衆議院

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第18号 令和6年5月29日(水曜日)

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令和六年五月二十九日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      岸 信千世君    小寺 裕雄君

      高鳥 修一君    橘 慶一郎君

      中川 貴元君    中川 郁子君

      西野 太亮君    細田 健一君

      堀井  学君    宮下 一郎君

      保岡 宏武君    簗  和生君

      柳本  顕君    山口  晋君

      山本 左近君    梅谷  守君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      川内 博史君    篠原  孝君

      緑川 貴士君    山田 勝彦君

      渡辺  創君    一谷勇一郎君

      空本 誠喜君    掘井 健智君

      稲津  久君    山崎 正恭君

      田村 貴昭君    長友 慎治君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   環境副大臣        滝沢  求君

   内閣府大臣政務官     古賀友一郎君

   厚生労働大臣政務官    三浦  靖君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田  薫君

   政府参考人

   (消費者庁食品衛生・技術審議官)         中山 智紀君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 河合  暁君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁審議官)            福原 道雄君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 中村 英正君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 山崎  翼君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    田原 芳幸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            森光 敬子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           増田 嗣郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            松尾 浩則君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (林野庁長官)      青山 豊久君

   政府参考人

   (水産庁長官)      森   健君

   政府参考人

   (環境省大臣官房政策立案総括審議官)       大森 恵子君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 前田 光哉君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  白石 隆夫君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     柳本  顕君

  宮下 一郎君     岸 信千世君

  山口  晋君     中川 貴元君

  梅谷  守君     篠原  孝君

  一谷勇一郎君     空本 誠喜君

同日

 辞任         補欠選任

  岸 信千世君     宮下 一郎君

  中川 貴元君     山本 左近君

  柳本  顕君     五十嵐 清君

  篠原  孝君     梅谷  守君

  空本 誠喜君     一谷勇一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 左近君     山口  晋君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、大臣官房危機管理・政策立案総括審議官松尾浩則君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、林野庁長官青山豊久君、水産庁長官森健君、警察庁長官官房審議官和田薫君、消費者庁食品衛生・技術審議官中山智紀君、総務省大臣官房審議官河合暁君、出入国在留管理庁審議官福原道雄君、財務省大臣官房審議官中村英正君、大臣官房審議官山崎翼君、国税庁課税部長田原芳幸君、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官森光敬子君、大臣官房審議官鳥井陽一君、大臣官房審議官増田嗣郎君、環境省大臣官房政策立案総括審議官大森恵子君、大臣官房審議官前田光哉君、自然環境局長白石隆夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。

 今日の農林水産委員会は、定足数に達することが定刻どおりにできず、若干遅れてスタートをしたということは、極めて残念なことだというふうに思います。

 我々、農林水産委員会での議論というのは、党派を超えて今までさせていただいてきました。思いは同じだというふうに思います。ただし、今回の食料・農業・農村基本法の改正案の議論については、なかなか心を一つにできなかったことが残念だというふうにも思っています。

 昨日、参議院の農林水産委員会で、今申し上げました食料・農業・農村基本法改正案が可決されました。本日の本会議で可決、成立となる見通しであります。十時から本会議の開会予定というふうに伺っております。

 さらに、大変遺憾であることというのは、国民的議論というものは展開されなかったということだと思います。私は今も様々な方々と地元に帰り意見交換をさせていただいていますけれども、もちろん私からはいろいろなところでこの基本法プラス三法案につきまして説明をさせていただいていますけれども、政府からの説明というのはなかなかされていなかったこととか、そして、この大切な食料安全保障に係る基本法の改正についてはもっとたくさんの方々を巻き込んでやはり審議がなされればよかった、そういう声を聞いているところであります。

 一言で言えば、私は、生産者から消費者までの国民の皆さん不在で今回の基本法の改正がなされているということだというふうに思いますので、そこのところをしっかりと受け止めてほしいんです、大臣。そして、その上で、成立してしまうのであれば、これからしっかりと計画の策定ということになっていくわけですから、そこのところにもしっかりと様々な配慮をしていただきたいと思います。一括でやっています三法案の審議はまだ参議院で残っておりますので、そこの部分でも仲間が頑張ってくれることだと思っています。

 五月二十三日の日農新聞に農政モニター調査の結果が掲載されておりましたが、岸田政権の農業政策を、大いに評価する、どちらかといえば評価するが一九・八%、どちらかといえば評価しない、全く評価しないは七〇・四%。評価しないと答えた理由は、生産資材などの高騰対策が四三・三%、基本法の見直しが三七%、米政策が三五・六%などとなっています。このような数字を見ても、現農政に対しての厳しい声があるということを是非お認めいただきたいと思います。

 このような中、本日は、皆様御存じのとおり、御案内があると思いますけれども、全国農業委員会会長大会が開催されます。大会前に、私も、福島県選出の国会議員団と福島県農業会議の皆さんと、大変短い時間ですけれども懇談会が開催されることになって、出席を求められているところでもあります。本来であれば、その懇談会の後にここで質疑をさせていただければ、皆さんの声というのを反映させながら質問させていただけるのですけれども、いろいろなものを前提として質問させていただきたいと思います。

 そこで、平成二十七年、二〇一五年の農協法の大改正と併せて、農業委員会制度も大きく改正されたわけであります。その改正から、とうに五年以上が経過している。この五年以上と申し上げたところは、農協法等の改正法の附則、検討条項があります。第五十一条、「政府は、この法律の施行後五年を目途として、組合及び農林中央金庫における事業及び組織に関する改革の実施状況、農地等の利用の最適化の推進の状況並びにこの法律による改正後の規定の実施状況を勘案し、農業協同組合及び農業委員会に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、必要な措置を講ずるものとする。」とされています。

 この間の農業委員会制度の評価と課題について、政府としてどのように認識しているのかお伺いしたいと思います。大臣、お願いいたします。

坂本国務大臣 農業委員会につきましては、平成二十七年に、農地利用の最適化を進める現場活動を強化する観点から、農地集積、遊休農地解消等の最適化活動を必須業務とするとともに、現場活動を積極的に行うため、農地利用最適化推進委員を新設する等の改正を行ったところです。

 この改正後、実際の現場活動といたしまして、遊休農地を解消しながら農地集積を進めた事例や、新規就農の促進に取り組んだ事例など、いろいろな成果を聞いているところでもあります。制度改正が農業委員会の農地利用の最適化を進める現場活動の強化に寄与したものであるというふうに評価をしております。

 現在、農業委員会におきましては、特に地域計画の策定に向けて大変な御苦労をいただいております。心から感謝をし、敬意を表するところでございます。市町村、そして農地バンク等の関係機関とも連携をし、今後も地域の実情に応じた現場活動を行っていただきたいと考えているところでございます。

金子(恵)委員 次の質問なんですけれども、恐らく今日の全国農業委員会会長大会におきましても様々な要請が出てくるというふうに思っています。基本法や農地法制、地域計画など農業委員会の業務に係る施策を始め、食料、農業、農村基本政策の具体化に向けた政策提案がなされるというふうにも聞いています。

 その中で、農業委員と農地利用最適化推進委員の併存配置の見直しについても要請があるというふうに伺っているところでございます。今、大臣は、本当に御苦労されていらっしゃる現場の声にも寄り添っていただくようなそういうお言葉を下さったわけでありますので、是非ここについても、しっかりと御検討いただきたい点でございます。

 この併存配置につきましてもこの制度改正の際に設けられたわけでありますけれども、農業委員会の現場では、委員と推進委員の立場や役割等の違いから、一体的な運営に支障が生じているという声があるということでございます。

 これに関連いたしまして、昨年の九月十五日付の全国農業新聞の記事では、当時、坂本大臣が会長であった、今も会長でいらっしゃるのでしょうか、自民党の農業委員会等に関する議員懇話会においてこの併存配置が焦点になりまして、そこで、農業委員会組織からは、制度を見直し、効率的な運営を行えるよう求められたというふうに報じられています。

 その新聞の記事を私も確認をさせていただきましたが、全国農業会議所の国井会長は、私が承知する限り、農業委員と推進委員が併存する制度を導入したことで、ああ、よかったという話を聞いたことがないと強調されています。続けて、是非、謙虚に制度を見直して、農業委員会の効率的な運営に努めるようにしていただきたいと訴えたということであります。もちろん、坂本会長、この懇話会の会長は、国井会長の意見を重く受け止めたいと述べたということであります。

 ただ、今おっしゃっていただいたことも関連していると思いますが、一方で、地域計画の策定を進める中で新たにこの問題が出れば現場が混乱する可能性があるとして、農業委員会組織の意見も踏まえながら今後の対応を検討していく考えを示したというふうにもその記事の中では記載されているわけであります。

 ここで、もちろん懇話会の会長として議論をしてきた、そういう経緯を踏まえまして、この併存配置の在り方、見直しの必要性、そして必要ならばその方向についてどのような見解を今大臣であられます坂本大臣はお考えになられているのか、その見解をお伺いしたいというふうに思います。改めて、農水省の見解、そして大臣、当時、あるいは今もかもしれませんけれども、懇話会の会長としてのお考えもお聞かせいただきたいと思います。

坂本国務大臣 現行制度の下で、農業委員会と農地利用最適化推進委員が連携をいたしまして、実際に農地利用最適化活動の成果も上げていただいていると承知をしております。農業者が高齢化、そして減少化する中で、現場活動によりまして一層取り組んでいただくことが重要であると考えております。

 一方、農業委員会系統からは、委員おっしゃいましたように、農業委員と農地利用最適化推進委員の立場や役割等の違いから、一体的な運用に支障が生じているといった意見もいただいているところでございます。

 農業委員会の運営状況は現場ごとに様々であると考えますが、農林水産省としては、まずは農業委員と農地利用最適化委員が総力を挙げて、本年度末の期限に向け、地域計画の取組の推進をしていただきたいというふうに考えております。

 私も、全国農業会議所の国井会長から、再三にわたりまして併存配置の見直しを訴えられております。国井会長に対しましても、今の地域計画の策定がある程度めどが立ってから様々なことを考えていきましょうというようなことをお答えしているところでございますので、今後も、皆様の声を聞きながら検討してまいりたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。重要なことをおっしゃっていただいたと思います。

 それでは、地域計画が一段落したらば、しっかりと見直しをしていく、大臣はその必要性については受け止めているということでよろしいんですか。

坂本国務大臣 地域計画で様々な課題もまた見えてくるというふうに思いますので、そういったものを踏まえて、皆さんたちの意見を聞きながら検討してまいりたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 国井会長の方から、もう再三この件についてはしっかり見直しをせよという声があるということは、受け止めていらっしゃるということでありますから、実際に現場の声を聞いてということで、いろいろな方々のお声を聞いてということになれば、見直しが必要なんだろうと思います。

 ただし、今の段階では、その方向性についてはおっしゃることはできない状況だというふうに理解をさせていただきましたが、是非、御対応を、どちらの対応にしても、どのような形で見直しをしていくのか。この併存配置自体が駄目なのか、あるいは、今の状況を、例えば、もっと更なる支援をしていくことによって続けていくのか、それも含めての御検討をこれからしていただけるものだというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 先日の委員会で農振法等改正案に対して全会一致で附帯決議を付し、その一項目で、市町村の農政関係部署及び農業委員会事務局の人員を始めとした現場の体制整備のために必要な支援措置を十分に講ずることを政府に要請したわけでございます。この点については、もうこの委員会の中でもいろいろな委員の方々が質問をしていらっしゃったというふうに思います。

 この事務局体制、しっかりと改善していかなくてはいけないというわけで、地域計画を今作っている状況で苦労している、そのとおりなんです。苦労しているからこそ、本当であれば、もっと先に、早くしっかりと事務局体制を整えてさしあげることが必要だったのではないかというふうに思っていますが、現段階で、この問題意識を持ちながらどの程度把握していらっしゃるか、どんな状況であるかということ、そしてまた、それに応える形で必要な支援措置としてどのような支援を行うことを検討しているのか、お伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 農林水産省では、毎年十月の時点におきまして、事務局職員を始めとした農業委員会の体制に関する調査を実施しております。令和五年十月時点における農業委員会事務局職員の平均人数は四・八人、そして、専任職員がいない農業委員会は全体の四割というふうになっております。

 また、農業委員会系統からは事務局体制の強化が必要であるという声をいただいており、農林水産省といたしましても、農業委員会が農地利用の最適化活動という重要な役割を担っていることから、それを支える事務局の業務が少しでも円滑に進められるよう、様々な取組、工夫を講じていくことが必要であるというふうに考えております。

 事務局体制整備に関しましては、従来から、農業委員会交付金によりまして事務局職員の人件費等の支援を行っていますが、令和四年度から、農地利用最適化交付金により、臨時職員の雇用など事務費にも活用できるよう運用改善を行ったところです。

 このほかにも、タブレット端末の配付によるデジタル化を通じた農業委員会業務の省力化、また、都道府県農業会議による農業委員会相互の連絡調整、巡回等による指導助言等といった他の機関からのサポートなどの取組を進めてまいります。

 今後も、現場の声を聞きながら、農業委員会の活動に必要な支援をしっかり進めてまいりたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 済みません、私の聞き方がいけなかったかもしれませんけれども、把握をしっかりとやはりすべきだということを申し上げさせていただきまして、その件につきましては、意見を聞くといっても、例えば、五月九日の参考人質疑の際には、全国農業会議所の稲垣さんからは、今回の改正に直結する問題であり、是非、国会の先生にお願いするしかない問題として認識していることでございますがと言って前置きをし、それは、先ほども申し述べましたが、市町村農政の推進体制の問題、市町村農政部署と農業委員会の事務局職員の抜本的強化についてでありますとおっしゃっています。続けて、全国千六百九十六農業委員会の職員の平均は四・八人、中央値は四・〇人、うち四割の委員会には専任職員が一人もいないという状態、兼務で回しておりますというようなことをおっしゃっている。

 この件についてはもう農水省は把握をしているわけなんですが、数字だけではなくて、では、どのような問題点が本当に出てきているか。現場に例えば足を運びながらいろいろなヒアリングをしていくことも含め、私は、もちろん全国農業会議所からの意見聴取というのも重要でありますけれども、直接御覧になっていくということも重要かと思いますが、いかがでしょう。

坂本国務大臣 先ほども言いましたように、今、それぞれの農業委員会で、地域計画を作るために大変な御苦労をいただいております。そのために、市町村に対しましては、補助金として十四億円交付をして、補助をつけておりまして、その十四億円の中で、様々な地域計画に対する人的な手当て、こういったものもお願いしたいというふうにしているところです。

 これはまず地域計画を作っていただくための補助金でありますけれども、それ以外、今後の農業委員会の在り方につきましては、全国農業会議所等々の意見も聞きながら、しっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 しっかりと対応していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に参ります。

 生産基盤の弱体化を前提とした交付金について、実は、五月の十六日の参議院の農林水産委員会で、我が党の徳永議員からの質問がありました。生産基盤が弱体化したとは思っておりませんでしたと、五月十六日、このときの参議院の農林水産委員会で大臣はおっしゃられて、その後、この委員会におきましても、私の発言に対しましての答弁で、生産基盤は弱体化していると修正されたという経緯もあります。

 改めてなんですけれども、五月十六日の交付金についての質問というのは、前提となっているのが修正前の大臣の発言ということで、生産基盤は弱体化していないということを前提にして発言している、答弁しているのではないかというふうに思いますので、是非、改めて、今現在は生産基盤は弱体化している、そういったことを前提といたしまして、これを認めていらっしゃるわけですから、この答弁が本当にまるっきり逆になっていく可能性もありますので、私として質問させていただきたいところといいますのは、生産基盤の弱体化を前提として、農地を維持する人に面積に応じて直接交付するような新たな交付金制度の必要性、大臣はどのようにお考えになるか、お伺いしたいというふうに思います。

坂本国務大臣 弱体化していないというふうに私が申しましたのは、頭の中に、生産基盤の強化といった場合には、土地改良事業を始めとする農業農村事業、そして農業の経営体、これをどう強化するかというようなことで、様々な政策をこれまでつくってまいりましたので、そういうことからすると、一時期二千億円台まで落ちました土地改良事業等も含め、あるいは経営体の法人化等も含めて、それぞれの、それなりの努力をしてきたというようなことで、ついつい弱体化していないというような言葉になったことでありますけれども、全体的に見れば弱体化している、それを前提に今回の法案も提出されているということで、謝罪し、撤回をしたところでございます。

 その上で、今言われました農地維持直接支払い、あくまでも直接支払いというものは支払い手法の一つでありまして、我が国においても、政策目的に応じて、農地等の保全管理に資する多面的機能支払交付金や、あるいは中山間地の不利を補正いたします中山間地域の直接支払交付金など、日本型の直接支払いが措置をされています。

 農業所得を確保、向上する上で重要なことは、まずは農業者の皆さんたちが創意工夫を生かして農業経営を展開し、収益を上げていくことであり、そのために国がなすべきことは、直接的に所得を補償することではなくて、農業者が収益性を上げることのできる環境を整備し、農業者の取組を後押しすることであるというふうに思っております。

 農地維持交付金については、御党の制度設計がどういうふうになっているか分かりませんけれども、EUにおきましては、農地を維持するということではなくて、生物多様性の観点から、耕地と、それから河川の間の緩衝地帯、あるいは泥炭地には生物多様性の観点から直払いを出すというようなこともあります。

 農地がどういうふうなことで定義として固められ、そこに交付金が交付されるのか。じゃ、林地は駄目なのか、あるいはそのほかの雑種地は駄目なのかというふうな様々な課題も出てくるというふうに思いますので、今後、農地維持交付金というものがどういうようなものであるかというのは、しっかりその制度設計を聞かせていただきたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 私は、ここで、今質問のときに、大臣がおっしゃった農地維持交付金という言い方はしておりませんで、あくまでも農地を維持する人に面積に応じて直接交付するような新たな交付金制度の必要性ということでお伺いさせていただいたところでございまして、徳永議員が示した交付金、今名称をおっしゃっていただきましたけれども、それは一つの提案ということではなかったかなというふうにも思っております。

 改めて、今おっしゃっていただいたように、日本型の直接支払いを実施しているからというようなことではありましたけれども、でも、しかしながら、それにもかかわらず生産基盤が弱体化し続けているという状況なわけです、それが現状です。であれば、例えばその制度創設以来、物価高等も受けて厳しい状況があるわけですから、この交付金の交付単価を増額することなど、しっかりと様々な角度から検討していくべきではなかったかなというふうにも思います。

 大臣から明確に、徳永議員から示された農地維持交付金については賛同を得られないというようなことでありましたから、それであれば、交付単価増額とか抜本的に拡充する必要があるとか、私はそう思いますけれども、大臣の見解をもう一度お伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 単価の引上げとか交付に関しましては、財源に関わることでありますので、軽々に申し上げられません。ただ、環境に関する現在の環境保全支払交付金につきましては、令和七年度にその単価を含めて見直すことにはしているところであります。

金子(恵)委員 単価見直しについて、分かりました。

 次に参ります。

 新たな環境直払いの見通しということでお伺いさせていただきたいと思いますが、四月三日、当委員会で、環境負荷低減に取り組む農家を支援する新たな直接支払い制度を令和九年度を目標に導入すると表明されました。これは、昨年末の政府の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で決定された「「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」に基づく施策の工程表」を踏まえたものだというふうに思っております。

 これから具体的な検討を進められるもので、現時点で具体的に想定される内容も限られているとは思いますが、この工程表を見る限り、現行の日本型直接支払いのうち、環境保全型農業直接支払交付金と多面的機能支払交付金について、令和七年度に新たな仕組みを導入すると示されています。また、令和九年度を目標として、みどりの食料システム法に基づき環境負荷低減に取り組む農業者による先進的な営農活動を支援する仕組みに移行すると示されています。一方で、中山間地域直接支払いと多面的機能支払交付金は、令和七年度以降も継続される方向が示されているということだというふうに思います。

 四月三日の大臣の表明に戻りますけれども、大臣の環境負荷低減に取り組む農家を支援する新たな直接支払い制度導入の表明について、四月の四日の日本農業新聞では、現行の交付金は主に複数の農家による集団的な取組が助成対象だが、これは個人の農業者に支払う仕組みに改めると報じられているわけですけれども、このような理解でよろしいでしょうか。

坂本国務大臣 新たな制度につきましては、みどりの食料システム法に基づき認定を受けた環境負荷低減に取り組む農業者を対象にすることとしておりまして、具体的な内容につきましてはまさに検討中ですが、より進んだ環境負荷低減に取り組む農業者をしっかりと支援できるよう検討を進めてまいります。

金子(恵)委員 そうしますと、集団的な取組への助成というものを、個人の農業者への直接支払いに改めるということでよろしいですね。

坂本国務大臣 そういうものを含めて、ただいま検討中でございます。

金子(恵)委員 その検討をするに当たっては、今ある日本型直接支払制度全体として、バランスとか制度の在り方などを見ていくということですか。

坂本国務大臣 現在の日本型の直接支払いは、環境保全型農業直接支払い、それから多面的機能の支払い、さらには中山間地域等の直接支払いから成っております。地域での農業生産活動や共同活動への支援を通じて、多面的機能の発展に貢献しているというふうに思っておりますので、多面的機能にしっかりと貢献する、そういうようなことを念頭に、今後も日本型直接支払いの制度というものを考えてまいりたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 農業者がいかに生き残っていくかということが食料安全保障をしっかりと構築する上でとても重要な課題なんですけれども、今までの日本型の直払いではそれができなかった、本当に生産基盤は弱体化し続けてきたということでありますので、しっかりと、これは、検討するということであれば大きく検討していかなくてはいけないし、大きく変えていかなくてはいけないと私は思います。

 時間が参りますので、最後の質問をさせていただきたいと思いますが、ALPS処理水の関係なんですが、今回、日中両首相が初の正式会談に臨みました。しかし、岸田総理はしっかりと日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を求めていただいたか分かりませんけれども、李強首相は応じなかったということで、福島県民としても、あるいは福島県知事としても非常に残念だということで発言をされています。

 国の取組、どうしますか。

坂本国務大臣 先日、二十六日の日中首脳会談におきましては、ALPS処理水の海洋放出につきまして、両首脳は事務レベルの協議のプロセスを加速させていくことで一致をしたほか、中国による水産物を含む日本産食品の輸入規制につきまして、総理からは即時撤廃を改めて求めたところと承知しております。

 この中国による輸入規制措置につきましては、農林水産省におきましても、科学的根拠に基づかない措置の即時撤廃に向けまして、昨年十月のASEANプラス3農林大臣会合、そして本年二月のFAOアジア・太平洋地域総会等の場におきまして働きかけを実施したところであります。

 今回の首脳会談を受けまして、また、今後の事務レベル協議のプロセスも踏まえながら、農林水産省として、輸入規制措置の撤廃に向けて更に強く働きかけていく考えです。

金子(恵)委員 終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 おはようございます。また質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 今日は重点を絞って質問させていただきたいと思います。資料をいつもどさっと山ほどお配りしているんですが、今日は一点だけに絞りました。一枚紙をお配りしておりますので、これを見ながら質問をお聞きいただきたいと思います。農業基本法、食料・農業・農村基本法の質問の延長線上で話をさせていただきたいと思います。

 重点の一つは、緑です。有機農業、環境です。金子さんの質問の中にもありました。ほかのところの省庁を見ていますと、グリーントランスフォーメーションと格好いい名前をつけてやっています。あれは大したことないんですよね。大したことないのに、世の中の流れがグリーンになっているから、グリーンだ、グリーンだと言ってちょろまかして、原発も再開させようとか、そういう感じになっています。

 だけれども、緑、グリーンを一番最初に言い出したのは農林水産省ですよ。それを余り前面に出さないでいるというのは損だと思います。消費者の理解を得るためにも、みどりの食料システム戦略というのを、突然変異です、今まで有機農業なんてちょっと変わった人たちがやっているんだというふうに冷たい目で見ていた、変人のやっていることだと言っていたんですが、突然変えたんですよね。ですから、その延長線上でいえば、私なんかからすると、それを前面に押し出して食料・農業・農村基本法も改正して、一つの目玉にしていけばいいと思うんです。それは、食料安全保障、食料安保が大事じゃないとは言いません。それは当たり前のことです。ですけれども、今、国民にアピールし、農家の皆さんにも認識していただくためには、有機農業、みどりの食料システム戦略を前面に押し出していくべきだと思うんですが、余り出ていないんです。どうしてなんでしょうかね。

坂本国務大臣 改正案では、農業、食品産業が環境に負荷を与える側面があることを正面から捉えまして、基本理念におきまして、新たに、生産から消費に至る食料システムを環境と調和の取れたものにしていくことを位置づけるものであり、みどりの食料システムの考え方を反映しているものになっております。

 その上で、基本的施策におきまして、農業分野における取組として、現行基本法でも自然循環機能の維持増進の施策の対象でありました有機農業につきまして、引き続き、環境への負荷の低減の施策の対象として、化学農薬、肥料の使用削減など幅広い取組を促していきます。同時に、食品産業分野におきます取組といたしまして、環境負荷低減などの食料の持続的な供給に資する事業活動の促進を位置づけるなどとしております。

 いずれにいたしましても、今回の基本法の見直しの内容を踏まえ、有機農業を含め、みどり戦略に位置づけられた目標の実現に向けた取組を、引き続きしっかりと後押しをしてまいります。

篠原(孝)委員 字面では言っていますけれども、具体的な感じが全然しないんですよね、具体的な、びしっと出てくるのは。

 アメリカは生産性重視でいろいろやってきましたけれども、行ってみられると分かると思います、もうカバークロップで、緑で覆って、土が舞い上がったりしないように、土壌流亡しないようにということをしています。気候回復計画というので、気候変動に合わせて必死になってやっている、消費者もそういうことを要求している。

 それから、日本はまだ大規模化、大規模化。私は大規模化がいけないと言っているわけじゃないんです。前のときに、数十年前の、私と叶芳和というのが朝日ジャーナルに出たのをちょっとお配りしましたけれども、でかいのなんてもう言っていないんですよね。どうしてかというと、慣行農法でやってきて、大規模化してきたけれども、自然を汚している、だから、不耕起栽培、もう耕さない、日本でいうと乾田に直まきですよね、そういう方向に行っていると。

 それから、ばかでかいトラクター、あれも日本ではあり得ないことなんですが、二階建てのビルが行ったり来たりしているようなもので、土がどんどんどんどん踏み固められて微生物が死んでいる、知らず知らずのうちに土が劣化しているんです。大問題だというふうになって、環境に負担をかけない、大臣が言われました、環境に負荷を与えているんだ、自然を壊していると。それは当たり前なんです。

 農業というのは、自然を壊して、人間に都合のいい食べ物を、済みませんけれども、作らせてくださいと。だから、作ったものをいただきますと言って食べている。日本人はそれを分かっていたんだろうと思います。そのことを忘れているんじゃないかと思います。

 それで突然変異ですよね、突然変異で立派な計画を作ったわけです、どこの役所もそういう計画を作りますけれども。一%未満です、有機農業をやっている人なんというのは、冷たかったですから。EUは八%。それを、EUは二〇三〇年までに四分の一を有機農業にすると。その四分の一だけまねて、今、四百三十万ヘクタールあるんですけれども、そのうちの百万ヘクタールを二〇五〇年までに、四分の一に持っていって、百万ヘクタール以上にすると。

 私は、これは本当に、そこら中にいろいろな目標がありますけれども、余りそういう派手派手しいことをしない農林水産省にしてみると、何か物すごく過大な目標のような気がするんですよ。大臣は後から就任されて、本当にできるとお思いになりますか。

坂本国務大臣 現状、有機農業の取組面積は二万七千ヘクタール、耕地面積の〇・六%であります。みどりの食料システム戦略に掲げております、二〇五〇年までに有機農業の取組面積を耕地面積の二五%に当たる百万ヘクタールに拡大する目標というのは、非常に意欲的な目標であると考えております。

 この目標の達成に向け、まずは有機食品の理解の浸透や輸出促進によるマーケットの拡大、そして、先進的な有機農業者の栽培技術の横展開を進めまして、二〇三〇年までに六万三千ヘクタールまで拡大をしてまいります。

 その上で、二〇五〇年の目標達成に向けまして、自動除草ロボットの開発や普及、そして、病害虫抵抗性の高い品種の育成、さらには、次世代有機農業技術の確立に取り組んでいきたい、そして、多くの農業者が経営の選択肢の一つとして有機農業に取り組むことができる環境を整えてまいりたいと考えております。

篠原(孝)委員 僕は、けちをつけているわけじゃないんです。どんどんやっていただきたいと思う。だけれども、過大な目標は立てたけれども、やっていることはしみったれていて、余り見えないと思う。前面的に出していくべきだと思います。

 それで、有機農業は大変なんです。機械とかそういうので、技術革新で補える部分もありますけれども、基本的に人手がかかります、手間がかかります。ひたすら生産性、生産性、手間がかからないというふうに言っている中では、ここは相当てこ入れが必要だと思うんです。その部分が全然なっていないんですけれども、さっきちょっと消費者に理解を得るとか、消費者はとっくの昔から理解していますよ。こんなへんちくりんなものを食べさせられたらたまらぬ、農薬漬けの食べ物なんて食べられるか、食品添加物だらけの食い物なんて食べられるかと、消費者は完全に分かっていますよ。それに私は応えていないんじゃないかと思います。

 これだという具体的な政策は何かあるんですかね。

舞立大臣政務官 先生御指摘のとおり、有機農業は人手がかかると。そういった中で、農業従事者、減少するといった中で、有機農業には除草や病害虫防除に労力を要することや、慣行栽培とは異なる栽培技術の習得を要すること、有機栽培への転換直後には収量が大きく減少することなど、多くの課題があると考えております。

 一方で、最近でいいますと、農業への新規参入者のうち、有機農業に取り組まれる方が二、三割いるなど、有機農業ならではの魅力も見られてきているところでございます。

 このため、農林水産省といたしましては、まず抑草技術などの労力の削減に資する栽培技術の普及や、各都道府県で行われる有機農業の技術指導等を行う有機農業指導員の育成への支援、また、環境保全型農業直接支払交付金のほか、特に転換直後の農業者を対象とした有機転換推進事業により有機農業のかかり増し経費を支援するとともに、地域ぐるみで生産から消費まで一貫して取り組む市町村であるオーガニックビレッジの創出への支援等々、有機農業に取り組もうとする方々のための環境づくりを強く進めてまいりたいと考えております。

篠原(孝)委員 今答弁にありましたけれども、新規参入、二割から三割、有機農業、当然ですよ。時代の流れに敏感なんですよ。

 世界で見ても同じなんですよ。ベジタリアンとかビーガンとかいうの、年寄りは今更変えられないですけれども、若者は敏感で、こんな食い方していたら地球を駄目にする、だから肉を食べるのをやめようと。若手が圧倒的に多いです。日本が、先進国の中で、一番そういう点では足りないんですよ。昔は逆だったんですけれどもね。そういうふうに変わっているんです。

 ですけれども、いいこともあって、大臣、御存じかどうか、全体の有機農業のパーセントで、一番が北海道で、二番目は鹿児島で、三番目に熊本なんですね。前にちょっと触れましたが、竹熊さんという人がいたりして、先進的な農家があって、それをやっていこうという。だから、てこ入れすれば、私は、何とか進んでいくんだろうと思います。てこ入れの状況が全然足りないと思います。

 今ちょっと答弁にありましたけれども、農林水産省、こういうところは得意ですよ。いろいろな技術だとか機械があったりしたとき、パイロット事業というので、そこにお金を出して、そこで重点的にやって、そして先進地視察に行って、みんなやってくださいよという。

 これは、ほかのところを、私は今環境委員会にずっといるんですよ、ずっといるというか、誰も希望しないので、希望しないところへ行ってやっているんですけれどもね。私の趣味もありますけれどもね。環境委員会がやたら最近、地域を指定して、そこのところを生物多様性の重点区域だからといって、お金がないから、格好よく指定するだけで何もしてやらないで、地方自治体で勝手にやってくれという。農林水産省はそこは、お金も、最近予算は減っていますけれども、取り方は上手ですから。

 オーガニックビレッジと言われましたけれども、これ、何か格好よく片仮名で言っているだけで、農家にオーガニックビレッジなんていったって、ぴんときますかね。こないです。有機農業という言葉があるんだからそれを言って、日本で有機農業が難しいのは、一軒一軒の立派な農家はいるんですけれども、ドリフトってありますね、長野なんかでもそうですが、幾ら言ったって、隣で消毒をばあばあしていたらかかってきますから、もう有機農産物にならないわけです。地域全体でやらなくてはいけないんです。

 だから、オーガニックビレッジって、本当に村なのか、市なのか、市になっていますよね。もっと小さなところで、その地域全体を有機農業の地域だといって、そこのところを重点的にバックアップして、そしてそこの評判がよくなって、ここのは安全だからと。これは人によって違うんですけれども、一般の世論調査でいうと、二割ぐらい高かったら有機農産物を買う、だけれども、五割高かったらもう嫌だと、一般の人たちは。だけれども、こだわる人はいるので、そこの村なりそこの集落がきちんとやっているといったら、高く買ってくれるようになるんですよ。そういうことをやっていただきたいんですよね。

 いかがでしょうか。

舞立大臣政務官 先生御指摘のような有機農業等を推進するためには、地域での生産、流通の共通化を図りながら、地域ぐるみで有機農業等の環境負荷低減に取り組むことは効果的であり、重要と考えております。

 このため、農林水産省では、みどりの食料システム法に基づき地域ぐるみで環境負荷の低減に取り組む特定区域の設定を推進しますとともに、みどりの食料システム戦略推進交付金によりまして、地域ぐるみで生産から消費まで一貫して有機農業に取り組むオーガニックビレッジの創出を支援しているところでございます。

 例えば、オーガニックビレッジの事業では、特定区域を設定すると、採択時に当たりましてポイントを加算する等のメリット措置を講じております。

 本年五月現在、特定区域は十六道県二十九区域で設定されておりまして、オーガニックビレッジは九十三の市町村において取組が開始されているところでございます。

 引き続き、制度と予算の両面から、地域ぐるみでの有機農業等の環境負荷低減の取組を支援してまいりたいと考えております。

篠原(孝)委員 政務三役の皆さんの地元、今言ったオーガニックビレッジで、日南町というのは地元ですね。滋賀県は甲賀市。熊本は南阿蘇村、選挙区ですかね、大臣の。山と都と書いて何と読むんですかね、教養がないから知らないんですけれども、山都町。何か少ないんじゃないですかね。政務三役をやっていたら、地元へ帰って、ちゃんとやれといって号令をかけてください。見本をつくってください。そうして、俺がやったと威張ってください。そういうことができるんですよ、政治家は。

 じゃ、オーガニックビレッジ、今申し上げたようになっているとみんな知っていましたか。

舞立大臣政務官 日南町長からは、みどりの関係、オーガニックビレッジの要望も受けましたし、私の地元は、鳥取県だけじゃなくて島根県も、合区の選挙区でございまして……(篠原(孝)委員「島根県は五市町あります」と呼ぶ)浜田市を始めとして多く有機農業に取り組んでいただいておりまして、私もしっかりと後押ししてまいりたいと考えております。

篠原(孝)委員 ですから、そこの食べ物しか食べないようにと宣言すると、またほかの市町村から嫌われるからいけないと思いますけれども、そこは本当に、冗談じゃなくて、助けてあげてください。そうやってきているんですよ。

 例えば、ちょっと例を示しますと、フランスでこういうのがあったんですよね。有機農産物しか食べさせないという、シャンブルドットという農家民宿があるんですよ。僕は、その農家民宿を、インターネットで調べられるので、それで海外視察のときに、フランスで、パリで別れて、そこにわざわざ行ったんですが。行ってみたら、びっくり仰天、そこは村全体が有機農業の村になっていたんですよ。村長さんが号令をかけて、その村長さんというのは、ヨーロッパで一番でかい農薬会社の元社長で、そして、売って売りまくったんだけれども、環境を壊して、国民の健康も相当害してしまったんじゃないかと、罪滅ぼしに地元の村に帰って村長になってやったんです。

 そして、ワイン。ワインなんというのは余り念頭になかったようです、野菜だとか何かだったんですけれども。そうしたら、ワインコンクールに出していたら、そこのワインが一位になっちゃったんです。念頭に置いていなかったんですけれども、検査すると味が一番よくて、そんな、農薬をばんばんかけたり、化学肥料をどんどんやったのじゃなくて、自然で、有機で作ったブドウが一番よくて。料理が大事なんですよ、やはり。物がいいか悪いかは、原料が一番大事なんです。そして、瞬く間に、それであっちにもこっちにも、白ワインの産地だったので、白ワインが駄目で、赤ワインの方がポリフェノールでいいと。それで、それだけじゃいけないから、次にロゼで、白ワインの産地は青息吐息だったんですけれども、一位になったので、近隣にぶわっと広まっていったんです。みんな自然と有機でやればいい、そして、ちゃんとコンクールでも一位になってきた、そういうふうにならないと。だから言っているんです、見本をつくってくださいと。

 次に、消費者、消費者と、消費者に対して要求して、有機農産物を食べてくださいよというふうに言っている。しかし、そんなのは勝手だと思うんですけれども。それで、どういうふうにやって消費者にアピールしていくのかというのがよく分からないんですけれども、具体的にこれは何をされていくんでしょうか。基本法の中には大々的に、消費者も環境負荷が少ないものを食べるようにしろといって、結構高圧的なんですよね。この間の刑事罰の問題もそうですけれどもね。何か具体的な、これだというのがあるんですか。

舞立大臣政務官 昨年内閣府が実施した世論調査におきましては、消費者の八割以上が環境に配慮した農産物を購入したいと回答する一方で、購入しないと回答した消費者の六割以上が、どれが環境に配慮した農産物かどうか分からないためということを主な理由に挙げているところでございます。

 このため、農林水産省では、みどりの食料システム戦略に基づき、農産物の生産段階における温室効果ガスの削減や生物多様性の保全に貢献する環境負荷低減の取組を評価して、星の数で消費者に分かりやすく伝える、見える化の取組を本年三月から本格運用しているところでございます。

 今後も、これらの取組を通じまして、消費者を含めた食料システムの幅広い関係者に対し、環境に配慮した農産物に対する理解醸成や行動変容に向けて、見える化の取組を進めてまいりたいと考えております。

篠原(孝)委員 努力してください。

 表示だけじゃ難しいと思うんです。私はこれだけ安全だとか原産地表示だとか言ってきたんですけれども、私は女房によく怒られるんです。あちこち行くときに、女房は広島の育ちで、漬物なんて食べて育たなかったといって、私が漬物が好きなのにろくすっぽ出さないんです。ですから、私が買ってくるんです。そうすると、どんとテーブルの上に置いてあって、封も切っていないんです。何かというと、原産地中国と書いてあるから。それで、添加物をこれだけ使っている、この口先政治家めと怒るんです。有権者にばらしてやると言って、ここでばらしているようなものですけれども。見ていられないんです、ごちゃごちゃ書いてあるのを見ていられないんです。時間がないから、駅前の売店で買ってくるわけですね。

 だから、皆さんそういうのなので、今非常によくなったのは、地産地消で、スーパーや何かに行くと、地場産品コーナーというのがあるんです、地場産品コーナー。あれは効果的だと思うんです。ですから、さっき大臣が言われました、消費者にも働きかけて、私は、スーパー等に有機農産物コーナーというのを設けたらいかがですかというのをやっていただきたいんですね。地場産品は、地産地消もありますけれども、旬産旬消で、そこでできたものをそこで食べるんだから、冷凍とか冷蔵も必要ないので、入ったらすぐ手前に、有機農産物を買ってくださいよといって正面にある。農協のAコープは完璧に地場産品です。ほとんど地場産品ですけれども、その中にもウルトラ地場産品を置いていますよ。そういうふうにして有機農産物のコーナーを絶対に設けていただきたいと思っております。

 消費者はもう完全にSDGsの時代ですし、さっき、二、三割の新規参入者は有機農業だと。敏感なんです。そういうふうに言っています。だから、ここのところに相当気を遣ってやっていただきたいと思います。

 最後に、農薬の問題です。

 農薬の再評価、二〇一八年に再評価制度を取り入れて、そして科学的な知見の下にこの農薬がちゃんと有効かどうかというのをやると。いい制度だと思います。ヨーロッパとかアメリカでは、欧米社会では完全に取り入れられている制度なんですが。ところが、これも分からないでもないんですけれども、その再評価するに当たっての科学的知見を集めるのは、データを集めるのはメーカーにみんな任せているんですね。ある程度議論があったのは知っています。言い訳を言ってみますと、農林水産省側は、いや、第一義的責任は生産者にあるから、メーカーにあるからと。二番目は、農林水産省にそんなのをみんなチェックする人員がいないと。これは両方とも多少分からないでもないんですけれども、いや、やはりそれはいけないと思いますよ。

 どうしてかというと、何で今日有機農業をやっているか、私は、今、有機農業推進議連の、幹事長か副幹事長か知りません、実質的に私がずっとやってきています。

 もう一つ、これは誰もやるのがいないから仕方がなく私がやっていたんですが、水俣病被害者とともに歩む会という超党派の議員連盟の会長をしばらくやっていたんです。今は、西村智奈美、阿賀野川の。野間さんが事務局長でやってもらっていますが。地元意識が、地元のある人にやってもらっていますけれどもね。これで、水俣にも行っています、阿賀野川水銀の阿賀野川にも行っています。

 水俣病は悲惨です。だけれども、あれは魚を食べていて、あのときだけですけれども、農薬まみれ、化学肥料まみれ、分かりませんけれども、ともかく汚された食べ物をずっと食べているというのは、静かに静かに水俣病のようなものが進行していると同じなんです。

 千差万別ですけれども、我々の時代にアトピー性皮膚炎なんてなかったです。原因が分からないですが、何か変なものが体に入っていて、それに拒否反応を示しているわけです。皆さん余り御存じないかと思いますけれども、今は四・七組に一組が不妊だそうです。いろいろな障害があって、生まれてこない、子供が生まれない。少子化対策、少子化対策、結婚できない、給料が少ないなんて言うけれども、物理的にというか、肉体的に我々の体が相当おかしくなっている、その原因の一つに、汚れた空気、汚れた水、汚れた食べ物があるんじゃないかと私は思います。

 本当にきちんとやらなくちゃいけない。それはいろいろな原因があると思いますけれども、誰が考えたって分かりますよ。農薬なんて、五十年前、六十年前は使っていなかったんですから。使って、ドジョウもいなくなり、フナもいなくなり、タニシもいなくなり、トンボも減ってとなっているんですよ。虫や魚に悪いのは、我々人間にも悪いのは決まっているんです。だから、農薬はよっぽどきちんとやらなかったら、静かなるチッソになってしまうんです。徹底的にこの再評価というのはやらなくちゃいけないと思うんです。

 もう提案します。簡単なんです。農林水産省に人はそんなにいません、人員は増やせません。増やした方がいいと思いますね、この分野は。だけれども、有識者はいっぱいいるので、その人たちにきちんとやってもらう仕組みをつくればいいんだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。やってください、これは。

坂本国務大臣 農薬の再評価につきましては、最新の科学的知見に基づきまして安全性を評価することが何よりも重要でありますので、毒性試験などの様々な試験の結果とともに、関連する公表文献も提出させることとしております。

 その公表文献の提出に当たりましては、申請者が恣意的に文献を収集、選択するということがないように、手順を明確化したガイドラインを定めているところであります。

 その上で、農林水産省は、このガイドラインに従いまして、公表文献が適切に収集、選択されたかを確認しておりまして、必要に応じて文献の追加等の指示を行っているところです。

 農林水産省といたしましては、食品安全委員会への諮問前に収集結果を公表し、さらに、追加すべき文献に関します情報を広く募集する仕組みを行っているところです。

 こういった措置を取りまして、公表文献につきましては一貫性及び透明性を確保しており、申請者任せにすることなく、評価に必要な文献は網羅されるようしっかり取り組んでまいりたい、そして、取り組んでいるところでもございます。

篠原(孝)委員 最後に、もう法案は通しましたけれども、問題の刑事罰を科す法律です。

 それだけ熱心に食料の自給とかを考えていただくのは非常に結構だと思います。刑事罰まで科して、言うことを聞け、ちゃんと報告しろとか。しかし、僕なんかはいつも根源に立ち返って考える方でして、今も食べ物の安全性というので、子供が少ないというところの根源の原因として、結婚できない、結婚するのが嫌だとかいって、彼女をつくれないとか、そういうような中に、物理的にというのをさっきちょっと申し上げましたけれども。

 これは、だけれども、食料がちゃんと供給できない事態をつくる、農民にツケを回す前に、そういう事態を起こしてしまった農政に問題があるんじゃないですかね、政府に。私は、よくそういうことを言えるなと思います。まずは、そういう質問をしたり、そういうことを言う機会がなかったです、私だったら、そういう事態を引き起こした農林水産省、政府を真っ先に罰してから農民に注文をつけろということを申し上げたいと思います。本当にそうですよ。政府の責任ですよ。農政の欠陥です。そして、後からツケを農民にだけ回すなんて、とんでもないことです。だけれども、一応、食料をちゃんと安定的に供給しようという意思があるということは丸です。

 それをしっかりやっていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日も質疑の時間を頂戴しましたことを、委員各位に感謝を申し上げたいと思います。

 早速、時間も大切でございますので、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、私、森林について伺いたいと思っております。先般も伺ったんですけれども、そこで聞き切れなかったことをここで再度伺わせていただきたいと思っております。

 まず、森林経営管理制度に基づき、今後、地域に密着した行政主体である市町村の役割はますます重要になってくると思っております。しかしながら、もう一方でいうと、市町村での体制、これが十分ではないというふうに思っております。

 森林環境譲与税、これまでも様々な議論のある中で何とか今やっていただいておりますけれども、いかんせん、お金が行ったとしてもなかなか活用できない理由の一つとしては、市町村の体制の不十分さというのもあるんじゃないかというふうに聞いているところでございます。

 ただ、もう一方でいいますと、市町村の体制強化に向けた支援策として、地域林政アドバイザー制度がございます。地域林政アドバイザーの育成と市町村の意向を踏まえた人材のマッチングが課題となっていると承知しております。

 市町村が中心となった森林整備を進めていく上でも、市町村の要望に基づく地域林政アドバイザーの配置等、国による技術的支援を拡充することや、林野庁として市町村への支援に向けた施策の拡充を図るなど、具体的な対策を講じることが必要だと思います。これについての大臣の所感を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 農林水産省では、令和元年に森林経営管理制度の開始以降、市町村の体制の整備の強化充実に向けまして、一つは、地域林政アドバイザーとなる技術者を育成してまいりました。そして二つ目は、アドバイザーの活用を希望する市町村の情報を技術者団体に提供をやってまいりました。そういったことを通じまして、地域林政アドバイザーの活用を推進してきたところであります。

 さらに、森林整備に取り組みます市町村を支援するため、市町村の林務担当者等を対象にした研修、そして、全国の先進事例の共有を目的とした事例報告会の開催などにも取り組んでいるところであります。

 引き続き、現場の御意見をお伺いしながら、市町村の支援に向けた施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

神谷委員 大臣、是非お願いをしたいと思うんですが、先般も、聞いているところですと、市町村によっては、木材担当というか、森林担当の担当官というのか、そういう方も大分減っているというような状況でございますし、中には一人、あるいはないというようなところもあると聞いております。そういう意味では、やはり地域林政アドバイザー制度というのは非常に重要だと私は思っております。

 そういった意味でも、是非、大臣、引き続き市町村への対策、これはしっかりやっていただきたいと思いますので、市町村への対策というか、国からしっかりと支援をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたい、このように思います。

 その上で、森林・林業を推進していくためには、森林環境譲与税も活用し、地域材の利用拡大対策が必要であるというふうに認識しております。

 先般も、公共建築物の木材利用をもっと推進するというような法律も通っているところでございますけれども、これだけでもやはり足りないんじゃないか、もっとこれは推進していくべきではないかなと私自身は思っております。

 加えて、近年、大規模な自然災害が多発している中で、山地災害防止が重要であるとともに、資源の循環利用の観点から、間伐材を利用して、林道施設や治山施設の森林土木工事において木材による資材を積極的に活用するべきである、このように考えるわけでございますが、これについてはいかがでございましょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 人口が減少してまいります中で、それに合わせて住宅需要も減少しておりまして、木材利用を拡大していくためには、公共建築物における木材利用を推進していくことが重要と考えております。

 こうした中、令和三年に改正されました都市の木造化推進法に基づきまして、政府一体となって木材利用を推進するとともに、地方公共団体における木材利用方針の策定、改定の働きかけを行っております。これらによりまして、国が整備した公共建築物のうち木造化が可能なものの木造化率は令和四年に一〇〇%となりましたが、地方を含めた公共建築物全体の木造化率はまだ低い状況となっております。

 林野庁としましては、地域材利用のモデルとなる公共建築物の木造化、木質化へ支援するとともに、地方公共団体における公共建築物での木材利用の促進が図られるよう、他省の木造化、木質化に活用可能な補助事業についても情報を取りまとめて提供するほか、委員から御指摘もございました森林環境譲与税を活用した取組事例の周知に努めているところでございます。

 さらに、公共土木分野におきましても、農林水産省の木材利用推進計画に木材利用を位置づけまして、自ら率先して木材利用に取り組むとともに、地方公共団体においても利用が促進されるよう、土木分野における木材利用の事例を収集して、情報提供に努めているところでございます。

神谷委員 長官、ありがとうございます。

 長官、今、これは通告を申し上げていないんですけれども、地公体で何でこんなに進まないのか、ここについての御見識はございますでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 国の公共建築物について、私どもも、周知徹底、政府の方針として浸透させているわけでございますけれども、地方公共団体もそれぞれの事情があると思います。まだまだ我々の周知も足りないと思っておりますので、御理解いただくようにこれから努めていきたいと思っております。

神谷委員 是非、周知もいただきたいと思いますし、実際に建てていくために、ひょっとすると財源上の問題もあるのかなと思ったりもします。資材高騰の世の中ではありますが、国産材を使う分には、これはひょっとしたら、より優位性が、少しずつ出てきているのかなとも思ったりもしております。

 そういった意味において、より推進するチャンスでもないかなというふうに思うわけでございまして、是非、もちろん、いろいろ周知をしていただくということも大事なんですけれども、あるいは、時に大臣にも頑張っていただいて、財源的なことも頑張っていただかなきゃなというふうに思うわけでございます。

 何にしても、川上から川下までとは言いませんが、まず、しっかりとニーズをつくっていただく。そのためには、やはり公共建築物というのは非常に重要なファクターだと思いますので、これまで以上に頑張っていただかなきゃいけないなと思いますし、それが、よってもって、この国の森林あるいは農山村を元気にしていくんだということ、この観点から是非お進めをいただきたい、このように思います。

 その上で、建築用材や土木建築用材の需要量というのか出荷量というのか、この辺は近年どのような状況になっているのか。数年来、減少傾向が続いているというふうには聞いているところでございますが、こういう状況ではないのか、ちょっと確認させてください。

青山政府参考人 お答えいたします。

 御質問の建築用の製材、合板、それから土木工事用の型枠合板等につきましては、加工工程が同一でありますので、建築用材等として私ども統計を取っておりますけれども、建築用材等の需要量は、住宅着工戸数の減少等によりまして長期的に減少傾向にあり、直近の、平成十四年に四千八百万立米でありましたものが、令和四年には三千六百万立米まで減少しているところでございます。

 一方で、このうち、国産材につきましては、合板原料としての利用が拡大してきたこともございますので、平成十四年に一千百万立米でありましたものが、令和四年には一千八百万立米まで増加してきているところでございます。

神谷委員 やはりここもしっかりやっていかなきゃいけないなと思っています。

 やはり国産材をどれだけ使っていただくかが重要であって、もちろん、住宅着工数なんかも減少しているから仕方ないんだというところがあるのかとは思うんですけれども、そんな中でも、外材を使うか国産材を使うか、その辺の置き換えによっては、先ほども申しましたとおり、国産材は少し優位性が出てきたんじゃないかと私自身は思っていますので、是非、活用を推進していただく方向で、周知徹底も含めていろいろ考えていただきたいと思いますし、例えば、先ほど申し上げた公共建築物においても、やはりもう少し進めていただきたい。

 国においては頑張っていただいているというのは承知しておりますが、やはりまだ余地が残っているというふうに思いますので、是非お願いをしたいと思います。

 そういった意味において、建築物における木材需要を高め、国産材の安定供給を図るためには、小規模、分散的な供給から、原木を取りまとめて供給する体制への転換が必要ではないかと思います。

 そのためには、川上、川中、川下の連携強化を図り、原木供給等のコーディネートを行う人材の育成が必要だというふうに考えております。また、生産性を向上させるためにも、路網整備等の加速化が必要だというふうに思うのでございますが、これについてはいかがでございましょうか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 我が国の豊富な森林資源を循環利用し、地域の林業、木材産業を持続的に成長、発展させるためには、御指摘のとおり、川上から川下までの関係者が連携をして、国産材の安定的かつ持続的な供給体制を構築していくことが重要と考えております。

 このため、川下におきましては、需要拡大に向けた中高層・非住宅建築物の木造化の実証や専門家の派遣、川中におきましては、効率性の高い木材加工流通施設の整備を進めるとともに、川上におきましては、現場の生産性を高めるために、高性能林業機械の導入を図り、引き続き路網整備を実施していく必要があると考えております。

 今後とも、こうした取組を通じまして、国産材の安定的かつ持続的な供給体制の構築に向けて取り組んでまいります。

神谷委員 武村副大臣に申し上げたいのは、今おっしゃっていただいたとおり、川上、川中、川下の中でそれぞれ御努力をいただいているというふうに御紹介いただきました。これは本当に大変大切なことだと思います。

 その上で、川上から川下までの一貫したコーディネート、これも重要なんじゃないかなと思っているところでございまして、これについての人材をつくっていく、コーディネート役をつくっていく、こういったことが必要だと思うんですが、これについてはいかがでございますか。

坂本国務大臣 日曜日に岡山県で植樹祭がありました。そのときに、林野庁の職員と一緒に真庭市の方に行きました。ここは川上と言ってもいいかもしれませんけれども、CLTを始め大変な木材の産地で、様々な工夫が行われておりました。そして、川中、川下に対しましての様々な供給体制、販売体制もしかれているようでありました。

 こういう状況をやはり全国至る所につくっていくこと、そのための専門的なコーディネーター、こういったものが必要であるということを改めて感じたところであります。

神谷委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いをしたいと思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。食品衛生法の改正について若干伺いたいと思っております。

 先ほど篠原委員からもございました。現地の、よいものを作って、例えば道の駅とかそういったところで漬物販売とかそういうことをやっていると思うんですけれども、実は、二〇二一年に施行された食品衛生法の改正が、経過期間を経て、二〇二四年六月、今年の六月から全面実施となります。その結果として、漬物や梅干し、たくあんなど、いわゆる個人でやっているようなところまで、地域のお母さん方がやっているようなものまで営業許可が必要になるというふうに承知をしてございます。

 しかし、いわゆる漬物を販売している方の中には、今申し上げたように、農家や個人で、いわば近所で漬物名人みたいな方々が自宅などを使って作ったものを、産直売場、先ほどのようなところで販売をしているというようなケースが多々ある。我々も見かけておりますし、そういったところで買うことが一つの楽しみだと思うんですけれども、そういった皆さんがこの食品衛生法の改正に対応できずにやめていくような事例が見られるというふうに聞いておりますし、最近も報道もされているということでございます。

 そういった事例について承知をしているのかどうか、これは厚生労働省に伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 漬物製造の規制につきましては、御指摘のとおり、平成三十年に成立した改正食品衛生法の施行に合わせて、令和三年六月より、漬物製造業を新たに許可業種としております。これは、平成二十四年八月に浅漬けによる大規模な食中毒事件が発生したこと、製造工程が長期間になるほど、製造中の食品に含まれる細菌等が繁殖するおそれがありまして、食中毒のリスクが高くなることを踏まえ、専門家による御審議をいただいた上で導入したものでございます。

 これによりまして、食品を製造する専用の室又は場所や、従業員の手洗い設備、器具や原材料等の洗浄設備の設置など、最低限の衛生基準を満たしていただくことが必要となりますが、令和六年五月まで三年間の許可基準の猶予期間を設けたところでございます。

 経過措置終了後も、一部の漬物製造者の事業継続が困難である旨の報道がなされていることは承知しておりますが、これまでも、家族経営などの小規模零細な事業者に過度な負担が生じないよう、事業継続に配慮したきめ細かい指導等を行うよう都道府県等に通知しているところでございまして、今後も、引き続き、自治体の運用状況も把握しつつ、事業継続に向けた配慮がなされるよう都道府県に周知してまいりたいと考えております。

神谷委員 今おっしゃられたとおり、浅漬けのことがあったんだろうというふうには承知をしておりますし、改正の端緒となったのは、O157による集団食中毒事件であったというふうにも承知をいたしております。

 そういう意味において、もちろん、やはり何らかの規制が必要なのかなというふうには理解をできないわけではないんですけれども、一方でいいますと、個人、そういった小規模の皆さん方が作っているものについて、特に個人の延長線上のような方々について、どれくらい実際にこういった食中毒事案があったのか、ここについて確認をさせてください。いかがでしょうか。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 食品衛生法におきましては、食中毒事件が発生した場合には、都道府県等に対して、厚生労働省に対する報告を求めております。しかしながら、その製造者が個人であったか法人であったかの報告は求めていないところでございます。

 平成二十四年に発生した、浅漬けを原因食品としたO157による集団食中毒が発生してから令和五年までの間に、漬物が原因食品と断定又は疑われた食中毒事件は五件発生しております。

神谷委員 五件そういった事件があったということは残念なことだと思いますけれども、ただ、今おっしゃっていただいたとおり、大規模なのか、あるいは個人なのか、そういったところは特定されていないというようなことでございまして、実際に、例えば道の駅、あるいは農家が店先でやっているような、個人の、あるいは小規模の、そういったものについてどれくらいの食中毒事件が発生しているのか、事案が発生しているのか、ちょっとそれは分からないというようなことだというふうに思いました。

 だとするならば、実際にこういった個人の皆さん方がやっている漬物、こういったものが本当に食中毒の可能性があるのかないのか、ここについてはちょっと何とも言えなくなったなというふうにも思ったりもするのですけれども、ただ、もう一方でいいますと、やはりそういう事件があってはいけないというのも、それもまた理解ができるところでございます。

 ただ、やはり漬物は、言うまでもなく、我が国の伝統的な食品文化の重要な一部分でありますし、大きな食品メーカーで作っているものもありますけれども、農家等が自家野菜を活用してその家の味を提供している場合なども多いというふうに承知をしております。大きなメーカーで日々大量に製造している場合の規模は、万が一の影響が広範囲であることに鑑みれば、当然に規制をしなければならないにしても、もう一方で、こういった個人が地域の伝統食として手作りの漬物を作り、販売することができる環境というのはやはり維持していく必要があるのではないかというふうに考えております。

 そういった意味において、規制の在り方というのはやはり区別して考えるべきではないかなと思うんですけれども、これは大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 平成三十年の食品衛生法の改正に伴います政令の改正におきまして、漬物製造業が新たに許可を得なければ営業ができない業種とされたところであります。これは、消費者の安全、安心に応え、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するための措置であるというふうに承知しております。

 御指摘のとおり、小さな農業者の方々が漬物製造に取り組まれているケースもあるために、厚生労働省では、都道府県に対しまして、小規模零細事業者の事業継続に配慮するよう依頼をしております。そして、都道府県では、各地域の実情に応じまして、施設整備に対します支援を講じている都道府県があるというふうに承知しております。

 農業者の方が自家野菜を活用して漬物を製造する取組が継続していくことは、農家の収入確保だけでなくて、地域の食品文化の伝承の観点からも極めて重要であるというふうに考えています。

 しかし、同時に、やはり食品の安全は大前提でもありますので、衛生当局の意見も十分に取り入れなければならないというふうにも考えているところであります。

神谷委員 大臣がおっしゃるとおりでございまして、非常に悩ましい問題ではありますが、もう一方でいいますと、こういった地域の伝統文化みたいな、漬物みたいなものは守っていってほしいなというのが本音でございますし、私たち自身も、やはり一つの楽しみとして、あるいは、そういった伝統文化は守っていくべきではないかなというふうに思っているところでございます。

 農水省におかれましても、地域の優良なものについて、例えばGI表示などもやっていただいておりますが、EUでも、特定の地理的領域で受け継がれたノウハウに従って生産、加工、製造された農産物、食品、飲料等が対象のPDOであるとかPGI、伝統的なレシピや製法に基づいて製造された製品を保証するTSGなどの認証制度なども用意されているところでございます。

 大きな話でいえばこういった表示制度も活用しながら、また、もう一方でいいますと、地域の伝統的な食の守り手である農家等が提供しているような小ロットの漬物製造、こういったものをしっかり維持できるような支援も含めた保護ができないか。規制もそうなんですけれども、それ以上に、こういったものを守っていくための保護、そういったこともできないか。これについての所感を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 地域の伝統的な食文化を継承していくこと、これは極めて重要であるというふうに考えております。

 このため、農林水産省では、我が国の地域固有の多様な食文化を次世代に継承するために、各地域の郷土料理の歴史やレシピについてデータベース化をしております。農林水産省のホームページで公開をすることで、地域の食文化の情報発信に努めておりまして、漬物では約七十品目が公表されております。地域の伝統食である漬物を多くの方々に知っていただくことに寄与していると考えております。

 そのほか、その地域ならではの環境の中で育まれてきた特性を有する産品の名称を知的財産として保護いたしますGI制度に、現在、漬物は二品目が登録されております。秋田県のいぶりがっこと長野県のすんきでございます。

 こうした取組に加えまして、六次産業化・地産地消法等に基づきます計画の認定を受けた農業者の団体が漬物製造のための施設を整備する取組に対しまして支援が可能でありまして、都道府県と今後連携をして、活用を検討していただけないかと今考えているところでございます。

神谷委員 是非お願いをしたいと思います。

 ただ、大きな漬物メーカーばかりが残るようではこれは困ると思っておりまして、やはり地域の、いわば手作りの延長線上のこういったものが普通に手に取れるような環境、これは引き続き、厚生労働省にも、農水大臣、農水省にも、是非御検討というか、これ以降も、規制の在り方を含めてお考えいただけたらと思うところでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 さて、次の質問に移りますが、物流の問題について伺いたいと思っております。

 農産物、食品流通は、トラックによる輸送が九七%と承知をしております。また、一般的に、農業の盛んな地方の大産地から消費地までの距離が遠く、例えば東京へは北海道からは千キロ超となっております。青森で七百キロ、宮崎で千四百キロと遠方であり、それは同時に、輸送時間がかかり、トラックドライバーに負担がかかることを意味していると思っています。

 もちろん、鉄道や海運への転換も模索されていると思いますけれども、集荷など、ラストワンマイルはどうしても車に頼ることが多く、物流のいわゆる二〇二四年問題は、国交省ばかりでなく農水省も積極的に考えなければいけない問題だと承知をしております。大臣の所感を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 昨年十二月に、私を本部長といたします農林水産省物流対策本部というものを設置いたしました。農業団体、そして食品産業団体のほか、物流団体の協力も得て、現場での課題解決に当たる取組を進めているところでございます。

 今のところ大きな混乱というのは起きていないように思いますけれども、二〇二四年問題は我が事として認識しておりまして、今後とも、各般の取組を進め、農産物、食品の円滑な物流に努めてまいります。

神谷委員 これは非常に重要な問題だと思っています。今はまだ起こっていないかもしれませんが、これから多分どんどんどんどん問題が出てくると思います。

 そういった意味において、ドライバーの方の待遇の改善は当然待ったなしでございます。そういった中で、賃金上昇もあるでしょう。輸送コストが上がっていく可能性がございます。

 そういった一方で、農産物の価格はなかなか上がっていません。先般、この委員会でも、合理的な価格の形成という話がございました。そういう中において、果たしてどういうふうな形で合理的な価格の形成ができるのか、そこについては考えていかなければならないと思いますし、更に配慮が必要なんだろうというふうに思います。

 時間も参りましたので、この点については質問はいたしませんが、是非、両方が並び立つ形をつくっていただけるように、政府一丸となって大臣にはお取組をお願いしたいと思います。

 そのことを御要請申し上げさせていただいて、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、お疲れさまです。

 農林中央金庫が、アメリカ国債など債券の運用で多額の含み損を抱えています。損失処理に伴って、今年度末、二〇二五年三月期には、五千億円を超える最終赤字になる見通しが示されています。

 リーマン・ショック並みの今回巨額の赤字、改めてリスク管理の甘さが指摘されるところですけれども、農水省、監督庁としての御認識と、そして、今回、財務の健全性を保つための一兆二千億円規模と言われる資本増強では、その増資はJAなどが引受先になります。増資の要請が大きな負担になって、農林漁業の生産現場、あるいは地域経済への影響も懸念をしているところですけれども、政府対応、どのようにお考えでしょうか。

坂本国務大臣 二十二日に、農林中央金庫は、令和五年度の経常利益が単体ベースで一千百九十五億円、令和六年三月末時点の自己資本比率は一六・四三%となった一方、今期の通期決算では五千億円超の赤字を見込んでいるとともに、一兆二千億円の資本調達につきまして、農林中央金庫への出資者でございます系統金融機関と協議を行っている旨発表したと承知をしております。

 農林水産省といたしましては、農林中央金庫の財務の健全性は確保されていると考えております。資本調達については決定されたものではなく、農林中央金庫を含みます系統金融機関内部で今後検討されるものであり、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、農林中央金庫は、農協等から預かりました資金の運用収益を還元いたしまして、系統金融機関の経営基盤を強化する役割を担っておりまして、農林水産省といたしましては、引き続き、金融庁とも連携をし、金融市場の動向を踏まえつつ、農林中央金庫の経営について十分に注視をしてまいります。

緑川委員 メガバンクなどは、株であるとか企業向けの融資で、今回、リスク分散をしながら資金を回収しているのに対して、農林中央金庫は、投資の大部分を外債運用に頼るという収益構造の見直し、国際情勢を見通す部分についてやはり課題があったというふうに思います。

 この事業構造を見直して、海外の大型の事業向けの融資であったりとか、あるいは手数料ビジネスといった、収益の柱ということで進めようということで考えているようなんですけれども、これが成長するのは時間がかかりますし、やはり、農林中金の利益が収益の大きな源泉になっているという地域の単協、農協も少なくありません。

 今回それが最終赤字ということになって、シナリオとして、今後五年間はその後も赤字が続くということが示されているわけですから、そのシナリオのとおりになってしまえば、農協や組合員である生産者の収入にも影響してくるわけであります。

 今日は時間が限られていますけれども、また機会を見ながら注視をしていきたいというふうに思っていますけれども、足下では、農林漁業者、やはり資材高の影響を受けています。増資が負担になって、農協の店舗が縮小されたりとかサービスの縮小という形であおりを受けることがないように、是非とも監督庁として最大限のお取組をお願いしたいということを申し上げたいと思います。

 質問の順番を変えて、熊対策について先にお尋ねいたします。

 今月の十八日に、秋田県の鹿角市で、タケノコ取りに入った男性が遺体で見つかりました。熊に襲われたものと見られていて、そこで捜索に当たっていた警察官二人も熊に襲われて大けがをしています。

 先週二十一日には、秋田県は、現場の山に県外から入らないように通知をすることを、隣接する青森、岩手、宮城、山形の四県に要請をしているんですけれども、それでも、その後もタケノコ取りのために禁止エリアへの入山が残念ながら続いています。

 特に、立入禁止エリアの道路脇に止まっているのは県外ナンバーの車が目立ちます。事故を知った上で、それでもあえてタケノコ取りに来ている人もいるわけなんです。これまで一度も熊を見たことがないし、ヘルメットもかぶっているんだ、鈴や爆竹も持っている、だから大丈夫なんだといって入ってしまっているわけなんですけれども、人間は食べ物を持っているんだ、しかも、更に言えば、人間は食べ物であるということを覚えてしまっている熊がこれから積極的に見つけた人に近づいていって襲ってくるケースも、やはりこれから音を察知して襲うケースも考えられるわけです。

 県を越えた広域での呼びかけ以降も続いている入山に対しては、やはり深刻な被害を防いでいくために国として入山禁止の周知徹底を図っていく必要があるというふうに思いますが、政府対応、どのようにお考えでしょうか。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一般論といたしまして、地域における安全確保のための入山規制などの要請につきましては、やはり地域の様々な事情がございますので、その状況を踏まえて、現場の状況に知悉している自治体において判断をいただき、その地域住民に周知いただくことがやはり基本ではないかというふうに考えてございます。

 今回の周辺の自治体に対する通知にいたしましても必要な連絡はされていると思いますけれども、状況に応じて必要な協力を求めるということがやはり根本ではないかというふうに考えてございます。

 その上で、そのエリアが例えば国立公園の中であれば国立公園の管理者の立場から、それから、国の土地であれば土地所有者の立場からなど、国としては、その権限の及ぶ範囲で、周知に適切に協力をしてまいりたいというふうに考えてございます。

緑川委員 基本を行った上で、まだいまだに対応が、周知をした上でも変わっていないわけです。被害が懸念されているわけですから、広域での被害に対して国がしっかりと動いていただきたいというふうに思っています。

 タケノコは、北東北では根曲がり竹とも言われまして、初夏の味覚なんですけれども、山のごちそうとして、この時期、やはり売れるわけです。でも、お金よりやはり命が大事である。自分は大丈夫なんだという意識、正常化の偏見は捨て去るべきでありますし、行政が立入禁止とした場所に入れば犯罪になるんだ、軽犯罪法が適用されるんだということも、これは国として、法律に基づいてしっかりと通知をしていただくことも必要ではないかというふうに思います。是非、抑止のために国として動いていただきたいと思います。

 昨年度も熊による人身被害が相次ぎましたけれども、熊の対策では、個体数の管理は例えば環境省が担当しています。被害の防止については農業部門として農水省、そして森林の管理を担当するのは林野部門として林野庁というふうに、縦割りに分かれているんです。

 しかしながら、例えば個体数の管理では、どのぐらいの数に抑えれば、人里での熊とのあつれき、被害を減らすことができるのか。あるいは、熊の個体数とするならば、森林に餌であるドングリをつける広葉樹が、豊作か凶作かというその年の変動はありますけれども、まず絶対数としてどのぐらいあればその個体数として熊の暮らしの環境が保たれるのか。つまり、管理する個体数が適切かどうかを決める上で大きく関係しているのは、農山村の活性化の度合いであったりとか、あるいは熊が暮らせる森林環境の保全の状況であったりとか、農業部門や林野部門が密接に関係しています。

 こういう状況を踏まえて、関係省庁で一体的に対策を進めていくという視点が重要ではないかと思います。適切な管理を進めるために、省庁として別分野とされてきた状況も、よりこれは把握、共有をしながら、より広い視点で取り組んでいくことが必要ではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 昨年の熊による人身被害の急増を受けまして、環境省が中心となりまして、農林水産省、そして林野庁、そして国交省、さらには警察庁、こういった関係省庁の参画の下、本年四月に、クマ被害対策施策パッケージの取りまとめを行いました。

 この中で、農林水産省は、農林業やその従事者への被害防止の観点から、人の生活圏への出没防止に向けた放任果樹等の誘引物の管理や緩衝帯の整備、農地周辺での捕獲、熊の生息環境の保全、整備に向けた針広混交林や広葉樹林への誘導などを進めることとしております。

 農林水産省といたしましては、熊被害防止に向けまして、環境省、その他の省庁とも連携を密にいたしまして、本パッケージに基づく施策をしっかりと推進してまいります。

緑川委員 従来の施策を更に前に進めていくということは重要でありますし、今回違うのは、指定管理鳥獣に熊が先月追加指定されました。都道府県への支援が強化されてくるということもこれは前進なんですけれども、やはり省庁の縦割りによる支援、それぞれのすみ分けを行った上での支援ということではなくて、やはり省庁一体的に進めていくことが、都道府県そして市町村の取組の充実にもつながるというふうに思いますので、指定管理鳥獣に指定されたということを受けて、更なる後押しをお願いしたいというふうに思います。

 その上で、この指定管理鳥獣の管理を実際に担うのは都道府県になります。熊対策の交付金が、今年度懸念される更なる被害というものを最小限に抑えなければなりません。出没抑制に取り組めるハンターであったりとか、あるいは自治体の専門職員、こうした方々の人材の育成にやはり重点的に交付される必要があるというふうに思いますし、熊の個体数の推定調査というのは、各都道府県で個別に調査をしていますけれども、一方で、同じ個体群が複数の県をまたいでいて、各都道府県で同じグループが生息をしていたとしても、その各県がそれぞれに独自で調査をしている形になっています。培ってきた調査のやり方も異なっているわけです。

 個体数の適切な管理に向けては、やはり全国の生息数を正確に把握するために、推定調査の手法の統一化を図る必要があるのではないかというふうに思います。

 そして、そもそも指定管理鳥獣に指定されるまでは、環境省の特定鳥獣保護・管理計画の一環で、これまでこのように都道府県単位の調査が行われてきたわけなんですけれども、今は指定管理鳥獣に追加指定になりました。同じ指定管理鳥獣でいえば、イノシシについては全国の推定調査を国が行っていますし、同じくニホンジカも、北海道以外、本州以南で推定調査というものを国が担っています。

 推定調査の手法の統一化をスムーズに進める上でも、指定管理鳥獣となった熊については国が主体的に調査を進めるということが必要になってきていると思います。お考えはいかがでしょうか。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、熊類による被害を低減するために、議員御指摘の人材育成を含めて、都道府県の状況に応じた総合的対策が重要だというふうに考えてございます。

 本年四月に関係省庁が取りまとめましたクマ被害対策施策パッケージにおきましても、環境省と農林水産省が連携をして、人材育成、確保に取り組んでいくということとしております。

 環境省では、熊類の指定管理鳥獣への指定を踏まえた、指定管理鳥獣捕獲等事業交付金の事業内容につきまして検討を行っております。人材育成の支援も含めて、引き続き検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

 それから、議員御指摘の個体数の把握につきましては、環境省では、都道府県が特定鳥獣保護・管理計画を作成する際に参考となるガイドラインというものを策定しておりまして、その中で、熊類の個体数の調査や推計方法等についてもお示しをしてございます。

 熊類の正確な個体数の把握でございますけれども、イノシシ、鹿と違い、なかなか難しいという面があるということも申し上げなければならないと思っております。技術面、それからコスト面も踏まえると、現時点で、全国統一的に有意だというふうに、絶対これが必要なんだと言えるような手法を示すことがなかなか難しいというふうに専門家からも聞いておりますけれども、引き続き、最新の科学的知見を踏まえながら、必要な技術的支援を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

緑川委員 推計調査の手法などについても国が伝えているということなんですけれども、例えば、同じ個体群で成っている秋田県と岩手県ですけれども、熊の生息域がやはり重なっている。同じ個体群で、秋田県ではカメラトラップによる調査、つまり、餌でおびき寄せた熊をセンサーカメラが捉えて撮影をして、胸の月の輪の模様でツキノワグマの場合は個体を識別して生息数を出すということなんですが、その映像を判別する人手とか、時間もありますし、何より判別する人の能力によっても結果が大きく左右されるということで、数が大きく変わるということが言われています。

 それに対して、岩手県ではヘアトラップによる調査。有刺鉄線を張り巡らせた中に餌を置いておびき寄せて、鉄線にひっかかった熊の体毛から個体を識別して生息数を出すということで、同じ個体群を調査しているのに、同じ個体群でさえ手法が違うんですね。

 そこで、やはり、国が主導しながら複数の県が共同で、同じ個体群でダブらないように、しっかりと、しかも調査も統一化を図って調査に当たるということが必要ではないかと思いますが、この点についていかがですか。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のような秋田、岩手とか、同じ個体群が生息していると思われるところにつきましては、必要に応じ、環境省から秋田県及び岩手県あるいは隣接する県に対して、必要な情報提供等、連絡には努め、手法の統一でありますとか、いろいろな点については、引き続き支援をしてまいりたい。秋田県でこういう手法でやっているけれども岩手県ではということで調整がつかないということでは意味がありませんので、そういう点での技術的な支援はしてまいりたい。

 ただ、一般論として申しますと、先生御指摘のとおり、カメラトラップというやり方、これは非常にコスト的にはより安いやり方でできるわけですけれども、個体識別の精度がやはり下がるというものがございます。翻って、個体識別を完全にやろうとしますと、一頭一頭捕獲をして、DNAを採集して、それをもう一回放獣するというやり方があるわけですが、非常に危険が伴うということと、それからコストが非常にかかるというやり方もございます。

 要は、場所場所に応じてやはり最適な方法というものを模索しながらやるのが、現時点ではやむを得ない調査方法だというところもございますので、そういうところも踏まえながら、なるべく効果的な手法を取ってまいりたい。我々も各県と連絡を取りながら、重複勘定のないようなやり方を考えてまいりたいというふうに考えてございます。

緑川委員 詳しい御答弁、ありがとうございます。

 コストであったりとか、あるいは人間に危険が及ぶというような部分についても、やはり、いろいろな視点から取り組んでいかなければならないというふうに思いますし、地域の実情を踏まえた上で、それでもなお、同じ生息域においての全体の数を正確につかむということが必要であると思います。

 秋田県では、昨年度、既に二千三百頭以上が捕獲されています。これは、これまでの推定生息数でいえば四千四百頭ですけれども、半分以上が捕獲されたということになるんですが、果たして全体の数がどうなのかということ、それに基づいた対策もやはり変わってくると思いますので、正確につかむ上での効果的な対策というのに努めていただきたいというふうに思っております。

 続いて、水田の畑地化を進めることによる農業の多面的機能への影響について伺います。

 日本学術会議の答申では、農業の多面的機能を貨幣の価値で評価すると、年間で五兆八千億円以上の価値になります。このうち、最も大きいのが洪水防止機能、治水ダムの代わりとして評価をすれば、およそ三兆五千億円と試算されています。毎年のように国内各地で起こる豪雨災害に対して、水をためる大きな役割を果たす水田の面積が、今回、畑地化によって減ることによって、この価値が損なわれることはないのか。

 今、防災・減災のために田んぼダムや流域治水を関係省庁と協力して農水省は取り組んでいますけれども、畑地化を進めることによって、こうした取組の効果が薄れることはないんでしょうか。

坂本国務大臣 農業の多面的機能の発揮につきましては、水田は、雨水を一時的に貯留し、洪水や土砂崩れを防ぐなど重要な役割を担っているものと認識しております。

 しかし、畑につきましても、形態の相違はあるものの、土壌を耕起して生産が行われることを通じまして、洪水の防止、土壌流出の防止等、地域において重要な多面的機能を発揮しているものと考えております。

 また、地域社会、文化の形成など多面的機能につきましても、水田だけでなく畑における農業生産活動が大きな役割を果たしているというふうに認識しております。

 いずれにいたしましても、水田、畑地に限らず、多面的機能が適切に発揮されるよう、今後とも日本型直接支払いなどの支援に努めてまいります。

 なお、現在、各産地におきまして、農業の実情を踏まえまして、水田機能を維持して産地化するのか、あるいは畑地として産地化するのか、検討をしていただいているところです。

 これらの各産地の実情や検討結果も踏まえつつ、田んぼダムや農地の保全などの農地、農業水利施設を活用した流域治水の取組について、引き続き促進してまいりたいと考えております。

緑川委員 答申では、貨幣の価値以外に数量評価の事例も挙げています。

 農業総合研究所では、水田にためることができる水の量は、畦畔の高さや水田の面積からおよそ五十二億立方メートル、それに対して、畑は、土壌中にためられる量として八億立方メートルというふうに評価しています。

 大臣は畑にもそういう機能があるというふうに言うんですけれども、明らかに数字が違うんですね。畑の五、六倍の水というのを水田はためることができるわけです。水を一時的にためることで河川への急激な水の流れ込みを和らげて、周辺、下流域での水害の被害を軽減したり防止できる機能というのは、完全な畑になれば、それが低下するのは明らかではないでしょうか。

長井政府参考人 今委員御指摘の田と畑の違いはございますけれども、流域治水に関して申し上げますと、流域全体であらゆる関係が協働し豪雨による被害を軽減させるわけで、要は、田んぼダムの取組だけではなくて、水害が予測される際には事前に農業用ダムとかため池の水位を低下させる事前放流、農地のみならず、市街地や集落の湛水も防止、軽減させる排水施設の整備、活用などの様々な取組を組み合わせて行われるものでございますので、そうした組合せをしながら、しっかりと流域治水を進めてまいりたいと考えております。

緑川委員 時間がないんですけれども、最後の問いで、全国で農地が更に減っていくという前提に立たざるを得ないわけですけれども、その中で生産力を高めるためには、表作だけでなくて、秋から春にかけての裏作を広げる、二毛作を拡大させて、今ある農地の耕地利用率をいかに高めていくかという視点が大切であるというふうに思います。

 資料もお配りしていますけれども、かつて、昭和三十一年には、作付延べ面積、表作と裏作の面積のトータルが八百二十七万ヘクタール、左側ですけれども、ありました。これは耕地利用率一三七・六%で、裏作が非常に盛んでした。九州の暖かい地方では盛んなところもありますけれども、今、全国では、もう作付面積の半分以下になってしまっているわけです。

 しかし、今、温暖化の影響で、水田での二毛作が可能な地域が広がってきているというふうに思いますし、国産化が急務である小麦を裏作として秋にまいて、翌年の春から初夏にかけて小麦を収穫する、その後、稲作を行う、それができる地域が今増えていると思います。同じ耕作地で農業所得を増やし、畑では懸念される連作障害も起きません。二毛作によって水田の高度な活用を進めながら、国内の生産力、食料自給率を高めていくべきであるというふうに思います。

 あわせて、最後の問いですけれども、二毛作は積雪のある地域ではなかなか実施が難しいと言われてきたんですけれども、裏作として、牧草では、例えば栽培で人気のあるイタリアンライグラスの新しい品種で、積雪があっても栽培できる品種が出てきました。表作として主食用米、転作田であればWCSあるいは飼料用米、トウモロコシ、そして裏作ではイタリアンライグラスの雪に強い品種を組み合わせれば、雪国であっても二毛作ができます。引受手の見つからない、鳥獣被害が懸念されている遊休農地の活用に取り組めたりとか、耕畜連携で安定的に飼料を確保しながらそこで放牧ができたりとか、良質な和牛の生産にもつながるというふうに思いますが、最後に御所見を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 水田二毛作など、水田の有効活用を進める必要が本当にあるというふうに考えております。

 九州など西の方の地域であれば、これは年間で二毛作ができます。しかし、それ以外のところにおきましても、稲、麦、大豆、二年三作の取組も多くなってきているというふうに思っております。

 こういったものを更に進めながら、一方の方で、委員が今おっしゃるところの、牧草も含めた、イタリアンライグラスも含めた二毛作の活用、こういったものも今後取り組んでいく必要があるというふうに考えております。

緑川委員 ありがとうございます。質問を終わります。

野中委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 今日も発言の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 今日は、能登半島地震における農林水産部門の被害状況、そしてまた復旧状況についてまず教えていただきたいというふうに思います。

 石川県のホームページの災害対策本部会議資料を拝見をいたしますと、五月二十一日現在で、石川県内の農道、水路、林道、漁港の被害件数、あるいは被害箇所数について、農道が千六百七十件、水路が二千八十八件、林道が二千百二十か所、漁港が、県管理漁港が七港、市町管理漁港が五十三港という形で被害を受けていますよという被害状況が記載をされております。

 他方で、どのくらい復旧したのだろうかということについては数字が記載されておらないのでございますけれども、今申し上げた被害件数、被害箇所数に対応する応急復旧した件数をそれぞれ教えていただきたいというふうに思います。

長井政府参考人 お答えいたします。

 石川県におきます農道、水路、林道及び漁港の被害状況については、現在調査中でありますが、今委員御指摘の数字の被害箇所数でございます。

 それに対しまして、農道、水路及び林道の被害箇所数は多数に上っておりまして、また、応急復旧は国の査定前に実施されることから、これらの応急復旧の箇所数は承知しておりませんが、漁港につきましては、五月二十日時点で、被災した六十漁港のうち十九漁港で応急復旧を実施中であります。

川内委員 農道、水路、林道については、応急復旧をした箇所数については承知していらっしゃらない、国としては、災害査定をした上で復旧事業を支援するのだというお立場であろうというふうに思いますが、他方で、私ども国民の立場から、公表されている資料などを見て、ああ、石川県、能登半島地震で被害を受けているけれども頑張っていらっしゃるんだな、みんなで応援しなきゃいけないなというふうな気持ちをしっかりと持ち続けるためにも、国としても、応急復旧の箇所数などについて石川県に教えてねということで、石川県ホームページに記載するなり、あるいは、政府の方でもホームページで被害箇所数については公表していらっしゃるようですから、どのくらい復旧復興が進んでいるのかということを多くの国民の皆さんに知っていただくという意味で、応急復旧の箇所数もしっかりと公表された方がよろしいのではないかというふうに思いますが、大臣に、石川県にしっかりとそういう面について、じゃ、助言しようねというお気持ちがありやなしやというところを御発言をいただきたいというふうに思います。

坂本国務大臣 丁寧に御説明、あるいは丁寧に情報提供していくというのは大事なことでありますので、委員の質問を受けまして、こういう質問があったということで、馳知事の方にしっかり伝えたいというふうに思います。

川内委員 ありがとうございます。とても大事なことだろうというふうに思うんです。よろしくお願いします。

 それで、最近、定額減税について、給与明細書にその額を記載させるということで、大変なコストがかかるとか、めちゃめちゃ制度が複雑だとか、減税だけじゃなくて給付を受ける人もいるらしいとか、その人数が二千三百万人になると昨日の夜ニュースでやっていましたけれども、いろいろ政府には、減税だけじゃなくて話題も提供していただいておるわけでございますけれども。

 そこで、ちょっとお伺いしたいんですが、六月に定額減税が実施されると、農家の皆さんというのは個人事業主である方が多いだろうというふうに思うんですけれども、農家の皆さんへの定額減税の恩恵というのは六月に当然あるんですよね。いかがですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 農家を含む事業所得者の方々につきましては、納税の機会を通じて減税することとしておりまして、予定納税の対象者につきましては本年七月以降の予定納税の機会から、それ以外の方々につきましては令和六年分の所得税に係る確定申告の機会に減税を行うこととしております。

川内委員 農家の方々というのは、非常に最近コストも上昇しているし、予定納税をされる方というのは少ないのではないかというふうに思うので、確定申告の時期、すなわち来年、年が明けてからということにこの定額減税の恩恵はなってしまうということで、物価が上がり、様々な肥料、飼料、農薬の値段も上がって、お金が喉から手が出るほど欲しいという農家の皆さんには先送りに、来年になってしまう、それだけでもこの定額減税って一体何なのかというふうに思うんですけれども。

 そこで、もう一つお尋ねしますが、そもそも、農村における、農業法人などというのは中小零細企業が多いわけですが、そこの給料で働いていらっしゃる農業者の皆さんには六月からの減税になるということなんですが、中小零細な農業法人の経理事務が誠に煩雑になるわけですよね、減税額を給与明細書に記載しなければならないわけですから。

 じゃ、そもそも、給与明細に定額減税額の記載を義務づけるということなわけですけれども、ここはよく聞いてくださいね、定額減税額の減税額を給与明細に義務づけるというのが今回の制度である。じゃ、一般論としてですよ、一般論として、例えば所得税減税の減税額を今まで、減税額をですよ、給与明細に記載を義務づけたことがありますか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 前回、平成十年の際でございますけれども、同様に……

川内委員 だから、よく聞いてくださいと言ったじゃないですか。平成十年のときも定額減税なんです。

 だから、一般論として、減税をする場合、減税額を給与明細書に書かせたことはありますかということをお聞きしております。

中村政府参考人 お答えいたします。

 減税につきましては、単に手続だけではなくて、目的も含めまして効果を求めているものでございまして、その減税、減税の機会にそうした趣旨などを踏まえましてその要否を我々は判断しているところでございます。

川内委員 さすが、やはり財務省の審議官は優秀なんですね、紙を見ずにお答えになられて。だから、紙なんか見なくても議論できると思うんですよね。

 私が聞いたのは、定額減税以外で減税するときに、その減税額を給与明細書に書きなさいよと義務づけたことが過去ありましたでしょうかということをお聞きしております。

中村政府参考人 お答えいたします。

 申し上げたように、なかなか一般論でできないところではございますが、ファクトで申し上げますと、平成六年、七年、八年の際、義務づけをさせていただきました。

川内委員 それは何の減税のときですか。

中村政府参考人 恐縮です、誤りのないように紙で確認いたします。

 平成六年、七年、八年の定率減税のときでございます。

川内委員 いや、だから、定率減税とか定額減税とか、減税の前に何か言葉がつく場合は給与明細書に記載を義務づけたことがあると。だから、要するに、それは特別な場合ですよね。一般論で聞いているじゃないですか。一般論として、所得税減税等をする場合、給与明細書に減税額を書かせるということが、一般論としてそうなんですかということを聞いているんですけれども。

中村政府参考人 ありがとうございます。

 申し上げているように、一般論でというのはなかなか難しゅうございます。

 といいますのは、目的とか、あるいは、それぞれの減税で給与明細のところに必ず個人で幾らということが明記できる場合、できない場合がございます。そういったことを踏まえて、それぞれの減税の場合に適否を判断させていただいております。

川内委員 それぞれの目的に応じて、給与明細書に減税額を記載させたりしなかったりするのだということがお答えですよね。

 そうすると、非常に政府側の裁量にそこは任されるのだということになるわけですけれども、そういう場合に、省令でそれをやる場合は、一般的には行政手続法に基づいて意見募集の手続が必要になるということが法の枠組みである、たてつけであるというふうに思います。

 そこで、今日は行政手続法所管の総務省に来ていただいているんですけれども、行政手続法の三十九条の四項の二、「納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。」と。「当該法律の施行に関し必要な事項」の「必要」というのは、そういう政治的目的をも必要という言葉に含んでいいんですかということをお聞きしたい。

 というのは、この場合に当てはまるとパブリックコメントを取らなくていいよということになっているわけです、パブリックコメントを取らなくていいよと。しかし、パブリックコメントというのは、政府が国民の権利や義務に関して、あっ、大臣、もう行っちゃうんですか。だから、もう定額減税なんか、給付の方がよかったと思いませんか、大臣。そこだけちょっと一言言って、行ってください。

坂本国務大臣 申し訳ありません、本会議があるものですから、本会議の方に出席いたします。

 今般の定額減税につきましては、財務大臣からも答弁されているとおり、デフレマインドの払拭に向けまして、コロナ禍や物価高騰という苦しい中におきまして納税していただいた国民の皆様に所得の上昇をより強く実感していただくことが重要との考えから、減税という分かりやすい方法が、給付等の他の手法と比較して最も望ましいと政府として判断したものであります。

 その上で、農業を所管いたします農林水産省といたしまして、農業者等から不安の声等があれば、財務省、国税庁等と連携をしながら、相談対応など農業者等に寄り添って対応してまいりたいと考えております。

川内委員 どうぞ、大臣。

 委員長、どうぞ大臣を御退室させて。

野中委員長 では、坂本大臣は御退席ください。

川内委員 大臣に一個貸しですからね。

 それから、今申し上げたように、行政手続法上、パブリックコメント手続を除外されるのは、その省令改正が必要なんだという場合ですよね。しかし、減税額を給与明細書に記載させるか否かというのは政府の裁量なんだというふうに財務省はおっしゃられるわけですけれども、権利や義務に大きな影響を与える省令改正が、政府の裁量でパブリックコメントを取ったり取らなかったりできるのだという、この行政手続法の解釈でよろしいんですかね、総務省。

河合政府参考人 行政手続法三十九条四項二号に規定する「その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。」には、納付すべき金銭について定める法律の施行に関し必要な事項を定める命令等が広く含まれるものでございます。これに該当するか否かにつきましては、命令等を定める機関において判断されるものでございます。

川内委員 いや、だから、僕が聞いたのは、必要かどうかは各省が最終的に判断するということかもしれないけれども、有権解釈権は総務省が持っているので、国民の権利や義務に大きな影響を与える省令改正をするのに、各省が、じゃ、これは必要、これは必要ないというふうに判断しちゃっていいものですかねと。ここの「必要」という言葉は、技術的な省令改正、技術的な命令を定める場合というふうに読むのが解釈としては適当ではないかということを主張しているんですけれども、川内の言っていることは間違いだ、政府には大きな裁量があるのだということを今おっしゃられたんですか。

河合政府参考人 お答えいたします。

 法文上、「施行に関し必要な事項」ということで、「関し」という言葉が入っておりますので、かなり広めな裁量が認められているというふうに考えております。

川内委員 今日は余り時間もないので、次回じっくり議論したいというふうに思いますが、これだけ国民の皆さんに混乱を引き起こし、せっかく定額減税するのに、減税して国民の皆さんに恩恵を感じていただこう、その政府の意思は、私はすばらしいな、ありがたいなというふうに思いますよ。だけれども、せっかくそういう施策を講じるに当たって、給与明細書に減税額を書かせますということで、押しつけがましいとか、いろいろなことを言われちゃうわけですよね。手続が煩雑だと。手続が煩雑になるだけじゃなくて、お金までかかるわけですよ、システム改修の。

 そういうことをされるんだったら、ちゃんと正々堂々と、国民の皆さんに、こういう制度ですよ、お金もかかりますよ、いいですかということを私は聞いてからやるべきではなかったかというふうに思うし、しかも、これは罰則までついていますのでね。

 今日、もう余り時間もないので、厚労省にも来ていただいているんですが、財務省は、減税額を給与明細書に記載できなかったとしても罰則を考えてはいませんよ、あるいは、年末調整でやったとしても罰則は考えていませんよというようなことをおっしゃっていらっしゃるわけですよね。そこをちょっと、財務省としての罰則についての御方針というのをちょっと確認させてもらっていいですか。

田原政府参考人 お答えいたします。

 給与明細へ減税額を記載しなかった場合の罰則の適用についてのお尋ねですが、個別具体的な判断にはなりますけれども、例えば、六月の給与明細書の交付時には対応が間に合わず、定額減税額の記載がなされなかったような場合につきましては、基本的に罰則が適用されることはないと考えております。

川内委員 国民に大変な迷惑を押しつけておいて、罰則を適用しますよとかここで言ったら私は怒るんですけれども、基本的に考えておらないということですから、それは理解をいたしますが。

 もう一つ、ところがこの前、厚労省が、労働基準法上問題であって刑事処分の可能性があるという趣旨の答弁を別な委員会でされているんですね。私、これはもう看過し難い御答弁だというふうに思っておりまして、労働基準法上の法令違反になる可能性があるかもしれないけれども、そんな厳格な、厳密な取締りは全く必要がないというふうに、国民の側からすれば、そこまでしないでよ、そんなこと言わないでよというふうに思うんですけれども、厚労省としての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

増田政府参考人 お答えを申し上げます。

 労働基準法第二十四条第一項におきまして、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないこととされ、その例外といたしまして、法令に別段の定めがある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができるとされております。

 この法令に別段の定めがある場合には、所得税法に基づく所得税の源泉徴収などが該当いたしますが、税法に基づき六月の給与での源泉徴収から定額減税をしなければならないとされている労働者に関して、これを先送りして年末調整で定額減税をすることは、六月の賃金から税法に定められた本来の源泉徴収額より過大な税額を控除することになると考えられます。

 こうした過大な税額の控除につきましては、労働基準法第二十四条第一項の例外の要件であります、法令に別段の定めがある場合に該当すると評価することはできないことから、同条違反になるものと考えられます。

 一般論でございますけれども、企業に労働基準関係法令違反が認められた場合、労働基準監督機関においては、重大、悪質な事案については送検を行うこととしておりますけれども、まずは、その企業に対しまして是正指導を行うことにより、企業による自主的改善を図ることとしているところでございます。

川内委員 いきなり送検とかではなくて、企業に対して、ちゃんとしてねということを申し上げるということでよろしいですね。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、その企業に対しましてまずは是正指導を行うことによって、自主的改善を図っていただくことになると考えております。

川内委員 終わりました。

 とにかく、余りいろいろなことを刑事罰で押しつけると、これはガバメントハラスメントだと。これは私が言ったんじゃないです。私の仲のいい企業経営者が、もうこれは政府によるハラスメントじゃないかとまでおっしゃっていたのを、副大臣、政務官、大臣にお伝えいただければというふうに申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

野中委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久です。

 早速質問に入ります。

 まず一つ目は、環境保全型農業直接支払交付金の件についてです。この件は、先ほども金子委員、篠原委員からも類似の質問がありますが、私の方からも聞かせていただきます。

 農業の持つ機能としては、当然、農産物を生産する、それから豊かな自然景観、また、田んぼダムの機能とか、非常に多面的に農業の持つ機能というのは評価されると思います。ただ、一方で、農薬、また化学肥料を使うということで、環境に負荷を与えている、そういう側面もあります。

 生物多様性が危機に瀕することの要因としては、森林伐採、中山間地などの手入れ不足、人間が持ち込んだ外来種や化学物質、気候変動などが要因と大宗言われているところでありますが、これからの時代は、やはり環境負荷を低減する農業をどのように地域で構築していくか、このことが求められる、このように感じております。

 生物は、人間の生活や経済を支えている。例えば、世界の約七五%の農産物のいわゆる受粉、これは蜂とかチョウだと言われていますけれども、そうしたことを考えていくと、やはりこういう環境保全型農業というのは意識しなければいけないというふうに思います。

 二〇二二年、カナダで開催された国連の生物多様性条約第十五回の締約国会議、COP15です、ここで、生物多様性の損失を二〇三〇年までに食い止める、このようにしました。

 このような時代の趨勢、国際情勢を踏まえていただいて、大臣はいらっしゃいませんけれども、大臣に次の点を伺うということで通告しました。

 農薬使用を低減し、地球温暖化防止や生物多様性保全等に効果の高い農業に取り組む場合の支援として環境保全型農業直接支払交付金が制度化されていますが、今後の方向性として、昨年十二月に決定した食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の先進的な環境負荷低減の取組支援によると、令和九年度を目途に、みどりの食料システムに基づいて環境負荷低減に取り組む農業者による先進的な営農活動を支援する仕組みに移行をしていくと考えています。極めて重要で、予算もしっかり、また内容もしっかりしたものにしていかなければいけない、このように思っております。

 そこでお伺いしますけれども、大臣として、令和九年度の新たな環境負荷低減に取り組む農業者を支援する環境保全型農業直接支払い制度をどのように構築するか。ここで細かなことは言いません。フォーム、輪郭、これをしっかり答えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊東(良)委員長代理着席〕

武村副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、農業分野におきまして、地球温暖化や生物多様性に係る国際的枠組みが設けられるなど、世界的に環境負荷低減の取組が求められていると認識をしています。

 農林水産省といたしましては、食料、農林水産業の生産力向上と持続性の両立に向けまして、令和三年五月にみどりの食料システム戦略を策定し、今般の食料・農業・農村基本法の改正におきましても、環境と調和の取れた食料システムの確立を柱として位置づけております。

 基本法の改正を踏まえ、アジア・モンスーン地域に位置をし、温暖湿潤で環境に対する取組に高いハードルがある我が国におきましても、環境負荷低減を見据えた農業を展開していく必要があると考えています。

 御指摘のとおり、昨年十二月末の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部におきまして、食料・農業・農村政策の新たな展開方向に基づく具体的な施策の内容の決定を踏まえ、環境負荷低減に向けた取組強化として、農林水産省の全ての補助事業等に対して、最低限行うべき環境負荷低減の取組を義務化するクロスコンプライアンスを導入することとし、令和六年度から試行実施をしております。

 その上で、令和七年度から次期対策期間が始まる環境保全型農業直接支払交付金及び多面的機能支払交付金につきましては、有機農業の取組面積の拡大や環境負荷低減に係る地域ぐるみの活動推進といった観点から見直しを検討するとともに、令和九年度を目標に、みどりの食料システム法に基づき環境負荷低減に取り組む農業者による先進的な営農活動を支援する新たな取組に移行することを検討しております。

 この新たな仕組みへの移行に当たりましては、現場の農業者の皆様に環境負荷低減の必要性をしっかりと理解をしていただき、前向きに取り組んでいただけるよう十分留意をしながら、クロスコンプライアンスより更に進んだ環境負荷低減に取り組む農業者の方々をしっかりと支援をできるように検討してまいります。

 以上です。

稲津委員 そうなんですよ。結局、農業者の方々に御理解いただくということが一番のポイントなので。

 みんなこれはやりたい、すばらしいと認識していると思います。ただ、そこを裏づけるような、後押しをするような仕組みをつくらなきゃいけない。だからこそ、今お話があったように、農業者の方々に御理解いただける、そういうことをこれから丁寧にやっていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 次は、農林水産業における外国人の活躍の必要性についてお伺いします。ちょっと早口で申し訳ありませんけれども、お許しください。

 技能実習制度に代わり育成就労制度となる入管法改正案が国会で審議されている。育成就労制度に変更となった暁には、これまで以上に外国人材の育成、活躍が図られるものと理解している。

 出入国在留管理庁の発表によると、外国人労働者数は昨年比一二・四%増の二百四万人で、過去最多を更新しました。外国人は今後も増加の見込みで、国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来推計人口によると、二〇七〇年には、日本の総人口が八千七百万人に減少する一方で、外国人は九百三十九万人に増加し、人口の約一割超を占めると予測している。

 生産年齢人口の減少が進み、多くの産業で人手不足が深刻化する日本において、外国人労働者の存在が今後ますます重要になるとともに、特に高齢化の影響で若い労働者の採用が難しくなっている一次産業や地方にとって、外国人労働者は間違いなく必要不可欠な労働力になっていくと思われます。

 実は、私が事務局長を務める公明党二〇四〇ビジョン検討委員会では、二〇四〇年の超高齢化、人口減少時代に向けた議論を行っていますが、今般、急速に進む人口減少と少子高齢化に対し、各自治体がどのように対処しようとしているかを探ることを目的に、自治体向けのアンケートを実施しました。四十六都道府県と千三百四市区町村から回答を得ました。

 その中で、外国人材の受入れの見通しについて尋ねたところ、今後不足しそうだと回答した市区町村が六三・七%、これを自治体としての存在に危機感を持っている市区町村に限定すると、七〇・七%が将来に不足しそうだと回答しました。

 また、外国人材を受け入れる上での課題を三つ選んでもらったところ、市区町村では、地域住民の理解と協力が最も多くて六一・一%、日本語教育の充実が五三・七%、地域や職場における通訳などの支援スタッフの確保が五一・三%となりました。また、各都道府県では、日本語教育の充実を掲げた回答が八一・一%と圧倒的に多くなりました。

 これらのアンケート結果から、人口減少が進む自治体ほど外国人材の受入れを必要としているとともに、外国人材から選ばれる地域になるための体制づくりや共生社会の実現に向けては、多くの自治体が課題を抱えていると言えるのではないかと思います。このことは、地方の基幹産業となっている農林水産業の一次産業も同様のことが言えます。

 そこで伺いますが、農林水産業における外国人材の活躍の必要性について、これは事前に渡しましたので、我が党のアンケートを踏まえての所見と、農水省としての今後の基本的な取組について見解を伺います。

    〔伊東(良)委員長代理退席、委員長着席〕

武村副大臣 お答え申し上げます。

 ただいま御紹介をいただきましたアンケート結果、公明党二〇四〇ビジョン検討委員会アンケートの結果によりますと、自治体としての存続に危機感を持っている市区町村の約七割が外国人材が将来的に不足すると回答しており、とりわけ、人口減少が進む農林水産業の現場における外国人材も含めた労働力の確保は喫緊の課題であると改めて痛感をいたしました。

 農林水産省といたしましては、外国人材の適正かつ円滑な受入れと働きやすい環境整備に向けまして、相談窓口の設置や優良事例の周知等を支援するとともに、優秀な外国人材に中長期的に活躍をしていただけるように、特定技能制度における対象分野を拡大したところです。

 現在、新たに育成就労制度を創設するための法案が審議をされているところでありますが、我が国が外国人材から魅力ある働き先として選んでいただけるような国となるように、農林水産分野におきましても、現場の声をお聞きしながら、引き続きしっかりと取り組んでまいる所存です。

 以上です。

稲津委員 実は、農林水産業の従事者の数字、先ほどどなたかの資料にありましたけれども、それを見ますと、現在二百三万人と出ていましたけれども、実は、この農業人口二百三万人とほぼ同じ数字というのは、先ほども申し上げましたように、日本で働いている今の外国人労働者が二百四万人ですから、そういうことを考えていくと、いかにこのテーマが重要なテーマかということが分かると思います。

 それで、ちょっと時間の関係上、質問を飛ばしまして、育成就労制度での地域協議会の在り方について伺います。

 技能実習制度では、地域協議会が各地に設置され、制度の様々な課題に対処する機関の一つとして運営されていると承知をしております。

 しかしながら、この協議会は毎年六月に全国八ブロックで開催するもので、果たして技能実習生や受入れ事業所の抱える課題などを幅広く受け入れているかどうかは、何とも評価し難いものがあります。

 今般、有識者会議の報告によると、自治体が地域協議会に積極的に参画し、受入れ環境整備等に取り組むこと、季節性のある分野で業務の実情に応じた受入れ形態を検討すること、これは、農業の分野では、夏は例えば北海道、冬は九州、いわゆるリレー派遣といいますけれども、そうしたことも加味していると思います。

 こうしたことから考えると、育成就労に移行した暁には、地域協議会の在り方はどう変わるのか。少なくとも、課題の共有とか、重点的に取り組む事項の協議とか、制度運営上の留意点等の把握だけではなくて、より身近で課題を解消する機能を持たなければいけない、このように強く思います。

 季節性のある農林水産業が抱える課題解消にも取り組むべき、こう考えますが、所管の出入国在留管理庁にお聞きいたします。

福原政府参考人 お答えいたします。

 まず、現行の技能実習制度におきます地域協議会は、全国八ブロックの地域で組織されております。これには、出入国在留管理機関、労働基準監督機関、地方公共団体の機関等を構成員として、相互の連絡を図り、地域の実情を踏まえた技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に有用な情報の共有を目的として活動を行っております。

 その上で、御指摘の育成就労制度では、人材確保も制度目的としており、より身近な地域の課題に対応するとともに、地域への定着等をより促進していく観点から、地方自治体が積極的に地域協議会に参画して地域産業政策として受入れ環境整備等に取り組むなど、地域協議会におきまして、よりきめ細やかな、積極的な取組を行う方針としています。

 地域協議会の設置方法等に係る詳細につきましては、今後、関係機関等の意見を聞きながら検討いたしますけれども、地域協議会で期待される役割を踏まえ、実効性のある取組を行ってまいりたいと考えています。

稲津委員 だから、地域協議会が育成就労に移った場合に、今御答弁があったことを踏まえると、より地方自治体がそこに参画をして、多分、そこの自治体が軸にならないと、より身近なところでの協議が進まない、問題点が見えない。解消すべきその手法が見えてこない。だから、今の技能実習の全国八ブロックのようなことにならないように、もっときめ細やかな体制をしっかりつくっていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 それから、更に加えますけれども、農業等におけるリレー派遣、これも是非検討していただきたい。

 今、直接雇用と派遣という両方が特定技能にもありますけれども、しかし、令和五年の派遣人数は千百七十八人で、直接雇用が全体の九八%。派遣は二%なんです。だから、リレー派遣も今後検討していかなければいけない。こうしたことも地域協議会の中で是非議論していただきたい。

 そういうことを強くお願いしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、橘慶一郎君。

橘委員 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私、万葉集を詠んで質問するということにしておりますので、朝最後の質問ですから、爽やかな朝の歌を歌って始めさせていただきたいと思います。

 万葉集巻十九、四千百五十番。

  朝床に聞けば遥けし射水川朝漕ぎしつつ唱ふ舟人

 それでは、よろしくお願いいたします。(拍手)

 今歌った歌は、私の地元が歌枕なんですけれども、今回、能登地震の被害をやはり受けた地域でございます。もちろん、能登が一番大変でありまして、やはり能登に重点的に施策は進めていただきたいという思いを強く持っておりますが、しかし、県内のことも少しこういう機会にお聞きしておきたいと思います。

 富山県内は、水稲の作付前に、用水路の修繕等、査定前工事を含めて大変迅速に対応をいただいて、水が張れないんじゃないかという心配については想定以上に解消いたしまして、多くのところでチャレンジできることになりました。

 しかし、水を張ってみると、ちょっと水がうまく張れないというような農地の不具合があったり、いろいろなことがやはり引き続き生じてもおります。

 また、災害査定も現在続いているところでありまして、災害査定作業の現状であったり、出来秋に向けて農業者から要望の強い農業施設の補修とか、あるいは現在水稲から転換を余儀なくされている方々への支援、こういったことについての農林水産省の取組について、まずお伺いをいたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 富山県の農地や水路等の被害につきまして、これまで延べ約千二百名のMAFF―SATを現地に派遣しまして、自治体や関係団体と連携をいたしまして、まず、今春の営農への影響が最小限になるように、査定前着工を活用しまして、応急復旧を進めてきたところでございます。

 水張り後の農地に漏水が生じた場合でございますけれども、自治体と連携して、できるだけ速やかに災害査定を行いまして、災害復旧事業等での支援を進めてまいる考えでございます。

 さらに、漏水等によりまして今年の水稲作付が困難な場合には、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージに基づきまして、他作物を作付する際の種子等の購入支援に加えまして、水田活用直接支払交付金の活用といった支援を講じていきたいというふうに考えております。

 なお、富山県の米の乾燥調製施設につきましては、一部で被害等が見られましたが、秋の収穫までに災害復旧事業等を活用して修繕の上、例年どおり利用が可能であるというふうに伺っているところでございます。

橘委員 多面的に対応していただいて、ありがとうございます。どうか出来秋に向けて、最後までよろしくお願いしたいと思います。

 次は、海のことももう一問聞いておきたいと思います。

 地震発災後、富山湾では魚種に大きな変動が出ております。カニ、シロエビは大変不漁になりました。一方で、ホタルイカは大変豊漁になりまして、海中の環境の変化、地形の変動、いろいろなことがやはり想像されるわけであります。

 県内の漁業施設の復旧の進捗状況と併せ、海中の状況把握の進め方についてお伺いをいたします。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 まず、漁業施設の復旧についてですが、被害を受けた富山県の十の漁港の復旧につきましては、三漁港で応急工事を実施するとともに、六月末をめどに災害査定を終了させ、順次復旧工事に着手することとしております。

 海中の状況把握についてですが、地震発生後の富山湾でのベニズワイガニ、シロエビの不漁やホタルイカの豊漁が震災に伴う環境変化によるものかどうかは現時点でははっきりしておりませんが、農林水産省におきましては、漁業者が富山県の水産研究所と連携をして行っている富山湾七十四定点での海底堆積物や底生生物の調査、また、新湊沖でのシロエビの資源状態調査に対して支援を行っております。

 以上です。

橘委員 副大臣には現地にも入っていただいておりまして、お礼を申し上げます。どうか漁業者の方々が安心できるように、引き続きお取組をお願いしたいと思います。

 続いて、復興つながりということなんですけれども、私は東日本大震災の復興の仕事にも携わらせていただく機会をいただいております。

 福島の浜通りにおきましては、東京電力福島第一原子力発電所の事故によりまして避難を余儀なくされた方々、しかし、ようやく、十三年という年月を経ながら、避難指示解除が徐々に進んでおりまして、営農も段階的に再開されております。

 折々、双葉町、大熊町、浪江町や富岡町など、あちこち訪ねさせていただくと、農業が元に戻ってきて、いろいろ耕作をされる、あるいは農家の、家の周りをきれいにされる、やはり人の手が入ってくることによって随分景観というのが美しくよみがえってくるんだなという、農の営みが地域の活力や景観の源となることを強く認識させていただいております。

 被災十二市町村の令和七年度末の営農再開目標は、一万ヘクタールと立てられております。その進捗状況と、新規作目の取組についてお伺いいたします。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 福島県の原子力被災十二市町村におきましては、令和七年度末の営農再開目標面積一万ヘクタールに対しまして、令和五年三月現在で八千ヘクタールで営農が再開されるなど、目標達成に向けて取り組んでいるところでございます。

 また、御指摘のように、新たにカンショの高品質苗の供給施設でございますとかカット野菜の加工、冷凍工場、こういったものが整備されたことによりまして、カンショ、タマネギ、ネギ、ブロッコリーなどの新しい品目の生産につきまして、今後、本格的な拡大が見込まれるところでございます。

 引き続き、農林水産省としましては、被災地における営農再開に向けた取組の支援、あるいは新たな品目による高付加価値産地の展開、こういったもので被災地域の農業の再生を後押ししていく考えでございます。

橘委員 ありがとうございます。

 新しくまた取り組んでいく中において、いろいろな新しい作目、あるいは新しい取組の中で、力強く、こういった地域の基幹産業である農業の復活に向けて、後押しをお願いしたいと思います。

 営農再開に当たりまして、農林水産省におかれては、農地所有者の意向確認あるいは権利調整など、こういった業務が現地で発生しております。なかなか町村の役場だけでは対応し切らないということで、スムーズな営農再開を支援すべく、この十二市町村に職員を派遣するということをずっと続けていただいているかと思います。これは大変大事なことだと思うんですが、その取組の成果についてお伺いをいたします。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、原子力被災十二市町村の営農再開を加速するために、令和二年四月から各市町村に職員を派遣するとともに、富岡町に東北農政局震災復興室を設置いたしまして、各市町村の取組をサポートしているところでございます。

 このうち、各市町村に派遣された十三名の職員につきましては、それぞれ異なる現場の課題でございますとかニーズを把握いたしまして、例えば、営農再開に向けたビジョン策定のサポートを行う、地域計画策定に向けた農地所有者の意向確認の調整を行う、集出荷施設あるいは農地の整備、こういったものにつきまして関係者との調整を行う、こういった営農再開に向けた現場の取組を後押ししているところでございます。

 今後とも、現場段階での積極的な人的支援を行いまして、市町村、JA、福島県等と一体となりまして、被災地域での営農の再開に取り組んでいく考えでございます。

橘委員 農林水産省の職員の方にすると、かなり現地まで入り込んでということで御苦労もあるかと思うんですが、そういう伴走型、そして一緒に取り組むということが、やはりこういう復興においては大変大事な要素ではないかと思っております。

 また、事態の進捗に合わせて、是非、体制はまたいろいろ変更もあるのかもしれませんが、どうか復興の完遂に向けて引き続きお力添えをしていただきたい、このように思います。

 震災復興について、一つ、私なりの提案がございます。

 地震、津波被災地域なんですけれども、低地の方にありました住居が、そこでもう住めなくなって、集団移転、高台移転等を行いますと、いわゆる移転元地と言われる、元々宅地であったところ、あるいはそういう宅地的利用をしていたところ、都市的利用をしていた場所というのが、利活用に非常に苦慮するという現状がございます。

 地面のことで農転という言葉がよく語られるわけでありますが、逆でございまして、宅転しないといけないんじゃないかな、そんなふうにも私なりには思っています。

 有効な活用策としては、そういった意味で、宅地という地目を農地に変更するようなことによって農地化を図って、農業による一体的な土地利用を実現するということも一つの地域の復興策としてのあり得る姿ではないか、このように思うのでありますが、見解をお伺いいたします。

長井政府参考人 お答えいたします。

 地震、津波被災地域における移転元地について、農地として活用を図っていくことは、被災地の復興を後押しするとともに、農地面積の確保にも資する有益な取組であると考えております。

 このような観点から、委員御指摘の東日本大震災における地震、津波被災地域では、防災集団移転促進事業と連携して農業農村整備事業を実施し、住宅地の高台への集団移転と併せまして、移転元地も対象に農地整備を行うことにより、移転元地の農地としての有効活用を図ってきたところであります。

 御提案の移転元地の活用に当たりましては、耕作する農業者の確保や防災上の配慮などを含め、土地利用の在り方について地元関係者の合意形成を図ることが重要と考えており、今後、具体的な要請があれば、まずは地域の意向を確認するとともに、農地としての活用の方針が示されれば、地域の実情を踏まえ、農振農用地区域への編入や農地整備事業の活用などに関して必要な助言や支援を講じてまいりたいと考えております。

橘委員 今回の農業関係の法案の中には、農地の維持というようなこともあったかと思います。やはりいろいろなアプローチがあるのかなと思って、提案もさせていただいたところであります。

 それでは、また富山県の方に戻らせていただいて、私どもは、何といっても米に非常に特化した農業生産をやっている県であります。

 その米作でございますが、昨年の夏は、日本海側を中心に、収穫期の高温障害というのが出まして、特に、私どもの県なり、そこから東北に向けて、一等米比率が著しい低下を来したわけであります。

 今まではコシヒカリということで頑張ってきたんですが、高温に強い品種、私どもでいうと富富富というのがございますが、こういったものにやはり目を向けていかなければならないんじゃないかなという現場の声も強まっているところでもあります。

 こういった高温に強い品種の奨励策、また消費先の確保につきまして、農水省さんの取組をお伺いいたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 昨年、委員御指摘のとおり、厳しい高温に見舞われました北陸等で、白未熟粒の発生等によりまして、米の一等比率が低下しておりました。

 五年産米の農産物検査の結果、全国で一等比率は過去最低になります六〇・九%、富山県におきましても六二・二%なんですが、前年から比べると二五・八%も下がっているということでございます。

 このような状況に対して、農林水産省では、昨年度の補正予算におきまして、高温耐性品種に対しての導入支援ですとか、栽培技術の導入実証を通じた新たな栽培体系への転換に対する支援を措置いたしました。

 委員御地元の富山県におきましても、この事業を活用していただきまして、御紹介のありました富富富等の高温耐性品種への切替えの実証に今取り組んでいただいているところでございます。

 なお、本年につきましても、気象庁発表の向こう三か月の予報でいきますと、気温は全国的に高めに推移するというふうに予想されております。

 農林水産省は、先月、品質低下を防ぐための追肥ですとか水管理などの基本技術の徹底を促す技術指導通知を発出したところでございまして、引き続き、今年の夏につきましても生育状況等を注視していく考えでございます。

橘委員 ありがとうございます。

 やはり、気候変動というようなこともあるものですから、是非またそういった取組をしていただくとともに、私どもも、どうしても米を首都圏に持っていきたがるんですけれども、私どもの地域からいうと中京圏とか関西圏、そういったところも踏まえて消費先の拡大はやっていかなきゃいけないなと思っているところであります。

 そして、米作中心の地域において、やはり農地というものは、大規模化をしていくとか、それから用排水路を適切に維持、更新をしていくとか、どうしても持続的に、基盤整備事業で農地にある意味で投資をしていかないと、生産性というか、そういったものの維持ができないというところがありまして、大変要望の強いものがございます。

 こういった各種基盤や生産施設への持続的な投資をやはり怠らないということが大事でありまして、農地の区画の大区画化とか、いろいろな補助事業の採択というのが大変求められるところであります。

 もちろん、予算の制約はあるものではありますけれども、やはり投資が大事だというところで、農林水産省さんの思いといいますか、こういった農業基盤整備事業に対する方針をお伺いしておきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 農地や農業水利施設等を整備する農業農村整備事業は、食料の安定供給の確保や農業の生産性向上を図っていく上で極めて重要であると考えております。

 具体的には、将来に向けまして、スマート技術等の活用に資する農地の大区画化や農業水利施設等の保全をしっかり進めていく必要があります。

 農業農村整備事業につきましては、地域におけるニーズも高まっておりまして、こうした状況もしっかりと踏まえながら、計画的に事業を推進できるように、必要な予算の確保に全力を傾けてまいります。

 以上です。

橘委員 やはり投資なくしてリターンはないんだろうと思いますし、そしてまた、地域では、それこそ農業基盤整備事業ですから、いわゆる耕作者の同意をみんなで集めながら、本当に切実に、早く採択してほしいなという声をよく聞きますので、どうか予算の中でまた御配慮もいただきたいな、このように思います。

 最後の質問とさせていただきます。

 担い手の確保、育成ということも、大変この農業分野の大事なテーマであろうと思います。その中で、農業教育というものが果たす役割ということにも、当然、やはりそれがあってこそ、農業者、次の新規就農ということにもつながるんだと思います。

 地域には農業高校とか園芸高校とかいったものがございますが、こういったところでは、農場を充実させるとか、それから、新たな農機具やいろいろなものがまた出てまいります。スマート農業という話もございます。そういった、いわゆる教育用の設備としての農機具の充実も必要になってまいります。また、農業を教えていただく、そういう専門教員の養成、そしてまた、農業の教育ということで、次世代に魅力のある教科設定、そういう多面的な取組がやはり農業教育の現場にも求められると思います。

 まして、少子化で、なかなか皆さん、若い方々もいろいろな進路選択について迷われるところの中で、やはり、そういった高校の、そういう農業教育機関の魅力向上ということも大変大事なことではないかと思います。

 こういったこともろもろにつきまして、農林水産省さんの御方針をお伺いしておきたいと思います。

舞立大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 農業高校などの農業教育機関は、地域農業の担い手を養成する中核的な機関として大変重要な役割を果たしておりまして、そこで学ぶ学生たちが農業に魅力を感じられる教育環境を整備していく必要があると考えております。

 このため、スマート農業等の教育カリキュラムの強化に必要となりますスマート農業機械等の導入、そして、農機メーカー等の外部講師によります実演会や、スマート農業を体験する現地の実習、また、多忙な教員でも参加しやすいスマート農業のオンライン研修など、農業教育の充実に向けた取組を総合的に支援しているところでございまして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

橘委員 いただいたお時間の中で、富山県のこと、能登には特に思いをはせながら、そしてまた福島のこと、いろいろ聞かせていただきました。

 今回、食料・農業・農村基本法、そしてまた三法案一括の審議も終わったところでありますが、そういった中において、やはり、こういったいろいろな現場の実情も踏まえていただきながら、より農業者の方が元気が出るように、地域が元気が出るように引き続き頑張っていただきたいということと、委員としてまた応援させていただくことをお誓い申し上げ、質疑を終わらせていただきます。

 今日は、ありがとうございました。

野中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。

 本日は、一般質問をさせていただきます。質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げます。是非よろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速質問に移らせていただきます。

 質問の一として、地方の声と農政というふうに題しまして、本日、この一般質疑が終わった後は、農林水産省として最後の法律であります漁業法改正案と水産流通適正化の法案の改正案、漁業関係の法律の提案理由説明がこれからあります。今回は、私なりに、まだ終わっておりませんけれども、今国会の締めくくりとなるような質問をさせていただきたいなというふうに思っております。

 まず、大臣にお聞かせいただきたいと思います。

 この農林水産委員会では、大きく二つの役割があるというふうに思っております。一つは、農林水産の日本が進むべき政策、農政の大きな方向性を議論して方向性を決めていくことだというふうに思います。もう一つは、地域密着でありまして、各地域の農家の皆さん、そして、水産業、畜産業、林業に従事される方々の声をこの委員会に届けていく。特に二つ目は、農林水産委員会の大きな特徴の一つだと私は思っております。

 先日、一般質問にて、地元の新規の二十七億かけて牛舎を建設された農家さんの話、飼料用のトウモロコシの生産について、基盤整備の後の話でありました。そして、今、兵庫県でも四億六千九百万、大臣の熊本県でも五億四千万ほどの鳥獣被害が、全国的に出て困っております。緑川委員の方からも、熊の被害について今日午前中にもありました。

 地元の声を上げることが多いわけですが、そこでこんな意見がありまして、やはりこういった、ちょっと小さく見える内容なんだというふうに思いますけれども、地元の陳情のようなことを委員会で聞くというのはどうなんだ、委員会では日本農政の大きな方向性を議論するべき。これは一つの方向性だというふうに私も思っておりますが、この委員会では、与野党を問わず、地元の声、先ほど緑川委員からもありました熊の被害、そういったこともありました。

 委員会に届けている、委員会で皆さんも多くこの声を聞かせていただきますが、先日、地元の農業者、そして地方議会の先生方と農政の方向性について大きく議論をさせていただきました。地域の事情から、その方向性、そして農政の対策まで幅広く議論をさせていただくことがあったんですけれども、今回は、質問の構成で、一時間という長い時間でありますので、農家の方々が、そして地元の議員の方々がどのようなことを考えておられるかを含めまして、私なりにまとめさせていただきました。

 参議院にて、食料・農業・農村基本法も先ほど成立をしました。基本法が成立した今、これから実際にどう農業現場の意見を反映して動かしていくか、そういった段階に移ってきているというふうに思います。今後、具体的にどのような予算をつけ、どのように対応していかなければいけないか。

 そこで、大臣、先ほどからお聞きしますと言いながらなかなか聞かないんですが、大臣は、熊本の県会議員時代に農政にも関わられたと思います。県会議員だと、やはり地域の声を聞くことが多いと思います。私も県議でありましたので、いろいろな地域密着型の質問を聞かせていただくことがありました。ここで、農水のトップである農水大臣になられまして、今全国の農政のかじ取りをされておられます。大臣も折に触れ、熊本県の農業の事情を答弁の中に織り交ぜられて、大臣が答弁をされておられますね。

 地元の声というのは、日本が進むべき農政とは関係ないというふうに大臣は思っておられますでしょうか。こういった地域の声をなかなか上手に伝えられないという私自身の質問のスキルもありますが、今後は地元で起こっている地域での事情というのはなるべく避けていこうというふうに思いますが、まず最初に、大臣がどのように今お考えか、そしてまたスタンスでおられるかということをお聞かせいただきたいと思います。

坂本国務大臣 農林水産業の現場に赴きまして、地域の声をしっかりと受け止め、政策に反映することは、農林水産省の重要な役割であり、地元の声は農政全体の議論と密着に関係したものというふうに認識しております。

 世界の食料需給が不安定化している中、国民一人一人の食料安全保障を確立していくためには、日本の各地域における農林水産業の課題と向き合い、生産基盤を確保していくことが重要であります。

 農林水産委員会においては、委員の皆様から、地元の声に基づいた熱心な御意見や質問をいただいております。特に農林水産業に関しては、それぞれの現場が一丁目一番地だというふうに思っております。現場の声を大切にしながら、農政の責任者として大変ありがたく感じているところであります。

池畑委員 やはり、これから質問させていただく内容も、今大臣が答弁いただきました内容も含めて質問させていただきたいと思いますが、今回、農林水産委員会でもよく議論に上がります戸別所得補償の在り方についてであります。午前中は金子委員からもありましたし、稲津委員からもありました。

 その中で、私は、先ほど申しました地元の関係者と議論した内容ですので、また、ここにおられます空本議員からもありましたけれども、大臣が十五年前でしょうかに書かれた「未来に向けた農林業政策」というレジュメを拝読させていただきました。これを、大臣の個人的な思いは、今組織のトップでありますからなかなか難しいとは思いますが、議論を聞いていただきたいというふうに思います。最後、議論が終わった後、この質問を終わらせていただいた後に、また総じて質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、戸別所得の前提についてお話をさせていただきたいと思います。

 民主党政権の戸別所得補償については、野党からはやるべきだというお話がこの場でも多くあります。一方で、政府の答弁は、難しい問題がある、その繰り返しでありまして、議論がなかなか深まる感じが私はしないというふうに思っております。

 そもそも、委員会でのやり取りは、このやり取り一往復だけと言っても過言ではないというふうに思います。数字がどうといった議論はなかなかありませんということでありますが、議論はあるというふうに思いますが。あと、今議論に上がる戸別所得補償、これは米だけの話なのか、そして、作物も含むのか、畜産も含むのか。ここも不明確のままですから、要するに、煮詰まらないのか、煮詰まらないようにさせているのか、そういった方向性も含めてちょっとお聞かせをいただきたいのです。

 また、戸別所得補償の効果、効果があったかなかったかということもこの農林水産委員会では多く議論をされます。効果があるかないかに関しましては、効果はあるに決まっているというふうに私は思います。基本的に補助金が出されているわけですから、どこに決まって出されているかははっきり分かりませんが、国民がそれに対して納得をするか、消費者の理解も得ることができるかということに尽きると思います。

 財源もどうするのかというのもなかなか不明確でありますから、私たちは、戸別所得補償をもう一回やるべきだ、これだけ言うのは問題でありますので、予算は無限にあるわけではないですから、我々も知恵を絞って今議論中でありますので、何兆円かかってもやってもいいというのであればできる話なんですが、そういうわけではありません。

 根本的に、なぜ米への直接支払いは問題があるのか。それは、米が、国内で足りないのではなくて足りている、むしろ余っている、そういったものに補助金をつけるのかという議論はかなり多く出てまいります。足りないものを増やすために支援するというのは、他の産業ではなかなかないということでありますから、先ほど申しましたように、消費者が納得するような議論をもう一度しなければいけません。

 政府の反論も、なかなかいまいちぴんときません。戸別所得補償があると米価が下がる、こういった話もよく議論させていただきます。価格が落ちる可能性がある、そう言うとまた反発がある、これでは一向に先に進まない議論だというふうに思っています。

 なぜ、主食用米への直接支払いは問題があったのか、参議院でも衆議院でも答弁は決まっているんじゃないかなというふうに思うぐらい答弁が同じなんですが、原点に立ち返って、明確な答弁を副大臣からいただきたいというふうに思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 現在の米政策と旧戸別所得補償制度の最大の違いは、主食用米に交付金を払うかどうかです。旧戸別所得補償制度のように、国が個々の生産者に米の生産数量目標を配分をして、その達成を前提に需要が減少している米に対して交付金を支払えば、主食用米から輸入依存度の高い麦、大豆など、需要のある作物への転換は進みにくくなると考えます。

 このため、行政による生産数量目標の配分と米の直接支払交付金を平成三十年度以降廃止をしておりまして、政府としては、農業者自らの経営判断による需要に応じた生産を米政策の基本としております。

 以上です。

池畑委員 やはり、経営判断によるという言葉が必ず出てまいります。私自身も、やはりそういった部分が大きいのかなというふうに思う部分もあります。

 もう一点、よく出てくる議論の中に、副大臣の中にはちょっと出てまいりませんでしたけれども、EUの直接支払いと比べるというような議論が時々出てまいります。

 EUで導入している直接支払い、今、冒頭に申し上げましたように、整理をして話をしているので、ちょっと質問の時間が長くなっておりますけれども、日本でも同じように導入すればいいじゃないかという議論もありますが、こういった、頻繁に私たちも質問をさせていただく中で、EUの今の状態というのは、畑しかないわけですね。そして、生産調整は基本的にないという状況であります。

 もう一つ、EUは規模が大きい。実は、EUの直接支払いは、単価は十アール当たりで数千円だったりするわけですけれども、規模が大きいのでそこそこの所得が得られるというふうにうまくできているわけです。日本ではまだそこまで大規模化が進んでおりませんので、ここは大きな違いだというふうに思います。

 そもそも、EUの直接支払い制度を日本の直接支払い制度に当てはめること自体がなかなか難しいわけですが、単価五千円としますと、小規模農家が多い日本では、仮に一ヘクタールの農家では五万円です。これではなかなか所得補償という切り口ではなくなってまいります。EUはある程度農地がまとまっているので所得補償として機能するんですが、EUの制度を単純にスライドさせればいいというものじゃないというふうに思います。

 これまでも、EUの政策については詳細な説明は余りなく、ふわっと片づけられるというのは、それは失礼な話なんですが、今副大臣が答弁いただきましたように、一般的にはこうだということもあるんですが、大臣も答弁の中で、EUと比べて、逆行するとか、EUと比べてというお話をよくされますが、EUの政策に関して詳しく説明をしていただきまして、日本の農業に当てはめるときの課題とかそういったことを今の農林水産省が現段階で認識している、そういったことがもしありましたら、知っている範囲でいいので、解説と答弁をいただきたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 EU共通農業政策における直接支払いにつきましては、九〇年代まで品目ごとに実施していた価格支持制度から転換する過程において、果樹、畜産も含めた、品目を限定しない制度として導入されたものであり、気候条件、作付品目等が異なる加盟国全てに一律に適用される制度として実施してきております。

 また、EUにおいては、平均経営面積が十七・一ヘクタールで、三十ヘクタール以上の大規模経営体が約一一%を占めるという農業構造を背景に、規模拡大に対する政策的な誘導策を講ずることなく、農地面積の大小にかかわらず、一律の単価支払いとしてきました。

 ただし、加盟国の拡大や財源の縮小などを踏まえて、EUの直接支払いも、環境要件の強化ですとか大規模支払いへの上限設定などの修正を加えてきておりまして、二〇二三年からは各加盟国の異なる農業事情に応じた裁量を拡大する方向へ政策の転換を進めているものと承知しております。

 一方で、我が国では、平均経営面積が三・四ヘクタールと小規模である中、従来から気候条件、作付品目、経営規模等の農業構造の違いに応じてきめ細かい施策を行ってきたところです。

 例えば、直接支払いについては、外国との生産条件の不利を補正する畑作物の直接支払交付金、いわゆるゲタ対策、多面的機能交付金や中山間地域直接支払交付金などの日本型直接支払い交付金が措置されているほか、収入保険制度などの経営安定対策が講ぜられ、また、圃場整備事業やハード事業等の施策が充実しております。

 このように、我が国とEUでは農業の抱える事情も異なる中、EUの直接支払いを単純に我が国に当てはめるのは困難であると考えております。

池畑委員 そのとおりだと思います。

 EUの制度をそのままスライドさせるわけにはいかない。課題も、農林水産省としてもよく把握されていらっしゃいます。

 具体的に、今のお話ですが、いろいろなEUの勉強するところは勉強し、いいところは取り入れていければいいというふうに思いますけれども、そういったことも分かっていながらなかなか議論が進まないということは、ほかに何か理由があるのかなというふうに思います。そこも含めて、後半戦、また戸別所得補償については話を進めていきたいと思います。

 次は、農業の弱体化についてであります。

 農業基盤ですね、坂本大臣が撤回をされたというお話であります。これも金子委員の方から午前中にありましたし、参議院の質疑、委員会も見させていただきました。

 正直、何が問題になっているのか最初はよく分かりませんでしたけれども、参議院の方で、大臣が、農業の現場は、基盤は弱体化していないというふうにおっしゃった、それに対して後々反発があったというふうにお聞かせをいただきました。

 金子委員からも詳しくありましたので、既に撤回をされていますから多くは語りませんが、大臣の発言を、前後をよく見ますと、これは私なりの理解だったんですが、農業基盤整備の基盤と、日本の農業生産の基盤の、その基盤違いなのかなと一瞬思いましたけれども、それでもちょっと違う。基盤については、至って間違ったことを言っておられるような感じではなかったというふうに私は思っておりましたが、本日、参議院にて、我が党からの討論でもこの話題が持ち上がったと聞いております。

 例えば、農地の集積が進んできている、そして販売金額が大きい経営体も大きく出てきています。そういった点で、確かに人も少なくなり、耕作放棄地が厳しい状況にあるということでありますが、そこで大臣がおっしゃったことがそういうふうな話につながったんだというふうに思います。

 ただ、弱体化していないという発言に対して反発される方の思いもよく分かります。これから人口はどんどん減少していく。地方でも人がいなくなっていく。そうして、実感として、大規模化を進めても、なかなか、もうこれ以上農地を受け入れられないという方もたくさんおられます。百ヘクタールの規模で、また三十ヘクタール、四十ヘクタールもと、結構ありますが、この規模でやってこられた方が急におられなくなったらどうするのか。事実、大きなところから潰れていっているのが現実であります。

 そうしたら、本当に弱体化しつつも、現場の努力がなかなか実らない。今の現段階では、現場の努力で何とかもっている状況だというふうに私は思っております。しかし、この後、何十年か後、今のままでは完全に弱体化する、こういったことなのかと私は思っております。

 ということなので、私は、今現状のプラス要素とマイナス要素、両方またここで整理をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、プラスの面でありますが、このプラスの面はいろいろあるというふうに思います。一つは、それは技術革新だと思います。

 先日、スマート農業法について議論をさせていただきましたし、ここで質問もさせていただきました。私は農業高校の実習の助手をしていたわけでありますけれども、私があのとき、当時使っていた機械からして、今はもう格段に発展をしております。形は変わらないんですけれどもね。農林水産省の技術会議の事務局の方が、皆さん説明をしてくださいました。

 今後、スマート農業の展望をこれから期待しているところでありますが、品種もそうだというふうに思います。

 品種に勝る技術なし、これは大臣もよく引用される言葉でありますが、私もそういうふうに現場で教えてきましたし、教えられてきました。

 農業現場の、研究現場の力を結集して、すごく頑張ってきたということはよく分かるんですが、私、資料を三枚出させていただいていますが、この資料一というのは、ちょっと見やすくしておりますので、大分簡素化しておりますが、小麦でいうと、大規模化などで効率化を図るために、労働時間は格段に減ったという資料であります。小麦を作付する人は確かに減ったんですけれども、労働時間が大幅に減ったということでこれは保っているわけです。現場の努力。

 そして、品種改良の発展もそうであります。

 今回、多収化についていろいろと議論をさせていただきまして、修正もいただきましたが、小麦については、昔はうどん用がメインだったんですけれども、今回はパン用の小麦、そしてそういった品種が多く出てきております。私たちがスーパーで国産小麦を使ったパンを見るのも珍しくないというふうなことになってきましたが、これも現場の努力であるというふうに私は思っております。

 人は確かにこういうふうな資料を見させていただきますと少なくなってきているんですが、効率的にカバーをしていく、そして国内需要に応えられるようになっていく、そういったことだというふうに思っております。

 先日、スマート農業法の、農業機械だけでなく、技術の発展のためにいろいろな要素が盛り込んであるという観点でよかったというふうに質問させていただきました。

 農業技術はこれからどういうふうに発展を遂げていこう、そして、今までのお話の中で、プラス面のお話もありますしマイナス面の話もありますが、これからどういうふうに農業技術の政策を進めていくのか、政務官の答弁を聞かせていただきたいと思います。

舞立大臣政務官 お答えいたします。

 我が国では、狭く急峻で南北に長い国土におきまして、アジア・モンスーン地域の気候の下、食料の安定供給の確保や農業、農村の振興を図る上で様々な課題に対処していく必要があると考えております。

 そういう状況の中で、これまで農研機構等におきまして、緑の革命に貢献し、人類を飢餓から救った日本の小麦品種、ノーリンテンや、現在、世界で最も多く栽培されるリンゴ品種でございます「ふじ」の育成、そして手植えの約五倍の能力向上となる日本初の実用的な田植機の開発等々、様々な研究成果を生み出してまいりました。

 また、最近では、製パン適性や病害抵抗性を有するゆめちから等、生産性の向上等に貢献する品種の開発や、温室効果ガスの削減など環境負荷の軽減や防災・減災、そして食の安全、安心など、その時々の政策課題に対応した研究開発に重点的に取り組んでいるところでございます。

 今般の改正食料・農業・農村基本法を踏まえまして、食料安全保障の強化につながる多収性の品種の開発や病害虫の防除技術、そして環境と調和の取れた食料システムの確立に向けた温室効果ガスの削減や化学農薬の低減技術、また、農林水産物・食品の輸出促進に資する高付加価値な品種、そして人口減少下におきましても農業の生産性向上を実現するスマート農業技術などの開発に取り組むこととしておりまして、今後とも、農業現場のニーズに対応した技術政策の一層の充実に向けて不断に努力してまいります。

池畑委員 技術の話はこの間の委員会でも質問させていただきました。今、政務官からもありましたように、農研機構の役割というのはかなり大きくなってくると思います。

 次に、農研機構で研究をしていただいた、そうしたまた品種を作っていただいても、なかなか、発展しても、よい技術をスムーズに活用する農地がなければ全く意味がないというふうに思っています。

 農地については、大臣が就任されたときに予算委員会で質問させていただいたことがありました。以前、大臣が農林水産委員の頃に、班田収授の法から始まって、自由化の話でありますが、何十年もたって、農家が努力をされ、そして農地が守られてきたわけでありますけれども、むしろ、今農地が余りぎみになって、受けたくても受けられないというような状況になっているというお話もさせていただきました。

 今、これは農家の方、そして地方議員の方との議論の中でのお話でありますので、これから新しい技術を導入する、そして農地を集約したところでどのように進めていくのか。これまでの農地政策の評価、そして今、現段階でどこまで進んでいるのか、そして今後の社会の動向を見込んで、今政務官のお話にありました話も踏まえて、認識を、どのように今考えておられるか、答弁をいただきたいと思います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 農地は、農地法第一条にあるとおり、国内の農業生産の基盤であり、現在及び将来における国民のための限られた資源であるとの認識の下、農地政策につきましては、その時代の社会経済的環境を踏まえ、政策の見直しを行ってまいりました。

 具体的には、数次の制度改正を行いつつ、平成二十一年には、農地を最大限有効活用するための抜本的な改正を行い、農地制度の基本を所有から利用に再構築するとともに、農用地区域からの除外を厳格化するなど、転用規制の強化を図りました。さらに、平成二十六年には、農地集積、集約化を図るため、農地バンク制度を創設したところでございます。

 この結果、担い手への農地集積率は約六割に増加するとともに、農地転用につきましても、優良農地以外の農地への誘導に一定の効果があったものと認識をしております。

 今後は、委員御指摘のとおり、更なる農業者の高齢化によるリタイアの増加が見込まれます。これらの方が今利用されている農地をこれからの農業を担う経営体にきちんと引き継ぐ、そういった、経営体がより農地を引き受けやすくする取組が重要になっていくと考えております。

 このため、農地の総量確保とともに、農地の集約化を進めることなどの農地の有効利用の取組を進め、引き続き時代に即した農地政策を推進してまいりたいと考えております。

池畑委員 今、プラス面のことについての答弁をいただきました。

 これからちょっとマイナス面についての質問をさせていただきたいと思いますが、これからマイナスの要素が結構大きくなってくるということは事実であると思います。今局長からも答弁いただきましたが、これからこうするというお話をいただきました。

 次はちょっと政務の方に質問させていただきます。

 人口がどんどん減少していく、そういったこともこの委員会でもずっと聞いております。今、百万人と少しの農業従事者は、何十年後かには三十万人になる、前回の質問でもこうお伝えさせていただきました。見込みも農林水産省から提示をされておられます。

 一方、今よく聞かれるのは、先ほども申しましたが、農地はこれ以上受けられない、大規模法人でももう限界がある、耕種農家でも畜産農家でも、大規模農家がかなり離農してしまったらどうするんでしょうかというお話であります。一気に国民の皆様への食の供給が滞っていく。これは今局長からもいろいろお話をいただきましたが、集約をするために、更に農業に向ける目はどんどん厳しくなってきます。環境への配慮だとか、国際情勢を見ながら国内農業をどう考えていくか、そういった、何十年間はなかなか考えられなかった要素がこれから出てきております。これから何の手も打たなければ、農村はどんどん弱体していくどころか、弱体を通り越してなくなってしまうというようなことも、この間、発表もありました。こういったことは事実だというふうに思います。

 農林水産省としても、その危機感から今回の食料・農業・農村基本法の改正案を提出されたんだというふうに思いますが、いま一度、農業の現場の危機感について、政務の副大臣からお聞かせいただきたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 基本法制定以降、我が国の農業は、世界的な食料や生産資材の価格の高騰や輸入の不安定化、環境問題、そして国内の急激な人口減少と担い手不足など、大幅に変化をし、国内外の深刻な社会課題に直面をしているところです。

 特に、平成二十年をピークに人口減少局面に入る中、農業者の数については、基幹的農業従事者がこの二十年で高齢化の進展を主な要因として半減し、百十六万人となっております。さらに、現在の年齢構成を見ると、七十歳以上の層が六十八万人を占めておりまして、今後のリタイアが避けられない状況にあることを踏まえれば、人口減少に伴って農業者も今後二十年で三十万人にまで減少するおそれがあると危機感を抱いております。

 こうした状況を踏まえますと、担い手の育成、確保を図りつつ、同時に、将来的には現在よりも相当程度少ない人数で食料生産を担うことを想定しておかなければならないと考えておりまして、改正案におきまして、人口減少下における農業生産の維持発展と農村の地域コミュニティーの維持を基本理念に位置づけたところです。

 以上です。

池畑委員 今、副大臣の認識は全く間違っていないというふうに思います。であれば、なかなか農家の所得が上がらないのは一体何なんでしょうかという話になってまいります。

 農業所得が、稲作農家ですけれども、時給十円だという話がこの委員会でもありました。今、副大臣が認識されているように、政府はそのように認識をしているということでありますので、やはり、所得をどういうふうに上げていくかということも踏まえて、認識をしておられるのですから、今後どういうような議論を進めていくのかというのはかなり大事なことだというふうに思います。

 これは直近のものでありますけれども、水田農家の全体の平均をすると十円ということになりますが、この場合、所得は一万円、労働時間は一千時間、割って時給十円、こういう計算であるというふうに思います。この平均値の経営面積は三ヘクタールです。ただ、この三ヘクタールの規模の水田農家とはどんなものなんでしょうかということになります。

 これは資料二でありますけれども、資料にありますとおり、三ヘクタール以下の経営体は圧倒的に副業が多い、そういうことになっております。農業を主に仕事にしているわけではないという方なわけでありますが、一方、私も、予算委員会で大臣から答弁があったんですけれども、主業農家であれば、ここに書いております、時間所得に計算してしまうと七百円ぐらいになるんですが、兵庫県だと最低賃金は千一円でありますし、大臣の御地元は八百九十八円です。まだまだ時給としては足りないわけでありますし、マイナスになっている畜産農家もあります。

 ちなみに、この千時間、統計を見ますと三人分ぐらいの時間なわけであります。そう考えると、三百時間。サラリーマンの大体の労働時間は年間二千時間でありますから、ほとんど副業と考えられます。

 同じ統計を見ると、酪農でいうと、労働時間は八千時間あります。二、三人分でありますが、一人当たり三千時間ぐらいでしょう。これは、かなりの激務だというふうに思います。二千時間以上働くと、これは農業を主業としてやっている、メインでやっているということになるというふうに思います。大体十ヘクタールぐらいの規模になります。

 所得がどうかと考えますと、また同じ統計から引っ張ってきますと、約三百万円の所得であります。メインの仕事でこれは少ないというふうに思っておりますので、やはり私個人としては、所得補償の必要性というのは感じます。

 特に、水田農家のところはよく誤解されて議論されるんですが、いま一度、農林水産省から、水田農家のこれまでの構造の変化と、そして、望ましい水田農業の構造というものをどういうふうに考えておられるか。この資料を踏まえて、答弁をいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、望ましい農業構造の姿といたしまして、全農地面積の八割が担い手によって利用されることを目指すことにしておりますが、稲作経営体で見ますと、令和二年では、担い手のシェアというのは五割強となっています。

 一方、稲作経営体の平均の作付面積なんですが、平成二年は〇・七ヘクタールでありましたけれども、令和二年、三十年後なんですけれども、一・八ヘクタールというふうに、倍以上になっております。また、作付規模の十ヘクタール以上の層でありますけれども、平成二年、千五百経営体だったものが、令和二年には二万一千七百経営体にまで増加している、そういう構造の変化も今してきているところでございます。

 先ほど、一時間当たりの農業所得の話がございました。令和四年の水田作なんですが、水田作全体では十円という、令和四年はちょっと値段が下がったということもありましたけれども。ただ、この十円なんですけれども、主業農家は、今委員がお配りになった資料の中にあります主業経営体で見ますと、平均で六百九十九円、約七百円ということでございます。

 さらに、水田作の面積が二十ヘクタール以上の層では、一時間当たりの農業所得は千七百六円というふうになっておりまして、一般的に、水田作は、経営規模が拡大すること、ある程度団地化して一気に作業することによって、生産性が向上いたします。それによって収益性が向上するのは顕著に見られる部分でございます。着実に生産性の向上を図っていくことが農林水産省としては非常に重要だというふうに考えております。

 このため、担い手への農地集積、集約による規模拡大によって、水田農業の構造転換を推進するとともに、スマート農業技術ですとか省力栽培技術の導入、多収品種の育成、導入の促進による単収の向上等によって、生産コストの低減、あるいは集落営農等によりできるだけ作業を団地化して進めることによりまして、農業所得を持続的に向上させていく、これが必要なのではないかというふうに考えております。

池畑委員 この後の後に質問させていただきますが、有機無農薬ですね、有機農業を農林水産省も進めようとしております。規模拡大、そして基盤整備をして、こういった作業をしやすくする。

 私がスマート農業の農業法に関してすばらしいですという話をさせていただいたのは、農業機械促進法みたいな、農業機械をどんどん作っていきます、新しい技術を取り込んでいきますということだけじゃなくて、農家の方々を踏まえた法案だったということで、すばらしいというお話をさせていただきました。

 今、平形局長のお話も含めて、最後の方ですが、やはり作りやすくすることで、スマート農業の中の一部を入れることによって、やはり生産性を向上させて、労働力の時間を短くする、そういったことが大事になってくるというふうに思いますが、やはり時給何円というのが衝撃的でありますから、そこに注目をしてしまうんですが、やはり収益を上げていかなきゃいけないということはどの方々も認識をしていることだというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきますが、これは、先ほど戸別所得補償の議論は終わったかに見えたんですが、もう一回やらせていただくんですが、なぜ今、間にこの質問を挟めたかと申しますと、戸別所得補償のシミュレーションについて具体的に質問させていただきたいからでありました。

 まず、意見交換をした中に、そのままちょっと入れ込ませていただきたいんですけれども、中山間地域、うちの地元もそうなんですが、本当に離農が激しく進んでおります、耕作放棄地がどんどん進んでおりますので、その危機感から、戸別所得補償についてどう考えているという話がありました。その中で、中山間地域の、大体、感覚で五分の一はもう耕作を放棄されているという状況であります。そして、若い人はほとんどいないということであります。

 耕作放棄の対策、そして農業振興策、ブランド化、大規模化、企業参入、いろいろなことがありますが、こういった政策がいろいろ出てきておりますけれども、しかし、なかなか耕作放棄に対応できるわけではない。若者は、農業をやりたくないから若い就農が少ないといったことだけではない、農業が稼げないから若者が来ないんだ、これを改善しなければ将来の農村はひどいことになるよというようなお話をいただきました。

 ちょっと、ほおと思うような意見だったんですが、これはいろいろありますが、最終的には、公務員になってもらって中山間地域を担ってもらうなどというようなことがありました、それはちょっと難しいかなというふうに思いますが。そういったところも含めて戸別所得補償を提案されているんだという、歴史的な話がありました。

 ちょっと具体的な提案だったので、そのまま紹介させていただこうかなというふうに思いました。資料三であります。

 ちょっと見にくい部分があるかもしれませんが、全農地に対して、中山間では十アール当たり十万円を支払う、これは案であります。これは、中山間で米を作った場合に生産性が可能な水準である。そして、平地では三万円支払う。そして、水田では好きなだけ米を作らせるということで、食用にはできないから輸出に回す。これはいろいろ質問なんかでもよく出てくるんですが、それでも売れなかった米は飼料用米に回せばいい。なかなか、品種のこともありますのでそんな単純なものではないんですが、飼料用米にした場合はここでもまた十万円払えばいいということを言われておられました。

 また、農家への戸別所得補償と言うと反発も強いですから、金子委員も言われていましたけれども、農地維持支払いでしたか、払い方が、理解が得られるのではないかということでありました。この場合、米だけではなく、全ての農地に払うことになります。

 そこでざっくり試算をしていきますと、中山間地域がおよそ百五十万ヘクタールで一・五兆円、一方、その他の農地では、平地二百五十万ヘクタールで七千五百億円程度。飼料用米については今でも水田活用交付金の支援がありますから、このために新しく必要になる予算は、一・五兆と七千五百億円を足した二兆円と少しの額でこれができるんだというお話でありました。この額で国の食料安全保障の観点から国を守れて国民の食が守られるんだったら、払うべきだというふうに言っておられました。

 ちなみに、この水準は肌感覚的にはどうかといいますと、先ほど申し上げたとおり、水田農家の所得は時給十円について、これは全ての平均になりますけれども、同じ統計によると、規模は大体三ヘクタールということで計算をされているようであります。ですから、十アール当たり十万円を支払うと三百万円、確かに何となく暮らしていけるような水準にはなるんじゃないかな、営農を続けていこうと思う気持ちにはなるんじゃないかなというふうに思います。

 しかし、いざ政治、そして行政で政策をつくっていく場合は、現実を直視しなければなりません。二兆数千億円の額は農林水産予算の全ての額でありますし、今では国の財政が余裕があるわけではありません。削減をどんどん求められていまして、農林水産省でもどんどん予算が減らされている。今、農水省の予算は二兆数千億、これもこの委員会で質問させていただきましたが、補正予算も含めれば三兆円近くになると思いますけれども、まだまだ足りないというふうに思っております。

 そこで、今ある予算措置を全て諦めてやるというのは、しかも毎年というのは現実的にはあり得ないわけであります。そして何より、国民の理解が得られないというふうに今の段階では思います。全体額、直接の支払い制度、水田活用交付金、そして畑作物の交付金、中山間支払い、全てかき集めて大体六千億ぐらいであります。これをまとめることはできませんけれども、少なくともこれに収まる額で何かできないかということであります。

 そういうふうに考えますと、民主党政権時代のときの単価一万五千円の、水田の米だけ払うというのは、一千数百億円ですから、財政的にも可能な範囲でできた政策だというふうに推測をしております。冒頭申し上げましたとおり、そもそも補助金の支出として適切だったかという議論はありますが、この一千数百億円、最初やるときに相当なエネルギーが必要だったというふうなことを思っておりますし、理解をしております。

 そしてもう一つ、これは坂本大臣、冒頭申し上げました、未来に向けた農業政策のレジュメの中にもあったんですが、全ての農家に頑張っても頑張らなくても同じ金額を払うのはいかがなことか、経営を改善しても改善しなくても同じ支援があったとしたら、正直者がばかを見ていますよねといったことがありました。その中で国民の理解が得られない、私もそう思います。他の産業ではなかなかこういったことはないというふうに思います。

 この議論の中で、農業以外の仕事や年金で生活が成り立っているなら補助金は不要だという声もありましたので、そちらに書かせていただいておりますが、しかし、農業は人間の生活にはなくてはならないというふうに思っております。

 例えば、地域の計画に位置づけた農地、そしてこれから、食料供給困難事態法の中でも議論されました、罰金の議論がありましたけれども、こういった農地の維持のインセンティブをつくれば、農家に罰金というふうなことがなかなか独り歩きせずに済むのかもしれないというふうに思いました。

 しかし、現実化するためには工夫をしていかなければいけないというふうに思います。その工夫というのは、漫然と支払うわけではなく、めり張りをつけて支払う、そして財源の当てを考える。

 そこで、何パターンか考えているんですけれども、具体的な答弁はできないというふうに思いますが、この中での課題を指摘をしていただく範囲で指摘をしていただきまして、答弁をいただきたいと思います。

野中委員長 答弁はどなたに求めますか。

 もう一度、ちょっとポイントだけ、池畑先生、お願いいたします。

池畑委員 今の、具体的ではないんですが、この三番目の資料を見ていただきまして、やはり、具体的にこういった企画が考えられるということでありましたが、今現在の水田活用だとか畑作の交付金だとかという六千億円の範囲の中で、いろいろなことは、具体的には、注意していかなきゃいけないことや、もうちょっと考えていかなきゃいけないというふうに思いますが、こういった具体的に考えていく案について今どのように思われているかということを答弁いただきたいなというふうに思いますが、局長から。

平形政府参考人 資料三を見させていただきました。

 今の予算のところで、約六千億円ということなんですけれども、実は、水田活用ですとか畑作の交付金ですとか、中山間、多面的機能と書いてありますが、昔は農地、水というふうに言っていて、実は、二十四年の政権交代のある前もこれはやっていただいておりまして、麦とか大豆については、やはり前の政権のときもこれはしっかりやっていただいておりました。ですから、この戸別所得補償と今やっているものの違いは、本当に主食用につけるかどうかだけでございます。

 先生今おっしゃった中で、一千億ちょっとだったら出るんじゃないかということなんですけれども、実はここを削ると、麦とか大豆とか野菜ですとかを作っていらっしゃる方も大変困るということになっておりまして、本当に農林水産省の予算全体の中でよくよく考えていかなければいけない。どこにつけるのがいいのかというのもよく考えて、より皆さんがやる気になっていただくというようなことを進めていくのがやはり役所の考えることかなというふうに思います。

 失礼します。

池畑委員 局長、ありがとうございました。

 この議論の中で、やはり若い世代に集中的に投入すればいいんじゃないかというお話もありました。

 今、平形局長からありましたが、以前からやっている部分と、そして、全体的にこれを使い込んでしまうということは私も無理なのは分かっておりますが、資料に書いております、若い世代に集中的に投入するのはどうか。

 これもざっくりした計算なんですけれども、六十歳以下の方々は全体の約二割ぐらいですので、四十九歳以下にすると更にめり張りが利くかもしれない。維新も、医療費だとか、世代格差などの是正をいろいろ議論しておりますけれども、農業に当てはまるのではないかというふうに私たちも思っております。

 大体、六十歳以下は全体で二割というふうなお話をさせていただきましたけれども、これはちょっとざっくりとした計算なんですが、六十歳以下では、全体的に二割でありますので、二兆円掛ける二〇%で四千億。本当は若年層によってどれぐらいの農地が担われているか分かればいいんですけれども、五十歳以下では一割でありますから、五十歳以下の場合は二千億。

 無理くりこの数字を合わせているわけではなくて、やはり、若い世代を支援する現状の補助金では、新規の就農の予算が大体三百億円ぐらいだというふうに思います。この予算を活用して、そういった若い世代に集中的に面積払いをしていく、こういったことはどうかというふうに考えているようであります。

 ちなみに、EUの直接支払いなんかもそういうようなことがあるそうですが、これからやはり一つのアイデアということで、今、参考人の平形局長から答弁をいただいたと思います。

 次に、担い手の要件について質問させていただきたいと思います。

 農業を仕事としてやっている方、そして、今、十円の話がありましたけれども、これは、やはり、どれだけ努力をしても、なかなか、ゲタ対策、そして中山間支払いなどを足したようなことになってしまいますので、これは担い手に限定をさせていただきます。

 農林水産省の中でも過去にやろうとしたというふうに思うんですね。およそ十五年ぐらい前だったというふうに思いますけれども、品目横断の対策として、四ヘクタール以上を対象とするといった要件を課したことがありました。そのとき余りうまくいかず、結局、今では規模による要件というのがほとんどないかというふうに思います。このために、方法は財政的にはクリアしても、実際実行するとなると、過去の失敗を乗り越えていかないといけません。一番自然なやり方ではあると思いますが。

 一方で、先ほど申し上げました、漫然とめり張りなく予算をつけてしまってはいけません。農業一筋でやろうとしている人たちの支援が手薄になるということになってしまってもいけません。

 担い手の直接支払いは一つの手段であるかもしれませんが、少なくとも、担い手への集中支援はこれから絶対に必要だと私は思っております。百ヘクタールの水田では、一万人が一年間食べる米が生産されているわけでありますから、そこから、担い手の危機は、イコール食の供給危機であるというふうに考えております。

 担い手こそが一番直接支払いが必要なわけだというふうに思っておりますが、農水省として、品目横断の対策として規模要件を入れたときにうまくいかなかったときの反省というか、これからどういうふうにやっていくかということを、総括を含めながら答弁をいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 平成十九年産から実施されました担い手経営安定法に基づく品目横断的経営安定対策でございますけれども、当初、認定農業者又は集落営農であって一定の規模要件を満たすもの、具体的には、認定農業者であれば、都府県は四ヘクタール以上、北海道は十ヘクタール以上等の要件を課して、そこで直接支払いを実施しておりました。

 ただ、認定農業者の方々の中には、規模は小さくても収益性の高い作物を取り入れているんだ、あるいは、複合経営や販売、加工など、六次産業化に取り組むことで所得を上げていこうとする方もいらっしゃるので、このような規模要件を課すことは、こういう意欲のある担い手を対象とする制度の趣旨としてはなじまないんじゃないか、そういう議論がございました。

 このため、平成二十六年に法を改正いたしまして、一つは、対象者として、認定農業者、集落営農に認定新規就農者を加えるとともに、面積規模要件は設けないことといたしました。また、集落営農の要件につきましても、法人化や集積が確実と見込まれる場合には対象とすることにしまして、中小農家がある程度集まって集落営農をやっていただくようなものについても幅広く加入ができるようにしたところでございます。

 経営所得安定対策につきましては、農業で生計を立てる意欲と能力のある担い手を規模要件を課すことなく対象とし、我が国の農業を安定的に発展させ、国民に対する食料の安定供給を確保していくということを考えていきたいというふうに思っております。

池畑委員 局長、ありがとうございました。

 今の答弁を受けて、ちょっと時間が、配分がちょっと難しくて、なくなってまいりました。

 有機無農薬に向けて質問させていただきたいと思います。

 篠原委員からもありましたけれども、これから二〇五〇年までに、耕地面積に占める約二五%、百万ヘクタールを目指すということでありましたが、水田活用交付金なども含めて、いろいろと有機農業がどんどん拡大をしていくということでありました。今、みどり戦略の予算は余り多くはないというふうに思っておりますけれども、これは米の需給の調整にも役立つものだというふうに思っております。

 今、EUといろいろなものを比べるんじゃないというようなお話とか、EUと比べてみてはみたいなお話をさせていただくんですが、この中で、本当の環境直接支払いをやってもいいんじゃないかなというふうに思います。EUで導入しているエコスキームというのがありますが、これは支払われている交付金の日本版になり得ると思います、これから考えていくことは。

 日本にも結構こういったことがフィットしていくわけでありますけれども、今、環境直接支払いの予算は数十億円でありますけれども、水田活用交付金は三千億円あるわけですから、全て組み込んでもいいのかもしれません。そういった中で、財源的にはいいんじゃないかなというふうに思います。

 そういった説明が余りなかったというふうに思うんですが、ここに着目すると割とうまくいくんじゃないかなというふうに思いますが、政務官の答弁をいただきたいと思います。

舞立大臣政務官 水田フル活用の予算と環境保全支払い交付金の話をしていただいたところでございますけれども、水田フル活用につきましては、基本、ブロックローテーションですとか畑地化等の予算を確保して、また、環境保全支払いは、有機農業等へのかかり増し経費への支援等をさせていただいているところでございます。

 その上で、環境直接支払いにつきましては、令和九年度を目標に、新たな仕組みに移行することを検討しているところでございます。

 そうした中で、それぞれやはり政策目的が違うものでございますので、それぞれの財源についてそれぞれの方向性を踏まえながら今後検討していく問題でございまして、今の時点で予断を持って言うことは、発言を控えさせていただければと思っております。

池畑委員 やはり目標を立てたからには進めていかなければいけないというふうに思いますので、今の政務官のお話を受けてなんですが、渡辺創委員からも名前が出てまいりましたけれども、山下惣一さん、金子美登さん、星寛治さんの、有機三傑と言われる方々の勉強会を、この間、超党派の議連で勉強させていただきました。

 その中で、有機農業が広がらない理由、これは具体的なんですが、一等米、二等米、三等米、こういった一等米の話が今、橘委員からもありましたけれども、一等米にするためには、カメムシなどの吸い跡、着色がつかないように、これは千粒の中に大体ゼロから二であれば一等米、千粒の中から三から五であれば二等米、六粒以上になると三等米になってしまうわけであります。

 これは昭和二十六年の古い制度でありまして、ちょっとこれは答弁を短目にいただきたいんですが、農水省は、検査によっていろいろブレーキがかかってしまうんじゃないかという声を有機無農薬の農家さんたちから聞いておられるかもしれません。農水省の今の現段階での見解をお聞かせいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農産物検査制度ですけれども、全国統一的な規格に基づく等級格付をしまして、現物を確認することなく、大量、広域に米を流通させることを可能にするものでございます。

 農林水産省は、例えば米について、着色粒の混入があると消費者からのクレームの要因になるということで、生産者、流通業者、消費者等の関係者の意見を聞いた上で、農産物検査法に定める農産物規格規程において混入割合の基準を設けてきました。

 ただ、委員おっしゃるとおり、この規格について、生産者によっては、追加的な農薬の使用が必要になるというようなことをおっしゃる声もありますので、等級検査の規格とは別に、令和四年二月に機械鑑定を前提とした規格を策定しまして、等級の区分ではなくて機械の測定値で表すことも可能にしたところであります。

 また、農産物検査規格は任意でございますので、有機農業のように特別な付加価値によって販売する場合には、農産物検査を受けずに、個人での販売や生協への直接販売などをしていただくことも可能になっています。

 ただ、仮にこのような着色粒の規格自体を廃止するというふうになりますと、米に着色粒が混入することになりまして、消費者によっては許容しない人もかなりいらっしゃると思いますので、流通段階で着色粒を除去するカラーソーターを入れることが完全に当たり前になってしまいますと、今以上にコストがかかる可能性もあるというところも考えなければいけないというふうに考えております。

池畑委員 やはり、有機農業、そして有機無農薬の広がりを阻む壁としてそういったことがあるというふうに思いますので、別でちょっと考えていかなければいけないと思いますし、今の話でありますけれども、農研機構とか、やはりあれだけ人数がいて予算を組んでいますから、いろいろなことが考えられると思います。是非、そういったことも含めて、壁をどんどん除去していただきたいというふうに思います。

 その中で、今、農研機構のお話をさせていただきましたが、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 農業を支える人材を国策としてつくっていくということだというふうに思っております。次世代に我が国の農業を伝えていく、こういう考え方はあるというふうに思いますので。

 十何年か前まで、私は農業大学校でありますけれども、国の方では農業者大学校という国立の農業の養成学校のようなものがありました。今でも一部ありますけれども、農研機構の組織の一部としてやってこられたようでありますが、廃止をされてしまいました。

 農業技術というものは、国策として農研機構も頑張っておられるというふうに思いますけれども、なかなか予算が厳しいと思います。それ以上に厳しいのが人材の確保だと思います。これも橘委員の方からもありましたけれども、農業の資材、そして、今言いました山下惣一さんや星さんの技術をどんどん伝承していくためにも、総合農業機関として抜本的に拡充するという考えがあってもいいんじゃないかなというふうに思います。

 そもそも、農業者大学校も農研機構の一部であったというわけでありますから、なぜやめてしまったのか。これからどんどん人材育成の役割も大事だというふうに思いますので、その辺も含めて、農林水産省の今の考え方をお聞かせいただきたいと思います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 農研機構は、平成十八年四月に農業者大学校を統合し、最先端の農業技術や高度な経営手法等について教授することにより、農業を担う人材を育成してきたところであります。しかしながら、平成二十二年の事業仕分におきまして、各地の農業大学校の力を伸ばしていくべき等の意見により、農業者大学校の業務については事業の廃止とされ、平成二十四年三月をもって閉校となりました。

 農研機構は、現在、創立百三十年を超える我が国最大の農業技術の研究機関でありまして、北海道から沖縄まで全国各地に拠点を有し、我が国の多種多様な農業を対象に研究開発に取り組んでおります。

 その際、農業現場の意見、生産者、実需者の意見を聞きながらニーズに応じて進めることが大切でありまして、大学や高専、農業高校、公設試、JA、民間企業等の地域の方々と連携し、産学官で研究開発を進めております。

 先般のスマート農業法でも御議論がありましたとおり、人材育成は大変重要でございまして、スマート農業技術を扱う人材、あるいは品種を作る人材、あるいは栽培する技術、こういったものにつきまして、農研機構では、標準作業手順書などを作りまして、現場のサービス事業体、学生、スタートアップ企業、試験場の研究者、普及員、あらゆる方々と意見交換しながら、人材育成も含めて、研究開発と併せて一生懸命やっているところでございます。

 今後とも、農研機構と連携し、技術の開発、人材育成を進めてまいります。

池畑委員 人材育成をする場所というのは農業機関ばかりではないというふうに思いますし、今、川合さんが言っていただいたようなシステムをつくって、どんどん担い手を育成していく必要があるというふうに思います。

 それでは、最後の質問になりますが、最初にお話をさせていただきましたとおり、今回、途中でちょっと、大分、戸別所得補償についてだとか人材育成についてだとか、そういったお話もさせていただきました。未来に向けた農林業の政策については、次の質問に移られます空本さんから紹介をいただいた書類でありましたけれども、それも含めて、大臣、最後に、今回の戸別所得補償も含めた形で、これから大臣が進めようとする農業政策の一つを答弁いただきたいと思います。

坂本国務大臣 今国会において、基本法を始め法案審議、それから一般質疑の中で様々な御意見をいただきました。そして、今日も皆さん方からいろいろな貴重な御意見をいただいて、そして、途中、中座をいたしましたけれども、参議院の本会議で食料・農業・農村基本法が上程されまして採決でありましたので、そこでも反対討論、そして賛成討論、様々な意見を聞かせていただきました。

 それぞれが貴重な意見でありまして、私自身にとりましても毎日が勉強でございます。しっかり受け止めて、そしてそれらをいい政策につくり上げる、そのことに邁進してまいりたいというふうに思っております。

池畑委員 いい政策をつくり上げる、我々野党も、意見を出し合い、そして議論をこれからも続けていきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 持ち時間が終わりましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、空本誠喜君。

空本委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会、空本でございます。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今、いい政策を大臣の方は進めていくということで、私は大変期待したいところでございます。

 その中で、二〇〇八年十月に大臣が地元に向けて、「坂本てつしの未来に向けた農林業政策 「総合直接支払い制度」による拡充・強化で大胆な農政転換へ」、これをやっていただければ、農業は大きく変わると思います。

 もうここに書いているんですよ。大臣は、二〇〇八年当時、「日本の農業は行き着くところまで行き着きました。」「思い切った政策の転換が必要です。」。まさに戸別所得補償、名前が変わってもいいです、直接支払い制度、ヨーロッパ型の直接支払い制度を今こそ大臣が率先して入れていただくということが一番大事かなと。

 質問項目として提示させていただいているのは、大臣が掲げていらっしゃる、ヨーロッパ、EUの直接支払い制度を日本も充実させていく必要があると書いています。そして、生産調整をしつつ、生産活動に対して一定の金額を支払う。さらに、税を投入することで農家の所得を安定させる総合直接支払い制度、これを導入する。さらに、直接支払い制度の拡充で国内の農業の安定化を図ると。

 すごくすばらしい政策なんですよ、すばらしい政策。この政策を大臣が率先してやっていただければ、日本の農業は大きく変わります。間違いありません。

 大臣、今の、この書かれたEU型の直接支払い、生産調整、また税の投入、そして直接支払い制度で国内の農業を安定化させる、その思いをお聞かせください。

坂本国務大臣 私も十六年ぶりに、この自分の書いたやつを見させていただきました。

 これは、私なりの、ちょっと選挙区事情がございます。私はその頃無所属で、自民党の公認の方と、それから民主党の方と争っておりました。そういう中で、やはり自らの考え、個性というものを出さなければいけませんでした。

 自民党の方からは、そのときは、先ほどありましたように、品目横断的経営安定対策事業というのが出されておりました。これは、四ヘクタール、あるいは北海道では十ヘクタール、そして集落営農では二十ヘクタールというようなことで、集中的に、そして、個別の品目ではなくて、品目横断をしてやはり支援をするというようなことでありましたけれども、これが非常に評判が悪かったんです。結局、小農家切捨てではないかということで、二〇〇九年の、参議院選挙では惨敗をし、結局、これが政権交代につながりました。

 そういう中で、私としてどういう政策を出していったらいいのかというようなことでこれを書いたというふうに思っております。総合直接支払い制度というのは、非常に抽象的な言い回しです。品目横断が余りにも評判が悪かったものですから、こういった総合的直接支払い制度というふうな文言にしたのだというふうに思います。

 そして、その中で、ちょうどEUも、価格支持制度が破綻をいたしまして、納税者の理解を得るために、やはり環境、そして景観、あるいは生物多様性、こういったものに対して交付をする直接支払いというのが生まれて、そして、生産力の増強と切り離して、デカップリング政策というのがその当時始まっていたわけであります。

 ですから、そういうのを取り入れまして、やはり、EUがやっているような直接支払いをもう少し広範囲にやれないか、そして、どういう形に今後していくかということで、この総合型直接支払いというものをここで提言したわけです。

 しかし、直接支払いといっても、今もそうですけれども、受け取る人によっていろいろ違います。戸別所得補償と受け取られる人もいますし、それから、一方の方で、やはり、景観を守る、その地域のものに対して、共同活動に対してこういった交付金が支払われるものというような、様々な受け止め方があります。

 結果として、私が提示しました総合直接支払い制度というのは、その後、多面的機能支払交付金あるいは中山間地域の直接支払い交付金、そしてそのほかの畑作物の直接支払交付金など、いわゆる日本型の直接支払い交付金に政策として実現していったというふうに私自身は理解をいたしております。

空本委員 であれば、例えば、じゃ、大臣は農業、米作り、よく御承知ですので、中山間地域、平地含めて、先ほど池畑議員の方からいろいろ時給の問題とかございましたけれども、米六十キロ当たり、農家が幾ら手取りがあれば生活できるのか、維持できるのか。どのようにお考えでしょうか。

坂本国務大臣 その当時私が書きました「未来に向けた農林業政策」では、生産調整をしつつ、しっかりとした経営をしている農家に対して、各農家の農作物生産状況や畜産、酪農の飼育頭数、あるいは実績などを計算し、生産活動に対して一定の金額を支払うということ、すなわち、ゲタ、ナラシ等の充実を図ることを訴えたものというふうに私も今は理解しております。その後、先ほど言いましたように、経営所得安定対策の見直しや、あるいは日本型直接支払いの創設が措置をされました。さらには、牛マルキン、豚マルキン、こういったものも含めての経営安定対策でございました。

 その上で、米の価格は需要と供給のバランスによって民間の取引の中で決定されていくものであり、かつ、米農家が農業を維持していくために必要なコストは土地条件や環境、規模によって異なっていることから、一概にどれだけかということを申し上げることは困難です。

 ただ、米農家の持続可能な経営を実現するためには、農業者や各産地が、全体の需給状況や産地銘柄の在庫等の情報を踏まえながら、どの販路にどういう米を作ればいいのか、一番評価されるのか、所得につながる作付、販売方法を考えていっていただくこと、このことが重要であるというふうに考えております。

空本委員 戸別所得補償制度、私も民主党のときに一生懸命これを勉強しまして、また、地域の皆さんに説明してきて、やはり、一反当たり大体一万五千円、これであれば農家の皆さんは生活できるといいますか、維持できる。農機具も、また、耕運機とかトラクターとか、こういったものも維持できる。しかしながら、これは地域によって、ですから、先ほど地域差があるということをおっしゃったんですが、まさに中山間地域は地域差であります。だからこそ、中山間の直接、環境の直接支払い、そういったものがあるわけで、そこはもう整理されているわけですよ。

 ならば、中山間だから、平地だからではなくて、直接支払い制度がもうあるわけですから、そこを除いた形で、米が六十キロ当たり、一反当たりでも結構でございます、幾ら農家に収入があれば農家は生活できるんでしょうかといいますか、維持できるんでしょうか。もう一度お願いします。簡単にお願いします。

坂本国務大臣 幾らということを単純に申し上げることはできませんけれども、今、この需給をしっかりと守りながら、需給を引き締めながらやっているということで、一万三千円から一万五千円の価格がついているというふうに思っておりますので、そういうような、一万五千円の価格であれば、一定程度の規模拡大を進めていけば、それはしっかりとした所得につながっていくというふうに思っています。

空本委員 ありがとうございます。

 今、一万五千円という数字をいただきました。この数字はとても大事だと思います。これを維持できたら、本当に、中山間地域だったとしても、直接支払い制度、環境直接、中山間、また、三つのこの支払い制度をうまく活用させていただければ、担い手もまだまだ維持できると思います。

 先ほど農水省さんの方から、意欲ある、能力ある担い手をこれから期待するということだったんですが、今まさに、中山間地域を始めとして、また、秋田県の大潟村なんかでも、大規模農家の方が自己破産されている、そういう状況もあります。まさに今、農家の皆さんが、米が安過ぎて、今ちょっと、昨年の作付が悪かった、そういう形で値段は上がっているかもしれませんが、概算金、相対価格、こういったものではすごく下がっている。

 そういった中で、やはり、しっかりと金額、例えば六十キロ一万五千円、これであれば、どの農家もやっていこうという意識は高まります。販売農家、また主業農家さんにやっていただければいいと思いますが、やはり中山間地域とかになれば、兼業農家、ふだんは会社勤めされながら、土日、田んぼの世話をやる、稲刈りをする、田植をする、そういう方々が維持できる、それがまさに中山間地域を守ることなのかなと。そして、田植のシーズンになれば、五月の連休とかであれば、息子さんもお孫さんも地元に帰ってきてくれて、一緒に田植ができる。そうすれば人件費もかからない。

 そういう仕組み、今まさに中山間地域においてはあるべき姿なのかなと思うんですが、大臣、地域をしっかり歩かれていらっしゃいますので、中山間地域の在り方というのはどう考えますか。

坂本国務大臣 やはり、中山間地の農業生産額、これは平たん地に比べて上がっております。それはなぜかといいますと、やはり中山間地にしかできないものを作っていただいている。あるいは米にしても、水のおいしい中山間地のお米は非常にやはり高値で取引されるというようなこともあります。ですから、ブランド化も含めて、やはり中山間地ならではの農業を展開していく、そのことがまずは大事だろうというふうに思っております。

 その上で、様々な中山間地に対する直接支払い制度、こういったものも充実させていかなければいけないというふうに考えております。

空本委員 今、半導体、熊本もすごくバブルかもしれません。また、北海道、ラピダス、これも一兆円を入れる。

 今、経産省からもらった、例えばTSMC関連で一・二兆円、二〇二二年、二〇二三年、合わせて一・二兆円。また、マイクロン、私の地元、うちからすぐなんですが、五分車を飛ばせばマイクロンの工場がございますが、そちらも二千億円ぐらい。

 今回、ラピダスについては一兆円を超えるんじゃないかという投資です。一兆円ですよ。今、この国の農業予算というのは二兆円、そんな規模じゃないですか。だったら、米の農家さん、若しくは農業の皆さんに対して一兆円、二兆円入れたっていいわけですよ。

 今回、大臣がお考えになっていらっしゃる、七千億と書いてありましたけれども、米を含めたら一兆円ぐらいがちょうどいいのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 当時の私の資料では、今委員御指摘いただきました、総額約七千億円を直接支払い制度枠として予算化することが可能ではないかというようなことを提示しておりました。

 我が国農業が直面する課題や目的に応じた政策が重要と考えておりまして、現在、諸外国との生産条件の格差による生産条件の不利を補正する畑作物のいわゆるゲタ対策が千九百九十二億円、そして農地等の保全管理に対する予算でございます多面的機能の支払い交付金、さらには中山間地の支払い交付金、日本型直接支払い交付金七百七十三億円、これを交付しているところです。それに加えて、三千億円の水活、水田活用交付金、さらには畑作物の交付金を加えますと、結果として、今、七千億円程度というものにはなっております。私が提示したものに対して、今、細分化した形で、それぞれの目的を持って交付されているということであります。

空本委員 大臣の書かれたものは抽象的ではございません。まさにこれはすばらしいんですよ。農家はこれを待っているんですよ。大臣、あと、農水予算を一兆円取ってくるとか、最後に、本当にその意気込みをお願いいたします。

野中委員長 時間が来ていますので、答弁は簡潔に願います。

坂本国務大臣 来春に向けて基本計画も作ってまいりますので、それに見合うような、しっかりと予算獲得に努めてまいりたいというふうに思っております。

空本委員 ありがとうございました。

野中委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 人工甘味料について質問します。

 四月の委員会で指摘しましたように、人工甘味料は、二型糖尿病、不整脈、慢性腎臓病、脳卒中、認知症などの疾病リスクがあると欧米各国からの報告が相次ぎ、WHO、世界保健機関は、人工甘味料を推奨しないとのガイドラインを発表しました。多くの食品、飲料に使われている人工甘味料ですが、その多くは輸入です。

 改めて財務省に聞きます。

 主要な人工甘味料の年間輸入量は、例えば二〇二三年で、スクラロースが三十一万九千四百四十六キログラム、アスパルテームが十二万四千四十九キログラム、アセスルファムカリウムが五十二万千二十六キログラムとの回答を先日受けたところです。まとめて資料配付していますが、これに間違いありませんか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のございましたスクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムの数量につきましては、御指摘のとおりでございます。

田村(貴)委員 この三つの人工甘味料の四年間の輸入総量を資料としてお配りしています。これは合計で、三年間で一三%増になっているんですね。

 農水省に伺います。二〇二三年のこの数値を砂糖換算にしたらどうなりますか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 スクラロース等の甘味料につきましては、糖類でなく、砂糖と風味やカロリーが異なるため、単純に換算することはできませんが、砂糖を一とした場合の甘味度を用いて換算いたしますと、スクラロースにつきましては、甘味度六〇〇でございますので、二〇二三年の輸入量に掛けて換算しますと約十九・二万トンとなります。

 また、アスパルテームでございますけれども、甘味度が二〇〇でございますので、同様に換算しますと約二・五万トン。

 アセスルファムカリウムにつきましては、甘味度二〇〇でございますので、同様に計算しますと約十・四万トンというふうになります。

田村(貴)委員 合計で三十二万トンぐらい。すごい量ですよね。これは、砂糖の昨年の供給量が百七十七・六万トンとされていますが、手計算で大体一八%ぐらいに当たるものが人工甘味料として輸入されています。初めて明らかになりました。多くの食品、飲料に使われています。

 冒頭述べましたように、人工甘味料の危険性を示唆する研究が次々と発表されています。三月に、スクラロースが、ウイルスやがん細胞を攻撃するT細胞の機能を弱め、発がん性に関与するという研究が発表されました。イギリスの生物医学研究の一大拠点であるフランシス・クリック研究所の発表で、世界で最も有力な科学誌の一つ、イギリスの科学雑誌ネイチャーに掲載されました。

 日本政府は、この論文は承知しているでしょうか。日本では疫学調査をやらなくてよろしいんでしょうか。

中山政府参考人 お答えします。

 御指摘の研究論文については承知しております。

 この論文の知見も含めまして、様々な国内外の知見も含めて情報収集し、必要に応じて専門家の意見も聞きながら検討していく必要があるというふうに考えております。

田村(貴)委員 これはスクラロースの危険性を示す有力な研究ですよ。あくまでも政府は、聞いて、そして検討するだけですか。

 ほかにもスクラロースは、製造方法によってスクラロース6アセテートという有害な不純物が発生するとも言われています。かつてスクラロースが食品添加物として指定された当時、再精製されていました。ところが、今は再精製されていません。指定要請書に記載されたものと現在販売されているものが同じと言えるんでしょうか。スクラロース6アセテートを始めとする不純物が多く含まれている可能性があります。

 スクラロースの再評価、そして指定要請書の再点検が必要だと考えますが、その点についてはいかがですか。

中山政府参考人 お答えします。

 平成十一年に食品衛生法に基づき新規に食品添加物として指定した当時の成分規格におきましては、液性という項目にpHの規定を定めておりました。平成十九年の食品添加物公定書の改訂の際に、スクラロースを収載するに当たりpHの規定を削除しているという事実はございます。

 ただし、これは、国際的な添加物の評価機関であるJECFAなどにおいてpHが規定されていないことを踏まえまして、この規格との整合化を図ったものでございます。

 この改正は、専門家による議論を経て、改正後の規格は、安全性や有効性について指定した当時の規格と同等であると判断したためでございます。

 したがいまして、現在流通している規格に合致している製品は、指定された当時のものと同等であるというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 それならお聞きしますけれども、第十版添加物公定書で定められた不純物、ここには、他の塩化二糖類〇・五%以下に包含される物質、これは一体何なんでしょうか。スクラロース6アセテートはこの中に含まれているのじゃないですか。その他の物質の遺伝毒性試験というのはどうなんでしょうか。試験はしたんでしょうか。その結果についてはどうなんでしょうか。お答えください。

中山政府参考人 お答えします。

 スクラロースの成分規格においては、他の塩化二糖類は〇・五%以下という基準が定められております。本項目は、国際的な添加物の評価機関であるJECFA規格などの国際規格と整合しておりまして、スクラロースの製造過程で僅かに生じるスクラロースと構造が似た物質が含まれていると承知しております。委員御指摘のスクラロース6アセテートに関しましても、この中の不純物に含まれるものでございます。

 これらの物質につきましては、個別に遺伝毒性試験を実施しておりませんけれども、スクラロースの指定当時の議論におきましては、これらの不純物も含まれている可能性がある前提で、スクラロースとして遺伝毒性の懸念はなく、安全性に問題はないというふうに判断されておりますし、あと、スクラロース6アセテートに関しましては論文情報がございましたので、これにつきましては、食品衛生審議会の添加物部会で審議し、遺伝毒性に対する懸念に言及することは困難であり、追加の規制措置を導入する科学的な必要性はないものとして了承されているという状況でございます。

田村(貴)委員 いずれにしても、疫学研究、調査はやっていないんですよね。結局、何なのか分からないんですよ。不純物が何で、どんな毒性があるのか、それが不明なのにどうして安全だと言えるんですか。疫学研究をやっていないじゃないですか。

 毒性については、スクラロース6アセテートなどの不純物が原因であるとする研究結果が世界中で次々に報告されています。事は国民の命と健康に関わる問題です。これはもう日本政府も責任を持って調べるべきですよ。

 厚労省から三浦政務官にお越しいただいております。それから、内閣府から古賀政務官もお越しいただいております。

 お尋ねします。

 まだ五月なんですけれども、真夏日が続出して、熱中症で病院に救急搬送される方が続出しています。死亡者も生まれました。熱中症対策で水分の補給は極めて重要です。その水分の補給の中で、経口補水液やスポーツドリンクはどのような位置づけをされているんでしょうか。摂取に当たって、国民にどのように政府は伝えていますか。

三浦大臣政務官 お答えいたします。

 厚生労働省におきましては、熱中症予防のための情報・資料サイトにおきまして、熱中症の予防法や応急処置等について周知を行っております。

 その中におきまして、熱中症の予防のためにスポーツドリンク等を補給することや、熱中症が疑われる方が大量に汗をおかきになっている場合にはスポーツドリンクそして経口補水液等を補給することについて周知を行っております。

田村(貴)委員 それで、厚生労働省のホームページを見ても、それからチラシなどを見ると、こう書いているんですよね。熱中症が疑われる人を見かけたら、水分、塩分、経口補水液などを補給、あるいは、水分、塩分、スポーツドリンクなどを補給しましょうと呼びかけているんです。これは大丈夫でしょうか。

 資料二を御覧ください。

 市販されている、テレビでも大々的に宣伝している経口補水液、スポーツドリンクを少しチョイスして挙げて、その成分について各企業のホームページから抜き出して書いてきました。ことごとく人工甘味料が使われていますよね。

 今から本格的な長い夏を迎えます。今年も猛暑日が続くと言われています。経口補水液やスポーツドリンク、先ほど大量の汗をかいて補給と言われましたけれども、大量に汗をかいたらやはりごくごく飲みますよ。毎日暑いから、大量に、やはり継続的に摂取していきますよね。それで大丈夫なのかということを四月から私聞いているんですよ。

 欧米では継続的に大量に摂取するといろいろな健康リスクが生じると出ている。先ほどは、がんのリスクがあるとイギリスの研究が権威ある報告書で述べられたと。でも、日本政府は、それを聞いている、そして、まあ、伺って検討しているだけなんですよね。本当にそれでいいんですか。

 国連が人工甘味料を推奨しないと言っているんですよ。ガイドラインを発表したにもかかわらず、日本はむやみに人工甘味料入りの経口補水液やスポーツドリンクを推奨する、それでいいんですか。

三浦大臣政務官 先生御指摘なされましたように、確かに、厚生労働省におきましては、ホームページの中でスポーツドリンクや経口補水液の摂取について言及をしております。

 しかしながら、甘味料につきまして、食品衛生法第十二条によりまして、人の健康を損なうおそれのない添加物として指定されておりまして、安全性を確保するための規格基準が定められております。熱中症対策としてスポーツドリンクや経口補水液を一定程度摂取することは問題ないものと考えておるところでございます。

田村(貴)委員 一定程度というのはどれだけの量ですか。だって、毎日国民は、やはり水分を取らないかぬ、厚生労働省のチラシを見ても書いてある、これは飲まないかぬ、水よりこっちの方が何かよさそうだと思って摂取するわけなんですよ。

 これは本当に大丈夫なのか。手が挙がったんですが、どうなんですか。

中山政府参考人 お答えします。

 経口補水液に含まれる甘味料としてスクラロースがありますけれども、使用基準といたしましては、清涼飲料水一キログラムにつきまして〇・四グラムまで使用できるということになっております。

 健康に影響を及ぼすと考えられるスクラロースの一日摂取許容量という、ADIと呼ばれますけれども、これについては、一日当たり体重一キログラムにつき十五ミリグラムまで摂取が可能というふうになっておりまして、これは、換算いたしますと、体重六十キログラムの方であれば、その清涼飲料水を一日二・二五キログラム摂取し続けた場合までは、安全性について、一生涯摂取したとしても問題ないという量として換算することができます。

田村(貴)委員 私、この間から、欧米ではちゃんと疫学調査に基づいて人体への影響が出ていると、各国から出ているわけですよ。今日、ちょっと紹介する時間がないんだけれども。そうしたことに対して、最近の調査に対して、やはり正面から受け止めて調査すべきですよ。

 政府として何も検査しないということなんですよ、消費者、国民に対して情報発信はしない、摂取量については、今、細かな基準とか言われましたけれども、それは国民に伝わっていませんよ、とにかく推奨されているだけですよ、それでいいのかと。

 つまり、人工甘味料の有害性について、今後明らかになっていくと私は思いますよ。でも、今の政府の立場としては、それを放置し続けるということなんです。それで本当に、内閣府、いいんですか。

古賀大臣政務官 お答えいたします。

 甘味料を含む食品添加物につきましては、一般に、食品衛生法の規定に基づきまして、内閣総理大臣が指定をしたもの以外の使用等を禁止をしているということでございまして、その指定に当たりましては、食品安全委員会による評価結果、そして消費者庁の食品衛生基準審議会、これは今年度から厚労省から移管されてきたものでありますけれども、これにおける審議結果も踏まえまして、安全性に関する必要な評価を行った上で指定をしているというところでございまして、また、添加物に関する規格基準を定めるということによりまして安全性を確保している、こういう状況でございます。

田村(貴)委員 新しい知見をちゃんと吸収してください。

 滝沢環境副大臣にもお越しいただいています。

 二〇〇九年に第四十三回日本水環境学会で、スクラロースが下水処理場から検出されたとの発表がありました。二〇〇八年の神奈川県の調査では、県内の多くの河川から、微量でありますけれども、スクラロースとアセスルファムカリウムが検出されたとされています。

 スクラロースの半減期は数十日、アセスルファムカリウムは七百日に及ぶと言われます。となれば、使い続ける限り環境中に蓄積されていくのではないでしょうか。生物多様性にどのような影響が出てくるのでしょうか。少なくとも、その後どうなったのか、これは環境省として調査を行うべきではないですか。

滝沢副大臣 お答え申し上げます。

 神奈川県において、二〇〇八年から二〇一〇年にかけて委員御指摘の調査が実施されたことは承知しております。この調査は、スクラロース及びアセスルファムカリウムの生活排水等の追跡指標としての有効性を調査したものと認識しております。(田村(貴)委員「結論でいいですよ、結論でいいです」と呼ぶ)

 環境省としては、このような調査を行う考えはございません。

田村(貴)委員 結局、何にもしないと。アメリカだってイギリスだってフランスだって中国だってちゃんと検査しているのに、日本政府は何もやらない。深刻な影響が出てからでは遅いと言わざるを得ません。また議論します。

 滝沢副大臣、古賀政務官、三浦政務官は退室していただいて結構です。ありがとうございました。

 次に、盗伐問題について質問します。

 林野庁にお伺いします。端的に数字だけ答えてください。ここ五年間の無断伐採数を答えてください。

青山政府参考人 農林省では、森林所有者に無断で伐採が行われて県や市町村に相談が寄せられた事案の数を平成三十年から調査しております。

 直近五年間でございますと、平成三十年一月から十二月までの暦年で七十八件、三十一年、令和元年が九十七件、令和二年が九十九件、令和三年が百六件、令和四年が七十二件となっております。

田村(貴)委員 次に、警察庁にお伺いします。

 森林窃盗について、五年間の件数を教えてください。

和田政府参考人 警察においては、森林においてその産物を窃取する森林窃盗について、令和元年に三十七件、令和二年に三十二件、令和三年に五十件、令和四年に五十六件、令和五年に四十八件を検挙しております。

田村(貴)委員 相変わらず、毎年、違法伐採、盗伐が起こっているわけです。盗伐というのはれっきとした犯罪です。

 私、二〇一七年から、本委員会で毎年のようにこの問題を取り上げてきました。取締りの強化と対策の抜本強化を求めてまいりました。盗伐の多くは宮崎県です。ところが、鹿児島県にも大分県にも被害が広がり、そして、今度、熊本県で発生しました。

 坂本大臣のお膝元、熊本県小国町の盗伐現場に被害者と一緒に先週末行ってまいりました。

 資料三を御覧ください。

 盗まれた木は杉の木約二千五百本です。1の写真、後ろに、一筆の山の部分なんです、被害の一筆の山の一部です、木立が見えるんですけれども、その手前にもっと太い杉の木がずっと並んでいたんです。

 2と4を御覧ください。これは立派な杉の木です。樹齢は六十年から七十年、あるいはそれ以上のものもあるのではないか。私も見てまいりました。そして、大臣御存じのように、小国杉は木目の詰まった比重の高い優れた名木であります。被害者の悔しさ、悲しさ、これはもういかばかりかと思いますよ。

 そして、この3を見てください。伐採すると種が落ちますよね。そうすると、新しい杉の木が自然発生してきます。一、二年はたっているのではないかと思います。つまり、伐採届を出した人は再造林の意思がないということがここからも読み取れます。

 この山林の所有者は既に亡くなっています。伐採届は、故人の家族をだまして町役場に提出されました。こうした事例がどれほどあったことでしょうか。

 林野庁にお伺いします。

 伐採届における、伐採届だけでいいです、この間の対策について簡単に説明してください。

青山政府参考人 お答えいたします。

 伐採届出につきましては、令和三年度の森林法施行規則の改正によりまして、伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告について、造林後にのみ届け出ればよいとしていたものを、伐採の終わった日から三十日以内にその状況を報告させることとしたほか、令和四年度の規則の改正によりまして、伐採及び造林の届出の提出の際に、権利関係を確認できる書類や境界関係書類などの添付を義務づけることとしたところです。

 その上で、これらの施行規則の施行に向けまして、制度が適切に運用されるよう、それぞれ、令和四年度、五年度に、改正内容につきまして、県を通じて、市町村に対して指導通知を発出するとともに、警察庁に対して、県警と地域の関係機関との緊密な連携等を進めることについて依頼を行ったところです。

田村(貴)委員 届出の改善は前進で、大事です。問題は、それがいかに徹底されるかどうかということだと思います。しっかり確認することですよね。伐採造林届に瑕疵はないのか。伐採造林報告はきちんと行われているのか。それは誰がどのようにして検証しているんでしょうか。それは検証されていませんよね。

 森林法第十条八の二項では、伐採造林状況の報告が義務づけられています。そして、報告しなければ罰金三十万円以下が科せられます。

 しかし、この小国の盗伐のケースでは、報告がされていないんですよね。通達が伝わっていないんです。違法伐採を防止するために届出制度を見直したのであれば、その見直し前の伐採届についても、ちゃんと再造林は行われていたのかとチェックする必要があると思います。その点についてどうですか。

青山政府参考人 法制度につきまして見直しを行ったことは遡及されておりません。

田村(貴)委員 遡及されていません。

 私、大事なのは、伐採届をちゃんと届け出た後に履行されているのかというチェックが要ると思いますよ。それを検証しなければ、また同じ問題が起こってくるということです。再造林の届出がないんだったら、ちゃんと追いかけないといけないんじゃないですか。

 立木所有者若しくは家族などから盗伐の連絡があった場合、自治体は何をするんでしょうか。それは何に基づいて行うんでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 林野庁では、市町村が行います伐採造林届出の適切な運用を図るため、伐採、伐採後の造林の届出の制度に関する市町村事務処理マニュアルを作成し、通知をしております。

 市町村は、森林所有者から森林窃盗や無断伐採等に関する相談があった場合には、このマニュアルに基づいて事実を確認し、都道府県と連携して、森林窃盗等に係る告発の手続や、警察等による捜査協力等、必要な対応を行うこととしております。

田村(貴)委員 被害者は憤慨されているんですよね。

 小国町で、所有者の家族が伐採届書を役場に情報公開請求したら、届出人もそれから伐採業者も、黒塗りで出てきたんですよ。誰が切ったのか、誰が届けたのか、被害者にとって全く分からないんですよ。こんなケースも、私は初めて見ました。切り倒されて持ち逃げされたら、もう取り返しが利かないんですよね。

 告発という言葉もこのガイドラインの中にあります。でも、自治体がそんなことをやった例はありません。不断のチェックと監視が求められます。

 そして、自治体の職員は限られています。マンパワーの確保、森林の専門家の育成を強く求めたいと思います。

 坂本大臣、今、「盗伐」という本が四月に発刊されて、大変読まれています。森林ジャーナリストの田中淳夫さんが盗伐の取材を丹念に行って書きました。著者本人も、所有する大木を盗伐された経験を持っています。このように書かれています。個人が破壊行為を行ったことは無性に悔しい、金銭的被害よりも感情被害が大きいことを思い知ったと。つまり、木がなくなって悲しいんだけれども、その後、被害届を出しても受理されない、それから、行政が相手にしてくれない、泣き寝入りをしている人がほとんどなんですよね。

 この点について、私は、二〇一七年から歴代の農水大臣に改善を迫ってまいりました。

 大臣にお伺いします。なぜ、先ほど数字の説明がありましたけれども、盗伐被害がなくならないのか、これについて大臣の所見をお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 農林水産省といたしましては、警察等と連携をした伐採現場のパトロール等に加えまして、森林法で定めている伐採造林届に所有に関する権利や境界関係書類の添付を義務づけるなど、対策を強化しているところですが、山村の過疎化や国産材需要の高まりを背景として、森林盗伐や無断伐採がなくなっていないものと認識をいたしております。

 今回の小国につきましても、今の組合長が私の事務所にもいましたので、先生の質問通告を受けて電話してみましたら、おじいちゃんの代から相続登記が行われていない、それで孫さんが切ってしまった、それに対しておじさんたちがやはり大変な怒りを持っていらっしゃるというようなことでございました。

 しかし、いずれにいたしましても、無断伐採事案が発生していることにつきましては、大変遺憾に思っており、許されないことであるというふうに考えます。

 引き続き、都道府県や市町村、警察庁、そして森林組合等とも連携しながら、こうした対策を徹底し、無断伐採の未然防止に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 大臣、もう地元だからよく御存じだと思うんですけれども、かつて、鹿児島県の小里副大臣が、農水委員会で、地元でも盗伐が発生したし、たしか副大臣は宮崎の現場にすぐ飛んで視察に行かれました。

 坂本大臣も、是非この惨状を、あちこち起こっているので見ていただきたい。現場に入って陣頭指揮を執っていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 委員の御意見をしっかり受け止めたいと思います。

田村(貴)委員 最後に警察庁に伺います。

 盗伐の被害相談件数、それから被害届の受理件数については把握されているでしょうか。

和田政府参考人 盗伐に係る被害相談については、全体を網羅的に把握しているものではありませんが、警察に寄せられた相談のうち、盗伐に関連するものとして、全国で、令和三年は三十一件、令和四年は二十五件、令和五年は二十九件を把握しております。

 また、盗伐に係る被害届の受理件数については、一概にお答えすることは困難でありますが、いずれにいたしましても、警察としては、被害の相談があった際には、被害者の方の心情に配意しつつ、個別の事案に応じ適切に対応するとともに、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき厳正に対処してまいります。

田村(貴)委員 今回の小国町のケースは、被害者が所轄の警察署に被害届を出したら、速やかに受理されました。そうしたところを私たちも検証したいと思いますので、是非、警察庁は、この盗伐事案について、全国の警察に照会をかけていただきたい。

 そして、どのぐらいの相談があっているのか、そして届出はちゃんと受理されているのか、捜査が必要ならばやっているのか、そのことについて掌握していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

和田政府参考人 今御答弁申し上げましたように、全国の相談の数字を把握しているところであります。

 警察といたしましても、関係機関等と連携しつつ、適正に対応してまいります。

田村(貴)委員 徹底した対策を要求して、終わります。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗でございます。

 本日は、ゆっくり、久しぶりに三十分御質問させていただきますけれども、やはり、食料安全保障という喫緊の課題に関連して、肥料の問題について質問をしたいというふうに思っています。

 御存じのように、化学肥料というのは、いわゆる粗原料になる鉱物資源というのは、ほとんど中国とかマレーシアとかカナダで、外国に依存している。それから、みどりの食料システムで、農林水産省としても、化学肥料というのはどんどん減らしていく、こういう方針だというふうに思います。

 そういう中で着目しているのが、いわゆる下水汚泥資源というものを活用すべきだということなんですが、これは、令和四年に成立をした経済安全保障推進法の中の第七条に、肥料というのはいわゆる重要資源だ、特定資源だということで位置づけられて、農林水産省としても同年に、食料安全保障強化大綱、この中に、下水汚泥の使用量というものが、今、たしか一四%ぐらい農業に使われておりますけれども、これを二〇三〇年までに倍増する、下水汚泥に限らず、いわゆる国産肥料資源については二五%から四〇%に引き上げるということなんですが、これは非常に重要な課題だというふうに思いますけれども、進捗状況について伺いたいと思います。

坂本国務大臣 化学肥料は、その原料の多くを海外に依存しています。食料安全保障を強化し、国際価格の影響を受けづらい構造に転換していかなければなりません。そのためには、委員御指摘のとおり、下水汚泥、そして堆肥、こういった国内資源の利用の拡大というものを図っていく必要があります。

 このため、令和四年十二月に策定いたしました食料安全保障強化政策大綱におきまして、二〇三〇年までに堆肥、下水汚泥資源の使用量を倍増し、肥料の使用量、リンベースに占める国内資源の利用割合を、二〇二一年の二五%から、委員も御発言されました、四〇%まで拡大するとの目標を掲げまして、現在、下水道事業を所管する国土交通省と連携しつつ、国内肥料資源利用拡大対策事業を始めとする様々な施策を講じているところでございます。

 これまでの取組を通じまして、堆肥と下水汚泥資源の肥料としての使用量は、基準年とした二〇二一年の二万七千トンから、二〇二四年五月までに二割増しの三万二千四百トンまで増加する計画が肥料関係者によって立てられておりまして、着実に進捗をしているところであります。

 農林水産省といたしましては、引き続き関係省庁と連携しつつ、目標の達成に向けて、一層強力に国内資源の利用拡大に向けた取組を推進してまいります。

北神委員 ありがとうございます。

 まだ二〇三〇年まで時間がありますけれども、今、それなりに順調に進捗しているというふうに理解をしました。

 進捗状況を聞いたのは、何かそういう課題とかがあったら、また一緒に考えないといけないというふうに思っていたんですが。私が聞いている、肥料製造業者、肥料メーカーさんのいろいろな話を聞きますと、これは利便性の問題だけかもしれませんけれども、やはりまだ様々な課題があると。

 たまたま、私の選挙区に、松井三郎さんという京都大学の名誉教授の方がおられまして、この方がプロバイオティクス農業というものを推進をされている。これは何かというと、いわゆる下水汚泥とか、あるいは家畜のふん尿とか生ごみとか、あるいは食料の残り、あるいは農業の廃棄物とか、こういった有機物に乳酸菌をかけて、それで堆肥にしていく。これは非常に循環型農業に資するのではないか、こういう発想だというふうに思います。

 ただ、この乳酸菌の話というのは、農林水産省に聞くと、環境省の所管だということなので、これ自体はお聞きしませんけれども、いわゆる有機物から堆肥、コンポストに変換をする技術について、今課題があるというふうに伺っているんですが、皆さんはどうお考えなのか。そして、この技術開発の支援を国としてされているのかということをお聞きしたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 技術については開発途上であって、一個一個コメントするのは難しいんですけれども、今我々が関係する事業者さんとの間で課題となっていることをちょっと御紹介したいというふうに思っております。

 下水汚泥資源ですとか家畜のふん尿、それから食品廃棄物などが原料になりました国内資源の肥料利用というのを進めていくんですけれども、肥料の原材料の供給事業者、それからそれを使う肥料のメーカー、農家、それぞれに取り組もうとしておりまして、様々な面で見通しが立てにくくて、設備投資等が進まないという話は伺います。

 具体的には、下水道の事業者の方からは、肥料原料の供給事業者からは、肥料メーカーとの接点が少ないですとか、肥料メーカーにおかれては、希望する品質の原料を安定的に確保できない、あるいは産地の確実なニーズが見当たらないとなかなか作るのが、見通しが立てづらいという話、それから、肥料を利用する農家側のお話からしても、化学肥料に比べて適切な施用の方法が分かりづらいというお話を伺いまして、原料、製造、利用の各段階において、関係者が連携して取り組むことが必要ではないかというふうに考えているところです。

 このため、農林水産省では、令和五年二月に、国内肥料資源の利用拡大に向けた全国推進会議というものを設置いたしまして、取組のいろいろな事例の紹介をさせていただいております。また、農政局中心なんですけれども、各地域ごとに関係事業者間でのマッチングの会合というものも開催するなど、連携づくりへの支援を行っております。さらに、堆肥化の処理施設等の設備ですとか機械導入、新たな肥料の導入に伴う施肥の効果の実証、こういったものに対しても支援を行っているところでございます。

 今後とも、こうした取組を通じて、肥料関係者が連携した取組が進むように、着実に推進をしていきたいというふうに考えております。

北神委員 農林水産省として、肥料関係者のいろいろ、情報の共有とか、マッチングとか、それは是非今後も進めていただきたいというふうに思います。

 私が一つ聞いているのは、大体、肥料が、堆肥が必要になるのは、春と秋だと。春と秋なんですけれども、下水汚泥というのは、おのずと、そんな長い間保管していたりすると使えなくなってしまうということなんですが、この保管の問題についてもよく聞かれるんですが、これについては何か対策は講じておられますでしょうか。

平形政府参考人 国内資源の利用を四〇%にするという目標に関しましては、家畜のふん尿に加えて、下水汚泥資源についても積極的な利用拡大というものを考えているところでございます。

 委員御指摘のとおり、こういった国内資源の利用割合を拡大する際には、肥料原料の発生時期と肥料として利用する時期、肥料原料は通年でずっと発生するんですけれども、利用する時期はやはり春と秋に固まりますので、これが差が生じていることなんですが、肥料原料の供給事業者、それから肥料の製造事業者、肥料の利用者等の話合いを通じて、最も妥当と考えられる場所に原料や製品の保管施設を整備するということが必要だというふうに考えております。

 農林水産省では、こうした環境整備を進めるために、国内肥料資源の利用拡大対策事業におきまして、原料ですとか製品の保管、管理に必要となる施設の整備等に対して支援を行っているところでございます。

 引き続き、国内肥料資源の利用拡大を推進していく考えでございます。

北神委員 今の需要だったら、それなりに、いわゆる処理場、下水処理場からそのまま直接運んでいって間に合っているというふうには伺っているんですが、おっしゃるように、食料安全保障強化大綱によると、利用量を倍増するということなので、そうすると、ちょっとそれでは間に合わなくなる。

 今局長がおっしゃったのは、それなりに、利用者とかメーカーさんの間で、どこが一番適切な場所かとか、そういったことをどんどん相談してもらう必要がある、農林水産省としてもその保管場所の支援をされていると。

 具体的にどういう支援をされているか、伺っていいでしょうか。

平形政府参考人 委員解説していただいたとおり、今ぐらいの量ですと、そのまま持っていかれたりということなんですが、量が多くなりますと、やはり、一気に必要な時期と製造される時期というのはどうしてもずれてまいりますので、そういったために、原料と製品のやはり保管施設というものが必要になってまいりますので、それをためておくだとかストックする、例えば、屋根があって、コンポストのところがあって、それを皆さん取りに来れるような形にするだとか、そういった施設整備について支援を行っているところでございます。

北神委員 これは私の思いつきかもしれませんけれども、やはり、それなりの重点的な各地域にそれなりの保管施設というものを設けて、そこから各農家が、周辺の農家が、いわゆる下水汚泥の堆肥というものを取りに行くとか、多分そういった方式になるんじゃないかというふうに思っていますけれども、これはおいおい、是非検討していって、進めていただきたいというふうに思っております。

 後半は、食料安全保障の関係で、今堆肥の話をしましたが、これも以前に、以前といっても五月に、今月の初めの頃に、たしか平澤さんと議論をしたというふうに思うんですが、平澤参考人。あなた、平澤さんですよね、たしか。違ったっけ。平形か。じゃ、違う人やった。平澤さんという方と議論しておったんですが。

 要は、食料安全保障で、いわゆる栄養分のある食料を有事の際も提供しなければいけない。ほかの国を見ますと、やはり、一番自分の競争力の強い食料にかなり力を入れて、極端に言うと、最大限生産をして、そして、もちろん、国内だけで需要を上回る、余剰が生じた場合には、更に努力をして新しい市場開拓をする。

 そういう意味で、今回の基本法の中に、たしか第二条四項だったと思いますけれども、輸出というものが新たに加わるわけですよ。これは、食料安全保障の項目の中に輸出が入るということですから、食料安全保障に資する輸出というふうに論理的には考えざるを得ないんですが、そうなると、やはりお米しかないと私なんかは思うんですよ。

 だから、そういうお米以外で食料安全保障に資するような食料品あるいは生産物を輸出するということは、まずちょっと考えられないなというふうに思っています。

 まずお聞きしたいのは、今は全然違う方向に進んでいって、これは有事の話を今申し上げたんですが、平時のときは、そんなことを言ったって、毎年お米の消費量も十万トンぐらい減っている、もう既に水田の半分ぐらいは使われていない、今後更にそうなっていく、だから、そんなところを一生懸命維持をするのは相当なお金がかかるというのがこの前の平澤参考人のお話でした。

 その代わり、やはり、今、平時で需要のある小麦とか大豆とか、こういったところに力を入れる、だからこそ、いわゆる、減反というのか分かりませんけれども、畑地化というものを進めているんだということをおっしゃるんです。

 しかし、やはり、コストというものが三倍ぐらい外国との差がどうしてもあるという意味で、これもかなりお金がかかるわけですよね。だから、水田を維持するのもお金がかかるし、新たに需要の高まっている小麦とか大豆とか、これを日本で無理やり条件が厳しい中で推進をするのもお金がかかる。これは、お金、具体的にどのぐらい、コストの比較というのは今申し上げませんけれども。

 皆さんのOBである山下一仁さんという方がいますね。この人が言うには、お米というのは、今消費量が七百万トンぐらいある、国内の消費量が。そして、今、わざわざ米を作らせないようにしている、それはさっきの理由で需要が減っているからだと。しかし、これを輸出の方に最大限向けたら、これは彼の試算ですよ、一千万トンぐらい更に追加的にできると。だから、国内の需要と海外の需要で都合千七百万トンお米を生産をして、そして、いざというときには輸出を止めて、食料安全保障ということで国内に提供すればよいと。

 これは理屈の話なので、私も、どこまで現実的にできるかということは何とも言えないと思うんですが、まさにそういう考えもあるんですが、農林水産省としてはどうお考えなのか。もちろん、これは、さっきの話、お金がかかるということなんです。

 二つ問題点があって、一つはお金がかかる。でも、山下先生が言うには、減反政策、いわゆる畑地化政策にもう既に年間三千五百億円ぐらいつぎ込んでいる、この三千五百億円を、極端に言うと全部なくして、お米を最大限作らせる、お米の価格の低下によって厳しくなった方には、その三千五百億円から直接支払いなり所得補償をすればよいということをおっしゃるんです。それで間に合うと、彼の試算によるとね。

 もう一つの問題というのは、輸出といっても、今までも皆さん頑張っておにぎりとか米パックとかやっておられますけれども、いわゆる短粒種ということで海外にはなかなか受け入れてもらえない、どんなに頑張っても輸出がそこそこしか増えないという二つの問題があるというふうに思うんですが。

 まずお聞きしたいのは、お米を最大限力を入れて、そして、余剰の部分は輸出に回すというその考え方というのは現実的に成り立つかどうかというのを、大臣、伺いたいと思います。

坂本国務大臣 現在の米政策は、平成三十年産から米の生産数量目標の配分を廃止をいたしました。農業者や産地の自らの経営判断によりまして、需要に応じた生産を基本としております。需要の減少が続く主食用米から需要のある麦、大豆等の作付転換を支援するとともに、近年拡大している輸出の促進も進めているところであります。

 また、米は我が国で自給可能な唯一の作物でありまして、輸出拡大によって新たな需要を生み出していくことは食料安全保障の強化を図る上で重要であり、輸出拡大実行戦略に基づきまして更に拡大に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 ただ、米の輸出量は近年四年間で倍増していますが、三・七万トン、生産量が六百八十万トンでありますので、三・七万トンにとどまっています。これは、輸出は輸出相手国の需要を踏まえながら行う必要があることから、主食用米の需要減少をカバーするほど急激に拡大するものではないというふうに思っております。

 委員が挙げていただきました米の産地のベストエイトまでは全部長粒種であります。それから、欧米の方は麦の文化であります。ですから、ジャポニカ米の短粒種というのは少数派でありますので、まずはおすしとかおにぎりとかパック御飯あたりでしっかり米のおいしさを伝えていく、そして徐々に徐々に輸出を拡大していく、これが現実的であるというふうに思っております。

 それから、山下氏の主張は詳しくは承知しておりませんけれども、現在の水田面積が二百三十五万ヘクタールであります。仮にその全てを米の生産に充てることとした場合、現行の食料・農業・農村基本計画で目標としている多収品種の飼料用米の十アール当たりの収量、十アール当たり七百二十キロで計算すれば、山下氏が言われるような千七百万トンの生産量になります。飼料用米等以外の米の平均収量であります五百三十六キログラムで計算しますと、大体千二百六十万トンの生産量になります。

 実際には、農業者や各産地が全体の需給状況や在庫等の情報から作付、販売を考えていただき、需要に応じた生産、販売を進めていただくことが重要と考えており、需要見込みがなく、また食料安全保障の強化の観点から麦、大豆の生産拡大が課題となる中で、現在の水田面積全てを米の生産に充てることは現実的ではないし、先ほど言いましたように、ジャポニカ米というのが少数派でございますので、それを輸出に振り向けるということは、大量輸出にはやはり今のところはつながらないというふうに思っております。

北神委員 詳細にありがとうございます。

 ジャポニカ米が少数派だと、おっしゃるとおりだというふうに思います。そういう皆さんの問題意識というのもずっと聞いているんですが。

 ただ、これはもう、食料安全保障の項目に輸出というものを掲げた限りは、やはりお米の輸出に相当な力を入れていかなければいけない、現実、いろいろな課題があってもですね。

 まず、例えば二〇三〇年までにどのぐらいの輸出を主食米について実現するのか、こういう数量目標みたいなものは設けておられるんでしょうか。

平形政府参考人 お米なんですけれども、一つは、輸出拡大実行戦略というものがございまして、この中には、二〇二五年で米、パック御飯、米粉、米粉製品全部合わせて百二十五億円という目標を持っています。二〇一九年が五十二億円ですから、二〇二五年、百二十五億円ということでございます。

 委員御指摘の二〇三〇年となりますと、現行の基本計画におきまして、農林水産物・食品の輸出額を五兆円というのがございまして、それで米の部分を抜き出しますと、二〇三〇年で二百六十一億という目標を立てているところであります。

北神委員 これ、金額ベースしか目標はないんですかね。やはり、何万トンとかそういう数量の方が私は適切なんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 付加価値という意味で、輸出全体が何兆円という目標の中でのことになっておりますので二百六十一億円ということなんですが、今の輸出が、実際、二〇二三年、米でいくと九十四億円なんですが、これで約三・七万トンであります。これを単純に同じ単価で伸ばしていったら、二百六十一億だとすると十・三万トンという数字になります。ただ、これは目標ではございません。

北神委員 何でトン数の方がいいかというと、食料安全保障のことを考えるとやはり量というものが一番大事で、価格というのは幾らでも変動しますので、やはりそういったところも、数字を押さえるべきだということを申し上げたいというふうに思います。

 それで、私、お配りしている資料がありますが、この輸出の中で、資料の中の下の方を御覧いただきますと、アフリカというのが全体のお米の国際市場の中で三分の一を占めているんですね。

 大ざっぱに言うと、国際的ないわゆるお米の市場、貿易量の総額というか総数ということを言うと、大体五千二百五十万トンぐらいある、その三分の一がアフリカ、三分の一がアジア、三分の一がそれ以外のところということが言えると思うんですが、このアフリカというのが、どんどんそこに着目をして、これはまたジャポニカ米という話があるんですけれども、私が聞いたところによりますと、アフリカ、アフリカといってもいろいろありますが、北アフリカは基本的に麦が主食だと。サハラ砂漠以南ですね、そこのところが結構、自分たちでもお米を作っていますし、お米をたくさん食べる、相当輸入している、ほとんどインドがそちらに輸入をしてきたということなんですが。

 ここで、ジャポニカ米を受け付けられないと。確かに、インドの方は長粒種の方で売っていますので、今はそうかもしれませんけれども、別にアフリカ人が、南サハラのアフリカ人が、必ずしもお米の文化というのが昔から歴史、伝統的にあったわけではなく、恐らくインドの企業なんかが入っていって市場開拓をして、そして自分たちのお米というのを宣伝をして普及をさせた結果、そうなったんじゃないかと。逆に言うと、別にジャポニカ米が最初から拒否されるべきものではないというふうに私は思っているんですが。

 こういったところに農林水産省としてもっと売り込むべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員おっしゃるとおり、米の貿易量の約三分の一はアフリカ諸国へということでございます。ただ、米の貿易、世界貿易全体の大半といいますか、九割以上が長粒米でございまして、我が国の国産米、短粒種、ジャポニカ米の市場はやはり世界的には大きくなく、アフリカ諸国の米の輸入元は、おっしゃるとおりインド、タイ、ベトナム等の長粒種の輸出国というふうになっております。

 この中で、アフリカ諸国向けの日本産米の輸出の実績なんですけれども、昨年は十五トンというふうにとどまっております。実際に輸出している事業者さんから伺ったところ、日本食が広まりつつあるものの、ビジネスベースになるほど日本産米の需要があるかまだ分からないといったような状況でございます。

 農林水産省としては、輸出拡大実行戦略に基づいて、米の輸出促進団体を中心として、まずは、輸出実績上位である、今後も更なる需要拡大が期待できる国、地域として、重点的に示すターゲット国、地域として、香港、アメリカ、シンガポール等への輸出拡大を図っていく考えでありますが、その上で、アフリカ諸国を含むその他の国、地域についても、中長期的な視点に立って、更なる輸出拡大を見据えて、マーケットに関する情報収集等を図っていきたいというふうに考えております。

北神委員 恐らく、インドなんかは結構大手の企業が入り込んで、相当な市場調査とか、インドの中の農家の皆さんとの品質の調整とか、そういったことをいろいろやってきたと思うんです。我が国はなかなか、大きな企業がそういうことを一生懸命やっているところはないと思うんです。恐らくジェトロとかね。でも、ジェトロとかではそれはやはり限界があるんですよ。特にサハラ砂漠より以南は横のつながりが非常に厳しい、だから、そんな簡単にいろいろな国を回って売り込みができないということなので。

 また次回質問したいと思いますけれども、輸出をもっと、専念するような公社とかこういったものをやはりつくって、どんどん売り込むための体制というものを整えるべきだということを申し上げて、これはいずれまた、次回議論したいと思いますけれども、質問を終わります。

 ありがとうございます。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 今日は、有機農業につきまして、まずは質問をさせていただきたいと思います。

 私の地元、宮崎県の高鍋町と木城町は、二〇一八年から高鍋・木城有機農業推進協議会を設立しまして、農業者や関係機関、団体が連携協力して、有機農業の取組を今支援しているところでございます。

 昨年、二〇二三年六月二十五日に、国の政策であるみどりの食料システム戦略に基づきまして、有機農業について、生産、流通、消費まで一貫して、農業者のみならず、住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組を進めるオーガニックビレッジを高鍋町と木城町が合同で宣言をしました。

 二町による広域の連携はまだ全国でも珍しく、高鍋、木城は、有機農業を推進し、持続可能な町をつくるため、有機農業の生産者を増やすほか、学校給食の有機化などに今取り組んでいるところでございます。

 実は、約二週間前の五月十三日に、この高鍋・木城有機農業推進協議会が企画した有機農業の講演会がありました。講師の先生は徳江倫明さん、NPO法人全国有機農業推進協議会の理事を始め、数々の有機農業の団体の事務局長や会長、代表理事をされている方ですが、大地を守る会に参画されたり、有機農産物の宅配事業、らでぃっしゅぼーやを起こしたりされた方であります。

 その徳江さんが、有機農業概論として、国内外における有機農業の歴史と今後の展開についてお話をされまして、今後有機農業を学ぶ上での土台になるようにと、高鍋農業大学校の生徒さんに向けまして、地域の方も何人か来ていらっしゃいましたけれども、二時間ほどお話しいただいたところでございます。

 私もその講演を聞かせていただきました。有機農業、これまでの五十年、そしてこれからの五十年という形で、前半は有機農業の歴史についての振り返り、後半はこれからの有機農業がどうあるべきかという内容だったわけですが、お手元の資料一を御覧いただければと思います。

 有機農業の普及をめぐる歴史と時代認識ということで、オーガニック一・〇、オーガニック二・〇、オーガニック三・〇という形で、大きな流れを分かりやすくまとめていただいております。これは徳江さんが作られた資料で、高鍋農業大学校の講演時に配られた資料になります。

 オーガニック一・〇というものは、十九世紀の終わりから二十世紀の初めにかけて、農業が進み始めた方向に問題を感じ、基本的な変化の必要を察した数多くの先駆者たちが自然農業の実践と普及を始めた頃で、オーガニックの創始者の時代ということになります。

 オーガニック二・〇は、先駆者たちが作り出した文書や農業体系が基準や規定、制度という形にまとめられていった一九七〇年代に始まる時代で、大体二〇〇〇年前半ぐらいまでをオーガニック二・〇ということにしてあります。この間、民間の自主基準や公的規制、世界的評価、マーケットの拡大などが進みました。

 オーガニック三・〇は、オーガニック運動の第三段階です。オーガニック三・〇の目的は、これまで片隅にあった有機農業を主流に押し出し、地球と人類が直面する難題の解決に不可欠な手段の一つとして有機体系を打ち出す、まさに今の時代です。SDGsに代表されるように、真に持続可能な包括的な在り方に向けた大々的転換で、有機農業の新しいビジョンを展開し、世界の難題に積極的に取り組もうというところに、私たちが今いるところになります。

 興味深いのが、資料の一番左上、オーガニック一・〇の部分を見ていただくと、有機農業研究会が発足した年と環境庁が新設された年が同じ一九七一年なんですね。その前に、水俣病が一九五六年に公式に発見されています。戦後、水俣のチッソ株式会社が、アンモニア肥料、硫酸アンモニウムの製造を再開したのが一九四五年。日本の公害問題や環境問題に世間の注目が集まり始めた頃に有機農業の原点があるということが分かると思います。

 日本に有機農業が提案された時代の問題認識はどのようなものだったのかということですが、これは、日本有機農業研究会設立趣意書というものがありまして、一九七一年十月十七日に出されておりますけれども、このように書いてあるんですね。

 現在の農法、一九七一年時点当時の現在の農法は、農業者にはその作業によっての傷病を頻発させるとともに、農産物消費者に残留毒素による深刻な影響を与えている。また、農薬や化学肥料の連投と畜産排せつ物の投棄は、天敵を含めての各種の生物を続々と死滅させるとともに、河川や海洋を汚染する一因ともなり、環境破壊の結果を招いている。

 このことから、農業の近代化と環境問題に対する明確な認識が一九七一年時点であったことが分かります。

 また、技術の開発については、このように記されています。

 現在の農法において行われている技術はこれを総点検し、一面に効能や合理性があっても、他面に生産物の品質に医学的安全性や、食味の上での難点が免れなかったり、作業が農業者の健康を脅かしたり、施用するものや排せつ物が地力の培養や環境の保全を妨げるものであれば、これを排除しなければならない。同時に、これに代わる技術を開発すべきである。

 この時点で、環境保全を阻害する要因は排除すべきという意思と代案の必要性が、一九七一年の段階で訴えられております。

 最後に、農業者の役割と国民の共感という部分については、このようにあります。

 農業者が、国民の食生活の健全化と自然保護、環境改善についての使命感に目覚め、あるべき姿の農業に取り組むならば、農業は農業者自身にとってはもちろんのこと、他の一般国民に対しても、単に一種の産業であるにとどまらず、経済の領域を超えた次元で、その存在の貴重さを主張することができる。そこでは、経済合理主義の視点では見出せなかった将来に対する明るい希望や期待が発見できるだろう。

 こういうふうにあるわけなんですね。社会問題解決型に農業はなるんだ、ソーシャルビジネスとしての農業の提案というものが見て取れるわけなんです。

 このように、日本の有機農業の歴史をひもときますと、有機農業は、どのような時代背景の中、誰が唱え始めて、問題意識の原点は何だったのかということを知ることができ、それはとても重要なことで、有機農業のことを考える大前提だなというふうに感じたわけです、高鍋農業大学校で徳江さんの授業を私も拝聴してですね。

 そこで、大変恐縮なのですけれども、失礼を承知で伺いますけれども、農林水産省の職員の皆様は有機農業についてはどのように学ばれているのか、まずはお聞きしたいと思います。

平形政府参考人 我が国における有機農業でございますけれども、一九五〇年頃から、いわゆる自然農法と呼ばれる農業が実施され始め、高度成長期で環境問題への意識の高まりを背景に、委員御指摘の一九七一年というのはちょっとエポックメイキングな年なんですけれども、やはり有機農業ということが各地に広がったというふうに思っております。

 農林水産省は、みどりの食料システム戦略で有機農業を始めとする環境負荷低減の意欲的な目標を掲げているわけでございますけれども、現場で培われてきた技術ですとか経験を踏まえることが、理解することが我々にとっても必要だというふうに考えておりまして、有機農業を切り開いてきた先駆者の皆さんの歩みを職員自らが理解することが大切だというふうに思っています。

 このため、全国各地の現場に伺って、有機農業に取り組んでいる方々や実需者から直接お話を伺うとともに、有機農業に関するセミナー、例えば、私も昨年、兵庫県の豊岡、丹波篠山に行ってJAの人、市長さん、皆さんからお話を伺ったり、最近は、宮崎県新富町、綾町、熊本県山都町、茨城県常陸大宮市、セミナーについても、オーガニック学校給食深掘りセミナーとか、いろいろなところに実は職員が行って、それぞれごとに皆さん違うんですけれども、学ぶ機会を得て、こういったことを仕事に役立てていくように考えております。

長友委員 各地にも足を運んでいただいて学んでいただいているということで、承知をいたしました。

 では、有機農業という言葉を最初に考案した日本人はどなたか御存じでしょうか。これは大臣に伺いたいと思います。

坂本国務大臣 我が国において有機農業という言葉が使われるようになったのは一九七一年ですから、まだそんなに昔のことではありませんけれども、一楽照雄氏が、海外で使われていたオーガニックという言葉を有機と訳して用いたのが始まりであるというふうに認識をいたしております。

 一楽氏は、東大の農業経済学科を卒業されまして、一九五〇年代から一九八〇年代にかけて、農林中央金庫の理事や全国農業協同組合中央会の理事、それから協同組合経営研究所理事長を務められた方であります。徳島県出身の方でございます。

 そして、一九七一年には、民間団体でございます日本有機農業研究会を設立され、日本の有機農業の発展に大きく貢献された方であるというふうに認識をいたしております。

長友委員 大臣、ありがとうございます。

 一楽照雄さんの経歴も御紹介いただきましたけれども、一楽照雄さんは一九〇六年生まれなんですね。日露戦争が終わったのが一九〇五年です。そして、足尾銅山の暴動が起きたのが一九〇七年、その間にお生まれになっております。

 一楽照雄さんは、四十八歳のときに農林中央金庫の理事になり、一九五四年のことです。五十二歳のときに全国農林中央会の理事になっております、一九五八年ですね。そして、六十五歳で日本有機農業研究会を設立。このときに、日本に有機農業という言葉が生まれたということになるんです。

 有機という言葉にどういう意味があるのかということなんですが、自然界には機がある、つまり仕組みや法則があるという意味で、一楽照雄さんは、自然の摂理に沿って作物を育てる農業を有機農業と命名をされました。

 自然界の仕組みや法則にのっとった農業とは一体どんなものなのか。化学農薬や化学肥料を使わないことはあくまで結果の一つで、本来、自然の循環を大切にし、自然環境、生物多様性を保全し自然との共生を図る農業で、有機農業の原点は、自然の摂理に沿った農業。つまりは、自然農業であり、自然の循環を大切にし、自然環境、生物多様性を保全し自然との共生を図る農業で、持続可能な農業という考え方であるということで腹落ちをしているわけなんです。

 先ほど、環境庁と一楽さんが設立した日本有機農業研究会は同じ一九七一年にできたというふうに、今日この場も、皆さん理解をしておりますけれども、有機農業運動の原点は公害問題と環境問題にあるということが分かってくるわけなんですね。

 先ほどの資料一でも、環境庁を新設した年と有機農業研究会が立ち上がった年が同じだというふうにお話ししましたけれども、農薬を日本で最初に製造したのは、足尾鉱毒事件の原因企業である古河鉱業です。今の日本農薬株式会社の前身というか、源流に当たる会社になります。そして、日本で最初に化学肥料を製造したのは、水俣病の原因企業である日本窒素肥料株式会社ということになります。

 先日の環境省のマイクを切った問題で、伊藤大臣が、水俣病は環境省が生まれた原点だと謝罪されましたけれども、日本最初の化学肥料と公害、また、日本最初の化学農薬と公害は結びついている。そこがやはり有機農業の原点であり、その有機農業を提唱したのが、戦後の農協の設立に尽力された一楽照雄さんなんだというところを押さえなければ、有機農業は語れないというふうに私は思いました。なので、ちょっと長々と時間をいただきまして、有機農業の始まりの背景について紹介をさせていただいた次第なんです。

 こういうことを、徳江倫明さんは宮崎県立農業大学校で講義をされたんですね。実は、この徳江さんも水俣の御出身です。お父様がチッソ株式会社に勤めていて水俣病に関わったことから、御自身も、有機農業が自分がやるべき使命だということで、今も非常に精力的に取り組んでいらっしゃるんですが、これから有機農業を学んでいこうと取り組む学生がいる中で、導入には非常に大切な授業だったなと感じたわけです。

 ここから質問に入りますけれども、一昨日、有機農業に取り組む生産者から話を聞く機会がありました。米の等級検査が有機農業の広がりを阻む壁になっているとのお話でありました。等級ごとの価格差が大きいので、農薬散布に歯止めが利かなくなるということをおっしゃっておりましたが、そもそも米の等級検査は誰が何のために始めたのか、教えてください。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農産物の検査でございますけれども、藩の時代からいろいろな藩でやっていたようなんですが、昭和十七年に、食糧管理法に基づき、国の買入れのための規格というものが定められました。これは国による検査だったんですが、その後、昭和二十六年に農産物検査法というものが制定されまして、検収検査、つまり国が買い入れるための検査から、農産物の公正かつ円滑な取引のための商品検査として再構築をされた。さらに、平成十二年の法改正によりまして、検査実施主体が国から民間に移行ということなどを経て、現在の形になっています。

 農産物検査は、全国統一的な規格に基づく等級格付を行いまして、精米に搗精する際の歩留りの目安というふうになって機能しておりまして、消費者というよりも事業者間の規格として機能しておりまして、現物を確認することなくお米を大量、広域に流通させることを可能としている、そういう規格でございます。

長友委員 歩留りの目安ということで、消費者というよりも、事業者が重宝するための規格ということで、明確に御答弁いただきました。

 つまり、食べる側は関係なく、流通の都合で一等、二等、三等が決められているというふうに聞こえるのですが、その認識で合っていますでしょうか。いわゆる食味は関係ないという理解で合っていますでしょうか。

平形政府参考人 食味ではなく、外形的なもので流通させるという形のものでございます。

長友委員 外形的なもので一等、二等、三等が決まっています。

 相場を見れば、一等、二等、三等の価格差というのは分かるわけですね。一袋、六十キロ当たり大体千円ぐらいずつ変わります、一等、二等、三等で。

 作っている側からすれば、当然、一等米を目指したいわけですよね、価格が下がるわけですから。ただ、一等米を目指すためにはどうなるかというと、使う農薬の量がどうしても増えるわけですね。これは現場の農家さんがそのように言っていらっしゃるんですけれども、そのような実態を認識されていますでしょうか。

    〔委員長退席、古川(康)委員長代理着席〕

平形政府参考人 実は、委員と多分同じ、超党派の会合だったと思うんですが、我が職員も行っておりまして、そのヒアリングに出席された生産者の方から、有機農業の広がりを阻む壁として、国の等級検査で一等米にするためには、カメムシの吸汁被害などによる着色粒が最高限度〇・一%という規格があるんだ、これをクリアするために農薬散布を行わざるを得ないという御発言があったというのを我々も聞いております。

 このように、着色粒の発生を防ぐ目的で、カメムシを防除するために農薬散布を行うということは各地の栽培履歴にも掲載されていて、広く全国で実施されているというふうには承知しています。

 ただ、農薬につきましては、施用可能な時期だとか量だとか回数が定められておりまして、農業者の安全ということも含めて、使用する方はこれを遵守されて施用されているというふうには思っております。

長友委員 米の規格、何のために等級検査があるのかといったときに、食味は関係ない、いわゆる見た目をきれいにするため、そして物流の事業者の都合でということで、多分、食管法の時代に、いわゆるサンプルを取り寄せて、実際に物を見なくても流通させられるようにということでこの等級検査というのも導入されたというふうに、事前にレク等、調べたときにも伺ったわけなんですけれども、もう今は食管法はないわけですよね、民間に、米の流通、調達というのは自由にしていいよとなっているわけで。食管法の時代は国が厳格に全量管理をしていた、その当時の米の規格が、等級検査が今も残っているということに関しては、私は違和感を感じるんですね。

 むしろ、みどり戦略が今できているわけでありまして、一等米の定義というものは当然見直すべきだと思いますし、この米の等級検査そのものを変えていく、改善する、若しくは今の時代に合ったものにするということが必要だと感じますが、農水省の見解を伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農産物の検査あるいは規格につきましては、農産物の流通等の現状や、栽培、調製の技術の進歩を踏まえて、消費者ニーズの変化に即した合理的なものになるように、見直しを実は順次実施してきております。

 例えば、米の着色粒につきましては、その混入が消費者のクレームの要因になることから、国が買い入れていた時代というよりも、今の生産者、流通業者、それから消費者等の意見を聞いた上で、農産物検査法に定める農産物規格規程において、その混入の割合の基準を設けてきました。

 ただ、この規格については、生産者によっては、追加的な農薬の使用が必要になるとの声もあります。このために、農林水産省は、令和四年二月に、等級検査の規格とは別に、機械鑑定を前提とした規格を策定して、等級区分ではなく機械での判定値そのものを示すような、そういうような規格についてもつくってきたところであります。

 ただ、米の等級低下を最小限に抑えるためには、先ほどあった農薬による防除のほかに、一定の委託費用、又は自身が設備投資をして、色彩選別機によって物理的に着色粒自体を一定程度取り除くこと、これも一つの方法だというふうに思っておりまして、その導入についても支援をしているところであります。

 また、有機であれば付加価値をつけた販売ということが可能になりますので、相手を見た上で、農産物検査をせずに、個人での販売ですとか生協などへの直接販売などをされている方も多く見られているところでございます。

長友委員 御答弁ありがとうございます。

 当然、相手によって、もう今、民間では流通できるわけですから、等級検査を経ずに販売することもできるんですが、これはこの委員会でも私は取り上げたことがありますけれども、有機農業をもっともっとやって広げていこうとしたら、その売り先を当然確保しないといけなくなるわけですよね。

 独自で販路、例えば、有機の米を作っている人が、年間十トン作りました、五トンは自分で販路が広げられましたけれども、残り五トンは自分で販路を見つけ切れていない、そうなったときに、やはりJAさんに買ってほしいということになるわけですね。そうすると、JAさんとしての規格、JAの規格米、JA米というものは等級検査をするわけです。そうなると、どうしてもオーガニックのお米というものは規格外ということで、半値以下の取引になる、こういう実態があるんですね。

 有機農業の話になると、有機農業では食えないという言葉がよく出ます。つまり、販路がないからというか、販路が広がりにくいような制度が今も残っているからですよね。だったら、有機のお米をもっと作ってもらう人を増やしたいということであれば、JAが採用している規格、また等級検査というものは、やはりオーガニックにはなじまないというふうに思うわけなんです。

 有機JASの、これは野菜とかになってきますけれども、認定についても同じような声がやはり聞かれるわけです、これは弊害になっているよと。私の地元の方がこう言っていました、有機農業を長年やられた方が。農薬も使わず、化学肥料も使わず、安心、安全な野菜やお米を作っているのに、何でその証明をわざわざ、作っている側の私たちが自腹を切って証明をしないといけないのか、その費用を負担しなければならないのか。

 有機JAS認証を取るのは、ただじゃないわけですよね。わざわざ経費をかけて、コストをかけて取り続けることの意味が感じられなくなったということで、最初は取っていて、何年か取り続けていましたけれども、取る意味を感じられなくなった、ばからしくなって有機JASを取得することをやめた、そんな生産者もいらっしゃるわけですよね。

 みどりの食料システム戦略で、有機農業を力を入れていくということであれば、そういう実際に有機の現場で生産に当たっている皆様の声にしっかりと、農水省が変化をしていただかないと。旗は振ってもはしごを外しているという状況が今の実態だと思うんですね。その点を是非、至急改善をしていただくことをお願いしたいと思います。

 そういう状況だからこそこの質問をしたいんですけれども、有機農業をやる人は本当に今増えているんでしょうか。有機農業に取り組む人の人数と、基幹的農業従事者のうち何割が有機農業に取り組んでいるのか、その推移等についてデータを、お示しできるものがありましたら、教えていただけますか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機JAS認証を取得している農家戸数でございますが、令和四年度は三千九百三十六戸でございます。十年前、平成二十四年度の三千八百三十八戸から若干増えておりますが、ほぼ同水準ということでございます。

 一方で、総販売農家戸数は減少し続けておりますので、販売農家戸数に占める有機JASの認証を取得している農家戸数の割合でございますが、令和二年度は〇・三七%です。十年前の平成二十二年度の〇・二四から増加というふうになっております。

 先ほど、私、カメムシを防除するために農薬散布を行うことは各地の栽培履歴というふうに申し上げましたが、栽培暦でございました。間違いでした。失礼しました。

長友委員 データというか、参考になるのかどうかちょっと分かりませんけれども、はっきり分からないわけですよね、有機農業に取り組んでいる人が実際に増えているかどうか。

 だって、基幹的農業従事者がそもそもかなり減っていくわけですから。そして、自作農が崩壊しているような状況の中で、有機農業だけが増えるということはあり得ないと思うんですね。新規で就農する人の中には有機に挑戦したいという人はいるかなと思いますけれども、数を増やしていくということは、総体的にそもそも農業従事者がかなり減っていくわけですから、有機農業をやっていくという数も、割合は増えても、数はなかなか増えないよなというふうに思うわけです。

 ただ、国はみどりの食料システム戦略を掲げたわけですし、基幹的農業従事者が二十年後には三十万人にまで減るという中で、減る原因というのは、やはり六十、七十以上の皆様が農業に従事している中心になっているわけだから、その下の世代がどんどん農業に入ってきていただかないといけない。しかも、できれば有機をやっていただけると、みどりの食料システム戦略的にはいいわけですよね。

 新規就農する方の中で、有機農業を選択してくれる方を増やしていこうという中で、若いうちから有機農業の人材を本腰を入れてやはり増やしていくということが必要だと思うんですが、では、日本の農業をしょって立つ農業人材を日本はどういうふうに育てているのかということが気になってくるわけですね。

 ちょっと質問の順番を入れ替えますけれども、農業高校、農業大学について質問をしていきますけれども、農業高校から農業大学校に進学する生徒の数や進学率、また、農業高校を卒業した生徒、農業大学校を卒業した生徒の就農率を農水省は把握できているのか、伺いたいと思います。

    〔古川(康)委員長代理退席、委員長着席〕

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 令和四年度の農業高校の卒業生、約二万三千人となっておりますが、このうち農業大学校に進学した生徒の数は九百九十名となっております。進学率にいたしますと、約四%となります。

 また、農業高校及び農業大学校の卒業生の就農率につきましては、農業高校では約三%、農業大学校では約五四%となっております。

長友委員 ありがとうございます。

 農業の担い手を育てる役割を持っているはずの農業の教育現場で、実績として今答弁いただいたとおりになっているんですが、果たして狙いどおりの就農率なのかというところが私は問題になってくるんじゃないかというふうに思います。

 ある就職活動支援を行う企業のウェブサイトに、東京農業大学の教授のインタビュー記事が掲載されています。東京農業大学生物産業学部自然資源経営学科の小川繁幸准教授がインタビューに答えて、このようにお話をされているんですね。

 これは二〇二三年に公開された記事になりますけれども、このように話されています。

 かつて農業系のキャリアといえば、農家になるかJAのような農業団体に就職する人が多かったと思いますが、今はその選択肢はかなり広がっています。それは農業の領域が多様化していることも要因の一つかと思います。なお、農業の総合大学として自負している本学、東京農業大学のことですけれども、研究分野も多岐にわたり、学生の就職先の業界も多様です。その結果、今や農業分野への就職率は全体の五・二%で、うち昨年度の就農者は全体の三%。そのほとんどが企業内で農業関連の職に就いた人で、農家として就農した人は僅か〇・二%でした。

 このように明確に答えていらっしゃいます。

 その原因を分析されているんです。

 今の学生はほとんどが非農家出身です。かつて東京農業大学の学生は農家の後継ぎが多かったかもしれませんが、昨今は、高齢化や人口減少で地域が疲弊し、地方の農業は厳しい状況に置かれています。そのような中で、農家は自らの子供に農業をやってほしくないと思っているのではないでしょうか。それゆえ、農家の後継ぎが農家になるという傾向は少なくなってきているのではないかと思います。

 私自身、元々は兼業農家の後継ぎでしたが、父が農家にはならない方がいいよと言っていたことを思い出します。結果的に、私が高校生のときに父と母は離農することになり、私も大学進学を考える頃には非農家出身でした。

 こういうふうに小川先生が答えていらっしゃって、さらに、こういうことをおっしゃっています。

 東京農業大学の学生は、どんなモチベーションで入学してくるのか。

 農家の子供が農業系以外の進路を選択する傾向にある一方、非農家の学生たちは、自然との関わりに関心があり、田舎暮らしができる、家畜と触れ合えるなど、農業に対して漠然としたよいイメージを持って入学してきます。また、Z世代と言われる今の学生たちは、自然との共存や持続可能な社会を重視する価値観が根づいており、社会貢献意識が非常に高いのが特徴です。食を支えている農業が社会的に大切だという認識も強くあります。そのため、担い手不足を何とかしたい、地域を活性化したいなど、それぞれの課題感と解決に向けたアプローチの方向性を定めて学科を選択しています。

 ゆえに、今の学生は農業に対して関心があり、問題意識もある。しかし、学生たちの多くは、自分が農家になって主体的にその課題を解決したいわけではありません。農家が大変だという現実を知っているからでしょうか、農業を応援する立場を選択する学生が多いように思います。

 こういうふうに答えているんですね。

 就農希望の学生はいないのかということを質問したところ、こういう答えが出ています。

 中には初めから就農を希望している学生も僅かにいますが、農家になるために必要なことは卒業までに学べるかというと、カリキュラム上、難しいのが現実です。大学では、作物の生産に関わる点だけ見ても、土壌学や作物学など専門領域が細分化されています。専門分野については詳しいけれども、野菜を一から育てることはできない、育て方が分からないという学生がほとんどです。

 ほとんどですと言い切っていらっしゃいます。

 研究してきたことを生かせる仕事に就こうとすると、農業系といっても農家ではなく、土壌学や作物学であれば、学生のキャリアビジョンとしては、肥料会社や育苗会社など、企業への就職が現実的になるのです。

 また、昨今は、直販や六次産業化、多角経営など、農業の在り方も多様化しています。農家には、作物生産のプロフェッショナルとしてだけでなく、ゼネラリストでありアントレプレナーとしての資質も求められる時代になってきました。栽培に関する理系的な知識にとどまらず、経営や販売など文系的な知識まで幅広く学ぶ必要があります。しかし、今の大学では入学時点で文系か理系かを選択しなければならず、それらを網羅的に学ぶことが難しい仕組みになっています。

 東京農業大学は、「人物を畑に還す」ということを理念に掲げて、農業人材や地域社会の担い手を育て、地域に還元することを目指してきました。各県にある農業高校も、元々は同様の目的でつくられたものですが、残念ながら、現在、多くの学校がその機能を果たせていません。

 現場の先生として、はっきりと認識を持っていらっしゃるんですね。

 では、農業高校はどのような状況にあるんですかという質問に対して、こう答えていらっしゃいます。

 農業高校においては、高校の先生方にお話をお伺いすると、そもそも農業に関心のある生徒が半分に満たず、就農希望者に至っては毎年一人か二人というのが現実だそうです。時代の流れの中で、農業だけでは学生が集まらなくなり、食や環境など関連する領域へと間口を広げた結果、本来の農業高校のミッションは薄れてしまいました。少子化によって総合高校と統合する学校も増え、農業科としての授業時間が削られているという現状もあります。現在の農業高校の多くは、農業を教えるというより、農業というツールを使って子供たちを成長させることを目的にしています。教育としてはすばらしいのですが、それでは農家の育成、輩出にはつながりません。

 学生が農家としてのキャリアを描く上でも、就農希望者が農地取得や経営計画作りなど学校ではカバーし切れない実務的なことを学ぶ上でも、地域の先輩農家に教育者としての役割を担ってもらう必要があると考えています。人、金、物が集まりづらい地方で、どのようにビジネスとして農業を営んでいくのか、自らモデルとなって新規就農者を導いていける農家を増やしていかなければいけません。

 こういうふうに答えていただいているわけですけれども、現場の先生たちの実感ですよ。これが現場のリアルなんだと思うんですけれども、農業高校がそういう現状であるということなんですね。

 こうもお話をされているんですね。

 起業家、アントレプレナーとしての農家を育てるには、最低五年はかかると考えています。習得すべき領域も幅広く、大学だけでは完結しません。高校、大学、地域の農家などが垣根を超えて連携しながら、キャリア教育から実務教育まで、人材を育てる長期的な支援の仕組みをつくっていくことが大切なのではないでしょうか。

 つまり、既存の農業高校では農家を輩出できませんよ、農業大学でも、東京農業大学がそうなんですから、農家を輩出することはできませんというふうに先生がおっしゃっているんですね。

 では、どうすればいいのかということになってくるんですね。

 私は、この委員会で、高専の生徒さんたちが農業の課題解決に頑張っていただいているという話を、実例を紹介させていただきました。

 理系の高専はたくさんあるんですが、農業の高等専門学校、高専をつくれば就農率が上がるんじゃないか、そういう可能性が期待できるんじゃないかというふうに考えてみるわけですが、農業の高専をつくるということはこれまで検討されたことがあるのか、農水省に伺います。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から通告いただいたときに文部科学省の方にも確認をしましたが、まず、制度的な側面から申しましても、現行の高等専門学校は工業分野を中心とした技術者を養成してきており、そういった位置づけになっているということで、農業分野に限定した高等専門学校を直ちに設置することは難しいというふうに聞いておりまして、そういったことで我々は承知をしております。

 また、仮に農業の高等専門学校を設置する場合においても、財政的あるいは組織的な観点、学生の確保など様々な課題をクリアしていかなければいけないと考えられますが、今後、農業者の急速な減少が見込まれる中、農業の担い手の育成、確保は重要な課題でございます。より多くの学生に就農していただけるよう、魅力的な教育環境を整備していくことの重要性は委員御指摘のとおりだと我々も認識をしております。

 このため、農林水産省といたしましては、まず、現行の農業高校あるいは農業大学校等におきまして、スマート農業等の時代に即した、魅力ある教育が展開されるよう、スマート農業機械等の導入、農機メーカー等の外部講師による実演会、スマート農業を体験する現地実習等、農業教育の充実に向けた取組を総合的に支援してまいりたいと考えております。

 なお、近年の動きでございますけれども、農業分野の高等教育機関といたしまして、四年間の教育課程で理論と実践を組み合わせた職業教育を行う専門職大学が静岡県及び山形県で開校されるなど、新しいタイプの農業教育がスタートしており、両校の動向についても我々としても注目してまいりたいと考えております。

 今後とも、次代の農業を担う人材の育成、確保が図られるよう、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

長友委員 文科省に聞けば必ずそういう回答になりますよね、制度的には難しい。何度もそういう答弁ぶりは聞いてきているんですよね。

 でも、農水省としてどうなのかということだと思うんですよ。基幹的農業従事者がこれだけ危機的に減ると言っている中で、既存の農業高校や農業大学では就農する人材は輩出できないと、現場の先生が明確に言い切っているわけですよね。ああ、そうですかでいいんですかという話なんですよ。

 専門的な農業の学校が幾つか出てきているという話もありましたけれども、大臣、私はこういう提案ができないかなと実は思っているので、ちょっと聞いていただきたいなと思うんですが、陸上自衛隊の高等工科学校も参考になると思うんです。

 陸上自衛隊の高等工科学校は、身分は特別職の国家公務員で、学生になります。国を守る若者たちであります。手当の支給を受けながら高等学校教育を受ける制度がありますけれども、これは防衛大臣直轄の教育機関ということになるんですね。

 今、食料安全保障ということが非常に現実的になってきている中で、国を守る若者たちの高等工科学校があるわけですよ。であれば、日本の食料安全保障を守る、日本の農業を守る若者たちの高等工科学校が、私は農林水産大臣直轄の教育機関としてあってもいいんじゃないかと思うわけなんですね。

 議連とかで、勉強会では、もう徴農制をしかないといけないんじゃないかというようなことも、国会議員の中からもお話をされる方が出てきていますけれども、その前に、日本の農業を守るんだという認識をしっかり持った若者を育てていくということが農水省の姿勢としても私は必要だと思うんですが、大臣、これについて見解を伺わせていただくことはできますか。

坂本国務大臣 高専につきましては、私は高専小委員会の会長もしておりますので、全国で五十一の国立の高専、それから三つの公立高専、そして四つの私立の高専があります。あと、商船高専というのがあります、鳥羽とか広島とか。

 ただ、商船高専の方も、商船高専にも非常に優秀な人間が入ってくるけれども、なかなか船乗りにならない、やはり企業の方に、商船三井とかそういった大企業の方に勤めていくというようなお悩みを校長先生から聞いたことがあります。

 私たちとしては、農林水産省としては、いかにこれから、しっかり経営感覚を持って、そして、さらには、非常に食料に対して高度な見識も持って、やる気のある若い人たちを育てるかというようなことを常に考えております。そのための教育機関として、教育としてどうしていったらいいのかということについては、これから更に、お知恵も拝借しながら考えてまいりたいというふうに思っております。

長友委員 先ほど御紹介させていただきましたけれども、東京農業大学の現場の先生が御披露された現場の危機感というか認識、これは非常に私は重く受け止めたわけなんですね。是非、後ほど皆様も検索して見ていただきたいなと思いますので、よろしくお願いします。

 続きまして、クロスコンプライアンスにつきまして質問させていただきたいと思います。

 お手元の資料三を見ていただきたいんですが、ポンチ絵がありますけれども、環境保全型農業の効果のレベルに応じた施策手法。

 これは平成二十八年四月に農水省が出した資料で、二〇一六年の時点での資料だと私は認識しているんですが、どうも実はそれよりも前にこの絵というものはでき上がっていたというふうにレクではお聞きをしましたけれども、これは非常に興味深いなというふうに思うんですね。

 クロスコンプライアンスの部分で、土づくりの励行とか、施肥基準に基づく適正施肥、それから防除基準に基づく適正防除、施肥、防除の記録の作成、研修への参加等、まさに今始まったクロスコンプライアンスのチェックシートの項目というのが、既にこの時点であるわけなんですよね。

 ここに、農業環境規範のレベル、リファレンスレベルという言葉が出ていると思います。それより上は、社会が一定の負担を行いながら推進することが正当化される営農活動、それより下は、農家自らの責任で推進すべき営農活動ということになっているわけですが、このリファレンスレベルというものと、その下に書いてあるものは、改めてどういう意味があるものなのかということを農水省に伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、環境と調和の取れた農業生産活動を推進するために、土づくりの励行ですとか、適切で効果的、効率的な施肥、適正な防除などの七項目について、農業者が最低限取り組むべき規範として、農業環境規範を平成十七年三月に策定しました。これは、農業者自らの責任で推進すべき営農活動として設定され、リファレンスレベルというふうに称しまして、経営安定対策等の一部の事業の要件にしてきたところであります。

 配付資料の中で、下の段のところ、全ての農業者が義務として実施すべき項目というのがございまして、それの上のところにリファレンスレベルがあり、それから先のところはまさにプラスアルファの部分ということでございます。

長友委員 ありがとうございます。

 まさに今現在、各種の補助事業におきまして、環境負荷低減に関する要件等を設定するクロスコンプライアンスの取組が始まりました。一人一人の現場の生産者には、クロスコンプライアンスの意義、取組の狙いを、誰がどのように伝えているのかを教えてください。

川合政府参考人 お答えいたします。

 クロスコンプライアンスにつきましては、令和四年の九月十五日に、みどり法に基づく基本方針、これが定められまして、その中で、最低限取り組むべき取組というのを七つ挙げて、大臣告示しております。この段階から、大臣告示を、七つの取組がありますよということを、みどり法の周知と併せて、これを事業者だけじゃなくて、生産者だけじゃなくて、いろいろな方々に理解していただきたいということで説明してまいりました。

 さらに、新しい基本法でも、第三条で環境負荷低減をするということがありますので、これをきっちりやっていくということも含めまして、食料システム関係者に全部これを説明しているという中であります。

 特に、このクロスコンプライアンスにつきましては、農林水産省の全ての補助事業に対しまして、チェックシートをやる。これは、九年度からは本格実施なんですけれども、六年度は、まずチェックシートのみを提出していただきたいということでございます。慣れていない方々も多いので、これを丁寧に説明しないといけないということでございます。

 これは国が責任を持って説明しているんですが、委員御地元の宮崎県では、私、直ちに聞き取ったところ、先ほどお話がありました木城町でありますとか高鍋町には、まだ説明が十分行き届いていないようでございます。宮崎県の中では、三市それから県庁と農協との意見交換というのはあるんですけれども、まだまだ行き届いていない部分があります。

 私どもも責任を持ってしっかりこれを説明していくんですが、やはり補助事業につきましては、毎年毎年出さなきゃいけないものと、例えばカントリーエレベーターとか、大きい施設を入れるときだけ提出するものというのもあります。本格実施のときにはそれを確認するということも定められておりますので、その確認の手法も、なるべく農家の負担にならないように、あるいは事業者の負担にならないようにということで、抽出方式でありますとかいろいろなことを検討しないといけませんので。

 今年から初めて実施した内容でございますので、現在いろいろな意見をたくさんいただいておりますので、まずは一生懸命現地を回って、農家の個々の方々に、まず、どんな取組なのかというのを説明してまいるように、責任を持ってやっていきたいと考えております。

長友委員 国が責任を持って説明すると言っていただきましたから、是非それをやっていただかないといけないんですけれども、始まっているんですよ、現場では。

 現場で、私のところに連絡がありました。少し触れていただいていましたけれども、WCS用の稲の申請にJAに行ったら、今年から農薬散布の写真と農薬の領収書が必要と言われたと。

 言われた方は、何で、病気も出ていないのに、必要とはどういうことというふうに受け止めた。何でなのと聞いても、いや、国がそう決めたからやってもらうしかないんだよということで、きちんと、クロスコンプライアンスの意味とか、リファレンスレベルの意味というものが全く説明されていないんですね。だから、怒って私のところに連絡が来るわけなんですね。みんな納得がいっていないよ、何でなの、おかしい、腹が立つとまで言われました。こういうことが現場で起きている実態なので、非常に残念だなと思うんです。

 農水省としては、もう資料が、平成十七年にはこの絵ができていたということで、全ての農業者が義務として実施すべき取組レベルであったり、農家自らの責任で推進すべき営農活動というものが項目として挙がっていたわけじゃないですか。やっと今年から、チェックシートの提出のみからですけれども始まっているという、入口の部分で全く意図が伝わっていないという状況なんですね。

 私ももちろん説明しますけれども、現場でしっかりと農家の皆さんにこの狙いが届くように説明をしてもらうということを、JA職員にもしっかりと御指導をいただくことをお願いしまして、私の今日の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

野中委員長 次に、内閣提出、漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣坂本哲志君。

    ―――――――――――――

 漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

坂本国務大臣 漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 現在、我が国においては、水産資源の持続的な利用を確保するため、漁獲可能量による水産資源の管理を行っておりますが、今般、その管理の基礎となる漁獲量等の報告義務に違反した太平洋クロマグロが流通する事案が生じたところであり、その再発防止や管理強化を図ることが急務となっています。

 こうした状況を踏まえ、漁獲量等の報告義務の確実な履行を図り、水産資源の持続的な利用を確保するため、特に厳格に漁獲量の管理を行うべき水産資源について、個体の数の報告並びに船舶等の名称等の記録の作成及び保存を義務づけるとともに、水産物の販売等の事業を行う者による当該水産資源に係る情報の伝達を義務づける等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、漁業法の一部改正についてであります。

 漁獲可能量による管理を行う特定水産資源のうち、個体の経済的価値が高く、かつ、国際的な枠組み等の事情を勘案して特に厳格な漁獲量の管理を行う必要があると認められるものを特別管理特定水産資源とし、これを採捕する者は、現行の漁獲量等に加え、採捕をした個体の数を報告するとともに、当該採捕に係る船舶の名称、個体ごとの重量等に関する記録を作成し、保存しなければならないこととしております。

 また、特別管理特定水産資源に係る報告義務に違反し、かつ、違反行為を引き続きするおそれがある者に対して即時に停泊命令等を行えるようにするとともに、報告義務違反に対する罰則を強化することとしております。

 第二に、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部改正についてであります。

 水産資源の保存及び管理のための措置に違反する行為が行われるおそれが大きいと認められる水産動植物も規制の対象とすることとし、それに該当するものとして漁業法に規定する特別管理特定水産資源等の採捕や販売等の事業を行う者は、取引の際に、当該水産動植物の採捕に使用した船舶の名称、個体の重量等を伝達するとともに、記録の作成及び保存をしなければならないこととしております。

 このほか、特定第一種水産動植物の輸出時に必要な農林水産大臣が交付する適法漁獲等証明書について、農林水産大臣が指定する者にその交付事務の全部又は一部を行わせることができることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

野中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る六月五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会


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