第14号 令和6年6月7日(金曜日)
令和六年六月七日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 務台 俊介君
理事 畦元 将吾君 理事 伊藤 忠彦君
理事 小倉 將信君 理事 堀内 詔子君
理事 馬場 雄基君 理事 森田 俊和君
理事 奥下 剛光君 理事 鰐淵 洋子君
井上 信治君 井上 貴博君
石原 正敬君 稲田 朋美君
金子 容三君 菅家 一郎君
国定 勇人君 熊田 裕通君
笹川 博義君 西野 太亮君
森 由起子君 柳本 顕君
鷲尾英一郎君 大河原まさこ君
川内 博史君 近藤 昭一君
篠原 孝君 西村智奈美君
野間 健君 松木けんこう君
渡辺 創君 市村浩一郎君
小野 泰輔君 空本 誠喜君
林 佑美君 中川 康洋君
…………………………………
環境大臣 伊藤信太郎君
農林水産副大臣 武村 展英君
経済産業副大臣 岩田 和親君
経済産業大臣政務官 石井 拓君
環境大臣政務官 国定 勇人君
政府参考人
(内閣府食品安全委員会事務局長) 中 裕伸君
政府参考人
(公害等調整委員会事務局長) 小原 邦彦君
政府参考人
(農林水産省大臣官房参事官) 大島 英彦君
政府参考人
(農林水産省農村振興局農村政策部長) 神田 宜宏君
政府参考人
(経済産業省大臣官房福島復興推進政策統括調整官) 川合 現君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 浦田 秀行君
政府参考人
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長) 井上 博雄君
政府参考人
(環境省大臣官房政策立案総括審議官) 大森 恵子君
政府参考人
(環境省大臣官房審議官) 前田 光哉君
政府参考人
(環境省大臣官房環境保健部長) 神ノ田昌博君
政府参考人
(環境省地球環境局長) 秦 康之君
政府参考人
(環境省水・大気環境局長) 土居健太郎君
政府参考人
(環境省自然環境局長) 白石 隆夫君
政府参考人
(環境省環境再生・資源循環局次長) 角倉 一郎君
政府参考人
(環境省総合環境政策統括官) 鑓水 洋君
環境委員会専門員 野崎 政栄君
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委員の異動
六月七日
辞任 補欠選任
石原 正敬君 西野 太亮君
松木けんこう君 渡辺 創君
屋良 朝博君 西村智奈美君
杉本 和巳君 小野 泰輔君
空本 誠喜君 市村浩一郎君
同日
辞任 補欠選任
西野 太亮君 石原 正敬君
西村智奈美君 野間 健君
渡辺 創君 川内 博史君
市村浩一郎君 空本 誠喜君
小野 泰輔君 杉本 和巳君
同日
辞任 補欠選任
川内 博史君 松木けんこう君
野間 健君 屋良 朝博君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
環境の基本施策に関する件(水俣病問題等)
――――◇―――――
○務台委員長 これより会議を開きます。
環境の基本施策に関する件、特に水俣病問題等について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府食品安全委員会事務局長中裕伸君、公害等調整委員会事務局長小原邦彦君、農林水産省大臣官房参事官大島英彦君、農林水産省農村振興局農村政策部長神田宜宏君、経済産業省大臣官房福島復興推進政策統括調整官川合現君、経済産業省大臣官房審議官浦田秀行君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君、環境省大臣官房政策立案総括審議官大森恵子君、環境省大臣官房審議官前田光哉君、環境省大臣官房環境保健部長神ノ田昌博君、環境省地球環境局長秦康之君、環境省水・大気環境局長土居健太郎君、環境省自然環境局長白石隆夫君、環境省環境再生・資源循環局次長角倉一郎君、環境省総合環境政策統括官鑓水洋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○務台委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○務台委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。近藤昭一君。
○近藤(昭)委員 おはようございます。
今日は、水俣病問題に関することでこうして審議の時間が持たれたことを感謝を申し上げたいと思いますし、私も、その中で質問の機会をいただいたことを感謝申し上げたいと思います。
環境に関わる問題というのは非常に様々な課題があると思っていまして、そういう意味で、法案はもちろんのこと、法案は当然でありますけれども、様々な課題について、一般質疑あるいは集中質疑が是非多く開かれればというふうに思っています。
それで、今日は水俣病問題について質問をさせていただきます。
以前の委員会でもお話しさせていただいたことがありますけれども、やはり環境省、そしてその前の環境庁、まさしく環境庁にとって本当に水俣病というのは原点である、こういう認識であると思います。環境省、環境庁自体もそういうことで言っている。そして、政治家としての課題として、環境問題に取り組む私自身にとっても非常に大きな課題であるというふうに思っています。
そして、これは、私も、多くの方が御覧になった、目に触れられたと思いますが、ユージン・スミスさん始め多くの写真家、あるいは多くの報道カメラマンといいましょうか、関係者が捉えた写真にショックというか、衝撃を受けた方は多いと思うんですよ。私自身は、具体的にいつかということはつまびらかに覚えてはいませんけれども、やはり中学生の頃だったと思います、ユージン・スミスさんの写真を見たのは。そして、大きな衝撃を受けたということは先般もお話をしました。
しかし、更に衝撃をというか、ショックを受けるといいましょうか、それは、今もってこれが解決をしていないということであります。私自身は、環境問題にしっかりと取り組みたい、それは一人の政治家としての思いであります。そして、そういう中で、やはり水俣病の問題というのは大きなウェートを占めています。そして、今日もこうして質問をするという機会を得ている、それにある種関わることができることは意義があることだと思っている反面、いまだにこのことが解決をしていないということに対して、非常にじくじたるといいましょうか、悩みを持つわけであります。
私は、民主党政権時代に環境副大臣をさせていただきました。時に、あらゆる課題に環境問題というのは関わっているので、環境のことをまず考えるべきだ、こういうことも訴えさせていただいてきたところなんです。
そして、環境庁、環境省ができたのは、やはり経済至上主義、発展主義、とにかく経済が発展していけばいいんだ、それをまず最優先に考えてきた、そこに大きな反省があったと思うし、なければいけないと思う。ただ、一方で、いまだにそのことが、水俣病に対する反省というか、取組の中にきちっとそうしたことは生かされているのか、その反省がということであります。
私は、今環境問題に取り組んでいるというお話をさせていただきましたけれども、アスベストの問題もそうでありまして、この問題も最高裁まで行きましたけれども、これは超党派で取り組んでいるところでありますが、きちっとした解決がない、特にメーカーの責任だと思っているんですね。
国の責任が問われました。国がきちっとアスベストを、ほかの国では規制をされているにもかかわらず、日本においては十分な早い規制が行われなかった、そのことによってアスベスト問題が大きくなった。
そして、メーカーの責任も問われたけれども、しかしながら、いまだ、いわゆる解決といいましょうか、和解と申しましょうか、それがきちっとできていない。だから、メーカーとしては、患者さん、被害者の人たちに、必要な補償等々があればそれぞれの裁判でというようなことを主張されているわけですよね。
そして、私は、最近のことで申し上げると、また是非環境委員会で議論をしたいと思いますし、議論をする時間をつくるべきだと思いますが、PFOS、PFOAの問題があります。この問題も、早急な規制、早急な対応をしないと、環境被害、健康被害が広まっていく危険性がある、そう思っています。
そういう意味でも、やはり、冒頭に申し上げましたように、環境庁、環境省ができた、そのときの反省、そのときの意識というものが十分に生かされているのか、そう思うわけであります。そういう思いを持って、しかし一方で、だからこそ私は、環境省に頑張っていただきたい、伊藤大臣におかれましては、その最高の責任者としてリーダーシップを発揮していただきたい、そう思うわけであります。
さて、水俣病問題について、そうしたことから、まず、国の責任についてということでお話、そして質問を進めてまいりたいと思います。
改めて、ちょっと振り返るようなことで恐縮でございますが、水俣病は一九五六年、私が五八年の生まれですから、その前に最初の公式発見であります。もう随分たっているわけであります。五六年五月に公式発見されたが、公式確認が五六年だけれども、同年の末には、一九五三年十二月から発生している五十四人の患者と、そのうち十七人が死亡していることが確認されたということであります。
人によっては、いろいろな統計とか資料とか、調査がしっかりされていなくて、資料も残っていなくて、これは、いわゆる水銀を使っていた工場はもっと早くからあったので、もっと早くから大きな被害が出ていたのではないか、こういう指摘をする研究者もいます。そうした五三年、五六年、それから七十年近く経過しているわけでありますが、先ほど申し上げましたように、いまだに解決しているとは思われません。
二〇〇四年十月十五日に言い渡された、いわゆる水俣病関西訴訟の最高裁判決、これは最高裁まで行ったわけであります。最高裁判決によって、国及び熊本県には、水質二法、県漁業調整規則の規制権限を行使せず、昭和三十五年一月以降、水俣病の発生拡大を防止しなかったことにつき、賠償責任があるとされたわけです。国、そして自治体の責任があるとされたわけです。
水俣病は、有機水銀を工場から排出したチッソによって引き起こされたわけでありますが、この最高裁の判決が言うように、水質二法を行使せず、発生拡大を防げなかった国にも大きな責任がある、先ほどから申し上げているところであります。
公害による健康被害の救済は、他の民事紛争と同様に、被害者が民事訴訟等の手段により損害賠償を求めて解決することが基本であるということであります。しかし、裁判による救済は、緊急な治療が必要な被害者にとって相当の時間や費用を要するという問題があるため、一九六九年十二月に、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法が公布されました。法律による認定制度が始まったわけであります。その後、一九七四年、公害健康被害の補償等に関する法律が施行され、現在、同法に基づき、被害者の方々の認定が行われている、こういう状況であります。
同法は、公害原因者に課される賦課金を財源として、行政が健康被害者を認定し、認定患者に対して補償給付をするとともに、その健康の回復、保持、増進を図るための公害保健福祉事業を行うこととしております。したがって、水俣病については、公害原因者であるチッソが認定患者に対する補償給付を行い、政治解決の一時金等を支払ってきた、こういう歴史があります。
環境汚染などに関しては、行為によって発生した費用はその発生原因者が負担すべきであるとする汚染者負担が規範原則であるため、水俣病の歴史を見れば、チッソの意向や支払い能力に応じて被害者の数や補償の金額が決められてきたという指摘もあります。私も、そういう懸念を持ちます。そうしたことが、この問題が最終解決に至っていない、そうした根本にあるのではないかと思っています。
しかしながら、先ほども言及しました二〇〇四年の関西訴訟最高裁判決によって国と県の賠償責任が認められたことを鑑みると、補償を受けるべき患者は存在している、しかし、それがいまだ行われていないということがあるのではないか、そして、そういう中では国が公害原因者に代わって補償を検討すべき、こういうところもあるのではないかと私は思います。
しっかりと、早急に、まだ残っている患者さんたちを救済していかなくてはならない、こう思います。大臣、いかがでありましょう。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
公害健康被害補償法は、民事責任を踏まえた制度として、公害により健康被害を受けた被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的として制定されました。
水俣病に関しては、その症候が非特異的であることから、高度な学識、豊富な経験に基づき総合的に検討することが必要であるとの前提の下、暴露歴及び症候の組合せがある場合は通常水俣病と考えるという、いわゆる昭和五十二年判断条件にのっとって、専門家による認定審査会の意見を聞いて認定が行われてまいりました。
したがって、委員が御懸念を持たれたように、チッソの意向や支払い能力に応じて被害者の数や補償の額を決めているという事実はございません。
チッソ株式会社は、原因者負担の原則を踏まえ、患者への補償金等の支払いを行う。それを前提として、国としては、患者に対する補償金支払いに支障が生じないように配慮する観点から、支援策を講じているところでございます。
○近藤(昭)委員 大臣の答弁は何か、大変恐縮でございますが、これまでどおりであって、私が申し上げたいのは、そうした中で、残念ながら、七十年近くたっていても、解決というか、患者さん、そして被害者といった、ここで言葉も違う言葉が使われていて、ある種の分断が起きていると思うんです、そうしたことに対して、いまだに解決に至っていないことに対して、どういうふうに十分に大臣が思われているのかなと私は思ってしまうわけであります。
それで、ちょっと先にというか、確認をしていきたいことがあるんです。先ほど申し上げた最高裁判決、時に、どうしてもといいましょうか、それぞれの立場があると言うとちょっと語弊があるのかもしれませんが、それぞれ主張があるというようなところがあるので司法の場に持ち込まれるということがあるわけであります。そして、司法の場に持ち込まれても、地裁、高裁、やはり最高裁まで行かなければある種の結論が出ない。最高裁で結論が出ても、なかなか解決に至らないところがあるわけでありますが、ただ、仕組みの中で最高裁まで行くという、最高裁まで行ってということであります。
ですから、先ほど言及しましたように、二〇〇四年に最高裁の判決が出た、これは非常に大きい、そして、そこで国と自治体の責任も問われたということが大きい問題だと思っているんですが、さて、そのときに、二〇〇四年の関西訴訟最高裁判決です、国の責任が認められた。しかし、その後、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法、これが成立するのはその五年後であるわけです。五年間かかったというわけであります。
これはどうして、最高裁判決で国の責任が問われて、解決、それに当たる法律ができるのに五年かかったのか。そして、その間は、どのような被害者の皆さんに対する救済の措置を政府として取っていたのか、教えていただければと思います。
○前田政府参考人 お答えいたします。
二〇〇四年、平成十六年の関西訴訟最高裁判決を踏まえ、二〇〇五年、平成十七年に環境省におきましては、「今後の水俣病対策について」を発表し、総合対策医療事業の拡充、再開や保健福祉施策の充実などの新たな地域的取組を進めることとしたところでございます。
一方で、その後の公害健康被害補償法の認定申請者の増加や各種の国家賠償等請求訴訟の提起の状況も踏まえ、新たな救済策の具体化に向けた検討が進められ、二〇〇九年、平成二十一年に、自由民主党、公明党、民主党の合意により水俣病被害者特措法が成立したと承知をしてございます。
答弁は以上です。
○近藤(昭)委員 もう少し具体的に、どのような被害者救済の措置をこの五年間の間は取っていたか、つまり、最高裁を受けて、一つ課題がある、残っているという認識の下に、今御指摘のあった、政党間で法案を提出していったということでありますが、この間も、被害者の皆さんたちの窮状というか、厳しい生活、治療生活、療養生活があるわけであります。この間の救済の措置はどういうものだったか、ちょっともう少し具体的にお答えいただけるでしょうか。
○前田政府参考人 お答えいたします。
二〇〇四年から二〇〇九年までの救済措置ということでございますが、医療施策の一層の充実ですとか水俣病発生地域の再生、融和の促進ということを行っていくということを中心といたしました「今後の水俣病対策について」を発表したところでございまして、まず、総合対策医療事業の拡充、再開というところでございますが、保健手帳ということで、医療費の自己負担分を全額給付する、そういった給付内容を拡充した保健手帳の交付申請の受付を平成十七年に再開をしたというところでございます。
答弁は以上です。
○近藤(昭)委員 ありがとうございます。
そういう中で、その五年間には、健康手帳ですか、交付を行ってきたということであるわけでありますが、そういう法律ができるまでの間、そして法律ができてから措置をしてきた、しかし、そういう中でも、残念ながら、まだ裁判も続いているというところであります。
この間、私もできる限り、被害者、そして患者の皆さんのお話を聞かせていただいたり、あるいは、書かれているレポートなどを読んだりするわけでありますが、さて、二〇一二年に特措法の申請が締め切られているわけであります。法律の中では、最終解決をということでこの法案が作られて、そして、それに向けての申請は期限を区切ったわけであります。しかし、救済を求める声はなくなっていない。既に二千人を超える方が裁判で救済を求めている、二千人を超えているわけであります。
二〇一二年の申請締切り時点で、特措法を知らずに申請できなかった人はどれだけいると把握しているのか。聞き及ぶところによれば、環境省としてはでき得る限りというか、かなりというか、当時、私も民主党政権のときには、先ほど申し上げましたように、環境副大臣として仕事をさせていただいておりましたので環境省とも話をしましたけれども、周知に努めている、大きな課題であるので、全ての人がほぼ知っているというようなことであったんですが、その後も、これは大臣も御存じだと思いますけれども、知っていても申請できなかった。
つまり、差別を受ける、あるいは、もしかしたら、これはどう表現したらいいか分からないんですが、まだ自覚をするような症状がなかった、しかし、年齢とともに出てくるとか、そういうことがあると思うんですが、こうした、特措法を知らずに申請できなかった人がいるというふうに聞いていますし、直接そういう話を聞いています。
こうしたことは、そういう状況といいましょうか、そこに対してどのような認識というか把握をしておられるのか、聞かせていただきたいと思います。
○前田政府参考人 お答えいたします。
水俣病被害者特措法は、救済措置の開始後三年以内を目途に対象者を確定し、速やかに支給を行うと規定してございます。
これを踏まえまして、当時、申請期限を設けた上で、期限内に申請していただけるよう、周知、広報の徹底も図ったと承知をしてございます。
二〇一二年の申請期限時点で水俣病被害者特措法のことを知らずに申請できなかった方がどのくらいいたかにつきましては、承知をしてございません。
答弁は以上です。
○近藤(昭)委員 政府として統計を取るような対象というか項目ではない、認識ではないということかもしれませんけれども、やはり、今もなお続いているという中では、締め切ったということでありますから、この時代にということを私も思わないでもありません。それでも、実際お話を聞いて、それが複数おられるという状況を見ると、やはり知らない方がいらっしゃったのかもしれない、いらっしゃるのではないかと思うわけです。
そういう意味では、そうしたものが把握できるような、つまり、答えられるときには一定程度正確にというのがつくので、余り曖昧なお答えはしにくいんだとは思いますけれども、実相として今もなぜ、そして、さっきも申し上げましたように、二千人を超える方が裁判で救済を求めていることを考えると、やはり何らか環境省としては、終わったとしている立場でありますからなかなか難しいのかもしれません、しかし、私は、冒頭から申し上げたように、環境庁、環境省の原点であるわけで、それがいまだこういう状況が続いていることに対して、やはり大きな懸念があるんですね。
それでは、大臣に質問させていただきたいと思います。
先ほど来から申し上げています、特措法を作った、入念にというか、かなり丁寧に環境省が取り組んだということは、私も承知をしているところであります。そして、そういう中で、これはちょっと冒頭申し上げましたように、原因者であるチッソのことも考えるとというか、いわゆる補償の部分とか財源とかも考えると、やはり、あれはある種、和解というスキームでありますから、チッソも加わって、ここで最終解決しよう、よく考えれば、ここで最終解決するんだ、だからきちっとやるんだ、その代わり、申請する人もきちっと知って申請をしてくれということであったと思うんです。そこで一つの区切りをつけようと思ったんだと思いますが、ただ、残念ながら、私はそうなっていないという認識なんですね。
特措法によって最終解決を目指したわけでありますが、今も裁判が続いている、先ほど申し上げたような状況であります。このことに対して、なぜ今もそうした裁判が続いているのかということに対して、大臣の御認識というのはいかがでありましょうか。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
訴訟を提起される方々の理由は様々だと思います。そのため、これまで訴訟が続いている要因を一概にお答えすることは困難だと思います。
○近藤(昭)委員 この問題は、残念ながら長く続いているということの中で、先般のというか、いろいろなところでも指摘されているところであります。当初、食品衛生法を使ってもっと早急に対処すべきではなかったか、しかし、そこで一定の報告が出ていたのに、その委員会が解散させられたとか、いろいろなことがあったと思います。いろいろなことというか、様々あった。そういう中で複雑になっている部分もあると思いますよ。
もっと早くやれば、もちろん、当時の政治状況というか法律の状況とか、そういう違う要素もあるとは思うんですが、でも、今思うと、もっと早くこの法律とかをやればという声は当然ありますし、そして、そういう中で歴史を重ねてきて、よく言えば、そこに対して対症療法的に取り組んできたところもあって、そういうものが複雑な要素を持っていて、大臣としてもなかなか答弁しにくいのかもしれません。
あるいは、先ほど大臣が答弁されましたけれども、そういう公健法において認定基準を持った、認定基準に合致するかどうかでやってきたんだと。にもかかわらず、裁判が起こっている。だから、そこは、ある種、認定基準を設けて、それに当てはまるか、当てはまらないかというのが一つのポイントだというようなことをおっしゃったかと思います。もちろん、それはポイントなんです。
ただ、一方で、そうすると、認定基準に合う、合わない、どうしてもお金の給付とかに関わるわけですから、ここでは、こういう基準を満たせばまさしく患者さんだと。ただ、患者さんと認定するのも難しいというのは大臣も御認識だと思うんですね。だからこそ、政治的な解決もあったと思います。だから、認定基準を設ける、あるいは認定基準を、ある種、政治解決だから緩めるというような、幅広くというようなところもあったと思うんです。でも、私は、そうした緩める、緩めないというここの線引きというものが本当にまさしく難しい、そして、それが分断をしてきた歴史もあると思うんですね。
今、大臣、非常にお答えにくいところであったと思います。お答えにくいというのは、簡単に答えられるようなことではないと。ちょっと時間も限られてきますので、もう一度、また後で質問させていただくかもしれませんが、次の質問に行かせていただきたいと思います。
認定患者、いわゆる認定ですね、補償ランクの変更を求めている方がいらっしゃいます。Aランク、Bランク、Cランク、なかなか認められていないという声を聞きます。例えば、Bランクであった人が、症状が厳しくなってきた、やはり今の生活、そして将来に対する不安を持つ、だから、このランクを変更してほしい、変更してもらわなくてはならない、こういう声を聞きますが、公害等調整委員会に補償ランクの変更の申請を求めてもなかなか認められないというような現実があるそうであります。
さて、補償ランクの変更の申請数と認められた数について確認をしたいと思います。
○小原政府参考人 お答えします。
公害等調整委員会では、水俣病の患者グループとチッソ株式会社との間の補償協定に基づき、補償ランクの判定を当委員会に求めることとした患者の申請について調停を行っています。具体的な数については、昭和四十八年に最初の調停が成立して以降、令和五年度末までに千四百六十七名の患者について調停が成立をしています。
補償ランクの変更については、令和五年度末までに五百七十四件の変更申請を受け付け、このうち、ランクが変更された数は九十一件となっています。
○近藤(昭)委員 ありがとうございます。
変更を求められた方が五百七十四名、そこで認められた方が九十一名、これを、先ほど大臣もおっしゃったように、基準があるんだ、基準を設けてA、B、Cをやった、だからそれぞれの基準がある、だから基準を変えるにはまたその基準に基づくということでありますので、五百七十四人のうちの九十一人が多いのか少ないのか、これでは分かりませんし、そういう判断をすべきではないかもしれません。
ただ、今回も、大臣も現地に行かれて、意見交換というか話を聞くという時間が設けられた。そういう中から、やはり患者さん、被害者の皆さんが、私なんかが聞く声は、これがなかなか認められていない、不合理と言ったら失礼かもしれないですね、実態に合っていないという声もよく聞くんですね。ここはしっかりと、公害等調整委員会という独立した機関でありますが、対応していただかなければならないと思います。
さて、次に参りたいと思います。
残念ながら発生の拡大がなかなか止められなかった、こういうことを先ほども申し上げました。いわゆる当初の食品衛生法の問題であります。ごくごく簡単にというか、質問したいと思います。
この食品衛生法の問題でありますけれども、早くから、地元紙、熊本日日新聞等が、猫、てんかんで全滅、猫がてんかんで全滅してしまっている、ネズミの激増に悲鳴、ネズミが激増してしまっていると地元の住民の人たちの声があって、それを新聞が紹介しています。
その後、関連報道はないわけでありますが、一九五六年五月一日に、チッソ附属病院の細川院長でありますが、小児科の野田医師を水俣保健所へ派遣し、原因不明の神経疾患児続発を報告した。これが水俣病発生の公式確認となったわけでありますが、そして原因究明が行われるようになった。
一九五九年一月、厚生省食品衛生調査会の中に、熊本大学医学部研究班、国立公衆衛生院、国立衛生試験所などを中心とした水俣食中毒特別部会が発足をした。代表には、鰐淵健之熊本大学学長が就かれたわけであります。そして、同年十一月十二日に開催された食品衛生調査会合同委員会は、水俣病の主因を成すものはある種の有機水銀と答申をしたわけであります。五九年であります。発生源については触れられませんでした。
しかし、十一月十二日、そして十三日でありますが、今後の原因究明は厚生省だけでは困難だという理由で、窓口を経済企画庁に移します。経済企画庁に移し、関係各省庁の多角的研究をすることとして、水俣食中毒特別部会は突然解散をした。この解散については、この部会の代表である、先ほど紹介しました、鰐淵健之熊本大学学長にさえ事前に知らされていなかったと聞いております。
当時の渡辺良夫厚生大臣は十三日の閣議に食品衛生調査会答申を報告したが、池田勇人通産大臣は有機水銀が工場から流出したとの結論は早計だと反論したため、閣議の了解とはならなかった、こういうふうな報告がされています。
このような国の対応が、まさに水俣病の発生拡大を止められなかったと私は思いますが、大臣の認識はいかがでありましょうか。先ほど申し上げました、いわゆる経済成長を、経済を優先をして、環境問題、現場で起こった環境汚染による食品の問題についてきちっと対応していなかったのではないか、それが発生を大きくしたのではないかと思いますが、いかがでありましょう。
○前田政府参考人 お答えいたします。
御指摘のような出来事があったことは承知をしてございます。
そうした当時の様々な経緯も踏まえ、二〇〇四年、平成十六年の関西訴訟最高裁判決におきましては、一九六〇年、昭和三十五年一月以降、国には、いわゆる水質二法に基づいて対策を講じる義務があったにもかかわらず、それを怠った責任があると判示されたものと承知をしてございます。
答弁は以上です。
○近藤(昭)委員 また最後に大臣にも質問したい、考えもお聞きしたいと思いますが、その発生拡大が原因にあった、そして、裁判でも、そういう水質二法によってきちっと対応しなかった、だからこそ、国、自治体の責任を問うたところです。
そして、残念ながら、私が申し上げたいのは、そうしたことが今も続いているところがあるのではないか。これまでもアスベストの問題があったし、今懸念しているのはPFOS、PFOAの問題であります。経済を第一にしているところがあるのではないか、今もってであります。
さて、そういう中で、私は残念だと思いますが、水俣病の研究についてであります。最近は、水俣病そのものを研究する論文等の発表が減っていると思います。その背景に何があると認識しておられるのか、大臣、いかがでありましょうか。
○前田政府参考人 お答えいたします。
水俣病そのものの研究の範囲につきましては一概に言えないところはございますが、例えば、世界の主要医学系雑誌等に掲載されました文献をカバーする検索エンジン、PubMedで水俣ディジーズに関連する論文の数を十年単位で調べますと、一九五〇年代には百八十本以上の論文が発行されておりますが、その後、減少傾向となり、一九八〇年代には二十本程度まで減少しております。その後、増加に転じまして、二〇〇〇年代には二百五十本以上、二〇一〇年代には百八十本となってございます。
一方で、水俣病患者の方の高齢化による合併症の増加など、水俣病の評価が困難になってきているという事実もあると認識をしてございます。
答弁は以上です。
○近藤(昭)委員 時間もないのであれですけれども、現状として確かに減っているわけでありまして、でも、今なお多くの方は現在進行形であります。そういう意味では、治療法等々を含めて、あるいは、今も解決に至っていないということで、裁判が起こっているという意味でありますが、私は、ある種、国もバックアップしてそうした研究を進めてもらいたい、こんなふうに思います。
さて、次に行きたいと思います。医療の支援について、ちょっとお聞きしたいと思います。
特措法でも救済されていない方々、あるいは、先ほども申し上げましたように、今まではランクがあって、その中でランクの変更を求めている方、いずれにいたしましても、被害者そして患者の皆さんたちが、特に特措法でも救済されていない方たちが痛切に求めている要望の一つに医療支援があると思うんですね。医療支援であります。
公害原因者であるチッソが補償給付を拡大することが難しい、企業からすると、これは裁判でやってくれということであります。和解等の形になると、話合いがなければならない、なかなか進んでいない。
そういう中では、一定の地理的範囲を決めざるを得ないかもしれませんが、感覚障害と暴露がはっきりする方については、全ての方を対象に何らかの医療支援を国が、最高裁でも問われたわけでありますから、支援をするということを検討できないでしょうか。大臣、お答えいただければと思います。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
現在なお認定申請や訴訟を行う方がいらっしゃるということは、大変重く受け止めております。
一方で、水俣病問題については、公害健康被害補償法に基づいて三千人が認定を受けて補償を受けられるとともに、これまで平成七年と平成二十一年の二度にわたる政治救済により、合わせて五万人以上が救済されてまいりました。
この補償、救済の中で、公害健康被害補償法に基づく水俣病患者の皆様については、慰謝料の支払いに併せて医療費等の支給が行われ、また、政治救済対象者については一時金の支払いと併せて医療費等に対する支援が行われてきました。
水俣病対策については、今後、熊本、新潟で意見交換を進めるところでございまして、まずお話をお聞きし、歴史と経緯を十分に踏まえつつ、真摯に検討してまいりたいと思います。
繰り返しになりますけれども、関係の皆様にできるだけ寄り添って対応できるように、現状を分析しつつ、現行法の丁寧な運用や医療、福祉の充実、地域の再生、融和、振興などの取組をしっかり進め、水俣病対策に全力を尽くしてまいりたいと思います。
○近藤(昭)委員 大臣、最後にもう一度お聞きしたいと思います。
今お答えいただきましたけれども、この間も裁判は続いていて、全面解決に至っていないということであります。そして、医療支援、つまり訴えていらっしゃる方は病状というか被害を訴えていらっしゃる。そういう中で、疫学的な調査をしっかりちゃんとやってくれ、これは第二回目の政治解決の中でも求められているところであります。そういう意味で、やはり疫学的調査をしっかりとする、そういう中で、本当に窮状を訴えていらっしゃる方にはきちっとした医療支援をしていく。
そして、大臣、やはり構造的な問題が今もあると私は思っているんです。つまり、経済成長、経済を優先をしているところがある。だから、きちっと規制できない。そして、原因者である企業の態度は私は問題だと思っているんです。それも今も続いていると思うんです。そして、それは、今回のこの問題の原因者だけではなくて、その後も、先ほど申し上げましたアスベストでも、いわゆるメーカーはいまだにきちっとした和解というか救済策に応じていないんですね、裁判でやれと言っているんです。
こうしたことに対する構造的な、私は冒頭申し上げました、やはり環境省は頑張ってほしい。命と健康を守ること、環境を守ることが環境省の役割であります。どうぞ、もう一度、最後に、時間が来ておりますので簡単で結構でございますので、大臣の決意をいただきたいと思います。
○伊藤国務大臣 健康調査については、水俣病被害者特別措置法第三十七条三項で、そのための手法の開発を図るものと規定していることから、環境省では、脳磁計やMRIによる手法の開発を進め、昨年度、調査の在り方を御検討いただく研究班を立ち上げたところでございます。
こうした専門家による議論も十分に踏まえながら、健康調査の実施に向けて、できるだけ早く検討を進めてまいりたいと思います。
また一方で、患者の皆様のニーズ等を踏まえて地域の医療、福祉の充実等に取り組んでいくことは重要であるというふうに認識しておりまして、環境省では、患者の皆様の生活支援、患者の皆様の療養施設等の整備、介護予防事業の実施などに努めてきたところでございます。
初期対応が遅れたということがこれだけ水俣病の被害が広がったことの一つの要因でもありますので、それを深く反省して、このような悲惨な公害を決して繰り返してはならない、その覚悟で、水俣病の問題について前進すべく全力を傾けてまいりたいと思います。
○近藤(昭)委員 どうもありがとうございました。
○務台委員長 次に、西村智奈美君。
○西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。
新潟県から日本海に流れ注いでおります阿賀野川は、栃木県、福島県を源流として、水量が大変豊富な川です。その流域は、春は新緑、秋は紅葉、そして冬は雪景色と、四季折々の景色が本当に美しいところなんです。
その阿賀野川流域で、昭和電工鹿瀬工場は、アセトアルデヒドを一九三六年から生産を開始していたと言われておりますけれども、一九五九年頃から生産量を急激に増加させており、製造工程内で副生されたメチル水銀は、処理されないまま阿賀野川に垂れ流しとなっていました。新潟水俣病の公式確認は一九六五年、同じくアセトアルデヒド生産のために副生したメチル水銀をチッソが水俣湾に垂れ流しにしてきて発生した水俣病の公式確認から九年後ということであります。
当時のことを思い、それからの時間の流れ、またその中で苦しんできた被害者の皆さんのことを思いますと、私も憤りでいっぱいですし、胸の中が、何とも言えない、本当にここで何とかしなければいけないという思いでいっぱいであります。
そんな中で、今年、水俣市で開催された関係者団体の皆さんとの意見交換会で、あろうことか、環境省が三分でマイクを切るという暴挙に出ました。あってはならないことでありまして、これは、環境省が水俣病と向き合う根本的なその姿勢が問われた、そういった事件だったというふうに私は思っております。
それで、私は、まずこの件から伺いたい。
実は、マイクを切られたのは、二回だったのではなくて三回だったのではないかということです。環境省は、マイクを切ったのは、団体三番目の水俣病被害市民の会と、それから五番目の水俣病患者連合の二回であったというふうにおっしゃっておりますけれども、本当は、水俣病不知火患者会の岩崎さんを含めて三回だったのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○伊藤国務大臣 五月一日の水俣病関係団体との懇談会において、御発言の途中でマイクの音量を切るという不適切な運営が行われたことについては、大変遺憾であり、大変申し訳ない思いでございます。
八団体との意見交換を行う中で、そのうちお二人について、司会からお話をまとめてくださいと声がけをした後、話される間にマイクオフをしてしまったことを事務方から報告を受けております。
今回の反省の上に立って、今後、環境省として被害者の皆さんに寄り添って対話をするように取り組んでまいります。
○西村(智)委員 大臣、私は事前に大臣のところに当日の動画をお送りして、見ていただきました。同じ動画は、私たち立憲民主党が国対ヒアリングという場でみんなで見たんです。テレビにつなぎまして、マスコミの皆さんも入っておられて、そして、議員があのとき十人ぐらいはいたと思いますけれども、みんなで見たときに、やはり途中で切られているねと思ったんですよ。
大臣も、私は事前にお送りして、見ていただきました。実は、岩崎さんは、この件についてはもういい、聞かなくてもというふうにおっしゃっておられましたけれども、それでは私の気持ちが済まないので、あえて聞かせていただいているんですけれども、大臣は、音がやはり途中で切られているねというふうにお思いにはなりませんでしたか。
○伊藤国務大臣 担当していた職員に何度も確認しましたが、マイクを切ったのは二回というのが環境省が調べた結果でございます。
動画は、お送りいただく前にも私も拝見しておりますけれども、何度も見ましたけれども、岩崎会長の御発言の際に職員がマイクを切ったという確証は私は得られませんでした。何かマイクを動かしていらっしゃいましたよね、岩崎さんの声が大きいということもありますけれども。私が報告を受けているのは二人でございます。
いずれにいたしましても、懇談の際に、お話の途中でマイクオフをしたことについては、大変不適切で、申し訳ないことと考えております。
○西村(智)委員 そういうことを答弁されているから、やはり環境省が本当に水俣病と向き合っていないというふうに思われるんじゃないですか。
繰り返し言います。みんなで見ました。みんなで見たときに、やはり途中で音が切れていました。岩崎さんは確かにお声が大きいので。途中で、もうそろそろまとめてくださいと声をかけられているんですよ、司会の方から。だけれども、ちょっと待ってくれという形で、こうやって左手を動かして、その後、しゃべり続けるんですけれども、そのときに、もうマイクが、実は音がなくなっていたんです。音がなくなっていたので、岩崎さんは諦めて、マイクを置いて、そしてしゃべられたんですよ。
大臣、本当にこれはマイクが切られている、音がなくなっているというふうにはお思いになりませんでしたか。ちゃんとイヤホンをつけて聞いていただきましたか。マイクを切った、その操作していた方が二回だと言うのかもしれませんけれども、大臣としては、やはり音が絞られているね、切られているね、こういうふうにはお思いになりませんでしたか。是非それを認めていただきたいんですけれども。
○伊藤国務大臣 何度も拝見しましたけれども、マイクが切られたかどうかというのは、イヤホンというよりは、スピーカーで大きく流しましたけれども、私としては確証が得られませんでした。
○西村(智)委員 スピーカーでは分かりにくいんですよ。私もスピーカーで聞きましたけれども、それだと分かりませんでした。ですから、あえてイヤホンをつけて聞いてくださいというふうにお願いをしているにもかかわらず、それをやっていなかったということですか。本当にこれは真相を明らかにしようということすらも環境省は姿勢として持っていない、こんなことだから、こんな事件がやはり起きちゃうんですよ。徹底的に私は改めてもらいたいというふうに思います。
これ以上やっても先に進まないと思いますので、大臣、もう一回イヤホンをつけて聞いてください、本当に。確認していただきたい、後で教えてください。
それで、こういった形で、三分ずつの会というのは、やはりやり方として形骸化しているというように言われても仕方がないというふうに思うんです。これは在り方を見直すべきだというふうに思いますけれども、今、環境省ではどういうふうに取り組んでいるんでしょうか。
○伊藤国務大臣 毎年五月一日、水俣病慰霊式に環境大臣が水俣を訪問する際に、水俣病関係団体の懇談を行っております。これは、関係団体の皆様や患者、被害者の皆様の御意見、御要望を伺うための貴重な機会だというふうに考えてございます。
今回の一件は、この懇談会に臨む国の姿勢が問われる事態であります。発言される方に敬意を持ちつつ、その発言に真摯に耳を傾けるという意識が不足し、スケジュール進行を優先させたことは、厳しく反省しなければならないと考えております。
水俣での再懇談は、十分な時間を確保し、じっくり皆様からお話を伺い、充実した意見交換ができるように調整してまいりたいと考えております。
○西村(智)委員 書いてあるものを読んでいただくだけでは気持ちが全くこもっていないですね。
委員長、ちょっとお願いします。
マイク切りは三回だったんだと私は思っています。大臣は、今、答弁の中で、スピーカーからは分かりにくかったというふうにおっしゃいました。私も、確かにスピーカーから聞くと分からないんです。でも、イヤホンをつけて聞いてくださいというふうに私はお願いしました。是非この件は理事会で御協議いただいて、委員会に御回答いただけないでしょうか。
○務台委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。
○西村(智)委員 それで、タスクフォースというのが設置をされたということなんですけれども、大臣もこのことについて度々その目的を聞かれて、いろいろなことをおっしゃっているんですよね。一つには、水俣で私自身が伺った御意見、御要望を踏まえて、環境省全体でこの水俣の問題に取り組んでいく趣旨で立ち上げましたというふうにおっしゃっていたり、あるいは、問題の解決に向けて、有意義な懇談になるように設置しているというふうにおっしゃっていたり、あと、環境省の答弁ですけれども、体制の強化を行い、職員の頻繁な現地出張や懇談内容の充実に取り組むというふうに言っておられるんです。
これは、やはり何回聞いても、目的が何なのか、よく分からないんですね、タスクフォースの目的というのが。しかも、タスクフォースというのは、よくビジネス界などで使われる用語ではありますけれども、何かというと、組織の中での緊急的な課題に対応するために一時的、臨時的に構成する組織だ、組織の中に。一時的、臨時的に構成されるチームがタスクフォースだというのが一般的な捉えられ方なんですよ。
何かが達成されたら、タスクフォースは解散するということなんでしょうか。何が達成されたら、タスクフォースは解散するんでしょうか。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
五月一日の水俣病関係団体との懇談において、発言の途中でマイクの音量を切るという不適切な運営が行われました。このため、私自身が水俣へ出向き、謝罪するとともに、御意見、御要望を伺いました。この中で、改めて懇談の場をつくってほしいという御要望をいただき、そうした場を設けることにいたしました。
水俣病タスクフォースは、省内横断的に強化した体制の下、五月一日の懇談及び八日の面会で伺った御意見、御要望について誠実かつ真摯に検討しつつ、改めて懇談の場を開催し、損なわれた関係団体の皆様や現地との関係性の修復に取り組むことを目的としております。
○西村(智)委員 答えていませんが、何が達成できたら、タスクフォースを解散するんですか。タスクフォースは、一時的、臨時的な組織という位置づけになっています、そういう意味合いになっています。何ができたら、解散するんですか。
○伊藤国務大臣 信頼関係を回復できる懇談会を設置することがタスクでございます。
○西村(智)委員 ということは、懇談会を開催したら、タスクフォースは解散するということですね。
これは大変なミスリードだと思いますよ。被害者、団体の皆さん、原告の皆さんもそうですけれども、このタスクフォースがつくられたということは、本来であれば、今、環境省が動くべきことは、懇談会をきちんとやり遂げるということだけではなくて、その先にある本当の解決、救済、これをやるということを皆さんは求めておられるんですよ。それを何かタスクフォースは懇談会ができましたから終わりですということになると、これはやはり駄目ですね。
大臣、今まさに大臣のリーダーシップが問われているときだというふうに私は思っています。大臣もこれまでいろいろ答弁されて、今日、議事録の抜粋を持ってまいりましたけれども、我が党の川田龍平議員や渡辺創委員の質問に対して、最終解決を目指して全力で進めていきたい、最終解決に向けて全力で今回の懇談もします、全面解決に向けてなるたけ早い時間にそれを実行していくために、私も全力を挙げてまいりたいというふうにおっしゃっているんですよ。この言葉に本当に当事者の皆さんは、私も含めてですけれども、期待しているんです。
総理のリーダーシップも、それは当然必要ですよ。私は、環境省五十年史というのを今回取り寄せて読んでみたんですけれども、これまで水俣病の節目節目は、総理それから環境長官あるいは環境大臣、このリーダーシップで動いてきているんですよ。大臣が今やるべきことは、タスクフォースをつくって懇談会をうまくやり切るというだけではありません。そのために恒久的な何か取組をやるということ、そして全面解決をしていくんだということ、そのことを省内、後ろの人はいいです、やめてください、環境省に対して、大臣自身が、恒久的な取組をすることを明確に指示していただく、それが必要だと思うんですけれども、大臣、やる気はありますか。
○伊藤国務大臣 まず、タスクフォースの目的ですけれども、一回の懇談で終わるものではございません。政務三役を始め環境省の職員が、頻度多く懇談また意見交換をしていくものでございます。
そして、タスクフォースは、解散の期限はありません、期限は決めておりません。そして、水俣問題に関しては、タスクフォースだけで取り組むものではありません。やはり環境省を挙げてこの水俣問題に対して真摯に全力を挙げて取り組むということでございます。
そういう意味で、私も、どれほどあるか分かりませんけれども、リーダーシップを発揮して、環境省がこの問題解決のために前進できるように全力を挙げてまいりたい、そのように考えております。
○西村(智)委員 では、そのことをもう一回改めて省内に指示していただけますか。
私は、やはりタスクフォースというのは心配なんですよ。これは、最後は骨抜きになるんじゃないかというふうに思っているんですよ。元々が一時的な組織ですからね、タスクフォースというのは。だから、是非そこは大臣からもう一回省内に指示していただきたい。
しかも、省を挙げて取り組むためにタスクフォースをつくったんでしょう。今までは特定疾病対策室でやっていたわけですよ、水俣病というのは。今回、前田審議官を担当の審議官として任命して、二十九人体制ですか、それでタスクフォースをつくった。それが省内全体で取り組むということなんじゃないですか。
だから、是非もう一回大臣の方から指示をしていただきたい。御答弁をお願いします。
○伊藤国務大臣 御質問でございますけれども、実は、数次にわたり指示はしております。先ほど御答弁を申し上げたように、タスクフォースだけで水俣問題をやるわけではありません。このタスクフォースには、もちろん、政務三役全員、そしてまた次官を始めとする、必ずしも疾病対策室と関係ない部署の方も入っておりますけれども、いずれにいたしましても、タスクフォースは、懇談会を一回設置して終わるという性格のものではなくて、タスクフォースが設置した、私を含む政務三役あるいは環境省の職員の累次の懇談、意見交換によって更に進めるということだろうと思います。
そして、水俣問題については、環境省として全力を挙げて取り組んでいくということでございます。
○西村(智)委員 何か同じことを何回も繰り返して聞かされているだけのように私にはどうも受け止められてしまうんですね。
ちょっと時間がありませんので、個別的な課題に入っていきたいと思います。
二〇〇九年に特措法が成立いたしました。当時、私も現職の衆議院議員でありました。この特措法が成立してからもう十五年になります。特措法による申請が締め切られてから十二年になります。ところがと言うべきなんでしょう、今もなお被害の声を上げることができない方々が多くいらっしゃるというふうに言われております。
これは、やはり地域に住んでいる方々、そして今原告になって裁判を闘っておられる方々だけではなくて、私の地元である新潟県が「新潟水俣病のあらまし」という小冊子を作っておりますけれども、この中においても、現在も水俣病問題は解決していない、今なお取り組むべき重要な課題ですというふうにも、令和に入ってからも記載をされているわけです。
特措法を成立させた私自身としても、もっとこの間できることがあったのではないかというふうに考えております。そういった思いで、今、私自身は、超党派でつくっております水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会の会長を務めさせていただいておりますけれども、この特措法について幾つか伺いたい。
まず、問題の一つ目は、救済措置の開始後三年以内を目途にということで、申請期間が大変短く区切られてしまったことだというふうに思っています。
実際の申請期間は、二〇一〇年の五月から二〇一二年七月の僅か二年二か月でありました。関係団体はもとより、私の地元新潟市からも、申請期間が短いということで懸念の声が当時からも上がっていたんですけれども、現に、近畿訴訟、先日、大阪地裁の判決が出ましたが、この中で原告になっていた方の中でも、何人かは、特措法を知らなかったという方が結構いらっしゃるんですよね。
大臣自身は、特措法の申請期間が短かったというふうに認識は持っておられるでしょうか。
○伊藤国務大臣 水俣病特措法は、公害健康被害補償法に基づく認定や補償とは別に、早期に幅広い救済を行うことを目的としたものでございます。こうした趣旨を踏まえ、この法律では、早期にあたう限りの救済を果たす見地から、救済措置の開始後三年を目途に対象者を確定し、速やかに支給を行うように努めることを規定してございます。これに基づいて、国として対応を進めてきたところでございます。
環境省としては、期限内に申請いただけるよう、関係自治体等の協力をいただきながら、周知、広報を徹底し、救済に必要な対応に取り組んできたというふうには考えております。
○西村(智)委員 答弁になっていません。私は大臣自身の認識を聞いています。
大臣は、これまでも、不思議なんですけれども、大臣と一政治家としてとか、何か立場を使い分けて答弁しておられることが結構あるんですけれども、この場で私が伺いたいのは、政治家として、今現に特措法ができて、だけれども、まだ救済されていない、申し出ることができなかった人がいらっしゃるということを振り返るときに、この申請期間が私自身はやはり短かったと思います、これは反省も含めて。
やはり短かったという認識に立たないんですか、どうなんですか。
○伊藤国務大臣 法の趣旨に基づき実行したものだと思いますし、私は、当時の判断は尊重したいというふうに考えております。
○西村(智)委員 そういう認識では、最終解決という大臣がおっしゃっているその中身について、私は本当に疑いの目を向けざるを得ません。何が取り残されているのか、何が水俣病が終わっていないという中身に該当するのか、何が残されているのかということについて、私の認識と大臣の認識は違うということなんですかね。私は、そうじゃないというふうに信じたい。信じたいと思っているので、今こうやって質問をさせていただいています。
訴えられなかった人がいるんですよ。声を上げられなかったんです。それは、期間が短かったというだけではなくて、やはりいろいろなことがあるんですけれども、例えば、劇症の方であったり重症の方であったりという人が水俣病だと思っていた、今もそういう方は結構いらっしゃるんですよ、原告の中でも、それから今申請していない人の中でも。中等症とか軽症の人たちは、自分は違うと思っていた、だから、水俣病だと言われてびっくりしたと皆さんおっしゃるんですよ。当たり前だと思っている人は余りいないんですよ。なおかつ、水俣病は水俣の人だけだというふうに思っている方も実はいらっしゃいました。やはり差別や偏見を恐れて申請できなかった方もいらっしゃいます。
そういった患者さんの存在を知った以上は、やはり環境省として、この申請期限のことも含めて、もっとやるべきことがあったのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。大臣、書いてあることは私は分かっているので、大臣の政治家としての答弁をいただきたいんです、どうでしょうか。後ろの方、いいですから。
○伊藤国務大臣 繰り返しになって恐縮ですけれども、水俣病については、公害健康被害補償法の施行、二度にわたる政治解決等、多くの方々が様々な形で努力をされてきました。しかし、委員御指摘のように、現在もなお、水俣病の病状で苦しんでいる方、認定申請や訴訟を行う方、また、水俣病に起因して偏見や差別が起こり、地域の亀裂で苦しんでおられる方、大変重要な、そしてまた重い事実があって、私も胸を締めつけられる思いでございます。
こういう現状を考えますと、水俣病の問題は道半ばであり、まだ終わっていないと考えております。
水俣病については、今後、熊本、新潟で意見交換を進めるところでございます。まずお話をよくお聞きし、歴史と経緯を十分に踏まえつつ、真摯に検討してまいりたい、そのように考えております。
○西村(智)委員 私は、今日は、大臣から前向きな答弁がいただけるのではないかと期待して立たせていただきましたけれども、結局、従来からと答弁が変わっていないということで、本当に残念でなりません。
本当にちょっと信じ難い話がいろいろあって、私たちは、水俣にも新潟にも意見交換会で伺いました、立憲民主党として。そこで、とある方がこんなふうにおっしゃっていた。公健法の認定のために健康診断に行った。その方が言うには、足を筆でこすられたというふうにおっしゃっていましたけれども、要は、感覚障害があるのかどうか調べるために足を筆でこすられた。だけれども、見えるんですよね、見える状態で足をこすられている。これは分かりますかと聞かれる。見ているから、分かりますよね。触られているかどうかというのは感覚障害があるから分からないとしても、見ているから、分かりますと言ったら、それで認定されなかった。今もその方は、それが影響しているのかどうか分からないけれども、特措法でも救済されていないというような話がありました。
大臣、本当にいろいろな課題があるんですけれども、まず、この判定の問題です、認定の問題とか。まず一つは、やはり水俣病の臨床経験のあるドクターや法曹の方をこの委員会に加えるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。時間がありませんので、答弁は短くお願いします。
○伊藤国務大臣 公害健康被害補償法の公害健康被害認定審査会は、関係する都道府県又は政令市に置かれることとなっております。その委員については、都道府県知事又は市長が、医学、法律学その他公害に係る健康被害の補償に関して学識経験を有する者のうちから任命することとされてございます。
この規定に基づき、関係市町において適切に委員が任命されているというふうに承知しております。
○西村(智)委員 私は、今、具体的なことについて指摘をしましたので、是非そういったことも今後とも留意をしていただきたい、するべきだと思います。
先に進まなければいけないと思います。
救済措置の方針について伺いたいと思います。
二〇〇九年の特措法に引き続いて、救済措置の方針が閣議決定をされました。この救済措置の方針というのは、なかなか分かりにくい書き方になっていて、地域と年齢が分けられるような形で記載されているんですね。それによって、自分は該当しないんじゃないかというふうに思った方がいたかもしれない、自分は区域外だと思って申請を諦めた人がいたかもしれない、あるいはこの方針によって判定に誤りが生じたかもしれない、これは、可能性としていろいろなことが私は想定されるべきだというふうに思うんですよ。
ちょっと時間がないので二つまとめて聞きますけれども、実は、この特措法で、地域外、指定された地域の外の人たちもたくさん救済されていますよね、たくさんではないですけれども。諦めた人もいるけれども、救済された方もいる。だけれども、区域外で認められなくて、今なお裁判を闘っている方もいる。あと、原告の方に聞けば、自分の住んでいた町では、区域外だからということで取り残されている人がたくさんいるというふうにおっしゃっている方もいらっしゃいます。
私も不知火海を船で回らせていただきましたけれども、本当に穏やかな海で、みんなつながっているんですよ。あの島は指定区域だけれども、そこから裏の方は区域外ですと言われても、それはなかなか納得できる話じゃないです。
もう一つは年齢の話。四十何歳の人が原告になっているんですよね、四十代の人が。そういったことからすると、やはりこの救済措置の方針というのが、認定に至らなかった、そういう要素を逆につくっちゃっているんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
水俣病特措法の対象地域は、ノーモア・ミナマタの訴訟において裁判所が示した和解所見を基本に、訴訟をしなかった患者団体との協議も踏まえて決められたものでございます。
水俣病被害者特措法の対象となるのは、通常起こり得る程度を超えるメチル水銀の暴露を受けた可能性のある方のうち、四肢末梢優位の感覚障害又はそれに準ずる感覚障害を有する方でございます。対象地域内に一定期間の居住歴のある方については、この暴露を推認することにより、個別の証明を求めることなく迅速な救済を図るものでございます。一方で、対象地域外に居住歴がある方についても、個別に暴露の有無を判断し、相当数の方が救済対象になったと承知しております。
このように、円滑に認定を行う観点からの仕組みであり、こうした仕組みが申請をしにくくしたというふうには考えてございません。
それから、水俣病被害者特措法の出生年は、ノーモア・ミナマタ訴訟において裁判所が示した和解所見を基本に、訴訟をしなかった患者団体との協議も踏まえて定められたものでございます。環境省としては、この経緯を尊重する必要があると考えてございます。
なお、昭和四十四年以降に生まれた方でも、水銀への暴露の可能性が確認されれば救済の対象とすることとされておりまして、県において、一人一人丁寧に審査されているものと承知しております。
したがって、水俣病被害者特措法の出生年における考え方が適当でなかったというふうには考えてございません。
○西村(智)委員 救済措置の方針を今丁寧にお話をくださいましたけれども、私は、あえてそれを承知の上で質問しているんですよ。
つまり、そういった認定の基準というものが、やはり被害者の皆さんへの差別とか偏見とかそういったものがある中で手を挙げにくい、挙げたとしても、疫学の考え方に基づいていない判定が行われてきたがゆえに、またそこで分断が起きてしまっている、それを私は申し上げたいと思っているんです。やはり政府は、環境省は、特措法第三十七条に基づく健康調査を、疫学的な健康調査を行うべき、行わなければいけないというふうにこれは強く申し上げたいと思います。
あえて三十七条の一項と三項で分かれているんですね。三十七条一項では、研究調査をしなさいと書かれているんですよ。条文を読み上げましょうか。読み上げなくても分かっておられますよね。政府は、途中を略しますけれども、健康調査を、ちょっと長いので読み切れないですが、済みません。健康調査をしなさい、するものとすると書いてあるわけですよ。これは何でやっていないんですか。
実際に何をやってきたのか。答えは、多分、MRIとMEGを使った手法の開発を先にやりますということですよね。大臣、そういうことですよね。ちょっと時間がないので、確認させてください、まずそれだけ。
○伊藤国務大臣 御指摘のように、水俣病被害者特措法第三十七条一項で、健康調査を行うことを規定するとともに、同条第三項で、そのための手法の開発を図るものと規定しております。これを踏まえて、環境省としては、まず第三項の手法の開発が必要であると考え、脳磁計、MRIによる手法の開発を進めてきました。
昨年、開発の成果をまとめて国際的な学術誌に論文が投稿され、専門家の査読を経て公表されるなど、手法の開発が一定の精度に達したことから、昨年度、健康調査の在り方を御検討いただく研究班を立ち上げたところでございます。
昨年度末に提出された本研究班の報告書では、調査実施に当たっての考え方や検討すべき課題についての研究の状況が報告されてございます。これを踏まえて、今年度、令和六年度は、脳磁計やMRIの研究を継続するとともに、研究班において課題と整理された点について更なる研究の深掘りが進められる予定でございます。
こうした専門家による議論も十分に踏まえながら、できるだけ早く検討を進めたいと考えております。
○西村(智)委員 MRIとMEGを使った手法は、私は、スクリーニングには全く使えないというふうに思います。本当に開発に取り組んでこられた方々は御努力をされてこられたということは分かりますけれども、MEGとMRIを組み合わせた方法で水俣病として認定された患者のうち、約八割でしか反応が検出されないんですよ。感度八割です。ほかの二割の方は、水俣病認定患者なのに反応が検出されないんです。健常者の方であっても、約一割で同様の反応を検出しているんです。本当に使えますか。
しかも、これはすごいお金がかかっている。十二億三千七百万円かかって、水俣病患者でやられた方のうち、研究に有効に組み入れられている方の人数は四十二人、健常者の方は二百八十九人、数は少ない。MEGとかMRIだって、全国でできるわけじゃありません。水俣や新潟市にあるんですかと聞いたら、分かりませんという環境省の答えで本当にびっくりしました。
私は、健康調査の方法というのは、やはり疫学的な手法であるべきではないか。それこそが患者さんたちが求めていることなんですよ。大臣の耳にも届いていると思いますけれども、そのことにはお答えいただけないんでしょうか。しかも、十五年もこれはやっていないんですよ、開発しています、開発していますと言って。十五年もやられていないということは、これは不作為のそしりを免れないんじゃないかというふうに思いますけれども、大臣、どうですか。
○伊藤国務大臣 御指摘がありましたけれども、いかなる医学的検査でありましても、特異度を一〇〇%にするということはできないと思います。一般的に、診断閾値は、感度、特異度、健常者なのに疾患と診断された偽陽性、疾患なのに健常者と診断された偽陰性、これを考慮して設定されるものでございます。
したがって、健常者が異常と診断されても、そのことをもって診断方法がふさわしくないというふうには考えられないと考えております。
○西村(智)委員 疫学的な調査を是非やってください。それについてはいかがですか。最後に一言だけ答弁ください。後ろの方はいいので、大臣、お願いします。
○伊藤国務大臣 委員の御指摘も含めて、検討を進めてまいります。
○西村(智)委員 終わります。ありがとうございました。
○務台委員長 次に、渡辺創君。
○渡辺(創)委員 立憲民主党の渡辺創です。
五月一日に水俣市で起きた環境省の水俣病患者団体との懇談会におけるマイク切り問題を契機に、政府及び伊藤大臣の水俣病に関する認識を確認をしていきたいと思います。
個人的には、今日、私は差し替えで入っていますけれども、五月の十日の委員会でも大臣とやり取りをさせていただきました。引き続きの質疑になりますが、まず、関係者の皆さんが環境省の姿勢を、大変強い憤りと不安、そして同時に、裏腹ですが、一縷の希望を持ってこのやり取りも聞いていらっしゃるということを前提として、是非、誠意ある対応をいただきたいというふうに思いますので、お願いを申し上げます。
ちょっと一言申し上げたいんですが、今回、水俣病のことで集中でこうやって質疑をさせていただく機会ができて大変よかった、与党の皆さんも大変強い関心を持っているんだなというふうに思っておりましたが、今、大分戻られましたけれども、先ほどまで、西村議員が質問されている間、与党というか、公明党さんはずっと座られていますが、自民党さんの席は半分ぐらい、いない状態になっておりました。これは今の政府・与党の下で起きたことでありますから、与党の皆さんにも是非強い関心を持っていただいて、全体で何とか解決に向けていくんだという思いを共有できる委員会になればというふうに思っております。
今日のやり取り、事務方の皆さんの答弁も排除はしませんが、質問の意図をきちんと理解をいただければ、基本的に大臣が答弁していただきたいものがほとんどということになるはずですので、それは前提として、誠意ある対応をお願いしたいというふうに思います。
私は、五月の十日の環境委員会で私自身がやらせていただいた質疑を振り返って、反省をしています。全面解決という言葉を繰り返し私自身が使いましたけれども、この間、水俣や新潟の方々の話を伺い、様々な文献にも改めて触れる中で、いかに裁判が原告の納得いく形で終結をしようとも、また充実した政治的解決が図られようとも、水俣病に苦しむ方々の症状が収まるわけではありませんし、大きくその心身をえぐった傷が完全に癒やされるということもない。
それは、言ってみれば、本当の意味での全面解決や完全解決などというのはほど遠いことであって、ずっとこれからも水俣病と向き合わなければならない方々がいるという現実は続いていくわけであります。そういうことを踏まえれば、私自身も、全面解決などというのは安易に使うべき言葉ではなかったなというふうに自問自答しているところであります。
ただ、我々は、こういう役割の立場ですから、いかにして本質的な解決に近づく努力をするかというのが我々の責任だ、責務だというふうに思いますので、是非、そう信じて取り組みたいというふうに思っています。
まず、大臣にお伺いをしたいと思いますが、大臣は過去に映画の関係のお仕事もされていらっしゃったと承知をしていますし、今も、時々御案内をいただきますが、映画議員連盟の会長にもあられます。映画について高い見識をお持ちと察しますが、二〇二〇年にアメリカで製作をされ、日本でも翌二〇二一年に公開された映画「MINAMATA」というのがあります。御存じかと思います。ジョニー・デップさんが写真家のユージン・スミスさんの役を務めて、真田広之さんや浅野忠信さんなど国内の有名な俳優さんも出演をしています。
大臣は御覧になったでしょうか。御覧になっていらっしゃれば、その感想をお伺いしたいと思います。
○伊藤国務大臣 映画「MINAMATA」、拝見しました。この映画「MINAMATA」は、水俣病問題において著名な写真家の一人であるユージン・スミスさんをモデルとして脚本が書かれた劇映画であります。
この作品を拝見して、発生から現在に至るまでの水俣病問題の歴史に思いを致すとともに、こうした作品を通じて若い世代の皆さんが、様々な方が水俣病問題に関心を持つきっかけになるんだろう、そのように思います。
それから、いろいろなせりふなりエンドロールもありますけれども、そこも含めて、やはり環境省として引き続き水俣病対策に全力を尽くしていくという覚悟を強めたところでございます。
○渡辺(創)委員 今お話があったように、この映画は、水俣の闘争の歩みもあれば、写真家としてのユージン・スミスさん自身がいろいろ抱えているものをいかに再生していくかという物語でもあったというふうに思うんですけれども、この映画の中で、最後のエンドロールのところに、エンドロールの部分の冒頭と言っていいかもしれませんが、一九七三年春、チッソは賠償金及び医療費と生活保障金の支払いに合意、だが、その後、チッソと日本政府は十分な責任を果たしていないというふうに出ています。
このことについて、大臣はどう受け止めていらっしゃいますか。
○伊藤国務大臣 冒頭申し上げましたように、これはユージン・スミスさんをモデルとして脚本が書かれた劇映画であります。そして、劇映画のエンドロールでございますので、ここは映画評論の立場ではないので、そのことも受け止めながら、しっかり水俣病対策に全力を尽くしていきたいという感想を申し上げたいと思います。
○渡辺(創)委員 日本政府は十分な責任を果たしていないと指摘されています。環境省は、この日本政府は十分な責任を果たしていないという指摘は受け止めているということでいいんでしょうか。
○伊藤国務大臣 先ほどの繰り返しになりますけれども、これは劇映画であります。ですから、何か政治的なメッセージ、あるいはドキュメンタリーにおけるナレーションとも異なるわけであります。
ただ、いずれにいたしましても、この水俣病問題、まだまだ道半ばだというふうには捉えております。
○渡辺(創)委員 分かりました。
私は、これは劇映画だからと大臣がおっしゃるのは分からなくはないですけれども、ドキュメンタリーでもないということになっていますが、ただ、最後のエンドロールの部分は、別に演出の、名目ではないというふうに私は感じています。そのことだけ申し上げて、次に進みたいと思います。
水俣市に、水俣病センター相思社というのがございます。伊藤大臣も、五月八日にマイク切りの謝罪で水俣病患者連合の松崎副会長のところに会いに行かれたときに、足を運んでいらっしゃるはずだと思います。そこに、水俣病歴史考証館というのが併設をされています。ほんの数十メートル坂を上れば、大臣が行かれたところからすぐにあるものになります。
大臣は訪問されたことがないというふうに聞いておりますが、これはちょっと質問の本質とは違いますが、せっかくの機会なので、今度再懇談に行かれたときに、先方が嫌だと言われれば別かもしれませんが、大臣、ここに行かれるべきじゃないかと思うんですが、どうですか、行きませんか。
○伊藤国務大臣 先方が受け入れてくれれば、訪問したいと考えております。
○渡辺(創)委員 ありがとうございました。
ちょっと本筋に戻りますが、その歴史考証館は、原因企業の歩みであったり、水俣の昔からの生活であったり、さらには裁判闘争の流れなどに加えて、水俣を表現し続けてきた、さっきユージン・スミスさんの話をしましたけれども、写真家であったり文献などについても触れています、その考証館では。つまり、水俣病という災禍を多くの国民が認識をするには、ジャーナリズムであったり文学であったりということが深く関わってきたことの証左であるというふうに思っています。
先ほど、映画のモチーフになったユージン・スミスさんを始め、たくさんの写真家の方々が水俣を題材とかテーマとして写真を撮ってきていますけれども、また、水俣の支援運動にも深く関わった石牟礼道子さんの「苦海浄土」など、水俣三部作と言われるような文学作品もあります。水俣の抱える状況を多くの方々に、こういう作品、報道であったり文学が伝えてきましたし、水俣にとどまらず、全国の公害救済の運動にも大きな影響を及ぼしたというふうに私は思っています。
大臣は一九五三年のお生まれというふうに伺っておりますので、言ってみれば、水俣病の様々な歩みと同時代を生きてこられたというふうに言うことができると思うんです。こういう文学であったり報道等が、水俣病についての認識を多くの国民が持つ入口になったのではないかと思います。
大臣はそういう時代の頃にどういう印象をお持ちだったかということと併せて、また、こういうジャーナリズムや文学が我が国の高度経済成長期の公害問題をめぐって果たしてきた役割というのを環境大臣としてどう認識されていますか。
○伊藤国務大臣 私の小さい頃、学校教育あるいは報道の特別番組、こういったもので水俣病の問題に触れたのが、多分、私の水俣病との関わりの一番最初だと思います。それから今日まで、水俣病に関係する資料、本、また映像、写真をたくさん読んだり拝見してまいりました。
それで、前段の御質問でございますけれども、御指摘のユージン・スミス氏を始めとする多くの写真家がこの水俣病に関連して写真の作品というのを発表して、また、多くの小説も書かれまして、小説だけでなくて、もちろん、資料、本も書かれております。そういう出版物、映像、写真、これは非常に私は重要だと思います。
それで、こうしたジャーナリズムや文学、芸術などは、水俣病の実態を伝え、水俣病問題に対する社会の関心を高めるに当たって極めて重要な役割を果たしてきたと私は考えております。
こうした作品や出版物は、水俣病問題を後世に伝えていくに当たっても重要な役割を担っているというふうに考えております。
○渡辺(創)委員 同じ趣旨でもう一問伺いたいと思うんですが、水俣を始め様々な公害の運動には、多くの市民運動や労働運動などが支援の広がりをつくってきたという歴史があるというふうに思います。裁判闘争や公害問題を解決しなければならないという機運を当事者とともにつくり出してきた、それを支えたのはそういうセクターであったというふうに私は思います。
このような運動がつくり出した当時の機運も含めて、公害問題において、そういう支援をする立場にある人たちの存在がどのような役割を果たしたかということについて、環境大臣はどのように認識していますか。
○伊藤国務大臣 昭和三十一年に水俣病が公式確認されて以降、水俣病の患者の皆様、被害者の皆様が大変な御苦労をされてきたと考えております。その中で、水俣病の支援運動は、社会への問題提起、患者、被害者の方への支援、補償、救済の実現、地域の医療、福祉の充実化、地域づくりなど、様々な面で大変大きな役割を果たしてこられたと思います。非常に社会的な意義を持っているものだというふうに認識しております。
環境省としては、こういう患者支援運動の方々とも意見交換をしっかり行って、公害規制の実施、公害健康被害補償法の運用、二度の政治救済、地域の医療、福祉の充実に取り組んできたところでございますが、これからも更に努力してまいりたいと思います。
○渡辺(創)委員 あえてこういう話をさせていただいたのは、冷静にこの水俣の歩み、またその他の公害の歩みを振り返れば、原因企業であったりとか国が能動的に解決のために動き出した場面というのはほとんどないわけです。被害を受けた方々が懸命にその小さき声を上げてきた、そして、それを拾い上げるようにして、たくさんの皆さんとの問題意識をどうやって共有するかという運動があって、ようやく原因企業や国は動かされたわけであって、決して能動的に国が動いて解決してきたわけでもないわけです、大方の場面。それが、国がというか政治が役割を果たせるのは、今までにも二度あった政治的解決を図ろうとした場面だったというふうに思うんです。
今回、今この水俣病を取り巻く状況というのも、まさに政治が久方ぶりに働き、役割を果たすべきときだというふうに思っているので、環境省の皆さんには、今の環境省の立場を超えて新しい段階に是非進んでいただきたい、そういう思いを込めてこういうことも伺った次第でありますので、次に移らせていただきたいというふうに思います。
次の質問でありますが、資料を配付しておりますけれども、六月四日の環境委員会で、自民党の稲田朋美委員、今いらっしゃらないですけれども、を始め各委員から、解決に向けて何が必要かと大臣の資質を問うような質問がありました。その際の大臣答弁を資料として配付をしています。
四日は、何度問われても基本的にはこの答弁の線を繰り返していたというところでありましたけれども、私は、五月の八日に涙を流してぶら下がりを受けられて水俣へ向かわれた伊藤大臣が発していらっしゃった言葉、そして、五月の十日の環境委員会で大臣が示した姿勢が後退していっているのではないかというふうに大変心配をしています。大臣に頑張っていただきたい、何とかこれを解決するためには環境大臣が果たす役割というのは大変大きいというふうに思っていますので、その心配を抱えながら、細かく四日の答弁を確認していきたいと思うんですが、資料を御覧いただきたいと思います。
この答弁はA、B、Cというふうにブロックを分けていますが、見ていただければ分かりますけれども、Aの部分では全体認識を示して、Bでこれまでの経緯を説明し、CのところでBを踏まえて結論を述べるという構成の答弁になっているというふうに思います。やはり官僚の方が書かれるのはこういう流れになるんだなというふうに改めて思いましたが、最初の質問をしたいと思います。
まず、この最初のAの部分、「いまだに被害を訴える方がいらっしゃるという事実」というふうに黒い文字で下線を引いているところがありますが、との表現があります。これは何を指していらっしゃいますか。
○伊藤国務大臣 この「いまだに被害を訴える方」、これは、ある意味で広い意味でございます。いまだに公害健康被害補償法に基づく認定を求める方、訴訟を行われている方、それから水俣病の病状に苦しんでおられる方、また、水俣病による偏見、差別、地域の亀裂に苦しんでおられる方などがいらっしゃると思います。
○渡辺(創)委員 今、御答弁の中にもありましたが、あえて確認をしますが、認定申請が引き続き出ていることであるとか、その対応を不服として訴訟が提起されていることなども含むということでよろしいですね。
○伊藤国務大臣 そこも含む意味で、いらっしゃる方という表現をさせていただいております。
○渡辺(創)委員 ありがとうございます。
引き続き、Aの部分ですが、被害を訴える方がいらっしゃるという事実を受けて、赤い文字で二重線の部分になりますが、「政治家として重く受け止め」ていると答弁をなさいました。
確認をしたいと思いますが、この「政治家」という意味は、環境大臣としてというふうに置き換えても同義と理解をしていいか、また、環境省として重く受け止めているというふうに変更しても答弁としては同一のものだというふうな意味で捉えたらいいでしょうか。
○伊藤国務大臣 このことは、政治家としてだけでなく、環境大臣としての受け止めでございます。そして、環境大臣は、議院内閣制でありますから、政治家でもございます。
○渡辺(創)委員 次に伺います。
Cの後段のところでありますが、「現状を分析」と「現行法の丁寧な運用」というふうにありますけれども、これは、それぞれ具体的にはどのような環境省の取組を指しますか。
○伊藤国務大臣 水俣病に直接関係する現行法は、公害健康被害補償法や水俣病被害者特措法などがあり、これらを丁寧に運用することが重要というふうに考えております。
○渡辺(創)委員 Cの最後の部分になりますが、水俣病対策に全力を尽くす、今日のこの委員会の質疑の中でも何度か全力を尽くすというふうに大臣の答弁がありましたけれども、基本的な立ち位置を確認したいと思います。
環境省は、五月一日の出来事を契機として、水俣病の本質的な解決に向けて新しい対応に取り組むという意欲があるのか、それとも基本姿勢は五月一日以前と変わらないのか。一番関心を持っていて、しかし、やり取りをしてもはっきりしない分、先ほどの西村委員の質問もある意味通ずるものがあると思うんですが、新しい対応に取り組むという意欲があるのか、それとも五月一日以前と基本姿勢は何ら変わらないということなのか、是非大臣から御答弁いただきたい。
○伊藤国務大臣 先ほど御説明申し上げたように、環境省としては、現行法の上で全力を挙げたいということで、その新しいという概念をどう取るかによりますけれども、その中で、現行法の中でできることはもっとあるのではないかなと私は考えております。
ただ、それは、具体的に言うよりは、これから懇談も含め関係者の皆様の御意見、御要望について誠実に、真摯に検討し、懇談を行い、意見交換を行い、その中から、何を新しいというかというのはちょっと人によって判断が違うと思いますけれども、前進すべく水俣病に対する環境省の政策を前に進めてまいりたい、そのような決意でございます。
○渡辺(創)委員 聞き方を変えます。
今日、近藤委員や西村委員からも質疑がありました。私たちは、水俣で丸一日かけてお話を聞いたり、新潟水俣病の関係の皆さんの話も、先日、新潟に行ってずっと聞いてまいりました。
いろいろな要望があることはよくよく分かります。しかし、やはり、今、患者さんたちの求める重要なものの一つは、未救済の患者さんたちをどうやって救済するかというのが、この国に突きつけられている最大の課題だというふうに強く感じました。少なくともこれは、重要なテーマの一つであることは間違いないというふうに思うんです。
もう一度繰り返しますが、未救済の患者さんたちをどうやって救済するのか、この課題に対して、まず、環境省は認識として、私が今指摘していることと同じ立ち位置を共有できているんでしょうか。それとも、その立ち位置は共有できない、同じ立ち位置には立たないという立場が環境省の立場なのか、そこを大臣から御答弁いただきたい。
○伊藤国務大臣 まず、今なお訴訟を行う方、また認定申請を行っている方がたくさんいらっしゃることは重く受け止めております。
ちょっと繰り返しになって恐縮なんですけれども、水俣病については、長い経緯もあり、公害健康被害補償法に基づいて三千人が認定を受けて補償を受けられるとともに、これまで平成七年と二十一年の二度にわたり政治救済が行われております。
平成二十一年の水俣病被害者特措法は、超党派の議員立法によって生まれたものでございますけれども、地域における紛争を終結させ、水俣病問題の最終解決を図ることを規定しております。こうした二度の政治救済により、合わせて五万人以上が救済対象となっております。
特措法が超党派の議員の皆様によって制定された経緯を踏まえて、法律が規定する趣旨を最大限尊重して制度を運用すべきものと認識しております。
熊本、新潟で意見交換を進めるところでございまして、環境省としては、まずお話をよくお聞きし、歴史と経緯を十分に踏まえて真摯に検討してまいりたいと思います。
○渡辺(創)委員 お話は多分今までも繰り返し繰り返し聞いてこられていると思うんです、環境省として。初めて接した問題ではないですよね、水俣病の問題。毎年、大臣の懇談会もやってきた。改めて聞かないと分からないということばかりであるんだったら、今まで何をやってきたのかという話ですから、あえて私は分かりやすく聞いているので。
未救済の患者さんたちがいる、これは各地裁判決でも、いるということは出ていますよね。それが期間からあぶれている、あぶれていない等々の判断はありますけれども、未救済である患者さんたちがいるということは事実だと裁判所も言っているわけです。これをどうやって救済するのかというのが、この水俣病に関する最大級のテーマだというふうに思います。これを何とかしようという思いが環境省にはあるんですかということを聞いているんです。小学生でも分かる質問だと思いますから、分かるようにお答えいただきたいと思います。
○伊藤国務大臣 歴史と経緯というものをやはり十分に踏まえなきゃなりません。そしてまた、関係の皆様にできる限り寄り添って対応できるように、現状を分析しつつ、現行法の丁寧な運用や医療、福祉の充実、地域の再生、融和、振興などの取組を進めて、水俣病対策を前に進めてまいりたいと思っております。
○渡辺(創)委員 僕は、本当にこれを見ている方々は残念な気持ちになられていると思いますよ、未救済の方々を何とかしなきゃいけないということすら環境省は言えないんだなというのがはっきりしちゃっているわけですから。
五月の一日のことを受けて、岸田総理の寄り添うというのは本当に言葉遊びになっちゃっていませんか、これだったら。本当に寄り添うんだったら、最大のテーマである未救済の皆さんを何とかしなきゃいけないという思いぐらいは環境省は持っていますよ、しかし、いろいろな経緯もあるから、方法論についてはいろいろなことを議論しなきゃいけないというところまでせめて言えれば、環境省の姿勢を信用することができるというふうに思いますが、残念だなというふうに言わざるを得ません。
私は、先日の四日の稲田委員の委員会でのやり取りを見ていて、大変感動というか感心しました。先輩にそういう言い方は失礼ですけれども、今までの対策を俯瞰すると、最高裁判決が出て救済範囲を拡大するといった司法の判断の後追いになっていないかと指摘されていまして、弱い立場の人たちが、最後のとりでとして救済を求めるのが司法の場だ、行政は、司法よりも更に血の通った行政、これが求められるというふうに稲田さんはおっしゃっていたじゃないですか。公明党さんからも質問が出ていらっしゃいました。自民党の皆さんも公明党の皆さんも、何とかしなきゃいけないという姿勢で質疑されていたと思うんですよ。
是非、伊藤大臣が虚心坦懐に直言を岸田総理にしていただいて、岸田政権においてこの問題の政治的解決を図るんだ、そのエネルギーを燃やして、大臣から岸田総理に直接持ちかける、総理の指示を受けて何かをするじゃなくて、これをやる必要があるというふうに伊藤大臣が岸田大臣に申し入れればいいと思う。かつてよりもそういう政治救済がやれる環境に近づいていると思うんです、今、水俣病を取り巻く環境。
是非そのことを踏まえていただいて、最後にもう一度大臣にその決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
○伊藤国務大臣 強い御意見をいただきました。
特措法が超党派の議員立法により制定された経緯を踏まえると、法律が規定する趣旨を最大限尊重して制度を運用すべきものと思っております。
熊本、新潟での意見交換を進めるところでございますので、まずはお話をよくお聞きし、繰り返し同じ問題が出ているという御指摘もありましたけれども、新しい御指摘もあるんですよ、お話をお聞きして、歴史と経緯を十分に踏まえながら、前進させるために真摯に努力してまいりたいと思います。
○渡辺(創)委員 時間が来ていますのでやめますが、よく大臣は、前回の政治解決のときには超党派の議員立法だったとお話しされます。それは事実だと思います。ある意味、国会で政治を進めていく上での合意形成の一つのスタイルとして、超党派の議員立法というのは有力な方法だというのは分かります。
しかし、決して、政府が自ら解決を図るという姿勢を持ってその準備を進めていくというやり方があってはいけないわけはどこにもありません。それは政府の姿勢だけの問題だと思いますから、それを、裏も表も含めて、知恵を絞って何とか解決をするという役割を、この五月一日の問題に直面した伊藤大臣の責任だというふうに思いますので、是非ともその役割を果たしていただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○務台委員長 次に、野間健君。
○野間委員 立憲民主党の野間健と申します。
本日は、水俣病の実質的な集中審議の場に立たせていただきましたこと、心から感謝を申し上げます。
私は、鹿児島県の選出でありますけれども、水俣病が発生した不知火海、八代湾の、熊本県ではない鹿児島県側、南側が地元でありまして、今度大臣も行かれる獅子島を含む長島町や出水市、また伊佐市、阿久根市、これが私の地元であります。今日は、本当に当事者として質問させていただきたいと思います。
大臣、安全保障、エネルギー、食料、環境、人権などなど噴出する諸課題、これらを根源的に解決するには政治に新たな地平が必要です、従来の固定的な発想にとらわれず新たな視点で問題解決を図ることが求められています、できない理由を言うのではなく実現可能な方法を創出するため日夜努力を続けます、これはどなたの言葉かお分かりですか。そうなんです、これは伊藤大臣のホームページの冒頭に書かれた言葉ですね。すばらしいですね。できない理由を言うのではなく実現可能な方法を創出するため努力を続けます、これが今必要ですよね。大臣、まさに毎日、五月一日以降、取り組んでおられると思います。
いろいろ先ほど渡辺創委員ともやり取りがあったと思うんですけれども、私もまた被害者の水俣病の患者の皆さんに昨日も会っていろいろ話を聞きましたけれども、野間さん、環境省の態度、出てくる人のランクががらっと変わったよ、こう言うんですね。逆に、今までいかに自分たちが軽く見られていたかというのは分かるんだけれども、確かに変わった、姿勢が変わった、態度が変わった、これは事実だ。ですから、これを本当に解決につなげていただかなきゃいけない、まさに今その正念場に来ていると思います。大臣がおっしゃるように、できない理由を言うんじゃなくて、できるようにするのが今大臣がやっておられるお仕事だと思います。
例えば、渡辺創議員とのやり取りが五月十日にありましたけれども、最終解決に向けて全力で今回の懇談もいたしますし、そして、今回の一回の懇談だけではなく、既に、私を始めとする、大臣、副大臣、政務官、そして環境省の幹部が多く水俣に赴き、水俣病の被害者また関係団体の方と懇談を重ね、全面解決に向けて、その具体的な方策を力を合わせて紡ぎ出して、なるたけ早い時期にそれを実行していくために、私も全力を挙げてまいりたいと思いますと。そして、渡辺創議員から、今後、立憲民主党、野党からも、いろいろな法案等、具体的に提案しますよということを申し上げましたら、今の御提案、これは具体的にその法案が出てこなければあれですけれども、患者の皆様を、あるいは被害者の皆様を救うものであれば、私は賛成して、後押ししたい、ここまでおっしゃった大臣は今まで一人もいないわけであります。本当にこれはすばらしい発言だと思います。
ですから、これが後退しないようにしていただきたいんですが、ちょっと懸念されることが、五月十七日の大臣の記者会見の後、環境省の大森恵子審議官が、被害者救済の検討は、タスクフォースに現時点で明確には含まれない、十四日の会見では、大臣は意気込みを話したという発言があるんですが、これは何かちょっと大臣の発言をセーブする、後ろに引き戻すようにも捉えかねないんですけれども、これは後ろ向きなことではないんでしょうか。大森審議官、いかがでしょうか。
○大森政府参考人 お答えいたします。
五月十七日の閣議後会見後、私から記者に対して、救済は含まれていないと御説明いたしましたのは、水俣病タスクフォースの設置趣旨といたしまして、水俣病関係団体との改めての懇談の場を開催し、損なわれた関係団体、現地との関係性を修復するということを目的とし、そのために、体制の強化を行い、職員の頻繁な現地出張、それから懇談内容の充実に取り組むとしていることを御説明したものでございます。
○野間委員 ですから、決して後ろ向きのものではないということが確認されたと思います。
一昨日、全国の公害被害者総行動デーがありまして、大臣から水俣病についての発言もありました。その中で、大臣が、冒頭でも特措法のこともおっしゃって、私は環境大臣として、水俣病特措法に込められた思いを踏まえて、水俣病対策を前進させるために全力を尽くしていく気持ちです、現在調整させていただいている改めての懇談の場においては、十分な時間を取って、丁寧に皆様と意見交換を行い、でき得る回答について、新しい解決方法を見つけていくなど、今後の施策に生かしていきたいと、新しい解決方法とおっしゃっていますね。
先ほど渡辺議員とのやり取りの中でも、いろいろ、今は言えないようなことがあるのかもしれません。そして、冒頭とこの部分と二度にわたって、特措法に込められた思いを踏まえてということを、特措法のことを触れられますが、先ほどからおっしゃっている現行法に基づいて、しかし、その中には新しい解決があるんじゃないかということもさっきおっしゃいました。
これは、踏み込んで言いますと、特措法を改正するなり、少し変えて解決に資することもある、そんなことが脳裏にあるのか、いかがでしょうか。
○伊藤国務大臣 先ほどから累次の答弁を申し上げているとおり、私は環境大臣としては、現行法の下、特に、特措法の趣旨が本当に生かされる、これは地域の紛争を終結させる、そしてまた皆様が健康で安心して暮らせる社会をつくるということでありますので、それが達成されるように全力を挙げたいということでございます。
○野間委員 昨日、全国公害被害者総行動デーで上京した被害者団体の皆さんあるいは弁護団の皆さんと前田審議官が協議をされたということで、その中で、前田審議官は、この水俣病問題の解決を、解決をする覚悟を持って、継続的な実務者協議をやっていきましょうと明確におっしゃったということですけれども、ちょっとそこを確認したいんですが、いかがでしょうか。
○前田政府参考人 お答えいたします。
私からの発言につきましては、その前の日の六月五日の総行動デーの大臣からの発言をなぞる形で申し上げた内容でございまして、水俣病には長い歴史やそれぞれ異なる立場からの様々な意見があり、一回の懇談で全てが解決するとは考えていないということと、あとは、七月を目途に調整中の水俣での再懇談ですとか新潟への訪問のみならず、政務三役や事務方による継続的な意見交換を通じて、信頼関係を育みながら前進してまいりたいという大臣の御発言を御紹介いたしました。
その上で、継続的な意見交換ということにつきましては、継続的な協議の場というふうに捉えていいかというふうに聞かれたところでございますので、意見交換ということでございますということはお答えをいたしました。
そして、全面解決に向けた覚悟はあるかということにつきましては、覚悟はあるというふうに答えたところでございます。
○野間委員 ということは、もう一度ちょっと確認しますけれども、全面解決の覚悟を持って実務的な協議を、ただ単なる懇談会ということではなくて、実務的な協議を行っていくんだということでよろしいですね。審議官、いかがでしょうか。
○前田政府参考人 お尋ねのとおり、その覚悟を持っているところでございます。
○野間委員 是非そういう姿勢で行っていただきたいと思います。
なぜ私もそういうことを事務方の方にお伺いするかといいますと、これは大臣もおっしゃっているんですね。五月二十三日の参議院の環境委員会で、今回の一件、五月一日の一件ですね、やはり水俣病に取り組む省内の体制が十分ではなかったことの表れだと思います、改めて、環境省の職員一人一人が水俣病の歴史と経緯を踏まえつつ、関係の皆様にできる限り寄り添って対応できるよう、省を挙げて取り組んでいかなければならないと。
言ったら悪いんですけれども、環境省の姿勢が今まで本当に寄り添ったものだったのかということは、なかなか言い難いところが、体質があると思うんですね。
今日、資料を配らせていただきました。資料一、これは二〇一三年ですけれども、国が虚偽証言をしてくれと要請した、環境省がですね。水俣病の訴訟において、大阪の女性が訴訟をしていたわけです、認定をめぐって。これに対して、国が訴えられていました、国は、ある医師に、この女性の診断をしてくれ、この人は水俣病じゃないはずだということで診断してくれと言ったら、医師が診断したら、この人は水俣病ですよということで、その医師はそう判定したんですね。そうしたら、国は、それはちょっと困ったなということで、とにかく、最初の県が認定した判断は、少なくとも、この人は水俣病じゃないという判断は妥当だったと証言してくれないか、こういうことを環境省がこの医師に頼んで、やってくれと言ったけれども、医師は、良心に恥ずることになるからそういうことはできないといって断っているわけですね。こういうことも過去に指摘されています。これは一つの環境省の姿勢ですよね、こういうことをしていた。
あるいは、資料の二と三、これも、今、裁判の中で大きな問題になっています。
今、環境省の基準では、毛髪、頭髪に五〇ppmの水銀が含まれていなければ水俣病じゃないと言っているんですけれども、もう既に一九八九年にWHOがそれは違うと。いろいろな、当時、イラクで水銀の問題が起きて、五〇じゃなくて、一〇から二〇の水準でも、実際、特に子供さん、胎児性、こういった人たちはやはり有機水銀の被害を受けているんだという実例があるので、WHOの下部機関といいますか、IPCSという化学物質の安全計画、こういうところが、ちょっと基準を下げてもいいんじゃないかということを環境省に言ってきたら、環境省は、それは困ると。そんなに基準が下げられたら、自分たちがやっている水俣湾のヘドロ除去の見直しとか、いろいろな補償がまた発生してしまって、要するに、範囲を広げてしまうと環境省が困る。ですから、これは患者救済とかじゃないんですね。環境省が困るんだ、お金がかかるんだ、いろいろこういう面倒なことが起きるから、反論のチームまでつくってやろうとしていた。
資料の次のページの三を見ていただくと、結局、WHOは、完全な勧告まではいかないけれども、警告として、一〇から二〇のppmの方でもやはりこういうのが起きるんだということを認めたんですね。ですから、そういうことまでしたというのが現実に過去の中であります、環境省の体質として。
もう五月一日以降、そういうことはないと信じたいですけれども、やはり大臣あるいは事務方の皆さんもそういうことが続いていないということを私も祈りたいですし、そういうことはあってはならないということを申し上げたいと思います。
大臣、いかがお考えですか、過去のこういったことを。
○伊藤国務大臣 環境省は、人の命と環境を守るというのが一番大事なことだと思っていますので、御指摘のようなことが環境省において起こらないように、しっかり指導してまいりたいと思います。
○野間委員 是非その姿勢を堅持していただきたいと思います。
それと、これも本当に申し上げたくないですけれども、今の神ノ田部長さんも環境保健部長さんでいらっしゃいますけれども、これも随分前の話ではありますけれども、当時の原徳寿さんという環境省の環境保健部長さん、資料の四、五と、当時の新聞を掲げさせていただいています。
当時のこの部長は、水俣病の診断、水俣病の患者さんに対して、受診者がうそをついてもなかなか見抜けないんだよ、汚染魚一匹食べたって発症するかもしれない、そんな論理なんだ、不知火海沿岸では、体調不良をすぐ水俣病に結びつける傾向があると。あるいは、六九年以降生まれの人のへその緒に水銀値が高い例があるというが、原因は魚かどうか分からない、何が理由か分からない、今はコメントのしようがない、母親が鯨好きだったのかもしれない、鯨のメチル水銀値は高いからとか、診察時に針で刺されても分からないふりをする詐病、他の症状を水俣病と結びつける傾向がある、あるいは、金というバイアスが入った中で調査しても、医学的に何が原因なのか分からない、こんなことを平気で言って、この当時も大きく新聞に出て問題になりました。
今はそんなことはないと思いたいんですけれども、神ノ田部長、いかがでしょうか。
○神ノ田政府参考人 お答えいたします。
歴代環境保健部長に御指摘のような考え方が引き継がれているということはございません。
当時の原部長の誤解を招く発言によりまして、現地の関係団体等に不安を与えてしまいました。このため、当時の斉藤環境大臣は、原部長に対し厳重に注意するとともに、関係団体の方々に発言の事実関係について直接説明してくるよう指示をいたしました。原部長は、この大臣の指示に従いまして、現地に行って謝罪をし、真意を説明したと承知をいたしております。
○野間委員 ですから、今は、ある意味、本当に患者の実態を分かっていない発言はもうない、そんな体質はないと思いたいですし、確信したい。今の部長のお話で、そんなことはないということが確信をされたと思いたいと思います。
次に、先ほど近藤委員との質疑の中でもありましたけれども、いわゆる公害問題等の際は、PPP、汚染者負担原則があるんだということが言われます。先ほど大臣は、チッソのいわゆる賠償ができる財政的な範囲の中で救済をやっているんじゃないか、いや、そんなことはない、きちっとそういうことに関係なく救済しているんだというお話でありました。
今、資料をつけさせていただいています。資料の六、七なんですけれども、実質、PPPという、公害を出したら汚染者が負担をするんだという原則は、ここで崩れているんですよ。崩れているといいますか、原則はあります、しかし、例外が必ずあるんですよね。
このときは、国は、非常に、ある意味賢明に、チッソが払えないんだったら、やはり国が肩代わりしてあげようとやったんですね。これで二百七十一億円のチッソの債務を免除して、国が棒引きしてあげたんですね。このときは、日本興業銀行等、取引先の銀行も、三百五十億の貸付けとかは全部チャラにしているわけであります。
ですから、もちろん環境省は、PPPの原則はあるんだということは今も主張されるでしょうけれども、その原則には例外もあって、こういうことでどうしようもないときはやはり国がきちんと最後は面倒を見るんだ、こういう姿勢は、国として、ある意味当然だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○鑓水政府参考人 お答えいたします。
汚染者負担ないし原因者負担の原則を踏まえて、水俣病患者に対する補償金の支払いは、原因者たるチッソ株式会社が行うものでございます。
これまで、チッソ株式会社の経営状況などを踏まえまして、閣議了解等に基づき、チッソ株式会社の経営努力を前提としつつ、患者への補償金の支払い等の安定かつ確実な実施等のため、公的債務の支払い猶予などの措置を講じてきたところでございます。
御指摘の平成十二年、二〇〇〇年の抜本策においては、チッソに対する支援措置の一環といたしまして、平成七年一時金県債の国庫負担相当分の債務について返済の免除を行ってございます。これは、チッソ株式会社の経営基盤の維持強化を通じて、患者に対する補償金の支払いに支障が生じないよう、患者補償の安定かつ確実な実施の観点から行ったものでございます。患者補償等はチッソが責任を持って行うということに変わりはなく、原因者負担原則の例外を認めたという御指摘は当たらないと考えております。
○野間委員 理屈としてはそうなるんでしょうけれども、実際は棒引きをしています。ですから、これは、その原則に一つの例外ができた、風穴が空いたというふうに思っていいと思います。これ以上は申しません。
続いて、特措法の三十七条でうたわれた健康調査の問題であります。先ほどからも議論されています。
ちょっとお伺いしたいんですが、この三十七条の三項に調査研究のための手法の開発の問題が取り上げられていますけれども、手法の開発といっても、今やられているのは、メチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査、その手法の開発、脳磁計とか、いろいろやっていますよね、十二億円かけてやっています。それ以外にあと二つあるんですよね、やらなきゃいけないことは。効果的な疫学調査、そして水俣病問題に関する社会学的調査。少なくとも、ここに書いてあるのは、三つの調査手法の開発をやりなさいと言っていますね。
一つはやっているんでしょう、今その脳磁計で。あとの二つはどうなっちゃっているんでしょうか。効果的な疫学調査、これはやられているんでしょうか。
○前田政府参考人 お答えいたします。
水俣病被害者特措法は、第三十七条第三項で、第一項で規定する調査研究の実施のため、委員御指摘のメチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査、効果的な疫学調査、水俣病問題に関する社会学的調査を例示しつつ、必要な手法の開発を図ることを規定してございます。
環境省におきましては、水俣病患者の経年的変化や自然史、メチル水銀への暴露量と症候の関係、そして水俣病に係る有効な診断方法に関する様々な研究を実施しており、例えば、疫学調査につきましては、昨年度立ち上げた研究班におきまして、脳磁計とMRIを用いた調査の調査デザイン等を研究してございます。
このほか、国立水俣病総合研究センターにおきましても、ヒアリング等を通じて、地域の福祉課題等を分析する社会学的調査等、各種の研究を行っているところでございます。
引き続き、環境省といたしまして、必要な研究を進めてまいります。
答弁は以上です。
○野間委員 この手法の開発は、手法がないから開発するわけですよね、恐らく。手法があれば開発する必要はないですね、十二億円もかけて。いかがですか、そこは。
○前田政府参考人 委員御指摘のとおり、手法の開発に努めているということで、MEGとMRIを組み合わせた調査の方法などを進めているというところでございますが、最近、その精度が上がってきて、海外の雑誌にも発表できるぐらいのサンプル数といいますか、患者数のデータが集まってきたということで、手法の開発が大分進んできたというところでございます。
以上です。
○野間委員 ですから、今まで患者さんや被害者の方を判定する手法がなかったのか。ありましたよね、あるんですよね。
資料の十とか十一とかからずっとつけていますけれども、これは一九七〇年代初期に、熊本県や鹿児島県は何万人単位で調査しているんですよ、やっています。それでいろいろな隠れ水俣病が発見されているんですよ、もう既に。
これはどうやっているかといいますと、まずアンケートを取って、その後、そこで自分がこういうところがおかしい、ああいうところがおかしいという方のアンケートをもらって、その人を二次診断ということで医師が診て判定するということで、相当多くの患者が掘り起こされ、名のり出てきている、こういうことが実際に行われています。
そして、実は、これはテレビでも出ていることですけれども、熊本県が、最高裁判決で国も県も敗れて、大変なことになったということで、当時の熊本県の潮谷義子知事が、これは県としても何かしなきゃいけない、きちんと対応しなきゃいけないということで、この資料の九の一以下に書いています。
十五年前に、熊本県として、こうやったら地域の健康調査ができるんじゃないかといって、その前のページ、資料八をつけていますけれども、きちんと、「今後の水俣病対策について」ということで、二〇〇四年の十一月二十九日、環境省に、当時の小池百合子環境大臣に、調査のやり方はこうやったらどうですかということを出しているんです。
資料の八に書いていますよね。沿岸地域住民の健康調査について、八代海沿岸地域に居住歴のある人、四十七万人、当時ですね、この人をこうやって調査します、そして見込みの経費は八億七千三百万、ここまで書いて、こうやったらどうでしょうかと環境省にちゃんとお伺いを立てて出しているんですよ。きちんとしたデータに基づいてやっています。
ところが、これは、潮谷元知事は当時の小池大臣に出したけれども、残念ながら、ある意味一顧だにされなかった、ああ、そうですかと受け取って、何の連絡もなかった。それが、以下の熊本の県民テレビ、これも出ました。残念だった、あのときにもうちょっと自分たちの調査のやり方等をきちっと検討していただいて、やってくれれば、こんなことにならなかったのになということがずっと書かれています。
ですから、ここが大きなポイントだったというんですけれども、潮谷知事も、本当にせっかくこうやって健康調査は具体的にこうしますよということまで出したのに、取り上げられず、本当にむなしさがありましたと。
また、これを実際に実務的に携わった森枝さんというのもここに感想が述べてありますけれども、不思議なのは、健康調査の手法が県の報告書に書いてあるのに、国は十五年間、手法を開発していますと言い続けているんですよと。今やっていますよね、脳磁計。えっという感じですよ、なぜ今頃、まだこういうことをやっているんですかって、だって十五年ですよ、だからまた新しい訴訟が提起されたりしていますから、何なんでしょうね、行政のあるべき姿としてはどうなんでしょうねと。嘆いていますよね、十五年前にこういうことをもう既にやっているわけですから。
ですから、こういったことを、今、環境省はどういうふうに当時のことを捉え、もう既に手法はあるんですから、開発して。言っては悪いですけれども、被害者の皆さんは、自分たちが死ぬのを待っているのかと。十五年も開発しています、開発しています、税金の無駄遣いもいいところですよ。どう思われますか、大臣。
○伊藤国務大臣 水俣病の健康調査については、水俣病被害特措法は、第三十七条第一項で、政府が健康調査を行うことを規定するとともに、同じ条の第三項で、そのための手法の開発を図るものと規定しています。これを踏まえ、ちょっと繰り返しになって恐縮ですけれども、環境省としては、第三項の手法の開発が必要であると考え、脳磁計とMRIによる手法の開発を進めてきました。
手法の開発に当たっては、研究に御協力いただける患者さんを探し、研究内容を御説明して個別に同意をいただいた後、医療機関までお越しいただく日程を調整して、複数の検査を受けていただく必要があります。こうした形で丁寧に研究を進め、集めたデータを様々な解析手法で分析し、特徴的な所見を見出しつつ、さらに、汚染地域外にお住まいの健常の方にも御協力をいただき、科学的知見として分析可能となる三百人以上の規模の対象者を集めてきたところでございます。
その結果として、昨年度、開発の成果をまとめて国際的な学術誌に論文が投稿され、専門家の査読を経て公表されるなど、手法の開発が一定の精度に達したことから、健康調査の在り方を御検討いただく研究班を立ち上げ、一年目の研究において、調査実施に当たっての考え方や課題が検討されたところでございます。この内容を踏まえ、今年度は、脳磁計やMRIの研究を継続するとともに、研究班において課題と整理された点について更なる研究の深掘りを進めてまいります。
こういう専門家による議論を十分に踏まえながら、できるだけ早く検討を進めたいと考えております。
○野間委員 その繰り返しの御答弁なんですけれども、手法はあるんですよね、もう七〇年代にやっていますから。ですから、大臣はそうやって事務方の答弁を読まざるを得ないんでしょうけれども、今のようなことですと、手法を開発しているんだ、しかし、もう既に行われている、しかし、手法を開発するということは、患者はうそをついているんだ、お金をもらいたいためにやっているから何か客観的な、脳磁計か何か分かりませんけれども、もう手法はあるんですから。結局、そうなりますと、五月一日以降、体質は変わったのかなと思いましたけれども、また元に戻っているのかなとも思えるんです。
大臣、本当に本音で、俺もおかしいと思うよと。どうですか。本当におかしいですよ、これは。いかがですか。
○伊藤国務大臣 環境省としては、関係法令に基づき研究開発を続けたと思います。それが結果として十四年もかかってしまったことは申し訳ないと思いますけれども、なるたけスピードアップして、しっかりと健康調査ができるように進めてまいりたいと思います。
○野間委員 それ以上は言えないのかもしれません。
先日、五月三十一日、NHKの「おはよう日本」を始め、この日は三回か四回この番組がありました、「水俣病 問われる国の姿勢」。この日は新潟水俣病が五十九年前に公式確認された日ですけれども、何回となく解説委員がNHKの番組でやりましたね。こういったこともかつてないことだと思います。
やはりこの中で、いまだに終わっていない水俣病の問題です、元々環境省は水俣病などの公害から国民を守るためにできた役所で、まさに環境省の原点とも言えるこの問題で、被害者の声を真摯に聞く姿勢をなくしては存在意義が問われます、被害者が高齢化し亡くなる方が多くなった今、国は問題解決を急ぐことが求められています、こういったことを多くの国民が見ましたね、NHKで。やはり何かしていただかないといけないと思います。
水俣の地元で、もう大臣もお聞きになっていらっしゃると思うんですけれども、今、確かに国立水俣病総合研究センターがあります、しかし、そこにおられる方は、前田審議官は所長さんでいらっしゃいますけれども、月一回程度行かれているということで、研究者の方が多くて、いろいろな被害者、患者さんたちの声を聞いてくれる窓口がないので、是非、環境省の出先といいますか、こういった水俣病についての少なくとも話を聞いてくれる人を一人でも置いてくれないかと。当たり前ですよね。置かれていないんですね、いまだに。
こういう例えを言っては悪いんですけれども、隣の鹿児島県の出水市というところがあります、ここは、ラムサール条約で、鳥類の保護をしているんですね。鳥類の保護をするために、環境省出水自然保護官事務所というのがありまして、二人の人がいるんですよ、そこに。常駐しているんですよ、鳥を守るために。
鳥も大事です、鶴も大事ですけれども、人間も大事ですよ。一人か二人、きちっとそこに環境省の担当の方が一年中いていただいて、月一回じゃなくて。やはりいろいろな、様々な問題が起きていますから、そういったことを聞いていただく姿勢を示していただきたいと思いますけれども、最後に、大臣、いかがでしょうか。
○伊藤国務大臣 環境省の環境調査研修所国立水俣病総合研究センターについては、確かに所長は本省の審議官が兼ねており常駐しておりませんが、次長以下計二十七名の職員は常駐しています。これは環境省の職員です。
センターでは、水俣病に見られる運動失調等に関して、磁気刺激療法等の調査研究を行うほか、認定患者に対するリハビリテーション事業を実施しております。また、地域の福祉支援の一環として、体操教室や物づくり教室にも取り組んでおります。
本省から職員が水俣へ出張する際の活動拠点ともなっておりまして、この水俣病総合研究センターも活用しつつ、水俣病タスクフォースのメンバーにも頻繁に現地に行かせたいと思います。
○野間委員 水俣病問題を解決する最後の機会ではないかと思います。大臣のリーダーシップ、そして事務方の皆様の過去の反省に立った協議、対話を続けていただいて、解決に向かっていただきたいと思います。
終わります。ありがとうございました。
○務台委員長 次に、川内博史君。
○川内委員 尊敬し敬愛をする務台委員長の下で、今日は主に水俣病問題に関する重要な質疑が行われるというこの会議を開いていただいた与党の先生方に、まず感謝を申し上げたいというふうに思います。本当にありがとうございます。
長い長い本当に苦難の歴史をこの水俣病の皆さんはたどっていらっしゃるわけですが、政府は間違わないのが原則ですから、平成十六年に政府の責任を最高裁で指摘された後、政府にも責任がありますということになったわけでありますが、最終的な解決、全面的な解決をどうやっていくのかということを考えたときに、本当に難しい乗り越えるべき課題というものがたくさんあるんだろうなというふうには私も思います。
そこで、まず基本的な姿勢をお尋ねをしたいんですけれども、政府の責任というものを果たすために、本当に、この水俣病問題にしっかりと向かい合っていくよ、向き合っていくよというお気持ちが環境省におありになられるか、環境大臣におありになられるか、まずそこをちょっと確認をさせてください。
○伊藤国務大臣 政府の責任として、また環境大臣として、しっかり責任を果たすべく、全力を挙げたいと思います。
○川内委員 私は、伊藤大臣はすごく羨ましいなと思うんですね。この重要な問題を解決する権限を伊藤大臣は持っていらっしゃるわけですよね。あらゆる環境省の持っている法律の主語は、大臣はと書いてある、主務大臣はとかいろいろな表現はあると思いますが、大臣には本当に様々な権限がおありになられる、そして解決に向かわせることができる。
しかし、長い長い環境庁や環境省の歴史の中で、先ほどからいろいろな指摘が出ているわけですが、事務方の中にはいろいろな思いがあるんでしょう、それで、患者団体や水俣病関連の皆様方との関わりの中で、いんぎん無礼だったり、時には物すごい失礼なことを言ったり、中にはいい人もいたんでしょう、いろいろなことがあると思います。でも、水俣病の団体の方々の中に、私たちが死ぬのを待っているんでしょう、どうせ私たちが死ねば終わるということなんでしょうというようなことをおっしゃる方たちもいらっしゃる。
今日は、前田審議官、水俣病問題の担当ということですから。前田審議官以下、環境省の事務方は、皆さんが死ぬのを待っているんですか。
○前田政府参考人 お答えいたします。
水俣病の問題につきましては、公害健康被害補償法ですとか、あとは水俣病被害者特措法、そういった関係法令に基づいて適切に事務を行っていくということが私どもの役割というふうに認識してございます。
以上です。
○川内委員 適切に事務を行っていくという言葉は、先ほどの前田審議官の言葉と矛盾しますよね。自分も全面的な解決に向けてしっかりと懇談の場で協議をしていきたいとおっしゃったじゃないですか。今ある法律の中で適切な事務を遂行するのみならず、協議をするんだと。協議をするというのは、新しい問題にも対応するということなんじゃないんですか。今ある関係法令の中で適切に対応するというだけだったら、そう言い放てばいいじゃないですか。何も協議する必要はないでしょう。
○前田政府参考人 先ほど申し上げました水俣病被害者特措法の前文におきまして、「地域における紛争を終結させ、水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現すべく、この法律を制定する。」と示されているところでございまして、この法律に基づいて対応すると申し上げますのは、この最終解決を図って、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現していくために、そういった関係団体の方々とも実務的な協議を進めていくということも法律の範囲内に入っていると思ったものでございますので、法律の範囲内と申し上げたところでございます。
以上です。
○川内委員 済みませんでした、私が法律に疎くて。その前文さえもちゃんと守るんですよという決意を持っていらっしゃるというのを聞かせていただいて、物すごく安心をいたしました。
じゃ、協議の場の論点は何ですか。協議していくわけですね。協議の場の論点を教えてください。
○前田政府参考人 お答えいたします。
現在、私ども、水俣病タスクフォースに課せられております論点といたしましては、五月一日の大臣への要望事項ですとか、五月八日に患者団体から大臣に寄せられた要望事項、そういった要望事項の内容についてまずはきちんと回答を用意する、そういった内容を、まず大臣と水俣及び新潟での懇談を進めていく、そこで実務レベルで対応すべきものについては対応していく。まずは五月一日と八日の要望事項、そちらがスタートになるというふうに考えているところでございます。
○川内委員 そうすると、大臣、これまで懇談の場とおっしゃっていらっしゃったわけですが、協議の場というふうに言い換えられているわけですね。
論点としては、要望事項が論点になるということになっている。そうすると、大臣、水俣病特措法の申請期間が不十分だったのではないか、申請をもう一度できるようにしてくださいとか、あるいは、水俣病特措法あるいは公健法で地域指定されているけれども、その地域以外の方たちの中にも、水俣病被害者あるいは水俣病患者がいらっしゃるのではないかということも論点になるという理解でよろしいですね。大臣、そうだよと言えばいいんですよ。
○伊藤国務大臣 五月一日にいただいた要望書あるいは要請書でしょうか、それから、五月八日にいただいた要望書、そしてまた、口頭でのいろいろな要望、要請、これを全部合わせると数十になります。ですから、その論点という言葉がどのように解されるかでございますけれども、意見交換の中で様々な御意見が出てくるだろうと思いますし、その中で、あたう限り環境省側としてお答えできることはお答えしてまいりたい、そのように考えております。
○川内委員 今大臣が意見交換の場という言葉を使われたんですが、既に前田審議官は協議の場とおっしゃっていらっしゃるので、大臣が協議の場と言わないと協議の場にならないので、協議して、話し合って、解決策を見出すという、大臣、協議の場というふうにおっしゃっていただけますか。
○伊藤国務大臣 今まで私どもは懇談の場、そしてまた、さらに、私が使い始めたと思うんですけれども、意見交換の場という言葉を使っていますので、私としては、今の段階では意見交換の場というふうに定義させていただきたいと思います。
というのは、一回の懇談、意見交換で一〇〇%の何か結論なり解決策が見つかるというものではないんだろうと思います。ですから、それを協議という、協議の言葉の捉え方によりますけれども、そこで結論を出さなきゃならないというふうにすると、また、本来の懇談の、十分に意見を聞くとか、こちらが丁寧に御説明するというところが逆に圧縮されてしまう危険性もあります。それから、数十の御要望をいただいておりますので、まずは御意見を聞く、そしてまた、あたう限り私の方から御意見も、その中で、どちらかということじゃなくて、両者のいろいろな考えが合わさることによって何か新しい解決方法が見つかることを私は期待しているということでございます。
○川内委員 それじゃ、大臣、私も言い張るつもりはないんですね。全面的な解決に向けて何らかの結論を見出すための意見交換の場、継続的な意見交換の場、もう一回言いますね、何らかの解決策を見出すため、全面的な解決のための解決策を見出すための継続的な意見交換の場という理解でよろしいですね。
○伊藤国務大臣 ちょっと繰り返しになりますけれども、タスクフォースの目的はしっかりとした懇談の場をつくることでございます。そこで関係団体からの御意見、御要望について誠実かつ真摯に検討を行いつつ、進めていくということでございます。
全面的な解決、これはなかなか、人によって定義が異なると思います。水俣に関係しては、訴訟を行っている方もいらっしゃいます、行っていない方もいらっしゃいます、特措法で認められた方もいらっしゃいます、認められなかった方もいらっしゃいます。また、それ以外のいろいろな、多岐な意見もございます。
ですから、全面的解決というのは、訴訟が終わることだけをもって全面的解決とは言えないわけですね。だから、究極的な目的としては、この特措法にうたわれているように、地域紛争を終結させ、安心な社会をつくることでありますけれども、全面的解決という言葉をなかなか軽々に申し上げるのは難しいんだろう、究極的にはそれを目指しておりますということでございます。
○川内委員 環境省として、環境大臣として御努力いただくことについては、敬意を表したいというふうに思います。
そこで、ちょっと根本的なお尋ねをしたいんですが、公健法上の水俣病患者、あるいは特措法上の水俣病被害者、どちらも水俣病の方たちであるということでよろしいですね。
○伊藤国務大臣 平成二十一年の水俣病被害者特措法では、地域における紛争を終結させ、水俣病問題の最終解決を図るため、公害健康被害補償法に基づく判断条件を満たさないものの救済を必要とする方々を水俣病被害者として受け止め、政治解決により救済措置が講じられております。
公害健康被害補償法、特措法と制度の違いはありますが、いずれの方々も、水俣病問題と関係がないという認識には立っておりません。
水俣病被害者は、特措法では水俣病被害者と規定してございます。
○川内委員 今の答弁を聞いて、多分、小学生や中学生は分からないと思うんですね。
平成二十五年の最高裁判決で、四肢末端の感覚障害だけであっても、その他の様々な要因によって総合的に水俣病と判断されるという判決があったわけですけれども、公健法上の、法律上の水俣病というのは、メチル水銀を含む魚介類を多量に摂取することによって発症する病、それが水俣病である。
今、大臣は事務方から説明を受けて、ごまかされているんですよ。公健法上の水俣病では、それは水俣病ではなくて、補償協定上の水俣病なんです、大臣が今御説明されたのは。
補償協定で、千八百万とか、千七百万とか、千六百万の補償をしますよという水俣病、要するに、公健法と補償協定が結びついているがために、水俣病というものが物すごく狭く解釈されて、物すごい混乱をずっと引きずっているというのが今日の状態なんです。
だって、いろいろなものを食べて何か病気になりました、それは個人差が物すごくあるに決まっているじゃないですか。大臣は学者だから、私が言っていることは分かりますよね。物すごい個体差がある、個人差がある。物すごく重い人もいるし、軽い方もいらっしゃる、あるいは発症しない人もいるでしょう。
でも、発症していればどんな軽い人でもそれは水俣病ですよと、法律上はそうなっているんです。それを限定しているのが通知ですよね。通知で限定したわけです。そこにごまかしがあるんですよ、環境省の。
だから、それらを解決するには、政府として今までの病像とかをしっかり、位づけという言葉は余りよくないかもしれないけれども、しっかり研究した上で、こういう人たちにはこうする、こういう人たちにはこうする、こういう人たちにはこうするという、物すごく精緻な議論が必要なんですよ。
大臣は、裁判でいろいろなことを言われるのは、国際的に認められた科学的根拠に基づいていない判決だとか、記者会見で述べられたりしていますよね。だけれども、国際的に認められた科学的根拠というのは何ですか、前田審議官。
○前田政府参考人 お答えいたします。
国際的な科学的知見という内容につきましては、WHOが示すメチル水銀の環境保健クライテリア、そちらに基づいているものでございまして、こちらは一九八〇年のWHO総会の決議に基づく国際化学物質安全性計画により、WHOが国際的な研究者の協力を得て作成したものでございます。
答弁は以上です。
○川内委員 大臣、今説明があったじゃないですか。これは環境省にもらったんですけれども、環境保健クライテリア一〇一と書いてあるんですけれども、今、WHOがと言ったんですけれども、この表紙に、この報告書はWHOの公式見解を必ずしも表すものではないと書いてあるんですよ。WHOがと環境省は言ったけれども、WHOの公式見解を必ずしも表すものではないと書いてあるんです。これは知っていましたか、大臣。知っていたか知らなかったかだけ、教えてください。
○伊藤国務大臣 存じ上げておりました。
○川内委員 それをWHOがというふうに言い張って、国際的に認められた科学的根拠に基づいた判決じゃないんだ、判決じゃないんだと一生懸命言っているわけですね。
じゃ、大臣、最高裁判決はお読みになられましたか。読んだか読んでいないか、後ろに聞く必要ないでしょう。読んでいないのなら、読んでいないでいいんですから。
○伊藤国務大臣 読んでおります。
○川内委員 読んでいらっしゃるわけですよね。めちゃめちゃ科学的じゃないですか。判決の中に様々展開されている論は、めちゃめちゃ科学的だと思いませんか。
○伊藤国務大臣 どの最高裁判決のどの部分をおっしゃっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
○川内委員 普通、質問者に聞かれることはないんですが、例えば平成二十五年とか平成十六年とか。
○伊藤国務大臣 お聞きしたのは、私の発言の中で、近時の最高裁判決が何を示すかということにお答えしようと思って、それでお聞きしたんですけれども、近時の最高裁判決というのは、二〇二〇年、令和二年に出されたものでありますけれども、これは、メチル水銀中毒症における暴露停止から発症までの潜伏期間は数か月から数年である、長期にわたって微量のメチル水銀に暴露することによって症候が発現することは考え難いという判決があります。
それから、二〇一八年にもございまして、これは、水俣病の場合に発症が通常の発症時期、暴露停止から一年よりも遅延することもあるが、その期間は暴露期間からせいぜい六、七年にとどまるものと認められるという部分を私の記者会見で申し上げたところでございます。
○川内委員 平成二十五年の最高裁判決で指摘されていることについて、ちょっと残りの時間、議論したいんですけれども、環境省事務方は、通知で示されている判断条件自体は否定されていないのだということを一生懸命言うんですね。だけれども、大臣、よく聞いていただきたいんですけれども、私は思うんですよ、判断条件は否定されないですよ、だって、判決の中にも一定の合理性を有すると書いてある、一定の合理性を有するが、さっきも申し上げたとおり、法律上の、公健法に書いてある水俣病の定義というのは、メチル水銀を含む魚介類を摂取することによって発症する病気というふうに書いてあって、症状の程度は一切書いていないわけです、法律上は。そこに補償協定が結びついているから、通知で重いものだけを認めるようにしてきたんですよ。
そのことについて最高裁は、それは違うと。法律上の、さっき大臣は、水俣病被害者も水俣病患者も水俣病ですよねという私の問いに、ちょっとうにょうにょとお答えになられたけれども、要するに、全部水俣病なんですよ、法律上は。だけれども、それに補償協定が結びついているからおかしなことがずっと続いてきた。そのことを平成二十五年の最高裁判決は、この人は水俣病ですよ、症状は軽いかもしれないけれども水俣病ですよということを指摘しているんです。
だから、平成二十五年の最高裁判決で全体の枠組みが否定されたと私は最高裁判決を読んだんです。本当に平成二十五年の最高裁判決を読みましたか、大臣、読んでいますか。読んでいないなら読んでいないと言ってくださいよ。
○伊藤国務大臣 読んでおります。
○川内委員 だったら、全体の枠組みを見直す必要があるということは、私と大臣の共通理解になると思うんですよ。全体の枠組みがおかしいからずっと悲劇が続いてきているんですよ、この水俣病問題について。
大臣も、渡辺議員の質問に対して、以前、法的に不十分な点があるのであればというようなことをおっしゃっていらっしゃる。だけれども、議員立法でやれというんじゃないんですよ、これは。議員立法を閣法で改正したことなんかたくさん過去にあるんですから、議員立法を閣法で改正することなんかあるんですから、いっぱいある。だから、この枠組みがおかしかったものを、もう時間もそれほどたくさんあるわけではない、そして、速やかに政府としての態度をお示しいただくとするならば、大臣が、全体の枠組みを含めてちょっと専門家に検討会を立ち上げてもらって、早急に議論しようかということぐらいは、私はすべきだというふうに思うんです。だって、大臣はその権限を持っているんですから、というか、大臣しかその権限はないんですから。
最高裁の判決で枠組みが否定されたんですよ、それはちょっとおかしいよということが。だから、症状の軽い人でも水俣病ですという判決が出たわけですから。そこは、大臣、是非、専門家による、これまでの法的枠組みを含めた検討会をつくって、検討してもらおうというぐらいはお述べいただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
○伊藤国務大臣 御指摘がありましたけれども、平成十六年、そして、今御指摘のありました平成二十五年、この最高裁判決において、現行の認定基準である昭和五十二年の判断条件は否定されていないと思います。
他方で、総合的な検討の重要性が指摘された平成二十五年の最高裁判決を踏まえて、昭和五十二年判断条件に示されている総合的検討をどのように行うかを具体化した通知を平成二十六年に発出しております。
関係自治体である熊本県、鹿児島県、新潟県及び新潟市においては、この通知も踏まえて、個々の申請者の暴露、症候、因果関係について総合的な検討が行われているものと認識しております。
引き続き、関係の県市と密に連携しながら、公健法の丁寧な運用を積み重ねてまいりたいと考えております。
○川内委員 大臣、後ろから秘書官殿が差し入れた紙を今お読みになられたわけですけれども、大臣は、累次にわたる答弁で、政治家として自分がやれることはやりたいというふうにおっしゃっていらっしゃるわけです。
ずっとこの問題がなかなか解決しない。そして、最高裁で判決が出ても、いやと。要するに、後ろから今秘書官が差し入れた紙には、いや、僕たちは悪くないもんと言っている紙を差し入れているわけですよ。でも、政府の責任を平成十六年に指摘されて、もう認めざるを得なくなったわけですから、政府に責任がありますということになっているわけですから。
そうしたらば、今度、平成二十五年に、公健法上の水俣病、それから特措法上の水俣病被害者、どちらも水俣病だよ、それ以外の人の中にも水俣病がいるよという判決が出たわけですから、最高裁でですよ。
だから、私は、環境省の事務方の人にいろいろなことを教えていただいていても、裁判に勝ったとか負けたとか言うんですよね。私は、そういう問題じゃないと思うんですよ。自分たちはもうできないから裁判でやってよということじゃないと思うんですよ。
政府として何ができるのかということを考えたときに、検討会を立ち上げて、今のままでいいもんというんだったら、そういう結論でいいんですよ。だけれども、ちょっと待っていてね、スイッチを切らないでよ、平成二十五年の判決を受けて、環境省の事務方に聞いたら、五十二年判断条件を見直さないという意思決定をした意思決定文書がありますかと聞いたら、ないと言ったんですよ。ということは、最高裁判決を受けても、昭和五十二年のままずっと来ているということなんですよ、見直さないんだから。
それは政府として、平成十六年に責任を指摘されて、二十五年に全体の枠組みを否定されたわけだから、今までの来し方、行く末をちょっと議論する、専門家に議論してもらうという検討会、検討会までいかないんだったら、それこそタスクフォースでも何でもいいですよ、何か議論すべきなんですよ。そうじゃないと絶対解決しないです、これは政府として。
是非もう一度、尊敬しているんですから、政治家伊藤信太郎として、検討会の立ち上げをするじゃなくて、検討会の立ち上げを検討するでいいです、ちょっと考えてみる、事務方と話し合ってみるということぐらいは言ってくださいよ。
○伊藤国務大臣 御指摘を踏まえて、適切に対処してまいりたいと思います。
○川内委員 終わります。
○務台委員長 次に、篠原孝君。
○篠原(孝)委員 立憲民主党のトリを務めます篠原孝でございます。
水俣病は、本当に六十八年とかがたって、何回国会で議論されているか分かりません。ダブるのを避ける意味もあって、最初に、石井政務官、おいでいただいていますね、そちらの方からお伺いしたいと思います。
熊本の人には今熱狂的に迎えられていますTSMC、私はこれは非常に心配しているんです、第二の水俣病になるんじゃないかと。
皆さん御存じだと思います。シリコン、半導体、シリコンバレーとよく言われますね。なぜかというと、半導体を作るには水が、しかもきれいな水が必要なんですよ。だから、長野県でいえば、伊那谷があるんです、シリコンバレーと呼ばれているところがあります。坂城町という、僕の選挙区じゃないんですけれども、上田と長野の間にある、そこもシリコンバレーと。
蒲島前知事は、九州を新たなシリコンアイランドと言っている。原発もそうです、明るい未来のエネルギーと。それでもってみんなほかのを消して、わいわい言って、問題があるのをチェックしないんですよ。また同じことが行われている。経産省は、非常に無責任だと思います。
日米半導体摩擦というのがあったんです。日本が世界の半導体の大半を生産し、輸出して、相手の国の産業を潰している、やめてくれとアメリカがかんかんになって怒って、その代わりに日本は買えと言われて、金額で大きくなるのは航空機です、航空機は日本で造っていませんから、買えばいいわけです。金額的にはささやかなんですけれども、林産物をいっぱい輸入させられたんです。こういうのが中山間地域の疲弊につながっているんですよ。
そうやっておきながら、円高事業対策とかをやっていましたけれども、途中からのぼせ上がったんです。もう弱い産業は日本国にいなくたっていい、競争原理が働いて、労働集約的なものは東南アジアや中国に行ったっていい、先端産業だけが日本に残ればいいと。生意気ですよ、人間も生意気になっていく人はいっぱいいるんですけれども、産業界もそうです。経産省が生意気になって、一切援助しないというのでやって、このざまですよ。車も、エンジンで走っているのはあるんだけれども、車に積んだ車載半導体が必要だ、それがないというので、日本の自動車産業は真っ青になったわけです。
それで、補助金はけしからぬと言っておきながら、五千億近い補助金を一企業に出す。農林水産省は真面目ですよ、一農家に補助金は出しません、そっちは融資です。共同でやっているものにしか出さないんです、ちょろまかしがあったりするといけないし。ところが、一大企業に。
進出してください、日本に行ってやるという態度だと思いますけれども、私は違うと思います。台湾で文句を言われっ放しなんです、TSMCは中国の企業だ、台湾を汚しまくっていると。サイエンスパークとかと言われています。第一と第二がある。近隣住民はかんかんです。森は切る、日本で数少ない東京の森を切ったりしているとんでもない知事もいますけれども、めちゃくちゃですよ、出ていけと追い出されているんです。そこがちょうどいいからと、水が豊富だから。
熊本市周辺の人たち、百万人は、地下水のきれいな水を飲んでいるんです。川の流れているのを止めて、浄化しているんじゃないんですよ。水前寺公園というのがありますけれども、あれは水が豊富だからなんです。
こういう実態を経産省は知っているんでしょうか。私は、これもだまして、全然しらばっくれて、そして歓迎一色で受け入れている。何かちょっと最近の新聞を調べましたら、多少あったんですね。熊本だけです、全国紙の熊本版のところに、熊本県がそれは心配だと行ったけれども、みんな環境規制をきちんとやっていて、そんな問題はない、ないといって帰ってきているんです。だから、安心だといって工場を造っている。
この実態を経産省は知っているんでしょうか。政務官は承知していますか。
○石井大臣政務官 篠原委員の御質問にお答えさせていただきます。
まず、台湾でのTSMCの水質汚染が問題になっているかどうかというお話をおっしゃられました。TSMCの工場が立地する台湾の新竹サイエンスパーク周辺地域において環境汚染を懸念する声があるということは承知しております。
こうした懸念を受けて、昨年夏、熊本県庁が現地を訪問し調査を行ったところ、TSMCが原因で深刻な環境問題が発生している事実はない旨を確認し、その結果については公表されているものと承知しております。
経産省としても、引き続き、状況を注視するとともに、自治体とも連携し、自治体というのは熊本県ということでございますけれども、連携して、必要に応じて対応を行ってまいりたい、そう考えております。
○篠原(孝)委員 どこかで聞いたせりふですね。我が日本国で、水俣でも阿賀野川でも、いや、うちは悪くないというのを何年言っていたんでしょうか。
もし分かっていたら、早くやっていたら、さっき野間さんの質問の中にありました、テレビの後ろの方に、早くこれをやっていたらと。健康調査もありますけれども、早く分かっていたら、早く公害認定をしていたら。最初はみんなそう言っているんです。だまくらかしているんです。同じことを今やっているんです。
それは台湾は出ていってもらいたいから、公害で困っているから出ていかせるなんて誰が言いますか、そんなことを。私の言うことは、こんなことは言ってはいけませんが、よく当たるんですよ。本当にとぼけたことをしているんですよ。こんなことをしていていいのかと僕は思います。
台湾政府もTSMCに文句を言えないんです。日本のトヨタは、農業総生産額をしのぐ売上高、GDPの一〇%です。ところが、TSMCは、台湾の一九%も占めているんです。だから、文句を言えないんですよ。分かっていても、水俣の文句を言ったら水俣市が生きていけないからとみんな黙っていたのと同じ。水俣市でチッソは殿様だから、チッソがなかったら困るから。同じことが台湾でも起きているわけです。そして、これが熊本にまた来ているんです。
どうしてか、私は不思議だと思います。これは先を言うとよくないので、長野県の人に嫌われるかもしれませんけれども、びっくら仰天ですよ、PFASで千曲川が汚染されているんです。何で千曲川が汚染されているのか、僕は気になっているんです。県庁に聞いたって、何だか分からない、答えが返ってきません。農薬だとか、同じことが言われる。農薬汚染じゃないか、マルチ栽培というのでビニールをかぶせている、あそこから何かしみ出ているんじゃないかと。私は違うんじゃないか、余り断定的なことは言えませんけれども。
半導体にはいろいろな特殊なガスが必要だし、液晶のところをきれいにするのにエッチングとかに使用するんだそうですけれども、そこにPFASが使われているんです。長野県は軽薄短小しか成り立たないんです、工業では。重化学工業なんてあり得ないですね、港から離れていますから。だから、私のところでいえば、新光電気、日本無線、新日本無線とか、半導体産業なんです。私は、そこからいっぱい有毒物質が流れているんじゃないかと思う。日本中が汚染されてしまう、きれいな水を求めてきたところで汚染されてしまうんです。
これは、私はほっておいてもらっては困ると思います。絶対に二度と同じ間違いをしないようにしてもらいたいと思います。熊本県にも警告したいと思います。やめるべきだと思いますよ、TSMCは。そんなに大事だったら、自分たちでまたゼロからやり直せと。
そして、絶対に必要なのは、競争原理、競争原理で来ていますけれども、必要不可欠なものの五〇%ぐらいは国内で作る。食料がそれになるわけです。経済安全保障が大事だ、それでどうしているかというと、傑作です、冬期湛水といって、この辺で分かる人はいますか、冬に水をためておくんです、田んぼに。九州は裏作ができるんですよ、麦でも大豆でも何でも冬の間に。それをやめて、水をためておいてくれ、水がなくなるからと。食料安全保障そっちのけで、半導体の水のために田んぼに水をためておいて、そして地下水を豊富にしている、そこまでしているんですよ。
しかし、そこまでやって、汚染水をだんだん流されている。日本中が汚されるんです。また金、金、金でやり出すんです。もう私は見ていられないと思います。国会でこういう質問をしている人が今までいたのかどうか分かりませんけれども、重大警告をしておきます。
政務官はこれで結構です。経産省へ戻ってから、これをちゃんと伝えていただきたいと思います。
次に、今まで皆さんが触れておられないことなんですが、環境省の職員の構成の問題です。
熊本に、水俣に行かれた方は、神ノ田部長さん、それから室長さんとかは医系技官の方ですね。だけれども、ちょっと聞いたら、みんな厚生労働省採用で、厚生労働省からの出向だと。
環境省、環境庁ができて何年ですかね。一九七一年にできたんです。環境省になったのが二〇〇一年です。医系技官は環境省にもいっぱい必要なのに、何でそんなことをするのか。あっちに行ったり、こっちに行ったりするのはいいんです。県に出向する、厚生労働省に行く、外国のどこかに行く、だけれども、ホームグラウンドは環境省だという医系技官をつくっておかなくては駄目じゃないですか。こういうところがたるんでいると思う。どうしてそういうことをしないのかと思うんです。
大臣、これは大臣の鶴の一声で直せますから、直してください。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
いつも重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
少し事実関係を申し上げて、私の意見を申し上げたいと思います。
御案内のように、環境庁発足から五十三年がたち、多数の職員を環境省で採用、育成してきております。
こうした職員は、多様な専門性を、医系技官もそうですけれども、有しており、複雑高度化する行政ニーズに迅速かつ的確に対応するため、それぞれ貢献していると思います。
御指摘の医系技官でございますけれども、医系技官を含め、環境省として、これから多様な職員を採用、育成してまいりたいと思います。
ただ、他省庁との比較を必ずしも出すべきではありませんけれども、環境省におけるプロパーの職員比率はどんどん高まってきております。ただ、残念ながら、今、プロパーで医系がいないというのも事実でございますので、そこも含めてしっかり改善してまいりたいと思います。
○篠原(孝)委員 ずっと環境省にいる必要はないんですよ。だけれども、環境省でずっといくんだ、ここがホームグラウンドだという人をつくらなきゃ駄目ですよ。
これはちょっと余計な話ですけれども、大臣は何でもできるというのは、高村正彦外務大臣のときに、僕は同じように建設的な提言をしたんです。どういうことかというと、アフリカが大事だ、アフリカが大事だ、TICADとかいってやっておられるけれども、アフリカに若い頃に行ったら、その人たちを偉くしないと。聞いたことがないと言っては悪いけれども、そういう人を大使にしていると言ったら、それを聞いて、ちゃんとやりますと。あの人は勝ち気ですからね。それから三か月後ぐらいに、大臣官房の課長三人を一斉にアフリカの大使にしたんです。そういうことができるんですよ。さっき、大臣だから何でもできる、幸せなポジションだと言っておられましたけれども、そういうことができるんですから、是非やってください。
それでは、時間はそんなにないんですけれども、本番の水俣病です。
やはり何が一番問題かというと、私は、今までの排水を止めなかった、公害病だと認定しなかった、いろいろあります、国の責任だと認めなかった、だけれども、何が一番いけないかというと、健康調査をしていないことだと思います。僕は初めて知りました、熊本県がとっくの昔にちゃんとしたものを出していた。小野さんは知っていましたかね、熊本で。それを国が全然採用しないで、しらばっくれている、こんなとぼけたことがあるか。
これを全部やったりしたら、隣を気にして手を挙げられないとかはなくなるわけです。国や県がちゃんと検査してくれた、そして、俺は、私は水俣病だと。だからといって、こういう程度だったら、人によって症状は違いますからね、それで分かってくるわけです、一斉に解決できるわけです。
これは是非していただきたいと思いますけれども、何でこれができないのか。大臣、お答えいただきたい。
○伊藤国務大臣 特措法第三十七条三項で、手法の開発が必要であるということがうたわれておりますので、環境省としては、脳磁計とMRIによる手法の開発を進めてきたところでございます。
何でとおっしゃられましたけれども、私も必ずしも医学研究者ではないんですけれども、手法の開発に当たっては、まず、研究に御協力いただける患者さんを探し、研究内容を御説明して個別に同意をいただいた上で、医療機関で複数の検査を受けていただく必要があります。こうした形で丁寧に研究を進め、さらに、汚染地域外にお住まいの健常の方にも御協力をいただいて、科学的知見を、分析可能となる三百人以上の規模の対象を集めてきているわけでございます。
この結果、この手法の開発が一定の精度に達したことから、昨年度立ち上げた研究班において、健康調査の在り方の研究が進められており、こうした専門家による議論も十分に踏まえながら、できるだけ早く検討を進めてまいりたいと思います。
一方で、水俣病問題については、これも繰り返しで恐縮ですけれども、公害健康被害補償法に基づいて三千人が認定を受けて補償を受けられるとともに、これまで平成七年と平成二十一年の二度にわたる政治救済により、合わせて五万人以上が救済されております。
水俣病対策でございますけれども、熊本、新潟で意見交換を進めるとともに、よくお話をお伺いして、今までの長い歴史、複雑な状況、これを十分に踏まえつつ、真摯に前進させるために全力を挙げてまいりたいと思います。
○篠原(孝)委員 時間が押していますので、ちょっと僕がわっと言いますから、聞いていていただきたいと思います。
四ページの資料を出してありますけれども、三つの判決、これは違うんですよね。ごたごたしているので、こんなに各地の判決もまちまちだったら、患者の皆さんが困りますよ。司法がラストリゾートですけれども、これに頼ろうと思っていても、大阪地裁のように、みんななるんだったらいいんですけれども、これはやはり行政がやらなくちゃいけないと思います。司法と行政と立法と三つに絡んでいるんです。日本のシステムが問われていると思います。六十八年もたって、これ一つ解決できないのか、何をしているのかと。
次のページは、前のときにも提出しましたけれども、和解に至っているのは、国が、総理が言って解決しているんです。ハンセン病も総理談話で解決していたはずです。そして、そういうことはできるはずです。それが二ページ目です。
そして、次は、去年の九月の、長野駅前で月曜日に街宣をしているんですが、そのときの私のペーパーです。その二ページ目のところを見てください。ここでちょっとは言ったかと思いますが、余り言っていないんですが、ドミニカに農業移民で行ったところが、土地が全然、うそで、提供されていなかった、それで路頭に迷うわけです。我が日本国、金持ち日本国は、小泉純一郎総理が談話を発表して、一人二百万円、そのときに補償をした。ドミニカ政府は黙っていた。しかし、お金がたまってきたんでしょうね、びっくら仰天ですよ、四十三世帯、家族に対して、一家族当たり二千万円の補償をするというのを発表して、やっているんです。貧乏国なんて言っては悪いんですけれども、そんなにお金もない国がこういうことをしているんです。日本国は、ここに書いてあるように、謝らない、失敗を認めない。日本はそうなんですよ。しつこいんです。
そんな中で、私の個人的なことですけれども、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。もうほとんど環境省の人たちも知らないと思いますが、山内豊徳さんという立派な方がおられたんです。環境庁です、一九三七年生まれ、私より十歳ぐらい上ですけれども、企画調整局長で、悩んで自殺されたんです。
この方は、私は何で知っているかというと、霞が関ペンの会というのがあったんです。どういうことかというと、霞が関の役人で本を書いている、自分のやった法律の解説書じゃなくて、そうじゃない本を書いている。山内さんから電話がかかってきて、私は「アメリカは田舎の留学記」という本を出したところなんです、そういうことをやりたいから会に参加してくれ、勉強会をやったりすると。非常に優しい人でした、物腰が柔らかで。そういう人だから私は入ったんです。ほかに、竹本直一さん、それから、厚生労働省の先輩では大泉博子さんとかがいました。
この方が、本当は水俣病の患者を救いたいから全面的に和解したいというのに、国は絶対和解しちゃいけないと。そもそも福祉行政をやりたいということで厚生省に入られている、そういう人なんです。そういう人が命を絶たれるわけです。びっくら仰天です。命を絶たれたのは一九九〇年ですけれども、環境庁長官が、三十年ぶりに水俣を訪問しているんです。そういう高圧的な国なんです、現場にも行かない。それからすれば、大臣は大したものです。大分、日本国政府も柔らかくなったと思いました。
私は、つなぎで、水俣病被害者とともに歩む会の会長というのをやっていたんです。私の選挙は関係ないですよ。たった一つ、私は環境委員会の近藤さんに次ぐ主みたいになっているので、しようがないから。近藤さんがやった方がいいんですけれども、嫌がっていましたので。何でやったかというと、この山内さんの無念を晴らすことができるんじゃないかと。しかし、私よりも、阿賀野川を抱えた西村智奈美、水俣のすぐ南の野間健の方がふさわしいから、会長と事務局長にして、うまくいっていると思います。
これは、やる気があるかどうかですよ。山内局長、自ら命を絶たれた方、この無念を晴らしていただきたいと思います。環境省の職員の皆さんに、まずそういう気持ちを持っていただきたい。さっき川内さんが、裁判に負けた、勝ったとかと言っている、そんなのじゃないよと。当たり前ですよ。
それで、うちの方の変な人たちが、この問題、マイクを切断した事件があったときに、環境大臣の首を取れるぞとかと言って喜んでいたのがいましたけれども、僕はどなりつけました。何をばかなことを言っているんだ、そんなのはうちではない、ちょうどこういうのがあったから責めたりするから、こんなことがあったので、これをきっかけに水俣の患者を一気に救うんだと。
だから、今大臣は大変かもしれませんけれども、そういう機会に恵まれておられるんだと思います。この絶好の機会を是非生かして解決していただくことをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○務台委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時二十三分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○務台委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。市村浩一郎君。
○市村委員 日本維新の会の市村でございます。今日は四十分いただきまして、質疑をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
私は、あらゆる政策には環境のフィルターを通すべきだ、こういう思いで政策活動に取り組んでおります。そういう観点からしますと、今日、こうしてお時間いただいたことを心から感謝をいたします。
では、早速質疑に入ります。
まずは、唐突になるかもしれませんが、ハクビシンの話をさせていただきたいと存じます。
まず、ハクビシンは、外来種としてはどのような類型にありますでしょうか、簡単にお答えください。
○白石政府参考人 お答え申し上げます。
まず、ハクビシンでございますけれども、いわゆる特定外来生物ということではございません。
こちらにつきましては、我が国において生物の種の同定の前提となる生物分類学が発展して、海外との物流が増加した明治期以降のものを対象として特定外来生物というふうにしておりますけれども、ハクビシンは、明治時代以前に我が国に持ち込まれた外来種でございますので、科学的根拠に基づいて整理されていることから、特定外来生物には指定されていないということでございます。
○市村委員 ハクビシンと同様の農作物被害をもたらしているものにアライグマがありますが、このアライグマは、今のお話の中に出てきましたように、特定外来種の生物ということで指定されているということで、これは、狩猟期間以外でもアライグマは捕らえることができるということなんですけれども、ハクビシンについては、特定とは指定されていないがために、狩猟はできるんですけれども、狩猟期間以外は捕ってはいけない、こういうことになっているということであります。
そうしますと、狩猟期間以外に、例えば、わなに仕掛けて、箱にアライグマとハクビシンが同時に入っていることがあるというときに、アライグマは捕獲していい、そして、それを役所に持っていくと、役所によって、自治体によって違うらしいんですが、中には千円あるいは三千円という報奨金を出すところがある。しかし、ハクビシンについては、実は同等の農作物被害を与えているにもかかわらず、捕っちゃいけない、狩猟期間以外は。これも、申請して許可を自治体から取ればやっていい、狩猟する資格を持っている人が捕っていいらしいんですが、申請して許可を得なくちゃいけないということであります。
そうすると、大変手間がかかるということもあって、実際に、同じ箱にアライグマとハクビシンが入っているのに、一方は捕っていい、持っていったら千円とか三千円の報奨金が出る、一方は持ってきても困る、今捕っちゃいけませんよ、逃がしてくださいというようなことになって、しかし、逃がしてしまうと、このハクビシンはどこに行くか分からないわけですね。
ある人は、自分の村とか町以外のところに持っていってそれを捨てるというか逃がすとなると、そっちに被害が及ぶということになって、今アライグマと同様にハクビシンも、大分対策は取られていますが、増えているところもあるというところで、これを、やはりハクビシンも特定外来種に指定したらどうだという意見があるんですが、これについて、いかがでございますか。
○白石政府参考人 お答え申し上げます。
答弁の繰り返しになりますけれども、特定外来生物は、生物の同定の前提となる生物分類学が発展して、海外との物流が増加したのが明治時代以降であることを踏まえて、原則として、明治時代以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物を特定外来生物というふうにしております。
ハクビシンは、明治以前に持ち込まれた外来種でございますので、現時点では特定外来生物に指定することは考えておりません。
○市村委員 であれば、今、先ほど私からも申し上げましたが、市町村に申請して許可を得れば狩猟期間以外でも確保が可能だという制度があるということなんですが、残念ながら、それが周知徹底されていない状況があるようでございます。それを大臣、是非とも、周知徹底をいま一度図っていただきたいと存じますが、いかがでございましょうか。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
狩猟期間外にハクビシンを捕獲する場合には、鳥獣保護管理法に基づく許可が必要となります。同法の許可を受けて捕獲されたハクビシンの数は、令和元年度では、三十七都道府県合わせて約二万三千頭となっております。ハクビシンが分布している自治体の多くで、同法の許可を受けた捕獲が実施されている状況にございます。
環境省としても、鳥獣保護管理法に基づく許可捕獲制度について、環境省ホームページでの周知を図っているほか、農林水産省が発行している野生鳥獣被害防止マニュアルや、都道府県や市町村等を対象とした研修等でも随時の周知が行われていると承知しております。
御指摘もあります、引き続き、農林水産省と連携して、鳥獣保護管理法に基づく鳥獣の許可捕獲制度の適切な運用について、都道府県、市町村に対して周知してまいりたいと考えております。
○市村委員 大変被害を受けて苦しんでいる農家さんがいらっしゃいますので、特定に指定するのはなかなか難しいんですけれども、現実的に狩猟できるような制度があるということでありますので、是非とも徹底をしていただきたいと思います。
農作物被害じゃなくて、今、空き家が全国に九百万戸ぐらいある、これはマンションとかは含んでいません、一戸建てで九百万戸ぐらいあるということで、特に農村地帯の空き家にそういうハクビシンとかが屋根裏とかに忍び込んで、そこで巣を作るということ、そこで生きていくということになると、そこにダニとかが発生して、このダニ被害というのもかなり深刻な状況になっているということもあるようであります。
是非とも、そうした状況を、そういう現地、現場の状況をしっかりと把握していただきまして、それを解決する方法、もちろん動物保護という観点も、特に環境省さんの観点からいうと必要なことかもしれませんが、一方で、やはり人間の生活、営みを守っていくというのも必要でありますので、その辺のバランスは大変難しいかもしれませんが、農林水産省さんとこれは協力していただいて、そういう制度の周知徹底を図っていただきたいと存じます。
次に、今度は、クビアカツヤカミキリというのがいます。二〇一二年に初めて愛知県で発見されているということでありまして、これは害虫でありますけれども、世界の状況を見ますと、発見し次第、その発見された木を即刻伐採して、数年間にわたってモニタリングをするというのが基本対策ということになっているらしいんですが、残念ながら、二〇一二年に見つかって以降、そういう即伐採ということをしなかったがために、結局、今、かなり全国、まあ全国とまで言いませんが、九州と北海道にはまだ行っていないようでありますけれども、本州、四国にはこのクビアカツヤカミキリが広がっている。
これは特定外来種ということでございまして、このほかにももう二つ、ツヤハダゴマダラカミキリというのと、サビイロクワカミキリというのも特定外来種に指定されて、防除をしなくちゃいけないということになっているようでありますが、残念ながら、梅の木とか桃の木、それから我々日本人がこよなく愛している桜の木に被害を与えるということで、これを直ちに伐採するという発想が、二〇一二年段階では、なかなか取りにくかったのではないかと思います。
やはり、農家さんからすれば、大切に育てている梅の木、桃の木、スモモの木とか、それから、桜並木にもしそのクビアカツヤカミキリが発見されますと、伐採しろと言われると、皆さん楽しんでいるのに何とかならないのかということで、何とかしようとされてきたんだと思います。いろいろ農薬とかを入れて、あとネットを張ったりとか、いろいろ工夫はされてきたんですが、残念ながら、群馬県とかの取組もかなりのお金をかけてやったんですけれども、結局は防ぎ切れていないということで広がっている、こういうことになっているようであります。
実際、それが、例えば、和歌山県、ミカンの里、あと梅の里、南高梅とか有名ですけれども、いよいよそこまで今そのクビアカが来ているということで、このままいきますと南高梅の里にクビアカが入るのも間近じゃないかというふうに言われているようでありまして、これはもう即刻対応しなくちゃならない。
その対応につきましては、やはり即時伐採ということが必要、それから数年間にわたるモニタリングが必要じゃないかというふうに言われておりますが、大臣、これはどうしたらよろしいでしょうか。
○武村副大臣 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、被害が確認された木を伐採することは、効果が高い防除方法の一つです。
他方で、伐採した木の生産者にとっては一定期間収入が減少することとなり大きな負担が生じることにも配慮が必要であり、地元自治体において、現場の実情を踏まえて、適切な防除方法を選択されているものと考えております。
具体的に、現在、クビアカツヤカミキリが確認された園地等におきましては、被害樹の伐採だけでなく、これも御指摘のとおりでありますが、農薬による防除、また羽化した成虫の飛散防止のためにネットを巻くといった対策を、発生状況に応じて、組み合わせて被害抑制を図っているところであります。
このような取組に対しましては、農林水産省では、伐採や伐採後の焼却費用に係る費用、また伐採に使用するチェーンソー等の購入費用、さらには防除用の薬剤や飛散防止のためのネット等の購入費用等について支援を行っております。また、園地の再生に向けて、被害樹の伐採後に改植をする場合、改植費用や幼木管理費用を支援をしております。
引き続き、環境省や関係都道府県等の関係機関、団体と連携をしながら、クビアカツヤカミキリの蔓延防止対策を取ってまいります。
以上です。
○市村委員 もちろん、先ほども申し上げましたように、二〇一二年に初めて発見されて以来、農林水産省さんも、何とかしよう、何とか切らないで頑張ろうと頑張ってきたのは、本当にその御努力は多とするところなんですけれども、結局防ぎ切れていないという現状があって、このままいくと更にまた広がる可能性があるとなると、これは基本に返って、やはりもう即時伐採しかないのではないかと私は思うんですが、副大臣、いかがですか。
○武村副大臣 繰り返しになりますけれども、伐採をするとなりますと、木の生産者にとりましては一定期間収入が減少するという大きな負担が生じることにも配慮が必要であります。それぞれの地元の自治体において、現場の実情を踏まえて、適切な防除方法を選択するべきではないかと考えます。
以上です。
○市村委員 国立研究開発法人の森林総合研究所が出しているクビアカツヤカミキリの防除法という、これは国の機関ですけれども、ここにも、結局、とにかく即時伐採で、その後の長期間のモニタリングというのが基本であるということを研究所が出しておられるわけですね。ですから、やはり、これは忍びないんだけれども、今までやってきて結局防ぎ切れていないというこの現状を考え、そこからスタートしていかなくちゃならないのではないか、これは忍びないと思います。
私の地元で、十二年前、梅輪紋ウイルスというのが出て、結局、一生懸命何とか切らないで頑張ろうとしていたんですけれども、最後の最後に、やはりもう無理だということで伐採に応じると。ただ、そのときに、今さっき副大臣もおっしゃっていただいたように、やはり伐採費用の問題とか、その後の再植林、それからその育成のときの補助とか、それは是非ともお願いしますということで、当時は民主党政権でしたけれども、私も民主党にいて、それはやらせていただきました。
だから、忍びないですけれども、何とか伐採した後の、今農林水産省も頑張っておられるように、その後の補助というか支援も含めて、それから、その間の生産ができない、出荷できない、そして収入がない、こういうところも含めて、やはり是非とも制度を考えていただいて、特にこのクビアカツヤカミキリ始め、三種ですね、特定外来種に指定されていますので、こうしたものに対して即時対応する、早期発見、早期対処ということをやはり是非ともやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
○大島政府参考人 お答えいたします。
私どもの防除対策の基本的な考え方につきましては、先ほど副大臣から御答弁申し上げたとおりでございます。
基本的な考え方といたしましては、その防除のステージがございますので、蔓延の初期、そして、あるいは深刻になって被害が甚大になっている時期、いろいろとございます。先生御言及されました森林総研のマニュアルにおいても、特に被害が深刻になったときは伐採を基本にということもございます。
和歌山等の梅の大産地で大変被害エリアが近づいてきているということは、私ども大変深刻に受け止めております。常日頃、和歌山県庁さんと意見交換もさせていただいておりますし、その時々に必要な対策を自治体の意向も踏まえながら講じていくということを基本に対応してまいりたいと思っております。
様々、防除に係る費用につきましては、消費・安全対策交付金、あるいは農産局が持っております果樹の支援の対策によって措置をしてまいりたいと考えております。
○市村委員 やっていらっしゃるということは、先ほども申し上げましたように多とするところなんですが、実際に今広がっているということであります。
私の地元の兵庫県にももう入ってきているということでありますので、本当に、農家さんとか、桜の木を楽しみにしている、私もその一人ですけれども、その人間からすると、それを伐採するというのは大変厳しいという思いもあるんですけれども、しかし、これ以上広げない。今のお話をいただけば、もう拡大期に入っているという認識になると思いますので、もうこれは基本に返って伐採、それから一定期間のモニタリングということを是非ともお願いしたいと思うところであります。
それから次に、そうした害獣、害虫とかいうのは早期発見が必要だ、早期発見、早期対処が必要だという流れの中で、各自治体でいろいろな取組をされているところがあります。
つい最近のことなんですけれども、今年の四月なんかは、市町村向けの有害鳥獣捕獲確認事務デジタル化サービスとかがスタートしたりとか、昨年の三月二十二日には、レイミーのAI病害虫雑草診断とか、スマートフォンアプリができたとか、神戸市さんでも、アプリを使って外来カミキリを捜索せよとか、あと、群馬県ホームページだと、ぐんまクビアカネットの運用とか、これはおととしとかに運用されています。各自治体で、そういう早期発見、早期対処という取組をやっておられます。しかも、それを、DXの時代ですから、デジタルの技術を使ってやろうということであります。
そういう観点で、例えば、今ウェザーネットというのがあって、そこが何をやっているかというと、会員さんが自分のいるところの上を見上げて雲とか空を写して、それをウェザーネットの多分解析コンピューターに送るんだと思いますが、そういうことによって天気予報の確からしさをもっと高めようという努力があるということです。
そういうことを参考にして、害獣とか害虫が発生したところの写真、例えば、捕獲しましたということを写真に撮って送るとか、何かクビアカらしいものを見つけた、別に分からなくてもいいんですね、素人でいいんです、とにかく見つけて、アプリをダウンロードして、写真を撮ってそれをアップロードして、メインコンピューターに入れて、AI解析とかで、これはどうもクビアカらしいとかいうことをコンピューターが認識したら、それをいち早く警告を発する。
しかも、位置情報を持ってデータが上がっていますから、どの地点にクビアカが例えば発生したとか、ハクビシンが捕まったとか、こういうのをどんどん送ってもらうというアプリを開発するのが、自治体でやるのがいいんですけれども、動物ですから、虫とか動物は、我々も動物ですけれども、動いていますから、一つの市町村にいるわけじゃありません、やはりいろいろ動きます、ですから、国がそういう仕組みをつくって、早期発見、早期対処という流れをつくったらどうかと思っているんですが、これについてはどういう御見解でしょうか、大臣。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
クビアカツヤカミキリについては、例えば、今御紹介があったかと思いますけれども、群馬県において、地域内での発生地点が一目で分かるようなマッピングシステムを運用するなど、一部の地方自治体において、住民からの情報を収集し、対策に活用している事例がございます。また、全国でも、クビアカツヤカミキリによる被害情報を共有できるオンラインマッピングシステムが森林総合研究所等によって試行的に開発、運用されていると承知しております。
また、環境省においても、野生生物全般を対象に、いきものログシステムを整備、運用し、スマートフォン等を通じて市民参加で分布情報を収集しております。収集情報はオープンデータとして広くインターネット上で提供し、地方公共団体等に活用いただいております。
引き続き、関係省庁と連携して、これらのシステムを最大限活用し、関係機関の間で迅速な情報共有と対策への活用を進めてまいりたいと考えております。
○市村委員 いろいろな取組が行われている、国レベルでもというお話でありました。
そこで、実際に、クビアカの例を取ってみても、まだ残念ながらそこが防ぎ切れていないという現状から考えますと、じゃ、それがやはりちゃんとワークしているのか、そういうことをやっている、やっているというのはあるんですけれども、残念ながら縦割りになってしまっている部門はあるのかもしれませんし、そういうのを包括的に考えていただいて、やはり効率的に運用もできるように、同じようなことをやっているんだったらそれをまとめてもっと機能性が発揮できるような、効率的にやれるような、そういうようなシステムにしていただきたいと思います。
本当に是非ともよろしくお願いしますが、また大臣、今の話でちょっと一言お願いします。
○伊藤国務大臣 委員の御指摘も踏まえて、関係省庁また自治体と連携して検討を進めてまいりたいと思います。
○市村委員 ありがとうございます。
では、次に、今後、太陽光パネルとか各種いろいろなバッテリーというものが、特に電気自動車の時代とかになってきますと、そういうバッテリーとか太陽光パネルというのが使われる、それをどう処分していくかということが大変大きな問題にこれからなってまいる時代になります。
特に太陽光パネルは、二〇三〇年問題、二〇四〇年問題と言われています。二〇三〇年に関しては、あともう五年後ぐらいに出てきます。そのときに太陽光パネルの大量廃棄が始まるということになっていまして、この時代、これをどう処分するか。何もしないと、そのままどこかの産廃業者の方に手渡されて、その方たちがどうするか、ひょっとしたら、ぽんと捨てて埋めてしまうということになってしまいかねないということもありまして、銀とか銅とか、貴重な鉱物も、物質も含んでおりますので、何とかこういうものをしっかりとリサイクルにも回すということが大切であります。そんなことを考えています。
今からもう対処を取っておかなければならない、こういう思いでありますが、この辺に関して今どういう対応を取られているのかということを、太陽光パネル、バッテリー、まとめてちょっとお答えいただければと思います。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げます。
使用済みの太陽光パネルは、二〇三〇年代後半に、年間五十万から八十万トンの排出量のピークを迎えると想定されております。これらについて、適正処理を確実に実施するとともに、リサイクルの促進を行う必要がございます。
このため、昨年四月から、経済産業省と共同で有識者検討会を設置いたしまして、使用済太陽光パネル等の廃棄やリサイクルの在り方について検討を進めております。今年一月に、中間取りまとめを行いました。中間取りまとめを踏まえて、使用済太陽光パネルのリサイクル促進等のために具体的にどのような仕組みが望ましいのか、現在、検討を深めてございます。
また、使用済太陽光パネルのリサイクルを行う体制の強化も必要です。このため、環境省では、太陽光パネルの高度なリサイクル技術の実証事業への支援や、リサイクル設備の導入に対する補助を行っております。
加えて、今国会で成立いたしました資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律では、部品等の分離回収が困難な廃棄物について、高度な技術を用いて再資源化を可能とする事業を対象に、環境大臣が認定を行うこととしております。認定を受けた場合は、廃棄物処理法に基づく地方自治体の許可を不要とし、手続を迅速化することとしており、これによって再資源化の取組を後押ししてまいりたいと思います。
これらの取組を通じて、太陽光パネルの適正処理の実施及びリサイクルの促進に向けて、計画的に進めてまいりたいと思います。
それから、二問目のことでございますが、電気自動車、水素燃料電池車の普及拡大が進んでくると思います。そうすると、今後、これらが廃棄される際に、使用済みの蓄電池の排出量の増加が見込まれます。このため、リユースや再資源化の取組を促進し、処理体制をあらかじめ構築することが重要だと考えております。
電気自動車等に搭載されているバッテリーについては、現在も、事業者が自主的な回収システムを構築しています。加えて、環境省においても、例えば、車載バッテリーや廃リチウム蓄電池のリサイクル技術の実証事業により、技術開発を支援しております。加えて、既に商用化されたリサイクル技術を用いたリサイクル設備の導入も支援しております。
今国会で成立した、さっきと同じ法律で恐縮ですけれども、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律では、製造事業者と廃棄物処分業者が連携して実施する再資源化事業などを対象に、環境大臣が認定し、この場合の廃棄物処理法の特例を設けております。再資源化の取組を制度面でも後押ししてまいりたいと思います。
これらの取組を通じて、バッテリー等の排出量が今後増加した場合でも適切に処理が行えるよう、処理体制の構築に取り組んでまいりたいと思います。
○市村委員 ありがとうございます。
バッテリーの話、太陽光パネルの話は、ちょっとこれで終了させていただきます。
次に、環境省さんがこれまで取り組んでこられている事業の中で、ちょっと私も御縁があっている事業がありまして、それは、風力発電システムの開発であります。
日本においては、日本独自の風力発電システムを生産とかができる企業はないということで、全部外国製ということでありますが、実は、二〇一〇年頃から、日本でも国産の風力発電システムをつくろうという努力はスタートしています。九州大学さんが中心になって行われているんですけれども、その中で、二〇一〇年から、環境省の予算、環境省の助成で、浮体式の洋上エネルギーファームのアイデアというものを環境省さんが支援しておられたんですね。その上に風力発電とか太陽光パネルも載っけるというところで、特にその風力発電システムが、レンズ技術というのを用いて集風効果を高めて、そして発電量を増すというような、ありていに言うと、羽根の周りに輪っかをくっつける、そういうレンズ風車という言い方をされていますが、それを環境省さんが大変支援をされて、第一期の試験はそれを洋上で、浮体の上にそういうレンズ風車を置く、そして太陽光パネルも置いて、そして電気を作る、再エネ発電をやるという事業を支援していただいていました。
その後、ちょっと残念ながら、浮体の方は環境省さんの支援ということはなかったんですけれども、レンズ風車の方は、今度は経産省さんの、エネ庁さんの、そしてNEDOさんの支援を受けて、そのレンズ風車の発展はこの十数年でやっています。さらに、その発展形の中のものが、二〇二二年から今年ということで、二百キロタイプの風レンズ風車、風力発電システムというのが、今、この八月以降に実際に設置されて、発電実験が始まるというところまで来ているところなんです。
今、電源構成が、二〇三〇年に向けて再エネが二六パーでしたでしょうか、ということの中で、その中でも太陽光が一番割合を占めると思うんですけれども、風力もこれから頑張ろうということで、経産省さんも特に洋上の浮体式風力発電というのも大変支援されていますし、この間の日米首脳会談でもこの話が出ていたわけですね、浮体式の洋上風力発電。
だから、この浮体式洋上風力発電も取り込んだやはり洋上エネルギーファーム、これはそもそも環境省さんが一番最初にそういうものを支援していただいておりまして、だから、これを是非とも、風力発電だけではなくて、洋上エネルギーファームということで、風力発電ももちろんある、そして太陽光もある、また、ひょっとしたら、潮力とか波力、それから海洋温度差発電とか、こういうものを一体として洋上エネルギーファームというものに仕上げていくということが、私は、今求められているアイデアではないか、発想ではないかと思っています。
今日は経産省からも副大臣がお越しなんですけれども、ちょっとNEDOさんがこうやって支援をしていただいて、かつ、浮体式洋上風力発電という言い方で今されていますけれども、やはりこれからは、せっかく日本はそうやって洋上エネルギーファームという発想でもやってきた歴史もありますので、是非とも、そういう発想で浮体式洋上風力発電というのを考えて、捉え直していただくことはできないかなというのが思いなんですが、いかがでございますか。
まず、井上部長からお願いします。
○井上政府参考人 お答え申し上げます。
洋上における再生可能エネルギーにつきましては、今後の可能性として、洋上風力のみならず、洋上太陽光や潮力発電に加えまして、御指摘のようなレンズ型風車を含む洋上エネルギーファームもあり得るものというふうに考えております。
洋上エネルギーファームの実用化に向けましては、海水による電気設備への塩害等の影響を考慮していくこと、あるいはコスト低減等、様々な技術的論点に対応していく必要がございます。
こうした点も踏まえまして、御指摘の洋上エネルギーファームにつきましては、CO2の排出削減効果や経済波及効果等の観点から、国によるプロジェクト支援の必要性も含めてしっかりと見極めてまいりたいと考えております。
○市村委員 ありがとうございます。
副大臣、いかがでしょうか。せっかく今日お越しいただいています。
○岩田副大臣 お答えいたします。
繰り返しの点もございますが、洋上風力のみならず、洋上の太陽光や潮力の発電を加えて、また、御指摘のようなレンズ型風車を含む洋上エネルギーファーム、こういったものはあり得るものだ、このように考えております。
一方で、様々な実用化に向けた課題というものもまた整理をされているところでありますので、例えば、電気設備などの塩害の影響、こういったことですとか、コストの低減、こういったところにきちんと対応していく必要があろうというふうに考えているところでございます。
○市村委員 今の塩害というのも含めて、環境省さんが二〇一〇年から支援していただいておった、博多湾に浮体式の、そういう浮体を浮かべて、浮体ですから浮かぶんですけれども、そういうものを浮かべて、もちろん海の上に浮かべていますから、いわゆるさび止めの話とかもそのときに実は実験されています。結構いいさび止めができたりとかしているんです。
だから、既にもう実証は結構終わっているものもありまして、是非ともそれは国がちゃんと支援して、助成して、そういう大学とか学術機関がそこで一緒にやって、もう実際にいろいろな調査結果が出ていると思いますので、そういうのは国がもう持っていらっしゃいますから、是非ともそういうものを御参考にいただければと思います。
それで、最後になるんですけれども、環境省ということで、ちょっと例を申し上げたいのは、今、洋上風力発電ということで、これは着床式のものなんですけれども、例えば、山形県の遊佐町というところで今後計画されているものの設置区域が、陸から一・二キロから五キロ以内というところに、十から十五メガぐらいの巨大な風力発電システムを四十五基とか五十基並べるとかいう仕組みが計画されているらしいんですが、今日、もう時間がないので言いませんが、この低周波たるや、もうこれは一・二キロとか五キロではとてもとても耐え切れないと私は思います。
諸外国の例を見ると、大体二十キロ以上離しています。しかも、すごく巨大なものを造るというのはもう時代の流れではないということも、実は私も九大にちょっと研究員としていさせていただいて、それはもう口酸っぱく聞いている話でありまして、今、これからは、中型の規模のものをブドウの房みたいな感じでクラスター化するのがこれから社会の主流なんです。
ですから、先ほどのレンズ風車の二百キロができますと、この二百キロは、大体、今の中でいうと五百キロぐらいの役割、発電量を持つんです。集風効果で、二百キロだけれども大体五百キロぐらいの発電量を持ちますから、五百キロというと〇・五メガなんですね。一メガの半分までいくぐらいのものが二百キロでいける。それを房のようにやるということで、クラスター化の方がこれから多分風力発電というのはいい方向であるし、世界の権威と言われている先生も、これからはクラスター化が望ましいというふうにおっしゃっておられます、オランダの先生ですけれどもね。
ですから、是非ともそういう方向にしていただきたい、私はそうすべきだというふうに思いますが、最後に、環境大臣の方から、この思いについて、私の提案について御見解を賜れば幸いでございます。
○伊藤国務大臣 お答え申し上げたいと思います。
直接の御質問ではありませんけれども、環境大臣でありますので、御懸念の環境問題についてお話ししたいと思います。
現行の再エネ海域利用法については、経済産業大臣及び国土交通大臣は、促進区域の指定に当たり、関係行政機関の長に協議することとしており、環境省は、事業者が環境影響評価手続を適切に実施し、騒音や鳥類への影響等について適切に調査、予測、評価を行うことを求める等、環境保全の観点から意見を提出しております。
今後、こうした意見も踏まえて、事業者において適正な環境配慮を確保しつつ、事業が進められていくものと認識しております。
また、事業者が環境影響評価準備書を作成した際には、その内容を審査し、適切な環境保全措置が講じられるよう、環境大臣として、必要に応じ、厳しく意見を述べていくことになると思います。
御提案は非常に興味深い提案ですので、また、私どももいろいろ勉強して検討してまいりたいと思います。
○市村委員 ありがとうございます。
ここで終わります。ありがとうございました。
○務台委員長 次に、奥下剛光君。
○奥下委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の奥下でございます。本日もよろしくお願いいたします。
まず、今回のマイク問題を発端に今日の委員会があるわけですけれども、先ほど篠原先生がおっしゃったように、起こってしまったことはもう仕方がないので、これを機に、どうよりよいものをつくっていくかということの方が大事だというふうに思っておりますので、今日はそういった観点から質問をしていきたいと思います。
一連の報道、大臣、何回も言われるのは嫌だと思うんですけれども、涙ながらに語られているのとかを拝見させていただいた中で、やはり大臣、今後、より患者さんとか御家族の方に寄り添った解決策を見出していっていただけるんじゃないかなというふうに思っております。
ただ、実際、団体とかの方々が出している要望書を見させていただきました。多岐にわたるものです。当時の解決策、皆さん全力で取り組まれてきたと思いますけれども、やはり年齢とともに症状が変わったりするのは当然だと思うので、そういったことをより解決していく、これは尽力すべきだと思うんですけれども、実際、賠償をされている、先ほどちょっと出ましたけれどもチッソ株式会社さん、ここが仮に何らかの今の要望をかなえるときに、最終、行き着くところはやはり費用の問題になってくると思うんですけれども、このチッソ株式会社さんは、仮に賠償の額が増えたときとか、こういった支払い能力というのはどんなものなんでしょうか。
○鑓水政府参考人 お答えいたします。
仮定の状況の質問でございますのでなかなかお答えするのが難しいものですから、現在のチッソの状況ということでお答えさせていただきます。
チッソ株式会社は、患者補償金等の支払いのため、熊本県から多額の貸付けを受けているということでございます。
同会社は、中期計画を策定いたしまして業況の改善に今取り組んでいるところでございますけれども、経常利益の中から患者補償金を優先的に支払っていくことを支援するため、平成十二年の閣議了解に基づきまして、国及び熊本県は、経常利益から患者補償金を支払った後、可能な範囲で県への貸付金返済を行い得るよう、各年度におきまして所要の支払い猶予措置などを講じている、そういった状況でございます。
○奥下委員 ありがとうございます。そうですよね、非常に今でさえ厳しい状況だというふうに思います。
今、国が毎年肩代わりして、閣議決定までしているわけですけれども、いずれにしても、その要望をかなえていくときに、これが、先日の委員会でもありましたけれども、議員立法で何らか取り組んでいくのか、政治解決というお言葉も出ていましたけれども、そういったときにやはり何らかの負担は出てくると思うんです。そういったときに、やはり、じゃ、またここで増税かとか、そんなものはあり得ないと思いますし、いずれにしても、国民、納税者の皆様に納得をいただけるものである必要があると思います。
そのためには、やはり、これを機に水俣病についてもっと皆さんに知っていただく必要があると思うんです。現在、我々が水俣病を学ぶのは小学校五年生なんですけれども、全部じゃないんですけれども、四社ほど教科書を取り寄せたところ、多くて四ページにわたって水俣病のことを書かれています。これは小学生の教科書なので、文字も大きく、写真も多いので、実質二ページぐらいのものなんですけれども、あとの二社は、本当に、四大公害病でばんと表が出て終わっていて、一番ひどいところは、当時の経済成長とともに公害問題がありましたぐらいで終わっているんですね。やはりこれはよくないと思うんですよ。
やはり子供たちにも、高度成長期があって今の我々の生活がある中でこういった問題があったということをきちんと学んでいただく必要があると思うんですけれども、是非、大臣の旗振りの下、こういったことを学ぶ機会というか、内容にしていっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○伊藤国務大臣 大事な御指摘をいただいたと思います。
水俣病を始めとする公害問題は、我が国の環境問題の原点でございます。子供を含む国民の皆様には、この歴史と教訓について学んでいただく機会を設けることは非常に大切だと考えております。
現在の小学校学習指導要領においても、関係機関や地域の人々の様々な努力によって公害防止や生活環境の改善が図られてきたこと、公害から国民の健康な生活を守ることの大切さを理解する知識、技能を身につけられるように指導することが求められております。
環境教育を実践するに当たっては、地域において育まれた歴史や教訓等から、環境問題を自分事として捉え、実際の行動につなげることが重要だと思います。環境省としても、環境教育等推進基本方針を踏まえ、公害資料館等の施設を適切に活用するなど、地域の公害の歴史や教訓等を踏まえた環境教育を引き続き推進してまいりたいと考えております。
○奥下委員 先日の委員会でも、環境省の職員の方々はそういった学ぶ場をきちんと設けられているということでしたけれども、是非、小学校でそういったことが学べる環境づくりをしていただけるよう、お願いいたします。
次に、水俣病を教訓として、今後、同様の環境汚染病の再発を防ぐことが一番大切かなというふうに思っております。現在、規制や監督体制に改善が必要な点とかというのはあるんでしょうか。
○土居政府参考人 お答えいたします。
水俣病を始めとします激甚な公害の再発を防ぎ、国民の健康の保全、生活環境の保全、こういったものを図るためには、水質汚濁や大気汚染などの公害の防止と環境の保全に関する施策を総合的、有効、さらに適切に講じていく必要があるというふうに考えております。
具体的に申し上げますと、例えば水質汚濁に関しましては水質汚濁防止法を制定をし、工場、事業場への排出の規制、さらに、地方公共団体におきます環境モニタリングや、工場、事業場への立入調査によります監視、指導、こういったものが極めて重要だというふうに考えております。
これらの規制や監視、指導が引き続き適切に行われるよう、地方公共団体と連携をいたしまして取組を進めるとともに、科学的知見を継続的に収集をしまして、これに基づきまして、環境汚染の防止のために必要な施策につきまして、不断の検討、また努力に努めてまいりたいというふうに考えております。
○奥下委員 ありがとうございます。
今、科学的知見という言葉がありました。先ほども出ていましたけれども、きちんとした疫学に沿ったエビデンスというのはやはり大事で、当時そういった技術がなかったこともあると思うので、今後、そういったことも含めてまた検討していっていただけたらなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、ちょっと話は変わりまして、大阪に豊能町というところがあるんです、私の選挙区の隣町なんですけれども、こちらでダイオキシンの最終処分場が造られる予定になっております。
現在、ボーリング調査を終えて、今月から環境調査に入っているようなんですけれども、この豊能町は、人口減少が続いて、二二年に過疎地域に指定されることから、国からの財政支援を受けることになり、それを機に最終処分場と同時に地域の再開発を進める計画が始まり、今日に至っているわけなんですが、ダイオキシン問題が発覚をしてから二十七年という月日が町を高齢化させて、問題への関心を薄れさせたことも要因だと考えております。
豊能町はたまたまこういった財政支援のタイミングも重なり、動き出したわけですが、こういった問題は、先ほどもちょっとほかの方が出された資料では出ておりましたけれども、今後、全国各地で起こり得る問題だと思うんですね。
こうした際に、国として、もうちょっときちんと補助、助けていく必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○角倉政府参考人 お答え申し上げます。
環境省におきましては、最終処分場を含めた一般廃棄物処理施設の整備に対しまして、循環型社会形成推進交付金等により、地域の実情等も考慮して市町村等へ財政支援を行っているところでございます。また、過疎地域におきましては、この交付要件を緩和するなどの柔軟な対応を行っているところでございます。
御質問いただきました地域ごとの個別の課題に対しましては、各市町村が抱える課題に応じた技術的助言や循環型社会形成推進交付金等の国の支援制度の地域の実情等に応じた活用などを継続して行うことにより、市町村等における一般廃棄物処理が適切に実施されるよう支援をしてまいりたいと考えております。
○奥下委員 ありがとうございます。
支援の対象の枠組みであるとか、こういったものは、この御時世といいますか、こういった時期に来て、もうちょっといろいろ見直していただけたらなというふうに思っています。
豊能町というところでは、国内最高濃度の汚染ということで当時出ておりましたし、その大量の汚染廃棄物がドラム缶に詰められた状態で町が処理するという、町が担うということが迷走の始まりだったと思うんですけれども、自治体がそこは責任を負うのは当然だと思うんです。
ちょっと話は違うかもしれませんけれども、温暖化によって、大阪市では、鯨の処理問題でちょっと今もめていたところはありますけれども、たまたまあれは大阪市だったから、ああいった費用が出たと思うんですけれども、あれがたまたまどこかの小さい自治体とか、そういったときには、やはりそういった一自治体では対応し切れない問題というのは絶対あると思うので、こういった環境を含む全体の問題として、何かそういった補助というのは今後ちょっと考えていっていただけたらなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、ALPS処理水の海洋放水についてお尋ねします。全国の議長会からも要望が出ているのでお尋ねするんですけれども、ALPS処理水の海洋放水が開始されて、中国などにおいては日本産食品の輸入が規制されるなど、今後更なる風評や、先日、ニュースにもなっていましたけれども、中国人男性が靖国神社に、小便と言っていいんですかね、かけて、トイレットと書くという、あんなことも今後また起こるようなことも懸念されます。
今後、更なるこういった風評や、こういったことを防ぐためにも、処理水の海洋放水に関してだけじゃないですけれども、正確な情報発信が求められてくると思うんですけれども、東京電力に対してどのような指導をし、連携していくのか、教えてください。
○川合政府参考人 お答え申し上げます。
ALPS処理水の海洋放出につきましては、まず国として、国内はもとより中国を含む海外に対して、モニタリング結果を始めとする安全性について透明性高く繰り返し説明、情報発信を行ってきております。
具体的には、国際会議や二国間の対話の場、在外公館やメディアへのブリーフィングなどの様々な機会を通じまして、科学的根拠に基づき丁寧に説明を行ってきているほか、SNS、ウェブサイト等を通じた情報発信も行っております。
こうした取組によりまして広く国際社会からの理解と支持が得られている中において、一部の国、地域による日本産水産物の輸入停止措置は科学的根拠に基づかない措置であり、全く受け入れられないと考えております。特に中国に対しては、科学的知見に基づく理解が進むよう、あらゆるレベルで意思疎通を行ってきておりまして、政府一丸となって輸入規制の即時撤廃を強く求めてまいります。
また、東京電力に対しても、ALPS処理水の安全性に関して分かりやすい情報発信に取り組むよう指導を行ってきております。
東京電力による具体的な取組といたしましては、ALPS処理水に関する専用のウェブサイトの立ち上げによる放出の状況のリアルタイムでの表示及び海外モニタリング結果の日本語、英語、中国語、韓国語といった多言語での一元的な情報発信、SNSや動画配信を通じた情報発信、海外のメディアを対象にした説明会や福島第一原発の視察ツアーの定期的な開催等を行っております。
引き続き、東京電力や関係省庁とも連携しつつ、ALPS処理水の海外放出に係る安全性について国内外への透明性の高い情報発信に取り組んでまいります。
○奥下委員 ありがとうございます。
きちんとやっていただけていると思うんですけれども、中国は、我々の常識が通用しない別の角度から難癖ありきで言ってきているところもあると思うので、それでも発信し続けていくことが一番大切だと思うので、今後とも発信していっていただけるようお願いします。
そして、先ほど申し上げたように、ピンチはチャンスということで、ALPS処理水においては、トリチウムの分離の技術においては実用化の可能性を評価したいと思いますし、当該技術の実用化に向けて尽力していっていただきたいと思いますし、汚染物の発生を抑制し、将来的には防止するような、国内外の知見を集約して抜本的な対策を取っていただきますようお願いします。
次に、PFOSについてお尋ねします。
私の地元の摂津市は、ダイキン工業があって、以前にも質問させていただいたんですけれども、ほかの委員、ほかの党の方も質問されて、こういった調査に関して、今までとはちょっと違う、スピード感を持ってやっていただけているなというのは理解しているんですけれども、最終、地元の方々が心配しているのは、やはり目に見えないものなので、調査中とはいえ、早く結論を出してほしいという声は今もよく言われます。
PFOSの食品安全評価の現在の調査経過について教えてください。
○中政府参考人 お答え申し上げます。
先生の御質問にございましたPFOSを含むPFASにつきまして、食品安全委員会におきましては、その下に設置されたPFASワーキンググループにおいて、本年一月、評価書案が取りまとめられまして、その後、意見、情報の募集手続、いわゆるパブリックコメントの手続を実施しております。
その中でいただいた御意見について、この四月に開催された同ワーキンググループで議論が行われ、現在、意見に対する回答及び評価書案の修正について御検討をいただいているところでございます。こちらの手続が終了した後は、食品安全委員会での審議を経て最終的な評価書が公表されるという手続となっております。
委員からの御質問、最終的な評価書の公表の時期につきましては現時点でお答えすることは困難でございますが、事務局としては、専門家の先生の皆様に早期に取りまとめていただけるよう、議論の円滑化のためのサポートを行ってまいりたいと考えております。
また、食品安全委員会としての結論が取りまとまり次第、環境省などのリスク管理機関に迅速に伝達してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○奥下委員 ありがとうございます。
食品安全評価の調査書がないとやはりこの先ちょっと判断しにくいことも多々ありますし、水道水の基準であったりもそうですし、一番は、毒性情報の情報を皆さん知りたがっているという声を私の地元の方では多く聞きます。
うちの地元のダイキン工業さんは、アメリカでも裁判で負けております。アメリカの方と我々日本人の体のつくりが違うから許容量がどれだけ違うかとか、そういった話も聞きましたけれども、この国というのはそうなんですけれども、マーガリン一つ取っても、向こうの国では、欧米では禁止されているけれども我々が食生活全体の中でどれだけ取っても大丈夫だから禁止しないとか。体によくないものはすぐ禁止して、後から分かってこれだったらいいとか、そういったやり方もあると思うんです。
是非、世界的な知見ももっと参考にしていただきながら、早い判断基準をお願いして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○務台委員長 次に、小野泰輔君。
○小野委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔でございます。
本日の最後の質問ということになります。大臣、よろしくお願いいたします。
私は、熊本県の副知事を八年やっておりました。熊本県政も、前蒲島郁夫知事の下で十二年、一緒にやらせていただきました。私自身の直接の所掌ではなかったんですが、水俣病問題に関しては、自らもその経緯というものも見てきたということで今回質問の機会をいただいたということで、私の中にも非常に複雑な思いがあります。
何といっても、先ほど午前中にも非常にいい議論ができていたんじゃないかなというふうに私もお聞きをしておりましたが、水俣病が公式確認されてからもう七十年近くたとうとしている。そして、私は今年五十歳になったんですけれども、ちょうど五十年前に公健法が施行されたということで、それ以来、これは公害ということで認定をされて、被害者の救済ということもされてきたわけですが、それでもまだ終わらないということで、今回は、何でこういうことになっているのかということを中心に議論させていただきたいと思います。
まず、私は、一番の問題だと思っているのは、水俣病の判断基準だというふうに思うんですね。午前中も話がありましたが、五十二年判断基準と言われているものが、これまでずっと長らく水俣病の患者さんなのかどうなのかということを分けてきたわけでございますけれども、その五十二年判断基準によって認定されない水俣病の認定申請者が、時によって、裁判所の判決によって救済をされ、そのことによって申請者が急増して、その後に、これは二度にわたりましたが、政治的な救済が行われてきたというような歴史がずっと繰り返されてきたわけでございます。
私が見ていて水俣病での一番大きな出来事というのは、やはり二〇〇四年の関西訴訟だったと思います。この関西訴訟では、五十二年判断条件は公健法の水俣病認定要件と理解すべきだということで、それとは別個に独自の判断基準を示して、名称もメチル水銀中毒症ということで、水俣病とは違う形で被害者の皆さんの損害を認めたということであります。これは、非常に行政にとっても大きなショックがあっただろうと思います。
その後、司法による救済を新たに求めたり公健法の認定申請を行う方々が増えたために、水俣病問題の最終解決をしようということで、これは私の師である蒲島知事も非常に必死になって動きまして、そして、ここにも関わっておられた議員の皆様もいらっしゃると思いますが、二〇〇九年七月に、議員立法により、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法、いわゆる特措法というものが成立をしたわけでございます。これによって、一時金や療養費等の支給対象者は三・八万人ということで、多くの方々が政治的な救済が行われたということはありました。
しかし、これは、後で別途特措法については質問させていただきますけれども、特措法の救済の対象地域とか対象期間、申請期間というものが問題となって救済から漏れたというような方々が司法救済を求めるという動きがこれまで続いてきました。
そういう中で、私もその当時は副知事をやっておりましたけれども、二〇一三年の四月に、熊本県による公健法の認定審査で水俣病患者と認められなかった女性の遺族が認定を求めた上告審で、裁判所が、県の審査とは別に一から審査をして、個々の事案を総合的に検討し、水俣病というふうに認定をしました。その際、水俣病の認定要件について、五十二年判断条件が示す複数症状の組合せではなくて、感覚障害だけであっても認定可能という判示を行ったわけでございます。これは、私も県庁にいて大きな衝撃を受けました。
この最高裁判決を踏まえまして、同じ年、二〇一三年の十月二十五日に、国の公害健康被害補償不服審査会が、熊本県が行った水俣病の認定申請の棄却処分を取り消すという裁決を行いました。蒲島知事もこれには本当にショックを受けて、十二月十九日、私も年末のことなのでそこは覚えているんですけれども、知事が、国から委託された水俣病認定業務の返上を表明をいたしました。国の判断によって、県がやっている認定審査、それは取り消せというふうに言われてしまった、最高裁判決を受けてそういう判断が国からなされたということで、県としても、これ以上審査できませんということになったわけなんですね。その上で、蒲島知事は、国の臨時水俣病認定審査会、臨水審と言っていますが、国自らがもう判断してくださいということでこの審査業務を返上したということになりました。
その後、ちょっと時間が空いて、翌二〇一四年の三月七日に、環境省は、認定基準の新たな運用指針として、「公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定における総合的検討について」という通知を関係自治体に出しました。これは、いわゆる総合的検討通知というものですけれども、この通知では、元々、五十二年判断基準においても、水俣病であることを判断するに当たっては、高度の学識と経験に基づき総合的に検討する必要があるというふうにされていまして、最高裁判決で総合的検討の重要性が指摘をされたというふうに判示を受けて、五十二年判断条件に示された症候の組合せが見られない場合での総合的検討の在り方を整理をしましたということで、通知の中では、いろいろとその内容について述べられています。
こういう通知があったので、引き続き五十二年判断基準に基づいて総合的検討をやってくださいよということで熊本県あるいは新潟県に指示を出したということなんですけれども、その後に、同じ年の四月二十六日に、国の臨水審も十二年ぶりに再開する、そして、熊本県や新潟県も、その通知に基づいて関係自治体の認定審査会をやっていったということになりました。
そこで、ちょっと最初に御質問をしたいんですけれども、総合的検討通知によって示された、五十二年判断条件に示された症候の組合せが見られない場合での総合的検討によって水俣病患者と認められた例というのは、総合的検討通知の前後でそれぞれ何件あったんでしょうか。そして、それは、全体の認定患者のうち、どれほどの割合を占めているのか、お答えいただきたいと思います。
○前田政府参考人 お答えいたします。
昭和五十二年の通知におきましては、委員御指摘のとおり、水俣病であることを判断するに当たっては、高度の学識と豊富な経験に基づき総合的に検討する必要があるとしてございまして、水俣病の判定は、総合的な検討の上で行われるものでございます。
関係県市の認定審査会におきまして、昭和五十二年通知に示されております症候の組合せが認められないものの水俣病と認定された例がどれだけあるのかの確認は行っていないということで、関係県市におきましても、個人情報保護等の観点から、認定された事案の詳細については公表していないという状況でございます。
なお、平成二十六年三月の総合的検討通知の発出以降、認定された方は二十名でございます。
答弁は以上です。
○小野委員 これは、当時もマスコミも多く聞いていた話ではあるんですけれども、総合的検討というのは、元々、五十二年判断条件がそういったことも含んで基準を作っているんだというふうに言っているので、最高裁の判決で負けた後、そういうふうに通知を出したわけですけれども、それより前にもうやっていたんだったら、そのことをはっきり私は言うべきだと思うんですよね。
それをやらないと、本当に環境省は五十二年判断基準を通知のとおりに今までやっていたのかどうかということが信用できないというふうにも思いますから、やはりそのことを、今からという話にもならないのかもしれませんが、ただ、プライバシーを理由にして何か公表できないなんということは私はないんじゃないのかなというふうには思うんですね。複数症状の組合せによって判断した人とそうじゃない人というのは、別にそれはプライバシーの問題じゃないだろうと。別にそれで名前が分かるわけでもないので、やはりそこはもっと誠実に対応した方がいいんじゃないかなというふうに私は思っているので、これからそれをやることによってどれだけの意味があるのかというのはありますが。
ただ、環境省として、今回のマイク事件ということよりも、私は、そういう情報をちゃんと出すということをやはりやっていかなきゃいけないんじゃないのかというふうに思うんですね。
五十二年判断基準に関連して、ここ昨今の地裁判決で出ていることに関してお伺いしたいと思います。
ノーモア・ミナマタの第二次訴訟で、大阪地裁の判決が出ました。これは近畿訴訟というものですけれども、昨年の九月二十七日に、大阪地裁において、水俣病被害者救済特別措置法で救済されなかった被害者百二十八人が、国、熊本県、加害企業のチッソに損害賠償を求めたということですが、この判決で、大阪地裁は、原告全員を水俣病と認定をして、総額三億五千二百万円の支払いを命じたということになりました。
この判決では、疫学調査を基に、年代、地域による特措法の線引きをなくしたんじゃないかというふうに評価される方もいらっしゃいますし、実際に救済されていない人がいるんじゃないのかということも見解として示している人もいます。
そこで、これは大臣にお伺いしたいんですけれども、今回のこの大阪地裁の判決について、環境省が上級審の判断を仰ぐという決定をされていますけれども、その理由として、国際的な科学的知見、あるいは最高裁で確定した近時の判決の内容等と大きく相違していることを挙げておりますが、具体的にはどこがどう相違しているんでしょうか。
○伊藤国務大臣 昨年九月二十七日、ノーモア・ミナマタ近畿訴訟の大阪地裁の判決については、今委員が御指摘のとおり、国際的な科学的知見や、最高裁で確定した近時の判決内容等と大きく相違することなどから、上訴審の判断を仰ぐ必要があると判断したところでございます。
具体的には、まず、世界保健機構が公表している発症閾値を下回る場合にも水俣病の発症を認めていること、そして、メチル水銀の暴露から発症までの期間は、通常、一か月から長くて一年程度とされているのに対し、それを超えて、十数年やそれ以上の経過後の発症を認めていること、それから、遅くとも昭和四十四年以降は、水俣湾周辺地域でも、水俣病が発生する可能性のあるレベルの持続的なメチル水銀の暴露が存在する状況ではなくなっていたにもかかわらず、それ以降も、広い地域で暴露を推認していることでございます。
そして、二つの最高裁で確定した近時の判決、一つは、メチル水銀中毒症における暴露停止から発症までの潜伏期間は数か月から数年である、長期にわたって微量のメチル水銀に暴露することによって症候が発現することは考え難いというものと、もう一つは、水俣病の場合に発症が通常の発症期間、暴露停止から一年程度よりも遅延することもあるが、その期間は暴露停止からせいぜい六、七年にとどまるものと認められるという最高裁で確定した近時の判決でございます。
○小野委員 まだ地裁レベルということで、双方、水俣病というのはどういう条件で発症するのかということについてはいろいろと考えの違いがあるんだろうというふうに思うんですね。
先ほどの質問でもちょっと出ておりましたけれども、WHOの基準というものが、果たしてそれが本当にはっきりWHOとして言っているものなのかどうなのかとか、あるいは、最新の知見というものがどんどん変わっているという可能性もあったりして、私は、やはり今までの最高裁の判決でこうだったからという理由だけで考えていいのかどうかというのは、もちろん、行政側としてはそういうものを基準にしてやっていくほかはないという事情もあるのかもしれませんが、これは、裁判所もそれだけの理由だけで判示をしているわけではないというふうに思うんですね。
例えば、関西訴訟で判示した岡部裁判長は、熊本日日新聞のインタビューにこう答えておられます。四十年近くも同じ基準を使っていて、一番最近の新しい知見や研究結果を取り入れていないのはおかしなことで、裁判所は今の時点の新しい最新の知見で今回判断をしたというような証言もあります。
ただ、裁判所が果たしてどこまで正しく判断できるのか、これは最後に私は議論したいと思うんですが、そういう問題もありますけれども、ただ、今までの既存の最高裁の判断というものが一緒だったのかというとそうではないし、そこら辺については、やはり我々は、立法府としてもそういう認識は持っておく必要があるんだというふうに思っております。
次に、五十二年判断基準から少し離れまして、特措法の線引きについてお伺いをしたいというふうに思います。
二〇〇九年に成立した水俣病特措法に基づく救済の対象地域、対象年については、ノーモア・ミナマタ訴訟で裁判所から示された和解所見を基本として、訴訟原告だけでなく、訴訟をしなかった患者団体との協議も踏まえて決められたというふうに大臣は御答弁をされております。
しかし、特措法の申請期限を過ぎた後に司法による救済を求める動きが続いて、最近の地裁訴訟では、先ほどのような近畿訴訟でも、大阪では敗訴となっているようなこともありまして、特措法で線引きをしたために救済する範囲が狭くなってしまったというような認識は大臣におありでしょうか。
○伊藤国務大臣 委員が御指摘のとおり、水俣病被害者特措法における対象地域、出生年は、ノーモア・ミナマタの訴訟において裁判所が示した和解所見を基本に、訴訟をしなかった患者団体との協議を踏まえて定めたものでございます。
水俣病被害者特措法の対象となるのは、通常起こり得る程度を超えるメチル水銀の暴露を受けた可能性がある方のうち、四肢末梢優位の感覚障害又はそれに準ずる感覚障害を有する方でございます。対象地域内に一定期間居住歴のある方については、このうち、暴露を推認することにより、個別の証明を求めることなく迅速な救済を図るものでございます。一方で、対象地域外に居住歴がある方についても、個別に暴露の有無を判断し、相当数の方が救済対象になったと承知しております。
したがって、対象地域の指定により救済範囲が狭くなったということではなく、現時点で、水俣病被害者特措法の対象地域の考え方が適当でなかったというふうには考えてございません。
○小野委員 実際に私もいろいろ水俣の方ともお話をしていたりすると、今、訴訟をやっていらっしゃる方々というのは、特措法の線引きの外におられる方なんですよね。ですから、水俣あるいはその線引きの中に入っている方々は、かなり特措法で救済されているというようなお声はお伺いをしています。
ただ、線引きの外でも救う方法はあるんだと今大臣がおっしゃいました。そのとおりだと思います。制度のたてつけ、そして県の方での運用でも、そういうことは私も承知はしているんですけれども、ただ、これは最後でもちょっと議論するんですけれども、証明自体が非常に難しかったり、あと、自分自身が、例えば手の先が震えるとかそういう症状がある方が、それが何でなんだろうというのがそもそも分からないと思うんですよ。でも、チッソはこれだけの公害事件を起こしたということで、そういった健康被害を訴えている方々を広く救うというのは、私は政治の責任だろうというふうに思っているんですね。ですから、今まさにまだ多くの方々が、訴訟によっても水俣病というふうに認定をしてほしいという方がいらっしゃる以上は、やはり私はこの特措法についてどうだったのかと。
申請期間の話については先ほども質問があって、そもそもそんな救済をやっているということは知らなかったという方もいらっしゃった。完璧ではないことはもちろん承知はしていますが、それとともに、線引きというものが妥当だったのかどうかということについてはやはり検証する必要があると思うんです。
そこで、大事なのが健康調査だというふうに思うんです。
先ほどからも健康調査については議論されているところでございます。そして、水俣病の被害者特措法で、まさに三十七条の一項で、政府が健康調査を行うとしているんですけれども、そして、三項で、そのための手法の開発をしていくんだということも規定をされています。
私は、改めて考えてみたんですけれども、健康調査に関していろいろな方が質問されているんですけれども、大事なところが抜けていると思うんです。この健康調査をする目的というのは一体何なんですか。これについては余り誰も正直に、まともに議論していないように思うんですが、この点は、大臣、いかがでしょうか。
○伊藤国務大臣 平成二十一年に成立した水俣病被害特措法の前文において、「地域における紛争を終結させ、水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現すべく、この法律を制定する。」と示されております。この趣旨に基づき、第三十七条第一項で、政府が健康調査を行うことを規定していると承知しております。
水俣病の健康調査については、専門的知見の充実、整理のために、昨年度、研究班を立ち上げたところであり、こうした専門家の議論を十分に踏まえつつ、健康調査の実施に向けて検討を進めてまいりたいと思います。
○小野委員 今の御答弁を聞いていると、安心して暮らせるようにというようなことなのかなと思いますが、それは一体どういうことなのかということをもうちょっと突き詰めなければいけないんじゃないのかなと思うんですね。
先ほども申し上げましたが、不知火海沿岸に住まわれていて、自分自身が、自分でコントロールできないような手の震えとか目まいとかしびれとか、そういうものがあって、それは一体なぜなのかということが分からないというのは本当に不安だと思うんですよね。唯一可能性としてあるのは、もちろん、自分がほかの病気がある、これは特異的でないというようなことも言ってはおりますが、ただ、やはり蓋然性としては、自分自身が不知火海沿岸に住んでいて、それで魚を食べていた、ですから、もしかしたら、自分もメチル水銀を摂取したことによってこういうことが起こっているのかもしれないという不安があるわけですよね。そして、それを言い出そうものなら、偽患者だとかと言われてしまうような雰囲気もあったりしたわけです。
でも、そういう中でも、やはり真実を知りたいという方々が当然今もいらっしゃるわけですし、そして、それに関して国が認めてくれないか、チッソが垂れ流しをして、それを止めなかった事実はあるわけですから、やはりそこに対して真摯に向き合っていくということが健康調査の目的だと思うんです。
先ほど質問しましたように、第二次のノーモア・ミナマタの訴訟で、大阪地裁の判決、それから熊本地裁、また新潟地裁と、全部ばらばらなんですよね。こういった中で、自分たちがこれだけの健康被害をやはり受けているんだ、何かあるんじゃないかという人たちに応えるというのは、私は政治の責任なんじゃないのかというふうに思います。あと、先ほど川内さんが本当にいみじくもおっしゃっていましたけれども、患者さんが全員亡くなるのを待っているんですかと。これは、私も県庁の中にいながら、薄々そういうことしかないのかなみたいなことを、そういうことを考えてもいけないなと思ったけれども、そういうことだって思うわけです。
でも、それを今ここにいらっしゃる皆さんの中で、どうやって救済をしていくのかといったことについて考えをもうちょっと及ぼす必要もあるんじゃないかなということで、今回は環境省の方がマイクのスイッチを切ってしまったということに起因しているわけですが、でも、私は、水俣のまさに最終的解決という二〇〇九年に特措法の中に盛り込まれたことがまだ実現していないので、それを、今回、たった一日ではありますけれども、議論をしたということについては非常に意味があるんじゃないかなというふうに思っているんですね。
そこで、ちょっと戻りますが、環境省では、健康調査についてどうやるのかということについて、脳磁計とMRIを活用して手法の開発を進め、この手法が一定の精度に到達したことから、昨年六月に研究班を立ち上げ、この手法を使った健康調査の在り方について専門的知見の充実、整理を進めているということでありますけれども、これまでかなり長い期間、二〇〇九年からですから、本当に十五年たとうとしているわけですが、それだけの長期間にわたって動きがなかったわけですけれども、ここ最近でどういう事情があって、それは手法開発に関する一定の精度の到達があったということなんでしょうけれども、どういう事情があったんでしょうか。そして、健康調査をこれから行っていくめどは立ったのか、これについてお伺いしたいと思います。
○前田政府参考人 お答えいたします。
健康調査につきましては、水俣病被害者特措法第三十七条第三項で、そのための手法の開発を図るものと規定していることから、環境省では脳磁計やMRIによる手法の開発を進め、学術誌への掲載を進めてきたところでございますが、昨年、令和五年の二月及び五月に論文が掲載をされたというところでございます。
こうした成果の整理が行われたことを踏まえまして、昨年度、令和五年度より健康調査の在り方を検討する研究班を立ち上げたところでございまして、調査実施に当たっての考え方や課題などを整理しているところでございます。
答弁は以上です。
○小野委員 それを一生懸命やっていただくことも、もちろん科学的知見を得るためには大事だと思うんですが、多分、間に合わないと思うんですね。それができ上がって実施できる頃には、もう水俣病に苦しんでいらっしゃる方々はこの世にいないということになっている可能性がある。
そして、先ほど申し上げたように、最近の裁判で判決が出ているその内容自体、水俣病をどういうふうに認めるかという基準自体が地裁レベルでも違うし、それは今まで最高裁の判決で示したものとも違うということで、やはりそれは健康調査を行っていないからだと思うんですね。もっともっと疫学的にやって、そして、これぐらいの蓋然性があるんだったら、もっと幅広く救ってあげようというようなことをやはりやっていかないと、我々が口では最終的解決と言っていても、それが絶対に実現できないだろうというふうに思います。
ですから、この点に関しては、やはり潮谷知事もずっとおっしゃっていました、そして、その手法も提案をしていました。蒲島知事もそれは引き続きやっていましたし、私も、この質問をするということは全く言っていないのに、偶然、先ほど野間さんの資料で森枝敏郎さんの発言みたいな資料もありましたが、彼からも連絡が来て、やはり健康調査はやるべきだというふうにいまだに言っておられるんですね。
ここは、やはり大臣、これ以上、このままでいては、多分、水俣病の解決というのは、自然に患者さんが、皆さんがいなくなってしまうということで終わってしまうというふうに思います。後世にこれは大きな禍根を残すんじゃないのかなというふうに思います。この点、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○伊藤国務大臣 できるだけスピードアップして健康調査が実現できるように、私も全力を挙げたいと思います。
○小野委員 その言葉は本当に何千人もの方が期待をしていますので、是非、もう伊藤大臣でしかやれないというふうに思っていますし、このタイミングを逃したら多分終わってしまうというふうにも思います。
北朝鮮の拉致問題についても、やはりあれも時間的な制約があって、今、岸田総理も一生懸命頑張っておられますけれども、この水俣病問題だって同じだと思うんですね。ですから、やはりそれは党派関係なく、全員がそういう緊張感を持って前に進めなければいけない問題だろうというふうに思っています。
次に、今度は水銀条約についてのお伺いをしたいと思います。
蒲島知事も、この水銀条約を、水俣の方で会議を開きまして、何十か国と集まってもらって、そしてそれを発効させたというようなことにもなったんですが、ただ、いろいろやらなきゃいけないことは結構大変で、水銀というのは、まさにまだ産業でも使っていることもありますし、国内からも輸出しちゃっていたりとかするわけですね。
そこで、これは経産省と環境省にお伺いしたいんですが、まず、国内の水銀の保管状況、これをなるべく、自然界で水銀というのは、生体の蓄積も含めて、大気中も含めて拡散して蓄積して循環するということがありますので、保管をするということが大事です。その状況について、条約が国内で発効する前と後でどういうふうに違っているのか、変わったのか、それから、輸出の状況についても何か改善しているのか、御答弁いただきたいと思います。
○神ノ田政府参考人 お答えいたします。
国内の水銀保管に関しましては、水銀汚染防止法に基づき、水銀等を貯蔵する事業者に対して、環境の汚染を防止するための指針の遵守や貯蔵量等の定期報告を求めております。
この定期報告によると、水銀等を貯蔵している事業所の数は、二〇一七年の九十三事業所から、二〇二二年には六十二事業所まで減少しております。
一方、貯蔵量に関しましては、同期間に、約四十六トンから約百十九トンに増加しております。これは、主として、輸入原燃料に含まれる水銀や、分別回収された製品由来の水銀が、指針に基づき適正に管理、貯蔵された結果であると認識しております。
○浦田政府参考人 お答えいたします。
我が国からの水銀の輸出につきましては、水銀に関する水俣条約及び外国為替・外国貿易法に基づいて輸出管理を行っているところでございます。
水銀の輸出承認を行った量でございますけれども、足下の二〇二三年度において、約四十六トンとなってございます。
輸出の審査に当たりましては、輸入国が書面による同意を与えていること、水俣条約で認められた用途であること、最終用途及び最終需要者が特定されていることなどの条件を確認しており、これらを満たした場合に限定して承認をしているところでございます。
引き続き、水俣条約にのっとり、適切に輸出管理を行ってまいります。
○小野委員 ありがとうございます。
条約を決めていく場所が水俣であったということもありますし、我々が率先して水銀の管理また輸出の抑制ということをこれからも努力していかなければいけないと思いますので、そこは環境省そして経産省で責任を持って努力を継続していただくということをお願いをしたいというふうに思います。
最後に、これは締めくくりとして大臣に御質問したいんですが、改めて、いろいろな方からも聞かれていると思いますけれども、なぜ水俣病は終わらないのか。この点について、なかなか環境大臣としての御認識を答弁をするのは難しい問題だと思いますが、あえてお伺いしたいと思います。
○伊藤国務大臣 公式確認から現在に至るまで、これほど長い時間が経過した理由は、まさに一言では言い尽くせませんけれども、歴史の頭からひもとくと、まずは、当初の対策の遅れが被害を拡大したことがあります。それには当時の役所もチッソもあると思います。それから、環境や健康への深刻な被害というのは容易に回復できないということがあると思います。
そして、水俣病が終わらないということの認識というか、定義でありますけれども、これは、私は、まず、水俣病で苦しんでいる方がたくさんいらっしゃるということですね。それからまた、今日の議題にも何度も出ましたけれども、訴訟を行っている方がいらっしゃる、認定されなかった方がいらっしゃる、また、被害者として認められなかった方がいる。それと同時に、認められたけれども、あるいは被害者として認められたけれども、それに対する国や自治体あるいはチッソからの、政策なり賠償が十分でないということもあると思います。
それから、私は、水俣病に起因して、やはり地域社会に大きな亀裂が生まれた、また、偏見や差別や、人々が憤るいろいろなことが起きてきた、そしてまた、それは今完全になくなったわけではないということで、本当に水俣病を終わらせるというのはそんなに容易なことではないと思います。
ですから、環境省として、やはりそれをどうやったら終わらせるというか、解決できるか、環境省ができる限りのことをしたいと思っております。
繰り返しになって、でも、最後ですから申し上げれば、やはり公害健康被害補償法に基づいて三千人の方が認定を受けて補償を受けられるとともに、これまで平成七年と平成二十一年の二度にわたる政治救済により、五万人の方が救済されております。
そして、今度、私だけではありませんけれども、私は熊本、新潟に行って意見交換を進めます。そしてまた、皆さんの話をよくお聞きし、こういった本当に複雑で、また人によって立場や意見の違う、そして、この件については必ずしも同じ意見じゃない場合もあるんですね、そこも含めて解決していくということが必要でありますし、私も環境大臣として、前進させるために全力を挙げたいと思います。
○小野委員 大臣には、是非全身全霊で頑張っていただきたいと思うんですね。
最後にちょっと申し上げますけれども、私も県の中にいて、審査業務をやる立場として仕事をしていたわけなんですね。ただ、その中で、今、こうやって議員になっているから言えるんですけれども、審査業務をやっている県の立場としては一切言えないことですが、加害者である国や県が水俣病を規定して、そして患者かどうかを認定するという制度自体が私はもう限界に来ているんじゃないのかというふうに思うんですね。
あと、先ほど午前中の議論でもありましたが、PPPの原則、これはOECD諸国でもそういうことが認められているわけなんですが、でも、あくまでもその企業が払えるだけの範囲内でしか救えないわけですね。
これは表ではなかなか言えないのかもしれませんが、やはりチッソを救済して、先ほども公費を入れて実際にはやっているじゃないかという話がありました。そして、原発の補償についても私は同じことを思いますけれども、国と県の責任も問われている中で、そして海全体が汚染されたわけですよね、それを国民全体として、やはりみんなでその痛みや苦しみを分かち合おうじゃないかというような哲学が出てきたっていいんじゃないのかというふうにも思うんです。変に邪推はしたくはないんですね。払える範囲内で救おうみたいなことがあってはいけないし、あったのかどうかなんて私は言いませんけれども、ただ、やはりそうやって誰が判断するのか。
これは、裁判所が、今、結局、裁判に訴えて、誰が患者で、誰が患者じゃないのかということを判断していること自体もおかしいし、裁判の判決自体でもその基準が違っているということで、やはり私は、健康調査をちゃんとやった上で、そして幅広く、確からしさがこれだけあるよねと。そして、疑わしきは被告人の利益にじゃなくて、疑わしきはこれは患者の利益にということで考えていくということがなければ、最終解決なんて望めないんじゃないのかなと思っています。
ただ、これは、大臣に何かを申し上げて、それで全てが解決するわけではないと思います。国会も含めてですし、メディアもそうだし、それから国民全体でも考えていかないと、人類最大の健康被害、公害というものをどうやってこれから考えていけばいいのかというのは、まだまだ難しい問題があると思います。
ただ、私は、この機会をつくっていただいた委員長、委員の皆様方、そして来てくださった大臣に本当に感謝したいと思いますが、これからまだこれは本気になって議論していかなきゃいけない問題だというふうに思いますので、是非大臣も、引き続き、水俣病で苦しんでいらっしゃる皆様のために、これからも頑張っていただきたいというふうに思います。
終わります。ありがとうございました。
○務台委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後二時四十一分散会