衆議院

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第9号 令和6年4月11日(木曜日)

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令和六年四月十一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    金子 容三君

      神田 憲次君    小寺 裕雄君

      鈴木 英敬君    高鳥 修一君

      橘 慶一郎君    中川 郁子君

      古川 直季君    細田 健一君

      堀井  学君    宮下 一郎君

      保岡 宏武君    簗  和生君

      山口  晋君    山本 左近君

      梅谷  守君    金子 恵美君

      神谷  裕君    緑川 貴士君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      一谷勇一郎君    空本 誠喜君

      掘井 健智君    稲津  久君

      山崎 正恭君    田村 貴昭君

      鈴木 義弘君    長友 慎治君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   環境大臣政務官      国定 勇人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           奥野  真君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (水産庁長官)      森   健君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 前田 光哉君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 堀上  勝君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     山本 左近君

  西野 太亮君     古川 直季君

  一谷勇一郎君     空本 誠喜君

  長友 慎治君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 直季君     鈴木 英敬君

  山本 左近君     神田 憲次君

  空本 誠喜君     一谷勇一郎君

  鈴木 義弘君     長友 慎治君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 英敬君     金子 容三君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 容三君     西野 太亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、消費・安全局長安岡澄人君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、水産庁長官森健君、文部科学省大臣官房審議官奥野真君、環境省大臣官房審議官前田光哉君、大臣官房審議官堀上勝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。近藤和也君。

近藤(和)委員 皆様、おはようございます。石川県能登半島の近藤和也でございます。

 今日も、石川県が開発した花、エアリーフローラを着けて質疑をさせていただきます。花言葉は希望でございます。希望ある答弁を是非とも政府の皆様にはお願いをしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 まずは、海のことから質問させていただきます。

 今回の能登半島沖地震では、隆起をした海岸線が注目を集めております。今までになかったことでございますが、これは、いわゆる能登半島の外浦というところですね、志賀町から輪島市、珠洲市にかけてなんですけれども。一方で、珠洲市から能登町、そして穴水町、七尾市の能登島にかけては津波がございました。そして、この津波があった海岸線では、漂着ごみが流れてきているということで、このごみの処分をめぐって、地域の方々、そして、漁業関係者の方々が大変困っています。

 実際には網など大変大きなもので、所有者が分かっているものであれば、これは災害廃棄物ではなくて産業廃棄物だ、これは分からないでもありません。けれども、例えば浮き輪ですとか、小さな網のほぐれたものですとか、こういったものは所有者が分かりようがないと思います、現場で見ても。

 そして、もうぐちゃぐちゃですから、津波で流されてきたものは。これは誰々の所有物、これは分かりませんねということで、分かるものはあなたたちで片づけてくださいということは、これは大変厳しいのではないかな、復旧を妨げているのではないか、そういう、分けてやること自体がですね。

 この点につきまして、今日は環境省さん、政務官にお越しいただいておりますが、これは、しっかりと処分をしていくということ、復旧のスピードアップを図っていくという点で必要だと思うのですが、いかがでしょうか。

国定大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、環境省では、災害等廃棄物処理事業費補助金によりまして、市町村への財政支援を行っているところでございまして、基本的には、実施主体は市町村の方で行っていただく、こういうたてつけでございます。

 その上ででございますけれども、津波等によりまして損傷し、今ほど御指摘いただいておりますとおり、所有者が特定できない漁網、ロープ等の災害廃棄物につきましては、これは、海岸保全区域外の海岸に漂着し、市町村が生活環境保全上の支障があるというふうに判断をする場合には、今ほど申し上げました災害等廃棄物処理事業費補助金の対象となります。

 こうした漁具を始めといたします災害廃棄物を適正かつ迅速に処理をし、被災地の一刻も早い復旧復興に資するよう、被災市町村等に引き続き寄り添いながら、私どもとしても支援をしてまいりたいと考えております。

近藤(和)委員 所有者が分からないもので、そして海岸保全区域外であればという御答弁だったというふうに思います。ありがとうございます。

 ただ、地域の方々にとってみれば、保全区域外であろうが内であろうが、復旧を妨げる漂着ごみであることは変わりありませんし、これは誰々さんのものだ、いや、これは分からないですよねということを地域の方々は一々、じゃ、誰が調べるんですかということもございますので、ここは柔軟に環境省さんも、そして区域内であれば農林水産省であったり国交省であったりすると思いますけれども、柔軟に、早急にしっかりとこの処分をしていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 それでは、国定政務官、ありがとうございました。

 それでは、次の質疑に入らせていただきます。

 ちょっと通告になかったんですけれども、二日前に財政制度審議会の分科会が行われました。財務省から出された資料で、今回の震災に対しての復旧復興に対して、東日本大震災の例も含めて、人口減少区域にはある程度、少し、縮小均衡というか、こういったことも考慮していかなければいけませんねというような意見がどうやら出されたそうです。大変腹立たしいとしか言いようがありません。

 そこで、大臣に伺いたいのですが、今年度の予算、もう成立をいたしました。そして、予備費も一兆円積み上げております。財務省の分科会が何を言おうが、財政制度審議会が何を言おうが、復旧復興に対しての、政府は力を入れていく、農林水産省はしっかりと後押しをしていくということは変わりはないということでよろしいのか、確認をしたいと思います。

坂本国務大臣 私たちは、災害に対して果敢に復旧復興に取り組んでいく、農業も、林業も、水産業も、その点については変わることはありませんので、しっかりとそこは予算獲得、そして一日も早い復旧と復興。特に、石川県の知事からは、農林水産業の復旧なくして能登の復興なしというようなことも常々言われておりますので、全力で頑張ってまいりたいと思っております。

近藤(和)委員 大変力強いお言葉、ありがとうございます。

 私も、能登で、フルマラソンですとか百キロマラソンとかでいろいろ出ているんですけれども、これからスタートしようというときに、参加者が少ないから突然エードステーションを減らしますよと言われるようなもので、やる気をなくします。ですから、しっかりと応援をしていくということを何とかお願いをしたいというふうに思います。

 そしてもう一つ、済みません、実はこれも通告にないんですが、昨日、今日で、為替が円・ドル百五十三円ということで、三十四年ぶり。今、食料・農業・農村基本法の質疑をしていますけれども、この法律ができる前の水準よりも円安になっているということでございます。

 去年もおととしも、資材、肥料等が為替の要因で更にコストが上がっていく。原油価格も、この一年、二年の間では、底値を打ったところから二割は更に値上がりをしている、戻っているという状況でございます。間違いなく、今後、農家の方々、漁師さんからも、しっかりと対策を打ってくれという声が上がってくるはずです。昨日の地方の視察でもそういった声があったということを聞いております。

 もうやっておられぬ、もうやめたという声があちこちから上がる前から、しっかりと農林水産省として対策を打っておくということが大変重要だと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 私も、円安に関しては非常に心配をいたしております。

 特に、畜産関係の配合飼料、そして、果樹園芸も含めた資材あるいは肥料、こういったものに対してやはり大きな影響がありますし、それはコスト高になって、そのまま農家の皆さんたちの所得に直接つながってまいるところでございますので、これまでも配合飼料等につきましては、しっかりと五千七百億円の支援措置をしてまいりましたけれども、今後も、円安あるいはこういった飼料等の高騰、そういったものにはしっかりと注視をして、支援すべきところは支援をしていかなければいけないというふうに思っております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 少し私として心配をしていますのが、昨日かおととい、二十三か月連続実質賃金がマイナスというニュースが出ておりました。これは二月ですね。あわよくば四月か五月かに実質賃金がプラスに変わってくれるかもしれません。私たちは野党の立場ですけれども、やはり一般の方々のことを思えば、これが早く途切れてくれることを願っています。

 実質賃金が例えばプラスになった、物価高に勝てるような状況になったとしても、一次産業に携わる方々は今でも置いてきぼりなんですね。賃上げのニュースに対して、おらっちゃはもう関係ないわ、自分たちは、いろいろな値段が上がって、自分たちが売りたいものの値段は上がらぬで大変困っているわと今でも置き去りの気持ちなんですけれども、実質賃金がもしプラスになった段階で、もう物価高対策をやらないということが大変心配をしています。

 ですから、そのような状況になったとしても、実質賃金がもしプラスになったとしても、一次産業に携わる方々はコスト高で苦しんでいるんだ、そして、価格転嫁はできていないんだということをしっかりと認識を持ち続けていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に参ります。通告どおりの質問に行きます。

 農家の方々、被災された方から、共同利用をしているポンプの電気代が大変だということを伺っています。特に現在、田舎の方であれば分かると思いますけれども、共同利用施設があって、みんなで分担をしていて、分担をしてくれる方が減って負担が増えるということで、生き残りをかけた方が、普通の商売であれば生き残りのメリットがあるのが、地方であれば生き残った方がむしろ負担が増えてしまう、こういった現象が起きてしまっています。

 数字でいけば、例えば五百万円の共同利用の負担があったとして、十人だったら五十万円ですけれども、十人が五人になったら百万円負担しなければいけない、こういう現象が起きています。そして、今回の地震でもそれが加速しかねないということを被災地の皆様は心配をされております。

 この点について負担軽減策が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 共同利用施設、とりわけ農業の水利施設につきましては、令和四年度からの電気代高騰を受けまして、省エネルギー化に取り組む施設管理者に対しまして、高騰分の一部を補助する措置を講じてきております。

 この措置につきましては、エネルギー価格がウクライナ侵攻前の水準まで低下してきたこと等を踏まえまして、終了することにしております。

 ただ、本年の営農に支障があってはいけませんので、これは各土地改良区からも私のところにいろいろな陳情がございました。そういうことで、電力消費のピークを過ぎる本年九月までこの措置を実施することとしているところでございます。

 また、農業者が減少する中で維持管理費の低減を図るためには、エネルギー価格高騰の影響を受けにくい農業水利システムというふうな方へ転換する必要があります。転換する場合には、水利施設の省エネ対策というのを用意しておりまして、この事業をやれば、農業者の方々の負担が六%から一%に減らせるというようなことも措置しておりますので、こういったものも含めながら、今後の省エネ、電気代の節減、こういったものに努めてまいりたいというふうに思っております。

近藤(和)委員 電気代については考慮していく、対策を打っていくということで御答弁いただきました。ありがとうございます。

 一方で、電気代以外の使用料、例えば酪農のふん尿処理施設の利用料など、こういったところは対応しないと。これは坂本大臣以前の農水大臣のときにも厳しい答弁をいただいたんですけれども、そして今回も答えていただいていないということは、ここは考慮しないということだと思います。

 けれども、続けたいんですが、今回、基本法の議論の中で、基幹的農業従事者が現在百二十万人台だ、そして二〇五〇年、三十年後には三十万人台に減る、約四分の一まで減っていくということですから、先ほどの私の、十人でそれぞれ五十万円分担していたのが、五人になって一人百万円という例を挙げましたが、これよりももっと極端な例に現実的に進んでいくわけですよね。

 ですから、基本法の中で、人が減っていく、農業に携わっていかれる方が減っていくという中で、共同利用の負担部分がどんどんどんどん増していくんだということをしっかりと組み込んでいく必要があると思います。大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 最初のお尋ねの家畜排せつ物等につきまして、これは以前もお答えしたんだろうというふうに思いますけれども、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、廃掃法に基づきまして、畜産農家が自らの責任におきまして処理しなければならないものとされておりまして、共同利用施設の利用者減に伴う利用者負担の増加への支援を行うことは難しい状況にございます。

 ただ、今後、堆肥の高品質化あるいはペレット化、こういった施設は必要になってまいりますので、各市町村それからJA、こういったものが中心になりまして、今後の利用者負担等を図ってまいりたいというふうに思っております。

 私の地元のJAでも、畜産農家からそれぞれのふん尿を集めまして、そしてペレット化をする、それを広域的に販売していく、そういったことで今、準備を進めている、あるいはその作業を進めている最中でございますので、こういう取組を今後、全国的に横展開していかなければいけないというふうに考えております。

近藤(和)委員 一次産業のみならず、過疎地では、ありとあらゆる共同施設の負担増ということが現実的な問題として起こってきています。特に一次産業、農業の百二十万から三十万人まで減るということは、あらゆる産業の中でも最も厳しい現状ではないかなというふうに思います。ある意味、最先端だからこそ、この負担を軽減していくということをしっかりと配慮をしていく、手を打っていく、農林水産省こそが先んじてやっていくということを何とか一緒に考えていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 今日はここまでしか答弁できないというふうに思いますが、問題意識を持って一緒に進んでいけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の題に入りますが、資料を見ていただきたいと思います。この地図は何かといいますと、輪島市の町野地区というところの航空写真でございます。

 今、この能登半島で、約二十一路線で四十三か所通行止めになっています。これは県の管理の道路ですが、先月から、一路線そして四か所しか通行止めが解消されていません。今、地震から四か月目に入っています。いかに土砂崩れであったり陥没しているところを直していくことが困難かということでございます。

 輪島市と珠洲市のちょうど間のところが今日お示しをした写真の地域、輪島市町野地区というところでございます。ここで農家の方に伺ったのですが、自分のビニールハウスまでたどり着くことができない。実際、自分で道を開けることができないですから、山の中にあるビニールハウスが壊れているかどうかも確認することができない。そして、工事に携わる行政の方に聞くと、一年や二年ではここまで行くことができないだろうというふうに言われています。

 この農家の方は、この写真の、東陽中というんですけれども、この文と書いてある右端のところから、バッテンのついた手前のところに一か所ビニールハウスがございます。この手前のところのビニールハウスと、この右側の端にあります山の中にあるビニールハウス、この二か所でホウレンソウなどを作っているということなんですが、極端な言い方をすれば、ビニールハウスが目に見えるところで壊れてしまっていれば、今回の復興支援策、十分の九ですから、大変ありがたいです。これは、農家の方々もありがたいというふうに言われているんですが、壊れてしまっていることが分かれば十分の九のこの補助金を使って近くに移す、造ることができるんですけれども、たどり着けないし、壊れているかどうかさえも確認することができないという状況です。

 この農家の方から、早くビニールハウスを近くで造り直して営農を再開をしたいと。この方は七十前後の方なんですけれども、息子さんもこの地域で営農を一緒にしていただいています。将来地域を担っていただく大切な農家でございます。

 今までの災害対策の中では、壊れたということであれば考慮をしていたと思いますが、そこまでたどり着けないということを今まで考慮していなかったと思うんです。これをしっかりと手を打っていただきたいんですが、いかがでしょうか。

舞立大臣政務官 先生御指摘の問題は、農地利用効率化等支援交付金の被災農業者支援タイプの件だと思いますけれども、これは被災した農業施設や機械の復旧支援ということで、被災しているかどうかが不明な施設は本事業の支援対象にならないということはどうか御理解いただきたいと思っております。

 やはり、まずは市町村におきまして、御指摘のビニールハウスが利用できる状況であるか、その事実確認をする必要があると考えておりまして、当該ハウスが今後は利用できないということが確認できますれば、ハウスの設置場所を変えて再建する場合も支援対象とすることは可能でございます。

 こうしたことは、北陸農政局を通じまして、県、市町村には既にお伝えしているところでございますが、改めて周知を図ってまいりたいと考えております。

近藤(和)委員 理解してくださいと言われても、理解はできないです。もう理解ができないような災害になってしまっているわけです。

 この地図、再度見ていただきますと、この寺山集会所というところにもたどり着くことができません。こちらは少しだけ、若干平地になっているんですが、写真を見てお分かりいただけるように、もう私もこの辺りも何度も何度も走っているんですが、この左から二枚目の写真は、これは右側が山の斜面で、左側が崖で下に田んぼがあるんですが、こういったところも無事かどうか分からないんです。

 そして、更にずっと進んでいって、大体、この寺山集会所というところからビニールハウスのところまでは三キロから四キロぐらいあるんですが、この右下の写真を見ていただければと思いますが、もう山の中をひたすら通っている道でございます。ですから、どこが土砂崩れになっているか、そして、一番右下の写真は橋が無事かどうかさえも分からない、もうたどり着くことができないんです。

 では、無事だと確認できるのが、三年後なんですか、四年後なんですか、五年後なんですか。そのときまで、今まで収益の半分若しくは三分の一をつくっていた部分を諦めろというんでしょうか。これはもう、現実的に理解は絶対できないです、農業者の方にとっては。

 舞立政務官、何とぞ、もう少し前向きな御答弁をお願いしたいと思います。

舞立大臣政務官 事実関係の確認に非常に時間がかかるという場合におきましては、当該ハウスの復旧を待たずに、一定の要件がございますけれども、新たな場所においてパイプハウスを自力施工で導入するために必要となるパイプ資材の購入経費等につきまして、持続的生産強化対策事業、産地緊急支援というものがございますが、そうしたメニューで支援することが可能になっているところでございますので、御検討いただければと思っております。

 以上です。

近藤(和)委員 そちらだと十分の九じゃないですよね。更に補助の割合が減ると思います。

 では、確認をして、壊れていたらどうするんですか。実際行けないということは、営農できないということと一緒ですから。壊れていて十分の九の補助をするということは、営農できないからそれをしっかりと補助しましょうねということだと思うんです。実質的に壊れているのと一緒ですから。

 是非とももう少し、ちょっと今の答弁だったら、違うもので、補助率は低いですけれどもそこを検討してくださいということだと、これはちょっと納得いかないと思います。もう一度お願いいたします。

村井政府参考人 まず、事務方の方からお答え申し上げます。

 今、委員御指摘があったように、道路の復旧に本当に実際どれぐらいかかるのかというようなことですとか、あるいは、このビニールハウスの状況について、例えばドローン等を活用して上空の方から確認できないかとか、いろいろなことがちょっと考えられると思います。

 いずれにいたしましても、現場の状況、ぎりぎりのところをどういう確認の仕方があるのかどうかということについては、県なり市町村の方ともちょっとよく相談をしてまいりたいというふうに考えております。

舞立大臣政務官 確認して、壊れていれば支援対象になるというふうに答弁したところでございますが、その確認等につきまして、先ほど村井局長から説明がありましたように、また再度、何ができるかというところはしっかりと検討してまいりたいと考えております。

近藤(和)委員 再度、何ができるかしっかりと検討していきますという御答弁を信じて、営農できないということはもう間違いないですし、山奥を御存じの方であれば分かると思いますが、私もこういったところを街宣車で回ったりするんですけれども、ふだんでも心細いんですよ、携帯もつながらないですし。ここでパンクしたらどうしようとか、一人のときに思うんです。災害だったらなおさらです。

 ですから、何とか寄り添って、そして、この方は、個人的なことにはなりますけれども、一般的に、能登の山奥は同じような農家の方もいらっしゃると思います。ですから、何とか先行事例として救済をしていただくようにお願いをしたい。事務方の方も、実際行っていただければ、いかにしんどいところか分かりますから、ああ、これは無理だなというふうに分かっていただけると思いますので、是非ともよろしくお願いをしたいと思います。

 それでは、次の質問に参ります。

 今、様々ななりわい支援策については、採択されるかどうか不安だ、だから建物を発注しにくい、コンバインなども発注しにくい。この採択されるかどうかの不安と、さらには、やはり七十代、八十代の高齢者の方にとってみれば、場合によっては自分の命がどこかで尽きてしまうかもしれない、そういった場合に、耐用年数が来る前に自分が亡くなってしまった若しくは友人が亡くなってしまったらこの返還を求められるのではないか、そういった心配がございます。

 そして、若い農業家、農業者にとってみても、三人若しくは五人でしている場合に、一人、二人、三人が何らかの理由で農業をやめて地域から出ていくと、もう自分だけではできない、営農が無理だというところが来るかもしれない、そういったときに返還を求められるかもしれないということで申請をするのをためらってしまうという声がございますが、ここを何とか柔軟な運用が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘の生活となりわい支援のためのパッケージにおきましては、機械、施設の復旧支援に向けまして、農地利用効率化等支援交付金の被災農業者支援タイプや、強い農業づくり総合支援交付金の被災産地施設支援等を令和五年度予算予備費において措置をしております。

 これらの事業につきましては、令和五年度中に要望調査を実施し、産地から申請のあった事業については全て採択をしておりまして、現在まで不採択となった案件はありません。令和六年度にも活用できるよう繰越手続を講じたほか、令和六年度当初予算も活用しながら、切れ目ない支援策を措置をしているところです。

 もう一つ、補助事業で導入した機械、施設等につきまして、耐用年数を迎える前に離農することとなった場合におきましても、補助条件を継承できる者に無償で譲渡する場合には、補助金返還までは求めないこととしております。

 生活となりわい支援のためのパッケージに基づきまして、被災された農林漁業者の一日でも早いなりわい再建に向けまして、現地に寄り添った丁寧な支援に取り組んでまいります。

近藤(和)委員 ある程度柔軟な対応をしていただけるという答弁だったと思います。ありがとうございます。

 ただ、田舎の悲しい現実として、無償譲渡する相手がいないということも今後あり得ますので、何とか更に更に柔軟に対応していただければと思いますし、現状において、安心して申し込んでくださいというメッセージで、よかったと思います。本当にありがとうございます。

 時間がなくなりましたので、今日は、農業従業者の年金についてですとか、また、石川県から様々な要望をいただいたことも取り上げたかったのですが、できませんでした。

 そして、基本法については、やはり人口減少の部分については、人口減少を前提とするのではなくて、人口が維持をできていたとしても、今農業が厳しいんだということをしっかりと省みる必要があると思いますし、予算等についても、裏づけのものを今回の基本法でしっかりと位置づけないと、基本計画を作っていくときに心もとないのではないか、そういったことをやりたかったのですが、次回、質問で取り上げていきたいと思います。

 今日はどうもありがとうございました。

野中委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日も、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 今ほど近藤委員からもお話がありました食料安全保障、その中でも災害というのも食料安全保障の一環ではないかと思います。是非、対応を私からもよろしくお願いをしたいとまず冒頭申し上げたいと思います。

 それでは、私の質問に入らせていただきます。

 今回、基本法においては、食料安全保障、本当に、非常に大事な概念として入ってまいりました。食料安全保障をどうやってならしめるのかというときに、やはりこの国では農業の基盤を大事にしなければいけない。では、基盤とは何かといえば、農業者、農地だというふうに理解をしているところでございます。

 そこで、今日は農地について少し伺いたい、このように思っているところでございます。

 私からは、まず、農地の維持、確保、これについて伺いたいと思っているんですけれども、農地の維持、確保は、やはり農業基盤、農業の根幹に当たる部分であるというふうに理解をしておりますけれども、この二十五年間を見ておりますと、残念ながら農地も減少している現状にございます。

 何が問題だったのか。これは予算委員会でも伺ったんですけれども、この農水委員会の場においても改めて大臣にお伺いをしたいと思います。いかがでございましょうか。

坂本国務大臣 現行の基本法が施行されました平成十一年時点では、四百八十六万六千ヘクタールございました。しかし、令和五年時点で四百二十九万七千ヘクタールとなりまして、この二十四年間で五十七万ヘクタール減少をいたしております。

 主たる原因といたしましては、一つは、宅地や工場等の建設に伴います農地転用、これはとりわけ都市近郊で非常に激しくなっております。そしてもう一つは、やはり、中山間地も含めまして、高齢化や労働力不足によります荒廃農地の発生、この二つが大きな原因であるというふうに考えております。

神谷委員 ありがとうございます。

 全くそのとおりだと思いますが、その上で、先ほどもお話がありましたとおり、現在の農業者の方は大体百二十万人ということでございますが、将来、この国全体の人口も下がってくるというところでございますけれども、農業者の推計が三十万人になるというようなことで推計をされているというふうに理解をしております。

 仮に、この三十万人という方々で耕作をしていただくということになると、実に四分の一の方で耕作をしていただかなければいけないということになるわけでございますから、だとすると、どれくらい耕作できるのかな、現実のマンパワーというのか、農業者の数で考えたら相当程度厳しくなってくるんじゃないかなんということも思うわけでございます。

 仮に三十万人とすれば、現在の農地から耕作できる、三十万人でも維持ができるというふうにお考えになっているのか。また、どれくらいの農地が、現在の農地から不幸にして耕作放棄地になる可能性があるとお考えになっているのか。その辺の推計についてお考えがあれば伺いたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 現行の食料・農業・農村基本計画におきましては、令和十二年時点で、農地面積につきましては四百十四万ヘクタール、農業就業者数につきましては百四十万人と見通しておるところでございます。

 今国会で基本法改正案が成立した際には、それを踏まえまして策定されます次期基本計画におきまして、農地面積でありますとか農業就業者の確保を始めとする食料安全保障の確保の目標に関する数値の具体的な内容について議論していくことになると考えております。

 いずれにいたしましても、農林水産省といたしましては、農地の維持のため、農業の生産性の向上に資する農業生産基盤の整備を行うとともに、意欲と能力のある担い手の育成を図り、農地中間管理機構を活用いたしました農地の集約化等を推進しつつ、荒廃農地の発生防止のため、地域の共同活動でありますとか鳥獣害対策、粗放的利用による農地の維持保全の取組などの施策を推進しているところでございます。

 また、農業者につきましても、高齢化が進みます個人経営体におきまして今後も大きく減少することが見込まれることから、次代の農業人材を育成、確保するため、就農に向けた様々な資金メニューでの支援でありますとか、新規就農の受皿としても重要な農業法人の経営基盤の強化を図ってまいりたいと考えております。

神谷委員 今局長から御答弁いただきましたけれども、もちろん、農業者を減らさないということが我々にとって非常に重要な問題だ、課題だと思っておりますし、あるいは農業者に新しい方に参画いただいて耕作をしていただく、これは本当に必要なことだと思います。

 ただ、現状で推計でいうと三十万人という見込みだというようなお話も一つには聞いているところでございます。そうなったときに、本当に三十万人でどれくらいできるのかというのは現実の話として、この後、基本計画の中でもお考えになるんだろうと思うんですけれども、本当に現実の話として考えなければいけないと思っておりまして。そうだとすると、三十万人でできる規模というのは実はそんなに、どうなのかというところもあります。もちろん、耕作条件もあって、平地であれば多少できるかもしれませんが、例えば中山間地であるとか、そういうところも含めて、本当に、じゃ、三十万人でどれくらいできるのか。

 だとすると、現実的な話としてどれくらいの生産力というか、どれくらいの収量が上がるのか、そうすると自給率はどうなるのか、様々なことをやはり考えなきゃいけない。特に食料安全保障という概念の中では、これは絶対必要な概念だというふうに思っているところでございます。

 現在、多分、まだそういった集計等あるいは推計等はされていないというような今の御答弁だったと思います。ただ、やはりこれは絶対やっていただくべきなんじゃないかなと実は思っていますし、ある種のシミュレーションというんですか、そういうようなことだと思うんです。これは基本計画の中の論議の中でやっていくおつもりがあるんでしょうか、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 現行基本法制定時から六十万近く減少している、その原因としては先ほど御答弁差し上げたとおりでございます。

 そういった状況を踏まえまして、今回の基本法改正に合わせまして農振法を改正をいたしまして、農振除外の厳格化を措置することで、農業生産の基盤である農地を確保するということにしております。一方の方で、法人経営体でございますが、経営基盤強化を措置することによりまして、やはり法人経営体によりまして農地を活用していただく、営農していただくというような効率的な農地の利用促進を図ってまいります。

 そのために、やはり、現在、地域計画を作っていただいておりますけれども、この地域計画の中でしっかりと農業生産基盤の強化、整備、そして農地の集積、集約をやっていただくこと。それから、スマート農業化といいますのも、これは、今後の大区画化、スマート農業がやはりそこに貢献できるような農地の大区画化、こういったものも必要であるというふうに思っております。と同時に、担い手が中心でありますけれども、担い手以外の多様な経営体、こういった方々によりまして、農地をやはりしっかりと確保しながら耕作していく。

 まさに一体となって、農地の維持が図られるように、今後取組を進めてまいりたいというふうに思っております。

神谷委員 大臣の問題意識はそのとおりだと思います。

 その上で、農振法についてはこの後の法案審議の際にまた御議論させていただこうと思っているんですけれども、今ほど大臣、先ほど三十万人に減るというようなお話の中で、やはりどれくらい農地が維持できるのかということは、維持できるというか耕作していただけるのかというのは、条件もあるでしょうし、地域もあるでしょうし、しっかり推計していただくべきなんじゃないか。その上でシミュレーションした上で、実際にどういう規制の在り方であるとか、あるいは誰に耕していただくとか。今計画の話もしていただきました。

 実際にその計画ができてくれば、ある程度見通すこともできるかもしれませんけれども、こういったことを実際のシミュレーションとしてやるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか、これは。

杉中政府参考人 今後、基本計画の見直しをするということがありますけれども、現行基本計画でも、自給率の算定のバックデータとして、生産努力目標として作物ごとにどれぐらい生産を増やしていくか。また、構造展望等で、それを行う農業経営体というのをどういうふうに確保していくか。また、農地の見通し、今後目標になる可能性はありますけれども、どれぐらいの面積を使っていくのか。

 それを組み合わせた上で、できるだけ国内で作るべきものは作っていくという方針を目指していきたいと思いますので、先生がおっしゃるような形で、いろいろな要素を検討した上で次期基本計画を作っていくということになりますので、その点についてはしっかり作業したいというふうに考えています。

神谷委員 審議官、ありがとうございます。

 ただ、一つ確認したいんですけれども、基本計画というのは一応五年じゃないですか。五年ということで考えたときに、この三十万人というのはたしか二〇四〇年の推計だったというふうに理解をしておりまして。だとすると、この二〇二五から二〇三〇の話もそうなのかもしれませんが、その後の二〇四〇までのシミュレーションも含めた上でこの五年間を練っていくということが大事だと思うので、見通しにおいて、この五年間の基本計画を作る際に、その先々も見据えた上で作っていくべきだと思うんですけれども、こういった考え方でよろしかったですか。

杉中政府参考人 この基本計画を、今回、基本法も変わりますので、その在り方についても広く議論したいと考えておりますので、長期的な見通しと、五年間でのしっかりとした計画というのの組合せをどういうふうにしていくか。

 これは生産努力目標とかいろいろな要素でちょっとずつ変わってくることもあると思いますけれども、しっかりいろいろな人たちに御意見をいただきながら、しっかり考えていきたいと考えています。

神谷委員 是非ここの部分をしっかり考えていただきたいと思います。

 また、三十万人という数字はやはり大きな大きなショックがある数字だと思っていますし、このことがこの国の農政、農業に与える影響というのは実際、考えなきゃいけないと思っているところでございまして。恐らくいろいろなことは考えていただいていると思いますが、いかにして減っていく数を少なくしていくか、ここが、逆に言うと農政の肝じゃないかなと思っていますし、この基本法の実は肝じゃないかなというふうにも思っているところでございます。

 そういったこともあるので、農地の減少がなぜ起こったのかというのはやはり見なきゃいけないだろうというふうに思った次第なんです。

 その上で、農地を維持していくための規制の在り方、この規制の在り方は、現在の形が本当にいいのか悪いのか。残念ながら、今の規制の段階であっても、先ほど大臣御答弁いただいたように、残念ながら減っているということでございます。もちろん農地転用の部分があるわけでございますけれども、農地転用以外の部分で中山間地でどんどん減っているみたいなお話もございました。

 そんなことで考えると、やはり規制の在り方そのものに問題があるのかないのか、ここを考えなきゃいけないと思いますし、また、耕作放棄地を出さないために、農業者以外の方にも耕作していただくということも考えなければいけないと思うんですけれども、これについて、大臣の所感を改めて伺いたいと思います。いかがでございましょうか。

坂本国務大臣 農地農振法の改正があるということで、全国知事会等も含めて様々な要望が私のところに来ております。必要以上に厳格化することによりまして非常に地域にいろいろな弊害が起きるというようなことで、それぞれ、農地を守るためには地域地域の状況がありますので、それはそれとしてしっかりと考えながら、国と地方の協議の場等を通じまして農地を確保していかなければいけないというふうに思っております。

 それ以外につきましては、やはり先ほど言いましたように、担い手がしっかり農地を活用していただく、あわせて、やはり担い手以外の多様な経営体がそこに農業として農地に取り組んでいただく、こういったものを今後しっかり進めていきたいというふうに思っております。

神谷委員 ありがとうございます。

 もちろん担い手は大事です。担い手に集めていくことも大事です。その上で、多様な経営体があることが本当に非常に重要なんじゃないか。農村の多様性というのは非常に大事だと思っておりますので、是非そこも考えていただきたいと思います。

 ただ、規制の在り方については、先ほど申し上げたように、現在の規制であっても残念ながら減っているという現状を考えたときに、じゃ、今の規制の在り方はどうなんだろうか、あるいは、規制を厳格化したとして維持ができるのかどうか、ここも考えなければいけないと思っていまして。厳格な規制の下であっても、どういう方に入っていただくのか。あるいは、実際にきちんと耕作していく方であるならば、いろいろな方に耕作していただくことも考えたらいいんじゃないか。あるいは、小作権の利用なんてことも考えてしまうとか。

 いろいろな、ここは考えどころだと思っておりますので、大臣、もう十分いろいろお考えだとは思いますけれども、是非また今回の基本法改正に当たってはこの辺についても御留意をいただきたいと思いますし、その上での基本計画の改定に是非お知恵を絞っていただけたらと思う次第でございます。

 また、今回の基本法、生産性向上のために農地集積を進めていくという方針であると思いますけれども、これは本会議場でも申し上げたんですが、北海道ではかなり農地集積が進んでおります。その結果として、残念ながら、農村の過疎化であるとか限界集落であるとか、そんな課題が更に増えてしまった、進行してしまったんじゃないかというふうに思っております。

 農家戸数が今後も減少する、先ほどあったように、百二十万から三十万人というようなこともありましたけれども、そうすると、果たして農村集落が維持できるのだろうか、ここが非常にやはり課題だと思っております。もちろん、やはり人が住めないところに農業が成り立つとは思えないわけでございますから、集積の結果として、やはり農村コミュニティーの崩壊という副反応が出る、そのことについてどう考えていくのか、大臣の所感を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 集積の結果としての副反応、これは委員の御地元でございます知床等で私も話を聞いているところでございます。

 それで、先ほど言いましたように、高齢化、人口減少も急激に進行している中で、地域の農地が適切に利用されなくなること、そして地域コミュニティーの維持等に支障が生じること、これは確かに懸念をされます。

 このため、引き続き、担い手への農地の集積、集約化への取組を推進していかなければいけないと思いますけれども、問題は、やはり使われなくなる農地が増えるということが一番心配でございます。ですから、できるだけそれを使うこと、そして、農村コミュニティーにおきましては、農業にあるいは何らかの形で関わっていくという、高齢者も含めてですね、このことが必要なんだろうというふうに思います。

 そういうことで、多面的機能支払いというものを今後もしっかりと維持させて、農村の下支えということをやってまいりたいというふうに思っております。それ以外にも、六次産業化や農福連携などの農山漁村のイノベーションの取組、そして農村RMOによりまして様々な地域の業態というものをそこに生み出していく。こういったものによりまして、農地が集積、集約化されようとも、そこに農村の集落機能、コミュニティー機能がしっかりと息づく、こういったものをつくり上げてまいりたいというふうに思っております。

神谷委員 是非御留意をいただきたいと思っています。

 集積率、北海道は多分八五パーを超えてきたと思っています。そういう中においては、一人当たり、要は一経営体当たりの規模というのも相当大きくなっております。そうすると、その方が抜けると、その農地、十五町、十七町、二十町、人によっては七十町、八十町、百町という方がいらっしゃいます。そういう方々が抜けた結果として、じゃ、引受手はどうなのかというのは、なかなかこれは本当に厳しい、現実の話として厳しくなってまいります。

 そういったこともありまして、もちろん大規模にやっておられる方は大事なんだろうと思うんですけれども、やはりそればかりではない農村の構造というのが必要なんじゃないかなというふうに思っているところでございます。

 ですので、集積も大事なんですけれども、むしろ、私は、農村における多様性みたいなものが必要なんじゃないかなというふうに思っていますし、今度の基本法、食料・農業・農村基本法ですが、この農村部分が意外と弱いんじゃないかなという実感も実は湧いております。そういったところも是非御留意をいただきたいと思うんです。

 そういう意味で、先般また質問させていただいたところもあるんですが、規模拡大をこれまで目指していただいて、生産性の向上ということでやっていただいたんですけれども、規模拡大が直ちに生産性向上につながったのかといえば、実はそうでもなかったんじゃないかなということは私は申し上げました。これは実感として申し上げました。大きくすれば、もちろん面的整備をやると効率性が上がるのは事実でございます。ただ、それに応じて、機械投資であるとか、あるいは様々な投資がまた必要になってまいりまして、ここの部分が相当重くなっているというのも事実だというふうに思っています。

 そういった意味で考えたときに、もちろん、農地を大きくすること、あるいは規模拡大していくことが、一部、そういった省力化や労働時間の短縮とか、そういう効果は否定をしないものの、やはり、面的な整備も含めて、できるところというのは、この国の国土条件から考えると、意外とそんなに多くないんじゃないか。いい場所というのはそんなに多くはないんじゃないか。先ほど、お話が一番最初にありましたけれども、中山間地でやはり多くやめていっているような現状もあるんだろうというふうに思っています。

 そうした背景を見たときに、やはり大規模化ばかりじゃないんじゃないかなというふうに思っていまして、先ほども申しましたけれども、中小・家族経営であるとか多様な農業経営体が農村にいること、これが実は非常に意義があることじゃないか、農村ということで見たときには非常に意義があることじゃないかなと思うんですけれども。中小・家族経営、あるいは多様な農業者の存在、こういったことが地域にいる、地域コミュニティーにいること、この意義について改めて大臣の所感を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 北海道の地理にちょっと不案内だったものですから、先ほどは失礼しました。知床ではなくて、空知でございます。申し訳ありません。

 高齢化いたします農業者の減少に伴いまして、今後、離農農地が多く生じることは懸念されます。経営規模の大小や家族、法人などの経営形態を問わずに、農業で生活を立てる担い手を育成、確保することが引き続き重要であるというふうに考えております。

 一方で、委員おっしゃいますように、兼業農家など担い手以外の多様な農業者も、中山間地域等の農地の保全それから管理、そして集落機能の維持などの面で本当に重要な役割を果たしております。

 このため、今般提出いたしました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案におきましては、担い手である効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保を引き続き図りながら、一方の方で、担い手とともに地域の農業生産活動を行う、担い手以外の多様な農業者を位置づけたところでございます。

 多様な農業者につきましても、その役割に応じた支援を行いまして、双方で連携の下、一体となって、中山間地域を始めとした地域農業を支えていくことが重要であるというふうに考えております。

神谷委員 大臣、ありがとうございます。是非お願いをいたしたいと思います。

 その上で、一番最初、冒頭伺ったときに、中山間地は、やはり荒廃が進んでいるというか、残念ながら耕作放棄地になっている例があるということでお話をいただきましたけれども、特にこれまで水田活用直接支払交付金が支えていた面が実は大きかったと私自身は思っています。こういった部分が、畑地化なりなんなり、今回なる可能性が高い部分が多いと思うんですけれども、そういった畑地化を経たとして、その後きっちり支援がなければ、中山間地、こういったところは、支援がなくなった途端に耕作放棄地になる可能性が否めないんじゃないかなと実は懸念をしております。

 やはり、中山間地の支援の在り方について、やめていく例も多いんだというようなお話もあったので、支援の在り方、支援が足りていないんじゃないか、そういったところを思うわけでございますが、この辺についての所感を改めて大臣に伺いたいと思います。いかがでしょう。

坂本国務大臣 中山間地域で二〇〇〇年と二〇二〇年を比較をしてみますと、販売農家数は半減をいたしております。しかし、一方の方で農業産出額の方は微増となっております。私は、それだけ中山間地の皆さん方、様々な形でブランド化をされている、健闘されているというふうに思います。米一つにいたしましても、コウノトリの米とか、あるいは赤とんぼ米とか様々な工夫をしながら中山間地ならではの特色を生かした取組というのをされているというふうに思いますので、そのことについてはしっかりと後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

 その上で、これまでの中山間地直接支払制度によりまして、営農そのものを下支えしながら、一方の方で、中山間地でもスマート農業はできますので、スマート農業技術を活用した生産方式や地域に適した品種、技術の導入、こういったものもやってまいりたいと思いますし、中山間地での就農に向けた研修資金や営農開始資金の交付、そして経営発展のための機械導入の支援による農業の担い手の育成、確保、こういったものに取り組むことによりまして、中山間地をしっかりと支援してまいりたいというふうに思っております。

神谷委員 大臣おっしゃっていただいているように、優良な取組について後押ししていく、これも大変大切なことだと思いますが、先ほど産出額は増えているんだという御紹介もいただきましたけれども、一方でいうと、やはり耕作放棄も増えているという現実も見なければいけないと思っていまして。

 いわば優良な取組ができたり先進的な取組ができるところについては、頑張っていただいているので、それはそれで後押しをしなければいけないのですけれども、それとは別にしても、普通に耕作をしている方がやめていかなければいけない現状もやはり見なきゃいけないんだろうと思います。努力しなければ駄目なんだというところはあるのかもしれませんけれども、決して、そういう優良な取組ができない農家さんが努力していないかと言われれば、そういうわけでもないと私は思っています。中山間地という条件不利地の中で不断に耕作をする、それも怠けることなくやっているということであるならば、これは十分に評価するべきだと思うし、むしろこれで経営が維持できないということが問題なんじゃないかなと思います。

 そういった意味での、いわば下支えというか、経営の見通しがつくような、そういう経営維持のための支援策、ここも是非御留意いただき、考えていただきたいと思うんですけれども、大臣、そういった考え方でよろしいんでしょうか。いかがでしょう。

坂本国務大臣 全体として、中山間地の直接支払制度がまず大きな枠としてあって、その中で、しっかりと営農される方々のそれぞれの営農手法、そういったものに対して支援をすることによりまして、中山間地の農業というものをやはり持続させなければいけないというふうに考えております。

神谷委員 中山間地の営農の持続に向けて是非よろしくお願いしたいと思います。

 その上で、中山間地が代表的なんですけれども、条件不利ということを考えたときに、実は条件不利というのは傾斜地だけじゃないんじゃないかなというふうに思っております。

 例えば、面的な整備ができなくて非常に多くのところを抱えているというのも、実は条件不利なんじゃないかなと思ったりもしています。あるいは、最近はおやめになっていく方も多いのでやむを得ず引き受けるみたいな田んぼあるいは畑、そういう場所がたくさんある。あるいは、分散錯圃というのか、多くのところに通い作というのか、通わなきゃいけない例も聞いているところでございます。北海道だと、本当にひどいところだと通うのに三十分かかるんだみたいなところも間々聞いているところでございまして、実はこういったところもかかり増し経費という意味では条件不利じゃないかなと思っています。

 この際、そういった傾斜地以外の様々な条件不利を改めて考えていただけないかというふうに思うんですけれども、条件不利ということに対する考え方、これを見直すというのか、あるいはもう一度考える、そういうことはいかがでしょうか、お考えになっているんでしょうか。

坂本国務大臣 条件不利、いろいろなケース、パターンがあるんだろうというふうに思います。

 中山間地等におきましては、適切な農業生産が継続できるように、先ほど言いました中山間直払い等によりまして、生産条件に関する不利を補正をしているというところでございます。

 本制度では、傾斜がある農地のほか、自然条件により小区画あるいは不整形な田も支援の対象としておりまして、委員お尋ねの面的な整備ができずに小区画となっている田んぼにつきましては、本制度の対象というふうになっております。

 一方で、農地が遠方にあるなどにより作業が非常に非効率となっている場合につきましては、地域の将来の農地利用の姿の明確化に向けて、現在、市町村で取り組んでいただいております地域計画の策定過程におきまして、地域の話合いを通じて、農地の集積だけでなくて集約化を進めていただく、そういうことで最適な農地利用を進めることが可能であるということなどから、そういう遠隔地というだけで条件不利性があるとは言えないというふうに考えております。

神谷委員 最近になって本当に多くやめる方があって、結果として引き受けなければならない、それがかなり遠方、その地域の中ではどうしても中心になる方が引き受けなければいけない、その結果として、渋々というわけではないですけれども、多くの遠隔の農地が実際にできているというような事例を多々聞いているところでございまして、これがやはり最終的にまた障害になってこないか、あるいは、かかり増し経費は当然あるだろうと思うところでございます。

 実は細かく見ると条件不利に相当するような部分はたくさんあると思いますので、そういったところにどういった支援ができるのか。かゆいところに手が届くとは言いませんが、そういったこともこの際考えていただきたいということを新たに要望させていただきたいと思います。

 その上で、今回、次に白書について伺おうと思ったんですが、お時間が来たようでございますので。

 PDCAサイクルを回す上でも白書は非常に重要だったと思っています。新しい基本法の中での位置づけ、多少、少し変わったような、あるいは変わっていないような、そんな書きぶりになっておりますので、ここについて、PDCAサイクルを回すという意味で、しっかりと審議会にもかけていただく、あるいは国会にも御報告いただく、そのことを質問ではなく御要望という形で申し上げさせていただいて、この場での私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

野中委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、お疲れさまです。

 食料安全保障の確保が、この基本法案の重要な基本理念の一つに位置づけられています。その上で、重要な食料供給基盤である農地、その集積について、私からも初めにお尋ねをしたいというふうに思っております。

 担い手に集積させるという目的で農地バンクがつくられてから十年になります。先月末、二三年度までに担い手への農地集積を八割にするという政策目標を掲げて長らく取り組んでこられたところですけれども、まずはその達成状況についてお伺いしたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ありましたように、政府といたしましては、二〇二三年度末、令和五年度末までに全農地の八割を担い手に集積するという目標を掲げているところでございます。

 担い手への農地集積率、二〇二三年度の数字につきましては現在集計中ということになりますので現時点ではお答えできませんが、直近出ておる数字といたしましては、二〇二二年度末、令和四年度末の数字になりますけれども、これが五九・五%となっております。これは、農地バンク等の創設等もあり、二〇一三年度末、平成二十五年度末に比べると約一〇ポイントの増加となっております。

 集積が一定程度進んだとは評価しておりますけれども、今御紹介したように、現状、まだ目標には届いていない状況であると認識をしております。

緑川委員 その理由はどこにあるというふうにお考えでしょうか。

坂本国務大臣 農地バンクを活用した集積は増加をしております。これまでの担い手への農地の集積は、相対の農地の貸借によるものが中心となっておりました。このため、一般的に、農地の分散錯圃が解消されずに、担い手に使い勝手のよい形での農地集積が図られないことが、担い手への農地集積が進まない要因というふうに考えております。

 今後は、今、目標地図を作っていただいておりますので、それを明確化して、その中で作られた地域計画に基づきまして、さらには農地バンクも活用いたしまして、農地の集積、集約化を一層推進してまいりたいというふうに思っております。

緑川委員 これまで、荒廃農地を未然に防ぐということを主眼として農地の集積また農地の集約化を図って、まとまった農地で、なるべく一枚にして効率性を高めて生産性を高める、生産拡大を図るということ自体は否定するものではありませんけれども、数字として、今事務方から御答弁いただきましたように、バンクがつくられての集積率が五〇・三%から十年で、二〇二二年度で一〇%弱、九・二%という伸びに、これは九年間ですから、とどまっているわけです。六割弱という数字、九ポイントで、今からあと五、六年でこれを今まで以上の、倍以上の割合で高めていかなきゃならない、それが八割という目標であると思います。

 大臣から御答弁いただきました、相対で、地域内で顔の見える関係に、これは、安心感を感じて農地を貸している所有者もやはり多いわけであります。地域内で担い手以外への農地の貸し借りが行われてきたことももちろんあります。

 そして、そもそも都道府県によって担い手の数にやはり大きな差があります。地域類型で見ても、南関東のように都市的な地域が主体であったり、北陸や東北、九州のように平地や中間地域が多かったり、あるいは、中国や四国のように中山間地域が大半を占めていたりと。また、作付についても、比較的大規模化を進めやすい水田地帯に対して、一方、果樹の産地であったり、都市近郊の地域では、大きな担い手への集積というのはやはり進みにくいといった地域の事情があります。

 この取り組みやすさが違う中で、一律に八割というのは、やはりこれは地域によっては相当な高いハードルだというふうに思います。もちろん達成しているところはあるんですけれども、達成していないところが大半です。

 この二二年度の一年間の実績で見ても、ここ最近は集積した面積は一・四万ヘクタール。つまり、年間の目標面積の九%に足らない状況なんです。ほぼ頭打ちという状況の中で、ここから更に二割を引き上げるというのは、現実としてかなりこれは難しいんじゃないかなというふうに、やはり実感としては感じてしまいます。目標の見直しであったり、あるいは取組の軌道修正がやはり今この節目で求められているというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 今後は、やはり農地バンクを更に活用すること、そして、地域計画を作成しておりますので、その地域計画に基づきまして、引き続き八割を目指して、担い手への集積率をフォローアップしてまいりたいと思っておりますが、それぞれ、地域地域、今委員言われましたようにそれぞれの事情がございますので、目標の立て方につきましては今後議論をしてまいりたいというふうに思っております。

緑川委員 八割目標という数字自体は、これは堅持をしていくということだと思いますが、これまで八割という目標を設定をするという状況において影響を受けている数字というものにちょっと触れたいと思うんです。

 お配りしている資料の3なんですが、現行の基本計画の策定の際に示されている二〇三〇年の農業就業者の数のイメージです。四年前に展望として示されていたのは、この上の方の八十六万人の担い手や主業の経営体ということなんですけれども、これはあくまでも、書かれているように、農地の八割を担うことになるという前提での数字です。

 これは、実際には集積率がやはり頭打ちで、全国では八割、各都道府県では八割に到底達しないというところが現実的であるというふうに思いますけれども、そのような状況であれば、これは八十六万人ではなくて、主要な農業の支え手というのは、集積が進まない中ではもっと必要になるというふうに思います。見通しはやはりこの時点で甘かったのではないかというふうに思わざるを得ないところですが、この辺り、大臣の御認識を伺いたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘があったように、現状の数字と当時立てた見通しの数字に少し乖離が出ているというのは、事実関係としてそういうことだというふうに我々認識しております。

 今回、基本法の改正ということでこの委員会の場で御議論をいただいておりますけれども、こういった御議論を踏まえ、また、基本法が改正された暁には、新しい基本計画を策定する中で、こういったところについてどういうふうに考えていくのかというのは、また次期基本計画の策定過程において十分考えていきたいと考えております。

緑川委員 これは現行の基本計画の際ですけれども、五年前の時点でも、調べますと、これが八十六万人じゃなくて九十万人だったんですよね。ですから、どんどん減らしているんですけれども、それでも見通しがやはり甘いというふうに思います。もう一段、低い数字というのを低い担い手で支えていかなければならない、少ない数でしっかり支えていかなければならないという現実が迫っていたということを、やはり重くこれを反省をして、受け止めて次に向かわなければならないというふうに思っています。

 個人、法人問わず、新規就農者の確保がこれは必要ですけれども、減少幅が拡大をし続ける理由の一つは、やはり新規の就農がなかなか進んでいないということが一つあると思います。次世代人材投資事業だったりとか農の雇用事業も新規就農の後押しになってきたわけですけれども、毎年これは採択の人数が漸減していますし、将来の担い手として期待される四十歳以下、特に若い就農というのは二万人台をいよいよ割り込んできている。一万八千人台とかになっているような状況です。

 高齢農家の減少を十分にカバーできずに、最近の基幹的農業従事者、今日の御議論もありますけれども、もう年間で最近では六万人から七万人減っているわけです。昨年が百十六万人、二〇三〇年には、このままのペースでいきますと、基幹的農業従事者自体がこの数字で八十六万人と書いてあったんですが、基幹的農業従事者自体が八十万人台になってしまう。相当な乖離があるというふうにやはり思いますので、その時点でも甘い試算であったと言わざるを得ないというふうに思います。

 この集積も、やはり一律の目標設定ではない仕組みにするべきである。この取組の難しさを考えて、栽培とか地域類型別に基づいて集積目標を設定したりとか、あるいは、担い手がそこにいないのであれば、担い手に準ずるような経営体に集積ができないか、そのような仕組みを取れるような支援をしていくべきであるということを、私は委員会でも議論を大分前からさせていただいたんですけれども、なかなかそれが改善されないままここまで来たというふうに思っております。

 あくまで、目標を堅持するにしても、改善するべきこの集積に当たっての課題、また、この八割目標を設定する、これから改めて設定したにしても、それに向かうまでの、大臣おっしゃったように、立て方のプロセスはしっかりと見直していかなければならないというふうに思っておりますし、中山間地域では、神谷委員がおっしゃったように、やはり集積が進んでいないという現状が、この影響が表れているというふうに思います。

 二〇一五年と二〇二〇年の農林業センサスの数字を比較したときに、担い手へのこれまでの集積、集約化、また法人化を進めてきたことで、一経営体当たりの耕地面積は確かに増えているんですけれども、配付している資料の1を御覧いただきたいんですけれども、国内全体の経営耕地の総面積というのは、二〇一五年が三百四十五万ヘクタールあったんですが、この五年後、二〇二〇年には三百二十三万ヘクタール。この五年間で二十二万ヘクタールの経営耕地が減りました。

 全国の平均では六・三%という減少ですが、これは地域別に見ると、沖縄では二〇・八%、四国では一二・九%、中国地方で一二・二%、東海で一〇・一%。平均以上にこれは面積が減少しています。そして、経営規模の大きい北海道を除く都府県で比べたときには、特に減少が進んでいるのが中間農業地域の九・五%、山間地域では一三・五%です。

 耕作放棄地の統計が前回二〇一五年の調査を最後にして正確な数字、統計が取られていないというのは残念ですけれども、二〇二〇年の耕作放棄地の正確な数字はないんですが、担い手への集積が難しいところ、こうした条件不利地で耕地面積が大きく減って、耕作放棄がやはり特に進んでいると言えるのではないかというふうに思いますけれども、大臣、御認識はいかがでしょうか。

坂本国務大臣 まず、耕作放棄地と、それから荒廃農地、この仕分につきましては委員今御指摘のとおりでございまして、現在、耕作放棄地につきましては、農業者の側からの農地ということで、これは統計として出ておりませんが、平成二十年から毎年調査をしております荒廃農地につきましては、全体的な推移といたしましては近年横ばいで推移をいたしております。令和四年末時点で二十五・三万ヘクタールというふうになっております。

 委員御指摘のとおり、中山間地域では人口減少や高齢化が都市部、平野部に比べまして急激に進行し、農業生産活動の継続、農地の維持管理が単独では困難な集落が増加する中、農地の荒廃が進行し、全国の荒廃農地の六割が集中しているというような状況にあります。

 そこで、農林水産省といたしましては、まずは荒廃農地の発生防止が重要であると考えておりまして、営農を続けて守るべき農地と、それから粗放的な利用を行う農地とを明確にしまして、総合的な対策を打ってまいりたいというふうに思っております。

 粗放的な管理といいますのは、例えば養蜂の蜜源にするような、こういった植物を植える、あるいは花を植える、あるいは放牧をする、あるいは鳥獣被害を防止するための緩衝地帯とする。こういったものを、しっかりと粗放的なものをやはり活用、利用することで、荒廃農地というのを今後防いでまいりたい、広がりというのを防いでまいりたいというふうに思っております。

緑川委員 六割という荒廃農地がやはり条件不利地で多いというところで、営農環境が特に厳しいところで、大型の機械がやはり入れにくい、除草や防除も本当に難しい、生産効率が上がりにくい、そうした難しいところで食料の供給基盤である農地を守りながら、耕地面積の四割、そして農業産出額の四割をこれまでも担ってきた、そんな農地の減少を食い止める経営体への支援というものが、私は食料安全保障の確保には不可欠だというふうに思います。

 中山間地域等直接支払金は、これまで裁量性の高い交付金で、共同の集落活動が行えるようにして、農村の活性化、地域資源の保全に果たしてきた役割は非常に大きいというふうに思うんですけれども、やはり今現状を見ると、集落協定についていえば、制度が始まった二〇〇〇年の第一期からほぼ同じ方々が持ち上がりで、協定の参加者が高齢化をしています。四半世紀近くで協定の数、参加者の数、そして交付金の受給面積というのは、いずれも少しずつですけれども減ってきています。この協定数も減っていることから、集落の協定の広域化というのは、残念ながら、狙いとしてきたことは進んでいないというのが今の状況にあると思います。

 そして、これからの見通しとして、資料の2をお配りしているんですけれども、農村の集落が、人口九人以下の小規模集落となるところが、二〇五〇年には全集落のうちの一割を超えて、山間地域では三割を超えていく。これからの集落の農地面積が、三十万ヘクタールにこうした集落が及ぶとしています。

 小規模集落にこれからなり得る、高齢化が半分を超えている集落の農地面積についても、これは七十万ヘクタールに達するということが見込まれています。

 集落の戸数が九戸以下となれば、農地の保全など集落の活動の実施率が急激に下がると言われていますから、人口九人以下であれば当然戸数は九戸以下になるわけですから、こうした集落が機能不全に陥る可能性があります。

 現状、この中山間直払いの交付対象が、集落などの農家が組織する団体が基本であります。これからも集落協定というのは多くの集落で柱になることは、これは前提でありますけれども、他方、個別農家への交付というのは、これまでかなり特例的なものとして制限されてきました。

 ただ、今回の基本法案では、効安経営の農家に加えて、中小の家族経営とか副業的な経営体、半農半Xあるいは自給的農家、これら多様な農業者が生産活動を通じて農地を維持するという主体として、今回、条文に書き込まれています。

 人手が確保できずに共同活動自体が成り立つのが困難になっている、そういう集落に対しては、個別協定の対象を、従来の認定農業者や法人だけでなく、多様な農業人材を交付対象に加えて、積極的に支援をしていく必要があるというふうに思います。

 大臣、御所見いかがでしょうか。

坂本国務大臣 中山間地の直払い制度の個別協定は、認定農業者そして農業法人等による農業生産活動の継続を支援するものでありまして、令和四年度で全協定のうち二%となっております。

 委員御指摘のように、今後集落機能が低下する地域におきましては、農地の保全管理におきまして、担い手の果たす役割が大きくなっていくというふうに考えております。

 そのため、少ない担い手でも広い農地を保全管理できるよう、農作業の効率化を行うスマート農業の導入、そして、水利用の省力化や効率化に資する水管理システムの導入、さらには、農作業を請け負うサービス事業体の育成、確保などの対策を講じていくこととしておりまして、個別協定として行うのであれば、その対象として多様な農業人材を交付対象に加えるような支援は必要はないというふうに考えております。

緑川委員 個別協定というのは、そもそも、集落協定の圧倒的に例外的な取組として認められているものの中で、担い手だけで取り組める数というのは、今、現状においても非常に限りがございます。認定農業者以外でも、認定農業者に準ずる者ということで、地域の実情に応じて、今後の担い手として市町村の認定を受けた人ですけれども、これも調べると、個別協定というのはそもそも六百弱の協定、二〇二二年度でも相当少ないんですけれども、その中で、準ずる者というのはたったの十四件。非常にやはり担い手というところに対するハードルが高いわけですね。

 基本法でも多様な農業者というものが位置づけられていますし、先般の農業経営基盤強化促進法でも、地域計画に位置づける主体として、効安経営体のほかに農業を担う者が加わりました。地域計画に多様な農業者が位置づけられることも想定されているんですが、こうした、市町村が認めた場合、自治体が認めた場合にこそ、個別協定に基づく交付対象としてしっかり支援をしていくべきではないか、これは認めてもいいんじゃないかというふうに思いますが、これはいかがでしょうか。

長井政府参考人 お答えいたします。

 今お話があったのは個別協定の話でございますが、基本的には、中山間直払いにつきましては、地域で、皆さんで共同活動をしていただくという、集落協定というのを基本としてやっていくということで制度が始まっておりまして、市町村がそういう形で、共同活動の、集落協定の方を中心にやってきているということでございます。

 そういう意味で、先ほどありましたように、認定農業者の方がやられるということであれば、それ以外の多様な農業者の方は、そういう意味では、集落協定の方の中で、地域で、皆さんで一緒にやっていただくということが活動するのに基本であるというふうに思っております。

 なお、協定の支払いの関係の支払い方は、それぞれ協定の中で配分の仕方を決めることができまして、実態としましては、交付金の配分は、集落協定であっても個人に配分することも可能でございますので、現状で、共同の取組活動と個人配分が大体半々ぐらいで、それぞれ交付金の配分を行われているという現状がございます。

緑川委員 集落協定の中でやればいいじゃないかということに対しては、先ほどから私が申し上げているように、集落機能の維持がもう難しくなっているという集落が出てきているということに対して、個別の対応が求められているということについてお伺いしています。

 大臣、こうした現状についてしっかり受け止めて、多様な農業者の位置づけ、これは基本法案だけじゃなくて、今の経営基盤強化促進法にも位置づけられています。この辺りの支援を、地域の実情に応じた多様な農業者への支援というもの、具体的なメリット、位置づけられた場合のメリット、支援措置ということも併せて現場に伝えていただく必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 今局長お答えいたしましたように、多様な農業者も含めて、あくまでも集落として集落協定を結ぶことによりまして、その集落の維持存続を図る、そして集落の中山間地の活性化を図るというのがまずはやらなければいけないことでございますので、個別協定につきましては、それは、選ばれた人といいますか、認定農業者、こういった方々としっかりそれは結んでいくというようなことで、集落協定の条件というものはしっかり守ることによって中山間地を守っていきたいというふうに思っております。

緑川委員 神谷委員とのやり取りでも聞いていましたけれども、将来的に、基幹的農業従事者が今のおよそ百二十万人から三十万人、四分の一にも減るという中で、いまだ抜本的な仕組みを変えずに担い手に担い手にというのであれば、私は、農村の集落というものが危機的な状況に陥っていくのを、見放していくしかないというような大臣の御答弁、事務方の御答弁であるというふうに思ってしまわざるを得ないと思います。

 この集落協定というところと個別協定というところの仕組みを、やはり比率を含めてしっかりと見直していただきたいというふうに思っております。

 時間がないので、次の問いに行くところですけれども、今年度末までに地域計画というのは策定されることになりますから、各自治体でこれは出てくるわけですから、早めに多様な農業者に対する支援措置というものを、具体的にはどういった支援ができるのかということは、しっかりと現場に周知をしていただきたいというふうに思っております。

 農業との、多様な農業体、経営体ですけれども、接点を持ちながら自分の趣味や強みなどを仕事とする半農半Xというのは非常に大事ですけれども、六次産業化ということの関係においては、政策の目的はそれぞれ異なるんですけれども、半農半XのXは、農村の外での収入というものが想定されていることが多いと思うんですが、関係人口を増やしながら農村のコミュニティーを維持していくということを考えれば、六次産業化を目指すということも一つの目標の形として、農村の内側からの発展を考えていくことが大切ではないかというふうに思っております。

 今、副業的な経営体の農の暮らしが定着をして、それを発展させた形の一つとして六次産業化を位置づけしやすいというふうに思いますし、農地の保全やコミュニティーの活性化にもつなげることができるんじゃないかというふうに思っていますけれども、新規就農者が減る中で、場合によっては将来の担い手としても期待される、意欲を持って取り組む半農半Xにうまく橋渡しができるような、六次産業化につながるような支援が必要ではないかというふうに思いますが、この辺り、大臣のお考えを伺いたいと思います。

坂本国務大臣 半農半Xは、例えば、都市から農村への移住者が、農業と別の仕事を組み合わせて生活に必要な所得を獲得する働き方でありまして、その中で六次産業化に取り組むこともあり得るというふうに考えております。

 半農半Xを実践される方が、六次産業化に取り組むことによりまして、将来の地域社会を維持する担い手になることが期待されることから、委員御指摘のように、半農半Xの働き方を支援することによって、地域社会をしっかり維持することに努めてまいりたいというふうに思っております。

緑川委員 元々、食品の製造であったり、食べ物でなくても物づくりに携わっていた方とか、また、サービス業、お店をやっていた方が農村に移り住んで農業に関わるといった場合には六次産業化に取り組みやすいというケースもございますので、部局ごとの各事業の縦割りではなくて、しっかりこれは、結果として、同じ取組を行っているという事業者の結果にもつながることになると思いますから、横の連携を取りながら事業の後押しをしっかりしていただきたいというふうに思っております。

 最後に、食品加工の中で、漬物製造に係る課題についてお伺いしたいと思います。

 食品衛生法の改正に伴って、二〇二一年の六月から、漬物を製造して販売する場合には漬物製造の営業許可が求められるようになりました。

 大臣の御地元の熊本で、冬場の冷たい風に大根をさらして作る寒漬けがあるのに対しまして、秋田では、外にさらせば大根が凍ってしまいますので、いろりの上につるしながらいぶして、ナラの木や桜の木を燃やして薫製にして、米ぬかで漬け込んで作るいぶりがっこというものがあります。雪国の保存食として重宝される、食文化として地域に深く根づいている漬物なんですが、法改正のきっかけとなった問題の浅漬けとは製造方法が根本的に違いますし、いぶりがっこによる食中毒の問題はこれまで確認されていないんですけれども、今回、一律の漬物製造業ということで、衛生基準を満たす施設整備が求められるようになりました。

 改正法に対応する三年間の経過措置というものがいよいよ来月末で終了するわけなんですが、秋田県の調査では、直売所で漬物を販売する農家六百三十六人のうちの三割、およそ二百人が営業許可を取らずに事業を終えるというふうに回答しています。高齢化に伴う廃業という側面もありますけれども、今回の改正が多くの廃業を決断させる決定打になってしまっているという事実はあると思います。各農家、小規模生産でありながらも、その家々の伝統の味を求めて産直や道の駅に買い付けに来るという地域の方も多いんですが、一旦廃業してしまいますと、なりわいの継承というのは難しくなってしまいますし、それと結びついた農業生産、農村の活気も失われてしまうという懸念があります。

 施設整備の費用は県の補助に市町村の補助が上乗せされているところもあるんですけれども、自治体によっては支援には差がありますし、事業者の設備投資への負担というものはやはり生じています。事業を続けるか分からないと答えている方もいらっしゃるんですけれども、次の世代に引き継ぐためにも、法改正に当たっての国の責務として、事業者の費用負担を含めた負担軽減、自治体による後継者確保の取組への支援、積極的にこれは国の責務として行っていただきたいと思いますけれども、最後にお尋ねいたします。

坂本国務大臣 平成三十年の食品衛生法の改正におきまして、漬物製造業が新たに許可を得なければ営業できない業種とされました。御指摘のとおりでございます。施行まで三年間の期間を取って令和三年六月に施行するとともに、従前から漬物製造業を営む方々にあっては、更に三年の経過期間を設けました。その経過期間は本年五月まででございます。公衆衛生の見地から必要な施設準備の遵守が求められているものというふうに承知をしております。

 その中で、御指摘のとおり、農業者の方が漬物製造に取り組まれているというケースもある中で、厚生労働省では、都道府県に対しまして、小規模零細事業者の事業継続に配慮するよう依頼するとともに、例えば、議員御地元の秋田県では、関係団体との調整を踏まえて小規模農家の事業継続に配慮した対応を行うというふうになっております。

 そして、都道府県では、各地の実情に応じまして施設整備に対する支援を講じておりまして、例えば秋田県では、漬物製造の継続を希望する農業者の方々に対しまして、令和四、五年度の二年間に集中して対策を講じ、取組が進んできたというふうに聞いております。

 漬物製造のための施設を整備する取組に対しまして支援が今後も可能であり、都道府県と連携をして活用を検討していただけないかというふうに考えております。

緑川委員 農村での振興という点で、生きがいづくり、仲間との交流の機会を何とか絶やさないように、きめ細かい支援をお願いして、質問を終わります。

野中委員長 次に、渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党の渡辺創でございます。

 基本法の質疑でございますので、ちょっと御容赦をいただき、最初に、少し抽象的ですが、大臣の農政の現状に対する認識をお伺いするという趣旨で質問をさせていただきたいと思います。

 八日に、立憲民主党が進める全国農林水産キャラバンで、鹿児島県の薩摩半島を訪ねました。このキャラバンは、昨年七月から既に全国十三か所を回って、農業者や関係者の方々の中に入って党としてお話を聞かせていただいている取組であります。今回は、野間理事を中心に、子牛の競りであったり、イチゴや薬草栽培の現場、そして各種の意見交換をさせていただいてきました。

 その中で、私と同じぐらいの世代の男性の専業農家の方から、こんな御意見がありました。私が取ったメモを基に、その方の発言の要旨をそのまま読み上げたいと思います。

 元々役場に勤めていたが、実家の農業を継いだ、いつも稼ぐ農業を意識しているが、サラリーマン並みの収入を得るには朝から夜まで休みもなく働くしかない、この国では今でも農業者は生かさず殺さずなのだと実感している、大きい農家だけが生き残ればいいというシステムになることをとても危惧しているとおっしゃっていました。

 今回の基本法改正は、これから二十年の農政の骨格をどうするかということを議論しています。今、その重要なポイントに立っているという認識をした上で、これまでの農政、これは政治全体の責任と言えるかと思いますけれども、その結果として、農業者が今こういう心情に至っているということを、大臣はどのように受け止められますでしょうか。

坂本国務大臣 生かさず殺さずという表現が出ること自体、大変残念でありますし、そういうことを私たちはやはり考えない農政をしていかなければいけないというふうに思っております。

 いろいろな方がいろいろな職業に就くときに、やはりそこは夢と希望と目標を持って就いていかれるはずです。その中で、目標に達しない、あるいはなかなか挫折をする、挫折せざるを得ない、そういうときはやはり再チャレンジできるような、そういう仕組みもつくっているところでございます。

 私たちとしては、特に農業の場合には、非常に播種から収益まで期間が長い、そして地域に貢献するものである、そして生命の源である農作物を作るものであるということで、様々な対応策をしております。農地に対しての取引の制限、あるいは税制、そして経営の安定、所得対策、さらには収入保険等々で私たちは農業の振興を図っているところでございますので、決して以前のような、生かさず殺さずというようなことではなくて、稼げる人はどんどん稼いでいただきたい、そしていろいろなチャレンジもしていただきたいというふうに思っております。

 それを更にもう一歩前に進めるために、今回、食料・農業・農村基本法を改正し、それに関連する様々な法案、法律を提案しているところでございます。

渡辺(創)委員 この方は中山間地でミニトマトやカンショ、稲作をやっているという方でありました。あえてもう一度強調しておくと、御本人としては稼ぐということを一生懸命意識しながら日々農業に取り組んでいらっしゃるんだということを、改めて強調しておきたいと思います。

 大臣には、子細が分からない中で答弁するのも難しいものだったと思いますが、我々政治サイドがこういう心情をしっかりと理解しようとしているということ、そこは大臣からもよく御答弁からも確認できたので、本当にありがとうございました。

 次の質問に移りたいと思いますが、九日のこの農林水産の委員会の中で、旧戸別所得補償制度に関するやり取りがありました。同制度に関する評価は、それぞれの立場も考えもあるでしょうから、今日は限られた時間の中でこの場でその是非について議論をするつもりはありません。

 ただ、大臣の答弁の中で、旧戸別所得補償制度の復活は、結果として、需要に応じた生産を行うという農業者の努力を損なうリスクがあるという趣旨の御答弁がありました。議事録も何度も読みました。ただ、ここで聞いていると、前後のつながりも含めていまいちニュアンスがつかみづらかったので、再度御説明をいただきたいと思います。

坂本国務大臣 九日の委員会での稲津議員への答弁は、主食用米の個々の販売農家に生産数量目標を割り当てることを前提としていた旧戸別所得補償制度を復活させることとなれば、米の販売先との結びつきや、輸出を含め米の販売先の開拓、あるいは需要のある作物への転換など、生産者や産地が取り組んでいる、需要に応じた生産に向けた創意工夫や日々の努力にブレーキをかけることになりかねないことが懸念される旨を私が答弁したところでございます。

 現在の米政策では、需要に応じた生産、販売を行っていただくことを基本としております。現に、多くの生産者や産地では、生産される産地銘柄米などの需給状況や市場評価を踏まえながら、生産性や付加価値の向上等の取組によりまして所得確保に向けた創意工夫がなされているところでありますので、農林水産省としては、こうした生産者や産地の努力を後押ししてまいりたいというふうに思っております。

渡辺(創)委員 需要に応じた生産を行う努力というのは、つまり、お米を作るか作らないか、販路をどこに求めるか、また、水田でほかの作物を作るかどうかなど、生産者が判断して取り組むことを努力というふうに表現をしたのかな、そう理解すればいいのかということを確認したいと思います。

 その上で、改めて再確認ですが、戸別所得補償制度ではその努力は損なわれるというふうに大臣はおっしゃっていると理解したらいいでしょうか。

坂本国務大臣 やはりブレーキがかかるというふうに思っております。

渡辺(創)委員 見解としては理解をいたしました。

 一方で、確かに自民党さんや公明党の皆さんなどの主張や政策とは異なるというのは分かっていますが、農水省としてここまで言い切って、答弁で大丈夫なのかという気がちょっとしています。

 それは、そもそも今回の基本法の改正という取組自体が、農政を取り巻く環境の変化が速くなっているということを踏まえて行っているわけですね。環境が変化している中で、将来、所得補償が必要だという政策転換が出てくる可能性は一定程度予見されるわけでありますし、完全にそれを否定するということは誰にもできないと思います。にもかかわらず、ここまで否定をするというのは、農水省という立場に立てば、政策判断の可能性を無駄に狭めているだけではないか、こういう答弁を繰り返すこと自体がですね。選択肢を狭めるという意味では、自らの首を絞めていることになるんじゃないか。

 私は、この答弁はやはり蛇足ではないかという気がしています。ある意味で、ためにする議論に乗っかってしまっているんじゃないかという気がしますが、この中身については堂々巡りになるので、今日はこれ以上はやらないでやめます。

 ただ、この間の御答弁の中で、一つ看過できないことがあったというふうに思っています。それは、答弁の中で、補償を織り込んで取引価格が低く抑えられる、買いたたかれるということを前提に答弁がなされていたというふうに思うんです。これは、基本認識として問題ではないでしょうか。

 通告していないですが、大臣にお伺いをしたいと思いますが、旧戸別所得補償制度下で、取引価格が低く抑えられ、買いたたかれたということが仮に事実であった場合、買いたたくという行為は、在り方として是認されて当然の行為であるというふうに大臣はお考えになっているので、この間のような答弁になったんでしょうか。答弁の内容によっては、私はこれこそ、先ほど冒頭で紹介した農業者の皆さんの苦境を許容してきた農政の元凶の一つではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

平形政府参考人 済みません、農林水産省とおっしゃられたので。

 前回の稲津先生への答弁のときは、二十一年、二十二年と比べて全銘柄平均でどうなったかという御質問をされて、その中で銘柄平均で値段が下がったということをおっしゃっていただいて、それに対して大臣がコメントしたところなんですけれども、今おっしゃられたように、取引価格が下がるということは、基本的に、当時も農林水産省はそうなんですが、強引に、戸別所得補償が始まったから取引価格を下げるとか、あるいは優越的地位を利用して取引価格を下げるように交渉するということに関しては、公正取引委員会とともに農林水産省としてもそれは見過ごすことができないということで、通知を出して周知をしたところでございます。

 ただ、一般的な取引の中でいろいろあって、優越的地位ではなくということであれば、それはなかなか取り締まるそのものにはなり得ないんですが、ただ、優越的地位だとかそういったものを利用してということで、この機に乗じてというような、そういったことに関しては、注意喚起を今までも行ってきたところでございます。

渡辺(創)委員 今の御答弁であれば、この間の委員会での質問で、そういう買いたたくという行為を前提に、起きてしまうことが当然というような答弁の組立ては、やはり大きな問題があるんじゃないかと思うんです。

 なぜ今このことを聞いているかというと、まさにこの買いたたくという構造は、価格転嫁ができないということの象徴ですよね。そうであるにもかかわらず、その構造を問題視しないで、それを是認するような答弁が続くのであれば、そのこと自体がいかがな問題かというふうな気がするんです。そうしないと、今回の基本法改正の中で議論されている適正であったり合理的な価格形成という問題に大きく関わると思うんですよ。さっき言ったようなことを前提に答弁をするような農林水産省が、本当に、この基本法の中で言っている適正であったり合理的なというような価格形成にちゃんと取り組むことができるのか、その本気度が国民から問われるというふうに私は思います。

 ですので、やはりこの間の答弁は、ちょっと前提としてはかなり粗っぽい答え方になってしまっているのではないかと思います。大臣、いかがですか。

坂本国務大臣 それが前提となっているものではありません。一般論として、取引価格への影響としてやはり懸念がある、その懸念があることについては、農林水産省としてはその懸念の払拭に努めなければいけない、そういうために農林水産省としての通知を出して、要するに、優越的地位の活用にならないような、そういう状況をやはり私たちとしては防止をしなければならないということで通知したところであります。

渡辺(創)委員 よく議事録を読み直していただきたいと思うんですが、今大臣がそういうお考えであるということは理解をしようと思いますけれども、この間の答弁の前提はそのような説明にはなっていなかったというふうに思います。買いたたかれるという行為で値段が下がるということがいわば当然、起きて当然、それが前提となっているという、それは質問者の趣旨にもそういうことがあったような気もしますけれども、答弁もその前提を受け入れたものになっていたと思いますので、これ以上繰り返しませんけれども、是非、今この基本法の改正を議論して、国民の皆さんがこれからの取組の信頼性をちゃんと担保できるのかということを思っている状況だと思いますので、是非御留意をいただきたいというふうに思います。

 次のテーマに移りたいと思います。

 水田活用直接支払交付金のことについてお伺いをしたいと思いますが、この数年間、水張りをめぐる混乱なども含めて修正が加えられ、今も全国で活用されているこの水活でありますけれども、水田の維持、畑地化への転換促進も含めて、農地維持のためには欠かせない制度ということになっていると思います。

 現状を踏まえれば、数年間で制度の存廃を考えられるような状況にはとてもないというふうに私は思いますけれども、農水省の見解をお伺いしたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、水田政策につきましては、水田機能を維持しながら稲、麦、大豆等の作物を生産する水田については水田でのブロックローテーションを促し、一方で、畑作物のみが連続して作付されている水田については、一定期間の継続的な支援や畑地化への基盤整備への支援を行っているところであります。

 現在、各産地の主体的な判断を踏まえまして、ブロックローテーションや畑地化の取組のいずれも後押しをしているところでありまして、令和九年度までにこれらの施策を集中的に推進をしてまいります。

 令和九年度以降の水田政策につきましては、食料安全保障の強化を図るため、水田を活用した米、麦、大豆等の生産性向上や主食用米の需給調整を効果的に進めていく観点から、将来にわたって安定的運営ができる水田政策の在り方をあらかじめ示すことができるように検討をし、その実現を目指していく考えであります。

渡辺(創)委員 今の後段の方の答弁の中身は期待をしたいと思いますが、私はやはり、毎年毎年更新される制度ではなくて、法律の裏づけがある形で、つまり法制化した方が農業者の皆さんも安心できるのではないかなと思います。

 この手の質問は我々の立場から繰り返しているわけですが、農水省は否定的でありますが、改めて、法制化を否定する理由を御説明いただきたい。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 水田活用の直接支払交付金につきましては、水田機能を維持しながら、稲、麦、大豆等のブロックローテーションや、米粉や輸出促進など米の新たな需要に応じた生産を進める上でも有効なものでありますが、これまでも、輸出用を始めとする新市場開拓用米等に対する支援の導入や、飼料用米の多収品種、米粉用米の専用品種への誘導など、随時見直しを行ってきたところであります。

 今後とも、主食用米の需給状況や、麦、大豆等の生産拡大の目標等を踏まえ、状況に合わせた支援を機動的に行うためには、法制化はなじまないものと考えております。

 以上です。

渡辺(創)委員 ありがとうございました。

 実は最近、何度も、農業に深く関わる立場の方々から、役職名や立場を明かすとちょっと問題になりそうな方々から、この水活について、制度の大前提が実は全く理解されていないのかな、誤解、曲解されているのかなと思うしかないような話を続けざまに聞きました。つまり、水田としての機能維持が大前提であるということ自体がよく御理解いただけていないのかもしれないなというふうに感じたところであります。

 そこで、ちょっとふと考えてみて思ったんですが、この制度は、長く、米からの作付転換を支援するような各種制度の流れをくんで始まってきているものだというふうに理解をしていますが、そういう経緯も相まったのか、そもそも制度のスタートの時点から制度の趣旨が正しく周知されてこなかったのではないか。頑張って伝えようとしたんでしょうけれども、行き届かなかったということかもしれません。

 だから、この数年間の水張りをめぐる制度的な混乱も招いたということであったと思いますし、今でも、水張りできなくても制度維持を求めるというような声が消えないというのも、そこに起因しているんじゃないかなという気がします。

 勝手に想像すると、農林水産省も当然、農業者の生産を守って、米以外のものの生産も促さなければならない、一方で、農地維持も一生懸命やろうという理屈の中で、必要に迫られて、本来の目的をきちんと伝えるよりも、その場しのぎというか、その場その場の対応を優先してしまった結果、制度趣旨をきちんと伝えることに課題が残ってしまったんじゃないかという気もします。

 大臣にお伺いをしたいと思うんですが、この数年間いろいろあった混乱も含めて、大臣もこの間ブログに書かれていらっしゃいましたが、今も残る制度への誤解も含めた上で、私が今指摘したような構造に陥っていなかったのか、そういう側面があったのではないか。いわば、この制度をめぐる今までの状況の総括を大臣に伺いたいと思います。

坂本国務大臣 この交付金は、名称そのものが水田活用直接支払交付金ですから、交付対象は水を張る水田ということは、これは農業者の皆様方もまずは初期の時点で御理解いただいているんだろうというふうに思います。

 そして、農林水産省は、財務省の予算執行調査におきまして米の生産ができない農地への交付事例が指摘されたこともありまして、こういったことも受けまして、交付金の目的に即した適正な執行が行われるよう、随時、同交付金の見直しを行ってきたところです。

 これまで非常にその辺の、水田をいかにして活用するかというような思いが、長年の中で、要するに境目といいますか、そういうのが、考え方の切替えというのがなかなか難しいということもありまして、見直しに当たりまして、令和三年秋から約一年間をかけまして、多くの農業者、そして自治体、農業団体の方々から現場の意見を伺いながら、次のような対応にしたところでございます。

 水田機能の確認を具体化をしてほしいという声に対しましては、やはり水稲作付により確認することを基本としながら、湛水管理を一か月以上ですから、この一か月だけでも相当な論議になりました。これを一か月以上行い、そして連作障害による収量低下が発生していない場合は、水張りを行ったものとみなす。また、畑作物が連続して作付されている水田につきましては、産地化に向けた一定期間の継続的な支援が必要との声を踏まえまして、畑地化促進事業、十四万円、掛ける二万円掛ける五年間を措置をしたところでございます。このように、できる限り、一年をかけて現場の声を反映してきたところでございます。

 現場での浸透は今後も必要と考えておりまして、引き続き、現場の皆様に寄り添って、現場の課題や問題を丁寧にお伺いをしながら、今後の周知に努めてまいりたいというふうに思っております。

渡辺(創)委員 制度の説明は分かっているつもりでありまして、問題は、長い経緯の中で今言ったような側面がいかがだっただろうかというのがちょっと聞きたいところでありましたが。いい方に改善、改善すると。農業は継続してありますし、作物ができるのには一定以上の時間がかかって、自然環境のこともあるので、いい方に少しずつ改善するという幅を持っておくことはとても大事だと思うんですが、一歩間違うと、やはりこれがびほう策の繰り返しみたいになってしまって、根本的な治療ではなくて、カットバンを上から貼り続けるみたいなことになっていないのかということをチェックする目も必要ではないかというところで、指摘をさせていただいたところであります。

 時間がないので次の質問に行きますが、畜産における粗飼料の国内確保について質問します。

 食料自給率の向上を考えるときに、畜産に必要な飼料をいかに国内で賄うのかというのは重要なポイントだと思っています。特に、海外からの飼料の価格高騰が続いている近年というのは、その推進を図る上ではいいタイミングではないかと思いますし、当然、食料安全保障にも資すると思います。濃厚飼料はちょっとハードルが高いとしても、粗飼料は現状でも七八%程度の自給ということになりますので、決して非現実的な目標だとは思いません。

 ただ、現状を見ると、この十年、粗飼料の自給率はほぼ横ばいというのが続いていますが、この原因はどうお考えでしょうか。

舞立大臣政務官 粗飼料自給率の横ばいの原因ということでございますけれども、畜産経営の規模拡大が進む中で、飼料生産に適した農地が限られており、利便性が高い飼料作付地の確保が困難な上に、飼料生産にかける労働時間や手間の確保が難しい等々の要因により、横ばいで推移してきたものと考えております。

渡辺(創)委員 国は、令和十二年度の目標として、粗飼料については自給率一〇〇%を目指していますが、仮にこの目標が達成できたときに、食料自給率全体の改善にはどのぐらい貢献するという見通しですか。

舞立大臣政務官 仮に粗飼料自給率以外の数値は変化しないとした場合に、仮定した場合に、粗飼料自給率が一〇〇%に上がったら、食料自給率は〇・五%向上することになります。

渡辺(創)委員 分かりました。

 じゃ、ちょっと一問飛ばします。国の取組を聞くつもりでしたが、それを飛ばして。

 宮崎県では、全国有数の畜産県でありますけれども、今年度から、国の目標よりも早期の令和八年度に粗飼料自給率一〇〇%を達成するということで取り組んでいます。これは、昨年あったサミットの農相会合の宮崎アクションを実践しようという取組であります。

 宮崎県では、令和三年度のデータで粗飼料の自給率が八八%、全国平均よりも一〇ポイントぐらい高いという状態でありますけれども、二十万五千TDNトンを二十四万TDNトンに増やすという計画をしています。今、田んぼにすき込まれてしまっている稲わらをちゃんと回収できるような仕組みをつくろうとしたりとか、県内に四十七あるコントラクターのオペレーションの人材確保、また、県内での広域化などにも取り組もうというふうにしていますが、こういう、国の対策の先を行く、早期に粗飼料の一〇〇%自給を目指そうとする自治体の取組をどのように評価されるでしょうか。大臣にお伺いします。

坂本国務大臣 粗飼料というのは、今まで安かったんです。そして、簡単だったんです。ロットで輸入の乾牧草が一気に来ますので、棚に上げていればいい、そしてそれを崩して牛にやればいい、あるいは乳牛にやればいい、そういうような時代だったんです。しかし、これが急激に高騰をいたしました。そのことによりまして、やはり粗飼料の国産化というのは、これは待ったなしで迫られることだというふうに思っております。

 そういう中で、宮崎県さんが一〇〇%の粗飼料の自給をやられる、これは高く評価できるというふうに思っております。

 そして、今後も、国産飼料の生産、利用拡大につきましては、自治体の活動も非常に重要であるというふうに思っておりますし、それぞれの、JAや個々の農家の取組も重要であると思っておりますので、今後も十分話合いをしながらこの取組を進めていただき、さらに、それが全国的な広がりを見せればというふうに思っております。

渡辺(創)委員 ありがとうございます。

 大臣、今お話あったように、価格差が縮まっているからこそ好機だと思うんです。やはり、畜産に関わる皆さんや生産者の皆さんも、安心で安全な、近くでできた粗飼料を基に生産したいという思いは強くあられると思いますので、国としても是非機運をしっかり高めていくことによって、実現は不可能ではない、そして、この基本法改正の理念にも沿う方向性でありますので、しっかり御支援をお願いしたいというふうに思っています。

 この後、獣医師確保についてもちょっとお伺いをしたいところでありまして、幾つかの質問を予定しておりまして、通告もしておりましたが、申し訳ありません、一点だけお伺いしたいと思います。

 確保が大変深刻だというのは、先日の委員の質問でもあったところであります。特に、公務員獣医師の確保、産業動物を診る先生方の確保、大変難しい状況にあると思います。その中で、先ほどから言っていますように、宮崎県では宮崎大学の農学部の獣医学科に地域枠を今年度からつくるということにして、大変大きなお金も出しながら、県庁の獣医師さんになってもらうための対策などを始めています。畜産と必ずセットで必要な獣医師さんの確保だと思いますので、その重要性、また自治体の取組について、農水省としてはどうお考えでしょうか。

安岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、産業獣医師の確保というのは地域によっては非常に困難になっているということは、私どもも非常に問題だというふうに承知をしているところでございます。

 農林水産省では、地域の産業動物獣医師の確保のため、地域で産業動物獣医師に就職することを条件に修学資金を給付するであるとか、実際に、獣医学生の方々にこういう産業動物分野への関心を高めてもらうためのインターンを行うだとか、実際、ペットと違って移動時間が長いということがありますので、遠隔診療を導入するであるとか、さらには女性獣医師の職場復帰、再就職をしやすくするような研修を行うなど、確保に向けた支援を行っているところでございます。

 一方で、宮崎県のお話がございました。宮崎は実際、国の支援を活用するというふうにお話がございましたとおりで、県においても、獣医師に対する手当の充実だとか、仕事ぶりのPR動画の作成など、いろいろな独自の取組をしていただいているというふうに認識をしてございます。非常に積極的に取り組んでいただいている例だと思います。

 農水省では、こうした各県の優良事例なんかも共有、横展開しながら、引き続き、都道府県と連携しながら、産業動物獣医師の確保に取り組んでいきたいと考えております。

渡辺(創)委員 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、空本誠喜君。

空本委員 日本維新の会、教育無償化を実現する会との共同会派、空本誠喜でございます。

 今日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。御礼申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、今問題となっております有害な有機フッ素化合物、PFASの全国での高濃度の検出の問題、この問題については、本改正法案で、第二十九条、農業生産の基盤の整備及び保全において、良好な農業用水の確保の観点からお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。また、農水省の設置法におけます第四条十九号の所掌事務として、「農地の土壌の改良並びに汚染の防止及び除去に関すること。」が明記されておりますので、この観点からもお聞きしたいと思います。

 まず、三月二十七日、NHKの報道でございますが、国内の流通食品に対するPFASの実態調査を農水省が行うということが報道されましたが、このPFASに対する農水省の今後の取組について、政府参考人から。また、PFASに汚染した土壌、農地などの浄化、回復を、土壌汚染対策法で今後、環境省としてどのように取り組んでいくのか。農水省と環境省から、それぞれお答えをお願いいたします。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 農畜水産物に含まれるPFASについてでございますけれども、含有実態などの科学的知見がまだまだ不足しております。まずはこうした知見の集積が必要だというふうに考えているところでございます。

 このため、今御紹介いただいたとおり、農林水産省では、令和六年度から、国産の農畜水産物の含有実態調査を行うこととしております。農作物、畜産物、水産物において、代表的な品目について、それぞれ品目ごとの濃度分布など、国内のPFASの実態把握を更に進めたいというふうに考えております。

 また、こうした調査に加えて、農地土壌などの環境から農作物にどの程度移行するかといった研究に関しても更に進めることとしてございます。

 こうした結果や食品安全委員会の評価結果などを踏まえて、必要に応じて関係府省庁と連携して対応していくこととしております。

前田政府参考人 お答えいたします。

 土壌中のPFASにつきましては、統一的な測定方法が確立されていなかったということで、昨年七月に、暫定測定方法を関係自治体に周知したところでございます。こうした暫定測定方法を用い、自治体と連携し、土壌中のPFASの挙動等に関する科学的知見の集積などを進めているところでございます。

 具体的に申し上げますと、この暫定測定方法は、限られた試料数と土質の土壌を用いて精度の検証を行ったものでございますので、自治体に対しまして、課題等を把握した際の情報提供を要請しているところでございます。

 こうした取組に加えまして、昨年七月に公表したPFASに関する今後の対応の方向性を踏まえ、農産物に係る調査研究を実施している農林水産省の取組なども把握しつつ、科学的な知見の集積を進めてまいります。

 答弁は以上です。

空本委員 農水省、環境省共にしっかりお願いしたいと思いますが、そこで、農用地に関して、PFASの汚染に対する農用地土壌汚染対策法の適用ということも考えていかなきゃいけないかなと思っております。その浄化、回復。

 大臣、今回、環境委員会で、三月、もっと前からいろいろこのPFASの問題について質問させていただきながら、環境省を中心として、また農水省の方々も協力いただきながら、大分行政が動いたと感じています。農水省としてもしっかりお願いいたしたいと思いますし、また、この法律に対する取組、こういったものもしっかりお願いしたいんですが、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 有機フッ素化合物、一万種近くあるということを聞いております。その総称がPFASでございます。

 しかし、農産物中のPFASについて、先ほど政府参考人からもお答えいたしましたけれども、科学的知見が本当にまだまだ不足しております。アメリカでは飲料水については規制を強化したようでありますけれども、農産物において果たして管理措置が必要なのかどうなのか、また、土壌の汚染の取扱いも含めましてどのような措置が適切かを考える上では、まずは知見の集積、これが先決であるというふうに思っております。

 このため、農林水産省といたしましては、実態調査とともに、土壌から農産物への移行に関する研究を更に進めたいというふうに思っております。

 このような取組を通じまして、必要な対応を検討し、関係府省、環境省も含めてかなり広範囲にわたりますので、関係府省と連携して、農産物の安全確保にしっかりと取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

空本委員 是非よろしくお願いします。

 やはり、今ちょうど、私の地元の方の米軍の川上弾薬庫、この周辺で出てしまいまして、そろそろ場所が特定されるかな。しかしながら、これは米軍だけの問題ではなくて、様々な半導体工場とか、様々な地域で出ている、また空港の周辺でも出たりしています。その近くには農用地があったりしますので、そういうところの取扱い、これはしっかり今後考えていかなければならないと思いますので、その取組、環境省とともによろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、中山間地域における環境直接支払いについて質問させていただきたいと思います。

 今お配りしている資料がございます。

 まず、資料一番目、これは草刈りをしている資料でございます。裏側に、西日本の中山間地域に生息する特別天然記念物オオサンショウウオの生息地と、どんなものかということでお示しをさせていただいております。

 私自身、環境委員会の方で、生物多様性に係るこの間の法案、今、改正法案が審議されて衆議院を通過いたしましたけれども、これに関わって、農業のみならず、環境側面からやはり環境直接支払い制度を拡充していくべきじゃないかなと思っています。

 まず、一枚目の写真は、私と私のスタッフ、支援者が一緒に、農用地、休耕地になっているところを耕させていただいてといいますか、草刈りをさせていただいて、そこに、実は、政党の広報掲示板をくい打ちして立てる。そのために、週、大体二、三回草刈りをしています。といいますか、所有者の方に許可をいただいて、草刈りしますので、田んぼにくいを打たせてくださいということでやらせていただいていまして、また、私自身も、くいを打ちながらそういう広報活動をさせていただいているんですけれども。やはり、今、こういう中山間地域におきましては、休耕田、そしてこういう荒廃地がたくさん増えてきております。

 一方で、資料二のとおり、西日本は、中山間地域を中心として、オオサンショウウオの生息地であります。特別天然記念物、こういった大事な、こういう生物がたくさんおりまして、この維持のためにも、やはり水田とか水路とかの清掃とか草刈りというのは大変大切でありまして、このオオサンショウウオについても、絶滅危惧種として指定されております。

 そこで、まず、本改正案第四十七条の中山間地域の振興に関連してなんですが、今現在、農業の中山間地域支払直接制度があります。多面的機能支払いもあります。環境保全型の農業直接支払いもあります。

 この三つの制度は維持しながら、生物多様性保全、再生の観点から、今参議院に送られました地域生物多様性増進活動促進法案に係る里山の再生、これに対し、農業者だけではなくて、その地域を守る方々に対する環境支払い制度、こういったものを、これは農水省というよりも環境省主管で新たに新設して、また、農業との直接支払いはすみ分けしながら環境省から提案すべきではないかなと思うんですけれども、まず環境省、いかがでしょうか。そして、農水省の方もいかがでしょうか。各々お答えをお願いいたします。

堀上政府参考人 お答えいたします。

 里地里山の管理につきまして、生物多様性保全の観点から、地域全体で支える仕組みづくりが重要と認識をしております。

 環境省では、草刈り作業といった作業のみに対して直接支援する制度は設けておりませんが、里地里山の生物多様性の保全、活用に関する先進的、効果的な活動につきまして、現在、生物多様性保全推進交付金により、必要な経費の一部を実施主体に対して交付しているところでございます。

 この交付金は、里地里山等における持続可能な活動を推進することを目的として、環境的課題と社会経済的課題を統合的に解決しようとする活動を対象とするものでございまして、議員御指摘の草刈りという作業だけでなくて、自然体験あるいは雇用創出などを組み合わせた先進的、効果的な活動に支援をしているところでございます。

長井政府参考人 お答えいたします。

 委員が環境省に御提案されております新たな環境支払い制度の創設につきましては、農林水産省としてお答えする立場にはございませんが、環境省等関係省庁と連携しながら、中山間地域における生物多様性の保全を図ることは大変重要であると考えております。

 農林水産省といたしましては、引き続き、中山間地域等において農業生産活動の継続を支援いたします中山間地域等直接支払制度や、農地の保全管理活動を支援する多面的機能支払制度等によりまして、農業、農村の有する多面的機能の維持、発揮を図ってまいりたいと考えております。

空本委員 今、農水省の方から、管轄じゃないという話だったんですが、この地域生物多様性増進活動促進法案、これは農水省も共同所管でございますので、関係ないことはないです。取組はやっていただけるということなのですが、関係なくはないので、やはり共同所管でございますので、その点は御配慮いただきたいと思います。

 そして、瀬戸内海についてもやはり生物多様性の観点からお伺いしたいんですが、今水産庁が助成している、ノリ、ワカメ養殖場における栄養塩供給技術実証試験事例集というのがございます。カキの養殖等を含めながら、この研究成果をどのように自治体に伝達しながらフォローアップしているのか、水産庁から、まずお答えください。

森政府参考人 お答えいたします。

 水産庁におきましては、効果的な栄養塩類の供給手法の開発や、栄養塩類と水産資源の関係の解明等に取り組んでいるところでございます。

 こうした取組で得られました成果につきましては、関係自治体の水産部局、研究機関に提供しているほか、漁業関係者や関係自治体の環境部局など幅広い関係者が出席する協議会においても情報を提供しているところでございます。

 また、こうして得られた研究成果を活用いたしまして、関係自治体の研究機関が主導いたしまして、漁業者からの協力も得ながら、より効率的な栄養塩類の供給手法の開発にも取り組んでいるところでございます。

空本委員 よろしくお願いします。

 そして、今、瀬戸内海のみならず、様々な海域、有明海とか、また志摩とか、そういったところで、やはりノリ、ワカメの色落ちとか、さらには不漁とかがございます。そういった中で、しっかりと栄養塩の供給、施肥、こういったものを、何回もこの農水委員会でも質問させていただきまして、お願いしましたけれども、また、他の委員の方々も問題として取り上げておりますけれども、しっかり研究成果を生かしていきながら、それを実効性あるものとしていただきたいと思います。

 また、カキ殻ですね。養殖ガキのカキ殻なんかを高温度で一度焼却して、またそれを粉砕して、浜にすき込む、そういうことによって浜の再生が行われると。まさにこれこそ、生物多様性の観点から、環境の再生の一つの事業であろうと思います。

 そういった意味で、先ほど環境省の方から、様々な取組を行う方々に対してのそういう支援ということは考えていくという話でございましたけれども、これも、農水省と水産庁そして環境省とともに、海域を含めて、里山、田んぼ、畑地、さらには川、そして浜辺、これを一体として、生物多様性の観点から環境を再生させる、そういうことが大変必要ではないかなと思っております。その点につきまして、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 漁業の方について申し上げますと、漁業は、自然の生態系に依存をしておりまして、その一部を採捕することによって成り立つ産業であります。漁業活動を持続的に行っていくためには、海洋環境や海洋生態系を健全に保つことが重要であると考えます。

 委員が環境省に御提案されております海域を含めた新たな環境支払い制度の創設につきましては、農林水産省として今お答えする立場にはございませんが、引き続き、環境省等の関係省庁と連携をしながら、海洋環境や海洋生態系の適切な保全及び管理を通じて、生物多様性の保全、再生と持続的な漁業の実現を図ってまいりたいというふうに思っております。

空本委員 是非お願いしたいんですが、資料三番、これはスイスの環境直接支払い。やはり、生物多様性の観点からの支払い制度が、スイスとかは増えています。農業に関わるといっていますけれども、実際は農業のみならず生物多様性の観点からの支払い制度となっておりますので、そういった意味で、しっかりこれは広げていくべきだろうと。環境立国として日本がまだまだ進んでいくのであれば、広げていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 続きまして、安全保障、食料自給率、さらには所得補償、こういった点でお聞きをしたいと思います。

 資料としては、私の方で用意させていただいていますのは資料四でございまして、これは後ほど御説明しますけれども、まず、三月二十五日の本会議におきまして、岸田総理から、戸別所得補償制度では農地の集積、集約化が進まなかった、生産性の向上が阻害されるおそれがあるとの言及がございました。

 まず、戸別所得補償制度で本当に農地の集積、集約化が進まなかったのか。また、生産性の向上が阻止されるとはどういう意味なのか。農水省から、当該の、例えば二〇一〇年から一三年のデータを基にお答えをお願いいたします。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、農地集積の関係でございます。旧戸別所得補償制度の実施時期における担い手への農地集積率でございますけれども、実績の数字といたしまして、平成二十二年度から平成二十五年度は、年平均で〇・一五ポイントの増加となっております。なお、旧戸別所得補償制度の見直し以降の平成二十五年度から令和四年度の実績につきましては、年平均一・二〇ポイントの増加となっているところでございます。

 続きまして、生産性の向上の関係の御質問がありました。農地の集積、集約化を進めることによって、農地が分散している状況を改善し、作業がしやすくなって、生産コストや手間を減らすことができることに加えて、スマート農業などにも取り組みやすくなるなどの効果があると考えております。

 一般論ではございますけれども、農地を集積、集約化することによって、令和四年度に行った調査によれば、米の作付規模別に生産コストを見ると、〇・五ヘクタール未満の層に比べて、三ヘクタールから五ヘクタールの層では、ほぼ半減という数字が出ております。

 また、集約化の効果についても一律にお示しすることはなかなか難しいところでございますけれども、事例ということで少し御紹介をさせていただきますと、令和二年度に行った調査において、秋田県北秋田市において、百ヘクタールの水田を複数の担い手が分散して耕作していたものを集約化して、担い手の平均団地面積が五倍になったことで、生産コストを二四%削減した事例等があるということで我々承知をしております。

 このように、農地の集積、集約化により生産コストの削減を実現しており、生産性の向上に寄与しているものと考えているところでございます。

空本委員 後ほどもう少し深めたいと思いますが、まず、食料安全保障上、食料自給率は、私は資料四のとおり、五〇%程度、四八%ぐらいまでは増やすべきだと考えていますが、政府目標四五%を達成するために耕作面積はどのくらい増やすべきか、農水省からお答えください。

杉中政府参考人 まず、現在の食料・農業・農村基本計画に基づく数値について説明をさせていただきますけれども、食料自給率目標四五%の前提となるものとして生産努力目標を掲げておりますけれども、それに基づく延べ作付面積として、令和十二年時点で四百三十一万ヘクタールと見通しているところでございます。

空本委員 もう一問、大臣に今度はお聞きしたいと思うんですが、農家の所得を安定させる、例えばヨーロッパ、EU型の直接支払い制度等によります所得補償の要否について、坂本大臣御本人の御見解はいかがでしょうか。

坂本国務大臣 私の考え方でもありますし、一般論でもありますけれども、生産コストと取引価格の差額を公的な負担によりまして補償するなどの所得補償をした場合には、その差額の補填を織り込んで、取引の現場で生産者価格が低く抑えられてしまう懸念があるということがあります。それから、消費が減少している品目を対象に行えば、需要に応じた生産が進まず、需給バランスが崩れること等が懸念をされております。

 このため、政府といたしましては、農業の持続的発展に向けまして、生産性の向上や付加価値の向上に取り組む農業者への支援を行い、収益性の向上を実現していただきたい、あるいは実現していきたいと考えています。

 その上で、国内外の資材費や人件費の恒常的なコストなどが考慮された価格形成が行われる仕組みの構築を図るとともに、価格転嫁が間に合わない急激なコストの高騰が発生することもあることから、収入保険制度や、あるいは経営安定対策と併せて、影響緩和対策というものを実施していくというのがあるべき姿であろうというふうに思っております。

空本委員 坂本大臣は農水に地方議員のときからお詳しいということを聞いて、まずは、リスペクトしながら、いろいろ大臣の資料等を探させていただきまして、読ませていただきました。

 まず、大臣の方、二〇〇五年ぐらいに、令和十七年ですかね、国による所得の補償は必要であると朝日新聞でお答えになっていらっしゃいます。

 また、こちら、農林業政策検討資料、「坂本てつしの未来に向けた農林業政策」というところでは、総合直接支払い制度、民主党政権時代の生産数量目標を設定しないでやるような、国による、税金を使った所得補償制度が必要であると書かれていますけれども、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 所得をそのまま補償するのか、あるいは様々な形で実質的に所得を担保していくのか、そういったところの考えが必要だろうというふうに思います。

 現在は、やはり、様々な農業者の皆さん方の経営判断によって所得を引き上げ、それを追い越してしまうようなコスト高に対しましては、しっかりと多様な、重層的な支援措置というのをそこで考えていかなければいけない、そのことが結果として所得を確保することにつながるというふうに思っております。

空本委員 今、中山間地域、大臣はやはり中山間地域は大事だということで、中山間地域の特に所得の補償が必要であるというふうなことも書かれていらっしゃいます。

 ならば、今現在、所得補償制度を中山間地域に向けてやるべきではないかと思うんですが、いかがですか。

坂本国務大臣 現在でも、中山間地の直接支払い等を含めまして、中山間地に対する様々な支援措置、これは講じているところでございます。

 今後も、中山間地に対しては、非常に、食料自給という観点からも重要な地域でございますので、しっかりと後押しをしていかなければいけないというふうに思っております。

空本委員 大臣は、所得補償制度自身、EU型であるかもしれませんが、民主党型じゃないものであればいいというふうにお考えなので、やはりこれは柔軟に対応していけばいいのかな。

 民主党政権時代の所得補償制度でなくてもいい、もう大臣なりの所得補償制度を新設して、せっかくなんですから、それが逆に我が国の農業を支えることになるかもしれません。そういった意味で是非考えていただきたいんですが、いかがでしょうか。

野中委員長 坂本大臣、簡潔に願います。

坂本国務大臣 EUも含めて、今、私たちも含めて、直接支払いという形で所得を一定程度、確保するというような方向に世界も進んでおりますので、そういう方向でしっかり所得を確保してまいりたいというふうに思っております。

空本委員 分かるんですが、やはり大臣は書かれています。これを忠実に政策実現することが大臣の役目ではないかと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の掘井健智でございます。

 それでは、早速質問いたします。

 前回の続きでありますけれども、法案二十九条、農業生産の基盤の整備及び保全のところで、水田の汎用化及び畑地化があります。実際、畑地化も戦略に基づいてやっていただいて、生産調整とか、また、価格維持が難しいから水田を放棄する、そういった方向にならないようにしていただきたい、こう願いながら質問したいと思います。

 米の輸出、二条四項でありますけれども、水田として整備された農地全部に米を作付した場合、米が過剰になるということは明らかでありますから、大豆、小麦、また大麦などを作付しようとする戦略だと思いますが、この度のこの基本法の骨であります食の安全保障ということを考えますと、やはり米は取りあえず作る、そのために販路を拡大するということとすれば、輸出するということを前提で米の生産を構築したらどうかな、こう思うんです。

 前回の基本法に対する質問の中で、輸出と食料供給能力の維持のことでお答えをいただきましたけれども、米の生産を増やし、また維持するためには、海外に輸出が必要であるのかなと考えております。逆に言えば、適切な米の輸出計画によって米の生産量が維持できるとも考えるんですけれども、大臣の御所見をまず伺いたいと思います。

坂本国務大臣 米につきましては、主食用米の国内の需要が年間十万トンずつ減少しています。その中で、我が国で唯一、自給可能な作物が米であります。輸出拡大によりまして新たな需要を生み出していくことは、食料安全保障の強化という点では非常に重要であります。そういうことで、輸出拡大実行戦略に基づきまして、更なる輸出拡大に取り組んでいるところです。

 一方、米の輸出量は、直近四年間で倍増をいたしました。昨年は三・七万トンとなっていますが、輸出は相手国の需要を踏まえながら行いますことから、主食用米の需要減少、毎年十万トンをカバーするほど急激な拡大をするものではありません。ですから、需要に応じた生産を推進していくことが重要であるというふうに思っております。

 農林水産省といたしましては、農業者や産地の判断の下で、輸出拡大も含めた需要に応じた米の生産とともに、輸入依存度の高い麦、大豆、米粉用米等への転換を推進することで、食料安全保障の強化と農業者の収益性の向上を図ってまいりたいというふうに思っております。

 なお、蛇足ながら、今月は米粉月間ということでございますので、私も、昼飯は米粉で揚げたカツ丼を食べることにしております。

掘井委員 ちょっとこの後米粉のお話もしますけれども、まずもちまして、やはり、相手国の需要の話がありました。米が毎年十万トン減っているということでありますから、その分を、輸出の計画も含めて、目標を作れたなと思うんですけれども、相手国の需要の話ということで、次の質問をしたいと思います。

 日本の米を輸出する際のニーズと、もし課題があればということで。日本の米の価格と海外の米の価格の問題とか、いろいろあると思うんですけれども、一体、最近日本の米が人気があると聞くんですけれども、海外におけるニーズはどれくらい見込んでおるのかというか、どれくらいあるのか。これからの展望について、期待できるのかどうか。新たな需要の一つになる可能性が十分にあるのか。そしてまた、課題があって、解決に向けてのもし取組があれば、教えていただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 米の世界貿易の市場、大半が実は長粒米でございまして、我が国が生産いたします短粒米の市場は実は大きくございません。

 しかし、海外におけるすしブームですとか和食ブームを通じて、ジャポニカ米の認知度が高まってきておりますし、最近は、テイクアウトで手軽に食べられるということで、海外においても、実は、日本産米を利用したおにぎりというものが大変人気になっております。ニーズが高まってきているというふうに考えております。

 このような日本産米の輸出拡大に向けました輸出拡大実行戦略で、米、パック御飯、米粉及び米粉製品、全部まとめて、二〇二五年の輸出目標百二十五億円と目標を設定しておりまして、マーケットインの発想に基づいた販路の開拓と輸出産地の育成、これを進めることにしています。

 販路の拡大につきましては、国別に需要開拓するメインターゲットの国を設定いたしまして、米の輸出促進団体がジェトロ、JFOODOと連携いたしましてプロモーションを行っております。こうした取組によりまして、米、パック御飯、米粉、米粉製品の輸出額というのは、直近四年で倍増しているところでございます。

 課題といたしまして、委員御指摘のとおり、値段の格差があるということもございますので、米の輸出産地の育成におきましては、他国産との格差を埋めるように、日本産米の特徴についての理解を醸成しながらも、輸出に向けて国際競争力を高めていくために、大ロットで生産、供給を行うモデル的な輸出産地の育成、これを進めております。多収米の導入など、生産コストの低減によって国際競争力を高めてきている産地も出てきているところでございます。

 このように、引き続き、販路の拡大と輸出産地の育成、この両方に取り組んでいきたいというふうに考えております。

掘井委員 ありがとうございます。

 まず、日本の米は、我々日本人が食べたら非常においしいんですけれども、それぞれの歴史、文化がありますので、口に合うのかなと思ったり、何かべちゃべちゃしているとか、そういうような、昔はあったんですけれども、そんなこともないのかなと思ったりします。

 それで、ニーズが増えてきているというふうに思っております。価格の問題もありますけれども、そういったことを乗り越えるためには後押しが必要なのかなと思いますけれども、百二十五億という金額を今述べられておりましたけれども、十万トン毎年減っていくんですけれども、これはどれぐらいカバーすることになるんですか。分かったら。

平形政府参考人 お答えいたします。

 百二十五億円なんですが、米だけではなくて、パック御飯、米粉、米粉製品、全部含めての付加価値ということで百二十五億円なんですけれども、大体、トン数とすると四万トン強ということを考えております。

掘井委員 まだまだ難しいな、そんな実感をしておりますけれども。

 今、大臣も触れられましたけれども、米粉の展望について質問したいと思います。

 炊いて食べる御飯以外の需要を拡大する取組も、ありとあらゆる手段を使いたいと思うんですけれども、最近では、米を小麦粉と同じくらい細かな粉にする技術ができた。僕もそんなことは知らなかったんですけれども、細かくすることで用途が広がるということであります。米穀の新用途への利用の促進に関する法律も制定されまして、品質、栽培の支援体制もできておると思うんですけれども、この米粉の展望について伺いたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 主食用米の需要が年々減少する中で、国内で自給可能な米を原料とした米粉の需要拡大を進めていくことが重要な課題であるというふうに認識をしております。

 このため、農林水産省におきましては、令和四年度及び五年度補正予算におきまして、米粉の利用拡大支援対策事業を措置しております。米粉の商品開発、情報発信、製造施設の整備等を総合的に支援をしており、現在、八十社以上の食品事業者におきまして、米粉を使用したパン、麺、菓子、スイーツなどの新商品が開発をされ、順次販売をされているところです。

 展望についてですが、こうした取組などによりまして、米粉用米の需要量は、令和四年度実績で四・五万トンに対しまして、令和五年度で五・三万トン、令和六年度で六・四万トンに増加するものと見込んでおります。

 米粉の生産拡大には新規の需要拡大が前提となっておりますので、農林水産省としましては、引き続き、パンや麺などに適した専用品種の開発、普及と併せまして、米粉の特徴を生かした新商品開発への支援を通じ、米粉の拡大に努めてまいる所存でございます。

掘井委員 ありがとうございます。

 この米粉も含めて、輸出対応の中に入れていただきたいと思います。

 前回、備蓄の強化のことで質問をしました。備蓄体制と輸出システムを適切に組み合わせて、どうしても足らないものは輸入するというこの体制、安全保障を考えるこの機会に再構築していただきたいと思います。

 次の質問です。

 環境への負担の低減の促進と有機農業、法案三十二条についてであります。これは有機農業はないんですけれども、この法案三十二条について。

 これから農業は、CO2の二〇五〇年の目標という、この大枠の中でしか農業の在り方を考えられない時代になってくるのではないのかなと思っております。自然循環機能の維持増進、環境への負担の低減、そのための農産物の円滑な流通の確保として、この法案第三十二条が新設されております。

 ここで質問なんですけれども、JAの有機農業への取組の推進についてちょっとお伺いしたいんです。

 全ての農薬なんかは、一定の試験を受けて、安全基準が作られて、定められた用法、用量を使えば作物が安全である、この基準で行っており、これはまた肥料も同じように基準が作られておる。今後は、化学農薬の使用量は減らした方がより安心であるとして、それなら減らしていきましょうということで、有機農業にスポットが当たっている、そう理解しております。

 これまでの質疑において、例えばお米でいえば、農協が取扱いに渋るというようなこともありました。兵庫県ではカントリーエレベーターの導入ができて、一般米と有機米を分けることで、農協さんの協力体制ができました。こういった設備ができたのは、やはり首長の価値観でありますとか、また農協さんとの日頃の連携であると思っておるんですけれども、国の役割といたしまして、まず、この化学肥料を減らすという行動規範を理解してもらうということと同時に、やはり設備などの課題がないのか、現状をもっと把握すれば進むかもしれないと思っております。

 こういったことの対応について、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 有機農業の推進に当たりましては、有機農法の指導、それから有機肥料の生産資材の確保、さらにはブランディングや販売店の開拓などの点から、こうした能力を持つ地域のJAを巻き込んで進めることが重要であるというふうに考えております。

 実際に、議員御指摘のJAたじまのみならず、ほかにも、茨城県石岡市のJAやさとでは、有機部会の設立や、JAが販路を確保する生産、販売のサポートとともに、有機農業に取り組む就農者への研修、指導、そして農地の確保など、支援体制を整備をしております。

 JA東とくしまでは、地域協議会によるブランディングを始め、有機農業への転換や新規就農者のための技術実証圃場の設置など、JAの参画により有機農業の取組が進展した事例が見られます。

 こうした現場でのJAの取組の優良事例につきましては、オーガニックビレッジ全国集会での発信や、JAグループとの意見交換での働きかけなど積極的に行っているところであり、今後とも、JAや地方自治体等の関係者と連携をいたしまして、有機農業の拡大を進めてまいりたいというふうに思います。

掘井委員 分かりました。

 ひょっとしたら、物理的なというか予算的な課題もあるのかなと思ったりしますから、今後、いろいろ調査研究していただきたいなと思っております。

 次も有機農業に関してでありますけれども、有機農業の研究に予算をつけて、技術確立を急ぐ必要があると考えております。

 四月の四日の参考人質疑で、フランスと韓国で指導員として招聘された西村参考人の答弁を伺いました。韓国でも有機農業推進法みたいなものが制定されて、まず、試験研究機関が有機農業の技術を確立して、次に指導員の、指導者の養成を行う、そして次に需要の拡大を、国が後押しじゃなしに積極的にやっているということが確立されていると伺いました。そうでないと、なかなか二〇五〇年までの目標に進まないと思うんですね。日本はどうでしょうかということで、まず、この基礎研究について質問します。

 例えば、生産性は窒素によって左右されますので、この窒素の研究でありますとか、また微生物の研究、土のバランス、また有機の機能性の分析、こういったことはなかなか地方自治体でできません。

 公的機関でのこの分野の研究が必要だと思うんですけれども、この基礎的研究の状況、どうなっているのか、教えていただきたいと思います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 国の研究機関であります農研機構では、有機農業に関する様々な研究開発を行っているところでございます。まず、とにかく、有機農業については病害虫の話が非常に難しいので、病害虫抵抗性を持つ品種開発、こういったものを当然のことながらやっております。

 そういった一方で、雑草との闘いになりますので、例えば、水稲の有機栽培におきまして除草対策が重要なので、縦方向、横方向、二方向の機械除草を可能とする両正条田植機の開発を進めまして、これを地方公設試や民間企業と連携しまして、早期の実用化に向けまして全国十一か所で実地試験を行っております。

 また、園芸作物、非常に有機栽培が難しいんですけれども、効果的な病害虫対策技術が非常に難しいということもありますので、地方公設試あるいは民間企業と連携しまして、安価な国産天敵製剤の開発などに取り組んでおります。

 最近では、令和五年度から、病害の出にくい土づくりや国産天敵製剤、バイオスティミュラント資材等の研究開発に取り組みまして、園芸作物における病害虫対策を中心に、収量や品質の安定につながる研究を実施しております。

 引き続き、農研機構を中心に地方公設試、民間企業などとも連携いたしまして、開発した技術の早期の現場普及を図りまして、有機農業の推進に貢献してまいります。

掘井委員 ありがとうございます。

 そこで、やはり、こういった基礎的な研究に対して十分な予算が計上されておるのかということをちょっと再質問で。幾らかというのはすぐ分からなかったとしても、十分にあるとお考えでしょうか。

川合政府参考人 有機農業の関係は品種開発、機械開発それから土づくり、防除、いろいろな関係者がおりますので、一概に有機農業の関係だけの予算を切り出すというのは非常に難しいんでありますが、令和六年度予算におきましては、みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業ということで、これは三十億円措置されているんですけれども、この中で有機農業に関する研究を進めることとしております。

 また、農研機構の運営費交付金や産学官連携研究を支援する競争的資金なんかも活用しまして、基礎から実用化まで切れ目なく支援することとしております。

掘井委員 分かりました。

 大事なのは、ここで研究されたその知見を、今度はまた、人を育てるものになって、そして、それがやろうとする人たちにちゃんと伝わるという、フローチャートといいますか、こういうことが大事だと思いますので、計画を持っていただきたいなというふうに思っております。

 それと、もう一つは、有機農業の指導ができる人材確保、先ほど答弁の中でも触れられておりましたけれども、この人材確保なんですけれども、やはり、有機農業を始めようとしたときに、ちょっと進んでおるなと思う兵庫県でも、なかなか技術を教わる機関や指導者がいないという状態なんですね。国や県の指導機関で有機農業を指導できる人材、これは不足しております。多分、全国もそうじゃないかなと思います。そんなところなんですけれども。

 この有機農業推進法で、有機農業を指導できる普及指導員の確保が明記されておりますけれども、なかなかこれは現状はうまくいっていないと思うんです。育成ができていないと思うんですけれども、これはなぜかといいますと、やはり自治体にその予算がないわけであります。国の積極的な支援でこれは何とかならないのかなと思ったりしますけれども、いかがお考えでしょうか。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおりであります。有機農業の拡大に向けましては、各地域で有機農業の技術を指導できる人材をいかに確保していくのかというのが重要でございます。

 このため、農林水産省では、有機農業の栽培技術や有機JAS制度等の指導を行います都道府県の有機農業指導員の育成に対する支援を行っております。令和五年末までに三十四府県で約千名の有機農業指導員が育成される見込みでございます。

 これに加えまして、オーガニックビレッジの取組の中で、それぞれの地域で実践されている技術の体系化をしていかなければいけませんし、有機農業の技術指導を行う市町村の体制づくりを支援していかなければなりません。それから、有機農業の民間指導団体が三団体ありますけれども、この民間指導団体が全国の産地に赴きまして、有機農業者への技術指導を行う活動への支援等も行っていかなければいけないというふうに思っております。そして、実際、今それを行っているところであります。

 農林水産省といたしましては、これらの取組を通じまして、地域で有機農業を教えられる人材の確保やレベルアップを図りまして、農業現場において有機農業の技術を習得できる環境の整備を進めてまいります。

掘井委員 次に、有機農産物の販路、公的機関への推進ということで、有機農業の市場の確保について、有機農業先進国なんかでは、やはり公的資金でやっていけるように、学校給食、軍隊又は病院、刑務所、こういったところに有機農産物がきちんと供給されていまして、有機農業の市場が確保されておるということであります。

 需要拡大が生産面積の拡大につながりますが、こういったことは国が率先してこうやると決めればできると思うんですけれども、学校給食も、教育委員会また保護者のこともありますし、なかなか後押ししかできないという状況なんですけれども、ほかの公的機関でしたらできるのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 国等における環境に配慮した物品の調達につきましては、令和四年二月に、グリーン購入法に基づく基本方針が見直されまして、国等の庁舎内の食堂においては、有機農業により生産された農産物やその加工品の利用の推進というのが配慮事項として追加をされました。

 農林水産省では、他府省庁に率先して有機農産物の利用に取り組んでおりまして、職員第一食堂というのがあるんですが、常時十種類以上の有機農産物が使用されております。また、昨年から、庁舎内の六か所ある食堂全てにおいて、有機農産物を使用したメニューが提供されております。

 また、他府省に対しても働きかけを行っておりまして、有機農産物を取り扱う事業者の情報提供なども行っておりまして、従来から取り組んでおりました法務省の食堂に加えて、令和五年度には新たに防衛省等、複数の省庁の食堂においても有機農産物が使用されたメニューが提供されるようになりました。

 引き続き、他省庁への働きかけ等を行いまして、各省庁の食堂において有機農産物の使用を後押ししていきたいというふうに考えております。

掘井委員 どんどん召し上がって、健康になっていただきたいと思います。

 次の質問、ちょっと順番を変えます。四番の農産物の付加価値の向上、法案三十一条でありますけれども、これについて。

 新設で、法案第三十一条では、高い品質を有する品種の導入促進などに関して、高い品質を有する品種、植物の新品種、家畜の遺伝資源、知的財産の保護が書かれております。

 知的財産として法定されていない日本に古くからある植物品種、種子などに対しての付加価値についてどう考えておるのか、またどのように支援していくのか、教えてください。

水野政府参考人 お答えいたします。

 各地域には、その地ならではの魅力のある農産物や植物品種が多く存在しております。これらの付加価値を高めるためには、知的財産として戦略的な保護、活用を推進することが重要と考えております。

 このため、農林水産省では、地域特有の産品の名称やブランドを保護するGI制度や商標の活用を推進しているところでございます。

 また、種苗法に基づく品種登録に当たって、種苗の海外持ち出し制限や国内の栽培地域の限定等の活用を促し、登録品種のブランド保護に向けた取組を推進しているところでございます。

 加えまして、国内在来品種を保護するため、地域における種苗の保存活動を支援しておりまして、具体的には、伝統野菜の種子の生産活動や優良な品種の選抜や保存に係る活動などに対する支援を行っているところでございます。

掘井委員 種子法とか種苗法が変わりまして、地域が頑張るということが基軸に置かれてやっていくんでしょうけれども、今回、種子の価値を高める質問でありましたけれども、種子を守るということも食の安全そのものでありますので、またどこかで議論したいと思います。

 次の質問です。農産物の価格の形成と経営の安定、同三十九条についてであります。畜産、酪農経営、価格の転嫁に向けての改善ということで質問します。

 法案第三十九条、農産物の価格の形成と経営の安定について書かれております。需給事情及び品質評価が適切に反映されるよう、必要な施策を講じるとありますけれども、生産コストが急騰した場合、価格転嫁が進まないと、経営に大きな影響が生じました。適切な価格設定は非常に重要な課題であります。

 例えば、牛乳のことが問題になりましたけれども、乳価は指定団体と乳業メーカーの交渉で決まるということになっておりますが、乳業メーカーの決定した価格を受け入れるしかないという立場でありますから、その一方、乳業メーカーは、当時、飼料が上がって、上げてほしいという交渉の中で、なかなか思うように上がらないけれども、スーパーではかなり上がっている。こういう何か矛盾したようなことがありますけれども、こういったことの改善の方法、まずこれについてお伺いしたいと思います。改善について。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 現在、協議会で、乳業者も含めて協議を進めているところでございます。これまでは、乳業メーカーを始めといたします製造業の皆様方からもいろいろと理解の醸成に時間がかかったところではありましたが、現状におきましては、やはりこの持続的な供給をしていくためにはみんなで協調していこうというところに理解が増えてきているところでございます。そういう意味でも、その改善というものを少しずつ今醸成をしているという状況でございます。

掘井委員 もう時間が来ましたけれども、終わりますけれども、一言だけ。

 協調して本当に値段が決められたら、ほんまはそれにこしたことはないんですけれども、非常に難しいんだと思っております。今回、環境保全とか有機農業の話をしましたけれども、やはり、大きな農業をされておることの中で、なかなか、経営状態も鑑みながら移行していくとかそういうことも考えなきゃいけないから非常に難しいと思うんですけれども、バランスを考えながら進めていただきたい、このように思っております。

 終わります。ありがとうございました。

野中委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十一分開議

野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 食料・農業・農村基本法の改正案について引き続き質疑します。

 最初に、農産物の価格形成、価格転嫁についてです。

 法案第二条、「食料安全保障の確保」で、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、」とあります。では、お米ならば合理的な価格というのは幾らなのか。三月二十六日のこの私の本会議質問に対して、岸田首相は、米の価格は民間取引において、その時々の需給のバランスによって決定されているとしつつ、適正な価格形成の仕組みづくりに向けて、米も含めて実態把握のための調査を行い、その結果も踏まえて検討を進めると答弁されました。

 よく分からないので、再度伺います。

 価格水準は需給バランスで決定するとしながら、適正な価格形成の仕組みづくりを検討するというのは、これは矛盾していませんか。需給で決めていくのか、それとも需給で決めずにコストを価格に上乗せしていくのか、どちらなのか、説明していただけますか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 米の価格は需要と供給のバランスによって民間の取引の中で決定されるべきものと認識しております。基本法の改正案においても、食料の価格形成につきましては、需給事情や品質評価が適切に反映されることが基本になることには変わりはございません。

 一方、近年、資材価格等が高騰する中で、民間での価格形成過程では生産コストの増加が十分に考慮されていないという指摘があり、食料の持続的な供給を行っていくためには、生産から消費に至る食料システムの関係者により持続的な供給に要する合理的な費用が考慮される仕組みを構築していく必要があると考えております。

 このため、農林水産省では、昨年八月より、この関係者による協議会を開始し、議論を行ってきているところでございます。その中で、米についても、コストデータの把握、収集、また、価格交渉や契約においてどのような課題があるか等を調査、検証することとしております。

 こうした取組を通じて、価格形成に際して食料システムの関係者により、食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるように、費用の明確化等が促進されるよう検討を進める、そういう考えでございます。

田村(貴)委員 総理答弁と余り変わらないんですけれども、コストの価格上乗せはするけれどもその方法を模索していくのか、それともコストの上乗せ自体を検討中ということなのか、どちらなんですか。

平形政府参考人 繰り返しになりますけれども、需要と供給のバランスの中で決定されるべきもの、それが基本であることには変わりありませんが、ただ、コストを計算するということが考慮されて関係者の中で価格形成がなされていく、そういう形だというふうに考えております。

田村(貴)委員 主食の米自体も価格転嫁の方向性がなかなか見えないということですね。

 比較的価格が転嫁しやすいと考えられている酪農についてはどうでしょうか。農家の再生産のコストは、生産費調査があるので、これはデータがあります。一方、乳業者のコストデータはあるんでしょうか。これは入手できるんでしょうか。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 価格形成につきましては、協議会を現在行っているわけでございますが、その過程では、コストデータの収集に関しましても議論が行われてございます。

 今委員から御指摘ございましたとおり、生産段階におきましては公的統計データがございますし、さらに、公的統計データ以外のデータも活用してはどうかといった議論も行われているところでございます。

 また、乳業メーカーを含みます製造段階につきましては、個社情報の開示はなかなか難しいという意見が多うございます。そういった中で、業界団体で取りまとめる方式を検討してはどうかといったような議論も行っております。

 さらに、小売段階におきましても、商品ごとのコスト管理を行っていないような実情がございますので、光熱費、人件費、物流費などのコストの分類に応じて捉える方法を検討してはどうかといったような考え方も提案しながら、議論を進めてきているところでございます。

 先週、第四回目の協議会を行いましたが、今後の検討方向といたしまして、品目ごとに各段階の取引価格やコスト構造などについて実態調査を行った上で、企業情報の取扱いも含め、各段階におけるデータ収集の課題等を検証するということで認識共有を一致したところでありまして、引き続き、データ収集に関しても検討を深めていくということとしているところでございます。

田村(貴)委員 二〇〇四年、Jミルクが、飲用原料乳コストデータから乳価をはじく、こうした公式フォーミュラを示しました。しかし、乳業者の製造販売コストデータが入手できずに、普及しませんでした。こういう事例がありますね。法整備をして乳業者に公表を義務づけたとしても、コストを恣意的に作成される可能性はあります。

 各段階のコストを公表して、それを積み上げて小売価格を決めていく仕組みをつくれば、これは、競争的な市場で交渉により価格を決める自由と公正の前提を欠くことにもつながりかねません。そうなれば、独占禁止法に抵触するのではありませんか。いかがですか。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のございました独占禁止法の運用に関してでございますが、先日九日のこの委員会の質疑におきましても、公正取引委員会の方から、食品スーパーによる野菜の廉売に対して、独禁法に規定する不当廉売に違反するおそれがあるとして警告を行った事例があるということですとか、引き続き、中小事業者などに不当に不利益をもたらすような優越的な地位の濫用、あるいは大規模事業者による不当廉売、こういったものに対しては厳正に対処していくという答弁があったところでございます。

 農林水産省におきましては、こういった取組と併せまして、食料の持続的な供給を食料システム全体で確保していくということを目的として、合理的な費用が考慮される仕組みについて、法制化も視野に検討しているというところでございます。

田村(貴)委員 農産物の価格形成というのは、農業者とその取引相手の卸売業者、そして、食品加工業者だけではありません、小売店から消費者、市民に至るフードシステムの構成者全てが関わってまいります。しかし、それぞれの立場から全体は見えません。問題を認識し、合意形成が難しいです。価格は当事者同士が交渉して決めるものであり、そこに枠をはめると、独禁法違反あるいは抵触するということになりかねません。

 四日の参考人質疑で、東京大学大学院の安藤光義教授は、農業者の再生産価格の実現は必然的に食料品価格の上昇をもたらし、国内の所得格差の拡大が進む中、低所得層が極めて厳しい状況に追い込まれる、このように指摘されました。

 一方、法案は、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態とし、これは、国連食糧農業機関、FAOの食料アクセスの定義を導入していると、先日の私の質問で答弁がありました。

 低所得層が極めて厳しい状況であるのと、国民一人一人がこれを入手できる状態、この矛盾をいかにして解決されていくんでしょうか。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 この委員会における質疑に先立ちまして、三月二十六日に衆議院の本会議におきまして質疑が行われてございます。

 その中では、国民の皆様が物価高を超える賃上げを実感することができなければ、持続的な供給のために必要な合理的な価格の形成というのは難しいのではないか、物価上昇を上回る賃上げの実現に向けてどう取り組むのかといった御質問がございました。

 これに対しまして、岸田総理の方から、食料供給に関わる産業を含めて、あらゆる産業において賃上げと成長の好循環が実現できるよう、物価高に負けない賃上げの実現に向けて、価格転嫁の促進やその他各種支援措置を講じて強力に後押しをしてまいりますというふうに御答弁をされてございます。

 今委員からお話ございましたとおり、生産、製造、流通、販売といった各段階の費用を単純に転嫁をしていきますと、消費者が負担できないような価格になるのではないかという認識は、私どもも同じ認識を持ってございます。このために、価格転嫁ばかりではなくて、政府を挙げて、賃上げを通じた購買力の向上と相まって取り組むということが重要と考えてございます。

 協議会の議論におきましても、生産者にしろ、消費者にしろ、どこか一部の関係者にだけしわ寄せが及ぶ仕組みというのは、食料システムの持続性を確保することは難しいという意見が出されているところでございまして、各関係者間でバランスの取れた食料システムとなるように、丁寧に合意形成を図って検討を進めていきたいと考えているところでございます。

田村(貴)委員 坂本大臣、今の議論なんですけれども、買う側の購買力の問題なんですよね。

 大臣にも見解をお尋ねします。

 実質賃金が二十三か月連続で減少している。これから先、賃金を上げると言うけれども、全ての働く人たちの賃金が上がる保証はどこにもありません。食料の価格が高くなれば敬遠されるのは、これはもう明白な話であります。価格の転嫁、価格の形成と国民の消費購買力の関係をどのように考えておられますか。賃上げという言葉はありましたけれども。大臣はどう考えておられますか。

坂本国務大臣 その辺のバランスは一番大事なところだというふうに思っております。

 やはり、コスト指標をしっかり出して、その中で、合理的な価格をそれぞれに出していく。しかし、それを積み上げた結果、かなり高くなって、価格が高くなってしまうと一人一人の入手が困難になってしまうというようなことですので、そこは両々考えまして、今政府参考人も言いましたように、やはり購買力というものがまず大前提で、購買力というのを増していかなければなりません。

 その中で、やはり、持続可能な農業と、国民一人一人にアクセスできる食品と、そして、それに見合う合理的な価格、この三方をそれぞれ見合いながら、しっかりとした価格形成と持続可能性を追求していかなければいけないというふうに考えております。

田村(貴)委員 政府自身、自民党自身ですね、認められるように、コストカット経済を長年続けてきた。そして、賃金が上がらない状況を招いている。政権に就いて、賃上げを進めるから食品価格が上昇しても大丈夫だと言っても、これは説得力を持たないわけであります。

 私、財務金融委員会にも所属しているんですけれども、購買力を上げるんだったら、やはり岸田政権として、消費税を下げるとか、新たな負担増につながっているインボイスは中止するとか、目に見えての購買力引上げの対策を打たないと、幾ら価格転嫁の議論をしても、そこが始まらないと、これは果たせませんよね。そのことを指摘させていただきたいと思います。

 参考人質疑で、東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、ゲタ、ナラシ、収入保険など、既存の制度のいずれもコスト高に対応できない、これらの欠陥が自給率を低下させていると指摘されました。

 昨今の重大な課題であるコストの高騰に対して、この法案は、政策上、どのようにカバーされているんでしょうか。

坂本国務大臣 資材費等のコスト増につきましては、価格転嫁が基本と考えていますけれども、価格転嫁が間に合わない大幅なコスト増も想定されます。このため、収入保険等の経営安定対策と併せまして、施設園芸の燃料や配合飼料、肥料についての価格高騰対策等を講じているところです。

 基本法改正案におきましても、今後、第四十二条第三項におきまして、農業資材の価格の著しい変動が農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講じる旨を新たに規定をしたところでありまして、これに基づきまして、その時々の必要な施策を講じてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 その時々の必要な施策と言われました。

 これは、コスト高に対して対応できる恒久制度をつくるということではないんですか。それとは違うんですか。

坂本国務大臣 影響緩和のための対策を講じていくということであります。これまでも重層的にそういったものをやってまいりましたけれども、そういう影響を緩和させるための対応策というものをその時々でしっかり講じていくということであります。

田村(貴)委員 その都度ということなんですね。

 フランスでは、生産コストを価格に反映できるようにするエガリム法があります。農水省はそれを参考にすると言われています。

 しかし、フランスと日本は状況が全く違います。元々、EUでは、CAP、総合的農業政策によって、農家への直接支払いが本格的に導入され、それでも足りないといって、フランスではエガリム法が制定されました。農業所得に占める政府補助の割合は、フランスが六七%に対して、日本はその半分以下、三〇%にすぎません。直接支払いの制度は弱いというわけです。そして、フランスの食料自給率は実に一一七%、だからこそ、輸出も旺盛なんですよね。対して、日本は輸入依存にあります。

 日本がこういう状況で価格転嫁をしていくならば、そして商品価格を引き上げていけば、消費はおのずと輸入にシフト、輸入に流れていくのでないんでしょうか。それを防ぐためにどうしますか。説明をお願いします。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 これまでの協議会の議論の中でも、コスト上昇によりまして価格改定を行った際に、需要量の減少ですとか、あるいは代替品への需要のシフトが生じるということから、小売業者などとも十分に調整の上、価格改定の幅を決定する必要があるといった御議論がございました。費用を単純に価格に転嫁するということについては課題が多いと考えているところでございます。

 このために、基本法の改正案におきましても、合理的な費用が考慮されるようにしなければならないと規定をいたしておりまして、この考慮が行われる仕組みの構築に向けて検討を進めていくという考えでございます。

 また、消費減少や輸入品への代替を極力起こさないようにするためには、やはり消費者を始めといたします関係者の理解醸成が不可欠であると考えてございます。このために、現在行ってございますフェアプライスプロジェクトを通じまして、理解醸成に引き続き努めていきたいと考えているところでございます。

田村(貴)委員 価格形成をするためには、製造販売業者のコストデータを入手する必要がある。先ほども言いました。関係者の合意は当然のことであります。そして、独禁法との整合性も見ていかなければならないし、消費者の負担や国内市場の縮小といった解決し難い問題がたくさんあるわけですね。では、何が求められるかといったところです。

 農業者の再生産を可能にし、かつ価格上昇を抑えるために、参考人で安藤先生は、農地に対して面積当たり定額を支給する直接支払いの実施しかないと述べられました。鈴木先生も、農地が農地として維持されていることに対する基礎支払い、生産費と販売価格の差額を補填する不足払いが必要だと述べておられました。

 EUの総合的農業政策、CAPは、農地面積に応じた直接支払いを中心とする所得、価格政策と同時に、環境や地域社会に考慮した取組への支払いという二本柱で構成されています。大いに参考にすべきではありませんか。

 食料の安定供給、農業者の所得補償、環境保全、農村振興が図られています。EUのように、食料の安定供給には、価格転嫁の追求だけでなくて、所得補償がなければ実現は困難ではありませんか。いかがですか。

杉中政府参考人 EUの直接支払いについて言及がございました。

 まず、EUにおきましては、確かに、共通農業政策、CAPの中で農地面積に応じた直接支払いを行う制度が措置されておりますけれども、昨今の全体的な流れとしては、基礎的所得支持に対して環境についての取組とのリンクが求められ、いわゆる耕地の一定面積の休耕など環境についてのクロスコンプライアンスが強化されております。

 また、化学農薬の削減、有機耕作地に係る直接支払いなど、環境への更なる取組の上乗せ措置としてエコスキームというものが導入されるという中で、農村政策においても環境、気候変動対策が強化されるなど、近年の動向としては環境、気候変動対策が大幅に強化をされております。

 また、各国の自主的な取組が優先をされまして、各国の負担の中で競争力の強化を行うような施策を行っている。

 また、いわゆる共通市場政策というものの中で、EU全体においても価格転嫁、その一つの加盟国の取組がエガリム法なわけですけれども、そういった食料システムというのを推進する施策が進んでいるというところで、直接支払い一本ということではなくて、EUにおいてもバランスの取れた施策が行われている。

 我が国においても、農業の持続的な発展を図るために、需要に応じた生産を推進しつつ、生産性の向上、付加価値の向上に関する取組を行って収益性の向上を図るということと、また、EUと同様に、恒常的なコスト増を考慮した価格形成を行うということ、また、環境との調和を図る政策を行うというようなことで、EU等が行っているようなこととかなり似たような形で施策の見直しを行っていくという方向で、当然、その施策の考慮の中に当たっては、委員の議論されているようなEUでの取組なども十分参考にして検討してまいりたいと思っています。

田村(貴)委員 制度解説を大分されたんですけれども、やっていることはやはり、直接支払い制度が充実している、そして所得補償が行われている。こうしたところを取り入れないと、価格転嫁、価格形成というのはできないということじゃないんですかと私は聞いているんです。

 ずっと議論してきましたけれども、製造販売者のコストデータがない、これも出てくる保証もない。それから、コスト高への恒久的対策も位置づけられていない。国民への物価高騰対策、これも本当に、全く不十分である。さらに、農家の所得を補償する対策もない。これで価格形成をやりますと法文上書いても、それはもう絵に描いた餅にしかならないんじゃありませんか。

 やはり、所得補償をしていく、そして農業で生計が立てられる、その補償を持って、そして、国民に対しては所得を引き上げていく、これをちゃんと実現しなければ価格形成はできないのではないか。特に、所得補償については、エガリム法を参考にされるというんだったら、これはどういうふうにしていくんですか。もう一度答えてください。大臣、いかがですか。

坂本国務大臣 今、政府参考人の方から言いましたように、EUの方も、共通政策の中で、それぞれの国の自主性というものをやはり尊重をする流れにあります。そして、直接支払いの方も、環境等に重点を置いて直接支払いというのをやっております。しかし、その直接支払いの中身につきましては、日本の場合も、十アール当たりの支払い等につきましては、単位面積当たりではEUよりもはるかに高額の直接支払いをしているところでございます。

 それで、基本的な私たちの考え方といたしましては、生産者の方々は常に、生産性の向上によるコスト低減や、付加価値の高い農産物の生産などを行って、そしてコストをできるだけ吸収しようという努力をされておられます。こうした生産者の方々の努力を踏まえまして、持続的に生産を行えるようにするために、政府としては、まずは生産性の向上や付加価値の向上に取り組みましょう、そして農業者への支援も行いましょう、さらには、資材費や人件費などの恒常的なコスト増に配慮した合理的な価格形成をしていきましょうということで、生産者の収益性の向上を実現していきたいと考えているわけであります。そしてさらに、やはり急激なコスト上昇につきましては影響緩和対策でやってまいりましょうということであります。

 ですから、所得補償あるいは直接支払いということにつきましては、私たちは、EUと、あるいはアメリカとも比較をしてみた場合にも、単位面積当たりでそれぞれの直接支払いに遜色はないし、逆に単位面積当たりでは日本の方が非常に高くなっているというようなことは言えるんだろうというふうに思います。

田村(貴)委員 そうやって施策を紹介されて、やっている、やっていると言って、今の基本法で二十五年、この四半世紀で福岡県や愛知県の面積を超える田畑がなくなった。日本の農業人口は、人口減は四%なのに、五〇%もいなくなってしまった。これが現実ですよね。現状追認では駄目ですよ。現状追認に拍車をかけるような農地法ではこれは駄目だということを申し上げて、時間が来ました。次回にまた論議させていただきたいと思います。

 終わります。

野中委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 六年ぶりに農水委員会で質問をする機会をいただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 早速質問に入りたいと思います。

 ある識者は、日本が農業を評価する際に、足りている豊かさという規範に固執しており、余っている豊かさという規範が欠けているためだと。飢饉への不安や口減らしなど、日本には一貫して食料不足の下、苦労を重ねてきた歴史がある。戦後も、輸入する農産物に頼りながら腹を満たしてきた。国内の農業だけでは食料が足りない状況が定着してきたことは、皮肉なことに、一種の安心感を生み出した。それは、平和な時代にあって、国内の農業だけでは食料が足りないとしてもふだんの生活では何ら困らないという安心感や、いざというときに食料が足りないからこそ国内の農業の大切さは疑いようがないという安心感だというふうに言っているんですね。

 例えば、食料自給率の低さについて、ふだんの生活に影響がないため不安に思わなくてもよいと考える人がいる、一方で、日本農業の大切さを訴えたい人にとっては、足りていないという貧しさが続いているため、これまでと同じように日本農業の大切さを主張し続けることができる安心感があるというものなんです。食料自給率の低さを気にかけるか否かという立場の違いこそあれ、そこには足りている豊かさの規模の評価事由でそれぞれにとって安心感が生み出されているにすぎないというふうに、この識者の方は述べています。

 国内の農業だけでは食料が足りないという慣れた状況がもたらす安心感に浸り、農地が減り続ける中で、いつまでも食料安全保障のために農業は必要、重要だと叫び続けるのか、それとも、余った農地に新たな価値を見出す覚悟を持ち、進むべき道を切り開くのか、日本人は大きな岐路に立っているのではないかというふうに述べています。

 農業の現場一つ取っても、種、肥料、建設資材、エネルギー、どれもが他国に依存している日本の農業の今後の展開を、まず、大臣にお尋ねしたいと思います。

坂本国務大臣 今御紹介をいただきました識者の方の考え方というものにつきましては、またじっくりと考えてみたいと思いますけれども、我々といたしましては、世界の食料需給が不安定化している中で、将来にわたり食料の安定供給を図るために、国内で生産できるものはできるだけ国内で生産するということがまずは重要であるというふうに考えております。

 その上で、現在の消費に合わせた生産を図るためには、国内の農地の約三倍が必要であるという試算もあります。また、御指摘のように、肥料やエネルギーなどにつきましても海外からの輸入に依存している中、どうしても自給できないものについては、輸入による供給も不可欠だというふうに考えております。

 このため、今回の基本法改正案では、過度に輸入に依存している麦、大豆、飼料作物の国内生産の拡大というものを進めながら、国内生産で需要を満たすことができない農産物及び農業資材の安定的な輸入の確保に向け、輸入相手国の多様化、そして輸入相手国への投資の促進等を行っていかなければいけないというふうに考えております。

 これらを通じまして、食料安全保障の抜本的な強化というものに取り組んでまいりたいと思っているところであります。

鈴木(義)委員 この間、地元のスーパーに行って、豚肉を売っているところの売場に行ったら、カナダ産、カナダ産、カナダ産、カナダ産。国産はちょこっとしか置いていないんですね。本当に、豚肉はカナダ産。うちの方は、私は埼玉の三郷というところの出身なんですけれども、うちの地元のスーパーさんは、カナダ産の豚肉の売場がいっぱいあって、国内産はちょこっとしか置いていない。それだけカナダ産の方が安いから。国産の方がちょっとやはり高いんですよね。お客様である消費者はやはりどうしても安い方を買ってしまうという、現実のギャップがあるんだと思うんです。

 そこで、食料自給率を上げますよといっても、これも県会議員のときに私は何回も質問しましたけれども、当時、十五年ぐらい、もうちょっと前の話なんですけれども、埼玉県の食料自給率は一六%しかないんです。国の三八よりもぐっと低い。何でかと聞いたら、海がないんです。肉を作っていると言っても、鳥肉はまあまあ、豚肉もあるんですけれども、牛肉を飼育している酪農家さんはそんなに多くないんですね。

 だから、物によっては食料自給率がすごく低いところもある。ノリも取れなければシャケも取れない。そういう地域柄があって、それでも食料自給率を上げろと言うんですけれども、例えば穀類だとか芋類、果糖類は、カロリーベースでいけば食料自給率を上げることができますけれども、葉物野菜を一生懸命作っても、ほとんどカロリーは上がらないんですよ。

 だから、指標の取り方一つ取って、食料自給率の三八%が云々だけじゃなくて、もう少し中身を国民に知らせて、国産のものを買ってもらうような形で向けていかないと、せっかく二十五年ぶりに食料の基本法を改正するに当たって、消費者の消費意欲を喚起させるようにして国産をなるべく買ってもらうような誘導策を取っていかなければ、幾ら国が振っても、やはり安い豚肉を買うんですよね。

 先日、地元のそば屋さんに行って昼食をいただいたんです。ざるそばをいただいたんですが、食べた後、お店にお客さんがいなかったので、店主の方と話をしました。自分のところのそばのそば粉は、茨城県産のそば粉を使っているんだけれども、その農家の方から、あと十年か十五年しかそば粉を作れないと言われたというんです。

 米農家も高齢化が進んで、平均七十歳、十年先には米を作る人がいないと将来を不安視する話題が中心でしたが、そば粉も、海外産が八割、国産が二割とも聞きます。

 自由貿易で競争するのは、消費者にとって、安価な食べ物が食べられるのでメリットがあるんでしょう。しかし、それでは生産者は生活していけません。

 ある識者は、食料を得るために農業を発展させることや、食料安全保障のために農地を守るといった伝統的な発想とは違い、日本人にとって農業や農地、国土がどうあるべきかという、農業観や農地観、国土観に根差した、勇気と覚悟による決断が問われているというふうに述べているんです。

 人口減少の時代の中、地方では加速度的に減少している地域が出てきています。田んぼや農地をどう守るかは、その土地の農家や地域住民で決めて戦略を立てるべきという考え方も多く聞きます。しかし、それは、自主性を尊重しつつ、反面では田んぼ余りや農地余りの対応を現場の現世代に押しつけているにすぎない考え方で、増え続ける余った田んぼや迫りくる農地余りについて、今後の展望を個人や狭いコミュニティーで答えを出すことは、もはや限界を迎えつつあるんじゃないかとも述べているんです。

 私の地元でも穀倉地域があって、最初の計画のときは県の圃場整備事業だったんですけれども、過半を取って大規模化しようというので合意形成が得られたんですけれども、いざ工事に入ったら、うちの土地だから、過半は取らないでくれ。現実、そういうことが起こっています。

 ですから、なかなかそこのところの合意形成をどうするかというのは難しいんですけれども、現場でよく話し合ってくれ、現場で協議してくれということだけでは、今申し上げたようなことは解決できないと思うんですね。

 だから、今申し上げたように、農業や農地、国土がどうあるべきか、農地観や国土観について国が方針をもっと強く打ち出さないと守れないんじゃないかというふうに考えるんですけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 まず、国土観、農地観を持つべきであるというようなことで、今回この基本法に併せまして、農地農振法、こういったものも提出をさせていただいて、そして、国としてどう農地の確保に取り組むべきかということを、この国会の中で審議していただきたいというふうに私たちの方で考えているところでございます。

 そして、国土の在り方についても、国土形成法に基づきまして、国土形成計画におきまして、都市、農山漁村、産業等の事項につきまして総合的な見地から示しているところです。昨年七月に閣議決定されましたその計画におきましては、農地は国民に農産物を安定的に供給するとともに、多面的機能を発揮する重要な基盤として、優良農地の確保等を図るというふうにされております。

 また、農村は、現行基本法においても規定しておりますように、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしていることを踏まえ、農業の振興については、まず地域においてその将来像を定めていただくことが重要であり、現在、ボトムアップで進められている地域計画の策定を進めているところです。

 国家としてのこういった国土形成計画、これは示しているつもりでございます。しかし、最終的には、やはり国家としての強権を発揮するというのではなくて、地域で、それぞれの話合いによって、現在進めていただいている地域計画を策定していただく、これが基本になってくるというふうに思っております。

鈴木(義)委員 私の地元は都市農業を一生懸命やって野菜を作っているところなんですけれども、六年前に都市農業の問題で質問に立ったときも例示を挙げさせてもらったんですね。

 例えば、田んぼ一枚で十二万の米ができる土地がありました。すぐ隣に、農地転用して、駐車場だとか資材置場で貸せば、年間三百万、そこの土地から収入が上がってくる。十二万の土地と三百万の土地、農家はどちらを選択するかといったら、みんな三百万を選択するんです。

 そのときの当時の大臣は、いや、都市農業にも優良農地があるんだからと、こういう答弁をされたんですけれども、そういう考え方で、都市近郊の農家と穀倉地帯の農家、中山間地域の農家を一緒くたに論じていたらやはり農地は守れないと思うんですけれども、もう一度、その辺の切り方というんですかね、全体で何かということよりも、やはり部分部分で国の方向性を決めていかないと、いつになっても、現場に戻しますよ、現場で協議してください、方向性を決めてくださいと言ったら、私は、申し訳ないが、自分が農家だったら、私のところも昔農家だったんですけれども、やはり三百万の土地利用を選択しちゃいますよね。

 その辺をどう考えるか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

坂本国務大臣 繰り返しになりますけれども、全体の国土形成計画としては、国の方でそれを提示をしております。それから、都市には都市に、都市農業振興基本法というのがありまして、生産緑地をどれだけ確保するのか、その中で、都市のオアシスとしてどういう農地を確保し、どういうものを生産していくのか、そういうような、都市としての農地のあるべき姿というのがありますので、やはり、全体は全体として国が提示をしながら、一方の方では、その地域地域に応じた農地の活用方法、あるいは農地のあるべき姿、こういったものを住民の自治によって考えていただく、これが一番これからやらなければいけないことだというふうに考えます。

鈴木(義)委員 じゃ、これも過去に質問したことなんですけれども、農業は産業政策としての考え方でやろうとするのか。片方は、社会政策、福祉政策でやろうとしている。過去にこの話をしたら、車の両輪だというふうに答弁された。でも、今、それで、こちらを強く言えば言うほど、産業としては成り立たなくなっていくんです。だから、みんなやめ始めちゃう。ソバも作る人もいなくなっちゃう。米もどうしようかという話になる。

 だから、今は、どっちかというと産業政策の方を力を入れないと、今までと同じように福祉だ、社会政策だという考え方でやろうとすると、やはりこっちがみんな今、へたってきちゃっているというのが私の実感なんですけれども、その辺についての考え方をお示しいただきたいと思います。

坂本国務大臣 やはり、そこは車の両輪だというふうに思います。

 産業政策は産業政策として必要だと思います。ですから、私たちは、需給に応じた生産、そしてそれぞれの経営判断に基づいた作付、そしてコスト低減、こういったものを生産者の皆様方にお願いしているところであります。

 そして、一方の方では、やはり、食料・農業・農村基本法でございますので、農村が持つコミュニティー性、農村が持つ多面的な機能、こういったものもしっかり維持しながら、国土を形成し、そして、そこで、産業とそれぞれのコミュニティーでの生活が両立するというような方向を目指しているところでありまして、その方向に沿って、今回も、食料・農業・農村基本法の改正案というものを理念として提示しているところであります。

鈴木(義)委員 後でまた機会があったら議論させていただきたいと思うんですが。

 次に、この法律の改正によって、例えば令和五年の補正予算と令和六年度の補正予算で、スマート農業に対して予算を計上されているんですね、約三十六円、二つの予算を合わせてですけれども。実証成果を全国各地の生産者、産地に横展開する取組を推進するというふうにあるんですが、新しい技術、例えば種一つ取ってもそうですね、肥料一つ取ってもそう、農業用機械もそうですけれども、新しい技術って、なかなかやはり農家の人というのは、それでうまくいくのかどうかが分からないと受け入れてもらえないと思うんですけれども、このスマート農業技術を横展開させて全国に広めていこうというふうになったときに、どういう方策でやっていこうとするのか、お尋ねしたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 スマート農業を推進するため、令和五年度補正予算及び令和六年度当初予算におきまして、スマート農業技術の開発、改良、またスマート農業技術の実証、さらには実証成果の横展開の取組に対して支援を行っています。

 御指摘の実証成果の横展開につきましては、生産者に技術導入による経営改善効果等を御理解をいただくことが重要ですので、例えば実証地区における研修会や実演会の実施、また、ポータルサイトを通じた営農類型別の経営収支に関する情報等の一元的な発信等を進めているところです。

 さらには、令和四年度から、実証プロジェクトの実施者がサポートチームを組織をして、他産地へ実地指導をするとともに、そのノウハウを手引書にまとめ、公表する取組を支援をしているところです。

 引き続き、成果の発信に取り組むとともに、今国会に提出しているスマート農業技術活用促進法案、この中で、農業者によるスマート農業技術の活用、それから、これと併せて行う新たな生産方式の導入に関して税制、金融等の支援を行う、また、複数の農業者が同一の計画に参画することによる機械の共同利用の推進、さらには、農業者のスマート農業技術の活用をサポートするサービス事業者の取組の促進等の措置を講じているところです。

鈴木(義)委員 よく、道路を造ったり、区画整理をやったときに、税金を投入することによって事業を進めようといったとき、必ず出てくるのが、費用対効果、BバイCだと思うんですね。

 農林水産省の予算も二兆円を超える予算を投入して、では、それが実際に、現場現場で働いている農家の人たちの実入りが、二兆円使ったんだけれども、どのぐらいプラスになるのか。

 スマート農業もそうだし、次の質問のところもそうなんですけれども、何億もの予算をかけるんですけれども、では、五億使いました、来年か再来年で構わないと思うんですけれども、そのとき十億になったんだからこの技術を使ってみませんか、この種を使ってみませんかという話になっていくんだと思うんです。

 そこのところを何となく、補助金を出しているんだから、これだけの施策をやっているんだから、あとは頑張ってねというのではなかなか、新しい技術だとか、説明をしていくときに、最終的に、今申し上げたのは、産業として育成していくんだといえば、産業はもうからなければやらないということなんです。それをこっちの社会政策と福祉政策で絡めちゃっているから環境が大事だとか、日本の伝統が大事なんだということでやれてきたんですけれども、そろそろこのプラスの面をきちっと打ち出していかないと、農業の後継者は育っていかないんじゃないか。

 私の地元でも、若い世代の人が、やるよと言っている農家さんもあれば、いや、私は自分のおやじを見て、もう大学を卒業したら農業をやらないといううちも正直あります。そういったうちでもコマツナを一生懸命作っている。朝から晩まで働いている。でも、年間の売上げが、やはり生活が楽な方向に行くような価格での取引になっていないから、どうしてもやめていかざるを得ない、後継ぎにならないというのが今の実態だと思うんですね。

 これは、都市近郊と穀倉地帯と中山間地では全然違うと思うんです。そこのところをやはり少し切り分けた政策を打ち出していってもらわないと、みんな一緒くたでこうなんだということでは、問題の解決につながらないんだと思います。

 それの一つとして、ちょっと質問を飛ばさせてもらいたいんですけれども、例えば埼玉でも彩のかがやき、彩のきずなという、新しい米のブランドといっても何年か前に品種改良して作ったんですけれども、四十七都道府県で、みんないろいろな自分のところのブランドを作って、それを売ろうとするんですね。もうそろそろ四十七都道府県での競争をするのを少しやめた方がいいんじゃないかと私は思うんです。だって、米は余っているんですよ。海外に売っていかなければ、飼料米をしました、加工米にしますといっても、また次の年にお米が余っている、それが現実。

 昨年なんかは何といったら、高温障害で白濁した米が、一等米、二等米がなくて、三等、くずしかないとか、こういうことも去年騒がれた。今年どうなるかというのは分かりません。でも、そういう状況の中で、同じ作付の面積をこれからも続けていけば、同じ量がもしできたとすれば、また米が余る。さあ、どうしましょう。

 そうじゃなくて、やはり、もうそろそろ考え方を、方針を国が示していくべきだと思うんです。それには一つ、もう随分力を入れてやっていただいていると思うんですけれども、世界に目を向けた戦略と戦術を取る時代だ。輸出の方に力を入れてもらっていると思います。

 例えば、この間、地元のお花屋さんに行ったら、あれっ、このカーネーションは安いですね、こっちは高いけれどもと。百円か二百円、開きがある。安い方はオランダから空輸で持ってきた、高い方は日もちするけれども国産の花だと。それだけ価格差が出ちゃっている。お客様はどっちを買うか。そこが今の一番消費者に近いところの話なんだと思うんですね。

 売上げというのは、もう過去に何回も質問しています、単価掛ける数量。この日本の農業の分野で、単価を上げていこうと考えるのか、数量を増やしていこうとするのか。数量を増やしていこうとしても、人口減少になって、食事として摂取してもらう、買ってもらう人が減っていく時代の中で、海外に出していく。より一層、海外にやはりシフトをして、そこに競争力を持たせるような価格で作っていこうとするという形で、極端に言えば二極化するようなものをやっていかないと、本当の意味で農業が成り立たなくなってしまうんじゃないかと思うんですけれども、その辺が一つです。

 それと、あと、さっきも申し上げましたように、BバイCでいけば、これだけお金を使って、二兆円以上のお金を使って、GDPをどのぐらい押し上げられるのかというのもきちっと示すべきだと思うんです。特に今は円安で、今日は百五十二円ぐらい行っていると思うんですけれども、今がチャンスなんだと思うんですね。

 そこのところの、輸出に向けての意気込み、特に、加工品じゃなくて青果物を直接売っていくような形で、利益を農家に還元できるような仕組みで頑張ってもらいたいと思うんですけれども、御答弁いただきたいと思います。

坂本国務大臣 農林水産物・食品の輸出促進につきましては、貿易統計で確認できる輸出額として、二〇二五年に二兆円、そして二〇三〇年に五兆円とする目標を掲げているところです。

 委員御指摘のGDPの押し上げの目標設定というのは行っておりませんが、農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略におきまして、農業者の所得向上に向けた具体的な戦略というのを定めているところでございます。この輸出戦略につきましては、農業者の所得向上につなげていくための取組と、それから所得向上を農業者が実感していくための取組、この二つがあるというふうに思っております。

 つなげていくための取組は、海外市場でできるだけ高値で販売していくこと。それから、重点品目について、輸出品目団体を認定して、各地域が個別にプロモーションを行うのではなくて、オール・ジャパンでの一体的な取組を進め、日本産ブランドの価値というのを高めること。それから、所得向上を農業者の方々が実感してもらうためには、やはり輸出産地の育成に向けた地域ぐるみの取組というのが大事だというふうに思いまして、それには支援しているところであります。

 そして、一定量を継続的に輸出できる産地、いわゆるフラッグシップ輸出産地として地域を選定いたしまして、そこを拠点として輸出をしていく、こういう取組が必要であるというふうに思っております。

 農産物の輸出の促進、それを通じた農業者の一層の所得向上、その所得向上につなげるもの、そして実感をしていただくための政策、この両方を今後も進めてまいりたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 私は、引き続き食料安全保障についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 資料を御覧いただきますと、今回、えらい食料安全保障というのが脚光を浴びて、この基本法の改正に詳しく盛り込まれるということですが、以前、令和四年十二月に内閣の方で国家安全保障という文書が出て、閣議決定を十二月十六日にされていますけれども、この中にもう既に食料安全保障というものが書かれております。

 余り詳しく言いませんけれども、国家安全保障戦略の中に書かれている食料安全保障という言葉、これは資料に御覧いただきますように、下線を引いていますけれども、有事の際の対応能力等の観点から、食料安全保障、これは当然エネルギーも含まれますけれども、こうした政策を進めるとか、真ん中の方に行きますと、食料安全保障に関し、我が国の食料供給の構造を転換していくこと等が重要である云々書いてありますけれども、これが今回の改正における食料安全保障の定義、第二条一項だったと思いますけれども、それと同じかどうか、お尋ねしたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘いただきました国家安全保障戦略においては、我が国の経済、社会活動を国内外において円滑にし、有事の際の我が国の持続的な対応能力等を確保する観点から、我が国の安全保障に不可欠な資源を確保するための政策を進めるとして、ここにおいて、国民への食料の供給量を確保するという観点から食料安全保障を記載しております。

 他方、今回の基本法改正法案では、当然、国民への食料の供給量を確保するという側面はあるんですけれども、それに加えまして、食料の輸送能力の低下、あと低所得者世帯数の増加などにより、食料を円滑に入手するということに支障を生じている者が増加しているという現下の課題を踏まえまして、FAOの定義も参考にいたしまして、食品アクセスの観点を踏まえまして、食料安全保障を、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態ということで定義をさせていただいたところでございます。

 国家安全保障戦略は、安全保障に不可欠な資源を確保するということで、限定をした形での安全保障というのを言ってございますので、両者が矛盾することはないと考えております。

北神委員 今の審議官の御説明でいくと、要するに、基本法の方は、定義の、国民一人一人がこれを入手できる状態をいうというところに重きを置かれているということですかね。要するに、所得再分配、それから輸送能力を含めた、実際に食料を届けるということに重きを置いている、そこが違いだと。

杉中政府参考人 これは食品アクセスのところにより重きを置いたということではなくて、これまでも説明してきましたとおり、我が国の量としての食料安全保障についても、輸入リスクが増大をしているといったようなこととか、国際的な内外の食料需給というのが不安定化しておりますので、量としての食料を確保するという施策も重要でございますし、ただ量があれば国民一人一人に行き渡るという状態でなくなっているということも現下の課題でございますので、この両者をひとしく対処することによって、国民一人一人に食料が行き渡るという、今回定義したような食料安全保障というのを確保できるようにしたいと考えています。

北神委員 それはよく分かるんですけれども、国家安全保障戦略においては、それも含まれるということですか。国家安全保障戦略の方でも、一人一人に行き渡るようにするという輸送的なところ、それから量的なところを併せておっしゃっている。つまり、FAOの定義と同じことをこの国家安全保障戦略で言っているという理解でよろしいでしょうか。

杉中政府参考人 繰り返しになりますけれども、国家安全保障戦略の方につきましては、有事の際の我が国の持続的な対応能力を確保するという観点から、そういった対外的な観点というのに着目して、我が国の安全保障に不可欠な資源を確保する、そのための施策ということで、その中で食料安全保障が例示されておりますので、国家安全保障戦略の方は、先ほど述べましたような形で、有事、平時を問わず、国民への食料の供給量を確保していくというところに着目をして食料安全保障ということを記載しているというふうに理解しております。

北神委員 よく分かりました。

 要するに、国家安全保障戦略の方は、有事のときの対応能力というところにより重きを置いているというか、場合によっては限定して、それにおける食料安全保障ということだというふうに理解しました。

 次の質問で、これも資料の裏側を御覧いただきますと、緊急事態食料安全保障指針に関するシミュレーション演習というのが令和元年に行われています。これは、農林水産省の方でやっておられるというふうに思います。

 これは非常に大事だというふうに思います。ただ法律とか文書で食料安全保障と言っても、具体的ないろいろな状態を想定して、そこでいろいろな課題というものが生まれるということでありますけれども、ケース一、ケース二、ケース三があって、レベルゼロ、レベル一、レベル二と。上の表を御覧いただきますと、レベルゼロというのは、ちょっと危ないなという兆候が表れている。レベル一というのが、供給量が二割減少する。レベル二というのが、この前、おとついお話ししていた、一人当たり二千キロカロリーの供給熱量というものが達成できないというような状態を想定しているということなんです。

 こういう演習で非常に大事なのは、この下の方に今後の課題というのがあります。やはり、大体、演習をした後、今後の課題だけ指摘をして、そのままその課題を解決していないままいくというおそれがありますので、是非、ここは、ちゃんとやっているかどうかを確認したいというふうに思います。

 まず、今後の課題というところで、増産を検討した各品目について、具体的にどの地域でどの程度の面積を増産するかについて、定量的な検討を進める必要がある。併せて、次のところにありますが、不測の事態の発生期間、時期によって、増産の決定から実施、供給に至るまでの期間や対策の継続年数が異なるため、増産した食料が供給されるまでの対応策や複数年にわたり増産を継続するシナリオについても検討すべきだというふうに書いてありますが、これについてどのような検討をされたのか、伺いたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、農林水産省では、定期的に不測の事態を具体的に想定したシナリオによりシミュレーション演習を実施しておりまして、そこで対応手順の確認と実効性の検証を行っております。

 御指摘のように、令和元年の演習では、世界的な不作による小麦や大豆などの輸入減少シナリオに基づきまして、事態の深刻度に応じた具体的対策やその実施を検証しまして、その中で、食料増産の具体的スキーム、栄養バランスの考慮、あと、流通、価格面での対応等についての御指摘をいただいたということでございます。

 これらのことについて、課題に対して実効的な施策をどういうふうにして確保できるのかということを検討しておったわけですけれども、その延長で、昨年八月から十二月にかけて、不測時における食料安全保障に関する検討会というのを開催しました。

 その中で、こういった増産であるとか安定的な流通の確保といったようなものを行うためには、政府全体で意思決定を行う体制というのを構築しないとできない、また、供給量を把握するためには、まず、国内でどれぐらい在庫があるのかということで、把握できるような報告徴収の仕組みが必要だという内容での検討の結果、そういう結論になって、これを踏まえて、不測時の対応根拠となる法制度について検討した結果、今国会に食料供給困難事態対策法案を提出したところでございます。

 また、その中で、増産の対応ということですけれども、食料の増産につきましては、まず、国が、生産を拡大すべき、どれぐらい量を確保するかということを把握をした上で、まずは生産の促進というのを要請をして、要請を行ってもなお必要量を確保することが困難なときに限って、生産計画の届出などを行うようにする。

 また、増産に至るまでにということ、まず、国内にある資源を計画的に出していくということが重要でございますので、流通に関しては、出荷、販売の調整の措置により、適正な供給量を確保していく、また、そういった必要な出せるものについては、一定限度、国内において在庫若しくは備蓄を確保していくということが重要だと考えておりますので、これは、法律に基づいて、基本方針の中で、重要な食料、資材等についての備蓄の方針というものを決定していくというような形で、具体的に対応できるような仕組みづくりを進めていきたいと考えているところです。

北神委員 ありがとうございます。

 次に、栄養バランスというのはどんな結果になりましたか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 栄養バランスについても、先ほどと同じような形で、法制度の中で対応するという結論になったわけですけれども、法制度の中で供給量を確保すべき品目ということについて、特定食料として政令で指定をするということとしました。

 この特定食料の指定というのは、今後具体的な検討を行いますけれども、まずは必要となるカロリーの確保、それだけではなくて、いわゆる栄養バランス、たんぱく質、脂質、炭水化物といった栄養素のバランスの取れたものについて指定するということによって、栄養のバランスの取れた食料の供給を確保できるような対策を講じていきたいと考えています。

北神委員 三つ目の課題になっている、流通、価格等の規制、割当て、配給等、これも簡単でいいですから、どういう検討結果になったか教えていただきたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 流通につきましては、法案の対策ですけれども、まずは出荷、販売の調整というものを主要な供給確保の対策として位置づけました。

 それによって、民間にある在庫というのを適正に供給を確保していくというのを前提としますけれども、その後、非常に供給量が減ったときということについては価格の規制や、国民が最低限度必要とする食料の供給ができないおそれがあるときというものについては割当て、配給についても検討していく必要があるというふうに考えております。

 法案の中では、その他の食料供給困難事態対策として、価格の対応であるとか割当て、配給等につきましても、国民生活安定緊急措置法などその他の法令の規定に基づきまして、一体として対応していくというふうに考えております。

北神委員 ありがとうございます。

 これからの法案とか基本方針にこのシミュレーションの検討結果を生かしていただけるということですので、またそのときに是非審議をしたいというふうに思います。

 最後の質問で、今回の法律で、現行の第二条二項においては、輸入及び備蓄の適切な組合せというような文言が、今回の改正案では、安定的な輸入及び備蓄の確保を図るというふうに変わっております。

 これも前に議論をしましたけれども、例えばお米の備蓄なんかは、政府備蓄は百万トンだと。これは不作というものを前提に置いておられる。

 ただ、今回の改正案で、安定的な備蓄というからには、大臣、不作に応じて今百万トンということになっておりますけれども、さっき私は国家安全保障戦略をあえて出しているのは、これはやはり、有事の際、なかなか農林水産省さんの方では余りそういう意識がないようでありますけれども、はっきり言うと、例えば台湾有事のときに、本当に輸入が途絶する、どこまでかはいろいろなシナリオがあると思いますけれども、アメリカが中国と戦争に至ったとき、本当に今までどおり日本に穀物を輸出してくれるのか。あるいは、中国という今や最大の海軍を誇る軍隊を持っている国が必ずしも太平洋のシーレーンというものを妨害しないとは限らないわけなので、これは米に限らず、備蓄の量とかその運営の仕方というのは、やはりその情勢情勢に合わせて変えていかないといけないというふうに思います。

 だから、ただ今まで不作を前提に百万トンで足りたんだというのではなしに、やはりこういう国家安全保障戦略が想定しているような事態というものをちゃんと考えて備蓄の量等を考えるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 委員おっしゃいますように、様々なリスクがあると思います。地政学的なリスク、それから気候変動のリスク、あるいは感染症や様々な病害虫のリスク、そういったものに対しまして、備蓄と輸入というのがやはり非常に重要であるというふうに思っております。そういうことで、今国会に食料供給困難事態対策法案を出しておりまして、そこで基本方針を定めていく予定であります。

 ただ、この備蓄に関してもいろいろな要素がございます。一つは、やはり食料、原材料としてどのような形で流通し、保管されるのか。生鮮でなのか、それとも加工品か。それから、サプライチェーンの各段階で、輸入、製造、流通、小売の段階で、そのそれぞれの段階でどの程度在庫を有しているのかという要素もあります。さらには、供給が不足する場合に輸入先の転換や生産拡大をやらなければいけない。そのときの時間的なもの、期間、これがどのくらいを要するのかということがあります。それを品目別に分けて、それぞれの品目別で調査、検討していかなければなりません。

 非常にそこは複雑なものでありますので、そういったものをしっかりとやりながら、今後、様々な状況の変化にも対応できるような安定的な食料供給を行ってまいりたいというふうに思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 最後に、フィンランドというのは、去年の三月に、今までは国家の穀物の備蓄を六か月としていたのが九か月になった、これはなぜかというと、ウクライナ戦争です。だから、我が国もよくよくそこは考えるべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 坂本大臣、武村副大臣及び舞立政務官は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

野中委員長 この際、昨十日、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案の審査に資するため、宮城県及び福島県において視察を行いましたので、参加委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 参加委員は、伊東良孝君、小島敏文君、古川康君、山口壯君、野間健君、池畑浩太朗君、角田秀穂君、金子恵美君、田村貴昭君、そして私、野中厚の十名でございました。

 まず、宮城県庁で意見交換会を開催いたしました。

 意見交換会では、宮城県の行政関係者から、農業の担い手を確保するためにはもうかる農業の実現が必要という趣旨の御意見、農業関係団体の方からは、農産物の生産コストを転嫁可能な価格形成のためには国民の理解が必要という趣旨の御意見、農業者の方からは、食の重要性についての消費者の理解が必要という趣旨の御意見、学識経験者の方からは、所得補償のための直接支払いが必要という趣旨の御意見、食品産業の方からは、農業者の高齢化に対処するためには農地の集積、集約が必要という趣旨の御意見、消費者関連団体の方からは、食料の安定供給における消費者の役割について啓発活動が必要という趣旨の御意見をいただきました。

 次に、福島県のまるせい果樹園を視察いたしました。現地では、グローバルGAPの認証に係る取組等について説明を聴取いたしました。

 その後、福島テルサで意見交換会を開催しました。

 意見交換会では、福島県の行政関係者から、食の安全性に関する風評対策の充実が必要という趣旨の御意見、農業関係団体の方からは、食料・農業・農村基本法の改正による営農現場に対する効果の説明が必要という趣旨の御意見、農業者の方からは、畜産物の適正な価格について消費者の理解を得ることが必要という趣旨の御意見、食品産業の方からは、人口減少に伴う消費の縮小への対策が必要という趣旨の御意見、消費者関連団体の方からは、食料の安定供給のためには食品ロス削減の消費者行動が必要という趣旨の御意見をいただきました。

 以上が、視察の概要であります。

 最後に、今回の視察に御協力をいただきました皆様に心から御礼を申し上げ、視察の報告とさせていただきます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十四分散会


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