第10号 令和6年4月17日(水曜日)
令和六年四月十七日(水曜日)午前九時四分開議
出席委員
委員長 野中 厚君
理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君
理事 古川 康君 理事 山口 壯君
理事 近藤 和也君 理事 野間 健君
理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君
東 国幹君 五十嵐 清君
上田 英俊君 江藤 拓君
加藤 竜祥君 神田 憲次君
小寺 裕雄君 小森 卓郎君
高鳥 修一君 橘 慶一郎君
中川 郁子君 中曽根康隆君
西野 太亮君 細田 健一君
堀井 学君 宮下 一郎君
保岡 宏武君 簗 和生君
山本 左近君 梅谷 守君
金子 恵美君 神谷 裕君
篠原 孝君 緑川 貴士君
渡辺 創君 一谷勇一郎君
掘井 健智君 稲津 久君
山崎 正恭君 田村 貴昭君
長友 慎治君 北神 圭朗君
…………………………………
内閣総理大臣 岸田 文雄君
農林水産大臣 坂本 哲志君
農林水産副大臣 武村 展英君
農林水産大臣政務官 舞立 昇治君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 森 孝之君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 杉中 淳君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 宮浦 浩司君
政府参考人
(農林水産省大臣官房技術総括審議官) 川合 豊彦君
政府参考人
(農林水産省大臣官房統計部長) 山田 英也君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 安岡 澄人君
政府参考人
(農林水産省輸出・国際局長) 水野 政義君
政府参考人
(農林水産省農産局長) 平形 雄策君
政府参考人
(農林水産省畜産局長) 渡邉 洋一君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 村井 正親君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 長井 俊彦君
農林水産委員会専門員 飯野 伸夫君
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委員の異動
四月十六日
委員山田勝彦君が退職された。
同月十七日
辞任 補欠選任
山口 晋君 中曽根康隆君
梅谷 守君 篠原 孝君
同日
辞任 補欠選任
中曽根康隆君 小森 卓郎君
篠原 孝君 梅谷 守君
同日
辞任 補欠選任
小森 卓郎君 山本 左近君
同日
辞任 補欠選任
山本 左近君 山口 晋君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)
派遣委員からの報告聴取
――――◇―――――
○野中委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、本案審査のため、去る十五日、第一班鹿児島県、第二班北海道に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。
まず、第一班として鹿児島県に派遣された委員を代表し、私からその概要を御報告申し上げます。
派遣委員は、私、野中厚を団長として、古川康君、野間健君、池畑浩太朗君、加藤竜祥君、保岡宏武君、渡辺創君、山崎正恭君、田村貴昭君及び長友慎治君の十名であります。
まず、鹿児島市内において、株式会社カミチク鹿児島市食肉センターを視察し、関係者から説明を聴取いたしました。
次いで、シェラトン鹿児島において意見陳述者の方々との会議を開催いたしました。
意見陳述者は、鹿児島県経済農業協同組合連合会農産事業部部長新村浩二君、鹿児島大学名誉教授田代正一君、オーガニックパパ株式会社代表取締役八尋健次君及び有限会社内田農場代表取締役内田智也君の四名でありました。
意見陳述者の陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。
まず、新村浩二君からは、農業者が十分な施肥を行えるようにするため肥料価格を適正に価格転嫁する必要性、循環型社会への転換を進めるための生産者及び消費者の理解醸成等の意見が述べられました。
次に、田代正一君からは、輸入原材料を用いた加工食品の輸出の振興は国内農業の振興にはつながらない懸念、日本がゲノム編集食品の世界最大の消費国に移行する可能性等の意見が述べられました。
次に、八尋健次君からは、耕作条件が不利な農地の維持のために農福連携を活用する必要性、有機農業の推進に向け未利用バイオマスの活用を行政として支援する必要性等の意見が述べられました。
最後に、内田智也君からは、農地の集積を進めた上でのロボット農機等のスマート農業の導入の必要性、農地中間管理機構の人員、権限の拡充による地権者との交渉の促進等の意見が述べられました。
次いで、各委員から、離島においては輸送コストにより肥料及び飼料価格が割高になることについての見解、農業者の所得を補償するための直接支払交付金を導入する必要性、農福連携を促進させるために必要な最初の一押しの具体的な内容、農業の経営への女性の参画を進めるために必要な支援、食料自給率は何%を目指すべきかについての見解、オーガニック給食に切り替えることによる効果など、多岐にわたる質疑が行われました。
以上が第一班の概要であります。
会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。
今回の会議の開催等に当たりましては、地元の関係者を始め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
以上、御報告申し上げます。
次に、第二班伊東良孝君。
○伊東(良)委員 第二班として北海道に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。
派遣委員は、私、伊東良孝を団長として、小島敏文君、近藤和也君、東国幹君、中川郁子君、神谷裕君、一谷勇一郎君、稲津久君及び北神圭朗君の九名であります。
まず、夕張郡長沼町において、北海道子実コーン組合を視察し、関係者から説明を聴取いたしました。
次いで、札幌市内の札幌プリンスホテルにおいて意見陳述者の方々との会議を開催いたしました。
意見陳述者は、株式会社セコマ代表取締役会長丸谷智保君、空知農民連合書記長山口浩幸君、北海道農業協同組合中央会代表理事会長樽井功君及び株式会社ファームノートホールディングス代表取締役小林晋也君の四名でありました。
意見陳述者の陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。
まず、丸谷智保君からは、農村における物流に必要なエネルギー供給拠点の確保の必要性、産地と消費地を結ぶ高速道路整備の必要性等の意見が述べられました。
次に、山口浩幸君からは、農業者が安定的に営農できるよう生産コスト増に対応した仕組みづくりの必要性、農業者減少等に歯止めをかけるため、何らかの所得補填策を講ずる必要性等の意見が述べられました。
次に、樽井功君からは、農業者の減少により地域コミュニティーの存続に支障を来すことへの懸念、食料安全保障の確保のため、生産現場の実態及び意向を的確に反映した政策の再構築を図る必要性等の意見が述べられました。
最後に、小林晋也君からは、農業への参入の流れをつくるため農業の社会的意義を広く伝える必要性、技術開発やスタートアップ企業への支援を拡充する必要性等の意見が述べられました。
次いで、各委員から、生産費に見合う価格形成に向けた課題、過疎地におけるフードサプライチェーンの維持のための企業の役割、稲作における温暖化の影響及び今後必要な対策、備蓄体制強化のための方策、米の輸出促進のために必要な施策など、多岐にわたる質疑が行われました。
以上が第二班の概要であります。
会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。速記録は、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
今回の会議の開催に当たりましては、地元の関係者を始め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。
以上、御報告申し上げます。
○野中委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。
お諮りいたします。
ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
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○野中委員長 引き続き、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、大臣官房統計部長山田英也君、消費・安全局長安岡澄人君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、文部科学省大臣官房審議官森孝之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。五十嵐清君。
○五十嵐委員 おはようございます。自由民主党の五十嵐清です。
質問の機会をありがとうございます。
先ほど報告があったとおり、公聴会でも、地方、地域に根差した様々な意見が出たと承知をしております。私も、限られた時間ではありますが、幾つか質問させていただきたいと思います。
人口減少以上に農業者が減少する中、食料の安定供給を確保するには、農業を収益性の高い、そして、稼げる、魅力あるものとすることがますます重要になってきております。
また、地域では、離農農家の農地を引き受けるなどして経営規模の拡大が進んできております。実際に、経営耕地面積、農業総産出額に占める法人経営の割合は大きくなってきており、地域農業の維持発展のためには法人経営の存在も重要度を増してきております。
そこで、農業を収益性の高い、稼げる、魅力あるものとするため、また、法人の経営管理能力の強化を図るために、政府はどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
○武村副大臣 お答え申し上げます。
人口の減少に伴う農業者の減少等の状況下におきましても、農業生産の水準を維持し、食料を安定的に供給するためには、農業の生産性の向上と付加価値向上によりまして、収益性の高い経営を実現することが重要であるというふうに考えています。
このため、需要に応じた生産を推進しながら、農業法人等の経営管理能力の向上、また、農産物のブランド化による付加価値向上や、輸出による販路拡大を通じた収益の増加、さらには、地域計画の策定を通じた農地の集積、集約化や、スマート技術の開発、実用化の加速等による生産性向上等の施策を推進してまいります。
このうち、御指摘の農業法人の経営管理能力の向上の実現に向けましては、農業経営者を対象とした研修プログラムの策定、また、自らの経営状況を財務分析するソフトの開発、さらには、各都道府県で整備をされている農業経営・就農支援センターの支援能力の向上などに取り組むことによりまして、経営感覚を持った農業者を育成してまいります。
以上です。
○五十嵐委員 ありがとうございます。
付加価値をしっかり上げていくということがまず重要だと思うんですけれども、海なし県の栃木県の私ではありますけれども、やはりしっかりと輸出も取り組むべきだというふうに思っております。
地元の方とお話をすると、海外需要の開拓であったり、各輸出品目の産地間調整、これらについては、やはり国として、より戦略性を持って対応していただきたいという要望も伺っております。これを受けて、産地にメリットのある施策体系への充実強化を是非お願いをしたいと思っております。
また、私の地元栃木県ですけれども、農業法人は増加傾向にはあるんですが、実際に販売農家に占める法人の割合というのは、まだ二%にとどまっております。お話をすると、法人化のメリットというのは十分に理解をしていただいているんですが、実際に法人化に踏み切るタイミングというのが、後継者に譲るタイミングであったり、大規模設備投資をするタイミングというふうになっていまして、なかなかスムーズに法人化に進んでいきません。
先ほど、副大臣の答弁の中には、各都道府県の農業経営・就農支援センターの支援能力向上という部分の御指摘がありましたけれども、都道府県がこれをやるには、やはり必要な予算とか支援策が何しろ重要でありますので、その点にも十分御配慮いただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
次に移ります。
今後、人口減少に伴って生産年齢人口の減少が不可避となる中で、他産業との人材の獲得競争も厳しくなることが予想されます。このような中、農業に従事する方々を確保していくためには、法人経営などによる雇用も重要になります。
そこで、農業において雇用による労働力を確保するため、外国人材の受入れも含めて、どのように環境整備に取り組んでいくのか、お伺いいたします。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
人口減少下において労働力を安定的に確保するためには、労働環境の整備にしっかりと取り組んだ上で、農業を就労先として選択してもらえるようにしていく必要があると認識をしております。
このため、雇用労働力の確保に向けて、労働時間や休日の設定、保険加入など、就労条件を改善し、魅力ある労働環境づくりに取り組む地域協議会等への支援や、繁閑期の異なる他産地、他産業との連携のための体制構築を支援することとしております。
加えて、外国人材につきましては、農業現場で中長期的に活躍いただく人材を育成する観点から、外国人材に農業知識や科学的素養等の学習機会を提供する取組などを支援するとともに、技能試験の円滑な実施や相談窓口の設置等を支援することとしております。
また、新たな育成就労制度を創設するための関連法案が、現在、衆議院で審議中となっておりますけれども、改正法案の策定に当たりましては、農業現場の実情を踏まえて制度所管省庁と検討を進め、農業など季節性のある分野における通年での受入れを可能とするため、派遣形態での受入れを認めることができるよう措置することとしております。
これらの取組により、多くの方に魅力的に感じてもらえる雇用環境を創出し、農業における労働力の確保を推進してまいりたいと考えております。
○五十嵐委員 先ほど答弁の中で他産地、他産業との連携体制の構築という指摘がありましたけれども、これはしっかりと取り組んでいただきたいと思っています。
既に、令和元年から令和五年の間で、支援された地区は五十一を数えると聞いておりますけれども、やはり、優良事例をしっかりと横展開できるように、支援策、あるいは機運の醸成も併せて図っていただきたいと思っております。
そして、外国人材についてですけれども、実際には、今までの相談窓口の実績も確実に増えております。
外国人向けの相談件数としては、令和三年度に百四十件であったものが、四年度は二百二十八件、五年度は二百五十四件。そして、企業向けは、令和三年度で一千三百六十件、四年度で千六百五十件、令和五年度で二千四百五十五件ということで、大きな期待があるものだと思っております。
相談にも十三か国語を使って対応していただいていると聞いておりますので、学習機会の提供も併せて、しっかりと取組をしていただきたいと思います。
栃木県の担当の方と話をしますと、やはり、今回の外国人材、農業の全ての職種に就労が可能、あるいは派遣も期待できるということで、その準備に対して、すごく期待はしているわけなんですけれども、まだまだ情報が足りないというふうな話も聞いておりますので、是非、農水省におかれましては、適宜適切な情報提供も併せてお願いをさせていただきたいと思います。
次に移ります。
我が国の農業を形成する大切な要素の一つとして畜産、酪農がありますが、近年、豚熱の発生や鳥インフルエンザの蔓延など、家畜伝染病の発生のリスクが高まっています。
さらに、我が国への侵入リスクがかつてないほど高まっているアフリカ豚熱には有効なワクチンが存在せず、一度ウイルスの侵入を許せば、養豚業に甚大な被害をもたらすおそれがあります。
家畜伝染病の発生、蔓延は、畜産、酪農経営に甚大な影響を及ぼし得るものであることから、今回の基本法改正案に「伝染性疾病等の発生予防等」が新たに規定されていることは大変評価するところであります。
そこで、この新たな規定に基づいてどのような取組を進めていく考えなのか、お伺いをいたします。
○安岡政府参考人 お答えいたします。
家畜の伝染性疾病が発生、蔓延した場合には、委員御指摘のとおり、我が国の畜産業に大きな被害をもたらすおそれがあるため、海外からの侵入を防ぐための水際対策とともに、農場での発生予防対策、さらには発生した場合の蔓延防止対策、この三つの対策が今後とも重要でございます。
水際対策としては、アフリカ豚熱などの侵入リスクが高まる中で、家畜防疫官や検疫探知犬の増員、増頭による検疫体制の強化、さらには、警察などと連携した違反者の取締りの強化とともに、違反畜産物をそもそも持ち込ませないための輸出国における広報などに取り組んでいるところでございます。
また、農場での発生予防対策としては、我が国での発生が続いています高病原性鳥インフルエンザや豚熱などの病原体を農場に侵入させないためということで、飼養衛生管理が最も重要でございます。このため、各農場での飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図るとともに、データなどを活用した効率的な農場指導などを更に進めることとしております。
さらに、家畜伝染病が万一発生した場合には、蔓延防止対策として、殺処分など迅速な防疫措置に引き続き取り組むこととしております。
今後とも、国、都道府県、畜産事業者などの関係者の連携を図りながら、家畜伝染病の発生予防、蔓延防止対策を徹底してまいります。
○五十嵐委員 その飼養衛生管理の遵守というのが非常に現場では負担になっていると聞いております。
ただ、飼養衛生管理の徹底によって、鳥インフルエンザ発生件数は昨年度の一割に抑えている、収まっているということでありますので、評価もしたいなというふうに思っております。
是非、国としては、効果的な防疫技術の開発、ウイルスの侵入経路の解明、そして農場の分割管理に要する労務や資金に対する支援の充実強化も併せてお願いをしたいと思っております。
一方では、直近の事例で、鳥インフルエンザでは三十五、豚熱では三十六の発生農場で、衛生管理が不十分であった、適当でなかったというようなケースで手当金が減額されるといった事例もあったようですので、引き続きの指導もお願いをしたいと思います。
先日の農業新聞に、観光客が無断で農場に入ってスマホで牛の様子を撮ったというようなのがありましたけれども、一般の方々は、現場でどれだけの苦労をして飼養衛生管理を徹底しているかというのが知られていないというのもありますので、これは、国民にも広く知らしめるように、農水省としても取組を考えていただければと思っております。
最後の質問に移ります。
我が国では、食の外部化、簡便化が進む一方、食と農との距離が遠くなり、農業や農村に対する国民の意識、関心は薄れてきています。このような中、農業を持続可能なものにしていく、また、農業の環境負荷低減の取組を進めていくためには、消費者の理解醸成が重要であると考えます。
その中でも、学校給食における地産地消の推進などを通じた食育が特に重要と考えますが、このような食育の推進を具体的にどのように図っていくのか、お伺いいたします。
○安岡政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のように、国民の食と農の距離が遠くなる中で、農と農林水産業に対する国民の理解醸成を図る観点から、食育が改めて重要となっているところでございます。
こうした中で、地場産物を学校給食に使用し、食に関する指導、まさに食育の生きた教材として活用することは、地域の自然、文化、産業などに関する理解を深める上で、また、生産者の努力や食に関する感謝の念を育む上で重要でございます。
農林水産省では、地場産物の学校給食への利用を促進していくため、地域で学校給食に地場産物を実際に供給し、使用してもらうための連携体制づくりを進めるとともに、給食現場と生産現場の間の調整をする地産地消コーディネーターの派遣、さらには、地場産物を活用した給食メニューの開発といったことを支援しているところでございます。
今後とも、関係省庁とも連携をして、学校給食での地場産物の活用などを進め、食育の更なる推進を図ってまいります。
○五十嵐委員 政府、国の方では、六月にも給食無償化に向けた制度設計の検討に入るというふうに承知しておりますので、やはりこの機会をしっかりと捉えて、先ほどコーディネーターあるいはメニューの作成支援などのお話がありましたけれども、地場産物を活用して、併せて、農林業の体験もしていただくようなものと給食の無償化がセットになるような、そんな取組モデルであったり、プログラム化、これを農水省、あるいは文科省とも連携をしてやっていただければありがたいというふうに思っております。
また、改正法案では、消費者の役割というのがきちんと記載をされています。食育基本法も制定から二十年を迎えるわけですけれども、今年度の予算でしっかり教材を改定をすると聞いておりますので、農業を支える意識を持った賢い消費者が育成されるように、その教材の改定についても、農水省からもしっかりと働きかけをしていただければと思います。
時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○野中委員長 次に、山崎正恭君。
○山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。
本日も、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
貴重なお時間ですので、早速質問に入らせていただきます。
まず初めに、基本法第三十四条、女性の参画の促進についてお聞きします。
今後、農業従事者が急激に減少していく中において、女性の農業従事者をどう拡大していくかが重要であります。
女性の参画においては、雇用される農業者としての参画と、経営者としての参画の大きく二つのパターンがあると思いますが、雇用される農業者としては、一昨日の鹿児島での地方公聴会でも、農福連携事業を展開するオーガニックパパの八尋健次社長から、最近は多くの女性の応募、就農希望があると言われていました。
実は、私の地元高知県では、四国電力が、四国の基幹産業である農業の活性化に貢献したいと、二〇二〇年に、高知県が全国一の生産を誇るシシトウをAIやロボット技術などを駆使したスマート農業で作る子会社、Aitosaを立ち上げました。
実は、そこのファームマネジャーをしているのが私の高校の野球部の後輩でありまして、現在二十名の方を雇用されていますが、そのうちの十四名が女性、年齢は三十歳代から七十歳代までの方が働かれています。
勤務時間は、八時から十六時三十分が基本形ですが、子育て等家庭の事情に合わせて、十三時上がりの方もいれば、九時―十五時までの方もいるなど、可能な限り、一人一人の従業員の皆さんの働きやすい、柔軟な勤務体系にされています。休憩時間の取り方も工夫されており、十時十五分から十時三十分と十四時半から十四時四十五分の午前、午後それぞれの十五分ずつ取られていますが、私が意外だったのがお昼休みで、十二時から十二時三十分の三十分間でした。この理由を聞くと、サラリーマンの方などと違って、一時間など長い時間があるより、早くやって早く帰りたいという従業員の希望が多いため、三十分にしているとのこと。
養液栽培のため長靴は履かず、きれいな水洗トイレで、更衣室、さらには、カーテンの仕切りではありますが授乳室も完備されています。
女性の従業員の方の働きぶりについてお聞きすると、今の時代なので男性とか女性とかいうのはないのですがと前置きされた上で、女性従業員の方は、しっかりとしていて、仕事が丁寧。子育て中の方などは、短時間勤務のため、その限られた時間内でしっかり仕事をしたいとの思いが強いので、集中して一生懸命仕事をしてくれ、仕事の効率が高い。また、ハウス内やトイレや更衣室など、気づいて率先してきれいにしてくれると言われていました。量販店のバイヤーさんなどは、食品衛生上から、ハウス内の清潔度を見て、安心できる生産者なのかどうか判断する要素でもあるようで、ここなら安心して買えるといった評価もあったようで、そういった部分での貢献も大きいと言われていました。
ほかにも、子育て中の方は、お子さんの急病による急な欠勤や学校からの呼出しもあるようですが、現場責任者であるその後輩は、後輩も子育て世帯であるため、それらにも対応できるよう少し余裕を持たせた雇用人数の確保や、そんなときに休みの従業員さんがすぐに代わりに出勤してくれるよう、ふだんからのチームワークづくりを大切にされていると言われていました。
また、ちょっとしたことですが、少しでも気持ちよく働けるようハウス内には常に音楽を流されていますが、それら全ての取組から、企業だからやれるというだけではなく、従業員さんを大切にという思いがあふれているというか貫かれており、結果的に誰一人辞めていませんし、口コミでの就業希望者が増えています。こうした雇用環境整備が非常に重要であると思います。
女性が参画のもう一つのパターンは女性経営者としての参画ですが、これについては、女性が経営に関与している場合には農産物販売額等の伸び率が高いとの結果もあります。しかし、個人経営体では女性は経営への関与は三割程度、女性の認定農業者は五・三%にとどまっており、いかにこれから女性の経営参画を進めていくかが重要です。
そこで、女性の農業への参画について、雇用者としてと経営者としての大きい二パターンがあると思いますが、それぞれ、今後の女性就農者拡大に向けての国としての戦略をお伺いします。
○坂本国務大臣 農林水産省が昨年行いました農林業センサスを活用いたしました分析によりますと、女性が経営に参画した個人経営体は、参画していない個人経営体に比べて、農産物の販売金額や六次産業化等の関連事業の売上金額の伸び率が高いというような結果が出ております。
その一因といたしまして、一般に、女性の経営参画は、経営に新たな視点を取り込むことができる、そして、消費に関する意思決定の中心を担う女性のニーズを的確に捉え、より効果的な対応ができるといった効果があるというふうに言われております。
女性農業者が経営参画を含め農業現場で活躍できるようにしていくためには、女性でも働きやすい労働環境を整備するとともに、女性の能力の向上と活躍の場を創出していくことが必要であるというふうに考えております。
そのためには、農林省におきまして、男女別のトイレ、それから更衣室、さらにはシャワーの確保、こういった環境整備が必要であります。また、委員が御指摘されました柔軟な勤務体制、これも必要であるというふうに思います。
そして、地域のリーダーとなり得る女性農業経営者の育成等の支援に加えて、女性農業者と企業等が連携をして、農業で活躍する女性の姿を発信する農業女子プロジェクト、これが必要であるというふうに考え、私たちの農林水産省では取り組んでいるところであります。
これらの取組を進め、女性が輝き、地域の経済を活性化する大きな力になっていくよう、経営者そして従業員も含めて女性の活躍を後押ししてまいりたいと考えております。
○山崎(正)委員 ありがとうございます。是非プロジェクトの推進をよろしくお願いいたします。
次に、第二十二条、輸出の促進についてお伺いします。
今、各自治体においては、令和七年三月に向けて、地域計画の作成が進んでいます。農業従事者が大きく減少していく中で、食料の生産力を維持向上させながらどうやって農地も守っていくのか、様々な問題が絡む中で、各自治体、苦戦しながらも懸命に取組を進めています。
その中で一番は、やはり農地の中でも広大な面積を誇る稲作、田んぼをどうしていくのかという議論であります。日本全体の米の需要量が下がっていく中で、米価も下がっていますし、また、私の地元高知などでは狭小な田んぼが多く、なかなか集約化しづらく、稲作農家さんは苦戦されています。
そこで、将来を見据えた場合には、この広い水田を放棄地にしない、農地として保持していこうとする場合に考えられるのが、例えば地域の特産物であるユズ栽培などに転換していくことなどが考えられますが、やはり自治体の皆さんにすると、出口、買ってくれる販売先が確保されないとその転換を農家の方に促しにくいという事情があります。
そこで、出口を考えた場合には、今回の基本法改正の中でも言われている輸出が有効であります。高知県においても、現在衆議院議員をされています尾崎正直さんが知事時代にトップセールスを行い、ユズは現在フランスやアメリカ、香港などに年間八億円程度輸出されています。
そこで今後、自治体が地域計画の中で地域の特産物などへ大きく生産作物をシフトしたいと考えた場合に、国と連携しての出口戦略、販売先としての輸出が広がれば、生産拡大に向けての圃場整備や集約化への取組が促進され、その取組が推進しやすいと思いますが、自治体と国が連携した輸出拡大の重要性について、認識をお伺いします。
○坂本国務大臣 今後、一層の農林水産物の輸出拡大を図ってまいりたいと思います。そのためには、大ロットで取引をし、そして、海外の小売棚を長期間確保できるような、そういう大規模輸出生産地を形成すること、これが大切であるというふうに思っております。
委員の御地元であります、今言われましたようなユズ、七億円から八億円の輸出、各地で取り組んでおられるところでございます。
そのためには、やはり、農業経営基盤強化法に基づきます地域計画の策定と輸出促進を連動させることによって、地域の関係者が一体となって輸出を形成する取組を進めていかなければいけないというふうに思っております。
また、都道府県との間では、農林水産大臣と全国の知事会の間で輸出促進連携ネットワークを結成しまして、各県の輸出のプロモーションを有機的に連携させオール・ジャパンのプロモーションとするなど、連携の取組を進めているところでございますので、国、自治体がそれぞれ協力し合いながら、今後の輸出政策を進めていくべきであるというふうに考えております。
○山崎(正)委員 実際にシフトしていく場合には、圃場整備とか少ない人数でやれるような機械化などへの支援等も併せて行っていただけると非常に助かると思いますので、よろしくお願いいたします。
済みません、順番を変えて質問をしたいと思います。最後の項目です。
適正な価格形成の仕組みづくりについては、総理は、私の先日の本会議での質問に対して、法制化も視野に検討を進め、政府を挙げて、適正な価格形成を通じた農業所得の拡大に取り組んでまいりますと答弁されましたが、引き続き取組を進めていただきたいと思います。
現在、農業従事者の皆さんの足下では何が起こっているかというと、物流の二〇二四年問題もあり、農業生産物の物流費が上がり、それは生産者の新たな負担となっています。法制化に向けた取組は引き続きお願いしたいのですが、法施行を待たずに取り組めることから着手し、少しでも農業従事者が価格交渉できるような後押しを政府としてもすべきであると考えます。
そこで、現状、賃上げや価格転嫁などが他産業で進んでいく中で、農業だけが取り残されてしまっているといったことを払拭するようなメッセージを大臣に是非お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○坂本国務大臣 政府では、価格転嫁を通じて所得の向上を促しまして、食料供給に関わる産業を含めまして、あらゆる産業において所得増と成長の好循環を実現するよう、現在、強力に後押しをしているところです。
特に農産物や食品の価格形成につきましては、生産、加工、流通、小売、消費等の幅広い関係者による協議会におきまして、持続的な供給に必要な合理的費用を考慮した価格形成の仕組みづくりについて、法制化も視野に検討を進めているところであります。
こうした中で、御指摘のような、農業だけが取り残されてしまっているという受け止めを払拭する一つの方法として、公正取引委員会の協力も得て、三月末に生鮮食料品等の取引適正化ガイドラインというのを策定したところでございます。
このガイドラインでは、物流費等のコストが上昇した際に、小売業者が一方的に取引価格を据え置く等の問題となり得る取引事例を明示することなど、適正な取引、ひいては価格転嫁を円滑に進められるよう普及することとしております。
今後、小売業者の方々、卸売市場関係者の方々、そして団体の方々、直接あるいはオンラインも通してこういったものが周知できるよう、しっかりと農業者の皆さん方の後押しをしてまいりたいというふうに思っております。
○山崎(正)委員 最後の質問にしたいと思います。
この適正な価格形成についてなんですけれども、特に消費者の行動変容については、マスメディアの役割が大きいとの生産現場からの声も多くあります。適正な価格形成に関して、メディアの理解や協力を促進するような取組についてお伺いいたします。
○宮浦政府参考人 お答えいたします。
価格形成に関します理解醸成についてでありますが、昨年七月よりフェアプライスプロジェクトを開始いたしております。
この中では、生産者自身がコスト高騰の窮状を現場から訴えるなどのインターネット動画による情報発信ですとか、夏休みなどを活用した親子での酪農現場での餌やり体験等の体験学習イベントの開催など、生産、流通に関わる実態ですとか背景などを消費者に分かりやすく伝えるための広報を行っているところでございます。
こうした取組につきましては、御指摘のとおり、新聞ですとかテレビなどのマスメディアに共感を持って取り上げていただくということが重要だと考えておりまして、今後とも、メディアの理解と協力を得ながら、消費者を始めとする関係者の理解醸成を図ってまいりたいと考えてございます。
○山崎(正)委員 以上でございます。ありがとうございました。
○野中委員長 次に、篠原孝君。
○篠原(孝)委員 立憲民主党、略称民主党の篠原でございます。
質問の時間をいただきましてありがとうございます。本当はもっと前にたっぷり質問時間をいただくような感じになっておったんですが、ちょっと風邪を引きまして、元々滑舌が悪いのに、がらがら声で質問しては失礼かと思いまして、今日になってしまいました。
時間がないので、早速質問に入らせていただきます。
皆さんのところに資料をいろいろお配りしてあります。気にしないで見ていただけたらと思います。この食料・農業・農村基本法は非常に大事な法律ですし、私はこれに五十年ほど携わっておりますので、私の頭の整理のために、二枚ほどちょっとペーパーを作ってみました。これは後々も使うつもりなので、皆さんも有効活用していただけたらと思います。
まず最初ですけれども、大臣、日本農業新聞を見ていましたら前向きに答えておられましたけれども、前の改正のときに、中山間地域の直接支払いが具体的なものでは導入されたんですね。これは、生産条件が不利だから有利なようにというようなことを算定基準にして、傾斜度が何度だとか、そういうことでばかりやってきましたけれども、時代は変わって、SDGsの時代、環境が大事だということになってきて、今、この法律も環境負荷の削減というのが盛んに書かれています。
ですから、中山間地域の直接支払いも、山を守って、水を守って、洪水を防いでいる、国土強靱化というのは、何も、コンクリートで何か造るのだけが国土強靱化じゃないんです。ですから、直接支払いに環境支払い的な概念を相当入れてもいいと思うんですが、いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 中山間地の直接支払いは、委員御指摘のとおり、これは、明治大学の小田切徳美先生たちが中心になって、当時はやはり画期的なものであったというふうに思っております。
そして、中山間地における集落協定を結んで、そして直接支払いをするというような制度でございますけれども、モデルはヨーロッパであったというふうに思いますが、ヨーロッパの冷涼な気候と日本のアジア型モンスーン気候、これはかなりの違いがありますので、そこで、中山間地の直接支払い、それに加えて多面的機能支払い、さらには環境保全型直接支払い、こういったものを一体的に捉えて、そして、緑を保全し、災害を防ぎ、景観を維持し、都市部の住民の皆様方にも十分恩恵を感じていただける、そういう総合的かつ丁寧な制度になっているというふうに考えております。
○篠原(孝)委員 悪いことじゃないんですけれどもね。
皆さん、この緑の羽根をやっていますよね、昔からやっているんです。緑に対する敬意というのは日本国民にもあるんです。
ヨーロッパは、国民、市民とか都市住民は、環境を守ってくれているのは田舎に住んで生活している人だ、そこにお金を出していいんだということがもう定着しているんです。だから、文句を言わないんです。
ところが、我が国は、昔さんざんそういうことばかり言っていた人がいますけれども、林道なんかは人間よりも熊の方が頻繁に歩くとか、そういうばかなことを言っていた人がいまして、それが、今で言うフェイクニュースなんですが、すっかり洗脳されていまして、本当のようになっていました。これを変えていかなくちゃいけないと思うんです。今回の改正は余り目玉はないようなんですけれども、やはり緑、環境だと思うんです。
そういう点では、池畑議員なども質問されていますけれども、資料三と四を見ていただきたいんですが、有機農業。
みどりの食料システム戦略とか、二一年に変わりました。突然変わったんですね。余り皆さんは御存じないかと思いますけれども、私は、有機農業というのをずっと、農林水産省の役人時代から、虐げられながらやってまいりました。日本有機農業研究会霞が関出張所員というあだ名がついていました。中川昭一さんは、親しく、同じ農政を一緒にやっていたので、彼が冗談を言って、篠原さん、ユウキ農業というのは元気の出る農業ですかといって、わざと冗談を言っていた。そのぐらい有機農業というのは駄目でした。みんな認識が足りなかったんです。しかし、さっきSDGsで申し上げましたとおり、世の中が変わったんです。
これをちょっと見てください。これは、済みませんけれども、有機農業推進議員連盟の総会の案内。この一番下に、池畑さんが事務局長をやっていた、ここに、まだ承認されていないんですけれどもね、なっていまして、大勉強会を開くことになっておるんです。ちょっと見ていただくと、山下惣一、金子美登、星寛治、これを知らない方がおられたらちょっとよくないので、是非知っていただきたい。
次、後ろを見てください。この三人ですね、有機農業三傑、あるいはもう一人いて四天王か、三傑かですけれども、一年ばかりの間にばたばたばたと亡くなっちゃったんです。この人たちの考えを継承しなくちゃいけないということで、特別三連チャンでレクチャーというか勉強会を開くことにしました。本人たちに聞くのが一番よかったんですが、亡くなられてしまったので、縁の深い方にやっていただくことになっています。来週、池畑さんのところから、リクルート、参加してください、有機農業推進議員連盟に入ってくださいというのと、この案内が行きますから、よく見ていただきたいんです。
何でこの有機農業が入っていないのか。後で触れますけれども、何か多様な農業と言っている。多面的機能もそうです。いろいろな機能があるんだというのを、ウルグアイ・ラウンドの後半、それからドーハ・ラウンドにつけて、ずっと言ってきました。しかし、多様性というと、LGBTQは大事なのでそればかり出てきますけれども、農業においても多様性が必要なんです。これは幾ら言ってもなかなか分からなくて、規模がでっかくて専業でやっている人だけが大事なんだと。私は、でっかくなって専業でやるのは否定しないんです。ですけれども、ほかの人たちをみんな入れ込んでやっていかなくちゃいけない。それを、効率的な大規模農家とその他とかやっている。
僕は、多様な農業として位置づけるべき農業の一番真っ先は、イの一番は有機農業だと思うんですが、大臣はこういう認識をされておられますでしょうか。
○坂本国務大臣 基本法は、政策の方向性を示す理念法であるため、包括的な書き方というふうになります。
今回の改正案では、まずは、基本理念におきまして、食料供給の各段階における環境負荷低減の取組の促進、そういうことで、生産から消費に至る食料システムを環境と調和の取れたものにしていく旨を位置づけております。ですから、環境負荷低減の取組の中に有機農業というのは位置づけられるというふうに考えます。
その上で、基本的施策におきまして、環境への負荷低減の取組として、今言いましたような化学農薬、化学肥料の使用削減など幅広い取組を促していくこととしておりまして、有機農業の促進もその中に含まれております。
今回の基本法の見直しの内容も踏まえまして、みどり戦略に位置づけた有機農業の目標の実現に向けて、引き続きしっかりと後押ししてまいりたいというふうに思っております。
○篠原(孝)委員 それだけ考えられたら、もっとびしばしやっていただきたいんですよね。
消費者の役割というので、環境負荷低減のことを考えて消費してくださいよと。悪いことじゃないです。消費について口を挟むというのは余りしてきていないんですよね。それをやっている。
有機農業は環境負荷の低減と今大臣は言われましたけれども、そればかりじゃないです。日本国民に安全な食料を提供するんです。だから、消費者に、それを食べてくださいよと、堂々と言えばいいじゃないですか。やっていないんですよね。
大臣、ちょっと今見えますかね、私がどういうネクタイをやっているか。大臣に敬意を表して、くまモンのネクタイなんです。本当は長野県のネクタイをしようと思ったんですが、宮下さんは、おられるだけで、余り、本当は宮下大臣のときに、大臣で質問したかったんですけれどもね。残念ながら大臣でなくなられましたので、この次の機会、まだ議員をやっていたら、きちんとやりたいと思いますけれどもね。
それでは、有機農業。大臣のところに有機農業のカリスマ的な存在の人がおられるのを御存じだと思います。菊池養生園というのを御存じでしょうか、竹熊宜孝さん。福岡正信とか、いっぱいいるんですよ、ここの三人より前に。だから、大臣はそういう環境のいいところにおられるんですよ。だから、有機農業を是非きちんと位置づけてやってください。
熊本にはそういう、ほかには、ちょっと見たら、松田喜一さん、八代ですけれども。あの辺の農家にいろいろ指導されておられた篤農家もおられて、そういうところで大臣も育たれて、そして議員になって、農林水産大臣をやっていられるというのは、そういう巡り合わせだと思います。ですから、大臣がそういうことをやられなかったら、なかなかやってくれる人はいないんじゃないかと思うので、期待しております。
それから、次ですけれども、一ページ目のところをちょっと見ていただきたい、一ページの表。それぞれに、心血を注いで、この基本法を作っているんです。
はるかかなた昔、田中角栄政調会長なんです。田中角栄さんというと日本列島改造論ばかりが前へ出てきますが、熱心にやっていられたんです。実質的にやられたのが井出一太郎、井出庸生さんのおじいさんです、農業基本政策調査会長。
ところが、右が空欄ですけれども、農林水産省に、ここのところを、今、自民党がどうやって検討したかを入れろと言ったら、よく分からないとかいって、ぼけたことを言っているんです。後でちゃんと入れておいてくださいね。
真ん中。真ん中は総合農政調査会で、今は亡き松岡利勝さんがやけに張り切って、農林水産省の役人どもはへとへとになっていましたけれども。本当に真剣にやって、そして審議です。中川昭一さん、私は総理になるのを期待していましたけれども、このときが一番さえわたっていたと思います。大臣として、答弁、彼は格好つけるんですね。答弁書を読まないんです、自分の言葉でしゃべる。ちょっと危ういところはありましたけれども、それの方が生の声が聞けていいんだと思います。それで、最後は小渕総理も出席してというのは同じです。それだけ大事なものなんですよ。
ところが、駄目でして、次の、後ろの方を見ていただきたいんですけれども、この細かい数字、これをよく見てください、二ページ目。農業を取り巻く情勢。一般的な情勢を一ページ目に書きましたけれども、数字的なのはこれだけ変わっているんです、いろいろ。
例えば、規模の拡大ができないできないと言っていましたけれども、平均耕地面積は四・六ヘクタールになっている。なかなか規模の拡大をしなかったんです。三十八年間、一九六一年から九九年までに一・〇ヘクタールから二・一ヘクタール、ちょっとしか増えていないのに、この二十五年間でこれだけ増えているんです。いっぱい農業をやめる人がいるからですね。
あと、ほかに農業生産額とかがあるんですが、問題の、上から三番目の農林水産関係予算を見てください。四・一%から一・九%に減っているんです。もっと細かにやったのが、一枚めくっていただいて、一般会計に占める農林予算の推移というのがありますけれども、ほかの省庁の予算はみんな増えているんです。農林水産予算だけ減っているんですよ。こんなけしからぬことを許しておいていいんでしょうか。私なんかの怠慢です。皆さん方の怠慢でもあるんです。
昔、農業は過保護だ、農業に予算を使い過ぎだと。これも、うそニュースだったんです。使っていないんです。これはヨーロッパとの比較なんて入れていませんけれどもね。全然やっていないんですよ。
さっきちょっと言いましたけれども、目玉で中山間地域の直接支払いというのを、前の法律の後はあったんですけれども、今回、そんなのはあるんですか。僕は見当たらないんですけれども、何かあるんだったら言ってください。
○武村副大臣 お答え申し上げます。
目玉ということですが、今回の基本法改正の中で、食料安全保障を強化していくために、食料安全保障強化政策大綱に基づきまして、畑地化への思い切った措置、そして、食料供給基盤を支える輸出産地形成などの過度な輸入依存からの脱却に向けた構造転換のための予算、そしてまた、スマート技術実装、省力化に対応した基盤整備などの、生産者の急減に備えた生産基盤の構造転換のための予算、さらには、輸入安定、適正な価格形成に向けた調査、食品アクセスの確保などの、国民一人一人の食料安全保障の確立に向けた食料システムの構造転換のための予算を重点的に措置をしております。
引き続き、改正基本法に基づく施策を着実に実行していくため、当初予算はもとより、補正予算も含め、必要な予算の確保に努めてまいります。
○篠原(孝)委員 口先だけじゃなくて、ちゃんとやってくださいよ。こんな情けない予算というのはあり得ないんです。みんな農林水産軍団が声が小さいか、活動していないからだと私は思います。迫力がなくなってきているんじゃないかと思いますよ。
次に、戸別所得補償。
これは、こんなことを言ってはなんですが、私が相当心血を注いでつくったのを、何かいろいろこの場でけちをつけられている。心外なので、資料で反論したいと思う。私ばかりが言っているというのではいけないので、まず、資料として、戸別所得補償の衝撃というのを、村田泰夫さんという朝日新聞の論説委員、編集委員です、この方が、まだやり始めたばかりのときに、こう書いてあるんです。よく見てください。今まで、転作、米を作るな、作るなと言っていたのをやめて、それはやめて、ちゃんと本作にしてきちんと作ったらいいと。作る方にお金を出すというのが、農業者戸別所得補償なんです。
それで、大臣が、舌足らずで、マスコミは一部だけを切り取りますから、真意じゃないとは思いますけれども、戸別所得補償は需給調整に逆行する、需給調整ができないというふうに、農業新聞に書いてありました。稲津さんの質問、おられますかね、いないか。大事なときにおられないんですね。質問のときに、そういうことを言っておられて、それに対する答えですけれども、違うんですよ。
だから私は、うちの金子が、うちの組織では部門長というんですけれども、農政を取り仕切っておられるから、このことをちょっと触れてほしいというのをいただきましたので、特別に資料も作ってまいりました。それを見ていただきたいと思います。七ページのところですね。戸別所得補償で需給調整するというのを、大学の先生のレクチャーみたいになって恐縮ですけれども、せっかくの機会ですから、見てください。
こういう作物は、規模が小さいので、最初からハンディがある。これは、でたらめというか、みんな仮定ですよ、何ヘクタールなんというのは。所得補償額を決める。これだけの耕作面積があった。需給を見ていったら、米は安定、小麦は相変わらず足りない。これもみんな仮定の話ですよ。大豆が、油原料は無理だけれども、納豆、みそ、しょうゆの部分は自給できた。ソバは、これは現実に起こったんですけれどもね、我々の政権のときに。本州のことを念頭に置いて、北海道はそうなるだろうなと思っていたんですが、何か、十アールとか二十アール、三十アールなんですが、北海道だけ桁が違って、十ヘクタール、ソバを急に作ったりするから、物すごい所得補償額になるわけです。まして、このときはもう、遊休農地を農地に復活したらというのも加えましたから。
私が廊下を歩いていたら、国会見学に来た人たちがいまして、篠原さんと言って、列から飛び出してきて僕のところに来たんですよ。何ですかと。篠原さんですね、あんたのおかげで俺はもうかっていると。ソバを四十ヘクタール作っていると言う。
そうしたら、余るんです。菜種は、幾ら作ったって駄目で、全然作らなくなっちゃっているんですが。
いいですか。では、二年後、所得補償額をそれに応じて上げたり下げたりできるんです。現に、農林水産省は飼料米についてやっているじゃないですか。今年は十アール七万五千円だけれども、来年七万円にして、再来年六万五千円にすると。飼料米は余っているからですね。そうやって需給調整できるんですよ。賢いですよ。ちゃんと先の金額も言っているんですよ。農家はそれを見て、どれを作ったらいいかという、農民が主権を持って経営判断できるんです。
こんなことを言うとなんですが、三年三か月で政権運営ができなくて野に下っちゃいましたけれども、ずっと続けてやっていたら、私は需給調整がほぼでき上がっていたと思います。こうやってやればいいんです。今、飼料米にやっていることを、ほかのことについてもみんなやればいいんです。そのことを下に書いております。
大臣、私の簡単なレクチャー、お分かりいただけましたでしょうか。
○坂本国務大臣 言わんとされるところは十分分かりました。もしという言葉は使いませんけれども、そのまま政権が続いていたらこうなったというようなことだろうというふうに思います。
ただ、現在の米政策と旧戸別所得補償制度の最大の違いは主食用米に交付金を払うかどうかですが、旧戸別所得補償制度のように、需要量が減少している米に対する支払いを行えば、主食用米から麦、大豆などへの、需要ある作物への転換が進みにくくなります。そういうことも含めて、やはり過度に輸入に依存をしている麦、大豆、そういったものに対しての転換を図るということで、現在の制度になっているところであります。
そして、現在のその制度の中で、それぞれ農業者が経営を判断して作付をしていただく、その中で自給率もやはり上昇させる、そういうような全体的な政策体系になっているところでございますので、御理解いただきたいというふうに思います。
○篠原(孝)委員 理解できないんですね。
今おっしゃったこと、分かるんです。米は余っているんだからやらなくていいんじゃないかと。当然、議論しましたよ。だけれども、米ですら採算が合わない。採算が合わない米、捨てていいんですか。高鳥さんは困りますよ。北陸や、米産地帯は。
だから、米だって困っているから一番安い一万五千円で、麦や大豆を高くしておいて、米しかできないところは米でやっていいですよと、仕方ないと思う。だけれども、ほかのところは米じゃなくて麦、大豆にしてくださいよという指針を示したわけです。米を捨てていいんですか、余っているのを捨てていいんですか。そんな冷たいことをしちゃいけないと思います。
次に、望ましい農業構造の確立という二十六条、大問題なんです。
それで、恥ずかしながら、私の昔の雑誌のコピーを一番最後にお配りしております。四十三年前です、朝日ジャーナル。朝日ジャーナル、分かる人はおりますかね。大臣は分かると思います。左手に朝日ジャーナル、右手に少年マガジン、あるいは、いかがわしいのは平凡パンチだったと思いますけれどもね。それが大学生の一般的なものだったんですよ。
そこに、私がちょっと論文みたいなのを書いてエコノミストに紹介されたので、行け行けどんどんの叶芳和さんという経済学者と私が対談させられまして、野坂昭如さんがコメントを述べておるんです。
これは、延々ずっと続いている大きな農家、小さな農家、私は小さな農家の方がいいなんて一言も言っていないんです。小さな農家を捨てるのはよくない、大きなのをやってもいいんだけれどもと言っているんです。
それで、熊本県、いろいろ半導体でもありますけれども、ホンダの工場がありますよね。大臣の地元の事務所が大津町の室の一二二―四、ホンダの工場が平川の一五八〇。
土光臨調というのも、はるかかなた、昔になりました。農業を過保護だと言っているときの総本山です。そうじゃなかったんですけれどもね。経団連や経済同友会が、農業保護をけしからぬ、けしからぬといって提言をしていました。土光さんはトップで、副が二人、井深大と本田宗一郎です。
井深大さんは、日本に農業は要らない、東南アジアを日本の食料基地にと。だけれども、商社はみんな失敗したんです。それをまた海外に投資なんて言っている。何を考えているのかと思います。これはやめますけれどもね。
本田宗一郎さんは全然違ったんです。農業批判、一切しなかったんです。うちの工場で一生懸命働いていい製品を造っている人は、農村で生まれ育って、人柄もいい、勤勉なのだと。そして、あちこちに工場を建てた、欠陥が一番少ないのは熊本の工場だと。
ここから、答えてください。だけれども、年に二回だけ、異常に欠陥率が高くなるときがある。何のときだったんでしょうか。分かりますか、大臣。副大臣でもいいですよ。どなた、副大臣。大臣にこういうことを余り聞いちゃいけないから、副大臣。何のときですか。年に二回だけ、欠陥率が高くなっちゃうんですよ。
○武村副大臣 田植と稲刈りのときでしょうか。
○篠原(孝)委員 よく分かりましたね。さすが副大臣です。
だから、本田宗一郎さんはどうしたかというと、そのとき休んだんです、工場を。農業と工業を一緒にやっていけばいいんだと。そういうことなんです。それを、専業だ、兼業はいけないと決めつけるのは、私は絶対よくないと思っているんです。それを、相変わらず、専業だ専業だと言っている。これは絶対改めていただきたいんですけれどもね。
いっぱい質問をしたいんですけれども、ちょっと時間がないので、来週の一般質疑で続きをさせていただきます。
この件について、兼業も、関係人口というもの、二地域居住だとかいうもの、そうしたものを巻き込んでいって。兼業農家もちゃんと農家として位置づけて、守っていかなくちゃ駄目だと思いますよ。地元はそうなんですよ。
この点について、この法律は相変わらず、二十世紀の新自由主義的な考えに凝り固まった条文になっていると思いますよ。これは修正しなくちゃいけないと思いますよ、今更間に合いませんけれどもね。この点について、いかがでしょう。これで質問を終わります。
○坂本国務大臣 懐かしい、筑紫哲也さんが編集局長をやっていた、朝日ジャーナルの名前も出していただきました。
私のところです。本田技研、私が生まれ育った大津町です。長男の方々が農業を継いで、次男、三男が本田技研の方に勤務をされました。
そういうことで、農業だからということよりも、大津町を含め、その取り巻く農村地帯の労働力というのが非常に良質であったというふうに思います。それは、農村社会にみんなある程度関わり合いを持ってきて、そして農作物を丁寧に育てていく、あるいは畜産物をやはり優しく育てていく、そういったものが体の中に染みついているんだろうというふうに思います。
ですから、何らかの形で農業、農村社会に関わること、これが大事だというふうに思います。その中で、やはり、主要な担い手としての農家、さらには何かの形で関わっている多様な農家の方々、こういった方々の総合体によって、そういう良質の労働力や、あるいはコミュニケーション、そういったものが保たれていくんだろうというふうに思っております。
○篠原(孝)委員 皆さん、農的心を失われずにおられることをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○野中委員長 次に、野間健君。
○野間委員 立憲民主党の野間健です。
基本法改正案について引き続き審議させていただきたいと思います。
この基本法改正案について、私どもも、先日も、鹿児島での公聴会、あるいは宮城、福島でのいろいろな意見を聞かせていただき、また、日頃からいろいろな農家、生産農家の方ともお話ししています。
そしてまた、ちょっと資料で配らせていただいていますが、四月八日の日本農業新聞でも、今回の基本法で一番何に関心があるのか、何をしてくれたら生産者が助かるか、これはもう言うまでもなく、価格なんですよね。価格が余りに下がり過ぎてしまっている、それも長年ですね。ですから、価格転嫁が一番関心が高い。農家の所得さえ上がれば、若者や中年もこの仕事に絶対目を向けるんだ、こういうふうに宮崎県の畜産農家の五十代の女性も言っているように、まさにこういう意見に集約されるように、今回の基本法の改正で、価格がきちっと保障され、農家の所得が保障されるのか、そこを一番皆さんが見ていることは、大臣も御承知のとおりであると思います。
今日また、日本農業新聞の一面は、「農業の倒産最多更新」というのも出ています。
先般、福島、宮城へ行ったときも、酪農家の方など、こういう倒産という形じゃなくて、でも離農しているんですね。これではどんどん赤字を続けるだけだということで、非常に離農が多いんだという嘆きを伝えていただきました。
こういうような形で、とにかく、今回の基本法で、何のかんのということじゃなくて、この価格を何とかしてほしい、これが一番皆さんが寄せている期待でありますけれども、大臣、どう思われますか。
○坂本国務大臣 最も関心が高い問題だというふうに思っております。
御指摘のありましたアンケート調査につきましては、基本法見直しに当たって求めたいことに関しまして、農家やJA役職員ら百二十六名からの回答があったものというふうに承知をしております。そういう中で、食料の安定供給、農業者の確保等、七項目の中で、やはり、適正な価格形成を含む営農継続に必要な農業所得の確保が最多の回答項目だったというふうに承知をいたしております。
基本法改正にも盛り込みましたように、コスト高騰を踏まえました合理的な費用の考慮に対する期待が大きいものと受け止めておりまして、今後とも、価格形成の仕組みづくりを始め、生産者によります生産性や付加価値の向上の取組の促進、あるいは、一方の方で、収入保険等の経営安定対策、各般の施策を着実に推進することによりまして、農業所得の向上というものを目指してまいりたいというふうに思っております。
○野間委員 今までそういう政策を取られてきてここに来ているわけですけれども、もう一つ、資料の二ということで、二二年度の農業所得がどれぐらい、時間当たりですね、いわゆる時給と言ってもいいんでしょうか、農業所得についての時給。水田作ですと十円ですよね、一時間十円。酪農なんかですとマイナス六十円。繁殖牛でもマイナス六十六円。
もう一つの表三は、過去四年間の推移を見ているわけですけれども、全体、各耕種、畜産、分野によっていろいろ違いますけれども、どうでしょう、二〇一九年でも時給四百九十三円ですよね。大体四百円台、三百円台。最低賃金でも今、八百七十九円とか八百九十六円になっている状況であります。本当にコンビニでアルバイトをしている方が時給は稼げる、そういうぐらいの水準にずっと落ち込んできているわけであります。
今おっしゃったような様々な収入保険とかナラシ等、やってはきているんですけれども、それで果たして本当に解消できるのかどうか。先ほどの篠原委員の話じゃないんですけれども、そういう何か目玉として、価格、こうしていくんだというのがなかなか、今お話、対策はありましたけれども、過去にやられていたことで、見えないんですけれども、こういう過去の推移について、そして今後の見通しについて、どう思われますか。
○武村副大臣 お答え申し上げます。
まず、水田作経営についてですが、営農類型別経営統計を基に、単純に一経営体当たりの農業所得を労働時間で割って試算をしますと、米価が回復途上であった二〇二二年では十円というような低い水準となっております。
これは、自家消費が主などの小規模な経営体を含めた全ての経営体の平均値でありまして、例えば、農業の所得が主である主業経営体で見ますと、一時間当たり農業所得は平均で六百九十九円となり、さらには、水田作付面積二十ヘクタール以上の層につきましては千七百六円となっております。
このように、水田作は経営規模の拡大に伴って生産性が向上し、収益の向上が顕著に見られるところであります。
このため、今回の食料・農業・農村基本法改正案にも、農地の集団化や生産性の向上などを新たに位置づけたところでありまして、集落営農への参加や農地の集約化等による経営規模の拡大、スマート農業技術や省力栽培技術の導入などによりまして、生産コストの低減により収益性の向上を図ってまいります。
畜産についてですが、これは、畜産経営の二〇二二年の一時間当たりの農業所得はマイナスとなっているところです。これは、配合飼料価格が過去最高の水準にまで高騰したこと等が要因でありまして、高騰する前の二〇一九年は、酪農で千二百三十円、繁殖牛で千四円の所得となっております。
二〇二一年以降の配合飼料の高騰時には、配合飼料価格安定制度等によりまして、これまでに総額五千七百億円を超える補填金を生産者に交付し、激変緩和を図ってまいりました。
引き続き、制度の安定的な運営を図りながら、過度な輸入依存の低減を図り、国産飼料の安定供給を確保していくことが重要であるというふうに思っております。
このため、基本法改正案におきましては、飼料を含めた生産資材の安定確保を図るため、国内で生産できる代替物への転換への推進等を盛り込み、そしてまた、国産飼料の生産、利用の拡大を推進していく、さらには、経営安定対策を講じつつ、生産性の向上や農業コストの低減により、所得向上を図ってまいります。
○野間委員 今、この基本法によって、とにかく合理的な費用への配慮、価格形成をやっていくんだということで協議会をつくってやっていかれるわけなんですけれども、いろいろなところに、もし価格をやっていくと、いろいろなしわ寄せが来るんじゃないかと思うんですね。
例えば、出口といいますか、小売の前の段階の、製造して卸すというような会社、上場企業でも、例えば大きな会社ですと、アサヒグループホールディングスあるいは味の素、こういった大きな食品産業がありますけれども、こういったところの営業利益率というのが、一〇%を切っているような状況が続いています。キッコーマンとかそういうところにしても、一〇%に届いていない。ところが、外国の、よく皆さん御存じの例えばコカ・コーラなんというところは、営業利益が三〇%近い。マクドナルドは四〇%を超えている。スターバックスでも一六%。非常に利益率が段違いに海外の企業の、食品産業の場合は大きいわけです。逆に言いますと、日本の国内の上場企業ですら、なかなか大きな利益を上げて、それを何らかの形でどこかに分配するような原資がないというのが現状だと思います。
こういう食品産業もなかなか厳しい状況が続いていますので、こういった方にも当然価格の協議会に入っていただいていろいろな協議をすると思うんですけれども、こんな状況で、どんなふうに彼らに納得してもらうような価格をということを言うことができるんでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答えいたします。
今委員から御指摘ございました個社の状況でございますが、御指摘のありましたようなのは非常に大きな企業でございまして、食品製造業、大方は中小企業でございます。
中小企業全体も含めて製造業の営業利益率を見てまいりますと、令和二年以降二%台で推移するというような状況で、非常に経営環境としては厳しいという状況でございます。また、流通業におかれても、卸売業などでは〇・四%台でございます。さらに、小売業におきましても、一%台から一%を切るというような状況でございまして、こういった中でどうやってそのバランスを取っていくのかということでありますので、現在、消費者それから生産者の方々も含めて、忌憚なく協調して議論するということで解決策を見出そうとしているところでございます。
○野間委員 それはそう言わざるを得ないんでしょうけれども、一方で、消費者にしても、今、もう御承知のとおりですけれども、四十年ぶりに日本のエンゲル係数が、家計に占める食料費の割合が三割近く、二七・八%にまでなっている。これは先進国で一番今高い状態にあります。
こういったところから、これ以上食料品の価格が上がるということは、国民の家計にとって非常に厳しい、受け入れられないような状況にもなってきているのも現実です。
今回のいわゆる協議会を通じた価格形成、野村前大臣も、フランスのエガリム法を参考につくるんだと言われています。そのエガリム法ですと、農産物原材料の価格というのは聖域化するんだ、そこには手をつけないんだということで、生産者をある意味保護する、生産者を守るような立場でのつくりに、仕組みになっていますけれども、今回、協議会としては、価格の形成についてはこういう考えに立つということでよろしいんでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答えいたします。
今御指摘のございましたフランスのエガリム法でございますが、大きく二つの柱があろうかと思っております。
一つは、生産者が販売をいたします、第一段階という言い方をされておりますけれども、この取引におきまして、品目などごとに生産コスト指標というものを作成いたしまして、この指標などを活用した価格の決定方式、こういったものを記載をした書面契約というものを義務化するという中身でございます。
それから、二つ目が、今委員から言及のございました話でございますけれども、加工業者ですとか小売業者が販売いたします第二段階以降の取引につきまして、原材料となっております農産物分の費用は価格交渉の対象外とするという意味で聖域化等されているようですけれども、こういう措置が講じられてございます。
我が国の議論におきましては、人口減少ですとか高齢化が進んで、加工食品あるいは総菜などの需要が非常に高くなってございます。こういった状況も踏まえますと、食料の持続的な供給を確保するという観点からは、生産段階ばかりではなくて、製造、流通、販売の各段階につきまして持続性を確保する必要があるという観点で議論を進めてございます。
このために、エガリム法と全く同様というわけではございませんが、これも参考といたしまして、生産から販売までの各段階でコスト指標を作成して、これを活用して費用の考慮が進められるように、関係者間で議論を行っているというところでございます。
○野間委員 その議論は結構なんですけれども、先ほど言いましたように、もう本当に農家は待ったなしでこういう状況にあり、離農したり、そういった状況になっています。この協議会、いつまでやるんでしょうか。これ、五年後にできても全く意味がないですよね。やはり、この一年、半年、こういう速いスピードで期待の持てる価格形成が行われなきゃいけないと思います。そのためには、合理的な価格形成、みんなが納得する、結構なんですが、どこかに強制力を持たせるようにしていかないと、それが法整備という総理の発言かと思いますけれども、そういうことも考えておられるんでしょうか。
○坂本国務大臣 食料の価格形成、非常に難しい課題です。まずは、需給事情や品質の評価が適正に反映されること、これが基本でございます。その上で、資材価格が高騰する中で、食料の持続的な供給が行われるよう、生産から消費に至るまで、食料システム全体にわたり、合理的な費用が考慮される必要があるというふうに考えております。
その一方で、生産、加工、流通、小売といった各段階の費用を単純に価格に転嫁した場合、消費者が負担できない価格になってしまうのではないかという認識も皆さん持たれており、御指摘のような強制力というのは必ずしも適切ではないというふうに考えております。
実際に、協議会の議論におきましても、生産者委員の方からは、どこか一部の関係者にだけしわ寄せが及ぶ仕組みでは、食料システムの持続性を確保することは難しいとの意見が出ております。消費者委員の方からは、消費者の理解が前提と声高に言った結果として、消費者対他の関係者との対立構造を招くこと、これは避けるべきであるというような意見も出されておりまして、各関係者間で丁寧に合意形成を図り、バランスの取れた食料システムとなるよう、今後検討していかなければいけないというふうに考えております。
○野間委員 今お話がありましたように、どこにもしわ寄せをしないということが必要だと思いますが、恐らく一番弱い立場の農家、生産者に行ってしまうのが今までの通例であります。
是非そうならないようにしていただきたいということと、最後に、今日もいろいろな、先ほど篠原委員からもありましたけれども、尽きるところ、やはり農水省の予算が余りに低過ぎて低迷しているということで、いろいろなことが、いろいろな打つ手が多分あると思うんですけれども、そこはできなくなっているのが現状だと思います。
大臣、次は、来年はせめて一兆円ぐらい増やすというぐらいの決意を述べていただいて終わりたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○野中委員長 坂本大臣、答弁は簡潔に願います。
○坂本国務大臣 基本法を成立させていただきましたならば、基本計画を立てます。その基本計画の中で具体的に予算項目をつくり上げ、予算獲得を目指してまいりたいというふうに思っております。
○野間委員 是非、期待して待っております。
ありがとうございました。
○野中委員長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。
今回も、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。
一昨日、委員長からも御報告ありましたとおり地方公聴会がありまして、鹿児島県に伺いました。先週は宮城県、福島県と視察に伺いました。そちらでは、消費者団体、JA、学術者と生産者の皆様から様々な意見を聞かせていただきました。
そこで、鹿児島県の公聴会では、内田農場さんという熊本県で大きな耕作をされている水稲農家さんのお話を聞かせていただきました。多品種、十五種類の、作期分散などをされて一生懸命取り組んでおられました。その中で、お話を基に幾つか伺いたいというふうに思います。
食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に関しては大分大詰めを迎えておりますけれども、私もいろいろな角度から質問させていただきました。農協改革やスマート農業、篠原先生からもありましたが有機について、担い手、合理的な価格、農業高校の有機の専攻科についてなど、また、先ほど野間委員からもありましたけれども、農林水産省の予算を増やしていくにはどういうふうにしたらいいのかという質問をさせていただきましたが、今回は、特に現場での声をお伝えをさせていただきながら質問させていただきたいと思います。
若い世代で、企業もこれは含まれるんですが、特に農業の世界の外から新規参入したいという方の声を多く聞くんですが、農地が手に入りにくい、サポートが受けづらいということをよく聞かせていただきます。農林水産省としてどのような対策をしているのか、答弁をよろしくお願いいたします。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
農外からの新規参入を含め、農業生産を支える担い手をしっかりと育成、確保していくためには、就農相談から、研修、就農後の定着に至るまで、市町村やJA等の地域の関係機関が連携をして、農地の確保や資金面での対応など、就農希望者のニーズに応じたきめ細かな支援をしていくことが重要であると認識をしております。
農林水産省では、こうした取組を全国展開すべく、農地の確保や生活面等の相談窓口となる就農相談員の設置ですとか、技術習得に必要となる研修農場の整備、就農後の経営安定に向けた先輩農業者による技術指導など、地域におけるサポート体制の充実を支援をしております。
また、株式会社等の企業は、高齢化や担い手不足が進行する地域において、農業生産を担う存在として期待できるものであります。農林水産省では、農業への参入を希望する企業に対して農業参入フェアを開催し、都道府県、農地バンクによる企業誘致を後押ししているところでございます。
なお、農地というところで着目をいたしますと、現在、各地域において地域計画の取組を進めていただいております。地域計画が策定されれば目標地図ができ上がるわけですけれども、その際、受け手が見つからない農地については、その旨を目標地図に示していただくということになります。目標地図に示していただいた上で市町村に公表していただくとともに、これを農林水産省ホームページにリンクをして、都道府県の農業経営・就農支援センターや市町村等の就農相談窓口において活用していただくこととしております。
こういったことを含めて、どういったことができるか、これからも様々工夫を重ねてまいりたいと考えております。
○池畑委員 丁寧な答弁、ありがとうございました。
今局長からもありましたけれども、やはり土地の確保、農地の集積というのは大事だというふうに認知をされているというふうに思いますし、我々もそう思います。
次の質問につながってくるんですが、今の局長の答弁を受けて、農家さんが土地の集約をしていく、今局長からもありました。管理業務が多過ぎて仕事が進まないという話を公聴会でも聞かせていただきました。農地バンクの人員とか予算の確保など、だんだん増やしていくということは今大事なんですという話もいただきましたけれども、鹿児島の公聴会でお聞きしましたのは、具体的な話でありますが、百名の地権者の方と農地の契約を結んでおられる、バンクの方が大体六〇%、農業委員会からが四〇%であったというふうに聞きました。
農地バンクに全面移行させていきたいというふうに思っているんだけれども、農地バンクの人員とかそういったことで、何が壁になっているのかということも含めて、なかなかうまいこと業務を進めていただけないというような認知を農家さんはされておりましたけれども、農林水産省としては、どんな壁があって、どのような対策をしておられるのか、改めてお聞かせいただきたいと思います。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
我々も、今後農地の集積、集約化を進めていく上に当たって、農地バンクの役割はとても重要であるというふうに認識をしております。
農地バンクが創設された平成二十六年度以降、農地バンクによる農地の取扱量が増加したことに伴って、農地バンクが借り受ける農地の確認、それから賃料等の受取、支払い、さらには、農地バンクから転貸されていない農地の管理等の業務も増加をしてきていると認識をしております。
このため、これまでも、農地バンクの業務を円滑に行うため、市町村、JA等への業務委託の活用、現場活動を行う農地バンクの農地相談員、現地コーディネーターというふうに呼んでおりますけれども、農地相談員の確保等に必要な予算を措置をしてきているところでございます。
引き続き、必要な予算を確保するとともに、添付書類の簡素化といった農地バンクの業務の効率化を進め、農地バンクの活用による農地の集積、集約化を推進してまいりたいと考えております。
○池畑委員 一番目の答弁とまた農地集約について、またこれも詳しくお話をいただきました。
大臣、これはちょっと通告をしていないんですけれども、簡単な質問でありますので、是非お答えをいただきたいというふうに思いますが、今局長からお話をいただきました農地を集約するに当たって、私、坂本大臣が、ごまをすっているわけじゃなくて、ひいき目に見ても最大の責任者だというふうに思っております。
というのは、以前、熊本の蒲島前知事から、一時間ぐらいではなく、四、五時間ぐらい、五名ぐらいで車座で農業の話をさせていただいたことがありました。二年ほど前だったというふうに思いますが、農業についてはすごく思い入れの強い方だな、留学もされ、あちこちに行かれと。いろいろな意味で熊本というのはすごい地域なんだなというふうに思いました。
今局長から人数的な答弁はなかったんですけれども、農地バンクの職員が桁違いに多い。八十五名の農地バンクの職員がいて、ほかの県、第二位が五十二名ということでありますから、農地バンク、土地を集約することに関してはすごく力を入れている県なんだなというふうに思いました。
今局長からありました、業務を集中させてほしいと。それも、熊本の農家なんですね。今回お話を持ってこられて、農地バンクがもう少し値段の交渉だとかそういった業務を簡易化、簡易にしてほしいというふうに言ってこられたのは、熊本の農家さんでした。これだけ群を抜いて農地バンクの職員が多いのに、さらに、熊本の農家はそういうことを言われる。
予算委員会でも、初めて大臣に質問させていただいたときだというふうに思いますけれども、予算委員会で資料を配らせていただきました。全国の集積率の資料でして、余り活用しなかったんですけれども、そのときに、熊本というか、九州は四十何%だった、北海道は九十何%でありました。
今回、蒲島さんがお話をされていたこともありますけれども、熊本の集積モデルというのは、結構積極的にやられている地域でありますので、農地が減って、担い手も減っていく中で、ここから、大臣、ちょっと質問なんですが、農地集積は、大臣の中で、優先順位、プライオリティーは何番目ぐらいにあるのかというのをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○坂本国務大臣 担い手の育成とそれから農地集積、これはセットで大事だというふうに思います。そういうことで、人、農地ということで、これまでプランを作り、それを法制化して地域計画を作っているというふうに思っております。
ですから、今、蒲島知事の話が出ましたけれども、蒲島知事は、農協の職員からネブラスカ大学に行って農学で博士号を取り、ハーバードに行き直すわけですけれども、それだけ農業への思いが強く、農地バンクの職員も多いというふうに思います。私は、まだまだ、個人的には、農地バンクとそして農業委員会で集約化を進めていかなければいけませんけれども、農地バンクのマンパワーの強化、これは必要であるというふうに思っております。
○池畑委員 優先順位はつけるものではないという判断なんでしょうかね。優先順位は特にありませんでしょうか。
○坂本国務大臣 人と農地、これが一番大事だというふうに思っております。
○池畑委員 ありがとうございました。
それでは、次の質問に移らさせていただきますが、今、農地集積に関して、我々はかなり強い思いを持って質問させていただいております。我々と申しましたのは、党としても農地の集積というのが一番大事なのではないかなというふうに考えているということであります。
今回、農業者の経営判断で作物を選択できるようにするためには、農地のカスタマイズも農業者が自主的に行うべきだというふうに思っております。補助事業で行うような大規模な圃場整備ではなくて、自社、あえて自社といいますが、自社で施工ができるような圃場整備にも支援が必要だというふうに農家の方からもよくお聞きします。農林水産省も取り組んでおられるというふうに思いますが、具体的な取組の事例がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
○長井政府参考人 お答えいたします。
需要に応じた生産を進め、農業の振興を図っていくため、農地の大区画化等を行う事業に加えまして、畦畔除去、暗渠排水等のきめ細かな耕作条件の改善を機動的に進める事業によりまして、農地の基盤整備を進めているところでございます。
また、今申し上げた畦畔除去とか暗渠排水等、こうしたきめ細かな耕作条件の改善を行う事業につきましては、農業法人等が自ら施工する農地整備につきましても助成対象としておりまして、おおむね大体半額ぐらいの支援をしているところでございます。
農林水産省といたしましては、引き続き、制度の周知に努めるとともに、現場のニーズを踏まえながら、農地の基盤整備を計画的かつ効果的に推進してまいりたいと考えております。
○池畑委員 大規模な農家はどんどん生まれる、また、篠原先生からは小規模な農家も大事だと。私たちもそう思っておりますが、集積をしていくのに予算的には百九十億ちょっとという話を聞かせていただきましたが、やはり、農林水省の予算として、こういったところが影響が出てくるというふうに思いますので、やりたいことをずっとやってもらうためにも、予算を確保しながら大きく進んでいくべきだというふうに思っております。
次に、多収品種について、これも鹿児島の公聴会でお話がありました。
我々、新しい品種、そして多く取れる品種というのを私も前の農林水産委員会で質問をさせていただきました。ちょっと現場の声で意外だなというふうに思いましたのは、多収品種は四年前にやめましたというお話でありました。
原因としては、なかなか価格交渉ができないということでありました。民間の品種で多収化と聞きますと、私も、農業高校時代に多品種の種類を作ってみましたけれども、確かに多く取れるんですが、農家にとっては、価格の転嫁、価格の交渉ができないというのは結構大きなことだということでありました。
農家の生産活動に集中すべき、先ほどありました、農地バンクの業務だとか土地の集積に当たる契約書だとかというものは省いて、農家が一生懸命農業にいそしんでいただけるような環境を我々はつくっていかなきゃいけないというふうに思っておりますが、最後は、資材の低価格、有利販売、これは、農業協同組合、農協が生産者にもっと寄り添って汗をかくべきではないかということを質問させていただきました。
当然、努力をして頑張っておられるJAもおられます。今回も、JAの方にも質問させていただきました。多くのこの基本法に関わっているメンバーとして、鹿児島でJAの方が、部長さんでしたが、今回のこの法律に対してはおおむね賛成だというふうなことを公聴会でもお話をされておりましたが、私が、そのおおむね賛成の部分、どういったところが賛成なのかという質問をさせていただきました。
特に大臣、お話をお聞かせいただきたいんですが、消費者と今回明記をされましたけれども、消費者と生産者、そして農協がもう少し汗をかくべきだというふうに私は思いますが、大臣として今最後にどうお考えかということを含めて御答弁いただきたいと思います。
○坂本国務大臣 農協につきましては、農協法におきまして、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならないというふうに規定をされております。
農林水産省といたしましては、引き続きこのような農協の農業者への所得の増大を目指した自己改革を促し、そして後押ししてまいりたいというふうに思っております。
○池畑委員 先ほど申しました多収品種、農協が推進しているだけではないというふうに思いますが、地域のそういった先進農家が取り組んではやめ、取り組んではやめという形であれば非常に問題だというふうに思いますので、これからも、消費者の方にも理解をいただきながら、新品種を改良するためにはやはり消費者の方も御理解をいただく。そして、三十年前から言わせれば、今の農業の耕作を知る上で、労働時間というのは七〇%から八〇%ほど削減をされています。
やはり農協の努力もされたんだというふうに思いますので、是非今後も、農協のまたこれからの指導、そして今、国の役人の方ともお話をさせていただきましたけれども、やはり農協がどのように活動していくのか、これは県が管理をされていることであったと思いますけれども、国としても三十名ぐらいの農協の管理をされていらっしゃる方が職員としておられます。しっかり大臣も率先して、農協がどのような行動を取られ、そして、この日本の農業に対してどのように寄与していくのかというのを、これからも注視をしていただきたいと思います。
時間ですので、質問を終わらせていただきたいと思います。
○野中委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
農業の担い手について質問します。
水田作経営体の農家の年間所得は一万円しかないということを私は、三月の本会議で質問しました。そうしたら、岸田総理は、自家消費を目的としたり農外収入を主としている小規模農家も含まれていると答弁されました。そこで、四月三日、本委員会で、それらを除く水田作経営体の専業農家の所得を伺うと、百九十八万円で、二十ヘクタール以上であれば八百四十五万円との答弁でありました。
では、二十ヘクタール以上の農業経営体の数は幾らですか。全体の何%となっているでしょうか。
○山田政府参考人 お答え申し上げます。
最新の令和五年の農業構造動態調査で申しますと、販売目的で水稲を作付けている農業経営体のうち、最大の面積規模区分というのが十ヘクタール以上になってしまいますので、この十ヘクタール以上の農業経営体の数を申し上げますと、二万三千経営体となっておりまして、販売目的で水稲を作付けた農業経営体の総数に占める割合は、四%となってございます。
なお、御参考まででございますが、この十ヘクタール以上の農業経営体の作付面積シェアを見ますと、令和二年の農林業センサスで三六%、こういう数字もございます。
○田村(貴)委員 十ヘクタール以上が四%にすぎない。十ヘクタール未満が九六%であるということですね。
では、水田作経営体の九六%が十ヘクタール未満ということでありますけれども、その九割は五ヘクタール未満の小さな農家です。五ヘクタール未満の年間農業所得はどうなっているでしょうか。
○山田政府参考人 お答え申し上げます。
最新の令和四年の調査結果でございますけれども、水田作経営のうち作付延べ面積が五ヘクタール未満の農業経営体の農業所得を見ますと、平均でマイナス三十万円となってございます。
なお、御参考まででございますが、作付延べ面積五ヘクタール以上層で見ますと、面積規模が大きくなるにつれまして農業所得が増加する傾向も見て取れるところでございます。
○田村(貴)委員 つまり、専業、兼業問わず九割の水田経営体が三十万円の赤字だということなんですね。
これまで、兼業農家や自給的農家は、基本法で担い手としては位置づけされず、主要な施策の対象ではありませんでした。現行二十一条では、効率的かつ安定的な農業経営を育成するため農業経営の規模拡大をするとして、そこに施策を集中してきました。その結果、どうなったでしょうか。
資料を御覧いただきたいと思います。二〇二一年の財務省の資料です。財政審議会に出された資料です。
二〇一〇年から二〇二〇年にかけて、青い部分です、組織経営体プラス主業農家は三十九・一万経営体から二十六・九万経営体へと大きく減少していますけれども、担っている農地は変わっていません。つまり、どんどん大規模化しているということです。一方で、ピンクの部分です、準主業農家プラス副業的農家等は百二十八・八万経営体から八十・七万に減少。そして、耕作地面積も百四十五万三千ヘクタールから百九万六千ヘクタールへと、共に減少しています。
これを見ますと、兼業農家の離農した農地を主業農家が吸収されずに失われている、そして農地は維持されていないということではないでしょうか。いかがでしょうか。
○村井政府参考人 お答え申し上げます。
委員お示しいただいたこの数字に基づいて実際の農地の集約の状況等、この数字そのものは、ちょっと我々、分析をしたということが私自身は承知をしておりませんので、なかなか即座にお答えするのは非常に難しいところはあるんですけれども。
我々、担い手への集積、集約を進めてきている中で、特に最近の動向で申しますと、農地バンクの創設というような形で取り組んできた結果、現在、担い手への農地集積は一定程度は進んできている。直近の数字で申し上げますと五九・五%ということになっておりますけれども、そういった状況にあるということで我々は認識をしておるところでございます。
○田村(貴)委員 これは財政審に出された資料ですよね。農水省が知らないわけないじゃないですか。この数字を見れば、行き詰まりはもう明らかだということですよ。
坂本大臣にお伺いします。
効率的かつ安定的な農業経営を育成とか、また農業経営の規模拡大というのを、ずっと農水省、政府は掲げてきました。でも、大臣もあちこちで聞かれていると思うんですけれども、農家からは、もう集約できるところは集約し終わり、不利なところしか残っていない、こういう声だとか、これ以上引き受けるのは限界等々の声が上がっています。ここにおられる委員の皆さんも、そういう声を聞かれていることだと思います。
副業的農家はもとより、主業農家であっても農地が支えられないところに来ているのではないか。大臣はいかが考えられますか。
○坂本国務大臣 私たちは、経営規模の大小や、家族や法人を問わず、農業で生計を立てる農業者である担い手と、そして農業以外で生計を立てる多様な農業者では、農業においての果たしておられる役割が異なるというふうに思っております。
ただ、御指摘の兼業農家や自給農家などの方々は、農業で生計を立てる担い手ではないものの、農地の保全や管理、それから集落機能の維持、こういったところで非常に重要な役割を果たしていらっしゃいます。
そういうことで、私たちは、担い手の方々に対しましては、補助金、金融措置、そして税制措置、各種施策で重点的な支援をしてまいります。それから、担い手以外の多様な農業者の方々に対しましては、多面的機能支払いや中山間地直接支払いなどによりまして、地域の共同活動への支援など、それぞれの役割に応じた支援を私たちが行いまして、農業生産の基盤でございます農地の確保を図ってまいりたいというふうに考えているところであります。
○田村(貴)委員 役割が違うとおっしゃいますけれども、先ほど答弁がありましたね。水田作経営では、九〇%を超えるところが三十万円の赤字なんですよ。日本のお米を担っておられる方々が三十万円のコスト割れで、これでいいと言うんですか。駄目じゃないですか。
半農半X、兼業農家、自給的農家を条文では確かに位置づけしましたけれども、農地の確保が図られるように配慮する対象ではあっても、生産活動への支援対象では、依然として規模拡大を図る専業農家となっています。
兼業農家や自給的農家なども担い手として位置づけて、小規模な農家が成り立つようにやはり支援すべきではないでしょうか。専業、兼業、大規模、小規模の区別なく、農業で十分な収入が得られるよう政府が財政措置すべきだと思います。大臣、いかがですか。
○坂本国務大臣 現行の基本法におきましては、農業の持続的な発展に向けまして、効率的、安定的な農業経営、いわゆる担い手が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造を確立するため、その育成、確保を図ってきたところでございます。改正案におきましても、この考え方が基本であるというふうに考えております。
その上で、農業者が急速に減少している中で、担い手だけでは管理できない農地が出てきており、担い手以外の多様な農業者についても、自らの農地は生産を通じ保全管理を行うことが重要であることから、担い手以外の多様な農業者が、地域における協議に基づきまして農地の保全を行っていく役割を新たに第二十六条第二項で位置づけました。
我が国の食料供給の担い手として、今後、より大きな役割を担うことが予想されます農業法人の経営基盤強化を図るため、経営管理能力の向上、労働環境の整備等の施策を講ずる旨を、これも新たに第二十七条第二項で規定しているところでございます。
○田村(貴)委員 大臣、今二十七条を言われたけれども、二十七条でどう書いてあるか。国が、「経営管理の合理化その他の経営の発展及びその円滑な継承に資する条件を整備」と。この対象は、専業農家、経営意欲のある農業者を指しているじゃないですか。「家族農業」という言葉がある。だけれども、「活性化を図る」とだけなんですよ。条文ではこうしか読めないんですよ。
本当に家族農業、圧倒的多数の小規模農家を大切にするというんだったら、そういう条文にしなければならない、そのことを申し上げて、今日は質問を終わります。
○野中委員長 次に、長友慎治君。
○長友委員 国民民主党の長友慎治です。
まずは、子供食堂について質問します。
子供食堂の数が急速に増加をしています。二〇二三年の子供食堂の数が九千百三十二か所と、過去最多になりました。これは、全国の公立中学校の数に匹敵しています。このような状況について、農水省としては好ましく思っているのか、若しくは危機感を覚えるのか、見解を伺います。
また、子供食堂の数に対し、フードバンクの数は現在何か所あるのか、把握されていますでしょうか。教えてください。
○武村副大臣 お答え申し上げます。
令和五年度における全国の子供食堂の数は、民間の調査によりますと、九千百三十二か所に上るとされておりまして、また、フードバンクにつきまして、令和六年三月三十一日現在におきまして、二百七十三団体に上るものと承知しております。いずれも、その数は年々増加している状況にございます。
子供食堂やフードバンクが増加している背景には、支援を必要とする子供や家族がそれだけ多く存在していることが考えられます。
こうした中で、子供食堂は、様々な困難を抱える子供が安心して過ごせる居場所として、また、温かな団らんのある共食の場としての役割が期待されるほか、円滑な食品アクセスの確保にも貢献するものでありまして、子供食堂の取組が拡大していること自体については有意義なことだと受け止めています。
他方で、本来食べられるにもかかわらず、フードバンクなどに活用されていない食品はまだあるものと認識をしています。
このため、農林水産省では、フードバンクや子供食堂への多様な食料の提供に向けて、生産者や食品事業者などの地域の関係者が連携する体制づくりの支援などを行っているほか、様々な食堂が、子供の居場所づくりなどの観点から、子供食堂などの活動を支援する関連予算を措置しているところです。これらの施策が各地で活用されるよう、こども家庭庁などの関係省庁と連携をしながら取り組んでまいります。
○長友委員 子供食堂のニーズというか、必要だという認識だということと、その反面、フードロス、食品ロスがまだまだあるということで、私も五年前に地元の仲間とNPO法人のフードバンクを立ち上げて、もう五年やっているんですが、私たちも、実際問題として、取扱量が増えていますし、利用される方が増えているんですね。
ただ、設立したときの私たちの目標というのは、いつかこういうフードバンクとか子供食堂が要らない社会を実現したいね、それが本来の理想であるんですけれども、現実問題、必要な家庭や子供たちが多い、また、フードロスもまだまだあるということだという状況です。
日本では、まだまだ食べられるのに廃棄される食品のロスが年間約五百万トンから六百万トンというふうに推計されていますが、これはよく言われるんですけれども、日本人全員がお茶わん一杯分の御飯を毎日捨てているという量に匹敵することになるわけですね。
ただ一方、この食料・農業・農村基本法の中で食料安全保障、また食料危機が迫っているということを指摘しながら、税金を使い大量の食品ロスの廃棄を行っているという現実には、非常に矛盾を感じるなというふうに思うわけです。
つくる責任、使う責任というSDGsの言葉がございますけれども、その点をよりこの世の中に浸透させる必要があると思いますが、その先頭には農水省としてしっかり立っていただきたいなと思いますことをお願いしまして、次の質問に移りたいと思います。
私の地元で、農家さんの農協離れが進んでいるように感じるんです。地元以外でも、例えば、ネットで農協離れと検索してみてください、多くの記事がヒットします。農家が農産物を農協に出荷するのが当たり前だった時代というのは、もしかしたら今や昔の話で、就農したばかりの農家かベテランの農家かにかかわらず、農協を通さずに自分で売らなければやっていけないと感じている人が少なくないのではないかというふうに思います。
なぜ農協に頼らず自分で販路を築こうとするのか。ある人はこう言っていました、自分で売らないと食べていけないからですと。事実、私の地元のあるトマト農家さんが、農協に出しているだけでは全く貯金ができず、子供の将来に不安を感じた、子供が中学、高校、大学と進学するに当たって、借金ばかり増えていく状況を打開するには自分で販路を広げるしかないと、販路開拓に取り組んで、農協への出荷量を減らし、ほとんど今では全量を独自の販売ルートで売れるようになったというふうに言っている方が実際におります。
このような農協離れの状況について、お話しいただければ大臣の見解を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 農業の経営体数は減少しております。農協の正組合員数も、それに比例して減少傾向であります。一方の方で、農業経営体のうち法人数は増加傾向であります。農協の正組合員のうち法人数も同じく増加傾向にあるというふうになっております。
若手農家や大規模法人を含め、農業者が農協の事業を利用するかどうか、これは組合員の選択に委ねられています。この点を明確にするため、平成二十七年の農協法改正によりまして、組合員に対する事業利用の強制を禁止する規定を措置をしたところでございます。
農協が組合員に事業を利用していただくためには、組合員との対話を通じて、農協の事業に対するニーズを把握し、それに応える事業運営を行うことが何よりも重要であるというふうに思っております。例えば、肥料や農薬を工場から直送によって値下げをするとか、それから、大口契約などをしっかりとやっていく、それから若手農家の方々には事業承継に対しての支援をする、あるいは新規就農者の確保への取組などをしていく、こういうことが必要であるというふうに思っております。
農林水産省といたしましては、若手農家や大規模法人も含めて、農業者の所得向上のための各農協の取組を後押ししていきたいというふうに考えておりますが、農協におきましては、組合員との対話を踏まえた取組が行われていくということを期待しております。
○長友委員 大臣、ありがとうございます。
農協のできた経緯というのも私が言うまでもないんですけれども、日本が、戦後、地主が支配する農業構造を壊して、農地改革によって生まれた自作農を軸とする農業を守り、維持するためにつくられたというふうに理解しております。村の協同組合として、農業生産から共同販売、生産、生活資材の共同購入、それから協同組合銀行、助け合いを基礎とする共済、協同医療事業などの、農家の暮らしを全般にわたって、小さな農家のとりでのような役割が期待されていたのではないかと思うわけです。
日本が経済成長期に入った一九六〇年以降、規模拡大と合理化、効率化を進める外部経済の動きに合わせて、農協も合併を繰り返してきました。しかし、それは、実際には小さい民の協同組織という農協の本質から離れることにつながっているように感じるわけなんです。
行政単位を大きく超える巨大合併は、不採算部門の縮小、切捨てとセットになります。巨大合併で地域に網の目のように張り巡らされていた支所、出張所が次々と廃止されまして、農業指導部門の営農セクターは金を稼がないということで縮小され、農協という農民組織の象徴だった営農指導員が稼ぎ部門の共済に回されている、営農指導員が保険の勧誘に歩かされるというような状況になっています。支所、出張所の廃止で組合員の農家と直接触れ合う場がなくなり、そこに営農部門という農協にとってはなくてはならない部分が縮小されるということが重なり、農協の、農家離れが進んだのではないかというふうに私は思うわけなんですね。
大臣、最後にお聞きしたいんですけれども、農業協同組合とは、元々、小さき者が肩を寄せ合って、例えば高利貸しや、農家に高い肥料を売りつけたり米を買いたたいたりする資本と渡り合うために、自主的につくったものなのではないでしょうか。小さい農家や家族経営をする農家に寄り添ってこその農協であるというふうに私は思うんですが、法人が増えているというふうに御指摘いただきましたけれども、農協についての現在の課題というものが、大臣、感じるところがありましたら、最後に伺わせてください。
○坂本国務大臣 委員おっしゃいますように、弱い立場にある人をしっかりと支えていく、それが農協の原点であるというふうに思っております。
ただ、農協そのものの運営というのもございます。ですから、宮崎のように、県一農協になった農協もあります。私たちの熊本ではなかなかそれができません。
しかし、問題は、農協としての運営をすると同時に、よりきめ細かな指導というものをしっかりと行うことによって、やはり食料の供給体制を確立していただく、そのことを私たちも期待しているところでございます。
○長友委員 ありがとうございます。
以上で質問を終わります。
○野中委員長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 五分しかないので質問しますけれども、この前、食料自給率、これが十七条第二項からちょっと弱まってしまった、目標というものが非常に曖昧になってきたという問題意識の中で、私は、提案しているのは、有事版、有事の際に必要最低限のキロカロリーというものを分母に置いた食料自給率というものを新設して、これを一つの目標にすべきだということを申し上げました。答弁の中では割と前向きな話があったんですが、これはやはり十七条第二項に明記をすべきだというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○坂本国務大臣 まず大事なことは、食料の生産を増大するということだというふうに思っております。そのことによりまして、今、自給率の増加要因あるいは低下要因、それぞれありますけれども、そういったものをしっかりと私たちは分析、検証しながら、今後に備えなければならないというふうに思っております。
今回の基本法案では、食料自給率やその他の食料安全保障の確保に関する事項の目標を定め、目標の達成状況を少なくとも毎年一回調査し、その結果を公表するというふうにしております。
目標の達成状況を踏まえてPDCAを回す新たな仕組みを導入いたしますので、自給率や今後新たに設定される目標の達成状況の評価をしっかり行えるものにしていきたいというふうに思っております。
○北神委員 えんきょくに、明記したくないという答弁だったと思いますけれども、これは、大臣、物すごく大事で、国の責務として改正案に、第八条に書いてあるわけですね。この責務というのは、食料安全保障ということは、いざというときに国民一人一人に必要最低限の食料を提供するということでありますので、そういった意味では、やはり法律にちゃんと書いて、基本計画の中でこれを達成するんだということを明記すべきだというふうに思います。
時間がないので、もう一つ、最後の質問に変わりますが、資料をお配りしていますけれども、前も国家安全保障戦略の話をさせていただきました。もう時間がないので、ここで、下線の中の二行目、要は、安全保障環境が非常に厳しくなっている、最悪の事態をも見据えた備えを盤石のものとしと、ここは一義的には外交、安保の話ですが、この下の段落、最後の段落の下から二行目を見ていただくと、本戦略は外交、防衛を始め、こうずっと書いて、残念ながら、エネルギーまでは書いてあるんですが、食料はこの「等」の中に組み込まれているんだというふうに理解しております。ですから、最悪の事態、これをやはり想定すべきだ。
ところが、この前も申し上げたとおり、農林水産省は、今まで食料安全保障の指針に基づいてシミュレーションをやっている中で、これまで生じたような話、これは不作が続いたとか、外国が急に、アメリカのように、もう大豆を日本に輸出しないとか、こういったことを基本的に想定しているので、やはりこれは、ここに書いてある、閣議決定されている最悪の事態というものではないと私は思いますので、やはりそういったことをシミュレーションでやっていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のように、農林水産省は、緊急事態食料安全保障指針に即しまして、不測の事態が生じた場合においても食料供給の確保が迅速に図られるよう、定期的にシミュレーション演習を実施しております。
また、委員が御指摘のように、今般のロシアによるウクライナ侵略によって、地政学的リスクが、食料や生産資材の多くを輸入に依存する我が国の食料安全保障上のリスクになるということを経験をいたしました。食料供給困難事態対策法案の成立した場合においても、現在やっているようなシミュレーションは必要だというふうに我々は考えています。
このシミュレーションに当たっては、述べたような地政学的リスクによる食料安全保障のリスクも考慮しつつ、より効果のある演習の在り方や、シミュレーションの対象となる食料供給困難事態について検討した上で、有効な演習に取り組んでいきたいと考えています。
○北神委員 もう時間ですので、終わります。ありがとうございました。
○野中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時十六分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。
○宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。
総理には、農林水産大臣と御出席いただき、誠にありがとうございます。
時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
今回、農業の憲法とも言われる食料・農業・農村基本法を改正する意義ですが、食料需給の変動、地球温暖化の進行、人口の減少という大きな環境の変化に対応するために、食料安全保障の確立、環境と調和した産業への転換、生産水準の維持発展を図るなど、食料、農業、農村の大転換の方向性と施策を明確に示すことにあるというふうに私は考えております。
中でも、人口減少を乗り越え、少ない人数で農地を活用し、農業の成長産業化への転換を図るためには、来年三月までに策定されます地域計画を踏まえて、土地改良事業による土地の集約化や汎用化を実現し、また、ドローンや無人トラクターなどを保有して農業経営の支援を行うサービス事業体を育成し、スマート農業を推進して生産性を向上させ、また、法人その他団体経営体の強化を図り、中山間地農業の支援を強化することなどが必須だと思います。
しかも、今の担い手の高齢化や人口の減少の現状を踏まえますと、これからの五年間が一番大事でありまして、こうした大変革をこの短い期間に成し遂げることが必要なのではないかというふうに考えております。
岸田総理はこれまでも、我が国の様々な課題を乗り越えるために、国土強靱化でありますとか防衛力の強化、こども未来戦略などにリーダーシップを発揮されて、通常の予算とは別枠の予算を複数年しっかり確保して、その推進を図っておられます。
今こそ、一昨年の食料安全保障強化政策大綱や今回の基本法改正を踏まえまして、食料安全保障確保のための実効性ある施策に着手することが必要だと考えます。是非、岸田総理には、基本法の成立後に策定する基本計画を待つことなく、もし編成される場合には、本年度の補正予算からでもスタートをしていただいて、複数年で抜本的な予算を確保して、この大転換を支援していただきたいと考えます。
総理の御見解を是非お聞かせいただきたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 予算の確保についての御質問ですが、御審議いただいておりますこの食料・農業・農村基本法、成立させていただいたならば、これは、食料・農業・農村基本計画、これを策定するとともに、スピード感を持ってこの基本法に定める施策、これを進めていかなければなりません。
そして、そのために必要な予算、これは適切に措置しなければならないわけであります。基本法に位置づけております食料安全保障の確保ですとか、あるいは環境と調和の取れた食料システムの確立、さらには生産性の向上と付加価値向上による農業の持続的な発展、これらを実現するために必要な予算、適切に措置するよう、政府としても全力で取り組んでいきたいと考えます。
○宮下委員 ありがとうございます。是非スタートダッシュでしっかりした予算を確保していただければと思います。
また、食料の安定供給の確保のためには、三つの柱がございます。第一が、国内生産力の強化を図ること。第二は、国内で賄い切れない農産物や肥料、飼料などの生産資材の安定輸入を図るため、輸入の多角化を推進すること。第三に、官民連携による備蓄の確保を図ること。この三つでありますけれども。また、国内生産力の強化ということでいえば、農業の収益力を高めるためにも、農産物や食品の輸出の促進を図って、成長する海外需要を取り込むことが重要な課題だと思っております。
特に、輸入の多角化や輸出の拡大には外交力が重要だと考えます。食料ということであれば、水産物の加工や輸出も重要でありますけれども、昨年八月にALPS処理水の放出に伴う中国による日本産水産物の輸入停止措置があった際には、岸田総理にも様々な場面で日本の立場をしっかりと明確に訴えていただきました。
私も当時、農林水産大臣として、十月にマレーシアで開催されましたASEAN農業大臣会合に参加した際には、各国の農業大臣に日本の水産物の安全性を訴えるとともに、現地の日本食レストランや量販店などでホタテなどの試食イベントを開催しまして、大変好評でございました。先日の報道によれば、マレーシアでの日本産の水産物の輸入は着実に増加しているということでもあります。
また、日本の農産物や日本の外食産業の魅力の強みを生かしてインバウンド需要を取り込むことも、人口減少を乗り越えて日本が成長する鍵だと考えます。
コロナ禍にありました二〇二一年に行われた調査では、コロナ収束後の海外旅行先として日本がトップとなって、日本を訪れたい理由として、八割以上の方が食事がおいしいからということを理由に挙げられているそうであります。
現在は円安基調でありまして、輸入物価の上昇を招いている反面、輸出やインバウンドには強みとなっております。
岸田総理には、以上のことを踏まえ、輸入の多角化、農産物、加工品の輸出拡大、日本の食の魅力の発信を通じたインバウンドの拡大に向けまして、トップセールスでの御貢献をお願いするとともに、政府を挙げてその推進に御尽力をいただきたいと考えております。
総理の御決意を是非お聞かせください。
○岸田内閣総理大臣 我が国の食料安全保障を確保するためには、食料、さらには肥料、飼料、こうしたものについて、国内生産の増大を図りつつ、安定的な輸入を組み合わせていく、これが重要であると認識をしています。
基本法の改正案においては、国と民間とが連携し、これらの調達先の多様化等に取り組むこと、これを盛り込んでいるわけですが、これに加えて、食料供給基盤を強化する観点からも、我が国の農産物、食品の輸出の取組、これも一層進めていくことが重要であり、これもまた基本法の改正案に盛り込んでいるところです。
そして、それを実現していくために、食料や農業資材の安定調達に向けた輸入相手国との間の政府間対話などの取組、これはもちろん重要でありますし、それと併せて、今委員の方から御指摘がありましたインバウンドの拡大も見据えたトップセールス、これを含めた政府を挙げた輸出拡大の取組の促進、これを一層、実施に向けて政策を進めていかなければならないと思っております。
私自身も、トップセールスということで先頭に立って、こうした取組をアピールするべく、努力をしていきたいと考えます。
○宮下委員 是非よろしくお願い申し上げます。
私は、昨年九月まで、加工や流通、外食などの食品産業に対する政策を議論します自民党の食料産業政策委員長を務めさせていただいてまいりました。食品産業は、食料システムの重要な要素でありまして、基本法でもその健全な発展が掲げられております。
近年では、食品加工業が農業生産に乗り出すとか、また流通、輸出などを担うビジネスモデルも増えておりますし、また加工会社やレストランなどのニーズに合わせて農家が契約栽培を行うことによって生産現場の所得向上につながっている例も増えております。
一方、二〇二四年問題もありまして、中継物流拠点の整備を行うなど、流通改革による流通コストの削減も重要であります。このことによって、これらは結果的に産地での適正な価格形成にもつながります。さらに、食品産業の省力化、デジタル化の支援、生産性の向上も重要と思います。
こうしてみると、加工、流通、外食などの食品産業に対して、農林水産業が中心となって、経済産業省また国土交通省など関係する省庁が連携して、政府全体で支援をしていくことが重要だと考えます。
総理の御見解をお伺いしたいと思います。
○野中委員長 岸田総理大臣、簡潔に願います。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の食品産業ですが、食料の生産から消費に至る一連の活動全体である食料システム、これを構成するものです。国民への食料の安定供給はもとより、取引先の農業者の所得向上を図る、こういった点においても重要な役割を果たす存在であると認識をいたします。
こういった点を踏まえて、今回の改正案においても食料産業を総合的に支援するということにしているわけでもありますし、また価格転嫁の促進を通じた所得の向上、また物流二〇二四年問題への対応、これは、食品産業においても大変重要な課題であり、政府一体となって取り組んでまいります。
こうした取組を進めることによって、食品産業、さらには農業者の所得向上、こうしたものにつなげていきたいと考えております。
○宮下委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、坂本大臣には、地域計画の推進について質問を用意しておりましたが、失礼いたしました。是非、私もこの大改革の推進に向けて力を尽くしていくことをお誓いをして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○野中委員長 次に、金子恵美君。
○金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
総理におかれましては、訪米、いかがだったでしょうか。お疲れさまでございます。
帰国後すぐに着手しなければいけないことの一つとしては、やはり、政治と金の問題をしっかりと取り上げ、そして対応するということだというふうに思っております。政治資金規正法改正案ということだというふうに思いますので、是非よろしくお願いします。進めてください。そして、政治への信頼回復です。私たち全ての国会議員が、本当に今、政治への不信感があるということから、それぞれの立場でいろいろな思いを持っています。
そういった中で、総理は官邸で、十五日になりますけれども、二本松商工会議所の皆様から、国指定史跡、旧二本松藩の戒石銘碑の拓本を受け取ったということであります。全ての国会議員に贈るということを二本松商工会議所は決定しているということでありますので、それぞれの皆様のところにも順次贈られていくことだというふうに思います。
爾の俸 爾の禄は
民の膏 民の脂なり
下民は虐げ易きも
上天は欺き難し
俸給は民から与えられたものであり、感謝を忘れてはいけない、この気持ちを忘れて民を虐げたりするときっと天罰があるだろうというふうに解釈をするということでありますけれども、公人としての規範意識を思い出してほしいという願いから、会頭らが、総理のみならず全ての国会議員に贈るということを決定したということであります。
総理は、それを受け取られて、どのようにお感じになられましたか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘のように、先日、十五日の日に、旧二本松藩戒石銘碑の拓本をいただきました。そして、この碑文の言葉の意味は、今委員の方から御紹介があったとおりであります。武士の俸給は民が汗を流して得たものである、民への感謝を忘れてはならない、こういった意味であると、その当日も、お持ちいただきました商工会議所の皆さんからお伺いしたところであります。
まず、そうした碑文の思い、これは、時代を超えて、現代の政治家においてもしっかりと肝に銘ずべき重たい言葉であると思います。この言葉のとおり、国民のための政治を行う、こういった精神を大切にし、今、大きな課題となっております政治の信頼回復、さらには、国民のための経済再生を始めとする先送りできない課題に全力で取り組まなければならない、こういった思いを新たにした次第であります。
○金子(恵)委員 是非よろしくお願いしたいと思います。
残念ながら、内閣支持率は低迷したままで、二三・八%、直近の共同通信の世論調査です。総理の処分なしにも納得せずと答えた方が七八・四%という状況。大変厳しいです。
私が心配しているのは、今回の食料・農業・農村基本法改正案、これは、支持率が低迷している内閣から出された法案ということもありまして、国民の皆様の支持を得ていない状況の中で、どこまで本当にこの法案について関心を持っていただけるのかということです。
以前にも私は、予算委員会で総理に対しまして、この基本法についてはしっかりと国民的な議論を展開しなくてはいけないということも申し上げました。
もちろん、与野党の筆頭理事の御尽力もあり、委員長のお取り計らいもあり、地方の公聴会もでき、そしてまた、地方の視察等も行われました。しかし、そこで聞かされた言葉というのは、この改正案についてはまだまだ理解が不十分だというようなことであったり、情報がまだ提供されていなかったということです。
この状況の中で、私たちは、もしすぐにでも採決しなくてはいけないという状況だとしたならば、これはもうとんでもないことだと残念でなりませんし、一言で言えば、やはり審議がまだまだ足りないんじゃないかというふうに思っています。
さっきおっしゃっていただいたように、私たちは、立法府にいる者として、やはり国民の皆さんに寄り添っていかなくてはいけないというふうに思っています。ですから、今回のこの改正案が、しっかりと国民の皆さんの理解を得て寄り添うものであるか、本当の意味で食料安全保障というのを手にすることができるものなのか、そしてまた、生産者の方々が潤うような形で農政が大きく動くのか、これはしっかりと見ていかなくてはいけません。
ただ、残念ながら、そこが見えないまま今動いているとしたならば、私たちも修正案の提出を今準備しているところであります。そこをしっかりと受け止めていただきたかったというふうにも思っています。
与野党問わず、命をつなぐための今回の食料・農業・農村基本法改正となっていただきたい。そして、なりわい、農業を守るための、食料安全保障を守るための、本当に確立するための改正となってほしいという願いを持って今まで議論をしてきたわけです。
総理、何か一言ありますか。
○岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のように、政治の信頼回復のために努力をしなければならない、これは大変重要な課題でありますが、あわせて、今、政治を担う者として、国民の生活また命につながる切実な課題についても答えを出す、こういった責任も果たしていかなければなりません。
今御審議いただいております食料・農業・農村基本法、これも、国民の命やあるいは暮らしに関わる、我が国の食料安全保障に関わる重要な法案であり、我々に課せられた大きな課題であると思っています。
このことについて国民の理解を得ることが大事だという御指摘でありますが、そのとおりであります。引き続き、こうした法案の中身について、政府としても、国会においても、しっかり国民の皆さんに説明をしていかなければならないと考えます。
ただ、国民の皆さんの関心は、決して低いことはないと思います。車座対話、各地で行う中にあっても、農業関係者の皆さん方からは、この基本法に対する関心が寄せられています。こうした関心にしっかり応えながら、この法案の審議をしっかり国会にお願いした上で、成立を目指していきたいと考えます。
○金子(恵)委員 アメリカで行われました岸田総理とバイデン大統領との日米首脳会談での農林水産分野の合意事項でありますけれども、農業分野では、食料安全保障及び持続可能な農業の強化に合意されたということでありますし、先ほど少しありましたけれども、中国などによる日本水産物の禁輸措置を受けた輸出先の多角化については、日米間の協力を通じた輸出チャンネルの強化などを確認したということも伺っております。
今回のこの合意、そして我が国の今後の農政の在り方、どのようなバランスとなりますか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の日米首脳会談における共同声明については、農林水産分野における合意としては大きく二つありました。
一点が、食料安全保障及び持続可能な農業の強化は、食料安全保障の取組を強化するための持続可能な農業の実現に向けた日米間の対話に関し、特に温室効果ガスの排出削減に向けた協力を進めていくというもの。
そして、二点目として、強靱で責任ある水産物サプライチェーンの促進は、我が国からのホタテなど水産物の輸出先の多角化が課題となる中、日米間の協力を通じ、輸出チャンネルの強化等により強靱なサプライチェーンを構築すること等を確認した。
こうした二点を確認していますが、これを中心に、日米間においても、農林水産分野、この協力の可能性は大変大きいものがあると感じています。是非、具体的に取組を進めたいと考えます。
○金子(恵)委員 日米間のことを申し上げると、もちろん、例えば主にトウモロコシなどはアメリカから輸入している。小麦もそうです。大豆、これも七六%米国から輸入している。小麦、先ほど申し上げましたが、四四%。そして、トウモロコシは七三%ということでありますので、良好な関係をつないでおかなくてはいけないという思いもこの分野においてはあったかというふうに思います。ただ一方で、主には経済とそして防衛に関する日米間の協力についての議論があったというふうにも思います。
そういった中で、私はいつも思うのですけれども、一言で言うと、他国に振り回されない、そういう日本らしい、しっかりと我が国らしい主張というのをしていかなくてはいけないというふうに思いますし、特に、農は国の基なり。本当の食料安全保障、これを手にするためには、やはり食料の自給率を上げていく、国内生産を増大させるということがまず第一でありまして、そういう意味からも、もちろん、輸入とか輸出とかそういうことは今の世界情勢の中で全くゼロにはならないわけですけれども、しかし、やはり、集中しなくてはいけないところは、国内の生産をいかに大きくしていくか、そして国内の農業者の方々をいかに守っていくかということだというふうに思います。
そういう中で、お聞きしたいのは、今回のこの改正で、総理は本会議での答弁で農政の再構築を図ると述べられているわけですね。どのような形で再構築を図るのか、見えるようで見えない。
二〇二二年の九月九日に遡りますけれども、第一回の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部が官邸で開催されました。そこからスタートなのかなというふうに思っておりますけれども、岸田内閣においては、新しい資本主義の下、スマート農林水産業、そして農林水産物・食品の輸出促進、農林水産業のグリーン化、食料安全保障の強化を農林水産政策の四本柱として進めていくということ、そして、それを全ての農政の根幹である食料・農業・農村基本法の改正ということで進めていくというような趣旨の御発言を総理はなさっているということです。
改めましてお伺いしますけれども、そうすると、この新しい資本主義の下での農林水産政策というのは何なんでしょうか。今までの農政を大きく変えるものになるんでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 まず、我が国の農林水産業、食料等の世界的な需給変動、また環境問題、また国内の急激な人口減少と担い手不足、こういった深刻な社会課題に直面しているわけですが、新しい資本主義との関係の御指摘がありましたが、岸田内閣における農林水産政策、これは、新しい資本主義に基づいて、こうした国内外の社会課題に官民連携で正面から取り組み、これらを克服して成長のエンジンとする、こうした課題解決と地域の持続的な成長、この両方を実現していく、これが基本的な考え方です。御指摘の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部における発言も、そういった趣旨を申し上げたとおりであります。
そして、その展開方向として、スマート化による生産性向上、グリーン化による付加価値向上を図り、担い手確保を含め、持続可能な農林水産業を確立するとともに、農林水産業者の所得向上を図っていく、そして、輸出促進により需要を拡大しつつ、輸入依存度の高い麦、大豆、飼料等の国内生産の拡大等により食料安全保障の確立を図っていく、こういった方向を示したわけでありますが、まさに今御審議いただいている基本法において、今申し上げた基本的な方向性、これを盛り込ませていただき、そして、この基本法に基づいて農政を転換し、そして食料安全保障を確かなものにしていく、こうした取組を進めようと考えております。
そして、結果として、農業所得の向上、そして農村地域の活性化につなげていきたいと考えております。
○金子(恵)委員 新しい資本主義については、官邸のホームページを見ると、今総理がおっしゃっていただいたことよりも少し分かりやすいと言ったらいいんですかね、コンパクトに書かれている部分があるんですが、成長と分配の好循環による新しい資本主義によって、官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人一人が豊かで、生き生きと暮らせる社会をつくっていきます、ということでよろしいですか。
○岸田内閣総理大臣 まず、結論から言いますと、御指摘のとおりであります。
農業分野における所得の分配、所得の向上について、基本法の改正案に基づいて、スマート技術の導入による生産性の向上、ブランド化、さらにはグリーン化、こうしたものによる付加価値の向上等を通じて農業経営の収益力を高めていく、そして、食料システムの関係者の合意の下、適正な価格形成を図る仕組みを進めていく、こういったことを通じて、成長と分配の好循環、実現をしていく、こうした取組を進めていきたいと考えております。
○金子(恵)委員 実際には、基幹的農業従事者も減りました、農地も減りました、そして食料自給率も上がらない状況にあります。
そういった中で、例えば、農業者が減った、でも、土地は守らなきゃいけない、農業は守らなきゃいけないからスマート農業を進めますということだったら、おかしいですよね。実際にそうであれば、新規就農者の支援も含めまして、人をいかに増やしていくかという基本のところをしっかりと進めなくてはいけないんですよね。
私が今申し上げようとしているのは、今までどうしてこういう状況になってきたかという検証がやはり足りないということです。今のこの現状に取りあえず合わせて今回の法改正ということかもしれませんけれども、そうだとしたら、根っこのところにある問題には触れずに、そのまま進めようとしているだけであって、基本的な課題というのは解決しないままにならないでしょうか。いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 先ほど、基本法等を通じて農業のこれからの方向性を示したいということを申し上げましたが、これを示すためにも、委員御指摘のように、今まで問題とされていた基盤的な問題、担い手を始め人の問題、生産性や付加価値の向上の問題、こういったものに取り組んでいかなければならないと考えます。
ですから、従来の点についてもしっかり振り返りながら、今申し上げたような要素についてしっかりと対応を考えた上で、先ほど申し上げました、所得の向上等、未来の方向性を目指していく、これが基本的な考え方であると思います。
過去についてもしっかり振り返るべきである、これは御指摘のとおりだと考えます。
○金子(恵)委員 新しい資本主義の下で、ますます格差が広がってしまったのではないかとか、貧困層がまさに膨れ上がっているのではないかとか、そういう指摘もある中で、先ほどおっしゃっていただきましたが、適正な価格形成をしていくというようなことでした。これは大変難しいことだというふうに思います。消費者の方々のもちろん理解ということでありますけれども、貧困層の中では食品にアクセスできない方々がいるということで、大変な問題にもなっています。本当の食料安全保障ということで、不測時だけではなくて平時から、いろいろな状況を考えていかなくてはいけないという時代にも突入しているということです。
そうであれば、農林水産の分野だけではなくて、もちろん、福祉やほかの分野においても、社会全体の問題としてしっかりこれを取り上げなくてはいけないというふうにも思いますけれども、その中でも、農業者、生産者を守ることや、食料システムの中のそれぞれの段階にいらっしゃる皆さんを守る、しっかりと事業者を守るということだというふうにも思いますけれども、これはとても難しいことだというふうに思います。
総理は、今回の改正の中でも合理的な価格形成の合理的という言葉は変えられず、適正という言葉ではなくて、合理的のままなんですけれども、この合理的な価格形成というのは今の社会情勢の中で本当にでき得ると思いますか。
○岸田内閣総理大臣 農産物の価格形成については、需給事情あるいは品質評価を適切に反映しつつ、生産から消費までの各段階の関係者の合意の下、国内外の資材費あるいは人件費等のコストが考慮される仕組みを構築していく、こういった取組が重要であると考えます。
こうした価格形成の仕組みづくりについては、農林水産省において、各段階の関係者による協議を進めており、法制化も視野に検討を進め、適正な価格形成の仕組みづくりに取り組んでいるところです。
農業者の所得向上に向けては、適正な価格形成を確保しながら、収入保険制度等を適切に講じつつ、デジタル化による生産性向上、ブランド化、グリーン化による付加価値向上、こういった取組を支援していくことも重要であり、これらを組み合わせることによって、今おっしゃった、難しいと言われる価格形成の仕組み、これをつくっていきたいと考えています。
○金子(恵)委員 時間が参りましたから、これで終わりますけれども、実際に、農業物価指数よりも生産資材の価格指数の方が全然上回っているということ、つまりは、農業を本当に継続していけない、持続していけない人たちが増えていく可能性があるということを考えたときに、しっかりと、もちろん、正しい価格形成はしていかなくてはいけません。けれども、総理がこれまで、もしかすると間違った方向で経済を回してきてしまったかもしれませんけれども、新しい資本主義の下で、多くの方々は格差社会の中で本当に困っている状況にある、今、適正な価格形成をつくり上げることができるんだろうか、悩ましいところだというふうに思います。
そういうことであれば、今、収入保険の話もありましたけれども、新たな形での直接支払いの仕組み、これをやはりつくり上げるべきだというふうに私は思います。何かあれば、一言、お願いします。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の新しい資本主義という考え方自体が、市場やマーケットに任せるのではなくして、様々な社会課題に官民で協力する形で立ち向かうことによって、それを成長につなげていこうという考え方であります。
格差が広がっているという御指摘がありましたが、これは、市場やマーケットに任せるのではなくして、社会課題の解決に取り組むという中で格差の問題にも取り組んでいる、これが新しい資本主義の基本的な考え方であると思います。
御指摘の価格形成についても、難しい仕組みづくりだという御指摘でありますが、是非、今申し上げたように、社会課題の解決という観点からの官民の連携や協働、これをつくり上げていきたいと考えています。
○金子(恵)委員 時間が参りましたので、終わります。
ありがとうございました。
○野中委員長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。
今回は、総理に対して質問させていただきたいと思います。
総理が本会議場で、農業の憲法とも言われるこの食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に関して改正すると言われたのが、施政方針演説で、一月の二十六日でありました。本日が四月十七日であります。長いようで短く感じましたが、私に与えられた時間は六分間でございますので、しっかりと質問させていただきたいと思います。
宮城県、福島県では視察を、北海道、鹿児島県では公聴会について意見を聞かせていただきました。午前中は、坂本大臣に、土地の集約についてをメインに質問をさせていただきました。
今回の視察や公聴会は、生産者サイドの意見をお聞きしたのはもちろんなんですが、今回は消費者サイドの方のお話も聞かせていただきました。とてもよかったというふうに思います。消費者にとって、生産者がどれだけコストがかかって、どれだけ厳しい経営をしているかというのは遠い話でありまして、よく分からないというのが現実だというお話を伺いました。
今回は、法律案には、消費者の役割というものが明記をされております。
現在、世の中では、消費者もなかなか賃金が上がらない上、生活をしていく上で物価高に苦労をしております。このままでは、消費者が、生産者の生産の仕方とかそういう理解、そして適正な価格の理解ができないまま、悪循環をなかなか抜け出せないというふうに思っております。
午前中の質疑にもありましたけれども、営農類型別統計の下に労働時間を割り当てますと、大体、一時間当たり、米農家は十円、酪農農家に関しては、北海道では百二十四円でありますが、他府県ではマイナス二百四円という結果でありました。
消費者と生産者が互いのことを理解をして、共存共栄になっていくためにはどうしていくべきか、国として生産者コストの理解促進を努めていくべきだというふうに思いますが、総理の見解を求めます。
○岸田内閣総理大臣 食料の持続的な供給、これを実現していくためには、消費者の皆さんに、生産物が生産され、流通や加工等の過程を経て消費者の手元に届くまでに様々なコストがかかっている、こういった実態について御理解をいただくことが重要です。
このため、政府としては、生産コスト等の明確化に取り組み、客観的な情報、これを分かりやすく発信していかなければならないと考えます。
また、生産者の皆さんに対しても、生産性や付加価値の向上を促進しつつ、加工食品や総菜等の需要増といった消費者ニーズの多様化、これに応える取組を進めていただく支援を政府としても行う、こうしたことも重要であると考えます。
こういったことを通じて、消費者と生産者の相互理解を醸成し、そして、生産から消費の各段階の関係者の合意の下に、国内外の資材費、人件費等のコストが考慮された価格形成の仕組み、これを、法制化も視野に検討してまいりたいと考えています。
○池畑委員 価格形成の法制化というのは大事なことだというふうに思います。是非とも進めていただきたいと思います。
次に、これから人口減少が続く中、農村人口の確保にも取り組んでおられます。労働力は限られているのが現実であります。品種や栽培技術などでカバーできるということはあるというふうに思いますが、スマート農業技術では、なかなか、少ない人手でというのをかなり私たちも有効だというふうに思っておりますが、多収品種の開発とか普及の促進という農業技術の基本に立ち返るということも大事だというふうに思いますが、総理の見解をお聞かせいただきたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 品種開発ですが、従来から、品種に勝る技術なしと言われるほど、農業の基盤的な技術であると言えます。
多収性品種の開発とその普及は、今後の我が国農業において、生産性向上を支える極めて重要なものであると認識をします。
多収性品種については、産学官連携による開発を進めてきており、水稲や大豆などで新たな品種も開発されているところであり、今後とも、多収性に優れた品種の開発、普及、これを進めて、我が国農業の生産性、これを向上していきたいと考えます。
○池畑委員 多収性、総理もきっちり読んでいただきました。
食料安全保障の中で、食料自給力という考え方も農林水産省の中にもあるというふうに考えております。農地をフルに活用すると国民にどれぐらい供給ができるのか、品種改良等で単収の面、今総理もお話をいただきました、単収でいかに上げていくかということも大事なんだというふうに思います。
今後とも、総理、日本の技術を結集していただいて、食料の安全保障、そして国民への食料の確保、担い手が継続してこの国で消費者へ食料を供給できる環境の制度、今、制度というふうにも言われましたが、制度を整備していただくようにお願いをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○野中委員長 次に、掘井健智君。
○掘井委員 日本維新の会、掘井健智でございます。教育無償化を実現する会との共同会派でございます。
それでは、時間がありませんので、早速質問いたします。
新基本法が制定されようとしておりますけれども、この基本法を見直す大きな背景というのが食料の安全保障であります。緊急時にどうするかというその前に、ふだんから緊急事態に対応していくためにどんな農業構造をつくっていくのかということを中心とした、そんな基本法にしていただきたいと思っております。
日本の農政の課題は、農業構造を改革して農業を発展させるという考え方と、多数の兼業農家などの小規模さんを守るという考え方が、どうしても対立してしまうということであります。農業改革と利害関係の調整、その繰り返しである、そのように思っております。
質問します。
望ましい農業構造の確立を定める法案二十六条には、二項が新設されております。農業の担い手をより広く捉えて、農地の確保が図られるように配慮する、これは、これまでやってきた農地バンクまた農地の集積率目標という構造政策に反して、後退しているようにどうしても見えます。このことによって、小規模な農地を専業農家に集約するという農業の大規模化でありますとか、また効率化、こういったことが矛盾しないのか。そして、政策が進まなくなるのではないのか。こんな心配がございます。
これまで大臣に質問してきましたけれども、改めて総理の御見解をお願いしたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 まず、現行の食料・農業・農村基本法においては、農業の担い手が生産の相当部分を担う望ましい農業構造の確立に向け、担い手の育成、確保を図ることとしており、今回の改正案においても、こういった方針は継続することとしております。
そして、この望ましい農業構造において、担い手がカバーする相当部分以外は、従来より、担い手以外の多様な農業者がカバーすることを前提としており、離農者が増加する中、担い手への農地集積を進めつつ、担い手以外の多様な農業者に、担い手だけでカバーされていない農地の保全管理を適切に行っていただく、こうしたことが重要であると考えています。
こうしたことから、基本法上、担い手以外の多様な農業者の役割についても明記したものであり、従来の構造政策と矛盾するものではないと認識をしております。
○掘井委員 矛盾していないというお言葉がありましたけれども、やはり、条文の冒頭が、「国は、望ましい農業構造の確立に当たっては、」という文脈があります。この文脈において、多様な農業者によって農地の確保が図られるように配慮するということでありまして、これはやはり、読みますと、区別されるのではなくて、むしろ、兼業農家が望ましい農業構造に組み入れられるようにしかやはり読み取れないんですね。今日は時間がないということでありますから、条文解釈する時間がありませんのでいたしませんが、次の質問に移ります。
兼業農家さんも中心となって、先ほど総理言われましたけれども、農地の保全管理、これを担っていただくということであります。兼業農家さんも、農地を守るために、収益を上げないと農地は守れないわけであります。草刈りしておったって農地は守れないわけでありますから。
であるならば、農業技術や経営戦略を持って、これからのスマート農業でありますとかみどりの食料システム、また食料安全保障など、非常に高度な農業政策に取り組まなければいけないということでありますから、引き続いて、生産調整の話であったり価格安定の問題、また耕作地放棄の問題、食料安全保障にも私は響いてくると思うんです。
兼業農家にも非常に高度な農業政策を実現していくために、この支援について政府はどのようにお考えでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 食料の安定供給について、農業の担い手はその中心的な役割を果たすものであり、引き続き、農地の集積、集約、これは進めてまいりますが、兼業農家等の多様な農業者も、農地の保全管理あるいは集落機能の維持といった役割を果たしていただいています。
農地の確保が課題となる中で、兼業農家等がこうした役割を果たしていけるように、水路の泥上げなど地域の共同活動への支援、また、六次産業化、農泊など農村地域の仕事づくりの支援など、これは引き続き行っていきたいと思いますし、こういった形で地域の農業生産の継続、これを支えていくという考え方は重要であると認識をしております。
○掘井委員 時間が来ましたので、最後、兼業農家の課題と専業農家の課題は、これからやはり別になってくると思うんです。これまで私が主張してきましたように、やはり兼業農家さんは守っていかなあかんということなんですけれども、やはり、農村を守るというそのくくりの中で十分に守っていくと。実際、分けた方が本当に分かりやすいというか、多分、財務省もお金が出るんじゃないか、このように思っております。この法案がその解釈どおりになるように祈っております。
ありがとうございます。
○野中委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
岸田総理に質問します。
食料・農業・農村基本法の前回の改定から二十五年、政府の食料自給率目標は一度も達成されたことがありません。
三月二十八日付の日本農業新聞の論説では、「食料リスクが高まる中、国民各層が自給率向上に取り組む意義は増す。問われているのは、目標達成に向けた政府の本気度だ。」と指摘しています。
岸田政権は、現行基本計画の四五%を目指すのか、更に高みを目指すのか、だとしたら、それは何%か、岸田総理の本気度をお尋ねします。
○岸田内閣総理大臣 御審議いただいております食料・農業・農村基本法の改正案、これが成立を見れば、これに基づいて基本計画を策定することとしており、その中で、食料自給率を含め、食料安全保障の確保に関する事項について、国内外の食料需給の動向、また、これまでの取組の検証結果、これを踏まえながら、適切な目標を設定すべく、議論を進めていきたいと考えております。
基本法制定以降の食料自給率、これは今三八%前後で推移していますが、その変動要因について見ると、国内で自給可能な米、野菜、魚介類の消費量の減少、一方で、輸入依存度の高い飼料を多く使用する畜産物の消費量の増加、こうした消費面での変化、これが食料自給率の低下要因となっています。
こういった点もしっかりと振り返りながら、食料自給率の向上のために、具体的な政策、これを進めていきたいと考えております。
○田村(貴)委員 総理、今日の総理質疑で六回目の委員会審議です。食料自給率を上げるという明確な政府の姿勢が見えてまいりません。これでは本当に困ったものです。
それでも、基本法には、国内の農業生産は増大させるとしています。ならば、関税とか、それから輸入制限など、国産品の市場を守る努力が今から必要になってくるのではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 これまで幾多の農産物貿易交渉を重ねる中で、我が国の農業生産に重大な支障を招くことがないよう、米、麦その他の生産物について必要な関税を維持してきたところであり、また、輸入急増に対応するための緊急措置であるセーフガードも獲得をしてきました。
基本法の改正案においても、農産物の輸入の増大によって農産物の国内生産に重大な支障を与えるなど必要な場合には、関税率の調整や輸入の制限を講ずる旨について、現行法に引き続き規定をしているところです。
これらの措置を確保した上で、国内生産の増大を図ることにより、食料安全保障の確保、これをより確かなものにしていきたいと考えます。
○田村(貴)委員 しかしながら、三八%まで下がってしまった食料自給率、その根源は、やはり輸入自由化路線にあったことは間違いありません。
四日の参考人質疑で、東京大学の安藤光義教授は、食料自給率が大きく低下したのは、一九六一年の農業基本法下におけるアメリカの小麦、大豆、トウモロコシの購入が原因だとし、日本の低自給率はこの時点で確立したと意見陳述されました。
事実、自民党政権は、麦、飼料、大豆などアメリカの余剰農産物を進んで受け入れ、その後も、牛肉・オレンジの自由化、WTO農業協定、TPP、日欧EPA、日米FTAなど次々に輸入自由化を行い、そのたびに安い農産物が大量に流入してきました。
総理にお尋ねします。
過度な輸入依存からの脱却を目指すのであれば、こうした輸入自由化路線、わけてもアメリカの食料戦略への追従を見直さなければいけないと考えますが、いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 これまでの農林水産物の貿易交渉、例えば、TPPですとか日・EU・EPA交渉などで、重要五品目を中心に関税撤廃の例外を獲得することによって、必要な関税を維持した上で、輸入急増に対応するための緊急措置であるセーフガードの導入、こういったものも措置をしてきました。
今御審議いただいている基本法の改正案においても、こうした輸入の増大によって支障が生じる場合に適切に対応する、これは規定をしているところであります。
是非こういった措置を確保した上で、国内生産の増大に取り組み、食料安全保障を確かなものにしたいと考えております。
○田村(貴)委員 現状をしっかり捉え、これまでの反省を踏まえることを強く申し上げて、質問を終わります。
○野中委員長 次に、長友慎治君。
○長友委員 国民民主党の長友慎治です。
ずばり、総理に伺います。
岸田総理が考える農業の醍醐味、やりがいは何でしょうか。見解を伺います。
○岸田内閣総理大臣 まず、農業というのは、人間が生存していく上で必要不可欠な食料、さらには生活に彩りを与える花々ですとか、こうしたものを生産する営みであります。まずもって、これは誇りある営みであるというふうに考えます。
そして、農業には、自然環境に左右されるといった厳しさもありますが、そういった中にあっても、経験を通じたノウハウ、最近ではスマート技術によるデータの活用、こうしたものを活用しながら、これまでよりも更によいものを作りたい、こういった思いで創意工夫を重ねていく、ここにやりがいがあるというお話、関係者の皆さんから聞いた記憶があります。
こうした地域の自然風土の中で自分が苦労して丹精込めて作ったもので、日本全国さらには世界各地に笑顔を届けることができる、こういった可能性を持っている、これが農業の魅力である、醍醐味である、こういった話も聞いたことがあります。
これはまさに現場で働く皆さんの実感ではないかと受け止めさせていただいております。
○長友委員 総理、すばらしいですね。ありがとうございます。
誇りある営みを皆さんやっていただいておりますし、丹精込めて作ったもので笑顔を届けられる、まさに魅力的な職業だと思いますし、私も農家の皆さんには敬意を持っているんですけれども、それなのに、担い手がなかなか育たない、増やすことができない。
つまり、なぜかというふうに考えたときに、総理が今お話しいただいたような醍醐味ややりがいを伝える場や環境がないからじゃないかと私は思うんです。農業の担い手が育たない、その理由を考えたときに、その環境や場を政府としてしっかり用意をしていくべきだと考えるわけなんですが、私、常々、小学校や中学校の授業に、国語、算数、理科、社会、農業というような形で、是非、義務教育の科目に農業を加えてそういう担い手を育てていくべきだというふうに考えますが、総理の見解を伺います。
○岸田内閣総理大臣 子供たちが農業について学ぶこと、これは重要であります。政府としては、現在、例えば、小学校の社会科において我が国の農業が国民の食料を確保する上で重要な役割を果たしていることを理解してもらい、また、中学校の技術・家庭科において野菜等を育てることを通じた栽培活動を行うなど、学校において農業に関連する授業の実施を求めていると承知しており、今後とも、農業に関する教育の充実に努めてまいります。
また、学校給食における有機農産物の活用については、食文化や環境に関する理解、安定的な販路の確保等の観点から有意義であると認識をしており、地域の実情に応じて各学校の設置者において食材を判断すべきものでありますが、政府としては、学校現場と生産現場を調整するコーディネーターの派遣に対する支援等を通じて有機農産物の活用の促進、これも図ってまいりたいと考えています。
○長友委員 総理からオーガニック給食にまで言及いただきまして、ありがとうございます。
ただ、各地方自治体に調達を任せているということであれば、私は、みどりの食料システム戦略の野心的な農水省の目標は絶対達成できないと思います。出口、大変困っていますので、総理、是非、オーガニック給食に関しては政府として取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
以上です。
○野中委員長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
総理、今回の基本法の改正というのは、新しく、食料安全保障というのが柱として打ち立てられました。これは農林水産省だけではできない話で、お配りした資料にございますように、これは令和四年十二月に内閣の方で国家安全保障戦略というものを制定したということです。
この真ん中の下線のところを御覧いただきますと、要は、非常にせっぱ詰まった状況の中で、二行目を見ていただくと、最悪の事態をも見据えた備えを盤石なものとすると。基本的にこの段落は外交、防衛の話ですけれども、その下に行くと、これはいわゆる総合的な安全保障であって、経済安全保障とか技術とかいろいろありますけれども、「エネルギー等」、この「等」の中に食料安全保障も入っているんです。これは信じてもらえればいいと思うんですけれども。
当然、兵糧なくして戦うことはできませんから、だから、そういった意味で農業というのは、そういう意味でも非常に重要であるということなんですが、残念ながら、私が農林水産省と議論していると、なかなか、当然かもしれませんけれども、そういう、いわゆる防衛的な、有事に対する感覚というのが希薄のように思われます。
ですから、今まで、いわゆるシミュレーションの演習というのをやっているんですね。いわゆる本当に厳しいときに、どのような食料をどのようにして届けるのか、国民一人一人を食べさせるのか、こういう演習をやっているんですが、少なくとも今までは、不作が二年続いたとか、輸入に頼っていた外国が急に輸出を止めたとか、この程度で、せいぜい輸入が五割ぐらい減るというぐらいの想定なんですね。
総理、訪米されて切実に感じたと思いますけれども、安全保障の専門家の中では、台湾有事の可能性というのが非常に高まっている、こういうことも想定して、そこで米国が本当に参戦を、参戦というか当事者として戦った場合に、果たして、太平洋といえども食料が入ってくるのか、こういうシミュレーションを私は農林水産省もやっていかないといけないと。
しかしながら、なかなかそういうことについては今まで専門としておられなかったということで、是非、総理に指導力を発揮していただいて、こういうシミュレーション演習にもこういう厳しい、輸入が途絶する、あるいはそれに近い状態を想定するようなことを、農林水産省にも、是非巻き込んでやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 ロシアによるウクライナ侵略を受けて、食料安全保障に関して、地政学的なリスク、これが現実のリスクとして顕在化したということ、これは世界が今実感しているわけですが、今回の食料・農業・農村基本法の見直しの背景にはこれも一つあったんだと認識をしています。
そして、委員の方から、より厳しい状況を想定したシミュレーションを考えるべきだということでありますが、御指摘のような食料安全保障のシミュレーションについても、こうした地政学的リスクを踏まえて、今国会に提出している食料供給困難事態対策法案の枠組みの下で、より効果ある演習の在り方、あるいはシミュレーションの対象となる食料供給困難事態、これを検討した上で、政府一体となって、有効な演習に取り組んでまいりたいと思います。様々な事態を想定して、有効な演習、これを考えていくことが重要であると考えます。
○北神委員 ありがとうございます。
もう一つは、今、長友委員から、農業というのは大変やりがいのある誇らしい職業だ、しかし、担い手が減っていると。それは、元々、農業というのは、特に我が国の農業というのは、様々な不利な条件、自然的な条件、土地が狭い、社会的インフラも、農家の人たちで農村で支えないといけない。おのずと、国際的に食料価格というのは、日本の農業で産出するものは高くならざるを得ない。
これを、今まで市場原理とか自由貿易とかこういうことで改善しようとしたというのは、それを全部駄目だとは言いませんけれども、やはり財政的な支援というのが必要なので、ひとつ、そこを総理の立場からもよろしくお願いしたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 財政的な支援、予算等の関係でありますが、我が国の食料安全保障リスクが高まる中、過度に輸入に依存する小麦、大豆等の国内生産の拡大など、食料安全保障の確保に向けて、安定的な予算、これを確保するよう努めてきているところでありますが、食料・農業・農村基本法の改正案が成立を見れば、政府として、食料安全保障の確保に向けた施策を体系的に進めていく方針であり、これに合わせて、施策実行に必要な予算、しっかりと措置してまいりたいと考えます。
○北神委員 終わります。ありがとうございました。
○野中委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。
次回は、明十八日木曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後二時六分散会
――――◇―――――
〔本号(その一)参照〕
―――――――――――――
派遣委員の鹿児島県における意見聴取に関する記録
一、期日
令和六年四月十五日(月)
二、場所
シェラトン鹿児島
三、意見を聴取した問題
食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 野中 厚君
加藤 竜祥君 古川 康君
保岡 宏武君 野間 健君
渡辺 創君 池畑浩太朗君
山崎 正恭君 田村 貴昭君
長友 慎治君
(2) 意見陳述者
鹿児島県経済農業協同組合連合会農産事業部部長 新村 浩二君
鹿児島大学名誉教授 田代 正一君
オーガニックパパ株式会社代表取締役 八尋 健次君
有限会社内田農場代表取締役 内田 智也君
(3) その他の出席者
農林水産委員会専門員 飯野 伸夫君
農林水産省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官 菅家 秀人君
――――◇―――――
午後一時開議
○野中座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院農林水産委員会派遣委員団団長の野中厚でございます。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶申し上げます。
私ども農林水産委員会では、現在、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を審査しているところでございます。
本日は、委員会の審査に当たり、国民各界各層の皆様の御意見を承りたく、当鹿児島市におきまして地方公聴会を開催をいたしました。
本日は、意見をお述べいただく皆様方におかれましては、本当に貴重なお時間をいただき出席いただいたことに感謝申し上げたいというふうに思います。是非、忌憚のない御意見を承れればというふうに思っておりますので、本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
まず、派遣委員は、自由民主党・無所属の会の古川康君、加藤竜祥君、保岡宏武君、立憲民主党・無所属の野間健君、渡辺創君、日本維新の会・教育無償化を実現する会の池畑浩太朗君、公明党の山崎正恭君、日本共産党の田村貴昭君、国民民主党・無所属クラブの長友慎治君、以上でございます。
次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
鹿児島県経済農業協同組合連合会農産事業部部長新村浩二君、鹿児島大学名誉教授田代正一君、オーガニックパパ株式会社代表取締役八尋健次君、有限会社内田農場代表取締役内田智也君、以上四名の方々でございます。
それでは、まず新村浩二君に御意見をお述べいただきたいと存じます。
○新村浩二君 ただいま御指名いただきましたJA鹿児島県経済連の新村と申します。
本日は、食料・農業・農村基本法改正に関する公聴会にお招きいただきまして、大変光栄に感じております。
私の所属する農産事業部ですけれども、農産事業部には、米穀特産課、肥料農薬課、農業機械課という三つの課がございます。
米穀特産課につきましては、米と鹿児島特産のカンショでん粉の集荷、販売が主な業務でございますし、肥料農薬課、農業機械課は、その名のとおり、肥料、農薬、農業機械を取り扱っております。
私どもJA鹿児島県経済連では、一昨年、令和四年あたりから、耕畜連携やみどりの食料システム戦略、また、食料安全保障を意識した取組を行っておりますので、それらを紹介した後で、今回の改正に関する意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
それでは、資料の方の一ページをお開けいただきますと、「JA鹿児島県経済連について」とございます。全国で数少ない県段階の経済連でございまして、農畜産物の集荷、販売を行う販売事業、さらに、生産資材を供給する購買事業が主な事業内容となっております。
県内には十三の総合JAがございますけれども、離島JAも二つございまして、南北六百キロという広大なエリアでの事業展開となっているところでございます。
資料二ページですけれども、鹿児島の農業の概要でございます。
鹿児島県の令和三年の農業産出額につきましては、四千九百九十七億円ということで、北海道に次ぐ全国第二位でございます。特に、全国上位の飼養頭数を誇ります肉用牛、肉豚を中心としました畜産が全体の約六六%を占めておりまして、まさに畜産県鹿児島といった状況にございます。
次に、資料三ページの方をお開けいただきますと、生産金額、数量共に、先ほど申し上げました畜産を中心に上位に位置しておりますし、園芸作物につきましても、茶の生産量が全国二位など、上位の品目も多いわけですが、次の資料の四ページをお開けいただきますと、下から二番目の生産農業所得率、これを見てみますと、全国第四十位という低い位置にございます。
今まで申し上げましたのは令和三年のデータでございまして、令和四年のデータを見てみますと、農業産出額につきましては五千百十四億円ということで、やはり全国第二位でございます。ところが、生産農業所得率につきましては全国第四十七位ということで、最下位というようなところでございます。
この生産農業所得率の低さにつきましては、畜産の利益率が低いことが要因と言われていますけれども、耕種部門におきましては、農地一筆当たりの農地面積が狭いことによります生産性の低さも原因となっているというふうに思っております。
次に、資料の五ページでございます。先ほど、私、肥料農薬課を担当していると申し上げましたが、私どもの肥料事業の概要でございます。子会社の方で、年間八万トンを製造できる肥料工場を所有しております。こちらの方で配合肥料を製造しております。
令和五年度の配合肥料の実績、表がありますけれども、合計で約四万一千トンという実績でございます。下の方に前年比がございますけれども、前年比で見ますと八〇・七%と、非常に数量が落ち込んでいるという状況でございます。
その下につきましては、土壌診断、適正施肥のために土壌診断を行っております。年間一万点ほどは土壌分析を行っているというところでございます。
資料をお開けいただきまして、資料の六ページでございますけれども、こちらは肥料の価格情勢ということでございます。
肥料価格が高騰しているということは、皆様御承知のとおりだと思います。令和五年につきましては、少し値下がりの傾向でございました。ただ、今年の六月から秋肥ということで改定時期になりますけれども、為替の状況だけを見ても、これはまた上がるんじゃないかというような予想があるところでございます。
資料七ページを開けていただきますと、このような中で、耕畜連携の取組を私どもは行っているというところでございます。
畜産県鹿児島には、畜ふん堆肥が豊富にございます。それをそのまま堆肥として、もう一方では堆肥入り配合肥料として耕種農家に使っていただく、耕種農家で作られた飼料作物ですとか稲わらについては、飼料として畜産農家に使っていただくといった循環型の取組でございます。
資料八ページでございますが、この取組の一環としまして、令和五年二月に宮城県のJAいしのまきと実証試験を行っております。鹿児島の堆肥ペレットを宮城県の水田で活用していただいて、宮城県の稲わらを鹿児島の肉用牛の飼料として活用するといった内容でございます。
畜産堆肥につきましては、全国的には偏在しておりまして、特に米の主要生産県では不足するという県が多くございます。堆肥は、ペレット化することによって、運送効率も上がりますし、特殊な機械がなくても散布できるようになるということでございます。
一方、畜産県鹿児島では粗飼料を多く使用しておりますけれども、輸入情勢、また価格の不安定化という課題を抱えておりまして、国産化を進める必要があるという状況にございます。
資料九ページですけれども、こちらの方では、肥料をペレット化して、有機配合ということで、お茶ですとか果樹の肥料として使っていく。さらに、化成肥料と混合して、混合堆肥を肥料として一般の野菜、水稲などの肥料に使っていく。このような二つの方法で取組を今行っているところでございます。
十ページに実績がございますけれども、令和五年度はここにあります二十一銘柄で展開をしておりまして、下の方にありますが、令和五年度は八千九百トンほどの実績であったというところでございます。
次に、資料十一ページでございますが、堆肥入り肥料を更に拡大するために、堆肥ペレットの製造設備を先月新たに設置したところでございます。原料の安定確保に向けて、年間三千トンの製造を目指しているというところでございます。
以上が、私どもの取組についての紹介でございます。
ここから、今回の食料・農業・農村基本法についての意見でございます。
まず、肥料の需要量が減少しているという状況でございます。
先ほど資料の五ページで説明しましたけれども、私どもの配合肥料の実績、前年比の約八〇%という実績でございます。ほかの県ですとか肥料メーカーに聞いても、前年比七〇%というのが一般的なお話となっております。
この原因につきましては三つあると思っておりまして、一つ目は流通在庫の存在、二つ目は施肥量の減少、三つ目は生産面積の減少でございます。
一つ目の流通在庫につきましては、価格が高騰する前の令和三年頃に購入した肥料が卸売業者ですとか農家の在庫となっている、それが流通又は利用されているということでございまして、安いときに買いだめる、つまり、備蓄という行為ですので、これは自然なことだと思っております。特に問題視することはございません。
二つ目は施肥量の減少ということですけれども、肥料価格が高騰する中で、生産者がコストを抑えるために、面積当たりの施肥量を削減しているということでございます。一時的に施肥量を落としても影響が出ない場合もございますけれども、これが続くと品質なり収量が落ちてくるというふうに思っております。生産者が施肥量を落としているというのは、作った作物に価格が転嫁できないからというのが主な要因でございます。
今回の改正案では、第二条の五、また第二十三条、三十九条あたりに食料の価格形成について記載されているというふうに思っておりますけれども、適正な施肥を行うことが生産量の確保につながるものと思っております。農業生産量の増大、確保のために、生産に必要なコストは農畜産物価格に転嫁できるような仕組みの構築を強く要望するものでございます。
三つ目の生産面積の減少でございます。鹿児島県の生産面積は、私の担当している米では、令和の五年間で一二%ほど減少しておりますし、でん粉原料用のカンショにつきましては、病気の蔓延もございますけれども、約五〇%減少という危機的な状況でございます。
最近の生産コスト高騰を契機として、高齢の生産者を中心に、農業をやめていくということが現実に起こっているということでございます。二〇五〇年には基幹的農業従事者が七五%減少する、農地面積は三〇%減少するという予測もございますけれども、価格転嫁が進んで、しっかり利益が確保できる農業経営ができるようになれば、見通しも変わってくるんだろうというふうに思っております。
繰り返しになりますけれども、食料の価格形成については、必要なコストが考慮されることを希望いたします。
次に、先ほど、私どもの堆肥入り肥料の取組を紹介しましたけれども、資料の十ページにありますように、全体では二割ほどの切替えにとどまっているという状況でございます。
資料の表に青い字で三角の表示がしてありますけれども、これは類似肥料に対する価格の削減率でございまして、類似肥料に対して一〇%から三〇%ほど安い価格となっているということでございます。
肥料が高騰する中で、価格的なメリットがあるにもかかわらず、思ったほど切替えが進んでいないという状況になっております。生産者の方では、当然ですけれども、実績のある肥料を使う傾向にございます。これまで安定して生産ができていた肥料を変えることにはリスクが伴います。
しかし、改正案の中では、環境面を考慮しながら持続的な農業を目指していくということでございます。私どもとしましては、第十二条にございます農業に関する団体として、また肥料事業者として、循環型の肥料の展開を既に進めております。改正案の第十条には農業者の努力、第十四条には消費者の役割がございますけれども、やはり生産者、消費者の理解がなければ取組も進んでいかないものというふうに思います。
生産者、消費者への周知を図っていただいて、生産者は環境配慮型の肥料を選択する、消費者はそれによって生産された農産物を積極的に購入するというような施策を講じていただくようお願いしたいというふうに思っております。
以上が意見でございますけれども、今回の食料・農業・農村基本法の改正案につきましては、私どもとしては、全体的に賛成の立場でございます。
基本理念の実現へ向けて、必要な施策が確実に実践され、食料の安定的な供給、農業の持続的な発展、農村の振興が図られることを期待して、私の意見陳述とさせていただきます。
本日は、ありがとうございます。
○野中座長 ありがとうございました。
次に、田代正一君にお願いいたします。
○田代正一君 鹿児島大学名誉教授の田代正一と申します。本日は、よろしくお願いします。
私の専門は農業経済学です。二年前に大学を定年退職し、現在は、地元の有機JAS認証機関であるNPO法人鹿児島県有機農業協会の理事長もしております。
本日は、衆議院農林水産委員会地方公聴会において意見陳述をする機会をいただき、大変光栄に存じます。また、国の重要法案である食料・農業・農村基本法改正案の審査に係る地方公聴会をここ鹿児島の地において開催していただきましたことを、県民の一人として大変うれしく思います。衆議院農林水産委員会の関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
それでは、食料・農業・農村基本法の改正案について、大きく五つの項目に分けて私の意見を述べさせていただきます。
ただし、時間の関係もありますので、先日、東京で行われた公聴会における東京大学の鈴木教授、安藤教授が詳しく指摘されたような点につきましては、言及することを差し控えさせていただきます。
余り全国的にも指摘されることが少ないような、ちょっと変わった見方の意見陳述をするかもしれませんけれども、どうぞ御容赦ください。
まず一点目は、食料安全保障の抜本的な強化についてでございます。そして二点目が、環境と調和の取れた産業への転換ということについてです。三点目は、人口減少下における農業生産の維持発展ということですね。そして、四点目と三点目を合わせてなんですが、人口減少下における農村の地域コミュニティーの維持という点について若干コメントしたいと思います。そして、最後に、それ以外のことについて、私がふだん感じていることを述べさせていただきたいと思います。
まず最初の、食料安全保障の抜本的な強化ということが今回の一部改正法案にありますが、そもそも、食料安全保障という概念、フードセキュリティーといいますか、この概念は、幾つかの意味合いがあると思います。
私が研究を始めた若い時代に、一九七九年のことですけれども、ソビエト連邦、ソ連、今はロシアですけれども、ソビエト連邦がアフガニスタンに侵攻しました。それで、それに対する対抗措置として、アメリカがソ連に対して食料を輸出しない、対ソ禁輸措置を取ったんですよね、懲らしめてやるぞと。ということで、一挙に、食料というのは武器、武器としての食料というのが脚光を浴びました。
これで一瞬、輸入が止まるのかと震え上がった国もあったんですけれども、しかしながら、ソビエトはブラジルとかアルゼンチンとかにかけ合って、難なく代替輸入を確保して、アメリカの禁輸措置は実質的な効果を持たなかったという歴史があります。
ただ、そのときをもって、武器としての食料というのが非常に脚光を浴びて、その後、日本政府も、安全保障の一環としての食料確保ということを非常に重視するようになりました。日本政府、特に農林水産省がですね。
毎年の農林水産省、昔の農林省が発表します農業白書、今は食料・農業・農村白書になっていますが、その中にも必ず食料安全保障という言葉が出てくるようになりましたね。国としていかに基幹食料を確保するか、有事の際に確保するかというのが、長年、政府の懸案事項として受け継がれてきたわけです。
しかし、政府の主張することも分からないわけではないんですけれども、いろいろな国際会議で外国人と接する人たちの話を聞いてみますと、何で日本のように豊かで食にあふれている国が食料の危機を心配するんだ、何かおかしいんじゃないか、日本に行ったら物すごい残飯が出ているし、食料廃棄物が出ているし、宴会があれば食べ残しがいっぱいあって、どこに食料不足があるんだ、いつ食料危機が起こったんだと質問されるそうです、外国の研究者から、私が知り合いの研究者から聞いた話では。
ですので、国として何かあったときのために食料安全保障を考えるというのは別に悪いことではないんだけれども、客観的に見ると、日本が食料危機に陥ったことはほとんどないんですね。
一九九三年、平成五年の米の大不作のときは、米が七五%しか取れなかったので、国民みんな慌てふためいて、農水省はいろいろな国に米を買いに行った、食糧庁が買いに行ってかき集めてきてくださったんですけれども、その結果も、日本人は舌が肥えているといいますか、外国の米はまずいとか粘り気がないとか言って食べずに、挙げ句の果てには、公園に山積みして捨てている業者もいたというような話がありましたよね。私が実体験した話です。そういう飽食の日本の国がどうして食料安全保障をそんなに心配するんだというのは、外国からの声としてあるわけです。
そういうこともあって、最近の食料・農業・農村基本法の一部改正では、食料安全保障の概念が多少変えられまして、FAOが主張している概念に変換されたという事情があると思います。FAOは、元々は、貧しい人たちが日々暮らしていける食料、栄養が足りない人たちの問題をどうするかという観点で食料安全保障という概念、フードセキュリティーという概念を使っていましたので、それに近い形で今回は焼き直されたんじゃないかなと私は思っております。
食料・農業・農村基本法は、現行法も改正後も、国内生産を最重視し、輸入と備蓄を組み合わせて国民に安定的な食料を供給していくということですけれども、一方で、それだけでは、日本は人口が減少して需要が減退するので尻すぼみだ、先すぼみだ。どうにかしなきゃいかぬ、農業生産基盤を維持拡大するには、やはり輸出で、どんどん生産を増やして海外に売りまくろうではないか、売って回ろうじゃないかという考え方ですよね。
これは、別にそれを否定するつもりはありません。現に、近年、日本の農産物輸出は着々と増加してきておりますし、一兆円の大台も超えたということですよね。そのうちに二兆円という目標が掲げられています。
ただ、ここで一つ、私がふだんから感じておりますことは、農産物輸出といいましても、実際は、中身を見ると、加工食品輸出なんですね。米や野菜や肉や一次産品を、生鮮食料を輸出している額は僅かです。大半は加工食品であるということです。これは認識しておく必要があります。
私は、別に加工食品を作っている産業界を否定するつもりは全くありませんし、重要な雇用機会を提供してくださっているわけですから、大切な産業ではあるんですけれども、農業振興のために輸出振興というのは、若干ミスリーディングなところはありますよということですね。これは指摘しておきたいと思います。
皆さん御存じかどうか知りませんけれども、主な輸出品は、アルコール飲料、ホタテガイ、牛肉、ソース混合調味料、清涼飲料、ブリ、お菓子、真珠、緑茶、丸太、粉乳、サバと、リンゴ、ナマコ、カツオ・マグロ、ホタテガイ、スープ、小麦粉となっています。金額の多い順にですね。
こういうふうな輸出品の中に、では、お米はどこにあるんだ、牛乳や牛肉はどうなっているんだ、青果物はどうなっているんだと見ていくと、金額は一桁少なくなるんですよね、加工食品に比べると。ですので、それをきちっと国民にも明示して、その上で、なおかつ、農産物の輸出を拡大して農業生産を拡大するんだよということをちゃんと説明する必要があると思います。加工食品の原材料は、多くは輸入原材料が使われていると思いますね。
次に、環境と調和の取れた産業への転換ということですけれども、これは二年前ですかね、みどりの食料システム戦略というのを農林水産省が打ち出されまして、特に私が驚いたのは、有機農業ですね。化学肥料や農薬、それから、遺伝子組み換え技術を使わない有機農業を抜本的に拡大していくんだという新しい戦略を打ち出されまして、本当に、私としては、驚きとともに、ありがたいなと思ったわけですけれども。
ここ鹿児島県は、北海道に次いで、有機JAS認証面積が二番目に大きい県です。有機農業が非常に盛んです、特にお茶ですね。お茶は、輸出するには、有機栽培じゃないとどこも買ってくれません。お茶は、ほかの野菜や果物と違って、皮をむいて食べるわけでもないし、洗って飲むわけでもないし、葉っぱにお湯を注いで、そのまま飲みますからね。もし残留農薬があればそのまま飲むということになりますので、外国人は非常に敏感ですね。これを今、鹿児島県では、輸出したいという農家が認証を取るために、たくさん申請されています。そのおかげで、鹿児島県が全国二位のJAS認証面積を誇るということですね。
それから、環境との関わりで申し上げますと、最近、遺伝子編集食品というのが脚光を浴びていますよね。昔は遺伝子組み換え食品だったんですけれども、遺伝子編集食品はより安全で確実な組み換えができるということで宣伝されて、これからはもう遺伝子編集だという流れになっています。
これは、アメリカなんかではちょっと市民が警戒しているような動きもあるんですけれども、日本では全くその警戒はなくて、このままいけば、遺伝子組み換え食品同様、遺伝子編集食品の世界で最先端の消費国となるのは日本ではないかと私は予想しますね。これはいいことか悪いことか、人によって価値観は違うと思いますけれども。
時間がありませんが、最後に、気候変動に関することですね。
最近は、国連の気候変動枠組み条約の下で、日本も地球温暖化対策推進法を制定して、いろいろ努力していますけれども、私に言わせますと、これは政治的な真理であっても、科学的真理ではありません。
人間が出すCO2が地球を温暖化させているという仮説に対して、反対している学者が世界中にはたくさんいます。そういう人たちがたくさん署名をして、アメリカ政府を動かして、結局、アメリカ政府は京都議定書にも、批准しなかったというようなことがありますよね。
ですので、ヨーロッパを中心とする国連のエリートたちが盛んに喧伝している温暖化対策、IPCCを始めとする温暖化対策は、これは確固たる科学的根拠に基づくものではありませんので、いつ事実によって否定されるか分からないというのが私の見解です。これはいずれ結果は出ると思いますけれども。
多くの学者が、人間が排出するCO2が温暖化の原因ではないと主張している人はたくさんいますので、その辺りはある程度認識した上で、今後の我が国の食料・農業・農村政策も、そういうこともある程度視野に置いた上で対策なり研究なりを進めないと、全て温暖化でオールインして、気がついたら、あれ、違うということになったら取り返しがつかないですから。
私としては、是非ともその辺りは、農林水産省の方でも御検討いただければと思います。今日お配りした資料の最後の方の三ページぐらいを是非お読みください。
時間になりました。よろしくお願いします。
ありがとうございました。
○野中座長 ありがとうございました。
次に、八尋健次君にお願いいたします。
○八尋健次君 皆さん、こんにちは。オーガニックパパという会社をやっております八尋と申します。
福岡県太宰府市に本社がありまして、その近郊及び宗像市というところで農業をやっております。農福連携の専門会社です。
資料を準備していなくて済みません。十五分、我々の取組、また、今回の法案の改正に伴うことにお役に立てればと思っております。
私どもは農福連携の会社で、六十五人の障害者と、二十人くらいの、グレーゾーンといいましょうか、引きこもり、不登校、不登校から引きこもりになるんですけれども、そういう方々が正社員としてお世話したり。正社員が二十人くらい、パートタイマーが十五人くらいですかね、それで六十五人くらいの利用者さんと一緒に有機農業を行いまして、農福連携というスタイルなんですけれども、オーガニック給食を供給しております。
一日千食、幼稚園や大学等の学校が八割、ほかは、老人ホーム、老人施設とか障害者施設に一日千食納品しております。八割は学校で、二割くらいが今言いましたいろいろな施設という感じです。
千食、今、納品していますけれども、毎年、二千食は断るという感じで、すごくオーガニック給食はニーズが高くて、断るとかそんな生意気なことじゃないんですけれども、もう人手が、一気にはできなくて、農産物も。ちょっとしか無理はできないので、ちょっとずつ無理しながら食数を伸ばしています。どれだけでもよければ、どれだけでも体制が取れれば。今、手作りしている最終段階くらいじゃないですかね。もうちょっとしたら工業化して、もっと機械力が要るんじゃないかなというところです。
月間約千七百万くらいの、農業や、そうやって、六次化といいますか、給食事業で大体千七百万くらいの売上げになっております。農福連携としては非常に高めな実績を残せていると思います。
よって、障害者福祉ですけれども、まあまあ所得も高くて、今、九州では、一番高いB型就労継続支援というものでは、月の工賃が七万三千円平均ですので、九州では一番高いという感じです。調べておりませんが、全国では何位だろうというのがちょっと分かりませんけれども、どんどんどんどん所得は伸びていくので、そのうち日本一にもなるんじゃないかなと思っています。
そのような実態はどこから構成してきたかという話なんですけれども、私たちは小さな零細企業ですので資本もそんなにありませんし、やはり、農家が農福連携をやっているようなことで、自前で全部やっているという感じです。もう足りないものだらけなので、是非、この法案の改正の際には、今からの話を参考にしていただけると助かります。
まず、僕らは、農業には二種類あると考えていまして、まず一つが、大規模な、とても集約化された、基盤整備とかされていて、ちゃんと法人化して、スマート農業とかを的確にやっていく専業農家の農業と、それと、どうしても同じ地主さんが持っているんですけれども、都市近郊型の、形の悪い、十六町あります、百六十反あるんですけれども、その中で四角いところはゼロか所というくらい、全部、星形とか月形とか、真っすぐな面がないんですね。全部、中山間と都市近郊の農地を僕らがほぼお借りしてやっております。
そのような、とても農耕に適切な場所と、農耕に向いていない、専業農家の足手まといというか、これも全部同じ所有者が持っているので全部借りるんですけれども、高齢化が進んでいますのでどこもかしこも借りるんですけれども、正直言って日当たりが悪くて、福岡でいえばじゅるくて水が引かなくてとか、日当たりが悪くて形が悪くて面積が小さくて、耕作するところよりも草を刈る面積が広くてとか、そういうところもたくさんあって、こういうのは農業で食べていく専業農家にはとても、逆に足手まといで経営を邪魔するものになるんですけれども、そういうところを一括でお借りして、農福連携の力でそこも全部耕作していこうという作戦でございます。
やはり国の補助があっての農福連携ですので、クリーンというか、農業において安定的な経営を邪魔するものをやはり農福連携で補えたらと思いまして、今も、そういうみんなが借りたくない土地はありませんかということで借りております。
そこで、主には知的障害の方や、発達障害と言われる精神疾患の一部なんですけれども、発達障害系統の方、また精神病を患われている方、いろいろな方が来られますけれども、そういう方が今六十五人ほど働いてもらっています。まだまだ、増え続ければ増え続けるで、人手は常に足りていませんので、どれだけでも必要です。本当に、普通ではA型とかB型とかいって就労支援所に来られないような人でも、重度の人でも、結構、農業だったらやることがたくさんありますので、どんな方でも受入れできると思います。来て余り役に立たないなというような人はほぼいません。内勤も多いから車椅子の方もたくさん参加できると思います。そういう方々が、毎日、週五回、七・五時間とか九時間労働の間の中で、七時間から九時間くらい来ていただいております。
その方をお世話する、自分だけの力ではできないので、お世話する人たちも、農福連携ですので、農福の福はちょっと範囲が広くて、高齢者とか引きこもり、不登校の方とか、不登校と引きこもりはちょっと線が余りないんですけれども、不登校からずっと引きこもっている方とか、生活困窮とかも福祉ですので関係ありますし、あとは出所者の方とかも関係ありますね、福祉施設から。場所がいっぱい、あちこちあちこちで作業をわざとしていますので、どんな方がお見えになっても、障害者福祉サービスを適用されてもいいし、その方をお世話する側、すなわちパート、アルバイトとか正社員になってくるわけですけれども、そういう方々でも雇用して、お世話してもらいながら農業をしたり給食を作ってもらったりしております。
特に、知的障害の子と、不登校、引きこもり、社会人ですから引きこもりの子ですね、引きこもりの子はすごく相性がよくて、やはり学校ではうまくやれなかったり、社会で会社勤めしてもうまくやれなかったりするんですけれども、知的障害の子と一緒に農業をやったり給食を作ったり、その途中、選果したりピッキングしたり一次加工したり、ピーラーだけめっちゃうまくて皮むきがうまいとか、そういう、どんな仕事でも端から端までかなりありますし、また、朝四時から夜二十二時までオーガニックレストランとかもあるので、どこに参加してもよくて、障害の半分は精神的なアップダウンですので、そういう方々が、アップダウンする中で、落ち込んでいるときは人と余り会わない仕事を選んだり室内を選んだり、気持ちが高ぶっているときは農園に行って走り回ったり重たいものを運んだり。
有機農業でオーガニック給食という背景にはたくさんの業種があって、毎日気分で選べるというか体調で選べるというか、そういうことを繰り返すことで、どんな方も長続きしますし、成果というのは必ず出てきます。一年で覚えられるものを三年かかる人、これは落ちこぼれて引きこもりとかになるんですけれども、まあ、三年待てばちゃんとできるようになって、四年目からは健常者より早いというようなことになってきます。
ですから、ちゃんと稼げるように訓練すれば、どの方もなっていきます。ならない方に会ったことがないというくらいどなたもちゃんと稼げるし、笑顔ですし、やりがいと社会性はありますし、とってもいいことをしているというプライドも持てますし、所得にも思いっ切り反映しますしね。食べるものはあるので賄いはどれだけでも食べられますし、生活費が余りかからないから貯金、預金残高も結構みんなあるんじゃないかなと思っています。
そんな中で、農福連携の福を広く捉えて、どんな方でもお世話側、またお世話される側に、いろいろな労働環境を整えて、一人で働くこととバケツリレーみたいに百人並ぶことと、いろいろなことを兼ね備えることで、そのような環境づくりをすれば全員続くというようなこと、また、そういうマイノリティーの方々が非常に増え続けて、そういうサポート、ちょっとしたコツとルールさえ守ればどんな会社でもできますので、今こそそういうソーシャルファームが日本中にできていけばいいなと考えております。
その中で、もう一個大事なポイントが、山林未利用材を使っているんです。山の樹皮とか枯れ葉、落ち葉とか、草刈りをした枯れ草とか、そういうのを肥料で使っているんですね。そういうのを肥料に使うことで非常に微生物が大繁殖します。微生物を大繁殖させると、それがどう人間にとって効果的になっているのか。
不登校とか引きこもりというのは元気がないんですね。その元気がないという曖昧な症状というか状態なんですが、これは体の中の菌類たちが動いていないに近くて、もりもり健康なものを食べて微生物がたっぷりいるところにいたら大体克服する。不登校、引きこもりには三種類種類がありますけれども、その一種類、三分の一は大体克服する。元気がないだけ、優しくておとなしい子、この辺の子たちは、農業をやること自体で見る見る変わっていって、元気が出て、あっという間に普通に近づき、普通以上になって、要は若者の精神病ですから、これは本当に、いとも簡単にと言ったら簡単に言い過ぎですけれども、克服できます。
そのためには、そうやって微生物を繁殖させる、野菜というのは大体好気性の微生物が大好きなので、畑で意図的にそういう環境をつくって、実はそれは山林未利用材とか産業廃棄物、枯れ草とか、そういうものを引き取って使わせてもらっています。我々も、遠賀川という川の枯れ草だけで農業をやって、年間六十種類の給食用の野菜を使っていますけれども、それで見る見る野菜はできるものです。
それは、福岡で書かれたんですけれども、一六九〇年代に「農業全書」が書かれていまして、宮崎安貞さんという方が書いた。これを何度も読み返して、要は、江戸時代の農業をまねしてやっているという状態です。あのときの農業は、有機農業の中でも畜産系の堆肥とかはなかったんでしょうね、草と竹とか枝とかばかり使われている。これが、本当かなと思って十八年前からやってみたら、本当でして、見る見るどんな野菜もできる。そうしたら、皆さん、草を持ってくるようになって、全ての圃場に有機JASも取っているので、出先が分かるもの、分からないものと取り分けて使わせてもらっております。ですから、皆さんも大分、産業廃棄物処理代が減ったんじゃないかなと思っています。
これが全然足りていません。みどり戦略の中では、行政の応援というものが有機農業にあるんでしょう。そのときに、やはりエコシステムというか、循環型社会の炭素資材、山林未利用材とか、そういう公園の枯れ草とか刈り草とか、意外とあれは水分を含んでいるので燃やすお金もかかりますし、それをリサイクルする屋根つきの堆肥場みたいなものを貸してもらえると、本当に有機農業は一気に広がっていくんじゃないかなとかよく思っています。それに、軽のダンプがあったり、二トン車のダンプがあると、全員、農家はそれを畑にまくんじゃないかな、地盤改良材で。
それを、うちは多動症の子がまいているんですね。今、クラスに一〇%くらい不登校がいますでしょう。その中の何%かは多動じゃないですか。机の上を跳び回ったり、跳びはねて給食の時間は動物園みたいになっていて。あの子たちが、寝る以外、全部動いているわけですけれども、その子たちが、やはり手芸のようなことをさせたら、夜、寝なかったり、家でストレスをためて大変なので、畑で思い切り動かすんですね。枯れ草とかを畑じゅうにまいてくれています。ですから、種さえまけば何でもできるという状態です。福岡に来てもらったらその現場をお見せできると思います。
それで、その子たちは一回で覚え切らぬので、十回も五百回も聞いてくるんですね。職員はいらいらするんですけれども、高齢者とか、また、そういう知的障害の子に引きこもりの子たちは優しく何度も教えてあげて、とてもお互い向上し合って、オーガニック給食ということで、今、千食、幼稚園中心に届けています。
これが、野菜嫌いの子供たちが、野菜が変わっただけでばくばく食べるんですよ。その現場をお見せしたい。本当に、食育をしている幼稚園と食育をしていない幼稚園というのは、全く子供たちの様子というのは違うものです。
といいますのは、引きこもり、不登校、若者の精神病が、二十歳ぐらいや二十何歳で困って来るわけですけれども、それから面会を何百回もしたり、何十時間も何百時間もかかるわけです。治るとはいえ、元気になるとはいえ、元には戻らないわけですし、そこまではならないわけです。早くから、高校時代、中学、小学校と遡って対処しておけばそうはならなかったので。どうしても、その中の一部、食、幼児の食に問題があることが分かってきて、それからのアプローチで幼稚園給食をやっています。
すなわち、不登校、引きこもりとか精神病とか知的障害の大本の原因に対処していきたいという思いで給食をやっています。そうすると、どんどんどんどん子供たちの発育も変わっていって、きっと不登校は減っていくことだろうと思います。千九十五食、子供は千後半を一年に食べますけれども、二百食の給食を変えただけで随分と子供の様子は変わります。食習慣というのは変わるんですね。幼児のときに身につけることがとても大事なんですね。
また、その辺のこととこの法案がすごく実は関連しているということで、実に、今こそ食の安全、安心というのは急務、待ったなしの、もう大急ぎでやらないといけない。それは幼児食を中心に変えていかなきゃいけない。その大本となる原料は、一方では専業農家の大規模化もあるんでしょうけれども、日本には二種類の農地がある。農地に不適切な都市近郊等は農福連携で担ってほしい。日本の福祉施設が動き出しただけで十分に数は足りています。その数が動き出せる政策が今後もよりできていくことを願っております。
最後に少し、今、肥料の件を申し上げました。あと、日頃困っているのは物流の面ですね。それと農機、機械関係ですね。やはり、年に五回しか使わない、慣行農業だと十回使うものが、有機農業でも二回ぐらいは使うんですね。その機械面ですね。あと販路。この辺のところで力をかしていただけますと、農福連携はまだまだ実施できると思います。日本の農業において、農福連携というのが大きな肝になってくると思います。
どうぞまた、この法案がよりよい形で改定されることを心より願っております。
どうもありがとうございました。
○野中座長 ありがとうございました。
次に、内田智也君にお願いいたします。
○内田智也君 こんにちは。本日は、お招きありがとうございます。
熊本県阿蘇市から参りました、農業生産法人有限会社内田農場の代表取締役、内田智也と申します。本日はよろしくお願いいたします。
私は、先生方と違って、難しい話はちょっと分かりませんので、農業をしている立場から、やっていること、また、その中で課題、要望というふうにお伝えできればなと思っております。
私は、大学を卒業して、先代になります父親が会社を、農場を法人化しておりましたので、就農という形ではなくて、履歴書を持っておやじに入社をさせていただきました。所在地は熊本県阿蘇市内牧、今、TSMCの進出、JASMの進出で大変にぎわっております、坂本大臣のお膝元、菊陽町、大津町から約三十キロ、山に登りまして、阿蘇カルデラ、阿蘇神社があるところでございます。今は台湾、韓国からのインバウンドのお客様が大変多く訪れておりまして、阿蘇の人口よりも多いんじゃないかと思うようなところで農業をしております。
設立は、今期で二十九期目を迎えましたけれども、先代である父親がその前は養豚を高校から営んでおりまして、水害で豚舎が全部流されて、再建を考えていたところ、今後、阿蘇市の農地を誰が担っていくのか、高齢化する中で誰が受皿となっていくのかというものを考えまして、養豚業から土地利用型の農業に転換したと聞いております。
資本金は五百九十万となっておりますが、半分以下の四九%をアグリビジネス投資育成会社から投資をいただいております。
事業内容としまして、経営、賃借を含めまして、約七十ヘクタールの阿蘇の圃場で、米の生産、販売、大豆、麦の契約栽培、そして今、非常に注目されております餌用子実トウモロコシの栽培にチャレンジしております。そして、阿蘇の農家様の農作業のお手伝い、農作業受委託、そして、冬場は、自分たちの圃場を、業者ではなく自分たちで行う暗渠排水事業であったり、農業土木というものを弊社で事業として行っております。
すごくすばらしい経営をしているわけではないんですけれども、特色としまして、阿蘇の風土を生かした耕畜連携による有機物循環農業の確立ということで、米作り、農産物の我々のテーマ、哲学としまして、阿蘇で、阿蘇のものを使って、阿蘇の人でお米を作るということを掲げておりますので、阿蘇にたくさん、畜産、酪農も盛んでございますので、我々から出る稲わら、もみ殻等の粗飼料を畜産農家さんに回して、そこから出る完熟した堆肥を全圃場に還元してあげるという耕畜連携の有機物循環農法を先代より長くしておるおかげで、昨今の肥料、農薬の高騰に対しましてもそこまで大きく影響を受けずに、阿蘇の地の利を生かした米作りをさせていただいております。
そして、先ほど申しました、国庫事業による圃場の大区画整備ではなく、自社の機械を用いた、自社の圃場整備拡大を自社で行っております。お客様から約三百筆の圃場を今お預かりしておるんですけれども、もちろん了解を得て畦畔を一本、二本抜かせていただいて、今、約半分の百四十筆まで圃場を集約、大区画化をさせていただいております。その中でも、先ほど申しました、やはり中山間地の問題であったりとか、阿蘇は湖の下にあった地区なので非常にぬかる湿田が多くございますので、なかなか条件的に難しい圃場はあります。
そしてもう一つは、圃場管理のスマート化。三百筆圃場がございますと、新しく入った社員ではなくても、我々でも、どこに何を作付して、誰がいつ何を作業したのかというものが分からなくなってきておりますので、昨今、最近多い圃場管理システム等を用いまして、タブレット端末一つで、どこで誰が何を作業しているか、また、お客様に対して、トレーサビリティーとして何をいつ施用しましたというものが分かるシステムを導入している。
そして、栽培管理のスマート化として、以前はベンチャーであったりとかアメリカ・アップル社と田んぼ一枚一枚にセンサーをつけておったんですけれども、見栄えはいいんですけれども、余り土地利用型との親和性がよくないので、今は、全農さんが取り扱っていますBASF社の人工衛星から圃場管理ができるザルビオというシステムを使いながら、上から、面で、圃場の地力のばらつきあたりを確認しながら作業に取り組んでおります。
やはりこういったスマート農機、スマート農業というものは、見栄えはよいですけれども、さっきから申している、いい機械であっても一〇〇%使っていけていない実態がございますので、まずはしっかり圃場を集積して圃場を大きくすること、そうすることで、そういったロボティクスだったり自動運転だったりとか、センサーというものが生きてくるのかなと思います。
スマート農業というのは、若い人の機械、機器だけではなくて、我々のおやじたち世代の高齢者であっても力仕事を負担なく快適に作業できること、そして、八尋さんがおっしゃいましたけれども、障害を持った方でも我々と一緒に米作りができるような世の中にするためのデバイスだと思っておりますので、目的になってしまっているのが非常に残念だなと思いますので、あくまで手段としてスマート農機の導入を、入れることを我々も肝に銘じております。
そしてもう一つ、我々の特徴でもございます受注生産販売方式を取り入れたお米の多品種栽培と作期分散です。
以前は、私が入社した頃は、地域のライスセンターも担っておりますので、朝五時頃、おやじともみすりをして、日中、稲刈りに行って、また帰ってもみすりをするという仕事を毎日続けておりましたけれども、人を雇う中、また、若い人が入ってくる産業の中で、なかなかこれでは難しいということで、いろいろな作物への転換も考えましたけれども、阿蘇地区というのは年間約三千ミリの大雨が降るところでございますので、なかなか水稲以外の作付が難しい。
その中で、高冷地を生かしたコシヒカリの栽培が盛んであったんですけれども、我々は、自社の品種は、九月中に収穫する品種じゃなくて、十月、十一月まで延ばすことで、お客様の受入れもできる、そして機械の稼働率、そして気候による作期分散をしようということで、現在は、水稲約十五品種、リスクも多いんですけれども、米しかありませんので、米でどうやって飯を食うかということで、稼働率を高く、長くするような経営にしております。
以前は、大手牛丼チェーン、大手コンビニさんと業務用米の取引をしておったんですけれども、やはり市場価格であったりとか、契約栽培という名の向こうの言い値、相場というものがございますので、これは私じゃなくてもいいなということで、自分にしかできない、阿蘇でしか作れないお米を我々は作りたいなということで、現在は、日本、海外も含めまして、三十社の日本酒の蔵元さんと醸造用玄米、酒米の取引を、約九割、行っております。
そしてもう一つ、お米は非常に時間がかかる、非常に大変というイメージも持たれがちですけれども、多くなる耕作面積を受ける中で、やはり田植だけではなかなか先々立ち行かないなということで、直播、種もみをそのまま田んぼにまく、麦と同じような栽培方法、乾いた田んぼに種を直接まく乾田直播という畑作技術を取り入れまして、田植が五月連休から始まるのであれば、三月、そしてまた今頃の時期に作期分散として種もみを田んぼにまいておくという方式を取り入れております。
その中で、私ども至らない経営者はたくさん課題を抱えておるんですけれども、経営的な課題に関しては改善を繰り返すしかないと思っております。ただ、なかなか我々の努力だけでは解決できない課題というものに農地という問題がございます。
弊社は、現在、約百数名の地権者と農地の賃借契約を結んでおります。農地中間管理機構、農地バンクというものを通して、地主さんと我々が直接やるのではなくて、間に第三者機関、農地中間管理機構を通して事務的な支払い、契約等を結んでおりますし、それが令和七年以降、国も全面移行というふうになっておりますが、半分近く、四〇%は農業委員会を通す契約であったりとか相対の契約になっております。
当然、全面移行させたいんですけれども、農地の相続が行われていないケースが非常に多くて、苦戦を強いられております。それはやはり、地主さんがこちらにいらっしゃって、生きている場合は、印鑑であったりとか相続の問題もクリアしてまた賃借契約は結べるんですが、我々のお借りしている地権者さんの半分以上は、もうこちらに、阿蘇地区にいらっしゃらない方が多かったり、また、その御子息をたどっていっても、じいさん、ひいじいさんの名前のまま、山林、田畑、相続されていないケースが多いので、宙ぶらりんというか、我々がそれを全部事務的な、印鑑をもらいに行くのも非常に困難ですので、なかなか借りたくても借りられないというケースと、もう一つは、賃料の交渉です。
農地中間管理機構は、事務的な手続はしていただけるんですけれども、一番我々がしていただきたい、地権者さんとの賃料であったり条件の交渉は一切行いませんので、我々も、物件に対してお金を支払うという形でいっておりますので、条件が悪い圃場であったりとか先代から借りている非常に高額な賃借料の部分を交渉に参るんですけれども、下げてくれといって、喜んで下げてくれる地権者さんはいらっしゃらないので、そこの地域的な関係性であったりとか今まで行ってきた取引をまた見直すというのは、なかなか我々個人の努力では難しく感じております。
以上のことから、相続されていない農地や、また相対での賃料交渉など、非常に我々のような受け手に過大な労力がかかっておりまして、本来であれば行うべき生産管理活動になかなか専念できていない現状がございます。
要望としましては、管理機構に人員、今、阿蘇市でも、約五千五百ヘクタールを一人の事務員さんで管理機構は担っておりますので、非常に膨大な仕事量であったり、先ほど申した賃料交渉にしても、権限等がございませんので、なかなか直接管理機構から交渉を持ちかけるのが難しい。そして、地権者がどんどん減少している中で、全国でも、地域の用水路など、共同作業等が非常に困難になってきております。
我々のような受け手になる耕作者に全て負担が行かないよう、そういった中で、業者さんに委託する仕組みだったりとか予算をお願いしたいですし、五年水張りが決まりましたけれども、農地も、水を張ることを前提とすることではなく、地域性であったりとか取引による経営判断で作物を選択できるよう、農地も農業者によってカスタマイズが求められていると思います。
国庫事業で行うような用水、パイプラインを前提とした大規模な圃場整備を我々はお願いしたいわけではなくて、自社で施工できるようなちっちゃい圃場整備にも御支援をいただきたいなと思っております。
やはり我々のような土地利用型経営も、水田だけではなく、何筆も何筆も合筆して、少し勾配をつけたりとか、畑作に転換している農家も非常に多くあります。
昨今、危機感や悲壮感が叫ばれる農業界ですが、やはり我々の子供たちが夢を持って志す、わくわくするような産業にしていきたいと思いますので、今後とも御指導、御支援のほど、よろしくお願いいたします。
以上です。
○野中座長 ありがとうございました。
以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○野中座長 これより委員からの質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。保岡宏武君。
○保岡委員 自民党の保岡宏武と申します。
本日は、地元鹿児島での地方公聴会の開催、そしてまた、このような質疑の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。委員、皆様に心から御礼申し上げます。ありがとうございます。
そして、意見陳述者の先生方には、貴重な御意見、そしてまた今のお取組をいただきまして、誠にありがとうございました。
これから法改正、いよいよ最終盤に入ってまいりますけれども、先生方のいろいろな御意見をまた取り入れながら、しっかり、多くの国民の皆さんに、きちんとおいしい食べ物が行き届き、そして、そのためには、農家の皆さんが安心して次の年も次の年も農業が続けられるような、そういった農政をしていけるように努めてまいりたいというふうに思いますので、幾つか質問をさせていただきますが、また御意見をいただければ大変ありがたく存じます。よろしくお願いをいたします。
それでは、まず一つ目の質問に入らせていただきます。
本日は、鹿児島での開催ということで、離島の農業について少し伺いたいというふうに思っております。
今回の食料安全保障というものが、前回の参議院選挙のときにも、鹿児島でも非常にトピックスとして上がってまいりました。それは、言うまでもなく、ウクライナへのロシアの侵攻が起こり、農業にとって非常に大事な肥料や飼料というものがほとんど輸入で賄われているというような現状、化学肥料が輸入で賄われているような現状、そしてまた、食品においても、私たちがふだん口にしているものの中で、小麦というものの価格が高騰したりして、国民生活にも非常に大きな影響を与えたということがあったかというふうに記憶をしております。
その上で、特に離島におきましては、今様々なお取組をJAさんの方でもされていらっしゃいますけれども、やはり輸送コストの面であったり、農業を続けていくための肥料、飼料というのが割高になってしまうというふうな現状がございます。
特に離島におきましては、それこそ国家の安全保障においても、農業というのは非常に大事な役割を果たすという意味もありますので、その点におきまして、今後このようにしたらいいのではないかというような改善点などがございましたら、是非御意見をいただければというふうに思います。
この質問は、新村先生と田代先生の方にお願いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。
○野中座長 意見陳述者の皆様方におかれましては、着席にてお答え願えればというふうに思います。
○新村浩二君 確かに鹿児島でも、離島、特にサトウキビですとか、あと、畜産も盛んな状況でございます。特に、そこに対しては、そういう生産資材を運ぶ必要がございます。
私は肥料の担当ですので、肥料についてちょっと言わせていただきますと、基本的に全JA平等というような考えで県内はやっておりますが、離島については運賃助成というのを設けながら、極端に高くならないような取組は今やっているところでございます。
○田代正一君 私も離島には何度か行ったことがありまして、特に徳之島、沖永良部というのは非常に農業が盛んな地域ですよね。
最近のウクライナ侵攻に伴う肥料の高騰ということが話題になっていますけれども、私の意見としましては、もういっそ、この際、そういう高騰した肥料はできるだけ使用を減らして、有機的な、完全な有機じゃなくても、減農薬の方に移行されるのがいいんじゃないかな、率直に申し上げてそういうふうに、いずれまた肥料の価格は下がるとは思いますけれども、そういう意見を持っております。
それからもう一つは、環境、環境と騒がれる割には、大事な自然遺産である奄美諸島を開発して、大規模な弾薬基地とかミサイル基地とかを造っておりますね。これは、私の意見では、必要ないんじゃないかと。いや、必要だ、中国が攻めてくるから必要だという国民が多いのでそういう政策が遂行されているんだろうとは思いますけれども、やはり奄美は自然を生かした観光で生きていくべきではないかというのが私の意見です。
以上です。
○保岡委員 ありがとうございました。
なかなか、高温多湿ということで、奄美地方は完全にオーガニックというのは非常に難しい地域だというふうにも理解はしておりますけれども、先生の御意見も非常に参考になるというふうに思います。本当にありがとうございました。
続きまして、全く話を変わりまして、今度は八尋先生、内田先生の方にお伺いしたいというふうに思います。お二人が農業を実際にされていらっしゃるということで、お伺いしたいというふうに思います。
今の日本の現状が、基幹的農業従事者百二十三万人のうち五十代以下が二十五万人で、平均年齢が六十八・四歳というような現状がございます。あと十年したら農業の担い手がどうなってしまうのか、どう確保するのかというような中で、今回、農業、農村が崩壊しかねないというわけで、農業の持続的発展というものを基本的な施策として、家族農業に加えて、農業法人の経営基盤の強化というのも今回の改正には加えられております。
その上で、若手の農業者、経営をする側もそうですし、雇用されて農業に携わるという方も含めて、若手の方がこれから農業に参画をしていくという上で、これはこれから是非必要だからやってほしいということ、若しくはこれはやめてほしいというようなことがありましたら、御自身の御経験も踏まえて、何か御提言いただけたらありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○八尋健次君 僕らも、農業の担い手、日本の農業を強くするために、また、農水省と足並みをそろえるためにやっている活動でございます。
農福連携ですので、変な農業、ちょっと変わった農業という方に位置づいているわけですけれども、先ほども言いましたように、農業が二つあって、一個は都市近郊や中山間、もう一個は集約型の農業ということで、先ほどの内田さんの発表の中でも激しく同意することばかりなんですけれども、一方では、そういう農業を強くしていく。
一方では、働いていない人、これは三千万人以上いると思っているんですけれども、まだ体が動くのに働いていない人、この人たちが農業を通じて健康になっていったりとか幸福感を得ていったりとか、副次的な作用もありますし、そういうふうな農業、参加型、働いていない人の参加できる環境ということを整備する必要があるんじゃないかなと思っております。
○内田智也君 鹿児島県もそうだと思うんですけれども、畜産であったり施設園芸の経営者というのは、非常に若い方が多いんですよ。今先生が言われた、六十何歳以上、そして日本の農業の問題点のように言われるほぼほぼの問題は、農村、お米の問題が非常に多いのかなと思っております。
もちろん、なかなか投資に見合うだけの収益性がなかったりとか、原価割れしておったりとか、先ほど申した地域性、地域の問題に巻き込まれることを非常に嫌う若い経営者も多いので、そこもあると思いますし、やはり、専業として農業をしていく人、兼業として農業に従事する方が同じマーケットだったりとか、同じ色分けなんですよね。これをどう色分けするかといったら非常に言い方が悪いですし、難しいですけれども、なかなか同じ施策では僕は難しいのかなと思っております。
では、専業農家だけに支援すればいいのかとも思わないですし、まだまだ兼業農家さんに交付金と呼ばれるものを出していくのかというのは、非常に難しいんですけれども、畜産であったり施設園芸に関しては、やはりサバイバルがあったりとか、やめていく方も多いですけれども、一軒一軒が拡大されて、そこまで市場のニーズに応えられなくはないという話もありますので。
事お米に関しては非常に難しい問題かなと思っておりますし、お米なのか、水田なのかでもまた話が違ってくると思いますので、なかなかお答えになりませんけれども、私の中でも答えが出ておりません。
○保岡委員 ありがとうございます。
なかなか答えが出ないという、今、内田さんの方からもありましたけれども、これという答えがあるというわけではない。
私も、それを横展開するみたいな、そんな簡単な話ではないかとは思うんですけれども、若い人たちがもっと挑戦をしていけるような、何かそういう農業というのはどういうことなんだろうなというのを、もしよろしければ、そういう趣旨に沿って、何か御意見があればいただければありがたいなというふうに思います。もしなければ、もうないで結構でございます。
○八尋健次君 農家は自営だったんですよね。でも、今の若者は雇用されたいんですよね。だって、六割も七割も女性の方が多いですしね、希望者は。
僕らがやり出した十五年前は、制約も多かったし、規制緩和もまだ前でしたけれども、ほとんど農業は自営で男性でした。今は、雇用されたくて女性という形態ですので、やはり組織化していって、専業農業を増やして、それで企業単位にしていった方がいいんじゃないかな。
本当は国営が一番いいとは思っていますけれども、半官半民じゃないけれども、企業化していった方が、若い人たちが従事を圧倒的にできると思います。
○内田智也君 私の周りでは、畜産にしても施設園芸にしても、非常にチャレンジングな経営をされている経営者が多いなと思います。
やはりお米に関しては、先代、地域がずっとやっていたことをずっとやり続けるという、ある意味ですばらしい部分でもあると思うんですけれども、お客様を見るというよりは、田んぼがあるのでお米を作る、使命感のようなものがあること。そして、やはりお米が一丁目一番地じゃないですけれども、政策がころころ変わる部分もございますので、なかなか大きくかじを切って経営にチャレンジしていくというのが難しくなってきているのかなとは思います。いないことはないと思います。
○保岡委員 ありがとうございます。
もちろん、自分たちは、多くの、全ての農家さんに奉仕するというか、環境を整備していくというのが仕事でございますので、そういうチャレンジングな若手の方々がこういう政策が欲しいというものがありましたら、是非また、都度、御意見などもいただければ大変ありがたく存じます。
続きまして、今日は、最後は全員にお伺いしたいと思うんですけれども、それぞれ、有機であったり、化学肥料を減らしていかれるであったり、そういう取組、環境配慮型のこれからの農業をということで、今回の改正にもありますように、方向が進んでいくものだというふうに理解をしております。
その上で、この間、「クローズアップ現代」というNHKのテレビを見ておりましたら、長野県の松川町というところで、学校給食と遊休農地対策をコラボレーションさせたようなユニークな取組が報道をされていました。その結果、おいしくて豊かな給食が実現しただけでなく、地域の魅力もアップしたというような内容だったんですけれども、ちょっと記事がありますので、多分御覧になっていない方もいらっしゃるので、少しお話しします。
この松川町というところでは、四年前から、町内で作られた有機作物を小中学校と保育園の給食に積極的に使っているということです。学校での校内放送では、例えば、スープには牛久保さんのニンジン、凍り豆腐、ミートローフには牛久保さんのニンジン、ゴボウ、ここでも牛久保さんのニンジンが使われていますなどといって、生産者のお名前を紹介するような校内放送でもあるようです。
そして、その後、給食を食べる子供たちに、このニンジンを誰が作っているか知っている人と聞くと、みんな、牛久保さんというふうに元気に答えているというような映像がありました。牛久保さん自体は、時々このような学校を訪ねて、調理師なんかともコミュニケーションをしているようでございますけれども、町自体も、オーガニックの給食を作る生産者に助成をして、できるだけ給食に卸してもらうような環境をつくっているということだそうでございます。
済みません、ちょっと時間が来てしまいましたので、もう質問は端的にさせていただきますが、食育、特に給食というところに、私は今後の、先ほど八尋さんのお話もありましたけれども、有機の可能性が非常にあるのではないかというふうに思っております。
そのところについて、それぞれの御意見を、最後、済みません、もう時間が来ましたので、端的にいただけたらありがたく存じます。よろしくお願いいたします。
○野中座長 陳述者の皆様方に申し上げます。時間が来ておりますので、端的に。
○新村浩二君 先ほど私の意見の中で申し上げましたけれども、消費者の理解も必要になる。そういった考えをつくるのは、やはり小さい頃からの食育です。それはオーガニックに限らず、そういったことはできると思っておりますので、是非そういったところを進めていければというふうに思うところでございます。
以上です。
○田代正一君 今、保岡委員がおっしゃったとおりのこと、まさに私も賛成です。
それは、私どものNPO法人でも学校給食に有機農産物をという運動をしていますが、何せ非力で、十分に活動を行えていませんが、やっていくべきだと考えています。韓国なんかでは非常に盛んですよね。なぜか日本は非常に遅れています、いろいろ事情があると思いますけれども。
以上です。
○八尋健次君 農薬を減らしていこうと思ったら、やはり市場の格付を変えていかないといけないと思うんですよね。ですから、きれいな美品を作る、秀品を作るために農薬の多くは使いますし、収穫の効率化のために化学肥料も使いますので。だから、やはり市場の格付制度を変えた方がいいと思います。
○内田智也君 私は、地域性があって、地域で手に入りやすい野菜があれば、それでいいかなと思います。
決してオーガニック給食等々に反対しているわけではないですけれども、まずは必要な栄養素、必要な量をしっかり子供たちに食べさせてあげることが先決かなと思っております。
以上です。
○保岡委員 ありがとうございました。
○野中座長 次に、野間健君。
○野間委員 私も、御当地鹿児島三区選出の、立憲民主党の衆議院議員の野間健です。
今日は、御意見を陳述いただきまして、本当に貴重なお話、心から感謝を申し上げます。この鹿児島の地で地方公聴会が開けますことに、改めて御礼を申し上げます。
今回の食料・農業・農村基本法、私も、地元の生産者、農家の皆さん、消費者の皆さん、あるいは、先日もこの委員会で東北に参りまして、いろいろな生産者の方々とも、お話を聞いてまいりました。
皆さん一番どこに関心があるかといいますと、やはり価格なんですよね。価格転嫁を、今回の法律の中では、合理的な価格形成をやるんだということがはっきり書いてあります。これが本当にできるのかどうかということを必ず農家の皆さんに聞かれます。
なぜならば、先ほど新村部長さんからもお話がありましたように、例えば、鹿児島県の農業の所得率というのが二九・七%、一千万売って、二百九十万しかお金が、手取りが残らない。その中に人件費も入っているとすれば、ほとんど赤字みたいなものなんですよね。これが押しなべて、全国的に、農業を幾ら頑張ってもなかなかもうからないというのが現状です。
ですから、生産者の皆さんは、何とか価格を、合理的というのか、適正なのか、やはりきちっと自分たちがかけた能力、労力や、また、資材も上がっています。餌代、飼料、肥料、それから燃料も全部上がっている中で、なかなか売値には転嫁できません。これで本当に価格形成をきちっとこの法律がやってくれるのか、これを一番皆さん関心を持っておられるんですけれども。
先ほど、生産者とそれから消費者、中間の加工業者の皆さんともいろいろな対話をしながら、協議をしながら価格をこれからつくっていくということなんですけれども、こういうことを言ったらなんですけれども、やはり、なるべく安く食べ物を買いたいという消費者と、なるべく高く売りたい生産者、これはある意味では本当に相矛盾するんですよね。
こういう中で、価格転嫁、今、話合いをして、協議をしてやるということになっているんですけれども、新村部長さん、これはどうでしょうか。実際現場におられて、非常に難しいことだと思うんですけれども、どうやったらうまくできるでしょうか。
○新村浩二君 確かに非常に難しい問題だと思っておりまして、生産者がかけたコストをそのまま、では、丸々転嫁をやっていくと、市場性がなくなる。市場性と、さらに、品質というところをどのようにバランスさせるか。
先ほどの改正法の中にも書いてあるんですけれども、これをどうやってできるかというのは、私もちょっと今答えを持っていませんけれども、これからまた関心を持って見ていきたいというふうに思っているところでございます。
○野間委員 そうですね。ですから、これは本当にどういう形でできるのか。私はなかなかこれは難しいと思いますので。
これは、過去、民主党政権のときは、戸別所得補償ということで、食料品の価格は市場に任せよう、農産物の価格は市場に任せよう、しかし、農家、生産者の所得は政策で補っていこう、こういうことがいっとき行われましたけれども、これを少し変えた形ででも、やはり生産者に何らかの形で、政府の、政策上の直払いなりをしていかなきゃいけないんじゃないかなと私は思っているんですけれども、これは田代先生、いかがでしょうか。
○田代正一君 今、野間委員がおっしゃったように、農家の所得補償と農産物市場価格をカップリングするというのはもう一時代前の発想で、ウルグアイ・ラウンド交渉なんかの時代ではデカップリングということで、世界的潮流としては、農家の所得を補償するのは価格ではなくて所得、直接支払いだということで決着はついたと思うんですけれども。
それがうまくいかなかったのか、またぶり返して、価格政策を本格的にやるべきだなんという動きになっているというのは、ちょっと私、フォローしていなくて、意外ではありましたね。世界的には、そんな、直接支払いは普通だとは思うんですけれども、ヨーロッパなんかを見ると。
以上です。
○野間委員 おっしゃったように、ヨーロッパとかアメリカではいろいろな形での生産者に対する支援なり、直払いというのは行われていますので、潮流としてはそれは今もあると思いますし、我々は、そこはちょっと形を変えてもやっていかなきゃいけないことではないかと思っているところなんですけれども。
次に、八尋社長さんから。
実は、私ども鹿児島県でも農福連携を唱えてやっているところはあるんですけれども、正直、なかなかうまくいっていないんですよね。今お聞きして、非常に驚きますし、そんなにうまくいくのかな、まして、有機で生産していくということ。ただでさえ、本当に有機の生産者はいろいろな手間がかかって大変だということも当然あるんですけれども、難しいんです。
一つ是非お聞きしたいのが、先ほど、教えられながら教えるというようなお話でしたけれども、指導者といいますかリーダーといいますか、こういうハンディを持った方たちに、どんな形で、上手に導いていくといいますか、そういう何か非常にベテラン的な方、指導者的な方がいらっしゃってうまくいっているんでしょうかね。ちょっと教えていただけますでしょうか。
○八尋健次君 さっきの農家が食べていけないというのともリンクして、食べていけないから農福連携をやっているわけですけれども、元々月給二十万もらっていた人が十万円になるから不満が出るわけで、元々二万しかもらっていない人に十万円上げたら喜びになるわけです。食べていない人を食べさせるというのが農福連携で、そもそも、稼いでいない人が稼ぐんだからいいじゃないか、十万円でも大喜びだぞということです。
うちが今七万三千円払っていますけれども、それは低めに発表しているだけで、本当は十一万くらい払っていますけれども、大喜びで、紙幣価値も分からない人間が、売れたから、口座にずっと、障害者年金とともに十一万、あと、別途入ってくるわけで、大分預金残高もあるだろうとは思います。
コツをつかめば非常に簡単でして、農福連携というのは。でも、理事長の本気度というか、職員の本気さ、経営者の本気さがあれば簡単にできます。
ちょっと時間がないので、言葉を選ばずに話すとしたら、有機農業なら簡単です。立派な農業はできないです。ちゃんとした農業はできない、農福連携は。有機農業くらいならできるというか、オーガニック給食くらいならできるというか。蔑んでいるんじゃないですよ、そのことを。でも、あえて誇張して特徴を言えば、そういうことです。
ですから、毎日どこかが見に来ますけれども、いろいろな、手を挙げているみどり戦略の。見たらすぐ分かる、やり方は。だから、農福連携はほぼうまくいきます、簡単です。障害者と有機農業は相性がよくて。
それと、有機給食はいとも簡単で、もっともうかることにつながります。もうかるといったって、普通の人が食べられるレベルじゃないです。障害者か副業の高齢者が、まあまあくらいです、十万円くらいです。でも、えらい喜びますよね、元々稼いでいなかったから。そういう感じです。
見に来ていただいたら、どこにでも出向いていって教えますし、それをライフワークにしていますから、どこでも行って、すぐ教えます。よろしくお願いします。
○野間委員 社長、ありがとうございます。是非、見学に行かせていただければと思います。
あとは、内田社長さんに是非お聞きしたいんですが、先ほどもお話が出ましたけれども、確かに大規模化して、集積化して、集約化してやっていくという農業も絶対に必要なことだと思います。一方で、今、八尋社長さんもやられているように、非常に条件の不利な場所でも、あるいは兼業でも、片手間でもやっているところもまた数多くあるわけですよね。
それで、政府は一時、どんどんどんどん集約化をして、大規模化をして、生産性を上げてという方向に行ったかと思うんですけれども、今回の法案では、農家、農村では多様な人材をということで、半農半Xとか、そういう様々な方がやはり農業をやることで、何とか食料の生産、農地を維持していこうという、両方の面が出てきているわけです。
それはどちらとも必要だ、否定しないというふうにさっきもおっしゃったかと思うんですけれども、とはいえ、やはり小規模で零細なところというのは、生産性も低いですし、なかなかこれは黒字になるというものではないと思うんですけれども、そうしますと、そちらにいろいろな政策資源が向いていってしまって、大規模化の方がちょっと政治的におろそかになるということも考えられるんですけれども。
これはしかし、我々、地域からすれば、やはり両方あってもらわないと、もう農村人口がどんどんどんどんこれだけ減っていって、地域自体のコミュニティーがなくなってしまうという中で、私らの地域でもあるんですけれども、集約化がどんどん、ある意味、高齢化してもう田んぼができないと、どんどんどんどん頼みに来る方もいっぱいおられると思うんですが、しかし、それもちょっと限界がありますよね、多分。
もうこれ以上はできない、受けられないということも我々はよく聞くんですけれども、この辺のバランスといいますか、どこかで切り分けてしていかないと、何か共倒れしていくような気もするんですけれども、いかがでしょうか。
○内田智也君 おっしゃるとおりですね。
おっしゃるとおりですし、苦戦されている方というのは、やはり条件的不利、先ほど八尋社長が言われたとおり、ちっちゃい圃場、中山間地。我々のようなまだ条件のいい平場の地区だと、栽培管理においてだけ、先ほどの共同作業の有無は一旦おいておいて、栽培することに関してはまだまだ条件次第では受け入れられると思いますので、限られた農水予算でどっちもというのは、僕は難しいのかなと思います。
国土を保全したいのであれば、それはもう国交省なり経産省なり、また違った予算をつけて中山間地の維持、国土維持をしていくべきで、その方たちも、阿蘇地区もたくさんありますけれども、では、生業として、商売としてやっていけているのか。また、やっていく上で、我々のような人件費をかけてお米を作っているところと、人件費を考えず使命感だけ、ほぼほぼボランティアだけでやっている方、結局それが同じマーケットに上がってしまっては、僕はどちらも不幸になってしまっているんじゃないかなと思いますので、無理を言うかもしれませんけれども、農水予算であれば、二倍、三倍に増やす必要があるのかなと思います。
○野間委員 ありがとうございました。
やはり、正直、ここ三十年で見ますと、農水予算というのがどんどんどんどん減っていっています。今、補正予算を入れて三兆円程度ですから、それは防衛予算とかに比べれば、はるかに、三分の一ぐらいになってしまっている。これだけ食料安全保障という限りは、おっしゃるとおり、もっともっと農業の予算を増やしていくべきだと我々も思っているところであります。ありがとうございます。
ちょっと最後に、先ほどのお話もあるんですけれども、いずれにしても、やはり農業で稼いでいけるということが、食べていける、きちんとある程度収入が得られるということが、農業を存続させる、若い人も農業に就業してくれる最低限の条件だと思うんです。
それで今、私どもがちょっと考えていますのが、所得補償ということではなくて、農地を持っていること、あるいは、例えば畜産でいえば牛の頭数ですとか豚の頭数、あるいは耕作をしている農地に対して、国がある程度の支払いをする。一種の環境支払いとも言ってもいいかもしれませんけれども、農地を保全してくれていることに対して、ある程度の直払いをしていくということも考えているんですけれども、これについて、ちょっとお一人ずつ最後にお聞きしたいと思います。
○新村浩二君 やはり生産者にとってみたら、自分たちの作った農畜産物に適正な価格をつけてもらって、それで生活できるというのが一番だとは思いますが、今ありました農地等に対する支払いというのも、選択肢の一つには入ってくるのかなというふうに思っているところでございます。
以上です。
○田代正一君 私の専門は農業経済学ですけれども、実際には、環境政策、イギリスの農業環境政策で学位を取りました。
イギリスでは、農業管理契約というのがありまして、農業環境保全をするという契約の下に補助金を支払う、管理契約という制度があります。農業者の役割というのは、農業生産の担い手であると同時に農村環境の保全の担い手であるという二重の役割を位置づけていまして、それなりに、それで国民を説得して補助金を支給しているという制度がありますから、野間委員がおっしゃったように、農地面積当たりとか頭数当たり、そういう形で補助金を支給するというのは、決して間違ったことではないと思います。
お金の使いようですよね。日本はお金がないわけじゃなくて、防衛費はじゃんじゃん使って、アメリカの軍需産業にどんどん垂れ流しているわけですから。でも、それはできないのがなかなか歯がゆいところではありますね。
以上です。
○八尋健次君 僕は、農福連携なんというところには補助なんて要らないと思います。どれを取っても、受け取る気もありませんし、別に、補助なんというのは、農福連携を始める最初のパワーだけ補助してほしいだけで、波に乗れば、多分、僕らは申請等もしないでしょう。
でも、農業の高齢化というのは、担い手不足で高齢化したんじゃなくて、年を取ってもずっと続けるから高齢化して、もう適当にやめてくれたら、我々世代も、またその下の世代も。
だから、僕は、専業農家には補助してほしいし、専業農家の邪魔になる場所を農福連携で担うというのがコンセプトなので、専業農家には強くなってほしいけれども、単なる農地を持っているくらいで、農家をもう長引いてしてもらわない方がいいので。
高齢化しているのは、高齢者が高齢化して続けてしまう政策にあると思うので、もう早めにやめてもらう方が。六十八というのは大企業も北海道も入れてだから、もっと高齢化していますよね、現場は。もう早めにやめてもらった方がいいので、専業の請負会社を増やしてほしいと願います。
○内田智也君 野間先生、大変言葉が悪くて申し訳ないですけれども、やはり旧民主党の戸別所得補償はいろいろと功罪があると思います。やはり本来集まるべき担い手に農地が集まらなかったり、また、預けた圃場を、お金が来るので貸し剥がししたりとか、そういったこともありますし。また、それがいつまで続くか分からない中で、全く制度上は崩壊して、内田さん、してくださいということになっても、なかなかそういったものを集積するのは難しくなってくるんじゃないかなと思いますので。
我々が思うのは、やめられる方が安心して農地を預けられる仕組み、支援がいただきたいなと思っております。
○野間委員 貴重な意見、どうもありがとうございました。
失礼します。
○野中座長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 本日は、貴重な時間をありがとうございます。
私は、日本維新の会、そして教育無償化を実現する会で共同会派を組んでおります池畑浩太朗でございます。
保岡委員、そして野間委員と、鹿児島、鹿児島と続きまして、まさか続かないだろうというふうに思っていらっしゃるかもしれませんが、私は兵庫県の方の選出でありまして、赤穂市が有名でありますが、そういったところの選挙区でありまして、島もありますし、中山間地域ももちろんありますし、畜産も多くあります。
そういった地域から選出をされておりますが、吹上町の本籍地でありまして、いまだに本籍地は変えておりませんので、鹿児島の雰囲気を持ちつつ、三人続いたということで、特段何もありませんが、質問を続けさせていただきたいと思います。
私たちは、今、野間委員からもお話がありましたけれども、宮城、そして福島の方にもこういった意見をお聞きに上がりました。そのときには、消費者団体の方、そして農協の方、大学の方、そして生産者の方ということで、いろいろな意見を聞かせていただきました。
今日はちょっと全員の先生方にお聞きする時間がありませんので、飛ばしてしまった先生方には本当に申し訳ないんですが、まずは新村先生に質問させていただきたいと思います。
宮城のときにもお聞かせをいただきました。先生は、基本法の検証部会の地方意見交換会にも参加をされておられますので、かなり前から関わっておられるというふうに思います。
今、最後の方に、全体的には賛成の立場でありますというお話をいただきました。そして、今回、ちょっと端的に質問させていただきたいのは、今回の食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対して、中央会というか、農協で一番、中央会の中で会長さんがいらっしゃると思いますけれども、会長さんが、我々の意見がかなり通った一部を改正する法律案だという発言があったように聞いております。
大体、どの部分が通って、これがどういったところで賛成だという、一番強調していらっしゃるところを一つ、二つ述べていただけましたらありがたいというふうに思います。
○新村浩二君 確かに、今ございましたように、JAグループの意見というのはかなり通してもらったというふうなところでございます。
今、資料でも幾つかございますけれども、例えば食料安保のところでも、平時を含む食料安全保障を明確に位置づけるですとか、先ほどありました、適正な価格形成の実現を意識した、農業再生産に配慮した適正な価格とするというところが中心となるかと思います。
あと、加えて、資材価格など、生産価格の変動に対しても緩和を図る対策を講じる旨、基本法に明記されたというふうな認識をされているというところかというふうに思っております。
○池畑委員 福島ではそういった明確なお答えがなかったように記憶しているんですけれども、宮城では似たようなお話をいただきました。
当然、JAで考えておられる今回の基本法はあるというふうに思います。今ありました、消費者の方々の話もされましたし、価格の、合理的な価格、適正な価格、その辺はいろいろ御意見はあるところなんですけれども、是非、JAグループは日本の中で農業団体としてかなり組織的にも大きいわけでありますし、農林中金に至っては、かなりの規模で投資もされていらっしゃるというふうに思います。
これから、やはり営農指導も含めた形で、次は内田先生にちょっとお聞かせをいただきたいんですけれども、それに関連するんですが、なかなか、土地を集約していく上で、今お話にもありましたけれども、管理業務にかなり時間を取られているというふうに、こちらにも内田さんが書かれております。
やはり農業団体、特にJAさんが一生懸命、農産地に関わっていったり、合理的な価格に関わっていったりということは私たちは大事だというふうに思っておりますけれども、今回の基本法の改正の中には、なかなかそういった部分が抜けている部分が多いんじゃないかというふうに我々は考えているわけです。
抜けたといっても、大臣もよく答弁されておられますが、やはりJAあっての営農指導であったり、日本の農業の育成だとかというのはかなり大事だというふうに思いますので、是非、そういった部分を含めまして、新村先生の方から、農業団体はこれからも、価格にも、そして土地の集約にも一生懸命関わって活動していくということを宣言、もしくはそういうことだと思いますけれども、そういった思いがありましたら、御意見をいただきたいというふうに思います。
○新村浩二君 先ほど、就農人口も減っていく、農地も減っていく、そこで食料増産ということであれば、これは合理化しかないというふうに思っていまして、そこでは、やはり土地の集積というのが大きな機能を果たすだろう。
私、農業機械もやっていますけれども、土地の一筆当たりの面積が広くないとスマート農機は動かせませんので、そういったところも含めると、やはり土地の集積というのは大きな問題だというふうに認識しております。
○池畑委員 ありがとうございました。
ちょっと、時間の都合上、次の質問に移らせていただきますが、私は、先ほど言った吹上の本籍でもありますが、農業高校出身で、農業大学校出身で、農業高校の実習の助手を九年近くやらせていただいておりました。
かなり、農業高校出身の国会議員の先生方は何人かいらっしゃいます。農業高校を応援する会の会長は石破茂先生でありますが、農業高校を応援する会というのは自民党の議連なんですね。私、二年ぐらい勝手に参加しておりまして、二年目に怒られまして、次は参加しないでくれというふうに言われたんですが、農業高校を応援していくという会はどの党でもいいんじゃないかなというふうに思いますが、内田先生に質問をさせていただきたいというふうに思います。
今、多品種という話がありました。作期を分散していくというお話があったというふうに思いますが、それと、プラス、我々は、資料にもありましたように、多収米の品種を途中で、多分、言い値とか相場があったので品種を変えられたのかなというふうに思ったんですが、多収米の可能性について、ちょっとお話を聞かせていただくことがあるのか。それとも、このように、相場的には向こうが決めてしまうものだから、もうやめてしまったというお話なのか。どちらか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○内田智也君 私も農業高校出身ですので。
そうですね、以前、先ほど話に出てきましたけれども、多収米もかなり多く手がけておりました。それは、なぜ多収米を植えたかというと、牛丼に合う硬い硬質米のお米であったりとか、カレーに合うべたつかないお米であったりとか、専門性を持たせたお米ということで作っておったんですけれども、米の相場が下がると、そう言ってはいたものの、やはり大手チェーン店にとっては仕入れ、こういう値段が、条件が何個も入っていますので、相場で下がっていった現状がありました。
そして、多収米も、当然、反当たりの収量が増えるので、農家の所得がもちろん上がっていくものだろうと思っておったんですけれども、やはり量が増えると単価が下がる。プラス、ただその品種を作付しておけば十俵も十五俵も取れるわけじゃないんですね。やはりそこには土づくりとして肥料、農薬を二割、三割多く入れますので、昨今の肥料高騰が重くのしかかっているのかなと思います。
○池畑委員 今回の法律案の中にも、多収というか、そういった技術革新、又は技術を利用して、多収ということに対してかなり強く書かれている部分もありますけれども、今のお話を聞いていますと、やはりバランス的に、いろいろな面で、ただ多収だけでは難しい。そして、熊本の地でも、結構大きな天地返しをしていくことによって、肥料もかなり必要だったというふうにここには書いてありますけれども。
これから、いろいろな意味でいろいろな農業者が、二十六条の二項なんかにも書いておりまして、我々の党でもかなり議論をさせていただくんですけれども、いろいろな農業者の方、担い手の方、たくさんおられます。八尋先生からもお話がありました。具体的には、いろいろな農業者の方がおられればいいというふうに思うんですが、やはりもうかる農業でなければいけないということになってくるんですね。
今、農地をかなり、農地バンクを利用していただきながら、そして、農地バンクがもっと機能的になるべきではないかというお話をいただきましたね。我々もそれには当然賛成でありますし、この基本法の改正の中に大きく書かれていなくても、書かれてあっても書かれていなくても、それは大事なことだというふうに思いますので。
今、これから進めていく上で、内田先生、そして八尋先生にお聞かせいただきたいのが、まず八尋先生からお聞かせいただきたいんですけれども、先ほど来ずっと、集積をしていく部分、そして、そういった大きな農家が余り必要じゃない部分を八尋さんたちは使われていくんだというお話もありましたし、最初のパワーを具体的にいただきたいという、ちょっと抽象的な、最初のパワーだけいただきたいというお話を先ほどされたんですね、補助金は要らないよみたいなお話もされたんですが。
今回、基本法に、福祉というか、障害者の方が明記されるような条文がありますが、そこを踏まえながら、我々もそこが議論になりまして、障害者の方が農作業をすればいいというふうにこれは取れるんだけれどもというような意見が出てまいりましたし、農福連携をする中で、私も農業高校時代に、自閉症の子たちが土に触って授業をさせていただくことによって、生徒が、教える環境というのは、すばらしい授業になりましたね。我々が一方的にずっと話をするよりも、やはり障害者の子と我々の生徒、すごくまとまった授業になりましたし、今思い返しても感動するような授業だったというふうに私は思っております。でも、生産性を上げていく上で、今お話しだったように、障害者の方が利益を上げていける環境というのはすばらしいことだというふうに思いますので。
そういったことも踏まえながら、条文に、今回、障害者の方のことが書かれました。いろいろな意味で生産者の多様化が大事になってくるというふうに思いますが、今、最初のパワーを具体的にというふうな話があったんですが、その最初の、我々がぽっと押すパワーというのは具体的に何かというのを、ちょっと、再度聞かせていただきたいなというふうに思ったんですが。
○八尋健次君 僕らはずっと、十八年やっていますけれども、要は、農業を活性化したいことが、最終結果、農業を活性化しちゃったという状態をつくりたいんですが、目的は、社会保障給付費を減らすことにあるんですね、莫大に使い過ぎているから。
その中に、若者の精神病とか何か意味の分からないこととか、現代病とか近代病とか成人病とか言われる昔なかったような症状、やはりそれは国民が平和に安心して暮らしていくには治さなきゃいけないんだけれども、もう焼け石に水みたいな発生の仕方、それが一千万人を超す。障害者手帳を持っているだけでも、もっと隠れた何百万人という引きこもりとか、その予備軍とか、何かそういうものがうごめいていて、訳が分からない膨大な費用が使われていることを阻止したい。
それが、農家の、また、こういう農業と関わり合っているんじゃないか。だから、有機農業を促進したいというよりかは、社会保障費を減らすためには、有機農業が必要だ。まず自立してくれ、入院するんじゃなくて、施設に行くんじゃなくて。
僕らは、ちょっと三年間くらい厚生労働省からの給付金をいただいたら、その後は直接雇用したりして、自立してもらうんですね。グレーなんというのは、何か病院とかにずっと通ってあれしたりしないでくれ、もう全部自分で生きてくれと。ダウン症とかなんとか、先天的な障害の人たち、これは一定の率、昔から変わっておりませんので、この子たちもちゃんと稼いでくれ、納税者になってくれというようなことです。途中で糖尿病になって目が見えなくなったとか、いろいろいっぱい、体と心のことである。特に、意味の分からない若者の精神病的な症状的なものとかは、保障費がかかり過ぎる。この辺は全部排除できるんじゃないか、これを農業の目的にしています。
ですから、最初のパワーというのは、まず、さっきも言いましたように、肥料とか山林未利用材のようなものを使いますし、やはりダンプ状の軽トラとかは持っていませんし、農福連携というのは、素人だということですよね。
だから、素人が農業をできる環境づくりはそんなにお金がかからずにできるので、みどり戦略は今百市町村を超えていると思うので、それに、もう後は二百まで達成していくでしょうから、その周りでちょっと農福連携を補う政策、有機給食を補う政策が出るでしょうから、その延長にあるくらいで大丈夫だとは思っております。
○池畑委員 是非、また条文を見ていただきまして、また意見交換ができたらなというふうに思います。
田代先生にちょっと質問する時間がなくなりまして、大変申し訳ございません。
それでは、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○野中座長 次に、山崎正恭君。
○山崎(正)委員 公明党の衆議院議員の山崎正恭といいます。
私は、鹿児島つながりじゃなくて、四国比例ブロックの選出でして、高知の方に今住んでおります。
今日は、四名の先生方、貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
早速質問の方に入っていきたいと思います。
鹿児島つながりじゃないですが、私は、教員つながりで、中学校の教員を二十四年間務めてまいりました。その中で、特に一番ど真ん中に置いてやってきたのが、今、不登校の子供さんたちが十年連続で史上最多を更新しております。小中で三十万人と言われていますけれども、あれはカウントの仕方がありまして、実際は、小中高でいうともっと、三十日以上休んでいる子供さんたちは六十万人近くいまして、この子たちをどうしていくのかというのは、非常にこの国の重要な課題になっているなと。
それで、多くの子供さんたちは別に、中学校のときに不登校であっても、ほとんどの子供たちが今、社会で頑張っていっているんですけれども、中にはそのまま引きこもってしまう子供さんたちも一定数いまして、そういったこともありまして、今もこういったところはど真ん中に置いてやっているところです。
実は私も、高知県の方で非常に八尋さんと似た感じの雰囲気の人が、今、引きこもり支援、同じような、本当に似たような感じでやっておられる方がいまして、その人との連携もしながらやっているんですけれども、実は八尋社長のところが去年の五月の工業新聞に紹介されていまして、そこには、面白かったのが、井上君という中学校時代から引きこもりぎみの方の記事が載っておりました。
井上君は人間としゃべるのが苦手なんですけれども、畑では作物に声をかけ、優しく触って、触って、触りまくって育てるんですというふうに八尋さんが言われていました。また、彼が種をまくと、その種が土に吸いつくような感じで芽吹きます、もうこれは生まれ持ったものでしょうね、僕らはオーガニックの人と呼んでいますというふうな紹介がされていまして、そして、彼は人は余り好きじゃないみたいなので本当にしゃべりませんが、僕は井上君のまねをできる人は見たことがありませんということで、井上さんがダウン症の子供さんたちに丁寧に教えられているというふうな状況がありまして、井上さんはどんどんどんどん活躍の場を増やして、その中で生き生きと送られているというふうにあったんですけれども、本当に、引きこもりの方にとって、農業というのは非常に相性のいいものじゃないかなというふうに思います。
先ほど社長からもお話があったんですけれども、実は、引きこもりは、おととしの政府の推計調査によると、やはり全国で百四十六万人ぐらいはおるんじゃないかなと言われていますし、八尋さんからお話があったように、障害者の方でいうと九百三十六万人ぐらいおいでます。身体障害が四百三十万、知的障害の方が百八万、そして、言われていました精神障害の方は四百万人近くおいでます。
もちろん、障害のレベルもあると思うんですけれども、かなり多くの方が農福連携の中で共に社会参画しながら働いていく可能性があるんじゃないかなというふうに、私自身もすごく、高知なんかでの実践を見ても思っているところです。
ただ、大事なところが、その後、八尋さんはこういうふうに言われているんです。井上君がそれだけ生き生きと八尋さんのところで働いているけれども、じゃ、ほかで就職できるかといったら難しいと。では、障害者手帳がもらえるかといったら、そこまででもないというふうな形の中を言われています。しかし、しゃべれない以外は何の能力も劣らないんです、ただ、しゃべれなければ就職できませんと。
実は、ここが物すごく大事であって、やはり、先ほどもありました、井上さんはずっと引きこもり傾向があったのが、働けるようになって、そこで収入を得て、オーガニックの人と言われて、ダウン症の子供さんにも教えていく中で、すごく生きがいを感じたでしょうし、一番大事な自己肯定感というか、自分を肯定する感覚を持ったと思います。そして現実に稼いでいける。
先ほど八尋社長もそのことを言われて、ある意味そのことだったと思うんですけれども、やはり、ずっと保護をもらっていくこれからの人生だったのが、しっかりと自分で稼ぎながらというか、そういった実感を持っていくのか、ここが、先ほど言いましたように、今、日本ではいろいろな産業で担い手が不足していく中で、先ほど言った引きこもりの方や障害者の方が逆に生き生きと働いて社会参画し、その働き手となって、そして自分の生きがいを感じながら稼いでいける、これは物すごい重要なことだと思うんです。
実は、この間の質問でも言わせてもらったんですけれども、八尋さん、その方々がなぜ成功しているかというと、やはり私は、その人たちが最初にしっかり、先ほど言ったように、何年かたてば自分で自走できるんだと言われましたけれども、そこまでのところに特別な配慮、いわゆる合理的配慮と言われていますけれども、そういった合理的配慮が非常に丁寧で、そして、その人のペースに合わせながらやっているからこそ、八尋さんのところではそういった人たちが、実はここの記事にもありますけれども、九年たっても誰一人辞めていないんだ、ほぼ一〇〇%、全員が続いているというのにもそのことが表れているんじゃないかなというふうに思います。
ここで聞きたかったのは、まず一問目、八尋さんに聞きたいんですけれども、農業と福祉の関係の相性のよさというところと、これから農水省とか厚労省が一緒に進めていく上でどういうふうな合理的配慮があればそういった自立ができるのかというところについてお聞かせ願えたらと思います。よろしくお願いします。
○八尋健次君 私たちは、北九州と筑豊地区という特殊なエリアというか、独特なエリアで、地域若者サポートステーションといいまして、厚生労働省の引きこもりサポートセンターを十年間、何とか委託してもらっています。
どれだけカルテを読んで、何が過去にあったのか。今の現状は分かる。こんなに不登校が増えて、社会と接点を持たない者が増えてきたら、本当に犯罪大国になるし、本当にその者たちも不幸、家族はもっと不幸みたいな中で、地獄の底みたいな状態がこんなに増えていますよということは、安全国家が築けない、本当に犯罪大国になりますよということで、欧米、欧米とか言ってはいかぬけれども、やはり犯罪の多い国みたいになっちゃいかぬでしょうと。読み書きもできぬし、まさかこの国がと。でも、それが、もう危機迫っていると思います。
この中に、いろいろな種類で分かれていくと、農業という自然と接することで克服する人が結構、三分の一くらいいるんですね。何だ、それだけかというだけです。だから、自然、一次産業、何でもいいんですけれども、林業も、阿蘇の方に結構行ってもらったりして、何でもいいんです、一次産業、自然と接する仕事をしてもらったら、三分の一の子は克服するんですよ。
だから、やはり元々自然に近いんでしょうね、ぎりぎり人間というか。人間感覚より自然界に近いんでしょうね、いい意味で。ですから、そういう人たちが、ただそれだけなんだと。その子たちに道徳を幾ら唱えようが何しようが、やり方が違うので、やはりそういうことを早めに働きかけていったらどうかなというのは思いますね。
その人たちの農業というのは、立派な、市場でA品で、秀品で買ってもらえるものは作れないんですよ。それで、速度は出ないんですよ。でも、学校給食で、有機給食になるようなものはいっぱい作れるんですよ。ですから、もっと自然な感じのもの。だから格付には合わないんですけれどもね。
ですから、やり方、アウトプット先を変えれば活躍できます。それでちゃんと稼げますし。
何か農業とはちょっと話がそれますけれども、早くから、早めに農業のそういう受入れ、市町村なんでしょうけれども、不登校でも行くところがあって、家にじっといたら駄目で、学校は行かないけれども行くところがあって、そこが自然と接してくれて、そのまま農業会社が接点を持っているとか、やり方はあると思うんですね。またちょっとじっくりその辺はお伝えできればと思います。
○山崎(正)委員 ありがとうございました。
次に、最初に保岡委員からもお話があったと思うんですけれども、やはり担い手が、農業就農者が少なくなっていくという中で、一つは障害者の方とか引きこもりの皆さん方がやっているんですけれども、もう一つ私が注目しているのが、やはり女性の方の就農がいかに増えていくかということで、今、データが出ているところによりますと、やはり女性が経営参画しているところは非常に農産物の販売額の伸び率が高いというふうなところが言われていますが、実際、経営に参画している人は三〇%で、認定農業者は五・三%というふうなところなんです。
これは全員の参考人の方に聞きたいんですけれども、やはり女性がやっていくところのよさとか、それから、女性の方にもう少し就農してもらうにはどういうふうなところが大事なのか、それぞれのお立場で構いませんので、経験等も含めまして、何かそういったところで御所見をいただけたらと思います。よろしくお願いします。
○新村浩二君 女性が作業じゃなくて経営に参画されているというお話かとは思うんですけれども、たくさんの事例を見たわけではないんですけれども、やはり女性が参画することによって販売面でのメリットは出てくるのかなというふうな認識はございます。
以上でございます。
○田代正一君 私が大学で学生と接しておりますと、最近は女性の学生の方が優秀で、しかも非常に積極的で、海外研修なんかも進んで希望して行く。どちらかというと、男の方がちょっと頑張れよというふうな感じの風潮ですよね。
就農も、結構女性の方がされておるので、これからはそんなに心配しなくても可能性はあると思いますが、その人たちが将来報われるかどうかはちょっと分かりません。その相手方がちゃんとした御主人であって、あるいはちゃんとした経営であれば、ちゃんとした両輪として活躍されると思います。
○八尋健次君 女性だからという、でも、機械に乗りたがりませんよね、女性の方が。機械に乗って何ぼなんですよね。実は、結果が出ないところは機械に乗れる人が少ない、結果が出るところは機械に乗れる人が多い。というのは、実はこんな簡単な理由が結構多いんですよね。だから、機械に乗る人をプラスアルファでつけてやると女性の活躍の場は多いのかなと、傾向的にそう思います。
○内田智也君 やりたかったらやればいいし、やりたくなければいいんじゃないかなと思います。
うちも一人現場におりますけれども、八尋社長の言われるとおり、昔ほど米作りにおいても力仕事をすることはないんですね。なので、女性が参入する、参加するというのは、現場においてもそこまでハードルは高くないので、そのほかの、更衣室であったりとかシャワーであったりとか、そういったほかの環境整備の問題かなと思いますので、特に現場で男が女がということは余り我々はないですね。
○山崎(正)委員 済みません、時間が来ていますので、最後に内田社長に聞きたいんですけれども、やはり稲作がこれからどうなっていくかというのは非常に重要でして、我々の地元でもそういった話があるんです。
やはり、本当に需要が減っていく中で、多品種で、本当に、取る期間を移動されている、かなりの努力をされていると思うんですけれども、その中で、一つは、政策が結構変わるというふうなところへの不満はかなり地元からも上がってきますけれども、そういったところも含めまして、やはりこれからどう稲作が推移をしていって、農地を守っていくというところにおいては非常にやはり大部分を占めると思いますので、もう一度改めて、今、国として、今の稲作をこれから先へ進めていく上で、国が行うべき重要な政策というのはどういうふうなことがあるのかというのを教えていただけたらと思います。お願いします。
○内田智也君 これは難しい問題だと思います。
ただ、委員言われるとおり、なぜ稲作にここまでこだわるのかとは思います。だって、米は余っているので。もっと大豆であったりトウモロコシであったり、グレインをもうちょっと作っていく努力は必要かなと思いますので、稲作に限らず、何が事業として収益があるのかとか、どうしたら地域を守れるのかとかいうふうな政策の後押しが欲しいなと思います。
○山崎(正)委員 どうもありがとうございました。
以上で終わります。
○野中座長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
意見陳述者の皆さん、本日はありがとうございます。
最初に新村浩二さんにお伺いします。
先ほどは、耕畜連携について、宮城県でのお話を聞かせていただきました。大変勉強になりました。
検証部会の地方意見交換会、去年の七月に新村さんは、肥料高騰の中で、連合会では、堆肥ペレット製造設備などの設備投資をして、肥料、飼料の確保に取り組んでいくつもりである、この流れが価格高騰時だけで終わってしまい、輸入価格が安くなったときに国内原料は要らないということでは、事業を継続することはできないと。当然のことだと思います。
私は、国内産の肥料それから飼料をやはり増産していくことが必要でありますし、お話にもあった価格形成、価格転嫁というのも一つの大事な論点になってくると思います。また同時に、輸入の在り方についてやはり問い直していかなければならない、そういうときに来ているというふうに思います。
輸入が確保されて、それを頑張るんだというのであれば、価格が高騰したときにまた場当たり的な対応になってしまうということで、この輸入という今までのやり方について新村さんはどのようにお考えになっておられるでしょうか。
○新村浩二君 化成原料につきましては、御案内のとおり、かなりの部分が海外から入ってきているところでございます。一昨年あたり価格が高騰したというのは、ウクライナ情勢だとか中国の輸出規制で一時的に輸出が滞ったということで価格が上がった。ただ、世界的には十分な、カリなりリン安というところでは、あと三百年ぐらいは経済的埋蔵量があるんだというふうな話でございまして、量はまだ十分にある。ただ、日本は全世界の一%未満の使用量しかないということで、輸出はしづらくなっているという状況がございます。
今回、この食料安保の考えの中で、飼料なり肥料も国内でできるだけ賄うようにするということがございますので、国内で賄えないものは輸入するというような考え方ができれば一番いいのかなというふうには思っているところでございます。
○田村(貴)委員 続いて、田代正一先生にお伺いします。
先生は先ほど、みどりの食料戦略の流れの中で、有機農業が推進されることについて、ありがたいというふうに評価をされました。私も同感であります。
基本法の審議をしているんですけれども、基本法の三条及び三十二条のところは、環境負荷低減の規定があります。私は、本当にちょっと残念に思ったのは、有機農業という言葉がない、それから、環境負荷の低減なんだけれども、温室効果ガスの削減とかカーボンニュートラル、あるいはCO2の削減というところを直接読み取ることができないという条項になっているので、ここはやはり変えなければいけないなというふうにも思っているわけであります。
先生は、環境負荷の低減というところの規定について、御意見があればお伺いしたいと思います。
○田代正一君 今御指摘いただいた、有機農業の文言がないというのは、四月四日の中央公聴会で西村参考人が御指摘されていたと思いますね。私はそれを聞いて、ああ、なるほどと勉強させていただいたんですけれども。
これは、みどりの食料システム法を作って、そっちで一生懸命やるから基本法では必要ないんだというふうに解釈されたのか、その点がちょっと分かりません。有機農業、あれだけ旗をぶち上げたので、基本法に一言ぐらいあってもおかしくはないかなと思いますけれども、西村参考人によると、一言もないというので驚きました。
二つ目は、温室効果ガスの削減を法律の中でもう少し明示して国民に分かるようにすべきだとおっしゃいましたけれども、これは私が最初に参考人意見として申し上げましたように、余りにもそれ一辺倒でやると間違いも起こりますという私の御意見を陳述しました。
むしろ、環境保全という観点でいけば、水質汚濁を、汚染を防止するとか、あるいは、遺伝子組み換えで、それが改変されて遺伝子が自然界に汚染されて広がって手のつけようがなくなるとかいうのを防止するとか、生物多様性がなくなっていくのを防止するとか、そういうことについては私は書いてもいいと思いますけれども、この法律にはないけれども、参考資料にはたくさん書いてある、カーボンニュートラルのためのCO2とかメタンを削減しなきゃいけない、ついては、牛も減らせ、田んぼも減らせというような書き方ですよね。
今はそれは正義的な政治です、日本の。首相がカーボンニュートラルを二〇五〇年までに実現すると宣言しているわけで、これは国連の方針の下にやっているので、それは政治的な真理ではありますけれども、あれは西洋の、ヨーロッパのエリートたちが主張している論理です、はっきり言って、カーボンニュートラルとか脱炭素とか。それを、日本は国際社会の一員ですから、あえて反対するわけにはいかないので、従わなきゃいけない面もあるんだけれども、それ一辺倒でいくと危険だというのは私が申し上げたことなんですよね。これは科学的な根拠に基づいた説ではありません。反対の説を唱える科学者はたくさんいますから。いつ事実によって否定されるか分かりませんよ、これは。
特に私は若い官僚とか研究者に申し上げたいと思いますね。今の若い人たちは、生まれてから、学校に入ってSDGsで教育されて、それ一辺倒で洗脳されていますので、ほかのことを考えられなくなっていますけれども、よくよく、皆さん、考えないといけません。SDGsというのは、ヨーロッパのエリートたち、いわば高級クルーザーで旅行したり、プライベートジェットで会議に出席したりするような連中が考え出していることなので、その辺はちゃんと認識した上で、うまくつき合わないといけないというのが私の意見です。
○田村(貴)委員 八尋健次さんにお伺いします。
先ほどもあったんですけれども、服部幸應さんが新聞に書いておられたところですね。オーガニックな土づくり、生産者を引きこもりだった人がやっているといったところです。
これは、八尋さんがおっしゃっている、有機農業に取り組む中で一番大変なことは、土づくりでも野菜作りでもなく、オーガニックな人と巡り合うことですと述べておられることにもつながると思うんです。オーガニックな人と巡り合うということについて、ちょっと解説をしていただけますか。
○八尋健次君 服部さんが何を書かれたか、私は読んでいないんですけれども、服部さんとはよくそうやってお酒を飲みながらそういう話をしたので、井上君が登場してくるとは思いませんでしたしね。
オーガニックな人というのは、何ですかね、例えば、不登校の中に、学校に行くことがすごく価値が持てないんですよね、人との間の取り方とか、情緒がないんですよね。言葉が、本当に言っちゃいけないことを言うんですよ、友達の前でそんな言い方をしちゃいけないような。これ、どうぞと。要りませんとか言っちゃいけない、ちょっとぐらい食べなさいよとか、おいしくないなと思ってもおいしくありませんと言っちゃいけないんですね。やはり、おいしかったと言わなきゃいけないのに、そういう情緒がないんですね。正直過ぎますよね。正直に言っただけで、本人は正直に言ったら何が悪いんだろう的な感じで、そうやって居場所はなくなって、不登校になっていくわけです。正直過ぎるだけで何も悪くないんですけれども。
そういうふうな情緒がなかったり、後発的な障害的症状、先天的なものはあっていいと思うんですけれども、後発的な症状の人たちが余りにも増え続けていて、言葉が余りにも少ないとか、もういっぱい。しゃべらないという障害はないと思うし、トイレが近いとか、そういう障害もないと思います。
近来出てきている後発的障害的症状、この人たちに農業がてきめんに有効的だということがあります。オーガニックの人というのはそういう人を指しています。引きこもりの約三分の一だと思われます。
○田村(貴)委員 内田智也さんにもお伺いします。
みつひかりを生産されていたというふうに資料で読ませていただきました。
三井化学クロップ&ライフソリューションが、みつひかり二〇〇三において、異なる種子を混合しながら表示しなかったということで、農水省から報告命令という指導も受けています。
先ほど内田さんは、この業務用米からはもう手を引いたというふうにおっしゃったんですけれども、その理由について教えていただけますか。
○内田智也君 みつひかりは、四年前が最後の作付だったかなと思います。もちろん、メリットとしては、二倍近くの収量が取れること、そして全量を某牛丼チェーンさんが買い上げてくれる、そして、収穫時期が超おくてなので、十一月の中頃まで収穫を引っ張れますので、先ほど申した、九月の頭から収穫が始まって、十一月まで田んぼに置いておけるというのは非常にメリットがあったんですけれども、嫌いとかけんかしたわけではなく、取引としてしなくなったというだけなので、特にそこまで大きな影響があったことはないです。
○田村(貴)委員 せんだって、参考人質疑のときに、六人の参考人の方が来られました。今、食料自給率は三八%で、そして農業基本計画では四五%の目標を持っている。参考人の皆さんは、日頃主張されている食料自給率あるいは構想されている数字がもしあったら教えていただきたいというふうに質問したところ、最低ラインは、皆さん、四五%、それ以上でありました。
今日、四人の意見陳述者の方に、それぞれ皆さんの思いを聞かせていただければと思います。お願いします。
○新村浩二君 大変申し訳ありませんけれども、もう一回、質問の趣旨をお願いします。
○田村(貴)委員 日本の食料自給率、今三八%です。基本計画で四五%を目指しています。新村さんは、鹿児島の生産者として、あるいは個人的に、どのように引き上げていったらいいのか、その数字を、日頃御主張されているものがあったら教えてください。
○新村浩二君 現在の食料自給率三八%というのは認識しておりますけれども、では、これをいつ頃までにどのくらい引き上げるというような目標はちょっと私自身は認識をしていないところでございます。
○田代正一君 食料自給率がカロリーベースで三八%、金額ベースで六八%ぐらいあると思いますが、これは、食料・農業・農村基本法が制定されて、第一回目の基本計画が制定されて以降、ずっと政府が目標を提示していますが、一度も達成したことはないし、達成する見込みはないなというのも大体分かってきたと思いますよね。
それはそうです。さっきも野間委員でしたか、おっしゃったように、ここ二、三十年間で農林水産予算は三〇%ぐらい減らされる一方で、片や、国際貿易では自由化、ウルグアイ・ラウンドからFTA、TPP、日米物品貿易交渉とかいろいろな輸入促進をやってきているわけですから、ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでうまくいくわけはなくて、私から言わせれば、農水官僚の皆さんにも気の毒といえば気の毒ですよね。だんだん予算は削りながら、一方で自給率を掲げろとかいって目標を立てさせられて、でも、そういう手段はないということですね。
でも、私の個人的な意見からいうと、まあ、それが達成されないだろうなという予想もついていたし、かといって、日本人が食に窮したことはここ数年あるかということなんですよ。先ほどもちらっと申し上げましたように、一九九三年、平成五年には、米が大不作で慌てふためきましたけれども、それも一過性のものであった。今度のウクライナ戦争にしても、ヨーロッパは大変なことになっても、食料価格は二倍にも五倍にもなっているけれども、日本はそこまでなっていない、不思議なことに。何でか知りませんけれども。おかげさまで、ロシアも日本に石油を売ってくれているという話もありますし。よく分からないです、国際情勢は。
だから、確かにそれは、農林水産省あるいは農林水産委員会の立場からして、重要法案の審議をされているわけですから、食料安全保障について真剣に議論すべきことは分かりますけれども、私の個人的な意見としては、市民の方は、一般市民はそれほどそこに問題関心はないと思います。
以上です。
○八尋健次君 私は、余り実感として、ないですね。確かに産業用の農産物はなくなると思うんですけれども、そもそも、こんなに耕作放棄地で、直売所に行けば売れなくて困っていて、僕らは野菜屋ですけれども、野菜なんて売れずに困っていて、何か、自給率というのはどこからだろうというか、直売所とか郊外に行くと自給率は一〇〇%をはるかに超えていて、それは、パイナップルとか畜産は国産はできないでしょうけれども、一般野菜とか米とかはありまくっていて、それは、レストラン供給とかそういうのはできないでしょうし、旬じゃない食材というのもできないでしょうけれども、自給率というのはもうほとんど大丈夫なんじゃないかな。誰一人餓死しないとしか思えませんけれどもね。でも、化学肥料が入らないと、餓死するレベルに一旦いくのかなと思いますので、それ以外はもう自給というのはできているんじゃないかな、畜産とパイナップルとか、そういうもの以外、旬の野菜とかを外せば。
だから、要は、米とか旬の野菜だけだと、昔ながらの御飯だと、それは、自給率はもう何百%でしょうしね。ですから、余り、危機感は全く持っていないです。売れなくて困っているのが野菜だと思っています。米なんかもっとそうだと思っています。だから、主食を米に戻せば何の問題もないんじゃないかなと思います。
以上です。
○内田智也君 自給率に関しては、やはりエネルギーベースなのか、カロリーベースなのかで違いますので、余り当てにはしていないですけれども、世界情勢を見たときに、自給力は絶対に必要かなと思います。その中で、粗飼料、そして大豆、小麦、トウモロコシの穀物は力を入れていく必要はあると思います。
○田村(貴)委員 終わります。
ありがとうございました。
○野中座長 次に、長友慎治君。
○長友委員 国民民主党の長友慎治と申します。
私は宮崎の出身なんですけれども、今日は宮崎からは立憲民主党の渡辺創さんと私、二人でお邪魔しておりますが、同じ九州ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
まずは、田代教授と新村部長にお伺いをしたいと思います。
田代教授から、今日、食料安全保障について、武器としての食料、それから食料は武器であるというようなお話をいただきました。しかし、日本は飽食で、余っているのに食料が足りないという御指摘、いろいろありますけれども、輸入した分を、その分捨てているとか廃棄しているとか、毎日御飯茶わん一杯分を日本人全員が廃棄しているというようなデータもあるような状況です。そのような、食料が足りなくなるという状況の中、客観的に見れば日本はおかしな国だなという指摘というのはもっともな状況だというふうに思うわけですが、田代教授のお話からは、日本はフードロスにもやはり取り組むべきだという御意見があるのかなというふうに受け取りました。
田代教授から見た日本のフードロスの取組、どのように見ておられるのか、まず見解を伺いまして、その後、新村部長には、もし、御担当ではないかもしれませんけれども、JAでフードロス削減に取り組んでいることがありましたら、鹿児島の事例でも構いませんし、全国的にはこういうことがあるということを御教示いただければと思います。新村部長、よろしくお願いします。
○田代正一君 長友委員、ありがとうございます。
実は、私は出身は宮崎県日向市、旧東臼杵郡東郷町で、先週前半までは実家で父母がやっています飼料稲の田植の準備をしておりましたら、この委員会の参考人に出ていただけませんかという電話をいただいて、急遽こちらに舞い戻ってきたんです。
九十一歳と九十歳の、父親がまだ飼料稲を植えると言って聞かなくて困っております。それはもう病気で、やめられないみたいです、なぜか知らないけれども。トラクターに乗りたくてしようがない。トラクターに乗って田んぼでひっくり返っても別に自業自得だからいいんだけれども、そこまで行くのには公道を通らなきゃいけないので、車の免許がないと乗れないですよね。免許を返上しているので、車はそこまで持っていって、トラクターを持っていってあげて、田んぼで耕させる。認知症のおやじの面倒を見てきたんですけれども。
フードロスの話でいいますと、日本は早くから食品リサイクル法を制定して、改正もして、各業界にフードロスを減らせと熱心に指導をされて、フードロスを再利用、リサイクルするという対策をずっと練られていますので、無駄に捨てられている分は余りないと思いますが、問題は、一旦口に入らずに捨てられる分が物すごくあるという日本の食品廃棄物、これは他国から見れば非常におかしな、驚くべきことではあると思います。日本の、食料援助額と同じぐらいのフードロスが出ているという政府の統計もありますので。
日本人はもったいない精神があってすばらしい民族だとはいうものの、大都会の消費文化というのは、本当に大量消費、大量廃棄。私も農学部の教員でありながら、農学部で新年会、忘年会をやると、みんな酒飲みは食べ物は食べずに残して、残飯として帰っていますよね。皆さん、関係者はそういう現場をいつも見られるんじゃないでしょうか。新年会、忘年会、結婚式、相当な廃棄物が出ていますから。しかし、それはほとんどは輸入食品が多いです。だから、捨てるために輸入している民族と言える面もあって。
そういうことができているのは、今まで豊かだったからであって、しかし、これからだんだん貧しくなるとどうなるかなと心配していますよね。私はそんなにも、二十年ぐらいしか生きないだろうから、問題は今の若い人たちが果たしてちゃんとこれから食生活、市民生活を送れるか。これは今の世代、今の現役の政治家や官僚がちゃんとしなきゃならない責任があると思います。
以上です。
○新村浩二君 先ほど言いましたように、ちょっと私は担当ではないところで分からないところもあるんですけれども、今後、六年度は、七年度からの中期計画を立てる年になっております。そういった情勢認識の中で、そのようなことも出てこようかと思います。今、傍聴席に私どもの役員もおりますけれども、恐らくそういったところで今後議論が出ていくのかなというふうに思っているところでございます。
以上でございます。
○長友委員 ありがとうございます。
私は、地元日向市でフードバンクを五年前に立ち上げまして、今もやっているものですから、特にアドバイスをいただきたいなと思って御質問させていただきました。
続きまして、八尋社長に伺いたいと思います。
私のフードバンクが、実は昨年から、B型就労支援事業所と、業務委託というか、一緒にフードバンクをやっているんですね。フードバンクに皆さんから集めていただいたものを持ち込みまして、それを、B型就労支援事業所に場所をお借りしていて、そこで賞味期限をえり分ける、チェックするという仕分作業とか、箱詰めして送るまでの、配送までをお願いするということをやっていたりしているものですから、今日、オーガニックパパの皆様が九州で一番の工賃を実現しているということに関して初めてお伺いしまして、非常に敬意を表したいなというふうに思っております。
お話を伺いましたら、A型就労事業所とB型就労事業所を両方やられていて、その中で農福連携で高い工賃を実現されている、まさに全国の就労支援事業所のお手本になるところだなというふうに感じたところなんですが、先ほど野間議員からもお話はあったと思うんですが、今、八尋社長の方に、農福連携、是非まねしたいという問合せ等がどれぐらい来ているのか、また、来たことに対して、コンサル業務という形でやられていたりするのか、また、やりたいと言って、そう簡単に同じようにできるのかということを改めて教えていただけますか。
○八尋健次君 理事長、経営者が本気になればやれます。
コンサル業務はやっていませんが、コンサル受注はしておりませんが、どこまでも教えに行っています。だから、全国どこでも。だから、させた責任じゃないけれども、一回来て、その気になったら、本当に進んだら何十回も通うことになりまして、コンサル業というのは受けていません、そういう仕事ではないので。ただ、何度でも行ってお教えします。何度か行くとZoomでも教えられるようになるし、コツなんか本当に簡単です。
うちは農業法人から成る農福連携会社、珍しいタイプですね、農業から農福連携に入ったんですけれども。ほとんどの日本のそういう事業をやっている会社は、福祉から来た農福連携の会社ですから、安定的なところが多いですよね。社会福祉法人は、地元のとてもいい資本力とか組織力とか信頼性とか、いい会社が多いと思うんですよね。だから、僕らでもできるから、どなたでもできます。そういう社会福祉法人はできる。その方々が関わるところだけでも十分なニーズもありますし。
ですから、どなたでもできると思いますし、どこまででもお教えできます。誰でもできます。僕ら以上に、もっとできますというのが返答です。
○長友委員 八尋社長からそこまで言っていただけると、これはやらない理由はないなと思うB型就労支援事業所とかがいると思いますので、今の発言には励まされたなというふうに思います。
さらに、八尋社長にもう一つお聞きしたいんですけれども、先ほどのお話の中で、千食のオーガニック給食を幼稚園中心に届けていらっしゃる、食育をしている幼稚園と食育をしていない園では全く違うというお話をいただきました。年間千九十五食のうち二百食ぐらいを切り替えるだけで食習慣は変わるという話がありましたけれども、もう少し具体的に、どういうふうに変わるのかお伺いをできますか。
○八尋健次君 給食の時間というのは、幼稚園は、待てなくて、食べない子も多いし、偏食のような、三角食べもできないし、しつけというか、おなかもすいていないのか、騒ぐ子も多いし、もう本当に、今の学校、小学校とか幼稚園に行ったら、保育園とか行ったら、もうキーキーキャーキャー。
給食の時間は、食育というのは食事を通じて教育をすることなので、ちゃんと食事を通じてカリキュラムを組むと最高のしつけなんですよ。食事はちゃんと、かちゃかちゃして待っちゃいけないとか、いっぱい食事を通じてその子が教わる人間形成というのはありますよね。実はそれは食事を介してあることが多いんですよ。それで、それは後にまでつながるんですよね。
だから、食育というのは、やはり昔の日本のようなしつけに近いようなもので、これをなくしたらいけないなというのと、そういうことをやっている園とやっていない園というのは、もう行ったらすぐ分かります。子供たちの体つきとか元気とか、また礼儀とか自発的な挨拶とか、全然違いますよ。だから、違わない例を見たことがないので、どこにでもある食育に熱心な園と食育に熱心じゃない園は、比較したらやはり変わる。
それと、食習慣というのは、全部じゃなくても、やはり最後のバロメーターというか、健康にいいと悪いは、どこがあるかどうかは分かりませんが、人間、センサーがあって、やはり自分で自分の体は守らなきゃいけないというところに、食の安全、安心、そのセンサーが利く子供になるということですね。
ですから、そういう子は、実は二才までなら、それが駄目なら六歳までなら、本人が自分の体を守るためのセンサーというのはつきやすいので、そういうことも一番身につけさせる一つの大切なものじゃないかなと思っております。
○長友委員 ありがとうございます。大変参考になりました。
新村部長、もう一点、もし御担当じゃなければ、またそのときはそう言っていただければいいんですが、鹿児島の方はオーガニックも大変盛んだという話で、農福連携のお話を今いただいております。
JAさんとしても農福連携というのは盛んにやっていらっしゃるものなんでしょうか。
○新村浩二君 ちょっとこれも担当ではないんですけれども、一部、子会社の方では作業でそういう福祉施設にお願いしているという部分もございます。
○長友委員 ありがとうございます。
最後に内田代表にお伺いをしたいと思います。
事前に「新・農業経営者ルポ」という内田代表のインタビュー記事、これはもう七年ぐらい前の記事だったと思うんですけれども、「熊本大地震からのコメ作り 受け継がれる肥後もっこすの志」というタイトルのインタビューを拝見をさせていただきました。その中で、お父様の後を継がれて農業にのめり込むようになったということが書かれておりまして、その仕事ぶりに誇りを感じたからというふうにありました。内田さんの言葉で、「農家の若い連中が後を継ぐかどうかは、親が誇りを持っているかどうかが非常に大きな要因だと思います」というふうに答えていらっしゃったんです。
よく私の地元なんかでも、自分の息子とかに、農業はもうからない、稼げないので、農業はやらないでほかのことをやれと言う生産者さんもいるんですが、どうしてこういう言葉が増えてしまったのか、自分の農業というなりわいに誇りを持てない農家がもしかしたら増えているのかなと思うんですが、そのような状況になってしまったことについて、御意見を最後に伺わせてください。
○内田智也君 これは多分、農業に限らず、自営業、商業も含めて、時代ですよね。職業選択の自由であったり、いろいろな職業が世の中に増えてきたというのがやはり一番大きいですし、委員が言われた、もうからないから公務員をやったらいいとか、どこかに仕事に出た方がいいというのは、よく我々の世代は聞いていたと思います。
私も、直接的な入社の理由は今よく覚えていませんけれども、多分選択肢の中にあったんだと思います。それは、誇りを持って両親が取り組んでいたかどうかは分かりませんけれども、楽しそうに毎日きらきらして仕事をしていた記憶はございますので。それは、でも、農業に限らず、先輩方の仕事であっても委員の仕事であっても、日頃の大人の見せ方かなと思います。
○長友委員 ありがとうございました。
以上で質問を終わります。
○野中座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。
この際、一言御挨拶申し上げます。
意見陳述人の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。
私ども、この派遣委員団にとりまして、拝聴した御意見は大変参考になり、また、本地方公聴会も大変意義深いものとなりました。重ねて厚く御礼を申し上げたいというふうに思っております。
また、この地方公聴会の開催に当たりまして格段の御配慮をいただきました関係各位に、改めて御礼を申し上げたいというふうに思っております。ありがとうございました。
これにて散会いたします。
午後三時四十六分散会
―――――――――――――
派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録
一、期日
令和六年四月十五日(月)
二、場所
札幌プリンスホテル
三、意見を聴取した問題
食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)について
四、出席者
(1) 派遣委員
座長 伊東 良孝君
東 国幹君 小島 敏文君
中川 郁子君 神谷 裕君
近藤 和也君 一谷勇一郎君
稲津 久君 北神 圭朗君
(2) 意見陳述者
株式会社セコマ代表取締役会長 丸谷 智保君
空知農民連合書記長 山口 浩幸君
北海道農業協同組合中央会代表理事会長 樽井 功君
株式会社ファームノートホールディングス代表取締役 小林 晋也君
(3) その他の出席者
農林水産省大臣官房文書課長 高橋 広道君
――――◇―――――
午後一時開議
○伊東座長 これより会議を開きます。
私は、衆議院農林水産委員会派遣委員団団長の伊東良孝でございます。
私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げる次第でございます。
皆様御承知のとおり、当委員会では、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案、この審査を盛んにさせていただいているところでございます。
本日は、本案の審査に当たりまして、国民各界各層の皆様から御意見を賜るために、当札幌市におきましてこのような会議を催しているところであります。
御意見をお述べいただく皆様におかれましては、大変、それぞれのお立場で、またお仕事でお忙しいにもかかわらず御出席をいただきましたこと、誠にありがとうございます。どうか今日は忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げます。
それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。
会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うこととしているところであります。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
まず、派遣委員でありますが、自由民主党・無所属の会の小島敏文君、東国幹君、中川郁子君、立憲民主党・無所属の近藤和也君、神谷裕君、日本維新の会・教育無償化を実現する会の一谷勇一郎君、公明党の稲津久君、有志の会の北神圭朗君、以上でございます。
次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
株式会社セコマ代表取締役会長丸谷智保君、空知農民連合書記長山口浩幸君、北海道農業協同組合中央会代表理事会長樽井功君、株式会社ファームノートホールディングス代表取締役小林晋也君、以上四名の方々でございます。お忙しい中、本当にありがとうございました。
それでは、まず丸谷智保君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
○丸谷智保君 それでは、丸谷でございます。
資料がたくさんあるので、いきなり本題に入っていきます。
今日お話ししたい点は、私どもは何で農業法人をやっているかというようなこと、事業概要ですね、それからあと、消費のサイドからの高齢化社会について、最後に物流問題、この三つの構成でお話をしていきます。
開いていただいて、ちょっと紙芝居みたいになっていますので、絵を見ながら話を聞いてください。
グループ概要というのがありまして、その下にサプライチェーンマネジメントと書いてあるんですけれども、我々は食品を主に扱っていまして、食品の原材料の調達、生産から食品の製造、そしてそれを物流して小売をする、そういうサプライチェーンを経営している構造の会社であります。
次が原材料で、どんなものを使っているかというところなんですけれども、そこにございますように、非常にたくさんの量のものを使っています。野菜で八千五百トンとか米が一万二千トンとか、かなりの量のものを食品として使っておりまして、加工に回しているわけです。
その中で、野菜に関しましては、私どもは北栄ファームという農業法人を持っていまして、北海道と関東に七農場、百二十ヘクタールを経営しております。先ほど示しました年間八千五百トンの野菜の使用量のうちの四分の一を、この農場で生産をしております。
次を開いていただきますと、これは農場の写真なんですけれども、その下、何で農業生産法人をやるのかということなんですけれども、まず、食品の加工商品というのは非常に加工度が低いんですね。野菜を洗って切っただけで出しているものとか、サンドイッチに挟んだだけとか、そういうふうに加工度が非常に低い。ということは、原料の価格の上下動に非常にさらされる。
しかしながら、一度パックされてしまうと、それは小売の商品になって、毎日のような価格変動をすることができない商品が多いんですね。ですから、自分たちで作って原料を安定的に仕入れて、そして加工度が低い最終商品の価格変動をできるだけ少なくする、そのために自分たちで作っています。足りない分については、大きくは、契約農協、契約農家さんから契約ベースで原料を調達するというようなことをやって安定化と価格の安定化双方を兼ね備えたものです。
次のページなんですけれども、小さな表が描いてあります。これ一つ一つはいいんですけれども、要するに生産計画を立てます、その生産計画というのはどんなふうに立てるかというと、私どもの中で一番使用量が多いけれども市場の価格変動に非常にさらされやすいもの、例えばトマトであったりキュウリであったりレタスであったり、こういう価格変動の大きいものを優先的に割りつけて、百二十ヘクタールの棚割りをします。農業生産法人でできるだけ確保しながら、足りない分の四分の三は、一部は市場から取りますけれども、主に契約農協、農家さんから取るというようなことをしています。
例えば、昨今、為替が非常に円安に振れたことによって、従来、ホットシェフというところで使っているフライドポテト、これを千五百トンぐらい使うんですけれども、それは、従来はアメリカのアイダホ・ポテトを輸入して使っていたんですけれども、完全に今、国産に切り替えました。価格はむしろ安くなってきたんですね。昔は高かったんですけれども、今は全量国産に切り替えました。これもいろいろ難しい問題点はあるんですけれども、サプライチェーンを維持していくのは非常に大変なんですけれども、今は国産に全量切り替えています。
次のページなんですけれども、例えば、サプライチェーン経営の難しさというのをこのナポリタンスパゲッティを例に取りますと、パスタ麺というのはデュラム小麦で作っているのが一番品質がいいんですけれども、それはもうほとんどが輸入になります。下の地図にありますように、トルコのアンカラ、それからイタリアのボローニャ、バーリ、この三か所からそれぞれ異なるパスタ麺を輸入しています。
ところが、御承知のとおり、アデン湾で紛争が、紛争がというかな、海賊行動というかテロ行動が起きたことによって、次のページ、地図を大きくすると、結局、スエズ運河を通ってインド洋に簡単に出ていくものが喜望峰を回るということで、いろいろな抜港調整をした結果、やはり三か月到着が遅れる。そうしますと、パスタ麺の原材料の確保が非常に難しく、在庫が切れそうになって、一時欠品したということがあります。ようやく四月になって着きましたけれども、こんなことが、我々の小さなパスタにも地政学的リスクが影響を及ぼすという一つの例です。
ちょっと横道にそれましたけれども、本題に戻ります。原材料を使いまして、食品加工を行っています。北海道の地図がございますけれども、そのように、道内に二十三の工場、漬物工場があったりとか、いろいろなものがあるんですけれども、アイスクリーム工場とかですね。
次のページを開くと、これは大きな工場の一つですけれども、牛乳の工場も持っていまして、生乳ですね、生産を行っています。原乳は全て豊富町から入れておりまして、豊富町の原乳のほぼほぼ九五%ぐらいは私どもで使用しています。これが、今、外販で二千五百万本、それからセイコーマートの店舗で二千万本、計四千五百万本のパック乳を作っている。そのほかに、製造用の殺菌乳等を作っております。
それから、少し工場の説明なんですけれども、羽幌町では、牛乳を使った乳製品でありますところのアイスクリームを作っている工場があります。
それから、メロンの端材の、規格外品の写真なんですけれども、これをもったいないので絞ってメロンの果汁にして、産業廃棄物にならないような形で、我々、産地から買いまして、八農協から百トン、今、仕入れをしております、このように冷凍保管をして、そして夏場になると、メロンソフトクリームという北海道産のものを作っています。これは、三百六十万個、これだけで売れていますけれども、アイスも、この下の写真にあるように、二千二百万個作るうちの三分の一は北海道外で販売をしています。
次のページ、また北海道の地図が出てきますが、道産品を活用した商品というのは、様々な原材料を使ってこのように食品として加工をしている。これがまた、先ほど申し上げたように、三千四百五十万個を北海道外で販売している。さらに、次のページに行きますと、ふるさと納税の返礼品としても使用して、いわゆる広がりがかなり広いということですね。
次に重要なのが物流でありまして、物流拠点が北海道十三か所、本州三か所ありまして、次のページに行きますと、また北海道の地図が出てきますけれども、物流拠点がこのように、道内に、主要都市に配送センターを配置して、ここから千百店舗以上のお店に、店舗のルート配送を行うというような物流体制を組んでおります。トラックは二百四十台持っていまして、一日の配送距離の累計が七万キロ、地球を二周ぐらいするような距離を走っています。北海道は、それだけ物流が大変だということですね。
こういう動脈的な物流だけじゃなくて、帰りの便の静脈物流にもいろいろ力を入れております。その結果、こういったサプライチェーン全体、生産、製造、物流、その結果、初めて小売店があって、その下にオレンジの北海道の地図がありますけれども、全道の百七十九の市町村のうちの百七十五に店舗が展開されているということです。一言で言えば、物流があってのお店ということになると思います。
そのほか、まちづくり協定をいろいろなところと締結したりしておりまして、災害時にも非常にインフラとして活躍しているのが店舗であります。
次の課題としては、消費者側からの目線の問題ですけれども、とりわけ高齢化についてお話をしたいと思います。
次のページを開いていただくと、一位、二位、三位という表があると思うんですけれども、これは何を言っているかというと、その月における一番売れる日、売上げの高い日を示しています。二〇〇六年は給料日の二十五日が一番売上げが高かった。ところが、二〇〇七年になりますと、年金の支給日の十五日、これは偶数月でみんな取ってありますけれども、年金の支給日の十五日が一番売上げが高い日になっています。二〇一三年になりますと、今度は生活保護の支給日の一日が第二位に上がってきて、給料日が第三位。現在は、年金支給日が一位、それから生活保護の支給日が二位、そして給料日は第三位、こういう順番です。
つまり、消費における高齢化、これは何を意味するかというと、社会保障収入に依存する社会であるということが、あくまでもこれは我々の小売の世界での話でありますけれども、高齢化をこんなように私は理解をしています。
したがって、やはり出す食品というのは、原材料をできるだけ歩留りを高めて、できるだけ原料コストを安くする。それから、ここにあるような総菜、百三十八円とか、切り干し大根の百三十八円というのも見えますかね。実は、昔は百八円で出していたんですけれども、今は切り干し大根の原料が上がっちゃって百三十八円になっている、それでもお手頃だと思うんですね。やはりこういう価格のもので出していかないと、なかなか消費者としては厳しい世の中に入ってきているかなというふうに思います。
その次のページを見ますと、例の切り干し大根なんですけれども、こういう基礎的な栄養を取れるような野菜、大根のようなものですね、重い、重量商品をなかなか作ってくれなくなってきていまして、元々は、芽室農協さんから切り干し大根を十トン買って、これを一年間使っていたんですけれども、今は大根そのものが集まらなくなりまして、豊頃農協に頼んで今度五トン作ってもらう、しようがないので、残りの五トンは今、鹿児島県から入れざるを得ないというような状況になってきています。
そのほかに、消費者目線で、できるだけやはり価格を安くするために、包材ですね、私どもの包材は非常に簡単にできておりますけれども、この包材のコストを見直す意味で、自分たちで包材を毎日二十万個作っています。食品加工場の中に包材工場を設けて自分たちで作ることによって、約八割の価格、コスト削減に成功いたしました。このような形で、値上げはせざるを得ないけれども、できるだけその値上げの幅を抑えるような流通での工夫をしています。
次のページは、卵ですね。
卵を、ゆで卵製造機というのがあって、大体年間で九百万個作るんですけれども、やはり五%ぐらいは崩れちゃったりするんですね。でも、崩れたら捨てなきゃいけないんですけれども、それをタルタルソースにしたり、あるいは卵サンドにしたりして歩留りを一〇〇%にすることによって価格を五%抑える、そういうような努力をしています。
というのも、下の表にありますように、やはり、年代が上がっていくほどお総菜をたくさん消費するようになっています。老夫婦世帯になると作らなくなるんですね。ですから、やはり、ちっちゃなものを買ってきて食べるというような消費形態に大分変わってきておりますので、そこのところは十分考慮していかなければいけないと思います。
次のページは、鳥肉の端材の活用ですね。
鳥の串に刺せないような小さな端材をたくさん集めて、これをパスタのペペロンチーノの鳥肉にしたりとか、このような形で食品ロスの活用、本来であれば捨てられてしまうようなサンドイッチの切り落とした耳ですね、乾燥させてラスクにしたりとか。これによって、製造過程で出てくる食品ロスを年間で二千三百十七トン削減をしております。
我々にとってみれば、食品ロスの削減というよりも、使えるもの、食べられるものをできるだけ歩留りを高く使い切ろう、それによって最終消費者には安く出そう、そういう流れで御理解いただければと思います。
次に、最後ですけれども、物流の問題です。
もう御承知のとおりでございますけれども、二〇二四年問題、いろいろな業種で、働き方改革、時間外の規制強化、これはいいことなんですけれども、一方で非常にドライバーが不足をしている、これも仕事の内容がきついからかもしれません。
我々は、様々な効率的な物流網を構築して、できるだけ片荷にならないような、次のページ、また北海道の地図が出てきますけれども、例えば、稚内まで横持ちで大きなトラックが運んだ帰りは空っぽになってしまいますね。その帰りは豊富町に寄って、稚内から三十分くらいです、ここに寄って、でき上がった牛乳をたくさん積んでまた札幌に戻ってくるというような、片方の荷にならないような工夫をいろいろ行って、物流コストをできるだけ削減するような形を取っています。
そのほかに、我々のものだけじゃなくて、空いているところには、このように、様々な異業種のものを一緒に混載をして運ぶことによって、実質的な物流コストの削減。
それから、次のページ、これはちょっと面白いんですけれども、トラックドライバーが減るということで、モーダルシフトを描いています。その一つは海上輸送なんですけれども、それからもう一つは航空便による輸送ですね。今、高級な水産物とかあるいは高級な果物とかはもう既にやられていると思いますけれども、意外と旅客のおなかが空いているんですね。調べましたら、北海道内だけでも一日三百トンから四百トンのスペースが実は航空便で空いています。
ここを有効活用しようということで、実は非常に安い。松山から実は伊予カンを運びました、北海道の千歳まで。これはたった七万円なんです。ですから、一個十円ぐらい航空運賃料を乗っければ、通常価格よりも十円高いんですけれども、売れまして、あっという間に売り切れになった。北海道からは、松山の方に、アスパラガスとかあるいはもぎたてのトウモロコシ、こういったものをやはり航空便で運びまして、それで、向こうでも非常に評判がよく、あっという間に売り切れた。
こんなことを積み上げていまして、今は、稚内空港から沖縄へ牛乳を運んでいます、牛乳とヨーグルトですね。これは、お昼の便で載せると、その日のうちに沖縄に着きます。沖縄のスーパーには翌日並びますので、非常に鮮度のいいものが届くのと同時に、普通に運んでいたら五日間ぐらいかかっちゃうんですけれども、賞味期限が非常に長く取れるということもあって、このように物流面は非常に食品にとっては重要だということですね。
その次に、下の方に、農村のエネルギー物流と書いてあります。
実は、農業というのは太陽エネルギーだけでできるわけじゃなくて、やはり、トラクターを動かしたり、刈取りだとか耕作のための、いわゆる化石燃料のエネルギーがまだ必要ですね。これを供給できるところが、今だんだんと、ホクレンさんのスタンドぐらいしかなくなってきて、このエネルギーの確保に非常に生産地が苦労しておりますので、農村のエネルギー物流の確保、これも非常に大きな課題かなというふうに思います。
それから、次のページ、私どもがやっています酪農についても、このような大体十一トンぐらいのローリーで運ぶんですけれども、このローリーの原乳を運ぶ物流、これも実は非常に難しい。
それから、もっと言えば、畑のあぜ端から鉄コンでどうやってこれを運ぶのか。今、農協さんがやっておられるか、自分で運ぶかですね。しかし、我々のような法人がこれを引取り物流で運ぶということも非常に効率的かなというふうに思いますので、そういう産地からの物流というのも非常に今後大きな問題点になろうかと思います。
最後に、ちょっと余計なことをつけ足しましたけれども、やはり、そういう意味では、広い北海道、産地とそれから消費地を結ぶ高速、高規格道路の整備は、決して建設業だけではなく、農業、生産者にとっても非常に必要なものでありまして、大幅なまだ計画未達がございますので、一日も早くこれがつながってくれれば、もっと牛乳もスムーズに豊富から出せるかなというふうに思っています。
私は、以上でございます。(拍手)
○伊東座長 ありがとうございました。
次に、山口浩幸君にお願いいたします。
○山口浩幸君 本日は、このような機会をいただき、ありがとうございます。
空知農民連合で書記長を務めさせていただいています山口です。本職は農業者ですが、また、地域の土地改良区の監事もさせていただいています。
本日は、基本法の改正に関する地方公聴会ということで、送られてきた資料に目を通す時間がなかったもので、聞き及んでいる範囲で、基本法のことや現在我々が抱えている課題を中心に意見を述べさせていただきます。
さて、私自身は、札幌近郊の南幌町で、小規模ではありますが、後継者の息子と、米、麦、キャベツを生産しています。
また、私の所属している空知農民連合は、空知管内の農業生産者の社会的、経済的地位を高めることを目的としている運動体であり、今月四日、国会で行われました農林水産委員会に参考人として出席していました中原氏の北海道農民連盟とともに、我々生産者が抱えている問題の解決、政策の不都合な点の改善、理想とする農業環境を目指すべく、盟友農業者の代表として活動しています。
さて、昨今の農業の現状は、この数年、様々な要因で農業経営が厳しい状況にあります。新型コロナを原因とした農産物価格の低迷、昨年は、猛暑の影響により、農産物の収量、品質が低下しました。
私の場合、水稲の収量は平年並みでしたが、農協以外に販売した米が二等米となったり、特にキャベツにおいては、雨不足の時期にはアザミウマという害虫の被害があり、計画の六割程度の収穫しかありませんでした。また、世界情勢の不安定化により肥料、燃油の高騰、円安等により生産資材が高騰し、経営を圧迫し、厳しい状況にあります。
また、空知の農地の多くが水田であり、多くの農地が土地改良区と関わりがあるため、一昨年の水田活用の直接支払交付金の見直しが、特に転作率の高い私が住んでいる南空知の地域にとっては、いまだに混乱と戸惑いがあります。このため、コスト高による経営の悪化や水田活用の見直しをきっかけにして、離農する生産者が増えています。
猫の目行政に振り回されている農業経営としては、先の見通せない状況の中で、交付金は経営を支えるものであります。
また、水田の畑地化をしても、必ずしも土地改良区の地区除外とはならないので、決済金を払っても土地改良区からの脱退とはならず、賦課金は払い続けなければなりません。
今後、水田活用の交付対象外となった農地を持つ生産者にとって、経営の足かせとならない対策をお願いしたいと思います。
さらに、今後は、トラックドライバーの時間外労働の上限規制問題、さらには、私の地元で生産されている南幌のキャベツなどの野菜はJRコンテナを利用して道外輸送しているため、JRを利用して輸送している北海道産の農産物が、新幹線の札幌延伸に伴い、もし函館―長万部間の在来線が廃止となれば、今後の農産物の生産、輸送に対しても大きな影響が考えられます。
国際貿易と自給率については、日本の国土に根を下ろしている我々農業者が、輸出企業のために、貿易交渉のたびに自給率の高い農産物の輸入や影響の大きい農産物の関税の引上げ交渉を材料とするのは、非常に納得がいかないところです。
ましてや、こうして農産物をどんどん輸入して、さらに自給率の高い米までが国内需要の一割以上を輸入しているため、食料自給率が上がらないと言っていることについては、国の国内農業に対する姿勢としては甚だ疑わしいです。いまだTPPのアメリカ枠を取り下げず、農業輸出国との新たな交渉もうわさされている中、更に輸入が増えるのが心配です。
次に、農業経営における国からのセーフティーネット対策として、収入保険制度や、全ての農産物が対象ではないものの、農業共済制度がありますが、いずれも収入や売上げを基準に補填する制度であって、現在のように、肥料、燃油などの生産資材の高騰や労賃、高額な農業機械の購入に対する資金など、コストが収入より高くても、そのコスト増を賄える仕組みではないため、経営は厳しい状況にあり、このため、組合員勘定制度という、農協に経費を一時立て替えてもらって、農産物の収穫後に返済する仕組みである組勘が年末に黒字化することができるのか、不安を抱えて十二月を迎える生産者も多くいます。
政策の中で、経費の補填をするものとして畑作物の直接支払交付金がありますが、経費を収量で割り返すため、生産者の努力で収量を上げても、一俵当たりの金額がコストに見合うような金額とはならず、豊作でも収益が上がる仕組みとはなっていません。
また、経費に算入される労賃は作業員としての単価であり、例えば、機械を操作する場合は、オペレーターとしての労賃を導入すべきと考えます。
このような状況で営農している親としては、子供に強く後を継ぐようには言えず、ましてや、娘には農家だけには嫁がせたくないなど、農業者の減少に歯止めがかからない状況にあります。新規就農者においても、このような環境下では長続きせず、離農する者も多いと聞いています。
やはり、真面目に営農に取り組んでいる農業者が将来にわたって安定的に営農ができ、後継者に自信を持って就農を勧めることができる政策を求めるものであります。
次に、価格形成については、我々としても価格転嫁できるならうれしい限りではありますが、我々農業者が必要とする農産物の価格と、消費者が農業の実情を理解した上で購入する価格には、かなり開きがあるものと感じますし、実際、農産物の価格が上がると、買い控えや、以前レタスが高騰したときは安いキャベツを代替品として購入するなど、最終的には、価格の高い国産の農産物ではなく、価格の安い輸入農産物を求めるようになる可能性が考えられます。それでも価格を上げれば、食料を購入することができない国民が増えることと思います。
国に価格補填対策を求めると、過去の米の所得補償政策のときのように国から補填されるなら、その分、価格を低く抑えられることがあったため、国は補填対策には後ろ向きではありますが、作物別の所得政策や生産資材の補填対策ではなく、経営全体を通しての所得政策や、中山間地域等直接支払制度や多面的機能支払交付金のように、農地に対して支払われるものを参考に、今すぐにでも何らかの所得補填対策を講じないと、農業者の減少に歯止めがかからず、耕作放棄地も増えるため農業生産物が減り、自給率が更に下がることは明白であります。
そのためにも、防衛費の増額よりも、食料安全保障に沿った農業予算確保を第一に求めるものであります。強力な武器をそろえても、国民が飢えているようでは本末転倒であり、有事の際には食料の確保が重要であり、輸入もままならなくなるはずです。本来、防衛費と食料の確保は表裏一体であると私は思いますので、食料の備蓄は重要であると思います。
ちなみに、タイ米を緊急輸入した平成五年の冷害のときは、作況が七四であり、今年の需給見通し六百七十一万トンで計算すると、百七十五万トン不足することとなります。
また、不作以外の要因や食料の輸入できない事態となると、当然、今の十年に一度の不作にも供給できる量としての備蓄量百万トンが適正であると言える状況にはないと考えます。
また、農業者の減少とともに耕作放棄地が増えていることは、土地改良区や農協の運営に支障を来すばかりでなく、冬の北海道にとっては、一般道路はもとより高速道路、中には空港の除雪を担っている農業者もいます。農業者の減少によって冬の北海道経済を支える除雪作業が滞ることとなると、大変な状況になることは容易に想像できるところであります。
次に、スマート農業の推進については、人手不足の解消や生産性の向上などの利便性や効果については理解しますが、円安、物価高、半導体不足、ディーゼルエンジンの新たな排ガス仕様など農業機械は非常に高額化しており、規模の小さな多くの生産者は購入に慎重な状況にあります。そのための予算確保をお願いいたします。
また、関連法案の食料供給困難事態対策法案については、生産調整を国が手放し、生産者が需要に応じた生産をするように進めてきたのに、不測時の罰則規定は到底納得できるものではありません。これを進めるのであれば、国による生産の関与や、目標とする自給率を達成できなかったときには国の責任を明確にするなどの責任を果たしていただきたい。
最後に、このような公聴会での意見を基本法の施行や基本計画の策定に反映していただき、家族農業の重要性を分かっていただいて、安心して将来にわたって営農できる国内農業の推進と、食料が行き渡り、飢える国民を出さないことを基本中の基本として、我々が希望を持てる改正をしていただきたい。
耕作放棄地が出ていることで、生産現場は既に手遅れなところまで来ておりますが、取り返しがつかなくなる前に手を打っていただくことをお願いして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○伊東座長 ありがとうございました。
次に、樽井功君にお願いいたします。
○樽井功君 ただいま御紹介いただきましたJA北海道中央会の樽井と申します。よろしくどうぞお願いします。
まず、先生方におかれましては、本当に大変お忙しい中、札幌までお越しをいただきまして、大変ありがとうございます。JAグループ北海道の意見を反映させていただきましたことに対しまして、心から厚く感謝とお礼を申し上げたいというふうに思います。
それでは、早速ですけれども、私の方から考え方を申し上げさせていただきます。
北海道農業の歴史、概要は既に御案内のことと思いますので、私の方からは、北海道農業が直面している問題について若干申し上げ、その後、基本法改正案について数点に絞って御意見を申し上げさせていただきたいというふうに思います。
まず、北海道農業が直面する問題でありますけれども、国際紛争や急激な円安の進行による飼料、肥料を始めとした生産資材価格の高止まりのほか、水道光熱費等の上昇が農業経営に与える影響は甚大なものとなっております。
とりわけ、輸入飼料価格の高騰や副産物価格の下落による酪農経営の収支悪化への影響が大きく、酪農家の搾乳中止が顕著であり、ホクレンの受託戸数では、令和六年二月末において四千四百八十五戸と、前年比で二百十三戸減少しております。農業経営上の問題もありますけれども、農家戸数が減少すると、地域に人がいなくなる、いずれ学校が廃校になる、また子供たちが地域から出て地元に帰ってこなくなる、病院、商店がなくなる、人が住めなくなるという地域のコミュニティーの存続、改正案で言う食料安全保障の確保、環境と調和の取れた食料システムの確立、農村の振興に支障を来すことが懸念されております。
酪農に限らず、北海道における農業者の一戸当たりの経営耕地面積は、平成十二年の十八・三ヘクタールから令和四年の三十四・六ヘクタールにほぼ倍増した一方で、農業経営体数は、基本法制定時の、平成十二年の六万四千七百三十一戸が、令和四年には三万三千戸まで半減いたしました。酪農地帯だけでなく、水田地帯、畑作地帯においても地域のコミュニティーの維持が問題になっております。
これは、現行法が効率的かつ安定的な経営体の育成に大きくかじを切った当時と様相が大きく変わっております。基本法は農業の憲法でありますので、我々農業者が、後継者や就農を希望する人に、自信を持って農業をやってみたいということが言える、そういう地域社会をつくっていきたい、そういう思いでございます。
食料安全保障の確保ということです。
まずは、冒頭の御挨拶でも申し上げましたとおり、改正案に食料安全保障の確保が明記されるなど、JAグループ北海道として大筋で改正案を評価させていただいております。
その上で、初めに、改正案第二十四条の不測時における措置であります。
まず、不測時における措置が重要であることはもっともであります。しかし、問題は、平時からの食料安全保障をどう確立していくかが重要であります。平時からの食料安全保障の確立に向けては、安定して生産し、流通し、消費され、結果として農業者の所得が確保されるというサイクルが円滑に回ることが大切であります。
ついては、食料・農業・農村基本計画で定める食料自給率、自給力などの各種目標の達成が必要不可欠であることから、これまで以上に生産現場の実態、意向を的確に反映した基本政策へ再構築及び強化を図ることが重要です。
次に、改正案第十七条の基本計画の見直しについてであります。
現行法が制定されました平成十二年以降、食料自給率目標は達成しておりません。また、基本計画に定める品目の生産努力目標も、ほぼ全ての品目で未達が続いております。
そのような中、基本計画の実施期間中でありながら、生産現場に生産努力目標以下に生産抑制を強いられている状況が発生し、多くの農業者に閉塞感が蔓延、農家戸数が減少し、食料安全保障の確保に支障を来すことが懸念されます。
そこで、是非とも国は、なぜ自給率目標や生産努力目標を達成できなかったのかという基本計画の検証を行い、過去の基本計画で掲げた目標値に責任を持つとともに、食料安全保障を強化できる、実効性のある基本計画とすることが必要であります。
次に、改正案第二条の食料安全保障の確保についてであります。
食料安全保障の強化には、担い手が豊凶変動等の農業特有の事情を気にすることなく将来展望を描き、創意工夫を持って営農を継続し、生産された農畜産物が確実に消費されることが不可欠であることから、予期せぬ需給変動や生産環境の変化を緩和するための制度、仕組みづくりの確立が必要です。
具体的には、過度な輸入依存のリスクが高まる中、現行の備蓄制度の検証、見直しを行うとともに、備蓄品目の数量、用途の拡充や備蓄品目の国産への代替促進を図り、食料安全保障の強化に資する備蓄体制の確立が必要でございます。
次に、改正案第二十二条にあります農産物の輸出促進についてであります。
我が国においては、今後、更なる人口減少や高齢化に伴う国内市場規模の縮小と、世界人口の増加に伴う海外市場規模の拡大が予想されております。そのような中、国内生産基盤の維持と農業所得向上に資する農畜産物、食品の輸出の更なる促進に向けた支援が必要でございます。
次に、改正案第三十三条にある国民における農業への理解をどう深めていくかでございます。
農業の果たす役割や価値は、幼少期から学校教育の中で学ぶ必要がございます。そこで、国において、各省庁連携の下、食育基本法に基づく食農教育のより一層の推進を図るとともに、今まで以上に食料安全保障に関する国民理解醸成を図ることが必要です。
次に、改正案第二条、第二十三条にある良質な食料が合理的な価格で安定供給されることや、食料の持続的な供給に当たる費用の考慮についてであります。
合理的な価格形成には合理的な費用の視点が必要である旨が改正案に書かれております。現行の基本法を制定した当時においては、農畜産物価格が徐々に低下していくことは予想されておりましたが、農業における近年に見られるような生産コスト上昇までは想定されなかったと思われます。
生産コスト増の要因には、ロシアのウクライナ侵攻や円安もありますが、世界的な食料需要の拡大が根本的に背景にあると思います。このことについては、現在、国において、生産から消費までの関係者を集めた適正な価格形成に関する協議会で議論されておりますが、食料システム全体で再生産可能な農業所得の安定確保に資する適正な価格形成が可能となる法制度の早期実現を図ることが必要です。
あわせて、改正案第三十九条には、国は、農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるとあり、さらに、第四十二条には、国は、農業資材の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講じるとあります。このことは、農畜産物の価格変動だけでなく、生産資材価格の高騰に対しても影響緩和対策を講ずるという意味と思われます。
ついては、我が国の食料安全保障の強化には、農地の総量確保と生産性向上を図り、再生産可能な農業所得を安定確保するということが必要不可欠であります。そういった観点の下、生産現場では生産コスト低減に取り組み、価格は適正な水準を実現し、それでも足らざる部分は、既存の経営安定対策の検証を行った上で、法整備を含めた恒久的な経営安定対策及びセーフティーネット対策の構築、さらには農地を適正に維持することに着目した日本型直接支払い制度の再構築が必要であります。
次に、農業の持続的発展であります。
改正案第二十七条にある専ら農業を営む者等による農業経営の展開であります。
このことについては、食料安全保障の強化に向けて専ら農業を営む者の役割を明確化した上で、高齢化等により生産基盤の維持が困難な地域が存在することから、地域農業の将来像の実現に向けて取り組む農家経営の農業者と併せて、新規就農者や雇用就業者、またJAの農作業の受託組織等といった多様な農業人材の育成、確保が図られることが食料安全保障の確保、農業の持続的発展、農村の振興に寄与するものと思います。
次に、改正案第二十八条の農地の確保及び有効利用についてであります。
我が国が輸入依存から脱却を果たし、平時からの食料安全保障の確立を実現するためには、国が中長期的な国内需要、国内生産の見通しを立てるとともに、基本計画上において、作物ごとの方向性と農地利用の方向性を一体的に生産現場へ明示することが必要です。
その上で、各地域の地域計画の策定と地域農業の振興方策の実践については、それぞれ独立に運用が図られていることが多いことから、地域計画と地域の農業振興方策等の連携を促し、地域関係者が一体となって地域課題へ対応を図れるよう、国が後押しすることが必要です。
あわせて、農地の総量を確保するためには、農地の受け手不足の状況を発生させない施策が必要であり、受皿が不足した際は、地域の実態に合わせて活用可能な施策が必要です。
改正案第十九条にある食料の円滑な入手の確保の中では、食料の輸送手段の確保の促進が明記されております。
北海道は、全国に向けて農畜産物を安定供給する役割を担っており、生産した農畜産物を府県に運んで初めて消費者の元に届きます。このことについては全ての安全保障、食料、経済、防衛上で強靱な物流、輸送体制の確立が必要不可欠であり、特に、我が国の国土の二二%を占める広域分散型地域構造である北海道においては、物流の二〇二四年問題や環境負荷低減の面からも、鉄道の維持を基本とした流通体制の構築を最優先で進めるとともに、その上で、その他の輸送手段の強化も併せた万全な物流体制の構築を行うことが必要であります。
あわせて、物流の二〇二四年問題への対応に向けては、産地にコスト負担が集中しないように、適正な価格転嫁の仕組みの構築、デジタル、DX化等の推進に加え、一貫パレチゼーション輸送等の拡大やストックポイント、農畜産物の中継輸送拠点の整備等への支援を拡充することが必要であります。
次に、環境と調和の取れた食料システムの確立であります。
最後に、需要が期待される食料、自給飼料などを安定生産すること、農業における環境負荷低減、この二つをいかに両立させるかが重要でございます。JAグループ北海道といたしましても、この両立は言うはやすく行うは難しですが、両立に向け、生産現場は行動変容に取り組んでおります。
例えば、本日午前中に子実コーンの視察を先生方もされたと思います。需要が期待される食料や自給飼料を選択し、合理的な輪作体系を構築することがあります。また、化学肥料等を低減し、家畜ふん尿の資源化、堆肥化などの更なる有効活用や、安全性を確認した上で汚泥などの未利用の資源を有効活用していくことも重要となってきます。
また、新品種の導入やスマート農業を進めるなど、農業現場の技術革新を進めることも重要です。さらに、バイオガス発電や米をプラスチックの代替とする技術であるライスレジンなどに取り組むことで、これらを両立したいと考えております。
最後に、みどりの食料システム戦略において掲げた化学肥料、化学農薬の削減、温室効果ガスの削減に向け、国は生産現場の取組を強力に後押しする必要があることから、環境負荷低減の取組にインセンティブを設けることが必要です。
あわせて、エネルギー自給率も低い我が国においては、農業から生み出される再生可能エネルギー等の有効活用について、より一層積極的に検討を進めるとともに、持続可能な循環型社会の構築に向けて取組を後押しするための予算の拡充と政策的な支援が必要です。
このような考えを是非とも考慮していただくことをお願いし、我々JAグループ北海道といたしましても、食料安全保障の強化に貢献し、持続可能な農業を確立していく所存であることを申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○伊東座長 ありがとうございました。
次に、小林晋也君にお願いいたします。
○小林晋也君 改めまして、株式会社ファームノートホールディングスの小林と申します。本日は、このような貴重な機会をいただきまして、大変感謝しております。
私は北海道帯広市から参りまして、お手元に私たちの会社概要を置かせていただいておるんですけれども、生きるをつなぐというビジョンで、人、動物、自然、これが調和した地球を目指そうということをビジョンに掲げ、事業を行っております。
その中でも、やはり私は十勝の中で実家が農業をやっていたということもありまして、この地球と調和の中でもサステーナブルな食料生産というところを挑戦したいということで、私は二〇一三年からこのファームノートという会社を経営しております。
ファームノートの概要は、ページをめくっていただいた四ページ目にファームノートグループのお話が書かれているんですけれども、ファームノートは、今は食料生産の中でも酪農というジャンルに身を置かせていただいております。酪農のデジタルトランスフォーメーション化を支援するということと、それを通じて生産者の方々の生産性を改善していく、向上していくということをミッションに経営を行っております。
それと同時に、三年前から北海道の中標津町、そして、おととし、北海道の遠軽町というところで酪農生産も実際に行っておりまして、自分たちがDX化を支援するということ自体を自分たちで実践し、決算書上、どこで、どういうふうに利益が出るのかというところまで実証して事業を行っております。
この生産者支援と実際の生産というところを両輪を回していくということが我々の事業なんですけれども、牧場事業においても、今、五か所牧場をやらせていただいておりまして、中標津、遠軽、鹿児島、あとは、直接我々が牧場を経営するというよりは、運営を受託するという運営受託も含めて、今、五件やっておりますけれども、大体千五百頭ほどの牛を我々の方で管理させていただいているというような形でございます。
次のページに、ステークホルダーというところで、この業界にかかわらず、様々な、全方位で御出資をいただいておりまして、このビジョン実現に向けて邁進しているところでございます。
俗に言うスタートアップという会社でございます。このようなスタートアップの会社も発言をいただける機会を頂戴できたことを大変うれしく、そして感謝しております。私の方からは、このスタートアップという視点と同時に生産者という視点と、両方持ち合わせているのはなかなか珍しいんじゃないかなと自分で思っておりまして、そのような視点からちょっと皆様に御意見を申し上げさせていただきたいと思っております。
私は、今回の農業基本法の改正において、いろいろ拝見させていただいた中で、食料の安全保障というところ、これは私も国民として非常に重要だと強く思いますし、国民全てが願っていることだと思います。じゃ、なぜ安全保障が必要なのかと考えれば、当たり前ですけれども、人が人として安心して生きていくために本当に最低限、絶対必要だ、こういうものだと思います。
この観点からこの法案をいろいろ考えていったときに、私はここから考えようと勝手に思ったことがありまして、それは人から考えてみようと。どういうことかといいますと、生産においては担い手が必要ですし、担い手が作る生産物は流通が必要でしたり販売が必要でしたり、そして、それを食べる消費者が必要でしたり、そのようなやはり人が人のために安全保障をつくるということから、人がどうあればいいのかということを私なりに考えてみたところでございます。
私は、生産者の皆さんにテクノロジーを提供していく中で非常に感じることがありまして、何かというと、非常に農業が複雑化して難しくなっている、そして技術がとても要求されるものに変わっていったんだろうというふうに思います。
私たち、特に酪農というジャンルにおいては、非常に多岐にわたる技術が必要です。餌から飼養管理から繁殖から治療から、それだけじゃなくて畑、トラクターの運転、様々な技術が必要だということを一人の生産者の方が全て理解し、それを完璧にできるかというと、それは私でも無理だなと思って、ふだん生産者の方々に接しさせていただいております。ですから、我々のような会社さんや農協さんを含め、サプライヤーの皆さんが生産者の方々を支えていくということで生産というものがなされていると思うんですけれども、それにしても、非常に生産のノウハウというものが難しいなというふうに感じております。
そうしたときに、これを本当に前向きに、面白いとやりがいを持って生産されている皆様、もちろん、私たちのお客様の中にもいらっしゃいますけれども、逆に、苦しみながら営農されている、非常にやはり難しいものをチャレンジされているという中で、なかなか利益が上がらず、生産も上がらないというふうな形で御苦労されている生産者の方々も多々いらっしゃるなというふうに思います。
そのような状況の中で、担い手がいなければ生産が生まれないということを考えると、もちろん、担い手が入ってきてくれる、そういう魅力ある業界にやはりこの農業がなっていく、ないし、より魅力を増していくということがとても大切だと思うんです。
私はこの業界に参入して十年たちますけれども、非常に苦労しておりまして、何かというと、生産者の皆様が利益が上げづらい状況であれば、サプライヤーの我々も利益が上がりづらい。となると、業界全体が、言い方が乱暴ですけれども、もうからない、そのような業界に見られてしまっているのではないかと思います。これは、もうからないと断言しているのではなくて、そう見られてしまっているのではないかという側面があるのではないかなと思っておりまして、やはりもうかる農業、これはいろいろな方々が参入していく上では一つポイントじゃないかなと思うんです。
一方で、もうかる、もうからない以前に安心、安全な食料生産を実現するには、極端な話、そこに利益は関係ない話だと思います。やはり人が人として安心して生きていく社会というものにおいては、利益以上にかけがえのないものがあると思うんです。
実は、これに気づいている若者が今とても増えているんじゃないかなと私の実感がございます。それは、私たちの会社で新卒の採用をやっているんですけれども、生きるをつなぐというビジョン、持続可能な食料生産ということに非常に興味を持っていただく若者というのがたくさん私たちの会社に応募いただいているのを見ると、ああ、まだまだ農業は発展するのかしらと。
これはちょっと私の狭い目線で大変恐縮なんですけれども、もうかると同時に社会的意義があるということが、もっともっと農業の中で、外の消費者の方々だとかいろいろな方々に伝わっていく必要があるのではないかなというふうに思っております。そうすることによって、やはり新しい方々の参入や後継ぎの方々が参入したいという流れが生まれてくると思うんです。
私が苦労している中で、何に苦労したかというと、一番はやはりお金に苦労するわけでして、私は、信用ゼロで、農地も何もない中から参入しまして、そしてJAの組合員にもならせていただいて、今、営農もさせていただいているところではあるんですけれども、この間に、私たちは、お金はほとんど補助金ではなくてエクイティーという形で、資本を自ら調達して投資をしてまいりました。やはり農業はビジネスができ上がるまでに非常に時間がかかるなと思っておるんですけれども、その中でも諦めずにずっとやってきて、何とか今一つの形になりました。
もうかる、もうからないみたいな形で見れば、やはりなかなか今は厳しいかなと思うんですけれども、私が歩みをやめたくなかったのは、これが非常に社会的意義があり、たくさんの人たちを救うことだなと思うと、私は体を止めずにいられないということでずっと経営させていただいたところでございます。
そうなってくると、参入してくる人たちが、後を継ぐ方が次に何が必要になってくるかという観点で見たときに、よくあるのは、技術だとか仕組みをつくるということは議論されると思うんですけれども、今、複雑化した技術、そしてかなり資本主義が進んでお金の流動性が高くなっている状態、そして人の流動性も非常に高いというこの中で、これらをとどめるというか、こちらに流れてくるような形をつくるということも非常に重要だと思いますし、それを使いこなすということも非常に重要だと思うんです。今、国の施策の中でも、スーパーL資金等で、法人ややる気のある担い手を支援するという仕組みはあるとは思うんですけれども、じゃ、実際にそれを経営する方々のマネジメント能力というものはどの程度あるんだろうかということがやはり非常にポイントになってくるんじゃないかなと思います。
ですから、やはり人や技術やお金というところをしっかりと使いこなせる人材というものが農業の中にもっともっと増えてくればいいんじゃないかな、そうすると、資本がよりまた集まってくることによって食料の生産が進み、そしてまた担い手が生まれてくる、このような循環が生まれてくるんじゃないかなというのを私はちょっと勝手にイメージしたところでございます。
その中で、私の方から少し御意見をさせていただきたいなと思ったところが、魅力あるというところもそうですし、もうかるというところにもつながってきますけれども、やはり技術開発という観点は非常に重要かと思っております。
今、スマート農業の方の研究や投資というところでは国の補助があることを存じ上げておりますけれども、例えば、スペースXというアメリカにスタートアップがありますけれども、NASAから年間数千億単位で発注を受けているスタートアップです、まだ未上場です、イーロン・マスクという有名な経営者がやられておりますけれども。NASAが、もうロケットを飛ばさない代わりに民間に一〇〇%任せるという方針で、大きく投資をする、国が投資をするという形になっております。
この一例を見ても、中途半端な金額ではイノベーションは起きないというふうに思います。ですから、大きな可能性のある技術に投資をしていくという観点は非常に重要なのではないかと思っております。
それにつながって、二つ目は、我々のようなスタートアップの会社に対しての投資ということがもっと広がっていく観点というのも重要だろうというふうに考えております。
今、SBIRで大きなお金がスタートアップに流れていく形ができたのは大変喜ばしいなと思っておるんですけれども、私の周りで、ここ三、四年ぐらいで、一旦、アグリテックなんて名前がついたスタートアップの方々はかなり廃れてしまった、やはり時間がかかってもうからないということで撤退された方が多かったんですけれども、ここ二、三年を見ると、非常に優秀な若手が今スタートアップに続々参入してきております、特にアグリ系のスタートアップに参入してきております。
ですから、私たちということではなく、このような有望な、優秀な、せっかく入ってきた方々が農業の中で戦っていけるような、そういう御支援を是非考えていただけるとよろしいかなと思っております。
そして、三つ目が、先ほどマネジメントというところをお話ししましたけれども、非常に重要なのは、マネジメントに対しての目利きと、そして学びの提供というところかなと思っております。
資本を投下する、国の場合だと補助という形になると思いますけれども、そこにお金を投ずるということは、本当にその可能性があるのかないのかということを目利きするという力が非常に重要だと思うんですけれども、そのマネジメントをする目利きというのは、やはり会社を経営しなければなかなか身につかないことだと思います。
ですから、民間の力も是非頼っていただいて、どこのところにお金を投資していくべきなのか、補助していくべきなのかのような議論、ないし、経営者として育っていくようなマネジメントをよりサポートしていくような仕組みづくり等も是非お考えいただけたらうれしいなというふうに思います。
四つ目なんですけれども、これはちょっとネガティブには聞こえてほしくないんですけれども、希望あるリタイアというのもありじゃないかなと私はちょっと考えております。これは、離農してくださいということを勧めるということでは全くございません。
やはりたくさん生産性を上げるために努力をされても、苦しく生産されている方々というのはいらっしゃるんじゃないかなと思います。そういう方々に希望を持って営農、ないし、もしかしたらやめたいと思っている方もいらっしゃるかもしれないということも考えた上で、生産者に寄り添ったような形の仕組み、考えというものもあってもいいんじゃないかなというふうに思っております。
これらは、全てやはり担い手の方々が入っていただけるようなことを私なりに考えた一つの意見ではあるんですけれども、これらも含めてなんですけれども、食料をどうやって増産していくのか、どうやって輸出していくのか、当たり前のことですけれども、この長期戦略というのがやはり非常に重要だと思いますし、国と農協さんと我々民間というところで握り合いながら、単年度のスパンではなく、本当に五年、十年という長期の戦略を持って進めていただけたらなというふうに考えております。
最後になりますけれども、私は、やはりこの分野が好きで事業を今営ませていただいておるんですけれども、ここに住んでいる人たちのためにも、食料生産に関わっているみんなで、夢ある、そして希望ある、そして社会的に意義ある持続可能な食料生産というものを私はもっともっと皆さんと一緒に考えて、私も実践する立場の一人としてこの身を投じたいなと思っておりますので、若輩者ではございますが、御意見をちょっとお話をさせていただきましたけれども、これで終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
○伊東座長 ありがとうございました。
四人の皆様には、それぞれのお立場から貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。
以上で意見陳述者の皆様からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○伊東座長 これより委員からの質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。東国幹君。
○東委員 四名の皆さん、この度は、御参加をいただき、御対応いただきまして、大変ありがとうございました。
時間が限られておりますので、早速質疑をさせていただきたいと思います。
それでは、最初に丸谷会長からなんですが、セイコーマートさんは、胆振東部地震のときにも道民の皆さんに直接支援をされていたということ、そして、何よりも町村を始めとする過疎地に出店をされているということ、まさしく行政との隙間を埋めていただけるような御貢献をされていることに、本当に、道民の一人として感謝と敬意を申し上げたいと思います。
恐らく、会長の会社は生産からまた消費までということで、様々なサプライチェーンの一角を担っておられると思うんですが、基本法改正の中でのいろいろな政策がありますけれども、まず、生産費に合う価格転嫁、合理的な価格形成をしていかなければならないよということ、合理的な費用の視点というもの、これは基本法の改正案にも明記されているわけなんですが、ひょっとしたら、食料安全保障というのは、むしろ、国産国消を考える上では、農業に携わっていない方々の理解をどのぐらい深めるかということがやはりポイントだと思うんです。
そして、例えば、確かに生産費も上がっております、農業資材も上がっていて、物流コストも上がっている、そういった中において、即座に価格転嫁ということに相なりますと、先ほど山口書記長さんが言葉の中でおっしゃった、購買率が非常に下がってくるのではないだろうか。しかし、これは、フランスのエガリム法並みの研究も一方で農水省はしているわけなんですね。
そういったところの価格転嫁の障壁というか課題というか、そういったことをちょっとお伺いしたいと思います。
○丸谷智保君 丸谷でございます。
今、東先生の御質問、これは非常に難しいポイントだと、私、実は思っておりました。
ただ、農業基本法というのは何のためにあるかというと、恐らく、国民が安心して物が食べられるというか、食料が行き渡る、そこが最終的な着地点だと思うので、それで、先ほど消費の立場からと申し上げたんですね。
消費の立場から見ますと、我々のPOSデータを見ると、今一番消費が減退しているのは、実は、六十五歳以上の方のところであります。
私ども、実は、昨年、売上げが非常に伸びました。ただし、その売上げの上昇の一番効果を示したのは二十歳代の方、それから三十歳、四十歳と年が経るにつれて、だんだんだんだん伸びが落ちていって、六十歳を超えていくと、今度はマイナスに転換していく。七十代は完全にマイナスになっている。
つまり、食べるものは買うんですけれども、やはり、量を減らすとか、そういう行動になっていく。これがずっと進んでしまうと、今度、三食を二食にするとか、そういうことが起きる方が、全てではないんですけれども、出てきてしまうかなと。
これは、いろいろ思ったんですけれども、やはり、ベースアップとか、それから様々な子育て支援とか、そういう財政的な支援が一番不足する世代がその世代なのではないかなと。むしろ、負担が増えていっていると思うんですね。そういう中で、食品に関するいわゆるエンゲル係数が高齢者ほど上がっていっているということが実態にあると思います。
ですから、価格転嫁は我々もしなきゃいけません。例えば、米が五十円上がりました、昨年から比較して一キロ当たり五十円上がる、そうすると、一万トンもし米を使うと、五億円のコストアップになりますので、これは、例えばホットシェフの価格を上げざるを得ないとか、そういうことはするんですけれども、やはり大事なことは、価格を上げれば売上げが上がったかのように見えますけれども、数量が落ちてくるんですね、微妙に落ちてきて。結局は、一年たつと売上げが落ちるんですけれども、できるだけその数量を落とさないような価格帯を探しながら、価格転嫁をするようにしています。
私は、先ほど発表で申し上げたように、様々な歩留りアップとか、捨てることをできるだけ防いで効率化することで、価格転嫁の率を下げようと考えています。
それはなぜかというと、付加価値をつけるというやり方は、もう通用しなくなっているんじゃないか。付加価値は、結局はお客さんが負担することになりますので、付加価値ではなくて、企業としての活動の利益は確保しますけれども、しかし、原材料のコストの部分を見直すことで削減をして価値を残していくという、いわゆるコストリダクション・フォー・バリューみたいな、そういうような考え方でやっています。それが、先生御指摘の、サプライチェーンの中で非常に実現をしやすいのであります。
農産品に関しては、野菜に関してだけは何とか農場で作ったり、契約をしますけれども、酪農製品とか畜産に関して言うと、これは私どもも打つ手がありませんので、流通形態の中、例えば物流コストとかそういうものを抑えるような形で、二十円上げるところを十円に抑えるというようなことをしながら転嫁をしていこうと。
それじゃ、それを国内で作っていく農村、農民の方の所得を上げていかないと、やはり、逆に言うと離農が進んでしまうとかあるんですけれども、そこに関しては、もう少しいろいろな、物流面等のコストを工夫することで、農民にできるだけ利益が配分されるような形づくりも、もう一方で必要になるかなと思います。
山口さんがお話しになったように、一定のところまでいってしまうと、今度は逆に、やはり消費が落ちてしまいますので、これは本末転倒になっているのかな。そのうち、食料安保の危険性が出ると、今度は食べられなくなる人が出てきてしまう、あるいは、老人が十分なカロリーを取らずに痴呆症が進んでいくとか介護が進んでいくとか、そういうようなことの危険性は多分厚労省でも指摘されていることだと思いますので、そういうことが起きないような、一定の価格を維持しながら、工夫をした上で、農民には利益がもっと落ちていくような仕組みづくり、僕は、流通過程の中にまだそれは残っているような気はします。
以上でございます。
○東委員 ありがとうございます。
それでは、小林社長さんにちょっとお伺いしたいんですけれども、興味深いお話を本当にありがとうございました。おっしゃるとおり、本道農業界のかなりの面で、業種を問わず、人材不足というのは構造的な課題だと思っております。
ただ、東京などの大都市圏から北海道農業に魅力を感じる方々も、そんなに少なくはない。しかし、おっしゃったとおり、農業の複雑化というものもこれありで、かなりそういったものが、機会があるかもしれないけれどもちょっとそこに、お部屋に入っていくまでいろいろな逡巡があるというふうに思っております。
それと併せて、新規就農される方々というのは、やはり、その地域のコミュニティーと余りうまくいかないだとかで離農してしまったり撤退してしまったり、そういったことがあるんですけれども、新規就農者の皆様方の課題というものは、感想的にどのような考えを持っておられますか。
○小林晋也君 ありがとうございます。小林でございます。
私たちの新規就農の観点というところは、ちょっとまだ意見としては強い意見を持っているところではないんですけれども、ちょっとこれは私の雑感になるかもしれませんけれども、まず、私たちが新規就農をしたときに一番大切にしたことというのは何かというと、地域との御縁を一番大切にしました。
これはちょっと言い方が乱暴かもしれませんけれども、酪農はやはり大きなお金を動かす農業でして、ですから、大きなお金を動かすということは、そのサプライチェーンの中で様々なサプライヤーの皆さんに御協力いただかなきゃならない。
更に言うと、本当に経営なのかと疑問に思うところがありまして、それは、作ったものが一〇〇%に近い形で販売されるということは、販売先を自分たちでつくらなくていいということでいうと、経営で非常に重要である物を作ってどこかに売るということに関しては、酪農においては余りないわけです。
でも、逆に言うと、一〇〇%に近い形で生産物を引き取っていただけるということもすごくありがたいというところもありますので、いい悪いとかではなくて、たくさんの人たちに私たちは協力いただかなきゃ新規就農できなかったものですから、関わっていただける全ての方々にこの御縁を大切にしてという気持ちで新規参入をさせていただきました。
その中でやはり一番苦労したのは、認定農業者という制度がありますけれども、ここを取るというところが、私、全くバックグラウンドもない状況で、農地もなければノウハウもなければ、何もない形で取ろうとしたんですけれども、ここは私の入っている農協さんのお力をかりて、あとは町のところのお力をかりてやったんですけれども、御協力はいただいたんですけれども、非常に時間はかかったんですね。
ですから、何かぱっと入れるものでももちろんありませんし、たくさんの人たちに力をかりないと農業ができないというのも事実だなというところで、私たちとしては地域の御縁を一番大切にするということを大事に参入しました。
逆に言うと、単純に農業だけやりたいんだという方からしてみると、もしかすると、何か人と余り接したくないから農業をやるみたいな方もいらっしゃったりするんじゃないかなと思いますし、酪農家のうちのお客様も、コミュニケーションが苦手とされている方も結構いらっしゃるのかなと思うと、なかなかそれでその地域との御縁がちゃんとつくれなかったりとか、そういうことは起き得そうだなというのはイメージ的にはあります、ちょっと余りお答えになっていないかもしれませんけれども。
以上です。
○東委員 ありがとうございます。
○伊東座長 東君、時間がほとんどありませんので。
○東委員 ほとんどございませんか。
樽井会長、御当地東川町では、四十億以上のカントリーエレベーターの建設、そして輸出戦略をも見据えたこの米の加工工場、お米というところの輸出に向けての見通しというものをちょっとお伺いしたいと思います。
○樽井功君 東さん、ありがとうございます。
私の地元、上川管内、旭川市の隣の東川という町のJAなんですけれども、水田どころでして、今、それこそ国営事業で、大型補助、約五百八十億の事業で、二千八百ヘクタールの面工事も入っています。そこで今、国の方の支援をいただいて、カントリーエレベーター、乾燥調製施設と、あと精米工場も造っていまして、精米工場は完成して、今年の七月から正式稼働させます。
その中で、今、国内の主食米については、毎年十万トンずつ国民の皆さんがお米を食べなくなってきているということで、米地帯の農地をどう守っていくかということについては、やはり水張り面積を減らしたくないというような中で、国の水活の方の交付金を利用しながら輸出事業を今取り組んでいます。今、アジア圏を中心に、EU諸国を含めて九か国、将来的には地元生産の十分の一の一万二千トンを海外輸出をしていこうということで取り組んでいます。
この部分については、今、国の方で国消国産と言われている中で、輸出とは何事だというふうに言われるかもしれませんけれども、私たちは、地域の特性といいますか、地域の農業をしっかり守るということについては、有事の際にはやはりいつでも田んぼに戻せる、お米を作れる環境にいつでも戻せるということも考えて取り組んできているところであります。
海外に輸出していることについては、やはり国の輸出米についての交付金がしっかりいただけているからできることでありまして、政府の方も今、輸出という部分についてはいろいろと力を入れてくれていますので、今後とも引き続きよろしくお願いいたしたいというふうに思います。
ありがとうございます。
〔座長退席、小島座長代理着席〕
○東委員 終わります。
○小島座長代理 次に、神谷裕君。
○神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。
本日は、四人の参考人の皆様、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
まず、早速伺いたいと思いますが、現場の農業者であり、かつ団体の役員でございます山口参考人と、それから樽井参考人に是非お伺いをしたいと思っているんです。
今回の基本法は、御案内のとおり、食料安全保障ということが大きく取り上げられております。じゃ、この食料安全保障をどういうふうにやっていくかというときにまず大事になってくるのが、農業の基盤をしっかりと整えていく、これはすなわち、何かと言われれば、農業者であり農地であるというようなところでございます。それに、適正な備蓄と、あとは海外輸入ということになるわけでございます。
御案内のとおり、北海道の農業、いわば先進的というか、国内にあっては規模感も達成し、そして、いわば農水省が描いているところの理想的な農家像に一番近いんじゃないかな、このように思うわけです。しかし、現実にはどうかというと、北海道の農業者もなかなか厳しい、これが現実だと思います。その結果として離農者も多い、あるいは耕作放棄地も出ている、こういう状況にあると私どもは理解をしております。
だとするならば、二十五年間も、御案内のとおり、基本法はございました。そんな中で、じゃ、今回の改正に当たって、先ほどもお話しいただきましたけれども、どうやったら農業者が元気になり、農地が維持できるのか、ここについて、率直なところ、思うところをお二人からお聞かせをいただきたいと思います。
○山口浩幸君 ありがとうございます。
私としては、まず、先般の例えば認定農業者の要件の中に、たしか、府県は四町以上、北海道は十町以上という要件があったように記憶しているんですけれども、それで、北海道の場合、規模拡大ということでやってまいりましたけれども、その結果として、要は、消費者が何を求めているかでなくて、農業者が何を作ることができるかに走ってしまったという部分があるのかな、多くの農業者が。
一部の農業者は、確かに消費者のニーズに合わせて生産されているものもありますけれども、要は、自分の能力で、この規模で作れるものと、消費者のニーズにいかに合わせるかという、そこの誘導がまず必要ではないのかなという部分と、どうしても北海道を始めとする豪雪地帯や寒冷地帯においては、要は年に一作というような考え方で、日本は南北に長い国ですので、南であれば、裏作として夏は米を作って冬は野菜か何か作るみたいな、そのようなある程度の所得を確保できるような仕組みというのは南の方はあるのかもしれないけれども、その中で、北海道としてどのように所得を確保するかということで、国の誘導策ということで、まず規模拡大、並びに、要は転作に打ってきましたのですけれども、こちらを今後どのように解消するかについては、私としても、そこを認めていろいろと運動はしているんですけれども、なかなか難しい問題なのかなというふうに考えております。
せっかく質問を投げかけていただいたんですけれども、答えになっているのかという部分では非常に疑わしい部分もありますけれども、私が言えることは以上です。
〔小島座長代理退席、座長着席〕
○樽井功君 ありがとうございます。
今、北海道農業は、酪農、畜産、そして畑作、そして米、水田と、広い北海道でもエリア的に三つに大きくやはりその産地が分かれています。その中で、適地適作という言葉もありますとおり、これからの農業は、例えば北海道でいうなら、その地域地域に合った施策というか、一律の交付金の出し方とかそういうものじゃなくて、やはりこれからその地域の農業を担っていく若い世代の方々に手厚くといいますか、本当にそういう交付金の使い方を考えていく必要があるのかなというふうに思っています。
農水省の国の農業に対する予算というのは、本当に今年も多く見てもらってありがたいんですけれども、国民の皆さんがこれから自分たちの税金がどういうふうに使われているのかというのも、やはり、一〇〇あるうちの農業予算については何%だとか、自分たちが税金を国に払って、そして、それの何%が本当に農業者に使われているのかとか、そういうところはやはり細かくこれからつくっていってもいいのかなという感じがいたしております。
今、価格転嫁、価格転嫁といっても、本当に国民の皆さんは、どういうふうに農畜産物に価格転嫁しているというのも分からない部分がこれから出てくると思いますので、そこら辺をやっていく考え方もこれから検討していただきたいなというふうに思います。
それと、補助金はないよりあった方がいいんですけれども、私たち農業者も、やはり自己責任、努力の中でしっかりと農業をやっていくという自信と誇りを、これからJAグループ北海道の中でも、地域の農協さんを通じて、そこら辺もお互いに対応しながら協力していく体制。
これは全国どこでもそうだと思うんですけれども、これから、日本の農業の役割の中では、やはりJAグループ、JA組織というのは大きな力を発揮していかなければならないというふうに思っていますので、今後とも、御支援、御指導のほどをよろしくお願いいたしたいというふうに思います。
ありがとうございます。
○神谷委員 ありがとうございます。参考に是非させていただきたいと思います。
続いて、丸谷参考人にお伺いしたいと思います。
先ほどもお話にありましたとおり、胆振東部地震のときに大変な御貢献をいただきました。今回、食料安全保障ということがうたわれてございます。そういったときに、いわばフードサプライチェーンとして、この食料安全保障、不測時のときはもちろんなんですけれども、平時における食料安全保障が今回言われておりまして、平時においても、やはり、経済的あるいは貧困家庭と言われる、そういうような状況の中で、健康的な食にアクセスできる、あるいは過疎地において、そういう意味ではセイコーさんには大変御貢献をいただいておりますけれども、なかなか買物に行く、この買物までの距離、こういった難民もいるというようなことで、実は、フードサプライチェーンというのか、食品システムというのか、今後、そういう皆様方には大変な、お願いというのか、御協力をいただかなければならないんだろう、このように思っておるところでございます。
そういった意味において、皆様の会社も含めてでございますが、フードサプライチェーンとしてどんな貢献をしていただけるのか、どんなことをお考えなのか、その役割についてお聞かせをいただきたいと思います。いかがでしょうか。
○丸谷智保君 丸谷でございます。ありがとうございます。
まず、生産空間をどうやって残していくかという中で、私どもは、やはり、リアル店舗があること、残っていることは非常に重要な要素かなと思っています。
今、この天気の中で、いよいよ耕作が始まってきました。そうすると、お弁当の需要がすごく増えるんですね。そういうものは古くから届けております。そういったところの供給者がその地域地域にいなくなると、本当に生産空間というのは守れるんだろうかという、そんな思いがあるので、できるだけ生産空間を守っていくということをまず心がけています。
もう一つは、先ほど申し上げた物流なんですけれども、生産空間は広いだけに過疎でありまして、やはり隣の家まで随分キロ数があるという過疎地です。そうなると、物流が非常に難しい困難なところが多いのですが、物流さえつながっていけば、食品、商品は届けられるので、そういった毛細血管的な物流をいかに維持していくか、私ども、自前で物流をやっている一つの大きな工夫の一つであります。
それからもう一つは、法人化をして、生産をできるだけ、農地を確保していこうとしているんですけれども、私が単純に考えたのは、法人化してサラリーマン化すれば休みは取れるだろう、代わりばんこにやっていけばですね。
それは、高齢化しているがゆえに、だんだん体がきつくなると、やはり、天気がいいからといって今日も仕事をするのか、あしたも農作業かと。それから、ハウスに入ると、今、灼熱地獄の中で、毎日ハウスの中に入るようなことが非常にできづらくなってきているんですね。
これを代わりばんこに休みながらやることも、法人化すればできるんじゃないかな、高齢化しているからこそ、まさにそこが重要なんじゃないかなというふうに思いまして、幾つかの農家さんに集まってもらって法人化したような次第であります。そういう意味では、多能工化といいますか、分業化ができるというのは、法人化の非常にいいところかな、六十五歳でやめようかなと思っていた人が七十まで働ければ、五年間は何とか確保できるんじゃないか、そんなような思いで法人化を進めました。
あと、いろいろ農地を守るということを、やはり、高齢になってから一人で投資をするよりは、法人化した方が投資はしやすいので、そういう意味でも法人化はいいと思います。
実は、投資をしますと、今まで耕運機で耕していたところが、GPS搭載のものを投資をすれば、畝幅が七十五センチぐらい正確に広がるんですね。これが、やはり、五十ヘクタールあると実質的には耕作地が増えるということになりますので、そういうようなテクノロジーの対応も法人化の中ではできていくというふうに思って、その法人化を進めてきて、保有面積も広げていきました。
それからもう一つは、農協が行っているAコープというのが、だんだんだんだんみんな閉めていくんですね。これが唯一、その村や町では食品を提供していた立派な店なんですけれども、経営難で閉めていく。そういったところを私どもが引き継いでいくというケースが幾つかありますけれども、そのような形で支援をしていって、生産空間を残していけば我々も残っていけるかなというふうに考えてやっています。
○神谷委員 ありがとうございます。
残り僅かな時間なんですけれども、小林参考人に伺います。
先ほどから、DXについて様々な御貢献をいただいていること、御紹介をいただき、本当にありがとうございました。これをまた酪農以外の世界に、例えば、ほかの農業でもいろいろな種類があると思うんですけれども、これに対する横展開についてはお考えなのでしょうか、伺わせてください。
○小林晋也君 ありがとうございます。
私たちは、将来的にはあるかなと思っているんですけれども、この酪農の業界自体がいい意味で非常に難易度が高いなと思っておりまして、しばらくここに集中しようというふうに考えております。
逆に、ここで培ってきた考え方だとか技術というものは、今、いろいろなそういう農業系のスタートアップが出てきているので、その皆さんにノウハウの提供だとか考え方の提供というのを今やっておりまして、そういう形で貢献できればなというところを考えております。
以上でございます。
○神谷委員 時間のようでございますので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。
○伊東座長 次に、一谷勇一郎君。
○一谷委員 本日は、誠にありがとうございます。日本維新の会の一谷勇一郎です。
私は、先日こちらに来させていただきまして、ホテルで朝食をいただいたんですけれども、ゆめぴりかを大変おいしくいただきました。ありがとうございます。そこで、おいしいですねということをスタッフのちょっと年配の方にお話ししましたら、恐ろしいんですと言われたんですね。それはなぜかといえば、温暖化をしているので、米がおいしくなっているんじゃないかということだったんです。
温暖化について山口さんと樽井さんに、お米を作っておられるということでお聞きしたいんですが、今後、温暖化はますます北上化もして問題になってくると思うんですけれども、対策としてうまくいっているのか、今後、国として何か対策が必要なことがあれば教えていただけたらと思いますので、お願いいたします。
○山口浩幸君 ありがとうございます。
私は確かに米は作っておりますけれども、残念ながら、ゆめぴりかは作ってはいないんですけれども。確かに昨年は猛暑ということで、私は、先ほど申し上げたとおり、米については、残念ながら、業者にすりっ放しで出したんですけれども、二等米というランクづけがされまして、たしか報道の中でも、新潟は、さらに、一等米比率が下がったということで、かなり猛暑の影響はあります。
この辺は、今までは品種改良においては冷害に強い品種という枠で恐らくやられていたんですけれども、今後はそういう猛暑に強いという品種も育てていただけたらなとは考えているんですけれども、生産者として、まさかそこに急に手を出すという話もありませんし、今日、あしたにでもそういう品種ができるわけではないので、当面は、我々としては、水管理等をうまく利用して、要は、なるべく水田の水が極力高温にならないように管理をしながら、品質に関しては、ある程度技術的な面で補っていかなければならないのかなというふうには、昨年の反省を踏まえて、私としては考えているところであります。
○樽井功君 ありがとうございます。
ただいまの質問ですけれども、私のところではゆめぴりかを作っていまして、作っているといっても息子が管理しているんですけれども。高温対策では、昨年やったのはやはり水のかけ流しですね。排水から水を抜いて、上流から水を入れて、これで水温を下げる。今、山口書記長が言ったような対策をしています。
それでも、昨年の収量的なものは、作況指数は高かったんですけれども、組合員さんの、生産者の実質の収量を聞くと、北海道米というのは青米が入ってくるんですけれども、高温の影響でほとんど整粒になって、整粒歩合が八〇%以上を超えたというのが今の実態でして、これからは、やはり北海道も高温にでも強い品種改良というのは、本当に年数はかかるかもしれませんけれども、必要なのかなという部分と、あと、多収品種、北海道も多収品種は出てきていますけれども、十アール当たり十二俵、十三俵取れるような品種を作ることが、これからの有事のときには、一年以上かかりますけれども、そういうお米の品種開発も必要なのかなというふうに考えております。
あとは、一谷先生からの質問がないところでありますけれども、お米の備蓄も、今危惧しているのが、やはり今年も高温という予想をされています。そして、道内よりも府県の方で、雪の降る地区でも雪が降らないということで、これからやはり備蓄の量を、今百万トンとございますけれども、本当にこの量が適正な量なのかどうなのかということも考えていく必要があるのかなというふうに考えております。
以上です。
○一谷委員 今の御意見を参考にして、温暖化対策もしっかり考えていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
丸谷社長のお話は大変興味深くお聞かせいただきまして、私は神戸から今日参っておるんですが、阪神・淡路大震災で、震災の対策というのは私の政治家としての大きな役割だと思っています。
国の方でも、セコママートさんの取組というのは、非常に災害時の取組を大きく取り上げていただいていまして、やはりこれからの災害のときには、スマートフォンとコンビニをどういうふうに活用していくかということが大切だというふうに改めて勉強させていただいております。
また、私は、実は二十年間介護事業所を経営しているんですけれども、厚生労働委員でもあります、先ほどの高齢者の方の栄養不足で認知症が進むというのはまさにそうだなと思いまして、大変今日は勉強になったんですね。
その中で、やはり農林水産だけではなく他省庁との連携も必要ですし、これだけ複雑化する中で、環境問題もあって、より多くの現場の声をやはり聞いていかないといけないというふうに思います。
私も現場第一主義なんですが、これまで以上に皆様の声を聞くためにはどういったことをしていけばいいかということを、今日は四人の参考人の皆さんにお聞かせいただけたらと思いますので、丸谷社長からお願いできたらと思います。
○丸谷智保君 時間もあると思うので、一言。
SNSがいいと思います。発信をして声を聞くのがよろしいと思います、正しい発信が必要だと思いますけれども。
○山口浩幸君 まず、どうしてもやはり高齢者になると、年金生活だけということになってしまう、収入が年金一本みたいな感じになっておりますので、その中で、今まで百円だったものを、百五十円になって買いますかという、どうしてもそういう話になると思うので、そういう面で、例えば今の年金額がどうなんだという話になりかねないのかなというふうには思っております。
○樽井功君 私は、これから高齢者の方々は、田舎もそうなんですけれども、都会の方も、これからやはり高齢になってきて、買物難民といいますか、なかなか買物に行きたくても車がないだとか、いろいろな部分が出てくると思います。
そこで、そこら辺の食事の提供だとか、これから福祉の方も含めて、やはり食べることが先決だというふうに思いますので、今、丸谷会長がお話ししましたように、SNSの利用だとか、あとはQRコード。いろいろなQRコード、二次元バーコードの使い方が、結構皆さん今有効に使ってきていますので、そこら辺で、私たちは、やはり地元の生活する人たちにしっかりと食を提供するということを日々考えていかなければならないなというふうに思っています。
以上です。
○小林晋也君 ありがとうございます。
SNSの活用というところは非常に有効だなと思います。
更に言うと、今は大量のデータをチャットGPTのような生成AIに食わせると、もっともらしい答えは出てくるんですね。ただ、そのもっともらしいという源泉になるデータの量は、あればあるほどもっともに近しいデータに変わってきますので、だから、たくさんの人の声を、無作為とまでは言いませんけれども、集めた中で、まずは機械の力をかりて聞いてみるというのも、ただ、そこに重要なのは、やはり自分の直感に沿うかどうかというのはとても大事になってくると思いますので、そのような形で、一つ技術を使いながら意見集約をするというのはありなんじゃないかなというふうには思います。
ありがとうございます。
○一谷委員 ありがとうございます。
まず、私は皆さんのSNSをフォローするところから始めたいと思いますので、どうぞ発信をよろしくお願いいたします。また、私たちもしっかり正しい情報を受け入れるようにしたいと思います。
本当に私は農水に来させていただいて思うんですけれども、経産とか厚労とかというところとの連携をもっともっと進めていくことが、この農業の基本法も更にいいものになるのではないかなと思いますので、今後も御指導いただけたらと思います。
それでは、小林さんにお伺いしたいんですが、今日はJクレジットのお話が出るかなと思って楽しみにしていたんですが、私の選挙区の灘区も、お酒を造る際にJクレジットに取り組んでいきたいという話をしているんですが、このJクレジット自体は、取り組むためにはコストがかかると思いますし、そのコストに見合うだけの収益が上がっていくのかというところも踏まえて、お考えをお聞かせいただけたらと思います。
○小林晋也君 ありがとうございます。
我々は、日本で酪農家として初めてJクレジットでクレジットをつくりまして、今、明治ホールディングスさんの方に売却をさせていただいておるんですけれども、本当にこれはシンプルに、方法論の確立のところで確かに投資もかかったり審査にも時間がかかったりするんですけれども、方法論さえ分かってしまえば再現性が高いということですので、その再現性をたくさんの人に広げていくということが次のステップとして非常に重要だなと思っております。
我々の場合は、Jクレジットが八年でしたかね、たしか期間があったと思うんですけれども、その期間内で自分たちで上げられる収益というのは正直余りないなと思っているんですけれども、それよりは、この考え方を、私たちの場合であれば、お客様の方に広げていくということが、我々の収益にももちろんプラスになると思うんですけれども、非常に社会的な意義があるのかなと思っていまして、それを広げる活動というのをこれからやろうと思っています。
更に言うと、それを測定可能にするためのセンサー、牛のげっぷを測定するセンサーが今うちの牧場に設置してあるんですけれども、それによって、測定を可能にすることで、より真実だよねということを証明していくということも非常に重要だと思っておりまして、それもセットで今進めております。
○一谷委員 このJクレジットは今農林水産でも非常に力を入れていくということですし、先ほどげっぷが測れるということをお聞きしたので、また是非現場で見せていただけたらなと思いますので、お願いいたします。
残り二分ですので、私が今日ここに来て皆さんのお話をお聞きして、丸谷社長のお話をお聞きして感じたことを質問させていただくんですが、環境負荷を軽減させていくということで、トラックの輸送が一日地球二周でしたかね、お聞きして、CO2の削減というのはやはり環境負荷を軽減していくためには大事だと思うんですが、何かお考えがもしありましたらお聞かせいただけたらと思うんですが、よろしくお願いします。
○丸谷智保君 正直なところ、農業生産ではCO2を吸収するわけですね。その農業生産をやはり活性化していくためには、トラクターはCO2を吐き出します、化石燃料を使います、これの馬力に代わるものというのはなかなか今見出せないと思います。電気に替われば一番いいんでしょうけれども、まだちょっと難しい。それから、トラックは大体二十トンから三十トンぐらい運べますので、これもなかなか代わるものがない。私は、むしろ、これがスムーズに運べるような道路網の整備、これこそが削減につながるのではないかなというふうに思います。
それと、その分野においてそれを言うよりは、むしろ、CO2を吸収するものをたくさん作るために必要不可欠なCO2は、効率的な農業を営む意味で積極的に活用していくべきではないか、そうしないと残っていかないというふうに思います。
ただ、先生がおっしゃるようなモーダルシフトの努力だとか、そういったことはもちろんやっていかなければいけませんけれども、今は、何とか生産空間を残していく、そういう中で最も使いやすいものをやはり活用すべきかなというふうに思っておりますので、お答えになっていないと思いますけれども、そのように個人的には考えております。
○一谷委員 ありがとうございます。
時間になりましたので、私の質問はこれで終わらせていただきたいと思います。誠にありがとうございました。
○伊東座長 次に、稲津久君。
○稲津委員 初めに、今日のこの地方公聴会に四人の陳述人の皆さんに大変お忙しい中お越しいただいて、貴重な御意見を賜っていることに対して、心から感謝を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございます。
最初に、樽井陳述人にお伺いしたいと思いますけれども、備蓄体制の強化ということをお伺いしたいと思います。
今、世界の途上国を中心に人口の増加とか、それから突発的な気候変動ですとか、そういったものに加えて、ロシアによるウクライナ侵略等によりまして我が国に対する突発的な様々な変化があって、特に、輸入の農産物や肥料、資材等が高騰しました。
改めてこういうことを考えていくと、我が国の海外からの輸入に依存している割合というのは非常に高いということを実感していますし、だからこそ、今回の食料・農業・農村基本法の改正においては、国内でできるだけ生産できるものは生産していく、こういうことなんですけれども、もちろん、とはいえ、やはり輸入を安定的にしていくということも重要である。
そして、もう一つ、三つ目の重要ポイントとしては備蓄だろうと思っております。これについては、例えば、小麦の増産を図るとなったら、現状の備蓄体制で本当にいけるのか。それは、生産地の備蓄もあるし、港湾等から麦等を出す備蓄施設もあるだろうし、あるいはJAや民間団体、企業等でも備蓄体制を整えていただいております。
もちろん、小麦に限らず、肥料とか飼料とか、こういったことを含めて、今後、備蓄体制をどう強化すべきか、この点についての御意見を伺いたいと思います。
○樽井功君 稲津先生、ありがとうございます。
備蓄については、今先生がおっしゃられたとおり、小麦にしても大豆にしても、今、海外から輸入されてきています。それが、円安からいろいろな問題の中で高騰してきています。
そして、今、北海道も水田農地を畑地化にして、農水から大きな交付金をいただいておりますけれども、やはり北海道で生産される、これから増えていくだろう大豆、小麦等も、作ったものが国内で各メーカーさんがしっかりと使っていただくということが大事になってくるんじゃないのかなというふうに思っています。
今、カナダからの小麦の輸入だとか、メーカーさんの話を聞くと、やはり安くて品位が安定しているというようなところで使われているそうですけれども、北海道の小麦等もやはりいろいろないい品種が、パンに向いている品種、麺に向いている品種、いろいろと品種ごとによって使い分けてくれていますので、そこら辺は、秋になったら小麦の貯蓄倉庫がしっかりと空になって、また新しい麦が取れたらその倉庫に入れるような、そういう体制づくりが今後必要になってくるのかなというふうに感じております。
それと、お米の方も、港の近くに貯蔵、備蓄するというよりも、やはり地方の備蓄も、これから、いざというときのことを考えれば、そういう倉庫群も必要になってくるのかなというふうに思います。
とにかく、日本という国は島国ですので、そういう穀物等の輸送には、飛行機ではなくてやはり船の利用が必要ですので、今、国の方も港湾の重要性もうたっていますし、これから私たち農業者にとっても支援してもらいたいのは、その地域地域の備蓄体制をやはり強化していただきたいなというふうに思います。
先日、沖縄に行ったときにも、沖縄の方でも農協の関係者の方が、米にしても何にしても備蓄がないんだ、できないんだ、これはやはり国にしっかり支援いただきたいという話もしていました。今、国内の備蓄も本当に百万トン程度で、二か月分、二か月ちょっとのお米しかございません。お米を作るのも、北海道、日本は一年一作ですので、そこら辺の備蓄体制もしっかりまたこれからお願いいたしたいなというふうに思います。
以上でございます。稲津先生へのお答えになっているか分かりませんけれども、以上です。
○稲津委員 どうもありがとうございました。
次は、山口陳述人にお伺いしたいと思います。
お伺いしたいのは、農業における環境への負荷低減ということについて伺いたいと思いますけれども、みどりの食料システム戦略を踏まえて、環境負荷低減の項目を今回の食料・農業・農村基本法の改正に盛り込まれました。具体的には、三十二条の二項に、環境への負荷低減の状況の把握及び評価の手法の開発というふうにあります。
農業は、どうしても農薬等あるいは化学肥料を使いますので、環境に一定の負荷を与える。しかし、ここをやはり少しずつ変えていこうじゃないか、そういう大きな声があって、これに取り組んでいる先進的なところ、例えば、南幌の近くの新篠津村でも完全無農薬の生産をやっているところもあれば、空知管内でも、北竜町では、お米の減農薬で農業大賞を取ったことは既に有名な話です。
そういう中で、先ほどもJクレジットの話がありました、こうしたことを進めていこうとするならば、やはりJクレジットの利点というか、農業者にとってはメリット感がないといけないかなと思うんですよね。この辺についてのお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。
○山口浩幸君 ありがとうございます。
特栽米というか、無農薬とか、化学肥料を使っていない農作物、米とかについて、実は、単協によっては、扱いがちょっと悪い農協もございまして、当然、ある程度ロットがたまるような環境になれば扱っていただけるものかと思うんですけれども、そうならない以上、要は、農薬や化学肥料の極端な低減というのはなかなか難しいですし、昨今、異常気象によって高温状況になると、適度に雨が降れば、害虫とかも自然にある程度収まるんですけれども、先ほど私が話した中にあるように、雨不足ぎみになると、どうしても害虫が増える。
そうなると、本来はできるだけ農薬は使いたくないですし、仮に肥料並みでなくても、農薬もじわじわじわじわ上がってきているのは間違いないので、経費節減の中ではなるべく農薬を使わないで、本来は、例えばフェロモントラップとかを使って害虫なり病気を抑え切れればいいんですけれども、どうしても今の状況の中でなかなか難しい部分もあります。
あと、水稲についてもメタンガスの発生の問題がありまして、それで、みどりの云々の中で中干しの延長等がうたわれているんですけれども、それでも、片や水田活用で、一か月間、水を張ってくださいと。水を張ったら、メタンガスは出ないのかな、例えば、麦跡で、麦の麦稈を処理し切れずにすき込んだ中で水を張ってしまうと、やはりここではまたメタンが発生するのかなと。なかなか環境負荷低減の中で難しい部分もあります。
先ほど物流の関係で社長がおっしゃったように、電気トラクターみたいなものを仮にそこで造ることが可能でも、じゃ、その電気はどうやって発生させるんだといったときに、結局、石油なり化石燃料をたいて電気を起こすのであれば、要は、そういう化石燃料を使用する機械に直接入れた方が、炭酸ガスの発生に関してはかえって効率がいいのではないかなということで、今の質問に対して答えになるかどうか分かりませんけれども、一農業者としての感想で、ちょっと意見を言わせていただきました。
○稲津委員 ありがとうございました。
次に、丸谷陳述人にお伺いをさせていただきたいと思います。
今回の法案の重要な論点というのは、やはり食料の合理的な価格形成でありますけれども、総理も、このことについては法制化を視野に入れて検討したい、こういう答弁がさきにありました。
ただ、最終的にやはり価格を決定していくというのは、消費者が何を求めていくのかというところにあると思うんです。内閣府の先般の調査によりますと、様々、物価高騰がありましたので、それに関して、価格が上がっても、値上げでも許容できますかということについて、七割の人がいいですよと言っているんですけれども、実際に、じゃ、どういう選択をしますかといったら、六割の方が安いものを買い求める、これは率直な話かなと思うんですね。
そこで、もう一つ大事なポイントとして、じゃ、この価格形成について消費者の理解をどのように醸成していったのかという話もいっぱい出てきました。そう考えていくと、それは大事なポイントなんですけれども、どんなふうに、例えばコスト指標ですとか、先ほど陳述人からもお話のあった生産、流通、加工、また流通、そして消費という中で、まだまだコストの削減はできるんじゃないか、そうしたことをもうちょっと見える化した方がいいんじゃないのだろうか、これについての御意見を更に伺いたいと。
もう一つは、やはりこういったことに関連して、この法制化についての御意見、そして、さらに、申し訳ないんですが、一部小売店には、店頭で少し不適切な廉売をするというのも間々見受けられます、例えば牛乳とか豆腐とか卵とか、そういうことも少し考えていかなきゃいけないのかなということもあるんですけれども、この辺について御意見をいただけたらと思います。
○伊東座長 丸谷さん、時間がある程度来ておりますので、簡潔にひとつお願いします。
○丸谷智保君 分かりました。
なかなか難しいですけれども、まず、法制化に関して申し上げますと、私は、個人的にはちょっと法制化するのはどうかなというふうに思っています。
それから、合理的な価格形成をどうやって消費者に伝えていくんだ、受け入れられるのかということに関しては、私どもがやったのは絶対価格ですね、お客様に対して。絶対価格でどのくらい値上げをすると受入れ可能なのかという、リーズナブルプライシングといいますか、そこを常に考えてきました。それは、やはり原材料をしっかりと見直した上で、このくらいはどうしても仕方がない、また、それがある一定の水準を超えてしまうと大幅に数量が下がりますので、その経験則みたいなもので実はコントロールしてきて、恐らく成功したと思います。ほとんど値上げしたけれども、ほとんど批判がなかったのが去年一年間でありました。
やはり先生がおっしゃるとおり、しっかり見える化をして、これだけのコストがかかって、これだけのコストが上がったので、これだけ価格転嫁をしなければいけないと。それに対して、流通業者もやはり適正に価格転嫁をしていくべきだと思うので、便乗的なことはよくないと思います。
それから、法制化に対して反対な理由の一つとしては、買う方が強いのか、売る方が強いのかということになると、今は供給が細ってきているので、どちらかというと、売る方が強くなっている、買う方がむしろ弱いかもしれませんので、むしろ、それを強制化していきますと、消費者が今度は買いづらくなってしまう、あるいは、低所得の方は本当に必要カロリーが不足するという事態に陥りかねないのではないかというふうに思いますので、慎重に御検討される必要があると思います。
○稲津委員 ありがとうございました。
○伊東座長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 今日は本当に、皆さんの貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。私、有志の会の北神圭朗といいます。
最後に質問になりますので、いろいろ用意していたものがどんどんほかの方がもう既に、つらい立場なんですけれども、まず、樽井会長に伺いたいのは、先ほど、お米の輸出を頑張っておられると。今回の基本法で、食料安全保障という中に輸出というのが入って、中には批判があるんですよ、それが何で食料安全保障なんだという話もあるんですが、私もあえて言うと、やはりお米だったら、今、国内の市場が縮小している中で、どんどん輸出を増やして、それで、いざというときに、先ほどもおっしゃったように、国民にも食べさせられるようにしておく。
ただ、言うはやすしで、今までは余りお米が輸出で大きな割合を占めていないし、お米といっても七割ぐらいがお酒として輸出されているので、北海道だけじゃなくて、全国的に言って、国としてどういうことをしたらよりお米の輸出というものを促進できるかというのを、お考えがあれば教えていただきたいと思います。
○樽井功君 ありがとうございます。
先ほどもお話しさせていただいたんですけれども、私たちの地元は本当に米どころでして、農地の約八割をお米で、転作は二割しかありません。この中で、やはり主食米が減ってくるのであれば、輸出用米ですとか、あと飼料米、あと加工用米、ほかの用途でやはり水張り面積を維持、拡大していくという考えでいます。
どうしても、今、地元の若い人たちも、経営面積がやはり二十町以上を超えてきて、将来的に自分の面積は三十ヘクタールでいいというような人間も出てきていますので、そういう人たちにもうちょっと、やはり、水張り面積を減らさないためにも、輸出用のお米を作ってでもちゃんと所得になる、主食米と変わらない程度の所得になるということを打ち出していますので、これから、今、アジア圏が多いですけれども、EUだとか海外に、地元の精米工場でできて加工したお米を真空パック状態で海外に持っていくことも考えて、今取り組んでいます。
○北神委員 ありがとうございます。
同じ質問を、山口書記長、現場の生産者のお立場で。私は京都なんですよ。だから、およそ米どころとは全然違うんですけれども、みんな、そんな輸出というのは本当に夢物語みたいな感じでおっしゃるんですけれども、米どころの北海道の生産者としてはいかがでしょうか。
○山口浩幸君 ありがとうございます。
米の輸出に関しましては、いずれにしろ、私が感じている部分では、海外から日本に来る農産物の検疫と日本から海外に送る場合の検疫が実は非常に違うんじゃないかというふうに感じます。結構、海外の方がそういう意味では厳しいのかなと。
それと、やはりどうしても、日本のお米というのは海外から見れば恐らく高価なのかなと。ただ、今円安なので、同じ米にしても、ある程度、向こうにしてみれば、若干安いようなイメージにはなっているのかと思います。
そういう意味で、日本で余っている米を海外に出すことによって、国内の水張りが守られることによって、要は、不測時のときにその輸出を止めることによって国内の自給率を賄うというその考え方は、ある程度ありではないのかなというふうに私は思っております。
○北神委員 ありがとうございます。
丸谷社長に伺いたいのは、先ほどの御説明で、円安が進んで、今までアイダホのポテトでフライドポテトを作っておられたけれども、今は完全に道産の方に移行していると。
多分、ポテトだけじゃなくて、円安でしたら、ほかのところも割高感が出てきていると思いますけれども、ほかにそういう事例というのはございますでしょうか。
○丸谷智保君 まず、小麦ですね。外麦一辺倒だったんですけれども、内麦に替えようかなと思っています。そのほかにも様々検討できるものがあります。
ただ、一つ、豚肉もそうですし鳥肉もそうなんですけれども、同じ農場あるいは同じ地域から買わないと、肉質が変わったりするようなんですね。それが大量に供給できる先がないような場合には、残念ながら海外から買わざるを得ないと思いますが、農産品に関して言うと、価格が大分近づいてまいりましたので、相当変更が可能だと思いますが、ただ、ポテトも、調達は相当苦労しました。私自身も農協を随分歩きました。
○北神委員 ありがとうございます。
小林社長に伺いたいのは、今、基本法の改正で、結局、本当は、皆さんがおっしゃるように、食料自給率というものを中心に農林水産省に頑張ってほしいということなんですけれども、だんだんこれが、目標が何か後退していって、むしろ輸出とか、いざというときの輸入ということとか、それから、いつもスマート農業で生産性を上げると。
今日、社長も、そこに力を入れているし、複雑化している農業についてはもっと力を入れないと、ということなんですが、これも、私の地元では、スマート農業で、一つのそういう何か乗り物を買うのも一千万円ぐらいかかるとか、あるいは、みんな平均年齢が七十歳以上で、今更そんなスマート農業というところじゃないと。
仮にやったとしても、私の単なる直感ですけれども、生産性は上がるし、やるにこしたことはないんでしょうが、それで、食料安定供給、簡単に言うと、農家の所得が上がるのかというと、そんな簡単じゃないと思うんですけれども、その辺、お考えがあれば、いかがでしょうか。
○小林晋也君 ありがとうございます。
私たちがなぜ牧場を始めたかというと、スマート農業というものが本当にもうかるかを自分たちで確かめるためにやりました。結論は、余り関係ないというのが僕らの結論です。
ところが、そんな乱暴なことを言ったら、じゃ、何のためにスマート農業という技術があるんだという話になるので、一方で、こういう見方をすると、僕は、すばらしいものに変わると思っていまして、それはやはり、使う側の人がなぜそれを必要として、なぜ使うのかということがはっきりしていると、実は、とても効果が出てくるということになります。
要は、技術を導入しただけで生産性は上がらなかったんですね。何でかといったら、我々、生産ノウハウが余りなかったわけなので、自社の製品を入れて使っても、初めは全然、利益なんて関係ない。センサーが牛の状態を通知してくれたりとか、いろいろな技術を我々は開発しているわけなんですけれども、それで利益が上がったわけじゃなくて、結局、最終的に利益がしっかり上がるようになってきたのは、やはりノウハウが大切なんですけれども、そのノウハウをしっかりと使う人の数が多ければ多いほど生産性が上がっていく、つまり人だというところが我々の結論です。
だから、技術と人が結びつくからうまくいくということなので、ちょっと私が先ほどお話しさせていただいたところは、人がやはり技術を使っていくという立場に立脚して、それを使いこなすというか、何でそれを使うのかとか、経営をしていく、営農していく上で、何をやったら利益が上がるのかとか、そういうノウハウをみんなで学んで、それを使いこなせるようになっていくということが、やはりとても大切だなと思います。
ただ、一方で、これを入れればいきなりレベルが上がるという技術も、もちろん、やはりあったりするわけなんですね。それは、例えば、馬からトラクターに替わりましたみたいなところというのは一気に生産性が変わったと思うんですけれども、酪農においては、搾乳機からロボット搾乳に替わるということだけで実は大きく生産性が上がる部分というのもあったりしますので、一概に技術がどうこうというよりは、いい技術ももちろんあるんですけれども、スマート農業というふうにまとめて生産性が上がるかというと、それは、やはり使う側の人の意識というところが大切じゃないかなと思います。
○北神委員 ありがとうございます。
じゃ、もう一つ、樽井会長様にお聞きしたいのは、先ほど、食料自給率、会長も意見陳述の際におっしゃいました。
先ほど、今回の改正案で、我々は国の目標から遠のいたというふうに解釈しているんですけれども、その他の指標の中の一つ、ちょっとぬきんでている指標程度で、現行は食料自給率というのを中心に、いわゆる計画に据えるということが書いてあったんですが、農林水産省にしてみたら、国民の食生活が変わったから食料自給率は下がってしようがないんだ、米離れしているから、外国の小麦とかの食生活にどんどん移っている、今後ももっと移るだろう、そんなことで食料自給率は下がっていくわけだから、国としてこれを目標値にしても、国民の生活、もっと米を食べなさいとか、毎日あともう一膳追加で食べなさいと言うわけにはいかぬ、そこは理解できるんですね、そういう悩みがあると。
私は、だから、平時をすごく強調されておられまして、私もそのとおりだと思うんですが、平時の農業生産を上げるためには、やはり有事のときにこのぐらい絶対に国内で確保しないといけない、さっきの備蓄もそうですけれども、それで逆算して、平時においてはこのぐらい常に生産、あるいは農地を確保していないといけない、そのためには、場合によっては国も支援しないといけないと。安全保障ですから、単なる経済合理性では済まないというのが食料安全保障だと私は理解しているので。
そのときに、有事の食料自給率というのを私は提案しているんですけれども、要するに、本当に輸入が途絶した場合ぐらいを考えて、一人一人どのぐらい最低限、何カロリー必要とされるのか、それをどういう食料で賄っていくのか、栄養とかも全部考えて。それを分母に置いて、それだったら別に食の嗜好とかに左右されないわけですよ。
国としてこれを確保するんだ、輸入途絶したときに。それを分母に置くような有事の食料自給率というものを本当は中心に据える、中心にいかなくても、有事のときには必ずこれを確保する、そして逆算して、平時にはちゃんと国も責任を持って、農家の皆さんと、農協の皆さんと連携してこれを確保する、そういう考えはいかがでしょうかね。
○樽井功君 食料自給率は今三八%、こういう数字が出てきて、今、日本の人口が毎年六十万人ずつぐらい減ってきて、この先本当に、今先生がおっしゃられたとおり、自給率がもうちょっと下がってもいいんじゃないかというようなことだと思いますけれども、全国千七百余りの市町村がある中で、今の日本国と国民の食料を支えてきたのはやはり地方、田舎なんですね。田舎の中で、今の、これからの担い手の皆さんが、農業を営みながら、消防団員、学校、小学校、中学校のPTAの役員、自分の仕事、家業以外のことも全部担って生活しているんですね。
そこには地域の暮らしなり歴史があり、これは本当に、今後五年、十年先、日本の地域が疲弊していく、地域に人がいなくなるということを考えていくときに、やはり、食料自給率が下がるかもしれないけれども、その地域での人々の暮らしがしっかり営むことができるということが基本だと思うんです。今、やはり都会に若者は集まりたがりますけれども、そこら辺はこれから、地方の魅力、地方の伝統文化、こういうものをもうちょっと、農業だけではなくて地方の暮らしをやはり考えていく必要があるんだろうと僕は思います。
それで、自給率は本当に人口減で低くなるのかもしれませんけれども、ここはやはり、若者たちには、緊急時にすぐやれといってもなかなかできるものじゃありません。それは、やはり平時からしっかりと地域での暮らしがあって、成り立って、初めて緊急時の食料は生産できるというふうに私としては考えています。
ちょっと質問に対しての答えになっていませんけれども、ごめんなさい、そういうことで。
○北神委員 もう時間ですので、終わります。
ありがとうございました。
○伊東座長 ありがとうございました。
以上で委員からの質疑は終了いたしました。
この際、一言御挨拶を申し上げます。
今日の意見陳述者の皆様におかれましては、大変に御多忙のところを御意見をいただき、また、長時間にわたっておつき合いをいただきましたことを、重ねて厚くお礼を申し上げる次第であります。
本日皆様から拝聴させていただきました御意見等々につきまして、最終的にもう少しでありますけれども、この法案の成立まで十分反映できるように我々も頑張ってまいりたいと思う次第でありますが、貴重な時間を本当にありがとうございました。
また、この会議のために格段、各界において大変に御尽力、御協力を賜りました皆様に、改めて厚くお礼を申し上げる次第であります。ありがとうございました。
それでは、長時間にわたりましてありがとうございました。
これにて散会いたします。
午後三時三十一分散会