衆議院

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第12号 平成29年2月17日(金曜日)

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平成二十九年二月十七日(金曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 達也君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    石破  茂君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      大串 正樹君    大西 英男君

      奥野 信亮君    門  博文君

      神田 憲次君    木内  均君

      黄川田仁志君    國場幸之助君

      佐田玄一郎君    鈴木 俊一君

      瀬戸 隆一君    田所 嘉徳君

      田畑 裕明君    谷川 とむ君

      津島  淳君    豊田真由子君

      中山 展宏君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      野中  厚君    原田 義昭君

      平口  洋君    福田 達夫君

      古田 圭一君    星野 剛士君

      堀井  学君    前川  恵君

      宗清 皇一君    保岡 興治君

      山下 貴司君    渡辺 博道君

      井坂 信彦君    今井 雅人君

      小川 淳也君    緒方林太郎君

      後藤 祐一君    坂本祐之輔君

      重徳 和彦君    篠原  豪君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      初鹿 明博君    福島 伸享君

      前原 誠司君    宮崎 岳志君

      本村賢太郎君    山尾志桜里君

      柚木 道義君    伊佐 進一君

      伊藤  渉君    國重  徹君

      真山 祐一君    赤嶺 政賢君

      高橋千鶴子君    藤野 保史君

      本村 伸子君    井上 英孝君

      伊東 信久君    小沢 鋭仁君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         金田 勝年君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (働き方改革担当)    加藤 勝信君

   国務大臣         山本 幸三君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       丸川 珠代君

   外務副大臣        岸  信夫君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部統括官)        西崎 文平君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐川 宣寿君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         村田 善則君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  由木 文彦君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  佐藤 善信君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   豊田  硬君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           辰己 昌良君

   参考人

   (独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)   菅野 和夫君

   参考人

   (文部科学省元大臣官房人事課企画官)       嶋貫 和男君

   参考人

   (前文部科学事務次官)  前川 喜平君

   参考人

   (文部科学省元大臣官房人事課長)         藤江 陽子君

   参考人

   (再就職等監視委員会委員長)           大橋 寛明君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十五日

 辞任         補欠選任

  真山 祐一君     吉田 宣弘君

  高橋千鶴子君     本村 伸子君

  伊東 信久君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田 宣弘君     真山 祐一君

  本村 伸子君     高橋千鶴子君

  下地 幹郎君     伊東 信久君

同月十七日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     田所 嘉徳君

  岩屋  毅君     瀬戸 隆一君

  江藤  拓君     木内  均君

  衛藤征士郎君     池田 佳隆君

  門  博文君     古田 圭一君

  國場幸之助君     田畑 裕明君

  長坂 康正君     中山 展宏君

  野中  厚君     豊田真由子君

  星野 剛士君     谷川 とむ君

  井坂 信彦君     柚木 道義君

  今井 雅人君     山尾志桜里君

  小川 淳也君     本村賢太郎君

  緒方林太郎君     初鹿 明博君

  後藤 祐一君     重徳 和彦君

  玉木雄一郎君     坂本祐之輔君

  辻元 清美君     篠原  豪君

  福島 伸享君     宮崎 岳志君

  真山 祐一君     伊佐 進一君

  赤嶺 政賢君     藤野 保史君

  高橋千鶴子君     本村 伸子君

  井上 英孝君     小沢 鋭仁君

  伊東 信久君     吉田 豊史君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     堀井  学君

  木内  均君     神田 憲次君

  瀬戸 隆一君     岩屋  毅君

  田所 嘉徳君     石破  茂君

  田畑 裕明君     津島  淳君

  谷川 とむ君     星野 剛士君

  豊田真由子君     野中  厚君

  中山 展宏君     前川  恵君

  古田 圭一君     門  博文君

  坂本祐之輔君     玉木雄一郎君

  重徳 和彦君     後藤 祐一君

  篠原  豪君     辻元 清美君

  初鹿 明博君     緒方林太郎君

  宮崎 岳志君     福島 伸享君

  本村賢太郎君     小川 淳也君

  山尾志桜里君     今井 雅人君

  柚木 道義君     井坂 信彦君

  伊佐 進一君     真山 祐一君

  藤野 保史君     赤嶺 政賢君

  本村 伸子君     高橋千鶴子君

  小沢 鋭仁君     井上 英孝君

  吉田 豊史君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     江藤  拓君

  津島  淳君     福田 達夫君

  堀井  学君     宗清 皇一君

  前川  恵君     長坂 康正君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 達夫君     國場幸之助君

  宗清 皇一君     大西 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     衛藤征士郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十九年度一般会計予算

 平成二十九年度特別会計予算

 平成二十九年度政府関係機関予算

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算、平成二十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として前文部科学事務次官前川喜平君、文部科学省元大臣官房人事課企画官嶋貫和男君、文部科学省元大臣官房人事課長藤江陽子君、再就職等監視委員会委員長大橋寛明君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣府子ども・子育て本部統括官西崎文平君、外務省大臣官房審議官飯田圭哉君、外務省大臣官房参事官飯島俊郎君、財務省理財局長佐川宣寿君、文部科学省高等教育局私学部長村田善則君、厚生労働省健康局長福島靖正君、国土交通省住宅局長由木文彦君、国土交通省航空局長佐藤善信君、防衛省大臣官房長豊田硬君、防衛省統合幕僚監部総括官辰己昌良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 本日は、安倍内閣の基本姿勢・社会保障等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大串正樹君。

大串(正)委員 自由民主党の大串正樹です。

 自由民主党・無所属の会を代表して、本日は、社会保障、特に雇用政策と働き方改革についてお伺いいたします。

 まず初めに、雇用政策における諸課題について、総理にお伺いしたいというふうに思います。

 アベノミクスの成果といたしましてよく強調されます有効求人倍率が大きく改善をしたわけでございます。これは必然的に人材不足が景気回復の足かせになりつつあるという理解をしているところでございますが、その解決にはやはり、職種間の求人に格差がある現状では、それぞれの職業に合った個別のマッチングなど多面的な取り組みが必要になってくると考えております。

 このように、アベノミクスの第二ステージと称しまして、働き方改革など雇用問題が経済再生の中心的な課題になりつつある、こういう認識で私も本日の質問に臨んでいるところでございますが、この労働雇用政策におけるさまざまの課題をどのように認識されているのか、改めて総理の御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々は、三本の矢の政策を進めております。マクロ、ミクロの政策を進めておりますが、それは国民生活を豊かにするためであり、そしてやはり働きたい人が働けるという状況をつくっていくという意味においては雇用という数字は最も大切な指標であり、我々政治家にとってまず一番最初の大きな使命ではないか、こう思っております。

 私たちが政策を進めてきた結果、約百七十万人就業者は増加をいたしましたし、政権奪還後の初期はやはり、正規をふやしていく、これが大きな宿題でありましたが、この正規雇用についても、一昨年、八年ぶりにプラスに転じて、昨年と合わせて七十七万人増加をいたしました。

 有効求人倍率は、兵庫県はもちろんのこと、全国で一倍を超える、これは史上初めてのことでありますが、同時に、今委員が御指摘になったように、人手不足の問題またミスマッチの問題が発生をしているのも事実でございます。全体として雇用が大きく改善する中において、職業別の有効求人倍率を見ますと、建設や介護関連職種など他の職業に比べて高いものがありまして、求人、求職のミスマッチや人材不足といった課題があると認識をしております。

 このため、介護や建設等の人材不足分野について、ハローワークでのきめ細かなマッチング支援や面接会の実施、能力面でのミスマッチを解消するための職業訓練の実施、そして職場の魅力を高めるための雇用管理改善に対する支援等の取り組みを行っているところであります。いわば臨みたい分野、臨みたい職種につけるように、政府として、スキルアップのための支援を行いながらこうしたミスマッチの解消あるいは人材不足の解消を図っているところであります。

 さらに、平成二十九年度予算においては人への投資に力を入れておりまして、職業訓練給付について、ITなどの分野や子育て女性のリカレント教育、いわば学び直しと言ってもいいんですが、このリカレント教育の講座を大幅にふやすとともに、受講費用に対する給付の引き上げを行うなど、出産などを機に離職した女性の再就職、学び直しへの支援や、非正規雇用の若者等のキャリアアップ支援の拡充といった事項を盛り込んでいるところであります。

 政策をしっかりと、使い勝手がいい、ちゃんと使えるという政策にしていくためにも、我々は、実際に多くの方々から生の声を伺いながらそれを政策に反映させていくという手法をしっかりととりながら、今後もアベノミクスによる成長の果実を生かしながら、人への投資や一億総活躍社会の実現のための最大のチャレンジである働き方改革の取り組みに全力を挙げていきたい、このように考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 総理みずからの、細かい、さまざまな取り組みについての御回答をいただいたところでございます。

 おっしゃるとおり、平成二十九年の雇用政策関連の予算では人材投資関連予算が倍増しているということで、その意気込みが数字にもあらわれているのではないかなというふうに考えるところでありますので、有効な施策の実践を推進していただきたいなというふうに思っております。

 それでは、各論の方に入りたいと思いますので、ここから先は塩崎厚生労働大臣に幾つかお伺いしたいと思います。

 冒頭お話しいたしましたとおり、不足する労働力をいかに確保していくかというのがアベノミクスの次のステージの大切な課題になってくるというわけでございますが、幾つか、先ほど総理にも少し触れていただきましたけれども、お話を伺いたいと思います。

 まず第一に、女性の活躍。これも、安倍政権が発足して以来、女性が活躍する社会をつくるという点においては非常に重要な政策の位置づけになっているところでございますが、きょうお伺いしたいのは主に転職や復職支援といった分野でございます。

 もちろん、男女限らず一般に転職者を受け入れている企業というのは、中途採用のメリットというのを非常に自覚した上で繰り返し転職者を受け入れるような傾向があるように伺っております。つまり、一定の意識改革が進めば雇用というのはもっともっと流動的になるのではないかなというふうに思っております。

 ただ、女性に限って考えますと、ライフイベントなどの諸事情を考えた上での施策が重要になってくるわけでございますし、現状の労働力不足、この少子化が続く中では、やはり女性の活躍というのが結果的に労働力確保に大きく貢献するということを踏まえまして、女性の復職といったものについてどのように考えられているか。

 特に、来年度予算には、子育て支援はもちろん、先ほど総理が触れていただきましたリカレント教育などの復職支援がある一方、受け入れ企業側にも再雇用の助成制度なども実施されている。これらの施策の有効性についてお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 御指摘のように、特に女性の活躍というのが今後は労働市場においても大変大事だということでありますが、子育てなどを機に離職されてまた再就職しようというときの支援が大変大事であります。

 厚生労働省としては、今御指摘いただいたように、能力アップを図るためにリカレント教育などの支援を拡充する、あるいは教育訓練給付の給付率の引き上げなどを行ってこれを進めていこうということで、雇用保険法の改正法案を今回お出ししておりますが、来年度予算では、今お話がありましたが、企業にも能力評価を前提とした再雇用制度というのを導入して、希望者を再雇用した企業への助成制度を創設して支援していこう、こういうことでございます。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 具体的な施策が本当に動き出して、もっともっと女性が活躍できる社会を目指していっていただければというふうに思います。

 また、あわせまして、間接的な女性への支援といたしましては、やはり男性の働き方改革も重要であると考えております。特に、男性の育児休暇などについても、現状、助成制度はありますけれども、引き続き支援をしていっていただければというふうに思います。

 次に、生産性の話を少しお伺いしたいと思います。

 限られた労働力を最大限に活用するためには、やはりそこで働かれている人たちの生産性をいかに向上させるかというのが大きな課題になると思われます。欧米よりも低いとされております日本の生産性の向上というのは大変重要な喫緊の課題であると言えるわけでございますが、ただ、この生産性というのはなかなか定義もしにくいものでありますし、また業種によってその意味も多様であるというふうに思います。

 おもてなしといったような分野でしっかりとしたサービスを提供しているものの生産性をどういうふうにはかるのかといったところも課題ではないかなというふうに思いますが、そういった意味で、政策で直接あらゆる職業の生産性を向上させるというのはなかなか難しいことではないかなというふうに考えます。

 現在、来年度の予算の中には環境整備といった分野で幾つか予算が盛り込まれているということでございます。この点につきまして、生産性の向上の施策についての厚生労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 これまでも厚生労働省では、魅力ある職場づくりを通じた企業の生産性の向上というものを図るために、公正な評価あるいは処遇制度、研修制度などを導入した場合に助成するということをやってきたわけでありますが、これに加えて今国会では、雇用保険法の改正の中で、労働関係助成金の理念として初めて企業の生産性の向上の実現の後押しというものを追加することにいたしました。誰の目でこの生産性をはかるのかという際に、当然これは厚生労働省側が必要な判断をするわけでありますけれども、その際に、金融機関が行う事業性評価、これを参考に生産性向上を判定するということを導入しようということでございます。

 さらに、来年度予算では、生産性向上に資する人事評価制度それから賃金制度をきちっと整備した企業には助成をしようということで、そういう新たな助成制度も創設をすることにしております。

 今後とも、企業の取り組みの成果をしっかりと評価しながら、生産性向上につながる支援をやっていきたいというふうに思っております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 有効な施策となりますように、また、その結果がどういう形になってくるか、いろいろな先進的な事例も出てくるでしょうし、効果が出るもの、出ないもの、いろいろあると思います。それをしっかりとまた次の施策へと展開していっていただければいいなというふうに思っているところでございます。

 また、この生産性向上については、この後ちょっとお伺いをいたしますけれども、長時間労働の是正、こういった分野とも非常に表裏一体の課題であるというふうに思っております。政策効果を見きわめながら、確実に進めていっていただきたいなというふうに思います。

 労働力の確保策の最後の課題として、人材育成についてお伺いをしたいと思います。特に、今回の予算の中に大きく取り上げられております、キャリアアップにかかわる施策の具体的な中身やその有効性について。

 特に、来年度の予算額を見ても、人材育成に大変大きく注力しているというふうに数字からも受けとめられるわけですが、中には、オーダーメード型訓練の開発であるとかキャリア形成促進助成金の見直し、専門実践教育訓練給付の拡充など、冒頭、総理からも触れていただきましたけれども、大変たくさんのメニューを持って人材育成に大変力を入れていこうという意図が見えるわけでございます。

 確かに、今の人口減の社会では労働力の質を高めていくということが必須になるわけでございますけれども、学び直しにおいては、きょうはお呼びしておりませんけれども、文部科学省との連携によって、大学としっかりと連携をしながらまた社会に戻っていっていただく、そういったところも必要ではないかなというふうに考えているわけでございます。

 このようなキャリアアップ関連の施策は有効に機能し得るのかどうか、これについてお伺いしたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 やはり、働く方々の能力をアップしていくということ、これが生産性向上や賃金アップにもつながってくるわけでございまして、今お触れをいただきましたが、二十九年度の予算案では、先進企業の好事例を活用しながら企業それぞれに合ったオーダーメードの訓練というものを中小企業へも支援していこう、新たな人材育成支援というものを行っていきたいと思っておりますし、また、個人のキャリアアップや子育て女性のリカレント教育、先ほど出ましたが、これを支援するために、専門実践教育訓練給付の助成対象講座の拡充を格段に図っていこうというふうに思っています。

 それから、一年、二年、少し長期にわたっての訓練を受けることによってレベルの高いITの資格であったりといった資格取得などができる離職者訓練の新設、拡充。それから、子育ての女性の再就職に向けた職業訓練の際に託児所があるとないとではえらい違いでありますので、託児所つきのものを含めて職業訓練を拡充していこうというふうに思っておりまして、OJTだけではなくて、大学あるいは専門学校そしてまた民間でもそういった訓練をやっておりますので、教育訓練機関としっかりと連携をしながら取り組んでまいりたいと思っております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 生産性向上のさまざまな環境整備とあわせて、人材育成という部分についてもさまざまな施策を展開しながら、しっかりと労働力を確保していくというところをお願いしたいと思います。

 ただ、実践的な現場の問題になればなるほど本当にOJTというのが有効になると思いますし、そういう場面に頼らざるを得ないというところもありますので、外部の資格教育とあわせて、OJTとの組み合わせによって、より効果的な、実践に役立つ人材の育成を支援していただければなというふうに思います。

 それでは、最後に、働き方改革についてお伺いしたいというふうに思います。

 加藤働き方担当大臣にきょうはお越しいただいておりますけれども、昨今、働き方改革実現会議というところで非常に活発な議論が行われている。総理も陣頭指揮をとっていただいて、その意気込みが大変感じられる会議でありますけれども、実行計画の取りまとめは本年度末にあると伺っておりますし、この十四日にも踏み込んだ議論がされたところであります。報道関係でも報じられているところであります。

 同一労働同一賃金などの非正規雇用の処遇改善あるいは長時間労働の是正といった、今本当に中心的な話題になっているテーマを含めた九つの課題を踏まえて、会議の進捗であったり、今後、当面の方向性について御説明いただきたいと思います。

加藤国務大臣 大串委員には、雇用政策や働き方改革に取り組んでいただいております。

 今御質問がございました働き方改革実現会議、昨年九月以来、労使のトップ、有識者にお集まりをいただき、安倍総理大臣が座長を務めていただく中で、働く人の立場、視点に立った議論を重ねております。

 そこでは、同一労働同一賃金の実現、長時間労働の是正、雇用吸収力の高い産業への転職、再就職支援を初めとした幅広い分野について、この三月に実行計画を取りまとめるということで議論を進めていただいております。

 特に、非正規で働く方の処遇改善につながる同一労働同一賃金については、不合理な待遇差を是正するため、詳細な政府のガイドライン案、これは昨年末に公表させていただきましたが、労働者が実際に裁判で争えるよう、その根拠となる法改正については、実行計画を踏まえて立案作業を進めていきたいと思っております。

 また、長時間労働の是正については、いわゆる三六協定を超えることができないように、また罰則つきの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、これも実行計画を踏まえて法案作業を進めていきたい、こういうふうに考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 後でお伺いしようと思っていたところなんですけれども、今お話がありました長時間労働の是正についてちょっと踏み込んだところでございますが、十四日の実現会議でたたき台が示されたところであるんですけれども、労使それぞれの代表でなかなか合意が得られなかったというふうに伺っております。

 過労死であるとか過労自殺などが後を絶たないわけでありますし、一刻を争う課題であるということをしっかりと認識していただいて、こういった不幸な事件が二度と起きないように、今おっしゃっていただいた特別条項の上限をしっかりと設けて、具体的な数値を入れて、三六協定の見直しを含めた法制化を確実に行うということを今おっしゃっていただいて、本当にそれでお約束いただけるかどうか、再度確認をさせてください。

加藤国務大臣 二月十四日に開催いたしました働き方改革実現会議で、事務局からいわばたたき台案みたいな形でお示しをさせていただき、長時間労働の是正の法改正のあり方について具体的な議論をいただきました。

 誰に対して何時間の時間外労働の上限を設けるのか、これは非常に重要な議論であります。労働側、使用者側にはしっかり合意を形成していただく必要があるというふうに考えておりまして、当日の会議においても、総理から労使双方の代表に対して、胸襟を開いての責任ある議論を要請させていただいたところであります。

 三月末に取りまとめる実行計画においては、実態を見据え、かつ実効性の上がる結論を出していきたいと思いますし、今お話がありましたように、先般の過労死による自殺等々、そういった悲惨な事案は二度と起こさない、こういう観点から取り組んでいきたいと思っております。

 時間外労働時間の上限については、法律に明記していくべきものというふうに考えております。

大串(正)委員 ありがとうございました。

 強い決意ということを伺いました。そして、しっかりと法制化を進めていただくというお約束もいただいたということで、これはしっかりと進めていただきたいと思います。

 ただ、法律をつくることが目的ではなく、やはりこういった事件が二度と起きないこと、それが我々の目的とするところでもありますので、しっかりとその点を踏まえた上で、有効な施策に展開していっていただければなというふうに思います。

 もちろん、この長時間労働の問題については、労使がそれぞれなかなか合意が得られないというところからも明らかなように、経済成長を足踏みさせずに同時に雇用環境を改善していくというある意味二項対立的なテーマではあるんですけれども、この二項対立をしっかりと乗り越えるべく、人材育成を通じた生産性の向上、先ほどお伺いしたとおりの生産性の向上というのが不可欠であろうかというふうに考えるところでありますので、しっかりと対応していただきたいと思います。

 それでは、もう一点、今回の働き方改革の中で重要なテーマである同一労働同一賃金のことについてもお伺いしたいと思います。これは少し各論にも入りますので、塩崎大臣にお伺いしたいと思います。

 一般的に言われる同一労働同一賃金、言葉どおり受けとめると全ての同じ労働には同じ賃金という誤解も多いんですけれども、実際に日本の雇用慣行の中ではなかなかこれが全て同じというわけにはいかない中で、先ほどお話がありましたとおり、昨年末にガイドラインが示されたところでもあります。そういった意味では、認められるべく、異なる支給、あるいは同一としなければならない支給といったものがあるかと思います。

 労使双方で相互理解が必要であることは明らかなんですけれども、現時点で、この同一労働同一賃金とはどのような考え方なのか。また、その実現のためには、経営側、企業側のメリットが何かというのを理解していただく必要もあると思います。そういった意味で、企業側にどんなメリットがあるかという点も含めて御説明をいただければと思います。

塩崎国務大臣 御指摘のとおり、同一労働同一賃金の実現に向けては各企業でさまざまな努力をしていただかなきゃいけないと思いますし、また大事なことは、労使できっちりと話し合うということが大事で、合意に至ることが大事だと思っております。

 特に大事なのは、同一労働同一賃金の同一労働とは何かということが大事で、やはり、職務や能力などの明確化、そしてそれに基づく公正な評価というものが大事だというふうに思います。さらに、こうした公正な評価にのっとった賃金制度というものを、労使の話し合いを通じて納得を得ながら、可能な限り速やかに構築していくことが大事であって、今回のガイドライン案においては特に基本的な考え方を前文でお示ししておりますので、その哲学を明らかにしたところでございます。

 三月末に取りまとめられる働き方改革実行計画も踏まえながら、このガイドライン案をもとに法改正の検討を進めておりまして、早期の国会提出を目指してまいりたいと思います。

 企業へのメリットでありますが、これにつきましては、非正規で働く方々の声や働き方改革実現会議での御意見を伺う中で、雇用形態にかかわらず誰もが公正な評価と処遇を得られるようにすることが、一人一人に多様な働き方の選択を可能にするだけではなくて、それが働く人のやる気を引き出すことで企業の生産性や競争力の向上につながる、そしてさらに待遇改善の原資につながっていくという、働く喜びと成長の好循環とも言うべきものが生まれるべきなんだろうと思います。同一労働同一賃金の実現によって正規、非正規の間の格差を埋めて、若い方々も将来に明るい希望が持てるようにすることによって、中間層の厚みを増して、より多くの消費につながることも企業にとってのメリットではなかろうかというふうに考えております。

 同一労働同一賃金を実現するために実効性のある法整備に向けた検討は先ほど申し上げたとおり大事だということで、しっかりやっていきたいと思います。

大串(正)委員 ありがとうございます。これからしっかりと対応していただけるという強い決意を伺いました。

 もともと、この同一労働同一賃金の議論というのは非正規雇用の待遇改善というのが目的でスタートした議論でありますので、正規雇用の賃金を引き下げてというようなことは決してないように、それだけは強調しておきたいというふうに思います。

 また、キャリアアップ助成金の拡充などによって、非正規雇用労働者の正社員転換などもあわせてしっかりと実効性を見きわめて推進していただきたいなというふうに思います。

 それでは、最後の質問でございます。

 これも加藤大臣にお伺いしたいと思うんですが、インターバル規制の問題でございます。来年度の予算の中ではシステムの導入への支援、若干予算額としては小規模ではないかなと。

 ただ、現状、いろいろな御意見を伺う限りはまだまだその導入というのが非常に少ないということでありますし、EU指令でも十一時間のインターバルを置くというふうにされてはいるものの例外規定もたくさんあって、非常に難しい制度であるという認識を持っております。実践の率からしても今いきなり厳しい規制を設けるというのも難しいわけでございますが、今後インターバル規制についてどういうふうに対応されていくのか、お伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 仕事が終わってから、次の日、仕事が始まるまでの間の時間をしっかり確保していこうというのが勤務間インターバルということでありまして、生活をする時間、特に睡眠時間を確保していく、そして健康な生活を送っていくためには非常に重要な考え方といいますか対応だというふうに思います。

 ただ、日本ではそうした勤務間インターバルを制度として導入している企業というのは二・二%という水準なんですね。したがって、この状況の中で、罰則つきのインターバル規制というものについては今直ちに導入し得る環境にはないのではないかというふうに考えております。

 また、EU等ではこうした勤務間インターバル規制が導入されておりますけれども、農業、港湾や空港労働者、鉄道輸送といった業種などで十四もの例外規定が設けられているといったことからもおわかりになるように、労務管理上いろいろ課題もあるわけであります。

 まず、政府としては、今御指摘もありましたけれども、インターバルを導入する中小企業への助成金を創設していく、あるいはうまくやっている事例をほかの企業にも周知していく、こういったことを通じて、自主的な取り組みによってまずはインターバル規制導入についての環境を整備していく、それにしっかりと邁進をしていきたいと思っております。

大串(正)委員 ありがとうございました。

 このインターバル規制という言葉自体もまだまだ周知されていないように思いますので、その点も含めてお願いしたいと思います。

 今回取り上げました女性の活躍であるとか生産性の向上、人材育成、同一労働同一賃金、長時間労働の是正、今のインターバル規制など、全て雇用政策においては相互に関係し合った概念でありますので、その相互作用を考えて改革を進めていかなければいけないなというふうに考えておりますので、またしっかりと対応していただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

浜田委員長 この際、豊田真由子君から関連質疑の申し出があります。大串君の持ち時間の範囲内でこれを許します。豊田真由子君。

豊田委員 おはようございます。自由民主党の豊田真由子でございます。

 本日は、予算委員会において初めての質問の機会をいただきました。理事の先生方初め先輩、同僚議員の皆様に心より御礼を申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、社会保障の集中審議ということでございます。

 私は、自分自身が二人の子を育てる母親として、また、祖母の介護を母が在宅でずっとしておりました。学生時代には児童養護施設や障害のあるお子さんの放課後デイサービスなどでボランティアをさせていただいておりまして、また、今地元で日々いろいろな悩みを抱える方のお話を聞いて思いますことは、社会保障というのは何といっても国民の安心と希望の源でありまして、最後のとりでであります。そして、国民を幸せにするためのものであります。

 そうした中で、やはり、ケアを受ける側の方が幸せになるためには、ケアを提供する側の方が元気であしたも頑張ろうというふうに、やりがいを持って仕事をし続けることができなければならないというふうに思います。そういった意味では、どの現場もそうだと思いますが、医療、介護、福祉、保育、教育、それぞれの場所で、やってもらうことが当たり前ではなくて、こうしたケアをしていただくことに大変感謝する、そのことによって信頼関係が生まれ、真心と熱意あふれるケアが提供される、これをしっかりと実現していくような政策を進めていかなければならないというふうに思います。

 ここで、パネルを一つごらんいただきたいと思います。

 これは、OECD加盟国中、国民負担率を高い順から示したものでございまして、国民所得に占める社会保障と租税の負担率を示しております。

 これをごらんいただきますと、我が国は三十四カ国中二十八番目でございまして、相対的に低い国民の負担率で、健康寿命世界一といったすぐれた健康水準を実現できております。そして、これは一つにはやはり現場で働く方々の献身的な、ある意味非常に長時間の重労働も含めた献身的な努力によって成り立っているとも言えるわけでございまして、この働く側の方を幸せにしていくことが私はこれからの日本の社会保障の一つの重要なポイントであると考えております。

 まず、保育の充実についてお伺いをいたします。

 昨年六月に閣議決定をされましたニッポン一億総活躍プランに基づきまして、本年四月から、保育園で働く全職員の方、これは保育士の方に限らず、事務あるいは調理をなさる方なども含めて、全職員の方のお給料を月額平均で二%、六千円程度アップするということが決まっております。

 さらに、研修などのキャリアアップの仕組みを構築いたしまして、おおむね経験三年以上の方については月額約五千円、そしておおむね約七年以上の方に対しては月額約四万円という、大幅な給料アップを行うということを今回政府の方で決定いたしております。このために、公費一千百億円の新たな確保をいただきました。安倍政権の子育て施策支援への意気込みを感じられると思います。御礼を申し上げたいと思います。

 そしてまた、この二月は保育園の入所決定が決まる時期でございまして、私のところにも今、保育園の入所待ちをしているという切実なお声が聞こえてまいります。保育所の受け皿整備につきましては、四十万人から五十万人分に上積みするということで懸命に取り組んでいただいているとは承知をしておりますが、さらなる拡充と、それぞれの事情、ニーズに応じたきめ細やかな対応が可能となるように、さらにお願いをいたしたいと思います。

 こうした状況を踏まえ、保育ニーズに対応した保育、そして保育士の皆さんの質と量の確保につきまして、総理のお考え、意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 地方出張に行った際、ある女性の方から握手を求められたんですが、握手をしたときに、私は保育士なんですが、大変処遇を改善したことはうれしいんですが、しかし将来に夢を持てる職場にしてください、こういうお話もございました。

 今回の保育士の処遇改善は、努力が評価され、将来に希望が持てるように、技能や経験に応じたキャリアアップの仕組みを構築することとしております。ですから、頑張っていけばしっかりと自分の努力が報われるという職場にしていく、そのための施策を講じたところであります。

 これに加えまして、平成二十九年度予算において、保育の人材確保策として、保育士の宿舎借り上げ支援の拡充、そして離職者の再就職支援を行う保育士・保育園支援センターの体制強化などを盛り込んでおります。

 これらの対策を総合的に実施することによって、高い使命感と希望を持って保育の道を選んだ方々が将来の目標を持って保育の現場で長く活躍し続けられるよう引き続き取り組んでいきたいと思っておりますが、もちろん保育所の五十万人の受け皿整備等はしっかりと行いながら、ハード、ソフト両面にわたって支援をしていきたい、拡充していきたいと思っております。

豊田委員 ありがとうございます。

 まさに総理がおっしゃるとおり、処遇の改善、お給料が上がるということはもちろん大事ですが、それだけではないということを私は現場の方々からお話を伺っていて思います。人は誰しも、自分が大切な役割を果たしている、誰かの役に立っている、そういうやりがい、生きがい、そして将来的な人生の展望、こういったものがあってこそ生き生きと働き続けることができると思います。こうした多角的なアプローチを今後もお願いしたいと思います。

 次に、介護離職ゼロについてお伺いをいたします。

 この介護離職ゼロという言葉は、一つには高齢者の御家族の方が介護のために今の仕事をやめるということがないようにしたい、もう一つは介護の現場で働く方がやりがいを持って働き続けることができる環境をつくっていく、この大切な二つの意味があり、どちらも実現をしていかなければならないわけであります。

 前者につきましては、介護休業を取得しやすくする、残業の免除をするといったようなこと、あるいは介護の受け皿整備、これも保育と同様でございますが、二〇二〇年代初頭までに約五十万人分を整備するということに今懸命に取り組んでいただいているわけでございます。こうしたさまざまな方策が必要となってまいります。

 そして、介護の現場で働く方々につきましては、これも保育と同様に累次の処遇改善が講じられてきておりまして、二十九年度からはまた月額約一万円相当のアップということでございますが、やはり先ほどの保育士の方と同じように、将来的なキャリアアップの展望が築いていける、あるいは介護ロボットやICTなどを活用いたしまして介護現場の負担を軽減する、こういった多くの取り組みが求められているところでございます。

 この介護離職ゼロにつきまして、塩崎大臣の御決意を改めてお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 今回、新たなる三本の矢で、日本をつくり直すということで今やらせていただいております。その大事な一つの柱が介護でございまして、今御指摘をいただきましたように、処遇改善等々、介護の道を選んだ方々が介護の仕事というのは本当にやりがいがあるというふうに感じていただけるような、そういうしっかりとした対応を私どもとしてもやっていきたいと思いますので、今御指摘をいただいたとおりの方向で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

豊田委員 ありがとうございます。

 我が国は、世界を引っ張る長寿大国であります。私の地元でも、長年地域と国を支えてきた高齢者の方が今でも現役で、自分のことよりみんなのこと、地域のことと一生懸命活躍をしていらっしゃいます。

 こうした高齢者の方を大切にして尊敬して、安心して過ごしていただけるように、そして、もし介護や医療が必要になったときには、安心して尊厳と希望を持って、皆さんから大切にされる。これは、今高齢になっている方だけではなくて、全ての国民にとっての未来の大事な課題でございます。引き続き強力にお力添えをいただきたいと思います。

 次に、今回の社会保障予算における目玉の一つであります、我が事・丸ごとの地域づくりについてお伺いをしたいと思います。

 地元を回りまして、各御家庭の様子を拝見いたしますと、いろいろな複雑な課題が絡み合っているんだけれどもなかなか適切なサポートにたどり着いていない、ちょっと孤立しているというような御家庭を実は多く見受けることがございます。

 例えば、一人親世帯ですとか、高齢者の独居あるいは高齢者のみの世帯、子育ての深刻な悩みを抱えていらっしゃる、また虐待が疑われるような事例もございます。あるいは、自宅にこもってしまっている若者や中高年の方また障害のある方などもいらっしゃいます。こうした方については、御近所の方も何となく気づいているんだけれどもどうしていいかわからない、あるいは民生委員や児童委員といった専門職の方もなかなか相談窓口が一本化されていないというような状況がございます。

 こうした状況に対応するために、パネルをごらんいただきたいと思います、今回は、塩崎大臣のリーダーシップのもとで我が事・丸ごとの地域づくりというのがスタートすると伺っております。いろいろな課題を、自分には関係ないではなく、自分にも何かできないだろうかというふうにみんなが考える、そしてそれぞれの課題を縦割りではなくて丸ごと受けとめて各所が連携していく、こういう仕組みだと伺っておりますが、このことによって今までできなかったどのようなことがどのようにできるようになるのか、具体的にお伺いをしたいと思います。

塩崎国務大臣 やはり、一人一人、住んでいるのは地域で住んでおられるわけでありますので、地域あるいは個人の抱える今御指摘をいただいたようなさまざまな課題、これを人ごとではなくて我が事として地域住民が、まちづくりを、つまり助け合いの仕組みをしっかりと、能動的に参画をしていく。そして、我が事として受けとめて、多様な主体とともに縦割りではなく丸ごとの支え合いをする地域共生社会というのを実現しようということで、今、私ども厚生労働省を挙げて取り組んでいるわけでございます。市町村におけるさまざまな生活課題を解決するための包括的な支援の体制を整備していくことだと御理解いただければと思います。

 このため、今国会に提出いたしております地域包括ケアシステムの強化を図る法案の中では、そしてまた二十九年度の予算では二十億円を計上いたしまして、全国百カ所程度を対象に、自治体の先駆的な取り組み、つまり丸ごとの相談を推進することにしております。

 これらによって、これまでの相談体制ではなかなか対応ができてこなかった複合的な課題をお持ちの方々や、制度のはざまに入ってしまっておられる方、そしてまた、みずから相談に行くことがなかなか難しい、先ほど引きこもりということがありましたが、そういうことを確実に支援できるようにしていこうと。そしてまた、就労支援などを一体的に行うことで支援を必要としていた方御自身が地域を支える側にもなる、こういうような住民主体の地域づくりをつくり上げていきたいというふうに考えております。

豊田委員 ありがとうございます。

 人は誰しも幸せになる権利がございます。そしてまた、誰しも、いつ自分が支援を必要とすることになるかわからない。したがって、私は今この瞬間も、我が国において孤独の中でつらい思いをしている方がいれば、こちらから、もちろん本人の御意思を尊重しながらそのドアをノックしに行く、こうしたたくさんの思いやりや優しさが、我が国にとっての大きな希望の光が広がっていくことを切にお願いいたしたいと思います。

 次に、これまで社会保障の充実のお願いを重ねてしてまいりました。ただ、持続可能な社会保障制度を考える場合には、財政の健全化と必要な社会保障の充実、この難しい二つを両立させていかなければなりません。そして、これからは平成三十年度の診療報酬と介護報酬の同時改定の検討が進められていくわけでございますが、こうしたことに対してやはり現場では心配をする声も聞かれるところでございます。

 もちろん、社会保障をめぐる財政状況が厳しい中、適正化、効率化すべきところはしっかりと実施をしていく必要がございます。ただ一方で、社会保障は国民の命と健康を守る安心の源、最後のとりででございます。そしてまた、研究開発など、我が国の経済の成長分野としても大変期待をされている分野でございます。

 こうしたことを踏まえまして、同時改定も含めた財政健全化と社会保障の充実について、安倍総理の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 多くの国民の皆様は、将来自分は現在の社会保障の給付を受けられるんだろうかという漠然とした不安を持っておられるんだろうと思います。その理由というのはやはり、団塊の世代の皆さんが今もう支え手から給付を受ける側になっておられるんですが、その皆さんが二〇二五年はいわば七十五歳以上になっていかれる、そのときに介護も医療も大丈夫かという不安を持っておられるんだろうと思いますが、その中においても国民一人一人が状態に応じた適切な医療や介護を受けられるよう、医療と介護の提供体制をしっかりと構築していく必要があります。

 平成三十年度は、医療と介護のサービス提供等に関する計画である医療計画と介護保険事業計画が初めて全国で同時に改定される年であります。非常に重要な年と言ってもいいんだろうと思います。二〇二五年までの残された期間を考えると、今回の六年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定は非常に重要な分水嶺と考えております。

 このため、今回の同時改定においては、地域包括ケアシステムの構築、医療と介護の連携強化と効率的なサービス提供体制の構築、急性期から回復期、慢性期、在宅医療までの医療機能の分化、連携の推進、ICTの活用も含め、現場の負担軽減にもつながる効率的な医療、介護の提供の推進、高齢者の自立支援に資する取り組みの推進等を強力に進めたいと考えております。

 二〇二五年以降の超高齢社会においても国民皆保険を維持していくため、適正化、効率化すべきことは実施しつつ、質が高い医療や介護を安心して受けていただけるように、関係者の御意見も伺いながら、平成三十年度の同時改定へ向けてしっかりと検討してまいりたい。

 つまり、しっかりと持続可能なものにすると同時に適正化を行う。適正化を行うということは、必要な給付を切るということでは決してないんです。必要とする給付はしっかりとお届けをしながら、質もちゃんと維持をしながら、しかしその中で効率化を図っていきたい、このように考えております。

豊田委員 ありがとうございます。

 国民の皆様にしっかりと説明し御理解をいただきながら、国民のお一人お一人がみんなで一緒に、この国の未来を、安心をどうやってつくっていくかを御一緒に考えていきたいというふうに思います。

 次に、社会保障と教育。私は、これも非常に大切で、密接な関係があるというふうに思います。

 まさに総理が施政方針演説で述べられたように、我が国の未来、それは子供たちであります。

 私も小学生二人の子供の母親でございますが、たくさんの子供たちや保護者、先生方とお話をします。

 今は本当に、社会の急激な変化に合わせて、子供たちを取り巻く環境も大きく変わっております。情報化やグローバル化によって、学ぶ内容も多様化、高度化をしております。また、人間関係が複雑化する中で、いじめや不登校などの深刻な問題も出てきております。そして、発達障害など、特別な支援を必要とするお子さんたちも増加の傾向にございます。

 そして、地域における子供の安全確保、地域のきずなが薄れていく中で痛ましい事件なども起きておりまして、私は、こうしたさまざまな複雑多様化する課題に対応していくためには、子供たち、先生方、保護者の方、それぞれにかかっている負荷をきめ細やかに軽減していく、その悩みに向き合っていく必要があると思います。

 例えば、教職員の先生方については非常に、本来の授業以外にも、さまざまな事務ですとか保護者への御対応や部活動などの時間もとられるというようなお話もございます。やはり教職員定数をしっかりと確保し、また指導、運営体制の充実といったサポートをしていかなければいけないと思います。

 そしてまた、全てを学校にお任せしていればいいということではないというふうに私は思います。学校と御家庭と地域、それぞれが非常に強く連携して協力をし合うことによって、子供たちそして地域の未来は守られていくと思います。私の地元でも、保護者だけではなくて地元の方々が学校応援団というのをつくられまして、さまざまな学校の活動を支援いたしたり、子供の見守りや声かけ活動に熱心に取り組んでおられます。

 また、保護者の方の負担ということでありますが、その一つにはやはり、幅広い世帯における教育費の負担が大きいという点がございます。今回、新たに給付型の奨学金が創設されるということでさまざまな施策を講じられているところではありますが、この対象となる年代あるいは世帯をできる限り広くしていくべきというふうにも考えます。

 こうしたさまざまな課題、子供たち、先生方、保護者、地域の方、そのお力を得ながらそれぞれの負担を軽くしていき、みんなが笑顔で、子供たちの未来を、若者の将来を一緒に考えてつくっていける、この社会の構築に向けて、松野大臣の意気込みをお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

松野国務大臣 豊田委員の御指摘のとおり、複雑多様化する課題に対応するためには、学校が家庭や地域と連携、協働し、社会総がかりによる教育を実現することや、誰もが家庭の経済状況に左右されることなく希望する質の高い教育を受けられることが大変重要であると認識をしております。

 文部科学省においては、教職員定数の改善を図り、学校の指導、運営体制を強化するとともに、地域住民との連携、協働を含めた学校運営の改善を図ることにより、学校の機能強化を一体的に推進します。このため、こうしたことを実現するための法案を今国会に提出させていただいているところであります。

 さらに、幼児期から高等教育段階までの切れ目のない教育費負担軽減として、平成二十九年度予算案では、特に、幼児教育無償化に向けた取り組みの段階的推進、高校生等奨学給付金の充実、大学における授業料減免等や、給付型奨学金の創設を含めた大学等奨学金事業の充実等に必要な経費を盛り込んでいるところであります。

 なお、給付型奨学金については、創設に向けた法案を今国会に提出させていただいております。

 今後とも、学校、家庭、地域の連携、協働のもと、誰もが平等に教育を受ける環境整備に向けて全力で取り組んでまいります。

豊田委員 ありがとうございます。

 教育は全ての礎であります。そのお子さんや若者の人生ということはもちろんですが、御家庭や地域また国の未来にとっても教育が礎となってまいりますので、どうぞ引き続きお力をお尽くしいただきたいと思います。ありがとうございます。

 次に、ともに生きる共生社会、真の共生社会の実現に向けた取り組みについてお伺いをしたいと思います。

 私は、先日、地元で、障害のある方をメンバーとする劇団の演劇を拝見する機会に恵まれました。本当にすばらしい歌や演技で、強く胸を打たれました。そして、非常に障害が重くて車椅子の方も出演をされていて、くす玉を割る役を一緒に皆さんとなさっていまして、大きな拍手が会場からは起こりました。

 私は、そのお姿を見て、全ての方にそれぞれ大切な役割があり、輝く場所があるのだと、一億総活躍社会の一つの姿をそこに見る思いがいたしました。大切なのは、そういう機会がきちんと与えられること、光をどうやって全ての方に当てていくようにするかということだというふうに思いました。

 丸川大臣、きょうお越しをいただいておりますが、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて、それをよい契機といたしまして、今、我が国ではバリアフリーの取り組みが進められております。まちづくりにおいては駅や道路などのバリアをなくしていこうということでありますが、そういったハード面のバリアがなくなっても、人の心の中のバリアが残り続けているとすれば、私はそれは根本的な問題の解決にはならないのではないかというふうに思っています。

 ヨーロッパで仕事をして生活していたときに、我が国に比べて車椅子の方とかベビーカーの方が本当に元気に自由に町を闊歩しておられる姿を見まして、私自身ベビーカーを押していて、向こうはインフラも、百年前にできた地下鉄などもありますのでバリアフリーでは全然ないんですが、困ったことが実はなくてですね。というのは、階段に差しかかると、どこからか人がわらわらと寄ってきて、みんなで担いでくれて、またねと言って去っていく、これを本当に当たり前に皆さんが行っている。障害のある方に対しても、高齢の方に対しても、ハンディがある方に対して当たり前に社会がそれを受け入れて自然に手を差し伸べていく、そういう姿に、これが本当の意味での共生社会、心のバリアフリーではないかというふうに感じました。

 今さまざまな取り組みがなされているところでございますが、こうした心のバリアフリーも含めた、真の共生社会の実現に向けた御決意をお伺いいたしたいと思います。

丸川国務大臣 豊田委員におかれましては、昨年の八月まで十カ月間、文部科学大臣政務官をお務めのときに、インクルーシブ教育であるとかあるいはパラリンピックの支援に大変熱心にお取り組みであったということに改めて敬意を表したいと思います。

 その上で、まさに心のバリアフリーということを、物理的なバリアフリーと同時に、あるいはそれ以上にしっかりと、この二〇二〇年東京大会を契機に推し進めてまいりたいと思っております。

 学習指導要領の改訂については豊田委員も大変熱心にお取り組みいただいたところでございますが、さらにさまざまな業界を超えての接遇のマニュアルをしっかり浸透させていきたいと思っておりますし、これから施策をつくるときには、立案の段階から障害者の皆様に入っていただくということがこの霞が関で浸透していくように進めてまいりたいと思っておりますので、この一年かけて取り組んでまいりましたユニバーサルデザイン二〇二〇関係府省等連絡会議の取りまとめをしっかり皆様の前で発表できるようにしたいと思っております。よろしくお願いします。

豊田委員 お互いをみんなが尊重し合い大事にし合う共生社会の実現に向け、これからも一丸となって頑張ってまいります。

 本日は、どうもありがとうございました。

葉梨委員長代理 これにて大串君、豊田君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。

 本日は、この予算委員会の集中審議、貴重な時間をいただきました。委員長、また理事の皆様、各委員の皆様に心より御礼申し上げたいと思います。

 まず一点目、待機児童の問題を質問させていただきます。

 今、保活の真っただ中でございまして、保育所に入れるかどうかというところ、役所に申請をして、今その答えが返ってこられた方、あるいは今待っていらっしゃるという方々がいらっしゃいます。

 以前、政府は、保育の受け皿整備目標として四十万人分を確保すると。これを、二年前倒ししよう、平成二十九年度中にやろう、しかも十万人分上乗せしよう、全部で五十万人分、保育の受け皿をしっかりと整備しよう、こういうような目標を持って今やっているわけですが、いよいよその目標となる平成二十九年度の予算を今審議しております。

 この二十九年度の五十万人、これはまず達成できるのかどうか、伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 保育の実施主体は各市町村でございますが、将来に向けて、潜在的な保育ニーズも含めて幅広く把握をして、整備計画の見直しを今行っておりまして、昨年九月に取りまとめた集計結果では、平成二十五年―二十九年度の五年間で約四十八万人分の拡大が見込まれております。内閣府所管の企業主導型保育事業による受け皿拡大見込み約五万人分と合わせますと、合計で約五十三万人分の拡大が見込まれるわけでありまして、五十万人分の保育の受け皿の確保は達成可能というふうに考えております。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

伊佐委員 やると言った目標、五十万を超えて、五十三万までやるという見込みだと。やると言ったことはしっかりと達成するということでございました。ここはしっかりと評価をしたいと思います。

 現場では、今、申請をして、残念ながら保留通知というので返ってきたという方もいらっしゃいます。こういう方には本当に申しわけなく思っておりますが、こうした今回の予算も通じて、ことし、来年ということで、ますます今のこの状況というのは緩和されていくということになると思います。

 これまで政府は、保育の量と質の改善ということで、全部で〇・七兆円かけてやるんだというふうに言っておられました。消費税一〇%のときに〇・七兆円やろうと。これを今回、今八%でありますが、あえて前倒して、今の段階で〇・七兆円、しっかりと予算を捻出して措置した。さらに、その上で、やろうと言っていた分以上に今、上乗せしてやろうとしているわけです。そういう姿勢は、自公政権がしっかりと今、子育て政策というものを重視しているということの一つのあらわれだというふうに私は思っております。

 私の地元大阪の守口市というところは、この四月から実は日本で初めての取り組みを行います。何かといいますと、ゼロ歳から五歳まで保育料はただです。幼稚園の授業料も全部ただです。しかも所得制限なしということで。もちろん実費は必要なんですが、これによって、義務教育期間、中学卒業までは基本的なところは全て公費で賄うということになりました。また、医療費についても、通院も入院も無償化、中学卒業までです。結果として、保育も教育も医療も中学卒業まで全部無償化という取り組みをしております。この規模でやるのは日本で初めてです。

 それで、何が起こっているかといいますと、当然、保育や幼稚園の申請というのが今物すごくふえているんです。若い世代がどんどんこの守口市に移り住んでくるかもしれない。まあ、当然これを目指していたわけですが。そうすると、あわせて、いろいろな受け皿がさらに必要になってくるんです。

 今、必死で、既存の幼稚園あるいは保育園の本当に多大な協力を得ながら、小規模の保育というのをふやしている状況ですが、ここで大事なことは、質を落としてはいけない、量をふやしたとしても質をしっかりと維持しなきゃいけない。処遇改善もそうです、保育士の皆さんに来ていただかなきゃいけない。こういう環境をつくっていかなきゃいけない。

 こうした頑張っている市町村があるわけです。守口市もそうです。こういう市町村に対して、国は引き続きしっかりと支援をしていただきたいと思いますが、安倍総理、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 子育て支援においては、子供たちの生活の場である地方自治体、市町村が極めて重要だ、こう思っております。

 今御紹介をいただいた守口市の先進的な取り組みには敬意を表したい、こう思っています。恐らく、全国の市町村も、守口市のような状況をつくっていきたい、ただ財政状況もありますが、そういう状況をつくっていきたい、こう思っているのではないかと思います。

 今後とも、そうした頑張っている自治体をしっかりと支援していくことも大切であります。保育、教育、医療など各分野にわたって、子育て世帯を安倍政権として、自公政権としてしっかりと支援していきたい、このように考えております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 先ほど私も保育士の処遇改善ということを申し上げましたので、ちょっと一言だけ確認をさせていただきたいと思います。これは、私、保育の受け皿の一つの肝だというふうに思っておりますので。

 グラフ、パネルを用意しておりますが、自公政権になって保育士の処遇をどのように改善してきたかということですが、これはずっと右肩上がりです。今、トータルで一〇%増になっています。しかも、今回、この予算は、一〇%増の上で、さらに経験に着目して最大四万円プラスしよう、経験のある保育士さんにはプラスしようというようなものでございます。

 この取り組みに対して、本会議でも野党の皆さんは、ほど遠い金額だというふうなことをおっしゃったこともあるわけですが、私はこれはとんでもないと思います。このグラフには書いていませんが、この左側のところは、民主党政権下は実はマイナス一・二%でしたので、この下がってきたところというのを反転攻勢させて、こうしてずっとここまで上げてきたんだ、実績を積んできたんだということをしっかりと指摘しておきたいというふうに思っております。

 次のテーマに移ります。がん対策についてです。

 三人に一人ががんで亡くなる時代、あるいは二人に一人ががんになる時代、こういうふうに言われておりましたが、これは実は少し昔の話です。今は、女性のがんの罹患率は四六%、男性は六二%なんです。つまり、五人に三人ががんになる時代、こういう状況になっております。

 この夏に、政府は、第三期のがん対策推進基本計画というものを策定することになっております。

 第一期、最初のがん対策基本計画がつくられたのは第一次安倍政権です。これから十年たちました。十年前に目標を立てたんです。残念ながら、この基本計画で第一期のときに立てた目標は、今、達成できる見込みが立っていません。

 例えば一つは、七十五歳未満の死亡率を二〇%減らすんだ、これは達成できない見込みです。ずっと減ってはきたんです。減ってはきたんですが、今、頭打ちしている状況です。がんの検診、できるだけ皆さんに検診を受けていただきたい、目標五〇%。我が党も、検診の無料クーポン、こういうものを提案してまいりました。残念ながら、少しの改善は見られたんですが、この十年間で一〇%アップしましたが、今、それでも検診率四〇%。がんと就労、がんの治療と働き方、こういうものを両立しよう。残念ながら、今、がんになられた方は三五%の方が仕事をやめている、こういう状況なんです。

 こんな中で次期、三期の計画をつくるということになりますが、国が本気になって本当にこの目標を達成していくんだ、この本気度というのを自治体あるいは関係団体に対してしっかりと見せていくということが私は極めて大事だと思っています。

 私が議員になってからずっと取り組んでおります一つががん教育というのもありまして、これもいよいよ全国で開始をされるということになりました。こうして始まるものもあります。

 今回、第三期の基本計画について、私は総理に提案があります。それは、六年間のロードマップをつくっていただきたい、つくったらどうかというふうに思います。つまり、目標を定めるだけじゃなくて、具体的に政府はいつ何をするのかというところをしっかりと定めて、それを評価できるような形にすべきじゃないかと、がん教育も含めて思いますが、国の本気度を具体的に示すという観点で、総理の御決意を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 がん対策については御党が非常に熱心に取り組んでこられましたし、伊佐委員におかれましても政策立案等において主導的な役割を果たしていただいたことに敬意を表したいと思います。

 がん対策については、御指摘をいただいたように、第一次安倍内閣の平成十九年に初めてがん対策推進基本計画を策定し、がん検診の普及による早期発見の取り組み、がん拠点病院の整備など、全国的な医療の充実に努めてきました。また、緩和ケアを初めがん患者の療養生活の質の向上や、がん治療に関する研究の推進を図ってきたところであります。

 こうした取り組みの具体的な成果として、今御指摘をいただきましたがん検診の受診率の向上、がん診療連携拠点病院や地域がん診療病院の設置が全国で進み、全ての拠点病院にがん相談支援センターや緩和ケアチームが設置をされたところであります。全国に小児がん拠点病院が整備されたこと、あるいはまた、がん治療の進歩により生存率が向上したことなどが挙げられますが、一方、やはり、御指摘をいただいたように、がん検診受診率が目標値の五〇%に達していないこと、がんの罹患をきっかけに離職する人の割合が改善していないといった課題が残されているのも事実であります。

 こうした課題に対応するため、平成二十七年十二月にがん対策加速化プランを策定し、対策を推進しております。本年夏を目途に策定する第三期がん対策推進基本計画においては、引き続き、がん検診の受診率の向上、緩和ケアの充実、がん研究の推進などに取り組むとともに、昨年十二月に改正されたがん対策基本法の趣旨も反映をしまして、就労支援やがん教育などをさらに推進するための方策を盛り込み、がんになっても安心して暮らせる社会の構築に全力で取り組みたいと思います。

 また、第三期がん対策推進基本計画では、計画の進捗管理を徹底するため、取り組みごとの評価指標や数値目標を設定した今御要望がございましたロードマップを作成し、公表し、着実にがん対策を進めることとしたい、このように考えております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 総理の口からロードマップを作成するというふうに言っていただきました。こうした客観的な評価を入れることが私は大事だというふうに思っております。総理からも評価をいただきました。我が党、がん対策をこれまで頑張ってまいりましたので、引き続きこれからもさらにさらに後押ししてまいりたいというふうに思っております。

 次に、発達障害のある皆さんに対する支援という観点で質問させていただきたいと思います。

 昨年の通常国会で、十一年ぶりに発達障害者支援法というものが改正をされました。これは、超党派の議連で進めさせていただいて、当時、十一年前は、我が党の福島豊衆議院議員、実は、私の選挙区の前の方、前任でいらっしゃいます、私はその後を継がせていただいたわけですが、この福島議員が当時の議連の事務局長として発達障害者支援法というものを策定いたしました。

 十一年前というのは、まだ発達障害という言葉すら余り浸透していなかったんじゃないかと思います。それが、この基本法によって、今やこの発達障害という言葉は国民の皆さんの九割の方が知っているというような状況になっております。本当に大きな一歩だというふうに思っております。

 今回の法改正は、十一年たって見えてきたところ、あるいは足らざるところを改正したということでございます。今回も、この議連で、我が党の高木美智代衆議院議員が事務局長として、本当にさまざま、各党各派と一緒になりましてこの改正法を成立させていただいたというところでございます。

 この足らざるところ、いろいろな点、新しい改正点としまして、例えば発達障害といってもみんな違うわけです。個々のそれぞれの特性に合わせて支援をしていくことが必要だ、個別に支援計画というのを保育所やあるいは学校でつくって、つくったものをどんどんとライフステージに合わせて引き継ぎながら切れ目ない支援というのを行っていこうというのが一つの改正点でございますが、こうしたさまざまな取り組みというのは今後自治体が行っていくということになっております。国は、こうした自治体の取り組みを引き続きしっかりと支援していただきたいというふうに思っております。

 厚労大臣に学校教育の現場での取り組みという観点から、あわせまして、文科大臣にこの法改正を受けて今回どのような支援を行うのかということについて伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 御指摘のように、昨年の五月に、超党派の議員連盟の御尽力で発達障害者支援法というのが改正されました。医療、福祉、教育、労働などの関係機関が連携をしっかりとして切れ目のない支援を実施するということが盛り込まれたところでございまして、その支援の中核を担うのが発達障害者支援地域協議会でございまして、これは全国に今、五十八の都道府県と政令市で設置をされております。全体が六十七でありますから、もう一歩で全てというところでありますが、なお努力が必要か、こう思います。

 厚労省としては、協議会の運営等に必要な補助を行うとともに、国の職員を都道府県等に派遣いたしまして協議会の充実に向けた助言を行うなどの支援を行っております。

 今後とも、関係省庁と連携しながらしっかりと取り組んで支援を強化してまいりたいというふうに思います。

松野国務大臣 昨年改正された発達障害者支援法においては、教育分野についても発達障害児に対する適切な教育支援を行うことが規定されています。

 文部科学省としては、この改正を踏まえ、平成二十九年度予算において、障害のある児童生徒の就学前から学齢期、社会参加までの切れ目のない支援体制の整備のための補助事業を新規に計上しています。また、発達障害を含めた障害に応じた特別の指導、いわゆる通級指導による指導の充実のための基礎定数化に係る経費等を計上するとともに、そのために必要な義務標準法の改正法案を提出するなど、特別支援教育の充実に向けた取り組みを進めているところであります。

 引き続き、発達障害を含めた障害のある児童生徒一人一人のニーズに応じた教育を実施するため、適切な支援に努めてまいります。

伊佐委員 文科大臣から今、通級の基礎定数化というお話がありました。私、これは本当に大きな一歩だった、大事な一歩だったというふうに思っております。

 我が党では、富田衆議院議員初め、文科部会でもずっと後押しをしてきた件でございますが、発達障害というのは早期に支援が必要です。早期に支援が必要なのに、実は現場では指導担当員が足らないという状況が続いておりまして、いわゆる通級待機児童生徒、こんな言葉まであったわけで、こういう状況が、今回基礎定数化をされたということで、これから確実にしっかりと配置をしていくための大きな一歩だったというふうに思っております。この法改正の精神というのをしっかりと現場で反映していただきたい、具現化していただきたいというふうに思っております。

 次の質問に参ります。介護。

 介護の現場、もう本当に今大変です。人材不足で、とにかく人が足らない。今政府も何とかふやそうということで頑張っていただいてはおりますが、政府は二〇二五年に向けて三十八万人の介護人材をふやそうということで取り組んでいただいております。いろいろな政策を打っておりますが、ちょっと心配する点があります。

 何かといいますと、介護福祉士の国家試験です。先月発表されましたが、この介護福祉士の受験者数が半減したんです。一気にどんと半分減ったんです。これまで十六万人でした。これが今回八万人になったんです。これは一体どういうことなんだろうと。

 これは想定していたことなんでしょうか、大臣。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただいた介護福祉士の試験でございますけれども、この受験資格について、平成二十六年の法改正によりまして、本年一月実施分から、新たに、三年以上の実務経験というのを経てから受験するようにという場合は、あらかじめ実務者研修を修了することが必要ということになりました。

 受験者減、今、半減というお話がありましたが、受験者の減少の要因としては、この見直しを見据えました駆け込み需要というのがあって、それの反動なども考えられるところでございますが、この見直しは、近年の介護ニーズの高度化、多様化に対応できる資質を担保して、質の高い介護サービスの提供ができる人材の養成を目的としたものでありますので、今後とも、資質の向上と質の高い人材の確保にしっかりと取り組まなければならないというふうに考えてございます。

伊佐委員 今の大臣の御答弁によりますと、そもそも介護福祉士というもの、この仕事自体のプレステージをしっかり上げていこうというふうに理解をいたしました。介護福祉士となるために研修を義務化した、今まで以上にハードルを上げた、ある程度狭き門という形で、その分しっかりと質を確保しようという取り組みだと思います。

 もしそれであれば、私はぜひ議論をしていただきたいのは、皆さん仕事をやっている中で、介護現場を抱えている中で研修を受けなきゃいけないということです。その上、研修を受けた上で国家試験に臨んで介護福祉士という資格に臨んでいくというこの狭き門、こういうものに挑戦するだけのインセンティブというのが私は必要なんじゃないかというふうに思っております。

 つまり、給与、処遇改善もそうです。あるいはキャリアパス、介護福祉士になることによってその後どういうようなキャリアパスがあるのかということも大事です。

 介護福祉士になるのは大変なんだけれども、それを頑張って挑戦しよう、こういうインセンティブが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、武藤(容)委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 おっしゃるとおり、介護人材のキャリアパス、つまり、どういうふうにしたら自分の将来がどう見えてくるかということがはっきりするということ、そういったことの構築、あるいは処遇改善そのもの、これは質の高い介護サービスを提供する上で極めて重要であることは御指摘のとおりだと思います。

 来年度から、介護福祉士の資格等に応じました昇給の仕組みを構築して、そういったところに月額平均一万円相当の処遇改善を図ることを決めております。また、現在、社会保障審議会の福祉部会福祉人材確保専門委員会というのがございますが、そこで介護福祉士として必要な資質とキャリアパスの明確化などの議論を鋭意今進めていただいております。

 こういう取り組みによって、介護福祉士を初めとする介護人材について、キャリアに応じた適切な処遇が行われるようにしてまいりたいと思いますし、やはり、先が見える、システムとしてキャリアパスが見えるということをしっかりと構築することが大事だというふうに思っております。

伊佐委員 介護の現場というのは、私、本当にどこの地域を回っても今大変な状況でございまして、そんな中で今御答弁いただいたのは、処遇改善も引き続きしっかりと行っていくという点であったり、あるいは、キャリアパス、今検討しているところだ、これをしっかり先が見えるような形にしていただくということだったというふうに思います。介護職員、現場の皆さんが頑張っていこうとさらにやりがいを持って働ける、そういうような制度にしていただきたいというふうに思います。

 ここの点は、本当に我が党としても、公明党としても、全力で応援をしたいというふうに思っております。公明党の地方議員の皆さんと一緒になって、地域地域できめ細やかに我々も対応していきたいというふうに思っております。

 次に、みとりについて伺いたいと思います。

 人生の最期をどこで迎えるかというところで、戦後すぐは、在宅でのみとりが八割ぐらいで、病院で最期お亡くなりになる方が二割、八割、二割という状況だったんですが、現在では全く逆転をしております。病院が八割、在宅が二割ということになっております。

 政府の方針として、今、在宅を目指すということになっております。もちろん、在宅療養、在宅医療というのを目指していくわけですが、ただ、なかなか、場合によっては、各御家庭の状況によっては在宅で見切れないという場合もあります。いろいろな医療の提供が必要であったりとかという状況もあります。

 ではどうするかというと、今の制度であるのは、例えば一つは、特養、特別養護老人ホーム。ただ、数を今一生懸命ふやしていただいておりますが、待っていらっしゃる方もいるというような状況です。特に特養の場合は、医療的なケアが必要な場合は入れてくれません。例えば、胃瘻であったりとか、あるいは喀たん吸引、定期的にたんとか唾を吸引しなきゃいけないというような場合、こういうような医療的なケアが必要な場合というのはなかなか入れない場合が多いです。

 では病院でお世話になれるかというと、治療が必要だというわけじゃないので、ここもまた見てくれない。何かあって救急で入ったとしても、九十日で基本は戻される場合も多いという現状であります。

 では一体どうするんだ。医療もケアも必要で、長期の療養も必要で、みとりの場所にもなるような、在宅はもちろん目指しているんですが、それも難しいこうした方々の場合は適切な施設というのが必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 御指摘のように、高齢者はニーズがさまざまでありまして、今後、高齢化の進展によって増加が見込まれる長期的な医療と介護のニーズ、両方を必要とされる方々、こういった方々に対応するために在宅医療や介護の整備を進めることは当然重要であるわけで、鋭意やっておりますが、御指摘のような、医療の処置などが必要で自宅や特養等での生活がなかなか難しい、こういった高齢者の皆さん方にも対応できる受け皿が必要だという御意見があるわけであって、それは大変重要な点であろうと思っております。

 そのため、今回、地域包括ケア強化法案を提出させていただきましたが、まず第一に、日常的な医学管理やみとりやターミナルケアなどの機能に加えて、生活施設としての機能を兼ね備えたそういう施設を、介護医療院として介護保険法上新たに創設するということを提起しておりまして、さまざまなニーズを持つ高齢者が適切なサービスが受けられるように取り組むための手だてとして、この法案で皆様方に御審議をいただいて用意させていただければというふうに思っております。

伊佐委員 生活施設というものもきちんと加味された、いろいろなニーズ、医療ニーズも含めて、こうしたものをしっかりと、受け皿としての介護医療院というものを今回取り組もうというお話でございました。まさしくこの通常国会で法案提出されるかもしれませんこの介護医療院制度というものは非常に大事な制度だと私は思っておりますので、しっかりと後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

 最後に、一言申し上げたいと思います。

 きょうは、子育て支援、あるいは介護であったりとか障害者の支援というものを質問させていただきました。

 一億総活躍といいますとどういうものかというと、それぞれの人がそれぞれの場所で自分らしく輝いていくこと、これが私は一億総活躍の意味だというふうに思っております。

 私の好きな言葉に桜梅桃李という言葉がありまして、桜は桜らしく、梅は梅らしく、桃は桃らしく、スモモはスモモらしく、別に、梅が桜になる必要もないし、スモモが桃になる必要もない、それぞれがそれぞれの花を咲かせればいいよ、こういう言葉がございまして、私は、一億総活躍というのはまさしくこの桜梅桃李なんじゃないかなというふうに思っております。桜梅桃李の一億総活躍というものを目指していくということで、我々もしっかりと後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

 本日はありがとうございました。

武藤(容)委員長代理 これにて伊佐君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 おはようございます。民進党の長妻昭でございます。

 まず、麻生大臣に質問させていただきますけれども、天下りの問題はこの予算委員会でも相当議論をいたしました。その中で、天下り団体、不要な天下り団体がいろいろあることも判明をいたしました。

 それでは、いわゆる天下りを受け入れている公益法人等に、今審議をしております平成二十九年度の予算から幾らぐらい財政の支出があるのか、この金額と団体の数を教えていただければと思います。

麻生国務大臣 平成二十九年度の予算において、主として公益法人への支出が見込まれます補助金等の総額、二千九百八十七億円であります。これらの補助金については、補助金等を所管しております各府省に対して、支出見込み先法人に関して平成二十九年一月一日現在で元国家公務員再就職者の在籍の有無の確認を行ったところであります。

 その結果、元国家公務員が再就職をしております公益法人等に支出が見込まれております予算額としては、各府省から聞き取った計数を集計いたしますと、二千百八十三億円であります。その内容も要るの。(長妻委員「団体の数は」と呼ぶ)団体の数は、私どものあれでは、各府省に行っておりますので、今、法人数は、重複している部分がありますので、今回調査した結果では、予算について、その支出先の法人、重複を外して七十八となっております。

長妻委員 これは相当私は精査が必要だと思うわけでありまして、例えば文部科学省の天下り団体、天下りがばれちゃったら文教協会というところが解散になる、そこに補助金が今まで出ているわけですから、それは不要になるわけですね。

 今、七十八団体、二千百八十三億円、いわゆる天下りを受け入れている公益法人等に、この今審議している予算の中から金が流れるという御答弁がありました。全体の公益法人向けは、先ほどの御答弁では二千九百億円ということですから、ほとんどが、天下りを受け入れているところに金が流れる、こういうような非常にいびつな構造なんじゃないかな。

 この中で、やはり天下りの全容解明をしていただかないと、変な予算が、無駄な予算が要らない団体に流れるということになりかねないので、ぜひ天下りの全容解明をこの予算の採決までに出していただきたい。総理から一言、それはそうだな、それはそうだ、出すべきだ、こういうふうにちょっと宣言していただきたいんです。

安倍内閣総理大臣 大変濃密な予算の審議をいただいているところでございますが、このいわゆる天下り問題につきましては、文部科学省においてもあるいは全省庁においても、山本大臣が答弁をさせていただいておりますように、しっかりと調査をし、調査が整い次第しかるべき形で委員会に報告をさせていただきたい、期限ありきということではなくて、しっかりと調査をしていきたい、このように考えております。

長妻委員 こういうことになると総理は余り元気がないんですけれども、これは、一回この予算がここで通過しちゃったらばもう取り返しがつかないんですよ。修正減額できないんですよ。やはりこの予算の審議の中で出すということを総理が指示すれば役所は動きますから、ぜひもう一度、もう一度お願いします。

安倍内閣総理大臣 山本大臣からも答弁させていただいておりますが、全省庁についてしっかりと第三者の皆さんが調査をする、徹底的な調査をするわけでございます。また、文部科学省の事案につきましては、中間報告もさせていただくということで答弁をさせていただいておりますが、そうした形でしっかりと対応させていただきたい、このように思っております。

長妻委員 非常に消極的でありまして、まさか、予算が通過した後、こんなものが出ましたというような形で出していただいてもこれは遅いわけでございますので、ぜひよろしくお願いをいたします。強くこれは要請をいたします。

 そして、きのうもこの予算委員会の理事懇談会に共謀罪についての資料、統一見解が出てまいりましたけれども、この統一見解を読むと、一般の市民も対象になりかねない、こういう懸念があるのではないかというような文書でございました。これも相当議論を深める必要があります。

 あるいは、南スーダンの、ここでも議論になっているあの日誌の問題、日誌がないといって実はあったという問題でありますけれども、これについて防衛省が調査委員会を、我が党の後藤委員とか辻元委員も指摘しましたけれども、調査委員会を設置しようとしたら、なぜか寸前になってそれが見送られたというような報道もありまして、これは何の力が動いたのかな、こういう問題もあります。

 そして、格差の問題や経済の問題も、まだまだ議論しなきゃいけない問題があるにもかかわらず、残念ながら、委員長が幕引きを図るような、中央公聴会を含めて日程を強行的にどんどん決めている。こういうことでは困るわけでありますので、ぜひきちっと議論をして、そして、しかるべきときには当然その採決というのはあります。しかし、これは幕引きを図るということでは絶対だめだということを強く委員長にも申し上げます。

 そして、話題をかえますけれども、総理が議長であります働き方改革会議、これが今月の十四日、バレンタインデーの夕方に開かれた。本当に働く人たちに吉報がもたらされるのかどうかということなんでございます。

 これは総理に端的にお伺いしたいんですけれども、この働き方改革会議が最終的に得る達成目標というか、その狙いというか、何を達成したいのか、どういうことを達成したいのか。その最終的な狙い、目標を教えていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 この働き方改革実現会議におきましては、まさに先般の過労死の問題もありました、そうした働き過ぎの問題、過酷な労働条件を解決していく。そしてまた同時に、多様な働き方をしたいというニーズも高まっているわけでありまして、いわばニーズが多様化していく、人それぞれのライフステージに合わせた働き方をしたい、あるいは女性も高齢者も自分たちのそれぞれのステージに合わせた形で働き方を選べるようにしたい、こういう多様な働き方に対応できる、そういう形に変えていく必要もあるわけでございます。

 そうした観点から、現在の働き方に関する法制等々をしっかりと見直し、多くの方々が、こういう働き方をしたいという働き方を選べる、そしてその中において生きがいを感じて人生を送れるようにしていく。当然、ワーク・ライフ・バランスもしっかりととっていくことができるような、そういう働き方改革を進めていくために、さまざまな分野の方々に御参加をいただいて御議論いただいているところでございます。

長妻委員 私は、その多様な働き方という言葉、これは非常に耳ざわりのいい言葉で、余り異論はないと思うんですね、どなたも。

 ところが、やはり多様な働き方といったときに、これまで政府の姿勢は、規制を緩和する。総理もかつてダボス会議で、労働法制、労働市場について、既得権益だ、安倍総理のドリルからは逃れられないような御発言もされたことがあると思いますけれども、やはり多様な働き方といったとき、労働法制を緩くする、規制緩和になっていくわけで、何で労働法制というのは自由な取引をしないのかというと、これは当たり前ですけれども、人間の、生身の自分の時間を提供する、取引する。人間の時間というのは、時間の使い方というのは命の使い方でありますから、過度にその取引がなってしまうと健康や精神にも支障を来してしまうのではないか。

 そして、力関係ということで、使用者と労働者の力関係というのは歴然として使用者が強いわけで、多様な働き方といったときにどんどん労働法制が緩和の方向に行くと結局は働く人に不利になる、負荷がかかる、こういうことにつながるわけでありますので、そこら辺を厳重に見ていただきたいということなんです。

 その中で、私はとんでもない法律が政府から出てきたというふうに思う法律がございます。労働基準法の改正法案でございますけれども、その中には今申し上げたような労働法制の規制緩和、つまり働き方を、裁量労働制というところを広げていく、こういうような法案が出てきているわけでありまして、これは私は大変問題があると思っているわけであります。

 この裁量労働制というのは何かといいますと、これは、今も裁量労働制が入っておりまして、大体七十三万人の方が適用されておられますが、これをさらに拡大するという法律なんですけれども、今出ているのが、今の裁量労働制でいいますと、みなし労働時間というのを決めて、大体平均八時間です、そうすると、八時間はみなし労働だよ、あとは別に、短くても長くてもあなたの裁量で仕事をしてくださいというような形で、自由に働ける。だから、お給料はその八時間分しか払わないけれども、短くても長くても八時間だよ、こういう働き方であります。ただし、深夜残業、二十二時以降は割り増し賃金を払うし、休日も割り増し賃金を払うというような仕組みにはなっているんですが、これは時間管理がずさんで、きちっと払われているかどうかが相当疑わしいわけであります。

 今度は営業にまで裁量労働制を広げていくということになると、どんどんどんどん長時間労働がふえていくのではないのか。

 電通で昨年末に、過労死をされた高橋さんのお母様が、この前、こういうふうにもおっしゃっていました、裁量労働制の拡大、労働時間の規制をなくす法律は危険であると。そして、二〇〇九年に二十六歳の長男が過労自殺されたお父様は、政府のやり方は働き方改悪だ、私のような苦しみを味わう親をこれ以上つくらないでほしいと。過労死遺族の会も、裁量労働の拡大に反対をしているところであります。

 先ほど申し上げましたみなし労働時間、八時間以下に設定している事業所は五割以下、半分以下でございますが、一方で、実際の平均の実労働時間が八時間以上の事業所は八割以上ある。最長実労働時間が十二時間を超える労働者が存在する事業所が四五%もある。

 このパネルを見ていただきますと、普通、これを導入するときの当初の想定は、八時間、みなし労働時間を決めるけれども、八時間もかけずにさっと済んじゃう人はもっと短い時間で帰っていい。裁量的な働き方ですね。

 ですから、別に八時間ずっとデスクに座ったり仕事に縛られなくても、裁量ですから、短く済めばそれでいいんだ、あるいは、保育所の送り迎えとか親の介護とかいろいろな時間を使って、自由なんだ、基本的には時間が短くなる、こういう想定だったんですが、実際、今検証しますと、裁量労働制というのは、企画業務型、これはホワイトカラーですけれども、専門業務型、これはシステムエンジニアとか研究者などなんですけれども、いずれにしても通常の労働時間制よりも長い働きになっているわけでありまして、一体これはどうなるんだということなんですね。

 例えば、現行の企画業務型裁量労働制、最長、一日の実労働が十八時間を超える、こういうような労働者がいる事業所が三・一%ある。製造業では八・二%。実労働が一日十八時間を超える、こんな長時間労働も生んでいるわけでありまして、これは言うと、本当にブラック企業合法化法案になりかねない、そういうふうにも思うわけであります。

 ちょっと基本的なことをお伺いするのでございますけれども、結局、裁量労働制を拡大するとそういう人たちの労働時間は今よりもふえるのか減るのか、どちらになるんですか。

塩崎国務大臣 もともとこの裁量労働制というのは、みずからの裁量で時間配分あるいは出勤時間などをみずから決めることができる、自律的で創造的に働く、こういった方々を対象にした制度であるわけでございます。

 先ほど七十三万人というお話がありましたが、今回新たに労基法の中で提案をしているのは企画業務型で十一万人の方々、〇・二%という大変少ないところの拡大を今御提起を申し上げているわけであります。今データをお取り上げいただきましたけれども、結論的には、いろいろな調査がございまして、御指摘のような調査ももちろんございます。

 厚生労働省自身の調査によりますと、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べますと一般労働者よりも短いというデータもございまして、例えば一般の平均的な方が九時間三十七分働いていらっしゃいますが、企画業務型の裁量労働制の方は九時間十六分ということで、約二十分短いというデータもございます。ただ、最長の方というのを見ると、裁量労働制の方が少し長いというものもございます。

 また、裁量労働制の見直しに当たっては、長時間労働を防止して、健康を確保するためのさまざまな新たな措置も今回講じているわけでありますので、今回の見直しはもともと、長時間労働を防止して、健康を確保するための措置を講じながらやるわけでありますので、自律的で創造的な働き方を可能にするものでありますので、残業時間がふえるということで一方的に御指摘をされることは必ずしも当たっていないというふうに思っております。

長妻委員 ちょっと答弁の意味がわからないんですが、労働時間がふえるのか減るのか。想定は、この裁量労働制というのは、基本的には減るという方向性を一つ想定して入れるわけですけれども、実態のデータはふえているわけで、どちらか、ちょっとお答えにならないわけであります。

 裁量労働制について、ちょっとこのパネルを見ていただきたいのでございますけれども、電通という会社名をあえて挙げますのは、相当、昨年の末の高橋まつりさんの過労死問題等々、これはもう世の中に広く流布した重大問題ですので、あえて個別企業名を挙げさせていただきますけれども、私が聞いているところによりますと、電通は、裁量労働制を営業に拡大する、今は営業はできません、営業に拡大するということが非常にこれまで悲願だったわけであります。

 例えば、有名な電通事件というのがございます。これは最高裁まで行って判決が出ました。これは過労死認定の大きな判例となった事件でございますけれども、この事件の始まりは、一九九一年、電通のラジオ局入社二年目のO君が過労死された。このO君も二十四歳なんです。高橋まつりさんも二十四歳。入社二年目。高橋まつりさんは入社九カ月。一九九一年。

 そして、判決は二〇〇〇年に出るわけですが、その間に、一九九七年に日本広告業協会、当時、理事長は電通の会長さんでございますけれども、それの裁量労働制研究会というのがあって、これが労働省に、営業に対しても裁量労働制を拡大してほしい、これを言っているんですね。

 この要望書の中ではこういうことを言っています。広告業界における広告営業あるいはマーケティング計画など、ほかに四業務ありますけれども、その業務を裁量労働制の対象としていただきたくお願い申し上げます、広告会社の社員一人一人が常に時間的、空間的自己裁量のもとで専門的業務を遂行する責任を担っている、こういうことで強く要望した。

 そして、その後、二〇〇〇年にこの電通の最高裁の判決が出ましたけれども、その裁判の中でも電通はこういうような主張をされているんですね。この亡くなったO君は裁量労働制ではなかったんですけれども、電通の主張は、このO君の労働は裁量的な労働だと。つまり、電通側は長時間労働も個人の選択によるものと主張されたんですね。

 つまり、個人が判断で裁量的に自分で長時間労働をしているんだから、別に会社が命令していないんだ、こういうような主張をしたんですが、判決はそれを認めなかった。長時間残業の原因は、期限までに完了されるべきものとする一般的、包括的な業務上の指揮または命令にある、こういうふうに判断してその主張を退けたわけで、執拗に、裁量労働なんだ、残業は自分でしたんだ、こういうような主張をしたわけです。

 その後、二〇〇二年に、「労務事情」という雑誌に電通の人事部の部長さんがインタビューをされて答えているのでありますけれども、これは「「裁量労働的働き方」と「裁量労働制」との間に横たわる溝」というタイトルでありますが、こういうふうにおっしゃっているんですね。

 広告会社の営業は、クライアント、つまり顧客のマーケティング活動全般に対する総合的なコンサルティング的業務が多くなっています、広告だけでなく、その商品のポジショニングやネーミングなど、商品開発からお手伝いしている、言うならばマーケティング・ソリューション・コンサルタント、できることなら、営業と制作は一括して裁量労働制を適用したい、こういうふうに主張されておられて、これは、法案として政府にも働きかけるような話もされているわけでございます。そして、昨年の末、高橋まつりさんが過労死をされるということがありました。

 その間、実は、一九九八年、ここの表には入っておりませんが、一九九八年には、政府は法律を改正して、ホワイトカラーにも裁量労働制を入れました、営業は入れませんでしたけれども。そして、二〇一五年に、今ですけれども、二年前でありますけれども、政府は、まだ法律は成立していませんけれども、営業に裁量労働制を適用する法案を国会に出してきた。こういうことで、非常に平仄が合うわけであります。

 営業に裁量労働制を入れるというのは悲願なわけですね、ほかの業界も含めて。いい制度なら私は労働者の側から声が上がるはずだと思うんですが、ほとんど上がっていないんですよ。これは経営者の側からどんどこどんどこ声が上がるわけで、本当に大丈夫なのかということなんです。

 塩崎大臣にちょっとお尋ねしますが、今度営業に入るわけでありますけれども、これは例えば、さっき申し上げた、広告会社の営業が、さっきのインタビュー記事ではないですけれども、マーケティング・ソリューション・コンサルタント、つまり、相手企業の商品開発から全面的にお手伝いをして、どういう商品をつくったらいいのか、ポジショニングやネーミングなど、商品開発からトータル的にコンサルタントする、こういう営業は、塩崎大臣、ちょっと聞いてください、こういう営業は当てはまる可能性はあるんですか、今回。

    〔武藤(容)委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 これはもう何度も申し上げているように、いわゆるルートセールスのような、コピー機を売るとかそんなような単純な営業は全く相手になっていないわけでありますし、そもそも、今回、課題解決型提案営業と言っていますが、言ってみれば、開発を提案するという業務であって、法人である顧客、相手方ですね、この事業の運営に関する事項について、企画、立案、調査、分析に加えて、法人顧客の業務改善のための開発を行う業務、こういうことを提案していくというものであって、そもそも、今お話がありましたけれども、個別の企業のお立場の方が提案をするということと今回の見直しは全く関係のない話であって、今回の企画業務型の裁量労働制の対象業務の追加は、日本再興戦略の改訂二〇一四というところで裁量労働制の新たな枠組みを構築する方針が閣議決定されたわけでありまして、労政審の労働条件分科会において公労使の三者で御議論をいただいて、審議会の建議に基づいて法案化したわけであります。したがって、個別企業の意見と今回の見直しは何ら関係ない。

 今回追加をする業務は、今申し上げたとおり、みずから企画立案した成果を活用して、新たに……(発言する者あり)静かにしていただけますか。新たに開発した商品やサービスを提案するものでありますから、広告会社が他社の商品開発をコンサルティングするような業務は対象にはなりません。また、個別の広告の制作とかあるいは広告枠の営業業務というのは当然対象にはならないということでございます。

長妻委員 これはおかしいですね。私、事前に役所に事細かに聞いたときに、対象になる可能性もあるというような説明だったわけです。

 私はルートセールスのことを聞いているのではなくて、課題解決型提案営業とおっしゃいましたけれども、まさに、この電通の人事局の部長さんもおっしゃっているように、商品開発からお手伝いする。つまり、どういう商品がこれから売れ筋なのか、そしてネーミングも含めて、マーケティングも含めてお手伝いをして、トータルパッケージで、マーケティング・ソリューション・コンサルタントのような形で営業があるんだ、だからそれは裁量労働制をお願いしたいということで、今回の営業というのは課題解決型提案営業、まさにそれはずばりそのものじゃないかと私は思うわけで、これは当てはまらないというふうに断言できるんですかね。

 よく塩崎大臣は答弁でも、全体の事業にかかわる、大きい話だとおっしゃっていますけれども、条文を見ても指針を見ても、どこにもそんなことは書いてないんですよ、大きい事業だとかいうことは。

 つまり、例えば当該事業所に係る事業の運営に影響を及ぼす独自の事業計画や営業計画をいうと。その事業というのは、例えば支社や支店等である事業所における事業でもいいわけですよ、支社とか支店でも。あるいは、一つの会社の工場等である事業所における事業でもいいわけですよ。全社的な事業ではなくて、例えば会社が一つの商品を開発するときにそれを一からサポートする営業、これは当てはまる可能性があると私は思いますよ。それを否定するというのは、本当に大丈夫なんですか。

 ここだけのその場しのぎで否定するということは、私は国民の皆さんに対して不誠実だと思いますよ。役所の説明を私は緻密に聞きましたけれども、入る可能性はあるということですから。どうですか、大臣。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、法人である顧客の事業の運営に関する事項という中で、今御指摘があった、企業全体ではないケースもあるんじゃないかというお話がありました。

 これは、企業全体の事業に影響する事項を対象とすることが条文上明確ではないということですけれども、条文では、法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析ということになっていること、これを明記しているわけであります。

 また、事業の運営に関する事項とは、現行の企画業務型裁量労働制の指針と全く同じでありまして、今御指摘のとおり、まず、対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼす事項に加えて、当該事業場に係る事業の運営に影響を及ぼす独自の事業計画や営業計画など、企業全体の経営や独立した事業部門、ですから工場とかですね、そういうところの事業活動を左右するような重要な事業計画や経営方針であるわけでありますから、先ほど個別の広告営業などがこの対象になることはないということを申し上げているので、さっき申し上げたとおりでございまして、他社の商品開発をコンサルティングするような業務というのは対象にはなりません。

長妻委員 私はこれは明言できないと思いますし、指針についても、さっき法的な条文をおっしゃいました、法人であるところの事業ということなんですが、法人の中にも事業というのは、一つでなくてたくさんの事業が、人事もあるし、経理という事業もあるし、いっぱいあるわけで、これを直ちに否定するというのは私は不誠実だと思いますし、実際、仮にこの法律が施行されたときに今の答弁は担保できないと思いますよ。

 私も、いろいろ営業を自分もかつてやっていましたので聞いてみますと、例えばコンピューターの営業でも、大型コンピューターであれば、相手の企業の全体のシステムをつくる、会社の運営にもかかわるような形で中枢の意思決定のアプリケーションソフトをつくって、それをカスタマイズして売り込む。あるいは、建設会社の営業でも、不動産会社に対して、ただ建物を建てるのでなくて、どういうような節税ができるのか、あるいはどういう資産が収益が上がるのか、土地の有効活用の提案、時によっては実際に入居するテナントも見つけてきてパッケージで提案する営業。あるいは、商品卸でも、スーパーマーケットに、全体の、お店の商品の陳列から店づくりまでをトータルでする営業などなど、こういうものも役所に緻密に聞くと入る可能性があるという話だったわけでありまして、非常にそこが曖昧なわけであります。

 実際、総務省の調査では、こういう営業、単純な訪問販売は除く営業というのは日本で三百三十六万人もいらっしゃるわけでありまして、いろいろな学者の先生とも意見交換いたしますと、法人営業は全て当てはまる可能性が出てくるんじゃないのか、こういうふうに心配する学者の先生もおられるわけで、私もそういう懸念を強く持っているわけであります。

 私は、今の答弁はその場逃れの答弁だというふうに言わざるを得ないわけで、では、一体どういうものが当てはまるのか、具体的な例がなかなか出てこないわけであります。ぜひこれは考え直していただきたい、営業まで広げるのは。

 そして、もう一つ、現行の裁量労働制でもゆゆしき事態がありますのは、裁量労働制というのは、基本的に、時間の縛りがない、自分で時間を管理できる、自分で時間を決められる、こういうものでありまして、これは法律にも書いてあります。労基法の三十八条の四でございますが、時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこと、こういう取り決めがあるんですね。

 きょうは厚労省の独立行政法人も来ていただいていますけれども、この裁量労働制の労働者の方々、特に、今回広げようとしている企画業務型の労働者で一律の出退勤時刻がある方というのは実際どのぐらいの比率いらっしゃるんですか。

菅野参考人 私どもの平成二十五年に行った裁量労働制等の労働時間調査でありますが、その中で、企画業務型裁量労働制の時間管理について尋ねております。一律の出退勤時刻があるというふうな回答は、事業場調査では一九・六%、労働者調査では四九・〇%であります。

長妻委員 これは非常に驚く調査なんですね、今パネルにまとめましたけれども。

 一律の出退勤時刻があるというのは、裁量労働制が適用されている労働者に調査すると四九%、半分がある、朝何時に来なきゃいけない、夕方はこれだけだと。これは同じ対象者なんですが、事業所の人事担当に聞くと、一律の出退勤時刻があるのは一九・六%、低く出ている。

 これは、事業所は例えば就業規則とかそういうところに書いてあるかどうかというような判断で答えているわけで、しかし、就業規則に書いてなくても、上司がそういうようなことを言ったり、実際にそういうような状況になっているということで、労働者の方は非常に実態を答えておられるんだと思います。

 塩崎大臣、一律の出退勤時刻があるというのはだめなんじゃないですか、裁量労働制。

塩崎国務大臣 その前に、先ほどの、どこまで営業が入るのかということについては、個別案件ごとにもちろん判断することになりますけれども、私どもとしては、法律と指針によって限定と、企業における本制度の適用の際に必要となる手続などによって、対象となる方々が極めて限られたものになることを明示していくという方針であることをまず申し上げたいと思います。

 その上で、今、一律の出退勤時刻を定めることはおかしいのではないかというお尋ねがございました。

 裁量労働制は、当然のことながら、出退勤時間の決定も含めて労働時間の時間配分の決定に裁量のある方が前提となるわけでありますので、仮に、企業が一律に出退勤時刻を定めて、裁量労働で働く方に対してもそれに従うように指示をしているということになれば、それは制度の趣旨にそぐわない運用だということを申し上げなければならないと思います。

 ただ、そういう場合には、やはり労使同数の労使委員会というのが、自社の業務内容をよくわかった上で、定期的に裁量労働制の実施状況についてチェックをすることになっています。したがって、働く方に時間配分の決定を委ねていないという今の御指摘のようなことがあれば当然労使委員会で話し合って見直しをしてもらわなきゃいけないし、またさらに、労使委員会が本来の役割を果たしていないというようなことがわかれば労働基準監督署が指導しなければならないというふうに考えておりますので、今申し上げたとおり、改正法案でも、働く方本人の裁量で始業、終業時刻も含めた労働時間を決定することが確保されるように条文で明確化することとしておりまして、監督指導も含めて、しっかりと対応してまいりたいというふうに思います。

長妻委員 これは実際、いろいろおっしゃいますけれども、現実に半分の人が一律の出勤時刻があるという回答をしているわけでありまして、では、指導があるということですけれども、こういうことについておかしいよということで、労働基準監督署はこれまで何件指導しているんですか。

塩崎国務大臣 取り締まりというか、指導の件数についてお尋ねがありましたけれども、定期監督や申告等を通じて監督を行って必要な指導等は行っておりまして、また各種事例も把握をしているわけでありますが、指導件数の全数を業務統計として集計はしておりますけれども、そのうち企画業務型の裁量労働制に係る指導件数だけを区分しているということではございませんので集計しているわけではございませんので、確たる数字を申し上げるのは、今数字を持ち合わせていないということでございます。

長妻委員 これは基本的にわからないということなんですね。つまり、指導しようがないというか、時間管理していませんから、裁量労働制ですから。ですから、これは指導のしようがないということで、そもそもこういうような働き方自体がなじむのかどうかということなんですね。本当に立場の弱い労働者が働く上でいかがなものか。

 裁量労働制で死亡事例、過労死事例もたくさんあります。

 例えば、四十七歳のアナリストの方は、残業は月四十時間とみなされたけれども、発症前の一カ月の残業が百三十三時間だった。そして、大手印刷会社の男性は、二十七歳で過労死されましたけれども、入社翌日から裁量労働制で、みなしは一日八・五時間でしたけれども、メールでは、一時過ぎに帰宅して三時に就寝して、六時半に起床して七時過ぎに出勤する。あるいは、出版社のグラビア担当の編集者は、入社二年目で裁量労働制で過労死された。もう一つ、機械の大手では、三十四歳で過労死された。裁量労働制です。一日の労働時間は八時間とみなされたけれども、月に残業百時間以上が多かった。こういう割り増しの賃金も払われていない。

 こういう事例がたくさんあって、ほとんど野放しです、はっきり言って。これは取り締まれないんですよ。ですから、ルールだけどんどんどんどん拡大して、営業の定義も曖昧で、これを野放しにしてしまうということは、私はこれはあってはならないというふうに強く思うわけであります。

 総理、最後にちょっと総理に質問いたしますけれども、今までのやりとりを聞いて、私は、さっき総理がおっしゃった、多様な働き方を目指すんだ、言葉だけはいいと思います。ただ、さっきも言ったように、労働の法規の規制を緩和すると、結局しわ寄せは弱い立場の働く人に来る。こういう法律、総理、ぜひ撤回をしていただきたいと思うのでございます。

 労働の規制を緩和すると、基本的には労働者に不利な方向に働くケースが多い、こういう御認識というのはまずありますか、総理。

安倍内閣総理大臣 新たに裁量労働制に課題解決型提案営業を業務の対象として追加するわけでありますが、これはまさに自律的で多様な働き方を可能とするために行うものでありまして、この制度の対象となる人は、こうした業務をみずからの裁量で遂行できる知識や経験を有する人に限定されるわけでございます。それと、これはまさに本人の同意も必要でありまして、極めて限られた範囲になっていく、こう考えているわけでございます。

 という意味におきまして、また、確かにこうした規制緩和において、果たしてそれは企業の論理だけに傾きがちになるのではないかという御懸念でございます。

 確かにそういう懸念はあるだろうと思います。ですから、そのために、今回は新たに健康管理をしっかりと行っていくということと、対象業務はこの要件のもとで労使同数の委員会の決議によって選定される仕組みになっているわけでございますし、先ほど申し上げましたように、本人の同意が必要であるということでもって働く方の立場をしっかりと守っているということになるのではないか、このように思います。

長妻委員 これは、テレビをごらんになっている人も、本人の同意があるというふうにおっしゃいましたけれども、やはり上司から、君、裁量労働制をやってほしい、どうだと言われて、嫌ですと本当に断れるのかということなんですよ。やはりそういうところも考えていただきたいというふうに思います。

 私、この前、ある会で、若い研究者、会社をうつ病でやめた方のお話を聞きました。その方は博士まで行って、大学で相当勉強した方でありますけれども、残業時間が一カ月百六十時間、こういうのが続いて、結局退社せざるを得ない。その方がおっしゃっていたのは、私、非常に感じたんですけれども、大学で博士まで出て研究者として会社に入る、国民の税金である意味では育てていただいた、こういう貴重な人材がどんどんどんどん潰されている、非常に危険です、今、研究者の心身は守られていない、今もそれが続いているんだ、こういうこともおっしゃっているわけで、一体何のための成長なんですか。若い人を潰して何の成長なんだ、私はこういうような思いがするわけであります。

 私は、もう少し慈悲の心といいますか、そういう心が足りないんじゃないのか。この世に生まれたからには、どなたでもやはり自分の力を発揮したい、そういう思い、気持ちは自然なものだと思いますけれども、しかし、その力の発揮を阻む壁が日本社会にはいっぱいあって、結局潰れてしまう若者が多い。こういうことについてもぜひ、総理、目を向けていただきたい。

 家庭と職場の両立、ワーク・ライフ・バランスを重視するほど生産性が高くなる、今、こういう研究結果も出ております。ドイツでは、一日十時間以上の労働は厳しく禁止されています。休息規制、退社してから出社するまで十一時間あけなきゃいけないというインターバル規制もきちっとあります。しかし、そういうドイツでも、労働生産性、稼ぐ力は日本よりも一・五倍も高いわけであります。

 ちょっと経営者の方々も、全部頭が古いとは言いませんけれども、どんどんどんどん働き方を多様化して、労働法制を規制緩和すれば経済は強くなる。かつて雇用のポートフォリオ論というのがあって、非正規雇用はどんどんどんどん入れた方がいいんだ、正社員だけ、年功序列だけではだめだ、こういうことでどんどん非正規がふえて、今、四割です。しかし、それに伴って労働生産性がどんどん落ちて、経済にとってもマイナスになっている。

 総理、労働法制の規制緩和について、ドリルからは逃れられないというようなことをダボス会議でもおっしゃいましたけれども、その認識を改めて、労働法制については規制緩和すればするほど労働者が潰れて労働生産性にもマイナスになるんじゃないのか、こういう認識をぜひお持ちいただきたいと思うんですが、どうですか。

安倍内閣総理大臣 私たちが今やろうとしている働き方改革は、まさに過酷な労働条件を改善していく。委員がおっしゃったように、家庭との両立を図っていく、ワーク・ライフ・バランスをとっていくことの方が生産性は上がっていくというのは、私も全く同じ考え方であります。その中において、いわば限られた方々について、研究者の方がそうですが、アイデアがひらめいたときには継続的に仕事をし成果を出していく、そしてしっかりと健康管理をしながらさらにまた仕事を進めていくという働き方も可能にしていく。いわばそうした自分の能力や才能を生かしたいという人は生かしやすくするような、そういう規制の改正を行うものでありまして、そうではない人たちを一律にとにかく長時間働かせようというものでは全くないということはどうか御理解をいただきたい、このように思います。

長妻委員 これは別に、日本がよくなればいいわけですから、総理も対立点はないと思うんですよ、つまり、働く人たちは、本当に自分の能力を発揮したいとみんな思っているんです。その自然な気持ちを後押しするような制度をきちっと維持したりつくったりすれば、日本はもっとよくなる、これは間違いないと思います。

 何でこんなに日本は経済的に成長率が低いんだ。いろいろ、アベノミクスもあります、金融だけではできませんから。ぜひ、働く人たちが本当に働きやすい、今総理がおっしゃったのはまだ残念ながら建前なんですよ。多様な働き方というのは、さっきもるる実態を申し上げましたけれども、結局そうでなくなってしまうんですよ、裁量労働制を含めて。

 ぜひ、特に営業の裁量労働制については、私は何としても、総理、撤回していただきたい。これについては本当に撤回していただきたい。最後に一言、ちょっとそこだけお願いします、総理。

安倍内閣総理大臣 営業職というと相当多くの方が対象になるわけでありますから、その中で相当今申し上げましたような絞り込みを行っていくわけでございまして、営業職に大きく網をかけるわけでは全くないということも御理解をいただきたい。そして同時に、しっかりと健康を確保していくということも明らかにしているわけでございますので、御理解を賜りたい、このように思います。

長妻委員 これで終わります。よろしくお願いします。

浜田委員長 この際、山尾志桜里君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 民進党の山尾志桜里です。

 総理、去年の二月二十九日、この予算委員会の場で私が総理に、保育園落ちた、日本死ねというブログを紹介してから約一年がたちました。保育園に入れるか入れないか、また通知が届く季節がやってきました。私のもとにも、ことしも保育園落ちたという相談、悩み、叫びが今たくさん届いています。

 おととい十五日に当事者のお母さんたちが議員会館に直接来てくださって、それぞれにベビーカーを押して、だっこひもに赤ちゃんを抱えて声を届けてくださいました。

 認可と認可外、二十カ所以上に申し込んだが落ちた。二人の娘を抱えているが、四年連続落ちた。先週二月十日に全て認可は落ちた、急いで認可外を探しているけれども、百人待ちと言われている。

 ことしも、去年同様、この待機児童問題は解決していません。そして、直近二年、待機児童数はふえ続けています。平成二十七年四月一日時点で二万三千百六十七人、平成二十八年四月一日時点で二万三千五百五十三人。今、不承諾の通知を受け取っているであろう平成二十九年四月一日時点での待機児童の数がわかるのは、例年どおりであればことしの九月前後に公表されるんでしょうから、現時点ではこれはお尋ねをいたしません。ただ、ふえることはあっても、恐らく大幅に減るということはないでしょう。

 まず、総理にお尋ねします。

 総理は、昨年の通常国会でも臨時国会でも繰り返し、待機児童をゼロにするとおっしゃっています。いつまでにゼロにするとおっしゃっているのですか。

安倍内閣総理大臣 まさに我々は待機児童ゼロを目指して強力に政策を推進しているところでございまして、保育の受け皿の整備につきましては、ふやすというのは簡単なんですが、大切なことは、しっかりと財源を得てそれを実行していくということであります。我々は民主党政権時代よりも二・五倍のペースで保育の受け皿を整備している、これは事実であります。

 そして、保育士の確保のためにも、民進党政権時代には保育士の皆さんの処遇はマイナス一・二%、つまり処遇は改善されるどころか下がっていたわけであります、それに対しまして私たちは安倍政権になって一〇%引き上げることになるわけでありますし、そしてキャリアを積んだ方にはさらに四万円プラスになるわけでございます。

 それは人事院勧告も含めてではないかという御指摘がございましたが、人事院勧告というのはそのときの経済の状況、デフレかインフレか、あるいは給料が上がっているか下がっているかということでもって、決めるのは人事院でございますが、そういう経済状況をつくっているのはそのときの政権の責任、政策の結果であるということも申し添えておきたい、このように思います。

 同時に……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 保育の受け皿をふやしていく中において、今、働く女性の皆さんが安倍政権ができてから九十万人以上ふえたわけでございまして、当然その中でニーズもふえていく、また受け皿もふえていく中において、申し込みをしようという方々もふえていく中において、残念ながらゼロにはなっていないのは事実でございますが、我々は、地域ごとの事情をよく見ながら、地方自治体ともしっかりと協力をしながら、国としても最大限の支援をしていきたい、このように考えております。

山尾委員 総理、一緒にこの待機児童を解決したいので、答えていただきたいんですね。

 まず、総理は、待機児童ゼロを目指すと繰り返しおっしゃっています。いつまでに待機児童ゼロを目指しておられるのですか。

安倍内閣総理大臣 いつまでにということをおっしゃったわけでありますが、いつまでにということを、なぜ今ここで断言が難しいかどうかということでございます。

 それは、さらにニーズがふえていくということも十分にあり得るわけでございますし、私たちの政策を今進めていることによって、いわば今まで諦めていた方々が可能性が出てきたという中において、申請者がさらにふえていくということもあるわけでございます。

 その中で、だからこそ今それはなかなか申し上げられないということを申し上げているわけであって、民主党政権時代にも恐らく目指していたんだろうと思いますよ。なぜ私が過去の皆さんの政権と比べるかということは、言うことは簡単なんですが、実行するのは、まさにこれは財源を得て実際に実行していくという責任が生じるかどうかということであって、我々はその責任をしっかりとかみしめながら今こうして発言させていただいているところでございます。

山尾委員 総理は、二〇一三年四月十九日、日本記者クラブの講演で、しっかりと年限を明言されて待機児童ゼロを目指すと言っておられるんですね。この年限は今撤回をされたんですか。

安倍内閣総理大臣 残念ながら、我々は確かに、最初は四十万人という目標を立てたわけでございますが、それを行っていくことによってゼロ近傍に至るという予測を立てたのでございますが、しかし、実態としては、女性の活躍政策を進めていく中において、今申し上げましたように、実際に女性の働く方はまさに労働市場に九十万人以上参加をしていく、さらにふえていくという中においては予測どおりにはなかなかならないという実態について申し上げているところでございます。

山尾委員 女性が職場に出ていけばやはり潜在的待機児童もふえていくということは、二〇一三年、またそれより前からわかっていることなんですね。

 それでは、私、もう一回お尋ねしますけれども、この二〇一三年、総理は記者クラブで何年までに待機児童ゼロを目指すとおっしゃったか覚えておられますか。

 事務方に聞かなくて結構です。何年までに待機児童ゼロ、事務方に聞かないとわからないんですか、何年までに目指すと。ここでなぜ塩崎大臣なんですか。わからないんですか。ここで塩崎大臣に答えさせたら、総理、自分は何年までに待機児童ゼロを目指すのかわからないでおっしゃっていたということを自白したことになります。大臣、答弁をやめた方がいいです、今大臣が答弁したら、総理は今、後ろを振り向いて事務方に聞こうとした、それをたしなめられたら塩崎大臣に話題を振った。

 総理、総理が何年までに待機児童ゼロを目指すとおっしゃっていたのかは、総理にしか答えられない。総理、お答えください、お答えください。総理、お答えください。わからないんですか、何年までに待機児童ゼロを目指すと言っていたのか。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 そんなに興奮しないでください。

 委員会というのは、質問者が答弁者を指定するのではなくて、念のためにお伝えしておきますが、委員長が委員長としての職権で……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 指名をするわけでございます。

 今、総理の過去の発言でございますので正確にお答えをしなければなりませんから、事務方に確認するのは問題ないと思いますよ。そういう時間を惜しめというのであれば、あらかじめ言っていただければいいだけの話であって、通告をしていただく、これが常識なんです。通告をせずに、すぐに答えられなかったからといって……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 答えられなかったからといって、まさに何か一本とったように感じるのは、それは充実した審議とはほど遠い審議と言わざるを得ないわけでありまして、そんなことをやろうと思えば幾らだってできるわけでありますが、自民党はそんな質疑はしませんよ。

 そこで……(発言する者あり)済みません、ちょっと、これはタウンミーティングじゃないんですから、どんどん私に問いかけをしないでもらいたいと思います。

 そこで、今申し上げますと、確認いたしましたら、二十九年ということでございます。

浜田委員長 タウンミーティングという言葉はできるだけ使わないように願います。よろしくお願いします。

山尾委員 笑うところではないのです。笑うところじゃないんです。

 総理、今、事務方から耳打ちをして、初めて平成二十九年という答えが出てきました。(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。

浜田委員長 静粛に願います。自民党、静かに。

山尾委員 真剣なんですよ、お母さんたちの声を聞いて、子供たちの声を聞いて。

 私が申し上げたいのは、平成二十九年なんです、来年なんです。平成二十九年度までに待機児童ゼロを目指すと言っているんですね。もしそれを本当に真剣に考え続けて去年の国会でも待機児童ゼロと胸を張っておっしゃっていたのなら、常に頭にあるはずなんですよ、あと一年だと。平成二十九年四月一日時点、それが公表されるのは恐らく来年の九月でしょう。でも、平成二十九年四月一日、あと一年だ、こういう思いがなくて待機児童ゼロと去年から胸を張っておっしゃっていたのかと思うと、私は本当に涙が出ますよ。何を言っているのと、今、総理、その席からやじをおっしゃいましたけれども。

 そして、私、もう一回申し上げます。

 待機児童ゼロを目指す、平成二十九年、これを総理は知らなかったわけですけれども、今お答えを聞いたら、断言できない、期限は言えないとおっしゃいました。総理は、では、平成二十九年までにゼロにする、こういう前からの約束を、今、期限については変更する、撤回する、期限はなくす、こういうことですか。

安倍内閣総理大臣 いろいろと批判をされましたが、これは興奮してする議論ではないんですよ。冷静に、建設的にいかなければいけない。

 なぜ私が民進党政権時代にだめだったかということをお話ししたかといえば、ただスローガンを叫んだり相手を批判することでは何も実は生まれないんだということであります。盛んに皆さんは私たちに保育士の改善を求めておられたわけでありますが、皆さんのときにはまさに保育士の皆さんの待遇は改善されていなかったというか、マイナスだったということは事実なんですよ。こういうことを皆さんはかみしめながら発言されるべきなんですよ、発言されるべきなんです。

 確かに、二十九年度末、二十九年度末ですから正確に言うと三十年の三月三十一日ということになりますが、しかし、今申し上げましたように、残念ながら今非常に厳しい状況になっているのは事実でございます。しかし、だからといって、待機児童ゼロという目標を取り下げるかといえば決してそんなことはないわけでありまして、そのときを目指して頑張っていかなければ改善はしないじゃないですか。ですから、私はそう申し上げているわけであります。

 それで、山尾さんは一方的に何か興奮をされて、我々を一方的になじっておられるから、我々もこれはいかがなものかと思って見ていたわけでございまして、申し上げるわけでありますが、大切なことは、しっかりと経済をよくしていく、そして財源をつくっていく中において、財源を確実にしながら結果を出していくことではないかということであります。

 申請者が果たしてどれぐらいふえたかということについても、出生率も上がっているわけでありますし、申請者もふえた、この現実があるんですよ、この現実を見ていただかなければならないということでありまして、確かに女性の方々が働き始めるということについては、我々の予想以上になったのは事実であります、見積もり以上になったということであります。それはある意味では私たちの政策の効果が非常にきいたということにもなるわけでありますし、経済の回復の度合いも、労働市場の状況が私たちの予想以上にいわば改善されてタイトになったということであります。

 我々が予想した段階においては、全国四十七の全ての都道府県で有効求人倍率が一倍になるということは予測もしていなかったわけでございます。そういう中においては、そういう早い段階での回復が非常になされているという中においては、確かにそういう意味において我々の予測は外れたわけでございまして、その点については、十分に改善速度に追いついていなかったということについては残念ではありますが、しかしこの目標に向かってしっかりと進んでいく、ただ、状況としてはなかなか、今にわかには、間違いなく達成できる状況ではないということは先ほど申し上げたとおりでございます。

山尾委員 平成二十九年度末、平成三十年三月三十一日までに待機児童ゼロを目指すという政府の方針、これを今総理は答弁で事実上断念されました。そういうことですよね。私は……(発言する者あり)ちょっと静かにしていただけますか。

浜田委員長 静粛に願います。

山尾委員 この一年間、私も大変責任を感じ続けているんです。民進党として緊急提言も出させていただいた。でも、それを実際に与党に実行していただく原動力として、どこまでしっかりと私自身が働けているんだろうかというふうに思います。一つ一つ検証していきたいと思いますが、時間の関係で一部になるかもしれません。

 これが、去年、民進党が待機児童の解消に向けて出した緊急提言です。

 まず一番ですね。全国統一の基準で、隠された待機児童を表に出してあげよう、こういうことです。政府が待機児童の定義を曖昧にしたまま統計をとっているので、自治体ごとの待機児童の数字が表に出ていません。実態を反映していません。だから、待機児童ゼロを信じて引っ越したら待機児童になったという、本当に笑えない話が散見されているわけです。

 また、待機児童の狭い解釈を許しているので、その統計の数字も実態を反映していません。平成二十八年四月一日時点で二万三千五百五十三人の待機児童ですけれども、育休中の人、特定の保育園を希望している人、こういう人を入れた隠された待機児童を合わせれば九万九百七人。去年から議論して、塩崎大臣のもとで厚労省がこの数をようやく表に出したことは、私は一定の評価をしたいと思います。要するに実数は四倍近くあった、こういうことなんですね。

 だから、私たちは、統一基準をつくって全ての自治体が実数をしっかり表に出せるようにして、そして待機児童の総計も実数で把握をしましょう、こういうふうに提案し続けています。でも、いまだにやられていないんです。

 総理、これをまず一緒にやっていただけないですか。民主党政権のときにどうだった、ああだった、少なくともよくなったとか、総理の方から見る一方的な数字をおっしゃるよりは、これを一緒にやりましょう。これはいいんですよ。私たち民主党政権のときも、こうやって統一基準でしっかりと表に出すということをやれていなかったんです。一緒に責任を負いますから、これをやりましょうよ。いかがですか、総理。

塩崎国務大臣 厚生労働省では、昨年九月から待機児童数の調査検討会というのをやっています。

 統一するべきだというお話がありましたが、今みずからお認めになったように、同じ定義でずっと、民主党政権のときもこれで来ました。そして、今御評価をいただきましたが、隠れ待機児童とおっしゃいますが、別に隠しているわけでも何でもないわけで、テレビを見ていらっしゃる方が御存じないといけませんから申し上げておくと、地方単独事業を利用している方々、特定の保育園だけを希望されている方々、それから求職活動を休止している方々、育児休業中の方々、こういった方々について、それぞれ市区町村ごとにばらつきがあることは御案内のとおりで、これによって統一というのはなかなか難しいということがずっと言われてきたわけであります。

 それで、この待機児童数の調査検討会では、例えば特定の保育園を希望する方などの取り扱いについて市区町村ごとに不合理なばらつきがあるのではないかという指摘があるわけでありますので、そういうことで検討を、それぞれどういうばらつきがあるのかということを見直すことで、これは定義を見直すことではございません。地域における通常の交通手段の違いなどの合理的な事由を除いて、不合理な運用上のばらつきを是正することを目的として、できる限り皆さんが同じような考え方でやっていただけるように、あるいはむしろ逆に待機児童となっていらっしゃる方々の立場に立って、わかりやすいものにしようということであります。

 保護者に他に利用可能な保育園の情報を提供しないで、一律に特定の保育園のみ希望する方ということで、待機児童に含めないとするところがあります。保護者に対してきめ細かな対応が行われているとは言えないということでありますので、そういうような実態を踏まえて、今後の待機児童数の調査方法を検討して、この年度内にめどとして取りまとめる予定としているわけでございます。

 今回の検討は、待機児童数を減らすようなことを……(発言する者あり)いや、一方的にお話をされますけれども、政府の話もちゃんと聞いていただきたいと思います。待機児童数を減らすようなことを目的としたわけではございません。各市町村が保護者の御意向や状況をしっかりと積極的かつ丁寧に把握して、利用可能な保育園などの情報を提供するなど、保護者のニーズに応じた適切な保育の提供がなされるようにすることが重要なので、政府としては、保育コンシェルジュとかいうような形で、一人一人にきちっとした対応を親切にやっていくことを支援していこうと思っておるところでございます。

山尾委員 今の話だと、検討会をやっているけれども定義を統一にするということは考えていないというようなお話で、結局、私たちがこうやって提言しても、今の御説明を聞いても、なぜやらないのかということはやはり納得がいかないんですね。育休がカウントに入ったり入らなかったりする。特定保育園を希望しているのがわがままと言われたりする。

 少し声をお届けだけしたいと思います。

 今、政府が通そうとしている雇用保険改正案の中に育休二年が入っていますよね。育休をとれたら待機児童のカウントから外せる、こんな運用はだめですよ。今のままだと、育休をとれちゃった人は待機児童から外しても外さなくても構わない、これが厚労省が自治体に出している通知です。でも、こういう運用のまま育休二年の制度を導入して、待機児童解消の本来の国の役割を果たさないで、育休延長でお茶を濁さないでほしいというのが一点。

 そもそも、お母さんたちの現実を知ってほしいんです。こういう声がいっぱいあります。

 一歳で申し込むなんて絶望的だからゼロ歳から頑張って、こういうふうに役所で言われている。ましてや、二歳から申し込むリスクなんてとれない。育休を二年とって、そんなリスクをとる人、どれだけいるんですか。

 これが当事者の声の一部です。また、こういうのもあります。

 子供を認可外にも入れないで育休を二年とって家で育てていたら、そうしたくても、そうしていたらポイント加算がほとんどなくて、どんどんどんどん優先順位下がっていくのが目に見えている。どうしてこういうリスクをとれるのか。

 これが現実なんですね。だから、育休二年が待機児童解消にどこまで本当に向き合っているのか、正直、的外れなんじゃないか、こういう声もまた現場のお母さんたちの声だし、ましてやプラス育休をとれたら待機児童のカウントから外されちゃう、こんな運用のままで育休だけ延びたらかなわない、こういう声があるんです。

 だから、私は、民進党の提言ですけれども、育休中の人もきちっと統一基準で待機児童にカウントして、ちゃんと解決の俎上にまずはのせましょうよ、こういうことを申し上げている。

 でも、今の塩崎大臣のお話だと、そういった定義を統一するということは考えていない。検討会の回答が三月ぐらいに出るという話ですけれども、今のところこういう民進党の前向きな提言もやるつもりがないということで、大変残念ですけれども、私はこれは言い続けますよ。特定保育園のことだって言いたいことはいっぱいありますから。

 もう一点、処遇改善です。

 民進党は、全ての保育士さんに当てて五万円給与を上げましょう、こういう法案を昨年の通常国会から提出しています。一方、フェアにいきたいと思います、私は総理と違って。政府は、ことしの四月から約三分の一のベテラン保育士さんに約四万円上げると言っています。ことしの四月からできれば実現したいと。

 一生懸命現場の方が知恵を絞ってやっているのは、私は後ろにいる方ともずっとこの間お話をしてきましたから、それはそれで、今までより、去年の保育園落ちたのブログの前より、やはりこの一年、現場の方は頑張っておられると思います。しかし、私たちの案に比べると対象者も予算も約三分の一という規模感なんです。

 そして、何より心配なのは、法律ではないということは、来年も再来年もその次の年も同じように予算がついていく、そういう法的な担保はどこにあるのですかということなんです。どこにあるんですか。

塩崎国務大臣 民進党案は五万円一律に上げるということでございますが、私ども安倍政権では、大事なのは高い使命感と希望を持って保育の道を選んだ方々に仕事を続けていただくということであって、処遇改善を初め、潜在保育士の再就職支援とか保育士の事務負担の軽減など、私どもは総合的に取り組んでおります。

 民進党が出されている法案につきましては、まず第一に財源の確保などが何ら明らかになっていないこと、それから人材確保のための総合的な対策となっていないということでございまして、我々は、キャリアアップの仕組みをきちっとつくった上で、そういった経験や能力の評価をした上で四万円を基本に上げていこうということでございますので、そういったことを持つことがキャリアとして先を見えるようにする、これがやはり大事なことであって、努力の仕方はどうしたらいいのかということもわかるようにしていくということが大事なのでありますので、私どもとしては、一人一人の保育士の皆さん方がみずから努力しながらステップアップしていくことに大いに期待を申し上げたいというふうに思っております。

山尾委員 結局、今の大臣のお答えを聞いていると、毎年確保されていくというお約束がないんですね。

 私たちがどうしてこうやって法制度をつくろうと言っているかというと、予測可能性が鍵だからです。保育士さんたちに、これから先も給与が上がり続ける、上がっていく、途中で予算措置が途切れて何か減ったり、前に戻っちゃうということがないと。そういう予測可能性があって初めて、せっかく資格を取った保育士さんたちが、ではちゃんと保育士の仕事をやりがいを持ってやっていこうと思える、あるいは、一旦やめた保育士さんたちが現場に戻ろうと思って戻ってくれる。

 それを一回一回ごとの予算措置で、本当に来年も続くのかどうかわからないという状態では、結局、根本的に保育士さんが足りないという状況を解決できないから、私たちは、こうやって法律でしっかり制度をつくりましょうと。こういう提案を去年からずっとしているんですね。それでも、ずっと審議拒否をされて議論に応じてもらえない。本当に失望します。

 もう一点だけ私は伺って、次に行きたいと思いますけれども、長時間労働規制も同じなんですよ。私たちは、保育のテーマにもこの長時間労働規制法案を位置づけて審議してくれと言っています。

 子供には、専門家である保育士さんたちなんかによる専門的な保育と、やはり家庭での保護者にしかできない子育て、この両輪が就学前の子供たちにとってとても大事だから、親と一緒にいられる時間を子供たちにきちっと大人がつくってあげよう、長時間労働規制、インターバル規制、法律でちゃんと制度として、この立法府でちゃんと採決していきましょうよ、そういうことを言っているんです。これも審議拒否で応じていただけないのは、保育というテーマからも私は大変残念に思っています。

 そして、一つ気になることがございます。今パブリックコメントにかかっている保育指針なんですけれども、保育所保育指針案ということで、保育園の子供たちも国歌に親しむ、国旗に親しむ、こういう新しい保育指針案が今俎上に上っています。これはパブリックコメントをやっていますけれども、このパブリックコメントの後、結局これは来年四月から施行したいということのようなんです。

 国歌・国旗のことも含めて、来年四月からこの案を施行するかどうかということも含めて検討されるのか。それとも、もうこれでいくよということは既定路線なのか。どちらですか。

塩崎国務大臣 当然、パブコメをやっているわけでありますから、国民の御意見を聞いた上で四月からということでございまして、この保育所保育指針の改定は、小学校教育への円滑な接続を図るという観点で、三歳以上の子供たちの教育内容については、保育園、幼稚園、認定こども園を通じて同じように、同様の内容とする改定を行っていこうということでございます。

 国旗・国歌に関しましては、親しむという内容を盛り込んだわけでございますが、小学校の学習指導要領等を踏まえたものでございまして、小学校教育への円滑な接続を図る観点から重要だというふうに考えております。

山尾委員 前回、厚労省の方から聞いたときも、パブリックコメントをしっかり検討して、その上でこの施行案を施行するのかどうかも含めてパブリックコメントを踏まえて検討する、こういう御答弁がありましたので、今大臣もそういうことだというふうに思います。ぜひしっかりパブリックコメントを、いろいろな意見が出てくると思います、よく見ていただいて、また議論する場があったら議論したいと思います。

 私が申し上げたいのは、子供たちが社会に愛されて社会に育まれていく、そういう環境をつくることで子供たちの心に、押しつけではない、自然に社会を愛する、そして自分の住んでいる、自分の生まれ育ったこの国を愛する、こういう意識が芽生えていく、これがやはり順番なんだと思うんですね。だから、まず子供たちが社会で愛される環境をつくってほしい。保育園というのは、子供たちが社会とのつながりを得る最初の第一歩です。その第一歩で、あなたは入れないよ、こういう最初の手紙をもらう、こういう社会のままで、社会を愛せよ、国を愛せよ、ちょっと順番が違うのではないかなという気もいたします。

 ただ、こういうのはきちっと議論した方がいいから、極端なことを申し上げるつもりはありません。ただ、まずはその前提のところを一生懸命やっていただきたい、こういうことを申し上げたいと思います。

 次に、共謀罪のことについてお聞きをしたいと思います。

 きのう、また法務省から驚くようなペーパーが出てきました。このペーパーにはこのように書いてあります。もともと正当な活動を行っていた団体についても、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には組織的犯罪集団に当たり得る、こういうペーパーであります。

 法務大臣にお尋ねします。

 一月三十一日の刑事局長答弁、これと全く違うことを言っているんですね。このときは、そもそもその団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体、これだけに限られる、こう言っていました。さきのフリップと、この前の刑事局長の答弁、真逆なんですね。

 当初からそもそも犯罪集団でなければ当たらないのだというのが局長答弁。そして一方、法務省のペーパーは、当初は普通の集団でもその後に犯罪集団に一変した場合には当たるのだ、これが、法務大臣が出したんでしょう、きのう出てきた法務省のペーパー。

 法務大臣、改めて聞きますね。これは、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているんです。どっちですか。

金田国務大臣 山尾委員の御質問にお答えをします。

 刑事局長の答弁の意味につきましては、本来、刑事局長に御質問いただく方が適切とは思われますが、私の理解では、刑事局長の答弁は、正当な活動を行っている団体がたまたま犯罪行為に及んだ場合にテロ等準備罪の対象となり得るかという趣旨の質問に対してなされたものと承知しております。

 この刑事局長の答弁は、もともと正当な活動を行っていた団体につきまして、その結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合に組織的犯罪集団に当たり得るか否かという点について何ら言及しているものではないと理解しております。

 したがいまして、林刑事局長の答弁は法務省の示した統一見解と私の答弁と何ら矛盾するものではない、このように考えております。

山尾委員 矛盾しているものを矛盾していないと言うことは、よくおっしゃられることなんですけれども、どう見ても矛盾しているんですよね。

 そもそも犯罪を実行することにある団体に限られると局長は言っていた。そして、きのう出てきたペーパーは、もともと正当な活動を行っていた団体でも性質が一変した、こういう場合には集団に当たり得ると。これは全く真逆のことを言っているんですよね。どこをどうおっしゃられると、矛盾していないという話になるんですか。

 そして、さっき大臣がおっしゃったけれども、さっきのこの刑事局長の答弁ですけれども、質問者は何も、たまたま犯罪集団になったときには当たるんですかなんて質問はしていませんよ。勝手にその前の質問をつくりかえないでいただけますか。

金田国務大臣 御質問にお答えをいたします。

 テロ等準備罪の具体的内容は現在検討中であります。そして、組織的犯罪集団につきましては、結合の目的が犯罪を実行することにある団体をいうとの趣旨で用いることを検討いたしております。

 もともと正当な活動を行っていた団体についても、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には組織的犯罪集団に当たり得ることがあるとするのが適当である、このように考えております。

山尾委員 それでは、法務大臣、引き続きお尋ねしますけれども、今回の法務省から出てきたペーパー、もともと正当な活動を行っていた団体についても性質が一変したら当たり得る、これは従来の共謀罪のときの議論とどこが違うんですか。

金田国務大臣 委員の皆さんからのいろいろな意見がございます。

 ただいまの質問については、御質問の趣旨がいまいち鮮明ではないのですが、組織的犯罪集団については明確に定義を置くということを含めてしっかりと現在検討中なのであります。その中で、成案ができましたときにしっかりと御説明をしてまいります。

山尾委員 委員の意見とかは気にされず、大臣としてしっかり答弁してください。

 もう一回お尋ねします。

 それでは、従来の共謀罪では、もともと正当な活動を行っていた団体が今大臣がおっしゃったように性質が一変したと認められる場合には、この罪の対象に当たったんですか、当たらないんですか、どちらでしたか。今大臣は、今回のものについては、もともと正当でも性質が一変したときは当たり得るとおっしゃっていました。後ろを向かなくて結構ですよ。従来のときはどうだったんですか。違うんですか、同じですか。

金田国務大臣 ただいまの御質問の従来のいわゆる共謀罪の法案、これは廃案になった法案であり、これをベースに現在のテロ等準備罪についての法案のお答えはいたしかねるというふうに思います。

山尾委員 そうであれば、大臣、かつての共謀罪とは全く違うと言ってきた御自身の答弁、全部撤回してください。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 過去の法案と今回の法案、その中で、今回の法案における組織的犯罪集団も、かつての共謀罪の団体といいますか、それと実質的にどう違うのかというのと同じような質問と私は受けとめておりますが、かつての組織的な犯罪の共謀罪におきましては、その主体は団体とのみ規定されておったわけであります。

 検討中の現在の法案におきましては、組織的犯罪集団につきましてしっかりと明文で定義し、主体をこれに限定することを検討しておるわけであります。これによりまして、私どもは、かつての共謀罪に対して示されました一般の方々の不安や懸念というものを払拭することができる、このように考えて、その意味をかつての共謀罪とは異なるものとして現在検討を進めているということであります。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

山尾委員 異なるとおっしゃるので、もう一回聞きます。

 かつての共謀罪では、最初は正当な団体だったものが性質が一変した場合には対象となり得たんですか、ならなかったんですか、どちらですか。

金田国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、それはなり得るものではあるとは思いますが、しかしながら、現在成案を作成中でございますから、その段階でしっかりと答えていきたい、このように思っております。

山尾委員 かつてと同じなんですよ。かつての局長答弁がこれです。初めは正常なものから走り出した、でも完全に詐欺集団として切りかわった、そうすれば認定され得る、こういうことを言っているんです。

 かつてもそうだったし、今回もそうなんです。当初は一般の団体ひいては一般の市民であっても、途中で捜査機関が、性質が一変した、犯罪集団に切りかわった、こういう認定をされればこれは今回の対象に当たる。かつても今も全く同じ答弁をされているんです。だから私は聞いているんです、これはかつてと違うという理由にならないんじゃないですかと。

 では、大臣、お伺いします。総理でも結構です。

 総理はずっと、一般の人は対象にならないとおっしゃってきました。でも、これでいくとなるんです。そのところの矛盾をどう御説明されますか。

安倍内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体がまさに現に存在している場合に、組織的犯罪集団として取り締まりの対象とすることは国民の生命や財産をテロから守ることにおいては当然のことでありまして、まさにそもそもの目的が正常な目的であったとしても、その段階で一変しているわけでありまして、一変している以上これは組織的犯罪集団と認めるのは当然のことであろうと思うわけでありまして、結成当初からそのような団体であったのか、あるいはある時点でそのような団体になったのかによって対応が異なるものではあり得ないわけでございます。

 例えば、オウム真理教がそうでありますね。当初はこれは宗教法人として認められた団体でありましたが、まさに犯罪集団として一変したわけであります。一変したわけでありますから、まさに一般人を取り締まるというその観点からしても、犯罪集団に一変した段階でその人たちは一般人なんですか、私は今大変驚いているんですが。一般人であるわけがないじゃないですか。犯罪集団に一変したものである以上それは対象となる、これはまさに明確であろう、このように思います。

山尾委員 そうであれば、総理、一月二十六日の御自身の答弁を思い出してください。

 今総理は、当初から犯罪集団であるか、ある時点で犯罪集団であるかで扱いは変わらない、扱いが変わったら困るじゃないかと胸を張っておっしゃいました。

 一月二十六日の総理の答弁を読み上げましょう。「かつての共謀罪は、いわば、共謀して何人かが集まって合意に至ったらそこで共謀罪になるわけであります。今回のものは、そもそも、犯罪を犯すことを目的としている集団でなければなりません。これが全然違うんです。」これが総理の答弁であります。

 今の御答弁は、そもそもであろうと、途中で変わろうと、テロとか犯罪集団に切りかわったら対処しなければならないのは当たり前じゃないか、対応は異ならないよとおっしゃいました。一月二十六日の答弁、撤回されるんですか。

安倍内閣総理大臣 一月二十六日の答弁においても、まさに一般の方々を取り締まるものではないという趣旨で申し上げているのであって、つまり、犯罪を目的としているということは明確にしているということであります。つまり、今回も、いわば一変しているわけでありますから、一変しているということは、まさに犯罪を目的としている集団となったということであります。

 つまり、まともな集団の中において一部の人が犯す犯罪において、その団体全部が取り締まりの対象にはならないということでありますが、まさに今回は一変しているということをもってそうなっているわけでありますし、また準備行為を行うということをもってしてもそれは違うことでありますが、かつてのいわば共謀罪と違うということについては私たちは必ずこの二つの点を挙げておりますから、今改めてそう申し上げているところでありまして、重要な点は、犯罪行為を行うということについて組織が性質を一変させることにポイントがあるわけでありまして、それとさきの答弁は何ら矛盾するところはない。

 強引に矛盾しているように見せかけようとしておられるかもしれない、努力をしておられるかもしれませんが、その努力は無駄な努力でありまして、大切なことは……

浜田委員長 総理、時間が来ておりますので。

安倍内閣総理大臣 大切なことは、お互いに国民の生命と財産を守ることじゃないですか。その観点を忘れたら、本質を見誤りますよ。

山尾委員 総理、一月二十六日は、そもそもかどうかが違うんだ、そうおっしゃっていた。そうしたら今度は、一変したかどうかがポイントだと答弁を全く変えた。変えたものを変わっていないと強弁するのは、これは国民にとって不誠実ですよ。

 総理はこの前、こういうこともおっしゃっているんですよ。共謀罪というのは、前の共謀罪では、例えば、そんな組織的なものじゃなくても、ぱらぱら集まって今度やってやろうぜという話をしただけでこれはもう罪になるわけでありますと。総理はこう言っています。

浜田委員長 山尾君、時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。

山尾委員 では、法務大臣に聞きましょう。

 ぱらぱら集まって今度やってやろうぜと話をしたら、従来の共謀罪は共謀になったんですか。

浜田委員長 いやいや、時間が来ておりますので、質疑をまとめてください。山尾君、時間が来ていますので、まとめてください。

山尾委員 時間の無駄遣いの答弁をされて私は大変不本意でありますけれども、やはり、必要性もはっきりしていない、そして答弁がころころ変わる、変わったことも認めない、矛盾したまま突き進む、こういう法案の検討はやめていただきたいし、大臣、こんな姿勢では、本当に大臣は辞任していただかないと、この議論は前に進まない。私はそう申し上げて、時間ですので、終わりたいと思います。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、大西健介君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 きょうのこの集中審議、本予算の審議に入ってから三回目ということでありますけれども、一回目の集中審議は天下りの集中審議でありました。これは補正予算のときから我々が求めていたものでありますので、集中審議、まだまだ私は足りないというふうに思っております。

 それから、先ほど昼の理事会で、そういう状態にもかかわらず、既に与党からは出口の話がありました。私はもう驚きました。腰を抜かしそうになりました。もちろん、いずれ出口はあるわけですけれども、しかし、今申し上げましたように、まだまだこの審議を通して明らかにしなきゃいけないことがたくさん出ております。

 一つは、例えば南スーダンPKOの日報の隠蔽問題。そしてもう一つは、共謀罪の詳しい中身について国民に知らせることをしない、隠している。そして三つ目は、天下りの全省庁調査。これについてもまだ何も出てきておりませんし、それどころか、文科省の案件についてもその全容はまだ明らかになっておりません。

 そういう状態で、これらの隠蔽三問題に幕引きを図ろうとするかのように採決を急ぐのは、私は断じて許されないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 あわせまして、これまでこの審議を通して金田大臣がしどろもどろの答弁を繰り返して、そして最後には何を聞かれたかも忘れてしまう、こんなこともありました。また、稲田大臣におかれては、同じような答弁を繰り返したり、あるいは関係ない答弁を長々として委員長に途中で遮られる、こんな場面もありました。そして、あげくの果ては、総理の駆けつけ警護を受けないと自分を防衛できない、そんな稲田防衛大臣。この二人の大臣の答弁でたびたびこの委員会の審議も中断をする。この予算委員会の審議の重要な時間が私は多く浪費をされているというふうに思います。

 ですから、しっかり時間を確保していただいて審議していただきたいということを冒頭申し上げておきたいと思います。

 先日、十四日の日に、第七回の働き方実現会議が行われました。これは総理が議長を務められている会議でありますけれども、この会議の中で、労使の協定を結んでも上回ることができない年間の総残業時間、これを七百二十時間にするという事務局案が示されたわけですけれども、この七百二十時間というのに即して、私の方でちょっと一つのケースを考えてみました。

 これがそれなんですけれども、ここに書きましたけれども、Y社という会社では、年間七百二十時間までは残業させてもいいよという労使協定を結んでいた。今回示された事務局案というのがこのケースです。

 そこで働くAさんですけれども、ある年の一月からずっと次のような時間の時間外労働をしていた。一月八十時間、二月七十五時間、三月八十時間、四月七十五時間、五月八十時間、六月七十五時間、七月八十時間、八月六十時間、九月九十五時間、こういう時間外労働をした。ところが、不幸なことに、九月三十日、疲労こんぱいして、Aさんは翌朝未明、急性の心筋梗塞を発症して死亡した。こういうケースをちょっと考えてみたいんです。

 これを見ると、一月から九月まで、Aさんが死亡するまでの累計の残業時間、これは合計しても累計七百時間。つまり、今回事務局案として示された七百二十時間に至っていない。つまり、今回の案でもっても刑事罰の対象外になります。

 なおかつ、これだけの残業をしていますけれども、亡くなる直前の一カ月前、九月の残業時間というのも九十五時間ということになります。それから、発症前二カ月から六カ月間の平均をとってみても、いずれも八十時間にはならないということなんですね。

 ということは、どういうことになるか。下にも書いてありますけれども、今回の実現会議の中では繁忙期一カ月の上限という具体的な数字は示されませんでしたけれども、今言われているのは、過労死ラインと同じ一月百時間とか二月平均八十時間というのを考えているのではないかというんですけれども、例えばこの例でいうと、年間七百二十時間としても一月百時間でもこれは当たらないし、そして二月の平均八十時間でも当たらない。つまり、このY社のAさんのケースというのは、今の七百二十時間の中で、過労死ラインと同じような一月百時間とか八十時間とかそういう数字を上限にしたのでは死んでしまうということなんですよ。過労死はなくならないということなんです。

 改めて、総理、このようなケースを見ていただいて、やはり連合の会長も、今回はあえて繰り返さないけれども、前回ちゃんと言っている、そしてそれは変わらないと。その変わらないと言っているのは、到底百時間はあり得ないということなんです。

 到底百時間はあり得ないというのはこのケースを見ても明らかだというふうに私は思いますけれども、働き方実現会議の議長として、総理の御答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 大西議員が指摘をされているケースは、大西議員が作成した数値例でありまして、仮定のケースにすぎない、こう思います。仮定のケースにすぎないわけでありまして、何度も申し上げているように、誰に対して何時間の上限にするかについては労使の合意を形成すると申し上げています。労働側が合意をしていただけなければ法案を提出することはありません。

 ちなみに、二月十四日の働き方改革実現会議において事務局がたたき台として示した案によれば、議員の御指摘とは異なり、時間外労働時間の限度を月四十五時間かつ年三百六十時間と法律に明記し、これを上回る時間外労働をさせた場合には、労使が合意する特例の場合を除いて罰則が科されるわけであります。

 このため、年間七百二十時間とか月百時間とか八十時間とか、使用者側が自由に時間外労働を強いることができるわけではそもそもないわけであります。臨時的な特別な事情があることについて労働組合側が合意しなければ、月四十五時間かつ年三百六十時間が限度となることに留意いただきたいと思います。

 なお、連合が二〇一三年に政府の規制改革会議に提出した時間外労働の上限時間規制の導入案について、上限時間規制において年間七百五十時間とすること等が考えられるとしており、事務局案の七百二十時間より緩いものとなっていることも申し添えておきたいと思います。

 また、労働基準法は最低限守らなければならないルールを決めるものでありまして、企業に対しそれ以上の長時間労働抑制の努力が求められることは言うまでもないということでございます。

大西(健)委員 四十五時間、三百六十時間というのは今も大臣告示で決まっています。そして、労使が合意しなければいけないというのは今も変わらないんです。そして、ここの例でも労使協定を結んでいたと書いてあるように、今回の七百二十時間も当然労使の協定があった場合。今は青天井になっているのを七百二十時間にしようと。

 私は、それ自体は別にきょう問題にしているわけじゃないんです。それでも、この例でいうと、累計時間も七百二十時間を下回るけれども、例えば、九十五時間とか八十時間にならないということでいうと、百時間とか八十時間みたいなさすがに繁忙期、一月百時間とか二月平均八十時間なんかでは。この例であってもそうなんですけれども、こういう例は幾らでもつくれる、幾らでもあるんです、こういう境界事例。

 例えば、言い方は悪いですけれども、この方は九月までに七百時間で亡くなっていますけれども、もうちょっと持ちこたえてというと言葉が悪いですけれども、頑張って、十月二十時間さらに残業していたら、それは超えてしまうわけですよ。でも、こうやって九月で亡くなった場合にはひっかからないということですから、例えば、幾ら忙しくたって、やはり月百時間とか八十時間、特に百時間なんというのはあり得ないですよねということを伺っているんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほども申し上げたんですが、誰に対して何時間という時間外労働の上限を設けるのかは非常に重要な議論でございまして、さまざまな業態等々があるわけでございまして、そこに働いている人々もその業態を理解しているところもあるわけでありまして、そういうところに対応していくというのが例えば業種あるいは企業にとっての一つの生き残っていく形。

 しかし、その中においても、果たしてどこを限度にするかということについては、当然これはよく考えていかなければいけないわけでございますが、労働側と使用者側には、そのためにしっかりと合意を形成していただく必要があるわけであります。まさに労働側も実態をよく知っているわけでありまして、それぞれの現場に対してどれぐらいの時間が、時間外労働の上限が適切なのか、あるいは例外としてはどういうものが考えられるかということについては、じっくりと話し合っていただきたいということは先ほども申し上げたとおりでありまして、三月末に取りまとめる実行計画に向けて、実態を見据えて、かつ、実効性の上がる結論を出していく考えであります。

 いずれにしても、従来から答弁をさせていただいておりますように、脳や心臓疾患の労災認定基準をクリアするといった健康の確保を図ることが大前提であるということは言うまでもないわけでございます。

大西(健)委員 総理はよく誰に対して何時間と言うんですけれども、百時間なんというのは誰に対してもやっちゃいけないんですよ。

 白河委員がこういうことを言っています。今の労働時間規制というのは速度制限のない高速道路だ、だから事故も起これば犠牲者も出る。そこに速度制限を設けること自体に我々は反対しません。しかし、例えば百時間というのは、事故をなくすような速度制限ではないんじゃないですかということを繰り返し申し上げているわけです。

 私は、百時間は到底あり得ない。そして、総理も今、労災認定基準というのをクリアするようなと言われました。だから、百時間というのはそれはクリアしたことにならないというふうに私は思いますので、このことはぜひしっかりと働き方実現会議の議長として胸にとどめていただきたいというふうに思います。

 そして、今総理は、三月の末までに実行計画をつくるということを言われましたけれども、もう三月末まで一カ月強しかありません。

 そういう中で、総理は、先日の十四日の日の会議の最後に御挨拶をされて、こんなことを言われています。残業時間の上限は多数決で決するものではない、そのとおりだと私も思いますけれども、とする一方で、合意形成をしていただかなければ、残念ながらこの法案は出せないということになる、こういうふうに述べられているんです。これは一体どういう意味なんでしょうか。

 私は、前回の質問でも指摘したように、この実現会議というのは、経営側の代表の方が七名で、労働側の代表は一人しか入っていない、そういう意味ではこれは多数決で決めるべきではないと思いますが、一方で、この総理の言い方というのは、合意しないならこれはもうオジャンですよ、だから法案は出せないよ、それでもいいのねと脅しているかのように私には聞こえるんです。

 これは、やはり上限規制が必要だということは、さっき言ったようにみんなコンセンサスがとれているわけです。ですから、まさか法案を出さないなんということは、私は選択肢としてはあり得ないと思うんですけれども、この発言の真意について総理にお聞きをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど、多数決はおかしいとおっしゃいましたね。ですから、まさにそうなんですよ。多数決はおかしいですから、コンセンサスをしっかりと形成していただきたい、特に労使で話し合っていただきたいということであります。

 ですから、その意味においては、反対する人が一人おられれば、残念ながら、これは当然、案は成案を得ることはできないわけであります。

 一方、労政審においても、御承知のように、ずっと議論してきたけれども結果が出ないじゃないですか。結論が出ないんですよ。だからこそ私は申し上げたんですが、労政審で議論してきたけれども残念ながら結論が出ていませんねと。だから、私が議長という責任を持つ形でこういう会をつくって議論をしていただいています。

 ですから、ぜひ合意を形成していただきたいということを申し上げる、これは当然のことであろう。むしろ、反対する人がいるけれども我々が法案を提出するといった方がこれはおかしな話であって、当然、まさに労使で合意をしていただかなければ法案は提出できないという、このことを申し上げたわけでありまして、合意形成をしていくということは、みんなで責任を分かち合っていきましょうということでございまして、でなければ、法案ができなければそれは私の責任であります、もちろん。であれば、今まで議論してきたことが水の泡に帰す、水泡と帰すわけでありますから、しっかりとそういう認識を持って議論を進めてくださいということをお願いしたところでございます。

大西(健)委員 せっかく青天井に上限をつくろうということについてはコンセンサスがあるのに、法案を出さないという選択肢があるんだと知って私はちょっとびっくりしました。

 それであるならば、我々は既に、昨年の夏以来、長時間労働規制法案というのを国会に出しているわけですから、それをベースにしっかり議論していただきたい、これを一刻も早く国会で審議していただきたいということを申し上げて、次の問題に移りたいというふうに思います。

 私も次に、午前中も山尾委員が取り上げたテロ等準備罪、共謀罪についてお聞きをしていきたいというふうに思います。

 山尾委員が午前中に取り上げた、統一見解として理事会に出されてきたものでありますけれども、もともと正当な活動を行っていた団体が性質が一変した場合には組織的犯罪集団に当たり得る、この問題について議論をしていきたいというふうに思うんです。

 さて、金田大臣、政府はこれまで、検討中の法案というのは今までの共謀罪とは全然違うんだ、それは犯罪の主体を、テロ組織であったりとか暴力団であったりとか麻薬密売組織であったりとか、そういう組織犯罪集団に限定しているので、一般の方々が対象になることはないんですよ、だから安心してください、こういう説明を繰り返してきたわけですけれども、しかし、ここで今お示しをしたように、普通の団体であっても、もともと正当な活動をしていた団体であっても、性質が一変したら組織的犯罪集団になり得るということなんですね。これはさっき総理も御答弁の中で言われていました。

 そこで、幾つかちょっと具体的なイメージを持つために私の方で例を考えてみたんですけれども、例えば、自然破壊を防ぐための基地建設反対の市民運動をやっている、これは市民運動ですから、正当な普通の活動をやっている団体。ところが、国が工事を強行しようとするので、工事車両を阻止するために座り込みを繰り返すようになった。そうすると、これを組織的威力業務妨害を目的とする組織的犯罪集団とみなすこともあり得るんじゃないか。

 あるいは、普通に労使交渉をやっている労働組合が、例えば社長の譲歩が得られるまでは社長を会議室に閉じ込めるというようなことを繰り返してやったような場合に、例えば強要を目的として組織的犯罪集団になったということもあるかもしれない。

 あるいは三つ目、実際に判例があるものでありますけれども、例えば、会員制のリゾートクラブの会員権販売会社が電話勧誘をやっていた。ところが、あるときに実質的に破綻をして、もう預託金の返済能力がないとわかりながらずっと電話勧誘を続けたということになると、これはあるときから性質が詐欺を目的とする組織的犯罪集団に一変する。これはこういう判例もあります。

 そして、先ほど総理自身は、例えばオウム真理教の話を持ち出されて、普通の宗教団体があるときその性質が一変して、そして組織的犯罪集団になると。

 でも、これは結局、誰が決めるのか。まず、金田大臣、こういう私が出したような事例について、こういう普通の団体がいろいろな形で、ここに出したような例でこういうふうに性質が一変して組織的犯罪集団に変わり得るということで、こういう理解で間違いありませんか。

金田国務大臣 大西委員の御質問にお答えします。

 テロ等準備罪、これを現在検討中でありますが、私どもは、厳格な要件を定めることによりまして一般の方々がテロ等準備罪の適用対象にならないような法案を現在検討しているわけであります。性質が一変するのは極めて限定的な場合のみであるということを申し上げたいと思います。

 テロ等準備罪における組織的犯罪集団につきましては、結合の目的が犯罪を実行することにある団体をいうとの趣旨で用いることを現在検討中でありますが、いずれにしても、条文上明確にするつもりでありますし、これに加えて、そもそも、どの団体を組織的犯罪集団と認定するかの判断は裁判所が行うものでありますし、我が国においては、裁判所による審査が機能しておりまして、捜査機関による恣意的な運用ができない仕組みになっておるのであります。

 したがって、お尋ねの点につきましては、成案を得た後、具体的な罰則の内容に基づいて説明をすべきものと考えておりますが、基本的な考え方を申し上げたわけであります。

 もう一つ、大事な点を申し上げます。

 もともと正当な活動を行っていた団体につきましては、団体の意思決定に基づいて犯罪行為を継続するようになるなど、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められるような状況に至らない限り、犯罪を行うことを目的とするものと認められることはないものと考えているのであります。

大西(健)委員 いや、決めるのは裁判所と今言われましたけれども、でも、その前段階で捜査をするんじゃないですか。ですから、私は、結局警察が決めるんじゃないかと思いますし、かつ、どこかで一変するんですけれども、どこで性質が一変するかを判断しようと思えば、その前段階からずっと監視しておかないとわからないはずなんですよ。ですから、まさに、正当な活動を行っている団体がどこかで一変するかどうかというのは、その前段階から、ふだんからメンバーの活動とかを監視する、あるいは場合によっては通信傍受をする、そういうことが行われることになるのではないかというふうに思うんです。

 逆に言えば、それを行っていなければ、どこかで一変しても、例えばこの例でいうと、たまたまある会合に来て、そのことを何にも知らない人が、実際に座り込み活動にも入らなくて、もうそこにいたということだけで後で捕まるかもしれない。でも、そうじゃなかったということを証明するためには、ではそこで何が話し合われていたかというのを実際に最初から通信傍受なり監視しないとわからないはずなんですよ。

 ですから、これはやはり、どこで性質が一変するかというのを見ようと思ったら、結局監視することにつながっていくのではないんですか。大臣、どうですか。

金田国務大臣 御質問にお答えをします。

 我が国におきましては、先ほども申し上げましたが、裁判所による審査が機能しておりまして、捜査機関によります恣意的な運用ができない仕組みになっております。そして、テロ等準備罪の捜査についても、現在行われている他の犯罪の場合と同様の方法で、刑事訴訟法の規制に従って、必要かつ適正な捜査を行うことになるわけであります。

 法案が成立しました際には、適切な運用がなされるように、捜査機関を含めて、法律の趣旨を周知してまいることは当然のことであります。

大西(健)委員 仮に裁判所が判断するにしても、その判断に当たって、その性質が一変したということを判断する材料が必要になるわけですよ。そうすると、正当な活動をしている団体を監視して、そしてそれが変わったということがわからないと、裁判所だって判断できないはずですよ。

 ですから、例えば捜査令状をとるとか、その場合に裁判所の許可をとるというような手続があるのかもしれないですけれども、結局は、一般の団体がこういう捜査の対象とか監視の対象になっていくということになっていくんじゃないかと私は思っているんです。

 次のパネルをちょっとごらんいただきたいんですけれども、これは治安維持法と共謀罪のこれまでの答弁を比較したものですけれども、例えば治安維持法についても、当時の小川法務大臣が貴族院で答弁をされている中では、無辜の民にまで及ぼすというごときことのないように十分研究考慮をいたしましたとか、実行に着手するものを罰する、決して思想にまで立ち入って圧迫するとか研究に干渉するということではないというふうに答弁していたけれども、結局は、その後、拡大解釈や法改正を許して、それが一般の市民の弾圧につながっていったということは皆さん御存じのとおりであって、私は、だから、幾ら今政府が一般の市民は対象にならないんだ、大丈夫なんだと言っても安心できないというふうに思っているんです。

 そういうおそれがある中で、これまで金田大臣のこの委員会でのしどろもどろの答弁を見ていて、私は、この先、この法案の審議を本当に金田大臣に任せていて大丈夫なのかというふうに思っているんです。

 特に、とりわけ質問封じともとられかねない文書を提出したことについては、自分の答弁能力がないことを棚に上げて質問封じを行う、私はこれは絶対に許されないことであって、そして、謝罪して撤回したからそれで済むという問題ではないというふうに思っています。

 この件については、伊吹元衆議院議長がこのように言われています。三権分立の中で内閣の一員が国会のあり方についていろいろ言うことは憲法上の問題になってくる。これは元三権の長の言葉ですから、私は重いと思うんです。

 つまり、憲法上の問題になってくる、だから、これは、取り消したとしても、憲法上問題があるようなことを言った時点でもうアウト、大臣失格だというふうに私は思うんです。

 次のパネルをごらんいただきたいんですけれども、これは週末の共同通信の世論調査です。今言った大臣が出された文書のことを含めて、法相の一連の言動についてどう思いますかということについて、国民の七割の方が問題だというふうに言われているんです。

 かつ、いろいろなものがありますけれども、例えばこれは産経新聞の社説ですけれども、「法案の成立に適任なのか」、まさに、法案の成立を図りたいんだったら金田大臣じゃだめなんじゃないですかということが言われている。あるいは、私、いろいろな新聞の投書も見てみましたけれども、この投書は朝日新聞の投書欄ですけれども、「閣僚の国会答弁が情けない」「金田勝年法相の答弁もお粗末です。」こういう国民の声が寄せられているんです。

 大臣、七割の国民が大臣の言動は問題がある、そして、これから法務省は出そうとしているということでありますけれども、大臣ではこの法案の成立は難しいんじゃないか、そして、国民の皆さんもこんな人で大丈夫かというふうに言っているんですけれども、大臣、これをどう受けとめられますか。

金田国務大臣 大西委員の御質問にお答えをいたします。

 ただいま御指摘をいただきました文書につきましては、国会に対しその審議のあり方を示唆するものと受けとめられかねないものである、そのように受けとめられかねない内容を含めまして、不適切なものとして撤回を直ちにさせていただきました。改めておわびをしたいと思います。

 その上で、国会における法案の審議につきましては、与党協議を終了しているか、成案を得ているか、あるいは国会提出後か否かにかかわらず、どのような質問も妨げるものではないものと理解をしておりますし、その上で、御質問の内容によりましては、例えば法案についてであれば、その法案検討の具体的な進捗状況に鑑みて確定的な回答をすることが困難な場合も想定されるところでございまして、そのことは御理解を賜りたい、このように思う次第であります。

 いずれにしましても、国会に対してみずからが行う施策について丁寧な説明に努めますとともに、丁寧な説明に努めるという政府の基本姿勢に立って、誠実に職務に当たってまいる所存であります。

大西(健)委員 先ほども言いましたように、伊吹元衆議院議長が憲法上の問題だと言っている、そういうことをやる法務大臣でいいのか。

 そして、法務大臣は既に死刑執行をされていますけれども、法務大臣というのは、人間の命を奪うという重い職責を担っている、負っている、そういう大臣です。それに対して、多くの国民がこんな人で本当にいいんだろうかと言っている。

 そういう状況では、私は、法務大臣としての重い職責を担うことは難しい、そして、本当にこのテロ等準備罪、成立をさせようと思うんだったら、金田大臣、潔く身を引くべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

浜田委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 民進党の辻元清美です。

 まず最初に、総理、一問お聞きしたいことがあります。

 昨日、トランプ大統領がイスラエルの首相と会談をされて、イスラエルとパレスチナの問題について、記者会見で、二国家共存と一国家を検討している、双方が望む方でいいというような発言をされました。そして、二日前のこの委員会でも議論がありましたけれども、イスラエルの首都をめぐって、テルアビブからエルサレムにということで真剣に検討している、今後どうなるか見きわめるということをおっしゃいました。

 日本の立場を私は確認しておきたいと思います。といいますのも、このパレスチナとイスラエルの問題を含めて、これは、テロの拡散であったり、今までのテロの問題と直結してくる問題だと思うんですね。

 ですから、私は、特にこの二国家共存と一国家を検討しているというような発言、これに同調するということはないと思いますけれども、ここは、明確に日本の立場を公、公式の国会で御表明いただいた方がいいと思いますので、日本は、イスラエルの首都はテルアビブ、そして二国家共存という政策をきっちり堅持していくということだと思いますので、確認させていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、イスラエルの首都はどこかということを私が述べるのは、まさにこれは内政干渉であるということは明確にしたい。どこどこであるということは当然言えないわけでありまして、日本の首都はどこだ、こうほかの国から言われたら、それはまことに変な話でございます。

 そこで、トランプ大統領の共同記者会見の発言でありますが、二国家であっても一国家であっても両者が望む形がよいと思う、両者が望む形であれば自分は非常に満足だということであります。

 そこで、確かに、委員が御指摘になったように、中東和平は非常に重要な、中東地域の平和と安定に重要な要素であり、かつ、テロとの関係においても、この平和、中東和平の実現をしていくことはテロの根絶に資する、こう思っております。

 九三年にクリントン大統領のもとでオスロ合意がなされたわけでございますが、しかし、二〇〇〇年にキャンプ・デービッドで合意をしようとしたところ、なかなかこれは、最後の段階においては合意には至らなかったわけでございます。

 その後、米国としては二国家解決を目指していくという方針をとり、そして日本を含め世界各国がその方針を支持しているわけでございまして、日本としてもその考え方には全く変わりがないわけであります。我が国としては、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決を支持する方針には変わりはないわけであります。

 米国による今後の中東和平に関する具体的施策を関心を持って注視していくわけでございますが、いずれにせよ、米国がこの中東和平において果たすべき役割は極めて重要であるわけでございます。その基本的考え方から、米国がこの和平を実現するために尽力していくことが望ましいし、我々もそうした中において私たちの役割を果たしていきたいと思います。(辻元委員「大使館は、テルアビブの」と呼ぶ)米国の大使館を……(辻元委員「いや、日本。日本はテルアビブでいいんですね」と呼ぶ)日本の大使館については、我が国としては大使館をエルサレムに変更する考えはないわけでございます。

辻元委員 この点はやはり公式に御発言をしていただいた方がいい、今後これが世界情勢に及ぼす影響が非常に大きいと思いましたので、確認をさせていただきました。

 さて、南スーダンの問題、引き続き議論をしたいと思います。

 稲田大臣、二日前も、南スーダンに派遣されている自衛隊のことについて質問いたしました。そこで、まず最初に大臣にお聞きしたいんですが、私への答弁で、毎日毎日、南スーダンの情勢について、日報のみならず、現地の情報、さまざまな情報、二十四時間以内の状況について報告を受けておりますと御答弁されました。

 昨日の日報をごらんになった、そして昨日はどんな報告を、毎日毎日見て、報告を受けておりますと前回おっしゃいましたので、昨日、どのような南スーダンの状況の説明がございましたか。

稲田国務大臣 私が委員にお答えをいたしましたのは、日報だけではなくて、日報そのものは見ていません、毎日毎日見ておりますのは、日報からいろいろなエッセンスをとって、海外の部隊からの情報そしてUNMISSからの情報、現地の報道、そういったものを含めて毎日毎日報告を受けているということでございます。

 そして、昨日も報告を受けました。それは、南スーダン全土においてさまざまな事象が起きていることについて一つ一つ報告を受けたということでございます。

辻元委員 それでは、昨日の報告ですから一昨日までの状況を報告されていると思いますが、一昨日、マシャール前副大統領が声明のような、インタビューを受けております。これが今世界を駆けめぐっております。これが一昨日です。

 きのうの報告では、その話はありましたか。どうですか。あったかないかだけお答えください。

稲田国務大臣 昨日の報告の中にその話題はなかったということでございます。

辻元委員 一昨日、マシャール副大統領がNHKの取材、ここで衝撃的なことを言っております。マシャール氏は、政府側との和平合意はもはやない以上、戦いを続けるしかないと言っています。そして、反政府勢力は今も首都ジュバの周辺に展開している、これは自衛隊が行っているジュバです、今後の状況次第では政府軍が掌握するジュバへの攻撃も辞さないと、今南アフリカに行っていますけれども、この副大統領がおとといこういう宣言じみたことを言っている。

 これはお聞きになっていないんですね。

稲田国務大臣 そういった発言は今までも何度もありますよね。インタビューも何度もやっています。

 しかし、事実は、そのマシャールさんはもう既に国外に逃亡しました。そして、マシャール派も分裂をして、その中のタバン・デンさんが今第一副大統領になっている。マシャールさんは南スーダンに帰ることすらできていない。もちろん、残存しているマシャール派もいます。しかしながら、マシャール派が、例えば紛争当事者になれるような、そういう勢力でないということは今も変わっておりません。

辻元委員 きょうの朝刊でも、国連が、南スーダン紛争、壊滅的という文書をつくっていたということが明らかになっております。

 私は、昨日、現地で活動していたNGOの人に聞き取りをいたしました。これは非常にまた緊迫するんじゃないかと。要するに、特にジュバは、今、いわゆる元副大統領派の部族が多いわけです、政府軍との間に緊張が高まってくるんじゃないかというような話もありました。

 そこで、今回、日報が破棄され、また発見された話が今出てきております。これはジャーナリストの布施祐仁さんという方が開示請求をして、そこから話が始まったんです。

 これを布施さんがなぜ開示請求したかと申しますと、南スーダンに派遣されている家族を取材していた、家族の不安の声、そして南スーダンで自衛隊がどんな活動をしているのか知りたいということで、では私が情報開示をしましょうということに至ったと本人から聞きました。

 そして、ではどんな声がありましたかと幾つか聞いてみました。

 その中に、ある陸上自衛官の息子さんが、南スーダンを含めて少年兵がいるわけですね、私服を着た民間人、そしてさらに子供の兵士が私服を着ています、その話に及んだときに、子供を殺すくらいなら撃たれる方を選ぶと言って派遣されたと。私はこの話を聞いて、胸が詰まる思いをしたんですね。

 ほかにも、高校卒業後に自衛隊に入った十八歳の方、海外派遣が怖くないと言えばうそになります、どうか駆り出されることがないように願うまでですと。これは率直な声だと思うんですよ。

 そういう中で、とにかく安全だ、安全だと。でも、報道では南スーダンの状態をいろいろごらんになっています。だから、安全だ、安心しろでは逆に不安が募ってしまうというように、そういう声も大臣もお聞きになっているかもしれません。

 そこで、私は、家族の皆さんにどのような説明をされているのか、防衛省に問い合わせをいたしました。

 これは大臣もごらんになっているかと思いますけれども、第十一次隊の要員ですから、駆けつけ警護が付与された後に御家族の皆さんに第九師団家族説明会、これは九月の十七日にあったと聞いておりますが、その説明です。

 この家族の皆さんへの説明については、大臣も以前の国会での答弁で、自分も、不正確な記述がないかどうか、資料の修正なども指示しているという答弁を参議院の方でなさっています。

 これは全部目を通していらっしゃいますね。

稲田国務大臣 まず、先ほど委員がおっしゃった中で、マシャール派の、マシャールさんの部族は南スーダンの中の北部の方なんですね。あと、北部と南部の方では今も武力衝突がかなりあります。

 そして、私は、一度も安心、安全だと言ったことはないんです。もちろん治安状況は厳しいんです。そういう厳しい中で自衛隊が派遣されていることも事実です。そして、PKO五原則が守られているか、さらには自衛隊の皆さんが、派遣された施設隊の皆さんがしっかりと自分たちの安全を確保して有意義な活動ができるかどうか、そういったところを毎日毎日報告を受けて見ているということでございます。(辻元委員「これ、これは」と呼ぶ)今おっしゃった、今いきなり示されておりますので、どの資料かわかりませんから、それについて私が今何かここでいきなり、事前に見せていただけていれば私も見ておりますけれども、今これが、これがと言われても、どんな資料を出されているのかわからないので、まず確認させてください。

辻元委員 家族への説明の資料なんです。稲田大臣は、御家族も含めて隊員の安全を守る、るる今まで答弁をされてきたんですよ。これは私も随分前に防衛省からいただいて全部見ましたから、てっきり大臣には常識かと思いました。

 今、家族に説明会が行われていることは御存じだと思いますが、大臣の御答弁の中で、南部と北部は今も、大臣の言葉で言えば衝突があるというようなお話をされました。これは家族への説明のところでは、南部と北部の衝突について、一切消えているんですよ。そして、家族への説明は、北部地域に比べて、ジュバについて、平穏であると。

 そして、大臣への説明資料という、八月に大臣が、駆けつけ警護をなさるかどうか、駆けつけ警護を決めるに当たって、そして大臣は稲田さんです、大臣にジュバの状況を説明したところのその説明には、二十一カ所、南部も北部も含めて、七月から八月にかけて戦闘がある説明をしているんです。

 そして、同じころに家族に説明している資料には、二カ所だけ北部で戦闘がある。全部抜け落ちているんですよ。衝突でもいいですよ。

 大臣に説明しているところには二十一カ所、そして御家族に説明しているところには北部の、ジュバから遠く離れたところに二カ所の戦闘。

 これには、からくりがあるんです。大臣への……(発言する者あり)では、確認してもらう。大事なことですから確認させてくださいということだから、いかがですか。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 大臣、今の件について答弁願います、見ていないなら見ていないで。どうぞ。

稲田国務大臣 まず、家族に対する説明というのは、何回も行われているんです。

 そして、今いきなり、この資料を見ましたか、そして、これが大臣のそのときの資料ですと今いきなり言われて、この場で確認できません。やはり事前に見せていただいて、それが本当にそうなのかどうなのかしっかり確認しないと、正確な答弁ができないんですね。

 なので、その点はよろしくお願いしたいと思います。

辻元委員 大臣が、毎日毎日報告を受けて、資料をしっかり見ている。これは、きのう防衛省から出てきた資料なんですよ。大臣にどんな資料で駆けつけ警護を決める前に説明しましたかということで防衛省からいただいた資料だから、特に大事だから、これを知らないとおっしゃったのは非常に驚きました。

 そして、では、もう一つお聞きしましょう。

 ここに、家族説明資料の応答要領というのがあるんですよ。この応答要領の中を見ると、例えば……(稲田国務大臣「いきなり出して」と呼ぶ)いや、毎日報告を受けていると言うから聞いているんですよ。特に、御家族の皆さんへの説明というのはとても大事だと思いますよ、どういうようにしているか。

 その中で、応答要領を見てみますと、例えば、駆けつけ警護を派遣施設の隊員が行うと、これまでの派遣より危険は増大しないのかという質問が出たら、これに対しての答えということで、駆けつけ警護においては、活動関係者の生命または身体を防護するため、武器使用が可能であり、これにより安全かつ万全を期して任務が遂行できるものと考えており、これまでの派遣より危険が増大することはありませんと応答要領に出ているわけです、駆けつけ警護について。

 そこで、家族の方からの声は、そうしたら、何で賞じゅつ金、今までのPKOでは、もしも犠牲になった場合、六千万円だったんです、死亡された場合に。しかし、駆けつけ警護を付与することによって、そこで死亡などした場合は九千万円に上げたんですよ。御家族からしたら、危険は増大されませんといいながら、賞じゅつ金は駆けつけ警護については九千万円に上がっている、これは危険な任務につかせるからじゃないんですか、そういう声があるわけです。私もそうだと思いますよ。やはり危険だからですね。

 普通の任務は六千万円だったけれども、危険だから九千万円に上げたと思いませんか。いかがですか、大臣。

稲田国務大臣 新たな任務を付与したら、それだけ足し算的に危険、リスクがふえていくというものではありません。

 また、駆けつけ警護は、今までもそういう要請があって、そして法的な根拠がない中で、自衛隊の皆さんがそれでも我が国の人々が危険に陥っているところにいろいろな規定を使って、そして駆けつけ警護という法的な根拠を与えたのが今回でございます。

 賞じゅつ金についても、今回の国際平和協力手当や賞じゅつ金の充実は、リスクの増減という観点ではなく、あくまでもいわゆる駆けつけ警護という新たな任務が付与されることに対応するものでございます。

 もちろん駆けつけ警護はリスクを伴う任務ですけれども、万が一にも邦人に不測の事態があり得る以上、あらかじめ必要な任務として、権限、まさしく法的根拠ですよね、これを付与し、事前に十分な訓練を行った上でしっかりとした体制を整えた方が、邦人の安全に資するだけでなく、自衛隊のリスクの低減に資する面もあるというふうに考えております。

辻元委員 御家族がそれで納得すると思いますか。今の説明を家族の前でするんですか。私は、駆けつけ警護をする場合はやはり危険が増大する、ですから賞じゅつ金も、あってはならないことですよ、犠牲が出たら、検討いたしました、そういうように説明した方がいいと思います。

 もう一つ、この応答要領にこういうこともあるんですね。自衛隊自身が武力紛争に巻き込まれることになるのではないか、武力紛争に巻き込まれることはないと出ております。しかし、日報を見ますと、公表された日報ですね、偶発的な戦闘の可能性は否定できず、巻き込まれに注意が必要、そしてモーニングレポートも国連兵士の巻き込まれ事案が発生、開示された日報を見ると巻き込まれにとにかく注意しろと書いてある。しかし、家族への説明の応答要領では巻き込まれはないと。

 これも、私は、それは南スーダン、先ほど申し上げましたように少年兵の話もありますよ。ですから、一人の息子や御家族を自衛隊に送っている、女性もいるんですよ。この新聞、見たことありますか。南スーダンで、自衛隊が派遣されたときの翌日の朝刊なんです。南スーダンの新聞ですよ、ジュバ・モニターという。これが一番市民に読まれている新聞なんです。この新聞にも日本の自衛隊のことが書いてあって、感謝もされているんですよ。しかし、こう書いてあります、最初は建設工事などに従事していたが、より危険な役割を負うことになるだろう。現地の人はそう見ていますよ。

 ですから、巻き込まれることはありませんと説明するのではなくて、それでも、こういう理由があるから行ってくださいと言うのが誠実な態度じゃないですか。いかがですか。

稲田国務大臣 あらゆる危険を想定して対応するのは、私は当然だというふうに思います。

 また、今、家族に対するお話がございましたけれども、従来より、派遣の前に十分な準備訓練を行った上で派遣をいたしておりますけれども、そうした海外に派遣される隊員が安心して各種任務に従事するためには、隊員の留守を預かる家族が不安を抱いたり、生活の不便を感じることがないようにすることが重要だと考えて、このため、各種の留守家族支援施策を実施いたしております。

 先ほど委員がお示しになった女性隊員、私も、訓練の視察に行ったときに、派遣される直前の女性隊員とお話をいたしました。中には、子供さんを置いて派遣される方もいらっしゃいます。皆さん、それでも南スーダンの支援のために、やはり士気高く行かれているわけであります。そういった皆さんの気持ちというものも体して、家族に対しても誠実に支援をやってまいります。

辻元委員 なぜ私が先ほどの第九師団の家族説明会のものを示したかというと、駆けつけ警護任務を付与されて、この人たちが最初に行った部隊なんです。大臣は、これは示されていないからとおっしゃるけれども、以前の国会でいろいろこのことを質問されているんですよ。そうしたら、私自身が手も入れました、そして誤解を生じないように資料の修正もさせたというような答弁を参議院でされているわけですね。ただ答弁を読んでいるだけですか。中身、これはすごく大事な問題ですよ。

 もう一点、指摘します。

 そうすると、自衛隊員の安全を守るためには、この間、教訓という話がありました。私、すごくいい活動を自衛隊はされていると思います。これは国際活動等の教訓と反映ということで、静岡県に施設をつくって、そこでいろいろな、次にPKOなどに行く人たちに対して、今までの教訓は何かという教育をしているわけなんですね。これは、自分の命だけではなく、次に行く人たちの命を守るために、隊員の命を守るために。

 見てください。資料をお配りしています。その中に「国際活動教育隊の教訓業務の流れ」、この左の端に教訓業務、要するに教育をする、その主要教訓資料源、派遣部隊の日報等とあるわけです。そして、この上に「上級・関係部隊等からのPKO等の教訓レポート、派遣部隊日報等の提供受け、」ということになっているわけです。

 日報は活用されているじゃないですか。そして、これは、日報はやはり大事だ、だからとっておこうということで、それを介して、あるんじゃないですか。そして、こういう教訓の教育に使っているということじゃないでしょうか。いかがですか。

稲田国務大臣 今委員がお示しになった陸上自衛隊中央即応集団隷下に置かれております国際活動教育隊は、国際平和協力活動に従事するに当たり、必要な知識及び技能を習得させるための基本教育や、陸上自衛隊の部隊が行う国際平和協力活動に係る錬成訓練の支援を行っております。

 これら教育訓練については、実際に派遣された部隊などの経験、教訓を踏まえ、不断に改善を図ることが必要になり、このため、国際活動協力隊は、派遣中の部隊の経験を把握し、教育訓練に反映すべき事項を研究、検討しているところでございます。

 今おっしゃった日報については、教育訓練への反映が必要となる可能性のある事象の有無を確認するために閲覧をいたしておりますが、実際に教育訓練に反映すべき事項の研究、検討は、主として、派遣要員から直接そのような事象の詳細を聞き取った上で行います。

 国際活動教育隊においては、日報は、そのような事象の有無を確認した後は不要となるため、文書として保管はしていないところでございます。

辻元委員 私は、頑張って教訓のこの業務を充実させた方がいいと思いますよ。では、この教訓業務の資料をつくるために日報をぱあっと見て、一日か二日で破棄すると言っていますから、それでばあっと破棄されるんですか。

 最後に、私、二日前に質問した折に、ほとんど答えられずに、調査いたします、どういう認識であったかということを含めて、しっかり検討、調査をしたいと思いますと八回言ったんですよ。文書が発見され開示に至った経緯、この点についての事実関係はしっかりと調査してまいりたいと考えております、開示に至るまでの事実経過についてはしっかりと検証してまいりたいと思いますと八回、私に対してその場で答えられなくて、調査する、調査するとおっしゃったんですよ。

浜田委員長 時間が来ています。

辻元委員 稲田大臣に最後にお聞きします。

 大臣みずからも調査対象であるという自覚がありますか。大臣みずからも、被害者じゃないんですよ、あなた自身も関与していたんじゃないかと言われているんですよ。ですから、第三者を入れた調査をしっかりと大臣みずからが行うべきだと思います。いかがですか。

浜田委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

稲田国務大臣 まず、この日報は、規則上廃棄する、用済み廃棄になっているものでございます。そして、廃棄により不開示とした、そういう報告を受けて、私は、これは本当にどこにあるかしっかりと捜索して、それを開示するように指示して、そして見つかって、ただ、委員が前回指摘されたように……

浜田委員長 時間が来ておりますので。

稲田国務大臣 見つかってから私に報告するまで一カ月ぐらいたった、それは私もやはりしっかりと検証して事実確認をしなければならない、そして、その教訓をまた先に生かすという意味で、私は直接さまざまな当事者から聞いているところでございます。

浜田委員長 辻元君、時間が来ております。

辻元委員 今の御説明では御家族は納得しないですよ。私は、自衛隊員や自衛隊員の家族のためにも、大臣本人も含めて調査の対象にしてしっかりここは調査をするべきだ、それができないんだったらやめた方がいいですよということを申し上げて、終わります。

浜田委員長 この際、後藤祐一君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 引き続き、南スーダンPKOに関連して、現地できょうも大変厳しい環境の中、PKO活動にいそしんでおられる自衛隊員の皆様方に敬意を表して、質問を始めたいと思います。

 まず、稲田大臣、PKO五原則に反している反していないとか、法的意味における戦闘行為とかというと非常に不毛な法律論になりかねないので、きょうは、現地の自衛隊員の安全をどう確保するか、その中で国際貢献もしっかりやっていかなきゃいけないという、バランスをどうとるかという実質論を中心にお話ししたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 ですので、PKO五原則は、今のところ国及び国に準ずる組織が南スーダンにはいないという御判断でおられますので、戦闘行為はないとか武力紛争はないですとか、そこについてはもう御見解はわかっていますので、ぜひ、きょう議論したいのは、実質的に、現地の自衛隊員がどのぐらい危険なのか、撤収しなきゃいけないのかという判断が、なかなかPKO五原則だけだと使えない基準になっちゃっているわけですね。つまり、南スーダンはどんな危険な状態であっても国に準ずる組織というのは存在しないわけだから、危険だから撤収するという判断は別の基準が必要になる。それで実は稲田大臣とは以前から御議論させていただいて、こちらのパネルをごらんいただきたいと思いますが、大臣もお手元にあると思います。

 安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難と認められる場合には撤収する。このお話は、実は民主党政権のときに、野田政権のもとでゴラン高原から撤収しました。このときは、PKO五原則は満たしている状態の中でこれと同じ判断をして、PKO五原則は満たしているけれども、憲法違反の状態にはなっていないけれども、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することは困難だと判断して撤収したんですね。

 そのときの教訓という資料が自衛隊の中にありまして、私はそれを入手いたしまして、稲田大臣に、このゴラン高原のときの撤収の御判断、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な場合には撤収するという基準で今後の南スーダンのPKOも御判断いただくということでよろしいですかという質疑をさせていただいて、大臣はそのとおりだというふうにお答えになりました。大変建設的なお答えだったと思いますし、その結果、昨年の十一月十五日、南スーダンのPKOに駆けつけ警護を付与する閣議決定文書の中にこの基準を入れていただいたわけです。

 ですから、きょうは、安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な状態になっているのか、なっていないのかということを、ぜひ、これは大臣の御判断、もちろん総理も含めた政府全体の御判断だと思いますが、これを実質的に御判断するのが稲田防衛大臣なんだということを私は一番大事なことだと思っていますので、その観点からきょうは御議論したいと思います。

 安全を確保できている状態なのかどうか、これを判断する上では、やはり現場における生の事実、この前のやりとりでも稲田大臣はおっしゃいました、その生の事実をちゃんと大臣御自身が知ることが必要だと思うんですね。そういう意味で、日報を御自身は余りごらんになっていないということでございましたけれども、現地の自衛隊の部隊がつくっている日報の中には、去年の七月に、たくさんの戦闘という言葉を使って、こういう事実が起きているという日報の報告が本国に対してなされているわけですね。

 ところが、これをベースにつくった大臣に対する報告資料、このときは稲田大臣ではありませんけれども、この中には戦闘という言葉が消えてしまう。そうしますと、現地で起きていることというのがなかなか大臣に伝わりにくくなって、先ほどの安全が確保されという基準を満たしているのか満たしていないのかということを常に防衛大臣は考えなきゃいけない中で、現地の日報に書いてあるような、戦闘があったのかなかったのかという情報が大臣に伝わりにくくなると思うんですよ。

 戦闘という言葉が入った形の日報の方が、安全が確保され有意義な活動ができるかどうかという基準に照らしたときに、撤収すべきかどうかの判断において戦闘という言葉が入った日報の方が参考になるんじゃありませんか、大臣。

稲田国務大臣 まず、委員もおわかりのように、戦闘行為があったかどうか、PKO五原則が満たされているかどうか、これはしっかり議論をしなきゃいけない。憲法上の要請から来ているものですから、ここは、武力紛争があるかどうか、国または国準、それはしっかり議論しなきゃいけない、それはおわかりだと思います。

 その上で、先ほど委員もおっしゃったように、ゴラン高原のときもPKO五原則はある。それから、南スーダンでも、二〇一四年の初めには、スーダンから南スーダンに空爆があって、キール大統領がこれは戦争だと宣言しても、民主党政権でPKO五原則は満たされていると。しかし、ゴラン高原のときもPKO五原則は満たされているけれども撤退をした。それは、まさしく委員がおっしゃった安全性を確保して有意義な活動ができるかどうか、それができないということで撤退をしたわけです。

 そして、そのことを委員との間で議論して、私もそれは大変建設的な議論でした。私はそういう議論をしたいんです、委員との間で。一般的に戦闘がどうとかじゃなくて、そういうことじゃなくて。そして、私は、結果、PKO五原則だけではなくて、自衛隊員がみずからの安全を確保しつつ有意義な活動ができることというのを今回初めて、安倍政権で初めて閣議決定で要件に入れたんです。

 なので、私は、PKO五原則が認められている、戦闘行為が法的な意味でない、だからそれでいいじゃなくて、むしろそれよりも、自衛隊員がしっかりと安全を確保できるかどうかということ、私は生の事実を見てそれを判断していくということです。生の事実がどうかであって、それをどう表現するかではないし、戦闘と表現されていても、それを私は否定するものではありません。しかし、国会で議論するときには法的な意味での戦闘行為ということと区別をすべきだということで申し上げております。

後藤(祐)委員 問題意識は非常に共通していると思うんです。PKO五原則の話はもういいじゃないですか、今大臣もおっしゃったんだから。

 だから、安全が確保され有意義な活動ができるかどうかの御判断をするに当たって、現場の生の情報が大臣に届くということが大事だ、ここまでは多分いいと思うんですね。

 その大臣に対しての情報が、できるだけちゃんと生の情報が届くようにするために、部隊の日報というのを、今までのように戦闘という言葉が入ったもので大臣に届く方が、例えばどの程度の厳しい戦闘だったのか、どのぐらい自衛隊のいるところから近くの戦闘なのかとか、あるいはどのぐらい継続しているのかとか、そういったことが大臣に日々届くことによって、撤収するかしないかという御判断になると思うんです。

 そういう意味では、日報に戦闘という言葉が入ったもので大臣に届いた方が、まあ、日報そのものでなくてもいいですよ。ただ、日報には戦闘という言葉が入っているのに、大臣報告資料だとこれが抜けちゃうような形で大臣に御説明が行っているというのは、非常に我々は心配になるんです。

 というのは、やはり国民の代表として、シビリアンコントロールの観点から、文民たる稲田大臣が大臣として自衛隊を統率されているわけじゃないですか。ですから、きちんと現場で、戦闘という言葉がどうしても気に食わないのかもしれませんが、せめて、現場でこういう言葉を使って御報告が行っているということは変えない方がいいと思うんですよ。

 ところが、私が二月九日に質疑をしたちょっと後に統合幕僚長が会見で、これは前回もやりましたけれども、戦闘という言葉は大規模衝突などに、置きかえることを強制するわけじゃないけれども、法的意味における戦闘行為に当たるようなもの以外は戦闘という言葉は使わないような指示をされたわけですよね。

 そうすると、今まで日報で戦闘という言葉が使われていたものが、ほとんどの言葉が衝突とか大規模衝突というふうに置きかえられちゃうと、大臣のところに生の事実が届かなくなっちゃうと思うんですよ。ですから、できるだけ今までのような戦闘という言葉を使った日報なりを大臣レクの資料に使っていただいて説明いただいた方が、安全が確保され有意義な活動ができるかどうかの撤収の判断が、大臣、しやすいんじゃありませんか。

稲田国務大臣 ですから、日々報告を受けております。そして、それは生の事実。ここでこういう事実があった、ここでこういう事実があった、そういう生の事実を受けております。そして、それがどういう表現でなされているか。私は、現地で日報で戦闘という言葉を使っていたとしても、それがどういう事実を指しているかということをしっかりと見ていきます。

 それから、今、統幕長のことをおっしゃいました。そして、この資料の中に、前回も言われましたけれども、今後は法的意味も含めた戦闘という言葉になるということですかということで、そういう言葉が出てきた場合、そういうことになると思います、ここだけとられていますけれども、その後にまた同じ質問をされて、これから戦闘と書いてあった場合には法的な意味での戦闘と理解してもいいわけですねという記者の問いに対して、それは違います、それは現地部隊が判断する話ではなくて、政府レベルとして判断するわけですから、幾ら彼らが法的なものを自分たちは勉強しました、これは戦闘ですと進言してきたとしても、それはストレートではありませんと。

 すなわち、統幕長は現地に戦闘という言葉を使うななんということは一切指示していないんです。私も、どんな言葉を使うかではなくて、それは表現の問題なんです。そして、国会で議論すべきは、法的な意味での戦闘行為があったか、PKO五原則が認められているかどうか、そして安全を確認して有意義な活動ができるかどうかということで、生の客観的事実はしっかりと見ていくということを委員との間で議論しているわけでございます。

後藤(祐)委員 大臣が国会でどういう言葉で言うかということを聞いているのではなくて、大臣に対して現場の情報を上げるときに、こういう部隊の日報で戦闘という言葉を使って上げた方がより正確な情報が大臣に伝わるのではありませんか、これに対して戦闘という言葉が例えば衝突なり大規模衝突なりという言葉に仮に置きかわってしまっている場合とどっちの方が大臣にとって有益な情報だと思いますかという私の質問なんです。

 もう一度お答えをいただけますか。

稲田国務大臣 どういう表現を使われているかではなくて、その表現があらわすところの事実、どんな事実が南スーダン、ジュバの近郊で行われているか、日々自衛隊がどういう活動ができているか、そしてそれを国際社会の報道ですとかいろいろな情報を総合して判断すべきだと私は考えています。

後藤(祐)委員 非常に残念なんですね。

 以前、法的意味における戦闘行為はなかったけれども一般的用語としての戦闘はあったという解釈に立てばこの問題は解決できるんじゃないんですかと私から申し上げました。

 つまり、PKO五原則違反になってしまう、憲法違反になってしまいかねない法的意味における戦闘行為はなかった。いいですよ、それで。私は、それに対してそれがおかしいとか言った覚えはないんです。

 ただ、現場で戦闘があったという言葉を日報で使っている、その一般的用語としての戦闘はあったと端的に認めて、上の方の法的意味の戦闘行為という話と一般的用語としての戦闘の話は切り離して、大臣に対してできるだけ現地の情報が伝わるようにするために一般的用語としての戦闘はあったというふうにした方が、これを素直に認めた方が大臣に対して生の情報が集まりやすいんじゃないんですかということに対してお認めにならないのは余り理解できないんですね。実は、防衛省の中の事務方の方々も、あるいは自民党の防衛大臣経験者の方々も、そこはちょっと理解に苦しむなとおっしゃっておられるんです。

 ぜひ、大臣、シビリアンコントロールの問題なんです。南スーダンの現実、生の事実が大臣に集まっていただかないと国民としては心配ですし、何より現地の自衛隊員の身の安全にかかわる話なんですよ。ぜひそこは、法的意味における戦闘行為はなかったけれども一般的用語としての戦闘はあったと。

 私、この後、これを認めたからって、戦闘行為はなかったけれども戦闘があったとはどういうことだなんて、そんなことは言いませんよ、そんなことは詰めませんって。だから、これはちゃんと切り離してできないんでしょうかね。それは詰めないですから。いかがですか、大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

稲田国務大臣 委員がそうおっしゃる気持ちは理解できますけれども、私は、何度も言っていますし、前国会でも申し上げましたように、戦闘行為というのは非常に大きな意味を持つし、そしてそれは国または国準の間で行われる紛争を指しているわけでありますから、人を殺傷し物を損傷する行為でありますので、国会で議論する場合には紛らわしい言葉を使うのではなくて、私は、やはりそこは区別して言う方が混乱しない、国民の皆さんにミスリードしないという意味でるるずっと説明をしてきているわけであります。

 ですから、現地のレポートで、日報でどう書こうか、私は、それは何ら問題にも考えていませんし、その中の客観的事実が何かということをしっかりと見ていくということでございます。

後藤(祐)委員 いや、残念ですね。ここが余り、そういう形になって、結局、現場の南スーダンの自衛官が一般的用語としての戦闘は使っちゃいけないのかなとなるということは、本当にシビリアンコントロールの観点から心配だということを申し上げて、次に日報の話に行きたいと思います。

 去年の七月の七日から十二日の日報に関して、流れを事務方から確認しました。南スーダンの派遣施設部隊が作成し、それを陸自指揮システムの現行派遣という名前の掲示板にアップロードします。そうしますと、中央即応集団、これは日本にあります、中央即応集団がこれをダウンロードして、その日報をベースに、ちょっと見にくいですが、モーニングレポートという形で、もうちょっと情報を集約したものをつくります。このモーニングレポートを中央即応集団の司令官に報告した瞬間に、日報というのは用済みになって廃棄ということになります。

 これは今まで大臣の御説明にもあって、ただ、この廃棄というのがいつなされたのかということが問題になっているわけですね。

 ただ、このとき、どこを廃棄しなきゃいけないかというと、実は三つあるんです。つまり、南スーダンの派遣施設部隊が廃棄されているのかどうか、これをアップロードした陸自指揮システムから廃棄されているのかどうか、そしてこれをダウンロードした中央即応集団で廃棄されているのかどうか。紙、データベース、電子ファイル、それぞれが廃棄されているのかどうか、これを確認する必要があるわけです。

 なお、この統合幕僚監部と書いてあるところは、この陸自指揮システムから別途ダウンロードをしていて、こっちにあったから後で発見されましたということなんですけれども。

 大臣にお伺いします。

 廃棄されていたのかどうか、そしていつ廃棄されたのかということについて、この三カ所でそれぞれ紙及び電子媒体がいつ廃棄されたのか、七月七日から十二日の日報それぞれについてお答えいただけますでしょうか。

稲田国務大臣 派遣施設隊、それからCRFすなわち中央即応集団司令部ですけれども、つくっているのは施設隊ですよね、現地の南スーダンの。そこでつくっているのが原本で、日報を中央集団に送って、そして用済みになるということでありますので、日報をつくり、中央即応集団に送り、用済みになって破棄がされたというふうに報告を受けております。

後藤(祐)委員 先週からずっとこのテーマをやっているのに、いつということに対してお答えになられないのは、これは通告もしていますし。

 これは実は、第三者も入れて調査委員会みたいなものをつくって、きちっとそれぞれのところで何があったのかということを調べていただくという御検討をされたはずで、二月十四日、大臣もそういう方向であったように伺っています。ただ、その後、与党の方々、予算委員会の与党委員の集まりでしょうかね、そこで、そんな必要はないんじゃないか、そんな調査委員会なんて要らないんじゃないかというようなお話があって沙汰やみになったというようなお話も一部報道などで流れていますが。

 ぜひ、いつ廃棄されたのかというのは国民的関心事なんです。もう相当時間がたっているのに、調査委員会、名前は何でもいいですよ、徹底的に調査する場をつくって、その結果をこの衆議院の予算案の採決より前に、この衆議院のこの予算委員会の理事会にお届けいただけるよう、委員長のお計らいをいただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

後藤(祐)委員 それで、問題は、統合幕僚監部に実はあった、発見されたということなんですが、実は全部、統合幕僚監部にあるんじゃないんですか。去年の七月七日から十二日の日報が発見されたといいますが、これは第十次隊のものです。今、第十一次隊が行っていますが、今行っている第十一次隊の日報は、どこにあるのかははっきり言いませんが、とってあると。こういう議論にもなっているのでとってあるといいます。

 第一次隊から第九次隊まで含めて、第十一次隊まで全て、まあ、多少の漏れがあるかもしれないけれども、統合幕僚監部なりどこかにとってあるんじゃありませんか、大臣。

稲田国務大臣 先ほどの答弁を少し補足しますと、派遣施設隊の日報それからCRFの日報は短期間で用済みになって、破棄される文書については規則上、破棄した期日を記録することとはされておりません。その上で申し上げれば、文書管理者である中央即応集団司令部防衛部長ないしは派遣施設隊長のもとで適切に廃棄された、破棄されたとの報告を受けております。

 その上で、今御指摘の、統幕において一次要員から第九次要員までの日報を保管しているのではないかということを、委員の御質問を受けまして確認いたしました。そして、南スーダンへの部隊派遣の開始以来、日報を電子データとして保存していることを確認したところでございます。

後藤(祐)委員 まず、前段の、いつ廃棄したかはわからないというのはやはり問題で、というのは、前回の私の質疑で、十月三日に情報公開請求がなされているんですね、それより後に廃棄したら大変問題ですから、それより前ですねと私が聞いたら、それより前だというふうに大臣はお答えになったので、ということはいつ廃棄したかというのはわかっているはず、わからなかったらその答弁はできないはずなので、何でわかったのかなというのが不思議になっちゃうわけですね。

 なので、これは、届けていただくということを理事会で御議論するので、やはり時期がいつであるかというのがわからないと、十月三日より前に廃棄されたという答弁が本当に正しいのかどうかということになるので、時期をしっかりお答えいただきたいと思います。

 その上で、統合幕僚監部に第一次隊から第九次隊までの日報が全て保存されている、これは大変大きな事実であります。

 ただ、私、現場の日報というのはきちんと保存すべきだと思います。実際、その日報の中には、水をどのぐらい使ったとか、どれだけどういう物資が残っているとか、実はこういう情報は大事なんですよ。実際、前回もやりましたけれども、病気になった方、けがでかかった方がどれだけいるか、そうすると、医薬品をどれだけ持っていかなきゃいけないか、これから先の兵たんをどうするかとかを考える上でも日報というのは絶対必要なんですよ。だから、必ず私はどこかにあると思っていたら、やはり全部あるんですよね。

 でも、だとすると問題になってくるのは、この情報公開請求が十月三日にあって、十二月二日に文書が存在しないということを理由に不開示決定をしておるんですが、統合幕僚監部はもう全部とってあることを知っていたわけですから、この不開示決定というのは、知りませんでしたという話じゃなくて、組織としてちゃんとこれをとっていたわけじゃないですか。この悪意はちょっと今までとは違ってくるんですよ、大臣。これについてどう思いますか、大臣。

稲田国務大臣 何度も申しますが、この日報自体は規則で用済み廃棄にするものであります。そして、探した範囲は、派遣部隊と中央即応集団司令部で探して、破棄されていて、ないという不開示決定をしたわけですけれども、私、その報告を聞いた瞬間に、本当にないのか、これはもしかしてほかを探せばあるんじゃないのかと言って、統幕から出てきました。

 もちろん、統幕から出てくるんだったら、もっときっちり探しておけ、探し方が不十分だというのは私はそのとおりだと思いますけれども、隠す意図はないんです。そして、見つけたら出しましょうということで、防衛省内で、私たちの中で、そして出したわけであります。したがいまして、隠蔽する意図はなかった。

 ただ、私への報告が、探せと言って見つかってから一カ月間報告がなかった、そのことは私はしっかりと今検証しておりますし、見つかったこと自体をなぜ早く上げてこなかったんだということは言っていますけれども、もともと隠蔽する意図は全くないし、隠蔽する必要もない。

 ただ、今、後藤委員がおっしゃったように、この日報は大切なもので、水がどれだけあったとかそういうものがあるので、そんな、用済み後廃棄、一年未満廃棄じゃなくてもう少し保管した方がいいんじゃないのかと、私も同じことを思いました。なので、やはり、派遣されている期間、そして帰ってきてそれがまた教訓とかに生かされる期間、適当な期間はしっかり保存するようにもう指示をしておりますし、今後の課題として、これをどのように保存するかということは検討すべきだというふうに思っています。

後藤(祐)委員 十二月十六日に大臣に説明があって、大臣から、本当はあるんじゃないかという指示をされました。そのときも、統幕はずっと前から組織として日報はずっと保存している。つまり、あることなんて知っていたんですよ、最初から、十二月十六日の大臣説明のときに。

 つまり、大臣に対して、いや、わかりませんねなんて、非常にいいかげんな説明を部下は大臣に対してしていたということじゃありませんか。実際に発見されたのは十二月二十六日、十日後ですが、具体的にどこのファイルにあるかとかいうのは若干探さなきゃいけないかもしれないけれども、統幕として組織として持っているということは、十二月十六日に大臣に説明したときに統幕は知っていたはずですよ、ある程度の責任者は。それについてどう思いますか、大臣。

稲田国務大臣 私は、私の指示で探すように、徹底的に探して見つかったら公表しろということで指示をして、見つけて、実際に公表をしております。したがいまして、隠す意図とか、わかっていたのにないと言ったとか、そういうことではないというふうに認識をしています。

後藤(祐)委員 南スーダンの現地の情報も大臣になかなか届かなくなってしまった。そして、統合幕僚監部は第一次隊から全ての日報を持っていることを知っているにもかかわらず、大臣が探してくださいと言ったら実はその場でありますよと言えるのに、その情報が大臣に残念ながら上がってこない。

 これは、やや蚊帳の外になっちゃっているんじゃないですか、大臣。その状態で、我々は、現地の自衛隊員の情報が伝わらないのはシビリアンコントロール上も大変問題だと考えます。この状態が続くのであれば、私は現地のPKOは撤収することも考えなきゃいけないと思います。

 というのは、大臣にちゃんとした情報が伝わっているのであれば先ほどの安全が確保されという基準に基づいて撤収できるかもしれませんが、情報が伝わらないのであれば現地の自衛隊員は危ないです。そういう状態なのであれば、今実際、国連なんかもだんだん危険になっているという情報もあります、撤収を考えるべきだということをお伝えして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 稲田大臣に一問だけ確認をさせていただきたいと思います。

 今の後藤委員の続きですけれども、十月三日に開示請求があったんですけれども、当然その前に削除されていたということを後藤委員の前回の質疑のときに大臣は答弁されました。先ほども後藤委員から説明があったように、これは実は、削除しようと思うと、最低三カ所で削除しなければいけませんし、紙とデータの二種類のものを削除しないと削除したことにはなりません。

 十月三日以前にそうした削除が行われ、つまり逆だったら大変ですからね。開示請求が来た後、ああ、困ったといって削除していたら大変なので、それ以前に削除したということを大臣は前回お答えになったので、その根拠を教えていただけますか。

稲田国務大臣 まず、この日報は派遣施設隊がつくっているものです。そして、この日報は、陸上自衛隊文書管理規則に言う、随時発生し、短期に目的を終えるものとして、保存期間が一年未満と整理をされています。日報の作成目的上、派遣施設隊長から中央即応集団司令官への報告が終了した時点で目的を達成したと判断し、関連法令及び規則に基づいて廃棄をしていました。

 昨年七月の衝突事案の期間中の日報についても、開示請求を受けて探索した結果、日報の作成元である派遣施設隊及び報告先の中央即応集団司令部から使用目的を達成し廃棄したとの報告に基づいて、十月三日の開示請求受領日より前に廃棄されていると申し上げたところでございます。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

玉木委員 では、大臣は確認はされていないんですね。そういう報告があったからそういうふうに言ったと。

 実は、これは何回もやりとりをさせてもらっているんですが、全部、システムなので削除ログが残ります。例えば多分、一番最初の末端の現地では、小さいノートパソコンか何かでつくったんでしょう。それでも、個別の、スタンドアローンのパソコンでもきちんと確認できますけれども、システムは、まさに機微な情報を扱う自衛隊・防衛省のシステムですから、誰がアクセスしたのか、いつアップロードしたのか、そしていつ削除したのかは必ずログの記録が残ります。ですから、それを確認して、大臣がおっしゃったものをきちんと証明してもらいたいということをずっと事務方にもお願いしていたんですけれども、今に至るまでそれは出てこないんです。

 なので、なぜ大臣があのとき、十月三日の開示請求の前に必ず、確実に削除されていたんだ、データと文書と両方ですね、そのことの根拠を教えてほしいということでお伺いしたんですけれども、今お答えになられなかったんですが、今の時点では根拠がないのでこれから調べるということですか。

稲田国務大臣 まず、御指摘の陸上自衛隊の指揮システムですけれども、これは、指揮官の迅速的確な指揮統制を目的として、各種事態対応において陸上自衛隊の運用の中心となる指揮統制システムです。

 日報は、同システムの上の掲示板に掲載されていますが、同掲示板は、ログのデータ量が膨大になることから、ログを記録する仕様にはなっておりません。

 そして、先ほど来委員が御指摘の、ではどうやって確認したんですかというのは、私は、報告を、破棄をした、破棄をしていい文書ですから破棄をしたというふうに確認した。しかしながら、その報告を受けてすぐに、やはりもう一回探して出すべきなんじゃないのかといって、私たちで探して統幕から公表しているんです。なので、隠蔽をする意図というのは全くないということでございます。

玉木委員 いや、そういうことは聞いていなくて、最初に大臣が考えた直観はまさに正しいんです。私たちも今思っているのは同じで、本当に消えているのかなと。我々も、確かに、いろいろ文書をつくったり画像データを入れたものなんかは、パソコンが重くなって、削除しないと次が入らないので時々削除しますけれども、ただ、そのすぐ翌日に、今どきデータを削除しながら新しいのをアップデートしていくことはしないと思うんですね。だから、まだ残っているんじゃないかなと思うのが自然な感覚。それは大臣が最初にお持ちになった感覚。だから調べてほしいと。

 指揮システムはそういうふうになっていないと言いますけれども、本当ですかね。私は、そんな甘いデータ管理のシステムを防衛省・自衛隊が使っているとはとても思えないので、ですから、きょうは多分、これは水かけ論になりますから、先ほど言ったように、きちんと整理をして、この衆議院の予算の審議が終わるまでに調査結果を出していただくことをお願い申し上げたいと思います。

 もう稲田大臣、結構ですから。

 それでは、北朝鮮のことを聞きたいと思います。

 安倍総理、日米首脳会談、お疲れさまでした。グッドスタートだったと思いますし、ゴルフについてもいろいろ言う方はいらっしゃると思いますが、お互いの性格を知る上ではゴルフは大事なので、私はよかったと思っています。

 そんな中で、首脳会談ですが、拉致問題については議論はありましたか。

安倍内閣総理大臣 拉致問題については、もちろん大統領との間においてお話をさせていただいておりますし、北朝鮮の問題を話すときに、日本の課題として当然拉致問題があるということについては既にお話をしているところであります。

 その結果、共同声明にしっかりとこの拉致問題の解決についての認識が確認された、拉致問題の早期解決の重要性について確認したということを入れ込むことができたということでございます。

玉木委員 続いて、ちょっと資料の一を見ていただきたいんですが、一部アメリカのメディアなんかで、これはゴルフの後ですね、総理、北朝鮮のミサイルが発射された後、直後だと思いますけれども、ディナーをされているんですけれども、一般人がこうした様子をSNSに投稿されているんですね。

 総理がまさに一度お話があったハグをしたかされたか、ナンシー・ペロシ院内総務も、彼女はトランプさんに向かって危機管理意識が極めて低いというようなことを厳しく批判しておりますけれども、ただ、我が国にとっても北朝鮮の我が国に対するミサイル発射という安全保障の機微に触れる情報がこうしたオープンな場で議論をされるということは、我が国のセキュリティー上も問題ではないかなと思うんです。

 総理、こういうやはりオープンな場で北朝鮮の議論をされたんですか。

安倍内閣総理大臣 玉木委員も、これは、「国家機密に関わる話を一般人の目の前で!?」と、クオーテーションマークとともにクエスチョンマークを付されております。まさにそうした話は当然しておりません。

 ミサイルの発射にかかわる話につきましては、まず、当時はフリンさんがおられましたので、フリン安全保障担当補佐官から私に同行しておりました谷内NSC局長に詳細な説明が、アメリカが持っている情報等についての説明があり、ここで我々は情報の交換と認識を同じゅうしたわけですが、その結果について私は谷内さんから報告を受けたところであります。アメリカと日本のミサイル発射に対する認識あるいは情報等の交換の結果について私は谷内さんから話を受け、そしてまたフリン氏はその話の結果を大統領に伝えているわけでございます。

 そして、私と大統領との間においては、この問題についてはいわば二人だけの場で話をしているわけでございます。

 ここで話しているのは、私はその後、ぶら下がりの会見をするということを決めておりましたが、ぶら下がりから会見に変えるということを決めまして、それを米側というか大統領に伝えたところ、大統領側から、では自分もそれに立ち会うということをオファーされまして、そもそも記者が泊まっているホテルでやる予定だったんですが、それを、我々が泊まっているというか大統領の所有しているリゾート施設でやる、ぜひそれは変更してもらいたいということが米側からございました。

 これは結構大変なことでございまして、そこに入る上においてはセキュリティー上のチェックが果たしてできるかどうかということもありまして、私はちょっとそう簡単にいかないですよという話をいたしましたら、大統領が米側のシークレットサービス等との調整をしているところであり、私を囲んでいるところは、事務方が考えた私のそのときの発言案でありまして、それはまさに私がどう発言するかということについてでございますから機密情報ではないわけでありまして、どういうふうに意思を国民や世界やあるいは北朝鮮に伝えるかということについての相談をしていたわけでございます。そこでまとまったところを私がその後の記者会見で発言したということでございまして、機密については一切ここでは話をしていない、これは常識だろう、このように思います。

玉木委員 ミサイル発射の一報を聞いて、こういうオープンな場、オープンな場はオープンな場だったんですよね、総理。これはいろいろな人が、むしろ書き込みをされている方が、オープンな場で、何かスタンディングオベーションで迎えられたようなことも書いていますね。ですから、かなりオープンな場での議論だったと思うんですが、あの一報があった後、このオープンな場で食事を続けること自体の危機意識のことについて、私はやはりこれは少し問題だったのではないかなというのと、これは写真を撮られているので、この写真がピストルだったら撃たれていますよね。だから、そういうことの管理がアメリカ側で本当に、これは総理の身の危険を心配して私は申し上げているんです。その意味で、本当に。

 それで、SCIFという施設がありますね。これは、国家機密を遮蔽された空間で話をする。盗聴とかハッキングを防止するための、これはオバマさんはよく使っていましたけれども、そこでしか話してはいけないというルールがアメリカにはありますよね。

 ですから、そのSCIFの中で、例えばそこに行って一緒に話そうとか、そういうことを総理が言っていれば、多分、物すごく信頼のある、G7の中でもさすが先輩のリーダーだということで信頼を得られたのではないかなと思うので、いろいろなことを、総理がこれから言うべきことは言うということですから、こういうことについても、こういう話は我が国の安全保障にもかかわるので、ちょっとこんなところではやめましょうというようなことを言ってはどうかなと思いました。

 それで、谷内NSC局長などもいらっしゃったので、私は、もう少しセキュリティーに配慮した対応があってもよかったのではないかなというふうに思います。

 もう一点伺いますが、金正男の暗殺が報じられておりますし、まさにミサイル発射ですが、今回、SLBMから改良したコールドローンチ、かつ、固形燃料に変えているということと、総理もこの前おっしゃったTELという移動式の発射台ということで、なかなかディテクトするのが、探査するのが難しい。私、これはかなり脅威だと思います。

 そういう中で、この金正男とその暗殺がどうかかわっているかは別として、北朝鮮情勢というのはかなり緊迫してきているんじゃないか、緊張感を持って見なければいけない状況になっているのかなと思います。

 そこで、日韓関係です。

 例の釜山の総領事館の、まあ、私もけしからぬと思いますが、ただ他方で、これはどこで拳をおろすのか、あるいは事態の打開をしていくのかというのは、難しい状況になっていると思いますね。要は、大使をいつ帰任させるのか、総領事をいつ帰任させるのかということで、今ほど日米韓の連携が不可欠なときはなくなっていると思います。

 外相会談が行われたのはすばらしいと思いますが、その意味で、総理、大使がずっといない、総領事もいないこういう状況、対北朝鮮を考えても私は余りよろしくないと思います。なかなか難しい判断だと思いますが、これはどうやって事態を打開していくおつもりですか。

安倍内閣総理大臣 最初ちょっとお話があったSCIF、機密情報管理施設というのが、我々が宿泊をしておりましたマーラ・ラゴについては存在しているわけでございまして、この中で私とトランプ大統領が話したかどうかということについてはお答えを控えさせていただきたいと思いますが、安全については、これは相当セキュリティーが厳しくて、例えば萩生田副長官ですらこのマーラ・ラゴに入ることについては、日米のやりとりを相当しなければ中に入れないということでございまして、そこにおられる方々は相当厳重なセキュリティーチェックを受けた方しかいなかったということは申し添えておきたい。これは、米国側の名誉のためですから、申し上げておきたいと思います。

 その上で、ただいまの御質問でございますが、現在、大使が帰国をしているという状況にあるわけでございます。

 我々といたしましては、まず、慰安婦合意につきましては、我々は果たすべき責任を果たしているわけでありまして、この後、いわば韓国側において責任を果たしていただきたい、こう思っているわけでございますが、私たちの思いとしては、責任を果たすという中において、さらに釜山の総領事館の前に建てられるということについては、私たちとしては韓国側の善処を求めるというのは当然ではないか、こういうことでございます。

 他方、金正男の殺害については、韓国を初めとする関係国と緊密に連携しながら情報収集、分析を行っておりまして、北朝鮮による弾道ミサイル発射に対しては、日米韓で緊密に連携して対応しているわけであります。

 この韓国大使の帰任時期につきましては、韓国大使は帰任をしておりますが、ミサイル発射に対応する体制としては、我々は緊密に連携しておりますので問題は生じていないというふうに承知をしておりますが、駐韓大使の帰任時期については総合的に判断をしていきたい、このように考えております。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

玉木委員 非常に難しい政治的な判断だとは思いますが、ここは戦略的に考えていく時期だと思いますので、ある意味こういったことも踏まえながら時期を探っていただきたいと思います。

 次に、天下りのことを聞きます。

 前回、集中審議で議論をさせてもらいましたけれども、早稲田大学に対する違法なあっせんを伴う天下りということが問題になりましたが、その後、今度は慶応大学にもそうした違法な疑いのある天下りについての報道がございます。かつ、報道によると、昨年の三月に退職した元幹部が二カ月後に慶応大学の参事に就任し、前回もお越しをいただきました嶋貫さんやあるいは前川前事務次官、当時の人事課長もこれを了承していたという報道がございます。これは事実でしょうか。

松野国務大臣 文部科学省を退職した元職員が学校法人慶応義塾に再就職していることは承知をしております。

 平成二十年十二月三十一日以降に再就職をした文科省退職者全員について今現在調査を行っているところでありますから、この元職員が慶応義塾に再就職した経緯につきましては、弁護士等の有識者を中心とした調査班において関係者のヒアリングを含め徹底した調査を行っているところであり、御指摘の点につきましてもこの調査の中で明らかにし、公表していきたいと考えております。

玉木委員 報道もされているのに、大臣、のんき過ぎますよ。本当に調査する気があるのかないのか、これは疑わざるを得ませんね。

 名前は控えますけれども、元高等教育局にもおられた方ということだと思いますが、では、きょうは、お忙しい中、お三人の方にもお越しをいただいていますので、こういう報道がありますけれども、こうしたことに関与していた、知っていた、これはどうですか、事実関係を端的にお答えいただきたいと思います。知っていたか知っていないか、関与したかしないのか。嶋貫さん、いかがですか。

嶋貫参考人 私の承知している範囲のお話をさせていただきますが、大学の方から人材を紹介いただきたいということで御依頼いただきまして、その後、私なりの判断である人物を御紹介したことは事実でございます。

玉木委員 前川参考人、いかがでしょうか。

前川参考人 私の知る範囲での御答弁になりますので、事実関係全体につきましては調査を待っていただきたいと思いますが、当該人物につきまして、嶋貫さんが慶応大学との間でその人物の紹介をしている、そういう方向であるということにつきましては、事実として、報告を受けたという記憶はございます。

玉木委員 報告を受けたということですね。

 当時の人事課長だった藤江参考人。

藤江参考人 御質問の件につきましては、報道にありました元職員につきまして、嶋貫氏が再就職先として慶応大学を考えているということを人事課職員から報告を受けたという事実はございます。

玉木委員 ということは、やはりこれもまた組織ぐるみの案件ですね。

 監視委員会の報告書の中には、これは多分二十九番目の案件なんですが、二十九番目の案件というのは、必要なところだけマスキングするんじゃなくて、全部隠している案件です。大臣、これは本当に真面目に調査をやっていますか。

 伺います。資料の三を見てください。

 これは、私のところに、文部科学省の未来を憂う職員有志という名前で、ある書類が送られてきました。何かというと、これは文科省の中で調査をしている調査票が送られてきたんですね。これは真正のものかどうかわかりませんから、どうなのかなと思っていましたが、きのう、現に使っているものを出していただいたので、比べました。全く同じでした。

 これは何も書いてありませんでした。ただ、あるところに黄色のマーカーが引かれていました。何かというと、こういうことが書いてありました。とにかく、違法行為があった人は自己申告してください、あるいは、そういった違法な行為を他の職員が行っていることを見たり聞いたりしたことがある人は出してください、こういうことが書いてあります。しかし、その後です、括弧書きがあります。ある場合は、そのことの証明できるものが必要ですと書いてあります。加えて、仮に虚偽の回答が判明した場合、懲戒処分等の量定に影響が出るおそれがありますというおどしめいたことも書いてある。

 大臣、こんなことを出しても何も出てこないんじゃないですか。なぜ証明を求めるのですか、お答えください。

松野国務大臣 今回の全職員調査の調査票に関しましては、外部有識者の法律やコンプライアンス等の専門的知見に基づいた御指導のもとに作成をし、再就職等監視委員会への報告も行った上でこのような記載にしたところであります。

 全職員調査につきましては、今回の事案を受けて、まずは、現職の職員が国家公務員法における再就職等規制に違反する行為を行ったことがあるか否かについて正直かつ真摯に回答していただくことを期待したものであります。

 他の職員が国家公務員法における再就職等規制に違反していることについては、それを証明するためには最終的には客観的な証拠が必要となることから、外部有識者の指導のもとにこのような記載にしたところであります。

 具体的な調査状況については、今精査をしているところでございますから、しっかりと公表していきたいと考えております。

玉木委員 大臣、こんなことで出てくると思いますか、本当に。上がってきたときに、これではとても、要は萎縮効果満点の調査依頼ですよね。こんなことで本当のことはとても言えないと思うんです。

 しかも、実はこれは各部局でまとめてから上げろということになっているので、例えば何々局、何々局の総務課なりが集めるので、まずそこでチェックが働くと思いますね、そういう上げ方だと。

 ですから、やはり本当にきちんとした、私、実は一つの希望を感じたのは、これではおかしいと思う文科省職員がいるということですよ。プライドを持って働いている多くの、これは文科省だけではありません、霞が関の優秀な役人の方はいっぱいいますよ。でも、これだと本当の意味での信頼回復につながらないということで送ってこられたんだと思います。

 ですから、大臣、そのことを受けとめて、もう一度これはやり直してください。そして、真実を明らかにしない限り、この予算の審議を閉じることはできませんよ。

 ちなみに、違法だと既に認定された九件のうち、来年度予算が行く可能性のある法人はその中で何件ありますか。

松野国務大臣 先ほどの、虚偽の回答が判明した場合、懲戒処分等の量定に影響が出るおそれがありますというのは、これは、職員みずからの再就職等違反の有無について自己申告する際に、そういったこともあるので誠実に答えてほしいという趣旨でございまして、この記載によってむしろ職員の自己申告が促進されるものと考えております。

 お尋ねの、監視委員会から指摘がありました九件の事案のうち、今年度の予算計上について関係がある……(玉木委員「来年度」と呼ぶ)失礼いたしました、来年度の計上に、支出の可能性があるものは、九件のうち五件でございます。

玉木委員 やはり、今回違法だと認定された案件の中に来年度予算にかかわるものが少なくとも五件はあると、今大臣、認められたんですよ。

 そして、次の四、五をちょっと見てもらいたいんですが、これは後藤委員からもありましたけれども、やはり、予算をふやすために適任者を紹介してほしい。これは、一部文科省に聞きましたけれども、病院での研究予算をふやすために、科学研究費を申請できる機構となるためのアドバイザーを、まあ、予算をふやすために人が欲しいと言っているわけですね。

 もう一つ。天下りを受け入れた側は関係ないから予算支出をそのままさせてくれという話が来たんですが、ただ、これを見てください、二十四の案件、何とかである何とか氏(文科省OB)の働きが悪いため、後任を派遣してほしいと依頼を受けた。どういう働きを期待しているんでしょうね、これは。受け取る側も含めて、一体となって違法行為に関与しているんじゃないか。しかも、国の予算、国民の税金が使われる可能性があるということですね。これはやはり全容を明らかにしてじゃないと、予算の審議を終局するわけにはいかないと思います。

 次に、山本大臣にお伺いします。

 文科省だけでこれですね。全省調査をやっています、文科省に加えて。全省調査については、何と、どういう調査をしているかの調査票さえ出してもらえません。まともにやっていますか、調査は。

山本(幸)国務大臣 今般の文部科学省事案で生じた国民の疑念を払拭するため、安倍内閣総理大臣から私に対し、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示がございました。

 調査は、各省任せではなく、内閣人事局に外部の弁護士を含む再就職徹底調査チームを立ち上げ、直接実施しているところであります。

 具体的な調査内容、調査対象者、調査方法については、調査対象者に不適切な対策をさせないため、お答えを差し控えたいと思います。大事なことはしっかりとした調査を厳正に行うことであり、最初からスケジュールありきではなく、徹底的に調査を行ってまいりたいと思います。

 いずれにしても、調査結果が出次第、速やかに結果を明らかにしていくことが重要であり、私の指揮のもと、スピード感を持って進めてまいりたいと思います。

玉木委員 大臣はずっと答弁を読んでおられますけれども、そうではなくて、私、だから文科省の調査を出したんです。やはりどういう調査が行われているのかという調査の対象、やり方を見ないと本当に有益な調査ができているのかがわからないので、やはりきちんとそこはお示ししてほしいと言ったわけですね。

 ちょっと時間がないので、総理、最後にお伺いします。

 今の全省調査で本当にいいと思いますか。特に、前回総理はお答えになっているんですが、期限を切らずにやると言っているんです。でも、私、これは間違っていると思っています。

 実は、企業等不祥事における第三者委員会ガイドラインというのを日弁連が出しています。これはいろいろなところに使えと言っているんですが、公的機関も使いなさいと言っている中で、第三者とは一体何なんだという指針があって、それは、調査スコープ、つまり対象者ですね、加えて調査結果を開示する時期を事前に明示することが第三者性の重要な要素だと言っているんです。何でかというと、時間的猶予を与えてしまうと客観的な調査ができないということでありますから、総理、これはもう一回、期限を区切って、少なくともこの予算の審議をやっている間に中間報告を出せと総理から指示いただけませんか。

浜田委員長 安倍内閣総理大臣、時間が来ております、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 いわば行政の信頼を回復するためにも、しっかりとした徹底した調査を山本大臣のもとで行っていく考えでございます。

玉木委員 終わります。

浜田委員長 この際、福島伸享君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享でございます。

 予算委員会の審議というのは、国政の基本的な方針を議論するとともに、国民の皆さんからいただいた税金の使われ方、それは今、玉木委員が議論いたしました天下りの問題、権力によってそうした予算の使われ方がゆがめられていないかという問題、そして、きょうは私は、国民の税金で形成された国有財産のその扱われ方、このことについて議論させていただきたいと思います。

 ここ数日、大阪の私立小学校の建設のための国有地の売却について議論されております。その経緯について、若干最初に触れたいと思います。

 この土地は、昭和四十九年の三月、伊丹空港周辺の騒音対策の区域の用地として指定をされ、国が買い入れたものであります。その後、飛行機の性能なども上がりまして、平成元年、豊中市野田周辺の騒音対策区域の解除がなされまして、平成五年、行政財産から普通財産化をして、将来の売却ができるような状況にしたということであります。

 それに伴って、国土交通省大阪航空局の方で調査をしたところ、地下に構造物や土壌の汚染がある、鉛とか砒素、廃材、コンクリートがら、こうしたものがあることが発覚をしたという状況でございます。

 しかし、これを取り除けば普通に使えるわけでありますから、平成二十三年七月ごろには、ある学校法人が七億円ぐらいで買いたいと財務局に提示をしたんですが、このときは交渉が折り合わず断念。その後、航空局は近畿財務局に、この用地を売るためのお手伝いをしてくれ、手続を進めてくれということで依頼いたしまして、平成二十五年の九月二日、学校法人森友学園が近畿財務局に取得等要望書を提出した、こうした経緯でございます。

 これは、何でこの問題が報道される発端になったかというと、ほかの随意契約で売り渡された土地は、幾らで誰に売ったというのが明示されているんですけれども、これだけ、幾らで売ったというのが空白になって明示されていなかったんですね。それはなぜかということからこの問題が始まっております。

 私も、この問題は、さまざま役所の方を呼んでお話をお伺いしましたけれども、皆さん本当に苦渋の、渋い顔をして説明されまして、私も役人をやっていましたのである程度気持ちはわかるような気もするんですけれども、何か特別な、法令やそうした決まりを超えた特別な力が働いてやっているんじゃないかなと思わせるような説明をしていただいております。

 これでございますけれども、この土地は、学校をつくるときは原則として校舎や校地を所有しなければならないんですが、貸し付けで、借りたいということでこの森友学園は申請することになります。

 平成二十七年の二月十日、国有財産近畿地方審議会で、さまざまな議論があって、異論も出たんですけれども、附帯条件が付されて、それが満たされる前提としてこの審議会として了承するということで、近畿財務局において、将来的に買い受け特約を付した十年間の有償貸付契約というのを結ぶことになります。このときに、この土地の時価は九億三千二百万と算定されましたので、それを十年間で割って月額二百二十七万五千円の賃料で貸し付けを行ったということであります。

 これはまず、何でこれを貸し付けにしたのかというのが一つの論点でありますけれども、これまでの事実関係はこれでよろしいでしょうか、財務省。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係についてはそのとおりでございます。

福島委員 先ほど申し上げました九億三千二百万円というお金は、土壌汚染があるということを前提に算定された値段であります。これを取れば、将来、土地の値段が上がります。上がりますから、この除去をやった後に、森友学園がこのごみを除去すれば、それにかかった費用は、ここの四月六日のところにありますけれども、後ほど有益費として森友学園に戻るという契約を結んでおりまして、この契約に基づいて、森友学園はごみの除去を行い、それにかかった一億三千百七十六万円というものを財務省の方からいただいているということでございます。

 ところが、ここで事態が急変するのは、平成二十八年三月十一日です。森友学園から近畿財務局に対して、くい打ち工事、基礎を打つためのくい打ちをするときに、地下の九・九メートルの深いところで新たな地下埋設物が発見されたと連絡を受けます。それで三日後に、近畿財務局、大阪航空局及び現地関係者が現地確認を実施して、そのすぐ後、十日後に、森友学園から近畿財務局に本地を購入したいという連絡があります。

 これは、素人目で見ると、直観的に普通の人から見ると非常に不思議なのは、よりごみが残っているんだから買おうと思わないにもかかわらず、すぐ、では買いますと言うんですね。そして、どうなったかというと、結局売買契約を結ぶんですが、最後の六月二十日のところでありますけれども、学校法人森友学園と売買契約を締結して、その値段は一億三千四百万円であった。

 最初、九億三千二百万円と不動産鑑定で評価されていたものが、一億三千四百万円と八億円もディスカウントされてしまったのはなぜなのかということなんですが、その八億円が、この四月十四日、大阪航空局から近畿財務局に地下埋設物の撤去、処分費用の見積もり八億千九百万円を報告ということで、このごみを取るのに八億千九百万円かかるから、実際の値段の九億円から八億円を引いて約一億円で売りましょうという売買契約を行ったというのが事のてんまつです。

 これを、値段でもう一度ちょっとこちらで見てみますと、最初、九億三千二百万円です。それから、最初の、浅いところに埋まったごみを一億三千百七十六万円で取れば、ちょっと値段が上がって九億五千六百万円という価値の土地になります。その後、さらに新たな埋設物が見つかったから、八億千九百万円分、その除去費用を差っ引いた一億三千四百万円で売り渡したということですが、そもそも、八億千九百万円もかかって除去するごみがどんなものだというのは、どなたがどのように確認したんでしょうか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がおっしゃいましたように、三月十一日に、森友学園が学校の建設工事をやっている最中に新たな地下埋設物が見つかりまして、そこにさまざまなごみ等が発見されたわけですが、三月十四日に、私どもの近畿財務局、それから国土交通省の大阪航空局及び現場の方々と一緒に現地を確認したわけでございます。

福島委員 何が埋まっていたんでしょうか。さまざまと言ったけれども、何ですか。何がどのような状況で埋まっていたんですか。

佐川政府参考人 本件に関しましては大阪航空局の方で全体の見積もりはしておりますが、その時点で新たに見つかったものとしては、廃材、プラスチックあるいは生活ごみ等々でございます。

福島委員 それは、有毒で有害な土壌を除去するための法律の対象になるようなものだったのでしょうか。

佐川政府参考人 ちょっとその有害関係の法律についてはつまびらかではございませんけれども、今言ったようなものが埋設物として発見されたということでございます。

福島委員 これは、最初の一億三千百七十六万円の部分は、鉛とか砒素の有害なものだからこそ、法的に除去しなきゃならないものだから国が負担をして取ったんですよ。有害じゃないかわからないようなものの費用負担をなぜ国がやるということを決めたんですか。お答えください。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 そもそもこの経緯は、委員御承知のとおり、貸付契約を結んでおりまして、国と法人の間で学校を建てるという用途指定のもとでの貸付契約でございました。それをもとに学校法人は建設をしていたわけでございますが、その途中で見つかったのが今のお話でございます。

 いずれにしましても、見つかったのは二十八年三月でございまして、本学校は、翌年、一年後の二十九年四月には開校予定ということで、そういう意味では開校が切迫していた時期でございます。そういう意味では、大量に深いところから見つかったごみを何としても早く取りたいということでございまして、大阪航空局と議論をいたしまして、これは国が撤去するという方法もあったかもしれませんが、それは入札等々で相当時間がかかる制度でございます。そういう意味では、先方から、早く学校を開校したい、したがって、深い埋設物は自分で撤去して早く開校したいという御意向でございましたので、もともとこの貸付契約には売買予約契約書が同日に結んでございますので、先方が買い取りの意思を示せばその場で買い取りに移行する、こういうことでございます。

福島委員 いや、八億も値引きしているということは、本当にそれは除去が必要なのかどうかを精査するのは国の役割じゃないですか。皆さんの財産じゃないんですよ、国民の税金で買った国有財産を、安全か危険かも判断しないで、向こうの言い値でやるというのはおかしいじゃないですか。

 これは、八億一千九百万円の根拠は、一万二千二百立米の残土を搬出して、そのかわりにきれいな土を一万一千百立米入れるとなっているんですよ。それをやると、ダンプカー四千台分ぐらいです。四千台のダンプカーが行き交いすれば、当然やっていることはわかりますけれども、実際に工事をやったかどうかは確認されておりますか。

佐川政府参考人 今委員おっしゃられました八億の話は、大阪航空局が、専門的知識に基づきまして、工事積算基準というのを持っておりますので、それで計算をしているところでございます。

 それと、実際に確認したかどうかでございますが、私ども、国有地を売る場合は時価で売るというのが基本でございます。したがいまして、不動産鑑定士に更地の価格を鑑定していただきまして、そこから大阪航空局が積算した埋設の撤去費用を差し引くというのがいわゆる時価でございますので、適正な価格で売っているということでございます。

福島委員 いや、不動産鑑定士が出した時価は九億五千六百万円なんですよ。それで、普通、ごみが埋まっていたときのものも含めて不動産鑑定士は値段を出すんです、その土地自体の。今回はそれをやらないで、八億一千九百万は国交省が見積もったものですよ。しかも、今聞く限り搬出しているかどうかもチェックしていないといったら、八億一千九百万円のお金をそのまま利益供与したのと一緒じゃないですか。だからこそ、この取引は怪しいということを言っているわけですよ。

 学校設置の認可の話も怪しい問題があります。

 平成二十六年の八月二十日に、設置計画書というものが森友学園から大阪府に提出をされております。そして、一回、十二月十八日に大阪府私立学校審議会で十二月定例会が開かれたんですが、このときに、設置認可は普通は大体一回でおりるときが多いんです、大部分なんですけれども、答申を保留し、継続審議というふうになっております。

 そのときの議事録は資料としてつけさせていただいております。資料の六というものがそのときの議事録であるわけでありますが、一番上が答申、六の二というのが十二月定例会の議事の内容ですけれども、申請内容等において確認すべき点があるため継続案件とする、臨時の審議会で審議をすると。一回却下されて、わずか一カ月後に臨時会というのが開かれている。これもめったに開かれることはありません。わざわざ開かれて、条件を付し認可適当と認めるという答申が出されました。

 そこで付されている条件というのがこの六の一という資料でありまして、この二パラグラフ目に、小学校建設に係る工事請負契約の締結状況、寄附金の受け入れ状況、詳細なカリキュラム及び入学志願者の出願状況、開校に向けた進捗状況。つまり、これを見る限り、何の準備もほとんど進んでいないわけですよ。資金の計画も、工事も、そうしたカリキュラムも決まっていない段階で認可を出したんですね。

 学校の設置というのは、先ほども申しましたように、原則、校地や校舎を自己所有するのが原則だというふうに思います。これは小学校でありますから、自治事務で、大阪府の設置の認可でありまして、その大阪府の基準では、「校地、校舎その他の施設は、自己所有であること。」と明確に規定されています。ただ、例外として、借地の上に校舎がないこと、校舎の部分の土地だけは自分で持つことということが基準であるんですが、この森友学園の場合は借地の上に校舎がありますから、この基準に照らしてもおかしいんですね。

 大阪府のこの認可というのは、そもそもこの大阪府の認可基準に照らしても認可するのはおかしいと思いませんか、文科省。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 お話しのとおり、本件につきましては、大阪府知事が認可権限を有しているものでございます。それは大阪府の認可基準に基づいて審査をするわけでございますけれども、その中には、校地は自己所有であること、一方で、これにかかわらず、教育上支障がなく、かつ、次の基準を満たす場合に限りということで、以下……(福島委員「短目にお願いします」と呼ぶ)ございます。失礼いたしました。

 それで、本件につきまして大阪府に確認をいたしましたところ、設置認可適当という答申を出す際には、申請の段階で、現に土地の所有または借用が行われているか、あるいは相当程度の確実性を持って土地を所有または借用できる見込みが求められるということでございます。御指摘の点につきましては、土地の買い受けないしは借用を予定している相手方が国であり、森友学園のみが近畿財務局に対して国有財産の取得要望の申請を行っている事実が確認されたこと等をもって判断したものというふうに伺っておるところでございます。

福島委員 いや、おかしいと思いますよ。これを見てください。まだこの段階では貸し借りの契約は一切結んでいないんですよ。審議会も開かれていないんですよ。しかも、審議会が開かれれば無条件で認められるんだったら、審議会なんてそもそも必要ないじゃないですか。普通は、審議会を開いて、貸し借りの契約を結んだ上で設置の認可が出るのが当たり前じゃないですか。そうじゃないというのは、何か裏で怪しい力が働いたんじゃないかと思うんですよ。

 そこで、この大阪の例はあえて聞きません。私立大学は文部科学省の認可だと思います。松野文部科学大臣、土地の所有もしていなければ、賃借の契約もしていないような人が大学設置の認可申請を出してきたら、文部科学省はそれに認可をおろすことはできますか。

松野国務大臣 大学の設置認可申請につきましては、審査基準に基づき、大学設置・学校法人審議会による専門的な判断を踏まえ、認可を行っているところであります。

 この審査基準におきまして、校地は、申請時において申請者の自己所有であり、かつ、負担つきでないこと、抵当権が設定されていないことでございますが、としている一方で、一定の条件のもと、借用を認めております。具体的には、申請者名義の借地権の設定登記がなされた借用または開設時以降原則二十年以上にわたり使用できる保証のある借用であり、地方公共団体、国の所有する土地であれば、申請時までに貸し付けについての議会の議決等がなされているもの、地方公共団体等以外の者の所有する土地であれば、申請時までに賃借の契約等が締結をされているものとされているところであります。

福島委員 だから、今の基準に満たすと、私立大学の設置許可は出せないですよね。議会の議決とか契約もないから出せないということでよろしいですか、端的にお答えください。一言で端的に。

村田政府参考人 事務的に補足をさせていただきます。

 先ほどお話がございましたけれども、大阪府からの二十七年一月の段階でございましたのは、あくまでも認可適当という条件を付した答申が行われているものでございまして、最終的な認可は、その後の進捗状況の報告を含めて、本年三月に大阪府が開校に向けた準備状況について最終的な確認を行った後で認可が行われるということで承知しております。(福島委員「答えていない。私立大学です」と呼ぶ)

 私立大学の場合は先ほど大臣から御答弁があったとおりでございますけれども、ただ、これはあくまでも私立の小中学校の認可に係る問題でございます。

福島委員 なぜもごもご言うのかわからないですけれども、私立大学でできないものを今回私立小学校でやって、法律を潜脱していて、脱法的な疑いがあるわけですよ。土地を買う値段もおかしければ、設置の認可の状況でもおかしいというのがこれなんですね。

 あえて言いますけれども、この小学校の名誉校長とされているのが安倍昭恵先生という方で、右を見ると、安倍晋三内閣総理大臣夫人と書いております。この理事長の籠池先生の教育に対する熱い思いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきましたと。

 この事実、総理は御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この事実については、事実というのはうちの妻が名誉校長になっているということについては承知をしておりますし、妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いております。

 ただ、誤解を与えるような質問の構成なんですが、私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います。

福島委員 しかし、ホームページのトップにこれが出てくるわけですよ。

 当然、この学校が開設されれば私学助成金も入ることになります。この学校に文部科学省以外に何か補助金は出ておりますか。

由木政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省では、建物の木造化、木質化を推進するために、先導的な設計、施工技術を導入し建築物の木造化、木質化を図るプロジェクトに対しまして、通常の建築物と比較して木を用いることで割高となる金額の一部を補助してまいっております。学校法人森友学園が行う小学校の校舎等の建設については、この補助事業に基づきます補助金を交付しております。

 補助に当たりましては、公募によりプロジェクトを募った上で、学識経験者等による評価委員会での審査を経て採択を行っているところでございます。森友学園のプロジェクトは、平成二十七年度に応募がございまして、同年に採択した八件のうちの一つとして、適正な審査を経て採択したものでございます。

 このプロジェクトは、二十七年度から二十八年度にわたり工事が行われており、二カ年で合計約六千二百万円の補助金を交付するものでございます。

福島委員 というふうに、六千二百万円もの補助金が交付されるもので、重大なものなんです。

 私は、総理がかかわっていると言っているわけじゃありません。余りむきになって反論すればするほど怪しいから、冷静に御答弁をぜひお願いしたいんですけれども。

 この学校は、先ほど申し上げましたように、最初賃借でとやったのは、学校の用地は普通は買うんですよ、国有財産。それを特例で、いろいろ議論があって賃借をしたというのは、学校の設置の当初はお金がかかって、この学校は、自己資金がないから賃借にしてくれということで、寄附金集めが設置認可の条件になるぐらい苦労されていました。

 そこで、この学校もずっと寄附金集めをやっておりまして、こういうのが父兄の方、皆さんに渡されて、寄附をお願いしますというものが出されておりました。

 ここで、「「記念小学校」設立に向けて」という籠池理事長のお手紙があります。

 さて、かねてより保護者の皆様から御要望をいただいておりました小学校開設の件ですが、ようやく十年来の構想が実現する運びとなりました。しかしながら、小学校の建築には十億円の費用を要し、本日現在、二億円の資金不足が生じております。つきましては、ぜひ、皆様の御協力をお願いしたく、御寄附をお願いする次第です。書面にて厚かましいお願いで恐縮ですが、寄附金は一口一万円とし、二口以上の御寄附を賜れると幸甚に存じます。御寄附に当たっては、同封の振り込み用紙をお使いいただきますようお願いします。平成二十六年三月。ということで、これが同封された振り込み票ですけれども、ここに、大変厚かましいお願いでございますがと、同じことで、二口以上お願いします、なお、御寄附を賜りました方には、安倍晋三記念小学校の寄附者銘板にお名前を刻印し、顕彰させていただきますと。

 私はこれは、総理が悪いと言っているんじゃないんですよ、利用されているだけじゃないかと思うんですけれども、こうした名目でお金を集めているということを総理は御存じでしたでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私はそもそも、今、話を伺って初めて知ったわけでございますが、これは、私が総理をやめたときに、うちの妻が知っておりまして、そしてその中で、いわば私の考え方に非常に共鳴している方で、その方から小学校をつくりたいので安倍晋三小学校にしたいという話がございましたが、私はそこでお断りをしているんですね。私はまだ現役の国会議員だし、総理大臣はやめたけれども、この先全く、もう一回復帰することを諦めたわけではないので、まだ現役の政治家である以上、私の名前を冠にするというのはふさわしくないし、そもそも、私が死んだ後であればまた別だけれども、何かそういう冠をしたいというのであれば、私の郷土の大先輩である例えば吉田松陰先生の名前とかをつけられたらどうですかというお話をしたわけでございます。

 事実、安倍晋三小学校なんというものは存在をしていないわけですよね、名前が違うわけですから。

 ですから、そういう意味においては、私はこれは初めて知ったわけでございまして、これは本物かどうかというのは私も確かめようがないわけでございます。

 いずれにいたしましても、繰り返して申し上げますが、私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして、なぜそれが当初の値段より安くなっているかということは、これは理財局に聞いて、もう少し詳細に詰めていただきたいと思いますし、認可においては、大阪府ですか、小学校、中学校ですから大阪市になるのかな。(福島委員「府です」と呼ぶ)ああ、府ですか、に確かめていただければいいことであって、私に聞かれてもこれは全くわからないわけでありますし、繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。全く関係ないということは申し上げておきたいと思いますし、そもそも、何かそういうことが動いているかのようなことを前提にお話をされると、この小学校に通う子供たちもいるんですから、こういうことはやはり慎重にちゃんとやっていただきたい、このように思います。

福島委員 いや、籠池理事長がこう言っているんですよ。安倍総理が野党議員のときの話です、内諾はいただいていましたが、総理になってそれはできないと辞退されました、安倍総理は政治家というより偉人ですよと、もう総理にめろめろなんですけれども、ただ、これが出ているのは平成二十六年ですから、総理になっているときなんですよ、実は。だから、断られたかもしれないけれども、総理にもう一度復帰された後にもこの振り込み票が流れているわけですから、これは厳重に抗議をした方がいいと思いますし、李下に冠を正さずという言葉がありますけれども、奥様も含めて、広告塔のようにホームページに出るのは私は控えられた方がいいと思います。

 学校の趣旨に総理が非常に賛同されているというのはわかりますけれども、総理というのは大きな権力があるわけです。先ほどの天下りの話も、国家権力を使って役人が天下って、そこに不当に国民の税金が流されているんじゃないかということなんです。この問題も、国有地、国民の財産ですよ、不当にそれが安く売られて、学校設置にも便宜が図られ、寄附金集めにも総理の名前が出され、生徒集めのホームページには奥様が出るというのは、多くの国民はそこで疑問を感じちゃうんです。

 私は、初めから総理が悪いなんて決めつけていませんよ。決めつけていないけれども……

浜田委員長 時間が来ております。御協力願います。

福島委員 総理の立場にある意味であるとするならば、そういうものはもっと慎重にするべきだと私は思います。

 そして、この問題の本質は、八億一千九百万円もの国民の財産がこの森友学園に……

浜田委員長 時間が来ておりますので、まとめていただきたいと思います。

福島委員 譲り渡されているのが本質なんですよ。それはまさに来年度の予算にもかかわる話でございますので、中央公聴会の後に採決に向けた、出口に向けた日程をすることなく、この問題についても天下り問題と並んでしっかりと今後も審議する時間を設けていただくことを委員長に最後にお願い申し上げまして、質問といたします。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて長妻君、山尾君、大西君、辻元君、後藤君、玉木君、福島君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 私は、共謀罪について質問をいたします。

 金田法務大臣は、六日夕刻、「予算委員会における「テロ等準備罪」に関する質疑について」と題する文書を記者クラブに配付しました。文書は、それが基本的な政策判断にかかわるものであれ、具体的な法律論にかかわるものであれ、成案を得た後に、つまり法案が出た後に審議すべきだと述べています。

 基本的な政策判断と言うのであれば、共謀罪はまさに、憲法十九条、思想、良心の自由を初めとする国民の自由と人権、そして刑法の大原則、犯罪捜査のあり方、これらを根本的に変質させる大問題であります。だから、今大問題になっている。基本的な政策判断そのものであります。こういう重大な問題についても、法案が出てくる前は予算委員会で審議するなということでしょうか。とんでもない話だと思います。

 大臣にお聞きしますが、大臣の本音は、我々国会議員に対して、法案が出てくるまではどんな大事な問題であっても審議するなと。これが本音だということでしょうか。

金田国務大臣 藤野委員の御質問にお答えをいたします。

 ただいま御質問の中で御指摘がございました文書につきましては、国会に対しその審議のあり方を示唆するものと受けとめられかねないものでありまして、そのように受けとめられかねない内容を含めまして、不適切なものとして直ちに撤回をさせていただきました。改めておわびを申し上げたいと思います。

 その上で、国会における法案の審議につきましては、成案を得ているのか否かにかかわらず、どのような質問も妨げるものではないものと理解をいたしております。また、御質問の内容によりましては、その法案検討の具体的な進捗状況に鑑みまして確定的な回答をすることが困難な場合も想定されるところでございまして、そのことは御理解を賜りたいものと思います。

 いずれにしましても、国会に対してみずからが行う施策につきまして丁寧な説明に努めるという政府の基本姿勢に立ちまして、誠実に職務に当たってまいりたい、このように考えている次第であります。

藤野委員 我々国会議員の大事な役割は、法案が出ていようが出ていまいが徹底的に審議をして、国民の前にその問題点を明らかにすることであります。法案が出ていないから審議するななどということは絶対に許されない。きょうも、共謀罪の問題について徹底的に議論をしたいと思います。

 政府は、共謀罪がなければオリンピックは開けないという趣旨のことを言ってきました。本当にそうなのか。テロ対策のために、国際組織犯罪防止条約、いわゆるTOC条約が必要だと大臣も答弁をされてきました。事実はどうなのかということをお聞きしていきたいと思っております。

 配付資料の一枚目をごらんいただければと思います。これは国連の広報センターのホームページであります。字が小さくて恐縮なんですが、国連がテロの防止条約として十四本の条約を紹介しているというサイトであります。パネルを用意しました。十四本の国連が言っているテロ防止条約であります。

 外務副大臣にお聞きしたいんですが、国連はこの十四本がテロ防止条約だと言っている、間違いありませんか。

岸副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘の国連広報センターのホームページに掲載されています条約は、国連のテロ対策実施タスクフォースの関連ホームページにおいてテロ防止関連条約として掲載されているものと承知をしております。

藤野委員 今答弁がありましたように、国連はこの十四本がテロ防止条約だと言っている。指定している、分類しているわけであります。

 重ねて外務副大臣にお聞きしたいんですが、この十四本の中に、TOC条約、これは含まれているんでしょうか。

岸副大臣 TOC条約は含まれております。(藤野委員「どこにあるんですか。確認してください」と呼ぶ)ごめんなさい、済みません、おりませんです。失礼しました。

藤野委員 ちょっと驚きましたが、こちらにありますように、いわゆる国際組織犯罪防止条約、TOC条約、今回の共謀罪の担保する条約の方ですが、これは国連が言うテロ防止条約には入っていないわけですね。これは大変重要なことであります。政府はTOC条約はテロ防止条約であるかのように言ってきたわけですが、国連はテロ防止条約だとは言っていない。

 それはなぜかということですが、配付資料の二枚目をごらんいただければと思います。

 国際法学者の薬師寺公夫立命館大学教授がこのTOC条約について説明したものであります。この方は、国際法学会の常務理事、国際人権法学会の理事長などを歴任され、政府の代表団顧問として国連の会議にもたびたび出席をされている方であります。こうおっしゃっています。テロリスト犯罪は組織犯罪の範疇から除外されることになった、これにはトルコ、エジプトなど若干のイスラム諸国から不満の声が表明されたが、国際組織犯罪防止条約は一連の国際テロ防止条約とは区別されて普通犯罪に対処する条約に位置づけられることになったということであります。

 つまり、国連がTOC条約を採択するに当たっては、テロを対象に入れるかどうか、これは確かに議論がありました。テロを対象にすべきだという国もあったんです。しかし、そうした議論の結果、議論の末、結論としてTOC条約は現在のようになった。

 薬師寺先生だけではありません。ここに持ってきておりますが、国連の薬物犯罪事務所、いわゆるUNODCが作成した、TOC条約の採択過程の議論などについての公式記録というものがございます。この記録にも、一部の国から、先ほど言ったようなトルコやエジプトなどからテロに含めるべきだという意見があったこと、しかし最終的にはテロはこのTOC条約とは区別して扱うことになったこと、まさに薬師寺教授の説明と同じ内容が国連の報告でも指摘をされております。

 つまり、国連はいろいろな議論を経てTOC条約をつくった、だからこそ、国連はそれをよく知っているからこそ、先ほど挙げた十四本のテロ防止条約の中にTOC条約は入れていないわけです。TOC条約がテロ防止条約でないということは、この点でも極めてはっきりしているというふうに思います。日本政府だけが、この条約がテロ防止のためであると言い続けている。

 テロ防止でないということは、このTOC条約の個々の条文の定義にも反映をしております。外務副大臣にお聞きします。同条約第二条、この二条の組織的な犯罪集団の定義は何でしょうか。

岸副大臣 今の藤野議員のお尋ねでございますが、その前に、TOC条約の起草に向けた交渉過程においてテロリスト犯罪は組織犯罪の範疇から除外されることになったのではないかという御指摘でございますが、本条約の起草に向けた交渉過程においては、重大な犯罪の具体的な内容を列挙する犯罪リストを作成し、その中にテロ行為を含めることが議論されておりました。このような状況において、リストに含むべき犯罪の選別の議論に多大な時間を要し、コンセンサスを得ることが困難であること、また多様な活動を行っている組織犯罪への対処に柔軟性を欠くことなどから、主要国の多くが、そもそもリスト方式は適当でないという立場で交渉に臨んでおりました。

 御指摘の経緯は、このような交渉の結果として、本条約の対象犯罪についてリスト化は行われず、テロ行為が対象犯罪として明示されることはなかったというものでございます。

 実際に、本条約を採択した二〇〇〇年十一月の国連総会決議においても、国際的な組織犯罪とテロ犯罪との関連が増大しておりまして、本条約がこのような犯罪行為と闘うための有効な手段であり、必要な法的枠組みであることが指摘をされておるところです。(藤野委員「定義をお答えください」と呼ぶ)これは今の御質問の、後段の御質問の前提でございます。

 また、二〇一四年十二月の国連安保理決議では、各国に対しまして、テロ防止のために、テロの資金供給源となっている国際組織犯罪への対処を含めた幅広い分野における協力を求めるとともに、本条約を含めた関連する条約の締結及び実施を各国が優先的に行うよう求めているところです。

 したがって、本条約ではテロ犯罪を対象にしていないという御指摘は当たらない、このように考えております。

 その上で、今の第二条が規定している組織的な犯罪集団の問題でございます。

浜田委員長 簡潔に願います。

岸副大臣 国際組織犯罪防止条約第二条は、組織的な犯罪集団について、三人以上の者から成る組織から集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接または間接に得るため一または二以上の重大な犯罪またはこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものという定義をしております。

 また、本条約五条1は、金銭的利益、ほかの物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一または二以上の者と……

浜田委員長 副大臣、簡潔に願います。

岸副大臣 合意することの犯罪化を義務としておるところでございます。

藤野委員 聞いていないことを長々としゃべるのはやめていただきたい。定義は、最後のほんの一部であります。

 そして、テロ防止条約、国連が指定しているものは、あなた自身がこの十四本とおっしゃいました。そして、この十四本にはTOC条約は入っていないんです。何を言っているんですか。

 そして、今、二条の定義をおっしゃいました。要するに、TOC条約が言っている犯罪集団というのは、金銭的利益その他の物質的利益を得るためにさまざまな犯罪を行うことを目的として行動する、こういう集団だということなんですね。

 金銭的利益を得るために犯罪を行う集団、どんなものがあるか。典型的にはマフィアであります。つまり、TOC条約というのは、マフィアが行うような経済犯罪を主眼とする条約だ、だからテロ犯罪の中には含まれていないわけであります。

 時間が潰されましたので、こちらで言いますけれども、五条の合意の定義も同じであります。五条は重大な犯罪を行う合意。この定義も金銭的な利益にかかっている。金銭的な利益その他の物資的利益を得ることに関連する犯罪を行う、それを合意するというのがこのTOC条約五条の定義であります。

 今、勝手な解釈をおっしゃいましたが、国連の定義はまさに金銭的利益を中心に犯罪集団も犯罪の合意も組み立てている。当たり前であります。経済犯罪を中心とした条約であって、テロ防止のための条約ではないからであります。

 国連の先ほど申し上げたUNODC、薬物犯罪事務所は、二〇〇四年、TOC条約の内容を説明するための立法ガイドを作成しております。きょう持ってきましたが、五百ページを超える大変な分量があるわけですが、この立法ガイドの二十六パラグラフに何と書いてあるか。パネルを見ていただきたいと思います。

 同条約の組織的犯罪集団にテロ集団が含まれるかどうかということについての説明であります。下の方に仮訳をつけております。金銭その他の物質的利益を得ることを目標としない集団は含まれず、目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは、原則として、組織的な犯罪集団には含まれない。これが国連の説明であります。まさに、TOC条約が言う犯罪集団にはテロ集団、純粋に非物質的な利益を目標とするテロリストグループは入らないと断言しているわけですね。

 TOC条約は、別名パレルモ条約と呼ばれております。それは、この条約がイタリアのシチリア島最大の都市であるパレルモで結ばれたからであります。この条約がマフィアを主眼としていたことは、この条約の名前にもあらわれている。

 そして、国連だけではありません、日本政府、法務大臣も同じ説明をしておりました。二〇〇五年十月二十八日の衆議院法務委員会、南野法務大臣の答弁です。少し長いですが、紹介したいと思います。

 国際組織犯罪防止条約は、組織的な犯罪集団とは、金銭的利益その他の物質的利益を直接または間接に得るための重大犯罪等を行うことを目的として一体として行動するものをいうと規定しておられます。したがいまして、御指摘のような宗教目的や政治的目的でつくられた団体が純粋な精神的な利益のみを目的として犯罪を行う場合には、この条約に言う組織的な犯罪集団には当たらないこととなる。

 先ほどの国連の立法ガイド二十六パラグラフと非常に似ている。

 金田大臣にお聞きします。この答弁、当然御存じですね。

金田国務大臣 お答えいたします。

 その答弁は承知をいたしております。

藤野委員 金田大臣は、この南野大臣の答弁、同じ立場なんでしょうか。

金田国務大臣 申し上げます。

 私の考えは、TOC条約については、起草段階からテロ活動を対象に議論が行われてきたものであって、テロと強い関連性がある、したがって、テロ組織等によります犯罪を処罰の対象とするテロ等準備罪をTOC条約の担保のために整備することは適切である、このように考えております。

藤野委員 一体何を聞いていたのか。今まで、国連自身がこのTOC条約はテロ防止条約ではないと。実際、その定義もテロとは関連づけられていないということを確認してまいりました。

 もう一回お聞きします。

 二〇〇五年の段階で、南野法務大臣当時は、その立場に立って、国連立法ガイド二十六パラグラフとほとんど同じ定義を国会で言われている。これは、つまり、このTOC条約はテロを対象とするものではない、そういう大前提に立っているからであります。

 改めてお聞きします。金田大臣も同じ立場ですか。

金田国務大臣 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、TOC条約につきましては、起草段階からテロ活動を対象に議論が行われてきたものであって、テロと強い関連性がある、したがって、テロ組織等によります犯罪を処罰の対象とするテロ等準備罪をTOC条約の担保のために整備することは適切である、このように考えております。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 仮に純粋に精神的利益を得る目的のみで行われるものがあるとすればという仮定の話でありまして、そのようなテロが現実にあることを認めた趣旨ではない、このように考えております。

藤野委員 ちょっと、今のはどういう意味ですか。純粋に政治信条やいわゆる経済的利益以外でテロを起こすことはない、そういう意味ですか。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 現実には、組織的犯罪集団がテロを含めた組織犯罪を行うに当たって、純粋に精神的な利益を得る目的のみで行うことは想定しがたいのであります。

 お尋ねの趣旨は、TOC条約に規定する金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的等の要件を今回の法案にどのような形で盛り込むのかにかかわるところでございまして、いずれにしましても、法案については検討中ではありますが、成案を得てからお答えする所存ではありますが、テロ等準備罪については条約との整合性を図りながら必要かつ適正な範囲で整備する方針でおります。

藤野委員 全くお答えになっていないんです。

 二〇〇五年の南野大臣の立場と同じかどうかということを聞いているんです。大臣、イエスかノーか。

金田国務大臣 現実にはそのようなことにはならないというように思っております。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 現実的に、純粋に精神的な利益を得るというものがあるとすれば、組織犯罪を行うということは、その目的のみで行うことは想定しがたい、このように考えております。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 仮に純粋に精神的利益を得る目的で行われるものがあるとすれば、当時の答弁と同じであります。

藤野委員 目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは原則として組織的な犯罪集団には含まれない、こういうことでよろしいですか。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 仮に純粋に精神的利益を得る目的で行われるものがあるとすれば当時の答弁と同じでありますが、これは条約の解釈でありますので、外務省の方の答弁をいただきたいと思います。

浜田委員長 岸外務副大臣、簡潔に願います。

岸副大臣 お尋ねの立法ガイドの件でございますけれども、純粋に精神的な利益という部分は対象になっていないということでございますけれども、御指摘のような件につきましては、採択をした時点で、二〇〇〇年十一月の国連総会決議においても、国際犯罪とテロ犯罪との関連が増大しているというような状況において、本条約がこのような犯罪行為と闘うための有効な手段である、このように解釈をされています。ですから、一般的には、この物質的利益のものについても、財政的、金銭的または同等の利益に……

浜田委員長 答弁をまとめてください。

岸副大臣 限定されていない、こういうことでございます。

藤野委員 前半ずっと確認してきましたように、国連自身が十四本のテロ防止条約を指定している、しかし、その中にTOC条約は入っていないんです。そして、TOC条約が入っていないもとでどういうふうに定義をしているか、犯罪集団について。それは、純粋なテログループは含まれないというふうに国連は定義をし、南野大臣も二〇〇五年段階でほぼ同じ答弁をしている。つまり、テロ防止条約ではないという立場に当時の法務大臣も立っていた、政府も立っていた。

 今になって大臣は同じだとおっしゃった。同じなんですね。同じだとすればテロ防止条約じゃないじゃないですか、TOC条約というのは。今までの説明が全く違うということじゃないですか。

金田国務大臣 条約にかかわることでございますので、外務省から答弁させていただきます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 外務省から答えていただくべきところではありますが、先ほどからの御質問にお答えしますと、仮に純粋に精神的利益を得る目的で行われるものがあるとすれば、当時の答弁と同じであります。

藤野委員 全く同じことを言っていて、答えていないんですが、例えば二月六日の答弁では金田大臣はこうおっしゃっています。政治的な主張に基づくテロ行為、これはまさに純粋なというものですね、政治的な主張に基づくテロ行為も含めて、TOC条約五条の考え方、私どももそういう思いで成案を検討中でありますと。

 だから、政治的な主張に基づくテロも含むというのが金田大臣の立場ではないんですか。どちらなんですか、どっちなんですか。

浜田委員長 金田法務大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

金田国務大臣 例えば、先ほどの立法ガイドパラ二十六でお話がございましたが、本条の第二条に言う金銭的利益その他の物質的利益とは広い概念であると解されます。これによって除かれるのはおよそ物質的利益に無関係なものにとどまる、このように解されるわけであります。立法ガイドの記載もこうした解釈を前提としておるのであって、テロ組織の一般が組織的な犯罪集団に当たらないとしたものではないと考えております。

藤野委員 もう終わりますが、見てきましたように、要するに、このTOC条約は国連自身が、あえて、議論の結果、テロ防止条約から外したわけであります。そして、同条約に基づいて、そうした国連の立場と同じ立場で前回の共謀罪の議論は法務大臣が答弁をしていた。これを全て無視して、テロ対策だ、テロ対策だ、こう言っている政府の説明そのものが偽りだということであります。まさに共謀罪を通すために今までの立場も全部ひっくり返している、こういうことは絶対に許されない。

 今、全国各地で共謀罪に対する反対の声が急速に広がっております。共謀罪の法案の国会提出そのものを断念すべきだと強く求めて、質問を終わります。

浜田委員長 この際、本村伸子君から関連質疑の申し出があります。藤野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 政府は、リニアの大阪までの開業を最大八年前倒しだといって、JR東海リニア事業に三兆円の公的資金を投入し、既に一兆円貸し付けております。このリニア事業を行うJR東海、そもそも三十年前、国鉄分割・民営化で誕生した会社でございます。

 まず確認をさせていただきますけれども、国鉄の分割・民営化当時、国はJR東海の適正利益をどのくらいに想定していたのか、また、実際、今のJR東海単体で売上高経常利益率はどのくらいか、石井大臣、お答えいただきたいと思います。

石井国務大臣 まず、国鉄改革当時でございますが、JRは、最大限の効率的経営を行うことを前提に、当面収支が均衡し、かつ、将来にわたって事業等を健全かつ円滑に運営できる限度の長期債務等を負担することとされました。

 具体的には、当時の予測をもとにいたしまして、JR各社、JR東海のみならずJR各社が効率的な経営を行うとした場合に収入の一%程度の経常利益を上げることができることといたしまして、その前提で負担できる利子負担の額を算定し、その利子額に応じて債務等を負担させたものであります。

 ちなみに、平成二十七年度、JR東海単体の売上高経常利益率は三六・一%になっております。

本村(伸)委員 国鉄分割・民営化のとき、JR東海の適正利益は一%と想定をされておりました。しかし、今や三六%もの売上高経常利益率を上げている。驚くべき利益を上げている。実に三十六倍も上げているわけでございます。公共交通機関として本当にこれでいいのか、もうけ過ぎじゃないかと、与党の皆様からも声が聞こえてまいります。

 国の国鉄分割・民営化で分かれた七つの会社の二〇一六年三月期の財政状況をパネルにしてまいりました。棒グラフがJR各社の鉄道事業の営業収益、そして折れ線グラフがJR各社単体の売上高経常利益率でございます。

 JR東海は、五千五百五十六億円営業収益を上げている、そして売上経常利益率は三六%でございます。一方で、JR北海道、JR四国、貨物、九州は鉄道事業で赤字でございます。JR北海道、四国、九州、貨物の赤字分はJR東海、東日本、西日本が簡単に穴埋めできるぐらいのもうけを上げているわけでございます。

 安倍首相にお伺いをいたします。一つだったものを七分割されて、なぜこんなに格差が出ているとお考えでしょうか。

石井国務大臣 国鉄の分割・民営化に際しましては、全国一元的な経営体系を改め、適切な経営管理や地域の実情に即した運営ができるようにするとともに、旅客の流動実態に適合し、地域的に自然な形の分割となるよう、旅客流動の地域内完結度に配慮いたしまして、旅客部門は全国六社に分割されました。

 これによりまして効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた結果、全体として鉄道サービスの信頼性や快適性が格段に向上いたしまして、経営面におきましても、JR本州三社に続きましてJR九州も完全民営化されるなど、国鉄改革の所期の目的を果たしつつあるものと考えております。

 一方、JR北海道、JR四国及びJR貨物につきましてはまだ上場が可能となるような安定的利益を計上できる段階には至っていないため、国といたしましても、経営安定基金の運用益の下支えや実質的な積み増し、設備投資に対する助成や無利子貸し付けなど、これまで累次にわたって支援を行ってきているところでございます。

 いずれにいたしましても、国としては、国鉄改革の趣旨を踏まえまして、残るJR北海道、JR四国及びJR貨物の完全民営化に向けた取り組みを進めるとともに、JR各社による鉄道サービスが引き続き各地域において求められる役割を果たしていくことができるよう努めてまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 なぜ格差がこんなにあるのかを伺ったんですけれども、不利な条件で切り離されて、地域間格差ができるということは最初からわかっていたんです。国鉄分割・民営化後初年度のJR各社の決算を見て当時の運輸省の幹部は、ようかんの切り方を間違えたというふうにおっしゃっていたという報道もございます。

 何でこんなにJR東海はもうけを上げることができるのか。そこには、三十年前のこの国鉄分割・民営化の当初からの背景があるからです。

 国鉄分割・民営化で、二十四兆円もの巨額の国鉄債務が国民、住民の皆さんに押しつけられました。毎年毎年、今も平均で三千四百億円ぐらいですけれども、この借金を支払い続けております。一方で、JR東海には、ドル箱と言われる、大もうけを上げている東海道新幹線を譲渡し、いいとこ取りをさせたわけでございます。国鉄債務は国民、住民の皆さんに押しつけ、そしてJR東海は東海道新幹線、いいとこ取り、これがJR東海の大もうけの背景にあるわけです。そして、その巨額のもうけをリニアにつぎ込むという計画でございます。

 パネルの二枚目ですけれども、これはリニアルートでございます。

 このように、リニアルートは、南アルプスをトンネルで初めてぶち抜くというもので、日本の宝である自然環境を壊すわけでございます。そして、赤い線が主な活断層になるわけですけれども、日本でも有数の活断層地帯を通る計画です。個別の断層のずれに対する評価はしていないと答弁で明らかになり、安全性についても疑問があるわけです。リニアはこうした問題を抱えております。

 JR東海は、発足時、誕生したときから優遇をされて、その上に今度は、長期、固定、低利でリニアのために三兆円の財政投融資を出す。三兆円の返済は三十一年後でございます。

 この公的資金投入でJR東海は幾ら利息負担が減るのか。国交省は、JR東海の利息負担は五千億円減るというふうに答えておりますけれども、間違いありませんでしょうか。

石井国務大臣 昨年十月二十六日の衆議院国土交通委員会におきまして、鉄道局長より、JR東海の金利負担額について、品川―名古屋間の着工の平成二十六年から、全線前倒し開業が見込まれる、大阪までの開業が見込まれる平成四十九年までの期間で、交通政策審議会で検証された当初ケースと、財投により八年前倒しを行うケースを比較すると、約五千億円の差がある旨お答えをいたしました。

 ただ、これは、財投借り入れの金利を全て〇・六%とするなど一定の仮定を置いた上でシミュレーションを行って算出したものですが、今年度一兆五千億円貸し出しをする予定ですが、一回目の五千億円は確かに〇・六%の金利でしたが、二回目は〇・八%になっておりまして、昨年お答えした段階と比べると状況は変わっているというふうに理解をしております。

本村(伸)委員 五千億円よりは少し減るかもしれないけれども、やはり物すごい優遇だと言わざるを得ないというふうに思います。経営支援はしないと言っていたのに、おかしいというふうに思います。前提が崩れているわけですから、やはり工事実施計画は取り消すべきだということを強く申し述べておきたいと思います。

 物すごい優遇をするリニアですけれども、二〇一三年当時の山田佳臣社長は、リニアは絶対にペイしないというふうに、赤字が確実な事業なんです。ドル箱の東海道新幹線の乗客も減る予測になっておりまして、赤字のリニア事業を抱えて本当に大丈夫なんですかという問題がございます。

 この三兆円の財政投融資の償還確実性、リニア建設費九兆円の根拠、ちゃんと精査をしたのか、臨時国会で麻生大臣に質問をいたしましたら、それまで生きている保証がありませんので、何ともわかりませんとおっしゃったんですよ。こういういいかげんなことで、沿線住民の皆さんの暮らしが壊され、南アルプスが壊されるということを私は許すわけにはいかないんです。

 しかも、このJR東海のために安倍首相は、二月十日、日米首脳会談後の日米共同記者会見の中で具体的にリニアと言って、トップセールスをしているわけでございます。そして、実際に国交省の予算の中には、アメリカのリニアのための調査費が今年度も来年度もついております。アメリカのリニアという公共事業のために、日本の国民、住民の皆さん、私たちの税金が直接投入されるというわけでございます。

 リニアはJR東海しかやっておりません。総理、行政府の長として、行政府の長が特定の企業にこんなにあからさまに優遇をしてもいいんですか。異常じゃないですか。

安倍内閣総理大臣 リニア中央新幹線についてですか。(本村(伸)委員「リニア」と呼ぶ)まず、リニア中央新幹線については、現下の低金利環境を生かした財投の活用により、大阪までの……(発言する者あり)アメリカですか。(本村(伸)委員「首脳会談の話です」と呼ぶ)いや、今、それでリニア中央かということを確認させていただいたら、そうだということで、お答えさせていただいたんですが。

 アメリカについては、まずアメリカは、もちろんこれはODAの対象ではございませんから、日本がいわば資金の援助をするということではなくて、まさにこれはビジネスベースにおいて、米国においては、このリニアだけではなくて、テキサスにおいても、あるいはカリフォルニアにおいても、そちらはリニアではなくて普通の新幹線でありますが、それぞれ、私たちは新幹線と、あるいは東部においてはリニアを売り込んでいるわけであります。日本以外にもコンペティターの国はあります、中国もそうなんですが。その中において、今、日本も、この日本の高い技術を生かして事業を行いたい、こうしたインフラの輸出は安倍政権においても日本を成長させていく大きな柱でございますから。

 その中において、日本が行う例えばファイナンス面における投資というのは、まさにこれは投資でございますから、そこからしっかりと利益を得る投資を目指しているわけでございまして、国民の税金をアメリカ人のために使うということでは全くないということであります。ビジネスベースで行っているものを行っていくということでありまして、日本の税金を何かアメリカ人のために渡してしまうというものでは全くないということでございます。

 そして、JR東海につきましては、既にこれは財務大臣からも答えておりますように、また今委員から御指摘があったように、財務体質は非常にいいわけでございますので、この返還の……(本村(伸)委員「赤字の事業だから、赤字だから」と呼ぶ)いや、JR東海は赤字ではもちろんないわけでございまして、また、例えばリニア中央新幹線におきましては、まさに今、低金利の状況を生かしていくというのは当然のことであろう、低金利環境を生かした財投の活用を行っていくということでありまして、大阪までの全線開通を最大八年間前倒しして、整備効果を早期に発現していきたい、こういうことでございます。

 また、米国につきましては、まさにこれはビジネスベースでしっかりと進めていきたい、このインフラの輸出を競り勝っていくように努力していきたい、こう考えているところでございます。

本村(伸)委員 既に巨額の大もうけを上げているこういう特定企業に対する、強い者ばかりを応援するというのはやはりおかしいというふうに思います。

 一方で、地方路線はどうなっているかということを申し上げたいというふうに思います。

 資料の三をごらんいただきたいんですけれども、住民の皆さんの足、地方の基盤である鉄道の廃線が相次いでおります。資料は、二〇〇〇年度以降廃線になったもの、全国三十九路線、七百七十一・一キロ、これを示しております。

 資料四は「鉄道ネットワークの状況」という資料ですけれども、これは環境経済研究所の上岡先生が資料をもとにまとめられたものです。日本地図上の黒い線は鉄道の路線です。赤い線は廃線になった鉄道路線でございます。一番下の三つ目の日本地図は、赤字の路線を除外すると日本の鉄道網はこういう幹線だけになってしまうということをお示ししているものでございます。今とりわけ深刻なのが、JR北海道でございます。

 資料五を見ていただきたいんですけれども、資料五はJR北海道の資料でございます。昨年十一月十八日、十路線十三区間、自社単独で維持できない、約半分の鉄路が自社単独で維持できないというふうに発表をされました。それだけではなく、一月二十四日の北海道放送のニュースでは、JR北海道、全線で運行不可能と試算と報道され、衝撃も走っております。全線維持できない、経営破綻というところまで来ております。

 総理にお伺いをいたしますけれども、国鉄分割・民営化のやり方そのものが間違っていたというふうに思います。地元任せにせず、国が主体になって支援をするのが当然だと思いますけれども、総理の認識をお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国は、JR北海道に対して、平成二十三年度から八年間で六百億円の補助を含む総額千八百億円の支援を行うなど、累次にわたって支援を行ってきております。これにより、当面必要な安全投資や修繕を行いながら事業を続けていくことができる見通しであります。

 地域における持続可能な交通体系のあり方については今後関係者がともに考えていく必要があり、国としても、地域において鉄道の存続を支える取り組みに対して必要な支援を行っていきたいと思います。

 国鉄の分割・民営化の是非についてでございますが、国鉄の分割・民営化によって効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた結果、全体としてサービスの信頼性や快適性が格段に向上し、経営面でも、JR本州三社に続いてJR九州も完全民営化されるなど、国鉄改革の所期の目的を果たしつつあるものと考えております。

 一方、JR北海道、先ほど申し上げました北海道、そしてまたJR四国及びJR貨物はまだ上場が可能となるような安定的な利益を計上できる段階には至っていないため、国としても、これまで累次にわたって支援を行ってきました。

 引き続き、国鉄改革の趣旨を踏まえ、JR各社がサービス水準の向上を競うことにより各地域のニーズを踏まえた質の高い鉄道サービスが提供されるよう努めていきたいと考えております。

本村(伸)委員 累次にわたる支援といっても、応急手当てで、根本的な解決にはなっていないんですよ。その支援を受けているJR北海道が、半数の鉄路が廃線の危機にあるという現実があるわけでございます。

 私、現地にも行ってまいりました。廃線になってしまうと病院に行くことが困難になってしまうというお話や、あるいは、日高町長も、日高線は歴史がある、昔の方々が守ってきたものを私の代で簡単になくしたくない、国の力をぜひともかりなければとおっしゃっていらっしゃいまして、被災した鉄路の復旧、一刻も早く動かしてほしいとおっしゃっておりました。

 二月八日の当委員会で麻生大臣は、このJR北海道の経営状況の質問を受けて、国鉄を七分割して黒字になるのはJR東海、東、西と三つ、あとはならないということは当時からわかっていたことだ、経営がわかっていない人がやるとこうなるというふうにおっしゃっておりました。そして、JR北海道をどうするかという話は、なかなか、根本的なところをさわらずしてやるには無理があるというふうにおっしゃっておりました。

 麻生大臣、当時は力がなかったけれども、今ならとめられるということも答弁をしておりましたけれども、今、力を発揮していただきたいんです。根本的なところを国が直接関与して支援していくことが必要だというふうに思います。

 そもそも自民党の皆さんは三十年前何と言っていたかということを、資料、パネルの六に出しております。

 これがそうですけれども、「民営分割 ご期待ください。」三十年前、自民党の皆さんが新聞広告に出されたものでございます。一九八六年、主要な全国紙に全て掲載されました。北海道新聞にも掲載をされました。この最後の部分を見ていただきたいんですけれども、この最後には「ローカル線もなくなりません。」と明確に書かれております。しかし、JR北海道では半分が廃線の危機にあるわけです。

 北海道の畠山和也議員や紙智子議員もこの問題で質問をしておりますけれども、きょうは、自民党総裁である安倍首相にどうしてもお伺いをしたいということで、質問に立たせていただきました。

 自民党はローカル線もなくなりませんと約束をされておりましたけれども、実際は廃線の危機にあるわけです。今のJR北海道の事態、約束と違うんじゃないですか。廃線になったところもあるんです。

 公明党の方じゃないんです。自民党の方に、自民党の方に……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

本村(伸)委員 公明党の方じゃないんです。もう大臣には聞いているんです。自民党総裁。

浜田委員長 では、国交大臣の後に総理大臣が答えます。

石井国務大臣 私は自民党さんの選挙公約についてコメントする立場ではないのですが、事実関係だけ御説明をさせていただきたいと思います。

 これまでJR各社によって廃止された路線は、国鉄の改革以降に路線の輸送人数が大きく減少したことや代替輸送道路が整備されたことなど、国鉄改革以降の大きな事情の変化があったものに限られていると承知をしております。国鉄改革当時のことではございません。

 また、これらの路線の廃止に当たりましては、地域の関係者に十分な説明を行い、バス転換が行われるなど代替公共交通を確保し、最終的には地域の皆様に御理解をいただきながら行われたものと考えております。

安倍内閣総理大臣 今大臣から答弁をさせていただきましたように、これは国鉄の分割・民営化ということではなくて、まさにその後のいわば人口の変化もございますし、地域の人口の特に大きな変化の中においての結果であろう、こう思っております。

 しかし、確かに、委員がおっしゃったように、地域にとって鉄路が大きな足であるという地域もあることはよく承知をしておりますし、私の地元も、JR西ではありますが、山陰側には、山陰本線というのはそもそも単線で、残念ながら特急ももうないという状況にあるわけでございますが、しかし、こういう人口が減る中においてはやむを得ないという中で、なるべくバスで代替できるような努力もしているところでございます。

 いずれにいたしましても、今大臣が答弁をさせていただいたように、これからもしっかりとJR北海道あるいは四国等々に対しての支援を行っていきたい、このように思っております。

本村(伸)委員 約束を守るのが当然じゃないですか。「ローカル線もなくなりません。」と書いてあるんですよ。皆さんにうそをついたということですか。

安倍内閣総理大臣 当時私は自民党の議員ではございませんでしたが、いわば分割・民営化によってということでそういうことをお示ししたんだろう、こう推測するところでございますが、いわば分割・民営化によるということではなくて、どういうことが理由であったかということは既に大臣から答弁をさせていただいているところでございます。今後も、いわばJR北海道やあるいはJR四国、そしてJR貨物等々に対する支援はしっかりと行っていかなければならない、このように思います。

 しかし、同時に、今、各社は随分いろいろな工夫をしているわけでありまして、JR九州もそうでありますが、JR西もさまざまな工夫をしながら、人気の路線もあります。JR西において、瑞風という新しい、京都からぐるっと回るすばらしいものが今度できるわけであります。

浜田委員長 総理、時間が来ておりますので、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 これは恐らく予約が殺到するであろう、こうも言われているわけでございまして、済みません、私の地元の長門にもこれはとまるんですが……(本村(伸)委員「約束を守ってください」と呼ぶ)約束を守ったかどうかということについては、まさにこれは分割・民営化によるものではなかったということでございまして、御了解をいただきたい、このように思います。

本村(伸)委員 本当にひど過ぎます。

 今必要なことは、大もうけを上げているJR東海、リニアへの支援ではなく、実際に困っている方々がいらっしゃる切実な地方路線を守るべきだということを強く申し上げ、質問を終わらせていただきます。

浜田委員長 これにて藤野君、本村君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 日本維新の会、吉田豊史でございます。

 富山県富山市出身、三十六歳で富山の県議会議員として、自民党議員として政治の活動を始めさせていただきました。私は、そのときの政治のキャッチフレーズに、感謝、そして挑戦という言葉を選びました。それ以来、ここに立つまで十年かかりましたけれども、十年間、感謝そっちのけで挑戦、挑戦ばかりの自分だったことを改めて反省しながら、ここに立たせていただいていることを感謝して、進めてまいりたいと思います。初めて安倍総理に質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 我が家におきましても、我が国のトップリーダーに質問させていただくということは最大のニュースでございましたので、私は、妻と三人娘がおります、六年生、四年生、一年生とおるんですけれども、それらに、安倍総理にお聞きしたいことがないかということを確認してまいりました。意外としっかりしたものもありまして、アメリカでのトランプさんとの会談は成功だったんだろうかとか、あるいは、どうしていつもと違って今回はゴルフとか別荘とか楽しそうなのが多かったんだろうとか、ちょっといいポイントをついているな、そういう質問もあったんですが、一番下の子は、質問ではなくて要望を出しました。

 何かといいますと、夏になったら自分のうち、富山の方に総理にお越しいただきたい、こう言ったんですね。それで、何かかわいいことを言うなと思って、どうして安倍総理にお越しいただいて、何をお願いするのと言ったら、私と一緒に庭の草むしりをしてほしい、こういうばかなことを言いまして、それで、自分は親として本当に自分の子供さえ全然教育できていないなと思いながら、ただ、一方では、総理は私の子供にまで非常に親しみを持たせる、そういうキャラでいらっしゃるんだなということを確認したところでございます。

 そこでなんですが、私のきょうのテーマは、自立という非常に重たいものを持ってまいりました。

 自立については前回も麻生大臣からさまざまな御指導を頂戴しておるところでございますけれども、やはり私は、何をおいても政治において一番大切なことは、この自立ということを考えて進めていくことだろうと考えております。せっかくの総理にお聞きする機会ですので、私は、この自立というものを総理はどのようにお考えになって我が国を導いていこうとしているのか、このことをお聞きしたいわけです。

 自立ということを考えますと、私は今ここで立たせていただいておりますが、実は、自分の力で立っておるわけではもちろんありませんで、いろいろな方々の応援とか力をいただいて立たせていただいておる、支えていただいておる、こういうことだと思うわけです。

 そして、私が今所属する日本維新の会、我が党の狙うところも、やはり自立という言葉に尽きると思います。

 政党として自立をどう目指しているのか。それは、大きく、我が党は与党か野党か、いろいろなことをおっしゃる方々もおられますが、この立ち位置ということからすれば、自立においてはやはりきちっとした、私たちは、我が国は自立しなくちゃいけない、そのために改革をしなくちゃいけない、こうはっきりしておるわけです。憲法問題に対する我が党の姿勢もはっきりしておるというところでございます。

 我が国の自立において、近いところで、アメリカに総理は訪問なさっています、こういうようなことの体験とかお考えも含めて、国家のプレゼンスをどのようにして高めていくのか、そのために私は自主防衛は当然必要なことだろうと考えておりますし、そして何よりも、このアジアの中でしっかりとした平和と繁栄のためのリーダーとなる、この考えが必要だと思いますけれども、改めて総理のお考えをお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 安全保障政策においては、まず第一に、我が国の領土、領海、領空、我が国の国民の命、財産は断固として私たち自身の手で守っていくという基本的な考え方を持つのは当然のことであろうと思います。

 しかし、その中において、現在、どの国も一国のみで自国を守ることができない中において、日本は、日米同盟を安全保障そして外交の基軸として、揺るぎないものにしていく必要があると考えております。

 同時に、では、アメリカが守ってくれるからといって安心してはならないわけでありまして、自分の国を守ろうと努力をしない国を命をかけて守ってくれる人あるいは国は世界じゅう探してもどこにもないわけでありまして、私たちがしっかりと努力をする、それがあって初めて米国は日本と共同対処するんだろう、このように思います。

 議員がおっしゃるように、まずはしっかりと自立の精神で努力を重ねていくことが極めて重要だろう、このように思います。

吉田(豊)委員 今ほど総理がおっしゃいました自立への道ということですが、私は、戦後七十数年たって、やはり我が国は敗戦以来ずっとそういうことについての方向性を変えていくチャンスを失っていたのではないか、こういうふうにも理解しておるわけです。これが今、トランプ政権が生まれたということ、それから、改めて日本の周りの、国家安全保障においてのさまざまな環境が変化している、こういう機会を絶対に逃してはいけない、私はこういうふうに思うわけです。

 その意味で、改めて、自主防衛というところまで一挙に行く話ではもちろんないですけれども、総理は我が国の自立に向けて今は非常に大事な時期だとお感じだと思うんですが、そこをもう少し詳しくお伝えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本のいわば自立ということでありますが、外交においても日米同盟はもちろん基盤としているわけでありますが、日本の国益においては、あくまでも日本が決定をしていくことであります。また、外交・安全保障戦略においても、当然、日本の安全、国民の命そして日本の繁栄を守っていくということを中心にこれは描いていくべきであろうと思います。

 その中において我々は戦略を立て、同盟国であろうとも、私たちは言うべきことは言わなければいけない、要望することは要望するというのは当然のことであろう、こう思うわけでありまして、外交においても、日本の考え方を積極的に主張する外交を展開していかなければならない、こう考えております。

吉田(豊)委員 その上で、特に私はアジアの中での立ち位置ということが重要だと思いますけれども、総理は、このアジアの中でどのように、どうやってやはり日本の存在感を高めるかということについてのお考えはおありでしょうか。

安倍内閣総理大臣 アジアと一口に言いましても、アジアには、例えば北東アジアとして朝鮮半島と中国という存在があります。また、台湾もあります。そして、東南アジアもあれば、インド等の南西アジアもございますし、また中央アジアもあります。それぞれの多くの地域において日本は非常に信頼をされております、日本人自体が信頼をされ、そして敬意を表されている、こう思うわけであります。それは先人たちが積み上げてきた資産であろう、こう思うわけであります。

 中央アジアにおきましては、中央アジアの五カ国を訪問した際、かつてのソビエトによって連行された日本兵が、捕虜でありながらも非常に真面目に労働しいろいろな建物を建てたんですが、その建物はほかの建物に比べて極めて立派で大きな、例えばウズベキスタンにおいて大きな地震があっても日本人がつくったオペラハウスだけは壊れなかったということで、そうしたことによって日本の例えばインフラ輸出についても、やはりインフラは日本だねということになっているわけであります。こうした日本のソフトパワーをしっかり生かしていくことが必要だと思います。

 同時に、東南アジアにおいては、日本がしっかりと法の支配、国際法を遵守するということを主張することを多くの国々が期待しているんだろう、こう思う次第でございます。

 また、北東アジアにつきましては、この地域の安全保障環境は大変厳しさを増しているわけでございますが、そういう中において、東南アジアも含めて、日本が安全保障上の役割を果たしていくことが求められていく、平和国家としての歩みに誇りを持ちながらそうした役割をきっちりと果たしていきたい、このように思います。

吉田(豊)委員 総理、ありがとうございます。

 今、二つ、私は大事なキーワードをいただいたと思っています。やはりしっかりとしたリーダーとして、周りがこれは認める話ですから、そのためには、まず日本人が信頼されているという、これは本当に大切なことだと思うわけです。そして、それは法の支配、ルールにのっとってさまざまなことをやっていく。例えば、簡単に言えば、私たちは約束を守る、そういう国民だと思われているということが私は大事じゃないかなと思うわけです。

 翻って、今、国内での問題、きょうも予算委員会を朝から私も傍聴させていただきましたけれども、私は、さまざまなところでこういう日本人のよさ、それから信頼というものを基礎づける大切なことは、やはりルールにのっとって、そしてそのルールをきちっと守ってやっていく、ここの信頼感がさまざまなことに大きなプラスの成果を広げていくんじゃないかな、こう思うわけです。

 そうしますと、やはりルールというものは何よりも大切であって、私は維新という党にいて何が一番いいかというと、維新というのは、漢字のとおり、維を新たにする、こう書きます。維というのは織物の織りということです。それは、私たちの世界でいえばルールであったり仕組みであったりとか、こういうことだと僕は理解しているんですけれども、それ自身を新たにしなくちゃいけない。そういうところまで、今、私たちのこの民主主義、そして日本の国というものは、その仕組み自身がかなり疲弊しているというふうに私は感じています。それを維新は変えていこうとしている、そこに私も参画したい、こう思って頑張っているところなんです。

 けさからの質問は幾つか問題があると私は思いますが、全てやはり、私は、仕組み自身が本当に機能しているのか、していないのかというところに来ているんじゃないかな、こう思うわけです。具体的には、南スーダンの問題あるいは天下りの問題ですとか、こういうことだと私は思いますけれども、まず、南スーダンの問題について思うところを質問させていただきたいと思います。

 国会議員にならせていただいて、一年目からずっと予算委員会それから平和安全特の質疑、さまざまなものをこの場所の隅っこで私は聞いておりました。委員長も本当に御存じだと思います。

 その中で、やはり平和安全法制一つにしましても、本当に大きなエネルギーがかかって、そして、その中で達成してきた自立のための、自主防衛のための第一歩ではないかな、こう私は思っておるわけですね。ですから、今、この南スーダンに対してさまざまな決まったことを実行に移しているという非常に大切な、繊細なタイミングだと思うわけです。

 ここに来て、今、稲田大臣を初め防衛省の方々のところで、大丈夫なのかなという不安にさせる状況が生じているということ、このこと自身、本当に今まで積み上げてきたものの大切さが共有されているのかどうなのかな、私はこういうふうに思うわけなんです。

 具体的に、私は、稲田大臣が大臣の資質があるかないかとか、そんなことを申し上げる気もありませんし、私自身もそんな能力もありません。すばらしい政治家だと思っております、大臣だと思っております。

 その上で、ただ、私は、平和安全法制一つとっても、前防衛大臣の中谷さん、中谷大臣がずっとずっと本当にさまざまな努力を重ねた上でここのところに来ていらっしゃる、そしてそれを実行のところに移していく、この段階で、今の今になって、結果的にそうだから思うんですけれども、防衛大臣という非常に重要な大臣が交代してよいものなのかという根本的なところを疑問に今思っているんです。

 交代するというのは、もちろんそれぞれの方が資質があるからだということは思いますけれども、組織としての信頼感、根本のところに戻りますけれども、それを担保していくためにはやはり人間関係の信頼感というのが基本だ、こう思うわけなので、改めて僕は安倍総理に、防衛大臣が交代しているというこのこと自体が結果的には問題だったんじゃないかな、こう思うんですけれども、お考えをお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 防衛大臣というのは極めて重要な役割を果たしていただくわけであります、まさに国の安全保障政策の中心を担うわけでございますから。ですから、第二次安倍政権ができて、小野寺大臣には二年、そしてまた中谷大臣にもほぼ二年務めていただいているところでございます。

 中谷大臣にまた、今度は党において支えていただこうということになったわけでありますが、稲田大臣も、平和安全法制を政調会長として党側で担当し、そして法案の作成にも事実上かかわっていただいたわけでございまして、安全保障政策を任せるに足ると信頼しているわけでございます。今、日報等のさまざまな御指摘もあるわけでございますが、しっかりとこの事態に対して対処できる、このように私は信頼をしているところでございます。

吉田(豊)委員 そういう信頼を受けていらっしゃる稲田大臣なんですけれども、やはり、仕組みとして、結果として国民の不安をあおる状況をつくっているということは私は非常に大きなことではないかなと思いますし、どうすればこの状況を改善していくことができるかといえば、おかしいところをすぐにでも直していく、これしかないと私は思うわけです。

 実際のところ、情報開示一つをとっても、この日報問題が起こる前にもやはりまっくろくろすけのものが出てきたりとか、ああいうのは、私は、一つ一つ、組織とか仕組みとしての誠実さが疑われる問題じゃないかなと思うんです。

 一ミリでもいいから、一字でもいいから多く、さまざまなものを皆様に見ていただく、そういう姿勢を持つことこそ僕は本当に大事なことだと思うので、改めて、この状況に至っていることを稲田大臣はどうお感じで、そしてどうしようとしているのかをお聞きしたいと思います。

稲田国務大臣 南スーダンの日報の問題ですけれども、最初、不開示とした。これは廃棄してもよいものであったので、廃棄して不開示とした。しかしながら、私の指示で捜索をして、見つかって公表した。しかし、見つかってから私に報告するまで一カ月という時間を要してしまった、このことについては私も大変申しわけなく思います。

 そして、先生が先ほど来御指摘のように、やはり、いいものを守るために、しっかり変えるべきものは変えていく。そして、なぜここまで報告を上げるのに時間がかかったのか、そういったこともしっかりと検証して、また日報というものの保存期間が、果たして廃棄でよかったのかどうかということも含めて、しっかりと私の責任をもって対処してまいりたいと思います。

 そして、委員がおっしゃった自立ということ、自主防衛ということ、みずからの国をみずからで守るということでございますが、中谷防衛大臣もそうです、そして委員長もそうでございますけれども、我が国の防衛、領土、領海、領空、国民の生命、身体、財産、しっかりと守っていくべく頑張ってまいりたいと思っております。

吉田(豊)委員 本当の意味の有言実行で進めていただきたいと思います。

 もう一つは、南スーダンの話は、やはりきょうここでお聞きしていましても、事実というのは何かということがわからない者同士で、わからない者という意味は本人が目の前で見ていないという意味ですけれども、その中で進めているというところがあるかなと私は思っているんです。

 ですから、国会は国会で、平和安全法制一つとっても、結果としてそれを推し進めた。それから、今、こういう問題についてどう対応していくかということについては、正しい事実を自分の目で見てくることが必要だと思いますので、私が今思いますのは、我が党の中で了解が得られれば、やはり国会議員の中できちっと、私は安全保障委員会に所属しておりますので、安全保障委員会として現地視察団を組んで南スーダンを見てくる。もしそれが国会として実現できなかったときには、私は自分で行ってこようと思います。お声がけしたらいいかなと思う野党の仲間もいるかと思いますので、ぜひ一緒に行ってきたらいいというふうに思っております。

 次の問題に入らせていただきます。

 天下りの問題なんですけれども、きょう私がこのネクタイを選んでまいりましたのは、早稲田のネクタイです。早稲田の卒業生なんですけれども、結構古いものでして、これを私にくれた人はもう今はこの世におりません。なんですが、今回の天下りの中で最初に早稲田の名前が出てきて、本当に恥ずかしくて、悔しい思いをしている早稲田のOBの一人だろう、こう思うわけです。

 文科省の天下り問題、先般、松野大臣は早稲田の方にお越しになっておわびをしたというふうなことをおっしゃっていましたが、私は、そういう話だけではなくて、結局これは相手がおる話ですし、私が誇りとする早稲田は、皆さん御存じのように、都の西北という歌の中にも進取の精神、学の独立、こう歌って、それを誇りにして進んでいる大学です。今の今もその大学に憧れて受験している子供たち、学生たちもおるわけです。

 そういう中で、この問題は何か文科省、片方だけが悪いような状況という、それは私の中ではそうではないだろう、こう思っていますし、私にとって身内の学校だからこそ、今ここで、せっかく全国の早稲田の方々も見ていらっしゃるところです、それについて私たち早稲田の側からも、きちっと自分たちのこの問題についての考えを示していかなくちゃいけないとは思いますけれども、改めて松野大臣に、この問題は、何が本質的な問題なのかということを確認させていただきたいと思います。

浜田委員長 松野文科大臣、時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。

松野国務大臣 今回の文部科学省の再就職等規制違反によって、国民の皆様の文部科学行政に対する信頼を著しく損ねました。

 今、文部科学省は、省を挙げて猛省し、再発防止の体制をしっかりとつくっていかなければならないと決意をしているところであります。調査を進め、そしてその調査結果によって厳正に処分をし、文部科学省職員の意識も改革していかなければいけないと思います。大臣として、責任を持ってしっかりとその仕事を推進していきたいと思います。

 今回の事案で、早稲田大学にも大変な御迷惑をおかけいたしました。私も大臣として、鎌田総長におわびを申し上げたところであります。

 大学教育にとって、特に私立の大学にとっては、委員から御指摘があったとおり、建学の精神に基づいて、大学の自治そして学の独立、それぞれの思いの中で大学運営は進められていかなければならないと考えておりますし、私たち文部科学省も、その思い、各大学の価値観というのを大切にしながら、尊重しながら、引き続き大学の行政に携わってまいりたいと決意をしております。

浜田委員長 吉田君、時間が来ております。よろしくお願いします。

吉田(豊)委員 ありがとうございました。頑張ってまいります。

浜田委員長 この際、小沢鋭仁君から関連質疑の申し出があります。吉田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。

 きょうは、集中審議ということで、安倍内閣の基本姿勢並びに社会保障政策、こういうことでございます。

 基本的にマクロ経済政策の話の議論をさせていただきたいと思っておりますが、社会保障政策も一つのテーマでありますので、まず冒頭、塩崎大臣にお尋ねをしたいと思います。

 経済政策的観点から考えたときに、いわゆる社会保障の財源というのはどういうふうに考えたらいいのか、こういう観点です。

 というのは、当然のことながら、年金を含めて社会保障の財源が問題だ、こういうふうになっていて、そうなってくると、まずはとにかく消費税のアップというような話が出てくるわけですね。ですから、財源といえば、年金あるいはまた健康保険は保険ですから、保険料プラスいわゆる税金、こういう構造になっているわけであります。

 税金の話はここにおく。今度は保険料の話で考えたときに、保険料の額を上げるということが大事だ、こうなるわけですが、保険料率を上げるという話と同時に、要は、保険料というのはいわゆる国民所得に連動していきますから、景気がよくなって国民所得がふえれば保険料収入もふえる、こういう話が言えるんだろうと思うんですね。私は、そういう道もしっかりと議論をした方がいいと思っているんです。

 例えば、現在、五百三十兆くらいの国民所得がありますね。一%上がったらば保険料収入が何%くらい上がるかとか、そういった試算を厚労省はお持ちでしょうか。

塩崎国務大臣 今、保険料についてお尋ねがありましたが、年金、医療、介護、その他社会保障はございますが、一番大きいのは年金、そして医療、介護の順番だろうと思います。いずれも社会保険方式でありますので、保険料と税とそして自己負担というのがあるわけで、いずれもやはり、経済がうまく回っていった方が、所得がふえた方が負担が軽いというのと、入りも大きくなるということだと思います。

 今、例えば厚生年金あるいは健康保険の社会保険料につきまして、被保険者の賃金に当然、これは釈迦に説法でありますが、一定の保険料率を掛けて御負担をいただいているわけでありますから、一人当たりの賃金がふえたり、働く方の数がふえるということでも当然入ってくるものがふえる。今御指摘のように、国民所得が増加をすれば保険料収入も増加するということで、そのとおりでございます。

小沢(鋭)委員 ですから、まさに財源問題を考えるときに、経済を活性化していくという話も一つの道だ、こういう話をしっかり意識することが必要なんだろう、こういうふうに申し上げたいと思います。

 ぜひ一回試算を、これはまた厚労委員会か何かでやらせていただきたいと思いますが、やっていただけるとイメージが湧くのかな、こう思っておりますので、お願いしたいと思います。

 それでは、いわゆる経済政策、特にアベノミクスを中心に議論させていただきたいんですが、アベノミクス三本の矢というふうに総理はいつもおっしゃいます。一本目が大胆な金融緩和、二本目が財政政策、三番目が成長戦略、こういうことでございますが、第一の大胆な金融緩和は、実は我が党日本維新の会は、できる当初から一貫してこのことは主張してまいりました。その意味で、まさにアベノミクスの第一の矢は我々はずっと支持をしてきたわけでありますが、我々としては、まさにこの経済政策が一定の成果を上げてきているということは十分認めているわけであります。いろいろな批判もあるようでありますが、これは前に比べて一定の成果を上げているというのは間違いない。

 そのときに、政策効果を見るというのは難しいんですけれども、私は、三本の矢のうちの第一番目の大胆な金融緩和が肝だと思っているんですね。それはなぜかというと、二番目の財政拡大の話は過去の景気対策で何度もやってきました。三番目の成長戦略も、これは構造改革とかそういう名前のもとである意味では似たようなことをやってきました。過去やってきていなかったのは、この大胆な金融緩和なんです。

 そして、ここ日本の長年のいわゆるデフレ不況から脱却するという意味では、まさに金融政策が一番効果があるのではないかということの中でこの政策を行ってきて、そしてそれが現在の経済の、ある意味では企業が収入を得て、あるいは賃金も得て、雇用も全国的に拡大している、こういう結果を得ている、こう思っているんですが、総理の御見解をお尋ねしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに先生がおっしゃるように、いわば大胆な金融緩和、また金融政策そのものを中心的な政策として政権として掲げたのは我々の政権が初めてであろうと思います。長引くデフレから脱却する上においては、三本の矢の中において大胆な金融緩和政策というのが一番直ちに効果が発現しやすいものだろう。構造改革というのは、しばらく時間がかかって効果が出てくるわけでございます。

 安倍政権の発足後、政府、日本銀行の共同声明に基づき、日銀は大胆な量的・質的金融緩和を導入しました。これは、それまでの金融政策の枠組みを大きく見直した画期的なものでありました。固定化したデフレマインドの払拭につながり、もはやデフレではないという状況をつくり出すことはできたと考えています。

 金融政策の具体的な手法は日本銀行に委ねられるべきであると考えておりまして、黒田総裁を私は信用、信頼しておりますが、日本銀行が今後とも大胆な金融緩和を着実に推進していくことを期待しているところでございます。

小沢(鋭)委員 ぜひそれで進めていただきたいと思っておるんですが、問題は、トランプ政権ができました。そして、ちょっとパネルを見てもらいたいんですが、ここにあるように、現在の中国は、そしてこれまで何年にもわたって日本は市場で通貨安誘導を繰り広げ、米国がばかを見ている、こういう発言がありました。それから、あと、この前の日米首脳会談、共同声明の中にはなかったようですが、記者会見の場で、為替問題に関して、短期的な公平な条件を取り戻すという発言もトランプ大統領はされているようですね。

 ということで、ここは私、この一連の為替の問題を聞いて大変驚いているというか、心配をしているんですね。といいますのは、大胆な金融緩和をすれば当然のことながら為替は安くなる、円安になっていくという話は当然シナリオの中にあるわけでありまして、そういった意味では、米国がもしここのところを本当に本気になってやってくるのであれば、今総理と共通認識があった、大胆な金融緩和がきいていましたねという話をストップせざるを得なくなるのかな、こうも思っているわけです。

 麻生副総理のもとでペンス副大統領と今後やっていく、こういう話ですが、いつまたこの金融緩和に水を差すような話になるのかということを大変危惧しているわけですが、それはいかがでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 パネルでお示しをいただいたトランプ大統領の発言は、中国との関係の文脈で発言をされたものでありまして、日本を指したものではないというふうに私は認識をしております。

 トランプ大統領との間においては、為替については、日米首脳会談において、専門家たる財務大臣同士、日米財務大臣間で緊密にコミュニケーションをとっていく、議論していくべきだということで合意をしたところであります。また、いわば為替については、首脳会談においては全く議題にはなりませんでした。

 そこで、共同声明においては、三本の矢の一つとして金融政策を活用していくことの重要性について日米間で合意をされているわけでありまして、三本の矢についてのいわば言及があるわけでございます。その中において、三本の矢の一本目はまさに金融政策であり、大胆な金融緩和でもありますので、そこにおいては認識していただいているもの、このように承知をしております。

小沢(鋭)委員 ぜひそれで進めていただきたいと思いますし、麻生副総理にもぜひお願いしたいと思います。

 この表を見ていただければ、トランプさんて何を言っているのかな、こう思うんですね。見てくださいよ、この赤と青の、日本と米国のマネタリーベース、通貨供給量のグラフですけれども。

 二〇〇八年にリーマン・ショックがあったですね。その後から急激にアメリカは、ずっと通貨供給量をふやしてきているわけですね。これで、これまで何年にもわたって日本は通貨安誘導を繰り広げてきた、こう言われても、二〇一一年の三月は八十円を切っていたんですよね、ですから、本当にトランプさんて何を言っているのかな、こういうふうに思いますが、しかし、アメリカが言うことはやはり慎重に対応しなければいけませんので、ぜひ副総理、よろしくお願いしたいと思います。

 それから、もう一つ、アベノミクスをめぐる話で最近話題になっていることであります。内閣官房参与の浜田宏一先生のいろいろな発言です。私も実は二〇〇二年から浜田先生とともにリフレ政策を勉強してきて、私のある意味では師匠の一人だ、こう思っておるんですが。浜田幸一先生と名前は似ているんですけれども、こちらはそうではなくて浜田宏一先生ですが、エール大学あるいはまた東大の先生を歴任した浜田先生です。

 それで、何を言っているかというと、端的に言いますと、要は、今のアベノミクスでもなかなか二%のインフレターゲットが実現していない、それが起こらない理由は財政とセットで行っていないからだ、こういう言い方をしていまして、我々はある意味ではデフレというのは基本的には貨幣的現象だとずっと思って言ってきていたわけですけれども、加えてやはり財政も考えなきゃいけませんね、こういうことを言っているわけです。

 ですから、要するに、金融緩和がだめだと言っているんじゃなくて、加えてと、こういうことがポイントだと思いますが、その中の問題として、これは文芸春秋の中からですけれども、二つ具体的な話を言っておりまして、内部留保の利益を投資に回してほしい、こういう話の中で、具体的な政策として、回した企業を減税するとか、あるいは懲罰的に内部留保に対して課税をするとかいう話があるではないかと。これは総理も経済界の皆さんに要請はしているようですが、政策論としてはこういうことがあり得るというのが一つ。

 それからもう一つは、インフレ目標と消費増税は二つで一つに考えて、いわゆるコアコアCPIが目標の二%を達成できた場合に限り消費税を年々一%ずつ段階的に上げていったらどうか、こういう話が出ています。

 特に二番目の消費税の話で総理に御見解を聞かせていただきたいんですが、財政とのリンクということを考えたときに、消費税を八%に上げてしまったことが依然として影響を持っている、こういうことの中で、アメリカのシムズ理論、こういう話も最近ある中で、こういう議論がされています。この消費税に関する見解というのは極めて興味深いと私は思っておるんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 消費税の引き上げについては、世界経済がさまざまなリスクに直面する中で、あらゆる政策を総動員して経済再生、デフレ脱却に向けた取り組みに万全を期すべきことであることから、総合的かつ大胆な経済対策を講じることとあわせて、一〇%への引き上げ時期を二年半延期したところでございます。

 他方、消費税率の引き上げは、世界に冠たる社会保障制度の仕組みを次の世代に引き渡していくために必要であります。また、市場や国際社会からの信認、国の信認を確保するために必要なものであることから、平成三十一年十月には引き上げを実施したいと考えております。

 浜田先生の御理論は常に傾聴に値するものでございますが、政府の基本的な考え方は今述べたところでございます。

小沢(鋭)委員 現時点ではなかなかそれ以上のことはおっしゃれないのはよくわかりますし、麻生大臣としては、そんなばかなことがあってはいけない、予定どおりやるんだ、こういうお立場だろうと思いますけれども、経済政策論として考えたときに、総理も今、傾聴に値する、こういうお話がありましたけれども、大変重要な指摘だ、私はこういうふうに思っています。

 日本経済、ある意味ではデフレではない状況になってきている、こういう話がありますが、道半ばであることは間違いないわけでありまして、そういった意味では、こういった経済政策、ぜひ、せっかくいい提案がされておりますので、いろいろ議論をしていただきたいな、こういうふうに思います。

 浜田先生とはお話しになっているんですか、あるいは読んでいらっしゃるんですか。

安倍内閣総理大臣 先般も、帰国された際、浜田先生とはお話をさせていただいたところでございます。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 次に、TPPの話をちょっと確認させてください。

 もう既に国会答弁の中で、TPPの話は総理から答弁が何度かあったようであります。TPPに関しては相当しつこく意義を申し上げたけれども、トランプ大統領は嫌な顔一つせずにずっと聞いてくれていた、こういう話であります。それから、共同声明を見ますと、まさにTPPをやるべきだみたいな話が書いてありますよね。そういう中で、嫌な顔一つせず聞いてくれたという話ですが、それはどういうふうに受けとめたらいいんですか。

安倍内閣総理大臣 大統領には実は、ニューヨークでお目にかかったときから、また電話会談の際にも、TPPの意義として、自由で公正な経済圏をつくる、このルールメーキングを日本と米国でやることが大切ですよ、例えば国有企業の力を背景に市場をゆがめるようなことになってはなりませんよ、そういうパワーに対抗できるのは、日本と米国が主導して経済圏をこのアジア太平洋地域につくっていくことなんですという話をずっとしてまいりました。その中において、自由で公正な経済圏をつくっていく、あるいはルールをつくっていくということの重要性については理解をしていただいた。

 今回の共同声明には、日本が既存のイニシアチブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進することを含むとの記載がありますが、これは、日本がTPPを含めた既存のイニシアチブを基礎として、アジア太平洋地域において自由で公正な経済圏を広げていくことを米国も了解していることを意味するというふうに理解していただきたいと思います。

 米国の離脱表明後も、日本がTPPにおいて持っている求心力を生かしながら、今後どのようなことができるかをまたしっかりと考えていきたい、このように考えております。

小沢(鋭)委員 時間ですからこれで終わりますが、そこですよ、総理。そこのポイントが、私がさっき申し上げた共同声明にあるようなところだ、こう申し上げて、私はTPPの特別委員会で、もし米国がだめであっても米国抜きでまず進める、日本がイニシアチブをとってということを一番最初に提案した人間だと思っています。

 今のところがそういう書きぶりであるならば、ここはぜひ、米国抜きでも先に進めていただくという決断が重要だろうということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 これにて吉田君、小沢君の質疑は終了いたしました。

 各大臣は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

浜田委員長 この際、三案審査のため、去る十五日、第一班沖縄県、第二班愛知県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班菅原一秀君。

菅原委員 沖縄県に派遣された委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、浜田靖一委員長を団長として、理事葉梨康弘君、長妻昭君、委員石崎徹君、大串正樹君、國場幸之助君、星野剛士君、小川淳也君、後藤祐一君、辻元清美君、國重徹君、吉田宣弘君、赤嶺政賢君、下地幹郎君、私、菅原一秀の十五名であります。

 去る十五日、現地におきまして、航空自衛隊那覇基地の視察を行った後、那覇市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、宜野湾市長佐喜眞淳君、沖縄県政策参与・沖縄国際大学名誉教授富川盛武君、沖縄県商工会議所連合会会長石嶺伝一郎君及び沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科教授前泊博盛君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、佐喜眞君からは、普天間飛行場返還に向けた意思が示され、その間の地元の基地負担軽減策、普天間飛行場返還後の跡地利用のあり方などの意見が、

 次に、富川君からは、日本経済発展につながる沖縄県アジア経済構想、米軍基地返還による経済効果などの意見が、

 次に、石嶺君からは、那覇空港の機能拡充による経済発展、中小企業振興と人材育成のあり方などの意見が、

 最後に、前泊君から、国家予算の編成のあり方、防衛関係及び沖縄関係予算の問題点

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、沖縄振興の将来像における国と県の役割と一括交付金のあり方、日本及び沖縄県の安全保障のあり方、沖縄政財界におけるトランプ政権への受けとめ、那覇空港拡充等による観光振興に向けた行政への要望、沖縄県の中小企業及び人材確保策の現状、普天間飛行場の辺野古移設に対する賛否と対案などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力を賜り、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告とさせていただきます。

浜田委員長 次に、第二班武藤容治君。

武藤(容)委員 愛知県に派遣された委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、理事石田真敏君を団長として、理事西村康稔君、大西健介君、赤羽一嘉君、委員小倉將信君、門博文君、長坂康正君、山下貴司君、井坂信彦君、今井雅人君、福島伸享君、伊藤渉君、本村伸子君、井上英孝君、私、武藤容治の十五名であります。

 このほか、現地参加議員として神田憲次君が出席されました。

 去る十五日、豊山町において、国産初のジェット旅客機等の生産拠点である三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場を視察し、関係者から説明を聴取いたしました。

 次いで、名古屋市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、一般社団法人中部経済連合会会長豊田鐵郎君、日本労働組合総連合会愛知県連合会会長土肥和則君、全国商店街振興組合連合会理事長坪井明治君及び木曽川商工会会長五藤政尋君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、豊田君からは、税制、財政、社会保障制度改革の推進、防災に資する企業の設備投資への支援の必要性などの意見が、

 次に、土肥君からは、社会保障の充実と財政健全化のあり方、保育・介護分野の職員の処遇改善などの意見が、

 次に、坪井君からは、商業地の固定資産税の負担軽減、プレミアムつき商品券事業の必要性などの意見が、

 最後に、五藤君から、少子化対策の充実及び国民への周知、税金の無駄遣い対策の徹底

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、安倍内閣の外交・通商政策への評価、政府の働き方改革への評価、プレミアムつき商品券事業への評価、企業の内部留保を賃金に回す必要性、中小企業への具体的な支援方策、公務員人件費の改革などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

浜田委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

浜田委員長 次回は、来る二十日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十二分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の沖縄県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十九年二月十五日(水)

二、場所

   ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

三、意見を聴取した問題

   平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算及び平成二十九年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 浜田 靖一君

       石崎  徹君   大串 正樹君

       國場幸之助君   菅原 一秀君

       葉梨 康弘君   星野 剛士君

       小川 淳也君   後藤 祐一君

       辻元 清美君   長妻  昭君

       國重  徹君   吉田 宣弘君

       赤嶺 政賢君   下地 幹郎君

 (2) 意見陳述者

    宜野湾市長       佐喜眞 淳君

    沖縄県政策参与・沖縄国際大学名誉教授     富川 盛武君

    沖縄県商工会議所連合会会長          石嶺伝一郎君

    沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科教授   前泊 博盛君

 (3) その他の出席者

    予算委員会専門員    柏  尚志君

    財務省主計局法規課長  青木 孝徳君

     ――――◇―――――

    午後二時開議

浜田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団団長の浜田靖一でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算及び平成二十九年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当那覇市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党・無所属の会の菅原一秀君、葉梨康弘君、石崎徹君、大串正樹君、國場幸之助君、星野剛士君、民進党・無所属クラブの長妻昭君、小川淳也君、後藤祐一君、辻元清美君、公明党の國重徹君、吉田宣弘君、日本共産党の赤嶺政賢君、日本維新の会の下地幹郎君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 宜野湾市長佐喜眞淳君、沖縄県政策参与・沖縄国際大学名誉教授富川盛武君、沖縄県商工会議所連合会会長石嶺伝一郎君、沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科教授前泊博盛君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず佐喜眞淳君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

佐喜眞淳君 それでは、御紹介いただきました、宜野湾市から参りました宜野湾市長の佐喜眞でございます。

 本日は、衆議院予算委員会の沖縄での地方公聴会の開催に当たり、意見陳述の機会をお与えいただきましたこと、浜田委員長初め委員の皆様方に感謝を申し上げたいと存じます。

 私は、人口約九万八千名余り、町のど真ん中にある、市面積の約二五%の普天間飛行場を抱える宜野湾市より参りました。

 委員の皆様御承知のとおり、長年沖縄県民が強いられてきた過重な基地負担を軽減する、その象徴として普天間飛行場は、今から二十一年前のSACO合意において、今後五年ないし七年以内に全面返還するとの合意がなされました。

 町のど真ん中にある、世界一危険と言われる普天間飛行場の早期の危険性の除去と基地負担軽減は、県民の総意であります。返還合意の原点であったはずでありますが、現在、その原点はどこかに置き去りにされ、解決に向けた真摯な議論はなされておらず、市民は固定化への不安と、いつまで耐えなければならないのかといういら立ちを抱えております。市民の暮らしは、返還合意が行われた二十一年前と同様、いまだに航空機事故の危険性や騒音など、大きな負担が重くのしかかっております。

 この二十年余りの間に、人口は約一万四千人増加をし、基地を除いた人口密度は一平方キロメートル当たり約七千名を超してございます。東京や大阪府を超える規模となっており、SACO合意当時と比較して危険性や基地負担も増している状況であると言わざるを得ません。

 また、十三年前の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故では市民の恐怖は頂点に達し、オスプレイが配備されて以降は、特に夜間の騒音がひどく、資料にもございますけれども、深夜の騒音がことし百五十七件上がっております。二十二時から翌朝の六時までがもう本当にひどい状況でございます。本年度の苦情件数は現時点で過去最高となっており、市内外より悲鳴にも似た声が寄せられているのが現状でございます。

 このような中、昨年一月の宜野湾市長選挙において、普天間飛行場の固定化を許さず、一日も早い返還と危険性を除去するための五年以内の運用停止を公約に掲げた私が当選させていただいたことは、宜野湾市民の総意として普天間飛行場の固定化は絶対にあってはならないという民意が示され、普天間飛行場の一日も早い閉鎖、返還が市民の共有する願いであることが結果としてあらわれたものだと思っております。

 また、町のど真ん中に普天間飛行場が存在するがゆえに、道路などのインフラ整備や一体感のあるまちづくりが阻害されており、基地があるがゆえに基地対策を担当する部署が必要となるといったようなことが顕著な例でありますが、同規模の自治体と比較した場合にも、基地にかかわる予算が余分にかかり、財政的な圧迫も極めて高い状況にございます。

 町のど真ん中に基地があるがゆえに、市内どこへ行くにも基地を迂回しなければならず、南北に移動するための国道五十八号線や国道三百三十号線などを初めとする主要な幹線道路は慢性的に渋滞が起こり、市民も経済的な負担を強いられているのが現状でありますし、さまざまな分野へ影響を与えているのが普天間飛行場でもございます。

 また、返還期日が明確に示されていないため、狭隘な土地の中で小中学校を初めとする公共施設の計画的な整備ができない状況にあり、今でも基地の周辺に公共施設があるのが現状でございます。

 特に、普天間飛行場とフェンス一枚だけで隔てられている普天間第二小学校においては、授業中の騒音に悩まされることはもとより、米軍機の事故を想定した訓練を実施するなど、幼い子供たちが置かれている現状も看過することができないものでございます。宜野湾市の子供たちは本当に大変な状況であると言わざるを得ません。

 さて、沖縄県の試算によれば、普天間飛行場の返還による直接の経済効果は年間約三千九百億円とされており、返還前と比較し三十二倍の効果があるとされております。返還が実現されなかったことにより、宜野湾市はここで示された約三千九百億円という効果を享受できないでいると言っても過言ではございません。

 今般の防衛関係予算におきましては、沖縄の基地負担軽減などのために行うSACO・米軍再編事業などを着実に推進するため所要の予算が計上されておりますが、普天間飛行場の固定化は絶対にあってはならず、日米両政府で交わされた普天間飛行場の全面返還を確実に実現していく中において、地元の財政負担がないような支援について、国政の場においても御議論願えればと思っております。

 特に、五年ないし七年以内に全面返還するとされた普天間飛行場をいまだに抱え続けている宜野湾市においては、その負担に鑑み、再編交付金と同様な助成を受けることができるのではないかと考えております。

 一方、基地の跡地利用につきましては、一昨年三月にキャンプ瑞慶覧、西普天間住宅地区が返還をされ、今後の跡地利用のモデル地区として国から拠点返還地の指定を受け、国際医療拠点の形成に向け、政府による積極的な御支援をいただいているところであり、平成二十九年度予算においても、前年度同様の十億円、拠点返還地跡地利用推進交付金が計上されておりますことについては感謝を申し上げたいと思います。

 西普天間住宅地区の跡地利用については、普天間飛行場を初めとする、今後返還される大規模跡地につながるものであると考えております。私自身、西普天間住宅地区における国際医療拠点の実現に向けて全力で取り組み、これを普天間飛行場返還跡地の利用につなげ、宜野湾市や沖縄県だけではなくて日本全体の振興に寄与していきたいと考えております。

 また、嘉手納以南の千ヘクタールに及ぶ土地の返還につきましても、次世代のため、沖縄の飛躍的発展に寄与するとともに、日本全体の振興に大きくつながるものであります。普天間飛行場を初めとする返還が決まっている基地につきましては確実に返還を進めていただく必要があると考えております。そのためにも、国政の場で御尽力されております委員の皆様方のお力添えが必要でございますので、引き続き御支援方をお願い申し上げます。

 最後になりますけれども、沖縄の言葉に命どぅ宝というのがございます。命こそが宝である。二十数年間この普天間飛行場を抱えている宜野湾市民は、もうこれ以上普天間の犠牲にはなりたくない、そんなようなことを思っているんですね。何を優先すべきかということを、やはり国政の現場で、命が一番大切だということをぜひ地元の方々の身になって先生方には考えていただきたいと思います。

 もうこれ以上この普天間問題をこのまま次の世代に引き継ぐことはできませんので、宜野湾市長としてあえて大きく声を出して申し上げたいのは、とにかく普天間飛行場の一日も早い返還、危険性の除去をぜひ先生方にお願いいたします。よろしくお願いいたします。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 次に、富川盛武君にお願いいたします。

富川盛武君 富川でございます。

 本日、衆議院公聴会におきまして発言の機会をいただいたことを深く感謝申し上げたいと思います。

 私の方からは、沖縄経済振興等々について先生方に御理解、御協力を賜ればと思っております。

 まず一点目に、沖縄経済の実態でございますが、私は、二つのパラダイムシフトがあるのではないかというふうに考えております。

 一つ目のパラダイムシフトは、沖縄振興におけるパラダイムシフト。

 御承知のように、復帰以降、沖縄振興計画が今日に至るまで五回展開されてきました。三回までは、日本国家に組み入れられるということで、日本と平準化するような方向でいきまして、当分の間、格差是正という名のもとに、公共投資を初めいろいろな支援を賜りました。

 その中で、従来、三回目ぐらいまでは、沖縄は弱いから、やはり少しサポートしなきゃいけないというスタンスがあったかと思いますが、今回走っている、四、五年前に走った沖縄二十一世紀ビジョン基本計画、これは五回目の沖縄振興計画でございますが、そこから大きく潮目が変わってきたというふうに理解をしております。

 といいますのも、アジアのダイナミズムが相当うごめいてきまして、沖縄でも観光客それからホテル等への外資の投資等々が非常に活況を呈しておりまして、御承知のように、資料一の七ページ以降にも書いてありますが、日銀短観でもここ五年ぐらい、全産業でずっと全国を凌駕しております。それから県内総生産も上昇傾向。それから、一人当たり県民所得も一番低かったんですが、これも改善に向かって上昇傾向にあります。完全失業率も、三%台という前代未聞の低い水準に来ております。これは、我々は、マーケットが沖縄の可能性を認めたというふうに理解をしております。

 そこで、沖縄振興基本方針、これは二十四年に総理大臣が決定したものでありますが、その中に、沖縄はアジア太平洋への玄関口として大きな潜在力を秘めており、日本に広がるフロンティアの一つとなっている、沖縄の持つ潜在力を存分に引き出すことが日本再生の原動力にもなり得るというふうにうたわれております。当初は、これはそうあってほしいという願望に近かったんですが、先ほど見たように、経済的なパフォーマンス等々が、これが現実のものになりつつあるという感触を得ております。

 さらに加えて御説明いたしますと、日経ビジネスの二〇一二年の特集号で、沖縄経済圏というのを特集しております。その中にありますことは、航空、エネルギー、そして製造業、知られざる先端ビジネスが動き出している、その潜在力に、沖縄に人、マネーが流れ込む、もはや沖縄は日本の辺境ではない、アジアの重心は沖縄に近づいているということが書かれております。

 これが単なる文言だけでなくて、先ほど、資料一の七ページ、沖縄の経済が非常に活況を呈しております。この意味は、これまで振興計画において、沖縄は弱者救済的な視点がなきにしもあらずだったんですが、逆に、沖縄の潜在可能性が日本経済の再生に役立つ、ひいては牽引力となり得るというところまで来ているかと思います。

 そういう意味で、後で申し上げます沖縄の振興策、アジアのハブ、物づくり、それから観光等々、沖縄県ではアジア戦略構想、このダイナミズムを取り入れて、それを逸することなく沖縄経済にビルトインして経済の発展につなげるという政策を持っておりますが、その政策について御理解を賜って、ひとり沖縄だけの振興策ではなくて日本全体の発展につながる、いわば飛躍のジャンプ台というふうに御理解を賜って、いろいろな政策に対して先生方の御理解、御協力を賜ればと思っております。

 それからもう一点は、基地問題についてでございますが、この基地問題についてもパラダイムシフトが起こっているというふうに私は考えております。

 どういうことかと申しますと、ずっと従来、基地依存というのがありまして、例えば復帰前ですと五〇%以上、県内総生産に占める比率のことでありますが、軍関係受け取りが五〇%を超えた時代もあるんですが、最近は五%台になってきております。

 なぜこんなに激減したのかと申しますと、基地というのは経済主体でないという解釈があります。これは、企業とかそういう経済主体とは違って、自己増殖しないんですね。予算を加えればふえていきますが、市場原理にのっとって拡大していけない。ところが、企業とかそういうものは、マクロ的に見ると増殖をしていきます。その帰結として、沖縄の経済が発展すれば発展するほど基地依存率が低下してまいります。

 この数字が資料二の方に書いてありますので、後でごらんになっていただきたいと思います。資料二に、一番わかりやすい資料が三ページにあります。非常に激減しております。

 そういう中で、今までは、やはり基地がないと沖縄はやっていけないんでしょうというのが、まだまだ全国的にもそういう感が多いわけでありますが、これは、むしろ基地を返還した方がマクロ的にもミクロ的にも沖縄の経済の発展に非常につながるという事実がだんだん見えてまいりました。

 マクロと申しますと、産業連関表で計算をした結果、資料二の十一ページにありますが、沖縄県の観光だけの経済効果が、県の推計では一兆百四十三億三千四百万円となっております。

 私が最近、沖縄県の基地の経済効果、これは防衛省の予算とかSACOの費用とか、七ページにその細目が書いてありますが、それをまとめて産業連関分析という手法で計算した結果、二千八百五十六億二千八百万円ということになっております。はるかに観光の方が凌駕しております。ですから、仮にですけれども、基地が全部消滅しても、これだけの穴しかあかない。今、はるかにほかの産業が高い。

 ミクロ的に見ても、返還地は真っさらなキャンバスですので、たくさんのビジネスが入りやすい。御承知のように、ライカムで大きなショッピングセンターが入っております。それから、たくさんの世界水準の高級リゾートが北谷とか那覇市にも入ってきております。先ほど申し上げたように、外資が沖縄に投資をするということは、世界じゅうにあまたあるビジネスチャンスを全部吟味して、その結果、短期回収、収益が高いところに投資しますから、これはマーケットが沖縄の可能性を認めているんだというような解釈もできるわけです。

 そういう中で、返還地の方が隆盛をしているというこの事実は、今まで基地がなければ沖縄はやっていけなかったというその概念を転換させるパラダイムシフトではないかと思います。ですから、返還していくことが大きな問題で、今までは、安全保障の問題とか、それから犯罪、事故等の次元で議論されてきましたが、経済の視点で基地論が議論されると、これは、やはり基地は縮小した方がいいという新たな論点が出てきまして、これが新たなパラダイムシフトというふうに考えております。

 時間がないので、後で御質疑をお願いいたします。

 それから、先ほど申し上げたように、アジア経済戦略構想を沖縄県では練っておりまして、今、相当大きな波が沖縄県に来ております。観光客、特に外国人観光客も、四、五年前は二、三十万だったのが、今、二百万を突破しております。それから、沖縄県観光全体でも八百万、一千万も間近に迫っております。

 これが一過性のものかどうかも我々は吟味しましたけれども、今のアジアのダイナミズム、特に中間層の創出というものが観光需要を喚起いたしまして、これは重層的にアジアのダイナミズムが重なっておりますので、ここ当分、二、三十年はそのダイナミズムがうごめくのではないかというふうに考えておりまして、一挙に、爆買いのように、外国人の観光客が引くというのはちょっと考えにくい状況にあります。

 そうなってくると、アジアのスケールに合った、あるいはアジアのスピードに合った沖縄の振興というのが大事になってきます。これは、さっき申し上げたように、沖縄だけのためじゃなくて、日本全体の経済の飛躍のジャンプ台として御理解賜って、この拡充を、ぜひぜひ御理解と御支援をお願いしたいと思います。

 具体的には、アジアをつなぐ国際競争力物流拠点、それから産業クラスターの形成、世界水準の観光リゾート、アジアのスマートハブ、それから物づくりの拠点等々がありますが、後でごらんいただければと思います。

 最後に、沖縄振興特別交付金、いわゆる一括交付金についてのコメントをさせていただきます。

 これまで一括交付金は沖縄の振興において非常に効果的で、県及び市町村にすこぶる好評でございます。弾力的な運用ができるということもありまして、すこぶる好評でありますが、二点ほど先生方にお願いしたい点がございます。

 でき得れば、単年度ではなくて、やはり事業継続がありますので、継続年度で対応できるようにお願いをしたいと思います。

 それからもう一点は、沖縄県は、残念ながら執行率が悪いということで、本年度予算、少し削られましたけれども、この際の、いわゆる物差しといいますか、どういうふうなルールにのっとって評価がされたのかということを明確に示していただきたいと思います。各部署では明確に示されていると思いますが、具体的に言うと、執行率が高まったのに一括交付金が減額されたという事実がございまして、やはり県民に広くわかるような明確な物差しを提供していただければと思います。

 ちょっと時間過ぎて恐縮でしたが、ぜひぜひ沖縄の経済の実情について御理解と御支援を賜ればと思います。ありがとうございました。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 次に、石嶺伝一郎君にお願いいたします。

石嶺伝一郎君 ただいま御紹介いただきました沖縄県商工会議所連合会の石嶺でございます。

 本日は、このような機会をいただきまして、大変ありがとうございました。また、日ごろより沖縄振興に関しましては多大な御尽力をいただきまして、感謝申し上げたいと思います。

 私からも沖縄経済それから沖縄振興に関する意見を述べさせていただきますが、富川陳述人と若干重複するところもございますので、御了承願いたいと思います。

 まず、沖縄のポテンシャルについてお話をさせていただきます。

 沖縄のポテンシャルを語るときによく使われるフレーズは、沖縄は、日本の中央から見れば南の端だけれども、東アジア全体から見るとその中心に位置するということでございます。その地理的優位性に加えまして、多分、きょう先生方も沖縄に着いてお感じになったと思うんですけれども、冬の寒さから解放される温暖な気候、あるいはまた個性豊かな自然、文化というものが沖縄のポテンシャルでございます。

 したがいまして、このような沖縄の優位性あるいはまた潜在力を生かして、沖縄が日本のフロントランナーという形で日本経済再生の牽引役になるということ、それが、国家戦略として沖縄振興策が総合的そして積極的に推進されるということでございますが、それにつきましては、先ほど富川陳述人がお話しした内容でございます。

 それから二番目に、沖縄県の現在の経済の状況でございますが、これもお話がありましたように、基幹産業であります観光を中心に、個人消費それから雇用環境もともに好調に推移しております。

 観光では、昨年は八百六十万人を超えておりまして、四年連続の過去最高を更新中でございます。

 雇用関係につきましても、失業率が改善し、それから有効求人倍率も一倍台を記録するなど、着実に改善されているところでございます。

 それから、今年、平成二十九年の沖縄県の経済でございますが、国内景気とか、あるいはまた原材料価格、労働需給の逼迫といった注視すべき点はございますけれども、沖縄二十一世紀ビジョン基本計画に基づく各施策の展開、それから沖縄振興予算三千億円台の確保などによりまして、県経済全体としては引き続き好調に推移するものと考えております。

 ただ、一方で、県内の中小企業における景況感というものは、ことし一月まで、これは全業種平均でございますが、十八カ月連続のマイナスという形になっております。県経済全体の好調さが中小あるいはまた小規模企業にまで十分にまだ行き渡っていないというのが現状ではないかと考えております。県経済の産業そして雇用を支える中小・小規模企業にまでしっかりと経済の好影響が及ぶ施策を講じることが重要ではないかと考えております。

 それから、沖縄県経済の現状の課題そして優先施策について触れさせていただきます。

 ことしは、平成二十四年に県民を挙げて策定されました沖縄二十一世紀ビジョン基本計画の後期の五年のスタートであります。

 国、県におきましては、中間評価を経て、現在、基本計画の改定に向けた検討が進められております。沖縄県経済は好調と申しましたが、その好調な今だからこそ、ダイナミックな成長を促し、沖縄県が自立型経済を実現する中長期的な戦略が問われていると考えております。経済界といたしましても、国、県と連携をとりながら、沖縄振興計画を初め各計画、構想の実現に向け、引き続き最大限の努力をしていきたいと考えておりますが、特に幾つかの点についてお話をさせていただきます。

 一点目は、那覇空港の中長期構想についてでございます。

 入域観光客数、昨年は八百六十万を超えましたけれども、一千万人の目標達成が目前に迫っております。さらに、将来におきましては一千五百万人あるいはまた二千万人といった規模を目指すに当たって、先々を見据えた十分なインフラ整備が重要ではないかと考えております。

 那覇空港は、経済活動それから県民生活にとって重要な社会基盤でございます。その那覇空港が、現在、第二滑走路の増設工事を行っておりまして、平成三十二年には供用開始ということで工事が進められております。

 その二本目の完成につきましては経済界も大いに期待しているところではございますが、しかし、第二滑走路ができた後の飛行機の発着回数というものは、現在に比べて一・三倍ないし一・四倍程度の増にしかなりません。その発着の増を、せっかく二本の滑走路が、同時に離発着ができるくらいの距離をあけてやっているんですけれども、できれば、理想的にいえば当然離発着回数は二倍になるべきですけれども、一・三から一・四という状況が今予想されています。

 したがいまして、この空港機能の最大限発揮それから空港の利便性向上のためには、中長期的な観点からの検討が必要ではないかと考えております。

 それから、大型クルーズ船の拠点整備についてお話をさせていただきます。

 昨年のクルーズ船の県内の寄港回数は三百八十七回ということで、これは都道府県別に見ますと全国一になっております。沖縄県に入域します海外からの観光客、これは昨年二百八万人でしたけれども、その四割は海からのお客様でありまして、今後もその増加傾向は続くと見込まれております。

 このクルーズ、増大する需要に対応するために、那覇港の拡張整備に加えまして、那覇港以外の港湾整備も急務でありますが、その中で、国交省の方で、官民連携による国際クルーズ拠点形成というものができました。県内からは、沖縄本島北部の本部港、それから宮古島の平良港が選定されており、そのことに対しては改めて感謝を申し上げたいと思います。大型クルーズ船の運営、運航を、世界規模の海外企業とともに、ハード、ソフト面、両面から取り組みが進められると聞いておりますが、特にソフト面での取り組みについては、拠点化を進める上で極めて重要な要素と考えております。

 三番目に、国際物流拠点の形成についてお話を申し上げます。

 観光・リゾートそれから情報通信関連産業に続く、沖縄の地の利を生かしたアジアのダイナミズムを取り込めるような国際物流機能を活用した臨空・臨港型産業の発展が重要であると考えています。

 御承知のとおり、既にANA、全日空さんで航空貨物ハブが実現されておりますが、国際物流ハブとしてさらに発展するためには、空港、港湾のさらなる機能拡充、海上貨物と航空貨物との連携による物流環境の充実ということが重要でございます。

 また、輸送コスト低減の観点から、沖縄県内から国内外へ搬出する製品をふやすということも課題となっております。

 それから四番目に、沖縄振興の基盤となる人材育成についてお話をさせていただきます。

 産業界と教育界が連携をとりながら、沖縄県の産業振興のために真に貢献できる人材の育成というのが必要不可欠でございます。

 例えば、来年から那覇空港を拠点として航空機整備事業、MRO事業が開始される予定ですが、そこに必要な人材確保の一環として、平成二十七年から沖縄工業専門学校に航空技術者プログラムが開設されております。そこの講師としてANAさんから講師を派遣しているということで、産学連携による人材育成のよい事例だと考えております。そのような事例を人材育成のためにさらに多くつくり上げることが肝要かと考えております。

 それから、沖縄への外国人観光客が急増しておりますが、世界水準の観光・リゾート地を実現するためには、外国人観光客も満足する、質の高いサービスを提供できる人材育成が不可欠であります。

 例えば、県内の観光関連企業への語学あるいはまた人材育成研修への支援、そういったもの、それから、最近では、医療ツーリズム等に対応する外国人患者受け入れ体制の整備というのも必要になるかと思います。

 最後になりますが、沖縄は、地理的優位性、潜在力を有するといった一方、東西千キロそれから南北四百キロという広大な海域に多数の離島が散在しております。さらに、本土から遠く離れているということもありまして、構造的不利性というものを抱えております。この構造的不利性を抱える中で産業の振興、経済の発展を目指す、いわゆる島嶼経済の不利性の克服という大変難しい命題を抱えながらの沖縄振興をしなければいけません。

 このような中、これまで、五次にわたる振興計画のもと、社会資本の整備それから就業者数の増加、観光・リゾート産業の成長など一定の成果を上げてきておりますが、自立型経済の構築、確立にはまだ道半ばでございます。また、県内企業の九九・九%が中小・小規模企業でありまして、民間のみでさまざまな課題を乗り越えることは難しいといったことも勘案いたしますと、沖縄経済のさらなる発展、産業振興のためには、国、県そして経済界が一体となって自立型経済の構築と諸課題の解決に向けて取り組むことが重要だと考えております。

 地元の経済界としても、真の自立型経済の達成のために、少しでも近づけるよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。御協力のほど、お願いしたいと思います。

 私からは以上でございます。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 次に、前泊博盛君にお願いいたします。

前泊博盛君 前泊です。よろしくお願いします。

 ちょっと声がかれていますけれども、しっかり声を出していきたいと思います。

 お三人から既にもうたくさんの提案もあるので、重ならないような形で私の方からの意見を述べていきたいと思います。

 まず、ちょっとレジュメというか報告の方をお配りしてあるんですけれども、国家予算の審議のあり方としてどういうものが必要か。国民目線でいうと、どういう議論をしているか、国会の議論を聞いていてもなかなかわかりにくいものがあります。理由は、やはり大ざっぱな、大きな額で議論をされていて、詳細なその中身についての議論がわかりにくいというのがあります。ぜひ、事業内容がわかるような形、しかも、その予算の算定基準みたいなものも含めて、国会の中でも議論をしていただければというふうに思っています。

 それから、日本の財政とか予算についても、ほかの国はではどうなのかというようなところで、比較もしながらぜひ見せていただければというふうに思っています。

 それから、最近国会でもよく議論していますが、TPPの、アメリカが抜けることによってではどれぐらいの損失が出るのか、あるいは影響が出るのかというあたりも具体的な数字を持って議論をしてほしいというふうに思っています。

 その関連で、これは、訪米前、トランプ大統領と安倍首相が会談をする前にもう一部報道がありましたけれども、日本の年金を使って五十兆円ほどの経済貢献をアメリカにするというような話がありました。こういった問題については、根拠がどこにあるのかということも含めてよくわからない面もありましたので、ぜひ、国会議論の中でもう一度しっかりと取り上げてほしいというふうに思っています。

 何しろ、年金を使われるということになると、将来的な年金を受け取る側が、目減りをしていくことに対して学生たちの間でも非常に危機感を持っていて、もう払わない方がいいのではないかというような声も出ています。こういうことに対して、報道を受けて、どうなのかということをしっかりと国会の中でも議論してほしいというふうに思っています。

 それから、沖縄の関連、もう沖縄予算については富川先生からもありましたし、佐喜眞市長からもありました、石嶺会長からもありましたので、またちょっとはしょって、私の方からは防衛予算について少し指摘をしておきたいと思います。

 まず、これはもう政権にとっても非常に大きな課題となっていますけれども、辺野古の新しい基地建設問題というのがあります。

 先ほど佐喜眞市長からは普天間をいつまでほっておくのかという話もありましたけれども、辺野古に新しい基地をつくられることによってしか解決ができないというふうに言われていますが、それが本当なのかどうかというのがいつも十分な説明がないままに工事が強行されているような気がしてなりません。

 五つほど指摘をしましたけれども、まず経済的な合理性です。辺野古を建設するのに、新基地を建設するのに一体幾らかかるのか、その議論もないままに建設が強行されようとしていることに対しては非常に疑問を感じます。国民の予算を、お金を、血税を使って、なぜ他国軍隊の基地の建設を進めるのか、そのために幾ら使うのかという議論はしっかりとやってほしいというふうに思っています。報道とか、いろいろ言われているのでは、三千億円とか一兆円とか言われています。数字はしっかりと確定をした上でその議論を進めてほしいというふうに思っています。

 それから、政治的な合理性についてもいかがかというところでいうと、知事選、衆院選、参院選の最大の争点はこの辺野古の移設の問題でした。そこからすると、移設について反対という明確な意思表示を選挙によって示したにもかかわらずこれが強行されているという、この国は本当に民主主義国家なのかどうか、選挙民主主義の限界というのが沖縄では露呈しているような気がします。こういった問題についてもしっかりと国会の中で議論をしてほしいというふうに思っています。

 それから、軍事的な合理性。これも、歴代防衛大臣、なぜか大臣になると違うことを言うんですが、大臣になる前あるいは大臣が終わった後、はっきりと言っているのは、沖縄に米軍基地がある軍事的合理性というものがもう既に喪失をしているというふうに二人の防衛大臣が、経験者も含めて発言をしています。日本を代表する防衛の専門家がそう指摘をしているのに、なぜそのことに対して取り上げられないのかというのが不思議です。

 それから、法的合理性。これも、せんだってまで最高裁まで議論されましたけれども、前知事が下した判断の是非について議論をしていますけれども、現知事が下した判断こそ尊重されるべきであって、前知事が言ったことを根拠にして新基地建設を強行するということに対して、この国は本当に法治国家なのかというようなことの疑問が県民の中にはあります。むしろ、問題を放置している放置国家というふうに言われていますから、そういうことがないように、しっかりと指摘については議論をしてほしいというふうに思います。

 それから、環境的合理性の問題でも、沖縄では、山原という国頭地区の世界自然遺産登録の話もあります。しかし、その場所で、まさに米軍が訓練するために大規模な開発がされています。こういう問題についての整合性です。

 それから、大規模に返還をしたからそれが地元の経済に貢献するという言い方もしていますけれども、では、具体的にどういうふうに貢献するのかという話はありません。しかも、返還されるのは九割以上が国有地です。国有地を返還することに対して、いかにも沖縄県民に与えられるかのような印象を受けますけれども、これはさかのぼると、なぜ山原地域にこれだけ国有地があるのか、もともと琉球王国だったところに日本の国有地がたくさんあるのも不思議です。この根源的な問題まで含めて議論をしてほしいと思います。

 それから六つ目に、移設の根拠というのを入れてあります。これについては、先ほども話に出ていましたけれども、よく普天間が世界一危険な基地と言われています。しかし、これは添付資料にも入れましたけれども、危険性というのはどうやって確認をされたのか。世界一というふうに言われていますけれども、添付資料に入れましたけれども、沖縄県が出している過去の統計資料集の中で見ますと、三ページの右上の方につけましたのは米軍機の沖縄県内における事故の発生数ですけれども、これを見ると、全体で、復帰後これまでどれぐらい起こったか、六百七十六件が起こっていますけれども、基地別でいうと、普天間基地は実は十五件起こっているんですね。それに比べて、最大、どこで起こっているかというと、実は嘉手納飛行場が四百六十二件も起こっています。基地別に見ると嘉手納の、三十倍も多いこの数字がなぜ無視されて、嘉手納を問題視しないで、普天間の十五件が世界一だと言われているのか。果たして政府が世界一と言っている根拠は何なのかというのもしっかりと示した上で問題の対処をしてほしいと思っています。

 それから、防衛予算についても、電話帳四冊分ぐらいもあるかのような予算書が届きましたけれども、ざっとめくって調べてみたんですが、オスプレイについては記述がない、探せなかったんですけれども。十七機を買うということで、今年度五機、次年度以降四機ずつ買っていくということですけれども、これの詳細な額、三千六百億円とか三千七百億円と言われていますけれども、その算定基準を出してほしいと思います。

 これは、報道によると、予備エンジンが四十基も必要だという話もあります。なぜ、十七機で四十基も予備エンジンを買うのかということですね。聞くところによると、オスプレイのエンジンは、通常二千時間ぐらい使えるエンジンが四百時間ぐらいですぐにがたが来る、メンテが非常に大変だという話も聞きます。こういったところまでいくと、購入費だけじゃなくてその後の維持管理費まで含めて予算としてどれぐらい使うのかというめどがないと、非常に大きなダメージを受けるような気がします。

 それから、思いやり予算についても、稲田防衛大臣が日本側が駐留経費八六・四%を負担しているという発言でしたけれども、これは資料の右側の方に入れましたけれども、この駐留経費の見方そのものが防衛大臣は非常に甘いような気がします。しっかりと駐留経費は幾らかということを押さえた上で議論をしてほしいと思っています。

 その上で、辺野古に新しい基地をつくる、これも軍に対する貢献ということになりますから、その予算まで含めて対米貢献度として整理をしておく必要があるというふうに思っています。

 あと、沖縄予算については富川先生からももうたくさん指摘がありましたけれども、一括計上方式、これがあるために、沖縄予算、もらい過ぎているという言い方もします。それから沖縄振興予算という言い方もします。まるで、ほかの県にはない予算を特別にもらっているかのような印象操作が行われているような気がします。決してそういうことではなく、四十七都道府県がもらっている政府予算なのにもかかわらず、沖縄だけがもらっているかのような審議をするのもおかしいということで、そのあたりについてもしっかりと事実を踏まえた上で議論をしてほしいというふうに思っています。

 それから、一括交付金の話についても、もともとは、現在ある予算でも使い勝手が悪い、ひもつきになっているというようなところを自由に使えるようにということで落とされたはずなのに、実際に執行しようとすると、政府から縛りがかかって、これは既存の予算書にあるからだめというようなことで使えないということもあるようです。こういった問題も含めて、一括交付金の本来の趣旨を達成できるような形で使ってほしいと思います。

 沖縄については、先ほどありました三K経済、基地と、そういった問題もありますけれども、たくさんの可能性も指摘されている、そこに傾斜配分をしてほしいと思います。

 以上です。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

浜田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。國場幸之助君。

國場委員 貴重な御意見、まことにありがとうございます。

 まず、石嶺会長に質問を何点かしたいと思います。

 私たちは、予算委員会で、午前中、那覇空港、航空自衛隊の視察をしてまいりました。石嶺会長からの発言にもありましたように、那覇空港というものは、沖縄の地理的な優位性を生かし、なおかつ、島嶼県、離島県としての不利性を克服する最大の沖縄県の基幹インフラであると思っております。シンガポールのリー・クアンユーさんが、かつて、島嶼圏、島嶼地域において、その国の地域の空港や港湾機能以上にはその地域経済は発展しないんだ、そういう言葉を残しておりますが、私は、これからの沖縄の発展を考えるときに、那覇空港のあり方というものは最大のテーマの一つであると考えております。

 観光入域数も八百六十一万人と、過去四年連続で最高を更新しておりますし、その一方で、きょうも航空自衛隊のブリーフィングを受けたんですが、那覇空港の特徴として、航空自衛隊、陸上自衛隊、海上自衛隊、三つの自衛隊の部隊が駐留する日本で唯一の空港でもございます。そして、海上保安庁第十一管区、これは日本最大の管区となっておりますけれども、海上保安庁も那覇空港を活用している。

 そういう中におきまして、民間の飛行機そしてまた自衛隊機、軍民共用という側面もありますので、非常に過密状態にあるわけでございます。二〇二〇年にはもう一本の滑走路が完成してまいりますけれども、会長からの発言にもありましたが、二〇一五年の那覇空港の離発着の容量、これが今、十五・八万回でございます。それが、二〇二〇年にもう一本増設されたとしても十八・五万回。三万回もふえないというわけであります。ちなみに、自衛隊の方は二・一万回ぐらい毎年離発着の回数がありますけれども。

 那覇空港という、沖縄の県経済において、そしてまた日本とアジアとのかけ橋としての役割、ひいては南西地域の安全保障の側面という重要な側面を踏まえた際に、那覇空港の容量というものを抜本的に向上させるためにはどのような将来構想を必要と考えているのかという点につきまして、会長のお考えをお聞きしたいと思います。

石嶺伝一郎君 ありがとうございます。

 先ほど、飛行機の発着の能力が三、四割程度しか伸びないというところですけれども、これをもう少し詳しく申し上げますと、現在の滑走路を仮に第一滑走路、それから新しくできるところを第二滑走路と呼ばせてつけますと、第二滑走路に着陸した飛行機が現在の空港ターミナルに行くには第一滑走路を横切らないといけない。そうすると、第一滑走路を横切るに当たっては、第一滑走路に離発着する飛行機が優先されますから、そこまで待たされる形になるということで、そういったものが一つ、発着回数をふやさない要因がある。

 それからもう一つは、第二滑走路に着陸した飛行機が第一滑走路、ターミナルに着くまでに、第一と第二の間は一・三キロぐらいの距離があります。そこを地上走行してやる、しかもまた第一滑走路で、そこの離発着があるときにはそこでまた待つということになると、着陸してもなおかつお客様が飛行機から出られないという状況が続く。

 そういったものを見ると、効率性という意味では、現在のターミナル、第一滑走路にあるターミナルの位置では非常に効率性が悪い。それをどうするかといいますと、これは、例えば、仮に第一滑走路と第二滑走路の間に新しいターミナルをつくると、それが両方有効に使えますから、今の一・三倍、一・四倍がまたさらに大きくなる、一・八とかという部分になっていくんじゃないかというような形でございます。

 また、これも含めて、那覇空港の効率的な運用という部分について、それから使う側から見たターミナルビルについて、ここはもう少ししっかりと抜本的な検討を加え、中長期的に構想を練る必要があっていまして、それは経済界としても、これからいろいろな形で勉強しながら国とか県に提言をしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

國場委員 ありがとうございます。

 那覇空港の第一滑走路と将来の第二滑走路との間に旅客ターミナルを移転するという、本当に大胆、かつまた将来への提言もいただきました。ぜひとも、地元の経済界として、基幹空港である那覇空港の将来ビジョンというものは、絶えず連携をとっていきながら、その構想の形に、課題の解決に努めていきたい、このように思っております。

 もう一つ、那覇空港の特徴としましては、クルーズ船のことにも言及されておりましたが、空港と港が非常に近いという、それは優位性であると思っております。

 例えば、今、外航クルーズ船の寄港の回数は沖縄県が日本で一番多い県になっておりますが、クルーズ船と飛行機を組み合わせたフライアンドクルーズという観光の形態、さらには、今、那覇空港は、二十四時間空港という優位性を生かして、航空物流の重要な拠点にもなっております。きょうとれた青森のホタテがあしたの朝の香港の朝食に出る、また、熊本のイチゴとかメロンが翌朝、香港やシンガポールに届く、また、愛媛のタイとかブリが翌日のマレーシアのランチで食べられる、これは全て那覇空港の優位性を生かした新しい日本の、日本全体に貢献できる物流のロジスティックのモデルであります。

 しかし、その一方で、課題というものは、例えば、外航クルーズ船が若狭のバースの方に寄港する際に飛行機の飛行ルートの真下の方を横切るために、離発着の際に、那覇空港の航空機が、クルーズ船が通過をする間上空で待たされるという事態も起きております。

 空港と港湾機能が近接しているという優位性を生かして、そしてまた、なおかつ、それがゆえの課題というものを克服していくために、この空港と港湾の機能の有機的な連携、ひいては将来の那覇軍港の跡地利用も含めて、どのようなお考えを持っているかという点についてお聞かせください。

石嶺伝一郎君 特に私の方からは物流との絡みでお話をさせていただきますけれども、まず、航空物流につきましては、海上の物流に比べて日数が大幅に短縮されるという高速性のメリットがあります。それから、海上物流については、航空輸送に比べて運賃が大幅に安いというものがあります。したがって、航空運輸の高速性とそれから海上運輸の低コスト、この二つのメリットを、この二つが連携することによって国際物流ハブという形成ができるのではないか。これは、もう既に国の方でもいろいろな形での施策を打ちながらやっております。そういう中で、必要なものがあるんじゃないか。

 ただ、今の那覇空港のANAハブの付近、それからロジックセンターとか、そういうもので満杯になっています。だから、将来的に、さらにその規模を拡充するための用地という部分はこれからどう確保するかという問題が出てくるかと思います。

 それから、港と空港を結ぶ道路につきましても、例えば、今は民間のロジックセンターからトラックで公道を通ってANAの貨物ハブに行くというような形になっていますけれども、この効率性を今後どうやっていくかということも含めて、まだまだ取り組むべき課題があると思います。

 それからもう一つは、よく言われていますけれども、沖縄から海外あるいは国内外に物を運ぶ、物そのものがまだまだ絶対数が足りないということもありまして、海上物流ですと片荷、片道は空で行かぬといけないというようなところもありますので、そういった片荷解消に向けた支援とか貨物量の増大についてもこれから課題としてしっかりと取り組むべき事項だと考えております。

 以上でございます。

國場委員 ありがとうございます。

 続きまして、富川先生に何点かお尋ねしたいと思います。

 富川先生は、経済の専門家として、そしてまた沖縄県の県庁の参与として多くの実績を残しておりまして、また、今度副知事にもなられたんですか、これから、もうなられたんでしょうか、非常に多くの面で活躍をされております。

 その富川先生にまず最初にお尋ねしたいことは、ちょうど五年後に沖縄振興計画が期限を迎えます。今までは、本土との格差の是正とか沖縄の優位性を生かすとか、いろいろな段階があったかと思いますが、次の、復帰五十周年以降の沖縄振興の将来の姿、これをどのように描いているのかということについてお尋ねしたいと思います。具体的には、国家戦略としての沖縄振興というものが今の安倍政権の一つの目標でもあるんですけれども、国と県の役割というものをどのように考えているのか。

 例えば、次年度の沖縄予算、三千百五十億円なんですが、二百億の減額部分が、一括交付金の不用額、繰り越しも含めて、削減の部分が注目をされているんですが、私自身が非常に注目をしている点は、新規で、沖縄の産業イノベーション創出事業、沖縄離島活性化推進事業、これは額としましては約十億と、そんな大きなものではないんですけれども、つまり、国家戦略としての沖縄振興という点を考えた際に、産業イノベーションの人材や有人離島を守るという局面に関しては引き続き国が関与していくという部分だと捉えているんです。

 富川先生も、沖縄の自立性というものは、やはり、国に依存しなくてもアジアの中でダイナミックに活躍できる沖縄を目指していく、そういうビジョンを描いていると思いますけれども、その際の、将来の沖縄の、次の、五十年以降の振興計画の姿というものにどのようなことを描いているのか、この点についてまずお聞かせください。

富川盛武君 おっしゃるとおり、あと五年で沖縄振興計画が切れます、沖縄二十一世紀ビジョン基本計画ですが。これについては、その前に、二〇二〇年に、空港の滑走路二本、それから西原にある大型MICEの完成が予定されております。そして、並行して東京オリンピックもありまして、先ほど申し上げたように、この期間に、アジアのダイナミズムのスケールに合うように、スピードに合うようなハード、ソフトのインフラ、それから規制緩和というものを今のうちに仕込んで、練り込んでいって五年後に開花していく。

 五年後の振興計画については、まだ不透明でありますのでこれ以上私から申し上げられないんですが、おっしゃるように、今、我々の方でも、少なくとも中長期的な、五年後の沖縄というものがどういうふうに展開するかという青写真を計画しております。

 その中で、一つのポイントは、先ほど申し上げたように、沖縄というのは当然島嶼社会でありますので、やはり過去の沖縄の、琉球の時代にもそうだったんですが、小さな島が発展する場合には外との関係性がなければ発展はできません。当時の万国の津梁というのは、今で言う国際的なネットワークを構築して沖縄がこれだけ隆盛をきわめたというふうに理解しております。

 今の沖縄においても、制約条件が多うございますので、発展するためにはネットワークが大事だ、そうすると、当然、おのずから臨港産業、臨空産業というのが非常に重要な働きをするかというふうに思っております。先ほど國場先生もおっしゃったように、島嶼社会が発展するための要件としては、港、港湾が大事であるということは全く同感でございます。

 さて、そういうことを考えたときに、今の那覇空港それから那覇港湾も含めて、あるいは他の多くも含めて、どれだけの規模になるかというのは我々も今勉強中でありますが、少なくとも、今のアジアのダイナミズム、これだけ急速に二、三十万が二百万も来るような状況も来ていますし、この動向もまた当分続くと考えると、やはり現場で相当オーバーフローを来しております。

 そういうものを今のうちから先を見込んで展開していくということになると、國場先生がおっしゃったように、では五年後、その将来像は何かというと、やはり基本は臨空・臨港産業、そしてその後に観光とかもいろいろ立体的に組み込んでいかないといけないわけですが、まず個人的な見解として申し上げると、やはり一番足場を固めるのは、臨空産業、臨港産業、あるいはソフト、ハードのインフラの仕込みかと思っております。

 一括交付金につきましても、おっしゃるとおり、非常に有効にイノベーション等々で発展しているところもありますし、これはもう本当に敬意を表したいと思います。

 そして、おっしゃるように、人材育成がありまして、この人材育成も同じようにオーバーフローを来しております。

 いろいろな現場では人手がいなくてお客さんをお断りするということもありますし、あるいは、こういう先進的なものを展開する、沖縄をフロンティアとして位置づけられていますので、本土と同列ではなくて、一歩進んだ目玉をつくっていくことによって、それがうまくいけば、日本、本土にも移植するという考えも持っているわけでして、フロンティアの経済戦略というものを今考えておりまして、そうしたときに、どうしても人材育成が不可欠になってまいります。

 人材育成も、我々は今、策を練っておるわけですが、めり張りをつけて、スケールが大きいだけじゃなくて、それを支えるような人材の育成も並行していかなければいけないと思っております。これに関しましては、正直申し上げて、各省、国との連携も非常に重要なことではないかと思いまして、我々のシナリオ、我々のプロジェクトをお示しして、ぜひぜひ御理解を賜って、それをよしとするのであればこういうふうな展開をしていただきたいというふうに思います。

國場委員 ありがとうございます。

 ぜひとも富川先生には、副知事にも就任されるわけですので、復帰五十周年事業というものをどのように描いていくのかということも構想し、それを形にしていただきたいと思っております。

 私は、一括交付金というものは、沖縄の自主性というものを重んじる点からは大変に貴重な制度である、予算措置であると思っておりますけれども、同時に、沖縄が自発的に、内発的に構想し、提案をし、それを国が査定していく、そういう形態になっていないかということは若干懸念をしております。

 つまり、国家戦略としての沖縄振興という言葉があるとすれば、日本政府として、日本全体を大局的に見据えた上で、沖縄の優位性を生かしていくためにはこういう事業が必要なんじゃないかということを、県と連携をしていきながら、その最初と申しますか、一括交付金という制度を利用した上での日本国政府の沖縄の有効な生かし方というところを、ぜひとも経済の専門家でもある富川先生との連携の中で形にしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。(富川盛武君「連携よろしくお願いいたします」と呼ぶ)はい。

 また、もう時間が迫ってまいりましたので、最後に基地の問題についてお尋ねしたいんです。

 佐喜眞市長、本当に、普天間の一日も早い閉鎖、撤去と、そして、沖縄を取り巻く、日本を取り巻く南西地域の安全保障の緊迫した状況というものを踏まえた上で、抑止力の維持、そしてまた負担の軽減という、非常に難しい連立方程式を解いていかなければいけないという課題に直面していると思います。

 しかし、普天間の返還が合意されて二十一年間動いていないという現状に本当に心労しているかと思いますけれども、その中で、佐喜眞市長が描く沖縄の安全保障のグランドデザイン、つまり、在日米軍基地にしても自衛隊の役割にしても、沖縄県民の理解なくして日本の安全保障というものは機能していかないわけでありまして、そういう点で、沖縄の基地の一番難しい象徴でもある普天間を抱える首長としてどのようなメッセージを発することができるかということは、やはり私はみんなが注目しているかと思いますので、最後に、市長の思いと安全保障に対する構想と申しますか、お考えというものを聞かせていただきたいと思います。お願いします。

佐喜眞淳君 ありがとうございます。

 私は宜野湾市長でございますから、国家間でいう安全保障というものに対して答弁するのはちょっと重みがあると思いますけれども、いずれにしても、私は日米安保というのは必要だと思っております。

 そういう中においては、私は地方自治体の長でございますけれども、やはり日米間が合意した普天間の返還というのは、着実に前に進めて返還するべきだろうと思っております。また、千ヘクタールと言われるような嘉手納以南の返還はしっかりと実現していく。その返還跡地をしっかりと、国の国策という立場から、沖縄県民と、あるいはまた地方自治体も含めて一緒になってそれを描いていくというのが沖縄の振興あるいは日本の振興に寄与するものだと理解してございます。

 ぜひ、先生方におかれましても、やはり沖縄の実情というものをしっかりと理解していただきながら一つ一つ前に進めていく。そのために必要なのが普天間飛行場の返還だと思いますし、その返還のためにはどうしても地方自治体も含めて住民のコンセンサスが必要だと思いますから、それを丁寧に説明していただきながら、昨今のアジア情勢を見てもやはり安全保障というのは必要だという認識のもと、いかに沖縄県民の方々に理解を示されるようにやっていくかというのが必要だと思います。

 その中で、在日米軍というものも七十年以上沖縄にいるわけですから、逆に言うと、アメリカの国民がそこにいる、アメリカの国民とよき隣人としての交流も含めて、沖縄でしかできないことを新たにつくるというのも私は一つの案ではないかなと思いますし、例えばフェンスで閉ざされている環境というものを、何か、アメリカと、沖縄を通して日本との交流、そういう施設とか、あるいはそういう交流の機会というものを与えるということは極めて重要だろうし、また、そういうことがあることによって、次の世代に夢や希望や新たな産業や新たな価値観が芽生えると思うんですね。

 今までの、復帰四十数年たって、あるいは戦後七十数年たって同じようなことをするのではなくて、新たな道を、自分たちのいわゆるモチベーションを高くしながらやっていく。その中で、国民の安全やあるいは平和を、沖縄県民が貢献しているという自負心というものも必要だと思います。そのためには、やはり沖縄の基地負担を一刻も早く軽減していただきながら、基地のある、いわゆる提供施設というものは、日本国民全ての皆さんが理解をし、一緒になって考えていく。それが沖縄にとっての、二十一世紀沖縄のビジョンが実現するものだと思います。

 沖縄の可能性というのは、今、富川先生初めいろいろな方々が申し上げましたけれども、本当に次のステージに行くようなやはり価値観というか考え方がないと、何かいつまでも同じような、十年前とあるいは四十年前と七十年前、同じような感覚ではよろしくないのかな。だから、アメリカの在日米軍があるのであれば、そういうことも活用できるような仕組みもどこかで考えていただければいいのかな。

 ただし、やはり安全保障というのは絶対的に必要だと思いますので、やはり国民の平和を堅持するためには、さまざまな角度から御議論していただけるようにお願いをしたいと思います。

國場委員 ありがとうございました。

浜田座長 次に、小川淳也君。

小川委員 民進党の小川淳也と申します。

 きょうは、四名の陳述者の皆様、ありがとうございます。

 私、実は二十年前に沖縄県庁で勤務をいたしておりまして、当時、小学生の女の子が米兵の暴行を受け、県民総決起集会には家内と二人で参加をいたしました。その後、普天間合意、返還合意がなされて今日に至っているということで、大変じくじたる思いを抱えつつ、ちなみに、その後生まれた娘には、ユウナの花からとりまして友菜と名づけて、それぐらい、第二の故郷というぐらいの思いで本日参っております。

 まず、富川、石嶺両陳述人にお聞きしたいんですが、トランプ政権誕生の受けとめについて、沖縄県政財界の受けとめについて少しお聞かせください。

 国会でも今この話題で持ち切りでございまして、日米関係はもとより、さまざまな国際情勢、ひいては沖縄の経済あるいは安全保障環境に重大な影響を与えかねないというふうに感じております。

 そこで、富川陳述者には、現在、安倍政権は、世界に例を見ない形でこのトランプ政権と密接に距離を縮めています。このことに対しては、非常に大きな評価もあれば懸念の声もあるということでございます。これから副知事として沖縄県政のかじ取りを務められるお一人として、トランプ政権の誕生、そして、現在の政権、政府のアメリカ・トランプ政権との距離感を沖縄から見てどうごらんになるかについてお聞きをしたい。

 石嶺陳述者には、特に、現政権の安全保障政策あるいは沖縄の基地負担の正当化の根拠として、中国脅威論、対中脅威論、対中警戒論が非常に背骨にあるというふうに私は感じておりますが、私が沖縄で働き、暮らした経験からいって、余り沖縄の人には、対中脅威論、対中警戒論というのは存在しないというふうに受けとめております。この辺がまさに内地と沖縄との感情的なずれにもつながりかねないというふうに感じておりまして、この対中脅威論を背にしたトランプ政権との接近といったようなことについて、少しコメントいただけないかと思っております。

 両陳述者にお願いしたいと思います。

富川盛武君 大変大きな枠の御質問で、正直申し上げて返答に窮するわけでありますが、一研究者の視点からということで申し上げたいと思います。

 一つは、トランプ政権の政策に個人的にも興味を持っておるわけでございますが、かつてモンロー主義があったように、保護主義というのは、長い目で見るとどうしてもうまくいかないのではないか。もとより、中の資源で充当できれば発展するかもしれないが、これは限界が来るだろう。

 もう一つは、やはり根底にあるのは、ピケティが指摘するように、大きな格差があって、どんどん格差が広がっている。この格差の是正というものは、多分、今の私の見解では、トランプ政権の政策では解決できないのではないかというふうに思っております。

 この二つのほころびがちょっと心配でございます。

 直接沖縄に対する見解というのは、基地問題と経済の問題がありますが、基地問題は、この前、安倍さんと一緒に、ほぼ現状維持に近いということで、我々としては、これまでのように、基地は、応分の負担はともかくとしても、過重な負担というのは厳しいし、さっき申し上げたように、経済的な視点からも、これは縮小していった方が沖縄の発展につながるという見解でございます。そういう意味では、今のところ、従前と余り変わりはないかなという感じはしています。

 経済の面でいくと、TPPがどうも頓挫してしまったような感じがありまして、それは、沖縄の農家にとっては非常に安堵感があるかと思いますけれども。

 逆に、今、アジア経済戦略構想では、先ほど申し上げたように、コールドチェーンと申しまして、北海道のシャケをリードタイムが短い時間でアジアに展開できる。それから、今、福建省とは、MOU、覚書を締結しておりまして、沖縄産のものをアモイを経由していけば迅速な通関ができるとかいうことがありますと、特に食品等については、沖待ちが一カ月とかいうような状況の中で、沖縄を経由すると早目に着くかもしらぬという情報が飛び交うと、沖縄の空港が先ほど言ったように一挙に注目されて、沖縄を経由していくということもできるでしょうし、これは、トランプ政権と同じこと、そういう攻めの、沖縄も今やっている状況です。

 FTAで日本とどうなるかわからないんですが、期待があると同時に、一方でまた、あれだけ激変するような政策に翻弄されるのはちょっと困ったものだな。常に沖縄は外的な要因に翻弄された歴史があるものですから。

 ちょっとお答えとしては不十分かもしれませんが、今、感触的なところで失礼します。

石嶺伝一郎君 大変難しい質問でして、中国脅威論が沖縄の中でどうだということですけれども、これは、一概に脅威論がありませんとも言えませんし、ありますとも言えませんし、両方あります。ですから、さまざまな意見が沖縄にあるということは御承知いただきたいと思います。

 例えば漁業の従事者にとっては、尖閣の海域に漁業に行くのは大変怖いという話も聞こえてきます。ですから、脅威論について、再三申し上げますけれども、単純にここだというようなものは、なかなか私が耳にする中では整理はできないということでございます。

 以上です。

小川委員 ありがとうございました。

 両方の感覚がわかる人間として、そこのずれを少し心配している立場からのお尋ねでございました。

 再び富川陳述者にお聞きをしたいんですが、先ほど、今年度予算の減額について、その基準を示すべきだというお話がございました。きのうの赤嶺先生と安倍総理との間のやりとりも、きょう本県においては大きなニュースになっているようでありますが、やはりこの振興予算と基地問題とはきちんと区別して考えるべきだという伝統的な日本政府の考え方からしますと、少し最近の政府の立場はここに踏み込み過ぎているのではないかというふうに、ちょっと野党の立場から懸念をしております。

 したがいまして、この振興予算のあり方と基地問題とがリンクづけされることに対する懸念なり、あるいは牽制なりという立場から、少しコメントをいただけないかと思います。

富川盛武君 私は、経済を研究している研究者の一人として、沖縄の振興についても、ちまたで言うところのリンク論というのがあるんですが、それはあってはいけないことではないかと思っております。

 先ほども申し上げたように、沖縄振興の位置づけというのは、復帰後は、格差是正のもとに日本の国体のバランスを平準化するということで引き上げてもらったわけですが、今や非常に大きなジャンプ台になりつつある中で、そこに政局とか政治的な要因が絡んでくると、本来の経済の仕組みがゆがめられてしまう。

 ですから、一括交付金につきましても、非常にありがたい存在で、これは釈迦に説法ですが、日本の地方分権の中でこういう先鞭的な予算の使い方をするというのは、フロンティアとしての位置づけもありますし、沖縄の一括交付金の使用が非常に効率的でという判断になれば、当然また全国にも普及していくでしょうし、そういう意義づけもあると思っています。

 すこぶる好評で、ある部門においては非常に効果的に展開していると思われるわけですが、今回、執行率が高まって、県も努力して頑張ったにもかかわらず減額というのは、どうもその物差しがちょっとよく、お互いにそごがあるというような感触を受けますので、やはり、国家の予算ですからちゃんとしたルールにのっとってもちろんやられると思うんですが、それをぜひ、県民の目線から見てもフェアだとわかるような展開をお願いしたいというふうに思っております。

小川委員 ありがとうございます。

 その点は、野党の立場からもしっかりとチェック機能を果たしていきたいと思っております。

 実は、五年前に沖振法を抜本改正したときに、民主党政権でございまして、私どもも、担当者の一人だったんですが、やはり、日本の成長の最後列にいた沖縄ではなくて、アジアの成長の最前列にいる沖縄というふうにコンセプトを大きく変えたいという野心は当時からありました。五年たって、よかったところとそうでないところと、また中間的な検証は必要だと思うんですが、大きくはそういう文脈の中で今後の沖縄振興を考えていきたいと思っています。

 最後に、佐喜眞陳述人と前泊陳述人にちょっと基地問題についてお聞きをして、質疑を終えたいと思います。

 佐喜眞市長にぜひお聞きをしたいのは、昨年の再選、まことにおめでとうございます。非常に厳しい環境下での選挙戦だったと思いますし、心より敬意と祝意を申し上げたいと思うのですが、一方で、中央政府の立場から、当時の宜野湾市長選挙の結果をもって辺野古移設が沖縄県民から一定の信任を得たというような発信があったことに、少し私は疑問を持っておりました。

 といいますのも、非常に宜野湾市民にとっては酷な選挙だった、その限りにおいてはですね。そういうふうに受けとめておりまして、やはり地理感覚のわかる人間からしますと、まさに庭先の米軍基地ですから、どこでもいいから出ていってほしいというのが心情であって、だからこそ、当時の佐喜眞候補は、返還先あるいは返還手法としての辺野古移転は明言されなかったというふうに受けとめております。

 したがって、さきの浦添市長選挙もそうでありますが、この普天間近郊における地方選挙の結果をもって、基地の撤去に市民が意思を示したことはそうであるとしても、それが辺野古であるということまで追いかけて追認するものではないと私は思うんですが、その点に対する御見解を佐喜眞陳述者からいただき、最後に前泊陳述者からは、今、私どもは民進党でございまして、民主党政権時代に、この辺野古問題をめぐる一連の混乱なり、そして県民の皆様にも多大な御迷惑をおかけしたということをもって、今でも前科がある、十字架を背負っているという気持ちでおります。

 しかし、党内には、果たして辺野古が唯一の選択肢なのか、そして辺野古移設にこだわるべきなのかということを、余り公の場では言いませんけれども、党内で、さまざまな議論の中ではよく出る意見、いまだにそうなんです。

 この点、私どもは過去の十字架をどこまで対沖縄県民との関係で引きずるべきなのか、きちんと抱えるべきなのか。あるいは、どこかの時点で、国際環境、日米関係も大きく変わるとすれば、その過去の呵責をあえて乗り越えて大きな発信に行き着くべきなのか。そこは非常に大きな分岐点だというふうに自覚をしているんですが、そういう民進党内の、旧民主党政権に所属した者の葛藤をお聞きになった上で、ぜひ御助言なりあればいただきたい。

 この二点、お願いいたします。

佐喜眞淳君 まず、普天間の件でございますけれども、きょう資料としてお渡ししているこのパンフレットをごらんになっていただきたいと思います。

 その裏ページになりますが、先ほど陳述でも申し上げましたけれども、もう既に二十一年たっている。二十一年前の合意というのは、一九九六年十二月二日のSACO合意最終報告なんですね。釈迦に説法ではございますけれども、読ませていただきますが、今後五年ないし七年以内に十分な代替施設が完成をした後に運用可能となった場合に普天間飛行場を返還する、これがある種条件だと思います。

 二十数年というのは、我々にとっては貴重な時間だったんです。五年ないし七年、二〇一四年度、それも過ぎてまいりました。常に宜野湾市民が危険にさらされていて、常に負担を強いられていて、地元感覚が中央政府の中でどれぐらい共有されているか私はわからないですけれども、そういうことを考えたときに、一刻も早く、優先は普天間飛行場の危険性の除去と基地負担軽減が原点だったんですよ。

 二十一年たちました、先生。当時、民主党政権のとき、私は市長に当選をいたしましたけれども、あのとき県民は、最低でも県外というのは物すごく喜んだはずなんです。ただし、時間がたてば、また辺野古に回帰している。その落胆というものは多分宜野湾市民が一番持っていただろうし、我々はどうすればいいかというようなものが感情的に芽生えながら来たと思います。

 私は、昨年の一月に選挙に当選したときに、まず公約で挙げたのは、固定化は絶対あってはならないと。日米両政府は、辺野古が唯一であり、継続使用を避ける唯一の手段であると。私は、さまざまな御意見があるにしても、宜野湾市の市民の生命財産を預かる市長としては、個人的な見解よりも、むしろそれを否定することはできないと言わざるを得ません。

 何が原点であるかということをもう一度やはり真摯に受けとめていただけない限りこの問題は解決しないだろうし、我々が一番苦しんでいる普天間飛行場問題、危険性の除去もそうですけれども、まちづくり、あるいは、さっき言ったように慢性的な渋滞、常に基地を迂回していくような宜野湾市民、ガソリン代、時間的ロスというものは、ほかの市町村と比較しても多大である。それに対して何らかの形での、やはり一歩前に進んでの負担軽減策が必要だろうというのが私の見解であるし、それが宜野湾市民の総意だと思います。

 そういう中からすると、もう二十一年という時間は返ってきませんけれども、二十一年をつくる未来というものは、国の考え方として、やはり普天間飛行場が日米両政府で返還を合意したスタートなんだ、嘉手納飛行場は返還合意はされていません、だから、まずできることを、普天間飛行場を一日も早く返還することが、次のステージ、次の世代へと、いい意味での沖縄もバトンタッチができるものだと思いますから、ぜひそういう視点の中で、国会議員の先生方にも、まずそのあたりが重要であるということを再認識していただきたいと思います。

前泊博盛君 質問ありがとうございます。

 民主党を信じた沖縄県民、民主党を当選に導いて、沖縄から、当時、四選挙区の中で自民党が歴史上消えた、そういう時期もありました。最低でも県外という言葉が非常に夢を抱かせてくれたというのがあります。これは、加害者として、被害者がいいと言うまでは持ち続けなければならない十字架だと思っています。そして、ただ、民主党、民進党に変わったからといって、やはりそれは継続をされているわけですから、しっかりとそのことは認識をしてほしいというふうに思っています。

 民主党時代にたくさんのマニフェストをつくられました。その中には、地位協定の改定の問題もあります。これはいまだにホームページにも残っていますので、それも改めて見直してほしいと思いますけれども。

 それから、当時、政権をとったときに脱官僚と言っていました。これもおかしい。いわゆる官僚を、社員が言うことを聞かないから社長がみずからやるという体制ではなくて、活官僚、官僚を生かさなきゃだめだというふうに何度も申し上げてきましたけれども、そういうことが生かされなかったような気がします。

 それから、やはりこの問題でいうと、地位協定の改定案という非常にすばらしい改定案も出していますけれども、民主党時代の最大の弱点は、いいマニフェストはつくるけれども、ただ唯一弱点は実行力がないということ、これがやはり政権を失った最大の理由だと思っています。今からでも遅くないですから、ぜひ、よかったと言われて支持を受けたマニフェストについては、改めて再提起をして、実行力を持って実現をしてほしいというふうに思っています。

 以上です。

小川委員 終わります。ありがとうございました。

浜田座長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘です。

 本日は、四人の意見陳述者の皆様、貴重なお時間を割いてこの場にお越しいただきましたこと、また、重い御意見を賜りましたこと、冒頭、心から感謝を申し上げます。

 得がたき貴重な時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。

 あらかじめちょっとお断りをしたいのですけれども、國場先生と、沖縄の振興策、随分やはり重複するところがあろうか、関心がそれだけ重なるという意味においては若干重なる点があるかもしれませんが、私からも私の気持ちとしてお聞かせをいただければと思います。

 三点ほど、石嶺会長にお聞きをしたいと思います。

 石嶺会長御指摘のとおり、沖縄というのは、日本の端ということではなくて、東アジアと日本の真ん中に位置する、いわゆる中心にあるという捉え方、これは極めて重要であって、その優位性は大いに生かしていかなければならない。沖縄は、アジアにおける金融、物流、また経済も観光も、その中心に私は成長していかなければならないと思っておりますし、実は既にもうなりつつあるのではないかというふうにさえ思っております。

 観光の点で申し上げれば、陳述人からもございましたけれども、沖縄二十一世紀ビジョンの計画で平成三十三年に観光客一千万人という目標を掲げて、今一生懸命その実現に向けて国も最大限支援をしているという状況にあります。

 これに関連して、先ほど来お話がありますとおり、那覇空港の第二滑走路は建設中でございますけれども、これが完成をすれば、数には若干疑義があったのかもしれませんけれども、十八万五千回ほどの離発着が見込めるということでございます。また、クルーズ船の受け入れについてもさまざまな整備が進んでいるというふうに承知をしております。

 私は、この一千万人の観光客、これは必ず実現できると思うのですけれども、この一千万という大きな数字を受け入れるに当たって、やはり、行政が担うべき課題といいますか使命は大きかろうと思います。

 その点、率直に、石嶺会長から、行政への注文というものをぜひお聞かせいただきたい。意見表明の中にもさまざま御示唆があったというふうに承知をしておりますけれども、改めて御意見を賜れればと思います。

石嶺伝一郎君 ありがとうございます。

 行政への注文ということですけれども、まずは那覇空港につきましては、まずもって平成三十二年の運用開始、第二滑走路の供用開始、これは計画どおりしっかりと工事を進めて完成をしていただきたいと思います。それに加えて、先ほど申し上げましたように、那覇空港全体の、二本の滑走路ができた後の全体の効率的な運用については、現ターミナルビルの問題も含めて対応していただきたいと思っております。

 それから、クルーズ船ですが、これももう既に本部港とそれから平良港については拠点形成という部分が国交省でなされておりますが、改めてまた、中城湾港それから石垣港についても今後クルーズ船の受け入れ体制の整備というものは絶対出てきますので、ぜひ対応をしていただきたいと思います。

 それから、クルーズ船の面で、特にソフト面でお願いしたいのは、一つは、ハードができましても、最近の指摘では、例えば国家資格を持った水先案内人が絶対数不足している。ですから、これについても、水先案内人がしっかりとリードをして着岸せぬといかぬのですけれども、そういった不足という問題が出てきている。

 それから、クルーズ船が着岸しますと何千名という観光客が一度にぼんと来ます。そうすると、陸上での輸送体制をどうするかという問題が出てきます。さらに、海外のお客様がいっぱい来ていますので、言語のところ、多言語表示という部分が極めて重要であります。英語はさることながら中国語、韓国語、それがショーケースの中までしっかりと表示をされるという部分も、これから裾野が広い形で対応せぬといけないという状況があります。

 いずれにしましても、この受け入れのものにつきましては、特にハードのところはスピード感とそれから規模感です。小さい形でなくて、将来、一千万人どころか一千五百万人、二千万人というものがいずれ出てきます。もう一千万人は目前に迫っておりますので、そこを目指した形で、規模をそこに合わせた形でのハードのつくり込みというものをぜひ中長期的に対応していただきたいと思います。

 以上でございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 一千万という数字は、これはもう間違いなく実現をする。その上で今度は、一千万でも四、五年前は大変な数であったかと思う数字が、もう二千万というところまで言える沖縄になっているということが私は非常にうれしく思いますし、その見合った環境整備、これはしっかり私どもも力を込めていかなければいけないというふうに思っております。

 続けて御質問をさせていただきます。

 来年度予算の中に、沖縄への企業誘致、また国際物流拠点を活用した先進的な物づくり産業の創出、生産性を向上させるための産業人材の育成、また産業イノベーションというものをしっかりこの沖縄で培っていく、創造していくための予算として、これは新規の部分でございますけれども、沖縄力というものをしっかり発見し、またそれを創造、活用していくというふうな事業、また、文字どおり沖縄国際物流拠点活性化推進事業、それから沖縄産業中核人材育成事業、そのような、ハード、ソフト、多様に用いることができる、いわゆる新規の予算案がついております。

 参考人が先ほど意見の中で御指摘いただいた、沖縄の経済全体の明るい兆しといいますか明るい状況がまだまだ中小の事業者の皆様にはなかなか十分に行き渡っていないということについて、私も非常に残念に思っておりますし、これをやはり中小の皆様にしっかり行き渡らせること、これが極めて大切かと思っておりますが、その点、本事業というのはこの観点から何か触媒的な作用をもたらすのではないかとして私は期待をしているところでございます。好影響を及ぼすのであろうというふうに思っております。

 今三点ほど申し上げましたが、この事業の実施に向けて、中身がより充実をしていくために何か御示唆を賜れればと思うのですけれども、御意見をいただければと思います。

石嶺伝一郎君 ありがとうございます。

 この件については、新規のものが二点、今回予算も計上されておりまして、対応するんですけれども。

 沖縄力の発見、これについては、沖縄力発見ツアーというのが四年ほど前から、これは本土の企業の幹部を沖縄に招待していろいろなポテンシャルを見ていただいて、沖縄に進出してくださいということなんですけれども、これが今回から、本土企業だけじゃなくて海外の企業、あるいはまた幹部以外の者まで対象を広げてされたということですから、それは非常にまた効果的な形で今後伸びていって、より多くの投資とか、あるいはまた企業が沖縄に進出してくるものだと思っています。

 それから、国際物流につきましても、これまでの制度よりもさらに一歩踏み込んだ形になっていますが、やはり一番大切なのは、その制度の存在という部分をしっかりと中小企業を含めて全般的に周知をし、その利活用を促進する、この周知活動と、それから手続の簡素化というんですか、そういったものをしっかりとやっていただきたいと思っています。

 それからもう一つは、人材育成のところですけれども、これは、例えばホテルに従事している従業員の語学とかそういったものが、海外に行くのも結構ですし、あるいはまた県内でも実際にそういった対応ができるという形の人材育成、それからもう一つは、産学官が協同でやる。先ほど、航空機整備事業で沖縄高専に航空技術者の育成プログラムがあると言ったんですけれども、産と官と学が一緒になって、必要な、しかも質の高い人材をつくり上げるという部分は極めて重要でありますので、ぜひその方向で対応していただきたい。それについては産業界も挙げて、例えば講師の派遣なりそういったものについては対応させていただきたいと思います。

 以上でございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 私も、これからもさまざまな御意見をいただきながら、この事業、中身が充実するように努めていくように頑張りたいと思っております。

 加えて、もう一つ来年度予算には、交通環境イノベーション事業推進調査というふうなものが含まれております。

 私も、九州・沖縄という比例の選出をいただいております。沖縄の皆様にさまざま御指導いただきながら議員活動をさせていただいておりますけれども、自分の運転で沖縄を走らせていただいたこともございます。率直に申し上げて、決まったところで必ず渋滞を起こすというふうな現象に直面しました。道も非常に複雑だなと思いますし、逆の意味で私は沖縄という空気というものを感じることができて大変いい経験になったとは思っておりますが、この渋滞の解消というのは私は極めて重要かと思っております。

 また、沖縄にお住まいの方々が今は恐らく自家用車というふうなものにどうしても頼らざるを得ないような環境であろうとも思います。これを何とか改善できないのか。また、観光客の皆様にとっても気持ちよくこの沖縄で観光を楽しんでいただくためには、やはり渋滞はないにこしたことがないのではないかなと思います。

 そういった意味から、魅力ある交通環境の構築のためにも、この調査事業、私は非常に必要だと思っておりますし、例えば自動運転、最近脚光を浴びておりますけれども、そうした最新技術を活用した戦略というものも考えられていいのではないかなと思います。

 そのような観点から、また、この渋滞をなくするということからすれば産業の生産性というものもやはり向上していくだろうと思いますし、私は、そういった観点、今申し上げた観点から、この事業については非常に高く評価をしているところでございます。

 その意味から、私が高く評価したからといって、陳述人の皆様がどう思われているかわかりませんけれども、石嶺会長のお立場からこの事業に対する評価を、御意見を賜れればと思います。よろしくお願いします。

石嶺伝一郎君 那覇市内を中心に、特に通勤時間帯の交通渋滞というのは深刻な状況です。

 そういう中で、先ほど自動運転のお話が出てきましたけれども、聞くところによりますと、南城市の方でバスの自動運転というものが、実証試験が始まるということのようで、非常に期待をしております。

 それから、交通渋滞に対して自動運転という部分が、これはまだ時間はかかると思いますけれども、将来的にそれがしっかりとした形ででき上がると渋滞の解消は当然出てくるとありますし、渋滞がもたらす経済的な損失というのは莫大なものがありますから、そういう意味では、渋滞の解消をやれば産業の生産性というのは当然向上します。

 と同時に、観光の立場でいくと、先ほどもクルーズ船のところでお話し申し上げましたけれども、観光客が一遍にどっと来る、そうすると陸上の輸送、特にバスの輸送というものが大変、常時、恒常的にあればいいんですけれども、クルーズ船が着いたときに需要が発生するということですから、そういうときにこのバスの自動運転という部分ができますと、これはまた非常に観光産業においても有効な状況ではないかと考えています。

 ですから、自動運転という部分は、まだこれは技術的には相当な蓄積が必要と思いますが、将来的には有効なものと私も期待しております。

 それと同時に、渋滞につきましては、現在、沖縄の方で、ちょっと正式な名称を忘れたんですけれども、渋滞を解消する、あるいは新しい交通環境をつくるための有識者懇談会というのができまして、先日、中間取りまとめが出てきています。これは、いろいろな形での交通渋滞に対する対策があって、その中にやはり自動運転のものもありますから、全体的な中の一つとして取り上げて、ぜひその中間取りまとめで出てきたものの実現化に向けて対応をお願いしたいと思います。

 以上でございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 もう時間も来てまいりますので、最後に一問だけ、これは佐喜眞市長にぜひお伺いしたいんですけれども、市長としての立場から、子供の貧困対策についてぜひお聞かせいただきたいと思います。

 今年度予算から実は子供の貧困対策ということで十億円の予算がついておりまして、来年度予算の審査においても、一億プラスした十一億というふうな予算を今審議させていただいております。

 この中身は、行政の支援がこれまではなかなか、行政サービスがあっても子供に行き着かないというふうなことであったりとか、それを改善したい。また、沖縄の生活の中で、なかなか苦しい家庭というのは、夜に家にいることができないお子さんがいらっしゃる。私は非常に心が痛い話なんですけれども、こういったものをきちっと改善したい。また、経済的に苦しい御家庭というのは、お父さん、お母さんの仕事という面で、キャリアアップというふうなところでもやはりなかなか壁があり、これを解消することが難しいというふうな部分、それをケアする、学び直しというふうな部分もメニュー化されております。

 私は、今年度から始まったこの取り組み、極めて高く評価をしておりますし、この予算は十分の十ということで全て国費でついておりますが、現実に実施をするのは自治体の仕事になってまいりますので、そういった観点から、この事業に関する評価、今後また拡充等々の御要望がございましたら、ぜひ御意見を賜れればと思います。

佐喜眞淳君 沖縄の子供たちの貧困に対する御指摘でございます。

 まず、吉田先生におかれましてもこの御心配をなされている点については感謝を申し上げたいと思います。

 沖縄は、全国に比較して子供の貧困率というのが高うございまして、当然、市町村においても大きな課題の一つでもございます。そういう中で、十分の十の予算をつけていただきながら今年度からスタートいたしましたし、我々行政としても、いかに子供たちの環境をやはり平等につくっていくかというのが大きなテーマでございます。まず居場所づくりや、あるいは、今お話があったように、御両親のいわゆるケアというか、当然収入によって格差が出てくるというのもやはり念頭に置きながら対策をしなきゃいけないという点もございます。

 お願いしたい点は、この予算というのは十分の十で、沖縄県民あるいは各地方自治体もありがたい予算として扱っておりますし、引き続きこれをずっと拡充していただきたいということをまず御要望としてお願いしたいと思います。

 そこで、各市町村によってやり方は違うにしても、やはりさまざまな観点から施策を展開して、展開をしながら改善できるところは改善をしていっておりますし、また、的確にやるためにはやはりある一定程度の情報の共有も必要だと思いますから、そこはまた、国においても、沖縄の現状を鑑みてさまざまな角度から支援をしていただきたいと思います。

 宜野湾市においても、この貧困問題は次年度以降さらに強化をしていくような形になりますし、当然、それを強化するに当たっては予算が必要でございます。ことしは十億円の十分の十でございますけれども、当然、やる頻度が高くなってくると十億円では足りない場合がございますので、ここはまた沖縄県あるいは各市町村の御要望の中で予算の拡充というものが出てくるだろうし、予算の拡充が、ひいては、結果として沖縄の子供の貧困が解消されていくものだと思いますから、ぜひ国会議員の先生方におかれましても、この問題はやはり沖縄だけの突出した問題かもしれませんけれども、全国的に言っても子供の貧困問題は大きな課題の一つでございますので、十分の十をさらに拡充できるよう、御支援方よろしくお願いしたいと思います。

吉田(宣)委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

浜田座長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、意見陳述人の皆さん、本当に御苦労さまです。大変貴重なお話を聞かせていただきました。

 そこで、最初に宜野湾の市長からお伺いをしたいんですが、きのう、安倍総理に対して、普天間基地の五年以内の運用停止の問題を質問いたしました。思いがけず、そういう沖縄県と首相との合意などもうどこかに吹っ飛んでしまったような答弁があって大変びっくりしたんですけれども、佐喜眞市長も、昨年の十二月に、新しいトランプ政権に対して五年以内の運用停止を求めてほしいと安倍首相に要請をしておられます。その五年以内の運用停止について、今の国の取り組み、御意見がありましたらぜひお願いしたいということ。

 加えて、今、普天間基地の大規模補修工事が行われております。五年以内の運用停止の期限は二〇一九年二月なんですが、大規模補修工事はその五年以内の運用停止の期限を過ぎても行われているという、ここには、国はもう五年以内の運用停止なんかどっかに吹っ飛んでしまっているんじゃないかという危惧を持っているわけですが、佐喜眞市長の御意見を伺いたいと思います。

    〔座長退席、菅原座長代理着席〕

佐喜眞淳君 まず、五年以内の運用停止というのは、前県政と、そして今の政府の安倍政権を初め、私ども宜野湾市の三者で協議会、いわゆる普天間飛行場の負担軽減推進会議を結成し、五年以内の運用停止に向けて三者が協力し合って一歩一歩実現していくというのがまず原点だと私は思っております。

 その中で、私どものこの資料の中にも、十八ページに時系列的に書かれてございますけれども、一つ一つ言うことはちょっと差し控えますけれども、その一つとして、まず、KC130の空中給油機が、前県政のもと、十五機が岩国へ先行移駐されました。本来であれば、それを継続的に、沖縄県、政府、宜野湾市、一つ一つできることをやってもらいたい、その中で最終的には五年以内の運用停止というものが実現されると思うんです。

 私も、前県政のときにもそうですが、今の県政になっても、まず推進会議、作業部会というものを開催してもらえないと五年以内の運用停止はできませんよというようなことで、何度か県知事宛てに推進会議を開いてほしいと。あるいは、政府においても、沖縄県、宜野湾市も、やはり推進会議を開いてもらいたい、やってほしいということをお願いしたんですけれども、残念ながら、県政がかわって二年近く推進会議が開かれませんでした。先般の私の選挙が終わった後の、多分七月だったか、ちょっと日にちは忘れましたけれども、今の県政になって推進会議が開かれましたけれども、以来八カ月近くまた開かれていない状況でございます。

 できるのであれば、政府も沖縄県も同じ立ち位置の中で、やはり一番苦労というか犠牲を強いられている宜野湾市民や、あるいはその周辺地域の方々のために、例えば、夜間の飛行の軽減とか、あるいはオスプレイの訓練移転とか、そういうのを含めて、しっかりと前に向けて、五年以内の運用停止というものは危険性の除去がメーンだと思いますから、そういうことをぜひやっていただきたいというのが私の思いというか、宜野湾市民の総意だと思います。

 あともう一つは、普天間飛行場の改修工事の話でございますけれども、当然、二十数年間というもの改修工事をされなかった視点からすると、安全上必要なものは最低限やっても、それはいたし方ないかもしれませんけれども、しかしながら、固定化は絶対あってはならないという改修工事にしてもらいたいというのが私ども宜野湾市としての考え方の根底にございます。

 ただし、この二十一年間全然一向に進まない普天間飛行場の返還というものをやはりしっかりと前に進めるために、宜野湾市はもとより沖縄県、政府が一体となって、いかに普天間飛行場の返還を実現するかということをしっかりと議論を重ねない限り、間違ったメッセージはないんですけれども、やはり県民にしっかりとしたアピールというものが必要だと思いますし、そういう視点からすると、ぜひ、国会議員の先生方におかれましても、普天間飛行場の現状や、あるいは今言った改修工事の中身について、そして最終的には一日も早い返還というものがどういうふうな形で進んでいくかということを市民、県民にお示しできるように、やはり協力し合っていただきたいというのが、普天間飛行場を抱える宜野湾市長としての切なる思いでございます。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 次に、富川先生にお伺いいたします。

 私たちが米軍の直接占領下当時、基地経済からの脱却ということがスローガンでありました。当時の米軍の高等弁務官は、米軍基地は沖縄に金の卵を産むガチョウだ、沖縄県民は基地から離れられない、こう言われてまいりました。

 今、富川先生や石嶺会長の展望ある話を伺って、時代が大きく変わっているなということを実感しながらお話を伺っていたんですが、二十一世紀ビジョンのかなめになる考え方に、基地の存在が経済の阻害要因になっているのではないかという点があったと思います。その点と、先ほどのアジア経済戦略構想の展望について、つけ加えられるところがありましたら、よろしくお願いしたいと思います。

    〔菅原座長代理退席、座長着席〕

富川盛武君 先ほども御説明申し上げましたが、復帰以前というのは、焦土と化して、復興を遂げるときに産業がほとんどなかったわけです。そこに米軍基地が五〇年代に建設されまして、雇用をする、消費をするという形で、その周辺に門前町よろしくゲートウエーというのができまして、昔のコザ市等々もそうですけれども、そういうふうに戦後の沖縄の社会経済を大きく規定していたことは間違いないと思います。ボリュームの面でも当初は非常に大きな存在で、やはり米軍の中で働いた方がはるかに給与がいいとか、そういう時代もかつてはありました。

 しかし、時代は大きく変わりまして、先ほど申し上げたように、特にこの五年から十年にかけてアジアの経済が相当勃興してきまして、その展開が沖縄にも来まして、御承知のように、観光客とか外資の投資等々がありまして、まさに沖縄が、かつてのアジアの中心としての役割が非常に浮上してまいっております。

 一方、日本経済も、先ほど申し上げたように、かつての勢いがない、人口減少に突入しまして、どうしても輸出ドライブ、海外展開ドライブがかかる中で展開してきております。そういう中で、一番如実にわかるのは、外資だけじゃなくて、果ては地方銀行まで沖縄に出店をする。これはもう、人口減少とかそういう形で、どうしても外に行きたいといういろいろな企業の思惑の証左だと思っております。そういう中で、状況が全く変わってきておりまして、観光客の数とか景気も見ても、沖縄がはるかに凌駕している。

 そういう中で、やはり、沖縄を取り巻く環境の変化によって沖縄の役割が大きく変わってきまして、むしろ安全保障論とか社会問題ということはちょっとさておき、経済の視点から考えても、もう基地の存在というのは縮小した方がはるかに沖縄の発展につながる。

 そして、ミクロの視点でいっても、例えば北谷町、私も北谷町の生まれですが、かつては海だったところに、美浜の返還地に大きな商業地ができて、今やもうアジアの観光客もたくさん来るような、活況を呈したところがあります。そこにおける地主さんの心境としても、以前は地料がないと困ったんだけれどもという話だったと思いますけれども、最近はむしろ、返還して、一定期間我慢しなきゃいかぬ期間がありますけれども、今の方が資産活用してはるかに収入も大きいと。

 私は、正直言って、これは本音の意味で、基地を返した方がもうかるということが現実化してきますと、政治論とかイデオロギーとかそういう議論はさておき、経済の視点からももう返した方がいいよという大きな波が来るのではないかというふうに思っています。

 正直申し上げて、沖縄にありますけれども、米国総領事館の知人がいまして、よく沖縄の経済を話してくれということで呼ばれるんですが、当時、さっき申し上げた日経ビジネスのコピーを持っていって、もうそういう時代に来ているので、国防省あたりでもよく研究した方がよろしいんじゃないですかという提言をしたぐらいで、やはり、沖縄の基地問題というのは、安全保障のことももちろん根幹にはありますけれども、経済の面からいろいろなところからの議論があって、これが、基地は要らないという論に経済のところも来ていると思います。

 まさに、実際に、もう経済効果で見ても先ほど示したとおりでして、先ほどおっしゃったように、五年先、十年先、沖縄振興計画が五年後どうなるかわかりませんけれども、その後の沖縄を展望するに当たっては、我々としても、基地の跡地利用、宜野湾市もそうだと思いますけれども、那覇空港の周辺も、先ほど申し上げたように、アジアのスケール、アジアのスピードに合わせるのであれば、早急にこの機能を拡張しなけりゃいけない。

 そうすると、ふと横を見ると自衛隊基地がある、そして那覇軍港がある。それはそれなりの論拠で、あるとは思うんですけれども、経済、産業の視点からいうともっと拡大しなきゃいけない。ですから、これは申しわけないけれどもよいてくださいと言うこともできるわけで、これが実際に我々が調べていって、かなり事実を積み上げてきて、そういう状況にあると思います。

 ですから、五年先を見たときには、やはり沖縄の米軍基地というのは縮小していただいて、沖縄の発展につながる。安全保障とか抑止力の議論というのはまた政治の場で、分散の方向でぜひ議論していただければと思います。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 石嶺会長にお伺いいたしますけれども、本当に今の沖縄の経済は好調だと。経済界の皆さんの頑張りがあったればこそと思っております。本当に御苦労さまでございます。

 そこで、先ほど会長のお話にも懸念事項としてありました、沖縄の中小企業、小規模事業者、圧倒的多数の事業者が沖縄経済を支えているんですが、なかなかそこに景況感が伝わっていない。一方で、非正規の雇用形態をまだまだ抱えている。その辺を、今の経済の好調を維持しながら中小企業や小規模事業者や働く人たちにまで行き渡るという点ではどんなふうになっていくのかなということ。

 もう一つ、先ほどの、那覇空港の滑走路を二本使うという場合に、確かにターミナルの問題はあると思うんです。しかし、構造的な問題として、いわば離発着が同時にできないのは嘉手納ラプコンの存在が非常に大きい、つまり同時離発着ができない阻害要因になっているということを伺ってきたんですが、そこら辺のお考えはどうなのか。

 この二点、ちょっとお願いします。

石嶺伝一郎君 まず、中小企業、小規模企業の件でございますけれども、これは沖縄だけじゃなく全国的な傾向の中で、一つは人手不足という部分、それからもう一つは後継者の問題という二点があります。これは沖縄でも同じような形があります。

 ですから、人手不足については、例えば女性の活用、そのためには女性が仕事に出られるような、育児の問題、保育の問題も出てくるんですけれども。それからまた、年配の方々、定年が六十歳という、六十歳以降の定年した年配の方々、まだまだ元気で技術それから意欲もありますので、そういう人たちを活用する中で、人手不足という部分が解消できないかと考えています。

 それから、後継者につきましては、なかなか自分の息子も継いでくれない、だけれども企業は一定としてある、それを潰すと雇用の問題も出てくるというような状態があります。

 これに対してはやはり、商工会議所もそうなんですけれども、後継者育成のための相談窓口をつくって、それからまた後継者育成のために必要な手当てという部分をしっかりと相談できるような窓口が商工会議所あるいはまた商工会というところもございまして、そういったところを使っていきながら対応していく。そういうような形で、中小企業の皆さんが元気になるような手だてをしっかりやっていく。そういうことをすることによって産業全体が、基盤が持ち上がるんじゃないかと考えております。

 それから、先ほどの、滑走路が二本になったところ、嘉手納飛行場の存在の問題については、私、全くこの件については知見がございませんので、御勘弁をいただきたいと思います。

 以上でございます。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 あと五分を切ったところではありますが、最後に前泊先生にお伺いをいたします。

 先ほど、民進党の小川先生からも一九九五年のお話がありました。一九九五年の少女暴行事件が今の普天間、辺野古の問題に直結していると思うんですね。原点は少女暴行事件であり、そして、そのときに県民が求めたのは、やはり基地のない沖縄をつくりたい、当時は基地の整理縮小というスローガンでありましたが、自民党を含めて県民大会を開きました。それがいつの間にか、新しい基地をつくる形で普天間問題を解決しようという形にすりかわっているわけですね。

 この辺の問題について、一体沖縄の基地問題の原点とは何か。そして、安保条約賛成の翁長知事が安保条約反対の私たちと考えを同じく、辺野古だけはつくらせない、辺野古はつくらせないという意思を持っていらっしゃる。私は、もちろん普天間の基地も無条件撤去すべきだと考えておりますが、その辺の沖縄の基地問題の原点について、前泊先生の御意見をお願いします。

前泊博盛君 ありがとうございます。

 歴史的に見ると、沖縄に基地がなぜ置かれたかということですけれども、やはり、大戦のときに本土攻撃のための拠点として置かれた、それが戦後もそのまま置かれ続けていて、海兵隊について言えば、本土でも反対運動に遭って行く場所を失って沖縄に逃げてきた、あるいは移動されてきたという経緯があると思います。

 沖縄に基地があるべき理由、今本当になければならない理由を誰が説明できるのかというようなことで、疑問を持っています。

 そして、少女暴行事件に端を発して、今回の基地問題の原点というものを言っていますけれども、昨年も同じ、二十の女性が暴行されて殺されるという事件が起こっています。何度同じような原点を繰り返せばこの基地問題が解決できるのか。

 こういう意味では、やはり、基地が持つ安全保障上の効果と実際に日常において与える被害の比較というものが、本土と沖縄の間で非常に大きな温度差として存在しているような気がします。

 結局は、自分たちが嫌だから他人に押しつけるというようなことがあるのかもしれません。そういうところで、必要性を認めながら、その負担については自分たちは回避する、そして、沖縄に押しつけて、今沖縄にあればそれでもういいというような、本来考えなければならない問題を思考停止してしまっているような感じがします。難しい問題は先送りをするか、なかったことにするという、これが日本のおきてだとしたら、この問題についてはいつまでも解決できないような気がします。

 トランプ政権にかわって、新しい安全保障の体制を考えるという意味では、もう一度、日米安保についても、そして新しい安全保障の構築についても、棚卸しをした上で再構築を図る絶好の機会に来ていると思います。沖縄の負担軽減というよりも日本全体の安全保障の問題として考え直して、そして今、新たな政策を各党が提案する時期を迎えているような気がします。

赤嶺委員 終わります。

浜田座長 次に、下地幹郎君。

下地委員 陳述人の皆さん、ありがとうございます。

 質問する前に、我が党で三枚、座長、三枚私たちの傍聴券があるんですけれども、なかなか多くの問い合わせがあって、三枚しかありませんでした。会場を見ると相当席が余っていますので、これから衆議院の予算委員会、地方公聴会をいっぱいやりますけれども、できたら、ぜひ多くの皆さんが参加できる、そういう環境をつくっていただきたいな。冒頭お願いしておきたいというふうに思います。

 私の方は簡潔に質問させていただきますので、一回お答えいただいてからもう一回聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 佐喜眞市長にお伺いしたいんですけれども、固定化をしない、五年間の閉鎖というのはわかります。二十一年前の合意事項は、これは代替案を決めるということでありますけれども、佐喜眞市長はこの辺野古移設に賛成か反対か余りおっしゃらない。固定化をさせないとか普天間の危険の除去というのはわかりますけれども、普天間の辺野古移設に本当に市長そのものは賛成か反対か、これを明確にお話しいただきたいというのが一点。

 富川先生には、今回、副知事になられますけれども、翁長知事は、記者会見でもはっきりと、先生には副知事として基地問題をやってもらいたいというようなことを明確におっしゃっています。きょうの県議会の冒頭のお話でも大抵が基地問題に終始しておりまして、基地問題、辺野古を絶対につくらせないということを知事そのものが明確に言っています。

 これを副知事として支える上で、先生の方で明確に辺野古をつくらせないという対案をお持ちになって副知事をおやりになろうとしているのか。対案があったら、どういう対案なのかというのをお聞かせいただきたいというふうに思っています。

 石嶺陳述人は、今回この予算委員会で九本の沖縄税制改正があります。これは陳述人もおわかりのように、今回九本ありますが、沖縄の人口は伸びて、今はもう八十万が百四十万人になって、観光客も一千万人になっています。しかし、泡盛の売り上げは落ちました、そしてオリオンビールも伸びていません。そして、特区というものをつくりましたけれども、金融特区も、二十四年から二十六年まで、企業のこの税制に関してはゼロです。地方の旅館業に対しても、これは全く特区が活用されていません。那覇空港も燃料税の軽減をしましたけれども、山中先生があのとき、燃料税を軽減する措置を入れたときには、沖縄に来やすい料金を設定するためにと言われてあの税制を取り入れましたけれども、この前検証してみると、これはもう出されましたけれども、料金は上がっています。

 こういうように、九本の税制は全く稼働していないんですね、効果を出していないんですよ。経済がよくなっているからいいのではなくて、この九本の税制が全く成果を示していないのに、経済界は九本の税制をそのまま単純延長するというようなことをお決めになって、やりました。しかし、政府はこれを二年間の期限に縮めることになりましたけれども。

 私は、なぜ、この税制の効果が出ていないにもかかわらずそのまま単純に九本の延長を決められた根拠は何なのかというようなことをお聞かせいただきたいというふうに思います。

 あと、前泊陳述人は、先ほど話がありましたように、世界一危険というこの普天間の定義ですけれども、それをどうお考えになっているのか。

 二十一年前は大体年間八万回ぐらい離発着がありましたけれども、今は二万回だと言われております。那覇空港が今十四万回、伊丹空港が十五万回、そして福岡空港が十五万回、こういうふうな回数になっているわけですね。そういう中で、この二万回の空港が世界一危険だという根拠をどうやって政府がつくっているというふうにお考えなのか。

 もし先生がジャッジするならば、辺野古はやめて、普天間に一回戻して、それから次の場所を考えるというような政策をやることも一つの案だ、私はそう思っていますけれども、そういうことについての先生のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

 では、よろしくお願いします。

佐喜眞淳君 下地先生、ありがとうございます。

 まず、私先ほども申し上げましたけれども、日米両政府が今あるキャンプ・シュワブがいわゆる普天間飛行場の固定化、継続使用を避ける唯一の手段と言うことに鑑みたときに、一個人でなくて、宜野湾市民の生命財産を預かる市長としては、それを否定はできないでしょうというのが私の見解でございます。

富川盛武君 知事から副知事の依頼を受けましたけれども、当然ながら議会の議を経てしか発言できませんので、副知事の立場ではなくて、今の状態の、一つの研究者として発言させていただきます。

 知事が辺野古はつくらせないということについては、内々に私も今勉強中でありますが、連携して、知事を支えていく立場に行きたいと思います。

 ただ、これは私の個人的な願望にしかすぎないんですが、一つの視点として、先ほど申し上げたように、経済論から基地問題を融解させるような方向が一つないかなということで研究していきたいと思っています。

 今の時点ではまだ正式になっておりませんので、なった後にまたいろいろ御教示を賜ればと思っております。

石嶺伝一郎君 税制九項目については、五年という部分が二年という形でやりました。

 先ほど下地先生から、根拠は何かという話ですけれども、理論的根拠を持って今回要請しているという部分は薄いと思っております。基本的には各業界団体のこれまでの経緯をもって、要望に基づいて対応している。

 ただ、九項目の税制が延長を認められたということを踏まえた形で、次年度からの対応としては、もう一回、九項目の必要性、それから利活用の向上についてどういう形でやるのかという部分についてはしっかりと各業界それから経済界、まとめた形で対応を考えております。

 これは、国と、それから県とも、これからテーブルをつくって、その周知の活動、それから利活用のよさ、あるいは拡充についての必要性、その理論、根拠というのはこれからしっかりつくっていきたいと考えております。

前泊博盛君 端的に言いますと、普天間基地というのはいわゆるガン、沖縄経済にとってもガンだと思います。ガンの撤去をお願いしているのに、どこに移設をするかという話をするのは非常に残酷で、酷なテーマにしているような気がします。ですから、それはもう撤去すべきだと思いますし、それは要らないというのは、地元で要らないと言っているわけですから、どうしても必要だと言うところが引き受ければいいという話だと思います。

 それから、それを一旦とめて仕切り直しをということもやらない方がいいと思います。これは、二者択一の質問ではなくて、やはり多様な項目、選択肢を持って取り組むべき問題だと思います。

 そして、普天間について世界一危険だと言っているのは、ラムズフェルド元国防長官が言ったたった一言が根拠になっている。そういう言葉を根拠にして、日本の国会がドンパチやっていること自体もおかしいと思います。

 そして、その普天間の問題が海兵隊の問題として、いわゆる抑止力の議論としてやられていますけれども、尖閣の問題は、この資料にもつけましたけれども、尖閣で二つの島を米軍に提供しているにもかかわらずそれに安保の五条が適用されるかという、茶番のような議論をしているような気がします。なぜ大正島、久場島を赤尾嶼、黄尾嶼という中国名で提供しているのかというところも含めて、しっかりと国会の中で議論をして、海兵隊が本当に抑止力があるのかどうか、その議論を数字でもってしっかりと示した上で議論を再スタートさせてほしいと思います。

 不要な軍隊はどこにも要らないと思います。

下地委員 この次は前泊先生から聞きますけれども、今おっしゃったように、普天間は世界一危険という根拠はないというようにおっしゃって、辺野古に関しても、三千億も四千億もかけて基地をつくるというのはおかしいとおっしゃって、しかし、政府は現実にもうブロックの投下までやっているわけですね。現実を見ないで理想論を話しても前には進まないと思うんですけれども、私が先ほど申し上げたように、今の普天間の移設問題を考えたときに、もし立ちどまって考えるとしたならば、二者選択をしないと言うけれども、二者選択をしないとだめだというようなことになった場合には、それでもやらないということになりますか。

前泊博盛君 沖縄は要らないということで民意を示しています。民意を無視して政治を行うというのは、この国は民主主義じゃないということになります。せめて民意に応えるような努力をするのが先ではないかと思います。

下地委員 石嶺陳述人にお伺いしますけれども、今、もう来年です、来年がもう、この二年間というのはことし一年と来年やって再来年の四月に、まあ、来年の十二月ですね、またこの税制改正について論議しなければいけないわけですから一年しか時間がないんですね。この一年の期間を有効に使ってこの税制が効果が出るようにというのはそう簡単なことではないというふうに思っています。そういう意味でも、もう一回本気で経済界が、この税制が本当に必要か必要じゃないかということをしっかりとやってもらいたいというふうに思います。

 それと、先ほどから話がありました那覇空港の件についても、滑走路の二本目からターミナルに行くのは一キロしかありませんから、そこが問題じゃないんです。問題は、ボーディングブリッジとか国際線のターミナルをどうするかというものが全く計画が出されていないんですね。この前、国際線をつくって竣工しましたけれども、また壁を壊してもう一回つくり直します。

 そういうふうなことについて経済界がしっかりと発言力を持たないと、同じようなことの繰り返しが何度も起こると思っていますから、ぜひ、那覇空港の二本目の滑走路をつくった後の、空港ターミナル全体の駐車場の問題とかターミナルのボーディングブリッジの問題とかを徹底的に経済界で提案をしていただくように期待をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 富川先生のところですけれども、先ほど私申し上げましたけれども、今、副知事にまだなられていませんから、そういうふうなことは申し上げられないということでありますけれども、しかし、やはり何か案がなければいけないんじゃないですか。この前もアメリカに行かれてきたわけですから、前泊さんと同じような両方だめだ、普天間もだめだけれども辺野古もだめだというような案でこれからも翁長県政の中でおやりになるのか、新しい対案を出すつもりがあるのか、その辺のところだけは僕はこの場所で言ってもいいのではないかと思うんですけれども、どうなんでしょうか。

富川盛武君 恐縮ですが、まだなっていませんので、のりを越えて言うことはできませんけれども、ここは、知事と相談して、今おっしゃったようにいろいろな案があると思いますので、現実的な対応も十分勉強していきたいと思います。

下地委員 佐喜眞市長、先ほど明確に辺野古は賛成だということをおっしゃったと思いますので、それでよろしいかということと、それと、きのう、五年以内の閉鎖はできない、五年以内の停止状態はできないということを安倍総理が申し上げましたけれども、これに対して率直な、総理に対する、この発言に対しての市長のお言葉、どういう行動をとるつもりなのかということについてお聞きしたいと思います。

佐喜眞淳君 普天間問題について賛成、反対という言葉がよく出てまいりますけれども、一市長の賛成、反対で普天間飛行場が返還できるのであれば、それにこしたことはないと思います。

 ただ、やはり日米両政府の中でしっかりとした約束事があって、その約束事の中で二十一年という時間が過ぎた。その二十一年間の教訓として、私どもとして言えるのは、やはり代替施設というものが日米両政府で必要だということの結論が出ているはずなんです。そこで日米両政府が言っている、普天間飛行場を継続的に使用しない唯一の策としてキャンプ・シュワブという話があるので、それは否定はできませんねと。

 対案があるのであれば、そこにしっかりとロードマップも含めてやっていただければ、それは可能性としてあるかもしれませんけれども、今、唯一だと言われているものに対して、宜野湾市の市民の生命財産を預かる市長として、これはだめですよということはなかなか言いづらいというのが私の見解でございますし、そういう視点の中で、やはりこれは国と国の約束事ですから、一地方自治体に責任を与えるんじゃなくて、国としてしっかりと普天間飛行場問題を解決に向けて一歩でも二歩でも前に進むことが私は大切だということを申し上げたいわけでございますから、今、宜野湾市長として言えるのは、普天間飛行場の唯一のと言われているものに対して否定はできないということでございます。

 また、五年以内の運用停止でございますけれども、きのうのきょうでございますから、そのやりとりは私、詳細をよく存じてございませんけれども、いずれにしても、これは県も五年以内の運用停止というものを認めておりますし、県と国と宜野湾市で構成する推進会議というものが一つ一つの実績をつくっていって、最終的には五年以内の運用停止につながっていくと思います。そういう中で、県にも、やはり責任ある立場として、五年以内の運用停止に向けて、国に対して、何が問題で何ができないのかということを明確に市民や県民にお示ししながらできることをやってもらいたいというのが、私は、宜野湾市長としての、ある意味、願いというか要望というような形で御理解をしていただきたいと思います。

下地委員 佐喜眞市長、これは仲井真知事が辺野古移設を容認するときの条件の中の一つに入っているわけなんですね。そうなりますと、これができないということに簡単になると、容認をするときの条件が一つ崩れるということは非常に大きなことになるんです。これは政治的に大きなことなんです。

 そういう意味では、この問題は、総理が予算委員会で発言をしたこの問題はそう簡単な問題じゃないな、私はそう思っているんですよ。

 だから、これは逆に言えば、この問題を簡単にできないということになると、辺野古移設の容認そのものが政治的に崩壊する可能性があるわけですよ。そういうことも踏まえて、そうなると辺野古そのものが、普天間に固定化する、そういう状況が起こる可能性があるということで市長に質問しているわけですから、そこは明確に、市長がそれはだめだ、政府はしっかりと五年以内に閉鎖をやるべきだ、そういうことをおっしゃらないとこの問題は前に進まない。沖縄県がどうだとかこうだとかと言うのではなくて、市長の立場として、どうあるべきかということは明確に、絶えず政治が明確にわかりやすくやっておくというのは必要なことだというふうに思っていますから、それだけ申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 私の方は質問は終わりです。

浜田座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後四時二十三分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の愛知県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十九年二月十五日(水)

二、場所

   名古屋観光ホテル

三、意見を聴取した問題

   平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算及び平成二十九年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 石田 真敏君

       小倉 將信君   門  博文君

       長坂 康正君   西村 康稔君

       武藤 容治君   山下 貴司君

       井坂 信彦君   今井 雅人君

       大西 健介君   福島 伸享君

       赤羽 一嘉君   伊藤  渉君

       本村 伸子君   井上 英孝君

 (2) 現地参加議員

       神田 憲次君

 (3) 意見陳述者

    一般社団法人中部経済連合会会長        豊田 鐵郎君

    日本労働組合総連合会愛知県連合会会長     土肥 和則君

    全国商店街振興組合連合会理事長        坪井 明治君

    木曽川商工会会長    五藤 政尋君

 (4) その他の出席者

    財務省主計局主計官   岩元 達弘君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

石田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団の団長の石田真敏でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算及び平成二十九年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当名古屋市におきましてこのような会議を開催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようよろしくお願い申し上げます。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党・無所属の会の西村康稔君、武藤容治君、小倉將信君、門博文君、長坂康正君、山下貴司君、民進党・無所属クラブの大西健介君、井坂信彦君、今井雅人君、福島伸享君、公明党の赤羽一嘉君、伊藤渉君、日本共産党の本村伸子君、日本維新の会の井上英孝君、以上でございます。

 なお、現地参加議員といたしまして、神田憲次君が出席されております。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 一般社団法人中部経済連合会会長豊田鐵郎君、日本労働組合総連合会愛知県連合会会長土肥和則君、全国商店街振興組合連合会理事長坪井明治君、木曽川商工会会長五藤政尋君、以上の四名の方でございます。

 それでは、まず豊田鐵郎君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

豊田鐵郎君 中部経済連合会の豊田でございます。

 本日は、このような意見陳述の機会を賜り、まずもって御礼申し上げたいと思います。

 私からは、中経連が行っている取り組みやこれまで行ってきた政策提言などと関連づけて、予算案に対する意見を申し述べさせていただきます。

 予算案全般に対する意見を述べさせていただいた後、個別の予算案について若干の意見を述べさせていただく順序で発言申し上げます。

 それでは、まず最初に、予算案全般に対する意見についてであります。

 私ども中経連は、毎年、翌年度の税制改正に向けた意見書を政府に建議しております。その中で、財政の早期健全化を最重要課題の一つと位置づけております。

 その観点から着目いたしますと、歳入側の赤字公債の額は、前年より約一千億円減少しておりますが、総額は二十八兆円と、依然として大きな金額でございます。予算編成に大変な御苦心があったと推察申し上げますが、プライマリーバランスの目標達成に向けて、引き続き御努力をお願いしたいと存じます。

 目標達成には、歳入項目のうち、税収をいかにして大きくするかが重要課題となります。経済を成長させる実態面での政策が重要であることは論をまちませんが、一方で、経済に与える悪影響が少なく、安定的な租税収入が得られる構造へと、租税体系を抜本的に変える必要があることもまた事実であります。

 このため、少子高齢化の進展を踏まえ、所得税や法人税等の直接税のウエートを下げ、消費税のような間接税のウエートを高める、いわゆるリバランスについて検討する必要があるのではないかとかねてより建議してまいりました。

 一方、歳出側では、国債費が減少し、いわゆる政策経費が全体として増加しているところに、予算編成の積極姿勢を感じます。しかしながら、政策経費の大宗が社会保障関係費で占められる現状については、改革の必要性を感じざるを得ません。

 これにつきましても、かねてより中経連は、税制、財政、社会保障制度の三位一体の改革の推進の重要性を主張してまいりました。ぜひとも御検討を賜りたいと存じます。

 以上が、予算案全体に対する意見であります。

 さて、次に、個別の予算案について、中経連がこれまで行ってきた政策提言との関連で意見を申し述べます。

 まず、経済産業予算についてであります。

 中経連は、これまでの経済政策の提言の中で、技術革新の推進、経営のイノベーション、産業構造を革新するための国を挙げたIoTの推進、産業空洞化の抑制のための六重苦の解消、労働移動の流動性を高めるための労働規制の緩和、多様な働き方の拡大、ローカル経済の中核を担う中小企業の支援強化、生産性を上げるための産業人材の育成、経済の七割を占めるサービス産業の生産性向上などについて、具体的方策を関係各方面に提言してまいりました。

 もちろん産業界の自助努力が基本でありますが、政府が環境づくりという形で参加していただく必要があると考えております。

 この観点に立ちますと、科学技術振興費の項目において、次世代人工知能、IoT推進のための予算が増加していることを大変喜ばしく思っております。

 また、中小企業対策費の項目において、事業承継支援や生産性向上支援などを中心に、実質的には増額と読み取れる内容となっていることはありがたく存じます。

 ここで、一つ重要な事実を申し上げます。

 私ども中経連は、長野、静岡、一宮、四日市の有志の四商工会議所と協力して、昨年秋から冬にかけて大規模なアンケート調査を行いました。その結果、中小事業者の方々には国の施策が十分に知られていないことが明らかとなりました。せっかくいただいた施策は活用されて何ぼでありますから、ぜひとも施策の事業者の方々への周知に努めていただきたいと存じます。

 次に、国土交通省・公共事業関係予算についてであります。

 中経連は、関係者と連携して、インバウンド観光活性化に向けた昇龍道プロジェクトと称する活動を推進しております。これは、中部五県、すなわち長野、静岡、岐阜、愛知、三重の各県に加え、富山、石川、福井の北陸三県と滋賀県から成る地域を昇龍道エリアとして、インバウンド観光客の誘致を進める官民連携の運動であります。

 この観点に立ちますと、観光先進国の実現の項目において、二〇二〇年四千万人目標に向けた観光施策の推進の予算が増額となっていることは大変うれしく思います。

 また、昨年には、中部圏交通ネットワークビジョンを策定し、我が国経済を牽引する中部の新たな基盤づくりについて、中経連が考える望ましい姿を世に問いかけました。

 この中で、道路については、東海環状自動車道西回り区間や、名古屋環状二号線の西南部・南部、さらには西知多道路などの早期整備、東海北陸自動車道完全四車線化、三遠南信自動車道の早期整備などについて訴えております。

 空港については、中部国際空港の二本目滑走路の整備、県営名古屋空港のコミューター路線の充実、富士山静岡空港の観光促進、災害対策への活用、信州まつもと空港のチャーター便の利用促進などについて訴えております。

 港湾については、名古屋港、三河港、清水港、四日市港、御前崎港などについて、物流や資本ストック効果に資する港湾機能の強化、防災・減災機能の強化などの重要性を訴えております。

 この観点に立ちますと、三大都市圏環状道路など効率的な物流ネットワークの強化の項目で、東海環状自動車道、名古屋環状二号線が念頭に置かれた予算が増額となっていることは大変うれしく思います。

 ここで、先ほど御紹介申し上げたアンケート調査から得られた生の声の中にも、社会資本整備や公共事業の重要性を訴えるものが少なからずあることを御報告申し上げます。

 次に、社会保障関係予算についてであります。

 繰り返しになりますが、中経連は、財政の早期健全化のためには、税制、財政、社会保障制度の三位一体の改革の推進が重要であるとしてきました。

 この観点に立ち、医療・介護制度改革の項目で歳出削減の努力が行われていることに注目いたしました。抜本的とまではいきませんが、効率的な制度運用に向けた努力に敬意を表します。

 中経連は、これまでの経済政策の提言書の中で、人口減少抑制のために社会保障政策が重要な役割を果たすことを主張してまいりました。

 一例を挙げますと、結婚した世帯の出生率は低下していないにもかかわらず、出生率が全体として低下しているのは、結婚しない若者がふえているからであるという重要な事実に鑑み、結婚のインセンティブを高める施策を講じる必要があることを提言しております。

 具体的には、結婚して多くの子供をもうけた世帯ほど世帯全体としての所得税額が軽減される方向に働くN分N乗方式の所得税制の導入の検討を提唱しております。

 また、子育て環境改善の一環である待機児童解消には、現金給付より現物給付の方が効果が大きいことなどを提言しております。

 この観点に立ちますと、夢をつむぐ子育て支援の項目で、保育の受け皿拡大の予算が増額となっていることは、心強い次第です。詳細まではわかりかねますが、具体的な施策の展開が現物給付主体で行われることを御期待申し上げます。

 最後に、一つお願いを申し上げて、意見を終わります。

 東日本大震災では多くの教訓を学びました。端的に申し上げますと、官民がこぞって国土強靱化を行わなければならないということであります。

 我々産業界の立場からは、経済活動の持続性強化の側面から、国土強靱化に参加したいと考えています。つまり、サプライチェーンの粘り強さの向上であります。そのためには、工場等の生産拠点、オフィス、店舗などの耐震性強化が欠かせません。

 一社の機能不全が、複雑な供給ネットワーク、すなわちサプライチェーン全体の機能不全をもたらすことを、これまでの経験で学びました。この意味で、一社の防災力強化は、全体の防災力強化に寄与する公共的、公益的意義を持ちます。このことに鑑み、防災・減災性を高める設備投資には減税等の措置を講じていただき、企業の防災・減災対策の後押しをしていただきたいと思います。

 物づくりの産業が集積し、事実上、日本経済を牽引していると言っても過言ではない当地域においては、一層切実な問題であります。二十九年度予算への反映は無理としても、三十年度の予算においてはぜひとも実現していただきますようお願い申し上げます。

 以上、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

石田座長 どうもありがとうございました。

 次に、土肥和則君にお願いいたします。

土肥和則君 連合愛知の土肥と申します。

 私ども連合愛知は、愛知県に働く労働者五十四万人で組織しております。そのスケールメリットを生かし、愛知労働局並びに愛知県や各市町村に対し、働く者、生活者、納税者の立場から政策制度要求を行い、地方行政施策に対し私たちの声を反映していただけるよう取り組んでおります。また、各行政が主催します委員会、審議会などに参画し、意見を述べさせていただいております。さらに、経営者団体等との協議を重ね、労使共通の課題の解決に向けて取り組んでいます。

 しかし、地方行政が取り組める施策だけでは、私たちが目指す社会、働くことを軸とする安心社会の構築はできません。地方における働く者、生活者の声を国に届けさせるには、私たちが選んだ国会議員の皆さん方が取り組んでいただいております国会審議の場に委ねることになります。

 そのような現状から、本日、直接発言をさせていただく機会をいただいたことについて感謝申し上げます。

 平成二十九年度予算は、経済・財政再生計画二年目の予算として、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算として編成されています。予算の詳細を熟知しての発言とはなりませんが、幾つかの課題認識や問題意識を踏まえた発言となることを御理解いただきたいと思います。

 日本は、既に超少子高齢化、人口減少社会に突入し、労働力人口の減少がもたらす人手不足は、多くの企業や産業において喫緊の課題として顕在化していると思います。また、IoTやAIといったイノベーションが、企業や産業における働き方の変革まで迫ることが考えられます。

 その視点に立って、経済再生と財政健全化の両立を目指すとしている平成二十九年度予算案は、現状の日本が抱える課題に対応する姿勢が不十分であると、まず指摘をさせていただきます。財政健全化を進めるのであれば二〇二〇年までにプライマリーバランスを改善する目標があるにもかかわらず、歳入不足を国債に頼るということを繰り返しているのであれば、人口減少において、ますます将来の子供たちに負担を強いるのではないかと懸念を抱いております。

 よって、現状を踏まえた財政健全化に向けたロードマップと、国家財政のあるべき姿を国民に示すことが必要ではないかと思います。

 連合愛知は、二〇一三年に組合員にアンケートを行いました。その中で、組合員が連合愛知に取り組んでほしい政策の上位を紹介すれば、雇用の安定と創出、仕事と生活の両立支援、子供の健全育成、地域の産業振興の強化、安心な医療体制・サービスの充実、高齢者福祉充実が上位を占めました。

 当然に、働く者の立場でいえば、雇用の安定と創出、地域の産業振興の強化であり、生活者の立場を踏まえれば、仕事と生活の両立支援、子供の健全育成、安心な医療体制・サービスの充実、高齢者福祉の充実など、社会保障に関する施策が多くありました。

 その視点に立って、まず、子ども・子育て支援でありますが、平成二十八年度予算より増額していることは評価いたします。しかし、子ども・子育ては、ことし一年とか二年とかの問題ではなく、少なくとも数十年先を見越しての対策を講じなければ間に合いません。このような視点から、社会保障・税一体改革の三党合意に基づく少子化社会対策大綱等で決められた金額、一兆円規模を確保することが重要と考えています。

 また、安心できる保育のあり方を考えれば、保育士の処遇改善は必要不可欠であります。今回の予算で改善する予算は評価いたしますが、依然として、全産業平均に対して約十万円の賃金格差があり、処遇改善は、一時金ではなく、できる限り月給に反映させるべきだと考えています。

 そして、保育職場の実態である予算上から、非正規職員による保育士の要員確保や時間外労働の実態等の改善を含め、保育士の就労環境を整え、保育士が安心して働ける環境で子供たちの成長を見守るとともに、親が安心して就労できる社会環境をつくるべきと考えています。

 そして、保育施設などの施設は市町村になることかもしれませんが、国としても、縦割り行政を改め、子供や育児をする親のことを考えた姿にすべきだと考えています。

 続きまして、奨学金についてであります。

 給付型奨学金が創設されたことは評価いたします。しかし、先行実施とはいえ、対象者並びに給付額は極めて小さく、不十分であると指摘をさせていただきます。

 本来、学業に専念しなければならない中、バイトに精力を傾けなければならない状況や、ブラックバイトと言われるようなバイト先でバイトするような学生もいます。また、大学卒業時に、奨学金の借金を抱え、企業に就職しなければならない現状もあります。

 この状況を考えれば、無利子奨学金も同様でありますが、子供の学びを社会全体で支えるためには、大胆な政策転換が必要ではないでしょうか。ぜひとも、本格実施を迎える年度にかかわらず、大幅増額を必要と考えています。

 連合愛知と愛知経営者協会では、労使共同研究として、二〇一五年度に、仕事と介護の両立に向けた環境整備についてを研究テーマに取り上げました。この研究は、仕事と介護の両立に関する方針や考え方、両立支援制度の整備、利用状況等の実態を明らかにするため、労使双方でアンケートを実施し、仕事と介護の両立に関する現状把握を行い、個別の労使関係で取り組みの推進に向けての参考としていただけるように行いました。

 調査企業の約八割が、今後、介護が企業経営に影響を与えると回答し、管理職等のキーマンが介護者になる影響、要員計画の影響、介護者のモチベーションや健康状態が心配が上位でありました。また、調査企業の二割弱の企業で、介護を理由とした退職者が発生しているという回答をし、退職理由を把握していない企業と合わせると、潜在的には、介護を理由として退職する社員がアンケート結果以上にいると推察できます。また、労働組合としても、介護をしている社員を把握している組合は約四割にとどまっています。

 このような状況において、介護離職ゼロの施策はしっかりとして進めていただくとともに、介護サービスを将来にわたり確実に利用するために、安易な介護サービスの重点化、効率化につながらないようにすべきであります。

 そして、介護職員の処遇改善のための予算が組み込まれたことは評価いたしますが、保育士同様、全産業平均に対して十万円の賃金格差があることから、不十分と言わざるを得ません。そして、介護職場における人材不足や雇用のミスマッチの改善をすべきであります。

 連合愛知として、長年続けております組織内の連合愛知助け合いカンパを行っています。そのうち、何らかの理由で親元を離れて愛知県の施設で生活しなければならない子供たちが就職する際に、就職支度金を毎年お渡ししています。その子供たちに就職先を聞きますと、おじいちゃん、おばあちゃんが好きなので介護の職場に就職し、ケアマネジャーを目指す子もいます。そんな介護職場で働く子供たちが安心して生活できる環境をぜひともつくっていただきたいと要請をさせていただきます。

 このような課題以外にも、子供の貧困と言われる社会にもなっています。国としてのセーフティーネットの構築や親の雇用の安定化はもちろんでありますが、そして、何よりも、社会保障と税の一体改革は早期に実行すべきだと考えます。ぜひ、党利党略によらず、日本の将来を考え、社会保障と税の一体改革を進め、社会保障の充実、安定化と財政健全化に向けて、実効ある対応を望むものであります。

 次に、働き方改革に対して述べさせていただきます。

 今、国では、働き方改革実現会議が開催され、連合本部神津会長が私たちの代表として意見を述べさせていただいております。

 私も、労働組合役員経験が長い者として、平成四年に労働時間短縮推進計画が示され、平成十七年までに総実労働時間千八百時間の達成、定着を目指すとした計画を記憶しております。

 取り巻く時代の環境に違いがあることは理解しますが、本来、人間としての尊厳である仕事に対する適正な労働時間管理は、普遍的な取り組みであると考えています。今論議されている労働時間の上限規制と勤務間インターバルの規制を求めるとともに、早急に労政審で審議され、法整備をすることが必要だというふうに考えています。

 一方、政府が労働基準法等改正で進めます、表面にあらわれない労働時間による心身の健康阻害を引き起こしかねない企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大と高度プロフェッショナル制度の創設は、ぜひ撤回をすべきであるというふうに考えています。

 次に、少し地方分権についてお話をさせていただきますが、地方分権という言葉が、今では過去の遺物になったように感じられます。

 地方に交付される予算は、ある程度の枠は必要かもしれませんが、それぞれの地域の状況により、予算執行を任せることもできるものもあると考えています。国が進めること、地方に任せることについて、さらなる検討を進め、地方分権を進めるべきだと考えています。これからの社会では、国としてすべきセーフティーネットと、地方が知恵を出し主体的に進める政策が地方創生につながるのではないかと考えています。その視点に立った予算編成が必要と考えていますので、お願いをしたいと思います。

 最後になりますが、平成二十九年度予算には関係ないかもしれませんが、第四次産業革命が叫ばれる中で、心配する点があります。

 今までの産業革命は、大きく変わる社会環境の中に新たな雇用を創出してきたと考えています。しかし、IoTやAIが駆使された社会の中で、労働というものはどのように変化していくのでしょうか。

 企業が人材を育成し、生産性向上に向け働く者も努力し、日本の経済を支えてきた時代から、想定されるイノベーションにより企業がどのように人材を雇用し育成するかであります。場合によっては、社内に人材を抱え込むことの必要がなくなるのではないかと危惧しています。

 第四次産業革命を否定するものではありませんが、この変化に適応できる者とできない者の間に新たな格差が生じるのではないかということと、企業においても、対応できる企業と対応できない企業の差が出るのではないかと思っています。

 これらのことは単なる杞憂で終わるかもしれませんが、まさしく、将来を見据えて、国として雇用と人材などについてきちんとコミットすることが重要と考えています。そして、その時代が到達したときに、働く者を守る労働法等をどのようにすべきか、今からその認識を持っていただき、対応する必要があると考えています。

 以上が、私からの発言とさせていただきます。(拍手)

石田座長 ありがとうございました。

 次に、坪井明治君にお願いいたします。

坪井明治君 ただいま御紹介にあずかりました全国商店街振興組合連合会の理事長の坪井でございます。

 今回は、予算委員会の皆様方には大変御尽力いただきまして、このような場をおつくりいただきましたことをまずもって厚く御礼を申し上げたいと存じます。

 商店街を取り巻く環境が非常に厳しいということでございます。先生方もよく御存じかと思いますが、そこら辺の観点からお話をさせていただければ非常にありがたいなというふうに思っているわけでございます。

 大店法が撤廃されましてから十六年たったわけでございます。国会の先生方が十二分に論議をしていただきまして、あの大店法は撤廃すべきだというような結論に至って、現に今日に至ったわけでございます。

 その結果がどうであるかということは、もう先生御承知のとおりでございまして、名古屋はちょっと別にいたしまして、御地元へ帰られますと、全く中心市街地が空洞化してしまっている、シャッター道路だ、これはどういうことだというようなお話。地元へは、各先生方、おうちへ帰りたくないというふうにお話は聞いておりますけれども。

 というのは、要するに、夜なべ、商店街の方々が先生にお会いして陳情したいというようなお話があるそうでございますが、全くそのとおりでございまして、非常に厳しい状況下に置かれている。ここで一旦、仕切り直しをして、十六年前に戻っていろいろまた論議をしていただければ非常にありがたいなというふうに思っています。

 何もかも税というと商店街、要するに、貧乏人の集まりであるから、何も事を大きく扱わないから、あそこへ全部押し込んでしまえというところがあるかどうか、それは知りませんが、いつも全ていろいろなもの、消費税の増税でもそうでございますし、黙って言うことを聞けというような感じで、私どもは下を向いて、ははあと言って、お上に逆らったことは一度もないというのが私どもの考えでございますが、ここらあたりで物をきちっと言わなくちゃいけない時代に入ったのかなというふうに今思っているわけでございます。

 今の消費税でも、要するに、お預かりをする。私も先般、三年前でしたか、国会での公述人として参加させていただきまして、その話をさせていただいたわけでございますが、国、政府がやらなくちゃいけないようなことを、なぜ私ども商売人、あきんどが夜なべをして税制を、仕分けして国税へ持っていくんだ、そんなばかなことはないというようなことを私は申し上げたわけでございまして、できれば、毎日取りに来てもらっても結構ですというようなことをお話ししたことがございますが、それは採算的には非常に難しいからというようなことであったかとは存じます。

 いずれにしても、全てのものがそういうような状況に追いやられていってしまっているという、要するに、小売商業者というのは本当につらい、悲しい思いをしているわけでございます。特に、十七年前の大型店の郊外における無秩序な進出によって、あっという間に中心市街地が空洞化してしまったという、そこらあたりが一番よくわかるんじゃないかなというふうに思っています。

 私も、地方へいろいろ回らせていただきまして、見せていただいておるわけでございますが、地方の自治体が、これは大変だ、中心市街地が全く空洞化してしまっている、それを何とかしなくちゃいけないというようなことで、行政がお金を出して維持をしていく、要するに家賃を払いながら維持をしているというのを聞きまして、うわあ、とんでもないところまで来てしまったんだなという、ここらあたりで本当に真剣に考えていただきたいななんというふうに思ったこのやさき、デパートさんもそうでございますし、大型店もそうでございますが、要するに競争激化が始まりまして、お互いに潰し合いをやりまして、あっという間にまた大型店もなくなってしまっているというような状況でございます。

 御承知だと思いますけれども、大型店は、固定資産税も安いところでお店を持たれて、駐車場はただだということで人をお集めになってみえるわけでございますが、もうとんでもない話でございまして、要するに、一旦畑を我々の物販の方へ転用したときには、あれは十年、二十年で田んぼには戻らないということを今の二世、三世のお百姓さんの息子さんたちはやっとわかったみたいでございまして、とんでもないことをやってしまったなというようなことを叫んでいるそうでございまして、やめるのにもやめられない。なぜならば、要するに、税金が高いわけですから、やめたらその日からとんでもない金額になっちゃうものですから、そんなようなことも含めて、えらいことだ、えらいことだという話になっておるわけでございます。

 私は、特に固定資産税評価審議委員を十何年間やってきて、非常にこれはいかがなものかなというふうに思ったのが幾つもございました。特に、名古屋みたいな財政豊かなところでさえ、税制問題、要するに、今固定資産税を幾ら納めさせていただいておるかということを、先生方は、地方税ですからわからないと言われればそうかもわからないですが、実は四七%だとか五〇%近く固定資産税を払っている、それを安定収入だといって市町村が使ってみえるというようなことでございます。そこら辺のところもいかがかなというふうに思います。

 それから、商業の一、二がございます。その中の商業関係もございまして、そこへ入れて計算しますと、三〇%以上が固定資産税で賄っている、要するに、名古屋市内は三〇%が小売商業者が払っておるというようなことでございます。そこへ、全部私のところへしわ寄せが来て、おまえのところが払え、こういうような話ではないんじゃないかなというふうに、要するに、ここまで追いやられてしまうと大変な状況になってきているんじゃないかなというふうに思っています。どうか、そこら辺のところも含めて、もう一度、一考していただければ私どももありがたいなというふうに思っておるわけでございます。

 アメリカのウォルマートという最大のスーパーがございますが、そこは全敗ですよ、先生。要するに、地域の方々が反対といって裁判にかければ、今一〇〇%負けていますよ。私どもも黙っておってはいかぬな、いつも下を向いておっても最近はお金も落ちていないような状況でございますから、下を向いておってはいかぬななんと思っておりますけれども、そんなようなものが今の状況であるわけでございまして、要するに、是が非でもそこら辺のところも含めてお願いをしたいなというふうに思っています。

 二年前に大きな予算を講じていただきましたプレミアム商品券、あれは非常に大きな効果があったということでございますが、それを政府が何一つ発表していないというのは何か意味があるのかなというふうに私自身はいつも思っているわけでございます。

 この間、名古屋市のプレミアム商品券を発券した折には、三・五倍の経済効果があったということは既に数字であらわれているわけです。それが日本国全体で見ると、あれは内閣府でございまして、発表されないというのは何か意味があるのかねと。余り調子がよかったから、余りそれを言うとまた坪井みたいなやつが出てきて、またプレミアム商品券をもう一度やれ、こういうふうに話をするとまずいから黙ったのかどうかというのは私は知りませんけれども、そこら辺のところはもう少しガラス張りにしていただければよろしいんじゃないかなと。

 なぜいかぬのか、なぜ次年度は予算がつけられなかったのか、本年度もつけられなかったというのはどういうことなんだということもきちんと検証していただいて、悪いところは我々だって直せばいいことでございますし、そういうようなことを考えているわけでございます。

 特に、名古屋だけは、私の号令一下かどうかわかりませんが、各デパートさんも、若干の大型店の方々も賛同いただきまして、やりましょうと。要するに、これはあくまでも消費者の皆さんに喜んでいただくことが我々の使命だということでやらせていただいたわけでございまして、それも相当評判がよくて、まあ、行政からしっかりお金をいただいてはいないんですが、自助努力によって、我々の賄える金額で、お客様に二割引きで商品券を発売したというようなことでございます。これは毎年伸ばしていきたいなというふうに思っているわけでございます。

 いずれにいたしましても、我々の商店街、何とか周辺の皆さん方に少しでも喜んでいただこう、本当に少しでも明るい経済になればというような思いでやっているわけでございまして、どうかそこら辺のところも、先生、十分に踏まえていただきまして、やはり御支援をしなくちゃいけないところには御支援をするということをきちっと明確にお答えいただきまして、前に進ませていただければ非常にありがたいなというふうに思っております。

 何か時間が来ておるような感じでございますから、ここらあたりで済ませたいと思いますが、また、先生からのいろいろ御質問等もございましたら承りまして、私も返答させていただければ非常にありがたいなというふうに思っています。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

石田座長 ありがとうございました。

 次に、五藤政尋君にお願いいたします。

五藤政尋君 初めまして。私は、愛知県一宮市にあります木曽川商工会の会長を務めております五藤と申します。

 本日は、衆議院予算委員会地方公聴会に意見陳述人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。

 初めてのことで本当に大変緊張しておりますが、何を話していいのか、正直な話、今わかりませんでしたけれども、前のお三方がすごく、経済的なものとか予算的なものは専門的にお話しされたと思います。私は、商工会としまして、一番社会の底辺的な、庶民的な感覚でお話をさせていただきたいと思っております。何とか私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず最初に、木曽川商工会の紹介からちょっとさせていただきます。

 木曽川商工会は、新生一宮市の一番北西部に位置します。私ども木曽川町は、平成の大合併で二市一町が一緒になり、人口三十八万人有余ですが、新一宮市になりました。一宮市の人口は去年初めて減少に転じました。私ども木曽川商工会の会員も退会者が多く出ておりまして、先ほど商店街の理事長さんがおっしゃっていましたように、本当に商店街が疲弊していて、シャッター通りというのが多くなってきているのが現状だと思います。

 ただ、その理由として、退会者の大半が廃業ということに追い込まれる企業さん、いわゆる商店が多い、これも現実でございます。その理由として後継者問題がほとんどで、私ども商工会の会長として、まことに、本当に寂しい限りでございます。

 私ども木曽川町は、有名なことは、戦国武将山内一豊の生誕の地でございまして、もう一つ有名なことは、最近の映画で「海賊とよばれた男」という映画がございまして、機屋さん、いわゆるのこぎり屋根の工場を撮影させていただいたというのが木曽川町の工場でありまして、その二つが私はちょっと今自慢できることかなと思っております。

 毎年、木曽川町の一豊祭りを行っておりまして、旧木曽川町の人口は、前は二万八千から二万九千が、今、新木曽川町になりましたら、三万一千人ぐらいにふえまして、そして、町の地の利がよく、東海北陸自動車道があり、インターチェンジもあり、JR東海道線があり、名鉄本線があり、鉄道の駅だけでも町内に四カ所ございます。そのためか、町内には、大型施設のショッピングモールが二カ所、大型スーパーのチェーン店が八店舗ございます。今の時代、この大型店舗との共存共栄しかないと考え、大型ショッピングモールとコラボして、全国で初めて、地元商店街とショッピングモールと一緒に地域の活性化に取り組んでいます。

 そこで、少子化問題についてお話しさせていただきます。

 私ごとで恐縮ではございますが、私の家業は、貸し衣装を細々と営んでおります。近年、ブライダル業界も不景気で、大変苦しんでおります。売り上げも伸びない状態がずっと続いております。なぜかといいますと、先ほどお話があったと思います、結婚しない若者がふえている現状がございます。当然のように、結婚しなければ子供が生まれるはずがありません。今、現状、結婚披露宴等、結婚式がなくなったわけではありませんが、日本の伝統的な儀式ではなく、ショービジネス化されています。つまりは、費用がかかり過ぎるということです。

 また、私ども一宮市では、昨今、新聞の紙面を騒がせて有名になっております。近々でいいますと、ある中学校の先生による子供のいじめがございまして、大阪の商業施設から中学校三年生の生徒が飛びおりた、自殺したという事件とか、去年の、ポケモンGOを運転中にしていて、小学校の四年生の子供がはねられて死亡した事故等、少子化問題どうのこうのというよりも、まず、そういう形で、人間を、命を大切にする方策の方が重要なのかなと思っております。

 人口減少に歯どめをかけなければ、日本の国は大変なことになってしまうと私は思っております。これは私の個人的な意見ですが、なぜ少子化になってしまったのか。やはり子供を育てる費用がかさむからだと思っています。一人の子供を大学まで行かせて育てるのに、約三千万から四千万かかると言われています。ですから、出生率が一・六人台になってしまっています。

 今までは、核家族化で、二世帯あるいは三世帯住宅が主流でしたが、やはり建築費用や光熱費等、維持管理費も余分にかかってしまいます。そこで、私が提案したいのは、今のおじいちゃん、おばあちゃんは長生きでぴんぴんしておられる方ばかりで、孫の面倒ぐらいは見てもらえると思います。ですから、私は、子ども手当等も大事ですが、三世代同居減税を提案したいと思いましたが、私が調べたところ、既に二十八年度の予算でこれはもう決まったと聞いております。

 ただ、本当に、一般庶民の方にまだその情報が行き渡っていないというのが現状で、それに対しての国、自治体からの報告ですか、宣伝等をしていただいて、皆さんが周知し得るような方策をとっていただきたい。

 このことにより、住宅費、光熱費、生活費の軽減ができる、子育て教育に費用が回せる、家計にプラスの効果が生まれてくると思います。夫婦共稼ぎでも十分、子供の出生率が二人以上になっていくような気がいたします。

 次に、消費税について意見陳述をいたします。

 消費税、現行八%ですが、例えば今後一〇%になった場合、私たち小規模事業者にとって大変厳しい状況になると思います。ただ、国の財政が逼迫しているなら、これは仕方がないと私らは思っております。でも、八%から一〇%へ消費税率が上がると、一般の事業者は今よりも不景気になり、経営を圧迫するのは目に見えています。消費税の引き上げの前に、税金の無駄遣いとも言える天下りの禁止を徹底していただきたい。

 直近、問題となっている文科省の天下りあっせん事案では、関係団体に補助金が支出されて、まさしく税金の無駄遣いであると思います。たしか、大阪では天下りがとまったと聞いております。こういう形の税金の無駄遣いを改めていただくように、先生方にもお願いいたしたいと存じます。

 まだちょっと時間がございます。

 私、愛知県商工会連合会の理事も務めさせていただいております。ちょっとお話しさせていただきます。

 私どもは、五十七の商工会が愛知県にございまして、このほとんどが中小企業で、御存じのとおり、中小企業というのは、国の全体の九九%が中小企業で、その中小企業の中の八七%が小規模事業者でございまして、そのほとんどが愛知県商工会連合会の会員の中にあると思います。

 愛知県商工会連合会が行っております昨年の十月から十二月期の商工会地域の景況調査の結果を見ますと、業況判断、売り上げ、採算のDIがともに好転しています。回復基調には向かってはおりますが、来期の見通しでは売り上げの悪化が懸念されております。また、業種別では、製造業、小売業は回復の兆しが見られるものの、サービス業は二期連続で悪化しており、業種間格差が徐々にあらわれてきていると思います。

 このことに関しまして、先生方には大変申し上げにくいんですが、やはり小規模企業、特に、本当に、中小企業の小規模の方を守っていただくと言ったらおかしいんですけれども、何とか仕事が、商売ができるような形を、施策をとっていただきたいと思っております。

 時間も来たようですから、最後に、私の意見陳述を聞いていただきまして、まことにありがとうございます。これからも、国会議員の先生方、政府官僚の皆様方のお知恵とお力で、世界一の安心、安全、平和国家日本、経済大国日本をつくっていっていただくことを御祈念申し上げ、私の意見陳述を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。(拍手)

石田座長 どうもありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

石田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長坂康正君。

長坂委員 自民党・無所属の会の長坂康正でございます。

 きょうは、この愛知・名古屋での公聴会ということで、自民党、私は地元出身でございますので、質疑させていただくこと、本当に、座長を初め理事の先生方に感謝を申し上げる次第でございます。

 また、きょう、大変お忙しい中、中経連の豊田会長を初め、この地域のオピニオンリーダーといいますか、実情をしっかりと発言、発信していただける四人の陳述人の皆様に御出席をいただき、意見を開陳していただきまして、本当にありがとうございます。最後の木曽川の商工会長さん、私、しょっちゅうお会いをしております。

 中小企業、小規模事業者の苦しみといいますか、さっきおっしゃっていただいたように、愛知もそうですけれども、日本の産業を支えているのは、やはり良質な中小企業、小規模事業者の皆さんですから、これからもっとしっかり頑張っていただけるような、我々、アベノミクス、地方創生、一億総活躍というのを目指しているわけですけれども、本当に、そういった中で御苦労さまでございます。しっかりそういった意見を国政に反映していきたいな、そんな思いで拝聴しておりました。

 何しろ、愛知は物づくりの県でございます。中経連の会長からおっしゃっていただきましたように、我々、本当に日本経済を牽引しているんだというその自負があるわけでありますが、私も中小企業の息子といいますか、機屋の息子で育ちました。愛知県は本当に昔から、豊田自動織機さんじゃないですが、今、フォークリフトとかいっぱいつくっていらっしゃいますけれども、何しろ繊維産業でしっかり下地がある中で、そして自動車産業、そして電気機械。きょうは、三菱のMRJを皆さんと一緒に視察させていただきました。

 物づくりの現場というのを拝見すると、私たちは本当にわくわくしてくるというか、今、MRJも試作機でいろいろ御苦労はされておりますけれども、産みの苦しみはされておりますけれども、やはり物づくりでは日本は世界一だという自負のもとにしっかり頑張っていらっしゃる姿も拝見をしてまいりました。

 製造品出荷額は、愛知は、昭和五十二年以来日本一であります。喫緊でいえば四十三兆八千億円。御存じのように、名古屋港の貿易額は十六兆九千億。本当に、日本の物づくり、そして輸出産業をリードしているという、そんな思いでいっぱいでありますし、ますますこれからも、日本人のよさというか、真面目で勤勉、そういった物づくりを高めていただきたい、そんな思いでございます。

 せっかくきょうは、中経連の豊田会長にいろいろお話をいただきました。先ほどいただいた中で、予算に関するプライマリーバランスの目標達成への努力、また三位一体改革、そういったことはしっかりと受けとめて、着実に進めていかなきゃいけないと思っております。

 それから、いろいろな部分で評価をいただいた部分もあって、ありがたいわけでありますが、第四次産業革命を推進していくというこれからの目標の中で、人工知能、ロボット、IoT、自動車の自動走行の分野で、研究費等が予算に盛り込まれているということで評価もしていただきましたけれども、これから日本の製造業、世界的にいろいろIoTとか第四次産業革命が進む中で、我が国の強みである現場の力を生かしつつ、製造業がいかに勝ち抜いていくかということ、どんな方策というのを、いっぱい考えていらっしゃると思いますけれども、もう少し深く御開陳いただければと思いますが。

豊田鐵郎君 今の御質問ですけれども、今後、製造業がどういう形でいくかという、それがなかなかわからないものですから、わかれば簡単なんですけれども。

 いずれにしましても、この中部地域というのは製造業が盛んなところですので、やはり我々としては、その火を潰してはならないという気持ちが強くございます。

 そういう中で、本当に今我々が一番心配しているのはやはり自然災害ですね。熊本もそうですし、東北のときもサプライチェーンがずたずたになっちゃった。それも、本当に、一つのメーカーでやっている小さな部品のために工場が何日もとまって日本の生産額が落ちちゃったというのは、非常に大きな影響を与えたなという気がしております。

 今、多くの企業が防災・減災対策の必要性は認識はしています。しかしながら、対策の実施状況は芳しくないんですよね。

 ことしの一月に本会の会員企業向けにアンケートを実施しましたところ、自社施設の防災・減災対策については十分対策していると答えた企業は、製造業で全体の四分の一程度にとどまりました。従業員が三百人未満の製造業ではわずか八%しかありません。地震対策のためには耐震診断を受ける必要がありますけれども、そういう中小企業になりますと、金銭的余裕とか人的余裕が全くないということで、それすらも実施できないという中小企業が多いというのが実態です。

 そこで、中経連では、東日本大震災のあった二〇一一年度以降、継続して、企業が自主的に行った防災・減災対策に対する税制優遇制度を要望しておりまして、関係省庁等にも毎年御説明にお伺いしているというのが実態でございます。

 政府におかれては、大規模災害時のサプライチェーン維持に向けて、企業の自主的防災・減災対策の重要性を御認識いただきまして、本会が要望している税制の実現に向けて御努力いただきたいなと思っているところでございます。ここが一番大きなところなんです。

長坂委員 先ほど、陳述の最後に、やはり国土強靱化、防災対策が大事だというお話もいただきました。

 私の地元は愛知九区でございますが、南の方は、二万ヘクタールが海抜ゼロメーター以下であります。大体、木曽川の商工会長さんがおっしゃいましたが、木曽川町、今、一宮市ですが、あのあたりでも、木曽川は天井川でございますから、基本的に、自然に降った雨の水なんかもポンプがないと流せないというような状況であります。

 そういう中に、きょう視察させていただいたMRJじゃありませんけれども、航空宇宙産業も、飛島村とか弥富、あちらの方には三菱さんや川崎重工業さんがあります。ロケットもつくっております。これは濃尾平野でございますから、かつての伊勢湾台風以来しっかりと防災対策をやってまいりましたので、非常にそういった企業立地には適していると我々は思っておりますけれども、今、南海トラフとかそんなことを言われておりますから、これからしっかりと、やはりこういった、今おっしゃったサプライチェーンをしっかり守っていくためにも、防災・減災対策をやっていきたい、予算にもしっかりこれからも、国土強靱化を頑張れよと言っていただきましたので、意を強くして頑張っていきたいな、そんな思いでもございます。

 せっかく中経連の会長もいらっしゃっていますので、最近の話でいいますと、物づくりの愛知、中部圏でありますが、やはり輸出産業ということですね。そうしますと、日米首脳会談もございましたけれども、アメリカを初めとした国際情勢の変化が大変影響しやすい、輸出産業というのはそういうことだと思います。

 毎日、大統領の発言やツイッターに耳目が集まっているわけでありますけれども、今回の安倍総理の訪米、これは迅速に対応して、そしてまた異例の四十八時間の濃密な首脳会談になったというのは、大変私たちは自負をしているわけでありますけれども、特にいろいろ心配される貿易や経済の話も、麻生副総理とペンス副大統領をトップとしたハイレベル経済対話の枠組みもつくることができたと思っています。

 ペンスさんは、御承知のように、インディアナ州の州知事もされましたから、日本企業も随分行っているところでありますから、日本とアメリカのウイン・ウインの関係もしっかり把握していただけると思っておりますけれども、どうでしょうか、四人の方がいらっしゃいますが、それぞれの今の安倍外交、内閣に対する評価といいますか、率直な御意見をもしいただければありがたいと思いますが。

豊田鐵郎君 これだけ早く日米首脳会談を開いていただいて、非常に大きな成果が出たんじゃないかと思っております。

 ただ、トランプさんが大統領になって以来、どうも世界じゅうが何か過剰反応し過ぎだったんじゃないかなという気がしますね。だから、その辺のところを今回で少し落ちついて皆が考えられるようになったんじゃないかなという気がしております。今回の会談については、私は非常に効果があったなというふうには思っています。

 それから、ペンス副大統領は、私も二回ぐらい会ったことがあります。私どもの工場がインディアナ州にあるものですから工場にも来ていただけるし、刈谷にまで来ていただいています。ですから、非常に話のしやすい人ですので、我々も期待したいなと思っております。

 以上です。

土肥和則君 私がそこまで述べる資格があるかどうかわかりませんが、個人的に言いますと、まず、日米首脳会談を早く行ったということは私もよかったというふうに思っていますが、ただ、私どもはマスコミ報道しかわかりませんので、実のところはわからないです。

 ただ、感じだけをお話しさせていただくと、非常に友好的な中でやっていただいたことに対して、それを本当に受けていいのかどうかというところが、私は実は疑問を持っております。要は、ですから、これからアメリカが何を要求してくるのかということに対して、友好的な関係を持ったからこのことは当然やってくれるんだよねというような話になってくると、ちょっとつらいのかなという思いは持っています。

 これはなぜかというと、私たちは、働く者が、支えている産業が、やはりしっかりとした産業基盤がなければだめだということと、そこに働いている人間がしっかりと生活基盤がならなければならないという思いを持っています。ですから、今後、私は、これからの外交をしっかり見させていただきたいということでありますので、今回の外交については余りコメントを申し述べるものではないかなというふうに思っています。

 以上です。

坪井明治君 ただいまの先生のお話ではございますが、我々はどうであるかというようなお話であるかと思いますが、一刻も早く手を打たれたということについては非常に大賛成でございまして、やはり打つべきところは打ったなというふうに高い評価を実はしております。

 ただ、今後どうなるんだということについては非常に疑問符があるのかなというふうに思っておるわけでございまして、まだ一カ月もたつかたたないかというような状況でございますし、そこら辺のところもきちっと踏まえながら、今後とも我々は注視していきたいというふうに思っております。

五藤政尋君 私としましては、本当に大成功だと思っております。

 正直なことを言いますと、私、隠れトランプでございまして、一応、ネクタイもトランプと一緒の色でやっておりまして、本当に、最初はどうなるのか、すごく傲慢な意見が出ていましたけれども、意見よりも実質はもっとやわらかいんじゃないかという感覚がしていまして、安倍首相もすごくその辺がわかってみえて、うまい外交をされたな、大成功だと私は歓迎しております。

 以上です。

長坂委員 ありがとうございました。

 まだまだこれからいろいろハードルがあると思いますし、今世界を眺めましても、個性的で、したたかな指導者が多いわけですから、これはしっかりと安倍総理を先頭に頑張っていかなきゃいけないわけであります。ただ、選挙で選ばれた正統な政府であることは間違いありませんから、本格的な政府ですから、しっかりとこれは対応していくべきだろうと私たちは思っております。

 あと五分だと言われましたので、もっともっといっぱい質問をさせていただきたいんですが、商店街の会長もおっしゃいましたように、いろいろ困っていらっしゃる中に、やはり個人消費が上がらないということがあると思います。質問は中経連の会長にさせていただきますけれども、アベノミクスを推進する上で、個人消費を伸ばしていくという中で、やはり総理が言っています、企業の税制面でも、世界で一番企業が活躍しやすい国にするんだということで、法人税減税等もやってきたわけであります。

 そういう中で、きのうの予算委員会の質疑にもありましたけれども、なかなか個人消費が上がらない。その中で、またこれから給与の話も出てまいります。政府が給与を上げてくださいといって、この何年間、企業にお願いをしているわけですけれども、麻生財務大臣の答弁では、企業の内部留保というのは三百七十兆円あるんだ、そして、設備投資に回ったのが八兆円で、給与に回ったのがまだ三兆円なんだということをおっしゃっています。

 私と日ごろお話ししていただけるのは、木曽川の商工会長さんじゃありませんけれども、中小企業、小規模事業者の方ですから、一生懸命自分たちは苦しい中で給与を上げておるけれども、それになかなか利益は追っついてこないぞという方ばかりであります。

 だから、三百七十兆円の内部留保というと、大企業という話になってくるんだろうと思いますけれども、経団連もしっかり、これは個別の企業の実情があるわけですけれども、給与を上げてくれという話をしていらっしゃると思いますが、中経連の会長としてはこの関係はどんなふうに思いがおありかを教えていただければありがたいです。

豊田鐵郎君 企業が業績改善の成果を賃上げとして従業員に還元して、経済の好循環が生まれて景気が上向くことは大変望ましいことだと基本的には思っております。

 また、賃上げの中身について、経団連の方針の中で時短労働などが例示されるなど、企業がとり得る選択肢というのは非常にいろいろなやり方があるというふうになっておりまして、賃上げを前向きに検討する一つの材料にもなるのではないかと思っております。

 ただし、賃上げというのは、やはりそれぞれの企業が、それぞれの業績それから景気動向などを勘案して決めるものでございまして、私の立場としては、余り、数字等のコメントというのはなかなか言いにくいなというところでございます。

 中部圏の経済は全国と比較すると堅調ではある。いろいろな調査で出ていますけれども、企業の業績は多種多様なんですね、その中では。いろいろ、大きいところも小さいところもありますし、業績がよいところも悪いところもある。また、特にこの辺は、先ほどの話じゃないんですけれども、米国の新政権、この辺がどういうふうな形で出てくるのか、まだ本当のところはわかっていませんので、そういうものの影響を受けやすい業種、輸出産業が強いというのがありますので、そういうことで各社がどういうふうに判断されるのか、私も見守っているところでございます。

 以上です。

長坂委員 さっきの話じゃありませんが、九九%が中小企業、小規模事業者でありますし、そういったところで働く皆さんにも、やはり、そういったいろいろな意味での恩恵が行くように、また、ぜひ御尽力をいただきたいなと思う次第であります。

 また、きょう、中経連の会長のお話の中で、一宮市、四日市、静岡、長野の商工会議所と協力して、いろいろアンケートを実施していただいたお話もいただきました。

 公共事業が大事だと。先ほどの国土強靱化もそうでありますし、中経連さんが中部圏交通ネットワークビジョンということで提唱していただいています東海環状自動車道の西回りも今工事が進んでおりますし、名古屋の環状二号線西南部も早期完成を目指して今やっております。

 我々はやはり、物づくりの中で、例えば、名古屋港の機能をもっと強化したり、国土強靱化を思いますと、まだまだ、西知多道路だとか、これから中部国際空港の二本目の滑走路とか名岐道路を北進したりとか、私どもでいえば、東海北陸自動車道が名古屋港に、新名神まで直結するような一宮西港道路とか、そういったこともしっかり進むのが、地域のいろいろな意味での防災、減災にもなるし、交通のメリットでもあると思っていますので、そういった意味でのオピニオンリーダーとしてますますそういった地域から発信していただきたいなと思います。どうぞよろしくお願いします。

 きょうはありがとうございました。

石田座長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 改めまして、四人の意見陳述人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、貴重な御意見をいただきましたことを心から御礼申し上げたいと思います。

 時間もありませんので、早速質問に入っていきたいと思うんですけれども、まず初めに、豊田陳述人、そして土肥陳述人にお伺いをしたいと思うんです。

 これは少し、先ほどの長坂委員とかぶるところもあるんですが、昨日も、予算委員会では、総理の訪米を受けて集中審議が行われました。当初は、自動車の話であったりとか為替の話、これが大きな焦点になるのではないかと思われましたけれども、それは大きな問題にならずに少しほっとしたところではあるんですけれども、先ほどもありましたように、今後、麻生副総理とペンス副大統領の間でハイレベルの経済対話が行われるということでありますから、まだ私も予断を許さないのではないかなというふうに思っております。

 その中で、私がとりわけ重要だと思っておりますのは、先ほども話がありましたけれども、愛知県は、製造品出荷額が四十年連続第一位、二位の神奈川県の二倍以上ということで、まさに、物づくり愛知、日本一の物づくり産業県である。ですから、そこで働く人々というのがたくさんいるわけであります。

 例えばですけれども、トランプ大統領は、アメリカの雇用を守ると言っていて、アメリカの雇用をふやそうとしている。かつての自動車貿易摩擦のころと違って、今、日本の自動車メーカーは、アメリカ国内で生産をして、そしてアメリカ人をたくさん雇用しているということでありますけれども、仮にアメリカの雇用を日本の製造業がふやすということになれば、これは逆に、もしかすると日本の雇用にも影響することがあるというふうに思います。

 その点で、今後の為替やあるいは通商の動向がどういうふうになろうとも、日本の雇用をしっかり、この地域の雇用を守っていくことが私は重要だというふうに思いますが、その観点で、お二人から御示唆をいただければというふうに思います。

豊田鐵郎君 確かに、今先生がおっしゃったとおりで、アメリカで雇用をふやせば日本は減るという形になるのは当たり前な話ですよね。向こうはアメリカ人がふえて、こっちは日本人が減るということだと思いますけれども。

 今までなぜそういうふうな形になってきたのかというのは、例えば自動車をとってみれば、八〇年代の日米自動車摩擦、そういうものの対応でずっとやってきた。アメリカに一生懸命投資して、向こうの雇用を創出してきた。そういうことで今に至っているわけで、トランプさんの言うのはちょっと、もう古い話だなという気がしています。

 今、雇用を守るといって、あと、内部留保が多過ぎるとかいろいろな話が出ていますけれども、連結決算で、連結の数字だけで見ていると大間違いで、本当に内部留保がそんなにあるのかということも、またいろいろあるんですね。

 ですから、そういうことも含めて、全体でもっとうまく考えていかないとこれは難しい話だなという気がしてしようがないんです。

土肥和則君 今お話にありましたように、企業活動というのは、大昔だったら別なんですが、今の状況であれば、当然、グローバル社会でありますから、生産過程を考えると、いろいろなところで企業が活動しなきゃならないということは、私も理解をしています。

 ただ、雇用の問題になりますと、確かに、どこで雇用されるかというところはあるというふうに思いますが、やはり内需をいかに高めていくかといっても、どっちみち、日本の社会の中で内需をどこまで高められるかといったら、それは限度があると思っています。ですから、当然、海外に対してそのことの事業展開をする中で、日本の雇用もしっかり守るということは大事だというふうに思っています。

 ですから、私は、トランプ大統領がどのようにおっしゃるかわかりませんが、個人的には、日本で働く皆さん方の生産性向上に対するいろいろなものが報われないような社会はやはりつくってはだめだということを思っています。ですので、やはり日本の社会においてきちんと雇用をしっかり守るということ、これをやっていただくことは、経営者側と、少なくとも政府ではないかというふうに思っています。

 その視点に立って、内需を拡大するためには、これはちょっとくどいんですが、やはり賃上げをしっかりしなきゃならない。そのことによって消費を喚起することによって、またそこに生産を生み出すような過程ということをつくっていくためにはそのことも必要だというふうに認識をしておりますので、その視点に立った政策をぜひお願いしたいというふうに思っています。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 先ほどもお話がありましたように、やはりこの地域というのは、比較的まだ人口減少もそんなに急激になっていないですし、それはやはりこの地域に働く場がある、それを支えているのがこの地域の製造業だというふうに私は思っていますので、ぜひまた皆様にもその観点からも御協力をいただきたいと思います。

 一方で……(豊田鐵郎君「ちょっとよろしいでしょうか」と呼ぶ)

石田座長 ちょっとお待ちください。はい。

豊田鐵郎君 先ほどの雇用を守るというので、今お話もありましたけれども、この地域は要するに人口減少の影響が少ないと言われましたけれども、愛知県はそうなんですよ、ところがその周りの県は人口がどんどん今減っています。そういう中で雇用を守るというのも、また愛知県のところへも流れてきているものですから、ここがしっかりしないといけないんですけれども。

 そのために我々は何をやるかということで、やはり新しい産業、IoTとかいろいろなことで新産業、イノベーションを進めていく、そういうところで雇用をつくり出していく、そういう努力をせざるを得ないなというふうに考えています。

 以上です。

大西(健)委員 一方で、私、地元を回っていますと、例えばこの間も、大西さん、けさ、新聞の折り込みの求人広告がいっぱい入っていたのを、これだけ入っていたんだよ、これ見てと言って、例えば大手のところが期間従業員を時給千四百五十円で募集していると。うちなんか、こんなんじゃもう全然、それを超えるような条件は提示できないし、今もう本当に人手不足で、中小企業は人が集まらないというようなお話も聞きます。

 あるいは特定の業種、例えば介護であったり飲食であったり、あるいは運送業、トラックの運転手さんがいない、こういうようなお話もあちこちで聞こえてきて、この地域は、製造業を中心に非常に経済が堅調である反面、人手不足というのも深刻になっているのかなというのを実感しているんです。

 ただ、生産年齢人口も減ってきて、自然と、経済も堅調になれば人手不足になるんですけれども、それがまた一つ、後でちょっとまたお話ししようと思っている働き方改革とかにも私はつながっていくのかなと。

 例えば、ファミリーレストラン大手が、深夜のバイトが集まらないのでやはり深夜営業というのはちょっとやめようみたいな話もありますし、その中でどうやって働き方を変えていくのかということにもつながっていくと思いますけれども、この地域の人手不足について、土肥陳述人に、実感とそれから課題についてお話をいただければと思います。

土肥和則君 今先生がおっしゃられたとおり、この地域の中において、やはり人手不足というのは顕著にあると思っています。

 それは、大きく言うとやはり中小企業、これは大きい問題だというふうに思っています。いろいろお話を聞きますと、中小企業もやはり採用したいということで、例えば初任給を上げてもなかなか集まってこない、かといって、上げ過ぎると中小企業の経営も成り立たなくなってくるというお話も聞いています。

 ですから、そういう意味では、そういう業種、業態も中にはあるんだろうなということと、今まさしくお話がありましたように、今度は、業種の中でいえばやはり介護職の雇用とのミスマッチ。有効求人倍率は確かに介護職は高いんですが、なかなかそこに行かない。なぜかというと、まあ、言ってみれば、介護職に対する、労働状況の悪さということがありますから。それと、保育士も同じことかもしれません。ですから、そういったものを改定していかない限りは、そこにはやはり人が集まってこないということも現状だと思っています。

 そして、お話あったように、運送業も本当に、トラックの労働組合の方から話を聞きますと、人も集まらない。しかも、来る方々が、ちょっと失礼な言い方になるかもしれないんですが、年齢が上の方が来る、そういうことになったときに、非常に厳しい運送体系の中でやっていかざるを得ないということです。

 産業自身を考えたときに、それぞれの産業の課題はありますが、全体としての意識をやはり変えない限りは、なかなか難しいんだろうなと。例えば、パソコンで発注して、発送費がゼロ円で手元に届くような、こういうことが本当にいいのかどうか。そういうことをやるために、運送業界の方はその分のコストをどこに持っていくかという論議になってまいります。

 ですから、そういうことを含めて考えたときの、人材の集め方もそうなんでしょうけれども、まず、企業としての存続に対することをしっかりやらなければ、人は集まってこないんだろうなと思います。

 確かに、業種、業態によっての人手不足感は私たちもいろいろな会議の場で聞いておりますので、そういうことは理解をさせていただいています。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 私も回っていて、送料無料というのは何か自分たちがやっている仕事が全く無みたいなことで非常に嫌だという話はよく耳にしますし、それから介護士、保育士の処遇改善、これは政府・与党でもやっておられますけれども、我々も、競い合ってしっかりやっていきたいというふうに思っております。

 先ほど豊田陳述人の方から、新しい産業をやはりつくっていかなきゃいけないと。私も、そのとおりだというふうに思います。

 先ほどもお話ありましたけれども、我々はここに来る前にMRJの組み立て工場を見せていただいたんですけれども、私は、愛知はその中では、MRJもそうですし、中央リニアの新幹線、それからFCV、燃料電池車ということで、愛知は日本の中でそういう新しい産業というか技術をどんどん発信している地域だというふうに思っているんです。

 その中でも、特に私は個人的にも非常に注目しているのは、愛知県は、ことしの夏ごろに、一般道での、公道でのドライバーを乗せない形での無人運転、自動運転の実証実験をやるということですけれども、これは新しい技術でありますし、また社会のあり方そのものを変えていく、そういう可能性を秘めているというふうに思います。

 昨年も、高齢者のドライバーによる事故なんかが社会問題になりましたけれども、技術で、そういった事故の問題とかあるいは過疎化の問題を乗り越えることができるということで、私はこの自動運転に非常に期待をしているんですけれども、豊田公述人から、こうした自動運転を初めとする新しい技術、この愛知からさまざまな発信をしていくということについてコメントをいただければというふうに思います。

豊田鐵郎君 自動運転、個人的には、私は車を運転するのが好きなものですから、余り好きじゃないんですけれども。

 ただ、自動運転のレベルがどのぐらいまでいくのか。それが今後どういう、本当に完全に自動というのはかなり先の話ではないかな。人間が運転するものと自動運転のものが混在している状態では、本当に人間というのは何をやるかわからない、そこまでのセンサーというのが本当につくれるのか。混在しなくて、本当に全部自動運転になれば何とでもなると思うんですけれども。どこまでいくのかがよくわかっていない、ただ、それを進めざるを得ない。

 トヨタグループでも、自動運転はどうあるべきかという、どうあるべきか、具体的な技術はほぼできるんですけれども、ただ、どういう形の自動運転が一番世の中にいいのか、そういうことを今一生懸命考えて、それを、実証実験なんかをやりながらつくり上げていく段階じゃないかなという気がしております。

大西(健)委員 確かに、例えばトラックの自動隊列走行とか、そういうような特定の分野に絞っていけば、私は、十分に、すぐにできるところもあると思いますし、また、今、豊田公述人からあったようなお話を受けてそういうときに、例えば、では事故があった場合の責任の問題とか、あるいは自動運転における交通法規の法律的な整備、社会整備というのも、やはりこれも国政の場で我々取り組んでいかなきゃいけない問題だというふうに思っております。

 少し戻りまして、先ほど土肥公述人の方から働き方改革のお話がありました。きのうの実現会議の中でも、年間の総残業時間七百二十時間という数字が示されましたけれども、一方で、繁忙期一月の上限時間についてはまだ労使間にも隔たりがあるということで、きのうの議論では持ち越しになっています。

 ただ一方で、前回の会議のときだったと思いますけれども、神津会長が、繁忙期百時間、二カ月平均八十時間というのは、過労死ラインとの距離感の関係で、百時間は到底あり得ないという発言もされております。

 私たちも、今回のこの働き方改革というのは、安倍総理御自身が、電通過労死事件を受けて、あの悲劇を二度と繰り返さない、過労死をなくすためにやるんだと。もっと言えば、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ったりとか、働き方そのものを見直していくというようなことを掲げて始められたものだと思っております。

 そういう意味では、過労死ラインと同じというのはさすがにちょっと長過ぎるんじゃないかというのが私たちの考えなんですけれども、その点も含めて、何か今の働き方改革実現会議の議論について御意見があれば、土肥公述人から御意見をいただきたいと思います。

土肥和則君 やはり今の働き方改革実現会議で、長時間労働に対しまして、使用者側、労働側、そして政府ということも含めて論議されたことは、非常に私は評価をしております。

 そして、時間のあり方というものは、これはいろいろ難しい話があるのかもしれません。確かに、過労死ラインまでいいよといっても、過労死ラインまで本当に働かせていいのかというと、そうじゃないと思うんです。そこは、やはりそれぞれの労使関係でしっかり話をしていただきたい。ですから、ある程度の線はしっかりつくりますが、それ以下は、当然のことながら、それ以上は絶対やっちゃいけませんが、それ以下の部分は労使でしっかりやるべきだと思っています。

 もう一つ考えなきゃいけないのが、先ほど大西先生からもお話しいただいたように、例えば一カ月幾らだったらいいとかなんとかということになりますと、当然、一つ一つの業種、業態の中で例えば繁忙期とか閑散期があります。ですから、一律こうだという論議にはなかなか私もこれはできないというふうに思っています。

 ですから、連合は、ある程度の、一番最初は月四十五時間、年間で三百六十時間なんだということを言い続けているわけでありますけれども、これはこれとしましても、やはり物の考え方は、そこも含めた、繁忙期、そこら辺を考えながらの労働時間の設定というのが大事だというふうに思っています。

 ただ、お願いしたいのは、労使関係がある企業で働いている人たちは、私たち労働組合と経営者側でしっかり論議ができます。ただ、労使関係がないところ、ここで働いている方々については、その数字をもって判断になってしまう可能性がありますので、ぜひ、そういう意味では、しっかりとした、今の働き方実現会議における状況を公開していただき、どういう過程にあったかどうかを含めて、やはり周知をしていただければ幸いだというふうに考えています。

大西(健)委員 私も、おっしゃるとおり、労働組合があるところ、また、過半数労働者の選び方なんというのも適正な手続でなされなければ、この問題というのは解決していかないというふうに思いますし、中小零細企業の方が、幾ら法律を決めても、そのとおりに実行されなければこれは何の意味もありませんので、そこも含めてしっかり議論していく必要があると思っています。

 時間が余りありませんので、一つ、坪井陳述人にお聞きをしたいと思うんです。

 アベノミクスの大規模金融緩和、この地域は特に円安で大きな恩恵を受けていますけれども、製造業だけ見ても、大手は収益が伸びていますけれども、中小企業はなかなか厳しいねというところも多いと思います。それから、零細商店におかれては、本当に先ほどの商店街の話のように非常に厳しいところがあると思うんですけれども、この中小と大手の格差が開いていることについての御実感、それとあわせて、先ほどちょっと消費税一〇%という話が出ましたけれども、複数税率というのは、なかなか中小零細商店にとっては厳しいものがあるんじゃないか、特に、インボイス導入ということになると免税事業者が取引排除されるんじゃないかというような話もありますけれども、そこも含めて、御意見を賜れればと思います。

坪井明治君 お答えをさせていただきたいと存じます。

 相当時間を食うと思いますが、よろしゅうございますか。

石田座長 簡単にお願いいたします。

坪井明治君 端的にお話をさせていただきたいと思いますが、まずもって、さきに論議がございました雇用の関係でございますが、それなら我々の商店街はどうだといいますと、雇用問題というのは非常に難しい話でございます。

 といいますのは、要するに、郊外における大型店の進出によりまして、大店法が撤廃されまして、世間には上手にうまくお話をされて、雇用の促進だとかそれから税制の大幅なアップだとかということのいいお話ばかりをしまして、一斉に、これからの小売商業者はスーパーしかないごとくお話をなすって、我々の中心市街地が空洞化してしまったというところが、非常に大きい問題が一つあるということでございます。

 今さら何を言っとるんかなというような思いも私は抱いておるわけでございまして、上手にそのときは、皆さんが、そうかななんというような思いでこういうふうにされたとは思うんですが、今聞きますと、こんなような状況に相なっているということでございます。星の潰し合いを現にやっていることも事実でございますし、デパートさんも、処理をされているというのか、営業も畳むというようなところも来ているわけでございますが、大手のスーパーも、そんなものは普通でございますから、今現にやっている。

 そうするとどうなるかというと、雇用の問題でございます。即ほかのところへかわるということはなかなか難しいところであるかなというふうに私自身は思うわけでございまして、そこら辺のところも踏まえて、ひとつ先生方に御論議をいただければ非常にありがたいなというふうに思っています。

 それから、いろいろ税制問題の御質問をいただいたわけでございますが、複数税率の問題でもそうでございますが、我々が、要するにこういう年寄りが、先生、夜なべをして、これは税金の予算だ、これは収益の方の関係だというようなことを、仕分けを夜夜中やれるんですか。今でも食べるのに精いっぱいだと言っている昨今なのに、それを先生方はやるべきだと言う。

 我々、逆らったことは一度も、先ほども冒頭でお話をした、やりなさいと言ったことについては一回もノーと言った覚えもないわけでございまして、従うことには間違いなく従うわけでございます。そこら辺のところも十分にひとつお考えいただきまして、指導をしていただければ非常にありがたいなというふうに思っています。

 本来なら、そんな税制問題は、国税が取りに来てもらいたい話でございまして、私どもが計算するような話ではないというふうに私自身は思っているわけでございまして、ばんたび中央では私、そうやって申し上げているわけでございます。

 そのほかに、先生、何でしたか。

石田座長 時間が参っておりますので、ありがとうございます。

大西(健)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、五藤陳述人には、ちょっとお聞きする時間がなくて、申しわけありませんでした。

 ありがとうございました。

石田座長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 改めて、中経連の豊田会長、連合愛知の土肥会長、そして全振連の坪井理事長、木曽川商工会会長の五藤様、きょうは本当に、お忙しい中お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど長坂先生からも御発言がございましたけれども、まず初めに、やはり日本の経済を考えるときに極めて重要な個人消費のことについて、坪井理事長にお伺いをしたいと思います。

 これはもう御存じのとおり、我が国のGDPの約六割は消費が支えております。直近、この一月二十三日に月例経済報告が出されておりますけれども、ここでも個人消費は持ち直しの動きが見られるという状況でございまして、まだ力強さには欠けているという心配がされております。さまざま、巷間、子育て世代の可処分所得が十分ではないとか、将来への不安によって消費よりも貯蓄に回りやすいとか、いろいろなことが言われております。

 そうした中で、私どもは、特に、この消費を下支えする、先ほど理事長からも触れていただきましたプレミアム商品券、これは実は、昨年の平成二十八年度補正予算審議の議論の中でも、実現に向けて強く政府に求めてまいりましたけれども、先ほどこれも理事長がおっしゃっていただいたとおり、まだ効果が十分検証できていないということで保留になったというのが現時点でございます。

 個人消費の下支えという意味で、一方で、ばらまきではないかとか、需要を先食いしているだけだという批判もございます。需要を先食いするということは、つまり、商品券の期間が終わったら前より悪くなるということですね。後で買おうと思っていたものを先に買うわけですから、期間が終わったら前より悪くなる。もしそういう状態が実際にあるのだとすれば、商店街の皆さんも望まなくなると私は思っているわけです。

 ですから、その辺が、こうした巷間言われていること、まさに商店街の全国の理事長である坪井理事長の実感、そして日ごろ触れているお客様の声、こういった生の声を、まず冒頭、しっかりお聞かせいただきたいと思います。

坪井明治君 指摘される御質問は的を得ているなというふうに私自身は思っているわけでございますが、それであるのでしたら、要するにプレミアム商品券はやらない方がいいということの絵を描くのが先生はとてもお上手でいらっしゃいますから、そこら辺のところはひとつ横へ置いておいて、やはり経済の活性化というところに重点を置いて、GDPの六割が個人消費、これにどう刺激を与えるかというところが私は最大だというふうに思います。

 いろいろな意見は確かにあろうかと思いますが、それはそれでまあ問題もあるかと思いますが、現に我々が、国からの交付金として、補助金としていただいた金額以外に、昨年度は名古屋市が独自でやった金額が三・五倍の経済効果があったというところから見ていただければ、我々の自助努力によって、お金を私どもが自分自身で出して、それで顧客に喜んでいただくということでこれだけの成果が上がっているということをわかっていただきたいなというふうに思っています。

 そうであるなら、国も県も市も、それなら頑張って私どもも裏負担しましょう、もっとこの地域の経済の活性化に結びつけましょう、固定資産税で悩まなくてもいいように、ひとつ頑張ってやってちょうだいという話だったらわからぬでもないですが、とにかくあれをやめましょう、これもやめましょうというのは、それは私が考えるような話でございますから、何といったって、とにかく経済を活性化するような意味合いでひとつ御尽力いただければ非常にありがたいなというふうに思っています。

 もう一つ、この間、今国会で決まっているかどうかわかりませんが、固定資産税の、向こう先、二年間、延ばしていただけるという、あれはすごい効果が出てくるかと私は思います。あれを決めていただいた先生、一工夫も二工夫もされたかななんというふうに思いました。

 というのは、何か新しい事業を我々がやろうと思っても、ケーキのショーケースを一つ買おうとしても全部かかっちゃうわけでございまして、それを向こう先三年間延ばしていただくということであれば、よし、それまでは頑張って店を繁盛していくんだという思いになるかというふうに思いますから、そういう点でも、ひとつ、片方では、お金だけではなくして、やはり固定資産税のものもきちっと見直していただけるということが非常に大切かなというふうには思います。

 以上でございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 まさに消費を下支えするという意味のプレミアム商品券については、理事長の今の御発言は、現場はやはり求める声が強いというふうに理解をいたしましたので、また実現に向けてしっかり取り組んでいきたいと思います。

 また、図らずもお触れをいただきました固定資産税の減免の措置、税制につきましては、まさに中小企業強化法という法律に基づく計画とともにセットで出されている税制でございます。

 少し大前提のことにも触れておきたいと思いますけれども、きょう各陳述人の皆様からもお触れをいただきましたとおり、我が国の根本的な課題はやはり人口減少だと思います。なおかつ、全体の人口減少の速度よりも生産年齢人口が先に減っていく、いわば働き手が先に減っていく、ここにどう対応していくのかというのが全ての政策の肝だというふうに思って、常に政策議論をしております。

 参考までに、ちょうど二〇一五年の人口動態統計というのが発表になっておりまして、これも冒頭、豊田会長がお触れをいただきましたけれども、全体の人口が減少する中ですけれども、全国の中で四都県だけは人口がふえております。東京、愛知、若干滋賀がふえておりまして、あと沖縄。

 私、この数字をよくよく拝見していていつも感じることは、東京も愛知も約千五百人人口が増加をしております。一方で、合計特殊出生率、いわゆる御家庭から平均的にどれぐらいのお子さんが生まれてくるかという数字は、東京は最低ですね、一・二四。愛知県は平均以上です。なのに、東京も愛知もほぼ同じだけ人口がふえている。

 これはもう言うまでもなく、そこに、お子さんを産むぐらいの世代の人が東京は集まって、集まっているけれども、いわば統計的に見れば、そこで生まれてくる子供の数は全国で一番低い。つまり、これは人口減少を加速させていることになります。そういう意味でも、我々、今政権が取り組んでいるいわゆる地方創生というのは極めて重要だ、こういうふうに思っています。

 その中にあって、私どもが住む愛知は極めて重要な役割を持っているというふうに思っております。その中でも、まさにきょう連合愛知の土肥会長も来ていただいておりますけれども、雇用というものが極めて重要で、これが安定しているかどうか、これは一つ一つの家庭、家族にとって大変重要なファクターでございます。

 これも御存じのとおり、全体の雇用の七割を支えておりますのは中小企業、そして小規模事業者でございます。現在、政府・与党力を合わせて、これはもう与野党関係なくと言ってもいいかと思いますけれども、賃金の上昇を伴う経済の好循環を生もう、こういうふうに考えて取り組んでいるわけでございます。

 その中でも、比較的愛知はという言い方が正しいのかと思いますけれども、景気は全国的に見ればいい方だ、こういうふうに言われておりますけれども、なかなかやはり中小企業、小規模事業者の賃金を上げていくというのは簡単ではないなと思っております。取引環境の改善等々さまざまな取り組みもやっておりますし、先ほど坪井理事長に触れていただきました、いわゆる固定資産税の減免措置ということにもいよいよ踏み込みました。多分、固定資産税を減免するのは史上初めてだと思います。

 さらに、ものづくり補助金に代表されるような、製造業における生産性の向上を後押しするための補助も、製造業のみならず小売サービス業にも展開できるような諸施策も、予算とあわせて今回セットをさせていただいております。

 るる御説明をしてまいりましたけれども、ざっくり言うと、賃金を上げる環境をどうつくるか、そのためにはやはり生産性というものを上げていかなきゃいけない、そういったことでこういった施策に取り組んでいるわけです。

 これは四人の皆様にそれぞれ御意見、御要望という形でお伺いをしたいと思いますけれども、先ほど豊田会長が言われた、いろいろなことをやっていても現場の人が知らない、これも私、非常に問題意識を持っておりまして、どうやって伝えていくのか、そんなことも含めまして、ざっくばらんに御意見、御要望を四人の陳述人の皆さんから頂戴できればと思います。

豊田鐵郎君 私ども中経連で、毎年いろいろな提言をやってきています。昨年の二月にこの「新中部圏の創生」というのを出しました。要するに、「各地域の自助努力と連携による経済的自立性の向上」という副題がついていますけれども、これを狙って出したわけですね。その中で、人口の問題からいろいろなことを全部入れたつもりなんですけれども、そういうことで、いろいろな努力をしていこうじゃないか、これを会員、要するに我々が頑張らないとだめだよというあれでつくってあります。

 ことしは、今度は物づくりを離れて、中部圏のサービス、この白いものです、まだこれは今印刷中なものですから仮のあれしかありませんけれども、サービス産業の稼ぐ力の向上ということで、このサービス産業、日本の七割から八割はサービス産業に勤めている人が多いんですね、ここの生産性が余りにも低過ぎる、これをどうやって上げるかという提言を、いや、提言までちょっと、これは業種が物すごく広いものですからなかなか難しいんですけれども、そういう形で我々としてはトライをしている最中で、今後はこれを実際の動きに持っていきたいなというふうに思っておるところでございます。

 この二つを読んでいただければ、その辺の、今、世の中でいろいろ問題になっていることをかなり入れたつもりなものですから、よろしくお願いします。

土肥和則君 まさしく今、私どもは、春季生活闘争の真っ最中でありまして、今、伊藤先生が言われた部分の、中小の賃金改定というのは非常に大きな取り組みだというふうに思っています。

 そういう中で、先生からも御指摘いただきましたが、やはり取引慣行をきちんともう一回見直さなきゃならないだろうと思っています。具体的に言えば、金曜日に言って月曜日に持ってこいとかという、こういう話ではない。それと、やはり公正取引、これは公正取引委員会でも今やっていただいていますけれども、そこもしっかりしなきゃならない。そして、サプライチェーンで得た付加価値を適正に分配するということも大事だろうと思っています。

 私は、これともう一つ、連合の中でも論議するんですが、例えば、中小の方が一万円の付加価値を求めた製品をつくったとしても、それが世に出ていくときには、下手をすると八千円ぐらいになってしまうのではないか。なぜかというと、そういう値引きの関係が出てくる可能性が出るということなんですね。ですから、中小企業の方々が努力された付加価値、生産性が上がったとしても、結局、それが世に出たときはその生産性に見合うようなものになっていない、これがやはり大きな課題もあるのではないかなと思います。

 そして、今、豊田会長からもおっしゃられましたが、サービス業については、やはり私たち国民自身ももう少しそのことに対してきちんと考えなきゃいけないのではないかと思っています。言い方は本当に適切ではないかもしれませんが、お水を持ってきてもらうのが当たり前の世界、それが本当にいいのかということを考えていかなきゃいけない。それがいいということもあるかもしれません。ですが、どうしてもサービスになると、いいサービスを求めて、それがお金がかからないサービスを求めていく。結果として、さっき言ったように、生み出した果実が適正に評価されていない現状になってしまう。やはりこういうことを改めていくことが私たちも大事だというふうに思っています。

 そのことを含めながら、サプライチェーンで生み出した付加価値は適正にやはり配分していくんだということを基本に置きながらこれから交渉してまいりますので、これは健全な労使関係でしっかりやります。ただ、政府の方におかれましても、そのことの意思を理解していただきながら、国としてやれることがあったら、できればお願いをしたいというふうに思っています。

 以上です。

坪井明治君 先ほどから、要するに、商店街を取り巻く環境というのは非常に厳しいんだということを申し上げてきたわけでございますが、とても残念なのは、日本商工会議所、会議所の方がきょうここへ同席をしていただけなかったのは残念だなと私自身は実は思っているわけでございます。

 といいますのは、名古屋商工会議所というのがございます。無論、私も常議員でもございますし、小売部会の長をやっておるわけでございまして、商工会議所始まって以来でございます。北は北海道から南は沖縄まで、大体、小売部会というのは、商業関係の副会頭は必ず、その五、六名のうちの一人が担任になるということでございます。今回、小売商業者、つまり私どもの小売関係の副会頭さんが一人も見えなかったという、こんなのは私は始まって以来だなというふうに申し上げたわけでございますが、すぐ会頭にお話をさせていただきまして、これはどういうことですか、余りにも、確かに物づくりも大切だし、私も大賛成でございます、ただ、物を売る側も大切であることも御理解をいただきたいということでお話をさせていただきました。

 商工会議所の会頭さんは名鉄の会長でいらっしゃるから、わかっていただいているとは思いますが、そのような話をしたわけでございまして、何とか我々の商の方も、それなら名前をいっそのこと変えられたらどうですかと私が申し上げたんです。ええっと言われるものですから、名古屋工会議所にしてくれ、商は抜いてくれと言ったんですよ。そうしたら、びっくりこいておったんですけれども。

 そんなようなことで、全く商業関係を何か忘れてみえるようなところがある。国会議員の先生方は、ひとつ、ぜひとも忘れないように頑張っていただきたいなというふうに思っています。

 私が申し上げたいのは、要するに、ただ単に物を売る場だけではないんだ、やはり地域コミュニティーの担い手として務めるべきところはきちっとやっているという、これを全部お金に概算したら、えらい金額を先生方は国としてお支払いをしなくちゃいけないことだと思います。

 例えば、夜間のパトロールもそうでございますし、防災の関係もあるし、いろいろなものもあるんですが、全部ボランティアで、我々商売人は夜も朝も地域のためにこうやって活躍をさせていただいているんだということを御理解いただければ非常にありがたいなというふうに思います。

 それから、観光という大きな見出しでもございますが、まさしく観光なんというものは、商業を省いたら観光も何もないわけでございまして、歴史、伝統、文化を見ていただく、日本のよさを見ていただくというのには、やはり我々小売商業者はなくてはならないものであるということを私自身も思っているわけでございまして、そういうところも含めまして、さらなる御支援のほどをお願いできれば非常にありがたいなというふうに思っています。

 以上です。

五藤政尋君 皆さん、結構お話しされましたから、私は何にも言うことがなくなったんですけれども、私から言わせていただくと、やはり小規模企業が活性化できるような施策ですね。

 例えば、先ほども控室の方で話していたんですけれども、要するに、うちの商店街の方も本当にシャッター通りになりまして、ではなぜ貸さないんだとかいう話をしていましたけれども、後継者じゃなしに、要するに事業継承者ですね、そういう形に考え方を変えた方がいいんじゃないかと、先がたいい話をいただきまして、やはりそれに対して政府がやっていただけるような施策をいろいろ考えていただきたい。

 そういう感覚で、私の場合は、簡単に言いますと、本当に小規模な事業者がやっていけるような環境を整えていただきたいという話でございます。

 以上です。

伊藤(渉)委員 もう多分お時間ですので、最後に一点だけ。

 豊田会長が陳述の中で、税の直間比率のことについてお触れになったと思います。まさに欧米などを見ても、常に税制の議論で出てくる話であります。

 一方で、欧米と比較すると、日本国は、消費税、つまり間接税に対する抵抗感が非常に高い国だと思うものですから、なかなかこの直間比率を変えていく、つまり間接税を高くしていくということがよその国より難しいなという実感を私も税調で議論していて思っておるんですけれども、最後に会長のお考えを簡単に聞いて、終わりたいと思います。

豊田鐵郎君 消費税につきましては、中経連の立場として、できるだけ早く一〇%に持っていってもらいたいなと思っております。

 ただ、私は病院の理事長もやっていまして、院内でお薬を患者に支給する場合、その方が患者は便利なわけですよ、それをやる場合に、消費税が患者からいただけないんですね。これは、片っ方でそういうジレンマがありますけれども、いずれにしましても、一〇%にできるだけ上げていただきたいなと思います。

石田座長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 きょうは、貴重なお話を四人の皆様にお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。

 日本共産党の本村伸子と申します。比例東海ブロックで、愛知県の豊田市に住んでおります。よろしくお願いを申し上げます。

 私、少し長いスパンで日本の社会の変化というものについて申し上げたいというふうに思うんですけれども、この二十年間というスパンで見てみますと、大きく言って三つの特徴があると私どもは考えております。

 その一つは、富裕層に富が集中をしているということ、二つ目に、中間層が疲弊をしているということ、そして三つ目は、貧困層が拡大しているという問題があるというふうに思います。

 具体的に申し上げれば、富裕層のところに富が集中しているという問題につきましては、純金融資産五億円以上の超富裕層の方の一人当たりの金融資産というものが、六・三億円から十三・五億円と二倍以上になっている。

 その一方で、中間層と呼ばれる方々はどうなっているかといいますと、働く人の平均賃金で見ますと、五十五・六万円減っているということになっております。

 そして、貧困層の拡大ということで、働いても働いても豊かになれないワーキングプア、生活保護基準よりも下回る賃金しかもらえないという方々が、過去には二十五世帯に一世帯だったものが、今は十世帯に一世帯ぐらいになっているという現状がございます。

 また、貯蓄がゼロ、こういう世帯が、二人以上の世帯ですけれども、三〇・九%になっている。

 これが、今の日本の社会の中で進行している事態だというふうに思います。

 そういう現状の中で、アベノミクスという経済政策についてなんですけれども、委員部の方に事前にいただいた資料、皆様方の御意見なども書かれた資料ですけれども、それも読ませていただきました。

 その中で、豊田会長がこうおっしゃっております。アベノミクスで外需型産業が恩恵を受けているのは確かだが、内需型産業の疲弊や産業空洞化、若者の首都圏への流出など問題がたくさんあるというふうに中部圏の分析をされておられます。

 また、土肥会長は、連合愛知の皆様の特別決議の中で、現在、約七割の国民がアベノミクスの恩恵を実感していないにもかかわらず、現政権は依然としてトリクルダウン型の経済政策を推し進めている、今求められているのは、働く者、生活者の視点に立った、暮らしの底上げにつながる具体的な政策の実現であるというふうに述べられておられます。

 また、坪井理事長からは、アベノミクスの商店街への効果は薄いのが実情だ、地域へしわ寄せが来ているというふうに御指摘をされておられます。

 また、五藤会長がおられます木曽川商工会の皆様方は、地域で、繊維技術を生かしてさまざまな分野へ挑戦して発展させようということを頑張っているけれども、しかし、先ほどのお話では、退会が相次いでいると。中小企業の皆さんは本当に御苦労があるというふうに思います。

 アベノミクスの中でこういう評価があるわけですけれども、先ほども大西先生からお話がありましたように、大企業の内部留保というのは三百八十六兆円余りで過去最高になっている一方で、第二次安倍政権発足前と比べて、実質賃金は、年収で十九万円減って、そして、家計消費は、十六カ月連続で前年比マイナスになっているわけです。

 やはり今の経済政策ではなく、暮らしを直接温める、こういう経済政策に切りかえなければ、先ほど言った二十年の変化、一層ますます深刻化するだけであろうというふうに思っております。

 二月十二日の中日新聞のサンデー版なんですけれども、ここには、「利益配分 労働者に薄く 増え続ける企業の現・預金」、そういう特集が組まれまして、二〇一五年に日本企業の現預金が二百兆円まで積み上がったというふうに指摘をされております。

 やはり内需を伸ばそうと思ったら、賃金の引き上げや安定した雇用やあるいは下請単価の引き上げ、こういう方向しかないというふうに思うわけでございます。

 先ほども豊田会長が、大企業には本当に内部留保があるのかというお話があったわけですけれども、労働総研の調査では、安倍内閣が誕生した二〇一二年前の生活水準に戻そうと思ったら月額二万千五百五十六円の賃上げが必要だ、全労働者五千二百八十四万人の賃金を月二万円ちょっと引き上げようと思ったら、十億円未満の内部留保も入っているんですけれども、五百七十八・八兆円のわずか二・三六%でできるんだ、一年間に加えられる内部留保の三八・三一%で、過去に積み上げられたものを取り崩さなくても、積み増す分でできるんだということでございます。

 こういう月額二万円の賃金の引き上げが実現すれば、家計消費の需要が八・三兆円拡大し、国内生産が十五兆円、そしてGDPに匹敵する付加価値が七・一兆円ふえ、それに伴って、新たな雇用が九十三・二万人必要になり、そして税収も一・四兆円ふえるという試算もございます。

 やはり、富裕層に富が集中し、中間層が疲弊をし、貧困がふえていくという状況を切りかえていくためにも、今、内部留保の一定の部分を還元させていく、そして内需を拡大し、暮らしを応援する経済政策に切りかえるべきだと私どもは考えておりますけれども、四人の皆様方にぜひそれぞれ御意見をお伺いしたいというふうに思っております。

豊田鐵郎君 なかなか難しい御質問ですけれども、私なんかが感じるのは、私どもは世界じゅうで商売をやっています、そういうことで考えると、そういう国へ行くたびに思うのは、本当に日本みたいに安全で食べ物のおいしい国というのはどこにもありません、日本が一番です。全て安全で、食べ物がおいしい。それを皆さん、日本の人はそう意識をせずにエンジョイしているわけです。

 そういう中で、生活していくのに、今後、それは給料は高ければ高いほどいいに決まっていますけれども、ただ、本当にそれが消費に回るのかどうかというのは、日本の場合、どうして貯金がふえちゃうんですかね、よくわからないんですけれども。そういうことで、景気が本当に上がるのかどうかというのもまたよくわからないところがあります。

 いずれにしても、皆さんが貧困層と言われますけれども、本当に日本ほど貧困層が少ない国も少ないんですよね。そういう実態がある中で、あとは何をやっていけばいいのか。その辺のところは、私どもで考えることではないのかなという気もするし、国に考えてもらうことなのかなという気もするし、よくわからないんですけれども。

 いずれにしても、この国に生まれて育ったというのは、私自身は大変満足しているところです。

土肥和則君 私は、労働組合の立場でお話をさせていただければ、確かに、おっしゃられた部分の、本人が正社員になりたくてもなれなかった就職氷河期の時代の、本人が望まなくて非正規になってしまっている方々を含めての年収を考えれば、当然それではやっていけないだろうという思いは持っていますし、先生おっしゃられた部分というのは、私も確かに発言をしておりますが、それを否定するものではございませんし、そのとおりだと思っています。

 ただ、アベノミクスによって一部経済指標がよくなったのは事実だというふうに私は思っています。例えば、円高の問題も含めて、今の為替の問題がそうなってきたのもあるだろうし、その価値から生まれたものもあるというふうに思っています。

 ただ、それとこれが今一緒になるかというと、そうではなくて、私は、やはり人への投資ということをきちんとすべきだというふうな思いを持っておりますので、そのことをやるために。

 そして、先生がおっしゃるように、春闘というのは、個別の労使関係で整理するときに、そういった経済指標だけをもって労使関係で論議が実はできません。それぞれの企業における状況なり含めて、それぞれの賃金が持っている意味も含めながらの交渉でありますから、一月これだけ、どれだけ上げろということではないということになると思います。

 ただ、私たちは、やはり今の状況では、月例賃金をしっかり上げていくこと、このことはやっていかなきゃならない。そのための賃金をとるということは大事だというふうに思っていますから、それをまず改善するということを思っています。

 そして、一番は、やはり私は、賃金を上げてもなかなか消費に回らないのはなぜかというと、誰しもが考えると思うんですが、自分が将来どうなるんだろうなということだと思うんです。ですから、そこは、税の負担と納税者の立場から考えたときに、早目に消費税をしっかり上げて、その部分の財源を持ってしっかり社会保障を充実させない限りは、今の消費喚起は起こらないということを私は思っています。ですから、消費税は、私は、上げざるを得ないというよりも、上げていくべきだという論理を持っています。

 その観点で、景気がよくなってくれば、当然、その分で生産性が上がれば、私たちも賃金を獲得しながら、それが、強いて言うと、先生がおっしゃられた真ん中の分厚い中間層をしっかりつくっていくということが私は大事だというふうに思っていますので、そういう意味で取り組んでいきたいと思っています。

坪井明治君 先生の質問に対してお答えをさせていただきたいなと思います。

 内需拡大、雇用の促進というのは当たり前の話でございまして、当然ながら政策として打っていただかなくちゃいけないところだとは思うんです。

 これが全部預金に回ってしまうんじゃないかという、なぜ預金に回るかというのは、要するに将来の不安材料であるというところが私は最大でなかろうかなと思います。政府がそれなりに御理解いただき、方向性を見出していただくことができれば、やはりもう少し皆さんがお買い物をしていただけるのではないかなというふうに思うわけでございまして、そこら辺のところも踏まえて、とにかく将来の不安に対応していただくということが最大でなかろうかなというふうに今思っています。

五藤政尋君 今の先生の御質問にお答えします。

 私たち本当に小規模な関係は、アベノミクスというのは余り効果は、正直な話、出ていないように私は思います、景気がよくなっているかどうかは別にしまして。

 ただ、正直に言いますと、やはり給料が上がらない、私も経営者でございますから、売り上げが上がらないと給料は上がらない。この間もありましたが、最低賃金法ですか、パートさん一人にしても、やはり二十円、三十円、時間給で上げるということがすごく経営者にとっては負担になってくる。そうすると、やはり人を使えないという形になってきて、いわゆる悪循環が生じてくると私は思っております。

 政策的にどういうふうなのか僕はわかりませんけれども、先ほどどなたかおっしゃいました、要するに、雇用にしても、今、したくても人もいないということで、だんだんだんだん賃金も上がってしまうという状況が続いておりまして、やはり僕らの零細企業は本当に人も来てくれないという形がございます。

 もっとアベノミクスが進行しまして、もっともっといい方に好転するように、先生らの力でやっていただければ幸いに存じます。

 以上です。

本村(伸)委員 ありがとうございました。

 私どもは、景気を悪化させ、そして所得が低い人ほど重くのしかかる消費税増税はやめるべきだというふうに思っております。やはり累進課税ということをしっかりと、そういう公正な税制に切りかえるということをやるべきだと税に関しては申し上げておきたいというふうに思います。

 中小企業の問題についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 中小企業の皆さん方というのは本当に日本経済の根幹であるということを私どもも痛感しておりまして、企業数の九九・七%を占めている、働く人の三人に一人の雇用の担い手であるということで、本当に地域に根をおろして、地域社会と地域の住民の皆さんに貢献をしている存在であるということを痛感しておりますけれども、その中小企業の皆さんが、やはり今どんどん日本社会で小規模事業者が減っているということはあるというふうに思います。

 一九九九年には四百二十三万者だった小規模事業者が、二〇一四年には三百二十五万となりまして、九十八万も激減をしているという中で、やはり私どもは本気になって中小企業を応援するべきだということを考えております。

 その一つは、先ほど最低賃金の引き上げで困ったというお話があったんですけれども、最低賃金を引き上げるためにも、中小企業の皆さんに対して、社会保険の減免制度ですとか賃金助成ですとかそういったものを抜本的にふやして、中小企業の皆さんも安心して賃金を引き上げることができる、そういう制度をつくろうじゃないかということも提案をさせていただいておりますし、下請いじめをやめさせる公正なルールを実現していくということ、また、坪井理事長からもお話がありましたように、大店法の問題につきましては、大店法の、出店、撤退などの生活環境や地域経済へ与える影響なんかの評価と調整、規制を行う大型店のまちづくりアセスメントなど、ルールをつくることが必要だというふうに考えております。

 また、中小企業予算を一兆円規模に抜本的にふやすべきだというふうに私どもは考えているわけですけれども、やはり中小企業の皆さん、どんどん数が減っていて、本当に大変な現状だというふうに思いますけれども、そういう点も含めて、中小企業の支援、具体的な支援、どのように考えておられるか、坪井理事長と五藤会長にお願いしたいというふうに思います。

坪井明治君 ありがとうございます。

 先生が答えを全部言っていただいて、私がとやかく言うことでもないんですが、非常に厳しい状況下に置かれていることは事実でございまして、要するに、冒頭でお話をした、十六年、大店法の撤廃をしてから日にちがたったわけでございまして、ならば、今の中心市街地はどうですか、繁栄しているんですかということをお尋ねしていただければ全てがわかるんじゃないかなというふうに思っているわけでございます。それが本当に正しかったのかどうかというのは、検証していただければ何にも申し上げることはないということでございます。

五藤政尋君 お答えします。

 今、坪井理事長さんがおっしゃったように、大店法がどうのこうのという前に、私どもの地元の木曽川というのは、先ほどお話ししましたように、大型店舗が合計で十店舗、三万一千の都市に、町に来ているわけで、その間、小規模というよりも、商店街というのが本当に疲弊しまして、そこに来るお客さんというのはすごく少なくなりまして、手の打ちようがないというのが現状で、先ほどお話ししましたように、僕の場合でいきますと、やはり大型店舗、大型商業施設、モールですかね、ショッピングモールを引き込んで、我々がそこを、お客さんをうまいこと誘導してという、こすい考え方かもしれませんけれども、そういう形のものを施策として僕らが持たなきゃだめなんじゃないかなと。

 正直、僕らが今、大型店舗に来るな来るなと言ったって、絶対それはまず立ち退きませんから、だから、うちの場合は、木曽川の場合はとにかく共存共栄、それに対して、お客さんをいかにうちらの商店街の方に引っ張ってくるかというような感覚で今考えております。

 以上です。

本村(伸)委員 ありがとうございます。

 最後に、中国との関係についてお伺いをしたいというふうに思います。

 この愛知は、先ほど来御指摘がありますように、物づくりの産業が盛んな地域でございます。一月七日にもこの地域で春節祭があったんですけれども、日本最大規模の春節祭であった。それは、この地域が中国と大変深い関係にあるからだというふうに思っております。

 愛知からは千二百社余り中国に進出をしているわけですけれども、領土問題などあっても、やはり間違っていることは間違っていると指摘をしながら、お互いの利益を考えても、さまざまな問題を話し合いで平和的に解決するしかないというふうに思っておりますけれども、中部経済にとって、愛知の経済にとって、日本経済にとって、中国との友好関係を築いていく重要性について、豊田会長にお願いをしたいと思います。

豊田鐵郎君 中国との商売というのはなかなか難しいんですよね。私どもの会社も中国に工場はありますけれども、私どもの会社は、一応向こうから社長が何か名誉市民みたいなものを最近もらって喜んでいましたけれども、本当にいいのかなと言って、片っ方で疑っていますけれども。

 いずれにしましても、中国は市場はでかい。ですけれども、私は個人的には、突っ込み過ぎるな、そういう方向で今やらせています。突っ込み過ぎて本当に、とにかく投資したものは全て、今までのところ、うちはもう回収しましたので、だから、あとは接収されても別にいい体制にはもう持っていっています。そういうことをやっていかないと、危なくて、なかなか出ていくのは難しいんだろうと。

 うちのサプライヤーで中小企業の人も出たことはありますけれども、これは大変苦労をされました。やはりある程度の規模があって、要するに早く回収を進められるような仕事ならまだいいんでしょうけれども、政府がどういうふうに出てくるのか。我々が出てからでも結構いろいろな変化がありましたので、工場をまた建てかえて別のところに移せ、そういうものがあって、うちは移しました。そのためにちゃんと補償金はもらいましたけれども。

 いずれにしても、一筋縄ではいかないお国だということで、苦労は絶えない。中小企業の皆さんには余りお勧めはできません。

本村(伸)委員 ありがとうございました。

石田座長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 日本維新の会の井上英孝です。

 本日は、豊田会長、土肥会長、坪井理事長、五藤会長と、四名の意見陳述人の皆様方におかれましては、大変お忙しいにもかかわりませず、この地方公聴会に御参会をいただきまして、本当にありがとうございます。心から敬意と感謝を表する次第でございます。

 もう時間も限られていますので、質問に入らせていただきたいと思いますけれども、まずは、先ほど豊田会長の陳述の中に、財政健全化、それから税と社会保障の一体改革、さらには土肥会長も同じようにお触れになったかと思いますし、また、坪井理事長におかれては、消費税また固定資産税とか税に対してというお話もありました。

 五藤会長も含めて、まず単刀直入にお伺いをいたしますけれども、先ほど豊田会長と土肥会長は少しお述べになられたかもわかりませんけれども、改めまして、消費税を一〇%に今引き上げる、私は引き上げるべきだというふうには思っていますけれども、環境が、一〇%に上げる環境に整っているというふうに思われるか思われないか、お聞かせいただけますでしょうか。

豊田鐵郎君 難しいですね。

 こんなことを言うとあれですけれども、環境というのはなかなか、それぞれの人の感覚で違ってくると思うんですね。だから、できるだけ、とにかく私どもの立場でいえば、やはり国の財政の健全化を優先して考えてほしいなというふうな気がしますけれどもね。

土肥和則君 私も、環境は、正直言うと、今、豊田会長おっしゃられたように、個人個人の判断がありますけれども、それということも含めながら考えたときに、まず、するべきことはやはりやるべきじゃないかなと思います、正直な話をしまして。

 ただ、お願いしたいのは、私たちが払っている税金がどのように使われているかということを、しっかりやはりやっていかなきゃならないと思っています。どこかに行っちゃったら、私たちが払うお金が何なのという話になりますので、それをもしやっていただけるなら、私は、そのことを考えていただいて、税と社会保障の一体改革をしっかりやるべきだというふうに思っています。

 以上です。

坪井明治君 消費税の導入についてというような御質問でございましたが、どうであるかといえば、やはり我々は零細小売商業者でございますから、できればなくしてもらいたいというのが実は本音でございます。

 でも、それは、国全体から見れば、やはり思わしくないようなお話でございますから、万やむを得ないところもあるということでは、賛成というんですか、従わせていただくというのが我々の考えでございます。

 先ほどもお話がございましたように、本当に、税というのはどのような使い方をしているのかということをやはり明確にしていないと、すぐ我々の弱いところへ全部しわ寄せが来ちゃうわけですね。おい、ちょっとこれはまけていけ、この一〇%、一割ぐらいまかるだろう、おまえ、当然だがやというふうにいかないですね。隣のうちに行って買ってくるわ、こういうような話になるわけでございまして、これは、政府が、消費税というのはお預かりでございますよと、これをきちっとわかっていただけるようにお話をしていただきたいというのが私の思いでございます。

五藤政尋君 今、坪井理事長さんがおっしゃったとおり、本当に正直な話をしますと、消費税は私は要らないのかな、嫌ですなというのは思いますけれども、ただ、先ほど意見陳述の中で話をさせてもらったように、必要なものは必要なんだと。

 だから、時期的には別にしまして、必要なものは上げなきゃいかぬじゃないかというのが僕の本音でございまして、ただ、先ほどおっしゃいましたように、やはり使い道ですかね。今の天下りのあれで、一月に二日出て年間一千万とかという給料で、一日四十何万ですか、そういう形のものが行われるようではちょっとおかしい話だなと思います。それが、使い道がしっかりしていただければ、日本の財政的にはやはりやらなきゃいかぬじゃないかなという気はしています。

 以上です。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 きょうは予算の地方公聴会ということで質疑をさせていただいているんですけれども、予算を根本的に見直していくというようなこともやはり必要なんじゃないかなというふうに我々は考えております。

 そういう中で、先ほど豊田会長のお話の中に、政策経費がふえていっているというのは評価できる、社会保障がちょっと多いのが気になるけれどもというお話をされておられました。我々としても、政策的経費というのは、国民の皆さんに対するサービス、住民のサービスというのを上げていくという意味で非常に大事だというふうに思っています。

 ただ一方で、財政を健全化していくのに、税をふやしていくのか、それからまた経済成長をしていくことによってパイを広げていくのかという議論があります。我々、もちろん、経済成長をしていってパイを広げていって、その内訳を変えていく、内訳を広げていくことが一番やはり理想的だというふうに思っています。

 ただ、今、現状で何かをやる、政策的経費をやっていくということになると、振り分ける、振り分けの率を変えていくしかないというのが今のところの現状かと思います。そういった中で、政策的経費というのは、先ほども申し上げたように、国民に対する、国民サービスに対する費用ですから、それをやはりいきなり下げるというのは、我々はちょっと優先順位が違うんじゃないかなと。

 まずは義務的経費をやはり見直していく必要があるんじゃないかということで、我々はずっと身を切る改革というのを言わせていただいております。我々自身も身を切る改革をやっていかなあかんなと言っていますし、それはまた、ここにおられる先生方と議会でしっかりともませていただきたいと思うんですけれども。

 そういう中で、代表的な義務的経費とすれば、やはり公務員の人件費というのになってきます。先ほど言われたように、天下りの問題とか、そういうもろもろありますし、また来年には、国民年金ですけれども、受給金額は〇・一%下がるというような現状があります。それから、国家公務員の給料は三年連続上がっているんですね。来年度、平成二十九年度も、今のままだったら、多分、人事院の勧告は上がるということになっています。

 私は、給料も上がっていくことも決して否定しているわけではありませんし、上げられるものなら上げていけるという環境が整えば、それが一番最高だというふうには思っています。

 ただ、税ですね、先ほどから言われているように、税金というのはやはり払っていかないとだめだ。八%でも嫌だけれども、やはり必要なら、先ほど、坪井理事長のお言葉をかりると、従うというふうにおっしゃっていただいて、大変ありがたいお言葉だと思いますけれども、そういう状況の中で、やはり税を支払う皆さん方が非常にしんどい状況になっている中で、税で給料をもらう側が余りそんな裕福にやっている場合じゃないんじゃないかなというふうに我々は正直思っています。

 先ほども言うように、いろいろな環境、ここは大阪ではありませんけれども、大阪市の場合は、国民健康保険の保険料も来年は上がるというふうに言われています。愛知もどうか。ちょっと私は勉強不足でチェックしていなかったんですけれども、でも、だんだんだんだんそういう負担というのもふえていくというのが、今のこれからの社会情勢も含めて考えていくと当然ではないかなというふうに思っています。

 そういう中で、どんどんどんどん三年連続で国家公務員の給料が上がっていく。また、国民の皆さんには、東日本大震災の復興特別税なんかも平成四十九年まで薄く広くずっと取られていくんですね。そういう中で、実質、税金を払う側と税金で給料をもらう側とで正反対の状況が起きているというふうに思うんですけれども、率直にその辺はどのように思われているか、五藤会長、お聞かせいただけますでしょうか。

五藤政尋君 先生の御指摘のような感覚で、税金がいつの間にか上がっていくという感覚で、僕もすごく考えたことがあるんですけれども、全然消費税とは違いますけれども、正直、社会保険の方ですか、あれも自動的に何か年間、去年ちょっと下がったんですけれども、いつも毎年〇・何%ずつ自動的に上がっていくという形も僕もちょっと不信を抱いているところでございまして、ただ、健康保険にしても、僕がちょっとううんと思うときは、国民保険の人の払う金額と僕らが企業で払う保険料が、やはり僕らの場合は倍払っているような気分があるんですね。それで、病院へ行ったときに診察料が一緒だ、三〇%負担だというのがちょっと僕は腑に落ちないなと思ったことがありますけれども。

 それに対して、税金のどうのこうのということは言うつもりもありませんけれども、使われる道が先ほどお話ししたみたいにきちっとしておれば、それはそれで国民としてやはり負担するべきだと私は思っております。

 ただ、本当にわけのわからぬ現状は、天下りとか今の何とかかんとかというのに使われると、僕らはええっと思う、払いたくないなという気分になっちゃうのが税金だと思います。

井上(英)委員 ありがとうございました。

 先ほど天下りの話もありましたけれども、天下りも、関連団体に天下りできないようなルールをつくっていくというのは、ポピュリズムじゃないかとか大衆迎合じゃないかといってお叱りもいただくこともよくあるんですけれども、過度にならなければ、やはり世論の皆さん方がしっかりとうなずいていただけるような、留飲が下がるような政治というのは非常に大事じゃないかなというふうに思っています。度を超えないように、しっかりと、一定の大衆の世論といいますか、そういったものの動向にある意味敏感になるような政治というのもこれから我々は必要じゃないかなというふうに思っています。

 そういう意味で、天下りなんかも含めて、一切やはりできなくなる。特に関連団体ですね。先般、慶応大学に私学助成の課長が天下りしていた。私学助成の課長といえば、一番、私学に助成金を割り振る当該の課長ですから、その方が慶応大学に天下りしているというのは、聞いた皆さん方がどのように思われるかと考えると、李下に冠という言葉もありますので、やはりそういったところを、起きないように、関連団体には、これからそういったことも我々しっかりと訴えて、何とか実現をさせていければなと思うんですけれども。

 先ほど、五藤会長のお話の中に、後継問題、それで少子化という問題が取り上げられておりましたけれども、やはりこれからの子供たちというのは非常に大事だ、先ほども申し上げたように、社会構造でどんどんどんどん今は現役世代、世に言う稼働世代、働く世代が減っている。また、その稼働世代の子供たちがどんどんどんどん減っていっているという中で、やはりそれをとめていくというのは大事だ、今の政府においても、給付型奨学金の創設ということで土肥会長からも一定評価するというふうにおっしゃってはいただきましたけれども、まだまだやはり規模が少ないんじゃないかなというふうに我々は思っています。

 我々は、教育無償化というのを取り上げていまして、それも高等教育まで、できれば、その家庭内の収入によって教育の機会を阻害されないようにそういう機会をという、子供たちみんなにそういう機会をしっかりと与えてあげられるように、時の政権によって左右されることのないようにということで、憲法まで変えた方がいいんじゃないかと我々は思っているんですけれども、とりあえずは、先ほど申し上げているような義務的経費を削減していくことによって子供たちにそういう教育の機会というのを与えてあげられることができるのなら、私はするべきだと思っています。

 手前みそな表現ですけれども、私は大阪なんですけれども、大阪では今高校は、公立は民進党のおかげで無償化できましたけれども、私立は今、大阪は無償になっています。ですから、もちろん所得制限はあります、年間九百十万円というのがありますけれども、それ以下の収入の御家庭の方なら、私立は高校はみんな無償で行っていますし、九百十万を超える家庭でも、年間十万円という授業料で私立の高校にも行けるようになっています。

 幼稚園の無償化というのもどんどん進んでいまして、年長の五歳児はことしから無償にしましたし、来年は四歳児、そして、市長の意向では、再来年には三歳児と無償化にしていこうというふうに考えています。

 どんどんどんどんそれが、先ほども言っていただいたように地方分権で、これは権限、それから当然財源も必要なんですけれども、我々は財源を、そういった義務的経費、またさまざまなカットをすることによって生み出してきたという経過があるんですけれども、それをぜひ今度東京でもやられるというような話だったんですけれども、そのような、しっかりとした教育無償化、要は、少子化に歯どめをかけられるような政策についてどのようにお思いになられているか、五藤会長、お聞かせいただけますでしょうか。

五藤政尋君 今、先生から御指摘ありましたように、教育の無償化というんですか、それはやはり愛知県でもぜひともやっていただきたいことでございますし、僕は、たまたま今、木曽川中学校区の青少年健全育成会の会長もさせていただいておりますし、先ほどの事件とかなんかを聞くと本当に心が痛い思いがしていまして、そういう事件がなくなればいいなと思っています。

 無償化とかなんかといいますと、やはりそれがあることによって、学校へ行けないということは今はないと思いますけれども、学校へ行っても楽しく勉強ができるような環境づくりをしていただければいいと思いますし、ぜひとも先生方のお力で全国に広げていただいて、特に愛知県に広げていただいて、無償化の方もひとつよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

井上(英)委員 ありがとうございました。

 今おっしゃっていただいたように、やはり子供たちに、それは今の政府もそうですし、恐らく野党も、やはり子供たちの教育というのに関してしっかりと予算をつけていこうというふうには、多分それは党に関係なく思っておられるんじゃないかな。ただ、さまざまなしがらみもありますし、なかなか、先ほど言いました、振り分けていく、今まで振り分けているところをどこかカットして新しいところに振り分けるわけですから、いろいろな問題もあるかと思います。

 冒頭申し上げたように、もちろん、経済成長していってパイを広げていけば、新しく広がった分を新しいサービスで国民の皆さん方に提供できるというのはあるんですけれども、現状で、経済成長というところではなくて、今の現時点で何かをやるとなったときには当然振り分けるという作業になります。

 我々としては、そういう意味で、給料を下げる下げると言うと、土肥会長にちょっとお聞かせをいただけたらと思うんですけれども、我々は決して、給料を減らすということをそんなに、上げられるものなら当然上げていきたいというふうにも思っているんですけれども、民間の会社、要は、営利団体、企業のそういう給与も含めた面というのはなかなか非常に厳しい面がまだ今、現状にもあると思うんですけれども、逆に人事院勧告で、もちろんこれは労働基本権の代替措置で人事院勧告という制度をとっているんですけれども、民間の経済動向と合わずにどんどんどんどん公務員の給料が上がるということに関しては、会長としてはどのようにお思いか、ちょっとお聞かせをいただけますでしょうか。

土肥和則君 労働基本権の関係で人勧があるというのは、そのとおりだと思いますし、私は、人勧が出している数字がかけ離れた数字だと思っていません、正直言って。ですから、その部分はしっかり応えていただくべきだというふうに私は思います。

 公務員の給料が高いとかいって、天下り先のそういう一部の人たちのことを言うと、マスコミが取り上げるとそういうことになってしまいますが、本当の意味で、公務員の方々もしっかり仕事をしている人がいっぱいおるわけです。その方々たちの給料を見て高いか低いかという論議をされるのは、私は少し違うのではないのかなと思っています。

 もっと言いますと、例えば、県とかなんとかいろいろやったときに、どうしても業務量に合った要員がなくなってしまう。となると、どこで考えるかというと、やはり非正規なんですよ。そうなると、言ってみれば、非正規の窓口の受付の方がみえるとか、先ほど私が述べましたように、保育士の方が非正規になってしまうとか、そういう状況になってくるんです。ですから、公務員の給料を抑えて抑えて、では拡大するかというと、また、言ってみれば、そういういい人材が集まってこない状況になります。

 ですから、私は、給料というのは、その状況を見ながらしっかりやはり判断をし、上げるときはしっかり上げていただきたい。それは、国として厳しい中であれば、その労使間でしっかり話していただいて、今、うちのところはここまで厳しいから難しいということであれば、理解をすればそれでもいいと。政治が一方的に公務員の給料を下げるとか云々かんぬんは、私はないというふうに思っています。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 やはり、それぞれ皆さん、さまざまな思い、意見があると思うんですけれども、今、時代に応じて、しっかり削れるところ、それからやらなければいけないところ、また、そういうところを気概を見せるというのも、一つ、今の時代に必要なんじゃないかなというふうに我々は思っていまして、そういう面でもまた御理解をいただいて、また、愛知において、四名の意見陳述人の皆様方におかれましては、今後も御活躍されることを心より祈念を申し上げまして、本日は、この機会を与えていただいて、どうもありがとうございました。

石田座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして本当に貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じております。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時三十三分散会


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