衆議院

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第3号 平成29年1月27日(金曜日)

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平成二十九年一月二十七日(金曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 達也君    池田 道孝君

      石崎  徹君    石破  茂君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      大串 正樹君    大野敬太郎君

      奥野 信亮君    門  博文君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      黄川田仁志君    國場幸之助君

      佐田玄一郎君    鈴木 俊一君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    野中  厚君

      原田 義昭君    平口  洋君

      星野 剛士君    保岡 興治君

      渡辺 博道君    井坂 信彦君

      今井 雅人君    小川 淳也君

      緒方林太郎君    神山 洋介君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    福島 伸享君

      前原 誠司君    升田世喜男君

      村岡 敏英君    本村賢太郎君

      柚木 道義君    伊藤  渉君

      國重  徹君    真山 祐一君

      赤嶺 政賢君    高橋千鶴子君

      宮本  徹君    足立 康史君

      井上 英孝君    伊東 信久君

      丸山 穂高君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 高市 早苗君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    山本 公一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       今村 雅弘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (防災担当)       松本  純君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     鶴保 庸介君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)

   (国家公務員制度担当)  山本 幸三君

   国務大臣         丸川 珠代君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平川  薫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総括審議官)           井内 正敏君

   政府参考人

   (内閣府再就職等監視委員会事務局長)       塚田  治君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      西村 泰彦君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  山下 史雄君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    松本 光弘君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤江 陽子君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            関  靖直君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   政府参考人

   (気象庁長官)      橋田 俊彦君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    中島  敏君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            高橋 康夫君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 塚原 太郎君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  高橋 憲一君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深山 延暁君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十七日

 辞任         補欠選任

  山下 貴司君     池田 道孝君

  緒方林太郎君     神山 洋介君

  後藤 祐一君     柚木 道義君

  玉木雄一郎君     村岡 敏英君

  辻元 清美君     本村賢太郎君

  高橋千鶴子君     赤嶺 政賢君

  井上 英孝君     丸山 穂高君

  伊東 信久君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     大野敬太郎君

  神山 洋介君     升田世喜男君

  村岡 敏英君     玉木雄一郎君

  本村賢太郎君     辻元 清美君

  柚木 道義君     後藤 祐一君

  赤嶺 政賢君     高橋千鶴子君

  足立 康史君     伊東 信久君

  丸山 穂高君     井上 英孝君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     門山 宏哲君

  升田世喜男君     緒方林太郎君

  宮本  徹君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  門山 宏哲君     神山 佐市君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     山下 貴司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計補正予算(第3号)

 平成二十八年度特別会計補正予算(特第3号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計補正予算(第3号)、平成二十八年度特別会計補正予算(特第3号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官平川薫君、内閣府大臣官房総括審議官井内正敏君、内閣府再就職等監視委員会事務局長塚田治君、宮内庁次長西村泰彦君、警察庁生活安全局長山下史雄君、警察庁警備局長松本光弘君、観光庁長官田村明比古君、気象庁長官橋田俊彦君、海上保安庁長官中島敏君、環境省水・大気環境局長高橋康夫君、防衛省大臣官房衛生監塚原太郎君、防衛省整備計画局長高橋憲一君、防衛省地方協力局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 昨日の玉木雄一郎君の質疑に関連し、長妻昭君から質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長妻昭君。

長妻委員 おはようございます。長妻昭でございます。

 まず抗議を申し上げたいのは、きのう審議が始まって、もう本日採決というのを、きのう野党が三十分しか審議していない直後に強引に決める。たった二日で、この補正予算、非常に、見積もり誤り、税収が減る、重要な補正予算にもかかわらず、たった二日で審議を打ち切り。これは許せません。我々は、こういうやり方について厳重に抗議を申し上げるところでございます。

 そして、質疑に入りますけれども、日本の社会の大変大きな問題について質疑をさせていただきたいと思います。格差の問題であります。

 持てる者と持たざる者、この格差がどんどん拡大する、大き過ぎると、やはり富とともにチャンスも偏って、社会の活力、あるいは社会のきずな、あるいは経済の基盤を損なっていく、今、こういう日本の現状ではないのか、こういう強い問題意識を私は持っておりまして、大変重要な視点だと思っております。格差を、現状をどういうふうに認識するのかというようなことを総理にお尋ねしていきたいわけでございます。

 総理は、施政方針演説の中で、相対的貧困率、子供の貧困率に触れられておられましたけれども、この趣旨というのは、日本の子供の格差は小さくなってきている、こんなような趣旨でお触れになったのでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 相対的貧困率については、この委員会でもしばしば議論となったことであります。

 その中において、安倍政権が進めている政策を進めていけばいわば格差が広がっていく、相対的貧困率についてもそうでありますが、子供の相対的貧困率についてもこのままでは悪化していくのではないかとの御指摘がしばしばございました。

 しかし、結果として、先般の調査の結果において、それが悪化ではなくて改善しているという結果が出ましたから、それをお示しさせていただいたところでございます。就業機会がふえる、名目賃金が上がっていく中において改善されているという結果があらわれたのではないか、このように考えているところでございます。

長妻委員 格差をどういうふうに捉えるかというのは相当重要なことでございまして、パネル一を見ていただきますと、総理がおっしゃったのは相対的貧困率、これは格差を示す指標とも言われておりまして、所得を、日本国民全員を多い方から少ない方に並べて、その中央値、中央にいる人の所得の半分以下の比率が何%かというものでございますけれども、この上の方が厚生労働省が出している相対的貧困率。相当高い。一六%ということで、これを一つ目安とすると、G7諸国ではアメリカに次いで日本は格差が大きい、こういう問題意識も生まれるわけでございます。

 その一方で、総理が今お触れになったのは総務省が出している実態調査。これだと大体一〇%ということで先進国の平均になって、まあまあ日本の格差は普通じゃないのか、こういうような問題意識になるので、これは相当重要な問題であるわけでございます。

 総理、総理がおっしゃった、子供の相対的貧困率は改善したということでありますけれども、これは過去から公表していたものなのでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 それは、私が再々答弁をさせていただいております。

 今、二つの指標についてお話をされたわけでございますが、私はいわば傾向についてお話をしているわけでございます。

 この二つの調査は、母数、その母体等々に違いがあるので、違いが出ているのは事実でございます。

 そして、先般公表いたしました総務省の全国消費実態調査においての数字の方が低く出ているということについてはさまざまな解説がなされているところでございますが、今私が申し上げましたのは、まさにこれは傾向でございまして、傾向において、これは十五年前が例えば子供の相対的貧困率が九・二だったものが、十年前にこれは九・七に上がり、そして五年前に九・九と上がっていく中において今回初めて下がって、しかも二ポイントという大きなポイントが下がったのは事実で、十五年前、十年前、五年前と、九・二、九・七、九・九と上がってきて、そしてそれが七・九に下がったという、これは傾向を言っているわけでありまして、こちらが正しい、厚労省の方が違っているということを、絶対値においてはそう言っているわけではないわけであります。

 例えば、内閣支持率においても、高く出ているところもあれば低く出ているところもありますが、傾向は同じなんですね。上がっているときは大体上がっていくし、下がっているときはどこも。しかし、その絶対値は違いますが、傾向としてはそうだということでありますから、そのときのどういう政策に対する評価が変化したかということを、我々は一喜一憂しませんが、分析がなされるということでございますから、今度は、七・九という絶対値をもって言っているのではなくて、つまり、傾向としてはそうなったではないか、そうなるには理由があるのではないか、こういうことでございます。

長妻委員 いやいや、私がお伺いしたのは、総務省の子供の相対的貧困率は、過去から見ると改善しているとおっしゃいますけれども、その過去分はいつ公表したんですかということをお伺いしたんです。

 私、ちょっと不可解だったのが、この総務省の子供の相対的貧困率は、過去分は公表していないんですね、今まで。突然去年の十月に過去三回分も含めて全部公表されているわけで、ひょっとすると、数字が改善したから過去分を去年の十月に、今まで公表していない分を公表するというようなことであってはならないというふうに考えているところです。

 しかも、総理、御存じでございましょうか。日本には、子ども貧困対策法という法律がございます。その法律の中で子供の貧困率の定義というのがございまして、これは政令となっております。平成二十六年の一月十六日の政令でございますけれども、日本で子供の貧困率を考えるときには厚生労働省の指標を使いなさい、こういう政令もあるわけでございますし、OECD諸国が世界を比べるときに、我が日本の厚生労働省の貧困率、こちらの方がきめ細やかにデータが出ているということだと思いますけれども、OECDもそれを採用している。

 こういうようなことでございまして、ぜひこれは、楽観的に一つの数字だけをもって改善をしたというような油断というか安心をしてもらっては困るというふうに私は思っているところであります。

 総理は、施政方針演説でもおっしゃっております。子供の相対的貧困率は二%減少し、十五年前の調査開始以来一貫して増加していましたが、安倍内閣のもと、初めて減少に転じた、かつての悲観論は間違っていた、そのことを私たち自公政権は証明したと。

 相当、この一つの数字をもって、格差の悲観論は間違っていたんだ、これからは云々かんぬんというようなお話をされておられるので、これはもっと中身を見ていただきたい。ちょっと誇大広告に過ぎるんじゃないのかということで、ぜひもうちょっと、相対的貧困率のみならず、ほかの指標も見ながら、注意深く現場も見ながら格差の問題を認識していただきたい。

 これは、一国の総理大臣ですから、我々が申し上げているところで、総理の格差に対する認識次第、いかんによって打ち出す政策や法律というのが相当方向性が変わってくるので、私は、本当に国民の皆さんの立場に立ったきめ細やかな議論が必要だというふうに考えているところでございます。

 この総務省の調査というのは、そもそも二人以上の世帯がメーンで始まった調査で、単身世帯が後からつけ加わっておりまして、全体の中で単身世帯の比率は八%しかない。低所得の方が非常にとりにくいものになっている。しかも、この総務省のデータであれば、中央値がどんどん下がってきておりますので、ある意味では、みんなが沈んで多少平等になった、こういう見方もあるわけで、注意深く数字を拾っていただきたいということをまずお願い申し上げます。

 そして、もう一つ、格差にとって重要な視点。総理の答弁、私ども、過去にも格差の議論をさせていただきました。この格差について、総理はこういうふうにおっしゃっておられます。固定化されない、そして、人々の許容の範囲を超えたものでないことが重要だとおっしゃっているんですね。これは私もそのとおりだと思います。

 この二つの観点から、私は、総理に相当深刻にこの日本の格差の問題を受けとめていただきたいということなんです。

 一つは、これは配付資料でお配りしましたけれども、固定化されていないのかということについては、生活保護の御家庭で育ったお子さんの四人に一人がまた生活保護になってしまうというような調査、この七ページに入れておりますけれども、この調査は、学者の方が二〇〇六年のときに、ある市を例にとった調査。日本ではこれしかないわけでございまして、生活保護の御家庭で育った方々がまた生活保護になってしまう、お子さんたちが大人になっても、どのくらいそういう連鎖、固定化というのがあるのか、こういう調査をぜひ政府としても私はしていただきたい。

 そして、親の収入、家庭環境で成績や大学進学率が決まる、こういう現実もございます。

 きのうも細野議員が一部質疑いたしましたけれども、これは、大学、専修学校を含む進学率でございます。家庭環境別でございますが、全世帯の平均が七三パー、しかし、一人親家庭だと大体四二%に落ちてしまう。生活保護家庭であれば三三%です。児童保護施設におられる方は二二%ということで、どこで生まれたか、どういう家庭環境で生まれたかで、意欲と能力があってもチャンスがなかなか生まれてこない。こういう固定化という指標もよくよく見ていただきたい。

 日本では、年収四百万以下の家庭でございますと、大学進学率が三割でございます。一方で、年収一千万以上の御家庭だと、大学進学率が六割、四年制大学でございますが、そういう大きな差もある。

 そして、成績につきましても、四枚目のパネルでございますが、お茶の水大学の先生の協力でやった調査でございますけれども、年収によって子供たちの、これは算数と国語でございますけれども、成績が御家庭の年収によってきれいに比例してくる、こういう現状の分析。これも研究者の方が分析しているわけで、継続的に政府として、私は、固定化がどこまで進んでいるのか、こういう調査をぜひしていただきたいというふうに思うわけでございます。

 そして、もう一つは、世代間所得弾力性という調査もございまして、日本は〇・三五%ということでありまして、これは、例えば親の年収が平均よりも一%多い御家庭に生まれると、お子さんの年収もその後〇・三五%ふえていく。下がるときも同じであります。つまり、親の年収によって、お子さんが将来大人になったときの年収も相関関係がある。これはアメリカよりも低いんですけれども、北欧、ヨーロッパ諸国に比べると相当高い関連性がある。

 こういうような固定化はあってはならないという総理のお話でございますから、この固定化が相当深刻になっている、こういう認識のもと、ぜひ政府として、固定化の調査というのは余りないわけでございまして、調査をお進めいただく、こういうようなおつもりはございませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 格差が固定化しているかどうかについて一概に申し上げることは困難でありますが、格差について、固定化されず、人々の許容の範囲を超えたものとならないことが重要だと思っております。

 安倍内閣発足後の所得格差を示す指標の動きを見てみますと、所得再分配後のジニ係数は、近年の雇用・所得環境の改善や社会保障、税による所得再分配が機能したおかげもあり、おおむね横ばいで推移をしております。

 相対的貧困率については、先ほど申し上げましたように、全国消費実態調査によれば、子供の相対的貧困率は二%低下をしているわけでございます。これは、雇用が大きく増加する中で、経済が好転し、そして子育て世帯の方々の収入が増加したことによるものと考えておりますが、来年度予算案においても、格差が固定化しないように取り組んでいるところであります。また、働き方改革を進めているところであります。

 我々は、現在のアベノミクスをしっかりとさらに加速させながら、成長と分配の好循環をつくり上げていくとともに、こうした取り組みを続けることによって、格差が固定化されず、誰にでもチャンスがあり、頑張れば報われる社会を実現していきたいと思っております。

 今後とも、委員御指摘のようにいろいろな学者による分析がなされておりますので、政府としても勉強していきたいと考えております。

長妻委員 今総理がおっしゃったのは変化率のお話だと思うんですけれども、それも重要でありますけれども、現在の現状が少しよくなった、悪くなったでなくて、現在の実態、どこまで深く今の固定化が進んでいるのかという指標が政府にありませんので、ぜひ調査をしていただきたい。総理も、議員の質問に対して、今年度中に、ことしの三月までにそれを研究するというようなお話もされたようでございますけれども、ほとんど政府の中では進んでいないようでございますので、ぜひそれについても鋭意進めていただきたいというふうに思います。

 そして、もう一つ私が気になりますのは、例えば文科省と厚労省が連携できていない、いろいろな調査で。

 私も驚きましたのは、二〇一五年、最新のデータで、小中学校のお子さんの合計で、千人当たりの不登校のお子さん、最大になっている。家庭環境が影響している、しかし、文科省はなかなか家庭環境を把握できない。そういうようなことなので、厚労省と文科省も協力をして、この固定化や格差が不登校と大きく結びついているという国会の答弁もありますので、ぜひ調査をしていただきたいというふうに思います。

 そして、この中で、では実際に格差是正のためにどれだけ予算が使われているのか。

 一つは、教育の予算でございます。きのうからもるる出ておりますけれども、五ページを。

 これも、改めて見ると皆さんも驚かれると思うんですね。政府からいただいた最新の数字でございますけれども、日本の公的教育支出の対GDP比というのが、OECD諸国で確認できている数字が、諸国を全部ここに並べて、日本は最下位でございます。こういう現状で、しかも、格差が固定化されて、チャンスと富が偏って、本当に日本の将来は大丈夫か。

 そして、六ページ目でございますけれども、これにも関係していると思うのでございますが、大学進学率も、四年制大学でございますが、日本は五〇%でございまして、OECD平均よりも四年制大学進学率は低い。この前、ドイツにも大学進学率が抜かれてしまいました。こういう現状で、総理、本当に日本は大丈夫か。

 そしてもう一つ、経済への影響でございます。七枚目でございますが、これはOECDのデータをもとに関西学院大学が研究データとして発表したものでございまして、一部関係者に大きなインパクトがあったものでございますけれども、高等教育機関、大学以上でございますけれども、学生一人当たりの公的支出が高ければ高いほど時間当たりの労働生産性にも比例していく、こういうような相関関係もあるわけでございまして、いずれにしても、教育というのは本当に重要であるということでございます。

 その一方で、こういう指摘を受けて、総理は、給付型奨学金、これを創設するということで、今回スタートした。しかし、これは余りにも小粒なのではないのかということでございまして、今、子供の貧困は六人に一人と言われておりますけれども、この給付型奨学金、二万人ということでありますから、一学年に直すと五十五人に一人ということになるわけで、総理、今後、これを相当拡充していくというおつもりというのはどのぐらいあるのでございますか。

松野国務大臣 まず、委員の教育投資に関する御質問でございますけれども、教育は未来に対する投資であって、誰もが希望する質の高い教育の機会、これを確保していくというのは重要であることは、委員と思いを同じくするところであります。

 特に、家計収入が生徒児童の教育を受ける機会を奪ってはならないということで、平成二十九年度予算におきましても、幼児教育の段階的無償化でありますとか、高校生等奨学給付金の充実、大学における授業料の減免、給付型奨学金の創設等の必要な予算を盛り込んでいるところであります。

 今後とも、必要な財源を確保しつつ、教育費負担の軽減に向けて教育投資を充実させていきたいと思いますが、給付型奨学金に関しては、まず、着実な実行で、高等教育への進学の後押し、これをしっかりと結果を出していくということが重要であるかと考えております。

長妻委員 総理、相当優先順位を高めて、この部分、本当に日本はおくれておりますので、取り組んでいただきたいと思うわけでございます。

 特に若者の意識について私は本当に深刻に感じるわけでございまして、十八、十九歳を対象に、朝日新聞とNHKが調査をされています。

 朝日新聞は、二〇一六年の二月から四月でございますけれども、今の日本の社会にある収入の格差はこのままにしておいてもよい範囲だと思うか、行き過ぎているかということで、このままにしておいてもよい範囲だが三三%、行き過ぎているが五九%おられる。今の日本は努力すれば報われる社会だと思いますか、どうですかということで、報われる社会だと思う方が三七%、報われない社会だと思う十八、十九歳が五六%。今の社会は収入や就職の面で若い人たちが自立しやすい社会だと思いますか、自立しやすい社会だと考える人が一四%、八二%が自立しにくい社会だというふうに考えている。

 NHKも、十八、十九歳を対象に二〇一五年の十一月から調査しました。日本の所得格差は大き過ぎるかどうかということでございますが、そう思うが二五・九%、どちらかといえばそう思うとそう思うを足すと、七三%がそう思っている。日本の所得格差は大き過ぎると思っているわけでございます。

 こういう今の若者の意識、いろいろな指標の一部を申し上げましたけれども、総理、日本の格差の深刻度について、改めてちょっと認識をお伺いできればと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、所得再分配後のジニ係数は、近年の雇用・所得環境の改善や社会保障、税による所得再分配が機能したおかげで、おおむね横ばいに推移しているのは事実でございます。

 さまざまな意識調査があることは承知をしておりますが、この生活意識についても、安倍内閣発足後とそれ以前の生活意識を比較した内閣府の調査によれば、現在の生活について、満足とした回答は七〇・五%と、安倍政権が発足後、五ポイント上がっておりまして、不満とした割合は二八・五%へと、五ポイント下がっているわけでございます。

 さまざまな指標もあるわけでございます。ただ、私たちが目指していることは、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるように、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければならない、こう思っております。

 その中で、幼児教育の無償化についても段階的に進めてきているわけでございますし、高校への奨学給付金を拡充するとともに、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにする、さらに、新年度から返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしたところでございます。

 その中において、意欲のある人たちが希望すれば働く場を得ることができるように、障害や難病があったとしても、女性や男性でも、お年寄りも若者も、また、一度失敗を経験した方も、誰もが生きがいを持ってその能力を存分に発揮できる社会をつくっていきたい、このように思いますし、また、そのためにも働き方改革を進めていく必要があるだろう、このように考えているところでございます。

長妻委員 個々のいろいろな政策はわかるんですけれども、今冒頭おっしゃられたように、格差は横ばいだとおっしゃったわけでございますけれども、別に横ばいが悪いわけではありませんけれども、もともと格差が日本の社会では相当固定化しているんじゃないか。しかし、その固定化しているということについてのデータ、政府の中でそういう統計をとっていないわけでございまして、もともとの日本の深刻度をぜひ御理解いただきたいと思います。

 その中で、日本の所得再分配政策ということにちょっと触れたいと思いますけれども、まず、総理に。

 総理、ちょっと個人的なお考え、御感想で結構なのでございますけれども、所得格差というのは、所得の多い少ないというのは個人の努力なのか。あるいは、そうでない部分、個人の努力ではどうしようもない、生まれた家庭の状況、あるいは生まれつき自分が持っている能力などなど、個人の努力ではいかんともしがたい部分、運とそれを呼ぶとすると、どちらの方が、所得格差というのは個人の努力か、運か。

 二者択一ではありませんけれども、どちらの部分が大きく影響するというふうに、総理、思われますか。総理の個人的な御感想を。

安倍内閣総理大臣 それは一概には言えないことでございまして、何をもって運がよかったか、悪かったか。

 例えば、もともと生まれた家庭が裕福な家庭である。それは、運がよかったということでいえば、そもそも、生まれた家庭が裕福であれば、高等教育を受けるチャンスはもちろんありますし、また、基盤的な生活を心配する必要がないということももちろんあります。しかし、その中で、例えば厳しい状況の中で一生懸命頑張って、努力をして、勉強して大きな成果を上げている方々もたくさんおられるわけでございます。ですから、今ここで私が一概にこれはどうだったかと言えないわけでございます。

 しかし、その中において、先ほど申し上げましたように、自分の生まれた家庭の経済事情によって進学を諦めなければいけないという状況はなくしていきたい、このように思い、さまざまな政策をこれからもつくっていきたい、実行していきたいと考えているところでございます。

長妻委員 この調査というのは、実は世界的によくやられている、日本では余りなじみがないんですけれども、調査でございまして、非常に興味深いのは、ヨーロッパの方々、特に北欧諸国などでは、やはり所得格差というのは運の部分の方が努力よりも大きいというふうに答える方が相当多いわけでございます。その一方で、例えばアメリカでは、いや、努力の方が運よりも大きいんだ、所得格差に影響する、六割ぐらいの方がそういうふうに答えている。

 相関関係が私はあると思います。学者の先生もおっしゃられておりますけれども、つまり、運の方が所得格差に対する影響度は大きいというふうに答える国は所得再分配が相当進んでいる。つまり、ひょっとすると、自分も運が悪ければ低所得になっていたかもしれない、今の自分の高所得というのは、自分の努力もあるけれども、運の部分も多いから、それは再分配をする、そういう合意ができるのではないか、だからそれと関連性があるのではないかというふうに分析される方もおられるわけでございます。

 これは、総理が今おっしゃったことで、どんなに厳しい環境に育っても、頑張って自分の夢をかなえる人もいるんだとおっしゃいましたけれども、それはそのとおりだと思いますけれども、ただ、確率的には、裕福なところに生まれた方の頑張りと、そうでない家庭に生まれた方の頑張りと、同じ頑張り度合いで夢をかなえられるのかというと、相当厳しいハンディを日本の社会では負っているというのが現状だと私は思います。

 そして、私はびっくりしたんですけれども、八ページ目でございますが、財務省にデータを出していただきました。先進国の税による再分配機能、ジニ係数がどれだけ改善するのかということで、日本は、財務省に出していただいたものについて、先進国で最下位でございます。OECD平均よりはるかに小さい。つまり、日本は税による再分配の機能が弱い、弱過ぎる現状があるわけでございます。

 アメリカについても、累進性というのは弱いんですけれども、もともとの格差が大きいので改善度合いは大きく出ているわけでございますが、ドイツやOECD平均は、日本よりももともとの格差が小さい国もございます。

 これは分析は必要でございますけれども、こういうデータを分析して、ぜひ政策に役立てていただきたいと思うんです。

 もう一つよく言われるのが、税による再分配は少ないけれども、社会保障による再分配が日本は大きいんだ、こういうことも言われますが、これも、財務省に資料を出していただきますと、社会保障における再分配効果もOECD平均よりもはるかに下回っているわけでございまして、日本では、働く世代の中の一部では、再分配後の方が貧困率が悪化する、こういう逆機能、逆回転も起こっている珍しい国でございます。

 総理、ぜひ日本でもこの所得再分配、我々は所得税の累進の強化、あるいは金融課税の強化を申し上げておりますけれども、政府のもう一段のそういう再分配の取り組み、そして財源を見出していく取り組み、これを進めるお考えはどれだけございますか。

麻生国務大臣 お示しいただいております資料は、これは長妻先生の御依頼に基づいて、税のいわゆる所得再分配効果の例のOECDの推計値というものに関して、これをグラフ化してお渡ししたものだと、それはその前のものでしたか、一番前のものだと思いますが。

 御指摘のように、OECDのような推計を過去に行ったのは事実、これは二〇〇八年の資料だと思いますが。しかし、例えば厚労省がやっております直近の統計では、税による再分配効果はこのOECDの推計値を大きく上回っております。日本の税による再分配効果は非常に小さいとも一概に言えないのではないかということになっておると思っております。

 いずれにしても、税の再分配機能の確保というのは、これはおっしゃるとおり、極めて重要であります。したがいまして、経済社会の構造変化というのもいろいろ起きてくるところでもありますので、そういったところはよく今後とも考えながら、引き続きよく考えていかねばならぬと思っております。

長妻委員 今のお話だと、日本の再分配機能が弱いのか強いのかなかなか一概に言えないということで、財務省がそういう認識だと困るんですね。世界の中で日本の再分配機能は適切なのか、弱いのか、強いのか、この認識を、ぜひ政府、格差含めて、余りにも持たな過ぎるのではないのかというふうに思います。

 最後に、十枚目でございますけれども、これからの持続的な日本の財政や社会保障についてでございます。

 石原大臣が昨年末のセミナーで、消費税率について、文脈の中では、持続的な社会保障制度を次の世代にしっかり伝えていくためにということでおっしゃっておられるわけでございますけれども、消費税一〇%では賄い切れない、次は一二パー、一三パー、一五パーという形で消費税をしっかりと上げていく、このことを国民に問いかけて選挙をしていかないといけない、こういうふうにおっしゃっておられるわけであります。

 私も、これから持続的な社会保障を本当に真剣に考えたときに、今の消費税はまだ一〇%にも上がっておりませんけれども、当然、身を切る改革や税金の無駄遣い、天下りの問題など、徹底的に財源を打ち出す、見つける、これは大前提となりますけれども、それでもなかなか財政の持続的なものというのは見出せないわけであります。

 私は、パーセントを今直ちにぱっぱぱっぱ言うのは一つ行き過ぎだとは思いますけれども、国民に選択肢をいずれ示す時期が来るのではないのか。これだけの御負担であれば皆様に対してこれだけの社会保障が保障できる、これだけの御負担であればこれだけの社会保障です、どちらをお選びになりますか、こういうような議論をそろそろ、総理、始めたらどうか、昨日も前原議員からそういう趣旨の話がございました。

 日本では、二〇二五年以降の社会保障の推計値も一切出ておりません。これは、出すと直ちに財政の問題が始まってしまうというふうに懸念するのかとも思いますけれども、そういう消極的な姿勢でなくて、ぜひ、いずれ国民の皆さんに選択肢を示す、真の日本の財政の深刻な姿を国民の皆さんにお示しする、年金の姿も、今バラ色の形でまだお示しされているわけでございまして、二〇二五年以降の社会保障の姿を正直に示して、そして負担について、国民の皆さんに社会保障の将来像も示した上で議論をしていく、ポスト社会保障と税の一体改革、与野党の議論、こういう議論を進める必要があると思うんですが、総理、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 そこで、我々は別にバラ色の未来を申し上げているのではなくて、これはさまざまな指標に基づいた現状の分析をお示ししているわけでございます。

 その中で、まずは現在の経済の状況をしっかりと見ていく必要があるわけでありますが、我々は、短時間のうちにデフレではないという状況をつくった。しかし、まだデフレ脱却とは言えない状況、その脆弱性があるのは事実でございます。

 その中において、まず、力強い成長力をしっかりと確保していく必要があるわけであります。デフレから完全に脱却をしていく、その脱出速度を得ていく必要があるわけでございます。

 その中において、我々は今、三本の矢の政策をとっているわけでございまして、例えば金融政策においてはマイナス金利という政策をとっている中においては、いわば長期金利、十年物国債とGDPの成長率との比較でいえば、これは成長率が上回っているわけでございますから、その意味において、プライマリーバランスがバランスをしていく中においては、いわばワニの口というのもだんだん閉じていく方向になっていくわけでございます。

 そうしたいわば現在行っている経済政策の中において、しっかりとまずは勢いをつけて脱出をしなければならないということでありまして、そして、この名目GDPを今……(長妻委員「負担はどうなんですか」と呼ぶ)負担のためには、まず財源を確保していくということの中で、長妻委員は税制だけの話をされたわけでありますが、税収をしっかりとふやしていく上においては名目GDPをふやしていく必要もありますし、デフレ下においては税収がふえませんから。デフレ下においては税収がふえない。それで、我々はデフレではないという状況をつくって、そして名目GDPをふやしているからこそ、名目GDPは四十四兆円ふえたのは事実であります。

 こうした事実をお示ししながら、我々はしっかりとGDPを成長させていくという中において、将来にわたって団塊の世代がさらに七十五歳を迎えていくというある種の衝撃がある中において、この衝撃を受ける中において、しっかりと社会保障費を得ることができるかどうかであります。

 ただ、さまざまな努力をやることによって、さまざまな努力……(発言する者あり)大切なところなので、ちょっともう少し話をさせていただきたいと思うんですが……

浜田委員長 時間が来ていますので。

安倍内閣総理大臣 そこで、私たちは、さまざまな努力をやる中において、例えば毎年一兆円伸びていくという医療費を、五千億円以上、今年度、来年度と抑え込むことができた、これは半分以下ですから。小泉政権のときは、二千二百億を五年連続でやろうとして二年しかできなかったものを、その倍以上我々は実現しているわけであります。

 このように、やるべきことをまずしっかりとやっていく。やるべきことをやっていかなければ、消費税のさらなる一〇%以上の引き上げをそう簡単には、国民的な了解を得ることができないわけでありますし……

浜田委員長 総理、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

安倍内閣総理大臣 同時に大切なことは、消費税引き上げが経済に与えるインパクト、全体も考える必要があるわけでございます。結果として税収自体が落ちてしまっては元も子もないわけでありまして、またデフレに逆戻りしてしまってはならないわけであります。

 つまり、生き物である経済を十分に注意深く見ながら政策を立てていく必要もあるだろう、このように思うわけでありますし、まずはしっかりとこの社会保障費についても聖域を設けることなく見直しを行い、効率化を図っていく、ここにまずは私は重点を置くべきだろうと。

 ではなくて、今、もう所与のものだということの上に……

浜田委員長 総理、時間が来ておりますので、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 選択を迫るというのは、これは違うのではないか、このように思うわけでございます。

長妻委員 いや、私も経済成長は、これは重要です。ただ、今までの議論は、経済成長、経済成長と言って負担から逃げているのではないのか。本当に将来ずっと日本が消費税一〇%で未来永劫やっていけるのかどうか。成長が全てをバラ色にすると言わんばかりの話というのはやはりそろそろを卒業して、本当に向かい合って議論をする必要があるんじゃないかと思います。

 税率を決めつけるのではなくて、国民の皆さんに正直に日本の財政や社会保障の姿を示してそういう議論を始めていく、成長が全てを解決するという議論はそろそろ終止符を打った方がいいというふうに申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、井坂信彦君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井坂信彦君。

井坂委員 神戸から参りました井坂信彦です。

 本日は、電通の過労死問題、また長時間労働の規制、さらにはパートや派遣、契約社員の方々の給料や待遇をアップする同一労働同一賃金法について議論をさせていただきます。

 まず、パネル資料の一をごらんください。

 我々は、長時間労働規制法を既に昨年の四月に正式に国会に提出しています。

 目的は三つです。一つ目は、過労死をなくす。そして二つ目が、仕事と家庭の両立、ワーク・ライフ・バランス。三つ目が、今、日本の弱点である労働生産性のアップであります。

 内容は八項目。非常に多岐にわたる総合的な内容でありますが、規制もかけ、またその実効性も強化をする。

 ポイントは三つであります。まずは、残業時間の上限規制だけでなくて、インターバル、休息時間、夜会社を出てから翌朝また会社に来るまで最低これだけあけましょう、こういう時間を設けるということを法律に定めたいということ。二つ目が、裁量労働制の実際に働いた労働時間、これにもきちんと上限規制をかけましょうということ。そして三つ目が、これも実際に働いた労働時間、実労働時間の記録を義務化しましょう。いろいろありますけれども、大きくポイントはこの三つであります。

 一方で、政府の方は今、国会に法案を出してきておりますが、これは、残業時間が長くなっても会社は追加の残業代を払わなくてよいという裁量労働制が拡大され、また残業代は一切払わなくてよいという高度プロフェッショナル制度が新たにつくられる、こういう政府の法案が今出ています。残業しても残業代がもらえないから残業代ゼロ法案だなどと呼ばれる理由になっておりますが、きょうは、この残業代がもらえないという点については議論はいたしません。

 政府が今出している法案で拡大をされる裁量労働制と、そして新たに設けられる高度プロフェッショナル制度には、実際に働いた時間、実際に残業した時間である実労働時間に政府は残業時間の上限規制をかけるお考えはありますか。

塩崎国務大臣 これはきのうの議論の中でも申し上げたところでありますけれども、総理が明確に施政方針演説の中でも御答弁申し上げたとおり、三六協定が必ずしも有効に働いていない中にあって、これに実効性のある時間をしっかりと入れ込んだ法改正をやるということを申し上げているわけでございますので、そのような方向で今、実現会議でもこれから議論を始めていただいて、そしてその上で計画を固めて、法改正に向けて作業を急ぐ、こういうことでございます。

井坂委員 もう一度お尋ねします。

 裁量労働制とか、みなし労働時間、みなし残業時間、要は、あなたは一日一時間だけ残業したことにしましょうね、一日三時間残業しようが残業がゼロであろうが、そういう仕組みで残業代を払う、こういうルールになっております。

 こっちの、みなし、名目上の残業時間ではなくて、裁量労働制の方、あるいは今政府がつくろうとしている高度プロフェッショナル制の方が実際に働いた実労働時間、こちらに残業時間の上限をかけなければ意味がないわけでありますが、この実労働時間にも上限をかけるお考えがありますかとお尋ねをしています。

塩崎国務大臣 みなしの場合は、賃金の支払いに関しては、例えば十時以降の深夜あるいは休日、こういったものはきちっとお払いをするわけでありますけれども、制度として上限を今おっしゃったような形でかけるというのは、制度そのものと相入れないところがありますからそういうことはいたしませんが、これはもう何度も申し上げているように、裁量労働制にしても高度プロフェッショナル制度にしても、対象となる方は、今問題になっている、一般に働いていらっしゃる方々の、長時間労働を強いられていろいろな問題が起きているという方々とは全く対象が違う。

 まさに、みずからの業務の遂行の手段とか時間配分とか、そういうことをみずからの裁量で決定するということを労使の委員会の中で五分の四の多数決で決めて、いろいろな条件を決めるという中で、自律的な、あるいは創造的な働き方をしていただく方を対象としているわけでありますので、長時間労働が助長されるようなことになるということではないというふうに思っております。

 そもそも、国民の皆さん方も聞いていらっしゃって、裁量労働制というのは何か物すごくたくさんの方がおられると誤解をされているような感じもいたしますので、あえて申し上げますと、約五千六百万人働いていらっしゃる方が今おられますが、その中で、企画業務型裁量労働制、今回御提起を申し上げて拡大しようと言っているのはこの部分でありますけれども、これは全体の〇・二%、十一万人の方々でございまして、今申し上げたように、みずからの裁量で時間配分を決められるような方に限って導入をされているものでございますので、みなしの制度について変えるということを申し上げているわけではございません。

井坂委員 裁量労働制それから高度プロフェッショナル制度、今政府が出している法案で新しい働かせ方を拡大、また新たに設けようとしているわけでありますが、それに関しては残業時間の上限は設けないと。今、今回ずっと今国会で議論になる長時間労働規制の対象にはしないという御答弁だと思います。

 私、申し上げたいのは、これは厚生労働省の資料でもはっきり出ているんですよ。平成二十五年度の労働時間等総合実態調査、労働政策審議会に厚労省が提出した資料ですけれども、ここにはっきり書いてあって、裁量労働制の場合は、実際に働いた実労働時間が一日十二時間を超える労働者がいる事業場が依然として五割あるというようなデータを厚労省が出している。

 一日十二時間ということは、月八十時間の過労死ラインを超えているんです。こういうところが全事業場の半分ありますよという問題提起を厚労省が実際しているんです。だから、裁量労働制とかあるいは高度プロフェッショナル制度、これは実際の労働時間が非常に長くなりがちだという問題意識を厚労省も既に持っている。

 ところが、ここに残業時間の上限をかけなければ、パネルの資料をごらんいただきたいと思います、一番左側、現状は、この赤い矢印、残業時間に上限がない、青天井だということで問題になってきた。我々が先ほどお示しをした法案は、ここに上限、天井、壁を設けて、残業時間に、これは裁量労働制も含めて上限を設けましょうと。

 ところが、政府案、今お聞きをすると、裁量労働制をまた拡大します、しかも高度プロフェッショナル制を新たに設けます、そしてこれに対しては、上限の壁を突き抜けて、また抜け穴を設けましょう、こういうことになるんだというふうに思います。

 総理にお伺いをしたいんですけれども、残業時間に上限を設けると言いながら、一方で残業時間の上限がかからない働かせ方を拡大する、例えるならば、虫を捕まえようといって虫とり網を準備しながら、一方で虫かごに大きな穴をあけていこう、こういうことだと思いますが、残業時間、長時間労働をふやしたいのか、減らしたいのか。総理、どちらなんですか、これは。

塩崎国務大臣 今回の働き方改革もそうでありますし、第二次安倍内閣がスタートして四年たちましたが、これまでさまざまな成長戦略を出してきた中で、働き方改革はもう既にいろいろな形で入ってまいりました。

 その一つとして、今度、高度プロフェッショナル制度それから裁量労働制の拡大を少し考えるということで御提起申し上げているわけでありますが、そもそもこれは働き方を多様化しようということが大事であって、今、フランスなんかでも、労働規制が余りにも厳しかったので、これをどう緩和していくのかということが大統領選挙の大きなテーマになっているということを、多分、井坂先生は勉強熱心ですからよく御存じだと思いますが。

 それは何かというと、フランスだったら例えば若年の失業者は一〇%以上です、日本は全体としても三・一%ということでありまして、そういう意味で、働き方はやはり多様化をしていく、しかし同時に、意に反する長時間労働は決して許されるものではないわけでありますから、今回私たちは三六協定が有効に機能するような法改正をすべく議論をしているわけであって、一方で、多様化という意味においては、今の裁量労働制にしても、特に、例えば実労働時間をどう把握するのかということに関しては、御指摘のように、今までは通達でやっていましたから、これを今回省令に格上げして、法令でもってちゃんと実労働時間は把握するということを徹底し、なおかつ健康確保措置というものを導入するということでありまして、やはり働く人たちの健康を守るということは何ら変わらないというか、むしろそれをもっと重んじて大事にしていこうということでやっているわけであります。

 もちろん、高度プロフェッショナル制度も同じように健康確保措置ということが、これは法律で罰則つきの義務化をすることによってこれが守られていく一方で働き方を多様化するということで、必要な働き方を導入しようということであります。

井坂委員 総理、読売新聞に書かれてしまっています。働き方改革、矛盾の声ということです。どういう記事かというと、まさに今申し上げたような、残業時間に上限を設ける、規制すると言いながら、一方で残業時間の上限がかからない働き方を拡大、あるいは新たに設ける、これに対して、これは記事ですけれども、与党内からも、二つの法案は矛盾しているという閣僚経験者のコメントが載っていたり、あるいは、政府内では両法案の同時成立は困難との見方が広がっていると。こういうふうに読売新聞にも書かれてしまっているんです。

 ちょっと総理、一回ぐらいお答えをいただきたいと思いますが、電通のような事件は二度と起こさないと、総理は本会議の方針演説でも力強くおっしゃった。私も全く同じ思いです。そして、そのために私は法案を書いて、もう昨年の四月に提出をしています。

 そうおっしゃったのに、一方で残業しても残業代がもらえない、さらには、これが問題ですけれども、長時間労働規制の網にもかからない。働き方の多様化を認めるということと幾らでも長く働かせていいんだという話は全く別ですから、長時間労働規制の網にもかからない、こういう働き方をふやすということは、間違いなく長時間労働がふえるような働かせ方を拡大する。これでは電通のような事件は防げないのではないでしょうか。(発言する者あり)

浜田委員長 不規則発言は抑えてください。

安倍内閣総理大臣 私の方から私のいわば考えを述べさせていただいて、法案に係ることでもございますので、詳しくは厚労大臣から答弁させたいと思います。

 現在提出している労働基準法改正法案は、働き過ぎを防止するための施策を講じている。どういう施策かは厚労大臣から答弁させますが、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものであります。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 新しい労働制度については、働く人の健康を確保するさまざまな措置が講じられているわけでございまして、措置についてはまた厚労大臣から答弁させますが。

 したがって、現在、働き方改革実現会議において検討中の時間外労働の上限規制とこの法案は整合性のあるものであり、いずれも必要なものだ、このように考えております。

井坂委員 整合性があるとおっしゃったんですけれども、総理、きょうははっきり御答弁はまだいただけないかもしれませんが、新聞に報じられているように、閣僚経験者また与党内からも、二つ同時はちょっと矛盾があるんじゃないかと。私は大変良識的な判断だと思いますよ。

 総理も今すぐこれを撤回するとは言えないと思いますけれども、ただ、今まさに残業時間の上限を決める法案を政府内で検討を始められているところでありますから、その法案のできぐあいによっては、今出している穴を広げる法案と、まず中身的にも、それからもう一つ技術的にも矛盾してくる可能性が私は非常に高いと思っています。だから、今つくっている法案と矛盾するようなところが出てきたらこれは直して出し直す、それぐらい検討する。私は当たり前の判断だと思いますけれども、それぐらい御判断いただけませんか。

安倍内閣総理大臣 厚労大臣から答弁をさせていただきましたが、いわばさまざまな健康を害さないような措置が既にこの働き方改革の中で、裁量労働制、高度プロフェッショナルの中でもとられているわけでございますし、何か随分大きな穴を描いていますが、裁量労働制度は〇・二%、これは五割ぐらいですが、〇・二%であります。(発言する者あり)

浜田委員長 静かにしてください。

安倍内閣総理大臣 そこで、その方々は、例えば高度プロフェッショナルの場合はみずからが選択をするということでありますし、いわば管理職ではないけれども一千七十五万円以上でなければそれは該当しないわけでありまして、これは非常に少ないわけでありますし、そういう方が選ばなければそうならないわけですし、かつ労使でその話ができていなければならないわけでありますし、と同時に、例えば研究職であれば連続してずっと、新しいアイデアが生まれたら、ずっといわば研究し続けることによってそれを成就するわけであります。その後、しっかりと健康の調査もするし、休みをとる。

 いわば一律的に働き方を同じにするというのは、生産性においても、そうではない働き方をしたいという人たちだっているんですから、まとまって仕事をして、後はちょっとゆっくり休むという人は幾らでもいるんだろうと思いますよ。

 ですから、そういう中においては、一律の上限規制とは別に一時的に、一年じゅうそれをずっとやっているということではもちろんないんですから、集中的にやるということはいろいろな仕事では必要になるだろう、このように思いますし、そういう中においてこの制度の仕組みができているということでございまして、詳しくは厚労大臣から答弁をさせたいと思います。

井坂委員 ちょっと時間もあれなので、きょうはもう一点議論させていただきたいんです。きのう大西議員との間で激しいやりとりがありました、残業の上限時間が月八十時間で本当にいいのかという問題であります。

 私は先ほど、我々の法案の目的を三つ申し上げました。過労死を防ぐ、それだけでなくて、この残業時間の上限を設けるというのは、ワーク・ライフ・バランス、さらには生産性、さまざまな重要な目的があります。

 総理、お伺いします。簡単な、そして基本的な質問です。

 総理は、ことしも、そして去年も本会議の方針演説でこうおっしゃっています。長時間労働を防ぎ、そして仕事と家庭の両立、ワーク・ライフ・バランスを確保することが重要だ。総理のおっしゃるとおりだと思います。月八十時間、これは過労死ラインです。過労死としても、これでいいのかという問題があるんですけれども、では、月八十時間まで残業を認めたとして、これはいわば毎日平均夜十時まで会社にいるというような働き方でありますが、これで、総理が重要だと毎年本会議でおっしゃっている仕事と家庭の両立、月八十時間の残業上限でこれは果たせると思いますか。

加藤国務大臣 委員御指摘のように、何時間を上限とするかという意味においては、労働者の健康の確保、またワーク・ライフ・バランス、あるいは女性や高齢者が活用しやすい、そういった観点からしっかり議論する必要があるというふうに思っております。

 今の時点で、まさにこれから働き方改革実現会議で有識者、労働側あるいは使用者側の意見を伺いながら、実効性のある規制になるようにしっかりと議論していただきたいというふうに思っておりますし、また、その中においては、現行の大臣告示がどうなっているのか、それから、きのうも御議論がありましたけれども、過労についてどういう基準になっているのか、そういったことも踏まえながらしっかり議論し、実行計画において明確に結論を出させていただき、そしてそれに基づいて法改正に向けての作業を加速していきたい、こういうふうに思っております。

井坂委員 資料の三をごらんいただきたいと思います。

 私は以前この予算委員会で議論させていただきましたが、労働時間、残業時間、短ければ短いほど明らかに労働生産性が高まっている。しかも、ドイツなんかは非常に短いんですけれども、労働時間、残業時間が短くなるから手取りのお給料は減ってしまうかというと全くそうではなくて、労働時間がドイツは二〇%短いけれども、生産性が何と一・五倍に達しているから、短い時間なのにドイツ人の方が年収が多い、こういうような状態になっているんです。これは厚生労働省の資料ですから、まさに厚生労働省もこう考えている。

 総理、重ねてお伺いしますが、月八十時間という数字が、もうこれで調整が政府内で始まっていると報じられているわけですが、この八十時間で本当に家庭と仕事の両立ができるのか。さらには、八十時間、長く働く自由もあるとおっしゃいますけれども、一方で、大きな方向性としては、なるべく労働時間を短くして生産性を上げていこうと。大きな流れがある中で、月八十時間、これは本当にいいんですか。

 記事にどう書かれてしまっているのか。政府は新たな法規制による企業への影響は限定的と見ているが、こういうふうに書かれてしまっているんです。企業への影響が限定的ということは、月八十時間だったらほとんど何も変わらないと言われてしまっているに等しいわけでありますが、総理、どうですか。仕事と家庭の両立、さらには生産性の向上ということと比べて、月八十時間の残業時間、これでいいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私も、働き方改革の中で経営者の皆さんに、いわば働き方改革をしていくこと、長時間労働の今までの慣行を変えていくということは生産性の向上につながっていく、つまり、上限規制等も含めて働き方改革を進めていくことについて、これはいわば経営者側が何かを削って被用者にそれを足すのではなくて、まさにウイン・ウインなんだという話をしました。そうやって経営者側の理解を得たわけでございます。

 そこで、何時間がいいかということについてはまだ決まっていないわけでございまして、その中で誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、労働者の健康の確保の観点のみならず、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点や、ワーク・ライフ・バランスを改善する観点などさまざまな視点から議論する必要がある、このように思うわけでございまして、経営者の皆さんには働き方改革の中で、これは同一労働同一賃金の文脈で申し上げたわけでありまして、ちゃんとやる気を持てるようにしていく、と同時に長時間労働についても、ずっと、しっかりとした意義を感じ、目的意識を持たずに長時間労働をするのではなくて、短時間の中で効率的に仕事をこなすことによって生産性も上がっていくということも話をしているわけであります。

 しかし、その中で、今申し上げましたようなさまざまな視点があるわけでありますから、いずれにいたしましても、働き方改革実現会議において有識者、労働側そして使用者側の意見を伺い、実態を見ながらしっかりと議論をし、実行計画で明確に結論を出していただきたい、このように思っております。

井坂委員 総理、まず、答弁いただいてありがとうございます。

 もう一声、本当に総理のお考えをお伺いしたいのは、これから決めていくということは、政府が今そういうペースでやっておられるから、そのとおりだと思います。ただ、残業時間の上限が八十時間で調整がもし始まっているとしたら、私はやはり、過労死という観点からも、それから家庭との両立という観点からも、さらには生産性のアップという観点からもこれは全く不十分だと思うんですよ。

 総理は、残業上限が八十時間でもこの三つの目的は果たせるとお考えですか。

安倍内閣総理大臣 ですから、まだ八十時間とか何十時間とかは決まっていないわけでありまして、仮定の質問には私は今お答えすることはできないわけでありまして、いわば何時間がいいのかを労働界側も入っていただいて議論している、経営者そして労働界側からも御意見を伺いながら議論を進めているわけでございます。

井坂委員 時間が近づいてまいりましたので、ちょっと一点だけ、同一労働同一賃金について伺います。

 ちょうど先月、党首討論で安倍総理はこうおっしゃっています。同一労働同一賃金、何をすればこれは違法になるかどうかという、裁判所が判断をするまさにガイドライン、基準をつくるんだとおっしゃった。そして、昨年末、発表されたわけであります。

 ただし、ガイドラインは法的な拘束力は全くありませんから、私は当然、ガイドラインに書かれたような、具体的に、同一労働同一賃金、パートや派遣や契約社員の方と正社員の方とどういう差別をしてはいけませんよということ、これはやはり法律に書き込んでいく必要があると思います。

 我々、実はもう議員立法を既に準備しております。同一労働同一賃金実現法案という形で、我々は具体的な格差の是正について法案を準備しています。

 総理、最後に一点だけお伺いします。我々は、この法案、ぜひ審議に応じていただきたいと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 議員立法の御審議についてはまさに国会で決められることでございまして、国会の運営について行政府の長である私が口を出すことは厳に慎めと皆様からも言われているわけでございますから、厳に慎みたい、このように思います。

井坂委員 総理は常に、野党も対案を出せ出せというふうにおっしゃるわけであります。特にこの働き方改革の分野では、対案どころか、政府・与党が出すよりも常に先に、長時間労働の規制法また同一労働同一賃金法、我々が議員立法を先に出してまいりました。

 ところが、残念なのは、出したら出したで今度は審議をしていただけない、こういうことが続いているわけであります。

 余りこういうことが続くと、総理は対案を出せ出せとおっしゃっているけれども、実は単に批判のための批判としてそうおっしゃっているだけなんじゃないかということになりかねませんから、長時間労働の規制法また同一労働同一賃金実現法案、我々の法案、ぜひ政府そして与党としても審議をしていただきたい、このことを最後に強く申し上げて、私の質疑を終わります。

 どうもありがとうございます。

浜田委員長 この際、小川淳也君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也君。

小川委員 民進党の小川淳也です。

 総理初め関係の閣僚の皆様に、天下り問題一本に絞ってお尋ねをしたいと思います。

 これは、補正予算あるいは本予算を提出している政府が実は裏で何をやっているかという、信用にかかわる問題ですから、真摯にお答えいただきたいと思います。

 まず、このデータをごらんいただきたいと思います。

 民主党政権下で、政権交代直後、平成二十二年度でありますが、天下りの総数は半減いたしました、当時、麻生政権から。その後、第二次安倍政権が発足して四年、そのときと比較すると、天下りは二倍に拡大しているわけです。

 安倍総理、安倍政権は天下りに対して極めて対応の甘い政権なのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 今回の文部科学省における再就職規制違反事案は、国民の信頼を揺るがすものであり、あってはならないことと考えています。文部科学省において、全容の解明に向け徹底した調査を行い、再発防止策を講じてもらいたいと考えています。

 国家公務員の再就職について、問題なのは、再就職全部がいけないわけではもちろんないわけでありまして、官民の癒着につながりかねない公務員OBの口ききや、予算、権限を背景とした再就職のあっせん等の不適切な行為であります。

 一方、法令に違反することなく再就職をし、公務部門で培ってきた能力や経験を生かして、活用して社会に貢献していくことは、私は意味があることであると思います。

 このため、密接な関係のある営利企業への再就職の原則禁止にかえて、平成十九年の国家公務員法改正により、各府省による再就職あっせんの禁止等厳格な規制を導入するとともに、監視体制として再就職等監視委員会を設置したところであります。

 現行制度による厳格な監視が機能したからこそ事案が明らかになったものでありますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭するため、山本国家公務員制度担当大臣に対して、同様の事案がないかどうか全省庁について徹底的な調査を行うように指示したところでございまして、今後、準備ができ次第調査をして、その結果を明らかにしたいと思います。

 なお、御質問の中で、第二次安倍政権以降、天下りは増加の一途との御指摘がございましたが、民主党政権下でも公務員の再就職はふえているわけであります。

 具体的には、内閣人事局の公表資料によれば、管理職経験者の国家公務員の再就職の届け出件数は、平成二十二年度に七百三十三件だったものが、平成二十三年度には千百六十六件、平成二十四年度には千三百四十九件と大きくふえているわけであります。安倍政権になってから、直近のデータである平成二十七年に千六百六十八件ということからして、安倍政権になって公務員の再就職が大きくふえているという御指摘は当たらない、このように思います。

小川委員 そうおっしゃると思っていましたけれども、総理、実際天下りを減らすというのは大変なんですよ。本当に大変なんです。役所の方々とのあつれきや、今でも恨まれていることもあると思います。しかし、政権交代直後、やったんですね。二十四年に第二次安倍政権が発足した直後、政務のメンバーと官僚との間にその緊張関係はなかったということですよ。同じ増加でふえ続けたわけですから。だから、甘いんじゃないかと申し上げています。

 今の御答弁にありました制度改正について、これは私は極めて問題だと、当時から野党は主張もしていましたし、十年たって、改めてそれが明らかになったんじゃありませんか。

 今、総理も御答弁になられましたけれども、そもそも、第一次安倍政権が規制緩和するまでは、関係先企業等には二年間行けなかったんですね。しかし、当時、防衛施設庁の大談合、そして空港公団を初めとした国交省の談合事件があって、この国家公務員法の改正に踏み切ったわけです。

 私たち野党は、当時、この二年の再就職規制を五年に強化すべきだと主張した。しかし、当時の安倍政権は自由に行けるようにしたんですよ。この規制を撤廃した。しかし一方で、今総理がおっしゃったように、あっせんをしてはいけません、求職活動をしてはいけませんという行為規制をかけたわけです。そんなもの実効性があるのかという議論が、当時、さんざんありました。そして、OBを抜け駆けに活用する事態になるだけじゃないかという主張もさんざんした。しかし、それを振り切って改正して、今日に至った。十年たって、野党が言っていたとおりになったわけですよ。

 総理、二〇〇七年、第一次安倍政権下で行われたこの国家公務員法の改正は失敗だったんじゃありませんか。

安倍内閣総理大臣 例えば、民主党政権下の平成二十三年の国土交通省の再就職規制違反事案については、国会での指摘に対し、当時の国土交通副大臣らをメンバーとする調査委員会が二度にわたって違反行為はなかったと認定をしたわけでありますが、しかしながら、第二次安倍内閣発足後の平成二十五年三月に再就職等監視委員会が調査した結果、違反行為が認定されているわけであります。

 この再就職等監視委員会がまさに機能したわけでありますが、そうでない、皆さんが政権のときには、それはなかったと。国土交通……(発言する者あり)いや、これは私は今、事実、事実に対しては皆さんも事実に受けとめないと、これはちゃんとした議論ができないと思いますよ。大切なことを今申し上げているんです。

 つまり、今回も再就職等監視委員会が指摘をしたわけでありまして、その指摘に対して対応していく。この監視委員会が機能していない段階での皆さんの調査においては、それはなかったというふうにお答えになったけれども、この監視委員会が機能し始めてからは、なかったことはなかったということが明らかになりました。

 かつ、重ねて申し上げれば、再就職等監視委員会は、自公政権下、平成二十年六月、平成二十年十一月、平成二十一年二月の三度にわたって同委員会の人事案を提示したにもかかわらず、当時の民主党などの反対により国会で不同意になった。不同意になってこれをつくることができなかったということは申し添えておきたいと思います。

小川委員 当たり前じゃないですか。この規制緩和そのものに反対したんだから、それを監視する組織に反対するのは当たり前のことです。それをまず申し上げたいと思う。

 いろいろおっしゃりたいことはあるでしょうが、総理は天下りを根絶すると言ったんですよ、見つけますと言ったんじゃないんですよ。だから、監視委員会が見つけたからこれでいいじゃないかという話にはそもそもならない。根絶するためには規制を強化すべきだったはずだ。十年前の野党の主張は正しかったと今改めて申し上げているわけです。

 でも、これは水かけ論をしてもあれですから、それを指摘した上で個別に聞きますよ。

 今回の文科省の事案は極めて悪質だと言われている。その全容解明に一歩でも近づきたいと思うんですが、最大の問題は、人事課が潜りであっせんをしていたということ、そして、それを水面下に潜らせるためにOBを活用していたということ、そして、虚偽の回答をし、相手方に口裏合わせまで依頼をしていた。悪事の限りを尽くしているわけです。

 これに対して、予算審議が始まる前に党内会議がございました。いずれにしても、このOBの存在が鍵なんですね。文科省から党内会議に回答書が寄せられています。一月の二十四日ですから、三日前のこと。

 仮にR氏としましょう。R氏のあっせん行為の始まりは二十一年七月だと書いてあります、文科省の回答書に。そして、このR氏が代表を務める一般社団法人文教フォーラム、これは二十六年一月に任意団体として設立をし、そして二十八年四月、昨年四月に法人登記されたとあります。しかし、その下、R氏が実際にどう生計を維持していたのか、あるいは文科省としてR氏に給与、謝金等の支払いはないという回答が文書でありました。

 私は、これはおかしいと思ったんですよね。そんな、幾ら人のいい人がいても、ボランティアで十年近く一手に文科省の天下りを引き受ける、そんなはずないじゃないですか。

 まず、お聞きします。

 この一般社団法人文教フォーラムについて、文科大臣は、どのような団体か、きちんと把握しておられますか。

松野国務大臣 冒頭、今回の文部科学省の再就職等規制違反につきまして、国民の文科行政に対する信頼を大変失ったということに関して、深くおわびを申し上げますとともに、省として猛省をし、再犯防止に向けて、私の責任において全力で取り組んでまいります。

 お尋ねの文教フォーラムについての認識でございますけれども、一般社団法人文教フォーラムは、元人事課職員で文部科学省OBであるR氏を代表とし、平成二十六年一月に任意団体として設立され、平成二十八年四月に一般社団法人とされた団体であると承知をしております。

 この文教フォーラムは、国家公務員法を潜脱する目的で運用されていた再就職あっせんの枠組みの当事者であるとして再就職等監視委員会の報告において認定されたR氏が代表を務める団体であります。

 このため、再就職等規制違反の疑いのある行為等の全容の解明に向けて、R氏が代表を務める文教フォーラムの活動状況等を調査することが必要であると考えており、今後、再就職等問題調査班においてこの問題に関しても調査を進めるということでございます。

小川委員 何もお答えになっていないんですが。

 調査を進めるということですけれども、ちょっと次の資料をごらんいただきたいと思うんです。

 これは公開されている資料ですからあえてお示ししますけれども、一般社団法人文教フォーラムのホームページなんです。お名前とお顔は伏せておりますけれども、この方がこの法人の代表者であるR氏です。

 問題にしたいのは、このホームページは、どこまで行ってもこの一枚限りなんですよ。どこをクリックしても何も出てこない。驚きました。事務所が、ここにありますね、郵政福祉琴平ビル。虎ノ門の一等地にあります、文科省から歩いてすぐ。これは事務所を維持するだけでも大変だろうなと思ったわけです。

 少し気になったのが、この次なんですけれども、まさに郵政琴平ビルの三階にこの文教フォーラムはあるわけですが、この写真は私が撮ってきたものです。一般社団法人文教フォーラムと書いてありますね。しかし、その一般社団法人という記載は印字ではなくてシール張りなんです。

 その下に、一般社団法人の部分を拡大してあります。なおかつ、光の偏光を加減して、裏に透ける文字が見えやすいように加工してあります。これ、松野大臣、読めますか。はい。この裏には、シールに隠れて、公益財団法人文教協会と書いてある。恐らく、この一般社団法人文教フォーラムと、公益法人である文教協会は一体のものではないかと想像いたしました。

 そこで、改めてお聞きしますが、この公益法人文教協会とはどのような団体ですか、文科大臣。

松野国務大臣 公益財団法人文教協会は、昭和二十四年の設立でございます。

 これは定款によるものでございますが、同協会の目的は、文教に関する諸課題について調査研究の推進を図るとともに、文教に関する各種情報資料の収集、提供及び相互扶助等の事業を行い、もって文教の振興に寄与することであると承知をしております。

 具体的な事業といたしましては、文教関係の調査研究助成、文教関係の研究会等の開催、全国大学一覧等の書籍の刊行等を行っているものと承知をしております。

小川委員 関連の深い団体でありましょうから、重ねてお聞きしますが、この団体には文科省のOBが複数、役職員として在籍していると思います。それから、関連の文教予算、補助金や委託費、書籍購入等々で巨額の公金が投入されていると思いますが、事実関係について御答弁ください。

松野国務大臣 文部科学省から財団法人文教協会に関する関係でありますけれども、平成二十一年度から平成二十八年度までの間においては、委託費、書籍、雑誌の購入及び補助金の交付により支出が行われております。

 具体的には、平成二十八年度に免許更新制度高度化のための調査研究事業の委託費として約四百万円、文教協会が発刊する全国大学一覧等の書籍、雑誌の購入費として平成二十八年度約五百万円、補助金として、平成二十一年度に大学改革推進等補助金約五千万円、平成二十八年度に教員免許管理システム開発費補助金約五千万円を支出しており、委託費や補助金については公募を行うなど、公正な手続により支出をされていると承知をしております。(小川委員「OBについてはどうですか」と呼ぶ)

 この財団に関し、文科省OBが複数、今私の手元では、四名が理事に入っております。

小川委員 これは典型的な天下り公益法人なんですよね。そういう実態のある非常に大規模な公益法人が存在していることがわかりました。

 本題に戻りますが、この天下りをあっせんしていた文教フォーラム、天下りのエージェント的な役割をしていたわけです。この文教フォーラムと文教協会はどのような関係にあるんですか。

松野国務大臣 文教フォーラムは、文教分野に関する調査研究等を事業内容としており、文教協会の分室に所在しているとの報告を受けております。また、文教フォーラムの事務所の賃料は文教協会が負担し、文教フォーラムの理事長が文教協会の参与についていたと報告を受けております。

 文教フォーラムは、国家公務員法を潜脱する目的で運用されていた再就職あっせんの枠組みの当事者であると再就職監視委員会において認定されたR氏が代表を務める団体であることから、文教協会と文教フォーラムの関係について、引き続き、より詳細を確認し、今後の調査を通じて明らかにしていきたいと考えております。

小川委員 ただいまの文科大臣の御答弁、きのうまで事務的に聞き取った範囲でちょっと図式化しておりますので、ごらんいただきたいと思います。

 この文教フォーラムのR氏については、文科省のOBであり人事に詳しい方だと。しかし、そこに一切の文科省としての給与や謝金等の支出はありません。さっき文書で回答いただいたとおりでした。しかし、よくよく調べると、その背後に別のずぶずぶの公益法人である文教協会が存在をし、家賃を丸抱えし、役員として報酬を払い、全くもって丸抱えだったんじゃないですか。

 したがって、あたかもボランティア精神に満ちたOBが一人いましたというような生易しい話じゃなくて、関連の公益法人が、国家公務員法改正以降だけで約一億五千万の公金を投入しています、それを少なからず財源にして、役員九人のうち四人は全て文科省の元高官ですよ、その人たちと密接に通じて、わざわざ分室まで設けて、そこで天下りのあっせんを専業としてやらせていた。これが実態に近いと思いますが、大臣、いかがですか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

松野国務大臣 まず、先ほど御説明をさせていただきましたとおり、文部科学省から文教協会に対する事業委託また物品購入等に関しましては、第三者有識者等を通じて公正な手続のもとに行われたと承知をしております。

 ただ、委員御指摘の点に関しましては、これは監視委員会からもしっかりとその全容を解明するようにという指示も来ているところでありますし、この文教フォーラムと協会の関係においても、しっかりと今後調査班の調査によって明らかにし、その事実関係を解明してまいりたいと考えております。

小川委員 この件に関して、最後に一点だけ聞かせてください。とにかく極めて巧妙な組織ぐるみなんですよ。いま一度この文科省の回答書をごらんいただきたいと思います。

 一番下の赤線ですけれども、R氏がどのようにして生計を維持していたかについては、文部科学省として関知しておりませんと書いています。なお、R氏は保険会社や大学の顧問の仕事をしていると聞いています、文科省として退職後のR氏に何らかの給与、謝金等を支出したことはありません。

 この三つの内容について、一番下は、うそではないがごまかしがあると思われます。二番目の、保険会社や大学の顧問の仕事をしていると聞いていますに関しては、さっき大臣が御答弁になったように、文教協会の参与だったんでしょう。給料をもらっていたはずですよね。これは知っていて隠したんじゃないですか。

 したがって、どのように生計を維持していたかについては関知しておりません、これは一月二十四日、三日前のことですからね、この時点でこういう文書で回答を寄せたことは、うそだったんじゃありませんか。

松野国務大臣 まず、文部科学省からR氏が代表を務める文教フォーラムに関して支出があったことはございません。文教協会の参与職に関しては、無報酬であったと報告を受けております。

 その上で、委員御指摘のとおり、この問題は監視委員会からも、違法性を潜脱する目的でつくられたシステムが存在するのではないか、これについてしっかりと任命権者である大臣のもとに調査班を置いて全容を解明するようにという指示をいただいておりますので、まさにこの問題も重要な観点だと私も承知をしておりますので、しっかりと調査を進めてまいりたいと考えております。

小川委員 改めてお調べいただきたいと思いますけれども、恐らく、推測ですが、文教協会の中でこのあっせん業務をやっていたんでしょうね。しかし、余りにも機微に触れる情報を扱うために、近くのビルの一室に分室を構えた。そこを任意団体として当初は運営し、以後、法人成りまでさせた。文科省はそれを、恐らくですが、知っていたでしょう。知らずにやっているはずがない。しかし、我が党の説明要求に対しては、うそにならない範囲で、ごまかしにごまかしを重ねて今日に至った。

 虚偽答弁や口裏合わせがこれだけ横行しているわけですから、そういうふうにとられてもしようがない。その前提に立って厳しく真相究明をし、当委員会にも御報告をいただきたいと思います。

 きょうは、もう一点、こういう問題はとにかく組織ぐるみなんですよ。私も、中央官庁にいただけに、文化はわかります。これをどう解決していくか、本当に生易しい問題ではないんですが、その入り口のところだけ、歴史的にどうだったのか、最後にお尋ねして終えたいと思います。

 次の資料は、退職された前川前事務次官が、退職したその日に全職員に対して宛てたと思われる電子メールです。

 非常に、文科行政に対する熱い思いがある一方で、無念の思いもあったでしょう。後悔、反省の思いもあったと思います。が、私が一番気になったのはこの赤線部分なんです。国家公務員法が定める再就職規制を遵守できなかったことは事実であり、文部科学省として深く反省し、しっかりと再発防止措置をとる必要がある。

 ここには前川喜平さん御本人の反省は述べられていない。個人としての反省に言及をしていない。あたかも、組織の都合に詰め腹を切らされた、たまたま当たってしまった、悪いのは私ではない、文科省である。これは霞が関全体について言えることですよ、各大臣。それぞれ聞いておられると思います、それぞれの所管省の実情を。

 きょうは、過去この人事行政に携わった責任者の方々に政府参考人としてお越しいただきました。

 既に、直近の人事課長である豊岡氏については、口裏合わせを隠蔽した疑いで減給二カ月の処分を受けています。先々代の藤原人事課長については停職一カ月ということで、この二人については既に処分がなされています。

 奇妙なのは、この間にある藤江人事課長、平成二十七年の八月から二十八年の六月にかけて人事課長の職務についておられた。監視委員会の報告によれば、虚偽内容のストーリーを作成し、虚偽回答を行ったのは二十八年の五月です。藤江人事課長は、現在、大臣官房審議官、高校、大学の接続等を担当しておられる。いらっしゃっていますね。来ていないの。

 では、ちょっとお聞きしますが、伯井大学入試センター理事、お越しですか。中岡文化庁次長。関研究振興局長。常盤高等教育局長。

 歴代の人事課長で、いや、外部の人はいいですよ、政府参考人にならないんだから。これは、教育行政等々について聞かれる場合、来なきゃいけないんでしょう、国会に。与党の理事、何で反対したんだ。

 委員長、これは、大事な問題について、恐らく過去の真相を知っている当時の人事課長、そして現在も文科省の要職にあるこの方々に委員会にお越しいただきたいと、私は昨夜からお願いした。外部の方についてはやむを得ませんよ。これは理事間のやりとりがあるでしょう。内部の幹部について、出席をさせなかった責任者は誰ですか。

菅原委員長代理 責任者というよりも、理事会で与野党で相調いませんでしたので今の状況にあります。

 したがって、今の発言をもって、再び理事会で協議をいたします。

小川委員 こんな説明、通りますか。(発言する者あり)

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 小川淳也君の質疑に対して、今いろいろな御議論がございました。今とまった時間、繰り越して、この昼からの時間で対応させていただきますので、昼の理事会でもう一度議論をさせますので、ぜひ、ここで終わっていただいて次に進んでいただければと思いますので、よろしくお願いします。

小川委員 では、善処をお願いして、ひとまずおきたいと思います。

浜田委員長 この際、福島伸享君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享です。

 まず、今の同僚の小川委員の質問に対しまして、政府参考人を呼んだのに来させないというのは前代未聞だと思います。

 私も、先ほど問題になりました前川前文部科学事務次官、嶋貫文教フォーラム理事長を参考人でお呼びして、国民的な関心の高い文部科学省の天下り問題について質問するつもりでいました。

 キーは、個人の問題じゃないんですよ。この両名をお呼びした上で、どなたの指示で、どういう経緯でこのような仕事をすることになったのかというのを当人から聞かなければわからない問題なんですよ。来なきゃ議論になりません。

 きょうはこの質問を多く用意しておりましたけれども、参考人でお呼びいただけないということですので、きょうは質問いたしません、この点につきまして。

 そもそも、天下りで、その結果、予算配分がゆがめられているんじゃないかというのがこの問題の本質ですよ。この問題の解明なくして、平成二十九年度予算というのは正当性を持たないんですよ。ですから、本予算の前に、この補正予算の採決の前に、この問題に関する集中審議を、こちらが求めた政府参考人が来るのは当然のことですよ。

 これまで政府にいた、今は省外にいる人の参考人招致も含めて行った上でやることをまず求めたいと思います。委員長のお取り計らいをよろしくお願いします。

浜田委員長 引き続き理事会で協議いたします。

福島委員 本当はこの問題で半分ぐらいやるつもりだったんですけれども、呼んでいただけないということなので、次に、TPPの問題についていきます。

 若干これまでの経緯を振り返らせていただきますが、昨年の十月四日、臨時国会でありますけれども、私の予算委員会の質問に対して、この問題はそもそも、アメリカ大統領選挙でTPPの行く末が大きな争点になっているのに、なぜ無理して審議をするのか、なぜ日本だけ無理して通そうとするのかという話であったわけでありますが、安倍総理は、日本が批准していくと、米側だけがおくれていくのではないか、そうなっていけば米国は、果たしてTPPに入らなくて戦略的にいいのか、当然そうなってくるからアメリカは入ってくる、そんな生易しいことを十月に言い、十月十四日に臨時国会のTPP承認のための審議が始まりました。

 ところが、十一月九日に、TPPからの離脱を宣言していたトランプ候補が勝利宣言。その翌日の間の悪いときにあの強行採決。プラカードを掲げた画像で恐縮でございますけれども、強行採決をした。にもかかわらず、今度は、とまることなく参議院の本会議で審議入り。何でそんな、TPPをやらないというトランプ大統領が誕生したのにここで審議をするのかといったら、我が国が主導することで早期発効に向けた機運を高めていくんだ、米国に働きかけていくんだというような答弁をしております。

 その後、十一月十八日、安倍総理は、ニューヨークのトランプ・タワーでトランプ次期大統領と会談をし、胸襟を開いて率直な会談ができた。当然、TPPの話もしたんでしょうか。ともに信頼関係を築いていくことができる確信を総理がお持ちになったそのわずか三日後に、トランプ次期大統領はTPPからの離脱を表明。

 そして、ことしになって一月二十日、先日でありますけれども、トランプ新大統領の就任式のわずか数時間前に、我が国は、TPP国内手続完了をニュージーランドの事務局に通知いたしました。そのわずか三日後、トランプ大統領は、TPP署名国からの離脱をする大統領令に署名した、このような流れになっているわけであります。

 先日来この委員会で、昨日も総理は、TPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても腰を据えて米側に働きかけていくということをおっしゃっています。本当にできるんでしょうか。

 総理は二月十日にでもトランプ大統領と会うことに向けて最終的な調整をしているということでありますけれども、逆の立場に立ってみたら、トランプ大統領から、アベノミクスというのは円・ドルの為替レートをゆがめるとんでもない政策だからやめなさいと言われたら、総理、どう答えられますか。

安倍内閣総理大臣 私たちが進めている経済政策はそういう経済政策ではございませんから、いずれにいたしましても、今後とも、我々は力強くアベノミクスを前に前進させていく考えでございます。

福島委員 当然そうおっしゃると思いますよ。

 トランプ大統領にしてみたら、TPPから離脱しますということで大きな支持を受けて大統領に当選したわけです。特に、当選する原動力になったのは、自動車産業が集積しているような五大湖周辺の州などのスイングステートで勝ったからこそ当選したんです。

 トランプ大統領にとっては、このTPPからの離脱というのは、メキシコとの国境の壁の建設などと並ぶ、まさに一丁目一番地なんですよ。安倍総理がアベノミクスを吹かすと言っているように、TPPからの離脱というのは、これはトランプ大統領にとって非常に大事なことなのであります。

 フリップはないんですけれども、資料、この一月二十四日に外務省が訳した、トランプ大統領の大統領令の署名でありますけれども、ここのツーパラグラフ目、自分の政権は、個別の国と直接、一対一または二国間で今後の貿易協定を交渉していく考えであると明確に述べております。そして、これらの原則に基づいて、米国がTPPの署名国として離脱し、かつ米国が永続的に、永続的にですよ、TPP交渉から離脱するように指示をする、これは外務省の訳ですけれども、このように書いてあります。

 昨日、総理は、現時点で米国の方針を予断することは差し控えたいと言っていますが、もう予断なんて言っている場合じゃないですよね。予断する前に、もう明確になっているんですよ。幾ら腰を据えてアメリカに働きかけたって、何にも動かないと思いますよ。

 これまでだって、例えば気候変動枠組み条約とかWTOのドーハ・ラウンド、こうしたものはアメリカがノーと言いましたけれども、これはノーと言って、政権がかわって戻ることはないんですよ。アメリカは一度ノーと言ったら、どんな人が大統領になっても変わらないんです。

 USTRのホームページからはもうTPPのページ、膨大な情報がありましたけれども、それは全部消えて、アクセスできなくなってしまいました。

 総理、このような状況のもとで、二月十日でもその前後でも、トランプ大統領に会って、本当にTPPをやりましょうと本気で言うんですか。一体それは何の意味があるんですか。もうそろそろ次のことに頭を切りかえるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 TPPについては、まさにTPPは意義があるからこそ我々は批准をいただいたわけでありまして、国会の意思を示していただいたんだろう、このように思います。

 TPPは、これは単に関税だけではなくて、例えばルールにおいて知的財産が保護される。これはまさに米国にとって利益になることであると思いますし、また、労働や環境の規制もあります。先進国は既に労働や環境に厳しい規制がある中、そうではない国々もこれに従っていくということであり、そしてまた国有企業の競争条件の規律も書いてあるわけでございます。

 つまり、こうしたことをスタンダードにすることによって、RCEPやFTAAPに広がっていく中において、例えば中国をにらんだときにも、こうしたものがスタンダードになっていくということは米国にとっても不利なことではないということ等を我々が話をしていくことは当然のことであろう、このように思います。

 もちろん、米国が、ここまで大統領がおっしゃっているわけでありますから、そう簡単なことではありませんが、しかし、こういう考え方そのものについて米国側あるいは大統領にお話をしていくことは重要であろう、このように考えております。

福島委員 本気でそのようなことをトランプ大統領に言うつもりですか。トランプ大統領はTPPそのものを否定しているんですよ。トランプ大統領、あなたは勉強不足でわかっていないから、自分の方がリーダーの経験が長いから教えてあげるとでも言ってやるつもりですか。私はそのようなことにならないと思いますよ。

 私は、むしろ、そうやってやりたいやりたいと言って、向こうに断られて、一番最悪になることは、日米の二国間の交渉の土俵に上ることだと思っているんですよ。

 もう既に昨日の答弁で総理は、TPPの働きかけを行っていけば、今みたいな総理の働きかけを行うんでしょう、そうすればEPA、FTAは全くできないということなのでは、もちろんそんなことはないわけでございますと。自分たちは何かやりたいんだから、二国間を持ちかければやりますよとでも言うんですか。私は、それは非常に危険なことだと思います。

 今の日米の貿易の状況を見てください。アメリカから日本に輸入するもの、これはもう四分の三が、このブルーのところですけれども、税金がかかっておりません。税金がかかっているのはわずか四分の一。その約半分が農林水産品でありますから、アメリカは当然、日米でやるときには、関税分野では農産品の関税の撤廃を要求してくるでしょう。

 一方、日本からアメリカへの輸出は、三分の一以上は税金がかかりませんが、三分の二ぐらいが税がかかっております。しかし、部品も入れると、ここの中には部品も入っているでしょうから、半分以上は自動車です。二・五%の乗用車、二五%のトラック、そうしたものでありますから、日米でもしやるとしたら、自動車の関税がなければ確かにメリットはあると思いますよ。しかし、考えてみてください。そんな自動車の関税を撤廃するなんて二国間で要求できますか。

 今トランプさんが言っているのは自動車なんですよ、まさに。日本は、関税の問題じゃなくて、不公正な自動車の貿易をやっているからアメリカ車が日本で売れないんじゃないか、そういうことを言っているわけですね。私はこのアメリカの認識は全く間違えていると思いますし、当然、総理も反論すると思いますよ。

 昔、二〇一三年に、私、TPPの調査にアメリカに行ったときに、全米自動車評議会というところのブラント会長に会ってきました。元ミズーリ州知事だった共和党の人です。この人は、TPPに日本が入るなんてとんでもないと言っているんですよね。関税期間の長期化なんて自分が望んだものじゃないし、そんなものをいじることすらできない、日本の自動車市場の障壁解消は自由貿易では対応できない、米韓のFTAも先例にならない、日本の参加には反対だ、USTRに何か意見を言うことすら生産的ではない、こう言っているんですよ。

 そのときも、何で日本ではアメリカ車が走っていないんだと言うから、それは関税も何もかかっていないし、非関税障壁もありませんよ、現にベンツやビーエムはいっぱい走っていますよ、あなたたちが日本人が買いたい車をつくっていないだけじゃないかと言ったら、顔を真っ赤にして、もう時間がないから終わりにすると言って、終えられてしまいました。

 しかし、この自動車の関税を二国間でやって何かできるほど甘くないんですよ。これは二国間でやって、何を一体求めて、やるとすればやるんでしょうか。お答えください。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 自動車については、常に、例えば日米の議論の中ではこれは上ってくるわけでございます。TPPの中においても並行協議等で上ってくるわけでございまして、米国側が、誤解に基づくのか、あるいは戦略的なのか、日本で車が走ってはいないではないかということはよく言うわけでございまして、今、福島委員が言われたような説明を我々はするわけでございますし、事実、例えば日本の自動車輸出、かつては相当量を輸出していたわけでございますが、貿易摩擦を経て、むしろ我々は米国の生産に切りかえ、そしてその中において米国で多くの雇用をつくっているわけでございますし、日本企業全体の投資で八十五万人の雇用もつくっているわけであります。

 投資については、まさに英国に次いで日本が二番目の国である、そういう貢献等も含めて大きな絵を描いていくことが必要でありまして、首脳会談というのはそう単純なことではありませんし、私も相当数会談を経てきているわけでございますから、まさにこれは相手とけんかするということではないだろう、このように思いますし、協定というのはお互いがウイン・ウインにならなければ最終決着はしないということであります。

 関税については、こちら側はもう関税がないという中において、そして非関税障壁もない中において現状があるわけでございます。

 そういうこと等もお互いにだんだん理解を高め合っていくということ、新しく政権ができるわけでありますから、そういう中でさらに信頼関係を構築していくことが大切だろう、このように思います。

 トランプ大統領も、既に公約で述べていることに沿って、TPPについてはそうした宣言をされている。そして、二国間でやっていくということもそうでありますが、しかし、二国間で協定を結ばなければいけないわけでありますから、こちらが一方的に収奪されるような協定というのはどちらにしろ成り立たないわけでございます。これは、まさにお互いがさまざまな交渉をしていく。

 二国間については、これは今までの答弁でも申し上げておりますように、TPPを追求しつつも、豪州とは締結をしましたし、カナダとは交渉中でございます。決して相矛盾するものではありませんが、我々が例えば、米国だけではありませんが、さまざまな国との二国間において、こちらが一方的に譲歩して私たちが得るものがないということにはならないということは申し上げておきたいと思います。

福島委員 果たして、アメリカと二国間をやることにそんなにメリットはあるんですかね。自動車がとれるんだったらメリットがあると思いますよ。私はずっとTPPに否定的でありましたけれども、ただ、TPPという多国間の枠組みで議論することによって自動車のアメリカの関税の撤廃をとることができたというのは、それは大きな成果かもしれません。しかし、二国間でやってできますか。

 これまで、六〇年代の繊維摩擦、七〇年代は鉄鋼、八〇年代は自動車、半導体、スパコン、日米構造協議、さまざまなものがありましたけれども、今総理は、二国間でやるんだからそれは交渉次第だということをおっしゃいましたけれども、これまでずっとずっと要求し続けられて、それに従ってきた歴史なのではないですか。その成功体験があるからこそ、トランプは多国間じゃなくて二国間と言っているのではないですか。(発言する者あり)いや、そうですよ。

 ルール面で見たって、今回のTPPでアメリカから何かルール分野で有利なものをとりましたか。これは甘利前大臣とも何度も議論してまいりましたけれども、甘利さんは一回もそれに対して具体的な答弁をすることはなかった。私は、TPPがだめだから、では日米の二国間協議だという安易な土俵に乗るべきではないと思うんです。

 そういう意味では、きのうの答弁で二国間協議に乗る余地があるようなそぶりを見せたのも、これからトランプ大統領にお会いになるであろう総理としての戦略としては間違いなんじゃないかと思っているんですよ。この点についてはどうお考えでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 貿易については幅広くやっていくというのが原則でございます。幅広く構えていく。いわば、我々、自由貿易の旗手でなければならない、こう思っているわけでございます。

 その中において、日本もさまざまな国と二国間の協定を結んできているわけでありまして、一方的にとられたということはないわけでございます。

 TPPにおいても、多国間ではありますが、日米でも並行協議もしている、事実上二国間でやっているものもあるわけでございますが、しかし、その中でもしっかりととるべきものはとっているわけでございまして、最初からそんな弱気になっていてはやはりだめなんですね。しっかりと腰を据えて、軸足を置いて話をしていくということが大切なんだろう。

 個別のことについて、今、そもそも二国間をやるということは全く決めていないわけでありますから、この二国間を、絶対にこれを排除するのかと言われたから、それはそうではないということを申し上げたにすぎないわけでございまして、その中でしっかりと軸足を据えて我が国の国益を守っていく。これはTPPと同じでありまして、守るべきものは守る、攻めるところはしっかりと攻めていく、国益を最大化していくという最善の道をとっていきたい、この方針には全く変わりがないということであります。

福島委員 いや、問題は、TPPを、交渉が終わったのを破棄してまで二国間をやると言っているトランプが相手だからこそ、まさに交渉をやるためには最初の段取りが大事なんですよ。こっちから、物欲しい、そうした顔をしてはいけないと思うんです。

 私は、まず……(発言する者あり)ちゃんと聞いてくださいよ。まず、アメリカに、TPPに入らないその罰というかデメリットというのを実感させなきゃだめだと思うんです。我が国が、TPPがだめだったら二国間の道もありますよなんということを最初から言ったら、向こうの思うつぼじゃないですか。きのう言っているじゃないですか。その道もあるとさっき総理は言ったじゃないですか。

 このTPPを始めるに当たって、さまざまないわゆる前払いというものをやってまいりました。アフラックの商品を郵便局で売るとか、あるいは日米間で自動車に関する二国間協議も行ってまいりましたし、食品添加物とか残留農薬基準などの話も二国間で、いわゆる並行協議と言われるものもやってきました。あるいは、既にTPPでも日米二国間でサイドレター、附属書、さまざまなものを結んでおります。

 まず総理がおやりになるべきは、トランプ大統領に会ったら、これらのTPP交渉にまつわるこれまでの日米交渉の結果は、TPPに入らないなら全部チャラですよということをまずすべきではないですか。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 私もおっしゃっている意味がちょっとよくわからないんですが、いずれにいたしましても、これから首脳会談を行っていくわけでありますから、首脳会談で私がどう言うかということを今ここで世界に向かって、もし例えば交渉するのであれば、ここでまさに公表することこそ非常に拙劣な姿勢だと思うわけでございまして……(発言する者あり)済みません、ちょっと、たまには静かにしてくださいよ。今、宮崎さんと私は議論しているんじゃないんですから、時間の無駄ですから、ちょっとやめていただきたいと思います。

 そこで、大切なことは、しっかりと私たちの姿勢があるわけなんですね。姿勢について彼らに示していくことが必要です。それはそう簡単に、例えば今言ったルールについて言って、そこですぐわかりましたということには、もちろんそう簡単なものではありませんが、しかし、これを主流にしていくということが、まさに普遍的価値を共有する米国にとっても日本にとっても大きな利益であることは間違いがないわけでございます。

 そういう中において、いわば、それぞれの国が力に物を言わせてさまざまな制度をつくっていくという状況は世界にとって不幸なことは事実でありますから、その事実をしっかりと確認しながら、我々は公正でフェアなルールを広げていくことの必要性と、それをまさに日本と米国が示していくことの重要性を説いていくのは当然のことではないか、このように思います。

 それは、相手がただ単に簡単に受け入れる、そういう簡単な交渉というのは、米国以下、どこでもないんですよ。それをいかになし得るかということがまさに我々に問われているわけでございまして、その中で私たちも努力を積み重ねていきたい、このように考えております。

福島委員 私がこの議論をするのは、昨日、総理がこの委員会で、TPPがだめだったら二国間もあるかもしれないと言ったからなんです。今の総理の答弁は、引き続き多国間を求めていくということですよね。アメリカにもその多国間への参加を求めていくということですよね。その一方で、トランプ大統領は、大統領令で明確に二国間でやると言っているわけですよ。だからこそ、その土俵に乗らない強い姿勢を見せるべきではないかと私は申し上げているんです。その思いはどうですか、総理、言っているという声があったので。

安倍内閣総理大臣 ですから、これは、米国はいわば大統領令でも示しているわけでありますから、これはそう簡単なことではないというのは、認識は同じくしているのではないかと思います。その中でも粘り強く働きかけをしていく。この姿勢は不動の方針でありますし、我々は、批准しているからこそこの不動の方針を貫くことができるわけであります。あのとき批准していなければ、日本自体がふらふらしているということに、はなからなってしまうわけであります。

 それは、まさに私たちが批准したからこそこの不動の姿勢を保ち得ることができますし、先ほど言いました知財の問題もそうですし、労働や環境の条件もそうですし、国有企業に対する制限もそうです、それを日本はちゃんと認めている。しかも、国会でも意思を示したということの重要性を私たちは手に入れているんですよ。あれをやっていなければ、それは手に入れていないわけであります。それは、まさに十二カ国、当時のあの米国政権も含めていわば締結というか調印をしたということ、合意に至ったということの事実を持った、そして国内手続をやったということの重みの上に話をしていく。

 しかし、そこで、御質問があったのは、では二国間を絶対にやらないということかと言われましたから、それは自動的に絶対排除するものではないということをお答えした中において、例として豪州の例あるいはカナダの例も挙げました。しかし、カナダと豪州は一応、まだカナダは国内手続はやっていませんが、豪州は、国内手続、いわば批准自体は必要ないんですが、関連の法案がまだ残っているという状況になっているわけでございまして、我々が国内手続をしたことに対して敬意を表している、それぞれの国々は日本の強い意思に敬意を示しているのは事実でございます。

 その中において、いわば米国がどういう考え方を持っているかというのは、これは直接聞いてみないと私たちもわからないわけでありますから、まず直接話を聞かなければいけない、こういうことでございます。

福島委員 日本が先に批准をしたと偉そうに言っていますけれども、その批准をした協定自体が米国の利益にならないからトランプは二国間と言っているわけですから、そこから二国間をやればさらに深掘りされることになるわけでありますから、批准をしたことが何かアメリカに対して有利になるということは全くないということは申し上げておきたいというふうに思っております。

 いろいろな二国間の道もあるということですので、日本は、この色つきのところは、オレンジ色のところはTPP交渉参加国、緑色のところはTPPに参加していない国でありますけれども、多く二国間の協定を結んでおります。

 問題は、中国、韓国、台湾といった近隣の貿易額が多いところと二国間の協定が結べていないこと、あるいは、それぞれ多くの国と個別にFTA、EPAを結んではおりますけれども、それぞれ自由化率がばらばらであったり、あるいはルール面でもばらばらであるということが問題であると思いますので、私は、多様な自由貿易のこれからのあり方というのがあると思うんですよ。TPPに限ることなく、トランプ新大統領が誕生したというこの契機をもって、TPPだけにとらわれない、アジアでの自由貿易のルールづくりというものを日本は目指していくべきだというふうに私は思っております。

 そのことを指摘して、次の問題に移ります。

 総理は、平成二十五年九月二十五日、ニューヨーク証券取引所でこうおっしゃいました。もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました、TPPをつくるのは歴史の必然です、そう言ってTPPをやったわけでありますが、もう一つ、国境や国籍にこだわらない政策をおやりになろうとしております。それは、日本版高度人材グリーンカードというものでございます。

 今、一月十八日から法務省で、高度人材に一年で永住権を許可する日本版高度外国人材グリーンカードを創設しますということで、このパブリックコメントをやっております。これは、外国人材の永住資格に要する在留期間を現行の五年から一年に大幅短縮して、世界最速のグリーンカードを創設する、そうした制度であります。

 資料九というものをごらんになっていただければと思います。パネルはございません。

 もう既に、平成二十四年から高度人材ポイント制度というものが行われております。そして、平成二十七年からは、高度専門職一号、二号制度ということで、一号ですと在留期間の五年が与えられます。そして二号になる。これは、この五年間のうち三年以上活動を行って二号になると、在留期間無期限の付与ということで、事実上のグリーンカードが与えられる、そうした制度ができております。つまり、今の日本は最短三年で在留期間無期限という資格を持つことができるというものを、今回それを一年に短縮するというものであります。

 この高度人材になるためには七十ポイントというポイントをとる必要があるんですが、その次のページをめくっていただきたいんですけれども、例えば高度学術研究分野ですと、博士号で三十ポイント、年収が一千万円以上だと四十ポイントですから、これだけでもう七十ポイントで、高度人材として五年間の在留資格、三年いれば在留期間が無期限になる、そうした資格が与えられます。

 在留期間無期限と永住権の違いは、そんなに違いはないと私は思うんですね。在留期間無期限でも家族を呼び寄せたりもできます。ただ、前者は、在留期間無期限というのは、ビザの仕事をやっていなければいることはできません。ところが、永住権になれば、その後さまざまな仕事についても永住できるというのが違いだというふうに思っております。

 そこで、この制度の運用を見てみますと、高度人材の認定の推移、二十四年度からですけれども、このオレンジが中国人です。この人材で入っている者の圧倒的多数が中国からの方であります。決して中国からの方が高度じゃないとは申し上げません。しかし、高度な人材を入れるといって、これだけ多くの中国の方が入ってくるのは、中国人がほかの国の人に比べて圧倒的に優秀であるということでなければ、何か高度人材と別の仕掛け、からくりがあるんじゃないかと考えざるを得ません。

 二〇〇九年の日経新聞では、中国の博士号でも三十ポイントが得られる、その博士号は、例えば軍事系の大学とかそういうところでも簡単に取れる、コネでも取れる、アメリカの三流の大学の基準で評価して九九%がはねられるような人も博士号が与えられるというふうに言われておりまして、ある意味、移民とまでは言いませんけれども、永住外国人の抜け道になっている可能性もあるんですよ。

 最近の報道では、こうしたビザで入ってきた人が、高度医療に入るのに、家族を呼び寄せて、日本の国民の健康保険を多く使っているというような報道もあって、それのコンサルタントとかそういうのもいると言われております。

 この制度をやってみて、本当にこれは高度人材を受け入れる制度になっていると言えるかどうか、その点についての御認識をお伺いしたいと思います。

金田国務大臣 福島委員の御指摘についてお答えをいたします。

 日本再興戦略二〇一六、去年の六月に、高度外国人材の永住許可申請に要します在留期間を大幅に短縮する、ただいまお話のあった日本版高度外国人材グリーンカードという制度を創設することとされたことを受けて、今回そうした見直しを考えておるわけであります。

 これは、日本経済の成長への貢献が期待されます高度な技術や知識を持った外国人材を我が国にさらに呼び込む効果を期待できるという認識のもとに行っているものでありまして、御承知のとおりでございますが、高度人材に認定されるためには学歴や職歴、年収といったポイントが一定点数以上となる必要があるわけでありますが、一年の在留期間で永住を認めるのは、高度外国人材の中でも特に高度の専門的な能力を有する者なのであります。

 例えば、さまざまな専門性を持つ、技術を持つITの分野、あるいは再生医療の分野、人工知能の分野、さまざまな分野がございますが、そういう方たちをチェックの上、している。

 ですから、高度人材として一年在留すれば当然に永住許可を受けることができるわけではなくて、一般の許可申請と同様に、適切に審査を行う。

 その際に、今御指摘があった、中国の方を特に優遇しているとかそういうことではありませんで、公平な運用に心がけているところでありますし、ただ、ポイントに加えて、入管の実務もその上にしっかりと行うということが前提になっていることをお話ししたいと思います。

福島委員 高度な人材かどうかという質を見ているんじゃないんですよ。学歴で、博士号であれば無条件に三十ポイントなんです。年収一千万であれば無条件に四十ポイント。これで七十ポイントで対象です。

 今回、一年にビザがなる。あと、年齢要件で、例えば三十四歳以下だと十ポイントですから、三十三歳でどこかコネで博士号を、えたいの知れないのを得て、一千万円以上をもらって経営者ですときたら、これは形式的に認められてしまうんですよ。

 なぜ、一年の永住権にしたら高度な人材が来るんですか。経産省の調査でこの永住権の問題が障害で来ないというようなことを紹介して、これが必要だと言っているんですけれども、その調査のもとになるものを見ていると、フリーランスで世界各国を飛び回っている優秀な外国人材にとって必要なのは、永住権ではなく、長期滞在できるビザや複数回自由に出入国できるビザ。高度な能力を有する人材ほど定着せず、グローバルな流動性が高い。まさに優秀な人はあちこちの国に行くんですよ。一年で永住権を与えますといって集められる人間は、優秀な人が集まるんじゃなくて、一年で取れる永住権を目当てで来る人しか集まらないんですよ。

 総理は、世界最速級とか、そういう世界最高とか世界の真ん中で輝くとかおっしゃるのがお好きだけれども、実際やっているのは全く別のものだ。一体この制度は誰のためにやっているのか、何のためにやっているのか。世界最速というキャッチフレーズのもとに、全く違うものになっているんじゃないか。

 私は、安倍総理は日本を取り戻すとおっしゃっていますけれども、逆に日本を取り壊しているんじゃないかと思わざるを得ない。そうした状況だと思いますよ。TPPにしても、この高度外国人材にしても、キャッチフレーズは躍っているんですけれども、その中身を見ると、全くそういうふうになっていないものが多いわけですよ。

宮下委員長代理 福島委員に申し上げます。

 時間がもう終了しておりますので、よろしくお願いいたします。

福島委員 はい、終わりますよ。

 だからこそ、この国会、総理は、アベノミクスで効果が上がった、効果が上がった、そうおっしゃっておりますけれども、そこをきちんと見なければならないし、天下りの問題、TPPの問題、こうしたアベノミクスの問題、さまざまな問題をさらに議論する必要があると思いますので、きょうこの補正予算を採決するなどというのは言語道断であるということを最後に申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長代理 この際、申し上げます。

 小川淳也君の質疑につきましては、午後に譲ることといたします。

 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、まず、教育費の負担軽減について伺います。

 総理は、施政方針演説で、どんな家庭に育っても、誰もが希望すれば大学に進学できる環境を整えなければならない、こうおっしゃいました。

 現状はどうなっているか。国立大学の初年度納付金は八十一万七千八百円、私立大学は百三十一万円、先進国の中で高等教育への公財政支出が最低クラスという、長年の自民党政治によって高等教育の家計の負担が飛び抜けて重い国になっております。そのことで、経済的理由で大学進学を諦めざるを得ない人、中退せざるを得ない人も少なくありません。総理はこういう現状を改善するということですね。

松野国務大臣 委員御指摘のとおり、意欲と能力のある学生が、その家庭環境にかかわらず、しっかりとした学習機会を得るというのは極めて重要なことであると考えております。このため、文部科学省では、これまでも授業料の減免の充実や奨学金制度の充実に努めてきたところであります。

 平成二十九年度予算においては、私立大学の授業料減免について、対前年度十六億円増の百二億円を計上し、減免対象人数を四・八万人から五・八万人、一万人増員しております。また、国立大学の授業料減免については、対前年度十三億円増の三百三十三億円を計上し、減免対象人数を五・九万人から六・一万人に増員したところであります。

 さらに、来年度からは、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにするとともに、返還不要の給付型奨学金を創設することとしております。

 文部科学省として、授業料減免や大学等奨学金事業の充実に今後ともしっかり取り組みまして、経済的理由により大学進学を諦めることがないよう、大学段階における教育費の負担軽減に努めてまいります。

宮本(徹)委員 減免制度や奨学金のお話があったんですけれども、学費そのものが上がっているという問題についての指摘を私はしたわけですよね。

 私立大学の授業料は毎年上がり続けております。この四半世紀、デフレの時代だったわけですが、この間にも二十万円上がっております。

 なぜか。私学助成を減らしてきた。かつては私立大学の経常経費の二九・五%を支えていましたが、来年度予算はとうとう一〇%を割るということです。安倍政権のもとでも私学助成が減らされました。

 奨学金制度の拡充、給付制奨学金も国民の願いですけれども、一方で、授業料はどんどんどんどん上がっていく。こういう状況をつくったままだったら、これはマッチポンプじゃないですか。

 総理、やはり授業料そのものを引き下げていく、私学助成も抜本的に拡充していく、こういうところまで踏み込む必要があるんじゃないですか。どうですか。

松野国務大臣 大学授業料の減免に関しましては、総合的に検討をする必要があると考えております。これはもちろん財源との問題を考えなければいけない問題でありますし、財源となりますと、当然のことながら国民負担の問題がございます。

 こういった観点から、総合的に勘案し、今後検討を進めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 総理がなぜ答えられないのか全くわからないんですけれども。

 財源財源と言いますけれども、その気になれば、財源はどこからでもとってこられますよ。やる気の問題ですよ。

 今、学生の二人に一人が奨学金を借りる状況になっています。親の所得の低下もあるわけですけれども、デフレでも授業料はどんどん上がってきたという状況があるわけですよね。誰もが大学に希望を持てば行ける状況にしたいと、すると総理はおっしゃったんだから、高過ぎる授業料に手をつけるべきですよ。どうですか、総理。

宮下委員長代理 松野文部科学大臣。

宮本(徹)委員 もういいです。総理が答えないんだったら、いいです。同じ質問ですから、同じ質問に二回答えられても時間がなくなりますから、委員長、いいです。(発言する者あり)

宮下委員長代理 では、質問を続けてください。

宮本(徹)委員 今回、ようやく給付型の奨学金が具体化されるという状況になりました。果たしてこれで、誰もが希望すれば大学に進学できるようになるのか。

 パネルを見ていただきたいと思いますが、一学年二万人の規模だ、全学生の中で受給できるのはわずか二・五%だ、対象となる家計基準は住民税非課税世帯まで。政府の試算では、家計基準を満たす生徒は一学年十五万九千人、そのうち大学進学者は六万一千人。にもかかわらず、給付型奨学金の対象者は二万人。住民税非課税世帯の進学希望者でも受給できるのは三分の一以下と、大変狭き門になっております。

 松野大臣にお伺いしますが、これは一体どんな条件で誰が選ぶんですか。

宮下委員長代理 松野文部科学大臣。(発言する者あり)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 松野文科大臣。

松野国務大臣 失礼いたしました。

 給付型奨学金の支援対象は、経済的理由により極めて修学に困難がある住民税非課税世帯の学生で、学習状況、進学意欲等において特にすぐれた学生としております。

 学習状況や進学意欲については、具体的には、各高校等が定める基準に基づき判断をし、推薦をしていただくことを想定しております。

 成績基準の目安等は、日本学生支援機構において定めるガイドラインにおいてお示しすることと考えております。

 実際の推薦に当たっては、生徒を一番近くで見ている校長や教員が進学の意欲や目的等の観点もあわせて評価を行った上で、各高等学校が責任を持って対象者を選定することとしております。

宮本(徹)委員 それで、学校が推薦する、そのために、各学校に何人推薦枠があるのかという推薦枠をあらかじめ配分するということなんですね。

 松野大臣にお伺いしますが、学校推薦の基準を満たす高校生が学校に割り当てられた推薦枠より多くいたらどうするんですか。

松野国務大臣 各学校は、無利子奨学金よりも高い水準となるように定めた、日本学生支援機構が示す学力・資質基準等に関するガイドラインを参考としつつ、各学校に割り振られた推薦枠の中で推薦することとなります。この推薦を得ることが、給付型奨学金を受給する対象者を選定する基準となります。

 給付型奨学金の支給が受けられない学生については無利子奨学金の貸与を受けることが想定されますが、無利子奨学金については平成二十九年度から、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が貸与を受けられるようにするとともに、返還負担を大幅に軽減する所得連動返還型奨学金制度を導入するなどの充実を図っております。

 給付型奨学金制度とあわせて無利子奨学金等を活用し、学生等の経済的負担の軽減に全力で取り組んでまいります。

宮本(徹)委員 つまり、学校の推薦基準を満たす生徒が推薦枠より多かったら、無利子でやってください、無利子奨学金で我慢してください、こういう話なわけですよ。

 同じ程度の経済状況、学校の成績も同じぐらいの人がずらっと並んでいたらどうするんですか。学校の先生も大変な苦しみになりますよ、これは。基準を満たしても給付制奨学金をもらえない人がいるというのが今回のこの制度なんですね。

 こんな小さな規模では、総理、進学を断念せざるを得ない人はなくならないんじゃないですか。これは総理が答えてくださいよ。

安倍内閣総理大臣 今まで、まさに今、宮本委員がおっしゃったように、これは、果たして不公平に、どこで線引きするんだというのが大きな議論でありました。その中で、給付型奨学金に対しては残念ながらずっと一歩前に踏み出すことができなかったわけでありますから、ここで、いかに限られた予算の中で私たちは給付型奨学金を始めることができるかということを我々は判断したわけでございます。

 確かに、今、宮本委員がおっしゃったような御批判もあると思います。しかし、その中で、まずは限られたこの予算の中において給付型奨学金を私たちは始めていきたい。そして、これをまずは安定的に運用し、しっかりと後押ししていくという効果を見定める中において、しっかりと財源を確保する中で我々はふやしていきたい、このように考えております。

宮本(徹)委員 批判があるけれども財源がないから我慢しろというのは、総理が施政方針で言われた、誰もが希望すれば大学へ行けるという話と全く違いますよ。

 そして、住民税非課税世帯という収入基準も大変狭過ぎます。例えば、夫婦に高校生の子供一人という世帯でいえば年収二百二十一万円。

 大学進学率は収入によって違います。年収一千五十万円以上の層では六三%。年収四百万円以下の層では二八%。二倍以上違うわけですね。これが現実なわけですよ。希望する人が誰でも行けるようにするには、やはり収入要件はもっと広げるということが必要です。

 ちょっとパネルを見ていただきたいんですね。総理も世界と比べてほしいと思います。

 給付制奨学金の受給率、学生の中でどれだけの人が受けているのか。一〇〇%の国もあります。アメリカ四七%、イギリス四八%、フランス三四%、ドイツ二五%、カナダ三五%、お隣の韓国三二%。日本は今度の規模でいえば二・五%ですよ。ちなみに、この中で日本よりも低い受給率の国がありますが、こういう国は全部学費は無料です。

 総理、給付制奨学金はもっと多くの人が受給できるように抜本的に拡充しなきゃいけないんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 給付型奨学金についても、これは財源を確保して進めていくことが重要でありまして、我々は、現在、私たちの経済政策によってしっかりと税収を確保することができる中において、まさに成長と分配の好循環を回していくという考え方の中において給付型奨学金という判断をしたわけでございます。その中で、財源が限られている以上、どこかで線を引かざるを得ないわけでございまして、御理解を賜りたい、こう思う次第でございます。

 しかし、今回、私たちが給付型奨学金をつくることによって、数が少ないのではないかという御批判がございますが、しかし、その方々は間違いなく、これがなければ進学を諦めることになったかもしれない子供たちが進学できるようになってくるということは事実でございます。

宮本(徹)委員 財源財源と言いますけれども、私は、やる気の問題だと思いますよ。

 東京都は、私立高校の授業料の無償化を発表しました。父母や生徒の皆さんの運動と一緒に、共産党都議団が求めてきたものです。対象は年収七百六十万円まで。東京都ができて他の先進国ができることがなぜできないのか。

 教育を受ける権利というのは憲法に書かれているわけですよ。七十年もかかって、憲法に書いてあることが実現できていない。私は、改憲を唱える前に、憲法に書いてあることをまず実現することが総理の責任だということを指摘しておきたいというふうに思います。

 給付額についてもただしたいと思います。

 パネルをちょっと戻しますけれども、政府のペーパーを見ますと、国立自宅生は二万円、国立自宅外と私立自宅は三万円、私立自宅外は四万円。この額は、非課税世帯の学生の生活費を踏まえて算出したということです。ところが、この給付額の後ろに「国立大学は授業料減免制度を踏まえ、給付額を調整」と書いてあるんですね。

 松野大臣、幾ら給付額を調整するんですか。

松野国務大臣 国立大学においては国費による授業料免除制度が整備されていることから、免除を受けた国立大学生については、給付額の減額を含め調整することが公平性の観点からも適当であると考えています。

 具体的には、自宅生については、月額二万円のところ、支給しないこととし、自宅外生については、月額三万円のところ、月額二万円とすることを検討しております。その上で、給付型奨学金の対象者が国立大学に進学する場合には原則授業料の全額免除を行うこととし、そのことが進学前の段階であらかじめ予見できるようにすることが望ましいと考えており、今後、関係団体と調整をしていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 つまり、国立大自宅生の給付額は実際はゼロ円なんですね。メディアに流れているものは、全部二万円で流れていますよ。ところが、実際は一円も出ない。下宿生で二万円ということですよね。

 給付制奨学金の対象となる住民税非課税世帯というのは、国立大学でいえば全員が授業料減免の対象に既になっております。つまり、国立大自宅生は本当に誰一人もらえないという話ですよ。これは羊頭狗肉、看板に偽りありじゃないですか。

 経済的に厳しいから国立大学を選んで授業料減免を受けている方はいっぱいいらっしゃいます。

 私、先日、生活保護家庭出身で、都立高校から都内の国立大学に進学したAさんから話を伺いました。大学に進学して、Aさん分の生活保護費はなくなりました。東京都の児童育成手当も終了しました。八万円収入が減ったと。Aさんの場合は、民間の給付制奨学金を幸い受けられたから進学できた。しかし、民間の給付制奨学金なんて受けられる方は極めてまれな例ですよ。

 そうすると、こういう生活保護家庭で頑張って国立大学に進学しよう、そういう方の後押しには今度の制度は何一つならないという話じゃないですか。何の希望も見えないですよ。

 総理、授業料減免を受けたら給付額を一律にゼロにする、減らす、こういうのはやめるべきじゃないですか。

松野国務大臣 高等教育における教育費負担の軽減については、従来から、意欲と能力のある学生が経済的理由により進学を断念することがないよう、奨学金制度や授業料免除などの各種方策を組み合わせながら、総合的に施策を講じてきたところであります。

 国立大学の授業料免除は年額五十四万円相当であり、これを受ける学生にさらに今回創設する給付型奨学金を支給することに関して、その一部または全部について、給付型奨学金を受けていない他の者に回す方がよいのではないかといった意見もあり、現在検討しているところであります。

 制度の詳細が固まり次第、速やかに公表させていただきます。

宮本(徹)委員 総理、生活保護世帯の大学の進学率というのは、四年制大学でいえばわずか一九%ですよ。今回の制度では、経済的理由で進学を諦める人というのは絶対なくなりません。どんな家庭状況に育っても希望が持てる制度にすべきです。

 それで、総理は今回、給付制奨学金をやっと始められたんだと自慢されますが、財源を見ると、およそ自慢できるものじゃないんですね。給付制奨学金制度の財源をお伺いしたら、生活福祉貸付金の縮小のほか、現在の奨学金制度の見直しから出すという話なんですね。

 松野大臣、これは具体的にどう見直すんですか。

松野国務大臣 給付型奨学金制度の導入に向けて財源を用意するに当たり、その一部については、奨学金体系を見直すことで捻出することとしております。

 具体的には、今般の奨学金の抜本的見直しのもと、平成三十年以降の本格実施を見据え、所得に応じた新たな無利子奨学金貸与上限額の設定、博士課程進学の後押しのための大学院業績優秀者返還免除制度の見直し等を行うこと等を想定しております。

 こうした見直しを踏まえ、中期的に安定的な財源を確保することにより、給付型奨学金制度の確実な運用を図ってまいります。

宮本(徹)委員 今お話がありましたように、給付制奨学金制度をつくるために、今ある奨学金制度をいじるわけですよね。

 大学院生の奨学金返還免除制度を縮小するというお話がありました。総理、これは本末転倒じゃないですか。大学院生の四人に一人が奨学金を五百万円以上借りています。一千万円にもなる人もいます。

 先日話を伺った大学院生のBさん。奨学金月八万八千円とバイトで生活費を賄い、昼食は毎日カップラーメンだ、若手研究者のポストが減る中で一体将来返せるのかと、不安の中で研究しているというお話でした。

 今、研究者志望の学生が減っております。こんな中で大学院生の奨学金の返還免除制度を縮小したら、いよいよ研究者離れが進んで、私は日本の未来にとっても大変な損失だと思いますよ。

 それからもう一点、無利子奨学金の借りられる金額について、所得に応じた制限をかけるというお話がありました。

 私、先日、学生のCさんにお話を聞きました。六人兄弟だ、親はそれなりの収入はあるけれども、無利子奨学金だけでは足りないので有利子奨学金も併用しているというお話でした。今でも、無利子奨学金だけでは足りなくて、有利子奨学金と併用されている方はたくさんいらっしゃいます。

 松野大臣にお伺いしますが、無利子奨学金を受給している方のうち、どれくらいの方が有利子奨学金も併給していますか。数だけでいいです。

松野国務大臣 直近、平成二十七年度の実績において、無利子奨学金の貸与を受けた約四十八万七千人のうち、有利子奨学金の貸与をあわせて受けた方は約十一万二千人です。

宮本(徹)委員 つまり、無利子奨学金を借りている方のうちでも、無利子奨学金だけでは足りないと、有利子奨学金も借りている方が四分の一に上っているわけですよ。

 今度制限をかける無利子奨学金は、借りている家庭に高額所得者はいないですよ。もともと制度の対象外です。親が出す余裕がないから、有利子奨学金もあわせて借りている。これは、無利子奨学金で借りられる額を減らしたら、有利子奨学金で借りる額をふやさざるを得なくなるわけですよね。総理自身が進めてきた、奨学金は有利子から無利子へ、この流れとも逆行するじゃないですか。

 総理、経済的に困っている人のための給付制奨学金の財源を捻出するために、今ある奨学金の財源からつくろうとすると、新たに困る学生、院生を生み出すことになりますよ。タコが足を食うようなものですよ、これは。こうした財源の捻出方法は、総理が施政方針で言われた、誰もが希望を持てば大学に行ける、こういう話とは私は全く違うと思います。

 総理、給付制奨学金の財源づくりのために大学院生の奨学金制度を縮小することや、あるいは借りられる金額を制限する、こういう方法をやめて、ほかの方法で財源をつくるべきじゃないですか。

松野国務大臣 まず、先ほどの貸与の上限設定についてでございますが、それは、その家庭の家計収入に応じてということであることを加えさせていただきたいと思います。

 奨学金制度については、給付型奨学金の創設、無利子奨学金の大幅な拡充など、今回、抜本的な制度改正を行うことを踏まえ、奨学金制度全体を見直したところで、より低所得の方へ支援を手厚くする観点から、現在、制度見直しの検討を行っているところであります。

 こうした見直しによりまして、奨学金制度全体として効果的に教育費の負担軽減がなされるよう、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。

宮本(徹)委員 文科大臣に答えさせるのは酷ですよ。文科大臣に答えさせたら、文科省の中から財源をつくりましょう、探しましょうという話にしかならないじゃないですか。全体を見渡して、財源をどこからどこへ持ってくるとできるのは総理ですよ。(発言する者あり)財務大臣は総理の指示のもとでやるんでしょうが。

 今議論してまいりましたけれども、どんな家庭に育っても希望すれば大学に進学できる環境と総理がおっしゃいますけれども、この中身がこれでは私は極めて不十分だと思いますよ。小さなパイをめぐって困っている人に譲り合いを求める、これでは私は未来が見えるはずがないと思います。

 財源は、やる気になれば幾らでもありますよ。安倍政権が行った、黒字の大企業への法人税の減税は四兆円。大学授業料の無償化をやってもいっぱいおつりが来ますよ。学費の無償化、給付制奨学金の抜本的拡充へ真剣な努力を求めて、次に、社会保障についてお伺いしたいと思います。

 経団連の榊原会長の年頭のメッセージを読むと、冒頭にこう書いてあります。政権基盤が安定している今だからこそ、社会保障制度改革や財政健全化、抜本的な規制改革など、国民の痛みを伴う改革に真正面から取り組むべきである。

 ひどいなと思いました。これは総理も同じ認識ですか。

安倍内閣総理大臣 榊原経団連会長が御指摘のような意見を表明されていることは承知をしております。

 社会保障に関しては、少子高齢化が進展する中で、社会保障制度の持続可能性の確保と財政健全化を同時に達成する観点から、社会保障と税の一体改革に取り組んでいます。

 今回の医療、介護の見直しは、社会全体が高齢化し、医療費、介護費が増大する中で、制度を持続可能なものとし、次世代に引き渡していくため必要なものであります。このため、高齢者の方々にも負担能力に応じた御負担をいただくものでありまして、社会保障制度を持続可能なものとして次世代に引き渡していくことは安倍内閣の重要な使命であります。

 所得の低い方々などにはきめ細かな配慮を行うことは当然でございますが、そうしたことも含めて、十分な説明を行い、国民の御理解をいただいていきたいと考えています。

宮本(徹)委員 総理は持続可能な制度だと言いますけれども、制度だけ持続して高齢者の暮らしが持続可能でなくなれば、これは本末転倒だというふうに思いますよ。高齢者の暮らしが持続可能でなくなれば、経済面でも介護の面でも現役世代が支えるしかないということになります。

 大体、経団連の献金を受けて、経団連の言うとおりに国民の痛みを伴う改革を進めていく、これが今度の予算案になっているわけですよ。医療費も介護費用も負担増、後期高齢者の保険料も軽減制度がなくなります。

 私、市民の皆さんからよくこういう声を聞くんですよ、政府は老人と病人は早く死んでほしいと思っているのねと。総理はこういう声を聞かれたことはないですか。

安倍内閣総理大臣 今、老人と病人は早く死んでほしいと政府は思っているのねという声をよく聞かれるということでございますが、皆さん、聞いたことがありますか。

 政府は思っているなんという声は我々は聞いていないわけでございまして、安倍内閣は一億総活躍社会の実現を目指しているわけでありまして、高齢でも元気で社会参加が続けられるようにしていく、病気になっても適切な治療が受けられ、また意欲があれば仕事も治療もしながら、あるいは仕事も続けたいと思う方がおられれば両立が可能になる、そのような社会を実現するためにさまざまな施策を進めているわけでございまして、今回の医療、介護の見直しでは高齢者の方々にも負担能力に応じた御負担をお願いしていますが、所得の低い方々などにはきめ細かな配慮を行うこととしております。

 社会保障・税一体改革においては、所得の低い方々の保険料軽減などの充実を図っていくこととしております。

 また、御負担をお願いするばかりではなくて、御負担に見合うよう、医療、介護のサービスを効率的で質の高いものとしていくことが必要であります。疾病の予防や介護予防の取り組みやビッグデータの活用を推進して、効率的で満足できる医療、介護の提供体制の確立を目指しているわけでありまして、むしろ私たちは、高齢者の皆さんにはいつまでもお元気で活躍をしていただく、人生を楽しんでいただけるような、そういう日本をつくっていきたい、このように考えているところでございます。

宮本(徹)委員 批判の声を聞いたことがないというのは驚きですね。本当に、町を歩いて多くの皆さんの声を聞いた方がいいと思いますよ。なぜそういう批判の声が出るのか。

 年金生活者の家計がどうなっているのか。パネルを見ていただきたいと思います。

 毎月の可処分所得から消費支出を引いた額、年金生活者夫婦世帯で見ますと、二〇〇〇年は八千九百七十九円、これが二〇一五年では六万二千三百二十六円。これは赤字が拡大しているわけですね。単身者世帯、二〇〇〇年の二万五千九百三十六円から、二〇一五年は四万一千百九十五円。これも赤字が拡大しております。とりわけ安倍政権のもとで家計の赤字が大きく拡大をしております。

 この上、昨年、年金カット法を強行されました。二〇一九年には消費税増税。さらに、今後の改革工程表、財務省の案では、七十五歳以上の後期高齢者の窓口負担は二割、介護保険料も原則二割、年金の支給開始年齢も引き上げ、こういうことが検討課題になっているわけですよね。

 総理、安倍政権が続くと、この高齢者の家計の赤字はどんどんどんどん拡大していく、こういうことになるんじゃないですか。

塩崎国務大臣 今お配りをいただいているこのグラフの差を赤字と呼ぶならば、これは基本的には、人間はやはり現役のときに働いて所得を得て、そして引退してからそれを言ってみれば使っていくということでありますから、当然、支出と所得の間にこういう形のギャップがあることはそのとおりだろうと思います。

 いずれにしても、今総理から答弁申し上げたように、高齢者の方々にも負担能力がある方にはそれに応じて負担をしていただくということである一方で、当然のことながら、低所得の方々には十分配慮をきめ細かくしながら、今回また皆様方に御審議をいただくような形での医療あるいは介護のサービスの提供の仕方、そしてまた保険料負担のあり方などをお願いしているわけでございますので、私たちは、そういったところに十分配慮をしながら、社会保障の持続可能性というものをしっかりと確保していくという努力を絶えず続けていかなければいけないというふうに思います。

宮本(徹)委員 高齢者の赤字は、低所得者の世帯でもどんどん拡大をしているのが現状ですよ、現実ですよ。私は、この道は社会保障政策としても間違っていると思いますが、経済政策としても間違いだと思いますよ。

 消費のかなりを高齢者が占めているのは当然のことですが、今、政府の経済財政白書でも、現役世代が将来不安、老後の生活設計の不安で消費を冷え込ませていると書いているわけですよね。こういう形でどんどんどんどん赤字を拡大していく、社会保障を削減していく、こうなれば、現役世代の将来不安はますます拡大して、個人消費はますます停滞して、経済政策としてもどん詰まりになっていく道だと私は思いますよ。こういう未来のない道は転換すべきだと思います。

 安倍政権は、社会保障は自然増の分まで削減する一方、軍事費は聖域にしております。この第三次補正予算は、税収が減って赤字国債を発行しなければならない、こういう事態になったにもかかわらず、軍事費、防衛省予算を計上しております。

 稲田大臣、三次補正まで含めたら、二〇一六年度の防衛省予算は幾らになりますか。

稲田国務大臣 平成二十八年度第三次補正予算案については、当初予算編成後も刻々と変化する安全保障環境や自然災害の発生状況に応じて必要となる経費として、千七百六十九億円を計上しております。

 その結果、平成二十八年度当初予算、第二次補正予算、第三次補正予算を修正減少額を加味して機械的に合算すると、五兆四百二十四億円となります。

宮本(徹)委員 安倍政権のもとで、毎年補正予算も使って軍事費はどんどん増大させている。日米新ガイドライン、安保法制のもとで軍拡に拍車がかかっております。

 それだけじゃないんですね。防衛省の武器の購入というのは、契約年度には払わずに、後払いが認められております。この後払いのローンの残高、後年度負担といいますが、これが安倍政権になって大きくふえております。

 稲田大臣、この五年間で後年度負担の総額は幾らから幾らにふえていますか。

稲田国務大臣 防衛関係費における後年度負担額は、平成二十四年度時点で三兆五百五十五億円、平成二十九年度時点で四兆六千五百八十九億円となっております。

 いずれにせよ、この防衛関係費については、後年度負担も含めて、平成二十五年十二月に閣議決定した中期防衛力整備計画等を踏まえ、計画的な予算編成を行うこととしており、際限なく膨張するかのような批判は当たらないと思います。

宮本(徹)委員 後年度負担は、安倍政権以前は、民主党政権のときも自民党政権のときもふえていなかったんですよ。それは、毎年、また新たにする後年度負担とその年払う借金のツケ払いが同じぐらいで推移してきたからですよ。

 それが、そのバランスが極端に安倍政権のもとで崩れて、後年度負担がどんどんどんどん拡大しているわけですよ。未来の予算をどんどん奪い取っているという状況が生まれているわけですよ。これは、次の衆議院選挙で安倍政権が倒れて野党連合政権になっても引き継がなきゃいけない、負の予算だということになるじゃないですか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

宮本(徹)委員 総理、後年度負担をこんな形でふやしていけば、未来に向かって軍事費がどんどんふえ続けていきますよ。この上、トランプ大統領から米軍駐留経費の負担増だとかを求められていったらどうなるのか。際限なく軍事費の増大が続いていく、暮らしのための予算を際限なく圧迫していくということになりますよ。

 日米同盟ファースト、軍事ファーストから暮らしファーストの予算編成へ抜本的に組み替えることを求めて、質問を終わります。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、赤嶺政賢君から関連質疑の申し出があります。宮本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 米軍オスプレイの墜落について質問をいたします。

 先月の十三日、沖縄本島北部の名護市安部の浅瀬に米軍普天間基地所属のオスプレイが墜落、大破をいたしました。機体構造の欠陥が指摘されてきたオスプレイの墜落が現実のものになったわけです。県民の不安が高まっております。

 しかも、それだけではありません。事故機からの救難要請を受け、現場上空を旋回していた別のオスプレイが、普天間基地に戻ろうとしたときに胴体着陸をいたしました。オスプレイが飛行を再開した先月十九日、今度は嘉手納基地で、P8哨戒機が機体を牽引する装置と衝突する事故を引き起こしました。ことしに入ってからも、伊江島の葉たばこ畑に米兵がパラシュートで降下したり、うるま市伊計島では、米軍ヘリが農道に不時着し、油漏れを起こし、熱風で農作物を焦がす事故も引き起こしています。

 一体、米軍の安全対策はどうなっているのか、こういう怒りの声が上がっています。

 総理は、先日、施政方針演説を行い、冒頭で日米関係に触れました。これまでも、今も、そしてこれからも、日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸である、これは不変の原則、このように強調し、早期に訪米をして、トランプ新大統領と日米同盟をさらに強化する考えを示しました。

 一方、県民が今大きな不安と怒りを感じているオスプレイの墜落には一言も触れていませんでした。

 総理に伺いますが、施政方針でなぜこのことに触れなかったんですか。

安倍内閣総理大臣 オスプレイを含め、米軍機の飛行安全の確保は、米軍が我が国に駐留する上での大前提であります。したがって、政府として、米軍機の安全確保に万全を期していくことは、従来からも、そして今後とも、変わることはない方針であります。

 このため、施政方針演説において触れることはしませんでしたが、重要なことは実行であると考えております。

 先般のオスプレイの不時着水事故に際しては、深夜ではありましたが、直ちに防衛大臣から在日米軍司令官に対し、直接、飛行停止を強く申し入れたところであります。

 飛行再開に当たっては、米軍だけの判断ではなく、日米で協議を行い、日本政府においても、防衛省・自衛隊の専門的知見及び経験に照らして、再発防止について有効な対策等がとられているかについて独自に分析を行いました。また、今後とも空中給油訓練は陸地から離れた場所でしか行わないということも確認をしております。

 引き続き、事故の再発防止を強く求めていくとともに、米側と連携を密にして、安全確保に万全を期していきたいと考えています。

赤嶺委員 私、オスプレイの墜落について施政方針演説でなぜ触れなかったかと問いましたら、今の総理の答弁は、いや、米軍機の安全の確保については、過去も、今も、将来もきちんとやっている、問題は触れることではなくて実行だ、このようにおっしゃいました。

 実行されていないから、安全を確保するということを繰り返し言いながら、米軍機の安全確保について県民が不安を持っているから、恐怖を持っているから、だから触れるべきだと。問題は実行だというのは、全然、言葉と実態が合わないと思います。やはり、触れるべきものを触れなかった、そういうことを強く指摘しておきたいと思うんです。

 事故直後の地元紙の報道を委員の皆さんに配付させていただきました。当時の状況を思い起こしていただきたいと思います。胴体や翼がばらばらになって、大破したオスプレイが海に浮かんでいます。

 墜落現場は、安部の集落からわずか八百メートルでした。事故現場には規制線が張られ、名護市長も、立ち入りを求めたにもかかわらず、認められませんでした。極めて重大な事故でありました。ところが、政府は、先ほどの総理の答弁にもありましたが、いまだに、不時着水、このように言い続けております。

 総理に伺いますが、これだけ機体が大破したにもかかわらず、一体、何を根拠にして不時着水と言い続けているんですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のオスプレイの事故につきましては、米側から、事故機の機体は最低限姿勢を制御できる状態であり、パイロットが意図した地点である浅瀬に着水したという説明を受けたところでございます。

 また、不時着水時の状況は、着水するまでブレード、羽根でございますけれども、羽根以外は損傷がなかったものの、着水時においてブレードが水面と接触し、機体が着水したときの衝撃によりかなりの損傷が生じたというふうに考えられるところでございます。

 このようなことから、我々は不時着水というふうに表現をいたしておるところでございますが、いずれにせよ、引き続き米側において事故原因について調査中でございますので、詳細な情報が得られ次第、沖縄を初めとする地元の皆様にも、事故の原因と安全対策についてさらに丁寧に説明してまいりたいと考えておるところでございます。

赤嶺委員 今の態度、本当に恥ずかしいですよ。この写真を見て、大破したオスプレイを見て、それでも不時着水と言い張る、その神経が私にはわかりません。

 機体をコントロールできていたら、なぜキャンプ・シュワブにまで行ってそこで着陸しなかったのか。すぐ近くですから、そういう疑問が起きます。また、オスプレイというのはヘリモードに切りかえて着陸するものです。それでは、なぜ固定翼モードからヘリモードに切りかえて着水しなかったのか。固定翼モードのままの状態であります。

 そうしたことができないほど機体のコントロールができない状態になっていたということではありませんか。コントロールができていたというのは、アメリカの一方的な説明を繰り返しただけにすぎないんじゃないですか。やはり墜落じゃないですか、総理。

深山政府参考人 今回、なぜ固定翼モード、羽根を前方に向けたままでおりたのかというお尋ねであるかと思いますけれども、ブレード、羽根自体が空中給油の際に破損したという事情がございまして、いわゆる固定翼モードで不時着水したものと承知をしておるところでございます。

 また、コントロールできていたのかという問いでございますけれども、乗組員は、一人の方はまだ入院中でございますが、ほかの方は既に退院、復帰されていると聞いております。そのようなことからいたしましても、我々といたしましては、コントロールを、最後まで機体を制御できていたということについては理解できるものと考えておるところでございます。

赤嶺委員 防衛省自身が、事故が起きたときの第一報、最初の自治体への通報では、墜落、このように連絡をしていました。沖縄防衛局が名護市に送った第一報は、「オスプレイの墜落の可能性について」、こういうタイトルになっています。ところが、第二報からは不時着水に変わりました。なぜ墜落から不時着水に変わったんですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 事故が起きたという第一報を受けたときに、私ども、これは沖縄防衛局から御連絡したところでありますが、必ずしも詳細を把握できない状況でございました。しかし、情報は速やかに関係自治体にお知らせするのは当然でございますので、その段階でわかったことについてお知らせをいたしたところでございます。

 その後、米軍等と状況について聞き、そうしたことも踏まえまして、先生がおっしゃったような表現に改めたところでございます。

赤嶺委員 一度は、オスプレイの事故が起きたら墜落だというぐあいに報告して、アメリカから説明されたら不時着水と言い直した。しかし、現場を知る人たちは、これが何で墜落でなくて不時着水なんだ、余りにも見ていることと政府が言っていることは違い過ぎる、こういう疑問がずっと広がっている。納得できる説明ではない、このように思います。

 配付した報道記事にありますように、米軍のニコルソン司令官は、今度の事故について、墜落について、住宅や県民に被害を与えなかったことは感謝されるべきだ、このように発言をいたしました。しかも、沖縄県によると、知事はパイロットに対して勲章を上げるべきだとまで述べていたそうであります。占領意識丸出しの発言です。

 総理は、この発言を聞いて、米側に抗議いたしましたか。

稲田国務大臣 今回のオスプレイの事故については、国民がその安全性について高い関心を持っているオスプレイの事故でありますので、大変遺憾に思います。

 そして、先ほど総理も御答弁いただきましたように、すぐさま私から、夜中でしたけれども、マルティネス司令官に対して、強い遺憾の意と、そして、マルティネス司令官からは今回の事故が機体の事故ではないという説明でありましたので、しっかりとその事故の状況について、さらには再発防止策について万全を尽くしていただき、そして、全てのオスプレイの飛行停止を申し入れ、一時飛行停止がなされたところであります。

 その後、防衛省としても、このオスプレイの飛行及び空中給油の停止措置の再開に当たって、米側だけの判断でなくて、日米間で原因究明と対策について集中的に協議を行い、米側から得た情報等を踏まえ、今般の事故を引き起こした要因についてあらゆる可能性を分析した上で、防衛省・自衛隊の専門的知見及び経験に照らして、それらの要因を幅広く網羅する再発防止策を米側が全て実施したことを確認いたしました。

 そして、先ほど来、不時着かどうかというお話がございましたけれども、防衛省からも、オスプレイの空中給油再開について、事故の原因分析の結果を発表しているところでございます。

 その中で、今回の事故では、給油が終了し、オスプレイのプローブとMC130の給油ホースを分離させた後に、給油ホースとオスプレイの右のプロペラが予期せぬ接触を起こしてしまい、ブレードが損傷した、そして、オスプレイのブレードの損傷が回転するうちに大きくなり、飛行が不安定な状態となったため、搭乗員は訓練地点から相対的に距離が近いキャンプ・シュワブを目指し飛行を続けたが、パイロットは搭乗員の安全確保と飛行を継続することを両立させながら地元への影響を極小化するために海岸沿いを飛行していたが、途中、安全な飛行を続けることが困難であることを認識し、浅瀬に不時着水することとしたというふうに、その当時の状況を分析しているわけであります。

 ただいまの委員の質問に関しては、私も、ニコルソンさんにお会いしたときに、やはり、沖縄県民の心情、そういったものを考慮して発言をしていただきたいということを申し上げたところでございます。

赤嶺委員 防衛大臣、後の質問まで今答弁書を読み上げたら、後で答弁することがなくなってしまいますよ。逐次聞いていきますからね。長々と答弁して、聞かれたことの答えは最後のわずか数秒です。

 私が聞いたのは、いわば、住宅や住民への被害を避けるためにパイロットは海に不時着水した、これは勲章ものだ、こういうことを言っているわけですよ。これだけ県民に不安を与えて、恐怖を覚えさせておいて、いわば、沖縄県知事はパイロットに勲章を上げるべきだ、こんな言い方が許されますか、絶対に。これはまさに占領者意識をずっと引きずってきている。

 沖縄の知事だけに言ったんじゃないんですよ。ニコルソン司令官は、同じ日の記者会見でも、沖縄の人たちを守るため、浅瀬に着陸しようとしたのはよい判断だった、パイロットの判断を称賛する発言を行っています。

 私はこの発言を聞いたときに、ああ、また同じことを米軍の司令官が発言していると思いました。二〇〇四年に沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落、炎上したときにも、在日米軍司令官が、人のいないところを選んだパイロットの判断を、すばらしい功績、このように称賛いたしました。

 米軍の体質なんです。やはり、沖縄は自分たちの占領地だ、このように思っている。だから、住民はパイロットがやったことを感謝すべきだと。事故を起こしたら、米軍はすぐに、感謝すべきだ、こういう言葉が反射的に出てくる。

 このような発言は絶対に許せないではありませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 先ほども大臣から答弁をさせていただいたように、米側には、沖縄の県民の気持ちを配慮して発言していただきたい旨申し入れております。

赤嶺委員 浅瀬に落ちたという、この浅瀬ですが、これについての認識も持つ必要があると思うんですよ。

 さっきの防衛大臣の答弁の中に、わざわざ、被害を極小化するために浅瀬に落ちたということを答弁いたしましたが、私も現地に行っております。手つかずの美しい自然の砂浜が残されているところです。ふだんは、お年寄りが散歩をしたり、地元の子供たちが普通に遊びに行くところです。あのオスプレイが墜落した時間帯、いざりをするために、大潮の日にはみんなが、集落の人々が集まってくる場所ですよ。自宅用の魚やハマグリ、タコなどをとるために、みんなが利用している場所であります。

 墜落事故を受けて、安部区が出した要請書にはこのように書かれています。この海岸は、ふだんから多くの区民が利用し、世代を超えて守り、その恩恵によって命をつないできた区民にとって、本当に大切なところです、このように言っているんですね。

 だから、被害を極小化するためにあの浅瀬を選んだという認識が間違いなんですよ、防衛大臣。あの浅瀬は、住民の人々にとってかけがえのない場所であるし、遊び場であるし、集落の一部なんですよ。集落と切り離した海ではないんですよ。

 極小化するために浅瀬を選んだというこの答弁、撤回すべきじゃありませんか、防衛大臣。

稲田国務大臣 先ほども申し上げましたように、防衛省の知見で米側からの情報等を分析した結果、パイロットは、搭乗員の安全確保と飛行を継続することを両立させながら、地元への影響を極小化するため海岸沿いを飛行しておりましたけれども、途中、安全な飛行を続けることが困難であることを認識し、浅瀬に不時着をすることとしたということでございます。

赤嶺委員 政府も判断したといいますから、今度は、その政府の判断のあり方について問うていきたいと思います。

 飛行再開をめぐる政府の対応であります。

 米軍は、墜落事故から六日後の先月十九日、オスプレイの飛行を再開し、政府はこれを認めました。

 事故原因の調査は継続中であるにもかかわらず、なぜ認めたんですか。さっきの長々とした答弁はいいですからね。なぜ認めたんですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 十二月十九日の飛行再開についてのお尋ねでございますけれども、不時着水後、米側が機体の安全性につきましては点検、確認を行ったという説明を受けております。その間におきまして、機体においては問題が発見されなかったと。

 そうしたことを踏まえまして、政府といたしましても、その機体点検等につきまして理解ができるところであるということで、飛行再開について理解ができるということを申したところでございます。

赤嶺委員 飛行再開に当たって防衛省が公表したプレスリリースがあります。委員の皆様に配付した資料の中にも入っておりますが、それによりますと、今回の事故原因について調査は継続中としながら、専ら空中給油中に事故機のプロペラが給油ホースに接触したことによるもので、機体構造が原因ではない、このように結論づけております。しかし、なぜ接触に至ったのか、そこにオスプレイ特有の問題はなかったのかという肝心の問題が全くはっきりしません。

 防衛大臣に伺いますが、接触事故が起こった具体的な地点と高度を示していただけますか。

深山政府参考人 今回の事故が起きた地点と高度ということでございます。

 現在までのところ、米側から得た情報によりますと、今般の事故は、沿岸部から約四十海里、これはキロに直すと七十四キロでございます、離れた沖縄北東の公海上の訓練空域内において発生したものと承知しております。

 お尋ねの経度、緯度、高度といった詳細な情報については、米側が事故調査中であるため明らかになっておりませんが、米側から詳細な事故原因について情報が得られた際にはまた御説明をしてまいりたいと考えておるところでございます。

赤嶺委員 経度、緯度、高度というのは、事故が起きた場合に、どこで接触事故が起きたのかという事故原因を究明する上で一番基本的なことだと思うんですね。そうしたことへの説明も全くないのに飛行を再開したということですか。

深山政府参考人 今御答弁申し上げたとおりでございますけれども、事故の具体的な場所につきましては、先ほど申し上げましたように、沿岸部から四十海里、約七十四キロ離れた沖縄北東の公海上の訓練空域内という情報を得ておりますが、これ以上の情報はまだ得ておりません。

赤嶺委員 緯度、経度、高度について全くわかっていない。

 プレスリリースではこう言っています。給油ホースを分離させた後に、乱気流等により、給油ホースとオスプレイのプロペラが接触したとしています。

 乱気流の発生を政府はどのように確認したんですか。

深山政府参考人 御指摘の十二月十九日のプレスリリースによりますと……(赤嶺委員「乱気流が発生したと書いてあるでしょう」と呼ぶ)乱気流、ちょっとお待ちください。(赤嶺委員「いや、時間が決まっているんだから」と呼ぶ)はい。乱気流等、そうした気候の原因により接触事故が発生したというふうな説明を受けているところでございますが、その後も引き続き調査を行っているところでございます。

 一月五日の我々が出した報告では、そうしたことも含め、人的、環境的要因があることが考えられ得るという報告もあわせてさせていただいたところでございます。

赤嶺委員 要するに、乱気流が原因だといって最初のプレスリリースに書いてあるわけですよ。では、その乱気流の発生というのは政府はどのように認識したんですかといったら、全く答えられない。答えられないのに、文書には乱気流と書いてある。

 私も、先日、安部の公民館で当時の状況を伺ってきました。オスプレイが墜落したその日の晩は、満月で、海はなぎで、本当に静かな夜だった、そこにオスプレイの騒音が長く続くんですが、非常に静かな夜で、だから、海上からどれぐらいの高さを飛んでいたのか、乱気流だというのはにわかに信じられない、これが聞きたいんだ、このように言っておりました。

 政府は、確認するすべを持たないまま、乱気流が原因だった、こう言っているわけですね。

 気象庁長官に伺いますが、気象庁は、航空関係機関に対して、国内や日本周辺の悪天候に関する予報情報を提供していると聞いています。事故当時に乱気流の発生は予測されておりましたか。

橋田政府参考人 ただいま、乱気流あるいはそれを発生するような悪天候の予想についてのお尋ねがございました。

 委員今言っていただきましたように、気象庁では、国際民間航空機関の定めによりまして、中程度以上の乱気流、具体的には、航空機の姿勢や高度はかなり変動するが制御は可能である、航空機の速度に小さな変動があり、歩行は困難で、体がベルトで締めつけられる、また、固定していない物体は移動するといった程度以上の乱気流が予想される場合、航空関係機関に対して情報提供をするとなっております。

 お尋ねがありました当時、昨年の十二月十三日二十一時ころの沖縄本島周辺の上空では、そのような中程度以上の乱気流を伴う可能性のある悪天候は予想されておりませんでした。

 なお、局地的に発生する弱い乱気流、あるいは航空機の運航に伴って発生する人工的な乱気流については、気象庁では予想の対象としておりません。

赤嶺委員 要するに、予測していなかったわけですよね。

 それとあわせて、民間航空機が一定のレベル以上の積乱雲を確認した場合には、気象庁に報告する仕組みが設けられていると聞いています。民間航空機からそのような報告はありましたか。

橋田政府参考人 お尋ねのありました民間航空機からの報告でございますが、これにつきましても、国際民間航空機関の定めによりまして、先ほど申し上げましたように、中程度以上の乱気流に遭遇した場合はその旨を気象庁に報告するということとなっております。

 その当時、そのような報告はございませんでした。

赤嶺委員 気象庁は、乱気流の発生の予測も、それから民間航空機からの報告もなかった。しかし、なぜか政府のプレスリリースには乱気流が発生したことによってと書かれている。やはり、ここからいろいろなことを考えなきゃいけないと思うんですよね。説明責任がありますから、なぜ乱気流が起こったのか。

 防衛大臣に伺いますが、二〇一二年六月に、アメリカのフロリダ州でオスプレイの墜落事故がありました。二機のオスプレイで編隊飛行をしていたときに、後続機が先行機のつくり出す後方乱気流に巻き込まれて起きた事故でありました。風の影響を受けやすいオスプレイの構造的欠陥は、従来から指摘をされている問題です。

 今回の事故は、MC130という特殊作戦用の輸送機からオスプレイが空中給油を受けていたときに起こった事故であります。MC130による後方乱気流の影響で、オスプレイが機体のバランスを崩し、給油ホースに接触した可能性はないのですか。

 防衛大臣に答えさせなさいよ。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 後方乱気流の御指摘がありましたが、後方乱気流は全ての航空機の飛行中に発生するものであるというふうに承知しております。また、MC130による給油はオスプレイだけでなく他の機種も行っているところでありまして、MC130自体が特に後方乱気流が大きいというようなことがあるとは承知しておりません。また、他のヘリコプターもMC130から給油を受けているという事実もあるところでございます。

 いずれにいたしましても、原因を引き続き調査中でございますので、それが明らかになりました時点でまた御報告いたしたいと思います。

赤嶺委員 今の答弁によりますと、MC130は乱気流は起こす、しかし、ほかのヘリは安全に空中給油を受けていると。だったら、オスプレイの機体に原因があったのかな、こういう疑問になりますよね。

 本当に乱気流は起こっていたのか、仮に起こっていたとしても、それが気象条件によるものか、それともMC130によるものか。こうした判断は、事故機とMC130のフライトレコーダーやボイスレコーダーの検証、搭乗員への事情聴取などを行わない限りできないはずです。

 防衛省は、そうした具体的な情報の提供を米側から受けているんですか。

 委員長、今度は防衛大臣に答弁させてください。

稲田国務大臣 先ほど来答弁いたしておりますように、今委員が御指摘になったように、事故当時の天候は、夜間の空中給油訓練を行うために許容される条件の範囲内だったと聞いております。

 今般の事故については、夜間の空中給油という高い技能を要するオペレーションが強風、乱気流といった気象条件下で行われていたという環境要因と人的要因が複合的に重なって発生した可能性があることについて、日米間で見解が一致しているところでございます。

赤嶺委員 ボイスレコーダーや、そういう乱気流によるものか原因を特定するための操縦士の聞き取り、こういうのはちゃんと日本政府はやったんですか、これを聞いているわけですよ。イエスかノーかで答えてください。

深山政府参考人 私どもが原因を分析いたしましたのは、米側からの聞き取り、説明を受けてこのような見解をまとめました。

 具体的に今御指摘のあった情報を物として、例えばボイスレコーダーを渡されたというようなことはございません。

赤嶺委員 要するに、アメリカから言われていることを繰り返しているにすぎないわけですよ。

 海上保安庁はどうですか。日本側の捜査への協力をアメリカ側に要請したと聞いていますが、アメリカ側からの回答はあったんですか。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 海上保安庁におきましては、情報の入手後、現場の状況確認や機体の一部と思われる浮流物の回収、写真撮影、付近住民からの聞き取りなどを実施しております。

 また、捜査協力につきましては、現在、外務省等とも連携しつつ、日米合同委員会を含むさまざまなルートを通じて協議中であります。

 海上保安庁としても、引き続き、米軍当局の協力を求めつつ、事実関係の確認など所要の捜査を実施してまいります。

赤嶺委員 つまり、米側は調査をまだ受け入れていないということですか、保安庁長官。

中島政府参考人 お答えします。

 捜査協力につきましては、現在、外務省等とも連携しつつ、先ほども申し上げましたように、日米合同委員会を含むさまざまなルートを通じて協議中でございます。これらの状況を踏まえまして、個別具体的な状況に応じて適切に判断してまいりたいというふうに考えます。

赤嶺委員 こんな答弁がありますか。事故が起きたのは十二月十三日ですよ。今に至るも、海上保安庁も捜査できていない、事故原因を特定するボイスレコーダーや乗組員の聴取も行われていない。しかし、政府は、乱気流が原因だとか、環境要因だとか、人的要因だとか、いろいろ言い出しているわけです。

 先ほど総理は、米軍機の訓練に当たって何よりも大事なのは安全だ、このようにおっしゃいました。極めて重大な問題であります。安全を確保して飛行を再開したのか否か、これを防衛省も海上保安庁も調べるすべがないのに安全だというようなことを言っている。

 何で主体的な捜査が行えないんですか。何で事故現場で米軍と共同して捜査を行うことすらやらないんですか。外務大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 事故機の機体の検証をめぐりましては、日米の間において、日米地位協定を初め、さまざまなルールが定められております。

 まず、日米地位協定第十七条におきまして、米軍が施設・区域の外部で必要な警察権を行使することを日本側当局との連絡を前提として一般に認めた上で、その際に従うべき条件、すなわち、そのような米軍による警察権の行使の範囲を当局間の取り決めによって絞り込む、これは日米地位協定第十七条において規定をしています。

 そして、その取り決めですが、日米地位協定第十七条10の(a)、そして10の(b)に関する合意議事録、あるいは刑事裁判管轄権に関する合同委員会合意、こうしたものが挙げられるわけですが、航空機事故に際して、米軍は、秘密保全及び事故原因調査等の目的のために、必要な限度において、それぞれの取り決めの範囲内で、航空機の機体を含む米軍財産の捜査、差し押さえ、そして検証を行うことが認められています。

 そして、先ほど委員の方から御指摘がありました、あの沖縄国際大学の事故の後つくられたガイドラインというものがありますが、このガイドライン、すなわち、施設・区域外で発生した合衆国軍用機の事故に関するガイドラインにおいて、米側が全ての残骸、部分品、物品及び残渣物に対して管理を保持するとされており、これによって、米軍が米軍財産について管理を保持することができる、こういった確認が行われています。

 今回の事故におけるこの対応は、今のルールに従って行われていると承知をしております。

赤嶺委員 日本側が捜査権も発動できない、事故現場に立ち入ることもできない。海上保安庁が写真を撮ったのは、事故現場に立ち入ってじゃないですからね、上空からですからね。恥ずかしい話ですよ、警察権を持っている当局が。

 外務大臣は、日米地位協定は、あるいはそれに基づくさまざまな取り決めは、米軍の機密事項を守るためのルールだとおっしゃいました。それがルールだといいながら、一番県民の安全を阻害しているルールが日米地位協定じゃないですか。これを抜本的に見直すべきだと思いますよ。

 ここは主権国家かと名護市長はおっしゃっていますよ。事故現場に近づこうとしたら日本の警察が制止したんですよ。そして、事故現場では、米軍が一切立ち入りをさせないのを日本の警察が守っている。名護市長は、ここは名護市だ、ここは沖縄か、ここは日本じゃないのか、このように言っているわけですよ。

 ここが日本でないような状態が平気で行われていて、オスプレイは安全が確認されましたから飛びましたと、事故原因も解明できるすべもないのにそういうことを言っている。極めて恥ずかしい、主権国家にあるまじき事態が今起こっていることだと思います。

 オスプレイの構造的欠陥についてもう一問聞きます。

 オスプレイのプロペラは、ヘリのように垂直離着陸を行う必要があるために、プロペラが非常に大きなつくりになっています。その分、給油ホースとの接触事故を起こす可能性が高いと言われています。

 しかも、オスプレイのプロペラは非常に壊れやすい構造だと専門家は指摘しています。米国防総省の研究所でオスプレイの開発に携わったレックス・リボロ氏は、通常のヘリでホースがローターに当たれば、ホースが切れ、緊急着陸できると。つまり、通常のヘリであれば安全に給油できるということを先ほど深山さんはおっしゃっていましたが、通常のヘリであればホースの方が切れるんですよ。オスプレイのプロペラは非常に繊細で、ホースに当たるとばらばらに壊れてしまう、このように述べています。

 オスプレイのプロペラの強度についてアメリカ側に確認していますか。防衛大臣、お答えください。

深山政府参考人 オスプレイの羽根の強度というお尋ねでございました。

 現在、この事件に関して、直接強度を米側に確認はいたしておりませんが、オスプレイのブレードは、損傷が起きますと、飛び散って機体自体に当たって機体が傷つくというのを防ぐために、ほうき状に割れていく、そして機体に対する損傷を防ぐ構造であるということは承知しているところでございます。

赤嶺委員 機体に対する損傷と。オスプレイの羽根が損傷したら、これがコントロールできなくなるのは当たり前じゃないですか、こんなのは。誰が聞いてもわかるようなことであります。

 総理に伺いますけれども、プロペラの強度からいっても、MC130の後方乱気流に巻き込まれた可能性からいっても、オスプレイの機体構造に起因した事故であった可能性、これを否定することはできないんじゃないですか。

深山政府参考人 まず事務方から事実を申し上げますと、オスプレイがこのような形で給油中に事故を起こしたことは今回が初めてであるというふうに米側から説明を受けているところでございます。

 したがいまして、累次申し上げておりますとおり、まだ米側において原因の調査中でございますから、それを待つべきではありますけれども、必ずしもオスプレイであったからということ、オスプレイの機体構造の問題だと言えるものではないというふうに考えておるところでございます。

赤嶺委員 委員長、私、先ほどから答弁者を指名しておりますが、一向に委員長は応じてくれません。

 私が今聞いているのは、そういうMC130の後方乱気流か、あるいはオスプレイの構造的欠陥に起因するものなのか、これまでのやりとりを聞いて、それは否定できないんじゃないか、否定する根拠はないんじゃないかということを総理に聞いているわけです。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 原因の技術的な解明、究明等についての認識についてでございますから、これは当然局長からお答えをさせていただいたわけでございます。

 例えば、飛行の再開に当たっては、米軍だけの判断ではなくて、日米で協議を行い、日本政府においても、防衛省・自衛隊の専門的知見及び経験に照らして、再発防止について有効な対策等がとられているかについて独自に分析を行ったわけでございます。

 いわば、これについてはそうした観点から分析を行ったということでありまして、そして、それと同時に、またこれは繰り返しになるわけでありますが、今後とも空中給油訓練は陸地から離れた場所でしか行わないことも確認をしているところでございまして、引き続き事故の再発防止を強く求めるとともに、米側と連携を密にして、安全確保に万全を期していきたいと考えております。

赤嶺委員 全く私がるる今出した疑問に答えるものになっていません。大体、事故調査報告もないのに事故原因なんてオスプレイにないと決める方がおかしいじゃないですか。そんなのは科学的な態度じゃないですよ。

 今総理は、陸地の上空では空中給油訓練は行わないということでありました。

 そこで、配付資料を見ていただきたいと思いますが、ここに空中給油の写真が二枚出ています。名護市の基地対策室が撮影したものであります。海の上空でしか実施しない、そういう答弁でありましたが、陸地の上空でやっております。

 これは名護市長からも、自分たちの名護市役所の庁舎の上で、写真も、一枚目は、空中給油機が二本の給油ホースを出しながら飛行している写真です。二枚目の写真は、空中給油機と並行して飛行している戦闘機の写真です。屋上に上がったときには給油ホースは戦闘機から外されていましたが、最初に目撃したときはまさに空中給油を行っていたそうであります。

 海の上空でしか実施しないことを確認していると言いますが、総理、陸地の上空でもやっているではありませんか。

深山政府参考人 お配りいただきました写真に基づくことでございますが、まず我々が知るところを申し上げたいと思います。

 御指摘の写真につきましては、昨年十二月十六日でございますが、当方の若宮防衛副大臣が名護市を訪問させていただいた際に、稲嶺名護市長から、今、赤嶺先生がおっしゃいましたように、名護市上空において、これは二〇一五年十月と書いてありますが、写真を撮影したものだということで提示をいただきまして、我々も承知しているところでございます。

 これにつきましては、現在、米軍に関してこのようなことがあったのかということについて問い合わせをしているところでございます。

 一方、今、空中給油をしていたというお話でございましたが、これはこれに写っていないところのことかもしれませんが、これを見る限りは、下段の方も、相当距離がありまして、これは空中給油をしていた写真とまでは言えないのではないかというふうに我々としては考えております。

 ただ、総理から申し上げたとおりでございますが、米軍からは、今後とも空中給油訓練は陸地から離れた海域の上空でしか実施しないという説明を受けているところでございます。

 引き続きまして、この件につきましては、状況の確認を続けたいと思っております。

赤嶺委員 確認はしていないのに、これは空中給油をしている写真ではない。私も、している写真だとは言いませんでしたよ。空中給油をした直後の写真だ、空中給油をしている現場については名護市の基地対策課の職員が目撃していると。だから、あなた方はアメリカに問い合わせせざるを得ないじゃないですか。そういうのに、陸上の上空ではやらないというような答弁だけをひとり歩きさせるのはやめていただきたいと思います。

 パネルを見ていただきたいと思います。

 これは、辺野古の新基地と計画される飛行ルートを示したものであります。楕円形の二つのルートは有視界飛行を行う際のルートです。内回りが転換モード、外回りが固定翼モードです。一方、悪天候の場合は、管制塔の誘導に従って計器飛行を行います。黒い色の直線がそのときのルートであります。

 辺野古の新基地建設予定地から真っすぐ黒い線が延びているところが、今度墜落が起こった安部集落です。まさに、事故現場というのはこの計器飛行ルートの直下に当たるわけです。

 総理、伺いますが、墜落現場の上空をオスプレイが日常的に飛行する、そういう基地の建設を今政府は推し進めようとしている。辺野古が唯一だ、危険性の除去のためには辺野古が唯一だといいながら、その辺野古のすぐ近くで、いわば飛行ルートの直下で今度の墜落事故が起きている。こういう認識はお持ちですか。

稲田国務大臣 繰り返しになりますけれども、空中給油訓練は陸地から離れた海域の上空でしか実施せず、陸地の上空では実施しないこと、これは私もマルティネス司令官そしてニコルソンさんに直接確認をしているところでございます。

 そして、辺野古移転については、普天間の飛行場の危険性を除去するための、そのための唯一の解決策ということでございます。

安倍内閣総理大臣 これは、今まで累次御説明をしてきているとおり、普天間飛行場の代替施設は、滑走路を二本のV字形に配置しまして、通常の飛行ルートが海上になるように計画をしております。これは、平成十八年に地元の名護市及び宜野座村とも合意をし、近隣の集落上空の飛行ルートを回避するため、それまで一本の滑走路であったものを変更し、米側と協議して合意をしたものであります。

 政府としては、米軍機の飛行に際して、安全面の確保が大前提であります。引き続き、周辺の方々の懸念に応えて、住民の皆様の生活や環境への影響を最小限とするよう努めるとともに、あらゆるレベルで地元の方々との対話を継続していく考えでございますが、現在の普天間飛行場はまさに住宅地の真ん中にあるわけでございます。それを今回辺野古に移転し、繰り返しになりますが、V字形の滑走路をつくることによって陸上ではなくて海上を飛行するようになっていくわけでございますし、騒音も大幅に軽減されることになるわけでございます。

赤嶺委員 陸上を飛んでいるこの図を示されて、海上を飛ぶことになりますと。よくそんな答弁ができると思います。

 危険な普天間基地は閉鎖、撤去して、危険な辺野古基地もつくらない、こういうことを強く求めて、質問を終わります。

浜田委員長 これにて宮本君、赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 私の方からは、まず、トランプ大統領が、今国会が始まりました二十日にアメリカの新しい大統領に就任をされました。あらゆる政策分野でその影響が出てくると思いますが、中でも通商分野、これはまさにこれまでと全く違う新しい時代が始まる、こういうふうに申し上げてもいいような大変大きなインパクトがあると私は思っています。

 ただ、私は決して、TPPの意義とか、当時の甘利担当大臣がなし遂げてこられた仕事は、その意義は変わらない、こう思っているわけです。

 これは役所の、政府の資料ですから別に目新しいものではありません。TPPを初めとしてさまざまな、TPPあるいはEUとのEPA、これは今交渉中でありますね。それから、さまざまなバイ交渉も今でも行われているわけでありますが、きのうからきょうにかけて、予算委員会でも、総理の方からもスタンダードという言葉があったかとちょっと記憶しておりますが、私は、このTPPでなし遂げてきた一つの仕上がり、仕上がったわけですね。発効はしません。でも、日本は国内法整備をして批准した、国内法の担保はしたということでありますので。

 私は、このTPPというのは、これから日本が新しい時代の戦略的通商政策を講じていく際の一つのスタンダードになると思うし、それから、諸外国に対しても、あるいはトランプ大統領に対しても、ある種の相場観が既にこれでつくられてきたんだ、こう思っています。

 きょうも午前中、民進党の福島委員が何か、去年ですか、去年ずっと民進党さんはTPPの国会審議を邪魔してきたわけでありますが……(発言する者あり)ああ、邪魔じゃないか。何をしてきたっけ。TPPの審議について民進党さんが何をされたか、ちょっと私はよく存じ上げませんが、少なくとも国会で……(発言する者あり)ちょっと静かにしてもらえますか。申し上げたいことは、甘利大臣のときに、これは国益に資する交渉をしてこられたと思いますよ。だからアメリカは大統領も反対しているわけです。

 ちょうどきょうも福島委員が、自動車分野でのTPPの成果を取り上げて、これは二国間交渉では到底なし得ない成果を、TPP、甘利大臣はやったんだ、こう明言されましたね。これは民進党も認められているんです。民進党の福島委員みずからが、TPPの自動車交渉の成果は、これはとても、今後もう二度と二国間交渉ではなし得ないような成果を上げたんだ、こうおっしゃいましたので、一応リピートしておきたいと思います。

 そこで、私がぜひ総理に、これはこういう形でお見せするのがいいかちょっと悩みましたが、実は、チーム甘利、甘利大臣のチームに、外務省の経済連携課長として、その命をささげて交渉に取り組まれた松田誠さんという経済連携課長がおられました。交渉中に、激務もあってかと思いますが、病に倒れられたわけであります。私は京大の工学部の同級生でありまして、同じ年で、彼は外交官試験を、私は国家公務員試験を当時目指して一緒に図書館で勉強していたわけでありまして、大変残念な方を亡くされたわけです。

 私が申し上げたいことは、この松田さんの仕事もあるいは甘利大臣の仕事も、TPPが、アメリカがもうやらないよと言っても、日本のこれからの戦略的な通商交渉を進めていく上において、彼らの仕事が朽ちることはないんだ、こう私は思っているわけでありますが、総理、もしその辺の思いがございましたらおっしゃっていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 TPPにおいて非常に厳しい交渉を重ねてきたわけでありまして、その過程において、今委員が挙げられました松田誠課長を初めとする多くの関係者の尽力があってこそ初めて結実した、このように考えております。

 これは、ただ単に関税だけではなくて、ルールにおいても、自由で公正なルールをつくり上げることができたわけでございます。このルールについては、まさにこれは今後の世界の貿易の基盤となっていくものをつくり上げることができたと思います。TPP協定にとどまらず、RCEP、さらにはFTAAP等におけるモデルとなり、さらには二十一世紀の世界のスタンダードになっていくことが期待される、こう思う次第でございます。

 そして、TPP協定で結実した成果を基礎として、日・EU・EPAのできる限り早期の大枠合意を目指すとともに、RCEP、日中韓FTAなどの交渉において質の高い協定を目指していきたい、こう考えているところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 私たち日本維新の会も、やはりTPPをやるべきだということでずっと取り組んできたわけでありますので、今総理から、基盤としてということをおっしゃいました。まさに、今は亡き松田誠課長を初めとするそういう官僚たちも含めて、その成果、意義、意味というものは朽ちないというふうに私は申し上げておきたいと思います。

 さて、きょうるる午前中もありました通商交渉全体でありますが、私は、やはりこれは大変な交渉がこれから待ち受けているんだろうなと。福島さんが二国間は大変だよとおっしゃる。それはみんなわかっているわけで、わかっているけれども、マルチに乗ってきてくれたらいいんだけれども、TPPにアメリカが翻意して参加してくれればいいけれども、それが難しければ二国間も視野に入ってくるのは当たり前のことであります。

 その際に、アメリカはUSTR、通商代表部という組織があって、通商交渉は、今度、トランプ政権ではライトハイザー氏という方が、対中強硬派が既に指名をされております。TPPも、もともとやはり対中、先ほど総理がおっしゃった基準、ベース、基盤のようなものを、TPPでつくり上げた基盤をやはり中国に対しても迫っていくということが大変大事だと思うんです。

 その際に、石原大臣が今TPP担当大臣ということですが、TPPだけではなくて、まさにきのうから総理がおっしゃった、マルチもバイも含めて総合的な戦略性、これをやはりつかさどる担当大臣が必要だと思います。もちろん、それを石原大臣が担っていくのかもしれないし、それぞれのつかさつかさの大臣が担っていくのかもしれませんが。

 私は、ちょっと唐突な御提案で、総理に人事を御提案するというのも大変僣越なんですが、甘利前大臣がずっとTPPをやってこられました。つまびらかではありませんが、既に嫌疑も晴れたということだと承知しています。少なくとも甘利大臣は、秘書の問題について、しっかりと会見をして辞任をされた。

 民進党の某議員は、全ての責任を秘書になすりつけて、加えて、それを何か訴訟で訴えるとか新聞に書いてありましたが、それは事務所の中の問題だから知りません。知りませんが、できれば東京でしっかりと記者会見していただいたらよろしいかと思います。

 いずれにせよ、甘利前大臣はもう嫌疑は晴れていると思います。TPP交渉は、その詳細、全て甘利大臣がやってこられたわけだから、まさにTPPでつくり上げたその基盤というものをベースにこれから戦略性を持って通商交渉を進めていく、そのヘッドクオーターは甘利大臣がふさわしいなと個人的には思っているわけであります。

 いずれ、それが誰であれ、そういう総合的な司令塔、もちろん総理が司令塔ですが、担当大臣は、石原大臣も含めて、あるいは経産大臣含めて、御検討があるのかどうか、可能な範囲で教えていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 経済連携交渉の推進に当たっては、これまでも官邸の指揮のもとに、官邸が基本的には司令塔でございますが、官邸の指揮のもとに関係省庁間で緊密に連携をしつつ、政府一丸となって取り組んできているところであります。

 TPP協定の交渉においては、主要閣僚会議のもとで、内閣官房にTPP政府対策本部を立ち上げて、交渉等の総合調整を担う体制をとってまいりました。そして、今、足立委員からも御紹介をいただきましたように、甘利大臣が、まさに中心的な役割を担い、現地司令官として、司令塔として大きな役割を果たしていただいたと思っております。

 また、日・EU経済連携協定交渉については、岸田外務大臣を総合調整担当大臣とするとともに、主要閣僚会議を立ち上げるなど、交渉に応じて適切な体制を構築してきております。

 今後とも、官邸の指揮のもとに、複数のEPA交渉を戦略的かつスピード感を持って推進していく考えであります。

 その中において、今後、米国の出方等々もあるわけでございますし、ではTPPをどうしていこうかということもあるわけでございますから、そうした体制について、今、足立委員からは個別具体的な人事についてお話をいただきましたが、我々も、そうした体制をどうしていくかということも含めてよく検討していきたい、このように考えております。

足立委員 ありがとうございます。

 ぜひ戦略性のある、申し上げるまでもありませんが、トランプ大統領、プーチン大統領、習近平国家主席も含めて、大変剛腕の元首がそろっていますので、ぜひ頑張っていただきたい、こう思います。

 次に、憲法であります。

 日本維新の会は、昨年の三月、既に憲法改正草案を全政党に先駆けて、まあ、自民党さんはあるわけでありますが、憲法改正草案、三つの提案をさせていただいています。教育無償化、統治機構改革そして憲法裁判所であります。

 私、これはぜひ、憲法もそして法律案も、与党のみならず、当然、民進党さんあるいは共産党さん、与党の公明党さんを初めとして、皆様の御協力なくして法案は成立しません。今、国会では、私はそれが合理的かどうかわかりませんが、全政党がうんと言わなければ議員立法が一つも成立することはありません。昨年我々が百一本の法律案を出し、今度、早々、再びこの百一本をもう一回まとめて参議院に提出いたしますが、一本も成立しないというのは、別に維新がサボっているわけじゃなくて、一つの会派でも反対したらできないんです。それがこれまでの……(発言する者あり)例外がたまにありますけれどもね。

 そういう中で、ぜひ民進党の皆様も、私も敬意を持ってやりますので、態度を変えますので。いや、私、尊敬している方もいらっしゃるんですよ。この間、福島さんのパーティーにも行きましたら、維新は私一人でして、大変肩身が狭かったわけです。済みません、ちょっと余談があれですが。

 それで、憲法ですが、この教育無償化というのは、ざくっと言うと、基本的にはおおさか維新の会、日本維新の会が提案をしてきた話なんですね。その後いろいろあって、政府・与党も、先ほどもあった給付型の奨学金制度、これは大変大きな前進だと思います。ただ、我々は、個別の制度あるいは個別の立法ではなくて、これは憲法でやるべきだ、こう提案をしているわけです。

 そうしたら、民進党さんも、いや、俺たちこそ政策の柱は教育無償化だとおっしゃって、私は、すばらしい、誰が言い出したかではなくて、正しいものは正しいということで、民進党さんも、維新が言い出した教育無償化であっても、教育無償化は大事だということで追随を今してきていただいているので、大変ありがたいと思っています。

 ただ、辻元委員が、済みません、目が合っていますけれども、憲法審査会でも御一緒しています。憲法審査会の幹事懇でもいろいろお騒がせをしていますが、辻元委員から、足立さん、教育無償化はいいわよ、でも法律でやったらいいやんかと関西弁でおっしゃっていただいているんですが、私は、それはやはり我々は憲法でやるべきだと思っています。

 大体、義務教育は今でも二十六条に無償と、憲法に書いてあるんですね。だから、憲法に書くことと法律に書くことは、当然意味が、効果が違います。

 ぜひそういうことで、教育の無償化、特に、法律でやることと憲法でやることというのは違うんだということで、憲法と法律が違うんだということは当然安倍総理も、常識ですよね、そこをぜひ、違うという方もいらっしゃるので、教育無償化を法律でやるということと憲法で議論するということは、これはまた別のレイヤーのことだよなということは総理もそうだと言っていただけると思うので、安倍総理の御見識として、ぜひ御指導をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 教育の無償化について、憲法に書き込むべきだ、これは御党の主張でございまして、選挙戦における党首討論でもそういう議論が松井党首から出されたわけでございまして、他方、他の党の方は、それは予算措置でやればいいじゃないかというお話がございました。しかし、予算措置であれば、御党の反論としては、それはその時々の財政状況によって変わってしまうではないかという御議論を私は拝聴させていただいたわけでございます。

 憲法は、まさにこれは国の基本を定めるわけでございまして、私どもは、これは国の形を語るものであるということも申し上げてきているわけでございます。そこで、いわば憲法に書き込むということは、まさにそこに国の基本的な姿勢を定めるということにもなるんだろう、こう思うわけでございます。

 義務教育の無償化については、今御紹介いただいたとおりでございまして、既に憲法で決められている中において、これは新しい憲法のもと、義務教育が無償化されたわけでございます。

 そこで、御党の具体的な提案に対しましては敬意を表したいと思いますが、憲法の個別的な条文等々につきましては、どのような憲法がふさわしいのか、国会の憲法調査会において建設的な議論を深めていただきたい、このように願っております。

足立委員 ありがとうございます。

 総理、やはり選挙で三分の二という議論が、これは我々が言ったんじゃなくて民進党さんが言ったんですけれども、昨年の参議院選挙で三分の二ということで、我々は憲法改正を掲げて、自民党もそうだと思いますが、選挙をしてその結果が出ているわけでありますし、衆参でしっかりと三分の二が憲法改正で合意していくということは大変難度の高い仕事でありますので、ぜひことしも有効に審議を憲法審査会で進めながらやっていきたいと思います。

 これまでは、例えば立憲主義。私は、立憲主義というのは、政府・与党こそ立憲主義に沿っていると思いますよ。だって、今、立法府が統治行為論という形で一歩引いている中で、政府が憲法解釈を変更し、国会で過半数で法律を仕上げるわけですから、これは憲法に定める統治機構の中での作業そのものです。もしそれに異論があるんだったら憲法裁判所に賛成していただくしかない、僕はこう思っていますので、そういうことも含めて、立憲主義はどうとか、あるいはそういう議論はもうそろそろ収束させて、ことしは具体的なテーマ、教育無償化を初めとする具体的なテーマについてしっかり、自民党、与党も含めてしっかりやっていただいているわけですが、改めてお願いしておきたいと思います。

 総理、一言、そうやってことしはやはり憲法を前へ進めよう、民進党さんは行政府の長としての発言しか認めないと言っていますが、我々は認めますので、総裁としてでも結構ですから、憲法審査会でことしは前に一歩進めるということでちょっとお答えください。

安倍内閣総理大臣 今、足立委員が御指摘になったように、憲法の場合はまさに国会、衆参両院で三分の二の賛成がなければ発議できないわけでございまして、法律は過半数で成立をしてそこで終わりでございますが、憲法の場合は、さらにその後、国民投票を行うわけでございまして、最終的に決めるのは国民でございます。

 発議するのは国会であり、そして決めるのは国民という姿になっているわけでございまして、やはり国民にとって、自分たちが選択する権利を行使する、賛成か反対かという権利を行使するのは国民投票の場しかないわけでございまして、それをずっと国会において議論を進めずに、その権利行使に対してふたを閉めていいのかどうかというのが、我々としては大いなる問題意識としてあるわけでございます。

 いずれにいたしましても、いわば国民の過半の賛成を得なければ成立しないということを十分に頭の中心に置きながら、しかし、それぞれの政党が、日本をどういう国にしていきたいのか、自分たちの理想の姿を憲法においてはどういうふうに書いていくべきかということについて具体的な議論もなされることが望ましいのではないか、こう申し上げているわけでございまして、具体的にはまさに憲法調査会の場でしっかりと御議論をいただきたい。

 御党からは重ねて具体的な提案がなされている。具体的な提案を出すということは、国民の批判も受けるわけでございます。しかし、それに対して責任を持って示していくということがまさに政党の責任ではないか、このように思う次第でございます。

足立委員 ありがとうございます。しっかり我々も取り組んでまいりたいと思います。

 さて、次は、文科省の天下りの問題であります。

 きょう、私も全部ちょっと拝見できませんでしたが、民進党さんのときだったかな、質疑で安倍総理の方からも一部御紹介があった内容ですが、ちょっと私の方でパネルにして持ってまいりました。

 これも、別に民進党さんをどうこう言うつもりはないので、くれぐれも、党からも、下品な言葉はだめだけれども事実はいいよ、こういう御指導をいただいていますので、事実をちょっと並べさせていただいています。

 要すれば、この再就職等監視委員会の制度、これは安倍一次内閣でつくられたものです。制度創設というものですね。これは行為規制を初めて導入したということで、私は一つの大きな取り組みであったと思います。

 その後、当然与党は、自公政権はこれを動かそうとするわけでありますが、自公政権ですから、政府が人事案を提案するわけですが、国会で、もうこれはちょっとねじれていたのかな、不同意で、人事が固まりません。六月、十一月とそういうのが続いて、翌年、二十一年の二月にも再び不同意。したがって、自公政権の間は再就職等監視委員会が動かないまま、政権交代になったわけであります。

 実は、その後、動き出した再就職等監視委員会が取っつかまえた違反案件というのは、私が承知しているのは三つあります。今回の文科省は三つ目。二つ目、消費者庁の案件がその間にありました。

 一つ目は、国交省の案件というのがあるんですよ。この国交省の案件というのは、政権交代の後、二十三年に、大畠国交大臣のときに、まさに国交省の官僚がルールを破った。これはいろいろ指摘をされたわけですね。

 右の方に赤い、何か爆発しているのがありますが、その後も、与党になっても、政権交代した後も、民主党さんは人事案を国会に提示しながら採決しない。それで全部実現しなかった。

 加えて、この国交省の事案については、違反行為があった二十三年に対して、同じ二十三年にいろいろ指摘があったわけですね、これはだめじゃないかと。指摘があったのに対して、国交省は二十三年の八月に大畠大臣、御自分のときですからあれですけれども、大臣が前田大臣にかわられた二十三年の十一月も、いや、これは白だといって封印をしました。

 その後、監視委員会が動き出した後、二十五年、自公政権にもう一回戻った後、ここにちょっと太田大臣の名前がありますけれども、監視委員会が、これはやはり白ではなくて違反でしょうということで取っつかまえた。これが、再就職等監視委員会の立ち上がりの経緯と、一つ目の違反の認定の経緯であります。

 私は、これはやはり、だから一言で言うと、何というのかな、やめておきましょうね。余りこれ以上のことは言いませんが。

 これは、総理、どうですか。私が余り言うとまた国対からちょっと怒られますので、総理からちょっとお願いします。

安倍内閣総理大臣 本会議でも答弁させていただきましたが、まさに第一次安倍政権のときにつくりましたこの再就職等監視委員会が機能した結果、今回の文部科学省の事案が明らかになった、指摘されたわけでございます。このことを申し上げたら、随分これは何か反論とかやじがなされたんですが、改めて今、足立さんから見せられたこの表を見て、ああ、そうだなというふうに思ったわけでございます。

 まさにこれがない状況では、結局、役所、ここで私も殊さら民主党政権のことを言うつもりはありませんが、民主党政権時代に、当時の国交副大臣は、これは白である、こういうふうに述べているわけでございます。しかし、その後、この監視委員会が機能した結果、それはそうではないということがわかったわけでございます。

 つまり、行為規制によってしっかりと、こうした行為を摘発するためにはこの監視委員会が絶対的に必要であったのかなと改めて認識をさせていただいた次第でございます。

足立委員 当時の民主党政権の問題は、ほかにもいろいろあります。

 例えば、私、親元なので余り言いたくありませんが、資源エネルギー庁長官が東電に行ったとかいろいろ問題もありますが、親元のことは、私はそういうのを言わないようにしていますので、もうやめておきますが。

 いずれにせよ、そういう問題が、要は、民主党政権のときは、個別事案もそうだし、人事もそうだし、それも文科だけではない、ほかの省庁も含めて、万般にわたって本件についてはそういう姿勢で臨まれていたということは、これは事実関係を整理するだけでもわかることでありまして、私はこれから、私個人としては、文科省の問題もこれから明らかにしていく必要がありますが、やるならこれは全部明らかにしていった方がいいので、ぜひ民主党政権の時代も含めて追及をしてまいりたい、こう思います。

 この天下りの問題、実は、既に日本維新の会はこれについても法案を出しています、国家公務員法改正案を臨時国会に。これもその百一本の中の一本です。これも、自公は話を聞いてくれました。民進党は聞いてくれていないんですよね、多分。(発言する者あり)聞いてくれましたか。ありがとうございます。聞いていただいたということで、またその御評価もいただきたいと思います。

 これから政府も文科省のことも含めていろいろ調査をされるということでありますので、ぜひ今後、仮に今の制度に課題があるということになった場合には、こういう大阪の条例、大阪で橋下知事、松井知事、あるいは橋下市長、吉村市長が取り組んでいる天下り規制、大阪は、ここに書いてありますけれども、再就職そのものを一定の枠組みでもう禁止しちゃっているんですね。これは一生です、一生。そういう大変厳しい天下り規制を大阪では導入し、全く同じものを国の制度としても提案しているということを申し上げておきたいと思います。

 最後、もう時間がないんですが、どうしてもやっておきたいのが事業承継税制。

 総理、これから日本経済、日本経済は本当に重要なんですが、一言で言うと、優良企業も含めた中堅・中小企業が悶絶しています。要すれば、事業を後継者に譲るタイミングがもう既に来ている。その山はもうピークに差しかからんとしているので、半分近くの人はもう遅いんです。でも、ピークはもうすぐ来ます。

 ところが、ことしの税制改正の大綱でもなかなかここは、大分進んでいますが、私は、抜本改革をすべきだということで、先ほどあるように、この矢印の下が私の私案でありますが、実は維新の会は、法律案だけではありません。税制案も、税制は法律にするのが大変なので余りやっていませんが、こういう提案もしているわけですね。

 その提案の中身を一言で言うと、こういうふうに、要すれば、後継者に株式を集めるのであれば、筆頭株主要件もなくていいじゃないか、筆頭株主要件だけではない、配偶者でもいいじゃないか、こういう提案を、加えて、贈与税あるいは相続税については一〇〇%の猶予、これでやるべきじゃないかということを実は提案しています。

 これは、総理、総理に伺っていいのかな、こういう深刻な、現場で経営者たちが非常に悩んでいる、悶絶しているんだという実態、財務大臣でも結構ですけれども、その御認識はおありでしょうか。あるいは経産大臣でも結構です。

麻生国務大臣 あなたと違って、私、商売人からこの世界に入りましたので、ようわかっております。

 この内容の提案も、そちらに書いておられるその下の段の方も知らないわけではありませんけれども、この非上場株式等に関する相続税の話、簡単に言えば、役所言葉で言えばそういうことになるんですが、これは今、御存じかと思いますけれども、これに税をかけると、おやじが始めたものが息子の代になったら土地が上がっていて、早い話が、相続税で全部取ってその会社ごと潰れちゃう、工場ごとできないという事態は何も大阪に限った話じゃないので、どこでもある話なので、これはあかんやないかということで、だんだんとつられて関西弁になってきてしまうな。そうじゃないやないかということで、これは全ての財産を平等に課税するという原則というものがありますので、それと経済活力維持とのバランスの組み方が一番難しいということで、昔はそういったものの減というのは半分以下だったんですが、今は八割までそれを認めるようになった。これはもう間違いなく大きな変化なんだと思っておるんです。

 今、あなたにいただいている絵は、それを一〇〇にせいという話なんですが、これを一〇〇にしちゃうと、事業用の資産を持たないサラリーマンの人たちとそうじゃない人、持っている人たちとの間のバランスというものを考えると、それはちょっと公平性に欠くやないかという話になるという点が一番の問題なんだと思うんですね。

 ただし、この事業承継税制というのは、生前贈与をやったりなんかする場合はすごくごちゃごちゃして、いろいろ手間がありますので、その手間につきましては、これを安心してやってもらえるように、例えば相続した途端に会社が火事になった場合はどうしてくれるんだとか、それはいろいろな条件がつきますので、それは全部、大幅にそういったところはやりやすくしてありますので、御要望の点は大体そこでカバーしていると思うので、ちょうど時間となりましたところなんだけれども、大体そういう方向では動いています。

足立委員 十秒だけ、ごめんなさい。

 ぜひまた次の機会に、事業会社と政治団体の比較というのをちょっと今やっていますので、これはなかなか興味深いテーマですので、また総理、麻生大臣にも御指導いただきながら、討論を続けさせていただきたいと思います。

 本日は、大変にありがとうございます。

浜田委員長 この際、丸山穂高君から関連質疑の申し出があります。足立君の持ち時間の範囲内でこれを許します。丸山穂高君。

丸山委員 関西国際空港のあります大阪の南部、泉州選出の丸山穂高でございます。

 私からも党を代表して質疑させていただきたいと思いますが、若干、先ほどの足立議員と麻生財務大臣とのやりとりで少し私の時間を食われてしまっていますので、手短にお願いしたかったんですが、しかし重要な議論だとは思います。私の方はしゃきしゃきとやっていきたいと思いますので、御答弁よろしくお願い申し上げます。

 これは昨年の少し確認になるんですけれども、いわゆる安全保障上重要な土地、国境離島とか自衛隊の基地、水源のある森林などが外国の資本に買われていて、残念ながら国がこの所有実態すら把握できていないんじゃないか、ゆゆしき事態だという問題を昨年の通常国会、臨時国会でも私は取り上げさせていただいて、これで、総理、農水大臣から、政府でも対応を検討するという旨をいただきました。維新の会はこれに対して法案を出しております。

 ただ、報道では、その我々の質疑を機に、自民党の方でも法案の作成に動き始められているという報道があります。総理は自民党の総裁でもいらっしゃいますので、このあたりの事実関係、そして総理としての対応について、最初にお伺いしておきたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、防衛施設周辺等における外国人や外国資本による土地の取得に関しては、国家安全保障にかかわる重要な問題と認識をしています。

 このため、安倍政権発足後、我が国として初めて策定した国家安全保障戦略において、「国境離島、防衛施設周辺等における土地所有の状況把握に努め、土地利用等の在り方について検討する。」と明記をしたところであります。現在、これに従い、土地所有の状況について、防衛省を中心として計画的に把握に努めております。

 そして、この問題に関しては、既に日本維新の会が国会に法案を提出されていることは承知をしておりますが、かねてからの問題提起に敬意を表したいと思います。

 また、御指摘のように、現在、自民党においても、安全保障と土地法制に関する特命委員会において、防衛施設周辺の土地等の調査について、法制化に関する議論が行われています。

 政府としては、自衛隊施設や米軍施設の安全保障上の重要性に鑑み、与野党における御議論の状況も十分に注視をしながら、いかなる施策が必要か検討を行ってまいりたいと思います。

丸山委員 行っているという御答弁です。

 ただ、仄聞しますと、法案の方はまだ調査の強化とか権限付与ということで、我が党が出しているもののように、万が一何かあったときに法規制まで含めたというふうなところまではいかないんじゃないかという話もあります。中身は出てきてからという話になると思いますけれども。

 しかし、この問題自体は、前に少しでも進むのであれば、与党も野党もないというふうに我々は考えております。維新もできる限り協力していきたいと思いますので、ぜひともスピード感を持って、これは与党の方も、そして政府としても御対応いただきたいというふうに思います。私もこの問題をことしも引き続き追っていきたいというふうに考えています。

 さて、本日は、次の議題について主に質疑していきたいと思います。それは、ギャンブル依存症とパチンコの実態についてです。

 このフリップにもあります政府の公表資料では、厚生労働省の資料ですが、日本国民の成人の四・八%の方がギャンブル依存症の疑いがある。全国で五百万人以上、五百三十六万人という報道もありますけれども、男性だけ見ると人口の九・六%、十人に一人がギャンブル依存症の疑いがあるかもしれないという報道もあるということで、男女でならせばこの四・八なんだろうというふうに思うんです。

 しかし、この問題、前回の国会でIR法案の審議のとき、カジノができたらギャンブル依存症はよりまずくなる、何とかここの対応をしてくれよという、特に、反対をされた方々はその論調でよく議論されていました。非常にそれは大事な論点で、新しくできるカジノにおいてこの依存症をふやさないためにどうしていくか。特に、カジノなんかはしっかり設置するカメラ等で入られる方のチェックをしていく、依存症の患者の方が入られたらそれをとめていくような、そうした具体的な措置がカジノ場に必要だと思います。それは、この国会、次の国会等できちんと議論をしていくことだと思うんですけれども。

 一方で、残念ながら、この四・八%、今のカジノのない日本での数字なわけで、現実に今、この表にあるように、他国に比べても日本のギャンブル依存症の率というのは非常に高い状況になっている。この原因は何なんだという話をすれば、最初にお話をした、今もう既にあるパチンコが多くの原因だというふうに考えられると思うんです。

 最初に、大前提として、厚労省さんに伺っておきたいと思います。パチンコが依存症の原因となり得るという認識でいらっしゃるのかどうか。そして、四・八%と推計されていますけれども、パチンコが依存症の原因となって、なおかつそれはこの数字の多くを占めているのかどうか。

 そして、事前に厚労省に聞きましたら、実は、これまでの厚労省とのやりとりでは、残念ながら予算枠も少なくて、ではこの四・八%がどういう調査になって細かい分析みたいなものができているのかという問いに対して、残念ながらできていないというのが現状だというふうには聞いています。

 これがもし本当にできていないのであれば、予算もふやしていただけるということですので、きちんと分析調査をしていただいてこれを公表していくということが非常に今後の依存症対策において大事だと思うんですが、厚労大臣、お答えいただけますでしょうか。

塩崎国務大臣 今、パネルの方で四・八%という数字をお示しいただきましたが、ギャンブル依存症の疑いのある方は成人の四・八%というふうになっておりますけれども、この数値は、アンケートの調査によってみずから記入をするという、そんなやり方でやっていただいたものでございました。

 それで、より正確なギャンブル依存症の実態把握に努めなければならないということで、現在、改めて、日本医療研究開発機構、AMEDが国立病院機構久里浜医療センターに委託をいたしまして、十一都市に居住いたします成人の方々を対象に、みずから記入するのではなくて調査員による面接とか医師による診断などの手法を用いまして、実態把握に今努めておるところでございます。調査項目には、遊技あるいは公営競技、競馬とか競輪とか、こういった種類ごとにその頻度を問う質問とか、最もお金を使った種別を問う質問などを含めておりまして、このため、依存症とパチンコとの関係につきましても一定の分析ができるのではないかというふうに考えているところでございます。

 この調査結果の概要は三月中にも取りまとめられる、そういう予定と聞いております。(丸山委員「公表してもらえますか」と呼ぶ)当然これは、三月中に取りまとめれば、この概要について公表されるものだというふうに思います。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 総理、この問題をお伺いしたいんですけれども、IRの話で、もちろん依存症の話、しっかりこれから対策をしていかなければなりません。

 一方で、今のパチンコの現状を警察に聞きますと、賭博罪には当たらない、しかし、依存性が高い可能性が、おそれが出てくるので規制をするんですよというので風営法があるという理屈、建前は理屈なんです。

 しかし、現状として、厚労省は残念ながらまだデータがとれていない、今まで何でやってこなかったんだという御批判はあると思います。しかし、民間の調査では、例えばこの表を見ていただくと、ギャンブル依存症として病院に来られた患者さんのうち九一%、ほとんどですね、ほとんどがパチンコからこの依存症になってしまってという例もあります。これは民間の研究、医学界の研究ですけれども。

 そういった意味で、この依存症対策、本当にパチンコという本丸の部分、今後、総理は訪日外国人の方をふやそうとされていますね。二千万、三千万を目指されている中で、恐らく来られた外国の方はびっくりされますよ。何でこんな、ギャンブル依存症をつくっているようなものがいっぱい町じゅうに、駅のあるところ、あるところにあるんだといって。なおかつ、やってみたら、非常にわかりにくい日本独自のルールで運営されている。店員さんに聞いたら、換金はできません、しかし皆さんあっちの方に出ていかれますよみたいな、曖昧な言い方しかできないわけですよ。まあ、そういうルールですからね。

 しかし、そうしたものも踏まえた上できっちり、カジノは入場規制とかもしっかりしていく、これを機にパチンコに対してもしっかりそういった、今警察がやっているようなマックス機の規制だとかサブ基板の問題とか、そういう細かい部分じゃなくて大枠の、入場規制、依存症対策を含めた議論、そして対策をやらなきゃいけないと思うんですけれども、総理、どう思われますか。

安倍内閣総理大臣 ただいまのギャンブル依存症についての数値、成人の四・八%という数値については、厚労大臣から答弁させていただきましたように、より一層精度を上げていく、今調査をしているということでございますが、この表にある、アメリカ一・四%、イギリス〇・八、そしてオーストラリア二・一、それぞれここはいわゆるカジノが既にある場所でありますが、しかし、イギリスは〇・八と非常に低いということだと思います。

 パチンコを含むギャンブル場への依存問題については、IR推進法の審議の過程で対策の重要性が指摘をされました。附帯決議においても言及されたものと承知をしています。政府としても、ギャンブル等への依存症により不幸な状況に陥ることをできるだけ少なくするための対策をしっかり講じていくことが肝要であるものと認識をしています。

 そのため、昨年末に関係閣僚会議を立ち上げ、政府一体となってギャンブル依存症全般についての包括的な対策を強力に推進することとしたところでありまして、委員の御指摘も参考にしつつ、健全な社会を構築するために取り組みに力を注いでいきたいと思います。

丸山委員 しっかり、上辺だけじゃなくて、実際に既にいる依存症の方々、パチンコでほとんどなっていらっしゃるという方々が減るような形の、入場規制も含めた具体的な政策をやっていただきたいというふうに思います。

 そういった意味で、これは今出しているということで、今後この依存症対策とカジノの実施法案ということですけれども、実質パチンコの入場規制等までつながるかどうかというのは、非常にこのカジノ法案に続いて大事な流れだと思います。これは、しっかり維新の会も見ていきたいというふうに考えております。

 では、実際に、次のフリップで、総理のおっしゃる困っていらっしゃる方々はどういった方々か。いろいろな方々がいらっしゃると思います。

 一つ、生活保護費を使ってまでパチンコに行こうとされる方々の問題が社会問題になっています。ここに出ていますような記事の話がありますけれども、一番新しいのだと去年、別府市の方で、そういう方に対して市がやった是正策が問題だという指摘を国から受けて市ができなくなったとかいうような。国の対応が若干、禁止しているのか、それともそれを禁止していないのか、法的根拠がないゆえに、現状ないわけです、すごく曖昧で、現場でもある意味混乱が生じていると思うんです。

 実際、生活保護の方でどれぐらいの方がこういう状況になっているのかだけじゃなくて、では日本じゅうにある自治体の中でどれぐらいの自治体がこういった問題で困っているのか、実態はどうなんですかという話を厚労省に聞いても実態調査すら、残念ながらわかっていない、ヒアリングすら各自治体にしていないというお答えを、この質疑の前の厚労省とのやりとりで聞いております。事実関係、そこも含めて厚労大臣にお伺いしたいんですけれども、まずその事実の部分。

 政府としてちょっと正式に聞いておきたいんですけれども、パチンコに行くということ、生活保護費でパチンコや、例えば風俗店もそうですね、風営法で規定されているパチンコや風俗店の客となるのは、過度でなければ、これは憲法上保障された権利、健康で文化的な最低限度の生活と政府見解として言えるんでしょうか。つまり、生活保護でパチンコ等に行くのは憲法上の権利なんですか。大臣、どうですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、調査をどこまでしているんだ、こういう御質問でございましたが、確かに生活保護の現場を担っている地方自治体の方からはいろいろなお話が入ってくるわけでありますが、網羅的に把握をしているということはございません。聴取をしているという形でございます。

 現在の生活保護制度のもとでは、生活保護を受けている方が社会常識の範囲内でパチンコなどのいわゆる娯楽を行うことを特段禁止しているわけではございませんから、その実情について、今申し上げたとおり、網羅的には把握をしていないわけでありますけれども、受給者の一部には生活費をパチンコなどに過度に充てているという実態があることはよく聞いているところでございます。

 こういうことから、生活保護法において、受給者に対して支出の節約を求めるということはできるわけで、それから、過度にパチンコ等の娯楽に生活費をつぎ込むような場合には、ケースワーカーが当然指導をしておるわけでございます。

 今後も、生活保護受給者の自立がパチンコなどによって妨げられることがないように、生活保護の制度の趣旨が貫徹されるように、これらの取り組みを進めていかなければならないというふうに考えてございます。

丸山委員 憲法上許容される権利かというところは答えづらいと、きのうの厚労省との話ではされていまして、先ほども余りきちんと述べていただけませんでしたが、今お話しされたように、曖昧な解釈の中でやらざるを得ないということなんですけれども、自治体へのヒアリングをしっかりやっていただきたいなというのは非常に大事な点だと思うんですけれども、大臣、どうでしょう。これはやってくださいよ。

塩崎国務大臣 選挙区に戻ってミニ集会なんかをやると、いろいろ御批判を聞く中に、生活保護費が支給される日にパチンコあるいはカラオケなどが非常ににぎわっているというふうな話を聞くこともございます。

 したがって、今御指摘のように、実態をしっかり把握するようにということでありますが、その点は、把握をどういうふうにしたらいいのかということを含めて対応してまいりたいというふうに思います。

丸山委員 対応してまいりたいというお言葉をいただきましたので、これはしっかり実情をまず把握するところから、ようやくですけれども、やっていただきたいと思います。

 今大臣からいみじくもお話がありましたけれども、国民感情の中で、生活保護費の原資が税金である以上、しっかりきちんと生活保護で、本当に困っていらっしゃる方がお使いになるということに対しては誰も異論はないと思います。これは憲法上保障された権利です。しかし、そうじゃなくて、そのお金でギャンブルや、もしくは風俗みたいな形で行かれているということはやはりおかしいんじゃないかというのが通常の国民感情だと思います。保護を受けられている方の中で依存症の割合が高いというデータもありますので、これをしっかりとやっていくというのは非常に大事です。

 維新の会も実は、これも法案で既に先国会に提出しているものですが、政府としても、先ほどおっしゃっていただいた、最初の調査からですけれども、しっかりとこの問題もやっていただきたいというふうに思います。

 パチンコの件でもう一つ、お話を聞いていかなければならないのがこの観点です。

 パチンコのお金、我が国にミサイルの問題でいろいろある、そして我が国の国民を拉致している、その北朝鮮に対してお金が流れているんじゃないかという話がたびたび出てきます。

 それで、いろいろ調べていると、特に例えばインターネットなんかだと、当時、九三年に、武藤外務大臣の時代に国会答弁で、今このフリップを上げさせていただいています、朝鮮総連の北朝鮮への送金について、パチンコのお金が大分北朝鮮に行っているようだ、何千億円と行っているという発言があるんじゃないかという情報がいろいろあるんですけれども、実はこれは調べましたら国会答弁ではなくて、当時、九三年、シンガポールに行ったときに武藤外務大臣が記者懇で述べているということでした。これは国会答弁ではなく、正式な答弁ではないという、記者懇ですからね、それが記事になっているので、では、改めて正式な答弁を聞きたいというふうに思います。

 外務省はパチンコ業界等から北朝鮮にお金の流れがあるとお考えかどうか、外務大臣、答弁いただけますでしょうか。

岸田国務大臣 北朝鮮への資金の流れ等については、さまざまな観点から実態を把握するべく努力をし、そして我が国独自の措置を講じているわけですが、今御指摘のような点について、具体的な情報については、私自身、ちょっと承知はしておりません。

 引き続き、さまざまな情報については強い関心を持って、情報収集には努めたいと考えます。

丸山委員 外務省は、私も以前外務委員会をやっておりましたので、そこで北朝鮮への制裁はしっかりやっていくというお言葉をいただいておりますし、現にやっているんですね、人、物、金の流れをとめていくということで。公式には、人、物、金の流れは、北朝鮮へはゼロにするんだという形で、ほぼゼロになっているという状況なんですけれども、そういう認識でいいんですよね。公式の、表の場ではゼロになっているという認識でよろしいですね。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国は、人、金、物に対する厳しい制限を課している国連の安保理決議とは別に、我が国独自の措置を課しています。

 そして、人についても、北朝鮮籍者の入国の原則禁止等、厳しい制限をしておりますし、物につきましても、平成十八年から北朝鮮からの輸入を禁止、平成二十一年から北朝鮮への輸出を禁止、そして金についても、北朝鮮を仕向け地とする現金等の携帯輸出の届け出下限額を十万円超に引き下げるなどの措置を講じ、しっかりとこうした措置の実効性を確保するべく努力をしている、これが現状であります。

丸山委員 非常に答えづらいという形でお答えいただいているのは承知していますので、皆までやりませんが、ゼロじゃないんですね、残念ながら。残念です。これはしっかりやっていただかなきゃいけません。表では確かにゼロ。表立って輸出する人はほぼいないんだと思いますよ。ただ、第三国を迂回してというのがまだあるんじゃないかというのは非常に危惧しています。

 あるのであれば、とめなきゃいけないんですが、このフリップの記事をごらんいただいて、右側の「工作員、北へ長期不正輸出」というのは、この一月の記事なんですね。工作員がシンガポールを迂回拠点にして、中国も経由して、パチンコ経営者の方ですね、この工作員が物資を北朝鮮に不正輸出していたということで、外為法で検挙されたという話が出ています。この左の記事もパチンコ経営者の話ですけれども、工作員のパチンコ店経営者などが北朝鮮へ資金供与や第三国を経由して不正輸出をしている現状が記事ではかなり出ているということです。

 ただ、個別の事件に関して警察に対してこれは本当ですかというのは聞くべきじゃないというふうに思いますし、捜査の問題もあります。敵を利するものになりますので、件数をお聞きしたいんですけれども、国家公安委員長、お伺いできますでしょうか。同様の、パチンコ店などで生まれた資金、北朝鮮にこういうものが出ていって、これを取り締まった事例はどれぐらいあるんですか。

松本国務大臣 これまで、北朝鮮に対する措置に係る事件は三十六件検挙しております。

丸山委員 外務大臣、三十六件、同様の件で検挙しているんですよ。恐らく氷山の一角です。検挙できたものが、それが全部だというのは、本当は、普通はあり得ないですね。

 ということは、氷山の一角で三十六件あるわけで、およそこの国の経済制裁の抜け道としてこの件をほっておけば、結局、外務省は何をやっているんだということになりかねない、非常に大事な問題だと思います。その認識は大臣も共有いただいていると思います。

 そういった意味で、大きくうなずいていただきましたけれども、パチンコのお金だけじゃなくて、北朝鮮に対してお金が流れているという現状をとめていかなきゃいけないんだけれども、非常に難しいんですよ。

 今お話しされたように、外務大臣は公式にはないという見解で、基本的にはとめている、やっていると言うんですけれども、警察は警察で、三十件以上検挙がある、迂回献金があるという形で進めているわけで、表立っての交渉は外務省がやって、検挙は警察がやって、そして現場の税関とかあるいは財務省とか、ほかの役所がとめている。本当に縦割りな状況になっていて、これも後手後手になっているとか。

 調査予算も足らないのかもしれません。もしくは、北朝鮮からの入国禁止リストが今ありますけれども、これをもっと拡大していかなきゃいけないのかもしれない。非常にいろいろな対応策が考えられますが、しっかりとしたさらなる強化、裏も含めた対応を、総理、これは絶対にしていかなきゃいけないというふうに考えております。

 総理も根本意識、共有意識は同じだと思うんですけれども、これは何か、さらなる強化の検討ができないんですかね。今政府に聞いたら、まだこういうのはやっていない、検討もしていないという話なんですけれども。今この現状が表立って出てきていますけれども、総理、どういうふうにお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 私がかつて官房長官だったときに、北朝鮮に対して厳格な、これは当たり前なんですが、法執行を行っていくというチームをつくりまして、多くの省庁が参加をしてしっかりと、朝鮮総連も含め、さまざまな活動に目を光らせたわけでございます。

 政府としては、警察を初めとする関係機関間で緊密に連携をとりながら、法と証拠に基づき、違法な行為の取り締まりを徹底していく考えであります。また、政府としては、拉致、核、ミサイルという諸懸案の包括的な解決に向けて、何が最も効果的かという観点から不断に検討していきたいと考えております。

丸山委員 何が最も効果的かという点を踏まえて検討したいということですね。恐らく北朝鮮も考えてきて、徐々に裏の部分をふやしてくるでしょう。表の部分を減らせば、その分、裏の部分をふやしていきます。そうすると、効果的にやるには、この裏の部分をどうとめていくかが非常に重要だと思います。

 今私の御指摘した省庁の縦割りの問題。安全保障を見ていますと、例えば昨年やらせていただいた、尖閣を含めたあの海域をどう守っていくかというときの海上保安庁と自衛隊の縦割りの話、北朝鮮に対する不正輸出をとめるときの警察と外務省、もしくは外務省や税関、そういった役所の縦割りをなくしていくという話、これは本当に、まさに総理がいつもおっしゃる官邸のリーダーシップが問われる案件だというふうに思います。

 我々は野党ですけれども、決して足を引っ張るようなことはしません。おかしいところは、きょうお話をしたように、これはしっかりやってくださいよという指摘をして、対応、改善のお願いをしていきますが、そういった意味では、この点について強く重ねてお願い申し上げたいというふうに思います。

 最後に、ちょっと話題がかわるんですが、これだけは触れておきたいので話をさせていただきます。

 地方議員年金の復活の話が今出てきています。かつて、地方の議員の皆さん、国会議員もあったんですが、廃止されています。議員年金がありましたが、これを今、若い人がならない、引退後の生活の不安によるなり手不足が深刻だという地方議会の議員の皆さんのお声が意見要望として国の方に多く出されているということでございますけれども、本当にこれは年金を上げたらなり手不足が解消するんでしょうかね。

 私、この国会でも一番若い国会議員、男性の議員の一人ですけれども、こんな年金がどうこうで議員になるかどうかを決める若い人は聞いたことがないですね。

 なおかつ、国民の皆さんにはいろいろ負担をお願いして、この間、年金の議論をしたわけですよ。もしかしたら、経済状況が悪化すれば、物価も賃金も下がれば国民の皆さんに御負担をお願いしなきゃいけないという改正をしました。したのに、何で議員だけ、自分たちの議員年金を戻そうとしているんですか。

 しかも、これは二百億円分の公費負担ですよ。これを変えるには、地方議会だけではできないんです、国の立法措置、法律が必要です。つまり、総理が、やると言えばやるし、やらないと言えばやらないという、一つ大きな決断を担っているお一人だというふうに感じます。

 そういった意味で、総理、しっかりと、やらないと私は言っていただきたいというふうに思いますが、慎重に考えていただきたいんですが、この点について見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 地方議員の厚生年金への加入については、今御指摘もございましたが、国民の幅広い政治参加や地方議会における人材確保の観点から必要との考え方もあるというのは承知をしております。

 地方議員の年金を廃止した際に、「新たな年金制度について検討を行うこと。」とされた衆参両院総務委員会における附帯決議を踏まえ、総務省において所要の検討が行われてきたものと承知をしております。

 その中で、地方議員の厚生年金への加入に当たっては、保険料の二分の一を事業主として公費負担しなければならないことや、地方議員を厚生年金の加入者同様の被用者と扱うなどの法的手当てをどうするのかといった課題があるとされているところであります。

 いずれにいたしましても、地方議員の身分の根幹にかかわることであり、国民の皆様の声や地方議員の声もよく聞きながら検討がなされる必要があると考えております。

丸山委員 時間が来たので終わりますけれども、この点、絶対におかしいというふうに申し上げて、私、丸山穂高の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて足立君、丸山君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官藤江陽子君、文部科学省高等教育局長常盤豊君、文部科学省研究振興局長関靖直君、文化庁次長中岡司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 この際、小川淳也君の残余の質疑を行います。小川淳也君。

小川委員 小川淳也です。

 委員長、わずか三十五分しかない質疑時間を三十分と五分に分けられるというのは、審議の充実にとって甚だ支障があります。極めて遺憾であります。

 そのことを申し上げた上でお尋ねをいたしますが、あっせん行為が極めて組織的で悪質だということは、午前中の質疑で明らかにしたとおりであります。極めて重要な記述が文科省から民進党会議への回答書の中にあります。R氏による再就職のあっせん行為は、平成二十年の国家公務員法改正を受け、平成二十一年七月ごろから開始されたという記述についてであります。

 平成二十一年七月、ちょうど常盤文科省高等教育局長が人事課長に就任したときでありました。このR氏によるあっせん行為、そして人事課の加担含めて、当時からそうした事実はあったという御認識でよろしいですか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 私は、平成二十一年から二十二年にかけまして、一年間、人事課長をしておりました。人事課長経験者といたしまして、また文部科学省の幹部職員といたしまして、このたびの事案につきましては、まことに申しわけなく思っております。

 再就職のあっせんの問題につきましては、文部科学省として、現在、全容解明のための調査を行っているところでございますので、調査がまとまりましたらお答えをさせていただきますので、お時間を頂戴したいと存じます。

小川委員 司直の手が入っている、検察の手が入っている、警察の捜査が進んでいるのであれば、今の説明も一定理解いたします。しかし、松野大臣、内部調査ですよ。高等教育局長からいえば部下である後輩である審議官から事情を聞かれているから国会では答えられませんという答弁ですよ。これはあり得ません。ちゃんと答えてください、知っていたのか、知らなかったのか。

常盤政府参考人 ただいまお答え申し上げましたけれども、この問題につきましては、現在、文部科学省として全容解明の調査を行っておりますので、お時間を頂戴したいということでございます。

小川委員 文科省全体のことについてつぶさにと言っておりません。常盤教育局長が人事課長時代に知っていたことのみで結構です。正直に答えてください。当時から人事課のあっせんはあったんですね。

常盤政府参考人 重ねてで申しわけございませんけれども、現在調査中でございますので、お時間を頂戴したいということでございます。

小川委員 委員長、答弁させてください。

 先ほど申し上げましたが、これが検察の捜査や警察の捜査であれば、一定理解いたします。それから、全体像をこの場で明らかにしろと申し上げているなら、時間がかかるでしょう。この常盤局長の個人の経験を正直に述べてくださいとお願いしているだけですから、委員長、ちゃんと答えさせてください。国会の権威にかかわると思います。

浜田委員長 常盤局長、もう一度答弁願います。

常盤政府参考人 失礼します。

 文部科学省でただいま調査を行っておりまして、調査がまとまりましたらお答えをさせていただきますので、お時間を頂戴したいというふうに申し上げさせていただいております。

松野国務大臣 この事案に関しまして、国民の皆様の視点からすると、このOBを介して文科省の人事課の職員が、目的を、潜脱することとしてあったのではないかという疑惑があることは私も承知をしております。

 その国民の視点に立って、今後、私の責任下におきまして、しっかりと全容解明に努めてまいります。

小川委員 大臣、全容解明は全容解明できちんとやってください。

 今は、人事課長時代に常盤さん個人がどうだったかということを誠意を持ってお答えをしてくださいと言っているわけで、大臣、ちゃんと上司として、正直に答えなさいと常盤局長に言ってください。(発言する者あり)

浜田委員長 時間は来ておりますが、一旦、ちょっとここでとめさせていただきます。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 松野文科大臣。

松野国務大臣 現状の所管のことであれば局長として答弁をさせますけれども、当該事案に関しましては、私が任命権者として責任を持って、今後、調査をもって全容を解明してまいります。

浜田委員長 小川淳也君、時間が終了しておりますので、質疑を終了してください。

小川委員 所管事項、政策のことであれば私も聞きません。違法行為があった可能性があるから聞いているんです。

 大臣は、任免権を持ち、懲戒権を持ち、文科行政を正す唯一の権限と責任を持った方じゃないですか。過去の経験についてちゃんと答えさせてください。

浜田委員長 局長、もう一度答弁してください。

常盤政府参考人 ただいま大臣からも御答弁ございましたが、私の所管の業務ではございませんので、先ほど申しましたように、文部科学省全体として全容の解明ということで調査を進めさせていただいておりますので、その調査がまとまりましたらお答え申し上げたいというふうに申し上げておりますので、お時間を頂戴したいということでございます。

浜田委員長 時間が来ておりますので、よろしくお願いします。

小川委員 最後に。

 総理、全容解明のためにあらゆることをやりますと何度もおっしゃいました。今のような姿勢、答弁で、総理、本気度が問われると思いますよ。ちゃんと答えさせてください。総理のお答えだけ聞いて、時間ですから終わります。

浜田委員長 小川君の時間は終了しておりますので、総理、最後に一言答弁願います。

安倍内閣総理大臣 先ほど文科大臣から答弁をさせていただきましたように、局長は、現在局長としての職掌にあることについては当然答弁する義務があります。これは当然のことであります。しかし、かつての、かつてどの課にいたことについてここで答弁をすることはないということは、大体申し合わせで決まっていることではないかと思います。

 先ほど文科大臣がお答えをさせていただいたように、この問題の解明は文科大臣が責任者であって、局長ではありません。ですから、文科大臣が責任を持ってしっかりと調査をし、そしてそれを御報告する、こう申し上げておりますから、その責任を間違いなく文科大臣が果たしていかれるもの、このように思う次第でございます。

浜田委員長 小川君、終了してください。

小川委員 委員長、ちょっと整理を、委員会として整理をお願いします。政策については聞きませんから。政策については聞きませんから。違法行為や規範にもとる行為があっても一切聞けないということでは……

浜田委員長 申し合わせの時間が来ておりますので、小川淳也君、質疑を終了してください。

小川委員 行政を正すことは国会はもはや不可能ですよ。

 それを、委員長、整理してください。委員会としてルールを整理してください。政策について聞いていませんから。

浜田委員長 いや、整理してここに臨んでおりますので、そのまま。

小川委員 それだけお願いして、終わりたいと思います。

浜田委員長 これにて玉木君、細野君、前原君、大西君、山尾君、後藤君、長妻君、井坂君、福島君、小川君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 これより締めくくり質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎です。

 本日は、自由民主党並びに公明党を代表して、平成二十八年度第三次補正予算の締めくくり質疑をさせていただきます。

 この第三次補正予算におきます主な歳出項目は、第一に災害対策費、第二に国際機関分担金及び拠出金、第三に自衛隊の安定的な運用の確保等々という三つの柱立てから構成されておりますが、本日は、このうち、災害と国際貢献に関連した質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、災害対策でございますけれども、今回の補正予算には、昨年四月の熊本地震、また八月の北海道、東北の豪雨、台風災害への対応としまして、公共土木施設の災害復旧や農業関連施設の再建、作付の支援、また、廃棄物の処理、グループ補助金による中小企業支援、こうした予算千九百五十五億円が計上されておりまして、まさに早急にその成立を図って被災地の皆様にお届けすることが必要であると強く感じているところでございます。

 一方、この補正で措置したような、既に発生した災害に対して迅速な対応を図ることは非常に重要でありますけれども、さらに重要なのは、予測される災害に対しまして、さまざまな面からできる限りの備えを行って、被害を最小限にとどめる減災の取り組みなのではないかと考えております。特に、マグニチュード七クラスの首都直下地震や、マグニチュード八から九クラスの南海トラフ地震が今後三十年以内に発生する確率は、ともに七〇%程度と言われております。

 政府としては、これまでも、これらの大規模地震を想定して、地震防災対策の基本計画を立て、その中でまた減災目標を立てて、さまざまな対応策を推進されていると認識しております。同時に、実際に発災した際に円滑に対応できるように、応急対応のための体制をしっかり整備していくということも喫緊の課題であると考えます。

 ついては、政府の具体的な取り組みについて、松本防災担当大臣にお伺いをしたいと存じます。

松本国務大臣 南海トラフ地震、首都直下地震の対策を推進するため、それぞれ特別措置法が制定され、それに基づき基本計画を決定しております。基本計画においては、それぞれの地震の被害想定を踏まえ、十年間を期限とする定量的な減災目標を定め、建築物の耐震化、避難地、避難路の整備など、予防的なさまざまな対策を関係省庁が連携して推進しているところでございます。

 また、地震はいつ発生するかわからないため、発災時における対応を迅速に行うため、具体的な応急対策計画を策定しております。この計画に基づき、警察、消防、自衛隊の部隊やDMATなど医療チームを投入する人的支援や、水、食料、毛布など必要不可欠な物資を調達し輸送する物的支援について、被災地方公共団体の具体的な要請を待たずに、プッシュ型で行うこととしております。

 今後とも、国民の生命と財産を守るため、関係省庁、地方公共団体等とも緊密に連携しながら、平時からの防災・減災対策、また、有事の応急対策の両面において万全を期してまいりたいと存じます。

宮下委員 ぜひ、政府を挙げてしっかり対応をお願いしたいと思います。我々もしっかり応援をしていきたいと思います。

 次に、補正予算のもう一つの柱であります国際貢献に関連して質問をさせていただきます。

 この第三次補正予算に計上されました国際機関分担金及び拠出金は一千六百八十五億円でありまして、この金額は、平成二十八年度当初予算における当該予算を上回る、ある意味大きな金額となっているわけです。

 一方で、その経緯を伺いますと、当初予算の策定以降に、PKO分担金を初めとしまして、国際機関などから、さまざまなプロジェクトに対する分担金また拠出金の負担要請があって、その額を積み上げると今回の補正予算で計上した額の倍以上にもなっていた、これを財政的な制約も踏まえて優先的なプロジェクトに絞り込んだという御説明を伺ったところであります。

 そこで、岸田外務大臣からは、どういうことを重視してこの絞り込みを行ったのか、この補正予算におきます重点政策は何か、どこに重きを置いたのかということについてお教えをいただきたいというのが一点。

 また、関連して、こうした予算の計上の仕方は、見方によっては、当初予算に多目に計上しておけばいいんじゃないか、ないしは、予備費を多目に置いておいて、追加的なものはそっちで対応すればいいんじゃないかという考え方もないことはないと思いますが、実際は、従来もやはり、本当に要請が来るか来ないかわからない状態で予算に計上するということをせずに、しっかりした積み上げ、精査を行って当初予算を計上し、そして、こうした事態が起これば補正予算で計上しておりますので、私は、今回の補正予算による計上が適正だというふうに考えておりますけれども、この点についても、岸田外務大臣から御見解をお聞かせいただきたいと思います。

 あわせまして、もう一つ、国際貢献に関してですけれども、私の地元長野県駒ケ根市には、国際協力機構JICAの青年海外協力隊の訓練施設がございます。こうしたことから、市民の皆様が帰国した協力隊の皆さんからお話を聞く機会を持ったり、それを契機にみんなで途上国に学用品を送るなど、さまざまな支援活動も行ってきているところでございます。

 また、私自身も、海外出張などの際には青年海外協力隊やシニアボランティアの皆様にお会いをして、そのたびに、現地の皆様からはその活動が高く評価されている、こういったお話もお聞きしております。

 また、カンボジアからスタートした累次のPKO活動による各国の支援も、国際的にも高く評価されていることは言うまでもございません。

 こうしたことから、経済大国として拠出金などを通じて国際貢献をしっかり行う、その責任を果たすということと同時に、青年海外協力隊、国際緊急援助隊、PKO活動などの人的な支援、言いかえれば、日本の顔の見える支援が大変重要であると感じております。

 こうした人的貢献の重要性についても、あわせて御見解をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

岸田国務大臣 幾つか御質問いただきました。

 御指摘の千六百八十五億の内容ですが、国際機関に対する拠出、国連分担金あるいはPKO分担金、こうしたものについては、当初予算の確定後に金額が確定し、支払う緊急性があるということで支払うわけですが、内容につきましても、難民問題、保健、感染症問題、あるいはテロ対策、北朝鮮の核実験、ミサイル発射等も念頭に置いた軍縮・不拡散体制と、緊急性の高いものを厳選しております。

 中東あるいはテロ対策につきましても、シリア、イラクの人道状況の危機的な状況に迅速に対応する、あるいは、ISILの戦線縮小によって外国人テロ戦闘員がアジア諸国にもう今帰国をしつつある、テロのリスクが急速に高まっている、こういったものに対する対応など、内容につきましても緊急性に鑑みて厳選をしたところであります。

 そして、人的貢献についても御質問いただきました。

 テロ、難民、貧困、感染症、こうした課題に日本としてもしっかりと対応していかなければならないわけですが、青年海外協力隊、専門家の派遣、あるいは国際緊急援助隊の派遣、PKO要員の派遣、こうした協力は日本人の顔の見える支援の典型であり、高く評価されています。日本の強みだとも考えます。

 ぜひ、こうした取り組みはこれからもしっかりと重視し、積極的に国際貢献に取り組んでいかなければならないと考えます。こうした取り組みが進むことは、ひいては我が国自身が裨益する、そして存在感を高める、こういったことにつながる大切な取り組みであると考えています。

 以上です。

宮下委員 最後に、安倍総理にお伺いをしたいと思います。

 こうした大規模災害に備えまして、国も地方自治体も、民間の事業者も個人も、それぞれが着実に、そして可能な限り迅速に対策や準備を進めることが求められておりますけれども、その実効性を高めるためにも、安倍総理には引き続き強力なリーダーシップで、みんなで頑張っていこうという、そうした力を発揮していただきたいと思います。

 また、安倍総理が世界各国を積極的に訪問されまして地球儀を俯瞰する外交を実践されていることは、プロジェクト支援、また人的な国際貢献、こうしたことの価値を高めて、日本が世界の発展のために努力していることを各国の皆様に御理解いただく上でも大きな役割を果たしていただいていると感じております。

 ついては、安倍総理から、大規模災害に向けた対策推進に向けた御決意、また、施政方針演説でも述べられました世界の平和と繁栄のために力を尽くすということに対する思いについて、一言お伺いをしたいと思います。

浜田委員長 安倍内閣総理大臣、時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 場所を問わず、さまざまな災害が起こりやすい我が国において、災害から国民の生命と財産を守るため、これまでの災害から得た貴重な経験、教訓をしっかりと踏まえて、防災対策を不断に見直しをしていくことが重要だと思います。

 我が国では、南海トラフ地震、首都直下地震等の大災害の発生が想定されておりまして、国、地方自治体はもとより、事業者、国民一人一人が英知を結集して、被害を最小限にするための防災・減災対策を着実に講じていかなければなりません。

 今後とも、災害に際し、一人でも多くの人が被害から免れ生命が救われるよう、私が先頭に立って、ソフトとハードの対策を適切に組み合わせた総合的な防災対策に政府一丸となって取り組んでまいりたいと思います。

 また、地球儀を俯瞰する外交を展開する中で、我が国は、ODA等を活用し、質の高いインフラの整備や各国の人材育成を積極的に進めてまいりました。国際社会で協力し、世界全体の発展に貢献することは、我が国自身が裨益することにもつながります。

 日本の貢献は、途上国から高く評価をされています。防災分野では、我が国の知見や経験を生かして防災の主流化を推進しています。二〇一五年三月の第三回国連防災世界会議の仙台での開催や、世界津波の日の制定など、防災分野の取り組みをリードしており、今後も国際社会の先頭に立って推進していく考えでございます。

宮下委員 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 これにて宮下君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 締めくくり総括をやらせていただく予定でありましたが、今のような状況ではとても締めくくれません。

 まず、小川議員からも指摘がありました天下り問題の件について、改めて常盤高等教育局長に伺いますが、人事課長だった時代に、今回指摘をされているような、OBを経由したあっせん行為に何らかの形でかかわった、あるいはそういうことが過去も含めて行われていた、その認識はございましたか。

常盤政府参考人 先ほど大臣からもお話がございましたが、私の現在の職務として人事を担当しているわけではございませんので、私といたしましては、再就職のあっせんの問題については、文部科学省としての全容解明のための調査を現在行っているところでございますし、調査がまとまりましたらお答えをさせていただきますので、お時間を頂戴したいということでございます。

玉木委員 では、個人の御認識をお伺いしますが、今回問題になっている文教フォーラムの理事長である嶋貫氏については、この方を知っていますか。

常盤政府参考人 申しわけございませんけれども、文部科学省としての調査の中で私も協力をさせていただきますので、調査がまとまりましたらお答えをするということで、お時間を頂戴したいということでございます。

玉木委員 ちょっと、今のはひどくないですか。その人を知っているかどうかも答えられないんですか。それも調査を待たないと答えられないんですか。

 委員長、この嶋貫氏を知っているかどうか、そのことは答えさせてください。

常盤政府参考人 これも繰り返しで申しわけございませんけれども、私の所管の行政の範囲のお話ではございませんので、お答えを差し控えたいと思います。(発言する者あり)

玉木委員 やじは飛ばさないでください。与党の筆頭理事に注意してください。静かにしてください。

 では、所管に関することで聞きます。

 この文教フォーラムは、「全国大学一覧」等の大学、高等教育に関する書籍の販売等、正確に言いますと、定款にも書いていますけれども、文教分野における書籍の刊行ということが仕事になっております。それを仕事とする文教フォーラムの理事長たる嶋貫さんを高等教育局長は御存じですか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 「全国大学一覧」の御指摘でございますけれども、これは文教協会という組織が発行しているものだというふうに承知しております。

玉木委員 では、もう少し正確にいきます。

 かつて文教協会の参与であり、文教協会というのは、「全国大学一覧」という高等教育機関についての書籍を販売している文教協会のかつて参与であった嶋貫氏を高等教育局長は御存じですか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 嶋貫氏が文教協会の参与であるということは、私は存じ上げません。

玉木委員 総理が、今いらっしゃいませんけれども、何でもやるとおっしゃったんですよ。天下りの根絶と真相解明のために何でもやると言っているのに、知っているのかどうかと聞いて、何ですか、この答弁は。常識的に考えてくださいよ。こんなのあり得ないですよ。なぜそんなに隠すんですか。内閣を挙げて隠蔽するんですか。

 もう一度申し上げます。

 現行学習指導要領第三章、道徳、「うそをついたりごまかしをしたりしないで、素直に伸び伸びと生活する。」小学生向けの学習指導要領です。それを所管している文科省の幹部職員がこんなことでいいんですか。もう一度お答えください。

松野国務大臣 まず、先ほど申し上げましたけれども、今回、政府参考人の立場で局長はこの委員会に呼ばれております。その意味において、全体の調査、全容解明に関しては、先ほど申し上げましたとおり、私が責任を持って解明していくということでございます。

 一月二十三日にこの調査班を発足させていただきました。そして今、その中において、早急に体制を組みながら解明に取り組んでおりますので、いましばらくお時間をいただきまして、その結果を国会にしっかりと報告させていただきたいと思います。

玉木委員 ちょっとひどいと思いますよ。

 にこにこ、へらへらする話ですか、これ。(発言する者あり)何でそんなやじを飛ばすんですか。やじを飛ばすような話ですか、武藤先生。こういう態度だから、こうした悪質な天下り事案が起こるのではないんですか。(安倍内閣総理大臣「関係ないだろう」と呼ぶ)総理、もうやじは飛ばさないでください。

 では、伺います。先ほど小川委員から、文科省と文教協会……(麻生国務大臣「自分のときは何も言わないで」と呼ぶ)やじはやめてください、総理、麻生大臣。お願いします。委員長、注意してください。

浜田委員長 静粛に願います。

 質疑を続けてください。

玉木委員 この三者の構成の、組織ぐるみの……(発言する者あり)麻生大臣、やじは本当にやめてください。(安倍内閣総理大臣「やじじゃなくて話しているんです」と呼ぶ)総理もやめてください。(安倍内閣総理大臣「早く質問すればいいじゃないですか」と呼ぶ)いや、質問すればいいじゃないですかという言い方はないんじゃないですか、総理。(発言する者あり)

浜田委員長 不規則発言はやめてください。そして、やじに対して答えないように。よろしくお願いいたします。(発言する者あり)だから、両方がそういうふうなことだから議論が進まないんですから。静かにしてください。

 質疑者、答弁、じゃなくて質疑。

玉木委員 いや、私、答弁者ではないので、質問いたします。

浜田委員長 わかっていますよ。質疑者。

玉木委員 この三者の構造で組織ぐるみの極めて巧妙かつ悪質な、OBを経由した天下りの構造の一端が、小川議員の指摘によって明らかになりました。

 きのう私も質問しましたけれども、おととい、私もこの文教フォーラムに行ってまいりました。女性の職員の方が一人いらっしゃって、文科省から歩いて三分ぐらいのところにあります。文教協会についても、文科省から歩いて三分ぐらいのところ。非常に近いところにこの三つの組織は存在をしております。

 まず伺います。

 先ほど午前中の答弁で、松野大臣は、この文教協会が発行した書籍、一つ例を挙げました「全国大学一覧」、これを文科省が購入して、その対価を文教協会に支払うということがあるということがありました。

 ちょっと二十八年度の財務諸表を見てみましたら、文教協会、収入は約三億七千八百万円ぐらいありますけれども、そのうちの出版事業に関する収入が一億一千六百万円ぐらい。半分ぐらいが、文科省がそれを買っているということです。あとは受取負担金とありますが、これは団体扱いの火災保険をやっている集金機関としての手数料だと思われます。

 まず、この、文科省が購入している書籍として大臣が例示として挙げられた「全国大学一覧」、これはどのような書籍ですか。

松野国務大臣 「全国大学一覧」については、昭和三十九年度まで文部省が発行し、昭和四十年度から文教協会が発行しています。これらには日々の業務に必要な統計データや法令等が収録されており、省内の職員用や中央教育審議会大学分科会等の各会議の資料として活用するために必要な冊数を購入しております。

 具体的には、平成二十八年度においては、文部科学省で四百四冊購入し、その大半を業務に必要な省内各局に配付しています。その他、衆参文部科学委員会の理事等、省外の関係者に配付しておるところであります。

玉木委員 大臣、これを実際に見たことはありますか。

松野国務大臣 ございます。

玉木委員 どんな内容でしたか。感想は。

松野国務大臣 各大学の今の理事長から各学部代表者、またその学内の学部編制の経過等を編集してあるものだと承知しております。

玉木委員 皆さんのお手元に資料をお配りしていますけれども、この「全国大学一覧」という分厚いのがあるんですね。これは定価がついていまして、七千二百円なんですね。中身がどういうものかなと思って、非常に分析的なことが書いてあるとかいろいろなことが書いてあるかと思いきや、全国の大学の名前、住所、学部の名前、そこが何人定員があるのか、新しく設置されたら、その設置されたのはいつなのか、これが、お手元にありますけれども、延々ずっと並べられただけです。

 伺います。

 高等教育局が多分購入しているのかなと思うんですが、高等教育局は全部知っていますよね、このデータ。逆に、今おっしゃったように、昭和三十九年までは文科省自身がやっていましたから、これはもともとのデータは文科省からもらってつくって、それをまた文科省が買っているということではないんですか。

 大臣、これを、大学の名前とか住所とか学部の名前とか定員だけを書いたこの七千二百円の書籍を文部科学省が購入して、一体どういう政策決定や判断に使用されているんでしょうか。

松野国務大臣 まず、使用目的でございますが、先ほど申し上げましたとおり、文科省内各局におきまして、高等局を中心に、大学等にかかわる作業を進めるに当たってその資料として使用しているところであり、また、中央教育審議会等の委員の皆さん方にも資料としてお使いをいただいているということでございます。

 「全国大学一覧」の価格でございますが、市販価格が七千二百円でございますけれども、文科省の場合は、一定数を購入しているということで、約三千三百円で購入をしているところであります。

 データに関しては、昭和三十九年度から四十年度の移管に関しての状況について私は今承知をしておりませんけれども、恐らく、文科省の方からもとのデータがその当時あり、それを編集、加工した作業が文教協会で行われたものと思います。

 現在においては、文教協会の方で各大学に確認等の作業も進めながら編集、加工していると承知をしております。

玉木委員 これは、かつてよくあったやり方だと思うんです、各省で。私、正直申し上げて、いまだに文科省はこんなことをしているのかなと。

 つまり、もう少し高度になると、きちんとした法令の、コンメンタールといって、新しく法律を書いたら、その解説書みたいなことを書いて売るみたいなことを昔していました。しかし、これは余りにも、その辺に転がっているようなと言ったら悪いんですけれども、公開されているような情報を束ねて、適当な値段をつけて、それをまた文科省に売って、こんなのを高等教育局が何に使うんですか。こんなのは全部知っていますよ、高等教育局は。

 しかも、これだけではなくて、例えば法令を束ねたような本とか、あと文科省の、あるいは国立大学法人の職員録、内線まで書いているような、これも立派にして、それでこれも売って、買ったりしているんですよね。

 これがすごくうまくできているのは、職員とか法令というのは毎年変わるので、毎年編さんするニーズがつくられるんですよ。その都度やって、これを文科省が、もうその辺に積み上げていますよ。原資は税金で、その税金が文教協会に渡り、その文教協会のかつて分室であった文教フォーラムが天下りのあっせんを組織的にやっているんですよ。この構図です。

 もう一つ言います、フリップで。

 今、文科省から文教協会へのお金の流れを言いましたが、その下の文教協会と文教フォーラムは、当時、もともとは一体でありました。しかし、指摘をされたので、小川さんからも指摘があったように、去年の年末から分けて、シールを張って、違うものだというような形にしていますけれども、ここからここへのお金の流れ、確認しますが、午前中は、文教協会から、参与という形であっても文教フォーラムの嶋貫氏には対価は払っていなかったというけれども、それでよろしいですか。

松野国務大臣 参与としての対価は受け取っていなかったと報告を受けております。

玉木委員 それ以外の対価はありますか。あるいは、資金の流れはありますか。

松野国務大臣 文部科学省から文教フォーラム、またR氏と提示をされている人物に関して、収入……(玉木委員「文教協会から」と呼ぶ)失礼しました。

 文教協会から文教フォーラムに関して直接的にどうかということに関して、済みません、今承知をしておりませんが、文教協会の参与としてのR氏の秘書に対しては、その秘書は文教協会から派遣をされて、業務を行っていたと承知をしております。

玉木委員 今、微妙な言い方をされたんです。参与としてお金は行っていない。ただ、ここにも書いてあるように、家賃は払っていたということはあったんです。では、それ以外の流れはないのかなと思って調べました。わかりませんでした。

 ただ、この文教協会と文教フォーラムの二つの組織のホームページを見て、一つ気づきました。何かというと、文教協会の仕事は何か。午前中、小川委員が出したものに書いていますが、二つの仕事をやっている。研究助成と書籍の刊行が文教協会の仕事です。文教フォーラムは、先ほど言ったように、書籍の刊行と、あと組織に関する助言、アドバイス。それは天下りの助言、アドバイスかもしれませんけれども、それを行っている。

 ただ、文科省から民進党に出していただいた資料の中に興味深い記述を一つ見つけました。それは、どのような形で収入を得ていますかという中に、保険会社の仕事をしているというのがありました。

 保険会社の仕事、これは何だろうなと思ったんですが、今度、逆に文教協会のホームページを見ましたら、先ほどの資料では、やっている仕事は研究助成と書籍の刊行なんですが、右の方に文部科学省共済組合の団体扱い火災保険というのが、大きくバナーが張ってあります。

 これを見ると、チラシがきちんと出てきていて、文科省の共済組合に入っている人と退職した人向けの火災保険を売っていて、その集金機関であると書いてあるんです、文教協会が。

 そして、財務諸表を見ると、先ほど申し上げた、三億七千万ぐらいの収入があるうち出版業で一億一千六百万円。しかし、それを超える二億四千五百万円が財務諸表上は受取負担金と出ますけれども、これは、保険会社四社からの、集金機関として保険料を集めてもらったことに対する手数料等の支払いではないかと思われますが、いかがですか。

松野国務大臣 現状、私どもがつかんでいる事実関係に関しては、御党の部門会議等で提示をさせていただいたものでありますが、御指摘のとおり、この文教フォーラムの代表者のR氏に関しましては、監視委員会の方からも、文科省が本来の法を潜脱する目的で、OBとの間に、あるシステムにかかわっている人物と指摘をされております。

 そして、それに関する全容に関しては、文科大臣のもとの調査班においてしっかりと全容を解明するようにという指示もいただいておりますので、これは責任を持って、先ほど申し上げましたとおり、人事課とのかかわりに関しましても、一般国民の皆さんから見れば、これは人事課がかかわっていたと疑われてもしようがないような状況でございますので、それも含めてしっかりと解明させていただきます。

玉木委員 答えてくれていません。

 文科省提出資料について、では、一言だけ答えてください。ここに書いてあるR氏は保険会社の仕事をしていると聞いております。これは事実ですか。文科省の資料です。

松野国務大臣 保険会社の顧問をお務めだと聞いております。

玉木委員 今、幾つかるる私、二十分ぐらいかけてこれをいろいろやりましたけれども、相当深い闇、かなり長年にわたって、お金の流れを伴いながら組織的に行われているあっせん活動の一端が見え始めているのではないかと私は思います。

 確かに、小川議員が言ったように、ボランティアでこの膨大な作業をやる人はいないと思います。それにはもちろん活動費も要る。では、どうやって三百万円もの事務所費あるいは人件費が賄われているのか。そこに、税金を原資とする、書籍の販売を通じた文教協会へのお金の還流の仕組みと、そしてまた、退職者や現職の職員を対象とした火災保険の仕事をかますことによる文教協会から文教フォーラムへのいわば給与的な支払いの仕組み、ここがぴったりとお金の流れでつながっていくわけです。

 そんな中で、お金だけではなくて、求職情報、求人情報という情報もそこに渡り、組織的な、OBを活用したこのいわゆる天下りの仕組みが構築されているのではないかと思われます。

 総理にお伺いします。

 きのう総理は、後藤委員からの質問に対して、OBに対して情報を提供するようなことについては禁止するということをおっしゃいました。しかし、このような全容がわからなければ何を禁止するかもわからないので、まず総理に全省庁に御指示をいただきたいのは、こうしたことが、まず、文科省で実態として本当にどのようなことが行われているのか、お金の流れも含めて。そして、他の省庁でも同じようなことが行われていないか。これから全省庁に対してやる調査項目の中にこうした実態の解明もしっかり入れる、調査対象にする、このことを明確に総理から指示していただくことをお願いしたいと思いますけれども、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 委員御指摘のことは非常に重要な問題と思っておりまして、こうしたOBに対して組織的に役所が情報を出すということは、今回のような潜脱的なことになり得ると思いますので、しっかりと、ほかの省庁も含めて、総理から指示された調査の中に項目としても入れまして、その実態も踏まえた上で、いずれにしても、役所からOBに対してそうした情報を組織的に提供するということはもう決してやらせないということで指導していきたいと思っております。

玉木委員 山本大臣、ぜひリーダーシップを発揮してやっていただきたいと思います。

 その上で、きのう山本大臣から、そういった情報提供をやらないように指導するということがありましたけれども、指導しても、法的拘束力がなければいろいろなまた潜脱のスキームをつくり上げていくのではないかなと思うんですが、これはやはり、こういったことも含めて法的規制をかけていく、法的拘束力の網に入れていくということを検討するべきではないですか。山本大臣、どうですか。

山本(幸)国務大臣 その点は、まさに全省庁が調査をして、その結果を見て、そういうことも必要であるということであれば検討したいと思います。

玉木委員 総理に伺います。これは悪質な事案だと思いませんか。やはり法的規制、今、山本大臣からありましたけれども、法的な規制の対象にすることも含めて検討すべきだと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この事案については、先ほど大臣から答弁をさせていただきました。

 ですから、一体いつからこういうことが起こっていたかということも重要なんだろう。長い年月であれば、より悪質性も高くなるわけであります。これは最近起こったことなのか、あるいはいわば民主党政権、あるいはその前の自民党政権からずっとやっているのかということであります。

 いずれにせよ、今回、監視委員会の働きによってこの事案は明らかになり、そして……(発言する者あり)監視委員会の働きによって明らかになったのは事実じゃないですか。それはそうなんですよ。それはやはり認めていただかないといけないと思いますよ。その上において、今さらに……(発言する者あり)一々反論し、やじをやめようというのは玉木委員もおっしゃっていたことですから、やめていただきたいと思います。

 そこで、まさに今御指摘になったような視点も明らかになってきたわけでございますから、そういうことも含めて徹底してやる。この解明をした結果、必要とあれば、さまざまな、我々、できることはやるということは当然、約束しているわけでありますから、その中には今御指摘のあった法規制等も入るわけでありますが、我々としては、できることはやっていく。

 しかし、いずれにいたしましても、しっかりと全容を解明していくことが大切であろう、このように思います。

玉木委員 確認しますが、法改正も含めて検討するということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 これは山本大臣がもう既に答弁をしているわけでございますが、どのような形で二度とこうした事案が起こらないようにしていくかということについて、これはいろいろな手段があるんだろう。この中には、我々は、もう何回も申し上げているように、これは法改正ありきではございませんよ、しかし、いろいろな手段については、テーブルにのせて検討していくということであります。

玉木委員 これは累次求めてきていますけれども、やはり前川前次官、そして文教フォーラムの理事長さん、そして文教協会の理事長さんも含めて参考人でお越しいただいて、これをしっかり解明していくべきだと思いますので、委員長、ぜひお取り計らいをお願いしたいと思います。

浜田委員長 引き続き理事会で協議します。

玉木委員 はい。

 あともう五分となりましたので、締めくくり総括ですので、最後に、予算のことを聞いて終わりたいと思います。

 きのう、税収減に対して赤字国債を発行するというのは異例中の異例だということを申し上げたら、総理も麻生大臣も笑っておられました。私は、この異常事態に対する、緊急事態あるいは異常事態との認識がないのかなと非常に残念に思いました。

 実は、この予算を私が見たときに一番感じたのは、安倍総理、裸の王様になりつつあるのではないかなと思ったんです。

 というのは、税収が一・七兆円も減っているのに歳出をふやしています。しかも、緊要性のない、本来なら当初予算で計上すべき防衛省の予算、外務省の予算の前倒し計上が散見されます。一言で言うと、調子に乗り過ぎではないかなと思います。

 また、総理も財務大臣も財政再建には余り関心がないから、その意味で、予算の観点から見ても役人天国が復活しているんじゃないかなと思います。その延長上に、この天下り規制もゆるゆるになって今回のような事案が発生しているのではないかと思います。

 幾つか数字を挙げます。きのうも申し上げました。

 三次補正後のプライマリーバランスの赤字は十六・七兆円となり、当初予算比、これは十・八兆円でしたけれども、五・九兆円悪化しています。これは税収減だけではなくて、税の裏づけのない歳出が何兆円もふえていることも、この六兆円規模の、当初予算と比べて悪化していることの原因です。

 もう一つ、最新の中長期試算が出ましたけれども、それによると、今年度、着地時点では、内閣府の試算によると、二十・八兆円にプライマリーバランスの赤字がさらに拡大することになっていますから、当初予算と比べると十兆円もプライマリーバランスが悪化することになっています。

 そして、前年度、二十七年度、二〇一五年というのは、あの例の、プライマリーバランスの赤字を半減する目標を何とか達成できたということになりました。しかしながら、昨年度のプライマリーバランスの赤字十五・八兆円から、今年度、四・二兆円も悪化しているんですよ。そのときだけ何とかかき集めてプライマリーバランス半減目標を達成したら、すぐ緩んで、また悪化しているんです。

 そして、二〇二〇年度のプライマリーバランスの赤字は、昨年七月に試算したものから三兆円も悪化して、最新のものでは八・三兆円です。しかも、今申し上げたのは全て、経済再生ケースという非常に成長率の高いケースで、来年度二・五%、再来年度二・九%、次が三・七、オリンピックのある年は三・八、さらに三・七、三・八、三・八と、こんな成長が続いて、やっと二〇二〇年、それでも八・三兆円の赤字なんです。

 お伺いします。二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字は達成できますか、総理。

麻生国務大臣 まず、平成二十八年度の補正の総括でもありますので。

 まず、平成二十八年度の予算において、国の一般会計プライマリー……(玉木委員「時間がないので短くお願いします」と呼ぶ)むしろそちらが長くしゃべられたから。国の一般会計プライマリーバランスの赤字が拡大した背景は、主に熊本地震への対応ですよ、第一次補正。(玉木委員「一千九百ですよ、それ」と呼ぶ)七千七百八十億です。

 未来への投資を実現する経済の具体化、第二次補正、これは建設公債が主ですが。それから、今回の年初からの円高方向、百二十円から百二円まで移動しておりますので、これに対する減額補正等々が反映されております。それで、第二次補正予算の内容につきましては御存じのようなものでありますから、そういったもので、経済成長していく道筋をつけた。赤字公債を発行しているわけではございません。

 また、平成二十八年度の三次補正につきましては、これはもう先ほど申し上げましたとおりでありまして、決算までの計数というものは確定しておりませんので、御存じのように。したがって、二十九年度の五十七兆七千億というのを見込んでおって、政権交代以降、税収が増加している基調には全く変更がないというのが実態であろうかと思っております。

 二十九年度の予算におきましても、一兆円ずつふえてきた社会保障も全部抑えてきておりますし、目安も二年連続達成しておりますので、今回の国の一般会計プライマリーバランスは、政権交代前と比較して約十四兆円改善しておると思っております。

 このように、私どもとしては、財政健全化が後退しているとの御指摘は当たらないと思っております。(玉木委員「ちょっと、答えていないですよ」と呼ぶ)

浜田委員長 もう一回言ったら答えてもらいます。

玉木委員 だって、こんなので二〇二〇年、プライマリーバランスの達成はできるんですか。答えていないですよ。全く答えていない。

麻生国務大臣 今、これまでの経緯を申し上げて、プライマリーバランスが極めて緩目になっておるではないかと言うけれども、皆さん方のときと比べて十四兆円改善しているという事実をまず申し上げております。

 その上で、今回も、我々は引き続き、二〇二〇年までにプライマリーバランスをチャラにするべく、きちんと合わせるべく最善の努力をしてまいります。

浜田委員長 時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。

玉木委員 ちょっとふざけ過ぎですよ。

 きょう、二つの重要な数字が発表されました。消費者物価指数、十カ月連続下落。一六年平均でも、対前年度マイナス〇・三%。四年ぶりのマイナスですよ、総理。そして、年金も〇・一%引き下げ。これは改定、三年ぶりのマイナスですよ。

 経済状況がうまくいっていないことにもう少し正面から冷静に向き合って、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化、そして二〇一八年の中間目標、GDPの一%は無理ですよ。真剣に向き合っていただくことを……(発言する者あり)だって、長い答弁するから足りなくなるんじゃないですか。

浜田委員長 時間が来ております。(発言する者あり)静粛に願います。

玉木委員 強く抗議をして、質問を終わりたいと思います。

浜田委員長 これにて玉木君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 在日米軍駐留経費についてお伺いいたします。

 トランプ大統領は選挙中に、在日米軍の駐留経費は全額日本が持つべきという主張も行っておられました。この間、今国会の質疑の中で総理は、これ以上の負担の是非について聞かれて、是とも非とも明確には答えずに、日米間で適切な分担が図られるべきと言うだけです。

 改めて伺います。トランプ新政権から米軍駐留経費などの負担増を求められたらどうするんですか。拒否するんですか、しないんですか。どっちですか。

安倍内閣総理大臣 まだ首脳会談を行っていないんですから、今から、大統領がこう言ってきたからこう言うのか、こう言ってきたらこう言うのかということについては、これはお答えできません。

 基本的には、日米同盟は、日本の外交、安全保障の基軸でございます。まさにこの基軸は揺るぎないということを内外に示す首脳会談にしたい、こう考えておりますが、在日米軍の駐留費についても、日米間で適切な分担が図られるべきものと考えております。

宮本(徹)委員 首脳会談はこれからだからこそ、国会で、野党は心配してみんな追及しているわけですよ。

 拒否するということを明言しないということは、これ以上ふやすこともあり得るということなんですね。

安倍内閣総理大臣 御心配をいただいていることは大変ありがたいとは思いますが、我々としては、もしそういう議論になれば、しっかりと現在の駐留軍経費の姿等について、そもそも、在日米軍の役割等について当然説明をするわけでございまして、在日米軍というのは、我が国をもちろん守る、五条において共同対処するわけでございますが、同時に、極東の平和と安定のために我が国の基地を使っているわけでございます。極東の平和と安定のために基地を使うことによって、米軍のプレゼンスによってまさに地域の平和と安定を守り、それは米国の大きな利益にもなっているということでございます。

 そうしたこと等を踏まえながら、適切にこの分担を考えていくべきだというお話をさせていただくということを申し上げているわけでございます。

宮本(徹)委員 これだけ聞いても、適切に分担ということしかおっしゃらないわけですね。国会でこれだけ野党から聞かれて、拒否すると言わず、適切な分担ということを繰り返していたら、これ以上ふやすこともあり得ますよというメッセージになっちゃうんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも、駐留軍経費については毎年毎年米側と交渉しているわけでございまして、それであればどうするんだということで、その時々にいつも我々がお答えをしているのは、適切に分担をするということを毎年毎年、聞かれればそうお答えをしてきた、このように承知をしております。この姿勢には変わりがないということでございます。

宮本(徹)委員 毎年毎年と言いましたけれども、思いやり予算の協定は五年に一度だと思うんですが、去年、思いやり予算の協定の改定がありました。私、ここで一年前に議論をしたのを覚えていますけれども、当時、財務省ですら、思いやり予算は聖域視せずに減額すべきだと財政審の中で出していたわけですよね。

 ところが、日米首脳会談で、総理、オバマ大統領からHNSの話があったわけですよね。そして、その結果、思いやり予算は増額改定になったわけじゃないですか。そして、交渉後は、国会では適切な負担だと説明する。同じことが繰り返されるんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 ホスト・ネーション・サポートについては五年ごとに改正をしていく、そしてその中において毎年毎年予算措置をしていくわけでございますが、今、財務省ですらとお話しでございましたが、財務省は基本的に、しっかりと縮減を図っていくという役割を担っているわけでございます。日米同盟全体を考えるというよりも、予算をどうするかということを考えているんだろう、こう思うわけでございます。

 我々は、今申し上げましたように、適切に判断をしていくということでございます。

宮本(徹)委員 適切な分担、適切な分担と言われるわけですけれども、そもそも、日米安保条約、日米地位協定での分担のルールというのはもともとどうなっていたのか、立ち戻る必要があると思うんですよね。

 地位協定二十四条では、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う全ての経費は、日本に負担をかけないで合衆国が負担すると。岸田大臣、そうですよね、答弁しなくてもいいですけれども。

 ところが、この分担のルールを破って、不適切な分担を拡大してきたということなんじゃないんですか、この間。アメリカの求めに応じて、条約上の根拠のない思いやり予算も始めた。

 思いやり予算を始めたときの特別協定、一番初めの協定、一九八七年当時、政府は、円高という極めて異常な現実を踏まえての暫定的、一時的、限定的な、特例的な措置、こう国会で説明したわけですよ。ところが、どんどん拡大されて、初め六十二億円だった思いやり予算、来年度の予算案では二千億近くになるということです。

 そして、思いやり予算だけじゃないですよ。米軍再編費用、新基地建設、グアムでの基地の建設費用まで、アメリカに求められれば、そのたびにどんどん負担を拡大してきたじゃないですか。

 こういう地位協定の分担の原則を踏み外したやり方はいいかげんやめるべきだと私は思いますが、そう思いませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 前回の特別協定の改定においては、我々、しっかりと中身を精査いたしました。例えば、その前の改定のときもそうなんでしょうけれども、娯楽的なもの等の予算は、これについては我々は負担をなくしていくと同時に、しかし一方、必要と思われるところについてはしっかりと対応していくということも含めて、中身をしっかりと精査しながら対応しているわけでございます。

 そこで、まさに日米同盟が我が国の外交、安全保障の基軸である、そして、安保条約の五条において、もし我が国に事あるときには米軍が共同対処するという、この条約の中においてしっかり信頼のきずなが維持されるということも含めて、我々はホスト・ネーション・サポートを行っている。日本以外にも、韓国等々の国々もホスト・ネーション・サポートを行っているのは事実であろう。

 アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しくなる中において、そしてまた米軍再編を行う中において沖縄の基地負担軽減を加速させていくためには、我々もやはり応分の負担をしなければいけないと、それぞれ我々は判断をしているわけでございます。

宮本(徹)委員 韓国が負担しているという話もありますけれども、ここでも、韓国だとかドイツやイタリアと比べても日本が突出して負担していると、これは何度も問題になってきたわけじゃないですか。

 日米同盟が基軸、基軸ということを総理はおっしゃいますけれども、トランプ大統領のアメリカ第一主義に対して日米同盟第一主義で対応していったら、これはもう際限なく負担増を求められて、日本の負担がふえていく道ですよ。こういう外交戦略は根本から見直すべきことを求めて、質問を終わります。

浜田委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 議員の皆様、また大臣の皆様、決して私、デジャビュでここに立っているわけでも、決して時間が巻き戻ったわけでもなくて、二回目でございますが、最後の最後の残り五分をいただいております。あと五分でございますので、しっかりとおつき合いいただきたいというふうに思います。

 最後にお話しさせていただいた年金のお話、本当に私の中で腹に落ちないんです。

 確かに、なり手の不足の部分、深刻な事態がないとは言えないと思います。例えば島嶼部で、東京都なんかも離島がありますので、青ケ島なんかは月額十万円程度の報酬でやっておられるというふうな話もあります。一方で、例えば東京都、今、小池知事の話で話題になっていますけれども、報酬月百万円で、一回本会議に出るたびに一万円の費用弁償というのを別にもらっているようなんですね。非常に、国民の皆さんから見たら、どういうことやねんというような議会まで、いっぱいあるわけで、いろいろな種類があるわけですね。

 そうした中で、十把一からげに、そんな東京都議会も青ケ島も入れて全部年金を復活させようなんという議論は、さすがに、なり手不足という話だけでは少し強引な議論だというふうに感じます。

 これは、総理に重ねてお伺いしても、さっきと同じ御答弁になるというふうに思います。しかしながら、総理、お聞きになっていて、もっともだなと思っていただける部分もあると思うんです。

 率直に政治家のお一人として、政治家は大変だというのも私はわかるんですけれども、一方で、この年金の問題、率直に考えて、やはり国民の理解を得られるにはまだ少しほど遠いんじゃないかなとお考えになりませんか。

安倍内閣総理大臣 確かに、委員が前の質疑の際に言われたように、年金があるかないかで議員となっているんじゃない、それは確かにそのとおりだと私は思います。

 ただ、例えば私の地元の過疎地や江藤議員の地元等においては、確かに、全体が相当高齢化している中において、割と若い人たちにも議員をやってもらいたいという声はある。しかし、一生懸命議員に集中しながらやる上においては、今やっている仕事を半分ぐらいにしなきゃいけないという中において、家族もいて、ではこの後、将来どうなっていくのかという心配もするのは、これはしようがないのではないかという気もするわけでございまして、そうしたことも含めてこれはよく御議論をいただきたい、こんなふうに思っております。

丸山委員 今総理がおっしゃられたように、ケース・バイ・ケースだと思うんですよ。だから、際どい、若い人がなかなか見つからない、何とか見つけたいという部分もあるのはみんなわかっていると思いますが、そこに対してどういうふうに対応していくかというのが非常に重要です。

 一方で、十把一からげに町議会全部をというのはおかしいということと、そもそも論として、我々若い者が議員になろうというときにこの年金の話が果たしてその選択肢の大きな部分を占めるかというと、私は甚だ疑問だというふうに思うのは、今の総理の答弁を聞いていても、そこには納得いかないんです。しかし、議論はこれから先、まだ出ているものでもありませんし、総理は出さないというふうに私は思っていますが、出ているわけじゃありませんので、この話はこれぐらいで終わらせていただきたいと思います。

 五分ですので短いんですが、最後に、民泊の話だけ伺っておきたいと思います。

 大阪で、特区で民泊が七泊八日でオーケーだったのが二泊三日まで条例で縮まったんですが、一方で、今ずっと回している中で、地方自治体の首長から話を聞いていても、使い勝手が悪いよという話を数多く伺うところなんです。今回、それを受けて国交省さんが民泊を変えていかれるという報道が出ていますけれども、この改革の具体的な中身について伺っておきたいと思います。

 そして、特に特区のあるところは、今の現状の旅館業法と、この改正もそうですけれども、特区とまた別ケースで、それぞれ別の状況になってしまう。要は、どんなスキームがどうなるんだというような混乱も予想されるというふうに思います。

 そうした意味で、きちんと、これを変えるなら広報もお願いしていきたいし、また万が一さらに改善が必要であれば、改善をお願いしていきたいんですが、最後に大臣にお伺いして、終わりたいと思います。

石井国務大臣 民泊につきましては、急増する訪日外国人観光客の多様なニーズへの対応と、新たな宿泊モデルとして期待されているところでございます。

 一方、民泊は実態が先行しておりまして、安全性の確保や、騒音やごみ出しなど地域住民等とのトラブルに留意したルールづくりが必要と考えております。

 具体的には、昨年六月二日に閣議決定をされました規制改革実施計画におきまして、住宅提供者に対して、民泊を実施する場合、行政庁への届け出を課して匿名性を排除すること、名簿の備えつけ、所要の衛生措置、賃貸借契約や管理規約の違反の不存在の確認を義務づける、住宅提供者が不在の民泊である場合において同様の義務がかかる登録された管理者への委託などについて盛り込まれたところでございます。

 国土交通省といたしましては、民泊について、安全面や衛生面、近隣住民とのトラブル防止が図られた上で健全な民泊サービスが提供されるよう、関係省庁とともに関係者間の意見調整に努めておりまして、今国会への法案提出に向けて準備を進めているところでございます。

 なお、来年度予算で観光庁において健全な民泊サービスの普及のための予算を計上しておりまして、この予算を活用して、民泊事業の開始のための必要な手続の周知や、また民泊に関する相談窓口の設置を進めていく予定でございます。

丸山委員 しっかり、よろしくお願いします。

 終わります。

浜田委員長 これにて丸山君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして締めくくり質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして平成二十八年度補正予算両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 ただいままでに、民進党・無所属クラブ大西健介君外一名から、平成二十八年度補正予算両案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。

 この際、本動議について提出者より趣旨の弁明を求めます。緒方林太郎君。

    ―――――――――――――

 平成二十八年度一般会計補正予算(第3号)、平成二十八年度特別会計補正予算(特第3号)につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

緒方委員 私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提案の平成二十八年度第三次補正予算二案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に関して、その趣旨を御説明いたします。

 まずは、編成替えを求める理由を申し述べます。

 アベノミクスの失敗により、実質賃金は低下し、消費は振るわず、経済は低迷を続けています。結果、平成二十八年度の税収を一・七兆円も下方修正し、赤字国債を追加発行する羽目となりました。年度途中に新たに赤字国債を追加発行する事態が生じたのは、実に七年ぶりのことです。また、国の一般会計の基礎的財政収支は平成二十八年度第二次補正後予算から約二兆円も悪化する見込みであり、財政健全化はさらに遠のきました。

 アベノミクスは、日本銀行による事実上の財政ファイナンスに依存しており、我が国経済財政が危機的状況に陥るリスクは日に日に高まっています。そうした中では、補正予算に計上する費用について、いつも以上に緊要性を厳格に精査し、最大限国債発行は抑制しなければなりません。

 また、昨今、当初予算の財政的なつじつま合わせのために、本来当初予算に計上されるはずの事業が補正予算に押し込まれる傾向があります。こうした傾向についても、財政規律の観点から是正すべきであります。

 次に、編成替えの概要を御説明いたします。

 第一に、国際機関分担金及び拠出金等について、年度内に真に必要な経費は平成二十八年度予備費で対応すべきであり、全額を削減いたします。

 第二に、第一以外の国際機関分担金及び拠出金等は平成二十九年度予算に計上すべきであり、全額を削減いたします。

 第三に、今申し上げた歳出の見直しと見合いで不要となる国債の発行額を〇・二兆円程度削減いたします。

 以上が、民進党・無所属クラブの編成替え案の概要であります。

 何とぞ私どもの動議に各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げまして、提案理由説明といたします。(拍手)

浜田委員長 これにて本動議の趣旨弁明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 これより討論に入ります。

 平成二十八年度補正予算両案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。真山祐一君。

真山委員 公明党の真山祐一でございます。

 私は、自由民主党、公明党を代表して、ただいま議題となりました平成二十八年度第三次補正予算案に対し、賛成の立場から討論を行います。

 昨年は日本列島各地で大規模災害が発生し、被災地では懸命な復旧作業が続いています。被災地の一日も早い復旧復興、そして被災された皆様の生活再建を実現するために、本補正予算案の一刻も早い成立が強く求められていることを申し上げ、以下、賛成の主な理由を申し上げます。

 賛成の第一の理由は、昨年の北海道、東北を襲った豪雨、台風の災害からの復旧に必要な予算が計上されている点です。

 これにより、被災した河川、道路、港湾、水道等の復旧が着実に実施されます。また、被災した農業者が営農再開に向けて希望が持てるよう、農地や施設、機械の復旧、地力回復に向けた堆肥や資材の導入を支援する予算を計上しています。さらに、水産業の再建に向け、被害を受けた養殖施設の復旧を支援することとしており、高く評価いたします。

 賛成の第二の理由は、熊本地震からの復旧復興のために必要な予算が計上されている点です。

 被災地では大量の災害廃棄物が発生しており、自治体負担を軽減し、災害廃棄物の円滑、迅速な処理を支援します。また、被災した中小企業の再建を後押しするため、共同店舗の新設などを支援する中小企業等グループ補助金を計上するなど、災害からの復旧復興へのきめ細やかな政府の対応を強く支持いたします。

 賛成の第三の理由は、難民問題を含む人道支援など、外交上必要な予算が計上されている点です。

 シリア情勢に起因する難民への支援や、中東、北アフリカ諸国を初め不安定な国、地域における人道支援、また、東南アジア、南西アジアを中心とするアジア地域におけるテロ対処能力の向上、フィリピンにおける人道支援や薬物患者支援などの予算が計上されています。

 以上、本補正予算案に賛成する主な理由を申し述べました。

 政府におかれましては、本補正予算案の成立後、適切かつ速やかに予算を執行されますよう要請し、賛成討論といたします。

 なお、民進党提出の編成替え動議については、見解を異とするため反対することを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)

浜田委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 民進党の辻元清美です。

 私は、民進党・無所属クラブを代表して、平成二十八年度第三次補正予算二案に反対、民進党・無所属クラブ提出の組み替え動議に賛成の立場から討論をいたします。

 まず、実質審議は昨日から始まったばかり、にもかかわらず委員長の職権で質疑を打ち切り、採決が決められたことに強く抗議をいたします。

 とりわけ文部科学省天下りあっせん問題について、集中審議や前川前文部科学事務次官の参考人招致に一切応じない、それだけではなく、先ほどから現在の文部科学省の官僚も答弁をせず、大臣や総理までも答弁をさせない、こんなままで、疑惑隠しと言わざるを得ません。

 巨大与党の数のおごり、そして長期政権の緩みによって、政官業癒着の旧来の自民党政治がゾンビのようによみがえっているのではないか。かつて見た光景がきょうの委員会で示されたのではないでしょうか。多くの国民の不信は解明されておりません。

 政府・与党は、疑惑隠しと思われかねない態度を改め、集中審議や参考人招致に応じるように強く求めたいと思います。

 以下、本補正予算案に反対する理由を申し述べます。

 第一に、本補正予算では、一・七兆円もの税収を下方修正し、年度途中に赤字国債を追加発行するという異常事態に陥りました。これはリーマン・ショック以来七年ぶりのことであり、当初予算の見積もりがいかに甘かったかということの証左であります。

 第二に、補正予算はあくまで、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊急に必要となった場合に編成されますが、本補正予算には本来当初予算に計上されるはずの支出も押し込まれており、まさに財政法の趣旨に反する補正予算と言わざるを得ません。

 アベノミクスの三本の矢は、安倍総理の自画自賛とは裏腹に、あらぬ方向に飛んでいこうとしているのではないでしょうか。異常な金融緩和、ばらまき財政、大企業、富裕層のみしか見えない成長戦略の行き着く先は、格差社会と財政危機という二つの危機、これを見ようとしていない、そんな姿勢だったのではないですか。

 本日発表された消費者物価指数は十カ月連続下落、二〇一六年平均でも対前年比〇・三%、四年ぶりのマイナスと、先ほどこの場でも明らかになりました。

 総理のやるべきことは、都合のいい数字を並べ立てるのではなく、現実を直視し、そして人への投資を重視した経済政策に、私たちも提案をしてまいりました、しっかり転換をしていただくことではないでしょうか。

 我が党の組み替え動議は、被災地が望む災害対策費を最優先とした上で、そのほかの経費については厳しく精査し、国債発行を最大限抑制するものです。

 委員各位の御賛同をお願いして、討論を終わります。(拍手)

浜田委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 私は、日本共産党を代表して、二〇一六年度第三次補正予算に反対する討論を行います。

 第二次安倍政権発足から四年たちました。異常な金融緩和と財政出動、大企業優遇税制と規制緩和を柱にした大企業へのてこ入れ政策は、大企業の内部留保と大資産家のもうけを拡大しただけで、肝心の国民の実質所得や消費拡大に結びついていません。二〇一四年四月の消費税増税により、国民経済の六割を占める個人消費の低迷がいまだに続いております。社会保障予算は、改革工程表に忠実に沿い、自然増さえ賄おうとせず、医療も介護も年金も改悪の連続で、国民が疲弊し、将来不安が増大しています。

 経済の好循環は生まれず、その結果、税収も伸び悩んでいます。一六年度第三次補正予算で、歳入を一兆七千億円も下方修正して赤字国債を大増発したのは、アベノミクスの破綻そのものではありませんか。

 本補正予算の北海道、東北の八月豪雨災害の対応、熊本地震復旧の災害対策費は、緊急かつ当然の支出であり、これは賛成です。

 しかし、軍事費は問題です。なぜ、赤字国債を増発しなければならない事態になりながら、軍事費を特別扱いするのか。軍拡のツケを将来世代に回すなどもってのほかです。

 しかも、防衛省予算一千七百六十五億円のうち一千百十二億円、実に六割以上が歳出化の前倒し、つまり、過去の予算で発注済みの後年度負担分のうち二〇一七年度予定分を前倒しするものです。中身は、P1対潜哨戒機二十機で三百六十二億円、F35ステルス戦闘機八機で六十八億円、F15戦闘機近代化改修八機で十八億円等です。

 財政法では、補正予算が認められるのは、義務的経費の不足のほかは、予算編成後生じた事由に基づいて緊要なケースに限られております。既に発注済みの武器の後年度負担分を繰り上げて払うことに緊急性のかけらもないことは明白であります。何ら緊急性がない軍事費を補正予算で組むことは、財政法の趣旨に反して、断じて認めるわけにはまいりません。

 安保法制を強行した安倍政権のもと、アメリカと一緒に戦争のできる国づくりと一体に、軍事費は膨張し、後年度負担も拡大の一途をたどっています。第三次補正でさらに軍事費の新規後年度負担を二千八百六十七億円行い、二〇一七年度当初予算案まで含めれば後年度負担は四兆八千七百二十六億円、安倍政権の五年間で後年度負担は実に一・五倍に増大しております。安倍政権の大軍拡路線は、将来の財政収支を圧迫し、国民生活に必要な施策ができなくなる危険性を増大させています。

 国民の暮らしも経済もよくならず、戦争する国への暴走で、平和と暮らしを脅かす本補正予算に断固反対し、税金の集め方と使い方を抜本的に改めることを求めて、反対討論とします。

浜田委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久です。

 私は、我が党を代表して、平成二十八年度一般会計第三次補正予算案二案に賛成し、民進党提出の撤回のうえ編成替えを求めるの動議に反対の立場から討論をいたします。

 今回の補正予算は、災害対策費、国際分担金及び拠出金、自衛隊の安定的な運用体制の確保等の事項について措置を講ずるものです。

 災害対策費については、昨年八月末の北海道、東北の豪雨、台風災害等への対応として災害復旧等を行うとともに、熊本地震からの復旧復興に対して災害廃棄物の処理費用を積み増しています。

 我が党は、今年度第二次補正予算案には賛成しました。リニア予算前倒しを評価し、各地の災害復興は道半ばと考えたからです。我が党は、熊本地震の発災直後に震源地の益城町の被災状況を視察し、緊急提言を政府に提出しましたが、現地では昨年末にようやく益城町復興計画ができたところです。

 熊本地震、北海道、東北の豪雨、台風災害はもとより、災害復旧予算全体がまだまだ十分でないと考えます。もちろん、災害復旧や国土強靱化に名をかりた無駄が生じないよう、公共事業に対しては常に厳しい監視と事業の効率化、合理化が必要であり、今後、予算の執行についても注視してまいります。これは、他の歳出項目についても同様であります。

 歳入について言えば、一兆七千億円の税収不足とほぼ同額の赤字国債発行が強く懸念されます。為替レート等の経済指標の予想にも当初の税収見込みにも不正確さや恣意性がないか、今後もチェックすべきです。また、今後、補正予算の編成は、税収が低い場合には一層慎重に組むべきでしょう。

 そして、言うまでもなく、身を切る改革を初めとした徹底的な行財政改革による歳出削減を行うべきであると考えます。この点は、来年度予算案の質疑で徹底して質疑してまいります。

 特に、文部科学省で違法、不当な天下りが発覚したことに鑑み、国立大学運営費交付金、私学助成金、さらには独立行政法人を含む天下り法人全体への交付金、補助金の見直しも厳しく行うべきです。

 我々が指摘した問題点につきまして、今後、誠実な対応を強く要望し、我が党は、平成二十八年度一般会計第三次補正予算案二案に賛成、民進党提出の撤回のうえ編成替えを求めるの動議に反対をいたしまして、私の討論を終わります。(拍手)

浜田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 これより採決に入ります。

 まず、大西健介君外一名提出の平成二十八年度補正予算両案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浜田委員長 起立少数。よって、大西健介君外一名提出の動議は否決されました。

 次に、平成二十八年度一般会計補正予算(第3号)、平成二十八年度特別会計補正予算(特第3号)の両案を一括して採決いたします。

 両案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浜田委員長 起立多数。よって、平成二十八年度補正予算両案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました平成二十八年度補正予算両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十七分散会


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