衆議院

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第7号 平成29年2月6日(月曜日)

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平成二十九年二月六日(月曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      伊藤 達也君    石崎  徹君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    大串 正樹君

      大西 英男君    奥野 信亮君

      鬼木  誠君    菅家 一郎君

      黄川田仁志君    工藤 彰三君

      國場幸之助君    佐田玄一郎君

      白須賀貴樹君    鈴木 俊一君

      田畑  毅君    武部  新君

      津島  淳君    豊田真由子君

      中谷 真一君    根本  匠君

      野田  毅君    野中  厚君

      平口  洋君    藤丸  敏君

      藤原  崇君    星野 剛士君

      前川  恵君    前田 一男君

      牧島かれん君    三ッ林裕巳君

      宮内 秀樹君    宮路 拓馬君

      保岡 興治君    簗  和生君

      山下 貴司君    山田 美樹君

      若狭  勝君    渡辺 孝一君

      渡辺 博道君    井坂 信彦君

      今井 雅人君    小川 淳也君

      緒方林太郎君    後藤 祐一君

      階   猛君    高井 崇志君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      福島 伸享君    前原 誠司君

      村岡 敏英君    山尾志桜里君

      伊藤  渉君    稲津  久君

      國重  徹君    真山 祐一君

      高橋千鶴子君    畠山 和也君

      真島 省三君    井上 英孝君

      伊東 信久君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣         山本 公一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣         山本 幸三君

   国務大臣         丸川 珠代君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平川  薫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       三輪 和夫君

   政府参考人

   (内閣府再就職等監視委員会事務局長)       塚田  治君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      西村 泰彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤江 陽子君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            関  靖直君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (水産庁長官)      佐藤 一雄君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  奥田 哲也君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    中島  敏君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            高橋 康夫君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  前田  哲君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  高橋 憲一君

   参考人

   (再就職等監視委員会委員長)           大橋 寛明君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月六日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     宮路 拓馬君

  衛藤征士郎君     白須賀貴樹君

  奥野 信亮君     津島  淳君

  門  博文君     武部  新君

  佐田玄一郎君     渡辺 孝一君

  長坂 康正君     中谷 真一君

  原田 義昭君     工藤 彰三君

  平口  洋君     藤丸  敏君

  井坂 信彦君     山尾志桜里君

  今井 雅人君     高井 崇志君

  辻元 清美君     階   猛君

  福島 伸享君     村岡 敏英君

  伊藤  渉君     稲津  久君

  赤嶺 政賢君     畠山 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     鬼木  誠君

  白須賀貴樹君     大西 英男君

  武部  新君     前川  恵君

  津島  淳君     奥野 信亮君

  中谷 真一君     藤原  崇君

  藤丸  敏君     平口  洋君

  宮路 拓馬君     穴見 陽一君

  渡辺 孝一君     佐田玄一郎君

  階   猛君     辻元 清美君

  高井 崇志君     今井 雅人君

  村岡 敏英君     福島 伸享君

  山尾志桜里君     井坂 信彦君

  稲津  久君     伊藤  渉君

  畠山 和也君     真島 省三君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     江藤  拓君

  大西 英男君     菅家 一郎君

  鬼木  誠君     豊田真由子君

  藤原  崇君     牧島かれん君

  前川  恵君     宮内 秀樹君

  真島 省三君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     三ッ林裕巳君

  豊田真由子君     簗  和生君

  牧島かれん君     前田 一男君

  宮内 秀樹君     若狭  勝君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     田畑  毅君

  三ッ林裕巳君     衛藤征士郎君

  簗  和生君     山田 美樹君

  若狭  勝君     門  博文君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑  毅君     長坂 康正君

  山田 美樹君     井上 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     原田 義昭君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十九年度一般会計予算

 平成二十九年度特別会計予算

 平成二十九年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算、平成二十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として再就職等監視委員会委員長大橋寛明君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官平川薫君、内閣官房内閣人事局人事政策統括官三輪和夫君、内閣府再就職等監視委員会事務局長塚田治君、宮内庁次長西村泰彦君、総務省自治行政局公務員部長高原剛君、文部科学省大臣官房審議官藤江陽子君、文部科学省高等教育局長常盤豊君、厚生労働省医政局長神田裕二君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、水産庁長官佐藤一雄君、国土交通省鉄道局長奥田哲也君、海上保安庁長官中島敏君、環境省水・大気環境局長高橋康夫君、防衛省防衛政策局長前田哲君、防衛省整備計画局長高橋憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。國場幸之助君。

國場委員 自由民主党の國場幸之助です。

 初めての予算委員会での大変貴重な質問の機会をいただきまして、理事の皆様を初め委員の皆様方に心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

 まず一問目、天皇陛下の沖縄への御心についてお尋ねしたいと思います。

 今上天皇の沖縄への思い、皇太子時代から天皇陛下として即位され現在に至るまで、沖縄に対する御心は、多くの沖縄県民からも、日本国民の象徴として深く敬愛されていると感じます。昭和天皇は、沖縄に対する思いを持ちつつも、戦後、御訪問を果たすことはできませんでした。

 昭和六十二年、当時八十六歳の昭和天皇は、「思はざる病となりぬ沖縄をたづねて果さむつとめありしを」という御製をお詠みになりました。その強い思いを受け継いだと思われる今上天皇は、皇太子時代の昭和五十年七月、初めて沖縄訪問をされております。

 最初の訪問地の南部戦跡、ひめゆりの塔の前で、過激派から火炎瓶を投げられるという衝撃的な事件が起きました。騒然とした厳重な警備が続く猛暑の中、予定どおり、慰霊碑めぐりと遺族代表の方々との交流を行い、何事もなかったかのように日程をこなされました。

 沖縄の歴史、伝統文化に深く関心を寄せられ、数多くの琉歌をおつくりになり、復帰前から沖縄の中学生の豆記者との交流を続け、沖縄戦が終結した六月二十三日の慰霊の日をどうしても記憶しなければならない日として、必ず黙祷をささげられるとお聞きしますし、沖縄へのお越しは十回にわたっております。

 そこで、お尋ねしたいと思います。

 天皇陛下の沖縄への格段の御心についての御所見をお願いします。答弁は西村宮内庁次長にお願いします。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 天皇陛下におかれましては、さきの大戦において、地上戦が行われ、多くの犠牲を払った沖縄に対し、強い慰霊の気持ちを持たれておりまして、皇太子時代を含め、これまで十回沖縄を御訪問されているところであります。

 沖縄戦の終結した六月二十三日は、忘れてはならない四つの日の一つとしてお考えになられており、毎年六月二十三日には、沖縄で犠牲になられた方々に対して黙祷をささげられているところであります。

 このように、天皇陛下におかれましては、沖縄に対してお心を寄せてきておられるものであります。

國場委員 ありがとうございます。

 西村次長は、沖縄サミットの際に、沖縄県の県警本部長として、地方開催で初の首脳会議を、警備の面で非常に重要な任務を果たされました。当時、私、県会議員だったんですけれども、サミットの苦労話の際に、西村当時の本部長の答弁は非常に感動的な内容だったと今でも鮮明に覚えておりますので、引き続き陛下をお支えになりまして、また、沖縄の点もよろしくお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、皇位継承についてお尋ねしたいと思います。

 今国会は天皇陛下の退位が重要なテーマとなっておりますが、昨年八月八日の陛下のお言葉の結びは、象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしましたとなっておりました。その意味するところは、退位の問題だけではなく、皇位継承が、男系男子でわずか四方しかいらっしゃらない現状を踏まえ、安定的に皇位継承者が維持存続される状態も考えてほしいという天皇陛下のお思いがあるのではないかと思っております。

 ことしは日本国憲法の施行から七十年目の重要な節目です。そして、憲法の第一章は天皇でございます。皇位継承についてお尋ねしたいと思います。

 一月二十六日の予算委員会で、細野委員の質問に対して総理は、安定的な皇位継承の維持について引き続き検討してまいりたいと思いますと答弁されております。今後、政府は具体的にどのような取り組みをしていくのでしょうか、お尋ねします。

平川政府参考人 お答えいたします。

 安定的な皇位継承の維持につきましては、国会において総理が、国家の基本にかかわる極めて重要な問題である、この問題については、慎重かつ丁寧に対応する必要があり、男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえつつ、今回の公務の負担軽減等の議論とは切り離して、引き続き検討していく旨の答弁をなされております。

 政府といたしましては、総理の御答弁を踏まえて対応してまいる所存でございます。

國場委員 ぜひ対応をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、軍民共用の那覇空港の現状についてお尋ねしたいと思います。

 一月の三十日、那覇空港でF15戦闘機のタイヤの脱輪事故が起きまして、滑走路が一時間五十分閉鎖されました。その間、発着便の四十便が欠航し、少なくても八十八便、八千四百人に影響が出ております。まず、事故の再発防止を強く求めます。

 今、那覇空港は極めて過密状態にあります。それは、入域観光客数の急増と、近接する那覇港への外航クルーズ船の寄港、ちなみに、外航クルーズ船の寄港回数は、今、沖縄県は日本で一番多くなっておりますが、高層ビルのような大型クルーズ船が寄港する際、飛行ルートの真下を横切るために、那覇空港の航空機はクルーズ船の通過待ちをするために離発着におくれが生じております。

 さらに、那覇空港は軍民共用の空港ですけれども、陸上自衛隊、航空自衛隊、海上自衛隊の部隊が駐留しているという意味では日本で唯一の空港でありまして、今、スクランブルの回数も日本一多くなっております。南西地域の安全保障を担うという重要なインフラの側面もあります。

 そこで、国土交通大臣と防衛大臣に質問をしたいと思います。

 平成二十七年度の那覇空港の発着回数は十五・八万回です。二〇二〇年の三月に第二滑走路が供用開始されますが、その際の容量も十八・五万回に向上と、依然として過密状態の現状が抜本的に改善されるわけではありません。

 競争優位性の高い観光地として、そして我が国の安全保障の最前線として、那覇空港の担っている役割ははかり知れませんが、その円滑なる運用には今も将来も国土交通省と防衛省の連携が必要です。両大臣のそれぞれの所見をお願いします。

石井国務大臣 委員御指摘のとおり、那覇空港は、沖縄県と国内外とを結ぶ人流、物流の拠点といたしまして、また離島航空路の拠点として、極めて重要な役割を果たしているところでございます。

 近年、那覇空港の利用者数、離発着回数ともに増加をしておりまして、ピーク時間帯には慢性的な遅延が発生している状況であります。

 そのため、国土交通省といたしましては、第二滑走路の整備を着実に進めるとともに、民間機と自衛隊機が使用している現状に鑑みまして、那覇空港が担っているさまざまな役割を引き続き果たしていけるよう、その円滑な運用に向けて、防衛省と緊密に連携をしてまいりたいと存じます。

稲田国務大臣 那覇空港を使用している航空自衛隊那覇基地は、南西地域における唯一の航空自衛隊の航空基地であり、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、昨年度の那覇基地における緊急発進回数は全国の六割以上に達しており、同基地は南西地域の防衛のかなめでございます。

 那覇空港第二滑走路の完成後においても、防衛省としては、自衛隊の運用を確保しつつ、那覇空港の担う役割が果たされ、円滑に運用されるよう、引き続き国土交通省と緊密に連携してまいります。

國場委員 平成二十七年度の那覇空港の発着回数は十五・八万回、そのうち自衛隊が約二万一千回であると伺っております。それが二〇二〇年に十五・八万回から十八・五万回に向上と、わずかな容量の増加しかないわけでありますので、引き続き、南西地域の安全保障の環境というものは、厳しくなることはあるにせよ、緩和されることはなかなか難しい、そういう声もありますので、どうか防衛省と国土交通省との連携を密にお願いしたいと思います。

 さらには、沖縄県は、南西地域における観光地として、クルーズ船の寄港も日本で一番多くなりました。本当に感謝申し上げたいと思います。しかし、那覇港と那覇空港が非常に近い場所にあるということもあるので、どうか、航空局そしてまた港湾局とも連携を密にしていただきまして、引き続き、沖縄の優位性というものが高まるように、アジアとのかけ橋としての側面を形にできるように、政府の御協力を心からよろしくお願いします。

 続きまして、嘉手納基地に緊急着陸をした民航機についてお尋ねしたいと思います。

 一月三十日のF15戦闘機の脱輪事故で那覇空港が閉鎖されまして、民航機が嘉手納基地の方に緊急着陸をしました。百八十九名の乗客が二時間半以上にわたって機内待機を強いられ、那覇空港に到着したのは約三時間半おくれでありました。国内定期便による嘉手納基地への代替緊急着陸は、自衛隊の故障や事故そして天候不良のため、平成二十三年からちょうど先週まで十回生じております。

 仮に、嘉手納基地が、日米地位協定の第三条の管理権に関して、日米合同委員会でのさまざまな好意的配慮等があれば、嘉手納基地でおりてそれぞれの目的地に乗客が向かうことも可能であると思われますが、沖縄の基地負担軽減の一環として検討できないものでしょうか。

岸田国務大臣 嘉手納飛行場のような日米地位協定に基づいて米側が使用することが許されている施設・区域ですが、これは、日米地位協定第三条によって、我が国は、米側が施設・区域の設定、運営、警護、管理のための全ての措置をとることを認めております。

 したがって、米側が個別の具体的な状況において適当であると判断した場合には、施設・区域内に日本の民間航空機が着陸し、着陸した民間航空機から乗客が当該施設・区域内を通って外に出るということはあり得ると考えます。

 ただ、現実問題、もし航空機が国際線だった場合、入国手続が必要になる、それに対応するために具体的な措置が必要になるとか、手続面においてはもし現実のものになれば考えなければならないと思いますが、いずれにせよ、緊急時にこのような対応がとられることが適当か否か、これは米側においてさまざまな要素を考慮した上で判断されることになります。

國場委員 緊急着陸の際の、乗客の方がそこでおりてそれぞれの目的地に向かうということは可能かどうかは手続面での課題があるということと、また米側の判断というものが大きいということでありますけれども、ぜひとも、日本側の方から主張するということが大切だと思っております。

 もちろん、これにはいろいろな課題があるかと思いますけれども、やはり沖縄の基地負担軽減の一環として、そして、那覇空港が引き続き過密化になればなるほど、嘉手納基地の方に緊急着陸する回数というものがふえることが生じてくると思われますので、外務省としても、岸田大臣としても、いろいろな形での御検討をよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、在日米軍基地の管理権についてお尋ねしたいと思います。

 安倍政権は、空中給油機の岩国基地への移駐、そして西普天間住宅地区や北部訓練場の返還、さらには環境補足協定や軍属の見直し等も含めまして、沖縄の基地負担軽減について多くの実績と成果を出していると思います。

 特に、一九七二年の沖縄の祖国復帰以来、最大の返還となりました北部訓練場の返還は、沖縄県の米軍の専用施設の七三・九%から七〇・六%への減少という非常に大きな、歴史的な返還となりました。取り組みに当たった多くの方々にも、心から感謝を申し上げたいと思います。

 しかし、今、日米間で返還合意されております一九九六年のSACOの最終報告、二〇〇六年の再編実施のための日米のロードマップ、二〇一三年の統合計画での在沖米軍基地の整理、統合、縮小計画が全て終了したとしても、依然として、沖縄県には六九・七%の米軍の専用施設が残ります。

 安全保障の最前線でもある沖縄には、一定の抑止力は不可欠であります。しかし同時に、安定的な在日米軍基地の運用というものを考えた際には、過重な基地負担というものをいかに軽減していくのか、こういう視点も極めて重要です。

 抑止力の維持と負担の軽減、この双方のバランスある解決策の一つに、私は、在沖米軍基地の専用施設を日本政府、自衛隊が管理していく、そういう道もあるのではないか、このように考えております。

 沖縄には三十二の米軍基地、米軍の施設がありますけれども、自衛隊の管理、いわゆる二4(b)でありますけれども、二4(b)に該当する施設は、わずか一つしかありません。一方、北海道の方には十八の米軍施設がありますが、米軍の専用施設は、わずか一つであります。

 米軍基地における管理権の日本政府への移管は、沖縄における地域感情を緩和し、日米同盟での日本の役割を向上させ、沖縄における我が国の主権回復や、より成熟した日米関係の深化にも貢献すると思います。

 そこで、防衛大臣にお尋ねしたいと思います。

 アメリカとイギリスや、アメリカとオーストラリアのように、その国の軍用施設に米軍が駐留する形態、そして日本本土の米軍基地のような共同運用の形態を、沖縄の米軍基地でも目指すべきだと思います。もちろん、そのためには地元の合意というものが必要となりますけれども。

 今の日米間で合意されている整理、統合、縮小計画、それが全て完了しても、依然として、〇・六%の県土に約七割の米軍の専用施設が集中するという形は、これは変わらないわけであります。ですから、日米の抑止力の維持と負担の軽減、これは、計画、合意があったとしても、二十年、三十年と長い歳月がかかるわけでありまして、これからの南西地域、また日本とアメリカとの抑止力、負担軽減の関係というものを、今、安定政権の、力のある安倍政権の期間に、将来の安全保障のグランドデザインを描くべきだと考えますけれども、防衛大臣の御見解をお願いします。

稲田国務大臣 沖縄の負担軽減のため、できることは全て行う、目に見える形で実現するという基本方針のもとで、政権の最重要課題の一つとして取り組んでおります。

 沖縄においては、在日米軍が専ら使用する施設の割合が多く、本土では、かつて米軍の施設であったものが一度返還されて自衛隊の施設とした上で、改めて、その施設を在日米軍がいわば借りる形で共同使用しているものも多く存在しております。在日米軍がいわば自衛隊の施設を借りるような形にすることについては、日米同盟が十分に機能するかという点を十分に踏まえた上で検討されるべきものと認識をしております。

 いずれにいたしましても、これまでも、昨年十二月の北部訓練場の過半の返還、また平成二十七年の西普天間住宅地区の返還など、目に見える形で実現をしているところでございます。いまだ実現していない施策について、一日も早く実現していくことが重要であると考えております。

 施設・区域の共同使用については、新ガイドラインにもあるとおり、より緊密な運用調整、相互運用性の拡大、柔軟性や抗堪性の向上、地元とのより堅固な関係の構築といった観点から、今後充実させるべき日米協力分野の一つであると考えております。

 在日米軍が自衛隊の施設を借りるような形にすることについては、日米同盟が十分に機能するかという点も十分に踏まえた上で検討されるべきものと認識をしております。

國場委員 外務大臣からも答弁をいただきたいと思いますけれども、大丈夫でしょうか。

岸田国務大臣 今防衛大臣からありましたように、今委員の方から提案がありました課題につきましては、在日米軍が日米安全保障条約に基づいて十分機能するかどうか、こういった観点からもしっかり考えていかなければならない課題だと思います。

 いずれにしましても、この日米安全保障条約に基づいての体制につきましては、日米双方における意思疎通が重要だという点は変わらないと思います。そういったことを念頭に、そうした課題についても考えていかなければならないと考えます。

國場委員 ありがとうございます。

 時間も迫っておりますので、次の質問に移りたいと思います。

 続きまして、島嶼防衛と海洋資源についてお尋ねしたいと思います。

 我が国は世界第六位の排他的経済水域を持つ海洋国家でありますが、沖縄県は、東西千キロ、南北四百キロの全国第二位の水域を持っております。

 島嶼防衛には自衛隊や海上保安庁の役割が大変重要でございますが、同時に、尖閣諸島を含む我が国の国境離島の海域が日本の海として安全で平和な状態にあるのか、水産業や海底資源開発や航行の自由や釣りやレジャー等で、経済権益、生活圏が実効支配の状態にあるかどうか、このことが島嶼防衛の基礎ともなります。

 そこで、経産大臣に質問をします。

 沖縄近海の海底熱水鉱床は、今地球上で発見されている、銅の含有率が最も高い資源として注目を集めております。私は、二〇二〇年の東京オリパラの銅メダルを日本の資源でもある海底熱水鉱床で作製することができないのか、こういう提案も地元からありますけれども、これについては答弁は難しいかと思いますが、海底熱水鉱床の産業化は平成三十年度後半だと聞いております。次年度の調査内容と、将来産業化された際に地元へのどのような経済効果があるのかということをお尋ねしたいと思います。

 特に、多くの海域を持つ南西地域の沖縄という部分は、安全保障や観光の拠点であると同時に、今後の海底資源、海洋資源開発の集約化、人材やそしてまた研究機関や産業というもののクラスター機能を沖縄に集約することも可能であるかと思いますけれども、経産大臣の御答弁をお願いします。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 海底熱水鉱床については、今御指摘のとおり、平成三十年代後半以降に民間企業がちゃんと参画するプロジェクトとして開始することを目標に取り組ませていただいております。

 そしてまた、御指摘のように、沖縄海域で発見された熱水鉱床の中には銅の含有率が陸上鉱山の数倍のものもありまして、沖縄海域の海底熱水鉱床のポテンシャルは極めて高いというふうに考えております。来年度には、沖縄海域において、世界初のパイロット試験も実施をする予定となっております。

 しかし一方で、商業化に向けては、まず、資源量の把握ですとか、あるいはどういう技術で取り出していくのかとか、あるいはそのコストですとか、あるいは環境影響評価の国際ルールづくりなど、さまざまな課題も存在をしております。こういった課題を一つ一つ解決しながら、しかし一方で、これは沖縄経済への経済効果は非常に期待できるものでありますので、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

國場委員 ぜひともよろしくお願いします。

 続きまして、海上保安庁にお尋ねしたいと思います。

 海上保安庁第十一管区、これは日本最大の管区となっております。日々の尖閣警備も含めた緊迫した任務を担っていただき、心から敬意を表したいと思います。

 警備任務の中で、南西地域の領土、領海の安全、水産業の安全操業を含めまして、その実態はどのようになっているでしょうか。

中島政府参考人 お答えします。

 南西諸島を含む尖閣諸島周辺海域では、平成二十四年九月以降、中国公船等の徘回、接近あるいは領海侵入が依然として繰り返され、また、外国漁船による活動も続いております。さらに、外国海洋調査船による調査活動の活発化など、尖閣諸島周辺海域を初めとした東シナ海における状況は一層厳しさを増していると考えております。

 こうした状況の中、現場海域においては、引き続き冷静かつ毅然と対応するとともに、昨年十二月でありますけれども関係閣僚会議で決定されました海上保安体制強化に関する方針に基づき、巡視船艇、航空機の整備など、必要な体制整備を推進し、日本漁船の安全対策を含む領海警備に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

國場委員 ありがとうございます。

 続きまして、水産庁にもお尋ねしたいと思います。

 日中漁業協定は法令適用除外水域というものがありまして、数年前に、この水域内で違法サンゴ船が発見されてもこれが摘発できないという、多くの課題があることも指摘されております。日中漁業協定や日台漁業協定等、近隣諸国との関係で、我が国の水産業の安定操業、安全操業、そして経済権益というものは守られているのか、こういう点も含めて答弁をお願いします。

佐藤政府参考人 國場先生の御質問にお答えいたします。

 尖閣諸島周辺地域の取り締まりにつきましては、日本漁船の安全操業を確保するために、当該海域に水産庁取り締まり船を常在、配備いたしまして、出漁する日本の漁船に毎日定時に連絡を行うなど操業状況等を確認しておりまして、海上保安庁の巡視船と情報共有を行っているところでございます。

 また、平成二十九年度予算でございますが、最新鋭の千トン級の大型取り締まり船を更新するということで予算案に盛り込んでおりまして、尖閣諸島周辺海域を含む我が国周辺地域の取り締まりに万全を尽くしてまいる所存でございます。

 以上でございます。

國場委員 最後に、防衛大臣にお尋ねしたいと思います。

 尖閣諸島を含む南西地域の島嶼防衛について、日米安保第五条、尖閣諸島が適用対象となるということを日米の防衛大臣が確認したということは意義のあることだと思います。

 同時に、その大前提として、島嶼防衛というものは一義的に日本政府の任務である以上、日本の自衛隊の島嶼防衛能力の向上というものも極めて重要でございます。その現状と課題というものをお聞かせください。

稲田国務大臣 委員御指摘のとおり、マティス長官が、尖閣諸島が日本の施政下にあり、安保五条の適用の範囲内であると明確に述べられたことは、新政権も維持をしているということで大変重要ではありますが、と同時に、我が国自身の防衛力、島嶼防衛の能力の強化を図ることは喫緊の課題です。

 こうした課題に対応するため、平成二十八年三月に与那国沿岸監視部隊等を配備しており、今後、奄美大島、宮古島、石垣島に陸自の警備部隊等の配置を進めるとともに、航空自衛隊の南西航空混成団を南西航空方面隊に改編するといった取り組みを進めることが重要だと考えております。

 また、陸上自衛隊は島嶼を上陸、奪還する能力が不足しており、対応が急務です。このため、島嶼への上陸、奪還を主な任務とする水陸機動団を新編することといたしております。

 防衛省としては、これらの取り組みを通じ、島嶼防衛に関する能力を強化してまいります。

國場委員 沖縄県における自衛隊の役割というものは極めて重要なものがありまして、不発弾の処理を毎日行っております。そしてまた、離島の緊急患者の空輸も含めまして、復帰後の自衛隊の役割というもの、また県民の評価というのは高いものがありますから、在日米軍とのかかわりも含めて、今後とも、島嶼部における自衛隊の活躍というものを、私も地元選出の議員としてしっかりと応援していきたいと思いますので、その活躍、健闘を心から祈念申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて國場君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして順次質問をさせていただきます。

 まず、石井大臣並びに国土交通省の皆さん、そして関係者の方々に、心からの敬意を申し上げたいと思います。

 振り返ると、昨年の八月から九月にかけて、通常、台風の上陸が少ない北海道に連続して台風が直撃をしまして、かつてない被害を受けた折に、石井大臣には何度か被災状況を御視察いただき、また迅速な対応をいただきました。特に、きょうのテーマでございますJR北海道の新得町の鉄路については、現地視察と、あわせて、現場でのさまざまな対応も含めて大変な御支援をいただきまして、復旧に御尽力をいただきました。

 札幌と北海道の東の方の道東を結ぶ幹線であります石勝線それから根室線といいますが、この復旧には、何とか年末年始に間に合わせることができたということで、道民の皆さんも、またJR北海道も大変喜んでいるところでございます。

 それから、先般、平成二十八年度の第三次補正予算が成立をしまして、そして今、執行に入っている段階ですが、あわせて、平成二十九年度の本予算にも国土強靱化対策として予算が計上されておりまして、インフラ整備等に大変期待もございますし、一日も早い成立を強く願うところでございます。

 さて、本日は、まずこのJR北海道をめぐる問題について何点かお伺いしたいと思います。

 私の住んでいる北海道では、JR北海道に関する記事が、あるいは報道が、一日たりともない日はございません。そういう状況です。

 一方、JR北海道については、この復旧を進めていた昨年の十一月に、JR北海道単独では維持が困難な線区として、十路線十三線区を発表しまして、どうやったら今後維持ができるのかということを地域と協議していくという方針を発表されました。これは、いわゆるJR北海道の事業範囲の見直しというふうにされておりますけれども、実に北海道の鉄道網の半分に及ぶものもございまして、その衝撃は大変大きなものがあります。

 きょう、ぜひ議員の皆さんにも聞いていただきたいんですけれども、これは、ちょっと聞いただけでは、北海道のローカルな問題ではないか、こんなふうに思われるかもしれませんけれども、北海道は九州の約二倍、それから東北六県と新潟県を合わせた、それだけの広さがあって、このJRの示した路線が維持できなければ、北海道の多くの地域からすっぽり鉄道が消えてしまうという、異常な事態と言っても過言でないと思います。

 また、現場サイドでどういうことがあるかというと、JR北海道は、危機的な経営状況のもとで、ここ一、二年で、駅の廃止、減便など、相次ぐそうした取り組みを実施するとともに、残念ながら、サービス水準が低下をして結果として利用客が減ってくる、そういう進め方に対して地域が強い不信感を抱える中でのこのたびの見直しである。結果として、今現在ですけれども、JR北海道が求めている地域との協議というのはほとんど進んでいないという状況も生まれております。

 こうした状況を踏まえて、JR北海道の経営問題について伺っておきたいと思います。

 まず、我が国全体の五分の一の国土における鉄道網という視点、それからロシアとの国境とか北方領土との関連も含めた国土形成の観点からも、私は、このたびのJR北海道の事業範囲の見直しについては、JR北海道と地元だけの問題と捉えていいのだろうか、このように思っております。決してそうではなくて、やはりここは国もしっかりかかわっていただきたい。

 そこで、まずお伺いしたいのは、JR北海道の事業範囲の見直しに対して、国のかかわり方について大臣にお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 JR北海道は、地域の人口減少やマイカー等の他の交通手段の発達に伴いまして、路線によりましては輸送人数が大きく減少し、鉄道の特性を発揮しづらい路線が増加している厳しい状況に置かれていると認識をしております。

 国は、JR北海道に対しまして、これまで、経営安定基金の運用益の下支え、あるいは経営安定基金の実質的な積み増し、さらには設備投資に対する助成や無利子貸し付けなど、累次にわたって支援を行ってきたところでございますが、今後、地域における持続可能な交通体系を構築していくために、関係者において速やかに協議を始めていただく必要があると考えております。

 国といたしましても、北海道庁と連携をいたしながら、協議の速やかな開始に向けて関係者に働きかけていくとともに、これらの協議に国みずから参画をいたしまして、地域における持続可能な交通体系の構築に向けた対応につきまして検討してまいりたいと考えております。

稲津委員 大臣、ぜひ、この地域とのJR北海道の協議、今御答弁いただきましたように、北海道そして国もここに直接かかわっていくということをまた確認させていただきましたので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 そこで、JR北海道が示したこの十三線区の状況について、かいつまんで触れておきたいと思うんです。

 これはJR北海道の発表ですが、平成二十七年度の営業損失は百五十八億円に上るとされています。そして、昨年の末にJR北海道が、地域の交通を持続的に維持するためにという、これは社内資料として発表したものですけれども、そこにおきましては、このまま何もしなければ、今後、営業損失は四百六十億円規模となり、経営安定基金運用益などでは賄い切れず、毎年百八十億円規模の経常損失を計上する見通しです、こういうこともございました。

 そこで、もちろん、今ある十三線区等々も含めて、路線というのは未来永劫残るということはなかなか考えられないと思いますけれども、しかし、地域においてもできるだけ協力をして、あるいは支援を行う必要があるというふうに思うわけでございます。

 今私が申し上げました、二十七年度の営業損失、年間百五十八億円、この金額は、今、JR北海道が社内誌に出したのと同じように、到底、地方自治体で対応できるレベルではない。そう考えていきますと、このJR北海道が求めている自治体からの支援ということを仮にそのまま実行するとしたら、JR北海道が残って自治体の財政が破綻するという本末転倒のことにもつながっていくというふうに思っておるわけでございまして、こうした状況を含めて、国が事態の解決にやはり積極的にかかわっていただきたいというのが私の望むところであります。

 JR北海道は、地域への提案の一つとして、鉄道の運行と線路など施設保有の主体を分離する、いわゆる上下分離方式ということを提示されました。一方で、鉄道施設の老朽化は大変著しくて、例えばトンネルでは、築五十年以上が三六%、うち百年以上が一二%と説明しています。

 そうしますと、上下分離方式では線路などを自治体や三セク会社が持つことになるが、そうなると老朽施設の更新も自治体や三セクの負担となって、JRが長年、言葉は悪いですけれども放置したツケを自治体などに回すということになる。私は、これはあってはならないことというふうに思っていますし、慎重な議論が必要だと思っています。

 国土交通省は、この負担がどの程度になるかということを把握されているのかどうか、この点についてお伺いします。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 JR北海道は、今後、御指摘のとおり、毎年百八十億円規模の経常損失を計上することが見込まれるとしておりますけれども、それらにつきましては、まず、利用促進策等による増収でありますとか、設備の見直しやスリム化等による経費節減により損失を圧縮させた上で、鉄道を存続させていく上でなお不足が生じる部分について関係者で支えていくための方策を相談したいというふうに考えているものと承知をいたしております。

 JR北海道は、こうした相談を行うために必要となる情報として、線区別の収支を公表いたしますとともに、土木構造物の大規模修繕及び更新に係る経費につきましても、今後二十年間で必要になる費用の概算を示したところでございます。

 先ほど大臣からも答弁ございましたけれども、国はこれまでJR北海道に対しまして、経営安定基金の運用益の下支えでありますとか、経営安定基金の実質的な積み増し、また設備投資に対する助成や無利子貸し付けなど、累次にわたって支援をさせていただいたところでございますけれども、いずれにいたしましても、現段階では、今後、地域における持続可能な交通体系の構築に向けて関係者において速やかに協議を始める必要があり、国としても、道庁と連携しながらこれらの協議に参画し、地域における持続可能な交通体系の構築に向けた対応につき検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 なお、地域における交通体系を持続可能にしていくための議論におきましては、そのための方策につきまして幅広い検討が必要であるというふうに考えられまして、いわゆる上下分離もその選択肢の一つになり得るものというふうに考えておりますが、仮に上下分離を行うとした場合にも、全国的に見ますとさまざまな形態がございまして、御指摘の沿線自治体の負担をどのようにするかにつきましては、今後の地域における関係者の議論の中で議論されるものというふうに承知をいたしております。

稲津委員 局長、今、最後のところで御答弁がありましたけれども、各地で協議される中で云々とありましたが、私は、やはりしっかり現状、状況を把握していただきたいというふうに思うんです。もちろん当然把握されていらっしゃるとは思うんですけれども。

 もう一つ、これに関連して、国のしっかりした状況の把握ということについて質問をさせていただきたいと思いますけれども、私、先ほど、台風被害の復旧についてお礼を申し上げました。ただ、残念ながら、昨年の台風被害の鉄路の復旧というのは、まだ全てそうなっているわけではありません。

 例えば、根室線の富良野―新得間は、いまだ復旧の見通しは全く立っていないという状況です。これは、高倉健さんが主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台となった根室線の富良野―新得間というところですけれども、ここは今回、JR北海道はバス転換の方向で相談することが示されました。しかし、この区間については、今回の台風による直撃で被害を受けていまして、復旧に関する事業費さえ明らかにしていないという状況です。これがまた間接的に地元軽視ではないかという声もあって、私は、こうした姿勢が地域の不信感を助長しているということも、これは私一人だけの思いではないと思うんです。

 鉄道局は、この区間の被災状況ですとか復旧費用のことについて、どの程度、そしてどのように把握されているのか、この点を確認させてください。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 JR北海道根室線東鹿越―新得間につきましては、昨年の台風十号によりまして斜面崩壊でありますとか路盤流出等の被害が発生し、現時点においても運休中となってございます。

 当該区間につきましては、被災箇所が山間部にございますために、そこにアクセスするための新たなアクセスルートを確保しなければならないこと、また、昨年十一月末ごろより降雪が続いているといったような事情によりまして、現時点においても被災箇所に立ち入ることができず、被災状況を把握できていない状況にあるというふうに承知をいたしております。

 JR北海道としては、可能な限り早期に被災状況を把握するための調査を行い、復旧に必要な費用等を示したいとのことでありますので、私ども国土交通省といたしましても、可能な限り早期の調査実施を促してまいりたいというふうに考えております。

稲津委員 これは結局、台風で被害を受けた、それも確かに甚大な被害でした。なかなか、復旧についての方針だとか、それからどのような災害復旧にするかということを、十分な把握がまだできない、そういうこともあるのはわかります。ただ、もう一方で、時を同じくして、この線区の見直しで、ここのところはバス転換だという、この両方、全く相入れない話を提案されて、提案されてというか発表されると、当然これは多くの方々が、地元の方でなかったとしても、やはりここはなかなか理解できないことだと思うんです。

 それゆえに、ぜひ、所管の鉄道局として、ここはしっかり後押しをしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 ここまで、JR北海道に対する国のかかわり方について質問してまいりました。

 最後に、もう一点お伺いしたいと思うんですけれども、これは国からのJR北海道に対する支援という観点でお伺いします。

 先ほど大臣からもお話ありましたように、これまで国は、JR北海道の経営について、さまざまな支援もしていただいてまいりました。昭和六十二年の国鉄民営化の際には、先ほどのお話のとおり、経営安定基金を設置していただきました。当時の想定のもとでは、あの利率の中で毎年五百億円程度の運用益が得られるということになっていたんですけれども、それは当時とすればもう十二分な措置だったというふうに思います。

 しかしながら、御案内のとおり、その後、金利水準が大幅に低下する中で、設備投資などに累次にわたる支援を行ってきたわけなんですけれども、しかし、結果としてJR北海道は、数年後には資金不足も想定される今大変危機的な経営状況にある、そういうことで、ここはやはりさらなる支援が欠かせない、このように考えております。

 これまで申し上げてきましたように、このたびのJR北海道の問題は、私は、一地方の問題として、そういう対応ではなくて、まずは当然JRと地方で考えるべき、そういう問題かもしれませんけれども、しかし、先ほど来のお話のとおり、それだけで済まされる問題じゃない。

 昨年十一月に、北海道の振興開発に関する自由民主党、公明党のそれぞれの委員会の連名で、JR北海道の再生に関する要望を石井国土交通大臣にさせていただきました。その折にも丁寧な対応をしていただきましたことを感謝申し上げますが、こうしたJR北海道の再生と、そして将来に欠かすことのできない鉄道網の維持には、国の抜本的な支援が不可欠である、私はこのように思っておりますが、大臣の所見、決意を伺いたいと思います。

石井国務大臣 経営安定基金の運用益が金利により変動することは国鉄改革の当初から想定された仕組みでございまして、長期的な情勢の変化に伴って運用益が減少していることについては、基本的にはJR北海道の経営努力によって対処することが求められるものと考えております。

 しかしながら、こうした考え方に立ちつつも、国はJR北海道に対して、先ほど御説明申し上げたとおり、累次にわたって支援を行ってきているところであります。直近では、平成二十八年度からの三年間で総額一千二百億円の支援を行うこととしておりまして、これにより、当面は必要な安全投資や修繕を行いながら事業を続けていくことができる見通しであります。

 その一方で、JR北海道は、路線によっては輸送人数が大きく減少し、鉄道の特性を発揮しづらい路線が増加している厳しい状況に置かれております。このため、今後、地域における持続可能な交通体系のあり方について、関係者がともに考えていく必要がございます。

 このため、国といたしましても、北海道庁と連携をしながら、これらの協議に参画をいたしまして、その協議の中で、与党の北海道開発振興委員会からいただいた要請も踏まえつつ、国としての役割を果たしていく観点から、地域における持続可能な交通体系の構築に向けた対応につきまして検討してまいりたいと考えております。

稲津委員 大臣、ぜひ御検討いただきたいと思います。今の状況を考えていったときに、協議の中でさまざまな意見が出てくると思いますが、当然、国からの支援についてということも、恐らく現場サイドでは相当強い御意見が出るというふうに考えておりますので、そこを踏まえていただいて、JR北海道に対する支援を確実に行っていただきたいということを申し上げまして、このテーマの質問は終わらせていただきます。

 次に、海洋ごみの処理推進についてお伺いをしておきたいと思います。

 きょうは質問通告を三点にわたってさせていただいておりますが、残り時間ももう少なくなりましたので、二点に絞ってお伺いしたいと思います。最初の、実態の認識等々については、私の方から少し触れながら質問に入っていきたいと思います。ここのところは質問はいたしません。

 これは環境省の報告ですけれども、海洋漂着物地域対策推進事業、ここから算出した全国の漂着ごみの推計量というのは三十一万トンから五十八万トンとされる。これは条件がいろいろ違いますのでこういうことになっているんですけれども、海洋環境の悪化、それから漁業とか観光などに対する影響ははかり知れない、このように思っております。

 これは後で、大事なテーマになりますけれども、近年では、海水中に漂っていますマイクロプラスチック、これは微細なプラスチックですけれども、これが生態系に大きな影響を与える、こうしたことが問題になっています。

 平成二十一年に議員立法で、海洋漂着物処理推進法が制定されまして、これに伴ったさまざまな施策や予算もつくっていただいてきておりまして、大変うれしいことなんですけれども、しかし、なかなか、まだまだこの対策が十分とは言い切れない状況です。特に最近では、国内起源の海洋ごみの七割は川、河川からの由来だという指摘もありまして、河川と一体となった取り組みが今後必要だ、こういう状況です。

 それで、まず一点目ですけれども、都道府県や市町村が機動的に活用できる海洋ごみの対策支援事業についてお伺いをしておきたいと思います。

 先ほど申し上げました海洋漂着物処理推進法におきまして、当時、財政上の措置ということで、地域グリーンニューディール基金事業というのが設置をされました。これはその後、なくなりまして、現在は海洋漂着物地域対策推進事業で、これを平成二十九年度の予算案では三十八億五千万が計上されています。

 これも大変うれしいことなんですが、ただ、残念ながら補助率が下がってきまして、十分の七とか十分の八とかそういう状況で、現場からは、ちょっと使い勝手が悪いよね、こういうお話もあるわけでございます。

 ぜひ、このことを勘案しながら、地域グリーンニューディール基金の創設ということも希望したいところなんですが、ぜひ都道府県、市町村が機動的に使えるような活用を、この支援事業の中に組み込んでいく必要があるんじゃないか、このように思っておりますが、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。

高橋(康)政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県や市町村等におけます海洋ごみの対策に対する支援でございますけれども、環境省といたしましては、海岸漂着物等地域対策推進事業といたしまして支援をしてまいっております。

 平成二十七年度からは、都道府県や市町村の強い要望を受けまして、漂着ごみのみならず、漂流ごみやあるいは海底ごみといったものも回収、処理できるようにいたしまして、この機動的な活用を可能にしているところでございます。

 また、御指摘のありました補助率でございますけれども、原則は十分の七でございますが、過疎地や半島は十分の八、あるいは離島は十分の九ということにしてございます。

 また、加えまして、地方負担分の八〇%の特別交付税を措置いたしまして、自治体の実質的な負担の軽減にも配慮した制度としてございます。

 今後とも、都道府県や市町村の要望や意見を伺いまして、海洋ごみの対策の円滑な推進に努めてまいりたいと考えております。

稲津委員 恐らく、現場は、機動的に使える事業であれば一番望ましいということなので、そこをまたいろいろ工夫もしていただければなというふうに思っています。

 この問題と、もう一つ、先ほど私が触れさせていただいたマイクロプラスチック、微細なプラスチック、これが最近大変大きな問題になってきています。

 これはある調査の推計値ですけれども、二〇一〇年のデータ、百九十二カ国の国、地域を対象に行ったもの、世界全体でプラスチックのごみが一年間に最大で一千二百七十万トンぐらい出ているんじゃないか。これを少し細かく分析していくと、やはりどうも人口の多い新興国が上位を占めている状況で、二〇二五年には海への流出量が二〇一〇年の十倍ぐらいになるんじゃないか、こういう指摘もあります。

 特に日本近海で非常に深刻な問題がございまして、日本近海で浮遊するマイクロプラスチックの量は世界の平均の約二十七倍だ、こういう指摘もあります。東京海洋大学、九州大学等が協力した環境省調査では、海鳥の九〇%がマイクロプラスチックを摂取して、ウミガメ、魚、貝など二百以上の海洋生物も摂取しているということも発表になりました。

 特に、もっと怖いのは、このマイクロプラスチックに付着するPCB、農薬、こういった有害物質、高濃度に吸着する性質があるということで、これが水産資源や海洋生態系の保全に大きな影響を与えるということが今懸念されております。

 こういう中で、この微細なプラスチック、マイクロプラスチック対策、これは喫緊の課題だと思っています。二〇一六年の伊勢志摩サミットでも、このことがテーマになって議論になりました。

 私、一番大事なことは、これは国際的なグローバルな取り組みがなければなかなか話は前に進んでいかないと思っておりまして、実態調査やモニタリングの調査も必要ですけれども、あわせて、例えば、日中韓の三カ国の環境大臣の会合の中でもこれに取り組んでいくとありますけれども、もっと幅広く、近隣国とのいろいろな連携また対応等について協議をぜひどんどん進めていただきたい、このように思っておりますが、御答弁いただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 まず、稲津議員がお地元で海洋ごみ等についてボランティア活動をされていることに敬意を表したいと思います。

 今御質問にございましたマイクロプラスチックについては、生態系への影響はもちろんのことでございますけれども、国際的な海洋ごみ対策の必要性がG7や日中韓三カ国環境大臣会合においても確認されており、まさに地球規模の問題だ、かように思っております。

 このため、環境省においては、海洋中のマイクロプラスチックの実態把握のための調査を実施しているほか、その調査手法の国際的な標準化に取り組んでいるところでありまして、東南アジア諸国も参加するG20やAPECなどを通じて、海洋ごみ対策の推進を引き続き積極的に働きかけてまいりたいと思っております。

 また、国内においては、廃棄物の適正処理等の推進によりまして、陸上からの海洋ごみの発生抑制に努めてまいりたいと思っております。

稲津委員 以上で終わらせていただきます。

 きょうは、JR北海道の今後の経営のことについて、また海洋漂着ごみの処理について、それぞれ順次質問し、御答弁いただきました。ぜひとも、施策が一歩二歩と前進することを期待またお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて稲津君の質疑は終了いたしました。

 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 本日、質疑に四十分立たせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。

 テーマは引き続き共謀罪の話でありまして、きょうは、少し具体的な事例にも基づきまして議論をさせていただければと思います。

 まず、これまで出てきていた過去の共謀罪の法律についてですが、かなり幅広い犯罪が対象となっておりました。例えば、公職選挙法におきまして、買収及び利害誘導罪のうち、公職の候補者、選挙運動を総括主宰した者、出納責任者等がこういった買収、利害誘導を行ったときには四年以下の懲役または禁錮刑となっております。そしてまた、多数人買収については五年以下の懲役または禁錮刑ということになっております。

 過去に提出をされておりました共謀罪では、これらが法律の対象になっていたということをまず確認させていただきたいと思います、法務大臣。

金田国務大臣 緒方委員の御質問にお答えします。

 かつて政府が提出しました法案における組織的な犯罪の共謀罪につきましては、長期四年以上の懲役または禁錮の刑が定められている罪が対象とされておりました。したがって、対象となっていたものはあります。

緒方委員 今確認いただけたというふうに思ったんですけれども、もう一度だけ。

 公職選挙法のうち、買収とか利害誘導罪、その中でも連座になるものですね、公職の候補者、選挙運動を総括主宰した者、出納責任者等が行った場合、さらには多数人買収、こういったものについては、過去に出された共謀罪の対象犯罪であったということを再度御確認いただければと思います、金田大臣。

金田国務大臣 申し上げましたとおり、長期四年以上の懲役または禁錮の刑が定められている罪が対象となっておりましたので、その対象となっていた、このように申し上げます。

緒方委員 そういう中、公職選挙法違反の事例を少し調べておりましたら、二〇一五年四月三十日の産経新聞にこのような記事が出ておりました。選挙違反の証拠PC、海にどぼん、金田衆議院議員の元秘書を略式起訴、秋田男鹿区検。

 少し内容を読ませていただきますと、昨年十二月の衆院選挙で運動員に報酬を支払う約束をしたとして、男鹿区検(秋田県)は三十日、公選法違反罪、買収約束などで、秋田二区で当選した金田勝年氏の、ここは名前は読みませんが、私設秘書を略式起訴した、証拠隠滅のため海中に捨てられていた陣営のパソコンを県警捜査二課が押収していたこともわかった、そういう記事がございました。

 まず、金田大臣に事実確認を求めたいと思います。これでよろしいでしょうか。

金田国務大臣 私は、公職選挙法に違反しないようにという指示は常に私の事務所の関係者には申し伝えておりますし、その詳細については私はよく承知しておりませんが、それ以上の、しっかりと選挙違反のないようにという指示をしております。

 そういう中で、御指摘の点につきましては、しっかりと当局でそれを検討していただいて、その判決もいただいておる、このように承知しております。

 ただいま手持ちはございませんが、後で確認して、その話を御質問いただければ、申し上げることはできます。

緒方委員 いや、単に、運動員に買収約束をしたということで私設秘書の人を略式起訴したということと、証拠隠滅のために捨てられていた陣営のパソコンが押収されていたということは、これは事実ですねと。御自身の選挙であります。御答弁いただければと思います、金田大臣。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、刑事裁判の結果も出ております。略式起訴であったと承知しておりますが、これ以上の詳細についてはコメントを差し控えたいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 では、もう一回答弁願います。

金田国務大臣 略式手続の刑事裁判の結果も出ているというふうに申し上げました。その内容については私は承知をしておるつもりであります。

緒方委員 そうすると……(発言する者あり)静かにしてください。つまり、私設秘書の方が選挙買収で略式起訴をされた。そして、この買収、利害誘導罪のうち、候補者、選挙を総括主宰した者、出納責任者がこれを行った場合は四年以下の懲役、禁錮刑であるということでした。

 これは確認まででありますが、候補者たる金田大臣、選挙運動総括主宰者、出納責任者等の共謀はなかったと言えますでしょうか、金田大臣。

金田国務大臣 全くありません。

 加えまして、先ほども申し上げましたとおり、公職選挙法に違反することのないように常に注意をしておるところでありますが、私が、私の事務所の指導に当たっている秘書さんが話したことを聞いております限りでは、その方が電話をかけることをお願いしたらしいです。そして、そのときにアルバイト代を払うかのような約束をされたのかどうか、そういうことが問題となったというふうには伺っておりました。

 ただ、それは非常に遺憾なことでありますし、そういうことがないようには常々やっているところでございますが、これに対しては略式手続の適用がございまして、その刑事裁判の結果も出ているところでございますので、これ以上の詳細につきましてはコメントは差し控えたいと思います。

緒方委員 共同正犯とか教唆、幇助に当たらなかったんだろうと思います、立件されていないので。ただ、買収行為の約束を私設秘書が出納責任者との共謀なしにやるということはとても考えにくいと思いますね、お金に絡む話ですから。本当に共謀はなかったと言えるでしょうか、金田大臣。

金田国務大臣 何度も申し上げておりますが、それ以上の詳細につきましては私はコメントを差し控えさせていただきます。(発言する者あり)

浜田委員長 時間をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 繰り返しになりますが、略式起訴されたということは承知をしております。そして、その詳細については承知をしておりませんが、それまで以上の、公職選挙法の違反行為を起こすことがないように、さらに徹底を図ったというのは記憶しております。そして、それ以上のコメントを申し上げることはございません。

緒方委員 私が聞いているのは、特に出納責任者、お金を管理しておられる方が、全く共謀なしに買収の約束をするということはなかなか難しいんだろうと私は思うんですね。なので、共謀はなかったのですかと。もう一度、済みません、御答弁いただければと思います、金田大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

金田国務大臣 その点につきましては、何度も申し上げておりますが、なかったと私は思いますが、詳細についてはコメントを申し上げることはございません。

緒方委員 もうこの件はこれで終えたいと思いますが、私は何が言いたかったかというと、共謀がなかったことを証明することというのが極めて難しいんですね、なかったと。あったことを証明することは、あったことを証明すればいいんです。ただ、なかったことを証明することが相当に難しいと思います。金田大臣もなかったと思うけれどもと今言われましたけれども、引き続きこの件はやっていきたいと思います。

 いずれにせよ、報道にもありましたが、証拠隠滅のために事務所のPCを海に捨てていたこともわかっています。こういったことをあわせて、遵法精神が他の閣僚に比してより高く求められるにもかかわらず、買収、証拠隠滅を、御本人ではないかもしれないんですけれども、事務所全体としてやっておられたということについて、金田大臣、いかがお考えですか。

金田国務大臣 繰り返しになりますが、私は、地元の事務所におきましては、常々、法律違反、公職選挙法違反を絶対にしないようにという話し合いもしますし、決して違反が起こらないように、細心の注意を自分としては払ってまいりました。

 そうした中で略式起訴の事案があったということについては、非常に私は、公職選挙法の違反行為を今後とも絶対に起こすことのないように、さらに徹底をしているところであります。

 そして、それをぜひ御理解いただきたいのと、私は、大変重要な任務を負う、ただいまは法務省の長をいたしております。そういう自覚をしっかりと持ってその職責を果たしてまいりたい、このように考えております。

緒方委員 それでは、テロリズムと共謀罪について、引き続きお伺いをしていきたいと思います。

 今回のテロ等準備罪を法定するに際しては、これまで累次答弁があったと思いますが、TOC条約で求められているところの中身を、必要最小限、ぎりぎりまで必要最小限で国内法をつくっていくというふうに答弁されていたと思います。

 確認いたしたいと思います。これでよろしいですか、金田大臣。

金田国務大臣 国際組織犯罪防止条約、TOC条約を締結するための法案をつくるに当たりましては、現在検討中ではありますが、条約との整合性を図りながら、対象犯罪の限定の点も含めまして、そのあり方を検討しているわけであります。現在、最終的な詰めを行っている段階であります。(緒方委員「答弁が違う。必要最小限と言いましたよ」と呼ぶ)

浜田委員長 大臣、もう一度答弁願えますか。

金田国務大臣 TOC条約、国際組織犯罪防止条約を締結するための法案につきましては現在検討中であります。その際に、私どもは、条約との整合性を図りながら、対象犯罪の限定の点も含めて、そのあり方を検討しておるところであります。現在、最終的な詰めを行っているところであります。

緒方委員 前回、私が聞いたときに、たしか過不足なくという表現でしたかね、過不足なくやるということでよろしいですかということと、あと、その中で私、たしか必要最小限と言った気がするんですが、TOC条約との関係で、それを実施するのに、ともかく必要最小限のものまで削り込んでやるということではないんですかね。オプションがたくさんあると言われましたが、その中で、私は、いろいろ国民の不安があるから、不安があるところを削ってとかいう話もしておられたと思うんですが。

 必要最小限というふうに答弁してきたと私は理解しているんですけれども、それが違っているのであれば違っていると言っていただいて結構であります。必要最小限ということでよろしいですか、金田大臣。

金田国務大臣 TOC条約にかかわる部分については、本来外務省がお答えすべきところであろうかとは思います。そういう中で、私としてお答えできる範囲でお答えをしますが、条約との整合性を図りながら、必要かつ適正な範囲で国内法を整備していく方針であります。

緒方委員 少し質問を移していきたいと思います。

 ということは、今後国内法でどういうふうなものを取り込んでいくのかというと、TOC条約の第五条のところには、金銭的その他の物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的のための重大な犯罪、これを合意することだということで書いてあります。つまり、金銭的利益その他の物質的利益を得ることを目的にしているというふうに書いてあります。

 一方で、テロリズムの定義ということについて、テロというのは何ぞやということについてですが、これは国際社会的にもいろいろな議論があるわけでありますが、法律をいろいろめくっておりますと、特定秘密保護法、これは金田大臣の所管でありますね、そこでテロリズムというのが定義をされております。「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」とあります。政治上その他の主義主張に基づき行われるというのがテロであります。

 それで、金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的との関係が、間が全く重ならないとは思いませんが、テロの中でも今回TOC条約で対応できる部分というのは、テロリズムというのが全体があるとすると、極めて限界的な事例ではないかというふうに思うわけですが、金田大臣、いかがですか。

金田国務大臣 ただいまの委員のお尋ねは、条約の解釈にかかわる問題であるということから、外務省の所管事項であると認識しておりますので、外務省にお尋ねをいただきたい、このように思います。(発言する者あり)

浜田委員長 金田法務大臣、もう一度答弁願います。

金田国務大臣 委員のお尋ねにお答えをいたしたいんですが、条約の解釈にかかわる問題でありますので外務省の所管事項であると認識をしておりますので、外務省にお尋ねをいただきたい、このように考えております。

緒方委員 特定秘密保護法でテロの定義がされているんですね。特定秘密保護法も法務大臣として所管だと思います。

 まさにこれから金田大臣がつくられる国内法というのは、金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的に限定した法律をつくられるわけですよ。恐らくそうだと思いますね。しかし、国内法でテロの定義というのは、政治上その他の主義主張に基づき行われるものだというふうになっている。金田大臣がこれからつくられる国内法と、別途の国内法で定められているテロの定義との間に、重ね合わせてみると、重なり合うところが非常に少なくて、結果として、テロ対策だ、テロ等準備罪だと言われているけれども、テロに対応する部分というのは国内法の中でも極めて限られた部分になるのではないですかということを聞いています、金田大臣。

金田国務大臣 TOC条約との整合性を図りながら法案を作成する、そういう考え方で今現在検討を重ねているところであります。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 TOC条約がテロ対策も含まれるというのは、外務大臣が答弁したとおりだと思います。そして、法案はテロ対策のために必要ということもこれまで答弁したとおりである、このように考えます。そのことを踏まえて、過不足なく法案をつくってまいりたいということで現在検討しているということであります。もちろん、テロ対策も含めて、過不足なく法案をつくってまいりたい、このように考えております。

緒方委員 余り納得いく答弁ではありませんでしたが、今のを私なりに解釈しますと、今回法務省でやろうとしているのは、まず国際条約を国内で犯罪化するための法律がある、それとまた別に、テロ目的で犯罪化するもの、TOC条約とは関係なく、それとは違う別の、テロ目的で犯罪化するものも横についてくる。つまり、条約で義務づけられているもの以上のものを国内法でやろうとしているというふうに私は理解しましたけれども、それでよろしいですか、金田大臣。

金田国務大臣 TOC条約というものの中にはテロ対策も含まれているというのは、先般外務大臣がお答えしたとおりであります。そして、私たちも、外務省と協議を重ねながら、これから成案に向けて検討を進めているわけでございますから、テロ対策のために必要な、過不足なく、必要なテロ対策も含めてですよ、そういう思いでこの法案をつくっているというのが現状であります。(発言する者あり)

浜田委員長 法務大臣、もう一度答弁願えますか。

金田国務大臣 TOC条約にテロ対策も含まれるというふうに外務大臣が答弁されたとおりであります。(発言する者あり)

 TOC条約にはテロ対策も含まれている、申し上げたとおりであります。条約とは関係なくテロ対策のみを考えているわけではありません。

緒方委員 先ほど一度、過不足なくという表現がありましたが、それは、国際条約を国内法で犯罪化する、条約との関係で過不足なくということなのか、すごく広いかちょっと広いかわかりませんけれども、それよりも広い、テロ対策を行うのに過不足なくということなのか、いずれでございますでしょうか、金田大臣。

金田国務大臣 条約との関係においてと申し上げております。

緒方委員 ということは、先ほど私、もしかしたら誤解していたかもしれませんが、条約で求められている犯罪化をしなきゃいけないものがあって、それを少し超えるか大きく超えるかわかりませんが、それとは別の、純粋テロ対策として犯罪化するものというのがまた別個ついてくるということではないというふうに今、金田大臣は言われたと思いますが、その理解でよろしいですか。

金田国務大臣 ただいま委員が指摘されましたとおりと考えております。

緒方委員 済みません、どっちですか、金田大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 条約との関係でということで申し上げました。

緒方委員 そうすると、例えば純粋に政治上その他の主義主張に基づくテロが行われたとしても、金銭的その他の物質的利益に一切関係がなければ、恐らく金田大臣がつくろうとしている国内担保法ではそれは視野に入ってこないということだと思いますけれども、その理解でよろしいですか、金田大臣。

金田国務大臣 ただいまの御指摘の点については外務省の答弁をいただきたい、このように思っております。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 何度もお答え申し上げているつもりなんですが、条約の目的にはテロ対策も含まれております。条約との整合性を図りつつ法案を整備してまいりたい、このように考えております。

 それ以上は、TOC条約の解釈を御質問になりたいのであれば、外務省にお尋ねをいただきたい。(発言する者あり)

浜田委員長 金田法務大臣、再度答弁願います。

金田国務大臣 何度も申し上げておりますが、条約の目的にはテロ対策も含まれております。条約との整合性を図りながら法案を整備してまいりたい、このように考えております。

 それ以上につきましては、TOC条約の解釈ということで御質問がおありであれば、先ほど申し上げました整合性の内容も含めて、成案を得てから十分に御説明を申し上げたい、このように考えております。

緒方委員 先ほどは、条約を超える部分については、条約との関係で過不足なくと言われましたが、例えば金曜日の予算委員会での質疑の中でも安倍総理は、目的は二つでありまして、二つの目的については、まさに、条約を批准するためですね、もう一つは、テロに対する穴があればそれは埋めておく必要がありますねということです。

 先ほどから私はずっと同じことを聞いておりまして、条約で求めているものというのが、金銭的その他の物質的利益に直接間接に関連する目的ということでありました。それはそうなんです。しかしながら、国内法上定義をされているテロというのは政治上の主義主張に基づき行われるということでありまして、こういった、金銭的とか物質的なものと関係ない政治的な主義主張に基づくテロについても今回のテロ等準備罪では犯罪化の対象としていかれるんですかということを聞いております、金田大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 何度も申し上げてまいりましたつもりなんですが、そこのところは、政治的主張に基づくテロ行為も含めて、TOC条約の第五条の考え方として外務省が述べてきたと思います。したがって、私どももそういう思いで成案を検討中であります。

 同時に、これ以上のその解釈についてのお尋ねは、外務省を呼んでお答えを求めていただきたい、このように思っております。

緒方委員 例えば、何でもいいですけれども、ある事項について条約が求めているか否かの解釈は外務大臣の判断だとしましょう。今回も、TOC条約を国内法でどういうふうに施行していくかということについて、そのあり方については外務省と協議だということですが、必ずしも条約が求めていない部分について、法務大臣として、国内法でカバーする部分があるのでしょうか、ないのでしょうか。いかがですか、大臣。

金田国務大臣 条約の解釈は外務省であります。解釈いかんにもよりますが、いずれにしても、条約との整合性を図りつつ法案を検討中であります。(発言する者あり)

浜田委員長 金田法務大臣、再度答弁願います。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 申し上げてきたつもりでありますが、条約につきましては過不足なく担保する方針であるということ、そして具体的な法案の内容は現在検討中であるということを申し上げてきたつもりであります。

緒方委員 金曜日の予算委員会で、先ほども申し上げましたが、安倍内閣総理大臣は、目的は二つですというふうに言っています。一つ目は、条約を批准するためだ、もう一つは、テロに対する穴があればそれは埋めておく必要がありますねということを言っておられまして、プラスアルファの部分があることを示唆しているんだというふうに読めるわけですね。

 けれども、聞いてみたら、TOC条約を過不足なくやるということについては、これはよくわかりました。私が聞いているのは、ここはどういうふうにやるかは外務大臣とよく相談される、それはそれでやられるんだと思いますが、条約が求めている部分を超えて、例えば、先ほどから質疑しているように、純粋に政治上の主義主張に基づくようなテロについても、今回つくっていかれるテロ等準備罪、テロ等準備罪と言っているわけですから、そのテロの定義の中にそういうものも入り、法務省のこれは独自の判断ということになると思いますが、条約を超えた部分をやられるということですかということを聞いています、金田大臣。

金田国務大臣 御理解いただけると思いますが、TOC条約の担保できていない部分というものは、まさにテロ対策の穴となっておる部分であります。総理答弁と矛盾するものでもありません。

緒方委員 今言われたのは、TOC条約の担保、それを超えた部分があって、その部分の担保法をつくる、そこにTOC条約でやる部分とは別の穴があって、それを担保する法律も加わる、つまりプラスアルファがあるということを示唆されたということでよろしいですね、金田大臣。

金田国務大臣 TOC条約で現行法で担保できていない部分を申し上げております。

緒方委員 ということは、もう一度だけ確認させてください、私、質疑時間がそろそろ終わりですので。TOC条約を国内で実施するために国内法を改正して、いろいろな義務を国内法で新しくつくっていかれるわけですが、それを超えて、条約の求めるものを超えて、テロ対策、純粋に条約が求めていないテロ対策の部分を加えることはないというふうに答弁されましたでしょうか、大臣。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 条約との整合性を図りつつ、必要かつ適正な範囲で国内法を整備する方針であります。

緒方委員 私、質疑時間が終わったようでありますので、これで終えさせていただきます。

 今質問した件について、どうも私、よくわからなかったんですが、統一見解を提出いただくように求めたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

緒方委員 はい。よろしくお願いします。

 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 これにて緒方君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 私も共謀罪について主に質問をさせていただきたいと思うんですが、その前に、皆さんにお配りしている資料の一枚目をごらんになっていただきたいんです。

 集団的自衛権審議の想定問答について、内閣法制局が一時期開示を拒んでいた、国会でも開示を拒んでいたということなんですが、情報公開法に基づき、情報公開・個人情報保護審査会の方で、内閣法制局の解釈は間違っているという指摘を受けて一転、開示をしたわけです。

 この件について、この記事にも書いているとおり、法の番人である内閣法制局がみずから法の解釈を誤っている、しかも、問題は、国民の知る権利を制限するような、国民にとって不都合な解釈をして間違っているということで、私は法制局長官の責任は極めて重大だと考えます。

 長官の責任、どう考えていらっしゃるのか、答弁をお願いします。

横畠政府特別補佐人 情報公開法におきましては、行政機関が保有する行政文書に関して開示請求があったときは、原則として開示すべきものとしております。

 内閣法制局としては、今御指摘の文書、資料につきまして、平成二十八年二月に開示請求がなされた時点においては、職員が組織的に用いるものとして保有している文書には当たらないと考え、行政文書としては不存在とし、不開示決定をしたものでございます。

 その後、開示請求者から当該不開示決定に対する異議申し立てがなされたことから、当局においては情報公開法に基づき情報公開・個人情報保護審査会に対し諮問を行い、本年一月十七日、本件文書は行政文書に当たるとして開示すべきとの答申を受けたことから、行政文書性の認識を改め、開示決定をしたところでございます。

 本件文書は、国会答弁資料の原案というものでございます。国会答弁資料といいますのは、答弁者が国会において答弁するに際し、手元に置いて読み上げる資料でございます。その作成途中の案というものは保存しておく必要性が乏しいことから、本件文書につきましては、当局において、平成二十六年七月の時点において既に不要として廃棄することとし、実際に紙の文書は廃棄していたものでございます。

 しかし、平成二十八年二月の開示請求の時点におきまして、当局のサーバー内のフォルダに消去を失念して残存していた電子データがございました。これについては、紙文書と同様、行政文書性がないと考えたものでございます。

 今回の答申は、当該電子データについて、用いられることがなくなったことにより直ちに廃棄またはこれに準ずるような状況が生じたとは言えず、消去されないまま残存していた以上、なお行政文書性を失わないとの判断が示されたものであり、この点で事実認識において相違があったところでございますが、情報公開法において情報公開・個人情報保護審査会への諮問の手続が設けられている趣旨に鑑み、答申を踏まえ、行政文書性の認識を改め、本件文書を開示したということでございます。

階委員 言いわけがるる述べられましたけれども、解釈を、これまでとっていたものを変えたということはお認めになったわけですね。

 解釈を変更したならば、今後は、こういう場で開示を求めた立法過程での文書、こうしたものは、疑わしきはむしろ開示する、こういう姿勢で臨むべきだと思っています。疑義があるものは積極的に開示するという姿勢で臨むべきだと思いますが、いかがでしょうか。

横畠政府特別補佐人 情報公開法の趣旨に従いまして、保有している行政文書につきましては開示してまいります。

階委員 では、積極的に開示いただけるという前提で、以下、質問してまいります。

 まず、今問題になっている共謀罪、今では名前が少し変わっていますけれども、共謀罪制定に当たって問題となり得る憲法上の論点について、簡潔に御説明いただけますか、長官。

横畠政府特別補佐人 共謀罪という御指摘でございましたけれども、現在検討中の法案は、テロ等準備罪と称してございます。(階委員「どっちでもいい」と呼ぶ)どちらでもいいという御指摘でございますが、一般に、刑罰法令の憲法適合性に関しましては処罰の必要性、構成要件の明確性、罪刑の均衡といった点が特に問題となり、これらの共謀罪、かつての共謀罪にせよ、今般のテロ等準備罪にせよ、同様、処罰の必要性、構成要件の明確性、刑罰との均衡といった点が憲法上問題になるというふうに認識しております。

階委員 構成要件の明確性というところが特に私も気になるところでありますので、これからるる質問してまいりたいと思うんですが、その前に長官には、過去の共謀罪時代に政府案がつくられているわけですけれども、共謀罪の政府案について合憲判断に至った理由について、その参考となる資料を出していただきたいんですが、いかがですか。

横畠政府特別補佐人 いわゆる共謀罪としては、平成十五年、平成十六年、それと平成十七年の三回にわたり、政府として法案を提出させていただいております。

 いずれも内閣法制局におきまして法案の審査をしてございまして、その審査に係る記録、審査録と称しておりますけれども、それは全て保存してございます。(階委員「開示してください」と呼ぶ)もちろん、開示請求がございますれば、全て開示いたします。

 その中で、特に憲法についての判断をどのようにしたのかというお尋ねでございますけれども、先ほども申し上げましたようにこれは刑罰法令の審査でございますので、先ほど申し上げたような、処罰の必要性、構成要件の明確性、罪刑の均衡性といった点を主に審査したということでございます。

階委員 今、請求すれば開示いただけるということでしたので、この場で請求します。

 出してください。よろしいですね、長官。

横畠政府特別補佐人 情報公開法に基づく請求ではなくて、国会からの要求ということでありますれば、委員会の御指示に従います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

階委員 よろしくお願いします。

 それともう一点、今回のいわゆるテロ等準備罪についても、もう法務省とか関係の役所といろいろな協議をされていると思うんですが、これについての内閣法制局の関与はどのようになっているんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 現時点におきましては、法務省及び外務省におきまして法案の内容の詰めを行っているところであると承知しております。

 法制局といたしましても、法案審査の準備として、現状についての報告というか説明を逐次受けてはおります。

階委員 では、その説明を受けて法制局の見解も何らか示されていると思うんですが、そういった資料についてもこの委員会に提出していただけませんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 基本的には、法務省及び外務省において検討されていることであり、また途上の案件でございますので、現在私どもが持っております文書について開示することはいたしません。

階委員 途上の文書は開示できないということなんですが、ちょっと時間の関係で、また後日、この点については詰めさせていただきます。

 冒頭に申し上げましたとおり、法制局長官の解釈が従来は間違っていたということで今回問題になっているわけでして、疑わしきは開示するという姿勢の転換が求められているということだと思います。積極的に開示をお願いしたいと思っています。

 そこで、共謀罪について質問をしてまいりたいと思います。

 先ほど長官の方からも、憲法上は、処罰の必要性、構成要件の明確性、罪刑の均衡、主にこの三点が問題になるということでした。

 ところで、先日、私の質問に対し、金田大臣は、テロ等準備罪について、共謀罪、準備罪、この両者とも違うというふうに答えました。そしてまた、過去の判例で示された予備罪の定義、すなわち、当該犯罪の種類、規模等に照らし、犯罪実現の客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合という定義より、もっと手前で処罰することを認めました。

 つまり、先日の答弁を要すれば、この共謀罪、陰謀罪というカテゴリーと予備罪、準備罪というカテゴリーのその間に新しい犯罪類型を設けるという帰結になるかと思いますが、この点、いかがでしょうか、法務大臣。

    〔委員長退席、武藤(容)委員長代理着席〕

金田国務大臣 テロ等準備罪につきましては、かつての国会審議等の場における御批判あるいは不安、懸念といったものを踏まえまして、合意に加えて実行準備行為が行われたときに処罰の対象とすることを現在検討中であります。(階委員「新しい犯罪類型を認めるかどうかという質問ですよ。全然答えになっていないですよ。答えてください、ちゃんと」と呼ぶ)

武藤(容)委員長代理 金田法務大臣、いいですか。

金田国務大臣 法的な性質につきましては、成案を得て御説明をさせていただきます。

階委員 これは根本的な話ですよ。我が国の刑法典上今まで存在しなかった、新しい犯罪類型をつくるかのような答弁を前回されていました。だから確認しているんですよ。

 これは、法務大臣として、歴史に残る偉業か悪行か知りませんけれども、それをやろうとしているんじゃないですか。だったら、ちゃんと、新しい犯罪類型をつくるのかどうか明確に答えてくださいよ。前回の答弁からすると、新しい犯罪類型だということを示唆されていましたよ。違うのかどうか、イエスかノーかでお答えください。

金田国務大臣 テロ等準備罪につきまして、かつての国会審議等の場における批判と懸念、そういったものを踏まえまして、合意に加えて実行準備行為が行われたときに処罰の対象とすることを現在検討中でございまして、その法的性質につきましては成案を得た段階で御説明をさせていただきます。

階委員 答えになっていませんよ。新しい犯罪類型かどうかというのを聞いているんです。

 というのも、この準備行為というものがどういう意味を持つのかということなんですよ。

 新しい犯罪類型じゃなくて、もし既存の共謀罪、陰謀罪というものと同じ類型なんだということであれば、準備行為というのは単なる処罰条件。構成要件とは離れた話になります。ところで、予備罪、準備罪ということにもし当たるとなれば、この準備行為というのはまさに構成要件に該当する行為になるわけです。

 だから、今後の議論に大きくかかわるところなので、もし新しい犯罪類型でないとすれば、どっちに当たるのかということを明確にしていただきたいし、前回の答弁は、予備罪、準備罪の手前で処罰するんだ、共謀罪とも違うんだということを言っていたじゃないですか。それで、どっちでもないと。どっちでもないと言っていたんですよ、前回。違うじゃないですか。はっきり言ってください。どっちなんですか、新しい類型を設けるのかどうか。

金田国務大臣 ただいま実行準備行為について御質問がありましたので、お答えをします。

 現在、合意に加えて実行準備行為が行われたときに処罰の対象とすることを検討中でありまして、実行準備行為が法令上の概念ではない処罰条件に当たるかどうかをお示しすることは困難であります。成案を得た段階で条文に基づいて説明をさせていただきます。

階委員 前回と答弁が食い違っていると思いますよ。予備罪とも準備罪とも、共謀罪、陰謀罪とも違うということを前回おっしゃっていましたよね。では、それは撤回するということですか。違うと明確におっしゃっていたんですよ。撤回ですか。撤回してください、撤回するなら撤回するで。そして議論しましょう。どうなんですか。

金田国務大臣 申し上げましたとおり、現在、合意に加えて実行準備行為が行われたときに処罰の対象とすることを検討中でありまして、実行準備行為が法令上の概念ではない処罰条件に当たるかをお示しすることは困難であります。成案を得た段階で条文に基づいて説明を行います。(発言する者あり)

    〔武藤(容)委員長代理退席、委員長着席〕

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 では、速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 テロ等準備罪の具体的内容につきましては現在検討中であります。法案として提出した際に詳細に御説明をするものでありますが、基本的な考え方を申し上げますと、犯罪の主体を一定の重要な犯罪を犯すことを目的とする集団に限定し、準備行為があって初めて処罰の対象とすることなどを検討しているところであります。以上のような基本的な考え方に立って、以上について成案を得てお答えをしたい、このように考えております。

 そのような特質があるという意味において、前回もその趣旨で答弁をしたものであります。

階委員 では、具体的に前回の答弁を読み上げますね。

 金田国務大臣は、共謀罪それから準備罪、この両者とも違うということをまずおっしゃいました。そして、私の方から、予備罪の定義よりはもっと手前で処罰する、こういうことであるということは間違いないんですかという問いに対して、委員がただいま言われたことは私もそのように考えております、このように言われました。明確に言われました。

 この二つとも違うと言った上で、予備罪の定義よりはもっと手前で処罰すると言いました。これはよろしいですか、そういうことで。撤回されるなら撤回されるで、明確におっしゃってください。

金田国務大臣 前回の答弁をお読みになったとすれば、その点はそれはそれで結構でございますが……(発言する者あり)そのとおりでありますが、ただ、現在検討中であることを重ねて申し上げておきます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 実行準備行為が必要という点で、そのような行為が不要の共謀罪とは違うという意味で申し上げたものでございます。

階委員 それから、予備罪とも違うということもおっしゃっているわけだから、だから私はこの間にあるんじゃないですかと言っているわけですよ。それでいいんですよね。新しい犯罪類型だということでいいんですかね。それは、前回のおっしゃったことを論理的に帰結すればそういうことになると思いますよ。違いますか。

金田国務大臣 御質問がありましたので、その点については、どのような犯罪類型に分類されるかというものは、条文に基づいて判断されるべきものと思います。したがって、条文に基づいて説明をしたい、このように考えています。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 実行準備行為が必要という点で、そのような行為が不要の共謀罪とは違うという趣旨で申し上げたものであります。

階委員 でも、予備罪とも違うということもおっしゃっていました。

 いいですか、では、類型という言葉は私もあえて使いませんよ。要するに、前回言った、共謀罪それから準備罪、この両者とも違うということであって、もちろん、まさかこっちの方、未遂とか既遂とかの方を考えているわけではないと思いますよ。だから、私が問題にしたいのは、この間にある行為を処罰する趣旨なんだということを大臣が言われていると思ったんですけれども。

 類型という言葉はあえて使いませんけれども、これぐらいはもう、御自身の言葉ですから、どういう意図でお話しされたかはよく御存じなんでしょうから、そういうことでいいんですよね。この間を狙っているのが今回のテロ等準備罪だということでよろしいですか。

金田国務大臣 何度も同じことを申し上げるようにお受けとめかもしれませんが、具体的な条文に基づいて説明をすべきものであるということをしっかりと申し上げました。(発言する者あり)

浜田委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 準備行為があって処罰できるという点で共謀罪とは違うという点はおわかりいただけると思います。そして予備罪とも異なる。合意に加えて準備行為があって初めて処罰できる、そのような罪を検討している、こういうことになります。

階委員 要するに、この間の繰り返しのようなことを言われたのでこれで了としますが、予備罪とも違う、共謀罪とは違う、だからこそ、この準備行為というのがどういう意味なのか、先ほどの法制局長官の話にもあったように、構成要件の明確性というところで問われると思うんですね。

 そこで、具体的にお聞きしたいと思うんですが、まず、共謀罪との境目の話ですね。共謀罪と今回のテロ等準備罪を分けるのは実行準備行為があるかどうかだということなんですが、例えば、今もさんざんやられていますけれども、大臣とその仲間の官僚の人たちで、仮にですけれども、共謀して殺人罪の計画を立てたとしましょう。仮にですよ、仮に。架空の事例ですよ。(発言する者あり)架空の事例だから、ありでしょう。それで、計画を立てた段階では共謀だと思いますよ。

 それで、その官僚の人たちが計画を書いた紙を大臣に渡した、仮にですよ、こうした紙を渡して大臣が受け取った、その行為は実行準備行為に当たりますかね。具体的なイメージを我々はお聞きしたいんですけれども、いかがですか。

金田国務大臣 ただいまの御質問に答えるといたしますと、やはり、成案を得て条文に基づいて説明をすべきことだ、このように考えております。よろしく。

階委員 いや、だから、それだと準備行為というのが本当に共謀罪と全く違うものかどうかというのはわからないんですね。どこでその準備行為が始まったと評価できるのか。一方で、予備罪の手前で処罰するとも言っていますから、予備罪の手前で処罰するということは、さじかげんによっては共謀罪と限りなく近づけることもできる。

 実質的には共謀罪と同じように処罰することもできるという話かもしれないし、準備行為というのを限りなく予備罪に近づけるということもできると思うんですね。だから、この共謀罪とテロ等準備罪の境目がどうなっているのか、これは準備行為の考え方次第だと思っているんですけれども。

 今申し上げた事例、殺人罪というのが適当でなければ偽証罪でもいいですよ。偽証罪はまさに今回の四年以上の自由刑に当たりますから、これはもう現実的にあり得る行為だと思います。まあ、罪は何でもいいんですけれども、計画を立てたプラス何をすれば実行準備行為に当たるのか。

 例えば計画を書面化して、その書面を実行担当者に渡す、この渡して受け取った行為は実行準備行為に当たるのかということをお尋ねしています。これぐらいは当然考えていらっしゃると思うので、お答えいただけますか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

金田国務大臣 階委員の御質問にお答えをいたします。

 実行準備行為の意味をお尋ねだ、こういうふうに考えております。

 その御質問に対してなんですが、テロ等準備罪の具体的な内容につきましては現在検討中でありますし、法案として提出をした際に詳細に御説明をするものであります。したがって、具体的な成文案の作成に当たりましては処罰の対象が十分明確となるようにしていきたい、このように考えております。

階委員 私は、法案を出すタイミングが会期末ぎりぎりになって、この間のカジノ法案みたいに、いきなり審議時間が五時間ちょっとで強行採決されるような、そういう事態を危惧しているんですよ。だから、今から基本的なところは詰めなくちゃいけないと思っているんですね。

 石原大臣もきょうお見えなんですが、時間が足りなくて質問が回らないかもしれないので、この場でちょっとだけお尋ねしたいんですが、以前にも、当時の共謀罪が強行採決されそうになったときの法務委員会の委員長が石原大臣、当時は委員長でした。私は英断だったと思うんですが、強行採決を数の力でいえば当然できたにもかかわらず、強行採決しなかった。だから、私は今回そういう委員長であればいいと思うんですけれども、必ずしもそうは限らないのが昨年の臨時国会、いろいろな案件が強行採決された。

 石原大臣にコメントをいただきたいんですが、当時はどうして強行採決に至らなかったのかということを御説明いただけますか。

石原国務大臣 所掌外でございますので一般論としてお話をさせていただくならば、委員会で議論をして、採決をするに至らない状態であると判断をさせていただきましたので、採決を見送ったわけでございます。

階委員 採決に至らない状態というのは、もうちょっと具体的に御説明いただいてもいいですか。

石原国務大臣 所掌外でありますのでその当時のことの事実としてあったことだけしかお話しする立場にないと思うんですが、議場が外部の方も含めて騒然となりまして、私は暴漢に襲われるというような事態も実はございまして、このような状況の中で冷静な議論はできない、そんなようなことを記憶しているところでございます。

階委員 そういう身の危険を感じるようなことはあってはならないと思うんですけれども、やはり当時も、刑罰法規の明確性というものに反するのではないかということで国会では議論がされていました。

 このままいくと、やはり今回の実行準備行為というのも、不明確さが残るまま法案化がされてはならないと思うんですね。だから、私は今の段階からきっちり基本的なことは聞いているんですよ。基本的なことを聞いていますよ。共謀罪と違う、予備罪とも違う、これを明言されたので、今、共謀罪との違い、分かれ目はどこかということを聞きました。

 もう一点、予備罪の手前で処罰するということもお話しになりましたので、予備罪との境目についてもお聞きします。

 昔、和歌山毒入りカレー事件というのがありましたけれども、あれは、毒入りカレーでたくさんの方が亡くなった、本当に痛ましい凶悪な事件でした。

 あのときに、これも架空の話ですけれども、共謀して、誰か一人がカレーをつくった、そしてカレーに毒を入れた。カレーに毒を入れた段階では、少なくとも予備罪は成立すると思うんですよね。ただ、その前、共謀して計画に基づいてカレーをつくっている段階、その段階では予備なのか、実行準備行為なのか、それともただの共謀なのか。この辺はどうでしょうか、大臣。

金田国務大臣 ただいまの質問に対しましては、成案を得て具体的条文に基づいて説明をすべきものと考えております。

階委員 結局、予備罪とも違う、共謀罪とも違うといっても、ではどこが違うんだと聞いても明確に答えられないわけですよ。これからと言われても、基本的なことは今から明らかにしておかないと、また今までと同じように、強行採決するかしないかという話になってくるんですよ。だから、我々は……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

階委員 基本的なところは今の段階で明確にすべきだということを申し上げているんです。今の話は基本的なことだと思いますよ。

 四十二年の東京高裁の裁判例、前回、私も少し取り上げました。この判旨の中で、傍論ですけれども、傍論の中で、殺人予備で、殺人するための薬か何かをつくるのに、毒薬を用意すれば予備罪だけれども、毒薬とまぜる砂糖を用意すれば予備にならない、こういうようなくだりがあるんですね。

 私は、それにちょっとヒントを得て、今言った毒入りカレー事件のようなケース、毒を入れたカレーをつくれば予備だけれども、毒を入れる前のカレーというのは予備に当たらないんじゃないかというふうに思うんですね。

 かといって、これは全く共謀もあるわけで、共謀も既にあるという前提でお尋ねしていますけれども、共謀もある中でカレーをつくった、政府のこれまでの答弁などをしんしゃくするとこれは準備行為に当たるはずではないか、そういうふうに考えるんですけれども、この具体例に即して考えた場合、今言ったカレーのケース、どのようになりますでしょうか。

金田国務大臣 お答えします。

 成案を得て具体的条文に基づいて説明すべきものと考えております。

階委員 全く誠意が感じられないですね。

 では、成案が出た段階で、今の問い、二つの問いをしました。共謀があって、計画があって、その書面を実行者に渡したケース。毒入りカレーをつくる、そして人を殺すという計画があって、まずカレーだけをつくったケース。これが実行準備行為に当たるのかどうか、これは法案ができた段階で明確に説明できるということを確認したいと思うんですが、それでよろしいですか。ちゃんとそのときに答弁していただけますか。

金田国務大臣 ただいまの御質問にお答えしますが、犯罪の成否は個別具体的な事実関係に基づいて判断されるべきものであります。一概に申し上げることはできません。

階委員 実行準備行為の概念を聞いているわけですよ、個別具体的な話じゃなくて。実行準備行為の概念を明らかにせず、また具体的な実行準備行為に当たるかどうかも明らかにしないから、それを法案をつくった段階では明らかにするんですかということを聞いているんですよ。どうなんですか。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたように、成案を得て具体的条文に基づいて説明すべきものと考えております。

階委員 全く答弁がずれていますけれども、どっちなんですか。説明はするということでよろしいんですね。うなずいていただければいいんですけれども。どうなんですか。説明できるということでいいですか。

金田国務大臣 いかなることが処罰されるのか、これを一般的に御説明することは成案を得た段階では可能である、このように考えております。

階委員 それでは、実行準備行為というのは、予備行為、要するに、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合という確定した裁判例がありますよね、ですから、その手前で処罰するというわけです。つまり、実行準備行為を単体で見た場合は、これは無色透明の行為。カレーをつくる行為がそれに当たるかどうかは今は明確にお答えになりませんでしたけれども、危険性のない行為も実行準備行為に当たるということで、予備行為の手前で処罰するということになると思うんですね。

 となると、その行為だけを見ても、これが処罰に値するのかどうかはわからないと思うんですよ。だから、その前の共謀の段階から捜査を始めないとわからないと思うんです。

 前回、山尾委員への答弁で政府統一見解が出ました。共謀の段階では逮捕できません、実行準備行為が始まらないと逮捕できませんという話でしたけれども、逮捕というのは強制処分です。捜査の中には強制捜査と任意捜査がありまして、任意捜査というものも実行準備行為が始まらないとできないのかどうか、それとも共謀段階からできるのかどうか。任意捜査が可能かどうかについて、お答えいただきたいと思います。

浜田委員長 金田法務大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

金田国務大臣 ただいまの御質問にお答えします。

 テロ等準備罪につきましては、重大な犯罪の実行の合意に加えて実行準備行為が行われた場合に処罰されるものであるということを検討中でございます。

 お尋ねのような点につきましては、具体的な事情にもよるものと考えられますので、法案の成案を得た後、具体的な罰則の内容に基づいて十分に説明をしてまいる所存であります。

 以上であります。

階委員 では、最後にもう一回お尋ねしますよ。

 この間は、逮捕できないということはきっぱりお答えになりました。法案ができる前からそこはお答えになっている。なのに、任意捜査ができるかできないかは今の段階では答弁できない。これはなぜですか。お答えください。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 まずは、捜査の中で最も国民の権利の制約の度合いの強い強制捜査についての方向性をお示ししておりました。現在、その方向性に基づいて、具体的な罰則の内容について検討中であります。

 ただいまの御質問の点については、法案の成案を得た段階で十分に御説明を申し上げる所存であります。

階委員 やはり予想したとおり、任意捜査の可能性は否定していないわけですよ。任意捜査ができるということは、捜査というのは犯罪があると思料したときにできる、これが刑訴法の条文ですよ。犯罪があると思料しなければ捜査はできないんです。つまり、共謀の段階で犯罪があって、そして初めて捜査ができるわけで、共謀の段階で犯罪があるというふうに確定しなければ捜査には行かないんですよ。

 だから、私たちはやはりこの中身というのは共謀罪ではないかと。もし犯罪が共謀でなくて準備行為を始めて初めて成立するというのであれば、捜査は共謀の段階ではできない、任意捜査であってもできない。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

階委員 これが正しい帰結ですよ。これを今明言しないということは、やはり実態は共謀罪の可能性が高いということを申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

浜田委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 私の方からは、法務大臣の方で出されてきた、今回の共謀罪について、現行法では穴になっているから新しい共謀罪で埋める必要があるというふうに示された三事例、その三つ目の事例について、きょうはまず議論をしたいと思います。

 この三つ目の事例ですけれども、サイバーテロですね。テロ組織の複数のクラッカーが分担してウイルスプログラムを開発し、そのウイルスを用いて全国各地の電力会社、ガス会社、水道会社等の電子制御システムを一斉に誤作動させ、大都市の重要インフラを麻痺させてパニックに陥らせることを計画した上、例えば、それらのクラッカーがコンピューターウイルスの開発を始めた場合、現行法では対応できないので共謀罪が必要だ、こういうことでありました。本当にそうなんでしょうか。

 まず、お伺いをいたします。

 大臣、この事例を出されたということは、サイバーテロを共謀した集団がウイルスの開発を始めたときからやはり処罰をする必要がある、丁寧に言えば、このウイルスを使ったプログラムができちゃってからでは遅いんだ、開発段階から対応する必要があるんだ、そういう見解だということでこれはよろしいんですよね。

金田国務大臣 ただいま委員から御質問ございましたサイバーテロの事案でございます。

 御質問につきましては、必要な場合もあるものと考えております。

山尾委員 では、これは開発がスタートした段階から対応しなきゃいけない、これが法務省としての判断だ、現時点でそういうことでありました。

 そして、これは、現行法、刑法の百六十八の二、不正指令電磁的記録に関する罪、ウイルス作成、供用罪というふうにも言われますけれども、この法文の問題になってまいります。

 そして、この刑法百六十八の二、ウイルス作成等罪ですけれども、これは、先ほど何か自民党の側から声が出ていましたけれども、サイバー条約の担保法として、民主党政権のときに国内法を成立させ、そしてしっかりとこのサイバー条約を批准した、こういう経過がございます。

 逆に言うと、この法律は自民党政権下ではずっと共謀罪と抱き合わせで審議をされ、必要な法律で、条約も早く批准をする必要があるのに、共謀罪と抱き合わせであったからこそ、必要なものが一向に成立をしてこなかったものであります。

 民主党政権のときに、これは共謀罪と抱き合わせでやるべきものではない、しかし、早くサイバーテロに対してしっかりと国内法も担保しなければならない、そしてサイバーテロ条約もしっかりと批准をしなければならない、切り出して、その二つの要請にちゃんと応えよう、そういうことで民主党政権のときに国内法を成立させ、そして条約を批准した、こういうことをまず申し上げておきたいと思います。

 その上でお伺いをしたいんですけれども、確かに、このとき成立させたこの法律、作成には未遂がありません、既遂だけです。したがって、この三番目の事案で、ウイルスの開発をスタートした段階では、これは未遂であって既遂にはなっておりませんので、確かに今この法律では対応はできません。

 しかし、法務大臣、お伺いをします。

 この法律も、後で申し上げますけれども、それなりの考え方があって、そういうつくり方をしたんですね。そして、自民党もこの法律には賛成をしていただいています。作成段階では既遂から、その作成したものが完成をして、それを提供するような場合は未遂から処罰をする、当然、それが適切だということで、当時、二〇一一年、自民党の皆さんも賛成をしてくださったんでしょう。

 しかし、今大臣は、いやいや、ウイルスの開発の段階から処罰をする必要があるんだとおっしゃいました。どういう理由で考えが変わったのですか。

金田国務大臣 御質問に対しまして、一般人によるウイルス作成途中の行為について、一般を処罰すべきではないという意味では、ないです。あくまでも、組織的犯罪集団によるテロ等の計画がある場合に処罰する必要性があるということであります。

山尾委員 全く質問に答えていただいていないのですけれども、これは開発のスタート段階から処罰をする必要があるというふうに、今、法務省として、法務大臣としてお考えなわけですよね。つまり、ウイルス作成の既遂では遅い、未遂から罰する必要がある、こういうことでありました。

 では、お伺いしますね。このもとになっているサイバー条約、この条約では、ウイルス作成の未遂から罪とすることまで求められているかどうか、いかがですか。

金田国務大臣 条約の解釈の問題につきましては、ぜひ外務省にお尋ねいただきたいと思います。

山尾委員 答えていただきたいと思います。今、葉梨理事が一生懸命レクをされていますけれども。国内法で、作成の未遂は私たちは制定をしていません。それでもこの条約は批准できています。そこからお考えになっていただいてもいいのかと思いますけれども、もう一度聞きますね。

 このサイバー条約は、ウイルス作成の未遂までそれぞれの、各国の国内法で処罰することを求めていますか、いませんか、御存じありませんか。どちらですか。

金田国務大臣 委員の御質問についてなんですが、具体的な通告もいただいておりませんし、外務省の所管に属することでございますので、差し控えさせていただきます。

山尾委員 法務大臣、大臣が出されてきた具体的な事案について私は質問をいたしております。

 国内法でいくと、このウイルス作成のスタート段階、これは私たちの国内法は処罰の対象としていないんですよ。では、その背景となっているサイバー条約は、そもそも処罰の対象とすべきだ、こういうふうに言っているんですか、言っていないんですかと。

 この場で考えていただいてもわかると思うんですけれども、条約を批准しているわけですね、未遂がなくても。未遂がなくても条約を批准しているんですよ。考えていただければわかると思います。御存じないなら、御存じないと言っていただければ結構です。もう一度答弁を求めます。

金田国務大臣 繰り返しになりますが、具体的な通告をいただいておりませんし、外務省の所管に属することでございますから、差し控えさせていただきます。(山尾委員「知らないなら、知らないと」と呼ぶ)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 未遂罪がない形で条約を政府として結んでいるという状況に鑑みて、私の個人的な意見を求められるのであれば、その批准がされている以上、私としてはそれで、未遂がないということも含めて、それが整合性がとれているんだというふうに思いますが、具体的な通告もいただかないということと、外務省所管の事項に属することだということで、差し控えたいと思う気持ちは御理解をいただきたいと思います。

山尾委員 個人的な意見は求めていないんですね。

 私が申し上げているのは、この三つ目の事案ですよ。サイバーテロが計画されて、ウイルスの開発がスタートした時点からやはり対応する必要があるんだということを、法務大臣みずからが出してこられたわけですね。

 そういう判断をされたのなら、当然、今の法律、見ていらっしゃいますよね、今の法律にはなぜか作成は既遂しかない、未遂は処罰の対象としていない、なぜだろうとまず考えますよね。そうしたら、その根拠になっているサイバー条約を見ますよね。確かにサイバー条約では、作成の既遂からの処罰はあれだけれども、作成の未遂からは求めていないんだな、したがって、我が国の国内法も未遂はやっていないんだなと。

 そこまでは当然、勉強してというか把握をして、理解をして、それでもなお、条約もそこまで求めていない、そして今の国内法で、自民党が賛成してできた法律もそこまで求めていない、なぜそのときは求めなかったんだろうということまでしっかりと検討して、なお必要だからということで出してこられたんじゃないんですか。そういう検討をされていないということが今明らかになって、私はびっくりしているんですよ。

 お伺いしますね。

 それでは、なぜこの当時、国内法で、ウイルスの作成の未遂は設けずに既遂からということにしたんでしょうか。国内法の問題です。法務大臣、お伺いします。

金田国務大臣 不正指令電磁的記録作成罪に、ウイルス作成罪でございますが、未遂罪を設けることにつきましては、その場合に、不正なプログラムの開発を始めた時点での実行の着手が認められる、そして未遂罪が成立するというほかなく、ウイルス作成行為一般に処罰範囲が不当に広がることになるという問題が一方であるというふうに受けとめております。

山尾委員 そうなんですよ。不当に処罰範囲が広がる危険があるから、その際は自民党の皆さんの賛成もいただいて未遂はつくらなかったんですね。

 では、何で今回、不当に処罰範囲が広がる可能性があるのに、対応したいと言っているんですか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

金田国務大臣 私たちが現在検討しておりますテロ等準備罪というのは、ただいまの私が申し上げたことに対して、厳格な組織的犯罪集団の要件や実行準備行為を必要とすることによって、重大な結果が発生する危険性が高く、事前に抑止する必要性が高いものに限定をしていく、一般の方々が処罰の対象とならないことを確保しつつ、十分なテロ対策を行うということが可能になるのではないか、このように考えているわけであります。

山尾委員 全く答えていないんですね。

 作成、これは条約になぜ求められなかったかということとも関係すると思いますけれども、結局、開発をスタートするときには、ウイルスをつくろうとしているのか、それに対抗するための例えばウイルスバスターのプログラムをつくろうとしているのか、にわかには判断しがたいわけです。

 こういう段階から、プログラマーがコンピューターに向かった瞬間から未遂罪の対象となるというのは、ウイルスバスターのプログラマーの方も心配ですよね。そういうものをつくってしっかりテロ対策に貢献しようとしている会社だって心配ですよね、ちゅうちょするんじゃないか。サイバーテロを防止するための国内法が、むしろ、サイバーテロに立ち向かうためのそういったバスターのプログラムをつくるような人たちをためらわせてしまっては本末転倒になってしまう、そういうような懸念があるから、大臣、作成段階では未遂をつくらなかったということになっているわけです。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

山尾委員 それで、大臣、お伺いをしますけれども、開発スタートの段階から、それでもぜひとも処罰をする必要があるんだ、こういうことをおっしゃるなら、未遂罪をつくればいいんじゃないですか。刑法のウイルス作成等罪に、しっかりと要件を絞って未遂罪を入れればいいじゃないですか。なぜそれをやらないんですか。

金田国務大臣 ウイルス作成罪に未遂罪を設けることにつきましては、その場合、不正なプログラムの開発を始めた時点で実行の着手が認められ、未遂罪が成立するというほかはなく、ウイルス作成行為一般に処罰範囲が不当に広がることになるという問題があろうかと思います。

 これに対して、テロ等準備罪は、厳格な組織的犯罪集団の要件や実行準備行為を必要とすることによって、重大な結果が発生する危険性が高く、事前に抑止する必要性が高いものに限定をしておりまして、一般の方々が処罰の対象とならないことを確保しつつ、十分なテロ対策を行うことが可能である、このように考える次第であります。

山尾委員 処罰範囲が不当に拡大するのを防ぐために個別の法律の改正を考えるのではなくて、六百だか、三百だか、百五十だか知りませんけれども、包括的な共謀罪をつくった方が処罰範囲の拡大を防げるというのは、私には全く納得ができないんですね。そもそも、個別の穴があるというなら、まさにこういった事案をピンポイントで規制するための個別の法律にしっかりと制約をかけて、必要なところを対応するべきではありませんか。

 そして、未遂で足りるものを、なぜそれよりもさらに二段階手前の共謀から罪の対象にする必要があるんですか。未遂で対応できるものをなぜ二段階も手前の共謀で処罰する必要があるんですか。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 個別の犯罪ごとに検討をしていくという御意見でございますが、テロ等準備罪の対象となります罪を個々の犯罪ごとに検討するのと同じことではないかと思います。

 個別に設ける趣旨が、組織犯罪の危険性に着目をし、組織的に行うことの合意を処罰するというのであれば、現在政府で検討しているテロ等準備罪と基本的な方向性は変わらないのではないか、このように考えます。

山尾委員 今の答弁、意味が全く不明なんですけれども、もう一度質問します。

 三事例、穴になっている、ウイルスの作成の開発段階から処罰をする必要がある、こういうふうにおっしゃっておられます。そうであれば、未遂で足りるんです。大臣自身がおっしゃったんです、ウイルスの作成、開発のスタートは実行行為であると。つまり、実行行為の着手に当たると大臣が認めたんです。実行行為の着手に当たるのであれば、これは未遂なんです。未遂で足りるんです。

 未遂で足りる事案を、なぜ二段階も手前の共謀で対応する必要があるんですか。

金田国務大臣 あくまでも、テロ等の計画があった場合には処罰の必要性があるということであります。その前提なしに、ただ単にウイルスの開発を始めた段階で一律に処罰する必要がある、このようには考えておりません。

山尾委員 私が申し上げているのは、だったら、個別の法律の未遂罪を検討する際に、今大臣の頭の中にある絞り込みの要件を入れたらいいじゃないですか。なぜそれでは対応できないんですか。

金田国務大臣 先ほど申し上げたんですが、個別の犯罪ごとに検討するという場合には、テロ等準備罪の対象となる罪を個々の犯罪ごとに検討するのと同じことになる、このように思います。

 個別に設ける趣旨が、組織犯罪の危険性に着目をして、組織的に行うことの合意を処罰するというのであれば、我々が現在検討しているテロ等準備罪と基本的な方向性も変わらない、このように考えております。

山尾委員 基本的に全く違うんですね。私たちは、立法事実に基づいて、個別の法律で対応できない穴があるのであれば、それをしっかり埋める努力は一緒にしていきましょうと。しかし、三事例を見て、先回の質問で、ハイジャックテロの事件、現行法でいけると私、論証いたしました。サリン等の事件、これについても、政令事項であるということを申し上げました。そして三つ目の事案、この事案についても、個別の法律で足りないところがあるんだったらそれを検討しましょう、こういう話をしております。

 その私たちの基本的な考え方と、包括的に、数字は出しませんね、六百なのか、三百なのか、百五十なのかわかりませんが、包括的な共謀罪で網をかけていくということは、全く基本的な考え方が違います。

 答弁、どうぞ。どこが同じなんですか。

金田国務大臣 ただいまおっしゃられたことを含めて、TOC条約のその趣旨というもの、その考え方というものに即して私たちは考えているつもりであります。

山尾委員 質問に答えていただきたいと思います。

 個々の穴を個別の法律の改正で考えていくという考え方と、何百だかはわかりませんけれども包括的な共謀罪で対応していくという考え方の、どこに共通点があるんですか。

金田国務大臣 毎回申し上げていることで恐縮ですが、成案を得た段階で、どういう絞り方をし、どういう結果になったかをごらんいただいて、しっかりと議論をしていきたい、このように考えております。

山尾委員 お伺いします。

 前回、予算委員会の質疑の中で大臣は、この私たちの考え方、個別の法案として対応していくという考え方、これについて、一回は、個別も含めて検討中だとおっしゃいました。その後、本当ですかという趣旨の私たちの仲間の質問に対して、検討しているとは申し上げていないと答弁を変えました。どちらが正しいんですか。

金田国務大臣 ただいま検討の最中であります。

 そして、先ほどから申し上げておりますが、個別の犯罪ごとに合意罪の要件を検討するという御意見は、テロ等準備罪の対象となる罪を個々の犯罪ごとに検討するのと同じことではないかというふうに思います。

 個別の犯罪ごとに罪の要件を検討するという御意見は、組織犯罪の危険性に着目し、組織的に行うことの罪を処罰するというのであれば、我々と、政府で検討しているテロ等準備罪と基本的な方向性は変わらないのではないか、このように考えておる次第であります。

山尾委員 本当に、検討の俎上に上っているということでよろしいんですね。個別の犯罪ごとに構成要件を個別に検討していく、それを今、検討中の俎上にのっている、そういうことでよろしいんですね。

金田国務大臣 私が申し上げましたのは、対象犯罪のあり方を含めて検討をしている段階というのは、御理解いただけるものと思います。

山尾委員 対象犯罪のあり方というのは何ですか。

金田国務大臣 絞り込みのことを申し上げております。

山尾委員 対象犯罪の数の絞り込みについて今検討中だ、そういう御趣旨ですか。

金田国務大臣 絞り込みも含めてというのがより適切であります。

 ただ、前からも申し上げておりますように、この成案を得るまでは、さまざまな角度から常に検討を重ねて成案を得て、そして国会にお出しするものでありますから、その時点でしっかりと議論を国会の中で、しかも、所管である法務委員会の場で議論をさせていただきたい、このように考える次第であります。

山尾委員 成案を得る前に法務省から出てきた三事例について私は問うているんですよ。法務省が出してきたんですよ。

 この三事例のうちの三事案目について、結局、私、今何度も繰り返し尋ねています。これにはちゃんと対応できる法律がある、それでもどうしても処罰の時期を早めたいんだったら、きちっとそれなりの要件を絞り込んで、そして個別法の改正を検討されたらいいんじゃないかと。

 なぜなら、それは、共謀罪という非常に手前の段階で処罰するよりも、それぞれの自由あるいは人権の制約の度合いがまだかなり緩い方だから。当然ですよね。人権制約の度合いができるだけ弱くて、そしてその対応の穴を埋めることができる、そういう法律を選択するのが法務大臣の責任でしょう。

 だったら、どうして個別法で未遂を絞り込むという形をとらないのか。このことにはっきり何か理由があるなら、お答えください。

金田国務大臣 お示しを申し上げていたその三事例というものは、テロ等準備罪の成案が得られていない段階で、わかりやすくイメージをしていただくためのものでありました。

 そして、今、私どもは、その検討を重ねて、成案を得るべく努力をしている最中であります。

山尾委員 結局、この三事案目について、現行法のウイルス作成等罪、この未遂罪も含めた絞り込みで対応できないんだ、足りないんだ、こういう理由は、今、答弁、逃げましたね。一切お答えになりませんでした。

 結局、一つ目、二つ目、三つ目と、共謀罪じゃないと埋まらない穴は見当たらないんですよ。この包括的な共謀罪をつくらなければならないという必要性は、では一体どこにあるんですか。

 法務大臣、三事例を出されてきました。三事例の穴が塞がったとしたら、この三事例以外にあるんですか、ないんですか、どちらですか。

金田国務大臣 国際協力促進のためのTOC条約を締結する、そういう状況の中で、テロ組織を含む組織犯罪集団の犯罪を未然に防止する、要するに、テロ等準備罪の整備を行うことによりましてテロ組織を含む組織犯罪集団による犯罪を未然に防止する、そして可能になる。

 現行法は、テロ等の未然防止という観点からは不十分であるということであります。共謀、陰謀を処罰できる罪は限られておりますし、予備罪が設けられている罪も存在しますが、客観的に相当の危険性が必要とされておりますし、未然防止という観点からは現状では十分とは言えないということであります。

 ですから、先ほどは、イメージをしていただくためにお出しをしたものであります。それにつきましては、成案が出た段階で法務委員会でしっかりと議論をしてまいりたい、このように考えております。(山尾委員「だめです、質問に答えていない」と呼ぶ)

浜田委員長 答弁、大丈夫ですね。再度答弁。

金田国務大臣 先ほど、わかりやすくイメージしていただくためにお示ししたもの、これはよろしいですね。

 法案がまだ検討段階にある以上、テロ等準備罪の限界事例等を現在はお示しすることを差し控えさせていただきたいと思います。

 そして、お示しをした三事例以外の事例の提出につきましては、理事会で協議中と承知しておるんですが、そうですね。資料要求の中に入っているというふうに今、外からは聞こえました。その判断を待ちたい、このように考えております。

山尾委員 あるけれども出さないのか、ないのか、どちらかということを聞いているんです。

金田国務大臣 理事会でただいま協議中でありますから、その判断を得て、資料については理事会で協議中、だから、それを得て、その判断を得て対応したい、このように思っております。(山尾委員「出すか出さないかじゃないんだ。時計をとめてください」と呼ぶ)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 先ほどからお答えをいたしておりますが、法務省からお示しした三つの事例につきましては、この委員会でわかりやすくイメージをしていただくためにお示ししたものであります。

 法案がまだ検討段階にある以上、テロ等準備罪の限界事例等をお示しすることは、その成案を得た段階で説明を申し上げたい、このように思います。

山尾委員 法務大臣、お伺いします。

 この三事例以外に立法事実はあるんですか、ないんですか。そして、この三事例は、まさかと思いますけれども、立法事実ですよね。立法事実じゃないんですか、立法事実なんですか。

 済みません、二点お伺いします。

 この三事例は立法事実なのかそうでないのか。そして、この三事例以外に、出すか出さないかは別として、あるのかないのか。この二点、明確にお答えください。

浜田委員長 金田法務大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

金田国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、検討の方向性、少しでもわかりやすく御理解していただくためのイメージでお出しをしております。

 そして、成案を得た段階できっちり説明をしたいと。(山尾委員「だめだ、そんなの。立法事実かどうかも答えていない。二つ。立法事実じゃなかったら大変なことですよ」と呼ぶ)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 現行法は、テロ等の未然防止という観点からは不十分であります。共謀、陰謀を処罰できる罪、限られております。そして、予備罪が設けられている罪も存在をいたしますが、客観的に相当の危険性が必要とされておりますし、未然防止という観点からは、現状では十分とは言えません。

 そして、テロ組織によるテロ行為は、一たび実行されると取り返しがつかない結果が生じるため、計画発覚後はできるだけ早く検挙すべきでありますが、現行法の中だけでは不十分であるということでございます。

 そして、ただいまの三つの事例に加えて出すようにというお話ですが、成案を得た段階でしっかりと対応をしていきます。

 以上が私の答弁であります。

浜田委員長 時間が来ておりますので、山尾君……(発言する者あり)

 速記を起こしてください。ああ、とまっていないね。ごめんなさい。

 時間が来ておりますので……(山尾委員「委員長、とまっていると思われていたんなら、とめてください」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 どのような行為が具体的に現行法では処罰できず、検討中の法案で処罰し得るかというものについては、成案を得てしっかりと御説明をしたい、このように考えております。成案がなければ適切な説明は困難である、このように考えております。

山尾委員 法務大臣、順番がおかしいですよ。立法事実のあるやなしやというのは、検討する必要があるかどうかの大前提でしょう。

 そして、今、出す出さないじゃなくて、三つ以外に現時点で把握している事例が、四事例目があるのかないのかを答えてくれと言っているんですよ。

 もう一つ申し上げます。

 こういうふうに穴が埋まってくると、これはイメージだとおっしゃいました。立法事実だとおっしゃらなかった。大変なことですよ。立法事実じゃないんですか。もしこれが立法事実じゃないとおっしゃるなら、国民に向かった印象操作、イメージ操作じゃないですか。立法事実じゃないものを、こういうものにも対応しなきゃいけないということで出してくるなら。おかしいじゃないですか。

 安保法案のときに、米艦防護とかあるいはペルシャ湾の機雷掃海とか……

浜田委員長 時間が来ております。

山尾委員 立法事実でないようなものを出してきて、議論が進んだら、どんどんどんどんぼろぼろになっていった。

 共謀罪もそんなことになってほしくないんですよ。しっかり質問に答えてくださいよ。

浜田委員長 時間が来ておりますので、終わりですよ。

 では、これで打ち切りますので。

金田国務大臣 お示しをした三事例は、現行法で対処できない事例があり得ることをイメージとして示したものであります。

 現行法は、条約上の義務を満たしていないことは明らかであり、テロ対策としても不十分であり、立法事実は十分に認められるものと考えております。

山尾委員 議論できるような状態になっていないということがよくわかりました。

 印象操作はやめていただきたいと思います。

浜田委員長 これにて山尾君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省研究振興局長関靖直君、文化庁次長中岡司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑を続行いたします。玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 午前中、いわゆる共謀罪のことで少し紛糾しましたので、一点だけ確認させていただいて、文科省の天下りの話に入りたいと思っております。

 今、我が党内でもいろいろな検討をしておりますけれども、私は、基本的には、条約は批准すべきだと思っています。そのために、条約上の義務を果たすために国内法で何か対応することがあるのであればそれはきちんと埋めていくというのは民主党政権時代からの一貫した方針でありますけれども、問題は、埋めるべき穴はどういうものがあるのか、埋めるときにどのような国内法の対応をすれば必要かつ十分になるのかということが問題になるんだと思います。

 そこで、いろいろ法務省にも御協力いただいてこれまで各種資料を出していただいた際に、穴が知りたいので、大臣も先ほど、条約上の義務を満たすために、現行法で不十分な部分があるということはお認めになりましたね、ですから、その不十分なもの、我々の言葉で言うと穴は一体どういうものなのか具体的に知りたい、それに基づいて国内法の対応がどういうものであるべきなのかということを議論しようということで、三つ出していただきました。山尾さんが三つともやりましたけれども、一つはサリン等の問題、あるいはハイジャックの問題、そしてサイバーテロといったような、この三つが出されましたね。

 林刑事局長から、与党の先生の質問を受けて、現行法の予備罪の予備というものは限定的に解されるとされておりますと。裁判例に従って解釈して適用しているということなんですが、だから、例えば航空券の予約、購入では、現行法、またその裁判例の解釈によってはできないので、新たな、皆さんの言葉でいうテロ等準備罪が必要だということで来ています。ここまではいいですよね、大臣。

 それで、質問は、総理も、二月二日の階議員の質問に対してこういうことをおっしゃっているんですね。四十二年の判決でいえば、それは、国会を襲撃して占拠する云々、その目的に向かって、ヘルメットを用意し、防毒マスクを大量に用意し、そしてトラック等を獲得する準備をし、ホテルの予約をしていた、そして、ライフルを二丁、空気銃も用意していたにもかかわらず、これは予備罪にはならなかったわけであります、ここまでやっていて実はならないのが裁判例でありますということで、これだけ見ると、実は、これまでの判例上予備罪の成立というのは物すごく狭く解釈されていて、だから、今のまま放っておいたのではテロなどについては打てないということなんです。

 私、四十二年判決をもう一回よく読んでみました。お手元にちょっと資料を配っておりますけれども、いわゆる三無事件ということで、有名な事案ではありますけれども、これを見ると、結論から言うと、私、そんなに予備罪の範囲を狭く解した判例ではないのではないかと思っているんです。

 先ほど階委員からもありましたけれども、この資料六のところの下に書いていますが、客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要すると。これは大臣もるる答弁をいただいているところでありますけれども。

 刑事局長の御答弁では、総理と同じなんですが、ライフル銃を二丁、空気銃一丁といった武器、装備が利用可能な状態にあった事実を認定した上で、それでも処罰できなかったんですという話だったんです。

 私も、これを聞いたときに、やはり非常に予備罪の成立というのは狭いのかなと思って、その具体的な事案に対して東京高裁がどう判示しているかを読んでみました。

 そうすると、資料の七です、これは殺人罪そして騒擾罪の予備罪について争われた事案でありますけれども、大臣、例えば空気銃というのが出てきますけれども、この空気銃は一体何のために購入されたか、どう判示されているか御存じですか。御存じないのであれば私が言いますけれども、これは、ここにも書いていますが、大学に射撃部をつくるために、その練習用に購入したというふうになっています。

 ライフル銃二丁も、実はこの謀議の前から買っていて、全く知らない二人に保管させておいて、本件の謀議をするときにはこのライフル銃の使用については一切話が出ていないし、かつ、この謀議をするために、預けていた二人に、それをほかのところに移せとか、あるいは隠匿せよというような指示も一切出していないんですね。乗用車に取りつけられた無線機も故障したまま。

 次です。同志糾合工作として、映画の撮影の目的ですよといってエキストラ名義で集めたアルバイトの学生、アルバイトの学生をエキストラ名義で集めていて、だんだん作戦の時期がうまくいかないでおくれていくんです。おくれた途端に直ちに解散している。あるいは、ほかの動員工作も立ち消え。元陸士の方ですけれども、自衛隊幹部への工作も、これは判決文にもありますけれども、老躯をひっ提げて、いわば老骨にむち打って何とかしたんだけれども、全く聞いてもらえない。あとは、山での隠れた合宿訓練も実際は塾生の慰安、要は飲み会だったにすぎない。指導的立場の仲間も同調する気持ちをどんどん弱めていった。こういうことが実は判示されているんですね。

 資料の六に戻っていただきたいんです。

 刑事局長の答弁は、ライフル銃二丁だ、空気銃だ、大変だ、総理もそうですけれども、こんなに大変なのに準備罪が成立しないからおかしいということで答弁いただきましたが、実は、四十二年判決をよく読むと、確かにライフル銃二丁、空気銃一丁などなど、客観的には、これは正確に読みます、一応、利用可能な状態にあったものと認められるがです。その次、本件において、準備のための工作、奔走そのものは相当行われていたとしても、いまだ実質的にはほとんど見るべき効果を上げていなかった、こういう事実を、いわゆる実質的な事実を認定しています。それで、これは共通なんですけれども、準備罪の成立要件は、客観的に相当の危険性が認められる程度の準備が整えられたなので、成立しないと言っているんですね。

 ですから、要は、この四十二年判決というのは、準備罪の適用範囲がすごく狭いから成立しにくいんじゃなくて、そもそも本件事案が、できの悪い、これは当時の新聞にもあるんですけれども、粗雑なクーデター。要は、実現可能な危険性が極めて小さかった、あるいは実際の犯罪に至るいわば距離が遠かったということで準備罪を認めなかったという事案だと思っています。

 これに対して、これも刑事局長の答弁で、今回の法改正をしないと、このようにおっしゃっていますね、葉梨委員からの質問に対して、航空券の予約をしただけで実務上予備罪の適用は難しいと。これについて、今回、テロ等準備罪、これを創設すればこの事案の検挙が可能となりますかということに対して、金田大臣は、可能でありますというふうに、新しいテロ等準備罪を設ければ、初めてこういう事案で、航空機のチケットの予約の段階で打てるようになるということなんです。

 大臣に伺います。この四十二年判決というのは、航空券の予約では……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください、きちんと説明していますし、きちんと質問していますから。この四十二年判決があるから、航空券の予約の段階では予備罪の成立が難しいという理解でよろしいですか。

金田国務大臣 予備罪の成立範囲に関する法務省の見解は、林刑事局長が先日答弁したとおりであります。

 繰り返して申し上げれば、予備罪の予備とは、裁判例に従いまして、構成要件実現のための客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要するとされているわけであります。

 さらに申し上げれば、ただいま委員が、ある行為が予備罪に当たることがあり得るかという観点から議論されているわけですが、問題は、予備罪に当たらない場合があるかということであろうと思います。そして、昭和四十二年の裁判例によれば、お示しをしておりました三事例が予備罪にも当たらない場合があるということを申し上げているものであります。

 さらになおなんですが、この資料にもございます、ただいまの御質問にもございました、林刑事局長が答弁した判決の詳細な理解など、さらに専門的な点につきましては、どうぞ刑事局長を呼んでいただいて政府参考人として御議論いただくべきである、このように考えております。

玉木委員 大臣、端的に伺います。航空券の予約では予備罪が成立しない、その根拠はこの四十二年判決である、それでよろしいですか。

金田国務大臣 御質問に対しましては、予備罪が成立しない場合もあると申し上げております。

玉木委員 もう一回言いますね。航空券の予約の段階では予備罪が成立しないという根拠はこの四十二年判決、ほかに判例がないと聞いたので、この四十二年判決がある種唯一の根拠だということでよろしいですね。

金田国務大臣 昭和四十二年の裁判例によれば予備罪にも当たらない場合があるということを申し上げているものであります。

玉木委員 これは予備罪が成立しないのは当たり前だと思うんです。先ほど申し上げたように、客観的な危険性の観点から見たら、こういう状態では客観的危険性がないと認定したからなんですよ。

 私は、さっきの山尾さんの質問の中で印象操作という言葉がありましたけれども、ちょっと、都合のいいところだけ判例をつまみ食いしてやっているんじゃないのかなと思うんですが、大臣、同じ判決文の中にこういう記述があるんです。資料の八を見てください。

 ホステル、ホテルですね、ホテルの予約について、実は、まさにこの構成要件、構成要件というか予備罪が成立する条件を満たした場合には予備を構成するということ、まさに判決文の中に出てきます。大事なことは、例えば武器なり人の集まり方、いろいろな態様が、まさに人権侵害等との関係、保護法益との関係から、本当に客観的な危険性があるのかどうなのか、そこを実質上まさに判断されるべきものであって、ここにあるように、これらの銃器の存在も、他のヘルメット、防毒面、作業衣、トラック等の準備、あるいはホステルの予約等と同様、こういった実質の態勢が相当整っている場合には、これと合して騒擾の予備を構成するということをこの同じ判決の中で実は認めているんです。

 繰り返しになりますけれども、この三無事件は、さまざまな、武器とか装備あるいは人の集め方、集まり方についての実態が、危険性の度合いから考えて、余りにも薄い、遠いので予備罪の成立が認められなかった案件であって、予備罪そのものの範囲が極めて狭いことを判示した裁判例ではないと私は思っているんですね。

 しかし、とにかく今の現行法の予備罪というのは狭い、検挙が難しいから、またより大きな新しい罪の体系、類型をつくらなきゃいけないということを言っているのは、私は、先ほどあった安保法制における四十七年見解のように、集団的自衛権は認めないと決めたものが、それを利用して認めるという根拠になっているのと同じように、この四十二年判決を使って、予備罪が認められないということの唯一の根拠にするのはやめるべきだと思います。

 そこで、大臣に伺います。

 これは先ほどちょっと読み上げましたけれども、金田大臣の答弁で、葉梨委員の質問に対して、航空券の予約をしただけで、実務上は予備罪の適用は難しいという答弁でした、これについて、テロ等準備罪、これを創設すればこの事案の検挙が可能となりますかということに対して、可能でありますと答えています。

 では、今の予備罪の定義は何かというと、まさにこの判例であるように、客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要するとありますから、この要件では認められない罪も今度新たに創設するテロ等準備罪では検挙が可能になるということでありますから、伺います。

 実質的に重要な意義を持たず、客観的に相当の危険性が認められない程度の準備であっても、新たに創設される予定のテロ等準備罪では検挙が可能になるということでよろしいですか。

金田国務大臣 委員御指摘の点につきましては、成案を得た段階で条文に基づいて御説明申し上げたいと思っております。

玉木委員 いや、大臣、大臣自身がお答えになっているから伺っているんです。

 判例に基づく、つまり四十二年判決に基づけば予備罪の予備というのは限定的に解されている、なので、今回は、ハイジャックの航空券の予約をしただけでは打てない、だからテロ等準備罪、これを創設すればこの事案の検挙が可能となりますかと葉梨委員から聞かれて、可能でありますと大臣は明確に答えているんです。

 では、現在の予備罪の定義は何かというと、るる申し上げているように、実質的に重要な意義を持つ、相当の危険性が認められる程度のものが予備罪だということですね。

 そうなると、これでは打てないということですから、逆から言うと、実質的に重要な意義を持たず、客観的に相当の危険性が認められない程度であっても、新たに創設されるテロ等準備罪では検挙の対象となる、大臣はこう明確にお答えになっていると私は思いますが、そういう趣旨でよろしいですか。確認します。

金田国務大臣 先日の答弁というのは、現在検討中の法案の方向性を述べたものであります。したがって、準備行為をどのようなものとするかというのは成案を得た後に説明を申し上げたいと思っております。

玉木委員 大臣、では、もう一回同じことを聞きます。テロ等準備罪、これを創設すればこの事案の検挙が可能となりますか。

金田国務大臣 この事案については成案を得た後で説明いたします。

玉木委員 でも、大臣、二月一日の葉梨委員からの質問に対して、まず可能でありますと明確にお答えになっているんですね。事案はずっと議論されてきた事案でありますけれども、きょうもそうなんですけれども、質問のたびにふらふらしているので、では、ちょっと聞き方を変えます。

 今度新たに創設しようとしているテロ等準備罪は、具体的な合意に加えて、組織犯罪集団がやるということと、あとは実行準備行為ということが求められる。ここは答弁いただいていますね。

 では伺いますけれども、この準備罪における準備行為と実行準備行為は、どこがどのように違いますか。

金田国務大臣 御質問の点について、テロ等準備罪の具体的内容については、現在検討中でありますので確定的なことは申し上げられませんので、現時点でお答えすることは困難であります。

玉木委員 いや、でも、実行準備行為で縛りをかけるということは答弁されていますよね。それは、現在の準備罪の準備行為では打てないものを当然対象に含みますよね、そうじゃないと新たに創設する意味がないので。

 そうすると、その両者の概念の整理はきちんと私はやるべきだと思うし、もちろん法案がしっかり出てきた段階で議論はしますけれども、まさにそれが総理のおっしゃる、これまでとは全く違うものだということの一つの要件になっているわけなので、その全く違うことが何なのかということを聞きたいので、実行準備行為というのは準備罪における準備行為と一体何が違うのかということをお伺いしているわけであります。

 答えていただけないようなので、実行準備行為と準備罪の準備行為といったものが、現時点で整理されていると思いますが、どのように違うのか、整理して、統一見解をこの委員会に提出していただくことを求めたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議します。

玉木委員 はい。よろしくお願いいたします。

 最初の話に戻りますけれども、四十二年判決というのは、その案件自体が予備罪の成立を認めるには甚だずさんなものであったので予備罪の成立が否定されたものであって、予備罪というのはそもそも非常に狭いということではないということでありますので、その点は、印象操作的なものではなくて、しっかりと、本当に現行法制上穴があいているのか、むしろ現在の予備罪でも、それは相当の危険性がある、客観的な危険性が認定された段階では、まさに四十二年判決に言うホテルの予約と同様に、航空券の予約の段階で現行法でも予備罪でいける可能性が非常に高いと私は思っていますので、そこはしっかり整理をしていただきたいというふうに思っています。

 天下りの話に移りたいと思います。

 先ほど十二時に、今回の文科省のいわゆる違法な天下りのあっせん行為についての報告書第一弾というものが出てまいりました。国会が紛糾したこともあって十分読み込む時間がなかったので、また同僚議員からも詳しい質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、報告書本体に入る前に、資料の五を見てください。

 資料の五は、退職して再就職するのが、その退職した当日か、あるいは間髪入れず翌日に再就職しているのが、公表資料の中で見ると、全省庁、これは平成二十七年度に限定しましたけれども、千三百七十九件のうち九十一件あって、全体の七%、六%。ああ、これはちょっと数字が違うんだな。正確に言うと、千四百六十四件中九十一件あって、全省庁的には六%なんですが、文科省は、この四十七件のうち同日か翌日に間髪入れず再就職した人が十三件あって、二八%を占めるということであります。そして、官民人材交流センターによる再就職は、これは以前私聞きましたが、ゼロであります。

 普通考えると、やめたすぐその当日とか翌日にいきなり再就職できるというのは、やはり在職中、現職の間に求職活動をしたか、あるいは何らかの組織的あっせんがないと、こうしたことはなかなかやりにくいんじゃないかと思うのが私は普通の感覚ではないかなというふうに思うんですけれども、これはある意味、文科大臣に伺います、文科省はやはりそうした組織的あっせんが行われているという一つの証左だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松野国務大臣 まず、委員から御提示いただきました資料でございますが、二十七年度に退職した人数四十七は、文科省で公表させていただいた人数でございます。うち、同日か翌日に再就職した人数の十三に関しては、ちょっと今精査をしておりますので、確認をさせていただきたいと思います。

 委員に対するお答えをさせていただきますが、国家公務員法に基づく再就職の状況の届け出数を見ると、平成二十五年四月一日から平成二十八年九月三十日までの間の離職日当日または翌日に再就職している件数は三十三件ございます。また、御指摘のとおり、交流センターが新しい体制になった後の二十五年以降の利用者はゼロということでございます。

 国家公務員法の第百六条の三第一項においては、職員が利害関係企業等に対して求職活動を行うということは禁じられております。一方で、利害関係企業以外の企業に対して在職中に求職活動を行うことは禁じていないということでございまして、退職の当日または翌日に再就職をした者は、利害関係企業等以外の企業等に求職していた可能性がございます。

 いずれにしても、今回の事案を受けて、平成二十年十二月三十一日以降、再就職等規制委員会が始まった時点までさかのぼって、この事案に関してもしっかりと解明をしてまいりたいと考えております。

玉木委員 これは、集中的に一つ調べる対象だと思います。

 私が調べた中でいうと、利害関係のないところは在職中も求職活動がオーケーだということなんですが、例えばスポーツ・青年局から順天堂大学に行っているようなケース。これは、高等教育局が大学を見ていますけれども、例えば順天堂大学にはスポーツ・青年局から大学スポーツ研究活動資源活用事業とかそういったスポーツの関係で出たりもするので、高等教育局じゃないから大丈夫だというのも、よくよく見なきゃいけないし、例えば初等中等局から大学に行っているケースもあります。初等中等局なので、中学校とか高校だから大学は関係ないということなんですが、天下った大学に実は初等部とか中等部、つまり高校とか中学校があるケースも散見されます。

 ですから、利害関係がないところは現職中の求職もオーケーだというんですけれども、外形的に見て退職したその翌日からもう次のところに椅子があって働いているというのも、やはりそこは、一つの特に注意してよく調べる対象だということで、しっかり調査をいただきたいなと思っています。

 大臣に重ねてお伺いしますが、今回、調査の一次の結果が出てきましたけれども、その中にも明確に出てきます文教協会、OBを使った潜脱的な、脱法的な天下りを行っていた一つの組織のスキームの一部を構成する重要な組織でありますけれども、報道によると、解散するというふうに聞きました。

 しかし、解散してしまうと今回の全容解明に極めて支障を生じるというふうに思いますけれども、例えば文書とかデータ、いわゆる証拠保全といいますか、そういったことがしっかりと行われるように、何らかのきちんとした情報を残せということを指示しているのか。そもそも、解散することはこの全容解明が行われるまではするなといったような要請、依頼、こういったものは行っていますか。

松野国務大臣 文教協会は、二月一日に、信頼を著しく失墜し、今後の事業の存続が困難であると判断をし、解散の方針を決めたと聞いております。

 この解散の今後の日程に関しましては、今後の理事会をもって決めていきたいということであるとも報告を受けております。通常でありますと、継続案件等の処理もございますので、実際の解散までには一定の期間を要するものと思います。

 あわせて、私のもとに設置した再就職等問題調査班は、三月の末までに全容解明を、公表するということで進んでおります。三月三十一日までに全容解明ということでございますので調査はそれより以前になると思いますので、実態的には、調査班の審議に関しては解散の時期というのは影響を与えるものは少ないと思いますけれども、あわせて、文教協会からはさらなる調査が必要となる可能性も含め、調査への全面的な協力を求めております。解散の時期にかかわらず、文教協会からは協力をいただける旨の回答を得ているところでございます。

玉木委員 解散の時期にかかわらずと。解散してしまったら、やはり調査は困難になりますよ、大臣。

 では、全容を解明する前の解散もあり得るということですか。

松野国務大臣 先ほど答弁をさせていただきました解散のスケジュールに関しては今後の理事会で決定をするというふうにお聞きしておりますが、通常、解散までは、継続案件の処理等も含め、一定期間を要するものと思います。

 再就職等問題調査班による文教協会に対する調査に関しましては、最終が三月三十一日の全容公表ということでございますから、それより前に、当然、文教協会に関して、さらなるヒアリングを含め、この外部有識者を含めた調査班の中で行われるということになりますので、実質的には、解散時期よりも前にこの文教協会に関して調査を調査班が行えるというふうに考えております。

玉木委員 何か、大臣、全然のんきな感じですね。

 先ほどちょっと答弁が漏れていますけれども、データとか書類の保全はちゃんとお願いしていますか。今、どんどんどんどんまさに証拠書類がシュレッダーにかけられたりしていませんか。大丈夫ですか、それは。何か具体的な、明示的なお願い、依頼、していますよね。

松野国務大臣 現状は、文教協会に対する協力の依頼はしておりますが、その協力の内容に関して具体的に、メール等も含めた保持に関するお願いはしておりません。

玉木委員 ちょっと今びっくりしましたけれども、全容解明するといって、OBルートの一番の大事な組織である文教協会に対して、データや書類の保全のお願い、依頼をしていない。それで、本当に今、どんどんどんどんデータがシュレッダーされているんじゃないですか、あるいはデータ消去が行われているんじゃないですか。これで、大臣、隠蔽を追認するようなことで本当にいいんですか。大臣、全くしていないということで、びっくりしました。

松野国務大臣 メールや文書等の保全に関して、現状においてしていないというふうに申し上げました。委員からの御指摘もいただいて、要請に関してはこれからさせていただきたいと思います。

玉木委員 ちょっとびっくりしましたね。今から文教協会へのデータとか書類の保全をお願いすると。それで本当に全容解明できるんですかね。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、監視委員会に伺います。

 実は私、監視委員会の出した報告書、最初の事案を明らかにした、一月二十日ですかね、資料を読んでいて、ちょっと気づいたことがあるんですね。資料の四枚目のところを見てもらいたいんですが、これはいわゆるOBを経由した天下りの脱法的なあっせん行為のことを書いているんですが、ここに実は、文書上は出てこないんですが、図には出てきて、非常に印象に残った言葉があるのは、人事課から文部科学審議官Sに対して「マッチング内容について報告・了承」ということが出てくるんですね。

 ということは、今回の案件については、もともと人事課が組織ぐるみで深くかかわっていたということを監視委員会も認めたということでよろしいですか。端的にお答えください。

大橋参考人 お答えいたします。

 R氏がマッチングをした内容について審議官に報告をしたことがあったということについては、私どもも調査の過程で把握しております。そのことについて、どのくらいあったのかということは差し控えますけれども、その表に記載したようなやりとりがあったことは事実でございます。

 ただ、その評価について特にそこの中には記載はまだしておりませんので、そのように御理解いただきたいと思います。

玉木委員 人事課の関与があったということですね、これは。

 それで、きょう十二時に発表された文科省再就職等問題調査班が出した資料の中に、ちょっと間に合わなかったので、理事会の提出資料の承認を得ていませんが、この中に「再就職支援業務について」という文書が二枚ついております。

 これは何かというと、R氏にやはりあっせん活動をやってもらわなきゃいけないということで、おもしろかったのは、あるとき、このR氏が就職していた組織の当時の教職員生涯福祉財団理事長が、業務と関係のない再就職支援をこれ以上続けることに難色を示して、再就職支援を教職員生涯福祉財団から外形的にも独立させるということを求められたので、文科省の中でも人事課内で検討して、何とか嶋貫氏に再就職支援活動を継続してもらわぬと困るということになって、それで、今後の方針ペーパーを二枚つくっているんです。

 これは平成二十五年九月十一日のペーパーなんですが、文部科学省の方向性ということがまず書いてあります。何かというと、このR氏、嶋貫氏が週二日程度の保険会社顧問に就任し、残りの三日間で再就職支援業務をボランティアベースで行う、一定の資金が必要になることから、NPOをつくり、出版事業等を展開し、秘書給与及び執務室賃料等については、教職員生涯福祉財団等にて負担していただけないか。こういうことをいかに組織的にやろうかという作戦ペーパーがあるわけですね。

 次のページに行くと、嶋貫氏には一月に週一日程度の保険会社顧問に就任していただき、それで、残りの四日間で再就職支援業務をボランティアベースで行うとなっています。ちなみに、その後、注で書いてあって、保険会社の顧問ポスト案となっていまして、二つあるんですけれども、それぞれ、週一日で一千万円、月二日で一千万円というような、具体的な活動日数と報酬額も書かれてあるわけですね。

 加えて、嶋貫氏には主たる業務のほかにサロン運営もやっていただくと。サロン運営って何だそれと思ったら、本省局長級OB用サロンということで、秘書給与とあわせて月額三十万円ぐらいを出してはどうかというようなことを、いかに嶋貫氏に脱法的なあっせん行為をやってもらおうかということを、文部科学省のペーパーとしてつくっているんですね。

 二十五年九月の人事課長はどなたですか。

松野国務大臣 その時期の人事課長は、伯井人事課長でございます。

玉木委員 きょうは伯井元人事課長にもお出ましをお願いしていたんですけれども、きょうは来ていただいておりませんね。

 このきょうの報告書、文科省から出たものに、人事課の関与もだんだんだんだんふえていって、平成二十五年ごろまでには、組織的に嶋貫氏と共同し、再就職のあっせん体制を構築するに至ったと推察されるというふうに書いてはおります。平成二十五年ごろまでには、二十五年九月十一日のペーパーですから、これに基づいて、やはり保険会社に就職してもらって一千万円入ってくるようにするとか、サロン代で入ってくるようなことを文科省が主導して考えて、実際動き始めるわけです。

 では、伺います。伯井元課長はいらっしゃいませんけれども、藤江大臣官房審議官、この二十五年以降に就任された元人事課長として、こういった組織ぐるみの脱法、あっせん行為については御認識はありましたか。

藤江政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回、再就職に関することで大変国民の皆様方の信頼を損ねるようなことになりましたことを、大変申しわけなく、心よりおわび申し上げます。

 私は、平成二十七年八月四日から平成二十八年六月二十日まで人事課長を務め、現在は初等中等教育担当の審議官をしておるところでございます。

 お尋ねの件につきましては、私の人事課長在職時の問題でございますので、現在担当分野以外の事項でございまして、政府参考人として、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

玉木委員 いや、今まではそうだったと思うんですが、きょうの昼に、これは理事会にも提出されておりますけれども、先ほど申し上げました、人事課の関与もふえ、平成二十五年ごろまでには、組織的に嶋貫氏と共同し、再就職のあっせん体制を構築するに至ったと推察されるというふうに書いておりますけれども、今御答弁いただいたように、そこのまさに人事課長でおられたわけですね。

 今回の案件は、監視委員会も認定しておりますし、文科省さんが出された調査結果の中にも出てくる話であります。ですからぜひお答えいただきたいんですが、ここの調査の中にあるように、いわば組織ぐるみ、人事課が主導して今回のスキームを構築しそれを運用していたということでよろしいですか、もう一度改めて。

藤江政府参考人 繰り返しになりますが、先ほども申し上げましたとおり、今回の件については、大変申しわけなく、心よりおわび申し上げます。

 お尋ねの件につきましては、人事課長在職当時に関するものでございますので、政府参考人として、お答えは控えさせていただきます。

 大臣のもとに、今、全容解明のための調査を行っているところでございまして、その調査に真摯に対応していきたいと思います。

玉木委員 そろそろ、本当に真相究明していくのであれば、私も、新しい事実が出てきたのでそれを国会の場でお伺いしているので、誠実に……(発言する者あり)いや、参考人として呼んだら認めていただけなかったので、政府参考人に、与党の皆さんの協力を得られなくて、それは変更した経緯がありますから、そのことは申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

玉木委員 文科大臣に伺います。調査結果の中にあるように、少なくとも平成二十五年ごろまでにはこのOBを使った脱法あっせんのスキームが構築されることになっていたと認定しておりますけれども、このことに人事課が組織として関与していたということで、大臣、よろしいですか。

松野国務大臣 委員御指摘のとおり、平成二十五年の時点、新制度ができ上がってから二十五年までの間にOBを利用したこの枠組みができ上がったと、今回の調査班の報告書の中においても出されていることでありますし、私も、これまでの経緯を考えて、二十五年までにその枠組みができ上がってきたんだろうと思います。

 そこにおける人事課の、組織ぐるみという御表現だったでしょうか、組織としての関与ということでありますが、人事課がこれに関与をしてきた、情報を上げてきたというのは事実であろうというふうに思います。それがどの程度、人事課の中の組織としての意思決定のもとで、指揮系統のもとで行われたものなのか、個人の担当者レベルとOBの間で行われているものなのかに関して、その事実関係認定がまだ終わっておりませんので、それもしっかりと今後解明をさせていただきたいと思います。

 今日の時点において、調査班の報告また私の認識としては以上でございます。

玉木委員 前回も申し上げましたけれども、いわゆるノンキャリの方々だけ処罰の対象にして、今回、そういう意味では、人事課の一部の職員はかかわったけれども、人事課長等、組織としてはかかわっていないかのような説明をしているのは、私はちょっとまだこれは真相に迫っていないなというふうに言わざるを得ないと思うんですよ、大臣。

 実際、監視委員会は、先ほど申し上げたように、人事課として「マッチング内容について報告・了承」ということまで認定しているわけでありますから、そこはしっかりと、これはもう大臣がリーダーシップを発揮してやるしかないと思います。職員の皆さんはそれぞれいろいろな観点で行動されると思うんですけれども、やはり真相を究明し、そして行政、また文科省、日本の政府全体に対する信頼を取り戻すためにも、大臣、これは大臣が本当にリーダーシップを発揮してやっていただかなければいけませんので、その点、強くお願いしたいと思います。

 最後に、一点だけ聞きます。

 この報告書を読むと、このスキームを始めるときのきっかけなんですけれども、嶋貫氏がボランティアで始めたと。人事課としては、やってくれたらいいなというふうに人事課は嶋貫氏にあっせん活動を期待していたということで、勝手に嶋貫氏が始めて、それはやってくれたらいいなというぐらいの認識だということがここに書かれていますけれども、当初からこれは人事課も一体となって始めたスキームではないんですか。

松野国務大臣 まず、全容解明におきまして、私が責任を持って取り組んでまいります。

 先ほど、人事課の組織的な関与ということに関してお話をさせていただきましたのは、監視委員会からの報告書または調査班からの調査報告においても、人事課職員が個人情報の提供等で関与し、また一部課長もそれを認識していたということはもう既に出されていることであって、これをもって人事課の関与があったのは明白でありますが、指揮系統等についてまださらに解明が必要であるというお話を申し上げさせていただいたところであります。

 そして、最初の、この枠組みができ上がっていく時点での、どちらからの要望かということの御質問でありますけれども、これも報告書の中にあったとおり、平成二十年の十二月三十一日時点から新しい制度になりまして、これでもう、人事課の中においても、これからは現役の人事課職員がOBの再就職についてタッチすることはできないという認識がある中で、人事課職員としても、これからはOBの皆さんにOBの再就職等について御配慮、御心配をいただかなければなかなかこれは機能しないという思いがあって、そういう形に期待があったというのも事実だと思います。

 それが具体的などんな言葉でOBの方々、当時は嶋貫さんだけじゃなくて複数OBの方々に関してよろしく御配慮いただきたいという旨があったと聞いておりますが、そのうち、過程の中において嶋貫氏が中心的な役割を果たすようになったというような経過だと承知をしております。

玉木委員 先ほどもあったように、文教協会に対してまだ書類等の保全さえ今の段階でやっていなかったということが明らかになったので、大臣、もう少しここはしっかりと厳しくやってください。

 それと、これは委員長にお願いしますが、先ほど申し上げた、文科省が、平成二十五年、スキームをつくり上げるときの紙に出てくる、保険会社に対して、一千万ぐらいの報酬、あるいはサロンの運営もどうだということがありますけれども、こうした保険会社からの収入が嶋貫氏に入るスキームの全容について、これもしっかりと調査していただき、それをこの委員会に提出していただくこと、それは衆議院の予算が通過する前にしっかりと出していただくことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議します。

 これにて玉木君の質疑は終了いたしました。

 次に、小川淳也君。

小川委員 民進党の小川淳也です。

 引き続き、再就職問題についてお聞きします。

 まず、監視委員会にお聞きします。ようやく、いわゆる早稲田事案、吉田元局長の再就職について調査報告書をいただきました。

 これを私どもが最初にお願いしたのは党内会議だったと思いますが、国会開会前だったと記憶しています。それから、先週、私は個人の立場で情報公開請求を行いました。これには三十日の回答期間がかかりますというお答えだった。まず、もっと早くお出しいただくべきであったのではありませんかというのが一点。

 それから、委員の皆様また報道の皆様もごらんいただきたいと思いますが、委員長、ページによってはこれだけの真っ黒塗りの状態でありますから、これをもとに私どもはどこまで追跡、審議できるのか甚だ心もとない。いま一度、開示のレベルを上げていただく。

 この二点、まず委員長から御答弁いただきたいと思います。

大橋参考人 お答え申し上げます。

 再就職等監視委員会は、まず、調査終了の翌朝に調査結果の概要を発表いたしまして、記者会見での質問にも応じて公表をいたしました。

 確かに、調査報告書自体の公表ということは行いませんでしたけれども、当委員会の調査報告書というのは、前にも申しましたとおり、いろいろな記述がございまして、これを公表した場合には今後の調査に支障を来しかねないというふうに考えておりまして、二月二日の委員会でも現時点では公表するというのは適当でないというお答えをいたしました。

 しかし、不都合なところは黒塗りして構わないからとにかく委員会に提出するようにという意見もありましたし、委員会からの要望も踏まえまして改めて慎重に検討した結果、本日、委員会に提出をさせていただきました。

 開示されていないところが多過ぎるんじゃないかというお話でしたけれども、これは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の規定に照らしまして、報告書のうち、個人情報、あるいは調査を行った関係者の供述、まだ確定していない情報を含む文部科学省においてこれから調査を行う事案に関する情報、それから委員会調査の手法などが読み取れる記述などを現時点では不開示にしております。

 再就職等監視委員会としては、法令にのっとって適切に最大限の情報開示をしたというつもりでございます。御理解をいただきたいと思います。

小川委員 今回の監視委員会の御活躍については一定敬意を払うところなんです。

 委員長、お聞きいただきたいと思いますが、こういう時代ですから、情報公開請求が出るのは最初からわかっていますよね。私どもは二週間ぐらい待ちぼうけの状態なんですよ。ですから、報告書を仕立てられるときから公開を前提に、どうしても必要な部分については黒塗り作業も含めて同時並行でむしろ進められるべきじゃないかと思います。

 きょう開示をいただいて早速でありますけれども、開示のスピードの遅さと不十分さについては重ねて指摘をしたいと思います。

 同様に、文科大臣にお聞きします。

 先ほどいただいたばかりの早稲田事案とは別に、R氏にかかわる部分、これは一定記述がございました。内容に入る前にその手続についてもお聞きしたいんですが、調査班の設置は一月二十三日ですよね。専門家を入れたのが国会審議でいろいろありましたが、専門家に委嘱をしたのが二月の二日ですよ。十日余り一体何をされていたのか。

 何をもってこんなにこの中間的な報告が遅くなったんですか。二十三日の調査班の設置から二月の二日まで一体何をされていたのか、お聞きします。

松野国務大臣 委員からお示しをいただきましたとおり、調査班の設置自体は一月二十三日でございますが、それ以後、調査班としては、資料の確認、また監視委員会からの報告書についての再調査に向けた確認等々の作業を進めておりました。

 しかし、それまでの中の、この予算委員会で御審議いただき、さまざま御指摘いただいたことも含めて、やはり外部の方々の主体的な取り組みの中においてこの調査が進められるべきであるということもありまして、個々のヒアリング等に入るのは外部の有識者の人選、委嘱等が決定した後になって、それを二月二日に立ち上げて、本日、第一回目の報告を上げさせていただいたという経緯でございます。

小川委員 まるで、十日間もの時間があったにもかかわらず、しかも、今回の報告、これはきょう、今し方いただいたばかりですが、実際にヒアリングを行ったのは二月四日の一日だけですよね。一日だけでこれだけの、それなりのボリュームのある取りまとめをされているわけですから、その気になればできるわけですよ。

 その前提でいいますと、この十日間の空白は、私どもから見た空白は極めて残念であり、また予算審議の支障にもなる。これは後ほど、今後のスケジュールを確認する上で、改めて指摘したいと思います。

 確認ですが、この二月四日のヒアリング、歴代人事課長等とあります。外部の有識者はこのヒアリングに参加したんですね。

松野国務大臣 ヒアリングに関しましては、各人ごとのヒアリングに対して外部有識者が少なくとも一人は参加をしている状況で行われております。

小川委員 それでは、内容について、駆け足になりますけれども、今いただいたばかりですから、気になるところを中心にお伺いをいたします。

 まず、そもそも論でありますが、報告書の二ページ、三ページについてお聞きします。

 二ページの後段ですけれども、OBの再就職については任用班で行っていた、そして退職者の再就職あっせんを業務として行っていた。二ページにこういった記述があります。

 三ページ、上から二つ目の丸でありますけれども、退職後二年を経ることなく学校法人等への再就職等について官房人事課において業務として行っていた、人事課長が直接事務次官と、あるいは事務次官経験者等と相談を行いながら行うことが通例であった。

 そして、さらに気になるのは三ページの後半でありますが、改正法の施行までに集中的にこの再就職のあっせん業務を行った、つまり、法改正後困るから改正法が施行される前に集中的に行った、したがってしばらくは退職者の中で再就職に困る者が余りいなかったという記述があります。

 大臣、ちょっとそもそも論でお聞きしますが、この退職者の再就職というのは文部科学省の仕事なんですか。法改正以前について聞きます。

松野国務大臣 平成二十年十二月三十一日の改正以前におきましては、人事課においてOBの再就職に関して関与していたということは事実でございます。

小川委員 関与していることは誰しも知っている周知の事実だったと思いますが、ここまで赤裸々に書かれると、それは仕事なのかと。

 大臣、資料を要求したいと思いますが、改正法施行前の状態において、文部科学省の再就職者のあっせん業務は、一体、設置法何条に基づいて行われていたのか。業としてやっているということは、相当厚みを持ってやっているはずですから、それを前提に、設置法何条に基づいて行っていたのか、まず法的な根拠をしっかり押さえていただきたいと思いますので、委員長、資料要求をいたします。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

小川委員 次に、先ほど玉木委員の指摘の中にもございましたが、この報告書全体を通して、これは嶋貫がやったことだ、嶋貫の周辺がやったことだという印象が極めて色濃い。その背景には人事課長、歴代お越しいただいていますが、人事課は関係ない、人事課長は関係ないと言わんばかりの記述が目立って、本当にそうかという疑問と怒りすら感じるわけであります。

 具体的にお聞きします。

 四ページの記述について。これは二十一年七月当時ですから常盤局長が人事課長時代だと思いますが、四ページ(3)の記述に、当時の人事課長は嶋貫氏からの情報の要求に人事課の職員が応じていたとの認識はなかったとあります。

 ここをまず常盤局長にお聞きしましょう。当時、そういう認識はなかったんですか。

常盤政府参考人 私は、平成二十一年七月から一年間、人事課長をしておりました。人事課長経験者といたしまして、このたびの事案についてはまことに申しわけなく思っております。

 私は、本日、政府参考人として現在の所管業務についてお答えするという立場で出席をさせていただいているものと理解しておりますので、人事課長在職当時の認識についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 現在、文部科学省として全容解明のために調査を行っておりまして、私も調査には真摯に協力させていただきたいと思います。

小川委員 常盤局長、調査班のヒアリングは受けたんですね。

常盤政府参考人 私の人事課長当時の職務についてお答えする立場にはございませんし、調査班のヒアリングの内容ということについても私がお答えすべきものではないのではないかと思っておりますので、差し控えたいと思います。

小川委員 ヒアリングを受けたかどうかをお聞きしています。

常盤政府参考人 聞き取りを受けたということは事実でございます。

小川委員 ここに人事課長と書いてあるんだから、もうわかり切ったことじゃないですか。

 では、お聞きします。

 内部の調査班のヒアリングには答えられて、国会では答えられない理由を教えてください。

常盤政府参考人 繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、私は、本日、政府参考人として現在の所管業務についてお答えするという立場で出席をさせていただいておりますので、人事課長当時の認識についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

小川委員 大臣、今お聞きのとおりでありますが、今大臣は真摯に誠意を持って、この全容解明と国会における私どもの質疑に対する応答に努めておられると思います。これに対して、大臣の部下であるこの局長答弁、私どもとしては甚だ遺憾であり、欺瞞に満ちていると思います。

 大臣、改めて、もうこれは調査班で答えたことですから、調査班で答えて調査報告書にまとめられたことでありますので、大臣からきちんと答弁するように御指示をいただけませんか。

松野国務大臣 そのように私も考えておりますし、この委員会のお決めによってこの調査報告に関する内容を個々、これは局長としてではなく当時の立場において、この委員会の中で答えられるお立場の中でお呼びをいただけるということであれば、まさにそのようにさせていただきたいというふうに考えております。

 あわせて、この調査報告書の内容に関して、先ほど委員の方から、文科省は関係なくて、あくまでOBの方に責任を押しつけるかのように読めるというお話をいただきました。

 まず、この調査報告書の内容でございますが、この調査報告書は、外部の有識者の方々の調査方針、指針にのっとって調査を進めていただきまして、今回、二月六日の時点で公表する事実に関しても、外部有識者の立場で調査班に参加をしていただいている有識者の方々が今日の時点で自分の責任において発表できる内容はこうであるという趣旨で出ているものでございまして、私どもからこの報告書に関してこうあるべきだとか、こういう方向でというようなことはもちろん一切ございませんし、あくまで外部有識者の方々を中心とした御判断の中でこの内容が出ているということであります。

 加えて、あたかも押しつけているようなというお話がありましたが、これは私どもの調査報告書の中にも書いてありますが、新しい制度に変わって、先ほども申し上げましたけれども、人事課職員が直接的にOBの就職に関与することができないという意識の中で、OBの方にOBの再就職に関して御配慮いただくように期待をしているということもここに書かれておりますので、ここで言われるところの、一方的に嶋貫さんが持ちかけてそれに人事課が乗ったというような構図ではないというふうに私は認識をしております。

小川委員 大臣、そう読めませんからお聞きしているんですよね。

 五ページ、四つ目の丸でありますが、こうした体制については文部科学省人事課長が確かに認識しているものではなかったと考えられると書いてあるんですよ。七ページにも、二つ目の丸ですが、嶋貫氏の関与について、これらの嶋貫氏への情報提供等は人事課長からの指示を受けたものとの確認はできていないと書いてある。

 これは、ないなら、ないと書いたらいいんじゃないですか。なぜ、あるともないとも言えないかのような、まるで当時の人事課長を守るかのような記述が繰り返されているんですか。そこをきちんと御本人に聞きたい。これは極めて重要な問いだと思いますよ、大臣。

松野国務大臣 この内容に関しては、外部有識者の方に加わっていただいた今回のヒアリング調査をもとにまとめられているものであります。その中において、先ほど申し上げましたが、外部有識者が自分たちの責任において今日の時点で文書として発表できる内容がこうであるという御判断であったかと思います。

 加えて、この調査報告に関して当時の課長職としての内容について答弁をということは、委員会の理事間のお話の中でそういった場を設定していただければ、ぜひそれは積極的に協力していきたいと考えております。

小川委員 先週もお願い申し上げたとおりですけれども、政策課題については申し合わせのとおりですが。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 小川君。

小川委員 委員長、先週もお願い申し上げたとおりであります。政策課題については、現任部署の担当所管事項についてということは一定理解をいたしますが、違法行為の疑いあるいは倫理規範にもとる疑いがある場合には、属人的なことでありますので、真摯に正直にお答えをいただきたい。

 こうした審議を積み重ねることを通して、今回の事案、一定程度事態が明らかになってきた。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

小川委員 その意義については、委員長も一定御理解をいただいていると思います。この状態であすの集中審議に臨んでも、また同じ答弁が繰り返されるようであれば、それは全くもって実のある審議になりませんので、委員長、改めてこの場でルールをしっかりとお示しいただきたい。

浜田委員長 委員長から一言申し上げます。

 あすの集中審議におきましては、各人事課長経験者も出席してその場で答弁をしていただくということを参考人として確約しておりますので、それは当然のごとく、与党の議員がきょうはやれませんので、あした全員そろってやろうということの整理もありました。

 その意味では、御指摘の点は大変よくわかるわけでありますけれども、本日のところはそういう形で進めさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

小川委員 では、確認ですが、あすは、特に内部調査について、調査中ですから答弁できません、それはないという前提でよろしいんですね、委員長。

浜田委員長 それは当然、質問の仕方にもあると思いますけれども、出席した各参考人の方々に答弁させていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

小川委員 では、きょうお聞きすべき、先ほど玉木委員も触れられましたが、この二十五年九月の検討ペーパー。

 これは、伯井大学入試センター理事が当時の人事課長でいらっしゃいました。残念ながら、きょうの段階では政府参考人としてはお越しをいただけていない。恐らく、あした来られるのでありましょう。そのときに改めてお聞きしたいと思いますが、先ほど玉木委員も指摘したとおり、松野大臣、この顧問料、生命保険会社あるいは代理店、これは文科省だけでないと思います、各省に同じ構造があると思います、大なり小なり。

 その前提でお聞きしますが、この顧問料が週一日勤務で一千万とか、月二日勤務で一千万、そういう形で財政的、経済的に支援をしたらいいんじゃないかということがうかがい知れるペーパーでありますが、ちょっとこれは国民感情、国民感覚から見て法外きわまりない、異常だと私は思いますが、大臣、いかがですか。

松野国務大臣 まず、保険会社の顧問に関しては、嶋貫さんが最初、文科省のOBとして就任した一人目ではありません。これは報告書の中にも入っているということで、これが続いたということに関しては事実としてまず提示をさせていただきたいと思います。

 その上で、委員御指摘のとおり、国民の皆さん一般の視点からすれば、週一回また二回の顧問としての勤務の中において一千万円程度の収入を得るというのは、これは過大な収入ではないかという評価を国民の皆さんはされるのではないかと考えております。

小川委員 逆に、保険代理店からすると、それだけのメリットがあるということですよね。入構許可証ですか、全国の国立大学にも波及しているというお話もありますよ。

 相当な便宜を図り、そして顧問報酬を法外な形で受け取り、これが財政的な支援となって事実上のあっせん行為が行われていたという全体構図を見たときに、もう一点これに関連してお尋ねしたいんですが、こういう事実はわかっていたと思うんですよね、文科省の内部は。わかっていたと思います。

 その前提で、私どもの党内会議に対する回答書には、文科省として一切の金品等の支払いはないということを答弁している。あのときもお聞きしましたが、これは文理上うそではないかもしれませんが、ごまかしがあった、ごまかしがあると断定せざるを得ないと思いますが、あの答弁書はうそだったということをお認めいただけますか。

松野国務大臣 現時点では、あの答弁書というのがどの答弁書を御指摘のものか、ちょっとわかりかねますので、正確なお話を、しっかりと精査して答えさせていただきたいというふうに思いますが、実態的に文部科学省からこの文教フォーラムに関して支出がない、また嶋貫氏個人に関して何らかの提供がないということであっても、先ほど御指摘をいただいたとおり、こういった枠組みをつくっている、再就職の規制違反を何とか潜脱するという目的の中においてこういった枠組みが構築をされているということは極めて、国民の目から見ても、全く文科省がこの環境整備に関与したことはないとは言えないということは明確に言えるんだろうというふうに思います。

 ただ、構築に対する関与のあり方の度合いに関しては、今調査を進めている最中でございますから、しっかりと調査を進めながら報告をさせていただきたいと思います。

小川委員 この事態が発覚して以降、先般もお示ししたとおり、二十六年の一月からの経緯、そしてもっと言えば、国会召集日に合わせた前川前次官の辞任に至るまで、一連、ずっと隠蔽行為は続いているというふうに見なければならないと思います。必要に迫られ、論議に迫られて、小出しにしながら少しずつ事実関係を明らかにはしているけれども、そこにはいつまでたっても本気度が十分見られないと私たちの側からは断ぜざるを得ません。

 そのことを前提に、あすの集中審議なわけでありますが、冒頭申し上げた十日間の空白といいますか、私どもから見れば非常に不毛な期間が、私どもに対しても強いられました。そこで、お聞きします。

 きょう公表いただいた文書の中に、今後のスケジュールについての提案の文書がございます。再就職監視委員会の調査報告書に記載された三十七件の調査については二月下旬をめどに中間的なまとめを行うとあります。職員二千名とOB等含めて約三千名の調査については三月末をめどに結論を出すとあります。そして、退職者約五百名についても三月末とあります。

 二月の下旬といえば、ちょうど衆議院におけるこの予算案の議了が最大の攻防を迎えるころであります。三月下旬といえば、参議院の予算審議も終わるころであります。そうなりますと、大臣初め責任ある方々が国会にお出ましいただいて十分説明責任を果たすということが、予算委員会開会時と終了後では大幅にその負荷が変わってくるわけであります。

 これも、冒頭申し上げたように、一月の二十三日から二月の二日まで十日間、一体何をされていたのかということとあわせて、この二月下旬を二月上旬に、三月末を少なくとも三月中旬に前倒ししていただきたい。大臣、いかがですか。

松野国務大臣 十日間の、一月二十三日の設置以来のお話でありますが、やっていた内容は先ほど申し上げたとおりでありますけれども、その間のさまざまな御指摘の中において、ヒアリング等調査をするに当たっては外部の有識者等が入らないと、文科省単独の調査においてはその信頼性が低いのではないかという御指摘をいただいて、確かに国民の皆さんからより御納得をいただけるためにはヒアリング調査等にも外部の有識者に入っていただいた中で進めなければならないということで、人選を進め、また御了承をいただき等の手続をその十日間に並行して進めていたということでございます。

 また、日程等に関しては、今はこの日程というので出させていただいておりますけれども、できる限り早く、努力はさせていただきたいと思いますが、委員の方から御説明いただいたとおり、対象者が三千名を超える調査でございまして、また正確な御報告をさせていかなければならないということを考えますと、どうしてもこの日程になってしまうというふうな感じを今持っておりますけれども、その中においても、少しでも早く公表できるように進めさせていただきたいと思います。

小川委員 これだけの、それなりに意味のある御報告をいただくのは、たった一日のヒアリングですからね、たった一日です、その気になればやれるんだな、できるんだなと改めて今回も思いました。それをあえて二月の下旬、三月の下旬とおっしゃるには他意があるのではないかと、こちら側からすれば思わざるを得ないスケジュール感であります。

 改めて、今大臣もおっしゃいましたが、一日も早い内容の報告、正確性も大事でありますが、特にこの予算審議との兼ね合いでいえばスピード感が極めて大事でありますので、重ねてお願いを申し上げたいと思います。

 これは改めてよく精査をさせていただくといたしまして、麻生財務大臣にお聞きをしたいと思います。

 先週お聞きいたしました。今回の総予算、一般会計だけで九十七兆円です、このうちどの程度が文教協会のようないわゆる天下り公益法人に流れるんですかと先週水曜日にお尋ねをいたしました。朝の通告でありましたので十分なことは答えられませんという御答弁でありましたので、あれから四日、五日たちます、改めてお聞きをいたしますが、今回の総予算のうち、どのぐらいがこの天下り公益法人に流れるんですか。麻生大臣にお聞きします。

麻生国務大臣 中央省庁のOBが在籍している、いないにかかわらず、公益法人全体でお答えさせていただきますと、平成二十九年度予算において、主として公益法人等への支出が見込まれるものとして各府省から登録のあった補助金、委託費等の総額は二千九百八十七億円であります。

 このうち、中央省庁OB職員等々の在職している公益法人への支出につきましては、これは内閣人事局が再就職状況の資料を取りまとめておられます関係から、この資料をもとに、現在対象となります公益法人への補助金、委託費の金額が幾らとなるかは、作業をまだ行っている最中なので、これはちょっと時間がかかります。

 その上で、主としてと申し上げましたけれども、役所におられたので御存じと思いますけれども、これは委託に出しますので、そこから公募したりなんかしますから、その公益法人から先のあれに行きますので、そこは直接、ただ単に抜けていくだけで、応募したところに行きます関係がありますので、これはあくまでも私どもからそこに行ったところまでであって、そこから先の話は私どものところではわかりませんので、その点は、二千九百八十七億、全額がそこにとどまっているという可能性はむしろ低いと思います。幾らかの分は外に出ていると思います。

小川委員 総額で約三千億円というお話でありましたが、かなり大きな額ですよね。

 実は、何年か前、私どもが政権を担当する前ですが、特に長妻理事初め、予備的調査というのを行わせていただいたことがあります。そのときの統計調査をちょっと引っ張り出してきたんですけれども、当時、対象団体が六百三十二、該当団体への国からの資金交付の合計額が五千三百億円ということでありました。ですから、若干圧縮されているのかとも思いますが、おっしゃったようにその先もわかりませんので、実態はよくわかりません。

 そこで、お尋ねです。この文教協会の解散劇は、いろいろな評価があると思いますが、一つ、この解散そのものが隠蔽になってはいけないというのは先ほど玉木委員が指摘したとおりです。もう一つ、この団体は昭和二十四年の創業とお聞きしています。ですから、戦後すぐ立ち上がった、いわば歴史と伝統のある団体です。ほとんどが出版関連だったということでありますが、かくも簡単に解散できるということ自体、要らない法人だったんじゃないですか、文科大臣。

松野国務大臣 設立に関しましては、委員御指摘のとおり、昭和二十四年来の長い歴史のある団体であります。その間の活動に関しては、有用な活動をされているものも私はあると思います。

 今回解散に至ったということに関しましては、社会的にも信頼を損ない、今後の運営が厳しくなるということで、今回の事案に対しての問題意識が大きかったということではないかと思います。

小川委員 早期の事態の収拾を図るという意図があるように感じましたが、出版関係を文科省本体に引き取るということとは別に、例えば決算を見ますと約三億円、特に受取負担金等が二億五千万ですか、かなりの収入がほかにもありますからね、簡単に廃止できるような法人ということは、つまり、そもそも要らなかったんじゃないかという疑念すら生じます。昭和二十四年から一体何をやっていたんだ、OBを養うためだけかと言われてもおかしくないような今回の解散劇でありました。

 麻生大臣にいま一度戻りたいんですが、事ほどさように、この約三千億の予算がどういう実態のある団体でどのように使われるのか。

 そして、全庁調査、全省調査、山本大臣が担当されていると思いますが、先週から私どもが指摘、主張しておりますとおり、この天下り構造の全容解明と本予算がどういう道筋でどのように流れるのかということは密接不可分でありまして、まさに予算審議の最中に全省調査についてもきちんと御報告をいただくということがこの予算案審議の前提になると思いますので、まず山本大臣からは、そこに向けてこの全省調査を急ぎますという御答弁をいただきたい。麻生大臣からは、この全容解明なくして予算案通過あるいは予算の執行、公益法人向けのこの二千九百八十七億円だけで結構です、その安易な執行はないということ。それぞれからお約束をいただきたい。

山本(幸)国務大臣 今般の文部科学省事案で生じました国民の疑念を払拭するために、安倍内閣総理大臣から私に対して、同様の事実がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うように指示がありました。

 今しっかり調査をやり始めたところであります。調査をおくらせる意図は全くありません。大事なことはしっかりした調査を厳正に行うということでありまして、ただ、最初からスケジュールありきではないと考えております。一方で、調査結果が出次第、速やかに結果を明らかにしていくことも重要であり、私の指揮のもと、スピード感を持って進めてまいりたいと思います。

麻生国務大臣 御存じかと思いますけれども、今この中で一番多いのが子ども・子育て両立支援事業等々の一千三百十三億とか、そういうのが一番大きな形になっておりますので、あと七億とか、何かいろいろ小さいのがございますけれども、今、山本大臣の答弁にありましたとおりに、私どもとしては今、予算を審査した上で二千九百八十七を出しておりますので、私どもとしては、出した内容について、そこの先の省庁でよくお調べいただかないかぬということになるんだと思います。

小川委員 予算の審査は文教協会についても行われているはずですからね。今回、法人の解散と支出の取りやめということが予算審議中に明らかになっているわけですから、もちろん私も全否定していません、物によっては必要なものあるいは緊急性を要するものがあるでしょうが、その前提に、天下りに関する各省庁の構造なり全容の解明が先決ではありませんか、あるいは同時並行でやられるべきではありませんかということを申し上げています。

 山本大臣、これは予算審議に資する必要があるという点は少なくともお認めいただけませんか。スケジュールありきではないという重ねての御答弁ですが、予算案の審議に当たって極めて重要な情報であると。全省庁の天下り構造がどうなっているか、その意義、価値についてはお認めいただけませんか。

山本(幸)国務大臣 私が安倍総理から指示を受けておりますのは、国民の疑念を払拭するということが極めて大事だということでありまして、それに基づいてしっかりと厳正に徹底的な調査を行いたい、最初からスケジュールありきではないと考えております。

小川委員 私どもとしては、やはり予算審議中、特に衆議院における予算審議中に一定の経過報告なり中間的な取りまとめ、文科省はその気になればわずか一日のヒアリングでここまでやったわけですから、これはぜひお願いをしたい、改めて強く主張したいと思います。

 最後に、もう残りわずかなんですが、先般のやりとりの中で少し気になりましたので、農林大臣にお聞きしたいと思います。

 再就職のあっせんにかかわることについて、法に触れない情報提供というものはあったという御答弁、そういう趣旨の御答弁を後藤委員の質疑の中でいただいたと記憶しています。法に触れない情報提供とはどのようなものですか。

山本(有)国務大臣 先日お答え申し上げましたものは、再就職規制に違反しない外部への情報提供の例として考えられるものをあくまで一般論としてお答えしたわけでございます。実際にそうしたことがあったかどうか確認をしているわけではございません。

 一方で、現役職員の人事におきまして、独立行政法人に退職出向させるケースもございまして、この場合は、当該法人への情報提供は合法的なものとしてとり行われているところでもございます。

 いずれにいたしましても、国家公務員法に基づく再就職規制に違反する情報提供を行ったことはないという趣旨でございます。

小川委員 これは非常に定義も曖昧でありまして、先ほどおっしゃった現役出向は確かに法律上違反しない、法に触れない情報提供なんですが、再就職のあっせん目的であるかないか、これは極めてわかりづらい、外形的には少なくとも判断しがたい情報提供であります。

 事務的に少しお聞きして、明確な答えが返ってこないんですが、改めて確認します。再就職のあっせん目的ではない外部への人事情報の提供、あるいは外部への人事情報の問い合わせ、これは農林省においてはありませんか。

山本(有)国務大臣 お尋ねの点でございますけれども、事務方に当該そうしたものの確認をさせたわけでございますけれども、御指摘のような特定の人事情報を外部に提供したという事実はございませんでした。

 また、特定の法人等の特定のポストに係る情報を同法人に問い合わせたこともないという報告を受けております。

小川委員 まさに山本大臣が全庁調査を行われている中で、今、山本農林大臣は言い切られましたけれども、一説によればですが、監視委員会には今、内部告発等も多発しているというお話もあるようですよ。今大臣はまさに言い切られたわけですから、後々にそういった事態になれば、これは大臣御自身の責任問題にもなりかねない。そのぐらい、これからまだまだ審議は続きますので、私どもが投げかける問いに対しては本当に真摯に、それだけの責任がすぐにかぶってくる話だということを前提に、重い答弁をこの場でお願い申し上げたいと思います。

 時間でありますので、ひとまずおきたいと思いますが、あすの集中審議では、ぜひ、きょうお越しいただいた元人事課長の皆様、そして参考人でお越しいただく予定の前川前次官、さらにはキーマンとされていますR氏、皆々様の本当に誠意ある御答弁、内容を包み隠さず、うそ偽りなく誠意ある御答弁をいただいて、この問題が国民の目から見て少しでも真相究明、明らかになることに近づくように心からお願い申し上げまして、質疑を終えます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて小川君の質疑は終了いたしました。

 次に、高井崇志君。

高井委員 岡山から参りました高井崇志でございます。

 引き続き、天下りの問題について、私も質問させていただきたいと思います。

 天下りはそもそも何が問題なのか、なぜ許されないのか。幾つも理由はあると思います。しかし、私は、最大の問題は、やはり税金の無駄遣いにつながるんだと。天下り先を確保するために、本来の必要性とは別な組織を温存したり、あるいは新たにつくったり、公費を投入したり、必要でもない事業に税金が投入される。この天下りの実態がある限り、予算案にもそういう予算が含まれている可能性は高いわけです。だから、この予算委員会でもこれだけ取り上げているわけでありますし、予算案の審議が終わるまでにこの天下り問題の全容解明は不可欠である。

 そういう意味では、先ほど、小川委員の答弁に、山本大臣は曖昧な答弁でありました。私からも強く、この全容解明の、まずは全府省の調査の結果を出すということをお願いしたいし、また、予算委員会の審議においてこの天下り問題の全府省の調査の結果というのが報告されることは、もうこれは不可欠だと思いますので、委員長、お取り計らいをよろしくお願いします。

浜田委員長 理事会で協議をさせていただきます。

高井委員 これは強くお願いしたいと思います。

 私は、民進党のムダ遣い解消プロジェクトチームという事務局長を務めております。私たちは、政府の調査よりも先駆けて、既にこの問題について全府省からヒアリングを行っております。きょうはその立場で、そこからわかった幾つかの点について御質問いたしますが、残念ながら、政府は余り協力してくれません。

 そういう意味では、これは本当に国民の皆さんの大きな関心事であり、また予算案審議にとっての極めて重要なことでありますから、我々民進党として行っているこの調査にも政府はきちんと協力をしていただきたい、そのことをまずお願いしたいと思いますが、これは、山本大臣、事務方にきちんと協力するようにということを伝えることを約束いただけませんか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

山本(幸)国務大臣 当然、できるだけの協力はさせていただきたいと思いますが、今我々が全力を挙げて全府省に対して調査をやっているところでありますので、それを徹底していきたいと思います。

高井委員 政府がやる調査と、国会議員、我々野党がやる調査というのは、やはり性質も違ってきますし、またそのスピード感が先ほどから言っているように全然違うわけでありますので、我々としてしっかりまずこの調査を進めますので、その点はよろしくお願いいたします。

 今回の事案は、私たちは文部科学省にとどまらないのではないかと思っています。それは、そもそも、今の国家公務員の再就職の制度、平成十九年、第一次安倍内閣のときにできた制度ですが、これがもう既に機能していないんじゃないかというふうに思われます。

 もともとは事前規制でした。国家公務員が離職後二年間は営利企業に対して再就職は原則できない、そういう事前規制だったのを、平成十九年に事後規制そして行為規制に転換をした。三つ禁止事項があって、一つは省庁によるあっせんは禁止、二つ目は在職中の求職活動は禁止、そして三つ目、再就職者による働きかけ、いわゆる口きき、これを禁止するという三つが柱なんです。

 この間、再就職等監視委員会で摘発した事例というのは八件のみであります。そして、先ほどの省庁のあっせん禁止、一番目は二件、それから二番目の在職中の求職活動禁止というのは六件です。そして三番目の再就職者による働きかけ、これは一件も摘発した事例はありません。しかも、この八件のうち懲戒処分されたのは一件だけです。あとの七件は、事案が公表されたのみで、何ら処分はないんです。

 それはなぜならば、退職した後の人は処分できないから、そういう理由です。現職の人は懲戒処分ができますが、退職した人は何もおとがめなしなんですね。これは、そもそもこの法律に問題がある。後から議論したいと思いますが、刑事罰を導入すべきじゃないか、そういう議論になってまいります。

 そして、もう一つ。今六件あるという在職中の求職活動の禁止、これは一番わかりやすい例、今回もそうなわけでありますが、では、これも本当にこの六件だけなのかというのは極めて疑わしい。

 実は、きょうも議論になっていますが、離職した日の翌日に再就職している例というのがかなり見受けられます。この場合、翌日ですから、在職中に求職活動をしていたんじゃないかと容易に想像できるわけですが、大臣、この離職日の翌日に再就職している例というのは全部で何件ありますか。

山本(幸)国務大臣 平成二十一年度から現在までの間に、これは平成二十八年度第二・四半期までですが、把握している件数のうち、離職日の翌日に再就職しているものは千二百八十五件でございます。

 一方で、再就職先が離職時の職員の職務に対して利害関係企業等の要件に該当するか否かについては、当該職務内容に応じて異なるものでありまして、それぞれの離職時の府省において判断されるものだと考えております。

高井委員 私、次に聞こうと思っていたんですけれども、では、この千二百八十五件のうち、利害関係企業等に該当するものは何件ですかというふうにお聞きしようと思ったら、今答えていただきました。まあ、事前通告していましたから。これは答えられないという答えなんですね。

 つまり、利害関係企業等というのは厳密に七つ要件がありまして、許認可等を受けているか、補助金等の交付を受けているか、検査、不利益処分、行政指導、契約、犯罪の捜査と、七つ、明確に要件が定められているわけです。人事課の職員であれば、あるいは国家公務員全員が本来知っていなければいけないことなわけであります。

 では、これに先ほどの千二百八十五件が該当するかどうかというのを、きのう聞いたとかなら作業に時間がかかるというのはわかりますが、実は、私たちは、これを一月二十五日、十二日前の水曜日に内閣人事局を通じて全府省庁に聞いているんです。ところが、いまだに、十二日間かかっても、この数字が出てこない。きょう国会で質問しますと言っても、いまだに、何か全府省庁で作業しなきゃならないから出せませんと。十二日間、では一体何をやっていたのか。

 これはやはり、この問題が明るみに出ると、全省庁の再就職規制違反というのが出てしまうから、それを隠したい、そういう意図があると感じますが、山本大臣、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 隠すとかそういうことは全くないと思いますが、これは各府省じゃないと判断できないところでありまして、各府省で判断すべきものだと思っております。

高井委員 各府省にも聞いているわけです。きょうは、全府省来ていただくわけにいきませんので、何名かの大臣に来ていただいていますが、特に、我々は、いわゆる天下り、再就職が多い省庁、十三省庁に来ていただいてヒアリングをいたしました。一月の三十一日、先週の火曜日です。

 それで、各省庁において、こういった再就職した人、特に離職日から翌日に再就職しているなんというケースは、これは在職中に求職活動をしていたんじゃないかと容易に想像できるわけですから、こういったケースについて確認をしていますかと聞いたところ、十二府省のうち、実に七省庁が確認していないという趣旨の答えをしていた。先週、神山委員が資料も出したと思います。

 こういった回答なわけですが、私もその場にいました。財務省それから国土交通省は、かなり私はしつこく、こういう、翌日についても、離職してすぐに再就職しているようなケースというのは、本当にこんなケースも確認していないんですかと聞いても、いやいや、改めて確認はしていませんというのが事務方の答弁でありましたが、麻生大臣それから石井大臣それぞれ、本当に、この翌日に再就職していないようなケースについても確認はしていないんでしょうか。

麻生国務大臣 お尋ねの件ですけれども、財務省においては、離職日の翌日に再就職する旨の届け出が出された場合には、従来から、離職者の離職前の職務と再就職先の利害関係の有無等々を確認させていただいております。

 いずれにいたしましても、さまざまな機会を捉えて、この再就職規制の遵守というものの周知徹底を図っていかねばならぬと思っております。

石井国務大臣 国土交通省におきましては、再就職の届け出につきましては、届け出ごとにその記載内容を確認の上、再就職等規制に違反する行為があると疑われるような事案があれば必要な調査をすることになりますが、これまで、本人に対し、個別に再就職の経緯等を確認するといったことまでは行っておりません。

 なお、これまで、離職日の翌日に再就職をしていたものは、全て、利害関係のない法人等に対し就職前に再就職の約束をした場合であって、特段の問題はないものと認識をしております。

高井委員 麻生大臣の答弁は、そのプロジェクトチームで、私がこれはもう全部メモ起こしまでして、録音もとっておりますけれども、ちょっと違うなというところもあります。

 また、国土交通省は、明らかにそれはやっていなかったということでありますが、再就職の利害関係企業には該当しないということでありますが、しかし、これは翌日のケースはそうだったという答えなんですけれども、別に翌日じゃなくても、一週間とか、半月とか、一月とかいうケースは山ほどあるわけでございまして、こういったケースについて、政府として、利害関係企業等に該当するかわからない、答えられないんだということは、私は、これは本来、そもそもおかしいんじゃないか。

 やはり政府として、これは内閣人事局の担当者からも、このプロジェクトチームのヒアリングの場で、届け出を受けた時点でのチェックは各省にお願いしますと、それはいろいろな場で、研修の場とかで再三申し上げていますと言っているわけです。ですから、内閣人事局はそうやってお願いしているわけですよ。

 ところが、各府省は全くそれをやっていない。確かに、特に再就職が多い省庁は大変かもしれませんが、しかし、そこを確認しなかったら、どうやって在職中の求職活動をやっていたかどうかなんてことはわからない。それはもちろん、聞いたって正直に答えるかわかりませんが、少なくとも、そこを確認せずに、これがこういう実態になっているということは私は極めて不自然だと思います。

 これは、内閣人事局というか山本大臣、改めてこれを今後は徹底させる、あるいは、今までやっていなかったということに対して大臣としてはどういうふうにお考えですか。

山本(幸)国務大臣 その点は御指摘のとおりでありまして、実はこれまでも、内閣人事局としては、再就職の適正化ということで、求職活動についてのそういう届け出があった場合、現役時代に求職するということで届け出をした場合には、これは何回かのあっせん規制違反等があったことを受けまして、やっております。最新では、平成二十六年の八月二十九日付で人事局の人事政策統括官から各府省の官房長宛てに出しているわけであります。利害関係企業等への求職活動の禁止等についてですが、任命権者に提出された届け出については個別に内容を確認するとともに、再就職等規制違反が疑われる事例があった場合には必要な調査を行うことということで、しっかりと調査するようにお願いしているところであります。

 これが十分に守られていないということはやはり問題があると思いますので、この点について、私は、私の名前で出すか、あるいは違う形でやるか、今改めて、再度各省に注意を喚起したいというように思っております。

高井委員 本当にこれは極めて問題だと思いますので、徹底していただきたいと思います。

 それでは、きょう、ちょっと資料をお配りしております。これは公表された資料に基づいて、もう氏名も公表されているんですが、さすがにこの場で氏名まで載せるということはちょっと配慮して、氏名は除きましたけれども、いずれも公表資料です。

 先日のムダ遣い解消PTの中で財務省と金融庁に対して質問をしたんですが、これもいまだに回答が返ってきていないので、きょうお聞きしたいと思います。

 まず、一枚目の金融庁に関する部分ですが、ちょっと細かい字で申しわけないんですけれども、金融庁の検査局の総務課の統括検査官の方が、横浜銀行、東邦銀行と銀行に再就職している。それから、証券取引等監視委員会事務局の証券検査官の方がマネースクウェアホールディング、それから、監視委員会事務局の統括検査官はSBI証券。これは明らかに利害関係企業等に該当すると思われるわけですが、ここで見ていただくとおり、非常に極めて短い離職日です。

 この八十番について言えば、三月三十一日に退職して四月二十四日ですから、わずか二十四日間で利害関係等企業に再就職しているわけですが、こういうケース、本当に二十四日間で再就職したのかということを当然金融庁は確認しておくべきだと思いますが、この件について、どういう経緯なんですか、すぐに資料を出してくださいと言ってもいまだに回答がありませんが、大臣、お答えください。

麻生国務大臣 まず、御存じかと思いますが、この人たちはまず役人になる前に全部銀行員ですから、そこだけちょっと混線せぬでください。何か、聞かれていると、いかにも三十年奉職した人が天下ったように聞こえますけれども、金融庁に勤める前に銀行に二十年とか長いこといる人ばかりが途中採用で金融庁に来て、数年いてかわったという話ですから、そこのところをちょっときちんとされないと、きょうはテレビがありませんから、別に、ここにいる方だけが理解されるだけのものでしょうけれども、その点だけはぜひきちんとしておいていただければと思っております。

 いずれにいたしましても、退職した職員から国家公務員法に基づく届け出というものが提出された際には、離職日から再就職までの日が比較的短いなどの場合において、人事担当者を通じて、必要に応じた確認をさせていただいておるのが実態であります。

 しかし、いつ、どのような形で就職活動を行ったのか。これはちょっと個別の再就職の件なので、この今の四人に関して言わせていただければ、もとの銀行、金融関係からのあっせんというか、友人等々からの口ききが多かったと理解しております。

高井委員 今お答えいただいたようなことも、今初めてここでお聞きするわけです。

 先ほども言いましたけれども、先週の火曜日にこのヒアリングで聞いて、その回答の期限も区切って、木曜日までには出してください、予算委員会で質問する可能性がありますからと言っていても、何の返答もなくて、今になってそういうお話を、だからいいんだというわけにいかないと思います。

 こういったことをやはり我々にきちんと説明していただかないと、少なくとも、利害関係企業に該当するのかどうかぐらいを説明できないというのは、全く、我々がこういった調査をする妨げになりますから、何か内部事情を教えてくれとかいうことじゃなくて、客観的、外形的に明らかな問題でありますから、これはぜひ、全府省庁におかれて至急に作業していただいて、速やかに回答いただきたいと思います。

 ちょっと時間も過ぎましたから、先に飛ばさせていただきたいと思います。

 では、もう一つ。この財務省の資料を引き続き見ていただきますと、ここに、離職日、七月一日にやめて九月一日に再就職という例が、三ページ目以降からずっと、若干飛ぶときがありますが、七ページにわたって約八十件、ほとんど同じような例があります。こういった例も何か不自然じゃないか、どうなっているんだというヒアリングで質問をしたけれども、これについても答えがいまだありませんので、これも、大臣、お答えください。

麻生国務大臣 今御指摘のありました話は、これは組織的なあっせんではないのかというお話なんだと思いますけれども、これを私ども財務省として組織的な再就職であっせんをしている事実はございません。

 再就職日は再就職者と民間企業との間の個別の事情によって決まるものですから、これは財務省でも必ずしも個別の事情を、一つ一つ個別に把握しているわけではございません。

高井委員 こういった例について、我々としては、一万件以上この再就職のリストがありますので、今一つ一つチェックをさせていただこうと思っておりますので、これについては、それぞれどういう経緯であるのかということを真摯に、誠実に御回答いただきたいというふうに思います。

 それともう一つ、この天下り規制に大きな抜け穴があると考えています。

 それは、最終職歴が大臣官房付、あるいは、ここにもありますが主計局局長付、こういう形で、どうも聞くと、一日だけ大臣官房付になって再就職していると。これではほとんど意味がない。その前にどこの職にいたかということが重要であるわけでありますが、これについて、では、こういった官房付というのは何件あるんでしょうか。

山本(幸)国務大臣 平成二十一年度から現在までの間、これもさっきと同じ、平成二十八年度第二・四半期までに把握している件数でございますが、離職後の再就職情報の届け出がなされたもののうち、離職時の官職が大臣官房付であったものは千二百七十八件でございます。

高井委員 千二百七十八件が要するにこの資料だけ見ても何の意味もなさない。そもそも公表する意味がないんじゃないか。

 しかも、いろいろ聞いてみると、文部科学省だけは前職が、どこにいたかというのを出してもらって、もう出てきているんですけれども、やはり利害関係企業等に該当したと考えられるケースもありますし、あるいは、最近多いのは、独立行政法人などに現役出向して、そして、その現役出向者が一旦戻ってきて一日だけ大臣官房付に配属されて、そしてまた同じ独立行政法人に再就職する。これはもう天下りじゃないですか。現役出向していたという理由で、それを隠すために、隠すためかわかりませんけれども、結果として国民はわからないわけです。

 これは公表の意味をなしていないと思いますが、これはすぐにでも大臣からの指示で、こういう大臣官房付のようなものは、書いてもいいけれども、括弧して前職を書くというのが当たり前だと思いますが、大臣、そうする考えはありませんか。

山本(幸)国務大臣 今、全府省庁、調査をやっておりますので、その調査をしっかり、結果を出して、それを見て、御指摘の点も含めて検討したいと思います。

高井委員 大臣は、あらゆる答弁が全府省調査を待ってということなんですが、こんなことは本当に調査を待たずとも、我々のレベルでやった調査でももう明らかになっていることでありますから、せめてそういったものぐらいは御答弁いただいてもいいんじゃないかと思います。

 また、この全府省調査でありますけれども、この委員会でも何度か話題になりました、後藤委員からも、先ほど玉木委員からも、在職中にやりとりをしていたメールとか、これをやはり保存しておかないといけない、それが消去されてしまったら元も子もないじゃないかという話であります。

 ただ、メールというのは、今、サーバーに全部残っています。今回、再就職等監視委員会もそういう手法も使ってこの実態を解明したと聞いています。そういう意味では、メールサーバーまでチェックをする、開示を求める、そういうところまで当然この全府省調査というのはやると思っていますが、大臣、そのくらいは御答弁いただけませんか。

山本(幸)国務大臣 具体的な調査方法につきましては、調査対象者に不適切な対策をさせないために、お答えは差し控えたいと思いますけれども、御指摘の点にも留意しつつ、徹底した調査をやってまいりたいと思います。

高井委員 これは、ここまでやるとかなり実効性がある調査になると思いますので、留意しながらという御発言、慎重な物言いではありましたけれども、やはりこれをやらないと私は国民は納得しないと思います。調査はそれぞれの担当者からヒアリングだけして全省庁やりましたと、そんなものでお茶を濁しては到底納得できないということは申し上げておきたいと思います。

 それでは、続きまして、実は、私どもの民進党でムダ遣い解消プロジェクトチームというのを始めて、目安箱というのをつくりました。ホームページ上からいろいろな無駄についての通報をしていただくというもので、昨年の十一月ごろから始めておりますが、現在、百五十三件、内部通報をいただいております。このうち、天下りに関する件は十二件ございました。この問題が発覚してからばたばたっと来たものでありますが、きょうは、このうちの二件についてちょっと質問をいたします。通報者には、もちろん名前は出しませんが、御了解いただいております。

 まず一つ目は、厚生労働省が所管をします日本社会事業大学についてであります。

 これは、福祉指導者を育成するために昭和三十三年に設立された私立大学です。昭和四十五年から九代続けて事務局長が天下り、そして専務理事は昭和五十七年から五代続けて天下り、いずれも厚生労働省出身者です。

 今の事務局長の一代前の事務局長は、先ほど問題にした離職日の翌日に就任をしています。そして、その離職時点の役職は、社会・援護局の企画課の室長でした。実は、この日本社会事業大学は、社会・援護局の福祉基盤課というところが利害関係に当たる部署だということで、セーフだということなんですが、しかし、法律上そうかもしれませんが、この方は企画課の室長です。そして、その前は社会・援護局の総務課の室長。総務課というのは全部見るわけですね、所掌を。こういった実態がある。

 そして、もう一人、専務理事もいて、この方は社会・援護局の総務課長だったという方です。この方は、先ほど話題になった大臣官房付という役職で退職をしています。

 こういった例について、今回の内部通報によると、今、この専務理事、事務局長が福祉基盤課としょっちゅう行き来をしてやりとりをしていると。

 実は、この件は、かつて長妻厚生労働大臣のときに、それまで覚書があったんです。教職員の人事については、厚労省とこの日本社会事業大学が事前協議するという覚書があって、それが発覚して、長妻大臣のときにこれは破棄をさせた。しかし、破棄をしたのに、いまだにこういった連絡体制があって、これは告発者の証言でありますけれども、しかし複数の人が聞いていると言っていますが、この専務理事や事務局長は、予算の交渉に福祉基盤課へ行ってくる、ちょっととってくるわみたいな、そういう発言をしていると。こういうことは、先ほど問題になっている、退職後の働きかけに該当する可能性もあるわけです。

 こういった通報が来ておりますけれども、これを我々が福祉基盤課に聞いたところでまともな答えが返ってくるとは思えませんので、こういった内部通報があるわけですから、これは厚生労働省には直接行っていないかもしれませんが、今、私からお伝えしますので。

 これは、塩崎大臣、こういう今の御時世でもあります。非常に国民の皆さんも関心を持っている天下りの一つの事例かもしれないわけでありますから、徹底的に調査をしていただきたいと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただいた日本社会事業大学、今経緯についても少しお話がありましたが、これは、終戦直後、昭和二十一年に、実は日本社会事業学校としてスタートいたしました。これは、戦後の社会事業の専門的な人材育成をしよう、こういうことでつくられたものでありまして、それが昭和三十三年に四年制の大学になったということで、今日でもこの社会事業大学は、指導的な社会福祉事業従事者の養成を担ってきた、言ってみれば福祉の専門大学の草分け的な存在でございます。

 もちろん、大学は、先ほど覚書の話がございましたけれども、大学の規程に基づいて、今、各分野の関係者から成る評議員の合議によって人事は決められているわけでありまして、前事務局長につきましては、今少しお話がありましたが、平成二十一年当時に離職日の翌日に再就職した個別の事情については、これは我々が関知する問題ではございませんけれども、理事長を初めとした執行部がさっき申し上げたようなプロセスにのっとって採用していると承知をしております。

 今お話があった、やめるときに前職はどこだったか。それは、実は、社会・援護局の障害保健福祉部の企画課の自立支援振興室長というのをやっていた方でありまして、この大学の委託費というのがございますが、これを所管するのは社会・援護局の福祉基盤課ということで、部が違うところの企画課におりましたので、今御指摘になったのは少し正確性を欠くかなというふうに思いました。

 いずれにしても、大学が規程に基づいて選んでいるわけでありまして、では、何でいろいろ、厚労省に出向いて何かいろいろやっているんじゃないかみたいな御指摘が来ているというお話をいただきましたが、厚労省は、日本社会事業大学に対しまして、指導的な社会福祉事業従事者を養成するための事業を持っておりまして、それを委託費として交付しています。社会事業学校経営委託費という名前で委託費をお願いしておりまして、このために、厚労省の担当課、さっきお話をいただいたところでございますが、そこに、委託事務の実施に必要な経費の積算などに当たって、必要な情報について大学関係者からこの担当課がヒアリングを行っているわけでございます。

 それで、国家公務員法との関係はどうなんだ、つまり問題がないのかということでございますが、これにつきましては、国家公務員法の第百六条の四の再就職者による依頼等の規制というのがございますが、行政庁から委託を受けた者が行う当該委託に係るものを遂行するために必要な場合には、再就職した職員OBによる働きかけを禁止する国家公務員法の規定は適用しないということが書いてありますね。この規定に当たるものであって……(発言する者あり)聞いていただけますか。こうしたやりとりをしているのでありますので、この規定どおりでございますから、規制違反には当たらないということであることを御理解賜れればと思います。

高井委員 私は規制違反だとは言っていません。

 それで、例えば、今、企画課の室長とおっしゃいましたけれども、その前は総務課、総務課というのは局の全体の室長ですから、確かに法令違反ではないんですが、しかし、冒頭申し上げたとおり、私は、この法律がそもそももう機能していないんじゃないか。

 国民の皆さんからすれば、離職のその日にどこにいたかだけで全て縛られているけれども、そのちょっと前には権限のあるところにいた人が天下って、しかも九代も続けてやっていて、しかも、内部告発のその人たちは、厚労省との口きき疑惑だけじゃなくて、いろいろな点で苦労しているということを訴えてきているわけですから、こういった点は、やはり今回の天下りそのものの問題の本質的な部分だと私は思いますので、ぜひこれは大臣のリーダーシップで、福祉基盤課が幾ら調べてもそんなのは出てきませんから、きっちり調査していただきたい。

菅原委員長代理 答弁はいいですか。

高井委員 いや、もう結構です。

 それで、実はもう一つあるんです。今度は経済産業省にお聞きいたします。

 これは日本機械輸出組合といいまして、平成二十七年にできた団体で、経済産業省の認可。毎年一千万から一千五百万の調査事業が発注されています。ここにも経産省から専務理事が平成十九年、今から九年前について、それから今、もう六十五歳ですが、いまだに専務理事をされている。

 そして、この団体については、もともと日本貿易振興会が特殊法人から独立行政法人に移行したときに、貿易投資環境整備等事業資金という名目でこの振興会に二十二億円の交付が行っています。この二十二億円がいまだに基金のように積み立てられていて、そこから取り崩しながら、役員の定年を超えた人件費も賄っているんじゃないか、そういう通報でありました。

 このことの問題は、この方は、実は経済産業省にもこのことは通報したそうです。文書もいただきました。それから、経済産業省からナシのつぶてであったので、今度は内閣官房行政改革推進本部事務局、ここは今の行政事業レビューなどをやっていますから、そういった面で内部通報を受け付けているんですね。そこの正式なフォーマットにのっとってやっても、何の連絡もない。そして、今度は会計検査院にも、会計検査院にもそういうルートが正式にあるんです、そこにもきちんと文書で書いて、日付や連絡先とかを全部書いて送っているのに何の連絡もないということで、今回、民進党のこの目安箱に回ってきたということなんです。

 やはり、国民の皆さんからのそういった切実な通報については、しかも、そういう部署を設けているわけですから、これはきちんと対応すべきであると思いますが、まずは、一番最初に通報があったという経済産業省、この法人の所管大臣でもありますが、世耕大臣、いかがですか。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 民進党にどういう通報が来ているか、これは我々はわかりませんが、今議員が御指摘の日本機械輸出組合の内部職員の方から経済産業省に通報があったということは承知をしています。それが民進党に行っているものと一緒かどうかはわかりません。

 ただ、我々に来た通報内容は、法令違反ですとか組織運営上著しく不当な疑いがあるような内容だという判断はしておりません。どちらかというと、組合の内部の規律の問題だというふうに認識をしています。

 また、特に、これは複数のこの組合のプロパー職員の行為がこの文書の中で指摘をされておりまして、いわゆる経産省からOBが行っている、これは確かに事実でありますが、そのOBが在籍をしているということとこの通報の内容には直接関係がないというふうに判断して、我々は対応をさせていただいております。

 なお、経済産業省は、通報者に対して決してナシのつぶてというわけではなくて、経産省は、日本機械輸出組合に対して、雇用の上限年齢や、役員、賃金水準等に関して関与する立場ではない、この問題についてどうも問題を指摘されていた文書だったようですから、そういったことには関与する立場ではないということを、組合の内部の問題であると考えている旨を通報者には説明させていただいているところでございます。

高井委員 私は通報者からは、連絡を聞いたというふうには、何か電話が一本ぐらいあったのかもしれませんけれども、経済産業省に出したという資料は全部いただきました。それはですから共有をしています、同じ問題意識です。私の感覚からすれば、せめてきちんと会って話を聞くくらいはされて、その上でどう対応するかは判断だと思いますけれども、やはりそのくらいするべきであったと。

 今回の件も、この通報があったときは、最初は、いや、そんな通報はありましたっけというような感じでした、経済産業省の中も。もちろん、質問通告したから、過去のいろいろな資料を引っ張り出してきて調べたとは思いますけれども、やはりこういった体制、特に、山本大臣、これは公務員制度全般の問題にもかかわってくる、また行政改革推進本部ではそういった受け付け体制もあるわけですから、これは政府全体として、きちんとこういったものについては真摯に向き合う、対応するということをぜひ約束していただきたいと思いますが、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 私も行革推進本部を担当しておりますので。ただ、この件について具体的にはまだ承知しておりませんので、しっかり調べていきたいと思いますが、基本的に、そうしたことがあれば真摯に対応すべきだというふうに思っております。

高井委員 それでは、公務員制度、そしてこの再就職の問題、やはりここは私は、いろいろな問題点が出ている、今までの質疑の中でも明らかになったと思いますし、もう抜本的見直しをした方がいいと思っています。

 具体的に幾つか提案したいと思います。

 まずは、今回、先ほども申し上げましたけれども、再就職等監視委員会が摘発をした事例八つのうち、懲戒処分になった人は一人だけなんですね。あとの七つはおとがめなし、それはもう退職後の方だからどうしようもないんですと。懲戒処分というのは退職した方には適用されませんから、やはりここは刑事罰を設けるべきではないか。

 これについては、先般、自民党の河野委員からもそういう提案がありました。河野委員からの提案というのは、もともとのあっせん禁止の方についても刑事罰がないと。これは、あっせん禁止については、刑事罰があると捜査当局が強制捜査できる、先ほどの電話の記録の聴取とかそういったこともできるということであります。

 今のままの懲戒処分だけということであれば、懲戒権を持っているのは人事当局ですから、人事課長だったり、官房長だったり、事務次官ですから、その方々があっせんというのはやっている例がほとんどなわけですから、言葉は悪いですけれども、泥棒が泥棒に泥棒したのかと聞いているようなものだ、こういうふうに言っている評論家の方もいます。

 こういう今の制度は、もう既に私はほころびがあって機能しなくなっていると考えますが、刑事罰をまず導入すべきではないかという点、山本大臣、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 国家公務員に対する懲戒処分は、公務員関係の秩序維持を目的といたしまして職員の義務違反に対して加える制裁措置でありまして、この措置については公務員関係の存在が前提となります。

 今回の文部科学省の事案に関しては、前文部科学事務次官を含め、厳正な懲戒処分等が行われるとともに、退職後であっても今回の事例のように再就職先を離職せざるを得なくなったりするなど、社会的制裁も受けていると考えております。

 現行再就職規制による厳格な監視のもとで違反行為が行われるようなことがあればこのような厳しい制裁を受けるということを全ての国家公務員に肝に銘じてもらうべく、規制の周知及び遵守の徹底を図ってまいりたいと思います。

 刑事罰導入云々につきましては、これは、不正な行為があれば離職後であっても刑事罰はかかるという体制に今のところはなっているところであります。

    〔菅原委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕

高井委員 山本大臣は、ほかのことの質問は全府省調査が終わってから、実態を解明してからと言うんですけれども、この制度の話になると否定をされるわけです。しかし、これは全府省調査をやってみてから考えることじゃないですか。今、役所が書いた答弁を読まれたと思いますけれども、ここだけはそういうふうに答弁をするというのは私はちょっといかがなものかと思います。

 では、もう一つ提案します。

 そもそも、事前規制から事後規制に変えた、行為規制に変えたことがやはり問題だったんじゃないか、私は、かつての事前規制をもう一回復活すべきだと。

 ただし、かつての事前規制は問題がありました。離職後二年間という限定があったことと、それから営利企業だけしか範囲としなかった。これについては、当時の民主党は、二年を五年間に延ばすということと、それから営利企業を非営利法人まで広げるということを提案したわけですが、残念ながら当時は我々の提案は受け付けられませんでしたけれども、改めて、この提案、山本大臣、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 私どもは、十九年の国家公務員法改正において、従前は、二年間という期限を区切ってその期間は禁止でありますが、しかし各役所はあっせん行為を公然とやるということが行われていたわけでありまして、これに対して、そういう各府省がやるあっせん行為は全面禁止するんだということで、まさに行為そのものを全面禁止したわけでありまして、これは大きな改革だったというふうに思っております。

 そして同時に、それをチェックするための再就職等監視委員会をつくりましてチェックしているわけでありまして、その監視機能がまさに働いたからこそ、今回の文科省の事案が発覚したというふうに思っております。

 これは、そういう意味では機能が発揮されたということでありますが、問題であったことは確かでありまして、それについて、ほかの省でないかどうかの徹底的な調査を今私のもとでやっているところであります。

 その意味では、そういうやり方にしたことについて、これは私は方向としては間違っていなかったというふうに考えております。

高井委員 今申し上げた提案は、かつて公明党も同じ提案をしていたと思いますが、石井大臣のお考えはいかがですか。

石井国務大臣 私は、公明党を代表する立場にございませんし、また、国家公務員の再就職規制についてお答えする立場ではございません。

高井委員 もう一つ提案したいと思います。

 独立行政法人の公募制度。今回の再就職規制のもう一つの方法は、再就職先をしっかりする、これについては、平成二十一年から独立行政法人の公募制度というのが始まっています。

 ところが、どんどん尻すぼみになっています。民主党政権のときには、もう事前に数字を教えてもらったんですけれども、公募した独立行政法人のポストの数は百七十二ありました。民主党政権三年三カ月で百七十二。ところが、第二次安倍政権四年一カ月で公募数は四十六です。百七十二が四十六まで減りました。それから、公募したうち公務員がなった場合と民間人がなった場合。民主党政権のときは、公務員四十七、民間人百十八でした。ところが、第二次安倍政権になってから、公務員二十八、民間人十八で、公務員の方がふえてしまっている。

 これは明らかにこの制度が後退したというふうに考えますが、これは、山本大臣、いかがですか。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

山本(幸)国務大臣 公募は、独立行政法人等の役員について公正で透明な人事を確保する観点から、広く候補者を募った上で有識者による選考委員会等の選考に付し、その中から最も適当と考えられる者を任命権者が任命するために実施する手続でございます。

 それで、ただいま委員が紹介されたような実績があるわけでありますが、これは、公募の都度、選考委員会による選考、推薦を経て、任命権者において最適任者を選任した結果の積み重ねでそういう状況になっていると受けとめております。

 公募の仕組みが始まって間もない民主党政権時の状況と第二次安倍政権以降の実績とを単純に比較することには、余り意味はないものと考えております。

高井委員 種々提案をいたしました。

 そのほかにも、そのほかというか最も根幹なのは、この再就職の問題は、公務員の人事制度そのものをやはり見直していかないと、今のキャリア、ノンキャリアという制度を含めて、早期退職を促される、肩たたきがあるというところにも大きな問題がありますので、この点も含めて、これを機にしっかり解決していきたい。

 また、改めて申し上げますけれども、この天下りの問題の全容解明なくしてこの予算の審議というのは成り立たないということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて高井君の質疑は終了いたしました。

 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 日本の労働基準法第三十二条は、週四十時間、一日八時間と労働時間を定めており、原則、残業は禁止です。原則どおりならば家族で夕食を食べられるはずの我が国で、いわゆる過労死ラインを超える長時間労働が横行しているのはなぜか。

 配付資料一をごらんください。労働基準法第三十六条が、労使間で結ぶ三六協定を結べば例外として残業は可能としており、その上限について、大臣告示で週十五時間、月四十五時間、年三百六十時間までとしております。問題は、この三六協定で特別条項に明記すれば、残業時間の上限を幾らでも延長できるということになっていることです。

 青天井の残業に法的お墨つきを与えているのは、この三六協定の特別条項だけではありません。本日は、政府が指定する業務を残業時間規制の適用除外にしている問題について質問いたします。

 厚労省は、二〇一三年十一月十八日、労働基準局長通達で、それまでに新規制基準に基づく審査の申請を行っていた原発の再稼働審査業務について、労働基準法の残業時間に関する規制の適用を除外し、年間三百六十時間以内におさまれば、法律の基準である月四十五時間を超える残業が認められるようにしました。

 この通達を出す以前は、残業時間限度基準の適用除外とした電気事業における対象業務、これはどういうものだったでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法第三十六条により認められる時間外労働につきましては、御指摘もありましたように告示で上限時間が定められておりますけれども、公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務で厚生労働省労働基準局長が指定するものにつきましては、その一部を適用除外することとされております。

 従来からこの指定が行われている業務といたしましては、電気事業に関しましては、発電用原子炉及びその附属設備の定期検査並びにそれに伴う電気工作物の工事に関する業務、これが指定されているところでございます。

真島委員 原発の定期検査にかかわる業務を残業時間限度基準の適用除外の対象業務としている理由を具体的に述べてください。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 発電用原子炉等の定期検査に関する業務は、公益事業、すなわち電気事業でございますけれども、電気事業における業務でありまして、また、その安全な遂行等を確保する上で集中的な作業が必要とされることから、限度基準告示の一部を適用除外としているところでございます。

 なお、他に限度基準告示の適用除外として示されている公益事業としては、ガス事業に関するものがあるところでございます。

真島委員 公益事業という非常に漠然とした言葉なんですけれども、辞書を引いたら、公衆の日常生活に欠くことのできない事業と書いてあります。つまり、そういう事業であれば、国民多数の支持が得られるような事業でないといけないと思うんですけれども、どの世論調査を見ましても再稼働反対は五割を超えて、揺るがぬ多数を続けております。

 塩崎大臣にお聞きしますが、原発は公益事業であるということがその定期検査にかかわる業務を残業時間規制の適用除外の対象業務としている前提になっているわけなんですけれども、福島第一原発の事故の後、原発の公益性の意味は変わったんでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど労働基準局長からお答え申し上げましたけれども、限度基準告示が適用除外となる公益事業として示されている事業は二つございまして、電気事業とガス事業でございます。原発であることをもって公益事業であるとしているわけではございません。こうした考え方は、平成二十三年三月十一日の福島第一原発事故の前後で変わっているわけではございません。

真島委員 電気事業というくくりで公益事業と言っているから、原発についての公益性は福島の事故の前と後も変わっていないという、本当に驚くべき答えでした。

 福島の事故を体験して、国民は、原発の危険性、事故の被害の深刻さを目の当たりにしています。公益性の前提であった安全神話は完全に崩壊しております。ところが、安倍政権は、原発は重要なベースロード電源だから公益事業だという理屈を持ち出して、今、再稼働しているわけなんです。

 私もちょっと一言言わせていただきたいんですが、このベースロード電源というのは、政府が言うには、安定的で低コストに供給できる電源だということなんですね。

 原発なしに安定的に電力を供給できないということがまことしやかに言われてきましたが、この間、二年近い原発稼働ゼロ体験を国民はいたしました。原発なしに日本は十分やっていけるということは国民的な認識になっている。

 もう一つは、原発が最も低コストの電源だと言われてきましたが、先日、福島原発事故の処理費用がこれまでの倍の二十一・五兆円、そしてこれらを税金や電気料金に上乗せして国民にツケを回す。その一方で、加害者である東電は原子力賠償機構によって救済をして、東電の株主や資金を貸した金融機関には何の責任も問わない。原発で稼いできた企業自身が尻拭いもできないほど高い発電だということを認めたようなものですよ。

 ベースロード電源の意味になっている、安定的、安いということは、二つとも真っ赤なうそだということがもうはっきりしております。原発は公益事業という根拠が崩れていると思うんですが、定期検査にかかわる業務をこうして残業規制の適用除外にしていることを再検討すべきじゃないですか、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、公益性という意味においては電気事業の中で位置づけられているものでございますので、現在通達が出されているわけでございますけれども、今、そのような形で、公益性が特に変わっているわけでもございませんので、今までの考えどおりだと思っております。

真島委員 電気事業でくくっているから、福島の事故を経ても原発の公益性の意味は何も変わっていないと。

 これは、政府自身も、エネルギー基本計画の中では安全神話を一応反省するようなことを書いて、やはり福島の事故から再出発、そこを原点にして、エネルギー政策、再出発しなきゃいけない、原発についての立場はやはり変えなきゃいけないということをそれなりに書いているんです。結論として、ベースロード電源という、また虚構の公益性を持ち出して推進しているんですけれどもね。

 だけれども、厚労省は、全然変わっていないと。それで、原発で働いている人たちに過労死ラインを超えるような長時間労働を強いるという判断をしているのは、本当に驚くべき答弁だというふうに思います。

 塩崎大臣は、昨年十月十二日の衆議院予算委員会で、九州電力の求めに応じて適用除外としたと答弁しました。昨年十月二十五日の参議院の厚労委員会では、九州電力からは問い合わせしかなかったが、それを要望として受けとめたというふうに言いかえられました。

 配付資料二をごらんいただきたいんですが、二〇一三年十一月までに審査の申請を行った五つの電力会社の七つの原発について、通達発出前の検討段階で九州電力のほかの電力会社からの同様の要望や相談、問い合わせはなかったと答弁されているわけですね。

 つまり、二〇一三年十一月の労働基準局長通達でそれまでに申請のあった原発の再稼働審査業務を残業規制の適用除外の対象にしたのは、電力会社から要望や問い合わせがあったからではなくて、厚労省自身がみずからの考えで判断したというふうに答えられたんです。

 これは間違いないでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の通達でございますけれども、これは、電力会社から、九州電力でございますが、原子力規制委員会の審査に対応する必要があるとの要請があったことを踏まえまして、当時の労働基準局におきまして内容を検討いたしました結果、この新規制基準適合性審査に対応する業務が、公益事業における業務であって、その安全な遂行等を確保する上で集中的な作業が必要になる、そういう業務であるというような判断をいたしまして、限度基準の告示の一部を適用を除外することとしたものでございます。

真島委員 今の九電について、ちょっと正確に。

 あのときの、去年の臨時国会でのやりとりは、最終的に、九電の要請があって検討したんじゃなくて、九電からは要請ではなくて問い合わせしかなかったと答えられたんです、言いかえて。そして、九電以外のほかの電力会社は問い合わせも含めてなかったと。それを確認しているんです。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 九州電力から問い合わせがございまして、それを私どもといたしましては要請があったというふうに受けとめまして、検討したものでございます。他の電力会社からは特にそういった問い合わせはなかったところでございます。

真島委員 問い合わせがなかったけれども、厚労省自身が電力会社のことを思いやってそうしたということですか。

山越政府参考人 私どもといたしましては、これを要請と受けとめているところでございます。

真島委員 要請と言われたり、問い合わせと言われたり。九電は問い合わせがあってした、九電以外の電力会社は問い合わせも要請もないのにしたと。

 だから、電力会社からの要請に基づいて適用除外というのは検討を始めてやっていくものなのか、それは関係なしに厚生労働省の自主的な検討、判断でこの分野のこの業務はということで、これは限られて、ピンポイントで指定されていますよね、そんなに適用除外って広げたらいかぬから。だから、どっちなんですか。企業の要望で適用除外を検討しているんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、電力会社からの要請があったことを踏まえまして、私どもとして検討を行い、判断し、通達を出したものでございます。

真島委員 これは去年の臨時国会の答弁とも全く違うし、さっき答弁したことと、ころころ変わっていますよ、言っていることが。全然変わっていますよ、言っていることが。

 去年のやりとりでは、大臣も含めて、電力会社の問い合わせとか要望じゃなくて、厚労省自身が自主的にこれを判断するんだ、企業から言われてそんなのは考えるものじゃないみたいな答弁をされていましたよ。

 ところが、今は、要請をきっかけにしてやるんだというのは、全然違うじゃないですか。それでいいんですか。それが正解ですか。

山越政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の通達でございますけれども、電力会社から要請があったことを踏まえまして、私どもとして、この業務が……(真島委員「九電以外は」と呼ぶ)九州電力からでございますけれども、その上で、九州電力から要請があったことを踏まえまして、私どもといたしまして検討を行いまして、この通達を発出したものでございます。その前には、九州電力以外にはこうした要請はなかったと承知をしております。

真島委員 要請がないのに、九電以外はなぜ適用除外にしたんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この通達でございますけれども、電力会社、九州電力からの要請があったことを踏まえまして、当時の……(真島委員「違う、九電以外。九電以外と聞いているじゃない、さっきから」と呼ぶ)この通達でございますけれども、当時、九州電力以外からも申請がなされておりました。こういった申請がなされている業務につきまして私どもとして精査を行いまして、適用を除外することとしたものでございます。

真島委員 答えになっていないですよ。九電の要請をもって九電は適用除外を判断したとおっしゃっているのに、九電以外は要請も問い合わせもないのになぜ判断したんですかと聞いているんです。答えになっていない。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この通達は、当該業務が集中的な作業が必要とされる業務に該当すると判断して出しているものでございます。新規制基準におきましては、耐震、耐津波等に対する性能基準が強化されたため、さまざまな対策を検討し講ずることが必要となっておるわけでございます。

 また、新規制基準適合性審査におきましては、発電用原子炉の設置変更等、三つの適合性審査が行われるわけでございまして、こうした審査に対応するための作業が必要でございますので、これを集中的な作業が必要であるという業務と判断いたしまして通達を発出したところでございます。

真島委員 全然答えになっていないですけれども、ちょっと前に進みます。

 原子力規制委員長に確認しますが、個々の原発の再稼働の審査業務というのは、審査の結果として、動かせない、廃炉になる可能性もある、つまり、再稼働ありきで審査業務をやっているわけではないということでよろしいですね。

田中政府特別補佐人 事業者からの申請内容が新規制基準に適合しない場合は、そのままで許可するということはありません。

 その上で、事業者は新規制基準に適合するように努力するか、ないしは廃炉にするか、それは事業者の判断で、私どもの判断ではございません。

真島委員 つまり、再稼働ありきではないということなんですね。

 塩崎大臣にお聞きしますけれども、審査の結果、動かせない、廃炉になる可能性もある、こういう業務が公益上の必要があるというのはどういうことでしょうか。

塩崎国務大臣 御指摘の公益上の必要性でございますけれども、先ほども申し上げたとおり、電気事業それからガス事業といった公益事業を対象とするという意味であるということを申し上げたところでございまして、限度基準告示の適用除外につきましては、原発が再稼働するか否かということではなくて、公益事業の安全な遂行等を確保する上で集中的な作業が必要とされる業務であるか否かということで判断をされるというのが私どもの告示で示されている考え方だというふうに思います。

真島委員 公益事業、電気事業がそうだということでずっとさっきから言われているんですけれども。動くかどうかもわからない、それは電力会社の都合で、この原発を動かしたいということで審査を申請しているわけですよね。

 では、ちょっと原子力規制委員長にもう一度別のことを確認しますが、どの原発の再稼働を行うかということは各電力会社の判断であって、規制委員会の方が、この原発を動かしましょう、そのために審査しましょうと言っているわけじゃないですよね。

田中政府特別補佐人 先生御指摘のとおりで、原子力規制委員会は事業者からの申請に基づいて審査を行っておりまして、我々が原子力発電所を選んで審査はしておりません。

真島委員 今おっしゃったとおり、各電力会社の都合でこの原発を動かしたいか動かしたくないかということを判断して審査を申請して、合格するかどうかという前段階の話で、以前の、定期検査と言われる、動かすことを前提にした準備のための、安全の確保とか言われている、そういうものと全く質的に再稼働審査業務というのは違うんですよね。

 それで、再稼働審査業務は集中的な作業が必要とされる業務だとおっしゃっていますが、これはどういう意味でしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 新規制基準におきましては、耐震あるいは耐津波等に対する性能基準が強化をされましたため、重大事故の発生を防止するための対策でございますとか、重大事故の発生を想定した対策など、さまざまな対策を検討し講ずることが必要となっております。

 それから、新規制基準適合性審査におきましては、発電用原子炉の設置変更あるいは工事計画、保安規定の変更といった三つの適合性審査が行われるところでございます。こうした審査に対応するために多くの作業があることが想定されましたため、集中的な作業が必要とされる業務に当たると認めたものでございます。

真島委員 配付資料の二の右側の方に書いていますけれども、今、三つの審査業務というのを同時にやらなきゃいけないというのが集中的な作業を必要とされる理由としてよく説明もされているんですけれども、この三つの審査業務というのは、順次終了して、二つになり一つになっていくわけですね、最終的に。適用除外の理由として、三つを同時にやらなきゃいけないから大変なんだとおっしゃっていたんですが、最後の一つが終了するまでこの適用除外というのは続いているんでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この平成二十五年に発出をされました通達でございますけれども、新規制基準適合性審査に関する業務について限度基準の一部を適用除外とすることとしておりますので、したがいまして、この業務の全てが終了するまで限度基準告示の適用除外になると考えております。

真島委員 集中的な作業が必要とされる業務は何ですかと聞いたら、こういう三つの審査業務を同時にやらなきゃいけないからですという説明をされるんですよね。審査業務が二つになって一つになったら適用除外は終了するんですかと聞いたら、三つの審査業務で構成される再稼働審査業務が対象なので、最後の一つが終了するまで続きますと。これは本当に支離滅裂じゃありませんか。

 資料二の右側を見てください。

 設置変更許可の終了から最後の保安規定変更認可が終わるまで、高浜三、四号炉だと約八カ月です。伊方三号炉だと約九カ月、川内一、二号炉だと約八カ月もの長い間、残業規制の適用除外に労働者を置くわけです。

 規制委員長に伺います。今言われた再稼働の三つの審査業務、これには期限があるんでしょうか、いつまでにやらなきゃいけないという。

田中政府特別補佐人 三つの審査とも事業者の申請に基づいて行うものですので、私どもとしては期限は設けておりません。

真島委員 定期検査というのは二カ月という期限でやっているんですね。だから、その間に集中的に業務をやらなきゃいけないという理屈になっているわけです。

 原発再稼働の審査業務は、今規制委員長がおっしゃったように期限の定めがないわけですから、三つの審査業務があるとしても、社員に長時間労働で無理をさせなくてもいいわけです、十分体制をとれば。これはどうなんですか、大臣。

塩崎国務大臣 今、原子力規制委員長の方から答弁がございましたけれども、原発再稼働の審査業務には期限がございませんが、新たに設けられた新規制基準への適合性について行われる審査に対応するためには、短期間で多くのさまざまな業務を行っていくことが必要となるわけであります。

 労働基準局長から答弁申し上げたとおり、平成二十五年、二〇一三年の通達では、福島第一原発における事故を受けて、平成二十五年七月に原発の再稼働に関する新たな規制基準が設けられたこと、それから新規制基準に照らして三つの審査が行われることを踏まえて、当時の労働基準局長が、公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になると認め、こうした業務のうち、通達発出日以前に原子力規制委員会に申請されていたものに限り、三六協定の限度基準告示の適用を除外するというふうにしたものでございます。

真島委員 安全のために集中的な作業が必要なんだとさっきから言われているんですけれども、私はそれは全く逆だと思うんですね。過労死ラインを超えるような長時間労働を強いるのが本当に安全のためなのか、これは後で聞きますけれども。

 十月十二日の衆議院予算委員会で田中原子力規制委員長は、原子力規制委員会の事情によって事業者に審査の対応を急がせたということはありませんと言われております。

 では、この期限の定めのない審査の作業を誰が急がせているんですか、大臣。

塩崎国務大臣 基本的には、新規制基準そのものは、世界で最も厳しい基準ということで規制委員会の方でおつくりになられて、事業者たる電力会社の方は、原発の事業者の側はそれに合わせるために時間を凝縮してこの審査を行うということになるわけでございますので、一義的には、急ぐというのは、これは事業者の方の問題ではないかというふうに考えております。

真島委員 事業者の問題だと認められました。

 九州電力の瓜生社長は、川内原発がまだ再稼働していない一昨年六月の株主総会で、原発停止で厳しい経営状況が続いている、安全の確保を大前提に、原発の一日も早い再稼働を目指すと強調し、総会後の記者会見で、川内原発一、二号機を再稼働させ、赤字が続く収益をことしは何が何でも黒字にすると強調しました。

 福島の事故の後、同社の社長や会長は、原発を再稼働しなければ倒産する、原発を再稼働しなければ電気料金を値上げするしかないと、さんざん消費者や国民をおどしてきました。

 九電の瓜生社長は、昨年六月の株主総会後の会見の中でも、玄海三、四号機の再稼働時期について、本年度中に動かしたい、財務状況は依然厳しいと、早期再稼働に強い意欲を示しております。原発が動かないと収支が厳しい、夏までに、年内に、年度内にと社員をせかしつけているのは、大臣が認められたように、電力会社なんですよ。

 二〇一三年十一月の労働基準局長通達以降に再稼働申請もあっています。その中で、三つの審査業務を同時にやっている会社が六つの電力会社、そして七つの原発があります。でも、こっちは、その通達以降のものは適用除外にしていないんですね。これはなぜですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年七月に新規制基準が示されまして、電気事業者はこの新しい基準への適合性の審査に対応することが必要となったところでございます。こうした業務はこれまでに例のない業務であることを踏まえまして、通達発出の際に既に申請されておりました事案について労働基準局といたしまして検討し、それらに限定いたしまして適用除外としたものでございます。これによりまして、通達発出後に申請された案件につきましては適用除外の対象としていないところでございます。

真島委員 電力会社の要望で検討したとおっしゃったんだから、そういうことなんでしょう。こっちの方は、最初に出ているものは、物すごく急ぐ、一日も早く動かしたい、だからそういうことにしたということなんじゃないですか。

 昨年の十月九日の福井新聞がこう書いています。従来、公益性を理由にした適用除外はごく一部でしか認められていなかった、専門家は、再稼働対応は営利目的で、公益性や緊急性があるとは言えないと指摘している、政府が働き方改革を進める中で、厚労省の見識が問われると疑問視しているというふうに書いています。

 ここで、九州電力と四国電力が、この適用除外の対象となる審査を終えた後も残業時間の延長を大臣告示の上限を超えて続けている問題についてお聞きします。

 まず三点、基本的なことをお聞きします。

 一つは、これは再度確認になりますが、二〇一三年十一月十八日の労働基準局長通達の残業時間限度基準、この適用除外の対象というのは同通達発出以前に申請が出たものに限られていますね。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の通達が適用されるものでございますけれども、これは、通達発出時までに申請がなされているものでございます。

真島委員 川内原発は二〇一五年五月、伊方原発は二〇一六年四月にそれぞれ再稼働の審査を終えて、適用除外の期間が終了していますよね。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 通達発出時にこれが適用除外の対象となったものでありましても、既に許可とか認可が全て終了している原発につきましては、この限度基準告示の適用除外の取り扱いは終了しているものでございます。

真島委員 特定重大事故等対処施設の審査業務というのは、残業時間限度基準の適用除外の対象ではありませんよね。

山越政府参考人 特定重大事故等対処施設の審査に対する業務でございますけれども、これは限度基準告示の適用除外の対象とはならないものでございます。

真島委員 今お答えいただきましたけれども、ところが、昨年十月、我が党が聞き取り調査を九州電力と四国電力に行いました。その回答は次のようなものでした。

 九電は、審査業務が継続中の玄海原発で四百四十五人を月八十時間まで残業できるようにしている、適用除外期間が終了した川内原発でも、現在も二百九十二人を月百七十時間まで残業できるようにしていると言いました。九電の広報担当者は、規制委員会に二〇一五年十二月に申請した特定重大事故等対処施設の審査が新たな適用除外の対象になると説明しました。

 四電も、二〇一三年以降、伊方原発三号機の再稼働審査業務で延べ八十八人、実数で七十二人を適用除外としたが、適用除外期間が終了した現在も原子力保安研修所に所属する十人に適用除外を継続していると言いました。四電の広報担当者は、ことし一月に、ことしというのは去年ですね、ことし一月に申請した特定重大事故等対処施設の対応のためだと話しています。

 九電や四電は、残業時間限度基準の適用除外というのは年度末に自動延長するものだと認識している、こういう答えをしたんです。九電や四電が、残業時間限度基準の適用除外の対象となる審査を終えた後も上限を超えて残業時間を延長し続けている、こういう事実がわかりました。

 残業時間の上限を月四十五時間などと定めている厚労大臣告示にこれは違反するんじゃないでしょうか。

塩崎国務大臣 今、九州電力と四国電力のお話をいただきましたが、個別の事案につきましては私どもの方からお答えすることは差し控えたいと思いますが、新規制基準への適合性審査に関する業務が終了した後も同じような扱いがされているのではなかろうかという御質問だと思いました。

 終了した場合には、当然、その原子力発電所につきまして、当該業務への限度基準告示の適用除外の措置は終了するということになります。したがって、原則的な上限時間の範囲内で三六協定を締結していただいてお仕事をしていただくというのが当然であって、それをもし破っていれば、当然指導しなければいけないということになります。

真島委員 ぜひ調査して指導していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 そういったことにつきましてはふだんからしっかりと努力をして調査しているところでございますので、そういう中で見つければ、当然指導することになるということでございます。

真島委員 ふだんから調査、指導していてもこんな実態なんですよ。本当に、これは九電と四電だけですから、ほんの一部だと思いますよ。

 私は、厚労省が電力会社の望みどおりに再稼働審査業務を残業規制の適用除外にしている、それが、電力会社に対して、原発は公益事業だから自動的に適用除外になるんだ、そういう思い込みを与えて、現場にこういうモラルハザードが起きているんじゃないかと思うんですよ。ぜひ、事実を提供しましたので、調査、指導していただきたいと思います。

 二〇一三年の通達には、再稼働審査業務の残業規制の適用除外の期間について、当分の間としか書かれておりませんけれども、これはどれぐらいの期間を想定していますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の適用除外の期間でございますけれども、現時点では具体的な期間は想定しておりません。したがいまして、いつまでと申し上げることは現時点では難しいと考えております。

真島委員 資料二にありますように、実際には審査が長引いて、適用除外が三年も続いているんですよね。

 昨年十月九日の福井新聞がこう書いています。同省、これは厚労省のことですが、監督課によると、審査対応も定期検査の業務と同じとみなした、同課は、電力事業自体に公益性がある、年三百六十時間の制限は残っており、著しい問題があるとは言えないとしている、しかし、関係者によると、審査担当の電力社員には過労死ラインとされる月百時間を超す残業が続き、三カ月で四百時間を上回るなど、年間の上限を大幅に超えていたケースもある、また、定期検査の期間が二カ月程度と限られているのに対し、審査は一年以上と長期化し、担当する電力社員の長時間労働は常態化しているものと見られると、私が先ほど指摘したことと同じことが一般の新聞にも書かれているんです。

 残業時間限度基準の適用除外を行った五つの電力会社について、適用除外となった労働者の数、そして残業時間について把握しているんでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの電力会社ごとの労働者でございますとか残業時間でございますけれども、これは個別の事業場に関します内容でございますことから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

真島委員 把握しているかどうかと聞いているんです、本省が。現場の労働基準監督署は、適用除外となった労働者数や残業時間について、三六協定として出されているはずですから、つかんでいるはずです。本省がそれを把握しているかどうかと聞いているんです。

山越政府参考人 個別の事業場に関する内容については、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

真島委員 個別じゃないんです。把握しているかどうかを聞いているんです。なぜ答えないの。把握しているかどうかなんですよ。

浜田委員長 もう一度、山越労働基準局長。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 個別事業場の労働時間数について、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 失礼いたしました。

 個別の会社のことは申し上げられないといいながら、当然、私どもとしては把握をしております。

真島委員 本省として把握しているということですね。

塩崎国務大臣 当然、地方の支局ももちろん把握をしておりますが、三六協定の限度基準告示の適用除外とされている人数は、電力会社全体で、私どもとして、大体千四百人程度はいるものだというふうに合計でわかっておりますので、それは積み上げでそういうふうになっているということでございます。

真島委員 個別の会社についても把握はしているということですね。

 本省の局長通達という形で、この残業規制の適用除外をしているわけですよ。現場の労働者に長時間労働を厚労省の判断で強いているわけなんです。だから、その結果として、どれだけの労働者が何時間働かされているかという、この三六協定上のことだけじゃなくて、先ほど私が言ったような、現実に何時間働かされているかというのをつかむ責任があると思うんですが、どうでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の会社の労働時間、これは当然三六協定の範囲内でやっていただく必要があるわけでございまして、監督指導の際などにそういった実情を把握しましたら、必要な指導を私どもしていきたいというふうに考えております。

真島委員 それは一般的な話で、この適用除外というのは、政府の側が適用除外にして労働者に長時間労働を強いるという仕組みなんですよ。だから、その結果、どれだけ働かされているか、労働者の健康は大丈夫かというのを調べる責任があるでしょう。そういう気はないという答弁でしたね。

 昨年六月二十九日の佐賀新聞の報道によりますと、九州電力は、玄海原発と福岡市の本店に約二百七十人の社員を集めて、瓜生社長が、原子力部門だけではマンパワーに限りがある、あらゆる部門から人員を集めて対応していくと、審査の迅速化へ、さらに増員を図る考えまで示しております。

 結局、現場では、電力会社がこの適用除外の対象業務に何人でも社員を動員できるという、そんなことにもなっているわけですよ。

 厚労省の過労死等の労災補償状況というのが出ておりますが、建設事業、自動車運転業、研究開発業務など適用除外の対象業務での申請件数が非常に多いですね。これは、誰が見ても、残業規制の適用除外の業務で労働者の命と健康が脅かされている可能性が高いと思います。

 配付資料三のグラフをごらんください。

 これは関電OBと労働者らでつくっております電力労働運動近畿センターの調べなんですが、精神疾患の欠勤者は、一九九五年度に三十六人、従業員数の〇・一三%だったものが、二〇一二年度には百六十五人、〇・八一%にふえています。労働者の皆さんは、これは氷山の一角だ、職場は数字以上に病んでいると言っております。

 塩崎大臣にお聞きしますが、こういう過労状態での作業というのはヒューマンエラーを引き起こしやすくなるのではありませんか。

塩崎国務大臣 真島委員がおっしゃるように、一般的には、睡眠不足とか過労とか、そういうような状況のもとで作業などをしておりますれば、当然、その程度にももちろんよりますけれども、作業効率というのが低下をして、また作業上のミスが起こりやすくなるということは言えるのではないかというふうに私も考えております。

真島委員 大臣がおっしゃるとおり、資料の四をごらんいただきたいんですが、これは宮城労働局が作成した過労起因災害の概念図というものです。ちょっといろいろインターネットで探したんですけれども、宮城労働局しかこういう図をつくっているところがなくて。

 宮城労働局は、過労を直接間接原因とする労働災害と過重労働による健康障害を過労起因災害というふうに呼んで、昨年十一月の過労死等防止啓発月間、過重労働解消キャンペーン、この期間を契機にして、過労状態での作業の危険性の周知、長時間労働の削減や長時間労働者の健康管理を各事業場に働きかけをしております。

 みやぎ過労起因災害防止強調運動実施要綱というのがあるんですが、この中には、労働災害の発生要因にはさまざまなものがありますが、一般に過労運転など過労状態による作業は注意力の低下に伴うヒューマンエラーを惹起しやすくなるものと言われ、良好な睡眠と休養を確保することが安全作業の必須条件になるものでありますと、今大臣がおっしゃったとおりのことを言っているわけなんですね。

 これは原子力規制委員長にお聞きしますけれども、緊急時の対応も担っている電力会社の社員が過労状態で作業をしていて、しっかりした審査業務ができるでしょうか。また、緊急時の対応でも中心になるべき社員が過労状態で、緊急時の対応は大丈夫なんでしょうか。どうお考えでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生の御質問を正確に理解しているかどうかわかりませんが、審査の段階は、一般にはまだ原子炉は動いておりません。緊急時対応が必要になるのは原子炉が動いているときというふうに考えますと、審査と緊急時対応が重なるということは必ずしも考えにくいんですが、もちろん、審査があるから緊急時にきちっと対応できないということでは困りますので、事業者には、緊急時対応については、きちっと対応していただけるように私どもとしても指導しているところでございます。

真島委員 動いていなくても緊急時は起きますよね、原発では。

 それと、今、審査を理由にして緊急時の対応ができないようなことはあってはならない、そういうふうに指導したいというふうにおっしゃいましたけれども、昨年十月十二日の予算委員会で、原発再稼働の審査業務を適用除外にするという通達が出ていることについて、厚生労働大臣も経済産業大臣も原子力規制委員長も知らなかったとそのとき答弁されています。

 私、びっくりしました。審査書類がそろうだけでは安全を守れないですよね。原発を最前線で制御する社員が異常な長時間労働をしていることを大臣たちが三年間も知らなかったというのは、余りにも無責任ですよ。

 これは経産大臣に伺います。原発を最前線で制御する社員が過労状態で作業しているようでは、いざというときに住民の命に責任を持てないどころか、過労状態がヒューマンエラーを引き起こすリスクになる、先ほど厚労大臣がおっしゃいました、そういうふうに考えられませんか。

世耕国務大臣 原子力発電所については、いかなる事情よりも安全確保が最優先でありまして、御指摘のような、過労状態でヒューマンエラーを引き起こすというようなことがあってはならないというふうに思います。

 こういうことを引き起こさないためにも、原子力事業者は、原子炉等の規制法はもとより、労働法規を含め各種法令に従いながら適切な従業員の労働環境や体制の確保を行うのは当然のことだと思っています。

真島委員 福井新聞ばかり紹介して恐縮なんですけれども、昨年十月九日、福井新聞で、ある電力関係者はこう言ったというんですね、審査対応は長時間の残業で非常に過酷だ、体調を崩す人もおり、厚労省の通達が背景にあるとすれば残念だと。

 二〇一四年施行の過労死防止対策推進法の第六条に基づいて国会に毎年報告を行う年次報告書、昨年十月に初めて公表されています。このいわゆる過労死白書と言われるものですが、残業が過労死ラインとされる月八十時間を超えた企業が二割もある、年休の取得率は五割を下回ったまま、仕事が一因となった自殺は年間二千人を超えている、一方で、職場でのいじめや嫌がらせなどの相談はふえるばかりという内容になっています。

 政府は新たな残業時間上限規制を検討していますが、この中に繁忙期という例外を設けようとしているという話が出ております。この繁忙期という例外を設けて過労死ラインを超える残業にも法的お墨つきを与えるということになれば、これは事実上、今の特別条項の温存になるんじゃないでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問をいただきました特別条項でございますけれども、これは、臨時の事情がある場合に、特別条項を結ぶことによりまして、原則的な限度時間を超えて労働することを認めている制度でございます。

 今般御議論をいただいております通達に基づく制度は、一部でございますけれども、適用を除外するものでございまして、これらは別の制度であるというふうに考えているところでございます。

真島委員 事実上の特別条項の温存ですよね。

 関西電力の高浜原発一、二号機の運転延長申請にかかわった四十代の男性課長が、原発の安全対策の審査がいわゆる合格となった当日、都内のホテルで自殺するということがありました。

 この高浜原発の一、二号機の運転延長の審査業務というのは、残業時間限度基準の適用除外の対象業務にはなっていませんよね。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年の通達で限度基準告示の適用除外の対象としておりますのは、この通達発出時に新規制基準適合性審査についての申請をしていたものでございますので、高浜原発一、二号機の運転延長の審査業務は対象とならないものでございます。

真島委員 この男性課長は、適用除外でもないのに、月四十五時間、年間三百六十時間の上限どころか、最大で月二百時間、亡くなった四月は、十九日までに百五十時間の残業をしていました。運転開始から四十年たった高浜原発一、二号機は、昨年の七月七日までに運転延長の審査に合格しなければ廃炉になる可能性があった。課長は、原子力規制委員会へ提出する八万七千ページに上る資料作成に携わっていた。

 関電の岩根社長は、忙しいという状況があったのは事実だと認めています。そして、昨年六月の関西電力労働組合の大会で、若狭・高浜支部の代議員が、震災以降、原子力部門では時間外労働が高どまりしているという発言をしていることが、同労組の機関紙でも紹介されています。

 先ほど言った、繁忙期という例外を設けて過労死ラインを超えるような残業に法的お墨つきを与えてしまえば、こんな異常な長時間労働や過労死を根絶できないんですよ。

 では、次に適用除外を聞きますが、政府が新たに導入しようとしている残業時間の上限規制の中で、上限規定さえも取り払ってしまう適用除外についてはどう扱う考えですか。

塩崎国務大臣 今、適用除外についてお尋ねがございましたが、誰に対しての何時間の上限とするかを決めるに当たっての考え方について、これまで総理を含め私ども申し上げてまいりましたけれども、最低限、脳・心臓疾患の労災認定基準をクリアするといった、健康の確保を図ることが当然であるということがまず第一で、その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会をどうつくっていくのかという観点、あるいはワーク・ライフ・バランスを改善する観点といったようなさまざまな視点から議論をしなければいけませんし、今、働き方改革実現会議で議論を重ねさせていただいているところでございます。

 先日、長時間労働につきましては、二月一日に第一回目の議論をさせていただきましたが、働き方改革実現会議では、三月の末までに実行計画というのを取りまとめる予定でございまして、その後に、それに沿って法改正に向けた作業を加速して、いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則つきの時間外労働の限度について、どのような方に何時間の時間外労働の上限を設けるのかを明記したいというふうに、法律でもってお示しをしたいと思っております。

 適用除外をどうするかということでございますけれども、政府としては、実現会議において、今、有識者、労働者そして使用者、そういったサイドの方々に予断を持たずに御議論いただきたいというふうに考えておりますので、これは、実現会議において御意見を聞いた上で、予断を持たずに御議論いただいて、それを受けて実行計画をつくってまいりたいというふうに考えておるところでございます。

真島委員 本当に無責任ですよ。

 適用除外というのは、さっきから何度も言っているように、政府が特定の労働者に、残業時間の上限を取っ払って、本当に長時間労働を強いているわけです。その調査もしていないわけですよね、政府は。調査もしていないで、実現会議で話し合ってください、予断を持たずにと。現状が適用除外によってどんな現場になっているかという事実も実現会議に提供できないで、どうやって議論するんですか。

 昨年十月二十日のNHKニュースの中で、労働問題に詳しいと言われる関西大学の森岡孝二名誉教授がコメントしているのを紹介していました。再稼働審査業務の適用除外について、縛りがなくなり、時間外労働が野放しになるので大問題だ、突発的な事案はさまざまな分野で起こる可能性があり、あちらこちらに例外をつくってはいけない、今の規制の方向性からいうと、制限の適用を除外するというやり方は問題があるというふうにおっしゃっています。

 原発再稼働審査業務の残業時間限度基準適用除外、私は、直ちに原発再稼働審査業務については撤回をし、適用除外の対象業務全体についても、この機に働き方改革の議論の中で見直して、最小限のものにしていくべきだと思うんですが、大臣の考えを聞かせてください。

塩崎国務大臣 時間外労働をどう規制し実効あるものとしていくのかということについては、先ほど申し上げたとおり実現会議でこれから議論を深めることになるわけでございますので、今、真島先生の方から御提起をいただいた問題意識も含めて、しっかりと議論を深めさせていただきたいというふうに思っております。

 原発再稼働審査の適用除外、この局長通達の扱いでございますが、これは、局長から答弁を申し上げたとおり、平成二十五年十一月時点において、新規制基準適合審査業務というのが前例のない業務だったということで、先ほど申し上げたように、世界で最も厳しい基準ということだったことを受けて、そういうことで集中的な作業が必要だろうということで判断をしたものであるわけでございます。

 ただ、既にこの新規制基準が策定されて三年たったということでございまして、先ほど来お話も出ておりますし、また、これは少しお話が出ましたが、去年の予算委員会で高橋千鶴子委員からも、これはまた厚生労働委員会でも追っかけ、衆議院の厚生労働委員会で御指摘もあり、また参議院の厚生労働委員会の方で倉林先生からも御指摘がございました。

 ややダブルスタンダードになっているのではないかという御指摘かと思いますし、そういうところも含めて、この通達の必要性について、私どもとしても、ちょうど今、実現会議で働き方改革もやっているわけでございますので、見直しを行う方向で労働基準局で十分検討させたいというふうに思います。

真島委員 電力会社の利潤第一の再稼働の後押しのために政府が長時間労働にお墨つきを与えることは、労働者の命に対しても、その労働者によって守られる住民の命に対しても全く無責任だと思います。

 過労自殺、過労死根絶、長時間労働是正に対する政府の本気度が問われていると思いますので、ぜひ、きょう指摘したことを踏まえて考え直していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

浜田委員長 これにて真島君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久です。

 それでは、教育無償化について質問させていただきます。

 まずは、資料の一をごらんください。

 零歳児から大学院まで授業料を無償化いたしますと、授業料相当分、幼稚園・保育所、小学校・中学校、高等学校、大学等の各段階、給食や教科書代を入れずに合計すると約四兆二千三百六十億円必要だと言われます。

 さて、二月一日の予算委員会にて、今おられないんですけれども、辻元議員と安倍総理が高校の授業料無償化について、ばらまき政策だ、いやいや、そうじゃない、所得制限をつければばらまきではないという議論をされておられました。

 我々が思うに、財源を確保した上で教育無償化を実現すれば決してばらまきなどではないと思います。ところが、財源のない状態で、例えば選挙前に人気をとるためというのもあれなんですけれども無償化を、このような政策を公表すれば、ばらまきだと誤解されても仕方がないと思います。繰り返しますけれども、財源があって提案するのであれば決してばらまきではないと思います。

 というわけで、財源を捻出する議論からスタートしたいと思うんですけれども、どこにこの四兆二千億円の財源を求めていくかというところに意見の相違があると思います。

 財源というところで、麻生財務大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、続きまして、資料二を見ていただきたいんです。

 資料二では、子供の貧困の社会的損失が一学年当たり三兆円弱、これにより政府の財政負担増は一・一兆円との推計結果があります。青い部分、貧困世帯の子供たちに対して何も行わなかった場合は、所得が二十二・六兆円、税、社会保障の純負担が五・七兆円。これに対して、このオレンジの部分なんですけれども、子供の貧困対策を行って子供の進学率及び高校中退率が改善した場合は、所得が二十五・五兆円、税、社会保障の純負担が六・八兆円。

 進学率を引き上げることにより逆に一・一兆円の負担が減ることになる、財政にもこういったメリットがあると思うんですけれども、麻生財務大臣、そのような理解でよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 まず、今、伊東先生のお使いのその資料は、多分、政府の資料じゃなくて、中教審の昨年五月の資料ですよね。御指摘の言及というのは、そう書いてあるんですが、子供の貧困対策が重要な政策課題であるということは間違いない。伊東先生の御指摘のとおりなんだと思っております。

 ただ、私ども安倍政権において、いわゆる子供の相対的貧困率という言葉があろうと思いますが、これは五年ごとに出てくるものです。五年ごとに出てくるものを見ますと、いわゆる総務省の全国消費実態調査から逆算すると出てくるものなんですけれども、子供の相対的貧困率は、平成十一年、一九九九年の九・二%、次の五年後の九・七%、その五年後の九・九%と上がってきたんですが、平成二十六年ではそれが二ポイント下がって、〇・二ではなくて二ポイント下がって、七・九%に下がったということになっております。

 これは、近年の雇用情勢というものが改善したことによって雇用自体が大きくふえておりますので、子育て世代の方々の収入が多分増加したということによるものだと分析をしておりますけれども、いずれにいたしましても、こういった財政構造というものは極めて大事なものなので、私どもとしては引き続きこの方針に沿って進めてまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 試算の計算の仕方というのはいろいろありまして、これが絶対ということは私どもも申し上げるつもりはないんですけれども、本当に、具体的な財源の組み方というのをまた後ほど麻生大臣にはお尋ねしたいと思いますので、まず一個一個、各段階においての検証をする必要があると思っています。

 まず、幼児教育の無償化について御質問したいんですけれども、幼稚園、保育園について、ゼロ歳児から五歳児の利用者負担を無償化した場合、一兆千二百億円が必要であると試算されているわけなんですね。資料一に戻っていただくわけなんですけれども、政府の幼児教育無償化会議資料からの試算なんです。政府・与党は一昨年から幼児教育の無償化を打ち出しておりますけれども、残念ながら、いまだに実現していません。

 政府の言う無償化とは利用者負担を原則として全て無償化するということだと思うんですけれども、この一兆一千二百億円の予算を確保するという考えとか予定というのはないのかどうか、文部科学大臣にお尋ねをいたします。

松野国務大臣 教育は未来への先行投資であり、幼児教育の重要性、これはもう既に委員からもお話があったとおりでありますし、文部科学省としても、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであると認識をしております。家庭の経済状況にかかわらず、全ての子供に質の高い幼児教育を受ける機会を保障することは必要なことであると認識をしております。

 このため、幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議を毎年開催しておりますが、今後の取り組みの方向性を示しつつ、平成二十六年度以降段階的に取り組みを進め、幼稚園、保育所、認定こども園の全てにおいて、生活保護世帯の全ての子供や全ての世帯の第三子以降の保育料を無償化してきたところであります。

 平成二十九年度予算案におきましても、市町村民税非課税世帯の第二子無償化や、年収約三百六十万円未満相当世帯のさらなる負担の軽減に努めているところであります。

 財源確保の問題ということでございましたけれども、文部科学省としては、今後とも、関係省庁とも協議しつつ、財源を確保しつつ、幼児教育の無償化の実現に向けて段階的に取り組んでまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

伊東(信)委員 幼児教育の無償化について、それが必要であるということに対して相違はないと思いますし、予算を確保したいという文科大臣のお気持ちはわかるんですけれども、予定がないという感じにお見受けするんですね。

 そうであるのならば、今国会中に政府はロードマップの作成に着手してはどうかと思います。政府の本気度はロードマップから見えてくると思うんですけれども、この政策のリーダーとなる文部科学大臣から改めて答弁をお願いいたします。

松野国務大臣 財源確保の問題におきましては、これは当然、負担の問題等々もあわせて議論を進めなければいけない案件であると承知をしております。財務当局を初め関係省庁全体で、財源確保に関しては検討を進めるべきものであると考えております。

伊東(信)委員 なかなか、本気度がちょっと伝わってこないんですけれども。

 幼児教育だけで話を終わるわけにいかないので、高等教育の無償化についてお尋ねいたしたいんですけれども、ドイツ、フランス、スウェーデンなどの先進国は授業料無償化です。アメリカ、イギリス、カナダなどは、授業料が高くても、給付制の奨学金を充実させています。日本はどうかといいますと、授業料が高い上に、奨学金は、現在ですよ、有利子、貸与型が中心という制度はやはり見劣りすることが明らかでございます。

 次に、資料三を見ていただきたいんですけれども、高卒と大卒の生涯賃金の格差、高等教育の費用対効果。各個人なんですけれども、一人当たりの効果額は三百五十四万六千九百四十四円ということで、二・四倍という試算もあります。

 政府は、承知していますけれども、給付つきの奨学金を多少拡充いたしましたけれども、国際比較からも経済的合理性からもやはり高等教育を原則無償とするべきではないかと思うんです。重ねて、文部科学大臣、御見解をお願いいたします。

松野国務大臣 意欲と能力のある学生が家庭の経済状況にかかわらず高等教育を受けられるようにすることは、将来の経済成長や税収増等、教育の機会均等を図る上でも重要であり、委員から御指摘をいただいた点でございますが、これまでも、授業料減免等や奨学金の充実により経済的負担の軽減に努めてきたところであります。

 来年度の予算において、授業料減免等の一層の拡大に加え、無利子奨学金について、低所得者世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに残存適格者を解消することとし、この二つの施策によりましてこの枠を四・四万人拡大しております。事業費としては、前年度の二百七十九億円増の三千五百二億円に拡充したところであります。

 また、卒業後の所得に応じて返還額が変わる所得連動返還型奨学金制度を導入することとしております。

 さらには、先ほど委員から御紹介をいただきましたが、返済不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとし、日本学生支援機構に造成する基金に七十億円を措置したところであります。

 今後とも、意欲と能力のある学生が家庭の経済力の状況にかかわらず高等教育を受けられるように、財源を確保しながら教育費の負担軽減に努めてまいりたいと考えております。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

伊東(信)委員 その財源の確保が大事なことなんですね。

 幼児教育、高等教育の無償化に関する質問をしてきましたけれども、この教育無償化に関しましては、我々が提出してきた百一本の法案の中の十番目の教育無償化法案などの法案で実現することはできます。しかし、やはり政権ごとに変わったりとか、また教育の無償化を憲法に明記することが最も確実に安定的に実現できると考えまして、我々日本維新の会は法案提出と同時に我が党の憲法改正案に教育無償化を挙げたところなんですね。

 二月一日なんですけれども、BSフジのプライムニュースで自民党の下村幹事長代行が、党内における憲法改正推進本部と発議の一つの項目として教育無償化というものを入れて議論してもらいたいと発言されました。

 また、二月三日の朝日新聞の記事によりますと、自民党さんが、大学などの高等教育の授業料の免除など教育無償化に向けた具体策の検討を始める、総裁直轄の教育再生実行本部にプロジェクトチームを設置し、必要な財源には使い道を教育政策に限定する教育国債の創設などについて議論するとあります。

 このように、具体的な財源の検討に着手するということは、教育無償化を入れ込むという改憲議論も加速すると思いますし、安倍総理が前向きな教育無償化の実現も現実的になると思うんですけれども、我々も、文教・科学振興費の財源のための国債発行を可能にするという法案を実は提出しております。

 さて、教育国債の発行についてPT座長の馳浩前文部科学大臣を中心に検討を早急に進めてほしいんですけれども、我々の根幹は、財源確保は行政改革が最優先であります。しかしながら、こうやって前向きに議論が進んでいくということで、この教育国債の発行について財務大臣の立場から、麻生大臣の方に御意見を頂戴いたします。

麻生国務大臣 今御指摘の報道も含めまして、私ども自民党の党内また御党でも教育財源の捻出の話についていろいろ御議論があっていることは私ども承知をしております。

 しかし、以前から申し上げておりますとおり、教育国債というのを発行するということになりますと、これは償還財源の当てがきちんとしたものがありませんから、簡単なことを言えば、借金を子供の世代に送るということと同じことになりはせぬかということであります。

 すなわち、教育国債というものの実質というものは、親の世代が租税負担とかいろいろなものの教育費の捻出を逃れるために子供に借金を回すということなのであって、名を変えた赤字国債と変わらぬじゃないかという御意見というのは前々からあるところでして、私どもとしてはこの問題については、安易な教育国債というのは極めて慎重にやらぬと、何だ話が違うじゃないかということになりかねぬというところもよくよく考えておかないかぬところだと思っております。

伊東(信)委員 重ねて申し上げますけれども、我々の財源確保は行政改革が最優先なんですね。

 そういった報道もありましたから政府の方針としてお聞きしたかったんですけれども、教育国債の発行は現時点では財務省としては検討していないということでしょうか。

麻生国務大臣 私どもは、教育につきましては間違いなく今、この間の御党の方と安倍総理との間の話でも、教育の重要性につきまして、また財源が高い等々につきましては全く論をまちません。

 御記憶かどうか知りませんけれども、我々の世代、昭和三十八年の大学卒かな、この世代は東大の授業料は幾らだったか知っている人は。千円ですよ。今幾らか。ちょっとよく計算してみてください。教育費というのは高くなっていますよ、国立大学でも。(伊東(信)委員「月にですか」と呼ぶ)月千円だったんですよ。それが我々の世代。もっとも給料は八千円ですからね、そこは忘れぬでくださいよ。だから、そういった意味でも、それでも今、二十万円の初任給としても、それは随分と違うんじゃないかねというのは、間違いなく教育費というのは高くなってきていることは確かです。

 ただ、アメリカと比べたら安いじゃないかと必ず言われるんですけれども、それはまたアメリカは別のルールがありまして、奨学金とかなんとかでばさっと、額がそこは全然違いますし、私立というのがありますし、大体、国立大学がアメリカにはありませんから、州立しかありませんので、そういった意味では、かなりシステムとしては違っていることは確かです。

 何らかの形でこの教育費というものをどうするかというのは真剣に考えないかぬ、大事なところだ、私どもはそう思って、ことしは給付型奨学金とか、金利を下げたりいろいろなことをやらせていただいておりますので、その方向ではやろうと思っておりますけれども、やはり借金に頼ってやるというのはいかがなものかというのが基本的な考え方であります。

伊東(信)委員 そのとおりだというお声が聞こえています。本音を言うとそのとおりなんです、そのとおり。ということで、現状でまずできそうな財源確保について考えたいと思うんですけれども。

 では、全ての教育を無償化するというのは財源があればいいんですけれども、まずは、安倍総理との二月一日の議論であったんですけれども、例えば私立学校について授業料にキャップをつけるとか。例えば、大阪ですけれども、私立高校授業料無償化の制度を設けているわけですけれども、利用するに当たり、無償化の範囲を、学校の授業料は年間五十八万円までとしています。維新の教育無償化法案でも、大阪の例を参考にして、授業料の上限を設けまして、それを超える部分については有償とするなどの制度設計になっています。

 このことによって学校法人の経営効率化を促すことにもなり、私学助成金の削減にもつながると考えていますけれども、それでは、松野文部科学大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 現在、高校段階において、年収約九百十万円未満の世帯の高校生に対して高等学校等就学支援金により授業料を支援しているということであり、大阪市においては、大阪市独自の施策として、国の施策とあわせて、私立高校の実質的な無償化に向けての措置をされていることは承知をしております。

 この大阪の取り組みは大変意欲的な取り組みであって、各県の先行事例として私たちもぜひ研究をしてみたいと考えております。

伊東(信)委員 そうですね。本当に具体的に責任を持って考えるに当たり、やはり授業料のキャップというのはまず当面避けられない問題ではないかなと思うんですね。

 全課程の教育を無償化すると四兆二千億円ほどかかるということなんですけれども、資料四を見ていただきますと、次の財源ですけれども、我々が常日ごろ言っていることです。国家公務員人件費五兆円、地方公務員人件費二十兆円、合計二十五兆円、二割で五兆円削減すれば教育無償化がカバーできる。

 私たちは、何回も言わせていただきます、身を切る改革を実行して国民の支持を得た上で、規制改革や国の出先機関の整理などで国と自治体の事務も公務員の数も減らして財源とするべきではないか、増税ではなく行政改革による歳出削減を中心に考えるべきだと思っておるわけなんですけれども、維新が国家公務員人件費二割削減法案で示したように、国家公務員の人件費の二割、一兆円を削減して、まず政府の掲げた幼児教育の無償化だけでも実現すべきだと考えます。

 公務員の人件費なので、山本大臣、見解をよろしくお願いします。

山本(幸)国務大臣 国家公務員の総人件費につきましては、国家公務員の総人件費に関する基本方針において、職員構成の高齢化等に伴う構造的な人件費の増加を抑制するとともに、簡素で効率的な行政組織、体制を確立することにより、その抑制を図ることとしております。

 具体的には、平成二十六年の一般職給与法の改正に盛り込んだ給与制度の総合的見直しにおいて、初任給を据え置く一方、高齢者層を四%引き下げることにより、俸給表水準を平均二%引き下げるとともに、地域手当を見直すことにより、世代間、地域間の給与配分を見直すなどの取り組みを行っております。また、定員については、CIQの体制や海上保安体制の強化など、急増する内閣の重要課題に的確に対応できる体制の整備を図りつつ、切り込むべきところには切り込むといっためり張りある審査を行うことで、全体としての増員を抑制しております。

 今後も、厳しい財政事情を踏まえて、引き続き、この基本方針に沿って総人件費の抑制に努めてまいりたいと思っております。

伊東(信)委員 切り込むべきところをぜひとも、山本大臣、リーダーシップを持ってどんどこどんどこ切り込んでいただければと。どうしても、外科医なのでちょっと切るのがあれなんですけれども。

 さて、文部科学省で組織的な天下りが発覚したところでございまして、もう一つの財源確保の方法として、天下り法人の交付金、補助金の削減、これもやはり議論として出てくるのではないでしょうか。

 公務員人件費以外でも、天下り法人の支出を徹底的に見直すに当たり、来年度予算案の国立大学運営費交付金一兆円、私学助成金は四千億円、その一部が違法で不当な天下りの給与に仮になっているとしましたら、我が党の片山代表が参議院の代表質問で発言したとおり、ゆゆしき問題であります。

 さて、教育無償化の完全実施を進めると同時に、教育に係る経費のうち、教職員の人件費や施設の整備費のような経常費を徹底的に見直すべきだ。国立大学運営費交付金と私学助成金の合計で一兆四千億円、その七%でも一千億円程度になります。つまり、文部科学の予算のうち学校法人に投じられている交付金を数%削減して直接子供や保育者などの家計に入る形もいいのではないかと思うんですけれども、文部科学大臣の見解をお伺いします。

松野国務大臣 まず、今回の文部科学省の再就職規制違反におきまして、文部科学省の違反行為また一連の隠蔽行為を通じて国民の皆様の文科行政に対する信頼を著しく失ったことに関して猛省をしておりますし、信頼回復に努めてまいりたいと考えております。

 委員から御指摘があったいわゆる天下りの問題と助成金、補助金とのかかわりでありますが、私立大学等経常費補助金を初めとする補助金の配分につきましては、学生数、教員数等の客観的な指標に基づいて算定をされるもの、また外部有識者によって競争的に審査されるものでありまして、文部科学省の職員が再就職することで配分額が変わるものではないと承知をしておりますが、この点に関しては、引き続き、国民の皆様の疑念が晴れるように解明に努めてまいりたいと思います。

 あわせて、委員から御指摘がありました学校法人に対する助成を減らしてということでございますが、教育、特に私立学校にかかわる教育を考えますと、建学の精神に基づいたその学校法人独自の教育を進めていただくに当たって、一つにはやはり学校本体の基盤的なものに対する助成と、もう一つは委員御指摘の個々の生徒、家庭における教育費の負担軽減の問題、これら二つの側面から進めることが肝要ではないかと考えております。

 特に、法人に対する私学助成、基盤的経費の面に関しては、今、私立学校の経費が増大している中、私学助成の比率が一割を切っているような状況でありますので、文部科学省としては、その両面の充実を今後とも財源の確保を図りつつ進めてまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 何よりも、やはり子供たちが主役で、未来を担う子供たちのためにやっている施策ということは御理解いただきたいことです。

 あわせて、全省庁の独立行政法人の運営費交付金一兆円、その他補助金一兆円についても大幅に削減すれば、教育無償化の財源はできるのではないかと思います。

 ただ、本日、総理が来ておりませんので、教育行政のトップとして、重ねて松野文科大臣の御意見をお伺いいたします。

松野国務大臣 文部科学省の補助金また法人に対する助成のあり方についての考え方は先ほど申し上げさせていただいたとおりでありますが、教育財源をどういった形の中で今後確保していかなければいけないかという点に関しましては、御党初め各党各会派でさまざまに御議論があることは承知をしております。

 いずれにしても、その議論の中において、しっかりと教育財源の確保をし、教育の充実に努めていくことが私たち文部科学省としては肝要だと考えております。

伊東(信)委員 そういうことなんですよね。先ほど麻生財務大臣がおっしゃっていただいたように、未来や次世代にツケを残さない、残さないで財源を確保する、かつ、現在の国民の皆さんにも負担を強いることなく。

 だから、そういうことで今の全省庁の話もしたわけなんですけれども、省庁が変わるので松野大臣自体はお答えしにくいと思います。安倍総理がおられて各専門大臣を呼ぶのはわかるんですけれども、安倍総理をこの場に呼ぶわけにいかなかったので、松野大臣にお答えいただきました。

 しかしながら、だからこそ、だったら、この財源を文科省として確保するためのロードマップが必要じゃないか、そういうお話です。

 さて、時間も大分なくなってきましたので、次のところに移りたいと思います。

 話は打って変わりまして、福島県の広野町の高野病院のことなんですけれども、連日報道されていますように、東京電力福島第一原発の事故により、その後も病院にとどまり患者の診療を続けていた院長の高野英男医師が火災で亡くなられまして、常勤医が不在となりました。

 双葉郡の唯一の入院が可能な病院ということで地域医療の重要な役割を担っておりまして、広野町の遠藤町長らが国や県に常勤医を探すように支援を求めまして、高野病院を支援する会を南相馬市立総合病院の医師らがボランティアで立ち上げ、応援に入る医師を全国から募り、二十人を超える非常勤の医師たちを確保しました。

 ところが、なかなかこの高野医師にかわる人材はいないと思いますけれども、高野病院を地域医療の重要な拠点として存続させるべきだと私も考えるわけなんですけれども、報道ベースですけれども、情報を追っていくと、国や県はこの病院に支援を行っていない、そのような印象を受けているんです。

 実際のところはどうなのか、厚労大臣から御説明をお願いします。

塩崎国務大臣 結論から言えばそのようなことはなくて、我々としてはしっかり支援をしておりますし、また今後ともしっかり支援を続けてまいりたいというふうに考えております。

 高野病院、これは東日本大震災の後に双葉郡で唯一の地域に残って診療を継続されてきた病院でございまして、平成二十三年度から二十七年度まで、私どもとして、医師などの人材確保それからCTなどの設備整備、こういった費用につきまして地域医療再生基金から累計で三億七千万円の支援を行ってきたところでございます。

 そういう中で、高野先生が常勤医師として唯一、一人で頑張ってこられて、他の非常勤の先生方とともにやってこられましたが、残念ながら十二月に焼死をされるという大変なことが起きてしまいまして、心からまず御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 そこで、院長不在となった際に、昨年の十二月の火災の後に、ボランティアの医師の先生方が中心となって不足する診療体制を埋めるローテーションを組んで大学病院からの医師派遣を補ってきたこと、それから、二月、三月の院長として都立駒込病院の医師が着任したことなどによって当面三月までの診療体制は確保されてきたことを我々も常時確認しているわけでございます。これらの医師の人件費、赴任経費それから居住手当等は、地域医療再生基金の補助対象となっているところでございます。

 また、福島県と福島県立医科大学、ここにおきまして四月以降の院長の確保や常勤医師の派遣等の対策に関する協議が行われているわけでありますが、協議を踏まえて、何らかの要請があった場合には国としても必要な支援を行うとともに、引き続き、地域医療再生基金を活用して高野病院の支援に努めてまいりたいというふうに思っております。

 福島県内の先生方あるいは近隣の首長さんの皆さん方、中には相馬市長の立谷さんのようにみずからが医師という方もおられて、皆が挙げて支援体制を組んでいるわけでありますが、国としてもしっかりと注視をしてまいりたいというふうに考えております。

伊東(信)委員 今後も支援を続けていただきたいと思うんですけれども、問題は、やはりボランティアの医師たちが支援してくれないと発言しているのでそういった検証も、時間もなくなってきましたので、この件に関しては引き続きのフォローをお願いするということで。本当に高野病院に限らず医師の確保というのは深刻な問題でございまして、大阪におきましても、地元の交野市とかでも産婦人科医が足りないとかいろいろ問題になっています。政府の今後の医師の確保の見通しをお願いいたします。

 さて、もうあとわずかなんですけれども、二〇二〇年の東京のオリパラ大会というのは、日本のドーピング検査体制でも試練でございます。

 世界レベルの大会で求められるドーピング検査体制というのは非常に厳しいものなんですけれども、残念ながら、昨年のリオ・オリンピック、二〇〇八年の北京オリンピックでは、四百メートルリレーの金メダルが剥奪になるのではないかというような、こんな事例も出ています。

 さて、このような事例が二〇二〇年には起こらないようにしっかりと体制を整えたいと思うんですけれども、北京オリンピックのときのジャマイカのネスタ・カーター選手の検体から興奮薬メチルヘキサンアミンが検出されたそうなんですね。なぜ二〇〇八年の検体の再検査という流れになったのか、御説明をお願いいたします。

松野国務大臣 当該事案に関しましては、二〇〇八年当時のドーピング検査の技術においては、そこを検出させるまでのレベルに達しておりませんで、新たなドーピング発見技術の開発によって二〇〇八年時点の検体から確認をされたというふうに報告を受けております。

伊東(信)委員 この事案に鑑みまして、日本はどういったところが学ぶべき反省点なのかということなんですけれども、国の代表である選手がメダルを剥奪される結果になるというのは、もちろん違反をしたからなんですけれども、それだけ検査の手順が厳密だからなんですね。

 私自身もドーピングの検査員でありました。そういった経験から、二〇二〇年の大会を考えるに当たり、これは、検査員の資格を得るのに、二日間の講習を受けた後にテストを受けて、テストを受けた後に二年間研修しないといけないんですね。二〇二〇年まで、本当に時間が限られているんですけれども。

 オリンピック規模の精密さと厳密さ、そして人数の確保というのは大変なことだと思うんですけれども、検査員の確保及び質の向上が進んでいないように感じるんです。私自身憂えているんですけれども、進捗ぐあいを教えていただけますでしょうか。

松野国務大臣 伊東委員はこの分野の御専門でいらっしゃいますから、もう既に御案内のこととは存じますが、現在、ドーピング検査員の資格を有する者は国内に約三百名おり、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、組織委員会と日本アンチ・ドーピング機構により、約百五十名の増員が計画をされているところであります。

 東京大会におけるドーピング検査員につきましては、言語能力を含めた国際対応ができる質の高い人材が必要となることから、増員だけでなく質の向上も図ることとしております。

 これらの人材確保計画は来年度から本格的に実行されることとなっておりまして、文部科学省といたしましても、計画どおりに人材確保が進むよう、平成二十九年度予算案に人材育成を初めとするアンチドーピング関連予算の大幅な増額を盛り込んでいるところであります。

伊東(信)委員 時計の針を戻すことはできませんので、しっかりとやっていただきたいわけなんですけれども、来年度ということで本当にせっぱ詰まっておるわけなんですね。

 人の充実も大事なんですけれども、検査室の設備も重要な課題です。

 オリンピック・パラリンピックであれば、新規建設するわけでございますから、世界基準のドーピング検査室、動線を考えられると思うんですけれども、その一年前、二〇一九年にラグビーワールドカップが各地でございます。どの程度スポーツ庁がかかわっているんでしょうか。

 私の地元枚方市というのは東海大仰星高校のラグビー部が非常に強くて、ことし準優勝、昨年優勝していまして、医務室とかをそのたびに私は見に行っているんですけれども、検査室を十分確保すると、今度は医務室が狭くなるんですね。そもそも、設計図も見せてもらったんですけれども、その設計図を本気で考えているのかどうかというのがわからないわけです。例えば、選手がけがをしても直接医務室に入ることができない、わざわざぐるっと回って入らなければいけない。

 これだったら、二〇二〇年の東京大会の前年に行われる二〇一九年のワールドカップ大会で、ワールドラグビーが果たしてオーケーしてくれるのかどうか、こういった心配もあります。検査員の育成、経験値を上げてもらうためにも、ラグビーワールドカップのドーピング体制も二〇二〇年のオリンピックに向けて非常に重要なものと思うんですけれども、既存施設のドーピングの検査室の設備についての御説明をお願いいたします。

松野国務大臣 ラグビーワールドカップについては、大会の主催者であるラグビーワールドカップリミテッド及び日本アンチ・ドーピング機構の助言に基づき、大会開催自治体が各会場施設において、国際レベルのドーピング検査に対応できる検査室の整備を進めているものと承知をしております。

 また、二〇二〇年東京大会についても、組織委員会及び施設所有者において、世界ドーピング防止機構など関係機関と連携し、改修や仮設設備の設置を含め、適切な方法で国際レベルのドーピング検査に対応できる検査室の整備を進めているものと承知をしております。

伊東(信)委員 時間が来たので終わりますけれども、最後に、教育の問題も、医療の問題も、このドーピングの問題も、現場の声をしっかり聞いてください。

 終わります。

浜田委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明七日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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