衆議院

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第2号 平成28年9月30日(金曜日)

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平成二十八年九月三十日(金曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      赤枝 恒雄君    秋本 真利君

      伊藤 達也君    石崎  徹君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    大岡 敏孝君

      大串 正樹君    奥野 信亮君

      神谷  昇君    木内  均君

      黄川田仁志君    國場幸之助君

      佐田玄一郎君    鈴木 俊一君

      武部  新君  とかしきなおみ君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    野中  厚君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平口  洋君    福山  守君

      星野 剛士君    宮川 典子君

      宮崎 政久君    茂木 敏充君

      八木 哲也君    保岡 興治君

      山下 貴司君    渡辺 博道君

      青柳陽一郎君    井坂 信彦君

      江田 憲司君    小川 淳也君

      緒方林太郎君    後藤 祐一君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      初鹿 明博君    福島 伸享君

      細野 豪志君    前原 誠司君

      升田世喜男君    伊藤  渉君

      石田 祝稔君    國重  徹君

      真山 祐一君    赤嶺 政賢君

      池内さおり君    斉藤 和子君

      高橋千鶴子君    宮本  徹君

      井上 英孝君    伊東 信久君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 高市 早苗君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    山本 公一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       今村 雅弘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (防災担当)       松本  純君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     鶴保 庸介君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (働き方改革担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)

   (まち・ひと・しごと創生担当)          山本 幸三君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       丸川 珠代君

   内閣官房副長官      萩生田光一君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   加藤 久喜君

   政府参考人

   (内閣府国際平和協力本部事務局長)        宮島 昭夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  石川 雄一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 塚原 太郎君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           辰己 昌良君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月三十日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     八木 哲也君

  岩屋  毅君     宮川 典子君

  門  博文君     神谷  昇君

  國場幸之助君     とかしきなおみ君

  鈴木 俊一君     橋本 英教君

  長坂 康正君     茂木 敏充君

  根本  匠君     大岡 敏孝君

  星野 剛士君     宮崎 政久君

  井坂 信彦君     青柳陽一郎君

  小川 淳也君     細野 豪志君

  後藤 祐一君     升田世喜男君

  玉木雄一郎君     江田 憲司君

  伊藤  渉君     石田 祝稔君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     根本  匠君

  神谷  昇君     秋本 真利君

  とかしきなおみ君   國場幸之助君

  橋本 英教君     鈴木 俊一君

  宮川 典子君     岩屋  毅君

  宮崎 政久君     武部  新君

  茂木 敏充君     長坂 康正君

  八木 哲也君     福山  守君

  青柳陽一郎君     井坂 信彦君

  江田 憲司君     玉木雄一郎君

  細野 豪志君     小川 淳也君

  升田世喜男君     後藤 祐一君

  石田 祝稔君     伊藤  渉君

  宮本  徹君     斉藤 和子君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     木内  均君

  武部  新君     赤枝 恒雄君

  福山  守君     石破  茂君

  斉藤 和子君     池内さおり君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     星野 剛士君

  木内  均君     門  博文君

  池内さおり君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計補正予算(第2号)

 平成二十八年度特別会計補正予算(特第2号)

 平成二十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計補正予算(第2号)、平成二十八年度特別会計補正予算(特第2号)、平成二十八年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官加藤久喜君、内閣府国際平和協力本部事務局長宮島昭夫君、外務省大臣官房審議官水嶋光一君、農林水産省政策統括官柄澤彰君、国土交通省道路局長石川雄一君、防衛省大臣官房衛生監塚原太郎君、防衛省統合幕僚監部総括官辰己昌良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。茂木敏充君。

茂木委員 おはようございます。自由民主党・無所属の会の茂木敏充です。

 きょうは、六十分の時間の中で、今回の補正予算について、そして今後の経済対策や働き方改革について質問をさせていただきます。

 その前に、まず、総理が積極的に展開する外交について二点お伺いいたします。北朝鮮の問題とロシアの関係であります。

 北朝鮮は、今月の九日に通算五回目となる核実験を強行したほか、ことしに入ってから二十一発の弾道ミサイルを発射しています。こうした北朝鮮の挑発行為は、関連する安保理決議そして六者会合の共同声明等の明白な違反であるばかりか、我が国の安全に対する脅威がこれまでとは異なる次元の、より深刻かつ現実のものとなっていることを示すものであります。

 国際社会は、北朝鮮に対して断固たる対応をとり、このまま挑発行為を続けても孤立の道を歩むだけであることを知らしめ、核、ミサイル発射を放棄させる必要があります。そのためには、まず、日米同盟の抑止力を強化するとともに、日米韓三カ国の安全保障協力を強化していくことが喫緊の課題であると考えております。

 また、国際社会は、安保理決議に基づく制裁の強化に向けた外交努力に注力をする必要があります。ここで重要な点は、北朝鮮の貿易量の九割を占める中国をいかに説得し、北朝鮮への圧力、これを強化させるかであります。

 総理は先般、国連総会で、米国のオバマ大統領のみならず、中国の李克強首相とも連携を確認されたと承知をいたしております。日本は国連の安保理非常任理事国として、強化された制裁を含む新たな安保理決議などに向けてどのように取り組んでいかれるのか、総理のお考えをお聞きいたします。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮の弾道ミサイルの発射は、前回の発射においては三発の弾道ミサイルを同時に発射し、三発とも我が国のEEZ内に着弾をさせました。そして、核実験においては、北朝鮮は核弾頭を爆発させた、このように発表しているわけでありまして、許しがたい暴挙であり、断じて容認できません。そして、今回の核実験は相次ぐ弾道ミサイル発射と相まって新たな段階の脅威であり、これに対する対応も全く異なるものでなければならないと考えております。

 北朝鮮に対して、このまま核やミサイルの開発を続けていけば、ますます国際社会から孤立をし、その将来を切り開くことができないということを理解させなければなりません。

 我が国は、非常任理事国として、各国による安保理決議の厳格な履行の確保及び新たな安保理決議の採択に向け、米国、韓国、中国、ロシア等と緊密に連携しながら、リーダーシップを発揮していく考えであります。

 ミサイル発射につきましては、ちょうどG20が杭州で開催をされていたときに発射されたわけでございまして、私は直ちにオバマ大統領また朴槿恵大統領と連携をとりまして、そして三カ国でしっかりと緊密に連携をとりながら新しい決議を求めていこうという話をしたところでございます。また、国連総会に出席した際には、李克強首相とも、この北朝鮮の核実験に対して連携して対応していこうということを申し合わせたところでございます。

 北朝鮮への人、物資、資金の流れを厳しく規制する新たな安保理決議、そして我が国独自の措置により、断固たる対応をとっていく決意であります。

 また、核、ミサイル、そして引き続き最重要課題である拉致問題に関し、北朝鮮が問題の解決に向け具体的な行動をとるように強く促していく。国際社会に対して北朝鮮が正しい対応をとらなければ北朝鮮はみずからの未来を描いていくことができないということを理解させなければならない、このように考えております。

茂木委員 北東アジアにおきましては、この北朝鮮の問題や中国の台頭に見られるように、安全保障環境の不透明さが増しているわけであります。その中で日本とロシアの関係を考えると、この地域の平和と発展を確保することは日本とロシア両国の国益に資するものであり、日ロ関係を強固に発展させてこそ、緊張感を増している東アジアにおける我が国の安全保障が確保されると言っても過言ではありません。

 そのために欠けている重要なもの、東アジアの平和と安定という難しいジグソーパズルを完成させるのに必要不可欠なワンピース、それが日ロの平和条約だと考えております。

 安倍総理とプーチン大統領は、ことし五月にロシアのソチで行われた首脳会談で、双方に受け入れ可能な解決策の作成に向けて、今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を進めていくことで一致されました。また、今月初めのウラジオストクでの総理とプーチン大統領によります実に十四回目となる首脳会談でも、この新しいアプローチに基づく交渉を具体的に進めていく議論が進展をした、そのように承知をいたしております。

 では、この新しいアプローチ、これは具体的にどのようなものなのか。また、来る十二月に総理の御地元山口で開催予定の日ロ首脳会談では、総理は、北方領土問題そして平和条約に関し、どのような交渉を行い、何を達成されようとしているのか。総理のお考えをお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 ロシアは、我が国の隣国であり、そして同時に大国でもあります。そのロシアと、戦後七十年以上たっても平和条約が締結をされていない。この異常な状態を打開し、そして、その異常な状態に終止符を打たなければなりません。そのためにも、首脳同士の信頼関係のもとに解決策を見出していかなければならないと考えています。

 プーチン大統領との間では、五月のソチにおける首脳会談で、これまで停滞をしてきた交渉に突破口を開くため、未来志向の考え方に立って、今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を精力的に進めていくことで一致をしたところであります。

 そして、今月ウラジオストクにおいて行った通算十四回目となる首脳会談では、二人で突っ込んだ議論を行いました。全体会合と五十五分の二人だけでの議論もあったわけでございますが、交渉を具体的に進めていく道筋が見えてくるような手応えを強く感じることができました。

 また、先般の首脳会談においては、八項目の協力プランの具体化を初めとする経済や、安全保障分野を含む日ロ協力の現状や今後の見通し等について意見交換を行ったところであります。

 経済分野を含め、幅広い分野で日ロ関係を国益に資するような形で進めていく中で、四島の帰属の問題を解決して、平和条約を締結すべく、引き続きロシア側との間で粘り強く交渉に取り組んでいく考えでございます。もちろん、七十年間解決することができなかった問題でありますから、そう簡単なことではないわけでありますが、全力を尽くしていきたいと思います。

 十二月に予定する山口県での日ロ首脳会談では、こうした考え方に基づきまして、静かな雰囲気の中で率直に議論をし、平和条約締結交渉を前進させていく考えであります。

茂木委員 この日ロの問題、総理おっしゃるように、幅広い、さまざまな日本とロシアの協力関係の中で解決策を見出し、そして、先ほど申し上げたように、東アジア全体を俯瞰した外交、こういう観点から交渉をぜひ推し進め、そして、最後のワンピース、ジグソーパズルのワンピースを必ずその場に置いていただきたい、そのように考えているところであります。

 一昨年末の総選挙、そしてことし夏の参議院選挙で国民から与えられた政権の安定こそが、国内で大胆な改革を進め、そしてまた外交面でも日本のプレゼンスを高め、難しい外交交渉を進める何よりのエンジンだ、このように考えております。総理の強いリーダーシップに期待をいたします。

 自民党は、この夏の参議院選で、アベノミクスを力強く前に進めるべきという大きな御支持をいただきました。きょうはテレビ中継が入っております。

 そこで、きょうは、今後アベノミクスをどう具体的に前に進めるのか、国民の皆さんの前で基本的な認識を確認する場にもしていきたいと考えているところであります。

 進化とは、進歩ではない、多様性を生んだドラマである。これは、進化論で有名なダーウィンの言葉であります。

 アベノミクスも、最初に打ち放った三本の矢、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略から、現在は、一億総活躍社会そして働き方改革と、その政策目標、そして政策手段もある意味進化をしてきております。

 では、これらは政策課題のどのような変化に対応するものなのか議論をしてみたい、このように考えております。

 その入り口として、まず、今回の補正予算について財務大臣に質問をいたします。

 政府は、先日、事業規模二十八兆円を超える経済対策、未来への投資を実現する経済対策を取りまとめました。この経済対策を予算として具体化したのが今回の補正予算でありますが、まず、今回の補正予算について、改めて、その目的と政策効果、経済効果についてどのようにお考えか、お答えください。

麻生国務大臣 御存じのように、今回の資産のデフレーションによって長く続いたこの資産デフレ不況というものにつきましては、これを完全に脱却し、しっかりとした成長に導いていく。デフレから脱却ということになりますけれども、またもとに戻らないという保証はありませんので、デフレ不況が問題なので、そういった意味では、しっかりとした経済成長に道筋をつけていくためのものということを考えております。

 したがって、需要の喚起だけにとどまらないで、民間の需要というもの、民需主導によってきちんとしたものになっていかないかぬというところだと思っておりますので、経済成長と一億総活躍社会というものの着実な実現につながる取り組みというものを中心にまず考えております。

 その上で、具体的には、保育所等々、今問題になっております、働くために、いわゆる保育所の整備等々の前倒し、また、保育士の人材確保等々の拡充、子育ての環境整備を行う。具体的にはまずそれからであります。

 また、外国人の観光客が、安倍内閣が始まります前は一千万人を切っていたと思いますけれども、今それが約二千万人。やがてこれが四千万ということを目指しておりますので、当然、今、私どもの博多がありますが、港はもう全く満杯でありますので、これはクルーズ船等々の到着に対応できていない、CIQができていないというのはもちろんのことですけれども。そういった意味で、いわゆる入国待ち三時間とかいうことになっておるのが現実ですので、羽田空港等々、そういった機能強化を高めるというのも大事なことだと思っております。

 また、今、低金利、超低金利で、十年国債は〇・〇幾つという話ですから、財政投融資等々にこれを活用することによって、いわゆる公共工事というものは、基本的には投資した金に対して、かかります経費を上回るリターンがあれば、それはそれでそれなりにきちんと回っていくということになりますので、そういった意味では、リニアの中央新幹線等々の全線開通前倒しとか、いろいろ新聞に出ておりますような未来への投資を実現するものの一端というふうにしていきたいと思っております。

 また、この補正予算によって、いわゆる内需を力強く支えるとともに、いわゆるアベノミクスというものを一層加速して、資産のデフレーションによる不況というものからの脱出速度を最大限まで引き上げてまいりたいというのが基本です。

 また、内閣府によれば、本経済対策に基づいて、予算の措置によって短期的にあらわれると考えられる実質GDPの押し上げ効果はおおむね一・三%というように見込まれておると思いますので、私どもも、それをきちんと達成できるものまでに効果を上げてまいりたいと考えております。

茂木委員 デフレからの脱却速度を上げていく、そして、民需主導の持続的な経済成長、一億総活躍の着実な実現、つまり、今回の補正予算は、アベノミクスの一層の加速、それが基本的な目的なんだと考えております。

 そこで、アベノミクスのこれまでの成果と残された課題について簡単に整理をしてみたいと思います。

 この三年半で、アベノミクスの推進によりまして、デフレは確実に解消に向かい、日本経済にはさまざまな改善が見られるところであります。経済がよくなっているかどうか、さまざまな議論はもちろんあるところでありますが、これを端的にあらわす指標は二つだと思っております。一つは、やはり経済が全体的に拡大して企業の収益が上がっている。そしてもう一つは、仕事がふえて雇用情勢がよくなっているということだと思っております。この二つのポイント。

 まず、マクロの経済、企業レベルでいいますと、日本の名目GDPは、三年半で三十三兆円増加して、五百兆円台を回復いたしております。さらに、図一、お手元にお配りしてございますが、この図の一のように、企業収益も大幅に改善をして、二〇一五年度は六十八・二兆円、過去最高を更新いたしました。

 次のパネルもごらんください。

 雇用情勢についても、図二のように、有効求人倍率は一・三七、過去二十五年で最も高い水準であります。さらに、史上初めて四十七都道府県全てで有効求人倍率が一・〇倍を超えております。

 ただし、分野別に見ますと、企業の投資活動、そして個人消費、イノベーションなど、十分な進展が見られない部分、改善の余地が大きい部分もあると考えております。

 そこで、今後の重点課題を企業のレベル、雇用、個人のレベルに分けて、もう一度確認をしてみたいと思います。

 図三をごらんください。今後の重点課題を整理いたしております。

 まず、企業のレベルでは、大企業と中小企業で収益や生産性に依然として違いがあり、中小企業の生産性は十分改善していないという問題であります。この生産性の改善に向けてはIT投資が重要な鍵を握るわけでありますが、日本のIT投資は残念ながらまだ伸び悩んでおります。

 そして、せっかく改善している企業の収益、内部留保も、国内向けの投資よりは海外子会社向けの投資などに回っておりまして、今のところ、経済の好循環を回すエンジンにはなっておりません。

 さらに、エネルギー、農業、医療、介護など、今後成長がされる分野でも、確かにさまざまな制度改革、私も経済産業大臣時代、電力システム改革、こういった問題にも取り組んでまいりました、制度改革は進んでおりますが、民間実態の動きはまだ不十分で、構造改革も道半ば、このように言えると考えております。

 一方、個人、雇用のレベルでいいますと、個人消費がまだ残念ながら力強さに欠けている状況であります。

 そして、個人所得の面では、消費性向が高い低所得層、例えば非正規であったり若年層、そして共働きの世帯など、この層の所得が伸び悩んでおりまして、これが、消費性向が高いわけですから、個人消費が改善しない大きな原因の一つとなっております。

 さらに、人材の成長も、人材がなかなか成長分野に移動が進まない。全体の雇用情勢は間違いなく改善をいたしておりますが、雇用のミスマッチは依然として続いております。労働生産性も伸び悩みが見られるわけであります。

 さらに、日本は人口減少社会という構造問題に直面をしております。ここに来て確かに、それは四年前と比べた場合に、高齢者そして女性の雇用は圧倒的に、政府の働きかけもあり、進んでおりますが、より柔軟で多様な働き方への環境整備はまだ不十分だと考えております。

 これらの問題は、いわば、日本のこれまでの産業構造そして労働形態を転換する、経済構造改革と働き方改革にかかわる問題であります。その意味で、経済構造改革と働き方改革、これはアベノミクスの目標達成への車の両輪である、このようにも言えると思っております。

 もちろん、政府の側でもこの二つのテーマは検討を進めていただいているわけでありますが、今回、自民党におきましても特命委員会、経済再生そしてまたこの働き方改革について設置をいたしまして、私が委員長となってこれから検討を深めていきたい、政府に対してもこれから具体的な提言をさせていただきたい、こんなふうに思っているところであります。

 そこで、二つの大きなテーマの一つ、経済構造改革について議論を進めたいと思います。

 図の四をごらんください。

 先ほども指摘したように、大企業と中小企業では生産性に大きな開きがありまして、この三年で見ても、中小企業の生産性、確かに改善はしておりますけれども、その伸びは十分とは言えません。

 今こそ、アベノミクス推進のエンジンを大企業から全国各地の中核企業、中小企業に拡大していくべきと考えております。テレビのドラマの「下町ロケット」でいいますと、帝国重工だけではなくて、下町の中小企業、佃製作所にもロケットの基幹部品をつくってもらう、こういったことが必要なんだと考えております。

 そして、その一番大きな鍵を握るのがITシステム投資であります。図の五に示しましたように、IT投資によって中小企業の業績は間違いなく大きく改善をするわけであります。

 では、政府として、今後、この中核企業、中小企業の生産性向上に向け具体的にどのような取り組みをしていくのか、世耕経済産業大臣にお聞きをいたします。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 今御指摘がありましたように、大企業と中小企業では非常に生産性に開きがある、そしてその原因がIT投資のおくれではないか、その分析は私も全く共有をするところであります。

 まず、IT投資も含めた設備投資全体ということになりますが、ことし七月に中小企業等経営強化法というのを施行いたしました。中堅・中小企業の業種の特性に応じた生産性向上の指針の策定をいたしまして、この指針に沿って行う設備投資に対する固定資産税の減税など、中小企業者の生産性向上に向けた投資促進の支援策を抜本的に拡充いたしました。

 また、特にITに関しましては、今回の補正予算におきまして、中小企業が行うIT投資の促進や、あるいはIoTやロボットなどを活用した革新的な物づくり、サービスの開発支援という目的で、業務の効率化、生産性の向上につながるITツールの導入支援や、中小事業者にアドバイスなどを行うIT専門家の派遣、そしてIT利活用の取り組み事例の紹介や相談会の開催などの取り組みを集中的に実施してまいります。

 このように、きめ細やかな取り組みを通じて、IT投資を通じた中小事業者の生産性向上を集中的に支援してまいりたいというふうに考えております。

茂木委員 恐らく、端的に申し上げると、やるべきことは私は三つじゃないかなと思っております。

 若干分野を分けて言いますと、一つは、やはり物づくり中小企業のIT、そしてロボットの武装化を進めるということであります。

 そして二つ目は、やはり生産性といいますと、サービス産業の問題になってきます。サービス産業それぞれの業種によって違いがあるわけでありますから、その生産性を改善する分野別のプログラムを策定して実行していく。

 さらに三番目は、地域の経済を引っ張っていく。これからは中核企業です。恐らく全国に二万五千社ぐらいあるこの中核企業の投資を促進する。一兆円の投資で大体五兆円の経済効果、こういったものが見込まれると思います。

 この三つをやっていくことだ、そのように考えております。

 対象企業を明確にして、期限も、だらだらとではなくて、三年から五年、こういう期限を区切って、予算、税、金融、あらゆる政策手段を総動員する。そのために、私は、新しい法律、仮称でありますが、未来投資生産性向上支援法、これを早急に制定すべきだと考えておりますが、世耕大臣のお考えをお聞かせください。

世耕国務大臣 今、茂木先生から御指摘いただいた三つの点、非常にどれも重要だというふうに思っております。

 まず、IT、ロボットの導入については、ロボットの未活用領域でのロボット導入支援や、中小製造事業者がIoTの導入ノウハウなどを相談できる拠点整備を行っているところであります。

 二点目のサービス産業の分野別生産性向上に向けた取り組みにつきましては、先ほど申し上げました中小企業等経営強化法に基づいて、関係省庁と連携をしながら、卸、小売などの流通、そして旅館、医療などサービス業を中心に生産性向上策をまとめた指針を十一業種について策定したところであります。この指針の内容の充実を今後進めるなど、全力で取り組んでまいりたいというふうに思います。

 また、御指摘のように、一社で個別に投資をするのではなくて、地域の中核企業を軸に複数の企業に波及をさせていく、より効果的な投資を次々と生み出していくことが重要だというふうに思います。

 茂木先生が経済産業大臣を務めておられたときに、地域を牽引する中核企業を軸とした地域戦略を構築されたというふうに伺っております。私としては、そのお考えをさらに具体化して進めてまいりたいというふうに思います。

 例えば、IoT、ビッグデータなど、地域で蓄積されるデータを新たな地域資源として見て、こうしたデータを利活用する新たなビジネスに投資をしていくこと。あるいは、技術、資源、人材など、その地域が固有に持っている強みを生かして地域経済を牽引する地域中核企業による投資など、波及効果の高い投資に着目した取り組みが重要だと考えております。

 経産省としましては、このような地域の未来を支える投資や生産性向上への取り組みを促進するため、あらゆる政策を総動員すべく、今御指摘の新たな法的枠組みも含めて、さまざまな施策を検討してまいりたいというふうに思っております。

茂木委員 ありがとうございます。

 ぜひ新法を鋭意検討していただきたい、このように考えているところであります。

 成長戦略に関連して、もう一つ質問いたします。

 政府では、これまでの産業競争力会議と未来投資に向けた官民対話を発展的に統合し、新たな司令塔として未来投資会議を創設いたしました。

 石原経済再生担当大臣に、この未来投資会議の創設の狙いについてお伺いいたします。

石原国務大臣 茂木政調会長も産業競争力会議をおつくりになられて、先ほども御開陳されていましたけれども、エネルギー分野、ここの岩盤規制の見直しなど、私はすごく成果を出してきたと思います。そして、その延長線で、これは税制調査会で議論されたわけですけれども、高いと言われている法人税の減税についても実現して、六重苦と言われている経済的な困難というものに日本の企業が立ち向かう環境を整備していただいた、大変有意義な会議であったと思っております。

 そして、経済の好循環が、先ほど雇用と所得の関係でお示しされたように、回るようになってきた。そんな中で、一つの節目を私は今迎えているような気がいたします。

 今、世耕大臣との議論の中でのITへの投資、このIT分野のイノベーションというものが、我々が予想しているよりも非常に早く動いている。そんなこともありまして、このイノベーションをしっかりとキャッチアップできるように、これまでありました会議を発展的に解消させていただきまして、スピードアップとパワーアップ、この二つを図る上で、さらには構造改革ですね。この構造改革はいろいろなことを、茂木政調会長が経産大臣時代にも、エネルギーの話もありました、農協改革もありました、いろいろな分野でやってきましたけれども、総ざらいして、イノベーションをさらに加速化して、それを社会にどういうふうに実装していくか、こういうことを進めていきたいと考えてこの会議を設置させていただいたわけでございます。

 くどいようですけれども、イノベーションの起こるスピードにおくれをとらないように、そして民間部門で一体何が足りていないからできないのか、また、何がイノベーションの社会実装にとって障害があるのかないのか、こういう深掘りの議論を進めていきまして、成長戦略に責任を持つ担当大臣といたしまして、構造改革を力強く進めていく、そういう会議にさせていただければと考えております。

茂木委員 この分野はスピード感のアップが極めて重要だと思っております。三百七十兆円に上ります企業の内部留保、そして一千七百兆円の個人の金融資産、これを未来への投資に向かわせる。そのためには、日本の国内で新たな有望市場を創出することが極めて重要だと考えております。

 そして、その牽引車となりますのが、今、石原大臣そして世耕大臣の方からもお話のありました、IoTであったり人工知能、自動走行、ロボット、こういった第四次産業革命だと考えております。

 ただ、第四次産業革命による新たな市場創出、こう言っても、テレビの前の皆さんも何となくイメージが湧きにくい、こういう部分があると思います。

 そこで、この問題を、先日リオで日本選手が大活躍をしましたオリンピック・パラリンピックに例えてみたいと思います。

 図の六をごらんください。新たな成長市場の創出には、三つの取り組みが必要だと考えております。

 まず一つは、第四次産業革命をする重点分野、自動走行、ロボット、IoTなどの強化であります。

 この中で、自動走行は、確かに高速道路の走行や渋滞の解消にも活用できますが、将来、やはり私は、地方の高齢者向けが最も有望な市場ではないかと考えております。近所の八百屋さんがなくなってしまった、何キロか先のスーパーに買い物に行かなきゃならない、運転に苦労されているお年寄りも多いと思います。これが自動走行によって地方でも高齢者の足が安全に確保される。団塊の世代はもう六十五歳に入っているわけでありますから、この分野の潜在市場というのは極めて大きいと考えております。

 これは、オリンピックでいいますと、日本がメダルがとれる種目、これの強化ということになってくると思います。

 そして二つ目に、第四次産業革命のさまざまな技術革新、こういったものを波及させることによって、巨大な潜在市場、例えば医療、介護であったりエネルギー、農業、こういった巨大な潜在市場を開拓していくということでありまして、介護ロボット、さらにはよりスマートなエネルギーマネジメントなど、応用分野は限りなくあると考えております。市場開拓の余地も非常に大きいと思うわけであります。

 こちらは、どちらかといいますと、競技人口の多い分野の底上げと言えると考えております。

 そして三つ目、今お話しした成長分野の創出、拡大のためには、その基盤整備も重要になってまいります。例えば、人工知能に関するグローバル研究拠点の整備、そこに先端の人材を集めていく。

 これは経済版のナショナルトレーニングセンターの整備ということに、やはりナショナルトレーニングセンターがある種目が強いというのは明らかなんだろうと思っております。

 一千七百兆円の個人の金融資産を活用して、ファンドから資金提供する、こういった仕組みも資金面での基盤整備に当たってくると考えております。いいスポンサーというよりも、より多くのスポンサーの応援、こういうイメージで考えていただければと思っております。

 また、もう一つの基盤整備、資金と同時にビッグデータなどの情報の利活用の促進のための環境整備も重要であります。この利活用促進のため、この臨時国会に官民データ活用推進基本法を議員立法で提出する予定であります。これは経済界からも非常に期待されている法律でありまして、早期の成立を目指していきたいと思います。

 そこで、総理にお尋ねをいたします。

 日本は、リオ・オリンピックでも史上最高のメダル四十一個を獲得し、四年後の東京ではさらに多くのメダルを目指すことになると思います。

 お聞きするのは、東京でのメダルの目標数ではございません。今説明したように、経済の分野でもパネルのようなメダルがとれる取り組みが必要ではないかと考えております。そして、新設をしました未来投資会議も、単なるペーパーの取りまとめ、これでは意味がないんだと思います。

 先ほど提案をいたしました未来投資生産性向上支援法とあわせて、具体的な制度改正や予算措置、これで新たな高みに臨む政府の本気度を示すことが極めて重要だと考えておりますが、総理の御見解をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 ただいま茂木議員から、大変わかりやすく、我々の成長戦略についての性格づけを説明していただいたのではないかと思います。

 まず、自動車、ロボットなど日本企業が高い競争力を有している分野に重点的に取り組んでいきます。

 これはまさに議員御指摘の日本がメダルをとれる種目に当たるわけでありまして、自動走行については、昨年私が関係閣僚に対し、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックまでに必要な制度やインフラを整備するよう指示をいたしました。

 実現時期の見通しが立つことに、企業が呼応し始めています。例えば、ロボットタクシーの実験が藤沢市で始まりました。そして、自動運転機能を国内で初搭載したミニバン車が八月に発売されました。こうした企業の動きを加速するため、具体的な目標時期を設定して規制改革を進めてまいります。

 次に、医療、介護。市場規模が大きく、かつ拡大していく分野の市場を重点的に整備していく。

 これは議員が御指摘の競技人口の多い分野に当たるわけでありますが、例えば、センサー技術を活用した見守りシステムが、介護を受けている方がベッドから落下しそうな状況を察知して介護職員の端末に通報することで、介護職員がずっと見ていなくても通報によってその対応をすることができるということになれば、負担が軽減されるということになります。

 今後、こうした技術投入によって介護現場の負担がどのくらい軽減するかを検証して、その結果を介護報酬や介護施設の人員、設備基準の見直しなどにつなげていく考えであります。

 さらに、議員が経済版ナショナルトレーニングセンターと表現をいたしました切磋琢磨の場をつくっていきます。例えば、国内の優秀な研究者が医療分野などの実データを効果的に解析できる人工知能を開発する研究拠点を、大学と公的研究機関の連携のもとで整備していきます。

 第四次産業革命の実現を通じて、国民生活を豊かにしながら、企業の生産性を向上させるため、必要な改革をちゅうちょなく断行していく決意であります。

茂木委員 これらの取り組みをオール・ジャパンで進めることによってメダルは確実に二桁ふえる、このように考えているところであります。

 自民党は、自動走行でもロボットでも、最初から二番じゃだめなんですか、こんなことは決して言いません。一番をとる、こういう思いで取り組みをしていきたいと考えております。

 さて、もう一つの大きなテーマ、働き方改革に入りたいと思います。

 総理は、所信表明演説で、労働制度の大胆な改革を進める、非正規という言葉をこの国から一掃する、このように訴えかけられました。

 そこで、まず改めて、働き方改革に取り組む総理の意気込み、そして、この分野で何が最重点課題だとお考えなのか、お聞かせください。

安倍内閣総理大臣 誰もがその能力を存分に発揮することができる社会をつくっていく、それが一億総活躍社会でありますが、その一億総活躍社会の未来を切り開いていく鍵は働き方改革であると思っています。

 働き方改革のポイントは、働く方によりよい将来の展望を持っていただくことでありまして、第三の矢、構造改革の柱となる改革であります。

 長時間労働を是正すれば、女性、高齢者も仕事につきやすくなります。経営者はどのように働いてもらうかに関心を高め、労働生産性が向上します。そして、働き方改革こそが労働生産性を改善するための最良の手段であると思います。

 また、同一労働同一賃金を実現いたしまして、正規と非正規の労働者の格差を埋めて、若者が将来に明るい希望が持てるようにすることによって、中間層が厚みを増し、より多く消費することにつながっていくと思います。

 働き方改革は、社会問題であるだけではなくて、経済問題であります。ロボットからビッグデータ、AIまで、デジタル技術の活用が進む中で、働き方も間違いなく変わっていくわけであります。大切なことは、スピードと実行であります。もはや先送りは許されないわけでありまして、必ずややり遂げるという強い意思を持って臨んでいきたいと思います。

茂木委員 日本には現在、大企業と中小企業の賃金の差、そしてまた正規と非正規の賃金の差が大きいという問題があります。全体の四分の一の雇用者が時給千円未満の状況、短時間労働者におきましては実に六〇%以上が時給千円未満という形であります。

 図七をごらんください。

 フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準、ヨーロッパ諸国では七割から八割なのに対して、日本は六割以下の水準であります。

 この改善のためには、先ほど指摘をしました中小企業の生産性を高めると同時に、特に大企業における非正規雇用の処遇改善が最優先の課題になってくると考えております。同一労働同一賃金の法整備、パートタイム労働法、労働契約法、派遣法の改正を進める必要があると考えております。

 もちろん、正規の方の賃金を下げて同一賃金にしろ、こう言っているわけではありません。生産性の向上、さらには、より柔軟な働き方で非正規から正規にしていく、こういったことも含め処遇改善を図るというのが基本的な政策であると思っております。

 そして、今申し上げた法改正、スムーズな導入が極めて大切であります。このために、法整備に先行して、どのような処遇の格差が不適正なのか、同一労働同一賃金の円滑な実施に向けた、具体的でわかりやすい雇い主向けのガイドライン、これを早期に策定する必要があると考えております。

 政府でも、総理のもと、働き方改革実現会議を設置して検討に入っているようでありますが、加藤働き方改革担当大臣に、今お話を申し上げた法改正の必要性をどう考えているか、また雇い主向けのガイドラインの策定のめど、これをお聞かせください。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、我が国においては、パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国に比べて、正規労働者に比べると、欧州諸国は二割低いのに対して、日本は四割を超えるという状況でありますし、また、五十歳から五十四歳の年齢層について見ても、企業規模五人から九人の小規模でも一・五倍、さらに企業規模千人以上の大企業ではその差が三倍、こういうことになっております。

 こうした状況を克服するには、同一労働同一賃金を実現していくこと、そして、御指摘のように、それは非正規の方々の待遇を改善する中で正規と非正規の方の労働者の格差を埋めていく、それによって、先ほど総理が言われたように、若者が将来に明るい希望を持てるようにしていかなければならないと思っております。

 そういう意味で、今御指摘がありましたガイドラインについては、まず、どのような賃金差が正当ではないかを具体的に示していく。これは年内を目途に策定をしていきたいと思っております。その上で、賃金差について裁判で争われるということも当然考えられるわけでありますが、そうした場合、裁判所の判断の根拠となるものをしっかりとしておかなきゃならない。そういったことを含めて、法改正についてもちゅうちょなく行っていきたい、こう考えております。

茂木委員 ガイドラインを年内に策定する、そしてそれに引き続いてちゅうちょなく法整備を進める、明快な御答弁をいただいたところであります。

 それでは次に、長時間労働の是正の問題に入ります。

 図の八のように、日本は欧米に比べて時間外の労働時間の構成割合が高くなっておりまして、パネルでいいますと赤地になっておりますが、週四十九時間以上働く長時間労働者の割合がほかの国と比べて極めて高い状況であります。

 長時間労働の是正、これは長年の慣習もあって、また業種や企業によって時間外労働を必要とするそれぞれの事情があるのも確かだと思います。しかし、グローバル経済の中で、もう、日本だけ特別、こうは言っていられないんだと思います。

 では、企業の実態は今どうなっているか。

 図の九をごらんいただきたいと思うんですが、これは、労働基準法でのいわゆる三六協定、この協定によりまして、労使協定によって時間外労働の上限を超えられるようにしている制度でありますが、この三六協定の締結状況を示しております。

 現状、三六協定を締結している企業は全体の五五%、ブルーの部分であります。その中で、厚労省が時間外労働の上限のめどとしている月四十五時間を超える時間外を認める特別条項つきの三六協定を締結している事業場が二二%あります。特に大企業では、三六協定を締結している企業が全体の九四%、医学的に健康に被害が及ぶ、このように言われている八十時間以上を認める条項を締結している企業の割合も一五%に及んでおります。

 このような状況で、各企業の自主性に任せる、これはやはり私は限界があるんだと思います。一定の法的基準を立法化することが必要だと考えておりまして、三六協定について、例えば月何時間まで、こういった時間外の上限を新たに規定すべきだ、このように考えておりますが、加藤大臣の見解をお聞かせください。

加藤国務大臣 委員の御指摘のように、我が国における長時間労働というのは大変大きな問題ということであります。また、今委員からもお話がありましたが、我が国の労働基準法では、週四十時間を超えて労働させてはならないというのが基本として規定されており、その上で、同法三十六条において、その例外として、これは同法三十六条をとっていわゆる三六協定ということが、労使が締結をすると時間外労働ができる。そして、それは今、実態については委員から御指摘があったところでございます。

 こうした実情を踏まえて、労使のトップ、また有識者の方々に集まっていただいております働き方改革実現会議、先般第一回の会合を開かせていただきましたけれども、議員御指摘の時間外労働の上限を規定していく、こういう案も含めて、時間外労働の上限規制の労働基準法のあり方について、総理からも御指示いただいておりますが、働く人の立場、視点に立った議論を進めて、これは年度内に具体的な働き方改革実現計画という形で取りまとめていきたいと考えております。

茂木委員 この問題につきましては、党の方でも検討を進めまして、党の側からも具体的な提案もさせていただきたい、こんなふうに考えておるところであります。

 そこで、三番目、働き方に中立的な税制や社会保障制度をいかに構築していくか、こういう議論に入りたいと思います。

 ここで最初の課題と言われておりますのが、パート労働者のいわゆる百三万円の壁を除去する税制改正であります。

 図の十をごらんください。

 図の上にある現在の配偶者控除は、御案内のとおり、百三万円から控除が減る仕組みでありますが、これから、図の下のように、パート収入の上限がない夫婦控除に移行していくべきだ、このように考えております。政府税調でも、夫婦控除を導入すべき、こういう意見が出ていると聞いております。

 企業の現場でも、もっと働きたいのに年末になるとこの百三万円の壁でパートの人たちが時間の調整に入ってしまう。スーパーの方も、せっかくなれてきて仕事をよくしてくれる人がいるのに、その人が来ないで、新しい人を探さなきゃならない、こういう問題が起こっているわけであります。会社にとっても、そしてパートさんにとっても本意ではないと思います。

 そこで、麻生財務大臣に、この配偶者控除から夫婦控除への移行について、もちろん税収中立、そういった課題もあるのは承知をいたしておりますが、基本的な方向性、どうお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 多様な働き方に中立的な税制の構築ということにつきましては、これは総理の方からも指示のあった重要な課題と考えております。

 まず、御指摘のありました配偶者控除については、配偶者の就労を抑制している、百三万とか百三十万とか、いろいろの例がありますけれども、そういった面も考えて、抑制する意味の悪い意味での効果があるではないかという指摘がある一方、他方では、家族の助け合いとか、家庭の中における子育てに対する配偶者の貢献というものも積極的に評価すべきではないかという御指摘もあって、これはさまざまな立場から議論がなされてきております。

 夫婦控除への移行という御指摘も今、茂木先生からあっておりますけれども、現時点で具体的な案が決まっているわけではありません。

 この課題は今後の家族のあり方、働き方に関する国民的な価値観とでもいうべき大きな話になってこようと思いますので、幅広く丁寧な国民的論議が必要だということを考えております。政府税調でもその点を指摘して、この間第一回の会合をスタートしておりますけれども、政府・与党におきましても、政府でも与党においても、この議論を踏まえつつ、今後しっかりした議論を踏まえていかないと、今の時代の変化で女性の労働参加等々が非常に大きな問題になっているのは間違いありませんけれども、傍ら、今の点もちょっと考えておかぬと、日本の国の国体、国の体質にかかわる問題でもあろうと思いますので、丁寧な論議を進めて結論を得たいと思っております。

茂木委員 ありがとうございます。

 私が今指摘しているのは、こういった夫婦控除への移行。家族の価値観などについて、基本的に評価を与えるものではありません。

 つまり、共働き世帯と独身者、専業主婦を比べて、どっちがいい、どっちが悪い、こういう問題ではなくて、現状の問題点、例えば、世帯主が三百万円の収入、奥さんが家計を助けるためにパートに出る、働きたい、そういう思いなんですけれども、百三万円の壁でぶつかってしまって、そこで時間調整に入ってしまう、抑制をされてしまう、こういう現在の状況を改善したい。誰もが働きたければもっと働ける、こういう環境整備を進めたいと考えているところであります。

 それと、もう一点。これは今後の検討課題ということになってくると思うんですが、控除の仕方自体も、働き方に中立的で、中低所得者により負担のない制度にしていくことが望ましい、このように考えております。

 確かに、税制中立、これをいかに保っていくか、こういった課題もあって、ステップを踏んでやっていく必要はあると思っておりますが、現在の所得控除中心、こういったものから、税額控除方式を取り入れるなど、控除の仕組みの検討も今後の課題として、時間があればまた議論をさせていただきたいと思うんですが、指摘をさせていただきたいと思っております。

 さて、雇用のミスマッチに移りたいと思います。塩崎大臣にお尋ねをしたいと思っております。

 冒頭申し上げたように、今、雇用の情勢は改善をしてきております。有効求人倍率、冒頭申し上げたように一・三七、二十五年で最も高い水準でありますが、一方で、雇用のミスマッチ、これは三・三〇%、依然続いているわけでありまして、これでは、せっかくの経済の好転、雇用情勢の改善も、個人所得の本格的な向上にはつながっていかないのではないかなと考えております。

 そこで、私は、現在の雇用のミスマッチ解消に向けて、人材の育成、職業訓練であったりとか、資格の取得であったりとか、社会人の学び直し、こういったことに雇用保険の積立金を活用すべきではないかなと考えております。

 図の十一をごらんください。

 実は、雇用保険の積立金、十年前には積立金の残高が一兆円前後でありましたが、これが、最近の雇用情勢の改善によりまして残高は今、六兆円を超える、こういう状態でありますし、これに加えて、雇用保険の二事業、雇用安定事業、能力開発事業の資金残高も一兆円以上ある、このように考えております。

 雇用保険は、もちろん雇用や生活の安定を目的とする公的な保険でありますが、いつもリーマン・ショック級の経済変動に備えて、多額の積立金をいつも六兆円とか七兆円とか持っている必要はないんじゃないかなと思います。

 もちろん保険料の引き下げ、こういったことを図っていかなきゃなりませんが、それと同時に、今後は、単に失業手当を支給するだけではなくて、雇用のミスマッチを改善する職業訓練等にも活用すれば、より積極的な雇用、生活の安定につながっていくと考えますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 問題意識は全く共有するところでございます。

 雇用保険の制度につきましては、今般の経済対策でも、「雇用保険料や国庫負担の時限的な引下げ等について、必要な検討を経て、成案を得、平成二十九年度から実現する。」というふうになっておりまして、財政面も含めた制度全般について労政審で検討を行っていくこととなっております。

 今、人材育成について御指摘をいただきました。

 仕事を探している方が就職に必要な能力を身につけられるような公的職業訓練によって支援をするとともに、仕事についている方についても、教育訓練給付によって自発的な能力開発を支援する、こういう取り組みを行っているわけでありますけれども、今御指摘のような働き方改革を進めていく中で、人材育成について、雇用のミスマッチ解消とか生産性向上のためにも重要であると考えておりますので、今後、働き方改革実現会議や与党の御議論も踏まえながら、この特会の資金についても、どういう活用の仕方があるのか。

 私ども、助成金改革というのを、全面的に今見直しておりますので、今先生御指摘のような目的、つまり人材育成、ミスマッチの解消、こういったことのためにより有効に使っていけるような手だてを考えていきたいというふうに考えております。

茂木委員 恐らく厚生労働省は、来年度に向けた機構改革、この中で人材開発局を新設される。組織だけつくっても、大切なことでありますけれども、予算措置であったりとか制度改革、こういったものが伴わなければ実効性は上がりません。ぜひ大臣のリーダーシップに期待をしたいと思っております。

 最後、五つ目の課題として、女性活躍の促進、こういう観点からも、受け皿を拡大することになった保育園などの施設整備に加えて、介護の人材不足の解消、これが極めて重要だと思っております。

 先ほど総理の方からは、センサーを使った見守り、こういう話もありました。そういった技術革新も使っていく。そして同時に、どこから人材を確保していくか、こういったことも考えなければならないと思っておりまして、外国人材の受け入れのあり方、これについても検討が必要だと思っております。

 必要な分野に着目をして、例えば日本とどこかの国、二カ国間で協定を結ぶ、こういった枠組みなど、具体的な制度設計を進めるべきタイミングに来ていると思っておりまして、この点につきましても、また党でも政府の方でも議論を進められれば、このように考えているところであります。

 さて、ここまで議論してきました働き方改革の主要な政策課題、最後の図十二にまとめてみました。五つのポイントがあります。

 一つは、非正規雇用の処遇改善。同一労働同一賃金の話であります。そして二つ目に、長時間労働の是正の問題です。三つ目は、より柔軟な働き方への環境整備。この中には、先ほど申し上げた配偶者控除から夫婦控除への移行、こういった問題も含まれてまいります。そして四つ目に、希望する分野への就労に向けた人材育成。先ほど塩崎大臣に質問させていただきました。さらには、ここでは奨学金の問題。誰もが、学びたい、そう思ったら学ぶ機会が与えられるような奨学金、給付型奨学金の導入のことも検討する必要があると思っております。そして最後に、育児や介護の人材不足の解消、そして外国人材の受け入れ。この五つぐらいをメーンテーマにこれから議論をしていくことになると思っております。

 これらの課題は、これまでも問題と言われながらなかなか改革が進まなかった課題でもあります。国民の多くは、この働き方改革を最優先課題とする安倍政権で具体的結果を出してほしい、このように期待していると思います。改めて、総理の決意をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 ただいま、この働き方改革の主要政策課題について、茂木委員の方から五つにまとめていただきましたが、先般行われました第一回の働き方改革実現会議におきまして、私から、今後本会議で取り上げるテーマについて九つ発言をいたしました。

 具体的には、一番目に同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、そして二番目に賃金引き上げと労働生産性の向上、三番目に時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正、そして四番目に雇用のミスマッチ解消に向けた転職、再就職支援、職業訓練などの人材育成、そして格差を固定化させない教育、五番目にテレワーク、副業、兼業といった柔軟な働き方、六番目に働き方に中立的な社会保障制度、税制など女性、若者が活躍しやすい環境整備、そして七番目に高齢者の就業促進、そして八番目に病気の治療や子育て、介護と仕事の両立、九番目に外国人材の受け入れの問題でありまして、委員が御指摘になられたように、幅広く検討していくこととしております。

 今年度内に具体的な実行計画を取りまとめた上で、スピード感を持って国会に関連法案を提出する決意であります。

 多くの方が、働き方改革を進めることは人々のワーク・ライフ・バランスにとっても生産性にとってもいいことであると考えます。これまでできなかったことでありますが、いいことだと思いながらもなかなかこれができなかったのも事実でありまして、具体的な結果を出していきたい、このように思っております。

茂木委員 ありがとうございます。

 五つに分けるか九つに分けるか、分類論でありますが、基本的には最重点課題と捉えている分野というのは同じだ、こんなふうに認識をいたしております。

 自民党の側でも、きょう議論をさせていただいたアベノミクス加速の車の両輪、経済構造改革と働き方改革について、きょうこの国会での議論も踏まえて、検討をさらに進めていきたいと考えております。国民の期待に応える、必ず結果を出す、こういう思いで互いに取り組みをしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 この際、武部新君から関連質疑の申し出があります。茂木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。武部新君。

武部委員 自由民主党・無所属の会の武部新です。

 冒頭、このたびの一連の台風でお亡くなりになられた皆様に心から御冥福をお祈りするとともに、北海道、岩手を初め、被害に遭われた皆様方に心から深くお見舞いを申し上げます。

 私の地元北海道も大変大きな被害を受けました。被災者の皆様方の心に寄り添いながら、一日も早い復旧をするのが皆さんの望みでありますので、それをしっかりと実現することが政治の役割だと思っております。

 以下、政府の取り組みについて質問をさせていただきたいと思います。

 北海道は、史上初めて一年間で三つの台風が上陸いたしました。しかも、一週間で三つであります。その後に勢力の強い台風十号が接近いたしまして、これも大きな雨を降らせました。

 北海道庁によりますと、北海道の被害額は、現時点でありますけれども二千七百四十億、過去最悪であります。また、岩手は千三百九十四億円の被害が出ているとお聞きしております。

 我が党は、災害対策本部を立ち上げまして、二階幹事長初め幹事長室、それから農林水産業被害対策ワーキングチームをつくりまして、北海道と岩手の被害地視察を行いました。

 また、安倍総理におかれましては、九月十四日に早速北海道を視察していただきまして、その際に、災害視察だけではなくて、被害に遭われた農業関係者の皆様方と車座になって、親身にお話を聞いていただきました。

 それから、早速、二日後の九月十六日に、政府におかれましては、激甚災害の指定を閣議決定していただきました。

 そこで、安倍総理にお聞きいたします。

 改めて、北海道の被害視察をしていただいたときの感想と、そして早期復旧に向けた決意をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今般の豪雨そして台風は、東日本大震災からの復旧復興に懸命に取り組んでいる岩手県、そして委員の地元であります北海道に大きな被害をもたらしました。

 私自身、九月十四日に北海道帯広市を視察いたしましたが、河川の氾濫によって道路や橋等が流され、また農地がえぐられ、広い範囲の浸水によって農業施設等が広範な地域で甚大な被害に遭っている状況を目の当たりにいたしました。また、なりわいの再建に直面している農業者の皆様から、大変な御苦労を直接お伺いいたしました。

 なかなか厳しい中にも懸命に頑張っている農業者の皆さん、あるいは新しい取り組みを始めて、意欲を持って輸出もしていこう、そういう気持ちで頑張っているところに、いわばその基盤を崩すような被害を受けた、どうすればいいのか、そういうお話を伺いました。

 被災者の皆様が一日も早く安心して暮らせる生活を取り戻すことができるように、復旧復興に全力を尽くしていく決意を新たにしたところであります。そして、折れそうになっている皆さんの心が再び頑張っていこうという気持ちになれるように応援をしていきたいと思っています。

 北海道や岩手県を初めとする東北地方を襲った一連の災害を激甚災害に指定し、全国規模で、道路、河川、橋などのインフラや農地あるいは農林水産業の施設等の災害復旧事業の支援を拡充するとともに、被害の大きな自治体の中小企業への支援を厚くするなど、広範な分野で財政支援等の特例措置を講じたところであります。

 今後も、被災者の皆さんがもとの日常を取り戻すことができる日まで、被災者の住宅再建、農林水産業、観光産業やインフラなどの復旧について、地元自治体と緊密に連携をしつつ、被災地の方々の気持ちに寄り添い、できることは全て行うとの方針で、スピード感を持って全力で取り組んでいく考えであります。

武部委員 ありがとうございます。

 総理に北海道にお入りいただいて大変勇気づけられたと、直接お会いした方も、それからテレビでごらんになって、総理が来てくれたんだというような思いで、大変皆さん勇気づけられております。

 今回の一連の台風の農林水産業の北海道の被害は、六百七十五億円になります。被害を受けた農作物の面積なんですけれども、三万九千ヘクタール、これは東京二十三区の三分の二に当たる農地が冠水や浸水などの被害を受けております。

 山本農林水産大臣にも私の地元の北見市にお入りいただいて御視察をいただきましたけれども、私の地元の北見市でも、常呂川が氾濫し、堤防が決壊して、大変大きな農地が表土を本当に削られるような状態になりましたし、流木や土砂が圃場に広がって、いち早く私も農家の方、その畑の方と一緒に農地を見たんですけれども、本当に茫然自失として、肩を落とされて、言葉もなく、私も頑張ろうという言葉もなかなか言えなかったんですけれども、しかし、農家の皆様方に頑張っていただかなければ、北海道は食料基地でありますので、しっかりと頑張ってもらう。励ますのは、やはり一日も早い農地の復旧なんです。そして、この困難を乗り越えて、これだったら頑張れるというような政策をいち早く進めていくことが一番肝心だと思います。

 間もなく北海道は、十一月になればもう雪が降ってまいりますので、その前に、来年の営農を再開できるような農地の復旧を行わなければなりません。

 この農地の復旧にどのように取り組まれるか、山本農林水産大臣にお聞きしたいと思います。

山本(有)国務大臣 日本の中で、北海道は広大な面積を持ち、かつまた優良な農地がございます。今回の台風によりましてその農地に甚大な被害を受けましたこと、心からお見舞いを申し上げます。

 去る九月十四日、私も、河川の決壊等により大きく被災いたしました農地のある北見市、帯広市など、特に被害の大きい地域を中心に現地調査を行うとともに、現場で御苦労されている農業者の皆さんから、農地の早期復旧を初め、営農再開に向けたさまざまな御要望をお伺いいたしました。特に、武部委員さんには、被災者の立場に立って御同行いただきましたこと、御礼申し上げます。

 農地の復旧に当たっては、北海道に対する技術的支援を積極的に行いつつ、農地ごとに詳細に被災状況を調査し、被災の程度に応じ適切な復旧方針を決定するとともに、農業者の皆さんに丁寧に説明するようにしております。

 具体的には、積雪期前に工事を開始することで次期作付が可能となる農地につきましては、査定前着工制度を積極的に活用いたしまして、早期復旧を進めていきたいと思っております。

 比較的被害が軽微な農地につきましては、災害査定後、来年度早々に本復旧工事を行いまして、次期作に向けまして間に合うよう努めてまいりたいと思っております。

 また、河川の決壊等により、広範囲の農地での表土流出などが生じております。復旧に時間を要する農地につきましては、河川の復旧事業と適切に連携しつつ、農業者の負担軽減に配慮した工法による復旧を支援することで、着実に復旧を進めてまいりたいと考えております。

 さらに、地域によりましては、原状復旧にとどまらず、再度災害防止に向けて、一定の要件を満たせば排水路など関連する施設をあわせ整備できる事業の活用を検討してまいりたいと思っております。

 こうした取り組みにより、被災された農業者の皆さんが将来にわたりしっかりと営農を継続できるよう、全力で支援してまいります。委員の御指導も、またよろしくお願いいたします。

武部委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣が御視察いただいた北見の常呂のJAところでは、十二人の新規就農者がことし新たに農業を始めたそうでありまして、お会いしていただいた方の中に二人若い方がいらっしゃいましたけれども、その若い営農者の方々は、ことしは収穫、初めての年でゼロであったわけです。まさに、一番スタートから最も厳しい、農家の厳しさといいますか自然の厳しさというのを味わわれて、その際に、大臣からも頑張ろうよという声をかけていただきました。それを励みに頑張っていただけると思います。

 また、今大臣のお話にあったとおり、北海道は、日本の中の全耕地面積の二五%を占めております。

 私の地元が中心でありますけれども、タマネギは全国の六割が北海道、バレイショは八割、それから小麦は七割、砂糖の原料になりますてん菜は一〇〇%北海道でつくっておりますので、まさにこの北海道が、さらに言いますと、皆さん専業農家で大規模でありますから、農業収入がほとんどなんです。ですから、農業をやめてしまえば収入がなくなってしまうという状況にありますので、しっかり営農を継続していただくということが一番肝心であります。

 総理のお話にもありましたけれども、十勝では長芋を輸出しておりますし、いろいろな工夫をしてこのTPPを乗り越えて輸出拡大していこうという意欲に燃えているところにこの災害がありまして、皆さん、共済に大変入っていただいているんですけれども、制度上、共済にならない作物もあるんです。それは、長芋だったり、ニンジンだったり、ゴボウだったりするんですけれども。

 しかし、これはもう資材費をかけてとれなかったということで、共済も出ないということで、大変苦しい思いをされている農業者の方もいらっしゃいますので、今後、共済でフォローできない農業者の方をどうやって支援していくか、大臣にお聞きしたいと思います。

山本(有)国務大臣 今般の一連の台風災害で、北海道を初めといたしまして、バレイショ、タマネギ等の農業共済対象品目、それだけではなくて、御指摘の長芋、ニンジン等の対象外品目でも、圃場の冠水によりまして収穫できなくなるなどの被害が生じております。

 こうした農業共済対象外品目に対してできることは、まず、被災農業者の資金調達を支援するため、農林漁業セーフティーネット資金やスーパーL資金等の災害関連資金の貸付利子を貸し付け当初五年間実質無利子化したところでございまして、これらの資金の活用が可能でございます。また、種子の購入等に要する経費の助成など、次期作に向けました営農継続の円滑化を図るための対策を現在検討しております。

 今般の甚大な台風災害に際し、被災されました農業者の皆さんが、今後、営農意欲を失うことのないように、復旧復興に向け万全の対応をとってまいりたいというように思っております。

武部委員 ありがとうございます。

 今回の台風は、漁業、林業にも大きな被害を及ぼしております。大量に流出した流木が、畑にもそうなんですけれども、海にも相当流れ出ておりまして、今最盛期を迎えようとしておりますアキザケの定置網漁、この網の被害があったり、あるいは操業の支障になったりしております。また、岩手ではサケ・マスのふ化場施設ですとか、あるいは北海道でも道南の方のホタテの養殖施設ですとかに大きな被害が出ているところでありますけれども、このような流木の回収、漁業支援についてどのように取り組んでいくのか、大臣にまたお聞きしたいと思います。

山本(有)国務大臣 北海道、岩手を初めとする北日本の沿岸域に大量の流木が漂流、漂着するほか、サケのふ化放流施設に甚大な被害が発生していることは御存じのとおりでございます。

 私も、九月十四日、北海道で被害状況を視察させていただきまして、被災した漁業関係者から直接悲痛なお訴えをお聞きいたしました。

 農林水産省としましては、まず、流木の回収処理につきまして、漁港の泊地等にあっては災害復旧事業により、堤防等の海岸保全施設にありましては災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業によりまして支援を実施することとしております。

 さらに、沿岸域や内水面に堆積、漂流する流木等につきましては、漁業者等で構成されておられます活動組織が速やかに回収処理を実施できますように、地方負担の軽減など、水産多面的機能発揮対策事業の運用方法の改善を図ってまいりたいと思っております。

 また、ふ化放流施設につきましては、災害復旧事業の査定前着工等による早期復旧への支援を迅速に行いたいと思っております。

 今後とも、関係省庁とも連絡を密にいたしまして、被災地の漁業の一日も早い復旧復興に全力で取り組んでまいります。よろしくお願いします。

武部委員 ありがとうございます。

 都内のスーパーでは、タマネギですとかジャガイモですとかニンジンですとかが大変高騰しているという報道もあります。

 私も実際、都内のスーパーに買い物がてら、幾らかなと思って見に行ってみました。そうしたら、私のそばではタマネギが一個九十八円。お店の人に聞いたら、平年より倍ぐらいしていますねという話でありまして、これは生産地だけの災害ではないと思うんです。やはり消費者の皆さんにも大変大きな影響を与えています。

 ぜひともこういう災害があったときに消費者の皆様にも御理解していただきたいんですけれども、農家の方々というのは、まさに自然と向き合いながら、共生しながら、いろいろな苦労をして、困難を乗り越えて安全でおいしい野菜や畜産物をつくっているんです。漁業も同じだと思いますけれども。ですから、当たり前のように買えるものじゃないんだと。

 常に、やはり消費者とそして生産者の皆さん方との相互理解というのを、また、このピンチじゃありませんけれども、これをチャンスに変えていくような、そういった努力も私もしていきたいというふうに思っております。

 続きまして、輸送、物流への影響について質問をさせていただきます。

 今回の台風と大雨の影響によりまして、北海道の国道三十八号線、二百七十四号線、二百三十六号線、JRにつきましても、石勝線、根室線、石北線など、主要交通網が寸断されております。いまだ復旧の見通しも立たない路線もありまして、農作物の輸送ですとか、あるいは北海道は観光地でありますから、観光客も交通網が使えないということで北海道に行かないという、甚大な影響が出ております。

 北海道は大変道路も広いし伸び伸びとしていていいよねと言われるんですけれども、この災害を体験いたしまして、北海道の交通網というのは脆弱なんだなということを改めて感じました。

 そのような中、高規格道路の道東道は損傷も少なくて、国道が使えませんので、代替道路として一部の間を無料開放していただいて、物流を何とか支えていただいている状況にあります。東日本大震災のときもそうでした。高規格道路が命の道路として極めて大きな役割を果たしました。今回もそうなんです。

 しかし、北海道は高規格道路の整備進捗率が六割ぐらいでありまして、特に、被害の大きかった十勝、オホーツクが高速道路が整備されていません。リダンダンシーの確保のためにも、やはり高速道路の重要性というのは極めて重要だと思うんです。

 防災、減災の観点から、高規格道路の整備、ミッシングリンクの解消は重要と考えますけれども、石井国土交通大臣の所見をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 高規格幹線道路は、地域の活性化や物流の効率化等に役立つとともに、災害により地域が孤立しやすい、また、一つの道路が遮断されるとほかに選択肢がないなどの災害面からの弱点を克服するためにも必要なものと認識をしております。

 北海道におけます今般の一連の台風の被害におきましては、道東自動車道を二日強で復旧いたしまして、占冠インターチェンジから音更帯広インターチェンジの区間で無料措置を実施することによりまして、被災をいたしました国道三十八号や国道二百七十四号などの代替として機能させまして、物流、人流の確保においても重要な役割を果たしたところでございます。

 しかし、全国におきましては、いまだ高規格幹線道路がつながっていない地域がございます。北海道においては約四割が未供用となっております。

 今後とも、事業中の区間について整備を推進するとともに、未事業化区間におきましても計画的に調査を進めるなど、一日も早いミッシングリンクの解消に向けまして、関係者の皆様の御協力を得ながら、計画的に進めてまいりたいと存じます。

武部委員 大臣、ありがとうございます。大変力強いお言葉をいただきました。

 しかし、まだ、JRもそうですし、道路もいつまでに復旧できるということが見通しが立っていないところもありますので、ぜひとも一刻も早く寸断されている道路についての復旧をお願いしたいと思います。

 それと、先ほども申し上げましたけれども、北海道は三回も台風が来るというのは初めての経験ですから、河川も道路も台風に見合ったつくりになっていないんだというふうに思います。

 特に今回は、私の北見でいいますと、年間降水量は八百ミリぐらいだと言われるんですけれども、そのうちの半分ぐらいが一週間で降りましたので、想定を上回る降雨量に堤防も耐えられなかったんだというふうに思います。

 今後、では、これは百年に一回の災害だからもう来ないだろうというふうに思う方もいらっしゃるんですけれども、実は、これも私の選挙区なんですけれども、宗谷の利尻、礼文というのは、二年前に五十年に一度の雨が降った。土砂災害が出て、人が亡くなっているんですけれども、つい先日もそれ以上の雨が降っているんです。五十年に一度の雨が二年に一回降っているんです。ですから、これはもう、想定し得ないような、今までにはないよというような災害が起き得るんだと思います。

 気候が変動する中におきまして、原形復旧のみでは来る災害に対処できないんじゃないかという声がたくさん聞かれます。改良復旧でありますとか河川整備の根本的な見直しが必要だと考えますけれども、石井大臣の所見を伺いたいと思います。

石井国務大臣 気候変動の影響によりまして、今後、水害の頻発化、激甚化が懸念されます。

 昨年九月の関東・東北豪雨による甚大な被害を踏まえまして、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するという考え方に立ちまして、社会全体で洪水に備える水防災意識社会再構築ビジョンの取り組みを進めているところでございます。

 具体的には、洪水を安全に流す対策の着実な推進に加えまして、住民目線のソフト対策への転換、また、仮に越水等が発生した場合でも、堤防決壊までの時間を少しでも引き延ばすよう堤防構造を工夫した危機管理型ハード対策の導入など、ソフト、ハード一体となった対策を講じております。

 この夏、北海道、東北地方を襲いました一連の台風による被害を受けまして、河川整備に当たりましては、必要に応じて現行計画の事業内容の見直しを行った上でこれらの対策を進めてまいりたいと思っております。

 さらに、災害復旧につきましては、原形復旧のみならず、再度の災害防止を図る改良復旧の活用も検討いたしまして、早期に地域の復旧が図れるよう努めてまいります。

 また、今般の災害を受けまして、水防災意識社会再構築ビジョン、従来、直轄の河川の管理区域でやっておりましたのを県の河川管理区域にも広げていくという取り組みを進めますが、県の管理河川における取り組みも加速化していきたいと思っております。

 今後とも、災害から国民の命と暮らしを守るため、総合的な防災・減災対策を不断に見直してまいりたいと存じます。

武部委員 大臣、ありがとうございます。

 改良復旧も含めて、災害に強い国づくりを進めていっていただきたいと思います。

 最後に、まさにこの国土強靱化。首都直下型地震あるいは南海トラフ地震が将来予想されます。これに我々はしっかりと備えなければならないんだというふうに思います。

 どうやって国土強靱化を進めていくか、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 熊本地震や相次ぐ台風被害など、ことしも多数の災害が発生をし、南海トラフ地震や首都直下地震の発生も懸念される中、国土強靱化は我が国にとって焦眉の急であります。施設の耐震化や老朽化対策など、国民の命と暮らしを守るための防災・減災対策を重点的に進めていきます。

 また、国土強靱化は、国、地方、民間が一体となって国民運動として進めていくことが重要でありまして、地域計画の策定やその実施を支援するとともに、民間における国土強靱化に資する取り組みを促進してまいります。

 今後とも、国民の命と暮らしを守るため、ハードと、そしてハードだけではなくてソフトの対策も含めて、適切に組み合わせながら、オール・ジャパンで国土強靱化を強力に進めていく考えであります。

武部委員 ありがとうございます。

 被災者の皆様方は、一日も早い補正予算の成立を切に望んでいます。どうか、野党の皆様も、被災者の心に寄り添って、早期成立に御協力賜りますようお願い申し上げまして、質問とかえさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、とかしきなおみ君から関連質疑の申し出があります。茂木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。とかしきなおみ君。

とかしき委員 おはようございます。自由民主党・無所属の会、とかしきなおみでございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 九月二十六日、本会議での総理の所信表明の演説の中で、総理はこのようにおっしゃいました。ひたすらに世界一を目指す気概、そしてオンリーワンで世界を席巻するたくみのわざ、こういう皆さんが挑戦し続ける限り、日本はまだまだ成長できる、皆さん、今こそ、臆することなく、自信を持って世界一を目指していこうではありませんか、このように力強く訴えられたわけであります。

 ということで、きょうは、これを受けまして、日本の世界一、これは健康長寿でありますけれども、これを生かして、まちづくりの中で国の成長を目指していこう、こういうテーマで質問させていただきたいと思います。

 ことしの七月、実は私、厚生労働副大臣を務めさせていただいたときに、マレーシアの会議に参加をさせていただきました。

 このマレーシアの会議は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジということで、閣僚フォーラムということで、アジアやアフリカの二十五カ国のそれぞれの厚生大臣が集まって、日本の皆保険制度、医療制度をモデルにして、それぞれの国でこういった制度を取り入れることができないか、日本を目標にして自分たちの国も制度を整えていこうよ、社会保障制度を整えていこうよ、そういう会議でありました。後ろにはロックフェラー財団とか世界銀行とかがおりまして、そして資金的なバックアップをするという会議でございました。まさに、この会議に出ますと、日本というのは世界の中で大変評価が高い、そして日本の医療制度というのは大変すぐれているということがよくわかりました。

 では、振り返って、今度国内の方を見てみますとどうなのかということでありますが、国民の皆さんからすれば、多分世界の中の評価というのはほとんどわかりませんので、当然、過去との比較を見ていくしかありません。ですから、保険料や税金もふえていく、これから負担がどんどんふえていくのではないか、高齢社会になって労働力も落ちてくるから社会保障の費用負担がふえてきて生活が苦しくなるんじゃないか、だったら、不安だからお金をためておこうよ、こういう気持ちがどんどん強くなっていって、経済がまさにロックして動かなくなっているというのが今の日本の現状ではないか、このように考えます。

 そして、これは別に個人の人たちだけ、国民の人たちだけではなくて、企業も全く同じような状況に陥っておりまして、設備投資とかに投資しないで、むしろ内部留保で抱えていた方がいいのではないかと。内部留保も、財務省の調べによりますと、最新ですと三百六十七兆円ということで、日本のGDPが五百兆円でありますから、その約七割ぐらいが内部留保に回っているという状況であります。

 これは何でそうなるのかといいますと、やはり企業からすれば、将来、日本の国が何を目指しているのか、どの産業を強くしようとしているのか、それが明確に見えない。ゴールが、この国が十年後、二十年後、世界の中でどういう位置を占めていくべきなのか、これを明確にしておくこと、わかりやすくしておくことが今大切ではないか、このように思います。

 そのときに、ちょうど安倍総理が九月二十一日のニューヨークで、金融ビジネスの関係者の皆さんに向けてスピーチをなさいました。人口動態が重荷かボーナスかというスピーチをなさったわけですが、その中で総理が、日本の人口動態は逆説的ですが重荷ではなくボーナスである、こういうふうにおっしゃったわけでありますけれども、総理は具体的にこのボーナスというのは何を意味していらっしゃるのか、その意図をぜひお聞かせいただければと思います。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 人口動態については、我々はもちろん、一億総活躍社会をつくっていくという中において、少子高齢化、人口動態に真正面から取り組んでいく考えでありますが、同時に、私がさきのニューヨークにおける講演の中で、日本の人口動態は逆説的ですが重荷ではなくボーナスなのですと申し上げたのは、我が国の少子高齢化が我々に改革のインセンティブを与え、ロボットからAIまで、新技術の活用による生産性向上につながるという未来志向の思いからであります。

 生産人口が減少していくという現実の前で立ちすくむのではなくて、もう経済は成長していかないんだといって立ちすくむのではなくて、例えば、我々安倍政権ができてからでも三百万人生産年齢人口は減少しているんですが、名目GDPは六・九%ふえたんです。労働人口が減っていけば絶対に経済は成長しないということではないわけでありまして、むしろそれをきっかけとしていろいろなことをやっていこうじゃないかということであります。

 議員の御指摘の健康・医療分野においても、高齢化が進む中で、健康長寿社会の実現に向けて、再生医療やゲノム医療などの先端的な研究開発や、保険外サービスやICTシステムなど、新産業の創出に官民一体となって取り組んでいきたいと考えているわけでありまして、多くの国々がこういう課題に今後直面してくるわけでありますが、我々は最もそれに先駆けてこの課題に直面しているわけでありますから、この課題を克服するためにさまざまな取り組みをしていくということにおいて、課題先進国としての、いわばそれを強みにしていきたい、こう考えているところであります。

とかしき委員 ありがとうございます。

 私も総理の考えと全く同じでありまして、高齢社会を強みに変えていって、そして改革のインセンティブはむしろ日本がいっぱい持っているのではないか、このように今考えているわけであります。ということで、日本は高齢社会を強みにする、アベノミクスの成長戦略はまさにここがポイントなのではないかな、このように思います。

 ということで、皆様もよく御存じのように、健康寿命、これは日本、我が国は世界で一番であります。これの意味するところは、世界の人たちから見れば、多分日本は一番健康で長生きできるノウハウを持っている国ではないか、こういうふうに世界の人たちは見ているはずであります。

 そして、二番ではだめなんでしょうかとある党首の方はおっしゃっておりましたけれども、これはあえて言いますけれども、二番ではだめで、一番でないと絶対だめなんです。一番は、やはりビジネスチャンスは一番にしか手に入れることができません。フロントランナーで走っていくわけですから、そこには蓄積されたノウハウというものがどんどんたまってまいりますので、そこにビジネスチャンスがたくさん生まれてくるので、ですから、みんなビジネスをしている人は一番を目指していくわけであります。

 ということで、チャンスをどうやって生かしていくのか。先ほど総理もおっしゃいましたように、私も国際会議に出ると、先進国の方が特に、日本の高齢化はどうやって乗り越えていくつもりなんだ、私たちにそのノウハウを教えてほしい、こういうことを結構言われます。ということで、やはり高齢社会を上手に生かしてアベノミクスの矢を飛ばしていくことがこれからは必要ではないかと思います。

 では、日本の国内の今の状況なんですけれども、どうなのかといいますと、実は日本人は、日本は今欲しいものがない社会になっております。お金があっても欲しいものがない。バブル崩壊後、実は個人所得、デフレが二十年近く続きましたが、それでも日本は貯蓄をずっとふやし続けている、七百兆円もふやしていく。こんな国は多分、世界じゅう日本しかございません。金融資産も、一九九〇年のころは一千兆円でしたけれども、現在は千七百兆円ぐらいある、こういうふうに言われております。

 ですから、アベノミクスの経済効果を高めていくためには、ためるというところから、もっとお金を使ってもらう、こういう産業をどんどん育成していくことが大切ではないかというふうに思います。高度成長の時代は労働力がありますので、物をつくって輸出して国を富ませていくことができますが、今日本が踏み込んでいる成熟社会では、労働力は残念ながら落ちますけれども、その分ソフトや情報を生かした産業をいかに育てていって、国内にいかに世界からお金と人を呼び込んでいくか、こういうことが大切ではないかというふうに思います。

 ということで、では国民の皆さんが一体何にお金を使いたいと思っているのかということなんですけれども、この資料をごらんになっていただければと思います。

 高齢者になるほど、実は健康意識がだんだん大きくなってきます。若いときから高齢者に向かって、大体八割から九割の人たちはみんな健康に対して興味があるわけです。さらに、その意識は年を重ねるごとに強くなっていく傾向があります。ということは、高齢者の皆さんは、若者も含めて、健康に対して意識が非常に強くなっているわけであります。

 そして、では一体どれぐらいお金を使っているのかというのがまた次の表なのでありますけれども、若い六十五歳未満の勤労世帯、これから見ますと、教育に一番お金を使うんですけれども、高齢者の無職の世帯、これが普通の方と比べて一・三九倍保健医療にお金を使うという傾向が見えます。

 そして、平成二十六年の厚生労働省の労働白書によりますと、六十五歳以上の四一・五%が五千円以上健康の維持のためにお金を使ってもいいよ、こういうふうに言っているわけであります。

 ですから、日本人は今、物は余り要らないけれども、でも欲しいのは絶対健康だ、健康で長生きすることに関してはお金を使っていきたいと思っているわけです。誰も寝たきりにもなりたくないわけでありますし、認知症にもなりたくないわけであります。ですから、なるべく健康を維持して、そのためにお金を使っていきたい。

 では今どうなっているかといいますと、残念ながら、フィットネスクラブとか健康食品とか、それぐらいしかお金を使うところがなくて、健康を維持するために楽しくお金を使うところが全くない。そういう産業は日本には全くないということなので、ここをもっとこれから強化していくべきなのではないかというふうに考えます。

 日本の医療は、今、かかりつけ医師、かかりつけ薬剤師、こういうふうに患者を中心とした医療に変わりつつあります。やはり患者のニーズに応えて、そして患者さんの人生にどれだけ医療が寄り添っていけるのか、こういう価値観へのシフトが今医療の中で行われているわけでありますけれども、これからの地域医療というのは、病をなるべく発症させないように健康管理をするために、地域医療というのが大きな役割を担ってくるのではないか、このように考えるわけであります。

 ということで、将来、病を発症させないようにする予防医療、これを地域医療としてもっと積極的に手がけていくべきではないか、このように思うんですけれども、塩崎大臣、いかがでございましょうか。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 先生がおっしゃるとおりだと思いますが、これからのキーワードは、やはり、健康づくり、予防、重症化予防、これが基本ではないかというふうに考えております。

 これまで、開業医の皆さん方など身近な医療機関においても従来から、健診とか予防接種とか、健康づくり、病気の予防について重要な役割を担っているからこそ、これだけ寿命も延びたということであろうと思います。

 健康づくりには、しかし、個人の自主的な取り組みを促すために、それぞれの地域の実情に応じた環境の整備というのが必要だということで、さまざまな地域の取り組みを、例えば「健康寿命をのばそう!アワード」というような表彰をつくっていくなどの、他の地域への横展開というものも意識してやっていかなければならないというふうに考えています。

 御地元の吹田市民病院では一千人を超える参加者に対して肺機能検査を行うイベントを開催したというふうに聞いておりまして、肺の疾患予防あるいは禁煙の啓発活動が行われているということでございますし、また、薬局につきましては、これからかかりつけ薬局というのが定着をしてくるんだろうと思いますけれども、あす十月一日から、地域のかかりつけ医を初めとした医療機関などと連携をしながら、薬に関することを含めて、健康の維持あるいは増進の相談を行う薬局というのが健康サポート薬局として地域住民の健康づくりや予防に積極的にかかわる取り組みを開始するということになっております。

 事ほどさように、地域で日ごろの予防、そしてまた健康づくり、重症化予防というものをどういうふうにやっていくかというのはこれからますます大事になってくると思いますので、私ども厚生労働省としても引き続きこうした取り組みを進めてまいりたいというふうに思います。

とかしき委員 ありがとうございました。

 ここからは、大阪の吹田市と摂津市で今現在取り組んでいるプロジェクト、これは予防医療を中心としたプロジェクトなんですけれども、それを御紹介しながらちょっと質問を進めさせていただきたいと思います。

 実は、これは健都という名前でございます。健都プロジェクトと言われておりますけれども、これは町を挙げて循環器の病を減らしていこうという方法であります。

 駅前に、吹田と摂津にわたる土地なんですが、三十ヘクタールの土地があります。JR沿線上の新大阪から三駅目の非常にアクセスのいいところに三十ヘクタールの更地がございます。そこを使って新しく町をつくっていこうということで、国立循環器病センターが、これはもう移転が既に決まっております。その横に吹田市民病院、さらに国立循環器病センターの裏には医薬基盤・健康・栄養研究所が移転してくること、これも決まっております。ということで、医療機関と研究機関が集中してこの町にやってきて、さらにここには住宅もできますし、そして公園もあるということで、ある意味町の機能を全て持っているのがこの駅前の状態であります。今これは工事に入っているところで、二〇二〇年完成予定で動いております。

 このまちづくりのポイントは、高齢社会もいいものなんだ、そして幾らでもまだ地域でビジネスチャンスを生み出せるんだよということを世界に証明して、行く行くは観光地も目指していこうよ、こういうことを考えているわけであります。

 特徴は三つありまして、まず一つ目は、日本だけが商品化できる予防医療の情報をビジネスにしていこう、こういうふうに考えているわけであります。

 これは何で循環器の病に注目したのかといいますと、循環器というのは、実は、死亡率、御存じのように、一位はもちろんがんであります。これが二八・七%。次に、循環器の脳と心臓の疾患、これを合わせますと二五・五%。ほぼ、がんとそんなに遜色のない死亡率であります。

 さらに、これにかかっている医療費の方を考えますと、循環器の病というのは結構お金がかかりまして、長く患って体に障害を背負ってしまう場合もありますので費用がかかりまして、医療費が一番かかるのは実は循環器の病であります。五・四兆円。二番目にかかるのががんで三・四兆円ということで、非常に医療費もかかるし、体への負担も大きい。

 ところが、循環器の病は、ありがたいことに、がんと違って非常に明確に予防ができることであります。食事と運動のバランスがきちっととれればこれは予防することができるということで。誰でも好きなものを好きなだけ食べて、なるべく楽して運動したいわけであります。その技術開発を町を挙げてしていって、そして予防医療の情報でビジネスをどんどん生んでいこうよ、こういうまちづくりを目指していこうというふうに考えているわけであります。

 大阪は、ありがたいことにといいますか、健康寿命が実は最下位に近くて、男女とも四十四位、四十五位ということで、これ以上下がりようのない状況でありますので、これからは逆を言えば測定しやすい、データがとりやすいのではないか、こういうふうにも言えるわけであります。

 ということで、今までのようにモラルに訴えて、頑張って町をつくっていこうよ、これだと三年ぐらいで飽きてしまいますけれども、こうやってビジネスを起こしてみんなで稼いでいこうよ、こういう町も挑戦していこうよというのが一つ目の特徴であります。

 二つ目は、今お話しさせていただきましたように、地域医療は予防医療を中心にしてやっていくべきだ。

 今、ありがたいことに、技術が進んできまして、発症しそうな病というのがわかるようになってきましたので、それをなるべく発症させないようにどういう健康管理をしたらいいのかというので、地域の医療機関、お医者さんや薬剤師さんとかがしっかり健康管理をして、それで体を病気にならないように維持する。

 もちろんこれは皆保険制度の外の話でありますから、実費をいただかなくてはいけません。ということは、患者さんが納得をしていただけるようにどれだけ付加価値のある情報発信、カウンセリングができるか、これは医療関係者の人たちの腕の見せどころ、こういうふうにもなりますし、自由にアイデアを出して付加価値をつけていくこともできるのではないか、このように考えております。

 そして、三番目なんですけれども、このように言いますと、今までの保険料と違って実費で負担しなくてはいけないとなると、しんどいねという声も当然上がってまいりますので、それでしたら、このプロジェクトのまちづくりに皆さんも参加してくださいよということで、市民の皆さんにも経済活動の一翼を担っていただこうと考えております。食事と運動のバランスについて勉強していただいて、市民の皆さんには外から来た人たちに食事と運動のバランスを指導してもらう人になってもらおうと思っております。

 というのは、食事と運動のバランスというのは、ダイエットをなさった方はおわかりになると思いますけれども、一人でやると結構しんどいんですが、誰かと一緒だと結構できるので、それにつき合ってあげる人を市民の皆さんに、そしてそれに対してちゃんと報酬をいただくということで、このまちづくりに参加すると経済活動の一翼も担える、そういうまちづくりを今考えているわけであります。

 詳しいことは吹田市のホームページを見ていただければわかるんですけれども、今こういう町をつくろうということで、イノベーションパークには、この考えに賛同する企業もあわせて、食事と運動のバランスを楽してとれる方法を技術開発する企業を一緒に誘致して、そして町をいろいろなアイデアで循環させていく挑戦をしていこうというふうに考えております。

 さらに、ここは地域で雇用を生むわけでありますから、地域で比較的長距離で通勤するのが困難な方、例えば高齢者とか、子育て中の方とか、介護をしている方とか、障害をお持ちの方とか、こういう方々がなるべく地域で仕事ができるようにしていきたいな、このように考えております。

 特に高齢者の方々、今、引退してしまうと、家でやることがなくてごろごろして、年に数回の旅行だけが楽しみ、こういう方が非常に多いわけでありますけれども、これでは非常にもったいないということで、なるべく高齢者の皆さんに、事業を起こしたりとか、今までのノウハウを地域に生かしてもらう、こういう挑戦もしていただけたらありがたいかな、このように思っております。そして、先ほど言いましたように、高齢者や障害者や子育て中や介護中の皆さんを雇用してもらうような事業を起こしていただけたらありがたいなというふうに思っております。

 厚生労働省は、生涯現役起業支援助成金、これは既に導入していただいておりますけれども、この高齢者の起業支援についての取り組みと今後の方針について教えていただけますでしょうか。

塩崎国務大臣 年齢にかかわりなく働くことができる生涯現役社会を実現するというのは、これから高齢化が進む中で大変重要でありまして、中高年の方も、それまでの経験を生かして、起業、業を起こすということについて、それを含めて、いろいろな形での就業機会というのが提供されるようにしていくことが大事なんだろうというふうに思います。

 このため、中高年の方々が業を起こす、起業によってみずからの就業機会をつくっていくということとともに、中高年の方を雇い入れた場合に助成をするという、今御指摘をいただいた生涯現役起業支援助成金というものを今年度創設いたしたところでございます。

 当然のことながらこれから高齢化が進むわけでありますので、この助成金の積極的な周知をしていこう、そしてまた中高年の方の起業支援をしっかりして、生涯現役社会の実現を推進して、若い人も、そして高齢者の皆さんも元気に活躍していただくというふうに考えております。

とかしき委員 ありがとうございました。

 健康産業というのは、やはりこういう地域のまちづくりと一体化させていくというのがすごく重要であるというふうに考えます。

 例えばテーマを決めて、認知症を予防する町だとか、iPSを使った先端医療を取り入れた町だとか、例えば地域の伝統医療を体験したり学んだりできる町、これなんかは沖縄なんかは非常に向いているのではないかなというふうに私は思います。

 とにかく成功事例をつくって、地域で、それぞれの地域の特徴を生かしながら健康産業を生かして、そして市民の人たちを巻き込んでいろいろなビジネスを起こしていく、こういう挑戦をしていくのがいいのではないかと考えておりますけれども、健康長寿の国だからこそ優位性のある健康産業の育成についての支援、経産大臣はどういうふうにお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

世耕国務大臣 民間による健康産業の育成というのは非常に重要だと思っています。

 ただ、それは地域ごとにいろいろ事情があるわけです。今お話しの吹田市、摂津市は、やはり循環器センターという高度医療機関があるということで、それを軸にしたまちづくりをされています。

 そういった地域の事情に対応するために、経産省としましては、自治体や医療・介護関係者、農業、観光、スポーツなどの多様な民間事業者の連携を促進するために、地域版次世代ヘルスケア産業協議会の設置促進に取り組んでいます。全国でもう既に三十の協議会が設置をされております。

 例えば、温泉地におけるヘルスツーリズムの取り組みなどが生まれてきております。さらに、地域に根差した健康産業を支援するために、産業競争力強化法に基づくグレーゾーン解消制度を活用した民間事業者の健康産業への参入促進ですとか、あるいは地域の観光資源を活用したヘルスツーリズムのサービス品質の評価を行う第三者認証制度の構築などを行って、事業環境の整備を図っているところであります。

とかしき委員 ありがとうございました。

 やはり、日本は今、活性化するには成功事例をつくっておくこと、これが大切だと思います。町をつくって、ああ、ああいうふうにやればうまくいくんだ、高齢社会もすごくいい社会なんだということを証明する場所を幾つかつくっておくこと、これがこれからは重要ではないか、さらにそれを頑張っていけば観光資源にも十分なり得るのではないか、このように考えております。

 ということで、総理に、生涯活躍のまちということで、高齢社会の特徴を生かして、強みを生かしていくということでこういう構想を考えているんですけれども、総理のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 生涯活躍のまちについては、中高年の方々が希望に応じて地方や町中に移り住み、地域のさまざまな世代の方々と交流しながら健康で活動的な生活を送れるようにすることで、地方への新しい人の流れをつくっていくことにつながっていくと思います。その実現に向けた自治体の取り組みを、具体化のための手引作成、関係府省による支援チームの形成、そして交付金や指定等の手続の簡素化などを通じて支援しています。

 また、地域の魅力を最大限に生かした稼げるまちづくりについては、住民、事業主、地権者等が主体となった美しい町並みや人を引きつける地域ブランドの形成、そしてコンパクトシティーにおける波及効果が高い商業施設の整備や商店街の機能強化といった取り組みを情報面、人材面、財政面で支援するとともに、地域の優良な取り組み事例を収集して全国展開を促すこととしております。

 こうした施策を着実に進めて、地方創生に全力で取り組んでいきたいと思います。

とかしき委員 ありがとうございました。

 それでは最後に、高速増殖炉「もんじゅ」についてちょっと確認ということで。

 二十一日に原子力関係閣僚会議が開催されたと伺っておりますけれども、この会議前後一週間ほど「もんじゅ」については各新聞、マスコミが随分取り上げておりまして、「もんじゅ」が廃炉になるのではないか、廃炉があたかも既定路線のように決定していたような見出しが躍っております。

 そこでちょっとお伺いしたいんですが、「もんじゅ」について政府で今決まっていることは何なのか、整理整頓してお伺いしたいのと、ちょっと時間がないのでまとめてお聞きしたいと思いますけれども、高速炉開発の方針、具体的に今後どのようにお進めになるつもりなのか、これをあわせてお聞きしたいと思います。

松野国務大臣 「もんじゅ」につきましては、九月二十一日に開催された原子力関係閣僚会議において、廃炉を含め抜本的な見直しを行うこととし、その取り扱いに関する政府方針を、高速炉開発の方針とあわせて、本年中に原子力関係閣僚会議で決定することとしております。したがいまして、今後の高速炉開発の方針の策定と切り離して、現時点で「もんじゅ」の廃炉を決めたわけではありません。

 文部科学省といたしましては、原子力関係閣僚会議の決定に従い、年内に結論を出すべく、地元の意見をしっかりと踏まえ、検討してまいりたいと考えております。

 あわせまして、高速炉開発の今後の方針でございますが、我が国において今後も核燃料サイクル政策を堅持し、高速炉開発を推進していく必要があると考えております。このため、今般、原子力関係閣僚会議において、年末までに今後の高速炉開発の方針を決定することといたしました。

 また、経済産業大臣を中心に、文部科学大臣、原子力研究開発機構及び高速炉開発にかかわる民間事業者にも参画をいただきまして、高速炉開発会議を立ち上げ、国内の高速炉開発の司令塔として本方針案の検討、策定を行うということでございます。

 引き続き、本方針を基礎として高速炉開発の具体化を図っていく方針であります。

とかしき委員 ありがとうございました。終わります。

浜田委員長 これにて茂木君、武部君、とかしき君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 おはようございます。公明党の石田祝稔でございます。

 きょうは、総理並びに関係大臣に質問をいたします。

 まず、ことしに入りまして、四月の熊本の地震、そして、その後の夏の大水害、大変災害の多い年でございます。災害におきましてお亡くなりになられた方に心からお悔やみを申し上げたいと思いますし、今なお被災で苦しんでいらっしゃる方に心からのお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 私のふるさとの先人、寺田寅彦先生は、災害は忘れたころにやってくる、こういうふうに言いましたけれども、今は、災害は忘れる間もなくやってくる、常にあるということを大前提にして考えていかなきゃいけないというふうに思っております。後ほど、その災害については若干触れさせていただきます。

 まず、過日、厚生労働省が発表いたしました、いわゆる社会保障と税で再分配がしっかりと機能している、こういう報告がございましたので、特にこの成長と分配の好循環は、これは我々も参議院選挙でお話をさせていただきましたし、我が党としては、希望が行き渡る国、こういうことでお訴えをしてまいりました。今申し上げましたように、再分配について非常に大きな効果が出てきている、こういう観点で、きょうは、成長と分配の好循環の中でも、分配について少々お聞きをいたしたいというふうに思っております。

 まず、分配ということになりますと、やはり社会保障、特に年金、まあ税もあるかもしれませんけれども、そういう観点でお聞きをいたしますが、総理は分配のところで、特に年金の問題について、我が党も実は、六月二十二日の参議院選挙の始まる前の日、党首討論のときに、山口代表が、年金の受給資格取得期間の短縮について、そのときに総理に聞くという形をとらせていただいてお訴えをした。そのときに、総理も、これは喫緊の課題だ、こういうお話もなさったように記憶をいたしております。

 そういう中で、今大変皆さんが心配しているのが、年金積立金管理運用独立行政法人、GPIF、私もパネルを今お示しいたしますけれども、昨年度と本年の第一・四半期、これにつきましてちょっとマイナスになっている。では全体はどうなんだ。そこのところだけをとってマイナスだと言うのか。公平に見るんだったら、今までどうだったのかという中でどういうことを見ていかなきゃいけないのか。ここのところ、余りに、マイナスだマイナスだ、こういうことを言い募って年金受給者を不安にしているんじゃないのか。ですから、ここはぜひ正確なところを見ていただくということが大事ではないか。

 こういうことで総理にまずお聞きをいたしたいというふうに思いますけれども、年金財政にGPIFの運用結果がどういうふうに影響を及ぼすのか、まず総理にお伺いをいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 年金積立金については、将来の安定的な年金の給付に向けて、長期的な視点に立って安定的かつ効率的に運用することを基本としています。

 安倍政権の三年間における年金積立金の累積収益は二十七・七兆円でありまして、平成十三年度の自主運用開始以降の十五年間の累積収益は、今パネルで示していただいたように四十・二兆円になっているわけであります。

 かつては、例えば平成二十年には二・五兆円まで落ちているものが今四十兆円まであるわけでありますから、なぜ、これを年金がもう崩壊したかのごとく言うというのは全く理解できないわけでありまして、むしろ、これを見ていただいてわかるように、安倍政権において一時五十兆円までいったものが今四十・二兆円になっているわけでありますが、はるかにこれは高い水準であることは間違いないわけであります。

 繰り返しになりますが、安倍政権において二十七・七兆円、これは累積収益がふえているのは事実であります。そういうこともしっかりと見ていただかなければならないわけでありまして、年金財政上必要な収益を十分に確保し、年金財政にプラスの影響が出ているわけでありまして、したがって、市場動向等による短期的な評価損によって年金財政上の問題は生じず、年金額に影響することはもちろん全くないのはパネルを見ていただければ一目瞭然であろう、このように思うわけであります。

 つまり、かつてはこれはマイナスのときもあったわけでありますし、平成二十年、これは民主党政権時代ですか、二・五兆円。(発言する者あり)失礼しました。その後、民主党政権時代もずっと十一・七兆円ぐらいしかなかったものが、今はその四倍ぐらいはあるわけでございます。

 ということでありますから、殊さらこういうものを取り上げて不安をあおるというのはまことに遺憾なことだと私は思うわけでありまして、国民の皆様にはぜひ安心していただきたい、このように思うわけであります。また、むしろそういう不安をあおるということは厳に慎むべきではないだろうか、このように思うわけであります。

石田(祝)委員 数字としては四十・二兆円のプラスになっている、これが今の数字であります。ですから、私は、四十・二兆円の実績になっているから少々下がってもいいんだとかいうことは申し上げません。やはりこれは実績を上げていくという努力をGPIFにもしていただかなきゃいけないと思っております。しかし、ここの下降ぎみのところだけをとって、年金が危ないんだとか破綻するんだとか、こういうことを言うべきではない、私はこのように思っております。

 それで、これは厚生労働大臣にお聞きをしたいんですが、運用利回り、こういうことでこれだけ必要だという想定と現状について、どういうふうになっているのか。そして、一緒にこれはお聞きしますけれども、要するに、株式に、いわゆる六〇%社債、国債だったのを、ちょっとポートフォリオを変えよう、こういうことで変えたわけですね。現実には、株式を最大限まで買っているわけではありません。それぞれのプラスマイナスの範囲の中で行っているわけでありますけれども、この運用利回りの想定と運用実績について、また、どうしてポートフォリオを変えたのか。

 ここのところは、やはり株というものに対していろいろな国民の思いがあります、ですから、そこのところ、どうしてそういうふうになったのか、厚生労働大臣にお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 日本の年金制度では、年金の水準は基本的に賃金に連動する仕組みとなっているわけでありまして、年金積立金の運用が順調に進んでいるかどうかは、運用の利回りがその間の賃金の上昇率をどの程度上回ることができているのかということが大事であり、また、それが、五年に一度の財政検証の際に、事前に想定していた利回りを長期的に上回っているかが重要になるわけであります。

 年金積立金の自主運用を開始した平成十三年度から二十七年度末までの実績は、名目の賃金上昇率を年率で約二・六%上回る結果となっておりまして、運用実績は財政検証上の前提を大きく上回っているわけでございます。

 今、基本ポートフォリオの決め方のお話がございましたが、平成二十六年十月、おととしの十月に基本ポートフォリオの変更をいたしましたが、前回の財政検証の結果に基づいて、保険料を拠出している労働者、そしてまた使用者の代表と、それから経済学者など専門家で構成するGPIFの中に運用委員会というのがあります、その中で十回の検討会を重ねた結果、この基本ポートフォリオの変更は行われました。

 その結果、デフレから脱却をして、長期的に見て物価が上昇するという経済局面になっているわけでありますので、国内債券だけでは実質的な年金給付を確保することが難しい、そういう状況であります。その考えのもとで、国内債券に偏っておった従来の基本ポートフォリオから株式等への分散投資というのを進めたわけで、現在の基本ポートフォリオへの変更が行われたわけであります。

 この基本ポートフォリオの見直しによって、年金を受け取る被保険者にとって最も大事な、将来の給付のために必要となる積立金を確保できるという確率が高まったことが大事なことであって、株価維持のために一方的に行われたというような批判は全く当たっていないというふうに考えるべきだというふうに思います。

石田(祝)委員 この問題の最後になりますけれども、やはり、私が最初に申し上げたように、全体としては四十・二兆円の実績が出ている、しかし、昨年とこの第一・四半期についてはマイナスになっている、これはもうそのとおりだと思います。ですから、全体的にGPIFに頑張っていただかなきゃいけないということは事実ですので、このガバナンス等について、この強化に政府としてはどうこれから取り組んでいかれるのか、これは総理にお伺いをいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 このガバナンスの強化、これはまさに大切なことであります。年金積立金を運用するGPIFのガバナンス体制の強化は、運用に対する国民の信頼を高めるとともに、運用の多様化や高度化が進む中で、リスクを適切に管理しつつ、市場の動向に応じた機動的な対応を行う上で大変重要な課題であると認識をしております。

 このため、さきの通常国会に提出した年金制度の持続可能性を高めるための法案には、金融、資産運用、経営の専門家等から成る合議制の経営委員会を設けるなど、GPIFのガバナンス体制を一層強化する内容を盛り込んでおります。

 年金制度に対する信頼を高めるため、本法案の速やかな審議、成立をお願いしたいと考えています。

石田(祝)委員 続きまして、総理が所信でお述べになったところから少々質問いたしますけれども、所信の中で、消費増税が延期された中にあっても、アベノミクスの果実を生かして、優先順位をつけて社会保障を充実していく、特に無年金者対策は喫緊の課題であり、来年度中に年金受給資格期間を二十五年から十年へと短縮する、成長と分配の好循環をつくり上げていきます、こういう総理の所信でございました。私は、そのとおりだ、こういうふうに思っております。

 実は、今回の、今からお聞きすることについては、私たちも参議院選挙でもお約束をいたしまして、やはり無年金者の解消は大事だ、こういうことでお訴えをしてまいりました。

 それで、そのときに、実は、新しい経済対策、これを決めなくちゃいけない、その中で我々も、七月の二十二日だったと思いますけれども、官房長官のところに公明党としての考えを申し入れに行きました。そのときに、赤字国債は出さない、こういうこともあわせて申し上げたわけです。ですから、まさしくアベノミクスの果実を生かして、この無年金者対策、こういうことをぜひやってもらいたい、こういうことをお話ししたわけであります。

 この短縮措置についての、総理、もう所信に掲げているとおりだと思いますけれども、もう少し総理の思いが伝わるようにお話をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 来年四月に予定していた消費税率一〇%への引き上げについては、平成三十一年十月まで延期することとしております。こうした中におきまして、年金の受給資格期間の短縮は、現在の法律では消費税率一〇%への引き上げ時に行うこととされておりますが、無年金の問題は喫緊の課題であることから、できる限り早期に実施すべき、このように判断をいたしました。

 先ほど御紹介いただきましたが、六月の九党の党首討論会におきまして、御党の山口代表が、無年金対策を望む声は大変大きい、このように発言されまして、その御発言も受けまして、私から、重大な問題、喫緊の課題として前向きに検討したい、こう申し上げたわけでございます。

 まさに、年金というのは老後の生活の基盤をなすものでありますから、当然、無年金の問題というのは我々は真剣に取り上げなければならない、こう考えているわけでありますが、今回の受給資格期間の十年への短縮で、新たに六十万人を超える方々が年金受給権を得ると見込んでいます。こうした多くの方々が間違いなく年金を受給できるよう、対応に万全を期すために、平成二十九年八月施行としております。これによって十月から確実に受け取れることになるわけでありまして、しっかりと対応していく考えであります。

石田(祝)委員 年金については、やはり老後の生活の大きな柱であることは間違いないんですね。今でも約四千万人の方が公的年金の受給者になっている。そういう方々に、大体、一年間、給付費が五十六兆五千億円、これだけのお金が偶数月の十五日、前の月の二月分が間違いなく払われているわけですね。

 私も、いろいろなところへ行ってお話をする機会があって、だんだん高齢の方がふえてきていますから、年金について、偶数月の十五日に、または休日の場合は手前になりますから、振り込まれない方はいますかと言ったら、誰もいないんです、当然。ですから、五十兆を超えるお金が年に六回、四千万人の方に振り込まれている、これは大変なことだというふうに私は思っております。

 そういう中で、今回、総理から、六十万人を超える方々が無年金から解放される、こういうお話がございましたが、私は、大体、お年がいった場合は、お孫さんに小遣いを上げたいとか、正月とかお盆に孫が帰省したときに小遣いをやりたいといったときに、年金をもらっていない方というのは、ちょっと手元にお金が少ないなと、また、高齢者同士が集まったときに、ああ、あしたは年金の支給日だね、こうなったときに、ちょっと会話に入っていけないような、そういう方もいらっしゃるんじゃないかと思うんですが、そういう方が、六十万人を超える方が今回の法改正によって年金受給者になる、これは非常に大きなことだと私は思っております。

 これについて、厚生労働大臣、対象者は総理が六十万人超ということをおっしゃいましたけれども、もうちょっと詳しい数字があればあれなんですけれども。

 それともう一つ、消費税を上げるときに本来やるべきだったものを前倒ししてやりますから、では、財源は大丈夫なのか、こういうお話があるわけです。ですから、次の一〇%に上げるというときまで何とかつないでいかなきゃいけないんですが、この財源の問題についてもあわせてお答えいただければと思います。

塩崎国務大臣 まず人数についてもう少し申し上げますと、正確には総数は約六十四万人ということになります。

 それから所要額は、この受給資格期間の短縮によって必要になるのは、初年度である来年度、二十九年度につきましては、年度の途中である八月施行でありますので約二百六十億円と見込んでおりますけれども、満年度となります三十年度以降につきましては約六百五十億円と見込んでおります。

 この財源でございますが、決して赤字国債でやるようなことはないわけであって、平成二十八年度当初予算において簡素な給付措置の実施のために必要な約六百六十億円が計上されておりましたけれども、今般の補正予算案で、簡素な給付については、平成二十九年度から二年半分の予算が一括計上されました。それに伴って生じる財源が確保されていることを踏まえますと、今後の予算編成の過程の中で具体的に確定をさせていきたいというふうに思っておりますが、いずれにせよ、赤字国債を財源にするような無責任なことを行うことはなく、受給資格期間の短縮を実施してまいりたいというふうに考えているところでございます。

石田(祝)委員 今お話しいただいたとおりだろうというふうに思っております。

 それで、これを何とか今臨時国会で、野党の皆さんの御協力もいただいて、今出されている国民年金法改正とあわせて、ぜひ早期に成立をさせていただきたいというふうに思っております。

 これが来年の八月一日施行ということで、九月分を十月に一カ月分払う、あとは通常、偶数月の十五日に前の月の二月分を支払う、こういう仕組みになると思います。

 ぜひ厚生労働大臣にお願いをしたいのは、この施行に当たって万全の体制をとっていただきたいんですね。これは要するに裁定を受けておりませんから、記録について、本人がまた来ていただいて、年金事務所でしっかり自分の記録はこうだということを言っていただかないと、黙っていたら自動的に振り込まれるという誤解があってはいけませんし、ぜひそのことについてやっていただきたいということと、なぜ来年四月からやらないんだ、こういうお声も実はあるわけですね。これについてあわせてお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 まず手続でございますけれども、新たに年金の受給対象となると見込まれる約六十四万人の方々に対しましては、法律の成立後、今お話があったようにできる限り早期に成立をお願いしたいわけでございますが、日本年金機構から年金の請求書類を順次送っていくことになります。この請求書類を受け取られた方は、年金を受給するためには、請求書に必要事項を御記入いただいて、必要書類をそろえて、年金事務所において御自身で手続を行っていただく必要がございます。

 また、日本年金機構では、請求手続に関する御質問等に適切に御説明ができるように体制を組んでおりまして、まずコールセンターの体制を整えるということをやっておりますので、まずお電話で御質問をいただけるようになる。それから、受付相談窓口、おいでになったときには、人員をしっかりとふやして、対象の方々の年金が確実に受け取っていただけるように万全の体制を組んでいきたいと思っております。

 なぜ八月施行なんだということでありますけれども、消費税一〇%への引き上げについては政府として平成二十九年四月から平成三十一年十月まで延期する方針であることから、法律を改正しなければ、消費税一〇%への引き上げ時に行うというふうになっておりました年金受給資格期間の短縮も、同様に平成三十一年十月まで延期される可能性があったわけであります。

 しかし、無年金の問題は今お話がありましたとおり喫緊の課題でありますので、できる限り早期に実施すべきということで、今般、受給資格期間の短縮の施行期日を平成二十九年八月一日という法案をお願いしております。

 これは、六十四万人という多くの方々が間違いなく年金を受給できるように、法案の成立後、対象者に年金受給のための請求書をさっき申し上げたように順次送っていくということ、そして事前受け付けをするなどその対応に万全を期した上で、最も早い施行のタイミングとなる平成二十九年八月施行というふうにしたものでございまして、確実な実施のために法案の早期成立を重ねてお願い申し上げたいというふうに思います。

石田(祝)委員 ぜひこれはよろしくお願いをいたしたいと思います。

 これからちょっとお願いだけしておきます。

 あしたから、いわゆる厚生年金の適用の拡大が行われます。五百一人以上の企業で、一年以上の勤務、週二十時間以上、そして八・八万円以上の方は厚生年金の対象者になるということで、約二十五万人の方が新たに厚生年金の世界に入ってこられるわけです。これは、一時的に見ると、保険料を払わなきゃいけないということになりますし、使用者側からしたら使用者負担も出てまいります。そういういろいろなことはありますけれども、長い目で見たときにはやはりさまざまプラスの面があるということ、これもぜひ丁寧に御説明いただけるようにお願いをいたしたいというふうに思っております。

 引き続きまして、高等教育の問題について、また奨学金等を含めてお伺いしたいんです。

 これも総理の所信で、若者こそ我が国の未来だ、若者への投資を拡大します、本年採用する進学予定者から、その成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします、給付型の奨学金も来年度予算編成の中で実現いたします、こういうふうにおっしゃっております。

 私は、総理の今回の所信を聞いた率直な感想は、非常に短いフレーズの中で大事なことをはっきり言っていらっしゃる。何々しますというふうに、必ず、余り語尾がはっきりしていないんじゃなくて、しますという明確なメッセージを出していただいております。ですから、今回の所信の中の三行でありますけれども、非常に大事な若者に対するメッセージにもなっているだろうと思います。

 そういう中で、給付型奨学金の実現に向けて取り組んでいく、こういうことでありますけれども、予算編成過程でということはよくわかるんですが、ぜひ、今回のこのテレビを通して、そういう方、また保護者の方々に、こういうことを安倍内閣としては考えているんだと、概略になるかもしれませんけれども、給付型奨学金について総理のお考えをお示しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されてはならないというのが安倍政権の基本的な考え方でありまして、誰もが希望すれば大学等に進学できる環境を整えるために、奨学金制度の充実は重要であると考えています。

 給付型の奨学金については、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするという観点や、進学に向けた学生等の努力を促すといった観点から、文部科学省を中心に具体的な検討を今進めているところであります。

 いずれにしても、平成二十九年度予算編成過程を通じて制度内容について結論を得て、実現してまいりたいと考えています。

石田(祝)委員 これは二十九年度予算編成過程でということですから、ことしじゅうに決定がされる、こういうことだろうというふうに思います。ぜひ、この給付型奨学金については多くの方が希望を持っておりますので、よろしく御結論をお出しいただきたいというふうに思っております。

 私がここで教育の問題を取り上げるのは、やはり、貧困の連鎖を断ち切る、また格差を固定しない、これには教育しか私はないと思います。ことしの二月の予算委員会で、私も、自分の体験を通しながら、奨学金があればこそ、こういうこともお話をそのときさせていただきました。

 そう考えてみますと、総理、この後ちょっとお伺いしますけれども、無利子の奨学金の拡大だとか給付型奨学金の創設にまで踏み込んでいただきました。これは大いに私は希望が持てるのではないか、こういうふうに思っております。これからは、教育のための社会にしていく、こういうことが私は大事だろうというふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 そのとき総理がおっしゃったことの中で、必要とする全てのということで、無利子奨学金の方だと思いますけれども、ここはちょっと、必要とする全てというのがなかなかわかりにくい。具体的にどういうことを総理が指しておっしゃっているのか、ぜひこのところをつまびらかにお話しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今御指摘のありました無利子の奨学金の充実につきましては、未来への投資を実現する経済対策等を踏まえまして、速やかに残存適格者を解消するとともに、残存適格者というのは、適格ではあるけれどもそれを受け取れていない方々であります。残存適格者を解消するとともに、低所得世帯の子供たちに係る成績基準を平成二十九年度進学者から実質的に撤廃します。

 今までは成績基準というものがあって、無利子奨学金を受けられない子供たちもいたんですが、これを撤廃するということでございまして、必要とする全ての子供たちが受給できるようにしてまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 これは文字どおり、必要とする全てのということで、全部をここで一言であらわしている、こういうことですね。

 続きまして、残存適格者の問題は今総理がお答えいただきましたので、我々も主張、公明党も要望してまいりました、いわゆる所得連動返還型奨学金、これが来年からスタートする。ですから、二十九年入学生からになりますと、実質は三十三年卒業生が就職したときに払い始める。なかなかすぐに、ある意味では、収入がある一定のところに就職できるかどうかというのは、これはそれぞれありますけれども、今は固定で払うしかないものですから、非常に苦しんでいらっしゃる方も多いのは事実であります。それを所得に連動して返還できるようにという形をとっていただくということであります。

 今も、借りるときに保証人が要るわけですね、個人保証かまたは機関保証か。所得連動型になると当然返済期間が長くなりますので、機関保証だ、こういうことになるようであります。機関保証だと保証料が要る。この保証料が、実は二千円から三千円が毎月奨学金から天引きされる。これはどうかなというふうに私も正直思いますし、この保証料の引き下げを考えるべきではないか。これについては、文部科学大臣にお伺いをいたしたいと思います。

松野国務大臣 卒業後の所得に返還月額が連動する新たな所得連動返還型奨学金制度については、平成二十九年度進学者からの着実な実施に向けて準備を進めているところであります。

 本制度においては、所得が低く、返還期間が長期化した場合、人的保証では連帯保証人の返還能力が確保されなくなるおそれがあるため、機関保証に移行することが望ましいことが有識者会議において示されております。その際、保証料の引き下げについてもあわせて検討すべきとされております。

 有識者会議の議論を受けまして、文部科学省といたしましても、関係機関と協議しつつ、保証料を引き下げる方向で鋭意検討してまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 財務大臣がちょっとお出になられたので、質問は帰られてからしたいと思うんですけれども。

 私は、この二月の予算委員会のときに、総理に奨学金のことでお伺いをいたしました。そのときに、実は私、授業料のことを言わなかったんですね、あえて。ちょっと言いにくかったというのがあるんです。

 私は、昭和四十五年に当時の国立大学に入学したんですが、そのとき授業料が一カ月千円だったんですね。今聞かれるとみんなびっくりすると思いますけれども、年間一万二千円の国立大学の授業料でした。ですから、今考えたら、相当日本が高等教育に予算を入れていたんだなということを改めて私は感じました。

 奨学金の話をしているときだったので、自分の授業料が千円だったというのはなかなか言いにくかったものですからちょっと言わなかったんですけれども、きょうは言わなきゃいけないので、あえてそのときに言わなかったことを申し上げたんです。

 総理、奨学金については、給付型も踏み込んでいただいたので、大体奨学金についてはメニューはそろってきたんじゃないか。それで、私がちょっと申し上げたいのは、大学の無償化、これについてそろそろ検討を始めるべきではないのか。私は党大会で、政務調査会長に再任されましたので、政務調査会長の報告としてそういうことも入れさせていただきました。

 これはなぜかというと、奨学金は充実してきている、しかし、国公立と私立の格差も大変ありますけれども、国立大学、公立大学をとってみても、今私が申し上げたような、大分前になるので参考にならないかもしれませんけれども、そのときと比べたら、やはりもうちょっと高等教育にお金を入れるべきではないのかな、こういう思いも実はいたしております。

 そういう中で、アメリカの、今、大統領選挙をやっております民主党のクリントンさん、ことしの七月の大統領の候補者の指名の受諾演説、このときにこういうふうに言っているんですね。日本語でそのまま言いますと、バーニー・サンダース氏とともに、中間層を対象とする大学授業料無償化と全ての人々の貸与奨学金による負債をなくすために尽力します、こういうことを指名受諾演説でクリントンさんが言っているわけですね。

 ですから、私は別にここからクリントンさんを応援するつもりは一片もないんですけれども、そういうことをやはり大統領選挙の有力な候補者がおっしゃっている。こういうことも私は大いにこれから高等教育に力を入れていくという観点では大事じゃないのかな、こういうことも思ったわけであります。

 これについて無償化の検討をぜひしてもらいたいということと、そして、まず、これはすぐにというわけにはなかなかいかないでしょうから、授業料の減免、免除枠の拡大、これについて総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 米国においては多くが私学であり、基本的には授業料が高い中において、いわば学生ローンの問題が随分大きな問題になっているということにおいて恐らく大統領選挙でも取り上げられているんだろう、このように思いますが、政府としては、これまでも奨学金制度の充実を図るとともに、国立大学等の授業料免除についても、免除枠の拡大を図るなど制度の充実に努めてきたところであります。

 教育については、今、御党とともに幼児教育の無償化に取り組んでいるわけでございますが、それぞれ優先順位をつけて一歩ずつ進んでいくということが大切だろうと思います。

 基本的に若者への投資をふやしていくという大きな流れは進めていきたい、こう思っておりますが、今後ともこれらの施策の一層の充実によって学生の経済的負担の軽減を図り、希望すれば誰もが大学等に進学できる環境を整えていきたい、このように考えております。

石田(祝)委員 幼児教育の段階的な無償化をまずやっている、こういうお話でございました。私は、来年からというわけではないので、検討をぜひ開始していただきたいな、こういうふうに思っております。

 そのときに、やはり高校を出て働かれる方も当然いらっしゃるわけですね。そういう人と比べて、大学へ行かれる場合、奨学金だとか授業料だとか、ちょっと差がつき過ぎるのではないのかという御意見も私はあろうかと思います。ですから、私は、大学に行った人は、何のためにこれから働くのか、大学に行けなかった方のためにも貢献をすべきだ、こういう思いです。

 しかし、やはり日本は人材をもって国を立てていく以外にありませんので、格差の固定をさせない、貧困の連鎖を断ち切る、こういう観点ではどうしても教育が最重要だと私は思っておりますので、その点、総理もよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、財務大臣、有利子の奨学金の利子の引き下げについて、これは検討されているということで新聞報道もありましたが、これについてはどういうことになっておりますでしょうか。

麻生国務大臣 有利子の奨学金については、ニッポン一億総活躍プランにおきまして、現在の低金利、超低金利の恩恵を生かして、しっかり行き渡るように制度の拡充を図るということにしております。

 今回の、未来への投資を実現する経済政策におきまして、財政投融資の貸付利率というものの下限を〇・一%から〇・〇一%に見直すということにいたしております。

 御存じのように、有利子奨学金の貸付限度というか、貸与利率ですかね、経済用語で言えば、貸し付けるときの利率の話ですけれども、これは財投の貸付金利と同水準ということになっております。したがいまして、現在の低金利という環境で今回の下限の見直しというものが奨学生への貸与利率に直接反映されるということにいたしますので、金利負担の軽減というのは当然これで〇・一から〇・〇一に引き下げるという結果になるということだろう。

 ちょっと、時間がないと思いますので、あとずっとありますけれども、基本的にそうです。

石田(祝)委員 〇・一から〇・〇一ということで御答弁もいただきました。

 続いて、国立大学の運営費交付金についてお尋ねいたしたいというふうに思います。

 今、このパネルを見ていただいて、お手元にも資料をお配りいたしておりますけれども、運営費交付金は国立大学法人になってずっと下がってきて、二十八年、二十七年は同じ金額であった、こういうことであります。

 今、二十九年の概算を文部科学省も出しているだろうというふうに思いますけれども、先ほど総理にも御答弁をお願いいたしました授業料の減免枠、免除枠の拡大、このこともあわせて今回、文部科学省では概算要求をお出しになっているというふうに思います。

 それで、その減免枠の拡大が二十八年から比べて十三億円たしか多い要求をしているというふうに思いますけれども、これが実は国立大学の運営費交付金の内数で賄われることになっているんですね。ですから、この運営費交付金、現状維持でもほかの予算とバッティングする、まして減されたらこの免除枠の拡大というのがほかの予算を二重に侵食してしまう、運営費交付金の中で。

 ですから、この運営費交付金の拡充について、これは文部科学大臣の決意をお伺いすることになるかもしれません、財務大臣にお聞きをする勇気は今ちょっとございませんので。とにかく、文部科学大臣の決意をテレビの前で皆さんに、大学の運営費交付金については死守する、こういう決意を述べていただいたら我々も一生懸命やりますから。では、御答弁をお願いします。

松野国務大臣 国立大学法人運営費交付金は、授業料の免除を含め、国立大学が継続的、安定的に教育活動を行うための基盤的な経費であります。

 第三期中期目標期間の初年度である平成二十八年度予算においては対前年度同額を確保いたしましたが、これまで過去十二年間、減額をされたところであります。

 文部科学省としては、学生が経済状況にかかわらず安心して修学できる機会を提供するとともに、国立大学改革をさらに進め、国立大学の機能を十分に発揮できるようにすることが重要と考えております。授業料免除枠の拡大も含め、運営費交付金の確保が図れるよう、しっかり取り組んでまいります。

石田(祝)委員 それでは、総理、財務大臣、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。今、麻生財務大臣もうなずいていただきましたので、大丈夫じゃないかなと確信をいたします。

 続きまして、国土交通大臣にお伺いをいたしたいというふうに思います。

 過日、東京メトロの駅で、目の不自由な方がホームから転落をしてお亡くなりになった大変痛ましい事故がございました。それについて、国土交通大臣のところに、視覚障害者の団体と我が党の議員が政府に要望をいたしました。

 国土交通大臣にお伺いをいたしたいというふうに思いますけれども、この事故を受けてということでは本来ないと思うんですよね、着実に進めていかなきゃいけないことだと思いますけれども、予算等の関係もあろうかと思いますが、今回、改めて、目の不自由な方がホームを歩く、そして、一メーターぐらい下のところに落ちて、そこに電車が入ってくる、こういうことが現実としてあったわけでありますから、これをどういうふうに解消していくか、このことについてお伺いをしたい。

 あわせて、これは時間もかかる、お金もかかることでありますが、今ホームに、皆さん、JRだとか地下鉄、メトロに乗ったときに、ホームの端に黄色い点状ブロックがあるんですね。そこに、どちらがホーム側か、どちらが線路側かということがわかるように、ホーム側の方に、ぼつぼつの点状のものじゃなくて、横棒というんですか、棒を一本引いて、どっちが内側ですよというのがわかるような点状ブロックが今あるんですね。

 ですから、私は、ホームドアを一日も早く整備していただきたいということは、これはもうお願いをぜひしたいんですけれども、それが間に合わなかったら、その間、点状ブロックを全駅に、どちらがホーム側で、どちらが線路側かわかるものを、そういう点状ブロックをぜひ全駅に私はやってもらいたい、こう思いますけれども、いかがでしょうか。

石井国務大臣 まず、ホームドアの整備について申し上げたいと思います。

 ホームドアは、列車との接触やホームからの転落防止のための設備として非常に効果が高く、その整備を推進していくことが重要であると認識をしております。

 一方、ホームドアの設置に当たりましては、必要に応じホームの補強なども行う必要がございまして、一ホーム当たり数億から十数億と高額の費用がかかることや、車両により扉の位置が異なっていることなどの技術的な課題がございます。

 このため、利用者数が一日当たり十万人以上などの駅について優先的に整備を促進することといたしまして、整備費用に対する助成措置を講じるとともに、新たなタイプのホームドアの技術開発の支援も行うことによりまして、ホームドアの整備促進に取り組んでおります。

 先般の地下鉄の青山一丁目駅の事故を受けて、省内に駅ホームにおける安全性向上のための検討会を設置いたしました。ここにおきまして、ホームドア整備の加速化、また、視覚障害者への声かけ、誘導案内の強化など、ハード、ソフト両面からの転落防止対策の強化を検討してまいりたいと思っております。

 また、ホームドアの整備の推進とあわせまして、今御指摘がございました、内方線つき点状ブロックというふうに申しますが、この設置も有効な対策の一つというふうに考えております。

 平成二十三年八月のホームドアの整備促進等に関する検討会の中間取りまとめにおきまして、利用者一万人以上の駅については、内方線つき点状ブロックの整備を可能な限り速やかに実施することとしておりまして、現在、六三%まで整備が進んでございます。

 国土交通省としましては、引き続き必要な支援を行うことによりまして、この内方線つき点状ブロックの整備を推進するとともに、先ほど申し上げました検討会において、この内方線つき点状ブロックの整備のあり方についてさらに検討を深めていきたいと思っております。

石田(祝)委員 もう二度とあのような痛ましい事故が起きないように、ぜひ整備を促進していただきたいというふうに思います。

 それと同時に、目の不自由な方に対して、例えば白杖、白いつえを持っている方とか、やはり我々もそういう方々を意識して、ちょっと危ないなと思ったら声をかけてあげるとか、そういうふうにしないと。我々としてもそういう方々に対する思いも持っていかなきゃいけないな、こういうこともあわせて思っております。

 それから、引き続いて鉄道駅のバリアフリーについてお伺いしたいんです。

 私も四国でいろいろな方にお会いをするときに、自分の住んでいるところの駅に、特急もとまるんだけれどもエレベーターがないと。三千人という基準があるように聞いていますけれども、だんだんと高齢化が進んでまいります。そうすると、ますます車というよりもやはり鉄道ということにもなりかねないし、今まで以上に利用者がふえるということもこれはなかなか考えにくい。

 そういう中で、やはりバリアフリーという観点から、鉄道の駅のエレベーターの設置、これについて、基準はあったとしても、特急が停車するとか、そういう結節点になっているような駅は私はぜひ整備をしていただきたいんですが、これについて国土交通大臣の御答弁をお願いします。

石井国務大臣 国土交通省といたしましては、バリアフリー法の基本方針に基づきまして、平成三十二年度までに、利用者数が一日当たり三千人以上の全ての駅にエレベーター等を設置することを優先して取り組んでおります。

 一方、委員御指摘のとおり、利用者数が三千人未満でありましても、公共施設や病院や福祉施設などが周辺に所在する駅や、また観光の拠点となっている駅につきましては、三千人以上の駅と同様にバリアフリー化の必要性が高い駅と考えておりまして、今申し上げました基本方針におきましても、地域の実情に鑑み、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえて、可能な限りバリアフリー化するというふうにしているところでございます。

 今後とも、この基本方針に基づきまして、鉄道駅のバリアフリー化の取り組みを着実に進めていきたいと考えております。

石田(祝)委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 もう時間がなくなりましたので、最後になろうかと思いますけれども、災害対策についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 総理も本会議で御答弁があったと思いますけれども、今回の水害で、岩手県の岩泉町ですか、そこの高齢者グループホームの楽ん楽んというところで九人の方が亡くなった。ホームには、いわゆる避難準備情報というのが行っておったんだけれども、それが意味するところは何なのか、そこのところのちょっと受けとめ方が違っておったのではないかということも言われております。

 ですから、私がよく思うのは、役所から例えば発信をするときのその中身の問題と、受けとめる側がどうそれを理解して行動するのか、ここのところでいわゆる認識のギャップ、これがややもするとあるのではないか。正確に発信したつもりだけれども、受けとめる方は全然違う受けとめ方をしていた。

 これについては総理も、この言葉も考えていかなきゃいけない、こういう御答弁もあったようであります。これについて、総理が御答弁なさったすぐ後ですから、今固まっていないかもしれませんけれども、どういうお考えなのか、お聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国民の生命を自然災害から守るためには、情報を受け取った住民の誰もがその内容を正しく理解して、避難行動を的確に開始できるようにすることが必要であります。

 今回の災害に際して、住民の方々がどのように情報を受け取り、そしてどのような行動をとられたのか、その状況を把握し、改善すべき点があれば可及的速やかに改善することとしております。

 まずは、避難準備情報を発令した際に、住民の方々にどのような注意喚起を行っていたか等の調査を週明けにも開始いたします。その調査結果をもとに、防災、福祉等の関連分野の有識者から成る検討会において議論を行い、全国における避難準備情報の運用状況の再点検結果も踏まえて、年内をめどに、名称変更も含めて、情報提供の改善方策について結論を得ていく考えであります。

石田(祝)委員 もう時間になりましたので終わらせていただきますが、通告をして質問できなかったことをおわび申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、細野豪志君。

細野委員 民進党の細野豪志でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 民進党は、蓮舫さんを新しい代表に選びまして再スタートいたしました。方針は、批判より提案をということでございます。これまでも我々はそのことに心がけてきたつもりです。

 例えば、ことしの通常国会で成立をした法律というのは全部で五十四本、政府が提出したものの中であるんですが、我が党が賛成をしたものというのはそのうちの四十七本。八七%の法律には賛成をしているわけですね。決して反対ばかりしている政党ではありません。また、通常国会だけで四十九本の議員立法を出して、提案もしてきています。

 ただ一方で、国民の側から見ると、民進党というのは批判をしているだけにとどまっている政党だと見られている面がある。ここは我々自身も、国民の皆さんにしっかり説明をすることも含めて、変わっていかなければならないというふうに思っています。

 また、特に安全保障の問題は与野党ありません。午前中も少し出ていましたけれども、北朝鮮が核実験を繰り返し、ミサイル発射を繰り返している、こういう中において政府には厳しい対応をしていただかなければならない。その中で、例えば新たな経済制裁などにおいて国会が迅速に対応しなければならないような場面があるのであれば、そのことについては我々は常に対応する準備があるということも明確に申し上げておきたいというふうに思います。

 我が党の姿勢を明確にした上で、総理にまず一問、基本的な政治の姿勢に関することでお伺いしたいことがあります。それは、先日の本会議におけるスタンディングオベーションの問題ですね。

 総理は、本会議場でこう議員に呼びかけられた。海上保安庁、警察、自衛隊の諸君に対して、今この場所から、心からの敬意をあらわそうではありませんか。

 私も、演劇であるとか演奏会などでスタンディングオベーションをしたことがあります。ただ、いずれも聴衆の中から自発的にスタンディングオベーションというのは起こるものであって、スピーチの途中でスピーチをしている方から求められてということに関しては正直違和感を感じました。

 総理、いろいろ国会内でも議論が出ていますが、この問題について率直にどうお感じになっているか、まずそこをお聞かせいただけませんか。

安倍内閣総理大臣 今、私の発言の内容を引用していただきましたが、私がスタンディングオベーションをしてくれと一言も言っていないわけでありますから、それはまず、もう既に御紹介いただいて、そのことは明確ではないか、このように思います。先般も参議院の本会議で既に、小川議員からの質問がございましたので答弁していることでもございますが。

 所信表明演説の中において、まさに今、日本をめぐる安全保障環境が厳しさを増している中において、海上保安庁あるいは警察、そして自衛隊の方々が、厳しい緊張感の中で、まさに大変な思いの中においてしっかりとその職務を遂行しているということであります。一方、その中で、力による現状変更の試みもあるわけであります。そこでやはり、そういうことに対して我々はしっかりと対応していくという意味も含めまして、そういう呼びかけを行ったところでございます。

細野委員 私が伺いたいのは、あの本会議という場所でスタンディングオベーションをするということがふさわしいかどうかということを伺いたいわけですね。

 私、本会議場におりましたが、自民党の議員の中で、それは真っ先に立った議員もいましたが、相当ちゅうちょしながら周りを見て立った議員というのがたくさんいましたね。また、大島議長は、スタンディングオベーションが起こった後に、御着席くださいと自制を促しているわけですね。私は、ある種良識だなと思ったのは、公明党は立たなかった。

 では、大島議長や野党の我々や、さらには公明党の皆さんが自衛官や海上保安官に対して敬意を持っていないかというと、そんなわけないですよ。私も、自衛隊の行事、地元にもありますから、しばしば行きます。PKOの部隊が帰ってきたときなんかは拍手して迎えますよ。

 そういう思いは持っているけれども、総理というのは行政府の長ではあるけれども立法府の長ではないですよね。そこについては一定の緊張感が必要で、実質的には促していないとおっしゃっているけれども、この場所からと言われれば、促しているように聞こえますよ。総理に促されてスタンディングオベーションをするというのがどうなんだろうか、これがふさわしいのかどうかということについて聞いているんです。

 促していないということでおっしゃっているので、では、そこは総理の思いとしては受けとめますが、あの本会議場でのスタンディングオベーションということについて、ふさわしいかどうかという点についてはどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 例えばスタンディングオベーションと拍手がどう違うかということでありますが、スタンディングオベーションを私は促しているわけではありませんし、敬意を表そうと。敬意を表す仕方は幾らでも、いろいろな方法があるんだろう、こう思うわけでありますが。

 それとはまた別に……(発言する者あり)ああいう、例えばやじであらわす方も、御党の方ですか、初鹿さんですか、やじであらわす方もいますね。やじによって今も、議論が中断することもありますよね。(発言する者あり)今もまたやじがありましたが。御党はこうやってやじで意思をあらわされるわけですね。それが果たしていいのかという、いろいろな議論もあるわけだと思いますよ、私は。

 ですから、私が申し上げたのは、私に拍手しろと言っているのではなくて。私が申し上げたのは、今緊張感の中でこの日本を、そして国民の命を守るために頑張っている人たちに敬意を表そう、こう言ったわけであります。そして、その敬意の表し方については、それはまさに議員個人が、個人個人が判断すればいいんだろう、こう思うわけであります。

 一方、スタンディングオベーションというものについて、いいか悪いかというのはまさに議員が判断するわけでありまして、例えば米国の議会においてはスタンディングオベーションというのはよくあることでございますし、私も昨年、米国の上下両院合同会議において十数回スタンディングオベーションがございました。このスタンディングオベーションが悪いということはないわけでございまして、それを強制して全員が一斉にやるということは確かにそれはおかしいんだろうと思いますが、まさにこれは議員が自発的にどういう対応をとっていくかということに尽きるわけでございまして、どうしてこれが殊さらそんなに問題になるのかということは私はよく理解ができないわけであります。

 いずれにせよ、こういうことについては、まさに今申し上げましたように、私の姿勢としては、スタンディングオベーションを要請しているわけではなくて、まさに敬意を表そう、敬意をあらわそうではないかということを申し上げたわけでございまして、敬意のあらわし方についてはそれはそれぞれの判断であろうということではないか、こう思うわけでございます。

細野委員 議院運営委員会で随分議論したようですが、総理のところにはきちっと議運の懸念は伝わっていないという印象ですね。

 私、総理を見ていて常に感じるんですけれども、立法府というのは常に行政に対してはある種の緊張感を持っていなきゃならないんですね。何度か総理は、私は立法府の長ですというふうに答弁されている。これはさすがに、私も予算委員会の理事をやっていまして、最終的には議事録の修正を認めましたよ。言い間違いだと思いますよ。しかし、意識の中のどこかに、立法府で自分がトップに近い位置にいる、トップの立場にあるというような意識もあるのではないか。

 私が正直違和感を持ったのは、私も、海上保安官とか自衛官を目の前にした場合には、敬意を表して拍手をするんですよ。しかし、あの場面で拍手をする気にならなかった、もちろん立つ気にならなかったのは、自民党の皆さんを見ていると、自衛官や海上保安官に拍手をしているというよりは、安倍総理に拍手をしているように見えるわけですよ。さらに言うならば、総理御自身も本会議場の壇上で拍手をしておられる姿を見ていると、率直に私が感じたのは、この国の国会ではないのではないかというような錯覚すら覚えましたよ。

 そこも含めて、私は、もう一度、立法府が持つ役割と行政との緊張関係ということについても考えていただいた方がいいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

細野委員 そして、もう一つ指摘をしたいのは、与党の側のおごりです。

 きのう福井照議員が、この方はTPP特別委員会の理事をやっている方ですね、強行採決をするという断定的なお話をされた。これまで、私も結構長い間国会にいますけれども、委員会の理事がそれこそ実際の議論が始まる前に強行採決するなんて言ったのを聞いたことないですよ。こんなことをやり出したら、国会で議論する意味がないじゃないですか。

 さすがに御本人がもう辞任をされたようですが、私どもはこういう与党のおごりについては絶対に許しません。提案はしっかりしていくし、批判だけにとどまるつもりはないけれども、明確におかしいことについてはブレーキをかける役割をしっかりやっていくということだけは申し上げておきたいというふうに思います。

 午前中の時間が少なくなっていますから、その与党のおごりについて、午前中最後に、総理、どうお感じになっていますか。

安倍内閣総理大臣 私に対して拍手をせよと私が思っていたというのは、これはまさに……(細野委員「思っていたとは言っていません」と呼ぶ)いや、思っていたということを今ほとんどおっしゃっているじゃないですか。

 つまり、自民党自体が私に対する拍手をしているんだという表現はされましたよね。それはしかし、余りにも、最初に言っていた、批判だけに明け暮れないという言葉とは全然違うのではないですか。

 自民党議員が私に対する拍手だと言っていたんだったら別ですよ。私自体がはっきりと、まさに警察や海保や自衛隊の諸君に対して敬意をあらわそうではありませんかと明確に言っていて、その日本語を当然理解しているわけですから、それに対して拍手しているのをまるで、総理大臣に対して拍手しているという言い方は、これは余りにも、これはこじつけによる批判ではないか、批判のため、うがった見方ではないか、こう思うわけであります。

 かつ、私が許せないと思うのは、そのとき、どこかの国と同じではないかと。どこかの国。どの国なんですか。(細野委員「福井照議員について聞いているんです」と呼ぶ)いや、これは余りにも侮辱ではないかと思いますよ。どこかの国と同じではないかというのは、どこなんでしょうかね、それは。それはやはり、ただ単に、まさに侮辱に明け暮れているとしか私は思えないわけであります。そのことははっきりとここで申し上げておきたい。

 例えば、補正予算の建設的な議論をするというのであれば、その議論をしようじゃないですか。勝手に、自民党議員がそう思っていないにもかかわらず、まるでそう思っているかのごとくの批判をする、こういうことはお互いにやめようではないかということを私は申し上げたいと思うわけであります。

浜田委員長 総理、時間が来ておりますので、手短に願います。

安倍内閣総理大臣 これは大切なことですよ。まさに我が党に対する侮辱をまず、我が党に対する侮辱を細野さんがされたから当然私はそう申し上げているわけでありまして、これは理事が抗議をするようなことではありませんよ。むしろ、これは当然、本来であればこちらの理事が抗議したいと思うぐらいのことなのではないのかな、こう思うわけであります。

 そこで、いずれにせよ、我々も謙虚に議事の運営については当たっていくのは当然のことであろう、このように思っております。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。細野豪志君。

細野委員 午前中に引き続いて、私の方から質問させていただきます。

 午後は民進党の時間でございまして、今、国民の関心事であるさまざまなテーマについて、それぞれの質問者がしっかりと政府の姿勢を問いただしたいというふうに思っております。

 特に、国民の間では、東京オリンピック・パラリンピックをめぐって何と三兆円ものお金がかかるということで、衝撃が広がっております。しかも、この三兆円というのを政府も把握していない、そういう話になってきているんですね。ですから、ここはこの国会でもしっかり議論しなければならないというふうに考えておりまして、我が党から初鹿議員が、三時半ごろからでしょうか、そのことの質問をいたしますので、しっかり政府には答えていただきたいと思います。

 それでは、私から、まずパリ協定について総理にお伺いしたいと思います。

 我々は提案をするということを申し上げました。まず提案申し上げたいと思います。

 地球温暖化というのは世界じゅうにとって極めて重要なテーマでもあり、安全保障上の懸念にもなっています。総理、パリ協定を十一月のCOPの会議が始まるそのときまでにしっかりと締結していく。十一月の七日にCOPの会議があるんですね。

 私もかつて環境大臣をやっていましたので、この協定に対しての思い入れがございます。私が環境大臣をやっておったときは、京都議定書の第二約束期間に我が国がコミットするかどうかが問われたんです。私は、これには日本はコミットすべきではないという、非常に難しかったですが、判断をいたしました。

 なぜかというと、京都議定書には、中国やインドのような途上国はもちろん、アメリカも入っていない。当初は先にやるという手もあったかもしれないけれども、世界の経済がこれだけグローバル化している中で、そういった国々が入らない協定には意味がない。むしろ、日本がその第二約束期間に入らないことによって新たな協定ができて、あらゆる国が入る枠組みができた方がいいだろうというふうに考えたわけです。

 そして、その後の歴代の大臣の努力もあって、去年パリ協定というのができました。ところが、我が国はまだ締結できていない。既に、割合で、六十カ国、約四八%の排出国がパリ協定を締結しておりまして、今後、ドイツ、フランスあたりが締結してくると五五%を超えます。そうしますと、この協定が発効しますね。

 総理、これは総理にお伺いしたいと思います、既に本会議でも答弁されていますから。

 我が国が長年にわたって温暖化についてイニシアチブをとってきた、この役割を考えると、この十一月のCOPの会議までにしっかりこれを締結しておかないと蚊帳の外に置かれますよ。ここが、総理、自民党の部会を通っていないというような話のようなんですよ、政府としての対応は終わっているけれども。総理のイニシアチブでしっかりそれをやるという御答弁をいただけませんか。これは私からの提案です。

安倍内閣総理大臣 私は、第一次政権のときにハイリゲンダムでサミットがあった際、全ての国が参加する公平かつ実効的な枠組みをつくるべきだ、こう申し上げてきたわけでありますが、このたびパリ協定は史上初めてそうした枠組みとなったわけでありまして、政府としては、気候変動という国際社会の深刻な課題への対応に最大限貢献していくとの立場から、パリ協定の早期発効を重視しています。必要な準備、調整が整い次第、パリ協定を今国会に提出し、迅速な締結に向けて全力を尽くしていく考えであります。

 気候変動を重視する我が国としては、COP22において迅速な締結につき明確な姿勢を示せるよう、もちろん我が党の中においてもしっかりと議論し、早急に結論を得なければいけないと思っていますが、野党の皆様にも御協力をいただきたいと思います。

細野委員 総理、我々はこれに協力します。必要な調整というのは与党の中の調整なんです。総理がしっかりイニシアチブをとって、早々に部会を通して閣議決定まで持っていく。そこからでないと国会は協力できないんですよ。

 もう目の前にCOPの会議もあるんだから、そこで蚊帳の外に置かれるよりは、総理がイニシアチブをとってやられればいいじゃないですか。もう一言どうですか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、国会に出す以上、我が党で、あるいは与党でちゃんと結論を出しますが、今ここで私がそれを全てやると言うことはできないわけでありまして、我が党で。我が党はしかし責任感が強いですから、しっかりと結論を出していただける、このように確信をしているところでございます。

細野委員 前向きな答弁をいただいたというふうに理解をしたいと思いますが、この環境問題についての自民党の中というのはいろいろありますからね。やや心配をしているということもあわせて申し上げたいと思います。

 では次に、憲法の問題について議論をしてまいりたいと思います。

 先日、我が党の野田幹事長が自民党の憲法草案について撤回を求めました。それについては総理は明確に拒否をされた。これは自民党の中でいろいろな議論をしてきたものですから、いきなり撤回というのは、なかなか自民党として、はいとすぐに言えないことについては私も理解します。

 ただ、総理、憲法の議論を進めるためにはぜひ考えていただきたいことがある。それは、今の自民党の改憲草案をベースに議論するというのは、これは無理ですよ。総理は参議院選挙の後の記者会見で、我が党の案をベースにしながらとおっしゃっている。この考え方は改めていただいた方がいいと考えますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いわば憲法改正の草案あるいは憲法改正案を出している政党というのは、我が党は全体について、全体像を既にお示ししていますが、あと維新の会が出しておられると思いますが、その他はまだ出しておられない段階でありますから。撤回しろという意味がよくわからないんですが、例えば法案を提出してそれを撤回しろというのならわかるんですが、我々の考え方を国民の皆様に、我が党の考え方ですよということをお示ししたわけでありまして、それはしかし、三分の二という多数を形成しなければいけないわけでありますから、政治の現実においてはそれがそのまま通るとは全く思っていないわけでありまして、それはやはり、例えば細野さんがここはこうするべきだと、ああ、そうだなとなればこれは変わっていくわけですよ。当然ですね。

 しかし、当然私も、自民党の総裁でもありますから、我が党の案は全く関係ありませんよということにはならないわけでありまして、まずはベースにお願いしますと。しかし、そこで例えば細野委員が、ここは自民党の案はおかしいから、ここはこういうふうに修文すべきだと、そうすれば賛成できますよ。議論に入っていけば当然、我々も納得するということになればそういうことになっていくでしょうし、まさにそれはこれから憲法審査会の中においてしっかりと御議論をいただきたい、このように思っております。

細野委員 率直に言って、若干柔軟になってきたかなというふうに思いますね。

 さらにちょっと踏み込んでお伺いしたいんですが、総理、公明党の井上幹事長は先日の「日曜討論」でこうおっしゃっているんですね。自民党の草案をたたき台にして憲法審査会で議論することにはなっていないとおっしゃっているんですね。

 ベースという言い方とたたき台という言い方、これはどっちがどうかというのはありますが、私の理解する限り、ベースという言葉の方が強いですね、たたき台というのは柔軟ですね。総理はベースにするとおっしゃっている、公明党の方はたたき台にしないとおっしゃっている。これは、明らかにこの考え方のスタンスに違いがあるわけですよ。

 私の理解では、ベースというのは、まず自民党案があって、その中で三分の二で合意できないものについてはこれはやらないけれども、三分の二の合意できるものについてはこのベースのものを残す、こういう考え方に聞こえる。

 総理、まず確認したいんですが、たたき台にはしないという公明党の意見がある。すなわち、自民党案をまずベースにしてそこから調整をするのではなくて、各党の考え方でしっかりやるということでよろしいんですね。

 総理、もう一つ申し上げます。

 我が党は、確かに改憲の具体的な案は出していません。しかし、もう既に二〇〇五年に憲法提言を出していまして、かなり具体的にさまざまな考え方について提示をしているんです。これは、公明党の大体できているものと熟度においては大体同じぐらいですよ。公明党も改憲草案は出していない、しかし憲法改正については議論する。我々も憲法提言を出している、さまざまな考え方を出している。

 ですから、総理が本当にこの憲法の問題について、ベースにするという考え方をしっかりここで諦めて、さまざまな議論をしましょうということになれば、議論が進む可能性があるんですよ。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 我が党の案をベースにして議論したいというのは、まさにこれは私の思いと気持ちを述べたわけでありまして、当然それは相当議論をしたわけですね、自民党の中において。そうしてつくった草案である以上、我々もこれを大切にしたいし、これをベースにして議論していただきたい。まあ、ベースですから、先ほど申し上げましたように、これは撤回するとか撤回しないとかの話ではなくて、いずれにせよ、そこで三分の二にならなければ、ベースとか言っていても、そもそも話にならないわけでありますから。

 ただ、これは見方によるんだと思いますよ。民進党が出された案で、我々の案とは違うけれども、その案でもいいですねということになれば、その案でいくということになるんだと思いますよ、三分の二。ですから、具体的な、どういう条文でどういうことになっていくかということを見ないとわからないわけでありまして、それはまさに憲法審査会においてしっかりと御議論をいただくべきことではないか、こう思っているわけであります。

 これはいろいろな言い方があるんだと思いますが、私は、ベースにしたらいけないとか、たたき台だったらいいかとかいうことではなくて、とにかく案を持ち寄って議論しましょうということでありまして、我々は、我々の案は既にできていますから、それはお示しをする。我々は既に案を決めているわけでありますから、これでやっていただきたいと思っているということであります。

細野委員 なかなかベースにするという考え方を変えていただけないんですね。

 それでは、自民党案が本当にベースになるに値する案かということについて、ちょっと議論を深めてまいりたいと思います。

 総理、憲法九十七条、御存じだと思うんですが、この条文を自民党の改憲草案は削除しているんですね。

 私、浅学ではありますけれども、憲法を専門に大学時代はやっておりまして、九十七条というのは実は結構思い入れのある条文なんですよ。これは十章の最高法規のところに書いてあるんですが、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」

 最高法規の中にこの人権規定が入っていることは非常に重いと私は考えてきた。その立場からすると、改憲草案を見たときに、もちろん国防軍も、まあ、これはさすがにないだろうと思いましたが、この条文を削除したことについて、これは非常に問題があるなというふうに思いました。

 たたき台にする、さらにはベースにするという話を総理はおっしゃっているわけだから、たたき台は公明党ですね、ベースにするというふうに総理はおっしゃっているわけだから、この条文をなぜ削除したのか、ちょっと御説明いただけませんか。

安倍内閣総理大臣 もう既に国会で再三申し上げているわけでありますが、憲法の改正案につきましては、政府としては提出するということではないわけでありまして、まさに憲法審査会で御議論いただき、そこで御判断をいただき、そこで発議をしていただき、国民投票となるわけでございますから、今私がここに立っているのは、基本的には内閣総理大臣として立っているわけでありますから、一々の条文についてそれを解説する立場にはない、このように思っております。

細野委員 いやいや、総理、それはおかしいと思いますよ。総裁の立場もありますからベースにしますとさっきおっしゃったところじゃないですか。憲法の議論のまさにこれがベースになるわけでしょう。その重要な条文、しかも九十七条という根幹の条文で、もちろん事前にも通告してあって、なぜ削除したんですかと聞いているのに、答えられませんというのは、憲法の議論が成り立たないじゃないですか。通告もしてありますよ、事前に。

 委員長、これはまずいですよ。ちゃんと答えてください。

安倍内閣総理大臣 今お答えをいたしましたように、まさに逐条的な議論は憲法審査会でやっていただきたいということでありまして、まさに閣法として提出しているものであれば私は責任を持ってお答えをしなければいけないわけでございますが、今後……(発言する者あり)では、そうすると、一々我が党の憲法改正草案について逐条的に私が解説をするという立場になってくるわけでありますから、それはそうではないわけでありまして、まさにそれは憲法審査会において御議論をいただくべきものであろう、こう思うわけでございます。そのために憲法審査会があるのであって、この予算委員会においては、まさに補正予算について議論する場ではないか、こう思うわけでございます。

細野委員 委員長、これは議論できませんよ。だって、総理に対して憲法の改正草案の一番重要なところについて聞いているのに、何も答えないんですよ。この予算委員会で憲法の議論が成立しないなんということがあっていいんですか。

 これはそもそも院の権威にもかかわるし、委員長、しっかり考えてください。

安倍内閣総理大臣 まさに憲法審査会において、各党がまさに党の見識、議員の見識をそこで示すわけでありまして、衆議院、参議院で発議をするというのが本来の姿であります。

 今までお答えをしたことがありますが、いよいよ憲法改正草案について議論をしていくということになってきたわけでありますから、そこは明確にした方がいいのではないか、私はこう思っているわけでございまして、まさに細野委員がやりたいという御議論は憲法審査会でやっていただければいいのではないか、このように思います。(発言する者あり)

浜田委員長 細野豪志君、そのまま質疑願います。

細野委員 私もかつて議事録で確認したことがありますが、総理、長妻委員の質問に対しては、九十七条について答えていますよね。その議事録は私も読んでいます。

 今、自民党が非常に多数をとって、国民の皆さんも関心があるんですよ。しかも、具体的な議論にいよいよ入っていく。だからこそ、総理がしっかりと、自民党の総裁としての立場も含めてお答えになるべきじゃないですか。以前は答えられたけれども、今まさにそういう議論が煮詰まってくる、これからだというときだから答えられないなんというのは通用しませんよ。しっかり答えてください。

安倍内閣総理大臣 憲法の逐条的な解説については、もう既に自民党はその解説も出しているわけでございます。

 そして、議論をしないということではなくて、そのためにつくった憲法審査会において議論すべきだと私は申し上げているわけでありまして、政府の総理大臣としてここに立っているのは、まさに政府が提出している補正予算案、あるいはこれから提出しようとしている法案についての政府としての責任として、総理大臣としての立場で答弁をしていくということでありまして、憲法については、先ほど私がベースにしてということについてお答えをいたしましたのは、基本的な姿勢としてはお答えをさせていただきますが、逐条的にこれ以上議論を総理大臣である私がするのは適当ではないだろう、このように考えたところでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 総理、もう一度答弁願えますか。

安倍内閣総理大臣 先ほど来答弁をさせていただいておりますように、九十七条についての解説はもう既に党としてもお示しをしているわけでありますが、その議論をする、まさに逐条的にどう考えるかということを議論を深めていく場は憲法審査会であるべきだ、こう思っているわけでありまして、まさにそこにおいて各党が考え方を持ち寄って議論を深めていくべきであろうかと。

 この予算委員会は、まさに先ほど議論になりましたが、私は行政府の長としてここに立っているわけでありまして、ここでは、我々が提出させていただいている補正予算、そしてまた我々がこれから提出しようとしている法案等について私は責任を持って答弁をさせていただきますが、憲法改正については衆議院そして参議院それぞれが発議をするということでありますから、そこはまさに各党各会派がそこで議論を深めていくべきだろう、このように考えております。

細野委員 総理、私は細かい条文について聞いているんじゃないんです。(発言する者あり)九十七条の削除が細かい条文であるというふうに考えておられる自民党の皆さんは、大きな勘違いだと思いますよ。

 私は、総理、その姿勢は認めることはできません。なぜなら、ここでそれを認めてしまったら、これから、予算委員会はおろか、党首討論でだって憲法の具体的な中身について議論できなくなりますよ。総理が実質的に憲法を改正するんだということで強い指導力を発揮してきたんでしょう。逃げないでくださいよ。

 少なくとも主要な条文について答弁できないようであれば、憲法改正をやろうなんていう資格はないですよ。しっかり答弁してください。

浜田委員長 安倍内閣総理大臣、質問に適切に答えていただくように。できる範囲でお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 先ほど来申し上げているように、逃げないでくださいとおっしゃったんだけれども、それはこちらが申し上げたいことでありまして、つまり、議論をする場はどこかということなんですよ。

 議論をする場は、憲法審査会において各党がその責任を果たして、そこで議論していくわけであって、それはまさに立法府がその誇りと責任感の中においてそこで議論するものであって、今私は行政府の長として立っている立場で、逐条的な解説をする立場にはないということは再々申し上げているとおりでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、基本は、まさにこれは立法府が責任と誇りを持って、しっかりと憲法審査会において議論していただくべきものであって、内閣総理大臣である私が逐条的に解説をしたり、あるいは条文においてこういう改正をしてもらいたいとここで申し上げるべき立場にはないということでありますが、九十七条につきましては、これは現行憲法の国民主権や基本的人権の尊重や平和主義……(発言する者あり)よろしいですか。現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの基本原則についていささかの変わりもないわけでありまして、九十七条の削除は条文の整理にすぎず、基本的人権を制約するということではないわけであります。

 あくまでもこれは自民党の草案であるということでございまして、繰り返しになりますが、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重と平和主義、この三原則は変えていないというのは再々我々も申し上げて、私も申し上げておりますし、これは自民党の憲法の草案の解釈においても大前提であるということであります。

細野委員 総理、ここは御理解いただきたいんですが、私は、憲法の議論はきっちりしたいという考えなんです。だから総理に……(発言する者あり)逐条までは聞きませんよ、細かいことは。しかし、幾つかの主要な考え方については総理の考えを伺った上で議論できるかどうかという、そこまでいかないと、何も議論できないということになってしまいますよ。総理、自分で答弁を持っておきながら、これだけ長時間にわたって審議を拒否されるというのは、憲法の議論を本気でやる気があるのかどうかということが問われますよ。

 今の答弁について、では最後に、私の方で所見を申し上げるならば、恐らくそれは、総理、憲法十一条のことをおっしゃっていますね。憲法十一条には確かに基本的人権について書いた規定がある。しかし、ここは極めてシンプルに書かれているわけですね。「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」これが人権規定に書いてある。

 しかし、九十七条は全くその意味合いにおいて深みが違うんです。「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、」「過去幾多の試錬に堪へ、」という経緯も書いてあるんですね。なぜ十章にそれを入れたのか。最高法規の実質的な根拠をここで書いているんです。単に法律に上位をするから守りなさいねという形式的なこの最高法規の根拠は九十八条にありますから。九十七条は実質的な中身を書いてあるんですよ。

 この歴史的な経緯をなぜ自民党は除去するのか。総理は憲法の中身についてそれほど御興味ないのかもしれないけれども、それは憲法通説の芦部憲法にだって、私の師匠は佐藤幸治教授ですが、全てそう書いていますよ。

 ですから、総理、もうこれ以上何を聞いてもお答えになりそうにないので申し上げませんが、明らかにこの九十七条の部分には不備があります。

 さらには、憲法九条に国防軍を書いていますが、この国防軍を国民が認めるということはないでしょう。ですから、ベースとして自民党の憲法草案で議論するという考え方をもう一度考え直していただいて、しっかりと各党で議論する環境をつくっていただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。静粛に願います。うるさい。静かに。

細野委員 ありがとうございます。

 では、時間も少なくなってきましたので、生前退位の問題について質問させていただきたいと思います。

 陛下の会見、八月八日でしたけれども、私も本当に背筋を正して聞かせていただきました。非常に重たい言葉を陛下が一言一言お述べになった。

 私は、生前退位の問題は、これは陛下がおっしゃったからということではなくて、立法府としてもしっかり議論すべきだし、総理にも考えていただかなければならない、そしてこの議会でしっかりと結論を出すべきだというふうに思っています。

 ただ、総理、私ちょっと気になりましたのは、先日、同じく野田幹事長がこの問題について本会議で聞いたときに、総理は生前退位について、生前退位という言葉を使わずに、公務の軽減という言葉だけをお使いになったんですね。公務の軽減と生前退位というのは、意味的にも質的にも全く違いますね。

 総理、どういう意図で公務の軽減という言葉をお使いになったんでしょうか。お願いします。

安倍内閣総理大臣 天皇陛下の公務の負担軽減等については、今般設置をした有識者会議において、予断を持つことなく、国民の中にあるさまざまな意見を幅広く聴取した上で提言を取りまとめていただくことを予定しております。

 まずは有識者会議において静かに議論を進めていただくこととしておりますが、憲法上、天皇の地位は国民の総意に基づくとされていることも踏まえ、一定の段階で与野党を交えた議論を行うことも考えているところでございます。

細野委員 全然お答えいただいていないんですが、公務の軽減と生前退位というのは違いますね。生前退位についてしっかり検討するということでいいんですか。そこを聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 天皇陛下が国民に向けてお言葉を発せられたということを我々は重く受けとめているわけでございまして、これは憲法との関係もございます。ですから、我々は、お言葉を発せられたということを重く受けとめて、その中において国民的な議論があり、その国民的な議論を受けとめて、政府としても有識者会議を設けて議論を行っていきたいと考えているわけでございます。

 そこで、御公務の軽減について考えていくという上においては、予断を持たずにさまざまな事柄についてしっかりと検討していきたい、こう考えております。

細野委員 今も生前退位という言葉を使われないんですね。

 陛下の会見、私は何度も読みました。直接聞いた上に何度も読みましたが、ここを懸念されている。みずからの健康状態が深刻な状況に至ったときの社会の停滞。

 総理、ここをよく考えませんか。もちろん、判断するのは我々ですよ。仮に公務が軽減されたとしても、陛下であり続けることに変わりはないわけですね。そうなってまいりますと健康が深刻な状況になる、これは残念ですけれども、いつかはこういう状況が来ると考えざるを得ない。そうなったときに社会が停滞しないためにどうするかというのを我々は考えるべきじゃないですか。

 それを、総理自身が生前退位という言葉を使われないというのは、私は国民的な理解からいっても認めるわけにいかないんですよね。しっかり生前退位についても検討するという言葉ぐらいは、答弁ぐらいはいただけませんか。

安倍内閣総理大臣 退位の問題も含めて、予断を持つことなく、さまざまな専門的な知見を有する方々の意見を伺いながら議論をしていただけるものと考えております。

細野委員 きょうは内閣法制局長官にも来ていただいたのでお伺いをしたいんですが、二つお伺いしましょう。

 特別立法で一代限りで生前退位を位置づける、そういう議論があると聞いています。ただ、憲法二条には、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」とされている。一代限りであっても皇室典範以外の特別立法でやるということが憲法二条の許容するところなのかどうかということが一点。

 もう一点お伺いをしたいのは、恒久的な制度としてこの生前退位を位置づける場合、制度としてですね、その場合については憲法改正が必要なのか、もしくは皇室典範の改正という形でなし得るのか。

 この二点は内閣法制局の見解としてしっかりと確認をした上で国会での議論をするべきだというふうに思いますので、内閣法制局長官に明快に御答弁をいただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 陛下の御公務の負担をめぐりましては、過日の陛下の御発言を契機といたしまして、国民の間でさまざまな意見の表明がなされ、また、政府といたしましても、有識者会議を設けて、これから広く検討を行うとされているものと承知しております。

 したがいまして、当局として現時点で予断的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、それと切り離した上で、あくまでも一般論として、憲法の解釈という観点から申し上げたいと思います。

 憲法第二条は、皇位は世襲のものとするほかは、皇位の継承に係る事項については、国会の議決した皇室典範、すなわち法律で適切に定めるべきであるということを規定しているものと理解しているところでございます。

 また、一般に、ある法律の特例、特則を別の法律で規定するということは法制上可能でございます。

 そのことを踏まえますと、憲法第二条に規定する皇室典範といいますのは、特定の制定法であります皇室典範、昭和二十二年法律第三号ということになりますが、その特定の法律のみならず、皇室典範の特例、特則を定める別法もこれに含み得る、当たり得るというふうに考えられるところでございます。(細野委員「もう一問聞いています。ちょっと手短にお願いします」と呼ぶ)はい。

 もう一点でございます。

 今お答えしたとおり、皇位の継承に係る事項については、いわば法律事項と解されるところでございます。したがいまして、憲法を改正しなければ、およそ退位による皇位の継承を認めることができないということではないと考えております。(細野委員「ではない」と呼ぶ)ない。憲法を改正しなければ、およそ退位による皇位の継承を認めることができないということではないと考えております。

細野委員 非常に重要な答弁であったと思います。

 皇室典範によってもしっかりやり得るということですので、全国民を代表する議会でしっかりとこの問題については議論して、国民にもしっかり説明をしていくことが必要である、このことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、江田憲司君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。江田憲司君。

江田(憲)委員 民進党の江田憲司でございます。

 本日は、アベノミクス、金融、財政、経済政策につきまして、総理と生産的な議論をしたいと思います。

 過去のことはいろいろお互い言いたいことがあると思います。いろいろな統計数字もあると思いますけれども、これからが大事でございます。多くの国民が、そうはいっても景気回復を実感していない。各種世論調査を見ましても、アベノミクスに期待するか、アベノミクスで景気が回復するかという問いに、六割前後の国民が期待しない、回復しないという答えを出している。こういった問題に真摯に向き合うのが与党と野党第一党の務めだと思います。

 かつ、一点だけ申し上げると、私は旧民主党出身議員ではございませんので、民主党政権時代の批判は私には通用しないということを一言申し上げたいと思います。

 さて、私は、アベノミクス自体を全否定するものではありませんし、一定の評価をしているところもあります。しかし、その私も、もはやこのアベノミクスは限界を露呈しているのではないかというふうに考えております。

 その象徴的な事例の一つが今回の補正予算にも見られまして、これは、安倍政権になって、安倍総理、初めてこの補正予算で建設国債を発行された。二・七兆円の規模ですね。何とその歳入の八割を超えるような建設国債を発行され、総額二十八兆円を超える経済対策を出されたわけですね。これまでは、御承知のように、アベノミクスの果実、税収増で補正予算を賄ってきたんだというふうに胸を張られていたわけですけれども、これは一つの大きな転換点だ、象徴だと思っています。

 結局、御承知のように、国債発行、一年間の全体の発行額も三十七兆円を超えて、安倍政権発足以来初めて前年度を超える国債、借金をしてしまった。ここが私は一つの大きな、象徴的な、アベノミクスの限界をあらわしていると思いますけれども、総理のお考えはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回、二十八兆円の補正予算を組みました。これはまさに世界経済が……(発言する者あり)失礼いたしました。二十八兆円の経済対策を組んだわけであります。修正していただいて、ありがとうございました。

 そこで、我々はなぜこの二十八兆円の経済対策を組んだかといいますと、それはまず、リスクに直面している世界経済……(江田(憲)委員「いやいや、借金を初めて出したこと」と呼ぶ)その前提条件をちょっと説明させていただきますと、世界経済はリスクに直面をしているわけでありまして、それに備えなければいけないということがまさにG7サミットの合意になったわけでございます。

 そこで、しっかりと需要をつくっていく必要があるわけでございまして、その中におきまして、今、第一の矢として大きな、思い切った金融緩和策をとっているわけでありまして、思い切った金融緩和策をとっている中におきまして、さらに日本銀行のマイナス金利政策もある中においては、そこで財政政策をとっていくことは効果が発現しやすいわけでございますし、しっかりとそのことによって景気を下支えしていく必要がある、こう考えているところでございます。

 建設国債につきましては、まさに未来への投資として建設国債を発行しているところでございます。

江田(憲)委員 ちょっとすれ違いなんですが、私が言いたかったことは、安倍政権の成果として誇っておられたアベノミクスの果実、税収増も行き詰まってしまったということを象徴的にあらわしているんですね。まあ、それはいいでしょう。順次検証してまいります。

 最初に私の立場をはっきりさせておきますと、今、ここにパネルを出させていただきましたけれども、私は、第一の矢、金融緩和の矢は、確かに一本目は飛んだ、カンフル剤ですから一時的に体がしゃきっとして、株も上がったし、円も安くなったというのは認めます。しかし、当時から私が申し上げてきたことは、カンフル剤ですから、二本も三本も打つべきものじゃありませんよ、打ったって効果はどんどん減殺されていきますよ、打ち過ぎると副作用が起きますよと申し上げてきたので、私の今の第一の矢、金融緩和の評価は、もう既に矢折れ刀尽きた、限界をヒットしている。これは、日銀総裁もきょう来ていただいていますから、議論を逐次していきたいと思います。

 第二の矢は財政出動ですけれども、これはとんでもない方向に飛んでいる。簡単に言うと、これも後で検証していきますけれども、公共事業のばらまきや無駄な補助金、基金のブタ積みと私は言っているんですが、無駄遣いをしていて、人への投資とか生活への投資、技術革新へは向けられていない。だから、とんでもない方向に向いている。

 第三の矢の肝心かなめの成長戦略、規制改革等、日本の国の経済の新陳代謝、これが一番大事なんですけれども、この矢は飛んでいないということでございまして、これは反論があると思いますので、逐次取り上げながら総理の答弁を求めてまいります。

 まず、第一の大胆な金融緩和ですけれども、当初、あれはたしか二〇一三年の四月に第一の矢が飛びました。物価目標二%、インフレターゲットを初めて設定して、五十兆円規模の国債を買い入れするということで確かに効果がありましたが、そのときたしか、二年後には二%目標を達成するんだと日銀総裁はおっしゃっていて、副総裁に至っては、できなきゃ私は辞職するとまでおっしゃっていた。だけれども、一三年四月というと、もう今一六年、三年半たっても、物価が上昇するどころか、御承知のようにCPI、消費者物価指数はマイナス〇・五%、プラスどころかマイナス〇・五%という状態ですから、もう完全にこの金融政策は行き詰まったと私は思っておりますけれども、総理の見解を求めます。

安倍内閣総理大臣 政権交代後、アベノミクス三本の矢によって、これは二十年間続いてきたわけでありますから、非常にこびりついたデフレからの脱却にチャレンジしたわけでありますが、そこで、三年半で、もはやデフレではないという状況をつくり出すことはできたわけでありまして、そう簡単に、これは脱却ということには残念ながらまだなってはいないわけでありますが、デフレではないという状況をつくり出すことはできた、こう思っておりますし、国民生活にとって大切な雇用は大きく改善をしているわけであります。

 今御指摘の金融政策につきましては、今回、日本銀行は、総括的な検証を行った上で、金融緩和を強化するための新しい枠組みの導入を決定したところでありまして、当面、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債金利をゼロ%程度で推移するように長短金利を操作することとしていると承知をしております。これは、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するものである、このように理解をしております。

 またさらに、黒田総裁は、きょうは来ておられますから後で御本人から説明があると思いますが、金融緩和の拡大はまだ十分可能であり、必要があれば追加措置もちゅうちょしないと説明していると承知をしております。

 金融政策の具体的な手法は日本銀行に委ねられるべきであると考えておりまして、私も黒田総裁を信頼しているところでございます。

江田(憲)委員 それでは、日銀総裁、来ていただいていますからお聞きします。

 先週発表された長短金利操作つき量的・質的金融緩和というのは、本当にわけがわからない、まるで建て増しを重ねた温泉旅館みたいなもので、これはほとんど国民の皆さんはわからないと思うので、ただ、具体的なことはまた同僚議員が聞きますから、余りここに時間をかけられないので端的にお答えいただきたいんですが、これは、日銀の金融政策は量的緩和から金利操作に転換をした、ということは、八十兆円残高を買い増している今の八十兆円規模のオペレーション、買い入れというのは減らしていく、そういうことでよろしいんでしょうか、総裁。

黒田参考人 今回導入いたしました長短金利操作つき量的・質的金融緩和、これでは、従来のマネタリーベースの増加額にかえて、長短金利の水準を金融市場調節の操作目標とするということにしました。

 今回の決定会合では、現状程度のイールドカーブをイメージして、短期金利はマイナス〇・一%、十年物長期金利をゼロ%程度といたしました。そうしたもとで、長期国債の買い入れ額につきましても、従来と同じ年間約八十兆円をめどとしつつ、金利操作方針を実現するように運営するということにしたわけでございます。

 したがいまして、買い入れ額につきましては、年間八十兆円がめどとなりますけれども、長期金利操作目標を実現するためには増減することはあり得るということでございます。

江田(憲)委員 ふえることもあれば減ることもあるということですね。

 では、二点目。

 今回、金利操作という概念を初めて導入されたんですが、従来、日銀も長期金利は操作できないとおっしゃっていたはずなんですけれども、短期金利はマイナス〇・一ですね、どうやって長期金利を操作されるんでしょうか。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、中央銀行は、短期金利は操作できるが長期金利は操作できないというのが伝統的な考え方でありました。

 しかしながら、実際問題として、リーマン・ショック後、主要国の中央銀行、別に日本銀行だけでなく米国、欧州の中央銀行はほとんど全て、短期金利がゼロ制約に直面するもとで、長期金利に働きかけることを明確な政策目標として示しながら、長期国債などの大量の買い入れということを実施してきております。

 日本銀行といたしましても、過去三年半の量的・質的金融緩和とこの半年強のマイナス金利の経験を踏まえて、大規模な国債買い入れとマイナス金利を組み合わせることによって長期金利にかなりの程度影響を与えることができるということがわかったわけでございます。

 したがって、この二つの組み合わせを使い、さらにそれに加えて、日本銀行が指定する利回りによる国債の買い入れ、いわゆる指し値オペといった調節手段も加えまして、長短金利操作つき量的・質的金融緩和というものを導入したわけでございます。

江田(憲)委員 今の御答弁を裏から言うと、結局、今の国債市場というのは官製相場になっている、操作できるんだと。

 要は、従来、市場の機能が十全に発揮されているときには中央銀行たりとも操作できなかったけれども、今は、御承知のように、月々、新発、新規発行国債の九割は日銀が買い、もう三百五十兆円を超えて残高の四割は日銀が保有し、来年には五百兆にも及ぶんだ、これは日銀も認められている。まさに、はっきり言えば、日本の国債市場というのは完全に官製市場になっているから長期金利操作ができるんだということを白状しているようなものじゃありませんか。総裁、答弁してください。

黒田参考人 金融政策は、基本的に、金融市場を通じて実体経済に影響を与えようとするものであります。

 伝統的には、先ほど申し上げたように、短期金利操作をすることによってそれが中長期金利にも波及していって、そして実体経済に影響を与えるということを行ってきたわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、日本銀行のみならず欧米の中央銀行も、ゼロ金利制約のもとで長期金利に直接に働きかけるために長期国債を大量に購入しているわけでございます。

 したがいまして基本的な金融政策の考え方は変わっておりませんけれども、確かに、長期金利に直接的に働きかけるために長期国債等を大量に買い入れるというのは、伝統的というよりも非伝統的と言われるような新しい金融政策の手段であることは間違いないんですが、基本的に、金利に影響を与えて、それによって実体経済に影響を与えるという意味では、伝統的な政策でも金融市場に一定のコントロールを加えていたわけです。そのコントロールの与え方が変わってきているということであって、金融政策の本質が変わったわけではありません。

江田(憲)委員 総裁にしては苦しい答弁でしたね。

 では、もう一点。

 物価安定目標二%は、もう期限を切らず、何でしたっけ、横文字が出てきて、オーバーシューティングコミットメント、これはわけがわからぬですが、要は、これまで二年の年限を切って二%上げようと言ったけれども守れなかった、ではもう期限はやめちゃおう、要は短期決戦から長期決戦にしよう、こういう理解でよろしいですか。

黒田参考人 御案内のとおり、日本銀行は、量的・質的金融緩和の導入以降、一貫して二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するため金融政策を運営してきているということでありまして、こうした考え方自体には変わりはありません。

 ただ、我が国ではデフレが長年にわたって続いてきたこともありまして、御承知のように、予想物価上昇率が実際の物価上昇率に強く引きずられる傾向があるということでありますので、この予想物価上昇率を引き上げていくことに不確実性があるということであります。したがって、そこに直接的に働きかけるために新たにオーバーシュート型コミットメントを導入いたしまして、消費者物価上昇率の実績値が安定的に二%の物価安定の目標を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するという強いコミットメントをいたしまして、二%の実現に対する人々の信頼を高めることを狙いとしております。

 それから、先ほど委員の御質問にもありましたように、この枠組みの中心に長短金利操作ということを加えることで、経済、物価、金融情勢に応じたより柔軟な対応を可能として、また政策の持続性も高められたというふうに思っております。

江田(憲)委員 金融政策は、やはり市場関係者の見るとおり、今回の件で転換をされた。よく言えば、今総裁の答弁にあったように、金融政策を柔軟にした。悪く言えば、これはもう完全な手詰まり状態だ。では何をやるべきかというのはこれから述べますけれども。

 ただ、私、本当に今心配しているのは出口ですよ。さっき言いましたね、建て増しを重ねた温泉旅館というのは、いざ火事になると、迷路で、本当に危険なんですよ。

 来年には五百兆、GDPの一〇〇%も国債残高を持って、これはいずれデフレ脱却をして、うまくいったとしましょう。そうすると、今の八十兆円レベルの買い入れ額をどんどん減らしていかないかぬわけでしょう。持っている、その五百兆円になんなんとする日銀保有の国債も、ある意味で減らしていかないかぬわけでしょう、当然。アベノミクス発動前は、たしか日銀保有の残高は百五十兆円程度でした、国債は。それが五百兆円になる。そうすると、国債を手放すということは、国債の価格が下落する、金利が急上昇する。円ももしかしたらぼんと暴落するかもしれない。こうしたハードランディングを避けるためにソフトランディングできるんですか、本当に。

 こんなやりたい放題、私もあきれているんですよ。確かに第一の矢はいいんです、ショック療法、カンフル剤で。ただ、その間に体質改善、手術、構造改善、成長戦略をやっていないから。

 日銀総裁ばかり責めて申しわけない。日銀総裁はもうやり過ぎるぐらいやっているんですよ、危険承知で。

 今回、出口戦略がかいま見えるのは、去年から四千五百億円、日銀は国債下落のために引当金を積んでいるんですよ、もう見越して。日銀はやはり頭がいい。それから、国債を買い入れる余地が限界に達している。これはIMFも言っている。だから、日銀に金融機関が差し入れる担保だって、国債だけではなくて外債とか住宅ローン債権まで幅を広げている。これはまさに日銀が白状しているんですよ。

 総裁、本当に出口を真剣に考えてくださいよ。これは本当に、現実問題、私、大変心配していますから。ぜひ明確なお答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 一つ御指摘の点につきまして申し述べさせていただきますと、確かに、量的緩和を拡大している過程で日本銀行の利益は拡大しますので、他方で、それがいずれ何らかの形でテーパリングなりなんなりになってくれば、当然利益は縮小するわけです。そういった日本銀行の利益が大きく変動するのを避けるために引き当てをするということを始めたわけでございます。

 そこで、出口の問題につきましては、委員御指摘の点は私どももよく認識しておりまして、部内ではいろいろな議論はもちろんしておりますけれども、御案内のとおり、FRBの場合も、かなり早くに出口のことを言ったところ、実際の今やろうとしている、あるいはやりつつある出口のやり方と全く違うことを言っていたんですね。

 ですから、結果的に、本当に出口に差しかかったときに出口の議論をするというのは当然なんですけれども、まだ出口まで行っていないときに、そのときに、実際に出口に出るときの経済とか物価とかあるいは金融情勢というものを踏まえて一番適切な出口政策をとるということでありまして、そういう状況になっていないときに時期尚早に、こういう出口があるとか言うことは、かえって市場を混乱させるという意味で時期尚早ではないかというふうに思っております。

江田(憲)委員 内部ではいろいろやっているんでしょう。

 結局、今回の異次元緩和と言われるものは、私も、もう安倍総理が政権をとられる三年以上前に唯一みんなの党が訴えていたことですから、それなりに理解しているつもりですけれども、しかし、これは端的に言うと、期待感に働きかける政策だったんですよ。

 いみじくも、今回の先週の決定でも、フォワードルッキングな期待形成、要は前向きな期待形成をやるためとか、予想物価、要は物価が上がるだろう、こういう期待感に働きかけて、一本目は功を奏した。だから円安にもなったし、株高にもなった。

 しかし、やり過ぎたら弊害が出てくるということで、一番の弊害は、来るべき出口で日本経済が破綻しないようにしっかりやらないかぬ。しかし、申しわけないけれども、そのときには安倍総理もいらっしゃらないし、黒田総裁もいらっしゃらないんですよ。

 ですから、私は、本当にこれは、全く先行きもない中でどんどんどんどんマネタリーベースだけを上げていく、こういった責任はやはり安倍総理にあると思います、日銀総裁にここまでさせた。

 要は、成長戦略、規制改革、構造改革を本当は進めないかぬのにやらないものだから、これは黒田総裁もおっしゃっているじゃないですか、累次の講演とかなんとかで。あとは構造改革だ、規制改革だ、成長戦略だ、潜在成長率を上げていかないかぬとおっしゃっているので、これはやはり安倍総理の責任ですよ、ここまで総裁にやらせたのは。総理の責任、どうお考えでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 日本経済については、まさに私は責任を感じております。

 また、構造改革についても、我々は六十年ぶりに農協の改革を行いましたし、電力の自由化も行ったわけでありますし、医療についても大きな改革を行っているのは事実であります。それは江田議員にも多少はお認めいただけるのではないかというふうに思っておりますし、これからさらに働き方改革に挑戦していきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 多少やられていることは認めます。しかし、申し上げたいことは、余りちまちましたことをやって、実体経済にきかない規制改革をやったってだめだということを言いたいんです。

 農政改革もやっています、電力の自由化もやっています。それは多としますよ。しかし、数字が証明しているんですよ。では、潜在成長率は上がっていますか。成長戦略というのは、規制改革というのは、潜在成長率を上げていくことなんですよ。今、〇・三%じゃないですか、たったの。ゼロ%近隣に張りついているわけですね。

 それはなぜかというと、これはもう釈迦に説法ですが、潜在成長率というのは資本プラス労働プラス全要素生産性で伸びていくわけですよ。資本というのは、言うまでもなく、更新投資はだめで、新規投資、資本ストックを上げていかないかぬ。労働もいろいろな努力をせないかぬけれども、少子化ですからなかなか難しい。となれば、あとの全要素生産性。これは技術革新ですよ。端的に言えば、規制改革で新規参入、新しい血を将来有望な分野に入れていって、一方で、イノベーション、技術革新をしていく。

 やっておられると言うんだけれども、〇・三%しか潜在成長率がないから、今はアベノミクスが功を奏していない。国民の大多数が景気回復を実感していないじゃありませんか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに御指摘のとおりだと思っております。まさに我々もその考え方にのっとって構造改革を進めているわけでございます。

 その中で、例えば農業においても、企業や金融機関も農業に参入しやすくしたわけでありますし、また、TPPの創設メンバーになったことによって、農業を産業として発展させようという意識も高まってきた中において、輸出も過去最高を更新してきたわけでございます。また、観光分野においては、海外からの観光客が倍以上にふえているわけであります。これをさらに倍にしていくための投資を今度はしていくわけであります。また、再生医療については、病院が心筋や網膜のシート製造を企業に委託できるようにして大幅なコスト削減を実現したわけでありますし、そうしたことをやっている中において、日本に本社を移す米国企業があらわれるまでに至ったわけでございます。

 ただ、おっしゃるように、企業がまだ十分に設備投資等をやっていないではないかというのは、これは事実でございますので、我々も、設備投資を促していくようにしっかりとインセンティブを与えていかなければいけないと思っていますし、そのための規制改革、規制改革は大分やってまいりましたから今は相当かたいところまで来ているわけでありまして、まだまだやるべき改革はたくさんある、しっかりとこの叱咤激励に応えて取り組んでいきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 何年か前に安倍総理は、私のドリルの前に砕けない岩盤はないとおっしゃったですね。だけれども、残念ながらやはり岩盤が打ち砕けていないんですね。これはもう自民党の宿痾のようなもので、やはり既得権益、癒着、こういった岩盤が打ち砕けないのは、これは小泉政権以来の課題ですよね。それは民進党にも突きつけられている課題です。ただ、我々は綱領の冒頭に、既得権益や癒着の構造と闘う改革政党なんだと打ち出しましたから、我々も、競争じゃないですけれども、しっかりと潜在成長率を上げていく成長戦略というものを提示していきたいと思います。

 さて、第二の矢ですね。

 これはとんでもない方向に行っていると申し上げました。とんでもないというのは、相変わらず公共事業のばらまき、基金のブタ積み。本当に貴重な財政出動、予算ですから、税金ですから、どうしてもっと、さっき言ったイノベーション、技術革新とか人や暮らしへの投資、社会保障の充実に使っていかないのか。

 その象徴的な事例が公共事業ですよ、皆さん。見ていただきたいんです、これを。もう唖然としますよ。

 お金がないない、消費税は八%に上げた、社会保障はぶった切っているという中で、公共事業、安倍政権になって十兆円規模ですよ。借金ですよ。

 しかも、問題は、規模だけではなくて、毎年二兆、三兆使い残しているというんですよ。予算ですよ、一般会計の。あり得ないでしょう。二兆、三兆もあったら、幾つ老人ホームが建つんですか。幾つ保育園が建つんですか。介護士や保育士の給料を何万円上げてあげられるんですか。平然とこういうことをやっておいて、何で一〇%に増税だと消費税増税を言えるんですかね。

 これはどうなんですか、総理。御存じでしたか、こんなこと。

浜田委員長 江田さん、日銀総裁、よろしいですか。

江田(憲)委員 いいです。済みません。ありがとうございました。

麻生国務大臣 今の、公共事業の話をしておられるんだと思いますけれども、私どもとしては、今、公共事業関係というものが非常に大きな曲がり角に来ておりますのは、お近くに住んでおられるのであれですけれども、首都高というようなものを考えますと、これはもう耐用年数としてはかなり厳しいものになってきているという意味では、メンテナンスを含めて、高度経済成長のときにやりました多くの公共工事というのが非常に厳しいものになっているという背景が一つあります。

 したがいまして、今我々としては、公共事業関係の翌年への繰り越しという話ですが、これは別に無駄で余っているというわけではありませんので、直ちに執行に取り組んだとしても、地元の調整等々、不測の事態にかかりますのはもうよく御存じのとおりなので、翌年度へ繰り越されるものがありますけれども、これらについても翌年度においては適切な執行に努めておると思っております。その結果、不用の額は繰り越しに比べると大幅に少なくなっておりますので、また、近年大きく減っているという状況にもなっておると思っております。

江田(憲)委員 今、安倍総理は、一〇%増税を先送りした、二%分というと、たしか消費増税一%、二・七兆円で五・四兆円程度のお金をどうやって工面するかという資金繰りの問題を真剣に議論しているじゃありませんか。軽減税率、我々は給付つき税額控除で、反対ですけれども、軽減税率をやったら一兆円減収になるから、そのうちの四千億円は、総合合算課税といって、低所得者の医療や介護負担の上限額を決めようと言っていたのも先送りした。それで四千億切った。そんな議論をしている、資金繰りの問題をしているんですよ、二兆も残していて。

 二兆もあったらできるじゃないですか、総合合算課税だって。月々五千円、低年金のお年寄りに年間六万円支給する、これは五千六百億円でできるんですよ。できるじゃありませんか。

 総理、本当に明確に答えてください。

安倍内閣総理大臣 公共事業の繰り越しにつきましては、今財務大臣から答弁をさせていただきました、予算成立後直ちに執行に取り組んだとしても、これはそれぞれ、公共工事を行う地元の調整があるわけでありまして、この調整については、やはり、不測の日数を要したことによって、結果として翌年度に繰り越されるものがあるためであり、これは御承知のとおりだろうと思いますが、翌年度において適切な執行に努めているところでありまして、これは近年大きく減っているということは申し上げておきたい、このように思います。

江田(憲)委員 いや、公共事業が天変地異等で計画どおりいかないなんて、もうそんなのは当たり前の話なんですね。

 そうじゃなくて、それは、突発的に一年、二年、二兆、三兆残しました、使い残しましたというのならわかるんです。恒常的に残っているじゃないですか。だったら、当初予算を一兆ぶった切ればいいじゃないですか。だって、恒常的に残っているんだから。こういうのが僕は財政のマネジメントの失敗だと思いますよ。総理たるものは、予算編成というのは一番重要なんだから、霞が関に任せるんじゃなくて、こういうところを切っていけば簡単に出るというのが一つ。民進党は、財源がないないと言うけれども、こんなところもちゃんと指摘していますから、ちゃんと見直していただきたいということです。

 もう本当に、どこかの幹事長が国土強靱化と、この前、何か五回も本会議の代表質問で言ったと。覚えていますか、十年間で二百兆円と言っていたんですよ、公共事業。これは忠実に実行しているんじゃないですか、十兆、十兆、十年間二百兆円。そんな余裕はないんです、財政的には。それははっきり申し上げておきます。

 次に、私が同じように無駄遣いということで、基金へのブタ積みということ、ちょっと汚い言葉で申しわけないんですけれども、要は、無駄な、貴重な税金が基金というところに積み上がっているということですね。これも公共事業と一緒なんですよ。

 この表を見ていただきたいんですね。二〇〇八年から二〇一二年、この五年間、会計検査院が二〇一五年に調査しました、検査しました。その結果、三百を超える基金があって、五兆円以上の国費、税金が投入されて、何とその五分の一以上、一兆五百十五億円が返納されているんですよ、使い道がなくて。最近どうかといって調べてみたら、二〇一三、一四、一五と返納額を見てください、二千六百億円、二千三百億円、二〇一五年に至っては四千四百五十二億円も。

 結局、基金にお金は積んでみたが、いや、これは役人の責任だけじゃないんですよ。政治がすぐ、補正予算をまた一月後につくれ、そうしたら何兆円と規模が決まる、膨らまし粉をやらないか。役人も知恵がないんですよ。いきなり実需を調査しろといったって、そんな短期間でできない。そうすると、とりあえず名目をつけて、大義名分をつけて基金を積んでおこう、この発想なんですよ。私も元役人だからよく内情はわかるんですよ。だから、役人だけの責任じゃなくて、政治が今回も、二十八兆円まで膨らませろ、そんなことを言うからこういうことになっているわけですよ。これも恒常的に出ているんですよ。

 にもかかわらず、何の反省もなく、今回の補正予算でも三千億円以上の税金を積み増しして、何と、当初予算と足すと基金への税金投入額は一兆二千億円になっているんですよ。近年まれな、去年、二〇一五年度は五千億円、二〇一四年度は五千百億円なのに、二倍以上積んでいるんです。これはまたブタ積みになって返納されてきますよ。そんな余裕があるんでしょうか、総理。お答えください。

麻生国務大臣 主に基金についてですので、基金につきましては、御存じのように、毎年、予算編成に当たりまして、基金方式による実施が真に必要かどうかというのをいろいろ個別に精査した上で予算計上をしております。

 その上で、一旦予算計上した後も、経済情勢の変化等々でいろいろ予見できなかったというのはよくある話でありますが、行政事業レビュー等々を通じて点検を実施するというのをやらせていただいております。

 各府省におきましても、これは基金シートを通じて基金の事後点検をしているものと承知しておりますし、一旦予算に計上した後で、その後、基金をいわゆる放置するとかできなかったとかいうような情勢変化を踏まえた場合は、これは行政改革会議を中心に、毎年しっかり点検作業というか検査を行った上、御指摘のように国庫返納につながったものというのは幾つもありますが、予算を精査することで財源にできるというものではないというように考えております。

江田(憲)委員 これはもう公共事業と一緒で、そんな理屈はわかっているんですよ。ただ、毎年毎年恒常的に何千億と返っているじゃありませんか。もったいないじゃありませんか。何で社会的に弱い立場にある人の社会保障だとか生活投資に向かわせないんですかと言っているんです。そんなものを積まないでくれと言っているんですよ、こんなもともと返納が予想されるような基金に。それについて総理の答弁、しっかりお願いしますよ、本当に、責任者なんだから。

安倍内閣総理大臣 確かに、この基金については、私もしっかりと目を光らせていかなければならないというふうに考えております。

 その中で、平成二十六年度、二十七年度においてもしっかりと点検作業を行い、総額五千億円を超える国庫返納につなげることができた、こう思っておりますが、今後ともしっかりと精査をしていきたいと思います。

 また、先ほどの公共事業については、これは御承知のとおりなんですが、不用額と繰越額は違いまして、不用額については大幅に減ってきているわけであります。これは入札の際の価格差、落札価格との乖離から生じるものであって、それは不用額でございますが、繰り越しについては、先ほど申し上げましたように、地方における調整分でありまして、結果的に、これは余っているのではなくて、最終的には使っているということであります。

江田(憲)委員 今、かつかつの財政運営で資金繰りが大変だから言っているんですよ。だったら、ここで恒常的にこれだけ余らせているというのがわかっているんだから、当初予算を一兆円削って、もし本当に何か災害があって多くなれば補正を組めばいいという話なんですよ、財政制度は。ぜひそれはやってください。我々民進党も、私は行政刷新担当を命じられましたので、党内にプロジェクトチームを設置してしっかりやっていきますから、ぜひ安倍総理も前向きに検討していただきたい。ここから財源が出るということですね。

 次に、こういう無駄遣いだけではなくて税制改革、我々は、消費税だけではなくて所得税や法人税も含む総合的な税制改革が必要だと思っているんですね。

 そういう中で、OECDの報告にもあるように、格差是正や所得再配分が経済成長を促すという考え方があちこちで出てきたんですね。安倍総理が何度かお会いして御意見を伺った、ノーベル経済学賞をいただいたスティグリッツ教授も、所得上位一%の方からお金を取ってあとの九九%に回せば経済は成長していく、景気回復をしていくと。なぜならば、所得上位一%の方はやはり消費に回す比率が低いので、そうあるべきだというような、所得再配分、格差是正が経済成長を促す、こういう考え方について、基本的に安倍総理は同意されますか、されませんか。

安倍内閣総理大臣 いわば、スティグリッツ教授がおっしゃっているのは、このグローバルな経済の中において一部の人に富が集中していくという状況は変えていかなければいけないということなんだろう、こう思うわけでございますが、同時に、彼は、日本と米国を比較する中においては、日本は米国とは違うという認識は持っておられる、このように思うわけでございます。

 例えば、年間所得が一億円を超えると所得税の負担率が下がるという実態について御指摘をされたいと思っておられるんだろう、こう思うわけでございますが、それについてもついでにお答えしていいですか。

江田(憲)委員 先取りされました。

 要は、大企業やお金持ちに過大な負担を求めようというんじゃないんですね。やはり財源を探しているわけですから、大企業にも中堅企業並みの負担をお願いしたい。お金持ちにも庶民と同じような所得税を負担していただきたい。

 そういう意味で、ちょっと先取りされたパネル、これはもう如実に、年収が一億円を超えると所得税の負担率が下がっている。これはどう見ても不公平、おかしいでしょう。国民はもっと怒るでしょう。

 その原因はなぜかというと、一億円から上昇しているこのグラフを見ていただければ、結局、株式取引、株譲渡、これが分離課税で二〇%。所得税の最高税率は四五%。株を取引して得た利益や配当は二〇%。だから、お金持ちになるほど所得税は下がっている。

 安倍総理、先取りして僕も言うと、総理が一〇%だった分離課税を二〇%にした努力は認めます。その上で我々民進党が訴えているのは、これを、二〇%を二五%、さらには三〇%にすれば、仮に二五%にしたら一兆円分ぐらいの税収増が出るので、これも財源にしていきましょう。これは増税ですけれども、こういうことも民進党は訴えているので、ぜひ見解を求めます。

麻生国務大臣 済みません、時間がないので私の方から手短に。

 益金不算入という話と重なった話だと思いますので、またその先を越すようで恐縮ですけれども。そういった意味で、個人の場合も、いわゆる税金の、一億円のところにある配当という話は間違いなく事実です。そう思いますけれども、その大きな部分は株等々の配当金等々によるものだというのも事実ですので、その部分は、やはりこれを高くすると、今度は逆な意味で、いろいろな意味で、またその金が外に、国外にとかいうことになりかねませんので、そこのところはよくよく考えた上でやらぬといかぬところで、ことし一〇から二〇に上げさせていただいたということでございます。

安倍内閣総理大臣 金融所得課税の見直しについては、平成二十六年から上場株式等の配当及び譲渡益について軽減税率を廃止したところでありますが、これにより、高所得者ほど所得税の負担率が上昇する傾向が見られ、所得再分配機能の回復に一定の効果があったのではないかと考えております。

 金融所得に係る分離課税の税率をさらに引き上げてはどうかという御提案でございますが、今後の税率の水準については、引き続き、今般の改正の効果を見きわめるとともに、経済社会の情勢の変化や税制全体のあり方の中での位置づけ等も踏まえつつ検討する必要があると考えております。

江田(憲)委員 ここにも財源がある。別に過大にお金持ちに重税を押しつけるんじゃないので、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 そして、大企業、このパネルですね。これは中央大学の富岡名誉教授が詳細に試算をされて、細かいことは時間がないので省きますけれども、これは明らかに、資本金百億円を超える大企業の法人税の実際の負担率が二〇・二八%。これは二〇一三年、ちょっと古いので、当時は三八・〇一が法定の実効税率。三八・〇一のときにもう二〇・二八しか払っていない。一方で、一から五億円以下の中堅企業は三五・七五%。これはおかしいでしょう。

 下の欄が、これは、財務省がああだこうだ言うので、財務省に出せと言ったら、国税部分をやっと出してきた。ちょっと分類は違いますが、いずれにせよ、百億円超は二五・五%の国税のときに半分の一三・六〇しか払っていないんですよ。ここも、過大にやれと言うのではない、中堅企業ぐらい払いなさいよと。

 何でこれが起こっているかというと、これは、御承知のように、租特、政策減税、研究開発税制とか、ぼんぼん大企業に適用している。あと、子会社の配当金を持ち株会社の親会社は益金に算入しないとか、欠損金を八年も九年も繰り越せるとか、本当、優遇している結果なんですよ。

 ですから、我々が消費税だけじゃなくて法人税や所得税も含めて抜本的に見直せと言うのはここなので。大企業にも応分の負担をしてもらいましょう。課税ベースをふやしていけば全体の法人税率はもっと下げてもいいかもしれない。一概に法人税率の引き下げを我々も反対していませんけれども、やはりこういった不公平を是正しながら、法人税改革もやっていかなければいけないと思いますけれども、もう時間がないので、総理、答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 安倍政権においても、平成二十七年度から取り組んできた法人税改革においては、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるとの考え方のもとに、政策税制や大企業の欠損金繰越控除制度の見直しなど、特に大企業の課税ベースの拡大に取り組んできたところであります。

 なお、この受取配当の益金不算入制度は、子会社の段階との法人税の二重課税を避けるため、これは諸外国においても一般的に導入されている制度であり、こうした制度の影響を捉えて、大企業の法人税の負担割合が低いと単純に結論づけることはできない、このように思っております。

江田(憲)委員 以上のように、我々民進党には、財源がないじゃないか、人への、暮らしへの投資だと訴えているけれどもそのお金はどうするんだとさんざん自民党、安倍総理からも批判されてきましたからね。まとめますと、公共事業で二兆円余っているでしょう。基金のブタ積みで数千億円出るでしょう。それから、一億円を超えるお金持ちに所得税を応分に負担してもらえばまた兆円単位でお金が出るでしょう。大企業にも中堅企業並みに負担をしてもらえばこれも兆円単位で出るでしょう。こういう税制の抜本改革もやっていく。無駄遣いの解消もやっていく。

 我々は、再来年の四月から消費税は何とか一〇%へ上げたいと思いますが、それまでの間、つなぎ財源として、しっかり赤字国債ではない財源論を持っているんだということをここではっきり申し上げまして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

浜田委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 民進党の辻元清美です。

 先ほどの細野委員の憲法の議論を聞いておりまして、まず冒頭、一点確認をさせていただきたいことがあります。

 総理もよく、最後は国民が決めると。そのとおりなんですが、この憲法改正というのはどういうときに議論が始まるのか。

 一つは、国民の皆さんが、主権在民ですから、ここを憲法を変えてもらわないと人権がじゅうりんされるとか制約されるとか、本当に困るという声があっちからもこっちからも出てきて、ここを憲法を改正してほしいという非常に多くの国民の皆さんの声が出てきたら、それを立法府で受け取って、それでは変えましょうか、議論しましょうかというのが、主権在民の国の、立憲主義の国の憲法改正のプロセスだと思います。

 きょうは全大臣いらっしゃいます。もう一つは、全大臣そろっていらっしゃいますのでちょっとお聞きしたいんですが、皆さん所管されているそれぞれの所管、日本の国民の暮らしやさまざまな社会を守っていく上で、ほぼ森羅万象、きょうおそろいの全大臣が所管されていると思いますが、皆さん御所管の政策で、憲法のここを変えないと今所管されているこの政策を遂行することができないということをお感じになっている、お持ちの大臣がいらっしゃいましたら、挙手をして答弁してほしいんです。いかがでしょうか。

 といいますのは、先ほどから憲法審査会の話が出ているんですが、実は憲法調査会から、二〇〇〇年にできました。そして、約十七年間、国会で、調査会、それから調査特別委員会、審査会で議論してきたんです。私は二〇〇〇年の最初からのメンバーでした。この約十七年間に二百三十五回、国会で憲法の調査や審査をしてまいりました。逐条審査もしてきているんです。実は、例えば個別テーマごとの各論調査、それから各条や各章の点検も、例えば百八十一国会から百八十三国会まで三国会にわたってしてまいりました。

 しかし、十七年間議論してまいりましたけれども、ここがというところがなかなか出てこなかったのは、やはり国民の中から、ここを変えてもらわないと本当に自分たちの生活や人権が制約されて困るという声がなかったことの証左だと思うんですよ。

 例えば、先ほど出ておりました自民党の憲法改正草案ですが、国防軍の話がありました。反対の方が多いです。国民の中から国防軍にしてほしいとどんどん声が出て、それを各党が取り上げて、こういうふうにしましょうかというのがプロセスじゃないですか。

 私、驚きましたのは、自民党の改正草案で、表現の自由です。公益を害する活動や結社は禁止。国民の側から表現の自由の制限をしてほしいという声が、国民の人権を守る法務大臣、ありましたか。ないんですよ。

 ですから、各政党は憲法改正に、私はやはり立憲主義の憲法を議論する原理と作法があると思います。自民党はお出しになっています。しかし、私たちは国民の代表ですから、なぜこの案を撤回、白紙と申し上げているかというと、国民不在だからなんです。

 世界じゅう見ましても、どこの国も憲法改正をやっておりますよ。しかし、ここが困るなというところを、その声を受けとめてやっているわけです。丸ごと憲法改正案を出している政党がある国は私は存じ上げません。そちらの方が異例であり異常であるということを、総理は御認識なさった方がいいんじゃないでしょうか。違いますか。

 私は、総理、そういう案を出していない政党は無責任であるというのは全く本末転倒だと思います。自民党の憲法改正草案は国民不在ですよ。ですから、白紙ということに抵抗があるんだったら、総理にお聞きします、一回棚上げした方がいいですよ、自民党のためですよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 我々自由民主党は、既に憲法草案をお示しして、その上で選挙に臨んでいるわけであります。その上でここにいる議員は当選をしているわけでありますし、私もそうです。ですから、国民不在というその御指摘は全く当たらないのではないでしょうか。つまり、それは、我々を支持した人々は辻元さんの目には全く入らないということだと思いますが。

 そして、そもそも、確かに、私たちが出している草案についても十分な理解を得ていません。ですから、そうであれば、そもそも三分の二の形成は難しいでしょうし、たとえ三分の二を形成したとしても、国民投票に付したらこれは否決される。これはこういう仕組みでありますから、我々はその中において、自民党の議員は憲法を改正した方がいいと考えているわけでございます。

 しかし、自民党の中にだってさまざまな意見はもちろんあるんですよ。自民党草案を議論したときには、その中でもさまざまな議論がありました。しかし、最終的に決まったら、自民党はこれでいこうということになっているわけであります。

 ただ、先ほど来申し上げておりますように、これがそのまま通るとは私も考えてはいないわけですよ。ですから、政治は現実の場でありますから、そこは、さまざまな議論をする中において、国民投票に付すための憲法改正案が、三分の二を形成するための案ができる上においては、これは我々の考え方とは違う、違うというか、そのままではないだろう、こう思っているわけでありまして、その前のものを撤回するというのは、これはまだまだ出していないわけでありますから、基本的な考え方としてお示ししているものを撤回するか撤回しないかということではないんだろう、このように思います。

辻元委員 それぞれの国の憲法改正のプロセスをよく勉強なさった方がいいと申し上げておきます。

 私は、丸ごとの憲法改正案を出すという行為そのものが政治を不安定にすると思います。そして、国民不在と申し上げましたが、国民不安ですよ。押しつけ憲法論というのがありましたけれども、これは国民不在の押しつけ憲法改正草案じゃないかと申し上げて、次の質問に移ります。

 きょうは、安全保障の議論、浜田委員長ともさんざんここでいろいろされていましたけれども、いよいよ南スーダンにPKOが行きます。稲田大臣にその前に基本姿勢を一点、二点お聞きしておきたいと思います、防衛大臣におつきになりましたから。

 一つは、核保有の問題なんです。

 これは、大臣就任のときも記者会見などで問題にされました。こういう発言を稲田大臣はされております。長期的には、日本独自の核保有を単なる議論や精神論ではなく、国家戦略として検討すべきではないでしょうか。

 これを問題視されて、さまざまなところで指摘も受けておりますが、稲田大臣、この場で、国会の場で、この発言は撤回するということをはっきりおっしゃった方がいいと思います。これは日本の国是と全く違うと思うし、防衛大臣をお務めになりたいのならば、この場でこの発言、今ここに私、発言されて活字になっておりますのでね。国際的にも違ったメッセージを出されては困ると思いますので、稲田大臣、この場で発言を撤回すると一言でいいからおっしゃったら、次へ進みますから。どうぞ。

稲田国務大臣 私がまだ大臣になる前、対談の中で、文脈の中で、憲法上必要最小限度の自衛の措置は認められているというその文脈の中で、そういった発言が雑誌の中であったと記憶をいたしております。

 しかしながら、記者会見のときにも申し上げましたように、私は、今、日本が核保有をすべきではないというふうに思っております。そして、非核三原則、しっかりと守っていくべきだと思っております。

辻元委員 いつも今保有すべきではないとおっしゃるから、問題になるわけです。

 大臣、私が申し上げているのは、そのお話は記者会見等でもされているのは承知しております。ただ、安倍総理もつい先日の本会議で、核兵器のない世界を目指し、国際社会とともに努力を積み重ねてまいりますと。

 今、北朝鮮の核実験の問題に直面をしております。そんな中で、世界じゅう、北朝鮮に対してもしっかり批判をして、これをとめていかなきゃいけない。一方、防衛大臣が、いや、今は必要ないと思っていると。そう曖昧では、国際的にも信頼をなくすだけではなく、主張ができなくなる。それも防衛大臣ですよ。

 ですから、活字になってひとり歩きしますから、この発言は撤回すると国会の場でおっしゃっておいた方が稲田大臣のためになるんじゃないかと思って私は質問していますよ。

 撤回すると一言言ってください。

稲田国務大臣 核兵器のない世界に向けて全力を尽くす所存でございます。

辻元委員 よく私たちも、こういう雑誌なんかがあるんですけれども、発言というのは、何を言っても言いわけになるんですよ。

 ですから、もうこれは撤回しておきますとはっきりおっしゃったらいいんですよ。活字だから、世界じゅうの人が読めるんですよ。私だって入手できているんだから。

 撤回しますと日本の防衛大臣として一言おっしゃった方がいいですよ。もう一度。

稲田国務大臣 非核三原則を堅持し、核のない世界に向けて全力を尽くす所存です。

辻元委員 その態度そのものが、何でこれを撤回すると言えないんですか。その理由を教えてください。はい、どうぞ。撤回すると言えない理由。

稲田国務大臣 雑誌の中で、憲法九条のもとで最小限度の自衛権の行使はできるという中において、検討すらしないということ自体が憲法に違反するという文脈の中でそういった発言があったかと思いますが、現実問題、我が国は非核三原則を堅持し、そして核のない世界を目指し、私も防衛大臣として全力を尽くす所存でございます。(発言する者あり)

辻元委員 では、ちょっと言います。

 これは私は大きな問題だと思います。一言やはり言うべきですよ。だって、長期的に検討すべき、今も検討するとおっしゃったですよ。その道まで閉ざさないというような。

 委員長、これはちょっと理事会で協議してほしいんです。

 私は、文書でこの発言を撤回するということを防衛大臣として、特に北朝鮮の核実験と直面している我が国、非核三原則を持っているだけではありません。広島、長崎の皆さんもいるんです。国連の中でCTBT、この間も賛成をしているじゃないですか。ですから、文書で撤回をするということを私は出していただきたいと稲田防衛大臣に求めておきますので、理事会で協議してください。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

辻元委員 もう一点お聞きしたいことがあります。

 稲田大臣はこういうことをおっしゃっています。自国のために命をささげた方に感謝の心をあらわすことができない国家であっては国防は成り立ちません、これは日本という国家の存亡にまでかかわるとおっしゃっています。

 ところが、そうおっしゃっている大臣が国防の責任者になられて、ことしの八月十五日です、防衛大臣になられて初めての八月十五日、全国戦没者追悼式がございました。これは閣議決定までして、天皇皇后両陛下、総理大臣、両院議長を初め、政府の公式の追悼式。ことしは五千八百人の遺族の方。遺族の方は、御高齢の方が多いです、全国から出てこられているんです。これは、先ほど天皇陛下の御公務の話がございましたが、最重要の御公務だと言われております。これを欠席されたんですよ。

 あなた、いつも、命をささげた方に感謝の心をあらわすことができない国家ではなりませんと言っているにもかかわらず、全国戦没者追悼式、これに欠席するというのは私は言行不一致ではないかと思いますよ。そう思いませんか、いつもおっしゃっていることと。違いますか。政府の公式ですよ。

 そして、調べました。閣議決定されてから、防衛大臣で欠席したのはあなただけなんですよ、今まで。言行不一致じゃないですか。いかがですか。

稲田国務大臣 私が常々、日本の国のために命をささげた方々に感謝と敬意、そして追悼の思いを持つということは、私は日本の国民の権利でもあり義務でもあるということを申し上げてきました。そんな中で……(発言する者あり)義務というよりも心の問題ですね。心の問題ですというふうに申し上げてきました。

 その中で、今回、戦没者追悼式へ出席しなかったという御指摘ですけれども、それはまことにそのとおりでございます。

 そして、その理由については、就任後、国内外の部隊について一日も早くみずからの目で確認して、その実情を把握して、また激励もしたい、そういう思いから、部隊の日程を調整してきた結果、残念ながら出席をしなかったということでございます。(辻元委員「反省していますか」と呼ぶ)大変残念だったと思います。

辻元委員 これは急にジブチの出張が入ったと言われているんですけれども、八月十三日に日本を出発して、十五日を挟んで十六日に帰国されているんですよ。十二日に持ち回り閣議で、ばたばたと出発しているわけです。

 確かに、世界各国、日本の国内の自衛隊の現場を防衛大臣が視察されること、激励されることは大事ですよ。しかし、あなた、日ごろ言っていることと違うんじゃないですか。こうもおっしゃっていますよ。いかなる歴史観に立とうとも、国のために命をささげた人々に感謝と敬意をあらわさなければならない。毎年、靖国神社に行ってこられましたね。いつもおっしゃっていることと、それも公式行事ですよ。

 先ほど天皇の御公務の話がありましたけれども、何回もおっしゃる言葉を推敲されて書き直されたという報道も出ておりました。そんな中で、あなたの、戦争で亡くなった方々への心をささげるというのはその程度だったのかと思われかねないんですよ。

 ですから、そんなに緊急だったんですか。いかがですか。

稲田国務大臣 今、今までの私の発言、読み上げられたとおりです。その気持ちは今も変わりません。

 今回、本当に残念なことに出席できなかったということですが、御指摘は御指摘として受けとめたいと思います。

辻元委員 私たち国会議員は、例えば地元で式典があったり集会があったりします、この日も。でも、防衛大臣ですよ。ジブチ、行きたくなかったんじゃないですか。

 稲田大臣がいつも八月十五日に靖国に行くと、防衛大臣が行くと問題になるから回避をさせるためではないかと報道されているんですよ。あなたは、私は防衛大臣だったら信念を貫かれた方がいいと思いますよ。

 南スーダンの質問をします。南スーダンについて。これも防衛大臣です。

 安保関連法、強行採決から約一年たちました。いよいよ動き出す可能性があるんです。その第一弾が南スーダンPKOの新任務の付与だと言われております。

 この中で、南スーダンは、御承知のように、七月の八日から大統領派と前第一副大統領派の間で大規模な衝突が起こっている。七月といえば参議院選挙のころですよ。そして、二百七十人の死者が出たと言われていますけれども、私、現地のNGOの方に一昨日電話をかけまして、ヒアリングをいたしました。そうすると、現地では千人ぐらいの死者が出ているんじゃないかと言われているんです。といいますのは、現地では御遺体が腐敗するのですぐに埋めてしまった、いろいろなところで。被害の実情がわからないと言っています。

 ここで、ほんの二カ月前には戦車や武装ヘリ、ロケット砲も使われたと言われています。国連の施設にも砲弾が撃ち込まれ、多くの死傷者が出た。戦闘で約四万人が退避したと言われています。PKO部隊にも死者が出ております、これは中国ですけれども。

 そんな中で、この南スーダン、PKO五原則のことも含めて揺らいでいるのではないかという懸念の中で、この新任務、宿営地の防護や他国軍や民間人含めてのいわゆる駆けつけ警護というものなんですね。

 まず総理にお伺いします。

 現在、二カ月半たっております。この中で、自衛隊が活動しているエリアも含めたこの南スーダンの状況、そしてPKO五原則は崩れていないという御判断でしょうか。

安倍内閣総理大臣 南スーダンにおいては、本年七月に首都ジュバ市内においてキール大統領派と当時のマシャール第一副大統領派との間で衝突が発生し、治安が悪化したことから、政府として引き続き緊張感を持って現地情勢を注視しているところであります。

 他方、衝突発生後、双方が敵対行為の停止を表明して以降、これは衝突発生後直ちに双方が敵対行為の停止を表明したわけでございまして、大統領も第一副大統領もその指示を出したわけでございますが、現地の情勢は比較的落ちついているというふうに承知をしております。

 当該衝突については、現地に派遣されている要員からの報告や、我が方大使館そして国連からの情報等を総合的に勘案すると、PKO法上の武力紛争が新たに発生したとは考えていません。また、当時の第一副大統領派等が紛争当事者に該当するとは考えていないわけでありまして、したがって、PKO参加五原則は維持されていると考えております。

辻元委員 私、今お聞きしたことはちょっと上辺という感じがします。

 おととい聞きました話では、確かに自衛隊の宿営地があるあたりはおさまっているんですが、そこから六、七キロ先になりますとまだ銃撃戦があると。六、七キロというと、東京駅から新宿ぐらいです。という話を直接、十五日まで現地にいたNGOのスタッフに聞きました。

 これは、大統領派がPKOの増派を反対していたんですね。なぜかと思ったら、要するに、UNハウスというのがあるんですが、これは国連です。この近くに避難民の収容施設があるんですが、ここが副大統領派と言われている部族が多く避難しているということで、政府軍と言われる大統領派が攻撃しているというわけですよ。避難民を保護している国連の職員というのは主にそこで働いている。そして、このUNハウスの近くに自衛隊の施設隊の作業現場もあるわけです。

 そうしますと、どういうことが起こっているかというと、なぜ増派を大統領派が嫌がったかというと、この避難民の収容所というか、避難所みたいなところに反政府軍と見られている副大統領派の部族がたくさんいるから、そこを政府軍が攻撃したりするものだから、そうすると、PKO部隊がそれを防ごうとしたら政府軍と戦うことになってしまうわけですよ。

 ですから、PKO五原則は、その政府の当事者の受け入れの合意がないとできないというところがもう既に崩れかけている、また崩れているんじゃないかと各国が懸念を始めていることを、稲田大臣、御存じですか。

稲田国務大臣 当然、南スーダンの現地情勢は注視をいたしまして、日々報告は受けているところです。

 本年七月、ジュバにおいてキール大統領派と当時マシャール第一副大統領派との間で衝突が発生をして治安が悪化したけれども、今は、停止を表明して以降、比較的落ちついているというふうに承知をいたしております。また、現地からの報告によれば、ジュバ市内は比較的落ちついていて、引き続き情勢を注視したいと思っております。

 隊員の安全確保に細心の注意を払いつつ、今後も活動を実施したいと思っております。

辻元委員 今の答弁では心もとないです。

 避難民が退避している施設、ここをしっかり、どういう現状で、自衛隊の隊員の方も調査はされていると思うんですが、大臣、今度視察の予定があると聞いております。いつからの予定を考えていらっしゃいますか。予定で結構です。南スーダンに行かないと新任務を付与するかは決められないと思いますが、いつから行きますか。予定で結構ですよ。

稲田国務大臣 国会中でもあり、状況が許せば、できるだけ早く行く予定をいたしております。

辻元委員 きのう紙をいただきましたら、国会の方に許可をというのはそれはそうですが、十月七日から三日間行かれるという紙を防衛省からいただきましたが、今これで準備は進めているということでよろしいですか。いかがですか。

稲田国務大臣 今、状況が許せば、できるだけ早くということで調整をしているところでございます。

辻元委員 私、十月八日にジュバに着かれた場合の日程表みたいなものを今持っております。これは……(発言する者あり)いや、きのうこれは防衛省から届きましたよ。

 それで、ぜひ大臣、どうもお聞きすると、空港の近くと、そこにいる自衛隊の宿営地のあたりはおっしゃるように安定しているようなんです。先ほど私が申し上げたUNハウスという国連の司令部がある地域、そして避難民の現状、例えば国連の調査団は、アメリカの国連大使が団長になって、先日、数日間滞在をして、本当にPKOを続けられるかどうか調査をされています。ですから、少なくとも国連のUNハウスがあるその近所、ここは絶対行かなきゃいけない、場合によっては一泊ぐらいして行かなきゃいけないんじゃないかと思っております。

 いかがですか、私の意見も聞いていただけますか。いかがですか。

稲田国務大臣 今、日程調整中でございますので、今委員からのお話もいただいたところでありますので、そういったことも考慮しながら日程を詰めてまいりたいと思います。

辻元委員 次に、自衛隊の安全対策です。

 先ほど申し上げたようなところに新任務となると、戦闘に巻き込まれるリスクはやはり高くなる。これは認めざるを得ません。

 そこで、PKOの南スーダンの部隊、医官、医師ですね、何名行っていますか。

辰己政府参考人 医官は三名ですが、そのほかに衛生関係の隊員を含めると十名ぐらいおります。

辻元委員 三百五十人で医官が三名なんですよ。そして、先ほど申し上げた状況の南スーダンに行くわけです。

 そして、これは国連レベルでいえば一の医療活動だと思うんですが、日本の医官は手術などができますか。

塚原政府参考人 お答えします。

 PKOの場合の国連の医療体制につきましては、ステップ一からステップ三というそれぞれの……(辻元委員「説明はいい。手術ができるか」と呼ぶ)はい。そういうものになっておりますけれども、ステップ一の施設につきましては、あくまでも初期治療をするということでありまして、手術についての能力を求められているというところではございませんで、ステップ二の方に、カンボジアの施設がございますので、そちらの方に移送いたしまして手術をするということになっております。

辻元委員 こういう南スーダンに送っている自衛隊の部隊に医官三名で、ステップ一、手術することはできない部隊が行っているわけですよ。これでいいんでしょうか。

 そして、今こういうことが政府で議論されております。

 例えば、六ミリ弱のライフルの弾が貫通したらどれぐらいの傷になるか。アメリカなんかはこれは研究が進んでいますけれども、十八センチなんですよ。そして、二分以内に止血しないと死亡する率がぐっと高くなる。

 こんな中で、TCCCという、死亡を防げる、それは野戦です。医務官が三人いて、そこに連れていかなきゃいけないようでは、これは話にならない。ですから、部隊で緊急の、例えば喉を切開してその場で対処できるとか、そういう言ってみれば野戦態勢の医療技術をしっかり自衛官が持つ。これは検討会が開かれているんです。

 検討会の中身は結構ですので、この教育プログラムはいつから開始されるのか、そしてそういう技術を持った隊員が誕生するのはいつなのか、その部分だけお答えください。

塚原政府参考人 第一線救護能力の向上につきましては、平成二十五年度に策定されました中期防を踏まえて検討しているものでございまして、今般、専門家によります検討会の報告書をいただいたところです。

 この内容を踏まえまして、平成二十年度の前半には第一線救護に関する教育を開始すべく……(辻元委員「平成」と呼ぶ)平成二十九年の前半には開始するべく、カリキュラムの検討でありますとか教育体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

辻元委員 平成二十九年というのは、来年この教育プログラムをつくりますと言っているわけですよ。

 そうすると、先ほど私が申し上げた南スーダンの状況の中に、それも一番危ないのは、他国軍への駆けつけ警護と言われる、他国軍が危ないから助けてと言われたときに行く。そして、医官は三名、手術できない。そして、野戦で緊急対応できる、そういう自衛官の養成は来年からでございますと。総理、私は、この状況で南スーダンに新任務の付与というのは到底無理だというように、現実を見て、ファクトを見なさいとよく総理はおっしゃいますが、そのファクトから見て非常に難しいと思うんです。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 適切に判断していきたいと思います。

辻元委員 私は、もしも私が自衛隊員の家族だったらどういう質問がしたいかなと思って今回は考えてきました。本当に治安は大丈夫かな、本当にお父さんまたは兄弟が行っていいのかな。お母さんがいるかもしれない。そして、もしものときはちゃんと対応してもらえるんだろうか。両方危ないと思います。

 こういうことも未整備なまま強行採決をしました。だから、自衛隊をPKOに送っている、十一月から新任務を付与するというのは、総理、適切に対応しますという御答弁だけでいいんですか。どうですか、総理。自衛隊員の命がかかっているんじゃないですか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 自衛隊は、さまざまな任務において困難な任務が課せられているわけでありまして、それは命がけになることも多々あるわけであります。それは災害出動においてもそうであります。現地で十分に対応できないときに最後自衛隊が出ていくわけでありますから、これは大変困難な任務になることが多いわけでありますから、それぞれの任務においてまさに自衛隊の諸君は危険な業務にも当たっているわけでありまして、そうした業務を指示する際についても我々も判断をしているわけでございます。

 そして、今回の任務付与については、さまざまな状況を慎重に検討する中において適切に判断をしていくのは当然のことではないか、このように考えております。

 それと、受け入れ国の同意について先ほど辻元委員の方からお話がございましたが、受け入れ国の同意はいまだ全く揺るぎがないということでございます。

辻元委員 正規軍の、政府の兵士は部隊の軍服を着ておりますが、反政府軍と言われる副大統領派はほとんど平服なんですよという話も聞いております。

 私は、総理の認識は甘いと思います。アメリカの、戦場の心理学の専門家がこういう話をしています。殺される恐怖より、むしろ殺すことへの抵抗感です、殺せば、その重い体験を引きずって生きていかなければならない、でも、殺さなければ、そいつが戦友を殺し、部隊を滅ぼすかもしれない、殺しても殺されなくても大変なことになる。

 私は、これだけ南スーダンの問題も、今限られた時間の中で指摘いたしました。自衛隊の医療体制の不備を指摘いたしました。これで新任務を付与して、私は自衛隊にけがをしてほしくないと思います。まして、犠牲者が出るという事態は絶対に起こしてはならないと思っているんです。こういった気持ちは国民の全ての皆さんが抱いていると思います。総理も同じだと思うんですね。しかし、このような状態で新任務を付与して送るというのは、相当の覚悟がないと送れないですよ。総理は、政治は結果責任だとおっしゃっています。

 最後に総理にお聞きします。

 自衛隊員に万一のことがあったら総理は辞任をする、その覚悟はお持ちですか。それぐらいの覚悟でないと、この医療体制で、南スーダンに新任務を付与して危険度が上がります、送れないと思います。万一のことがあったら辞任するぐらいの覚悟が必要だと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 当然、自衛隊に任務を付与する以上、私に責任があるわけであります。しかし同時に、自衛隊の諸君というのは、まさに我が国を守るため、そしてまた任務を遂行する上において、身をもってその任務を遂行していくということを宣誓しているわけでございます。その上において、私も任務を付与していくわけでございます。

 いわばこちらも覚悟を当然持って指示をするわけでございますが、しかし同時に、自衛隊にしかできない任務を彼らは遂行しているわけであって、現在であっても、この南スーダンにおけるPKO活動、どこのPKO活動にしろ、これは危険が伴うわけであります。当然、危険が伴わないのであれば、これはそもそも自衛隊が果たす任務ではないわけでありまして、海賊対処活動もそうでありますし、南スーダンのPKOについてもそうであります。

 南スーダンにつきましては、中央アフリカやコンゴ民主共和国といった六カ国と国境を接しており、南スーダンが一刻も早く安定した国家としてひとり立ちしていくことが地域の安定、ひいてはアフリカ全体の平和と安定につながると考えられるわけでありまして、これまでも我が国は、自衛隊派遣のみならず人道支援や民生支援など大きな貢献を行い、南スーダンや国連を初め国際社会から高い評価を受けているわけであります。

 しかし、これは、自衛隊が行く以上、完全に安全な、例えば東京で仕事をしているのとは違うわけでございまして、そういうさまざまな危険が発生するというリスクの中で仕事をしているのは事実でありまして、そういうところに部隊を出す以上、常にそういう危険を覚悟して我々も指示をしているわけであります。

辻元委員 私は、自分の進退をかけて自衛隊員を送るんだったら、その覚悟を持っていただきたいと申し上げたんです。長々と事情を説明してくださいと言っておりません。

 これは本当に心配しているんですよ。国会の周りを多くの国民が取り囲んで、強行採決したのは誰ですか。そこまでやったんだから、自分の進退をかけてくれと言っているわけですよ。

 自衛隊の皆さんに今この場所から敬意を払おうと拍手するよりも、総理の仕事は、医療体制を整えたり、最後は責任を持つと言うこと、自衛隊員に向かって堂々と、自分の身を賭すと言うことだと思います。

 それを申し上げて、ちょっと残念な答弁でした。ちょっと悲しかったです。終わります。

浜田委員長 この際、後藤祐一君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 私も、今の辻元委員の南スーダンPKOに関連しまして続きの質疑をしたいと思いますが、ちょっと復習というか、テレビをごらんになっている方がどういう事情なのかわからないといけませんので、簡単に復習をします。

 もともと南スーダンはスーダンの一部でしたが、独立しました。ポイントは、今起きている紛争は、国際的な紛争というよりは南スーダンの中での勢力争いだというところがまずポイントなのでございますが、この中で、ことしの七月の七日以降、少なくとも三百人以上、先ほど辻元さんのお話ですと千人といったお話もありますけれども、死亡したというような情報があります。これは外務省からいただいた資料の中にもあった言葉でございます。

 また、この中で、これが日本の自衛隊が宿営している国連トンピン地区という場所でございます。この中の端の方に日本の自衛隊がおられて、実は、そのすぐ下の、そこの水色のところだと思われますが、ここで、七月十日から十一日にかけて、反政府勢力約二十名と政府軍の間で銃撃戦が起きました。七月十九日の陸上幕僚長の記者会見によると、そのときの流れ弾が自衛隊の宿営地の近くにも飛んできたという、これは陸上自衛隊として認めている事実でございます。

 また、実際にPKOに行っている各国の軍隊にも犠牲者が出ておりまして、中国の国防部のウエブサイトによりますと、七月十日、警戒任務に当たっていた中国の装甲車に砲撃が命中して、二人死亡、二名重傷、三名軽傷といったことも起きているわけでございます。

 これだけ大きな戦闘が起きているわけでございますが、稲田大臣、これはもう戦闘行為が起きていると理解してよろしいでしょうか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

稲田国務大臣 七月七日夜以降、ジュバにて発生した衝突事件については、当時、日本隊からは、宿営地近傍で断続的に政府側、反政府側間で生じたと見られる銃撃音が聞こえていたこと、これらの発砲は日本の宿営地を狙ったものではないと見られる旨が報告されています。

 七月十一日夜、南スーダン政府は敵対行為の停止を命じる旨の大統領令を発出し、これに応え、当時マシャール第一副大統領も元反政府側の兵士に敵対行為の停止の命令をして以降、ジュバの情勢は比較的落ちついているとの報告を受けております。

 いずれにせよ、引き続き慎重に情勢を見きわめてまいります。

後藤(祐)委員 いや、これだけの銃撃戦が起きて、これは戦闘行為が起きているとみなしていいでしょうかという質問なんですが。質問にお答えください。

稲田国務大臣 もう既に比較的落ちついており、紛争状態にあるとは考えておりません。

後藤(祐)委員 今のことを言っているのではなくて、七月七日から始まった、あるいは自衛隊の宿営地、七月十日、十一日にもありました、こういった一連の、七月上旬に起きた銃撃戦等を含めて、これは戦闘行為があったと見てよろしいでしょうかと聞いております。今のことを聞いているわけではありません。

稲田国務大臣 七月の事案について言えば、マシャール第一副大統領派は系統立った組織性を有しているとは言えません。また、同派による支配を確立するに至った領域があったとは言えません。衝突があったということでございます。

後藤(祐)委員 ということは、戦闘行為でないということですか、これは。

稲田国務大臣 国同士、国と国に準ずるものとの間の戦争があったということではない、戦闘行為というか、武力紛争があったということではないということです。

後藤(祐)委員 武力紛争について聞いておりません。戦闘行為があったかなかったかを聞いております。一々秘書官等に聞くのはやめていただけますか。これは基本的なことです。

稲田国務大臣 繰り返しになりますが、国と国、また国と国に準ずるものとの間の武力行使ではないので、衝突であり、戦闘行為とは言えないと思います。

後藤(祐)委員 これだけの銃撃戦があって、戦闘行為ではないんですか。

稲田国務大臣 委員が戦闘行為をどういう意味で使っておられるのか定かではありませんが、それが、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為という意味で使われているのであれば、法的な意味における戦闘行為ではないということです。

後藤(祐)委員 国際的な武力紛争でないのは明らかですよ。だから、最初に私は丁寧に説明したんです。これは国内の話なんです。この国内で戦闘行為が起きていると言えますか。

稲田国務大臣 繰り返しになりますけれども、国対国、国対国準という意味での、そういう武力行使ではないという意味で、戦闘行為ではありません。

 後藤委員がどういう意味で戦闘行為を使っておられるのか、つまびらかでないので、こういったお答えにならざるを得ないと思います。(後藤(祐)委員「答弁していないですよ」と呼ぶ)

菅原委員長代理 後藤委員、質問してください。

後藤(祐)委員 国内の戦闘行為があるかないかを聞いているんです。

 内戦としての、内戦という言葉がいいかどうかは別として、この南スーダン国内において戦闘行為があるとみなすのか、ないとみなすのか。もうこれは四、五回聞いているんですけれども、答弁していただけるよう委員長からも御指導をお願いします。

菅原委員長代理 防衛大臣は先ほど答弁しましたが、戦闘行為という内容について、委員、もう一度、逆に、質問を詳しくしてください。(後藤(祐)委員「ちょっと時計をとめていただけますかね」と呼ぶ)いやいや、とめません。もう一回質問してください。

後藤(祐)委員 南スーダン国内において戦闘行為があるんでしょうか、ないんでしょうか。

稲田国務大臣 大変繰り返しになって恐縮でございますけれども、今までも、戦闘行為とは何かということが国会等でも答弁がなされて、政府の答弁書等でもなされております。

 その中で、法的に言う戦闘行為とは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為をいうというふうに定義づけられております。

 そこで、法的に言いますと戦闘行為ではありませんということを申し上げております。(後藤(祐)委員「質問に答えていないです」と呼ぶ)

菅原委員長代理 いや、挙手をして質問してただしてください。

後藤(祐)委員 同じ質問を何度もしていますが、質問にお答えいただけないので。

 国際的な紛争のことを言っているんじゃないんです。もうこれは、南スーダン国内の戦闘行為があったかなかったかということについてお答えされないので、それをお答えいただけるまで、私は何度この質問をしたらいいんでしょうか。(発言する者あり)

菅原委員長代理 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

菅原委員長代理 では、速記を起こしてください。

 後藤委員、もう一度、後藤委員の言う戦闘行為の内容をただしてください。それについて、稲田防衛大臣、答えてください。

後藤(祐)委員 先ほど稲田大臣が、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為をいうというような、ほかの法律の定義をおっしゃったので。

 では、こうしましょう。国際的な武力紛争の一環ではなく、南スーダンの中で行われた人を殺傷しまたは物を破壊する行為はあったでしょうか。それをもって、そういう戦闘行為はあったでしょうかという質問として聞いてください。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

稲田国務大臣 繰り返しになりますが、戦闘行為というのは、先ほど申し上げましたところの、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為をいうと、繰り返し政府の答弁で、答弁書でなされております。だから、法的には、戦闘行為というのはそれ以外にはないと思います。

 今委員が御指摘になった、では、国際紛争、国際的な武力紛争の一環として行われないところのものというのはこの定義に当たらないので、法的には戦闘行為ではありません。ただ、衝突によって物が壊されたりまた人が亡くなったということはあったというふうに承知いたしております。(発言する者あり)

浜田委員長 後藤先生、もう一度説明をしていただけませんか。申しわけございません。

 要するに、戦闘行為についての定義とかそういうことで聞いているのであるならば、それを、どういうことなのかというのをもう一回ちょっと言っていただいて、答弁側もそれに対してしっかりと答えてください。お願いします。

後藤(祐)委員 私、先ほども申し上げましたけれども、国際的な武力紛争の一環として行われるものではない、南スーダンの国内において行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為、これを戦闘行為だとした場合に、この戦闘行為は行われたでしょうか。(発言する者あり)私は、そういう戦闘行為があったかどうかを聞いているんですよ。

 私は、私の質問の意味をちゃんと定義して言っているんですよ。この戦闘行為があったかどうかを聞いているんですよ。

安倍内閣総理大臣 先ほど来稲田大臣が答えているのは、政府の戦闘行為という定義は、先ほど稲田大臣が答えたとおりなんですね。国際紛争の一環としての武力衝突によって人を殺傷したりあるいは物を壊す行為を戦闘行為というということを政府として定義しておりますから、後藤さんのつくった定義で答えろと言われてもなかなか答えようがないわけであります。

 ですから、これは国際紛争ではなくて、国内に限った中において人が殺されたり物が壊されたりすることはある、このように答えているわけでありまして、それを我々がまた戦闘行為ということを言えば、今までの我々の戦闘行為の解釈を変えることになりますから、稲田大臣はあのように答えているわけであります。

後藤(祐)委員 これが何で大事かというと、私は最初に申し上げました。国際的な戦闘行為は起きていないけれども、国内的には実質的な戦闘行為が行われているわけですよ。これがPKO五原則との関係でどう解釈されるかがすごく大事なんです。

 PKOの五原則の一つ目は、紛争当事者間で停戦合意が成立していることとあって、ただ、この紛争当事者は、先ほど答弁にもありましたけれども、国際的な紛争になっちゃうんですよ。

 今、南スーダンでは国内的な紛争しか起きていないんです。ですから、国内の、キール大統領とマシャール前第一副大統領の間で紛争が少なくとも起きたわけですよ。これがPKO五原則の一つ目で言うところの停戦合意が崩れているのか崩れていないのかということと直接関係するから言っているんです。

 では、こういう質問にしましょう。

 国際的な戦闘行為が行われていなければ、国内的な、戦闘行為というのが嫌だったら戦闘行為的な行為でもいいですよ、その戦闘行為的な行為がどれほど激しく起きても、先ほど三百人とか千人という話がありました、これがどれだけの死傷者が出ようとも、それが国際的なものでない限りPKO五原則は崩れない、こういう判断なんでしょうか。

浜田委員長 岸田外務大臣。(後藤(祐)委員「稲田大臣ですよ」と呼ぶ)その前に岸田外務大臣から答弁願います。(後藤(祐)委員「稲田大臣、稲田大臣」と呼ぶ)いやいや、PKOのことですから。PKOのことですから、外務大臣に答えていただければと思います。PKO案件だから、とりあえず外務大臣にお願いいたします。

岸田国務大臣 五原則に該当するかを考える場合には、PKO法上の武力紛争に該当するかどうか、こういった観点で判断することになります。そういった判断をした上でこの五原則に該当しているかどうかを考える、これが基本的な考え方であると認識をしています。

後藤(祐)委員 助け船が出てきましたけれども、つまり、南スーダンの中でどれだけ、千人お亡くなりになろうが、万人お亡くなりになろうが、国内にとどまっている限りにおいてPKO五原則は崩れないという理解でしょうか、稲田大臣。このPKOに関しては防衛大臣が責任を持っているんですから、ぜひ稲田大臣の御見識を伺いたい。

 というのは、これから十月に行かれるわけですよね、ジュバに。そのときに、ジュバに行っている自衛隊が本当にそこに残っていいのか、あるいは駆けつけ警護を付与するのか、現場を見てきて実質的に判断されるのはやはり稲田大臣だと思うんです。

 ですから、このPKO五原則が崩れているかどうかの実質的判断をある意味されるわけですから、直接行くんですから、その稲田大臣の御見解を伺いたいと思います。

浜田委員長 ちょっと待ってください。稲田大臣に答えていただきますが、PKOの所管は外務大臣ですから、それは間違いのないように。

 稲田防衛大臣、よろしくお願いいたします。

稲田国務大臣 今、岸田大臣から答えられたように、PKOの五原則、そして、その中における紛争当事者という意味は、国または国準との間の戦闘行為ということであると思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま稲田大臣からお答えをさせていただいたように、七月の事案はどういう事案だったかということでありますが、これは、キール大統領派と当時のマシャール第一副大統領派の間の衝突によるものであります。そこで、マシャール第一副大統領派が系統立った組織を有していたかどうかということがPKO五原則との関係になってくるわけでありますが、それは系統立った組織性を有していたとは言えないわけであります。また、同派による支配が確立されるに至った領域があるわけではないわけであります。

 今申し上げましたように、これは、系統立ったものであり、かつ、支配している領域があれば、国内の中においても領域があるということであればPKO五原則にかかわってくるわけでありますが、そうではないということであります。

 さらに、キール大統領派とマシャール第一副大統領派の双方とも、衝突直後から、国連安全保障理事会を含む国際社会からの敵対行為の停止を求める働きかけに応じたわけでありまして、事案の平和的解決を求める意思を有していたと考えられるわけであります。

 これらのことを総合的に勘案すると、マシャール第一副大統領派はPKO法における紛争当事者には当たらないと考えるわけでありまして、七月の事案が武力紛争に当たるとは考えていないということでございます。

後藤(祐)委員 総理、防衛大臣を兼ねなきゃいけませんね。いやあ、総理の答弁の方がまだ意味がわかりますよ。

 防衛大臣、大丈夫ですか。PKO五原則をちゃんと頭に入れて言ってくださいよ。一つ目は停戦合意。二つ目は日本が参加することについての同意があること。中立性を守ること。武器の使用は最小限にすること、これが五番目。四番目は何ですか、稲田大臣。

稲田国務大臣 私は、後藤委員がおっしゃっている五原則の質問の意味を理解した上で、第一の、紛争当事者には当たらないということを先ほど答弁したわけであります。私がPKO五原則を知らないで答弁したというのは、ちょっと違っているというふうに思います。

 その上で、四番目の要件は、一から三番目までの要件が満たされない場合の撤退でございます。

後藤(祐)委員 そうなんです。この要件を満たされない場合は撤収。撤収だと思いますけれどもね、撤退じゃなくて。撤収するという選択肢を常に持っていなきゃいけないんです。

 ですから、七月のような紛争が起きたときには、もしかしたら第一原則が崩れているかもしれない。そう判断した場合には、第四原則に基づいて撤収しなきゃいけないんです。

 これから行かれますでしょう、大臣。そのときに、十月三十一日までに今行っている第十次の部隊は期限が切れます、十一月一日以降どうするかということを判断するために恐らく行かれると思うんです、駆けつけ警護の付与を今の段階では前提にしないという理解でよろしいですか。

 つまり、十一月一日以降、選択肢は三つあります。駆けつけ警護を付与する形で十一月一日以降も第十一次隊が行く。二つ目は、駆けつけ警護を付与しないで、今の状態で十一次部隊が行く。三つ目は、撤収までいくかどうかはともかく、縮小、撤収する。この三つの選択肢を予断を持たずに大臣が持って、それで実際に現地に行って、その危険な状況はどの程度か、この先どうなるのかということを見てきていただくということでよろしいですか。

稲田国務大臣 現時点で何かが決まっているということではありません。予断を持たず、しっかりと現地も見て、政府全体で判断してまいりたいと思っております。

後藤(祐)委員 その調査が、調査というか大臣がどうやって見てきたかというのは、これは全国民、このテレビを見ておられる方は特に、どうだったんだろうと大変関心があると思います。委員長も今うなずかれましたけれども、ここにいる委員の皆さんも大変関心があると思います。

 委員長、ぜひ、防衛大臣がジュバから帰ってこられたら、この予算委員会でその状況報告をしていただいて、その後どういう対応をするかについて御議論する機会をいただきたいと思いますが、御検討いただけますでしょうか。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

後藤(祐)委員 稲田大臣、先ほど辻元議員も申し上げましたけれども、特に駆けつけ警護の付与を認めるか認めないかというのは、宿営地の中にいてもわからないんですよ。実際、自衛隊員が駆けつけ警護が必要となるような状況というのは、先ほど具体的なお話もありました、いろいろなところで起き得るんです。

 つまり、宿営地の外がどんな状況かというのを稲田大臣の目でしっかり見てきていただくということを約束していただけますか。そして、もしそれが難しい、なかなかそういうところを見るのは危険だから行けなかったという場合には、それはやはり危険だということで、駆けつけ警護は付与できないというふうに我々としては判断せざるを得なくなってくると思うんです。

 この二つについて、お約束していただけますか。

稲田国務大臣 駆けつけ警護、今回、平和安全法制で入れられた新たな任務です。

 今、ジュバにも邦人も行っております。そして、そういうところから駆けつけ警護、とにかく救出の要求があったときに、今、南スーダンにおります自衛隊は施設隊です。そして、自分たちが対応できる範囲で、もちろん安全を確認しながら、仮に駆けつけ警護が付与されたらということですが、先ほど委員もおっしゃいましたように、予断を持たずに、しっかりと政府全体で判断してまいります。

後藤(祐)委員 質問に答えていないので、答えていただけますでしょうかと言いたいところですが、もう時間がなくなってしまったので、最後に提案したいと思います。

 実は、我々民進党も、駆けつけ警護を一部認める法案を提出しています。ただ、大きく違うんです。

 我々の出した提出法案は、まず、駆けつけ警護の対象は、基本的に自衛隊員、PKOの隊員がはぐれちゃったときに、仲間があそこで危険になっているというときに駆けつけられるということに限定していますが、今、政府で通してしまった現行のPKO法案は、PKOの活動関係者、つまり、ほかの国から来ている外国の軍人も対象にしているんです。これは当然危険の度合いが違います。

 また、現地の状況からしても、冒頭あったように、現に戦闘行為が行われていないことという条件を我々は付しています。これに対して、PKO五原則で確認するという、先ほどのPKO五原則についての答弁は非常に曖昧でしたという違いもあります。

 また、先ほど国会での議論が必要だという話も申し上げましたが、これこそ国会で議論すべき話であって、駆けつけ警護を付与するかしないかについては、本来国会承認に係らしめるべきだというのが我々の案であります。

 ぜひ、我々の提案、これを受けとめていただいて、駆けつけ警護を仮に付与する場合でも、その対象を限定するですとか、こういったことをよくお考えになってジュバに行っていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、初鹿明博君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。初鹿明博君。

初鹿委員 きょうは皆さんお疲れさまです。ただいま御紹介いただきましたが、民進党の初鹿明博です。

 先ほど、細野代表代行の質問の際に予告をさせていただきましたが、きょうは、今一番注目を集めていると言ってもいいオリンピックの問題について少し質問をさせていただきたいというふうに思います。最初は介護離職ゼロについて質問しようと思っていたんですが、きのう、そして、きょうのニュースなどを見ても、朝のニュースなどでもやはり一番時間を割いて取り上げられていたのがオリンピックでしたので、こちらをまず中心に取り上げさせていただきます。

 では、まず、東京都の調査チームの報告が出されまして、ここにあるとおり、三つの会場の見直しが提案をされました。これを見ると、海の森水上競技場、当初六十九億円だったものが四百九十一億円、七倍ですよ。そして、オリンピックアクアティクスセンター、三百二十一億円が二倍の六百八十三億円。そして、有明アリーナも百七十六億円が四百四億円の二・三倍。この三つの施設だけでも五百六十六億円が千五百七十八億円と三倍にもなっているんですね。本当に、どうしてこんなことになるのかなと、多分、国民の皆さんも驚いていると思います。

 次のフリップを見ていただきたいんですが、これに対して、小池知事は、費用のカットを判断するとか、都外施設も選択の一つにしたい、そして、この報告書をベースに進めたい、そういう発言をされているんですね。それに対して、萩生田官房副長官、都議の時代、私と一緒の籍を置いたこともありますが、目先の施設の費用が膨らんでいるからやめようでは問題の解決にはならない。私もそのとおりではあるとは思うんですが、ちょっと人ごと過ぎるんじゃないかなというのを感じたんですね。

 なぜならば、国も責任を持って、やはりオリンピックについて、担当大臣まで置いているわけですから、何の施設に幾ら予算が使われるのか、全体の予算の総額が幾らなのか、把握をしている必要があるんじゃないかと思うんですね。

 そこでまず、担当大臣、お伺いしたいんですが、この施設、こんなふうに七倍とか二倍とかになっているんですが、この建設費が増加していることをいつ知りましたか、担当大臣。

丸川国務大臣 大変恐縮ですが、私は、今、この中間まとめで出された数字をそのまま受けとめて、ああ、中間まとめでこういうことを都知事に対して都政改革本部が提示されたんだという認識を持ちました。

初鹿委員 つまり、東京都の調査チームが調べたものを見て、それで初めて知ったということですよね。直接聞いたわけではなくて報道で知った、そういう理解でよろしいんですか。それとも、東京都から報告を受けたりしているんですか。

丸川国務大臣 特段、東京都からの子細な報告というのはお受けをしておりません。

初鹿委員 まず、そんなのでいいのかなというのが、多分、国民みんなの思うところなんですよ。

 皆さん、オリンピック・パラリンピックの特措法、去年通りましたよね。そのときに、法律の第一条に何て書いてあるか覚えていますか。「大規模かつ国家的に特に重要なスポーツの競技会」と書いてあるんですよ。結構、私、びっくりしたんですよ。一つのイベントに、国家的に重要だと書いてあったんですよ、国家的にですよ。そこまで重視しているのに、国の担当大臣が、予算がふえていることを東京都の一調査チームが調査するまで全く知らなかったし、報告も受けていなかった。私は非常に問題だと思うんですよ。違いますか。

 立候補ファイルを見ましたよね。立候補ファイルによると、まず、開催経費については、一義的には組織委員会が資金調達をしてやる、足りない経費については開催都市である東京都がやる、それでも足りないときは最終的には国が保証するということになっていて、国が最終的な費用負担をしなきゃならなくなるんですよ。そのときに、国が全く予算の総額を把握していなくてどうするんですか。

 これは、負担するのは誰ですか。国民ですよ。国民が税金で負担をすることになるわけです。そのときに、どんどんどんどん費用が膨らんでいった、東京都も手に負えません、国でこれだけ負担してください、はい、そうですねと言って出して、国民が納得できますか。私は、納得できないと思うんですよ。

 今回の補正予算にもこのオリンピック・パラリンピック関連の予算が計上されておりますが、この金額は幾らですか。

丸川国務大臣 内閣官房として三億円という認識でございます。

初鹿委員 済みません、ここに資料がありますけれども、ここにちゃんと、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等に二百六億円と書いてあるんですよ。ちゃんと書いてありますよ、二百六億円と。二百六億円なんですよ。きちんと把握をしておいてもらいたいんですよ。

 では、担当大臣でも財務大臣でもいいんですけれども、今、開催経費が、東京都の調査チームによると三兆円になるという試算が出されているんですよ。ちょうど一年、二年ぐらい前に、森会長が二兆円を超すと言いました。去年の冬の段階で一兆八千億円ぐらいだと言われていた。そうしたら、今度は三兆円。二兆、三兆と、豆腐じゃないんですからね、本当に。

 では、丸川大臣、このオリンピックの開催経費の総額は幾らになるんですか。

丸川国務大臣 初鹿委員は、平成十三年から八年間、都議会議員をお務めでいらっしゃいましたので、このオリンピックの開催の契約の当事者は東京都とJOCであるということはよく御存じだと思います。そして、東京都がJOCと出資をいたしまして組織委員会をおつくりになった。

 その中で、今まさに経費の見直し等が行われておりますが、特に国が重要な役割を占めると思われるセキュリティーあるいは輸送については、ルートが決定されなければならない、あるいは、競技日程が設定をされなければ詳細な積み上げをすることができません。また、どの部分を国が負うのかということによっては、さまざまな協議がこれから展開されると思っておりますので、総額については、今後、組織委員会と東京都の間での議論がどのように展開するかによって変わってくるのであろうという理解をしております。

初鹿委員 いや、ちょっと待ってくださいよ。担当大臣ですよ。それで、政府の中でも、オリンピック・パラリンピックの関係閣僚会議というのをつくったんでしょう。その担当大臣が、総額は今の段階でわからない、東京都と組織委員会が決めてからじゃないとわからないというのはどういうことですか。

 少なくとも、現時点でどれぐらいに見積もっているのか、そして、今回の東京都の調査チームが出した三兆円が妥当なのかどうか、これをはっきりさせてください。補正予算でも計上しているんですから、少なくとも月曜日までに、今の段階での見積もりを出してください。

丸川国務大臣 東京オリンピックの主催者は東京都でございまして、IOCと協議をされるのは、東京都がおつくりになった組織委員会です。組織委員会がどのようにIOCと交渉されるかによって費用は変動し得るものでありまして、まさにその点を踏まえて、今、東京都に対して都政改革実行本部が中間まとめを出されているんだと思います。

 東京都の経費負担がわかりませんと、組織委員会や私どもの経費負担も明確にはなりません。ですので、今後、東京都が、特に都知事がどのようにまずこの全体像を確定していかれるかということによって経費は変動し得るものと考えております。

初鹿委員 少なくとも、ことしの一月の十二日に我が党の玉木議員が質問して、遠藤国務大臣も当時答えられていなかったんですね。リオのオリンピック・パラリンピックが終わるまでは、そこに集中したいということだったんですよ。リオも終わったんですから、そろそろきちんと試算しましょうよ。

 リオのオリンピックで本当に多くのメダルを選手団、とってきていただきました。これから東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張ろうと選手団も思っているし、国民もそう思っているときに、まさに水を差すようなことが今始まっていて、そして、国は責任を持っていない。

 国家的に重要なスポーツ競技大会ですよ。そこまで法律に書いていて、担当大臣まで置いているのに、総額でどれぐらいかかるかわからない。少なくとも、国が最終的には負担をするんですよ。国民が負担するんですよ。これを、全く、今の段階で見積もれません。では、東京都がどんどんどんどん経費を膨張させちゃって予想以上に多くの国の負担を求められたときに、はい、そうですねとなるんですか。ならないですよね。

 少なくとも、今の段階で、国として、見積もれる金額、はっきりさせる必要があると思いますが、いかがですか。

丸川国務大臣 残念ながら、国はIOCとの契約の当事者ではございませんので……(発言する者あり)どのようなルートで、どのような日程で競技を開催するかということに大きくこの経費は左右されます。ですので、私どもが、東京都がどのようにお決めになるかということの子細を確認しない段階で経費を見積もるとすれば、それは、例えば今中間報告で、ロンドン大会をベースに試算された今の数字というものが果たして実のあるものかどうかということを私どもなりに検証するというのが精いっぱいではないかと思います。

初鹿委員 少なくとも、今、見直しの話が始まっているのかもしれませんけれども、見直さないという前提での試算はできるでしょう。できますよね。

 ぜひ理事会できちんと資料を出してもらうように要求していただけないでしょうか。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

初鹿委員 では、何でこんな事態になってしまっているかということですよ。これは、調査委員会の上山さんがこういうふうに言っているんですよ、社長も財務部長もいないと。誰が責任者だかさっぱりわからないということですよね。

 一年前、新国立競技場ですったもんだありましたね。すったもんだありました。そのとき、最終的にザハ案が白紙撤回されるんですけれども、誰が白紙撤回しましたか。大臣、答えてください。

丸川国務大臣 総理大臣です。

初鹿委員 そうなんですよ、安倍総理が最終的な判断をして。私は、その判断は間違っていなかったと思いますよ。

 このときも、最初、立候補ファイルに書かれていたのは千三百億円程度だと。それが千六百億円になって、今度は二千五百二十億円になる。その間に、ワールドカップに間に合わせるためには、開閉式の屋根を後からつけなきゃいけないということになった。去年の六月、検討がされるんですよ、文科省の中で。七月七日に、一旦、屋根を後からつけるというので、これは決定したんですよ。JOC、そして、それを当時の文科大臣も決めたんです。その後どうなったか、皆さん、覚えていますか。七月の九日に、JSCは三十二億九千四百万円で契約をしているんです。ところが、十七日になって総理大臣が白紙撤回をする。責任者がはっきりしないからこうなるんじゃないんですか。きちんと、白紙なら白紙を契約する前の段階でしていたら、三十二億円契約をして、これは多分違約金を払うことになっているんですよね、それが必要なかったと思いませんか。

 だから、司令塔をどうするかということは非常に重要だと思いますよ。やはりそれをきちんと管理できるのは、国じゃないですか。そのための担当大臣じゃないのかと思うんですけれども、何のための担当大臣なのか、ちょっと答えてもらえますか。

丸川国務大臣 担当大臣の仕事は、主催者たる東京都と組織委員会がオリンピックを進める上において、特にセキュリティー面、また運輸面、運送面においてしっかりバックアップする、こういう立場でございます。

初鹿委員 本当にそういう担当なんですか。それだけなんですか。本当にそれだけでいいんですか。

丸川国務大臣 サイバーも含むセキュリティー、それから特に輸送面、それから機運の醸成、これが主たる私の任務と認識をしております。

初鹿委員 いや、本当に大丈夫かなと思うんですよ。

 皆さん、もう一回おさらいしますけれども、去年成立したオリンピック・パラリンピックの特別措置法、ここには、第一条に、「大規模かつ国家的に特に重要なスポーツの競技会」と書いてあるんですよ。国家的に重要なスポーツ競技会だから国がバックアップをしていきましょうということになっているわけですよね。その上で、さらに、先ほども言いましたけれども、立候補ファイルにあるとおり、開催経費についても最終的に国が財源をしっかり持つということになっているわけですよ。

 それなのに、総額が幾らになるのかわからない。国の負担も今後幾らに膨らむのかもわからない。これで、国家的な競技大会、国が責任を持ってやっていると言えるんですか。

 総理、どう思いますか、今のこの答弁を聞いていて。

安倍内閣総理大臣 東京オリンピックについては、まさにオリンピックは都市が開催しますから、先ほど丸川大臣が答弁をしたとおりであります。

 しかし、まさにオリンピックというのは国家的な行事であることは論をまたないわけでありまして、日本にとって、まさに世界最高のオリンピックにすべく努力をしていかなければいけない、こう考えているわけであります。

 そこで、予算等については、これは当事者である東京都そしてJOCが一義的に責任を持ってやっていただくのは当然のことであろうと思います。同時に、我々も政府として保証をしておりますから、当然、我々も、注文をつけるべきところは注文をつけていきたい、こう考えているわけでありますが、しかし、あくまでも主体は東京都であり、そしてJOCであるということではないかと思います。

初鹿委員 では、ちょっと視点を変えて聞きますけれども、国が最終的に予算をこれは全部負担をすることになるわけですよ。求められたら全額負担をするんですか。

丸川国務大臣 まずもって、誰が何を負担するのかという詳細を詰めるに当たって、今回、東京都が中間報告を出して都知事に対してそういう提言をされたということで、事実上ストップしていた東京都の検討が進み始めたというふうに私どもは認識しておりまして、ぜひ、アスリートファーストという都知事の言葉を実現するためにも、中間ではなくて、最終のまとめを私どももできる限り早く手に入れたいという思いでございます。

 その上で、東京都で開催するオリンピックに対して都税をお使いになるわけです。この東京都の負担を軽減することによって新たなコストが生じる可能性もございます。このコストを誰が負担するのかという議論のときには、当然、開催都市でもなければ競技場がない地域の皆様からもいただいた、私たちが預かった税金を使うことになるわけですから、そのような負担を求められる場合には、私どもはきちんと、なぜそうした負担を国が負わねばならぬのかということについてしっかりと、東京都及び組織委員会の判断についてよく伺って検討をさせていただく必要があると思っております。

初鹿委員 それは、今の答弁を聞いていると、非常に受け身に聞こえるんですよね。

 東京都が開催都市であって、まず主体的に物事を決めるというのはそうなんですけれども、最終的に東京都がこれぐらいの負担だとなってからそれについて説明を求める云々と言ったって、足りないものは足りないんだから出してもらわないと困ると言われて、それでどうするんですか。その前に、総額が幾らになるのかを、そして開催に当たってどういう問題があるのかをきちんと把握する。そういうところがないと困るんじゃないんですか。私は、非常に困ると思いますよ。

 丸川さん、東京都と協議をしたことは今まであるんですか、大臣になってから。全くないんですか。調査報告がまだこの中間の途中だから、全く東京都の担当者と話をしたことはないんでしょうか。

丸川国務大臣 オリンピック並びにパラリンピックの現地に参りましたときに東京都の皆様方と顔を合わせる場面はございましたが、詳細なコストについて組織対組織という形で協議をしてはおりません。

初鹿委員 ここからちょっと提案をさせていただきますけれども、まず、オリンピック・パラリンピックを開催するのに一番責任を持つのはどこなのかということをはっきりさせましょう。組織委員会なのか、東京都なのか、国なのか。その上で国がどのようなかかわりを持つのか。そして、開催にかかる経費について誰と誰と誰が協議をして決めていくのか。そういうことを決めましょうよ。

 そうしないと、ずっと今後、ここで見直ししても四年あるわけですから、どんどんどんどん経費がかさんで、開催するときにはまた二倍、三倍になりますよ。社長もいなければ財務部長もいない。多分、経理課長もいないような状況ですからね。わかりますか。

 では大臣、何か答えるようですから。

丸川国務大臣 オリンピック・パラリンピック基本方針というものがございまして、そこに明確にこのように書かれております。

 「大会組織委員会が、大会の運営主体として、大会の計画、運営及び実行に責任を持ち、東京都が、開催都市として、大会組織委員会の行う大会準備を全面的にバックアップするとともに、外国人受入れ体制の整備、開催機運の醸成等に取り組む。」責任という言葉は組織委員会のみにあてがわれております。

 「国は、」という部分を読み上げますと、「国は、大会の円滑な準備及び運営の実現に向けて、各府省に分掌されている関連施策を一体として確実に実行するとともに、大会組織委員会、東京都及び競技会場が所在する地方公共団体と密接な連携を図り、オールジャパンでの取組を推進するため、必要な措置を講ずる。」こうなっております。

初鹿委員 それをやるには、やはり総額が幾らかわからないと何にもわからないような気もするんですよね。

 では、丸川大臣、お伺いしますけれども、今、国で関係省庁会議をやっていますよね。これまでにオリンピック関連で支出をした予算が幾つかあると思いますが、既に支出をした担当の省庁はどこがありますか、オリンピック関連で、今までに。(発言する者あり)執行ですね、済みません。

丸川国務大臣 平成二十八年度に関して申し上げますと、文科省の競技力向上に係る事業、それから文科省や厚労省等による機運醸成に係る事業など、合わせて二十三事業百六十七億円となっております。

初鹿委員 では、省庁は文科省と厚労省だけですか、今のところは。

丸川国務大臣 読み上げますと、警察庁、それから農林水産省、国土交通省、環境省、そして内閣官房ということになっております。文科省は先ほど申し上げました。厚生労働省も先ほど申し上げました。

初鹿委員 では、今後予想される省庁はありますか。

丸川国務大臣 これ以上に当然広がっていく可能性もあろうかと思いますし……(初鹿委員「どこだと思うの」と呼ぶ)私は、例えば経済産業省等も挙げられるのではないかと思っておりますが、いずれにせよ、予算編成の段階で御議論いただくことかと思っております。

初鹿委員 つまり、まだまだ広がる可能性はあるわけですから、やはりコントロールをきちんとするところがないと、これは予算がどんどんどんどん膨張していきかねないし、何でもオリンピック・パラリンピックの関連だといって予算がつくことにもなるんじゃないかと思うんですよ。先ほど、施設の建設でもそうなんですけれども、落札率が九九・九九%で落札しているような施設もあるんですよ。やはりこういうのもきちんと見るようなそういう組織は私は必要だと思います。

 そこで提案をしますけれども、ロンドン・オリンピックも同じように予算がどんどんどんどん膨らんでいっていたんですね。どうなったかというと、イギリス政府は、オリンピック・デリバリー・オーソリティー、ODAという組織をつくって、そこが総合的に予算の管理や進行管理を一元的に担うということをやりました。

 今回の東京オリンピック・パラリンピックについても、そういう省庁横断的、そして、東京都と国と組織委員会とをきちんと管理して、予算の管理をし、そして進行管理もきちんとする、そういう組織をつくる必要があると思いますが、これは、総理、ぜひお答えいただきたいんですが、こういう組織は必要だと思いませんか、一元管理をする組織。

浜田委員長 時間がないので、担当大臣、済みません。

丸川国務大臣 ODA、政府開発援助ではなくて、ロンドン大会のオリンピック開発公社については、大規模なインフラ整備が大会の重要な要素であったという固有の事情に基づいてつくられたものだという認識を持っております。

 加えて、東京都の立候補ファイルには、自分たちはODAはつくらないということを前提に立候補するということが書かれておりますので、私どもも、東京都がまずどうなさるかというのはよく注目をしたいと思っております。

 その上で、大会組織委員会において二〇二〇年大会の成功に必要な業務の洗い出しをずっと続けてきておられるし、都としてもその取り組みをされている。私どももコストの抑制が極めて重要であると思っておりますので、コスト抑制の取り組みについては私どももしっかりバックアップをしていきたいと思っています。

初鹿委員 ぜひ、総理、検討してください。やはりこのままだと、どんどんどんどん予算もかさんでいくかもしれないし、責任の所在が曖昧になると思います。ぜひ、提案をしているんですから検討していただきますようにお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

浜田委員長 この際、福島伸享君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享でございます。

 本日は、この国会の最大の山でありますTPPと、そして、それに関連して、輸入米の価格偽装問題について質問をさせていただきます。

 TPPの批准は何か呪われているんじゃないかなというぐらい、いろいろなことが起きます。

 例えば、前回の国会、TPP特別委員会ではほとんど情報が開示をされず、出てこなかったのはこういう、いわゆるノリ弁と言われるような、こういう情報しか出てこない。

 その一方で、西川公也特別委員長が書いたとされる、本人は最後まで認めませんでしたけれども、こういう「TPPの真実」というようなゲラが出てきて、交渉の詳細が出ていたり。交渉の経緯を知る甘利大臣にお聞きしようと思っても、やんごとなき事情で国会にいらっしゃらない。鶴岡首席交渉官は、イギリス大使になってイギリスに行っちゃった。そのうちに、通常国会のTPPの審議は、いわば与党の審議拒否で審議がとまってしまったという状況になりました。

 張り切ってこの臨時国会で審議に臨もうと思ったんですけれども、先日、TPPの協定の訳文には何カ所もの決定的な誤訳があったということも明らかになりました。

 昨日は、TPP特別委員会の福井理事が、何と、審議も始まっていないのに強行採決をする決意を述べられて、その日に辞任してしまう。いや、もう、強行採決が初めから決まっているんだったら、この審議、何の意味があるのかなという思いもいたします。

 さらに、大江首席交渉官、役人の方でありますけれども、日本記者クラブの会見で、アメリカ大統領選までに衆議院を通してめどをつけたいと。私は、役人の皆さん方が立法府のことまで、いつまでに通せと注文するというのは前代未聞のことだと思いまして、何か、大統領選挙前に強行で、TPPを何としても採決するためには何でもありだ、そういう雰囲気を感じます。

 何の情報も出さず、まともに審議にも応じない、本当に何を考えているのかという中で、もう一つ大きな問題が出ました。九月十四日の毎日新聞の一面トップ、「輸入米 高値に見せかけ」「「調整金」還流 国は放置」「TPP説明と矛盾」「憤る農業関係者」「だまされたのか」、こうした問題が出てまいりました。

 ちょっと、若干入り組んだ問題でありますので、多少時間をいただきまして、制度の説明をさせていただきたいと思います。

 現在、米は高い関税がかかっておりますけれども、その高い関税をかける代償として、一定割合の量を国家貿易として輸入することとなっております。今設けられている枠は七十七万トン。そのうち、二つのやり方で輸入をしておりまして、一つは国が直接お米を買い付けて売るというもの、もう一つが今問題になっておりますSBS、難しい言葉なんですけれども、売買同時契約輸入というものでございます。

 これはどういう仕組みかと申しますと、国が買って売るということではなくて、この両側にいる輸入業者そして市場に出す卸売業者、この二つの人たちがあらかじめ、例えばアメリカ産のカリフォルニア米を幾らで仕入れて売りましょうという約束をした上で、もうその約束をした上で国に申し込みをして、入札を経て国に、百三十円のマークアップとあります、余分なお金を国庫に納めて、そして最終的には国と輸入業者と卸売業者の三者で契約をして売るというものであります。

 ここに書いてありますように、例えば、輸入業者が百三円ぐらいで調達しますと、国がそれを百六十五円で一回買い上げたことに書類上はします。さらに、そこに百三十円のマークアップを加えて国庫に納付した上で、高くして、二百九十五円で卸売業者に国が売る、卸売業者がマーケットにお米を流していくという、そのような仕組みにしております。

 マークアップということを設けることによって、ある程度国産のお米と近い値段にした上で、国産の米に迷惑がかからないように輸入をするというのが、このSBS、売買同時契約輸入というものです。

 しかし、これには一つの仕組みがございまして、国は、予算決算令という政令に基づきまして、先ほどの輸入業者から国に買い入れる予定の買い入れ予定価格というものを設けております。これより高い値段では国は買うことはできません。一方、国が卸売業者に売り渡すときには売り渡し予定価格というのをつくっていて、それを下回るお金で国は売ることはできません。そうした仕組みになっております。

 その中で、マークアップが高い順から落札をしていく。この場合ですと、一は、買い入れ予定価格より低いところで入れて、売り渡し予定より高い値段で出しますから、対象になるから丸となっております。二も同様です。一と二では、この線の長さがマークアップに相当しますが、国に納付する額が一の方が大きいということで優先的に落札されます。一方、三の場合ですと、国が輸入業者から買い入れる額が買い入れ予定価格より高いということで入札不調、落札できないことになります。四の場合は、国から卸売業者に売り渡す価格が予定価格より低いということでこれも入札不調になっちゃうという、このような仕組みになっております。

 そこで問題が生じるのは、売り渡し予定価格より安い値段で札を入れると、そもそも入札の対象になりません。ただ一方、経済原理として、輸入のお米でありますから、ニーズは安さを求めるわけですね。安さを求めて卸売業者は輸入米を輸入業者から買い付けるわけでありますが、先ほどの売り渡し価格、ここの「二百九十五円で売却」と書いてある、この価格が高いと、卸売業者はそのお米を買っても、市場に出したときに国産米より高い場合も場合によってはある。同じぐらいの値段では売れないわけですね。それだとこの売買同時契約というのは実現いたしません。

 そこで存在するのが調整金というものです。ここに六十二円。つまり、国は卸売業者に二百九十五円で売っているんですが、実際は商社は輸出国から百三円未満で調達しています。かなり利益を上げます。そこの利益の中から六十二円を輸入業者が卸売業者に渡すんです。そして、この六十二円を原資として、二百九十五円より安いお金で卸売業者は市場にお米を売ることができる。それが今回の問題の本質です。

 さっきの、国のこの「二百九十五円で売却」という売り渡し価格、これがいわば公定価格として農林水産省がこれまで公表してきた外国産米の価格なのでありますが、実際は調整金というのが存在することによって政府が今まで言っていた値段より安い値段で出回っているお米があったというのがこの報道なんですけれども、農水大臣、これは事実でよろしいですね。

山本(有)国務大臣 一部で報道されているSBSの入札参加業者間の金銭のやりとりにつきまして、SBS入札で提示、落札された売り渡し申込価格と買い受け申込価格で国との契約が行われ、国との間で当該契約が履行され、その上で調整金というものがあった契約が存在したことは事実でございます。

福島委員 農林水産省がその調整金の存在を知ったのはいつでしょうか。

山本(有)国務大臣 調整金の存在につきまして農水省が知りましたのは、たしか裁判が行われた二十六年十月の段階で、訴訟の中で、オーストラリア産のお米の品質にわたる係争の中に調整金という存在があったということは把握をいたしました。

福島委員 そうすると、その問題は後でお話ししますけれども、これは業界紙ですけれども、この調整金は、こんなものはSBSがスタートしたころから把握しているとか、商社筋は、いかにも調整金の存在が初耳かのように聴取する姿勢には違和感しか覚えない、農水省が知らぬ存ぜぬを通したい背景としては、とりあえず今回のTPP国会で承認等を最優先させたいため調整金については調査中の一点張りでかわしておきたいんだろうというのがあって、恐らくもっと前からわかっているかもしれないけれども、しかし、裁判でこの事実が出たことによって平成二十六年に知ったといたしましょう。

 大臣、この調整金の存在があるということを今お認めになりました。あった場合にどのような問題が生ずると思われますか。

山本(有)国務大臣 まず、米の価格でございますが、基本的に、品質及び需給で決まっていくというのが経験則でございます。

 また、特にSBSの入札における外国産米、これにつきましては、国産米が高ければ、全量落札されまして、高い国産米価格で販売されていっております。また、国産米が低いときには、SBS米は落札しても消費者は購入いたしませんので、落札残が発生しているという状況にございます。

 加えて、SBS米と国産米の流通構造を見てみますと、国産米の八百万トンの流通に対して、SBSは十万トンが流通しているわけでございます。しかも、国は、平成五年十二月の閣議了解の趣旨に基づきまして、政府が国産米を十万トン以上買い入れることによりまして国産米の需給に影響を与えないよう措置しているところでございます。

 しかしながら、委員御指摘でございます一部報道、SBSの入札参加事業者間の金銭のやりとり、これによって、民間事業者間の問題とはいえ、輸入業者から買い受け業者に金銭の授受が行われた、この授受を原資として市場価格を安値誘導しているというようなことがあったならば、それは問題だな、こう思っておるところでございます。

福島委員 私は違うと思いますよ。

 この資料をごらんください。これは農林水産省の資料です。上の赤い線がアメリカ産のウルチ米の値段、青い銘柄一とか緑色の銘柄二というのは国産米で、おっしゃるように、SBSで入れる米は国内産とほぼ同じ値段で推移しているということになっております。だからこそ、農林水産省は米の輸入をふやしても国内の米の価格、需給に大きな影響はないという説明をしてきたんです、これまでは。

 しかし、この赤い線は先ほど言ったような公定価格です。政府が仮に決めている価格です。もし調整金があるのだとすれば、この赤い線は実際はもっと下に行くわけです。そこが私は一番大きな問題の本質だと思います。

 大臣、今ペーパーを読まれましたけれども、九月十六日の記者会見ではそういうことをおっしゃっているんですよ。マークアップ方式、それによって国産米、これの売り渡しにおいて市場価格に、特に国内産米の価格に変動はありませんというふうに言ってまいりました、その言っておったことと異なることになることが最大の問題だと。全く私と同じ認識で、敬意を払いたいと思います。

 先ほど民間の問題だとおっしゃいましたけれども、これは民間の問題じゃないんです。今までの政府の農政の根幹である米の値段が変わることによって、農政が根本的に変わらざるを得ないかもしれないというところが一番大きな問題だと私は思いますけれども、その点、大臣、どう思いますか。

山本(有)国務大臣 今、輸入業者と買い受け業者のしっかりした調査に全力で取り組んでおります。

 その点において、調整金が払われた場合と払われていない場合、そして、輸入業者から買い受け業者への調整金がある場合と、逆に買い受け業者から輸入業者への調整金がある場合というように多様で区々でありまして、一概に調整金で安値誘導というわけには私は一刀両断には申し上げられませんので、調査をしっかりやりまして、その上で答弁させていただきたいと思っております。

福島委員 では、その調査の結果はいつ出すんですか。我々は、もうこの一週間、毎日農林水産省からヒアリングを行ってまいりましたが、誰を調査の対象として、何の項目で、どのような調査をしているのかというのは一向にお答えになりませんでした。報告をいつ出されますか。

山本(有)国務大臣 SBS米の取引と申しますのは、輸入業者、国、買い受け業者の三者契約でございます。その意味において、SBS米落札者である者は百者以上ございますし、買い受け業者は二十者以上ございます、その点に関して関係者が大変多いということでございます。

 さらに、強制捜査はできません。任意の聞き取りでありまして、しかも、当時のことは覚えていないとかいうような区々の対応でございますので、ある程度時間を要するということは御理解をいただきたいと思っております。

福島委員 いや、私はそう思いませんよ。私たちもさまざまな業界関係者からヒアリングを行ってまいりました。みんなこう言っているんですよ。調整金はいわゆるげた履きと称される行為だ、慣習的なやりとりで、米穀業界では大半の関係者が把握しているという声が大勢。皆さん方がヒアリングしている人たちがこう答えているんですよ。そして、げた履きはSBSが、さっきも言ったとおり、スタートしたころからもう把握している。

 つまり、これは、先ほど申し上げましたように、公定価格が決まっているわけですよ。政府が買い取る額と政府が売り渡しする額が決まっている。その制度の中で、民間の人たちが市場メカニズムのもとで輸入米をはかせるためには、調整金というものを使って実際の公定価格より安くしないと売れないから、さっきのグラフのように国産米と輸入米とが同じ値段だったら、それは国産米を買いますよ。それなのになぜ売れているかというのは多くの皆さんの疑問だったんです。しかし、ここで謎が解けた。調整金というのがあって、農林水産省の出している価格と実際の取引の価格が全然違ったということがわかったわけです。

 何が変わるのか。例えばTPPの試算、これは全然変わります。

 先日、衆参両院の本会議において、SBSの国別枠において輸入される米については、輸入量に相当する国産米を備蓄米として買い入れることにより、国内の需給及び価格に与える影響を遮断することにしております、TPPの影響試算はこのことを前提としたものであり、政府の説明が有名無実化するとの指摘は当たらず、やり直しの必要はないと考えておりますと安倍総理は答弁をされました。

 総理、これでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 答弁したとおりであります。

福島委員 それは、役所が渡された答弁書を読むからそうなってしまうんです。

 これは、同じ量の同じ値段の米を外国から輸入して、外国から輸入した米と同じ量の同じ価格の米を備蓄にして遮断をするから何も変わりませんという前提なんです。森山農水大臣はことしのTPP特別委員会でそのようなことをおっしゃっています、国産米と輸入米の価格が同じだからこうなるんですよと。

 調整金があるということは、その存在が変わることだと思いませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 今私がそう申し上げたのは、需給関係が緩むということはないと。つまり、七万トン入ったものを七万トン、こちらが買い上げるわけですから、七万トンがオーバーフローして、それによって価格が落ちていくということはない、その分を、七百万トンが消費されている中において七万トン入ってくる中において、七万トン分は隔離するわけでありますから、隔離というか、買い上げるわけでありますから、それによって需給が緩むことはないという考え方を申し上げたわけであります。

福島委員 量は、同量買い上げればそうでしょう。しかし、安い米が入ってくれば、当然それにつられて日本の米が安くなってまいります。それは統計上ももう実証されております。

 つまり、これまで同じ値段の米を同じ量入れるから変わらなかったけれども、今度は安い値段、しかも、このマークアップは、キログラム当たり六十円ということは、六十キロ、一俵で三千六百円ですよ。米の値段が一万二千円とか三千円のうちの三千六百円も安いということは、三分の一も安いということなんです。それだけ安いということは、当然影響があると思われませんか。

安倍内閣総理大臣 全体として流通しているのは、先ほど七百万トンと申し上げましたが、八百万トンでありまして、八百万トンのうちの七万トンが入ってくるわけでありまして、一%以下。かつ、先ほど申し上げましたように、七万トンは買い上げるわけでありますから需給は緩まない。中において一%に満たないものがどれほどの影響があるかということと、同時にまた、利益を度外視した値引き販売は結局は輸入業者の負担となるわけでありまして、このような取引が永続的に行われることは通常の商習慣では考えにくいのではないかというふうに考えているわけであります。

福島委員 そんな、価格割れして赤字覚悟で売る人なんていませんよ、そんなものは。

 一%とか言いましたけれども、輸入米が主に競合するのは業務用です、外食とか中食に当たるものです。その中で輸入米が占めるのは五%から一〇%ぐらいです。しかし、今度TPPで、今十万トンとおっしゃいましたけれども、さらに七万八千四百トンを追加するわけだから、これが倍になるわけです。三分の二の値段の米が一割近く入ってきたら、農産物の市場というのは、たった一%とか二%と言うけれども、少量でも安い米が入ったら暴落するのが農産物のマーケットなんです。私、農業経済というのをやっていたんですけれども。もうそれは統計的にも立証されているんです。

 しかも、三千六百円も安いとなったら、三〇%近く安いです。大きな影響があるんですよ。農水大臣、どうですか。

山本(有)国務大臣 確かに、看過できない重要な事実ではありますけれども、当該輸入米の契約外で授受された金銭の場合も調整金という名で授受されておりまして、このことが必ずしも、外食産業へ売り渡される、すなわち主食の市場に安値誘導したという事実があるかどうか、それを今大切に調査しているわけでございまして、一刀両断に、一つのことだけで全部を私は語るというまでにはまだ自信がございません。

福島委員 では、本当にこの国会中に出してくださいよ。

 なぜそれを言うかというと、鈴木宣弘さんという私と同じゼミの東大教授の試算がありますけれども、仮に、今報道されている一キロ当たり六十円の調整金があって、価格が下落したとすると、TPPで七万八千四百トンお米を新たに入れると米の生産額は三千四百一億円減少すると試算をしております。

 これはどのぐらいの規模かというと、農林水産省が今、TPPで農産物全体で一千五百十六億円減少しているというものの倍以上ですよ。これまで農水省や政府がTPPとしての影響と言ってきた農林水産物への影響の倍を超えるものがあるんです。そして、政府は、TPP関連政策大綱に基づいて予算を講じ、この補正予算にも約三千六百億円のTPP関連予算が入っております。仮に三千四百億円、米の生産額が減るんだとすれば、こんな対策ではとても足りないですよ。こんな対策ではやっていられませんよ。全部組み替えなきゃなりません。TPPの是非の前提も全て変わってくるんです。私は、それぐらいのインパクトがある問題だと思っているからこの質問をしているんです。

 大臣は今、調査が終わっていないから答えられないと言いました。調査が終わらないと、これから特にTPP対策の補正予算関連の審議はできません。私は、批判したり、とめたくて言っているんじゃないですよ、提案をしたいんですよ。今の政府がやっているような農地の大区画化とか畑地化とか、それも大事でしょう。でも、三千四百億円、米の生産額が減ってしまうのだとすれば、それはもう全然違うんですよ。

 調整金がいかなるものかわからないのは、大臣もおっしゃるとおりでしょう。この全容が明らかになって、試算の見直しが必要なのかどうかをしっかり検証し、その試算の結果に基づいてもう一度予算のあり方を考え、我々も提案したいと思いますから、この補正予算の審議中にその調査結果を、大臣、出してください。どうですか。

山本(有)国務大臣 まず、影響でございます。これまでのデータなどから見まして、SBSが国産米価格に影響を与えているとは、なお、この時点では考えておりません。

 基本的に、価格は品質及び需給で決まっているというのがこれまでの経験則でございます。国産米価格が高いときは、SBSは全量落札され、高い国産米価格で販売されております。国産米価格が低いときは、SBSは落札しても消費者は買わないので、落札残が発生しております。というように、いまだこのSBS米について、価格の変動と調整金との強い連関というのはまだ捉えておりません。

 しかし、民民の金銭のやりとりについての報道、農業関係者等のSBSに関する不信感を生ずるおそれがありますので、この払拭のため、現在、農林省において全力を挙げて調査を行っているところでございます。

 この調査につきましては、いわば任意の調査でございます。しかも、過去の話でございます。電話してすぐに、あるいは面談してすぐに答えられる種類ではありませんので、多少の時間をいただきたい、こういうことは通常じゃないでしょうか。

 以上です。

福島委員 いや、じっくりなんというのはおかしいですよ。だって、大臣、さっき二年前に調整金の存在を知っていると言ったじゃないですか。調整金の存在を知りながら、それを知りながらこの間のような政府の試算を出して、今それを言うのはおかしいと思いますよ。二年前に存在を認めているんですから。さらに……(山本(有)国務大臣「いやいや」と呼ぶ)指名していません、まだお願いしていません。いいですか。

 経験則でSBSが影響を与えていない、これもびっくりしました。日本の政府は経験則で政策をつくっているんですか。私はそうじゃないと思っております。今まで米の値段は下がっているんですよ。安倍総理が初当選されたころの米の値段、安倍総理、わかりますか。二万三千円。今、一万三千円ですよ。これが下がっているのは、ずっと農水省は米の自由化を進めたからじゃないとおっしゃっていますけれども、それは、さっきのグラフのとおり、価格が国産米と同じだという前提だからそれが言えるんですよ。もし実際の価格がそれと違ったということになれば、この今の安い米価の原因は輸入米をふやしたということも考えられるんです。

 経験則で言われたら困るんです。我々は、具体的な事実やデータに基づいた提案と政策議論をしたいんです。全てのこれまでの農水省の政策が変わる可能性がある問題だからこそ、ここで提起をさせていただいているんです。

 そして、なおかつ、TPPの審議もそうですし、そのTPP対策の予算として膨大な額が計上されているその妥当性を調べる一番大事な数字だからこそ、この調査の結果がなければしっかりとしたデータに基づいた国民の期待に応えられる審議はできません。

 委員長、この補正予算の審議中に、農林水産省が調整金の存在、その影響に関する報告を出すということをぜひ理事会で御協議いただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

福島委員 もうずっと聞いていると、オリンピックもそうですけれども、情報隠しばかりやっているとしか思えない。経験則とか、イメージで語るのではなくて、具体的なファクトに基づき、データを公開して国民の期待に応えられる政策論議をこの場で行うことを期待申し上げまして、またお誓い申し上げまして、質疑とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

浜田委員長 この際、緒方林太郎君から関連質疑の申し出があります。細野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎であります。

 今、福島議員から鋭意質問がありましたが、その後を継ぐ形で、引き続きSBSの問題について議論をさせていただきたいと思います。

 このSBSの価格偽装の問題というのは、TPPの試算なりその存在意義なりを根底から覆す重大な問題だ、私はそう思っております。

 先ほど福島議員から説明いたしましたが、私の方からもう少し簡潔に説明をさせていただきたいと思います。

 マークアップという言葉が出てきます。この上の青の部分ですが、これは何かというと、政府による中抜きであります。政府による中抜き。合法的に中を抜く。米の価格を上の線よりも高くするために中を抜くということ。

 そして、このマークアップについて、中抜きについては上限と下限が決まっています。売り渡すときはこの下の線よりも下の部分で政府に売らなきゃいけないし、そして、政府が卸の業者に売り渡すときは上の線を超えるところで渡さなきゃいけない。

 そして、本来、仕入れ価格が非常に安いわけです。仕入れ価格が非常に安い。これを真面目にマークアップを申告していると、非常に高いところで全部間を抜かれてしまう。このマークアップも調整金の分も、全てがマークアップで政府に中抜きされる。これが嫌だから、非常に高いところで政府に買い取ってもらうように価格を設定するわけですね。そして、その間の部分を調整金として商社が抜いている、こういうことです。非常に簡潔な図ですけれども。

 そして、この青の部分についてだけ政府は見ている。ここの部分だけを見ている。しかし、調整金を商社から卸業者に渡すことによって、実際に生じている取引はこの赤の部分です。

 農林水産大臣にお伺いいたします。

 今回のSBSの価格偽装の件についてですけれども、これは食糧法上合法だというふうに認識をしておられますか。

山本(有)国務大臣 このSBSの入札参加事業者間の金銭のやりとりにつきまして、提示、落札された売り渡し申込価格と買い受け申込価格と国との契約が行われ、履行されております。そして、この点において、食糧法上何の問題はないというように認識しております。

緒方委員 つまり、今大臣が言ったのは、この図でいうと、政府はこの青の部分しか見ません。青の部分だけ見ている。それ以外に、調整金をとろうが、赤の部分の取引があろうが、それは関係ないですと。政府として、そこは目を背ける、見ないということになっているわけですね。(発言する者あり)はい、そうです。

 けれども、そういう中で、大臣は何と言っておられるかというと、十六日の会見で、先ほど福島議員からもありました、我々としてはマークアップ方式、それによって国産米、これの売り渡しにおいて、市場価格に、特に国産米の価格に変動はありませんというふうに言ってまいりました、その言っておったことと異なることとなることが最大の問題だというふうになっております。

 合法であるのに、なぜ問題が生じるんですか、大臣。

山本(有)国務大臣 米の価格というのは、基本的に、私は品質と需給で決まっていると。しかも、内外、外国産米でも日本国産でも、これについては品質と需給というように思っております。特に、国産米が高ければ全量落札されている事実、高い国産米でまた販売されている事実。また、国産米が低いときは、SBSは落札しても消費者は買ってくれませんので、落札残、すなわち十万トンいかないというようになっております。

 そういうことからすると、かかる一部報道の調整金なるものの役割というものが、必ずしも我々にとりまして、市場価格に何か影響しているようには、まだこの調査が進んでおりません。その意味で、この調整金の調査をさせていただきたい。

 そして、全てのSBSの取引について、特に役所で保管している公文書は五年間でございますので、五年間において我々は悉皆調査をし、その上でこの判断をさせていただくようお願いをしているところでございます。

緒方委員 山本大臣、私の質問に全然答えていないんです。長々と答えましたけれども、大臣は、最初の記者会見で極めて正直に語っているんです、言っていたことと異なることになることが最大の問題だと。極めて正直。これは正しいと思います。

 しかし、合法だと言っている。合法なんだけれども問題だと。なぜそんなことが生じるんですか。それは法律が、今の食糧法自体に問題があるんじゃないですかということを聞いているんです。

 大臣、問題であるにもかかわらず合法というのはなかなか通用しにくいですよ。何がおかしいんだと思いますか、大臣。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のとおり、また御疑念をいただくように、この調整金が普遍的にSBS取引で行われているとするならば、これは価格への多大な影響があるだろう、私はそう思うところであります。

 しかし、調整金をとっていない場合がある。そして、逆調整金というのもある。そういうような多様な調整金の存在のことを考えていきますれば、どうしても、悉皆調査の上で、そして綿密な判断が必要だ、こう考えておりますので、その上でお答えをさせていただきたいというように思います。

緒方委員 いや、そこまでわかっているのであれば、そこまでの調査なりとも出すべきじゃないですか。まさに今、これは予算にかかわるわけですよ。大臣、今政府から出てきている説明なんというのは、そんな説明はどこにもないですよ。我々は何度も説明を求めていますけれども、いいかげんな資料が二枚出てきただけですよ。

 そこまでわかっているのであれば、現時点の調査を出すべきでしょう。予算にかかわる話ですよ。大臣、誠実に答弁ください。

山本(有)国務大臣 緒方委員も十分御案内のとおりでございまして、この調査と申しますのは、国が民間の会社に対して、しかもほとんどが従業員の皆さんに対してこれを任意でお聞きするところでございまして、担当者がかわっているということがあったり、あるいは記憶が定かではないということがあったりするものですから、単なる一回だけの接触で全ての調査が終わるわけではありません。数回の調査が必要でございまして、今直ちに出せと言われて出したならば、途中経過の発表で、これに対して、今後調査する業者に対して、また、報道等の影響がもしあるならば、我々にとりましては、調査が不十分であったというような結果にもなりかねません。

 したがいまして、しっかりとした調査をしていくという観点からすると、中途で中途半端な発表をすることは正確性を欠くというように思っておりますので、この点は御容赦をいただきたいと思います。

緒方委員 それでは、価格に影響があるのかないのかということについて、大臣は、現時点ではまだ確認できないというふうに言っておられます。

 森山大臣はさきの国会で、国産米より大幅に安い価格で国内流通しているものではないというふうに理解していますと言っています。この認識は現在でも共有しておられますか、山本大臣。

山本(有)国務大臣 森山大臣は、かかる調整金の存在を含めて考えておられたわけではありません。その意味におきましては、これは森山大臣のおっしゃるとおり、また、現時点で、私も、この調整金で市場価格に影響があるといまだ思っておりません。これは森山大臣と共通でございます。

緒方委員 調整金の存在を念頭に置くことなく答弁をしたと言っていますが、役所は二年前から知っていると言っているんです。二年前から知っていた。

 もっと言いましょう。私、外務省で通商問題を担当しておりました。そのときに、私は農林水産省とこの件について議論したことがあります、こういう調整金が生じ得るんじゃないかと。そのときに農林水産省の方が何を言ったかということはあえて私は申し上げませんが、私が外務省で通商問題を担当したのは二〇〇一、二年から二〇〇四年まででした。そのときでも農林水産省の方は、この調整金のような、先ほど言ったこの間の部分のお金の存在をもちろん知っているわけです。知らなかったとは言わせない。

 大臣、知っていたにもかかわらず、役所は、今言ったような森山大臣の答弁を大臣に渡しているわけですよ。背信行為じゃないですか。おかしいですよ、大臣。知っていたのに、それを想定していない答弁を読んだというのは、これはおかしいですよ。大臣、いかがですか。

山本(有)国務大臣 まず、調整金については、森山大臣は、この調整金について、市場価格に影響のある存在としてはいなかった、こういうことでございまして、私も、かかる調整金が市場価格には影響していないと今も思っております。

 そして、二十六年十月ごろ農水省が調整金の存在を知ったというのは、A社とB社のオーストラリア産のお米についての品質の問題での訴訟、この中で知ったわけでございまして、その意味において、調整金なるものが果たしてどういう意味あるものであるかの把握はまだやっておりませんでした。

 今回、そうした経過を見て、そして今、この報道を見て、調整金が万々が一市場価格に影響してはこれは大変だ、この観点から今現実にしっかりとした調査を始めたわけでございまして、その意味においては、私ども、二十六年十月に知ったことの意味は、知ったという認識の問題でありまして、それが行政行為を必要とする意味ある認識というものになるかどうかは、今の調査結果を待って、それで判断をしたい、こういう意味でございます。

緒方委員 知っていたにもかかわらずアクションは何も起こさなかったということを今くどくどと言われたわけです。

 知っていたのであれば、それに対して、価格が下がるわけですから、それはもう既にマーケットに影響が出ている、出るわけですから、そこはしっかりと対応するべきものじゃないですか、大臣。

 大臣、知っていたにもかかわらずアクションを起こしていないということが問題だと言っているんです。

山本(有)国務大臣 知ることにおいて、多少、緒方委員さんが認識している話と我々が認識している話が少し違っておりまして、A社とB社の訴訟の中で、B社はいわば逮捕されたりあるいは家宅捜索されたりした業者であって、しかも訴訟中というような話の中から訴えがあった、そういう事実の中での調整金という、判決あるいは訴訟の中での話として受け取ったわけでございまして、それが、行政行為を必要とする何らかの、SBS入札行為に対して農林省として何か対策を打つ必要のある話かどうかについては、それは、知ったということと意味あることであるかどうかについては今現在調査をして考えていますところでございますので、もう少し猶予をいただいて、しっかりしたことをしたいというように思っております。

緒方委員 影響が出ていますよ、大臣、どう考えても。

 先ほど言ったとおり、二年前に知り得た。もっと言うと、私が外務省のときの経験からして、十数年前から農林水産省はこういう現実があることを知っていますよ。けれども、価格に影響がないと判断できる、その根拠は何ですか、大臣。

山本(有)国務大臣 まだその調整金の性格とか役割とか、そういうものを決めたわけではありません。今調査をして、この調整金が販売促進費というものであるのか、SBS契約の中で裏金の代金の一部だというようになるのか、それを今研究しておるものでありますので、その調査、判断を待っていただきたいということを再三申し上げておるところでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

緒方委員 それであれば、その調査の結果が出るまでまさに予算の審議はできないということですよ。

 こういう試算に基づいて、TPPの対策、今回の三千六百億のその数字が出てきているわけです。この調整金の調査の結果次第では、価格が安かったかもしれない、そして試算に影響したかもしれない、さまざまな可能性がある。それによってTPPの試算が変わり、対策が変わるはずです。補正予算の内容も変わるはずです。そうである以上、この調査結果が出るまでは補正予算の採決はできないし、来週の月曜までに出していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

山本(有)国務大臣 再三申し上げますが、これは任意の調査で時間がかかるという前提を置いて、しかも、調査相手も、これについては記憶を呼び起こしたり、古い資料をまた検索したりというようなことでございます。また、現在の調整金についての機能というものが一刀両断に市場価格に影響するというようには現在私は考えておりませんし、調整金というのは区々多様な形態をとっているというものでございまして、しかも、調整金がない場合があるということもあります。ない場合が多い場合があるわけでございまして、そのことにおいて考えますれば、調整金があるといって、この資料が出ないから予算審議ができないというのはちょっと極端な話ではないかというように理解しております。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

緒方委員 先ほどから福島議員のときの質問にも、七万八千トンじゃないか、たかが一%じゃないかという話をしている人がいました。違うんです。現在十万トン、そしてアメリカ、オーストラリア枠で七万八千四百トン、そして既存のミニマムアクセスのところでさらにSBSを六万トン積むんです。全体合わせて二十四万トン近いんです。八百万トンのうちの三%までいくんです。

 ここで、先ほど言ったように、こういう調整金の仕組み、しかもこれは合法だと言っている。誰でもやっていいんです、今の食糧法の状態では。二十四万トンについて、ここで、赤の棒のところで出てくるような価格で市場に合法的に出回るのであれば、当然価格に影響が出るじゃないですか。試算が変わるじゃないですか。どうお考えですか。

山本(有)国務大臣 輸入米の量と国内産米の価格について相関関係があるのかと問われれば、私は必ずしもないというように思っております。

 SBS米が始まりました一九九五年、平成七年における国内産価格は二万一千十七円、六十キロの玄米でありますが。このときには、SBS米を含め、MA米が四十二万六千トンでございます。この後、徐々にふえていくわけでございまして、平成十八年には七十六万七千トンまでふえていくわけでございます。

 このふえていく過程の中で国産米がどんどん下がっているかといえば、平成十五年、二〇〇三年には二万二千二百九十六円という、いわば一九九五年に始まったときよりも、米がMAで入り始めたときよりもまだ高い価格を示しているわけでございまして、この相関関係は需給というものに依存しているというように思っております。

緒方委員 農林水産省から出してきている資料の中には、調査について、SBS米の入札と国産米価格の関係の分析等を行っているところと書いてあるんです。今、分析しているはずです。その調査が出てきていないのに、影響がないと何で言えるんですか。大臣、矛盾しているでしょう。

山本(有)国務大臣 これは、何度も言いました、正確に言いました、一九九五年から二〇〇六年にかけて、国内価格との比較という意味での話を申し上げました。

緒方委員 そうやって価格が実際のSBSの価格と関係がないと言っていますけれども、それは何かと比較しない限り、米の価格というのはいろいろな決まり方をします、いろいろな要素を勘案して決まっていきます、必ずしも、SBSの量がどう影響しているかというのは、何かと比較しない限り出てこないはずです。

 なぜ、今大臣が言うように、価格が高いときにSBS米の需要が高いことをもって何の影響もないと言えるんでしょうか、大臣。

山本(有)国務大臣 例えば、平成二十二年の輸入米のトン数は三・七万トンでございました。例年十万トン輸入しているところが、これは三分の一ぐらいに低くなっています。そのときの国内産価格は、その前年に比べて三十円安いというときでございました。また、二百八十六円しておったのが平成二十四年。これが二十五年には二百四十六円と、国内産価格が下がりました。そうすると、SBS米は六・一万トンといって、やはり十万トンを切りました。

 こんなふうな統計的な推移を見ますと、必ずしもSBSの量ではなくて、国内産価格に逆にSBS米の輸入量が変化するというように思っております。

緒方委員 では、聞きましょう。

 今回のTPPの農林水産業への影響試算、この調整金の存在を前提とした上で試算を立てられておられますか、農林水産大臣。

山本(有)国務大臣 調整金のことについては、市場価格に影響しない以上、影響試算には入っておりません。

緒方委員 調査が終わっていないのに、なぜ影響しないというふうに言っているんでしょうか、大臣。

山本(有)国務大臣 今現在調査中でありまして、これが影響するかどうかについてのアンケートが終了したときに考えることと、今の市場の判断とは全く関係がないというように思っております。

緒方委員 先ほど言ったように、二十四万トン、この赤の部分で輸入したところで全く合法なわけです。

 そのことを勘案してみれば、調整金の存在を前提とした上で、この低い数字で二十四万トン全部輸入されてくれば、絶対影響があるはずですよね。当然のことじゃないですか。価格は下がりますよ。三%ですよ、全体の、大臣。

山本(有)国務大臣 御心配の緒方委員のおっしゃるのは、SBS米に全て調整金が入っているということ、これを前提とした話、仮定の話というように私には聞こえております。その意味において、私どもとは違うお立場というように思っております。

緒方委員 まさにそこを今調査しているわけですよ。それによって試算も影響を受けるし、そしてそれによって補正予算も影響を受ける。まさに、調査が出てこない限り、試算がどうなるかも、動くかもしれない、それによって補正予算も影響を受けるかもしれない。

 やはり最後、重要なのは、いつ調査を、調査の結果、中間結果なり最後の結果なり、いろいろな可能性があると思います、それを出していただかない限り、この補正予算の審議は深まらないですよ。採決の前に出すことを確約ください、山本大臣。

山本(有)国務大臣 何度も申し上げて恐縮ですが、相手に強制捜査をしているわけではありません。そして、任意でお答えいただける部分についても、正確性を欠いた場合は再度お願いして、電話調査なり面談をしなければなりません。そのような丁寧な調査でなければ正確性を欠くというように思っておりますので、一刀両断にいつまでということは申し上げられないことをお許しください。

緒方委員 大臣は二十日の会見で、できる限りきちんとした、できれば完成形の調査の後に発表したいと。それが国会の日程とどうかかわるか、できれば国会の議論との平仄も考え合わせますと、できるだけ早くそういう発表をしてみたいと言っています。

 また、二十七日の会見では、これは民間業者のヒアリング調査を鋭意進めているところでございまして、全体として整理、分析をした上でないと公表の時期についてめどを立てるわけにはまいりません、しかし、かといって、いつまでもやっていてはこれは国会の審議に支障も出るわけでございますので、可能な限り急がせますと。

 正しいですよ。言っているとおりですよ。

 大臣にお伺いします。今の状態は、国会の議論と平仄が合っていると思いますか。そして、国会の審議に支障が出ていない、そういうふうに思われますか、大臣。(発言する者あり)

山本(有)国務大臣 補正予算の審議に欠くべからざる資料だというようには考えていないところでございますが、TPPや重要な市場価格への影響というように考えましたときには、できるだけ速やかに国会に調査結果を報告するというように思っておりますので、私といたしましても、緒方議員さんの立場に立てば、できるだけ早いことを望みます。

 そして、私としましても、せっかく改革しようとして、また、全てこういうものについても明らかにしようとしている立場の大臣としましては、できるだけ早くしたいという期待を込めて今お願いをしておるところでございますので、せっかくでございます、できるだけ早くしたいというように思っていることだけはお伝えしておきたいと思っております。

浜田委員長 やじの件でいろいろ今紛糾しましたが、この件に関しましては理事会でまた検討させていただきますので、よろしくお願いします。

緒方委員 今、国会の議論に支障が出ていないのかという話をしたところ、与党理事の方から、国会はとまっていないじゃないか、そんな不規則発言がありました。極めてひどい発言だと思います。重大なる抗議をした上で、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次回は、来る十月三日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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