衆議院

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第4号 平成28年11月25日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十八年十一月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山口  壯君

   理事 江渡 聡徳君 理事 小野寺五典君

   理事 寺田  稔君 理事 中谷 真一君

   理事 中村 裕之君 理事 後藤 祐一君

   理事 升田世喜男君 理事 浜地 雅一君

      今枝宗一郎君    大西 英男君

      大西 宏幸君    門山 宏哲君

      金子万寿夫君    北村 誠吾君

      熊田 裕通君    小林 鷹之君

      左藤  章君    武田 良太君

      藤丸  敏君    宮澤 博行君

      和田 義明君    青柳陽一郎君

      神山 洋介君    横路 孝弘君

      佐藤 茂樹君    赤嶺 政賢君

      下地 幹郎君    吉田 豊史君

      照屋 寛徳君    武藤 貴也君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   防衛大臣政務官      小林 鷹之君

   防衛大臣政務官      宮澤 博行君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 和夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 加藤 俊治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 川崎 方啓君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小野 啓一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 智哉君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    森  健良君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       丸山 則夫君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   齋木 尚子君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           高野  滋君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   豊田  硬君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  前田  哲君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           辰己 昌良君

   安全保障委員会専門員   林山 泰彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十五日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     大西 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     金子万寿夫君

    ―――――――――――――

十一月十八日

 戦争法の廃止を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第五七四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第六五六号)

 同(池内さおり君紹介)(第六五七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第六五八号)

 同(大平喜信君紹介)(第六五九号)

 同(笠井亮君紹介)(第六六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六六一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第六六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六六三号)

 同(清水忠史君紹介)(第六六四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六六五号)

 同(島津幸広君紹介)(第六六六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六六七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六六八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六六九号)

 同(畠山和也君紹介)(第六七〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第六七一号)

 同(堀内照文君紹介)(第六七二号)

 同(真島省三君紹介)(第六七三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六七四号)

 同(宮本徹君紹介)(第六七五号)

 同(本村伸子君紹介)(第六七六号)

同月二十四日

 戦争法の廃止を求めることに関する請願(小宮山泰子君紹介)(第七五六号)

 同(本村伸子君紹介)(第七七一号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第八四一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九二八号)

 同(池内さおり君紹介)(第九二九号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第九三〇号)

 同(大平喜信君紹介)(第九三一号)

 同(笠井亮君紹介)(第九三二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九三三号)

 同(斉藤和子君紹介)(第九三四号)

 同(志位和夫君紹介)(第九三五号)

 同(清水忠史君紹介)(第九三六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九三七号)

 同(島津幸広君紹介)(第九三八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第九三九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九四〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第九四一号)

 同(畠山和也君紹介)(第九四二号)

 同(藤野保史君紹介)(第九四三号)

 同(堀内照文君紹介)(第九四四号)

 同(真島省三君紹介)(第九四五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第九四六号)

 同(宮本徹君紹介)(第九四七号)

 同(本村伸子君紹介)(第九四八号)

 同(池内さおり君紹介)(第一〇二九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇三〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇三一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一四八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一一四九号)

 同(大平喜信君紹介)(第一一五〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一五一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一五二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一一五三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一五四号)

 同(清水忠史君紹介)(第一一五五号)

 同(島津幸広君紹介)(第一一五六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一一五七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一五八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一一五九号)

 同(畠山和也君紹介)(第一一六〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第一一六一号)

 同(堀内照文君紹介)(第一一六二号)

 同(真島省三君紹介)(第一一六三号)

 同(宮本徹君紹介)(第一一六四号)

 同(本村伸子君紹介)(第一一六五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一二六二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二六三号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一四四六号)

 同(清水忠史君紹介)(第一四四七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四四八号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四四九号)

 同(牧義夫君紹介)(第一四五〇号)

 自衛隊に駆けつけ警護など新任務を付与せず、南スーダンからの撤退を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八四二号)

 同(池内さおり君紹介)(第八四三号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第八四四号)

 同(大平喜信君紹介)(第八四五号)

 同(笠井亮君紹介)(第八四六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八四七号)

 同(斉藤和子君紹介)(第八四八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八四九号)

 同(清水忠史君紹介)(第八五〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八五一号)

 同(島津幸広君紹介)(第八五二号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八五三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八五四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第八五五号)

 同(畠山和也君紹介)(第八五六号)

 同(藤野保史君紹介)(第八五七号)

 同(堀内照文君紹介)(第八五八号)

 同(真島省三君紹介)(第八五九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八六〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第八六一号)

 同(本村伸子君紹介)(第八六二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇三三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一六六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一四五三号)

 沖縄・高江でのヘリパッド工事中止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九四九号)

 同(池内さおり君紹介)(第九五〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第九五一号)

 同(大平喜信君紹介)(第九五二号)

 同(笠井亮君紹介)(第九五三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九五四号)

 同(斉藤和子君紹介)(第九五五号)

 同(志位和夫君紹介)(第九五六号)

 同(清水忠史君紹介)(第九五七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九五八号)

 同(島津幸広君紹介)(第九五九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第九六〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九六一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第九六二号)

 同(畠山和也君紹介)(第九六三号)

 同(藤野保史君紹介)(第九六四号)

 同(堀内照文君紹介)(第九六五号)

 同(真島省三君紹介)(第九六六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第九六七号)

 同(宮本徹君紹介)(第九六八号)

 同(本村伸子君紹介)(第九六九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一二六四号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一二六五号)

 日本を海外で戦争する国にする戦争法(安保法制)の廃止に関する請願(池内さおり君紹介)(第一〇三二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一二六六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一四五一号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四五二号)

 南スーダンPKOに参加する自衛隊への新任務付与を撤回し、安保法制(戦争法)は速やかに廃止することに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一四四四号)

 陸上自衛隊を直ちに南スーダンから撤退させることに関する請願(梅村さえこ君紹介)(第一四四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田和夫君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、法務省大臣官房審議官加藤俊治君、外務省大臣官房審議官水嶋光一君、外務省大臣官房審議官川崎方啓君、外務省大臣官房審議官滝崎成樹君、外務省大臣官房審議官相木俊宏君、外務省大臣官房参事官小野啓一君、外務省大臣官房参事官宇山智哉君、外務省北米局長森健良君、外務省中東アフリカ局アフリカ部長丸山則夫君、外務省国際法局長齋木尚子君、国土交通省航空局安全部長高野滋君、防衛省大臣官房長豊田硬君、防衛省防衛政策局長前田哲君、防衛省地方協力局長深山延暁君、防衛省統合幕僚監部総括官辰己昌良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 おはようございます。自由民主党の寺田稔でございます。

 きょうは、限られた時間ではございますが、我が国の防衛力のあり方、また、その根底をなす法的基盤である我が国の自衛権についての考え方を中心に私の思うところを申し述べさせていただき、大臣にもお考えをお伺いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 御承知のとおり、我が国安全保障体制の構築を図っていく上で、我が国が持っておりますところの自衛権のあり方、これは我が国の自衛隊の今後の絵姿を描く上でも極めて重要でございます。その意味で、やはり過去の歴史というものも我々は十分踏まえて、その歴史を一つのファクトとして捉えていかなければならないというふうに思っております。

 まずもって、我が国が自衛権を我が国の固有の権利として有しているということは、当然の法理として認められているわけでございます。国際法理上は、集団的自衛権をその第七章、明文の規定でもって容認をしております国連憲章を我が国は何ら留保条件をつけることなく国会において批准、承認をした時点において、憲法、すなわち国内法の最高法規である憲法より上位法であるところの国際法理の当然の帰結として、我が国に国際法上も集団的自衛権は付与されたと解されるところでございます。

 現に、昭和二十年代でございます、まだ現行憲法のいわゆる創成期におきまして、当時は自衛隊の前身である警察予備隊が組成をされ、後に今日の自衛隊へと発展をしていくわけでございますが、当時の内閣法制局は、そのみずからの公権解釈といたしましてこういうふうに言っております。米軍駐留そのものをもってして集団的自衛権の行使である。すなわち、米軍の駐留でもって、日米はともに、急迫不正の侵略に対し自衛の権利を共同で行使する、そのことは集団的自衛権の行使であり、そのことを許容していたわけであります。

 御承知のとおり、その後、さまざまな国際情勢の変化の中で、許容される必要最小限の自衛権の範囲というものは内閣法制局の解釈によっても変わってまいります。集団的自衛権は保有をしているけれども行使はしないんだと言っていた時代があることも御承知のとおりでございますが、今日、昨年成立をした平和安全法制、そしてことしから施行されました。さまざまな環境に応じて、その考え方をファクトとして認識をする必要があろうかと思います。

 憲法上の議論として、武力行使の一体化論があることは御承知のとおりでございます。

 この武力行使の一体化というときに、憲法上一体何が一体化であるかという憲法上の論議と、それとは別に、そこに至る手前の段階で、より抑制的にあるいは謙抑的に一体化を防ぐという立法政策上の議論、この二つの議論は、たまに混同されることもございますが、それぞれ峻別をすべきであります。

 かつて、自衛隊がイラク戦争後のイラク・サマワに行ったときに、いわゆる戦闘地域、非戦闘地域という地域をもってする区分の議論があったことは御承知のとおりでございます。これは、実は、憲法上の議論そのものではなくて、憲法上一体化しないとされる限界のさらに手前で線を引くという立法政策上のレベルの問題であったわけであります。

 憲法上のレベルでいえば、かつて大森内閣法制局長官が示したいわゆる大森四要素、これは、四つの要素でもって総合的に、我が国が武力行使において一体化しないというふうな考え方、それは今日においても維持されているものと考えるものでございます。

 今回、平和安全法制、そしてまた平和安全法制の一環をなしますPKO法の改正でもって駆けつけ警護も認められているわけでありますが、これは、現に戦闘を行っていない現場という考え方でもって、四要素を考慮しても、それは一体化しないものとして是認をされるわけでございます。

 もちろん、自衛隊の安全確保の観点から、PKO五原則を満たしていても、円滑かつ安全に活動できない状況であればその活動をやめるという今回の南スーダンにおける実施計画の閣議決定、これも立法政策上行われた重要な配慮であるというふうに認識をいたしております。

 この平和安全法制は既に施行されているわけですが、御承知のとおり、いわゆる新三要件のもと、集団的自衛権の一部が容認をされたわけでございます。実は、全ての国連加盟国は国連憲章に従いまして個別的自衛権とともに集団的自衛権を持っている。しかし、それが使えないんだというふうな解釈をしていた国は、世界広しといえども我が国のみであることは御承知のとおりでございます。

 例えば、永世中立国のスイスも、スイスに行かれるとわかるとおり、十メーター置きに各国から招集をされた義勇兵が機関銃を持って国境線で守っているわけでございます。また、かつて非武装中立と言っていたインドも、集団的自衛権の行使については、アグニミサイルの開発に見られるとおり、中国とインドの国境紛争に対応して集団的自衛権の行使をフルレンジで認めております。

 実は、本年の四月、北朝鮮のミサイル発射事案がありました。その兆候が生じたときに、私の地元の呉市に米軍が管理をしておりますミサイルの弾薬庫がございます。黄幡弾薬庫というふうに言っております。そこから、米軍が管理をしている地対空防衛ミサイルを、輸送艦「おおすみ」、これは呉に所属をいたします海上自衛隊の艦船、輸送艦でありますが、「おおすみ」でもって宮古島に搬送した。米軍のミサイルであります。

 もしミサイルが我が国の領海、領空域に飛来をしていたのであれば、破壊措置命令を発動して地対空防衛ミサイルでもって迎撃をすることは、もちろん法的にも、また実際の行為としてもなされていたでありましょう。幸い、ミサイルはそこに至るまでの間に着弾をし、我が国の領海、領域内には侵入をしなかったわけでございます。

 また、北朝鮮がミサイルを三発発射して、我が国の排他的経済水域に着弾をしたという事案もございました。残念ながら、排他的経済水域においては破壊措置命令を今現在の法制では出すことができないわけでございます。これも、世界標準から見ますと、相当抑制的かつ謙抑的に破壊措置命令については現在措置をされているということでございます。

 今回、平和安全法制の一環としてPKO法の改正も行われまして、国際平和協力業務の実施または物資協力の対象として、新たに国際連携平和安全活動という類型、カテゴリーが追加をされました。いわゆる駆けつけ警護も法的にその一環として付与されたわけでございます。宿営地の共同防護の方は既にPKO法の中で授権をされていたわけでございますが、こうした活動もようやくできるようになった。

 実は、これは派遣をされていた現場の隊員からも極めて強い要望として出されていた事項でございます。自衛隊が誇りを持って現地で活動できる、そして、いわゆる世界標準に至らなくても、少しでもそれに近づいて、ともに新しい南スーダンの国家建設、そして平和的な運営に積極的に関与したいという隊員みずからの希望も極めて大きかった分野であることは御承知のとおりでございます。

 また、今回の平和安全法制では、武力攻撃事態における我が国の平和と独立及び国民の安全の確保に関する法律も一部を改正され、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したときに、我が国の平和と安全、そして国民の生命あるいは幸福追求権が根底から覆される明白な事態に立ち至ったときにおいて、限定的な形でもって自衛権の行使というものが認められるわけでございます。

 仮にこういった事態に自衛権の行使を否定すれば、憲法十三条で定めるところの幸福追求権、あるいは憲法二十五条で定めるところの生存権など、憲法上の国民の権利も否定をされることになるということも認識をいたさなければなりません。

 ちょうど九年前、第一次安倍内閣のときでございました。私も当時、衆議院の当委員会に属して、最初の再編特措法の審議が行われ、本会議で賛成討論を行わせていただきましたが、時あたかも、昭和二十六年の戦後における我が国の独立の回復、これはサンフランシスコ講和条約の調印でありました。それとともに、同時に日米安保条約に調印をいたし、この日米同盟のもと、我が国が我が国の安全保障体制を確立していくという基軸を確立したわけでございます。

 現在、米軍再編はまだその途上でございます。トランスフォーメーションからリバランスへと移り、そして今、ベストポリシーミックスという、米軍再編もオンゴーイングでありますが、さらに進化をした形でもって再編が行われている中で、我が国の自衛隊の位置づけ、役割、これも当然変わってこなければなりません。

 そこで、防衛大臣にお伺いをいたしますが、我が国の自衛隊、今のような変遷も踏まえて、自衛隊の今後のあるべき姿についての抱負をお伺いいたしたいと思います。

稲田国務大臣 寺田委員におかれましては、昨年成立をいたしました平和安全法制の意義、さらには戦後の集団的自衛権をめぐる考え方の経緯、そして我が国を取り巻く環境等々についてさまざまお話をいただき、大変感銘を受けたところでございます。

 私も、委員が御指摘になったように、我が国を取り巻く環境は大変厳しいものがあり、特に、北朝鮮の核実験二回、さらにはミサイルの発射、御指摘になったように、三発同時に発射して、三発同時に着水することができる能力を身につけている、そんな国が日本海を隔てたすぐそこにあるという現実を踏まえて我が国の防衛を考えていかなければならないと思っております。

 私は、我が国の防衛については、一つは、我が国自身の防衛力の質、さらには量を充実させること、そして二つ目には、日米同盟の強化、そして三つ目には、関係各国との関係を構築していく、その三つの側面からしっかり充実をさせていくべきだと思っております。

 そんな中で、我が自衛隊は、二十四時間三百六十五日、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くという強い決意を持って困難な任務を黙々と果たしております。また、地震、水害など大規模災害に際しては国民に寄り添った対応、また高く評価されている海外における活動などを通じ、国民から揺るぎない信頼が寄せられております。今や、自衛隊に対する評価は国民の九割を超えているということでございます。

 また、防衛大臣として、現場の声にしっかりと耳を傾けて防衛政策に反映していくことが大事だと考えており、海外にも視察に行きました。ジブチ、南スーダンにおいても、困難な状況の中で自衛隊がしっかりと現地の方々に寄り添った活動をして高い評価を受けている、世界から尊敬され、そして貢献をしていることをこの目で見ることができました。

 先週には、青森において、南スーダン派遣施設部隊の隊員、さらには家族の皆さん方とも直接語ることができましたが、引き続き、現場の声を聞いてまいりたいと思います。

 先ほど委員が御指摘になった自衛隊のよき伝統を守りながら、新たな情勢にも対応できる創造の精神を持って取り組んでまいりたいと考えております。

寺田(稔)委員 ありがとうございます。

 まさに大臣言われたとおりでありまして、隊員の皆さんは、二十四時間三百六十五日、身を挺して、国民のために、そして世界平和の実現のために頑張ってくれているわけでございます。

 大臣が既に、八月の就任以来、ジブチ、南スーダン、そして現場の隊員を激励された。大変すばらしいことでありまして、これからも、公務御多端の中とは思いますが、一人でも多くの隊員の方とお会いをいただき、また、現場の部隊にも行っていただき、激励をしていただければ、隊員も大変やる気を持ってさらにその職務に精励をするものと確信をしております。

 自衛隊のさらなる発展のためにも、ますます大臣に御尽力いただき、そして御活躍いただかんことを衷心より御祈念いたしまして、私の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 きょうは、岸田外務大臣御出席のもと、一般質疑が開かれることになりました。これまで、野党の皆様方にも前回、防衛大臣のみの、大臣に対する、所信に対する質疑をしていただきまして、きょうはそろっての質疑でございますので、最後まで、ぜひ五時までやり遂げたいというふうに思っております。

 きょうは、南スーダンPKOに自衛隊を派遣する国際的な意義について、稲田防衛大臣ではなく岸田外務大臣にお聞きしたいと思っております。

 前回、南スーダンのPKOの派遣延長、そして駆けつけ警護の付与につきまして、さまざま議論があったわけでございますけれども、私、その議論を聞いておりまして、なぜ南スーダンに自衛隊を派遣するのかという必要性の議論というものをもう少ししっかり国民の皆様方に御説明をした方がよろしいんじゃないかというふうに感じておりました。

 先日も、十一月の十九日に稲田大臣が青森まで行かれまして、南スーダンに派遣をされる自衛隊がしっかりと激励をされて旅立ったわけでございます。

 その中で、マスコミ報道等では、さまざま、南スーダンの情勢がどうなっているかとか、または武器使用権限がどうなるかとか、そういう議論ばかりでございますけれども、政府が発表しました派遣継続に関する基本的な考え方という文書がございます。そこの三のところに「意義」というものがございまして、ここで日本政府の「南スーダンは六カ国と国境を接し、アフリカ大陸を東西南北に結ぶ、極めて重要な位置にある。南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならず、周辺諸国の平和と安定、ひいてはアフリカ全体の平和と安定につながるものである。」という文章がございます。

 この南スーダンに自衛隊を派遣する国際的な意義について、岸田外務大臣に所見をお伺いしたいと思っております。

岸田国務大臣 まず、近年、アフリカの一部においては、テロ、そして暴力的過激主義の脅威が顕在化しています。その中にあって、今委員の方から御指摘がありましたように、この南スーダンは、アフリカ大陸を東西に結ぶ大変重要な位置に存在する、そして、六つの国と国境を接しているということであります。よって、この南スーダンが不安定化し、そして国境管理が不十分であるということになりますと、一部に台頭しておりますイスラム過激主義等がアフリカ大陸全体に拡散する危険がある、こういった指摘があるわけです。

 そういったことから、今御指摘になられました、アフリカ全体の平和や安定にこの南スーダンの安定が影響してくる、こういったことになると考えております。ぜひ、アフリカ全体の平和と安定にもかかわるこの南スーダンの安定に向けて、我が国も国際社会の一員として努力をしなければならない、こういった立場であると考えます。

浜地委員 ありがとうございます。

 今、アフリカはやはりイスラム過激主義が横行していて、南スーダンをテロの温床にしないという御答弁をいただきました。まさに私はこれは大事だろうと思っています。

 西を見ても、マリでもイスラム過激派のテロがございました。南もありますし、そして東側につきましても、これはソマリア等の難民も来ているわけでございます。そういう意味でいきますと、南スーダンをテロの温床にしない、緩衝地にし、そして発展していくということが非常に大事だろうと私も思っています。

 それと、これは私の個人的な意見でもありますが、中国も工兵部隊を千五十一人、今回、南スーダンのPKOに派遣をしております。岸田外務大臣は、八月にTICADを行われました。当然、安倍総理も行かれたわけでございますが、そのためのさまざまな準備をされる中で、やはり、これから日本がアフリカにしっかりと経済的にも貢献をしていく意味におきまして、しっかりこのアフリカの平和、安定について汗をかいているという姿を見せることが日本全体にとっても利益になろうというふうに私は思っております。

 ですので、やはり、南スーダン、さまざま許容性の点について述べられるわけでございますが、必要性、南スーダンをしっかり安定させていくことがアフリカ全体の安定につながり、ひいてはこれは日本のプラスになるんだということもしっかりと与党議員として語っていきたいなというふうに思っております。

 続きまして、南スーダン政府は、衝突解決合意の履行というものを目指しております。そして、その後の統合プロセスについてもしっかりとコミットをしているわけでございます。これにつきましては、柴山総理補佐官が実際にキール大統領とタバン・デン副大統領と直接会談をし、その報告書を見ますと、両者とも、衝突解決合意の履行及び統合プロセスへ強いコミットメントを示したというふうにあります。

 よく、この南スーダンは停戦合意が崩れている、崩れていないという議論がございますが、防衛大臣が前回も御答弁なさいましたとおり、PKO法三条一号のロでこれは派遣をしているわけでございますので、そもそも停戦合意という概念が存在しない中でのPKOの派遣でございます。しかし、この衝突解決合意が崩れたことをもって停戦合意が崩れたような間違った報道があるわけでございますが、そうではないということでございます。

 やはり大事なことは、七月に衝突が起きた、しかし、今後どのようにこの衝突解決合意が履行され、統合プロセスが進んでいくのかという、未来に向かっての南スーダンの政府の情勢というものの方が私は大事であろうというふうに思っております。

 当然、民族紛争によってこの南スーダンの衝突は起きているわけでございますが、キール大統領はディンカ族、そしてタバン・デン副大統領はヌエル族ということでございますので、この二つの民族がしっかりとタッグを組んで、一つの政府として今後統合プロセスに走っていくことが大事だろうと思っています。

 そこで、これは外務省にお聞きしたいと思うんですが、この南スーダンの衝突解決合意の履行、そして統合プロセスについて、どのように外務省としては進んでいくであろうというふうに認識されるのかをお聞きしたいと思います。

丸山政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現在、キール大統領及びタバン・デン第一副大統領のもとで国民統一暫定政府が機能を維持しており、両者は、昨年八月の衝突解決合意の履行をしていく考えを述べてきております。

 先ほど委員御指摘のとおり、この点につきましては、柴山総理大臣補佐官も両者にお会いになって、衝突解決合意の履行、それから統合プロセス、これに対しての強いコミットメントを直接確認されてこられています。

 国民統一暫定政府による合意履行の具体的な例、特に衝突が行われた後、八月以降、どういうことが行われたかということをちょっと御説明させていただければと思っております。

 八月には、暫定国民立法議会が発足しております。それから九月には、暫定治安措置に関する協議が開催されております。同協議には、政府と反主流派双方の代表が出席しております。また十月には、キール大統領、タバン・デン第一副大統領が協議をいたしまして、兵力の動員解除のためのプロセスを開始することに同意したと承知しております。

 こうした例に見られますとおり、キール大統領、タバン・デン第一副大統領は、国民統一暫定政府内で協議を行い、合意の履行に向けた具体的な取り組みをともに進めてきている、そのように理解しております。

浜地委員 ありがとうございます。

 七月に起こった衝突を今起きているように当てはめをすることはやはり間違っているわけでございまして、やはり、この暫定政府がもう一度しっかり立ち上がり、それがどのように統合に向かって行動しているかという、そういった現在の状況、そして未来の状況をしっかり確認していくことが大事であろうというふうに私個人としては思っております。

 続きまして、ちょっと視点を変えまして、日本が目指す核廃絶の道筋について外務大臣にお聞きをしたいと思っております。

 御存じのとおり、第七十一回の国連総会第一委員会におきまして、日本は核兵器法的禁止条約交渉開始決議について反対を投じました。(発言する者あり)いやいや、そうではないです。

 その一方で、共同行動を求める我が国の核兵器廃絶決議については、日本は共同提案国になったわけでございます。

 今、少し発言がございましたけれども、核被爆国の日本がなぜこれに反対をしたのですかという素朴な質問が私のところにも来るわけでございますが、この核兵器法的禁止条約交渉開始決議におきましては、安全保障の面がやはり欠落をしております。そして、核兵器保有国を巻き込んでの議論ができないとなると、やはり私は、これは絵に描いた餅になろうというふうに思っております。

 しかし、片や一方で、日本としましては、この核兵器の廃絶に向けて、唯一の被爆国として、やはり強い態度を示す、どういう道筋で核廃絶に向かうのかということを、決議に反対を投じた以上は、それを示す責任もまた増してくるのであろうというふうに私は思っております。

 四月のケリー国務長官のいわゆる広島訪問、感動的なシーンであったと思います。オバマ大統領が広島へ来られたのは、まさに岸田外務大臣が四月の時点でケリーさんを広島にお呼びされて、そしてしっかり肩を組み合った写真がございましたけれども、まさにそこからオバマ大統領の広島訪問がかなったんだろうというふうに私は個人的に思っています。

 そうしますと、やはり唯一の被爆国として、初めて、オバマ大統領、アメリカの大統領を広島に呼んだこの日本として、今後どのように核兵器廃絶に向けて行動を開始するのか、それをしっかり示すことが大事だろうと思っておりますので、その点、岸田外務大臣に確認をしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、核軍縮・不拡散における我が国の立場、態度、これはもう一貫していると考えています。核兵器の非人道性に対する正確な認識と厳しい安全保障環境に対する冷静な認識に基づいて、核兵器国と非核兵器国が協力し、現実的な、実践的な取り組みを進めていく、これこそ、核兵器のない世界に向けての実践的な取り組みであるという立場を貫いております。

 そして、御指摘のオーストリア等が提出しました核兵器禁止条約交渉に関する決議でありますが、これは、厳しい安全保障環境に対する認識、そして核兵器国と非核兵器国の協力、こういった点から問題があるということで、我が国としましてはこれは反対をいたしました。

 我が国のこの態度の妥当性については、他の国々の投票行動にもあらわれていると思います。この決議には北朝鮮が賛成をしました。そして、我が国とともに核兵器のない世界を目指すために努力をしてきた中道の非核兵器国、ドイツもオーストラリアもみんな反対をいたしました。そして、もちろん核兵器国は全て賛成しなかった。こういった態度をとっているわけです。

 そして、その決議と同時に提出されました我が国の決議、今申し上げた我が国の基本的な立場に立ってつくった我が国の決議には、アメリカも共同提案国になり、百六十七カ国、多くの国々が賛成に回ってくれた。我が国の基本的な立場は多くの国々から支持をされていると考えています。ぜひ、この立場をこれからも貫いていきたいと考えます。

 核兵器禁止条約の議論においても、また、来年は二〇二〇年のNPT運用検討会議に向けての準備委員会がスタートします。また、来月は長崎で国連軍縮会議も開催されます。こういった場において我が国の立場をしっかり貫いて、そして、何よりも核兵器国と非核兵器国が協力することによって結果を出していく、こういった取り組みをしっかりと進めていきたい、このように考えます。

浜地委員 以上で終わりたいと思いますけれども、CTBTの早期発効、FMCTの早期交渉開始という点もございます。しっかりまた、唯一の被爆国として促進をぜひお願いしたい、そのようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山口委員長 この際、休憩いたします。

    午前九時三十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。横路孝弘君。

横路委員 久しぶりに質問をさせていただきます。

 南スーダンへ駆けつけ警護を任務とする部隊が派遣されて、いよいよ本格的に新しい安保体制へというように進んでいくことになります。しかも、トランプ次期大統領が誕生して、一体、この体制をアメリカとしてどう考えていくのかということはこれからの問題ですけれども、お聞きしている範囲では、日本の自衛隊が国際社会の中でもっと軍事的な役割を質、量ともに拡大してほしいという要望を持っているというように聞いております。

 最初に、稲田防衛大臣に、トランプ大統領の登場で、私は心配しているんですけれども、日本の安全保障に一体どんな影響が出てくるのか、これからの話ではありますけれども、どう受けとめておられますか。

稲田国務大臣 トランプ次期大統領が大統領選のさなかにさまざま発言をされていたことは承知はいたしておりますけれども、大統領就任後にどういった政策をとられるか、これは予断を持ってコメントをすべきではないと思っております。

 私といたしましては、この厳しさを増す我が国を取り巻く環境の中で、一つは、我が国自身の防衛力はしっかりと質も量も確保していく、さらには、トランプ次期大統領も、総理と電話等でお話しになったときに、日米関係は非常に重要であるという認識を持っておられます。

 この日米の同盟をトランプ次期大統領のもとでもしっかりと強化、そして深化をさせていく、さらには、関係諸国との関係をしっかりと築いていく、そして、価値観を共有する国々とともに、東アジア太平洋地域のみならず、世界において法の支配を貫徹していくということだと思っております。

横路委員 外務大臣、これはちょっと通告している本題ではないんですが、TPPについて、もし正式にアメリカが離脱するということになれば、一体のものとされてきたいろいろな文書がありますよね。例えば、TPPに関連して作成された文書、あるいは、国際約束を構成する文書といったようなものがあります。

 これはTPPと一体のものとして言われているわけで、TPP協定がだめになれば、これらの文書も失効するというように考えてよろしいですか。

岸田国務大臣 御指摘の文書、要は、TPP交渉と並行して行われました日米間での議論に基づくサイドレター等を御指摘のことだと思いますが、こうしたサイドレター等は、TPPが発効するという条件のもとに内容を確認しております。

 TPPの発効がこのサイドレターの効力に影響する、かかわってくる、こういった問題であると認識をしております。

横路委員 それはまた、これからいろいろと議論をしていきたいと思います。

 きょうは、基本的な集団的自衛権の行使についてお尋ねしたいと思います。

 まず、ニカラグア判決では、集団的自衛権の発動要件として、集団的自衛権の支援を受ける国家が武力攻撃の犠牲国であること、当該国が武力攻撃を受けたと宣言をすること、当該国からの要請があること、そして、必要性、均衡性が必要とされておられます。

 しかし、外務大臣の御答弁では、要請だけじゃなくて、同意ということが自衛隊が集団的自衛権を行使する要件に含まれております。

 ニカラグア判決には同意というのはないんですが、同意をつけ加えている狙いは何ですか。要請で十分じゃないんでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のICJにおけるニカラグア判決ですが、御指摘のとおり、この判決では、集団的自衛権の行使に当たって、武力攻撃を受けた国から要請が必要とされています。

 ただ、この判決に対する理解は、国際社会の中で集団的自衛権を行使することについての被攻撃国の同意をその要件から排除する趣旨ではない、このように理解されています。

 事実、九・一一の同時多発テロの際には、NATO各国、これは北大西洋条約、すなわち、条約の形式で事前同意に基づいて自衛権を行使した、こうした事実もあります。こういったことからも、今申し上げましたような理解がなされているわけです。

 この同意の要件として念頭に置いておりますのは、あらかじめ同意を与えるということであり、主に条約の形式でなされるものでありますが、今現在、我が国として、そのような条約、これは締結しているものはありません。

 よって、我が国に関しましては、存立危機事態が発生し、新三要件に該当した場合、基本的に、武力攻撃を受けた国からの要請が行われた場合になると考えます。

 ただ、基本的な考え方として、今申し上げましたように、同意が排除されているものではないということから、要請または同意という形で説明をさせていただいている次第であります。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

横路委員 同意というのは、いわば他人の意見に対して賛成することですね。同意を得るとか、提案に同意するというように使われております。

 つまり、アメリカ側が同意するというのは、日本側から、日本は軍事力を行使したいのですけれどもよろしいですかと。つまり、アメリカ側に日本側が申し入れをする、それに対してアメリカ側が同意をする、こういう形ですよね、同意というのは。

 同意というのは、あくまでもアメリカ側の同意の話でしょう。

岸田国務大臣 同意の形というのは、いろいろこの解釈があるかとは思いますが、国際法上、同意における同意ということについては、条約の形式を念頭にこの同意というものを考えていると受けとめています。

 よって、現実、具体的には、同意ということは条約の締結等において確認されるものであると認識をいたします。

横路委員 しかし、その条約がないわけでしょう。ないけれども、同意と御答弁されていますよね。御答弁されていますよね、要件として。

 ですから、では、どういう事態なのかといえば、日本側から同意を求めるわけでしょう。軍事力を行使したいけれどもよろしゅうございますかということじゃないんですか。同意というのはそれ以外に考えられないでしょう。

岸田国務大臣 まず、国際法上、要請または同意という要件、これは国際的な理解として確立していると思います。ですから、我が国としましては、そうした国際法上の解釈等も念頭に要請または同意というふうに説明をさせていただいています。

 可能性の問題として要請または同意ということを説明させていただいておりますが、先ほども申し上げましたように、我が国としては、現実において、要請ということを念頭に置いているということであります。

横路委員 日本の自衛権行使の要件として聞かれて、同意とお答えになっているわけですよ。

 日本としては同意を想定していないのなら、その答弁、変更したらどうですか、訂正されたら。

 同意というのはあくまでも、形をちょっと聞きたいんです、日本側から申し入れるのが同意でしょう。

岸田国務大臣 ちょっと整理して申し上げますが、我が国が武力行使を行う要件として、新三要件というものを説明させていただいております。

 今御質問の中にありました要請、同意、これは、国際法上、集団的自衛権の要件として説明をさせていただいています。その新三要件に基づいて我が国の国民の命や暮らしを守るために武力行使を行う、その一部が国際法上の集団的自衛権として説明される場合があり得る、これが、我が国の武力の行使と、そして国際法上の集団的自衛権の整理であると思っています。

 今説明しておりますのは、この集団的自衛権の要件は何かと。その要件の一つとして、要請、同意というふうに申し上げているわけですので、これは国際法上一般にどう理解されているか、そういった考え方に従って説明すべきものであると考えます。

横路委員 それは、大臣、違いますよ。集団的自衛権の行使の要件として説明されているんです。

 だから、こういう答弁もあります。要するに、安保条約の五条を根拠にできないので、その点は日米間において整理しなきゃいけないという御答弁もございます。それから、同意するというのは、武力攻撃を受けた国が同意をするということですから、事前にやはりそうした同意を与える、こういう話し合いもしなきゃいけない、こういう答弁も皆さんがなされているんですよ。何も、国際法上可能性があるという話をしているんじゃなくて、日本の集団的自衛権行使の要件として述べられているんです。

 だから、日米間で整理をしなきゃいけないというのは、ではどういうことですか。

岸田国務大臣 改めて整理させていただきますが、我が国の武力の行使、これは新三要件に該当したときのみであります。そして、その一部が国際法上集団的自衛権として説明される場合がある、これがまず基本的な考え方です。その集団的自衛権を説明する際に、要件として、要請または同意、あるいは他に手段がない、必要最低限等、こうした要件があるわけですが、その集団的自衛権の国際法上の説明として、今申し上げたような要請、同意という要件を説明させていただいているということであります。

 そして、日米の間で整理する必要があるというふうにおっしゃいましたが、この同意、先ほども申し上げましたように、国際法上、条約という形を想定しているということであります。そして、日米安全保障条約において、これは事前に日米の間で同意が確認されているものではないということを申し上げ、やはり、日米安全保障条約の体制の中にあっても、集団的自衛権として説明される行為を行う際には、新たに要請というものが必要であるという整理をさせていただいております。日米の間での整理は、そういった整理になると考えます。

横路委員 そんな一般論としてお話しされているんじゃなくて、日本の集団的自衛権の要件の一つとして言われているわけですよ。だから、日本の状況判断に応じて、武力行使をしなきゃだめだと、新三要件に該当するからという場合に、アメリカ側に日本側が、行使しますよ、同意してくださいというようなケースはあるわけでしょう。

岸田国務大臣 先ほども説明させていただきましたが、我が国は、集団的自衛権の行使に当たっては要請ということのみ想定しております。要請がない状態で、我が国から同意を求めて集団的自衛権を行使する、こういったことは想定していないというのが我が国の立場であります。

横路委員 今の答弁も初めて聞きましたけれども、議事録をずっと読んでみますと、それは、そうではなくて、しかも、その同意の問題については、日米間で事前に話をして、そして整理しなければいけないという御答弁もあるわけですよ。この同意ということを日本の集団的自衛権行使の要件として発言するに当たって、アメリカとは何か協議されたんですか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、我が国として想定しておりませんので、日米の間で何か協議したという事実はございません。

横路委員 この同意という項目が私にとっては非常に気にかかりまして、つまり、日本側の判断において武力攻撃がされていないのに集団的自衛権の行使をするには、つまり、この同意要件で日本側にその権限があるようにされるのは、これは大変大きな問題だなと思っておりました。

 それで、ニカラグア判決の中でどういうことが言われているかというと、第三国がみずからの状況判断に基づいて集団的自衛権を行使することを認めるような慣習国際法は存在しない、集団的自衛権によって利益を受ける国家が武力攻撃の犠牲となったことを宣言することが期待されていると同時に、集団的自衛権の行使は被攻撃国の利益のためになされる旨の言及があります。つまり、保護法益は被攻撃国を守るということだと思うんですが、その点はいかがですか。ニカラグア判決の趣旨でございます。

岸田国務大臣 ニカラグア判決の評価、理解ですが、自国の法益侵害や自国の死活的利益の侵害は集団的自衛権発動の要件とはされませんでした。したがって、この意味において、同判決の考え方、他国防衛説の考え方に近いと捉えることが可能だという理解があります。

 ただ一方、伝統的な他国防衛説に分類される学説の中には、武力攻撃を受けた国からの要請または同意という要件を明確にしてこなかった、こういったものもあります。

 ニカラグア事件判決、これは、武力攻撃を受けた国からの要請が必要であるとしているので、同判決が他国防衛説と完全に一致しているとまでは言い切れない、こういった評価がなされていると考えております。

横路委員 同意という言葉を使って、日本側の判断で集団的自衛権の行使をすることはないというお話でございましたので、その点は了解をいたします。

 そして、次の質問に移りますが、十五事例集です。これは内閣官房が中心になって、集団的自衛権の行使を含めた十五の事例、そのうち大体八事例が集団的自衛権の行使と言われております。世耕内閣官房副長官の国会答弁によりますと、内閣官房が中心となって、防衛省を含む関係省庁と調整しつつ作成したもので、自衛隊の活動現場における問題意識を踏まえたものであるというように認識していますという答弁でございました。

 そこで、防衛大臣に、この事例集というのは自衛隊の現場における問題意識を踏まえたものであるというように理解してよろしゅうございますね。

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

稲田国務大臣 政府がお示ししたこの事例集は、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り、現実に起こり得るあらゆる事態に対して切れ目のない対応をしていくという観点から、与党協議における議論のため、国民にわかりやすい事例を示すための作業の一環として政府が作成したものと認識をいたしております。

横路委員 この事例集について、安倍総理は、三要件に合致したら、日本国として、自衛隊が武力の行使をこういった事例において行うことは可能であるという答弁を再三されております。そのことを前提にして、まず事例の十三、アメリカ本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戦を行うときの米艦防護という事例について御質問をいたしたいと思います。

 これは、アメリカ本土が、我が国近隣にある攻撃国から大量破壊兵器を搭載した弾道ミサイルによる大規模な武力攻撃を受けた、日本に対する武力攻撃は発生していない、そしてアメリカは、近隣において攻撃国に対する作戦を開始した、この際、米艦防護をしてほしいという話なんです。

 そこでお尋ねいたしますが、まず、この対象国、近隣諸国で大規模な大量破壊兵器を搭載した弾道ミサイルをアメリカ本土に攻撃する能力を持っている対象国は、これは一体どこになるんですか。

槌道政府参考人 この事例集そのものは、まさに大臣からお答えがありましたように、国民の皆様に御理解いただきやすい事例として、あくまでも事例として挙げたものでございまして、特定の国を念頭に置いたものではございません。

横路委員 しかし、そういう能力を持っている国は、ロシア、中国、北朝鮮にそういう能力があるかどうかは別ですが、一応この三つの国と考えていいんじゃないでしょうか。

 どうですか、防衛大臣。

稲田国務大臣 繰り返しになりますが、これは国民の皆さんにわかりやすい事例を例示したものであって、特定の国を念頭に置いたものではないと考えております。

横路委員 いや、この記載に該当する国は、能力を持っている国はどこですかと聞いているんです。

稲田国務大臣 どこか特定の国を想定しているものではございません。

横路委員 だって、そんなことを言ったって、もうロシアか中国か北朝鮮しかないんじゃないですか、近隣諸国でアメリカ本土まで核を積んで攻撃できる国というのは。

 この事態は、要するに、核戦争を想定しているケースだと思うんですけれども、アメリカのいわば核抑止力が失敗したということですが、もちろん、攻撃を受ければ報復しているでしょうから、ある意味で言うと、全面核戦争になりかねない。リアリティーがあるかどうかというと、余りないような気もいたしますけれども。しかし、もしあるとすれば、これは現場の声を聞いて想定したということでございますので、日本政府のやることは何ですか、アメリカの艦艇を守ることですか。防衛大臣、どうぞ。

稲田国務大臣 我が国の国民の生命身体を守ることだと思います。

横路委員 しかし、これは、集団的自衛権の行使として、アメリカの要請を受けてアメリカの艦艇を守る、あるいは基地を守るというようなことになっていますけれども。

稲田国務大臣 これはあくまでも国民の皆さんにわかりやすい形で事例を示しているものです。

 しかも、集団的自衛権の行使の事例ですから、存立危機事態、まさしく、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態を想定しているというわけでございます。

横路委員 いや、だから、国民はこのケースを見てどういう事態を想定するかというと、核戦争が行われているというときに自衛隊は何をやるんだろうか、国民に対して何を言ってくれるんですか。

 例えば、ガイドラインの中にCBRN防護というのがありますよね。そういうのがこういうときに発動されるんですか。具体的にそういうことを考えておられるんでしょうか。

 だって、これは現実の現場の自衛隊員の声を聞いて、あり得るケースを想定したんでしょう、このケースは。違いますか。十五事例、みんなそうじゃないの。だから、新三要件に合えば自衛隊は軍事力を行使するんだという答弁があるわけですよ。

槌道政府参考人 まず、繰り返しになりますけれども、この十五事例そのものにつきまして、これはあくまでも、さまざまな状況において我が国として切れ目のない対応をする、このための事例として説明したものでございます。例えば、こういうことが起こり得るからこういう対応をするとか、そういった前提でつくったものではございません。

 また、先ほど自衛隊の声を聞いてというお話がございました。確かに、この法制の作成途上におきまして、自衛隊を含めて防衛省の御意見も受けて、この事例に反映させていっているところでございますけれども、それは、一つ一つの事例が、こういう自衛隊の対応をするからこういうところは困るとか、そういう意味でつくったものではございません。そこは御理解いただきたいと思います。

横路委員 いや、いずれにしても、現実的に起こり得るケースとしてつくったわけでしょう。これを国民に示しておいて、いや、そんなことはないんだと言われたって困りますよ、これは。だって、完全に核戦争想定じゃないですか。核戦争を想定したときに米艦を守るんですか。おっしゃっているように、違うでしょう。日本の存立と日本の国民の命を守るということが第一にならなきゃいけないわけですよね。

 しかし、その守るというときに、では、日本政府が何をやるのかということでしょう。こういうケースをぽんと示されて、集団的自衛権の行使で対応しますよと言われたって、国民の方も困っちゃうわけですよ。核が飛んでくるかもしれない、ミサイルが飛んでくるかもしれない、そのとき政府は、では、国民に対して何を言うんですか。核防護というガイドラインの規定ができたじゃないですか、今回。だから、なおさらこういうものと具体的に結びつけて考えざるを得ないんじゃないですか、一般の国民はみんな。

 だから、どういうことなのか。どうするつもりか、全然考えていない話なんですか。この事例の十三というのは、一応内閣官房が想定したけれども、それは内閣官房の話であって、防衛省なり外務省としては考えていませんということなんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、この事例の見方として、これは、米本土が武力攻撃を受けたことのみをもって日本が対応するというものではないということをまず確認しておかなければなりません。

 米本土が大規模な武力攻撃を受けたとして、我が国に対する武力攻撃は発生していないわけですが、米国が我が国近隣において攻撃国に対する作戦を開始した、そして、近隣に所在するその攻撃国、これがこれまでも我が国と米国とをともに敵視する言動を繰り返しており、その武力攻撃を早急にとめなければ、次は近隣に所在する米国の同盟国である我が国にも武力攻撃が行われかねない、こういった状況もあるのではないか、こういった問題提起であります。

 そして、その場合に、あくまでも我が国が対応する、武力を行使するのは、新三要件を満たす場合のみであります。

 我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険が発生している、こういった判断をされた場合に対応できる、その際に自衛の措置として米国艦艇の防護などを実施する、こういったことが可能になる、このように理解するべきであると考えます。

横路委員 ちょっと質問の方法を変えます。

 アメリカにとって安全保障上の重要な脅威はどこの国かということです。

 二〇一七年度の国防予算に関連して、「二〇一七年度防衛態勢報告 長期的視点への考慮、将来への投資」という文書の中で、安全保障上の重要な脅威として、ロシアの侵略的行為というのを一番目に挙げています。次が中国の台頭、そして北朝鮮、イラン、そしてイスラム国といって、ロシアが一番の脅威というのはアメリカの位置づけだと思うんですけれども、これでよろしゅうございますか、外務大臣。

岸田国務大臣 米国の脅威について、私の立場から具体的に何か説明するという立場にはないと考えております。

 日本政府が米国の脅威はどこなのかということを判定するという立場にはないということは御理解いただきたいと思います。

横路委員 しかし、アメリカの国防報告や何かを見ると、みんなやはりロシアが第一ですよ、言われているのは。

 ですから、私は、今回のこの安保法制の中で、そこにちょっとずれがあるように思います。安倍総理は答弁で、中国と北朝鮮の名前を挙げていますが、ロシアの名前というのは全然挙げたことはないんですね。しかし、今回の安保法制が去年成立して以来、ロシア側はやはり日本の特にミサイル防衛能力についてさまざま発言をしております。

 ショイグ国防大臣が北方領土へのミサイル配備というのを三月に発言されていますし、国後、択捉に地対艦ミサイルのバルとバスチオンという射程距離四百五十キロという配備が完了したということなんですけれども、まず、このことを事実として確認されていますか、そして、それをどう受けとめていますか。

岸田国務大臣 まず、事実として確認しているかという御質問でありますが、ロシアが択捉島及び国後島への地対艦ミサイル配備を発表したこと、これは承知をしております。

 このことについては、二十四日、外交ルートを通じまして、北方四島におけるロシア軍による軍備の強化は、これら諸島に対する我が国の立場と相入れず遺憾である旨、申し入れを行いました。

横路委員 ロシアはずっと、北方領土の軍事拠点を着々と進めているんですよ。六月には松輪島の旧日本軍空港の改修工事も終えていますし、年内に海軍の基地建設も決めたというように進められています。

 このことについては、ロシア側と何か具体的に、今抗議をされたという話ですが、話はされているんでしょうか。

相木政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしまして、北方四島をめぐるロシア側の動向については常々注視をしておりますし、情報収集を行っておるところでございます。

 そういったことを踏まえて、適切に対応していく所存でございます。

横路委員 日本とロシア間の話し合いというのは、結構この間行われていますでしょう。そういうところで話題になったことはあるんですか、ないんですか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、日ロ間においては、首脳会談を初め、さまざまなレベルで意思疎通を図っております。そして、その中にあっては、二国間関係、あるいは地域情勢、さまざまな課題について幅広い意見交換が行われています。ただ、具体的に何を取り上げた等については、相手との信頼関係のもとにこれは明らかにしないという整理をさせていただいております。

 幅広い意見交換はこれからも続けていきたいと考えます。

横路委員 北方四島の返還という日本の立場と、ロシア側のこういう行為、行動、これはやはり大いに矛盾するものですよね。射程距離は北海道なんか入りますから、地対艦ミサイルということでございますが。

 防衛省はどう考えていますか。この軍事基地化がどんどん進むということは、日本の安全保障上どのように受けとめておられますか。

稲田国務大臣 太平洋艦隊の機関紙が伝えている択捉島、国後島への沿岸ミサイル部隊の配備の意図、目的について、確定的なことを申し上げることは差し控えますが、その上で、一般論を申し上げますと、極東海域から北極海域に至るロシア太平洋艦隊の部隊展開ルートの援護、オホーツク海における戦略原潜の活動領域の確保が考えられると思います。

 いずれにせよ、防衛省といたしましては、北方領土を含む極東におけるロシア軍の動向について、引き続き注視していきたいと思っております。

横路委員 このロシアのミサイル配備というようなことについて、防衛省としては注視、注目しているだけですか。何か対抗措置をとるなんということは考えておられるんですか。

稲田国務大臣 択捉島、国後島における地対艦ミサイルの配備に関して、それが一時的なものなのか、あるいは恒常的なものなのかを含め、今後の動向について確定的なことを申し上げるのは差し控えたいと思います。

 他方、先ほど紹介いたしました太平洋艦隊機関紙等を踏まえれば、今後、択捉島、国後島において同地対艦ミサイルの発射訓練を実施する可能性もあり、引き続きその動向を注視していく必要があると考えております。

横路委員 大体、これは発表されてからわかったというのではなくて、前からわかっていたことでしょう、もちろん。それを答えろとは言いませんけれども、発表で初めてわかったというのでは情報収集能力が非常にお粗末だと私は思います。

 それで、私が言いたいのは、安倍総理は、今度の安保法制で抑止力が高まったから、要するに、安心がより高まったというお話を、御答弁をずっとされてきました。しかし、実際に抑止力をこちらが高めれば、相手の方も高めるわけですよね。それが安保のジレンマと言われるものだということも議論されてきました。

 今回の対応というのは、日本の安保法制で、特にミサイル防衛が強化されたということについてのロシア側の反応の一つだというように私は受けとめますけれども、つまり、抑止力論というのはやはり軍備拡大の競争になってしまうということはよく言われていることですが、それを証明している出来事だと思いますけれども、岸田大臣、どのようにお考えですか。

岸田国務大臣 今回のミサイルの配備についてですが、抑止力との関係で今委員の方から御説明がありましたが、ロシア側の意図については、我々、確たるものを承知しているものではありませんが、こうした問題を根本的に解決するためにこそ北方領土問題をしっかりと解決していかなければならない。外務省の立場からいうならば、こういったさまざまな問題が指摘されるからこそ、根本にあります北方領土問題についてしっかりと解決をしなければならない、こういった思いを強く持ちます。

 戦後七十一年たった今日まで日ロの間に存在いたします、我が国の外交における戦後最大の課題であります北方領土問題、そして平和条約締結問題をぜひ前進させるべく努力しなければならないと考えます。

横路委員 プーチン大統領が日本に来られて、一時は、何か日本のマスコミも国民も、大いに前進し解決に向かって進むんじゃないかという期待度がわっと高まったんですが、しかし、ロシア側の方はそういう考えがあるのかというと、こういう軍備の配備をした。

 それから、もう一つお尋ねしたいのは、最近、土地の無償提供をするから北方四島を含めて極東に移り住めということを十月一日からやっているんですね。北方四島に現実にもう既に申し込みがあると言われています。五年間住むと、その土地の所有権を渡し、家を建てるお金も出すというような、本当に北方四島問題についてロシア側が解決する意思があるのかないのか疑わしい。

 安倍さんは、大分プラス思考で走っていますけれども、現実はやはりそうではないんじゃないかという思いがいたしますが、この点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の、土地の供与につきましては、ロシア側は、極東人口の維持、増加等を目的として、極東の土地を無償供与する措置をとっていると承知をしております。本件については、極東地域が対象ということでありますので、特に北方領土のみを対象としたものではないと理解をしております。

 いずれにせよ、こうした問題が議論になることにつけても、北方領土問題を解決することの重要性を強く感じています。

 そして、ロシア側が本当に解決する思いを持っているのかという御指摘でありますが、戦後七十一年間かけてまだ解決できていないこの問題はそう簡単な問題ではないと理解をしています。ただ、だからこそ首脳間の信頼関係に基づいてこの大きな課題を動かしていかなければならない。

 こういった問題認識のもとに、安倍総理、プーチン大統領は既に十五回にわたって首脳会談を積み重ねてきました。そして、その両首脳の間においても、戦後七十一年間たっても平和条約を結ぶことができていないこの状態は異常な状態であるということについては一致をしているわけです。

 ぜひ、こうした両国首脳の信頼関係のもとに、この課題を前進させたいと思っておりますし、そうした思いで今さまざまな努力が積み重ねられています。十二月十五日のプーチン大統領の訪日、これは一つ大きな行事だと思いますが、その際の首脳会談を念頭に、ぜひさまざまなレベルで努力を続けていきたい、このように思います。

横路委員 日本の新聞に余り出ませんが、プーチン大統領のロシアにおける発言を聞いていますと、私は、どうも解決する意思は余りないんじゃないか、むしろ経済協力で日本に協力してもらいたいというところにウエートがあって、領土問題については、今お話があったように、ミサイルの配備とか、それから人を移住させてふやしていこうとかいうような具体的な行動を見ると、非常に疑わしいんじゃないかなというように思っています。

 ただ、いずれにしても、解決することはこれは全ての国民が望んでいることでありますから、大いに努力をしていただきたいと思います。

 そうした中で、安保法制で抑止力が高まればというところにまたちょっと話を戻しますと、例えば、中国が尖閣列島へ軍事的な圧力を加えるということがあれば、日本側としては沖縄を含めた方に軍事力を配備するということをやっているわけでしょう。これがいわゆる軍事力の、お互いに信頼関係がないときに抑止力を高めるということだけをやりますと、お互い高める努力になってしまうわけです。

 その一つの例が、今回の北方四島におけるロシア側のミサイル配備であり、軍事基地強化だ。これはよく分析していただいたらいいと思いますよ、北方四島への軍事基地の強化というのは皆さんが考える以上に進んでいますから、海軍の基地もつくろうとか、それから前の日本の飛行場の跡地を直して空港を整備するとか、いろいろやっていますから。そういうことをぜひ認識していただきたいと思います。

 そこで、最近ちょっと心配になるのは、脅威というのは、よく言われるように、その国の意思と能力から成ると昔から言われています。意思というのは何かといえば、やはり外交ですよね、基本は外交です。例えば、経済の交流によって経済的な相互依存性を高める。アメリカと中国なんというのは今経済的には相互依存性が高まっているわけですよ。それから、多様な分野の相互交流というのも大事です。

 それから、軍事的能力でいえば、三つ方法がありまして、一つは、お互いの信頼醸成措置を確立するということですね。いろいろな方法があります。予算の具体的な発表もそうですし、あるいは部隊の移動みたいなもの、事前にお互いに通告するとか、いろいろな方法が昔から言われています。それから、お互いの軍事力のコントロールです。アームズコントロール。これもやはりお互いの間の軍事的な能力にかかわる重要な問題ですし、そして最後が軍備縮小、軍縮というような、いろいろな手段があるわけですよ。

 総合的安全保障という言葉が昔はよく言われましたが、最近さっぱりこの言葉はなくて、どうも安倍政権になると、軍事力の強化だけじゃないかと。しかも、米軍との一体化のもとに進められているので、周辺の国は、アメリカと日本を一体化して、脅威をむしろ感じているんじゃないだろうかと思います。

 私は、外務省が心配なのは、最近どうも外交力が低下しているように思えてならないんですよ。何か外務省も自衛隊の軍事力を活用した外交を目指しているんじゃないか、最近の状況を見ているとこういうように受けとめられるような、情けない思いでいるので、もうちょっと、外務大臣、頑張ってもらいたい。

 外交力の低下ということについてどう思いますか。外交で軍事力を活用してやるなんというのは、これは七十年間、日本は軍事力というのはもう抑制的にやってきて、それがやはり評価されてきたんですから。

岸田国務大臣 我が国の外交、安全保障を考える際に、外交が基本であるということ、これは委員御指摘のとおりだと思います。

 ちょうど三年ほど前に、我が国として初めて国家安全保障戦略を確定いたしました。この国家安全保障戦略の中にあっても、まずは外交において我が国にとって好ましい国際環境をつくっていく、これが基本である。その上で、万が一の場合に、我が国としてしっかりと備えるべきことを備えていく、安全保障の備えをしていく、これが基本的な考え方だというこの考え方は明記されております。

 我が国が国際社会の中にあって活動していくに当たって、やはり外交が基本である、これは私も強く感じるところです。

 今、国際社会においては、さまざまな脅威が国境を越えて飛んでくる、こういった時代になってきました。よって、我が国の国民の安全を守るためには、我が国みずから備えるだけではなくして、地域の平和や安定も考えなければいけない、さらには、国際社会全体の平和と安定にも思いをめぐらせていかなければならない、こういった時代であります。こういった時代ですから、なおさら、全て軍事力等で物事を考えるのではなくして、外交を通じて国際社会の平和や安定に貢献していく、この考え方が我が国にとって大変重要であると考えます。

 ですから、こうした地域や国際社会の平和や安定のために、例えば我が国としまして、人間の安全保障に基づいたさまざまな取り組みですとか、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジですとか、軍縮・不拡散ですとか、あるいは人権等に対するさまざまな活動ですとか、こういったさまざまな外交手段を使って好ましい環境をつくっていく、こういった取り組みはまず第一に大事であるというふうに捉えて取り組んでいかなければならない、このように考えます。

横路委員 では、防衛大臣、つまり、その軍事的能力をどうするかというときに、今お話し申し上げました信頼醸成措置とか、それから相手国との軍事的なアームズコントロールとか、あるいは軍備縮小だとか、いろいろな方法があるわけですよね。

 これは、まず信頼醸成措置をしっかりつくるということが大事ですし、あるいは北朝鮮とも、いろいろな問題はあるけれども、やはり国交回復するということは大きな目標にして、例えば大使館が向こうの国の中にできるだけでも大分違ってきますよ、いろいろな面で。

 それは余計な話ですが、防衛大臣に、いわば全体的には軍縮といいますけれども、信頼醸成措置、アームズコントロール、それからディスアーマメント、この三つについて何かお考えをお持ちですか。具体的に何かやっておられますか。

稲田国務大臣 先ほど外務大臣が御答弁されたように、我が国の安全保障、これは、国家安全保障戦略を策定し、その中に、防衛力という意味でも、防衛大綱、中期防というふうに位置づけております。

 それは、外交を基本としつつ、防衛力という意味でも、我が国の防衛力の質と量を確保するのはもちろんのこと、日米同盟、そして日米同盟だけではなくて、やはり、自由と民主主義と法の支配と人権、そういった価値観を共有する国々と連携をして、そして、力ではなくて法の支配を世界に貫徹させていく。さらには、外務大臣がおっしゃった人間の安全保障、そして、自衛隊のPKO活動にしても、日本らしさを発信することによって、力ではなくて法の支配を貫徹させていく。そのための外交であり、防衛力の策定であるというふうに考えております。

横路委員 私が言いたいのは、防衛力を強化するだけじゃなくて、特に心配な国があるならば、その国との間でいろいろな交渉を、外務省ばかりじゃなくて防衛省としても今言った信頼醸成措置をつくるというようなこと、これは本当に大事なことだと思うんですよ。そのことをこれからぜひやっていただきたいと思います。

 それで、最後に、核兵器の問題についてお尋ねします。

 核兵器禁止条約に反対したことはもうまことに残念でございます。多分私は、岸田大臣は広島だし、本当は棄権したかったんじゃないだろうかと。賛成してくれるのが一番いいですけれども。安倍総理の強い思いか、あるいは外務官僚の強い要請なのか、反対というみんなびっくりするような選択をしたわけですね。

 政府は核保有国と非核国家との対話だというように言っていますけれども、過去なかなかやはりうまくいっていないわけですよ。NPT条約はあります。しかし、これは全会一致です。核軍縮も進まないしということもあって、オーストリアとかメキシコが中心になって声を上げたわけですね。

 そこで一つお尋ねしたいのは、二〇一三年、日本も賛成して、核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明が国連総会の第一委員会、軍縮委員会で成立をしていますね。今回のこととこれとはちょっと矛盾するんじゃないですか。違いますか。核兵器の不使用の共同声明ですよ。

岸田国務大臣 まず、御指摘の決議については我が国も賛成したと記憶をしています。そして、それと我が国の態度が矛盾するのではないかという御質問ですが、私は矛盾はしていないと考えます。

 我が国の立場は一貫しております。我が国は、核兵器の非人道性に対する正確な認識、これはまことに重要だと思っています。一方、厳しい安全保障環境に対する冷静な認識、これも重要であると思います。この二つの大切な認識のもとに、核兵器国と非核兵器国を協力させなければならない、こういった基本的な方針をとっております。これはずっと貫いているわけです。

 そして、大変残念だという御指摘をいただきました先日の決議に対する対応も、今申し上げました基本的な立場から考えて我が国の対応を決断したということであります。厳しい安全保障環境に対する認識ですとか、核兵器国と非核兵器国の協力、こういった点についてこの決議は問題があるということで反対という対応をとったわけです。

 そして、先ほども申し上げましたが、我が国のこうした態度の妥当性については、他の国の判断においても見てとることができるのではないか、このように申し上げております。

 北朝鮮が賛成をする、ドイツやオーストラリアを初めとする中道の非核兵器国がみんな反対をしている、核兵器国もどの国も賛成はしなかった、こういった態度を見ても、我が国のこうした考え方については、妥当性を御理解いただけるのではないかと思っています。

 ただ、今後もこの態度を貫き通すことが我が国としては大事だと思っています。非核兵器国の高い理想はまことにとうといものがあります。しかし、現実、核兵器を持っているのは核兵器国であります。この核兵器国が変わらなければこれは結果が出てこないという現実の中で、この両者を協力させることが核兵器のない世界を目指す上において最短距離であるという認識に基づいて、努力を続けていきたいと思います。

 今後の国際会議において、また国際的な議論において、ぜひそういった思いで議論をリードしていきたいと考えています。

横路委員 核の非人道性というのは国際司法裁判所からも指摘されているんですが、これを訴えてきたのは被爆者の人なんですね。被爆者の人たちの本当に長い間にわたる訴えで、これは非人道的兵器であるということが言われて、各国がそれに対応した措置をとろうということで動いているわけです。

 きのうなんか、地元の市長さんが来て、核廃絶に向けて努力してほしいということで、ことしの広島の集会のときには、やはり核兵器禁止条約、法的な枠組みが必要だという広島市長のお話でございました。私もその場にいてお話を聞いていたんですけれども、こういう現地の声はどのように大臣は受けとめていますか。

岸田国務大臣 昨日も、平和首長会議の国内総会として、要請書を広島市長さんにお持ちいただきました。

 その中でも我が国の基本的な立場について説明をさせていただいたわけですが、核兵器禁止条約の議論につきましても、先ほどの決議、さまざまな評価はあるわけですが、決議は採択されました。よって、来年から、核兵器禁止条約は議論が始まります。これは議論が始まったならば、我が国は、唯一の戦争被爆国として、先ほども申し上げました、核兵器国と非核兵器国を協力させなければならない、協力がなければ結果を出すことができない、こういった立場から堂々と議論に参加するべきであると私は思っています。

 もっとも、これからこの議論の詳細が明らかになり、政府として正式に参加の手続を進めなければなりませんが、私は、先ほども申し上げました基本的な立場をこれから貫くためにも、核兵器禁止条約の議論が始まったならば、堂々と我が国は議論に参加するべきであると考えております。

横路委員 もちろん、参加して、禁止する方向での議論をしていただきたいと思いますが、今回も意外と反対が多かったというのは、アメリカの大きなプレッシャーですよね、完全に。日本政府も受けたんだと思います。

 禁止条約というのは、例えば化学兵器や生物兵器、地雷とかクラスター爆弾とかありますよね。これはやはり禁止条約をつくった効果というのはあるんですよ。それまで消極的だった国も、やはり条約ができると、国際的な関係において、その努力をしようと。地雷だったら、たしか初めのうちは自衛隊は賛成でなかったと思うんですけれども、やはり、そういうことで条約をつくって、そのことによって国際的な意思をはっきりするということが大事なんだということが作業部会なんかで議論されていたことです。

 あと、作業部会でもう一つ、日本が消極的だ、どうも自分たちのことしか考えていないんじゃないか、世界、人類全体が核戦争になったらどうなるんだと。世界戦争になったらどうなるかといろいろな事実が報道されていて、そしてそういうような意見がやはり出てきたわけでありまして、アメリカがどう言うかわかりませんが、ぜひその場に出て、議論をしっかりやってもらいたいと思います。

 もう一つ、核廃絶への経過措置として核軍縮の重要な第一歩になるのは、やはり核の先制不使用の問題だと思うんですね。これは第一に、非核国家にとっては基本的に核で攻撃されることはないというメリットがあります。そして、誤解などによる核戦争を防ぐことができるという意味では、核保有国にとってもリスクを減らすことができるんですね。

 よく言われますが、トマホークなど巡航ミサイルは、外形では核弾頭か通常弾頭か見分けることはできないんだそうですよ。だから、相手方の判断次第で、これは核だと思って先制攻撃というか反撃をするということで核戦争になることもあり得るというように指摘をされています。

 アメリカも、二〇一〇年に、NPTを遵守する非核保有国は攻撃しない旨、宣言をしています。それから、中国は先制不使用に賛成しているわけですね。

 日本政府はこれに対して正式に反対しているんですか。反対しているとすれば、その理由をお知らせいただきたいと思います。川口元外務大臣やオーストラリアのエバンス元外務大臣など四十名が共同声明を発表しています。ともかくこれが第一歩になるんだということで、私もそう思います。

 だから、アメリカばかり気にしないで、日本政府としても真剣にこれは検討すべきじゃないか。その議論の場でもぜひ御議論いただければと思います。

岸田国務大臣 核の先制不使用の議論は、先日も、オバマ政権の中で議論されているという報道があったことは承知をしています。ただ、今現在、米国政府として正式に核の先制不使用について態度を明らかにしたとは承知をしておりません。

 こうした課題ですので、我が国としてそうした決定が行われていない中にあってコメントをするということは控えなければならないと思いますが、ただ、米国との間においても、核兵器のない世界を目指す、こうした大きな目標については共有をしています。だからこそ、ことしのオバマ大統領の広島訪問にもつながったと認識をしています。

 ただ、その大きな目標に向けてどのようにアプローチをしていくのか、こういったことについて現実的に、具体的に考えていかなければならないということを申し上げています。

 そして、その際に、先ほど言いました核兵器国と非核兵器国の協力。特に去年、五年に一度のNPT運用検討会議、世界が注目する五年に一度の核軍縮・不拡散の会議が行われましたが、その会議においてすら共同声明をまとめることができなかった。

 今この現実の社会において、核兵器国と非核兵器国の対立はまことに深刻な状況にある、この認識をまず持たなければなりません。この厳しい認識の中で両者を協力させるためにはどうしたらいいのか、核兵器のない世界に向けてのアプローチとして本当に真剣に考えなければならないと思います。

 先ほどの核兵器禁止条約の議論はもちろんでありますが、次回のNPT運用検討会議の準備委員会も来年から始まりますし、来月には長崎において国連軍縮会議も予定をされています。こういった機会を捉えて、ぜひ現実的な取り組みを積み重ねていきたいと考えます。

横路委員 禁止条約も中身はいろいろあるんですね、幾つも項目がありまして。ですから、それを一つずつ丁寧にやっていただきたいということと、核の先制不使用の問題というのは全面的な核軍縮に向かう一歩だと私は思いますので、ぜひそういう御努力をしていただきたいと思います。

 最後に、稲田防衛大臣に、ちょっとこういう質問をして恐縮なんですが、日本の核武装について、前は、日本独自の核保有を国家戦略として検討すべきだということを言われておられて、国会で議論があって、今は、非核三原則を堅持して、核のない世界に向けて全力を尽くすというお答えでございます。

 私は、この姿勢をずっとこれからも持ち続けてもらいたいと思いますので、これは大臣の間だけの答弁なのか、いや、やめてからも、政治家として国会で答弁したことをしっかり守っていきますよということなのか、老婆心ながらちょっと御質問させていただきます。

稲田国務大臣 私は今、安倍内閣の防衛大臣として答弁をいたしております。安倍内閣の一員として、防衛大臣として、さらには唯一の被爆国として、今るる委員がおっしゃったことなどを踏まえ、さらには、非核三原則を守り、核なき世界の実現を目指してまいる所存でございます。

横路委員 ありがとうございました。ですから、それを大臣をやめた後もその姿勢でお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 一時間いただきましたが、盛りだくさんなので、早速行きたいと思います。

 まず、今の日ロ関係でございます。

 国後、択捉に地対艦ミサイル配備という発表がありましたが、昨日の参議院の外交防衛委員会における我が党の大野委員の質問に対して、まず、国後、択捉におけるこれまでのロシア軍の状況について、前田局長から、防衛的な任務を主体とする一個師団が現在も駐留しているという答弁がありました。

 稲田大臣に聞きたいと思いますが、今回の択捉、国後への地対艦ミサイルの配備というのは、防衛的な任務を超えて攻撃的な任務、我が国領土、領海を含めて、我が国に対する可能性も含めて、攻撃的な任務が可能な兵器の配備だと私は認識いたしますが、稲田大臣の認識を聞きたいと思います。

稲田国務大臣 やや繰り返しになって恐縮ですけれども、択捉、国後島への沿岸ミサイル部隊の配備の意図、目的について確定的なことを申し上げることは差し控えたいと思います。

 一般論として、極東海域から北極海域に至るロシア太平洋艦隊の部隊の展開ルートの援護、そしてオホーツク海における戦略原潜の活動領域の確保が考えられますが、いずれにせよ、防衛省としては、引き続き注視していきたいと思っております。

後藤(祐)委員 その二つだけですか。北海道方面に対して、択捉に配備されたバスチオンは四百五十とか五百キロを射程におさめるといいます。また、国後に配備されるバルというものは三百キロとも言われます。

 コンパスで引いてみましたか、どこまで届くか。どこまで届くんですか、日本の北海道方面に、これを撃った場合に。

稲田国務大臣 我々の理解といたしましては、バルは百三十キロ、バスチオンは三百キロでございます。

 コンパスで引きますと、網走あたり、北東あたりは入るかと思います。

後藤(祐)委員 実際は射程が何キロか正確にはわかりませんが、少なくとも国後水道は届くわけで、宗谷海峡、これに届く可能性があります。場合によっては、津軽海峡に届く可能性もあります。日本とロシアの安全保障をめぐる基本的な地政学が変わる可能性のある話じゃありませんか。

 日本とロシアは百年以上前に日露戦争を行いました。あのとき、バルチック艦隊を迎え撃つときに、どっちの海峡で来るかと。これは有名な話ですよね。まさにこの海峡を押さえられたら、日本を守れないんですよ。そこに対して王手をかけてきているんじゃありませんか。

 先ほど、我が国の立場に相入れず遺憾であると申し入れたと外務大臣はおっしゃいました。申し入れただけですか。抗議をしていないんですか。

岸田国務大臣 先ほど、ロシア側に対して、我が国の法的立場に基づいて遺憾であるということを申し入れたと申し上げました。これは、抗議したということであると御理解いただければと思います。

後藤(祐)委員 抗議したということですね。今のは初めてお話しになった言葉だと思います。であれば、明確に、抗議したと言うべきではありませんか。

 十二月三日にモスクワに行って外務大臣にお会いになられますし、十二月十五日にはプーチン大統領が来られます。もちろん領土交渉を進めるということは大切ですが、足元を見られているんじゃありませんか。日本の方が領土交渉を進展させたいという思いがロシアよりも強いと、少なくとも先方は見ている可能性が高い。だからこそ、今だったら、北方領土にミサイルを配備しても、場合によっては、先ほど稲田大臣が、発射実験を行うかもしれないと。そこまでやっても、日本はぐっとこらえるんじゃないかという見立てのもと、どんどんつけ上がって、足元を見られていると私は思いますが、いかがですか、外務大臣。

岸田国務大臣 ロシアをめぐりましては、東アジアのみならず国際社会の中でさまざまな動きがあり、さまざまな議論が行われています。

 その中にあって、我が国は、ロシアとの間において、経済分野における互恵的な協力を初め、双方の国益に資する形で関係を進め、そして北方四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結する、これが基本的な方針として取り組んでいる中身であります。

 戦後七十一年たって解決できないこの問題について、今申し上げました基本的な方針でしっかり進めていきたいと思います。

 経済協力についても互恵的な関係でなければならないと思っていますし、それぞれの取り組みはそれぞれの国益に資する形でなければならないと思います。この点をしっかり守りながら、努力を続けていきたいと思っています。

後藤(祐)委員 それぞれの国益に資する形で議論するのであれば、まず、このミサイル配備を取りやめていただきたい、それからだということを申し入れるべきではありませんか。

岸田国務大臣 ロシアとの間においては、二国間関係、そして国際情勢等においてさまざまな議論を積み重ねてきています。そして、その意思疎通の中で、両国関係をどう安定させていくのか、これを考えていかなければなりません。

 日本とロシア、これは、隣国でありながら、七十一年間平和条約を結べていない二つの国です。この二つの国の関係を安定させることは、地域の平和や安定にもつながる大変重要な課題だと思います。ぜひ、そういった思いで、責任のある二つの国として両国関係をどう安定させるのか、しっかり議論を続けていきたいと思っています。

後藤(祐)委員 交渉というのは焦った方が負けなんですよ。今は一呼吸置くべきときじゃありませんか。日本の方がとにかく十二月十五日に何か成果を出さなきゃと思えば思うほど、相手の思うつぼではありませんか。一呼吸置くべきときだと思いますよ。

 何でこの十二月十五日にこだわっているのか。一つ、私はこれが理由ではないかと思うものがあります。それは、日米安保条約六条の問題であります。

 北方領土の一部でも返還が実現した場合、その島における日米安保条約六条の適用があるのかないのか。米軍を日本国の区域に置く、使用することが許される、つまり、歯舞、色丹、まあ国後、択捉まで返ってきたらいいですが、返ってきたところに米軍を置いていいのかどうかという問題であります。

 安保条約六条を適用しない、北方領土の交渉の結果、戻ってきたところについては安保条約六条は適用しないということも可能性としてあるんでしょうか、外務大臣。

岸田国務大臣 我が国は、安保条約六条に基づいて、米国に対して、我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与するために我が国の施設・区域を使用する、これを認めています。我が国は、同条約を誠実に履行すること、こういった義務を負っていると考えています。この義務は全く変わっていないと考えます。

後藤(祐)委員 ということは、この北方領土交渉において、返ってきた北方領土における安保条約六条の適用を除外することはないということでよろしいですか。

岸田国務大臣 今、そういったことについて議論が行われている、こういった事実はありません。

後藤(祐)委員 議論が行われているか行われていないかではなく、適用除外をすることはないということでよろしいですか。

岸田国務大臣 これは予断を持って申し上げることは控えなければならないと思いますが、我が国のこの条約のこの義務、これは大変重たいものがあると思っています。

後藤(祐)委員 適用除外の可能性があるということですか。

岸田国務大臣 いずれにせよ、仮定の問題についてお答えするのは控えなければならないと思っています。

 一方、安保条約の我が国の義務、これは大変重たいものがあると思っています。

後藤(祐)委員 お答えできないということだと思います。

 お手元、配付資料十ページを皆さんごらんになっていただければと思いますが、これは共同通信の取材による、私のところでは神奈川新聞に載っていた記事でございます。ちょっと小さい字ですが、線を引いてあるところが三カ所あります。

 斜古丹に駐留する国境警備隊員の家族スベトラーナさんは、日本に返せば米軍基地ができて危険、プーチン大統領を信じているわと話す。加工場の運転手セルゲイさん三十二歳も、日本の水産加工場と米軍基地ができるだけだ、そうなったら、俺は森でパルチザン、抵抗運動に加わるよと笑った。元軍人のエブゲニー・ユーディンさん六十八歳は、よい兆候と評価しつつ、島を日本に引き渡せば米軍基地が設置されるだろう、ロシア太平洋艦隊にとって重大なリスクになると指摘。

 一般の方ですよ。一般の方が声をそろえて、米軍基地ができると。これは相当教育が行き届いているとしか言いようがないですよね。つまり、ロシアは、北方領土を仮に日本にお返しした場合も米軍基地が置かれるということは絶対認めない、もう住民のこの意見からして明らかじゃないですか。

 とすると、岸田大臣、この北方領土交渉というのは非常に狭いパスを抜けなきゃいけない。つまり、ロシアが返還された島に在日米軍が駐留することを容認した上で返還するのか、返還という言葉は使わないかもしれませんけれどもね。それは、今の記事なんかから見ると相当厳しい話だ。あるいは、米国が返還された島に在日米軍を置くことについて安保条約六条の適用除外を認める、あるいは、適用除外というかちっとした言い方でないにしても、事実上在日米軍を置かない内々の約束をする。このどっちかが実現しない限り、領土交渉は合意できないのではありませんか、岸田大臣。

岸田国務大臣 今現在、我が国は、ロシアから安保条約の適用除外について求められているということはありません。

 そして、その上で、未来に向けてどうかということについて、仮定に基づいて何か申し上げるということは、さまざまな影響を生じさせることになります。仮定に基づいての発言は控えさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 仮定というよりは、この両方とも満たされないときに合意できる可能性があるんですか、大臣。

岸田国務大臣 仮定に基づいて何か発言すること自体が今行われている交渉に影響を与えます。さまざまな箇所に影響を及ぼすことが想定されます。よって、私の立場から今の段階で何か申し上げるのは控えなければならない、仮定に基づいて発言することは控えさせていただく、このように申し上げております。

後藤(祐)委員 この問題の解決の方法は、適用除外というかちっとした言い方をするかどうかはともかく、事実上両方が置かないということを、お互い信頼関係を維持しようじゃないかという方法しかないと思うんですよ。それを、今回の地対艦ミサイルの配備というのは、向こうが裏切ってきているじゃないですか。(発言する者あり)そのとおりでしょう。自民党の方からも声が上がっているんですよ。

 だから、これは、もし我々が返していただいたときにも米軍は置かない、自衛隊は、本当は置きたいけれども置かない、そのかわりロシア軍も置かない、そこでうまくやりましょうよというところからこの話は合意可能性があるんじゃありませんか。だとすれば、今回の地対艦ミサイルの配備というのは、決定的に信頼関係を破壊して、交渉の入り口で張り倒されたようなものじゃないですか。どうやって合意するというんですか。

 これは実際、いろいろなところで起きている合意の方法なんです。アメリカの同盟国でこういった同じようなことが起きるんです。

 では、アメリカが、日本のような同盟国は各国にあります、その同盟国との関係で、第三国との関係で米軍を駐留できないという場所がありますか。

岸田国務大臣 米軍が第三国との関係で駐留できない場所がありますかということでありますが、私の立場で第三国間の関係について確定的に申し上げることは、立場上難しいと思います。

後藤(祐)委員 米国が同盟国である日本との関係において、本来であれば、日本の領域には米軍は置けるんですね、もちろん日本の同意が要りますが。でも、ロシアとの関係上、日本がここには置かないでくれと言って、アメリカがここには置かないというようなことをほかの国とやった例が、御存じないということですか。

岸田国務大臣 それは、今の例は日本の話ですが、日本ではなくして他の国、第三国がロシアとの関係でそれをやったかということかと思いますが、そういう例については、私は何か申し上げる立場にはないと申し上げております。

後藤(祐)委員 大臣、勉強してください。東ドイツがそうなんですよ。

 米、英、仏、ソ及び東西ドイツが一九九〇年に締結したドイツ問題の最終解決に関する条約というのがあります。これでは、ソ連が旧東ドイツから撤退した後は、外国の軍隊及び核兵器を東ドイツ地域に配備してはならないと規定しています。東ドイツという、そこにアメリカの軍隊を置かれたら、ロシアとして、当時はソ連ですね、ソ連としてはたまらないという問題を解決するために、一つの知恵として、多くの国々で合意したんですよ。

 もう一つ。スバールバル諸島をノルウェーと定めたスバールバル条約というのがあります。別名スピッツベルゲン条約。ノルウェー、デンマーク、日本も入っています、日本、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、オランダなどが署名しています。これは後にソ連や中国も加盟していますが、このスバールバル条約九条においては、スバールバル諸島にノルウェーは海軍基地を設置してはならず、他国が海軍基地を設置することを許可してはならないと規定しています。

 あるんですよ。こういう工夫をして、領土問題ですとか、お互いの意見の調整というのをうまく図ってきているんですよ。その前提は、係争となっている場所に軍を置かないということでお互いの信頼関係を醸成してきているんですよ。

 大臣、この事実関係を聞いて、いかがですか。

岸田国務大臣 それぞれの事案にはそれぞれの経緯があると思います。その経緯につきまして十分承知しておりませんのでコメントすることは控えますが、我が国においては、北方領土問題、今ロシアと協議を続けております。我が国としてあるべき姿をしっかり追求しなければなりません。そして、安保条約の関係でいうならば、今、安保条約の適用除外、ロシアから求められている事実はございません。

 将来に向けて、仮定の問題にお答えすることは控えさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 引きどきですよ、大臣。

 配付資料の十二ページに、経済協力八項目についての、やや詳し目に書いた資料を配付させていただいております。

 仲よくするのはいいですよ。ですが、日本の税金に根っこがあるような、国の予算そのもの、あるいは投資や融資、あるいは独立行政法人や公益法人、いろいろな形で事実上公的なお金がこの八項目に流れるでしょう。

 お互いが互恵的なものに限ってやっていますみたいな説明をいただいていますが、この中身を見ると、そうでもないようなものがいっぱいありますよ。

 一発目の、十二ページにある健康寿命の伸長に役立つ協力、これはどう見たってロシアの方々にメリットが極めて大きい話ですよね。それは、日本の医療関係者が少しそこで、いろいろ知恵がつくことがあるかもしれないけれども、限りなくロシア側のメリットの大きいような話は、これは、十二ページの方が各論が書いてあります、十一ページは総論として項目が並んでいるだけですね、お金、公費を投入するのは、十五日の結果を待ってからにした方がいいんじゃないんですか。これらの経済協力八項目については、領土問題の進展を条件にすべきではありませんか、大臣。

岸田国務大臣 八項目の協力プランにつきましても、日ロ両国で作業計画を作成したところです。個別の案件については、今、まだ調整中であります。

 そして、一方的に裨益しているのではないかという御指摘でありますが、これは、プラン全体、この一部分だけ取り上げますといろいろ評価はあるかもしれませんが、全体としては、両国が裨益する、日本の企業においても大きなメリットがあるなど、相互に、それぞれ裨益する、互恵的な関係をつくっていかなければならないと思っています。

 その上で、両国関係全体についても我が国の国益に資する形で考えていく、これは大変重要な考え方であると思っています。

後藤(祐)委員 いろいろな方がビジネスの関係で会う、会うところまではどんどんやったらいいと思いますよ。ですが、そこに公費が投入されるという段階に至るときには、やはり今回の領土交渉の進展を条件にすべきであって、その前にお金を投入することを約束するのはやめていただきたい。

 この八項目で、今年度予算、今年度補正予算、来年度予算概算要求、この中で、財投も含めて、含まれているもの、合計幾らになりますか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたが、今、日ロ両国で確認しているのは作業計画のみであります。個別的な案件については調整中であります。よって、関連予算についても、今の段階で一概にお答えするのは難しいと考えます。

 しかし、いずれにしましても、この八項目の協力プランは互恵的なものでなければならないと考えます。

後藤(祐)委員 先ほどの一つ目の医療も互恵だと言うんだから、これは何だって互恵になっちゃいますよね。互恵でないものなんてあるんですか、そんなことを言ったら。これは後で検証されますから、予算を使うのは控えておいた方がいいということを忠告しておきます。

 次に行きたいと思います。

 日韓GSOMIA、二十三日に調印されたようでございます。

 配付資料一ページ目、これまでのGSOMIA、GSOIAという名前のものもございます、を並べてみました。NATOのものは、これは国がたくさん入る話なので除外してあります。

 これを見ますと、上四つと下三つで違います。つまり、特定秘密保護法ができるまでは、第一レベル、アメリカの言葉で言うとトップシークレットが「機密/防衛秘密(機密)」、第二レベル、アメリカで言うとシークレットが「極秘/防衛秘密」という言い方をしていました。統一されています。ですが、特定秘密保護法ができてからは、インドとイタリアがそうなんですが、第一レベル、トップシークレットに当たるものが「極秘(機密)/特定秘密(機密)」と、イタリアでもそうです。第二レベルのシークレットに当たるものは「極秘/特定秘密」ということになっています。

 これは外務大臣に聞きたいと思いますが、「防衛秘密(機密)」でない機密って何ですか。これは外務省にしかないというふうに伺っていますが、かつ、これが、これは本文を見ていただきたいんですが、次の二ページ、これはインドとのGSOMIAでございますけれども、「特定秘密(機密)」の上に「極秘(機密)」があるんです。「特定秘密」より「極秘(機密)」の方が偉いんですか。あわせてこれは防衛大臣に伺いたいと思います。

 ああ、二つ分かれちゃうね。そうしますと、前段の方、これはまず外務大臣に聞きたいと思います。「極秘(機密)」であって「特定秘密」でないものって何ですか、外務大臣。

岸田国務大臣 まず、国際的な情報のやりとりについてですが、国際的な標準的な対応として三つの分類に分けるというのが標準的な考え方です。トップシークレット、シークレット、コンフィデンシャル、この三つに分けて情報をやりとりするというのが国際社会における情報の標準的な扱いであります。

 トップシークレットについては、我が国としまして、機密という情報を当て、第二段階として極秘。機密、極秘、秘、この三段階に分けて、今申し上げましたトップシークレット、シークレット、コンフィデンシャル、この三段階に対応させているというのが我が国の情報の取り扱いです。

 そして、整理のために申し上げますが、特定秘密の方は、特定秘密保護法、この新しくできた法律に基づいて、その要件に該当したものを特定秘密に指定するということになっています。ですから、それぞれこれは別の物差しによって分類されているということであります。

 よって、今申し上げましたように、機密以外については、その次、第二段階、第三段階に分類される秘密が該当することになります。

後藤(祐)委員 いや、そうじゃなくて、「特定秘密」でなくて「極秘(機密)」なものって何ですかと聞いています。

 そして、これは両方外務大臣でよかったんですね。何でその「極秘(機密)」の方が「特定秘密(機密)」より上位にあるんですか、先に書いてあるんですかということをあわせて御答弁ください。

岸田国務大臣 まず、特定秘密かどうかという問題と、先ほど言いました極秘かどうかという問題、これは別の物差しで整理しているということであります。

 そして、どっちが上かというのは、恐らくこれは特段大きな意味はないと思います。あくまでもこれは別の物差しによって整理された秘密であるという前提でこうした整理が行われていると考えます。

後藤(祐)委員 「極秘(機密)」って何ですかと聞いています。御答弁ください。これは「特定秘密(機密)」でないものということだと思うんですが、こっちが例外的なんじゃないんですか。

岸田国務大臣 機密、極秘、秘、これは先ほども言いました国際的な標準に基づいて分類が行われています。一方、特定秘密保護法によって特定秘密というものは指定されることになります。これは重なる場合もあれば食い違う場合もあります。そもそも物差しが違うわけですから、さまざまなケースが考えられます。一致する場合もあるかもしれませんが、物差しそのものが違うわけですから、食い違うこともあるという問題であると考えます。

後藤(祐)委員 安全保障に係らないものということでしょう。きちっと通告しているんですから答えてください、そこは。安全保障に係らないものは特定秘密の定義からかなり外れるので。答弁できますか。これは通告しているんですよ、私。

岸田国務大臣 要するに、特定秘密であって極秘でないものということをあえて申し上げるのであれば、特定秘密保護法の指定する要件が、これは三つ要件があります。別表に挙げる事項の情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるとして行政機関の長が指定するもの、これに該当しないものが特定秘密であって極秘に該当するものになると考えます。

後藤(祐)委員 もう、わかっていないから困っちゃう。ほら、後ろが慌てているじゃないですか。もうこれ以上時間をかける気がしないので、特定秘密の定義に該当しない機密のものを「極秘(機密)」にしているということで、安全保障以外のものなんでしょう。そういう説明が事務方からありました。私から解説しておきます。時間がかかってしようがないので。

 さて、問題の日韓GSOMIAですが、これは三ページ目に日韓GSOMIAがありますが、一ページ目の対比表を見ればおわかりのように、第一グレードのものがありません。つまり、「極秘(機密)/特定秘密(機密)」は大韓民国側と交換できないんです。実際、大韓民国のところを見ると、これは第一軍事秘密が抜けていて、第二軍事秘密から始まっている。なぜこうなってしまったんですか。

 日本は、このような一番上のトップシークレットに当たるものを除いているのは、確かにNATOがそうなんですが、NATOはいろいろな国が相手になるというところで若干私は事情が違うと思いますし、NATOのGSOIAは、読みましたけれども、そもそもちょっと仕立てが違うので、やや例外的なものだと思います。それを除けば、日本のGSOMIAなりGSOIAは、全てこの一番上のレベル、トップシークレットに当たるレベルのものを相手国と交換できるようになっています、仕組みとしては。

 実際、交換したくない場合はしなきゃいいんです、個別に判断して。でも、交換できる仕組みをつくりましょうというのがこのGSOMIAなわけですから、韓国とだけトップシークレットレベルが対象から外れているというのは、これは日本側の事情ではなく韓国側の事情だというふうに私は考えますし、韓国が日本とこのGSOMIAを結ぶということに、これは前回も国民からのいろいろな反対があったと聞いています。いろいろなそういう国内事情があってここは外されたのかもしれませんが、なぜこれは一番上のトップシークレットレベルを外してしまったんですか。日本から持ちかけたわけではないということでよろしいですね、外務大臣。

岸田国務大臣 もちろん、これは協議の結果、こうした協定を結んでいるわけですが、まず、実質的に、北朝鮮問題等を考える際に、これは結果としてトップシークレットを外した形であっても実際十分対応できるという判断があったんだと思いますが、一方で、事実関係で申し上げるならば、韓国は、二〇〇三年以降、こうした協定を結ぶ際には全てトップシークレットを外しております。今回、日本との協定においてもそれが外されているということで、これは二〇〇三年以降の韓国の対応としては全て共通している対応であると事実問題としては承知をしております。

後藤(祐)委員 その次の四ページ目に、韓国が結んでいる情報保護協定の相手国でトップシークレットまで含めている国、四カ国として、米、カナダ、ロシア、ウクライナとあります。これは、そうすると、二〇〇三年より前に結んだものということなんですね。それは今初めて気づきました。

 では、これは韓国側が政治事情で行ったのではなく、時系列として二〇〇三年以降はトップシークレットを含めていないからという韓国側の事情でトップシークレットレベルは対象にしなかったということでよろしいでしょうか、外務大臣。

岸田国務大臣 もちろん、これは両国で合意した結果でありますが、韓国側としては、事実関係として、二〇〇三年以降、トップシークレットを含めたものはないと承知をしております。

 そして、今回の協定の締結に当たって、北朝鮮問題等を考えた場合に、そうした対応でも我が国として不都合はない、このように考えた結果であります。

後藤(祐)委員 何で不都合がないとわかるんですか。第一級軍事秘密に何が入っているか、絶対わからないですよ、そんなこと。それは一番大事な情報の可能性が高いですよね。なぜそれがなくても十分対応できると判断できるんですか、大臣。

 これを聞いてもごにょごにょ言うだけだと思うので、それはそういう理由で言うべきじゃないと思いますよ。

 もう一つ、今度は稲田大臣。

 韓国のトップシークレットは日本は入手できないということですけれども、第二級のところ、第二級軍事秘密はこの日韓GSOMIAで日本に提供される場合があり得ます。その場合は、防衛省が入手した場合には、それは特定秘密になるわけですね。それがGSOMIAの、一ページ目のこれですよね。

 さて、同じ情報を韓国と米国の間のこの協定で提供され、そして米国からその情報が日本に提供された場合、日米の間では特別防衛秘密になるはずであります。同じ情報が二つのクライテリアになってしまう可能性がありますが、これについてどう整理するんですか、防衛大臣。

稲田国務大臣 あくまでも我が国においては特定秘密という整理をするということでございます。

後藤(祐)委員 そうすると、米国と日本の間ではこういった防衛に関する機密情報は特別防衛秘密として提供されるという協定のはずですが、この場合だけ特定秘密として扱うということですか。

稲田国務大臣 重ならないと思います。

後藤(祐)委員 なぜ重ならないんですか。丁寧に説明してください。

稲田国務大臣 特別防衛秘密は米国の装備品に関する秘密であるからであります。

後藤(祐)委員 それ以外の情報がないかどうかは、これから精査していきたいと思います。

 続きまして、厚木基地の騒音訴訟に行きたいと思います。

 第四次厚木基地の訴訟は、東京高裁の判決において、自衛隊機の午後十時から午前六時の飛行差しとめを認め、将来分の損害賠償を初めて認めて、九十四億円の支払いを命じております。最高裁に今行っていて、年内にも判決が言い渡されると聞いておりますが、この判決のいかんにかかわらず、夜十時ですよ、夜十時から朝六時、こんなのは飛んじゃだめですよ。私は、実はこの飛行機の離陸するすぐ下に住んでいたことがあります。テレビが見られなくなっちゃうんですよ、ざあっとなっちゃって。親子の会話が聞こえなくなっちゃうんですよ。こんなのはだめですよ。

 これは判決とかそういうことじゃなくて、少なくとも午後十時から午前六時の飛行はもちろん、その周辺、夜だとか朝も含めて、自衛隊機の話ですから、まず、防衛大臣の判断でできます。これは飛行禁止とすべきではありませんか、防衛大臣。

稲田国務大臣 厚木訴訟の最高裁が年内に出るということになっております。

 厚木飛行場における自衛隊の飛行活動等の実施は、我が国の防衛に重要な役割を担っている自衛隊の飛行部隊の練度を維持向上させるために必要不可欠なものでありますが、航空機による騒音は周辺の住民の方々により深刻な問題であり、厚木飛行場周辺の騒音軽減は重要な課題であると認識をいたしております。

 このような認識のもとで、自衛隊の飛行部隊は、訓練を実施するに際して、早朝、夜間の訓練をできるだけ控える等、航空機による騒音の発生を低減するよう努力をいたしております。具体的には、運用上の必要がある場合を除き、原則として夜間、二十二時から早朝六時までの間は自衛隊機の飛行を行わないこととしており、飛行場周辺の騒音等について留意しているところでございます。

後藤(祐)委員 ぜひ、それをもう少し横に広げていただきたいんですね。

 二十二時から六時の間の原則に対する例外というのはどういう場合なのかよくわかりませんが、本当に必要な場合というのはどういう場合か、余りないと思いますけれども、全面的にゼロにしちゃうと何かと困るというのがあるんでしょう。少し例外的なものも規定としてはあるけれども、実質的にはやらないという運用をするように、ぜひ防衛大臣として督励していただきたいと思いますし、二十二時より前、朝六時より後も含めて、そこを拡大していただけるようお願いしたいと思います。

 また、今回の判決は米軍機は対象になっていないんです。米軍機も大変うるさいんですね。アメリカに対しても、午後十時から朝六時まではもちろん、もう少しその外側も含めて、訓練差しとめ、これをぜひ要請していただきたいと思いますが、いかがですか。

稲田国務大臣 厚木飛行場による飛行活動の実施は米軍の運用上必要不可欠なものですが、他方、委員御指摘のとおり、航空機による騒音は周辺の住民の方々に大変深刻な課題であり、厚木飛行場周辺の騒音軽減は重要な課題であります。

 このような認識のもと、日米両政府は、厚木飛行場について、午後十時から午前六時までの間の飛行等の活動は、運用上の必要に応じ、緊要と認められる場合を除き、禁止されることを内容とした航空機騒音規制措置を日米合同委員会において合意しているところでございます。

 防衛省としても、これまで累次の機会に米側に対して騒音規制措置の遵守を申し入れをしております。

 今後とも、米軍に対し、航空機の運用に当たり、周辺住民の方々に与える影響を最小限にとどめるよう働きかけてまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 一度聞いていただきたいんですよ、物すごい音ですから。これは別に、厚木基地以外でも事情が似ているところはあると思いますが、物すごい人口密度なんです、全部家ですから。そういう意味で、相当深刻だということをぜひ一度見ていただきたいなと思います。いろいろな基地に行かれると思いますから、その基地に行くちょっと前とか後に、飛行機が飛ぶ時間にいていただくと非常によくわかると思います。

 あと、キャンプ座間のヘリポートから米海軍のヘリコプターが低空で旋回飛行を繰り返しています。また、相模総合補給廠のヘリポートにおいても、横田基地所属の米空軍ヘリコプターが同じように低空旋回飛行を行っていて、飛行機と違って長い間滞留してぐるぐる回っているものですから、またこれは別の意味で大変な苦痛を今伴っている状況でございます。これについてもアメリカに強く働きかけていただきたいというふうに思います。

 さて、南スーダンのPKOについて、前回もやりましたけれども、幾つか積み残しがありますので、確認をしたいと思います。

 まず、我が党の緒方委員の質問の最後のところで、支配地域を持たない、系統立っていない、しかし非常に強い重火器を持っている、そういう部隊がどんなに激しい衝突を起こし、どんなにその危機の度合いが高まったとしても、それは日本が定義するところの武力紛争に当たらないということかという緒方委員の質問に対して、稲田大臣からは、系統立ったものを持っておらず、支配地域を確立していない、その限りにおいて武力紛争ではない、法的な意味における武力紛争ではないという答弁がありました。

 つまり、どんな危険な状況になっても、南スーダンの場合はマシャールだと思いますが、マシャール派が面を持たない、系統立っていなければ、どんな危険な状態になってもPKO五原則は満たされているんだ、こういう答弁なわけであります。

 これを今から議論するつもりはありませんが、これは、PKO五原則はまさに形骸化しているということじゃありませんか。

 今回、十一月十五日の閣議決定で、「五つの原則が満たされている場合であっても、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合には、国家安全保障会議における審議の上、南スーダン国際平和協力隊及び自衛隊の部隊等を撤収する。」これは私が予算委員会でも提案させていただいて、これが閣議決定された意味は大きいと思います。

 質問ですが、この安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な場合には撤収するという基準は、今回の南スーダンに限らず、今後のPKO全てにおいての撤収基準になるということでよろしいでしょうか。

 また、撤収の基準だけではなくて、PKOを出すときの基準、今はPKO五原則を満たせば出すことはできますが、PKO五原則が形骸化しているわけですから、PKO五原則だけではなくて、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められないことということがPKOを出す段階での判断の基準にもなるということでよろしいでしょうか、防衛大臣。

 これは外務大臣なんでしょうか、どっちなんでしょうか。防衛大臣でよろしいですか、前回の答弁ですから。

稲田国務大臣 まず、PKO五原則が形骸化しているという御指摘でございますが、PKO五原則は、委員も御承知のとおり、日本の憲法の要請でありますので、そこは、武力紛争があるかどうかということは、国または国準との間において生ずる武力を用いた争いがあるかどうかということをしっかりと見ていく、これは法的な要件でございます。

 そして、それだけではなくて、やはり自衛隊がみずからの安全を確保しつつ有意義な活動ができて初めてPKO活動の意義があるわけでございますから、もちろん、それができなくなれば撤収をちゅうちょすることはない、今回書かせていただいたとおりでございますし、これから先も、PKO活動においてはその実態面の要件というのは重要だと思います。

 さらに、当然のことながら、自衛隊がみずからの安全を確保しつつ有意義な活動ができて初めてPKOとして派遣するということでございます。

後藤(祐)委員 最後の部分は、出す場合の判断の基準にもなるという御答弁だと理解してよろしいですか。

稲田国務大臣 そういうことでございます。

後藤(祐)委員 大変な御決断だと思います。これはいわばPKO六原則になったと、法律上の根拠はもちろん違うのかもしれませんが、事実上、PKO六原則になったということではないか。まあ、呼び方はいろいろあっていいと思いますが、少なくとも、今後PKOを出す場合は、PKO五原則及び今言った長いものを満たしているかどうかを、常に満たすかどうか判断するわけですから、六原則と使っていただければと思います。

 配付資料五ページ目、きのうの朝日新聞ですが、この稲田大臣のお言葉によりますと、一番下の段の右の方、「個別判断になるとは思うが、例えば、道路を造ったり砂利を運んだりすることができないほどの銃撃戦が起きるなどして長期間にわたって自衛隊員が首都ジュバにある宿営地から出られない状況は、撤収を検討するケースに当てはまるのではないか。」とおっしゃっておられます。

 このケース、すなわち、宿営地外で行っている砂利運搬が長期間にわたって困難になった場合というのは、十一月十五日閣議決定の「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合」に該当することになり、撤収を検討するということでよろしいでしょうか。確認です。

稲田国務大臣 このインタビュー記事の中にも書いておりますように、個別判断になると思います。

 しかしながら、ここで申し上げておりますように、参加五原則が満たされていても、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合、例えばということで、長期間宿営地から一歩も出られない、そして銃撃戦が飛び交っているような状況が長期間続いているというような状況は、安全を確保しつつ施設部隊としての有意義な活動ができない場合があるのではないかというふうに思います。

 ただ、いずれにいたしましても、個別事案の判断でありますし、最終的には、国家安全保障会議において審議をして、政府全体でその判断をすることとなります。

後藤(祐)委員 砂利運搬作業をやめると撤収しなきゃいけないから無理して砂利運搬作業を続けることのないように、そういうことはないと思いますが、そこはそこで、冷徹な御判断を現場の方がしていただくということも改めてつけ加えさせていただきたいと思います。

 その上で、配付資料六ページですが、これは、ジュバが比較的安定しているということの根拠をこれまでも当委員会に提出するようにということで求めて、一度中途半端なものが出てきて、その後出てきたものでございます。これも非常に不満足なものではありますが、少し進化した部分が七ページ目。

 つまり、私は何を求めていたかと申しますと、今現在のジュバ市内、あるいは自衛隊の活動するその周辺は安定しているかもしれないけれども、南スーダンのほかの地域ではいろいろなことが起きていて、それが将来にわたって自衛隊の活動地域に及んでくる危険性はどう見ているのかということについて何らの因果関係も書いてないではないですかということについて、何か、これこれこういうふうに、これだけ遠くてここに及ぶことはないでしょうとか、実際砂利運搬をやっている二十キロぐらいのこの周辺は、いろいろチェックしてみたけれどもそういう傾向はないだとか、そういう説明があってようやく、自衛隊のところは今言ったようなことがあるから比較的安全だというような説明がないとちょっと不足じゃないですかと。

 そう言ってきて出てきたのが、七ページ目の二つ目の段落の「十月二十六日以降、ジュバ市外約二十キロメートルの砂利採取場から国連トンピン地区までの砂利運搬作業を、安全が確認されている中、国連施設外活動として実施している。」この「安全が確認されている中、」という言葉が意味がよくわからないので、そこは補足的に答弁していただくことを条件に、この資料で私は認めたところでございます。

 この「安全が確認されている中、」とは、現在のことだけでなく、将来を含むということでよろしいでしょうか。そして、将来を含むのだとすると、今私が申し上げたような、その周辺を斥候みたいな方が行っていろいろ調べて大丈夫だとか、あるいは国連のそのあたりを調べてくれた方がいて安全だとか、そういうもう少し具体的根拠がある形で御説明してください。

稲田国務大臣 南スーダンの我が国施設部隊は、十月二十六日から、国連トンピン地区から北約二十キロ地点に位置する砂利採取場から国連トンピン地区までの砂利運搬作業を実施しております。

 これは、UNMISSから同作業の依頼があったことに加え、砂利採取場及び砂利採取場からトンピン地区へ至る経路における安全が確認されたため実施をしております。

 同経路上の治安情勢については、UNMISSが確認した各種道路の安全情報や、砂利運搬作業を日本隊より前から開始をしていたバングラデシュ工兵隊から得た情報、さらには、我が国派遣施設隊が独自に収集した情報などを総合して慎重に評価をし、経路上で我が国部隊に危険が及ぶような事象が生起する可能性は低く、安全は確保されていると判断をいたしたところです。

 また、砂利運搬をするに当たっては、その都度新しい情報をUNMISS等から収集し、危険が及ぶような事象の発生の可能性を評価し、経路上の安全を再確認した上で実施をしております。

 南スーダン北部では衝突などの事案が発生しているほか、南スーダン南部では国境付近で殺傷行為などの事案が発生しており、政府としても、治安情勢が厳しいことは十分認識をいたしております。

 他方、これらの事案の発生地域は砂利運搬作業の経路からは地理的に離れている、また、平成二十八年七月以降、同経路上で襲撃、衝突事案は生起していないことに鑑みれば、今後も経路上で我が国部隊に危険が及ぶような事象が生起する可能性は低いと考えられております。

 私自身も南スーダンを訪問し、ジュバは現在落ちついていることを確認いたしましたが、今後の治安情勢については楽観できないことも認識をしておりますので、引き続き、現地情勢について緊張感を持って注視しながら、部隊の安全確保に万全を期し、有意義な活動を実施してまいります。

後藤(祐)委員 最初からそのぐらいの答弁をすべきだと思いますよ。最初からその答弁をしていただければ、また国民の理解も違うと思うんです。今の答弁は、今までの答弁に比べますとわかりやすいと思いますし、具体性というか、少し説得力が増した答弁になっていると思いますので、これをもってこの資料提出は是としてまいりたいと思います。

 続きまして、トランプ次期大統領にまつわる問題をやりたいと思います。

 トランプ氏は、在日米軍経費をもっと負担せよというようなことをおっしゃっておられます。その中で、在日米軍の駐留経費、関連経費というか、これは言葉の定義によっていろいろ違うんですが、七四・五%日本は負担しているという数字がいろいろなところでひとり歩きしています。先日のNHKの日曜討論でもこの数字が出ておりました。

 配付資料八ページ目に、これの根拠となっている米側の資料がございます。そこの一番下のところに七四・五とありますが、これはそもそも、そこの分子であるところの、要は日本の予算ということだと思うんですが、これが日本の予算の中のどの項目を指すかもわからない。ましてや、分母であるところの米軍側が負担したものを合計した数字が、一体どれが根拠なのかもわからない。

 つまり、この七四・五という数字は、日本政府としてはどうやって計算したものかわからないということでよろしいでしょうか、防衛大臣。これは外務大臣なんですかね、外務大臣。

岸田国務大臣 御指摘の二〇〇四年の米国防省の報告書に指摘されている数字、もちろん承知はしておりますが、同報告書の算定基準については承知しておりません。

後藤(祐)委員 そうなんです。ぜひマスコミの皆様はこの数字を使うのをやめていただきたいんですね。

 では、どういう数字か。これはつくるのは大変でした。九ページ目、これは防衛省の方でつくっていただいた数字でございます。

 結論から申しますと、真ん中の四角、在日米軍駐留経費負担の負担額及び割合の中で、FIPというのは、この日本が負担している額が上限になっていて、それ以外米側がどう出しているかというのは把握しにくいので、これを除くと八四・九%、これを日本が全部負担していると仮定すると八六・四%という数字が出てきます。

 さらに、SACO関係経費のうち特別協定による負担、米軍再編関係経費の特別協定による負担を加えた一番下の四角で見ますと、合計値でいうと、FIPを除くと八四・七%、FIPを含めると八六・一%日本が負担しているという数字が出てまいります。若干の違いがありますが、八五%程度、日本は負担しているんです。ですから、七五%という数字は過小見積もりなんですね。

 上の一つ一つの項目を見ますと、一〇〇%のものが並んでいて、では、これをもうちょっと負担せよといった場合に、日本がふやせるところ、ふやすべきかどうかはまた別問題ですよ、要は、伸び代として、可能性としてあり得るのは、そもそも、光熱水料をもうちょっと負担しろとかいうぐらいのところしか残っていないんです。

 本当にトランプ氏は、ここの光熱水料をもうちょっと足してくれと、百億やそこらの話を求めているんでしょうか。そうは思いません。常識的に考えて、そうではないと思うんです。そうではないとすると、ここに書いてない、その外側にある経費をどうするのかという議論だと考えるのが常識的だと思うんですね。

 では、この外側に何があるかと考えた場合に、アメリカが日本でたくさんの、例えば空母を置いたり、イージス艦を置いたり、米軍の軍人もたくさんの人件費がかかっております。こういったものについて、では、例えば空母を横須賀からサンディエゴに持っていったら、アメリカの負担はふえちゃうわけですよね。そんな議論もあります。日本に置くことが多分アメリカにとって一番安いんです。

 以上のことを総合すると、アメリカが負担を減らすには、アメリカの極東におけるコミットメントを下げるしか方法はないと思うんです。これがトランプ次期大統領の言っている真意ではないかと推測せざるを得ないと思いますが、これについて、稲田大臣、どう考えますか。

稲田国務大臣 まず、トランプ次期大統領の政権発足後の方針について、予断を持ってコメントすることは差し控えたいと思います。

 その上で申し上げれば、日米同盟は、我が国のみならず、アジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための公共財として機能しており、同盟は、日米ともに利益を享受するものとして、両国にとって大きな価値を持つものだと思っております。

 トランプ次期政権との間でも、日米同盟の一層の深化、発展をさせていきたいと考えております。

後藤(祐)委員 もう最後、時間が余りないので、この資料の九ページ目の数字、これは防衛省につくっていただいた資料ですが、日本は在日米軍に関してこれだけ負担しているという割合、問われた場合、八六・四%なり八六・一%なり、このどれで言うかはともかく、これらの数字、並列でもいいと思います、これらの数字だということで間違いないでしょうか。これについて確認をしたいと思います。

稲田国務大臣 お示しの九ページの資料は防衛省でつくっているものであり、数字について間違いはないというふうに思います。

後藤(祐)委員 これからはぜひこの数字を使って、約八五%とかでいいじゃないですか、八四とか六とかいうレベルなんですから。そういう数字を政府としても堂々と説明していっていただきたいと思います。これ以上の負担を求められても、もう余地はないんだということを堂々と主張していくべきじゃないかというふうに思います。

 最後、少しだけ時間がありますので、岸田大臣、せっかく、待望の、前回おられなかったのでお聞きしたいと思います。

 トランプ大統領になって、日本の、大きく変動する可能性があるのは、今の安全保障の面もそうなんですが、経済面でもあると思います。トランプ氏のインフラ投資ですとか減税ですとか、こういった期待の中で、アメリカの中の株が上がったり、ドル高になって、今、足元では百十三円というようなことになっています。

 トランプ氏は、大統領選挙の中で、いわゆるラストベルトを中心に、製造業の労働者、この方々を味方にすることで勝ってきました。ドル高が進んだ状態でよしとするはずがありません。どこかで、ドル安・円高、これをしかけてくるというふうに私は思います。共和党のレーガン大統領は、一九八五年、プラザ合意で、これは各国を巻き込んでドル安をつくっていって、実際、その後、二倍まで円高になったわけです。

 このトランプ次期大統領の経済政策、とりわけ為替について、ドル安戦略をとってくる可能性についての大臣の見立てというか、御見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 為替について、政治の立場から何かコメントするのは控えなければならないというのが多くの場合の常識であります。ましてや、アメリカでの新しい政権が為替においてどんな政策をとろうとしているのか、今の段階で推測に基づいて仮定で物事を申し上げる、これは控えなければならないと思います。

 御指摘の点についても、今の段階で具体的に何か申し上げることは控えさせていただきます。

後藤(祐)委員 時間が来たので、終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、神山洋介君。

神山(洋)委員 神山洋介でございます。

 まず、北方領土に関する交渉と対ロシアの安全保障に関しては、これは前段、同僚議員からもいろいろ話がありましたので、簡単に触れるにとどめたいなというふうにも思っております。

 もうるる御紹介なり御答弁もありましたけれども、択捉にバスチオン、ジェーン年鑑によればですけれども、射程三百キロ。国後にはバル、百二十ないし百三十キロというところでしょうか。先ほどの答弁でいえば、この近隣の海域であり、戦略原潜に対してのケアであるという話がありました。いろいろな捉え方があるかと思うんです。

 シリアでは、このミサイルが、これは地対艦ミサイルではありますけれども、地対地ミサイルとして利用されたという実績もあるやなしやという話もありますし、だとすると、先ほども話がありましたが、網走含めて根室地方にも一部射程が及ぶということでもあるわけです。それに対しての具体的な対応をどうするのかというところは、あえてこの場では問いませんが、きちんと脅威は脅威として算定をして御対応いただきたいということを申し上げさせていただきます。

 基本的には、今回、単発でこのミサイル配備が行われたとは私は思っておりません。ロシアがこの海域に対してずっと、その抑止力というべきか攻撃力というべきか、そのパワープロジェクション能力も含めて高めてくるというプロセスの中の一環なんだろうというふうには思っています。その軍事的側面はもちろんそうですが、同時にやはり、ここで我々が考えなきゃいけないのは、政治的な面、ここは政治的にプレーアップをして、こうしたことをあえて出してきたということはないわけではなかろうというふうにも思うわけです。

 そういう意味で、きょうは、岸田外務大臣にもお越しをいただいておりますので、前段にも少し話はありましたが、まずは原則的なことを一点確認させていただきたいと思うんです。

 この北方領土をめぐる交渉、我が国の基本的な原則、立ち位置という観点、特にこの四島に対しては、四島の返還を求めるのであるというこの原則的な立場、これは不変であるということでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 北方領土に関する我が国の基本的な立場ですが、まず、北方領土は、我が国固有の領土であります。そして、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという方針のもと、交渉を粘り強く進めております。四島の日本への帰属を求めていく、こうした方針は変わりないと考えます。

神山(洋)委員 そこはぜひ貫いていただきたいと思うんです。いろいろな交渉事があるのはもちろんわかりますが、しかし、やはり原則的なポジションというところは、そうそう簡単に曲げてはいけないものであるというふうに私は思っております。

 前段にも少し関連したお話がありましたが、そことも絡んだ中で、前段では後藤議員から、日米安保の六条に関連をして、基地対応の条項に関連をしていろいろな議論がありました。似たような話ではありますが、五条の共同防衛条項に関連をして少し確認をさせていただきたいと思うんです。

 もう一月ぐらい前になったかと思いますが、そこは日米安保の限定適用をするなんという話があるという報道もありました。そのことの真偽は、余りここで確認をしても意味がないと思いますので、ここであえて議論しようとは思いません。

 ただ、そもそもの五条の中身からしたときに、我が国の施政下にある領域に対して有効であるという条項であると私は考えておりますし、るるこれまでもそういった答弁が行われてきております。もちろん今までよく議論されてきたのは、尖閣に関しての議論でよくこの条項についての議論がされてきたわけですが、ここで仮にそのことが、報道がどうのこうのという話ではないにせよ、よくよく考えてみたときに、理屈の上からすれば、両国が合意をすれば限定的に適用するということは、それは理屈上は成り立ち得るのかもしれません。ただ、私は、ここは政策判断としてそういった判断はあってはならないというふうには思っておりますし、恐らくそこは、岸田大臣もそう考えられているのではないかと思いますし、稲田大臣もそういう考えでいらっしゃるのではないかというふうに思っていますが、まずはこの点、そういう認識でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、日本の施政下にある地域に対して安保条約第五条が適用されます。この安保条約の条項をしっかり果たしていく責務を我が国は負っていると考えます。

 そして、先ほどの議論の中にもありましたが、こうした条約の適用除外をロシアから求められているという事実はございません。ただ、未来に向けてどうこうについては、今交渉が進んでおりますので、何か申し上げるということはいろいろな影響を与えることになりますので、仮定に基づく発言等は控えさせていただきたいと思います。

神山(洋)委員 原則的な、原則じゃないですね、基本は、我が国はそこは限定適用ということを考えないという御答弁をいただいたと理解をしております。

 五条にはこうあります。「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」ということであります。そこの具体的な解釈の中で、施政下にあるということがよく議論になるわけです。

 この交渉がどう行われようとしているのか、現時点では定かではありませんが、まかり間違ってもそういうことのないように、改めてこの場で要請をさせていただきたいと思います。

 この点に関しては以上とさせていただきます。

 さて、一週間ほど前でしたが、当委員会で稲田大臣と議論をさせていただきました。改めて、終わった後に速記録等も読み直してみたわけですが、正直、前回終わったときに、余りかみ合わなかったなという認識があったものですから、その続きも含めて少し確認も兼ねて議論をさせていただきたいと思っております。

 まず、世論調査云々の話をする中で、今回の南スーダンにおけるPKO派遣に対しての我が国の世論が、どの程度それを是認し、賛成しているかというところについて、問題なんじゃないか、課題なんじゃないかということを前回申し上げたと思います。具体的な数字も幾つか並べましたが、前回は、まだこれは派遣命令を下された直後だったかと思います。

 その後、幾つかまた調査が出てきました。例えば、幾つかあるんですが、朝日新聞なんですけれども、賛成、反対というところは、最初の数字を言うと、賛成が二八の反対が五六という数字なんですね。

 ただ、これは実は、示唆に富むなと思いますのが、そもそもこの駆けつけ警護ということに対してどの程度知っていますかという質問に対して、よく知っているとある程度知っているというところを合わせると三八、全く知らない、余り知らないを合わせると六一という、約一対二ぐらいの比率であるわけです。その方々に対して、駆けつけ警護というのはこういう内容ですということを説明した上で、その上で、駆けつけ警護を行うことに賛成ですか、反対ですかという質問をすると、今度は賛成が三七、反対が四九。

 いずれにしても反対の方が多いことは多いわけですが、最初に賛成ですか、反対ですかと聞いたときよりも約一〇ポイントぐらい賛成ですという人がふえて、反対ですという人が、一〇ポイントまでいかないですけれども、七ポイントぐらい減る、そういう数字がありました。

 この一つをとって、全て必ずこうなるかどうかということは別としてではありますが、やはり、多くの国民は、駆けつけ警護というのは一体何なんでしょう、南スーダンで一体何をするんでしょう、どういう危険があるとかないとかと言われていますけれども、一体本当はどうなんだろうということそのものに対して、疑念を持っている、もしくはそもそもわからないという中に今あるということなんだと思うんです。

 前回議論をしたときにも、冒頭、前提として申し上げましたが、やはり、大臣が命令を下して、そして我が国の国益のために、世界の平和と安全のために、ある意味では身を賭して活動してくれということを、命令を下されたわけです。この責任は極めて重たいと思うんです。

 これは現地に赴く個々の自衛官の立場であり、前回もお話ししましたが、家族であり、周辺の立場からしたときには、やはり、一人でも多くの方々が、もっと言えば、できれば国民全員が、頑張ってきてくれ、そういう環境の中で仕事に赴く、任務に赴くという環境であるべきだと思いますし、その環境をつくることはやはり大臣の極めて重大な責任なんじゃないかなと私は思うわけです。

 前回も実は同じ話をして、その上で速記録を見たわけですけれども、余りそれに対して明確にそうですというお答えはなくて、強いて言えば、多くの国民の皆さんが理解をしていただくということはとても重要なことだと認識をしておりますというお話で、それはそうですよねということなんですが、そのことを申し上げた上で、やはりもっときちっと説明を、意を尽くすべきじゃないかと思うんです。

 大臣、この点、もう一回改めてなんですが、どうお考えですか。

稲田国務大臣 今委員から、大変示唆に富んだアンケート結果のお話がありました。

 やはり、駆けつけ警護が何であるか、それから、南スーダンになぜ日本のPKOが行くのか、そして、南スーダンで日本のPKOの派遣部隊が何をやっているのか等々をしっかりと国民の皆さん方に理解をしてもらわなければならないというふうに思います。

 そして、委員が御指摘になったように、隊員たちは本当に過酷な環境のところに向かって、そして、国益のために、さらには南スーダンの平和と安定を築くために、道路をつくり、施設をつくり、また、家族はそういう隊員を送り出しているわけですから、そういったことは意を尽くして理解を求めていく努力をさらにすべきだと思っております。

神山(洋)委員 という議論がこれまでも別のところも含めて行われてきた中で、その幾つかいろいろ取り組みが行われている中の一つとして、官邸のホームページにその説明の資料、説明コーナーを設けるんだというお話がありました。

 私、そのホームページというか現物を確認させていただいたんですが、大臣はその官邸のホームページをごらんになったことはありますか。

稲田国務大臣 官邸のホームページにおいては、わかりやすくその解説がなされているというふうに思います。

神山(洋)委員 いや、ごらんになったことはありますかと伺っております。見ていなきゃ見ていないでいいですよ。

稲田国務大臣 承知はしておりますが、しっかりと見ているわけではありません。

神山(洋)委員 ぜひ見るべきだと思います。

 別に、わざわざパソコンを開いてホームページで見てくださいという話じゃないですし、今お手元にまさに紙でありますから、それで見ていただいた方がいいと思うんです。

 いいですか、これで。今ぱっと見ただけかもしれませんので、いい悪いは言えないかもしれませんが、正直、私、これを見て最初に思い浮かんだ一言は、エクスキューズだというふうに思いました。説明をしているのだということをホームページに載っけていますというエクスキューズだというふうにしか理解できませんでした。

 確かにテキスト数は結構ありますよ。ただ、中身を読んでいて、特に先ほどからの問題意識で申し上げているように、より多くの国民に、今回の活動の意義であり、もろもろ理解をしていただこうというスタンスの中で書かれているものだというふうには、正直読めません。これまでの安保法制をめぐる議論であるとか、今回の南スーダンへのPKO派遣を含めた駆けつけ警護に関連をする議論の中のいろいろな答弁であるとか、そこでつくられた資料というものを、コピー・アンド・ペーストと言っては申しわけありませんが、ぱっぱっぱっと張りつけたレベルにしか正直思えないんです。

 例えば、一個だけ具体的なところを申し上げます。

 始まって上の方に駆けつけ警護についての説明があるんですね。これも本当にテキストで四行、「「駆け付け警護」は、」ということで書いてあるわけですけれども、「「駆け付け警護」は、自衛隊が外国でPKO活動をしている場合に、自衛隊の近くで活動するNGOなどが暴徒などに襲撃されたとき」云々かんぬんということが書いてあるわけです。

 確かに、NGOなどが暴徒などに襲撃をされたとき駆けつけ警護がという話は、それはあるでしょう。ただ、本当にそれだけですかという話なわけです。ここまでも議論がありましたし、論点になっているところは、そういうことは想定されないという答弁が繰り返されていますが、別にNGOだけじゃなくて、少なくとも法理上は他国軍である可能性だってそれはあるわけですよ。

 その対象も、暴徒だけかといえば、それはどう定義するかは別として、ここで一般的に、暴徒というのを一般の方が読めば、食料を求めてなのか何なのかわかりませんが、多くの人数がわあっとなっているというところを想定するでしょうが、実際には、暴徒だけではなくて、武器を持っていて、それも、小銃だけではなくて、RPGとか、そういったロケット砲まで含めた形での武力を持った武装勢力だということだってあり得るわけです。

 そういったことを、いろいろなパターンもあるんだけれどもという形できちんと説明をしようとするスタンスが実はここには感じられなくて、これだったらすっと入るだろうというほんの一例だけここに記載をして、それで、説明しました、理解を求めていますというこのスタンスは、やはりまずいと思うんですよ。

 大臣、これをもう一回確認した上で、必要があれば、今大臣がおっしゃっていただいた線に沿ってきちんともう一回つくり直すということも御指示いただくべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

稲田国務大臣 今委員が御指摘になった部分ですけれども、私は、これは駆けつけ警護の典型的な場合を例示しております。もちろん、その対象がNGOなどに限られるわけではないと言われればそうではありますけれども、駆けつけ警護の緊急性や人道性、一時的に応急対応する、さらには施設部隊が対応可能な範囲において行うというものであることを考えますと、この図であるとかこの説明が足らないとは思いません。

神山(洋)委員 今のお話を仮にテキストに起こしてここに記載をしたところで、そもそもわかってくれないですよ。そもそも、ホームページにどういう形で載せるかというところが重要な点ではなくて、これはほんのワン・オブ・ゼムな話なわけですよ。姿勢の問題で、どうやってそれを理解してもらうかという中でやはりきちんと工夫をしないと、それは、現地に赴いた自衛隊員であり、その送り出した家族でありが報われないじゃないですかということを申し上げているわけですよ。その姿勢の部分を改めていただきたいんです。

 そのあらわれとして、このホームページがより見やすくなり、かつ、アクセスが幾つあるのかは聞きませんけれども、恐らく大してないですよ。ちゃんとアクセスが集まるということも含めて、効果があらわれる形にするべきだということが申し上げたい趣旨ですので、ぜひその点を御理解いただきたいというふうに思います。

 我々は、今回の駆けつけ警護を含めて、若干異なる点での議論をさせていただいていますが、しかし、自衛隊員が各地域のPKOに赴いて、その地域での平和と安全、国づくりにかかわるということは、基本的にやはり是とすべきだと思っていますし、その上で、やはり大事なのは、そこに赴く自衛隊員個々の待遇面、これは先日来の給料の話だけじゃありませんよ。いざ、本当にそこでけがをした場合の対応ということも含めてでありますが、そこがきちんとされている中で、それで初めて現地に赴くことができる環境を整備するのが政治の責任じゃないですかということを申し上げているわけです。その点はぜひ、変な意味ではありませんので、御理解をいただきたいと思います。

 もう一点、先日の議論の中で、もう一個、少しかみ合わなかった点は、充足率の話でした。

 何度大臣に伺っても、この充足率の話、これは速記録を見てもそうなんですけれども、防衛大綱、中期防に基づいて継続的に人員の充足向上を図ってまいりますということが繰り返されているわけです。そんなものは当たり前の話であって、どうやってやるんだという、そこが大事じゃないですかということを申し上げているわけです。

 先日の議論が終わった後に、事務方の方にお越しをいただいて、ちょっと、議論をしながら説明を伺いました。基本的には、現構成、陸海空の構成の中で一〇〇%を目指していくのだという、極めて当たり前といえば当たり前ですが、そういう方針なんですということは前提として伺ったんですが、大臣、この前提はそれでいいですか。

稲田国務大臣 前提というか、優先度の高い部隊を中心に充足率の向上に取り組んでいることは事実でございます。すなわち、艦艇及び潜水艦の増勢など、そういったものに従って、優先度の高い部隊を中心に充足率の向上に取り組んでおりますけれども、あるべき自衛官の定数と実員を一致させるべく、継続的に充足率の向上を図ってまいります。

神山(洋)委員 そこから先がやはり大事だと思うんですよ。一〇〇%を目指すというのはいいんですけれども、では、一体どうやってやるんですかという話です。いつまでにやるんですかという話です。ここが前回のときに全然前に進まなかった話です。

 前回、終わった後に、事務方の方にもちょっと確認をしたんですが、どうやって、いつまでに、これは、必ずしも自衛官の充足率一〇〇%を目指す云々の話ではなくて、ありとあらゆる組織において同じだと思うんですが、何を考えるにしても、ゴールがあって、ゴールに対してどのぐらいの期間の中で、具体的な手段は何をもってゴールに至らしめるのだということは、ありとあらゆる領域で私は考えるものだと思うわけです。

 では、この充足率一〇〇を考えたときに、一体どのぐらいの期間の中で、具体的にいかなる手段をもってそれを達成しようとしているんですかということが、何度伺っても答えていただけなかった点なんですが、この点、大臣、改めて伺いますけれども、いかがですか。

稲田国務大臣 前回も御答弁申し上げましたが、充足率は、二十五年度九二・六〇、二十六年度九二・六三、二十七年度九二・七〇、二十八年度九二・七八、継続的に充足率を向上させて、平成二十九年度概算要求においても六百十六名の実員増を要求しており、九三・〇二%の充足率とすべく、今取り組んでいるところでございます。

 充足率の向上のために実員を各年度どの程度増員させるのかについては、装備品の取得や維持管理に必要な経費、教育訓練に必要な経費や隊員の給料などの人件費等といったさまざまな経費の中で優先順位を考慮し、総合的に判断しながら決定するものであり、御質問の充足率一〇〇%を達成する具体的な時期について直ちに申し上げることは困難でございます。

神山(洋)委員 それを言えるようにすることが我々の責任なんじゃないですかね。一〇〇であるべきという定数を立てていて、でもいつできるかわかりません、一方で仕事はふえます、ことしは六百人ふえました、でも足りないのは二万人です、来年以降どうなるのかわかりません、これはやはり無責任な議論だと私は思いますよ。

 それは、来年度で、一年でぱっと解決できるという話じゃないのはわかりますよ。だけれども、少なくとも、では、十年計画の中でこの一〇〇を目指しましょうということをやるのか、十五年であってもいいですし、その際に、具体的に予算は幾らぐらい必要なのか、具体的にどういう手段が必要なのか、それを考えてきちっと積み上げていくということのプランニングをして実効あらしめるのが政治の責任であるし、もっと言えば大臣の極めて重要な責任だと私は思いますけれども、それはやらないということですか。

稲田国務大臣 防衛大綱、中期防を踏まえて、防衛省としては、厳しい安全保障環境を踏まえつつ、必要な人員及び装備を確保していくのが基本的な方向性でございます。

 充足率を含めた自衛隊の人員の体制は、委員御指摘のとおり、重要な課題であります。今後、中期防の策定等といった場において、諸般の事情を踏まえながら、よく検討してまいりたいと考えております。

神山(洋)委員 やれないのであれば、やれないなりに別のやり方を考えるということがあってしかるべきだと思うわけですよ。やれるのであれば、きっちりとどのぐらいの年限の中でやるのだということも明示するべきだと思うわけですよ。

 今の大臣のお話であれば、そもそも、やれるのかやれないのかもよくわからないけれども、頑張りますと。頑張っているだけではこれはだめなんですよ。結局、そのしわ寄せは現場に行くじゃないですか。そのことを早く解消しなきゃいけないでしょうということを申し上げているわけですよ。

 その定数の話まで、どこまでそれで踏み込めるのかよくわかりませんが、では、例えば、本当に十年間かけてでもいいですけれども、それを本当に一〇〇に持っていくんだというプランを考えたときに、どうやっても物理的に不可能なのだと、予算面を含めて、無理なんだという結論があったときには、では、今の定数のところをどうやったら見直すことができるのか、できないのかだって考えなきゃいけないじゃないですか。その判断をしなきゃいけないんじゃないですかということを申し上げているわけですよ。

 今の陸海空の定員を機械的にいじってどうのこうのという、そういう単純な話ではありませんけれども、実際に、では、どういうアプローチをしたら今おっしゃっているその一〇〇というところまでたどり着くのかということの算定をきっちりとやるべきですよ、大臣。

 それは、大臣がやると決めて、大臣の任期中に終わる話じゃないかもしれませんよ、でも、きちっとその道筋を描くということぐらいはここでおっしゃっても何の問題もないと思いますけれども、いかがですか。

稲田国務大臣 繰り返しになって恐縮ですけれども、防衛大綱、中期防を踏まえて、防衛省としては、必要な人員及び装備を確保していくのが基本的な方向性でありまして、充足率を含めた自衛隊の人員の体制は大変重要な課題なので、今後、中期防の策定等といった場において、諸般の事情を踏まえながら、よく検討してまいりたいと考えております。

神山(洋)委員 前回の最後に、大変残念な答弁をというお話をして終わってしまったんですが、またそういう気がします。

 無理なら無理で、違うアプローチを考えるべきですよ。できるのなら、できるなりにきちんと、すぐにはできないけれども、こういう形で達成をするんだということを言うべきですよ。それが命令を下す方の私は責任じゃないかと思いますよ。もう一回聞いてもまた同じ答弁が返ってきちゃうのかもしれませんが、大変そこは残念でなりません。

 もう一点、もうあと時間も限られていますので、一点だけ確認をさせていただきます。

 きょう出てこなかった論点のうちの一つですが、サイバーアタックなりサイバー攻撃に関連をして幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 まず、これは前提として事務的に確認をしたんですが、サイバーの話をしていると、いろいろな言葉が出てきます。サイバーインシデント、サイバーテロ、サイバーアタック、これはイコールサイバー攻撃かもしれません、サイバー戦争なんという言葉も出てきます。こうした言葉の、用語の定義というのはちゃんとできていますか。大臣、いかがですか。

稲田国務大臣 今委員御質問のサイバーセキュリティー関係の用語のうち、サイバー攻撃については、情報通信ネットワークや情報システム等の悪用により、サイバー空間を経由して行われる不正侵入、情報の窃取、改ざんや破壊、情報システムの作動停止や誤作動、不正プログラムの実行やDDoS攻撃等として整理をされております。

 その他の用語については、我が国においては一般的に確立した明確な定義は存在せず、また、国際的にも、各国においてさまざまに使用されているものと承知をいたしております。

神山(洋)委員 これは、定義が決まっていないということは、何に対して誰が責任を負うのか、具体的に何をするのかということを決められるはずがないんですよ。ここは、私はまず入り口の問題だと思っていまして、いろいろな委員会、この安全保障委員会も含めてですけれども、ずっと申し上げていることなわけです。

 実は、この話をすると、先ほど大臣がまさに御答弁をいただいたとおり、海外でもまだ確立をされていないとか、国際社会でもまだそこは共通した定まった認識がないという話になるわけです。わからないとは言いませんが、だから、我が国もできていませんという議論は、私は成り立たないと思うんですね。我が国が先導したっていいじゃないですか。

 実は、この同じ議論を内閣委員会で丸川大臣ともさせていただいたんですよ。大臣も同じことを言っていましたよ。それは、そういうふうに出てくるのはわかります。だけれども、であれば、ちゃんとここはスタート、キックオフをするべきですよ。これは別に誰が総理大臣だとか、誰が防衛大臣だとか、そういう問題じゃありませんよ。もう完全に出おくれていますよ。世の中のというより、軍事的な意味も含めて、この領域の中でいろいろなアプローチが行われているというのはもはや常識でありますし、オリンピックの件でもいろいろな議論がなされています。

 そもそも、昔でいう愉快犯のような形で、情報を盗むみたいな話であるとか、ちょっとサーバーに、ホームページに書き込みをするとか、そういうレベルではなくて、今や重要インフラに対してその制御そのものを狂わせるような話がどんどん出てきているわけです。ウクライナでは、とうとう電力に対してまで事例が発生をしているという事実はお聞きになっているとおりかもしれません。

 だとしたら、それぞれは、サイバーテロなのか、場合によってはサイバーウオーなのかもしれない。それぞれに対応する具体的なオペレーションはいかにあるべきなのか、まずは、ここの言葉の定義をきっちりとする中でじゃないと対応できないですよ。本来は、この議論は、では、サイバー領域における自衛権とはいかにあるべきなのかという話に最終的にはたどり着かなきゃいけませんけれども、きょうは、その議論をしてもほとんど時間がないので、しません。

 前提として、まずは、この一つ一つの言葉の定義、国際社会の話はもちろん大事でありますが、ないのであれば、我が国としてそこを先導するべきだと思っていますよ。大臣、これをやっていただけませんか。

山口委員長 では、少し速記をとめてください。

    〔速記中止〕

山口委員長 速記を起こしてください。

 稲田大臣。

稲田国務大臣 ただいまの委員の御指摘は、政府全体として検討すべき問題、課題だというふうに考えております。

神山(洋)委員 いや、それはわかっているんです。だから、リードしてくださいよと言っているわけです。

 これは、与党だとか野党だとかの話じゃなくて、我々だってきちんと問題意識を持ってやっていますから、きちんとやはり議論をしなきゃいけないと思いますよ。大臣、どうですか、もう一回。

稲田国務大臣 今の点を含めまして政府全体で検討すべき問題だと認識をいたしておりますし、防衛省・自衛隊としても、社会全体におけるサイバー空間の安定的利用の確保は極めて重要であるという認識のもとで、内閣サイバーセキュリティセンターや関係省庁等について引き続き情報提供等もしながら、政府全体として、今委員の御指摘の点も含めて、総合的な取り組みに積極的に貢献をしてまいりたいと考えております。

神山(洋)委員 終わります。

山口委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、最初に、米軍関係者による事件、事故の被害補償の問題について質問をします。

 来月の二日でSACO最終報告から二十年になります。SACO最終報告には、米国政府による慰謝料の支払いが裁判所の確定判決額に満たない場合に、日本政府がその差額を支払う仕組みが盛り込まれました。SACO見舞金と呼ばれているものです。

 まず、防衛大臣にこの仕組みがつくられた経緯について御説明いただきたいと思います。

稲田国務大臣 今委員が御指摘になったSACO最終報告の日本政府による差額の補填でございますが、これは、米軍人等による公務外の事故等における補償に関する地位協定第十八条第六項の運用改善措置の一つとして、平成八年十二月のSACO最終報告に盛り込まれたものでございます。

 この措置は、SACOの検討過程において、沖縄県から、日米地位協定第十八条第六項による補償について、加害者側である米軍人等が無資力であるなどの理由により、最終的に米国政府から補償を受けることとなった場合、米国政府による補償額が確定判決を下回る事例があるとの問題提起がなされたことを踏まえ、SACO最終報告において、日本政府がその差額を埋めるよう努力をする旨が盛り込まれたものであると承知をいたしております。

赤嶺委員 今の御説明のとおりなんですね。それで、当時アメリカの方は、そういう過去の事例は極めて少ないとまで言いながら、被害者救済の強い訴え、そういう沖縄側からの要望で入っているわけです。

 一点確認しておきますが、被害者の相続人が複数人いて、そのうちの一人が加害米兵を被告として提訴し、確定判決を得た場合、提訴していない相続人の方はSACO見舞金の支給対象になりますか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のような場合ですと、米軍人が起こした事件等により亡くなられた被害者の相続人の一人の方が提起した事案、こうした場合において、訴訟を提起していない被害者の相続人の方でありましても、ほかの相続人からの委任状を得て日米地位協定十八条六項に基づく請求を行った場合には、SACO見舞金の支給対象とさせていただいているところでございます。

赤嶺委員 今の答弁は、提訴に伴う御遺族の方々の負担を考えた場合に、非常に大事な点だと思います。

 防衛省のホームページを確認してみましたが、その点についての説明はありませんでした。ぜひホームページや手続案内などへの記載を御検討いただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

稲田国務大臣 御指摘の点につきましては、今までも、SACO見舞金の対象となり得る被害者等について、個別に説明は申し上げておりました。

 しかしながら、防衛省といたしましては、民事訴訟を提起していない被害者の相続人でもSACO見舞金の支給対象となり得ることが広く周知されるよう、御指摘のホームページ等で紹介することなどについて検討したいと考えております。

赤嶺委員 ぜひお願いしたいと思います。

 それで、今度はSACO見舞金の支給実績について伺いますが、まず、SACO最終報告以降、米軍関係者による公務外の事件、事故がどれだけ発生しているか、そのうちSACO見舞金が支給された件数と総支給額はどれだけか、これを明らかにしていただけますか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 SACO最終報告が発表された平成八年度から平成二十八年度九月末までの米軍人等による公務外の事件、事故の発生件数については、交通事故、航空機事故、刑法犯等を総じてお答えいたしますと、防衛省が日米地位協定十八条六項に基づく損害賠償等業務等の関係で知り得た件数ということになりますけれども、一万九千五百五十五件となっております。

 防衛省としては、事件、事故のうち、損害が発生し、当事者間での示談が成立せず、日米地位協定十八条六項の規定により被害者側から補償請求を受け、かつ被害者が加害米国人等を相手に訴訟を提訴した場合、その確定判決額と米側支払い額との差額をSACO見舞金として支払ってきております。その支給件数及び支給額については、平成二十八年九月末までにおいて十三件で、合計額は約四億二千八百万円となっているところでございます。

赤嶺委員 SACO以降、公務外の事件、事故は一万件を超えているわけですね。それで、今、提訴して被害額を受けたというか被害額を得た被害者の方は十三件。一万件の発生と、実際に得られる十三件というものの開きというのがあるわけです。

 念のために聞きますが、SACO最終報告に、「米国政府による支払いが裁判所の確定判決による額に満たない過去の事例は極めて少ない。」と書かれています。米国政府による慰謝料の支払いが、確定判決の元金、要するに確定判決どおりのお金、あるいはそれ以上になったケース、これは何件ありますか。

深山政府参考人 日米地位協定十八条六項に基づく損害賠償に関する書類の保存期間が五年間とされておりまして、米軍人等の公務外の事件、事故で網羅的に確認できるのは平成二十三年度以降となっておりますが、このうち米軍関係者による公務外の事件、事故について、裁判に至り、確定判決額が示された事案は三件ございます。

 その三件のうち、日米地位協定十八条六項に基づき、米国政府が慰謝料として支払った額が裁判所の確定判決額を上回った事例、事案というのはございません。

 なお、二十三年度以降、加害者本人による支払い額と米国政府が慰謝料として支払った額の合計が裁判所の確定判決額と同額だった事件は一件ございます。

赤嶺委員 米兵犯罪の被害者遺族や、沖縄で長年その救済に当たってきた弁護士の新垣勉先生が出した「日米地位協定」というブックレットがあります。

 そこには、米軍関係者による四つの交通死亡事故について、損害賠償請求額のほか、確定判決額、米側の支払い額、日本政府による差額の支払い額が書かれています。いずれのケースにおいても、アメリカの支払い額は確定判決額にはるかに及びません。

 その四つの事例の中で、儀保さんという方の事件を一例挙げておきますが、最もひどい儀保さんのケースでは、確定判決額が七千五百九万円に対し、アメリカ側の支払い額は一千三百四十万円、日本政府の支払い額が六千百六十九万円です。

 なぜ、確定判決額とアメリカ側の支払い額との間にこれほどまで開きがあるんですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 米国政府が被害者に提示する慰謝料の額につきましては、米国政府みずからの判断に基づいて決定していることから、確定判決額との差額、なぜ差額が出るかという理由等について私どもの方の立場として確たることを申し上げることは困難でございます。

 いずれにいたしましても、防衛省としては、SACO見舞金の支給を含め、被害者の方々が適正な補償を受けられるよう努力してまいりたいと考えております。

赤嶺委員 米側がどんな基準で補償額を示していて、確定判決額との間の開きがあるか、それはわからないが、いずれにしても、一生懸命やると言ってみても、被害者の救済はできないんですよ。

 同じ事故を取り扱いながら、これほどまでに金額に開きが出ている。これまでにアメリカ側の算定基準が日本側に示されたことはないんですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 米国政府が支払う慰謝料の額は、先ほど申しましたように、米国みずからの判断で決定したものと承知しておりますが、その算定基準等が日本側に示されたことはないと承知しております。

 一方、私どもが算定いたします際には、防衛省において、被害者側からの補償請求を受けまして、内容を審査し、その結果を米国政府に送付しておるところでございまして、米国政府もそうした内容は理解しているのではないかと考え得るところでございます。

赤嶺委員 理解の上で少なくしているというぐあいになったら、これは確信犯になってくるわけですよね。

 それで、一点確認をいたしますが、そもそも、米軍兵士の特性として、日本に駐留しているのは一時的で、上官からの命令で、随時、国外に移動する立場にあります。また、いわば体一つで日本に派遣されていることから、日本国内に十分な資産を持っていません。

 一般的に、米軍兵士にはこうした特性があると思いますが、この点についての政府の認識はいかがですか。

深山政府参考人 制度の趣旨に関するお尋ねと承りましたが、日米地位協定十八条六項の規定に基づけば、公務外の事案については、加害者たる米軍人等に支払い能力がない等の理由によって当事者間で示談解決が困難な場合、米国政府において補償金の額を決定し、被害者側に対し示談書を提示した上、その同意を得て支払うという仕組みになっておるわけです。

 このように、米軍人等が公務外で不法行為を行った場合であっても加害者に支払い能力がない場合に米国政府が補償を行うこととしておりますのは、米軍人等が頻繁に移動すること等によって被害者が救済される機会を逃すような事態を避けるためであると認識しております。

赤嶺委員 頻繁に移動したり、資産を持っていない、体一つで駐留しているというのがあるわけですね。そうした米軍兵士の特性からいって、加害米兵に損害賠償を求めても、そのための資産を持っていなかったり、裁判中に本国へ帰ってしまい、被害補償が十分になされないという実態があります。

 政府は、公務外の事件、事故の被害補償は示談が基本だとしていますが、そもそも、加害米兵の個人責任を追及するための基盤が成立していないということではありませんか。大臣、いかがですか。

深山政府参考人 先ほど制度の趣旨につきまして私どもの知るところを申し上げたわけでございますが、先生から基盤がないということはないかという御指摘もございましたが、先ほど申しましたように、米軍人が頻繁に移動する等の事実は、それはそのとおりであると思っております。

 今のこのような制度がありますのは、ちょっと繰り返しになりますけれども、そうした中にあっても被害者等の方が救済されることを担保するためということであろうと認識しておるところでございます。

赤嶺委員 いや、ですから、公務外の場合は加害者との示談というのが基本なんですよ。その加害者に示談を求める、あるいは示談が成立する基盤がないのではないかということを言っているわけです。

 それで、外務大臣にお伺いいたしますけれども、被害者や御遺族が、加害米兵から被害補償を受けることができずに、泣き寝入りを余儀なくされる現状は改めなければなりません。

 公務外の被害について、加害米兵の個人責任の問題としている現行日米地位協定を改正して、米軍を駐留させている日米両政府が被害補償に責任を持つ制度に変える必要があるのではありませんか。

岸田国務大臣 先ほど来やりとりをしていただきましたように、公務外の米軍人の作為、不作為によって生ずる請求権について、まずは基本的に地位協定十八条6があったわけですが、平成八年のSACO最終報告によって、御質問がありました見舞金に加えて、無利子融資制度、そして前払い制度、こういった制度が設けられた、これが現状であります。

 その現状に対して、さらにこの改定を求めるべきではないか、こういった御質問かと思いますが、今の現状についてさまざまな意見がある、これはもう当然承知をしておりますが、政府としましては、この地位協定について、手当てすべき事項の性格に応じて、効果的に、そしてさらには機敏に対応できる最適な取り組みを考えていかなければならないと考えます。

 一つ一つ具体的な問題に今日まで対応してきたわけですが、今後も、こうした問題意識に基づいて、具体的な対応、すなわち効果的で機敏な対応について、しっかりと検討していきたいと考えます。

赤嶺委員 外務大臣、効果的に機敏に対応してきたという認識で、しかし、公務外の米兵による被害者が圧倒的多数が泣き寝入りしているという現状が何も変わっていないわけです。ですから、今のように、加害兵士に示談を求めても、それが成立する基盤がない、アメリカ政府が出てこざるを得ない、そういうことであれば、公務中の米兵等の事件と同じように、公務外の米兵の事件についても、日米両政府が責任を持つべきだ、泣き寝入りする人が一人もいない、こういう状態をつくる責任が外務大臣にもあるということを強く申し述べておきたいと思います。

 事件、事故、犯罪は公務外の方が圧倒的に多いんですよね。そのことも強く申し上げておきたいと思います。

 次に、やっと加害者の米兵を見つけて示談に至ります。そこまで来るのも大変なんですよ。相手は基地の中ですからね。

 今度は示談書の文言について伺いますが、被害者や御遺族が慰謝料を受け取る際に、米国政府から防衛省を通じて署名を求める示談書には、米国政府に加え、示談の当事者でない日本政府や、加害米兵を免責するようにということが書かれています。

 これに対して、神奈川県内の米兵犯罪被害の救済に携わってこられた弁護士の方々が、示談書の文書の修正を繰り返し求め、日本政府を免責する文言については外されました。

 防衛省に確認をいたしますが、今後、米国政府が米兵犯罪被害者に対して慰謝料を支払う際に提示される示談書には、日本政府を免責する文言は入らない書式になったという理解でよろしいでしょうか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 地位協定十八条第六項に基づき、日本政府が公務外の事案に係る補償金の支払いを行う際、請求者に対し提示する示談書については、米国政府が当該補償金の支払いを行うかわりに、米国政府や加害者たる米軍人に加え、かつては日本政府を免責する旨の文言が記載されておりました。

 このうち、日本政府を免責する旨の文言につきましては、日本政府としてその必要がないと判断をいたしまして、平成二十七年七月以降に作成された示談書からは削除されておるところでございます。

赤嶺委員 つい最近まで、関係のない日本政府まで免責ということにサインをしなければ見舞金をもらえなかったわけですね。

 しかし、問題が残ります。米兵犯罪に巻き込まれ、家族の命を奪われた御遺族の怒りと無念、これは本当に察するに余りあります。その心情からすれば、加害米兵を免責することなどできるはずがないんですね。しかも、加害米兵にかわって米国政府が支払う慰謝料は、確定判決額にはるかに及びません。

 なぜ、慰謝料の受け取りに当たって加害米兵を免責しなければいけないんですか。大臣、いかがですか。

稲田国務大臣 御指摘の免責条項については、これまでも米側と協議してきましたが、米側は、米国政府が支払いを行う根拠である外国人請求法第二千七百三十五条に基づけば、事件に係る請求に米側が応じる場合、その解決は最終的かつ決定的なものとされており、被害者が米国政府による支払いを受領することにより、米国政府及び被用者が免責されることを明らかにする必要があることから、同免責条項上できないとの立場をとっております。

 一方、防衛省といたしましては、今委員御指摘の被害者やその御家族の心情への配慮が必要と考えており、こうした条項の文言について修正等を米側に働きかけるなど、適切に対応してまいりたいと考えております。

赤嶺委員 今のは、加害米兵の免責条項を示談書の中からなくするよう米側に求めていくという答弁ですね。

稲田国務大臣 繰り返しになりますけれども、米側が請求に応じる条件として、その解決が最終的、決定的なものである必要があると外国人請求法に書かれておりますので、そのこと自体は明確にすることは必要でありますが、一方、被害者の遺族等の心情を考えますと、加害者を永久に免責するかのようなそういった文言については、委員も御指摘のとおり、被害者やその御家族の心情への配慮が必要であり、修正等を米側に働きかけるなど、適切に対応してまいりたいと考えております。

赤嶺委員 日本政府の側の態度は今わかりました。働きかけてぜひ実現できるようにしていってほしいと思うんですよね。

 何で加害米兵を許さなきゃいけないのか。許すんだったら、米国政府は判決どおりに満額よこせというのは、これは被害者の当然の心情でしょう。だから、そういうようなことで交渉が滞っている事例もたくさんあります。

 私は、ぜひこれは、本当に国民を守るというか、国民の心情の方に心を寄せるという立場に立てば、直ちにやるべきだ、直ちに交渉に移っていただきたいと思います。いかがですか。

稲田国務大臣 被害者の御家族の気持ちを考えますと、法的な点はともかくも、加害者を永久に免責するというのは非常に表現としても配慮が足りないと考えますので、直ちに修正等を米側に働きかけるなど、適切に対応してまいりたいと考えております。

赤嶺委員 稲田大臣と初めて一致したかもしれませんが、それはそれとして、ぜひお願いしたい。

 法律上のいろいろなやりとりもありますが、それは米国政府相手のもので、米兵、兵士を相手にしたものではありませんから、これはきちんと、引き続き、この点はどうなったかということを委員会等でも確認していきたいと思います。

 次に、政府が東村高江区周辺で推し進めている米軍オスプレイパッド建設について質問をいたします。

 初めに、北部訓練場の形成過程について防衛大臣に伺います。

 米軍が北部訓練場の使用を開始したのは、今から六十年近く前の一九五七年のことです。

 当時、沖縄は、一九五二年のサンフランシスコ講和条約第三条によって奄美、小笠原とともに本土から切り離され、アメリカの施政権下に置かれていました。まさに、日本国憲法が適用されない全くの無権利状態、虫けら以下の、人権が無視されていた時代の無権利状態のときに、米軍からの一方的な通告によって接収されたのが北部訓練場であります。

 防衛大臣は、北部訓練場の形成過程についてどのように認識されていますか。

稲田国務大臣 政府としましては、沖縄県が戦後も長らく我が国の施政権の外に置かれ、北部訓練場については、米国の施政下において設置されたものと承知をいたしております。

 このため、北部訓練場の形成過程について、防衛省としてその詳細を把握しているわけではありませんが、昭和三十二年に北部海兵隊訓練場として使用を開始されたものと承知をしており、その際、米軍による強制的な接収が行われたという話があることも聞いております。その後、昭和四十七年、本土復帰に伴い、北部訓練場として提供開始されました。

 戦後七十一年を経て、なお沖縄県に大きな基地負担を負っていただいていることを重く受けとめており、このような現状は是認できるものではありません。負担軽減を図ることは政府の大きな責任です。一つ一つしっかりと改善していきます。

 北部訓練場の過半、約四千ヘクタールの返還は、沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後最大の返還です。返還に関する日米合意から既に二十年、いまだ返還は実現しておらず、もはや先送りは許されません。

 地元の国頭村や東村からは、国立公園の指定、世界自然遺産への登録を目指すとして、早期返還の要望を受けており、防衛省としては、年内返還の実現に向けて移設工事を着実に進めてまいります。

赤嶺委員 私の立場は、移設工事を進めることがいかに間違いかというのがきょうの質問の趣旨ですので、議論していきたいと思います。

 私も、改めて当時の状況を調べてみました。

 一九五五年七月二十一日の夜のことですが、沖縄本島の北部の国頭、東、久志、金武、宜野座、名護の六町村長と中部の具志川、勝連両村長のもとに、米軍から電報が届きました。翌二十二日に米軍への出頭を求める内容でした。そこで、当時米軍が沖縄統治のために設けていた琉球列島米国民政府の軍用地係のスミス氏が、北部の山林地帯や中部の海岸地帯など合計一万二千エーカーの新規土地接収を通告いたしました。米国が示した地図を見ますと、北部訓練場やキャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセンなど、現在の沖縄本島北部の米軍基地の原型が見てとれます。

 当時アメリカは、東西対決が激化するもとで、日本、韓国、台湾、東南アジアなどと次々に軍事同盟を結ぶとともに、沖縄の米軍基地をアジア戦略上のかなめ石、我々は、子供の時代によく米兵が学校に来て、極東のキーストーン、誇り持てなどと言われたものですよ、そういうかなめ石に位置づけ、恒久的な米軍基地の建設を推し進めようとしていました。

 普天間基地やキャンプ瑞慶覧がある宜野湾市の伊佐浜や伊江島補助飛行場がある伊江村では、米軍基地拡張のための銃剣とブルドーザーによる強権的な土地の取り上げが起こっていた。米軍の土地取り上げに沖縄じゅうが恐怖に震えていた時代でした。測量している人を見ると、また米軍の新たな土地接収が始まるんじゃないか、そういう恐怖の時代に、当時は、那覇市の銘苅、具志、読谷村の渡具知でも強権的な土地取り上げが行われていました。那覇市の具志というのは、私の地元でもあります。

 そうしたもとで、関係する町村長を一方的に呼びつけて、大規模な新規土地接収を通告したのであります。しかも、一万二千エーカーというのは民有地だけで、国有地を含めた実際の接収面積は四万二千エーカーに及ぶことが後でわかりました。国有地は講和条約によって米軍の管理下にあり、琉球住民のものではない、当時は沖縄県民と呼ばれずに琉球住民と呼ばれておりました、というのが軍側の考え方でありました。しかし、そこでの山林収入で生活していた住民にとっては、生活の手段を奪われることになりかねません。

 通告の経緯も内容も極めて一方的で、横暴なやり方だと思います。防衛大臣、当時の土地の接収のあり方、どのように認識を持たれますか。

稲田国務大臣 米軍による強制的な接収が行われたという話があることも聞いていますし、今先生がお話しになったように、地元では銃剣とブルドーザーと言われるような、そういった接収が行われたという話もあり、昭和三十二年に北部海兵隊訓練場として開始されたものと承知をしております。

赤嶺委員 米兵からの突然の通告にろうばいをいたします。地元の町村は、直ちに陳情書をまとめて計画の中止を求めています。

 東村の陳情書にはこのように書かれています。「七月二十二日、突然民政府から東村所在官有林接収の予告を受けたが、山林収入で生活の七〇%以上を占めている本村民にとつて不安と一大恐威を与えている。」「この地域が接収となると村民は生活の最大の収入源を絶たれ、代るべき収入は何物なくただ路頭に迷う外ない。」

 また、国頭村の陳情書にはこのように書かれています。「国頭村の東海岸、安波、安田、楚州は人口一千五百九十二人でその生活を山稼ぎで支えており、山をとられたら生活の根拠を失う。これら三区だけでなく、村の存続にも大きな影響がある」「年間二千八百九十万円の林産物を出しており、軍施設用材や復興建築用資材の確保や海上の保全などの点からも山に生きる住民の気持を汲んで寛大な処置をしてほしい。」と。これはもう哀願ですよ。

 反対闘争をやるならやってみろ、伊江島や伊佐浜のようになりたいかというおどしをかけた上での、村人の、本当に無権利状態に置かれている人たちの哀願になるわけですね。よって立つ憲法もない、接収の中止はもうお願いする以外にない、そういう声を踏みにじってつくられたのが現在の北部訓練場であります。

 防衛大臣に伺いますが、今、政府は北部訓練場の過半の返還のためとして着陸帯の建設を強行していますが、そもそも、米軍による不当な土地の接収によってつくられた訓練場は無条件で返還を進めるのが当然ではないですか。そこに移設条件をつけて、かわりの着陸帯を差し出さなければ返還に応じないというSACO合意の枠組み自体が、歴史を無視し、県民を愚弄するものだと思いますが、防衛大臣、いかがですか。

深山政府参考人 まず、私からお答え申し上げたいと思います。

 先生御指摘のSACO合意におきまして、北部訓練場の過半の返還が決まりました。今お話のあったような歴史的経緯は、確かにそのとおりだろうと思います。

 我々といたしましては、その中で、過半の返還というものは、先生のおっしゃる全面的な返還ではありませんけれども、沖縄の負担軽減に大きく資するものであるということを考え、SACO合意当時もそのような合意に至ったと承知しておりますので、我々は今それを、なかなか実現できてきませんでしたが、現在、工事を進めて、二十年前の合意でありますけれども、その実施に向けているところでございますので、我々としてはこれが沖縄の負担軽減につながるものと考えてやっておるということでございます。

赤嶺委員 沖縄の負担軽減について問題になったのが一九七二年であります。五月十五日に本土復帰を果たしました。沖縄返還協定は、それに先立つ一九七一年秋の臨時国会、いわゆる沖縄国会で承認をされました。

 協定の中身が明らかになるにつれ、核も基地もない真の返還を求める声が沖縄では高まっていました。そうしたもとで、衆議院の特別委員会で、沖縄県選出の瀬長亀次郎、安里積千代両議員が翌日に質問をすることになっていたのを無視して、いわば沖縄の声を封じて、採決が強行されました。それはまた、当時の琉球政府の屋良朝苗主席が政府に宛てた建議書を携えて羽田空港におり立った、そのときであります。一九七一年十一月十七日のことです。

 その後の十一月二十四日、強行採決に抗議して、瀬長、安里両議員、当時の社会党と共産党が欠席するもとで衆議院本会議が強行され、協定は可決、参議院に送付されました。

 そのとき、自民党、公明党、民社党の共同で沖縄に関する決議が提案され、可決をされています。

 どのような内容か、防衛大臣、御存じですか。

稲田国務大臣 御指摘の決議につきましては、昭和四十六年十一月二十四日、衆議院本会議において、本土復帰後、沖縄の米軍基地を速やかに整理縮小することをその趣旨として決議され、佐藤総理からも、復帰後速やかに実現できるよう真剣に取り組む旨の答弁がなされたものと認識をしております。

赤嶺委員 そういう整理縮小、移設条件つきでないというところに注目してくださいよ。整理縮小なんですよね。

 当時その趣旨説明を行ったのは、浅井美幸議員であります。

 このように述べています。

  沖縄米軍基地の実態は、基地の中に沖縄があるといわれてきましたとおり、密度においては本土の二百数十倍にも達し、機能においても本土のそれとは比べものにならないものがあります。沖縄返還によっても、何ら米軍の機能を損することなく、米軍基地が継続使用されるとの印象を与えていることは、きわめて遺憾であります。

  平和で豊かな沖縄県の建設は、本土政府並びに国民に課せられた重大な責務であり、佐藤総理みずから、今国会施政方針演説に明らかにされたところであります。しかし、沖縄の重大関心事は、沖縄の米軍基地を整理縮小し、真に平和な県民生活を約束するための基本的な条件を整えるべきことであります。したがって、米軍基地のすみやかな縮小整理を明確にする措置を講じなければならないのであります。

このように述べております。

 佐藤首相も、

  沖縄における米軍基地の整理縮小につきましては、復帰後すみやかに実現できるよう、現在からこの問題に真剣に取り組む方針であります。

と述べました。

 沖縄の本土復帰に当たって、沖縄の米軍基地問題に臨む政府の基本姿勢は、占領下で構築された広大な基地を縮小し、平和な県民生活を保障することにあったはずです。

 今、政府は、県民の声を無視して、参議院選挙の直後から着陸帯の建設を強行しています。六つの着陸帯に取り囲まれることになる高江の住民は、オスプレイによる激しい騒音と墜落の恐怖にさらされることになります。

 このような計画は、沖縄の本土復帰に際して政府が表明していた米軍基地問題に臨む基本姿勢と違うのではありませんか。復帰の原点が忘れ去られているのではありませんか。

稲田国務大臣 繰り返しになりますが、先ほど委員から御指摘になった北部訓練場の形成の過程も含め、沖縄県に戦後七十一年を経てなお大きな負担をいただいていることを重く受けとめており、この現状は是認できるものではないと思っております。負担軽減を図ることは政府の大きな責任で、一つ一つしっかりと改善していきます。北部訓練場の過半の返還も、その沖縄の負担軽減につながるものだと考えております。

 防衛省としては、北部訓練場の過半、約四千ヘクタールの返還について、地元の国頭村や東村が、返還跡地の有効活用策として、国立公園の指定、世界自然遺産への登録を目指すとして、早期の返還を要望しており、私が沖縄に行った際にも、国頭村や東村の村長とお会いして、この返還について御理解をいただいていること、また、これが返還されれば、沖縄県内の米軍施設・区域の面積が約二割減少し、沖縄の負担軽減にも資することとなることを踏まえ、一日も早い返還の実現に向けて移設工事を着実に進めてきたところであり、これまでの進捗状況に鑑み、年内の返還を目指して進めてまいりますので、引き続き地元の皆様の御理解をいただきたいと考えております。

赤嶺委員 矛盾した態度をとっていることにまだ気づかれないようであります。

 いつかは必ず広大なこの基地がなくなるであろう、これが沖縄県民が復帰にかけた願いであります。そして、整理縮小という形でいつかはなくなっていくんだと。ところが、返還をすれば移設条件をつけて、次の基地の拡張、強化を図る。基地の恒久化ですよ。

 さらに、世界自然遺産条約を出しますけれども、世界自然遺産条約に最もふさわしいところが、今あなた方がオスプレイの着陸帯をつくっているその場所なんですよ。あの山原の森の中で自然度が一番高いところ、そういうところに着陸帯をつくって、世界自然遺産条約に登録を待ちわびていますとか、その世界自然遺産条約を審査する国際自然保護連合は日本政府に勧告しているんですよ、そこに着陸帯をつくるなということを。だから、認識を間違えないでください。

 改めて、SACO合意に至る日米交渉の経緯について伺います。

 そもそも政府は、交渉に当たって北部訓練場の無条件の返還を求める立場だったのか、それとも当初から移設を前提にして交渉に臨んだのか、どちらですか。

前田政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、沖縄に所在する米軍施設・区域に係る問題について、沖縄の県民の方々の御負担を可能な限り軽減し、国民全体で分かち合うべきであるという考えのもとで、二十年前でありますが、SACO最終報告の取りまとめに係る日米交渉におきまして、日米両政府は沖縄の県民の負担を軽減し、同時に、それにより日米同盟関係を強化するという立場で臨んだものであるというふうに認識をいたしております。

 北部訓練場につきましても、このような立場から日米交渉に臨んだ結果、ヘリコプター着陸帯を返還される区域から北部訓練場の残余の部分に移設すること等を条件に、過半の返還について日米間で意見の一致が見られたものというふうに認識をいたしております。

赤嶺委員 つまりは、北部訓練場の返還に当たっては移設を前提に交渉に臨んだ、そういうことですね。

前田政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、沖縄県民の負担の軽減を図っていくことの大事さ、これは当然認識をした上で、同時に、それにより日米同盟関係の強化をするという立場で臨んだものであるというふうに認識をいたしております。

赤嶺委員 つまり、だから移設を前提とする立場だったと、さきの答弁を確認しているわけですが、それでいいですね。

前田政府参考人 お答えいたします。

 SACOの最終報告の取りまとめにそういう姿勢で臨み、その結果、北部訓練場につきましては、ヘリコプター着陸帯を移設すること等を条件に過半の返還について意見の一致が見られた、このように認識をしているところでございます。

赤嶺委員 交渉の最初から移設の条件つきを、日本側もそういう態度をとって臨んでいたということがわかります。

 ところが、返還区域にある着陸帯、四千ヘクタールと防衛大臣がおっしゃったその場所、そこは実際にはほとんど使われていないということが以前から地元ではよく言われていました。

 防衛大臣に確認をいたしますが、返還区域にある着陸帯の具体的な使用状況について、アメリカ側に説明を求め、確認した上でSACO最終報告に合意したんですか。

前田政府参考人 お答えいたします。

 SACO最終報告に至るまでの過程において、今先生がお尋ねの北部訓練場の返還区域にある着陸帯の具体的な活用状況、これをどのように確認したかというお尋ねでございますけれども、関連する資料が残っていないため、残念ながらお答えすることは困難でございます。

赤嶺委員 とても大事な問題ですよ。必要性のなくなった基地を日本側に返還しなければならないことは、日米地位協定にも書いております。

 地位協定二条三項は、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」これは地位協定の中に書かれているわけですよ、二条三項。

 二条二項には、いずれか一方の要請があるときは、施設・区域の提供に関する取り決めを再検討しなければならず、返還に合意できることも明記されています。

 日本政府には、返還区域にある着陸帯の具体的な使用状況について、アメリカ側に説明を求める地位協定上の根拠があります。当時、米側に説明を求めたんですか、求めなかったんですか。いかがですか。

前田政府参考人 お答えいたします。

 昨日、先生から御質問通告を受けまして、それに答えるべく資料の捜索等もいたしましたけれども、何分二十年前のことでございました。残念ながら関連する資料が残っておらず、本日の時点でお答えをすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 全く納得できる答弁ではありません。

 ここに来て、まさに二十年たった今日ですよ、米軍は何と言っているか。米軍自身は、返還区域は使用不可能な状態にあると認めています。米海兵隊の戦略展望二〇二五という文書の中に、北部訓練場の使用不可能な約五一%を日本政府に返還する一方、追加的に使用可能となる訓練場が整備され、有限な土地の最大限の活用が可能になる、このように述べています。

 政府は、仲里利信衆議院議員、沖縄四区の仲里議員が提出した質問主意書に対して、北部訓練場は、返還される部分も含め、実際に在日米軍によって使用されていると答弁をしています。返還区域にある着陸帯はどのくらいの頻度で使われていたんですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、戦略展望二〇二五について御指摘がありましたが、この文書は米海兵隊内の一部局が作成した文書であると承知しておりまして、我が国政府としては逐一論評すべき文書ではないと考えております。

 その上で申し上げますと、これまで、北部訓練場は、返還される部分を含め、実際に米軍によって使用されてきておると認識しておるところでございます。

 例えば、オスプレイの普天間飛行場への配備に当たって平成二十四年四月に米側が作成した環境レビューにおきましては、返還される区域内にあるヘリパッドの一つであります、ファイヤーベース・ジョーンズと呼ばれているヘリパッドがございますが、これについて頻繁に使用されるとされており、オスプレイ導入後も年間一千二百六十回の運用が予定されておるというふうに記述されていると承知しておるところでございます。

 また、返還される部分については日米間で既に返還が合意されていることから、海兵隊がもはや使用できない訓練場であると考えることはあり得ることかと思っておるところでございます。

赤嶺委員 管理している海兵隊が、今、着陸帯一カ所の例を挙げました。向こうは七カ所あるわけでしょう。それについて逐一言えますか、使っていたと。結局、使用不可能な場所だったということを海兵隊が言うことはあり得ると政府の側もおっしゃっている。

 米軍が使っていると言えば、もう全部そのままそれを認めていくような、うのみにしていくような政府の態度。

 では、あそこが日本の抑止力の維持のためにどのような使われ方をしているか。ベトナム戦争のときは、ジャングル訓練場として対ゲリラ訓練をして使われております。

 しかし、ことしの七月に、東村の村議の方々が米軍の案内で訓練場の調査に入っていますが、そこで米軍は、現在の北部訓練場の役割について、麻薬の密輸、製造を取り押さえるためにジャングル戦闘訓練が必要だと説明していたそうです。

 確かに、アメリカは、中南米からの麻薬の密輸に悩まされてきた歴史がありますから、米軍による対処が必要な場合もあると認識しているのかもしれません。九九年に閉鎖されるまでは、パナマに米軍のジャングル戦闘訓練施設があったとされています。

 しかし、麻薬の対策と日本の防衛との間に、一体どんな関係がありますか。政府は、米軍が具体的にどういう目的でジャングル戦闘訓練を行っているかについて、把握しておられますか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍が北部訓練場で行っております訓練の一々の目的については我々は承知しておりませんけれども、ヘリの運用を初め、各種訓練が行われているものと承知しておるところでございます。

赤嶺委員 返還予定地は、全く使われていないところ、使用不能と言われたところ、そこに、返還をするからというアメリカの言い分をうのみにして、着陸帯を六つもつくって、編隊飛行もできるようにして、自然を破壊し、そして高江の住民の暮らしも破壊する、こんな移設条件つきのやり方が沖縄県民の負担軽減に資するという、防衛大臣、こういう答弁が県民の大きな怒りを呼んでいる。

 すぐに中止して、移設条件をつけないで返還すべきだということを強く申し上げて、質問を終わります。

山口委員長 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 日本維新の会、吉田豊史です。よろしくお願いいたします。

 きょうもといいますか、前回に続きまして、自立と連携による我が国の安全保障、そういう観点で私は質問させていただきます。

 具体的には、東南アジア、フィリピン、そこを事例にしてお聞きしようと思うんですけれども、朝からの委員会になっておりますが、きょう、一番最初に寺田委員が御質問された。非常に格調の高い質問で、私も全て、質問、答弁あわせて、そのとおりだなと思って聞いておったわけです。

 日本に住んでいますと、世の中、国際関係というのは、当然そのようなルールのもとにさまざまなものが進んでいくべきであり、そして、それを遵守していこうという形の中に平和を模索していく、それは当たり前のことですし、すばらしいことだと思います。

 けれども、今、我が国が直面する現実というのは、非常に大きな転換期にあって、そしてそれは、例えばアメリカでトランプ氏が大統領になる、それから、今回私がテーマにするフィリピンではドゥテルテ氏という方が大統領なわけですけれども、あの方の政治姿勢というもの、それから、もちろん一番我が国にとって大きな問題であろう中国の習近平という、中国というその考え方、大きなジャイアンだなと私は思うわけですけれども、こういう人たちを、あるいはそういう国々を、どのようにしてあるべき姿のルールにのっとって対応していくのか。

 そして、そこには、一方では一つの限界もあるのではないか、こういうことも考えながら、それを想定したさまざまな安全保障を行っていくこと、これが私は、これから求められていく、非常に難しいでしょうけれども、やり方であり、考えるべきことではないかな、こう思うわけです。そういう大きな問題意識のもとにお聞きしていきたいと思います。

 何でフィリピンかというところなんですが、前回もお伝えしました、我が国民にとって、南沙諸島での中国の埋め立て、あの映像というのは非常に大きな衝撃だったろうと思います。私は、いつも安全保障というとあの写真がやはり思い浮かびますし、そして、これが日々どうなっていっているんだろうと。ここは我が国にとってやはり近いところなんですね。こういう認識というのを持ったときに、私は、これからの我が国の安全保障ということを国民が意識していく上で非常に重要なホットスポットというかポイントになるんじゃないかな、こう思うわけで、フィリピンを取り上げたいと思うわけです。

 ドゥテルテ氏という方が、また非常に個性的だというところも、私は、国民からすると、フィリピンと日本との関係はどうなっていくのだろうかとか、そして、フィリピンが置かれている立場、そのことが非常に中国と日本との関係においてもわかりやすく、そして、どの方向に進むかということが我が国にとっても非常に大きな分かれ道になるだろう、こういうことも思うわけですから、そういう意味でフィリピンを取り上げたい、こう思います。

 初めに、まずフィリピンという国ですけれども、私自身はいつも、国と国の関係というのも、安倍総理がトランプさんとお会いして信頼関係という言葉をおっしゃったように、結局は、人と人とのつき合いと同じように、どう信頼を醸成していくか、この問題に帰するだろうと思いますので、まず現時点で、フィリピンは我が国に対して、対日感情ですが、今、どういうふうにして捉えているか、外務省の見解をお聞きしたいと思います。

武井大臣政務官 お答えいたします。

 日本とフィリピンは、基本的な価値を共有する戦略的なパートナーであります。両国は長年にわたりまして友好協力関係を築き上げてきておりまして、フィリピンの対日感情は一般的に大変良好であると認識をいたしております。

 本年、国交正常化六十周年という節目の年を迎えまして、本年一月には天皇皇后両陛下のフィリピン訪問が実現をいたしたところでございます。また、先月には、本年六月に就任されましたドゥテルテ大統領、今お話ございましたが、日本にお迎えをいたしたところでございます。

 これまで培われてまいりました両国間の活発な人的交流、要人往来を基盤といたしまして、今後も両国の友好親善関係をさらに向上させてまいりたいと考えております。

 以上であります。

吉田(豊)委員 今ほど御紹介いただきましたが、例えばもう少し詳しく、歴史的に、近年のフィリピンの日本に対する好感度の変化ですとか、その辺は今すぐわかるものでしょうか、どうでしょうか。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 例えば、フィリピンの民間の調査機関がことしの十月に発表した調査によりますと、日本を信頼するというふうに答えている人が五六%、それから、信頼していないというふうに答えた人は二二%ということですので、その差でプラス三四%のような形になっているということで、これは、フィリピンにおいては、アメリカ、オーストラリアに次いで三位ということになっております。

 それからあと、イギリスの放送局のBBCがやっている世論調査によりますと、フィリピンでは日本を肯定的に見ている人が八四%に達しているということですので、日本に対する感情がいかにいいかということはこれでおわかりになるのではないかというふうに思います。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。

 そして、これはぜひ、世代間による違いですとか、あるいは、近年、非常にさまざまな要因によって向上していっているということはいいタイミングだと思いますので、もう少し丁寧な、フィリピンに対する我が国からのイメージと、そして、あちらがどう思っているか、そういうようなことのベースとして調査を積み上げるということは、今後、戦略的に進める上で非常に重要だと思いますので、ぜひ御検討いただきたい、こう思います。

 続いて、フィリピンと日本は友好信頼関係がもともとある、そして、今、非常にいい感じだということはお聞きしたんですが、よりこれを強化していくに当たっては、例えばさまざまな、平和的な部分としての貿易とか観光とか、あるいは語学の部分、それから技術連携とか文化交流とか、いろいろな観点はあると思うんですが、これについてどのような考え方を持っているかということをお聞きしたいと思います。

武井大臣政務官 日本とフィリピンは、今お話ございましたが、長年にわたり友好協力関係を築き上げ、自由、民主主義、法の支配といいます基本的価値を共有する戦略的パートナーといたしまして、地域の安定と発展のために協力を深めてまいっておるところでございます。

 さらに、フィリピンにとっても日本は最大の貿易パートナーでありまして、在日外国人、日本におられるフィリピン人の数としても世界三位であるなど、両国間の経済また人的交流も大変活発でございます。

 本年六月末のドゥテルテ政権発足後も、八月に岸田外務大臣がフィリピンを公式訪問いたしまして、ドゥテルテ大統領及びヤサイ外相との間で会談を実施したところでございます。

 また、安倍総理も、九月にラオスで開催されましたASEAN関連首脳会議の際に、ドゥテルテ大統領との間で首脳会談を実施いたしました。

 先月には、ドゥテルテ大統領が就任後初めて日本を訪問されまして、その際に、フィリピンの海洋安全保障能力向上のため、巡視船の供与に合意をしたほか、南シナ海の問題についても連携をしていくことを確認したところでございます。

 このように、ドゥテルテ政権との間でもハイレベルにおいて活発な意思疎通が図られてきておるところでございまして、今後とも、経済、安全保障、人的交流といった幅広い分野でのフィリピンとの関係を強化してまいりたい、そのように考えております。

吉田(豊)委員 それで、やはり一つ一つを具体的に考えていただきたいな、こう思うんですけれども、それは後でお聞きしたいと思います。

 まず、ドゥテルテ大統領ですが、大統領の我が国に対することを含む外交姿勢ということについて、岸田大臣として、既にお会いになっているとは思うんですけれども、どのような感触、そしてどのように評価していらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今もありましたが、私は八月にフィリピンを公式訪問させていただきました。そして、その際に、ドゥテルテ大統領の地元ダバオ市を訪問させていただきまして、フィリピン伝統の軽食を振る舞っていただきまして、意見交換をさせていただく機会がありました。

 そして、逆に先月は、ドゥテルテ大統領が日本を訪問され、夕食会の場でさまざまな地域情勢、二国間関係、さらには地元ダバオ市と日本の友好の歴史など、さまざまな意見交換をさせていただきました。

 そして、その直後、安倍総理との首脳会談においても、南シナ海問題における連携のほか、二国間関係のさらなる強化について協議を行いました。

 こうした会談を通じて感じることですが、ドゥテルテ大統領が対日関係を極めて重視しているということ、これを強く感じたところであります。

 こうした大統領の日本に対する姿勢、我が国もしっかり受けとめさせていただきまして、ぜひ、本年の国交正常化六十周年、この機会に一層、要人往来を活発化させ、意見交換を進め、信頼関係を構築し、重層的な関係を両国間で築いていきたいと強く願っております。

吉田(豊)委員 岸田大臣として最初に訪問して、そして訪問を受けてということで、非常にいいスタートを切っていらっしゃるということは理解できます。

 その上で、大統領が日本のことを非常に重視している、そういうことであればなおさらのことなんですけれども、我が国の方から、国民と言えばいいか、感覚的に思うんですけれども、安全保障の話のときも、やはり出てきますのは、まず、地理的なことからしても、中国であり、そして韓国であり、北朝鮮でありというところから始まって、大体そっちの方を見ているんですね。

 けれども、今実際、本当に大事なことは何かというと、中国という、大きな、暴れる可能性がある国があって、そして、最初に申し上げたように、国際ルールにのっとってさまざまなことを全てやっている国かというと、実際そうではないということにおいては不安があるわけです。例えば、国際法をきちっと遵守してやっているか、そういう意味ですね。そういうことからすると、そうではないというところ。そうすると、それ自身がやはり不安になるだろうと。

 日本周辺の地図を見てみますと、日本列島を含めて大きく三つの弧があると思います。日本列島の弧、それから沖縄・先島という弧、それからもう一つ先にフィリピンを含むところの弧ということで、中国が外に、海側に出て行こうとすると、この三つの弧によって遮られているという形が描かれるわけですね。

 ですから、私たち日本として非常に重要なことは、やはり、フィリピン、そして南シナ海というところ、ここが、我が国の安全保障上も、対中国を考えたときには非常にクリティカルな場所だということを、もちろん皆さんは現場のことを担当なさっているから認識されていると思いますけれども、国民がそれを、フィリピンという場所が安全保障上も重要な場所だということを認識しているかというと、まだまだ私はそこにいっていないだろうなと思うわけですね。

 ですからこそ、今ほどの大臣のお話であれば、フィリピンの大統領が非常に日本を重視しているということであればなおさらのこと、私たち自身もそれに対してきちっと、あるいは、それ以上の思いで応えていくということを戦略的にやっていただきたいというふうに思うところなわけです。

 具体的に少し入りますけれども、AIIB、中国が主導して進めていこうとしている。これは、一つの経済戦略といいつつも、この地域のリーダーになっていくための中国が考えた戦略だろうというふうに理解するわけですけれども、これについて、例えばフィリピンという国はこのAIIBについてどのような姿勢を持っているのかということの認識をお聞きしたいと思います。

武井大臣政務官 これは、我が国といたしまして、第三国の立場でございますので、コメントする立場にはないということで、差し控えさせていただきたいと思います。御理解いただきたいと思います。

 以上です。

吉田(豊)委員 ちょっと私はよくわからないんですが、そういう答弁になりますと、例えば、国民が、フィリピンがどうするのかねというふうに来たときに、我が国は答えません、こういうふうにおっしゃるわけですか。

武井大臣政務官 フィリピンにつきましては、このAIIBの設立協定については既に署名をしている、しかし、いまだ批准書を寄託していない状態であるということは承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、その是非等につきましては、我が国といたしまして、第三国の立場でありますので、コメントする立場にはないということでございます。

 以上であります。

吉田(豊)委員 非常にわかりやすい答弁ですし、コメントする立場にないというのはよく聞くんですね。それをお聞きすると、何となく、何でかというと、私の前回の恥ずかしい、レベルの低い質問だったと思いますが、あれも、私は富山出身ですけれども、四国の方から連絡が来ました。それで、答弁のやりとりを聞いていて、非常に私たち国民と同じ目線での質問をできているというところだけは評価してくださったわけです。

 ですから、こういうやりとりのときに、答える立場にないということを前置きされた上で、そして、そうだけれども、AIIBというのは、例えば、中国が戦略的にこういうふうなことをやっているというふうに認識しているんだ、それに対して、日本はもちろん日本としての考え方を示していく、フィリピンなりほかの諸国がどういうふうにして動くかということは、我が国としてはこう動いてほしいとか、あるいはこうあってほしいとか、そういうことはやはりぜひ話していただきたいな、それは思いますので、ぜひまた次回にチャンスがあればお聞きしていきたいと思います。

 そして、次に、フィリピンの、RCEPというのをきのう、私は、たまたまですけれども、参議院のTPP特別委員会の方を拝聴しておりまして、それで我が党の儀間議員がここについて総理にも御質問させていただいていました。

 そこで非常に重要だと思いましたのは、やはりこのTPPというものについて、こういう形でなかなか厳しい状況に行くとは誰も思っていなかったわけですね、関係者は。そして、何でそうかというと、やはりトランプ氏が当選するということ、これについても、可能性からするとそんなには思っていなかった。これが現実になってしまったわけです。

 そうすると、では、それに対してどう対応していくのかということは、やはり考え方をお聞きしたいなというふうに思うわけで、我が国として改めて、このRCEPというものがあって、これについてはどのように認識しているのか、そしてそれをどう考えていくかということについてお聞きしてみたいと思います。(岸田国務大臣「我が国ですか」と呼ぶ)済みません、まず武井政務官の方にお聞きしてからでいいですか。

 大臣、ではお願いします。

岸田国務大臣 済みません、我が国のRCEPに対する考え方というふうにお聞きしましたので、私の方からお答えさせていただきます。

 RCEP、これは、ASEANの国々を中心に、日中韓、オーストラリア、ニュージーランド、インド、こういった国々も加えた経済連携の枠組みですが、大きな考え方として、APECの会議においてFTAAPというアジア太平洋地域全体を巻き込んだ経済連携の議論が進んでいますが、その基本となるのがTPPであり、そしてRCEPである、こういった全体の構図が考えられています。

 その中で、RCEPの議論、大変重要な議論ではありますが、今、TPPの議論が行われ、TPPの議論で蓄積されたさまざまなルール、考え方、これがRCEPにも大きく影響していく、こういったことであると思います。TPPによって二十一世紀型の経済連携のルール、モデルをつくって、これが、RCEP、さらには日中韓FTAとか、ほかのメガFTAに影響を与えていく、こういったことであるということで、今、TPPの議論が盛んに行われている、こういった位置づけであると認識をしています。

 RCEPについても、たしか二〇一三年から議論が行われて、今までたしかRCEPは十五回、議論が行われていたと思います。いずれにせよ、かなりの数の議論が行われ、TPPと並行してRCEPの議論も行われていると承知をしています。

吉田(豊)委員 今ほどお聞きしていまして、最初のところで、政務官、済みませんでした。私、AIIBをお聞きしたときにちょっとびっくりしたものですから、それで、次は本当はRCEPについて、フィリピンのというところをお聞きしようと思っていたんですが、同じ答えだとちょっと失礼かなと思ったもので、それでこのようにさせていただきました。御了解いただきたいと思います。

 トランプ氏が大統領になるということについて、私たちの近隣の諸国でも、もともとそうだろうなと想像していた国というのは実はないだろうと思うわけです。我が国が、トランプ氏になって、さまざまなことについての、TPPを初めいろいろなことの戦略を今から組み上げなくちゃいけないということは事実ですけれども、当然、ドゥテルテ氏も同じように、あっ、トランプ氏になったんだ、こうびっくりしているだろうというのが僕は現実だと思うわけです。

 ですからこそ、何でAIIBとかRCEPについて改めて確認しているかというと、そういうことの重要性ということが増したんじゃないかな、僕は、もう一度見直さなくちゃいけない、考え直さなくちゃいけない、そしてそれに対応していかなくちゃいけない、こういうことのタイミングが来ていると思いますので、こういう質問をさせていただいたということです。

 フィリピンとの関係については次に進みますけれども、今度は具体的な安全保障のところでのさまざまな取り組みについて確認していきたいと思います。

 最初に申し上げましたように、南シナ海、そして南沙諸島での中国の行動というのは非常に不安を増長しているわけです。改めて、こういう状況がある中に、日本そしてフィリピン、また両方に非常に重要にかかわっている米国の存在、この三国の間において、安全保障上の連携、具体的には訓練等も入ると思いますけれども、この状況について確認させていただきたいと思います。

小林大臣政務官 お答え申し上げます。

 資源やエネルギーの多くを海上輸送に依存する我が国にとりましては、シーレーンの安全確保は重要な関心事項でございまして、その要衝を占める東南アジアとの防衛協力、そして交流の強化は重要な課題であるというふうに認識をしております。

 その上で、防衛省といたしましては、こうした考え方に基づきまして、フィリピンとの間では、例えば、我が国から艦艇やP3C哨戒機を派遣しての共同訓練、あるいは、人道支援、災害救援、国際航空法及び艦艇ディーゼルエンジンといった分野に関する能力構築支援、そして自衛隊の艦艇や航空機のフィリピン寄港の機会を捉えました部隊間交流といった幅広い分野での協力、交流を進めております。

 また、防衛省・自衛隊は、日本とフィリピンの二国間協力に加えまして、委員おっしゃいました日本とアメリカとフィリピン、三カ国間の協力も重視をしております。そうした観点から、アメリカとフィリピンの共同演習であるバリカタン、あるいはアメリカとフィリピンの共同訓練であるフィブレックスに要員を派遣させていただいております。

 今後も、アメリカとも緊密に連携をしながら、フィリピンとの共同訓練を初めとする各種協力を通じまして、フィリピンとの関係の強化を促進していくことが重要であるというふうに考えております。

吉田(豊)委員 今ほど幾つか御紹介いただきました。そして、日本とすれば、やはりまず自衛隊というところに入るわけですけれども、この自衛隊が具体的にフィリピンと連携を図っていく、そして信頼関係をより強固なものにしていく、現場においてはもちろんそうだと思いますけれども、具体的にどの部分、分野においてそれを図ることができるのかというお考えは大臣にお聞きしたいと思います。

稲田国務大臣 ただいま政務官からもお話ししましたように、また委員からも御指摘ありますように、資源やエネルギーの多くを海上輸送に依存する我が国にとって、シーレーンの安全確保の点から、その要衝に位置するフィリピンとの関係強化は重要だと思います。

 一方、多数の島々によって国土が成り立っているフィリピンにとって、人道支援、災害救援及び海洋状況把握に関する能力の向上が重要な課題となっております。先日、フィリピン大統領とともに防衛大臣も日本に来られた際にいろいろお話をいたしましたし、また、ASEAN防衛大臣会合にも参加をいたしまして、こういった点の要請も受けたところであります。

 防衛省・自衛隊としては、人道支援、災害救援や海洋安全保障といった分野を中心に、フィリピンとの防衛協力、そして交流を強化していくことを重視しております。

 こうした考えに基づき、これまでも我が国から艦艇やP3C哨戒機を派遣しての共同訓練、人道支援、災害救援等の分野に関する能力構築支援、海上自衛隊航空機TC90の移転に向けた取り組み等を行っているところであり、今後もフィリピンとの防衛協力をさらに発展させていく所存でございます。

吉田(豊)委員 先ほども申し上げましたけれども、この日米関係、それからフィリピンと米との関係、非常に、軍事的なことでいうと同じような要素をやはり持っているわけで、お互い理解し合える環境だという前提がある上では、トランプ氏になったということは、我が国にとっても非常に大きな衝撃ですけれども、衝撃という言葉は失礼か、変化ですけれども、フィリピンにとってもやはり同じような状況だろうな、こう思うわけです。

 ですから、この地域において、米国そしてフィリピンがそれぞれ今後どのようなリーダーシップ、あるいは連携を図って中国に対して動いていくのかということをどう予測しているか、これを確認させていただきたいと思います。

小林大臣政務官 お答え申し上げます。

 米国は、安全保障を含む戦略の重点をよりアジア太平洋地域に置くいわゆるリバランス政策の方針のもとで、地域の安定や成長のため、同盟国との関係強化や前方展開などの体制強化を進めているものと承知をしております。

 その上で、南シナ海における米国の取り組みの例といたしまして、具体的に挙げるとすると、平素からの警戒監視活動、そして同盟国及びパートナー国との訓練、演習や能力構築支援、そして海軍艦艇の寄港や航行の自由作戦、こうした幅広い活動を通じまして、地域における強固なプレゼンスの維持及び強化に努めているものと承知をしております。

 また、委員御指摘のアメリカとフィリピンとの間におきましては、フィリピン国内における米軍のローテーション展開を可能にする防衛協力強化に関する協定、いわゆるEDCAと呼ばれるものが二〇一四年に調印されておりまして、これに基づきまして、防衛協力を進める拠点として五カ所に合意をしております。また、今後、施設整備などに向けた取り組みが進められていくものと認識をしております。

 防衛省といたしましては、このような米国そしてフィリピンによる各種取り組みは、南シナ海を初め地域の安全保障環境が一段と厳しさを増していく、そうした中で、地域の平和と安定の向上にとって極めて重要であるというふうに認識をしております。

 委員が今御指摘のアメリカの新政権のもとでの取り組みにつきましては、現時点で予断を持って新政権のことをお話しする、コメントするのは控えたいと思いますけれども、今後注視をしていく必要があると思っております。

 いずれにしても、アメリカ、フィリピン両国による取り組みがアジア太平洋地域の平和と安定に寄与することを期待しております。

吉田(豊)委員 おっしゃるとおりでして、それで、私自身は昨年、その南沙諸島近くということですけれども、維新の党の時代でございますが、視察にフィリピンの方に行ってまいりました。そのときに、さまざまな方とお会いする中にあって、フィリピンの国民自身も、米国に対しての感情というのは単純なものではないわけなんですね。

 こういう現状というのがあった上で、それを、ではどちらの方向にこのフィリピンという国が向かっていくのか。非常にこの地域を不安定にしているのは、間違いなく中国の存在、やっていることだというふうに思いますけれども。

 繰り返しますけれども、安全保障という大きなテーマの中で、当然、軍事的な、軍事力の話のみならず、経済力、そしてどことの関係を深めていくのか、そのバランスをとっていく役割こそ、私は、我が国が安全保障上に果たすべき役割だと思っているんです。

 ですから、最初に岸田大臣がおっしゃったように、フィリピンとの関係を一層強化していく可能性があるということをお聞きしましたので、特に具体的に進めていただきたいなと思いますのは、例えば日本から飛行機でそれぞれの国に、近隣諸国に行くわけですけれども、その便数ですとか、それから、交流のことを考えると、明らかにやはり韓国ですとか中国ですとかが断然多いだろうと思うんです。それと同じだけのレベルでフィリピンとの交流が今あるかというと、現実はそうなっていない。

 ですから、ぜひ、よくわからない不安定な部分があるからこそ、安定していくために、今までの、伸び代という意味では、もうほかの国とは、例えばロシア、きょうのお話、きょう委員会をずっと聞いていましたけれども、ロシアとの関係、北朝鮮あるいは韓国、中国との関係というのは既にベースが積み上がっているからなかなか動きにくいところがあるんですけれども、フィリピンとの関係というのは、今後大きくプラスにも変動し得るという伸び代を持っていると思います。

 ですから、フィリピンとの人間関係を広めていく、そのために、簡単に気づくのは、例えば飛行機の便数を一挙にふやしてみるとか、いろいろさまざまな展開ということは考えて、そしてそれを国策として進めていくということも重要かなと思いますので、私なりの思いをお伝えさせていただきました。

 もう一つお聞きしたいのは、国民として、いつも言います、南沙諸島のあの状況を見ていると、例えばの情報ですが、ベトナムの方はベトナムで、自分たちのことを主張し始めたというようなニュースとかも入ってくるわけですね。そうすると、これは本当にそれぞれが自分たちのエゴをまき散らしていると、もしかしたら紛争に発展するんじゃないかとか、何かが起こるんじゃないか、こういうようなことも懸念、不安に思うわけです。

 ですから、万が一そういう安定しない状況になった場合に、我が国とすればどのような影響を想定しているか、このことについて今のお考えをお聞きしたいと思います。

小林大臣政務官 お答え申し上げます。

 我が国にとりまして、資源やエネルギーの多くを海上輸送に依存しておりますから、そういう意味では、南シナ海を含む海洋における航行の自由及びシーレーンの安全確保は重要な関心事項であるというふうに捉えております。

 お尋ねの南沙諸島で紛争が発生した場合の影響につきましては、個別具体的な状況によって異なりますから、一概にお答えすることは困難でございます。

 ただし、一般論として申し上げれば、シーレーンの安全確保に支障が生じ、我が国の経済活動にも何らかの影響が生じる可能性が考えられます。

 我が国といたしましては、これまで申し上げてきているとおり、南シナ海をめぐる問題は、アジア太平洋地域の平和と安定に直結する国際社会全体の関心事項であると認識しておりまして、各国が緊張を高める一方的な行動を慎み、海洋における法の支配の原則に基づき、平和的解決を図っていくことが重要であると捉えております。

吉田(豊)委員 非常に近いところだというところ、そして、何度もシーレーンというものが出てくるわけです。去年は、我が国の経済にとって、ホルムズ海峡という話がありました。あれは非常に、いかに重要なことなのかということを何度も何度も国会でもやりとりしましたけれども、もっと本当は、実はそれ以上に、今私が問題にしようとしているこの南沙諸島近辺の緊張関係が高まったときというのは、それの比でない大きな影響があるだろう、こういうことも想像がつくわけですね。ですから、やはりここが重要な安全保障上のポイントだということをぜひ私は国民の皆さんにも伝えていただきたい、こう思うわけです。

 その上で、もう少しだけお聞きしますけれども、この南沙諸島の状況というのは、いつも申し上げますように、いきなり、島と言えばいいか、中国が全てのものをつくり上げたかというと、決してそうではなくて、それなりの時間の経過があってこういう状況ができているだろうと思うんです。ある程度でき上がったところで、こういう情報が国民に知らされて、そして、ここでは非常な危機感を持ったというふうになるんですけれども、大事なことは、やはり最初のきっかけのところで危機感を共有するということが重要だな、私はこう考えているわけです。

 具体的に、我が国の領土である竹島なんですけれども、それというのは、最初にとられちゃったから、そのままずっとこれについては現時点ではこの状況が続いているという、それが実際なわけなんですね。

 ですから、最初のところで何が起こっているかということを国民の皆さんにきちっと伝える、そして危機感を共有する、そしてそれを背中にして、外交、さまざまな交渉をしていただくというのがやはり重要だろう、こう思います。

 そのための考えとして、例えば、南沙諸島が今どんな状況にあるのかということを私ははっきりと我が国民にお伝えする方法というのはあるんじゃないかなと思うんです。それは、例えば防衛省でも外務省でもいいと思いますけれども、ホームページをきちっとつくって、その専用のホームページでもいいと思うんです。それで、今こんな状況になっています、そういうことを、リアルタイムとは言いませんけれども、お伝えしていく。こういうような考え方というのは私は非常にいいんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。防衛省の方にお聞きしたいなと思います。

小林大臣政務官 現在、防衛省ホームページにおきましては、今委員御指摘の南シナ海における中国の活動に関する資料をトップページで公開させていただいております。本資料におきましては、南シナ海における中国の進出の歴史的経緯、最近の埋め立て動向、安全保障上の影響などにつきまして、わかりやすい形で説明を行っているところでございます。

 防衛省・自衛隊といたしましても、委員の意識は共有させていただいているつもりでございまして、今後とも、時宜を得て内容を更新するなど、引き続き国民にわかりやすい情報発信に努めてまいりたいと思います。

吉田(豊)委員 情報を公開していくということについては、当然、特に安全保障の問題であれば、全てを公開できるかというと、もちろん、国民に対しても、国民を守るためだからこそ公開できない部分もあるというのも、私は納得のいく考え方だろうなとは思っています。

 けれども、大方共有された情報、それから大きな部分での変化についてはやはり国民の皆さんにきちっと伝えて、そして危機感を共有するというその考え方が、私は、実は我が国がずっと欠けていた部分じゃないかなと思っています。結果的には、知らなくて、知らないうちにさまざまなことが進んでいて、そして、それがどうにもならなくなってから、ではどうするといっても、実はどうにもならないというのは当たり前の話なんですね。

 北方領土でも、きょうも幾つものがありました。具体的に、我が国の固有の領土の北方四島に既にロシアがさまざまな武器を配備しているとかという、こういうことの話一つとっても、やはり見せるべきだと思うわけです。見せることによって、では、もっともっとさまざまな危機感を持って、もっと緊張感を持って、おっしゃる質の高い信頼関係をつくっていく上にも、現実をきちっと把握した上での交渉というものに臨んでいただきたいなと私自身が思うので、ぜひお考えいただきたいと思います。

 終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 両大臣、長時間、大変お疲れさまでございます。

 先に外務大臣に尋ねます。

 私は、現在の日米地位協定は、余りにも多くの特権・免除が米軍人軍属らに与えられており、その抜本的、全面的改正がなされない限り、真の日本の主権回復は実現しないと考えます。

 さて、ことし四月に発生した沖縄県うるま市における元米兵軍属による女性強姦殺人事件を受け、日米両政府は、去る七月五日、日米地位協定の対象となる軍属を四つの職種に分類した上で対象範囲を狭める、法的拘束力を持つ文書を交わすことで合意しております。

 法的拘束力を持つ文書の作成作業には数カ月を要するとのことでしたが、かかる文書の発表時期の目安はついておるでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、本年四月に発生した沖縄県における米軍属による殺人事件を受けまして、日米両政府は、実効的な再発防止策を策定すべく、集中的に協議を進め、七月五日、軍属に係る日米地位協定の新たな扱いの導入及び日米地位協定の地位を有する全ての米国の人員に対する教育、研修の強化等を内容とする日米共同発表を行った次第です。

 そして、現在の状況ですが、七月五日の日米共同発表を受けて、個別の措置の詳細を法的拘束力を有する文書により発表することを両政府で目指して今協議を進めております。

 具体的なめどについての御質問だったかと思いますが、これは協議、相手のある話ですので、確定的なことを今ここで申し上げることはできませんが、そういった方針で、要するに、法的拘束力を有する文書によって発表するということを目指して今協議を進めています。

 できるだけ早く結論を出すよう、努力を続けていきたいと考えます。

照屋委員 大臣、七月五日の合意では、今後数カ月間、懸命に作業する、こう書いてある。

 ところが、やがてあれから五カ月、もう年を越そうとしていますが、何が日米間で障害になっているんでしょう。

岸田国務大臣 両国の間で、先ほど申し上げました共同発表に基づいて協議を行っているところです。

 軍属の範囲が明確化されることによって、軍属に対する管理監督が一層強化される、そして、軍属による犯罪の効果的な再発防止につながっていく、こうした考え方に基づいて取り組みを進めていかなければいけないというふうに考えております。

 ただ、今まさに、日米の間で本当にできるだけ早く結果を出そうと真剣な協議を続けているところであります。どこが問題点になっているか等、こういった公の場で申し上げることは協議に影響も生じますので控えたいと思いますが、今言った考え方に基づいて、ぜひできるだけ早く結論を出していくよう努力をしていきたい、このように考えます。

照屋委員 防衛省にお伺いしますけれども、現在、在沖米軍基地で働く軍属の人数を陸海空軍及び海兵隊の四軍別にお答えください。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄における陸軍、海軍、空軍及び海兵隊別の米軍属の人数についてのお尋ねでございましたが、この点につきましては、米側から情報が提供されておらず、我々としては承知しておりません。

 しかしながら、米側から得た情報によりますと、本年三月末時点で、日本国内には約七千名の米軍属が存在すると聞いておるところでございます。

 また、沖縄県における米軍属の人数については、時点が異なりますが、平成二十五年当時、在日米軍司令部から提供された居住者数として、平成二十五年三月末時点で一千八百八十五名であったというデータを得ているところでございます。

照屋委員 防衛省、これは、日米地位協定上の軍属を狭める作業を外務省を含めて鋭意取り組んでいるんだから、アメリカの資料提供がないから四軍別にわからぬというのを聞いたら、沖縄県民はアキサミヨーと言ってブチクンになりますよ。わからないの、本当に。

深山政府参考人 アメリカ側から、国際社会における米軍に対する脅威により、詳細な居住者数を提供することに対してより厳しい考慮が必要であるとして懸念が示されたことによりまして、平成二十五年度以降の在日米軍人等の居住者数については、総数を含め、我々に提供されていないところでございます。

 米側の懸念については防衛省としても配慮が必要だと考えておりますが、他方、在日米軍施設・区域の安定的な使用を確保する観点から、公表も含めた居住者数に係る情報の適切な取り扱いについて、関係省庁とも連携し、米側と協議しているところでございます。

照屋委員 外務大臣、日米地位協定上の軍属の範囲を狭めようとする、それに臨む外務省の考え方と哲学、どういう考えを持って臨むのか、教えてください。

岸田国務大臣 日米の協議に臨む基本的な考え方ですが、法的拘束力のある文書を作成することによって、軍属の範囲が明確化され、そして、適格な者のみが軍属の地位を得ることを確保することが可能になります。そして、そのことによって軍属に対する管理監督が一層強化される、そしてその結果として米軍属による犯罪の効果的な再発防止につながる、こうした効果を出していこうということでこの協議に臨んでいます。

 具体的なやりとりは控えなければなりませんが、今申し上げた基本的な考え方に基づいて、しっかり成果が上がるように米側としっかり協議をしていきたいと考えます。

照屋委員 外務大臣、冒頭申し上げたように、私は、単に軍属の範囲を狭めればいいという問題じゃなくて、今の日米地位協定上、米軍人軍属に余りにも多くの特権・免除を与えている、そこに切り込んでいく、要するに、日米地位協定が余りにも不平等、不公平であるという視点をぜひ忘れないようにしていただきたい、このように思います。

 さて、防衛大臣と法務省の政府参考人にお伺いします。

 去る四月、元米兵軍属による極悪非道で残忍な女性強姦殺人事件が、私が住んでいるうるま市で発生しました。私は、犯行現場と思料される場所をよく知っています。よもやあのような場所でウオーキング中の二十の女性が卑劣きわまりない犯行で命を奪われるというのは、想像を絶するものでありました。

 ところで、防衛大臣に尋ねますが、起訴された米軍属の裁判が開かれる見通しや日米地位協定上の補償の有無について御遺族が沖縄防衛局に問い合わせても、全く回答がない。御遺族は不安な状況下に放置されているようです。防衛省はこれらについて、事件後に御遺族に対して一度でも説明を行ったのでしょうか。どのような説明を行っているのか、行っていないならば、その理由をお答えください。

稲田国務大臣 私としても、今御指摘の事件は大変残忍かつ凶悪な事件であり、自民党政調会長時代に現場に赴き、献花も行ったところであります。将来ある若い女性に対する本当に身勝手で卑劣きわまりない犯行で、本当に許せない気持ちでいっぱいでございます。

 このような事件は二度とあってはならず、防衛省としては、被害者の御遺族に対してできる限りの対応をしたいと考えております。

 補償の状況につきましては、司法手続中であり、現時点で確たることは申し上げられないことから、防衛省から御説明はしておりませんでしたが、今月中旬に被害者御遺族の代理人の弁護士の方から問い合わせがあり、沖縄防衛局の職員が現在の状況についてお話をしたところであります。

 防衛省としては、今後も、御遺族の心情にも配慮しながら、誠実に対応してまいりたいと考えております。

加藤政府参考人 公判の進捗状況等についてお尋ねですので、お答え申し上げます。

 お尋ねの事件につきましては、現在、第一回公判期日前でございまして、公判に向けた準備段階にあるものと承知をしておりますが、それ以上の詳細につきましては、公判係属中の個別具体的な事件に関する事柄でございますので、答弁を差し控えさせていただきます。

照屋委員 次に、国交省の政府参考人にお尋ねしますが、政府は、去る十月二十五日、日米地位協定の実施に伴う航空法特例法施行令の一部を改正する政令を閣議決定し、同二十八日に官報に掲載しました。来る十二月二十一日に施行されるようであります。

 米軍機や米軍飛行場には、日米地位協定の航空法特例法により航空法が適用されません。これまで沖縄県は、国内法である航空法の適用を訴え、日米地位協定の改定を求めてきましたが、日米両政府は応じておりません。米軍機や米軍飛行場への航空法適用について、これまでの日米間における協議結果についてお教えください。

高野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、今回の日米地位協定の実施に伴う航空法の特例法施行令でございますが、その改正に至った背景をちょっと御説明申し上げたいと思います。

 近年、空港周辺等での航空機に対するレーザー光の照射であるとかたこ揚げといった航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為について、その危険性が広く指摘されてきております。これらの行為による航空機の飛行に対する影響を未然に防止するために、今般、航空法施行規則の一部改正を行いまして、航空法第九十九条の二、これは航空機の飛行に影響する行為を規制する条項でございますが、この航空法第九十九条の二の規制対象となる行為を追加することにいたしました。

 また、これらの航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為は、もちろん、民間航空機、自衛隊の飛行に対して影響があるわけですけれども、それのみならず、米軍機の飛行に対しても影響を及ぼすおそれがあることから、今般、御指摘の航空法の特例法施行令の一部改正を行うこととしたものでございます。

 御質問の点についてでございますが、議員御指摘のとおり、航空法特例法により、航空法の一部規定が米軍機であるとか米軍の施設・区域については適用除外となっているということでございますが、その見直しを求める声があるということは我々も十分承知をしております。

 国土交通省としては、今般の航空法特例法施行令の改正であるとかそういったことに際しまして、日米間で具体的にどのような協議が行われてきたかについては、立場上、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございます。

照屋委員 国交省、今回の政令改正によって、航空法第九十九条の二、飛行に影響を及ぼすおそれのある行為が米軍機にも適用され、米軍飛行場周辺でのたこ揚げや風船を飛ばす行為、米軍機へのレーザー照射などが禁止されることになりました。

 私が知りたいのは、米軍機の飛行に影響を及ぼすおそれとは具体的にいかなる態様を考えているのか。どうも、刑事法で言う構成要件が漠としている。ちょっと教えてください。

高野政府参考人 お答え申し上げます。

 航空法第九十九条の二の航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為というのは、委員御指摘のように、ロケットの打ち上げであるとか気球の浮揚、今回、レーザー照射といったものを追加したわけでございます。

 こういった行為は、離着陸時におけるパイロットの操作に必要な集中力を乱すなど、その飛行の安全に影響を及ぼすおそれがあることで、危険な行為であるということで、九十九条の二の対象にさせていただいています。

 ありがとうございます。

照屋委員 国交省、単刀直入に聞きますけれども、普天間第二小学校の校庭で学童たちがたこ揚げをすることは禁止されるんでしょうか。

高野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、普天間飛行場についてのお尋ねでございます。

 航空法第九十九条の二は、空港周辺の航空交通管制圏など航空交通がふくそうしている空域において、航空機の離着陸の安全を確保するために一定の行為を規制するものでございます。

 それで、お尋ねの普天間飛行場につきましては、航空法上の航空交通管制圏等が設定されておりません。このため、お尋ねの普天間第二小学校におけるたこ揚げなどにつきましては、現在のところ、今般の政令、省令改正による規制の対象にはなっておりません。

 ありがとうございます。

照屋委員 しつこいようですが、国交省に教えてもらいたいんですけれども、沖縄は、米軍基地がもう超過密、基地と住民地域というのはそんなに明確に分かれるわけじゃない、フェンス一つ隔てて。そうすると、基地周辺における商業用アドバルーン、熱気球などは禁止されるんでしょうか。

高野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明申し上げましたとおり、航空法第九十九条の二は、空港周辺の航空交通管制圏などの航空交通がふくそうする空域において一定の行為を規制するものでございまして、例えば、全ての基地においてそういった行為が規制されるということではございませんで、航空交通管制圏が設定されている場合においてそういった行為が規制されるということになると思います。

 ありがとうございます。

照屋委員 国交省、極東最大の空軍基地嘉手納、それから普天間基地、具体的に皆さん、思い起こしてくださいよ。では、そういうところで子供たちがたこ揚げをする、あるいは商売上アドバルーンを上げる、熱気球で観光客がそれを楽しむ、そういうためだったら航空管制官との調整が必要なんですか。

高野政府参考人 お答え申し上げます。

 再度申し上げますが、航空法第九十九条の二の第一項というのは、もちろん、今回、米軍の基地で航空交通管制圏が設定されている部分に適用になるわけでございますが、従来から民間空港の周辺でも適用されてきておりまして、例えば、民間空港の周辺でそういった気球を上げる行為であるとかアドバルーンを上げる行為というのはもちろん禁止をされております。

 その上で、どうしても必要な場合は、安全性に影響を及ぼさないということを調整した上で許可を受けていただくということになってきておりまして、米軍基地でも同じような取り扱いになると思います。

 ありがとうございます。

照屋委員 国交省、くどいようですが、私は、やはり国内法である航空法を米軍に守ってもらうことが国民の安心、安全の観点からも大事なことであって、今国交省がやろうとしていることはそれとは真逆のことであるということを申し添えておきます。

 外務大臣、最後になりますけれども、十一月十五日の当委員会で稲田防衛大臣にもただしましたが、日米両政府が日米合同委員会で合意した嘉手納基地及び普天間飛行場におけるいわゆる騒音防止協定が全く遵守されておらず、有名無実化しております。その最大の原因は両基地に飛来する外来機にあり、百デシベル以上の爆音をまき散らし、基地周辺住民に睡眠障害などの健康被害を強いております。

 私は、騒音防止協定上司令官に求められている責任を果たすよう、ぜひ大臣が外務省沖縄大使を通じて両基地の司令官に強く申し入れるべきだと考えますが、見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 御指摘のように、日米両政府は、日米合同委員会において、嘉手納飛行場そして普天間飛行場における航空機の騒音を規制する航空機騒音規制措置について合意をしています。

 米軍機による騒音問題、委員御指摘のように百デシベルを超えるという騒音、これはもう大変な騒音であり、周辺住民の方々にとって深刻な問題である、こういった認識は強く持たなければならないと思います。

 従来も、日米合同委員会合意による騒音規制措置を遵守するよう求めてきていますが、ぜひ今後とも、御指摘のように沖縄担当大使による申し入れも含め、さまざまなルートから、米側に対して、日米合同委員会の合意を遵守することなど、しっかりと働きかけを行っていきたいと考えます。

照屋委員 終わります。

山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十七分散会


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