衆議院

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第19号 令和6年6月5日(水曜日)

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令和六年六月五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 野中  厚君

   理事 伊東 良孝君 理事 小島 敏文君

   理事 古川  康君 理事 山口  壯君

   理事 近藤 和也君 理事 野間  健君

   理事 池畑浩太朗君 理事 角田 秀穂君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    上田 英俊君

      江藤  拓君    加藤 竜祥君

      神田 憲次君    小寺 裕雄君

      杉田 水脈君    高鳥 修一君

      橘 慶一郎君    西野 太亮君

      藤丸  敏君    細田 健一君

      堀井  学君    宮下 一郎君

      保岡 宏武君    簗  和生君

      山口  晋君    若林 健太君

      梅谷  守君    金子 恵美君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      川内 博史君    緑川 貴士君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      一谷勇一郎君    掘井 健智君

      中川 宏昌君    山崎 正恭君

      田村 貴昭君    長友 慎治君

      緒方林太郎君    北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   厚生労働副大臣      浜地 雅一君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   農林水産大臣政務官    舞立 昇治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          山田 英也君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            長井 俊彦君

   政府参考人

   (林野庁長官)      青山 豊久君

   政府参考人

   (水産庁長官)      森   健君

   政府参考人

   (水産庁次長)      藤田 仁司君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局次長)       小笠原憲一君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     藤丸  敏君

  宮下 一郎君     若林 健太君

  梅谷  守君     亀井亜紀子君

  稲津  久君     中川 宏昌君

  北神 圭朗君     緒方林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     杉田 水脈君

  若林 健太君     井出 庸生君

  亀井亜紀子君     梅谷  守君

  中川 宏昌君     稲津  久君

  緒方林太郎君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     宮下 一郎君

  杉田 水脈君     中川 郁子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

野中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、水産庁長官森健君、水産庁次長藤田仁司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。保岡宏武君。

保岡委員 おはようございます。自由民主党の保岡宏武です。

 本日は、質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 漁業法及び特定水産物流通適正化法一部改正の質疑の前に、関連で質問させていただきます。

 五月の二十九日、漁協組合などが漁業者に貸し出す漁船の費用を水産庁が助成する水産業強化の補助事業、漁船導入支援事業において、水産庁が会計検査院の指摘を受けたとの報道がございました。

 この事業は、基金から支援を受けて漁船をリースした人の漁業による所得を評価対象として、五年以内に漁業所得を一〇%以上向上させることが目標とされています。

 事業の運営はNPO法人水産業・漁村活性化推進機構が担当し、漁業者は漁船を借りてから五年間の漁業所得を同機構に報告、五年後までに一〇%の所得向上が見込めない場合は地元の専門家らから改善策の提言を受ける必要があるというふうになっています。

 今回、漁業者が所得の算出方法について十分理解ができておらず、海の清掃など漁業以外で得た収入や支出も所得の計算に加えており、二〇二一年度までの六年間に漁船を貸し出した漁業者七百二十五人のうち約六割に当たる四百五十九人が、事業実績として報告する漁業所得が実態と一致していなかったということです。中には、会計検査院が計算した所得と一割以上金額に差があったケース、漁業以外の収入を差し引くと目標の達成基準を下回っていたケースもあり、事業の成果を正しく把握できない状況になっているというふうに伺っています。

 水産庁は、会計検査院から、正しい算出の方法などを漁業者などに周知するよう、事業マニュアルの改定を求められているというふうに伺っています。

 質問です。指摘された事業マニュアルの改定は、具体的に、いつまでにどこをどうするのか。また、今回、六割も誤った方法で算出されたというふうにありますが、この補助事業の効果をどう判断するのか、若しくはしているのか。あと、そもそもこのNPO法人は実施主体として大丈夫なのかという疑問も残りますが、水産庁の見解を示してください。お願いいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 まず、経緯から申し上げますと、今般の会計検査院による処置要求につきましては、水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業の実施に当たりまして、先ほど御指摘のありました、事業目標の達成状況の判定材料となる漁業所得の算定において、遊漁船や警戒船などの漁業以外の収入、支出を含めた事例があったということ。

 これを受けまして、改善処置として、水産庁に対して、漁業以外の用途、漁業所得として取り扱うべき収入、支出の費目等を運用通知等に具体的に示し、その内容を事業実施主体からリース事業者等に周知をさせること、リース事業者に借受け者の漁業所得の内容を十分確認させるよう事業実施主体に対して指導等を行うことが求められているところでございます。

 水産庁といたしましては、処置要求の内容を真摯に受け止めまして、まずは、漁業所得として取り扱うべき費目等についての基準、これを明確にした上で、事業実施主体に対して指導等を行っていきたいというふうに考えております。

 また、御指摘の事業実施主体は、特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構でございます。この法人は、全国漁業協同組合連合会を始めとする漁業者団体等を会員として、水産業の発展及び漁村活性化のための事業を行っている法人ということでございまして、適切な手続の下、事業実施主体として選定されているところでございます。

 水産庁といたしましては、事業実施主体が円滑、適正な事業実施ができるよう、引き続き指導してまいりたいと考えております。

保岡委員 ありがとうございます。

 この補助事業、現場でも大変人気がある補助事業だというふうに私も認識をしております。事業の成果を正しく把握ができるよう、今後、事業が適切に実施をされ、政策目標の効果検証に支障を来さないように、対応をよろしくお願いをいたします。

 さて、続いて、漁業法及び特定水産物流通適正化法一部改正の質疑に入ります。

 今回の法改正は、二〇二三年二月、クロマグロの漁獲量を正確に報告しなかったとして水産会社社長が逮捕された、いわゆる大間事案が発端となっていると伺いました。

 青森県大間で捕れたクロマグロは海のダイヤモンドと言われ、初売りで一億円以上の高値で落札されることもあります。今回、横流しによる不正報告で摘発された裏には、決められた枠を破ってもクロマグロを多く売りたい一部業者の思惑がありました。

 クロマグロは、中西部太平洋まぐろ類委員会、WCPFCで国別の漁獲枠が決められており、漁獲枠を超えれば合意違反となるため、水産庁は都道府県ごとに漁獲量を割り当て、漁獲管理をしています。その点では、今回の不正報告は、国際社会での日本の信用を毀損する結果にもなったというふうに理解をします。

 今回、国を挙げて資源管理に取り組んできたにもかかわらず、いわゆる大間事案が発生したことに関して政府の認識を伺います。

 どこに問題があったのか。仮に、本法案の内容が措置されていれば、大間事案は未然に防ぐことができたのか。今回の違法の未報告数量は八十八・一トンですが、被害総額が幾らで、今回の改正で違反した法人には最大一億円の罰金が新設されていますが、これが本当に抑止力になるのか。どういう根拠で罰則を作っているか。流適法には同様の法人への罰金はありませんが、大丈夫なのか。また、管理強化だけでなく、漁獲枠の増枠も必要との指摘も現場からはありますが、今回の法改正によって同様の事案が完全に抑制されるのか。政府の見解をまとめてお示しください。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 まず、大間の事案でございますけれども、特に大型の太平洋クロマグロの個体につきましては経済的価値が非常に高いものですから、TAC報告をあえて行わないということで多額の利益を得られることが大きな誘因となったのではないかと考えてございます。

 ただ、今回の違反につきまして、個体ごとの取引額といいますか、その違反で得た利益につきましてはちょっと調べがつかないものですから、幾ら違反でございましたということはちょっとお答えをできない状況でございます。

 ただ、大間事案を未然に防げなかった制度的な要因を挙げるとすれば、一つは、漁獲量の総量をTACで、TACで報告というのは重さで報告をしていただいていますけれども、実際には個体ごとに取引が行われておりまして、その個体ごとに行われております取引伝票との照合が容易でなかったというのが一つございます。

 二つ目に、流通が多段階に及ぶ中で、情報伝達ですとか取引の保存が必ずしも行われておりませんで、裏づけをするということが容易でなかったことというのがございます。

 三番に、不正に得られる利益に対しまして罰則による抑止力が相応であったのかということについて問題点があったというふうに認識をしてございます。

 このため、水産庁におきましては、本年の四月から漁獲監理官というものを新設をいたしまして、取締り体制の強化を行ってございます。

 本法案におきましては、さらに、TAC報告事項に、太平洋クロマグロの大型魚を何本捕ったかという本数の追加をいたしまして、その基となる情報の保存を義務づける、違反者に対する罰則強化というものを行うということをまず漁業法の中で行う。次に、水産流通適正化法におきまして、漁業者、流通事業者に対する情報の伝達、保存の義務づけ等の措置を行うということとしております。

 さらに、この際、TAC報告義務違反者に対する罰則の強化につきましては、大規模な漁業法人の年間の平均売上総利益が約五千四百万円であること、他の立法事例を踏まえまして、法人についても十分な抑止力の水準となるよう、一億円以下の法人重科を導入するということにしたところでございます。

 この法人重科等の漁業法の罰則につきましては、大間事案のような、漁業者と流通事業者が要するに結託しましてTAC報告違反が生じた場合には、流通事業者についても共犯者として適用されることになります。

 こういったことによりまして、類似の事案の抑止力は大きく高まるとともに、違反事案が疑われる場合により的確に取り締まることができるようになり、さらに、関係国への信頼の確保を通じまして、太平洋クロマグロの今後の増枠の交渉にも寄与するものというふうに考えてございます。

保岡委員 ありがとうございました。絶対再発をさせないという強い意気込みを感じました。

 本日、済みません、質問通告はしていないんですけれども、せっかく今日の新聞でも取り上げられておりましたので。七月に北海道釧路市であるWCPFCの小委員会、十二月の年次会合に向けた水産庁の意気込みというのを、簡単で結構ですので、お聞かせいただけますでしょうか。

 今回、まず法改正をして国際的に下がった日本の信用を回復した上で、漁獲量交渉で上積みを狙うというような意図があるというふうに理解はしておりますが、いかがでしょうか。お願いいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 太平洋クロマグロにつきましては、WCPFCにおきます国際規制の中で、国内の事業者、漁業者の方々は厳格な資源管理に取り組んできていただいております。その結果、資源は順調に回復をしているという状況でございまして、我が国の漁業関係者の間には増枠に対する強い要望があるというふうに承知をしているところでございます。

 本年行われました新たな資源評価、二年に一回の資源評価でございますけれども、これによりまして、太平洋クロマグロ資源が回復目標を達成し、更なる増加傾向にあるという結果が示されたところでございます。

 今後、御指摘のとおり、WCPFCの会合、七月中旬の釧路での会合を皮切りに、年末に向けて数次にわたり行われていく予定でございますけれども、我が国として、増枠の提案を行うことを含め、増枠が実現するよう努力してまいりたいというふうに考えております。

保岡委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 さて、特定水産動植物としては、アワビやナマコも、財産上の不正な利益を得る目的で採捕されるおそれが大きく、生育又は漁業の生産活動に深刻な影響をもたらす、要保護性が高い水産物として指定をされています。

 また、私の出身の鹿児島は養鰻日本一ですが、シラスウナギも令和七年から指定をされるというふうに聞いています。ちなみに、シラスウナギの二三年の平均取引価格は二百五十万円・バイ・キロ。違法行為から得られる利益に比べて罰則が軽過ぎることがあっては、密漁を抑制することができないのも明らかです。

 次の質問です。これらの魚種は、今後、特別管理特定水産物及び流適法の特定第一種第二号水産動植物に指定される可能性があるのでしょうか。また、新たに指定される場合の判断基準や、検討、決定のプロセスなど、政府の見解をお示しください。お願いいたします。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 まず、アワビ、ナマコ、シラスウナギにつきましては、前回の漁業法改正の際に、漁業者以外の方が違法な採捕をしているということで、特別に罰則を強化をする形で措置をさせていただきました。

 今回の件で申し上げますと、現行のアワビ、ナマコ等につきましては、まさしく漁業者以外の方による密漁が問題となっていたことを受けまして、権限を有していない方が採捕したものが流通しないように、権限を有する漁業者ごとに番号を割り当てまして、用いられている漁獲番号の伝達を義務づけているというのが現行でございます。

 他方で、今般の改正で新設をいたします特定第一種第二号水産動植物で、これは太平洋クロマグロの大型魚を想定しているわけでございますけれども、権限を有する漁業者の方がTAC報告義務違反をしたということでございますので、正式には、権限を有する方が、一部はちゃんと報告したんですけれども、一部は報告しなかったということでございます。こういうTAC報告義務違反をした漁獲物がマーケットに流れていくということがないように、個体ごとに船舶の名称や重量等のTAC報告の基となる情報の伝達を義務づけるというのが今回の改正案でございます。

 このため、現在、TAC対象魚種となっておりませんアワビ、ナマコ、シラスウナギにつきましては、特定第一種第二号水産動植物の対象にはならないものというふうに考えてございます。

 その上で、特定第一種第二号水産動植物につきましては、法律上、漁業法に規定する特別管理特定水産資源を原則としてその対象とすることというふうにしておりまして、この特別管理特定水産資源の指定に当たりましては、個体の経済的価値が高いことを要件といたしまして、国際的な資源管理の枠組みや資源評価の状況、流通段階におけます個体単位での取引が行われているかどうか、違反行為の発生状況がどうなっているか等を勘案して指定をしていくということになろうかと考えてございます。

 具体的な指定手続は、本法案の公布後に、広く学識経験者や漁業者、流通事業者等の関係者の御意見も伺いながら行っていきたいと考えてございますけれども、現時点で、太平洋クロマグロの大型魚以外について、指定を行う必要が生じている水産資源はないものというふうに考えてございます。

保岡委員 ありがとうございました。

 さて、最後は大臣に質問させていただきます。

 今回のテーマの根底にもある水産資源の管理に関して、大臣は、国際的に厳格な漁獲量の管理が行われている状況ですので、より厳しい管理を我が国としてもやってまいりますという発言をなさっておいでです。

 一八年に漁業法を改正して、TACの魚種を追加、IQ、個別割当て方式で漁業者や漁船ごとに枠を配分したり、より厳しく管理する方向へあると私も認識をしています。

 一方、枠を高めに設定することで漁獲を抑えなくても悠々と守れてしまっているTACのハードルはかなり甘いというふうに指摘をする声もあります。このままでは日本の漁獲量は五〇年にほぼゼロになるペースで減っているというふうに警笛を鳴らす研究者もいます。

 また、漁業者が大漁をよしとする文化で、目の前の生活もあるので、捕れるのに捕らないという考えになかなかなじみにくいということも分かります。

 しかし、捕り過ぎると資源量が減り、捕るのを抑えるとまた増え出し、生物の自然増と釣り合ったペースで漁獲をすることが漁業を永続させるのには必須であることは論をまちません。

 二二年、三百九十一万トンで、ピーク時の七割まで下がった漁獲生産量を、三〇年度に四百四十四万トンに回復させる目標に向けて、資源管理は重要だというふうに考えます。

 そのためにも、日本の消費者のマインドチェンジも私は必要だというふうに考えています。

 日本の消費者は、値段の安さに強くこだわる一方、今の日本の漁業が置かれている状況などには関心がありません。ですので、捕った魚は利益が出ないほど買いたたかれ、漁業者は量を多く捕るしか選択肢がなく、空っぽの海に出かけ、一生懸命に網を引いている。

 かつて、世界の漁場で魚を捕りまくり、魚食を謳歌していた日本人ですが、各国が自国の漁場管理を徹底し、世界の海で自由に漁ができなくなりました。また、魚食の味をしめた中国のバイイングパワーが強くなり、人口減少と円安が重なって、輸入も更に厳しい状況になっています。

 日本の消費者は、自らが置かれた状況を正しく理解し、マインドチェンジが必要であることを認識する時期に来たのではないかと言えるとも考えています。

 いずれにせよ、現状維持では日本の漁業の未来はおぼつきません。消費者の理解を得ながら、漁業全体の仕組みを変えていかなければ、日本の漁業がそのポテンシャルを発揮できる日は来ないというふうに考えています。

 大臣は、日本の新時代の漁業を、日本の漁業の未来図をどのようにお考えでしょうか。日本の消費者に語るような、できるだけ平易な言葉で、政治家としての御見解をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

坂本国務大臣 我が国の漁業は、国民への食料供給を担いまして、地域経済を支える重要な産業であります。

 しかし、委員御指摘のとおり、海洋の環境変化、潮流、海流の変化などで非常にやはり厳しい水産資源の局面にあります。加えて、漁業就業者の減少、高齢化など大きな課題が立ちはだかっております。我が国漁業が持続的に重要な役割を果たしていくためには、水産資源の適切な管理を促しながら、水産業の成長産業化を進めていく必要があるというふうに考えております。

 このため、海洋の変化にも対応しながら、幾つかの柱立てをしております。

 まずは、本年三月に改定いたしました、資源管理の推進のための新たなロードマップに即した水産資源の管理を推進していきましょう。それから二番目は、高性能漁船の導入や操業形態の転換、そして複合化等による漁船漁業の成長産業化も併せて行ってまいります。三番目は、マーケットイン型の養殖業の推進等によりまして、養殖業の成長産業化も進めてまいります。そして四番目は、令和四年に制定いたしました、さかなの日による消費拡大、そして低未利用魚の活用等の高付加価値化への支援をしてまいりたいというふうに思っております。五番目に、ブリ、マダイなどの重点品目を中心にした輸出の拡大、こういったものをやってまいります。

 こういう各般の施策を総合的に展開をいたしまして、水産国日本の復活を果たしてまいりたいというふうに思っております。

保岡委員 ありがとうございました。質問を終わります。

野中委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回の法改正は、二〇一〇年頃に資源量が最低基準となったことから導入された太平洋クロマグロのTAC管理の報告義務に背いて、未報告のクロマグロが大量に流通していたことが水産庁への通報から明らかになり、再発防止のための対策が急務となっていることが理由として挙げられていますが、まず、改正の背景となった未報告クロマグロの数量の把握についてお伺いします。

 令和三年八月の水産庁への通報から一年後の令和四年八月に青森県が公表した調査結果では、未報告数量は五十五・七トンとされたが、青森県警の捜査では九十八トンと、大きな開きがありました。このため、令和五年八月から十二月にかけて青森県が行った再調査の結果は、八十八・一トンでした。このような差が生じた上に、通報から二年余りの時間を調査に要しました。

 そこで、法改正によって、今後、同様な事案が発生した場合に迅速な事実の把握が可能になるのか、お伺いいたします。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 まず、今般の大間事案におきまして、青森県の調査結果と県警の調査結果に差異が生じました。未報告数量の確定に時間を要したことは委員御指摘のとおりでございまして、伝票等が適切に保存されていなかったことですとか、伝票内容とTAC報告の内容を個体ごとに照合するということが容易にできなかったこと等の要因があると考えてございます。

 このため、本法律案におきましては、TAC報告事項に採捕した個体の数を追加するとともに、個体の重量等の情報の記録、保存を義務づけることとしておりまして、これによりまして、疑義情報等があった場合に、TAC報告との照合ですとか流通経路の確認、調査を迅速、適切に行えるようになるものと考えてございます。

山崎(正)委員 次に、太平洋クロマグロの資源量は、二〇一〇年には初期資源量の一・七%まで減少しましたが、その後の厳しい漁獲規制により順調に資源量は回復しており、昨日発表されました、国際的な科学機関であるISC、北太平洋まぐろ国際科学小委員会による資源評価では、親魚資源量は、WCPFC、中西部太平洋まぐろ類委員会が回復目標と定めた初期資源量の二〇%を二〇二一年に達成、二〇二二年には二三・二%まで回復しているとの最終報告がありました。

 未報告マグロの大量流通の背景として、厳しい漁獲枠の下で、これでは食べていけないという漁業者の置かれている厳しい状況も指摘されています。

 今年十二月に予定されているWCPFCの年次総会を目指して、漁獲上限の更なる増枠の実現を目指すことになりますが、未報告太平洋クロマグロの大量流通に対しては海外からも厳しい目が向けられています。日本として有効な対策を講じ、国際会議の場でもしっかり示さなければ、マグロを目の前にしても捕れないつらさに耐え、厳しい資源管理に協力してきた多くの漁業者の努力も報われないということになりかねず、漁獲量回復を目指して今後も進めねばならない資源管理の取組への理解と協力を得ることも難しくなってしまいます。

 そこで、今後の国際交渉での漁獲量増枠の実現に向けて、今回の法改正の意義について大臣にお伺いします。

坂本国務大臣 太平洋クロマグロは、WCPFC、中西部太平洋まぐろ類委員会での決定に基づきまして、関係国等が連携協力をいたしまして、資源の回復に向けまして漁獲枠による資源管理に取り組んでいるところであります。漁獲量の迅速かつ適切な報告は資源管理の根幹を成すものというふうになっております。

 そのような中で、我が国で発生をいたしました違法な未報告事案というのは、資源管理措置が正しく実施されなかった事例としてWCPFCの会合でも報告されており、我が国が望んでおりますWCPFCにおける今後の増枠の検討に当たっては、早急に再発防止を講じ、そしてWCPFCの会合で説明する必要があるというのが現状であります。

 今般の法改正によりまして、未報告事案の再発防止、さらには国内管理の強化を行っていくことで、国際的信用の維持、回復を果たし、それを我が国の増枠実現につなげてまいりたいというふうに考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 次に、対策の実効性についてお伺いします。

 改正案では、漁業法の特別管理特定水産資源について、TAC報告事項に採捕した個体数を追加するほか、記録の保存義務、罰則の強化などを新たに規定し、水産流通適正化法においては、流通段階での情報伝達と記録の作成、保存などを義務づけることとしています。

 そこで、水産流通適正化法は、元々、アワビ、ナマコの密漁対策として加工及び流通段階も含めて排除する必要があることから制定されたものですが、令和四年十二月の法律施行によって検挙件数の減少などの効果は表れているのか、お伺いします。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のように、水産物流通適正化法につきましては令和四年十二月に施行されておりまして、国内において違法かつ過剰な採捕が行われるおそれが大きいアワビ、ナマコ等につきまして、漁業者、流通業者等に対しまして、売買等の際の漁獲番号等の伝達、取引記録の作成、保存、輸出時に国が発行する適法漁獲等証明書の添付等を義務づけをしたところでございます。

 制度施行後の対象魚種の密漁件数等はまだ判明しておりませんで、本制度におきます密漁防止への効果を定量的に検証するということは難しいと思われます。ただ、本制度の施行後、事業者からの疑義情報が寄せられるなど、事業者の違法漁獲物の流通に対する意識は高まっており、密漁に対する抑止力は高まっているものというふうに認識をしてございます。

 今後とも、水産流通適正化法等の適正な運用を通じまして、違法な漁獲物の流通防止にしっかり努めてまいります。

山崎(正)委員 分かりました。まだ始まったばかりなので定量評価はあれですけれども、そういった効果が出ているということで、よろしくお願いします。

 次に、報告事項の追加、流通段階での情報伝達についてお伺いします。

 漁業者を始め多くの関係者は資源管理に真摯に協力しています。一部の違反行為に起因して新たな義務が課されることになることについて、現場の負担を極力増やさないための配慮が必要と考えます。

 そこで、法施行によって増える現場の負担軽減についてはどのように考えているのか、お伺いします。

森政府参考人 お答えいたします。

 本制度では、漁業者や流通事業者などに必要な情報の伝達、記録、保存等を義務づけるということになっておりますけれども、制度の運用や省令の策定に当たりましては、太平洋クロマグロの大型魚につきましては、全国津々浦々の港で、年間を通じて、様々な漁業種類で漁獲、陸揚げされているという実態がございます。こうした実態を踏まえて、現在、商習慣上発行されております取引伝票やタグなどを用いて義務を履行できる仕組みとする考えでございます。

 他方で、様々な各市場でのシステムの状況によりましては改修等を行う必要が生じる可能性もあるというふうに承知をしております。

 このため、制度の施行に当たりましては、現場の関係者の意見をよく伺いました上で、実行可能性を踏まえた省令等の具体化を行うとともに、関係者の負担をいかに軽減するかについてもしっかりと検討してまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 次に、スマート水産業についてお伺いします。

 水産資源の持続的な利用や水産業の成長産業化を目指し、スマート水産業の取組が種々行われていると承知しております。

 中でも、資源評価の高度化や水産流通適正化法への対応などの取組が進められており、水揚げ情報の電子的収集体制の構築や電子的漁獲報告体制の構築などが行われていますが、現状と今後の取組についてお伺いします。また、取組を進めていく上での課題についてどのように認識しているのか、お伺いします。

森政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省といたしましては、御指摘のとおり、電子的に水揚げ情報を収集する体制の構築でございますとか、水産流通適正化法の施行に当たっても、アワビなどの情報伝達の電子化に取り組むといったようなデジタル化を推進をしているところでございます。

 今後とも、資源管理をしっかり推進していくという観点で、現場の漁獲報告の一元化の取組や、最新のデータを用いたタイムリーな資源評価を進めたいというふうに考えておりますし、今般の法改正に基づきまして新たに生じます保存、伝達義務の履行についても、現場の負担軽減に資する電子的情報伝達を推進していきたいと考えております。

 こうしたものを推進していくためには、都道府県の関係者、あるいは現場の漁業者等の協力が必要不可欠ということでございます。デジタル化の意義、メリットを示しながら、丁寧に意見交換をしながら進めていきたいと考えております。

山崎(正)委員 次は、カツオの水揚げ量についてお伺いします。

 カツオの水揚げ量は長期的に減少傾向にあり、特に二〇二〇年は私の地元高知県の近海カツオ一本釣りにおいては過去最低の水揚げ量となりましたし、近年は、世界中のツナ缶需要に応えるべく、発展途上国を中心に漁獲量が増大し、資源量は過去最低レベルまで減少しています。

 このような中、二〇一七年二月には、日本にカツオを取り戻すという趣旨の下、高知カツオ県民会議が発足するなど、漁業者はもとより広く県民の間にもカツオ資源に対する危機感が広がっているところです。

 近年のカツオ水揚げ量の減少は、中西部太平洋の熱帯水域においてまき網漁船が増加し、まき網によるカツオの漁獲量が一九七三年に二万トンだったのが二〇二二年には百四十四万トンと、この半世紀で七十倍以上に急増していることが原因と考えられています。

 二〇二二年に開催されたWCPFC年次会合において、新たな漁獲管理の枠組みとして管理方式が導入されました。まき網漁や一本釣りなど漁業方法ごとに漁獲量や操業日数といった基準値を設け、漁業がない場合の資源量を一〇〇%と仮定し、実際の資源量が四〇から五七%の基準値内で操業できるようになっていますが、この管理方式において、現在の資源量では、中西部太平洋熱帯水域におけるまき網漁業の漁獲努力量が変わらないことから、我が国周辺での更なる漁獲量の減少が懸念されています。

 また、二〇二三年に開催されたWCPFC年次会合において、漁獲努力量、漁獲量が基準値を上回った場合に熱帯マグロの保存管理措置を見直す規定が追加されましたが、その中で、メバチ資源の増加予測を受けて、集魚装置の使用禁止期間の短縮など、熱帯マグロの保存管理措置の一部が緩和されました。

 このため、我が国周辺へのカツオ来遊量の回復に向けては、科学的根拠に基づいた保存管理措置の強化や管理方式の見直しが絶対的に必要だと考えます。

 そこで、我が国周辺のカツオの来遊量回復に向けて、二〇二九年を待つことなく、科学的根拠に基づく管理方式の見直しをWCPFCにおいて率先して提案すべきであると考えますが、大臣の認識をお伺いします。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、我が国沿岸のカツオの来遊量の回復に向けては、科学的な知見に基づいた実効性のある国際的な資源管理が実施されなければならないと思っております。

 二〇二二年のWCPFCにおきまして、資源量が一定の水準を下回った場合は漁獲量や漁獲努力量の水準を減らす手続を定めた管理方式が採択をされました。

 この管理方式につきましては、御指摘の二〇二九年を待つことなく、二〇二五年及び二〇二八年に見直しを行う予定となっております。

 これらの機会に、最新の資源や漁獲の動向を見極めながら、必要な改善を働きかけていくことなど、実効性のあるカツオ資源管理が実施されるよう取り組んでいく所存であります。

山崎(正)委員 済みません、もう一問準備しておりましたが、時間の関係で、申し訳ございませんでした。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

野中委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 今日もまた質問の時間をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、私、以前、マグロの方の組合の方におりまして、それこそ藤田次長とは海外で一緒に国際交渉もやらせていただいたという経緯がありまして、そういった面でも、様々、今日は伺わせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、今回の法改正の端緒になったのは、先ほどからお話がありましたとおり、大間の事案でございました。大間の事案については、釣りですので、これについては今回法改正をしていただいて、これでしっかり対応していただければいいなというふうに思っているところでございます。

 もう一方でいいますと、釣りは、そういう意味では、規制は、簡単に止めるということはできるのですけれども、どうしても、オーバーキャッチという意味においては、混獲というのか、例えば、まき網であるとか、あるいは定置であるとか、そういったものが非常に気になるところでございまして、結果として捕ってしまうというような漁業でございます。

 この間もいろいろな問題があったなというふうに思っておりまして、特に定置について、特性上、どうしても様々な魚種が漁獲をされるということになります。中には大量に入ってしまうようなこともあって、本当に枠を使い切るようなことはないとは思うんですけれども、オーバーキャッチの可能性というのは常に秘めているなというふうに思っています。

 漁船のように、枠の上限に達したらすぐにやめろと、止めるということはできるんですけれども、速やかに終了するということができるんですけれども、逆に言うと、定置などは漁獲枠を超えないための対策みたいなものが必要なんじゃないかなと思うんですけれども、これについて水産庁の御見解を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 定置網漁業につきましては、クロマグロの混獲回避が大変重要な取組でございます。

 これまで放流手法に関する技術開発も行われておりまして、例えば、クロマグロが入網していた場合に網の外に出すための操業方法の工夫ですとか、定置網へのクロマグロの入網状況を陸上から確認して混獲を回避しやすくするための定置用の魚群探知機の開発など、一定の成果が得られてきているところでございます。

 さらに、現在、国といたしましても、放流の取組に対する一人一日当たり三千円の作業経費の支援ですとか、混獲回避のために必要な機器の導入に要する経費の支援も行っておりまして、放流技術、機器等の普及に努めているという状況でございます。

 特に、定置網漁業につきましては、漁船漁業に比べて今申し上げた支援の上限額も高く設定をさせていただいているということでございまして、引き続き、現場の状況も踏まえながら、定置網漁業の安定的な操業が確保されるように、更に資源管理の取組というものを支援していきたいと考えております。

神谷委員 是非、いろいろと御検討いただきたいと思っています。

 どうしても、ナショナルクオータでございますから、漁獲枠というもの、総量は決まっています。そういった中で、釣りはある程度コントロールできるのかなと思うんですけれども、混獲の部分はどうしても気になるところでございますし、その中では、まき網であるとか、あるいは定置というところは大きな部分だろうと思います。

 かつて定置の部分で大きな問題になったなということも十分承知をしておりますし、結果として、定置を持っていた方々が大変な思いをされたなというふうに思っています。決して彼らが悪いとは思わないのですけれども、結果としてマグロが入ってしまうこともあるというようなことでございますので、こういったところの改善というのか、何らか方策というのを考えないとなかなか難しいのかなと思っておりますので、是非この点について御留意をいただけたらと思う次第でございます。

 今般の法改正、先ほどから種々質問も出ておりますけれども、やはりWCPFCについての対応ということになると思いますが、前提としては、この水域においての漁獲というか資源量、これがしっかりと増大をしているということがまずは大事なんだろうと思っているところでございます。

 先般、ISCの話も出ておりましたけれども、この見通しというのか、資源量の見通し、それから、あわせて、WCPFC会合、これについてどのように考えているのか、この辺の成果の見通しについて伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

森政府参考人 太平洋クロマグロにつきましては、厳格な資源管理に漁業者の方々が取り組んできていただいた結果として、資源は順調に回復をしているという状況でございます。

 先ほど御指摘のありましたISCが行いました新たな資源評価によりましても、太平洋クロマグロ資源が、WCPFCが回復目標として定めた初期資源量の二〇%を二〇二一年に達成し、更なる増加傾向にあるといった結果が示されているところでございます。

 今後、太平洋クロマグロの我が国の増枠というものを実現していくためには、WCPFC等の関係の国際会議におきまして、関係国、加盟国との協議が必要ということになります。このため、現時点においての交渉の見通しを申し上げることはなかなか困難ではある状況でございますけれども、私どもといたしましては、我が国の漁業関係者からこの増枠に対する大変強い期待、要望があるといったことも踏まえまして、先ほど御紹介いたしました最新の資源状況に基づき、増枠が実現できるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

神谷委員 ちなみに、御通告申し上げていませんけれども、このWCPFCには、漁業者を含めて、関係者もまた一緒になって応援する形で会合等を行う形でよろしかったですか。いかがですか。

藤田政府参考人 委員御指摘のとおり、この種の国際会議におきましては、顧問団として業界の方にも一緒に出向いていただきまして、要所要所で交渉の状況を御説明し、判断をしていくというプロセスを踏んで対応してまいっている状況でございます。

神谷委員 ありがとうございます。

 そういった取組が本当に大事だと思っていまして、当事者も含めて、その現場で状況を知る、そして厳しさを知る、これも大事だと思っていますので、これは引き続きお願いしたいと思いますし、その現場で、皆様方、水産庁の皆さん、当事者の方、外務省も含めて、様々レクをしていただく、こういうことが結果として、漁業者にしっかりと資源管理の大切さであるとか今の状況というのを知らしめることになると思いますので、是非、引き続き、その取組は続けていただきたいと思います。

 その上で、これも御通告していないんですけれども、今ISCの話もありましたけれども、ISCに対しての我が国の関わり方、これについてはいかがでしたか。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 ISCにおきましては、主に北の、北緯にある国の科学者、関係国の科学者が参加をして構成をしてございます。当然、我々の方の水産研究・教育機構の研究者の方にも参加をしていただきまして、関係国がそれぞれ調査あるいは漁獲して集めたデータを持ち寄って資源評価を行うという形になってございます。

神谷委員 これも大事な取組だと思っております。やはり科学的な調査、これに対して我が国が貢献をしていくこと、これは本当に大事だと思いますし、逆に言うと、そこの真実性も含めて確認ができるという意味でも、絶対これは必要だと思いますので、引き続きこれも取組をお願いをしたいと思います。

 その上で、今マグロの話が出ておりますので申し上げますと、遠洋のマグロ船、特に超低温のはえ縄船なのでございますけれども、我が国にとってはいわば最後と言ってもいいくらいの遠洋漁業の部隊であるというふうに認識をしておりまして、遠洋漁業の最後の部隊ではあるという状況なんですけれども、かつては、私が知る限り千二百隻とか、もっと多かったかなと思っていまして、それが徐々に減らしていまして、今、大分減って、四百隻ぐらいだったかなと思いましたけれども、ぐらいまで減っているというような状況にあります。

 徐々に隻数を減らしている現状なんですけれども、この理由というのは、やはり、最近でいうと燃油の高騰や例えば資材代、これも、海外に出ていくものですから、為替というのが気になるところでございまして、やはり経営も大変厳しいんじゃないか。これ以上隻数を減らすとまた水域の漁獲量にも影響が出てくるかなと思うんですけれども、昨今のマグロ船、遠洋船の経営の状況はいかがなのか、これを伺いたいと思います。いかがでしょうか。

森政府参考人 遠洋マグロはえ縄漁船についてお答えをさせていただきたいと思います。

 我が国の遠洋マグロはえ縄漁船の許可隻数でございますが、過去十年さかのぼりますと、二〇一四年には二百五十五隻でございましたけれども、二〇二四年現在、百六十一隻ということで、十年間で約四割が減少している。

 その背景といたしましては、主要漁獲物でございますマグロ類、例えばミナミマグロなどの価格が伸び悩んでいるということでございますとか、船員の高齢化となり手の不足、さらに、国際規制や監視の強化に伴うコスト増あるいは船価の上昇などに加えまして、近年の燃油費などの操業経費の増大もあるというふうに認識をしているところでございます。

 こうした中で、遠洋マグロはえ縄漁業につきましても、その操業形態ですとかビジネスモデルの転換といったものも求められている状況かなというふうに考えておりまして、農林水産省といたしましても、いわゆる経営安定対策による支援に加えまして、収益性の高い操業・生産体制への転換が可能となりますよう、例えば、投縄作業の自動化によります作業負担軽減ですとか、船内居住環境の改善によります乗組員の確保、さらに、外地から外国市場への直接輸出による販路拡大などの取組に対して支援を行っているところでございます。

神谷委員 想像以上に減っていたので、正直驚きました。もう百六十一という数字なんですね。これは本当に、私にとっては衝撃的な数字でございます。

 日本に、我が国に、刺身というかマグロ刺身市場というか、そこに向けてしっかりと供給をしていただいている日本の部隊、これが大分減っているんだなということ、これはやはり大きな衝撃なんだろうと思います。遠洋船はそこまで厳しくなっているのかというのを改めて実感をした次第でございます。

 その上で、遠洋マグロはえ縄の漁場確保とか、あるいは、先ほどカツオの船の話もありましたけれども、遠洋カツオ船、これはもう三十隻を切ったなというふうに思っていたんですけれども、今何隻あるのか分からないんですけれども、それもやはり相当少なくなっている。

 こういった方々の入漁の円滑化のために、OFCF等の団体を使ってODA等の協力を実施してきているというふうに承知をしております。漁業に関する専門家の派遣であるとか冷凍加工施設の提供など、特に沿岸漁民にとっても分かりやすい事業を展開しておりまして、そういう意味では、日本や日本漁船への理解増進につながっているというふうに承知をしております。

 こういった事業は、結果として商船も含めた船の安全航行にも役立っているというふうに承知をしており、やはり、ODA予算が縮小している中であっても、水産無償とか、あるいはOFCFを中心とした水産関係のODA、これは本当に大事だなというふうに思っているんです。

 これについて、是非しっかりと予算を確保していただきたい分野であるというふうに承知をしているんですけれども、農林水産大臣の所感を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、農林水産省では、我が国のカツオ・マグロ漁船の重要な漁場でございます太平洋島嶼国等の要請に応じまして、海外漁業協力財団、いわゆるOFCF等を通じまして、水産関連施設の修理、修復や、沿岸漁業振興等に関する支援を、今年は五・八億でございますけれども、行っているところでございます。

 こうした協力は、現地水産業の持続的な発展に貢献するものとして入漁先国から高く評価をされております。我が国漁船の海外漁場を安定的に確保する上で、極めて重要な役割を果たしているというふうに思います。

 今ちょうど、パラオの大統領、ウィップス大統領が来日中でございます。今日も私は、昼に、パラオ友好議員連盟の一員として昼食会に臨むことにしております。

 こういった協力事業を通しまして、しっかり予算を確保してまいりたいというふうに思っております。

神谷委員 大臣、本当にお願いいたしたいと思います。

 日本でODAを出すんですけれども、例えば、首都にでっかい建物を造るとか、橋を造る、こういうことはあるんですけれども、水産の場合は、先ほど申し上げたように、例えば、漁業者に対して漁船を出すとか、あるいは水産加工の技術を提供するとか、沿岸の漁民にとって非常に分かりやすい。ですので、そういった方々が、同じ水域に日本船が入ってきても理解を得やすいというような特性もあります。

 中には、例えば、過去の事例でありますと、モーリタニアのタコであるとか。タコつぼ漁ですけれども、これは日本人が教えました。結果として、今、例えば、たこ焼き屋さんで多くモーリタニアのタコが使われていると思いますけれども、こういうことを実践していただいて、現地の人たちはタコを食べないんですね、だからほとんどが日本にやってくる。ですので、実は、相当、現地の皆さんにとっても、ウィン・ウィン、我々にとってもいいというようなことで進んでいると思います。

 そういった意味で、あの水域でも、アフリカの水域で海賊等はあるんですけれども、彼らはやはり生業とかがない。例えばこういった水産無償、そういった協力ができれば、あるいはそういった海賊行為をやめるんじゃないかなんという議論もあります。

 そういったところで、この水産無償、ODA、本当に大事だと思っておりますので、是非御理解を賜りたいと思いますし、OFCFに限らず、しっかりと進めていただきたい分野でございますので、是非、大臣、お願いをしたいと思います。

 かつて、この部分もしっかり確保されていたんですけれども、その確保された部分が実は減っております。結果として、水域であるとか、あるいは、マグロだけじゃなくて、例えば鯨もそうだったんですけれども、そういった捕鯨支持国に対してもODAを出しておりましたし、そういった国々の日本に対する理解というのが、例えば、国連における、かつてあった、理事国入りを目指したときの基礎票になった国でございますので、そういった国々が減っていくようでは困りますので、是非、この水産無償を含めたODA、しっかりやっていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 先ほどのお話にありましたとおり、船員のなり手不足が深刻となっております。特に、海技士などの資格保持者の不足が顕著であると聞いております。

 特に、遠洋船においては、ポートステートコントロールとか、様々な課題があるところでございます。そういったところも含めて、対策はいかがでしょうか。水産庁に伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 近年、漁船漁業の乗組員の不足、高齢化に伴いまして、次世代を担う若手の海技士の不足が非常に深刻化しているという状況でございます。このため、海技士の計画的な確保、育成が重要となっている状況でございます。

 このため、農林水産省といたしましては、例えば、水産高校卒業生を対象に海技士免許取得に必要な乗船履歴を短期に取得するコース、これの運営を支援しておりますし、また、若手船員が海技資格取得のために講習を受講しようという場合にも、これへの支援などを行っているということでございます。

 特に、前者の水産高校卒業生を対象としたコースの運営支援につきましては、令和四年度から、支援対象を四級海技士に加えて五級海技士にも拡大をしたというところでございます。

 引き続き、この海技資格の制度を所管しております国土交通省ですとか関係団体とも連携をいたしまして、漁船乗組員の確保、育成に向けた取組を後押しをしてまいりたいというふうに考えております。

 また、これを進めていくためにも、若者に漁業が選ばれ、さらに、漁業に定着してもらえるような取組が必要だということで、このためには、関係団体、事業者による職場環境改善の取組も必要だというふうに思っております。このことにつきましても、よく関係者とも議論をして進めてまいりたいというふうに考えております。

神谷委員 ありがとうございます。

 実際に資格を取らせても船に乗ってもらわなかったら何も意味がないので、是非お願いをしたいと思いますが、そういった意味で、今、長官お触れになりましたけれども、若い方が就業していくために漁船の環境を整えていく、これは本当に大事なことだと思います。

 実際に、例えば個室化であるとか、あるいはインターネットが使えるような環境であるとか、そのために、例えば許可トン数の変更というか、そういうところを数えないとか、様々な工夫ができると思うんです。そういったことについて、今、国交省を含めて、いろいろなところとやり取りをやっておられると思うんですけれども、実際に、そういった漁船、個室化とか、そういうのは進んでいる状況なんでしょうか。いかがですか、今お話しになられたので。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の漁船のトン数につきましては、漁業法でその制限をしている部分と、国土交通省におきまして、船員の資格の問題として制限をしているといいますか、これ以上の資格を有する者を乗せないといけないという基準がございまして、そういったものが相まって、漁業者の方は、その船をどういう大きさの船にするか、あるいは乗組員をどう手当てするかということを手配をされているという状況でございます。

 漁業法に関しましては、我々の方は、できるだけトン数の、自由と言ったらおかしいかもしれませんけれども、緩和を図りまして、大きな船を造って個室を大きくするということもできるだけ可能になるようにということで、これまで運用を改善をしてきました。

 その結果、そういうことに意識の高い船主の方は、乗組員の方の個室をしっかり確保する、あるいはインターネットにおきます通信環境を確保するといったことを手当てをされるということが進んでおりまして、今後、やはり若い方に漁船に乗っていただくという面では、船にいながらインターネットを使えるという状況をできるだけ備えていくということが、漁業においても必要になってくるだろうというふうに考えてございます。

神谷委員 次長がおっしゃるとおりなんです。ただ、船主さんに対してそういうふうにやれと言ってもなかなか進まないのかなと思いますので、何らかの指導というのか後押しというのか、そういったことは絶対必要なんだろうと思いますので、引き続きお願いをしたいと思います。

 次に伺います。漁業における外国資本をどのように考えるかという問題です。

 特にマグロのように、国際管理の魚種というのは、国別のナショナルクオータというのが割り当てられます。このナショナルクオータというのは、いわばこの国の国民の共通の財産であるというふうに思っておりまして、そういった共通の財産を外国資本の方に使わせるということについては、いささか問題があるんじゃないかと思っております。

 そういったことについての大臣の考え方を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 まず、外国人や外国企業が我が国水域におきまして漁業を行うこと等につきましては、外国人の漁業の規制に関する法律等によりまして、基本的に禁止をされております。

 その上で、漁業法に基づきまして、漁業許可及び漁獲割当て量の設定は、これらの申請者が日本国民又は日本企業である限り、その対象者として認められます。これは、外国人や外国企業が主な出資者である日本企業、すなわち外資系日本法人であっても同様ということになります。

 また、外国人や外国企業によります我が国漁業会社への対内直接投資につきましては、農林業や石油業、海運業等とも、外為法に基づきます審査付事前届出制度の対象とされております。我が国の経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすとか、あるいは我が国の安全を損なう事態が生じるおそれがあると認められる場合には、対内直接投資の中止を命じることができるということとされているところであります。

神谷委員 大臣、是非御検討をお願いしたいのは、先ほど申し上げましたとおり、日本国の大切な漁獲枠です。この漁獲枠を、今、外国資本という申し上げ方をしましたけれども、実際には国内の企業かもしれませんが、実質的にオーナーを含めて外国人である場合がえてして散見をされるというようなことも事象としてあります。そういった方々が、じゃ、この国の本来の漁獲枠を使われることについてどう考えるか。

 更に言いますと、マグロロンダリングなんてこともございまして、日本は、我が国は伝統的にマグロ漁をやっているものですから、漁獲枠は比較的多いです。逆に言うと、外国のほかの少ない国がいわば日本船につけ替えるというようなこともあり得るんじゃないかと思っているところでございまして、そういったことを根本的にやはり監視をしていかなきゃいけないだろう。

 もちろん、本来違法な行為ですから、これはやってはいけないことではあるんですけれども、その余地、可能性を残すのではないか。あるいは、本来、先ほども申し上げたように、この国の枠ですから、この国の皆さんのために使われるべきであると思いますので、この点について、大臣、やはり御留意をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 そこは今言いましたとおり、様々なケースがありますけれども、著しい影響を我が国に与える、そういう場合につきましては、その投資そのものを中止することができるということとされておりますので、様々な形で検討してまいりたいというふうに思っております。

神谷委員 ありがとうございます。

 ただ、大臣、投資の話で禁止ができるというのもそうなんですけれども、例えば、マグロであれば漁業の操業許可というのがございますので、厳然として許可の枠がありますので、そういった枠組み、あるいは一斉更新のときにどういうような状況なのかというのはしっかり見なきゃいけない、見ていただいていると思うので、その上でもどうなのかなというふうに、逆に言うと別の手法もあり得るのかなと思っておりますので、そこは厳格にやっていただきたいと思います。

 そういったことも含めて、特に、WCPFC水域ではありませんが、ミナミマグロなんかについてはそういったことが非常に懸念されたということもかつてありました。そういったこともありますので、大臣にはこの辺を是非御留意をいただきたいと思います。いかがですか。

森政府参考人 お答えします。

 先ほど大臣の方からも御答弁申し上げましたが、漁業法に基づく漁業許可、あるいは漁獲割当て量の設定につきましては、申請者が日本国民又は日本企業である限りはその対象者として認められるというルールになっております。

 例えば、外資系の日本法人であることのみをもってこれを規制するということにつきましては、サービスの貿易に関する一般協定に定めます内国民待遇との関係に十分留意する必要がございますし、規制目的の正当性、手段の必要性、合理性の観点から、これはちょっと慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

神谷委員 是非御留意をいただきたいと重ねて申し上げたいと思います。

 次に、WTOについて伺いたいと思います。

 WTO、本年三月にも会合が行われました。その際に、漁業補助金についても話が持たれていたというふうに承知をしております。これについては合意ができなかったというふうにも聞いておるところでございますけれども、そういったことについて、大臣の所感を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 二月二十六日から三月二日の未明にかけましてアブダビで開催されました第十三回のWTO閣僚会議、そこにおきましては、第十二回WTO閣僚会議で積み残しとなっておりました、過剰漁獲につながる補助金や途上国の特別待遇などについて議論が行われました。しかし、各国の意見の隔たりは大きく、新たな漁業補助金の規律の合意には至りませんでした。

 我が国といたしましては、世界的な過剰漁獲等の問題に早急に対応していくことが重要と考えておりまして、我が国の水産政策を実施する上で必要な補助金の確保は図りつつ、引き続き、積極的にこの議論に参加してまいりたいと考えております。

神谷委員 是非お願いをしたいと思うんですけれども、もちろん資源管理という意味でも非常に重要ですし、問題なのは途上国の枠だなというふうに思っておりまして、この途上国の枠について我が国がどう考えていくのか。ここを合意できないとなかなか資源管理は難しいかなというふうに思っているんですけれども、この点についていかがですか。

森政府参考人 お答えいたします。

 このWTO漁業補助金交渉におきましては、大きな論点となっておりますのは、例えば乱獲状態にある資源に関する漁業に対する補助金の禁止といったようなことがございますが、途上国に対する特別待遇ということも大きな論点となっております。

 こうした点について、途上国に対する配慮という点はSDGsの中でも位置づけられているということで、非常に大きな論点となっているという状況でございますので、その範囲でございますとか、例えばルール導入までの年限をどうするのか等々が議論が行われているということでございますが、現状において合意に至っているという状況ではないということでございます。

 我が国といたしましても、途上国に対する特別待遇という点については、当然配慮をしながら交渉を進めていくという状況でございます。

神谷委員 長官がおっしゃるとおりなんです。ただ、途上国に対する特別待遇、これを認めちゃ駄目ですよという話ではなくて、結果としてなかなか途上国の待遇から脱しないというか、結果として卒業してくれない国があると思います。しかもそれは、漁業で見ると意外と先進国なんじゃないかなと思えるような国があって、そういった国がいつまでたっても途上国の枠にしがみついて、結果として資源の漁獲圧につながっているというふうに思っております。

 やはり我が国としては毅然とした態度を取るべきだと思うんですけれども、これについていかがですか。

森政府参考人 お答えいたします。

 このWTOの漁業補助金協定についての議論の中では、御指摘の、例えば途上国からの卒業といったような形をどう考えていくかといったような、こういう議論も行われております。

 私どもとしても、特定の国の名前は挙げませんが、大漁業国である国が、途上国であるということを称して、あるいは自称する形でルールから逃れるというようなことがないようにする。それは、我々としても、この協定交渉において実現すべき一つの目的、目標というふうに考えて交渉に臨んでいるという状況でございます。

神谷委員 是非、そういったことも大事なことだと思いますので、国際漁業としての枠組み、これをしっかりつくっていくこと、我が国もそのルールに従って頑張っていくこと、そして、それを破ろうとする国があったら、それについて毅然とした対応を取ること、このことが本当に必要だと思いますし、そのための法案だというふうに理解しておりますので、これからも頑張っていただきたいということを申し上げさせていただいて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 クロマグロの資源管理、その本題に入る前に、前回の委員会質疑で、虚偽答弁がありました。

 農家に罰金という異例の法律を作るに当たって農家の方々から意見を聞いたのかという私の質問に対し、あたかも全国の生産者、百七十件、一千二百名に対し説明会を行ったように答弁されていました。しかし、この会の趣旨はあくまで各地の農協への説明会であって、その場に農家が参加していたかどうかは分からない、そう担当者は答えられています。

 さらに、現場の農業者からの質問などを約五十件、約百八十名に対し説明を行ってきたと発言されていますが、これは農水省が主催したわけでもなく、たまたま問合せがあった生産者にのみ説明をしていた、その質問に回答をしていたにすぎない。生産者に特化して、募集して開催をした説明会は一度も行っていない。

 しかも、百七十件、千二百名への農協などへの説明会も、そもそも農業基本法の説明会であり、今回、私が特に問題視した、重要な、農家に罰金という罰則についての説明は一度もなされていない、こういった信じられない事実が分かりました。

 まず、農水省に確認します。この事実、お認めになられますか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 先生から事前に虚偽答弁ではないかという御指摘をいただきましたので、我々としても、改めて議事録を確認させていただきました。

 先生の御質問につきましては、改めて、現場の農家の方々に対し、法律を作るに当たって、どのようなヒアリングを重ねて、どういう意見を聴取したのか、そういう御質問でございました。

 これに対して、五月十五日に私の方からは、まず、食料・農業・農村政策審議会で取りまとめられた中間取りまとめ、この中には不測時における対策についても相当詳しく書いてありますけれども、これについて十一ブロックで意見交換を実施した。この十一ブロックの意見交換会には、必ず複数の生産者が参加をしております。

 また、不測時における食料安全保障に関する検討会では、農業団体の有識者に委員として参加していただきました。ただ、この農業団体の有識者が農業者でないということは、川内先生の質疑の中で明らかにしたところでございます。

 また、現場の生産者を含む農業団体や消費者団体への説明を百七十件行った。この農業者団体の中には、農業者が中心のものも複数ございます。また、現場の農業者から五十二件、これについては、具体的な法案の質問について丁寧に説明をしてきたところでございます。

 特に、委員御指摘の、現場の生産者を含む農業者団体への説明でございますけれども、その中には、農協等だけではなくて、農業法人の経営者が集まるグループ、あと、4Hクラブなどの若手農業者グループ、共同農園などの団体も含むものでございます。

 また、説明内容も法案全体に関するものでございますけれども、特に、閣議決定後に当たりましては、生産計画の届出指示に従わなかったときに罰金がかかること、こういうことについても説明をさせていただいております。

 以上のことから、お答えした内容については、農業者に向けてどのようなヒアリングを行ったのかという問いに対し、事実を答弁しておりまして、虚偽答弁であるという御指摘は当たらないと考えています。

 なお、生産者等からの質問の中には、届出指示違反について罰金を科すのは重過ぎるという意見はございませんでしたけれども、一部の報道を受けまして、国が増産の指示をして、従わなければ罰金を科すのは重過ぎるのではないか、こういう御意見はあったところでございます。その際には、法案の正確な内容の説明を行ってきたところでございます。

 今後も、いろいろ御指摘をいただきましたので、法案が成立すれば、現場の農業者の方々に法案の内容というのを丁寧に説明していきたいというふうに考えています。

山田(勝)委員 坂本大臣、今の説明で本当にいいんでしょうか。

 つまり、法案が成立した後に、農家に罰金という、こういった罰則を科すような重要な課題について農家から意見を聞く、若しくは一方的に決定事項を説明する、こういう立法の在り方で本当にいいんでしょうか。

 昨日から参議院でも審議入りしていますが、余りにも現場の声、そしてこの国会の質疑、軽視が甚だしいと思います。一度廃案し、改めて全国の農家の皆様に、今度こそ農水省が呼びかけて、しっかりと、正々堂々と現場の御意見を頂戴してから法案を出し直すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 法案説明の経過につきましては、先ほど事務方から答弁したとおりでございます。

 そして、本法案の罰金規定につきましては、生産者を含みます事業者の皆様からの御協力を得ながら、国民の皆様に安定的に食料を供給するという責務を果たすために、必要最小限度の措置として規定をしているものであります。

 本法案の趣旨、目的や内容につきまして、引き続き、関係者への正確かつ分かりやすい情報提供や意見交換を幅広く行うなど、丁寧に説明するとともに、法案が成立した暁には、法の施行に向けまして、実際にどのように運営していくのかにつきましても、現場の声を丁寧に聞き取ってまいりたいというふうに考えております。

山田(勝)委員 現場の声を丁寧に聞き取ることはもちろん大事ですが、明らかに順番が間違っていると思います。

 前回の質疑、私のユーチューブチャンネルを御視聴いただいた全国の農家の皆様や国民の皆様から、多数の意見を頂戴しました。その中で、こういう意見がありました。公開アンケートを取ってもらいたい、政治家が言うように罰則に対して本当に反対意見が出ていないのか、絶対反対の意見は出ているはずだ、政治家がうそをついているとしか思えない。こういった国民の声を聞かない今の政治、この国の民主主義は危機的状況にあると思います。

 このまま農家に罰金を強行するようなことになれば大変な問題を起こしてしまう、そのことを強く申し上げた上で、本日のメインテーマはクロマグロの資源管理ですのでここまでにいたしますが、この問題は厳しく追及していきたいと思います。

 昨日、クロマグロの資源管理に関する会議が東京で行われました。七月上旬に予定されている国際会議に向けて、日本政府としての最終方針を決めるに当たって、全国各地の漁業現場から意見聴取をする大変重要な会議です。

 しかし、対馬のマグロ漁師の方とたまたま別件でお話をして驚いたんですが、その重要な会議の存在すら知らなかった。そして、その漁師さんが所属している漁協にすぐ確認すると、その漁協の組合長自身も知らなかった、案内が届いていなかったことが分かりました。

 まさか水産庁まで現場の声を軽視しているわけではないと信じたいのですが、一応確認させてください。この現場の声を聴取する重要な会議の開催に当たり、現場の漁業者の皆様に対し、どのような周知をされたのでしょうか。そして、今後どのように改善されるのでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の会議は、昨日開催をされました中西部太平洋まぐろ類委員会北小委員会等に向けた太平洋クロマグロの資源状況等に関する説明会というものでございます。ウェブと対面のハイブリッド形式で開催をさせていただいております。

 この会議の開催に当たりましては、農林水産省としては、漁業者、業界団体等の関係者に広く参加していただけるよう、今申し上げたオンラインでの参加も可能とするとともに、農林水産省ホームページに開催情報を掲載いたしまして、さらに、関係の漁業協同組合、漁業者等に情報が伝わるよう、都道府県、全漁連、業界団体を通じて御案内をしたところでございます。

 この結果、昨日の会議では約二百六十人の御参加をいただいておりまして、その中には長崎県内の漁協関係者もいらっしゃったというふうに伺っておりますし、また、長崎県の関係者の方からは、小型魚、ヨコワでございますが、この小型魚の増枠を求める意見もいただいたというふうに承知をしております。

 私どもといたしましては、今後とも、こうした会議の開催に当たりましては、情報発信等を更に工夫、改善しながら、なるべく広く現場の方々に御参加いただけるよう努めてまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 大変驚いたので、私の事務所から長崎県の水産部にも確認したんですけれども、メールで各漁協には確かに案内をしたそうなんですが、やはりメールだけ送るということではなかなか伝わらないと思います。公式な案内文書なりが全国各地の漁協の皆様にしっかり届くような、そういった改善を是非お願いしたいと思います。

 ここで、対馬市ひき縄漁業連絡協議会の西川征二会長から坂本大臣への要望をお伝えいたします。

 私たち沿岸漁業者は、国からいきなりのクロマグロ漁獲規制を強いられ、九年がたちました。規制前はクロマグロ漁だけでも年間一千万近くあった水揚げも、規制当初は百万円以下までになりました。

 私たち対馬の漁業は、未成魚であるヨコワ漁やイカ釣り漁が主な漁です。規制前、ヨコワだけで一日五百キロ以上漁獲することもありました。しかし、規制が始まった当初、一年間で漁獲可能量が約四百キロしかなく、大漁の日の一日分にも満たしません。私たちには余りにも残酷過ぎる漁獲規制でした。このような状況で、他の漁へ転換したり、廃業した漁師もいます。

 近年、クロマグロの資源は間違いなく回復しています。これは、水産庁の資源管理計画が正しかったのではなく、私たち沿岸漁業者が苦難に苦難を重ねた結果です。もう我慢の限界を超えています。本来なら、私たち沿岸漁業者をこのTAC規制から外してほしいです。無理ならば、せめて小型魚、大型魚共に大幅な増枠をお願いできないでしょうか。

 本当に切実な現場の漁業者の声だと思います。

 大臣、これから日本政府として国際会議へ臨むに当たり、これまで長きにわたり無理なお願いに耐え続けていただいた漁師の皆様のためにも、クロマグロの漁獲割当て、大幅な増枠を求めていく方針で間違いないでしょうか。

坂本国務大臣 太平洋クロマグロにつきましては、厳格な資源管理に取り組んでいただいた、あるいは取り組んできた、その結果、資源は順調に回復をしてまいりました。

 我が国漁業関係者の間には増枠に対する強い要望があるもの、それは承知をしております。今委員の直訴の手紙からもひしひしと感じるところであります。

 本年行われました新たな資源評価で、太平洋クロマグロ資源が回復目標を達成し、更なる増加傾向にあるとの結果が示されたところでもございます。WCPFCにおきまして、我が国として増枠の提案を行うことを含め、増枠が実現するよう努力してまいります。

山田(勝)委員 力強く、増枠を求める提案をすると大臣からありました。現場の漁業者の皆様にとって本当に心強いメッセージになったと思います。是非頑張っていただきたい、その思いです。

 この増枠を求めるに当たり、大型魚、小型魚の割合などが重要になってきます。水産庁は、ヨコワなどの小型魚を規制することが有効だと主張をされています。しかし、現場でマグロの資源管理を実践している沿岸漁師の皆様はこう主張されています。

 クロマグロの産卵期である六月から八月を禁漁にすべきだ。この時期、クロマグロのおなかには約五千万個もの卵が入っている。しかし、産卵期には、雌を雄が追いかける時期でもあり、一か所にマグロが集まりやすい。そこを狙って大型まき網船が一気に根こそぎ捕る。そうではなくて、卵を産ませるべきだ。

 このような資源管理に真剣に取り組む漁師の皆様からの現場の提案に、大臣、どうお答えになられるでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 太平洋クロマグロにつきましては、卵からふ化した仔魚の初期減耗が大変激しく、生残率が環境要因等によって大きく変動するという特性がございます。このため、親魚の量と加入する幼魚の量の間に必ずしも明確な関係が見られないという状況でございます。

 いわゆるISC、北太平洋まぐろ類国際科学小委員会、ここには日本だけではなく多数の国々の科学者が参加をしておりますが、このISCでは、こうしたクロマグロの生物学的特性を踏まえて、資源回復のためには小型魚の漁獲抑制が最も効果的であるという見解を示しているところでございます。

 これを受けて、WCPFCでは、三十キロ未満の小型魚の漁獲を半減するといったような管理措置を導入し、この取組の結果、資源は急速に回復してきたということでございます。

 今後とも、やはり科学的知見に基づいた資源管理あるいは漁獲規制が重要でありますので、こうした科学的知見も踏まえながらの増枠交渉、さらに、資源管理というものに取り組んでいく必要があると考えております。

山田(勝)委員 ヨコワという幼魚、長崎県ではヨコワという表現をしていますが、こういった小型魚を規制することが有効だという知見があることは分かります。

 しかし一方で、産卵期に禁漁することも有効ではないかという提案に対して、そういった実証なり調査なりということは行ったことがあるのでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 実際に産卵期の親魚に禁漁を行ったということはないわけでございますが、先ほども申し上げたとおり、ISCにおきましては、様々な国、日本だけではない、複数の国の科学者が議論を経た上で、その結論として、小型魚の漁獲抑制が資源回復のためには最も効果的であるという見解を示したところでございます。

 そういった見解を踏まえて、WCPFCではルールが決まっているということでございます。

山田(勝)委員 明確にないとおっしゃいました。ないなら、効果があるかどうか分からないと思います。科学者の話を聞かれるのもいいですが、やはり生産者、漁業者の現場の声をもっと大切にしていただきたいと思います。このことも引き続き訴えていきます。

 国連は、二〇二二年を国際小規模漁業年とすることを決め、国際的に小規模漁業の重要な役割を認識し、その振興政策の実施を各国政府に求めています。

 ついては、水産庁は、全経営体の九割以上を占める小規模沿岸漁業者の意見を重視した政策を推進していくべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 我が国の漁業は、規模の大小にかかわらず、重要なたんぱく源である魚介類等の水産物を国民に安定的に供給するなど、我が国経済におきまして大きな役割を果たしております。

 国連小規模零細漁業、養殖業の国際年といいますのは、二〇一六年のFAOの水産委員会におきまして、中南米グループが小規模零細漁業の国際年の設定を提案いたしまして、二〇一七年の国連総会で、持続的漁業決議におきまして、二〇二二年を国際年とすることが決定したというふうに承知をいたしております。

 小規模漁業が多い我が国の沿岸漁業に対しましては、適切な資源管理や単一の資源に頼らない操業形態への転換等を通じまして、小規模漁業の持続的発展を支援してきたところでもあります。

 引き続き、これらの取組をしっかりと推進してまいりたいというふうに思っております。

山田(勝)委員 全国各地の漁協や漁村の経済を支える漁業であることなどを配慮し、国連決議や、国際漁業条約にある小規模漁業配慮条項にのっとり、沿岸釣り、はえ縄、クロマグロ漁獲枠を大幅に増やすべきです。

 しかし、水産庁は、制度開始当初、クロマグロのTAC配分を、大中まき網漁業者と小規模沿岸漁業者に対し、根拠なく二分の一ずつとしました。全体の九割以上の沿岸漁師に対する配分が極めて少なく、経営が困難となっています。

 小規模漁業を大切にするため、沿岸漁業の漁獲配分を大幅に増枠させるべきではないでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 まず、御指摘の管理開始当初の配分につきましては、当時、我が国全体として基準年であります二〇〇二年から二〇〇四年の平均漁獲実績から漁獲を半減させる必要があったということでございまして、まき網漁業には半減以上の削減を求めて、同基準から約五六%削減をした一方で、沿岸漁業を含むその他の漁業は約四二%の削減にとどめたものでございます。そういった意味では、沿岸漁業へ配慮した配分が当初から行われたということでございます。

 その後も、令和六管理年度の大中型まき網の小型魚の枠について見ますと、基準年であります二〇〇二年から二〇〇四年の平均漁獲実績の五分の一にまで減少させております。これも、沿岸に配慮した配分を行ってきた結果ということでございます。

 今後、今回、増枠交渉に臨むわけでございますが、増枠の可能性が出た暁には、再度この配分の考え方についても議論を行うということになるということでございます。今後も、沿岸漁業への配慮等も行いながら、適切な資源管理を行うようにしていきたいと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 本当に、沿岸漁業者への配慮は大変重要なテーマですので、引き続き、是非よろしくお願い申し上げます。

 先ほど紹介した西川会長の要望にもあったように、沿岸漁師の皆さんは、生活もできない厳しい条件の中、九年間も耐え続けています。

 水産庁は、養殖にこれから力を入れていくと言われています。クロマグロ養殖へヨコワは提供されており、これからますます需要が高まっていきます。

 そして、クロマグロの資源回復は非常に喜ばしい反面、壱岐や対馬で厳しくヨコワ漁を規制した結果、マグロの主な餌であるイカが大幅に減少しました。壱岐や対馬の漁師の皆さんにとっては、ヨコワもイカも捕れない悪循環に陥っています。さらに、イカ漁に至っては、クロマグロによる被害で、一晩でひどいときは二十万円弱の漁具被害などが深刻な問題となっています。

 果たして本当にこれでいいのでしょうか。小規模沿岸漁師の漁村での暮らしや漁業の持続可能性を高めるためにも、ヨコワの漁獲割当てを大幅に拡大すべきではないでしょうか。

坂本国務大臣 太平洋クロマグロの増枠に向けた交渉に当たりましては、大型魚のみならず、小型魚の増枠を求める関係者の声が強いということは十分承知をいたしております。

 太平洋クロマグロにつきましては、大型魚の漁獲と比較をいたしまして、小型魚の漁獲の方が資源に与える影響が大きいことから、小型魚の増枠に慎重な意見を有する国もあるため、増枠は容易ではありませんけれども、関係国との折衝を行ってまいりたいというふうに思っております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 小型魚を規制することを望まれるような厳しい声もある一方、大臣からは、現場のそういった様々な声を受け止めて、しっかり交渉していきたいというお話をいただきました。

 こういった小型魚で生計を立てている沿岸漁師の皆様の声、大臣も是非直接お聞きいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 そういう機会を是非つくってまいりたいというふうに思っております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 この中継を御覧いただいている沿岸漁師の皆様にとっては、本当に、大変力強い、勇気をいただける大臣の御発言だったと思います。

 続きまして、大中型まき網、沖合底引き網漁業による漁獲圧力は、その探索能力、漁獲能力から強大です。ヨーロッパでも、TAC管理の弱点として、低価格魚、小型魚の海上投棄が問題視されています。そして、日本でも、大中型まき網や沖合底引き網漁業による海上投棄が同じく問題となっています。

 資源管理を推進する水産庁の方針に基づき、大臣許可漁業の透明化を確保するため、監視カメラを搭載し、位置情報とともに沿岸漁師の皆さんへ情報を公開すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 資源管理を行っていくためには、やはり、大臣許可漁業に限らず、その資源を漁獲する全ての漁業において適切な操業が行われる必要がございます。そのためには、行政による監視は重要であるというふうに認識をしてございます。

 大中型まき網漁業ですとか沖合底引き網漁業といった大臣許可漁業につきましては、機会があるごとに、正確な漁獲報告を行うように指導をしてございます。さらには、こういった大臣が許可を行っている漁船につきましては、VMSといいまして、衛星船位測定送信機の設置と常時作動を義務づけしておりまして、これを国が監視しているという状況でございます。

 引き続き、こうした取組によりまして違法操業の抑止に努めていく考えでございますけれども、委員御指摘の洋上での監視の在り方につきましては、監視カメラの利用やその情報の取扱いを含め、具体的な手法や実行可能性などを十分に検討、議論していく必要があるというふうに考えてございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。是非検討してください。

 漁船リース事業についてです。

 これも漁業者からの声です。この方は、申込みから許可が出るまでに一年間も待たされてきた。売上計画が狂ってしまうだけではなく、生活費を融資で賄ったり、資金繰りに大変苦労をされていました。

 漁業者からの申込みがあれば、水産庁は迅速な対応を取るべきです。時間がかかり過ぎている、その間に、物価高騰の影響により漁船の改造や設備機器が値上がりし、自己負担が発生する可能性もあります。

 大臣、今後、このリース事業はどのように改善をしていただけるのでしょうか。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業、いわゆる漁船リース事業により漁船を借り受けようとする漁業者の方につきましては、漁業所得の一〇%以上の向上等を目標とする事業計画を策定する必要がございます。事業主体である水産業・漁村活性化推進機構におきましては、定められた要件を満たしているか確認しつつ、可能な限り迅速な対応に努めているというふうに承知をしてございます。

 この際、計画案によりましては、事業の目標を達成するための取組内容等についての説明や根拠となる資料が不足している例が見られまして、こうしたものにつきましては、計画内容や根拠資料の修正や追加等が必要となります。結果として事業計画承認までに時間がかかるケースがあるということは御理解をいただきたいというふうに思います。

山田(勝)委員 時間が参りました。引き続き、現場の漁師の声を届けてまいります。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の掘井健智でございます。

 水産庁は、昨日、国内関係者との意見交換会を開催いたしまして、七月の国際会議で太平洋クロマグロの漁獲枠増枠を提案する方針を説明したと伺いました。

 今回の改正案は、現場の漁師の方からすると監視強化であります。しかし、その結果、太平洋のクロマグロの親魚の資源量が大きく回復すれば、我が国の漁獲枠は増枠され、漁師の方の漁獲割当ても後には増えるということで、今、漁獲割当てをきちんと守っていけば、将来、より多く漁獲できて、また経済的に豊かになるということを、現場の漁師さんとより一層認識共有していただければと思っております。

 大間事案がありました。青森県による行政処分のことで質問をいたします。

 改正案は大間事案を非常に重く見た政府が国会に提出したものであります。しかし、令和五年七月十三日に有罪判決が出てから間もなく十一か月が過ぎる現時点におきまして、青森県はいまだ行政処分をしていないということであります。

 もちろん、地方自治といいますか地方分権の観点はあるものの、法の実効性の担保のために、政府として、青森県のこの未処分について速やかな対応などを助言する必要性があるとも考えております。

 青森県がいまだ行政処分を行っていないことに対する認識と、今後の対応についてお伺いします。

坂本国務大臣 今般の事案は、知事が漁獲数量の管理を行っているクロマグロ漁業者が、青森県知事に対して令和三年度の漁獲の報告を怠ったものであります。現在、青森県におきまして漁業法に基づく処分の実施を検討中というふうに聞いております。

 今後、青森県において適切に処分がなされるよう、国といたしましても引き続き委員おっしゃられました必要な助言を行ってまいります。

掘井委員 ありがとうございます。

 非常に対応が遅いということで、調べますと、行政処分の前提であります聴聞会すらできていない、開催されていないということでありますので、国と県のコミュニケーションをきちっと取っていただきたいなというふうに思います。

 次の質問です。トレーサビリティー制度について質問します。漁獲番号についてであります。

 現行法では、採捕者は取扱事業者に対して特定第一種水産動植物の漁獲番号を伝達する必要があります。漁獲番号は水産物を集荷する際に漁獲番号等伝達システムを利用して発行されておりますが、このシステムはウェブシステムとして無償で提供され、また、スマートフォンやタブレット、PC等でも利用可能で、簡単にできると聞いております。

 これだけ簡単であるならば、改正案の特定第一種第二号水産動植物、つまりクロマグロにおいても、この漁獲番号の伝達を行うようにすべきだと考えております。

 しかし、水産流通適正化法の改正案では、新九条が準用されるのは六条一項一号ないし四号だけであります。漁獲番号を規定する五号を準用せず、漁獲番号の伝達は行わないという理由はいかがでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、現行のアワビ、ナマコ等につきましては、非漁業者による密漁が問題となっていたことを受けて、権限を有さない者が採捕したものが流通しないように、権限を有する漁業者ごとに割り当てられました番号、これを用いた漁獲番号の伝達を義務づけているということでございます。

 他方で、今般の改正で新設をされます特定第一種第二号水産動植物につきましては、権限を有する漁業者によるTAC報告義務違反が発生したことを受けての対応ということで、TAC報告義務違反が行われた漁獲物が流通しないように、個体ごとに情報の伝達を義務づけているということでございまして、いわば権限を有する漁業者による漁獲を前提とした上でのルールということで、アワビ、ナマコ等のような漁獲番号の伝達は義務づけていないということでございます。

掘井委員 法律のたてつけが違うというか、目的が違うんだろうと理解いたしました。

 機能面としては、やはり、システムは結構簡単であると聞いておりますし、非常に正確性があるのかなと思いますので、この法律の中で適用しないのであれば、このシステムの仕組みを活用していただきたいな、このように思いますけれども、こういうことは可能でしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 現行の水産流通適正化法の施行に当たりましては、先ほど御指摘もございました、情報の伝達等をスマホ等で簡易に行うことができるシステムを国で整備をいたしまして、活用を推進をしているということでございます。

 今般の改正におきまして情報伝達が義務づけられる特定第一種第二号の伝達について、具体的な方法は省令で定めるということとしておりますけれども、電子的な方法も含めて多様なものを定めて、各現場で使いやすいものを選択してもらうということを想定しております。

 今般の改正で新設する第二号水産動植物についても、国のシステムを活用することができるよう、現在システム改修に向けた事業の執行手続を行っているところでございます。

掘井委員 また今から質問しますけれども、情報の伝達手段が複数あるんですけれども、改正法案で、特定第一種の第二号水産動植物、つまりクロマグロの情報の伝達、法案七条のイメージとして三つのパターンを記載したのは、流通関係者の負担を大きくしない形での制度とするためである、このように理解はしております。

 ただ、複数のパターンを可能とすることで多様な漁業者への柔軟な対応となる一方、その管理等をする漁協、自治体、政府にとって煩雑であって、また今後、画一性などの課題が考えられると思いますが、政府の見解、情報システムを統一すべきではないかな、こんな思いがありますけれども、いかがでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 この特定第一種第二号水産動植物の情報伝達につきましては、電子的な方法も含めて多様なものを定め、それらのうち各現場で使いやすいものを選択してもらうということを想定しているところではございますけれども、やはり、タグですとかQRコードの活用によりまして、漁獲から流通までの適正かつ円滑な管理が可能となるというふうに考えております。

 そういった意味では、こうしたタグやQRコードの普及拡大がやはり中長期的には望ましいものというふうに考えているところでございます。

掘井委員 今、タグ、QRコードの話が出ましたけれども、ちょっと質問します。

 やはり、ただ、効率化を図って、改ざんを防いで、また、不正の検証コストを低減するためには、生産や流通における情報の報告、また伝達を電子管理で行う仕組みを整備すべきである、このように思います。今、漁獲番号を取り上げたのも同じ問題関心であるんですけれども。

 改正法案では、タグやQRコードの活用を、今触れましたけれども、選択肢の一つにしております。しかし、今年の四月の水産庁の「水産政策の改革について」では、資源管理から流通に至るまでICTを活用する、こう記載されております。クロマグロにもタグやQRコードなど電子管理に統一すべきであるとやはりこの背景からは考えられるわけでありますけれども、今後このトレーサビリティー制度の効率化をどのように考えておるのかということが一点。

 それと、また、QRコードなど電子管理を促進する場合、現状の手段を変更しなければいけない漁業者に負担があります。費用負担が発生することにもなりそうでありますけれども、タグやQRコードの活用のための機械導入などの支援なんかは考えることができるんでしょうか。お願いします。

森政府参考人 先ほども御答弁を申し上げましたが、やはり、今般の法改正に当たっての措置に当たりましては、現場の負担軽減を図りながら対象の水産物の円滑な流通を確保していくことが重要というふうに考えております。

 そういった意味で、タグ、QRコード等の電子的な方法、情報伝達というものの普及拡大が望ましいものというふうに考えております。私どもとしても、それを推進をしていきたいというふうに考えております。

坂本国務大臣 今般の法改正に当たりまして新たに義務づけられる情報伝達、現場の情報伝達につきましても、現場の負担軽減を考慮しつつ、タグ等を活用した電子的な情報伝達手段の推進を図る観点から、令和五年度から実証事業を行っているところでございます。

 今後も現場の事情を丁寧にお伺いしながら、効率的な情報の伝達について推進してまいりたいというふうに思っております。

掘井委員 漁業はやはり生産性を上げていかなきゃいけない、この後質問しますけれども、その一環と捉えてやっていただきたいなと思っております。

 次の質問です。不正防止対策、大きく不正防止対策のうちの、悪意ある場合の防止対策の実効性について質問をいたします。

 例えば船上で加工して市場を通さずに売れば、これはなかなか追いようがないわけであります。一方で、ざるのような仕組みだとの指摘もあります。

 船上で解体して出荷する場合でも、改正案では漁業法上の報告義務及び保存義務がかかるため、これらに違反した場合、採捕漁業者に罰則がかかるということになります。

 しかし、大間事案摘発後も、青森県では、漁業者が夜間などに誰にもチェックされずにクロマグロを水揚げし、闇出荷されているという情報も飛び交っていると報じられております。

 このように、TAC報告をしないことを前提にクロマグロを船上で解体して販売する場合、改正案ではどのようなたてつけになるんでしょうか。お伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 まず、水産庁におきましては、今年の四月から水産庁に漁獲監理官を新たに設置をいたしまして、太平洋クロマグロの主要な陸揚げ港におきまして、関係事業者等を対象とした陸揚げ状況の検査や巡回指導を開始したところでございます。委員御指摘の大間の方にも担当の方が参って、これからしっかり検査しますよということをお伝えをしてございます。

 夜間、人目を避けて陸揚げするケース等につきましても、こういった関係機関への周知徹底の際に、都道府県の水産担当部局、警察、海上保安庁等の関係機関と緊密に連携をしていこうということで、調査、捜査等を行っていくということで、今現在、方針で臨んでおります。

掘井委員 法律のたてつけだけではなくて、実際に取締り可能な体制も必要である、このように考えます。

 そこで、次の質問なんですけれども、漁港へのカメラの設置についてであります。対策の実効性を高めるために監視カメラの設置も検討すべきではないかなと思います。

 令和五年度補正予算で、クロマグロの陸揚げ監視強化検討業務といたしまして、監視手段のモデル的な導入、検証等が行われることになりました。前向きな取組と評価できますけれども、当初の計画では、業務の履行期間は契約締結の日から令和六年の三月二十九日まで、つまり、今年の三月までに終了の計画ではありましたが、実は、まだ実施すらされていないと説明を受けました。

 この未実施の理由と、今後の実施の見通しをお伺いいたします。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げました、今般新設いたしました漁獲監理官におきましては、効率的に監視業務を実施するために、市場関係者と連携して、監視カメラ映像を活用するということを検討しているという状況でございます。

 そのため、御指摘のように、令和五年度の補正予算におきまして実証事業の予算を確保した、認めていただいたということでございます。監視カメラも活用しつつ、産地市場等における陸揚げ状況等の監視の高度化を図るための新たな監視手段等の調査、検討、モデル的な検証を実施するということで、少しその手続に時間がかかっておるという状況でございました。

 ですけれども、令和六年度中にはしっかり事業を実施しまして、この事業実施結果を踏まえつつ、効率的な監視体制を構築していきたいというふうに考えてございます。

掘井委員 分かりました。遅れた理由は分かったんですけれども、今後の実施するスケジュールなんかお分かりになるなら、ちょっと教えていただきたいなと思いますが。いつぐらいからやっていくというか。

藤田政府参考人 実証事業の方につきましては、手続が済み次第、可及的速やかに実施したいというふうに考えてございます。

 その後の展開につきましては、やはりその結果を踏まえながらということになりますので、ちょっとこの席で具体的にお答えをするということは難しいと思いますけれども、しっかり都道府県ですとか市場等とは情報交換をして、しっかり管理体制を整えていくということで臨んでまいりたいと考えております。

掘井委員 管理体制の中で、やはりカメラを設置するということでありますから、漁民の皆さんにとっても抵抗があると思いますので、その説明とか、そういうことも含めて非常に大事であると思いますけれども、やはりそうでしょうか。

藤田政府参考人 昨年の、大間の事件が明らかになって以降、我々の方といたしましては、どういった管理体制が適当かということで、関係者が主な水揚げ港に赴きまして、いろいろ実態の調査をしてきたところでございます。

 そういう中で、やはり、当初は、市場の関係者の方は、取締官が来るということでございますので、何となく構えをするということがございましたけれども、相当我々の方は、大分回ってきましたので、こういう管理体制に協力していく必要があるということは理解を得られているというふうに認識をしてございます。

 今後とも、こういった取組の必要性というものが現場で理解されるように努めてまいりたいと考えてございます。

掘井委員 これは、漁師さんにとってはある意味規制していくというか。であるからこそ、いろいろな意味で合意形成していく、つまり、説明責任をきっちり果たしていくということが非常に大事であるのかなと思います。

 次の質問でございます。資源管理の人員の体制について質問いたします。

 再発防止には資源管理の人員体制が非常に重要であります。課長級ポストの漁獲監理官が今年度新設をされております。船に乗って洋上で不正漁獲を監視するポストといたしましては、既に漁業監督官が置かれております。漁獲監理官は、これと連携して、水揚げされてスーパーなどで消費者に販売されるまで、一連の流通過程を含めて漁獲管理を徹底することを目指しております。

 マグロに限らず、ほかの魚種も監視対象となるということでありますが、四月に新設されてまだ二か月しかたっていないわけでありますが、非常に恐縮なんですけれども、漁獲監理官の効果、もしあればお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、伊東(良)委員長代理着席〕

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 今年四月に漁獲監理官を設置いたしまして、太平洋クロマグロを陸揚げする主要港におきまして、関係機関へまず協力依頼をいたしました。その上で、漁業者や漁協、産地市場等の関係事業者等を対象といたしました無通告による陸揚げ状況の検査や巡回指導、あるいは、VMS、衛星船位測定送信機情報と市場データ等の照合、確認、疑義事案が確認された場合における関係事業者等への質問、立入検査等を行っているところでございます。

 ただ、取締りに関する情報でございますので詳細はお答えは差し控えたいと思いますけれども、これらによりまして、大間事案のようなTAC未報告事案の再発防止のための抑止力は大きく高まるとともに、違反事案が疑われる場合にはより的確に取り締まることができるようになるものと考えてございます。

掘井委員 この漁獲監理官以下は二十三名のスタッフがおると聞いておりますので、今後に期待をしております。

 次の質問であります。担い手の育成、確保と生産性の向上であります。

 今後の課題といたしまして、担い手の育成、確保と生産性向上があります。

 まず、担い手の育成、確保でありますが、我が国の漁業就業者は減少傾向にあって、高齢者の退職によって今後も減少が続くということが想定されるために、今後、担い手を育成、確保していく必要があります。

 その一方で、漁業における生産性が低いと指摘されております。TAC報告違反の原因が生活苦であるならば、監視強化は根本的な解決にならないとも思うんですね、いろいろな原因があると思うんですけれども。

 ここで、別紙をお配りいたしておりますけれども、各国の生産性の表を見てほしいんです。シンプルでありますけれども、漁業者一人当たりの生産量、日本はアイスランドの十分の一以下、漁船一隻当たりの生産量、日本はアイスランドの約三十分の一、非常に生産性が低いということであります。

 今後、操業期間の制限等によって、国が責任を持って資源管理の実施、また、紛争防止を確認した上で、漁獲量の相当部分にIQが導入された漁船については、船舶の規模に関する制限措置を定めないものとして、生産性を高めるとしておりますが、そのほかとして、いろいろな方策が考えられると思うんですけれども、何かございますでしょうか。

舞立大臣政務官 我が国漁業の成長産業化のためには、先生御指摘のとおり、生産性の向上を図ることが必要不可欠と認識しております。

 一方で、沿岸漁業と沖合、遠洋漁業では、その操業環境が大きく異なっておりまして、これを踏まえたそれぞれの対応が必要と考えております。

 まず、沿岸漁業につきましては、地域ごとに多種多様な魚種が季節ごとに水揚げされる一方で、その多くはイワシやアジ、サバ等、大量に漁獲される安価な魚種であり、これを生かしつつ、いかに売上高を確保していくかが課題と考えております。

 このため、近年の海洋環境の変化も踏まえまして、漁獲量が増加している魚種の有効活用とともに、例えば、全漁連が開設した直販ECサイトのほか、産地市場と小売、飲食店、消費者をネットでじかにつないでいく取組など、バリューチェーンの強化による高付加価値化等に取り組んでいくことが重要と考えております。

 これに対しまして、沖合、遠洋漁業につきましては、サンマ棒受け網漁業やカツオ・マグロ漁業のように、沿岸漁業と比べて漁法や漁獲対象とする魚種を絞り込んだ専業化が進展している一方で、この専業化の中で、漁獲対象魚種の資源変動の影響を受けやすいことが課題となっております。このため、漁獲対象魚種や漁法の複合化、転換などに取り組むことが重要と考えております。

 これらに加えまして、やはり生産性向上のためには、いずれの漁業におきましてもICTを活用した操業の効率化、省力化を図ること、すなわちスマート水産業の導入、普及促進が重要であり、必要と考えております。

 引き続き、漁業種類ごとの経営を取り巻く状況に応じまして必要な対策を講じながら、我が国漁業の生産性向上に向けてしっかりと取り組んでまいります。

掘井委員 いろいろな方法で生産性を向上しなければいけないということであります。

 漁業も産業と捉えるからには、そういった方法はいろいろあるんだと思いますけれども、漁師さんたちの心構えというか、やはりそういった生産性を上げるということに対しての理解も必要だと思うんですね。その辺のことについて、いろいろな方策はありますけれども、連携していくということで、漁師さんのそういった気持ちの向上であるとか認識の向上であるとか、この辺はどうお考えなんでしょうか。

森政府参考人 お答えします。

 先ほど大臣政務官の方からも御答弁申し上げましたとおり、日本の漁業というのは非常に多様でございます。お配りいただきましたアイスランドですとかノルウェーですと、非常に大型のまき網ですとか沖合底引きが中心ということでございますので、一人当たり、一隻当たりの生産量も大きいということでございますが、日本においても、沖合底引きですとかまき網漁業については、これと匹敵するような一人当たりの生産量、一隻当たりの生産量というのがありますし、一方で、沿岸においては、様々な、小規模な漁業も含めていろいろな取組が、漁業が行われているということでこういった数字の差になっているという状況でございます。

 先ほど政務官が御答弁申し上げましたとおり、そうしたような漁業の種類に応じた生産性向上の在り方、意識改革の在り方というのはあろうと思います。

 特に沿岸の方につきましては、先ほど申し上げた、今近くに来ている魚をしっかりと捕ってしっかりと売っていく、バリューチェーンの中にどう乗せていくかといったことが非常に、大変重要になっていると思います。今、特に沿岸漁業者の方々も、いろいろ、どう売っていくかという点については大変意識を高めつつあるという状況でございます。

 海業といった取組もそういったものの一環でございますので、そういった意識の向上、いろいろな形で我々、漁協ですとかあるいは県の水産関係組織なんかとも連携をして、漁業者の意識が更にいろいろ広がっていくように、あるいは高まっていくように、後押しをさせていただければというふうに思っております。

掘井委員 ありがとうございます。

 大間事案のようなことが今後起これば、国内の資源管理の実効性が損なわれていくわけであります。それだけではなく、我が国の漁業管理に対する国際信用の失墜ということで、漁獲枠の拡大ももしかしたら認められなくなる可能性もあります。しっかりと監視強化を行いつつ、同時に生産性も向上させるということが必要ではないかなと思っております。

 そして、やはり、太平洋のクロマグロの親魚の資源量が大きく回復すれば我が国の漁獲量が増えるということであります。好循環をつくるために、水産庁の皆さんには是非頑張っていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

    〔伊東(良)委員長代理退席、委員長着席〕

野中委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 法案の審議に入る前に、能登半島地震の漁業被害対策について質問します。

 石川県の奥能登四市町、珠洲、輪島、穴水、能登で、今年度、県立高校の入学者数が前年度比二三・五%減となりました。小学校は三割近く、中学校は二割以上減少しています。

 輪島港を始め広範囲で地盤隆起が起こり、海に漁に出られない状況が長く続いています。若い世代の多い漁業を早く回復させていかないと、過疎地はもっと深刻になってまいります。

 まず、地盤隆起の対策についてお伺いします。

 水産庁の漁業地域復旧・復興技術検討会では、沖に港を移す沖出しや海底の掘削、しゅんせつが検討されていると聞いています。

 五か月たちました。大事なのは、いつになったら港は再開されるのか、出漁はいつからできるのか、展望を示すことではないでしょうか。方向性はいつ示されるのでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 石川県内の漁港の復旧につきましては、二十漁港で応急工事を実施しているほか、国も協力をいたしまして、県が港の復興協議会を設置して復興方針の検討を進めているところでございます。

 また、議員御指摘のとおり、国は、有識者によります技術検討会を設置をいたしまして、地盤隆起等による被害を受けた漁港の復旧復興の技術的課題、方法、手順などを取りまとめて、七月中に県の復興協議会の方に提示をするというふうにしたいと考えております。

 引き続き、漁港施設等の仮復旧を進めながら、暫定的にも漁業の再開が進むように、県、関係市町等と連携しながら取り組んでいきたいというふうに考えております。

 ただ、具体的な見通しという御指摘につきましては、なかなか、漁港の復旧につきましては、なりわいの場としての漁港、漁場、それから生活の場としての漁村集落、これを一体的に考えていく必要があるという面もございます。やはり、地元の皆様とよく議論、対話をしていくことが必要だと思っておりますので、県とも非常に調整を図りながら丁寧に対応していきたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 私も地盤隆起、四メートルのところも見てきました。これはなかなか大変なことだと思います。だからこそ、国が先頭を切って頑張っていただきたい。そして、早くロードマップを示せるようにしていただきたいと思います。

 二月の予算委員会で、私の質問があったんですけれども、坂本大臣から、能登半島の漁業者には十分な生活ができるよう対応してまいりますという答弁がありました。

 漁業者の生計は維持できているのでしょうか。漁業再開への漁業者の意欲を継続できる状況になっているでしょうか。被災漁業者の経営体ごと、また個々人の共済加入状況はどうなっているでしょうか。それらの検証と対策について大臣にお伺いします。

坂本国務大臣 農林水産省では、今般の能登半島地震への対応といたしまして、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージを取りまとめ、そして被災された漁業者への必要な支援等を措置しているところであります。応急復旧を行った施設や、船体損傷がなく航行可能な漁船等を活用いたしまして、定置網漁、そして底引き網漁等が再開をしているところでございます。

 一方で、漁に出られない漁業者の方々に対しましては、漁業共済の早期支払いを行うとともに、漁業者の生活を支えながら漁場環境を回復するために漁業者が取り組む活動等への支援をしているところでございます。他の漁船や他地域の漁業者に雇用されて行う研修に係る支援なども行うこととしております。漁協の支所ごとにおける説明会の開催、それからホームページへの掲載などや水産庁現地支援拠点を活用いたしまして、漁業者の方々への周知を図ったところでございます。

 具体的には、石川県の七尾市、それから輪島市等の各地域におきまして、漁場の環境を把握するための調査や漂流、堆積物の除去の取組が行われているとともに、研修支援の取組を活用いたしまして、被災された輪島市、珠洲市等の漁業者が他地域や他漁船に受け入れられているところでございますので、一日も早い再開に向けて、地元に寄り添って対応していきたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 水産庁、経営体ごとの漁業共済の加入についてはどうですか。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 農林水産省におきましては、漁業共済の加入状況につきまして、経営体ベースで把握できるように対応を始めているところでございます。

 具体的には、二〇二三年漁業センサスにおきまして、新たに漁業共済の加入状況についての調査項目を追加をいたしました。

 加入するかどうかということの判断は、あくまでも経営体としての判断ということになりますけれども、経営リスク低減の観点からは漁業共済を一層活用していただきたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 初めて経営体ベースの把握をするという答弁がありました。ずっと求めてきましたけれども、これは早く出していただきたいと思います。そうじゃないと、共済が救済制度になっているというところの検証ができないわけですよね。進めてください。

 それから、法案に入ります。漁業法改正案について質問します。

 以前、質問で私は取り上げましたけれども、二〇一九年にテレビ東京の番組「ガイアの夜明け」でクロマグロの洋上投棄が報道されました。まき網でごっそりとクロマグロを捕って、その網の下にあったマグロが重みで死んでしまったんですね。それを海に捨てているという告発番組だったんです。千本上がったら、四、五十本は海洋投棄されていたという話でした。

 水産庁はこの件について調査を行いましたか。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の報道につきましては、具体的な船名や日時等が不明でございまして、報道側からも個人や船名等を特定する情報は得られなかったこともありまして、その後の調査では事実関係を確認することができませんでしたけれども、まき網漁業者に対しましては、洋上で漁獲された個体が死亡していたという状態の場合には、その後どう処置したかということにかかわらず、その数量を採捕したものとして報告するように繰り返し指導を行っているという状況でございます。

 現時点まで同様な情報は寄せられておりませんけれども、仮に今後、同様な情報の提供があった場合には、しっかりと調査を行ってまいることとしております。

田村(貴)委員 もう映像は御覧になったと思いますよ、水産庁の皆さん。私もびっくりしましたよ、こんなことがあっていいのかと。

 どういう調査をしたんですか。誰にどういうヒアリングをしたんですか。お答えください。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 その当時、我々の方といたしましては、関係する漁船が、恐らく日本海を根拠地とする、日本海で水揚げをしている大中型まき網漁業だろうというふうに想定をいたしまして、関係する組合ですとかあるいは漁船の方にヒアリングをしたという状況でございます。

 ちょっと現時点で詳細をお答えするということは難しゅうございますけれども、その後、事あるごとに、総会ですとか資源管理の打合せの際に、皆さん分かっていますよねということで、指導を繰り返しさせていただいているという状況でございます。

田村(貴)委員 恐らくもう特定できたと思うんですよね。ちゃんと対応していただきたいと思います。

 誰も見ていない洋上での投棄対策というのは、水揚げ後の検査や報告徴収だけでは防げません。

 水産庁は、当時の答弁で、今後、改正漁業法に基づき数量管理を基本とした資源管理を実施していくに当たっては管理の透明性の確保が重要と考えており、我が国としてどのような取組が可能か、検討を進めてまいりたいと述べました。

 先ほど、立憲民主党の山田議員の質問に対して、監視は必要だというふうにお答えになりました。だったら、大中まき網、この船へのオブザーバーの乗船とか、それから監視カメラ、こうした導入はあってしかるべきだと思いますが、ちゃんと検討されていますか。

藤田政府参考人 委員御指摘のとおり、数量管理を基本といたしました資源管理におきましては、正確な漁獲量の報告等が重要であるというふうに考えております。

 そのため、令和二年十一月の議論以降、まず、各種機会を通じまして、死亡個体は一匹残らず水揚げして、TAC報告を行うよう繰り返し指導いたしました。さらに、新たな取組といたしまして、令和四年から、同漁業のクロマグロ大型魚の主要な陸揚げ港である境港におきましては、陸揚げごとに魚倉内に漁獲物が残っていないかなどの検査を行っております。さらに、コロナ禍の影響で一時期停止をいたしておりました公海域での操業に対するオブザーバー乗船も再開をしているという状況でございます。

 引き続き、大中型まき網漁業におけるクロマグロの資源管理が適切に行われるように取り組んでまいります。

田村(貴)委員 洋上の漁獲の公正公平さを客観的に監視する、検証していく、この手だてがとにかく求められます。急いで進めてください。

 沿岸で起きたTAC報告義務違反、これは大間でしたけれども、昨年に起こったことですね。昨年起こったことなのに、今度、すぐに法改正で罰則を強化するということです。資源管理については、四年もたっているのにまだ検討している段階だと。

 これは独自にやれないという理由はどこにあるんでしょうか。

森政府参考人 まず、大間の案件につきましては、令和三年に発生した事案ということでございます。

 その上で、御指摘の洋上監視の強化というものにつきましては、先ほど来次長の方から答弁をさせていただいておりますが、今、WCPFCにおきまして、公海における操業の一部についてオブザーバー乗船が義務づけられていることを受けまして、大中型まき網漁業についても乗船の受入れを実施をしているということでございます。

 また、今後電子モニタリングといったものが導入できるかどうかといったことを含め、WCPFCにおける監視強化の議論の進捗等も踏まえながら検討していきたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 検討、検討と言う前に、やろうと思ったらできることじゃないんですか。

 本法案は、海洋投棄は対象になっていないんです。しかし、実質的に沿岸だけを対象にする罰則強化になっています。これは問題ではないでしょうか。

 令和六年度管理期間における大中型まき網のTAC数量は四千二百トン、大中まき網は二十船団以上で四千二百トンです。沿岸漁業者への割当ては、全国に約二万隻あると言われていますけれども、二千三百九十三トンにすぎません。TACの設定が二〇一五年から二〇一七年の実績を基に算定しているからであります。

 この時期というのは、二〇一五年から二〇一七年というのは、まき網の日本海でのマグロ操業が急激に増えた期間であり、卵を抱えた抱卵マグロまで捕っていました。沿岸漁業者が何度も抗議の声を上げていました。この時期です。

 沿岸漁業者がマグロが捕れなくなった時期を算定根拠に据える一方で、抱卵親魚まで捕りまくる大手まき網にはたくさんの枠を与えるというのは、大臣、これは余りにも不公平だと沿岸漁業者も言っています。私もそのとおりだと思います。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 太平洋クロマグロ漁獲枠につきましては、水産政策審議会の下に設置されましたくろまぐろ部会におきまして、沿岸、沖合の配分等への関係者からの意見を踏まえて取りまとめたものであります。配分の考え方におきましては、沿岸漁業へ配慮する考えが示されているところでございます。

 今後、増枠の可能性が出てきます場合には、再度くろまぐろ部会を開催をいたします。そして、配分の考え方の見直しを行うことになります。今後も、沿岸漁業への配慮等も行いながら、適切な資源管理に努めてまいりたいというふうに思っております。

 なお、これまで沿岸に配慮した考え方に基づき配分してきた結果、例えば、令和六年管理年度の大中型まき網の小型魚の枠につきましては、基準年である二〇〇二年から二〇〇四年の平均漁獲実績の五分の一にまで減少をさせているところでございます。

田村(貴)委員 大臣、もう一問。

 そうしたら、十二月のWCPFCで日本の漁獲枠が増加した場合には、沿岸漁業者に優先的に配分してしかるべきだと思いますが、水産庁、大臣、いかがですか。

森政府参考人 お答えいたします。

 まずは、この増枠が実現できるようにしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 さらに、増枠ということになる場合には、くろまぐろ部会の方での配分の考え方、これにつきましての見直しを行うということになります。その際には、これまでの経緯あるいは資源管理の努力等も踏まえながら、沿岸漁業への配慮を行いながら、適切な資源管理というものが実現できるような配分という形にしていきたいと考えております。

田村(貴)委員 大間の漁業者からも聞き取りをしたんですけれども、割当てが大体一隻当たり一・五トンなんですよ。一年通してキロ四千五百円ぐらいですから、年間の収入が六百七十八万円なんです。でも、燃料代とか、それから委託販売の手数料などを入れると、最低でも五百万円かかる。規模が大きくなると一千万円を超える。漁業者は何の補償もないし、漁済は高い掛金に見合った見返りがない。こんな状況では違反者が出るとさんざん言ってきたけれども、案の定そうなったというふうに述べておられます。

 水産庁は、漁業者を始めとする関係者の理解と協力を得ながら、新たな資源管理に当たっていくと言っています。

 卵を抱えた抱卵親魚がたくさん捕獲されている、そうした状況については放置していく。しかし、沿岸漁業者の漁獲拡大には応えない。その下で、罰則強化の法改正に漁業者たちの理解は得られると感じておられますか。罰則強化について、県や漁協に報告しなかったことで、倍の一年以下にするという法定刑は、これは重過ぎると言わざるを得ません。

 元々、未報告の流通、販売は違法ではありませんでした。むしろ、水産庁が独自の販路開拓として推奨してきたものであります。それを、知事命令違反などと同等の一年以下にするなどというのは、これはやはり過重であります。指導や取締りの強化を図れば十分ではないかと考えますが、いかがですか。

森政府参考人 お答えいたします。

 太平洋クロマグロにつきましては、厳しい漁獲枠の設定の中で、全国の漁業者がこれをしっかりと守るということを通じて、資源の回復が図られてきたところでございます。

 それを、TAC報告違反といったような形で、そうした全国の漁業者の努力をないがしろにしかねない行為が行われることについては、やはり一定の抑止力の強化というものが行われるべきであるということは我々としても考えておりますし、そのことは全国の漁業者におかれても理解はいただけるものというふうに考えております。

田村(貴)委員 水産流通適正化法について、これは、生産段階で適正証明を求める完全なトレーサビリティーは漁業者や流通業者などに甚大な負担を課すことになるから、これを回避したのが元々の法の趣旨でありました。

 しかし、今回、事実上、採捕の適法性を確認することになります。こうした実務を設けていくことについて、漁業者とか流通業者にどのような負担が生じると予想されますか。予想されることについてお答えください。

野中委員長 時間が来ておりますので、答弁は簡潔に願います。

森政府参考人 今回の、情報の伝達、記録、保存の義務づけについては、様々な漁業があるという実態を踏まえて、現在、商慣習上発行されている取引伝票、タグ等を用いて、義務を履行できる仕組みとする考えでございます。

 やはり、いろいろなシステムの違い等、システム改修などを行う必要があるといったような可能性はあると考えておりますが、これに対しましては、現場の負担軽減に資するよう、水産庁といたしましても、様々な実証事業を現在、令和五年度から行っている状況でございます。

田村(貴)委員 時間が来ましたので終わりますが、罰則も、知事命令違反と同等の一年以下にする、これも重過ぎる。このことを指摘して、質問を終わります。

野中委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 私からも、田村委員に続きまして、大間事案について、冒頭お聞きしたいと思います。

 二〇二三年二月に、漁業者と産地の仲買人が共謀してTAC報告を偽ったとして関係者が逮捕された大間事案ですけれども、国を挙げて資源管理に取り組んできたにもかかわらず事案が発生した原因は何だと考えているのか、農水省の見解を伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 太平洋クロマグロにつきましては、WCPFCにおいて国際的に決定された厳格な漁獲上限を遵守するために、多くの漁業者は適正にTAC報告を行っているところでございます。

 こうした中で、御指摘の事案につきましては、特に大型の太平洋クロマグロの個体の経済価値が高く、TAC報告をあえて行わないことで、漁業者やこれを仕入れて流通させる事業者が多額の利益を得られるといったようなことが、こうした事案の大きな誘因になったのではないかというふうに考えているところでございます。

長友委員 更にちょっと教えていただきたいのが、大間事案に関わった漁師の皆さんは、どういう漁法でやられていた方々でしょうか。まき網漁でしょうか、それともはえ縄漁でしょうか。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 青森県の方で管理をしております、ひき縄ですとかはえ縄といった漁法だというふうに認識をしてございます。

長友委員 なぜTAC報告を偽ろうとしたか。これは、漁獲の割当てが、地元の皆さんからすると不満があったからだというふうに私は理解するわけですね。でなければ、きちんとみんなで資源管理を守っていこうと本来はする作用が働いていたと思うんですが。私の地元の漁師の皆さんにも話を聞くと、やはり割当てに対する不満というものが、非常に大きい声を聞いております。

 例えばこんな声を聞くわけですね。過去はオリンピック方式で、枠に達するまで早い者勝ちでクロマグロを捕っていた。しかし、今、一定期間の過去の漁獲量の実績に応じて割り当てられた。その辺りの経緯は先ほど田村委員も御指摘いただいておりましたけれども、その際、まき網漁はそもそも漁獲量が多いため多く割り当てられて、はえ縄漁をやっていた人は少なく割り当てられた。しかし、少なく割り当てられた漁師さんたちも、クロマグロを捕ろうと思えば、もっと本当は捕れるんですね。だから、その期間の漁獲量をいわゆる実績というふうに見られるということに対しては納得いかない、そういう声だと思うんですね。

 余りにも少ない割当てに不公平さを感じていて、一時的な実績のみに基づいた割当ては不満だと、はっきり、そういうふうな声がたくさん出ております。ある漁師さんだと、年間数百キロくらいしか割当てがなくて、一回漁に出たらそれだけで枠を超えてしまう、それぐらい少ないんだ、そういう訴えも聞いているところなんですね。

 つまりは、割当てが少ない漁師の皆さんたちからの不満を、なかなか政府としても対処できていないことに起因するんじゃないかというふうに思うわけです。

 もし、大間事案の前に、今回の改正案の内容が措置されていれば、大間事案を未然に防ぐことができたというふうに考えるのか、見解を伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 本法案におきましては、TAC報告事項への本数の追加、漁業者に対するTAC報告の基となる情報の保存の義務づけでございますとか、漁業者、流通業者に対する採捕漁船名、個体重量等の情報の伝達、保存の義務づけなどの措置を行うこととしております。

 また、これらの法改正と併せまして、今年四月には、取締り体制の強化ということで、漁獲監理官の新設も行ったところでございます。

 こうした手当てによりまして、大間事案のようなTAC未報告事案の再発防止のための抑止力は大きく高まるとともに、違反事案が疑われる場合には、より的確に取り締まることができるようになるものというふうに考えているところでございます。

長友委員 大きく高まるということで、現場の皆さんも、本来なら違反したくないんですよね。ない前提で、みんなで努力していこう、自分たちの信頼される漁法をやっていこうということに努力をされておりますので、そこに対して、違反者を出しにくい、出さないような配慮ということもしっかり政府が取り組むべきだというふうに思いますので、その点、お願いしたいと思います。

 今回の改正案について、特別管理特定水産資源の対象として当面は太平洋クロマグロの大型魚のみが指定されるということが想定されておりますけれども、今後、特別管理特定水産資源に指定される可能性がある魚種等がほかにあるのかということにつきまして、見解を伺います。

森政府参考人 今般の大間事案の発生につきましては、やはり個体の経済的価値が高いということで、少しでも多く漁獲する誘因が働いたということだったというふうに我々としては理解をしております。

 これを踏まえまして、特別管理特定水産資源の指定に当たりましては、個体の経済的価値が高いことを要件とし、かつ、国際的な資源管理の枠組み、資源評価の状況ですとか、流通段階で個体単位で取引が行われているかどうかなどを勘案するということとしているところでございます。

 具体的な指定手続は本法案の公布後に行うことになりますが、現時点で太平洋クロマグロの大型魚以外について指定を行う必要が生じている資源はないというふうに考えております。

長友委員 今のところは太平洋クロマグロのみということで、承知をいたしました。

 続きまして、違法・無報告・無規制による、いわゆるIUU漁業について質問させていただきます。

 WWFジャパンの調査によりますと、日本市場にIUU漁業由来の水産物が流入しているリスクは中、高程度でありまして、ウナギ類、ヒラメ・カレイ類、サケ・マス類でそのリスクが高いというふうに指摘をされています。

 また、別の調査によりますと、日本が輸入する上位九か国で評価したところ、二〇一五年に輸入した天然水産物二百十五万トンの二四%から三六%、金額にして千八百億円から二千七百億円が違法又は無報告漁業によるものという推定が出ております。

 IUU漁業が依然として蔓延している理由について、水産庁としての見解を伺います。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のように、IUU漁業につきましては、無許可ですとか、報告をちゃんとしない、あるいは虚偽報告をする、地域漁業管理機関で定めた漁獲上限以上の漁獲をするといった、国内法ですとか国際法のルールに従わない漁業活動のことを指しているということでございます。

 国連食糧農業機関、FAOの、IUU漁業を防止、抑制、廃絶するための国際行動計画におきましては、IUU漁業に対処する既存の国際的手段が効果的でないのは、当該国際手段に参加しない国が抜け穴となっていることや、全ての参加国の取組が十分とは言えないことが原因であるというふうにされてございます。

 我が国といたしましては、関係国と連携しながら、IUU漁業の撲滅を目指して、地域漁業管理機関ですとか、FAOの違法漁業防止寄港国措置協定等の取組の実施を主導しているところでございます。

 先ほど委員が引用されましたWWFの調査の報告書でございますけれども、同論文におきましては、日本へ輸出した各国の漁獲物が違法である、あるいは無報告漁業によるものかを推定する際に幾つかの仮定を置いてございます。一つは、漁獲枠が設定されている場合には小型魚を投棄するインセンティブが発生して、相当量の投棄が生じている、二つ目は、船員が航海中に食料として消費した分が無報告である、三つ目は、新聞記事において漁業者が密漁に関して発言しているといったことを前提としておりまして、リスクを過大に評価している可能性があるというふうに考えてございます。

 また、近年におきましては我が国の輸入業者の方もIUU漁業由来の水産物を輸入しないように努めているということも、まだ考慮をされていないというふうなことだと認識をしてございます。

長友委員 WWFジャパンの調査がリスクを過大評価している可能性もあるという御指摘で、その点は私もしっかり見ていきたいと思いますけれども。

 別な調査によると、IUU漁業による被害額、これは日本円に換算すると一兆一千億円から二兆五千八百四十億円というふうな推定の調査もありますが、この値が日本の水産物の生産額とほぼ同等の値になってくるんですね。それにもかかわらず、漁獲量でいうと日本の生産量の二・五倍から二・九倍に及んでいる。

 このことから分かるとおり、IUU漁業由来の水産物は安値で販売され、その分だけ正規の漁業者の利益を損なっているということにつながっていくわけでございますが、日本政府として、IUU漁業撲滅についてどのような取組、働きかけをしているのかということについて教えてください。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 我が国は、IUU漁業を水産資源の持続可能な利用に対する深刻な脅威と認識をいたしまして、国連サミットで採択されたSDGsや、G20の大阪会合首脳宣言、あるいはG7の広島サミット首脳コミュニケ等におきまして、IUU漁業を撲滅する方向へコミットをしてございます。

 具体的な取組といたしましては、地域漁業管理機関における議論を主導いたしまして、IUU漁船リストへの登録ですとか公海における乗船検査の仕組み等の国際的な漁業管理体制の構築及びその実施に努めるとともに、国連食糧農業機関の違法漁業防止寄港国措置協定に基づきます、IUU漁業に従事した外国漁船の寄港禁止措置の実施及び非加盟国への加盟を促す働きかけを行っているほか、IUU漁業に対する補助金を禁止するWTO補助金協定を締結しておりまして、これらの取組を通じてIUU漁業の撲滅を目指してございます。

長友委員 分かりました。

 大臣にお聞きしたいと思いますが、日本が率先してIUU漁業で捕られている魚を国内で流通させない、そういう取組をしっかりと示すことで、ひいては大間事案のような、再発防止につながると考えますが、大臣の見解を伺います。

坂本国務大臣 水産資源の適切な管理を進める上で、IUU漁業の廃絶、これは喫緊の課題であると考えております。我が国といたしましてもIUU漁業廃絶に向けた国際的な取組を支持し、そして積極的に取組を進めているところでございます。

 このため、水産物の国内流通及び輸出入の適正化を図るために、令和二年に水産流通適正化法を制定をいたしました。国内において違法かつ過剰な漁獲が行われるおそれの大きいアワビ、ナマコ等の水産資源につきまして情報伝達等を義務づけますとともに、国際的にIUU漁業のおそれの多い水産資源につきまして、輸入時に外国政府が発行する証明書の添付を義務づけたところでございます。

 さらに、本法案におきまして、特に厳格に漁獲量の管理を行うべき水産資源につきまして、漁業法及び流適法を改正をいたしまして、生産段階、流通段階で新たな規制措置を講じることで、大間事案のような未報告漁獲物の国内流通の再発防止を図っていきたいというふうに考えております。

 これらの措置を通じまして、我が国といたしましてもIUU漁業撲滅の取組を全力で進めてまいります。

長友委員 日本として、水産資源国として、是非しっかりと取組をしていただきたいんですが、今、IUU漁業について問題視されているのが人権の問題だったりします。乗組員や漁業監視員、それから加工場等での労働者の健康や安全、そして人権問題がいろいろと上がってきております。

 特に、遠洋マグロ漁船などの外国人の乗組員、多くはインドネシアなどの東南アジアからの労働者の皆さんだったりしますけれども、航海中に不十分な食事や休息の中、長時間労働を強いられる、若しくはパスポートの没収や暴行などの行為も行われているという事例が、これは日本とは限りません、海外の船の可能性もありますが、報告をされています。中には、航海中に死亡して、海洋に遺体を投棄した事例というものも報告が上がっているということです。

 また、マグロ、カツオ類の遠洋漁業では、漁獲や混獲などのデータを取得するため地域の漁業管理機関に派遣された漁業監視員が乗船してチェックしていますけれども、そのような方々が航海中に行方不明になる事例も世界的には報告が上がってきております。

 タイの養殖エビの加工場では児童労働が高い頻度で行われているとか、就学の機会が失われているだけでなく、火器の取扱いなどの危険な作業や長時間労働に従事している、そういう報告も世界ではありますので、日本としてIUU漁業についてしっかりと排除していくという姿勢をメッセージとともに発信して、日本の水産資源を守っていただきたいと思います。

 質問は以上で終わります。

野中委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 最後、十五分、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、大臣に、漁業と自由貿易の関係についてお伺いをいたしたいと思います。

 私は昔、WTO交渉とかそういうことをやっていて、自由貿易の分野に携わったことが長かったんですけれども、最近思うのが、漁業というのは自由貿易と本当に整合的であり得るのかということについて、非常に疑問を持つことがございます。大臣の御所見を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガットにおきましては、締約国が実施することができる関税以外の貿易措置として、水産物を含みます有限天然資源の保存に関する措置等が位置づけられているところであります。

 こうした中、我が国では、現在でも、地域漁業管理機関によります国際的枠組みに基づきまして管理が行われているマグロ類等の輸入に際しては、IUU漁船によって捕獲された漁獲物ではないことの確認を行っておりますほか、国際的にIUU漁業のおそれの多いサバ等につきましては、水産流通適正化法に基づきまして、適法に採捕されたことを示す外国の政府機関発行の証明書等を添付してあるものでなければ、輸入してはならないこととしているところであります。

 漁業の持続的発展のためには、まずは各国が適切に資源管理に取り組むことが重要でありまして、我が国といたしましては、地域漁業管理機関での議論を始めといたしまして、資源管理の推進に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

緒方委員 今、地域の様々な機関を通じていろいろな規制をかけているということで、ここまで来ると、何となく、資源管理の観点から、自由貿易と本当に整合的であるのかなということについては、これからも問題提起をしていきたいと思います。

 続きまして、WTO漁業補助金協定についてお伺いをしたいと思います。

 この協定、先ほどから出ているIUUとかを禁止したりとか、いろいろあるんですけれども、第四条1において、乱獲状態にある資源に関連する漁業に対する補助金は禁じられているんですね。

 しかしながら、その下、四条の3では、資源管理のその他の措置により資源回復を促している場合、又は補助金自身が回復を促進する場合には、補助金供与が許されるというふうになっております。

 農林水産省に事前に聞いたところ、この規定によって、日本は、この協定が発効しても何らの制度変更を迫られることはないということでございました。

 農林水産省にお伺いしたいと思います。

 これは、乱獲につながる補助金を出していたとしても、それをその他の措置で補えば問題ないという理解なのでしょうか。水産庁。

森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の漁業補助金協定につきましては、WTO第十二回閣僚会議で採択をされ、昨年の通常国会で御承認をいただいたということで、現在、発効に向けた手続が各国で進められているという状況でございます。

 御指摘のとおり、同協定の中では、乱獲状態にある資源に関連する漁業に対する補助金を原則禁止としておりますけれども、別途、資源回復のための措置が実施される場合に限って、補助金の交付が可能ということでございます。

 先ほど御指摘のあったとおり、我が国としては、漁業法等に基づいて適切な資源管理に取り組んでいるところでありまして、本協定が発効した場合でも、現在、禁止される補助金はないというふうに考えているところでございます。

緒方委員 もう一度確認なんですけれども、現在、乱獲につながる補助金を出しているという事実がないということなのか、出しているんだけれども、ほかのところで補填をしているので問題ないということなのか、いずれでございますでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 まず、漁業補助金協定が採択をされ、承認をいただいたという状況で、まだ発効されていないという状況でございます。

 そうした中で、乱獲状態にある資源に関連する漁業に対する補助金というものの具体的な対象というものについての、定まった解釈といいますか、定義というものもないという状況でございます。

緒方委員 なかなか難しい立場だなというふうに思いました。

 つまり、今はまだ乱獲状態にある資源に関する漁業に対する補助金を出しているかどうかということについては明言できないということでよろしいですね。長官。

森政府参考人 御指摘のとおりでございます。

緒方委員 この協定、先ほどからあるとおり、まだ発効に必要なだけの国の数がそろっていないということで発効していないんですが、この協定、発効後四年で過剰な漁獲能力につながる補助金の禁止等についての包括的な合意がなければ、そもそも失効するというふうに書いてあります。

 協定においてIUUが禁じられて、そして乱獲補助金についても規制がかかっているんですが、この過剰な漁獲能力につながる補助金に関する日本の考え方についてお聞かせいただければと思います。長官。

森政府参考人 お答えいたします。

 漁業補助金協定につきましては、第十二回WTO閣僚会議で合意できなかった、御指摘の過剰漁獲能力、過剰漁獲につながる補助金と資源管理措置等の追加的規定に関する交渉が、現在もWTOで行われているという状況でございます。

 我が国といたしましては、資源管理措置が適切に実施されていれば必要な補助金を供与できるとの規定が確保されるよう、交渉に当たっているところでございます。

緒方委員 それは、過剰な漁獲能力につながる補助金をやめるということではなくて、出せるような、そういう道を探るというのが日本の交渉ポジションだということでよろしゅうございますでしょうか。長官。

森政府参考人 御質問が非常に複雑で難しいところでございますけれども、今議論されている議長テキストでは、過剰漁獲等につながる補助金は原則交付を禁止ということでございますが、資源管理措置の実施により資源が持続的な水準に維持されることを、合理的な説明をした場合には、こうした補助金も交付可能ということでございます。

 過剰漁獲等につながる補助金というものについては、例えば漁船の建造だとか船舶の機械、装置等に対する補助金など、非常に広く今の議長テキストで定義をされているところでございますので、そういったものが全面的に禁止をされるということではなくて、資源が持続的な水準に維持されることが説明できる場合にはこうした補助金も交付可能というような整理でのテキストとなっております。

緒方委員 しかし、今言われたようにきちっと管理できるのであれば、そもそも過剰な漁獲能力につながる補助金ではない可能性が高くて、もう一度お伺いをさせていただきたいと思うんですが、日本は、過剰な漁獲能力につながる補助金をやめるというポジションではないのでしょうか。長官。

森政府参考人 例えば、資源に影響を与えるような過剰な漁獲等につながる補助金については、日本としても、まさに漁業補助金協定の交渉の目的がそれを規制するということでございますので、そのような補助金については規制の方向でということについては日本としても同じ立場でございますが、一方で、先ほどから申し上げております、資源が持続的な水準に維持される、資源管理、資源の回復につながるようなものであれば、それは禁止の対象になることはおかしいという立場で主張しております。

緒方委員 この件は、結構、これから更に農林水産の分野で重要なテーマになっていくと思いますので、WTO漁業補助金協定、まだ発効しておりませんけれども、注意していただければと思います。

 次に、TAC対象の魚種についてお伺いしたいと思います。

 この魚種については、二〇一八年のクロマグロ以降、ちょっと停滞していた感があったんですが、今年からカタクチイワシとウルメイワシの二魚種を追加いたしました。ロードマップでは、令和七年度までに漁獲量ベースで八割をTAC管理にするということで書いてあります。

 これは大臣にお伺いさせていただきたいと思いますが、この目標達成に向けた決意をお伺いしたいと思います。大臣。

森政府参考人 農林水産省におきましては、令和二年に施行された漁業法に基づきまして、TAC管理を基本とする資源管理の取組を推進しております。

 TAC管理対象資源、現在四十一資源ということでございますが、御指摘のカタクチイワシなどについても、TAC管理の開始に向けて準備を進めているということでございます。

 御指摘がありましたロードマップにおきましては、TAC管理による、漁獲量ベースで八割という目標を掲げているところでございますが、現時点において、TAC管理が開始されている資源の割合は六・五割ということでございます。

 今後とも、漁業者の方々、関係の方々とも議論を進めながら、その拡大を目指しているところでございます。

坂本国務大臣 今、長官も言いましたように、漁業者を始め、関係者の方々、それぞれいらっしゃいます。そういった方々の御協力を得ながら、今後、しっかりと資源管理に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

緒方委員 今、長官からありました。現在六五%なんですね。あと一五%をここから令和七年度末までということになると、結構な作業の迅速化が必要だと思います。頑張っていただければと思います。

 次に、先ほどから幾つかテーマになりました、TAC枠の個々の漁業者への割当て、IQについてお伺いしたいと思います。

 これは実績ベースで行っていると言っているんですが、実績ベースでやってしまうと、現状の漁獲量をそれぞれの個人に対して固定する可能性があって、新規の漁業参入者にとっては不利になる可能性があるんですね。場合によっては、利権化する可能性もあると思います。

 枠の割り振りについては、先ほどオリンピック方式というのが長友議員の方からもありましたし、場合によっては、これはうまくいくかどうか分からないですけれども、オークションで割り振るというやり方だってあると思うんですね。大間の事案についても、枠の割り振りに問題があったという指摘もあります。今後、この枠の振り方について様々な取組をしていくべきではないかと思いますが、水産庁。

森政府参考人 お答えいたします。

 漁獲可能量、TACの管理につきましては、まず、TACを都道府県及び大臣管理区分ごとに配分をした上で、このうち都道府県につきましては、知事が、漁獲量の総量による管理、又は船舶ごとに漁獲量を割り当てる管理のいずれかを選択して、数量管理を行うという仕組みになっております。

 現時点におきましては、各都道府県において総量による管理が行われておりまして、各地域の漁業の実態に応じた数量管理の方法が取られております。

 例えば、青森県のクロマグロの管理につきましては、青森県への配分数量を、青森県の資源管理方針において漁協に配分するということを定めておりまして、各漁協ごとの配分数量を定めております。その上で、各漁協において、総量による管理、又は漁業者ごとに割り当てる管理というのが行われている状況でございます。

 沿岸漁業につきましては、非常に様々な漁業が営まれておりまして、これまで都道府県知事が免許、許可等を行って管理をしてきているということでございまして、このため、都道府県内の管理区分の設定、配分についても、地域の実情に即して、各都道府県がTAC制度の運用を行うということが現実的かつ効率的であるというふうに考えているところでございます。

緒方委員 最後に一問だけ。

 全く違うタイプの質問なんですが、かねてから問題意識を持っているウナギの稚魚の輸入についてお伺いしたいと思います。

 これは香港からの輸入がむちゃくちゃ多いんですね。だけれども、香港にはウナギの稚魚が育つ川は別にないわけでして、台湾から入ってきたものであることは過去の答弁でも農水省は認めています。密輸だと思われます。日本の仕組み、体制が外国に違法性のある活動をまき散らしている可能性が極めて高いということであります。

 私は、そういう状態ではなくて、きちっと、台湾と違法状態を解消するための協議を更に強化して、このような香港からの輸入といういびつな状態を早急に解消すべきだと思いますが、水産庁、いかがでしょうか。

藤田政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、台湾から相当量のウナギの稚魚が、まず、台湾は、資源保護を理由にウナギ稚魚の輸出を禁止してございます。一方で、台湾産のウナギ稚魚が輸出規制のない香港を経由して入ってきている可能性があるということでございます。

 今漁期のウナギの稚魚の輸入量を、貿易統計に基づきまして水産庁の方で試算をいたしましたところ、ニホンウナギと思われる輸入量の約九トンのうち八・六トンが香港からの輸入となっておりまして、これは主に中国で採捕されたものでございますけれども、台湾で採捕されたものも一部含まれている可能性があるということでございます。

 水産庁といたしましては、台湾側で行っております資源管理上の効果がない、あるいは規制の実効性が伴わない規制につきまして、香港経由の不透明な流通をつくり出しているのではないかということで、流通の正常化を図るために、日台間の直接取引が拡大できるよう働きかけを行っております。

 過去には、実は日本側も輸出を規制する時期を設けておりましたけれども、現在は、日本側が先行して輸出を規制する時期を撤廃いたしまして、台湾から直接日本に輸出できる期間が拡大できるようにということで、先方に迫っているという状況でございます。

緒方委員 終わります。

野中委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

野中委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、漁業法及び水産流通適正化法の改正案に反対の討論を行います。

 本法案は、大間のクロマグロを漁獲する沿岸漁民が未報告の脇売りに手を染めてしまったことを受け、これを取り締まるための罰則の強化、流通の監視の強化を図るものです。

 法案は、漁獲の未報告について、六か月以下の拘禁刑だった法定刑を倍の一年以下にしますが、これは、漁業法違反の刑罰としては、密漁や漁業許可違反の刑期に次ぐ重さであり、漁業調整委員会の指示に従わず、知事の命令にも従わなかった場合と同様の法定刑となります。

 未報告の流通販売行為は元々違法ではなく、むしろ水産庁が独自の販路開拓として推奨してきたものであり、漁業者には違法の認識は薄い行為です。これを同じ六か月以下の法定刑だった知事許可条件違反、漁業権の違法貸付け、漁業監督官への虚偽陳述などの倍の一年以下とするのは重過ぎます。違反を防ぐためには、指導や取締りの強化を図れば十分です。

 また、水産流通適正化法は、そもそも反社会的勢力による密漁品を生産の段階で摘発するのではなく、流通の過程であぶり出し、それまで密漁者だと分かっていても手を出し切れなかったものを流通から排除するスキームでした。

 漁獲そのものの違法を防ぐため生産段階で適法証明を求める完全なトレーサビリティーは、漁業者、漁協、行政、流通に甚大なコスト負担を課すことになるから、これを回避したのが法の趣旨だったはずです。

 にもかかわらず、今回の改正で一匹ごとに適正漁獲であることを証明するタグづけをさせ、それを解体するまで付随させていくのは、漁業者、流通業者共に負担が多過ぎます。まして、魚価が上がらない下で、流通コストだけを上昇させることが妥当とは言えません。

 そもそも、クロマグロに依存する沿岸漁民を違反行為にまで追い込んだのは、沿岸漁民の納得も補償もないまま一方的に行われた漁獲規制です。全国で生活にすら困窮する漁業者が続出すること、それゆえ違反者が出ることは想定されていたにもかかわらず、政府は何も対策を講じませんでした。

 加えて、大中まき網が日本海側で抱卵したクロマグロを一網打尽にしていること、また、大量に洋上投棄をしている内部告発、報道があっても看過し続け、沿岸漁民だけをターゲットに罰則、規制の強化を行うことは、到底沿岸漁民の納得は得られません。

 以上で討論とします。

野中委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

野中委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

野中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、古川康君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。渡辺創君。

渡辺(創)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して趣旨の説明に代えさせていただきます。

    漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  漁獲量が長期的な減少傾向にある中、将来にわたって持続的な水産資源の利用を確保するためには、適切な資源管理を進めることが重要である。不適切な流通事案の再発防止、我が国の資源管理制度に対する国際的な信用の回復に向けて、漁業者を始めとした関係者の理解と協力を得て今般の法改正を実効性あるものにする必要がある。

  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 特別管理特定水産資源を農林水産省令で定めるに当たっては、我が国水産業の実情を踏まえ、漁業者・漁業協同組合及び流通・加工業者の経営並びに地域経済に及ぼす影響について十分に配意すること。

 二 資源管理に取り組む漁業者の経営への影響を最小化するため、漁業収入安定対策事業やクロマグロ資源管理促進対策の更なる充実・強化に努めること。

 三 特定第一種第二号水産動植物等の譲渡し等の際に採捕に係る船舶等の名称、個体の重量等を記録・保存・情報伝達する制度の運用に当たっては、現場の関係者の過度な負担とならないよう、情報通信技術の活用の促進その他の必要な支援を行うこと。

 四 北太平洋まぐろ類国際科学委員会の資源評価を踏まえ、中西部太平洋まぐろ類委員会北小委員会等において、太平洋クロマグロの漁獲枠の拡大に向けて精力的に交渉を進めること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。

野中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

野中委員長 起立総員。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣坂本哲志君。

坂本国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

野中委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

野中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、大臣官房統計部長山田英也君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長長井俊彦君、林野庁長官青山豊久君、水産庁長官森健君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君、国土交通省水管理・国土保全局次長小笠原憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 今日の私の質問に際しまして、質問の順番を入れ替えていただきました野党各会派の皆様、御協力を本当にありがとうございます。

 今日、午前中は漁業法の質疑ということでございました。森は海の恋人という言葉があることは皆さん御存じのとおりだと思いますが、山が荒れれば川が荒れまして、川が荒れれば海が荒れる、若しくは、山が痩せれば川が痩せて、川が痩せれば海が痩せる、そういう言葉がございますが、森と海はつながっている、切っても切り離せない関係であるということで、今日はこの後、森林について質問をさせていただきたいと思います。

 日本独自の森林認証制度、SGECというものがありますけれども、国内の林業団体、環境NGOなどにより平成十五年に発足したもので、人工林の比率が高く、零細、小規模所有者が多いといった日本の実情に即した森林及び林産物の認証を行っております。

 このSGEC、林野庁と緑の循環認証会議がどのような連携を取っているのかについて、まずは教えてください。

青山政府参考人 お答えいたします。

 SGECを含めました各種の森林認証制度は、民間の第三者機関が、森林経営の持続性や環境保全への配慮等につきまして一定の基準に基づいて評価し、森林を認証する仕組みであり、持続可能な森林経営を支援する有効な取組と認識をしております。

 このため、農林水産省では、林野庁のウェブサイトにおきまして森林認証の取得や森林認証材の普及促進について情報発信を行っているほか、消費者の認知度の向上等に向けた活動についても支援対象としているところでございます。

長友委員 森林の認証、森林環境を持続可能なものにしていく、そういう森林経営を後押ししていただけるということなんですけれども、六月になりまして、森林保全を目的とする新税、森林環境税の徴収が始まりました。一人年間千円の、個人住民税に上乗せして集めて、税収は森林環境譲与税として自治体に全額が配分されます。林業の担い手の確保や公共施設の木造化などに充てられるということになっておりまして、譲与税は別の財源を使って二〇一九年度から配分されておりますけれども、主に都市部で使い切れない自治体が出るといった課題が明らかになっております。

 森林環境税の徴収対象は住民税を納める約六千万人で、税収は年約六百億円を見込むというふうに承知をしておりますが、自治体へは、私有の人工林面積、それから林業の就業者数、そして人口に応じて配分されるということなんですけれども、林野庁の集計では、二〇一九年から二〇二二年度に市区町村へ配られた千二百八十億円のうち、三九%の四百九十四億円が使われず、百七十三自治体は二二年度に全額を積み立てて翌年度に繰り越しているという状況でございます。

 そういうような現状があるわけですけれども、自治体側が森林環境譲与税を使ってSGEC認証を取得することはできるのでしょうか。SGEC認証を取得するための費用に森林環境譲与税を使うことはその目的に反しないのか、伺います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 森林環境譲与税につきましては、法律に定められました森林の整備及びその促進に関する施策の範囲内において、市町村の判断で幅広く事業を実施することが可能となっております。

 御質問のSGEC認証に関しまして、SGECを含む森林認証の取得に関する取組につきましても譲与税を活用している自治体があると承知しております。

 農林水産省としては、こういった事例も含めまして、自治体への情報共有を図ってまいりたいと考えております。

長友委員 SGECを始めとする認証制度を活用して、認証を取得するということは、認証された森林から産出された木材やその関連商品に認証マークをつける、そして供給者が明確に差別ができて、消費者は自らの意思でそれを選択して購入ができるということを仕組みとしてつくり出していくという試みでございます。サステーナブルな森林経営や環境保全活動を積極的にサポートできるということになってきます。

 認証製品は、製造過程や販売過程において認定を受けるためのステップを踏んでおりますので、どうしても価格が高い傾向にあります。また、審査にも時間がかかるため、中小企業ではどうしても認定取得のハードルが高いという声が聞かれております。

 しかし、自治体が森林環境譲与税を活用して地元の中小企業等の森林認証取得費用をサポートできるのであれば、大いに活用のしがいがあるのではないかと思いまして、質問をさせていただいた次第です。

 更にもう一点、伺います。

 省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量をクレジットとして国が認証するJクレジットの制度もありますが、例えば、東京都内の自治体が森林環境譲与税を活用して地方のJクレジットを購入する、そのようなことも問題はないのでしょうか。見解を伺います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、森林環境譲与税は、法律に定められた範囲で、市町村の判断で幅広く事業を実施することが可能というふうに申し上げました。

 Jクレジットにつきましても、創出に関する取組についても活用している自治体があると承知をしております。

 また、Jクレジットを購入するという取組につきまして、それが市町村におきまして幅広く住民の皆さんに御説明ができると判断されるのであれば使えると思っております。

 今後とも、そういった御相談にも乗っていきたいと考えております。

長友委員 各自治体の判断で、首長がしっかりと住民の皆様に説明できるということであれば幅広く活用してほしい、それが国のスタンスであるということが確認することができました。

 これが各地方自治体、それから東京都心の自治体にも広まれば、地方の森林が吸収したCO2や適切な森林管理で創出したクレジットを、CO2を排出する側の都会の消費者が購入するということで、日本全体でSDGsに寄与する、カーボンニュートラルに寄与する、貢献する、理想的な関係を築くことができますので、是非そういったことを周知していただきたいというふうに思います。

 引き続き、木材について質問させていただきます。

 物価高騰による住宅コストの上昇から、国内の住宅着工戸数の大幅な減少が起きております。国土交通省の住宅着工統計によりますと、二〇二三年における注文住宅の新設着工戸数は二十二万四千三百五十二戸、前年比一一・四%マイナスになっております。一九五九年の二十万四千二百八十戸以来、実に六十四年ぶりの低水準というふうになりました。

 そんな中、国産材の木材状況は二十年来の低迷に直面をしているところです。木材価格はウッドショック前の水準に戻っていますが、人件費、それから電気代などの製造コストは大きく上昇しています。価格低迷と需要減で非常に厳しい状況が続いている、このようなことを現場の声として聞いているところでございます。

 この現状の打開策として、国産材使用住宅への支援などの需要喚起、また、ハウスメーカーへの適正価格転嫁などの対策について、どのように取り組んでいるのか伺いたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 まず、住宅着工戸数の事実関係でございますが、新設住宅着工戸数につきましては、十か月連続で対前年同月比で減少しておりましたけれども、四月は十一か月ぶりに対前年同月比で増加となったところでございます。

 ただ、長期的な木材需要の推移を踏まえますと、輸入材が多く使われている住宅の横架材などにおいて国産材への転換を図るとともに、これまで木材が余り使われてこなかった中高層建築や公共建築物など非住宅分野における新たな需要を創出することが重要と考えております。

 このため、林野庁としては、住宅分野におきます杉材へ転換する際の設計変更等の取組の支援、中高層建築物等の木造化、木質化に資するCLTや木質耐火部材等に係ります技術、製品の開発支援、公共建築物の建築支援などに取り組んでいるところでございます。

 また、御指摘のございました適切な価格形成に関しましては、公正取引委員会が、木材を含む様々な物品につきまして適正な価格転嫁が可能となる取引環境を整備するため、独占禁止法上の優越的地位の濫用に係る調査を継続的に実施しておりまして、その結果を公表しているものと承知をしており、林野庁としても、その結果について周知を改めて行っているところでございます。

 林野庁としては、今後とも、効率的なサプライチェーンを構築しまして、川上の林業現場から川下の住宅メーカーまでが、それぞれの取引において相互の利益を得られるよう、顔の見える木材での家づくりの取組への支援などに努めてまいりたいと考えております。

長友委員 川上から川下まで支援をしていただけるということなんですが、現場からはこういう声も上がっております。花粉症対策の伐採についてなんですね。

 政府の方が花粉症対策に取り組むということで、伐採が広がっていくと原木の過剰供給になり、更に市場価格の混乱が起きるのではないか、そういう声が聞かれておりますけれども、これに対する見解を伺います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 花粉症対策につきましては、杉人工林の伐採を加速化することとしておりますので、原木の過剰供給による市場価格の低下への懸念があることにつきましては委員御指摘のとおりと考えております。杉材利用の拡大を図りながら全体の対策を進めていくということが重要と考えているところでございます。

 このため、林野庁では、たわみにくさが求められますはりや桁などの横架材で杉材を活用するための技術開発、普及への支援や、地域の建築の担い手であります工務店が杉材を用いた設計、施工を行う際の支援のほか、市況安定のためのストック機能強化として製品保管倉庫や原木ストックヤードの整備への支援などに取り組んでいるところでございます。

 また、国土交通省、林野庁、関係団体が連携いたしまして、国産材を多く活用した住宅であることを表示するジャパンウッドラベルの取組などによりまして、花粉症に関心のある消費者層への訴求力を向上させようとしているところでございます。

 引き続き、花粉症対策を推進していくため、杉材などの国産材の利用拡大を図っていきたいと考えております。

長友委員 杉材などの利用拡大を図っていくということで、現場の方にもそのようにお伝えはしていきたいと思いますけれども、価格の回復ということを非常に経営に直結するということで心配されておりますので、その辺りの配慮を改めてお願いをしておきたいと思います。

 最後の質問になります。

 六月は食育月間ということになります。食の学びを通して心と体を健康にするということで様々取組が行われているかと思いますが、先般、この農林水産委員会で、食料供給困難事態対策法案について審議がありました。食料安全保障ということが大きなテーマだったと思うんですが、食料安全保障の観点から、不測の事態に備えるということであれば、国民一人一人が少しずつでもいいから、ふだんから農業をする、また農に接するという環境を私はやるべきだと思います。

 地方と、いわゆる農村と都市部の消費者の分断が起きているということはさんざんこの委員会でも指摘がありましたけれども、農家、生産者のことに思いをはせられる、また適正な価格形成等にも寄与していくためにも、例えば一人一人の個人の家庭で、家庭菜園のレベルでもいいですし、ベランダ農業のレベルでもいいので、これまで農業をやったことがない人たちに農業に関わってもらう、身近なところから農業を始めてもらう取組というものも農水省には取り組んでもらいたいと思いますが、見解を伺います。

坂本国務大臣 国民各層の皆さん方が我が国の食と農につきまして理解を深めていただくことは大変大事だと思いますし、平時、不測時を問わず、我が国の食料安全を、そのことが、関わっていただくことが確かなものにする、していくというふうに思っております。

 そのために、市民農園、それから農泊による農業体験、さらには、若手農業者の下で職業としての魅力ある農林水産業、特に農業の体験をしていただく、こういうことを今取組としてやっているところでございます。

 今後、多くの国民が実際に農業に関わり、体験することが重要であるため、今後ともこの取組をしっかりと推進してまいりたいというふうに思っております。

長友委員 農業では食育、林業では木育をしっかり推進していただくことをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会、教育の無償化を進める会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 私たち日本維新の会としまして、この農林水産に臨みまして、まず役割分担で質疑をしていこうというふうに話をしていました。池畑理事は全般的にやっていただいて、そして、掘井さんには有機農業やお米をやっていただきたい、私はスマート農業をという話をしていたんですが、今国会の農林水産、多分今日が最後の質問になるのではないかということなので、どうしても畜産の問題をさせていただきたいと思いまして、今日は畜産について質問をさせていただきます。

 まず、令和五年度食料・農業・農村白書に、農業生産の出荷高がありました。その中で、どの部門よりもやはり畜産の数値が高く、粗利益も高いんだろうというふうに思っています。

 ただ、白書の中には、和牛の需要が軟調に推移して価格が低下しているというふうに書かれていました。

 令和六年二月三日の日経新聞にも、畜産家の生産コストが重くなる中、和牛は価格がなかなか上がらない、農家はコスト高を受けて、できるだけ高く売れる和牛の生産をやっていきたいと考えているというふうに書いてあります。

 畜産農家は和牛を安定的な価格で販売をしていきたいという思いと、やはり市場との乖離があって、私は畜産農家を守っていくためにも和牛の価格の安定ということが重要ではないかというふうに思いますので、まずはここを大臣にお伺いをしたいと思います。

 和牛の需要を伸ばす政策についても、もしできればお答えいただけたらと思います。

坂本国務大臣 和牛肉につきましては、物価上昇に伴います消費者の生活防衛意識の高まりによりまして、価格が軟調に推移している中、和牛生産の持続的な発展には国内外の需要開拓というのが不可欠であるというふうに考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、国内消費対策といたしまして、令和五年度補正予算によりまして、和牛肉の販売方法の多様化による需要開拓の取組、そして和牛肉関連のイベント等における消費拡大と消費者理解の醸成等を緊急に支援することとしております。

 それから一方で、輸出につきましても、伸びが期待されます海外の需要を取り込むことが重要であると考えまして、オール・ジャパンのプロモーションや産地主導で取り組む新たな商流構築、それから、輸出認定食肉処理施設の増加に向けた施設整備及び認定の迅速化等を強力に推進しているところでございます。その結果、二〇二三年の牛肉輸出の実績は前年比で一一一%の五百七十八億円と、過去最高となったところであります。

 引き続き、和牛肉の国内外の需要喚起を図り、肉用牛経営を支えてまいりたいと思っております。

一谷委員 ただ、まだ在庫が結構残っているということもお聞きしていますし、大臣から御答弁いただきました和牛需要拡大緊急対策事業というものだと思うんですが、私も今回質問をさせていただくのに政府と話をして初めてこれを知ったんですが、元々、和牛の話をさせていただくのに、地域の牧場の方々のお話を聞いていると、やはり価格安定を何とかしてほしい、イベントをやってもらえないか、できたらバーベキューなんかでお肉を出すときに補助してもらえないかというのを聞いて、問いを作ったんですが。でも、こうやって政府の方はやっていただいているということなので、なかなかやはり周知ができていないのではないかなというふうに思います。

 もう一つ、これは緊急というふうに書いてありますので、緊急ということは単年度予算ということになると思うんですが、それであると、なかなか事業者の方も、安心して続けていくというのは、ちょっと心もとないのではないかなというふうに思いますので、何か恒久的な予算というのも考えていただく方がいいのではないかなというふうに思います。

 先ほど、農林水産省のポスト、旧ツイッターを見たら、夏が近づいてきたので、バーベキューの予約はしていませんかというふうなポストがあって、しっかり中心まで焼いてくださいとか、焼くとき、食べる、トングと箸は分けてくださいとかいうような案内がされていましたけれども。

 まさにこれからバーベキューの季節ですし、和牛はしっかり食べていただけるように進めていただけたらというふうに思いますし、この緊急という予算ですね、五十億ですか、ついておりますが、どのように活用されて、また来年度もあるのかというところも示していっていただけたらというふうに思います。

 続きましては、農家の戸数が減少しているというところで、飼養戸数が非常に減少しているということです。特に年齢も、これは二〇二〇年農林業センサスというのを見ますと六十五歳以上の酪農家の割合が四七・二%、二〇一九年度の畜産物生産費統計を見ても七十五歳以上が二〇・三%ということで、非常に高齢化も進んでいます。

 私、いろいろ資料を見てみますと、先ほどの令和五年度食料・農業・農村白書の中に都道府県別農業産出額というのがあったんですが、一番から十番まで見てみますと、ほとんどが畜産と野菜の合体というか、ミックスをされているところが多いです。一位が畜産で二位が野菜であったり、一位が野菜で二位が畜産ということで、十位までの間に、青森が果実と畜産、そして十位の長野県が果実と野菜となっていますが、そのほかは、ほぼ畜産と野菜のミックスになっています。

 ということは、これは私の考えなんですけれども、野菜農家さんがしっかり野菜を作っていくのに、やはり畜産というのは、バランスよくなければならないんじゃないかなというふうにちょっと考えているんですね。

 その中で、飼養戸数が減少していくということで、資料を見ましても、平成二十七年から令和五年までずっと減り続けているという数字があります。これは何とか歯止めをかけないといけないというふうに思うんですが、政府としてはどのように考えているのか、御意見をお伺いしたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 肉用牛の飼養戸数でございますが、これは委員御指摘のとおり減少傾向で推移をしてございますけれども、大規模化の進展によりまして、合計での飼養頭数は増加傾向で推移をしているという状況でございます。その他の畜種を合わせましても、飼養戸数は確かに減少してございますけれども、大体横ばいで頭数とかは推移をしてきているという状況にございます。

一谷委員 確かにそうなんです。戸数は、平成二十七年度、五万四千から、令和五年になると三万八千なんですが、一戸当たりの牛の数は四十五から何と六十九という、すごい、非常に多く増えています。

 ただ、大規模化というのは私もある程度大事だというふうには思うんですが、ただ、そうやって集約していきますと、先ほど申した、野菜を作っておられるところの堆肥をどうするんだとかいうことも問題になってくると思いますので、できれば集約化して、大規模化を余りし過ぎるのも問題ではないかなというふうに思います。やはり産地というものを大事にしていくためには、ある一定、畜産農家さんが必要ではないかなというふうに考えますので、ここは、一戸当たり増えているからいいというようなことではちょっといけないんじゃないかなというふうに考えています。

 そこで、次の質問をさせていただきたいと思うんですが、ちょっと問題を飛ばさせていただいて、五番目の問題ですね。畜産農家の戸別所得補償制度を、これは私の意見です、党の意見ではなくて私の意見なんですが、考えていくのが必要ではないかなというふうに思います。

 今、調べさせていただきますと、肉用牛の経営安定交付金、マルキンというんですかね、これがあるということですけれども、これはあくまで保険のような制度であって、肥育経営安定交付金は販売価格の変動によって価格差の補填を行うということで、あくまで保険のような制度のように思っているんです。

 やはり、酪農農家を増やしていくためには、どちらかというと、所得は国が補償するのでチャレンジしてくださいというような体制を取っていった方がいいのではないかなというふうに思います。これだけ餌代も上がってきていますので、このマルキンと言われる制度で本当に安心して、先ほど言いました、高齢化しているところが跡取りに任せよう、息子さんや娘さんに任せようという気になっていくのかなというふうに思うんですが、その辺りの政府のお考えをお聞きしたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 肉用牛経営でございますけれども、子牛ですとか肥育牛を育てて出荷をするのに長い時間を要するということで、その間に子牛の価格にしても枝肉の価格にしても変動がある、それに加えまして生産資材などのコストもその間も変動していくという特性がございます。そういった特性に応じて経営安定対策を措置をしてございます。

 御指摘の肉用牛肥育経営安定対策交付金、いわゆる牛マルキン制度でございますけれども、これは、標準的な生産費と標準的な販売価格を比べまして、言ってみれば、販売価格が標準的なコストを割れる、コスト割れのときに、コスト割れした部分の差額の九割を補填するというような対策でございます。

 こういった対策を適切に実施することによりまして、肉用牛経営の安定を図っていくというのが私どもの方針でございます。

一谷委員 費用がかかり過ぎた分を補填するということなんですが、あくまで、何か私のイメージではちょっと後ろ向きなような感じがして、笑っておられますが、済みません、ちょっと、チャレンジできるような、私たちはベーシックインカムという話もしているんですが、ある程度やはり所得を補償してチャレンジできるようなことの戸別所得補償制度というのをやっていくのがいいのではないかというふうに考えます。

 これは党内でもまだまだコンセンサスが取れていないので、私が今勝手に言っていますけれども、しっかり考えていきたいというふうに思います。

 それでは、少し質問を戻らせていただきまして、飼料の国内生産についてお伺いをさせていただきます。

 飼料の自給率の現状と目標という資料を読ませていただきました。その中で、粗飼料ですね、これは令和四年度から令和十二年度に向けて国産を一〇〇%にしていこうということで、今の七八%から一〇〇%ということで、すごい野心的な目標だというふうに思うんですが。濃厚飼料については、現在国産一三%を国産一五%ということで、もう少し上げていけないのかなというふうに思いますし、どうしても和牛の牛が食べるのは濃厚飼料だというふうにお聞きしていますので、この飼料について、餌代も上がっていますので、国の対策としてどうするのか、意見を求めたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 持続的な畜産を実現をして畜産経営の安定を図るためには、やはり、委員御指摘のとおり、国内の飼料生産に立脚した畜産になっていくということが重要だと考えてございます。

 そういうことで、私ども、畜産農家と耕種農家が連携をする耕畜連携ですとか、飼料生産を請け負うようなコントラクターなどの飼料生産組織の運営の強化といったものを支援をしてございまして、国産飼料の生産、利用の拡大をしてきておりますし、これからもしていきたいと思っております。

 一方、我が国でございますけれども、耕地面積の制約などから、濃厚飼料の生産を大きく引き上げることはこれは現実的には困難であるということだろうと思っております。むしろ、労働時間が短い飼料作物の特色を生かして、濃厚飼料の代替となり得る青刈りトウモロコシの生産の拡大ですとか、あるいは子実トウモロコシの生産実証あるいは品種の開発などを進めているところでございます。

 国内で生産できるものはできる限り国内で生産するということでございますけれども、濃厚飼料の自給率を大きく引き上げるということは現実的には難しい中で、輸入と備蓄を適切に組み合わせて安定的な供給に努めていきたいというふうに考えてございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 畜産は農政の基ではないかなというふうにも考えますので、これからもしっかりと勉強して、質疑をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

野中委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。教育無償化を実現する会との共同会派であります。

 本日は最後の一般質問です。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。是非よろしくお願い申し上げます。

 今回は、先週に一般質疑をさせていただきました折に、後半あたりの質問で、人材育成の、農業者大学校の廃止について議論をさせていただきました。今回、少しちょっとその辺りのポイントを深掘りをしていきたいというふうに思います。

 今国会ではスマート農業についても多く議論をさせていただきました。農研機構についても技術会議から毎回のように丁寧に答弁をいただきました。

 どんなに農業機械の技術が進んでも、扱う人材がいなければ宝の持ち腐れだというふうに思います。いろいろなお話が出ますが、最近では、技術の進歩が進むにつれて、現場で農業機械が壊れましたら、メーカーさんが来るまでなかなか電子系統が多くて直せなかったり、動けなかったりということが多いというふうに聞きます。技術はどんどん進んでいますが、人がついてこれないということでは意味がないというふうに思います。

 技術革新は明るい話題ですし、我々も賛成でありますが、やはり最後に大事なのは人だというふうに思います。

 私は、毎回毎回お話をさせていただきますが、農業高校出身で、農業大学校出身であります。これまでも農業教育について多くの質問をさせていただきましたが、農業機械の整備への支援、こういったことも当選直後から質問させていただきました。今では、農業高校への機械支援も農水省が行っているというふうに聞いております。少しでも農業教育が前進していることに、皆様に感謝をするとともに、うれしく思っております。

 今回は、こういった観点で、農業機械関係の人材育成について質問させていただきたいと思います。

 私自身も、県立の農業高校に勤めていたときに、一年間、内地留学という形で、かつてありました県立の農業機械センターというところに勤めさせていただきました。農業機械科がある高校もありましたけれども、全県の農業高校とか工業高校とかが参加をしておりました。中には、宿泊を要して、女子、男子関係なく研修に来ていまして、最後は仮免許みたいなことを取っていく。実習の教員自身も研修に来るような施設でありましたけれども。

 私も、トラクターの後ろを改造して、ブレーキがついておりまして、そこでコースを運転しながら、これが一日目。二日目がエンジンの分解、組立てをする。中にはエンジンがかからないところもありまして、音でどの辺りの問題があるのかということも、いろいろ研修をさせていただいたように覚えております。そこは、残念ながら、予算が組めないということで、廃止となってしまいました。

 そこで、こういった研修ができる機械センターは全国に今どれぐらいあるのか。また、農林水産省として必要性を感じているかどうか。各県にとは言いませんけれども、せめて、農研機構の視察の折に担当の方もお話しでありましたけれども、機械メーカーが農研機構の圃場を使って実証実験をするとか、農研機構が持つ全国五か所ぐらいの圃場に、そういった圃場があるわけですから、近畿や九州といったブロックで、農業高校生や工業高校生や農業大学校の生徒たちが利用する機械センターの設置をするのは私は有益だというふうに思っております。四十七都道府県にあります農林水産省管轄の農業大学校に設置するのも現実的ではないかというふうに思っております。

 質問としてまとめさせていただきますと、運転免許の取得やスマート農業技術の習得ができる実習をしっかりと行って、機械を使いこなせる人材を育成していく必要があるというふうに私は思っております。そのときに、全国に設置されている農業大学校の中核的な役割というのがあるというふうに思いますが、そういった研修を提供すべきだというふうに思っております。

 今は、残念なんですが、教える側も、教えるに当たり農業機械を恐る恐る触るという感じで、不安と負担が大きくなっております。もっと力を入れていくべき分野だというふうに私は思っておりますが、農業大学校に今回は絞りますが、農業大学校における農業機械実習の現状と、実習機会の充実に向けた、現段階でいいので、農林水産省の取組、また支援をお伺いしたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 道府県立農業大学校におきましては、学生や社会人の就農希望者等を対象にトラクター等の農業機械の操作研修を行っておりまして、例えば、令和五年度には約千七百名が農耕用の大型特殊免許を取得していると承知をしております。

 また、スマート農業につきましても、令和三年度に全ての農業大学校においてカリキュラム化をされておりまして、ドローンやハウスの環境制御システム、トラクター等の自動操舵システムなどに関する教育が行われていると承知をしております。

 農林水産省では、農業大学校におきまして、スマート農業を含む農業機械の実習機会の充実を図るため、研修用農業機械、設備の導入、それから、農機メーカー等の外部講師によるスマート農機の実演会、さらには、スマート農業を体験する現地実習などの取組への支援を行っておりまして、ハード、ソフトの両面から教育の環境整備を進めているところです。

 また、農業高校等と連携をした教育も重要であると考えておりまして、農業大学校における農業高校生向け研修等の取組について支援を行っているところです。

 今後とも、農業機械を使いこなせる人材育成を図ることができるように、しっかりと取り組んでまいります。

 以上です。

池畑委員 副大臣、ありがとうございました。

 現在も、今副大臣からも答弁をいただきましたが、スポット的な実習はできるというふうに思いますが、なかなか、私の実感では、そういった機会についてはまだまだ少ないというふうに感じております。もっとプロの農家を増やすためには、国として、戦略的に、組織的に人材育成をしていく。副大臣の答弁にもありましたけれども、組織的に、戦略的にやっていくことというのも大事だというふうに思います。

 予算に制約があるのはよく分かっておりますが、何でもかんでも国費で支援をするべきだというふうには思っておりません。そこで、民間の力をかりていくとか、そういったことも必要だと思います。

 農業機械メーカーも、一部あるんですが、研修機関をつくって、そういったことをすれば人は集まってくるということでありますし、今回、スマート農業の法律案もありましたけれども、機械メーカーに提供していただく、これは単なる案でございますが、税制優遇とか、支援するとか、そういったことも大事だというふうに思いますので、農機具メーカーにとっても、そういったところで、うちの機械はこういったところがメリットがありますよということを提供できるということは、次に農家に買ってもらえる可能性も十分出てくる場面を農林水産省がつくっていければいいんじゃないかなというふうに思っております。

 農業機械の実習を通年でも、今、繰り返しになりますが、受けることができる研修拠点を整えるべきだというふうに思いますが、これも現段階で構いませんので、農林水産省の見解をお伺いしたいと思います。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 農業機械の実習のための環境の充実につきましては、農林水産省としても必要性を十分認識をしております。

 農業機械実習の取組状況を見ると、例えば、富山県において、令和三年にスマート農業普及センターを開設し、学生や指導者、現役農業者等を対象に、幅広いスマート農業技術に関する研修を通年で実施をしているほか、多くの農業大学校におきまして、累次にわたり、大型特殊免許の取得に向けた研修を実施しております。このような取組の底上げ、高度化を図っていくことが重要だと考えております。

 先ほどお答えをいたしましたように、農林水産省では、ハード、ソフトの両面から環境整備を進めているところでありまして、今後とも、各都道府県と連携をしながら、機械実習の充実に向けて取り組んでまいります。

 以上です。

池畑委員 ありがとうございます。

 八ケ岳の実践大学校とか鯉淵学園とか、私立系のそういった農業研修、また農業の学びができる場所も多くあります。副大臣からありました富山県の例もありますが、そういったことも含めて、やはり、研修を継続してやれるところが必要だということ、底上げも必要だというふうに言っていただきました。

 ここまで、機械を活用できる人材をどう育成したらよいかについて質問させていただきまして、副大臣に答えていただきました。

 最後に申し上げますが、技術の開発、そして人材の育成、これを一連の流れとして進めていってほしいということであります。開発だけでは駄目ですし、人材だけでも有用な技術がなければ意味がないというふうに思います。

 そのためには、開発も現場のニーズに応えたようなものが必要である、これは農研機構も頑張っておられますが。そのために開発をどんどんしていく上で、先ほど申しましたように、開発された技術は、人材育成と連帯をして次世代の人材に教えていく、こういったことも必要だと思います。

 先日、レクを受けておりまして、技術会議の事務局からも丁寧な説明を受けました。スマート農業の実践地区、そして産官学の努力が結集してやっている。農研機構が実施主体ではありますけれども、そこにはいろいろな関係機関が結集しています。もちろんメーカーですとか、JAさん、そして関係者が連帯してやっているというふうに聞いておりました。そこで、先ほどから申し上げております教育機関も参加してやったりしていると。こういったものが、点ではなく面で広がっていくことが期待をされると思っております。

 そこで、最後に大臣にお聞かせいただきたいと思いますが、今副大臣が答弁をいただきました内容を絡めてなんですけれども、スマート農業技術の普及に向けては技術開発と人材育成を車の両輪として取り組む必要があるというふうに考えておりますが、今後の農林水産省を率いる坂本大臣の思いと意気込みをお伺いさせていただきたいと思います。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、スマート農業技術の普及に向けて、野菜や果実など開発が十分に進んでいない領域のスマート農業技術の開発を加速させたいというふうに思っております。それを使いこなす人材の育成を図ることもまた非常に重要であります。農業者に加えまして、委員御指摘の農業高校や農業大学校の学生、それからサービス事業者など幅広い方々がスマート農業技術を活用する担い手になっていただくことが重要であるというふうに考えております。

 このため、現在、参議院で審議中でございますけれども、スマート農業技術活用促進法案では、農業者の、技術が高いスマート農業技術を国が明示をし、そうした技術を開発する取組に対しまして金融あるいは税制等で支援する仕組みとしておりまして、これらを通じてスマート農業技術の実用化を図ってまいりたいと考えております。

 また、人材育成面では、国は、スマート農業技術を使いこなす人材の育成、確保のため必要な措置を講ずるよう努める旨規定をしておりまして、ハード、ソフトの両面から人材育成の取組を進めていくこととしております。

 農林水産省といたしましては、今後の農業者の急速な減少等に対応していくためにはスマート農業技術が不可欠というふうに考えております。技術開発や人材育成に必要な予算の確保に努めながら、総合的に全力で施策を推進してまいりたいと考えております。

池畑委員 大臣、ありがとうございます。

 最後に、大臣、今、継続的に研修ができる場所、予算のこともいっぱいありますし、優先順位もあると思いますが、大臣、最後に、こういった機械の研修する場所は必要か必要じゃないか、それをどちらかで答えていただきたいと思います。

坂本国務大臣 新たな技術を習得する人材の育成の場も含めて、必要であるというふうに思っております。

池畑委員 質問時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

野中委員長 次に、亀井亜紀子君。

亀井委員 久々に農水委員会で質問をさせていただきます。亀井亜紀子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、インボイス制度について伺いたいと思います。

 一つ事例を出します。中海漁協の例です。中海漁協から深刻な相談が上がっております。

 内容についてですが、今日、資料をお配りをしていまして、一枚目、中海漁業協同組合について、インボイス制度がスタートするとどうなるか。今はまだ経過措置期間ですけれども、この表を見ながらお話をいたします。

 中海漁協、ここは、後ほどお話をしますけれども、元々、諫早湾のように、国営の中海干拓事業というのがあって、これの工事が進められ、中海の漁協は、いっとき漁業を諦めたといいますか、補償金を受け取って、漁業権を返して、本格的に漁業ができなかったわけですけれども、この干拓事業、淡水化事業が止まったので、もう一度漁業をやりたいということで、かつて生産されていたアカガイ、サルボウガイですけれども、これを養殖、ここ数年、努力して復活させていこう、そういう取組をしている漁協です。

 これまでこの中海漁協が払っていた消費税というのは、組合員からいただく委託手数料、これが五十万として、この五十万に対して消費税が一〇%かかっていたので、大体五万円程度納めていたそうです。それが、インボイスが導入された結果どうなっているかということを今から御説明します。

 下に表がありますね。支出合計、その隣に組合員との取引、一千三百八十四万六千八百六十七円、これが課税標準額になったわけです、いきなり。これの一〇%、その隣にありますよね、百二十二万三千五百二十九円。この金額を中海漁協に払ってくださいというのが、インボイス制度が導入された結果なんです。

 今、経過措置期間なので、令和六年ですと八〇%仕入れ税額控除ができるので、八〇%を引くと、二十四万四千七百六円。これが今年、中海漁協が支払う消費税なんですけれども、今まで五万円程度だったわけですから、もう既に五倍近いわけですね。この経過措置が終了する令和十三年三月期以降は百二十二万三千五百二十九円丸々支払えというのが、インボイス制度が導入された結果なんです。

 こんなことになったら、廃業せざるを得ませんよ。今大変追い詰められておりまして、この状況を農水省はどのようにお考えでしょうか。農協特例とか市場特例とか、そういうものが適用されていない中海漁協に対して、簡易課税であるとか特例であるとか、何かしら必要だと思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

坂本国務大臣 一般的に、漁協が漁獲物を取り扱う場合には、委託販売と買取り販売があるというふうに承知しております。

 委託販売の場合には、無条件委託等の要件を満たせば、これは農協と同じですので、仕入れ税額控除に係る協同組合特例の対象というふうになります。

 また、買取り販売の場合には、中海漁協の事業規模からいえば、基準期間における課税売上高五千万円以下の事業者として、これは簡易課税制度を選択することが可能というふうに考えられます。

 このような制度につきましては、農林水産省といたしましても、制度導入前から財務省と連携をいたしましてオンライン説明会を累次実施してきたところでありまして、また、島根県からも同様な説明が行われているというふうに承知をいたしております。

 そうした選択肢の中でどのような選択を行うか、これは漁協の方でその選択を判断していただきたいというふうに思うところであります。

亀井委員 そのような話は県から伝わっていないようですし、とにかく頭を抱えておりまして、普通にこれだけ聞くと、一体どういうことになるのかと。当然、心配ですよね、廃業に追い込まれますから。

 それで、では、中海漁協が簡易課税も含めてどういう対応ができるのかというのは、農水省と、また県と相談をしていきたいと思いますけれども、こういう環境に置かれている生産者というのは、農業も含めて、漁協だけの話じゃないです。一千万円以下の売上げの生産者というのは島根県にもごまんとおられて、その人たちが、今後この経過措置期間が終わった後で農業を続けるべきか、やめるべきか、もう今から悩んでいます。多分続けられないでしょう。そのぐらい、このインボイス制度の影響というのは甚大なものがあります。

 そこで、今日、財務省の方にもお出かけいただいておりますが、インボイス制度の導入目的をまず説明してください。これは、軽減税率とセットでインボイスが導入されたと承知していますが、そうであるならば、軽減税率をやめればインボイスというものも必要がなくなるものなのかどうかという点。

 それから、インボイス制度を導入した理由。例えば、免税事業者を減らしたいとか、益税が発生しているかどうかは別として、そういう、もっともっと消費税を取りたいから始めたんでしょうけれども、一番の疑問なのは、赤字事業者から取るのはなぜですかということなんですね。

 中海漁協も、今年は赤字だそうです。それは、去年の夏が暑過ぎたこともあるでしょう、気候変動の影響があってなかなか思うように捕れないわけですけれども、自然を相手にしているなりわいですから、漁業にしても農業にしても、赤字のことはあるでしょう。それでも消費税を取り立てるというのはどういう発想なのかということも、財務省にお伺いいたします。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 まず、インボイス制度の導入目的でありますけれども、インボイス制度につきましては、売手と買手の適用税率に対する認識を一致させることで、複数税率の下での課税適正性を確保するために必要な仕組みとして導入したものであります。

 これまでもこうした制度趣旨を御説明してきておりますけれども、政府として、単一税率の下でのインボイス制度の必要性を主張してきたものではありません。

 いただきました、赤字企業でも消費税の納税が必要となるのはどうかという話につきましては、消費税は、企業の黒字、赤字とは関係はなく、売上時に受け取った消費税額から仕入れ時に支払った消費税額を引いた額がプラスとなっている場合にはその差額を納税していただき、マイナスとなっている場合にはその差額が還付される仕組みとなっております。こうした仕組みは諸外国でも同様でありまして、赤字企業でも消費税の納税が必要となることに問題があるとは考えてはおりません。

 なお、企業が赤字の場合であっても消費税の納税が必要となる場合があるのは事実ではありますが、課税される売上げが仕入れよりも少なければ仕入れ税の還付を受けることとなり、こうしたケースも実際に相当数あるものと認識しております。

亀井委員 売手と買手を一致させるためというような御答弁がありましたけれども、消費税の仕組みというのは、いわゆる預かり税ではないですよね。例えば、千円のものを買って千百円払って、その百円分が消費税に当たるわけですけれども、その百円分を、売れた分をかき集めて、そっくりそのまま過不足なく納めるという制度じゃないですよね。どちらかといえば売上税ですよね、売上げに対して一〇%かかっている。

 だから、誰が消費税を納めているのか。それは、仕組みとして価格転嫁ができるという前提で、価格転嫁ができれば消費者がその分消費税を払うわけですけれども、できない状況だと事業者が負担するわけですよ。その負担が大きくなっていることが問題で、今の問題というのは、例えば、農家ともお話をしました。トマト農家があります。トマトの値段というのは二十年間変わっていません。その中で消費税だけが上がってきていて、それがかなり負担になっているわけですね。

 今、インボイス制度も導入されて、売上げが一千万以下のところにも消費税を払ってくださいとなったときに、後で還付されますというふうに財務省はおっしゃいますが、一回納めるために借金することになるんです。

 だから、借金してまで消費税を納める必要があるのかとみんな考えておりまして、そんなことをするんだったらもう廃業すると言っております。こういう人たちはたくさんいますよ。そういう問題意識はありますか。

 もう一回ちょっと財務省に伺いますけれども、赤字事業者に消費税を納めさせるというのはどういうことなんでしょうか。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 消費税は、経済的に税を負担する能力である担税力を消費に認めて課しているものであります。納税義務者は事業者ではありますが、最終的な負担者は消費者となることが予定されておりまして、消費を多く行う消費者ほど担税力が高いものとして、より多くの税を御負担いただくこととなっております。

 なお、繰り返しになりますけれども、消費税は、売上時に消費者等から受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税額を差し引いた額がプラスかマイナスかに応じて納税したり還付を受けたりする仕組みとなっておりまして、赤字企業の皆様にも納税義務を果たしていただくことに御理解をいただければというふうに思います。

亀井委員 理解はできませんけれども、ここで繰り返していても解決にはならないので、私の考え方を申し上げました。

 農水省がインボイスを導入したわけじゃないので、やはり財務省の方に問題があると思いますけれども、これはほっておくと、本当に生産者がいなくなります。一千万円以下の生産者はたくさんおりますから、廃業に追い込まれる人たちが、この経過措置期間の後、かなり増えるということは覚悟した方がいいと思いますし、その前に何らかの対策を取るべきだと思います。

 中海漁協の例を出しましたので、この中海について、国営干拓事業をやめた後の状況についてちょっとお話をしたいと思います。

 財務省に対してはもう質問はないので、御退席いただいても結構です。ありがとうございました。

 私は、令和元年十一月十三日にこの農水委員会で、中海干拓事業のその後の、どうやって中海の自然環境を再生していくかという観点で質問をしました。そのときに、質問した後、農水省の方が説明に来られまして、そのいただいた資料を今日皆様にお配りしております。

 このA3の地図で、今どういうことになっているかといいますと、中海に大根島という島と、その右上に江島という島があって、この島を堤防でつなぐようにして囲って、この内側を淡水化、農地にしようとしておりました。

 ほぼほぼ工事が完成して、水も閉じ込めてしまってから、あとは水を抜いて農地にすればいいですという状況になって、ようやく中止されました。それはこの間、ずっと地元の方々、特に宍道湖のシジミ漁師が物すごく反対をして、それでこの淡水化事業は止まりました。

 その後、例えば左側の西部承水路、これは農水省が撤去したので、もうありません。今残っているのは、緑の線である堤防と青い線である堤防、この堤防が残っていて、上が道路として使用されています。水が閉じ込められていましたけれども、二か所開削が行われて、一応水は通り抜けているわけですけれども、これが今の状況なんですね。

 地元では、もっと堤防を開削してほしいとか、海底にヘドロがたまっているのでそれをどうにかしてほしいとか、いろいろな要望があるんですけれども、順番として、まず、このヘドロを何とかなくしていかないといけないと考えております。

 もう一つ、今日、これも農水省からいただいた地図、海底がどうなっているかという、本庄工区の道路路線図というものも出しました。

 これは前回質問の後にいただいた資料でして、地元の人が言ったとおり、やはり水を抜いたら、ここにもう区画整理がされていたから、道路などが現れるというんですね。その凸凹のへこんでいるところにヘドロがたまってしまっているので、それをどうにかしてほしいということなんです。

 それで、かき出したとしても一回水が汚れるんでしょうし、それよりは、有機物の分解の、そういう成分を持った盛土をした方がいいのではないかという専門家の意見などをいただいております。

 中海の干拓事業は、元々、この本庄工区の道路路線図の下に施工イメージがありますけれども、水中盛土というやり方で工事を進めたようですので、水中盛土ということができるのであれば、このヘドロの上にきれいな土を盛土でかけるという方法もあるのではないかなと考えております。

 それで、質問なんですけれども、中海を今後どうしていくかというのは、中海会議、これは島根県と鳥取県と国交省が入った会議で話し合われているようなんですけれども、何かが決まってきているという報告はまるでありません。農水省に対して質問しましたら、会議には参加しているけれども、農水省が主催しているわけではないので、今年何が話し合われているのか知らないし、国交省を呼んだ方がいいと思いますと言われて、今日は国交省の方にも同席をしていただいております。

 私の質問は、中海のこの破壊してしまった環境を戻していくためにどうしたらいいのか、ヘドロをなくすために盛土はできませんかという質問をしたいんですけれども、どちらに質問しましょうか。

 では、御地元である舞立政務官にまずお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

舞立大臣政務官 まず、事実関係から入りますけれども、鳥取、島根両県からの要請に基づきまして昭和三十八年度に着工した国営中海土地改良事業、先ほど来から亀井先生、いろいろとお話をいただきました。今では、森山堤とか、平成二十二年に島根県に譲与されているという状況でございます。

 こうしたことから、堤防開削ですとかいろいろと要望を今お話しされましたけれども、この地元要望につきましては、現在施設を管理する島根県等に相談するのがまずは一般的だと考えられますけれども、その具体化に向けては、関係機関が共同して設置した中海会議において協議、検討がなされていくものと承知しておりますので、農水省といたしましては、中海会議における議論を踏まえつつ、農林水産業を所管する立場から、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。

亀井委員 確認をしたいのは、誰が主体性を持って進めていくかということで、今、例えば、ヘドロをなくすために水中盛土をしてもらいたいですねという意見が地元の漁協と県でまとまったとしますよね。そうすると、それは、ほかの公共事業と同じように県の要望として国に出すという以前に、中海会議というところで話し合われなければいけないのか。その中海会議というのはどういう位置づけなのか。

 いつもこの質問をすると、中海会議で話し合っておりますで終わるんですけれども、年に一回しか開かれませんし、ここで何かが決まってくるという雰囲気ではございませんので、そのプロセスについて伺っております。

 今日は国交省の方も来られているんですよね。では、国交省の方にもお伺いいたします。よろしくお願いいたします。

小笠原政府参考人 お答えいたします。

 中海会議でございますが、年に一回以上開催するということになっておりまして、昨年度の会議では、各構成員の取組状況や水質等の現状を共有した上で、今後の更なる水質改善に向けた取組の方向性について確認をしたところでございます。

 今年度の開催につきましては、時期及び実施内容について、現在、鳥取県、島根県などの関係機関と調整を行っているところでございます。

 以上でございます。

亀井委員 それは誰でも分かることでして、島根県、鳥取県、国交省が今年の会議について、今、開催について相談をしておりますというのは誰でも分かることなので、ゼロ回答に近いんですけれども。

 とにかく、誰が主体性を持ってこの中海の環境を改善してもらえるのかという、国交省とか農水省とかの関わり方について伺いたいんですけれども、私も、まず県の方と話をして、また国交省にも個別に、農水省にも個別にちょっとお話をさせていただきたいと思います。でも、こういうところで発言しないと何も動かないというのが現状でして、状況というのはよく分かりました。

 時間がなくなってきておりますので、一つ、県の要望について伺います。配合飼料価格安定制度についてです。

 配合飼料が円安の影響でずっと高止まりをしております。国が緊急対策、令和四年に緊急特別対策、令和五年に新たな特例を措置して激変緩和をしているわけですけれども、でも、この補填がなくなってきている。要するに、高止まりした状態が常態化している中で、県には予算が余りございませんので、きちんと手当てをしてほしいという県からの要望でございます。

 農水省の方は、なぜ足りないのかという質問が来ていまして、私も確認をしました。そうしたら、畜種、結局、牛の方が大変なんですよ。豚の方はある程度収入が得られているけれども、牛の方は、子牛の価格が下がっているので、それで非常に厳しい。だけれども、この補填というのが豚の方にも支払われて、結局、全体としての補填資金がなくなっていくので、きちんと畜種ごとに生産物価格の状況を勘案して緊急対策を発動するなど、工夫してくださいという県からの要望ですが、農水省にお答えいただきたいと思います。

舞立大臣政務官 令和三年以降の配合飼料価格の高騰に対しましては、国の予備費ですとか地方創生臨時交付金、重点支援交付金等によります追加的な財政支出に加えまして、民間による借入れも活用して、配合飼料価格安定制度等により総額五千七百億円を超える補填金を、生産者に対し、激変緩和の機能を果たしてまいりました。

 本制度は、あくまで配合飼料のコストの上昇に対する激変緩和を図るためのものでございまして、飼料価格が高い状況や畜産物価格が十分に上がらないような状況に対して、永続的に補填を行うことを意図した制度ではないことは御理解いただければと思っております。

 畜種ごとの経営安定対策や金融支援など、各種施策を総合的に活用して必要な支援を行うとともに、国際情勢の影響を受けにくい体質への転換のため、国産飼料の生産、利用の拡大を推進していきたいと思います。

 また、今後、為替の動向ですとか、トウモロコシや大豆油かすの相場等も見ながら、しっかりと、必要な対応につきましては検討を続けてまいりたいと考えております。

亀井委員 時間ですので終わりにいたしますが、一言申し上げたいのは、インボイス制度の導入と、あと円安によるコスト上昇で、このままほっておくと農業にしても漁業にしても生産者が激減しますよということをお伝えして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 今日、資料を配付させていただいています。資料の一は、全国四十七都道府県の農業の生産所得率ですね。どれぐらい、例えばお店や企業で一千万売り上げて幾ら手元に残るのか、その率を一から四十七まで挙げました。

 一位は、古川先生の御地元の佐賀県。これはもうずっと、十年ぐらいずっと佐賀県が農業の利益率ではトップなんですね。大変残念ながら、今日、私も、川内委員も、そして保岡先生、鹿児島県が、産出額では全国二位なんですけれども、最下位なんです。昨年は四十番でしたけれども、その前も最下位でした。ずっと最下位なんです。恥ずかしいと思いつつも、問題提起をしたいと思って、この表を出させていただきました。

 それで、北海道も、もちろん産出額は全国トップ、一兆二千九百十九億なんですが、利益率でいいますと十五番目なんですね。鹿児島県は、本当にお恥ずかしいんですが、五千百十四億売り上げていますけれども、二九・二%。ですから、一千万売ったら、二百九十万しか手元に残らない。しかも、この手取りというのは人件費は入っていないですから、ここから人件費を払うともう完全な赤なんですね。そういう表です。

 それで、もう一つ、佐賀県、福岡県、福井県、大臣の地元の熊本県、大体この一位から四位ぐらいもほとんど変わらないです。ずっとトップを占めています。

 ですから、九州七県のうち佐賀、福岡、熊本、三県がいつも、それから五位が大分ですから、非常にいい、バランスの取れた農業をしているということが言えるかと思うんですが、どういうふうに佐賀県と私どもの鹿児島県とは違うのか。

 よく見ますと、やはり佐賀県は、これも本当に有名ですけれども、もちろんお米も、さがびよりとか夢しずくとか、全国的にも有名です。そしてまた、レンコンとかタマネギとかアスパラ、これも全国の生産二位、小麦も三位、二条大麦だと一位ということで、これを見ていただきますと、要するに、畜産ももちろんあるんですけれども、特に多いのは野菜とか果実ですよね。それから福岡県も、二位ですけれども、やはり野菜や果実、それから花卉、イチゴですとか、そういうお金になる作物を作っているということが大きな原因だと思います。

 残念ながら鹿児島県は、一番の特徴は、やはり牛、鳥を始めとした畜産が多いということですね。畜産が鹿児島県ですと六七%、七割近いわけであります。宮崎県もかなり畜産の率が高いので、なかなか所得率は高くならないというのが現状なんですね。

 それで、私どもも、鹿児島県で畜産をやっている方ともいろいろ相談しますけれども、野間さん、とにかく、石川啄木じゃないですけれども、働けど働けどなお我が暮らし楽にならざりし、そんなことで、もうずっと頑張っているけれどもなかなか上がらないんですよということを、半分諦めの心境を話される方も多いんです。

 非常に単純に考えれば、いや、もっとブランド戦略をやればいいんだ、鹿児島牛でもっとどんどんどんどん売っていけばいいんだ、確かに、六大ブランドというのがありますけれども、神戸、松阪、近江、米沢、宮崎、仙台、そこに鹿児島牛も入れるようにすれば付加価値が取れるんじゃないか、こういう話もあります。

 鹿児島県の牛に限って言えば、いろいろ出荷をしていますけれども、繁殖牛をいろいろ、屠畜して出しているのが七割、県内でやっています。そのうち九割が県外に出ています。それから、子牛の二割が県外に出ています。ですから、ここまではたどれないんですけれども、鹿児島から出た子牛が松阪に行っているんじゃないか、いろいろなところに行っているんじゃないか。神戸牛はいろいろな条件がついているので、それができないということになっていますけれども。

 そういう形で、ある意味で、工業製品でいえば、原料で出して、加工はよその県でやるので、その間の付加価値が取れないということでこうなっています。ですから、逆に言いますと、鹿児島牛がどんどんどんどんブランドが高くなると、こういう松阪牛とか近江牛とか、そういったところの原料の供給ができなくなってくる。なってきた場合は、お互いさまで、あっちが引っ込んでこっちが上がるというようなことで、国内全体でこれだけ人口減少している社会ですから、お互いがよくなるということはないということになってくるんじゃないかと思います。

 そういった意味で、非常に国内の市場も縮小もしていく中で、こういう、人件費も出ないような状況ですよね。全国全ての平均的なものを見ていただいても、これも大臣もよく強調されていますけれども、九兆円の売上げといいますか、九兆円やっているんだと。確かにそうです。しかし、実際、全国の利益率を見ても三五・八%、ですから、一千万で三百五十万だ。これは人件費も入れたら赤ですね。日本全国、やはり赤字なんですよね。それが私は今の偽らざる現状だと思います。

 それで、昨日、自民党の食料安全保障検討委員会の森山会長などが岸田総理を訪ねて、農林予算は増やしてもらわないと大変なことになるということで、とにかく再生産を可能とする合理的な価格を形成することを要請する、それにはやはり予算がないとできない。それからまた、日本型の直接支払いや畑作物の直接支払交付金、ゲタ対策の見直しなども要請する。つまり、言葉はもっともらしいけれども、要するに、農政が行き詰まっているということですよね。そういうことを、森山委員長を始め自民党の皆さんも、このままでは駄目だと。

 これは相当予算を増やして、農家の所得を上げていかないと、先ほど亀井委員の話もありましたけれども、どんどんどんどんやめていきます。大臣がおっしゃっているように、二十年後、百十六万人の農業基幹従事者が三十万人になると言っているんですから、四分の一ですよね。崩壊するということですよね、日本の農業が。

 というような状況なものですから、大臣、本当に、これが実態ですよね、赤字なんですよ、要するに。それを幾ら各県が一生懸命頑張っても、佐賀県のものをこっちへ取ってきたり、内輪で取り合いみたいなことをしても、農業全体はよくなりません。

 そういった意味で、やはり、我々も主張しています、農家に直接、所得に寄与するような直接の支払い。もろもろ、今、恐らくこれは自民党内でもそういうことを考えられているんじゃないかと思いますけれども。

 大臣、こういう実態を御覧になって、やはり今までのままやっていてもこれは駄目だと思われませんか。そして、どうしたらいいか。いかがでしょうか。

坂本国務大臣 まず、直接支払い、所得補償、そういったものに対してお答えいたします。

 農業を持続的にするためには農業者の所得を確保することが重要ですが、そのためにすることは、所得を補償することではなく、生産性の向上や付加価値の高い農業生産などを通じて、収益性の高い農業を実現していくことが基本であると考えています。

 その上で、国内外の資材費や人件費等の恒常的なコストなどが考慮された価格形成が行われる仕組みの構築を図るとともに、農産物の価格変動に対しまして収入保険等の経営安定対策、そして、生産資材の高騰に対して影響緩和対策を実施していくことによりまして、経営の安定を図ってまいりたいと思います。

 畜産につきましては、やはりこれは子牛から始まって、その子牛がそのままコストになります、肥育にとっては。ですから、非常に、売上高、個体そのものは百万近く、あるいは百万以上もするわけですけれども、どうしても、今言われた利益率というふうになりますと、それは小さくなります。佐賀や福岡のように、米麦あるいは野菜、こういったものにつきましては、コストが非常に低価なものになるということで、利益率というのは高くなるというような構造になるというふうに思っております。

 そういうことで、このままでは再生産可能に疑問符がつくかもしれないということで、食料・農業・農村基本法の改正というふうになりました。そして、やはり生産、加工、流通、小売、消費、こういった横の連携を取って、食料システムという考え方の中で、相互理解を深めながら、価格転嫁もしていく、合理的価格を決めていく。そのことによって農業者の所得を引き上げ、そして持続可能な農業を展開していくというようなことに今回の法案でしたわけであります。

 それで、昨日、自民党の森山先生たちが総理に申し入れられたということは、それに対してやはり予算が必要でありますので、予算の十分な獲得をしてほしいというような要望であったというふうに思っております。

野間委員 もう詳しくは反論はいたしませんけれども、やはり自民党内からも、従来の予算で同じことをやっていたら駄目だという声が上がっているということは事実だと思います。

 続いて、これも参議院でも取り上げていましたけれども、手作りの漬物を六月一日から、事実上、食品衛生法の改正によって禁止されたということであります。これもテレビ、新聞等でもよく報道されていましたけれども。

 厚労省さんも今日来ているわけですが、今まで六件、漬物についての食中毒が発生したということなんですが、二〇一二年の札幌での白菜の浅漬けから始まって、これは確かに死者が八名出て、その後の五件、これも、キムチの事件が三件、浅漬けが三件ということです。これはちょっと詳細をいただきましたけれども、漬物を作るある程度の施設のある製造所が四件、それから飲食店が一件、そしてもう一つは、保育園の台所で何かサルモネラ菌があったんじゃないかというのが一件。

 ということで、これを見ますと、いわゆる個人の農家の皆さんがいろいろ手作りで作ったものというところから食中毒が起きたということは、この六件を見る限りはないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の漬物が原因食品として特定された食中毒発生状況は、二〇一二年の札幌市の事件以来、現在までそれ以外に五件起きておりまして、原因施設はおおむねおっしゃられたとおりかと存じております。

野間委員 ですから、とりわけ私の地元も、よく私も漬物を買ったりするところがありますけれども、高齢の農家のおばあちゃん、おじいちゃんが作っている、そこで何か食中毒が起きたなんということはないんですよね。そういった人たちのところを禁止するというのはいかがなものかなと思います。

 これは参議院で舟山委員も指摘をしたところですけれども、こういういろいろな規制を作った食品の営業規則に関する検討会、これは厚労省の検討会ですけれども、この中に本当にそういう個人で作っている方々の声を代弁している人がいたのかなと思いますけれども、十二名いて、学者先生が四人、業界、これは惣菜協会の事務局長さんが一人、あとは、保健衛生関係の行政関係者が五人で、民間の研究者的な人が一人ということで、そういう声は全然届いていない中で、保健衛生的な観点から規制が始まったということが言えるんじゃないかと思います。

 しかも、これは、例えば蛇口をひねらなくても水が出る、国会でもそうですけれども、ぱっと自動的に水が出る装置とか、いろいろこういうものをつけなさい、台所と別な建屋を造ってそこで製造しなさい、こういうような規制とともに、HACCP、国際的な基準に基づいた手引書に倣って製造しなさい、こんなことをこれから漬物を漬ける人にも課しているわけですけれども、これは漬物を作っている人に非常に失礼というか。

 ユネスコに和食が登録されて、無形文化遺産になっていますよね。それで、農水省のにっぽん伝統食図鑑というものに、五つぐらいの日本の代表的な食べ物の中に漬物があるんですよ。これを見ますと、縄文時代から既に野菜の皮を塩漬けして食べていた。それから、天平時代といったらもう千四百年ぐらい前ですよね、木簡にウリの塩漬けとか、平安時代の延喜式にも酢漬けとか、ひしお漬けとか、かす漬けとか、いろいろ今食べているようなものが全部書いてあるんですよ。そんな、HACCPの何か手順を教えてもらう必要なんか全くないんですよ。

 そんなことを今そういう農家の皆さんに強いてやるというのは失礼な話ですし、恐らくやめている方はいっぱいいますよね。そうすると、もうこういうものは作れないですよ。伝統的な日本の文化、本当に和食の文化はなくなりますよね、工場で作るものしか許さないということですから。

 だから、これは全然やっていることが反していますし、残念ながら、厚労省がそういう規則を決めるときに農水省さんがきちんと意見を言っていなかったということが私は大きな問題だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、古川(康)委員長代理着席〕

坂本国務大臣 平成三十年の食品衛生法改正に関連いたしまして、漬物製造工場が新たに許可を得なければ営業できない業種とされたところですが、これは、消費者の安全、安心に応え、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するための措置であるというふうに承知しております。

 漬物製造は、国産野菜の消費先でもありまして、また、農村においては、農家の収入確保だけでなくて、地域食品の文化の伝承の観点から極めて重要であるというふうに考えておりますが、やはり食品の安全は大前提でありますので、ここは大事にしなければいけないというふうに思います。

 似たようなことがございます。野間委員の近くの天草の牛深というところ、私が三年間勤務したところでありますけれども、ここは加工業、納屋が盛んであります。雑節あるいは煮干し、こういったものを蒸して作って、節にして、そして京都の料亭に送る。そして味を出すと、非常にいい味が出るということで、これまで海水で生魚を洗って加工していたわけですけれども、それを衛生上の理由でやはり水道水にしなさいということになって、今大変な騒ぎにもなっております。

 しかし、一方で、こういった全国化あるいはブランド化、そして海外展開あたりも考えれば、やはり世界のルール、日本の衛生ルール、こういったものについてはある程度受け止めなければいけない。その中でどうやって地域産業として特色を出していくのか、これが重要なことであるというふうに思っております。

 産業振興の立場からも、それを受け入れた上で、これからの振興策というものを考えていくべきであるというふうに思っております。

野間委員 そうやって業として、商売として全国的に売っているものは、本当に、確かに大臣おっしゃるような衛生管理も厳格にやらなきゃいけないと思いますけれども、極端に言いますと、家でおじいちゃん、おばあちゃんが漬物を作って、私らや孫に食べさせた、これもだんだん禁止されるようになりますよ。家で作るな、衛生管理がされていないからと。

 極端に言うとそういうところにまでなるような、その延長線上で道の駅とか直売所では売られているわけであって、そこまでやるのは酷な話じゃないかなということを申し上げて、もうこれ以上これについては質問いたしません。

 最後に、農林中金の巨額損失の問題であります。

 これはもう既に今回で三回目になるんですけれども、一度は、一九九五年に住専の問題でいろいろな不良債権を抱えて、JAバンクですね、六千八百億もの公的資金を注入して救済した。その後、リーマン・ショックでもやはり一兆九千億円、今回と同様に、JAグループを引受先として資本の増強を行った。今回も一兆五千億を使って増強するということなんです。

 農林中金の、いろいろ見ますと、百兆円近い預金があって、使うところがないということなんですよね。農業だけでもせいぜい八兆円ぐらいしか、融資もしていないし、使われていない。ただし、JAグループに対して毎年三千億円の奨励金、還元金を払わなきゃいけないということで、外債の運用に今頼らざるを得ないということなんですけれども、ここに莫大な農家の汗と涙の結晶の積み上げたお金があって、それが使われずに、いろいろな外債やら何やら、得をしたり損をしたり、そういうところのギャンブル場にお金が突っ込まれているということが、本当に国にとっていいのか。

 これはもちろん、民間金融機関だから政府がどうのこうのと言うことじゃないんでしょうけれども、農林中金法の総則では、農林水産業の発展に寄与するのが目的だというふうになっていますので。

 これだけ農水予算もずっと停滞をして厳しい中で、例えば、先ほどもお話が出ましたけれども、マルキンをやっている農畜産業振興機構とか飼料高騰対策をやっている全日本配合飼料価格畜産安定基金とか、こういうところに、何らかの基金に投資をするなり、基金に積み上げるなりして、後で、相場がよかったときはお金を返すこともできるわけですから、何らか農業のためにもっともっと使ってもらうべきじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 農林中金は、農協等のために金融の円滑を図る役割を持った金融機関でございます。

 具体的には、農林中金は、農協等から預かった資金について、農林水産業や関連産業への融資や出資、そして金融市場における有価証券等の運用等によりまして、収益を還元しているというふうに承知をいたしております。

 また、農林中金は、農協などの農林水産業者の協同組織を基礎とする金融機関として、農業関連融資約六千億円といった農業者や関連産業への融資や、そして国産農産物の利用促進、さらには高付加価値化などの取組を通じて、農林水産業の発展に寄与しているものと承知をいたしております。

 農林水産省といたしましても、民間金融機関ではございますけれども、農林中金が協同組織や農林漁業者のニーズに応えた取組をより一層進めることにより、日本の農林水産業の発展に寄与するよう後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

    〔古川(康)委員長代理退席、委員長着席〕

野間委員 農協自体、今年が千五百億ぐらい減益になるということも聞きますし、あるいは、ダイヤモンドの記事もつけましたけれども、五年後、千七百億ぐらいの大減益になるんじゃないかと。それは、当然そうですよね、大臣もおっしゃっているように、二十年後、三十万人に基幹的な農業従事者がなるのであれば、農業をやる人たちがどんどんどんどん減ってきて、預金もどんどん引き出されていきますよね。そうしますと、もう足腰が、農林中金といえども、がたがたになってくる可能性があります。

 そういったことも配慮をしていただいて、また、農林中金に別に指示、命令はできないでしょうけれども、そういう対話を是非続けていっていただきたいと思います。

 ということで、もし一言あれば、よろしくお願いします。

坂本国務大臣 しっかり日本の農林業に寄与するようなことを、今後も農林業に寄与するように後押しをしてまいりたいというふうに思います。

野間委員 ありがとうございました。終わります。

野中委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 私の方からも、漬物の製造、販売について質問をします。

 漬物の製造、販売が、食品衛生法の改正によって、今月から届出制から営業許可制度となりました。許可に必要な施設整備が行えず、全国各地で廃業が相次いでいます。このことを伝える報道も後を絶ちません。

 厚生労働省の浜地副大臣にもお越しいただいております。

 まず、厚労省、農水省、この廃業が相次いでいる事態について把握されていますか。

浜地副大臣 お答えをいたします。

 田村委員御指摘のとおり、平成三十年の食品衛生法の改正以後、令和三年六月一日に経過措置が設けられておりましたが、その期限が来ております。

 厚生労働省としましては、現在、自治体に対して、法令改正施行後の実態把握に努めるとともに、特に家族経営等の小規模零細な営業者に対しまして、事業継続に配慮したきめ細かい説明等を今後行うように努めてまいりたい、そのように思っております。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 漬物製造業の状況でございますが、私ども、工業統計調査などを通じまして算出しております事業所数あるいは出荷金額、こういったものを把握をいたしているところでございます。

 平成三十年、法改正があった時点ですけれども、事業所数は、千二百八十三事業所ございましたが、直近の令和四年では千百九十事業所、それから出荷金額では、平成三十年に三千三百九十六億円でありましたが、令和四年では三千二百十五億ということで、微減となってございます。

 ただし、こうした事業所数などのデータの中には、委員おっしゃったような、農業者が自家野菜などを活用して漬物生産などを行うような場合というものは含まれていないというふうに承知してございます。

田村(貴)委員 しっかりと、国が作った法改正によって廃業が生じているわけですから、掌握して当たり前じゃないですか。つかんでください。

 農家などが長年、地元の野菜を使って、昔から行ってきた塩漬け、梅干し、ぬか漬け、みそ漬け、これらは食中毒事件を起こしているんですか。先ほど野間議員の質問で、二〇一二年、札幌の浅漬け以来、六件あったというんですけれども。こうした地元の漬物が食中毒事件を発生しているんですか、お答えいただきたいと思います。

浜地副大臣 お答えいたします。

 漬物等の食品において食中毒事案というものが、私の手元にございますが、これは、浅漬けの場合であったり、又は浅漬けかどうか不明なものもございます。(田村(貴)委員「浅漬けとキムチだけですよ」と呼ぶ)浅漬け若しくはキムチ。

 ただ、このキムチの中でも、実際これが浅漬けなのかどうかということは正確に把握をしているものではございませんで、実際に二〇一三年から二〇二三年までの食中毒事案としましては、六件報告をされているところでございます。

田村(貴)委員 それはさっきから言われていて、衆参でもう質問があっているんですよ。

 この中に、ぬか漬けとか梅干しとか、それからみそ漬けとか、元々の保存食なんですよ、これが入っていないんですよ。食中毒も起こしていない。それを、地域地域で愛されてきた漬物とサラダ感覚で漬けた浅漬けと一くくりにして同じ管理を押しつけるというのは、やはり無理があるのではないですか。副大臣、いかがですか。

浜地副大臣 済みません、先ほど私の答弁で六件と申し上げましたが、五件が正確でございます。申し訳ございません。訂正をさせていただきたいと思っています。

 田村委員御下問の問いでございますけれども、まず、そもそも今回の許可制度にした契機は、御案内のとおり、平成二十四年八月に浅漬けによるO157等の大規模な食中毒事件が発生したことが契機でございます。

 漬物は、野菜を調味液等に数日間漬けることが製造工程に含まれておりまして、製造工程が長期間になるほど製造中の食品に含まれます細菌等が繁殖するおそれがありまして、浅漬けに限らず、漬物製造は食中毒のリスクが高いというふうに考えられております。

 このことも踏まえまして、食品の衛生規制に関する検討会で専門家による御審議もいただいた上で、漬物全般にこういった許可制を設けたところでございます。

 ただ、例えば浅漬けとそれ以外の製造に関しましては、具体的には、浅漬けの製造には製品が摂氏十度以下となるような管理をすることができる機能を備える冷蔵庫が必要でございますが、それ以外の漬物につきましては、製造する場合、当該冷蔵設備を不要としているなど、そういった浅漬けやそれ以外の漬物との差異にも応じた基準を設けているところでございます。

田村(貴)委員 坂本大臣にお伺いします。

 秋田県のいぶりがっこ、有名な漬物ですよね。県内直売所で売る人が六百三十六人いたけれども、今度の法改正によって許可施設が百七十九件にとどまっているんですよ。だから、みんなやめているんですよね。継続できるようにするのがやはり行政の役割じゃないんですか。

 坂本大臣は、先日の神谷議員の質問に対して、こう答弁されています。地域の伝統的な食文化を継承していくことは極めて重要とおっしゃいましたね。そして、農業者が自家野菜を活用して漬物を製造していくことは農家の収入確保だけでなくて地域の食品文化の伝承の観点からも極めて重要とも答弁されています。すばらしい答弁ですよ。

 極めて重要な漬物作り、極めて重要な食品文化の継承、そこまでおっしゃるのであれば、これまでのように製造、販売ができるように支援すべきではないですか。

坂本国務大臣 農林水産省といたしましては、この前もお答えいたしましたように、漬物等の地域の固有の食文化を次世代に継承するために、各地域の郷土料理の歴史やレシピをホームページで公開をし、地域食文化の情報発信に努めております。そして、農業者の団体が六次産業化・地産地消法等に基づく計画の認定を受けた場合には、漬物製造のための施設を整備する取組に支援をしているところでもございます。

 御指摘のような、農業者が自家野菜等を活用いたしまして漬物生産等を行うケースを網羅的に把握することは現実的には非常に難しいところでありますけれども、食品の安全はまずは大前提でございますので、必要な衛生規制はきちんと受け止めた上で、様々な施策を有効に活用いただけるよう、厚生労働省とも協力をして、そして地域の文化というのを守ってまいりたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 文化を守っていくんだったら支援が必要なんですよ、廃業を止める。またもう一回再開する支援が必要なんですよ。食品の安全は絶対大事ですよ。私は何にも否定しません。でも、今の事態は、作り手も悲しんでいる、買手も悲しんでいる。地域の文化がなくなっていくんですよね。作りたい、作り続けたいとおっしゃる方がたくさんおられます。そうした生産者とか農家に寄り添って、ここまでの造作をしたら認められますよという、やはり、きめ細かなアドバイス、そして財政支援が必要ではないですか。

 支援をやっているところの自治体、やっていないところの自治体、ばらばらですよ。政府が、やはりこういう、これまでの地域の伝統産業、漬物産業を支えてきた人たちに寄り添うことが必要だと思います。

 大臣のおっしゃるこれからの振興策というのは、今やはり継続したいと考えている人たちに寄り添う支援ということで捉えてよろしいんでしょうか。いかがですか。

坂本国務大臣 先ほど厚労省からもありましたように、法施行までには三年間を取って、準備に必要な期間を用意をいたしました。そして、従来から漬物製造業を営む方々に対しましては、更に三年間の経過期間を取ってまいりました。

 加えて、厚生労働省では、都道府県に対しまして小規模零細事業者の事業継続に配慮するよう依頼をし、都道府県等では、各地の実情に応じて施設整備に対する支援を講じてきたところでもございます。

 改正食品衛生法の施行に向けて、重ねて対策が今後も講じられていくよう努力をしてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 大臣、今のままだったら、農家の収入の確保、これも断たれてしまいます。極めて重要だとおっしゃった地域の食品文化の伝承もできないということであります。そのことを指摘させていただきたいと思います。

 次の質問に入ります。

 浜地副大臣はここで退席していただいて結構です。

 酪農について伺います。

 二〇二二年の酪農経営の農業経営収支では、売上げから経費を引いた農業所得が、北海道も含めて、平均でマイナス四十八万八千円の赤字でありました。

 配合飼料価格安定制度の見直し、それから、価格高騰分の直接支援を打つべきだと私はずっと委員会で主張してきましたけれども、政府は十分やっていると言うだけでありました。

 しかし、結果はもう明らかです。酪農の離農、廃業が相次いでいます。都府県では七%が一年間で廃業、北海道も四・四%、合計で一年間で五百五十一軒の酪農家が廃業しています。

 政府のこれまでの配合飼料高騰対策等々を含めて、農家の窮状に向き合っていない、農家の窮状を救っていないと思いますが、これでよろしいんでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘ございましたけれども、畜産経営、令和四年の一時間当たりの農業所得はマイナスでございます。

 一方、配合飼料価格が高騰する前の二〇一九年を見ますと、酪農ですと一時間当たりの農業所得で千二百三十円、繁殖牛で千円ちょっとというようなことになってございます。

 ただ、厳しい状況になった理由でございますけれども、令和三年以降の飼料価格の高騰、これは国際的な穀物相場が上昇したということですとか、あるいは円安、さらには新型コロナによりまして牛乳・乳製品に対する需給の緩和ということで、厳しい状況になったと認識をしてございます。

 政策的には、令和三年以降の飼料価格高騰に対しましては、配合飼料価格安定制度などによりまして、総額五千七百億円を超える補填金を生産者に交付をして激変緩和を図りましたし、また、乳製品の需給対策といたしましては、余剰な乳製品の在庫削減対策なども講じまして生乳の需給改善を支援をして、それによりまして、コスト上昇を価格に反映できるような環境の整備によりまして、累次にわたる乳価の引上げにつながったというふうに考えてございます。

 引き続き、経営安定対策や金融支援などで畜産業を支援していきたいと考えてございます。

田村(貴)委員 一年間に五百五十一軒の酪農家が離農、廃業しているんですよ。いろいろやっていると言うんだけれども、結果、こうじゃないですか。

 そして、高齢化だとか言われるけれども、後継者がいる酪農家だっているんです。能登半島で、地震と資材高騰でダブルパンチを受けている、それでも後継者はいた、だけれども、今のままだったら継ぐことができないと泣いているわけなんですよ。もっともっと、資材価格高騰、ちゃんと財政措置をやって、救済すべきじゃないですか。

 資料をお配りしています。これは、大手乳業メーカー三社の決算と内部留保の推移であります。

 これを見てお分かりかと思うんですけれども、三社の内部留保が一兆円を超えています。乳価の引上げのときに、あれほど価格引上げを渋った乳業三メーカーは増収増益であります。一方で、カレントアクセスで安い輸入の脱脂粉乳を使って大きなもうけを得ているということがこの数字からうかがえます。

 よつ葉乳業の社長も、生産者側が在庫調整するのは望ましくないやり方だ、乳業メーカーが責任を持つ必要があると言っています。

 大臣に質問します。

 政府がこうしたメーカーを指導して、これだけある、一兆二百七十一億円もある内部留保金、これをやはり吐き出す、そして、国産脱脂粉乳を購入するように強く指導することをしたらどうですか。乳価の引上げに積極的に関与する、メーカーの側から関与していく、こうしたことが必要ではないか。政府の指導責任が問われていると思いますが、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 現在、ヨーグルトの需要の低迷、それから製品価格の値上げの影響もありまして、特に脱脂粉乳の需要が緩和傾向で推移をしておりまして、何ら対策を講じなければ在庫が積み上がってしまうような状況は変わっていません。

 このため、生産者団体と乳業が負担し合う形で、脱脂粉乳を子牛のミルク用に仕向けることなどによりまして、脱脂粉乳の在庫を減らす取組を行ってきたところでございます。

 同様に、こういった努力を続けてまいりたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 乳業メーカーへの指導をしっかりしていただきたいと思います。

 終わります。

野中委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 大臣、しつこい男だと思われるかもしれませんけれども、お米がやはりまだ不足をしている。いろいろなところから、更に声が上がっています。

 今まで農業新聞とかは取り上げていたんですけれども、この前、五月二十二日に日本経済新聞が取り上げていまして、需給が逼迫していると。新潟産のいわゆる有名なコシヒカリなんかでも、今や一俵六十キロ、二万三千百五十円というふうになっています。これは前年に比べると八千円以上値上がりしている。もっと言うと、東日本大震災のあった二〇一一年の九月以来の高値だというふうに、これは日経新聞に書いてあります。

 そこにも大臣のお考えが書いてあるんですが、私もこれは四回目ぐらいの質問だというふうに思いますけれども、大臣は、需給の状況、価格の動向を注視するという話なんですね。

 いろいろ議論していても、これはなかなかつかみどころのないところがありまして、皆さんの統計によると主食米は別に逼迫していないということなので、であれば、私は、注視するというのも結構なんですけれども、それをちょっと踏み込んで、もし需給が逼迫するのであればそれなりの手段を取る用意ができている、こういうことをやはり言われた方がいいんじゃないかというふうに思います。

 というのは、日経新聞なんかの分析によると、去年の猛暑によって、お米の作況が、数字で出ているほど、そんなに収穫できていない。あるいは、お米の需要も、インバウンドを含めて、おにぎりとかそういうのが人気が出てきて、お米の消費も増えているという分析なんですが、私が現場の流通関係者に聞きますと、一部の大手がもしかしたら買い占めている、値段が上がることを見越して、それでちょっと買いだめをしていると。

 そういうけしからぬ業者がいるのであれば、やはり大臣から、今後もこのまま、通常考えると、八月に向けてどんどん価格が、更に米の価格が上がっていきますから、そこでちゃんと、もし農林水産省としてちょっと放置できないような状態になれば、我々は介入、介入というか、ちゃんと措置をする構えができている、これだけでも牽制になるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

坂本国務大臣 前回と同じ答弁になりますけれども、年間の需要量に対します在庫率、これは二六・四%でありまして、コロナ禍前の時期とほぼ同水準でございます。ですから、現時点で主食用米の需給が逼迫しているという状況とは考えません。やはり、特定銘柄等によりますスポット買い、こういったものが非常に高値に結びついているんだろうというふうに思っております。

 そして、先月末には六年産主食用米の四月末時点の作付意向も公表をされました。前年の作付実績と比較いたしましても、増加傾向が一月末時点の五県より増えて十一県になっております。その増加傾向の十一県も、北海道や青森、それから茨城や宮城といった主産県でございます。こういうことで、各産地が主食用米の需給の状況を踏まえてそういったものを検討されて、こういう作付結果になっているんだろうというふうに思っております。

 農林水産省といたしましても、産地品種銘柄ごとの販売状況、そして在庫量、さらには作付意向など、引き続き、きめ細やかな情報提供をそれぞれの団体、農業者にしっかりと徹底していく考えであります。

北神委員 ちょっと時間がありませんけれども、情報提供のみならず、やはり為替介入と一緒で、ちゃんとそういう牽制をするようなことを発信するのも農林水産省の仕事だというふうに思っていますので、是非そこをまた検討していただければというふうに思います。

 次に、森林環境保全整備の話に移ります。

 私の地元も、京都といいながら、亀岡とか、今日も地元の仲間の市会議員も傍聴席におられるんですけれども、京北、北山杉というのが有名ですけれども、美山町、南丹市とか、京丹波町とかいろいろありまして、そこの森林組合の方々からこの前お話を伺ったんですが、今日は間伐に限定したいと思うんですが、間伐で補助金があります。この単価が余りにも安い。

 今、技能士をどんどん雇わないといけない人手不足の中で、とても今のこの単価では技能士を雇うことができない、あと、安全対策もなかなかできない。御案内のとおり、きこり業というのは非常に事故率の多い仕事なので、そういった面でも非常に単価が低い。

 資料を皆さんにお配りしておりますけれども、これは農林水産省の実際の調査、林野庁の令和四年度の調査ですが、ちょっと分かりにくいんですけれども、上の方を御覧いただいて、いわゆる間伐の、伐倒、木を切り倒す、百本当たりの作業時間の平均値、それから、補助金の金額の基準となるいわゆる標準工程、この比較をしています。

 胸高直径別にありますけれども、この上の箱の表の、二十八センチ以上の胸高直径の木を見てみますと、平均値というのが、右の方にちょっと行くと、二・六。これは、要するに百本につき二・六人が必要だということであります。これが、実際に調査をした結果、平均すれば二・六になっています。

 ところが、補助金の基準となる標準工程というのがたったの一・二六なんですね。現実と相当な乖離がある。だから、ここをもう少しやはり引き上げていかないと、全体の物価も上がっているという状況の中で、問いたいということです。

 もう一点は、例えば、私のところで京北というところがあって、間伐するにも、簡単に間伐できるところと、桂川というのが流れていますけれども、桂川の川辺にすぐ山がある、そういったところはなかなか手間も暇もかかる。そうすると、今の補助金は一律どこでも同じですから、どうしても、難しい、なかなかできないところ、手間がかかるところ、これはほったらかしになって、大雨のときに山崩れとか、そういったことになっている。

 だから、そういうちょっとめり張りをつけるような、二段階なのか分かりませんけれども、そういう価格を、補助金の単価というものを二段階にすべきではないかというふうに思いますけれども、合わせて二問、問いたいというふうに思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 間伐につきましては、選木、伐倒、造材、集材、四つの工程がございまして、それぞれの工程の労務量に労務単価を掛けまして、これに諸雑費を加えた上で、その四つを合計して間伐の補助金の単価を算出しているところでございます。

 配付いただいた工程分析調査事業の結果、間伐とは別になりますけれども、下刈り、地ごしらえの標準工程について、令和五年三月に見直しを行ったところです。

 御指摘をいただいております間伐の伐倒工程につきましては、先ほどの調査において、実際の工程が標準工程を若干上回ることが分かりましたけれども、そのほかの選木、造材、集材の工程につきましてはデータが得られておりませんので、令和五年度に間伐作業全体の工程の調査方法と調査票を見直したところでございます。

 今年度、見直した調査票を基に、間伐作業全体について、作業システムの変化も踏まえまして、改めて標準工程の見直しに必要な調査を全国で予定しているところでございます。

 もう一点の御質問の標準工程は、条件がよいところと悪いところも含めまして定めていることと、造林事業は全国で十数万件と小規模かつ膨大な件数を実施しておりますので、それぞれの箇所の条件に応じた補正を行うことは、事実上、事業として困難ではございますけれども、現場状況が標準工程に適切に反映されるよう今後とも努めてまいりたいと考えております。

北神委員 もう時間ですので終わりますけれども、是非早めに調査をして、必要な修正をお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

野中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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