衆議院

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第16号 令和6年5月15日(水曜日)

会議録本文へ
令和六年五月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      英利アルフィヤ君    加藤 竜祥君

      神田 憲次君    小寺 裕雄君

      高鳥 修一君    橘 慶一郎君

      中川 郁子君    西野 太亮君

      細田 健一君    堀井  学君

      宮下 一郎君    保岡 宏武君

      簗  和生君    山口  晋君

      梅谷  守君    金子 恵美君

      神谷  裕君    川内 博史君

      緑川 貴士君    山田 勝彦君

      渡辺  創君    一谷勇一郎君

      掘井 健智君    稲津  久君

      山崎 正恭君    田村 貴昭君

      長友 慎治君    北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (内閣法制局第四部長)  栗原 秀忠君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          藤本 武士君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     英利アルフィヤ君

同日

 辞任         補欠選任

  英利アルフィヤ君   加藤 竜祥君

    ―――――――――――――

五月十五日

 食料自給率向上を政府の法的義務とすることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三四〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食料供給困難事態対策法案(内閣提出第二七号)

 食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、食料供給困難事態対策法案、食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律案及び農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、農産局長平形雄策君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、内閣法制局第四部長栗原秀忠君、消費者庁政策立案総括審議官藤本武士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高鳥修一君。

高鳥委員 おはようございます。自由民主党の高鳥修一でございます。

 今日は、質問の機会をありがとうございます。早速質問に入らせていただきます。

 まず、適正な価格形成に向けた理解の増進について伺います。

 四年前、新潟でG20農業大臣会合が開かれ、そのとき、私は農水副大臣として出席をいたしました。どうして農業者は金持ちになれないのかというのがテーマの一つとして議論され、食料に価値があることを認めないと農業者がいなくなるというのは世界共通の課題であると認識した記憶がございます。

 先日の参考人質疑で、田代参考人から、農家の労働費、全経営平均三百七十九円を最低賃金千四円並みにするとすれば、三倍近くにしなければならないという指摘がございました。適正な価格転嫁というのは当然しなければならないわけでありますけれども、価格転嫁だけでは消費者が買わなくなるという問題がございます。この差を埋める方策をどのように考えておられるのか、お聞かせ願います。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 適正な価格転嫁、これはしていかなければならないということでございますが、現在、私どもが行っております生産から消費に至る関係者が集まっていただきました協議会の中でも、転嫁をすると需要ですとか消費が大きく減退するのではないかといった御指摘がございます。他方で、消費者の委員の方々からいたしますと、じゃ、買わないのは消費者が悪いのかといったようなことになっても困る、消費者とそれ以外の関係者が争うような構図にならないように、売手、買手双方が信頼関係をきちっと構築するようにというような御指摘もいただいてございます。

 こうした中で、現在、政府を挙げて、価格転嫁を通じた賃上げ、これを通じました所得増と成長の好循環の実現というものを通して消費者の購買力の向上を図ろうとしてございます。これと平仄を合わせまして、協議会において関係者間で議論を十分に行いまして、消費者を始め特定の方々にしわ寄せが行くことのないように、丁寧に合意形成を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

高鳥委員 ありがとうございます。是非、実効性のある取組に努めていただきたいと思います。

 次に、生産促進の財政措置について伺います。

 農業者に対する財政支援の内容を、生産転換のコスト、それによって農業所得が減少する場合の補償や、促進、奨励等について明確化すべきではありませんか。また、財源の確保についても含めて、大臣の決意をお聞かせください。

坂本国務大臣 要請等に基づきまして生産者が生産を拡大する場合には、例えば、追加の生産資材や収穫等に必要な機械の確保が必要になります。それから、不作付地の除草、整地、こういったものに必要な様々な機械、そういうものも想定されます。

 財政上の措置につきましては、これらのことも考慮に入れて、対象品目、そして需給の状況など、個々の事態に応じた具体的な支援内容を検討することというふうにしております。

 その際、事態法の第十九条の規定に基づきまして、要請に当たっては、事業者が要請に応じようと考えていただける環境を整えること、それから、計画の変更指示に当たっては、経営への悪影響を回避することといった観点から、財政支援というものを検討してまいりたいというふうに思っております。

高鳥委員 大臣、応援しますので、是非しっかりやっていただきたいと思います。

 次に、農地法等の関係について伺います。

 農用地区域からの除外に係る都道府県の同意基準に関して、面積目標の達成に支障を及ぼすおそれのある場合には、遊休農地の解消等の除外の影響の緩和措置を確認した上で農振除外を認めるとされております。

 先日の参考人質疑で、全国農業会議所の稲垣参考人も、荒廃農地を再生し、農用地区域への編入を強く求めることが必要とおっしゃっておられましたが、市町村が行う荒廃農地の再生を含めた農振除外の影響を緩和する取組に対して、政府としてどのように支援を行うのか、お聞かせください。

長井政府参考人 お答えいたします。

 市町村が行う農振除外が、都道府県面積目標に影響を及ぼすおそれがあると認められる場合において、都道府県が市町村に対して確認する影響を緩和するための代替措置としましては、農用地区域への編入、荒廃農地の解消等の取組を想定しているところでございます。

 これらの取組に対しまして、農林水産省では、農地耕作条件改善事業による基盤整備や、遊休農地解消緊急対策事業により農地バンクが行う簡易な基盤整備、最適土地利用総合対策により、中山間地域等で地域計画の策定を行う市町村において、市町村、農業者、地域住民等の話合いで、営農を続けて守るべき農地と定めた荒廃農地の再生の取組などの支援を行っているところであり、引き続き、これらの対策に努めてまいります。

高鳥委員 ありがとうございます。

 次に、スマート農業法の関係についてお伺いをいたします。

 農業者が急速に減少する中で、スマート農業の推進は、我が国農政において重要な課題でありますが、大規模な経営体だけではなくて、中山間地や中小・家族経営も含めて、幅広い農業者が取り組めるようにしていくべきと考えます。

 このような視点に基づいて、本法案にどのように取り組むのかを伺います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 今後の農業者の急激な減少等に対応いたしまして、農業の生産性の向上を図っていくため、平場、中山間地域を問わず、中小・家族経営を含む幅広い農業者にスマート農業技術の活用を進めていただきたいと考えております。

 こうした考えの下、令和元年度から開始しましたスマート農業実証プロジェクト、二百十七地区でやっております。この中で、傾斜地にも対応できるリモコン草刈り機でありますとか、経営規模が小さい農業者でも比較的導入しやすいドローンによる農薬散布、経営管理ソフトの導入などの実証を行ってきたところであります。

 実証を通じまして、スマート農機等の導入コストや、それを扱える人材不足などの課題が明らかになる一方、中山間地域の高低差を生かしたスマート農機の共同利用によりまして機械の稼働率を高め、作業時間の削減や単収の増加に成功する、あるいは、ロボットによる農薬散布サービスが中小・家族経営を中心に利用が進むなどの成果も確認されました。

 本法案では、こうした課題や成果を踏まえ、スマート農業技術の導入などを図る生産方式革新実施計画を国が認定し、認定を受けた計画が継続的に実施されるよう、税制、金融などの支援を措置するとともに、複数の農業者が同一の計画に参画することによりまして、機械の共同利用の促進、農業者のスマート農業技術の活用をサポートするサービス事業者による取組の促進などの措置を講じ、導入費用の低減や導入に向けた多様な選択肢の提供を含め、スマート農業技術の活用を促進してまいります。

高鳥委員 是非、幅広い農業者が取り組めるような対策を徹底していただきたいと思います。

 次に、不測の事態の対策についてお伺いをいたします。

 何をどれだけ増産するのか、そしてそのために何を削減するのか、具体的な計画はどのようになっているのでしょうか。また、不測の事態が三か月程度あるいは一年以内、一年以上継続する、状況に応じたシミュレーションはできているのでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 不測時における食料の生産につきましては、食料だけではなく、資材の不足や価格高騰、物流の確保など、様々な要素が影響することから、様々な事態を想定して、我が国の食料供給能力や国民経済等に及ぼす影響を把握し、対応するシミュレーションを行うということが重要だと考えております。

 例えば、スイスには、輸入の途絶などの不測の事態に備えまして、食料供給に関する政府当局である国家経済供給庁の意思決定を支援するシステム、いわゆるスイスフードシステムにおきまして、個々の事態に応じた生産構成などの最適化、そのために必要な農地面積に関するシミュレーションを実施しているというふうに承知しております。

 我が国としても、こうした取組を参考にしながら、シミュレーションの在り方について検討してまいりたいというふうに考えております。

高鳥委員 十分な検討をお願いいたします。

 もう一問、お伺いをいたします。備蓄についてお聞きをしたいと思います。

 玄米生産量を八百万トンとすれば、食料供給困難事態の二〇%以上というのは百六十万トンということになり、平時の備蓄水準百万トンとの間に六十万トンの開きがあります。ここは、法律として整合性が必要ではありませんか。そして、備蓄量を見直す考えはないのか、お聞かせください。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 まず、米についてでございますけれども、政府備蓄米といたしまして、十年に一度の不作、大体、作況九二等の事態があっても不足分を補って国産米で一年間供給できる水準として、百万トン程度を備蓄をしております。このほかに、民間流通在庫も最も少ない八月末で民間在庫として百万トン程度あり、これを合わせると百六十万トン以上の備蓄を有しております。

 また、備蓄につきましては、食料供給困難事態対策法案につきましては、基本的には民間備蓄の活用を念頭にしまして、供給対策として出荷、販売の調整を位置づけまして、この中で、備蓄の放出の要請や、供給量を抑制することによって備蓄量を確保するといった要請を行うなど、不測時において食料を適切に市場に供給をしていくこととしております。

 また、出荷、販売の調整を適切に行うためには、平時から一定量の在庫を確保していくということが重要でございます。

 こうした特定食料等の備蓄の在り方については、法案の基本方針の中の本部設置期間以外の期間において実施する措置の総合的な推進、ここにおいて備蓄の方針を定めるということとしております。

 また、食料供給困難時に供給確保対策を行うためには、民間在庫を組み合わせて国内にどの程度食料等が存在するかを把握することが重要でございますけれども、現状では、主要な食料の多くについて流通在庫等が把握できていない実態でございます。このため、備蓄の方針を策定するに当たり、報告徴収の規定に基づき、民間の在庫量を含む必要な調査を行うということを検討しております。

高鳥委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

野中委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 初めに、食料供給困難事態法案によって、法律の目的である国民生活の安定、国民経済の円滑な運営が一体どのように確保されるのかということについて質問をしたいと思います。

 安全保障の話というのは、とかく仮定の話、たらればの話になってなかなか理解しづらいところがありますので、ここでは少しでもイメージしやすいように、特定食料として例示をされている米について、一九九三年、平成五年から翌平成六年にかけて実際に起こった供給困難な事態、いわゆる平成の米騒動が、ただいま審議をしている法律が成立した後に起こったと仮定して、対応がどのように変わるのかということについて幾つか質問したいと思います。

 一九九三年は、四月以降の全国的な低温傾向が夏に入ってから一層強まり、各地で平均気温、日照時間は観測開始以来の最低を更新、九州から東北は梅雨明け日が特定されず、降水量は各地で最多を更新をいたしました。記録的な異常気象で、野菜や果実など農作物にも広く被害が発生をいたしましたが、とりわけ深刻だったのが米でした。

 八月二十七日発表の農水省の平成五年産米の全国平均作況指数は九〇、それが九月には八〇となり、十月末には七五、最終的には七四となります。生産量七百五十万トンと予測をされ、不足する約二百五十万トン、当時の年間の米の消費量は一千万トンでしたが、この二百五十万トンを海外から緊急の輸入で賄うこととして、政府は、タイ、アメリカ、オーストラリアなどとの交渉を開始したわけです。

 ここまでで、まず、第五条の食料供給困難兆候の発生の認識と、農林水産大臣から内閣総理大臣への報告はどの段階で行うことになるのか。また、様々な供給困難兆候の把握のためには、情報の収集、分析、評価のための体制も強化する必要があると考えますが、この法律に基づいて今後どのように進めていくことになるのか、伺いたいと思います。

坂本国務大臣 平成五年の米不足につきましては、委員御指摘のとおり、七月には記録的な低温、日照不足が記録されました。冷夏による大凶作の懸念の声が出ていましたけれども、具体的には供給確保対策を講じることができないまま、消費者等による買占め等が発生いたしました九月になってから、対策の実施を決定することというふうになりました。このケースに当てはめてみると、大凶作となる見込みが高まりました九月より早い段階で食料供給困難兆候と判断することになったのではないかというふうに思っております。

 このように、兆候の発生を速やかに把握し、できるだけ早期に食料を確保する対策を講じることが重要です。農林水産省では、これまでも、FAO、あるいは米国の農務省、USDAによります諸外国の食料供給の需給予測等を収集、分析をし、食料安全保障月報として毎月公表してきておりますけれども、このような国内外の食料需給の収集、分析を一層充実させていきたいと思います。

 こうした困難兆候や困難事態の発生状況に関する情報収集などを含めて、平時から行う取組につきましては、本法案に基づきます基本方針において基本的な考え方を定めていくこととしております。法案が成立した暁には必要な検討を行ってまいりたいと思いますし、食料安全保障室というような体制もしっかり整えていきたいというふうに思っております。

角田委員 当時の総務庁の家計調査や報道などによりますと、国産米の不作が明らかになり、小売価格が上昇し始めた十月頃には買い急ぎによる購入量の増加が認められ、翌六年二月、三月頃に大幅に増加をいたしました。

 第六条に基づき、内閣に食料供給困難事態対策本部が設置をされれば、消費者の買い急ぎ、販売側の売惜しみなどによる混乱が予想をされます。社会の混乱を防ぐための迅速な対応が極めて重要になると思いますが、この点について、新法によってどのような有効な対策を講じることができるようになるのか、伺いたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 不測時には、需給状況が不透明となりますので、食料が入手困難となる不安から消費者の買占め、また、更なる値上がりを期待した事業者の売惜しみなどが発生するおそれがあります。

 このような場合には、まずは正確な需給見通しの下で供給サイドにおきまして適切な供給を行うということが有効と考えられることから、本法案に基づきまして、出荷、販売を行う事業者に対して、需給状況に応じて適切な数量の供給を行うこと、また、用途、仕向け先等の調整のための要請を行っていくということを想定をしております。

 また、消費者に対しましても、正確な情報を分かりやすく提供しつつ、買いだめや買い急ぎなどを控えて食品ロスを減らすなどの働きかけを行うなどの対策を行うことが必要と考えております。

 こういった対策を政府一体として総合的に行うというために、食料供給困難の兆候の段階から設置する政府対策本部において、農水省と消費者庁などの関係省庁が連携し、供給対策と消費者対策を含む総合的な措置を講じていく考えでございます。

角田委員 確認のために質問をさせていただきたいと思います。

 法案では、供給困難事態の未然の防止、事態の解消のために、生産者に対して、事態の進展に応じて増産の要請や生産計画変更の指示ができるとしております。これは海外における連続的な不作や輸出規制で事態がいつ解消されるか分からない場合、すなわち輸入に多くを依存している小麦、大豆などの特定食料を念頭に置いたもので、米については自給が可能でありますので本来こうした要請はないのではないかと思いますけれども、米について要請が行われる場合というのはどのような状況が想定をされるのか伺いたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 国内で自給し、一般に需要を上回る生産が行われている米につきましては、平成五年時の経験も踏まえまして備蓄制度の創設などの対応ができておりますので、当時と比べれば供給不足のリスクは減っているというふうに考えます。ただ、気候変動によって複数年にわたって国内生産が大幅に減少するというリスクは発生する可能性がありますので、平成五年を下回る作況が見込まれる場合など、輸入や備蓄の活用によっても必要な供給量を確保できないおそれがある場合には、生産者に対して生産拡大の要請を行うということも想定をされます。

 なお、実際に要請などを行う場合の確保すべき生産量や対象者、対象地域などについては、品目ごとの特徴や事態の状況に応じて決定するものでございますので、政府対策本部にて策定をする実施方針において定めることとしております。

角田委員 平成五年のときは、持ち越し在庫が極めて低い水準だったこともあって不足分約二百五十万トンを輸入で確保したわけですが、このときの日本による大量の緊急輸入は国際的な米価格の高騰を招きました。一方、国内では、日本人になじみのない長粒種のタイ米の不評や、中短粒種の外国産米の供給の遅れ、さらにはタイ米と国産米のブレンド販売の方針が消費者の国産米買い急ぎを加速させるなど、平成六年二月から三月にかけて、スーパーには開店前から長蛇の列ができ、あっという間に棚から国産米が消え、十キロ五千円程度だった国産米が一万二千円とか一万五千円で買われるなど混乱が広がりました。このことによって、米の代わりにパンや麺の消費が増え、消費者の米離れが加速したという側面もあります。

 平成の米騒動は、平成六年産米が打って変わって作況指数一〇七の豊作となったことから、新米が出回り始めた頃には終息をいたしました。このときの経験も踏まえて、現在では国産米の備蓄が行われており、不作等で供給が確保できない事態には、まず備蓄米を放出し、その上で不足分を海外からの輸入で補うという対応になると思いますが、平成五年当時、米をほとんど輸入したことのない日本が世界の貿易量の二割から四分の一という大量の米を極めて短期間で調達できたということは奇跡と言っても過言ではないと思います。当時の各国の日本大使館を含む政府関係者や商社など、官民が危機を乗り越えるために一丸となって奮闘したことによるところが大きく、現在も同じようなことができるのか疑問が残ります。

 さらに、関係者の必死の努力で確保した輸入米が消費者には受け入れられず、大量に売れ残ってしまった。不足分を輸入で補えば、基本法二条一項の、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる食料安全保障を確保できるかといえば、それほど簡単な話ではないということをこのときの米をめぐる混乱は示していると言えます。

 消費者の強い国産志向や、他の穀物に比べて貿易量の少ない米を輸入することの国際的な影響の大きさも考え合わせて、深刻な不足に見舞われても混乱なく、特に自給可能な米を安定的に供給できるようにするために、国産米の備蓄水準についても議論する必要があると思っております。

 現在の備蓄米は、適正備蓄水準を百万トン程度として運用されております。これは、十年に一度の不作や通常程度の不作が二年連続した事態にも国産米で対処できる水準とされておりますが、食料安全保障のためには更なる上積みも必要と考えておりますけれども、この点について見解を伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、政府備蓄米につきましては、十年に一度の不作であります作況九二等の事態があっても、不足分を補って国産米で一年間供給できる水準として百万トン程度で運営しております。

 備蓄につきましては、不測の事態の発生初期における重要な対応策の一つでございまして、民間の在庫も含めて考えていくことが必要ですが、米についても、民間の流通在庫が最も少ない八月末で百万トン程度あり、政府備蓄と合わせると現時点ではこの水準で対応可能というふうに認識しております。

 さらに、作況七四だった平成五年当時と現在を比較しますと、稲の品種改良や生産技術の向上によって、平成六年以降、過去三十年間のうち二十八年間は作況九八以上と安定した生産が行われていることや、平成七年から開始されましたミニマムアクセス米のうち、一定量は国産米に近い中短粒種、七十七万トンのうち四十万トン程度でございますけれども、かつ、各国から米の輸入を行うルートも確立されたこと等の違いがございます。

 その上で、現在審議中の食料供給困難事態対策法案の基本方針において、特定食料等の備蓄の方針を定めることを検討することとしておりまして、その中で米の備蓄についても検討する考えであります。

角田委員 続いて、米以外の主要農産物の備蓄について質問したいと思いますけれども、小麦は八割以上、大豆に至っては九割以上を輸入に頼っています。今後国内生産を増強するにしても、輸入が途絶した場合の影響は特に大きいと言えます。

 現在、小麦は外国産食糧用小麦の需要量の二・三か月分が製粉会社に備蓄をされております。この水準について、供給が不足する事態が生じた場合に、他の輸出国からの代替輸入に要する期間を四・三か月と見込んでいて、二か月分については既契約分に係る輸入小麦を輸送する船舶が順次入港することによって需要を賄うことができると見込まれるところから、国における輸入小麦の年間需要量の二・三か月分とされているわけですけれども、この考え方には、物流が完全に停滞するような事態は考慮されていないのではないかと思います。

 新型コロナウイルス感染症の流行の際も起こったことですが、世界的なパンデミックなどの際には、社会経済活動が停滞し、物流も滞ることも十分に想定をされます。気候変動の影響で感染症流行のリスクが高まっていることも踏まえた適切な位置づけの水準の検討が必要ではないかと考えます。

 また、大豆については、一九七三年、オイルショックに加えて、世界的な異常気象による食料危機に見舞われた際に、アメリカが突如として大豆の禁輸を発表したことを契機として、翌年から食品用大豆の備蓄事業が行われるようになりました。

 当時、日本は、米国産農産物の最大にして安定した輸入国だったわけですが、その日本に対してもアメリカが輸出規制を行ったということは非常にショッキングな出来事であり、備蓄の必要性を痛感させられたものと思いますが、大豆の備蓄は、二〇一〇年度に、一度も備蓄大豆の放出が行われなかったことなどを理由に廃止をされたまま、現在に至っております。

 放出したことがないから備蓄を廃止して、食料安全保障を確保できるのか。大豆についても、備蓄再開に向けて、適正な水準について検討すべきだと考えます。

 以上述べた点も含め、改正基本法の理念に位置づけた食料安全保障のための主要な食料の備蓄について見解を伺いたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 備蓄は、国内生産や輸入と並ぶ食料供給の重要な手段でございまして、今回の基本法改正法案におきましても、引き続き備蓄の確保を図るということを位置づけております。

 特に、輸入の途絶などの食料供給が大幅に不足する事態における初期対策として備蓄は大変重要でございますので、委員御指摘のように、物流が途絶するというようなリスクもございますので、特定食料の備蓄の在り方について、食料供給困難事態対策法案における基本方針の中の、本部設置期間以外の期間において実施する措置の総合的な推進において、備蓄の方針について定めたいというふうに考えております。

 また、備蓄も含めて、食料供給困難時に供給確保対策を行うためには、民間在庫を含めて国内にどの程度の在庫が存在をするのか、まずトータルで把握するということが前提と考えていますけれども、現状では、主要な食料の多くについて流通在庫等の把握ができていない実態でございます。このため、備蓄の方針を策定するに当たって、本法案の報告徴収の規定に基づき民間の在庫量を含む必要な調査を行った上で、必要な検討をしてまいりたいと考えています。

角田委員 基本法の第十九条、国は、地方公共団体、食品産業の事業者その他関係者と連携し、地理的な制約、経済的な状況その他の要因にかかわらず食料の円滑な入手が可能となるよう、食料の輸送手段の確保の促進、食料の寄附が円滑に行われるための環境整備その他必要な施策を講ずるものとするとされております。

 食料供給困難事態においても、誰一人取り残されることなく、国民一人一人が良質な食料を入手できる状態が確保されることが極めて重要だと考えます。高齢化の進行等で今後更に増加が予想される買物困難者や生活困窮者に対する特段の配慮が食料供給困難事態下においても求められると考えますが、食料供給困難事態下における買物困難者、生活困窮者への食料供給確保について見解を伺いたいと思います。

杉中政府参考人 まず、食料供給困難事態におきましては、供給確保のための措置を実施することによって特定食料などの供給量を確保することといたします。

 また、議員御指摘のように、不採算地域からの小売、スーパーの撤退や高齢者を中心とした買物の移動の不便さの増大による買物困難者の増加、また、経済的な理由で健康的な食生活に必要な食料を入手できない方々の増加といった食品アクセスの問題は、平時から対応すべき課題であり、そのため、今回の基本法改正案におきまして、国民一人一人の食料安全保障の確保を図るための食料の円滑な入手対策について規定をしております。

 議員御指摘のように、食料の供給が大幅に減少するおそれがある事態につきましては、このような買物困難者や経済的に困窮している方々の食料確保はより困難になることが想定されます。本法において食料の総量を確保するとともに、平時から実施する食料の円滑な入手対策を組み合わせて実施することによって、食料が国民にあまねく行き渡るように対策を講じてまいりたいと考えています。

角田委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内でございます。

 委員長や理事の先生方のお許しをいただいて、二年半ぶりに国会で発言をさせていただきます。本当にありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 今日は主に、食料供給困難事態対策法案の二十三条、二十四条、罰則の関係について御教示を賜れればというふうに思っておりますが、その前に、この委員会に今議題とされております三法案は、食料・農業・農村基本法の関連として議題となっておるというふうに認識をしておりますけれども、食料・農業・農村基本法というのは、食料・農業・農村政策審議会での議を経て、農業の憲法として、今回、新たな基本法になるというふうに聞いておりますけれども、農業は大事だねと言うと、みんな、そうだね、そうだねとおっしゃるわけでございまして、誰も否定はしないわけですね。

 だけれども、委員長、大臣、私は思うんですけれども、言葉の並びですね、食料・農業・農村基本法。私は思うんですけれども、言葉の並びというのはすごく大事で、例えば、成長と分配なのか、分配と成長なのかとか、様々議論になるわけですけれども、農村があるから農業があり、農業があるから食料が生産されるということを考えると、言葉の並びとして、農村・農業・食料基本法、あるいは農村・農業・食料政策審議会とか、そういう言葉の並びの方が持続可能性というものが追求していけるのではないか。

 この前、消滅自治体が将来的に七百四十四自治体になるよという政府としての発表があったり、あるいは、おとといは警察庁から、独り暮らしの高齢者の方が孤立死あるいは孤独死をこの一月から三月までの間に一万七千人しているよという報告があった。その中には農村にお暮らしの独り暮らしの高齢者の方もたくさんいらっしゃったのではないか、分析が必要だろうというふうに思うんですけれども、やはり、農村の持続可能性というものが、何よりも農業や食料というものを考えるときに大事になるのではないかというふうに思うと、食料、農業、農村という言葉の並びをいま一度議論をしっかりした方がよいのではないかというふうに思ったりするんです。

 そこで、ちょっと役所の方に教えていただきたいんですけれども、食料・農業・農村基本法、あるいは食料・農業・農村政策審議会という、この食料、農業、農村という言葉の並びは議論されたことがあるのでしょうか、これまで。この並びでいいんだ、なぜならこうだからだという、そこをちょっとまず教えていただきたいというふうに思います。

杉中政府参考人 食料・農業・農村基本法の題名につきましてでございますけれども、一九九九年の現行基本法の制定時において、まず基本法について、国民全体の目線に立って政策を展開するという観点から見直しが行われたところです。

 そういう形で、題名及び施策の並びにつきましても、まずは、国民の立場から、国民の生活に必要な食料が安定的に供給されなければならないこと、また、国民に対して大変重要な外部経済効果である多面的機能が発揮されなければならないということをまず位置づけた上で、こういった食料供給機能と多面的機能を発揮するために農業の持続的発展が図られなければならないことが続き、また、最後に、農業の持続的発展の基盤である農村の振興が図られなければならないという議論に基づきまして、並びにつきましても、食料、農業、農村という順番で制定することが適当であるというふうな議論が行われたところでございます。

 また、今回の基本法の見直しにつきましても、このような国民の視点に立った食料、農業、農村政策を講ずるという基本的な枠組みは維持することが適当であろうという判断の下、世界の食料需給の不安定化など、国内外の情勢変化に的確に対応するべく必要な見直しを行うべき、こういう議論を踏まえたものでございまして、法律の名称についても、このまま維持をするということが適当であると判断をしたところでございます。

川内委員 私、今回の改正について、議事録とか審議会の議論の経過は見たんですけれども、そんな議論はされていましたか。この言葉の並びでよいのだろうかという議論、いつされていたか、ちょっと教えてもらえますか。

杉中政府参考人 審議会におきましては、まず、法案につきましては現行法を前提に、これを改正をすることで必要な見直しを行うべきという議論が行われたところでございます。

川内委員 だから、現行法を前提にと。食料・農業・農村基本法という言葉の並びについて、これは哲学に関わると思うんですよね、農政の根源的な、今の御答弁を聞いておりましてもね。だから、この言葉の並びについて、もう一度、私はしっかりと、農村の疲弊などを見ておりますと、しっかり議論をした方がよいのではないかというふうに思うんですけれども。

 大臣、私がいきなりこんなことを言って、大臣が今、答弁を求めて、では川内の言うとおり検討するよとか、そんなことは言えないでしょうから、受け止めるぐらい、ちょっと御発言いただければありがたいんですけれども。

坂本国務大臣 連日ニュースで流れますパレスチナのガザ地区の食糧難あたりを見ていますと、空から食料を空輸されます。やはり、国民の皆さんたちにいかにまず食料を安定的に届けるのか、これを私たちは、農林水産省としては第一の使命としてやっていかなければいけないというふうに思っております。

 その上で、やはり食料を確保する、そのためにはやはり農業が当然必要である、その生産地域として農村がなくてはならない。これはあくまでも順番ではなくて、並列に考えながら、その中で、やはり食べることの重要性というのは私は十分に大事なことであり、この並び云々について言えば、食料・農業・農村基本法で私は適切であるというふうに思っております。

川内委員 大臣のお立場としてはそのような御答弁になろうかというふうに思うんですが、今、大臣の御答弁の中で、一律、同じなんだという御答弁があったわけで、そういう意味では、農村をいかに守っていくのか、あるいは、消滅自治体がこれから物すごく増えていくだろうという中にあって、食料をそれこそ国民のために確保する、そして、食料を国民のために確保するための農業というものを持続可能なものとしていくためには、農村がまず持続可能性を持たなければ、それは全て絵に描いた餅に終わってしまうわけで、そういう意味で申し上げさせていただきました。

 大臣には、受け止めるとおっしゃっていただけなかったことは残念ですが、恐らく受け止めていただいたんだろうと勝手に解釈をしたいと思います。なぜなら、全部一緒だからだ、全部大事なんだというふうにおっしゃっていただいたからでございます。

 そういう意味で、食料供給困難事態対策法の中にある罰則ですね。農村に住まい、農村で農業をなりわいとし、そして食料を生産していらっしゃる方々に、食料危機、食料供給困難事態に立ち至ったときに様々なことをお願いする、要請する、指示するという中において、罰則をかけるという条文が困難事態対策法案の中には盛り込まれているわけでございますけれども、過料と罰金という二つの類型があって、罰金というのは刑事訴訟法上の手続になるわけですけれども、犯罪になるわけですね、前科がつくわけです。様々な影響が出るわけでございます。

 この食料供給困難事態対策法案というのは、昨年、農林水産省に、生産、流通、消費や法律やリスク管理などに関する有識者や関係省庁を構成員とする、不測時における食料安全保障に関する検討会が設置をされ、不測時の対策に関する基本的な考え方や求められる対策、現行法令による対応の可能性、関係省庁の役割等について検討され、検討結果が取りまとめられて本法案につながっているというふうに聞いております。

 今日は衆議院の調査室の方に来ていただいておりますので、この法案の検討過程の中でどのような議論が行われていたのかということについて調査、分析をしていただいているので、幾つか教えていただこうというふうに思います。

 検討会においては、罰則に関連して、届出指示義務違反については罰金ということに本法案はなっているんですけれども、この検討会では、罰金というのは刑事訴訟法の適用になるんですよというようなことが農水省から説明をされ、議論をされていたのでしょうか。公表資料の中から分析していただいて、お答えいただきたいというふうに思います。

飯野専門員 お答えいたします。

 検討会の議論については、議事概要と取りまとめが公表されておりますが、その中には、刑事訴訟法の適用についての言及はございません。

川内委員 刑事訴訟法についての言及はないということです。

 あと、第四回検討会の議事概要の中の担保措置、第四回に担保措置を議論しているんですけれども、その中のある発言で、罰則、公表の話も出ていたが、ある種の規制の担保措置は必ずこういったものになるという理屈はない、今回は、既存の他の法制を見て、こういった措置なら無理がないだろうと判断することになるというふうに、議事概要の中に出ております。

 また、取りまとめの中の罰則等の法的な担保措置の項目においては、罰則に関して、要請や計画作成の指示等の前提となる情報を確実に把握する観点から、報告徴収に対する虚偽報告や立入検査の受入れ拒否などについては、他法の例を踏まえ、罰則、罰金を設けることが妥当と考えられるとされるとともに、計画作成の指示に対して届出がなければ、確保可能な供給量を確保できず、計画変更作成の必要性も判断できないことから、計画作成の指示違反についても同様に罰則、罰金を設けることが妥当とされておりますというようなことが、議事概要や公表資料の中に出ているわけでございます。

 今私が申し上げたこれらの議論の経緯というのは、調査室の分析でも同様の分析であるというふうに理解してよろしいですかね。

飯野専門員 ただいま川内先生から御紹介のあったとおりの議論というふうに承知いたしております。

川内委員 では、本法律案では、虚偽報告や検査妨害に対する制裁は行政罰である過料にとどめる一方、要するに、検討会では両方罰金だったんです、両方罰金だった。ところが、本法律案では、虚偽報告や検査妨害に対する制裁は行政罰である過料にとどめる一方、計画届出の義務違反に対する制裁は刑罰である罰金としていらっしゃいます。

 政府は、部会などでも、国民生活安定緊急措置法や石油需給適正化法などの並びで計画届出の義務違反に対する罰金を設けたというふうに御説明をしていただいているわけですが、これらの法律において、虚偽報告や検査妨害には過料、計画届出の義務違反には罰金という、この食料供給困難事態対策法案と同じ法律のたてつけ、枠組みになっているのでございましょうか。

飯野専門員 国民生活安定緊急措置法と石油需給適正化法におきましては、虚偽報告や検査妨害に対しては、過料ではなく、計画届出義務違反に対する二十万円以下の罰金よりも重い、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金を科すこととされております。

 これらの法律の罰則と本法律案の罰則を比較いたしますと、虚偽報告や検査妨害と計画届出違反とでどちらが重いのかという点が逆になっております。

川内委員 大臣、逆になっているんですって。だから、この法案はこの法案で考えたというふうに御説明されるんでしょうが、では、例えば新型コロナ禍の令和三年に、感染症予防法が改正された際、入院の拒否あるいは疫学調査の拒否に対して設けられる罰則が、政府提出法案の罰金から議員修正により過料に改められたという経緯がありました。

 この新型コロナウイルス感染症禍の感染症予防法の改正時に、過料と罰金の違いについてどのような議論がなされたのか、また、罰金が過料へと修正されたのは、違反に対する制裁として罰金では重過ぎるためであったのか、修正の趣旨などについても、当時の国会の議論を調査室の方から御説明をいただきたいというふうに思います。

飯野専門員 お答えいたします。

 まず、過料と罰金の違いとして、過料の多くは、一定の法律秩序を維持するために、法令に違反した者に対する制裁的処分として科されるものなのに対し、罰金は、一般的には、より違法性の高い行為を犯罪行為と捉えて、これに対して刑罰として科されるものである旨の政府答弁がございました。次に、警察の関与について、過料であれば警察が関与することはない旨の政府答弁がございました。また、修正案提出者からは、刑事罰を導入し、警察が関与することになると、これは本当に国民を萎縮させてしまうおそれがあるとの説明がございました。また、罰金と過料の違いについて、前科がつくかつかないかというところが一番の違いになってくる旨の政府答弁がございました。

 令和三年の修正の趣旨につきましては、修正案提出者から、刑事罰は量刑均衡の観点から明らかに過重であるというふうに考えて修正した旨の説明がございます。

 以上でございます。

川内委員 以上の検討会での議論、あるいは感染症予防法の改正のときに罰金が過料に修正されたという議論の経過を踏まえて農水省にお尋ねをいたしますけれども、この検討会の中で、罰金というのは刑事訴訟法上の取扱いになる、すなわち犯罪になるという説明をされましたかということを御説明いただきたいと思います。

杉中政府参考人 検討会の議論の経緯について、詳細に説明をしたいと思います。

 まず、昨年八月に、生産、流通、消費や法律、リスク管理などに関する有識者や関係省庁を構成員とする、不測時における食料安全保障に関する検討会を設置をいたしまして、食料供給が大幅に減少する事態への対応について集中的に議論を行いました。

 この議論の中で、供給の確保対策につきましては、供給が減少するおそれの段階から食料供給に関する全ての事業者に対して供給確保のための要請を行い、国民生活、国民経済に実体上の支障が生じた段階では、より対策の実効性を高める必要があることから、供給確保のための計画作成を指示する必要があるとされました。

 また、これらの対策を着実に実施してもらうための、いわゆる担保措置についても議論をしました。この中で、食料供給困難事態におきましては、輸入価格の上昇や生産に必要な資材価格の上昇など、事業者にとって損失リスクがあることから、供給確保対策を実行するためには支援策が必要、また一方、食料価格は上昇していることから、在庫、輸入、生産量などを過少に申告をしてより高値になってから販売するという誘因もあることから、支援策だけではなくて罰則についても必要という議論になったところでございます。

 具体的な量刑につきましては、生活に必要な物資の供給を確保するため供給計画を作成し、届出を指示する国民生活安定緊急措置法や感染症法の罰則、これが二十万円以下の罰金であることを示しまして、検討会においても、類似の法令を参考に具体的な内容を決めるべきという議論を行いましたけれども、類似の担保措置がいずれも二十万円以下の罰金であったということから、過料と罰金の違い、また御指摘のあった刑事訴訟法の内容等については、検討会では議論をしておりません。

川内委員 いろいろ長々と説明されましたけれども、結局、罰金というのは刑事訴訟法上の取扱いになる、犯罪になりますということを説明はされてはいないわけですね。過料と罰金の違いについても説明されていない、しなかったということが今御答弁の中にあったわけですけれども、なぜ説明しなかったんですかね、そういう厳密なことを。

杉中政府参考人 まず、量刑につきましては、先ほど申しましたように、類似の法令を参考に検討するということが適当であるという議論が行われたところでございます。

 その上、繰り返しになりますけれども、類似の制度として国民生活安定緊急措置法や石油需給適正化法、感染症法においても規定をされておりまして、いずれの法律におきましても、計画届出違反についての罰則は一律二十万円以下の罰金ということを規定をしておりますので、この類似の例に従うということが適当であるというふうに考えています。本法案につきましても、過去の類似の例と同水準の罰則を設けるのが適切であるというふうに考えています。

川内委員 調査室から先ほど御説明いただいたように、本法案は、報告徴収、立入検査の忌避と届出指示義務違反が他の法令と逆になっているという御説明があったわけですが、横並びで横並びでというふうにおっしゃるわけですけれども、食料の緊急事態において特定作物の増産とかをお願いをする、指示する、要請する、対象の農家の皆さんに、従わないと罰金だぞ、犯罪になるぞと言うのは、私はこれはちょっと重過ぎるのではないかというふうに思います。

 過料だと担保措置にそもそもならない、過料だと担保措置にならないんだという理由がよく分からないんですけれども、それを御説明いただけますか。

杉中政府参考人 一般的には過料についても一定の担保措置となり得るものだというふうに認識しております。

 この上で、食料供給困難事態対策の量刑につきましては、繰り返しになりますけれども、類似の法制度を参考に定めるということが適切であるというふうに考えておりまして、いずれの法律も計画届出違反に対しての罰則は二十万円以下の罰金と規定をしておりますので、本法案についても、計画届出義務違反につきましては同水準の罰則を設けるのが適切であると判断したところでございます。

川内委員 今、図らずも、過料でも一定の担保措置になる、こう御答弁があったわけで、過料で十分なんですよ。

 他法と横並びでということを御説明されるわけですが、国民生活安定緊急措置法の十五条、生産計画の届出指示義務違反については、確かに二十万円以下の罰金に処すると書いてあるんですが、これは限定がついていて、主務省令で定める要件に該当する者を除くという限定がついています。

 主務省令で定める要件に該当する者を除く、これはいかなる意味かということを、今日、消費者庁に来ていただいているので、説明していただきたいというふうに思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 指定された物資の生産の事業を行う者が、全て本条、第十五条の対象となるわけではないという意味であります。

 例えば、中小零細の事業者にまで生産計画を届出させることは実効を期し得ないことが多いと考えられます。また、その物資の生産の多くが特定地域に集中しているような場合は、全国の生産事業者を対象にする必要がないということも想定されます。

 こうした考え方から、主務省令では、指定された物資の生産の実態に即して事業者の規模を限定することや、場合によっては、地域限定その他必要に応じた事業者の制限が規定されることが想定されております。

川内委員 だから、ちゃんと配慮がなされているわけですよね、罰金をかけますよという条文を作る上では。

 では、食料供給困難事態対策法案では、生産者の中で、零細な生産者とかは除かれるんですか。どうなんですか。全てが対象なんじゃないですか。

杉中政府参考人 ただいま説明がありました国民生活安定緊急措置法につきましては、政令で指定された物資の生産者は、生産計画を主務大臣に届け出なければならないという規定となっております。

 このため、主務省令で定める要件に該当する者を除くという規定がなかった場合には、主務大臣に事業者を指定する裁量はなく、生活関連物資が政令に指定された場合、規模等にかかわらず、当該生活関連物資等の全ての生産業者が計画を作成、届出しなければならないということになるため、これを全ての事業者に対して要求することは負担が大きいということから、省令において事業者を限定することとしたというふうに理解をしております。

 一方、本法案につきましては、主務大臣に届け出ることを指示することができるという規定となっておりまして、主務大臣は指示の対象者を指定する裁量を有しておりますので、全ての事業者に指示をしなければならないという規定にはなっておりません。

 生産計画の届出指示の具体的な対象者につきましては、内閣総理大臣を本部長とする食料供給困難対策本部におきまして、当該本部の下で定める実施方針において指定をするということで、実施方針の中で計画届出指示の対象者についても決めていく。

 なお、本法案につきましては、生産拡大するための生産計画の変更指示に関する規定がありますけれども、当該変更指示の対象者については、現実的な可能性等も踏まえまして、生産者の持つ農地や機械、技術等に制約をされるため、省令において指示の対象者を限定するということとしております。

川内委員 今の御答弁はごまかしがありますよね。食料供給困難事態対策法案、全ての事業者が対象ですよね、法律上は。そこを聞いているわけですから。それを、刑罰を科すのに、こっちで選ぶことができるんだということを後づけで答弁されるのは、私はそれは、そういうことを言っているからみんなに不安がられるのではないか、なおさら過料にしなきゃいかぬというふうに改めて強く思ったんですが。

 今日は法制局にも来ていただいているんですけれども、法案審査の段階で両方過料にする、要するに、報告徴収に応じない、あるいは立入検査を忌避するのは過料で、届出指示義務違反も過料、両方過料にしたらどうですかねとか、農水省から協議を受けられましたか。

栗原政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの法律案につきまして、農林水産省から私どものところに条文審査ということで持ち込まれた案におきましては、提出されています法案同様の罰則と過料という組合せの案になっておったところでございます。

 私ども法制局といたしましては、農林水産省から提出されました法律案について審査を行ったものでございまして、両方の事柄について過料にするといったような案については審査をしておりませんので、この場でお答えすることは困難でございます。

川内委員 だから、法制局の審査の段階で、両方を過料にするということは審査されておらない、協議を受けておらないと。

 実際に、議員修正をかけて過料にすることは私は何ら問題がないのではないかというふうに思いますが、手前どもの方から、この担保措置、罰則の部分について、立入検査の忌避、報告徴収については過料、届出指示義務違反についても過料という形での修正をさせていただこうということで今準備をしておりまして。

 是非、委員長、手前どもの方から提案があったら、与野党で十分議論をして、実際にこの規制を受ける農家の方々に不安がないようにしていかなければならないというふうに思うので、理事会でしっかり協議をするということをお約束をいただいておきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

野中委員長 仮に修正案が提出された際は、与野党でしっかりと議論していただく、それをしっかりと理事会の場で議論をさせていただきます。

川内委員 大臣、最後に御答弁いただきたいんですけれども、この罰則の部分については、いろいろ御説明されたけれども、検討がやや不十分なんじゃないか。不十分というんじゃなくて、やや、やや不十分じゃないかというふうに思うんですよ。

 食料を確保することは大事だ、農業も大事だ、だけれども、それは農村がなければ、そこに住まう人々がいなければ成り立ち得ない議論になるわけで、そういう意味で、農村にいらっしゃる人々に不安を与えない、あんたたち、届出を出さないと犯罪になりまっせみたいな話ではなくて、過料という行政罰になるけれども協力してね、だから協力してねということで私は十分だというふうに考えるのでございます。

 ちょっと検討が不十分だったね、やや不十分だったねという私の考えについては、大臣は、いや、十分だ、何を言っとるんじゃ、川内はというふうにお思いになられるか、最後、御答弁いただけますか。

坂本国務大臣 この事態法を作成するに当たりましては、農業団体の代表者あるいは民間団体の代表者、企業の代表者、学識経験者、こういった方々九人から成る検討委員会をつくらせていただきました。座長は、参考人としてお越しいただきました名古屋工大の渡辺研司先生でございました。そこで六回の検討を行いました。

 そして、行って出た様々な意見を、それぞれ十一の地方農政局のブロックで説明会を行っております。意見交換会も行っております。そこに生産者の皆さん方も、あるいは流通業者の皆さん方も全部来ていただいて、トータルで二百回以上にはなっているというふうに私も聞いておりますので、私は、十分な意向聴取、意見聴取、そういったものをやった上で今回の事態法の案ができ上がっているというふうに確信をいたしております。

川内委員 大臣、お上に対して物を言うというのはなかなか大変なことでございます。

 決まった案を説明して、農家の皆さん方の中には大変な不安が広がっているというふうに聞いております。だから、私ども、修正案を提出させていただいて、与野党で議論させていただこうというふうに思っておりますので、もし修正されたならば、大臣としてそれをしっかりと受け止めていただきたいということを最後に申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

野中委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 農家に罰金についてです。

 本法案は、緊急事態時に食料不足が生じた場合、どの程度の食料確保が可能かを把握するため、農家から計画を政府へ提出させるといった義務を課し、計画の提出を怠った場合は刑罰を科すとしたものです。農家に罰金を科すことを可能とする極めて異例の法律に対し、私の地元長崎県だけではなく、全国の生産者や国民の皆様から不安や怒りの声を多数聞いています。

 食料安全保障が重要だと政府は言いながら、物価高で深刻な経営危機にある酪農家や畜産農家を救おうとせず、残念ながら廃業者や自殺者が増えている状況です。そういう背景がありながら、いざ食料危機が来ると、罰金という圧力で農家を従わせようとする。ただでさえ厳しい経営環境にある農家の皆様を犯罪者にするような法律は絶対に許されません。すぐに撤回するべきです。

 資料一を御覧ください。こういう全国百二十万人と言われる農家の方々へ大きな影響を与える重要な法改正でありながら、立法プロセスに疑問を感じます。専門家会議の有識者九人のうち、確認したところ、生産者は一人もいない。JAの役員が入っているようですが、この方は農家ではないというふうに聞いております。

 先ほど川内委員とのやり取りもありましたが、改めて、現場の農家の方々に対し、こういった法律を作るに当たって、どのようなヒアリングを重ねて、どういう意見を聴取したのでしょうか。

杉中政府参考人 まず、不測時における食料安全保障の確保につきましては、令和五年四月二十八日に開催されました食料・農業・農村政策審議会の第十四回基本法検証部会において、かなり具体的な議論が行われました。その結果を踏まえた中間取りまとめについて、全国十一ブロックで生産者も交えた意見交換会を実施するとともに、農林水産省のホームページを通じて広く国民の皆様の御意見、御要望を受け付けるなど、現場の声を聞いてまいりました。

 その後、先ほど御紹介があったように、不測時における食料安全保障の検討会におきましては、委員御指摘のとおり、農業者団体の有識者に委員として参画をいただきまして、現場目線も踏まえた検討を行ったところでございます。

 その後も、求めに応じまして、現場の生産者を含む農業者団体や消費者団体などへの説明、意見交換会を延べ百七十件、参加者としては千二百名に対して行うなど、丁寧な説明を行ってまいりました。

 また、現場により近い地方農政局の職員に対しても我々が法案の説明を行い、地方農政局の職員から、現場の農業者からの質問等を約五十件、約百八十名に対して説明を行ってきたところでございます。

 我々としても、できるだけ現場の農業者等も含めまして丁寧に意見聴取を行い、説明を行ってきたというふうに考えておりますけれども、今後とも、引き続き御理解をいただくような丁寧な説明に努めてまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 それだけたくさんの生産者、消費者の声を聞かれたということですが、では、こういった法律が作られるに当たって、そういった意見交換の場に参加していた生産者は納得されていたんでしょうか。

杉中政府参考人 現在、世界の食料需給は不安定化をしているということで、食料が不足する事態というのがいつ起こるかもしれない。そのときにつきまして、食料供給に係る事業者が協力して対応しなければいけないということについては、原則として必要性について御理解をいただいているというふうに考えております。

山田(勝)委員 私が現場で聞く限りでは、そういった必要性に関しては、当然、理解をしている方々はいます。しかし、罰金という罰則を科して強制的に生産をさせるような、こういった手法に関して納得している生産者は誰もいません。その辺りがちょっと私の現場のヒアリングとの乖離があるようですが、次の質問に入ります。

 本法案は、予想される事態の進行に合わせて三つの段階を想定して対応を取ることになっています。三つ目の段階では、農家にカロリーの高い芋や穀類への作物の転換を指示し、休耕地の耕作を求めることも検討するとあります。これこそまさに現場を理解されていない机上の空論だと思います。

 坂本大臣は、休耕地がなぜ休耕地になっていると分析されますか。

坂本国務大臣 私の地域を見ますと、休耕地になっているのは、どうしても人手が足りない。だから、やはりそこは、農地は整備しておくけれども作物は作らないようにしよう、また、作るような人手が足りない、そういうことで休耕地になっているところが非常に多くあるというふうに認識をいたしております。

山田(勝)委員 まさに人手が足りない、それはつまり、農業をやってももうからない。適正な利益が農業で上げられることができれば、そもそも休耕地になっていません。農業を続けていても、生活ができなかったり家族を養えない。農家の所得を支えるような農政であれば、休耕地がこのように拡大していないはずです。

 離農者も多く増え続けている中で、緊急時に生産拡大を指示するとあるが、何を根拠に生産拡大や転作が可能だと考えておられるのでしょうか。

舞立大臣政務官 緊急時といいますと、国民が最低限度必要とする食料の供給が確保できないおそれがある状況と、非常に深刻な事態だと思っておりまして、そのような事態では、農業者の方にも国民への食料供給にしっかりと御協力いただく必要があると考えております。

 その上で、生産拡大や転作が可能と考えているのかという御質問だと思いますけれども、やはり、平時からしっかりと農業者や農地等の生産基盤を確保するというところがまず重要だと考えております。

 そのため、今回、この基本法の改正案の下で、需要に応じた生産を推進しつつ、農地の集積、集約やスマート技術の導入等による生産性の向上、付加価値の高い農業生産の推進、成長する海外市場への輸出の促進等によりまして農業者の収益性の向上を図ることによって生産基盤を強化するとともに、麦や大豆、飼料作物、加工原材料野菜等の輸入依存度の高い品目につきまして国産への転換を推進し、海外産地による不作などの輸入リスクを低減するといった対策を平時から講じていくことで、不測の事態においても必要な生産が適切にできるような環境を確保してまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 先ほど川内委員からも最後指摘があったんですけれども、私は最大のこの法律の問題点というのは、やはり罰金を、刑罰を、犯罪者にしてしまうという点だと思っております。

 過去、こういった、農水省が農家の皆さんに協力をお願いしてきている政策というのは様々あるわけです。例えば、減反政策。一九六〇年代、生産過剰となった米の生産量を調整するために、農家の米の作付面積の削減を目指し、米農家の方々に転作を支援するための補助金を支払う、それによって生産量を調整してきました。このとき、減反政策に協力しない農家の方々に、罰金や罰則など、そういった規定はありませんでした。協力金として補助金を支払い、そして、いろいろ現場の農家さんの中には思いはあったと私も聞いていますが、しかし、その政策に対して多くの農家の皆さんは理解をし、協力をしていただいたわけです。

 食料危機も、不測の事態、先ほど御説明がありましたが、私も、不測時にこういった法律を準備しておくことは重要であるし、必要だと思います。ただし、生産者の方々に対して、有事のときに食料を作ってくれることを計画しない、そういうことがあれば罰金を科す、そういう内容の法律ではなくて、食料危機時に国民にしっかりと安心して必要なカロリーを供給できる、そういった公的な担いを協力いただける農家の方々にお願いします、そして、この協力にお願いしてもらったら協力金をお支払いします、こういう内容でいいんじゃないでしょうか。

 五月九日、参考人質疑で、田代参考人からも貴重な提言がありました。北風のペナルティーを科すことで生産への期待をするのか、それとも太陽のインセンティブで促進を促すのか、法律として、国民的な合意、農業者の合意がなければ不測の事態に耐えられない、お考えをいただきたい、こう述べられています。大変重要な御指摘だと受け止めました。

 大臣、協力金という名のインセンティブでなぜ駄目なのでしょうか。

坂本国務大臣 減反政策と違いますのは、やはりこれは不測の事態です。国民の皆さんたちが食料に瀕する、そういう状況を想定して作る法律であります。

 その際に、生産者も、そして流通業者も輸入業者も、全てがやはり同じ土俵に立つ、同じような結束をする、そのことが大事であるし、これがやはり非常事態のときを乗り越える一つの大きな鍵になる。そういう前提に立って、今回の法案につきましては、検討会において、供給を確保するための対策とともに、これらの対策を着実に実施してもらうためのいわゆる担保措置について論議をしたところでございます。

 いかに供給をどれだけ把握するか、これが国の役割としてまず求められるところでございます。その中で、食料供給困難事態におきましては、輸入価格の上昇や生産に必要な資材価格などの上昇など、事業者にとって損失リスクがある、そして、供給確保対策を実行するためにはそれだけの支援措置が必要である。一方の方で、食料価格は上昇していることから、在庫、輸入、生産量などを過少申告し、より高値になって販売するという誘因もあることから、支援策と同時に罰則も必要であるという議論になりました。

 こういったものを踏まえまして、本法案におきましては、事業者の方に積極的に御協力いただくための財政上の措置と併せて、担保措置として罰則や公表措置についても規定したところでございます。ですから、それは、流通業者も、輸入業者も、そして生産者の皆様方も、同じような立場に立って、国の危機を救うんだというような心構えが必要であるというふうに思っております。

 引き続き、関係者の皆様方に正確かつ分かりやすい情報提供と意見交換等を幅広く行うなど、丁寧に説明をしてまいりたいというふうに思っております。

山田(勝)委員 今のお話を聞いていても、農家の方々にインセンティブだけでは駄目なのかという質問の答えに全くなっていない。いろいろ事業者のお話もされたんですけれども、これはあくまで生産者の方々に対する罰則規定の話でございます。

 ちょっと、重要な指摘というか、過去の農水大臣のコメントについて確認をしたいんですけれども、二〇二三年五月二十三日、当時の野村元大臣が耳を疑うようなコメントを出されています。

 まず先んじるのは法律を制定することだろうと思います、何から作れというのは法律によって縛りをかけていかないと農家の皆さん方に効き目がないというか、皆さん一斉にやってくれないだろうと思いますと。

 これは坂本大臣も同じような考えでしょうか。

坂本国務大臣 不測時の食料安全保障につきましては、平成二十四年九月に農林水産省が定めました緊急事態食料安全保障指針は、法令に基づくものではなく、また、農林水産省が定めました指針でありまして、政府全体の取組の根拠にはなり得ない等の課題がございました。

 野村大臣の御発言は、こういった課題の下に、不測時の対応に関する法制度が必要であるという認識を受けてのものだというふうに考えております。

 本法案では、食料供給不足の兆候が見られる段階から、農業者を含む事業者の自主的な取組を要請することにより、食料供給困難事態になることを防止するということに主眼を置いておりまして、野村元大臣の御発言も、農業者に対して増産を強制するといった趣旨ではないというふうに認識をいたしております。

山田(勝)委員 野村大臣が増産を強制するような趣旨ではないという答弁がありました。

 しかし、この法律自体は、緊急時に増産を、罰則まで、そういった圧力までかけて強制するような内容になっているわけです。

 重ねて大臣に確認したいんですけれども、この法案はそもそも、罰金が目的ではなくて、不測時に農家の皆様に協力してもらうことが目的であるはずです。どういう制度であるべきかということを、これは不十分な内容になっているし、多くの生産者の方々や国民の皆さんが、特にこの内容に対して理解を得られているとは到底思われません。

 改めて、生産現場や国民の声を直接伺いながら、国民的議論が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 先ほど事務方からも答弁いたしましたように、本法案の検討に当たりましては、審議会それから有識者検討会において、かなりの数、議論をいたしました。そして、地方意見交換会や各種意見交換の機会を捉えて、現場の生産者の御意見も伺いました。

 先ほど事務方も言いましたけれども、各十一のブロック、地方農政局があるブロックにおきまして、農業団体や地方団体に対する説明会を百七十件行いました。千二百名が参加をいたしております。それから、食料供給困難事態対策法案に係る現場の農業者からの質問等へ対応をする、その話合いを、延べ五十件、百八十人の方が参加をされております。こういう丁寧な聞き取り、こういったものを行った上で今回の法案というものを作成したわけであります。

 本法案は罰金を科すことが目的ではありません。不測の事態において、事業者の皆様に御協力を得ながら危機を乗り越えること、これが目的であります。

 ですから、とにかくまずは供給量を把握することが大事でありますので、どれだけ供給できますかという届出だけは出してくださいねと。それは、全然できません、ゼロです、うちは花農家だから、米あるいは芋、そういったのはできません、そういう届出を出していただければいいわけですので、そういった御協力をお願いし、その上で、担保措置としての罰則というふうになっているところでございます。

山田(勝)委員 十一ブロック、百七十回の説明を重ねたとおっしゃっていますが、回数よりもその説明の中身の方が重要なのではないでしょうか。

 こうやって国会で審議をした上で、問題点が相当出てきている。そして、この論点も整理されていると思います。その上で、改めて、本当に刑事罰じゃないと駄目なのか、過料でいいんじゃないか、若しくは協力金という形で、生産者の方々は十分協力するよ、そういった声を拾うことが重要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 私の後援会は、ほとんどが農家でございます。最初は、花農家に芋を作らせるのかというような、そういった新聞の見出しになったようなことが話題になりましたけれども、最近はそういう声はなくなりました。

 それから、委員が聞かれていることと私の後援会等から出ていることはそれぞれ違うかも分かりませんけれども、罰則についての様々な抗議、あるいは、それはおかしいんじゃないか、そういう声は、少なくとも私の周辺からは聞かれません。

山田(勝)委員 本当に、今の大臣のお話は、私は問題だと思います。全国の農家の皆さんは、インターネット上を通じても、相当、この農家に罰金を科す法律に対して怒りの声が上がっているわけです、全国各地から。水俣病の対応に対しても、環境省は大変な問題がありました、途中でマイクを切るという。こういった、農家に罰金を科す、農家を犯罪者にする可能性のあるような法律に対して、農家の声を聞かずに強行採決をするようなことは絶対にあってはならない。強く抗議をさせていただきます。

 その上で、五月九日、農水委員会、数々の参考人の方々から、こういった議論の前に、まずもって平時からの食料自給率の向上が重要である、さらに、そのためには、直接支払いによる所得補償が必要だと、多くの専門家も、そして、私たち立憲民主党だけではなく他の野党の皆様も、この委員会を通じて、そして本会議場でも質問をしております。こういった所得補償の重要性に対して、現時点において、自民党や公明党が反対しているだけで成立しないのは大変な問題があるのではないでしょうか。

 農家の戸別所得補償制度の復活に対し、岸田総理が今国会でも答弁をされていますが、反対理由が全く反対になっていません。

 買いたたきについて言及をされましたが、民主党政権時、本当にこのような買いたたきが事実だとしたら、政府はどういうふうな対応をしたのかというと、資料もお配りしているんですが、公文書で通知を出しています。今、中小企業の賃上げのために、国を挙げて適正な価格転嫁を求めている状況です。このように、不当な取引を買手側が行ったとすれば、これは当然、独占禁止法の優越的地位の濫用に該当し、明確な違法行為として取締りができます。

 そして、岸田総理は二つ目に、需給バランスを言われました。米価の推移を見ても、民主党政権の所得補償によって米が下がったという指摘は全く当たりません。総理は大変な勘違いをされているようです。

 そもそも、当時の所得補償は、生産調整を条件にしていました。さらに、飼料用米や米粉米の反当たり八万円の交付金も同時に進め、需要のある米作りを推奨し、その結果、飼料米の生産は大きく拡大されました。こういった内容であったことに対する、政府を代表する岸田総理の答弁は、全く反論になっておりませんでした。

 最後、済みません、その上で、坂本大臣は、農家の戸別所得補償制度、どのように思われていますか。

坂本国務大臣 やはり、公取委に対しまして、私たちはそのときに、買いたたきが心配されますので、局長通知を出しました。その結果でありますけれども、買いたたきに対しての相談窓口に対して、買いたたきの事実があったということはそれほど来ておりません。ですから、それは農林省の通知というのがしっかり利いていたんだというふうに思います。

 それから、私たちは、やはり需要に応じてしっかりと農作物を作っていく、このことが大事であるというふうに思います。年に十万トンずつ減少している米に対して戸別所得補償をして、そして米を作っていただくということではなくて、やはり需要に応じた作物を作っていただく、そして、自給率を引き上げるために、輸入に依存している麦、大豆、こういったものに対してやはり直接支払いをして作付をしていただく、こういうような方向性の方が、よりこれから農家の所得にとっても、そして自給率を引き上げるにとっても効果があるというふうに思っております。

山田(勝)委員 時間が来ました。

 私たちは、農家の所得補償によって食料自給率を引き上げていくべきだと引き続き訴えていきたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の一谷勇一郎です。本日もどうぞよろしくお願いをいたします。

 前回の委員会は参考人質疑ということで、その道のプロフェッショナルの方々、まさに現場を知っておられる方々から大変有意義なお話を聞かせていただきました。私も本当に、この法案審議をしていく中で、この参考人質疑を聞いて、考えが変わったり、考えが深まったりしてきたので、今日は、この参考人質疑で参考人の方がおっしゃって、非常にこれは重要だなと思ったところを抜き出してきましたので、そこを中心に質問させていただけたらと思います。

 まず、大臣に冒頭、質問させていただきたいんですけれども、参考人の平澤さんが、有事の際に一人当たりの熱量なり栄養の供給はどうするのか、予測システムの重要性というお話をされました。この予測システムというのはスイスが先行して開発をしているようにもお聞きするんですが、日本として、日本の政府として、今後、この予測システム、有事の際にどのようにして、食料が足らなかったときに代替をしていくのか、家畜をどうするかとか、肥料にしていたものをどうするかとか、ちょっと考えていかないといけないと思うんですが、まず大臣にお考えをお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 不測時におけます食料供給につきましては、実際の不測時の状況や食料の生産、輸入、流通の状況等、様々な要素が影響してまいります。そういった様々な事態を想定して、我が国の食料供給能力や国民経済等に及ぼします影響を把握した上で、対応するシミュレーションというものを行うことが重要であるというふうに考えております。

 平澤参考人の方からも陳述がありましたように、スイスには、輸入の途絶等の不測の事態に備えて、食料供給に関する政府、国家経済供給庁というそうですけれども、その意思決定を支援するシステム、スイスフードシステムにおいて、個々の事態に応じた生産構成等の最適化や、そのために必要な農地面積に関するシミュレーションを実施しているということをおっしゃったということを私たちも聞かされております。そのことにつきましては、農林水産省も承知をいたしております。

 こうした取組も参考にしながら、シミュレーションの在り方につきまして、今後検討してまいりたいというふうに思っております。

一谷委員 今後取り組んでいく、参考にしていくということなんですが、これは質問通告していないので、参考人の先生方、答えられたらでいいのですが、今回の法案に出ているような供給と確保という政策の発動は、予測システムもない中でどうやって発動していくのかということをもしお答えできたら、していただけたらと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 検討会の報告書におきましても、こういった予測システムというのが必要だという御指摘をいただいておりまして、我々、スイス側とも連絡を既に取って、その内容について聴取をしております。特に供給が大きく不足する事態というのは、必要な資材、例えば燃料であるとか肥料であるとかも不足するという事態の制約の中で、どの程度生産若しくは供給を拡大していけるのかということで、シミュレーションするというのは大変重要だと思っておりますので、この法制度の執行に当たっては、そういったシミュレーションの導入というのも検討していきたいというふうに考えております。

一谷委員 導入導入というふうに気持ち気持ちでいくのもあれですけれども、やはりいつにするかという期限も決めていただいて是非取り組んでいただきたいと思いますし、スイスとそういうやり取りができているというのは、非常に心強い回答をいただきました。

 では、次の質問をさせていただきます。

 これは稲垣参考人からのお話があったんですが、農地の転用のために農用地区域からの除外を行う際に、その除外面積に相当する荒廃農地の再生などにより、どの程度農地総量の確保の徹底が重要と考えているのかということについて、これは規模感を問いたいと思います。政府参考人の方にお願いいたします。

長井政府参考人 お答えいたします。

 現行の基本指針におきましては、確保すべき農地として農業振興施策の対象となる農振法の農用地区域内農地につきまして、令和十二年時点の面積目標を三百九十七万ヘクタールと設定しており、この目標の達成に向けて各種農業施策の実施に取り組んでいるところであります。

 今次国会におきまして、農振法改正法が成立した場合の新たな面積目標につきましては、今回法定化いたします国と地方の協議の場を通じまして、地方公共団体の御意見を伺いながら検討することとしております。

一谷委員 これは、就農で農業をしていただく方の人数の確保も必要なんですが、やはり農地の確保も必要だというふうに参考人の方もおっしゃっていましたし、農地が減っていけば、それだけ結局食料を作れないわけですので、この確保をしっかりしていただけたらというふうに思います。

 次の質問をさせていただきます。次の質問は非常に重要な質問じゃないかなというふうに、参考人の方からのお話を聞いていました。

 農業委員会の業務が毎年増加している状況であるというふうに言われていますし、お聞きをしました。全国農業会議所は、千六百九十六か所の農業委員会があり、約四万人の委員がいるということです。現在は、昨年四月に施行された改正農業経営基盤強化推進法に基づく地域計画の策定に取り組まれている農業委員会及び市町村の支援に取り組んでいるということですが、市町村の農政部署にも、専門のスタッフというよりは、やはり兼務している方が多いと。建設や商工や観光も一人で担って、一人霞が関状態になっているということも言われていました。

 これは、農林水産だけではなくて、政府が決めた基本法であるとか法案に対して自治体に計画をお願いした場合、大変自治体に重い負担になっていって、結局、手が回らなかったら隣の自治体のやつをまねしてという、余り自分の自治体にマッチしていないような計画書が出てくる可能性もありますし、農林水産はどうか分かりませんが、コンサル会社にお願いして計画書を作ってしまうという自治体もあるというふうに聞いています。

 実際、事務所の四割が専門職員がいないという状況だということをお話をいただいておりましたが、この状況について政府の問題意識をお聞かせいただきたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 農業委員会でございますけれども、農業者が高齢化、減少していく中で、農地の集積、集約化、遊休農地の解消など、農地利用の最適化活動を担う重要な組織であると我々、認識をしております。

 現在、農業委員会におきましては、特に、地域計画の策定に向けた目標地図の素案作成にも取り組んでいただいております。農林水産省としても必要な支援を行っているところでございます。

 事務局の体制整備の関係でございますけれども、従来から、農業委員会交付金によりまして事務局職員の人件費等の支援を行っているところでございますけれども、令和四年度から、農地利用最適化交付金によりまして、臨時職員の雇用など事務費にも活用できるよう、運用の改善を行っているところでございます。

 さらに、事務局職員の資質向上という観点からは、都道府県農業会議が農地や農政に関する会議ですとか研修会を行うほか、新任者に対する研修も行っていただいているところでございます。

 なお、タブレット端末の配付もしております。こういったことによってデジタル化を進め、農業委員会業務の省力化も推進をしていかなければいけないと考えております。

 今後も、現場の声をお聞きしながら、農業委員会の活動に必要な支援をしっかり行ってまいりたいと考えております。

一谷委員 計画書の策定に当たって、人件費を一緒に出しているということなんですが、この結果、それで職員が増えたのか、働きやすくなったのか。あと、ICTでタブレットを配付していますということはどの委員会でもよく聞くんですが、それだけで本当に生産性が上がるのかというのは私はすごく疑問に思っています。やはり配りっ放しではなくて、それからどうなって効果が出たのかというのは本当に十分検証しないと、配って終わりということになってしまって、ベンダーさんが自分の思いで作ったアプリを入れて終わりとか、そんなことになっているんじゃないかなというふうに思いますので、しっかり効果検証をしていただきたいというふうに思います。

 それでは、本日、質問時間が短いので、少し飛ばさせていただきまして、五番目の質問をさせていただきたいというふうに思います。

 岸田総理の、合理的な価格形成には人件費等の恒常的なコストに配慮するとありますが、これは本当に恒常的なコスト、人件費をそのまま乗せてしまうと、食料価格が高騰してしまう。私の問題意識は、何度もこの委員会でもお話をしていますが、やはり年金生活者の方のエンゲル係数が上がっていくということに対して私はすごく問題意識を持っているんですが、総理がおっしゃった、価格形成に人件費の恒常的なコストに配慮するという意味、これについて政府参考人の方の御意見をお伺いします。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 人件費等を含めまして、生産、製造、流通、販売といった各段階で費用を単純に転嫁をしていった場合に消費者が果たして負担可能なのかどうかというのは、同様の観点を持って私どもも取り組んでいるところでございます。

 現在、政府を挙げて、所得増と成長の好循環の実現というものに取り組んでございますが、ここでまず、消費者の購買力の向上を図るということと歩調を合わせて取組を進めなければならないだろうと思っております。

 また、今御指摘のございました年金制度につきましても、毎年度、賃金や物価の変動を踏まえて支給額が調整されるというふうに伺ってございます。賃金や物価が上昇した場合には、受給する年金額も一定程度増加するというふうに承知をしてございます。

 こうした状況も踏まえながら、農林水産省で行っております協議会においても、消費者を始めとして、どこか特定の一部の方々にしわ寄せが偏らないような仕組みとなるようにすることが重要だという意見をいただいてございますので、関係者間でバランスの取れた食料システムとなるように、丁寧に合意形成を図っていきたいと考えているところでございます。

一谷委員 今、物価が上がれば年金も上がるというお話を聞きましたが、ただ、人口が減っていけば年金は上がらないのではないかな、追いつかないのではないかなというふうに思いますので、私は、これは素人の意見で大変申し訳ないんですけれども、農業をやりながら、もちろん給料が上がるんですけれども、副業的に、この場でも何度も申しましたが、ちょっと池畑議員にもあんたの言うている議論は古いでと言われたんですけれども、太陽エネルギーの話であったりとか、SDGsの話であったりとか、そういった副業的な収入を得られるということはしっかり一緒にやっていくことが重要じゃないかなというふうに思いますので、ちょっと意見を述べさせていただきました。

 では、次の質問をさせていただきます。

 八〇年代農政基本的方向に、食料の安全保障、平素からの蓄え、有事の事態への備えの記載があり、平素から総合的な食料自給力の維持強化を図っていくということが重要だと書かれています。現状、この考えはうまく今まで機能してきたのか。もし機能してこなかったら、課題は何だったのかというところを、人の確保であったり、農地の基盤整備であったりとか、輸入であったりとか、そういった視点から政府参考人の方に御意見をお伺いします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の八〇年代の農政の基本方向の考え方につきましては、現行基本法におきましても、食料の安定供給のために国内生産を増大していくという考え方に引き継がれているというふうに考えております。

 現行基本法におきましては、担い手や新規就農者の育成、確保、農地の確保や農地の集積、集約化、農業生産基盤の整備の推進などに取り組んでいった結果、基幹的農業従事者が大幅に減少する中でも、農業総産出額は九兆円前後を保っております。

 また、担い手への集積率は六割まで増大、また、販売額五千万円以上の経営体や法人経営体の増加など、望ましい農業構造の実現に向けて、取組というのは着実に進めていると考えております。

 また、食料自給率は三八%で推移しておりますけれども、海外依存度の高い小麦の生産拡大に取り組んだ結果、小麦の自給率は二〇〇〇年の一一%から二〇二〇年には一五%に向上しており、一定の効果があったと考えております。

 今後とも、こういった取組を更に進めるという観点から、需要に応じた生産の考え方の下で、麦、大豆、飼料作物や加工原料用野菜などの輸入依存度の高い品目の国産転換の推進を進めてまいります。

 また、基幹的農業従事者が大幅に減るという中で、改正基本法に基づきまして、スマート農業の推進や、それを支えるサービス事業体の育成、付加価値の高い農業生産の推進、成長する海外市場に向けた輸出促進により農業の収益性を高めることによって、食料自給力を強化をしていきたいというふうに考えております。

一谷委員 御答弁ありがとうございました。

 日本維新の会も農政はしっかりやっていきたいと思いますし、時間が来ましたので、今日、初めて速やかに質問を終了お願いしますという文言が書かれた紙をいただいたので、もうこれで終わらせていただきたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。

野中委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。

 今回は、スマート農業技術活用促進法案について質問をさせていただきたいと思います。

 短い時間ではございますけれども、今回、農林水産省からのレクとか、この法案を読み込みました結果、スマート農業技術活用促進法、この名称からは想像できないほどの作り込みをされているなというふうに感じさせていただきました。

 今回、技術会議が取りまとめるとお聞きをいたしましたけれども、開発と使う人の育成とのバランスを取っておられるなと思いました。生産方式革新実施計画についてと、開発供給実施計画と、最後には総論的にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 農業人口が減少して高齢化が進む中、スマート農業の導入は必然であると考えますというスタートになってしまいます。

 先週ですが、参考人質疑の中で、高橋参考人の言葉にありましたが、スマート農業を推進して機械化して、空いた時間をどう使うのかと、非常に印象的な言葉でありました。答えは何通りもの答えになってくるというふうに思いますけれども、私個人としては別の感情も湧いてまいりまして、機械化による労働の時間を短縮をして、それだけではないなというふうに今回は感じさせていただきましたので、その辺りも踏まえながら質問させていただきたいと思います。

 小規模農業者が単独でスマート農業の機械を所有することは難しいというふうに思います。複数の農業者による共同利用、レンタル、いろいろなことが考えられるというふうに思いますが、具体的にどのような取組を考えておられるかという質問になってしまうんですが、前段に申し上げましたように、農業技術革新というのは、促進法の名称からは想像できない内容であるというふうに思いますので、是非、副大臣が今どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 今後の農業者の急速な減少に対応し、農業の生産性の向上を図っていくためには、御指摘のとおり、経営の規模や地域を問わず、幅広い農業者の方々にスマート農業技術を活用していただくことが重要でありまして、そのためには、個々の農業者の状況に応じた多様な導入の選択肢を確保をすることが重要だと考えております。

 このため、本法案におきましては、国が認定する生産方式革新実施計画におきまして、農業者が自らスマート農機等を導入する取組に加えまして、複数の農業者がスマート農機等を共同利用する取組、また、農業者がスマート農業技術活用サービス事業者を活用してスマート農機等のレンタルや農作業の委託等を行う取組のいずれにおいても、農業者やスマート農業技術活用サービス事業者に対して、税制、金融等による支援措置を講ずることとしておりまして、こうした措置を通じて、農業者がスマート農業技術を活用しやすくなる環境の整備に取り組んでまいります。

池畑委員 今、副大臣が最後に申し上げられましたとおり、やはり活用しやすいというのが一番大事になってくるというふうに思います。

 前段にもお話をさせていただきましたが、今回の法案によって農業者がスマート農業技術の活用と併せて生産方式の見直しを求める場合、販路の確保、大体、多収化になってしまって、こういうふうに収穫が増えてしまい、いい意味でもろもろうまくいくとなりますと、販路の確保が課題になってくるというふうに思います。

 この法案の中にも販路のことも書かれているんですが、そういった辺りも含めてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 スマート農業技術の活用の効果を最大限発揮するために農業者が行う生産方式の転換の取組としましては、例えば、スマート農機による作業がしやすいように畝間を拡大したり、樹形を変更するなどの栽培方法や圃場の形状の変更に加えまして、機械収穫等に適した加工、業務用品種への転換などが想定されます。こうした取組に伴い、販路の変更や確保等も課題になると考えております。

 このため、本法案の生産方式革新実施計画におきましては、農業者のスマート農業技術の活用と連動する食品事業者の取組を計画に含めることができることとしております。

 具体的には、農業者と食品事業者が継続的に取引を行う場合におきまして、食品事業者が行う加工、業務用向けの出荷、販売に必要な冷凍、貯蔵設備等の導入、また、様々な規格の野菜や果実の選別、調製に必要な機械の導入等について、農業者の取組と一体的に支援を受けられる仕組みとしており、農産物の生産だけではなく、流通、販売面からも農業者がスマート農業技術を円滑に活用できる環境を整備してまいります。

池畑委員 この促進法はやはり販路も考えていくという上でなかなか作り込んでおられるという点でもお話しさせていただきましたが、最後にも聞かせていただきますが、自治体や農協がきちんと機能していくということが大きく重要なことだというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきますが、開発、普及を進める技術について、二点お伺いさせていただきたいと思います。

 私は、農業高校の実習助手時代に、県内にあります農業機械センターに内地留学を一年間させていただきまして、その当時、農業機械促進法というのがありまして、それで、研修を一年間重ねまして、二十三年前ぐらいになりますけれども、冊子にまとめて県の方に報告をしたことがあります。その話をレク中に農林水産省の方にお話をさせていただきましたら、その法律と同列とか若しくは一緒にされたくないという結構強い意思を感じまして、そうなんだなというふうに思いました。

 今回の基本法改正案で多収化に資する新品種の育成、導入を明記する修正が行われましたけれども、本法案でも、スマート農業を機械のみならず、今までやはり機械だけじゃないのかなというふうに思われていた部分が大きいんですけれども、そのような新品種の育成、導入、そういった支援も考えていくべきではないかというふうに思います。農業機械促進法となると、なかなか、そういった強い、そういうこととは違うんだという意思がありましたが、大臣、そこも含めて答弁いただきたいと思います。

坂本国務大臣 これまでスマート農業実証プロジェクトというのをやってまいりました。その中で明らかになったことは、スマート農業技術そのままを導入してもその効果が十分に発揮されないというようなことが改めて分かりました。委員が言われるところの農業機械促進法のようなことでは、やはり本当の効果は表れないということであるというふうに思います。そのために、スマート農業の技術に合わせたといいますか、適したといいますか、こういった品種の開発、そして現場への導入、こういったものが必要であるというふうに考えております。

 そのスマート農業技術に適した品種としては、例えば、作物の成熟が均一になる、それから倒れにくい、こういったことで、機械による認識や農作業の効率化に寄与する品種が必要であるというふうに思っております。

 私は、日曜日、諫早湾の干拓地の農場を見させていただきました。一区画は六町です。そこにキャベツやあるいはブロッコリーが植えられておりましたけれども、特にブロッコリーは成熟度合いが非常にばらばらですので、こういったものが均一化してくれば、一気に収穫作業、そういったものができるということをおっしゃっておられました。キャベツも、機械でやっておりますけれども、どうしても倒れやすいところがございますので、これも新たな品種として開発していただければというような要望もありました。

 それ以外にも、傷つきにくく品質が劣化しにくい、そして機械収穫による歩留りを改善する、こういったことが大事であるというふうに思っておりますので、議員御指摘の多収化に資する、そういった品種の開発というものを今後もしっかりとやっていかなければいけないというふうに思っております。

池畑委員 やはり、一番最初は、スマート農業となると機械がどんどんどんどん進化していくというイメージだったんですが、このように新品種の改良、今大臣からも諫早湾のブロッコリーのお話もいただきましたが、そういった今までできなかった、農業機械というだけではなくて技術も含めてどんどんどんどん推進して総合的に考えていこうと、この技術会議のメンバーが一生懸命考えておられたんだなというふうに認識を改めていたしました。

 大臣からもありましたが、その適した場所で、そして現場へ導入していかなきゃいけないというお言葉がありました。

 条件のよくない中山間地域、これはどの選挙区でも抱えておられることだというふうに思いますけれども、活用できるスマート農業技術等の開発、普及をやはり進めていくべきだというふうに思いますが、その中山間地域に合った、それだけというわけではないんですが、そういったことも踏まえて、どのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 今後の農業者の急激な減少等に対応し、農業の生産性の向上を図っていくためには、委員御指摘のとおり、平場のみならず中山間地域におきましても、幅広い農業者にスマート農業技術の活用を進めていただきたいというふうに考えております。

 こうした考えの下、令和元年度から開始をしておりますスマート農業実証プロジェクトにおきましては、例えば、傾斜地にも対応できるリモコン草刈り機や、経営規模が小さい農業者でも比較的導入をしやすいドローンによる農薬散布や、経営管理ソフトの導入などの実証を行いまして、これらの中で、作業時間の削減や単収の増加、農薬散布の負担の軽減などの成果も確認をされております。

 本法案におきましては、技術開発の必要性が特に高いと認められるスマート農業技術等を基本方針で明示をした上で、これらの実用化に資する技術の開発供給を行う取組を認定し、支援をすることとしておりまして、技術の内容につきましては、農業産出額の四割を占める中山間地域等のニーズも十分に踏まえて検討をしてまいりたいと考えております。

池畑委員 今、これから草刈りのシーズンに入ってまいりました。大規模農家、今、諫早湾の六町の話もありましたが、それだけではなくて、やはり中山間地域で、農家のプライドというふうによく言われますけれども、草刈りを、あぜを刈っていくんだという時期に入ってまいりまして、やはりそういう中山間地域の方々のことも、この法律でどうにか助けていくというか、考えていく必要があるというふうに思いますので、是非、副大臣の今の答弁にもありましたように、やはり一番いい場所にそういった技術の革新をつくっていただければいいというふうに思っております。

 最後に、スマート農業の推進に向けた環境づくりの視点から、お伺いをさせていただきたいと思います。

 スマート農業機械を使いこなせる人材育成と今いただきましたが、また、地方公共団体の責務規定として第五条がありますが、国としてどのような役割を期待しておられるかということを答弁いただきたいと思います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、スマート農業技術の活用につきましては、それを使いこなせる人材の育成というのが非常に大事でございます。

 このため、農業者に加えまして、農業高校あるいは農業大学校、高専の学生の方々、スマート農業技術活用サービス事業者など幅広い方々、そういったいろいろな方々が担い手になっていただくということがとても大切だと考えております。

 本法案では、第二十条三項におきまして、国は、スマート農業技術を使いこなす人材の育成、確保のために必要な措置を講ずるよう努める旨規定しております。この中で、農業者向けの研修でありますとか、サポートチーム等による優良事例の横展開、あるいは、農業高校や農業大学校等におけるスマート農業機械の導入、これを体験する現地実習、こういった取組の支援を行っております。

 この法案の中でも、スマート農業技術活用サービス事業者に金融、税制措置の支援を講ずる、あるいは、ハード、ソフトの面から人材育成の取組を進めていくと。このため、ここの中に精通している、北から南までいろいろな地域がありますので、地方公共団体の役割が非常に重要となってきます。

 このため、第二十条第四項に基づきまして、普及指導員などによります指導助言の実施などを通じたスマート農業技術の現場への導入促進、これを使いこなせる人材の育成、あるいは、民間事業者や大学と連携した試験研究機関におけるスマート農業技術の開発促進、こういったことを期待しております。

 引き続き、国と地方公共団体が緊密に連携しまして、スマート農業技術の活用を促進してまいります。

池畑委員 成功事例を共有していきたいと思いますし、農林水産省といろいろお話をしているときに、現段階で成功しているのはどこだという話をしましたら、やはり岐阜だという言葉が出てまいりました。把握をしていらっしゃると思いますので、是非、成功事例を共有して、これからいろいろな県、そして国からもいろいろ指示、指導できるような法律になっていけばいいというふうに思っておりますので、是非よろしくお願いいたします。

 時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。

野中委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 前回に引き続き、食料供給困難事態対策法について質問します。

 九日の参考人質疑で、横浜国立大学の田代洋一名誉教授は、食料自給力について、米麦中心では、現在、既に千七百五十五キロカロリーと、不測時の千九百キロカロリーを下回っている状態だと指摘されました。つまり、輸入が途絶えたら、米麦中心では最低限のカロリーは賄えず、芋を摂取しなければなりません。

 特定食料に芋は想定されていませんが、八日の野間議員の質問の答弁で、農水省は、国民が最低限必要とする食料の供給が確保されないおそれがある状況においては、より熱量を重視した農林水産物の供給が重要になるので、芋類を追加することも検討しているというふうに答弁されています。

 緊急事態食料安全保障指針では、畑の表作で芋類の増産、次いで、花卉、工芸作物、飼料作物、野菜、果樹、この順番に芋畑に転換していくとあります。

 しかし、芋への生産転換というのは、すぐにできるわけではありません。仮に生産計画を出すように指示したとしても、芋の生産に至るまでどのぐらいの期間を見込んでいるのでしょうか。説明してください。

坂本国務大臣 芋類の生産は、植付けから収穫まで半年程度を要することに加えまして、種芋の生産、そして育苗等、種苗の確保のための期間を含めれば一年から二年の期間を要するというふうに思われます。食料の生産にはある程度の期間を要するというふうに考えております。

 このため、事態の進展に応じまして、芋類の生産が必要となるような状況も想定しまして、早期の段階から、必要な食料や生産資材の供給確保のために対策を行うことというふうにしております。

田村(貴)委員 畝や、肥料の確保、それから機械も必要ですよね。そして、今は基腐れ病などの病気もはやっていて、そういう防除対策も必要になって、転換は極めて困難だと思います。平時から生産量を増やさないと、いざ必要となったときにすぐにできるわけではありません。

 第二条、食料確保困難事態とは、過去に日本においてどんな例を想定されているんでしょうか。

 坂本大臣の答弁でも、農水省の説明でも、挙げられてきたのは、一九九三年の記録的な冷夏による米の大不作でありました。当時の備蓄は二十万トンで、前年比二四%、不足されたとしています。しかし、現在の備蓄は百万トンで、五倍増になりました。

 九三年の例は、立法の根拠とは言い難いのではないでしょうか。同様の不作があったとしても、事態法がなくても対処できるのではないでしょうか。

杉中政府参考人 委員御指摘の米の備蓄水準につきましては、政府備蓄米として百万トン程度を備蓄しているほか、民間流通在庫も最も少ない八月末で百万トン程度あり、これも合わせると百六十万トン以上の備蓄というのも有しております。

 ただ、今後、世界の食料需給というのは不安定化をしておりますので、一九九三年を超える異常気象等による生産の縮小、そういったこともあり得るということもございますので、備蓄ということについても対策は重要だと考えております。

 また、特定食料につきましては、米だけではなくて、現在の食料を支えるほかの作物ということも重要でございますので、食料供給困難事態対策法につきましては、民間備蓄の活用を念頭に、出荷、販売の調整を位置づけまして、この中で、備蓄の放出の要請、あと、供給量を抑制することにより備蓄を確保するといった要請を行うなど、不測時において食料を適切に市場に供給していくという措置を加えております。

 また、米だけではなくて、重要な食料について、平時から食料供給困難事態に備えて一定の備蓄を行うということは重要でございますので、特定食料等の備蓄の在り方について、基本方針の中の、本部設置期間以外の期間において実施する措置の総合的な推進において、備蓄の方針というものを定めたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 食料供給困難事態は、供給量が二割減になったときだと政府は説明しています。お米ならば、玄米八百万トンの年間生産量の二割に相当しますね、百六十万トンが必要になってくる。今の政府備蓄は百万トンで、これでは足りないわけですね。平時の施策の充実が最も大事と、大臣は何度も答弁されてきました。天候による大不作の予想などは、一年前や二年前なんかできるわけでもありませんし、今年は能登半島地震があった、そして、気候危機による大水害、大災害が毎年のように日本全国各地で起こっているということです。

 二割の不足に備えて、お米六十万トンの備蓄を政府として増やさなければいけないのではないでしょうか。いかがでしょうか。

杉中政府参考人 お米の備蓄についての質問でございますけれども、先ほどもお答えいたしましたが、政府備蓄米として百万トン程度を備蓄しているほか、民間流通在庫、これが最も少ない八月末も百万トン程度ありますので、全体としては百六十万トンを超える備蓄というものが確保できていると考えております。

 また、ほかの品目についての備蓄につきましても、やはり、民間においてどの程度在庫を持っているのかということを前提に必要な備蓄の在り方というのを検討したいと考えておりますので、法案ができた暁には、まず民間の在庫についての調査も行った上で、適切な備蓄の水準も含めた方針というのを定めたいと考えております。

田村(貴)委員 局長、そうおっしゃったけれども、在庫とそれから備蓄は別ですよね。民間に流通している在庫と、それから市場から隔離された備蓄というのは、別物ですよね。いざという緊急事態のときには、やはり備蓄というものが大切ではないんでしょうか。だから、国家備蓄ということで、食料供給困難事態、二割相当しているんだったら、この二割に相当するのが法に合わせた備蓄の方法ではないのか、在り方ではないのかと指摘せざるを得ません。

 今、政府は、水田活用の予算三千億円などで畑地化を進めています。もしお米が不足して、増産や生産転換を要請したとしても、既に水田を畑地化していればこの転換は容易ではありません。米の需要が減少しているからと畑地化を進めていけば、いざ不測の事態となったときに、これは途端に困る話です。どの程度の水準で水田を維持していくべきと考えていますか。

坂本国務大臣 米は、主食でありまして、我が国で自給可能な唯一の作物でありますけれども、主食用米の需要が毎年十万トンずつ減少をしております。将来の米の需給の安定に必要な水稲の作付面積を確保しなければなりません。一方で輸入依存度の高い麦、大豆等の生産の拡大もやりながら、食料安全保障というものを確保していかなければならないというふうに考えております。

 現在、水田は二百三十万ヘクタールであります。このうち百五十万ヘクタールで水を張り、水稲、これは主食用米だけでなくて飼料用米も含みますけれども、百五十万ヘクタールで水稲が作付されております。残り八十万ヘクタールは、麦、大豆、野菜等が作付されております。

 こういう中で、各産地のそれぞれ主体的な判断に応じて、米、麦、大豆、ブロックローテーションをやったり、あるいは、水田に対しては畑地として産地化する、あるいは汎用化をする、こういったものが行われ、それに対して私たちも後押しをしているところでございます。

 現在の基本計画では、令和十二年の農地面積の目標を四百十四万ヘクタールと見込んでおりますけれども、水田と畑を分けて設定はしておりません。一方で、主食用米に加工用米あるいは飼料用米等を合わせた米の作付面積の目標を設定しておりまして、令和十二年の百四十四万ヘクタールの目標に対しまして、令和五年では百四十八万ヘクタールというふうになっております。

 今後、基本法が成立しました暁には、それらを踏まえまして食料・農業・農村基本計画を策定することとしておりまして、その中で、生産努力目標の実現に必要な米の作付面積についても検討をしていく考えでありますけれども、畑地化の促進は、畑作物が連続して作付されている水田について、畑地として生産性の向上等を図ろうという産地の取組を支援するものでありまして、水田に戻すということは想定をしておりません。

田村(貴)委員 お米は大事ですよね。今度の特定農産物も、お米、麦、大豆、油、肉、そして砂糖、人間が生きていく上で欠かせない、その筆頭にあるのがやはりお米ですよね。畑作にずっと流れをしていくと、やはりここは食料確保が得られないという事態も招きかねません。

 先日の参考人質疑で、農林中金総合研究所の平澤明彦さんに、農家の担い手を増やすためにどうすればいいかと私が質問したら、先生は、国境を開く以上、そこは所得で補填していくしかないときっぱり述べられました。そして、土地利用型と言われる穀物を作ってももうからないので、ある程度重点化していかないと農地の維持はできないと述べられました。この指摘は重要ではないでしょうか。

 米や麦、大豆といった基幹作物については、政府として、経営が維持できる水準の直接支援がやはり必要と考えます。これこそ大臣の主張される平素の施策の充実ではないでしょうか。この点について、大臣、やりますか。

坂本国務大臣 平澤参考人の御意見につきましては承知をしているところでございます。

 まず、農業を持続的にするためには、農業者の皆さん方の所得を確保することが重要でございますけれども、そのためには、生産性の向上や付加価値の高い農業生産などを通じて、収益性の高い農業を実現していくことが基本であるというふうに考えております。

 その上で、米につきましては、国内需給に影響を与えないよう、国家貿易により輸入を行うなど、十分な国境措置を施しております。また、麦、大豆につきましては、米のような十分な国境措置がありませんけれども、諸外国と生産条件において不利があることは事実でございますので、これを補正するために、担い手経営安定法に基づきまして、標準的な生産費と標準的な販売価格との差額を補填する畑作物の直接支払交付金、いわゆるゲタを措置しているところでございます。

田村(貴)委員 田代参考人は、生産促進の現実性という点で、農業所得についても言及されました。

 都府県の水田作は労務費が時給マイナス七十九円、畑作であれば六百円から七百円水準だと指摘されました。水田作付では、規模別に見ると、五ヘクタール未満がマイナスで、十から二十ヘクタールが最低賃金前後、黒字化するのは二十ヘクタール以上だということです。このような状況で罰則つきの生産促進など可能なんでしょうかと、先生は疑問視されました。

 平時に農業所得が確保されないで農家が離農していく、この状況の中で、不測時だからといって生産促進など、本当にできるとお考えなんでしょうか。どうするんですか。

坂本国務大臣 平時における食料安全保障の確保というのは食料・農業・農村基本法改正案によりまして規定しておりまして、食料供給困難事態対策法案は、いわゆる不測時における対策を定めたものでございます。

 基本法改正案におきましては、必要に応じた生産を推進しながら、農地の集積あるいは集約、スマート化、こういったもので生産性の向上を図ってまいりますし、付加価値の高い農業生産の推進、あるいは成長する海外市場への輸出の促進等によりまして収益性も図り、生産基盤を強化をしてまいりたいというふうに思っております。

 一方で、麦、大豆、飼料作物、加工原料用野菜の輸入依存度の高い品目につきましては、これは国産に転換をしていく、そのことを推進し、海外産地による不作などの輸入リスクを低減する対策を平時から講じていかなければなりません。不測時においても生産を推進できるような平時の環境というものをしっかり整えてまいりたい、確保してまいりたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 施策はいろいろあることはいいんです。だけれども、大臣、その平時の取組が、余りにも、余りにも所得が低いじゃないか、そういう状況がこの委員会の審議でも大問題になっているわけですよね。先生がおっしゃるように、やはり、売れる作物に流れていく、花とかあるいは野菜だとか、穀物はどうするのかということが今問われているわけですよね。

 食料供給困難事態は、私は、緊急事態食料安全保障指針で対応できると思っています。この罰則つき、制裁つきの事態法などを持ち出さなくても食料供給はちゃんとできる、現行法に基づいて対策を打っていけば私はできると思います。刑罰や社会的制裁をもって農家に作付を強要したいというのがこの法案の本音ではないでしょうか。それではいけないと思います。

 今日、山田議員からもまた紹介がありましたけれども、野村元農水大臣が、まず先んじるのは法律と強調されました。坂本大臣、まず先んじるのは法律ではなくて、まず先んじるのは農家への命令でなく、自給率の向上を高く掲げて、国産増産を急いで進めていくことではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 不測時の食料安全保障につきましては、平成二十四年九月に農林水産省が定めました緊急事態食料安全保障指針というものしかありませんでしたので、これを、やはり指針では不測時の根拠にはなり得ないということで、今回の事態法の提案というふうになったところでございます。

 そういうことで、生産者の皆さん方にも、そして輸入業者の皆さん方にも、物流業者の皆さん方にも、しっかりそこは御理解いただいて協力をしていただく、こういう気持ちで、みんなが同じ気持ちになって危機を乗り越えるということが大事であろうというふうに思います。そのための担保としての、一定の必要最小限度の罰則、これはやはり必要であるというようなことで、野村大臣もそういった法律の必要性ということを念頭に発言されたのだというふうに思っております。

田村(貴)委員 北風制裁一辺倒では農家の理解は得られないと言わざるを得ません。

 岸田首相が、三月二十六日、本会議の私の質問の答弁で、人件費等の恒常的なコストに配慮した合理的な価格形成と言われました。

 最低賃金の三分の一しかないんですよね、全経営体平均で時給三百七十九円の農家の所得。この所得が価格転嫁していけば、食料価格というのは数倍に跳ね上がるわけなんですね。そうなれば、消費者は国産品を買わずに輸入品を買う方向に流れていき、食料自給率は低下していくんです。

 これはジレンマだと思います。このジレンマについて、農水省はどのように考えていますか。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、農林水産省で協議会を開催して、合理的な費用が考慮される仕組みづくりなどについて議論をいただいておりますが、今御指摘ございましたとおり、価格転嫁が実現したとしても、輸入品への需要のシフトが生じてしまって、結果として国内生産が減少してしまうというのは本末転倒だろうというふうに、留意をしているところでございます。

 このために、昨年八月に第一回の協議会を開催いたしてございますが、この第一回の協議会の際にも、輸入品へ代替する可能性があるということも明記した上で議論を開始をいたしまして、また、直近の四月に開催されました協議会におきましても共通認識が得られたところでありますが、その中では、品目などの実情に応じて仕組みづくりについて検討するというふうにいたしてございまして、輸入品との競合状況なども踏まえながら検討を進めていこうというふうに考えているところでございます。

田村(貴)委員 まだ続きがあるんですけれども、時間が来ましたので、次回また論議させていただきたいと思います。

 今日は終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 五月九日の参考人質疑のことを振り返りながら質問をさせていただきたいと思いますが、株式会社雨風太陽の高橋博之さんから、供給困難事態法案について、平時から食料危機に備えることがまず先であって、都市と地方の分断が食料安全保障への無関心を招いている、青少年への農山漁村体験を推進し、平時から理解を促すことが欠かせないというような指摘がありました。

 その青少年への農山漁村体験を推進するための青少年自然体験活動等の推進に関する法律案というものが、議員立法でございますけれども、各党で現在議論されているかと思います。この法案は、全国市長会、町村会からも成立を求める要望が上がってきている法案になりまして、食育を推進するべき立場にある農林水産委員会とも深い関係がある法律案だと理解をしています。

 この法案の目的は、第一条に書いてありますので、確認の意味で読ませていただきます。

 この法律は、人々の生活が便利になる一方、人と自然や社会とのつながりを実感することが難しくなっている近年の状況において、青少年自然体験活動等が、農山漁村その他の豊かな自然環境を有する地域における様々な体験活動を通じ、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養い、人と人とのつながりの大切さを認識し、農林漁業の意義を理解すること等により、青少年が生きる力を育むことに資し、並びにその実施を受け入れる農山漁村等の活性化及び都市と農山漁村等相互の共感の醸成に寄与するものであることに鑑み、青少年自然体験活動等の推進に関し、基本理念を定め、及び国の責務等を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、青少年自然体験活動等を推進し、もって我が国の活力の向上に寄与することを目的とする。

ということであります。

 この推進に関し、基本理念を定めて、国の責務等を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定める必要があるとして、青少年自然体験活動等の推進に関する法律案が議員立法で提出されようとしているわけですけれども、この法案が成立した場合、農林水産省としては、食料安全保障の観点から、また食料供給困難事態対策の観点から、どのような取組が可能になるのか、また推進しやすくなるのかということを、大臣に伺いたいと思います。

坂本国務大臣 青少年自然体験活動等の推進に関する法律案につきましては、今委員も言われましたように、青少年が農山漁村における様々な体験活動を通じて農林漁業の意義を理解すること等によりまして、農山漁村の活性化や都市と農山漁村の相互理解の醸成等に寄与するものであるということに鑑みまして、その体験活動の推進を図ることを趣旨とするものというふうに認識しておりまして、大変重要なものであるというふうにも思います。

 国会で御審議いただくべき法案でありますので、成立した場合の政府としての見解を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、国民の意識、関心が農山漁村あるいは食料というものに対して薄くなっていく中で、こういった都市と農村の様々な分断を招かない、こういう意味では非常に重要なものであるというふうに思っております。具体的な行動変容に向けて、それをつなげていかなければいけないというふうに思います。

 そして、最終的には、平時、不測時を問わず、我が国の食料安全保障というものを一層確かなものにしていかなければいけない、そういう観点からも、やはり、この法案あるいはそういった取組というのは重要なものであるというふうに思います。

 たしか、文科省あたりを中心に、農山漁村子供交流プロジェクトというものは今あって、農山漁村と都市の子供が交流する、そういったものは今設けられているようでありますけれども、法的なものによって裏づけされていけば、これがより確かなものになっていくだろうというふうに思っております。

長友委員 大臣の思いも込めていただきまして、御答弁ありがとうございました。

 参考人質疑で意見陳述されました高橋博之さんは、あるべき農村の姿として、そこに子供たちがいて、農林漁業の意義を理解することであり、分断されている都市部と農村の関係を修復することであり、都市と農山漁村の相互の共感の醸成であり、これこそ平時の消費者と生産者の在り方であって、不測時の食料供給困難事態につながっていく態度だというふうに指摘をいただきました。私もそのとおりだというふうに思います。

 この基本理念と食料安全保障はセットで、ニコイチであるべきだと思いますので、まずはこの青少年自然体験活動等の推進に関する法律案の成立を、是非、国を挙げて進めていただきたいというふうに思います。

 続きまして、二地域居住について伺いたいと思います。

 現在、二地域居住を推進するための関連法案が国会で審議されています。国土交通省は、広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案を提出しまして、現在、参議院の方でまさに審議、採決を迎えているところでございますが、この法案が成立した場合、農林水産省としては、農地を守る観点から、またスマート農業を推進する観点から、どのような取組が可能になるのか、また推進しやすくなるのか、見解を伺います。

長井政府参考人 まず私の方から、農地を守る観点の方からお答えさせていただきます。

 農村地域におきましては、人口の減少、高齢化が急激に進行しており、農村関係人口を創出、拡大し、農業、農村に関係する様々な活動に関わる多様な人材を呼び込むことが重要でありますが、二地域居住はその有効な手段の一つであると考えております。

 二地域居住の普及、定着につきましては、委員御指摘のとおり、現在、二地域居住者向けの住宅やコワーキングスペースの整備等の取組を支援するための仕組みを創設する、広域的地域活性化法の改正案が審議されているものと承知しております。

 農地保全の観点から申し上げますと、農林水産省では、多面的機能支払いなどによりまして農地の保全に向けました共同活動を促進しているところでありますけれども、二地域居住の促進によりまして地方への人の流れの創出、拡大が図られれば、このような共同活動に二地域居住の方が参加されることも期待されると考えております。

 今後とも、二地域居住を推進する国土交通省を始めとする関係府省とも連携して、必要な施策を講じてまいります。

川合政府参考人 スマート農業の推進の観点から説明させていただきます。

 二地域居住によりまして、農業に取り組む機会が増加することが見込まれます。

 スマート農業技術の活用によりまして、例えば、トラクター等の農業機械の自動操舵でありますとか、スマートグラスを活用しまして熟練農業者の技術を見える化しまして、新規就農者に継承する取組などによりまして、初めて農業に取り組む方にとっても取り組みやすくなるということから、二地域居住の方々にも農業に取り組んでいただけますよう、関係省庁とも連携しまして、スマート農業技術の普及に努めてまいります。

長友委員 答弁ありがとうございました。

 同じく参考人で来られました農業会議所の稲垣専務理事も、これからの農地を守っていくに当たって、関係人口が大切だという指摘をされておりました。集落営農に二地域居住の人材を取り込んでいくことが農地を守っていくことにもつながっていくという期待をされておりましたので、二地域居住を進めるということは、関係人口を増やしていく、そして農村に多様な人材を取り込んでいくということになりますので、これからは、都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つ二地域居住などの多様なライフスタイルの視点を持って、地域への人の誘致や移動を図ることがやはり私も大切だというふうに思っております。国交省は二地域居住の推進を図るための情報発信等を行っておりますので、しっかり農水省も連携をしていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 また、今回の広域的地域活性化基盤整備法では、インフラ施設を整備する自治体に対する財政支援などを定めている以外にも、改正案には二地域居住の受入れ施設の整備を含めた促進計画を自治体が作成できる仕組みを導入し、同計画を作成する自治体には国の補助金や交付金が採択されやすくなるようになっております。農地を守っていくためにも、そしてまたスマート農業の推進に当たっても、高橋参考人からは、外部人材の方の方がITリテラシーも高い方が多くて、スマート農業に参入しやすいという指摘もありました。

 ですので、例えば、これは総務省の管轄になりますけれども、スマート農業の普及というミッションを地域おこし協力隊に持っていただいて、積極的に農村で受け入れていくようなことも効果的なのかなというふうに考えているところでございますので、省庁横断で、国を挙げて農地を守っていく、そのような姿勢で農業振興地域の整備に当たっていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 続きまして、食料安全保障の観点から、食料供給困難事態対策法で、生産者を始めとする供給サイドに期待する対応が焦点が当たっているように受け止めておりますが、やはり、先ほどから指摘があるように、平時からの対応そして対策というものがセットなんだということを考えると、消費者側に求められる点、また消費者側が変わらなければならない点も盛り込む必要がないのかというふうに考えるわけです。

 多くの国民の関心が、食料供給困難事態、いわゆる食料安全保障というものに決して十分な関心があるわけではない、また、農村に対してもまだまだ一般の国民の皆様の意識が向いていない、東京の一極集中が進んでいるわけですから、このような他人事のような状況が見受けられる中で、農水省としても消費者サイドに求めていく取組というものが十分なのかどうか、また、今回の食料供給困難事態対策法案の中に消費者側に求められる点を盛り込んでいかなくていいのかという点について、答弁を求めたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 不測時には、消費者の不安により国民生活や国民経済上の混乱を招くことも考えられることから、消費者に正確な情報を分かりやすく提供し、買いだめや買い急ぎを抑えるなどの働きかけを行うことが必要と考えておりまして、本法案の在り方を検討した検討会におきましても、消費者行動の専門家に委員として参画いただき、消費者対策をテーマとして取り上げ、議論を行ったところでございます。

 このため、本法案に基づき策定する基本方針におきましては、こうした消費者への情報提供や働きかけ等といった消費者対策についても位置づけたいと考えています。その上で、政府対策本部の下で、消費者庁など関係省庁とも連携をして、供給対策だけでなく、消費者対策も一体として講じていきたいというふうに考えております。

 また、平時からの対応ということですけれども、消費者を含め国民の食や農業への関心を深めていただくべく、平時から国内農業の重要性を始めとして我が国の食料をめぐる現状や課題、食育など様々な情報発信を行ってまいりました。

 多くの国民の食や農への関心が低いという御指摘につきましては、これを真摯に受け止めまして、食料・農業・農村基本法の見直しを踏まえて、平時からの食料安全保障の重要性や不測時において各消費者が取るべき行動など、国民理解の一層の醸成に取り組んでまいりたいと考えています。

長友委員 大臣からも、都市と地方の分断が進んでいる点、これは解消をするべきだということを冒頭にいただいておりますけれども、今回の法案で生産者サイドに罰則を設ける等、非常に、生産者サイドからすると、何で困ったときだけそういうことをするんだという意識はどうしても拭い切れないというふうに思いますので、やはり平時からの、私たち消費者が生産者をしっかり、日頃から信頼関係を構築するということを行っていないことには、今回の法案というものはなかなか理解していただけないものだというふうに私個人は理解をしておりますので、是非、その点においてはこれからしっかりと取組を進めていただきたいというふうに思います。

 最後に、農地のことについて、農業委員会の稲垣専務理事から、農地を守る農業委員会として、事務方を担う自治体職員を増やしてほしい、サポートしてほしい等の要望が先日もお話にありました。高齢化と、なり手不足が深刻化する農業委員会について、農水省はどのような打ち手を考えているのか、また、将来の農業委員会をどのようにサポートしていくのか、改めて見解を伺います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの一谷委員の御質問に対する答弁と重複するところがございますけれども、農業委員会につきましては、農業者が高齢化、減少する中で、農地の集積、集約化、あるいは遊休農地の解消など、農地利用の最適化活動を担う重要な組織であると我々は認識をしております。

 一方、今、長友委員から御指摘ございました、先般の農林水産委員会におきまして、稲垣参考人から、農業委員会の事務局体制がなかなか厳しいといった御発言があったことを承知しております。

 農林水産省といたしましては、事務局の体制に関しましては、従来から農業委員会交付金により事務局職員の人件費等の支援を行っておりますけれども、これに加えて、令和四年度から農地利用最適化交付金によりまして臨時職員の雇用など事務費にも活用できるよう運用改善を行っているところでございます。

 また、タブレット端末の配付によるデジタル化を進めて、農業委員会業務の省力化の推進、こういったことも進めなければいけないというふうに考えております。

 一谷委員から、効果について検証するようにという御指摘がございました。今後も、こういった取組が現場でどういった効果が出ているか、それをしっかり我々としても把握しながら進めていきたいというふうに考えております。

 さらに、他の機関から農業委員会に対してのサポートという観点で申しますと、例えば、都道府県農業会議が農業委員会に対しまして、農業委員会相互の連絡調整、あるいは巡回等による指導助言等の支援を行っているところでございます。

 今後も、現場の状況をしっかり踏まえながら、農業委員会の活動に必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

長友委員 農業委員の皆様は、私の地元を回っても、やはり高齢化をしておりまして、先ほども、タブレットの導入をして効率を上げていくというお話がありましたけれども、タブレットを使いたいとは思っていないような状況だと思うんですね。使い慣れていませんから。

 であれば、やはり、先ほど二地域居住のところで述べましたけれども、スマート農業を導入するに当たっては外部人材を受け入れていく、農業委員会の方でも外部人材にサポートをしてもらう、そのような観点も必要だと思いますので、その点、併せて検討をお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 今日は農地法改正について質問したいと思います。

 前に三月十三日に私が質問したときに、地元の京都で外国人が農地を、許可を得て、農業をやると言いながら資材置場に結局なった。これは別に外国人に限らず、いわゆる違反転用の問題について質問したら、大体全国でどのぐらい違反転用というのはあるのかと質問したら、九千五百件余りあるということで、これはかなりの数字だというふうに思うんです。

 農林水産省としては、なぜこんなに九千五百件以上も違反転用というものがあるのか。特に食料安全保障を考えると、やはり農地資源というのは極めて重要であります。もちろん、農家の現場の声からいうと、幾ら農業をやっても赤字がずっと続く、もうやっていられない、そういう声もあるんですけれども、それはそれで対策を打つべき話であります。

 やはり、こっちはちゃんと法律もあるわけですので、しっかり取締りをすべきだと思いますけれども、農林水産省として、このような九千五百件以上の違反転用というのがあるということについての原因、総括、教えていただきたいと思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、令和二年において違反転用されていた九千五百八十八件の内訳は、令和二年に新たに発見された四千百八十七件と、過去の違反転用が是正されずに積み残っている五千四百一件の合計となっております。

 令和二年に新たに発見されました四千百八十七件、面積でいいますと二百九十ヘクタールになりますが、それの違反転用のうち九四%に当たります三千九百二十五件は同年中に違反状態が解消されたところでありますが、このように、新たな違反転用についてはこの十年程度において毎年四千件前後が発生し、その九割については、その発見年のうちに違反状態が解消されております。

 ですから、残ったものが少しずつ積み上がっているのが五千件というようなもので、あと、先ほど申し上げた毎年のものが四千件あって、それが九割解消している、そんなような状況になっております。

 これは、違反転用の発生理由の多くは制度の不知、誤認によるものでありまして、要は、本来事前に許可を取れば問題ないものが許可を取っていないというケース、これは九割のケースでございますが、そういったものが大半でございまして、事後的に転用手続等を行わせることで違反状態を解消しているものでありますが、そもそもの発生防止というのをやはりやる必要がございますので、そういう意味では、制度の誤認等があるということでありますので、農地転用許可制度の周知徹底というのをしっかりやっていくことが必要であると考えております。

北神委員 一つは、今おっしゃったように、大体約七割以上が非農家、あるいは農家であっても農業を実際やっていない、こういった方たちが七割ぐらい占めているということなので、おっしゃるように周知徹底、ちゃんと農業委員会で、農地法上これは許可を得ないといけないよと。性善説に立てば、彼らは知らなかったということになりますので、そこを頑張っていただくことが一つ。

 もう一つは、平成二十八年以前の違反転用の案件というのが大体七割以上あったと思います。平成二十七年以前ですね。これはほとんど、だから、長期でずっと放置されてきた。ここも皆さんのお考えというか対策を知りたいんですけれども、やはり早期発見というのが極めて重要だと。長く放置すればするほど当然既成事実化してきますし、関係者が引っ越したり、あるいは死亡したりします。そういうことを考えますと、早くやらなければいけない。ところが、かなり長い間ほったらかしにされている場合がありますので、そういったことに対する対策はいかがでしょうか。

長井政府参考人 お答えいたします。

 農地につきましては、毎年、農地法に基づいて農業委員会が農地パトロールをやっていただいておるんですが、なかなかそこで発見できないとか解消できないという点もございます。また、物によってはかなり意図的にやられているケースというのもございまして、こうした違反転用の是正につきましては、仮に発見までに時間を要するものであっても、事例としては、粘り強く指導することなどによって違反状態が解消した事例もございますので、そうしたものの事例の横展開を図ってまいりたいと思っております。

 また、今後のことで申し上げますと、今回、農地法の改正法案におきまして、農地の権利移動の許可に際しまして法令遵守状況を確認することが明記されましたけれども、そうしたもので公表措置というものを今回入れておりますので、こうしたものによってその判断材料の一つとなるほか、違反転用者に是正措置を講じさせる、又は違反転用そのものの抑止というものも効果があるものと考えておりますので、こういう新しい措置も含めまして、しっかりと効率的、効果的に違反転用の是正を図ってまいりたいと考えております。

北神委員 今回の改正案に、確かに皆さんもそういう危機意識がおありだということで、いわゆる農業関係法令の遵守状況をちゃんと、やっていなければいわゆる農地の権利取得は得られないという条件が追加をされたというふうに思っています、思っているというか、そうなっているというふうに思います。

 これについて、これは私も賛成ですけれども、その中身、例えばどういう農業関連法令が対象になるのか、それとか、判断をするときに、遵守をしていない場合、その内容や時期、違反転用についてはその時期、こういったものについて具体的なお考えを教えていただければと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の農地法の改正案におきましては、農地の適正かつ効率的な利用の促進を図るため、これは全国農業会議所から事前に政策提案もいただいておりますけれども、こういった政策提案も踏まえて農業関係法令の遵守状況を確認することといたしまして、対象となる具体的な法律といたしましては、耕作の事業に必要な生産手段に係る法律として、農地法や農振法あるいは種苗法、農薬取締法等を想定をしておるところでございます。

 また、違反の内容でございますけれども、農地の権利取得者における、例えば農地法であれば違反転用、農振法の関係であれば開発許可違反、種苗法であれば育成者権の侵害、農薬取締法につきましては農薬使用基準違反、こういったことを想定をしておるところでございます。

 農業委員会の審査におきましては、許可申請時に、これらの違反がないことを申請者に申告させた上で、必要に応じ関係行政機関に確認をすることとする方向で検討しておるところでございますけれども、具体的な審査方法等の運用につきましては、農業委員会等の現場の意見も伺いながら、また現場の負担も考慮しながら具体的に検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

北神委員 遵守状況を確認する上で、農業委員会というのがやはり結構大きな役割を果たすということなんですが、先ほどからるるお話があるように、この前の参考人質疑で稲垣委員がおっしゃったように、全国の農業委員会の約四割で専任職員がいないという状況で、年々委員会の仕事が増えている。今回の改正案でまた更に、法令の遵守状況というのを確認しないといけない。

 今までも、先ほど答弁の中で、農業委員会のパトロールというのがある、これでしっかり違反を確認するようにされているという話なんですけれども、これまでの違反転用に限定して言えば、大体、農業委員会が発見したのは四割程度なんですね。それはそれで大きいのかもしれないけれども、六割ぐらいが、ほかの行政手続、申請手続の中でたまたま発見をした。地籍調査とかあるいは建築確認とか、こういった中で、よく見たら違反転用しているなということですので、かなりやはり農業委員会というのは、よほど皆さんが力を入れていかなければ、この仕事というものもきちっと、彼らの責任じゃないですよ、能力的に体制的に非常に難しいというふうに思います。

 先ほどの繰り返しの答弁になるかもしれませんけれども、是非、どういう支援をされていくのか、教えていただきたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 我々も、地方自治体は全体的に、定員の関係もあって、非常にマンパワーの関係は厳しいという状況の中で、農業委員会についても御指摘のような状況にあるということで、我々も認識をしております。

 答弁が繰り返しになって大変恐縮ですけれども、農業委員会交付金あるいは農地利用最適化交付金、こういったことで今まで事務局の体制等について手当てをしてきておるということで、まずこういった予算をしっかりと活用していただくということを、また自治体ともよく意思疎通を図りながら対応していただくように、我々としても働きかけを行ってまいりたいというふうに考えております。

 あと、先ほどの答弁の中でも申し上げましたけれども、やはりほかの機関との連携、特に、各都道府県に都道府県農業会議がございますので、こういったところとの連携ということもしっかりとやっていただくように、いずれにしても、現場の状況ということを我々もよく把握をしながら、そこのところをしっかりと業務をこなしていただけるように、我々としても、何ができるか、これからもしっかり考えていきたいというふうに思います。

北神委員 是非、農業委員会も、現場では非常に汗をかいておられますけれども、なかなか、これは特殊な方式ですね、農政の中の非常に特色だというふうに思いますけれども、やはり、一般の農家の人たちがこれをかなりやるということで、それだけに特化しているいわゆる行政職員ではないということを是非踏まえて、よく現場の声を聞いていただきたいというふうに思います。

 それで、多分、最後になりますけれども、もう一つ、資料の裏側にありますけれども、未是正の違反転用事案における是正の見込みという農林水産省の資料です。

 さっき事前規制の話をしましたけれども、事後的に言うと、是正というものを私の委員会の質問の中でも、よく勉強になりましたけれども、最終的には原状回復命令ができる、それから都道府県知事においていわゆる代行手続というのができるということになっていますが、この資料を見ますと、是正が見込まれない、違反が分かっていながら是正が見込まれないというのが五割ぐらいあります。確実に見込まれない、おおむね見込まれない。

 それから、二十六、下の方を見ていただきますと、是正が見込まれない、どちらとも言えないと回答した理由には、先ほど私も言いました、もう長期間経過している、もう今更遅いという回答とか、是正の意思が見られないためとか、こういうのがあります。大体、発見から是正するまで、平均すれば、平均かどうか分かりませんけれども、多くの場合は数年かかっていたりします。

 大臣、やはりここをしっかりやらなければ、やった者勝ちみたいな形になってしまいますので、これについてどのようなお考えがあるのか、教えていただきたいと思います。

坂本国務大臣 委員御指摘の状況は、いろいろなところに見られます。やはり、いつの間にか資材置場になっている、あるいは大型車の置場になっている、そういうのが長年そのままになって、先ほど言われましたように、なし崩し的に既成事実化しているというようなものが散見されます。特にそういうのは非常に地域では目立つわけですけれども、なかなかそれに対していろいろな声が出ないというのも、地域特有の事情があるのだろうというふうに思っております。

 そういうことを考えまして、私たちといたしましては、違反転用の是正事例の横展開を図っていかなければいけないというふうに思っております。今回の農地法の改正案においては、原状回復の措置命令に従わない者の公表の仕組み等を通じて、効果的、効率的に違反転用の是正を図っていきたいというふうに思っております。

 それから、関係省庁に対しまして、事業者へ農地転用許可制度を周知するポスターの掲示、これも行ってまいりたいというふうに思います。そして、都道府県等に対しまして、通報窓口の設置などを依頼したいというふうに思います。

 さらには、今回の農地法改正におきまして、転用事業の定期報告の法定化、こういったものを行うことにしているところでありまして、今後、早期是正、そして違反転用の発生防止、こういったものに努めてまいりたいというふうに思っております。

北神委員 事前防止も大事ですけれども、これは、指導をする、十回もいろいろ、ちゃんと原状回復しなさいと言いながらも全然動かない、十数回やっているケースもかなり多いので、そういった点も含めて是非お願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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