衆議院

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第15号 令和6年5月9日(木曜日)

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令和六年五月九日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      小寺 裕雄君    高鳥 修一君

      橘 慶一郎君    中川 郁子君

      西野 太亮君    細田 健一君

      堀井  学君    宮下 一郎君

      保岡 宏武君    簗  和生君

      山口  晋君    梅谷  守君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      川内 博史君    緑川 貴士君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      一谷勇一郎君    掘井 健智君

      稲津  久君    山崎 正恭君

      田村 貴昭君    長友 慎治君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   参考人

   (名古屋工業大学大学院社会工学専攻教授・リスクマネジメントセンター防災安全部門長)        渡辺 研司君

   参考人

   (株式会社農林中金総合研究所理事研究員)     平澤 明彦君

   参考人

   (一般社団法人全国農業会議所専務理事)      稲垣 照哉君

   参考人

   (エシカルバンブー株式会社代表取締役社長)    田澤恵津子君

   参考人

   (横浜国立大学名誉教授)

   (大妻女子大学名誉教授) 田代 洋一君

   参考人

   (株式会社雨風太陽代表取締役)          高橋 博之君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 食料供給困難事態対策法案(内閣提出第二七号)

 食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、食料供給困難事態対策法案、食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案及び農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、名古屋工業大学大学院社会工学専攻教授・リスクマネジメントセンター防災安全部門長渡辺研司君、株式会社農林中金総合研究所理事研究員平澤明彦君、一般社団法人全国農業会議所専務理事稲垣照哉君、エシカルバンブー株式会社代表取締役社長田澤恵津子君、横浜国立大学名誉教授、大妻女子大学名誉教授田代洋一君、株式会社雨風太陽代表取締役高橋博之君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言申し上げます。

 本日は、御多忙の中、本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。参考人各位、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りたく存じます。本日はよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、渡辺参考人、平澤参考人、稲垣参考人、田澤参考人、田代参考人、高橋参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、渡辺参考人、お願いいたします。

渡辺参考人 皆様、おはようございます。名古屋工業大学の渡辺と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、大学では教員かつリスクマネジメントセンターというところで事案対応をしておりまして、二十四時間待機携帯を持っておりますが、今、控室に置いてありますので、何となく心安らかにこの場に臨んでおります。

 専門は、リスクマネジメントそれから事業継続マネジメント、いわゆるBCP、BCM、それから重要インフラ防護というようなところでございまして、人様の不幸を研究しておる中で、今回は食料安全保障というところで、私の担当は食料供給困難事態対策法案、これを議論するに当たりまして、中間報告が出たものを検討会で議論いたしました。そこの座長を務めたということでこの場にお呼びいただいているかと思います。

 実際、研究職になる前はビジネスの世界におりまして、銀行員時代は米国に駐在しておりました。そこで起きましたシカゴの内水氾濫の対応であるとか、あるいはニューヨークのワールドトレードセンターの爆破事件の対応であるとか、それから、研究者になりましてからは、新潟県の中越地震、中越沖地震の新潟県の災対本部の支援、それから東日本大震災におきましては、岩手県の災対本部の支援をやりました。そういった知見から、今は、自治体あるいは企業のいわゆるセキュリティーのアドバイザーであったりとか、あとは訓練、演習の御支援をさせていただいたりしております。

 そういう意味では、今日、法案の中でも食料供給困難事態対応法案について、私のそれに関する意見を述べさせていただく、このような機会をいただきましたことをまずは御礼申し上げます。

 ふだん九十分単位でお話をしているものですから、十五分というのはなかなか厳しいものがありますけれども、なるべくポイントを押さえていきますと同時に、もし積み残しがありましたら質疑のところで対応させていただければと思います。

 お手元、資料をめくっていただきまして、まず、「はじめに」というところでございます。二ページです。

 これは、不測時における食料安全保障に関する検討会、昨年の八月から十二月、五か月の中で六回というかなり集中的な討議をさせていただきました。これは、基本法の検討部会から出ました中間取りまとめを踏まえて、具体的な制度の在り方について議論をするというものでした。メンバーは、農業協同組合、商社、研究機関、商学、法学等の有識者ですね、それから、関係省庁に加えて、ヒアリングの対象として、食品加工事業者、生産資材の事業者等が都度参加いただいたようなことでございます。

 検討会で議論した、展開した主な論点は、過去の議事録、あるいは、もう既にその結果として法案にありますので、細かくは御説明いたしませんが、まず、国内外の我々の食料事情を取り巻く環境についての認識。

 それから、現行体制、制度の限界についての認識。

 それらを踏まえて、そもそも、食料安全保障の不測時というのはどういうことなのか、その事態についての定義です。平時から不測時に至るところの兆候であるだとか、それから、今回の困難事態の定義であるとか、さらに、最低限度の供給が不能になった事態、それは一体全体どういうことかということを議論いたしました。

 その後、どのような品目が対象になるのか、特定食料、特定資材ですね、これは何に対して行うことなのかというようなことを議論いたしました。

 そして、政府が立ち上げます対策本部、この設置はどのような形の基準で立ち上げるのか、そして、その役割は何かということを議論いたしました。

 その後、何をするかということでございます。特定食料の供給不足、あるいは、おそれがある場合の諸対策、それは出荷、販売に関わるもの、それから輸入、生産、製造等に関わるもの、どのような諸対策があるのかということを議論いたしました。

 そして最後に、このような措置に対して実効性を担保するためにどのような仕組みが必要か、具体的には、財政上のインセンティブであったりとか罰則についても議論をさせていただきました。

 その後の法案の策定につきましては政府の方でおまとめいただきましたけれども、その議論あるいは策定に対して資するような論点あるいは知見が提供できたというふうに思っております。

 次のページに参ります。三ページ目です。

 そもそも、食料安全保障における安全とは何かというようなことでございます。これは法案そのものの話ではないですけれども、安全に対する概念が、多分、人によって違うと思いますので、ある程度、整理をしていただくための参考としてお話をさせていただきます。

 大きな辞書とかあるいはISO、IECのような国際基準では、例えば、危険がなく安心なこととか、心配のないこととか、危険のないこと、あるいは損害がないことという、ないということをうたっておりますけれども、食料安全保障における安全というのは、危険がないことはあり得ない、つまり、一〇〇%安全な状況がない中においてどのように安全ということを考えるべきかというようなことであります。

 二段目、点線の下にあります国際基本安全規格、ISO/IECガイド51、二〇一四年版に関しましては、ないとは言っているものの、許容できないリスクがないことと。つまり、いろいろなリスクに対して対応していくんですけれども、その残存リスク、残るリスクに対して、例えば、それに対して対応策が組めるのか、あるいは最終的にそのリスクがのみ込めるか。それがないとすると安全ではない状態であるということになります。

 つまり、ある、ないというイチゼロの世界ではないという状態において、では、安全というのはどういうことなのかというのが、ちょっと下にごちゃごちゃと書いてありますけれども、一番下の四角で囲ってあるところですね。安全とは状態であると、つまり、刻々と変わる可能性があるということですね。それは、モードといいますけれども、安全から危険、それから危機というような形のものが、一方向ではなく、行ったり来たりするということでございます。

 安全な状態というのはどういうことかといいますと、たまたまという言い方はあれですけれども、ダイナミック・ノンイベントという言い方があります。それは、水面上はきれいに、平穏に見えたとしても、その水面下でいろいろなもののリスクに対して対応しながら水面の平穏を保つというようなことであります。つまり、かなり能動的な対応が求められるという言葉であります。

 このモードに関しましては、例えば、水に関しては、温度によって固体から液体になって気体になるという、これが行ったり来たりするわけですね。

 要するに、今回、我々が議論した、あるいは、皆様方がこれから審議、審査いただく法案の中身の安全というものは非常に流動的に変化するものである。ですので、その変化する安全の状態、あるいは安全に関わる状態に対応するためには、その対応に関しても、非常に柔軟に備えていく必要がある、あるいは設計する必要があるということでございます。

 この左側にありますカラフルな九象限のマトリックスですが、これは、いわゆる普通のリスクマトリックスです。いろいろなリスクがある中で、それをどのように評価するかというところで、縦軸がそれが起こったときのインパクト、横軸がそれがどれだけ起こりやすいかということであります。これは、過去、フリークエンシー、頻度という言葉が使われましたけれども、今は頻度という言葉は使いません。なぜならば、今起こっているような事象は、過去の延長線上にはない、つまり、十年に一度、百年に一度というようなことを言えるようなデータがないので、起こりやすさという形の言葉を使っております。

 ただ、これは、例えば年に一回のリスクマネジメント会議でやるようなリスクの評価で使う表でございまして、これでは今回の文脈では不十分であります。

 これを、右側の方に目を移していただきますと、縦軸はそのままなんですが、横軸が回避、制御の可能性、いわゆるコントローラビリティーという言葉を使っております。

 これは実は、ある自動車会社、手前どもがあります名古屋ではないんですけれども、ほかの自動車会社のCEOが、あるとき、地震学者を呼んで、南海トラフはいつ起こるんだと。三十年間に八八%の確率である、いや、それは今日なのか三十年後なのかと聞いたときに、いや、だから、三十年以内にということで、つまり、企業のデシジョンとしては、それでは困るわけですね。彼は、学者たちを帰して何をしたかというと、もう当社は、コントローラビリティー、今それが起こったときに対応できるかできないか、イエス・オア・ノーで判断しようということでやりました。それを借りてきた軸なんです。

 つまり、今回、モードをどういうふうに切るかといったときに、インパクトはそのままなんですが、それが国として対応できるかどうかというふうなところで切った場合に、これは今回、事態の深化について、平時と困難兆候があるとき、それから困難事態に陥ったとき、それからさらに、最低限度の確保が不能なときというふうに分かれていますけれども、例えばこんな形でモードを切ります。

 そのモードが変換するときに、今回は、本部を立ち上げるというアクションがあります。それから、公示というアクションがあります。これで利害関係者が、今こういうモードなのでこういう指揮命令系統に立つのだということを、皆さんが共通の理解の下で対応するということになります。

 それでは、次のページに参ります。

 続きまして、では、その行動に対して、実施体制に求められるものは何かということでございます。危険、危機対応における情報共有と指揮命令、意思決定体制ということでございます。

 今回は、ある企業の事例をお持ちしております。企業といいましても、重要インフラ事業者、つまり、電力とかガスとか通信とか、私が常日頃おつき合いしている企業の中でも、彼らのサービスが止まったり不具合が発生した場合には、国民の生活であるとか社会経済活動に大きく影響を及ぼすような企業の危機管理体制を、少しエッセンスを持ってきたものでございます。

 上の段でございます。危機管理における情報共有、意思決定プロセス。非常に複雑な図なんですけれども、企業の場合には、経営のレベル、業務管理のレベル、それから現場のレベルがあります。それぞれリスク要因というものは検知されるわけですけれども、それをその場その場で見ていると、たまたまかな、あるいは、これは関係ないかなと思うんですが、そういったリスク群をエスカレーションといいますけれども、下から上げていって、経営層に近いところで分析をかけて、今、一体全体何が起ころうとしているのか、あるいは、既に何が起こっているのかということをつなげていく、こういった体制が重要になってまいります。

 右側の四角に書いてございますけれども、早期の情報共有、それから意思決定、コミュニケーションにより、迅速な行動、つまりアクションにつなげるということが重要でございます。

 特に、今回想定している事態というものは、例えば地震ですと、地震が起こりまして、そこから復旧カーブに入っていきますけれども、コロナ禍のように、どんどん打ち手によっても事態が変わっていく。いろいろなファクターが絡んでいますので、そのリスク要因が変わること、変化することを見逃すと、結局、対応が後手後手になると、リカバリーに時間がかかる、あるいはリカバリーできない状態になるということになりますので、早期の情報共有、意思決定、コミュニケーションにより、迅速な行動につなげることが求められております。

 あとは、現場からいかに能動的に兆候とか状況のエスカレーション、つまり報告が上がってくるかということを促進するかということです。

 ちょっとした報告をしたときに、それはちょっと、そんなの一々言わなくていいと言った瞬間に情報は上がってきませんので、いかに断片的な情報でも上げてくるような世界、今回ですと、農業者の皆さんであったりとか事業者の方からそういった兆候をいかに吸い上げられるかということもポイントになってこようかと思います。

 ただし、完璧な情報というのはあり得ませんので、不完全な情報、例えば粒度であるとか確度において不完全であるものについては、インテリジェンス、つまり、先ほど申し上げた、断片的な情報をつなぎ止めていきながら、これは粒度も違います、確度も違います、一体全体、国にとって何が起ころうとしているのか、あるいは何が起こっているかということを推測するような力、これは多分、政府の本部の方でやる話だと思いますけれども、そういう人材の育成とかスキルも必要になってまいります。

 その後、意思決定をした後に、利害関係者との適時のリスクコミュニケーション、つまり、一体全体、今何が起こっているのか、どういう状態なのかということを共有した後で、初動対応、復旧対応の効率化を利害関係者と協業しながら目指すということがあります。

 あと、様々なシナリオを用いて訓練、演習を重ねることで実効性を担保することを、リスク管理あるいは危機管理にたけた企業は都度やっております。例えば、ストレステストで社長が半泣きになるような訓練も能動的にやられているところがございます。ですので、しゃんしゃんで、今日はいろいろやりました、いろいろ学びました、また次回もよろしくというような訓練だけでなくて、演習というのはエクササイズですので、いろいろな変化球を投げながら、それで耐えられないところはどこかという、できないことを発見するのが演習ですので、こういったことを常日頃やっていらっしゃるところがいわゆる危機管理にたけた組織であります。

 下の段に参ります。

 危機レベルに応じた対応体制ということなんですが、これまた三角なんですけれども、社長を筆頭にした全社危機管理対策本部、それから常務、専務、副社長、ちょっとちっちゃい三角、一番下が本部長ということなんですが、こういったその部分にたけた企業というのは、危機レベルを明確に提示をしております。

 危機レベルに対してどの三角形を立ち上げるかということを明確にしておりますので、例えば、こういったことにたけていない企業というのは、本部長止まりで、例えばITのサイバー攻撃を受けた、大変だ大変だ、情報システムはぐちゃぐちゃになって、もう大変だ大変だ、常務を呼べということで、常務が筆頭の本部が立ち上がる、常務はここは手に負えないので、じゃ、社長だということでやって、記者会見、謝罪会見ということになるんですけれども。そうではなくて、あらかじめ決められたクライテリア、行動基準とか指標を決めた上で自動的に本部が立ち上がるということと、あとは、一番下にございます本部の設置をちゅうちょしないということであります。

 今回の法案では、本部を立ち上げるところで兆候が見えた場合とかありますけれども、今後の実運用のところで、それはどういうことなのか、トリガーとなるようなインデックスは何かということは今後詰める必要があると思いますけれども、これを立ち上げることをちゅうちょしない。逆に言いますと、そのたけた企業というのは、どんと社長を筆頭とした本部を立ち上げて、状況を把握した後で、じゃ、これは何とか専務、いや、これは本部長でお願いしますということで、上から下に下げていく、また事態が進展して深刻化した場合にはそれがまた上がってくるという非常に柔軟な対応をされておりました。

 ですので、こういったクライテリアや行動基準、あるいは指標を作るためには、いろいろな指標をモニタリングしながら、あらかじめ設定したトリガーポイント、これを超えた場合にはこういう行動に移すということを決めておくことが重要でございます。

 最後、三番目でございます。

 これはちょっと気が早いといいますか、フライングのようなことでありますけれども、今回御審議いただくに当たって、ちょっと先を見据えた形で考えていただきたいということで、お持ちしたスライドでございます。

 法案成立は、当然ながらゴールではなく、社会実装の具体的な設計を行うためのスタート地点でございます。まずもって、兆候の早期検知に向けた現行の国内外のリスクモニタリング、検証体制、これは農水省の食料安全保障室の方でやられています。私も、その立ち上げの方で、いろいろなインデックスの開発であるとか、その原因とか中間実証とか結果実証の定義をしながら、今、多くの指標をモニタリングされています。

 これは、年に一回取りまとめをして評価をして、アドバイザリー会議の方でそれを議論することがありますけれども、それはあくまで農水省の中だけの話なんですが、これから、この法案で示されています文脈では、今度は外部のデータを取らなきゃいけません。特定食料、特定資材に関する平時からのサプライチェーン、横断的な情報収集、モニタリングに関わるデータ、これは今、標準化されていないので、てんでばらばらであります。業界でもばらばら、あるいは特定の強い業者さんのデータの標準化、その様式が使われている。

 あと、共有のルールですね。当然、こういった情報というのは、通常時におきましては競合情報ですので他者には開示をしません。どのような情報を、どのようなときに、どのような形でタグづけをしたりしながら共有するかというのは、例えばサイバーセキュリティーの世界では、そういうタグづけのアンバーとか色をつけながら、これは公開情報にもありますので、そういったほかの枠組みを参考にしながらルールを取り決める必要があります。

 それから、実際に兆候が見られ、それから事態が進展して、あるいは最低限度の確保不能な場合になった場合に、実際にいろいろな物事を共有化して動かさなきゃいけないんですけれども、これもまた平時のロジスティクス、そのプロセスであったりとか資機材というものが、規格がまだばらばらな部分があります。

 ですので、これを有事の際にこうしましょうということだけですと、有事では使えないケースがありますので、平常時からこういった標準化とか共有化を進めることが必要であります。これは、有事の際というよりも、それをやることによって平時の効率化とかコスト削減につながりますので、これは業界にとってもいい話ですので、是非先生方には、この法案の議論の後に、こういったことを業界にも働きかけていただければと思います。

 これは防災の世界でも、ふだん使いをしながらやることを有事に使いましょう、災害時に使いましょうということで、フェーズレスとかふだん使いという言葉がありますけれども、是非こんなことも必要かなと思います。

 だんだん時間になりましたので、急ぎます。

 あと、忘れてはいけないのは、やはり市場原理を尊重するスタンスは崩してはいけないということです。ただ、本当の不測の事態というのは、市場原理が働かなくなることなので、そこで政府が関与していくわけなんですが、そのタイミングとか度合いに関しましては、利害関係者との丁寧な対話を続けるということと共通認識をつくるということと、それに伴って信頼関係を醸成するということが大事でございます。

 あと、訓練、演習につきましては先ほどお話をしました。

 あとは、最後、これはもっと先ですけれども、消費者の食文化に対する意識改革により、事態を事態にしないような、極小化をする働きかけですね。これは、今回の法案とは全くスコープ外になりますけれども、地産地消の推奨であるとか食に関する嗜好の柔軟性、つまり、お金を払えば何でも好きなものが食べられるようなことではなくて、今あるものを楽しむようなこと、こんなことを文化的に働きかけることも、ちょっと今回の議論の外ですけれども、必要かと思います。

 では、本当の最後です。食品、農業分野というのは、我が国の重要インフラの定義とか、あるいは特定社会基盤事業、これは経済安全保障の方の分野ですけれども、位置づけられておりません。一方、アメリカに目を向けますと、防護対象の十六の重要インフラの中には、フード・アンド・アグリカルチャー・セクターが含まれております。つまり、その下に書いてございますように、米国と日本は全く違う。状況も違うし、ミッションも違うし、法律も違いますので一概には比較できませんが、それが止まったときに、国民の生活とかあるいは社会経済活動に大きく影響を及ぼすことであれば、それは、民業の限界をちゃんと政府がセーフティーネットを使いながら国全体で守っていくということの定義でありますので、是非こんなことも、近い将来というか遠くはない将来、考えていただければなと思います。

 以上で私からの意見は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

野中委員長 ありがとうございました。

 次に、平澤参考人、お願いいたします。

平澤参考人 おはようございます。平澤でございます。

 今日お話しさせていただきますのは、私からも、一人目と同様、食料供給困難事態対策法案のお話でありますけれども、簡単に、私の研究ですけれども、ここ十年か二十年ほど主に欧米の農業政策の研究をしておりまして、その一部でスイスの食料安全保障政策の紹介などもいたしております。それ以外ですと、世界の穀物自給率であるとか、あるいは日本の食料安全保障関係の政策のこれまでの展開であるとか、そういったようなことも研究しておりまして、そういったようなことから、食料安全保障アドバイザリーボードであるとか、あるいは、食料・農業・農村政策審議会の専門委員などもさせていただいております。

 今日は食料安全保障の話ですけれども、私からは主にお話が三つございまして、一つが今回の法案の大きな背景でございます。二つ目が今回の法制化にどんな期待をしているかということ。三つ目が、法案の範囲外でございますけれども、スイスなどでやっている不測時の予測システム、これもかなり重要ではないかということ。その三つのお話をさせていただきます。

 まず、背景についてですけれども、スライドの一を御覧ください。

 不測時対策の必要性と書いてございますけれども、日本にとって何が問題かといえば、やはり農地が足りないということであります。それでこれだけ食料安全保障が大きな問題になっているわけですね。

 そうしますと、農地が足りないというのは二つ影響がありまして、もちろん農地が足りないわけですから、物理的に輸入をしないとやっていけないということですね。今輸入している食料は日本の農地の二倍ほどございますので、本当に足りないということでございます。

 もう一つは、やや見落とされがちですけれども、実は、農地が少ない国というのは農業の競争力が非常に弱いという傾向が強いです。国際経済学では、一般的に、資源の豊富な産業ほど競争力が高いという傾向にございますので、農地が足りない国は農業の競争力が弱いということになるわけですね。そうしますと、やはり輸入に依存が高まっていくということで、農地が足りない、非常に日本にとって農地は貴重な資源でありますけれども、残念ながら元が取れないということで、それが耕作放棄になってしまっているという状況があるという、この二つが日本にとっては大変な問題になっているわけでございます。

 実際、日本は輸入が必要であるということで、第二次大戦以降の、戦中なり戦後なり、あるいは七三年の大豆禁輸といったときのことを思い返してみますと、いずれもやはり輸入が止まってしまう。でも、それだけではないんですね。そのときに国内生産も弱っている。その二つがそろうと大変な食料危機になるということであります。ですから、この二つを何とか確保する必要があるということですね。

 高度成長以降、日本はお金があって、たくさん輸入が幾らでもできて、アメリカは食料が余っているという状況が続いてきたわけですけれども、残念ながら、そういった情勢はもう変わってきているということでございまして、日本の経済的地位は低下して買い負けが増えて、一方で国内の生産基盤はどんどん脆弱化してきている。世界的にも、気候変動なり、国際情勢の悪化とか、いろいろな不確定要因がございますので、いろいろ心配事が増えているという状況でございます。

 そこへもってきて、やはり食料安全保障だということで、今般、いろいろ法律が、改正案なり法案が出ているということでございます。今、一番下の黒の四角のところに参りましたが、一番ですね、今、基本法の改正案が出ていますが、国内生産と輸入と備蓄をバランスよくやるんだということなんですが、国内生産、実はこれは農地が足りないんですよね。それから輸入も頑張るといっても、これは日本の主権が及びません。そして最後、備蓄ですけれども、やはり、これは短期的な対策にすぎず、しかも物資のみで、それをどう配るかというところまで入っていないわけですね。

 そうすると、やはり不測時にどうするかということは別途考えておかないといけないということでございまして、それが今回の法案であるというのが二でございます。

 実は、不測時、最悪の場合には国内で増産を図るということになります。あるいは、平時から国内生産をしっかりしていくということになりますと、やはり、日本では、非常に少ない資源である農地をきちんと確保するということが大事でありまして、そこが、今回、私の範囲外でありますけれども、もう一つの農地関連の法案、こちらの方で農地の確保を目的規定にするとかいったようなことが入っているというのは、そういった背景になっているということでございます。

 続きまして、二枚目でございます。

 一方、海外情勢、私がふだん研究していますヨーロッパでは何が起きているかということであります。それはここ十数年、大分様子が変わってきております。

 七〇年代、八〇年代は、ヨーロッパは食料が余っておりまして、アメリカとの間で輸出競争で問題になっているという状況でしたから、食料安全保障のことは余り考えていませんでした。冷戦が終わると、もう食料の心配はない、そういう考え方が主流だったわけです。ところが、二〇〇〇年代後半から世界的に需給が逼迫傾向に転じまして、値段の高い情勢がずっとそれ以来続いています。そうした中で、ヨーロッパでもやはり食料安全保障を考えておかないといけないというふうに変わってきて、政策の方針もそれに合わせて、ここ十年ほどで大きく変わってまいりました。

 そこへ、二〇二〇年以降、不測の事態が続いているわけですね。コロナがあり、異常気象が続き、ウクライナがありということであります。その結果、EUもかなり新しいところへ踏み込んできています。特に、パンデミックで実は食料の流通がかなりおかしくなったということがございました。日本と違って、EUは土地がたくさんありますので、食料もおおむね自給しているから大丈夫だろうということで、不測時の対策を持っていなかったんですね。

 それで何が起こったかというと、不測時にいろいろな役所が、いろいろな国が勝手に行動して、情報が共有できないということが生じまして、一部の国が勝手に国境を閉じたり、いろいろなことが生じたわけです。それではまずかろうということで、今、慌てて、ここ二年ほど頑張って不測時の食料安全保障の対策計画というのを作っているところで、今いろいろなリスクの棚卸しなどをやっているということでございます。やはり、たとえ自給していても、そういった対策は必要ということでございます。

 もう一つはスイスでございますけれども、スイスは輸入が多いですし、用心深い国ですので、以前から不測時対策はしっかりやっているんですが、最近、異常気象の影響が非常に大きいです。国際河川であるライン川、こちらは干ばつで水位が下がりまして、物が十分運べないということになってきて、肥料だの燃料だの餌だのの輸送が思うようにいかないというので、備蓄の放出も考えなければといったような事態も生じています。それ以外のいろいろな事態もありますので、スイスでは、不測事態に対応する人員を増強しまして、さらに、今後、食料備蓄を増やすかどうかといったようなことも検討を開始しているということでございます。こちらは必ずしも合意が得られていない状況でありますけれども、検討中ということですね。

 そして、この十年、二十年の間、そういった不測事態の政策というものがヨーロッパでも出てきているわけですけれども、以前とは様相が違ってきています。かつては、第二次大戦と冷戦を通じて、戦争が起きたらどうするという感じの法律だったんですね。今はそうではないわけです。というのは、今見てきましたように、パンデミックなり気候変動、あるいは、もう一つ心配されているのは原子力災害ですけれども、そういった非常に多彩なリスクが出てきていて、これらに対応していかなければいけないということでございますので、戦争に限らず、食料関係のリスク一般に関して対応していくというふうに変わってきているわけです。

 例えば、ヨーロッパでは、EUでは、今、リスクで一番心配されているのは気候変動であります。特に南欧など、極端な干ばつや洪水が続いている上に、今後、気候変動で更に状況が悪化していくと考えられているわけです。

 続きまして、三ページに参りまして、法案への私なりの期待をまとめてみました。

 一つは政府の対策本部、これは大変期待しております。

 どういうことかといいますと、今までの仕組みですと、農水省の管轄外の事態にはふだんはなかなか対応できないのですね。事が起これば、そちらの本部が立ち上がって、そこに協力という形になるのでしょうけれども、食料安全保障の本体の方で扱うということがなかなかできない。そうしますと、実際に非常にまずいと思われる震災であるとか原子力災害とか戦争といった事態に、積極的にやっていけるのかという心配を私は持っていたわけであります。これが、政府の対策本部もでき、平時から省庁横断的な準備も可能であるということになると、そういったリスクへの対処が非常にやりやすくなるのではないかということが一点でございます。

 もう一つが平時から準備ができるということで、これは渡辺参考人が言っておられましたので、そんなには申しませんけれども、やはり、平時からいろいろやっておくということは非常に重要でありまして、データも集まるしということですし、あるいは、そういった法律がありますよということであれば、平時から自発的に民間部門の方でも対応が進む可能性があるかなということが期待されます。

 次に、これも渡辺参考人とやや重複するのですけれども、やはり、マクロで、全体で供給を確保するというのは最重要なのですけれども、それで民間を駄目にしてしまうと駄目なわけですね。民間の事業は今非常に複雑にしていますので、市場経済の方でうまく回るところは回していただいて、それをいかに全体の供給の確保とバランスを取っていくかということをきちんとやらなければいけないわけです。

 これを、戦争中の統制経済のように、かつてのようにトップダウンでやってしまうと、やはり経済の息の根が止まってしまう可能性がありますので、そこをいかにうまくやるかということで、例えば、今回の法案ですと、事業者に自発的にまずは計画を作っていただいてというような形を取っていますけれども、例えば、そういった形で、やはり民間の力をきちんと生かしていくという仕組みを組み込んでいくのが重要であろうと思うわけです。

 最後になりますけれども、こういった法案審議自体が、やはり、こういった問題に対する社会の意識の醸成であるとか、あるいは社会的合意の形成であるとか、そういったことにつながっていくと思いますので、大いに期待しているところであります。

 次に、四ページでございまして、不測事態の予測システムということでございます。

 こちら、スイスは既にそういう種のものを持っているのですけれども、実は、これはそう簡単な問題ではございませんで、ふだん農業で物を作っている、ふだん輸入しているのとは違うことをして、しかも、いろいろなものを組み合わせてどうやって供給していくか。これを、農水省の演習ですといろいろな部署の人が数十人集まって相談するんですけれども、当然ながら、大勢集まると結論はなかなか出ません。ただ、実際に事があれば、最適な答えを迅速に出して、事態が刻々と変われば対応していかなければいけないということです。今日的には、やはりこれはコンピューターの力をかりた方がいいのではないかと率直にそう思うわけであります。

 例えば、スイスの例からすると、まず、一人当たりの熱量なり栄養の供給はどうなるのか、それがちゃんと出てこないと、そもそも今回の法案で出ているような供給の確保とか政策の発動にもつながらないわけです。

 さらに、それをどうやって供給していくのかというと、これは非常に複雑でありまして、備蓄を取り崩して、輸入を増やして、代替品目を作って、国内で何をどれだけ増産して、そうすると自然と減る品目も出てきます。あるいは、本当にいざとなったら飼料米を人間が食べてしまうとか、餌がなくなったら家畜を早期に屠畜する。これで肉が出てくるとか、あるいは肥料が足りないかもしれないとか、こういったようなものをいろいろ入れて、じゃ、今月はどうなって、半年後どうなって、一年後どうなるんだということを考えていかないといけないということでございます。

 是非こういったものをきちんと、まずは予測システムがあって、それを基に人間が判断していけるということになればいいのではないかということですし、平時からこういうものがあればいろいろなシナリオ分析もできるということになると思います。

 ただ、恐らく非常に大変な作業であろうと思いますし、スイスでは非常に長い、少なくともここ二、三十年はずっと開発を続けているという状態だと思いますので、早めに始めるということと、息長くやっていけるようなノウハウを蓄積できる研究者の手当て、この辺が非常に重要ではないかと思うわけであります。

 最後のスライドであります。こちらは御参考ですけれども、関連する施策ということで、元々農水省は食料自給力指標というのを作っております。国内生産で最大限供給可能なカロリーは一人当たり何カロリーですかということですけれども、不測時の予測モデルというのは、これとちょっと考え方が近いわけですね。ただ、自給力指標というのは、シナリオが二通りか三通りあって、その結果の数字だけなわけですけれども、予測モデルは、これをもっといろいろな要素を膨らませて、なおかつ臨機応変に変えながらいろいろなシミュレーションが、できれば短時間でできるということですので、非常に機動性が増す、いろいろな可能性が考えられるということになると思います。

 それともう一つは、実は、前回の大きな食料危機であった一九七三年のとき、これを契機にして、農水省ではかなり先進的な世界食料需給モデルを作りました。今回はそれとは違って、不測時の予測モデルということで、下に表がありますけれども、性格がかなり違っているんですね。二つを対比すると分かりやすいのですけれども、世界のモデルですから、当然、世界で長期的な趨勢を見て、しかも、これは国際市場で価格で均衡していくという考え方ですが、今回のモデルは国内で短期で突発的なものを扱う、そして、今回は場合によったら市場が機能しない、価格がつかないような事態も対象にしてやっていかなければいけないということですね。なので、かなり特殊な仕組みが必要になるということだと思います。

 ただ、いずれにせよ、独自のシナリオ分析が可能になるということで、こういうものが実現すれば大いに助けになるのではないかと思う次第であります。積極的な御検討をお願いできればと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

野中委員長 ありがとうございました。

 次に、稲垣参考人、お願いいたします。

稲垣参考人 おはようございます。全国農業会議所の稲垣でございます。

 本日は、三つの法律案の審査のための参考人として御意見を申し述べさせていただく機会を頂戴し、本当にありがとうございます。

 日頃、いろいろ御指導を賜っている先生方が多数いらっしゃること、改めて御礼を申し上げます。

 私は、農業委員会の関係者でございますので、三つの法律案のうち、農振法などの改正をめぐる法律案についての御意見を申し述べさせていただきます。

 全国農業会議所は、御案内のことかと思いますが、全国に千六百九十六ございます農業委員会、そこに約四万人の委員さんがいらっしゃるわけでございますが、その方々を支援するために、全国段階の農業委員会ネットワーク機構として位置づけられている団体でございます。現在は、昨年四月に施行されました改正農業経営基盤強化促進法に基づく地域計画の策定に向けた目標地図の素案作りでありますとかに取り組まれている農業委員会及び市町村の皆様の御支援に取り組んでいるところでございます。

 今回の改正案は、食料・農業・農村基本法の改正案を踏まえた改正でございますので、まず、改正基本法案の評価について申し述べさせていただきたいと思います。

 いろいろな方面から御意見があることは承知しておりますが、法律制定時から四半世紀が経過する中で、農業委員会組織に身を置いております私といたしましては、農業、農村現場の実態と課題を踏まえていただいている点が多々あると思っております。それは、新自由主義、市場万能主義的な農政から、農政を地域に委ねるという、現場感覚にフィットしたものになったのかなと思っているわけでございます。

 平成二十五年に農地バンク法がスタートする際、農地は地域のものという考えを改め競争力のある者に活用させる、また、農業委員会を決定に関与させない、そして、十年間で担い手に農地を全国一律に八割集積等々の議論は、なかなかすんなりとのみ込み難い言説だったわけであります。

 それを、昨年の基盤法の改正で地域の話合いを地域計画として法定化いただき、担い手だけではないその他の経営体も農業を担う者に位置づけ、そして、今回の基本法改正案では第二十六条の第二項を新設いただき、「国は、望ましい農業構造の確立に当たっては、地域における協議に基づき」と、これは当然地域計画を指しているものと理解しております。

 そして何よりも、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われているということを明記いただきましたことは、担い手に農地を八割集積したら残りの農地はどうするんですかとか、うちのように中山間地域が多くて、担い手というのは誰ですかという現場の素朴な疑問とか思いについて、極めて常識的に法律案は受け止めてくださっているのかなと思う次第でございます。それを農地と人の面で裏打ちするのが、今回の農地関連の改正法案と認識しております。

 農業委員会組織では、昨年の五月と十一月に政策提案を実施し、今回の改正案にはその内容が相当程度反映されていると認識しておりまして、その行方に重大な関心を持っているところでございます。昨年末に政府が農地法制の見直しの方向についてを取りまとめられ、令和六年の二月に入りまして法案提出により改正内容が明らかになる都度、お手元にあるような資料、お国の出した資料を単なる要約したものではございますが、そういうものを作成し、組織内への周知を図っているところでございます。

 以下、今回提出されました三つの法律案ごとに御意見を申し述べさせていただきます。

 まず、農振法についてでございます。

 目的規定に、農業生産に必要な農用地の確保、それと国民に対する食料の安定供給の確保を追加することは、今般の基本法改正法案を踏まえれば、当然の改正と認識しております。

 ただ、そうやって設定される全国の農地の総量確保の目標面積と、現在市町村段階で策定が進んでおります地域計画で明らかになる守るべき農地の面積との関係をつまびらかにする必要があると思っているところでございます。

 また、農用地区域の変更に国の関与を位置づけるということを評価しております。

 その上で、やむを得ず農地転用のために農用地区域等からの除外を行う際に、その除外面積に相当する荒廃農地の再生などにより農地総量の確保の徹底の視点が重要であると考えます。具体的には、都道府県知事が市町村からの農用地区域除外に係る協議を受けた際に目標面積達成への影響を緩和するための代替措置を求めるわけですが、その際、荒廃農地を再生し、農用地区域に編入することを強く求めることが必要ではないかと思う次第でございます。

 荒廃農地約二十五万ヘクタールのうち再生利用が可能ないわゆるA分類の荒廃農地九万ヘクタールを優先的に再生する働きかけを強め、あわせ、再生困難なB分類荒廃農地についても、地域計画の策定と併せて、該当荒廃農地を含めて機構関連圃場整備事業などを優先的に導入して、農用地区域農地面積の確保につなげる取組を強化する必要があると思っております。

 二番目は、農地法の改正でございます。

 農地の権利取得の許可要件の例示に法令遵守を明記すること、転用完了までの実施状況報告及び違反転用の公表を法定化することを評価しております。

 その際、その運用を行う農業委員会の確認事務などを簡便にすることが必須であると思っております。

 御案内のように、近年、農業委員会の業務は毎年のように増加しており、それに対応する事務局は、約四割で専任職員がいないなどの人員不足に加え、人事異動のスパンが短い中で、もういっぱいいっぱいの対応をしております。更なる業務の付加に際しては、事務の簡素化とセットで御検討をいただきたいと存じ上げます。

 また、原状回復命令に従わない場合の公表は、違反転用を是正する上で当然の改正と認識しておりますが、それ以前に、原状回復措置の徹底が必要でないかとも認識しております。

 我々農業委員会組織としても、農地法第五十二条の四の、農業委員会が知事へ原状回復命令を出すことを要請できるの規定の活用について踏み込む必要があると認識しております。そのためにも、原状回復命令を都道府県が実施し、それを受け止める農業委員会段階が対応できるためのマニュアルというかガイドライン的なものの精緻なものの整備が必要と認識しております。

 三番目は、基盤法についてでございます。

 農業経営発展計画制度を基盤法に措置し、農地法第二条の農地所有適格法人の規制緩和、要件緩和で対応しなかったことについて評価をしております。

 このことは、一昨年末から今年の年初まで開催されました農水省の農地法制の在り方検討会で、会議所、たしか全中さんも、委員が力説した点でございます。

 この改正案は、農業者、地域の懸念に相当程度踏み込む内容、すなわち、法律案では、十四項目ものファイアウォールを設けていただいております。ただ一方で、昭和三十七年の農業生産法人制度発足以来の原則に踏み込む内容であることも認識しております。

 制度発足当初と農業を取り巻く環境がここまで異なってきたことを踏まえての改正でありますが、今のところ、農業現場から表立った反対、反論に我々は接しておりませんが、ただ、折に触れ現場の農業経営者の方々と意見交換をすると、今回の改正を歓迎する声がある一方で、慎重な意見もあることは事実でございます。

 これはやはり、数の上では農業関係者の決定権を担保いただいても、圧倒的なバイイングパワーを持つ食品事業者等に対して本当に反対票を投ずることができるかとの不安の証左であるかと思うわけでございます。

 でありますので、この発展計画制度を基盤法に措置し、農地法第二条の適格法人制度の規制緩和で対応しなかったこと、これすなわち、お国が現場の懸念を受けて立つという決意表明であると私は認識しておりますので、改めて、お国の指導等の実効性を確保することに特に特に注力いただきたいと思うわけであります。

 そのためにも、地元の食品事業者や農地所有適格法人の連携による地域振興の観点からの取組を前提とし、食品事業者、地域ファンドのニーズを掘り起こすことが重要であろうかと思っております。

 最後に、法律のこととは離れまして、総合的な意見として、今般の法律改正案を着実なものとする上での視点を二点申し述べさせていただきます。

 一つは、今回の改正の射程には当然入っていないわけですが、今後の基本計画策定等で議論するべきことと認識しているものでございます。

 それは、農振法、農地法、基盤法の農地管理は農地の地片の管理についてフォーカスしている法律なわけでありまして、一方、日本の農地、特に水田では畦畔、水路、のり面、この三点セットが漏れなくついているわけであります。この管理は、従来、集落、地域の共同活動で行われてきたわけでございますが、現在、言うまでもなく、地域における農業の比率の低下、人口の減少、高齢化でそのような活動が成り立たなくなっている地域が増加しているわけでございます。

 これらの問題については、現在、集落総出の賦役、共同作業、また制度、財政支援としての多面的機能支払い、サービス事業体の形成、農村RMOなどの地域運営組織の設立など、多様なアプローチがなされておりますが、要は、これに要するコストをどうするかという問題についての重要性が増しているとの認識でございます。

 今後、基本計画を議論する際に詰めねばならない問題ではないでしょうか。その際、土地改良区の准組合員制度の活用や不在村地主の関係人口への取り込み等がポイントになってくると思っております。

 二つ目は、今回の改正に直結する問題であり、是非、国会の先生にお願いするしかない問題として認識していることでございます。

 それは、先ほども申し述べましたが、市町村農政の推進体制の問題。市町村農政部署と農業委員会の事務局職員の抜本的強化についてであります。全国千六百九十六農業委員会の職員の平均は四・八人、中央値は四・〇人。うち四割の委員会には専任職員が一人もいないという状態、兼務で回しております。平成の市町村合併以降、市町村における農政セクションは独り負け状態ではないか。兼務の職員さんは、農林関係だけではなく建設、商工、観光なども担当し、一人霞が関状態になっているところも少なくございません。

 令和四年の基盤法改正の際にも参考人としてお呼びいただいた際にも、この意見は陳述ではなく陳情ですと申し述べさせていただきました。

 市町村段階の農政担当と農業委員会事務局職員の増員について、政治の力で何とぞ解決に向けて注力いただきますことを改めて申し上げて、意見の陳述を終わらせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。(拍手)

野中委員長 ありがとうございました。

 次に、田澤参考人、お願いいたします。

田澤参考人 皆さん、おはようございます。

 私は、エシカルバンブー株式会社代表取締役社長の田澤と申します。

 ちょっと日頃からしゃべり過ぎているので、声がかれていて聞きづらいとは思いますが、御了承ください。

 私は、東京から山口に移住しまして、現在、全国的に繁茂が問題となっている竹を使った製品の製造、販売を行っております。私自身も、チェーンソーなどを使用して、竹林の伐採などにも入っております。竹害と言われる竹を竹財として高付加価値をつけ、害ではなく有益な国産の資源として持続的に管理、活用できるサイクルを構築すべく、九年前に自社工場を山口県に設立いたしました。

 主な取組としましては、二〇二〇年に、竹を総合的に学び体感できる竹ラボという施設を山口県宇部市に設立いたしました。次世代の子供たちに国産の竹の魅力と可能性を伝え、竹を通して地域資源の活用や環境への意識を総合的に学べる場所として現在運営しております。小学生から社会人まで総合学習授業を行っております。月に大体四回ぐらい行っております。二〇二二年からは、竹林整備を安全に行うための研修制度としてバンブーエキスパート制度などを設立しました。二〇二三年には、山口県と連携し、地域の竹の有効活用を目標とした竹利活用のプラットフォーム、ヤマグチバンブーミッションというものを行政、地域、民間と協働で設立いたしました。

 今までの経験と取組を基に、今回の食料安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案について、製造業を行っている私なりの立場としてお話しさせていただきたいと思っております。

 製造業を行う立場として、食の安定供給という面から考えると、この数十年で日本はいつしか輸入なくして経済が回らない状況となりましたが、元々は島国として自国内での生産が主だったはずです。それがいつしか、他国同様に大量生産、大量消費による流れから価格競争に追い込まれた結果として、国内製造を海外製造に切り替わる流れが加速しています。そこから国内の自給力の低下、国産の生産力の低下という問題が大きく出始めていると感じています。さらに、輸入に頼る流れから、コロナ禍においては、輸入食材が入らないことで製造業や外食産業に大きな影響を与えることにもつながりました。

 ここでもう一度、国内で生産できる資源や素材に目を向け、一つ一つの資源を多角的に分析し無駄なく生かすカスケード利用等のサイクルを再構築することで、商品価値、社会的価値、企業的な価値が高まり、川上から川下までが自立した事業として持続可能で継続的な地場産業へつなげていくことが重要であると思っております。

 さらに、大量生産、大量消費の流れを変えるためにも、それぞれの地域の特性や風土を生かした製造体制の確立が必須であり、地域特性や風土を調査し、強みとなる特性を分析した上で、地域が誇れる物づくりへとつなげていくことも大切であると思っております。

 地域特性を生かした生産力の向上や地産地消の強化を考えたときに、要となるのが知財戦略だと思っております。

 私が経営している工場では、山口県の竹の特性を追求した製造体制を確立しております。竹は全て同じだから世界各国どこでも誰でも作れるということではありません。その地域の竹の特性や含水率、さらには、私たちは目や口、心臓などの細胞を使った上での安全性の試験などを行い、エビデンスや研究データを基に品質の確保なども行っております。製造に関する全ての情報を企業の資産と捉え、知財戦略にも力を入れてまいりました。知財戦略の流れも含めて自社ブランディングを進めてきたことで商品価値や企業価値を高めることにつながり、地域雇用を創出し、起業してまだ九年弱ではありますが、事業として継続的に竹を活用する製造業を進めております。

 竹と同様に、ほかの素材や資源でも同じことが言えると思います。それぞれの地域の風土や地域特性を生かした製品作りを追求し、製品だけでなく資源そのものの付加価値を高め、輸入に頼らず国内で持続的に循環するサイクルを形成し、国内で製造する全ての製造元が地域資源を生かした物づくりを行い、価格競争ではなく、品質を向上させる、地域資源を活用したブランド力の向上を図ることが食料の安定供給のためにも最重要課題であると捉えています。

 国内の自給力の低下と国内生産力の衰退の原因の一つが、知財戦略に関する意識の低下ではないかとも思っております。海外では当たり前のように、知財戦略として自分たちの技術を守り、次の世代につないでいく取組に力を入れている国が多数あります。弊社が使用している竹も同じです。

 国内には、竹を活用したすばらしい技術がたくさんありました。それがいつしか、大量生産、大量消費の流れも伴い、国内企業が製造の拠点を海外に移すことで技術漏えいが起き、国内で販売する製品や竹炭などを含めた炭製品の八割以上がいつしか外国産に換わってしまいました。その結果、竹を活用する事業者や炭焼き職人が減少しております。森や竹林が荒れ、現在のような竹害と言われる原因の一つをつくってしまっています。

 竹害が起こることで、針葉樹、広葉樹などの栄養も山から吸い取ってしまうため、どんどんどんどん針葉樹、広葉樹が枯れることから、ドングリなどが減少したりとか、あとは土砂崩れの問題ですとか、ほかの資源の栄養分を取っていってしまうために、大きな原因となっております。

 竹害と言われるまでにはほかにも様々な要因はありますが、技術的な内容も含め、知財に関する流れを再度見直し、地域資源の可能性を引き出し、持続的に活用する流れを整えるためにも、大量に物を作り安価に収めるのではなく、素材の価値を高め、無駄なく使用し、価格的に高くても消費者が購入したいと思える素材や製品を製造することで、製造、生産事業も持続可能となります。

 弊社では、製品を作る段階に排水や排気、廃液などが出ますが、それも全て商品化しております。商品化することで、工場からは一切の排水や排気などが出ないんです。それを、排水設備に物すごくお金をかけて行うよりは、排水にも何かあるのではないかということを考えたところ、オールカスケード利用が実現しております。

 弊社は、竹の買取りも、エリア限定ではありますが、行っております。買取り価格も、通常の買取り価格よりは少々高く買い取っております。それができるのも、商品自体、出口である商品に対して付加価値をつけて、決して安くはありませんが、全ての作業をする人材に対して対価が払える状態をつくっております。買取りができることとしては、安価な製品を作ることではなく、全ての部分、作業工程に対して対価が発生する流れを製造体制として確立し、買取り制度を始めてからは、近隣に伐採事業をしたいという若い事業者が増えてまいりました。さらに、一度はタケノコ農家などを引退してしまった農家の方々が近隣の方と一緒に竹を切り、持ち込むようになったことで、竹林が整備され、タケノコ農家として復活された事業者もございます。

 こうした流れを基に、未利用資源として、竹害と言われてしまう竹を竹財としてブランド化し、商品価値、企業的価値、社会的価値を高め、利益を出せる製造体制を確立し、継続的に国産竹を使用できる新たな竹産業の構築を進めておりますが、ほかの素材でも同様のことを検討し、知財戦略を含めたブランド力の向上を進めていくことで、生産者は良質なものを製造することに対してプライドと誇りを持ち、その製品を販売する人や購入する人も、それぞれが良質な製品を販売すること、購入することにプライドと誇りを持つことで、現在起きている様々な問題が解決できる糸口が見えてくると思います。

 現在、人材の確保の問題を含め、地方での製造業にとって大変厳しい状況が続いております。弊社の社員は、下は二十四歳、上は八十代です。働きたいけれども働けない人たちが地方にもたくさんいます。その人たちが働きやすい仕組みをつくることで、地域資源を生かした製造体制を確立し、地域ブランディングを進めていくことで、人材の確保や販売力の向上にもつながります。現に、弊社を含め、地域ブランディングを進めている魅力的な企業は採用に関する問合せが多く入り、弊社もですが、東京や県外から移住をして採用の希望を出してくる方が多くいらっしゃいます。

 食料の安定供給や農地の確保、有効的な農地利用を図るためにも、製造業や農林水産業が事業として産業として継続していくことが必須です。元々は島国として国内生産で回っていたのが日本です。新しいことを検討し進めていくことも大切ではありますが、新しいアイデアの元はゼロではなく既存のものを見直すことから始まります。国内生産が活発だった時代をもう一度振り返り、原点回帰をすることで、問題となっている自給率の向上や国内生産力の向上にもつながるという流れが見えてくるのではないかと、製造をやっている私の立場からは思っております。

 以上で、済みません、短いんですけれども、私からの意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

野中委員長 ありがとうございました。

 次に、田代参考人、お願いいたします。

田代参考人 元横浜国立大学、元大妻女子大学の田代でございます。

 本日は、こういう機会を与えていただきましてどうもありがとうございました。

 私は、食料供給困難事態対策、この法案の名前自体がなかなか覚えづらいんですけれども、これから不測事態法というふうに言わせてもらいますけれども、この不測事態法について、出荷、販売からではなくて、生産の面からお話をさせていただきたいと思います。

 以下、レジュメに即してお話をさせていただきます。

 まず第一番目に、この法案でございますけれども、今度の新基本法の改正案が成立したとしまして、食料安全保障の理念を実体法として具体化する法律として極めて意義のある法律だとは思います。

 ただ、既存のこれまでの政策、それから改正新基本法との整合性が十分に取れているかどうか。それからもう一点、先ほど平澤先生から世界の状況についてお話がございましたけれども、そういう中で、我が日本の特殊性というか独自性を十分に踏まえた日本独自の政策になっているかどうか、こういう観点から少しお話をさせていただきたいと思います。

 第一番目に、日本の持っている不測事態の日本的な特殊性ということでございますけれども、日本は不測事態が起こる頻度が極めて高い、深刻性も高い、そういう国だというふうに思います。

 一つは、申し上げるまでもなく、地政学的な危険性が極めて大きくなってきている。二つ目には、気温の上昇率が、みどり法でも、世界平均の倍も上昇が高い。それから、地震だとか豪雨。それから円安、これは構造化するということでございます。

 そして最後に、日本の特殊性として、食料自給率が極めて低い、このことをやはり踏まえる必要があるんじゃないか。そういう食料自給率の低い国としての特殊性を十分に踏まえた不測事態法にしていただきたいということでございます。

 結論から申しますと、やはり、食料自給率が低いということで、特に輸入に今は力を入れていて、国内供給、国内生産への期待がちょっと薄いんじゃないかという懸念を抱きます。

 以下、この法案についての詳細版というものもありますので、それも参考にしながらお話をさせていただきたいと思います。

 三ページ目に参ります。

 まず、整合性が取れているかどうかということでございますけれども、皆様方、緊急事態食料安全保障指針、これが既に農水省で定められております。ここでは芋類が非常に位置づけられております。

 その指針では、レベル二、極めて不足の事態である、一人一日当たり二千キロカロリー未満になっちゃう、このときには、熱量効率の高い作物などへの転換ということを書いてございます。特に、畑の表作で芋類の増産ということを書いているんですね。それで、花卉、工芸作物、飼料作物、野菜、果樹、この順に芋畑に転換していく、こういうことを書いてございます。

 今回の新しい法案は、御承知のように、米穀、小麦、大豆、その他畜産等々で、その他というふうになっていますけれども、国民が日常的に消費しているものが足りなくなった場合、こういうふうになってきております。言い換えれば、カロリー基準ではない。とはいいながら、極めて深刻な事態では千九百キロカロリー以下ということを言っていますから、全くカロリー、熱量を無視しているわけじゃないけれども、カロリー基準ではないということでございます。

 それから、農業白書等々でも食料自給率とともに示されております食料自給力、これがありますけれども、これは生産を全て、不作付地まで動員して、芋類を中心とした生産であると二千四百十八キロカロリーをカバーできる、これだったら何とかしのげるということでございますけれども、米麦中心にした場合には千七百五十五キロカロリーということでもって、非常に低くなっちゃうわけでございます。

 米麦を中心として考えた場合には、実は、平時というふうに言っていますけれども、平時でも国内生産、食料自給力のみでは足りなくて、既に平時でも千九百キロカロリーを割る不測事態になっている、こういうことがございます。

 皆様方、私も含めて、芋を食えということはなかなかやはり難しいところがあると思いますけれども、不測事態について、国民、政府がどれだけの覚悟を持っているかということでは考えるべきことではないかというふうに思います。

 二点目に、新基本法改正案では、田んぼの汎用化と畑化ということを書いてございます。それに対して、では、いざとなったときに、畑にしちゃっていて、それをまた開田して米を作るのかといったら、それはやはりなかなか難しいということであります。そういう点からも考えますと、新基本法改正案の水田の汎用化及び畑地化ということは、畑地化は取った方がいいんじゃないかということでございます。

 それから、備蓄との関係でございます。備蓄は、この政策では、平時の政策でもって、この法律からは除外しております。ところが、やはり問題は、平時の政策と不測時の政策とをどうやって関連させるかというところが問題であると思うんです。

 現在、いろいろな数字がありますけれども、玄米の生産量が大体八百万トンでございます。食料供給困難事態といいますのは、二〇%以上減ると食料供給困難事態だというんですけれども、八百万トンの二〇%というと、百六十万トンになるわけですね。ところが、現在の備蓄は大体百万トンというふうに言われております。百六十万トンと百万トンとの間にはやはり差があるんじゃないか。これはお金の関わる話ですけれども、こういう点でもやはり法律として整合性を持つ必要があるんじゃないかということでございます。

 四ページ目に移らせてもらいますけれども、問題は、生産の要請、促進に対する担保措置として、二つ、担保措置が出てきております。一つはペナルティーということでありまして、もう一つは財政ということでございます。

 かつて農水大臣は、二〇二三年の五月の記者会見で、農家の方に何から作れと言うのは、法律によって縛りをかけないと農家の皆さん方には効き目がないということを言っておりまして、どうも、その頃から、何か法律で罰則を設けてやるんじゃないかなという懸念がございました。

 ところが、不測時に農業者に対して生産計画を出せと言ったって、出せるのは作付計画だけなんですね。作付計画につきましてはもう、水田活用交付金だとか畑作物のゲタだとか、それから作付面積統計だとか、こういう業務統計や、それから法定の統計でもって、把握は可能なんですね。わざわざ出す必要があるのか。

 こういうものについて、現に生産している者全てに計画を出させるということなんですけれども、全部足すと八十四万事業体になってくるんですね。これにあえて出させる必要はあるのかという疑問があります。何かやはり、この生産計画は計画変更のデータ収集の手段じゃないのかという臆測もするわけであります。

 それから、問題は、計画変更ができると認められた者、これは省令で規定するというので、今、どういう者がなるのかはちょっと分からないんですけれども、これを特定するわけですけれども、この特定ということが、本当に不公平感なしに、やはりこの人だなということでできるのかどうか、私は非常に問題を感じます。

 それから、先ほど稲垣参考人がお話をされましたけれども、今回の農地法改正案では、違反転用の原状回復命令に従わない場合には公表をする、こういう、罰則とは言わないけれども、公表という社会的制裁が加わっています。

 ちょっと飛ばしちゃいましたけれども、生産計画と生産計画の変更の届出をしないと二十万円以下の罰金、それから、生産計画の変更指示に従わない、計画に沿った生産をしない場合には公表する、こういうことになっています。

 私は、率直に申しまして、農地法改正案の、違反転用の原状回復命令に従わなかった場合には公表するというのは、これは当然のことである、罰則を設けてもいいくらいであると。それと同じように、農業者が生産計画の変更、これを出さなかった、従わなかったというときに公表するというのは、それに値するほど罪な話なのかというのは、やはり考える必要があるんじゃないかということでございます。

 ここにいらっしゃる議員の先生方はそういうことはないと思いますけれども、生産に必要なのは、北風といいますか、ペナルティーを科すことで生産への期待をするのか、それとも、皆様方のような、太陽、インセンティブでもって促進を促すのか、その辺はやはり十分に、この法律として、まさに国民的な合意、農業者の合意がなければ、これはやはり不測の事態に耐えられないわけですから、お考えをいただきたいということでございます。

 それから、五ページ目に移りますけれども、ペナルティーに対して、今度はインセンティブについてもこの法律では考えられております。販売、輸入、生産、製造が円滑に行われるための財政措置、財政措置とだけは書いてくださっているんですね。ただ、その財政措置の内容が分かりません。詳細版によりますと、農地整備、高い資材費の支払い、値崩れの発生リスク。値崩れするはずないんですよね。不測事態で足りないわけですから、むしろ上がってくるということになってくるんじゃないか。ともかく、そういうものに対して財政措置を講ずるということが書いてございます。

 それに対しまして、イギリスの農業法二〇二〇、これのパートツーは食料安全保障になっていますけれども、ここでは、二十一条の第三項で、例外的な市場環境で収入に影響が出る場合、あるいはその可能性がある農業者には財政支援をするというふうに書いてあります。ここまでは日本と同じであります。ただ、四項でもって、財政支援は補助金、グラント、これを明確に書いてあります。補助金、融資、保証。

 財政支援ということだけじゃなくて、もうちょっとそれを突っ込んで、具体的な財政支援の中身を書いていただきたいというふうに思っております。具体的には、やはり生産転換にはコストがかかる、農業所得や農業付加価値の減少があり得る、ほかの作物に転換した場合ですね、そういう場合の補償、促進の奨励、こういうことについて明確にしていただきたいと思います。

 しかし、問題は、今日私が一番訴えたいのは、問題はそれだけか、不測時の財政措置を取れば済むのかということでございます。

 六ページに移りますけれども、今の日本の現実はどうなっているのか。一時間当たりの農業所得をいろいろな賃金と比較しています。最低賃金制賃金は二〇二三年で千四円でございます。それから、農産物の生産費調査に採用する賃金は千五百四十八円でございます。

 これと現実の農業所得がどうなっているのかを比較したのが、図の二でございます。左の四本は北海道、それから右の三本は府県を示しておりますけれども、これは全農業、全経営平均でありますから、企業的な経営も入っています。北海道でいいますと、水田作は最低賃金ぐらいのところはカバーしているけれども、畑作は辛うじて生産費採用労賃をクリアしているということで、赤字にはなっていないという程度でございます。

 ただ、北海道で畑作について生産転換をお願いする場合には、これは輪作を攪乱する可能性がありますので、そういう問題が出てくるということであります。

 御注目いただきたいのは都府県でございます。生産の促進は全農業者にやるわけでございますけれども、都府県を見ると、現在、既に農業所得はマイナスであります。

 農家の方に、あんた、農業をやったって所得はマイナスですよと言うと、農家の方は、いや、金のためにやっているんじゃない、これからも農業を守っていくためにやっているんだ、こういう切ないお話をされるわけでありますけれども、そういう事態でございます。

 畑作を取ってみます。内地の、都府県の畑作というのは少ないんですけれども、これも大体六百円から七百円ということでございます。この中には育成すべき経営、効率的かつ安定的という、これも含めた全平均でございますけれども、五百円から六百円ということでございます。この中には芋を作っている経営も取られております。

 七ページに行かせてもらいますけれども、水田作の規模別に見ていくとどうなるかといいますと、これは全国をやっていますから、さっきの都府県と違うんですけれども、階層平均では、水田作でいいますと、これはちょっと図が見えないんですけれども、十二円なんですね。一時間働いて十二円なんですよ。息子がパートで働いたって千円以上はもらえるときに、大の大人が働いて十二円だということでございます。

 五ヘクタール未満は赤字です。何だかんだ言ったって、もう五ヘクタール未満は、水田作で農業をやっている意味は所得の面からはない、こういう事態でございます。十ヘクタールから二十ヘクタールでやっと最賃制賃金、息子のアルバイト賃金並みというところでございます。生産費労賃に匹敵するような黒字になる経営は二十から五十ヘクタールで、五十ヘクタール以上だともう危なくなってくる、こういうところでございます。

 内地で見ますと、東北で七十八円。だから、東北でもやはり難しいです。北陸が五百八十八円。御注目いただきたいのは、関東以西はみんなマイナスです。全平均ですよ、全平均でマイナスだということでございます。

 次の八ページに移らせていただきますけれども、生産促進の確保条件として、平時に、普通のときに農業所得が確保されずに、不測時に生産の要請だ、促進だといったって、それは可能だろうかという感じがするわけであります。今の新基本法改正案では、合理的な価格ということが言われております。ただ、合理的な価格で皆さん方がお考えになっているのは、実は物財費だけで、労賃部分は余り検討していないんですね。

 岸田首相は、人件費等の恒常的なコストに配慮した合理的な価格形成ということをおっしゃったんですけれども、これは、各党派、会派によって違うでしょうけれども、首相が人件費も考慮して価格を保障するんだと言ったことは、非常に重大なことです。

 結論からいって、できっこありません。それは、労働費をもしも最賃制賃金で評価したならば、食料価格は数倍、数倍というのはちょっとオーバーかも分かりませんけれども、人件費だけを取れば、三百七十九円が千四円になるんだから、三倍になります。そうなってきたら、消費者はそんな国産品は買えません。みんな輸入品だけを買う、自給率は下がる、一人一人の食料安全保障は遠のいていく、こういうことであります。

 したがって、首相が幾ら約束したとしても、農業所得を確保するためには価格転嫁も必要だけれども、それだけでは駄目だ。やはり、直接支払い政策が必要になってくるんじゃないかということでございます。

 最後でございます。

 私は、冒頭、日本の特殊性に即した不測時対策が必要だということを申しました。結論的に言えば、食料自給率のいかんによって、食料自給率が高いか低いかによって、やはり各国の不測時対策は異なってくる。それは、先ほど平澤先生のお話にもございました。食料自給率が三八%という極めて低い日本、これにはやはり日本独自の不測時対策が必要じゃないかということであります。

 実は、そういう不測時対策はもうできているんですね。それは、一九八〇年の農政審報告でございます。「八〇年代の農政の基本方向」、これが原点でございます。この第二章、そこには「食料の安全保障―平素からの備え―」と書いてあります。それから、今回の法案に匹敵する、不測の事態への備えという項目もございます。不測の事態への備えというのは何を書いてあるかというと、そこでは、平素から総合的な食料自給率の維持強化を図っていくことが重要だということが書かれているんですね。

 私は、日本の不測時対策の最大のポイントは、やはり平素から、平時から食料自給率を維持強化していくことに尽きるな、そのためには農業所得を何とかしてください、こういうことをお願い申し上げて、終わりにさせていただきます。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

野中委員長 ありがとうございました。

 次に、高橋参考人、お願いいたします。

高橋参考人 株式会社雨風太陽代表の高橋博之でございます。

 我々の会社は、東日本大震災をきっかけに生まれた会社で、自然災害というのはその時代の社会の課題を浮き彫りにしますが、当時、東北の沿岸で浮き彫りになったのは都市と地方の分断という課題で、それをビジネスの力で解決していこうということで始まった会社です。

 具体的に何をやっているかというと、ポケットマルシェという産直アプリですね。生産者が価格決定権を持って自分で値段を決めて、その値段の説明をして、お客さんに直接売る。

 もう一つは、おやこ地方留学といいまして、今、帰るふるさとがないという都市住民が増えているので、僕は半分皮肉を込めてふるさと難民と言っていますけれども、夏休みに一週間地方に来てもらって、親は昼間ワーケーションしていてください、その間、子供が農家や漁師のところで様々な自然体験を行うみたいな、そういう都市と地方をつなぐ取組をしております。

 ですから、専門家ではないので、この法案に対して細かい指摘はできませんけれども、この十年間、実業家として、日本全国八周をしてきて多くの生産者と消費者の声に触れてきた立場として、感じているところをお話しさせていただければなと思います。

 まず、スマート農業法についてですけれども、スマート農業の振興は、あるべき農村の姿とやはりセットで考えないと意味がないんじゃないのかなと思っていまして。すなわち、人手不足を単に解消するためにスマート農業を導入するというのでは、ただの延命措置というか、対症療法というか、根本的な解決にならないのではないのかな。つまり、スマート農業を何のために使うのかということが大切だと思っています。要は、スマート農業をすることによって浮いた人手を一体何に使うのか、そこが大事だと思っています。

 かつて、民俗学者の柳田国男さんがこんなことを言っていますけれども、明治の政府から始まって、戦後加速していった日本の農業政策ですけれども、農業生産の生産性というのが飛躍的に高まった。つまり、十人でやっていた仕事を機械化することによって一人でできるようになったので、残り九人は農村から出ていったわけですね。つまり、生産性は飛躍的に高まったけれども、農村は寂れたというふうにおっしゃっています。

 つまり、農業政策と農村政策というのはセット、車の両輪であって、農村政策の方も考えなきゃいけないんだという話をしています。農業のみならず、農業に関わる加工業、手工業、金融並びに流通、そういった仕事を農村から出して都市に持っていって、農村は単に原料を生産するだけの寂れたところになってしまった。なので、もう一度それらを、元々、協同組合というのは農業に関わる様々な仕事の人々のネットワークとして形成されてきたわけですけれども、そういうのをちゃんとやらなきゃ駄目だよという話をしています。

 今回、スマート農業と言いますけれども、戦後、農業の機械化というのは、言ってしまえばスマート農業じゃないですか。くわでやっていたのを、機械を投入することによって、省力化で、十人でやっていた仕事を一人でできるようになった。それも当時のスマート農業だったと思うんですけれども。その結果、今こうやって過疎になっているんですね。今回またスマート農業をやって、では、浮いた人手がどこに行くのかというところが非常に大事だと思っています。

 そのときに、今回、基本法の方で、第四十五条の方ですけれども、地域の資源を活用した事業活動の促進というのが新たに新設されました。つまり、農業以外のなりわい、仕事をやはり農村の中で生み出していかなければならないんだということが新たに新設されたことは、非常に意義深いと思っています。

 ただし、今、つまり、お父さんとお母さんでやっていた仕事を、スマート農業を通じてお父さんだけでできるようになりました。お母さんは何をやるかということなんですが、今農村にいる人だけでは新しいビジネスは生まれません。だって、そうじゃないですか。同じ人たちと顔を合わせていても新しいアイデアというのは生まれてこないし、やりたいことがあっても、それを実現するためのやり方が分からないんですね。

 そのときに、第四十五条の中で、「農村との関わりを持つ者の増加を図るため、」と書いているんですが、これがいわば農的関係人口と言われているものだと思うんですけれども、外の、農村に関わろうとしている人たちをどう巻き込んでいくのかというのは極めて重要だと思っています。

 それから、四十九条に、事実上の二地域居住の話を書いているんですね、農村と都市との双方に居どころを有する生活をすることのできる環境整備と。これも同じでして、都市の人が二地域居住をするときに、自分の興味、関心と農村の課題が重なるところがあれば、それが生きるかいになっていくわけで、マーケティングだとかブランディングだとかを農家の人にやれと言っても難しい話で、その人たちがやることで、いわば柳田先生がおっしゃっていた、現代版の新しい協同組合の形というのができる可能性、地平が今開かれていると思っています。

 なので、今国会に国交省から二地域居住を推進する関連法案が出ていますけれども、霞が関でいうと縦割りになってしまいますが、横串にして、ビジョンというか全体観を持って、あるべきこれからの地域の姿というのをお示ししていくのが先生方のお仕事だと思うので、是非、スマート農業を何のためにやるのか、あるべき農村の姿とセットで推進していっていただけるとうれしいなと思っています。

 それからもう一つ、食料供給困難事態対策法案についてお話しさせていただきます。

 これは、危機対応ということですから、あくまで最後の一手というのが食料供給困難事態対策法だと思うんですが、参考人の先生方からもありましたけれども、最後の一手を打つ前の、やはり平時が非常に重要だと思っています。

 これまで、戦後、自動車や家電製品を外国に売ってもうかったお金で食料は外から輸入すればよかった時代が終わって、今、日本の国力も低下する中で、買い負けてしまっている。そうすると、当然国内で生産基盤を強化する以外に選択肢はないわけで、では、今、生産地はどうなっているのか。高齢化が進んで、あと十年たったらこの人たちは農業をやっているんだっけという事態に今直面しているわけですよね。その生産基盤をどう強化していくのかというのは非常に重要だと思っています。

 今回、基本法の中で、すごく意義深いなと思ったのが、第十四条の中で消費者の役割というところが、前回の基本法よりも更に踏み込んで書かれたところは非常に意義深いと思っています。それから、二十三条には適正な価格形成の話も盛り込まれていますけれども、やはり、ここは非常に大事だと思うんですよね。生産者だけがずっと変われと言われ続けてきましたが、食べる人は変わらなくていいのかということが問われていると思っています。

 今回、基本法の中で食料安全保障の話が出てきましたけれども、食料安全保障は平たく言うと、緊急事態が起きたときに我々はどうやって食べていくんだっけ、これは全ての国民に関わる話であるにもかかわらず、僕の感覚からすると、一部の消費者団体を除いて、ほとんどの人が無関心だなと。自分の命の根源、あるいは孫、子の命の根元に関わる話が国会で審議されているにもかかわらず、ほとんどの人が人ごとになってしまっている。ここをやはり考えていかないといけないと思っています。

 なぜこれだけ多くの国民が、これだけ生産地あるいは生産者の窮状が様々国会で審議されたり、あるいはメディアで報じられている中で人ごとであり続けるのかというのは、僕は、都市と地方の分断ということだと思っているんです。

 過疎が始まったのは、一九五四年です。集団就職列車です。日本は敗戦国で、この国を経済で立て直していくために、地方の若年の労働力を、いわば当時の労働省から要請を受けた県と国鉄が協力をして、臨時列車を走らせました。運賃免除、片道切符、途中の停車駅なし。東京、大阪、名古屋の三大都市圏に、二十二年間、ベルトコンベヤーのように地方の若者たちを都市に供給し続けたわけです。それが終わるのが一九七五年の三月二十五日、我が岩手県の三百七十四人の中学生を乗せた臨時列車が上野駅に着いて、これで終わるわけですが、二十二年間ですよ。

 いわば国家的プロジェクトとして、地方の若い人たちを都市圏に連れていって、重化学工業でこの国を発展させると。当時は合理的な選択で、ゆえにジャパン・アズ・ナンバーワンと言われる経済復興を成し遂げたのは事実ですけれども、帰ってこなかったわけですよ。帰ってこなかったんです。で、過疎が進んでいくわけです。

 地方から出ていった、都市をつくっていった地方の移民一世が、今、二世、三世、四世になって、今度は帰るふるさとがないという人たちが非常に増えています。つまり、地方に関わりがないんですよ。食べ物を作るということがどういう世界か、見たこともないんですよ。見たこともないものにお金を払えますか。価値を感じられますか。

 今、工業的食事、車のガソリン給油のように十秒チャージ、そういう食事のマーケットが広がっていますけれども、都市と地方の分断を解消していく役割というのは、国家的プロジェクトとして。世界に古今東西ありませんからね、国家的プロジェクトとして二十二年間、そうやって地方の若者を吸収し続けていったということは。つまり、それを解消するのも国家的プロジェクトとして、ある意味国策としてやらなければいけないことだというふうに思っています。

 いろいろやらなければいけないことがあると思うんですが、一つだけ。

 既に、毎回国会に提出されておりますけれども、青少年自然体験活動等の推進に関する法律案、これは非常にすばらしい法律だと思っています。やはり、子供たちですよ。今、都会の子供に魚の絵を描かせたら半分は切り身の絵を描いてしまうというぐらい、自分の命が何に依存して成り立っているのかということが全く分からないという子供たちが、この社会の未来を担う人間としてどんどん量産されているんですよ。その人たちが将来、食料の安全保障のために適正な価格で買おうという消費者になりますか。

 そのときに、僕は、この法律の第一条に感動しているんですよ。あえて読ませてください。目的、第一条。

 この法律は、人々の生活が便利になる一方、人と自然や社会とのつながりを実感することが難しくなっている近年の状況において、青少年自然体験活動等が、農山漁村その他の豊かな自然環境を有する地域における様々な体験活動を通じ、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養い、人と人とのつながりの大切さを認識し、農林漁業の意義を理解すること等により、青少年が生きる力を育むことに資し、並びにその実施を受け入れる農山漁村等の活性化及び都市と農山漁村等相互の共感の醸成に寄与するものであることに鑑み、青少年自然体験活動等の推進に関し、基本理念を定め、及び国の責務等を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、青少年自然体験活動等を推進し、もって我が国の活力の向上に寄与することを目的とする。

すばらしいじゃないですか。なぜ、この法案が毎回国会に提案されているのに通らないのか。一刻も早く、これは僕は反対する人がいるのが不思議なんですけれども、是非通していただいて、日本の小学五年生が年間に一週間、地方の農村、漁村に行って農漁業の体験に触れる。これを十年やったら、日本の未来は変わりますよ。食料安全保障も変わりますよ。日本の生産基盤も強化されると思います。

 なので、是非そのことも併せて、緊急事態の最後の一手が意味ある一手になるためには、平時の理解が必要なんですよ。緊急時だけ消費者に理解してくれと言われても多分無理なので、やはり平時からそういう生産基盤を強化するための消費者の理解を促進するようなことも、併せて、先生方には是非進めていっていただきたいなと切に願っております。

 済みません。以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)

野中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

野中委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。堀井学君。

堀井委員 おはようございます。自由民主党の堀井学でございます。

 本日は、参考人の皆様方、貴重な意見陳述、ありがとうございました。

 早速質問に入りたいと思いますが、時間の都合上、渡辺参考人と平澤参考人、稲垣参考人の三人に絞って質疑をさせていただきます。限られた時間ですので、質問できない方々にはお許しをいただきたいと思います。

 それでは、早速質疑をさせていただきます。

 食料・農業・農村基本法が改正され、この三法案は、基本法の理念に沿って、我が国の食料安全保障を守っていく、実行していく法案となるわけでありますが、お三方のそれぞれこの三法案に対する率直な評価についてお伺いを最初にいたします。

渡辺参考人 御質問、ありがとうございます。お答えいたします。

 私の担当は、その中の一つであります、いわゆる食料供給困難事態の対策法でありますので、それに限ってのお答えになりますが、今、いろいろな参考人の意見を聞きまして、現場で非常に構造的な問題が多々あるというふうに認識しています。ただ、それはそれとして、今、大枠を決めておかないと、迫りくるリスクに対して対峙できないという状況も一方であります。

 ですので、今回、法案につきましては大きな枠組みで、これからそれが決まった後で実装するための具体的な議論が始まりますので、是非、この大枠については私も大変評価しておりますので、法案が成立した暁には、現場で抱えている構造的問題も解決しつつ、どのように実装していくかということを議論する。そのスタート地点としては大きな評価をしております。

 三つの中の一つだけですけれども、コメントさせていただきました。ありがとうございます。

平澤参考人 私の意見でございますけれども、まず、不測時の法律でございますけれども、やはり今作っておく必要があるのではないかと思っております。

 先ほどお話ししましたように、ほかの参考人の皆さんがおっしゃられるとおり、平時から農業生産を強化する、それは大変重要なんですけれども、最初にお話ししましたように、幾ら頑張っても農地が足らないという問題はどうにもならないわけでして、しかも、輸入も当てにならない、購買力も低下してくるということになりますと、やはりいつ不測の事態があってもおかしくない、それに応えられる体制を今つくっておくということは非常に重要であるということがまず第一であります。

 もう一つは、やはり今までアドバイザリーボードで演習などをしていますと、今の枠組みではやはり弱いなと。法律もないわけでありますし、あるいは、本当の重要な不測の事態を演習で扱えるかというと、そもそも農水省の管轄外ですということになっています。

 これではやはりおぼつかないですし、それ以外も順次いろいろな法律を発動するということになっていますけれども、帯に短したすきに長しということで、食料が何か問題があったときにきちんと対応できる状態が今我が国はないという感覚を非常に強く持っておりますので、是非、法律を、とにかくスピードを優先して作ってしまったらいいのではないかと。先ほどもお話が少しありましたけれども、運用はその後いかようにでもなると思いますので、まずは法的基礎を、第一歩を踏み出すということが大事ではないかと思っています。

 もう一つ、それと、農振法の方でありますけれども、やはり平時のところも大事ですので、まずは農地をきちんと維持していくということで、そちらの法制化も是非やったらいいのではないかというところでございます。

 以上です。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 三つの法案についてのそれぞれの評価といいますか、緊急事態は、これはやはり当然なんだろうと。今回の基本法の中に食料安全保障を位置づけた以上、それに対応する法律として必須の法律なのかなと。

 ただ、やはり、当然なんですけれども、現場なり国民に、まずは法律の内容がつまびらかになっていないということで、何かあらぬ誤解を招いているのではないか。もっと言えば、極端な生産転換を農家に強いて、これはえらいことになるんじゃないかというようなこともありますので、そういうことに対して丁寧な説明、コミュニケーションを徹底して取るということと、私以外の参考人の方が皆さんおっしゃられたように、平時が大事だということで、やはり、生産現場からすれば、安心して農業生産ができるということが最大限大事なのかな。そういうことが、農家の方が、農業者の方が農村で安心して農業経営ができるということが前提となって、この供給困難の法律に対する理解というものが深まるのかなと思います。

 農地関連はもう申したとおりでございます。

 スマートも、ある意味当然だとは思っているんですが、やはり農地をつかさどっている部署の人間として、当然、スマート農業をやっていく上で、圃場の均平であるとか集積、集約ということが必須になってくると思いますので、今日はなかなか申し上げられなかったんですが、所有者不明の農地でありますとか、あと、不在村の方に対する手当ても同時にしていかないと、幾らスマートで農業が合理的にできるようになっても、その舞台、舞台をそういうものが導入できるような整備も併せて行わないと、これはなかなか大変な問題なのではないかなと感じているところでございます。

堀井委員 それぞれ御意見、ありがとうございました。

 次に、食料供給困難緊急事態法の兆候が見られた際、農林水産省は、特定品目三種、二割減以上となった場合を兆候と定めるようでありますが、参考人の皆様方に、兆候の目安がこれでいいものなのか。私なんかは農地面積の減少や農業従事者の減少も加えるべきだという私的な考えもありますけれども、皆様方の兆候の目安があれば教えていただきたいと思います。

渡辺参考人 御質問ありがとうございます。

 そういう意味では、まずは、二割ということに関しましては、検討会で食品加工業であるとか生産業の方をお呼びして、大体勘どころとしてどれくらいか、つまり臨界点はどのくらいかという議論をしたときに、二割ぐらいまででしたら何とかできる、ただ、それを超すと難しいということで置いた数字でございます。

 ただ、先生がおっしゃるように、リスクとか事態の状況を一つのインデックスだけ見ていると、ほかのインデックス、指標が上がったときに見逃してしまって気づかぬうちに事態に入るということがありますので、今後は多分、今スタート地点としては二〇%減でありますけれども、農地の状況であったりとかほかのインデックスを、これは農水省の食料安全保障室の方でやはりインデックスを見ていく部隊がいますので、そこで何をもって見ていけばその兆候が見られたとするかということは、これから実運用のところで詰めるべきだと思っています。

 以上です。

平澤参考人 二割でいいかどうかということはともかくとして、一つの品目で二割ということであると、じゃ、全部の品目が輸入が止まったらどうなるんだということを考えると、それが一か月であってもなかなか大変な事態になると思うんですね。なので、当初、別に一品目二割ということで始めてもいいと思うんですけれども、実際に運用する段になれば、演習などでやれば、いや、もっと事態は複雑であるということは直ちに出てくるのではないかと思いますので、そういった対応は当然その後必要になってくるのではないかなと思います。

 ですから、そういった後づけでいろいろやる余地を残しておくようなことが望ましいであろうというふうに思うわけです。

 以上です。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 この事態法についてはややアウェーな感覚を持っておりまして、余り正確なリサーチをしておりませんが、そういう中で、耳学問として今聞いている中で、今回の二割の一つの目安として、平成五年の大冷害、あれが一つのイメージになるというような報道等には接したことがあるわけでございますが。

 やはり、こういう農業の現場で仕事をしておりまして、この兆候というワード自体、初めて接するということでございますので、先ほどの質問と同じことになろうかと思いますが、そういう兆候ということについても、具体的な例示なり、やはり現場に、兆候はこういうことであるとか例示なり定義づけということをしっかりコミュニケーションしていくということが大事なのかなと感じております。

堀井委員 それぞれお答えいただきまして、ありがとうございました。

 私はもう、現在の日本の状況ですが、既に兆候が始まっているんだと思っています。なかなか上がらない自給率、ロシア、ウクライナの情勢、中近東情勢、台湾情勢など、考慮すべき点は既に満載であります。

 世界の人口はこれから増加する、日本の人口は減少していくわけでありますけれども、法律施行後、発動すべき状況にすぐ陥っていくのではないかと。現在、六十五歳以上が七〇%。平成二十七年に百七十五万人いた農業従事者が、令和二年で百三十六万人、二二%減少し、二十年後には、昨日、大臣も御答弁ありましたけれども、三十万人になることが予測されているわけであります。こうした状況を鑑みたときには、この法律が、非常に素早く発動すべきものではないかなというふうに思っています。

 日本は、防衛予算に一年四兆円のことを決定し、子供、子育てに三兆円。今こそ、これまでの農林水産省の予算の幅を、増額をしっかり高めて、はるかに上回る予算を確保して、国内の農業の活性化を図るべきときではないかと思っております。これは私見であります。

 最後に、スマート農業についてお伺いをして終わりたいと思います。

 これまで、農水省、それぞれ農業者のための政策の推進が図られてまいりましたが、結局、農業者はどんどんと人口が、農業従事者が減少していったこととなりました。その際、受益者負担というものがあって、補助金や様々な予算とセットで政策が進められましたが、農業者に残ったものは、莫大な借金が残り、これでは農業を、子供や親戚同士、これを譲り合って、農業従事者を育てることはできないということで、なかなか離農する方が止められなかったわけであります。

 このスマート農業も非常にお金がかかる投資になってくる可能性がありますが、スマート農業推進には受益者負担を低く抑える必要性があると私は考えておりますが、スマート農業推進、二〇五〇年、農水省は五〇%と定めています。しかしながら、農業従事者が二十年後には三十万人になる可能性があると予測されているわけであります。

 この三十万人の方々全てに私はスマート農業推進をして、先ほど御意見もありましたけれども、農村とスマート農業をしっかり確保しながらこうしたものを進めていく必要性があると考えますが、皆様方の御知見をお聞かせいただければと思います。

渡辺参考人 御質問ありがとうございます。

 そういう意味では私はこの件に関してはそれこそアウェーでありますけれども、一応、工学部の教員でありますので、その観点から申し上げますと、やはり人材不足であったりとか効率性を上げるためには、テクノロジーの導入というのは不可欠であります。

 ただ、議員がおっしゃるとおり、過去も、コンバインを入れて、巨大なコンバインが納屋に残ってしまっている、借金が残るというような状態は過去ありましたので、それを解消するためには、私の冒頭の陳述で申し上げました、やはり社会インフラとして国が指定をして、農家の方々に負担を押しつけるのではなくて、そのプラットフォームについては国がちゃんと整備をする。例えばそのレンタルをしたりとか共有するようなシステムをつくって、データも標準化して、システムのプログラムについても共有化して、フリーで提供するとか、ある程度、国の重要なインフラというふうに指定されれば、それは国がある程度整備をしなきゃいけない段階になりますので、その上に乗っかって各農業者の方々がDXを推進する、多分こういう構図がない限り、個別に対して対処するのはなかなか限界かなと思いますので、その辺の配慮が必要かと思います。

 以上でございます。

平澤参考人 私も、スマート農業ということですと素人ですので、あくまでも印象をお話ししたいのですけれども。

 みどり戦略もそうですし、いろいろなものを見てみますと、スマート農業というと、やはり人手が足りないということで省力化が中心のように見受けられますけれども、これではなかなかリターンとしては魅力が足りないように、そういう印象を持っていました。

 やはりもっと、収量を上げるとか品質が上がるとか、もっとそっちにシフトしてもいいのではないかなと。省力化だけでは、それは人手が足りなくてということはあるんですけれども、使って直ちにリターンが上がるような技術も併せてやるべきではないかというのが私の印象でございます。

 以上です。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 スマート農業の今後の対応とかその財政的負担の問題については、二点、今思っていることがございます。

 一点は、それを実需者に全て転嫁するということではなく、やはり一種の社会インフラだと思いますので、それなりな公的な負担もあるべきなのかなと思う一方、先ほど渡辺参考人のお話があったかと思いますが、実需者、現場の農業者が全て負うということではなくて、リース方式なり、そういう供給する企業がまず受ける体制をしっかりつくるということも大事かと。

 今年の、先生方に御注力をいただきました令和六年度の税制改正要望の中にも、スマート農業の導入、みどり戦略の延長かと思いますけれども、税金の改正をしていただきましたけれども、公的な資金だけではなくて、そういう税制面での配慮というものはますます重要になってくるのではないかと思っております。

堀井委員 以上であります。

 ありがとうございました。終わります。

野中委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭でございます。

 本日は、参考人の先生方、本当に貴重な御意見をいただきまして、大変にありがとうございます。

 本日、時間の関係がございまして、全ての参考人の皆様方に質問できないことをお許しください。

 それでは、早速、質問の方に入りたいと思います。

 まず初めに、食料供給困難事態についてお伺いしたいと思います。

 先ほど来、皆様方からお話が出ておりますように、やはり今回は、平時からの備えが大切だということが一つでございます。

 しかし、私の場合は、日本のことを考えた場合に、やはりこの不測時の対応というのが、皆様方からもお話があったように、やはり民間の方にも少し突っ込んだ内容になってくることで、どこまでのところで、どのタイミングでギアを上げていくのかとか、そういったことなんかが非常に難しいというふうに思います。

 平澤先生からは、備蓄の取崩しから、輸入拡大、代替品目への切替え、何をどれだけ増産するのか、飼料米の食用化とか、様々な点について御指摘がございましたけれども、ここでやはり一番聞きたいのは、そういった非常に様々な困難なことが考えられるわけですけれども、この法案が通過した場合に、成立した場合に、やはり最も日本にとって困難な課題はどういったことが予測されるのかということについてお聞きしたい。

 また、やはり国民の皆様方へのしっかりとした説明が重要だと思うんですけれども、まず国民の皆様方にどういったことからしっかりと御説明していくというか、訴えていかなければならないのか。

 この二点につきまして、渡辺参考人と平澤参考人にお伺いしたいと思います。

渡辺参考人 御質問ありがとうございます。

 法案が成立した後の困難な状況というのは、実運用におきましては、私が冒頭で御指摘したように、実は、データを集めるにも標準化されていない。あるいは、実際に事態が進展した後の物を動かすときの、例えばロジスティクスの標準化がされていない、あるいは共有化がされていない。例えるならば、ある特定のメーカーさんに合わせたパレットで、トラックの中で混載できないとか、いろいろなプロセスも、そこしかできないようなプロセスになっているので、多分これが、法案が通って、例えば事態が進展して本部が立ち上がって、さあ、実際にオペレーションしようといったときに、そこに大きな課題が待ち受けています。

 ですので、先ほど先生が御指摘あったように、もし法案が通ってすぐその事態になったときに、本部が立ち上がってもなかなか事が進まない可能性がありますので、できれば、事態に進まずに本部が立ち上がることがちょっと後になるとすれば、その間に、平時に、データの標準化であるとか、あるいはロジスティクスの共有化というものを急ぎ進める。これは何も不測時のためというよりも、先ほど申し上げたように平時の効率性とかコスト削減につながりますので、そういった意味で、インセンティブを前面に出しながらその整備をした上で、これから来るであろう不測時に備える、これが重要かと思っております。

 あと、国民の皆様に対するコンセンサス、どのように周知をして納得をいただくかということですが、これは高橋参考人がおっしゃっていたように、都市部と地方の断絶の中で、今食べているものが、どのようなプロセスで、どんな苦労があってこっちに来ているか分からないのが特に都市部の人たちですので、やはりここは普及啓蒙で、我々の言葉で知的な脅しといいますけれども、今我が国はこういう状況であって、皆さんが食べているものはこんな状況で、こういう危機にさらされているということを上手にコミュニケーションする。これはリスクコミュニケーションです。

 余り脅かし過ぎると政府は何をやっているかという話になりますけれども、そうではなくて、今こういう情勢で、それぞれの個別最適を求めて、省庁であったり業者がこうやっているけれども、これから事態が進むとその個別最適では対応できないような事態に達しますので、これはオール・ジャパンで、国民の皆さんの理解等を含めて、省庁も含めて、全員で取り組むべき事態が来るということをうまく早急に理解いただくような普及啓蒙をしていただければと思います。

 以上でございます。

平澤参考人 最も困難な課題がどれかと言われるとちょっと選択に困りますので、私が多分重要になるだろうと思うことを幾つか申し上げます。

 一つは、やはり、事業者に計画を作ってくださいということになっているんですけれども、これは個々の事業者に丸投げということではなかなか難しいと思うんですよね。例えば、スイスの場合は、これは業界ごとにかなり任されていて、そこの中で判断をして、そこで決定したらば業界全体にお願いするというような、そんな体裁を取ったりしています。

 恐らく、日本の場合、例えば、今既に個々の農業者がこれぐらい物を作りますなんというのを出していますけれども、あれも実際には行政と農協のサポートを受けてやることが多いわけでありまして、農業者は恐らくそういう形でできるでしょう。それ以外の食品なりそういった業界のところも、やはり業界団体がありますので、そういったところを通じて平素から取組を考えていくというのが恐らく重要なステップになるであろうということであります。

 もう一つは国の側ですけれども、自分が見えている範囲で申し上げますと、やはり、ある程度省庁を横断した枠組みをつくるという話なんですが、やはり平素はある程度そういうことをやっておかないと、なかなかいきなりはできないということになると思います。

 農水省でやっているシミュレーション演習も、やはり回を重ねるごとにどんどん新しい課題が出てくる状況ですので、これが省庁をまたぐと更にいろいろな問題が出てくると思いますので、これはやはりきちんとふだんから枠組みをつくって動かしておくということが恐らく大切になるであろうということですね。なので、今回、新しい法律ですので、全てが新しい取組ということですので、やはりいろいろやっておくことはたくさんあるかなと思っています。

 最後、国民への説明ということですけれども、それは、やはり、そういった取組の進展をその都度きちんと伝えていくということで、最初のところをどうするかということはあるんですが、最初のところは、やはり昨今、ここ数年、非常に食の安全保障の議論が高まっていますので、そこにきちんと手を打っていきますという言い方をして、やることをやっていますということで、次々と、ここまで進みましたという言い方で言っていくということでいいのかなというふうに基本的には思っております。

 以上です。

山崎(正)委員 ありがとうございました。

 やはり、業界ごとの取組が必要であるというふうな話とか、省庁横断、また、シミュレーションごとに課題も出ているということなので、それをかなり繰り返してもらうことで精度が上がってくるということが分かりました。

 また、渡辺参考人の方は、そういうふうな、ちょっと先生の出した著書というか文章を見たときに、やはり当たり前のように食が届くんじゃないんだということで、地元食などの推奨なんかもされているということで、やはりきっちり今そういうことを説明していくことが価格転嫁にもつながっていくというふうに思いますので、また参考にしましてこれからこの法案の審議に臨んでまいりたいと思います。

 次に、しっかりと食料自給率を上げていくことがやはり大事だということは、あとの参考人の皆さん方からもあったと思うんですけれども、そのときに、しっかりと今農地を守って、農業が持続的に発展していくことが非常に重要だと思います。

 その点につきまして、次にお聞きしたいと思います。

 今後、大きく農業従事者が減少していく中で、農地を守り、日本の農業を持続させていくために、地域計画の目標地図に基づいて農地の集約化をこれから進めていくというか、今現在進めておるところでございます。地域計画の策定に当たっては、離農する農地の受皿の確保が最大の課題となっており、その対応として、みどりのシステム戦略に沿った有機農業や半農半X、副業経営等の多様な経営の参入を促進するとともに、地域の既存の農業者との共存が求められています。

 ただ、実際、今、地域計画を進めていますけれども、なかなか大変な思いをしていまして、その中で様々な御意見を聞く中では、やはり大規模にやられている方からすると、かなりお願いされて任されてきて大きくなっているんですけれども、集約化しようと思ってもなかなかその間、間にある半農半Xだったり様々な業態の方々がいて集約化しにくいという、なかなか大きな声では言えないんですけれども、そういった本音も聞こえてくるところでもございます。

 中では、しっかりとエリア分けしていく、半農半Xエリアとか、新規参入エリアであるとか、有機農業エリアとか、そういうエリア分けもやはり一つ考えられる有効な手段だとは思うんですけれども、そのエリア分けをやっていくのにもなかなか、この基盤整備の段階で実際苦しんでいるというのが私の地元なんかの皆様方からの声でもございます。

 例えば、私の地元なんかでは、十五ヘクタールのところの基盤整備を今計画して進めているんですけれども、やはり百人以上の地権者の方がいて、なかなかそこで進んでいかないということで、せっかくエリア分けを描いて今一生懸命進めて、国の方もかなりそれは突っ込んだ制度をつくってくださっていて、八〇%以上担い手に貸せば実質負担ゼロというふうなかなりいい制度なんですけれども、なかなか苦戦しているところでございます。

 そこで、地域計画におけるこれから集約化が非常に大事になっていく、それは現実的に人が少なくなっていく中でいかに担っていくかということでは、集約化も大事ですし、様々な形態の人とも一緒にやってもらうことが大事なんですけれども、この二つが調和していくために、具体的にどのように進めていくとこれがより早い段階でできるだけいい形になっていくのか。非常に難しい問題だと分かりながら、稲垣参考人と田代参考人にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

稲垣参考人 御質問どうもありがとうございます。

 今先生から御指摘を受けましたように、まさに今、地域計画の策定で現場が大変呻吟をしているところでございます。

 やはり、想定されていた話ですが、人がいないとか、作る者がいないとか、これはもう想定されていたものであるわけですが、それ以上に、ああやはりなと最近思い出したのは、農地を手放したい、それとあと所有者にアクセスできないというふうな話が出ておりますので、そういう今回の次の課題として、やはり農地の受皿の問題ということをいろいろな方面で考えていく必要があるのかなと思います。

 それから、先ほどの私の陳述の中でも申し上げましたが、やはり不在村地主に対する手当てというものを少し本格的にやっていく必要があるのではないか。

 やはり不在村地主の方は都市部にいらっしゃるわけですので、そういうところに不在村地主の方のアクセスポイントを設置して、やはり農地というものは大事に使っていくんだということの情報発信もそうですし。あと、よく農業委員会等でたまに受ける話としてあるのは、相続して俺は農地の所有者になったけれども、そんな農地、行ったこともなければ見たこともないみたいな。そういう対応について、相続土地国庫帰属法みたいな対応はしていただいているわけですけれども、やはり日常的に農地を持っているということを御理解いただいて、農地を有効活用していく必要があるということを発信できるポイント、農村には当然あるわけですけれども、例えば農村外でもそういうアプローチをするアクセスポイントが必要かなと思っている次第であります。

田代参考人 御質問どうもありがとうございました。

 法律事項ではないんですけれども、私としては、集約化ということについて、一つは、やはり地域計画のエリアの中の担い手同士の話合いが十分に進んでいないんじゃないか、担い手同士がどうも競争し合っていて、お互いに腹を割ってやろうよということがないとなかなか進まないなというふうに思っております。

 それから二点目に、先ほど多様な担い手ということが出てきましたけれども、これから、新基本法改正案が成立したとして、二〇二五年に新しい基本計画を作るわけで、その中で農業構造の展望を示すわけですね。やはり、農業構造の展望の中に多様な担い手をどういうふうな視野でもって位置づけるのかということは非常に重要な問題になってくるんじゃないかと思いますので、そこを具体化してほしいと思っております。

 三点目なんですけれども、実は、新基本法改正案では、集落営農だとか、あるいは高齢者だとか女性だとか、こういうところについては全く改正がないんですね。だけれども、やはり今一番必要なのは、集落営農法人をどうしていくかだとか、高齢者だとか、やはり多様な担い手についてもっと支援をするようなことが法律に書き込まれるべきじゃなかったかなというふうに思うんです。特に、やはり集落営農法人につきまして、今、西日本を始めとして集落営農が成り立たない。どうしても、これを広域化していく、それから地域計画も広域化していくということが必要になってくるんですね。

 そのときに、私の調査では、自治体職員が非常に先頭になって。やはり村と村との間の話合いというのは、なかなか村同士はできないんですよ。そこをやはり自治体職員だとか農協職員がサポートしていって、仲人役になっていく。そのために、自治体の農業関係職員の数ががたがたと減っていますので、ここにやはり歯止めをかけて、全国町村会がおっしゃったような、一定の交付金を出すとかして、何とか集約化、サポート役としての自治体職員の手当てということがやはり必要じゃないかなというふうに思っております。

 以上です。

山崎(正)委員 済みません、まだまだ質問したいことがあったんですけれども、時間が来ましたので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 立憲民主党の近藤和也でございます。

 各参考人の皆様から貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 皆様からは、現状における危機意識の強さ、これは全ての参考人の皆様には共通のことであったのかなというふうにも感じましたし、全国民の皆様に現状の厳しさをいかに理解をしていただくことが重要か、こういったことも私も先ほど感じさせていただきました。

 そこで、まずは、渡辺参考人、平澤参考人、田代参考人にお伺いをいたします。

 現状が危機的な状況に近い、この認識は共通だとは思いますが、今後の食料供給困難事態対策法における、平時と不測時においてですけれども、特に、市場原理、市場万能、市場経済と農政とのバランスというのは非常に難しいものがあるのではないかなというふうに思います。

 そこで、平時と不測時におけるバランスのシフトの在り方、このままでいいのか、若しくは、比重を大きく変えるべきであるということなのか、この点について、お三方にお伺いをしたいと思います。

渡辺参考人 御質問ありがとうございます。

 確かに、今回の、事態の進展に伴う体制をどのようにモードを変換していくかというところで、特に平時とそれから兆候段階というのは非常に大きな断絶といいますか、ステップがあります。

 基本的に平時の場合には当然市場原理が優先されますけれども、兆候が見えた段階には本部が立ち上がり、そこでは、まだ市場原理が優先というふうに私は考えます。ただし、そこでは、いつ何どき、その市場原理を、ある程度その限界が見えた段階で政府が介入してきて、介入という言葉はよくないですかね、関与して、その統制を国がやるというようなことになると、いきなりは無理で難しいんですね。そういう意味では、兆候段階で、本部が立ち上がった段階で民間企業はスタンバイする。つまり、モードが変換されて、指揮命令系統を変えるためのスタンバイモードに入るということになります。

 ここで重要なのは、更にそれが未来永劫続く、あるいは、その先に進むというよりも、もし、事態が解消されれば、政府の方で公示なりなんなりで、これは解消されたので元の平時に戻りますということをちゃんと宣言するということですね。

 ですので、平時から兆候に対する大きなところについての明確なクライテリアと、そのときに何をもってそういう判断をするかということは、これは企業とそれから政府と、十分な会話、対話を進めた上でコンセンサスを得ておかないと、何だ今、何でそうなのかということで、そこで判断のずれが生じますと大きく全体の枠組みを狂わすことになりますので、そこについてはこれから慎重な議論が必要かと思います。

 以上です。

平澤参考人 私の考えでは、まさにそこのシフトを余り滞りなくできるようにするというのが今回の法律の大きな目的の一つではないかと思っています。

 やはり、不測時に一体何が行われるのか分からないという状態で不測時を迎えるということは避けるべきなんですね。民間は民間でやるべきことがありますから、不測時にこういう制度になるんだと分かっていれば、ふだんから自発的に備えるということも可能になりますので、それによって、あらかじめそうやって情報を出していくことによって、おのずとその準備ができるということがまずは望ましいと思うわけですね。

 あとは、実際、いつ、どの程度、ブレーキなりアクセルを踏むかというのは恐らく難しくて。というのは、不測の事態はまさに不測なので、その先どうなるかは、多分、その時点でも皆さん、誰にも分からないということなので、それはその時々で判断をしながらということなので、シフトということは非常に難しくて、恐らく、事態が実際に発生してから考える面も多々出てくるのだろうと思います。

 ただ、その不確実性を減じるためには、あらかじめ制度が決まっていること、民間も備えができていること、あるいは演習をしておくことといったことになるのかと思っています。

 以上です。

田代参考人 御指摘のとおり、日本は言うまでもなく市場経済国ですから、やはり不測の事態といっても、そこに国家がどれだけ関与できるかということは、これは原理原則的な問題だと思うんですね。

 私はやはり、その間のバランスを取るのは、国家の出動、権力的な出動といったときに、生産計画を立てなければ二十万円以下の罰則、これは刑事罰ですから、非常に厳しいですよね、警察が介入するわけですから。それと、生産計画の変更をしなかった場合には名前を公表するということですけれども、最近のいろいろなニュースを見ていても、ちょっと公表をしたりしたらネットで非常にたたかれるだとか、社会的制裁としては、二十万円以下の罰金よりも、むしろきつい感じもするわけですね。

 そういうことを考えますと、結論的に、市場経済国における国家の介入の仕方として、罰則でがりがりやっていくのか、それともインセンティブでやっていくのかということで考えると、やはりインセンティブに重点を置いた方がいいなと。

 何よりも、不測事態においても、農業生産者に、国民が飢えている、何とか我々も頑張ろうという気持ちを出してもらうのが一番大切なのであって、そのときに罰則でそうするんじゃなくて、やはりインセンティブだなというふうに考えております。

 以上です。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 あめとむちのような状況で、現状でも農業をやめたがっている方がたくさんいらっしゃる。私の近所でも、私の親戚でも、田んぼを誰かもらってくれないかと言っても田んぼをもらってくれる人がいない、道路などができたら運がよかったというようなのが現状でございます。

 そこで、先ほど刑事罰のこともお話として出ました。正直、資本主義の国において、ただでさえもうかっていない農家の方々に刑事罰を設けるということはいかがかというふうには思います。ただ、何らかの形でお願いをしないことには国民を救うことはできない、これも両方あるのだというふうに思います。

 この点で、先ほどのお三方にお伺いいたしたいと思いますが、この刑事罰の在り方について、我々は、刑事罰でなくて過料を。若しくは、やはり刑事罰ではなくて、そもそもがインセンティブをしっかりと今のうちに明示しておくべきだ。更に申し上げれば、現状でも、平時とはいいながら危機的な状況だと思います。

 現状でもこのインセンティブを更に加えていくべきではないかということについて、この点では市場経済と少し反する部分はあるんですけれども、この点についてお三方にお伺いをしたいと思います。

渡辺参考人 大変重要な御指摘だと思います。

 そういう意味では、今回の枠組みを推進するためには、まさに議員がおっしゃったあめとむちが必要です。

 今回の場合には、特に、ちゃんとやる方に対してはインセンティブを与え、そうじゃない方についてはある程度一定の刑罰にならないと何が困るかといいますと、これから起こることに対して今現状がどうなのか、どういうふうにできるかというキャパシティーを見誤ると、政府の判断が、結局、そのとばっちりがまた農業者の方に行きますので、ここは正確な情報をありのままに出していただくということをやっていただくために、ただ、こういう話になりますと一定程度そうじゃない方々もいらっしゃるので、牽制する部分はある程度入れなきゃいけないと思います。

 例えば、できることをできない、あるいは、できないことをできる、この場合は余りないと思いますけれども、その誤差が多いと状況判断を誤りますので、例えば、想定される事態が、実はそうでないにもかかわらず、緊急事態の方に移ってしまう。あるいは、過小評価で数字が上がってくると、緊急事態に移るべきタイミングを逃すということになりますので、ここはお互いの信頼関係に基づくということが大前提でありますけれども、ありのままを、あるべきところを出してくる。ただ、先ほど委員の先生方、あるいは参考人の皆さんからありましたように、そこに負荷がかかるとよくありません。

 ですので、簡便な方法で、あるいは組合がまとめた形で上げてくる。なるべく負荷をかけずに簡単にやって、その計画自体は、農業者の皆さんにとっても、自分たちの経営の効率とかを判断するために必要な数字ですので、負担のかからない形で素の情報をいかに上げてくるかというところのアクセルとしては、インセンティブ。

 ただ、そうじゃない方々のノイズが発生することを避けるために、ある程度の懲罰は必要だというふうに私は考えております。

 以上です。

平澤参考人 日本の農業が今非常にうまくいっていないというのは事実であります。

 先進国の農業政策というのは、そもそも市場経済の否定という面がかなりございます。市場経済に任せるとどうなるかというと、オーストラリアのように極端に土地の多い国が大々的に輸出をして、アメリカも競り負ける、そういう世界になります。そういうわけにはいかないので、各国とも、競争力の弱さに応じて何らかの政策で農業保護をするというのが実態でありまして、日本は、かなり弱いので大分やっていますけれども、やはり貿易自由化をするとだんだん競り負けてしまうという状況なわけですね。

 だから、市場経済に任せると食料生産はなくなってしまうというのが土地の少ない国の実情なので、それをちゃんと補整していくというのは政策の役割ということであります。

 ただ、今のお話ですと、農家は大変だからということで、それはそうなんですけれども、それは平時の政策の分野だと私は思うわけですね。不測時の対策ということであれば、例えば、農家は大変といっても、不測時に本当に農産物の値段はどうなるのか。マーケットに任せれば、かなり上がるはずです。ですから、そのときの罰則というのはそれなりに合理性があるかもしれない。

 厳しいことを言うようですけれども、私が何でこんな言い方をするかというと、外国の例を見ているからでして、スイスの場合ですと、これはもっと厳しいです。懲役ないし禁錮三年以下です。それに加えて、違反によって得た収益は全部没収になります。それは、やはり不測時ですので、そのときに食料が行き渡らないようなことをすれば、それなりに社会的な制裁を受けるということだと思っています。

 気をつけないといけないのは、それとふだん農業生産がままならないというのは全く別の話でありまして、それは基本法の方でしっかりと手当てをしていかないといけないということだと思っております。

 以上です。

田代参考人 先ほど来申しましたように、私は、やはり要請という形を取っていくべきだと。

 ただ、この法案では出荷と販売と生産とが全部並びでもって書かれているわけですけれども、そう言っては失礼なこともあるかも分かりませんけれども、出荷、販売と生産とはやはりやや違う局面があるんじゃないか。私は、生産については、せいぜい要請だなというふうに思っております。

 ただ、要請の在り方として、法案にもやや書かれておりますけれども、農協だとか農業委員会だとか自治体だとか、こういうところにもやはり協力要請を行うような、やはり要請の範囲を広めていくということが必要じゃないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 最後になります。

 皆様からお話を伺う中で、お金も足りない、人も足りない、その中で、高橋参考人からは、やはり情熱や国家観、こういったものも大変重要だ、そしてまた、国民の理解、納税者の方々の理解も大変重要だということも感じました。

 そこで、能登半島地震で高橋参考人は関わっていただいております。能登半島復興の中で農業、漁業の復興というのは大変重要になります。そして、能登が復興すれば、日本の農業の復興のモデルになるのではないかというふうに思います。今、もし権限、財源があれば、これを農政において実現をしてみたいということがあれば教えていただければと思います。

高橋参考人 ありがとうございます。

 能登は高齢化率四九%ですので、十三年前の三陸どころではないところが今回被災をしたわけで、能登の何を残すかは日本の未来に何を残すかと直結すると僕は思っています。

 今の先生の御質問にお答えすると、ちょうど今、多様な担い手をまさに農村の維持のために様々な形で受け入れていくということが基本法の方でもうたわれているので、その先進地に能登がなったらいいんじゃないのかなと思っていて。今回、広域避難で、能登の農地の九五%は田んぼですけれども、なかなか、人夫というか、作業される方の確保にも難儀しているところがある。石川県も今農業ボランティアを集めていますけれども、やはり多くの人が今能登に関わろうとしていても、どう関わっていいか分からないというふん詰まりを起こしているところもまだまだある。やはりそこは、定期的に関わってくれる人たちが来るために、必要な旅費等を含めて、まさに全国各地が問われていることを能登が先取りして、多様な担い手が継続的にその地域の維持のために関わるスキームを、是非こういうところでこそつくるべきなんじゃないのかなというふうに感じています。

近藤(和)委員 どうもありがとうございました。

野中委員長 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会・教育無償化を実現する合同会派の掘井健智でございます。

 参考人の皆様、本日、わざわざ農水委員会にお越しいただきまして、ありがとうございます。

 今日は、皆様に質問をしたいところでありますけれども、時間がもし来ましたら、絞って質問したいと思っております。

 今日は、環境と食料の安全保障の観点から質問したいと思います。

 渡辺参考人に質問したいと思うんですけれども、先生は、農水省の食料安全保障の検討会の座長もされておられます。そういうことで、食料の安全保障についての多くの意見をまとめてこられたと思いますけれども、新型コロナ感染症が世界に拡大することで、サプライチェーンが停滞して、物やサービスの供給が止まったわけでありますけれども、意外とというか、やはりといいますか、世界中のものが何でも手に入るこのネットワークの社会が脆弱であるということが分かったわけでありますが、これから、こういった中で、国の役割、また企業の、生産側の役割がありますけれども、消費者の役割について伺いたいと思います。

 渡辺参考人は、食料の安全保障には消費者の意識、行動の変革が重要であるということに触れられております。消費者の役割として、グローバルなサプライチェーンから地産地消の観点をもっと持って、我慢ではなくて地元の食を楽しむことが必要である、こう話されておられます。

 有識者会議の中で、もし行われておるならばどのような議論が行われたのであるか、また、消費者の意識、行動に対しての御所見を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、古川(康)委員長代理着席〕

渡辺参考人 御質問ありがとうございます。

 消費者の意識改革であるとか対応の変革につきましては検討会の範疇ではなかったんですが、当然、我々が議論した枠組みというのは、最終的に消費者のためにということもあります、あるいは国民のためにということでありますので、そこでの本丸の議論ではなかったんですけれども。

 そこで出てきたのは、やはり、今議員がおっしゃったような、サプライチェーンを、こういう言葉が妥当かどうか、ぶん回すという言い方が妥当か分かりませんが、最大限に活用して。ただ、最大限に活用している今の状態というのは、コンテナも貨物も輸送も全部ぱんぱんの状態であります。それが、例えば災害とか地政学リスクがあると連鎖的に止まっていく。この極めて脆弱なサプライチェーンに乗っかっていて楽しんでいる食を、本当にそれでいいんだろうかということは、もちろん、お金のある方はいつでも好きなときに好きなものが食べられるということはあるんですけれども、そうではない世界を、ちゃんと地元のものを楽しんで、取れなければ今年はいいかなと、違うものを食べる。つまり、地元の食を楽しむことをやることが、地産地消のサイクルが始まる。

 大きな災害時にも、結局、救援物資を待っているのではなくて、地元のそのときに残ったもの、あるいは取れるもので回していく。これは、新潟県中越地震でも弁当プロジェクトがありました。つまり、支援物資が届く前に、地元で取れる食材でお弁当を作って煮炊きをする、米どころですのでお米はたくさんありますので。それに対して政府がその補助をするという形で、災害時においてもいかに早く地元の経済サイクルを回し始めるか。それは突然できるわけでもないので、常日頃から地元の地産地消を楽しむ、地元は地元のものを楽しむ、食べたければ移動していくというようなことを含めてやっていただくこと。

 これは、今回の枠組みとは、本丸の議論ではなかったんですけれども、最終的にはそこを押さえないと、つまり、必要以上に事態に陥る可能性が今高い状態ですので、事態を事態にしなくするためには、そういった地産地消のサイクルを回して、地元のものをもっと食べながら回していくということが必要だというふうに考えています。

 そういう意味では、本丸の議論ではありませんけれども、外野とか、外側の議論ではそういうこともあったということを御紹介させていただきます。

 以上でございます。

掘井委員 ありがとうございます。

 農水委員会の中でもそういう議論というのはなかなか深まらないわけでありますけれども、そういう観点は、日本全体として、そういう覚悟というか、そういう方向にやはり意識を持っていくということが非常に大事であると思っております。なかなか意識づけというのは難しいのでありますけれども。

 次の質問に移ります。田澤参考人に質問いたします。

 田澤参考人が経営されておられますエシカルバンブーさんは、地域の山で放置された竹害の問題、これを、発想を転換して、逆に、早く成長する竹の特性を生かしたものを製品化してきたということであります。商品には、原料の天然資源だけではなくて、製造工程にも化学物質が使われていないということを伺っております。この循環型産業への取組は非常に評価されたということで、環境省の環境と社会をよくする取組を表彰するグッドライフアワード、環境大臣賞を受賞されたということであります。

 先ほど、食料の安全保障においての消費者の役割について伺いましたけれども、消費者の意識は、やはり自分たちが住んでいるところから始まっていくと思うんです。これから食料の安全保障を考えたときに、国内生産をどうやって広げていくかが課題になってくると思うんですけれども、それには、地産地消とか、また、環境と食、循環型社会を地域の中でつくっていく、こういうことが非常に大事であると思っております。

 事業を通じて何か今のキーワードで気づいたことがあれば、教えていただきたいと思います。

田澤参考人 私自身が元々、どちらかというと、製造業ではなく、マーケティングやブランディングに従事していたんですけれども、先ほどの高橋参考人じゃないんですけれども、農業に関わる人が、農業だけではなく様々な知識を持っている人材がその地域に入り込んで、ブランドの基準でもあるんですけれども、若者、よそ者、ばか者じゃないんですけれども、私はよそ者であって、元々、竹に関するところは正直、ばかなぐらい研究をしているんですけれども、そういう人材が入ることで、私自身も地域にとって、入り込んで見えるものがたくさんありますし、地域の人たちも、自分たちの固執した考えの中ではなく、新しい考えとか新しい風とか仕組みを取り入れる要素がお互いに持てると思うんですね。

 ただ、その中で一番大きい要素でいうと、やはり民間企業ではできる範囲というのが限られています。昨年にヤマグチバンブーミッションというのを立ち上げたのも、地権者ですとかいろいろな人たちと協議をする上でも、その土地の所有者が分からない竹林なども多くありますので、そういう段階においては、行政と地域と民間と組んで、しっかりとした利活用を進めるための地盤づくりとなるプラットフォームの育成が重要であると考えています。

 以上です。

掘井委員 ありがとうございます。

 非常に分かりにくい部分もあるんですけれども、食料安全保障とみどり化の関係について教えていただきたいと思うんです。みどり化のお話をされたのは誰でしたっけ。まあ、いいです。先に質問します。

 海外では、食料安全保障の観点に、良質であることや食を守ること、環境を保護する農業への補助の観点から、環境戦略も安全保障に入っているということであります。日本のみどり戦略にも生産力の向上と環境との両立が明確には一応なっておるんですけれども、やはり海外と比べて欠けている、足らぬところがたくさんあると思うんです。

 みどり戦略に不足しているところ、このお考えをお聞かせいただきたいと思うんですけれども、稲垣参考人にお願いします。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 みどりのシステム戦略と食料安全保障なりの関係についてということでございますか。

 みどりのシステム戦略の問題は、もう一昨年ああいう形で法律が出て、今現場で進んでおりますし、あと、特に、今年からクロスコンプライアンスのようなことも始まっておりますので、やはり、こういうものをしっかり現場に浸透させていく上で、農業者に余り過度な負担にならないような点が大事かなというのが一点と、やはり、みどりのシステム戦略では、年数は忘れましたが、有機農業の面積を百万ヘクタールというすごく野心的な目標設定をされているわけですので、そういうものを進めていく上でも、農地の対応等も含めてしっかり取り組んでいく必要があるのかなと思っております。

 やはり、有機農業であるとか、環境に負荷を与えない、これは当然のことですけれども、それを、今なかなか生産性とか所得の上がっていない農家に過度に求めると、なかなか達成が大変なわけですので、その辺の理解を求めることと併せて取り組んでいく必要があるのかなと思っている次第であります。

    〔古川(康)委員長代理退席、委員長着席〕

掘井委員 ありがとうございます。

 次の質問なんですけれども、これは稲垣先生と田代先生に聞きたいと思います。

 日本の農業の競争力は非常に弱いわけでありますけれども、農地が不足しているために、土地利用型作物はもう米以外は輸入に頼っている、これは日本の課題でありますけれども、米は余っていても生産調整されており、兼業のために集積も進みにくいということであります。

 また、畜産は自由貿易の交渉で輸入の開放が進んで、また、青果も輸入自由化で国内生産が落ちました。これから輸入は、日本のプレゼンスが落ちてきたということから、リスクも高まっておるということであります。燃料を使う穀物の困難性もあります。パンデミックによるサプライチェーンの確保、これも心配であります。国内生産力の拡大というものが本当に課題であります。

 これは基本法で議論されたことでありますけれども、各国はやはり、直接支払い、この制度によって農業収入を補完して、そのための予算を十分に計上しております。これは、食料の安全保障というのがもう目前に迫っているからだと思うんです。一方、日本は、非常に金額を見ましても低い。農地、また農地をやっている農家の方を守れるのかな、こういう課題がつきまとうわけであります。

 特に、基本法の二項に、兼業農家さんもそこにどんどん入れていくということでありますから、この直接支払いという考え方が非常に重要になってくると思いますけれども、それぞれの御所見を伺いたいと思います。

稲垣参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 直接支払いの問題につきましては、もう既に、日本には中山間でありますとか多面的等の日本型の直接支払いの制度があるわけでして、当然に、今課題になっている問題を解決するには、これの拡充が必要であると思います。そのためには、やはり予算を確保していただくという、まさに政治の力に期待するところが大であるということを特に特に強く申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

田代参考人 先ほど申しましたように、新基本法改正案でも、合理的な費用、それを合理的な価格に反映させるというだけではどうも片がつかない、何らかのやはり直接支払い政策を考えなければならない。

 ただ、現状でも、共済とそれから補助金の農業所得に占める割合はかなりの程度に来ていますので、いろいろな創意工夫が必要だなと。余り細々した補助金ではなくて、やはり一括した形での直接支払いが必要になってくるなというふうに思っております。

掘井委員 ありがとうございます。

 以上で質問を終わります。

野中委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 参考人の皆さん、本日はどうもありがとうございます。

 最初に、田代参考人と平澤参考人にお尋ねをします。

 平素からの対応が大事なのは、これはもう論をまちません。そして生産の拡大、生産向上、そして自給率を高めていく、また国内生産を高めていくといったところで、考えなければならないのは輸入依存の問題であります。この輸入依存を制度で位置づけている数々の自由貿易協定、経済連携協定についてどのようにお考えでしょうか。

 田代先生は著作の中で、適切な国境措置というふうにも書かれています。そして、海外を含めた備蓄にも言及されています。是非、備蓄とか国境措置について、お考えをお示しいただければと思います。

田代参考人 国境措置をどうするかという、このことでありますけれども、非常に重要な問題で、できるならば、私は不測時にも備えて、不測時はやはり食料を輸入に依存しているからこそ起こってくる不測事態なのであって、そこをもっと高めるためには、やはり国内生産をもっと重視するということが必要だとは思っております。

 ただ、そうはいっても、既に国境措置については、いろいろな自由貿易協定で、国の間の約束でもって決めちゃっているので、これをまた覆すというのはなかなか困難なことだなというところに、今の日本の苦しみがあると思うんですね。ということで考えると、制度的には国境措置が低くなっていることを前提として、だからこそ国も力を入れて国内生産を高めていく、こういうことが必要かと思っております。

 先ほどいろいろな議員の先生方から消費者の理解も大切だという話もありましたけれども、例えばお米を取ってみると、やはり消費者の方々は米から離れていってパンに移っちゃっているということもあるわけであって、食料自給率というと、国内消費量を分母として国内生産量を分子とするわけですから、米の消費が減ってくれば、生産も減ってきて駄目になっちゃう。食料自給率を高めるためにも米をもっと大切にする必要があるんだよということを示すためにも、やはり食料自給率という言葉は非常に重要だと思うんですね。ところが、それがちょっとないがしろにされているのは非常に残念だと思っております。

 以上です。

平澤参考人 まさに、この間自給率が下がってきたのは、自由貿易を進める過程でどんどん下がってきたわけで、もう何度かるるお話ししているように、農地が少ない、つまり競争力の少ない国が貿易を自由化すれば、農地を集約的に使う農業という産業は縮小していく、これが経済学の理論なわけであります。

 一方で、自由貿易を我が国は選択していくということであれば、政策で農業の方をいかに支えていくかという、それをセットでやらないといけないということでありまして、残念ながら、今のところ、やや予算が足りないのか、農業の方は縮小が続いているということです。

 これまでは、そこの自由貿易で乗り切ればよくて、輸入すればいいではないかということであったわけですが、肝腎の払うお金がだんだん寂しくなっているということであれば、やはり国内で守りを固めていくしかないということですので。一方で、国境を今更上げるということはそもそも国際ルール上難しいということであれば、やはり国内農業をいかに支えていくかということにならざるを得ない。

 そして、今日ずっと生産拡大の話が出ていますけれども、実際にはどんどん生産基盤が毀損している状態なわけでありまして、少なくともこれを底入れさせていかないといけないわけですよね。特に、人口が減るからある程度大丈夫ではないかということもあるんですが、今予想されている生産の減少の加速はそんなものではないわけであります。なので、何とか国内の生産を維持して、むしろ、人口が減少するにつれて人口一人当たりの農地が増えていくような、そういった政策が必要だということだと考えております。

 以上です。

田村(貴)委員 平澤先生がおっしゃった生産基盤の低下のところなんですけれども、平時から頑張っても農地が足りないということを強調されました。

 その農地については、農業基本法の論議の中で、大臣からは、農地は維持していくというお話がありました。農地を維持していくんですけれども、担い手についてはこの二十五年間で半減しました。農業従事者は、二〇四一年には三十万人に、今、百十六万人が三十万人に減るということを想定してやっていくというわけですね。

 私は、これではもう農業を維持できないというふうに思っていますが、担い手を増やすための基本的な対応、対策について、先生の御所見をお聞かせいただければと思います。同じ質問を田代参考人にもお願いします。

平澤参考人 幾つかあると思いますけれども、やることはシンプルでありまして、やはり、国境で守るか、あるいは所得を支えるか、いずれかしかないわけでありまして、国境を開く以上、そこは所得で補填していくということしかありません。

 特に、今、自給率が問題になっているのは、例えば若い人が就農するといっても、ほとんどがみんな野菜を作ってしまうわけですよね。お米を作る人がいない。あるいは、それ以外もですけれども、いわゆる土地利用型と言われるような、穀物を作ってももうからないので、そこからどんどん人が抜けていって、やる人がいなくなってということなので、そちらの方をある程度重点化していくということをやらないとやはり農地の維持はできないということだと思いますので、そこが大きな課題だと思います。

 問題は、結局、農業政策は、農家が食べていけないといけないので、そうすると、もうかる方へ誘導ということをすると、日本では農地をいっぱい使うものほど競争力が低いですから、そうすると、農地を節約するような園芸の方にどうしても行ってしまうんですよね。そっちがもうかるということです。ただ、それをやっているとどんどん土地利用部門から撤退してしまうことになりかねないので、そこのバランスをきちんと取っていくということをやっていかなければいけないということだと思っています。

 以上です。

田代参考人 まず、三十万人という言葉なんですけれども、これが独り歩きしているんですね。三十万人というのは、昔の言葉で言えば基幹的農業就業人口のことであって、要するに農業を主としてやっている人の数なわけですよね。だけれども、今考えていることは、農業を主としている人じゃなくて、半農半Xだとか副業的農家だとか、いろいろな方が一緒になって頑張ろうということなので、そこも含めた数がやはり必要だと思うんですね。

 さはさりながら、やはり今一番重要なことは、非常に農地について強調されましたけれども、私は、耕す人といいますか、新規就農者というか、やはりこれの歓迎体制をもっともっと整えていく必要があるんじゃないか。

 今、農の雇用事業だとか青年の就農対策だとか、いろいろな手当ては結構されております。しかし、それだけではやはり足りなくて、集落営農法人が自分で雇って将来の地域の担い手を育てていくだとか、農協がやるだとか、いろいろな目に見えない費用もかかっておりますので、その辺も含めて、やはり新規就農対策にもっともっと力を入れていただきたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 続いて、食料供給困難事態対策法についてお伺いします。稲垣参考人、それから高橋参考人にお尋ねします。

 法案では、食料供給困難事態になったときに、事業者に対して要請から指示に切り替わり、計画を出すことが強制されます。そして、生産計画で全体量が不足するとなったら、今度は増産が指示され、増産計画を出さなかったら罰則、罰金が科せられます。さらに、計画どおりに生産しなかったら公表される。社会的制裁を含む、私権に踏み込む重大な規定が入っています。これについて、いかがお考えでしょうか。率直なところで御意見を聞かせていただきたいと思います。

 まず、稲垣参考人、農業会議所の全国の皆さんにまだ知れ渡っていない、説明する必要があるというふうに先ほどお述べになりましたけれども、全国の委員さんからどのような感想とか、また要望が寄せられているでしょうか。

 高橋参考人は、全国の農業者、東北、岩手の農業者の方をずっと見ておられますけれども、そういう声を聞かれているでしょうか。いかがでしょうか。

稲垣参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 供給困難事態の法案について、このことについて組織討議ということをしたことはないんですが、公式、非公式、いろいろな農業者の方と会うと、やはり、いささかびっくりしているというのが偽らざる実感なのかなと。

 ただ、一方で、今回の基本法の改正で食料安全保障ということを打ち出した以上、それに対応する法律の整備ということは当然なのかなと思いますが、まさに今日多くの参考人の方がおっしゃっておられましたように、やはり、そういうものを本当に危機になったときに発動できる農業構造をちゃんとつくっていくということが改めて本当に大事なのかなと。そこがしっかりしていれば、また、そこがしっかりしていないと、こういう法律を作ってもそれを動かすことができないのではないか。また、せっかく法律を作っても、想定していなかったようなビヘービアということになるのではないか。

 同じことを繰り返しますが、やはり、こういう法律を作る以上は、平時からしっかりと農業者の方が、また地域が安心して農業に取り組めて、また、地域が振興できているという基盤があって初めて、この事態法案がしっかり動いていくのだろう。ですから、そこができれば農業者の受け止め方も全然変わってくるのではないか。そこがおろそかになっていたり、また、農業者なり地域が所得の向上であるとか地域の振興が実感できない中でこういうものが起きていけば、それはまた厳しい反応が出てくるのではないかなと思う次第でございます。

高橋参考人 有事に私権に踏み込むということができる前提として、やはり、平時に日本の食を担っているんだという社会的なリスペクトを今の農家さんたちが得られているか。親が農家だということを上京してきて恥ずかしくて言えない、あるいは、子供に農業をやれというのを言えない、こういう現状なわけですね。

 やはり、皆さん、農業は大切な仕事だと消費者も含めて言うんだけれども、じゃ、あんたがやるかというと、やらない。だったら、やっている人たちがちゃんと胸を張って食っていける値段で買うかというと、買わない。これはある意味で文化継承を強いる社会的圧力だとも思っていて、やはり、平時において、本当に、消費者を含めて、一次産業を担っている人たちが社会からリスペクトされて、胸を張っていけるような仕事で初めて、有事になったときに、よし、それなら皆さんの期待に応えてやるぞということが成り立つと思うので、やはり平時が問われていると思います。

田村(貴)委員 田代先生からは、生産の促進には北風、罰則よりも、太陽、インセンティブが必要だという指摘がありました。

 そこで、平時の低農業所得の問題について触れられました。時給が全国平均で千円を超えて千四円、そして全経営体で平均で一時間三百七十九円と、最低賃金にも及ばない今の農家の状況の中で、罰則ばかり強調されても、これは私は納得いく話ではないというふうにも思っています。

 田代参考人からは、このインセンティブとして直接支払い対策が必要だという御指摘がありました。そして、先ほど平澤参考人からも、やはり所得を支えていくということが必要だというふうに思いました。

 日頃生産しても生計が維持できないという農家が大半な中で、農業の経営維持に対して何が必要か、所得対策に何が必要だということを、最後、渡辺参考人、お願いします。

渡辺参考人 私でよろしいでしょうか。そういう意味では少し変化球が飛んできたと思いますけれども。

 まさに、今の法案というのは、まだそれの認識がない農業者の皆様方にこれをお願いすることになりますけれども、ただ、お願いする皆様方が今脆弱なところであるとすれば、それは多分、基本法の方で、基盤の整備とか強化というところで拾っていただきたいと思います。

 それはそれとして、事態が進展したときに、生産者の皆様方は、政府の指示で動くというよりも、当事者である、主体であるということを認識いただきたい。その背景には、高橋参考人がおっしゃった、そもそもの平時の農業に対するリスペクトが必要である。多分、これも基本法のところでやっていただくべきことかと思うんですけれども。

 ただ、だからといって、今の有事あるいは不測時に対しての仕組みに対して、余り現場に圧力をかけてはいけないという議論にはならないかなと思います。ですので、それは、粛々とこれから対話を重ねることによって、お互い信頼感を持って、これは国の不測時であるので、これは政府であろうと生産者であろうと、対等なパートナーとしてやっていくべきだということで御理解いただくことが必要かなと思っております。

 ですので、基盤整備の方については、あるいは収益性については基本法の方で拾っていただきながら、不測時に対しては、これはもうオール・ジャパンでやるときには対等なパートナーとしてやっていただく。こんな対話と信頼感の醸成が必要かと思います。

 以上でございます。

田村(貴)委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。

 終わります。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 まずは高橋参考人に伺いたいと思います。

 事前に高橋参考人の資料が、参考人の皆様の資料が配付されているので、これは皆さん読んでいるものなんですけれども、高橋さんの会社、雨風太陽は、昨年十二月に東証グロース市場に上場をしました。都市と地方をかき混ぜるをミッションに掲げまして、上場に当たっては、利益の創出と社会課題の解決を両輪で目指すインパクトIPOで上場されたわけですが、その際に起きたことについて私は驚きを持っているんですね。

 十二月十八日に上場するというニュースが高橋さんの出身地の岩手日報の一面で報じられた際に、株なんて買ったことがないけれども、応援したいから株を買わせてくれという漁師さんから電話がかかってきた。そんな農家さんからも連絡があって、上場によって農家や漁師が雨風太陽の株主になったということなんですね。

 先ほど高橋さんから食料安全保障について、また食料供給困難事態対策法案について、最後の一手の前の平時の対応や関係が重要だというお話がありましたが、まさに象徴している出来事だなと私は思ったわけでございます。

 私たち消費者が日頃から生産者に寄り添っていれば、食料供給困難事態にも生産者は消費者のために腕をまくってくれたり一肌脱ごうとなるはずですが、平時から生産者の作るものを安く買いたたいていたり、ただ都合がいいだけの関係になる、それではいけないということをこの高橋さんの上場のエピソードから感じ取るわけなんですけれども、この点について、高橋さんがよりお伝えしたいことがありましたら、もう一度聞かせていただけますでしょうか。

高橋参考人 ありがとうございます。

 知らない人が作ったものというのは僕も買いたたけるんですよ、安く買えるんですけれども、知っている人や友達が作っているものというのは言い値で買いたくなるのがやはり人だと思うんですね。

 今、この完成された消費社会で食べ物の裏側から完全に切り離されているので、我々消費者が得られる情報というのは、値段、見た目、食味、カロリー、全て消費領域の情報です。

 僕もこんな偉そうなことを言っているけれども、スーパーに行くと、やはり安いものを探しているんですよ。それは、それしか情報がないので、消費者高橋博之としての合理的な行動は費用対効果の最大化ですから、できるだけ安いコストでたくさんのものを得ようと、僕だけじゃなくて多くの消費者、国民がしてきた結果、気づけば外国産の農産物、海産物、畜産物が日本の食卓とレストランを席巻し、その裏側で地方の国産の生産をしてきている農村、漁村が今衰退をしているということなので、誰が悪いということじゃなくて、みんな、消費というのは選挙と一緒ですから、どういう事や物、その集合体としての社会を次世代に残すかという意思表示を皆がしてきた結果が今の社会だと思うので。

 僕は、違う選択肢、未来を変えられる選択肢があるということに気づいて、それは、食べ物の裏側にいる生身の生産者、農家と漁師、これを知ると、もう一つの人格が発動して、受贈的人格というんですけれども、これが発動すると、その生産者の生きざまだったり、哲学だったり、守ろうとしている価値に共感をした人は、多少スーパーより高くてもその人の言い値で買おうという人格が発動する。その選択肢を示せば未来は変えられるはずだということで、これまで見えない生産者を可視化して消費者とつなげるということをしてきたので、これをとにかくこれから先も続けていくことが未来を変える道だと思ってやっています。

長友委員 消費は選挙だという、私たちには非常に胸に刺さるキーワードが出てきたわけなんですけれども、非常に大事な指摘をいただいたというふうに思っております。

 続きまして、農地の確保について伺います。

 農業振興地域の整備について、また農地の確保について、全国農業会議所の稲垣専務理事からお話がありました。農地の管理は集落営農法人でやってきたわけですけれども、もうそれが成り立たないという状況になってきている。さらに、各地の自治体職員や農協職員も減っている中で、関係人口の取組が重要ということも稲垣さんからのお言葉の中にありました。実は、この関係人口という言葉は、高橋さんが提唱してきた一人でもございます。

 まずは高橋さんにお伺いしたいんですが、これからの農地の確保や農業振興地域の整備は、どのような形で取り組んでいくことが重要だと思いますでしょうか。ふだんから農村に入られている高橋さんが考える農地の守り方について、また、これからの農業委員会の在り方についても、もし御意見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。

高橋参考人 江戸時代、日本は三千万人で、それが一億三千万人になったら中山間地が過疎になったという、おい、どこに行ったんだという話で。七割の中山間地から三割の平地に皆が出ていって、都市に集中して、中山間地が過疎になっているということなんですけれども。

 僕は、やはり平場の農業はドローンを飛ばして生産性を高める農業を追求すればいいと思うんですが、中山間地の農地の保全に関しては、もはや、行けば分かるけれども、集約化といっても条件不利地域は日本は多いですから、ここにいる人たちだけでやれというのは酷ですよ。行けば分かる。

 なので、いわゆる多面的機能と一言で言ってしまえば身も蓋もありませんが、あれは別にそこに住んでいる人のためだけのものではなくて、多くの都市住民、僕、冒頭説明しましたけれども、今、帰るふるさとがないという都市住民が多いので、子供たちも夏休みにやっていることといったらユーチューブと塾とゲームみたいな。だから、都市で得難い教育的価値を提供できる空間がやはり中山間地にあるので、そういう形で、農地ということでもいいし、体験する空間としてでもいいし、都市の人たちに対していわば開放していくことで、そこを都市の人も含めて一緒に保全をしていくということは十分やれると思う。

 ヨーロッパは、一九六〇年代に労働時間の短縮運動を各国でしています。日本で言う働き方改革ですよ。自由時間を手にした都市住民はどこに行ったかというと、農村、漁村ですよ。一週間、バカンスをやっているわけですよ。そこで創作活動をしたり、生産活動を手伝ったり、ワインを飲んで農家と交流し、心身共にリフレッシュをして、農家にお金を払って都市に帰っていくということを、まあ、イタリアなんかが先進地ですが、日本もそういう形で、これからの農家は、漁師も、作物を作るだけで収入を得るのは半分、あと半分はやはり場を、都市の人たちは価値を感じるところにお金を払うので、場を開放して提供することで半分収入を得ていく。まさにイタリアがそうですけれども。

 そうすることで、農業に対する理解も広まって、適正価格にもつながっていくと思いますし、ひいては足腰の強い食料安全保障をつくっていくことにも僕はつながっていくんじゃないのかなと思っています。

長友委員 高橋さん、ありがとうございます。

 稲垣参考人、今の高橋さんのお話を聞いて、農地の守り方という部分でどのような見解をお持ちでしょうか。お聞かせいただくことはできますでしょうか。

稲垣参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 先ほど集落営農の、ちょっと一点、私の話し方がまずかったのかなと思って、訂正というか付言させていただきたいんですが。集落営農が成り立たなかったということを申し上げたのではなくて、要するに、特に水田についてくる畦畔、のり面、水路、この三点セットを、従来は共同作業で、経済学でいえばいわゆる外部不経済のことで対応していたことが、今、にっちもさっちもいかなくなっているということで、この問題は農地法、農振法、基盤法ではフォーカスされていない部分ですので、そういうところの手当てが大事なのではないかということを申し上げました。

 その際、もう人がいないわけですから、やはり外から人を取り込んでくるということで、特に関係人口の中の、広く国民全般を取り込めればもちろんいいわけですけれども、一つのターゲットとして、不在村地主というのは元々そこにいた方ですから、そういうことを取り込んでいくようなことに注力してはどうかなというのが一点です。

 それと、やはり、農地には三つの価値があると思っています。規模を追求するという価値、それから収益を追求していくという価値、あと社会的な価値。この三つの価値がある中で、今までの農業生産というのは、やはり規模の拡大であるとか、零細な農地でも集積型で収益を追求していくということでやってきた。その方向性は間違っていないと思うんですが、昨年の農地法の改正で下限面積が撤廃されました。この問題については、投機的な農地取得とかまだまだいろいろ心配な部分はあるんですが、その一方で、やはり半農半Xとか、従来想定しなかったような方が農地にアクセスをしてきている。

 ですから、規模も大きくない、収益もそんなに求めない、要するに社会的な価値を求めてくる方が増えてきている。こういう方をしっかり、農村とタッグを組んでいく必要があるのではないか。

 その意味でいいますと、改めて、平成二十一年の農地法の改正で、前文に、農地というのは国民の、地域の限られた貴重な資源であると明記していただきましたし、また二条で、所有者であろうが耕作者であろうが農地に対してしっかり責任を持つ、そういう趣旨のことをお書きいただいたわけですから、それを今更ながら磨き上げて、やはり、農地というものは国民にとって大事なものであるということを官民挙げて提唱していくということが、究極的には、食料の安全保障なり緊急時の対応にも必要な、大事なことになってくる視点ではないかと思っている次第であります。

長友委員 ありがとうございます。

 最後に、スマート農業について伺いたいと思います。

 先ほど高橋参考人から、スマート農業は何のためにやるのか、あるべき姿、農村の姿とセットで取り組むべきだという御指摘をいただきました。

 そこで、高橋さんが考えるあるべき農村の姿というものをもう少し具体的に伺いたいと思いますが、教えていただけますでしょうか。

高橋参考人 日本という国は、荒ぶる自然と向き合って先人たちは生きてきたわけで、台風の通り道だし、地震は起こるし、火山は噴火するし、津波は来るしということで、その土地その土地でその自然とどういうふうに折り合いをつけて、自然から生活の糧にするのかという、まさにその土地固有の生き方を連綿とつなげてきた歴史が各地にございます。この集落五百年、あるいは千年というのもざらですね。

 それはやはり関わりの中、先祖からつながってきた命の関わり、海の人たちは海との関わり、山の人たちは山との関わり、自然との関わり、それから地域の隣近所との関わり、関わりの中に自分というのを認識できるというのがやはり農村社会だと思うんですね。

 伊勢神宮というのは、三十年に一度わざわざ造り替えているのは、造り替えることで技術を永久に保つためにやっているわけで、各地の農村、漁村も、命をつなぐことによって、その土地の文化を永遠につなぐということをやってきているわけですよ。それは、まさに都市がなくしたものです。そして、なくしたがゆえに、都市は今行き詰まっているところです。

 今、無縁社会と言われていますけれども、行政サービスに依存するだけで、これから高齢化を迎える都市社会が耐えられるのか。あるいは、気候危機をここまで引き起こしているときに、際限のない拡張的な合理性だけを追求していることが世界的に今見直されている中で、まさに関わりの中で生きている農村社会というのは、取り過ぎると次の年はしっぺ返しを食らうということをよく知っていますから、そのやはり循環の中で、預金でいえば、利子の範囲内でやって元本に手をつけなければ持続可能なわけですから、我々都会の人間がそこから学ぶことはたくさんあると思うんですよ。

 そういうものを失っていったら、のっぺらぼうですからね。歴史の断絶ということに僕はなってしまうと思うので、その集合体が、まさに日本という国が日本であるゆえんだ、源だと僕は思っております。

長友委員 大切な指摘をありがとうございます。

 高橋参考人からは、青少年自然体験活動等の促進に関する法律案についても御指摘をいただきました。我が党は、これを来週木曜日にヒアリングして協議することになっておりますので、本日の高橋さんに伺った熱量をしっかりと伝えてまいりたいと思います。

 本日は誠にありがとうございました。

野中委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 今日は、参考人の先生方には大変貴重な御意見をありがとうございました。

 まず、渡辺先生、危機管理の専門家ということでお聞きしたいのは、農林水産省の方で、食料安全保障を、今回の法案の改正の前に、令和に入ってから三回ぐらいシミュレーション演習をやっておられると思います。私もそれをちょっと見させていただいて、例えばスイスでやっているのと比較をしたら若干物足りないところを感じたんですが、専門家の目から、こういうことをもう少しやった方がいいというのがあれば教えていただきたいと思います。

渡辺参考人 御質問ありがとうございます。

 そういう意味ではスイスと我が国はもう数十年の差がある中で、やはり日本が一歩踏み出したという意味では、シミュレーション演習、つまり、これまで起こっていなかったことがどのように起こって、それがどのように影響していくか。これはセンシティビティーアナリシス、つまり感応度分析と言いますけれども、農水省の見ていらっしゃるいろいろなインデックス、国内外の指標を見ていくものが、いろいろなシナリオを投げかけることによって、どこがどういうふうにヒットするか、それが一体全体我が国の不測の事態に対してどのような状況をもたらすかということを始めたばかりですので、物足りなさを感じているのは、多分参加をされている農水省の方々もそうだと思うんですが、ただ、やり始めて、これを続けることに意義があると思います。

 恐らく、そのストレスのパターンというのは、地政学的リスクなものもありますし、天災的なものもありますし、原産国の干ばつがあるし、今、いろいろなパターンを見ながら、どういう事態がどこにヒットして、それが我が国の不測の事態にどのように影響していくか、これを始めたという意味では大きな意義があるんですけれども、ただ、スイスと比べられるとそれはちょっと厳しいかなというところがございます。

 以上でございます。

北神委員 ありがとうございます。

 例えば、たしか過去の不作の状況を前提にしてシミュレーションをしたり、それ一つ取っても、もう少し、多分、食料安全保障と言うからにはより深刻な事態というものを想定しないといけないとか、そういうことをちょっと私は感じましたけれども、いろいろもっとこれから、おっしゃるとおり、防災でもそうですけれども、続けることが非常に大事だと思いますので、是非また御指導してやっていただければというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 次に、平澤先生ですけれども、食料安全保障というのは、自給率ももちろん大事ですけれども、先生が強調されているのは土地ですね。農地というのが最終的には一番重要で、人というのは、直接支払いとかそういう方法で、所得さえある程度保障すれば何とかなるだろうと。

 そのときに、土地利用型農業というと、水田か畑作かということになりますけれども、私、いつも悩ましく思っているのは、普通に考えると、自給率からいうと、本当にいざというとき、輸入が途絶されたような、そういう本当に厳しい状況の中では、当然、自給率の高いお米の方がいいんじゃないかなというふうに思います。

 ただ、平時において、やはりどんどん十万トン毎年需要が減っている中で、農林水産省さんは、今、むしろ麦とか大豆とか、そういった方に転換をしようとしている、いわゆる畑作。水田活用交付金というのも運用をかなり変えてしまっている。

 確かに、平時の需要に合わせないと、相当それは税金を使ってコストがかかって、水田を守るというのは大変だということも分かる。しかし、三倍のコストですよね、外国の小麦と日本の小麦。三倍のコスト。それをゲタ、ナラシでいろいろやっているわけですけれども、じゃ、いざというとき、輸入途絶のときに、それが本当に、麦とかそういったもので安全保障の対策として機能するのか、そこは非常に悩ましいというふうに思っているんですが。質問、分かりますかね。じゃ、お答えいただければ。よろしくお願いします。

平澤参考人 おっしゃるとおり、非常に難しい問題でございます。

 ただ、私は、そのことを考える際に、やはり、日本の風土に合ったお米は、水田は非常に大事なんですけれども、一方で考えないといけないのは、まさに需要が減っていることでありまして、これから更に人口が減っていくということですと、どんどん減っていくわけですね。そうすると、どこかの時点で、恐らく今の水田を維持していくことが本当に正当化できなくなるという日がいつか来ると思っているわけです。

 今、既に水田が半分近く余っているわけです。これで人口が半減という状況で、普通に考えて、七五%の水田は余るんだけれども、ずっと取っておきますということがいつまでできるかということですね。

 一方で、お金がかかるといっても、水田を維持するためにいろいろな施策をやっていますけれども、そちらにもお金がかかるわけです。ですから、最終的に水田が維持できなくなれば、それはもう畑にせざるを得ない。なので、長期的な展望を持ってどの程度畑にしていくかということを考えるというのが恐らく現実的なところであろうかと思います。

 問題は、水田が一番生産が安定していまして、麦、大豆は変動が激しいわけですね。おまけに単収もそれほどいかないということですので、カロリーをどう稼ぐかという問題はもちろん別途あります。なので、必要に応じて水田に残せるような、輪作の部分が残せれば、それにこしたことはありませんし、ただ、やはり、水田に使えばその分湿気が出ますから、麦、大豆に不適ということもあるので、そこのバランスを取りながら。

 もう一つは、あるいは、今余り積極的にやられていませんけれども、トウモロコシであれば単収が取れます。これであれば、我々はそれは餌だと認識しているわけですけれども、中南米ではこれが主食でありますので、餌といっても、それは餌米でもトウモロコシでも同じことですけれども、いざというときには食べるという考え方をすれば、食料安全保障という対策にもなるのではないかなと思っている次第です。

 以上です。

北神委員 分かりました。非常に明快な説明、よく分かりました。

 田代先生に伺いたいのは、田代先生はどちらかというとお米派だというふうにさっきの説明で伺ったんですが、もし今私の言った問題意識について何かお考えがあればというのが一つ。

 もう一つお聞きしたいのは、元々農林水産省におられたというふうに経歴を拝見したら書いてあったんですが、僕、不思議なのは、ほかの役所に比べて、安易に財政出動というのはよくないと思いますよ、安易にそれを要求するのは。

 ただ、農業の場合は、さっきの、これは全然多分お立場が違う平澤先生のお話とかを伺っていても、やはり、元々の土地の限界とか、そういったことからいうと、どうしてもこれは国の支援が必要だと思うんですよ。

 ところが、農林水産省の役所はほかの役所と違って割と謙虚なんですよ、自己抑制的というか。こっちがもっと頑張らないといけないんじゃないのと言っても、いや、余りばらまきはよくないですねとか、自分で自分を抑制しちゃっていて、本気でやはり、もう少し、市場原理とかスマート農業とか、そういうものを生産性で頑張らないといけないと本気で信念として持っているのか、財務省に気を遣っているのか。その辺、もし心理が分かれば教えていただきたいと思います。

田代参考人 おっしゃるとおり、私は米派でございまして、そろそろ腹が減ってきたんですけれども。

 やはり、今、世の中どこを見ても、パンについては物すごくいろいろな種類があって、よく皆さんパンをお食べになるんだけれども、米については食べ方は限定されていて、やはり、米についてもパンぐらいいろいろな食べ方があれば、もっと需要も伸びるのかなというふうに思います。

 先ほど平澤先生は、長期的にはそういう問題もございますけれども、やはり水田が一番転換が利きやすいわけですね。畑作にも水田にも、それから飼料にも、餌にも使える。そういうことから考えると、日本の風土に一番適した土地利用は何かということで考えたら、やはり私は水田だなと。汎用化まではいいけれども、畑地化というのは、ちょっと考えた方が食料安全保障との整合性は取れるな、こういうふうに思うわけです。

 それから、農水省の予算については、元農水大臣もいらっしゃいますし、決して謙虚に予算が下がってきたんじゃなくて、二〇〇〇年代の初めには、やはり当初予算でもって四%の基準があったんですね。現在は二%になっていて、これが一%を切るかどうかということは、決して農水省が謙虚だったのではなくて、やはり押されているんだと思うんですね。

 率直に申せば、防衛予算については、四十三兆円とどんどん出てくるという中で、安全保障、国民の安全保障ということを考えたら、農業ももっと大切だよということは、議員の先生方に頑張っていただいて、やはり回復するということは必要だなというふうに思います。

北神委員 ありがとうございます。

 おなかがすかれたということで、もうこれを最後にしたいと思いますけれども、これは稲垣先生に。ちょっと違うかもしれないですけれども、違反転用のことで、私は京都なんですけれども、地元で、やはり、外国人が農業委員会に申請をして土地をもらって、余りちゃんと運用していないという事例が幾つか出ているんですけれども、全国的な目で見て、そういうことはありますか。もしあるんだったら、あるいは、違反転用だけじゃなく、いろいろな問題意識がおありかどうかというのを最後にお聞きしたいと思います。

稲垣参考人 御質問ありがとうございます。

 外国人と農地の問題につきましては、なかなか難しい問題だということが、条約の問題とかあってそう簡単ではないということが分かってくる中で、御案内のように、昨年から、農水省の方でといいますか、農業委員会の現場で、農地を取得する際に、外国人というか国籍のチェックをするということがありました。

 累年の統計的なものがなかなかはっきりしない中で、やはりこういう取組をしっかりやっていく中で、まず、外国人の方がどういう形で土地を持っていくかということをしっかり把握するとともに、それは日本人だろうが外国人だろうが、農地をちゃんと使っていただくということを徹底していくことが必要なのかなと。

 外国人の農業労働の問題とも含めて、これから農村現場にもどんどん外国人の方が入ってきて、そういう方が、今後、永住とかを含めますと、どんどん日本の方と結婚されたりして家族をつくっていく中で、外国人の農地所有ということも避けて通れない中で、まずは、昨年から始まった、そういう取得段階でしっかり、日本人なのか外国人なのかということをチェックして、そこに対しては、日本人だろうが外国人だろうが、しっかり農地を使っていただくということを官民挙げて働きかけていくということが必要なのではないかと思っている次第でございます。

北神委員 ちょっと早いですけれども、お昼御飯にしたいと思いますので、ありがとうございました。

野中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言申し上げます。

 本日は、早朝から御参集いただき、また、それぞれの立場から貴重な意見を述べていただきまして、ありがとうございました。

 参考人各位の意見を参考にして、今後、本委員会で本法案に関する議論をより深めてまいりたく存じます。

 改めて、委員会を代表し、御礼を申し上げます。本日はありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る十五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会


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