衆議院

メインへスキップ



第8号 平成29年3月31日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十九年三月三十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平  将明君

   理事 石川 昭政君 理事 北川 知克君

   理事 高橋ひなこ君 理事 冨岡  勉君

   理事 福山  守君 理事 太田 和美君

   理事 福田 昭夫君 理事 江田 康幸君

      青山 周平君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    伊藤信太郎君

      木村 弥生君    小島 敏文君

      助田 重義君    田中 和徳君

      比嘉奈津美君    藤原  崇君

      星野 剛士君    堀井  学君

      前川  恵君    宮路 拓馬君

      菅  直人君    田島 一成君

      細野 豪志君    松田 直久君

      斉藤 鉄夫君    真山 祐一君

      塩川 鉄也君    小沢 鋭仁君

      河野 正美君    玉城デニー君

    …………………………………

   環境大臣         山本 公一君

   環境副大臣        関  芳弘君

   環境大臣政務官      比嘉奈津美君

   環境大臣政務官      井林 辰憲君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         川島 俊郎君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    吉井  巧君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 森 美樹夫君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官付参事官)         小川 良介君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           増田 博行君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  鎌形 浩史君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  亀澤 玲治君

   環境委員会専門員     関  武志君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     星野 剛士君

  藤原  崇君     宮路 拓馬君

  堀井  学君     青山 周平君

  斉藤 鉄夫君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     堀井  学君

  星野 剛士君     井上 貴博君

  宮路 拓馬君     藤原  崇君

  真山 祐一君     斉藤 鉄夫君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

同月三十日

 水俣病の全貌解明のため健康調査及び環境調査を行い、今後の水俣病対策に生かすことに関する請願(荒井聰君紹介)(第六二四号)

 同(漆原良夫君紹介)(第六二五号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第六二六号)

 同(黒岩宇洋君紹介)(第六二七号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第六二八号)

 同(西村智奈美君紹介)(第六二九号)

 同(野間健君紹介)(第六三〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第六三一号)

 同(鷲尾英一郎君紹介)(第六三二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六四七号)

 同(真島省三君紹介)(第六四八号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第七三五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

平委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府食品安全委員会事務局長川島俊郎君、消費者庁審議官吉井巧君、外務省大臣官房審議官森美樹夫君、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長北島智子君、農林水産省政策統括官付参事官小川良介君、国土交通省大臣官房審議官増田博行君、環境省地球環境局長鎌形浩史君、環境省自然環境局長亀澤玲治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島敏文君。

小島委員 おはようございます。自民党の小島です。よろしくお願いします。

 まず初めに、きょうは、資料を出しておりますけれども、遺伝子組み換え技術を用いた農産物についてお伺いいたします。

 農業・食品産業技術総合研究機構の資料によりますと、世界における遺伝子組み換え作物の栽培面積は、平成二十七年におきましておよそ一億八千万ヘクタールと、我が国の国土面積の約四・八倍となっております。

 我が国は、国内で消費する大豆とトウモロコシのほとんどをアメリカやブラジルからの輸入に頼っているのであります。アメリカやブラジルから輸入される大豆やトウモロコシのほとんどは遺伝子組み換え作物でありまして、多くは食品、食用油とかあるいは飼料に利用されております。

 もちろん、日本は遺伝子組み換え作物の輸入大国でもあります。これらが国内で流通している一方で、依然として安全性に対する消費者の方々の不安の声があるのもまた事実でございます。

 そこで、遺伝子組み換え作物やそれを用いた食品の安全性はどのように担保されておるのか、まずお伺いをいたします。

北島政府参考人 お答えいたします。

 遺伝子組み換え食品につきましては、食品衛生法に基づき、品目ごとにリスク評価を専門的に行う食品安全委員会による科学的な評価の結果を踏まえて、厚生労働省において、その安全性を確認した上で当該品目を公表し、食品としての流通を認めております。

 その上で、安全性の確認がなされていない遺伝子組み換え食品が流通しないよう、輸入時の検査を行うとともに、仮に違反が判明した場合には、速やかに廃棄、回収するなどの措置を行っております。

小島委員 次に、今回の改正案についての質問をいたします。何点かお伺いいたします。

 今回の改正案は、今国会に承認案が提出されている名古屋・クアラルンプール補足議定書の国内担保法として提出をされたと承知をいたしております。

 この補足議定書は、平成二十二年に名古屋市で開催されたカルタヘナ議定書の締約国会合で採択されたものでありまして、現在、締約国の数は三十六カ国というふうに聞いております。この発効要件は四十カ国とありまして、間もなくカウントダウンという状況だろうというふうに思っております。

 我が国は、平成二十四年に署名はしたものの、今日まで締結をしていないという状況でございます。採択から七年がたったわけですけれども、我が国で採択されて、また我が国の地名が冠してある条約でありまして、なぜ国内法の整備にこれほどの時間がかかったのか、また、これまでの検討の経緯も含めて、御回答をお願いいたします。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結につきましては、カルタヘナ法の改正の要否、あるいはその内容につきまして関係省庁間で慎重に検討を進めてきたため、準備に時間を要しました。

 なお、補足議定書の発効要件が四十カ国の締結であるところ、現在までに締結した国は三十六カ国で、発効までには至っておりません。しかしながら、あと四カ国の締結で発効のための要件を満たすことから、今回のカルタヘナ法の改正を含めまして、可能な限り早期に補足議定書を締結できるよう、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

小島委員 日本国で、こうして国内で締結されたわけで、それにしては、非常に、こういう重要な批准がおくれているということは残念に思うんですが、今回こうして提出されて、私は賛成なんですけれども。

 次に、現行のカルタヘナ法は、遺伝子組み換え生物の使用の形態に応じて規制を行っております。

 例えば、これが第一種使用、第二種使用とありまして、屋外と屋内管理というふうにありますけれども、制定から約十四年たっていますけれども、これまで遺伝子組み換え生物の不適切な使用事例にはどのようなものがあったのか、また、多様性に影響が出た事例はあるのかどうか、お伺いをいたします。

亀澤政府参考人 遺伝子組み換え生物等の不適切な使用事例といたしましては、承認されていない遺伝子組み換え種子が輸入穀物に混入していた事例や、適切な拡散防止措置がとられずに第二種使用された事例等がありますが、これらによって生物多様性影響が生じた事例は確認されておりません。

小島委員 そういう、確認をされていないということはいいことなんですけれども。

 今回の改正で新たに追加されました措置命令の規定では、その範囲を、生物の多様性の確保上特に重要なものとして環境省令で定める種または地域に係るものに限定しております。

 これは、補足議定書が損害の範囲を、生物の多様性の保全及び持続可能な利用への悪影響であって、測定または観察が可能な著しいものという文言があるわけですけれども、このことを踏まえていることは承知をいたしております。

 そこで、まず、この生物の多様性の確保上特に重要な種または地域について、具体的にはどのような種、地域を考えておられるのか、現時点での想定をお伺いいたします。

関副大臣 我が国におきましては、生物多様性の保全の観点等から、保護すべき特に重要な種または地域を種の保存法や自然公園法等の各種法令で国が指定をいたしまして、行為規制や保護、増殖等を行っているところでございます。

 このことを踏まえまして、生物の多様性の確保上特に重要な種または地域といたしまして、種といたしましては、種の保存法の国内希少野生動植物種を指定し、また、地域といたしましては、自然公園法の国立公園の特別保護地区や、また自然環境保全法の原生自然環境保全地域等を規定することを想定いたしております。

小島委員 今の答弁にありましたように、今回の改正案は、種や地域の観点から生物多様性への損害の対象を限定することによって補足議定書の内容を担保しようとするものでありますが、例えば、種の保存法で規定されている希少種について見てみますと、現時点で指定されているのは、わずかと言ってはおかしいんですが、二百八種ということですけれども、これでは対象範囲が狭いんじゃないかというふうに考えます。

 法の目的から考えますと、生物多様性の確保を十分に達成できるんだろうかというふうに思うわけですけれども、お考えをお伺いいたします。

関副大臣 生物多様性の確保の観点からは、まず、現行のカルタヘナ法に基づきます事前の承認または確認の手続等を確実に実施していくことが一番重要だ、そのように考えております。

 また、現行法で定められております中止、回収等の命令につきましては対象が限定されていないことから、我が国で遺伝子組み換え生物等による生物多様性に対する影響が生じました場合には、これらの命令によりまして遺伝子組み換え生物等が除去されます。これに加えまして、今般の改正により、重要な種及び地域につきましては回復命令を発することができるようになります。

 これらの規定によりまして、我が国の生物多様性の確保を十分に図ることができると考えている次第でございます。

小島委員 ちょっと通告していませんけれども、この二百八種類ですが、今後、環境省としてはどのくらい指定をするとされているのか、準備等あればお聞かせください。

亀澤政府参考人 お答えをいたします。

 二〇二〇年までに追加指定をすべく作業を進めているところでございます。ひとまずはそういうところで、その先につきましても、さらに指定を推進していきたいというふうに考えております。

小島委員 今回の改正案によりますと、遺伝子組み換え生物の使用により生物多様性が損なわれた場合には、国は、使用者に対して、損害の回復のために必要な措置を講じるよう命ずることができることとなっております。

 この回復のために必要な措置とは、具体的にはどのようなものが考えられるのか、お伺いいたします。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 回復措置の内容は、生じた影響の内容等に応じまして個別具体的に判断されるべきものというふうに考えておりますが、例えばということで申し上げますと、保護地域内の生物が減少した場合には、生育、生息環境の整備、あるいは人工増殖をしてその個体をもといた地域に再導入をすること、そういうことなどが想定をされているところでございます。

小島委員 先ほども述べましたけれども、今回の改正案では、回復措置の対象となる損害の範囲を、生物多様性の確保上特に重要な種や地域に限定しております。この中には、生息数や生息地が極めて限られる種が含まれているはずであります。一度大きなダメージを受けますと、復元がなかなか難しい。例えば、他の地域からの移殖で埋め合わせのできない、困難な場合もあると考えられます。

 改正案は主に損害発生後の対応について定めているものでありますけれども、私は、極力、回復の措置が必要となる前に適切な措置が講じられることが望ましいと考えております。

 そのために、使用に際してしっかりと事前に審査を行うとともに、悪影響を可能な限り早期に察知できるようなモニタリングが、しっかり強化が必要というふうに思うのでありますけれども、現状ではどのような取り組みがなされておるのか、お伺いをいたします。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 運搬の際にこぼれ落ちて生育していることが確認をされている菜種及び大豆につきましては、国がモニタリングを実施して、生物多様性影響が生じていないことを確認しているところでございます。

 また、今般のカルタヘナ法改正案で規定する回復措置命令の対象となる特に重要な種または地域につきましては、種の保存法や自然公園法等各個別法令の運用や、自然環境保全基礎調査の中で行っております特定の地点の環境動向に関する経年調査、いわゆるモニタリングサイト一〇〇〇、そういう調査の中で状況の把握に努めているところでございます。

小島委員 いわゆる遺伝子のそうした組み換えに対して大変不安があるわけですけれども、例えば、私の方の田舎で、これは全然希少種ではないんですけれども、非常にブラックバスが入ってきて、これは外来種ですね、要するに、ワカサギがもう全然いなくなっているということもあります。

 また、例えば、寂れ行く農村という絵がありますけれども、そこにペンペン草があるんですよ。このペンペン草というのは、皆さん、実は外来種なんだそうですね。私はその日本画を見まして、農村のわら屋の風景があって、その前にいわゆるセイタカアワダチソウがずっと描いてあるんですよ。これが日本の風景かなというふうに私も思っておったんですが、よく聞いてみますと、これは外来種ということなんですね。

 そういうものもどんどん田舎にも入ってきておりますし、また、そういうワカサギなんかも、非常に今ブラックバスが繁殖をして、これもなかなか、私も漁業関係の方々と話をするんですけれども、どうも、漁業鑑札、券ですね、権利を買う場合に、アユとかのは料金を取るけれども、いわゆるブラックバスは、キャッチ・アンド・リリースするだけですから取らぬそうですよ。これなんかはなかなか、まあワカサギは希少種ではありませんけれども、非常にそういうことがずっと最近とみに見られるという状況です。

 ひとつ大臣にもお伺いしたいんですけれども、冒頭で申し上げたように、多くの遺伝子組み換え作物が輸入されております。そこで、実は、今後懸念されることは、例えば、いわゆる大豆とかトウモロコシを輸入する、そして運んでいく、そういう中で、非常に途中で落ちこぼれるということがあると思うんですよ。冒頭言いましたように、非常に、これだけ多くの輸入の作物が、トウモロコシとかあるわけですから。

 そこで、例えば、先般聞いた話ですが、遺伝子組み換えの西洋菜種、これが実は、途中でこぼれ落ちまして、路上へ落ちて、もう生育しているという話を聞くんですよ。これなんか、長年月で考えれば本当に怖いなというふうに思うわけでございます。

 今後、まあTPPはちょっとストップしていますけれども、いわゆるFTAとかいろいろ、日本はそういう方向に行くわけですから、きっといろいろな農産物とかいろいろなものが入ってくると思うんですね。そういう中で、遺伝子組み換え作物の輸入品目、そして量がふえてくる可能性は十分にあるというふうに思うんですね。これに伴って、種子の要するにこぼれ落ちというのは非常にあるんだろうというふうに私は思うんですね、リスクが高まるというふうに思っております。

 そこで、環境省とされては、どのように生物多様性の確保に取り組んでいかれるのか、大臣の決意をお伺いしておきたいと思います。

山本(公)国務大臣 先般、NHKの放送で、南方熊楠の放送をいたしておりました。一度失えばもう取り返しがつかないという、南方熊楠の紀州田辺での活動のテーマだったんですけれども、今先生の御指摘のとおり、今回我々がやろうとしていることの最終目標は、まさに南方熊楠が守ろうとした、日本を守ろうということにつながっていくというふうに私は理解をいたしております。

 その上で申し上げますと、今回、万が一遺伝子組み換え生物等によって生物多様性に損害が生じた場合にも適切な対応をとることができるよう、補足議定書をできるだけ早期に締結するとともに、改正法案をお認めいただいた場合には、その着実な実施に努めてまいりたいと思っております。

 これらの取り組みによりまして、生物多様性の保全の分野で、引き続き国際的なリーダーシップを発揮していきたい、かように思っております。

小島委員 どうもありがとうございました。ひとつよろしくお願いします。

 終わります。

平委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 カルタヘナ法の改正案について質問をいたします。

 最初に、カルタヘナ法の議論をする前提となります名古屋・クアラルンプール補足議定書についてお尋ねをいたします。

 外務省にお聞きしますが、この補足議定書の前文に、この補足議定書の締約国は、環境と開発に関するリオ宣言の原則十五に規定する予防的な取り組み方法を再確認しとあるわけですが、この予防原則というのはどういうものかについて御説明をお願いします。

森政府参考人 お答えいたします。

 環境保護の分野におけます予防原則ないしは予防的な取り組み方法と申しますのは、一般的には、環境に重大または回復不可能な損害のおそれがある場合に、完全な科学的証拠が欠如していることを対策を延期する理由とはすることなく、損害を未然に防止するための対策を講じるという考え方を指すものと認識しております。

 委員御指摘のように、名古屋・クアラルンプール補足議定書においても言及されておりますリオ宣言の原則十五と申しますのは、予防的な取り組み方法を、環境及び開発の問題に関する基本原則の一つとして定めております。

 具体的には、環境を保護するため、予防的な取り組み方法は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない、深刻な、あるいは不可逆的な被害が存在する場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならないとされております。

塩川委員 損害を未然に防止するという基本原則として取り上げられているものであります。

 大臣にその予防原則について最初にまずお尋ねしたいんですけれども、そもそも、損害が生じないようにするためにも、生物多様性条約、それからカルタヘナ議定書、名古屋・クアラルンプール補足議定書を貫く原則でありますこの予防原則の重要性について、大臣からのお答えをいただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 十分なお答えができるかどうかわかりませんけれども、大変重要なことだというふうに認識をいたしております。

塩川委員 その上で、外務省にお尋ねしますが、第一条の「目的」には、「この補足議定書は、改変された生物に関する責任及び救済の分野における国際的な規則及び手続を定めることにより、人の健康に対する危険も考慮しつつ、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に寄与することを目的とする。」とあります。

 この生物の多様性の保全とはどういうものをいうのか、保全の対象はどういうものか、この点についてお答えください。

森政府参考人 お答えいたします。

 生物多様性の保全と申しますのは、地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全することを意味しております。そのために多様な個体、種及び生態系を保全することを指しております。

塩川委員 そうしますと、そういう点では、多様な種等を保全するということでいいますと、いわば人を含めて全ての生物が対象となるということでよろしいですか。

森政府参考人 議定書上の定義は地球上の多様な生物ということでございますので、生物としての人の多様性ということも含むものと解されます。

塩川委員 あと、持続可能な利用という言葉が使われておりますけれども、これは農業も含み得るものと受けとめてよろしいんでしょうか。

森政府参考人 生物多様性条約の第二条におきまして、持続可能な利用というのは、「生物の多様性の長期的な減少をもたらさない方法及び速度で生物の多様性の構成要素を利用し、もって、現在及び将来の世代の必要及び願望を満たすように生物の多様性の可能性を維持することをいう。」と定義されております。

 持続可能な利用という概念は、再生可能な資源の利用には一定の量的制限があるという観点から、開発や資源の利用とそれから環境の保全とを調和させるという意味で用いられておるものと認識しております。

 人類は、これまで、さまざまな生物を衣食住のために利用し、その恩恵を受けてきております。農業につきましてもさまざまな生物を利用して発展を遂げてきたことから、生物多様性の持続可能な利用は農業においても非常に重要であるというふうに認識しております。

塩川委員 生物多様性の保全というのは、人も含めて地球上における生物の多様性をどう確保するのか。その際に、同時に、持続可能な利用ということで、開発に資するような場合についてもその保全と一体に行うという観点では農業も含み得る。そういう点でも、持続可能な利用というのがまさに人間の生活ともかかわって重要なものであることはこの補足議定書の観点として大変意義のあることだと受けとめております。

 外務省にもう一点お聞きしたいのが、補足議定書でも管理者という言葉が出てまいりますけれども、そこの中に幾つか具体の例示もあります。こういう管理者には種子の開発企業も含まれるのか、その点だけ確認します。

森政府参考人 委員御指摘のとおり、名古屋・クアラルンプール補足議定書の第二条2の(c)という項目におきましては、管理者を「改変された生物を直接又は間接に管理する者」と定義されておりまして、その例として、改変された生物を市場取引に付した者、開発者、生産者、輸出者、輸入者、運送者等を挙げております。

 御指摘のございました種子開発企業というのが、ここで言う「改変された生物を直接又は間接に管理する者」という定義に該当する場合には、本補足議定書に言う管理者に含まれるものと解されると存じます。

塩川委員 遺伝子組み換えの品種の種子を開発するような企業も含まれるということであります。

 そこで、環境省にお尋ねしますが、今、名古屋・クアラルンプール補足議定書の定義等々を確認してまいりましたけれども、カルタヘナ法上の位置づけがどうなっているかということですが、このカルタヘナ法における、生物多様性の確保とあるわけですけれども、この対象というのは何なのか、その点について御説明ください。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、生物の多様性とは、全ての生物の間の変異性をいい、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む概念であります。

 そういうことからいたしますと、外来種や農作物も、生物である限りにおいては生物多様性の一部ではありますけれども、一方で、農作物は、人が野生植物から改良を重ねてつくり出した植物であり、野生植物とは異なるものであることから、農作物への遺伝子組み換え生物による影響につきましては、カルタヘナ法に基づく生物多様性影響評価の対象とはしていないところであります。

 また、生物多様性基本法における外来種の位置づけといたしましては、生物に対する危機の一つとして外来種による生態系の攪乱を挙げているところでありまして、そういう意味におきましては、国内法であるカルタヘナ法により確保を図ることとされております生物多様性には、外来種や農作物までは含まれていないものというふうに認識をしております。

塩川委員 農作物は入っていないということですけれども、外来種というのはどこまでが外来種なのかという話なんですよね。もちろん奈良時代から外来種というのは当然入ってきているわけですけれども、それは日本の生態系に溶け込むような、攪乱要素になっていないようなものもあり得るでしょうし、その場合の外来種というのはどういう線の引き方をしているのかということについて説明をお願いしたい。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 明確な線引きがあるわけではございませんが、明治よりも少し前ぐらいに入ってきたもの、そういうものも含めまして外来種というふうに呼んでおります。

塩川委員 明治。その線引きというのは、何でそこで線を引いているんですか。

亀澤政府参考人 太古の昔とか奈良時代までさかのぼるのは現実的ではなかろうということで、明治以降であればある程度の歴史もわかっているということも受けまして、明治時代より少し前ぐらいまで含めまして外来種というような一般的な呼び方をしているというふうに認識をしております。

塩川委員 明治以降の場合であっても、種によっては自分のふるさとの原風景にもなじんでいるような、ペンペン草の話じゃありませんけれども、そういったものも含めて、ある場合に、ちょっとその線引きがよくわからないんですけれども、もう一回。

亀澤政府参考人 時代的なこともありますけれども、人の手によって持ち込まれたもの、そういうことがある程度文献等によりまして確認されているもの、そういうものを外来種というふうに呼ぶということかと思います。

塩川委員 そうすると、それはさかのぼれるんじゃないですか。奈良、平安で持ち込みましたというのが確認できるものは外来種になっちゃうの。

亀澤政府参考人 お答えします。

 そういう意味では、かなり古いものでも、文献をさかのぼって外国から持ち込まれたというような記録があるようなものであれば、外来種というふうに言えると思います。

塩川委員 その辺が、それが実際に生物多様性の保全、確保に当たって差しさわりのあるようなものかどうかという線引きでいいのかというのは、何となくしっくりいかないんですけれども、どうですか。

亀澤政府参考人 具体的に、外来種も含めまして、影響があるかどうかというのは、その種が外来種かどうかということも含めまして、専門家の意見も聞きながら判断をしてまいりたいというふうに考えております。

塩川委員 今回の法案というのが、さらに損害に対する対応ということで回復措置を求めるということになっているわけです。ただ、そこの部分については、重要な種、地域ということで非常に限定されているということではあるんですけれども、カルタヘナ法そのものはそれなりに広く捉えているわけですから、本来、その立場でこの回復措置の部分についても扱うということが必要なんじゃないのかと思うんですけれども、そこはどうでしょうか。

亀澤政府参考人 使用者等に回復措置まで求めるということは、それなりの負担を求めるということでもありますので、とにかく広くとればいいということでもないというふうに考えておりまして、ある程度限定された形で対象を考えることが必要だというふうに考えております。

塩川委員 補足議定書を踏まえた回復措置の国内措置に取り組むというこの趣旨はわかりますし、まずはしっかり始めるということだと思うんですが、その範囲について非常に限定的だなというのは率直に思っているところですので、そのことを指摘しておくものです。

 次に、環境省に引き続きお聞きしますが、実際に野生植物と遺伝子組み換えの品種が交雑をしているような事例というのは確認をされているんでしょうか。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 環境省では、平成十五年度から、主要な菜種輸入港周辺の主要輸送道路の橋梁やその付近の河川敷等におきまして、輸送中にこぼれ落ちた遺伝子組み換え西洋菜種、いわゆるGM菜種というものですが、そういうもの等の生育状況調査を継続的に行っております。

 これまでの調査では、こぼれ落ちた種子に由来するGM菜種と外来種である西洋菜種、もしくは同じく外来種である在来菜種との交雑が確認をされておりますが、それらの生育は主要輸送道路の橋梁や河川敷付近に限られており、生育範囲が拡大しているというような状況ではございません。

 また、これらの調査結果につきましては、専門家の意見も聴取し、生態系への影響は生じていないというふうに評価をいただいております。

塩川委員 現行の環境省の実態調査の話というのは承知しているんですが、そういう調査の中で交雑をしている事例というのは紹介がありましたか。

亀澤政府参考人 遺伝子組み換え西洋菜種、いわゆるGM菜種と日本国内に入っております外来種である西洋菜種、あるいは同じく、在来菜種という名前ではありますけれども外来種である在来菜種とGM菜種との交雑は確認をされておりますが、それらがどんどん生息、生育範囲を広げているというような状況ではありません。

塩川委員 生息範囲を広げているわけではないという評価ですけれども、そういった交雑の事例というのも挙がっているわけです。

 そこで、次に、今、環境省としての遺伝子組み換え菜種の実態調査、紹介がありましたが、農水省としてこの遺伝子組み換え菜種の実態調査を行っているわけですが、その理由について説明してもらえますか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省の行っております西洋菜種の生育実態調査でございますが、まず、日本で輸入等が承認されている遺伝子組み換え西洋菜種は、輸入された港湾から運搬される際のこぼれ落ちなどにより生育した場合でありましても、他の植物を駆逐して生育域を拡大することはないことなどから、国内の生物多様性への影響はないと評価をされているところでございます。

 農林水産省といたしましては、遺伝子組み換え農作物による日本の生物多様性への影響を懸念する声に応えつつ、承認した遺伝子組み換え西洋菜種により生物多様性への影響が生じないことを確認するため、西洋菜種の輸入港の周辺地域におきまして、その生育状況や近縁種との交雑の程度などを調査しているところでございます。

塩川委員 生物多様性への影響がないことを確認するための調査ということですから、これ自身はカルタヘナ法に基づく実態調査ということでよろしいですか。

小川政府参考人 この調査は、カルタヘナ法第何条というような形で実施しているものではございません。

塩川委員 そうしたら、何を根拠に調査しているんですか。

小川政府参考人 失礼いたしました。

 強権的な発動ではございませんが、カルタヘナ法上の三十一条、情報収集という形の一環で実施させていただいております。

 訂正させていただきます。申しわけありません。

塩川委員 三十一条でいいのかな。

小川政府参考人 たびたび大変申しわけありません。訂正させていただきます。

 カルタヘナ法の第三十四条、科学的知見の充実のための措置ということでございます。

塩川委員 基本は研究といいますか、そういうスタンスでの調査ではあるんですよね。ただ、そういう三十四条を使いながらも、実際にどういう影響があるのか、生態系、生物多様性への影響がないことを確認するという趣旨での調査、これ自身がカルタヘナ法のスキームにのっとって行われているものだというふうに承知をしております。

 そういう中で、これは二〇〇四年ですけれども、農水省が日本植物油協会に発出した通知、「セイヨウナタネの輸入、運搬時等における留意点について」という通知があります。先ほど、種のこぼれ落ちということの話もありました。

 農水省が日本植物油協会に発出をしましたこの通知の趣旨と内容について、ポイントを説明していただけますか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ありました平成十六年に発した文書でございますが、平成十六年八月に、農林水産省から日本植物油協会に対しまして「セイヨウナタネの輸入、運搬時等における留意点について」という文書を発出してございます。

 これは、カルタヘナ法の検討過程におきまして、農林水産省は、平成十四年度から十五年度にかけまして、輸入する遺伝子組み換え農作物の輸送過程でのこぼれ落ちを想定した生物多様性影響評価を行うことの必要性につきまして、これを確認するため、原材料用として輸入した西洋菜種の輸送過程でのこぼれ落ちの実態を調査したところでございます。

 この調査の結果、菜種陸揚げ地点周辺におきまして、原材料用として輸入された西洋菜種の生育が確認されましたところから、こぼれ落ちを可能な限り防止する観点から、陸揚げ時のこぼれ落ち防止や工場敷地内の清掃の励行などの措置の徹底を輸入者に周知していただくよう団体に通知したものでございます。

 なお、この調査は、平成十六年二月のカルタヘナ法施行の前に行われたものでございますが、通知文でも言及されておりますとおり、生育が確認された遺伝子組み換え西洋菜種は、農林水産分野等における組換え体の利用のための指針に基づきまして、カルタヘナ法同様、こぼれ落ち等により野外で生育する可能性も含めて安全性の確認を行っているものでございます。

塩川委員 カルタヘナ法の施行の時期に合わせて、調査を踏まえてこういう通知を出したというんですけれども、この通知文を見ますと、「近年、国産セイヨウナタネについては、遺伝子組換えでないことを強調した生産・販売の動きが出てきている中で、万が一にでも環境中で生育した輸入由来の遺伝子組換えセイヨウナタネとの交雑が生じ、遺伝子組換えでないセイヨウナタネとして生産・流通している国産セイヨウナタネから遺伝子組換えセイヨウナタネ由来の核酸が検出された場合、生産・流通上の混乱を招く可能性がないとは言えない。」と。

 つまり、ある意味、国産西洋菜種ですというブランドで売ろうと思ったら、自然環境の中で交雑してしまって遺伝子組み換えが入ってしまったということになると、国産西洋菜種で遺伝子組み換えでないということを強調できなくなるということがあるから、運搬時にこぼれ落ちないようにしてねということになっていると承知しているんですけれども、そういうことでよろしいですよね。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘ございましたとおり、通知文におきましては、「万が一にでも環境中で生育した輸入由来の遺伝子組換えセイヨウナタネとの交雑が生じ、遺伝子組換えでないセイヨウナタネとして生産・流通している国産セイヨウナタネから遺伝子組換えセイヨウナタネ由来の核酸が検出された場合、生産・流通上の混乱を招く可能性がないとは言えない。」ということで、こういった風評的なものを起こさせないといった観点からの表現というふうに認識しております。

塩川委員 これは輸入、運搬時等における留意点ということになっているわけですが、カナダから多くは輸入されている遺伝子組み換え西洋菜種が環境中に逸出をする、これが生育するのを可能な限り防止するということで、陸揚げ時のこぼれ落ちの防止、運搬時におけるこぼれ落ちの防止、あと搾油工場敷地内の清掃の励行とか、よろしくお願いしたいということなんですけれども、今もこういう措置は生きているわけなんですか。

小川政府参考人 この規定は、今も事業者の方たちにおいて取り組むようにお願いしているところでございます。

塩川委員 その上で、ここにも書かれていますように、遺伝子組み換えでない国産西洋菜種を売りにしたいという話があった場合に、やはり交雑すると困るわけですから、それを防止する、交雑を防ぐ、そういう法制上の、それを担保するような法制度というのはあるんですか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 遺伝子組み換え農作物につきましては、今、カルタヘナ法で定めているとおり、使用規程を作成して、それに従って承認どおり使っていくということが一つ。それから、生産者の方としては、みずからの農業活動においてみずからの商品の品質を確保していくということでございまして、これを入れさせないための、国内において交雑をさせないための法的な拘束措置といったものは用意されていないと認識しております。

塩川委員 拘束されるような措置は認識していないということですが、遺伝子組み換えでないものと遺伝子組み換えのものが交雑することを防ぐような法制度はないということでいいですね。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 国内で生産している者に対して、そこに一切入れさせないというような法的な強制力あるいは拘束力を持った措置というものはないと認識しているところでございます。

塩川委員 そういう点で、交雑を防ぐような対策や交雑による損害に対する対策というのは必要だと思います。

 それと、遺伝子組み換えの農作物との関係では、パパイヤの話があります。

 資料の一枚目にお配りしましたが、未承認の遺伝子組み換えパパイヤの生産、販売の問題がかつてありました。これは読売新聞、二〇一一年四月二十二日付ですが、見出しのように「遺伝子組み換えパパイア流通 未承認 年百トン 沖縄の果樹園四ヘクタール伐採へ」とあります。

 これはどのような事例だったのかについて、簡単に農水省から説明をお願いしたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のあった新聞記事に係る事案について説明申し上げます。

 本事案は、端緒といたしましては、平成二十二年十二月、厚生労働省から、沖縄県内で流通するパパイヤの生果実及び苗を分析したところ、一部に未承認の遺伝子組み換え体が混入している疑いがあるとの情報が農林水産省に提供されました。

 この情報提供を受けまして、農林水産省は、科学的信頼性の高い検査法を諸外国に先駆けて確立いたしまして、次に検査体制を整備した後、平成二十三年二月から、カルタヘナ法第三十一条に基づき、輸入されるパパイヤ種子及び苗の水際での検査、さらに国内に流通するパパイヤ種子及び苗の検査を開始したところでございます。

 この検査の結果は、平成二十三年二月から八月にかけて検査を行ったところ、輸入され、国内で流通している全ての種子、これは十九品種二十九商品ございました、及び苗、これは四品種四商品ございましたが、これらを検査した結果、台湾から台農五号という名称で輸入をされ、沖縄を中心に販売された種子、この一品種一商品が我が国で未承認の遺伝子組み換え体であったことを確認いたしました。

 したがいまして、これ以外の種子、一品種除きますので十八品種、それから一商品除きますので二十八商品及び全ての苗、四品種四商品につきましては、遺伝子組み換え体でなかったことを確認いたしました。

 その後、カルタヘナ法の第三十条に基づき、台農五号の流通量あるいは流通経路を特定いたしまして、台農五号と特定されました八千本強、この記事にもございますが、約四ヘクタールの全てにつきまして、平成二十三年十二月までに伐採したところでございます。

 以上が事実関係でございます。

塩川委員 今お話ありましたように、たまたま、厚労省が、ハワイから遺伝子組み換えのパパイヤが入る、その確認の手続をする関係で、パパイヤにおける遺伝子組み換えの検査ができるような仕組みをつくろうというので沖縄でそれを試しにやってみたら、ハワイから来るものとは別のものがわかったというので、さかのぼってみたら、台湾から来ましたという話です。

 ですから、農家の方は全然、遺伝子組み換えなんということは全く承知もしていない話でありまして、紛れ込んでいた結果、全体のパパイヤの生産の二割ぐらいのところがそういった遺伝子組み換えのパパイヤだった。いため物なんかに使うようなパパイヤですから、日ごろ食卓へ上っているようなものがそういうものだった。

 安全性は確認されていたという話はありますけれども、しかし、こういった未承認の遺伝子組み換えの品種が国内において生産、販売をされていた事例として、極めて重大だと思います。

 これは何でこんなことになったのか、原因究明はされたんでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 本件、先ほど事案について経過を説明申し上げましたとおり、台農五号の流通量なり流通経路ということを調べていきまして、台湾側と話し合ってきたところでございますけれども、台湾の大学におきまして開発をしておったわけです。これは未承認でございます。これがなぜ台湾から日本に出てきたのかということまでは、解明はできておりません。

塩川委員 ですから、まだ原因がわからないままなんですよ。そうしますと、また繰り返されるんじゃないかという懸念も当然出てくるんですよね。

 そもそも、未承認の遺伝子組み換え生物を栽培し続けることはカルタヘナ法上違法だとなると思うんですが、その点、確認したいと思います。

亀澤政府参考人 承認を得ずに栽培されているということであれば、違法になると思います。

塩川委員 ですから、この沖縄における遺伝子組み換えのパパイヤが生産、流通、販売しているというのは、承認を得ていないわけですから、カルタヘナ法上は違法だということになります。

 先ほど農水省の答弁にも、こういった未承認の遺伝子組み換えパパイヤの生産、販売について、カルタヘナ法に基づいた、第三十一条の立入検査、また第三十条の流通経路特定のための報告徴収命令をかけたという話がありました。

 そうしますと、カルタヘナ法で規定をしている第十条の措置命令というのは出したんですか。その点はどうなっているんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、台農五号と特定された約四ヘクタール、八千本強の全てにつきまして伐採をしたと説明申し上げましたが、その際は、自主的な取り組みとして終了いたしましたので、カルタヘナ法第十条に基づく措置命令は発しておりません。その前段階で終了したということでございます。

塩川委員 回収または使用中止を求めるような措置命令には至らず、行政指導の段階で自主回収を求める、対処したということであります。

 ただ、スキームとすれば、カルタヘナ法に基づく措置命令という形もかけられるということになるわけです。

 これまで確認しましたように、この未承認の遺伝子組み換えパパイヤの生産、販売の問題というのは、基本、カルタヘナ法のスキームにのっとって対処も行われているわけですけれども、その場合に、ただ、損害をこうむった農家の方がいらっしゃるんですよ。その方に対する補償はどうなのかということが問われてくるわけなんです。

 農家の方は何の責任もないわけで、種苗会社から提供された種で植えてみたらそれが遺伝子組み換えだったということで、未承認ですから、当然のことながら、これは除去せざるを得なくなるということで、資料の二枚目に、沖縄県とJAからの国への要望書があります。

 これは、左側に、段落的には四つ目のところに、今やりとりしました「この事案が確認されるまでの間、生産農家は遺伝子組換え体の品種とは知らずに当該パパイヤ品種による経済栽培を行っており、「カルタヘナ法」に基づく当該株の伐採処理によって、農業経営に深刻な影響を及ぼす状況となっております。 このため、「カルタヘナ法」に基づく当該株の伐採処理については、「植物防疫法」と同様、損失の補償を行う必要があります。」という前書きを踏まえて、右側に四ポツとして、「パパイヤの伐採に伴う生産者等への損失補償を行うこと」ということを国に求める内容です。

 農水省でしょうか、この要望、生産者への損失補償ということについては、農水省はどのように対応されたんですか。

小川政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、平成二十三年に沖縄県等から、未承認遺伝子組み換えパパイヤの伐採に伴う生産者への損失補償に関する、この内容、四番が含まれている要望書を受け取ってございます。

 この今議論の対象になっておりますパパイヤでございますが、未承認の遺伝子組み換えパパイヤでございまして、これを商業栽培して収穫された生果実、これは食品衛生法に基づく安全性の確認を受けておりません。したがいまして、売ることができませんので、このパパイヤあるいはその生果実につきましては、経済的価値はないものでございます。

 また、種子を購入した農家は、先ほど来委員御指摘のとおり、遺伝子組み換えでない種子と思って購入したものでございます。その意味では、未承認遺伝子組み換えパパイヤの種子を販売した種苗会社は、売買契約の本旨に従った履行を行わなかったことになります。このため、当該農家は、種苗会社に対して債務の履行など民事上の責任を追及できると認識しております。

 農林水産省といたしましては、沖縄県等と連携いたしまして、生産者団体と種苗会社との補償に関する話し合いが円滑に行われるよう、未承認遺伝子組み換えパパイヤに関する情報提供や助言を行ってきたところでございます。

 その後、この結果といたしまして、生産者団体と種苗会社との話し合いが行われまして、種苗会社から生産者団体に対しまして、パパイヤの生産を再開するための苗を供給することにつきまして合意があったと平成二十五年五月に関係者から報告を受けたところでございます。

塩川委員 もちろん、遺伝子組み換えではないパパイヤの提供を求めたのに対してそうでないものということでいえば、種苗会社に民事上の責任を追及できるというスキームで、ただ、苗の提供なんですよね。もちろん、未承認の遺伝子組み換えのパパイヤだから売ることはできません、だから経済的価値がないと言われたらそれまでかもしれないけれども、農家の方にしてみれば大きな損害なわけですよ、その年の収入にもかかわるような。

 ですから、それなりの面積をやっている方にすれば、数百万円の本来入るべき利益が損なわれたという問題ですので、これはやはり、本来はしっかりと救済、補償するようなスキームというのが必要なんじゃないのか。もともと、カルタヘナ法上の未承認のこういう品種について起こっている事例ですから。

 私は、やはりカルタヘナ法のスキームにのっとった、農作物の被害に対する何らかの対応措置が必要なんじゃないかと思うんですが、この点について、環境省か農水省、答えてもらえますか。

亀澤政府参考人 今お尋ねの件につきましては、補足議定書で言う金銭上の保証に係ることだというふうに認識をいたしておりますが、補足議定書の規定では、金銭上の保証について一定の考慮義務を規定するにとどまっており、締約国に対して、金銭上の保証について国内法令で定めること自体を義務づけるものとはなっておりません。

 また、カルタヘナ法は、生物多様性への影響に関する法律でございますけれども、御指摘のパパイヤの事例につきましても、生物多様性に対する影響は確認されていないということも含めまして、我が国では、遺伝子組み換え生物等の利用によって生物多様性影響が生じた事例はこれまで確認されておりませんし、また、万が一、生物多様性に損害を生じたと認められるような事案が発生した場合でも、実際に命ずる回復措置の内容としては、実行可能で合理的な内容のものとすることを想定しております。

 そういう中で、保証金とか積立金等の財政的な負担をあらかじめ事業者等に課す仕組みをとるということは適当でないというふうに考えております。

塩川委員 補足議定書では、生物多様性の保全の大きな枠組みの中に農業も含まれているわけです。ですから、そういう農業に係る農作物の被害が現に起こっているわけですから、これについての補償措置というのも、この補足議定書のスキームにのっとって対応すべきだと考えております。

 この点では、今紹介されましたけれども、補足議定書の第十条に金銭上の保証という規定があるわけですね。こういったものについて、しかるべく国内措置を図る必要があるんじゃないのか。この点について、ぜひお答えください。

亀澤政府参考人 お答え申し上げます。

 カルタヘナ法につきましては、遺伝子組み換え生物等の利用によりましての生物多様性への影響を評価するというような仕組みになっておりますが、我が国では、これまで遺伝子組み換え生物等の利用によって生物多様性影響が生じた事例が確認をされていないということ、また、万一そういう損害を生じた場合に命ずる回復措置の内容としても、事業者等が実行可能で合理的な範囲のものとすることを想定しているということもありまして、今回の改正法案の中には盛り込むことは考えておりません。

塩川委員 補足議定書においては、やはり、基金をつくることやあるいは保険制度を設ける、そういうことを選択肢として締約国がやることはできますよということの規定があるわけです。それは国内措置ですから、各国の事情によって決めることなんだけれども、こういうパパイヤの例のように、もともと原因究明というのができないような段階で、しかし現に被害はあるという問題について、種苗会社に対応を求めるのも当然ですけれども、本来、やはり損害がきちんと補償されるようなスキームをつくる必要があるんじゃないのか。こういう工夫というのは大いに大事な点だと思っております。

 せっかくですから、比嘉政務官、この話も御存じでしょうか、一言思っているところを、いかがでしょうか。

比嘉大臣政務官 沖縄では非常にパパイヤは食されるもので、これを守っていく、生物多様性を守っていくということで、カルタヘナ法の重要性がここで問われるところだと思います。

 おっしゃるような保証金というのも、沖縄県民の農家がこうむった被害でございますので、またいろいろと考えていく必要はあるのかなとは思います。

塩川委員 最後に、大臣にお尋ねいたします。

 生物多様性の保全や農産物を含む持続可能な利用を保証するために、やはり損害が生じた場合の金銭上の保証措置というのを、補足議定書にのっとって、日本の国内措置としてぜひ検討すべきではないのか。この点について、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 先ほど亀澤局長の方から御答弁申し上げたことだろうと思っております。その上で、御指摘の事例については、生物多様性に対する影響は確認をされておりませんので、補足議定書で言う金銭上の保証の対象には当たらないと今局長が言ったとおりでございます。

 私人間で生じた被害については、基本的には民事で解決すべき問題であろうと思っておりまして、環境省としては、カルタヘナ法に基づく承認または確認の手続等の確実な実施により、生物多様性に対する影響の防止を図ってまいりたいと思っております。

 その上で、御指摘のようなことがたびたび生じるようなことがあるならば、やはり考えていかなければいけない課題にはなってくるのかもしれません。

塩川委員 わかりました。

 補足議定書には一定広い範囲での対象があるんですけれども、国内法の措置というのは非常に限定的だ、私はここは大いに見直すべきだということを申し上げ、大臣の答弁が前向きなものとなることを強く願って、質問を終わります。

平委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 民進党の太田和美でございます。

 本日は、カルタヘナ法の一部改正について質問させていただきたいと思います。

 さて、我が国では、二〇〇〇年に採択されましたカルタヘナ議定書の国内担保法であるカルタヘナ法は、二〇〇三年に公布され、二〇〇四年に施行がされています。遺伝子組み換え生物による生物多様性の保全や持続可能な利用への悪影響を防止するための規制が実施されていると思います。

 しかし、カルタヘナ議定書には、遺伝子組み換えによって生物多様性が損なわれた場合の対応についての規定がなく、国際的な議論を得て、その後、二〇一〇年に、生物多様性に損害が生じた場合の対応に関する愛知・クアラルンプール補足議定書が採択され、国際的枠組みが整備されたものだと思います。そして、我が国も、二年後、二〇一二年にはこの補足議定書に署名をいたしたものだと思います。

 この補足議定書採択から七年がたっております。署名から五年が経過しております。そして、やっと本日、この補足議定書を担保する国内法について議論させていただいているわけでありますけれども、まずは、お伺いしたいと思いますが、そもそもなぜこんなに国内法整備に時間がかかってしまったのかということです。

 昨年のパリ協定のときもそうだったと思います。わかっていながらも、発効前ぎりぎりにならないと動かなかったということがありました。インドや中国が批准して発効されそうになって、慌てて国内整備に向けて動いたということがございました。それで、発効にそのときは間に合えばよかったんですけれども、当時でも発効の見込みがなかったTPPの審議などを優先するが余り、結局はおくれての批准となってしまったこともあります。

 今回も、既に三十六カ国とEUが締結していますので、発効要件は四十カ国のため、またしても、発効に間に合うよう慌てての国内整備になってしまったのではないでしょうか。この対応の遅さについて、なぜかについて大臣にまずお伺いをさせていただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 パリ協定とは若干事情は違ってはこようかと思いますけれども、正直申し上げて、このカルタヘナ、もしくは生物多様性に関心を持っておられる議員の方々からいえば、多少時間がかかったことは、じくじたる思いがそれぞれあるんだろう、かように思っております。

 名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結については、改正の要否やその内容について、関係省庁間でかなり慎重な議論がなされたということは私どもも承知をいたしております。

 そういう意味において少し時間がかかってきたんだろうと思いますけれども、今回のカルタヘナ法の改正を含めて、可能な限り早期に補足議定書を締結できるよう、引き続き取り組んでまいりたいと思っております。これまでのおくれを取り戻す意味において、確かなものにしていきたいと思っております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 大臣の御決意に期待をさせていただきたいというふうに思います。

 次に、カルタヘナ議定書については、アメリカ、カナダ、オーストラリア、アルゼンチンと、遺伝子組み換え作物の生産主要国の栽培面積の約七割を占める国々が未締結であります。この補足議定書の枠外にあるわけであります。また、アメリカについては、そもそも生物多様性条約にも参加していないというような現状があります。そのため、完全な国際協調の枠組みにはまだ遠いという意見もございます。

 未締結国が遺伝子組み換え作物生産主要国である中、その実効性の確保についてどのように考えているのでしょうか。

 また、カルタヘナ法成立時の第百五十六回の国会の参議院において決議された附帯決議にあったんですけれども、「国際的な生物多様性の確保を図るため、生物多様性条約、カルタヘナ議定書を締結していない米国等に対し、あらゆる機会を利用して同条約、同議定書に参加するよう積極的に働きかけること。」というふうに決議がされておりました。

 環境大臣として、米国のカウンターパートと話し合いなどは行っているのでしょうか。

山本(公)国務大臣 現行法では、遺伝子組み換え生物の調達先の国がカルタヘナ議定書の締約国か未締結国かに関係なく、我が国の遺伝子組み換え生物等の使用等を行う者が事前に承認を得る必要がございます。

 そのため、遺伝子組み換え生物生産主要国が議定書未締結であっても、現行法の運用を通じ、我が国の生物多様性は確保されていると考えております。

 我が国としては、米国を含む非締約国も参加する国際会議の場において、世界の生物多様性の確保を図るためには国際的に協調して対応する必要があるということを訴えていきたいと思っております。

 私自身、まだアメリカとは直接の話し合いをしておりませんけれども、機を見つつ、生物多様性の保全の重要性について発信をしていきたいと考えております。

 さらに、生物多様性の保全を含め、今後、トランプ政権が環境政策をどのように具体的に進めていくか、引き続き注視をしていきたいというふうに思っております。

太田(和)委員 地球温暖化対策と同様に、このことについては本当に地球規模で取り組んでいかなければならないことだと思います。大臣からも今お話がありましたように、トランプ政権とどう私たちは向き合っていくのかということも大切なことになるかと思いますし、議長国を務めた我が国が、その責任においても、また国際社会でリーダーシップを発揮していかなければならないと思いますので、ぜひ、大臣におかれましては積極的な姿勢を求めてまいりたいというふうに思っております。

 次に、法案の中身についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 本改正案は、中環審自然環境部会遺伝子組換え生物等専門委員会によるカルタヘナ法の施行状況の検討について、それと、あと、バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書に対応した国内措置のあり方についての答申、この二つに基づいて作成されたというふうに理解をしております。

 このカルタヘナ法の施行状況の検討を見てみますと、「施行状況については特に問題はなく、現時点で、制度改正等は必要ない」とされた一方、「補足議定書の実施を担保するための国内措置については別途検討する必要がある。」ともされています。この文脈から、本改正案が補足議定書締結に向けた最低限の国内措置を担保することだけが目的となっているのではないか、そういうふうにも読めるんです。

 そこで大臣にお伺いしたいのが、カルタヘナ法の施行状況の検討及び補足議定書に対応した国内措置のあり方、この二つのそれぞれのパブリックコメントのところで、市民団体等から、現行法の問題点が放置されており、規制強化を求めるといった意見もございました。

 さらに、大臣の所信の中でも、「遺伝子組み換え生物の使用等の規制をさらに図るため、」と、「規制をさらに」というふうにおっしゃっておられましたけれども、今回の法案が果たして規制強化というふうになっているのかということをお尋ねさせていただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 本法改正は、そのような現状の中で補足議定書を担保するために、これまでの措置に加えてさらに追加的に回復の措置を規定するものであり、必要かつ十分な措置とは考えてはおります。

 おりますが、冒頭、小島委員の御質問の中で、私は南方熊楠の例を出しましたけれども、本当に一度破壊されてしまうと取り戻すことはもう不可能だということを私も信じておりますので、今回の国内担保措置がうまくできましたら、それを生かしていくことに全力を挙げていきたいというふうに思っております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 現行法では、遺伝子組み換え作物の輸入、流通、栽培に関して承認や確認の許可が必要となっていますけれども、最近ではこの手続の簡略が行われているというふうに聞きました。

 これでは事実上の規制緩和になってしまうのではないかなと思いますので、やはり、大臣がおっしゃったように、何か事が起きてからでは取り返しがつかないことになってきますので、これは、最低限の措置ということではなくて、本当に規制強化、厳しく厳格に取り締まるような措置にしていただきたいということを申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次に、使用者の責任のあり方についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 本改正案は、違法に遺伝子の組み換え生物等の使用がなされ、生物多様性に損害が生じた場合は、環境大臣は使用者に対して回復措置命令をすることができるというふうにしています。つまり、使用者が責任を負うことになるのは違法の使用時のみであって、適法使用時に発生した損害については使用者は責任を負うことがないということになっています。

 補足議定書においては、違法な場合に限定せず対応措置を図るよう求めています。また、EUの指令では、免責となるケースもありますけれども、使用者に責任を負わせる仕組みがとられています。

 大臣にお伺いしたいのが、例えばEUとは異なり、今回の法案が、補足議定書で求めていることよりもさらに限定的に、使用者責任を違法に使用した場合のみとして、適法使用の場合を除外した理由はなぜなのでしょうか。

山本(公)国務大臣 現行カルタヘナ法は、事前に適切な承認または確認の手続を経た場合等に遺伝子組み換え生物等の使用等を認めております。

 この事前手続を適切に行って遺伝子組み換え生物等の適法な使用が認められた使用者等が、さらに回復措置を命ぜられる可能性があるということは、使用者にとって過度な負担となるおそれがあると考えております。

 現行カルタヘナ法も、このような考え方に基づいて、回収命令の対象は違法な使用者等に限定されているところでございます。

 以上から、回復措置命令の対象は、違法に遺伝子組み換え生物等の使用等を行った者に限ることとしております。

 なお、補足議定書上、回復措置を命ずる対象者については、締約国に裁量が認められております。

 私が申し上げたいのは、先生の冒頭の御質問にございました、随分時間がかかったなと。いろいろな意味において随分時間がかかった、こういうことの苦しみをぜひわかっていただきたいなと思います。

太田(和)委員 いろいろな御事情があるのかと思いますけれども。

 そもそものこの議定書の考え方なんですけれども、環境保全や化学物質の安全性などに関し、環境や人への影響及び被害の因果関係を科学的に証明されていない場合においても予防のための政策決定を行うという、予防の原則から成り立っているものだというふうに思います。

 よって、予防するには、ある程度厳格であることが必要なのではないかと思います。違法な使用に限定するということは、この予防原則の考え方からも少し外れてしまうのではないかなというふうに私は思っております。

 つまり、何が言いたいかといいますと、日本の環境政策なんですけれども、日本の環境政策の欠陥は、予防原則とせず、何か起こってから規制化、強化するなど、対症療法主義であるということではないかなというふうに私は思っております。

 この予防原則という観点からなんですけれども、環境と開発に関するリオ宣言においても、「環境を保護するため、予防的方策は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない。」とあります。

 少しちょっとわかりにくい文章なんですけれども、要するに、科学的根拠が定かでなくても、それを言いわけに対策を先延ばししてはいけないということです。

 しかし、日本では、科学的根拠がないものとかについて制限をかけるということは、非常に慎重的なのではないかなというふうに思います。そして、取り返しのつかない絶対的損失が起こってしまったときに、いつも言うんです、当時の最先端の科学的知識から判断したと。こういう失政の言いわけになっているんだというふうに思います。

 附帯決議においても、「遺伝子組換え生物等による生物多様性影響については未解明な部分が多いことから、科学的知見の充実を急ぐとともに、「リオ宣言」第十五原則に規定する予防的な取組方法に従って、本法に基づく施策の実施に当たること。」とあります。

 先ほども申し上げた措置についても、この使用者責任についても、予防原則というのを十分機能させていただいて、本当に厳格に、厳しく事前に対処していくということが必要であるというふうに思います。世界の潮流からも外れているのではないか、このことを指摘させていただきまして、次の質問に移りたいと思います。

 カルタヘナ議定書第一条の目的は、生物多様性に悪影響を及ぼす可能性のある遺伝子組み換え生物の移送、取り扱い及び利用には、人の健康に対する危険も考慮した十分な水準の保護を確保することというふうに明記されています。

 補足議定書の方にもありました。改変された生物に関する責任及び救済の分野における国際的な規制及び手続を定めることにより、人の健康に対する危険も考慮しつつ、生物多様性の保全及び持続可能な利用に寄与することを目的とするとあります。

 ここに書かれております、人の健康に対する危険にも考慮ということを環境省としてどのように捉えているのでしょうか。

山本(公)国務大臣 カルタヘナ議定書は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるあらゆる遺伝子組み換え生物等の国境を越える移動、通過、取り扱い及び利用について適用されます。よって、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を及ぼす範囲内において、人の健康に対する危険も考慮することを規定いたしております。

 これを踏まえ、例えば、遺伝子組み換え生物等から有害物質が環境中に放出されることにより、環境を経由して人の健康に影響を与えるといった可能性を考慮し、現行のカルタヘナ法のもとでも措置が講じられています。

 具体的には、遺伝子組み換え生物等から放出された有害物質による動植物に対する影響の評価を行い、適切な措置を講ずることで、間接的な人の健康への影響について未然防止が図られております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 この間に開催されておりました、先ほども申し上げました両検討会、二つの検討会において、どうやら人の健康に対する危険などについては余り議論されていなかったようであります。

 遺伝子組み換え技術も日々進歩しておりますし、環境省としても、このことについては、現在何も起きていないから問題はないというスタンスではなく、起こしてはいけないことであるため、予防原則に基づいてでき得る限りの予防策を講じることを原則に取り組んでいただきたいと思います。

 さて、次は、遺伝子組み換えに関連する質問なんですけれども、カルタヘナ法成立時の附帯決議に、遺伝子組み換えの食品についても記述がございました。「消費者の不安が大きいことから、その安全性評価を行うに当たっては、科学的知見を踏まえ慎重を期するとともに、表示義務の対象、表示のあり方、方法についても検討を行うこと。」というふうにカルタヘナ法成立の附帯決議にございました。

 そこで、ちょっと、今回の法案とは直結はしないんですけれども、関連でお尋ねしたいんですけれども、まず厚労省に遺伝子組み換え食品の安全性確保の仕組みについて聞いてみましたところ、食品安全委員会による科学的な評価の結果を踏まえ、厚生労働省において、その安全性を確認した上で当該品目を公表し、食品としてその流通を認めているというように回答がございました。

 しかし、子供への影響の心配や健康志向が高まっている中で、消費者が遺伝子組み換え食品は健康によくないのではないかといったような不安を持っている方が多いのも事実であります。消費者はこれは遺伝子組み換え食品だろうかと知りたがっているのだと思いますけれども、よって、消費者の選択の自由を確保した適正な表示が必要と考えます。

 そこで、消費者庁にお伺いをしたいと思いますけれども、遺伝子組み換えか否かを知りたいと思う消費者がほぼ五割いる中で、現状の制度はどのようになっているのか。また、現在、遺伝子組み換え食品の表示義務の義務づけのあり方について、国内の実態を踏まえて検討を平成二十九年中に行うとされていますが、その検討状況はどうなっているのでしょうか。

吉井政府参考人 お答えをいたします。

 先生先ほど御指摘のとおり、遺伝子組み換え食品につきましては、まず国内に流通しているものは安全だということです。しっかり評価をされて、安全であるということでございます。

 その上で、遺伝子組み換え食品の表示につきましては、制度の実効性を確保する観点から、組み換えられたDNAやそれによって生じたたんぱく質が最終製品において検出できることを前提といたしまして、安全性審査を経た大豆あるいはトウモロコシ等々の八つの農作物、それから、これらを原料といたします三十三品目の加工食品、これは例えば納豆だとか豆腐等々が該当するわけでございますけれども、こうしたものを対象といたしまして遺伝子組み換えに関する表示を義務づけているところでございます。

 一方で、大豆を原料とするものでも、しょうゆでありますとかあるいは食用油、こうしたものについては、組み換えられたDNA等が加工工程において除去、分解をされまして、最終製品においては残らなくて検出をできないというものがございます。そうしたものにつきましては表示の義務の対象とはしていないということでございます。

 また、大豆、トウモロコシにつきましては、遺伝子組み換え農作物でないものを適切に管理していても、農産物の生産、収穫が行われる産地でありますとか船積みが行われる輸出港等々の流通の各段階で遺伝子組み換え農作物の混入が生じてしまう可能性がございます。

 このため、適切に管理をしていることを前提といたしまして、遺伝子組み換え農作物の混入が五%以下の場合には遺伝子組み換えでないといった旨の表示が可能となっているところでございます。

 こうした遺伝子組み換え食品に関する制度につきましては、先生先ほど御指摘もございましたけれども、来年度から検討することにさせていただいております。

 これは、二十七年に閣議決定をされました消費者基本計画においても位置づけられておりまして、一部積み残された課題という位置づけでございますので、それを踏まえて順次検討させていただこうというふうに考えておるところでございます。

 今年度でございますけれども、消費者庁におきまして、現在の仕組みがニーズに沿ったものとなっているのかどうか、現状をしっかりと把握をする、これを目的といたしまして調査を実施しております。

 具体的には、表示対象品目の検討に係る調査ということで、先ほどの、科学的に分析できるものがどういった対象、今の科学の知見でどこまで広げられるのかといったようなこと、それから、アメリカ、カナダにおける遺伝子組み換え農作物の流通状況の調査、それから消費者の意向調査、こうしたものを実施しております。制度の見直しに向けまして、必要な調査を順次実施しているところでございます。

 こうした調査につきましては、全て今年度末、この三月いっぱいで終了を予定してございます。これらの調査の結果を踏まえまして、検討すべき事項について整理をした上で、速やかに有識者等を構成員とする検討の場を設けさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

 なお、検討に当たりましては、諸外国の表示制度等を踏まえながら、どのような表示制度が消費者の自主的かつ合理的な食品選択に資するのか等の観点から、しっかりと検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 つまり、全品対象ではないんですね。さらに、御答弁もありましたように、原材料に占める割合が五%未満であれば表示が不要で、油やしょうゆ、マーガリン、マヨネーズなど、組み換えられた遺伝子やそれによって生じるたんぱく質が検出できない食品の表示義務はないとされています。

 EUと比較した場合なんですけれども、EUでは表示が免除されるのは〇・九%未満で、韓国では三%と、やはりここでも日本は五%という緩い基準になっています。現在検討が進められている遺伝子組み換え食品の表示義務のあり方の結論にも期待をしたいというふうに思います。

 最後に、大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 大臣は所信において、御所管でもありますので、当然、生物多様性について触れられておりました。しかし、政府全体を見てみますとどうなのでしょうか。例えば今国会における総理の施政方針演説を読み返してみたんですけれども、生物多様性という言葉がなかったんですね。

 生物多様性保全に係る政府全体の本年度予算を見ても、全省庁合わせて約一千四百二十二億円の、前年比マイナス二十八億円、環境省予算は約百七十億円で辛うじて前年比プラス六億円ですけれども、予算額から見ても政府の積極的な取り組みが見られませんでした。

 カルタヘナ法に関する環境予算では、遺伝子組換え生物対策事業というのがあったんですけれども、この予算の総額が何と二千百万円。規模がちっちゃくて少しびっくりいたしました。大臣も御努力なさっているとは思いますけれども、環境省としてもう少し頑張っていただきたいというふうに思います。

 最後に、大臣、環境大臣として、その思いだけではなく、実際これからこれぐらいはやるぞという御決意をお聞かせいただければというふうに思います。

山本(公)国務大臣 二千百万という御指摘をいただきました。

 ただ、私はいつも、どの施策にしましても、予算というのは有効に使って初めて効果が出るんだというふうに思っております。額ではないというふうに思っておりまして、少ない額の中でもそれを最大限生かして、有効に使い切っていきたいなというふうに思っております。

 その意味で、今回のこの法案を皆さん方の御尽力で成立をさせていただきましたならば、とにかく、法ができた以上は、厳正な運用に努めてまいりたいというふうに思っております。法の精神が生きるように努めてまいりたいなというふうに思っております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 最後に、本法の施行状況等を検討する際には、遺伝子組み換え生物等の導入に慎重な立場の学識経験者、農業関係者、そして消費者団体、市民団体など、幅広いステークホルダーを一定数以上加えること、そして、遺伝子組み換え生物等の新技術は日進月歩で変化しておりますので、二年に一度、この法案を見直しをしていった方がいいのではないか、このことを要望いたしまして、質疑を終えたいと思います。

 大臣、まことにありがとうございました。

平委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民進党の田島一成でございます。

 きょうは、カルタヘナ法、補足議定書の国内法についての審議でございますので、私の方からも何点か確認をさせていただきたいと思います。

 既に同僚議員からの質問で重複した部分等については、あたう限り避けていきたいと思っておりますので、御答弁の方、間違えて、めくり忘れのないようにお願いをしたいと思います。

 先ほど太田委員からもお話があったとおり、このCOP10、生物多様性条約締約国会議第十回、名古屋で開催したのが本当に随分昔のことのように思い出されるわけであります。

 私も当事者の一人として、その前年には相当EU等々へも行かせていただいて、事前交渉等に汗をかいてきただけに、今回、この名古屋・クアラルンプール補足議定書がようやくここに出てきたことを、ほっとするやら、今ごろという思いやら、非常に複雑なところも正直ございます。

 当初から、実はこれはすごく、補足議定書ができたときから気にはなっていたんですけれども、この名古屋・クアラルンプール補足議定書のタイトル、日本語の訳では、バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書というふうに実はなっております。

 このカルタヘナ議定書の責任及び救済というのに実は私、非常に、妙に何かひっかかるところがございます。責任と救済、英語で言うとライアビリティー・アンド・リドレスなんですけれども、このリドレスというのが、辞書で引けば救済という言葉が結構出てはくるんですけれども、この補足議定書の内容と照らし合わせたとき、救済というワードが本当に適切なのかなと私は実は思っております。

 これを訳したのは、外務省ですよね。そのとき、私だったら、回復とか修復とかという言葉を当てはめるなと思うんですけれども、違和感を感じませんか。お答えください。

亀澤政府参考人 御指摘の訳につきましては、条約その他の国際約束及び確立された国際法規の解釈及び実施に関することを所掌する外務省において適切に行われて、現在の和訳が作成されているものと承知をしております。

田島(一)委員 今からこの条約関係の和訳を修正しろなんておこがましいことを言うつもりはございませんが、ただ、責任と救済という、私の語彙力が足りないからなのか、そこはちょっと御指摘をいただきたいと思うんです。

 要は、亀澤さん、責任と救済がベストなんだとおっしゃっていただいて、質問をこの後続けたいんですけれども、どうですか。

亀澤政府参考人 外務省の和訳による責任と救済というのが最善のものだというふうに考えております。

田島(一)委員 わかりました。もうこれについては、これ以上議論をしても仕方がないので、来週の外務委員会でやらせていただきたいと思います。

 日本語というのは本当にいろいろな語彙があって、意味が随分ねじ曲げられたり、また勘違いしたりするところがあります。知らない人が責任と救済と見たとき、さっきの話じゃありませんけれども、GMパパイヤを栽培した農家の救済みたいな、そんな勘違いに働きはしないかななんということも実は考えたりもするわけです。

 それだけに、言葉というのは、専門は外務省ですから外務省に問うのが一番筋だとは思いますけれども、やはりもっと丁寧な日本語の使い回し、使い方を心がけていただきたいなというのが私から政府に対する要望の一つであります。この点についてはいつまでもこだわるわけにもいきませんので、次の質問に入りたいと思います。

 補足議定書の規定との整合性ということで、措置命令の追加、十条の第三項について通告をさせていただいておりました。

 この点、先ほど太田委員の方もお尋ねをいただいたわけでありますけれども、大臣も、これまでの調整に時間がかかった核心の部分だと言わんばかりの御答弁もいただきまして、その意味も、非常に我々が気にしているところを的確にお答えいただいたものというふうにも解釈をしております。

 ただ、本当に、遺伝子の交雑等々の問題は、非常に際限なく大きく広がっていきます。知らなかったからとかでは済まされない事態にまで発展しかねないと考えると、違法使用時と適法使用時で区別していくというのにはやはり無理があるんだろうなというふうに思います。今からここに修正をかけるという生意気なことはいたしませんけれども、この問題が今後どのように広がっていくのかを考えたときは、やはり看過できないなと実は考えているところであります。

 この点について、今後しっかりとした議論を政府内で進めていただきたい、そのことを強くお願いしておきたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 補足議定書第二条の中にあります対応措置の定義であります。

 補足議定書の対応措置の定義には、損害の防止、最小限化、封じ込め、緩和、そして回避というふうに列記をされているところでありますけれども、今回の改正法に盛り込まれている必要な措置は、これら五つの例示を全て踏まえているというふうに理解してよろしいでしょうか。その確認だけお願いします。

比嘉大臣政務官 名古屋・クアラルンプール補足議定書に規定する対応措置には、損害防止、最小限にし、封じ込め、緩和し、また他の方法で回避すること及び生物多様性を復元することが含まれております。

 現行のカルタヘナ法では、遺伝子組み換え生物等の使用の中止や回収等を命ずることができる旨を規定していることから、損害を防止し、最小限にし、封じ込め、緩和し、また他の方法で回避することは基本的に現行法で対応可能であります。しかし、生物多様性を復元することは現行法で命ずることが困難であることから、補足議定書を担保するにはカルタヘナ法を改正する必要がございます。

 したがって、現行法の措置命令の規定と改正法案の回復措置命令の規定によって、補足議定書の規定する対応措置の例示は全て対応可能になると考えております。

田島(一)委員 対応可能というお答えをはっきりいただきました。

 ただ、中環審の中にあっても、緩和であるとか回避といった課題は非常に難しいという指摘もあり、今答弁の中でもあったとおり、カルタヘナ法の改正等々をやらないとこれは対応できないという意見もやはり出てきているわけですね。

 カルタヘナ法を変えるべきなのか、それとも、やはり緩和であるとか回避にしっかりと対応していこうという姿勢を持つべきなのか、これは難しい選択だとは思いますけれども、本来の補足議定書に盛り込まれている五つの対応措置については、やはり忠実な対応というものを求めているわけですから、これは議定書の内容を変えていくとおっしゃっても、そのとおりにいくかどうかもわかりませんので、そういった場合、回避であるとか緩和という点をどういうふうにしていけばいいとお考えなのか、参考人で結構なので、お答えください。

亀澤政府参考人 今回の改正によりまして、補足議定書に対応して、生物多様性の復元までを含めることにするわけですけれども、これまでの緩和とか回避とか、さらには今回改正の復元も含めまして、これまで生物多様性に対する影響が確認をされていないところでありますが、今後とも、そういう事前の確認、それをしっかりやっていくことで対応していきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 本当に、予防原則ではありませんけれども、事前の確認というのが一番やはり大事になってくるんですね。さまざまな情報集積をしていく、あらゆるネットワークを使ってやっていく、全庁的に、そんな気がしているんですけれども、それにしてはやはり予算枠がしょぼいですよね。もう笑うに笑えないこの予算。

 これはどうでしょうね。本当にこの予算でおっしゃるような情報収集やあらかじめの対応というのがきちっとやっていけるのかなと思うんですけれども、三役のどなたか、ちょっとお答えできるようでしたら、通告していませんけれども、お答えいただけませんか。

山本(公)国務大臣 先ほども申し上げましたが、額ではないと私は思っておりますので、精いっぱいこの予算を使わせていただきたいと思っております。

田島(一)委員 大臣、お人柄がいいので、私もうこれ以上、本当に追及するのも忍びないんですけれども、ただ、やはり、根気よくやらなきゃいけない、時間もかかってくる、そしていろいろなところでの事例が出てくるということを考えると、先立つものがなければ、なかなかこれは進まないんだと思うんですね。どうぞそのことも含みおいていただいて、予算の獲得にやはり全力を挙げていただきたい、このことを強くお願いしておきたいと思います。

 では、ここからは、GM、遺伝子組み換えについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 遺伝子組み換えのGM菜種が日本で初めて発見されてから、もう早いもので十年以上たっているんですね。この十年間の足跡、環境省や農水省さんも相当御苦労をいただいてきたと思いますが、市民レベルでも、この遺伝子組み換え食品に対するアレルギーを持つ市民や団体、いろいろなセクターの方々が自発的に調査活動等に取り組んでいらっしゃいます。

 そのことを御存じでしたか。あえてお尋ねはしませんけれども、このGM菜種の実態等々、非常な今状況にあるということは他の委員からの質問にもありました。

 随分熱心に調査をしていただいている四日市港で水揚げされた菜種のルート、国道二十三号線、そして伊勢街道等々で、多くの市民が自発的にGM菜種の遺伝子を持つものかどうかという調査もやっています。そうすると、二十三号線の沿道、また中央分離帯等には、ひとり生えしたこの遺伝子組み換え菜種が立派に成長しているんですね。中には、三年物以上の菜種すら出てきています。

 そして、国立環境研究所の研究員が長らく調査した結果をもうホームページ上等で公表もされていますけれども、排水溝、いわゆる会所升等々に泥がたまっていたりすると、どうしてもそこに遺伝子組み換え菜種の種子が堆積をし、その泥、土を養分にして成長しているという調査結果も明らかになってきています。

 また、建物を取り壊しされた空き地等々が、人が入らないものだから菜種の自生がどんどん広がって、いつの間にやら「朧月夜」の歌に聞こえるような菜の花畑のようにもうなってきてしまっている。

 私、これが何で問題にしなければならないかというと、菜種というのはアブラナ科ですよね。遺伝子組み換え菜種の花粉が飛散をすれば、例えば、私たちが日常食べるアブラナ科の野菜、ブロッコリーであるとか大根とかカブとかキャベツにまで、この遺伝子組み換え菜種の遺伝子が飛散をしていく、そういう問題になっていくわけですよね。

 農水省さんはもう恐らくその問題意識をお持ちだというふうに思いますけれども、この認識について間違いないか、農水省さんの見解をまずお聞かせいただけますか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省におきましても、遺伝子組み換え農作物による日本の生物多様性への影響を懸念する声というものがございますので、この承認された遺伝子組み換え西洋菜種により生物多様性への影響が生じていないことを確認するため、西洋菜種の輸入港の周辺地域におきまして、その生育状況や近縁種との交雑の程度などを毎年調査しているところでございます。

 これまでの調査では、例えば、平成二十五年度以前と、あるいは、最近ということで平成二十六年度以降で比較をいたしましても、菜種類に占める西洋菜種及び遺伝子組み換え西洋菜種の生育割合あるいは生育範囲には変化は見られておりません。また、年度ごとに同じ場所で連続した生育というものも確認されておりません。さらに、近縁種との交雑個体は、我々の調査では確認されてきておらないところでございます。これらの調査結果はホームページにより公表させていただいているところでございます。

 これまでの調査の比較によりまして、我々は、平成十八年の承認時に行った生物多様性影響評価の結果と、我々の調査の結果というものは同じであったというふうに認識しております。

 これは、経年の変化をじっと見ていかないといけないと思いますので、今後とも、遺伝子組み換え西洋菜種の生育実態に係る調査を継続し、生態系への影響について調査をしてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 ちょうどCOP10が開催された二〇一〇年に、三重県、なばなの里なんというのがあったりして、実は、菜の花、菜種を採種する先進県の一つだったんですけれども、この三重県が、菜種の採種を、このCOP10が開催されている真っ最中に、県外で行うということを発表しています。

 これはかなり衝撃的なことでして、三重県における、なぜ菜種の種を県外からとってこなきゃいけないのか。県内にも十分に生産できる農地はあるんですよね。

 この事実は、農水省さん、御存じ、お聞きになっていらっしゃいますよね。ごめん、通告はしていないんだけれども、御存じだったらばぜひ聞かせていただきたいと思いますが、なぜ菜種の採種を三重県は県外で行うというふうにしたのか、その原因は何だったのか、わかる範囲でお答えください。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの点につきましてでございますが、業者を探したところ、県外の業者になったという事実は認識しておりますが、これがなぜそうなったのかということにつきましては、詳細、認識しておりません。

田島(一)委員 多分御存じだと私は思うんですよ、言えないだけで。間違いなく三重県内で菜種にGM菜種がもう交雑してしまっている。いわゆる遺伝子組み換えの菜種がありとあらゆるところに広がり過ぎて、県内で菜種を採種することが不可能になってきたというのが多分背景だと思うんですね。多分、お立場でおっしゃれないのか、通告しなかったからお答えできないのかわかりませんけれども、私、それぐらい、今、三重県における遺伝子汚染が相当菜種の分野にあっては広がっているんじゃないかという心配をしているんです。その点についてどのようにお考えですか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御懸念等にお応えする関係からも、毎年度、菜種の輸入港の周辺におきまして、こぼれ落ちがどうであったかということを調査してきているところでございます。

 これは、菜種の水揚げ港で申し上げますと、輸入量の九九・五%は揚がっているところで調査してきておりますので、これを継続し、比較できるような形で、皆さんにインターネット等を通じ情報を公開していくといったことに取り組んでいきたいと考えております。

田島(一)委員 息の長い取り組みでもありますし、三重県だけではなく、これはもう今、全国的にこのような事態が上がっています。関東にあっては、鹿島港も、四日市港と同様な事態にもあります。

 今回の法改正に伴って、ぜひ意識を環境省の皆さんにも持っていただきたい、そんなことで取り上げさせていただきました。

 そして、本来所管ではない国交省さんにもきょうお越しをいただいております。

 先ほど冒頭、この二十三号線での生育状況等々について申し上げたとおり、道路の排水管理等々にも非常にやはり問題といいますか、そこが増殖の一つのきっかけになっているやに私は受けとめております。

 今後、この排水升の管理、点検でありますとか、国道沿いに自生している菜種に対してどのような対策を講じていらっしゃるのか、道路管理だからということで、全く関係ないとおっしゃるならばおっしゃるで、誰が今後責任をおとりになられるのか、答えていただけますでしょうか。

増田政府参考人 お答えいたします。

 まず、国が管理する国道の排水構造物の清掃につきましては、土砂の堆積等による通水阻害を防止するために、通水阻害箇所を抽出した上で、適切な頻度を設定して行っております。

 また、除草につきましては、雑草の繁茂により建築限界内に障害が発生することを防止するということと、通行車両からの視認性、特に交差点部等では視認性を確保するという観点から、対象箇所を抽出した上で実施をしております。

 国道二十三号におきましても、排水構造物の状況及び雑草の繁茂状況を通常の巡視で確認をしながら実施をしているというところでございます。

 今のは直轄国道、いわゆる国管理の国道についてのスタンスで、また、地方道におきましても、各道路管理者において、道路管理上の視点、観点から適切に対応されているというふうに認識をしているところでございます。

 委員御指摘の菜種につきましても、このような道路の維持管理の中で対応していくという状況でございます。

田島(一)委員 遺伝子組み換え菜種の認識を持って道路管理しろなんということは申し上げません。ただ、道路を介して、実は、輸送のトラックがやはり全国各地にまき散らしているんだという認識はぜひ持っていただきたいんですね。どう対策するのがいいのか。もう、環境省、農水省だけがやればいいというようなテーマでなくなってきているように思います。その点をぜひ御認識いただきたくて、きょうは国交省の参考人の方にもお越しをいただいたわけであります。

 やらなきゃいけない仕事がたくさんある中で、遺伝子組み換えなんか考えていられるかという向きもあろうかと思いますけれども、そこはひとつ、こういう重要な課題は、国交省の道路管理、維持管理にまで実は影響してくるんだということをぜひ受けとめていただきたいと思います。

 もう一つの遺伝子組み換え作物で取り上げさせていただきたいのが、遺伝子組み換え綿です。

 これも、農水省が遺伝子組み換え綿の種子の検査法の開発を進めていただいている中で、中国から輸入され、そして販売されていた栽培用の綿の種子に遺伝子組み換え綿種子が混入していることが判明しました。今から二年三カ月前の平成二十六年の十二月、年末でした。

 この遺伝子組み換え綿は、殺虫たんぱく質の名前の頭文字から、Bt綿というふうに呼ばれており、殺虫たんぱく質を生成する遺伝子が組み込まれておって、綿を食べた害虫が死ぬ、そういう仕組みであります。

 このBt綿の種子を供給している会社の一つ、アメリカのモンサント社、多分皆さん御存じとは思いますけれども、かつてベトナム戦争で散布された枯れ葉剤の製造メーカーでもあります。大企業です。

 このモンサント社は、二〇〇四年にインドで綿生産者を対象に実施した調査ですが、このBt綿を栽培すると、従来の品種の綿の栽培を行った農家の生産者に比べて、収益が一一八%増加したと言っています。収量が六四%増加し、殺虫剤散布にかかるコストが二五%削減したということまでホームページ上では示されています。

 それだけに、インドでも、もはやこのモンサント社が売っているBt綿と殺虫剤を利用している農家がふえてきているが、実は、これ、皮肉なことに、もう金が回らなくなって、農家の方々がどんどん自殺しているなんていうような情報すらサイトでは上がってきています。

 害虫に強くて収量がふえるとして、今やインドの綿栽培面積の九割を占めるにまで至りました。最初のうちは高い害虫抵抗性を示しているので、綿農家にしてみれば、収益は上がるということでうはうはだったんですけれども、残念なことに、農薬を使う量や回数が劇的に減ってコストダウンしたのは最初のうちで、やがて殺虫たんぱく質への耐性を獲得した害虫がさらにふえて、追いかけごっこ、イタチごっこに結局なってしまうんですね。そのため、結局、種子に合わせた農薬をどんどんどんどん毎年毎年買いかえていかなければならない。そのことによって、貧しいインドの綿業農家が借金を苦に自殺をする、そういう展開にまで今なってきているというふうに言われています。

 綿花、恐らくこの日本にも相当入ってきて、先ほど申し上げたとおり、中国から輸入販売された栽培用の綿に遺伝子組み換えが混入していることを農水省も公表されているわけでありますけれども、それ以降、この検査の体制等々の整備に随分当たっていただいているようでありますけれども、実際にこの事案が発生してから、農水省において、検査状況についてはどのような開発に至っているのか、まずその点だけお聞かせいただけますでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、海外におきましては、綿の生産国の多くで遺伝子組み換え綿が一般的に流通あるいは栽培されております。また一方、我が国では、現在、遺伝子組み換え綿について、カルタヘナ法の栽培の承認を受けたものはないという状況でございます。

 こういった状況を踏まえまして、我が国で栽培の承認を受けていない遺伝子組み換え綿が輸入されることがないように、まずは団体等に、先ほども委員御発言ありましたが、海外から綿の種子を入手する場合には、種子が遺伝子組み換え体でないことをまず確認する、気をつけるということが大事でございますが、それとともに、我が方、先ほど御指摘ございましたけれども、平成二十五年から二十六年にかけまして、遺伝子組み換え綿の検査法を開発いたしました。これを受けて体制を整備し、平成二十七年二月から、植物防疫所におきまして、栽培用の綿の種子につきまして検査を実施しているところでございます。

田島(一)委員 平成二十七年二月から水際での検査体制を確立したという御答弁でありましたけれども、実際に、この平成二十七年の二月以降、輸入された、水際でのサンプリング調査等々はどれぐらいの頻度でやっていらっしゃるのか、さらに、これまで判明した混入の実績件数というのはお持ちか、これは通告していると思いますけれども、お答えいただけますか。

小川政府参考人 お答えします。

 先ほど答弁申し上げましたとおり、平成二十七年二月以降、植物防疫所におきまして、輸入時にカルタヘナ法第三十一条に基づく検査を実施しているところでございます。

 この検査の結果でございますが、平成二十七年二月から、最も最近のデータを含めますと、平成二十八年十二月まででございますが、輸入されたものは基本的に植物防疫所、全て検査に回しております。これが十四件ございます。そのうち九件につきまして遺伝子組み換え綿の種子を確認いたしました。

 これらにつきましては、輸入者に、加熱などにより生育できない状態にして処分をさせているところでございますし、加えまして、平成二十八年八月以降は、これをきちんと処分するということが大事だという認識から、処分に農林水産省の職員を立ち会わせるということにしております。

田島(一)委員 きちんとというのがポイントだと思うんですね。ありがとうございます。十四件のうち九件、遺伝子組み換え綿の種子が混入している、これはやはり驚くべき数字だと思うんですね。

 この綿というのは、ほとんど綿油、コットンシードオイルに使われる種ですよね。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 植物検疫所で検査をしております綿の種子は栽培用の種子になります。それ以外の、いわゆる御指摘のありましたような食用油脂等々は、我々の検査の対象とはしておりません。

田島(一)委員 わかりました。私のちょっと勘違いでもありました。

 ぜひ、この検査体制を十分に充実させていただきたいなと思うのと、先ほども答弁の中で触れていただきましたけれども、遺伝子組み換え綿種子を日本国内で栽培しても、農水省が判断する我が国の生物多様性への影響が生ずるおそれはないということが、これはホームページで上がっております。

 環境省さんも、これは、農水省さんが判断されているような同等の判断をお持ちかどうか、確認をさせてください。

亀澤政府参考人 委員御指摘の、二十六年に混入が確認された綿に関する農林水産省の見解についてということで理解をしておりますが、その件につきましての農林水産省の見解というのは環境省と共同で出したものでありますので、当該事例については我が国の生物多様性に影響が生ずるおそれはないと環境省としても考えております。

田島(一)委員 流通段階にある遺伝子組み換え綿の種子については種苗会社に対し回収を指導しているというふうにも上がっています。そして、これまでに販売されたものは商品名も公表し、そして、該当する種子は栽培しないように指導もしていただいているというふうに認識をしております。

 ただ、その種子が仮に栽培されたとしても生物多様性には影響はない、本当に影響がないと今断言なさいましたけれども、これはまだまだ私は眉唾に思っているところでもあります。安心はやはり禁物だろうと。そのことがあって、農水省も、これは毎年毎年検査等々をやり、そして、加熱処分等々をなさっているんだというふうに思うわけであります。

 ただ、先ほどもお話にあったとおり、カルタヘナ法に基づく栽培については今回含まれていないということでありましたけれども、問題がないのならば栽培したっていいじゃないかという話も一方で出てきそうな、そんな気もいたします。

 そこで、今後、この遺伝子組み換え綿の栽培について、政府としてカルタヘナ法に基づく栽培の申請というのを検討していくのかどうか、その点についてお答えいただけますでしょうか。

亀澤政府参考人 御指摘の綿の栽培についての承認はこれまではありませんが、今後、遺伝子組み換え綿を国内で栽培しようとする者からカルタヘナ法に基づく事前の承認の申請があった場合には、個別に国として生物多様性への影響の有無について判断することが必要だというふうに考えております。

田島(一)委員 個別に対応するということは、個別に栽培を認めていく可能性もあるという理解でよろしいですか。

亀澤政府参考人 個別に申請を受けた上で、生物多様性への影響の有無について審査をして判断をするということになります。(田島(一)委員「いいんだよね、認めるということだね」と呼ぶ)

平委員長 済みません、委員長を介してやってください。

 田島君。

田島(一)委員 はい。

 つまりは、このカルタヘナの議定書の中では、栽培は認められていなかった、入っていなかったということですものね、今の段階では。

 では、今後、申請の中に栽培というのを入れていくんですか。

亀澤政府参考人 これまでも栽培について申請することはできました。この遺伝子組み換え綿についての栽培の申請がこれまでなかったということでございます。

田島(一)委員 では、これまでどおり、遺伝子組み換え綿の栽培は日本国内では認めていかないという方針は確認させていただいていいですか。

亀澤政府参考人 これまで申請がなかったというだけでありまして、今後、申請があれば、生物多様性への影響について個別に判断をしていくことになります。

田島(一)委員 わかりました。ないことを祈りたいなというのが私の本音であります。

 最後、例えば、今、外来生物の話もほかの委員からもありましたけれども、外来動植物については、各地方自治体、それぞれの特性に応じた形で自治体職員等々が懸命に駆除等々に当たっていただいていることはもう皆さん御承知のとおりだと思います。

 ところが、遺伝子組み換え作物についての認識、見地を持つ地方自治体の職員の数というのは、これは劇的に少ないんですね。

 今後、地方自治体における遺伝子組み換え担当の職員をどのようにして育成していったらいいのか、どのようにふやしていけばいいのかという点が私は大きな課題になろうかというふうに思うんですけれども、御認識、御見解をぜひ聞かせていただけますでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、遺伝子組み換えの生物多様性影響ということでカルタヘナ法がございます。これらの承認審査につきましては環境省及び農林水産省、また、水際での検査というものは植物防疫所が実施しております。現時点では国の機関がカルタヘナ法の執行を担当している。

 また、国内の方を見ますと、国内におきましては、青いバラを除きまして遺伝子組み換え農作物の国内における栽培というものはないという現状にございます。

 以上のようなことから、今、我々といたしましては、自治体に対しましては、生物多様性と遺伝子組み換えの基礎情報あるいは遺伝子組み換え農作物をめぐる国内外の状況につきまして、ホームページ等を通じて情報提供をしているという形になっております。

 なお、これまで、地方自治体から研修なり育成についてのリクエスト、要望を受けたことはございませんが、ただ、今後、このような要望をいただきますれば、前向きに対応してまいりたいと考えております。

田島(一)委員 要望がないということは、やはり認識が薄いんだという裏返しだとも思うんですね。でも、やはり大事な問題だということは、きょうのこの質疑の中ででも、皆さんのやりとり等々も含めて、結構出てきているんだと思うんです。それこそ、先ほど沖縄での遺伝子組み換えパパイヤの話も、認識を持っていれば、もしくは疑ってかかっていれば、ひょっとしたら防げたかもしれないということがやはりあると思うんですね。

 情報提供のリクエストがないからそれまでは棚に上げておきましょうという事態では今ないように私は思います。その点をぜひ深く、省庁横断的に考えていただきたいと思います。

 最後に、大臣、今法施行とそして議定書の円滑な実施を進めていく上での最後の御決意をぜひ聞かせていただいて、質問を閉じたいと思います。よろしくお願いします。

山本(公)国務大臣 恐らく国会議員の中では、この案件に最も精通している議員のお一人だと思っております。

 そういう意味において、私も、今回この法が成立をした暁には、冒頭申し上げましたように、やはり一度壊れてしまうと、生態系というのはもとに戻るのは不可能に近いという信念に基づいて、法の施行を厳格にやっていきたいと思っております。

田島(一)委員 終わります。ありがとうございました。

平委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。よろしくお願いいたします。

 今回のカルタヘナ法改正案は、名古屋・クアラルンプール補足議定書を国内担保するためのものである、その大もととなるカルタヘナ議定書が採択されてから十年が経過した二〇一〇年に、名古屋で開催されたカルタヘナ議定書第五回締約国会議、MOP5において採択されたものと認識しております。

 この名古屋・クアラルンプール補足議定書という名前は、その議定書の交渉が開始された会議の開催地であるマレーシアのクアラルンプールと、交渉が終結した名古屋、この名前をあわせたものと伺っておりますが、まず、この名古屋・クアラルンプール補足議定書は、国際的にどのような経緯で議論が開始され、採択に至ったかということをお伺いしたいと思います。

関副大臣 平成十二年、二〇〇〇年でございますが、生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書が採択されました。この議定書は、遺伝子組み換え生物等が生物多様性に及ぼす可能性のある悪影響を防止するための措置に関する国際的な法的枠組みを定めたものでございます。

 しかしながら、遺伝子組み換え生物等の国境を越える移動から損害が生ずる場合の責任及び救済の分野につきましては、同議定書の交渉過程で合意に至ることができませんでしたために、さらなる交渉が続けられることとなりました。

 その後、平成十六年、二〇〇四年でございますが、クアラルンプールで開催されました同議定書の第一回締約国会合以降、約六年間交渉が継続されました。平成二十二年、二〇一〇年でございますが、名古屋市で開催されました第五回締約国会合におきまして、我が国が議長国として採択にこぎつけましたのが、名古屋・クアラルンプール補足議定書でございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 最初のカルタヘナ議定書に入れようと思ったけれどもなかなか入らなかった、非常に難しい議論があった。その後も非常に長い期間かけて議論をして、やっとこの補足議定書ができた。

 ですから、今回の中身というのは、法律を読むと非常に簡単な事項ですが、大変な議論が国際的にもあった。国内に入ってからも、名古屋の議定書から今まで、もう七、八年たっているわけで、国内的にも各役所の間で大変な議論があったと聞いております。それだけ、表面は非常に簡単ですが、中身は非常に難しい内容なんだろうなということはうかがい知ることができるわけでございます。

 では、次の質問ですが、まず、今回新たに加える規制に入る前に、もともとがどうであったかということをちょっと理解するために次の質問をさせていただきます。

 カルタヘナ法、もともとのカルタヘナ法が平成十五年に成立し、平成十六年から施行されております。約十年たつわけですけれども、現行のカルタヘナ法は遺伝子組み換え生物等についてどのような規制を定めているのかということについて、まず確認をさせてください。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 現行カルタヘナ法は、カルタヘナ議定書の国内における実施を担保するため、遺伝子組み換え生物等の使用等の規制に関する措置を講ずるものであります。

 具体的には、遺伝子組み換え生物等の使用等に先立ちまして、一つは、農地での栽培など、環境中への拡散を防止しないで行う第一種使用等の場合については、事前に生物多様性影響について科学的な審査を経て、問題がないとして主務大臣の承認を受けること等を義務づけております。

 もう一つは、実験室での使用など、環境中への拡散を防止しつつ行う第二種使用等の場合は、主務省令で定められた、あるいは主務大臣の確認を受けた拡散防止措置をとること等を義務づける、そのことによって生物多様性影響の防止を図っております。

 このほか、輸出の際の相手国への情報提供とか、立入検査、違反者への措置命令に係る規定等を設けているところでございます。

斉藤(鉄)委員 第一種、第二種がある、それから、事前の承認または確認という手続を定めて生物多様性の確保を図っている、こういう御答弁でございました。

 それでは、これまでに、この十年間に第一種、第二種それぞれ承認もしくは確認という実績がどれだけあったかということを確認させていただきたいと思います。

亀澤政府参考人 まず、環境中への拡散を防止しないで行う第一種使用等につきましては、二十九年二月末現在で、一般的な使用が可能なものとして、農作物、微生物で合計十一種、百七十五件の承認がなされております。

 また、第一種使用等のうち、一般的な使用ではなく、試験栽培とか試験飼育を目的として、環境への放出を一定程度限定した区域内で一定期間のみの使用を認められたものとしては、農作物、動物及び微生物で合計十七種、百八十三件の承認がされております。

 さらに、環境中への拡散を防止しつつ行う第二種使用等につきましては、確認されている拡散防止措置は、平成二十九年二月末現在で、研究開発分野、農林水産分野、医薬品等分野、鉱工業分野におきまして五千百二十七件となっております。

 具体的な承認または確認の例といたしましては、害虫に強いトウモロコシ等の遺伝子組み換え作物、機能性たんぱく質を生産する蚕等の遺伝子組み換え動物、B型肝炎ワクチン等の医薬品の製造に用いられる遺伝子組み換え微生物等がございます。

斉藤(鉄)委員 よくわかりました。

 第一種使用それから第二種使用についても相当数の承認または確認がなされているということで、特に第二種使用については五千件を超えているということで、私も今回勉強して、正直びっくりしたところでございます。

 こういう現状に対して、今回の改正案で導入する生物の多様性を回復するための措置命令については、こうした使用者のうち、カルタヘナ法に違反して遺伝子組み換え生物等を使用した者に対象を限って命令を発することができるということとなっておりますが、法に違反して遺伝子組み換え生物等を使用した者とか、こうした条件はどのような考え方に基づいて定められているのかという点について、わかりやすく説明していただきたいと思います。

亀澤政府参考人 現行カルタヘナ法では、事前に適切な承認または確認の手続等を経た場合等に遺伝子組み換え生物等の使用を認めております。

 この事前手続を適切に行って遺伝子組み換え生物等の適法な使用が認められた使用者等が、さらに回復措置まで命ぜられる可能性があるということは、使用者等にとっては過度な負担となるおそれがあるというふうに考えております。現行カルタヘナ法でも、こうした考え方に基づきまして、回収命令の対象につきましては違法な使用者等に限定しているところでございます。

 こうしたことから、回復措置命令の対象につきましては、違法に遺伝子組み換え生物の使用等を行った者に限ることとしております。

 なお、補足議定書上、回復措置を命ずる対象者につきましては、締約国に裁量が認められているところでございます。

斉藤(鉄)委員 わかりました。

 ここで、違反をした使用者に対して生物の多様性の回復を図るための必要な措置ということで先ほど御答弁があったわけですが、具体的に、生物の多様性の回復を図るための必要な措置というものはどんなものがあるんでしょうか。これもわかりやすく説明してください。

亀澤政府参考人 回復措置の内容につきましては、生じた影響の内容等に応じて個別具体的に判断されるべきものではありますけれども、例えばということで申し上げますと、保護地域内の生物が減少した場合には、その生育環境あるいは生息環境を整備することとか、あるいは人工増殖をして、その個体をもといたところに再導入するということなどが想定されているところでございます。

斉藤(鉄)委員 例えば人工増殖をして前の間違ったものの影響をなくしていくということですが、数学的に考えてもそれはなかなか、だんだん間違ったものを減らしていくということも、数学的には考えられるけれども、いつまでたってもゼロにはならないような、これは確率の問題ですから、するんですが、具体的にはどうなんでしょうか。

亀澤政府参考人 一旦失われた植生とかあるいは動物を取り戻すには大変長い時間がかかると思いますので、そういうことにならないよう、モニタリングを常に行い、早期にそういう事態を把握し、早期の回復に努められるようにしたいと思います。

斉藤(鉄)委員 例えば、間違ったものが入った、三〇%ぐらい占めてしまった、これをだんだん二〇%、一〇%、最終的にはゼロ%にしなくてはいけない、それが回復の措置だと思いますが、ある意味では、正しいものをどんどんわざと増殖させて、その比率をだんだん下げていく、こういうイメージでいいんでしょうか。

亀澤政府参考人 人工増殖したものをどんどん再導入していくということもありますし、悪い影響を与えているものを回収する、取り除くということもあわせてやっていくことになろうかと思います。

斉藤(鉄)委員 今挙がった生息環境の整備とか人工増殖、再導入といった措置を実施することは、かなり、想像しても難しいなということが言えるかと思いますが、改正法案によって新設するこの措置命令は、遺伝子組み換え生物を使用する方々にとって、適正に使用する人々にとっても過度な負担になる可能性もあるのではないかと思いますが、この点について環境省はどのようにお考えでしょうか。

比嘉大臣政務官 回復措置命令の対象となるのは違法な使用等をした者に限定しており、遺伝子組み換え生物等を適法に使用している者においては回復措置命令の対象とはなりません。

 また、求められる回復措置の内容及び程度は合理的な範囲に限られるべきものと考えており、事業者には過度な負担になるような回復措置を命ずることは、現段階では想定しておりません。

 こうしたことから、今回の改正で新たに設ける回復措置命令は、事業者に過度な負担を負わせるものではないと考えております。

斉藤(鉄)委員 そのための、真面目に正直にやっている人たちがそういうことに陥らないように、また丁寧な説明や行政の指導も必要だと思いますので、その点、ぜひよろしくお願いいたします。

 最後に、大臣にお伺いいたします。

 第三条には、「定めて公表する」、「公表する」という言葉もございます。国民に広く知らせる、知らせて知ってもらうということでございます。今回の法改正は、既存の法令にはない新たな措置命令規定を設けるものでありますので、引き続き、カルタヘナ法に基づいて、遺伝子組み換え生物の使用等の規制による生物多様性の確保を図りつつ、有用な遺伝子組み換え生物の使用を適正に進めていくためには、国民との間で丁寧なコミュニケーションを図っていくことが重要だと思います。理解をしていただくということがございます。

 そこで、最後に、今回の法改正を踏まえ、遺伝子組み換え生物等の使用に関して国民との間でどのようなコミュニケーションを図っていくのか、これが大事だと思いますが、大臣のお考えと決意をお伺いいたします。

山本(公)国務大臣 御指摘のとおり、今回の、遺伝子組み換え生物等の使用等に関しましては、国民との間でしっかりとコミュニケーションを図っていくことが重要であろうと考えております。

 この点、カルタヘナ法に基づく遺伝子組み換え生物等の第一種使用の承認に際しては、内容及び方法に応じてパブリックコメントを行っております。

 また、法の施行状況等についても専用のウエブサイトにおいて公表するなど、情報の共有に努めているところでございます。

 さらに、制度や生物多様性影響評価の実施状況、関心の高い遺伝子組み換え西洋菜種の生育実態調査の結果について、市民団体との意見交換等も御要望に応じて随時行っているところでございます。

 引き続き、こうした取り組みを通じて、国民とのコミュニケーションをしっかりと実施してまいりたいと思います。

斉藤(鉄)委員 その点、しっかりお願いをしたいと思います。

 以上で終わります。

平委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。

 きょうは、法案審議に入る前に、大変恐縮ですけれども、地球環境問題、大変重要なトランプ政権の発表がありましたものですから、一点、それを冒頭、御質問させてください。

 御案内のとおりでございますが、大統領令を先般出しまして、その中身は、まさにオバマ政権が行ってきた温暖化対策を全面的に見直す、こういう話になっているわけであります。

 パリ協定の離脱というような具体的な話までは踏み込んでいなかったので、そこはある意味でいろいろな議論がまだ政権の中であるのかなというふうには思って、私も見ました。

 前にも環境委員会で、これは山本大臣のときかどうかわかりませんけれども、この問題を質問させていただいて、とにかく、アメリカと中国がこれまで入ってこなかったので、大変我が国も苦労をして、何とかこの二カ国を取り込むんだということで全力を尽くしてきたわけで、それがパリ協定でああいった形で二カ国が入ってきたということで、大変、ある意味ではこの地球環境問題にとっては大きな出来事であった、こう思っているわけですが、それがある意味で形骸化していくという大変重要事態だ、こういうふうに思っています。

 地球環境問題に関しては、気候変動問題に関しては、いわゆる懐疑派という人たちも中にはいまして、そして、これは日本の中にももちろんいるわけで、今回のアメリカのこういった決定があると、日本の中でも、もうちょっと様子を見たらいいじゃないの、こういうような話が起こり得る、そんな心配も実はあるわけで、日本における問題もあるし、世界におけるいわゆるパリ協定の形骸化という問題もあるし、そういった意味では、今、本当に大変重要なポイントに来ているのかな、こういうふうに思っています。

 ことしはボンで行われるということのようですけれども、大臣として、この問題をどういうふうに認識して、どのように対応しようとしているのか。

 政権の中でも、聞くところによると、トランプ大統領のお嬢さんのイバンカさんとかその旦那のクシュナーさんあたりは割と推進派だというふうに、ティラーソン国務長官もややそういう嫌いもある、こういう話もあって、そこに希望を見出しながらいるわけですけれども、大臣の冒頭の御所見を聞かせていただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 斉藤先生、小沢先生と、環境大臣経験者二名の連続した質問でございまして、いささか緊張をいたしておりますが、今先生が御指摘のとおり、私も同じような懸念を実は持っております。

 ただ、いろいろな意味において、私は、COP3の後、やはりブッシュ大統領がひっくり返してしまわれた、そのときの経験もございます。しかしながら、アメリカは、やはり何年かたっていって、いわゆる世界の潮流というものを見据えた中で、本流に返ってきたというような経験もございますので、今回の大統領令への署名については、いささかショックは受けましたけれども、いずれまた、アメリカという国は州単位ではかなり進んだ議論もあると聞いておりますし、何よりも、企業が、もう世界の潮流は変わらないということで身構えていらっしゃるということも情報として入ってきておりますので、アメリカ政府としてのこれからの環境政策のありようというのは、もうちょっと時間を置けばある程度見えてくるのかなという気がいたしております。

 そういう意味において、環境省の幹部を年末、年始とアメリカに行かせまして、情報収集に当たらせました。先生がおっしゃったイバンカ御夫妻のお考えも漏れ伝わってきております。いろいろな意味において、私は、希望を捨てないで、この問題、日本政府としてはやっていきたいというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 トランプさんの選挙での公約というのは幾つかあって、例えば移民の入国制限なんという話も今、いわゆる司法の方からストップをかけられていますし、そういった意味で、今大臣がおっしゃったように、アメリカの企業の皆さんたちも、ある意味ではそれを取り込んで結局進めてきていますから、そういった声の中で、この大統領令も撤回みたいな話になることを希望したいと思います。

 ただ、大臣、もう一点、日本国内では迷わず行くんですね。その確認だけさせてください。

山本(公)国務大臣 アメリカがどのような政策をとろうとも、私は日本の政策に影響を与えてはいけないと思っておりますから、日本としては、愚直にこの道をこれからも追求していきたいと思っております。

小沢(鋭)委員 大変心強い御発言をいただきました。ただ、先ほども実は委員の中からありましたけれども、今回の法案に関係して、その親法案の生物多様性条約の話、批准が大変おくれている、こういう話があります。

 これも、ある意味では、政府の中で、先ほどの大臣の答弁、関係省庁との調整があって時間がかかっています、こういう話なんですけれども、反対しているというか、足を引っ張っている省庁があるんですよ、実際問題。

 これは本当に、名古屋で二〇一〇年にCOP10をやって、大変な騒動の中で、最終的に松本大臣がトーンと木づちを打って決めた話でありまして、それが日本でまだ批准できていないというのはゆゆしき事態だと僕は思っているんですね。

 ある意味でいうと、企業収益の一部を途上国の方に回していく、こういうような話に関して、大変、政府の中では危惧を持った声があるというふうにも聞いているんですけれども、本当に、この問題に関してどのように環境省は今対応しているのか、お尋ねしたいと思います。

亀澤政府参考人 名古屋議定書の関係のお尋ねかと思いますが、名古屋議定書の締結に必要な国内担保措置につきましては、遺伝資源の利用にかかわるさまざまな産業や学術研究において国外から遺伝資源を取得する際の手続や利益配分のあり方に深く関係をいたします。そのため、我が国における遺伝資源の利用の実態や他国の締結状況、さらには措置内容を踏まえ、適切な担保措置となるよう、丁寧な調整、検討を必要としてきたところでございます。

 このため、国内関係者の要望を十分に踏まえつつ、環境省が中心となって関係省庁間で検討を進め、国内担保措置案として、遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針の案を取りまとめるに至ったところでございます。これを受けまして、この国会に本議定書、名古屋議定書の締結についてお諮りすることになったところでございます。

小沢(鋭)委員 今国会で批准をするということでよろしいのでしょうか。

亀澤政府参考人 名古屋議定書の締結の承認につきましては、外務省の方から外務委員会の方に提出をされているところでございます。

小沢(鋭)委員 ぜひ大臣におかれましても、これは外務委員会ということですが、背中を押していただきたい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。

 この問題もアメリカは入っていないんですね、先ほどの委員からの話にもありましたけれども。とにかく、今局長からの答弁にもありましたけれども、いわゆる利益の一部をどう配分していくかという話が肝なんですね。そうすると、まさにアメリカ・ファーストというのか、とにかく利益は外へ出さない、こういう話、あるいはまた、日本の経済界の中でも、そんなことまでする必要はない、こういう話、そういった経済第一主義というか、経済を大事にするというのは、僕は経済政策専門だからいいんだけれども、経済のことしか考えられないというか、そういった話があるように思うんです。

 アメリカがそういった、この生物多様性条約に入っていない、当然、だからカルタヘナも入っていない、こういう話になるんですけれども、その理由はまさにそういうことだと推察しますが、いかがですか。

亀澤政府参考人 今御指摘がありましたように、アメリカは、名古屋議定書もそうですけれども、名古屋議定書の親条約である生物多様性条約も締結をしておりません。

 生物多様性条約及びこれに基づいて遺伝資源の利益配分に関する国際ルールを具体化する名古屋議定書をアメリカが締結する見通しは今のところ立っていないというふうに認識をしておりますが、その理由といたしましては、生物多様性条約の中に締約国間のバイオテクノロジーに関する技術移転を促進する趣旨の規定が設けられていることによりまして、アメリカ、自国の関連産業等が影響を受けるのではないか、そういう強い懸念がアメリカに存在していたこと等があるというふうに認識をしております。

小沢(鋭)委員 バイオテクノロジーの技術の問題、こういう話がありました。

 いずれにしても、環境問題に対して、やはり地球環境問題の温暖化の話も、この生物多様性も地球環境問題です、アメリカがなかなか前向きにならないという話に関しては、ぜひ大臣からも総理にもお伝えいただいて、総理とトランプさんの関係は極めて良好だということのようでありますから、特にまたイバンカさんとか、その辺も大変ある意味では重要な役割を持ってくるんだろうと思いますので、日本政府全体がそういった取り組みをしていただけるように、この際、お願いをしておきたいと思います。

 それから、遺伝子組み換えの話に入らせていただきます。

 これは、TPPの特別委員会に私も出ていて、我が党の松浪議員が相当ねちっこく質問をしていたんですが、私は余りこの問題は詳しくないんですけれども、今、国内に輸入が許可されている遺伝子組み換え作物は八種類と聞いていますが、どのような制度で国内での流通が認められているんですか。それは、そもそも論で恐縮ですが、本当に安全だと政府は言い切れるんでしょうか。

北島政府参考人 遺伝子組み換え食品につきましては、食品衛生法に基づき、品目ごとにリスク評価を専門的に行う食品安全委員会による科学的な評価の結果を踏まえまして、厚生労働省において、その安全性を確認した上で当該品目を公表し、食品としての流通を認めております。

 これまでに、こうした手続を経て公表した遺伝子組み換え食品は、八作物、三百十品種でございます。

小沢(鋭)委員 日本で遺伝子組み換え農産物は商業的な栽培は行われていないというふうに聞いていますけれども、なぜですか。

亀澤政府参考人 国内で遺伝子組み換えの作物について商業的な栽培が行われていない理由は定かではありませんが、それぞれの事業者等が遺伝子組み換え作物をめぐる状況等を総合的に判断した結果であるというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 全く定かではない御答弁をいただきましたが、なかなか、それこそ、そういうことしか言えないのかな、こう思いますが、一言で言えば消費者の不安ということなんでしょうね。つくっても、拒否感があってなかなか売れない、こういうふうに恐らく栽培者の人たちが考えている、こういうことなんだろうと思います。

 私は、本当に、さっきも申し上げたように、そんな専門でないので、さらにまた、別に不安をあおり立てるつもりもないんですけれども、いろいろ今回のことで調べてみましたらば、二〇一二年のフランス・カーン大学の研究というのがあって、セラリーニ教授たちの研究、こういうことのようでありますけれども、ちょっと古いんですけれども、二〇一二年。何か映画にもなった、こういうふうに聞いています。

 要は、遺伝子組み換え食品を食べさせたマウスとそうでないマウスを比べたらば、ずっとそればかり食べさせたマウス、トウモロコシのようなんですけれども、五割から八割に腫瘍が発生している、こういうデータが発表されて、大変世界にも衝撃を与えた、こういうことになっているんですが、これに対する評価というのはどうなっているんでしょうか。

川島政府参考人 今先生御指摘の論文は、フランスのカーン大学のセラリーニらが二〇一二年の九月に公表したものでございまして、遺伝子組み換えトウモロコシを食べ続けたラットにがん発生などの毒性が認められたという報告でございます。

 この論文につきまして、食品安全委員会では、試験に用いた動物数が少ないこと、遺伝子組み換えでないトウモロコシを与えた動物が一群しか設定されていないことなど、試験設計に問題があるため、試験に用いた遺伝子組み換えトウモロコシが人の健康に悪影響を及ぼすかどうかを判断するには試験内容が不十分である旨の見解を二〇一二年の十一月に公表しております。また、フランス、ドイツを初めとしました諸外国のリスク評価機関におきましても、同様の見解が公表されております。

 なお、この論文につきましては、科学的根拠に不備があるという理由で、後に取り下げられたというふうに承知をしております。

小沢(鋭)委員 わかりました。

 海外で認可されている組み換え食品で、例えば国内の審査に基づいて承認しなかった事例というのは、これは当然あるんでしょうね。きちっと審査していれば、これはだめよ、これはいいよ、そういう判断があろうかと思うんですが、そういった拒否した事例はありますか。

北島政府参考人 これまでのところ、食品安全委員会によるリスク評価等を踏まえた安全性審査の手続において、安全性が確認されなかった遺伝子組み換え食品はございません。

 これは、遺伝子組み換え食品の安全性評価の方法が国際的にも統一され、公表されており、開発者もその要求事項を十分承知した上で開発を進め、データ取得等を行っているためではないかと考えております。

小沢(鋭)委員 これは本当に、きちっと審査して、これはだめですというような事例があれば、ああ、ちゃんとやってくれているんだなというふうにも思えるんだけれども、そういった承認されなかった事例はありませんと言われると、本当に大丈夫かいなと、逆にそんな感じもしてしまうんですけれども。もうちょっと私も勉強してからまた議論をさせていただきたい、こうは思いますけれども、何か不安が払拭されないという思いであります。

 それから、これは遺伝子組み換え生物による生態系への影響の有無が問題になっているわけですが、それの調査研究というのはどのように進めているんでしょうか。

亀澤政府参考人 カルタヘナ法に基づく生物多様性への影響の審査に当たっては、遺伝子組み換えに関する研究等を行っている専門家による検討会を設置して、評価を行っているところでございます。

 また、環境省では、平成十五年度から、主要な菜種輸入港周辺の主要輸送道路の橋梁やその付近の河川敷等において、輸送中にこぼれ落ちた遺伝子組み換え西洋菜種等の生育状況調査を行っております。調査結果につきましては、専門家の意見も聴取し、生物多様性への影響が生じていないと評価されております。

 今後とも、遺伝子組み換え西洋菜種の生育実態等に係る調査を継続し、生態系への影響について調査をしてまいりたいと思います。

小沢(鋭)委員 この菜種の話は先ほども議論になっていましたけれども、そうやっておっこっちゃってそれがまた生育していくというような話というのは十分あるんですね。先ほど聞いて、改めて認識をしました。

 今回の法案で、第一種使用に関しては環境大臣及び所管大臣の承認を受けるということになっておりますが、環境省と所管官庁の連携、審査体制、これは万全なんでしょうか。

亀澤政府参考人 審査につきましては、例えば農作物につきましては、環境省及び農林水産省が共同で事務局を担う生物多様性影響評価検討会において実施をしております。また、研究開発段階の遺伝子組み換え生物等につきましては、文部科学省と環境省で、今申し上げた形と同様の、共同で事務局を担う検討会で審査を実施しておりまして、このように、関係省庁とそれぞれ連携をして審査を行う体制をしいているところでございます。

小沢(鋭)委員 もう一問あったんですけれども、済みません、時間が来たようでございますので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の一部を改正する法律案、カルタヘナ法の審議、きょうは、非常にそれぞれに関心のポイントが多岐にわたりますけれども、やはり確認をしておきたいということが各委員からそれぞれ出されております。最後の質問で重複するところもあると思いますが、そのことについてはまた丁寧な答弁をお願いしたいと思います。

 二〇〇〇年に採択されたカルタヘナ議定書と、その国内の担保法であるカルタヘナ法は二〇〇四年に施行されましたが、同年、COP/MOP1、第一回締約国会議が開催されています。

 この二〇〇〇年採択のカルタヘナ議定書とカルタヘナ法施行までの経緯、それから、二〇一〇年第五回締約国会合における補足議定書の採択、本邦、日本における二〇一二年署名から今提出、二〇一七年、それまでの経緯について、特にここ七年間に関する議論や経緯についての説明をまず大臣に求めたいと思います。

山本(公)国務大臣 二〇〇〇年に採択されたカルタヘナ議定書の国内担保法であるカルタヘナ法については、二〇〇三年の通常国会に法案を提出し、同年六月に公布、その後、同年十一月にカルタヘナ議定書を締結したことにより、翌二〇〇四年二月に施行されました。

 二〇一〇年に採択された名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結については、二〇一二年の署名以降、カルタヘナ法の改正の要否やその内容について、関係省庁間で慎重に検討を進めてまいりました。また、二〇一五年から、中央環境審議会の専門委員会に御審議をいただきまして、翌二〇一六年に国内措置のあり方について同審議会からいただいた答申を踏まえ、今国会での法案提出に至ったものであります。

玉城委員 さまざまな経緯、それから各省庁間での議論などなど、非常に時間をかけてここまで来たということだと思います。

 このカルタヘナ補足議定書が締約国に求める、国境を越えて移動するLMO、リビング・モディファイド・オーガニズム、遺伝子組み換え技術により改変された生物、このLMOにより、損害、これは生物多様性への著しい悪影響という損害が生ずる場合にとることの対応措置を求められていますが、この著しい悪影響、例えば、補足議定書では、合理的な期間内に自然の回復を通じて是正されることがない変化、それから、生物の多様性の構成要素に悪影響を与える質的または量的な変化、それから、生物の多様性の構成要素が物品及びサービスを提供する能力の低下、人の健康に及ぼす悪影響の程度などを勘案して決定するということになっております。

 この締約国に求めております生物多様性への著しい悪影響が生ずる場合にとることの対応措置について、その対応措置の内容の説明を求めたいと思います。

亀澤政府参考人 補足議定書で求める対応措置といたしましては、生物多様性に対する影響の状況に応じまして、損害を防止し、最小限にし、封じ込め、緩和し、または他の方法で回避すること、さらには、失われた生物の多様性を復元することというふうにされております。

 これを受けて、今回、カルタヘナ法を改正しようとするものですが、具体的な改正内容としては、国境を越えて移動する遺伝子組み換え生物及び国内で作出された遺伝子組み換え生物等につきまして、違法に遺伝子組み換え生物等の使用をした者等に対しまして、遺伝子組み換え生物等の使用等により生ずる影響であって、生物多様性を損なうものまたは損なうおそれの著しいものが生じた場合において、生物多様性に係る損害の回復を図るために必要な措置を新たに命ずることができるようにしようというものでございます。

玉城委員 その生物多様性について、生物多様性の確保を目的とする主な法律というのがありまして、自然環境保全法、自然公園法、種の保存法、そして鳥獣保護管理法などが挙げられています。

 さらに、それぞれの法律で、生物多様性を保全するために地域指定がされております。いわゆる自然環境保全法、自然公園法、鳥獣保護管理法、種の保存法などで地域が限定され、さらに、我が国の種の指定による生物多様性保全というものも、哺乳類から植物まで全二百八種が指定されています。

 この損害を受けた場合の回復を図るために必要な措置が図られる生物多様性における種または地域が極めて限定的であるという点について、限定する理由についての説明を伺いたいと思います。

亀澤政府参考人 補足議定書では、対応措置を講ずべき損害につきまして、生物多様性の保全及び持続可能な利用への悪影響のうち、測定することができるものであって、かつ著しい悪影響であるものと規定をしておりまして、損害の範囲そのものを限定しております。

 また、改正法案におきましては、使用者等に損害の回復措置として一定の負担を負わせることとしておりまして、対応措置を講ずべき損害の範囲は、使用者等にとってある程度予測可能で明確なものとすることが必要かというふうに考えております。

 こうした点を踏まえまして、我が国では、生物多様性の保全の観点等から保護すべき特に重要な種または地域を種の保存法等の各種法令で国が指定した上で、行為規制等を行っており、また、これらにつきましては一定程度の状況把握を国としても行っておりますこと、そういうことを踏まえますと、改正法で追加的に規定する回復措置命令の対象は、そうした種または地域に係るものに限定することが適当かというふうに考えております。

玉城委員 国民的な関心でいいますと、当然、地域や種を限定した方がより厳しい管理ができるということは一定理解できるんですが、しかし、さりとて、外来生物などについて、そこに定着をする、土着をするということに関しては広範なモニタリングも必要だというふうに思われます。

 さて、この改正では、農場での栽培のように環境中への拡散を完全には防止しないで行う使用、第一種使用等と、実験室で拡散を防止しつつ行う使用、第二種使用、及び遺伝子組み換え生物等の使用等を行う者に対する譲渡、提供などについて、違法にこの第一種使用等、第二種使用等、譲渡、提供等がなされた場合は、その行った者に対して損害回復措置の命令をこの改正で環境大臣が発することができるということになっております。そして、従わない者に対しての罰則をあわせて追加するということになっています。

 非常に厳しい罰則が追加されるわけですが、これまでこのような厳しい罰則が適用されたという例があるのでしょうか、御説明をお願いしたいと思います。

亀澤政府参考人 現行のカルタヘナ法におきましては、罰則が適用された事例はありません。ありませんが、例えば、未承認のパパイヤ輸入、販売、栽培の承認をされていない綿種子の混入、あるいは、不活化処理をしていない遺伝子組み換え生物の廃棄、遺伝子組み換えマウスの逸出等、不適切な事例は確認をされております。

 いずれの場合も生物多様性への影響は確認をされておりませんが、所管省庁による行政指導のもと、各事業者、機関において、回収、あるいは遺伝子組み換え生物等の管理体制の見直し、必要な応急の措置等を含む対策が行われたところでございます。

玉城委員 一旦環境が攪乱を受けるということが、いわゆるLMO、国境を越えて移動する遺伝子組み換え技術によって改変された生物などが入り込むと、それを立て直していく、あるいは、そこから一旦、回復措置を図るために全てを取り払い、新たに種の保存を図るためにさまざまな技術をもって回復措置を図るということは、非常に時間や、当然ですけれども、それだけの労力を要するというふうに思うわけですね。

 ですから、このいわゆる遺伝子組み換え生物等の規制については、非常に国民のおぼろげながらも食の安全に対する関心とあわせると、また別の観点から遺伝子組み換え生物等に対しての啓発活動なども行う必要があるのではないかと思います。

 そういう点で、最後に一点、お伺いをしたいと思います。

 二〇一七年三月現在、今回のこの法案の提案時点で、補足議定書の署名国は五十カ国、締約国が三十六カ国となっています。

 少し違う角度から目を向けてみますと、例えば、二〇〇〇年代以降、著しい経済発展を続け、世界人口の四割、国土面積の三割を占めると言われているBRICs、ブラジル、ロシア、インド、中国ですね。経済評論家の中には、それに南アフリカを入れてBRICS、五国と言う方もいるんですが、一般的にはブラジル、ロシア、インド、中国ということで捉えられています。このBRICsの四カ国のうち、補足議定書の署名、批准に及んでいるのはインドのみとなっています。ブラジルもロシアも中国も、署名、批准に参加しておりません。

 そして、これは財務省の貿易統計資料から持ってきた数字なんですが、遺伝子組み換え作物の代表格でもある、代表格と言ってもいいと思いますが、輸入大豆は、アメリカ、ブラジル、カナダ、中国から、約九九%を占める輸入です。さらに、輸入トウモロコシは、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンから、まとめると八九%。輸入小麦は、アメリカ、カナダ、オーストラリアから、九六%となっているわけですね。

 ですから、こういうふうに輸入産物の輸入先を見てみますと、第一位は米国で二三・一%、次に中国一二・一%、オーストラリア六・九、カナダ六・七、ブラジル六・四となっていますが、アメリカも中国もオーストラリアもカナダもブラジルも、やはりこの署名をしておりません、未締約国となっています。

 未締約国との、遺伝子組み換え生物及び作物等について、では、どのような規制の取り決めがなされ、そして損害を受けた場合の対応についてはどのように担保されているか、今回のカルタヘナ法の趣旨に鑑みて答弁をお願いしたいと思います。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 カルタヘナ法では、遺伝子組み換え生物の調達先の国がカルタヘナ議定書の締結国か未締結国かに関係なく、遺伝子組み換え生物を使用する者が事前に承認を得る必要があります。

 そのため、遺伝子組み換え作物生産の主要国がカルタヘナ議定書未締結であっても、カルタヘナ法の運用を通じて我が国の生物多様性の確保はなされているというふうに考えております。

 また、どこの国から調達されたかにかかわらず、我が国では、違法に遺伝子組み換え生物が使用されたことにより生物多様性への損害が生じた場合には、使用者に対しまして、中止、回収、あるいは今回新設を予定している回復措置の命令を課すことになると考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 そのような状況といいますか、きちんと取り組まれているということの啓発については、先ほども申し上げましたとおり、環境省を挙げてしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 質問を終わります。ニフェーデービタン。ありがとうございました。

平委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

平委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.