第10号 令和7年5月30日(金曜日)
令和七年五月三十日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 遠藤 敬君
理事 岩田 和親君 理事 尾崎 正直君
理事 木原 稔君 理事 篠原 豪君
理事 升田世喜男君 理事 屋良 朝博君
理事 美延 映夫君 理事 橋本 幹彦君
江渡 聡徳君 金子 容三君
黄川田仁志君 小池 正昭君
國場幸之助君 鈴木 英敬君
鈴木 隼人君 関 芳弘君
中曽根康隆君 福田かおる君
向山 淳君 新垣 邦男君
五十嵐えり君 伊藤 俊輔君
重徳 和彦君 下野 幸助君
松尾 明弘君 池畑浩太朗君
深作ヘスス君 西園 勝秀君
山崎 正恭君 赤嶺 政賢君
…………………………………
防衛大臣政務官 金子 容三君
参考人
(NMVコンサルティング上級顧問)
(元米国務省日本部長) ケビン・メア君
参考人
(ジョージ・ワシントン大学准教授) マイク・モチヅキ君
参考人
(三井住友海上火災保険株式会社顧問)
(元防衛事務次官) 黒江 哲郎君
参考人
(明海大学教授) 小谷 哲男君
安全保障委員会専門員 飯野 伸夫君
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委員の異動
五月十四日
辞任 補欠選任
平岩 征樹君 深作ヘスス君
同月三十日
辞任 補欠選任
黄川田仁志君 國場幸之助君
草間 剛君 小池 正昭君
同日
辞任 補欠選任
小池 正昭君 草間 剛君
國場幸之助君 黄川田仁志君
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五月二十二日
緊急出動のある自衛官の官舎の改善に関する請願(鈴木貴子君紹介)(第一二三六号)
同月二十八日
戦争準備の軍拡は中止し、憲法、平和、命、暮らしを守る政治への転換に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五一七号)
同(志位和夫君紹介)(第一五一八号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一五一九号)
同(辰巳孝太郎君紹介)(第一五二〇号)
同(田村貴昭君紹介)(第一五二一号)
同(田村智子君紹介)(第一五二二号)
同(堀川あきこ君紹介)(第一五二三号)
同(本村伸子君紹介)(第一五二四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
国の安全保障に関する件
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○遠藤委員長 これより会議を開きます。
国の安全保障に関する件について調査を進めます。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人としてNMVコンサルティング上級顧問、元米国務省日本部長ケビン・メア君、ジョージ・ワシントン大学准教授マイク・モチヅキ君、三井住友海上火災保険株式会社顧問、元防衛事務次官黒江哲郎君、明海大学教授小谷哲男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、ケビン・メア君及びマイク・モチヅキ君については、理事会での協議の結果、参考人として情報通信技術を利用する方法での出頭が認められましたので、本日はオンラインで委員会に参加いただきます。
また、カメラの関係上、会議中、着席したまま議事を行いますので、御了承願います。
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○遠藤委員長 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜り、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まずメア参考人にお願いいたします。
○メア参考人 おはようございます。
まず、委員会でお話しできて大変光栄だと感じます。
私がまず強調したいのは、元々アメリカ政府の者でしたけれども、今は全くそうではなくて、これから話す意見は私個人の意見です。アメリカ政府の代弁は全くできないけれども、話したいことは、まず、どういうふうに日米同盟が冷戦時代から今まで進展しているか、アメリカの目から見るとどうやって進展しているか、同時に、アメリカ政府の日本に対しての安全保障上の期待がどういうふうに変化しているかを説明したい。そして、最後に、現在の運用上の話題に少し触れたいと考えています。
私が初めて在日アメリカ大使館で働いた一九八〇年代は、ちょうど冷戦時代でした。冷戦の最後の十年間、私は大使館の安保部で働いて、そのときの日米安全保障関係は、単純に言えば、アメリカからはすごく限られた期待しかなかった。なぜかというと、御存じだと思うけれども、その体制は、主に言われたことは、日本の役割は盾、米軍の役割はやりという役割。日本が自国の防衛しかできない、憲法九条の制限がありましたから。日本が直接攻撃されていなかったら、アメリカが日本の領土外で、水域外で攻撃されたら日本がアメリカを助けるという期待は全くありませんでした、現実的に考えて。
そして、それが幸い、今までに終わった。いろいろ理由があったけれども、主に日本に対する世界中の脅威が変わっていったから、日本の考え方がちょっと変わったと私は印象を受けた。
ドイツのベルリンの壁が破壊されて冷戦時代が終わって、そして湾岸戦争が一九八九年、九〇年に発生して、そのときもアメリカ政府は、日本の自衛隊が湾岸戦争に軍事的に関与する期待はありませんでした。日本はすごく有意義な金融的な貢献をしたけれども、人を出すことができなかった。
湾岸戦争が終わったときに、そのときの有力な代議士の渡辺美智雄が冗談を言っていた。アメリカ人と日本人とイギリス人が歩いていて、近所の知り合いの家が火事になったのを見て、アメリカ人がバケツで水を運んで戦った。イギリス人が見て、ああ、私も一緒に戦おう。そして日本人が、おまえたちが火事と戦って、私は後で料金を出しますから大丈夫です。日本に何を防衛の面で期待できるかは、そういうふうな形でした。
でも、その後、PKO法を出して、日本事態法が導入されて、渡辺美智雄が言っていた冗談、そういう時代では全くなくなりました。でも、日本の周辺事態法の政策が、アメリカの目から見ると重要だと歓迎したけれども、主に後方支援に限られたから、共同作戦、合同作戦ができるようになっていないとアメリカ政府が分かっていたので、日本に対するそんなに高い運用上の期待はありませんでした。
次の節目は、二〇〇一年の九月十一日のテロ攻撃があって、その後で初めて日本が自衛隊をイラクに派遣したとき。でも、何の役割をできるかはすごく限られた。イラクの国の再建とか、ルール・オブ・エンゲージメントがすごく厳しくて、一緒に戦うという期待も全然なかった。なぜかというと、御存じのように、集団的自衛権を行使できないという基本的な政策でした。
そして、二〇〇五、六年に2プラス2の会議で、日米安全保障、将来の再編と変革という報告をしました。その中で重要なところは、もちろん米軍再編があって、在日米軍の基地の負担を削減するための米軍再編、大規模な計画も両政府が合意して、同時に、役割、任務、能力をどうやって分かち合おうかという話が始まった。でも、まだいろいろな制限がありました。なぜかというと、日本がまだ集団的自衛権を行使できなかった時代でしたので。
そして、私の目から日本の安全保障上の政策の一番大きい変更があったことは、二〇一四年の集団的自衛権を行使できるようになった決断でした。すごく大きかった。集団的自衛権を行使できるようになって、ワシントンで日本に対する考え方は基本的に変わりました。一緒に戦う、チームディフェンスもできるようになったんじゃないかという意見がすごく普通になりました。それで、中国が台頭しているから、北朝鮮の脅威が激しくなっているから、これからどうやって日米安全保障の面でもっと効率的に協力できるかという考え方になりました。
私の解釈では、集団的自衛権ができるようになったということは、憲法第九条の解釈の変更ではなくて、ただ最小限の定義が重要でした。というと、私が知っている限り、日本の最高裁は何回も、どういう国であっても自衛権があるので、その自衛権の中で最小限の軍事力を使おう。私の解釈では、そういう制限は変わっていないと思います。
ただ、周りの安全保障環境がすごく激しくなったから、私が考えていることは、安倍総理はそのときに、日本が独自で対応できないから集団的自衛権が必要であると判断して政策が変わりました。とにかく中国の脅威が激しくなったから、アメリカ政府はその変更をすごく歓迎しました。
脅威がどういう変化をしているか、増えたか。もちろん中国が、南シナ海、東シナ海、南西諸島。地域的な脅威が激しくなった。北朝鮮もミサイルと核兵器の脅威が激しくなったし、ロシアの脅威もある。ウクライナの戦争が一つ示していることですけれども。
私は、前にたまに日本で講演するときに、日本の国民は日米防衛関係を誤解しているとよく言っていた。誤解しているところは、主な人が考えていた、アメリカが日本の防衛をすると思っている。それが誤解。安保体制の本当の意味は、アメリカが日本の防衛に寄与する。基本的に、日本の防衛をする義務は日本の自衛隊です。もちろんアメリカも日本の防衛をするけれども、第一責任は日本の自衛隊です。
十年前、十五年前にこの話をして、主に聞いている人が、ああ、そういえばそうかなと思うという返事があって、今は全くそう考えていないのは日本の国民はもう分かっていると思います。日本政府もよく分かっている。だからこそ、日本政府が二〇二二年十二月、岸田政権のときにNSS、国家安全保障戦略と防衛力整備計画を導入して、アメリカはすごく歓迎しました。
なぜかというと、日本が自分の防衛能力を向上している。具体的に進歩していたから。防衛省の五年間の防衛力整備計画の予算が四十三兆円と、前の五年と比べると五五%増やした。あと、GDP二%の防衛関連費用も増やすとか。
私個人として考えると、GDPの何%という議論はそんなに適当ではないかもしれない。一番重要なことは、どういう脅威があって、そういう脅威に対応できるようにどういう能力が必要かを判断して、そして、その能力はどのぐらいの予算が必要である。そして予算を決めるべきだと思う。
でも、現実的に考えると、二%とか三%の目標があれば、予算をつけることはある程度難しくなくなるかもしれない。今のトランプ政権はもっと増やすべきだという意見がもう出ているけれども、私は、GDP何%よりも、その能力の予算はどのぐらい必要かを計算する。それで始まって予算をつける方がいいと思います。
でも、日本だけではなく、ヨーロッパのNATOの各国も自分の防衛能力を増やさなくてはならないという圧力はアメリカではずっと前からあった。それはアメリカでは超党派の立場。共和党政権、民主党政権であっても、各同盟国に何回も防衛能力を増やしなさいと。そして、私は、もしNATOの方が防衛予算を増やして防衛能力を早く増やして、アメリカはもちろん、NATOの関与が続き、ウクライナが生き残るんだったら、負けないようにしたら、それは日本にとっていいことになると考えている。
なぜか。そういうふうになったら、アメリカはもっとアジアにフォーカスできる、集中できるようになる。米軍のプレゼンス、新しい基地を造るとかは考えていないけれども、ローテーションの形で、もっと米軍がヨーロッパからアジアにシフトできるんじゃないか。あと、サプライチェーン、供給網の問題も日本の方がもっとプライオリティーになるんじゃないかと私は考えている。
要するに、今、日本の政府が取っている道をこのまま続けるべきだと思います。次の五年間の防衛力整備計画であっても運用上の時間が限られている。これから日本とアメリカは、一緒に中国の挑発的行動に抑止と対処をするためにネットワーク性が必要だと思います。そして、合同作戦ができるようになるべきだ。もうある程度できるけれども、こういうふうに促進すべきでしょう。
まず、JJOC、日本の自衛隊の統合作戦司令部が設置されて、アメリカですごく歓迎されている。そして、まずの仕事は、各自衛隊が統合作戦ができるようにしなくてはならない。同時に、日本の自衛隊とUSINDOPACOMが合同作戦計画と合同作戦をできるような、訓練と能力を調整できるような窓口になる方がいいと私は考えています。
そのネットワーク性の必要性というと、中国と戦いになったら数で勝つことはできない。そして、ネットワーク性、日米、日米オーストラリア、日米フィリピン、日米韓国とかのネットワーク性で、軍事的な相乗効果があるから、それで中国を抑止できる。万が一中国と戦いになったら、勝つことができるネットワーク性と合同作戦がないと無理だと思います。
そして、これから日本政府が政策のレベルで決断しないとならないことを示すために、台湾海峡のシナリオを最後に少し触れたいと思います。
万が一、台湾海峡の戦争があったら、アメリカ政府は後方支援とロジスティクスの支援だけを期待しているわけないです。一番現実的なシナリオと考えていることは、中国が台湾を閉鎖しようとする。閉鎖したら、ブロッケージしたら、アメリカが反応することが期待できます。というのは、閉鎖を破壊するために。
具体的に、台湾に供給する必要があるので、貨物船と戦闘機と飛行機とトランスポートエアクラフト、船とかを出す。日本にとって決めなくてはならないことは、自衛隊も参加するかどうか。アメリカは期待していると思います。中国が台湾を閉鎖したときは、アメリカが反応して行動します。日本が何もやらないんだったら、すごくやばいと思います。日本政府にとって政治的に難しい判断だと思うんだけれども。
そして、次の段階で、中国が閉鎖だけじゃなくて直接台湾を攻撃したら、例えばアメリカがF35戦闘機を派遣して制空権を取るときに、日本のF35もネットワークと一緒に合同作戦できるかどうか。それは政治的に非常に難しい判断であると分かっています。日本の存立に脅威があるという判断をしないと今の政策ではできないことですけれども。
私は、安倍総理がおっしゃったように、台湾有事は日本の有事であるという発言はすごく正しいと思います。もし台湾海峡の有事になれば、日本が関与しないことは余り想像できません、具体的に運用上の面から見ると。そして、難しい政治的な判断になるので、今私が希望していることは、日本のJJOCとUSINDOPACOMが一緒に協力して、連携して合同作戦ができるように訓練するとか、それによって、そういう期待が正常なことであるというふうに考えられる方がいいと思います。まだそこまでいっていないけれども、これから重要な話題になると思います。
話が長くなりましたから、この辺で終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございます。(拍手)
○遠藤委員長 ありがとうございました。
次に、モチヅキ参考人にお願いいたします。
○モチヅキ参考人 皆様おはようございます。ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキでございます。この委員会に参考人として招かれたことを光栄に思います。
時間が限られておりますので、私のトランプ政権の認識と、日本の外交、安全保障政策と、日米関係への影響に集中して話したいと思います。
三点申し上げたいことがあります。
まず、トランプの外交と安全保障政策の一般的な傾向についてです。二つ目は、トランプの中国政策に関する点です。特に、メアさんが話した台湾問題に関する点です。そして最後に、トランプ政権の日本との安全保障関係に関する姿勢について話したいと思います。
では、まず、トランプ政権の外交と安全保障政策に関する傾向について語りたいと思います。
トランプの外交、安全保障政策には多くの不確実性が存在しております。第二次トランプ政権の発足から約百二十五日が経過しましたが、具体的な政策に関する変動や矛盾が数多く見られます。これには多くの理由がありますが、重要な理由の一つは、トランプ政権内部において外交政策に関する意見の違いがあることです。
私は、トランプ政権内部には三つの異なる視点が存在すると考えます。
一つは、アメリカ優位主義者。英語で言えばアメリカンプライマシスト。それは、トランプのスローガン、メイク・アメリカ・グレート・アゲインを米国の世界における優位性、プライマシーを維持する手段とみなすネオコン、ネオコンサバティブ、保守派でございます。
第二の勢力は、優先主義者でございます。英語で言えばプライオリタイザー。このプライオリタイザーの考え方は、中東とヨーロッパからインド太平洋地域へ戦略的重点を移し、中国を封じ込めることを強調する勢力でございます。
最後には、抑制主義者です。英語で言えばリストレイナー。それは、海外での軍事的介入をできるだけ抑制したいと考える抑制派でございます。
トランプ大統領自身はこの三つの傾向を全て同時に示している印象があります。ですから、いろいろ矛盾な発言とか矛盾な行動を取っていると思います。
しかし、最近、ネオコンの影響力が低下しているように見えます。
トランプの外交政策について、多くの不確定要素がありますが、一つ確かなことがあります。それは、トランプ大統領が、一九一八年のウィルソン政権から始まったアメリカのいわゆるリベラル・インターナショナル・プロジェクトを打ち切ったことでございます。これはアメリカの歴史ですごい転換期を迎えていると思います。
そして、トランプ政権下では、世界におけるアメリカの価値観の促進に関心がありません。また、米国は、世界へ国際公共財を提供することについても関心がなくなったと思います。そして、トランプ大統領の任期終了後も、こういう流れ、アメリカ・ファーストという考え方が続くでしょう。アメリカが従来の世界での役割に当分戻らないと見ております。
次に、トランプ政権の対中国政策について話したいと思います。
トランプの極端な関税政策が示すように、トランプはアメリカが中国と激しく競争することを強調しております。しかし、同時に、彼は中国と軍事的衝突や戦争をできるだけ避けたいと思っております。
したがって、台湾問題に関して、バイデン大統領とは異なり、トランプは、中国が台湾を攻撃した場合、アメリカが台湾を守るかどうかを明確に表明しておりません。私から見れば、トランプは、台湾がアメリカの核心的利益、バイタルインタレストではないと考えており、台湾を防衛するために中国と直接戦うつもりは余りないと考えております。
台湾に対するこのような冷たいクールな態度は、日本にとって懸念材料になる可能性があるでしょう。しかし、私は、アメリカが台湾問題で中国との戦争を避ける姿勢は日本にとってよいことだと考えております。アメリカが台湾危機に直接軍事介入せず中国と戦争をしない場合、日本が台湾戦争に巻き込まれる可能性は低下するでしょう。
さらに、台湾をめぐる戦争を防止する方法を考える際、ロシア・ウクライナ戦争から正しい教訓を学ぶことが必要でございます。もちろん、ロシアはウクライナに対して侵略戦争をしかけた重い責任と罪があります。これにより、国際法と、武力行使により国境を変更してはならないという国際原則を否定し、破りました。しかし、同時に、アメリカと西側がロシアを挑発する役割を果たした点を認めることは重要でございます。
したがって、台湾問題に関しては、アメリカと日本、台湾は、中国を追い詰めるような行動を避けるよう注意すべきです。
戦争を防止するためには抑止力がもちろん重要でございます。メアさんはそのことを指摘しました。しかし、抑止力だけでは不十分でございます。アメリカ、日本、台湾は、中国との緊張を緩和し、戦争のリスクを軽減するために、積極的な外交を展開すべきでございます。
最後に、トランプ大統領の日本との安全保障関係に関する政策について述べたいと思います。
三月にヘグセス国防長官が日本を訪問した際、同長官は、日本の防衛に対する米国のコミットメントを再確認し、日本との防衛協力の強化を約束しました。しかし、トランプ大統領自身は日米同盟の現状について不満があります。トランプ政権はまだ東アジアに対する安全保障政策の見直しは行っていないが、日本に対して防衛費の増額を要求する可能性が高い。日米の防衛義務がもっと双務的になることを求める可能性もあります。
トランプ政権が韓国での軍事力の削減を検討しているという報道があるように、トランプは日本における米国の軍事力の削減も求めるかもしれません。このような政策は日本を不安にさせる可能性があります。しかし、長期的に見れば、このような政策の変更は日米同盟をより平等なものにし、日本の安全保障における米国の依存度を軽減するよい機会となると思います。
日本は自国の防衛にもっと責任を持つ必要があります。そして、日本は、核兵器や長距離攻撃用ミサイルを大量に取得することなく、専守防衛の枠組みを維持しながら自国の防衛は可能だと私は信じております。
さらに、トランプによる日米同盟の再構築政策は、沖縄の米軍基地の負担を軽減し、日米地位協定を改正する機会にもなると思います。
終わりに、二点を改めて強調したいと思います。
一つは、軍事的抑止力は重要ですが、不十分です。緊張緩和のための積極的外交は必要でございます。
二つ目は、日米友好関係を維持することは大事ですが、日本はもっと自立した、主体性がある外交を追求することはますます重要になります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○遠藤委員長 ありがとうございました。
次に、黒江参考人にお願いいたします。
○黒江参考人 黒江でございます。
まず、衆議院の安全保障委員会という大変大事な委員会の場で意見を述べさせていただく機会を頂戴しましたことを心から御礼申し上げます。ありがとうございます。
早速でございますが、私からは三点、我が国が抱えております将来課題ということでお話しさしあげたいと思います。
一つは、トランプ二・〇への対応。二つ目は、核問題への対応。最後は、これは国内問題でございますが、人口減少社会に対応しながら自衛隊としてどのように人的資源を確保するかという三点でございます。
駆け足で恐縮でございますが、早速、トランプ二・〇に対してどう対応するのかということでございます。
今、もう既にモチヅキ先生からも詳細なお話がございましたけれども、トランプ政権の百二十五日の間になされました相互関税、あるいは、ウクライナ戦争の調停を起因としました米欧関係の破壊といいますか、あるいは国際枠組みからの米国の離脱といったことで、国際秩序の混乱を招いている。
これについては、先生がまさに御指摘されたように、これまで戦後の自由主義、民主主義を基調とする国際秩序を米国がリードしてきたわけですが、そのリーダーシップというものを自ら放棄しているというところの懸念でございます。これが最終的にはといいますか、国際安全保障の面では同盟あるいは国際協調の機運が後退する、あるいは、国際経済の面では保護主義が台頭する、そういう懸念が生じているということであります。
他方、これがダイレクトに北東アジア地域にどのように影響を与えるかといいますと、恐らく米中対立というのが現在のトランプ政権といいますか、トランプさんの頭の中の大半を占めておることであろうと考えられますので、米国として中国を最大の戦略的競争相手と位置づけている限りは、アメリカと亀裂が入ってしまったヨーロッパ地域とはかなり様相が異なるんだろうというふうに考えております。
これが日米同盟にどのように反映されるのか、あるいは日米同盟をどうやっていくのかということでございますけれども、これも、既にモチヅキ先生からも御指摘がありました、あるいはメアさんからもお話がございましたけれども、現在、特に日米間では、もちろん難しい関税交渉は行われておるわけでございますけれども、首脳間でも閣僚間でもこの百二十五日の間では基本的に良好な対話が行われている。これは非常にいい材料だろうと思います。
特に日本の防衛ということを考えたときに、北東アジア地域で中国、ロシア、北朝鮮という核を持った権威主義国家に隣接しているという地政学的な位置からすると、我が国の防衛にとって、米国との同盟関係は必要不可欠でございます。これは、特に核のことを考えればすぐに分かることだと思います。自衛隊と米軍との間の指揮統制枠組みの向上でありますとか、あるいは日米の防衛産業協力を更に進める、こういうことで日米共同対処体制の充実強化を図っていく。
なおかつ、これもメアさんから指摘がございました。近年、我が国は、同盟の中において我が国側のより大きな責任の分担ということを図ってきたわけでございます。これを着実に続けていくことが必要かなと思います。もちろん、こういったことをやることは、何も中国と戦うということではなくて、中国と我々が事を構えずに済むようにする。
これは現在の吉田統合幕僚長が常々言っておることでありますが、自衛隊の任務について、自衛隊が刀を抜くとき、武力を使うときというのは任務の半分は失敗しているんだと。自衛隊は、刀を抜かないで済むように、日々刀を研いでいるんだということを常々いろいろな場で申しております。これはまさに抑止力の本質だと思います。
我々は、自衛隊の能力を強化し、あるいは日米同盟の信頼性を向上することで、この地域の安定を図る、武力衝突がないようにこれを抑止する、そういう目的でこういう政策を進めていくべきであると考えております。
駆け足で済みません。二点目、核の脅威の増大でございます。
現在の状況を見ますと、核の拡散は進んでいる。これは北朝鮮を見れば明らかです。あるいは、イランの懸念というのもございます。中国は着実に核軍拡を進めております。他方で、軍備管理・軍縮交渉は、米ロ間の交渉が停滞しておるように、ほとんど進んでいない。そればかりか、ウクライナ戦争ではロシアが核を使用するという威嚇を大っぴらにしておる。さらに、北朝鮮は、戦場で使いやすい戦術核を増産する、そういうことをやっている。
そういう中で、昨年、被団協が、大変喜ばしいことですが、ノーベル平和賞を受賞した。このこと自体は、被爆の実相を伝える活動が世界的に評価されたということで、大変すばらしいことだと私は思います。
ただ、ノルウェーのノーベル平和賞の委員会が、なぜこれは受賞したのか、そういう理由を説明した文書がございますけれども、その中で彼らが述べておりますのは、核使用のタブーが失われつつある、こういう危険な時期だからこそ平和賞を被団協に差し上げることが大事なんだ。ある意味、危機感の裏返しが今回の被団協の受賞だったというふうなことを言っております。
これに対して、我が国の核政策は、非核三原則の堅持、米国の拡大抑止、核の傘ですね、これに期待する、それから軍備管理・軍縮を進めるという三本柱になっております。これについては、一九七〇年にNPTに署名して、その頃からの核政策と全く変わっておりません。これは、ヨーロッパ地域ほどの危機感、東側の非常に大きな通常戦力に直面していた西ドイツが積極的に米国の核を西ドイツの中に持ち込もうとした、そういう交渉を彼らはしたわけですけれども、そういう事態とは全く違っていたわけです。
今、実際に日本の核政策はどうなっているかというと、核の傘についてはアメリカが宣言している。有事になったら日本に核の傘を差しかけますよと宣言している。これを日本側として信じている。他方、同じような非核保有国である韓国は、最近の核の危機的状況を受けまして、米韓間で急速に核協議を進展させておるわけでございます。これと比べただけでも、日本の核政策の不在とまでは言いませんけれども、非常に低調な状況というのが分かると思います。
これに対しまして、政府も、二〇二二年の国家安全保障戦略に従いまして、拡大抑止協議を充実させるということで、昨年、まさに木原先生が大臣として行かれました、拡大抑止協議の閣僚レベルでの実施というところまでこぎ着けた。さらには、ガイドラインの策定といったことで拡大抑止の実効性向上の政策を徐々に進展させている。ただ、これで本当に十分なのかという議論はあり得ると思います。
また、核軍縮に向けて、外務省さんを中心に、NPT体制の堅持、あるいは核兵器材料の規制、あるいは核実験の包括的禁止といった様々な総合的な政策を進めておりまして、これは大変すばらしいものだと私は思いますけれども、こういう政府の努力がなかなか脚光を浴びていない。
この原因は、(3)のところにありますけれども、我が国においては、核抑止論と核廃絶、核軍縮の議論が水と油の関係で全く交わらない。抑止論者は、核廃絶であるとか核軍縮というのは理想的かもしれないけれども現実的ではないという形で、ある意味、言葉は過ぎますけれども、冷笑的な目で見ている。他方、核廃絶論者は、核兵器の非人道性を強調し過ぎる余り、核抑止という言葉を聞いただけでこれを忌避するような傾向がある。
こうした対立は私は大変不健全なものだと思っております。これだけ核の脅威が高まっているのに国内的に議論が盛り上がらないこと自体が私は問題だと思います。
そういう意味で、この二つの議論の対立を克服することが一つの課題だろう。議論のきっかけとして、これまで核については非核三原則しかなかったわけですが、こういったことを機に我が国の核政策の基本指針を改めてまとめることが必要ではないかと思います。
ところが、あくまでも究極の目標は核の廃絶である。これを明示した上で、他方、現存している核兵器を使わせないためにどうしたらいいのか。そのために二つのやり方があるでしょう。一つは核抑止であり、もう一つは核軍縮を進めることである。この二つのやり方は、やり方は違いますけれども、二つとも現存する核を使わせないための方策である。そういうことを政府としても国民的な合意の上できちんと位置づける。
その中で、既に二〇一〇年に岡田外務大臣が指摘しましたけれども、非核三原則の第三原則はそもそも問題をはらんでおるわけです。ここについて深掘りして、第三原則をどうするのかということを核政策の基本指針の中で明らかにしていく。そういう努力が必要ではないかと思います。
最後に、人口減少社会への対応ということでございます。
これも各先生は御案内のことだと思いますけれども、二〇二三年の自衛官の採用は目標の半数にとどまりました。これに対応して、ここ二年ほど、自衛官の処遇改善に防衛省あるいは政府挙げて取り組んでいる。これは私が現役の頃にはとても考えられなかったような進展でございまして、すばらしい努力だなと思っております。
他方、もちろん処遇改善の進展は歓迎すべきことですが、これだけで人的基盤の強化につながるのか、解決できるのかというと、なかなか難しい面がある。
それで、これから必要なことは、自衛隊を支える社会基盤を強化すること、自衛隊自身の組織を変革すること、さらに、官民協力を進めること、この三点だと思います。
ここに社会基盤の強化ということは様々書きましたけれども、要は、例えば自衛隊法には、自衛官は職務上の危険を回避してはならないという規定があります。これは言葉を換えると、当然、国民の代表である国会で決まった法律がそう言っているということは、国民が自衛官に対して、命を惜しんではならない、そういう義務を課しているということでございます。
こういうことをたくさんの人が認識しているのか。そういうまさに等身大の姿を国民の間できちんと認識を共有していただく必要があるだろう。そのために教育であるとか広報が大事だと考えております。その上での処遇の改善、それに見合った代償措置を自衛官に対して行うことが必要だろうと思います。
自衛隊の組織の改革というのは、人が少ない中で戦わないといけないわけですから、自衛隊員、自衛官にしかできないことをやる組織にしていく。もっとはっきり言うと、戦闘機能に特化した組織にしないといけない。なおかつ、これには無人装備であるとかAIを活用して人手を減らすということを組み合わせる。
それと同時に、現在の、自衛隊の中で採用して教育して育てていく、そういう一貫した人育ての考え方を修正したらどうか。外部の有為な人材をどんどん登用できるような柔軟な人事制度が必要だろうと思います。
あわせて、予備自衛官制度を更に見直して戦力化していく。これは、毎年ごとの訓練の中身を充実させること、あるいは予備自衛官への手当を充実させること、あるいは企業への補償ということが含まれると思います。
最後の官民協力につきましては、これは単純に言いますと、社会全体が人手不足なのに、日本社会が直面している課題はどんどん難しくなり、増大しておるわけです。だとすると、解決するために関係者が協力するしかないわけです。
災害時に自助、共助、公助といった形が非常に大事だと言われておりますけれども、武力攻撃事態も全く同じだと思います。平素から民にできることはアウトソーシングを進める。さらに、有事の作戦所要にも民間企業の協力を得る。そのために、企業のリスクに対応するような制度を設ける。そういったことがこれから必要だろうと思います。
駆け足になって大変失礼いたしました。以上でございます。(拍手)
○遠藤委員長 ありがとうございました。
次に、小谷参考人にお願いいたします。
○小谷参考人 明海大学の小谷でございます。
まずは、本委員会にお呼びいただきましてありがとうございます。
私からは、既に三名の参考人がお話しになった内容と一部かぶるところもございますけれども、まず冒頭で、岸田・バイデン政権下において見られた日米協力の新しい展開、それから、トランプ政権の同盟政策について、最後に、日米同盟を更に強化するために何をするべきかということをお話しさせていただきたいと思います。
岸田政権の下で新しい国家安保戦略が作られまして、防衛費のほぼ倍増、反撃能力の導入など、日本独自の努力が見られましたけれども、一方で、バイデン政権との間で様々な新しい日米協力が進みました。
一つが、在日米軍の再編であります。例えば、在日海兵隊を海兵沿岸連隊に改編したことでありますとか、在日米軍の中に統合軍司令部をつくるというような動きがあり、新たに設置されました自衛隊の統合作戦司令部との間で日米の指揮統制面での連携が進んでいくということがございます。
もう一つが、日米の間で極超音速ミサイル迎撃に関する共同研究、共同開発が進んでいくということで、とりわけ滑空段階における迎撃ミサイルの開発が進んでいる。これも統合防空ミサイル防衛を進める上で非常に重要な動きであると考えております。
また、防衛産業基盤レベルでの協力に関しましては、米軍の艦船でありますとか航空機を日本においてメンテナンスする、オーバーホールをするという取決めもできまして、この点でも日米の協力が更に進んだと言えるかと思います。
加えまして、日米と第三国の間の連携強化も岸田・バイデン時代の間に進んだと言えます。とりわけ韓国それからフィリピンとの間での具体的な協力が進んでいきまして、フィリピンとの間では円滑化協定を結ぶ、また、米軍の方はフィリピンでアクセスできる施設を拡大しているということで、非常に重要な動きが見られたと思います。
加えまして、イギリス、フランス、ドイツを始めとしましたNATO諸国との間でも日米同盟の協力関係が進んだことで、岸田・バイデン時代の間に日米同盟は新たな段階に入ったと言えると思います。
その上で、現在のトランプ政権をどのように理解するのか、トランプ政権の同盟政策をどのように理解すればいいのかという点ですけれども、まず、トランプ政権は、安全保障政策の方針としまして、力による平和というものを掲げております。これは、アメリカの軍事的な優越性によって抑止力を高め、平和、安定を維持するという方針であって、これは同盟国から見ても歓迎すべき方針だろうと考えます。
また、トランプ大統領は今年一月二十日の就任演説で、自らがピースメーカーになる、平和の維持者になるということを強調されました。既に起こっている紛争を止めるだけではなく、今後起こるかもしれない紛争も止めるということで、抑止力を強化する方針が示されましたので、とりわけ東アジアにおいては台湾有事の可能性が議論されている中、トランプ政権がピースメーカーを目指すという方針は、同盟関係を強化する上で非常に歓迎すべきものであると考えております。
一方、モチヅキ参考人からもございましたとおり、トランプ政権の外交、安全保障政策、あるいは同盟政策には様々な混乱が見られます。
これもモチヅキ参考人が言及されましたけれども、私は、とりわけ、トランプ政権における優先主義者と抑制主義者の間のバランスというものがトランプ政権の同盟政策を大きく動かす原動力であろうと考えております。
元々、トランプ政権においては、優先主義者、つまり、最大の競争相手である中国と向き合うために、ヨーロッパや中東から手を引いていくという考え、これが優勢であったように見えました。しかし、今現在、トランプ政権内では抑制主義者がかなり影響力を増していると見ております。この抑制主義というのは、アメリカの死活的利益が脅かされない限り対外的な介入は行うべきではないというものでありますけれども、この抑制主義が今トランプ政権の中で思想としても人事面でもかなり広がっているというふうに考えております。
事実上解任されましたマイク・ウォルツ前国家安保担当補佐官、彼は優先主義者であって、それが実際に解任につながった大きな理由であると政権関係者からは聞いております。また、元々優先主義と見られていたマルコ・ルビオ国務長官、彼も最近の発言を聞きますと抑制主義にかなり傾いているということが言えます。そして、ワシントンを代表する優先主義者であるエルブリッジ・コルビー現国防次官、彼も最近の発言は優先主義よりも抑制主義に偏ってきていると考えられます。つまり、これは、抑制主義者でなければトランプ政権の中で生き残れないということだと思います。
この抑制主義がトランプ政権の対外政策あるいは同盟政策の基調となるのであれば、アメリカから見て死活的に重要な同盟国とみなされない限り、アメリカとの防衛協力が難しくなるということを表しているのだと考えられます。
それから、トランプ政権は、特に同盟国に対して厳しい関税措置を取っております。トランプ政権の基本的な考えは、同盟国はこれまでのアメリカによる防衛の提供に感謝していない。逆に、アメリカに製品を売りつけて貿易赤字をつくり上げてきた。つまり、同盟国がアメリカを搾取してきた、そういう不満が大前提としてあるということが見られます。日本自体も、今、関税交渉を行い、自動車関税、鉄鋼関税、そして相互関税の撤廃に向けて協議を行っているところでありますけれども、根底にトランプ政権が抱える不満があるということを認識する必要があると思います。
また、赤澤大臣が最初に訪米されたときにトランプ大統領が予想外に出てこられまして、一番最初に言及されたのが駐留経費の問題であったと聞いております。つまり、トランプ政権二期目においても日本に対して駐留経費の増額を求めてくることは十分考えられますし、また、防衛費そのものの増額を求めてくることも考えられると思います。
以上のように、岸田・バイデン政権の下で進んだ日米協力、そしてトランプ政権の対外政策の方針を受けて、日本が目指すべき方針、日米関係、日米同盟を強化するために必要なことは何か。
まず、一言で申しますと、日本自身がアメリカにとって死活的に重要な国であるとアメリカに認識させることだろうと思います。それは経済的な重要性はもちろん、軍事的、防衛面での重要性を理解してもらうことだと思います。
そのために、日本が安全保障政策として、同盟政策としてまず取り組むべきものは、日米が共に戦う姿勢、共に戦う体制、これを築いていくことではないかと考えます。
その上で、私の方から具体的に六つの方針についてお話をさせていただきたいと思います。
まず一つ目が、現在、日米の間で指揮統制面での連携が進んでいることを受けまして、これが完成した暁には日米の常設の統合任務部隊をつくることが必要ではないかと考えております。とりわけ南西諸島を守るための常設の任務部隊を常に日米でつくっておくことで、いざ有事が起こった際にはすぐに共に戦える、そういう体制をつくっておくことが今後日米同盟を強化する上で必要ではないか。そして、アメリカから見ても日本が欠かせない安全保障上のパートナーであると感じてもらえるのではないかと考えます。
それから、二つ目ですけれども、今の常設の統合任務部隊の設置にも関わることではありますが、現在、アメリカ陸軍では、マルチドメイン任務部隊を編成しまして、宇宙ですとかサイバーに加えまして、長距離の攻撃能力を持った部隊をアジア地域に展開しようと考えているところです。
このマルチドメイン任務部隊は、今後、二〇一九年に失効しましたINF条約で禁じられていた射程五百から五千五百キロの長距離ミサイルを保有していくことになります。例えば、HIMARSから射出するPrSMと呼ばれるミサイルでありますとか、あるいは、タイフォンと呼ばれる発射システムから撃つトマホークあるいはSM6。そして、現在、米陸軍が最も力を入れている長距離の極超音速ミサイル、ダークイーグル、これらをこの地域に配備したいと考えています。
米陸軍の本音は、常に日本にこの部隊を置くということであろうと考えます。とりわけ、米陸軍がこれから持つミサイルの射程を考えますと、九州が最も理想的な配備先ということになろうかと思います。その点も含めまして、政治的に非常に敏感な問題ではございますが、日米の抑止力を高めるためにも、九州において米陸軍のミサイル部隊を受け入れることについて日米で協議を始める必要があるのではないかと考えております。
それから、指向性エネルギー兵器の共同開発というものも必要ではないかと思っております。
現在、日米はそれぞれ指向性エネルギー兵器の研究開発を行っています。レールガンですとかレーザー、さらにはマイクロ波ですけれども、この指向性エネルギー兵器は、迎撃に係る費用自体は非常に安価なものになりますが、これの開発、製造には莫大な予算がかかります。その点を踏まえまして、日米で共同で行うことによってコストを下げることができるでしょうし、現在トランプ政権が検討しているゴールデンドーム、アメリカ本土のミサイル防衛ですけれども、これに日本も貢献することができるかと思いますので、その点、検討する価値があるかと思っております。
それから、拡大抑止につきましては、既にほかの参考人の方も述べておりますけれども、日米の間で協力関係はかなり深まっております。ただ、私から見て一番心配な点は、現在、この戦域に米軍の低出力の核がないことでございます。
アメリカの戦略核に対する信頼性が揺らいでいるとは私は思いませんけれども、米軍の低出力の核がこの地域にないところで、今、北朝鮮や中国がまさにこの低出力の核に力を入れているわけです。万が一、北朝鮮や中国が低出力の核を日本に対して使った場合、果たしてアメリカは戦略核でこれに報復するでしょうか。低出力に対して戦略核を使えばオーバーキルになる可能性がありますので、抑止の信頼性が揺らぐ可能性があります。
その点、現在アメリカで開発がストップされている海洋発射型の核巡航ミサイルの開発を再び行ってもらう、そして、それを搭載した潜水艦をこの地域に展開してもらうことが日米の核の傘の信頼性を高めることにつながると思います。核を積んだ潜水艦がこの辺りに配備されるということは、それがいずれ日本にも寄港する可能性もございますので、これも黒江参考人からございましたとおり、非核三原則の三つ目の原則、持ち込ませないということについて国民的な議論をして再検討する必要があるのではないかと思います。
それから、現在、関税交渉の一環で、日本からアメリカの造船業への投資が検討されていると仄聞しておりますが、これは非常に重要なポイントであろうと考えます。アメリカは、毎年二隻の原子力潜水艦を造らなければ、この先、全体の潜水艦の数が減っていくのですが、実態として毎年一隻しか造れていないのが実情です。
アメリカの造船業を復活させることはアメリカの即応態勢を高めることになり、ひいては日本に対する防衛を担保することにもつながります。とりわけアメリカではオートメーション化が遅れていますので、造船業への投資をするとともに、オートメーション化の技術についても日本からアメリカに提供することで協力関係を更に深めることができるだろうと考えております。
最後に、多国間の防衛協力でありますが、これまで日米豪印というクアッドが日本にとって安全保障の大きな枠組みでございましたが、近年は日米豪比の四か国協力が進んできております。これは俗に、クアッドをもじりましてスクワッドというふうに呼ばれておりますけれども、第一列島線の平和と安定を守る上でスクワッドの四か国協力というのは非常に重要なものであると考えます。とりわけ、ここに韓国ですとかベトナム、さらには台湾を巻き込むことで第一列島線を地域の関係国で守ることができると思いますので、この辺りについても日米で協力していくという方針を確認する必要があるのではないかと考えております。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○遠藤委員長 ありがとうございました。
以上で参考人各位の意見の開陳は終わりました。
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○遠藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。中曽根康隆君。
○中曽根委員 自由民主党の中曽根康隆でございます。本日は質疑の機会をいただきましてありがとうございます。
また、メア参考人、モチヅキ参考人におかれましては、アメリカは恐らく夜九時だと思いますけれども、大変遅い時間にもかかわらずこのような場で貴重なお話をいただきまして誠にありがとうございます。また、黒江参考人、小谷参考人もありがとうございます。今、皆様から大変本質的な、重要なお話をいただいたと思っております。
まず最初に、メア参考人と小谷参考人にお伺いしたいと思います。
先ほどメア参考人が御発言の中で、自分の国を自分で守れる国にならなきゃいけない、そして、その際に、GDP何%の議論が重要であるのではなくて、目の前の脅威に対応するために幾らかかるかを考えて予算を考えるべきというお話がありました。私は全くそのとおりだと思います。数値目標を掲げることは大事ではありますけれども、現実に沿った対応をするために幾ら必要かということが大事だと思います。
最近のニュースにおいても、まさにさっき小谷参考人からあったとおり、駐留経費の話が出ております。米国から、いわゆるFIP、米軍の住宅などについて数百億円規模を上積みするよう要請があって、政府が検討に入ったというニュースがありました。また、今の赤澤大臣の関税交渉においても、米国からの防衛装備品購入が視野に入るかと言われれば、入り得るという発言もありました。
自分の国を自分で守るために、当然、自分たちが必要な防衛力を持つために、しっかりと自分たちで予算を決めていくのが前提だというお話がありましたけれども、今申し上げた例のように、米国から様々な理由である意味プレッシャーはかかってきていて、自分が決めるというよりも、アメリカから何か言われて結局そういう方向に移っているという感覚が正直否めません。
トランプ二・〇ということになって同盟国や同志国にもディールの発想が持ち込まれている中で、安全保障の分野においても取引的な姿勢が強まっていくと思っております。
世界の警察をアメリカがやめて、そして、トランプ政権になってより一層、あらゆる地域における米軍の、アメリカのプレゼンスを意識的にアメリカが引いていく中で、既存のパワーバランスが崩れていく。これはいろいろな懸念国を利することにもつながるかもしれません。
ここで御質問です。
こういう状況において、日米同盟の実効性、抑止力、どのような変化が起きているのか、これまでの同盟関係から条件付の協力みたいな形に変質していく可能性があるのか、是非ともメア参考人、小谷参考人にいま一度お伺いしたいと思います。
○メア参考人 御指摘のようにいろいろ不安定な要素が今動いているけれども、私はかなり楽観的に、これから日米同盟がどう発展するか、見ています。
まず、おっしゃったように関税の問題があって、一九八〇年代のようないわゆる貿易戦争になっていないんだけれども、そうならないと思うんです。なぜかというと、今の日米政府の間のいわゆる関税に対する交渉はかなり友好的な雰囲気だと思う。
前例があります。貿易の面の摩擦が激しいとき、安全保障上ですごく日米同盟が進展した前例がある。それは、一九八〇年代、ちょうど貿易摩擦が激しいとき、そのとき私はワシントンの国務省日本部で経済部の方で働いて、そして次は大使館の安全保障部で働いて、冷戦時代のときに、アメリカと貿易摩擦があっても、安全保障上で日本とアメリカはすごく協力的な関係でした。
具体的に言えば、ソビエトを破壊しようとすると、成功しました、日本の助けで。具体的に、八〇年代に日本政府が、例えば、自分の防衛能力を向上するために二百機ぐらいのF15戦闘機を導入して、そして、潜水艦に対する能力があるP3Cを百機ぐらい導入して、そして、パトリオット三十二基を導入して、ミサイル防衛の協力もあって。
経済と安全保障は完全に別々にはできないけれども、同時に貿易摩擦を解決して安全保障関係を進めることはできると確信しています。もちろん不安があると思うんだけれども、来月六月中旬にG7で多分大統領と総理が会って、その前に何かのパッケージで解決できるんじゃないかと私はかなり楽観的に見ています。
おっしゃったように、アメリカに言われたからアメリカが造った装備を購入すべきだというんじゃなくて、日本が例えば次の五年間の防衛力整備計画で考えられていることをパッケージして説明したら、これからも中国に対処するために日本が自分の責任を背負って、それは日本にとってもいいことであると自分で判断して、自然な流れになると思います。
それだったら、私の目から見ると、トランプ大統領は関税をあちこちに導入して、余り組織的じゃないと見られているけれども、主な目的は中国です。そして、日本が中国の脅威に対処するためにアメリカと肩を並べて行動するよという確認があれば聞くと思います。
そして、私は来月の会談で多分うまくいくと希望しています、あと二週間くらいで分かると思うんだけれども。でも、どうしても、これから日本とアメリカが一緒に対処する、何が必要であるかを判断して協力する必要、連携する必要がある。その合同性がないと無理だと思います。
でも、先生がおっしゃったように、もちろん日本が判断します。何が、どういう能力が必要であるか、どういうふうに一番効果的に導入できるか。あくまでも日本の決断です。アメリカではない。でも、一緒に行動するのであれば、同盟関係ですから、もちろん調整する必要があると思います、お互いに。日本もアメリカに遠慮しなくて、何が必要であるかをアメリカに対してはっきり言う方がいいと思います。
もう兄と弟という昔のような関係はなくなって平等的な同盟関係になっているので、これからはそうすべきだと思います。
○小谷参考人 中曽根委員、御質問ありがとうございます。
今、日本の中でもトランプ政権に対する様々な不安、そして期待、双方が混在していると考えますけれども、第二次トランプ政権の最大の特徴は、ビジネスの発想を同盟管理に一期目よりも持ち込んでいることではないかと思います。
トランプ大統領の二期目における側近は、トランプ大統領に対して意見を述べないことが重要だと見られていますので、同盟関係にとってマイナスなことをやろうとしても、それを止める、いさめる側近がいないことが我々の不安に恐らくつながっているんだろうと考えます。
その中で必要なことは、トランプ大統領と直接トップ同士が話をして日本の立場を打ち込むことではないかと思います。
一期目におきましては、安倍元総理がまだ大統領になる前にトランプ大統領と会って、トランプ大統領の世界観に日本の考えを打ち込むことができた。これは非常に大きかったと思いますけれども、今のトランプ大統領はもう独自の世界観が恐らくでき上がっていると思いますので、これを大きく変えることは難しいとは思いますが、それでも、日本の立場として、日米の共通の利益を訴えかけることは決して無駄ではないと思いますので、まずはトップ同士の信頼関係、そして頻繁なコミュニケーションが必要ではないかと考えます。
アメリカから見ますと、日本が近年かなり自助努力をしていることは評価されていると思いますけれども、それでもまだ足りない部分はあるわけです。例えば、現在、四十三兆円まで防衛費を増やすことになっておりますが、為替を考えますと、当初は一ドル百円程度で考えていたところ、今は百四十円ですので、購買力が落ちていることは間違いありませんから、この点についてはアメリカに言われる前に日本として見直すことは必要ではないかと考えます。
その上で、追加でアメリカ製の例えばトマホークを購入することが日本にとって利益になるのであれば購入するということでしょうし、あるいは、共同開発、共同研究を進めることで日米の一体性を進めることも大事ではないかと思います。
何より日本の主体性が今は問われておりますので、アメリカから様々な要求はあるでしょうけれども、そのような要求があっても、論理的なものでないものに関してはこれに反論し、そして、日本の立場を打ち込めるように、日本の主体性を持った安全保障に対する考え方をいま一度我々として考える必要があるのではないかと考えております。
○中曽根委員 ありがとうございます。
黒江参考人にお伺いしたいのですが、先ほど自衛官の処遇についてのお話がありました。これに絡めて、私は先日、DSEIジャパン二〇二五、最先端の防衛装備品の展示会に行ってきました。そのとき強く感じたことは、無人機の時代だと感じたのです。これまでの人を前提とした戦い方から、無人機対無人機のフェーズに入ってくる。こういった無人機が主力になってくる戦場において、自衛隊に求められる人材像はどのように変わっていくのか。
要するに、人員規模の削減、縮小が現実的な選択肢となる中で、自衛隊の量的な抑止力という概念がどのように再定義されるべきか。なり手不足が深刻化している中で、党としても当然処遇の改善を含めて様々な施策をやっていますけれども、そもそも二十五万人という人数が無人機の登場によって妥当なのか、適正な人数であったり求められる資質、能力は変わっていくのではないか。
こういった人数のプレゼンスが減る分の抑止力の担保をどう設計し直すか、その辺の御意見があれば教えていただきたいと思います。
○黒江参考人 御質問ありがとうございます。大変大事なポイントだと思っております。
まさに御指摘のとおり、無人機の活用につきまして、諸外国と比べまして、例えばウクライナの現状と比べると、自衛隊はかなり遅れているんだろう。ここの部分は早急に改善していかないといけない。
また、その際にどのような人材像が求められているのかという誠に難しい御質問ですが、以前から自衛隊の隊員について言われておりますのは、部隊の能力は先端技術に合わせてどんどん高度化していかないといけない、これに対応できるような高度な技術、知識、そういったものを持った人間が多く必要になるということだろうと思います。
それがありますので、先ほどちょっと触れましたけれども、今は、全て自前で育て上げるということではなくて、部外の高度人材にうまく柔軟に自衛隊の中に入っていただいて活躍していただく、そういったようなことが必要だろう。
ただ、こう申し上げた上で、他方、災害の発生等が頻発していることを考えますと、災害の現場で炊事から何から全部自前で対応する組織力というのはどうしても必要になります。これを持っておりますのは今のところ日本の中で自衛隊だけでございますので、そういった私が最初に申し上げた高度化と若干反するようなローテクの部分、マンパワーに依拠しないといけない部分と両方ございますので、そのバランスを見ながらこれから組織づくりをやっていかないといけないので、全体の数は少なくする、そういうことじゃないかと思っております。
○中曽根委員 時間が来ておりますので、本当はモチヅキ参考人にもお伺いしたかったのですが、外交が大事という話がありました。また別の機会に御指導いただければと思いますけれども、やはり抑止力だけでは不十分であって、とにかく日本とアメリカが対中国というものを念頭に置いてしっかりと戦略的にこれまで以上に協力して外交を進めていく重要性を改めて認識したところであります。また別の機会に是非とも御指導いただければ幸いに存じます。
以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。中曽根康隆君の質疑は終了いたしました。
次に、屋良朝博君。
○屋良委員 参考人の皆様、よろしくお願いいたします。立憲民主党の屋良朝博でございます。
皆様の深い分析などをお伺いしていますと、やはり、今トランプ政権を前にして、かなり不確実性のある国際情勢になってきているということを実感せざるを得ないというふうな気がしましたけれども、お話を聞いておりますと、米国側とのつき合い、日本がどれだけ主体性を持って自立した安全保障政策を築き得るのか。軍事同盟なので軍事的な側面が強いというのは致し方ないと思いますけれども、一方、中国は、ASEANとかアフリカとか中東との経済協力を今強力に進めつつある側面がありまして、中国は経済でソフト面、アメリカはハード面であるというふうな分類がもしなされるとすれば、今アメリカの中で起きている不確実性で、アメリカが国際公共財からどんどん手を引いているという現状がこれまたあるという中で、やはり私たちが今考えないといけないチャレンジは大変幅広く多様なものになっていかざるを得ないのではないかというふうな気がしております。
そこで、メアさんとマイクさん、ワシントンからの御参加、本当にありがとうございます。お二人にまず聞きたいのは、主体性が求められる、自立性が求められる日本の防衛政策、安全保障政策の中で、日本は、今後トランプ政権がもたらす国際情勢の変化に対してどのような選択肢があるのかということを教えていただきたいと思います。
○モチヅキ参考人 どうも屋良先生、非常に重要な質問をありがとうございます。
一つの選択は、今日の委員会で参考人が強調した選択が一つです。それは、できるだけアメリカとくっついて抑止力を維持するために防衛協力を進めるということ。もちろんそれは重要ですが、私が指摘したように、これは不十分だと思います。
そして、第二の選択は、中国の力が拡大、拡張したので、中国のスフィア・オブ・インフルエンスに従うという選択があると思います。僕は、それは望ましい選択ではないし、中国は非常に傲慢な要素もあるし、中国を懸念する材料は結構あります。ですから、日本の一番望ましい選択は親米自立で、この自立のところは、アメリカが国際パブリックグッズを提供しないという方向に動いているので、日本がほかのミドルパワーと連携するということですね。
それは、近隣諸国を始め、一番大事なパートナーは韓国だと思います。そして、東南アジアの諸国、特にこれからますます国力を発揮するインドネシアとの連携は重要だと思います。もちろん豪州とかニュージーランド、そうしたインポータントな諸国との連携、だから、アメリカが公共財を提供しないという方向に動いているので、日本がリーディングミドルパワーとしてほかのライクマインデッドのミドルパワーと連携するということが一番望ましい選択だと思います。
そして、今日の質疑ではいろいろ軍事的な脅威を優先的に議論されていますが、私から見れば、安全保障から考えれば、一番の脅威は気候変動だと思います。これは基本的な安全保障にも関連するんです。それに対応するためには国際協力が一番重要だと思います。
○メア参考人 歴史を見ると、何回もアメリカのの方が内向きになって、孤立主義者が増えているとかという現象があって、残念ながら、よく歴史を見ると、特に二十世紀のときに、外国が、アメリカは弱くなっているので、これがチャンスだと間違ったことはある。ドイツとか、日本もそうだったし、北朝鮮もそうだったし、イラクもそうだったし。
アメリカはまだ強い国ですから、でも、屋良先生がおっしゃったように、日本の主権が必要で、もちろん、自立するか連携するか、どっちかという問題ではないんです。両方が必要です。それは言うまでもないことですから。
私がアメリカ政府に入ったとき、二、三十年前から、大使館で、国務省でも、いつも日本の方が、主権国だから、何でアメリカを頼るだけですか、安全保障上で。自分の国の防衛能力を向上しないとならない、主権国だから、自分の責任ですから。でも、それはアメリカにとって悪いことじゃない。ある人が、防衛の面で日本が強くなったら同盟によくないという意見が昔はあった。その意見は余りないです、アメリカでは。ほとんどのアメリカ政府の人は、トランプ政権もそうだと思うけれども、日本が強くなってほしいです。実際強くなっている、防衛能力、抑止力を向上することは早く進んでいる。それをアメリカはすごく歓迎する。
でも、多分、日本人の主な質問が、じゃ、日本がこれからアメリカを頼ることができるかどうかという疑問があると思います。今はちょっと不安定な要素が、おっしゃったように、よくありますので。頼ることはできると思います。私は確信しています。
こういう歴史でめり張りがあるでしょう。でも、日米同盟はすごく熟している同盟ですから、幅広い、深い同盟ですから。第一回のトランプ政権も同じような不安があったし、でも、考えると、振り返ってみると、前のトランプ政権、日米はいろいろあったけれども、日米同盟はかなりうまく機能していた。そんなに大きい問題は出なかったし、進んでいた。
なぜかというと、アメリカの議会を見ると、日本と連携して、日米同盟を考えると、超党派な支持者が多いです。だから、トランプ政権が今、中国に集中しているけれども、中国の脅威がいろいろありますけれども、日本にとっていいことであると思うんですけれども。
日本がどういう選択肢があるかというと、完全自立してアメリカとの関係をなくす。抽象的に言えば選択肢。でも、それは現実的ではない。
でも、どの国であっても、自立、自分で自分の国を守りたい、ほかの国を頼りたくないという気持ちがあるのは当たり前のことですけれども、私の経験では、日本のリーダーの方々とアメリカのリーダーの方々、これまでの人たち、トランプも含めている、独自で中国の脅威に対処することはすごく難しい、連携する必要がある、これは変わらないと思います、トランプ政権の下で。
現実的に考えると、中国に対処する日米同盟、日韓同盟、できれば日韓の連携と、日豪連携とか東南アジアとかの連携、防衛の面だけじゃなくて、モチヅキ先生がおっしゃられている、外交の面でも経済の面でも連携協力が必要である。それが一番現実的、日本にとっていい選択肢であると思います。
○屋良委員 ありがとうございました。
モチヅキ先生、日米関係をずっと研究なさっていて、沖縄の米軍基地問題についても長く分析されて、論考されてきたというふうに承知しております。現在、沖縄で進められている名護市辺野古の代替施設建設、FRFは、滑走路が短くて、有事に使えないよというふうな海兵隊の側の不満も聞かれてきております。
先ほど小谷先生も言及なさった在日米軍の再編、海兵隊は大幅に実戦兵力を減らしてハワイやグアムやオーストラリアに分散配備しようとしている中で、不人気と私は思っているんですけれども、その政策、普天間の辺野古移設をずっと続けていくということは日米双方にとって生産的ではないというふうに考えておりまして、よりよい解決策を探ることは可能なのかということをずっと私はテーマにしてきているんですけれども、先ほどモチヅキ先生、その点も、米軍基地の負担の軽減や日米地位協定の改定を求めていくチャンスじゃないかというようなことをおっしゃっていましたので、その点について少し詳しく教えていただけますでしょうか。
○モチヅキ参考人 ありがとうございました。
私は、もう三十年前から、アメリカの海兵隊を思い切って削減できるということを強調しております。
そして、僕は、今の、普天間の移設の、FRFの辺野古で今埋立ての滑走路を建設しているんですが、それは、軍事的に見れば非常に不合理で、日本の税金の無駄遣いだと思います。そういうような施設を建設するということはすごくぜいたくで、中国のミサイルが来たら、それは全然使えない施設だと思います。
ですから、今のFRFを修正して、大きい埋立ての計画を中止して、もっとコンパクトなヘリポートみたいな、オスプレイが使用できるような施設に、限定的なものにして、そして、できるだけ早く普天間の飛行場を閉鎖状態にして、それは、一時的に担保にして、有事のときに使用できるような形で置いておくんだけれども、それを訓練に使うということは住民には非常に危険を与えているので、それをできるだけ早く閉鎖状態に変えるということ。
そして、南西諸島の防衛とか尖閣の防衛ということは、アメリカの海兵隊よりも、日本の自衛隊が責任を持ってやるということが必要だと思います。既に日本は、アンフィビアス・ラピッド・ディプロイメント・ブリゲード、水陸機動団という組織をつくりまして、それは今のところ非常に不十分ですが、非常にエフェクティブな部隊にして、そして海兵隊を削減して、そしてFRFの建設をもっとコンパクトにするということの方が、国民の税金を効率的に使うということになると思います。
○屋良委員 そろそろ時間なので、最後に感想だけ言わせてください。
先ほど黒江さんが、自衛隊の将来像を聞かれて、災害の際に自立して自己完結的に活動できるのが自衛隊であるということが一つ指摘されたということと、日本はリーディングミドルパワーになって、今の一番の脅威である気候変動など、そういった国際協力へももっと積極的に進んでいくべきじゃないかというマイク・モチヅキさんの御指摘、何か関連しているような気がして、とても印象的でございました。
小谷先生、黒江先生にも御質問をさせていただきたかったですけれども、ちょっと時間の制約でできずに、大変残念でございます。またいつか機会があれば教えてください。よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 屋良朝博君の質疑は終了いたしました。
次に、美延映夫君。
○美延委員 日本維新の会、美延映夫でございます。
本日は、四名の参考人の先生方、貴重なお話をありがとうございます。
早速質問に入らせていただきます。
トランプ大統領になって百二十五日という話が先ほど出ておりましたが、現在のいわゆる関税の問題であるとか安全保障の問題であるとか、いろいろと発言をされておられますが、日米関係、日米同盟はこの後どのように変わっていくのか、またそのまま変わらずに進んでいくのか、それを教えていただきたい。
それから、日本の防衛費は今増額して約八兆円ですけれども、日本にとって、先ほどもお話にありましたけれども、アメリカにとっても脅威は中国であると考えられます。中国の防衛費は年間約三十六兆円、日本が八兆円です。日本の防衛費はGDPの二%ぐらいまで増額をしていますが、米国の高官の御指摘によると、まだまだ少ないのではないかというようなことも言われております。
そこで、今日、参考人の先生方に、これからのいわゆる日米同盟について、それから防衛費について皆様の御意見をお伺いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。
○メア参考人 ありがとうございます。
私はかなり基本的には楽観的な性格ですけれども、私は、日米同盟がこれからどう発展するかというと、今のまま続くと思いますね。いろいろ具体的に話題になるけれども、でも、日米同盟自体が、この十五年間、二十年間のように続くんじゃないか。そうすると、二〇二二年から今の五年間の防衛力整備計画があって、すごく節目だったと思います。日米同盟は本当に真の同盟になっているので、このことは続くんじゃないかと私は考えています。
トランプ政権のいろいろな理解しにくい点もあるんだけれども、基本的に、中国に対し、北朝鮮に対し、ロシアの脅威にどうやって対応するかを考えて、日米同盟がちゃんと機能しないと、アメリカ独自で対応できないとみんな分かっていますので、日本でもほとんどの指導者が分かっていることは、日本独自で対処できないと分かっているから、そういう背景で、どういう具体的な一時的な摩擦があっても、共通の価値観があるから友好的な関係ですから、一時的な問題を解決して、日米同盟がこのまま続く、進展すると考えています。
そして、防衛予算のことは、もちろんまだまだ十分じゃないと私は考えています、はっきり言うと。すごく前と比べるとよくなったけれども、いろいろなところでまだ能力は不十分ですので、例えば、空中給油の能力にすごく脆弱性があるところとか、戦闘機も少し増やす方がいいと思うし、いろいろな具体的なところで効率的に運用上で日本の自衛隊が動くことができるように、そして、それに加えて、軍事的な相乗効果があるように、アメリカと日本が、自衛隊と米軍が合同作戦できるようなことが進むように、防衛予算、今のままでは、また五五%、五年間増やすことは考えていないけれども、段階的に防衛予算を増やして、この傾向が続く方がいいと私は考えています。
○モチヅキ参考人 日米同盟が継続するかしないかということは問題ではないと思います。むしろ、メアさんがおっしゃったとおり、継続すると思います。しかし、問題は中身で、僕は、これからトランプ政権の日米同盟についての政策が出てくると思いますが、私から見れば、抜本的に再構築するような方針に動くと思います。一つは、日米同盟をもっと双務的なものにするということを要求すると思います。ですから、防衛費の増額だけでなくて、兵力構成の変化とか双務的な変化を求めて。
これから日本は、日本なりに日米同盟のどういう在り方が一番望ましいかということを主体的に考えて、トランプ政権にも打ち上げるということは重要だと思います。
○黒江参考人 お答えいたします。
まず、同盟の今後の姿といいますか、そういうことについて言いますと、本日の委員会の中でも主体性という言葉が何度も使われたと思います。恐らく、同盟がどうなっていくかというよりは、我が国として同盟をどうしていきたいかということに懸かっているんだろうと思います。
私の意見としましては、これまで着実に日米同盟は、日本側が同盟の中での責任分担を重くしていく、より大きな責任を負うことで深化、発展してきたわけです。この方向性を維持する、そういう意味で、これまでやってきたような方向で深化させていくというのを国の意思として持つべきだと思います。
それと、防衛関係費につきましては、現在の防衛力整備計画に従いましてGDPの二%を目指しておるわけですが、必要な経費をきちんと積み上げていく、そういう姿勢でいきますと、これから更に人的基盤の強化、人への投資が必要になりますし、あるいは無人装備も当然必要になる。そういったことを考えますと、所要としては非常にあるんだろう。
他方、防衛関係費も予算でございます。ですから、国の全体の予算の中で決まることですので、当然、財政力も国力の一つでありますので、突出して防衛関係費だけを重視するというよりは、他の施策との調和を図りながら決めていくべきであるというふうに思っております。
○小谷参考人 御質問ありがとうございます。
まず、日米関係、日米同盟の今後ですけれども、先ほども触れましたが、やはり、日本が主体性を持って同盟に取り組んでいくということがますます求められていくということになろうかと思います。
アメリカとしましては、先ほど冒頭にも申し上げました抑制主義という考え方が広まっていく中で、アメリカにとって死活的な利益となる問題についてのみ関与していく、これは恐らくトランプ政権が終わっても全体的な流れは変わっていかないと思いますので、まず、日本として、アジアの安全保障がアメリカにとってどういう利益があるのか、これを常に語り続けることが必要なんだと思います。
その上で、第一列島線はどう考えてもアメリカの戦略的な観点から見たときの利益であるはずですので、第一列島線を日米で、そしてフィリピン、オーストラリアなどと守っていくこと、これが何よりも大事だということを強調していくことが必要ではないかと思います。
これまで日米の共同声明の中で第一列島線の重要性に触れたことはないかと思いますけれども、今後、日米で協議をする際には、第一列島線の重要性を両国で確認することが一つ必要ではないかと考えております。
それから、防衛費につきましても、先ほどもこれも触れましたが、まずは日本の為替を考えたときの購買力が落ちていることを前提に、調達計画をまず自ら見直す努力というのは必要になってくるかと思います。
それから、黒江参考人からもありましたとおり、やはり人的基盤がなければ幾ら防衛費を増やしても駄目ですので、防衛費を増やす中で、人的基盤を確保する施策も必要になってくると思います。
現行の国家安保戦略、国家防衛戦略では、人を増やすことなく新たなミッションを自衛隊に与えるということでしたけれども、これは現実的に非常に難しいことだと思うんですね。やはり少子化の中でも人的基盤をいかに増やしていくかをしっかりと考えつつ、防衛費をそのためにいかに使うかということも必要だと思います。
アメリカでは、例えばコルビー国防次官が、承認の公聴会の中で、日本の防衛費はやはり足りない、少なくともGDPの三%が必要であるというような発言もありました。今後、アメリカから具体的な数字を挙げて要求が出てくるかもしれませんけれども、アメリカから要求が来る前に、まず日本として必要なものを積み上げて、これぐらいが必要だということを考えておく必要があると思います。
日米同盟に取って代わる枠組みは存在しません。それは、とりわけ核の拡大抑止を提供してくれる国がアメリカ以外にないからです。一方、通常戦力の面におきましては、まだ日本として取り組むべき課題は残っていると思いますので、そこに取り組む中で防衛費がGDPの二%を超えることがあってもおかしくないと思いますから、そういう観点で考えていく必要があろうかと思います。
ありがとうございました。
○美延委員 ありがとうございます。
今、小谷参考人の方から、いわゆる第一列島線、私もこれは同感です。やはりこれは米国にも利益のあることですので、そこはそうだと思うんですけれども。
それともう一つ、令和三年の四月十四日の参議院の調査会で小谷参考人が中国の海警法について述べられているのを私は拝見させていただきました。そこから四年がたって、先日も領空侵犯みたいなことがあってというようなことも言われていますけれども、今後、中国のいわゆる海警法がどうなっていくのか、この辺をもう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
○小谷参考人 御質問ありがとうございます。
海警法、それから海警と人民解放軍の連携というのは、間違いなく過去四年で広まってきたということが言えます。
尖閣周辺はもちろんですけれども、特に台湾周辺における海上封鎖を想定した演習の中で、人民解放軍と海警が連携をしてこの演習を行うということになっています。この演習を行う際に中国は侵入禁止の海域を設定しますけれども、これは国連海洋法条約上、認められるものではございません。海警法の中にも侵入禁止の海域を設定できるということが書かれておりますが、これも国際法違反の内容になっているところです。この点については、日本として関係諸国と連携をして常に中国に対して抗議をしていくことが必要ではないかというふうに考えております。
また、人民解放軍と海警局との間では人事面での交流もかなり深まっておりまして、元人民解放軍の司令官が海警の司令官をすることも散見されるようになってきておりますので、海警という組織を我々は海上警察としてみなすべきなのか、それとも軍の一部としてみなすべきなのか、この辺りも検討が必要ではないかと思います。
平時においては政府公船に対しては主権の免除が与えられますので、そこに外国が介入することは難しいのですが、有事の際に、これが軍艦なのか、それとも政府公船なのかというのは大きな違いが出てきます。つまり、有事の際、政府公船であれば無警告で攻撃はできないんですけれども、軍艦であれば攻撃ができることになります。
第一次トランプ政権の間に、実はアメリカ政府は海警局の船は軍艦であると解釈をして、有事の際には無警告で攻撃できるという方針を打ち立てました。そして、それを中国政府にも伝えたということですけれども、この点、まだ日本とアメリカの間の認識が違うと思いますので、ここは早急に日米で認識をすり合わせることが抑止力の強化に必要ではないかというふうに考えております。
○美延委員 どうもありがとうございました。時間が来たので、終わります。
○遠藤委員長 お疲れさまでございました。美延映夫君の質疑は終了いたしました。
次に、橋本幹彦君。
○橋本(幹)委員 橋本幹彦でございます。本日は初めてのオンラインによる出席ということで、この実現に尽力された遠藤委員長を始め、各位の御尽力に敬意と感謝を申し上げます。
私は、この質問において、日本国の政治が、無政府状態の世界政治においていかに主体的に国民のために働くことができるか、現状と今後の課題を明らかにしたいというふうに考えています。
まず、マイク・モチヅキ参考人と小谷哲男参考人に、日本の物語について質問します。日本国がよって立つ国民国家の共同幻想、あるいは日本国が同盟国、同志国と共有する価値が、国際政治の荒波を、あるいは国際企業が闊歩する時代を乗り越えることができるのかという問いです。
ケビン参考人からは、日本の集団的自衛権の一部容認ですとか安保三文書の制定によって、日米の連携が大きく進んだという発言がありました。確かに、政府同士や政府内の認識は進んだかもしれませんが、しかし、肝腎の日本国内においては課題が山積している状況だというふうに考えます。例えば、政府と国民、あるいは政府と野党、政府と多くの学者の皆さんの間に世界認識の分断があるように私は感じています。
黒江参考人からも、核抑止論と、核廃絶、核軍縮論の議論が全く交わらない、水と油という話がありましたけれども、このことは決して核の議論に限らず、安全保障全般に言える話ではないかなというふうに思います。
この分断を乗り越える一つの手段が、国民が共有できる物語であると考えます。例えば、中国には中国の夢があります。一帯一路を通じて投資家を巻き込んだ物語があります。あるいは、ロシアにはプーチン大統領が持つ旧ソビエト連邦の栄光を復活するという夢があります。日本国政府は自由で開かれたインド太平洋戦略というのを打ち出しました。TPPと連接して、同盟国、同志国と共有する価値となることを想定したわけですけれども、しかし、トランプ大統領による米国の方針の転換というのは、これに水を差したように私は思います。あるいは、この自由で開かれたインド太平洋戦略というのが、日本国民が広く、そして深く理解するところかと言われると、そうではない状況だというふうに思います。こういった国内の課題があろうかと思います。
モチヅキ参考人が言及された日本の主体的な外交の実現のためには、日本人が国内で共有できる、あるいは共有しようとする価値ですとか物語が必要だというふうに考えますけれども、この点について、現下の課題、モチヅキ参考人、小谷参考人の順でお答えいただければというふうに思います。
○モチヅキ参考人 ありがとうございます。
アメリカの国民と日本の国民の価値観の共有が成り立っていると思います。ですから、そういう意味で、アメリカの国民と日本の国民が交流して、連携をして、共有した価値観を大事にして促進するということは可能だと思います。
しかし、残念ながら、僕は、トランプ政権自体は価値観をどれだけ共有しているかということがちょっと疑問で、そしてアメリカは、歴史の中で、アメリカの民主主義体制の最大の危機に直面していると思います。私はすごく心配しております。
そういう意味で、日本は、アメリカだけでなくて、世界で共有する価値観を持っているほかの国々があります。まず近隣諸国で、韓国とかオーストラリア、カナダとかヨーロッパ、そういうミドルパワーの民主主義の国と連携を深めて、そして、アメリカが、また将来同じように価値観を共有して、世界にもっと平和と民主主義的な発想を普及するような国になるということを私はアメリカ人として望んでいるんですが、しかし、これから十年ぐらい、大変な時期に直面していると思います。
○小谷参考人 御質問ありがとうございます。
戦後日本においては、やはり自由主義でありますとか、それから民主主義、さらには自由貿易、そして近年ではルールに基づく開かれた国際秩序、これが恐らく多くの国民のコンセンサスとしてあったと思います。そして、そのコンセンサスに基づいて、日本政府は外交、対外政策を行ってきたというふうに考えています。
その現状は今のところ大きく変わっているというふうには考えませんが、ただ、例えばSNSなどを見ておりますと、このような価値観に異を唱える、つまり、アメリカでのいわゆるトランプ現象に影響を受ける形で、より偏狭なナショナリズムに走るような傾向も一部見て取れるかというふうには思います。近年の日本で行われる選挙を見ておりましても、選挙妨害と取れるような動きも広がっているかというふうに考えますが、これは数年前のアメリカに見られたものが日本でも見られるようになっているということなので、一部アメリカの政治状況が日本にも波及しているところではないかというふうに考えます。
ただ、全体として、アメリカに比べますと、日本社会が大きく分断されるところまでは行っていないというふうに思いますので、まずは、これまで日本が積み重ねてきた戦後の重要な価値、自由主義、民主主義、自由貿易、これらを再確認することが必要ではないかと思いますけれども、それは、これまで二度出されました国家安保戦略でも確認されていることですし、今後これが改定されるとしても、これは恐らく日本としては変わっていかないというふうに思います。
この自由で開かれたインド太平洋、これは専門家の間ではもう誰もが分かっていることですが、これを一般の国民の方に言ったときに、果たしてどこまで理解してもらえているかというのは正直なところあるかと思いますので、これについてはより積極的に日本政府として発信していただく必要があるでしょうし、これが実はアメリカも含めて多くの国が今賛同しているところであるということについても積極的にアピールしていく必要があるのではないかというふうに考えております。
○橋本(幹)委員 次に、ケビン・メア参考人と黒江哲郎参考人に、日本が今後構築すべき政軍関係、シビル・ミリタリー・リレーションシップについて質問します。
国家が有事に対処するに当たっては、政治のリーダーシップが的確に働くことが不可欠です。しかし、日本においては、戦略次元、作戦次元、戦術次元、レベルズ・オブ・ウォーフェア、それぞれに応じた意思決定の文化が十分に醸成されていないのではないかという問題意識があります。
この問題の根幹には、有事に際して、国会ですとか政治家が果たすべき役割が整理されていない。それが、例えば映画の「シン・ゴジラ」で描写されたように、戦術的情報までが総理に上がってしまうというような状況になるんだろうなというふうに思います。これは、ミッションコマンドとは真逆の指揮統制であり、マイクロマネジメントの弊害を生んで、国民と国そのものを危害から守ることができないというふうに考えます。
あるいは、例えば国会に制服組自衛官を呼んで意見を聴取する文化がないことも、文民統制を健全に機能させるに当たっては不健全な状況であるというふうに考えています。
こういった政軍関係の問題が日本国にはあろうかと思いますけれども、これについて、ケビン参考人、黒江参考人の順でお答えいただければと思います。
○メア参考人 もちろん、アメリカでもシビリアンコントロール第一ですよね。軍が完全に自由に動くことはできない。
さっきの質問で、国民の価値観ということにちょっと戻りますけれども、一つ違うところがある。主に共通価値観があると思いますね、アメリカの国民と日本の国民は。
一つは、平和ぼけの時代があったけれども、それは大きく違いがあった。それは、アメリカを頼るだけで、日本国民は別に防衛を考える必要がないという時代があったけれども、幸い、そういうのが完全になくなりました。
あと、もう一つ、ちょっと違うところ、自衛隊の社会的な位置はどんどん向上していると思うので、もっと早く対応をもっとうまくやるべきだと思う。宿舎とかを改善すべきだ思う。でも、どんどん国民が分かっていると思う。自衛隊が社会のためにどのぐらい苦労している、働いていると、どんどん理解が上がっていると思います。
シビリアンコントロールの意思決定の手続というか、日本で有名なことは、コンセンサスをつくらないとならない、根回しして、コンセンサスをつくって、時間がかかる。コンセンサス社会がいいことだけれども、コンセンサスがあったら早く実行できるけれども、でも、残念ながら、危機が起こるときに、災害でも軍事的な危機であっても、コンセンサスをつくる時間がないときには指導者の方が責任を取って決断する必要がある。
3・11の大震災のときに、二〇一一年の一つの例だった、余りうまく機能していなかったし、特に防衛の面で意思決定も早くやらないとならないことです。でも、シビリアンコントロールと軍の間の一つの具体的な話題になることは、事前にどこまで自衛隊の方が決める権利があるかを事前に決断しないと、そういう手続と概念、ルール・オブ・エンゲージメント、私の経験からいうと、日本で一番早く進んでいたところはミサイル防衛でしたから、そのミサイル防衛が、前に、日本では、私が知っている限り、ミサイル攻撃が来るときは総理が判断しないとならない。閣議決定が必要だった時期もあったけれども、今はそうじゃないんだけれども、もう七分か八分間しかないので、そういう決断の権利をできるだけ運用上で決める必要がある人に渡す必要がある。もちろん、きちんと調整する必要がある。これはこれから話題になると思います。
でも、基本的に申し上げているのは、アメリカの方で、日本と同じく、シビリアンコントロールが第一原則ですよね。軍がやりたい放題できるわけないでしょう、アメリカでも。それは当たり前だと思います。
○黒江参考人 大変重要な点の御質問をありがとうございます。
それで、一つは、シビリアンコントロールの枠組みにつきましては、私も元政府の人間でございましたので、枠組みは既にできている。重要な意思決定、特に自衛隊の行動についての命令権者については、重要なものになればなるほど上に上がっていくわけですね。それで、最終的に、自衛権の発動であれば内閣総理大臣が決定する。ただ、さらに、そこには国会の承認が必要である。例えば、そういったときに、国会で承認するといって、いかなる形で承認が行われるんだろうかといったことは私は寡聞にしてそういう議論をお聞きしたことがない。
ですので、例えば、以前の国会で、敵基地攻撃能力といいますか、反撃能力の導入の可否を議論されたときに、これはまさに自衛権の発動ですので、最終的には撃つか撃たないかというのは国会の承認が必要になるわけです、事前であろうが事後であろうが。それは、まさに、おられる国会の先生方皆さんがこれに賛成するのかしないのかを問われる形になるわけですので、そういった実態に近い、より実感を伴う形での国会での議論をやっていただけると、恐らく、先生御指摘のような、政治の役割で整理されていない部分がまだあるんでしょうから、そういうところの議論を深めることになるんだろうと思います。
それと、国会での自衛官の発言、証言ですが、これは昭和三十年代には何度かあったと聞いております。その後は行われていない。
これはあくまでも国会でお決めになることという前提で申し上げますと、私が実務担当者のときもそういう議論はございました。そのときに私が若干懸念しておりましたのは、国会は、もちろん政策の議論の場でもあるんですけれども、同時に政治権力の闘争の場でもありますので、例えば日々の委員会の質疑の中でも必ずしも政策の当否を問うような質疑だけではないものがなされる、これは仕方がないことだと思います。そういうものに対して、それでは自衛官をこういう場に持ってきて質問に答えさせるのが適切かどうかは、現段階ではなかなか考えにくい。
むしろ、そこは、例えば自衛隊の存在でありますとか自衛官の役割でありますとか、そういうものについて、大変僭越な言い方で恐縮ですけれども、各党派間で共通の認識があった上で、例えばオペレーションをやっているときには呼ばないとか、そういったごく常識的なルールができるのであれば、当然、自衛官が国会で答弁するのは十分可能だろう。ただ、現状、なかなかそこまでではないのかなというのが私の実感でございます。失礼いたしました。
○橋本(幹)委員 ありがとうございました。
時間ですので終わります。
○遠藤委員長 橋本君の質疑は終了いたしました。
次に、西園勝秀君。
○西園委員 公明党の西園勝秀でございます。
本日は、四人の参考人の方、大変貴重なお話をありがとうございました。
まず、メア参考人とモチヅキ参考人のお二人にお話を伺いたいと存じます。
メア参考人は、先ほどのお話の中で、アメリカの日本に対する見方がこれまでで変わってきたと。日米同盟が大変深化してきたという御指摘かと思います。その上で、どういう協力がこれから日本ができるのかということを考えていく必要があるというお話でございました。
また、モチヅキ参考人からも、アメリカ第一主義が続いていくんだと。特に、中国との軍事衝突を避けていく、そのために、ある意味、台湾有事の問題に対してはクールな対応も必要ではないかといったお話もございました。そして、さらには、緊張緩和を促すような積極的な外交が必要だ、こういう御指摘かと存じます。
その上で、お二人にお伺いしたいんですが、今、ロシア、中国、北朝鮮、こういったところの軍事的圧力が大変強まっておりまして、北東アジアでは緊張関係が増しております。
私たち公明党は、戦後八十年の節目の年に当たりまして、平和創出ビジョンというものを打ち出させていただきました。それは、これまで、北朝鮮、ロシア、中国、日本、アメリカ、韓国、この六か国による対話の場がございました。実は、今、これが途絶えてしまっている。紛争を未然に防ぐという意味においては、まずこの六か国を少なくとも含む関係国との対話のチャンネルを再開すべきだということをこの平和創出ビジョンの中で訴えさせていただいております。これは、いわゆる欧州安全保障協力機構、OSCEが、EUの、ロシアとかも含めてございますが、これを参考にした、我々は、北東アジアにおける安全保障対話・協力機構、いわゆるアジア版OSCEというふうにも呼んでいるんですが、こういった提案でございますが、我々公明党の提案に対して、メア参考人、モチヅキ参考人はどのように捉えていただいているか、是非御見解をお聞かせいただければと存じます。
○メア参考人 難しい質問でしょう。
確かに、おっしゃったように、ロシア、中国と北朝鮮の協力連携がますます脅威になっていると私は考えています。特に心配していることは、中国とロシアの協力、北朝鮮とロシアの協力を見て、御存じのように、北朝鮮がいろいろ武器とかをロシアに提供して何をロシアからもらっているかというのははっきりしていないんだけれども、ミサイルの技術と核兵器の技術とかをもらっているんじゃないかという意見が多いんですね。すごく危ないことです。
アジア版のOSCEとか同じくアジア版NATOをつくるべきじゃないかという、私も何年も前から政府に入っていたときに日本にアメリカ政府がよく言っていたことは、特に二〇〇〇年代のとき、日本がまずオーストラリアと協力しないとならない、安全保障の面でも。それはすごく進んでいます。
そして、できれば韓国との連携が必要であるけれども、歴史問題があるし、あと、韓国の政権がよく替わって、いろいろ難しいところはあるんだけれども、できれば日米豪韓、フィリピンとか、少なくともそういう国々と一緒に中国、ロシア、北朝鮮に対する連携をしないとならないと考えています。正式の組織ではなくても、この連携が進むべきだと思います。
○モチヅキ参考人 六か国の協議ですが、僕は、そういう協議がまた実現できるということは非常に望ましいことだと思います。現実的には非常に難しいと思います。
二十年前の話ですが、ちょうど北海道知事だった横路さんが北太平洋のフォーラムをつくって、それに僕も何回も参加をして、そのときは北朝鮮も参加したし、豪やカナダも含めて、それは非常に建設的な対話を行ったと思います。
しかし、残念ながら、今の状態では最悪の事態が起きていると思いますので、これは日本の安全保障環境からすれば、一番厳しいあれだと思います。ロシアと中国と北朝鮮が連携して、アメリカの同盟ネットワークに対抗するような姿勢を取っているということで、本当にアジア太平洋地域を分断させると言われる不幸な結果が今出ていると思います。
こういう結果が出たということは様々な要因があるんですが、アメリカの外交の責任も結構あると思います。最初に指摘したように、アメリカのロシア政策は非常に戦略的に間違って、この三十年間でウクライナ・ロシアの不幸な戦争まで持っていったという結果があります。
そして、北朝鮮とのディプロマシーもアメリカは何回も失敗に終わったと思います。そしてまた、僕は今でも対中政策はエンゲージメントポリシーが正しいというあれですが、最近アメリカは、中国の脅威をすごくインフレーションして、拡大して、中国に対処するという中国脅威論が独り歩きしているという感じがして、ですから、そういう意味で、公明党が打ち出した六か国の協議ということは、今のところ、実現しにくいと思います。
しかし、徐々にウクライナ・ロシア戦争が終結すれば、米ロの関係は改善する道が出てくると思います。そして、トランプ政権ではまた北朝鮮との積極的な対話が始まるということを僕は期待しております。しかし、これは非常に難しい問題ですから、すぐいい成果が出てくるということではないと思います。
○西園委員 ありがとうございます。
おっしゃるとおり、大変難しい道のりだと思いますけれども、やはり紛争を未然に防ぐという意味においても、対話のチャンネルというのをしっかり持っておくことは、私は重要ではないかと思います。ありがとうございます。
続きまして、黒江参考人にお話をお伺いしたいと存じます。
先ほどのお話の中で、被団協がノーベル平和賞を受賞したというのは、まさに核使用の危険性が高まっているというその裏返しじゃないかという御指摘でございまして、今まさに核の脅威というのが大変増してきているというふうに思います。またさらに、そのような中で、日本ではいわゆる核抑止論と核廃絶論が対立してしまっているということで、国民的議論が重要だという御指摘かと思います。
その上で、大変重要な御指摘だと思うんですが、日本は法治国家ですので、これまでの国会での議論のベースをしっかり積み上げてきましたので、そのベースの上にまさにそういった議論を行っていくべきかと思います。
その上で、黒江参考人は、二〇一五年の平和安全法制の制定時に防衛政策局長でもあられて、その後は防衛事務次官として同法の運用に携わってこられました。
この平和安全法制が制定されてから十年たつわけですけれども、自衛権行使の新三要件が規定され、憲法の下で許容される自衛の措置の限界が明確化された。これは公明党が当時強く主張させていただいてできた法案でございますけれども、制定から十年たった今、平時から有事に至るまでの隙間のない安全保障体制が現憲法下で行われているということでございますけれども、現時点における評価を是非お聞かせいただければと存じます。
○黒江参考人 大変視野の大きな問題について御質問いただきました。
まさに御指摘のとおり、私自身もそう認識しておりましたけれども、二〇一五年の平和安全法制につきましては、これをもって現行の憲法の下で自衛隊が活動するのに必要な法的な根拠等々が全て備わったというふうに私は評価しておりましたし、それと同時に、一連の法案の中でありました米艦護衛ですね、他国の軍艦も共同で護衛できる、そういう規定もございまして、これはまさに平素から行われなければならない活動に対して法的評価といいますか、法的根拠を与えたものでございますので、その後もこれを基にして実際に活動が行われているということで、非常に前向きな前進があったんだろうというふうに思っています。
ただ、もう一つ、現行の法制の下で法制度としてはきちんとできているんだとは思うんですけれども、よく言われますのは、その後、侵攻する側がより洗練されたやり方をやってくるようになった。これはクリミア半島の問題を見てもすぐ分かる話なんですが、要は、いわゆるグレーゾーンと言われるような事態をうまく創出して、そこの中で、攻められる側が軍隊を動かしにくい、動かしづらい状況を使いながら、実態上攻め込んでくる、そういうやり方を取ってきている。これは、どことは申し上げませんけれども、周辺国はそういう能力はいろいろ持っているんだろうと思います。
そういうものに対応するために現行の制度をうまく全て活用できるのか、抜けはないのか。よく言われますのは、国民を実際に侵攻がありそうな地域から逃がそうとするんだけれども、そのときには事態認定をしないといけない。ただ、事態認定をしてしまうとその国との間で戦争状態になることを政府として宣言することになるので、事態認定は非常にしにくいんじゃないかとか、そういう御指摘もいろいろあるわけですね。そういったところになおかつまだ課題は残っているのかなというふうに思っております。
以上でございます。
○西園委員 ありがとうございます。
当時から携わってくださった黒江参考人の貴重な御指摘でございました。これから、様々なまだ残された課題があって、さらに、今のこの新しい事態に対してどう対処すべきかというのをしっかりまた国会の場で議論していきたいというふうに思います。
続きまして、小谷参考人にお話をお伺いしたいと存じます。
先ほどの小谷参考人のお話の中で、日米が取り組むべき課題ということでかなり具体的に掘り下げてくださいました。指向性エネルギー兵器の共同開発、あるいは海洋発射核巡航ミサイル開発と日本寄港ですか、核の巡航船というか、そういうことで、これはアメリカの船ということでございますけれども、いずれにしましても、こういったものを開発していこうということになれば、国の方針あるいは予算について、国民の税金を投入するということでございますし、国民が当然そのことを知る権利がありますので、不断の監視の下でこれを行っていく必要があろうかと思います。
他方、こういう日本の軍事力みたいなことを国会の場で議論することが果たしてどこまでできるのか。
これは、小谷参考人が令和三年四月十四日の参議院の国際経済・外交に関する調査会において述べられた、私、議事録を読ませていただいたんですが、当時、中国が海警法を施行して約二か月に当たる頃でございましたけれども、小谷参考人は、この海警法について、日本が過剰に反応しないようにした方がよいということと併せて、武器の使用基準等について、国会という公の場で議論することは日本側の手のうちを見せてしまうことになってしまう、それはいわゆる抑止力につながらない、そういうことになってしまうのではないかという御見解を述べられましたが、こういった国会の場における、国民の知る権利と、さらには外交上の国益という観点のバランスをどう取ればいいのかという御示唆をいただければと存じます。
○小谷参考人 大変難しい質問であるかと思います。
恐らく、一つ言えますのは、戦略レベルの話というのは、国会を含めて公の場ですることに意義があるんだと思いますけれども、戦術ですとか作戦面に関しては、やはりこれを大々的に公に議論するというのは一般的には控えた方がいい、そういう区切りがあるのではないかと思います。
もちろん、国民の知る権利という観点、これも非常に重要なものではありますが、特に作戦、戦術レベルの詳細を明らかにしてしまいますと、自衛隊員ですとか、あるいは海上保安庁の隊員の、場合によっては命にも関わることですので、その点については慎重に議論するべきであろうと思いますし、なかなか明かせないことについても、これは政府であったり国会が責任を取るという形で、しっかりその担保をするということが一般的には必要ではないかというふうに考えます。
○西園委員 ありがとうございました。
以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
○遠藤委員長 これにて西園勝秀君の質疑は終了いたしました。
次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
ケビン・メア参考人に伺います。
私は沖縄県の出身でありますが、沖縄一区、那覇、那覇市近辺の七つの離島を選挙区にしております。
それで、メア参考人に、冒頭、参考人のかつての沖縄に関する発言をめぐってでありますが、多くの沖縄県民が言葉にならないほどの憤りを感じ、今も決して忘れることのできない方々がいるということは率直に申し上げておかなければなりません。
ただ、あの問題はアメリカ国務省として一定の区切りをつけ、また、今日は参考人として御意見を伺う場でありますので、忌憚のない御意見を伺うことができればと思います。
いわゆる敵基地攻撃能力の保有について伺いますが、参考人は、敵基地攻撃能力の使用に関して、アメリカと日本、台湾が、情報収集や、標的の選択、割当て、戦闘被害の評価などで協力する必要があると述べておられます。そのために、統合ネットワーク化された指揮統制ということも強調しておられます。この統合ネットワーク化された指揮統制とは具体的にどのようなものなのか。なぜそれが必要なのか。この点について参考人の御意見をお願いできればと思います。
○メア参考人 ありがとうございます。
私が申し上げた統合ネットワークと合同作戦、統合と合同、日本語で意味が曖昧な違いがあるんだけれども、合同作戦をやる必要があるということは、申し上げているように、中国に対処する数がないから、圧倒的に中国の人数と戦闘機の数とか船の数とか戦艦の数が多いので、合同作戦であれば、ネットワーク性があれば、例えば具体的な例を一つ申し上げます。
アメリカのF35戦闘機が飛んで、日本のイージス艦が別のところで動いている。センサーはいろいろあるから、攻撃されたらその地域の別々の場所で別のレーダーを使って見る。ネットワーク性があれば両方が同じものを見えるようになるので、そして運用上どうやって反応すべきか、どうやって一番効果的に反応するか、司令官が決めることができる、日本人であってもアメリカ人であっても。もちろん、反撃するかどうかを決めることは、日本だったら日本の方が決める、アメリカだったらアメリカの方が決める。統合性、合同性、ネットワーク性があっても、あくまでも指令権が、日本側は日本が指令権がある、アメリカ側はアメリカの指令権がある。
でも、連携できる、効果的に反応できるようにネットワーク性と合同性が必要であるというふうに考えています。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
次に、小谷、黒江両参考人に伺います。
今政府は、安保三文書に基づいて、敵基地攻撃能力の保有や南西地域の抜本的な軍事体制の強化を進めております。危惧されるのは、こうした軍事体制の強化が相互不信と緊張を高め、偶発的な衝突に至ることであります。そのような事態に至ったときに、沖縄を始め日本列島がどのような状況になることを想定しておられるのか。そして政府は、先島諸島の住民など十二万人の九州・山口への避難計画、疎開計画の具体化を進めておりますが、沖縄戦を振り返っても、対馬丸と同じことになるのではないかという危惧を持ちますし、避難先に戦火が及ぶことも想定されるのではないか、こう思います。
両参考人はこうした避難計画の現実性についてどのようにお考えでいらっしゃるか、この点について御意見をお伺いできればと思います。
○黒江参考人 お答えいたします。
今御指摘の、先島からの退避の計画でございます。これは、事態は様々あろうかと思います。実際に、政府がどのような事態なのでこういう避難が必要なんだということを、その事態に合わせて判断をすることになると思います。その際に、実際に必要な数だけの住民の方を安全なところに避難させることが大事でございますので、ですから、先ほどちょっとほかの御質問の際にもお答えしましたが、それを判断するタイミング、それに合わせた政府としての権限が必要だろうと思っております。
現実性という意味でいいますと、もちろん有事の場合にもそういうことは必要でございますので、それ以外の例えば大規模な災害にこの種の計画が使えないことは全くないと思いますので、私自身は現実性は十分ある、役に立つ計画であるというふうに思っております。
○小谷参考人 私からもお答えいたします。
例えば、二〇二二年二月二十四日にロシアによるウクライナの本格的な侵攻が始まりましたけれども、これを受けて、当時、ウクライナの総人口が四千万人、そのうち四十万人が退避を余儀なくされたというふうに理解しております。
万が一日本を巻き込むような有事があった場合、民間人の避難というのは当然政府の責任として行わなければならないわけですが、ウクライナと日本、特に南西地域の最大の違いは、ウクライナは地続きで隣国に退避することができますが、日本の場合はそれができませんので、空路及び海路を使って行わなければならない。
そのためには、事前に相当入念な計画を立てて準備をしなければなりませんし、政府、自衛隊、海上保安庁、そして地元の自治体との常日頃の連携が必要なものというふうに認識しておりますので、しっかりと計画を立てた上で避難に関する訓練、演習等も頻繁に行うことでこれらの計画をより実効性のあるものにしていくことができるでしょうし、避難計画を立てることも、やはり、抑止力を強化する一つの方策であるというふうに認識しております。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
それで、現実性はありということですが、私は、先ほどの質問の中で、もう一問。それじゃ、先島諸島の人たちが避難すると言われている九州・山口は有事の際には避難できる安全な場所かという疑問も持っているんですが、その点はいかがでしょうか。
○黒江参考人 お答えいたします。
先ほど、済みません、私、舌足らずだったかもしれないんですが、状況に応じて政府が判断する中には、どこの場所に避難をさせるかということも当然判断の中に入るわけでございます。ですので、当然、あらかじめ計画を立てておく中で、九州地域が安全だという一つの前提の下で、現在、九州・山口へということで計画を立てておるというふうに私は認識しております。
仮に、その地域が本当に危険であるということであれば、別の避難先を探すことが当然必要になろうかと思います。そこはまさに柔軟に対応しなければならない、そういう問題ではないかと思います。
○小谷参考人 黒江参考人とほとんど同じ答えになってしまうかと思いますけれども、それは、状況に応じて避難先をどう判断するかというのを政府が主体となって考えるということではないかというふうに思います。
ウクライナの例を見ておりましても、避難先、あるいは避難に使われる鉄道の拠点などが攻撃を受けることも実際にあるわけですから、それらも踏まえて、どこに避難させることが一番安全なのかということを臨機応変に考えることが必要ではないかというふうに考えます。
○赤嶺委員 次に、モチヅキ参考人に伺います。
参考人は、沖縄県のアドバイザリーボードや、新外交イニシアティブの提言などにも関わってこられました。先日公表された新しい提言においても、同盟による抑止というシステムが制度疲労を起こしている今、新たな外交の可能性に本気で取り組むチャンスだということを書かれておられます。
米中間の対立が激化する下で、日本は具体的にどのような外交を進めるべきとお考えか、その点の御意見をまずお伺いしたいと思います。
○モチヅキ参考人 もちろん、日米同盟を堅持しながら、継続しながら、私は、すごく強調しているのは、近隣諸国との協力連携を深めるということで、一番重要なパートナーは韓国だと思います。そしてその後は、豪州、オーストラリアとか、ニュージーランドとか、東南アジア、カナダとかヨーロッパの、ライクマインデッドの国々との連携です。
もう一つは、もちろん、アメリカ中心のミニラテラルのクアッドとか、そういうあれは今までどおり進めるべきだと思いますが、しかし同時に、中国が入っているミニラテラルも促進すべきだと思います。例えば日中韓の三か国の協議を、協力体制をますます深めるということは重要だと思います。
そして、日本が中国との関係を改善、最近、石破政権はそっちの方向に動いているんですが、もっと踏み込んだ外交をしなければいけないと思います。
今日の質疑では、対中抑止力が重要だということは参考人の皆様が強調していたんですが、僕もそれはある程度同感ですが、しかし、残念ながら、中国との関係を改善、安定したものにするということについて議論がほとんどなかったということで、私は残念に思います。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
モチヅキ参考人は、沖縄の辺野古新基地建設についても機会あるごとに発言をされてきました。とりわけ、沖縄に駐留する海兵隊の必要性について疑問を投げかけておられます。この点についての御意見もお伺いしたいと思います。
○モチヅキ参考人 私は台湾海峡のウォーゲームに何回も参加したんですが、海兵隊の役割はほとんどないんですね。
私は、海兵隊の任務というものは、一つのトリップワイヤーみたいな役割だと思います。ですから、それは非常に危険なあれだし、軍事的には必要性がないと思います。
ですから、できるだけ早く海兵隊を削減して、南西諸島の防衛に日本の自衛隊が責任を持つということが一番望ましい政策だと思います。
○赤嶺委員 ありがとうございました。
これで終わります。
○遠藤委員長 赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。
以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言御挨拶を申し上げます。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
本日、初めての試みとして、オンライン参考人質疑を行わせていただきましたが、無事に皆様方のおかげで終了することができました。これを機に活発な議論が深まり、各委員会、様々な委員会でよりこのオンライン参考人質疑が有効に活用されますことを心から祈念して、本日の委員会を終了したいと思います。
本日は誠にありがとうございました。お疲れさまでした。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十分散会