第5号 令和7年4月4日(金曜日)
令和七年四月四日(金曜日)午前九時五分開議
出席委員
委員長 遠藤 敬君
理事 岩田 和親君 理事 尾崎 正直君
理事 木原 稔君 理事 篠原 豪君
理事 升田世喜男君 理事 屋良 朝博君
理事 美延 映夫君 理事 橋本 幹彦君
江渡 聡徳君 金子 容三君
黄川田仁志君 草間 剛君
小林 茂樹君 鈴木 英敬君
鈴木 隼人君 高木 啓君
武村 展英君 中曽根康隆君
平沼正二郎君 広瀬 建君
福田かおる君 向山 淳君
山本 大地君 吉田 真次君
新垣 邦男君 五十嵐えり君
伊藤 俊輔君 重徳 和彦君
下野 幸助君 松尾 明弘君
池畑浩太朗君 平岩 征樹君
中川 康洋君 西園 勝秀君
山崎 正恭君 赤嶺 政賢君
…………………………………
防衛大臣 中谷 元君
国土交通副大臣 古川 康君
防衛副大臣 本田 太郎君
外務大臣政務官 生稲 晃子君
防衛大臣政務官 金子 容三君
防衛大臣政務官 小林 一大君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 門前 浩司君
政府参考人
(内閣府広域避難・計画推進室次長) 松林 高樹君
政府参考人
(総務省総合通信基盤局電波部長) 荻原 直彦君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 松尾 裕敬君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 濱本 幸也君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 柏原 裕君
政府参考人
(国土交通省道路局次長) 佐々木俊一君
政府参考人
(国土交通省航空局交通管制部長) 石崎 憲寛君
政府参考人
(防衛省大臣官房長) 萬浪 学君
政府参考人
(防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官) 家護谷昌徳君
政府参考人
(防衛省防衛政策局長) 大和 太郎君
政府参考人
(防衛省人事教育局長) 青木 健至君
政府参考人
(防衛装備庁長官官房審議官) 西脇 修君
政府参考人
(防衛装備庁装備政策部長) 坂本 大祐君
安全保障委員会専門員 飯野 伸夫君
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委員の異動
四月三日
辞任 補欠選任
草間 剛君 島田 智明君
五十嵐えり君 岡田 華子君
同日
辞任 補欠選任
島田 智明君 根本 拓君
岡田 華子君 五十嵐えり君
同日
辞任 補欠選任
根本 拓君 草間 剛君
同月四日
辞任 補欠選任
黄川田仁志君 小林 茂樹君
鈴木 英敬君 広瀬 建君
関 芳弘君 高木 啓君
向山 淳君 山本 大地君
西園 勝秀君 中川 康洋君
同日
辞任 補欠選任
小林 茂樹君 武村 展英君
高木 啓君 関 芳弘君
広瀬 建君 吉田 真次君
山本 大地君 向山 淳君
中川 康洋君 西園 勝秀君
同日
辞任 補欠選任
武村 展英君 黄川田仁志君
吉田 真次君 平沼正二郎君
同日
辞任 補欠選任
平沼正二郎君 鈴木 英敬君
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四月四日
防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)
同月二日
平和、命、暮らしを壊す大軍拡、大増税に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七九六号)
同(志位和夫君紹介)(第七九七号)
同(塩川鉄也君紹介)(第七九八号)
同(辰巳孝太郎君紹介)(第七九九号)
同(田村貴昭君紹介)(第八〇〇号)
同(田村智子君紹介)(第八〇一号)
同(堀川あきこ君紹介)(第八〇二号)
同(本村伸子君紹介)(第八〇三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案(内閣提出第五六号)
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○遠藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付のとおり、内閣官房内閣審議官門前浩司君外十三名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○遠藤委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。福田かおる君。
○福田(か)委員 自由民主党の福田かおるです。
昨今、我が国の安全保障をめぐる状況は急激に複雑化しております。台湾をめぐる情勢は、我が国の安全保障に直接影響を与えるものとして、重大な関心を持って注視しなければならない状況にあります。また、ロシアによるウクライナ侵略では、既に百万人を超える死傷者の方々が出ているとも言われております。北朝鮮からロシアに派兵がされたり、我が国周辺で中国、ロシアによる共同訓練が実施されたりするなど、我が国の安全保障の観点からも、ロシアの情勢も注視しなければなりません。中東も深く憂慮すべき情勢となっています。
世界各地で武力行使が常態化していく中で、我が国の安全をどのように守っていくべきなのか。戦後八十年、今の平和な日本は、多くの苦難と努力、そして国際社会の繊細なバランスの上に成り立ってきたものだと承知しております。今、そのバランスが大きく崩れつつあります。平和な日本を、そして国際社会を維持していくためには、我が国もよりしたたかに立ち回っていくことが必要だと改めて感じております。
今回の法案は、こうした安全保障上の要請に沿ったものであると承知しております。一方で、規定されている特例の内容は、日本人の生命、財産にとっても重大な影響があり得るものです。条文上は明確になっていない部分も含めて、その内容を本日は確認させていただければと思っています。
まず初めに、今回の法案について、改めて目的、概要をお伺いさせてください。
○中谷国務大臣 福田委員に御指摘をいただきましたが、日本の安全のためには多くの同志国や同盟国と共に行動してまいらなければなりませんが、ここで言います円滑化協定とは、一方の国の部隊が他方の国を訪問して活動を行う際の手続及び同部隊の地位等を定めることで、共同訓練や災害救援、災害救助等の部隊間の協力活動の実施を円滑にするとともに、部隊間の相互運用性の向上を図るためのものでありまして、本法律案は、この円滑化協定の実施を担保するための規定を設けるものでございます。
具体的には、道路運送法及び道路運送車両法の適用除外、刑事手続等の特例、国の賠償責任の特例及び特殊海事損害に係る賠償請求の援助等について定めるものであります。
その上で、この法律案は、円滑化協定に関する国内担保措置の内容が定型化していることを踏まえまして、これまで相手国ごとに整備していたRAAの国内実施法を共通規定化するものであります。
共通規定化によりまして、従来のように相手国ごとに個別の法律を参照することなく、RAAの国内実施法が規定する担保措置を総覧することができるようになるというメリットがあります。
また、今後、複数の国々とRAAを締結することも予想されますので、この共通規定化は、潜在的なRAA締結国に対して、我が国と締結するRAAの締結に伴って我が国が実施する国内法の措置について一定の示唆を与えるものでありまして、今後新たに締結するRAAの交渉の円滑化の観点からも有用であると考えております。
○福田(か)委員 ありがとうございます。
今回、共通規定を作るとのこと、一方で、円滑化協定の内容は、相手国、また世界情勢によって変わる部分もあるのではないかという疑問はございます。我が国の管轄権を狭くすることなく、これからも、世界情勢、相手国の情勢なども踏まえ、協定の内容については常に日本に有利な内容を志向し、今回制定される法についても必要に応じて改正を柔軟に行っていくことも大切ではないかと思っています。
今回、共通規定が作られたとしても、共通規定が円滑化協定の交渉内容を不本意に制約してしまうといった本末転倒なことがないようにしていただくよう、お願い申し上げます。
次に、法案の対象となる締約国について確認させていただきたいと思います。
現時点で該当する国はどこになりますでしょうか。また、今後の追加見込みはいかがでしょうか。そして、石破総理が発言されているアジアにおける多国間の安全保障の枠組み、この該当国が含まれることも想定されているのか、お伺いしたいと思います。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
本法案に言う締約国は、我が国と円滑化協定を締結している国を指しますが、現時点では豪州及び英国が該当いたします。また、今国会に提出している日本・フィリピン円滑化協定が発効することとなれば、フィリピンが含まれることとなります。
石破総理が御発言されているアジアにおける多国間の安全保障の枠組みは、現時点では具体的な国を念頭に置いているものではないと認識しておりますが、今後、新たな国との間でこれまで締結された円滑化協定と同じ内容の協定が締結されることとなれば、本法案の締約国に含まれることとなると考えております。
○福田(か)委員 ありがとうございます。
アジア諸国の政治情勢は、御存じのとおり、揺れ動いております。昨年、とある現役市長が中国のスパイではという疑惑で逮捕される事件もございました。政府要人であっても、他国の強い影響下にあるという可能性にも注意が必要だと思っております。
今回、締約国というのは、この法案の条文では個別具体的な名称で書かれておらず、この法体系では政令で規定されることになると承知しております。この点を整理していきたいと思います。
国会審議なしに、時の政権の決定のみで本法の対象となる締約国が追加され、刑事裁判権の特例などを受ける国が増える、こうした可能性は厳に排除しなければならないと思います。
法第二条第一号では、条約その他の国際約束が本法対象の円滑化協定になり得ると規定されています。条約は、国会の承認が要ります。その他の国際約束、こちらも必ず国会の承認を受けることになることをこの場で確認したいと思います。
内閣の外交処理権限の範囲内で行政府のみで国際約束がなされる、国会の審議なしに、時の政権の判断で本法に基づく政令が改正される、本法対象の締約国が増える、こういった法解釈ができてしまうのではないか、この点についてお伺いいたします。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
今回提出されていますRAA実施法案は、RAAが国会承認条約であるか否かに影響を与えるものではありません。このため、これまで我が国が締結してきたRAAと同じ形でRAAを締結する限り、その締結に当たりRAAは今後も国会に提出されることになります。
すなわち、どの国とRAAを締結するかにつきましては、国会での審議をお願いすることになります。
○福田(か)委員 ありがとうございます。
第二条第一号に規定されている条約その他の国際約束については、今お答えいただきましたとおり、締結に当たって必ず国会の審議を経る、時の政権の一存で締約国、本法の対象国が増えることはない、この非常に大切な点について確認させていただきました。
次に、本法の対象とする公務について確認させていただきます。
本法に基づき、共同訓練、災害救助などが行われると承知しております。本法案では、検察官などは、公務執行中の作為、不作為から生ずる罪と認められる場合、刑事訴訟法の規定にかかわらず、直ちに被疑者となる締約国軍隊の構成員を軍隊に引き渡さなければならなくなります。こうした特例が定められております。公務執行中であるか否かが特例の対象となるか否かを左右する公務性の判断、これが大変重要になります。
これまでも、日本に駐在中の他国の軍隊構成員の飲酒運転や性暴力など、問題が現実に起こってまいりました。上司の命令で公式行事に参加し、その過程で飲酒運転をしていたら公務性はどうなるのかといった議論も過去に国会審議でなされていたように承知しております。この点をよく確認しておきたいと思います。
仮に、日本国内で締約国軍隊の構成員が公務執行中に飲酒運転や薬物使用を行い、日本人を傷つけるようなことがあった場合、裁判権の行使国は日本と締約国のいずれになるのでしょうか。本法案の刑事手続の特例などが適用され、拘束した構成員を締約国に引き渡さなければならないといったことは起こり得るのでしょうか。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
我が国が締結している豪州及び英国とのRAA上、公務執行中とは、訪問部隊の構成員又は文民構成員として、法令、規則、上官の命令又は軍の慣習によって要求され又は権限づけられる全ての任務又は役務を執行中であることを指すことを相手国との間で確認しております。特定の行為が公務執行中の行為に該当するかどうかは、こうした要件と照らし合わせつつ、個別具体的に判断することになります。
その上で、いわゆる飲酒運転に関しましては、日本が接受国となる場合、上司の命令であれ、公式行事への出席であれ、車両の運転者が飲酒をしていた場合には、飲酒運転の事実をもって、派遣国側が裁判権を有するような公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪に当たらないものとして、日本側が裁判権を行使すべき事案となることを日豪間及び日英間で確認しています。
したがって、RAAの適用を受ける豪州又は英国の訪問部隊の構成員が接受国たる我が国で飲酒運転を行った場合には、接受国たる我が国として、当該構成員を相手国当局に引き渡す義務を負うことはありません。
○福田(か)委員 ありがとうございます。
飲酒や薬物使用、性暴力をしている時点で公務執行中には当たらない、第四条第一項の規定には該当しないということだと私は考えております。相手国に毅然とした態度で臨んでいただき、しっかりと運用いただくようお願い申し上げます。
さて、締約国の公務についてはもう一点確認しておきたいことがあります。それは、締約国により諜報活動が行われる可能性についてです。
日本国内で締約国軍隊の構成員が情報収集と称して諜報活動に等しいような活動が行われる可能性、こちらも否定できません。外交官や外国政府職員などの身分で入国し、対日有害活動を行っていたという事例も過去に指摘されております。
締約国軍隊の構成員が公務執行中に諜報活動を行っていた場合、日本側は法的根拠に基づいて何らかの対応ができるのか、それとも、本法に基づき相手国に諜報活動を行った構成員を引き渡すことになるのか、解釈をお願いいたします。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
円滑化協定は、共同訓練や災害救助などの部隊間の協力活動の実施を円滑化するものでありまして、円滑化協定の締約国が我が国で諜報活動をすることは基本的に想定されないものと考えております。
また、特定の行為が犯罪に当たるか否かについては、個別の事実に即して、法と証拠に基づいて判断されるべきものと認識しております。
その上で申し上げれば、円滑化協定は、派遣国と接受国の間で裁判権を行使する権利が競合する場合の裁判権の分配について規定しています。
具体的には、派遣国の当局は、専ら派遣国の財産若しくは安全のみに対する罪など及び公務執行中の作為又は不作為から生じる罪について裁判権を行使する第一次の権利を有することとなります。一方で、それ以外の罪、公務外の事件等については、接受国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を有することとなります。
○福田(か)委員 ありがとうございます。
日本には他国の諜報活動そのものを罰する法律はないと認識しております。公務執行中については今お答えいただきましたお考えなのだと理解いたしましたが、公務執行外は、日本の国益を害するような諜報活動のおそれがあったとしても、不正競争や住居侵入など、何らかの刑罰規定に抵触するような行為がなければ検挙できないということになるのではないかと理解しております。
外国による諜報活動などの対日有害活動については本法案の運用にも関わってくる問題だと思いますが、本法案での対応は困難だと理解しております。日本にはスパイ防止法がないという指摘も度々なされておりますが、本法案以外にも安全保障に関わる重要な法令の整備にしっかりと取り組んでいくことが重要であることをこの場で改めて指摘させていただきます。
そして、本法案により、国内実施法についての日本の考え方を明確にすることは、交渉テーブルの相手側が円滑化協定の締結先として適切であるのかを測るに当たっても意義があると思っております。
一方で、交渉上、足下を見られることのないよう、また、日本人の生命、財産を守っていただくよう、運用に当たっては妥協なく厳格に対応していただくことを強くお願いし、質疑とさせていただきます。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。
次に、松尾明弘君。
○松尾委員 立憲民主党の松尾明弘です。今日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
中谷大臣、私は、今週、西麻布の中華料理屋に仲間と行ったら、中谷大臣の色紙が貼ってありまして、二月に行かれたということで、私の選挙区なので、是非またいらしてください。
今回議題となっております円滑化協定の実施に関する法律案について幾つかお伺いします。
先ほど、この法案の内容、協定の内容については御説明いただきましたけれども、今回、この法律を作りまして、円滑化協定の実施について共通化を図っていく、手続を簡便化するということですけれども、今回の法律によって、これまで個別の国に同じような法律を作っていた場合と比べて、円滑化協定を締結してから国内で適用されて効力を有するまでの手続の流れがどのように変わるのか、この違いについて教えてください。
○中谷国務大臣 私も町中華は大好きであります。
円滑化協定の国内実施法の共通規定化、これは、円滑化協定に関する国内担保措置の内容が定型化していることを踏まえまして、これまで相手国ごとに整備していた円滑化協定の国内実施法を統合するものであります。
この共通規定化によりまして、従来のように相手国ごとに個別の法律を参照することなく、円滑化協定の国内実施法が規定する担保措置を総覧することができるようになります。
また、我が国が戦後最も激しく複雑な安全保障環境に直面し、外国軍隊との連携強化の必要性が高まっている中で、今後、複数の国々と円滑化協定を締結することも予想されます。この共通規定化は、潜在的な円滑化協定締結国に対して、我が国との円滑化協定の締結に伴って我が国が実施する国内法上の措置について一定の示唆を与えるものでありまして、今後新たな協定の交渉を円滑に進めることに資するものになると考えております。
その上で、本法案についてこの国会で御承認いただきましたら、締結される円滑化協定がこの法案の範囲内の内容となる場合には、その実施のために法改正が必要になることはありません。
他方で、仮に本法律の範囲内にとどまらない例外が生じた場合には、改めて法整備が必要になるということでございます。
○松尾委員 ありがとうございます。
緊張感の高まりに伴って、共通化することの意義は私も否定するものではありません。
一方で、これまでは、円滑化協定を結ばれるたびに、実施法案の審議という形で、国会の安全保障委員会の場で、事実上、RAAの内容、締結国がふさわしいかどうかということも含めて審議されていたわけですけれども、共通化されることによって、安全保障委員会で審議するというプロセスが一個抜けてしまう、なくなってしまうわけです。ですから、RAAの締結に対する国会における民主的コントロールの機会が減少するのではないかと懸念しているんですけれども、その点について大臣のお考えを教えてください。
○中谷国務大臣 この法案がこの国会で御承認いただきましたら、今後締結される円滑化協定がこの法案の範囲内の内容となる場合には、この実施のために法改正の必要はありません。
一方で、国の防衛政策について、安全保障委員会の委員の皆様方を含む国会議員の皆様の御理解を得ることは重要であると考えておりまして、防衛省といたしましても、新しく円滑化協定が締結される場合には説明に努めてまいりたいと考えております。
○松尾委員 説明いただくのは非常に重要だと思うんですけれども、具体的にどうするんでしょうかというところも確認をさせていただきたいんです。
例えば、安全保障委員会において、円滑化協定を締結するに際して報告してほしいというような要望があった場合には御対応いただけるんでしょうか。
○中谷国務大臣 国会の求めに対しましては、適切に対応してまいります。
○松尾委員 報告いただいたら、一方的に聞いていても、民主的コントロールという意味では意味が薄いわけで、それに対していろいろな意見を安全保障委員会の委員から述べることも当然あり得ると思うんですけれども、そういったものに対しては政府としてはどのように受け止め、取り扱っていくのかというのはどうお考えか、伺えるでしょうか。
○中谷国務大臣 国会は最大のシビリアンコントロールでございますので、国会からの御指摘や御意見につきましては最大限参考にするように努めてまいります。
○松尾委員 ありがとうございます。
国会でいろいろな意見を述べたときには最大限受け止めていただきたいと思いますし、最後に、一言でいいので、安全保障環境が非常に厳しい状況であるとしても、政府が単独で進めていくのではなくて、国会のなるべく多くの場で、あらゆる場面で国会の民主的なコントロールを及ぼすことが重要であるという点についての大臣の所感を一言お願いします。
○中谷国務大臣 いかなる安全保障政策におきましても、国民の理解と納得がなければ実行できませんので、その代表でございます国会からの御指摘や御意見に対しては最大限誠実に対応してまいりたいと思います。
○松尾委員 テーマが変わりまして、実施法の中で様々な規定がある中で、刑事手続について特例を定めるということが規定されております。
RAAに基づいて日本にやってきた締結国の軍隊の方が犯罪を犯した場合には、日本人が日本国内で犯罪を犯した場合と違う手続になるんですけれども、これまで、オーストラリア、イギリスとRAAを締結している中で、日本国内でそれぞれの軍人が刑事事件を起こして円滑化実施法案の手続にのっとって対応されたケースはあるんでしょうか。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
これまでに、訪日したオーストラリアや英国の軍隊の構成員やオーストラリア又は英国を訪問した自衛隊員が事件、事故を起こし、円滑化協定の刑事手続に係る規定が適用された事例はございません。
○松尾委員 それでは、逆に、日本の自衛隊員が相手国の領域内において、同じようにこの協定にのっとって刑事事件の手続が進んだ事例はあるんでしょうか。
○大和政府参考人 オーストラリア又は英国を訪問した自衛隊員が事件、事故を起こして円滑化協定の刑事手続に係る規定が適用された事例もございません。
○松尾委員 お互いに今のところはないということですね。
○大和政府参考人 御指摘のとおりであります。
○松尾委員 ありがとうございます。
その刑事手続の中で一点特筆すべきは、死刑制度、死刑に該当し得るような犯罪を犯した場合にどういう処理をするのかというところが十分にすり合っていないと私は感じていて、それもしようがないところで、日本はまだ死刑制度が維持されていますけれども、オーストラリアもイギリスも死刑制度が廃止されていますから、それぞれの国の法体系の根幹に照らすとどうしても一致しないところが残ってしまっていると感じています。
死刑に該当し得るような犯罪を犯したときの刑事手続の進め方、処理のやり方についてどのような規定になっているのか、御説明をお願いします。
○松尾政府参考人 お答え申し上げます。
我が国との間でRAAを締結済みの豪州及び英国並びに署名済みのフィリピンは、いずれも死刑廃止国であり、いずれのRAAにおいても死刑は同様の取扱いとなっております。
これらのRAAについて申し上げれば、日本が死刑存置国であり、相手国が死刑廃止国であるというそれぞれの国の法制度の違いを前提に、被疑者の逮捕、引渡しや捜査に関する相互援助を行うことが規定されており、それぞれの国における法制度の根幹の変更を求めるものではございません。
具体的には、相手方の締約国軍の構成員などである被疑者に死刑が科される十分な可能性がある場合には、相手国側が被疑者の逮捕、引渡しや捜査の実施などについての相互義務を免除されることとしつつ、日本国内においては、日本の警察が被疑者の逮捕などの警察権を行使するに当たり、相手国側はそれを妨害してはならない旨が附属書などで規定されております。
○松尾委員 この死刑制度のところは非常に大きな問題で、いざ実際に事件が起こったときに大きな問題になり得ることは容易に想定できますので、これからお互いの大きな法制度の在り方を含めて議論を深めていく必要があるということを指摘して、次の質問に移らせていただきます。
先ほど、現在RAAを締結している国、そしてフィリピンが協定まで結んだという話がありましたけれども、それ以外に、今後、このRAAの締結について具体的に交渉が進んでいる、若しくは締結予定である、こういった国はあるんでしょうか。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
RAAについては、豪州及び英国との間で既に締結しています。昨年七月にフィリピンとの間でも協定が署名に至ったところです。また、現在、フランスとの間で交渉を行っています。
政府としましては、引き続き、RAAを始めとする安全保障に関する協定の締結を含む様々な取組を通じて、同志国との連携を一層強化していく考えであります。
○松尾委員 今、フランスという国名が挙がりまして、RAAは、先ほどの答弁の中でも、お互いの国の法体系を大切にしてすり合わせていくんだというような話があったと思うんですけれども、イギリス、オーストラリアは御承知のとおりいわゆる英米法系と言われている国で、フランスは大陸法系と言われている法体系の国で、法体系が根本的に大きく違うんです。
そういった違う法体系の国と法律の理念をすり合わせていくようなこの協定、法律において、今後、一本の法律で共通化していくと、どこかでそごが生じてくるのではないかと考えられるんですけれども、その辺りはどのように整理されているでしょうか。
○松尾政府参考人 お答え申し上げます。
RAAは、一方の国の部隊が他方の国を訪問して活動を行う際の手続を定めることや、同部隊の法的地位を明確にすることなどを通じ、共同訓練や災害援助などの部隊間の協力活動の実施を円滑にするとともに、部隊間の相互運用性の向上を図るものであり、その内容は定型化しております。
既にRAAを締結している英米系の豪州や英国と法体系が異なるフィリピンとの間でも基本的に同内容のRAAの署名に至っていることを踏まえれば、今後のRAA交渉について予断することは差し控えるものの、相手国の法体系の違いのみをもって、今後我が国が締結するRAAの内容が異なるものとなることや、その交渉が困難となるといったことは一概には想定しておりません。
○松尾委員 ありがとうございます。
話は変わりまして、RAAは一連の締結が進んでいるわけです。オーストラリア、イギリス、フィリピン、今度はフランスとも交渉しているということで、一連のRAAの締結が進んでいて、先ほども同志国との間で連携を強化していくんだという話もあったと思うんですけれども、対象国として特定の国を意識して進めているものなのか、そうではないのかというのはいかがでしょうか。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
日豪、日英RAA、円滑化協定においては、これまで、各種共同訓練や艦艇の寄港等の際に適用がなされてきております。
これらの活動は、同志国との連携強化により地域の平和と安定の確保に資することを目指すものでありまして、特定の国や地域を念頭に置いたものではございません。
○松尾委員 特定の国や地域を念頭に置いたものではないとはいえ、例えば、昨年フィリピンとRAAを締結したときには、併せて2プラス2の会合も行われていて、その会合に関するリリースにおいては中国を名指しで非難しているので、境界は結構曖昧かなと思っているんです。
実際に、オーストラリアやイギリスとRAAを締結したときには中国側から反発するような声明も出されているんですけれども、こういった周辺国の反発、そして、かえって緊張感を高めているのではないかという点についてはどのように捉えていらっしゃるのか、教えてください。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
繰り返しになって恐縮でございますが、このRAAによって円滑化しようとする様々な協力活動は、地域の平和と安定の確保に資することを目指すものでありまして、特定の国あるいは地域を念頭に置いたものではないということでございます。
○松尾委員 外務省、防衛省の方で、中国が具体的にどのような対応をしているのか、どのような反発、声明を出しているのかというのは把握されているんでしょうか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
日本と他国との円滑化協定の締結に対して中国側が示している反応について網羅的にお答えすることは困難でございますけれども、過去の中国外交部の定例記者会見において、外交部の報道官は、日本と他国との円滑化協定に関する質問に対して、国と国との交流や協力は第三国を対象としたり第三国の利益を損なったりするべきではない、このようなことを述べていると承知しております。
○松尾委員 そのような反発が見受けられるわけで、私は何が言いたいかというと、中国に気を遣ってくださいということを言いたいわけではもちろん全然なくて、外交と安全保障、防衛は車の両輪だと言われています。こうやってRAAを締結していって同志国との連携を強めていくことは、私も今の東アジアの状況を踏まえると必要だと思う一方で、それだけを行け行けどんどんでやっていると、どこかで偶発的なことが起こらないとも限らないですし、相手方に対して言い訳を与えることにもなりかねないと考えて、それを懸念しているんです。ロシアも、ウクライナ側にロシア人が迫害されている、結局はそういった口実で始めているわけですから。
そう考えると、RAAの締結を進めるのと併せて、緊張緩和をしていくような外交上の努力も併せて行う必要があると考えているんですけれども、外交上の具体的な施策はどういったものをやっているのか、これからどのように進めていくのかという点について教えてください。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
中国との間には、様々な可能性とともに、安全保障に関するものを含め、数多くの課題や懸案がございますけれども、日中両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有しているところでございます。
日本としては、価値を共有する同盟国、同志国との連携を前提としつつ、中国との間では、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくというのが一貫した方針でございます。
中国との間では、この大きな方向性の下、あらゆるレベルで幅広い分野において意思疎通をより一層強化し、課題と懸案を減らし、協力と連携を増やしていくために共に努力していく考えでございます。
こうした考えに基づきまして、先般の日中外相会談においても、岩屋大臣と王毅部長との間で、安全保障分野での意思疎通を深めていくために、日中安保対話を可能な限り早期に開催することで一致したところでございます。
○松尾委員 実務的なところは分かりました。
今私が申し上げた防衛、安全保障政策と外交は両輪で、重要だという点について、政府の考え方、外務省の考え方を、政務官がいらしているので、一言お願いします。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
繰り返しになりますけれども、中国との間には、様々な可能性とともに、安全保障に関するものを含め、数多くの課題や懸案がございますが、両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有するものであります。
価値を共有する同盟国、同志国との連携を前提としつつ、中国との間では、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくというのが日本政府の一貫した方針であります。
中国との間では、この大きな方向性の下、あらゆるレベルで幅広い分野において意思疎通をより一層強化して、課題と懸案を減らし、協力と連携を増やしていくために共に努力していく考えであります。
こうした考えに基づきまして、これも繰り返しになりますけれども、先般の日中外相会談におきまして、岩屋大臣と王毅部長との間で、安全保障分野での意思疎通を深めていくために、日中安保対話を可能な限り早期に開催することで一致しています。
○松尾委員 是非対話を重ねていっていただきたいと思います。
あと、RAAを締結することによって、いろいろな議論があるので深くは立ち入りませんけれども、集団的自衛権が適用される三要件がある中で、いろいろな考慮要素を考慮するときに、RAAを締結している相手国だということは三要件に該当するかどうかの判断について影響があるのかを教えてほしいんです。
いろいろな議論がある中で、この対象範囲が安易に拡大していくということは控えるべきだと思っていますし、対象の要件は明確にしていくべきだと思っていますので、RAAを締結しているということと集団的自衛権の適用の範囲の線引きについて教えてください。
○中谷国務大臣 基本的には、平和安全法制の中で規定されている内容でございますが、武力行使の三要件の第一要件に言う我が国と密接な関係にある他国といいますと、一般に、外部からの武力攻撃に対して共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指すものと考えております。
具体的にどのような国がこれに当たるのかにつきましては、あらかじめ特定されているものではなくて、武力攻撃が発生した段階において、個別具体的な状況に即して判断されるものであるということで御理解いただきたいと思います。
○松尾委員 先ほども申し上げたとおり、安易に拡大することであったり、曖昧なままで物事が進んでいくのはよろしくないので、その辺を明確にするのは都度都度行っていければと思っています。
話は変わりまして、在日米軍の総司令部の移転についてお話を伺わせてください。
先週、自衛隊の方も統合作戦司令部が創設されまして、在日米軍の方も、それとのカウンターパートという形で組織再編を進めるという話もあります。昨年の安全保障委員会で同じことを私は大臣にお伺いしたんですけれども、まだ具体的なところは決まっていないというような答弁をいただきました。
その後、三か月半ぐらい経過しているんですけれども、今どのような状況にあるのか、概要を教えてください。
○中谷国務大臣 先日の日曜日でありますが、三月三十日に日米防衛相会談がございました。ヘグセス長官と話をいたしまして、ヘグセス長官から発表があったとおり、自衛隊の統合作戦司令部の創設とタイミングを合わせる形で在日米軍は統合軍司令部へのアップグレードを開始するということでございます。
具体的には、自衛隊と米軍の運用面での協力をより一層強化するために、在日米軍に新たに、自衛隊の統合作戦司令部と米軍の連携を専門に行う部署が設置されました。新設された当該部署の人員及び市ケ谷を直接訪問して防衛省・自衛隊と調整することが多い在日米軍の要員の一部は、赤坂プレスセンターのサテライトオフィスを拠点として、日常的に防衛省・自衛隊等のカウンターパートと連絡調整を行う予定でございます。
その上で、今般開始された在日米軍の統合軍司令部へのアップグレードにつきましては、今後とも米国内で検討を経た上で段階的に進められるものでありまして、日本としましても、引き続き日米の作業部会を通じて議論してまいります。
また、防衛省としましては、今回のアップグレードの開始を受けて、東京都、赤坂プレスセンターが所在する港区など、関係自治体に対して説明を行ったところであります。
防衛省としましては、引き続き、周辺住民、地域に与える影響が最小限になるよう、米側に働きかけを行っていくとともに、関係自治体に対しまして丁寧に説明するなど、適切に対応してまいりたいと考えております。
○松尾委員 今の状況は分かりました。これからもアップグレードを段階的に進めていくんだと理解しております。ただ、それも何月何日に何をやるというところまでは明確なマイルストーンはないのかなと思っております。
今大臣が言及されました赤坂プレスセンターですけれども、港区の六本木のど真ん中にあるところで、あそこはヘリポートも併設されているんです。今、あそこにいろいろなヘリコプターが飛んできている状況があって、周辺の住民からは、非常に危険ではないかという声も上がっております。
私が配付した資料を御覧いただきたいんですけれども、一枚目が、羽田空港への着陸便が南風のときに着陸してくるルートが図示されています。北の方から、板橋区とか練馬区から渋谷区、港区、目黒区、品川区を通って着陸していくんですけれども、こういうふうに都心の上空を通って着陸していくんです。
二枚目が、フライトレーダーで表されている、赤坂プレスセンターと横田の米軍基地、厚木の米軍基地を行ったり来たりするヘリコプターのルート、これは一部ですけれども、ある日のルートはこういったルートを通って赤坂と基地を行き来している。
このヘリコプターの行き来は、青山宿舎に住まわれている方がいると分かると思うんですけれども、ばんばん飛んでくるわけです。一日何便も来ることも珍しくないんです。これが飛んできていて、一枚目と二枚目を重ね合わせると、ちょっと薄くて見づらいんですけれども、こういった図になりまして、羽田空港への着陸便のルートを赤坂プレスセンターから飛び立っている米軍のヘリが何度も横断するような形でルートが交差しているわけです。
これが非常に危険だと考えておりまして、実際に今ニアミスがあったとかヒヤリ・ハットがあったという話は私は聞いていませんけれども、一方で、今年の一月には、アメリカのワシントンで旅客機と軍用ヘリが衝突して墜落する事故もあったわけです。
こういったことを踏まえると、赤坂プレスセンターの機能を強化していく、場合によってはヘリポートの発着が増えていくことは東京にとって非常にリスクが高いんじゃないかと考えているんです。
この観点から、赤坂プレスセンターへの移設ではなくて、少なくとも羽田空港への着陸便よりも西側、ルートが交差しない辺りに設置するべきだと思いますし、どうしてもそれがかなわない、市ケ谷との距離があるのであれば、羽田空港への着陸便のルートを、一定時間で通っているわけですから、元の海上ルートに戻すとか、そういったことも検討するべきだと思いますけれども、大臣、その辺はいかがでしょうか。
○中谷国務大臣 もちろん、日米間の運用等につきましては安全が第一でありますので、運用に関しましては、安全について確認しながら調整してまいりたいと思います。
そして、防衛省と在日米軍司令部は、これまでも緊密に連携してまいりましたけれども、日米連携を行う在日米軍の要員が都心で勤務することによりまして、自衛隊と米軍がこれまで以上に緊密に対面で連絡調整を行うことが可能になりまして、日米間の相互運用性、即応性の強化の観点から、迅速に、円滑に連携できるという点におきまして今回の案が出てきているわけでございます。
今日、安全ということで御指摘いただきましたので、そういう観点で今後検討してまいりたいと思います。
○松尾委員 都心のど真ん中で万が一事故が起こったときには取り返しのつかないことになりますので、是非安全を最優先に考えていただきたいと思っています。
機能強化を図っていく、連携強化を図っていくことは、私も今日の質疑でも何度も言いましたけれども、今の東アジアの情勢を踏まえると当然やらなければいけないことだと思っています。
一方で、何度も言うように、それだけやればいいのではなくて、外交的な努力も当然必要だと思いますし、国会における民主的なコントロールも当然必要ですし、周辺住民に対し説明責任を果たすことも非常に重要だと思っておりますので、それらの点にも是非留意していただきながら進めていただきたいと要望を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。
次に、下野幸助君。
○下野委員 おはようございます。立憲民主党の下野幸助です。
質問の機会を与えていただきました関係者の皆さん、そして地元の皆様に感謝を申し上げたいと思います。
私は、生まれも育ちも鈴鹿でございまして、三重県二区でございます。今週はF1ウィークということですけれども、F1は見られたことはありますか、大臣。ありがとうございます。二十か国以上で開催ということで、第一戦がオーストラリア、第二戦が中国、そして今日、第三戦が鈴鹿でございます。是非とも話題にしていただければと思いますので、生稲政務官もどうぞよろしくお願いしたいと思います。
それでは、質問に入らせていただきたいと思います。
まず一点目、RAA、円滑化協定の締結国の拡大についてお尋ねいたします。
政府は、同盟国、同志国間のネットワークを重層的に構築するとともに、それを拡大し、抑止力を強化していくということでRAAの締結は挙げられております。
そこで、RAAの締結が抑止力の強化にどのように貢献するのか、御答弁願います。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
一般に、RAAは、一方の国の部隊が他方の国を訪問して活動を行う際の手続を定めることや、同部隊の法的地位を明確にすること等を通じて、共同訓練や災害救助等の部隊間の協力活動の実施を円滑にするとともに、部隊間の相互運用性の向上を図るものであります。
RAAの実施を通じて、我が国と相手国との間の安全保障・防衛協力が更に促進されて、インド太平洋地域の平和と安定が強固に支えられることが期待されます。
政府としましては、引き続き、RAAを始めとする安全保障に関する協定の締結を含む様々な取組を通じて、同志国との連携を一層強化していく考えであります。
○下野委員 ありがとうございます。
RAAを締結しなくても通常の手続で対応可能なことを、同盟国、同志国間のネットワークの拡大と抑止力の強化のために行っていると確認できましたので、次の質問に入らせていただきたいと思います。
続いて、オーストラリア、イギリスに続き、フィリピンと三番目にRAAを締結する理由についてお尋ねしたいと思います。
ACSA、物品役務相互提供協定は七か国と締結していると聞いておりますし、また、情報保護協定はNATOを除いても十か国と締結しております。ですが、この二つの協定はまだフィリピンとは結んでいないという状況でございます。
他方で、RAA、円滑化協定は、オーストラリア、イギリスに続いてフィリピンが三か国目の締結国となります。なぜこのような早い段階でフィリピンとRAAを結ぶことになったのでしょうか、御答弁願います。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
フィリピンは、シーレーン上の戦略的要衝に位置し、我が国と基本的な価値や原則を共有する戦略的パートナーであり、近年、我が国との安全保障・防衛協力を強化してきています。
フィリピンとの間では、これまでも、能力構築支援、防衛装備・技術協力、共同訓練等を進めるとともに、OSAによる沿岸監視レーダーシステム供与の決定など、安全保障・防衛協力を進めてきております。
こうした中で、フィリピンとのRAAについて早期妥結に向けた交渉を重ねた結果、二〇二四年七月八日に署名に至ったものであります。
この協定の実施により、我が国とフィリピンとの間の安全保障・防衛協力が更に促進され、インド太平洋地域の平和と安定が強固に支えられることが期待されます。
以上です。
○下野委員 今お話がありました二〇二二年四月に2プラス2で始まって、今ちょうど三年というところなんですが、合意から協定の締結まで七年間かかった事例もあるんですが、二二年四月から三年間で急ピッチに進んできたということに関しまして、何か特別な事情はあるんでしょうか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
日本とフィリピンの間で早期妥結に向けて交渉を重ねた結果、二〇二四年七月八日に署名に至ったということでございます。
これは交渉事でございますから、相手国によって、交渉がまとまり次第、署名をするということになります。
○下野委員 交渉事はよろしいんですけれども、その三年間で急ピッチになった重要性の中身を教えていただけないでしょうか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになりますけれども、フィリピンは、シーレーン上の戦略的要衝に位置し、我が国と基本的な価値や原則を共有する戦略的なパートナーである、また、近年、我が国との安全保障・防衛協力を強化してきているということでございます。
そうした中で、双方が早期妥結に向けて努力した結果、交渉を重ねた結果、昨年七月八日に署名に至ったということでございます。
○下野委員 そうすると、シーレーン上の戦略的という話でありますと、フィリピン以外の国も入ってくると思うんですが、周辺国に関しましても、今後、戦略的パートナーとして積極的に日本としても協定を考えていくということでしょうか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
RAAにつきましては、相手国との二国間関係や、自衛隊と相手国との協力の実績、こういうことを総合的に勘案して交渉開始の要否について検討してきているということでございます。
○下野委員 それでは話を変えますが、二〇二二年四月九日のフィリピンとの2プラス2の成果文書では、フィリピンとRAAのみならずACSAも締結する話になっておりましたが、RAAだけになった経緯についてお伺いいたします。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
RAAにつきましては、繰り返しになりますけれども、日本とフィリピンの二国間関係、それから自衛隊との協力実績などを勘案して、交渉を開始して署名に至ったということでございます。
ACSAの交渉につきましては、現時点でフィリピンとの間で交渉に係る何らかの決定に至っているわけではございませんけれども、これまでのフィリピン側とのやり取りを踏まえて、ACSAの締結の可能性も含め、どのような枠組みを整備していくことが適切かを検討しているところでございます。
○下野委員 二〇二二年四月の時点では両方という話になっていたんですが、もう一度お尋ねしますが、先行した理由についてお尋ねいたしたいと思います。
○生稲大臣政務官 先行したことについてですけれども、RAAやACSAを含む安全保障に関する協定に関しまして、特段、締結に順番があるわけではございません。
繰り返しになってしまいますけれども、RAAにつきましては、相手国との二国間関係や自衛隊との協力実績などを総合的に勘案して交渉開始の要否を検討してきているところであります。
現時点でフィリピンとのACSAの交渉に係る何らかの決定に至っているわけではありませんけれども、これまでのフィリピン側とのやり取りも踏まえて、ACSAの締結の可能性も含め、どのような枠組みが適切かを検討しているところであります。
○下野委員 端的に確認ですが、ACSAの締結も前向きに検討ということでよろしいですね。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
フィリピンとの間で、ACSAの締結の可能性も含め、どのような枠組みを整備していくことが適切かを検討しているということでございます。
○下野委員 承知いたしました。
それでは、関連いたしまして、今後は情報保護協定も結んでいくのか、政府の方針を確認したいと思います。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
日本とフィリピンの間の軍事情報保護の在り方については防衛当局間で議論しているところでございまして、これも踏まえつつ、政府として引き続き適切に対応していきたいと考えております。
○下野委員 ありがとうございます。
我が党としましても、政府の方針について、応援できるところは応援していきたいと思いますし、是正するところは指摘させていただきたいと思います。今後のRAAの意義、そして、先ほどACSAも検討を進めていくということでございましたので、その展開について注視させていただきたいと思います。ありがとうございました。
三点目の質問に移らせていただきます。
RAAの実施に関し、共通規定化する必要性についてお尋ねいたします。
今国会には、RAAとACSA、物品役務相互提供協定について、それぞれ国内実施法を共通規定化する法案が提出されております。ACSAについては、今後、本委員会で審議されると伺っておりますが、今国会に提出されている協定が八か国目であるのに対し、RAAについてはまだ三か国目であります。
RAAにつきまして、現時点で国内実施法を共通規定化する必要があるのか、お尋ねいたします。
○中谷国務大臣 この法案では、円滑化協定に関する国内担保措置の内容が定型化していることを踏まえて、これまで相手国ごとに整備していた円滑化協定の国内実施法を共通規定化することといたしております。
この共通規定化によりまして、従来のように相手国ごとに個別の法律を参照するということではなくて、円滑化協定の国内実施法が規定する担保措置を総覧することができるようになるというメリットがあります。
また、我が国が戦後最も厳しい安全保障環境に直面しており、そして、外国軍隊との連携強化の必要性が高まっている中で、今後、複数の国々と円滑化協定を締結することも予期されます。
そして、共通規定化につきましては、潜在的なRAA締結国に対しまして、我が国と締結する円滑化協定の締結に伴って我が国が実施する国内法上の措置について一定の示唆を与えるものでありますので、今後新たに締結する円滑化協定の交渉の円滑化の観点からも有用であると考えております。
○下野委員 円滑化するということで共通化を進めていくというお話でございました。
ただ、私は、一つ一つ、一国一国を整理していくことも大切ではないかと思っています。
といいますのも、二〇二三年、ちょうど二年ぐらい前の安全保障委員会の日豪RAA、日英RAAに関する審議の議事録を見せていただきました。当委員会の自民党の鈴木議員が、実施のための一般法、これは要するにそのときも共通化の質問をされたんですが、一方で、当時の浜田防衛大臣は、単行法の実績を積み上げていくことが必要というふうな答弁をされております。
当時の浜田防衛大臣は、一つ一つの単行法を積み上げていくことが必要という考えだったんですが、今の中谷防衛大臣のお話は共通化していくということでしたが、この二年間での考え方の変更、違いについて大臣はどう思われますか。
○中谷国務大臣 これまで日豪、日英のRAAを結びましたが、国内実施法には、道路運送法及び道路運送車両法の適用除外、刑事手続等の特例、国の賠償責任の特例及び特殊海事損害に係る賠償請求の援助が含まれておりまして、これらの事項は二〇二四年七月に署名した日比RAAの実施のためにも同様に必要となる国内措置でございます。
したがいまして、これらの措置が定められていなければ、二国間の防衛協力を円滑にすることを目的とするRAAを締結することは困難であることから、これらは締結相手国を問わず、RAAの担保措置に含まれるということでございます。
これまでの二つの事例等におきましても内容的には同一のものが入っておりますし、今後のRAAにおきましても同一の内容でやっていくということで、積み上げながらRAAの交渉、締結を行っていくことになりますので、将来締結されるRAAにつきましても、上述の担保措置を必要としないものになることや、上述の担保措置の内容が変わることは基本的に想定されていないことから、定型化したという判断に至りました。
○下野委員 これからの話は中谷防衛大臣が今説明されたとおりですが、これまでの二年間の経緯の中で、先ほどの当時の浜田防衛大臣の単行法で積み上げていくという考えから変わった、そこの部分についての中谷大臣の御意見、所見をお伺いしたいと思います。
○大和政府参考人 今大臣からお話をさせていただいたとおり、日豪円滑化協定、日英円滑化協定の国内実施法にこの三つの要素が含まれ、また、昨年七月に署名された日比円滑化協定の実施のためにも同様に必要となる国内担保措置であるということになりました。
したがって、将来的に締結されるいずれの円滑化協定についても、これらの担保措置を必要としないものになること、あるいは、これらの担保措置の内容が変わることは基本的に想定されない、これは定型化したという判断に至りました。
一方で、先ほど来御説明しているとおり、仮に、今後結ばれるRAAの中で、今回の担保措置でカバーされないようなものが出てきた場合には、当然、国内法の担保措置として、新たな法律的措置、立法府による審査が必要になるということであります。
○下野委員 ということで、しっかりと国会での説明責任も必要になってくると思いますので、理解はいたしましたが、よろしくお願いしたいと思います。
それで、前に進めさせていただいて、今回の立法措置によりRAAの規定を共通規定化した場合、今後、諸外国と協定を締結した後の国会との関係を、先ほども説明というお話がありましたけれども、改めて確認ですが、先ほど前段で松尾委員からも質問がありましたが、お尋ねしたいと思います。
○大和政府参考人 これも先ほど大臣から申し上げたとおり、この法案を御承認いただければ、今後これらの国内担保措置を内容とするRAAが結ばれた場合には、それ以上の国内法上の担保措置の法律措置は要らなくなります。
一方で、新しくRAAを結ぶに当たりましては、安全保障委員会の皆様を含む国会議員の皆様にきちっと理解を得なければいけない、得る努力をするのは当然でありまして、審議の求めに対しては誠実に対応していきたいと考えているところであります。
○下野委員 ありがとうございます。
安全保障委員会の方でもというお話もいただきました。この法律が成立することによっても、しっかりと安全保障委員会の中でも審議ができる、協議ができるという形を要望させていただきまして、この質問を終わらせていただきたいと思います。
四点目の話に移らせていただきます。
道路運送車両法の適用除外についてということでございます。
本法律案第三条では、締約国の軍隊の車両は道路運送法、道路運送車両法の適用除外となっており、我が国が定める自動車の保安基準への適合や車両検査の義務などが免除されています。我が国の保安基準を満たしていない車両が公道を走行することは、道路交通の安全性を確保する上で問題ではないかと思っております。
例えば、陸上自衛隊が運用する一〇式戦車、九〇式戦車、七四式戦車の総重量は、それぞれ約四十四トン、約五十トン、約三十八トンであるのに対し、イギリス陸軍が運用する主力戦車チャレンジャー2の重量は約六十二・五トン、戦闘準備時の重量は約七十五トンということで、十トン以上重たくなっているということでございます。
そういったことで、特に地方の道路は耐え切れない状況だと思いますが、防衛省・自衛隊として道路事情を把握しているのか、お尋ねしたいと思います。
○中谷国務大臣 この点につきましては、災害救助、共同訓練の部隊間の協力活動の実施を円滑化するといった観点から、この法案には道路運送法及び道路運送車両法の適用除外が含まれております。
しかし、現時点において、豪州軍、イギリス軍、フィリピン軍の公用車両の我が国への持込みを検討している共同訓練はございませんので、日本においてこういった大型の車両を運行することは現時点においては考えておりません。
○下野委員 一番最初の質問でRAAの定義というか中身を生稲政務官から御答弁いただきましたけれども、円滑化するに当たって締約国の車両が入ったことはないと今大臣はおっしゃっていましたし、そこら辺のシミュレーションといいますか、何かあったときに来てもいいですよというルールにはなっていますけれども、海外からの軍用車両、公用車両がどこに来るのか、そして、どのように対応できるのかという部分はしっかりと認識しておかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
○大和政府参考人 円滑化協定の下で行われる協力活動は、そもそも我が国と相手国との間でその内容についてきっちり調整した上で合意することになります。
今、高重量の車両についてのお話がありましたけれども、御案内のとおり、自衛隊も非常に大きな重量の戦車あるいは機甲車両を持っております。したがって、我が国の自衛隊としても、いろいろな道路の強度等についてはいろいろなデータを持っているということであります。
したがって、仮に、今大臣から申し上げましたとおり、今のところオーストラリアあるいはイギリスの車両が持ち込まれるような計画がないと申しましたが、そういったことが行われる場合には、今御懸念があったような道路に対する損傷といった要素も考えながら、協力活動、具体的には、訓練等の具体的な内容、その際に行われる車両の移動の経路の選択が行われていくことになろうかと思います。
○遠藤委員長 せっかくなので、国交省の佐々木道路局長が来られているので、実際の耐久性はどうなんですか。
○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
道路の構造を保全し、交通の危険を防止するため、原則として、一定の重量や寸法を超える車両が道路を通行する場合には、道路法に基づきまして道路管理者の通行許可が必要ということになっております。
ただし、公共性が高い緊急車両等につきましては、徐行等の道路構造の保全措置を講じて通行するものに限り、通行許可を不要としております。
今回、防衛協力の円滑化のため、円滑化協定締結国に既になっておるオーストラリア国軍、英国軍の車両についても同様に許可を不要としております。
ただし、しかしながら、両国との具体の円滑化協定によりまして実際に通行するに当たっては、重量を始めとする車両の諸元や通行経路を事前に照会いただき、必要に応じて通行条件を付すことにしております。これによりまして、道路構造を保全し、交通の危険の防止が図られるように措置しているところでございます。
○下野委員 委員長が質問していただきましてありがとうございました。
先ほどの説明は、いろいろな基準があるということと、海外から公用車両が来たときに迅速に対応するということで、確認ですが、いざ来るときに、今の道路交通法上というか、どこの道路が通れるというのは本当に迅速に対応できるんでしょうか。
○大和政府参考人 これは一般論になりますけれども、共同訓練などを企画するときは、かなり前広にいろいろな準備をすることになります。したがって、御懸念があったような道路に対する影響等、こういったことも十分な前広な準備の中で問題が起こらないように措置していくことになろうかと思います。
○下野委員 想定されるのは、日本にRAAの締約国の車両が入ってくるというときは、恐らく緊急事態も考えられると思うんです。そこの部分で、訓練であれば事前に分かると思うんですが、それ以外のこともあるので、道路交通法等を含めた連携はしっかりとお願いをさせていただきたいと思っております。
以上、いろいろ質問させていただきましたけれども、この後にフィリピンもあるし、フランスもこの後に考えられているということでございますので、安全保障委員会でのしっかりとした情報提供をお願い申し上げまして、質問を終結させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。
次に、五十嵐えり君。
○五十嵐(え)委員 立憲民主党の五十嵐えりです。本日もよろしくお願いいたします。
まず冒頭、先ほどからもお話が出ていましたけれども、この協定を結ぶことで、中国との関係ですね、中国を刺激することになるんじゃないかとか、いろいろな報道を見ておりますと、中国とフィリピンとの衝突に巻き込まれるんじゃないかとか、そういう書き方がかなりあって、この点、日英と日豪とはちょっと事情が違う状態なのかなというふうに思っております。
実際に、二二年にフィリピンのマルコス政権が誕生してから、親中のように当初は始まったものの、途中で対中強硬路線に変更したりとかして、実際に、南シナ海で中国の船とフィリピン軍の船がぶつかって衝突、レーザーを照射して、乗っている方が一時失明した事件など、いろいろたくさん起きていますし、そもそもこの協定が締結される一か月前、二〇二四年の六月に南シナ海でフィリピン海軍の補給船と中国船が衝突した事件で、フィリピンの兵隊さんが七人負傷されて、一人は指を切断するという重傷を負ったというような事件もございました。
そのときにマルコス大統領はかなり抵抗しておりまして、このことについて、意図的な攻撃だ、我々はもはや外交抗議以上の行動を取らなければならないとか、国民が相手方の故意の行為によって死亡した場合、今回は指が切断だったんですけれども、万が一亡くなった場合には戦争に極めて近いというふうに述べて、アメリカとともに反撃するような可能性も示唆をしたというような記事もあります。
実際に、南シナ海では中国とフィリピンとの船舶の衝突が繰り返されておりまして、フィリピンと中国が非難の応酬をし合っているというような状況でございます。
そもそもなんですけれども、前提として、政府として中国とフィリピンとの関係をどのように見ているのかについて伺います。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
日中両国間には様々な可能性とともに数多くの課題や懸案がありますけれども、両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有しています。
価値を共有する同盟国、同志国との連携を前提としつつ、中国との間では、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくというのが日本政府の一貫した方針であります。
中国との間では、この大きな方向性の下で、あらゆるレベルで幅広い分野において意思疎通をより一層強化し、課題と懸案を減らし、協力と連携を増やしていくべく共に取り組んでいく考えであります。
○五十嵐(え)委員 協力と連携はもちろん必要なんですけれども、この協定を締結するに当たって、フィリピンは余りそのように思っていないというように思うんですね。
例えば、ちょっと前なんですけれども、二〇二三年の二月十三日のロイター通信なんですけれども、フィリピンのマルコス大統領がこういうふうに言ったという報道があります。マルコス大統領は、日本と訪問軍地位協定、VFAを締結する可能性について、自国領海の安全保障やフィリピン人漁業者の保護強化につながるならば結ばない理由はないと。つまり、VFAというのは地位協定なので、今回のRAAということですよね。これを結ぶ理由について、繰り返しますけれども、自国領海の安全保障の確保や漁業者の方の保護強化ということを非常に期待しているというような報道も出ております。なので、この協定を結んだ後に、フィリピンが求めていることに対して日本政府が応えるのかという点が問題になると思うんですね。
ちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば、昨年の六月、南シナ海でフィリピン海軍の船と中国船がぶつかって、フィリピンの軍人の方が指を切断するという重傷を負った事案があるんですけれども、今後またこういうことが起きた場合に、日本政府としてこの協定を結んだから何ができるというようなことがあるんでしょうか。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
一般論でありますけれども、複数の第三国間において何らかの事象が生じた場合に自衛隊がどのような対応を取るかについては、実際に発生した事象の個別具体的な状況に即して客観的、合理的に判断することになります。
また、円滑化協定は、一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続、それからこういった部隊の地位などを定めるものでありまして、何らかの活動を行うための根拠を与えるものではありません。また、協力活動についてはお互いが合意したものを行うということであります。
したがって、円滑化協定に基づいて新しい態様の活動が実施できるというようなことはありませんが、円滑化協定を活用することによって、一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を実施するに当たって手続や調整が簡素化されるため、これまで以上に頻繁に多くの部隊要員を伴う協力活動の実施が可能になる、こういうことであります。
○五十嵐(え)委員 今おっしゃってもらったように、協定四条に協力活動ができるということが書いてあって、これの中身について、要するに適用のある協力活動は何かという点なんですけれども、この協力活動の定義については、協定にその定義がないんです。書きぶりとしては、相互に決定してということで、今も御答弁ありましたけれども、相互に合意したものが協力活動になる。その協力活動について、このRAAというのは地位と手続を定めたものなので、義務が生じたり実体的に何かができるというような協定ではないということですよね。手続法だということだと思うんです。そうすると、例えば日本とフィリピンが合意すれば結局いいのかという話になると思うんですね。
この間、日英、日豪とRAAを締結してきていますけれども、例えば令和五年四月二十七日の外交防衛委員会などでも議論されておりますけれども、この協定の協力活動の意義については、個々にあらかじめ列挙されて規定されているものではなく、個々の状況に合わせて両国で合意をする、その上、武力攻撃事態等の状況において協力活動を実施することとなる可能性は協定上排除されているものではございませんというところをちょっと確認させていただきたいんです。
だから、これは要するに、日本とフィリピンが、南シナ海で船がぶつかったときにフィリピンから助けてくださいというふうに政府に要望があったときに、政府としては行きますよということで合意をすれば、この協力活動に当たるという理解でよいのでしょうか。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
今委員の御指摘の中にあった答弁は、円滑化協定の規定上、協力活動の内容は特段列挙して規定されておらず、武力攻撃事態等の状況において協力活動を実施することとなる可能性が協定上は排除されていないということを述べたものであります。
一方、かかる状況において円滑化協定の締約国がいかなる対応を行うかについては、それぞれの政策決定によるものであります。
また、個別具体的な協力活動の内容というのは、両締約国の法令の認める範囲内で、その都度各国が判断し、相互決定することになります。その上で申しますが、この協定が適用される協力活動としては、基本的には、これまでも活動実績のある共同訓練や災害救助といったものが中心になるというふうに考えているところであります。
○五十嵐(え)委員 過去の実績としては、共同訓練とか災害救助というのはそうなんですけれども、ちょっと確認をしておきたいのが、協力活動というのは法令の、実体法上の根拠が要るということですよね。それが、例えば国際緊急援助隊の派遣に関する法律などの法律の根拠が個別具体的になければ、当然のように協力活動に当たらないということでよろしいんですよね。
○大和政府参考人 さようであります。この円滑化協定あるいはその実施法が、何か活動の根拠、例えば今おっしゃいました国際緊急援助隊法に基づく自衛隊の派遣に関する根拠を与えるものではないということです。
○五十嵐(え)委員 あくまで地位を定めて手続を円滑化するということなので実体法上は変わらないという御答弁だったと思うんですけれども、そうすると、今述べてきたように、フィリピンとしてはそれでよいというか、それで納得されているのかなというのは疑問に思うんですけれども、その点もフィリピンには説明しているということでよろしいんでしょうか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
日本とフィリピンの間でRAAの協定の交渉を進めるに当たって、当然いろいろな議論をしてきて認識をそろえた上で署名に至ったということでございます。
○五十嵐(え)委員 だから、今の御答弁は、今後南シナ海で中国とぶつかったからといって日本が助けてくれるという協定ではないということをフィリピンも当然理解しているということですよね。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
フィリピンにおかれましても、この協定に規定してありますとおり、協力活動を行うに当たって相手国の部隊をどのように扱うかを規定したものがこのRAAであるということでございまして、協力活動としては、基本的に共同訓練や災害救助といった活動が中心になるということでございます。
また、個別具体的な活動の内容は、両締約国の法令の範囲内でその都度両国間で適切に判断し、相互に決定する、このような枠組みに日本とフィリピンの間で合意をしたということでございます。
○五十嵐(え)委員 フィリピンとの関係ではそうということは分かりました。
ただ、フィリピンと中国との関係が衝突していてかつ戦争状態だというような指摘もある中で、こういう協定を結ぶことで日本と中国との関係は大丈夫なのか、先ほど松尾委員も質問されていましたけれども、日中安保対話を可能な限り早期に開催して説明をされていくということなんですけれども、日英のときも日豪のRAAのときも中国は懸念を表明していますよね。例えば、二〇二一年に中国の報道官が、日豪RAAのときに、いかなる二国間協定も第三国に対するものであるべきではないとか、二〇二三年も報道官が、関係国間の防衛協力は各国間の相互理解、信頼、協力の増進に資するものであるべきで仮想敵国をつくるべきではないというようなことを、すごく懸念として公表されているんですけれども、今言ったことも日中安保対話できちんと説明していくということでよろしいでしょうか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
先般の日中外相会談において、岩屋大臣と王毅部長との間で、安全保障分野での意思疎通を深めていくために、日中安保対話を可能な限り早期に開催するということで一致したところでございます。
具体的な対話の内容について今私の方から予断することはいたしませんけれども、日中双方の関心事項について議論するということになるかと思います。
○五十嵐(え)委員 その点が、中国とフィリピンが今具体的にかなり緊張した状態にあるというのは、日豪と日英と違うところであると思いますので、その点はしっかり中国に説明していただきたいと思います。
次の質問に移ります。
米国における自衛隊の地位について、ちょっとRAAと比較しながら質問させていただきたいと思います。
まず、RAAの目的、先ほどからもありますけれども、地位を定める、これは、相互訪問している自衛隊員の、軍隊の方と自衛隊の地位を定めるということで、自衛隊員の法的安定性というか予測可能性があるという意味でも意義があるというものでよろしいんでしょうか。
○生稲大臣政務官 お答えいたします。
この協定により、日・フィリピンの一方の国の部隊が他方の国を訪問して活動を行う際の手続が定められて、また、同部隊の法的地位が明確化されることになります。
これらを通じて、日・フィリピンの部隊間の共同訓練や災害救助等の協力活動の実施が円滑化されることが期待され、部隊間の相互運用性の向上に資することから、この協定の締結には大きな意義が認められると思います。
○五十嵐(え)委員 今御答弁で、法的地位の明確化というふうにおっしゃっていただいて、その点にも意義があるというふうにおっしゃっていただきました。
そうすると、RAAでは自衛隊の地位に関して意義があるということだったんですけれども、アメリカとの関係ではそれが決まっていなくて、それで本当にいいのでしょうかという観点から質問させていただきたいと思います。
資料をお配りしております。昨年の、令和六年七月五日、アメリカ合衆国ハワイ州カウアイ島において、日米共同対艦戦闘訓練、リムパックに参加のために派遣中の第七地対艦ミサイル連隊の隊員が運転するレンタカーと現地民間人が運転するバイクの衝突事故が発生した。それで、ぶつかってしまった現地の相手方のバイクの運転手は、緊急搬送先の病院で死亡が確認されてしまった。これは陸上幕僚監部からのプレスリリースなんですけれども、このときに自衛隊の地位がどうなるのということが、どうなったのかも含めて確認をしたいと思います。
まず、前提に、アメリカで自衛隊員の地位を定めたルールはないということでよろしいですか。
○大和政府参考人 今の御質問は、アメリカとの関係でいわゆるRAAに相当するようなものがあるかないかということだと思いますが、それはございません。
○五十嵐(え)委員 この具体的な事件について確認をしていきたいんですけれども、この裏にも資料があって、陸幕長報告資料ということなんですけれども、アメリカに訪問して事故を起こしてしまったこの自衛隊員、これは公務中だったんでしょうか。
○大和政府参考人 御指摘のとおり、公務中でございます。
○五十嵐(え)委員 それはなぜでしょうか。済みません、理由もお願いします。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
この隊員は、滞在していた基地内の売店が閉店していたため、上官から指示を受け、基地の外に水、食料等の生活必需品を買い出しに行った際にこの事故が発生したものでありまして、公務中に発生したものであるということであります。
○五十嵐(え)委員 先ほどもあった定義によると、上官の指示があったというのが大きいということですかね。
そもそも、そうすると、この公務性というのはアメリカとの間では一切問題にならなかったということなんでしょうか。
○大和政府参考人 この事案に関しては、現地当局の関係では不起訴となっているところであります。
今の御質問は、現地当局による判断についてということだと思いますが、現地当局による判断についてはお答えする立場にないということを御理解願いたいと思います。
○五十嵐(え)委員 刑事的には不起訴ということだったと思うんです。
そもそも、前提として、自衛隊員というのはアメリカに行く際にビザは取得するんでしょうか。また、レンタカーを運転していたということなんですけれども、国際運転免許証なのか日本の運転免許証なのか、何の運転免許で運転していたのかについて教えてください。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
査証も取得しておりましたし、国際免許証も取得して現地に行っていたということであります。
○五十嵐(え)委員 不起訴となったというようなお話が今ありましたけれども、陸幕長報告資料というところで、刑事としては、原因(推定)、確認中(現地警察が捜査中)というふうにありますけれども、この自衛隊員、捜査中で身柄は現地の警察に拘束されたりしたんでしょうか。
○大和政府参考人 繰り返しになりますけれども、この御指摘の事故については、現地当局から起訴されることなく、当該隊員は既に帰国をしているということでございます。
○五十嵐(え)委員 ちょっと事故の態様を見てみると、要するに、自衛隊員が乗ったレンタカーの車が左折しようとしたところを直進してきた相手方の民間のバイクの方とぶつかったというような事故の態様になっているんですね、これによると。そうすると、過失があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、そういったことですね。
あと、この事故が起きた直後に現地の報道も出ておりまして、その報道によると、現地の報道なので事実関係はもちろん分からないんですけれども、事故の原因として速度が疑われるが、捜査は現在も継続中だなどと警察が述べたというような当時の現地の報道も出ているんですね。
なので、過失なのか、その辺ちょっと捜査する必要があると思うんですけれども、その際に、日本のアメリカに行っていたこの自衛隊の方が捜査中ということで身柄が拘束された事実があるかということを伺います。
○大和政府参考人 身柄の拘束があったかどうかということで、身柄の拘束はございませんでした。
○五十嵐(え)委員 仮に比較するとして、RAAだった場合、日本の自衛隊が例えばフィリピンに行って公務中に事故を起こしてしまった場合、その場合はRAAだとどういう法的枠組みになるかについて伺います。
○大和政府参考人 刑事上の取扱いということですけれども、日本・フィリピン円滑化協定は、裁判権を行使する権利が競合する場合の裁判権の分配について規定しております。派遣国の当局は、専ら派遣国の財産若しくは安全のみに対する罪など、それから公務執行中の作為又は不作為から生じる罪、いわゆる公務中の事件等でございますけれども、について裁判権を行使する第一次の権利を有するということになります。
したがって、フィリピンにおいて公務中の自衛官が事故を起こした場合、派遣国たる日本側が第一次裁判権を有するということになります。
○五十嵐(え)委員 RAAだとそうなりますけれども、日米に関してはそういう法的枠組みはないということですよね。
そうすると、今回のように、こういうふうに事故を起こしてしまった自衛隊員の法的安定性というか予測性というか、そういった処理の枠組みというのはどういうものになるんでしょうか。
○大和政府参考人 今の御質問は、米国で訓練を行う自衛隊員に米国の法令がどのように適用されるのかということと思います。
一般的に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員等は、個別の取決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務については、受入れ国の法令の執行や裁判権等から免除されると考えられている。その上で、一般に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員は受入れ国の法令を尊重する義務を負う。したがって、自衛隊が米国において訓練を実施する場合にも受入れ国である米国の法令を尊重する義務を負っている。これは一般的な国際法上の原則であるかと思います。
○五十嵐(え)委員 そうすると、アメリカに行った自衛隊についても、一般的な国際法の原則に従ってそういうふうに処理されるということでよろしいですか。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
自衛隊が外国で活動するに当たりましては、任務を円滑かつ適切に実施するため、その任務の具体的な内容や受入れ国の意向等、様々な点を総合的に考慮した上で、派遣される自衛隊員の法的地位を受入れ国との間で適切な形で処理をしております。これは米国についても同じです。
○五十嵐(え)委員 ちょっと確認を。
何が言いたいかというと、RAAについては、協定があるので原則としてこの枠組みでやりますよということが、フィリピンに行く自衛隊にも分かりますし、日本に来たフィリピンの軍隊の方にも予測できるので、それは地位を定めることでRAAの意義がありますというお話だったんですけれども、アメリカについては、先ほど、裁判権を免除するとか、相手国の法令を尊重するというのは当然のことなんですけれども、そういった取決めの根拠が、要するに、アメリカに行く自衛隊は、自分の身柄が、もし事故を起こしてしまったときに裁判権などはどうなるんだろうということが非常に不安になって、安心して訓練できるんですかということを今質問しているんです。
もう一度確認なんですけれども、アメリカに自衛隊員が行って本件のように事故を起こしてしまった場合、こういうときにどういう法的枠組みで処理されるのかの根拠と、その根拠、先ほど一般国際慣習法とおっしゃいましたけれども、その点についてはアメリカと合意をする必要があるのかについて、教えてください。
○青木政府参考人 先ほど申し上げましたように、一般的に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊の構成員等は、個別の取決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受入れ国の法令の執行や裁判権等から免除されているというふうに考えられています。その上で、一般に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員は受入れ国の法令を遵守する義務を負うということにされております。
その上で、先ほどもまたこれも申し上げましたとおり、自衛隊が外国で活動するに当たっては、任務を円滑かつ適正に実施するため、その任務の具体的な内容や受入れ国の意向等、様々な点を総合的に考慮した上で、派遣される自衛隊員の法的地位を受入れ国との間で適切な形で処理している。これは米国についても同じだ。このような形で処理されているということになると思います。
○五十嵐(え)委員 答弁が非常に長くて難しいんですけれども、今の御説明を解釈すると、特別な取決めがない限り、つまり、アメリカとの間で地位協定やRAAがない限り、今おっしゃっていたような国際一般法の慣習に従って適切に処理をされるということなんですか。
○遠藤委員長 青木人事教育局長、簡潔にお願いいたします。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
我が国と受入れ国との間で適切な形で処理をしていくということになりますし、これは米国についても同じということでございます。
○五十嵐(え)委員 極めて曖昧だと思います。ちょっとよく分からなくて、極めて曖昧だった。
そもそも、数を教えてください。日本の自衛隊がアメリカに行って訓練した数と訪問した自衛隊の人数、及び日本の自衛隊がフィリピンに行って訓練した数と訪問している自衛隊の人数を教えてください。
○大和政府参考人 まず、フィリピンの方からでありますが、令和二年度から令和六年度までにフィリピンで実施した日本・フィリピン共同訓練は四件ありまして、合計約八十名がフィリピンを訪問しているところであります。
一方、米国でありますが、令和二年度から令和六年度までに米国で実施した日米共同訓練は少なくとも十七件ありまして、千六百五十名以上が米国を訪問しているところであります。
○五十嵐(え)委員 それで、なぜ、フィリピンではRAAを結ぶ必要があるんですけれども、米国における自衛隊の地位については定める必要がないんでしょうか。
○遠藤委員長 時間が参っております。簡潔にお願いいたします。
○大和政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、自衛隊が外国で活動するに当たっては、任務を円滑かつ適切に実施するため、その任務の具体的な内容や受入れ国の意向、様々な点を総合的に勘案した上で、派遣される自衛隊員の法的地位を受入れ国との間で適切な形で確認するよう努めているところでございます。
○五十嵐(え)委員 何が言いたいかというと、アメリカとの間でも、自衛隊員の地位をしっかり法的安定性を定める必要があるんじゃないですか、見直すべきなんじゃないですかという点について、では、大臣、いかがでしょうか。
○遠藤委員長 中谷大臣、最後の答弁です。
○中谷国務大臣 バイクの事故の例を挙げられましたけれども、結果的には、自衛隊側の運転手につきましては不起訴となっております。これは日米間でも協議をした結果でございますので、もろもろの状況を勘案して、不起訴で終わってしまったということでございます。
○五十嵐(え)委員 終わります。
○遠藤委員長 お時間が参りました。お疲れさまでございます。
次に、新垣邦男君。
○新垣委員 立憲会派、社民党の新垣邦男です。
初めに、本日の議題である円滑化協定法案について御質問させていただきます。
この円滑化協定、フィリピンとの協定、趣旨や目的、その意義については先ほど大臣からお話があったので、それは省きたいと思います。
ただ、これまで、オーストラリアあるいはイギリスと協定を締結して、締結以前から共同訓練は実施をされていると思うんですね。そこで、協定締結前と協定締結後、何が変わったのか。それを確認したいと思います。
○大和政府参考人 フィリピンとの間では、締結はしたんですがまだ発効しておりませんので、発効後のことというのはまだ申し上げられないんですが、ただ、こういったRAAがなくとも共同訓練などを行うことはできます。
ただ、このRAAがあることで、共同訓練の計画から実施までが非常にスムーズになるということがあります。スムーズになることで、例えばより頻度を上げて共同訓練を行うことができるようになって相互運用性が高まる等の便益がもたらされる、こういうことであります。
○新垣委員 当然、フィリピンはこれからですから、フィリピンのことを聞いているんじゃなくて、オーストラリア、イギリスと締結をした、訓練は以前からやっているわけですね。締結後、何が変わったのかなと。そのことです。
○大和政府参考人 それは今回御審議いただいている実施法に定められている、例えば、出入国の手続等、あるいは車両をめぐる手続の適用除外等があるものですから、これがこういうものとして規定されることで、一度一度の、一回一回の訓練ごとに個別の相互理解を、相互理解といいますか共通理解を得るための努力をせずとも、より円滑に様々な共同訓練等の計画、あるいは執行ができるということになっております。
○新垣委員 何か締結前も締結後も余り変わらないような気がして。締結後は円滑に運営ができるよということなのかなと思っているんですが、恐らくフィリピンもそうなるのかと思うんです。
実は私は、日米比防衛協力の実態は対中国包囲網の強化だろうと思っているんですね。自衛隊と米軍によるフィリピン軍の近代化支援であるのではないかと私は個人的には思っているんです。先ほど五十嵐委員からもあったんですが、フィリピンと中国は南シナ海における領海の支配をめぐって長年対立しているわけですね、これは常識的な話ですが。そういう中で、今回フィリピンとの間での円滑化協定を結ぶということは、かなり中国を刺激するのではないかな。先ほど来、五十嵐委員からもそういう不安があったんですが、それに関して中谷防衛大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
○中谷国務大臣 私もせんだってフィリピンに参りまして、マルコス大統領やテオドロ国防大臣と協議をいたしました。フィリピンの安全保障をめぐる情勢やまた中国の動きなどについて協議をいたしたわけでございますが、いずれにしましても、フィリピンというのは、日本にとりまして戦略的要衝に位置をするということで、戦略的パートナーであるという間柄でございますので、フィリピンとの間では様々な分野における防衛協力を強化するということは約束をしてまいりました。
一方、円滑化協定というのは、先ほど説明したように、一方の国の部隊が他国の国を訪問して実施する共同運用、演習、災害救助などの協力を円滑にするというのが目的でありまして、これは中国を含めて特定の国などを念頭に置いたものではないということでございます。
○新垣委員 ありがとうございます。
中国を念頭に入れていないということですが、恐らくこれは中国としてはぴりぴりするだろうなと思います、当然のごとく。それはそうですよね、東シナ海でこれだけ衝突をしているわけですから。恐らく、日本、アメリカ、そしてフィリピンと包囲網ががちっとなると、当然それは緊張感は持つだろうと思っているんです。
最近のフィリピンは比較的安定した国内の政治状況だと私は思っているんですが、ただ、フィリピン軍は元々、国内の反政府勢力の鎮圧を目的にしたために、陸軍がかなり重視をされた。それに引き換え、海軍、空軍は陸軍に比べて少し戦力的には落ちるのかな。最近ではそうじゃないよ、かなり強化されているよという御意見もあるはずなんですが、中谷大臣において、戦力的に海軍や空軍が弱いと指摘されているフィリピン軍との間でのRAAを締結するメリットというのはどういうものがあるのかなと思って、もしそういうものが具体的にあればお願いします。
○中谷国務大臣 メリットというのは、両国が共同訓練をしたり活動した際に、それぞれの国内における手続とか評価における融通ができるというのがメリットでございます。
フィリピンとの間では様々な協力をしておりまして、例えば共同訓練について言いますと、陸上自衛隊のカマンダグ、海上自衛隊がサマサマ、航空自衛隊がパシフィック・エアリフト・ラリーにそれぞれ参加をしてきておりまして、災害援助についても、二十五年のフィリピンにおける台風災害の対応として自衛隊を国際緊急援助隊として派遣してまいりました。
そして、日本・フィリピン円滑化協定が発効しますと、我が国はフィリピンの領域において自衛隊及びフィリピン軍の間で協力活動をより円滑に実施することが可能となることで、こういった両国間におきましては、戦略的パートナーであるフィリピンとの防衛面での協力と連携を深化させ、地域の平和と安定を確保するために尽力していくわけでありますが、先ほど申し上げましたとおり、この円滑化協定というのは特定の国を念頭に置いたものでもないし、また、こういったことを利用して活動を活発にするということではなくて、両国間の訓練をスムーズにしていくことが狙いでございます。
○新垣委員 海上自衛隊の共同訓練はフィリピン近海で行われると思っているんですが、他方、先ほど来お話があるように、南シナ海で中国の船舶がフィリピンの船舶に衝突する事態も発生をしております。
このような情勢において本協定は締結されているんですが、共同訓練中に中国の船舶がフィリピン船舶に衝突するような事態に至ったときに海上自衛隊としてはどうするのかなということで、もしそれが回答できるのであればお願いします。
○大和政府参考人 なかなか仮定の質問にお答えすることは難しいということを御理解願いたいと思いますが、いずれにせよ、我が方の自衛隊が行う活動というのは、国内法令あるいは国際法に従って行われるということは当然のところであります。
○新垣委員 恐らく答弁はそうなるだろうと思っております。仮定の質問には答えられない、これまでもあるんですが。ただ、当然こういう緊張感があるときには想定はされるはずです、万が一のとき。ですから、この場ではお答えできないはずですが、当然そういうことは念頭に入れながら対応をやるべきだろう。そうじゃないと、事が起こってから考えますという話には恐らくならないだろう。皆さんもそういう意味では対応を考えているんだろうと思っているんです。
私が言いたいのは、これだけ中国とこういう緊張感があるときに、何かが起こる可能性は大いにあるだろうと思っているものですから、そういう事態になった場合はしっかり対応していただきたいなというふうに思っております。
そして、先ほど松尾委員からもあったんですが、フィリピンとの間で今回締結するに当たり大きな問題となるのは、刑事裁判権の管轄だろうと私は思っているんですね。
これは日豪RAAあるいは日英RAAにおいても同様ですが、日本とフィリピンの刑法で異なるのは死刑制度のみです。万が一、共同訓練中に日本でフィリピン軍人が公務外の時間に死刑判決を受けるおそれのある犯罪の容疑者となった場合に、日本側が裁判権を行使できるのかどうなのか。これについてはいかがでしょうか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
日・フィリピンRAAにおきましては、日本が死刑存置国でありフィリピンが死刑廃止国であるというそれぞれの国の法制度の違いを前提に、被疑者の逮捕、引渡しや捜査に関する相互援助を行うことが規定されており、それぞれの国における法制度の根幹の変更を求めるものではないということでございます。
具体的には、フィリピン軍の構成員等である被疑者に死刑が科される十分な可能性がある場合には、フィリピン側が被疑者の逮捕、引渡しや捜査の実施等についての援助義務を免除されることとしつつ、日本国内においては、日本の警察が被疑者の逮捕等の警察権を行使するに当たり、フィリピン側はそれを妨害してはならないということが附属書等で規定されているところでございます。
日本国内においてフィリピン軍の構成員等が死刑を科される可能性のある罪を犯した場合には、日本の警察は当該被疑者の逮捕等の必要な捜査を行うことになり、また当該罪が日本が裁判権を行使すべき罪に当たる場合には、日本の裁判所の判決により死刑が科されることは否定されていないということでございます。
○新垣委員 今、それぞれの立場で解釈すると。では、死刑は日本では執行されないということですね。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
日本の裁判所の判決により死刑が科されることは否定されていないというのが協定の規定でございます。
○新垣委員 ならば、日本の刑法に基づいて死刑の可能性もあるということですね、そういう意味では。否定されていないということは、日本の法律でもって、最悪の犯罪になった場合は死刑の執行が可能だということですか。
○柏原政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになりますけれども、日本国内においてフィリピン軍の構成員等が死刑を科される可能性のある罪を犯した場合には、日本の警察は当該被疑者の逮捕等の必要な捜査を行うことになり、また、当該罪が日本が裁判権を行使すべき罪に当たる場合には、日本の裁判所の判決により死刑が科されることは否定されていないということでございます。
○新垣委員 死刑が科されることは否定はないということですから、恐らくそれは、凶悪犯の場合は、死刑に当たるということになると死刑が執行されるのかなと思っているんですが。
日本では死刑執行があるんですが、フィリピン、イギリス、オーストラリアはないということですから、仮に、最終的な段階になって、いやいや、とんでもない、我々の国は死刑制度がないんだからこれは納得できないみたいな話になると、非常にこれはもめるんじゃないかなと思うんですね。今言うように、日本の刑事裁判権でそれを執行できるんだと言ったとしても、国と国ですから、いやいや、とんでもないという話になると非常に困るなと思っているんですね。
実は、沖縄では地位協定がほとんど守られていません。米軍が犯罪を犯したときには、基地内に逃げて、そのまま本国に帰るという話、これは歴史的にずっとあるんですよ。そういう心配をしているものですから、この辺は明確にした方がいいんじゃないかなというのが一点。
私としては、それぞれ死刑制度がある国と死刑制度がない国があるわけですから、死刑制度のある日本で仮にそういうトラブルがあった場合は、やはり特別な、裁判権を行使できるようにするならば、特別法を整備して、それに合うような犯罪確定をした方がいいんじゃないか。
例えば、アメリカでは禁錮百年とか五十年とかあるじゃないですか。そういう意味では、死刑執行ができないというんだったら特別法を制定した方がいいのではないかなと私は個人的にそう思っているんですが、これはここで議論しても始まらないので、万が一のときですから、そういう準備も一つの案として考えるべきじゃないかなというふうに思っております。それは今後また国として検討していただきたいというふうに思っております。
次に、四月二十二日から五月十日まで、フィリピンで米比共同訓練・演習ですね、バリカタンが実施されました。その際、米陸軍は、嘉手納基地からクラーク基地にパトリオット地対空ミサイルを搬入する訓練を実施しております。
私は、フィリピンとの間で今回RAAを締結した場合、キーンソードやアイアンフィストなど沖縄で展開されている日米共同演習にフィリピンも加わる形になるのではないか、そうなった場合、沖縄での軍事演習が一層激化するのではないかなというふうな心配を個人的にしております。
その辺り、どうなるのか、中谷防衛大臣に伺いたいと思います。
○中谷国務大臣 現時点におきましては、我が国におけるフィリピン軍との共同訓練については具体的な計画はございません。
共同訓練を実施する場合には、安全の確保は当然の前提として、周辺地域に与える影響を最小限にとどめるように努めるとともに、適切な情報提供を行ってまいります。
なお、円滑化協定は、これまで培ってきた二国間の安全保障・防衛協力を更に高みに引き上げることに資するという法的枠組みでありまして、円滑化協定の適用により、こうした共同訓練等の実施が円滑化をされ、そして部隊の相互運用性の向上につながるものでございますが、これをもって何らかの権限を有するということはございません。
○新垣委員 是非よろしくお願いしたいと思います。
フィリピンは、今大変な状況、中国との状況があるものですから、非常に心配をしております。そういう問題がないように対応を国としてお願いしたいなと思っております。
続いて、これまで各委員からもこのRAAについては御質問があったので、私としてはこれ以上は。終わりたいと思います。
次に、沖縄県の先島住民の避難計画、これはこの間地元の新聞に大きく載って、非常に地元では今、大きな課題というんですかね、問題として取り上げられております。
政府は、去る三月二十七日、有事を想定し、宮古、八重山五市町村から避難する住民の受入れに関する計画の概要を公表しております。住民約十一万人を九州と山口の計八県に振り分ける計画ですが、まず初めに、受入れに応じていただいた三十二市町に謝辞を申し上げたいと思いますが、その上で指摘したいのは、この避難計画が余りにも生煮えで具体性に欠けているのではないか、さらには実効性にも乏しいのではないか。実際、送り出す側、受け入れる側の双方から、机上の空論ではないかというような話があるわけですね。ある自治体の幹部から聞くと、国がやると言うからつき合っているだけだという批判も報じられているんです。
そういう状況の中で、今回の避難計画は特定の有事を想定したものではないと政府は説明しているんですが、では、なぜ、宮古、八重山の五市町村十一万人だけが対象なのか。あるいは、久米島、慶良間、そして南北大東、ひいては米軍基地のある沖縄本島が対象外の理由について伺いたいと思います。
○門前政府参考人 お答えいたします。
現在の先島諸島の住民避難の検討は、先島五市町村の意向などを踏まえまして沖縄県において検討が開始されたもので、国としても、万が一の際に住民の避難をできるだけ早く実施するためには平素から関係機関が連携して必要な検討を進めることが重要と認識しており、沖縄県とも協議をし、沖縄県の検討に参加することとしたものでございます。
また、こうした経緯に加えまして、先島諸島は、沖縄本島や本土から遠距離にある離島であり、輸送手段の確保など避難の困難性がより高いと考えられることから、沖縄県、先島五市町村と協議をし、まずは先島諸島の避難について優先的に検討することとなったものでございます。
沖縄県におきましても、まずは先島諸島の避難について検討し、その成果を踏まえて、御指摘ございました沖縄本島、久米島、南北大東島を含む沖縄県全体の避難の在り方を検討していく必要があると認識しておられると承知をいたしておりまして、今後の進め方につきましては、沖縄県と国でよく相談してまいりたいと考えております。
○新垣委員 先島は観光客も入れて十二万ということです。本島はもっと多いわけですね。
そうなると、本島から、避難計画を作ってくれ、あるいは避難対策をしてくれという要望があった場合は、それも考えますよという話ですか。
○門前政府参考人 お答えいたします。
沖縄本島の件で再度の御質問でございますが、繰り返しの御答弁になりますけれども、まずは沖縄・先島諸島の避難について検討し、その成果を横展開することにより沖縄本島も含む県全体の避難の在り方について検討するということを認識しておられますので、その沖縄本島の避難の進め方については、今後沖縄県とよく相談してまいりたいと考えております。
○新垣委員 沖縄本島の避難というのは、かなりこれは誰がどう考えても難しいだろうなというふうに思います。
先島は六日間というんですが、ただ、有事になった場合は、六日間待っていてね、あと百名ぐらい残っているのであと二日ぐらいはちょっと攻撃するのはやめてくれよというのが言えるのかどうなのか、私は実態としていざ有事になった場合はそうなるんじゃないかなという懸念があるのが一点です。
そして、何も先島を先にやる必要はない。十年ぐらい前から中国は嘉手納を狙っているわけですね、嘉手納、普天間。当然、当たり前の話です、常識的に考えて。米軍も、嘉手納常駐機を避難させる、さらには、米軍関係者、家族の皆さんを本国に撤退させるというような動きもあるわけですから、やはりこれは十分に考えないと、先島だけ六日間という話にはなかなか、当然、それが全て避難をして、はい、それから有事になるという話だったらいいんでしょうけれども、なかなか実態はそうはならぬだろうというふうに思っています。
ですから、よっぽどこれは慎重に事を運ばないと、では沖縄本島は何なんだというような議論になりかねない。
この先島の十二万人の皆さんが本当に六日間でやれるのかどうなのかというのも疑問だなというのが一点でありますし、また、人間だけじゃなくて、恐らくそこには家畜もたくさんあるだろうと思うんですね。特に、放牧をしている牛などもあるわけですから、そういう財産的なものはどうなのかなというのが懸念です。ここではもうそれ以上やって質問は求めませんけれども。そういう意味では、そういう認識を共有していただきたいなというふうに思っております。
そういう中で、先島の六日間で十二万人が移動という話なんですが、これは個人的には素朴な疑問なんですけれども、台風が非常に多い沖縄で、台風襲来に見舞われた場合、宮古・八重山地域だって台風シーズンは観光客も増える、繁忙期なんですね。こういう避難計画にそういう季節性を持たせる必要もあるのかなと私は個人的には思っているんですが、政府として、その避難計画の中で、有事になった場合は時期がどうのこうの言っている場合じゃないんですが、台風が多いので、その避難計画の概念の中にそういう季節性というのもあるのかどうなのか、お願いします。
○門前政府参考人 お答えいたします。
先島諸島の住民避難につきましては、先ほど申し上げましたとおり、輸送手段の確保など避難の困難性が高いことから取り組んでいるものでございまして、現時点における検討では、通常の運航状況などを前提とした最大限の輸送手段の確保の観点から、いわゆる基本形と呼ばれるものを検討しているものでございまして、御指摘の観光客シーズンや台風シーズンなどの季節性は現在では考慮しておりません。
なお、現在の検討におきましては、観光客につきましては、過去の先島諸島の観光客数を踏まえ、一万人滞在していると想定し、また、輸送手段につきましては、おおむね空港の通常の運用時間内に航空機の運航が円滑に行われるということを前提として行っております。
一方で、御指摘のような台風シーズンなど通常の運航状況ではない状態などにおける輸送についても重要な課題と認識しておりまして、今後、その実施について沖縄県と相談してまいりたいと考えております。
○新垣委員 検討の始まりだからということなんでしょうけれども、なかなか具体的には示せないということは理解をしております。
ただ、計画の公表を受けて、先島住民や沖縄戦を体験した皆さんから、また捨て石にされるのかという不安の声が上がっているわけですよ。これは実際に聞いているんです。
そういう不安がある中で、伺いたいんですが、いざ有事になった場合の避難者の財産補償はどうなるんだろうか、あるいは、避難せずに島に残るんだという選択をした住民の財産もひとしく補償されるのかどうなのか。いわゆるこれは戦争被害受忍論で退けられるのではないかということも言われているんですが、この辺はどうなんでしょうか。
○門前政府参考人 お答えいたします。
国民の被害に関する財産補償についてということでございますけれども、個別具体的な判断が必要であることから、武力攻撃事態が終了した後の復興政策の在り方の一環として検討するべきものであり、その状況下で可能な検討がなされることになるものと認識しております。
○新垣委員 検討といっても、この問題もなかなか簡単には解決できないと思っているんです。
そういう意味では、せっかく避難計画、あるいは島民の気持ち、思いも踏まえて幅広く、そして結構根深く検討が必要だと思います。だからといって、それが納得できるものではないという恐らく反発もあると思うので、その辺は計画を立てた時点でそれぞれの時期にしっかり説明をしてもらいたいなと思っています。
こういう状況の中で、先島がターゲットにされる。恐らく、これだけ避難計画があるということは、有事に備えろという話だと思うんですね、私は。これは基本的にはそうだと思うんです。
そもそも武力攻撃事態というのはどのタイミングで判断をするのか、これが一番重要じゃないかなと思うんですね。政府として、大臣、この武力攻撃事態、恐らく、やがて戦争になりますよというときに、有事になりますよというのはどういう形で判断をしていくのかなという、非常に私は個人的に疑問があるんですが、もし大臣、見解があれば。
○中谷国務大臣 武力攻撃事態に至る前には、重要影響事態とか予測、おそれ事態とかそれぞれの、政府の認定を通じて武力攻撃事態の認定がされますけれども、それは様々な要素を勘案するわけでございます。
こうやって武力攻撃事態に対して自衛隊は活動しますが、その一方で、住民の避難、これは大切なことでありまして、沖縄戦におきまして、住民を盾にし、避難を犠牲にして、たくさんの方が犠牲になったということもありました。
私はせんだって石垣島と竹富島に参りまして、実際の避難計画、行政の方とか住民の方から聞いてまいりましたけれども、こういった計画をまず立てて、そういうことを実際にできるようにしておくということ。それから、これは国だけの話ではなくて、県とか地元の市町村、こういったものも協力をしていかないとできません。
特に、先島の与那国島に参りました。地元の市長さんから、避難に関して、飛行場や港湾の充実をという要望もございました。
そういうときに、そういった島民の避難ができるように視察、支援も必要でございますので、今度、そういう面では、国も地方も住民もそういったことができるように計画を立てて、実際、訓練していかなければならないなという気がいたします。
○新垣委員 時間ですので終わりますが、済みません、あと一問あったんですが、それは飛ばしたいと思います。
ただ、国民保護というのは、前提として有事があるという想定ですから、これは沖縄県民にとっては八十年前とまた同じかというような不安を非常に抱えています。そういう意味では、やはり有事がない、外交で平和を守っていただきたいということをお願いして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。新垣邦男君の質疑は終了いたしました。
次に、美延映夫君。
○美延委員 日本維新の会の美延映夫でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、円滑化協定について伺わせていただきます。
我が国を取り巻く安全保障環境が戦後最も厳しい、そして複雑な状況の中で、我が国の安全保障を担保するには、同盟国であるアメリカはもちろんのこと、それ以外の同志国との協力関係も必ず強化しなければならないと思うわけです。
こうした状況を踏まえて、昨今、自衛隊の部隊と同志国等の部隊との協力が増大しておるところなんですけれども、我が国は、オーストラリア、イギリスとの間で既に円滑化協定を締結しており、円滑化協定の適用により、自衛隊と両国の軍隊との間に協力関係の強化に具体的にどのようなことがあったのか、まず中谷防衛大臣に伺います。
○中谷国務大臣 これは、大きな成果がございました。各レベルで協議したり、また軍種間で共同訓練をするなど、やはり防衛交流を着実に深化させてきたということ、それから、これまで培ってきた二国間の協力を更に高みに引き上げるということの枠組みでありまして、オーストラリアも英国も、共に各種の共同訓練、艦艇の寄港の際の適用がされております。
こうした円滑化協定の適用によりまして、こうした協力活動の実施が円滑化され、そして部隊間の相互運用性が向上するということで、非常に安全保障・防衛協力の深化につながっております。
防衛省・自衛隊としては、引き続き、この円滑化協定を活用しまして、大規模かつ複雑な協力活動を円滑に実施することを通じまして、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けまして、オーストラリアそして英国との防衛協力を一層強化していくという考えであります。
○美延委員 これはもう是非強化していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
これまで日豪と日英の円滑化協定が適用された活動について、じゃ、今大臣から説明をいただきましたが、もう少し具体的に教えていただけますか。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
日豪間、日英間共に、各種共同訓練や艦艇の寄港などの際にこのRAAの適用がなされておりまして、例えば、共同訓練の具体例としては、日豪間では、日本において豪空軍が参加した武士道ガーディアンや、豪州において航空自衛隊が参加したピッチ・ブラック24、日本と英国の間では、日本において英陸軍が参加したヴィジラント・アイルズ24がございます。
○美延委員 共同訓練が増加しているということなんだろうと思いますが、円滑化協定の締結により、オーストラリアやイギリスの軍隊が日本で新しい態様の活動を実施できるようになったということはあるんですか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
円滑化協定は、一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続、それから部隊の地位などを定めるものでありまして、何らかの活動を行うための根拠を与えるものではございません。
一方、円滑化協定を活用することによって、日豪又は日英の一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を実施するに当たり、手続や調整が簡素化されるため、これまで以上に頻繁に多くの部隊要員を伴う協力活動の実施が可能になるということでございます。
○美延委員 今局長から挙げられたような活動については、この円滑化協定を締結する前も、例えば、オーストラリアやイギリスの軍隊の部隊が日本で実施した例はあったと思うんですけれども、例えば、我が国では、多くの自然災害が発生しており、こうした災害に対処するために、他国の軍隊が我が国に来訪し、災害救助活動等を行っていたということも考えられると思います。
こうした外国軍が我が国で災害救助活動を実施するに当たり、円滑化協定ができる前は具体的にどのような手続を経ていたのか、教えていただけますか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
外国軍隊が我が国領域内において災害救助などの活動を実施する際には、個別のケースに応じて、両国間で協議の上、外交ルートを通じて活動の実施に向けた調整を行ってまいりました。
このように、円滑化協定がなくても外国軍隊が我が国においてこういった活動をすることは可能ではありますが、受入れのためには多くの手続や調整を要する場合があります。
円滑化協定は、一方の国の部隊が他方の国を訪問して活動を行う際の手続を定め、また部隊の法的地位を明確にすることにより、協力活動の実施に際する調整を容易にし、予見可能性が高められることになります。
具体的には、出入国手続が簡素化されることや、訪問部隊が港や空港を使用する際の条件が定められたりすることで、災害救援活動を含め、協力活動の実施が円滑化されることが期待されるということであります。
○美延委員 今、なくてもできるけれども、なかったら例えば外交ルートを通じてというようなことを、局長から御発言いただいたわけなんですけれども。
そうすれば、円滑化協定が必要という理由をもう一度教えていただけますか。
○大和政府参考人 フィリピンのケースに関して申しますと、先ほど大臣からも申しましたが、フィリピンは戦略的要衝に位置する、また我が国にとって戦略的なパートナーということであります。そして、ここ数年、いろいろな共同訓練等を進めてきているところであります。今後もこういった活動が拡大していくということは十分に考えられることでありまして、そういったことを考えますと、こういった活動をよりスムーズに行うために、今回のRAA、円滑化協定が必要であろうということで、交渉し締結した、こういうことであります。
○美延委員 今、局長から、オーストラリア、英国に続いてフィリピンが円滑化協定の締結相手国に選ばれた理由をるるお話しいただいたわけなんですけれども、戦略的なパートナーで必要ということもお話しいただいたんですけれども、そうしたら、これから円滑化協定によってフィリピンと防衛協力関係をどう発展させていくのか、大臣の御所見を伺います。
○中谷国務大臣 フィリピンはシーレーンの途上でございまして、非常に我が国にとりまして戦略的要衝に位置する、そして、戦略的パートナーといたしまして、二〇二三年十一月のフィリピン・日本首脳会談においてこの協定の交渉を開始することを決定し、昨年七月に署名したわけでございます。
今後、どのように発展させていくのかということにつきましては、例えば、自衛隊がフィリピンを訪れて実施した共同訓練について、航空自衛隊とフィリピン空軍の共同訓練など二国間の共同訓練を実施したほか、フィリピン、アメリカ主催の多国間の枠組みでも、陸上自衛隊がカマンダグに、海上自衛隊がサマサマに、航空自衛隊がパシフィック・エアリフト・ラリーにそれぞれ参加してきております。
そして、災害派遣については、平成二十五年に大変な台風がやってまいりましたが、その際、自衛隊を緊急援助隊として派遣したりしております。
もし、この日・フィリピン円滑化協定が発効すれば、我が国はフィリピン領域において自衛隊とフィリピンの軍隊の間で協力活動をより円滑に実施することが可能となりますので、自衛隊としましては、こうした部隊間の訓練を通じまして、日・フィリピンの安全保障・防衛協力をより一層推進していきたいと考えております。
○美延委員 今の大臣の御答弁、私もそのとおりだろうと思います。
ちょっと本題からはそれますけれども、大臣、二月にフィリピンを訪問されて、そして、向こうの国防大臣とともに日本から輸出したいわゆる監視レーダーを視察しているような場面、私もテレビのニュースで拝見させていただきました。
先ほどからもずっと議論になっていますように、やはり日本には、これは申し訳ないですけれども、ほぼ毎日のように尖閣諸島に中国の海警船が参っております。そして、先ほどお話ありましたように、フィリピンの海域で中国船との衝突というような、お互い、やはり海洋国である以上、シーレーン防衛というのは非常に大切だと思うんですけれども、もちろん、フィリピンに行かれている以上、国防大臣と会われている以上、そういう突っ込んだお話は必ずされていると思うんですけれども、もちろん、防衛上のこともあるので言える範囲で結構なので、どういう会談をされたのか、教えていただけますか。
○中谷国務大臣 テオドロ国防大臣とはいろいろな話をしました。
その中で、特にレーダーの話で、警戒管制レーダーを日本から移転したところに行きまして、実際にレーダーを運用している若い隊員さんや関係者と話をしまして、本当に一生懸命、国防という観点で働いているんですね。それまではレーダーがなかったので、特に東シナ海においては中国の船が一体いつどこで通過しているのか、全く分からなかったわけでありますが、このレーダーによりましてそれが分かるようになったということで、非常にフィリピンの安全保障に貢献をしている。
それから、フィリピンと日本は防衛大学校で留学生を受け入れておりまして、その卒業生が軍の幹部となって、実際、大臣との会談のときもその方が通訳で来ていただいて、防衛の話もしていただくとか、そういった面で非常に今回の訪問は有意義なものでありました。
特に、四つの分野での連携をスピード感を持ってやっていく、第一は運用面の連携、そして第二は人的交流の強化、そして第三は防衛装備・技術協力、そして第四は日米豪比、日米比など同盟国、同志国による連携を更に深めていくということで、テオドロ大臣との間で認識を一致することができました。
そして、マルコス大統領にも直接説明をする機会を得まして、非常に日本とフィリピンは同じシアターである、同じ面で防衛を考えていくべきではないかという話をしましたけれども、まさに戦略的パートナーとして更に緊密に協力していきましょうということでございます。
それから、こういったワレス空軍基地の視察におきましても、フィリピンの空を守り、そして南シナ海を守る地域の平和と安定に非常に大きく貢献していくということで、結局、我が国の防衛戦略としてもFOIPというのがありまして、インド、それからオーストラリア、日本、アメリカ、こういったFOIPとの自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、非常にフィリピンというのは大事な国であるということを認識いたしました。
○美延委員 大臣からるる御答弁いただいたわけですけれども、しっかりこれは前に進めていただきたいと思います。
この円滑化協定の実施法についてなんですけれども、日豪円滑化協定実施法と日英円滑化協定実施法の両法律について、国名以外に何か違いがあるんでしょうか。また、日・フィリピン円滑化協定の国内担保措置について、これらの違いが出るのか教えていただけますか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
日豪円滑化協定及び日英円滑化協定の国内実施法はいずれも、道路運送法及び道路運送車両法の適用除外、刑事手続等の特例、国の賠償責任の特例及び特殊海事損害に係る賠償請求の援助について定めておりまして、国の名称等以外に実質的な差異はありません。
昨年七月に署名された日本・フィリピン円滑化協定の実施のための国内担保措置についても、これらの事項が同様に必要となるものでありまして、これまでに制定された日豪円滑化協定実施法及び日英円滑化協定実施法に定める担保措置の内容と実質的な差異はございません。
○美延委員 実質的な差異はないということなんですけれども、今後締結される円滑化協定についても、国内担保措置の内容は今回共通規定化した範囲に収まると見込んでよいんでしょうか。また、これらに収まらない例外的な円滑化協定を締結することになった場合は、どのように措置されるのか教えていただけますか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
今回制定予定の国内実施法は、先ほど申し上げましたとおり、道路運送法及び道路運送車両法の適用除外、刑事手続等の特例、国の賠償責任の特例及び特殊海事損害に係る賠償請求の援助について定めておりまして、これらが定められていなければ、二国間の防衛協力を円滑にすることを目的とする円滑化協定を締結することは困難であります。したがって、これらは締約相手国を問わず、円滑化協定の担保措置に含まれることになるというふうに考えられます。
したがって、将来的に締結されるいずれの円滑化協定についても、これらの担保措置を必要としないものとなること、あるいは、これらの担保措置の内容が変わることは基本的には想定されないと考えております。
ただ、御指摘のように、仮に例外が生じた場合には法整備が必要になるということでございます。
○美延委員 円滑化協定実施法に規定する国内担保措置が定型化していること、そして万が一例外が生じた場合は新しい法律が必要になるということはよく分かりました。
これは、同志国等の連携が重要になる中で、円滑化協定は非常に重要であり、今後も様々な国と円滑化協定を私は締結していくべきだと思うんですけれども、このため、円滑化協定の交渉に政府の人的リソースを集中させていくべきであると思いますし、円滑化協定をタイムリーに締結していく上でも、円滑化協定実施法の共通規定化を是非推し進めるべきであると思うんですけれども、共通規定化することによってメリットはどういうことになるのか教えていただけますか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
円滑化協定の国内実施法の共通規定化は、円滑化協定に関する国内担保措置の内容が定型化していることを踏まえて、これまで相手国ごとに整備していた円滑化協定の国内実施法を統合するものであります。
この共通規定化により、従来のように相手ごとに別個の法律を参照することなく、円滑化協定の国内実施法が規定する担保措置を総覧することができるようになるというメリットがあります。また、共通規定化は、潜在的な円滑化協定締約国に対して、我が国との円滑化協定の締結に伴って我が国が実施する国内法上の措置について一定の示唆を与えるものでありまして、今後の新たな協定の交渉を円滑に進める観点からも有用であるというふうに考えているところであります。
○美延委員 次に、法案の内容について伺います。
本法案では、先ほども質疑はあったんですけれども、道路運送法や道路運送車両法の適用除外について定められているということですけれども、具体的にどのようなことが定められているのか。それからもう一問、こうした規定、例えば、外国軍の部隊が事件や事故を起こした際に、手続に関するもの、こうした規定が実際にどういうふうに適用されているのか、またそういう適用された例があったのか、併せて教えていただけますか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
まず、道路運送法の適用除外でありますが、この法案第三条第一項においては、締約国軍隊の公用車両には、道路運送法第九十四条及び第九十五条を適用しないこととしております。道路運送法第九十四条は、国土交通大臣は、同法の施行に必要な限度において、道路運送事業者を始めとする全ての自動車の所有者、使用者に対し、報告の徴収等を行うことができるとしております。締約国軍隊の公用車両に対して報告の徴収等を求めることは、共同訓練や緊急災害支援といった協力活動の円滑化を図るという協定の趣旨に照らして適当ではないことから、適用除外とするものであります。
また、道路運送法第九十五条においては、自動車の所有者に対し、氏名、名称又は記号その他の必要な事項について、自動車に表示することを求めております。
締約国軍隊の公用車両に対してその都度名称等の事項について表示を求めることは、協力活動の円滑化を図るという協定の趣旨に照らして適当ではないことから適用除外としております。
次に、道路運送車両法の適用除外であります。
法案第三条第二項においては、締約国軍隊の公用車両には道路運送車両法の登録、車検等の規定を適用しないこととしております。
これは、これまでに我が国が締結又は署名した円滑化協定第十条3において、接受国において賃借される車両以外の公用車両については、接受国による登録を要しないこととする規定が設けられておりまして、この規定の実施を担保するために、道路運送車両法の登録に関係する規定を適用除外としているものであります。
また、登録に関する規定以外の点検整備や車検など、車両の安全性に関する規定については、公用車両一台ごとに車検等の措置を義務づけることは、協力活動の円滑化を図るという協定の趣旨に照らして適当ではないことから、同様に適用除外としているところであります。
また、御質問にありました刑事裁判権の行使等の実例ということでありますが、こういった実績について申しますと、これまで、訪日したオーストラリア又は英国の軍隊の構成員が事件や事故を起こし、これらの関連規定が適用されたという事例はございません。
○美延委員 これまで円滑化協定が問題なく適用されてきたということは、よく理解しました。
今回、実施法を共通規定化することによって、円滑化協定により締結しやすくなる環境が整うと思います。現在交渉中の、先ほどフランスというようなことも挙がっておりましたが、今後、円滑化協定をより多くの国と私は締結するべきだと思うんですけれども、この点について、大臣の御所見を最後に伺います。
○中谷国務大臣 委員がおっしゃるように、同盟国のみならず、一か国でも多く連携することが非常に重要でありまして、我が国と相手国の部隊間の相互運用性の向上のために、非常に安全保障が進んでいくのではないかということで、今後とも円滑化協定の締結に努力してまいりたいというふうに思っております。
それから、一点訂正をさせていただきますが、先ほど、フィリピンの管制レーダーで、これまで見えなかった東シナ海の船の監視ができるようになったと言いましたが、これは南シナ海の航空機の間違いでありまして、この点、訂正させていただきます。
○美延委員 しっかりこれはこれからも続けていかれるよう、今日の大臣の答弁は非常に私も分かりやすかったと思いますので、是非今後ともよろしくお願いいたします。
これで終わります。ありがとうございました。
○遠藤委員長 ありがとうございます。
美延君の質疑は終了いたしました。
時間の配慮にも美延委員には御配慮いただきまして、ありがとうございます。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時四十八分休憩
――――◇―――――
午後二時二十六分開議
○遠藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。池畑浩太朗君。
○池畑委員 本会議、お疲れさまでございました。もう連投でございます。お疲れさまでございます。
兵庫県の西播磨、中播磨から参りました、日本維新の会、池畑浩太朗でございます。
本日は、円滑化協定について質問させていただきます。午前中にも、そして本会議でもありましたが、ほかの党からもありましたし、我が党の美延理事からも法案に対して丁寧な質問がございましたので、私からはまず総括的に質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
この円滑化協定実施法案について改めて聞かせていただきたいと思いますが、RAAの実施法は、これまで豪州、英国といった相手国ごとに個別に制定してきたところを、何遍も質問されておりますが、フィリピンで三か国目となりまして、法律の内容が定型化したことを契機として、今回共通規定化すると伺っておりますが、この共通規定化の経緯について、午前中の質疑もありました、本会議もありました、防衛省として答弁し足りないなと思っていらっしゃるところも含めて、少し具体的にお伺いさせていただきたいと思います。
○大和政府参考人 お答え申し上げます。
これまで締結された日豪円滑化協定及び日英円滑化協定の国内実施法は、相手国ごとに法律が整備されてきました。これらの法律では、いずれも、一、道路運送法及び道路運送車両法の適用除外、二、刑事手続等の特例、そして三つ目に、国の賠償責任の特例及び特殊海事損害に係る賠償請求の援助が含まれておりました。これらの事項は、昨年七月に署名した日・フィリピン円滑化協定の実施のためにも同様に必要となる国内担保措置であります。
また、これらの措置が定められていなければ、二国間の防衛協力を円滑にすることを目的とする円滑化協定を締結することは困難でありますことから、これらは締結相手国のいかんを問わず、円滑化協定の担保措置に含まれることとなると考えられるところであります。
したがって、将来的に締結されるいずれの円滑化協定についても、それがこれらの担保措置を必要としないものとなることや、あるいは、これらの担保措置の内容が変わることは基本的に想定されないということから、御指摘のあった定型化したという判断に至ったところであります。
こうした点を踏まえて、この法案においては、円滑化協定の国内実施法を共通規定化することをお願いしているところであります。
○池畑委員 防衛省としての見解を改めて聞かせていただきました。
これも午前中にたくさん出てまいりましたけれども、今の政策局長の答弁を踏まえてなんですが、同志国との防衛協力関係の強化をするものだというふうに思うというお話でありました。
我が国が同志国との防衛協力を強化する重要性について、改めて防衛大臣にお聞かせいただきたいと思います。
○中谷国務大臣 我が国の安全保障を確保するためには、やはり、各国の軍との協力は不可欠でありまして、特に、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下に、同盟国や同志国等と連携して、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現し、地域の平和と安定を確保していくということは極めて重要でございます。
国家安全保障戦略においても、同志国間のネットワークを重層的に構築、拡大し、抑止力を強化するということにしておりまして、円滑化協定はまさにその一つの取組に位置づけられております。
この円滑化協定は、相手国の安全保障・防衛協力の更なる促進に資することで、インド太平洋地域の平和と安定を支えるものにつながりますので、防衛省・自衛隊としましては、この円滑化協定の制度的な枠組みの整備を含めまして、引き続き、多角的、多層的な防衛協力・交流を積極的に推進してまいりたいと考えております。
○池畑委員 答弁ありがとうございました。
今、ネットワークの拡大ということや、やはり日頃からの交流ということが大事だというふうなお話を聞かせていただきました。
今回、それに続きまして、日米防衛相の会談についてお聞かせいただきたいと思います。
三月の三十日に、八十五分間にもわたってヘグセス国防長官と会談をされたということでありました。互いに、中谷大臣は普通科を、そしてヘグセス国防長官は歩兵出身であるということで、かなり盛り上がったというふうにお聞かせいただきました。共通点があるということは、こういったネットワークを拡大したりとか、交流を深めるといったといった点ではすごく大事なことだというふうに思います。
互いに、総理と大統領、閣僚の個人的な信頼関係というのを構築していく上でそういったことは大事だというふうに思いますが、大臣は、今回、長官と個人的な人間関係を構築できたというふうに思われているか、そして今後どういうふうに進めていきたいか、併せて答弁いただきたいと思います。
○中谷国務大臣 ヘグセス長官とは初対面の会談となりましたが、お互いに普通科、私は陸上自衛隊の普通科のレンジャー隊であり、ヘグセス長官は米陸軍の歩兵で、イラクとかアフガンでの第一線での小隊長の経験がありまして、それぞれ、小隊長というと、第一線の兵士とともに最前線で活動するという共通の経験があります。
また、九・一一のテロとの闘いのために尽力をしてきたということで、共通の経験を有するということで、初対面でありながら旧友のように非常に気が合うというか、話が合いました。
また、前日に、硫黄島の激戦地を慰霊させていただきましたが、これは日米双方に数万人の犠牲者が出ているところでありまして、お互いに、この現状の中で、こういった両国の激戦の歴史の上に、今は世界で最も強い同盟関係の中で平和構築をしている、そして、日米の防衛関係者がたくさん出席されておりましたけれども、共に国歌・国旗を演奏し、そして遺族や傷病兵の方々のスピーチもありまして、非常に、そういう意味では、平和の尊さ、また日米同盟、これの重要性を認識いたしました。
そして、今回、ヘグセス長官は、フィリピンとかハワイとか、こういった太平洋諸国を歴訪していまして、その一環で日本に来られましたけれども、FOIPというインド太平洋戦略、これの重要性において非常に強調されておりまして、やはりこの認識を一致して、これから共にこの地域の平和と安定に努力していきましょうという基本的な認識で一致しまして、私としましては、今回の日米防衛首脳会談は大成功であったというふうに認識しております。
○池畑委員 大成功というふうに言っておられます。
私も防衛省の動画を見させていただきました。硫黄島に大臣が行かれて、どういう思いで今活動しているかということも踏まえて動画にされているのはいい方向性だなというふうに思いましたし、大臣とヘグセス長官との人間関係、これは今政権交代したばっかりですから、それも踏まえて大きく変換していく部分だと思いますが、是非ともそういった人間関係を深めながら、つなげていただきたいというふうに思います。
その中で、会談の中で出た話だというふうに思いますけれども、防衛装備の技術協力について質問させていただきたいと思います。いわゆるDICASというやつですね。DICASの中で、今回の防衛相会談において、トランプ政権においても引き続き取り組んでいくということを認識したということでありましたけれども、第四回のDICASに向けて米艦船、また航空機の共同維持整備等の具体的な検討状況、それも含めてちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○坂本政府参考人 お答え申し上げます。
今回の日米防衛相会談におきましては、先ほど来お話が出ていますとおり、日米同盟の抑止力、対処力強化のためには、日米の共同開発、共同生産、共同維持整備等の早期実現を通じまして、日米の防衛産業基盤の相互補完、強化を進めていくということが死活的に重要である、そういう認識で一致したところでございます。こういった共通認識の下でDICASの枠組みを効果的に活用いたしまして、防衛産業協力の深化に向けた取組を加速するということも確認していただいたところでございます。
米国では政権交代がございましたけれども、それを経ても防衛産業協力の深化に向けた方針、これを国防当局間で改めて確認できたということは大変有意義であったのではないかというふうに思っているところでございます。
その上で、委員お尋ねの米軍の艦船あるいは航空機の維持整備につきましては、現在、米軍の具体的な所要がどういったものがどのぐらいあるのか、また日本企業がそれぞれの艦種、機種ごとに整備能力がどの程度あるのか、米国政府の法令や調達制度に合わせることができるのかどうか、こういったことを確認しながら、対象とすべき艦種や機種、それから各艦種ごと、機種ごとに日本国内でどういった整備をするのかといったことについて、米側と検討を進めているところでございます。
今後もDICASの下で日米同盟の抑止力、対処力に資する互恵的な防衛産業協力の実現を目指して検討を加速してまいりたい、このように考えております。
○池畑委員 なぜこの質問をさせていただきましたかといいますと、前回、安全保障委員会で質問させていただいたときに、やはり日本の軍事に関わる産業はどんどん撤退しているという質問をさせていただきました。
今回、DICASの中で取り組まれている内容で、アメリカ軍の船、そしていろいろな戦闘機も含めて修理するということがこのまま話によっては進んでいく、そういうことでありますと、日本の地域の企業にとってもプラスなんじゃないかなというふうに思っております。この話というのは、地元のそういった産業の方々にもいろいろ入っていただきながら話を進めていただきたいというふうに思いますので、是非よろしくお願い申し上げます。
次に、統合作戦司令部について質問させていただきたいと思います。先月の二十四日に統合作戦司令部が新設されました。統合作戦司令部は、平素から部隊を一元的に指揮して、これにより統合の運用の実効性を向上していこう、言ってみれば司令部だというふうにお聞かせいただきました。
これは残念なお話なんですけれども、また統合司令部が発足した直後に発生しました全国での一連の山火事、山の火災、統合司令部の下で災害対策に当たられた、これは第一回目の多分指令だったというふうに思いますが、改めて、現下の厳しく複雑な安全保障に直面する中でありますので、統合作戦司令部を新設することの意義について、大臣の改めてのお考えをお伺いしたいと思います。
○中谷国務大臣 統合運用の新設によりまして、自衛隊の運用が平素から部隊を一元的に指揮できるようになりまして、事態の状況、推移に応じた柔軟な体制を構築することができました。
今回の各地の山火事等につきましても、早期に情報収集し、分析し、そして、活用するために作戦を作って、いろいろと検討を重ねた結果、非常に初動が早かった。また、ヘリ映伝というヘリの情報を中継で送ってきたために、これで地方と情報がつながりまして、こういう点でオペレーションが非常に早くなりまして、非常にいい活動がされたというふうに思います。
また、ミャンマーにおいても地震が発生しました。外務省の方でJICA等の派遣も検討しておりますけれども、これも防衛省独自で、やはりこういった場合にどういうことが可能であるのか、もう土曜日の時点でいろんな分析や計画をしまして、外務省と相談いたしまして、よりよい活動が早く行われるように、非常にそういう意味では、統合司令部が発足をしたということはよかったというふうに思います。
○池畑委員 発足当時からこういったいろんな事態に対して対応がもう既にできていくということはすばらしいことだというふうに思いますし、余りよくないことなんですけれども、どんどん情報やデータが蓄積していくということもこれから大事なことだというふうに思いますので、是非この意義をみんなに分かっていただくように、伝えていただきたいというふうに思います。
その中で、実際に対応に当たる前線の部隊について、今、維新の勉強会の中で、元幕僚長の方からいろいろ御意見をいただきながら、我々も勉強させていただいているんですけれども、その中で、前線の部隊は、若手隊員を配置して若返らせることが大事なんじゃないかと。
定年制というのは上げていくべきじゃないかなというふうに我々も当然思っていたんですが、その分、前線におられる皆さんの若返りを図っていくべきだと。海外の部隊と一緒になるときに、やはり五十代、四十代の方々が日本側に多い。ほかの海外の部隊の方は、やはり二十代、三十代の方々と接することが多いんだと。
これは、いろんな指揮系統や自衛隊の組織の流れというのはよく分かっているんですが、これから、前線部隊に対して、どのように若手、世界に準ずるというのは変なんですけれども、ここを若返らせるということに対して大臣はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○中谷国務大臣 自衛隊は、任務上、組織を常に精強な状態に維持するという必要がありますし、若年定年制とか任期制を採用しておりますが、非常に今、保有する装備品が高度化し、複雑化し、任務が多様化し、国際化するということで、前線の部隊においても、知識、技能、経験、これを豊富に備えた人材も必要とされております。
このため、自衛隊においては、年齢とか体力のみならず、やはり知識、技能、経験、様々な要素を総合的に考慮して部隊の配置を行っているところでありまして、現在も前線の部隊には若手隊員を配置しているところでありますが、引き続き、防衛省・自衛隊の任務の円滑な遂行のために、適切な人員配置に努めてまいりたいと思います。
今、非常に若手の募集不足ということもありますけれども、その点は、機械化とか無人化とか情報化で補うということも必要でありますし、また、こういった知識、技能、経験、こういうものを活用して、人を使わずに、こういった知識や技能によって国を守るということも必要になってきているような気がいたします。
○池畑委員 今、大臣に新たなお話をいただきました。やはり、人工知能を含めた、いろいろな部隊の組立て方があるんじゃないかなというふうに思うという答弁だったというふうに思います。
それにつながっていくんですが、前回の安全保障委員会でも質問もさせていただきました。自衛官の処遇改善についてであります。
自衛官の処遇改善については、今日も本会議場でも質問がありましたし、我々も常に危惧しているところではありますが、我が国の防衛のために今この瞬間にも任務に当たっていただいている方々に対して、安心して勤務ができる環境整備をすることは当然大事だというふうに思っております。防衛省だけではなくて、政府が本気で今取り組んでいかなければいけないというふうに感じております。きちんと運営をされていると思いますけれども、当然、関係閣僚会議においても、昨年末に基本方針が出されまして、七年度の予算にも関連経費が計上されていますが、果たしてそれで十分なのかというふうに思っております。
更なる自衛官の処遇改善に向けて、防衛大臣のお考えを改めてお伺いさせていただきたいと思います。
○中谷国務大臣 世代というものは急速に替わってきておりまして、先日、隊員さんとお話をしましたら、九・一一テロを知らないという人とか、また、湾岸戦争を知らない、生まれる前の話ですというようなことで、自衛隊が発足して今まで歩んできた経緯とか、現在の世界の情勢の中で起こってきたことに対する認識も、しっかりとこれは教育しながらやっていかなければならないということ。
それから、ドローンとか、また人工知能とか、AIとか、やはり、そういうものを通じて国防に活用していくというようなことも必要になってきておりますので、こういう意味で、今、抜本的改革を推進いたしておりますけれども、こういった基本方針に基づいてこういった事業を早めに行うと同時に、また状況が大いに変わってきておりますので、新しい状況の中でどうあるべきかということも部内で検討しながらやっていく。
そういう中で、新たな意欲、国を守るということについても若い世代なりに自ら考えていただいて、こういった処遇改善は実施しますけれども、それに加えて、新たな国防意識というものを強く持っていただくように教育も実施してまいりたいと思っております。
○池畑委員 そのとおりだと思います。処遇改善というのは、これだけ努力をしながら、中身が伴わなければ意味がないというふうに思いますので、是非、しっかり教育をされる上で、こういった処遇改善も含めてやっているんだぞというのを逆に見せていける立場になれるというふうに思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。
私も、選挙区に姫路駐屯地がありまして、そこで家族会にも参加させていただいておりますけれども、処遇改善を、今大臣からもありました、進める中でも、厳しい任務に従事する自衛官の方々が後顧の憂いなく安心して任務に専念できるようにするためには、前回も質問させていただきましたが、衣食住が大事だというふうに思っております。
ピークに比べて、一万人ぐらい、なかなか募集ができない、そして他の仕事に就いてしまっているんじゃないかなというふうに思いますが、その中で、現場の自衛官の声を聞かせていただきますと、自衛官の宿舎についてなんですけれども、これはもう今大臣言われましたけれども、たくさん、順次改築をしていただいているんですけれども、その中で、老築を始めとする問題があるというふうに聞いております。
また、自衛官の各個々の能力を十分に発揮するには、やはり家族からの支えが必要だと。その中で、WiFiの設備とか、常日頃から、携帯がつながるとか、今どきの子ですから、そういったことがすごくありがたいんだということで、アンケートを取られているというふうにも聞かせていただきました。隊員も、実際、そういう、WiFiがつながったり、普通な環境にいられるということに対してありがたいという言葉も当然言われておられました。その中で、隊員を支える家族への支援も大変重要だというふうに思っております。
宿舎の老築化対策の推進や、隊員の家族への支援について、防衛省の見解をまず伺わせていただきたいですし、併せて、地元であります姫路駐屯地の宿舎の整備状況についてもお聞かせいただきたいと思います。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
自衛隊がその能力を十分に発揮し、士気高く任務を全うするためには、隊員、そしてその家族の居住環境の改善に取り組むことが重要です。
このため、宿舎の老朽化対策につきましては、宿舎の建て替えという方法、また、外壁改修及び内装のリノベーションなどの大規模な全面改修、こういった方法、また、外壁、内装、給排水設備改修などを実施する中規模な部分改修、こういったやり方を組み合わせて計画的な措置を実施していくことで、居住環境を改善していくこととしております。
また、委員御指摘のとおり、家族に対する支援というのはもちろん重要でございます。
家族支援に関しましては、具体的には、庁内託児施設の維持整備、また、緊急登庁支援の充実、そしてシッターサービス、こういった活用などを行っているところでございまして、これを更に進めてまいりたいと思っております。
また、委員、家族会ということでございますが、先月、防衛省と自衛隊家族会及び隊友会との間で、家族支援の協力に関する協定を締結いたしました。災害派遣等に従事する隊員の留守家族に対する支援を拡充するということにいたしております。
防衛省・自衛隊としては、引き続き、隊員家族や関係団体等との連携も含め、家族支援施策の充実に努めてまいります。
最後に、委員お尋ねの姫路駐屯地の宿舎の整備状況でございますけれども、宿舎戸数約百七十戸、このうちの約六割につきまして、これまで、外壁改修及び内装のリノベーションなどの大規模な全面改修を実施しております。
今後とも、計画的に整備を行い、居住環境の改善に取り組んでまいります。
○池畑委員 地域で頑張る自衛官に対して整備をしていくのも大事だけれども、改めて、同じことを申し上げますが、やはり、どういうふうに国を守っていくのかということも含めて教育する環境というのはすごく大事だというふうに思いますので、今後とも、整備について是非よろしくお願いしたいと思います。
それでは、最後の質問にさせていただきます。
自衛官の再就職支援についてお伺いさせていただきたいと思います。
基本方針では、新たな生涯設計の確立として、再就職先の拡充などが記載されています。一般の公務員より早く定年を迎える自衛官でありますので、今日答弁もありました、四十倍の募集があるということでありまして、おおという声も聞かれておりましたので、やはりそういった、自衛官が再就職をしていく上で、これから求められているところもあるというふうに思いますが、スキルの、経験というのは大変貴重であったというふうに思います。これは社会全体で活用しない手はないというふうにこの間質問させていただきました。
その中で、退役自衛官の再就職先支援については、政府全体でより一層力を入れていかなければいけないというふうに思いますし、前回質問させていただきました、農林水産業への再就職のための農業大学校へのリスキリングということで質問させていただきました。これは、農林水産大臣、防衛大臣、そして予算委員会で総理にも聞かせていただきまして、改めて御賛同いただいたというふうに思っております。日本農業新聞でも前面に、一面に出していただきまして、大臣もちゃんと写っておりましたので、是非もう一回見ていただきたいというふうに思うんです。
これは、防衛省の中で議論も進んでいるということだったんですが、進み具合も含めて防衛省の見解をお聞かせいただきたいと思います。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
昨年の十二月の安全保障委員会、そして今年三月の予算委員会におきまして、委員から、農業大学校を活用した、退職した自衛官の就農支援について御提案いただきました。ありがとうございました。
防衛省・自衛隊におきましては、退職自衛官の希望やニーズに基づき再就職支援を行っており、現在、就農を希望する退職自衛官に対して、地方農政局等とも調整しながら、農業の業種説明会、そしてまた農業インターンシップを実施しているところでございます。
また、委員の御提案も踏まえまして、就職援護を実際に現場で実施している自衛隊地方協力本部、ここに対して、今、農業分野への再就職に関する聞き取りを行いつつ、退職予定自衛官の希望やニーズ、これを踏まえながら、周知の在り方、また就農支援の在り方について検討しているところでございます。
いずれにいたしましても、自衛隊で培った知識、技能、経験を生かした再就職先を拡充することは重要でございますので、農林水産省とも連携いたしまして、就農を希望する退職自衛官を後押ししてまいりたいと考えております。
○池畑委員 是非、農林水産省も期待しておりますし、これから再就職をしていく上で、四十倍もの希望が来るわけですから、農林水産省としてもしっかり体制を整えながら、防衛省と連帯しながらこれからも進めていきたいですし、やはり、これから自衛隊が進む道というのは、これからこういった改善もしていくのも必要だというふうに思いますが、いかに他国と連帯しながら防衛していくかというのが一番大事なことだというふうに思いますので、今後とも、私たちもしっかりと支えていけるように努力して頑張っていきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。
これで質問を終わらせていただきたいと思います。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。池畑浩太朗君の質疑は終了いたしました。
次に、橋本幹彦君。
○橋本(幹)委員 国民民主党の橋本幹彦でございます。
今回はRAAの法案についての審議ということで、まず冒頭にその件をお尋ねいたします。
まず、本日の本会議で、立憲民主党の篠原議員から、こちらはACSAの共通規定化についてでありましたけれども、共通化することで、この安全保障委員会の場で意見聴取ができないんじゃないかというような質問がありました。このRAAについても同様だと思います。
RAAに関する条約の締結だけではなくて、防衛省に関係する条約の締結が国内法の規定に当たる場合、関係する委員会に対して報告して、その上で意見の聴取を受けるという事例は今までにあるでしょうか。
○濱本政府参考人 お答え申し上げます。
防衛省というよりは、より一般的な特定の国際約束を担保する法律について、条約を締結するたびに法律の所管委員会に報告していることがあるかということについて申し上げますと、一例としまして、社会保障協定につきまして、二〇〇七年の国会におきまして社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律が成立しておりまして、その際に、参議院の厚生労働委員会での附帯決議に基づきまして、新たに二国間の社会保障協定が締結される場合には、その内容を同委員会に報告することとされていると承知しております。
○橋本(幹)委員 質問の前段の報告を行うことがあるのかというところはお答えいただきました。
委員会を開いて国会議員からそれについて意見の聴取を受ける、そういった事例はありますでしょうか。
○濱本政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御紹介した例は、附帯決議において報告をすることとされている報告でございます。
その上で、外務省としましては、附帯決議に基づいて委員会を開いて審査している、そのような例は現段階では承知しておりません。
○橋本(幹)委員 ありがとうございます。
是非、国会における防衛省・自衛隊について広く意見聴取を求める場が今後も進展する、広がるよう願っております。
続いて、条約の中身に関わるところになってきますが、電波についてお伺いします。
今般、フィリピンとの条約においては、電波についての条約締結もあります。先ほどの本会議で定型化しているという話がありましたけれども、この電波の話を一つ取っても余り定型化していないのではないかと私は思いますが、いずれにせよ、締約国が使用する電波は、締約国あるいは日本国内において他国の軍隊が協定などに基づいて電波を使用することが想定されると思いますが、その際の電波は、当然、周波数帯が国内の周波数帯と重複することがあろうかと思います。
締約国ですとか他国の軍隊から事前に日本国に対して、どの電波帯を使用するのか、その通知はあるんでしょうか。
○荻原政府参考人 お答え申し上げます。
在日米軍以外の外国の軍隊が自衛隊との共同訓練等のため本邦内に持ち込む無線設備につきましては、従来より電波法に基づいて運用することが可能でございます。
当該無線設備の諸元等につきましては、外務省を通じて総務省に事前に連絡をいただくことになっておりまして、既存の無線システムに影響がないことを確認してございます。
○橋本(幹)委員 一般的な電波行政の枠に入るのかどうかを確認したいんですが、締約国ですとか、あるいは自衛隊もそうかもしれませんが、電波を使用するに当たっては、民生であれば、民間であれば電波使用料を支払うと思いますが、他国については電波使用料を払うんでしょうか。
○荻原政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘のございました電波利用料ですけれども、不法電波等の監視等の電波の適正な利用の確保に関しまして、無線局全体の受益を直接の目的として行う事務の処理に要する費用を、電波の利用状況に応じて無線局の免許人等の方々に負担を求めるものでございます。
締約国のような外国の軍隊が使用する無線局につきましては、国際慣行上の相互主義に基づきまして、電波利用料の徴収は行っていないところでございます。
○橋本(幹)委員 自衛隊は電波法の適用除外になっておりますが、締約国に対して使用料を求めないですとか一般の電波行政から外れるということは、それは軍隊という特性上からでしょうか。それとも、相互主義ということをおっしゃいましたけれども、相互主義によるものでしょうか。
今お答えいただいたのは相互主義だというお話ですけれども、それは、軍隊の特性上そういった配慮があるという側面もあったのではないかなと思いますけれども、その辺りはどのように整理されているでしょうか。
○荻原政府参考人 お答え申し上げます。
外国の軍隊が持ち込みます無線設備につきましては、先ほど申し上げましたとおり、電波法に基づいて運用することとしております。
ただ、電波利用料に関しましては、繰り返しになりますけれども、国際慣行上の相互主義に基づき、徴収は行っていないところでございます。
○橋本(幹)委員 観点を変えて質問します。
自衛隊法八十八条では防衛出動時の武力行使というものが定められておりますが、この際には国際慣例などに基づいて自衛隊は行動することになっています。その際にはあらゆる手段を講じて国防をしていくものと理解しますが、この手段のうちの一つとして電波は含まれるでしょうか。
○家護谷政府参考人 政府としましては、憲法九条の下において認められる武力の行使については、武力の行使の三要件に該当する場合の自衛の措置としてのものに限られると解してきております。
防衛出動を命ぜられた自衛隊が自衛隊法八十八条に基づく武力の行使としてどのような対応を行うかについては、実際に生じた状況に即して武力の行使の三要件に基づき個別具体的に判断する必要がありますが、防衛省・自衛隊としては、関連する国内法、国際法にのっとり、宇宙、サイバー、電磁波の領域と陸海空の領域を有機的に融合させ、我が国防衛に万全を期して対応に当たっております。
○橋本(幹)委員 今の答弁ですと、武力の行使の武力には電波も含まれるということだと思うのですけれども、そのような理解で合っているでしょうか。
○家護谷政府参考人 お答えいたします。
状況によりましては、そのようなものも含まれるという理解でございます。
○橋本(幹)委員 ありがとうございます。
防衛出動時において自衛隊が使用できる周波数帯、これは対処基本方針が定められています。ここではどのように自衛隊が使用できる電波を定めているのでしょうか。あらかじめ、こういう事態のときはこの周波数帯を使いますということなのか、それとも、事態の状況に応じて柔軟に対応していく、そういうような性質と理解してよいでしょうか。どちらでしょうか。
○門前政府参考人 お答えいたします。
武力攻撃事態等において、対処措置等の実施に当たり必要な電波の利用調整につきましては、特定公共施設利用法第十七条第一項に基づき、対策本部長がその時々の状況を勘案して定めるものでございまして、その時々、定めさせていただくというものでございます。
○橋本(幹)委員 その時々に応じてということですけれども、当然それは、自衛隊側からこういった使用をしたいという要望を上げて、それで調整を図る、そういうようなものだと思います。
自衛隊側は、軍事合理性に基づいて、武力に含まれることもあり得る電波をかくかくしかじかの周波数帯を使いたいと部隊なり現場なりが上申して、それを防衛省として最後に総合調整を図るというようなことだと思うのですけれども、そういった理解で合っているでしょうか。
○門前政府参考人 お答えいたします。
特定公共施設利用法は、我が国への直接攻撃や物理的な被害があることを念頭に、電波を含む特定公共施設等の利用に関し、武力攻撃排除のための自衛隊等の行動と住民避難等の国民保護措置が競合することを想定し、対策本部長に対してその利用に関する調整等の権限を与えることにより、自衛隊等の侵害排除と国民保護措置の的確かつ迅速な実施を図るものでございます。
○橋本(幹)委員 今のお答えですと、平時に比べて優先的に自衛隊なり、国民保護の観点もあるかと思いますけれども、電波使用ができると理解いたしました。
平時に自衛隊に割り当てられている周波数帯があります。それが有事の際には緩和されたり柔軟に使えるようになるということですけれども、これは各部隊から軍事合理性に基づいて軍事専門的見地から意見が上申されて行われるわけですけれども、ここが果たして健全に機能するのかというところを一つ懸念しております。
当然、陸海空、サイバー、いろいろな領域があります。いろいろな方面があります。それで、各部隊で、例えばドローンを使用する、あるいは無線を使用する。当然、電波妨害があったときに、一々、この周波数帯を使いますかと確認しなければならない、そういう手続になると思うんです。
確認が迅速にできればいいですけれども、そもそも、例えば電波妨害をされていたら確認のしようもないわけで、現場の判断で割り当てられている領域以外も使用せざるを得ない状況というのは生じ得るのではないかと思いますけれども、その辺りを防衛省はどのように想定しているでしょうか。
○家護谷政府参考人 お答えいたします。
自衛隊は、無線機やレーダー等、電波を発する装備品を新たに導入する際、総務省に対して周波数の申請を行い、総務大臣の承認を得ることとしています。一方、総務省は、電波干渉等の障害の有無を確認することにより、自衛隊と自衛隊以外の機関による電波利用の両立を図っているものと承知しております。
次に、訓練の場面でございますけれども、平素行われる訓練等で当該装備品を利用する場合、導入等に際して、あらかじめ総務省から承認を得ている周波数を使用することで対応可能であれば、改めて承認を得ることはもちろん必要ありません。
仮に、訓練を行う上で承認を得ていない周波数が新たに必要な場合には、総務省に承認を申請することになりますが、これまで、訓練の開始までに確実に承認を得ております。
また、防衛省と総務省との間では、自然災害等の緊急時に使用する可能性がある周波数をあらかじめ共有するとともに、仮に承認されていない周波数が必要となった場合でも、総務省から迅速に承認を得られるよう、二十四時間連絡が取れる体制を構築しております。
加えて、迅速性を更に向上させるべく、防衛省と総務省の間で調整を行い、災害派遣時には総務省への連絡を行うことなく全国で直ちに無人機を使用できるよう、総務省からあらかじめ承認を得ております。
○橋本(幹)委員 今のお答えの前半の部分は有事の話ではないので、別の観点ですね。後半の方の有事の際の使用についてお尋ねしています。
そもそも、あらかじめ予見していた周波数帯が電波妨害によって使えないというときに、そのときの現場の判断で使えるようにするべきではないかという問題意識から伺っているわけです。
例えば、無人の離島において東京と同じような電波環境である、そのように認識することは極めて非合理的だと思います。それは作戦環境によって柔軟に状況を認識するべきだと思いますし、資料一の三に、スペクトラムアナライザー、これは民生品ですけれども、こういった製品もあります。
その領域においてどういった電波が実際に使われているのか、どういった周波数が使われているのか、それは敵も含めてどのような電波が使われているのかを計測することはできるわけですから、有事の際は実態に基づいた電波使用を防衛省・自衛隊も一般の電波監理の枠組みを超えて考えるべきではないかと考えますけれども、防衛省の見解はいかがでしょうか。
○家護谷政府参考人 お答えいたします。
そもそも、装備品を買った段階で大体この周波数を使うということは分かっておりますので、まず、ふだんから使う周波数について総務省から承認をいただく。それから、それ以外で必要がありそうな周波数についても、ふだんから情報交換しておくことで総務省側の審査が早く終わるようにするということが今の基本的な考え方でございます。
それから、委員御指摘のスペクトラムアナライザーでございますけれども、電磁波領域で活動する部隊が結構標準的に装備するような機材かなというふうに考えております。
○橋本(幹)委員 ですから、質問は、行政的に予見して行っていくという局面ではなくて、有事の局面、それは武力の行使といった究極の使命を果たすときに当たって、どこまで割り当てられた領域を守る必要があるのかという話です。それはやはり、軍事専門的見地から、あるいは合理性の見地から、場合によってはあらかじめ割り当てられている帯域以外も使えるようにするべきだと思いますし、その想定もするべきだと思います。
実際、周波数帯が実態に基づかない電波監理になっているのではないかと思っております。
例えば、海外の製品、ドローンなり、あるいは無線機なり、こういったものを国内に持ち込んで、当然技適を取っていないわけですけれども、そういったものを持ち込んで使用したら、それは日本国が規定している電波監理の外で使用されるということですし、こういったものは当然あるものだと思いますけれども、これは通告していないんですけれども、総務省としてはそういった事例は認知されているでしょうか。
○荻原政府参考人 総務省といたしましても、技適等を取っていなくて違法な形で使用されている無線設備が存在することは否定できません。そのため、先ほど申し上げました電波利用料を活用しまして電波監視を実施してございます。
申請等があった場合には、発信源を突き止めて、例えば警察と協力して告発する、そういった取組を実施してございます。
○橋本(幹)委員 ありがとうございます。
繰り返しになりますけれども、防衛省に対して、作戦環境に応じて電波の使用は柔軟にするべきだと思います。国民や住民がいないときであれば、当然、携帯電話の電波も使わないわけですし、放送の周波数帯を、相当な周波数帯があるわけですけれども、そこを確保していく合理的な理由もないと思います。
そもそも、敵は日本の電波行政お構いなしにやってくるわけです。どんな周波数帯を使おうとも関係ないわけですから。是非そういったところを御検討いただければと思いますけれども、防衛大臣の所感はいかがでしょうか。
○中谷国務大臣 緊急事態におきましては、防衛省のみならず、警察や消防や、総務省とか他の省庁も電波の確保と使用は必要でございます。
そういう意味で、平素から総務省の中で電波の割当てとか使用を調整いただいておりますので、その分で所要の周波数の確保に努めておくべきだと思っております。
○橋本(幹)委員 結局、行政的な側面からのお話しか伺えませんでしたけれども、是非、軍事合理性に基づいた、軍事専門的見地に基づいた電波使用とは何なのかというところは防衛省の中で検討していただければと思っております。
続いて、今回は締約国を想定する法案ですけれども、そもそも自分の国は自分で守らなければいけないわけであって、そこの根本のところをお伺いしたいと思います。
精強性という言葉がよく出てきます。私は、精強性ですとか隊員の名誉や誇りといった言葉が出てきたときは要注意だと思っています。というのも、そこで思考が停止するからです。これは精強性のためにやっているんです、これは名誉と誇りのためにやっているんです、それはそういうふうな言い方もできるかもしれないけれども、最終的には国防に資するのかどうかというところで測ることができなければいけないわけで、先日、名誉と誇りとは何なのかという話をしましたけれども、是非、この精強性とはどういうものなのかというところを議論したいと思います。
まず大臣にお伺いしますが、精強性はなぜ自衛隊に必要なんでしょうか。そして、自衛隊の言う精強とはどういうような状態を意味しているのでしょうか。
○中谷国務大臣 まず、今のウクライナを見ても分かるように、あらゆる侵略とか災害の事態にしっかりと国を守るという点におきましては、国防の面におきましては精強性というものがまず求められると思います。
精強性とは何かということで、隊員の体力、気力、使命感、困難に立ち向かう勇気、そして自衛隊の力を発揮する、そういった状態でありまして、そういう意味においては、資質を強靱化することと、今、軍事技術が非常に進展しておりますので、軍事技術や装備品の高度化などにおいて知識、判断力、技術を備えた多面的な能力、そして、最後の最後までこの国を守り抜くという使命感、これは単に自衛官のみならず、国民に必要なことでありますので、国民の意識の中に国防というものも兼ね備えているということで、そういう面では、強靱化、強さという意味があるのではないかと思います。
○橋本(幹)委員 大変すばらしい答弁をありがとうございます。
実は、この精強性の議論は国会で全然されてきませんでした。調査室に調査を依頼したところ、近年で議論されたことはありません、直近の議論が実は民主党政権下であると。配付資料、一の四から一の五、一の六がそれに当たりますけれども、当時の総理大臣は野田佳彦さんで、石破茂議員が野田総理ですとか当時の大臣に質問する形で精強性とは何なのかというところを確認したのが直近の例でした。
そのときの答弁を見ますと、安住防衛副大臣、あるいは財務大臣として答弁していますけれども、バランスのいい部隊をつくること、それは若手の隊員も含めていいピラミッドができていることが重要なのであるということを答弁しておりました。そこは精強性の一要素であると思います。
今中谷大臣がおっしゃっていただいたところは、一言で言えば知徳体ですとか、国民も含めた周辺がバランスよくあって初めて精強性なんだというところを確認できたと思います。
是非、この精強性の議論、何が精強性なのかというところで、十年前から部隊のバランス、隊員の充足のバランスが大事であるという議論をしていたのにもかかわらず、今、実態としてこういった募集難になってしまった、バランスの悪い部隊になってしまったというところは大変反省しなければならないところだと思いますけれども、この議論から本日は一歩進みまして、精強性とは何なのか、非常に話が広がったと思います。
なぜ精強性という言葉にこだわるかといいますと、各部隊でよく使う言葉だからです。いろいろな部隊、陸海空問わず、現場指揮官、小隊、分隊も含めて精強性というのをよく使います。何なら、隊員のシャツにも精強と書いてあったりするわけです。
ただ、その精強の意味するところがよく分からないという問題があると思います。もちろん、それは各々思いがあって使う分には結構ですけれども、結局、各部隊が精強であるということは常に求められているわけですけれども、ただ、その精強性の方向性が、ただただ体力をつければいいであるだとか、そういうような方向性に行きがちですし、あるいは、先ほど安住副大臣、野田総理の答弁の話もしましたけれども、部隊のバランスのこと、それだけでも精強性ではない。やはり、知徳体、技術も含めて、使命感も含めて、国民の心も含めて、精強性を構成する要素なんだというところ、ここが議論の立脚点になるんだと思います。是非、今中谷大臣にお答えいただいたことを立脚点として、精強な部隊、精強な自衛隊とは何なのかというところをもう一度考え直していただければと思います。
ここまで言って大変恐縮ですけれども、中谷大臣は、先日の防衛大学校の卒業式で磨甎という言葉を使ってはなむけの言葉にされました。あるいは、廉恥、真勇、礼節、これは武士道の侍精神を表すものだというような御発言もありました。一つ、私は、一般的な通念として、この武士道であるとか磨甎という言葉は、隊員の心のありよう、それは一人一人が自己修練しなければいけないわけですけれども、そういった方向性を示す意味合いがあったのかなと思いますけれども、ここでお伺いします。
武士道や磨甎、どういった願いを込めてこの言葉を使われたのでしょうか。
○中谷国務大臣 卒業式でお話をする機会がありましたので、私自身が防衛大学校で学んでいまだに忘れ得ない、よい言葉を選びました。
この磨甎というのは、道元の思想の中で、修行の中で弟子たちが念仏を唱えているところに道元が行って、何のために念仏を唱えているんだということで、それは仏になるためですという話をしたら、道元がおもむろに瓦を持ち出して、それは瓦を磨くようなものですよということで瓦を磨き始めました。それは、決して瓦を磨いて仏になるということではないので、それをやるということを続けることが仏の道につながるという教えだということで、努力を惜しまないようにという話をしました。
それから、廉恥、真勇、礼節という学生綱領をいまだに忘れていないのですけれども、廉恥というのは、恥を知りなさい。真勇というのは、本当の勇気を奮いなさい。礼節というのは、礼儀作法を持て。じっくり考えてみますと、古来、武士道の中で、武士たるものは恥を重んじるとか、真の勇気を出すとか、礼節を持つとか、まさに日本のもののふというか武士たちがずっと伝えてきた精神は共通するものではないかなと個人的に思い出したわけでありますので、せっかくの機会でありますので、学生たちに話をしたところでございます。
○橋本(幹)委員 ありがとうございます。
防大の卒業生へのはなむけの言葉としては大変すばらしいと思います。ただ、私なりの言葉で言うと、求道者たれというような言葉なのかな。求道者たれ。とにかく、長い自衛官の生涯をかけて自己を陶冶してほしい、自己研さんに励んでほしい、そういったメッセージがあったのかなと受け止めましたが、ともすると、この精強であるということが、先ほど大臣はすばらしい答弁をしていただきましたけれども、自衛隊の中でぼやけていて、そして、どういうふうな方向性で部隊を錬成していくべきなのか、人を育てていくべきなのかという目標が、防衛省・自衛隊の中にははっきりとしたビジョンがないのではないかと思っているわけです。
どうしても、求道者たれ、自己陶冶していくんだという要素が強くて、それはそれですばらしいことだと思うんですけれども、一方で、武士道という言葉、武士という言葉、もののふという言葉がありますが、自衛隊も近代軍の延長にあるんだとしたら、近代軍というのはそもそも武士を否定して出てきたわけです。封建的な武装集団ではなくて、近代国家の下で、今日においては民主主義ですとか立憲主義の下で、どのように軍隊という、防衛力という物すごく大きな武力を、暴力装置を使いこなしていくのかという観点も大事だろうと思うわけです。
憲法にも自衛隊に関する規定はありません。これについてはいろいろな意見はあると思いますけれども、一つ、これは民主主義や立憲主義の観点からも私は大変問題であると思いますし、自衛官は武士ではないですし、令外の官でもありませんから、是非、近代軍としてあるべき姿という観点から、精強性、先ほどおっしゃったような要素を基に、どういうふうな自衛隊があるべきなのかというところをしっかりと検討していくべきだと思います。
それを、当然、防衛省の背広組だけではなくて制服組も一生懸命考えて、あるいは、現場の運用をしていく中でのフィードバックを基に練り上げていくものだと思いますけれども、そうした精強な部隊のつくり方、防衛省ではどのように精強な部隊を育成しているんでしょうか。そして、事、背広組と制服組、この精強な部隊を育てるに当たっての役割分担はどのようなものになっているでしょうか。
○中谷国務大臣 それは、これという答えはないと思います。基本的に幹部自衛官になる者でありますので、幹部自らが考えながらそれを実践していくということでございますので、それぞれ、仕事を通じてこういうやり方がいいんだということを体得して学んでいく。
精強になるということも、これは答えがなくて、そうあることを続けて努力をしているうちに精強になるわけでありますので、そういった努力を続けていってほしいということでございます。
それから、廉恥、真勇、礼節につきましては、別に武士道がいいということではなくて、統率者として、指揮者として、教官として上に立つべき人物になるわけでありますので、そういう面におきましては、恥ずかしくないような人間に、本当のときに勇気が出せるような人間に、そして、いかなるときでも礼儀作法を忘れない人間に、いわゆるこういった資質の面を身につけてほしいということを言いたかったわけでございます。
○橋本(幹)委員 その中谷大臣の思いは私は届くのですけれども、ただ、私が懸念しているのは、自衛隊というのが過度に属人的になっているのではないか、アマチュアリズムになっているのではないかというような懸念です。
観点を変えて質問しますけれども、資料一の六から一の八、防衛大学校における訓示、式辞、そして学生の答辞がございます。
学生の答辞で、令和六年度、防衛大学校は変革したというような答辞がありました。この変革はどういった内容だったのでしょうか。
○中谷国務大臣 例えば、今回卒業した六十九期生、彼らは、防大生活の最後の年に、防大は大きな変革期を迎え、学生間の指導の当たり前を覆すときが来たと述べまして、時代の変遷とともに指導の在り方を対応させ、上下級生の関わり合いを進化させる。そして、本質は不変であるけれども、全ては強い組織になるためにあるという中で、組織に属する全ての人の能力を遺憾なく発揮するという考えの下に、例えば、容儀点検の簡略化とか、朝の清掃の上級生の参加とか、学生間の指導の上級生、下級生の関わりを学生自らが率先して変えたと承知しております。
これは非常に立派なことで、従来のやり方を変えるということで、自分たちで考えて、上級生が偉くしているのがリーダーシップではないんだ、みんなが力を合わせてやることが大事なんだということを学生自らが考えて、時代の変遷とともに防衛大学校はいかにあるべきか、学生たちが考えて変化させてきたということで、立派なことだと私は思います。
○橋本(幹)委員 六十九期生の境遇は大変つらいものがあったと思います。入校してからコロナが始まって、想像を絶するような大変な中で四年間過ごされたんだと思います。
ただ、変革の結果が容儀点検の簡略化と朝の清掃の話だけだったとするなら、私はそれは大した変革ではないのではないかと思うわけです。はっきり言って、私は六十二期生ですけれども、清掃については六十二期のときにも変革していました。
いろいろな変革は場面場面であるわけであって、変革の在り方、特に、防大というのは、陸海空、サイバーも含めて幹部の候補生がそろう場所です。どのような学生であるべきなのかというところは、当然、作戦環境、安全保障環境が変化して、それに基づいて、陸海空からの要請に基づいて防大はどういった人物を育てていくべきなのかを考えるべきであって、はっきり言って、言い方は悪いかもしれないですけれども、コロナで大変なところの変革を学生に投げた、そういうふうな見方も場合によってはできるのではないかと思います。
実態は分かりません。これは一つの外形的なところから見ただけの話でありますから、六十九期生、そして今の防大生も大変な努力、悩み、苦しみはあったと思いますけれども、問題にしたいのは、結局、現場に任せて精強性とは何かというのがはっきりとしない中で、廉恥、真勇、礼節という自己修養の目標だけ掲げて、それの実行を任せましょうということで、結果として学生間指導の在り方がいろいろある。このような在り方で将来の自衛隊を担う人物を育てていて果たしていいんだろうかと思うわけです。
例えば、防大はパレードをやっています。私のときには一年間に百二十時間パレードをやっていました。中央観閲式に参加するときはもっとやっています。百二十時間というと、単位でいうと五個、六個の単位に相当するわけです。
パレードに全く意味がないとは思いません。私も中央観閲式に出て大変その奥深さは感じたわけですけれども、ただ、一年間で百二十時間、それを四年間やっていたら相当な時間になるわけで、防大生の貴重な時間をどこまでパレードに費やすのかというところについては、それは当然、訓練部ですとかいろいろなところが補佐するんでしょうけれども、それは防大だけに任すのではなくて、陸海空それぞれの要請に基づいて、どういう人物であるべきなのかという理想があって防大の教育というのはあるべきだと思っています。
資料一の九に、初代学校長槇智雄さんに関する資料を載せています。これを読み上げますけれども、この槇校長については、戦後、敗戦後にどうやって自衛隊をつくっていくか、防大をつくっていくかというときに大変悩まれたわけであります。
そして、「建学の精神 自主自律」という資料に書いているところですけれども、戦前とは異なる新しい幹部像を描き、それを実現するための教育、訓練、集団生活等を構想し、具体化しなければなりませんでした。いずれの使命にも戦前のように軍人勅諭等で表された明確な指針がなく、新憲法以外に頼るべき典拠もない中で、槇は己の人生の中で培った価値観、思想、教養を傾けて、パイオニアとしての重責を果たしましたと書いてあるわけです。
民主主義の下でどのような軍隊、どのような自衛隊をつくっていくかというところ、理念としては大変崇高なものだと思います。ただ、問題は、槇智雄さんという一個人の哲学によっているということです。強いて言えば槇イズムとでもいうべきでしょうか。
槇イズムは槇イズムですばらしいかもしれないですが、当然、安全保障環境は変わるし、槇初代学校長はアメリカの当時の士官学校を参照して防衛大学校の構想を練ったわけです。当時のアメリカの士官学校と今のアメリカの士官学校は全く違います。当時のアメリカの士官学校はパレード重視であったかもしれません。あるいは、壮絶なしばきというものがあったというふうに聞いていますけれども、今の米国の士官学校は当然状況が違うわけです。
これは、防大が盲腸のように、自衛隊が大きく変革していくときにその変革の波から取り残されて、それが学生による自主的な変革というところでなってしまったのではないかと懸念しております。
是非、防大がどのような教育であるべきかというところについては、学生ではなくて自衛官が、そして防衛省が一生懸命考えなければいけない話だと思います。そのときにどのように考えるべきなのかというところを話したいんですけれども、これは私が今ここでああだこうだ言う話でもないと思うんです。あるいは、今の学校長が言うべき話でもないんだと思います。そこは、本当に謙虚に歴史に学んで、どのような組織であるべきなのかというところを研究して知的基盤を積み重ねていって、その上で、あるべき姿を示していくべきだと思います。
そこで、知的基盤についてお伺いしますが、先ほどの大臣のお答えでは、知的基盤は精強性の一つを構成するのではないかというような答弁であったと思います。大変重要な答弁であったと思いますが、この知的基盤の中で欠かせないワードが軍事専門的見地というものです。
この軍事専門的見地とは一体何でしょうか。
○萬浪政府参考人 お答え申し上げます。
先生がお尋ねになる中で、文民統制等々のときにも出てまいりましたけれども、軍事専門的見地というところで申しますと、部隊の指揮命令や作戦の立案、あるいは部隊や装備の能力の的確な把握、部隊の的確な錬成等々に関する知識を指すものだというふうに考えてございます。
○橋本(幹)委員 今言っていただいたのは極めて抽象的な言葉ですけれども、では、その軍事専門的見地を防衛省としては自衛官にいかに育成していく計画なんでしょうか。
○遠藤委員長 もう一度。
○橋本(幹)委員 これは通告している質問そのままです。軍事専門的見地をいかに育成する計画か、防衛省の計画をお答えください。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
自衛隊の使命は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことにあり、我が国を防衛することを主たる任務としており、こうした任務を達成するための高度な知識や資質を有する自衛官を育成しているところでございます。
例えば、こうした知識や資質を身につけるため、各陸海空自衛隊幹部学校等における基本教育といたしまして、戦略、戦術、リーダーシップ、規律などの知識と素養を身につけるとともに、それぞれの職種、職域の学校におきまして、装備品等の運用に関する知識、情報通信、衛生といった術科を教育しております。
また、諸外国の軍に関する大学、国防大学等に留学する、こういった教育機会も設けまして、軍事専門的見地を身につけた優秀な自衛官の育成に努めているところでございます。
○橋本(幹)委員 今、青木局長から諸外国の大学という話がありました。
例えば、米国ですね。作戦術というのは、術、アートなんです。つまり、それは修士や博士号、こういったものも大学で付与しているわけですけれども、それでは、防衛省・自衛隊では、そういった修士や博士、この作戦術についてどういった人事管理を行っているでしょうか。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
まず、修士、博士ですけれども、一般の大学あるいは大学院、防衛大学校でも研究課程を卒業、修了いたしますと修士、博士を取ることができますけれども、自衛隊における人事管理におきましては、自衛隊に入るための試験、例えば一般幹部候補生であれば一般幹部候補生の試験、そういった各種試験を受けて入ってきておりますので、基本的には、その試験を通った者であれば、修士がある、博士がある、そういうことを要件として人事管理を行っているということはございません。
○橋本(幹)委員 資料一の十、自衛官で博士課程、修士課程を持っている者の人数を示しています。管理していない結果がこの状況ですけれども、知的基盤を責任を持って整備していくときに修士や博士というのは重要だと考えます。
というのも、修士号、博士号というのは知性の証明書になるわけです。それは、ただただ自衛官、自衛隊だけが、自分たちはこういう作戦術を考えています、こういう戦略を考えていますと言っても、それが他国で通用しなければ全く意味がない。外から見て通用しないものであってはいけないわけです。そこは知識に対する謙虚さといいますか、尊敬、敬意を払うという意味でも、修士号、博士号をもって知的基盤を統制していくことは大変重要であると思います。
今は時間が迫っていますのでこれ以上は述べませんけれども、知的基盤は大変重要です。先ほどの大臣の答弁は精強性を考える土台になる話ですけれども、どういう部隊が精強なのか、どういう教育をしていかなければならないのかというのは、それは思いつきや時の担当者が場当たり的に考える話ではなくて、やはりそれは知性の積み重ねであるというふうに思います。
中谷大臣は、まさに防大の卒業式の訓示の際には、高い教養を持った人材になってくださいという訓示をされたわけです。それがそれぞれ一人一人の自己錬成に任されるのではなくて、自衛隊としても組織的に錬成していく、そういった組織にしていただきたいと願っております。
最後に、広報の意義という項目に入りますけれども、統合作戦司令部ができました。統合作戦司令官が先日会見を行いましたけれども、こういった会見は定期的に行われるんでしょうか。
○萬浪政府参考人 お答え申し上げます。
三月二十四日に新編されました統合作戦司令部につきましては、その日、新たに編成されたということで記者会見を司令官から行いましたけれども、定期的に記者会見を行うことは考えてございません。
○橋本(幹)委員 各幕僚長は記者会見を行っております。定例的に行っておりますけれども、これの目的は何でしょうか。
○萬浪政府参考人 各幕僚長は毎週会見を行ってございますけれども、これにつきましては、防衛省・自衛隊の分かりやすい広報活動を積極的に行っていく、それによって国民の信頼と協力を得ていくことが重要だというふうに考えている中で、その取組の一つとして、各幕僚長が防衛大臣を軍事専門的見地から補佐する立場にあって、その専門性を生かして、記者会見を通じて、部隊運用に関することを始めとして、求められる説明責任を果たす、これが先ほど申しました国民の信頼と協力を得る上で意義があるものと考えているためということでございます。
○橋本(幹)委員 ありがとうございます。
最後の質問です。
平成十九年十月二十六日、衆議院の国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会において、防衛大臣が次のように発言しております。「悉皆調査を今かけておりますが、先進諸国において制服軍人、他国では軍人というのでしょう、それが国会に出て専門的な技術的な見地で意見を述べないという国は日本以外にはないと私は承知しております。」これは当時の石破茂防衛大臣の答弁であります。当時そこには理事として中谷大臣もいらっしゃったわけですけれども、この悉皆調査の結果はどうなっているでしょうか。
○萬浪政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の調査に関しまして、当時の資料、平成十九年当時のものでございますが、等々を我々としても確認いたしましたところ、公刊資料の確認からの調査結果でございますけれども、例えば、米国であれば、軍事委員会等の公聴会に出席を求められた場合に、軍人が証人として将官クラスを中心に出席することがある。また、イギリスやフランス、ドイツなどといった西欧主要国におきましても、軍人が議会において証人等として出席することが何かしらあったという結果があったと承知してございます。
○橋本(幹)委員 是非、その調査の結果を委員会の方に書面で出していただきたいと思いますが、お取り計らいをお願いいたします。
○遠藤委員長 理事会で協議いたします。
○橋本(幹)委員 終わります。
○遠藤委員長 お疲れさまでした。橋本君の質疑は終了いたしました。
次に、山崎正恭君。
○山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。
本日も御質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
まず初めに、私は四国比例ブロックの選出でありますが、先日、愛媛県今治で起きました山火事におきまして、自衛隊の皆様方の活動によりまして何とか鎮火することができました。大変にありがとうございました。
それでは、貴重なお時間ですので、早速質問に入らせていただきます。
まず初めに、国の損害賠償の特例についてお伺いします。
本法律案の第十二条では、締約国軍隊、つまり自衛隊とともに活動する相手側の軍隊が日本国内で公務中に違法に他人に損害を加えたときは、日本政府がその損害を賠償すると規定されています。
そこで、この法案第十二条の他人について、この他人の中には自衛隊員が除かれていると理解していますが、その解釈はどのような考え方によるものか、お伺いいたします。
○大和政府参考人 お答えいたします。
御指摘の本法案第十二条は、訪問部隊の構成員などがその職務を行う中で日本国内で他人に違法に損害を加えた場合、日本がその損害を賠償する責任を負うことを規定したものであります。
これは、これまで締結した円滑化協定において、公務執行中の訪問部隊の構成員などが第三者に損害を与えた場合、原則として、まず接受国が被害者に対して支払いを行うこととされていることに対応するものであります。
この点、円滑化協定にいう第三者には、訪問部隊又は公務執行中の接受国の部隊の構成員などは含まれないというふうに認識しておりまして、御指摘の条項にある公務執行中の自衛隊員はこの他人には含まれないということでございます。
○山崎(正)委員 ありがとうございます。
当人なので、そうではない方に損害を与えた場合ということで理解しています。
次に、締約国軍隊との共同訓練に参加していた自衛隊員が相手の締約国の軍隊から違法に損害を受けることは実際に起こり得ることだと思います。
そこで、本法案第十二条の他人に関する考え方との関係でお尋ねしますが、このような事案が発生した場合に、先ほどの規定には入らないんですけれども、被害者である自衛隊員自身はどのような賠償を受けることができるのか、その具体的な内容や手続についてお伺いいたします。
○大和政府参考人 お答えいたします。
これまでに締結された日豪、日英円滑化協定では、自国の部隊の構成員などが公務中に負傷又は死亡した場合の請求権については、相手国の部隊の構成員などの重過失又は故意により生じた場合を除き、相互に放棄しているところであります。
このため、お尋ねのような場合の自衛隊員の負傷又は死亡に対する賠償については、それが重過失又は故意により生じたと両国で相互に決定する場合には、賠償額について両国の間で協議して決定することとなります。
○山崎(正)委員 ありがとうございました。
次に、自衛隊員は、我が国の平和と安全のために日夜厳しい訓練を積んでおります。その際、不幸にして亡くなられる事故も発生しています。
そこで、政府は今、自衛隊員の処遇改善の取組を進めてくれていますが、その任務の特性上、危険と隣り合わせである自衛隊員に対する公務災害の補償制度はどのような制度となっているのでしょうか。例えば、一般の国家公務員と比較して違いはあるのか、そして、現状、国の補償制度として十分なものと言えるのか、大臣の認識をお伺いいたします。
○中谷国務大臣 自衛隊員に対する災害補償制度は、一般の国家公務員と同様の水準を基本としておりまして、職務の特殊性を踏まえて、危険が予知される任務に従事し、公務上の災害を受けた場合には、最大五割の加算措置が設けられております。
例えば、異常事態の発生時における人命等の保護、対領空侵犯措置、在外邦人の保護措置等の任務に従事する自衛隊員には、通常の障害補償、遺族補償等の額に最大五割を加算できるようになっております。
その上で、自衛隊の任務が年々拡大する中で、災害補償制度の充実も図ってきております。
具体的には、昨今、在外邦人輸送等の海外派遣の頻度が増していることに伴いまして、派遣部隊に先行して現地で連絡調整や情報収集を行う活動も増していることから、そうしたいわゆる先遣調査業務に従事し被災した場合も、本年四月から最大五割加算の対象に加えたところであります。
今後も、自衛隊の任務の拡大を踏まえまして、自衛隊員が後顧の憂いなく任務に従事できますように、不断に検討してまいりたいと思います。
○山崎(正)委員 大臣、五割を強調していただきましてありがとうございました。そういった危険の中で安心して任務に就いていただけるような十分な補償がますます充実していただけるよう、よろしくお願いいたします。
次に、危険な任務に臨む自衛隊員につきましては、公務遂行により死亡又は障害の状態となったときに賞じゅつ金を授与する制度があると承知しています。
そこで、この賞じゅつ金の目的と、自衛隊員の通常の訓練や外国軍隊との共同訓練においても授与されるのか、この点についてお伺いいたします。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
賞じゅつ金は、自衛隊の他の一般の職務と比較して、高度の危険が予測され、災害を受ける蓋然性が高い職務に従事する隊員が、一身の危険を顧みることなくその職務を遂行し、又はこれらの職務に特有の事故により殉職し又は障害の状態になった場合に授与されるものでございます。
具体的には、災害派遣、潜水作業、海賊対処行動、不発弾等の除去等の任務に従事中に死亡した場合、また、落下傘降下等の訓練中の事故で死亡した場合等は賞じゅつ金の対象となります。
これは、勇敢な行為をたたえ、弔慰又は見舞いの意を表するとともに、隊員が平素から安んじてその職務に専念し得るようにとの目的によるものでございます。
この考え方は、通常訓練や外国軍隊との共同訓練においても同じです。
○山崎(正)委員 ありがとうございました。
そういった形で、さらに賞じゅつ金も準備していただいて、しっかりとやれるような体制が整っているということで、今承知いたしました。
次に、国外処罰規定についてお伺いします。
本法律案の第十条によると、日本の検察官又は司法警察官は、締約国の当局から、締約国に所在する自衛隊員であって日本の法令による罪を犯したものを引き渡す旨の通知があった場合には、当該自衛隊員の引渡しを受けることになります。向こうの国で訓練中に日本の自衛隊員が日本の法令による罪を犯した場合は引渡しを受けることになる。
しかし、日本の法令に国外犯の処罰規定がない場合は日本の法令による罪を犯したことにならないため、締約国から当該自衛隊員の引渡しを受けることができません。
それどころか、これまで我が国が締結してきたオーストラリア及びイギリスとのRAAにおける刑事裁判権の規定によれば、接受国、いわゆる受入れ国の当局は、訪問部隊の構成員及び文民構成員に対し、接受国の法令によって罰することができる罪であって日本国の法令によっては罰することができないものについて専属的裁判権を行使する権利を有するとされていることから、当該自衛隊員の第一次裁判権は締約国となり、締約国の国内法に基づいて裁かれることになってしまいます。
この問題については、特に、国内法における過失運転致死罪のような過失犯に国外犯処罰規定がないことが何度も国会で議論されてきました。
締約国において自衛隊員が公務として自動車を運転することはよくあることと思われます。自動車を運転すれば、誰しも事故を起こす可能性があります。もちろん、そうした事故は許されるものではありません。しかし、我が国とは道路交通環境が異なる海外において、自衛隊員が職務上の命令により自動車を運転した際に過って起こした自動車事故について締約国の法令の下で刑事責任が問われる状態に置かれてしまうのは、いろいろな考えがあると思うんですけれども、自衛隊員の権利保護の観点からは好ましいとは思えません。是非我が国の法令で刑事責任を問う方向へ変えていただきたいと思います。
そこで、締約国で自衛隊員が公務として自動車運転をしていて過って事故を起こした場合などに、自衛隊員の権利保護の観点から、我が国の法令で刑事責任を問える国外処罰規定を整備していくことが重要と考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
○中谷国務大臣 私もこの件は非常に重要なことであると認識しております。
現在、国外における自衛隊員の過失行為に関わる国外犯罪規定の在り方については検討中でございます。
万が一自衛隊員が国外で国外犯罪規定のない罪を犯した場合には、個別の事案が発生した状況に応じて、当該隊員が適切に取り扱われるように締約国と協議しているということを実施いたしております。
○山崎(正)委員 ありがとうございます。
これはいろいろな考え方があるのは承知しておりまして、相手国で罪に問われなかったのに日本に戻ってきて罪に問われたらそれはどうなんだというふうな御意見もありますけれども、これからいろいろな国と結んでいく中で、日本のような法整備のところではない、言葉は気をつけなければなりませんけれども、劣悪な環境があった場合に、ふだん日本に住んでいた自衛隊員の皆さんですから、戻ってきて日本で裁かれるのはある程度納得がいくと思うんですけれども、劣悪な中でそうではないと思ったときに、あくまで自衛隊員の側から見た場合には、是非早急にそういった整備を整えていただくことが安心して訓練に従事できることだと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
少し時間が余っておりますけれども、以上で質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。山崎正恭君の質疑は終了いたしました。
次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
法案について質問をいたします。
これまで、部隊間協力円滑化協定、いわゆる訪問軍地位協定の国内実施法は、個々の締約相手国ごとに単行法として整備をしてまいりました。今回の法案はこれを一般法化するものです。
政府は、二〇二三年の通常国会に、初めてオーストラリア、イギリスとの円滑化協定の承認案件と国内実施法を提出いたしました。承認案件が付託された外務委員会には外務大臣が、国内実施法が付託された安保委員会には防衛大臣がそれぞれ出席し、質疑が行われました。ところが、今回の法案により、今後は、政府が新たな協定に署名したとしても国内実施法の提出は不要となり、本委員会での質疑も行われなくなります。
協定を実際に運用するのは防衛大臣です。その防衛大臣が、個々の協定の締結に際して、委員会に出席し、国会と国民への説明責任を果たすのは当然のことではありませんか。それをなぜやめてしまうのですか。
○中谷国務大臣 この件は先ほど本会議で長時間にわたって説明をさせていただきましたけれども、これまでオーストラリアまたイギリスと締結をしまして、今回いろいろと検討した結果、これにつきましては、今後締結される円滑化協定がこの法案の範囲内の内容となる場合には法律改正が必要となることはないということで、それぞれ、このことにつきまして御理解をいただいて、実施をした方がいいんじゃないかなと。同様の内容で行いますので、これにつきましては同意をしていただきたいというふうに思っております。
○赤嶺委員 私が聞きましたのは、協定を運用するのは防衛大臣ですよね。その防衛大臣が、協定の締結に際して、法案を提出し、国会と国民への説明責任を果たすことをなぜやめてしまうのかという点です。
○中谷国務大臣 それは、今後締結をされる円滑化協定がこれまでの法案の範囲内の内容となる場合がありますので、その実施のためには法改正の必要となることはならないと考えたわけでございます。
○赤嶺委員 説明責任を放棄していくことにつながってしまいます。
私は、二年前の質疑で、協定にある両締約国が相互に決定して部隊が実施する協力活動とは何か、その範囲に限定はあるかという点をただしました。共同訓練や災害救助を強調する政府の説明に対して、日米ガイドラインや安保法制に基づく重要影響事態や存立危機事態、武力攻撃事態における軍事支援活動が対象になるかを聞いたところ、協定上は排除されていないというのが当時の防衛省の答弁でありました。この答弁を受けて、私は、オーストラリアやイギリスなどの第三国の軍隊が日本列島を足場にしてアメリカ主導の軍事作戦を支援するための体制をつくるものだということを指摘させていただきました。
一方、この通常国会に提出されているフィリピンとの円滑化協定は、この後の質問でもただしていきたいと思いますが、おのずと協力活動の性格や内容は異なるはずであります。日本と同じように、台湾海峡に近接し、また中国とは南シナ海の領有権をめぐる問題を抱えている国です。
二年前に質疑が行われた当時の浜田防衛大臣は、協力活動の内容は、自国の法令、時々の状況や政策活動に基づき検討し、その都度、両国間で適切に判断し、相互に決定すると述べています。そうであれば、協定締結の都度、締約国との協力活動がどういったものになるのか本委員会で明らかにする責任があるのではありませんか。
○大和政府参考人 今いただいた御質問にお答えする前に、ちょっと先ほどの大臣の答弁に補足をさせていただきたいと思います。
ほかの委員からのお尋ねに応じて私どもから申し上げているとおり、確かに今回の法案について、この国会で御承認いただけたならば、今後締結される円滑化協定がこの法案の範囲内の内容となる場合には、その実施のための法改正が必要となることはございません。
ただ一方で、国の防衛政策について、この安全保障委員会の委員の皆様を含む国会議員の皆様の御理解を得ることは重要であると考えておりまして、防衛省といたしましても、新しく円滑化協定が締結される場合には、御質問などに応じてきちっと説明に努めてまいりたいと考えているところであります。
それから、フィリピンとの円滑化協定に基づく協力活動の内実ということでありますけれども、先ほど御指摘いただいたとおり、円滑化協定における協力活動というものの内実は、両締約国の法令の定める範囲でその都度各国が判断し、相互に決定をするということになります。
その上で申しますが、フィリピンとの円滑化協定にあっても、協力活動の具体的なアイテムとしては、基本的にはこれまでにも実績のある共同訓練あるいは災害救助といった活動が中心になるものと考えているところであります。
○赤嶺委員 運用の中身は締約国との関係でその都度検討されるべきと言いながら、結局は同じだからというような形で説明責任を逃れるわけにはいかないと思います。
円滑化協定の国内実施法は、自衛隊の海外派遣や国内の基地負担の増大など、憲法や人権に関わる重大な法案です。防衛大臣もよく御承知のとおり、自衛隊の海外派遣をめぐっては、テロ特措法やイラク特措法、安保法制など国論を二分するような議論が行われてきました。法案への賛否をめぐって立場の違いはあったとしても、自衛隊を海外に出動させるということの重大性、軽々に扱ってはならない問題だということへの認識は党派を超えてあったはずであります。
ところが、今回の法案を通じて感じるのは、政府・与党の中でそうした認識さえ薄れてきているのではないかということです。国会審議を形骸化させる一般法化は再考すべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
今回新たに円滑化協定を締結するフィリピンとの協力活動について伺います。
先月三十日、日米防衛相会談が行われました。防衛省の会談要旨によると、自由で開かれたインド太平洋を実現するため、日米を中核として、豪州、韓国、フィリピンを始めとする地域のパートナーとの間で情報共有や運用面を含む協力を進展させていくことで一致したとしています。
防衛大臣に伺いますが、運用面での協力とは具体的にどういうことを指しているのでしょうか。
○中谷国務大臣 今回の会談では、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化して、自由で開かれたインド太平洋を実現するため、豪州、韓国、フィリピンを始めとする地域のパートナーとの間で情報共有や運用面を含む協力を進展させていくということで一致をいたしました。
これまでも我が国は運用面の協力としまして、例えば、最近では、先月に実施された日米比三か国による海上協同活動、MCAを始めとする米国及び地域のパートナーとの様々な共同訓練を実施するなど、具体的な協力を積み重ねてまいりました。
防衛省としましては、引き続き様々なレベルで意思疎通を継続しましてこうした取組を発展させていくということで、地域のパートナーとの連携強化を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた地域的、国際的な協力を推進していく考えでございます。
○赤嶺委員 日米防衛相会談に先立ち、二月二十四日には日本とフィリピンの防衛相会談も行われております。ここでは、日本とフィリピンとの間で運用面の戦略的連携について協議するハイレベルの枠組みを新設することで一致した、このようにしています。
この運用面の戦略的連携とはどういうことを指しているんですか。どのような枠組みで、何を協議するんですか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
フィリピンは戦略的要衝に位置する日本の戦略的パートナーでありまして、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、フィリピンとの間で様々な分野における防衛協力を強化することが重要であります。
二月に実施いたしました日比防衛相会談では、地域と国際社会の平和と安定に貢献していくために、両国の防衛面での協力と連携を更に一段高いものに引き上げていくことでフィリピン側と一致した点において、大変有意義なものでありました。
その上で、御指摘のように、運用担当者間のハイレベルでの戦略的対話を新たに立ち上げ、その場において、より深い情報共有や高度な運用面での連携に向けて具体的に議論を進めていくことで一致したということであります。
この内容の詳細は今後議論してまいりますが、フィリピン側とも調整した上で適切な形で公表をしたいというふうに考えておるところであります。
○赤嶺委員 フィリピンでは、昨年四月に行われた米軍とフィリピン軍との合同軍事演習で、米陸軍の中距離ミサイルシステム、タイフォンが一時配備されました。ところが、演習の終了後も撤収されずにフィリピン軍が運用訓練を行ってきたことが報じられております。その後、昨年十二月には、フィリピン軍がタイフォンを取得する計画を明らかにいたしました。
今年の合同軍事演習バリカタンでは米海兵隊の地対艦ミサイルシステム、NMESISを展開させることも、先日、アメリカのヘグセス国防長官がフィリピンを訪問した際に明らかにしております。
これらの事実関係について、防衛省はどのように把握しておられますか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
御指摘の点につきましては、米太平洋陸軍が、二〇二四年四月、米・フィリピン共同演習サラクニブ24において地上発射型の中距離ミサイルシステム、タイフォンをフィリピンに初めて展開した旨公表したこと、フィリピン政府が同年十二月タイフォンの取得の意向を表明したこと、先日、三月二十八日に行われた米・フィリピン防衛大臣会談においてヘグセス米国防長官が、今年春の米比主催多国間共同演習バリカタン25において米海兵隊の地対艦ミサイルシステム、NMESISを展開する旨発表したこと、こういったことを承知しているところであります。
○赤嶺委員 防衛大臣に伺いますが、防衛相会談で確認した運用面の戦略的連携には、日本とフィリピンの長射程ミサイルを連携させて運用するということも含まれるのですか。具体的に決まったことはありますか。
○中谷国務大臣 運用の担当者間のハイレベルでの戦略的対話につきましては、深い情報共有、また高度な運用面での連携に向けて具体的に議論を進めていくということで一致をしましたが、その内容などの詳細につきましては今後議論することとしておりまして、フィリピン側とも調整をした上で、適切な形で公表させていただきたいと考えております。
○赤嶺委員 ただ、昨年のバリカタンには自衛隊も参加しております。具体的に、自衛隊のどの部隊から何人が参加したのか、そこでどのような訓練が行われたのか、これを明らかにしていただけますか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
昨年の米比主催多国間共同演習バリカタン24には、航空自衛隊から三名がオブザーバーとして参加し、IAMD、統合防空ミサイル防衛に係る専門家交流に参加して、米国、豪州及びフィリピンの参加者との間でIAMDに関する取組や関心事項について情報交換を行いました。
また、現地の地対空ミサイル部隊との交流を通じ、地域における防空及びミサイル防衛について相互理解を深めたというところであります。
○赤嶺委員 アメリカの太平洋空軍のホームページに掲載された昨年五月六日付の記事によると、昨年のバリカタンでは、演習の準備の過程で、同軍の太平洋IAMDセンターを中心に、アメリカ海兵隊や空軍、陸軍、フィリピン空軍の協力を得て、統合防空ミサイル防衛、IAMDに関する共通理解を得るための意見交換を行ったことを明らかにしております。今、局長の説明にもあったとおりであります。
航空自衛隊のホームページでも、アメリカ、オーストラリア、フィリピンの参加者との間でIAMDに関する取組や関心事項について情報交換を行ったと認めております。
IAMDに関し、具体的にどういう意見交換を行ったんですか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
航空自衛隊がオブザーバー参加したIAMDに係る専門家交流では、参加国である米国、豪州及びフィリピンに加え航空自衛隊から、それぞれ各国で実施するIAMDに係る取組について発表し、意見交換を行いました。
防衛省・自衛隊といたしましては、米国及びフィリピンを始めとする地域のパートナーとの連携強化を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を推進していく考えであります。
○赤嶺委員 先ほどの記事によると、インド太平洋軍のIAMDに関するミッションは米国が同盟国とシームレスに統合することだと述べています。
また、IAMDセンター所長のサベージ大佐が昨年ミリタリーレビューという雑誌に寄稿した論文でも、同様の考え方を持つ国々と地域の多国間のIAMD網を構築する考えを示しています。日米豪が参加した演習では、指揮統制が参加国間で共有されたことにも言及をしております。
アメリカのIAMD構想に従って同盟国との間で指揮系統を一元化する演習が行われているということではありませんか。先日の日米防衛相会談での確認は、事実上の米軍指揮下で同盟国や同志国を巻き込んだ一体のシステムとしてIAMDを構築していく考えを示したものではありませんか。
○中谷国務大臣 昨年四月の日米首脳会談においては、日米が共同対処を行う場合に、様々な領域での作戦、能力を切れ目なく密接に連携させていくという観点から、作戦及び能力のシームレスな統合を可能とするために、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上するということで一致したところであります。
このように、日米間で様々な能力の発揮のために緊密な連携を図ることは当然でありますが、御指摘のような自衛隊と米軍の統合、これを意味するものではございません。
その上で、我が国の統合防空ミサイル防衛能力というのは、米国の要求に基づくものではなくて、また、米国が推進するIAMDとも異なる我が国の主体的な取組でございまして、自衛隊の全ての活動は、何といっても主権国家たる我が国の主体的な判断の下に憲法、関係法令に従って行われているということ、また、自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することに変わりはありませんので、御指摘は当たらないと考えます。
○赤嶺委員 アメリカのヘグセス国防長官は、防衛省内で行われた共同記者会見で、日本は我々が西太平洋において直面するいかなる緊急事態でも最前線に立つと述べました。米中間で軍事衝突が起こった場合に最前線となる第一列島線でアクセスを拡大すると述べ、南西諸島での日米共同訓練を強化する考えも示しました。
長官の発言は、日本を米中対立の矢面に立たせ、なお沖縄を戦場にすることも辞さないという考えを示したもので、絶対に許すことはできません。
危険極まりない長射程ミサイルの配備、フィリピン軍を始めとする第三国軍隊と一体のIAMD網の構築はやめるべきだと思いますが、いかがですか。
○中谷国務大臣 ヘグセス長官からは、日本は西太平洋で我々が直面するかもしれない有事の最前線にいるということ、また、そのような状況において、何といっても日米同盟がインド太平洋地域における平和と安全の中核であるということ、日米が共に日米の安全保障と繁栄を拡大していくという力強いメッセージが示されたものだと考えます。
会談でも、一層厳しく複雑な安全保障環境に関する認識を共有しまして、その中で、日米同盟が並外れた力を持ち、インド太平洋の平和と安定を維持するという共通の認識に至りました。まさに、こうした認識を踏まえて、日米の抑止力、対処力を強化する必要があるということを強調した発言であると認識をいたしております。今般の会談におきましても、同盟の抑止力、対処力の更なる強化に向けた取組を継続していくことが必要だと。
今後も、ヘグセス長官を始めとして、トランプ政権の間で緊密に意思疎通をしていく考えでございます。
○赤嶺委員 この地域での軍事衝突が起これば、取り返しのつかない事態になります。緊張を高める軍事体制の強化ではなく、対話と協力を拡大するための外交にこそ取り組むべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
次に、安保三文書に基づく公共インフラ整備について質問をいたします。
政府は、四月一日、持ち回りで行われた関係閣僚会議で、二五年度の事業内容について決定をいたしました。インフラ整備の対象施設に、これまでの空港、港湾に加えて新たに道路を追加いたしました。
防衛大臣、今回、新たに道路を追加した理由について説明していただけますか。
○中谷国務大臣 申すまでもなく、道路というのは、災害においても、また危機管理においても必要なものなんですね。ですから、総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラの整備については今非常に厳しい環境にありますので、この対応を実効的に行うためには、平素から自衛隊、海上保安庁が民間の空港、港湾を円滑に利用できるようにインフラ管理者との間で円滑な利用に関する枠組みというものを設けて、これらを特定利用空港、港湾としてまいりました。また、特定利用空港、港湾につきましては、民生利用を主としつつも、自衛隊、海上保安庁の艦船、航空機の円滑な利用にも資するように必要な整備等を行ってきたところでございます。
こうした取組を進める中で、平素から自衛隊が円滑に人員、物資の輸送等を行うためには、特定利用空港、港湾と自衛隊の駐屯地の間のアクセスの向上を図る必要があると判断しまして、令和七年度からこの取組の対象に道路を追加したところでございます。
本取組に基づく道路ネットワークの整備によりまして、平素における円滑な自衛隊の通行、ひいては災害の対応等、効果的な実施が見込まれると考えております。
特に、輪島や他の災害において、道路の整備がいかに大切かということは我々も強く認識をいたしておりますので、こういった道路整備の必要性のために公共インフラ整備に指定したということでございます。
○赤嶺委員 復帰前の沖縄では、現在の国道五十八号線、名前も軍用道路一号線でした。あれをほうふつさせるようなことにならないかと、このニュースを聞いたときに危惧したものであります。
国土交通省に伺います。
沖縄では、三つの道路が対象施設に指定されています。しかし、いずれも以前から沖縄振興の一環として継続的に実施されてきた事業です。具体的な事業内容として何をやるのか、今回公共インフラ整備に位置づけたことで道路の規格などでこれまでと何か変わる点はあるのか、その点を説明していただけますか。
○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
公共インフラ整備の取組について、今般対象とした沖縄県内の道路事業は、国道五十八号那覇北道路、国道五百六号小禄道路、国道五百六号豊見城東道路の三つの道路です。いずれの道路も、整備によりまして、那覇市街地部の交通混雑の緩和を図るとともに、沖縄本島北部から那覇空港へのアクセス性の向上が期待される高規格道路です。
これら三つの道路につきましては、これまで同様、民生利用を前提に道路整備を進めるものであり、今般対象といたしましたことによりまして道路幅や舗装の厚さといった道路規格を変更するということは考えておりません。
○赤嶺委員 これらの道路整備はそれぞれいつ着工したものかも説明していただけますか。
○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
一般国道五十八号那覇北道路につきましては平成二十六年度に、一般国道五百六号小禄道路につきましては平成二十三年度に、一般国道五百六号豊見城東道路につきましては平成三年度に、それぞれ事業化をいたしております。
○赤嶺委員 元々自衛隊が使うことが想定され、何年も前から着工している道路の規格を、今になって変更するとは考えられません。
空港、港湾の場合は、管理者との間で円滑な利用に関する確認事項に合意し連絡調整体制を構築するとしています。しかし、道路については、元々、民間であれ、自衛隊であれ、同じように自由に使用しております。道路の場合、円滑な利用に関する確認事項や連絡調整体制の構築はどうしていくんですか。
○大和政府参考人 お答えいたします。
自衛隊が道路を通行するに当たり、空港、港湾を利用する際のようなインフラ管理者との利用調整は生じません。したがいまして、本取組に基づく整備の対象となる道路については、インフラ管理者との間で円滑な利用に関する確認事項を取り交わすことや、これに基づく連絡調整体制を構築することはしておりません。
なお、この取組は道路を自衛隊が優先的に通行するためのものではございませんで、自衛隊はこれまでどおり道路法等の既存の法令に基づき道路を通行してまいります。
○赤嶺委員 当然そういうことになると思うんですよね。
空港では那覇空港、港湾では石垣港が既に指定され、今回、平良港が追加指定をされました。いずれも従来から進めてきた事業を継続しているにすぎません。そうであれば、従来どおり民生目的で進めればいいだけのことであります。
防衛大臣に伺いますが、結局この公共インフラ整備というのは、アメリカから軍事費をGDP比二%に引き上げるよう求められて、それを達成するために公共事業を軍事費に組み込んだということではありませんか。こんないびつなやり方はやめるべきではありませんか。
○中谷国務大臣 私も時々沖縄に参りますけれども、沖縄の道路の混雑というのは異常でありまして、最近、海底道路とか湾岸道路ができまして非常にスムーズになって、多くの方々が利用をされるわけでありますし、また、我々も、何か有事、災害等においては緊急に行動する必要があり得ますので、やはり道路の整備というのは必要ではないでしょうか。
この取組によって、民生利用を主としつつ自衛隊のニーズを踏まえて道路ネットワークの整備を図ることは、平素における円滑な自衛隊の通行、ひいては災害対応の効果的な実施につなげるものであるというふうに考えております。
○赤嶺委員 特定利用道路ということまでして軍事費に数え上げる。でなくても、そういう道路の渋滞というのは民生用にずっと取り組んでやればいいことですよね。私はこの点で非常に疑問に思っております。
最後に、昨日の連合審査で質問できなかった点を伺います。
日米ガイドラインは、重要インフラやサービスを防護する理由として、自衛隊や米軍が任務を達成する上でそれらに依拠していることを挙げています。防衛大臣、これはどういう意味ですか。
○中谷国務大臣 二〇一五年に、日米防衛協力のための指針、ガイドライン、これが締結をされました。これにおいては、「日米両政府は、適切な場合に、民間との情報共有によるものを含め、自衛隊及び米軍が任務を達成する上で依拠する重要インフラ及びサービスを防護するために協力する。」というふうになっております。
一般に、自衛隊、米軍は、任務を遂行する上で、例えば電力、通信といった重要インフラに依拠しております。サイバー空間における脅威動向を踏まえれば、こうした重要インフラに対するサイバー攻撃というのは自衛隊や米軍が任務を遂行する上で阻害要因になる可能性がありますので、自衛隊・防衛省としましては、こういった問題意識も踏まえまして、日米間でサイバーセキュリティーの重要性について意見交換を行ってきたところでございます。
○赤嶺委員 今回の法案は、個々の国民や中小企業のサイバー犯罪対策を進めるためのものではありません。防護対象として真っ先に挙げているのは、政府や企業が保有する軍事機密であります。
国民生活に不可欠なインフラでさえ、米軍や自衛隊の軍事行動に不可欠という視点から捉えております。いかに政府が、国民の生命や安全よりも、日米軍事同盟の強化に重きを置いているかを示すものであります。日米安保のためと言って、県民の人権よりも米軍の運用が優先される沖縄の実態と同じです。
軍事同盟強化のための法案は廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。
これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○遠藤委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党を代表して、部隊間協力円滑化協定実施法案に反対の立場から討論を行います。
本法案は、これまで個々の締約相手国ごとに単行法として整備してきた部隊間協力円滑化協定、いわゆる訪問軍地位協定の国内実施法を一般法化するものであります。
円滑化協定と本法案は、アメリカの軍事戦略に基づいて、自衛隊の海外派遣とアメリカの同盟国、同志国との共同訓練や警戒監視活動を拡大するもので、憲法九条に真っ向から反するものです。
今国会に協定の承認案件が提出されているフィリピンとの間では、運用面の戦略的連携が確認され、長射程ミサイルを一体的に運用する動きが進んでおります。台湾有事を想定し、同盟国、同志国を巻き込んだアメリカ主導のIAMD計画の具体化にほかなりません。
さらに、協定と本法案は、日本国内における二国間、多国間の共同訓練を拡大し、基地被害の更なる増大を招くものです。米軍と自衛隊による航空機騒音や事件事故に苦しめられてきた日本国民に新たな負担を押しつけることは、到底許されるものではありません。
このような重大な内容を持つ法案であるにもかかわらず、成立後は、新たな協定の締結に伴う国内実施法の整備は原則として不要になっていきます。国会審議を形骸化させ、国会の審議権、立法権を侵害するものであり、断じて認められません。
政府は、地域の緊張を高める軍事体制の強化ではなく、戦争の心配のない東アジアをつくるための憲法九条を生かした平和外交にこそ取り組むべきであります。
以上を指摘し、討論を終わります。
○遠藤委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○遠藤委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○遠藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○遠藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、木原稔君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。下野幸助君。
○下野委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
今後、新たに円滑化協定が締結された際に、当該協定が本法第二条第一号に規定する円滑化協定に含まれることとなる場合には、遅滞なく本委員会に報告し、意見を求めること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○遠藤委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、防衛大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中谷防衛大臣。
○中谷国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力をしてまいります。
―――――――――――――
○遠藤委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○遠藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時四十六分散会