衆議院

メインへスキップ



第13号 令和6年4月25日(木曜日)

会議録本文へ
令和六年四月二十五日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      小寺 裕雄君    高鳥 修一君

      橘 慶一郎君    中川 郁子君

      西野 太亮君    細田 健一君

      堀井  学君    宮下 一郎君

      保岡 宏武君    簗  和生君

      山口  晋君    梅谷  守君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      重徳 和彦君    緑川 貴士君

      渡辺  創君    一谷勇一郎君

      掘井 健智君    稲津  久君

      山崎 正恭君    田村 貴昭君

      長友 慎治君    北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    依田  学君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        山越 伸子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            松尾 浩則君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (林野庁長官)      青山 豊久君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策統括調整官)          吉田健一郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 堀上  勝君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

            補欠選任

             川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恵美君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  重徳 和彦君     金子 恵美君

    ―――――――――――――

四月二十四日

 食料供給困難事態対策法案(内閣提出第二七号)

 食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案(内閣提出第四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 食料供給困難事態対策法案(内閣提出第二七号)

 食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案(内閣提出第四八号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官松尾浩則君、消費・安全局長安岡澄人君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、林野庁長官青山豊久君、消費者庁審議官依田学君、総務省大臣官房地域力創造審議官山越伸子君、厚生労働省大臣官房審議官原口剛君、環境省大臣官房審議官堀上勝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神谷裕君。

神谷委員 おはようございます。立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日も、質疑の時間をいただきましたことを感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質疑の方、入らさせていただきます。

 まず、先般、基本法の論議の際に地方公聴会をやっていただきました。その際に視察をさせていただいた子実用トウモロコシについて、若干、今日は質問させていただきたいと思います。

 地方公聴会の折に、北海道の長沼町というところで、子実用トウモロコシの生産者団体である日本メイズ生産者協会を視察することができました。大変に有意義な視察であったなと思っております。

 その際に、柳原さんという代表の方でございますけれども、御説明にあったのは、国内での需要というのは大変に大きなものがあるんだということ、需要は大変にあるんですけれども、逆に言うと、生産量というのがほとんど、この国では少ないというようなことでございまして、これまで国の言うところである需要に基づく生産ということであれば、このまさに子実用トウモロコシは合っているんじゃないかなと思います。

 また、これも説明によるんですけれども、我が国の気候風土を考えたときにも、全国での生産が可能だというようなことでございまして、生産についても余り手がかからないということでございまして、非常に大きな可能性があるんじゃないかということは実感をしたところでございます。

 そこで、農水省でも水田活用や水田リノベ事業などで支援を行っているというふうには承知をしているのでございますが、今後、この子実用トウモロコシの生産について、生産の促進というのか拡大というのか、そういったことについてどのように考えているのか、まず農水大臣の所感を伺いたいと思います。いかがでございましょう。

坂本国務大臣 飼料用の子実トウモロコシは、効率のよいエネルギー源として、ほぼ全ての畜種に給与ができます。輪作体系に組み込むことで連作障害の回避にも寄与し得るという大変使い勝手のよい濃厚飼料でございます。

 ただ、一方の方で、家畜の飼料はできるだけ低いコストで生産することが重要であります。子実用トウモロコシは、国内の生産コストが輸入価格を大きく上回っております。

 また、耕地面積の制約や、子実用トウモロコシの生産には不向きな我が国の湿潤な気候というのがございます。そういうことで、一回収穫した子実用トウモロコシも、機械で、温風機で乾かさなければいけないというようなことも今やっていらっしゃるところがあります。ですから、その生産を今後大きく引き上げることは現実的に困難であるというふうに思っております。輸入量が千百万トンあります。そして、国内生産は一・三万トン、〇・一二%でございます。

 農林水産省といたしましては、輸入品に対して競争力があり、より栄養価に優れた青刈りトウモロコシの方を粗飼料として、今後、国産飼料の生産、利用の拡大を推進していくべきだというふうに思っております。そのためには、畜産農家と耕種農家が連携をした耕畜連携、そしてコントラクターなど飼料生産組織の運営の強化、こういった取組をしていくことの方が重要であるというふうに考えております。

神谷委員 大臣、実は、その際に様々説明を受けたのでございますが、もちろん今おっしゃっていただいたように、飼料用に作っている部分もあるのかなとは思うんですけれども、飼料用以外にも様々な用途で使っている、使えるというようなお話でございました。

 また、大臣、今お話しをいただきましたが、この国で作っている量というのは、本当にたかだか知れている量。ただ、一方で言いますと、非常に需要というのは大きいというようなことでございまして、実際に価格が合わないみたいなお話だったのかなとも思うんですけれども。

 先般の食料・農業・農村基本法の論議の際にも、これからやはり国内の農業に重点を置いていかなきゃいけない、そういうようなお話もあったと思います。そういった意味では、この子実用トウモロコシは大きな可能性を秘めているんじゃないかなというのは、率直に言って、見てきた感想でございますし、いろいろ本当に使えるというようなことでございましたので、ちょっと合わないんだというような今のお話だったかもしれませんけれども、それではやはりいけないんじゃないかなと思います。輪作体系の中に組み込むという意味でも非常に重要だというふうに思いますし、また、粗放的というか、省力化もできるような、そんなお話もございました。

 ですので、実は、この国の湿潤な気候に合わないのではないかというお話もあったんですけれども、緯度から考えると、この国全体が作付は可能だというようなお話でございました。そういった意味で、実は、その現場で聞いたお話とは若干そごがあったなという感じがございまして、是非、この辺のところ、もう少し研究をしていただきたいと思いますのと、この協会の皆さん方に是非お話を聞いていただいて、まだまだ可能性があるんじゃないかなというふうに是非考えていただきたいと思うんですけれども、大臣、もう一回こういうのを聞くのも恐縮なんですが、そういった可能性についても是非目を向けていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の柳原さんでございますが、私どもも、事務方も接触させていただいておりまして、意見交換などをさせていただいておりまして、御意見をよくお伺いしていきたいというふうに思っておるところでございます。

 子実トウモロコシでございますが、大臣からも答弁がございましたとおり、やはり、耕地面積の制約ですとか、子実トウモロコシの生産には、あるいは保管には不向きな我が国の湿潤な気候から、なかなか大きく生産を上げるというのは難しいというのが現実でございまして、飼料用子実トウモロコシの年間使用量、大臣からもございましたとおり、一千万トンを超えておりますが、我が国の生産は極めて少量ということですが、これは、日本国内で最も安価で安定して調達できる飼料穀物が外国産トウモロコシであって、それを輸入している結果であるというふうに認識をしてございます。

 今後の課題といたしまして、国内で子実トウモロコシの生産や利用を拡大していくには、コストの面、生産性の向上によるコストの低減というのが一つ課題としてございますし、また、栽培時の湿潤な気候をどうするか、また、カビ毒の発生というようなものも注意して、しっかりカビが発生しないようにしなければならないというような点、また、トウモロコシを長期に良質な状態で保存するための乾燥施設、乾燥体制、保管体制の整備も重要だということでございます。

 ただ、もちろん農林水産省として、持続的な畜産のために、国内で生産される飼料はできる限り国産でというような目標もございます。大臣からもございましたとおり、輸入品に対して競争力があって、より栄養価に優れた青刈りトウモロコシなどを中心といたしまして、畜産農家と耕種農家の連携、それからコントラクターなどの飼料生産組織の運営強化などを引き続きやりまして、国産飼料の生産、利用の拡大を進めていきたいというふうに考えてございます。

神谷委員 今のお話ですと、大臣のお話でもそうだったんですけれども、青刈りトウモロコシの方が優位なんだみたいなお話なんでございますが、実際には、青刈りトウモロコシと子実用トウモロコシ、栽培の期間が若干長いとか短いはあるのかもしれませんけれども、それくらいの違いではないかなと個人的には思っておりまして。だとするならば、デントコーンというか、青刈りトウモロコシというか、この辺の可能性があるということであれば、子実用トウモロコシの方も当然にして可能性というのは否定できないんじゃないかなと逆に思うわけでございます。

 今ほど様々な課題等についてお話もありました。私自身も、柳原さんを含めて、課題等は研究というか勉強してまいりましたけれども、それを含めたとしても、やはり子実用トウモロコシの可能性というのはかなりあるんじゃないかというふうに率直に思ったところでございます。むしろ、これからの供給のことを考えたら、世界的な需要を考えていったら、あるいは国内の自給率を上げていくという意味においては、これはやっていくべきなんじゃないかと本当に思っているところでございます。

 むしろ、そういった課題があるからこそ、その課題をどうやって除去していくのか、そのことに是非農林水産省は頭を切り替えていただきたいと思いますし、だとするならば、生産拡大の課題について農水省としてどう考えていくのか、ここについて改めてお話を聞かせてください。いかがでしょう。

平形政府参考人 子実用トウモロコシに限らない話なんですけれども、生産拡大をする中で一番大事なのは、需要をどう捉えるかということだと思います。需要があって、それに対して生産ということでございます。

 子実用トウモロコシは、確かに、畜産の飼料、濃厚飼料としても使えますし、また、今神谷議員がおっしゃるとおり、食用としても、例えばコーングリッツ用ですとか、そういったことも用途はあることはあるんですが、ただ、国際価格とのやはり差がかなり大きい部分になってまいります。

 ここをどう埋めていくかということは、やはり規模拡大ですとか、集約化ですとか、そういったこともありますし、政策的にこれをどう後押ししていくかというのは、いろいろな品目がある中でどこに重点をかけるかというのもそれぞれの課題ごとにやはり整理をしていかなければいけない問題だと思っております。まず需要をどう捉えるか、それに対して、国内の中で押していく品目としてどういうものを重点的にやっていくのか、これをしっかり議論していかなきゃいけないものだというふうに考えています。

神谷委員 先ほどから価格差の話が出ているんですけれども、その際に聞いていた価格差というのは思ったより大きくなかったなと思っておりまして、また、昨今の為替の状況もあったんでしょうけれども、そんなに大きくなかったなというふうに思っていたんですけれども、それほどまでに価格差というのはあるものなんですか。いかがですか。これは御通告申し上げていないんですけれども。

平形政府参考人 今、円安になっておりますので、多少そこのところはより高くなっているかと思いますけれども、十年平均ぐらいで考えますと、子実用トウモロコシで飼料用に向けられるものについては大体キロ三十円ぐらいというのが相場になっておりまして、飼料用米についても大体それを基準にして取引が今まで行われてきております。

 ただ、実際のところは、農家の方の手取りからすると、それを下回ったり上回ったりということがありますけれども、やはりキロ三十円ぐらいの価格水準というのは、かなり手取りとしては低い水準というふうに考えております。

渡邉政府参考人 コストの件で御質問がございましたので、飼料関係で答弁させていただきますと、飼料のTDN、食べ物でいえばカロリーに近いベースでございますが、TDNという、牛とかが栄養に使えるもの一キロ当たりのコスト試算ですと、国産の子実用トウモロコシですと、北海道子実コーン組合、柳原さんの資料から算出いたしますと、一TDNキログラム当たり八十六円。輸入トウモロコシにつきましては、令和五年度の輸入価格から試算いたしますと、TDNキロ当たり五十五円というようなことでございます。

神谷委員 先般聴取したときには、大体十円ぐらいの差だというふうに聞いておりました。ですので、今、実際に手元に数字があるわけではないので何とも言えませんけれども、可能性そのものは私は相当あると思っています。是非その辺のところを御留意いただきたいと思いますし、これだけやはり、今回の基本法の改正に当たっても、国際的な環境の中でどういうふうにしていくか、この激変の中でどうしていくのかということが議論されてきたと思っています。だとすると、やはり、飼料用作物というわけではないですが、子実用トウモロコシについても是非検討するべきだと思いますので、この辺について是非前向きに考えていただきたいと思います。

 ただ、そういったことにおいて、先ほどから言っていただいているとおり、価格差というのか、様々な課題があるのも事実だと私は思っています。そういった意味においては、品代だけではどうしても農業者は食べていけないという現状があるというふうにも理解をしております。

 今回のこの子実用トウモロコシもそうなんですけれども、水田活用直接支払交付金の支援がどうしてもあって、それがないとやっていけないというふうにも聞いておりますが、一方で、農水省御案内のとおり、畑地化を推進しているというところでございまして、この子実用トウモロコシばかりではなくて、畑地化、あるいは水田活用直接支払交付金を受けながら一方で転作作物を作っていくというときに、やはり、水を入れていくというと、どうしても収量が落ちるということを懸念として挙げられているところでございます。水田としての作付ももちろんやっていただいていますけれども、農水省の政策の中で一か月の水張りでやっていただいているところもあると聞いているんですけれども、それであってもやはり収量が落ちるというような話があると聞いています。

 実際に畑地化をしていくとなると、やがては水田活用直接支払交付金が受けられなくなっていくというようなことになるわけでございますが、そうなったときに、そういった交付金がなければなかなか経営が成り立たないというような、品代だけではやはり厳しいというような話も聞いております。水活の見直し期間も、間もなく、令和四年から八年ということで終わると思いますし、畑地化の後の定着促進の五年間もやがて終わってまいります。その後どのようにしてこういった皆さん方を支援していくのか、ここについて本格的な議論をしなければいけないと思うんです。大臣、ここについてはいかがでございましょうか。

坂本国務大臣 麦、大豆、飼料作物等の畑作物を連続して生産している水田で、畑地化に取り組む産地に対しましては、今委員もおっしゃいましたように、産地の意向を踏まえまして、畑作物の生産が定着するまでの一定期間、五年間の継続的な支援とともに、畑地化のための基盤整備、そして、栽培技術や機械、施設の導入等も一体的に推進をすることとしております。

 その上で、麦、大豆、ソバ、菜種等に対しましては、水田作か畑作かを問わず、諸外国との生産条件の格差を是正するための畑作物の直接支払交付金、いわゆるゲタ対策の交付対象としているところであります。

 また、飼料作物は、輸入品に対し競争力があり、より栄養価が優れた、先ほど言いました青刈りトウモロコシなどの粗飼料を中心に耕畜連携、あるいはコントラクターの育成などを図っているところでございます。

 今後の水田政策についてでございますけれども、昨年十二月の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部におきまして、需要に応じた生産を基本としながらも、令和九年度までに、各産地の意向を踏まえ、水田におけるブロックローテーションや畑地化の取組を集中的に推進するとともに、令和九年度以降については、将来にわたって安定運営ができる水田政策の在り方をあらかじめ示すことができるよう検討し、その実現を目指すというふうにしております。今後の検討課題だというふうに思っております。

神谷委員 今そのお話にあったように農家はなかなか急にカーブは切れませんので、あらかじめ、早めに検討の上でお示しをいただきたいと思います。それがないと、逆に言うと、支援が終わっていくと同時に退場される方も出てくるんじゃないか、そういった懸念も具体的にあるわけでございますから、是非、早急な検討、そしてまた、充実の支援というのをお願いをしたいと思います。そういった意味において、子実用トウモロコシについても是非前向きにお考えをいただきたいと改めて御要請申し上げたいと思います。

 次に、森林対策について伺います。

 パリ協定に基づく温室効果ガス削減目標において、国際ルールの下で、森林環境譲与税も活用しながら森林吸収源対策について最大限促進していく必要があると考えています。

 森林吸収源対策の取組が不十分となれば、パリ協定の目標が達成できないばかりでなく、将来にわたって森林吸収量が低い水準のまま推移するおそれがあるというふうに考えておりますが、現在の目標における間伐等森林整備の達成状況はどのようになっているのか、まず聞かせてください。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 地球温暖化対策計画におきましては、二〇三〇年度の森林吸収目標の達成に向けて必要な森林整備量を年平均七十万ヘクタールと見込んでいるところですが、令和四年度の実績は五十万ヘクタールとなっているところです。

 中でも、間伐面積については、対象地の奥地化等に伴う間伐コストの増大、また、森林所有者の経営への関心の薄れ、さらには森林の所有者不明や境界不明確などの理由によりまして、年平均四十五万ヘクタールの必要量に対しまして三十三万ヘクタールとなっているところです。

 このため、間伐につきましては、森林環境譲与税の創設と併せて導入されました森林経営管理制度の集積、集約化を進めるとともに、路網整備や高性能林業機械の導入など、条件整備を図ることでコストを低減することにより、間伐の推進を図ってまいりたいと考えております。

 また、今後、我が国の人工林資源は間伐期から更に成熟をし主伐期を迎えますが、建築物等への木材利用の促進、それから、成長に優れたエリートツリー等を活用した再造林等の推進を通じまして、切って、使って、植えて、育てるという循環利用を確立し、成長の旺盛な若い森林の造成に取り組んでまいります。

神谷委員 なかなか進んでいないなというのが率直な印象でございまして、やはり、パリ協定を、約束を守っていくためにはしっかりやっていただかなきゃいけないなと思っております。

 その上で、今、再造林の話もお話しをいただきました。御案内のとおり、森林資源は、戦後造成した人工林が本格的な主伐期というか利用期を迎えておりますが、森林資源の循環利用に向けて、主伐後の植栽による再造林をやはり確実に行っていく必要があると考えています。

 しかしながら、木材価格の低迷や主伐による販売収入に対して育林経費が高いこと、あるいは、森林所有者の、今おっしゃっていただいたような経営意欲の低下などにより、適切な再造林が行われていないんじゃないかなというふうに考えております。こうなりますと、やはり再造林に関わる支援策の拡充が必要なんじゃないかと思うんですけれども、これについてはいかがでございましょうか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 森林資源の循環利用のサイクルを確立し、森林の公益的機能を発揮させていくためには、御指摘のとおり、伐採後の再造林を確実に行うことが極めて重要だと考えております。

 このため、森林整備事業によりまして、国と都道府県を合わせて再造林費用の約七割となる高率の助成を行っており、さらに、低密度植栽や下刈りの省力化に対する支援を強化をしております。

 加えて、再造林に係る経費を削減するため、地ごしらえ経費を削減できる伐採から造林までの一貫作業や、成長がよく下刈り経費の削減が期待できるエリートツリー等の苗木の増産等、造林の省力化や低コスト化に対する支援を拡充をしてきたところです。

 これらの取組を通じて、再造林の確保を図ってまいりたいと考えております。

神谷委員 副大臣、ありがとうございます。

 しかしながら、手厚い支援をしているんだという認識だと思いますけれども、これであってもなかなか再造林が進んでいないんじゃないかなというふうな認識も現場にはあるようでございますので、引き続き、何ができるか、積極的にお考えをいただきたいと思うんです。

 次の質問でございますが、林業の成長産業化の実現に向けて、森林環境譲与税の活用も図りながら、地域の森林整備を促進していく必要があると考えております。

 そのためには、地域の森林資源を活用した林業、林産業、木材産業による事業と雇用の創出、就業機会の増大、若者定住に向けた条件整備を推進することが必要と考えておりますが、林業労働者の現状というのはどうなっているんでしょうか。林業労働者の人数は徐々に減少し、全国で約五万人を割り込んでいる状況と聞いております。

 国として、これ以上の減少を食い止めるためのどのような措置を講じていくのか、これについて、大臣の所感を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 林業従事者は、今委員御指摘のとおり、国勢調査によりますと、平成二十二年の五万一千人から、平成二十七年は五万人を切りまして四万五千人、そして令和二年には四万四千人と、長期的に減少傾向で推移をしております。

 このような中、林業労働の担い手を確保するためには、新規就業者の確保、育成とともに、その定着を図るため、給与等の処遇面や安全面の改善を図ることが重要というふうに考えております。

 そのため、緑の雇用の事業、これは年間百三十七万円を給付いたします。それから、緑の青年就業準備給付金事業、これは、林業大学校に通っていただければ、それなりの、百五十五万あるいは百二十五万の給付をいたします。そういったことで、林業への就業に必要な知識や技術の習得に係る研修等を支援しているところであります。

 また、高性能林業機械の導入等によりまして、林業事業体の収益力を向上させ、従事者の所得向上を図りますとともに、作業の安全性の向上、軽労化を通しまして、女性や若者の就業の促進を図っているところでございます。

 特に、林業女子は、以前は苗木の育成ぐらいでしたけれども、昨年は、高性能林業機器の充実によりまして、伐採までされる林業女子が出てまいりました。非常にその増加を期待しているところでございます。

 さらに、全産業の十倍を超えるという労働災害発生率、これを半減をさせるということで、労働災害の多くを占める伐倒作業を安全に行うための研修、そして労働災害を防止するための保護衣等の導入などによりまして、労働安全対策の強化にも取り組んでいるところでございます。

 引き続き、これらの取組を進め、林業労働者の担い手育成、確保を図っていかなければいけないというふうに思っております。

神谷委員 ありがとうございます。

 様々な施策を打っていただいているのは承知をしているんですけれども、やはり他産業並みの所得の確保、収入の確保、あるいは、今おっしゃっていただいたような、もちろん様々な支援策、給付策はやっておられると思うんですけれども、やはり普通に所得が確保できることが何よりなんだろうと思います。せっかく就業していただいた方が後々おやめになるようでもまた困るものですから、是非また、いろいろ様々な施策を打っていただいた上で、頑張っていただきたいと思うんですけれども、今ほど、約十倍の労働災害の発生率ということをお話しをいただきました。

 そんな中で、現在の林業における外国人材の受入れがやはり検討されているというふうに承知をしております。今ほどおっしゃっていただいたように、労働災害が国内の他産業に比して約十倍となっている現状や、あるいは、外国人労働者の労働安全確保に関わる対策が万全に講じられているのかなということを、非常に懸念というか危惧されるところであると思います。あるいは、日本語教育、これが不十分であったときに、本当に危険な状態になるんじゃないかということも指摘をされているところでございます。

 零細企業が多数を占める国内林業の現状において、十分な安全教育を行うということについても、現状、課題があるんじゃないかなと思っているんですけれども。あるいは、外国人材が入ってくることによって、むしろ林業労働者の処遇が改善されないんじゃないか、低いまま置かれるんじゃないか、そういった懸念もあると思うんです。

 そういった懸念についてどのように考えていくのか、このことについて、大臣の所感を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 林業におけます外国人材の活用につきましては、業界団体の要望を受けまして、現在、海外への技術移転を目的といたします技能実習制度につきまして、技能実習二号、三号の対象職種の指定に向けて取り組む業界団体を支援しております。

 それから、特定技能制度につきましては、特定技能一号の対象分野への追加について閣議決定をされたところでございます。

 林業は、他産業に比べて労働災害発生率が、今委員も言われましたように、現実的に高い状態にあることを踏まえ、農林水産省では、外国人材を含む林業従事者全体の労働安全確保に向けまして、一つは、労働災害の多い伐倒作業を安全に行うための研修、そして保護衣、スマート衣服みたいなものでありますけれども、保護衣等の安全装備の導入などの支援に取り組んでおります。

 そして、令和五年度補正予算におきましては、ベトナム語、インドネシア語、ラオス語によります外国人材向け安全テキストの作成を支援しているところでございます。

 特定技能制度における外国人材受入れ見込み数につきましては、基本方針において、日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下を防ぐ観点から、過大でない数とするということとされていることを踏まえまして、適切に決定してまいりたいというふうに思っております。

神谷委員 今聞いているところによると、外国人材約千人を目標としているというようなことも聞いているところでございます。今お話しいただきましたけれども、やはり、安全に対する懸念というのはなかなか払拭できないんじゃないかなと。

 具体的に申し上げると、先ほど申し上げたような、果たして日本語教育が十分にできるのであろうかとか、あるいは、安全教育がちゃんとできるのか。それも、いわゆる中小事業者の方々にしっかりやっていただけるといっても限界があるんじゃないかというようなこともありまして、やはりしっかりこの辺は考えていただかなきゃいけないだろうと思いますし、結果として低賃金のまま置かれるということになると、国内の人材もなかなか育たないということにもなりかねません。

 そういった意味において、是非、そういった懸念を具体的に払拭をしていただきたいと思いますし、その上で外国人材を活用するのであれば、そういった皆さん方にもしっかりと日本で活躍をいただけるような、そういった処遇も併せてやっていただかなきゃいけないだろうということを、これはもう御要請申し上げるということで、私の質問時間が参りましたので、これで質問を終了させていただきます。

 本日もどうもありがとうございました。

野中委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 重徳和彦です。

 今日、農林水産委員会でお時間をいただきますことを、先輩、同僚各位に感謝を申し上げます。

 最初に、私の地元、岡崎市民がみんな頭にきている八丁味噌GI問題についてお尋ねいたします。

 御存じの方も多いと思いますが、八丁味噌というのは、徳川家康公がお生まれになりました愛知県岡崎市の発祥であります。八丁という名前は、岡崎城から西へ八丁、八百七十メートル行ったところで、数百年間にわたりまして、老舗の二社が造り続けてきた、地元にとって大切な伝統産品の名称であるということを申し上げたいと思います。豆こうじに塩と水のみを加えて、大きな木のおけに、上におもしとして丸い石を職人さんが円錐状に積み上げて、そして、二年以上かけて天然醸造で造るという伝統的な製法であります。

 ところが、農水省は、二〇一七年、もう七年前ですね、この老舗二社とは別の、愛知県味噌組合が、ここ数十年ぐらいですけれども、伝統的製法とはまるで異なる近代的製法で造る後発の八丁味噌なるみそを、GI、地理的表示保護制度として登録をしたわけであります。老舗を外してほかの後発組を登録するという、あべこべ登録であります。老舗側は、長年守ってきた八丁味噌ブランドを名のれなくなり、多大な不利益があると主張をしております。当たり前のことです。

 県味噌組合へのGI登録の取消しを求めて、農水省への行政不服審査請求を経て、提訴しておりました。先月、三月六日、最高裁は、原告、すなわち老舗側の上告を棄却をいたしました。このことに地元岡崎市民は大変な衝撃を受けております。でも、実は、その主な理由は、提訴期間を過ぎてしまったということであります。中身について判断したものでは基本的にはない。ただ、判決の内容を見ると非常に気になるところがありますので、大臣にお尋ね申し上げます。

 GIの法律のルールでは、今回のケースでいうと老舗側は、よそに登録されちゃってからも七年間は名のれるんですね、八丁味噌という名前を名のれます。が、その期限があと二年足らずになってしまった。ですから、二〇二六年の一月になりますと、八丁味噌という名前を原則名のれなくなるわけでありまして、これが不利益だと言っているんです。

 ただ、判決では、登録商品、つまり、もう一方の方に登録された商品との混同を防ぐ表示などをすれば名称は使用できると述べています。この意味は、農水省の方に確認をしますと、要するに、老舗二社がこれからもずっとパッケージに八丁味噌という名前を載せても、そこに、これはGI登録商品ではありませんと書けば使えるという説明を受けていますが、これは本気で言っているかということをお聞きします。GI登録商品ではないというのは、これは一体どういう意味なのか。老舗の、元祖の八丁味噌がGI登録商品ではありませんといって八丁味噌を売るという、では、GIとは何を証明するものなのというふうに私なんかでも一般の方から聞かれたら、どう答えればいいのか。そして、もしそのGI登録商品ではないという表示なく売ってしまったら、その場合は違法ということになるんでしょうね。そうしたら、農水省はこれを取り締まるんでしょうかね。

 こういう非常に疑問に感じることがあるので、大臣にお尋ねします。

坂本国務大臣 八丁味噌につきましては、御地元のことで、委員御指摘のとおりでございます。

 経過も含めて御説明申し上げますと、愛知県味噌溜醤油工業協同組合、いわゆる県組合が平成二十九年十二月にGI登録を受けておりまして、この県組合に所属しない生産業者は、特定農林水産物の名称の保護に関する法律、いわゆるGI法により原則その使用が禁止をされております。

 御指摘の二社につきましては、老舗の二社につきましては、このGI登録以前から八丁味噌の名称を使用しており、GI法第三条第二項第四号等の規定によりまして、例外的に令和八年一月末まではその名称を用いることが可能でございます。

 また、それ以降におきましても、当該GI登録を受けている県組合の商品との混同を防ぐのに適当な表示をすることを条件に、引き続き八丁味噌の名称を使用することができます。

 その場合、実際に混同を防ぐのに適当な表示とは何か、GI商品ではないとの表示だけで十分であるかどうかにつきましては、表示の内容、そして表示の態様などから全体として判断すべきものであり、一概には申し上げられません。

 他方、GI法上、生産者団体の追加登録制度もありまして、御指摘の二社が所属する八丁味噌協同組合が八丁味噌GIへの追加登録を受けることにより、この二社は八丁味噌の名称を令和八年一月以降も使い続けることが可能となります。

 いずれにいたしましても、農林省といたしましては、八丁味噌協同組合の意向を尊重しつつ、必要なサポートを行ってまいる所存でございます。

重徳委員 追加登録なんて駄目だということだからもめているわけでありまして、これは農水省の大失政であるということを歴代大臣に申し上げておりますけれども、重ねて申し上げたいと思います。意向を尊重してということであれば、しっかりと老舗の、本来の元祖二社の意向を尊重していただきたいと思います。

 これは、言いたいことは山ほどありますが、このぐらいにしておきたいと思います。

 さて、昨日、四月二十四日、人口戦略会議が、全国千七百二十九自治体の持続可能性分析結果リストというものを発表されました。

 同会議の増田寛也副議長さんから解説をいただく機会がありました。これは、十年前に発表された消滅可能性都市リストの基本的な考え方を踏襲した調査なんですね。私も、政治家の端くれとしましては、人様が住む町を消滅とかブラックホールとか言うのは大変はばかられますが、大変、国家の存亡に関わる極めて重要な、かつ深刻なテーマですので、民間組織の表現を引用する形でこの後お話ししたいと思います。

 消滅可能性自治体とは、若い女性人口が二〇二〇年から二〇五〇年までの三十年間で五〇%以上減少する自治体を指すとされています。対象となる自治体は、十年前は八百九十六自治体でしたが、今回は七百四十四自治体、百五十二団体減ということでありますが、ただ、これは将来の外国人の入国が増える見込みだというためであって、実態としては少子化の基調が全く変わっておらず、楽観視できる状況にはないという解説をいただいております。

 私が農林水産省でこのリストに注目しているのは、一つありまして、封鎖人口という推計データを使っているんですね。封鎖人口というのは、簡単に言えば、各自治体で人口移動の要素を除き、出生と死亡の要因だけで人口が変化すると仮定した場合の推計なんです。すなわち、社会減を除き自然減だけで推計したもの、これを封鎖人口というんですね。

 それを加味して分析をすると、結果として、東京二十三区を中心に、大都市というのは当然社会増が多いんですけれども、ただ、その大都市における出生率が低いわけです。すなわち、自然減が多いわけでありますので、要するに、大都市に人が集まれば集まるほど、日本全体で見ると自然減が増えるということなんです。

 だから、大都市はもっと自然増に向けた対策が必要だということになるんですが、そうはいっても、大都市ですから、地方と比べて居住スペースが大変狭いですので、島根県とか鳥取県のような広いところに比べると、やはり東京というのはなかなか三人も四人も五人も子供を育てる環境とは言い難いものがある、頑張ってもなかなか難しい。

 見方を変えれば、大都市から地方に人が移動すれば、おのずととまで言えるかどうか分からないんですが、比較的、傾向としては自然減の要因が縮減する、すなわち、もうちょっとやり方によっては自然増さえ期待できるのではないかということであります。

 前置きが長くなりましたが、これを実現するには、地方に就職先、転職先が必要であり、雇用が必要であり、そして、地方固有の主要な雇用というのは第一次産業である、これが申し上げたいわけであります。ところが、農業は農業でそれどころではない深刻な問題を抱えているということを、今回、基本法の改正の前提として農水省から様々な御説明を受けております。

 さて、ここで大臣に質問させていただきます。

 農水省は、結構今回はっきりと、今後二十年で基幹的農業従事者が四分の一に減る、百二十万人が三十万人に減る、こんな推計を示されました。ほっておくとそうなるという意味なのか知りませんけれども、じゃ、どうすればいいのか。数的に三十万人でいいという意味ではもちろんないんでしょうね。どのぐらいの水準に基幹的農業従事者、これは個人農業者ですよね、これを持っていきたいのか、このお考えをお示しください。

坂本国務大臣 我が国の農業人口、経営体数の約九六%は個人経営でございます。それから、経営体数が三万を超え、農地面積の約四分の一、そして販売金額の四割を担うまでになりました法人経営がございます。家族経営、個人経営と法人経営の組合せで我が国の農業経営体というのは成り立っているというふうに思います。

 こうした中で、農業者の数につきましては、個人経営体の農業者である基幹的農業従事者が、委員御指摘の百十六万人のところでございますが、現在の年齢構成から見て、今後二十年間で三十万人、四分の一にまで減少するおそれがあります。

 一方で、法人経営の役員や常雇いの方々は、基幹的農業従事者とは別に二十四万人いらっしゃいます。これは現在の百十六万人の中にはカウントされておりません。

 農林水産省といたしましては、次世代の農業者の確保に向けまして様々な資金メニューでの支援を行っていきたい。それから、機械、施設の導入の支援を行いたい。さらには、サポート体制の充実をします。そして、新規就農の受皿としても重要な法人経営の経営基盤強化など、あらゆる施策を講じていかなければならないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、今国会で基本法改正案を成立させていただきましたならば、それを踏まえて次期基本計画を策定することというふうにしております。我が国の農業がこうした個人経営と法人経営の組合せで成り立っていることも念頭に置きながら、農業者の数を始めとする食料安全保障の確保の目標に関する数値の具体的な内容につきまして、基本計画の中で論議をしていくことというふうになります。

重徳委員 法人のお話がございました。だけれども、法人だけで、今、これから、これまでもですけれども、激減していく農業者を賄うことというのは、これは事実上不可能だと思います。

 これまで二十年間で、法人に勤めている、雇われている農業者というのはせいぜい三、四万人ぐらいしか増えていないんですね。その間に数十万人の基幹的農業従事者が減ってまいりました。そして、これから百万人近く二十年間で基幹的農業従事者が減ると見込まれる中で、それを補う法人というのは、これはあり得ないと言うと批判的過ぎでしょうか、極めて困難ですよね。

 そこで、この後の話題としては、個人事業者たる基幹的農業従事者をどういうふうに補っていくかということでありますが、その前提として、通告でいうと二番、三番なんですけれども、農水省に、新規就農者を確保するために、私は先ほど申し上げたとおり都会の方々を地方に誘導するといいましょうか受け入れるということが必要だと思うんですが、どの年齢層とかどの職業層に重点を置いて支援しているのかということと、特に都市部のサラリーマンの農業への転職に特化した、転職というのは大変だと思うんですよ、会社から会社に移るのもいろいろなことを考えなきゃいけません。それを全く異なる農業に転職する、ここに特化した仕組み、取組があるのかどうかについてお尋ねします。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、新規就農者施策のターゲットという点でございますけれども、農業従事者につきましては、六十歳以上が約八割であるなど、年齢構成のアンバランスが大きな課題であると認識をしております。

 こういったことから、これを是正するため、また、他産業から比較的若い年齢で農業の方に転職をされるというような状況を考えた場合に、前職を辞めて就農した場合、生活資金の確保が極めて厳しい。言ってみれば、転職される方は相当なリスクを取って農業に転身をされるというようなことが考えられます。

 そういった中で、長きにわたって我が国の農業を担おうとする方を後押しするため、四十九歳以下の若い就農者に対して資金面等の支援を重点的に行っているところでございます。

 その上で、五十歳以上の方につきましても、地域の担い手として活躍していただけることを期待しております。そういったことから、農業大学校における就農を希望する方向けの研修に加えまして、令和四年度から新たに措置をしております、地域における就農相談体制や実践的な研修農場の整備などサポート体制の充実のための支援につきましては、年齢に関係なく、新規就農する方が農業技術等を身につけていただくための支援として活用をいただけるということになっております。

 それから、都市部のサラリーマンの方々に特化した仕組みというお尋ねがございましたけれども、全国農業会議所の調査によりますと、新規就農者のうち、農外から新しく就農されるいわゆる新規参入者のうち、約七割は都市部のサラリーマンなど他産業から就農された方であります。サラリーマンの方が農業に就業をされるケースが相当程度あると我々も認識をしております。

 そのため、農林水産省におきましては、転職を含めた就農希望者向けの就農相談会の開催、それから、農業インターンシップにおきましては社会人週末コースの設置、さらに、社会人が働きながら受講できる農業研修の実施など、様々な取組を推進しているところでございます。

 こうした取組を総合的に講じることによって、都市部のサラリーマンも含め、新規に就農する方の育成、確保についてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

重徳委員 先ほども申し上げました、大都市はブラックホールでありますので、大都市に人が行かない、あるいは大都市から人が地方に流れる、そういう仕掛けをつくっていかないと日本という国が滅びていくという危機感に立ったときに、今の御答弁を聞くと、まあ、これじゃなかなか進まないわなという、印象で申し訳ありませんが、そう感じたところであります。

 大都市の若者やサラリーマンを地方にお招きするには、就農に対する経済的あるいは心理的なハードルを思い切り下げなきゃいけません。その場合は自治体とか都道府県をまたぐ人口移動になりますので、これを担えるのは国しかありません。

 その意味で、私は、党内では静かなるブームになっていると信じたいんですが、国立農業公社構想というものを提唱させていただいております。これは、農業者になるサラリーマンの皆さん方に研修とか育成を行いまして、そして処遇の安定というものも両立させるものであります。農業を現実的な転職先として多くの方々が選べるような仕組みを想定しています。

 まだイメージなんですけれども、就農希望者を一括採用します。そして、ずっとじゃないですよ、終身雇用というイメージではないんですが、一定期間の雇用関係を持っている間に、いろいろな農業現場に派遣したり研修を行うということで育成する。それから、就農に、実際に自ら独立なりをするときの投資資金については支援をするというようなことで、とりわけ、先ほど申し上げましたサラリーマンの転職、もちろん定年後の方もターゲットであります、もちろん若い方もターゲットでありますが、特に転職ということのハードルが下がるように考えていかなきゃいけないと思っております。

 ですから、最初は二地域居住だけれども少しずつ段階的に地方へ移住していくとか、様々なことを考えるんですが、そのスタートに当たっては、公社がちゃんと雇用をしますので、そのときの処遇も、一般企業と、一般企業といってもいろいろありますけれども、サラリーマンと同じような給与、昇給、社会保険といったことを想定し、基本的には農業収入で賄うんですけれども、足らざる部分は補う。これは今の農政でもある程度行っていることですから、財源としても、一生懸命集めてくれば、こういった構想を実現できるのではないか。

 そして、なぜ農業がここまで優遇されるのか、特別な扱いをされるのかということについて、国民の皆様方に深い広い理解が必要なのは当然のことであります。

 ここまで申し上げた上で、確かに、法人、農業生産法人という組織はありますけれども、大臣、お尋ねします。やはり大半は個人の、基幹的農業従事者であるというのが農業の現実であります。そうであれば、法人に就職すればいいじゃないかということだけではなくて、中山間地域の農地も守らなきゃいけない、こういう公的な使命もございます。国として就農者を雇用する、今申し上げましたような仕組みがあっていいんじゃないかと思うんですね。農業だから雇用主なんていないとか、農業なんだから会社の同僚、先輩はいない、農業だから社会保険がない、これが必然ではないように思うんですよね。

 その辺りについて、大臣の御見識をお尋ねします。

坂本国務大臣 委員より御提案がありました国立の農業公社の立ち上げ、そしてそこで人材を採用するというようなことは、発想として考えられるというふうに思います。しかし、現実的には、財政的それから組織的な観点など様々な課題があるというふうにも考えております。農業が将来にわたりまして食料の安定供給や国土保全等の役割を果たしていくためには、農業の担い手をしっかりと育成、確保していかなければならないとまずは考えております。

 このため、委員御指摘の就農直後の支援として、新規就農者総合対策におきまして、資金面の支援、さらには、経営発展のための機械、施設等の導入、そして、地域におけるサポート体制の充実等に取り組んでいるところでございます。

 加えて、やはり福利厚生面の支援、これもやっていかなければいけないというふうに思っておりますので、労働力確保体制強化事業によりまして、労働時間や休日の設定、保険加入など就労条件を改善するための必要な取組を支援する、そういった総合的な対策をやはりやっていくこと、これが大事であるというふうに思っております。

 昨日のその人口減少のニュースを受けて、成功した事例をテレビ等で放映されておりました。小さい頃に奨学金を支給する、鹿児島県の長島町ではぶり奨学金というのを支給して、そしていずれ地元に帰ってくるというようなこと、そういったことをやっておられました。

 また、私のところでは、かつてのふるさと創生一億円を活用して小中学生を海外にやった。そこでやはりいろいろな状況を知って、そして、地元に、今度は廃校を活用して、農山漁村振興交付金を使って様々な施設、宿泊施設も造っていただいた。

 そういうような、かつていた若者がまた帰ってくる、そして、都市部とも意見交換を重ねながら関係人口をつくっていく、こういう地道な一つ一つのやはり積み重ね、これが農業者の後継者育成にもつながるし、地方の人口維持あるいは人口増加にもつながってくるというふうに思っております。

重徳委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣がおっしゃいました国土保全とか、そういうことも視野に入れていかなくちゃいけないのが、農業、第一次産業政策だと思いますが、自治体の取組はもちろん一生懸命サポートしていく必要があります。しかしながら、自治体間を超えた取組、都道府県を超えた取組、都市と地方の取組については、国が主体的に取り組まなければならないということを改めて申し上げたいと思います。

 最後に一問お聞きします。

 資料を御覧いただきたいんですが、これは、主な産業の個人事業者数というものを私の事務所でまとめてみました。

 そうしますと、これは二〇二三年で見ますと、六百三十九万人の個人事業者のうち、シェアでいうと圧倒的に大きいのが農業なんですよ。基幹的農業従事者なんです。百二十六万人が、約二割が農業者であります。ほかの業種というのは、建設業八十四万人、卸売、小売七十万、飲食四十五万と、結構よく町で見かける個人事業主を全部足しても農業には及びもつきません。

 そして、農業は地方にしかないということが一つ大きな特徴だと思っております。ほかのものは大体都市部を中心に存在すると思うんですが、農業は地方にしかない。だから、地方の人口減少というのは、すなわち、農業者が、この数字を御覧いただきますと、二〇一二年に百七十一万人いたのが、今、百二十六万人でございます。四十五万人も減っている。これが地方の人口の減少の最たるものであると申し上げたいと思います。

 そして、増減率を見ますと、マイナス二六・三%ですね。これが、ざくっと言えば、これから二十年で更に七五%減るという見通しを農水省は見ているわけですから。マイナス七五%ですよ。という大変なことが予想されているわけでございます。

 こういったことを踏まえると、農業生産法人に就職すればいいじゃないかというのも一つの有力な道ですよ。だけれども、圧倒的に多い、かつてはもっと多かった、だけれども、激減して今の状況にある、この個人経営体であります基幹的農業従事者の、ありていに言えば後継ぎですよね、後継者というものを、これは法人じゃないので、社長さんがいて社長さんが一生懸命従業員を集めるのとは違って、個人でやっているわけだから、誰も、社長さんは集めてくれませんよ。個人が、しかも高齢者の方が、後継ぎがいないなとぼやいているだけです、嘆いているだけです。それに対して手を差し伸べられるのは、もはや国しかないのではないか、私はそういう強い思いを持っております。

 ということで、最後の質問になりますが、大臣に、この圧倒的に多い個人の農家の後継者を国が主体となって探してこなければ、都市部からお招きをするという仕組みをつくらなければ、これは地方の農業どころか、地方の人口、自治体が消滅に至るということになるのではないかと考えますが、御見解をお尋ねいたします。

坂本国務大臣 先ほどから委員強調されます、個人経営体のうち、五年以内に農業経営を引き継ぐ後継者を確保していないものが七割を占めております。後継者の確保は非常に重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 このため、農林水産省では、就農希望者や地方公共団体、そして農業法人等が一堂に会しました就農相談会の開催、さらには、就農希望者の条件に合わせた自治体での受入れ情報の就農支援情報の提供などを行いまして、後継者確保に資する取組を実施しているところであります。

 個々人に対しましても、先ほどから言っております、様々な資金メニュー、それから機械導入の支援、そして、就農支援センターや市町村等によります就農や経営継承に関するサポート、こういったものを実施しているところでございますが、委員おっしゃるとおり、個人の基幹的就農者、従事者というのは大切なことでございますので、次世代の農業者の確保に向けましてあらゆる施策を動員して、そして確保してまいりたいというふうに思っております。

重徳委員 政治の創造力が問われております。与野党挙げて取り組んでまいりましょう。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に関して長らく質問をさせていただいておりましたが、今回は久しぶりに一般質問をさせていただきます。地元から、要望であったり、農業を営む方々の声をお届けしたいというふうに思います。是非よろしくお願い申し上げます。

 今まで農林水産委員会では二十一回、予算委員会では四回、農業に関して質問をさせていただいてきております。重複する部分もあるかというふうに思いますし、質問の機会をいただきました皆さんに感謝しつつ質問をさせていただきたいと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 時間に限りがありますので、地元でお聞きしたお声で、今回は二軒の農家さんと酪農家さんからの声でありますが、選挙区では兵庫県の西播磨、中播磨という地域であります。

 先ほど申し上げましたけれども、牛の飼料、粗飼料については以前から質問をさせていただいております。資材高騰、飼料高騰の時期に、赤穂市で、二十七億円もかけて酪農、第二牧場として始めている酪農家さんがおられます。これも、私は予算委員会でも取り上げさせていただきました。

 それで、午前中、神谷委員からも子実用のトウモロコシの話がじっくりありました。大臣からの答弁、平形局長からの答弁、渡邉局長からの答弁もありました。じっくり質問されておられましたので、私は、ちょっと青刈りトウモロコシの方の部分を少し触れさせていただきまして、余りにも詳しく答弁、質問されておられましたので、少し簡単に質問させていただきたいと思います。

 食料自給率の関係で、飼料用のトウモロコシの話がたくさん出ておられました。子実の飼料と青刈りのトウモロコシがありますが、農林水産省の推進の仕方というのは、よく、先ほどもお聞かせいただきました。

 改めて、青刈りトウモロコシを拡大させる意義と支援の現状について、言い残したことがありましたらいただきたいと思います。是非よろしくお願いいたします。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 我が国の令和四年度の飼料自給率でございますが、粗飼料で七八%、濃厚飼料で一三%ということで、輸入に大きく依存してございます。

 農林水産省といたしましては、食料安全保障のみならず、持続的な畜産を確立するためにも、国内で生産される粗飼料の利用を拡大するなど、できる限り国産飼料に立脚した経営に転換することが重要だと考えてございます。

 我が国の耕地面積が限られる中で、茎や葉も一緒に利用する青刈りトウモロコシは、同じ面積から収穫できる量や栄養が多くて、濃厚飼料の給与量の低減にも寄与するということもございますので、重要な飼料作物でございます。

 こうしたことから、耕畜連携ですとか、飼料生産組織の運営強化などの取組を支援しておりまして、青刈りトウモロコシを中心とする粗飼料の生産、利用の拡大を推進しているところでございます。

池畑委員 渡邉局長には、姫路まで牛の関係で来ていただきました。いろいろと牛の関係で意見交換もさせていただきました。その中で、国産の推進を進めていくということと、今の答弁にもありましたけれども、やはり、需要があって供給があるというふうに思います。当然だと思います。

 これから、そういった青刈りのことを進めていかれる上で、農家さんたちからの意見というお話を前段させていただきましたけれども、赤穂市では、基盤整備をずっとしております。その赤穂市において、高収益作物の支援を行っていただいているんですけれども、いわゆる、農林水産省の中で、キャベツとかそういったものを作っておられるというふうに思うんですが、酪農家たちが必要な、先ほどいただきました飼料用のトウモロコシなどで、地元同士で需要と供給のバランスが取れているそうなんですが、そこで、新規の基盤整備をしていただいているんですけれども、ここで、高収益の作物を二〇%ほどですか、取り組んでいただかなければいけないという規制があるみたいでございます。

 無理やりその規制にのっとらなくても、今、国産の青刈りなんかを推進していくということでありますから、規制にそこまでのっとらなくても、需要と供給が合致するのでありますから、臨機応変に、全国的にも事例があるというふうにお聞かせいただきましたけれども、さっきのことなどありますから、そういった二〇%、高収入の作物を作らずとも、こういった国産の青刈りや、そういったことの飼料用トウモロコシを作ってもいいのではないかというふうに思いますが、今の現状とお考えをお聞かせいただきたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 一部の農地整備事業で要件としております高収益作物の定義につきましては、畑作物の直接支払交付金及び戦略作物助成等の対象外であって、主食用米よりも面積当たりの収益性が高い作物としているところであり、主には野菜とか果樹などを想定しているところであります。

 委員御指摘の飼料用トウモロコシにつきましては、戦略作物助成の対象であるため、高収益作物には該当いたしませんが、例えば、農業競争力強化農地整備事業におきましては、農地集積、集約を進めることで農家負担を軽減した農地整備が可能であるなど、高収益作物を要件としない農地整備事業を行うことも可能であります。

 引き続き、地元の兵庫県とも連携しながら、現場のニーズを踏まえながら、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

池畑委員 現場のニーズを聞いていただきまして、ありがとうございます。

 そういった農家さんたちが手続をする上で、市役所とか県とかとお話をしますと、なかなか返答までに時間がかかったり、こういうことがあるんじゃないかなというふうに思いつつも、なかなか相談する場所がなかったりということでありましたので、今の局長の答弁をいただきまして、これからいろいろな面で国産のトウモロコシなんかが推進していけるように取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、大臣に質問させていただきたいと思います。

 今回、これもうったてで申し上げさせていただきましたが、地元の声でありまして、鳥獣害の件であります。今回は、鹿と猿の被害についてお聞かせをいただきたいと思います。

 まず、地元で猿の被害が減少していないという声を聞かせていただきました。離れ猿の対応だとか集団での対応など、多くの資料を見ながら、環境省さんも含めまして、各自治体用のガイドラインというのも丁寧に作られておられました。私も改めて見させていただきましたけれども、県の資料でも、被害解消と絶滅防止というふうに書かれております。かなり難しい問題だというふうに思います。

 中播磨にあります神河町というところに、猿の被害にずっと悩まされている農家さんがおられます。ヤマウチファームさんというんですが、地元の町会議員の方々ともいろいろ話し合ってきましたが、なかなか対応策が見当たりませんでした。

 そこで、農林水産省と環境省の方々に地域の猿への対策についていろいろお聞かせをいただいたり、意見交換を重ねてまいりましたが、この委員会でも、鳥獣害の質問というのは過去多く取り上げておられました。委員の皆様も、一度は陳情を受けたり御相談を受けたのではないかというふうに思います。

 ヤマウチファームさんでは、長い間、猿の被害に悩まされた結果、兵庫県の森林動物研究センターから指導員も派遣をされまして、猿の生態も勉強され、発信機をつけて、猿の、これは、資料には三群というふうに書いてあるんですが、地元では、A、B、C、Dの四群あるそうでありまして、三百頭の猿がおります。

 大臣の御地元の熊本県では鳥獣害の全体の被害額は大体約五億四千万ぐらいですが、今回のテーマであります、勝手にテーマにしているんですけれども、猿の被害は一千二十九万円程度でありました。前年度比三百万増でありました。我が兵庫県では、四億六千九百万円ぐらいが全体の被害で、そのうち猿の被害というのは二千七百万程度でありました。前年度からいうと一千万の増になります。

 これは、被害額が前年度比から上がっているというところがポイントでありまして、私、兵庫県議会議員のときに、十三年ほど前でありますが、猿の被害ではなかったんですが、鹿の対策を前知事が一生懸命気合を入れて取り組んでおられたんですが、増え始めた頃に対応ができず、対応しなかったために徐々に大きな被害が出て、対応が後手に回ってしまったということもありました。

 鳥獣害のうち、特に猿について、被害の現状というのはよくよく環境省さんと農林水産省さんにお聞かせをいただきましたが、全国の猿の被害に悩む農家の方々に向けて、農林水産大臣の現在の認識と猿被害の対策について、今の考え方を聞かせていただきたいと思います。

坂本国務大臣 野生鳥獣によります農作物の被害額につきましては、令和四年度は全体で百五十六億円、うち猿の被害が七億円となっております。

 私の地元熊本でも、やはり、ハウスの中のトマト、それからシイタケ、こういったものが徹底して被害に遭います。

 平成二十二年から比べると六割減少というようなデータも出ておりますけれども、新たに被害が発生したり、被害が拡大しているところもあるわけであります。

 猿は、猟銃で捕獲するのが難しい鳥獣であります。銃口を向けると手を合わせるとか合掌をするとか、それでなかなか撃てない、こういった話をよく聞きます。方法によっては、銃を向けて撃ったりしますと、群れが分裂して、そして被害が拡大するという可能性がありますことから、被害を起こす群れを特定をいたしまして、群れ単位で管理すること、これが重要であるというふうに考えております。

 発信機なども、御地元のように活用いたしまして、群れの状況を把握して、集落単位で効果的な追い払い、こういったものをやること。それから、大きな被害をもたらす群れには、大型捕獲おりというのがございます、三十匹、四十匹は捕獲できるようなおりでございますけれども、そのおりを用いて全頭捕獲をすること。そして、侵入防止柵については、猿にも対応できる多獣種対応の柵を活用する。こういった対応が求められるところでございます。

 農林水産省といたしましては、地域ぐるみでこういった対策を行う活動に対しまして、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして支援を行っておりまして、猿被害の軽減に向けまして、引き続き、このような交付金により猿被害対策を進めていきたいというふうに思っております。

池畑委員 大臣、御丁寧にありがとうございました。

 やはり、全国で七億以上の猿の被害があるということであります。いろいろな補助金や、農家の担い手を増やしていっても、こういった被害が増えていくということはやはり問題だというふうに思います。

 今、被害対策のいろいろお話も聞かせていただきました。最後の方にもまた猿のお話も出てまいりますが、大臣が今言われたような認識でおられるということでありますから、全国の農家の皆さん、是非、そういったことも取り組んでおるということを、お見知りおきをいただきたいというふうに思います。

 今大臣の答弁を受けまして、各局にこの後はお聞かせいただきたいと思います。

 猿の被害対策について、モデル的な取組を行っている地域はあるのかということであります。今のように、各地域で、各県で、いろいろとばらばらな取組の仕方をしているということでありました。

 選挙区ではないんですが、香美町というところでは、おじろ用心棒といいまして、元々、鳥取県で開発をされましたシシ垣くんというものにプラスアルファで、いろいろな被害を抑えていこうということで、いろいろな県や町で取り組んでおられる事業をコラボレーションして、どうにか駆除しようということでありますが、今大臣の答弁にもありました、全頭捕獲も含めてなんですけれども、全体的な猿の被害対策について、モデル的に取り組んでいる地域はあるのか、質問させていただきたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして鳥獣被害対策を推進しておりますが、地域によっては、新たな被害が発生した、あるいは、対策を講じているが被害が減らないといったところもあるというふうに承知しております。

 こうした地域において、被害対策を講ずる際の一助となるように、優良事例を取りまとめて公開をしており、例えば、猿については、兵庫県内の事例でございますが、県の研究機関等の協力を得て生息状況等を把握した上で、各群れに発信機を取り付け位置情報を把握し、住民にメールで共有することで効率的な追い払いを行ったり、ICTを活用した大型箱わなの活用等によりまして効率的な捕獲に取り組む等によりまして、農作物被害を抑えることに成功した事例を紹介しているところでございます。

 そのほかにも、幾つかいろいろな優良事例がございますので、こうした優良事例を参考としていただきながら、各地域において被害対策を推進していただきたいと考えているところでございます。

 加えまして、どのように対策を講じたらよいか分からないというような地域もあることから、農林水産省では、農作物被害の防止に関し助言を行うことができる専門家を紹介する農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー、こうした制度を設けておりまして、本制度についても引き続き活用を推進してまいりたいと考えております。

池畑委員 地元でも、やはり指導員の方々の強力な指導によって、いろいろな発信機をつけたりということは取り組んでおられます。

 次に、その被害、合う柵なんですが、これも農林水産省さんが鹿だとかイノシシだとかについて予算をたくさんつけていただきまして、柵を造っていただいております。今御紹介もさせていただきました、猿に特化した柵なんかもありますけれども。

 これも農家さんにお聞かせいただいたんですけれども、被害を減らす柵の設置についてなんですが、農家というのはなかなか農作業的なことも手広くやっている、若手の担い手さんというのは結構最近大きくやっておりますので、そういった作業がプラスアルファになってしまうと。

 柵を設置するに当たって、地元の業者さん含めて、設置をしてくれることも含めながら予算を組むことができないかというお話があったんですが、農林水産省さんと打合せをしているときに、この話をストレートにさせていただきました。そのとき、今、実際聞いてどう思ったかというお話をさせていただきましたら、費用的にたくさん出していると思いますよというふうな表現でした。農家も、できることはやった方がいいんじゃないですかねというような率直な意見もありましたが、それも踏まえて、柵は丁寧に対応していただいておりますが、やはり、農作業が忙しいときに、柵を造っていただける、また、地元の業者を使って柵を造っていただけるというふうな対策というのはないのか、また事例がないのか、お聞かせいただきたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 侵入防止柵の設置につきましては、鳥獣被害防止総合対策交付金の中で措置しておりまして、農家や地域住民自らが直営施工する、こうした場合もございますが、この場合には、資材費に対して、国費一〇〇%で定額支援をしております。

 一方、多分委員がおっしゃっている、地域住民が自ら施工することが困難な場合につきましては、柵の設置までを業者が行う請負施工というものがございまして、これにつきましては、補助率二分の一で支援をしております。兵庫県でも幾つかの市町村で活用いただいているというふうに承知しております。この場合、補助残につきましては、市町村が負担する場合、特別交付税が交付率八割で措置されているところであります。

 このため、地域住民まで巻き込んで直営施工を行うのか、あるいは請負施工を行うのか、地域の実情に応じて検討していただいた上で、交付金を活用していただきたいと考えているところであります。

池畑委員 それも含めて、やはりモデル地域、どういった形で猿を追っ払っていくのが一番効果的なのかということを含めて、パッケージングというか、そういった事例、いい事例に対して、こういったパッケージングがありますよということも発信していくことも大事だというふうに思いますので、どうぞ是非、県や森林研究センターにも、こういった使い方がベストなんじゃないかということも農林水産省の方から指示をしていただければありがたいというふうに思います。

 次に、鹿対応について質問をさせていただきたいと思います。

 捕獲をしたその個体、ジビエなんかはいろいろなところで活用しておりますが、地元で捕獲した個体の処理について、ジビエへの活用をよく言われるんですが、そのときに言われるのが、鹿の多い地域に、簡易的でもいいので、処理加工施設を設置することによって、かなり計画的にいけるんじゃないかと。北海道なんかでは、二十三か所ありますが、満遍なく北海道を網羅しているような形になっています。これは、民間の施設、民間認証の場所もありますけれども、大臣の御地元熊本県では、真ん中あたりに施設がかなり集中しておりまして、兵庫県というのは十二か所なんですが、これは冷凍車なんかが通りやすいような形で、鹿が捕れるルートというよりは、鹿を捕った後どういうふうなルートで回収していくかということを意識して造っておられるんだろうなというふうに思いました。

 鹿は、兵庫県なんですが、四万九百三十七頭捕獲をして、有効利用も含めて二割程度だったというふうに聞いておりますが、こういった処理加工施設を計画的に造るということに関して、どのようなお考えかというのをお聞かせいただきたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 捕獲した鳥獣をジビエ利用するためのジビエ処理施設につきましては、令和四年度に全国で七百五十施設が稼働しておりまして、古くから鹿やイノシシが生息している関東以西に多く分布しております。そういう意味でいうと、若干地域的な偏りというのはあろうかなというふうに思っております。

 一方で、鹿等の生息域は全国的に拡大し、また、近年、捕獲頭数も増加傾向にあることから、捕獲した鹿等の有効活用を進めるため、ジビエ処理施設がない地域にあっては、新たに処理施設を整備いただきたいと考えているところでございます。

 農林水産省では、これまでも、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、簡易な処理施設、皮を剥ぐとか、そういった簡易な施設でございますが、そうした簡易な処理施設を含めました処理加工施設の整備を支援してきたところでございます。また、ジビエ利用をどのように進めるのか参考となりますよう、自治体等を対象としたセミナーの開催支援や、優良事例の紹介等も行っているところであります。

 捕獲個体のジビエ利用が進めば、円滑な捕獲にもつながる面もありますので、今後ともこうした取組を通じまして、地域におけるジビエ利用を推進してまいりたいと考えているところでございます。

池畑委員 今も申し上げました、被害解消と絶滅防止というところが結構重要になってくると思うんですが、四万九百三十七頭駆除して、有効利用できたのが八千三百六十七頭。それでも、地元の組合さんなんかは、鹿を持ってくる人が結構増えましたということや、若い人が結構増えましたということでありますので、この先は、もう少しちょっと質問の角度が変わってきますので今質問はしませんが、出口戦略とか、そういったこともかなり重要になってくるというふうに思いますので、施設を増やしたからといって何も出口がないとか、ただ鹿を捕ればいいというわけではないというふうに思いますので、今後ともいろいろと研究をしながら、地域の方に発信をしていただきたいと思います。

 次に、今、農林水産大臣や農水省の方から答弁をいただきましたが、環境省にお聞きをさせていただきたいと思います。猟期を設定する考え方について質問させていただきたいと思います。

 猟期に関しては、趣味でハンターをされていらっしゃる方、そしてまた、主にハンターをしている方があられると思いますが、農家の方の声として、出没したときに捕ってほしいということでありましたが、猟期の考え方というのもあると思うんですが、これは私ちょっと、環境省にお聞かせいただいて、いやいや、時期的なことは特に関係ないんですという話があって、農家さんからは、出没をしたときに捕ってほしいんだけれども、猟期があって時期以外では捕れないんだというお話がありましたが、その辺も踏まえまして答弁をいただきたいと思います。

堀上政府参考人 お答えいたします。

 狩猟期間につきましては、北海道では毎年十月一日から翌年の一月三十一日まで、それから、北海道以外の区域では十一月十五日から二月十五日というふうにしております。

 その理由でありますけれども、これは農林業の作業を実施している、そういう時期を避ける、あるいは、山野での見通しの利く落葉時期に行う、そういった安全確保の観点がございます。それから、鳥類の繁殖あるいは渡りの時期を避けるということもありまして、これは鳥獣保護の観点でありますが、こういったことを考慮して設定をしております。

 一方で、鳥獣による農林水産業被害がある、そういったものを防止する目的で捕獲をするということにつきましては、狩猟期間にかかわらず、鳥獣保護管理法九条に基づく許可を受けていただければ捕獲ができるということになっております。

池畑委員 今、環境省の方にも説明をいただきましたし、事前にもお話を聞かせていただいておりましたが、やはり、先ほどから再三お話をさせていただいていますが、地元のプロの方でもちょっと認識が間違っていること、そして、地域の方がこうしてほしいということに対して、ううんと思っていることがたくさんあるというふうに思います。

 是非、認知も含めて、いろいろな意味で情報を発信していただいて、地域の方が今の時期に捕ってほしいということが、ハンターの方が今の時期は捕れませんみたいな話で断定してしまうと、なかなかその地域の被害というのも削減できないというふうに思いますので、是非とも発信をよろしくお願いいたします。

 次に、先ほど大臣にも答弁をいただきました、これはまた戻るんですが、環境省に質問させていただきます。

 ヤマウチファーム、先ほどから出ております神河町の猿の被害。四群ありますが、三百頭程度という話をさせていただきました。県内の取組として、研究センターが掲げてある目標ですが、地域での取組での防護柵。これはいろいろな意味で、標語みたいに書いてあるんですが、知らない間の餌づけをなくす、これは、野菜なんかをそのまま残しておかないで、収穫しない分もちゃんと最後、処理をするという意味であります。隠れる場所をなくす。これは、草刈りをしたり、枝打ちをしたりということで、猿が山から下りてこないように努力をしてくださいと。結構これは大きく書いてあるんですが、あの手この手で追い払うというふうに最後は書いてあるんですが、最後はあの手この手で追い払うしかないというふうに思うんですが。

 丁寧に作られているそのガイドラインの中に、今、最近はICTとかドローンとかというのが取り組まれておられるというふうに思います。対策の中で、環境省さんがすごく丁寧なガイドラインを作っておられますが、各自治体にお手本として提案するときに、ドローンとかICTなんかを載せていく必要もあるんじゃないかなというふうに思いますし、今、環境省さんも取り組んでおられるかもしれませんが、その辺りも含めて答弁いただきたいと思います。

堀上政府参考人 議員御指摘がありましたとおり、環境省におきましては、ニホンザルの保護や管理に関して、都道府県の対策の指針となるようなガイドラインを作成をしております。昨年度、改定作業を行いまして、近々公表予定としております。

 その中で、猿の、例えば、ICTを利用した大型捕獲おりによる捕獲手法などを掲載しておりまして、そのほかにも、最近ではドローンによる試験的な取組も行われているということは承知しておりますが、そのことはまだちょっと載せておりませんで、ドローンについては、活用事例を収集して、その効果を検証した上で、事例集というような形で整理をしていければというふうに考えております。

池畑委員 今、発信機をつけている猿が三群、四群あるというふうにお話をさせていただきましたが、その三群、四群を追いかけているのは人間でありまして、ここに猿が来ます、そして、農家の方が慌てて走っていっても、なかなかそこにはいないということも多くあるそうです。柵を造る場面、そして、柵をつけるときにも労力がたくさんあります。

 今でも、大分減ったとはいえ二百万ぐらいの被害がありますということでありましたので、ドローンの活用というのは、人間の代わりだというふうに思いますが、発信機で今、自分の圃場へ来ているというときに、もうどうしても間に合わないということもたくさんありますので、是非、そういった活用をしていただきたいというふうに思いますし、木酢酢を使った対応とか、いろいろな面で対応策というのはあるというふうに思います。

 大臣自ら猿の対策をお話をしていただきました。是非、我々の地域でありますところだけではなく、モデル地域をつくって、今の発信のお話であるとか、これからの新しい技術であるとかということを、情報発信をどんどんしていただきまして、猿の被害がなくなることによって七億円、いろいろな補助金をたくさん出しても七億というのはなかなか農家の方には回りませんので、被害対策を含めて、そして、絶滅をさせることなく、共存共栄できるような形を含めて、我々は取り組んでいかなければいけないというふうに思います。

 農林水産省や環境省さんの取組について、我々は敬意を表しますので、これからも是非、情報発信をよろしくお願いいたします。

 それでは、時間ですので、私の質問を終わらせていただきます。

野中委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 米の取引価格について質問します。

 インバウンドの増加などで、業務用米の需要が拡大しています。家庭用米も販売が上向いているというふうに聞いています。

 そんな中で、二〇二三年産米の取引価格が年明けから急騰しています。小売業者によりますと、卸の価格が、一万八千円以下がなくなって、今月においては二万円になっているとのことです。市場に米がなくなったり、六月頃には在庫がなくなる可能性があるとの指摘もあります。

 そうした状況について、農水省は把握しているでしょうか。調査はしているでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 令和五年産米なんですけれども、取引の多くを占めます相対取引価格でございますが、昨年の出回りから今年三月までの年産平均でいきますと、前年よりも千四百四十二円、プラス一〇・四%高の、六十キロ当たり一万五千二百八十六円というふうになっております。この水準は、コロナの前の平成二十九年から令和元年産の水準よりも、まだ低い水準というふうに考えております。

 委員御指摘のところの二万円というお話がございましたけれども、これは、相対取引価格ではなく、業者間のスポット的な取引価格が、一部銘柄によって高騰しているものがありまして、そういったことが報道されているものだというふうに承知しております。

田村(貴)委員 しかし、加工米需要者団体協議会、この協議会は、酒造、即席食品、冷凍食品とか、餅、菓子、みそ、そして米菓などお米を使う業界の組合の協議会が、加工原料用の国産米仕入れが極めて困難な状況となっており、代替として、政府備蓄米の加工用向け販売を行うことを要望しています。

 この協議会は坂本大臣に直談判したとのことであります。大臣は協議会の要請に対してどういう対応をされているのでしょうか。あわせて、備蓄米を放出するということは過去にやったことがあるのか、そのことも含めて答弁をお願いします。

坂本国務大臣 私自身、四月十一日に全国味噌工業協同組合連合会の皆様とお会いをいたしまして、加工原材料用の米が不足している状況を訴えられました。そのときに、政府備蓄米の加工用途向けの販売等を求める御要請もいただいたところでございます。

 令和五年産につきまして、加工原材料用の米の一部で、ふるい下米の発生が例年に比べて大幅に減少しております。これは、一等米等は猛暑で非常に少なかったんですけれども、やはり猛暑の分だけ粒が成長して小さい粒の米が少なかったということで、ふるい下米が極端に少なくなりました。

 そういうことで、加工用向けをどうするかということで、ミニマムアクセス米について、それをカバーすべく、昨年の同時期に比べまして一・六倍の販売量というふうになっております。更に需要に応えて販売を行っていくことを心がけております。

 国産米につきましては、産地や生産者に対しまして、令和六年産に向けまして、加工用米の作付、供給を要請いただくようお伝えをしたところでございます。できる限り加工用米、特に福岡とか佐賀あたりに作っていただきたいというような御要請をしたところであります。

 一方、政府備蓄米の放出につきましては、平成二十四年に二回、それから平成二十五年に一回、放出をしております。過去に加工用向けに備蓄米を販売をしたところでございますけれども、国内の加工原材料用の米の価格が急落をいたしました。そのために、加工原材料用米を取り扱います流通業者の方々も含めて大きな混乱を起こしたところでございます。ですから、政府備蓄米の放出につきましては慎重に検討していくべきものというふうに考えております。

 これから七月、八月、九月、新米に向けての端境期に入ります。今後とも、引き続き需給と価格の動向というものを注視してまいりたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 先ほどの農水省の答弁で、コロナ前よりも低い、お米の価格は高くなっているけれども、二万円というのは業者間のスポット価格である、市場については大丈夫みたいな話があったんですけれども、とはいいながら、日本農業新聞の報道でも、需給の逼迫感が強まり、民間在庫量が前年を下回る水準で推移している、そういうふうに報じられています。

 坂本大臣、どこかで目詰まりが起こっているのではないかという疑念もあるわけですね。小売店や加工業者にしわ寄せが起こらないように、また、市場価格が急騰していけば、これまたお米の消費拡大にも逆行してしまいます。ですから、そうした目詰まりが起こっていないのかも含めて、ちょっと調査をしてみる必要があるかと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 まずは令和六年産の加工用米の作付、こういったものに対して要請をしていかなければいけないというふうに思います。そして、主食用米、加工用米、それぞれのバランスを取っていくこと。さらには、その価格につきましても、やはり、みそ業者の皆さんたちがしっかりと製造コストを、例年と同じような価格で製品ができるように、しっかりとその方向に向けて需給調整をしていかなければいけないというふうに思っております。

田村(貴)委員 価格の高騰とか、それから品不足を招かないように、対応を要請したいと思います。

 続いて、能登半島地震の被災農家支援について質問します。

 まず、法人経営についてです。農業法人は奥能登も含めて石川県内に三十あります。水路の復旧が間に合わず、自費でポンプを稼働させて水張りを行うなど、何とか今年の作付そして復旧に取り組んでいる農業法人があります。

 こうした取組に対して、支援というのはどうなっているでしょうか。

長井政府参考人 お答えいたします。

 被災した水路等の復旧におきましては、営農再開に必要な農業用水を確保するため、市町村等の事業実施主体が査定前着工制度を活用いたしまして、仮設水路や仮設ポンプ等を応急的に設置することが可能であります。

 また、多面的機能支払交付金を活用いたしました共同活動を実施している地域におきましては、活動組織が、被災した農地の復旧や、農地周りの施設の補修や、復旧等の活動を実施する場合には、本交付金の対象となります。

 この査定前着工制度や多面的機能支払交付金による支援におきましては、農家個人による水路の補修やポンプ等の購入は支援の対象にはなっておりません。

 農林水産省といたしましては、こうした制度を被災農家に適切に御活用いただけるよう、引き続き周知を図ってまいります。

田村(貴)委員 個人で工事をしてしまった人は対象にならないということだったんですけれども、査定とか応急復旧事業が田植に間に合わないから、致し方なく自費でやらざるを得なかった。今度の災害においては、これは往々にしてあり得るわけですね。

 こうした事態があるということを前提に、是非、救済支援の範囲に入れていただきたいというふうに思います。

 法人経営には、農地が集まってくるにもかかわらず、それを耕作する人員が足りないという問題があって、大変難渋しています。思い切った対策がなければ廃業する法人も出てきかねません。

 パッケージではカバーできない部分、これについて、どういう対策が講じられようとしていますか。

坂本国務大臣 委員おっしゃるとおり、法人経営等につきまして人員を確保すること、これは重要であるというふうに考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、農業法人が被災農業者を一時的に雇用して研修する場合に資金を交付をいたします。それから、被災農業法人が従業員を他の農業法人等に研修目的で派遣する場合に必要な経費の助成をやります。そして、就農に向けた研修資金、経営開始資金等の交付におきまして、復旧作業を研修や農業生産等の従事日数に加えられるようにすることなどで、弾力的な運用を行うことというふうにしております。

 引き続き、被災地の声に耳を傾けながら、被災された方々をしっかりと支援してまいりたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 大臣が言われたそれらの施策、支援策は非常に大事だと思います。しかし、倒産とか廃業とか離農が起こってしまったら、これはやはりいけないと思います。それを回避するために、やはり制度の拡充が必要であると思います。

 農機具の被災について伺います。

 九割補助でもやめる人がいます。なぜならば、やはり費用がかかるからなんですよね。例えば基本法が制定された一九九九年、このとき六条刈りのコンバインの価格は六百万円程度でした。今、二千万円するんですよ。機能も上がらず、所得も上がらない中で、この九割補助はありがたいんだけれども、実際、二百万円の負担、二千万円だったら二百万円の負担というのがのしかかってくるわけです。

 しかも、補助金なしで買おうとすると、こうした農機具は値引きがあるんですけれども、補助金で購入すると定価で買わなければならない、結局、自己負担は大して変わらないという話も聞いています。

 高い自己負担があっては再建に踏み出せない、そして、仕方がないからもう廃業やむなしという事態が起こっている。そうあってはならないと思いますけれども、大臣、いかがですか。やはり一〇〇%近い公費による支援を行わなければ農業が継続できない。これについて、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 被害を受けました農業用の機械あるいはハウスの復旧につきましては、農業共済及び長期、低利の融資での対応を基本としておりますけれども、石川県におきましては、米農家を中心に、基幹的農業従事者の平均年齢が全国平均よりも高い状況にあります。

 そういうことで、能登半島地震につきましては、被害の甚大さに鑑みまして、被害の状況や過去の災害における対策との公平性を踏まえ、農地利用効率化等支援交付金の被災農業者支援タイプというのを発動しました。これが九割補助でございます。熊本地震のときも、経営体育成支援事業ということで、九割補助がございました。

 その上で、コロナ禍にあった令和二年七月の豪雨、これは熊本地震や東日本の豪雨のときでございますけれども、甚大な被害が発生した過去の災害の際に講じた支援と同様の支援策を今後も取ってまいりたいというふうに思っております。

 さらには、補助事業による支援に加え、災害関連資金等の措置も講じているところでありまして、農業者が着実に営農再開できるよう支援してまいりたいと思っております。

 なお、先日、三月十三日の衆議院の農林水産委員会で、私が、経験上、熊本地震の場合には、農業者の方から一割の負担が重いという御意見は余り聞こえてこなかったというふうにお答えをいたしました。これは、熊本と石川、農業者の平均年齢、六歳違います。そういうこともあると思いますし、また、残り一割については、様々な融資制度、そういったものを活用しながら、皆さん、営農再開に向けて動かれたんだというふうに思っております。

田村(貴)委員 甚大な被害が起こるたびに、私は、支援制度というのは拡充してしかるべきだと思うんですよ。そして、これだけ災害が続いているわけですよね。しかも資材高騰があっている。条件が不利なところである。だったら、従前の施策よりも制度を充実させていかないと、離農、廃業はやはり引き起こり、そしてこれが拡大していく。だったら、従前の施策にとらわれないでやるべきだと思います。

 それから、大臣、一割負担について声があるなしと言うんだけれども、一割負担が厳しい人は厳しいんですよね。この声があって、それがきっかけになって、農業をもうこの機会にやめてしまおうかというんじゃなくて、そうじゃなくて、頑張って、背中を押すということが非常に大事だ。このことを申し上げて、今日は質問を終わります。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 本日は、就職氷河期世代にフォーカスを当てまして質疑をしたいと思います。

 一九九〇年代、それから二〇〇〇年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代を就職氷河期世代と呼び、希望する就職ができず、不本意ながら不安定な仕事に就いている、また、無業の状態にある、社会参加に向けた支援を必要とするなど、様々な課題に直面している方が多数いらっしゃいます。

 厚生労働省では、就職氷河期世代の方々の就職、正社員化の実現、また引きこもりの方々などの多様な社会参加への実現を目指した支援を実施していますが、どのような支援を行っているのか、お聞きしたいと思います。

原口政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の就職氷河期世代の支援につきましては、政府といたしまして、骨太方針二〇一九に盛り込まれました就職氷河期世代支援プログラムの下で、二〇二四年度まで集中的な支援に取り組んでいるところでございます。

 その中で、特に長期にわたり無業の状態にある方に対する支援といたしましては、全国百七十七か所に設置してございます地域若者サポートステーションを拠点といたしまして、キャリアコンサルタントによる相談を踏まえた個別の支援計画の作成、働くために必要なコミュニケーション能力の向上のための訓練、また、働く上での第一歩を踏み出すための職場体験などの様々な支援メニューを通じて、支援対象者の職業的自立に向けた就労支援に取り組んでいるところでございます。

 こうした取組を着実に進めることによりまして、引き続き、長期にわたり無業の状態にある方の就労支援に努めてまいりたいと考えてございます。

    〔委員長退席、古川(康)委員長代理着席〕

長友委員 ありがとうございます。

 政府が、一九九三年から二〇〇四年の期間を就職氷河期と位置づけまして、今現在、四十一歳から五十歳になる方たちを就職氷河期の中心層として、正規雇用を希望しながら非正規雇用で働く方たちが少なくとも約五十万人いる、そういう推定があります。また、仕事も通学もしていない無業者が四十万人いるという試算を政府が出しているわけですね。さらに、推定で六十万人以上いると言われる四十歳から六十四歳の中高年引きこもりも、この世代の割合が突出されているというふうに言われています。

 実は私も就職氷河期世代になります。今四十六歳なんですけれども。私の周りにも、就職活動がうまくいかずにうつになってしまいまして、その後の人生を立て直せていない知人や、ブラック企業で体を壊して、他人とのコミュニケーションに困難を抱えてしまい、引きこもってしまっているという方が実際にいるんですね。

 いわゆる八〇五〇問題というものがあります。八十代の親が、五十代の子供の生活を支えるために、経済的にも精神的にも強い負担を請け負ったり、子供が自立した生活を送れないために、八十代の親の年金を頼りに生活していたりする社会課題になります。

 これは、親が七十代で四十代の子供の生活を支えている場合は七〇四〇問題というふうになりますが、実際に私も地元のフードバンク活動などを通しまして見ていると、四十代、五十代の無業者を抱える御家庭が困窮した生活を送っていらっしゃるということを目の当たりにしてまいりました。

 何とか私と同じ世代の仕事も通学もしていない無業者の方々の活躍の場を見出したいというふうに思うわけなんですけれども、一方で、農水省は、基幹的農業従事者が今後二十年で約四分の一程度、今百二十万人だとしたら約三十万人に急減するという見通しを発表しています。

 そこで農水省に伺いたいんですが、農林水産省も農業、林業、漁業について、就職氷河期世代の方々も含む新規就業者を確保、育成するための各種支援を実施していますが、これまでの実績について伺います。また、令和六年度の農水省の取組についても教えてください。

舞立大臣政務官 御質問ありがとうございます。私も四十八歳で、就職氷河期世代でございます。

 農林水産省におきましては、就職氷河期世代を含めた新規就業者を確保、育成するために、農業分野では、新規就農者育成総合対策による就農準備、経営開始時の資金面等の支援、林業分野では、森林・林業新規担い手育成対策によります新規就業者へのトライアル雇用や体系的な研修等の支援、そして水産分野では、経営体育成総合支援事業や漁業担い手確保緊急支援事業によります就業に当たっての長期研修等の支援等を実施しているところでございます。

 こうした取組の令和四年度の実績といたしまして、農業分野では、全体で四千七百三十七名を支援し、うち就職氷河期世代は千七百五十一名、林業分野では、全体で二千五百名を支援し、うち就職氷河期世代は六百五十三名、水産分野では、全体で四百十五名を支援し、うち就職氷河期世代は九十三名となっております。

 令和六年度におきましても、こうした制度につきまして周知を図りながら、地方団体等とも連携しながら、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

長友委員 ありがとうございます。

 今の答弁を聞いていただきまして、この後、大臣に御質問したいんですけれども、基幹的農業従事者が二十年後には三十万人になるという見通しを農水省は発表していますが、無業者が四十万人いるという政府の試算、また、推定で六十万人以上いると言われる四十歳から六十四歳の中高年の引きこもり、この世代の割合が突出しているという背景、私、それぞれの数字に非常にインパクトがあるなというふうに感じているわけなんですね。

 大臣とされまして、この就職氷河期世代の皆さんに農業従事者として活躍する場を用意する、そんな施策に農水省も力を入れていいと思うのですが、大臣の見解を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 今言われました、いわゆる農福連携と言われるものになりますけれども、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現するという取組が農福連携でございます。

 政府が令和元年六月に決定いたしました農福連携等推進ビジョンにおきましても、地域に生きる一人一人の社会参画を図る観点から、農福連携を障害者のみならず高齢者、生活困窮者、引きこもりの状態にある者等の就労、社会参画支援に対象を広げることも重要というふうにしております。

 好事例といたしまして、例えば、高知県安芸市の取組で、過去に引きこもりの状態であった方が農業を通じた就労支援後に新規就農した事例、こういったものがございます。それから、埼玉県熊谷市の取組で、引きこもり状態にある方を積極的に取り入れて一般就労につなげた事例がございます。いずれも、農福連携の優良事例を表彰いたしますノウフク・アワードにおきまして高く評価されておりまして、この取組が全国に広がるよう、今後も努力してまいりたいと思っております。

 私も、孤独・孤立対策担当大臣のときに、引きこもり状態にある方々に対しまして農という働く場所を提供する、農とこういった方々は非常に親和性があるなというふうに思いました。そして、実際、そういう方々が担い手として成長されたという事例もございます。

 今後、厚生労働省などの各関係省庁と連携をいたしまして、農福連携の推進を通じて、引きこもり状態にある方々あるいは多様な方々が、生きがいを共につくり、高め合うことができる社会実現、そして、やはり就職氷河期時代の方々の働く場所にもつながっていくというものにしていきたいというふうに思っております。

長友委員 大臣、ありがとうございます。好事例の御紹介までいただきました。

 地方公聴会でも、農福連携に有機農業で取り組んでいる方のお話もありました。有機なんかは特に農福連携では成果が出やすいと。それは、いわゆる大型化するよりも、丁寧に、農薬や肥料を使わずに、目の前のものに向かう。障害がある方や引きこもりの方々が、コミュニケーションに問題があっても農業に携わることで活躍できるということが、実際にもう農福連携の現場では実績がございますので、就職氷河期世代の対象となる方々にも農業分野での活躍の場というものを創出をすることを、是非取組を加速していただきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 地域おこし協力隊についてになりますが、総務省の発表によれば、二〇二三年度の地域おこし協力隊が、全国で前年度比七百五十三人の七千二百人で、四年連続で地域おこし協力隊の数が増加しまして過去最多を更新したということが発表されました。若者らが農山村を志す田園回帰の流れが続いていることを裏づけているというふうに思います。調査結果からは、同じ地域に定住した隊員のうち一割が就農していることも明らかになりました。

 新規就農の重要なルートにもなっているということが分かったわけですけれども、政府としまして、この地域おこし協力隊の隊員がスムーズに就農につながる取組を更に加速させるべきと考えますが、総務省と農水省、それぞれの見解を伺いたいと思います。

山越政府参考人 お答えいたします。

 地域おこし協力隊は、都市部から過疎地域などへ生活の拠点を移した方が、一定期間様々な地域協力活動を行うとともに、その地域への定住、定着を図る施策でございます。

 具体的な活動内容は自治体が地域課題等を踏まえ設定いたしますが、実際、地域で農林水産業に従事されている隊員も多くおられます。また、任期終了後も、御紹介ありましたとおり、定住する際、就農、就林等、農林水産業に就業する方もいらっしゃるという状況でございます。

 総務省といたしましては、令和五年度に七千二百人であった隊員数を令和八年度までに一万人まで増やすことを目標として、農業分野も含めて隊員数の拡大に取り組んでまいります。

 具体的には、戦略的広報などによりまして応募者の増加を図るとともに、全国ネットワーク事業など、自治体の受入れノウハウや隊員へのサポート力の強化を図ってまいります。

 また、協力隊員への研修といたしまして、これまでも、ステップアップ研修におきましては、農林水産省の施策を含め、新規就農するに当たり活用する支援制度について周知をいたしますとともに、起業、事業化研修におきましては、農業など一次産業での起業をテーマとして設定して研修を実施しております。

 さらに、定住に向けた支援といたしましては、農業を含む起業、事業承継に要する経費についても財政措置を行っているところでございます。

 これらの支援策を通じまして、地域おこし協力隊制度を活用して新規就農を支援する自治体の取組を積極的にサポートしてまいります。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省といたしましても、地域おこし協力隊の一員となって、まず地域になじんだ上で新規就農することも一つの有益な方法と考えております。委員から御紹介ございました、総務省の取りまとめを見ても、一定の実績も出てきているというふうに認識をしております。

 農林水産省におきましては、令和四年度から新規就農者育成総合対策を実施しておりますけれども、この中の、資金面の支援、あるいは経営発展のための機械、施設等の導入につきましては、地域おこし協力隊の任期終了後に就農する方についても、申請していただくことが可能となっております。

 また、従来から、一般社団法人移住・交流推進機構が実施をしております地域おこし協力隊合同募集セミナーに当省の職員も参加をさせていただいて、新規就農支援策の内容等について案内をさせていただく、こういったことを実施しております。

 引き続き、関係機関とも連携をしながら、農業人材の確保、育成に努めてまいりたいと考えております。

    〔古川(康)委員長代理退席、委員長着席〕

長友委員 ありがとうございます。

 先ほど重徳委員からも御指摘がありましたけれども、農業人口の確保は国が責任を持って行うべきだというふうに私も思いますので、今国がそれぞれ展開しているあらゆるリソースを総動員いただきまして、しっかりと農業従事者の確保をお願いして、今日の質疑は終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。

     ――――◇―――――

野中委員長 次に、内閣提出、食料供給困難事態対策法案、食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案及び農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案の各案を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣坂本哲志君。

    ―――――――――――――

 食料供給困難事態対策法案

 食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案

 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

坂本国務大臣 食料供給困難事態対策法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 現下の情勢として、世界人口の増加に伴い食料需要が増大する一方で、気候変動に伴う世界的な食料生産の不安定化、家畜の伝染性疾病又は植物病害虫の蔓延、国際的な物流の途絶等、世界の食料供給が不安定化することに伴い、我が国においても大幅な食料の供給不足が発生するリスクが増大しております。

 このため、食料の供給不足の兆候の段階から政府が一体となり総合的に対策を実施することにより、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に支障が生ずる事態の発生をできるだけ回避し、又はこれらの事態が国民生活及び国民経済に及ぼす支障が最小となるようにすることが重要です。

 このため、平時から、食料供給困難事態が発生した際の対策について基本方針を作成するとともに、食料の供給不足の兆候の段階において食料供給困難事態対策本部を設置し、事態の進展に応じて、事業者に対する食料の供給確保のための取組の要請等の食料供給困難事態対策を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 まず第一に、報告徴収についてであります。

 主務大臣は、特定食料又は特定資材の国内の需給状況を把握するため、特定食料又は特定資材の出荷、販売、輸入、生産又は製造の事業を行う者、これらの者の組織する団体等に対し、報告を求めることができるものとしております。

 第二に、基本方針についてであります。

 政府は、食料供給困難事態対策を総合的かつ一体的に実施するため、食料供給困難事態対策の実施に関する基本的な方針を定めるものとしております。

 第三に、食料供給困難事態対策本部であります。

 内閣総理大臣は、農林水産大臣からの食料供給困難兆候に関する報告があった場合において、食料供給困難事態の発生を未然に防ぐため必要があると認めるときは、閣議において、臨時に内閣に食料供給困難事態対策本部を設置することを決定することとし、また、本部は食料供給困難事態対策の実施方針を定めるとともに、事態の進展に応じて、食料供給困難事態である旨等の公示を行うこととしております。

 第四に、食料供給困難事態対策についてであります。

 主務大臣は、食料供給困難事態の発生を未然に防止し、又は食料供給困難事態を解消するため、事態の進展に応じて、措置対象特定食料等の出荷若しくは販売の調整又は輸入、生産若しくは製造を促進するよう事業者に対する要請や計画作成の指示等を行うことができることとしております。

 また、国は、要請に応じて食料の供給確保の取組を行う事業者に対して財政上の措置等を行うこととしております。

 続きまして、食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 近年、我が国の食料及び農業をめぐっては、国際情勢の変化等により世界の食料需給が変動する中で、国内の農地面積の減少、農業従事者の減少及び高齢化が進行していることなどから、将来にわたる国民への食料の安定供給の確保のための対策を講ずることが急務となっております。

 このため、国内の農業生産の基盤である農地を確保し、その有効な利用を図る観点から、農地関連制度において、確保すべき農用地の面積目標の達成に向けた措置の強化、農地の不適切な転用の防止と適正かつ効率的な利用の確保、地域において人と農地の受皿となる法人経営の経営基盤の強化による農地の有効利用の促進等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、農業振興地域の整備に関する法律の一部改正であります。

 まず、目的規定に、農業生産に必要な農用地等の確保及び食料の安定供給の確保を追加するとともに、国及び地方公共団体がそれぞれの立場から農用地等の確保に努めなければならない旨を規定することとしております。

 次に、農用地区域に定めるべき土地として、地域計画の達成のために農業上の利用を確保することが必要であると認められる土地を追加するとともに、農用地区域からの除外に係る都道府県知事の同意の基準として、農用地の面積目標の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められること等を追加し、その判断材料として、市町村に対し、面積目標への影響緩和措置等を記載した書面の提出を求めることとしております。

 さらに、農林水産大臣は、必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、農用地等の確保のために必要な措置について勧告等を行うこととしております。

 第二に、農地法の一部改正であります。

 農地の権利取得の許可に当たって考慮すべき要素に、農作業の従事者の配置と農業関係の法令の遵守を追加するとともに、農地転用許可の際に定期的な報告等の必要な条件をつけることとし、また、違反転用により原状回復等の措置を命ぜられた者が期限までに命令に従わなかった場合に、都道府県知事がその旨及び土地の地番その他必要な事項を公表できることとしております。

 第三に、農業経営基盤強化促進法の一部改正であります。

 まず、農業経営発展計画制度の創設であります。農地所有適格法人であって、農業経営改善計画の認定を一定期間以上受けていること、地域計画に農業を担う者として記載されていること等の要件を満たす者が、物資又は役務の取引の相手方から出資を受け、その取引の推進等により農業経営の発展を図るための計画を作成し、農林水産大臣の認定を受けた場合には、農地法における農地所有適格法人の議決権要件を緩和する特例を講ずることとしております。

 次に、地域計画内の遊休農地の解消を迅速に進めるため、農地中間管理機構が当該農地の権利設定に関し都道府県知事に裁定を申請する手続を迅速化及び義務化することとしております。

 続きまして、農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 農業者が今後急速に減少することが見込まれる一方、近年では農業の分野における情報通信技術が進展するなど、我が国の農業を取り巻く環境は大きく変化しています。

 こうした変化に対応し、農業の生産性の向上を図るためには、農作業の効率化等を通じて農業の生産性を向上させるスマート農業技術の活用を促進することが不可欠となっています。そのためには、令和元年度から全国二百十七地区で実施してきたスマート農業実証プロジェクトの結果等を踏まえ、スマート農業技術に適合した生産の方式の導入や、いまだ実用化に至っていない分野におけるスマート農業技術等の開発及びその成果の普及を促進することが重要となっています。

 このような状況を踏まえ、農業の持続的な発展及び国民に対する食料の安定供給の確保に資するため、スマート農業技術の活用及びこれと併せて行う農産物の新たな生産の方式の導入に関する計画並びにスマート農業技術等の開発及びその成果の普及に関する計画の認定制度を設け、これらの認定を受けた者に対する特別の措置を講ずるため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、基本理念及び国等の責務についてであります。

 基本理念として、国が生産方式革新事業活動の必要性及び有効性に関する知識の普及及び啓発を図るとともに、農業者等が自ら活用するスマート農業技術の性格、生産する農産物の特性等に応じて、生産方式革新事業活動に主体的かつ積極的に取り組むこと、開発供給事業について農業において特に必要が高いと認められるスマート農業技術を重点的かつ迅速に開発及び供給することにより農業の生産性の向上を図ること等を定めた上で、国等の責務として、スマート農業技術の活用の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施すること等を定めることとしています。

 第二に、基本方針の策定についてであります。

 農林水産大臣は、生産方式革新事業活動及び開発供給事業の促進に関する基本的な方針を定めるものとしております。

 第三に、生産方式革新事業活動及び開発供給事業の促進のための措置についてであります。

 生産方式革新事業活動を行おうとする農業者等は、その実施に関する計画について農林水産大臣の認定を受けられるものとし、認定を受けた農業者等には、株式会社日本政策金融公庫による貸付けの特例等の措置が講じられることとしています。また、開発供給事業を行おうとする者は、その実施に関する計画について農林水産大臣の認定を受けられるものとし、認定を受けた者には、公庫による貸付けの特例、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の研究開発設備等の供用等の措置が講じられることとしています。

 以上が、これらの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いを申し上げます。

野中委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

野中委員長 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、農産局長平形雄策君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策統括調整官吉田健一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。細田健一君。

細田委員 皆さん、おはようございます。新潟二区の細田健一です。

 質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。委員長及び理事の先生方に心から御礼を申し上げます。

 今御説明があった三法案ですけれども、先般可決された農業基本法と一体のものとして、更に深掘りといいますか、個別具体的な分野の実施法として提出されたものと理解をしております。

 これは閣法で提出されましたけれども、原案の作成に当たっては、我が党内でも本当に相当のインテンシブな議論を行いました。この議論に参加された先生方、また、今、宮下前大臣がいらっしゃいますけれども、宮下前大臣、坂本大臣、そして法案作成に当たられた農水省の関係者の皆様に心から敬意を表したいというふうに考えております。

 本日、時間は限られておりますけれども、幾つかポイントを絞って質問をさせていただきます。

 まず、食料供給困難事態対策法についてであります。

 この法令によって、生産者、これは恐らく一定規模以上の者に限定されるということになると思いますけれども、この生産者は生産計画の提出を求められることになります。この法令によって提出を求められる生産計画を作成、提出することが極力負担にならないように、これは既に補助事業の申請などを行う場合に様々な生産計画を提出していますから、これら既存の計画を可能な限り活用できるようにして、農家に新たな負担が課されないようにすべきであると考えますが、農水省の見解をよろしくお願いします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、今回、特定食料として指定することを検討している品目につきましては、平時から補助事業などの執行のため、生産に係る計画の提出を求めているものが多くあります。例えば、米や小麦、大豆につきましては、水田活用の直接支払交付金や、畑作物の直接支払交付金、いわゆるゲタ対策などにおきまして提出していただいている営農計画書に生産に係る情報を記載いただいております。

 本法案における生産計画につきましても、このように現行で記載いただいている生産計画の事項にできるだけ沿った内容としたいと考えており、農業者に過度な負担が生じないよう配慮して、計画の内容を検討してまいります。

細田委員 ありがとうございました。

 極力、新たな負担がないように、是非、御配慮をいただきたいと思います。

 次に、この法案によって、計画を提出した生産者が増産を指示され、それを拒否すると、罰則、罰金が科せられるというコメントが出ております。これはいろいろな、例えばネットでこういうコメントがあるようでございますけれども、今申し上げたように、計画を提出した生産者が増産を指示されて、それを拒否すると罰則、罰金が科されるということが本当にあるのかということ、これを是非、端的にお答えいただきたいと思います。

杉中政府参考人 お答え申します。

 計画を提出いただいた方がその計画において、また、変更指示を受けた方が変更計画において、増産に応じなかったとしても、罰金は科されません。

 どのような場合に罰則が科されるかも含めまして、本法案が成立した際には、関係者に対して丁寧に説明してまいります。

細田委員 ありがとうございました。

 罰金を科されることはないということ、この点については明確にしておきたいというふうに思っております。

 さらに、生産者に困難事態のときに増産をお願いして増産をいただくためには、当然のことながら、支援が必要だというふうに思っております。これは、法令の中で財政上の措置というのが規定されておりますけれども、具体的な内容というのは必ずしも明らかになっておりません。この支援の具体的内容というのはどういうものか、大臣の御見解をお願いいたします。

坂本国務大臣 生産者が要請に基づきまして生産を拡大する場合には、例えば、追加の生産資材や収穫等に必要な機械の確保、こういうのが必要になってまいります。それから、不作付地の除草、整地、こういったものも必要になってまいります。いわゆるかかり増し経費、あるいは、価格が安くなったときにどう埋め合わせていくかというような問題が生じる可能性がございます。

 そういう場合の財政上の措置につきましては、これらのことを考慮に入れて、対象品目、それから需給の状況など、個々の事態に応じた具体的な支援内容を検討することというふうになります。

 その際、第十九条の規定に基づきまして、要請に当たっては、事業者が要請に応じようと考えていただける環境を整える、支援の水準を考えていきたいというふうに思っております。そして、計画の変更指示に当たりましては、経営への悪影響などを回避する措置であることといった観点から検討してまいりたいというふうに思っております。

細田委員 大臣、ありがとうございました。

 今お話があったように、生産者に増産の要請を行ったときに要請に応じていただけるような環境を整える、そしてそれは経営に悪影響を及ぼさないという点、この点に十分配慮いただくということ、これは大変重要な点であるというふうに考えております。是非、この点に配慮しながら具体化を進めていただければ大変ありがたいと思います。

 それでは次に、農地法と農振法の関係について質問させていただきます。

 農地は、言うまでもなく、農業生産の基盤であります。ただ、荒廃農地の発生などによる農地そのものの減少に加えて、地方における急激な人口減少など、農地を維持する環境も悪化しています。

 私の地元新潟県でも、今後、二十年後に農業従事者は七分の一程度に減少するんじゃないかという試算もありまして、大変厳しい状況にあるというふうに考えております。

 このような、人の手当ても含めて、今後、農地の維持、確保に向けた対策というのを総合的に講ずるべきであるというふうに考えておりますけれども、農水省の御見解をお願いいたします。

長井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、農地は農業生産の基盤であり、食料の安定供給の観点から適切に確保していく必要があると考えておりますが、現状は、農地転用や荒廃農地の発生によりまして、農地面積は減少しているところであります。

 このため、今回の改正法案におきましては、農地転用を目的とした農用地区域からの除外について、都道府県の同意基準として、面積目標の達成に支障を及ぼすおそれがある場合には同意できないことを明記するなど、農地の総量確保に向けた措置の強化を図ることとしております。

 また、農林水産省といたしましては、荒廃農地の発生を防止し、農地の維持を図るため、意欲と能力のある担い手の育成を図り、農地中間管理機構を活用した農地の集約化等を推進しつつ、農業の生産性の向上に資する農業生産基盤の整備やスマート農業の推進を行うとともに、地域の共同活動や鳥獣害対策、粗放的利用による農地の維持保全の取組などの施策を推進しており、総合的に農地の維持を図っているところであります。

 こうした施策を総合的に講ずることによりまして、食料の安定供給に必要な人と農地の確保を図ってまいりたいと考えております。

細田委員 ありがとうございました。

 我が国の農業が今後持続的に発展していくためには、今お話があったとおり、農地とそして人の問題、これが本当に大変重要になってくると思っております。是非、農林水産省の総力を挙げて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、農業経営基盤強化促進法の関係で質問させていただきます。

 この改正法の中で新たに位置づけられる農業経営発展計画制度について、この計画によって出資ができる事業者を食品事業者と地銀ファンドに限るというふうに承っておりますけれども、それはどのような考え方によるものか、また、一口に地銀ファンドと言ってもいろいろな形態のものがございますけれども、どういう形態のファンドを想定しているのかということ、この点について御説明をお願いいたします。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 農業経営発展計画制度による特例の対象とする業種につきましては、地域における人と農地の受皿となっている農地所有適格法人の経営発展を図るために、その農地所有適格法人に対して出資するという性質上、農業に直接関連する業種が望ましいと考えております。

 食品事業者につきましては、既に農地所有適格法人に出資している業種の約半数が食品事業者であること、また、地銀ファンドに関しましては、地方銀行が地域経済振興を担う役割を持ち、地域農業の発展への寄与等を求める本特例制度との親和性が高いことを踏まえまして、食品事業者と地銀ファンドが特例による出資者として適切であると考えているところでございます。

 なお、特例の対象とする地銀ファンドにつきましては、地銀が組成するファンドのうち、農業との関係が深いものとして、農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法、いわゆる投資円滑化法がございますけれども、この投資円滑化法に基づいて農林水産大臣の承認を受けているファンドを対象として検討してまいりたいと考えております。

細田委員 ありがとうございました。

 農業生産の基盤を強化するということで、資本関係の強化ということについては十分理解をいたします。ただ一方で、農業者の中には不安の声、新しい制度で本当に農地が維持できるのかという不安の声もあるようですので、是非十分な御説明をお願いしたいと思います。

 それでは最後に、スマート農業法の関係について、まず最初に、本法案のKPIというのはどのようなものか御説明ください。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 今後の農業者の急速な減少等に対応し、農業の生産性の向上を図っていくためには、スマート農業技術の活用が不可欠であると考えています。

 そのため、本法案を通じて、広く我が国農業でスマート農業技術が活用されることを目指しまして、令和十二年度、二〇三〇年度にスマート農業技術の活用割合を五〇%以上に向上させることを目標としたいと考えております。

細田委員 ありがとうございました。

 二〇三〇年度に、私の理解では、いわゆる経営耕地面積の五〇%以上をスマート農業の対象にするという、大変意欲的な目標を立てられたというふうに理解をしております。

 確かに、基幹的農業従事者が、今後、相当大きく減少するという中で、スマート農業の活用というのは必要不可欠になってくると思いますので、是非、このKPIの達成に向けて、本当に全力で取り組んでいただきたいと思っておりますけれども、例えば私の地元を見ておりますと、ドローンによる水田の防除というようなものがかなり一般的になってきておりまして、そのための、そういうサービスを行う専門的な業者さんというのも既に相当数出てきております。

 スマート農業の振興、発展を図るという観点からいたしますと、例えばこういう専門サービス業者さんに対する支援も重要になってくるというふうに考えられますけれども、こういう点も含めて、この法令によるスマート農業の支援について、今後の取組について、是非御見解をお願いいたします。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 今後の農業者の急速な減少等に対応して、農業の生産性の向上を図っていくためには、御指摘のとおり、農業者をサポートするサービス事業者の役割が重要であると考えております。

 特に、農業者がスマート農業技術を活用する上では、スマート農機等の導入コストが高く、また、それを扱える人材が不足をしている、それからまた、果実や野菜の収穫など、スマート農業技術の開発が不十分な領域があるなど、生産サイドと開発サイド双方での課題が明らかになっているところです。

 このため、生産サイドでは、農業者のコスト低減等の観点から、スマート農機等のレンタルや農作業の受託、開発サイドにおきましては、特に必要性が高いスマート農業技術等の開発や農業者への供給などを行うサービス事業者の取組を促進することが必要です。

 本法案では、スマート農業技術の活用をサポートするサービス事業を第二条第四項に定義づけ、生産と開発の計画にサービス事業に取り組む者が参画できることとし、認定を受けたサービス事業者に対し、税制、金融等により積極的に支援をすることとしております。サービス事業者の取組の促進を通じて、農業者がスマート農業技術を活用しやすくなる環境の整備に取り組んでまいります。

細田委員 ありがとうございました。

 まさに今お話があったとおり、スマート農業技術、一生懸命開発をしていただきたいと思いますし、さらに、その上で、やはり現場の農業者がそれをきちんと実装していく、この五〇%の目標達成にはそれは本当に必要不可欠だと思いますけれども、是非、現場の農業者が使いやすい形で実装が行われるように、様々な政策を講じていただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

 最後に、米どころ新潟県選出の国会議員として、お米について一問、御質問をしたいというふうに思います。

 今、先ほど短期的にお米の値段が急騰しているんじゃないかというお話もございましたけれども、中長期的に見ると、残念ながら、人口減少によって年間十万トンずつお米の需要が減少していくという、基本的には非常に厳しい状況にあるのではないかというふうに認識をしております。

 お米の需要拡大、今、様々な観点から政策が講じられています。もちろん、主食用米に対する需要の拡大ということも重要だと思っておりますけれども、さらに、これに加えて、例えば米粉でありますとか、あるいは、主食用米であれば、いわゆるパック御飯、これは今のライフスタイルの変化にも非常にマッチしていると思いますし、また、私の地元の会社に聞きますと、年間十一億食ぐらい、今、日本全体で生産をしているそうですけれども、もう本当に右肩上がりでどんどん需要が膨らんでいまして、とにかく生産が十分に追いつかないというような話もお伺いするところでございます。

 したがって、こういう米粉あるいはパック御飯の生産拡大を更に促すような、あるいはそれを支援するような政策が必要になってくるのではないかというふうに考えておりますけれども、農林水産省の御見解をお願いいたします。

舞立大臣政務官 日本の食料安全保障を確保する上で、主食であり、自給可能な米の需要拡大は、大変重要な課題と認識しております。

 このため、学校米飯給食の推進等を通じた日本型食生活の推進や、消費者の意識変化を促す米と健康に着目した情報発信など、消費面での取組に加えまして、先生御指摘の米粉やパック御飯、さらには輸出など、新たな需要拡大を図っていくことが重要と考えております。

 具体的には、まず、米粉でございますが、パン、麺、菓子などの多用途に向けられるものであり、米粉用米の生産振興に加えまして、米粉のPRや料理レシピ等の情報発信、そして米粉の特徴を生かした新商品の開発への支援、そして製造機械、設備等の導入支援等を行ってまいりたいと思っております。

 次に、パック御飯でございますが、食の簡便化が進む中、国内外の需要が着実かつ確実に伸びておりまして、これに対応すべく、生産拡大のための施設整備等の支援をしてまいります。

 さらに、パック御飯も含めました米、米加工品の輸出につきまして、輸出拡大実行戦略に基づいて、米の輸出産地を全国各地に育成するとともに、米の輸出促進団体を中心としたオール・ジャパンでのプロモーション等によって、最近四年間では輸出額が倍増しておりまして、更なる市場開拓を進めてまいります。

 今後とも、これらの取組を通じまして、あらゆる面で米の需要拡大に取り組んでまいります。

細田委員 政務官、前向きな御答弁をいただきまして、大変ありがとうございました。米の需要拡大に向けて、是非全力で取り組んでいただくようにお願いをいたします。私も、党内からバックアップをさせていただきます。

 どうもありがとうございました。終わります。

野中委員長 次に、山口晋君。

山口(晋)委員 本日は質問の機会をいただきまして誠にありがとうございます。衆議院議員、山口晋と申します。

 実は、私自身はどちらかというと首都圏出身の議員でありまして、農家の実情についても、今回、基本法の制定に関しまして多くの方々とお話をさせていただきました。そういう中において、もしかすると、諸先輩方の質問と比べるとちょっと初歩的なところもあるかもしれませんけれども、お許しをいただければというふうに思っております。

 特に私の埼玉県ですと、今、有機農業とか農業の集約化ということで大きな圃場整備とかが進んでおりますけれども、その一方で、やはり兼業農家が多かったことで離農する方が増えているのも現状であります。

 そういう中において、今回、農政の憲法とも言われる食料・農業・農村基本法の見直しが可決をされたわけでありまして、また、先ほど大臣からも御説明がありました三法案の早期の成立、私自身も全力で応援をさせていただきたいなというふうに思っております。

 それでは、まず初めに、食料供給困難事態対策法案について質問をしてまいります。

 気候変動によって頻発する異常気象、高温、干ばつ、大規模な洪水などにより、世界的な食料供給の不安定化が大きな問題となっております。長期的かつ安定的な調達が困難になりつつありますが、食料は、人間の生命の維持に欠くことのできないものであり、不測時においても我が国において食料供給の確保が大前提であることは異議のないものと承知をしております。先日の附帯決議の一個目にも、しっかりと国が責任を負っていくといったことが記載をされておりました。

 ただ、その一方で、本法案については、生産者に強制的に栽培計画を立てさせ、従わなければ罰金を科すといった誤った理解に基づく議論も散見をされております。

 立法府として、世界情勢が不安定となる中、起こってほしくないことではありますけれども、有事に備えた議論、国民の生命を守るという観点での議論が必要だと考えておりますし、国民の皆様に本法案を正しく理解していただくためにも、政府としても丁寧な説明をお願いいたします。

 それでは、質問に入ります。

 先ほども述べましたけれども、国民の食生活や国民経済の維持、安定の観点から、有事の際に食料の安定的な供給確保のための対策を講じることは国の責任だと思います。諸外国においても、不測の事態に備えた法制度が整備をされていると聞いております。また、我が国においても、生活必需品については、不測時にその供給を確保するための法制度が整備をされていると承知をしておりますが、その事実関係について教えてください。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 諸外国における不測時の対策に関する法制度につきましては、例えば、スイスにおきましては、国家経済供給法の下で、エネルギー、医療に加えまして、食料やその生産資材の供給危機に備えた包括的な対策を行っております。

 また、ドイツにおきましても、エネルギーや医療に関する個別の対策法を有していることに加えまして、食料やその生産資材に関しても、供給危機に備えた個別法である食料確保準備法が整備されております。

 また、我が国におきましては、石油については石油需給適正化法、また、医薬品や医療機器については感染症法など、不測時において供給を確保するための実体法が整備をされております。

 このように、諸外国と比較をいたしまして、我が国において不測時に食料供給を確保する仕組みが整っていない、これが本法案を提出した理由の一つでございます。

山口(晋)委員 ありがとうございます。

 今御紹介をいただいたように、不測時の食料供給の確保の法律を整備していますが、我が国については、食料の多くを海外に依存するにもかかわらず、食料供給不足という事態に対応する仕組みがなかったということでありまして、基本法改正に合わせて本法案を成立させることは必要だと感じる次第です。

 次に、本法案において、食料供給困難事態の公示がなされた場合、事業者に対して、計画の作成とその届出を指示することができるものとされております。国内における類似の制度の有無、また、その概要及び仕組みについて教えてください。

 また、あわせて、類似の制度における義務違反に対する措置についても答弁をお願いいたします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました石油需給適正化法につきましては、石油関連事業者に対して、石油の生産計画、輸入計画、販売計画の作成、届出の指示、感染症法につきましては、医薬品等の生産計画、輸入計画の届出指示、また、国民生活安定緊急措置法におきましては、食品を含む生活関連物資の生産計画の作成、届出の指示が規定されております。

 このように、不測時における必要物資の供給を確保するため、生産、輸入、保管、販売計画の作成指示を行うことは、我が国の法制度において広く採用されておりまして、本法案もこのような仕組みを参考に本制度を構築したところでございます。

 また、義務違反に対する措置でございますけれども、国民生活安定緊急措置法や石油需給適正化法、感染症法、いずれの法律も、計画届出違反に関する罰則は二十万円以下の罰金と規定されております。

 本法案におきましては、計画届出違反についての罰金は、他法における量刑が一律二十万円以下の罰金であったこと、特に国民生活安定緊急措置法においては、現に食料の生産者に対する生産計画届出義務違反につきまして二十万円以下の罰金を科すこととなっていることから、同じ水準の量刑を定めたものでございます。

山口(晋)委員 御丁寧な説明、誠にありがとうございます。

 先ほどから申し上げているとおり、緊急時において国民の生命を守るという観点からの措置として、やはり類似の制度を参考にして講じていただくことが大事だと私も考えております。

 本法案に関して、最後に、政府の姿勢について質問をさせていただきます。

 本法案における食料供給確保のための措置は、出荷、販売の調整、輸入の促進、生産の促進と、サプライチェーン全体に及ぶものであり、その対象者も、出荷、販売業者、輸入業者、生産業者と、多岐にわたるものと認識をしています。

 私は、食料という国民の生活に不可欠な物資を供給する全ての事業者は、不測時においては、その供給に対して可能な限りの努力をしていただく必要があると考えております。また、政府としても、国民の生命を守るために丁寧な説明、運用を実施する必要があると考えておりますが、大臣の御認識、意気込みをお聞かせください。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、国民にとって欠かすことのできない食料を安定的に供給するため、これは農業者に限らず、流通業者、そして輸入業者、食品製造業者、さらには販売業者など、食料供給に携わる様々な事業者が日々御努力されております。いずれの事業者も食料供給に重要な役割を果たされているものと認識しています。

 委員御指摘のとおり、食料供給が大幅に不足する、又はそのおそれのある事態におきましては、国はもとより、これら食料供給に携わる事業者の皆様方にも御協力をいただき、供給確保を図っていくことが大切であります。

 ただ、本法案は、あくまで事業者の自主的な取組を基本とするものであり、こうした考えから、罰則についても、類似の法制度を参考に、必要最小限度のものというふうなものにしております。

 本法案につきまして御審議いただきまして、成立をさせていただきました暁には、法律の趣旨や内容につきまして、関係者への正確かつ分かりやすい情報提供、そして意見交換を幅広く行うなど、丁寧に説明をしてまいりたいと考えております。

山口(晋)委員 ありがとうございます。

 先ほどの細田議員からもありましたけれども、やはり、丁寧に説明をしていただいて、生産者に理解をしていただいて運用していただきたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 この法案に定める供給困難事態に陥らないようにどうするのかといったことがまず第一だと思っております。その中において、同志国、近隣諸国を含めた地域全体で食の安全保障を確保する取組というのも重要であると思います。

 特に、私自身は、気象条件や農業生産条件が類似をしているASEAN各国と連携をして、強靱で持続可能な農業及び食料システムの強化に向けて、日・ASEANみどり協力プランを示されているものと承知をしておりますが、より日本政府が積極的に、先頭に立ってこの施策を進めていただければ、食料の安全保障においても、また外交防衛においても、非常に重要になってくると思いますので、これはお願いであります。

 次に、食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 安定した食料を確保する上においては、農地の確保は大前提であるものと承知をしております。一方で、私の地域を見てみますと、農業従事者の高齢化、また都市化に伴い、残念ながら離農が進んでいるのも事実です。それによりまして、耕作放棄地も増えているという実態があります。さらに、圏央道の開通によりまして新たな工業立地のニーズが高まっております。

 そこで、本法案における農地の確保と産業立地の両立の観点についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 経済産業省が進める地域未来投資促進法の特例を活用した取組など、産業立地の際の土地利用転換の迅速化を進めているものと承知をしておりますが、本法律案との整合性について見解をお聞かせください。まずは経済産業省より促進法の内容について御答弁をお願いし、その上で農水省より整合性についてお伺いができればと思います。よろしくお願いします。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 地域未来投資促進法では、一定の要件を満たして同法に基づく土地利用調整がなされれば、農振除外や農地転用が認められることとされております。

 一方で、昨年十一月の経済対策におきまして、地方公共団体における連携により土地利用転換手続の期間の短縮等を図ることといたしました。具体的には、同法を活用した農振除外の手続と都市計画の地区計画策定の手続を同時並行で進めることができる旨を地方公共団体に明確化し、迅速を図っていくこととしたところでございます。

武村副大臣 農水省からお答えを申し上げます。

 農地は、農業生産の基盤であり、食料安全保障の観点から適切に確保をしていく必要があるため、今般の農振法改正法案におきまして、農地の総量確保に向け、農振除外の厳格化を図ることとしております。

 一方で、地域未来投資促進法におきましては、産業立地など地域で必要な開発ニーズにも対応するため農振除外の特例が措置をされているところですが、地域未来投資促進法に基づき計画を定める際には、地方公共団体の農林水産関係部局があらかじめ施設整備の計画内容を確認し、農振除外等の可否を慎重に判断をした上で、市町村は、都道府県に協議をし、その同意を得る必要があるなど、優良農地の確保を前提とした仕組みが設けられているところです。

 また、昨年末の総合経済対策における土地利用転換の迅速化の措置は、地域未来投資促進法を活用する場合の手続の迅速化を図るものでありまして、農振除外等の要件の緩和や、審査そのものを簡素化したりするものではないことから、優良農地の確保という点において、農振法改正法案と整合性は図られているものと考えております。

山口(晋)委員 ありがとうございます。

 まだまだ、地元を歩いておりますと、その辺に関してうまく整理ができていない方々もいらっしゃいますので、是非、丁寧な説明をお願いをいたします。

 先日、自由民主党の青年局のチーム・イレブンで、被災地であります能登半島の珠洲市を訪問してまいりました。近藤先生のポスターもたくさん拝見をさせていただきました。津波で被災した住宅街から移転を希望しておられる方の声として、移転候補先の高台が農業振興地域であり、スムーズに住宅を建てることができないといったお困り事を伺いました。

 こうした災害の際などは、柔軟運営も必要ではないかと思いますが、農林水産省の御見解をお聞かせください。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 地震等による災害時の応急措置や復旧の際の農地関連の手続につきましては、被災した住宅を移転するために地方公共団体が住宅用地の造成を行う場合は、農用地区域内の農地であっても、農地転用許可を不要としております。

 また、能登半島地震に際しましては、こうした取扱いについて、地震発生後の一月五日に各都道府県宛てに通知を発出し、周知を行ったところです。

 引き続き、能登の基幹産業である農業の復旧復興に向けて、優良農地の維持にも留意をしながら、被災地において住宅の復旧が円滑に進むように、地元自治体と連携をして対応してまいりたいと考えております。

山口(晋)委員 ありがとうございます。

 ちょっと一点確認なんですけれども、今、副大臣の答弁ですと、主語が、要は、地方公共団体が主体の場合はできるけれども、個人で申請をした場合は、要は、柔軟な適用は難しいという理解でよろしいでしょうか。

武村副大臣 地方公共団体が造成を行う場合ということです。

山口(晋)委員 ありがとうございます。

 是非、その辺も柔軟に運営していただいて、やはり、どうしても時間がかかってしまいますと、珠洲に住むのではなくて金沢に移転してしまうといった、そういった方も増えてしまうと思いますので、是非、ルールはルールでありますけれども、柔軟運営の方をよろしくお願いをいたします。

 最後に、農業の生産性向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案について質問をさせていただきます。

 スマート農業技術の活用を推進することは、将来の日本の持続可能な農業のために必要な取組であると認識をしております。一方で、都市型農業を営む地元の農家の方々の声を伺うと、扱う圃場が少ないことや品目が少ないことから、長年の経験と勘で十分だというような御意見もたくさん聞いてまいりました。

 このような声に対しまして、どのようにスマート農業技術のメリットを理解していただけるのか、農林水産省の御見解をお聞かせください。

川合政府参考人 お答えいたします。

 スマート農業技術につきましては、扱う圃場や品目が少ない都市型農業でありましても、危険、重労働からの解放、現場の張りつきからの解放、若者や女性など不慣れな方でも作業が可能になる、農産物の収量や品質の向上などの直接的な効果がありまして、さらに、労働生産性の向上によって生じた余剰時間を付加価値の向上や作付面積の拡大に充てるなどの効果もあると考えております。

 また、今後の農業者の急速な減少等に対応しまして、熟練農業者の技術やノウハウの継承をしていくためには、例えば、農業用ハウスの環境制御のノウハウのデータ化、あるいはスマートグラスの活用など、熟練農業者の技術やノウハウの見える化を促進するスマート農業技術の活用が重要であると考えております。

 このため、この法案では、第三条第一項におきまして、国がスマート農業技術の活用も含めた生産方式革新事業活動の必要性、有効性に関する知識の普及啓発、第二十条の第一項におきまして、国が生産方式革新事業活動の促進に資するよう、情報の収集、整理、提供を行うこととしております。

 スマート農業技術のメリットを農業者にしっかりと理解いただけますよう、優良事例の横展開など必要な施策を講じてまいります。

山口(晋)委員 ありがとうございます。

 あともう一点、やはりスマート農業の導入に関してネックになっていく、ボトルネックになってくるところがコストだというふうに考えております。スマート農業を導入したことによって、作物の品質や収量が向上して価格の上昇や農家の方々の増収も期待できるところもありますが、一方で、直接的に品質向上に結びつかないもの、例えば、グリーンファーミングと言われるような環境に配慮した農業など、持続可能な農業を実現するためのスマート農業技術については、導入コストを補うだけの価格転嫁が難しいと承知をしております。

 政府として、どのようにこの問題に対して取り組んでいくのか、御見解をお聞かせください。

川合政府参考人 お答えいたします。

 スマート農業技術につきましては、例えば、除草など農作業の自動化や軽労化に加えまして、農作物の生育データに基づく化学農薬や肥料の投入量の削減などを通じまして、生産性の向上と環境負荷の低減の両立にも役に立つと考えております。

 スマート農業技術の活用につきましては、農業者に対しまして、導入コストの低減や販路の確保も非常に課題であります。

 このため、この法案では、生産方式革新実施計画を国が認定し、税制、金融等の支援を措置するとともに、複数の農業者が同一の計画に参画することによりまして、機械の共同利用の促進、農業者のスマート農業技術の活用をサポートするサービス事業者、スマート農業技術活用サービス事業者、これによる取組の促進、農業者のスマート農業技術の活用に関しまして、農産物の加工や食品の流通を担う食品事業者と連携して一体的に支援を受けられる仕組みとしておりまして、この措置を通じて、スマート農業技術の活用の促進を図ってまいります。

山口(晋)委員 ありがとうございます。

 時間になりましたので、これで終わりにします。

野中委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久です。

 三法案について順次質問してまいります。

 まず、食料供給困難事態対策法についてですけれども、発展途上国などの人口急増、そして食料需要の増加、また気候変動による食料生産への影響、家畜伝染病など、国内における食料の安定供給が不足するリスクが非常に増えているということで、食料・農業・農村基本法を踏まえて本法案が提出をされました。

 法案の中で、第十五条では、出荷又は販売に関する要請等が規定されております。これは本法案の肝の部分だというふうに思っております。主務大臣による、食料供給困難事態の未然の防止や解消のために、出荷販売業者に対する調整要請、輸入業者への輸入の促進、生産可能業者への生産の促進要請など、大変重要な対策が列記されているというふうに承知をしております。

 その上でお聞きしたいのは、二十三条、二十四条の罰則についてです。第十五条の二項及び三項、第二十一条第一項に該当する違反行為があった場合の罰則規定がありますが、一部誤解を招くおそれがあることから、以下、伺ってまいります。

 まず、本法案について、国が生産者に対し増産を命令し、できなければ罰則を科すなどといった間違った情報が流布してきていると考えます。これは先ほど同様の質問が細田委員からもございました。私からは、罰則の対象とその必要性についてお示しをいただきたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 食料供給困難事態対策法案におきましては、食料の供給が大幅に減少し、国民生活等に実体上の影響が出た場合には、食料供給困難事態の公示を行い、出荷販売業者、輸入業者、生産業者に対して、政府が供給確保のための計画の届出等を指示することができることとしております。

 これらの事業者からの計画の届出につきましては、確保可能な供給量を把握し、政府が供給確保のための実施方針を策定するために不可欠であることから、計画の届出を行わない事業者に対しては、他法の例も参考に、法目的を達成するための必要最小限の措置として、二十万円以下の罰金を規定しています。

 一方で、この計画の届出につきましては、増産等の計画を強制するものではなく、実施可能な範囲で計画を作成すればいいこと、また、輸入や生産拡大などの届出の内容を結果的に実行できなかったからといって罰則の対象としているものではないことから、事業者に過度な負担をかけるものではないというふうに考えております。

稲津委員 基本的なところはよく分かりました。

 次に、生産者に対して罰則を科すべきではなくて、罰則は例えば輸入業者とか販売業者に限定すべきだ、こういう意見もお聞きをいたします。これは、罰則を科さずとも、供給不足時には生産者は自ら安定供給に協力していただけるという、そうした考えに基づくものだと思います。私も同じ意見でございます。また、そうあっていただきたいと思います。

 ただ、しかし、平成五年の米の不足のときを思い出すと、なかなか大変な状況になった。例えば、報道ベースですけれども、生産者による売惜しみや闇米業者の動きなどがいろいろと報道されました。

 そこで伺いますけれども、この時期は実際どうであったのか、まずお聞きしたいということ。それから併せて伺いますが、個々の生産者に対して生産計画の作成を指示するのは負担になる、そういう懸念の声もありますが、どういうものなのか。

 水田活用直接支払交付金や畑作物直接支払交付金等では、農業者が、県や地域農業再生協議会の協力の下で、毎年、生産計画の作成をしております。食料供給困難事態対策も、このような生産計画ベースによるものであれば負担は少ないものというふうに私は考えますが、生産者の負担は軽減されるべきだという視点に立って、この点について伺います。

坂本国務大臣 平成五年の米不足の際、これは北海道の作況指数が四〇でございました。全国でも平均で七四の作況指数でございました。このときに、一部の生産者や卸売事業者が値上がりを待って在庫を抱え込んでいるという報道や、闇米業者による買い付けに対しまして、生産者もそれに応じている旨の報道があったというふうに承知しております。

 このように、生産段階でも高値を見越して売惜しみを行ったり、生産の一部を高値で流通させるために生産量を過少に報告するということなど、食料供給確保対策の支障となるおそれがあることから、生産者に対しても、適切な食料供給を行ってもらうために、最低限の担保措置が必要であるというふうに考えております。

 また、生産計画が生産者にとりまして負担になるという点に関しましては、議員御指摘のように、主要な食料品として特定食料と想定している品目については、水田活用の直接支払交付金、そして畑作物の直接支払交付金など、これは水活とゲタでございますが、もう既に今の時点で補助事業などの執行のために生産計画の提出を求めているものが数多くあります。これは補助金と生産量とセットであるからでございます。

 そういうことで、本法案における生産計画につきましても、このように現行でも記載いただいている生産計画の事項にできるだけ沿った内容としたいと考えておりまして、農業者に過度な負担が生じないよう配慮をして、計画の内容を検討してまいりたいというふうに思っております。

稲津委員 やはり、昨今の世界情勢等を考えると、食料が供給困難になる事態というのは想定される。未然に防ぐ、あるいは、そうなった場合には全面的にみんなで対処していく、この考え方は多くの方々にも理解はしていただけると思っています。

 ただ、問題は、私、今申し上げましたように、生産者に過度な負担がかかるといけないので、そこのところの不安をきちっと払拭していただけるようにお願いしたいと思います。

 次に、農業振興地域整備法等の改正について伺いますが、まず、地域未来投資促進法等により定められた地域整備施設の設置に伴う農用区域からの除外は大規模になる場合が多い、このように思っておりまして、面積目標の達成に支障を及ぼすのではないか、こういうふうに考えますが、どうでしょうか。

長井政府参考人 お答えいたします。

 地域未来投資促進法等によります地域整備のための開発自体は、地域全体の経済等を牽引する開発計画となりますので、大規模になるケースが多いと考えております。

 しかしながら、地域未来投資促進法等により、開発を行う場合には、優良農地の確保を前提とする仕組みが設けられており、計画を定める際には、地方公共団体の農林水産部局があらかじめ、当該施設整備計画の計画内容を確認し、農振除外等の可否を慎重に判断した上で、市町村は、都道府県に協議をし、その同意を得ることになることから、面積目標の達成に支障が生ずることは少ないものと考えております。

 なお、仮に、こうした地域未来投資促進法等によります転用の積み重ねで面積目標の達成に支障が生ずるおそれがあることとなった場合には、その後の一般転用における都道府県知事の同意において、面積確保のための措置を確認していくことになると考えております。

稲津委員 次に、経営基盤強化法について、農業経営発展計画の認定についてお聞きをいたしたいと思います。

 農地所有適格法人の議決要件の特例措置についてです。緩和を求めるニーズがあるのかどうかということ。それから、食品事業者と地銀ファンドということになっておりますけれども、例えば、それ以外の農業に関連したITとか、あるいは観光とか、こういった業種にも広げるべきではないか、こういう意見も間々聞くんですけれども、この点についての見解を伺います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 農地を所有できる農地所有適格法人は、人と農地の受皿として重要でありまして、その経営基盤の強化が必要であることから、今回の法案で農地所有適格法人の議決権要件の特例を措置しております。

 具体的な検討に当たっては、農業関係者以外からの出資を受けている農地所有適格法人は約千百社と増加傾向にあり、このうち農業関係者以外の議決権割合が四〇%台にある法人も約四百社と増加をしていること、また、実際に、農地所有適格法人の中には、農業関係者による更なる出資は困難、また、取引先等との事業連携を進めたいといった声がありまして、これらを踏まえたものです。

 新たな制度の開始に当たりましては、まずはしっかり運用をすることが重要ですが、将来的に特例による出資者の業種を拡大するかどうかの検討に当たりましては、農業現場の懸念等の動向も見極めながら、丁寧に検討をしていく必要があると考えております。

稲津委員 最後のところの答弁、非常に大事だと思っていまして、そうであるならば、やはり慎重に検討するということがまず大前提になると思います。

 もう一方で、国立社会保障・人口問題研究所が、将来の人口推計について出しました。それから、昨日から今日にかけての報道にもあるように、全国の自治体の中で消滅の危機にある、そういったショッキングな報道がありました。

 これは本当に我々、真剣に考えていかなきゃいけないのは、我が国は非常に人口減少が著しくて、歯止めがかかっていない、だから少子化対策をやるんだ、だから様々な施策を講じるんだ。これはもう、全国どこも、一部の地域は別として、それから、あらゆる産業です、特に一次産業、農業にはこうした問題が直接降りかかってくる。だから、今回のこの農地所有適格法人の議決要件についても、様々な内部議論があったと思います。

 いずれにしても、そんなことも念頭に置きながらも、しかし、繰り返しですけれども、生産者に不安を招くようなことがあってはならないと思っていますので、ここは適宜適切な対応をお願いしたいと思います。

 次に、スマート農業技術促進法について伺います。

 今後、農業従事者の急激な減少が想定され、食料の安定供給に支障を来すのではないかという意見や、生産性を高めるためにはどうしたらいいのか、こうしたことを考えていくときに、スマート農業の導入促進が不可欠だという考え方はもう既に一般的になってきているというふうに思います。今回の基本法の改正に合わせて、スマート農業技術の開発普及を促すこの法律の制定は、私はもう極めて重要な意味があるものと思っています。

 そこで、順次伺います。

 まず、ロボット、AI、IoT等の先端技術を活用するスマートの社会実装を図るための研究データ分析を通じて取組を支援するスマート農業実証プロジェクトが行われてきた。一定の成果があったと私も評価しています。

 これまでの成果、分かってきた課題を簡潔に、またその対応について、お答えいただきたいと思います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 令和元年度から実施しておりますスマート農業実証プロジェクトを通じまして、危険、重労働からの解放、現場の張りつきからの解放、若者や女性など不慣れな方でも作業が可能になる、農産物の収量や品質の向上等の効果があったところでございます。

 一方で、従来の栽培方式にスマート農業技術をそのまま導入してもその効果が十分に発揮されない、スマート農機等の導入コストが高く、また、それを扱える人材が不足している、果実や野菜の収穫など人手に頼っている作物でスマート農業技術の開発が不十分な領域があるなど、生産サイドと開発サイド双方での課題が明らかとなっております。

 このため、この法案では、生産と開発に関する課題を解決するため、サービス事業者等と連携しながら、農業者による生産方式の転換を促すための生産方式革新実施計画、農研機構の設備等の供用を通じた産学官連携の強化により研究開発等を促進するための開発供給実施計画といった二つの計画認定制度を設けることとし、税制、金融等の支援措置を講ずることによりまして、農業の生産性の向上につなげてまいります。

稲津委員 もう一点。スマート農業については、水田とか畑作の導入は進んできました。ドローンとかトラクター、コンバイン等々。ただ、一方で、野菜や果実、薬草では遅れているというふうに言わざるを得ません。そもそも機械の開発が進んでいないのが現状で、これからの方向性や、法案ではどのように対応するのか、伺います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 野菜や果実の自動収穫などのスマート農業技術の開発が十分に進んでいない要因としましては、土地利用型作物と比べまして、品種、品目が細分化され、必要な技術のバリエーションが多い、収穫物に損傷が生じないよう精緻かつ繊細な作業が求められるなど、必要な技術の難度が高い、こういったことが要因と考えております。

 このため、この法案におきましては、品種、品目の細分化に対しましては、国が基本方針において、必要な開発の分野を明示し、開発のリソースが必要な分野に重点的に投入されるようにした上で、必要な技術の難度に対しましては、開発供給実施計画を国が認定、支援することを通じまして、研究機関や農機メーカー、AIによる画像解析など異分野の知識を有するスタートアップなどによる開発や農業分野への参入を促進する、こういったことによりまして、スマート農業技術の速やかな実用化を進めてまいります。

稲津委員 川合審議官から御答弁いただきましたけれども、よく分かりました。ただ、本当に、この野菜、果実それから薬草等のジャンルというのは遅れていますので、是非しっかりお願いしたいと思います。

 スマート農業に関連して、最後に一点伺います。

 農業大学校は、各県で設置されています。次代の農業、農村を担う優れた農業者の養成を目的として実践的な研修を行っていまして、高く評価しています。

 昨年、私は、北海道の本別町にある道立農業大学校に行きました。八十年も開設以来の歴史があって、五千名を超える卒業生を送り出している。すばらしいそうした学校運営を行っています。

 ただ、視察をして少々がっかりしたのは、農業機械の配備の状況です。トラクターを始め、多くの機械が大切に使われているのは大事なことですけれども、スマート農業用の機械がほとんど未整備ということの印象を受けました。

 学生がスマート農業などの就農に役立つ技術を学ぶために、スマート農業機械の大学校への導入など、農林水産省としても教育環境の整備を進めていただきたいと思いますが、この点についてお伺いします。

坂本国務大臣 将来の農業の担い手として最も期待されます農業大学校の学生にスマート農業技術を学んでいただくことは、大変重要であるというふうに思っております。

 これまでも、スマート農業機械の導入を進めてまいりました。また、農機具メーカーの外部講師を呼びまして、スマート農機の実演会等も行ってまいりました。

 全国の農業大学校の約七割に当たる三十校におきましてスマート農業機械の導入が行われておりますが、委員御指摘のとおり、まだまだ整備が不十分な学校や、更なる充実を目指さなければならない農業大学校があるというふうに思っております。

 農林水産省といたしましては、今回のスマート農業法、これが成立をさせていただきましたならば、各都道府県に対しましてこの補助事業の内容を丁寧に周知するとともに、必要な予算の確保に努めて、全国的にスマート農業教育の充実が図られるよう取り組んでまいります。

稲津委員 よろしくお願いします。

 終わります。

    ―――――――――――――

野中委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る五月八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.