衆議院

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第4号 平成30年2月2日(金曜日)

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平成三十年二月二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 菅原 一秀君

   理事 田中 和徳君 理事 橘 慶一郎君

   理事 福井  照君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 津村 啓介君

   理事 竹内  譲君

      あべ 俊子君    井上 貴博君

      伊藤 達也君    石崎  徹君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    遠藤 利明君

      大西 英男君    門  博文君

      金田 勝年君    岸田 文雄君

      古賀  篤君    後藤 茂之君

      佐藤ゆかり君    鈴木 淳司君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      根本  匠君    野田  毅君

      平井 卓也君    平沢 勝栄君

      船橋 利実君    星野 剛士君

      本田 太郎君    松本 洋平君

      三ッ林裕巳君    宮路 拓馬君

      務台 俊介君    村上誠一郎君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山本 幸三君    山本 有二君

      渡辺 博道君    阿部 知子君

      青柳陽一郎君    池田 真紀君

      岡島 一正君    岡本あき子君

      落合 貴之君    川内 博史君

      長尾 秀樹君    西村智奈美君

      日吉 雄太君    松田  功君

      道下 大樹君    山内 康一君

      山川百合子君    井出 庸生君

      稲富 修二君    小熊 慎司君

      大西 健介君    後藤 祐一君

      伊佐 進一君    石田 祝稔君

      中野 洋昌君    金子 恵美君

      原口 一博君    広田  一君

      藤野 保史君    森  夏枝君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (男女共同参画担当)

   (マイナンバー制度担当) 野田 聖子君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         河野 太郎君

   文部科学大臣       林  芳正君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (拉致問題担当)     加藤 勝信君

   農林水産大臣       齋藤  健君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    中川 雅治君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       吉野 正芳君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       小此木八郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (海洋政策担当)     江崎 鐵磨君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     松山 政司君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (人づくり革命担当)

   (経済財政政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)     梶山 弘志君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   田和  宏君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    樹下  尚君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    富山  聡君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    畝本 直美君

   政府参考人

   (財務省大臣官房長)   矢野 康治君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       佐野  太君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    今里  讓君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         飯田 祐二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官)    福島  洋君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    安藤 久佳君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         田村  計君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  藤井 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  蝦名 邦晴君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 北本 政行君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月三十一日

 辞任         補欠選任

  遠藤  敬君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  串田 誠一君     遠藤  敬君

二月二日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     松本 洋平君

  衛藤征士郎君     大西 英男君

  金田 勝年君     宮路 拓馬君

  古賀  篤君     岸田 文雄君

  野田  毅君     田野瀬太道君

  原田 義昭君     務台 俊介君

  星野 剛士君     後藤 茂之君

  山口  壯君     門  博文君

  青柳陽一郎君     岡島 一正君

  山内 康一君     道下 大樹君

  中野 洋昌君     石田 祝稔君

  篠原  孝君     広田  一君

  遠藤  敬君     森  夏枝君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     三ッ林裕巳君

  門  博文君     山口  壯君

  岸田 文雄君     古賀  篤君

  後藤 茂之君     船橋 利実君

  田野瀬太道君     野田  毅君

  松本 洋平君     石崎  徹君

  宮路 拓馬君     金田 勝年君

  務台 俊介君     本田 太郎君

  岡島 一正君     池田 真紀君

  道下 大樹君     松田  功君

  石田 祝稔君     中野 洋昌君

  広田  一君     金子 恵美君

  森  夏枝君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  船橋 利実君     遠藤 利明君

  本田 太郎君     井上 貴博君

  三ッ林裕巳君     鈴木 淳司君

  池田 真紀君     日吉 雄太君

  松田  功君     山川百合子君

  金子 恵美君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     原田 義昭君

  遠藤 利明君     星野 剛士君

  鈴木 淳司君     衛藤征士郎君

  日吉 雄太君     青柳陽一郎君

  山川百合子君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     長尾 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  長尾 秀樹君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     山内 康一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算、平成三十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官田和宏君、警察庁刑事局長樹下尚君、法務省矯正局長富山聡君、法務省保護局長畝本直美君、財務省大臣官房長矢野康治君、財務省理財局長太田充君、文部科学省科学技術・学術政策局長佐野太君、スポーツ庁次長今里讓君、経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官福島洋君、中小企業庁長官安藤久佳君、国土交通省土地・建設産業局長田村計君、経済産業省大臣官房総括審議官飯田祐二君、国土交通省鉄道局長藤井直樹君、国土交通省航空局長蝦名邦晴君、国土交通省政策統括官北本政行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岸田文雄君。

岸田委員 おはようございます。自民党の岸田文雄でございます。

 本日からいよいよ平成三十年度の予算の審議が始まります。我々与党、政府としましても、昨年の衆議院選挙において国民の皆さんにお約束をした多くの事柄を実行するために大切な予算だと考えます。丁寧な審議に努めつつも、一日も早い成立を図らなければならないと思います。その上で、経済の活性化、国民生活の向上に向けて、目に見える形で結果を出していきたいと存じます。

 きょうは、まず最初に、人手不足という問題について取り上げさせていただきます。

 私も、党の役職の関係で各地を回る機会が随分たくさんありますが、どこに行きましても、さまざまな指摘を受ける中にあって、人手不足ということについて最近強く訴えられることが多く感じます。

 アベノミクス、この五年間の取組によって、間違いなく、名目GDPですとか、あるいは企業収益ですとか、あるいは雇用ですとか、こうしたことにおいて、数字を見ても明らかに成長の果実を感じることができるわけですが、経済のサイクルを完成させるために、成長、所得、そして消費、このサイクルを完成させるために、今、生産性革命に取り組んで、生産性をより上げることによって賃金を引き上げ、そして強い消費に結びつけていこう、こういった取組が行われています。

 さらには、この経済の循環を完成させるためには将来の不安を解消しなければならない、最も大きな不安、少子高齢化に対して対応しなければいけないということで、人づくり革命に取り組むんだ、こういったことも去年の選挙において訴えたところでありました。

 この少子高齢化という問題、将来の大きな不安だということでしっかり立ち向かわなければいけない、こういったことを訴えてきたわけですが、少子高齢化は決して将来の不安ではなくして、直近の現実的な課題であるということを感じます。それがまさにこの人手不足という問題であらわれているのではないか、このように感じています。

 もともと、少子高齢化、人口減少による人手不足、これはある程度予測をされていました。しかしながら、景気が低迷している状況においては、この人手不足という問題、これは顕在化してきませんでした。

 しかしながら、二〇一三年以降、アベノミクスによって景気回復が図られてきた。この景気回復をきっかけに人手不足という問題が顕在化してきた、みんな多くの人々が意識をし始めた、こういったことなのではないかと思います。

 実際、昨年、二〇一七年の第二・四半期からGDPギャップはプラスに転じています。これまで、日本の経済はずっと、供給過剰そして需要不足、こういったことが課題だと言われてきたわけですが、今や、人手不足を背景として供給不足に陥りつつある、そんな心配も出てきている、これがこの現代の状況なのではないかと思います。

 人手不足によって供給不足が生じている、このことは成長を阻害することになります。そのことが成長、所得、そして消費の循環を阻害する、こういったことにもなりかねない、こういったことなのではないかと思います。人手不足、まさにこれは直近の今日的な課題だと思います。

 人手不足の観点からも、今取り組んでいる働き方改革、人づくり改革、あるいは生産性改革、こんなものにも取り組んでいかなければならない、このように感じます。

 総理、この人手不足という課題の認識について、冒頭、お伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 五年間のアベノミクスにより、日本経済は、足元では二十八年ぶりとなる七四半期連続のプラス成長であります。

 我々が政権をとる前は、直前は、経済はマイナス成長であったわけでありまして、その段階で既に生産年齢人口は減少に転じていましたが、有効求人倍率は〇・八倍台であった。つまり、一人の職を求める人に対して一人分の職がないという状況であったわけでありますが、我々が政権をとって、三本の矢の政策によって、特に金融政策、金融政策もいわば雇用に働きかけることができるわけでありますから、この三本の矢の政策によって雇用においては大きな成果が出たのは事実であります。

 正規の有効求人倍率も、史上初めて、今一倍を超え、一・〇七、過去最高となっているわけであります。

 これは、いわば給与が上がっていくという条件にはもちろんプラスになるわけでありまして、企業は賃金を上げていかなければ人が集まらないという状況でありますから、パートの時給も過去最高になっています。過去最高にしなければ人が集まらないという状況になりました。

 つまり、働き手からすれば、賃金が上昇するというプラスになっていくわけでありますが、同時に、今政調会長が指摘をされたように、人手不足は企業にとっては、更に生産を上げていく上においては、これはマイナスの要素となっていくわけであります。

 確かに、経済の好循環は着実に回り始めており、民需主導の力強い経済成長が実現をして、そして、デフレ脱却への道筋を確実に歩んでいます。ただいま岸田委員が御指摘になったように、需給ギャップは縮小し、そして、足元では、需給ギャップ、これはプラスにとうとうなったということであります。

 現在の日本経済にとって、人手不足を解消し、そして生産性を高める、潜在成長率を引き上げていくことが最大の課題であると思いますので、このためのあらゆる政策を総動員していく考えであります。

 中小・小規模事業者の皆さんは、特に深刻な人手不足に直面をしています。キャリアアップ助成金を大幅に拡充することにしました。これによって人手確保を支援していきます。それにあわせて、生産性向上に向けた攻めの投資を力強く支援していきます。

 アベノミクスにより経済が成長し、人手不足となった今こそ、生産性革命を進める最大のチャンスである、こう思っています。いわば、人手が余っているときには、生産性革命を進めていくといっても、これはいわば雇用を縮小していくという不安を人々は持つわけでありますが、まさに人手不足であるからこそ、企業の生産性を上げていく。つまり、上げていくということについて、働いている人たちも含めて、みんながその方向に向かって進んでいくことができる状況になっているとも言えるわけであります。

 生産性をしっかりと上げていくことができれば、人手不足の解消にもつながりますが、これはいわば一人一人の労働生産性が上がっていきますから、賃金が上昇していくことにもつながっていくということになるわけであります。つまり、同じ人数で多くの利益を上げていくということになれば、一人一人の給与を上げていくことにもつながっていくということにもなるんだろうと思います。

 また、働き方改革をその前に断行してまいりますが、長時間労働を是正すれば、女性、高齢者も仕事につきやすくなるわけでありまして、経営者はどのように働いてもらうかに関心を高め、生産性が向上していくことになります。

 さらに、人づくり革命を力強く進めていきます。現役世代が抱える介護や子育ての不安を解消するとともに、一人一人の人材の質を高めていくことが人手不足問題の解消にも資する、こう考えています。

 御指摘の人手不足解消の観点も十分に踏まえつつ、生産性革命、働き方改革、人づくり革命に全力で取り組んでいきたいと考えております。

岸田委員 ありがとうございました。

 この人手不足ですが、特に、日本の経済の九九%を占める中小企業あるいは小規模事業者にとって深刻な状況にある、こういったことも感じます。

 働き方改革、あるいは人づくり革命、あるいは生産性革命、こうしたものを進めるに当たっても、ぜひ、中小企業、小規模事業者の方々がしっかりと人材を確保し、そして教育をし、そして生産性を高めていく、こうした配慮、支援が不可欠だと考えます。

 昨年、政府の経済パッケージの作成の際に、党としましても、さまざまな提案をさせていただきました。その中にあって、中小企業、小規模事業者の支援という観点からは、ITツールの見える化ですとか、あるいは、共有できる、共同利用できるさまざまな設備あるいはノウハウ、こうしたものにつきまして、支援のプラットホーム、これをしっかりつくるべきではないかですとか、あるいは、賃上げや人材育成にしっかりと投資した企業を支援する仕組みを考えるべきではないかとか、さらには、下請取引の適正化を図るべきだとか、生産性を高める上から事業承継をしっかりと考えるべきだとか、さまざまな提案を党としてもさせていただきました。

 今議論になっている働き方改革につきましても、中小企業者あるいは小規模事業者の方々から、人手不足の中にあって時間外労働の改革にしっかり対応できるのかどうか、こういった声も聞かれます。

 これにつきましては、先日、一月二十五日だったと思いますが、参議院の本会議場において総理の方から、こうした不安の声に応えて、全国四十七都道府県に働き方改革支援センターを設置する、こうした方針が明言されたわけでありますが、こうした支援センターも、どういった支援をしてもらえるのか、こういった声があるのも事実であります。

 ぜひ、人手不足に悩む中小企業あるいは小規模事業者、こういった方々に対する支援ということについて、世耕経産大臣、お願いできますか。

世耕国務大臣 中小企業では、今、やはり人手不足がかなり深刻になってきています。これは大企業も同じなんですが、やはり調査をすると中小企業の方がより深刻ということになりますし、中小企業の経営者に今の課題は何かといったら、上位三位が全部人手関係のことと言うぐらい深刻になっているわけであります。

 そういった中で、今、岸田委員おっしゃったように、党から大変貴重な御提言をいろいろといただきました。その提言を今しっかりと政策に移していくという取組をやらせていただいております。

 やはり、人手不足に対応するには、人をふやすわけにはなかなかいきませんので、まず生産性を上げるということが重要だということで、ものづくり補助金ですとかIT補助金、こういったものによって設備投資をしっかりふやしていって、中小企業の生産性向上、効率化といったものをしっかり後押しをしていきたいと思います。

 また、中小企業に少しでも人が集まりやすくするためには、やはり魅力ある職場環境にしていかなければいけないということで、賃上げですとか人材投資に取り組む企業を支援していくということも進めていっております。所得拡大促進税制の控除率を現行から更に引き上げるとともに、それに加えて、思い切った賃上げや人材投資に取り組んでいる中小企業には更に控除率を上乗せするということも考えていっております。

 また、労働者だけじゃなくて経営者の側も人手不足が深刻になっておりまして、事業承継というのもこれまた深刻な問題になってきています。事業承継税制を抜本的に拡充をしたり、あるいは親族以外への承継への優遇制度を創設し、また経営人材のマッチング支援とかそういったことも行って、事業承継に対する切れ目ない支援も集中的に実施をしていきたいと思います。

 また、大企業でも人手不足が厳しい、そしてまた働き方改革などが進んでいく中で、そのしわ寄せが中小企業に行ってはいけないということで、大企業の短納期での発注など、こういったことにも目を光らせていきたいというふうに思っています。

 特に、下請の取引条件の改善ということに経産省は取り組んできておりますけれども、産業界に自主行動計画の策定を促したり、今、下請Gメンというのが、全国で生の、下請をやっている企業の声を吸い上げています。こういったことで実態把握をして、粘り強く下請取引条件の改善にも取り組んでいきたいと思います。

 また、これは経産省単体でできるわけではありません。政府全体として取り組むことも非常に重要でありまして、官邸に野上浩太郎官房副長官のもとに設置されました関係省庁連絡会議において、中小企業、小規模事業者の働き方改革や生産性向上などについて検討をしていただいておりますし、今、岸田先生からお話のあった、全国に厚労省が設置をする働き方改革支援センターと例えば商工会議所、商工会がしっかり連携をしていくというような取組も極めて重要だというふうに思っております。

 党の御提言を踏まえて、多面的、多角的取組をしっかりと行ってまいりたいと思います。

岸田委員 ぜひしっかりとした支援をお願いいたします。

 そして、この人手不足を考える際に避けて通れない課題として、外国人労働者の問題があります。

 我が国は、かねてより、専門的、技術的分野においては外国人労働者を積極的に受け入れています。また、国内には外国人の留学生が随分ふえてきました。

 ことしの成人の日で大変印象的だったニュースとして、東京都の新宿区における新成人、四八%から四九%は外国人だというニュースが流れていました。新成人の半分近くが外国人、これが新宿区の状況だというニュース、大変印象的でありました。こうした外国からの留学生の数も二十九万人を超える、こういった時代を迎えています。

 そして、従来から我が国は、開発途上国等の人づくりを支援するために、技能実習制度という制度を平成五年からスタートさせ、運用をしてきました。この制度によって、日本にいる外国の方々、これもどんどんふえて、今、二十五万人を超えたと言われています。

 ただ、この制度については、従来から、国連の人権委員会ですとかあるいは米国国務省の人身取引報告書で、この制度について大変厳しい批判を受けてきた、こういった経緯もありまして、一昨年、法律がつくられ、適正な実施あるいは保護に向けてのこの法律が成立をして、そして昨年十一月、施行されるということになりました。

 この法律の運用の状況もしっかり見ていかなければならないわけですが、こうしたさまざまな外国から来られる方々等の在留外国人、全部合わせると、今、三百万人を超えると言われています。そして、その外側には、今や毎年、去年の例でいきますと二千八百万人の外国人観光客も日本に来られている、こういった現状にあります。こうした外国の方々とどうつき合っていくのか。

 総理は再三、移民政策はとらない、これは強調されておられます。私も、日本において移民政策、これはなかなか難しいと思います。日本は、欧米諸国とは、歴史的にも、またいろいろ環境においても、またニーズにおいても異なる、こういったことですから、移民政策はとらない、これは十分理解できます。

 ただ、移民政策をとらないということと外国人労働者あるいは外国人の方々とどう向き合うかを考えないということは別だと思います。

 人口減少が進む中にあって、人手不足という観点からも、また、日本の国のグローバル化、あるいは日本の経済の付加価値を高める、こういった観点からも、外国人労働者あるいは外国の方々とどう向き合っていくのか、こうしたことについて真剣に考える必要があるのではないかと思います。このことは、日本の社会自体が多様性をどう受け入れるのか、こういったことにもつながる課題ではないかと思います。

 外国人労働者あるいは外国人の方々とどう向き合うのか、総理の基本的なお考えをお聞かせいただけますか。

安倍内閣総理大臣 労働人口が減少傾向で推移をしていく中において経済成長を実現していくためには、働き手の確保と生産性の向上が重要であると考えています。我が国の活力を維持するためには、あらゆる場で誰もが活躍できる全員参加型の社会を実現しなければなりません。その全員参加型の社会を構築することが必要であると考えています。

 その上で、外国人労働者の受入れについて申し上げれば、専門的、技術的分野の外国人は我が国の経済社会の活性化に資するという観点から、積極的に受け入れてきています。

 今後の外国人材受入れのあり方については、経済社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目をしつつ、内容の具体化を検討していく考えであります。

 その際、受け入れた外国人材が地域における生活者、社会の一員となることも踏まえて、幅広い観点から検討していく必要があるんだろうと思います。幅広い点から検討していく上においても、党においてよく議論を進めていただきたい、こう思うところでございます。

 多くの、いわば日本全国の地域の実情、働く現場等々、産業の現場の実情を踏まえた上でということになれば、やはり党の中においてしっかりと議論を、さまざまな状況を踏まえた議論を進めていただき、それも我々はしっかりと踏まえながら政府として検討していくことが必要だろう、こう考えております。

 なお、つけ加えれば、岸田政調会長が指摘をされたように、安倍政権においては移民政策をとる考えはないということは、改めて申し上げておきたいと思います。

岸田委員 ありがとうございました。

 少子高齢化とともに、もう一つの国民の将来の不安であります財政についてお伺いしたいと思います。

 国、地方が一千百兆円を上回る借金を抱える中にありまして、個人金融資産は一千八百兆円を超えて、そして企業の金融資産も一千二百兆円、内部留保だけでも四百兆円、こうした莫大なお金があるわけですが、これがなかなか消費に回されない、こうした課題があります。

 その大きな理由として、将来の不安ということが強調されます。財政健全化の見通しがない中では、例えば景気対策で財政出動ということを行っても、この財政出動自体が将来への不安を増大させてしまうことにもなりかねない、こういったことだと思います。

 去年の特別国会の代表質問で、私も持続可能な社会ということについて申し上げさせていただきましたが、持続可能な社会を考える上においても、財政の健全化、財政の持続可能性を考える、これは最も基本的な課題ではないかと思います。財政の健全化について、しっかりとした道筋を政府そして与党がしっかり示すということ、これは、将来への不安解消のみならず、消費を刺激して経済の循環を完成させる、あるいは効果的な景気対策を行う、こういった観点からも大変重要なことなのではないかと思います。

 財政健全化への見通しをしっかり示すことが重要であるという認識、あるいは健全化へ向けた決意、これにつきまして、総理にお伺いできますか。

安倍内閣総理大臣 まず、財政健全化をするためには、デフレから脱却しなければなりません。デフレ下において税収をふやしていくということはできませんから、これはまさに財政健全化はできないということだろうと思います。

 かつて日本は、名目GDPにおいて、一九九七年に五百三十六兆円というピークに達したわけでありますが、後はだんだん下がっていったわけであります。一度、税収においても六十兆円を超えましたが、それ一回、超えた。

 しかし、今回私たちは、デフレから脱却をし、そして経済を成長させるという政策をとった。そして、デフレではないという状況をつくったから、来年度予算においては五十九兆円という税収を今見込んでいるわけであります。これは、今回の見込みにおいては、史上第三番目の高い税収であります。ちなみに、二番目に高いのは、第一次安倍政権のときに記録をしているわけでございますが。

 そして今回、更にこの税収をふやしていきたいと考えています。そのためには、デフレから脱却をして、経済を成長させ、名目GDPを成長させ、そして税収をふやしていくことが必須であろうと思います。と同時に、当然、無駄な歳出をなくしていく、歳出改革も当然であろう、このように思います。デフレから脱却をし、経済再生により税収をふやす、それなくして財政の健全化はできない。同時に、歳出改革もしっかりと行っていく。

 このように、安倍内閣では、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針のもと、これまで、アベノミクスを進めることで、国民生活のために必要な政策を行いつつ、財政健全化に大きな道筋をつけてまいりました。国、地方合わせた税収は約二十四兆円増加をし、新規国債発行額は十一兆円減少した。事実、減少しているわけであります。

 今般、人づくり革命を力強く進めていくため、消費税率引上げ分の使い道を見直し、子育て世代、子供たちに大胆に投資をするとともに、社会保障の安定化にもバランスよく充当することとしました。これによって、子育て、介護等、現役世代が抱える大きな不安を解消し、また同時に、財政の持続可能性に対する不安も解消していく、消費の喚起にもつながるもの、こう考えたわけであります。

 つまり、今回は、消費税を八%から一〇%に引き上げる際に、五分の四を借金返しに使っていたわけでありますが、そうではなくて、約半分の一・七兆円を子供たちへの投資にする、これによって将来の子育ての不安を解消していくということと同時に、これを全部使ったらいいじゃないかという議論は私たちはとらない。まさに財政の健全化、そして社会保障の安定性のために、半分はしっかりとそのために借金を返していくことに使っていくというバランスを考えたところでございます。

 しかし、この結果、プライマリーバランスの黒字化の達成時期に影響が出ることから、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化は困難となります。ただし、財政健全化の旗は決しておろさず、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかりと堅持します。

 今後、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、この夏までに、プライマリーバランス黒字化の達成時期と、裏づけとなる具体的かつ実効性のある計画をお示ししてまいりたいと思います。不退転の決意で改革を進めていく考えであります。

岸田委員 ありがとうございました。

 政府におきましては、従来から、財政健全化については、プライマリーバランスの黒字化を実現し、同時に債務残高の対GDP比を安定的に引き下げていく、こうしたことを目標としてきました。昨年の衆議院選挙においても、我々自民党もそういったことを訴えました。

 このことについては、従来から少し議論があったのも事実です。プライマリーバランスの黒字化と債務残高の対GDP比の引下げ。例えば、経済の成長、これを優先すべき方々は、やはり後者、要するに債務残高の対GDP比の引下げを優先するべきだとか、目標はそっちだけでいいのではないか、こういった議論があった、これも事実であります。

 ただ、このプライマリーバランスの黒字化は、どれだけ税収を見込むか、そしてどれだけ政策的な支出を予定するか、これは国の意思により確定できる、こういった指標であります。一方、対GDP比ということになりますと、特にGDPそのものは、国の意思によってコントロールする、これはかなり難しい部分も出てきます。これは国の意思によって十二分に決められるものではない、こういった指標でもあります。

 また、プライマリーバランスの黒字化の方はフローの指標として評価されてきましたし、債務残高の対GDP比、これはストックの指標として評価されてきた、こういった評価もありました。要は、この両方はそれぞれ使い分けられてきた、こういったことだと思います。

 この二つの関係について、茂木大臣、どう考えておられますか。お願いします。

茂木国務大臣 今総理からもお話があったように、PBの黒字化を目指す、この目標自体はしっかりと堅持をしてまいりたいと思っております。

 そして、財政健全化を進める上では、今、岸田会長が整理をしていただいたように、一つはPB、これは単年度のフローの話でありまして、毎年、黒字が出るか赤字が出るか、こういうある意味政策であったりとか国の判断で若干の自由度がある、こういうものに対しまして、債務残高の対GDP比、これはストックということであります。

 家計でいいますと、PBの方は、毎月の収入、支出、ここでどれだけ赤字が出てしまうか、一方で、債務残高の対GDP比、これは、実際にその家計が持っている全体の借金がどれぐらい稼ぎに対してふえていくか減っていくか、こういう概念ではないかなと思っておりまして、どちらも重要であるのは間違いないわけであります。

 政府としては、経済再生なくして財政健全化なし、こういう安倍政権の基本方針のもと、単年度でのPBの黒字化だけではなくて、ストックであります債務残高の対GDP比の安定的な引下げ、これができるような経済状況をつくるということが何よりも重要だと考えておりまして、昨年、党の方でもこの御議論をいただきまして、それを踏まえまして、昨年夏の骨太方針におきましては、PBの黒字化と、「同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。」こういう文言を明確に入れたわけでありますが、それは、今申し上げたような趣旨をより明確に示すという観点から記入をさせていただきました。

岸田委員 ありがとうございました。

 いずれにせよ、政府としましては、ことしの夏を目標に、財政健全化に向けて一つの目標を明らかにする、こうした方針でいると承知をしています。

 その第一歩としまして、先日、一月の二十三日ですが、内閣府の方から、中長期の経済財政の試算、これが示されました。この試算は、これから目標を考える上での一つの基盤になるものだと理解していますが、内容を見ますと、実質二%程度、名目三%程度を上回る経済成長を実現したケースにおいて、財政の、PBの黒字化、二〇二七年度、このように見込んでいます。

 もちろん、これにはまだ、歳出改革努力、これは盛り込まれていません。

 また、きのうも党においてこの試算について議論を行ったわけですが、この試算の前提についても、どうなんだろうか、もっと保守的な前提に基づいて達成するようなことも考えるべきではないか、どんな要素を前提として置くべきなのか、さまざまな議論が行われました。

 歳出改革努力としては、二〇一五年に政府としては一度この計画を示して、そして、改革の工程表、こうしたものを示した、こういったことがありました。たしか、一般歳出で三年間の増加一・六兆円、そして、社会保障での増加、三年間で一・五兆円程度、こういった目標を掲げて、八十項目にわたって改革のメニューを示した、こんな計画だったと記憶していますが、今回も、今回出された試算に対して歳出改革努力を加えなければなりません。

 どんな歳出改革努力、計画をこれからつくっていくのか、そのことによって二〇二七年度とされているPB黒字化をどれだけ前倒しできるか、議論のポイントはそこになるのではないかと思います。

 この歳出改革努力について、二〇一五年の計画や指標をどう評価してレビューするか、これも大切なことですし、それ以外、どんな要素をこの歳出改革努力の中に盛り込むか、この辺がポイントなのではないかと思います。

 このことについては党としてもしっかり議論したいと思いますが、総理として、歳出改革努力、そして目標作成に向けての基本的な考え方をお聞かせいただけますか。

安倍内閣総理大臣 大切なことは、プライマリーバランスを改善し、債務残高対GDP比を着実に引き下げることであります。引き続き、経済再生を図りながら、歳出歳入両面からの改革を続けていきます。

 今後、医療や介護などの社会保障費の増大に伴う財政上の課題が想定されます。繰り返しになりますが、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、この夏までに、プライマリーバランス黒字化の達成時期と、裏づけとなる具体的かつ実効性のある計画をお示しします。党の議論も踏まえながら、国民の信頼を得られ、そして社会保障の持続可能性を担保できるものにしてまいりたい、このように思います。

 繰り返しになりますが、私の基本的な考え方は、経済再生なくして財政健全化なしということでありまして、経済成長を実現して税収を上げることで財政健全化も進めていくというものであります。

 先ほど、プライマリーバランスと債務残高の対GDP比については、いわばフローとストックという整理をされましたが、と同時に、いわばこのストックの見方としての債務残高の対GDP比は、これはGDP比という要素が入っている。先ほども、稼ぎといわば借金、債務との関係というふうに家計に例えたわけでありますが、まさにここのところが大切なところであります。

 また、政調会長は、意思があれば直ちにPB黒字化できる、こうおっしゃった。確かにそのとおりなんですね。思い切ってどんと歳出を来年削減すれば、それはPB黒字化というのは政府の意思でできます。

 でも、何が起こるかといえば、経済が腰折れをする。がくんと腰折れをして、税収はがくんと落ちる危険性があるんですね。

 そうなれば、やっとよくなった例えば雇用も一気に悪くなるということも考えられます。そうなれば、新卒の皆さんが就職できないという事態も起こってくる。そうなれば、その皆さんがその後も、新卒採用、今こういう慣行がある中においては、なかなか、就職する機会をずうっと失っていくということにもなっていくわけでありますから、まさに、財政再建も進めていきますが、歳出削減を急ぐ余り、国民生活にダメージを与えたり、景気の腰折れを招いてしまっては元も子もないわけでありまして、そこは大切なところでもあります。

 もちろん、歳出の無駄は省いていかなければなりません。

 ですから、この両方の指数を私たちは大切にしなければならない。プライマリーバランスの黒字化はできたけれども、債務残高の対GDP比が、実はその後経済が悪くなって残念ながらむしろ悪化していくということになっては、これは元も子もない、こう考えているわけであります。

 歳出改革を進めることによって、社会保障の持続可能性に対する懸念を払拭するとともに、市場や国際社会からの信認も同時に確保しなければならない。つまり、しっかりと経済を成長させつつ、同時に歳出をちゃんと改革していくということを見ながら、PB黒字化達成時期を我々ははかっていかなければならない、こう考えているわけでありまして、そういう観点から、バランスをうまくとっていかなければなりません。

 ナローパスを進んでいかなければならないと言えるかもしれませんが、この点については、責任ある政府・与党として、しっかりと議論を進めていかなければならない、こう考えております。

岸田委員 ありがとうございました。

 いずれにせよ、党としましても、しっかり議論を深めていきたいと存じます。

 次に、外交、安全保障の分野において直近の最も大きな課題であります北朝鮮問題について申し上げさせていただきます。

 我が国は、従来から北朝鮮問題に関しまして、拉致、核、ミサイル、こうした諸課題を包括的に解決する、こうした方針で取り組んできました。この方針は、これからもしっかり守っていくべきだと思います。

 その中にあって、今、韓国と北朝鮮、南北において対話が行われています。この対話については、平和的解決の努力として評価はしたいと思いますが、ただ、この中身については、これからも注視していかなければなりません。どんな議論が行われるのか。

 その中で、一つ、朝鮮半島の検証可能な形での非核化、この目標だけは絶対に譲れないということを確認したいと思います。

 今、南北の対話、平和的解決を考える中にあって、ある方は、平和的解決をするためには、北朝鮮に一部、核の保有を認める、こういったことを考えてもいいのではないか、こんなことを言われる方もいます。私は、絶対それはあってはならないと思っています。北朝鮮に一部たりとも、核開発を認める、そうしたら、周辺の国はどうだ、この国はどうだ、これは必ず核の拡散、リスクの拡大につながる。当然のことであります。これは、この対話の中で絶対許してはならないと思います。

 南北対話を見ておりますと、何か北朝鮮ペースで進んでいる、こんな感がしてなりませんが、この非核化という目標、これは損なってはならない。こういった考え方につきまして、総理、いかがでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 平昌オリンピックに向けて、今、南北対話が進んでいますが、そのことは評価しますが、しかし、この間も北朝鮮は核、ミサイルの開発を続けている、厳然たる事実があります。

 そして、今、岸田政調会長がおっしゃったように、大切なことは、まさに、完全そして検証可能な形で、不可逆的な方法で北朝鮮に核を放棄させることが必要なんだろう、こう思います。

 一九九四年の枠組み合意、そして二〇〇五年の六者会合の共同声明があります。あのときは、一瞬、彼らが核を放棄する、こう幻想を抱いたんですね。しかし、あのとき、ここまで彼らが核の能力を向上させる、そしてICBM級に挑戦するとは考えていなかった。恐らく米国は全く考えていなかったんだ、こう思いますね。九四年の段階においては、恐らく全くそうだったんだろうと思います。

 ですから、そういう反省を踏まえながら、話合いのための話合いはこれは意味がないわけでありまして、その中で、例えば平和的解決のためには北朝鮮の核兵器開発を一部認めてもいいとの考えは、これは大きな誤りであります。北朝鮮に完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させるとの目標は、これは絶対に日本としては譲れません。

 あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にまで高め、北朝鮮の方から政策を変更するので対話してほしいと言ってくる状況をつくっていく。それを通じ、核・ミサイル問題、そして何よりも重要な拉致問題の解決に向けて全力を尽くしていきたい、このように考えております。

岸田委員 総理の強い決意をお伺いできました。ありがとうございました。

 こうした状況の中で、日本は、みずからの国民の命や暮らしを守るためのさまざまな備え、イージス・アショアを始めとして、具体的な取組をしっかり進めなければならない。

 そして、二つ目として、今、国際社会、これだけ科学技術が進歩して複雑になってきますと、どんな国であっても、あのアメリカですら一国のみでは自分の国を守ることができない、これが国際社会の常識になりつつある中にあって、日本としては、日米同盟をしっかり強化していかなければならない。

 そして、三つ目として、これは最も大事な部分ですが、外交を通じてしっかりと好ましい環境をつくっていかなければならない。

 この三つを同時並行的にしっかり進めていくことが重要であると認識をいたします。

 対話、平和的解決、もちろん大事です。しかし、対話のための対話ではあってはならない、意味ある対話を引き出さなければならない、だから圧力をしっかりかけなければいけない、先ほど総理からそういった強い決意がありました。そういった思いでしっかりと取り組んでいただきたいと思いますし、その中にあって、これから行われます日韓首脳会談、これは、北朝鮮問題あるいは日韓関係等を考えましても、世界じゅうが注目する大変重要な会議となります。ぜひ、これを最大限に活用して、世界にメッセージをしっかり出していただきたいと思います。

 総理の決意をお伺いするところですが、ただ、この決意についてはこれまでもいろいろな場でもうお話しいただいています。重要だということを私からも申し上げて、ぜひ総理に頑張っていただきたいということを申し上げて、ちょっと、時間が大分押しておりますので次へ行かせていただきます。

 北朝鮮の核への対応、これは現実への対応です。一方、我が国は、もう従来から、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界を目指す、こうした理想をずっと掲げ続けていました。

 厳しい現実を前にしますと、この理想をややもしますとないがしろにしてしまいがちなところがあります。しかし、私は、やはり、現実への対応と理想の追求、これは二極対立するものではない、これは両方しっかり対応してこそ意味があるんだと思います。

 理想があるからこそ、今、現実への対応の説得力も出てくるのではないか。現実の積み重ねによって理想を追求する、こういった地道な努力こそ大事ではないか。理想と現実、これは両方しっかりと追求する、この態度は、日本にとってこれからもしっかりと確認しておかなければならない態度ではないかと思います。

 総理、北朝鮮への対応はもちろん重要です。一方で、核兵器のない世界を目指すという我が国の理想、これはこれからも揺るがないということにつきまして、お考えをお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として、被爆の悲惨な実相や核兵器の非人道性を最も熟知しています。国際社会の先頭に立って、核兵器のない世界という理想を高く掲げ、その実現に向けて国際社会の取組を主導していく使命を有しています。

 同時に、政府としては、何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任を有しており、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の脅威という現実に正面から向き合う必要があります。

 御指摘のとおり、このような現実への対応と、核兵器のない世界という理想の追求は、必ずしも二極対立するわけではありません。政府としては、現実の安全保障上の脅威に的確に対処しながら、唯一の戦争被爆国として、米国を含む核兵器国と非核兵器国の双方に働きかけていく考えであります。そして、その双方の橋渡し役として主導的な役割を果たすことにより、現実的な観点から、核兵器のない世界という理想の実現に向けて、粘り強く努力を重ねていく決意であります。

 一昨年、オバマ大統領が被爆地広島を訪問しました。それに際しましては、岸田外務大臣が、まさに被爆地広島出身の外務大臣として、外相会合を広島で開催された。そして、まさにそれによってケリー国務長官が被爆地を訪れ、被爆の実相をしっかりと実感することができたんだろう、こう思います。今まで、まさに原子爆弾を投下した米国の大統領が被爆地を、現職の大統領が広島を訪れることがなかったわけでありますが、このG7の外相会合が広島で行われたことにより、それが明確に私はオバマ大統領の広島訪問につながったんだろう、こう思います。

 そして、被爆の実相を示す写真について、岸田外務大臣がオバマ大統領に解説をされた。あのとき、真剣なまなざしでずっと写真を見詰めていた大統領の表情を今でも明確に覚えているわけでありますが、いかに悲惨なものであったか、その場で外務大臣が直接大統領に伝えたということは極めて重要なことであった。それは、今、長年の現実的なアプローチによる協力の私は成果だったんだろうと思います。

 同時に、理想はしっかりと追求していきたい、このように考えております。

岸田委員 ありがとうございました。

 そして、その理想への日本の取組についてお伺いをさせていただきたいと思いますが、今総理からも触れていただきましたように、四年八カ月、私も外務大臣を務める中で、広島出身ということもあり、核軍縮・不拡散に特に強い思いを持って取り組みました。しかし、厳しい現実にたびたびぶち当たりました。核軍縮・不拡散、これは、結果を出すためには、核兵器を現実に持っているのは核兵器国ですから、核兵器国と非核兵器国が協力しなければ、さらには、核兵器国自体を巻き込まないと結果につながらない、現実は動かない、こうした冷徹な現実にたびたびぶち当たった次第です。

 核兵器国を巻き込まなければならないと思ったからこそ、総理から紹介していただきましたG7の外相会談、あるいはオバマ大統領の広島訪問にも取り組んだ、こんなことでありました。

 しかし、残念ながら、核兵器国と非核兵器国の対立、これはますます深刻になっています。

 二〇一五年、核軍縮・不拡散の世界で最も大切な国際会議、五年に一度のNPT運用検討会議、残念ながら、これは、両者の対立のもとで、成果文書をまとめることができませんでした。

 また、今、核兵器禁止条約をめぐる議論を通じて、核兵器国は全くそれにかかわろうとしない、そして、非核兵器国の中も、核兵器禁止条約を重視するグループと、従来のNPT、核兵器拡散防止条約を重視するグループに分裂してしまっている、こういった現実があります。分裂はますます深刻になっている、こういったことです。

 この核兵器禁止条約に向けて努力すること、あるいは、先日もICANというNPOがノーベル賞をとった、こういった動きは、核兵器のない世界を目指す大きな目標を共有するという意味で、これは歓迎すべきことだと私は思っています。ただ、核兵器のない世界を目指すためには、被爆者、NGO、政府、自治体、それぞれ果たすべき役割がある、それぞれ果たすべき役割をしっかりと果たしていく、これが大事なのではないかと思います。

 日本政府の立場、これは各国政府に直接働きかけられる立場ですから、核兵器国、非核兵器国、それぞれの政府に直接働きかけることによって、核兵器のない世界を目指す、こうした目標を共有して、現実を動かすために皆で協力をしよう、こうした橋渡し役を果たしていく、これこそ政府の立場なのではないかと思います。

 そして、その中で、日本は、御案内のとおり、核兵器禁止条約交渉に加わることを控えています。そうであるならば、そして橋渡し役をするというのであるならば、なおさら、それでは日本はどういった道筋で核兵器のない世界というこの理想につなげていこうとしているのか、どんなシナリオを考えているのか、これをしっかり示さなければいけない、こういったことだと思います。

 昨年五月、私は、二〇二〇年のNPT運用検討会議第一回準備委員会に出席しまして、日本のシナリオ、これを訴えてきました。

 要は、日本は、NPT、CTBT、FMCT、これはもう時間が限られておりますのでちょっと解説はやめますが、さまざまな国際的な取組において中心的な役割を果たしてきました。この取組を引き続き続けることによって、核兵器の数、そして役割、意義、この三つをずっと低減させていって、最小限ポイントというふうに説明していますが、ある程度までその三つが下がった段階で初めて、法的拘束力のある条約を使って核兵器のない世界を目指す、こういったシナリオを考えるべきではないか。

 要は、こうした核兵器を禁止する法的拘束力のある条約、これは使い方を間違えると現実は動かなくなってしまうよということを訴えたわけです。現実、今、これを使おうとしてこの分裂が更に深刻になってしまっている、動かなくなっている、こういったことを考えましても、使い方を間違えてはならない、こういったことを訴えました。

 この考え方について、河野大臣、いかがお考えでしょうか。

河野国務大臣 おっしゃるとおり、核兵器禁止条約の目標は我が国も共有をするところでありますが、残念ながら、核兵器禁止条約は核保有国を一つも巻き込むことができず、おっしゃるように、非核兵器国もこれによって分裂をいたしました。

 日本としては、NPT、あるいはCTBTやFMCTといった、核保有国を巻き込んだそういう条約をしっかりと進めることによって、おっしゃるような最小限ポイントをまず目指す。そこまでいった上で、核兵器の確実な廃棄、あるいは再び生産をされていないかといったことをきちんと国際的にも検証する、そういうような枠組みをつくった上で、最終的な、究極的な核廃絶を目指すというのが現実的な路線だというふうに思っております。しっかりとそれに向けて努力を続けてまいりたいと思っております。

岸田委員 ありがとうございます。

 それでは、そのために具体的に日本は次に何をしなければいけないかということです。

 一つは、去年五月提案しました有識者会議、そして去年九月に河野大臣もそれを実現していただきましたが、有識者会議、すなわち、核兵器国と、非核兵器国の中のNPT派と核禁派、三つのグループそれぞれから有識者の方々に出てもらって、この三者の協力のために何をするべきなのか、この有識者会議の議論が続いています。この議論と先ほどの日本のシナリオをあわせて、ぜひ、ことし四月のNPT運用検討会議第二回準備委員会、これに提案をしていただきたいと思います。

 そして、その協力の基盤は何かということもぜひしっかり強調しなければならないと思います。それは、核兵器国と非核兵器国の信頼であります。信頼の基盤は何か。それは透明性です。核兵器国がどれだけ現実に核兵器を持っているかすらわからずして核廃絶を訴えても説得力がない、現実性がない、こういったことです。

 ぜひ、この透明性を高めるために、河野大臣に、NPDI、十二カ国の非核兵器国の枠組み、日本とオーストラリアが提案した枠組み、この枠組みを使って、従来も、核の実態を報告するフォーマットを提案するなど努力をしてきましたが、これをぜひ活用していただきたいと思います。

 質問時間が来たようであります。核軍縮とあわせて大きな課題であります気候変動問題についてもお伺いしたかったのでありますが、総理あるいは大臣から大変丁寧な御答弁をいただきました。心から感謝申し上げますが、時間がちょっとなくなってしまいましたので、他の課題につきましては次回に譲りたいと存じます。

 まことにありがとうございました。

河村委員長 この際、後藤茂之君から関連質疑の申出があります。岸田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤茂之君。

後藤(茂)委員 自由民主党の後藤茂之でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、日本経済の現況についてお伺いします。

 この五年にわたってアベノミクスを推進してきたことによりまして、もはやデフレではないという状況をつくり出すことができました。

 そこで、改めて、日本経済の現状、アベノミクス五年間の成果について総理にお伺いします。

安倍内閣総理大臣 アベノミクスにより、政権交代後、極めて短い期間で、デフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一一・四%成長し、五十六兆円増加し、過去最高となったわけであります。特に、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しております。

 大切なことは、働きたい人が働く場がしっかりあることであろう、こう思うわけでありまして、政権交代前に一倍を下回っていた有効求人倍率は足元で一・五九倍、これは四十三年と十一カ月ぶりの高い水準であり、また、史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超えました。高度成長時代にもバブル期にも、こんなことは起こっていなかったのであります。経済の好循環が回り始めていると思いますし、正社員の有効求人倍率は、調査開始以来、初めて一倍を超えて、足元で一・〇七倍、これは過去最高になりました。

 そして、うれしかったことは、昨年四月に高校や大学を卒業した若い皆さんの就職率が過去最高となったことでありまして、若い皆さんがみずからの努力でしっかりと未来をつかみ取ることができる社会を達成できた、こう思います。

 賃金についても、賃上げは、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが四年連続で実現し、多くの企業で四年連続のベースアップを実施しています。

 政権ができたときに、賃上げを、異例ではありますが、要請し、ベースアップをお願いしたい。最初、一社、二社がすぐに応じてくれたんですね。その一社、二社が応じてくれたという話をしたら、国会において、たった一社じゃないかという批判があった。でも、そういう批判をしていたのでは結局これは前に進んでいかないわけでありまして、そして、今や多くの企業がベースアップに取り組んでいるということであります。

 パートで働く方々の時給は、統計開始以来、過去最高の水準となっており、最近では二%以上の増加となっています。正規の方、非正規の方、それぞれで所得環境に改善が見られ、二〇一四年春以降、増加傾向にあります。

 五年間、後藤委員とともに経済最優先で取り組んできた成果が出てきている。更に我々の政策を加速させ、もっと多くの方々に実感をしていただけるような経済をつくっていきたい、このように考えております。

後藤(茂)委員 このような成果を生み出したのは、アベノミクスがこの五年間で大きく進化してきた、そのことが重要だったのだと私は思います。

 それで、少し振り返らせていただきますが、最初のステージで取り組んだのは三本の矢です。この三本の矢に、円安、株高という形でマーケットが大きく反応し、大手の輸出関連産業を中心に、企業の利益が大きく押し上げられました。

 しかしながら、それがそのまま賃金の上昇、消費の喚起、企業の投資の拡大につながりませんでした。このような経済成長の隘路としては、少子高齢化という構造的な問題が横たわっています。少子高齢化の進行が、将来に対する不安、悲観へとつながっているのです。

 また、長い間続いたデフレマインドを払拭することが難しい状況でありました。いわゆるトリクルダウンの政策だけでは十分な対応が図れないということだったと私は思います。

 そこで、アベノミクス第二ステージは、新三本の矢を放ち、一億総活躍社会の実現を目指すことといたしました。生まれ始めた好循環を一時的なものに終わらせることなく、その成果を子育て支援、社会保障の基盤強化に分配することによって培った安心が消費や投資を支える。さらなる成長や分配につなげる、内需主導による成長と分配の好循環を構築することを目指したのだと私は思っています。供給サイドの政策として、同時に、働き方改革とイノベーションに、いわば車の両輪として取り組んでいます。

 他方、ここに来て、需給ギャップが足元プラスになりました。こうした中で、人生百年時代を迎え、国難ともいうべき少子高齢化という壁に正面から取り組み、そして潜在成長率を引き上げることに挑戦することになりました。人生百年時代の新しい経済社会システムに向けた新たなステージともいうべき構造改革に現在は挑戦している、私はそのように思っています。

 このように、国民生活に寄り添い、党内外からのさまざまな意見に耳を傾けて、アベノミクスを大胆に進化させてきた安倍総理の姿勢は、大いに評価すべきであると考えております。

 もちろん、今後とも、一つ一つの政策目標についてしっかりとした成果を出していく必要があることは、これは当然のことでありますけれども、安倍政権の大胆な改革や挑戦の姿勢なくして、少子高齢化やイノベーションによって大きく変わろうとする世界の社会構造の変化に対応し乗り越えていくことはできないものと考えております。これはもう、私がアベノミクスを解説させていただきまして、そして総理の姿勢を、大いに私はこれからも応援していきたいと思っています。

 冒頭申し上げたように、先ほど総理もおっしゃいました、もはやデフレではないという状況まで来ています。デフレ脱却は目前です。デフレ脱却を実現するためには、力強い賃上げが必要であります。賃上げこそが成長と分配の好循環の第一歩になると思います。

 安倍内閣は、企業収益の拡大を速やかに賃上げや雇用拡大につなげるため、政労使三者が一致協力する体制をつくりました。既にことしの春闘も始まっています。デフレ脱却に向けて、また力強い賃上げに向けて、総理のメッセージをお願い申し上げます。

安倍内閣総理大臣 今、後藤委員が言われたことは極めて重要なことでありまして、なぜ賃上げが必要かということでもあります。

 我々の政策によってまさに経済は成長していますが、しかし、企業が過去最高の収益を上げる中において、なかなか賃上げが進んでいかない。しかし、その中で、そうはいっても、四年連続、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが続くことによって、賃金が上がっていくなという中で、やっと消費にいい影響が出てきた、消費が主導する経済成長が始まり始めた、こう考えています。

 しかし、それを継続していく、経済の好循環をしっかりと回していく上において、それが実現しなければデフレから脱却をしないわけでありまして、この好機を逃さず、流れを更に力強いものとしていかなければなりません。

 もちろん、その中において、さらに、ことしの四月に三%、しっかりと上がっていくことが大切でありますが、同時に、世界で胎動する生産性革命をリードして、二〇二〇年までを集中投資期間と位置づけ、賃金上昇、景気回復の波を全国津々浦々へと広げていくことが大切でありまして、繰り返しになりますが、ことしの春季労使交渉において三%以上の賃上げが実現する、これはまさに社会的な要請であるということをメッセージとして出すということは極めて有意義であろう、こう考えております。

 引き続き、大胆な税制、予算、規制改革、あらゆる施策を総動員することによって、賃金アップの勢いを力強いものとして、デフレ脱却を確実なものとしてまいりたい、このように考えております。

後藤(茂)委員 ところで、アベノミクスの進化によりまして景気回復が続く中で、持てる者と持たざる者との格差が広がっているのではないかという議論があります。総理も、格差の固定化は決してあってはならない、貧困の連鎖を断ち切らなければならないというふうに述べておられます。

 ところで、本当に格差は広がっているのでしょうか。政府として、格差が広がっているという懸念を払拭するためにどのように取り組んでいくのか、総理に伺います。

安倍内閣総理大臣 かつてこれは、池田勇人政権時代、高度経済成長を進めるときにも、成長が先かあるいは分配が先かという論争があったんですね。我々の政権においては、この論争に終止符を打ち、成長と分配の好循環を回していくということを政策の中心に据えたわけであります。

 安倍内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げるというものでありまして、成長し富を生み出し、それが国民に広く均てんされる、多くの人たちが成長を享受できる社会を実現をしていくわけでありまして、格差が固定化しない、同時に、許容し得ない格差が生じない社会を構築していくことは重要な課題である、こう考えています。

 安倍政権発足後の格差を示す指標の動きを見ますと、所得再分配後のジニ係数は、近年の雇用、所得環境の改善や、社会保障、税による所得再分配が機能した結果、おおむね横ばいで推移をしています。

 また、長期的に上昇傾向にあった相対的貧困率についても、政権交代後、雇用が大きく増加するなど経済が好転する中において、低下に転じました。

 特に、子供の貧困率、これはずっと、安倍政権ではないときの指標を使われまして、格差が拡大しているじゃないか、こう言われたわけでありますが、安倍政権になって初めて公表された総務省の全国実態調査によれば、十五年前の九・二から、十年前には九・七、五年前には九・九とずっと上がってきたものが、七・九と二ポイントの改善、これは集計開始以来初めて低下したわけであります。その後の、この数字を発表したときも、これは厚労省の数字を見なきゃわからないじゃないか、こう言われたんですが、厚労省の数字においても初めて改善が見られているわけであります。

 このように、安倍政権発足後において格差が広がったということはないというふうに認識しており、こうした動きが持続できるようにしていくことが重要であろう、こう考えているところでございます。

 今後、こうした中において、予算においても、格差、貧困の連鎖を断ち切るために、来年度予算においては、一人親家庭に対する児童扶養手当について、五十万を超える世帯で支給額をふやします。また、生活保護世帯の子供について、大学等への進学準備の一時金として、自宅から通学の方は十万円、そして自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設します。そしてまた、自宅から大学等に通学する場合に行っていた住宅扶助費の減額、これを取りやめることなど、取組を強化しております。

後藤(茂)委員 私たちが目指すのは、国民一人一人が、もっと自由に働きたい、温かい家庭を持ちたい、子を産み、健やかに育てたい、そういう希望を実現できる、格差の固定化しない経済社会であるというふうに思います。

 次に、生産性革命、その前に、先に中小企業の話をやりたいと思います。

 これまで議論してきたように、この五年間のアベノミクスの進化により、日本全体としては、大手企業や大都市を中心に経済の回復が大きく進展してきています。雇用情勢は大きく好転し、最近では、地方でも人手不足だという声が強く聞かれるようになりました。ただし、地方では、成長と分配の好循環をいまだ十分に実感できていません。むしろ、人手不足に伴う賃金の上昇によるコストアップに直面をしています。

 地域経済においても、経済と成長の、分配の好循環を実感できるようにするために、中小企業の生産性向上が第一の柱として、生産性革命においても位置づけられています。中小企業の業況は回復傾向にありますけれども、労働生産性が伸び悩んでおり、大企業との格差は広がりつつあります。

 今後、少子高齢化、人手不足、働き方改革への対応等、厳しい事業環境を乗り越えるため、老朽化が進む設備を生産性の高い設備へ一新させ、労働生産性の向上を図る必要があります。

 中小企業の設備投資を促進する観点から、固定資産税について臨時異例の大胆な特例を設けることとしていますが、どのような措置か、総務大臣に伺います。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

野田国務大臣 お答えいたします。

 生産性革命の実現は、大胆な税制、予算等、あらゆる施策を総動員すべき政府の大きな政策課題です。また、言うまでもなく、地域経済の活性化は、市町村にとって大変重要な課題です。

 そのため、今お話ございました固定資産税の特例措置を講じるに当たっては、現場の強みや課題等を最も身近に把握している市町村が地域の事業者と一体となって主体的に取り組めるような仕組みとし、市町村が創意工夫を競うような状況をつくることが大切であります。

 こうした点を踏まえて、与党税調での議論を経て、生産性革命集中投資期間中における臨時異例の措置として、三年間の時限的な特例措置を創設することとされました。

 具体的には、生産性向上特別措置法、これはまだ仮ですが、の規定に基づいて、市町村が主体的に作成した計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均三%以上向上させるものとして認定を受けた中小企業者の計画に記載された一定の機械装置等について、固定資産税を、最初の三年間、ゼロ以上二分の一以下の範囲内において、市町村の条例で定める特例率で減免することとしています。なお、特例率については参酌基準を定めず、市町村の主体性をより尊重する仕組みといたしました。

 生産性革命集中投資期間中、市町村や事業者が今回の仕組みを有効に活用することによって、生産性向上に資する設備投資が促進され、地域経済が活性することを期待しているところです。

後藤(茂)委員 一言で言えば、中小企業の償却資産を、固定資産税ゼロから二分の一に、市町村が決められるということです。

 ぜひ、全国の市町村にも御理解をいただいて、貴重な地方財源でありますけれども、積極的な活用を図っていただいて設備投資につなげていきたいと思います。

 それから、雇用者の七割が中小企業で働いています。この中小企業で働く人たちの賃金を引き上げていく。人手不足が厳しくなる中で、賃上げを頑張る中小企業を応援する必要があります。こうした中小企業の賃上げを支援するためにどのような税制上の措置を講じようとしているか、財務大臣に伺います。

麻生国務大臣 中小企業の定義は資本金一億円以下、全国に約二百六十一万あるかないかぐらいのところだと思いますが、そこに働いておられる従業員は約三千三百六十万人いらっしゃるというのを前提にしております。

 地方を変えるという意味においては、雇用というものはその地域においては極めて重要な要素でして、地域に雇用がないから東京に出てくるということにもつながってくると思っておりますので、その中小企業が持続的に賃金を引き上げていけるかどうかという環境をつくり出すということが、これは極めて重要なことなんだと思っております。

 したがいまして、今般の所得拡大促進税制の中におきまして、これまで給与支給額は、平成二十四年度に比べて一定以上の割合という要件だったんですけれども、それを変えて、前の年に比べて一・五%以上の賃金を引き上げた中小企業がこの税制が受けられるように、改正をさせていただいております。

 さらに、前年度から二・五%以上というような賃金引上げというのをしていただいたところに限りというか、加えて、リカレント教育等々、いろいろな人材投資等々、しっかり取り組んでいただいた中小企業に対しましては、大企業に比べて高い、いわゆる税額控除率を設定することで、大企業は五%、こっちは一〇%にさせていただいたと思いますが、強力な支援をすることといたしております。これを契機に中小企業の賃上げ等々が一層進んで、経済の好循環に寄与することを期待しております。

 こういった制度は、説明しても、えっと言われて、全然御存じじゃない方がいらっしゃいまして、きょう質問していただきましたけれども、このテレビを見ていただいている中小企業の経営者にもこれが伝わるというのは、私どもも大いに期待をするところです。

 ありがとうございました。

後藤(茂)委員 前年に比べて一・五%給料を上げると、一五%税額控除です。この一・五%というのは、中小企業の定期昇給の平均が全国で一・五%台ですから、ちょっと頑張ってボーナスとかあるいはベアを上げていただくと何とかなる数字であることなので、ぜひ、今財務大臣がおっしゃったように、使っていただきたいというふうに思っています。

 それから、前年度からの対比ですから、ことし頑張る中小企業、あるいは賃上げ、引上げを、人手不足で追い込まれている企業も、これはことし上げれば適用になりますので、ぜひ御利用をいただきたい、そのように考えています。

 それから、二〇二五年までに七十歳を超える中小企業の経営者は、今、二百四十五万人います。そのうち、約半分の百二十七万人の後継者が未定なんです。これは、日本企業全体の三〇%にも当たります。何とかして、こうした企業を廃業に追い込ませずに事業承継を進める必要があります。

 しかし、これまでの事業承継税制、使いでが悪かったという指摘もありました。こうした中、今回、事業承継税制には抜本的な拡充、一言で言えば、清水の舞台から飛びおりるほどの事業承継税制の拡充を行っていると思います。

 財務大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。

麻生国務大臣 高齢化が進んでおりますのは確かでして、商工会議所の調べでも、このままでいくと百二十五万社が十年以内に倒産というような話をさせていただいております。

 私どもとしては、この事業を承継できるような形にしないと、これは同時に失業にもつながりますし、GDPの低下にもつながるし、いろいろなことに全部関係いたしますので、この事業承継税制というのは、今おっしゃるように、これは抜本的に改革しないと、今までもあるんですけれども、なかなか利用しづらいとか余り効果がないとかいうようなことになっておりましたので、私どもは、この事業承継時の贈与税、相続税等々の支払い負担をゼロということで、雇用確保要件を弾力化させていただいております。

 また、複数名から承継するという例もありますので、最大三名の後継者に対する承継にも対象を拡大させていただいて、経営環境の変化に対応した減免制度というものを創設させていただいております。

 そして、将来の税負担に対する不安というものもあろうと思います。それに対応する等の特例措置も講ずることとしておりますので、こういった拡充に加えて、後継者による新しい挑戦というかチャレンジを応援する補助金等々、切れ目のない支援を実施することで、急激に進んでいくと思われます、いわゆる団塊の世代の、後期高齢者に入っていかれますので、そういった世代を対象にした、中小若しくは零細規模事業の、次の世代へしっかり引き渡していけるような体制というものを考えさせていただいたというところで、清水の舞台から、主税局としては確かにそういった気持ちでやったと思います。

後藤(茂)委員 次に、生産性革命と並ぶ安倍内閣のもう一つの柱が、人づくり革命であります。その中で重要な柱の一つが、幼児教育の無償化と言えます。

 無償化をめぐっては、無償化よりも先に待機児童を解消すべきとの声もあります。もちろん、待機児童対策は喫緊の課題であり、スピード感を持って取り組まなければならないことは当然のことです。

 今回、子育て安心プランを二年間前倒しすることとされましたが、今般の補正予算においても保育所の整備に関する予算が盛り込まれています。その内容を含め、今後の待機児童解消に向けた取組について、総理に伺います。

安倍内閣総理大臣 我々、待機児童の解消は待ったなしの課題であり、最優先で取り組んでいます。前政権の二・五倍のスピードで我々は保育の受皿をつくっているところでありますが、新しい経済政策パッケージのもと、幼児教育の無償化は二〇一九年度から段階的に進めていくのに対して、子育て安心プランに掲げた三十二万人分の保育の受皿整備は、今年度から早急に実施をしてまいります。

 具体的には、今年度は既に約六万人分を前倒しで確保できる見込みであります。さらに、今般の補正予算と平成三十年度予算案において、合計で十一・五万人分の受皿整備を進めます。こうした取組を通じて、二〇二〇年度末までに三十二万人分の保育の受皿確保を目指します。

 待機児童の解消に当たっては、保育の実施主体である市町村が、待機児童の状況や潜在ニーズを踏まえながら保育の受皿整備を行うことが重要であり、引き続き取組を加速してまいりたいと考えています。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

後藤(茂)委員 子育て安心プランの前倒しによりまして、二〇二〇年度には待機児童を解消、一方で、幼児教育の無償化については、二〇一九年度から一部スタート、そして二〇二〇年度から完全実施ということで、待機児童対策が後回しにされているのではなくて、この二つの政策を同時並行して進め、子育て世帯を応援していくという方針であるということが確認できたというふうに思います。

 また、今般の政府の方針では、三歳から五歳児については広く無償化するとともに、ゼロ歳から二歳児については当面低所得者に限って無償化するとされています。

 現場の声を聞くと、ゼロ歳から二歳児こそ支援のニーズは高いのではないかという声もよく聞きます。一方で、保育所や幼稚園などの利用率を見ると、三歳から五歳児の九割以上がこうした認可施設を利用しているのに対して、ゼロ歳から二歳児の利用率は四割弱となっています。これは、ゼロ歳から二歳児について、できる限りみずから家庭で子育てをしたいという方が一定程度おられる、そのあらわれかと思います。

 そこで、今般の無償化に当たり、三歳から五歳児は全面的に無償化するのに対し、ゼロ歳から二歳児については低所得者に限るとした理由を、総理に伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の幼児教育の無償化は、基本的に三歳から五歳児を対象としています。

 これはなぜかということでありますが、既にその九割以上が認可施設を利用できていることから、無償化をしても、いわば利用できていない待機児童への影響は極めて少ない、こう判断をしました。ゼロ歳から二歳児については、待機児童の問題があることから、その解消に最優先で取り組むこととし、無償化については住民税非課税世帯に限定することとしたところであります。

後藤(茂)委員 ゼロ歳から二歳児については、特に親御さんが強い思いを持っておられると思います。育休をとるのか、保育所に預けるのか、あるいは家庭の中でスキンシップを大切にして自分の手で育てるのか、それぞれのお考えもあるだろうと思います。国の制度としては、こうした多様な選択に対応できるようにしていく必要があると思います。

 こうした幼児教育の無償化について大きな議論になったのが、認可外保育施設や幼稚園の預かり保育などの取扱いです。自民党内においても活発な議論が行われました。認可外保育も含めて無償化を進めるべきということで、党も提言をまとめました。

 政府は、こうした認可外の無償化の取扱いについて今後どのように検討されていくのか、茂木大臣に伺います。

茂木国務大臣 幼稚園、保育所そして認定こども園以外の無償化措置の対象範囲、対象等につきましては、昨年末に与党の方からいただきました提言も踏まえまして、専門家の声も反映する検討の場として、幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会を、私自身も出席をいたしまして、一月の二十三日に立ち上げたところであります。

 現場や関係者の声に丁寧に耳を傾けつつ、保育の必要性や公平性といった観点からしっかりと検討し、御指摘いただきました幼稚園の預かり保育の取扱いも含め、夏までに結論を出していきたいと考えております。

後藤(茂)委員 認可外のサービスについては、その利用形態や提供方法などが千差万別であります。例えば、認可保育所を断られたために毎日やむを得ず認可外保育施設を利用されている方もいれば、ちょっとした私用の利用のために一時的に預かってほしいという場合もあります。また、十分なスペースが確保されていなかったり保育士がいなかったりと、劣悪な環境で保育が行われているケースもあります。しっかりとした質を確保することも重要な課題となります。

 昨年末、岸田政調会長や小泉進次郎議員などとともに、都内大久保にあるエイビイシイ保育園を視察いたしました。この保育園は社会福祉法人が運営する認可保育所で、認可外の無償化とは別の議論にはなりますが、多様な保育ニーズの一例として御紹介をしたいと思います。

 この保育園は、都内で唯一、二十四時間の保育を行っています。昼の認可保育園が三万カ所もある中で、こうした夜間の保育を行っている保育所は全国に八十カ所しかありません。

 実際に見せていただいて、職員の皆さんが園児と向かい合い、一生懸命保育をされている姿に感銘を受けるとともに、夜間加算も少ない中で夜間に保育を行うことの御苦労を実感いたしました。現在は日本社会は二十四時間動いていて、夜間に子供を預けるニーズは、マスコミ、病院関係、役所など幅広い方たちにあることも、園児の様子を見てよくわかりました。

 一方で、片野清美園長が、二十四時間働き続けている社会がいいのかという社会のあり方の問題はあるとしても、実際に親が深夜働くことで置き去りにされている子供が一人でもいるならば、自分はその面倒を見たいと語っておられることに心を打たれました。この保育所の取組は「夜間もやってる保育園」というタイトルで映画化もされておりまして、去る二十九日に自民党でも上映会を開催いたしました。

 このように、保育のニーズは非常に多様化しています。無償化の取扱いの検討に当たっては、無認可が認可に移行できるような質の向上に対する支援など、幅広い観点から制度を考えていくことが重要になるというふうにも考えますし、どうぞ、検討に当たっては、多様な実態について丁寧にヒアリングを行い、十分に実態を把握しながら検討を進めてほしいと思います。

 働き方問題は、今後また議論をさせていただきたいと思います。

 これで、私の質問を終わらせていただきます。

河村委員長 この際、田中和徳君から関連質疑の申出があります。岸田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中和徳君。

田中(和)委員 自由民主党の田中和徳であります。

 まず初めに、一月二十三日に起きた草津白根山の噴火により亡くなられた方、また被災された方々に、さらに、一月三十一日、札幌市東区で起きた火災により犠牲になられた十一人の方々に、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 私の質問は、私自身が深くかかわった数ある議員立法のうち、特に今なお課題が多い法律の施策や予算についてお尋ねをいたしたいと思います。

 最初は、各党の関係者で懸命に進め、平成二十八年十二月に成立、公布、施行され、さらに再犯防止推進計画が昨年暮れの十二月十五日に閣議決定された議員立法、再犯防止推進法についてであります。

 安倍政権は、平成二十五年十二月十日、「世界一安全な日本」創造戦略を閣議決定し、この中で、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを成功させる前提として、世界一安全な国日本をつくり上げることは絶対になし遂げなければならないことであると明記しました。

 それを受け、平成二十六年三月七日、自民党に、刑務所出所者等就労支援強化特命委員会、今の再犯防止推進特命委員会が設置されました。保護司で更生保護議連の会長の私が委員長に就任し、四年近くが経過をいたしました。自民党内では、この議員立法を成立させるために、この特命委員会や更生保護議連が中心になって動いたものでありました。

 再犯防止特命委員会では、この更生保護議連とともに、総理を始め各大臣にも再犯防止政策について数多くの要望を行い、また、二回の累計で合わせて延べ四百名を超える衆議院、参議院と地方議員が、地元の刑務所や少年院などの矯正施設や更生保護サポートセンターの視察、保護司の方々との懇談を行い、また、各議員より数多くの貴重な報告書がその都度提出され、我々の活動の源になってきました。また、平成二十六年八月には安倍昭恵総理夫人が、平成二十七年十二月四日には安倍総理御自身が、都内の更生保護施設、両全会を視察いただいております。

 昨今では急速に成果も上がり、警察庁発表では、ピーク時、平成十四年に二百八十五万件もあった一般刑法犯は、昨年末で九十一万五千四十二件と約三分の一近くまで減少し、戦後最少を更新したところであります。

 日本で起こる犯罪の約四〇%が初犯、約六〇%が再犯で、初犯者の減少に比べ再犯者の減少率が低く、刑法犯検挙人員に占める再犯者の割合は、平成二十八年において過去最高の四八・七%まで上昇をいたしました。残念ながら、再犯者率は逆に年々上昇しているのであります。

 再犯の内訳は、平成二十八年十二月末現在、刑務所に収容されていた全受刑者四万九千二十七人のうち約四五%が、出所してから五年以内の再犯となっております。直近の平成二十八年に刑務所に入所した二万四百六十七人については、約六〇%が再入所者で、東京オリパラを目標にしての世界一安全な国日本の実現のためには、再犯防止を推進し、一気呵成に、しかも効果的にその事業を進めなければならないことが明らかになっておるところであります。

 皆様、このパネル一をごらんいただきたいと思います。

 財務省主計局資料によると、刑務所などの矯正施設被収容者一人の一日当たりのコストは一万二千八百二十円、平均的な刑務所収容期間は二年三カ月でありまして、プラス警察による捜査費用や裁判関係費用を合算すると、一人当たり約一千万円の公費が二年三カ月のうちにかかっておりまして、約四万九千人、平成二十八年の末、収監をしておりますので、大変な金額になっておるわけであります。

 刑法犯認知件数が昨今戦後最少を記録したことは、安倍政権の大きな成果と言えます。世界一安全な国日本実現というこの大目標達成への決意と、犯罪急減の成果に対しての総理の感想をお聞かせをいただきたいと思います。また、特に重要な再犯防止推進計画推進に向けてどのように取り組んでいかれるのか、総理のお考えをあわせてお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国民の皆様が安全で安心して暮らせる国であることを実感でき、また、世界各国からの訪問者が、特にオリンピック、パラリンピックに向けて、皆さんが世界一安全な国日本を感じていただく、そういう日本をつくり上げていくことが、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会を成功させるための開催国としての責務であると考えております。

 安倍内閣においては、平成二十五年に「世界一安全な日本」創造戦略を閣議決定し、官民一体となった取組を進めてきたところであります。その成果として、平成二十九年の刑法犯認知件数が戦後最少、そして、戦後最多であった、これは平成十四年なんですが、その三分の一となりました。つまり、三分の二を減少させることができたということであります。

 他方、特殊詐欺被害、これはいわゆる振り込め詐欺でありますが、の増加、サイバー空間の脅威の増大、子供や女性に対する犯罪の発生など、犯罪情勢は引き続き予断を許さない状況でありまして、今後とも、国民の安全、安心を守るため、的確な犯罪抑止対策を進めてまいります。

 そうした中で、現在、検挙された者のおおむね半数が今御紹介いただいたように再犯者でありまして、再犯防止対策は犯罪対策の重要な柱であります。

 政府は、働く場を確保するため、これまでに、刑務所における職業訓練、教育の充実、刑務所出所者等を雇用した企業を対象にした奨励金制度の創設などの対策を講じてきました。こうした取組により、刑務所出所者のうち二年以内に再び刑務所に入所する者の割合も減少しています。また、この五年間で実際に出所者を雇用していただいている協力雇用主が約二・七倍になるなど、成果もあらわれてきています。

 他方で、私自身も、今御紹介いただきましたように、これまで、女子刑務所や先進的な取組を行っている更生保護施設、両全会でありますが、を訪問し、現実の実態や対策に当たる方々の御苦労を拝見したほか、更生保護にかかわる民間の方々から直接お話を伺うなどしてきた中で、薬物依存の問題や高齢犯罪者の現状への対策の必要性、国、地方公共団体だけではなくて、民間とも連携した息の長い取組の重要性を認識したところでございます。

 こうしたことから、昨年十二月、政府として初となる再犯防止推進計画を閣議決定いたしました。今後とも、再犯の防止等に向けた教育、職業と住居の確保、これは非常に重要でありますが、また、保健医療サービス、福祉サービスの利用の促進、協力雇用主の活動に対する支援の充実、薬物指導体制の整備等、地方公共団体、民間団体等と一体となって対策を推進していく考えであります。

田中(和)委員 ただいま総理からもお話がありましたけれども、刑務所を出所した後の雇用の問題というのが、また、住居の提供というものが非常に重要なことになってまいります。再犯防止の一番の基本だと思っております。

 再犯防止推進法に基づいて国の基本計画が昨年十二月十五日に閣議決定され、これを受けて、全国全ての地方自治体でも早期に計画を決定してもらわなければならないことになります。特に、規模の大きい自治体である都道府県や政令指定都市はなおさらのことであろうと思います。

 再犯防止推進法には、地方自治体が再犯防止計画を策定し、再犯防止に取り組む責務として、努力義務を明記しております。再犯防止の取組は、安全、安心なまちづくりという視点から、地方自治体に本来求められる取組そのものでありまして、これからの再犯対策の主役は地方自治体の時代と言っても過言でないと思います。

 私の神奈川県内では、保護司を務めている県会議員や市町村議員の皆さんが超党派でかながわ議員保護司懇話会を平成二十八年十二月に結成し、各議会で再犯防止対策を取り上げ、質問するなど、活発な活動を展開しておられます。ぜひ、全ての都道府県内でもこのような議員懇話会をつくっていただきたいと思っております。

 また、再犯防止の率先垂範を示すため、保護観察対象者の、中央官庁はもちろん、地方公共団体での雇用が不可欠であります。中央省庁における対象者の採用は、法務省、厚労省で始まりました。地方自治体では五十三自治体、私の地元川崎市でも採用が始まり、神奈川県でも近々予定されていると仄聞しております。

 全ての国の省庁、そして全ての自治体において、取り急ぎ、最低でも一名の対象者を雇用していただくべきと考えております。本日、出席をされておられる全ての大臣の方々にも、ぜひお願いをいたしておきたいと思います。

 そこで、国の機関や地方公共団体がこうした認識に立って雇用など再犯防止に積極的に取り組むように、どのようなことを実行されているのか、法務大臣から御説明を願いたいと思います。

上川国務大臣 一連の再犯防止の取組に対しまして、保護司であられます田中委員が大きなリーダーシップを振るわれたということに対しまして、心から敬意を表したいというふうに思っております。

 まさに再犯防止推進法の理念、この実現のためには、国、地方公共団体そして民間協力者が、それぞれの役割に応じまして、その力を最大限発揮することが重要でございます。

 この再犯防止推進法でございますが、国のみならず地方自治体も再犯防止施策の実施主体であるということを明確に位置づけるとともに、地方の再犯防止推進計画をそれぞれ策定する努力義務を課しているものでございます。

 再犯防止推進計画におきましては、国として、地方公共団体が取組を進める上で必要となる地域の実態把握や、また、犯罪をした者等が地域で必要な支援を受けられるようにするための地域ネットワークの構築など、地方公共団体による取組の支援を国として行うこととしているものでございます。

 そこで、現在、法務省でありますが、地域ブロックごとに、地方公共団体の職員を対象にいたしました説明会を計画的に開催をしておりまして、再犯防止推進計画の内容等につきまして説明をし、理解を求めているところでございます。

 また、先ほど御指摘いただきました刑務所出所者の、国あるいは地方自治体における、直接、職員として雇用していただく、こうした具体的な取組につきまして、国では既に四十五名ということでありますが、地方でも五十三カ所四十一名の雇用が実現しているということでありまして、こうした具体的な取組につきましても、それぞれの自治体の方にもお願いをしている、働きかけをしているところでございます。

 また、この問題は省庁横断的にも取り組むべきことであるということで、関係省庁におきましても、ただいまのような直接雇用の依頼でありますとか、また、国を通じて、それぞれの関係する機関に対しても、同じような視点で取組の実施を働きかけていただく、こうしたことも進めているところでございます。

 加えまして、平成三十年度の政府予算案でございますが、国、地方公共団体が連携をした再犯防止対策のあり方を調査するために、地域再犯防止推進モデル事業の実施に係る経費を計上しておりまして、地方公共団体による再犯防止に向けた取組をしっかりと支援をするとともに、モデル事業を通じて形成されました効果的な取組でありますとかその効果につきましても、その他の地方公共団体にも展開するということを目指しているところでございます。

 私も、地方自治体、首長様のところに訪問させていただきまして直接お願いをしているところでございますが、これからも推進元年という位置づけの中で、しっかりと、初期初動が大切である、こういう問題意識を持って取り組んでまいりたいというふうに思っております。

田中(和)委員 ただいま法務大臣からお話があったように、中央官庁、地方自治体等公的な機関で、やはり第三セクターも含めて雇用していただく、非常に私は民間の企業にお願いするときに説得力があるのではないかと思います。また、総理が提唱される再チャレンジの社会あるいは働き方の改革など、こういうものにつながることではないかとも思っておるわけであります。

 パネルをごらんいただきたいと思います。

 犯罪白書によると、全体の四二・一%を占める満期釈放者で、問題は、満期釈放者のうち四九・二%が五年以内に再入所、一方、仮釈放者は二八・九%と大きな差になっています。

 仮釈放者には保護観察がつきますけれども、満期釈放者は、刑務所を出た後、どこでどのように生活をしようと自由となり、再犯防止のフォローが全くできないのであります。満期で出所する人ほど、帰住先がなく安易にもとの反社会的な組織に戻るなど、再び罪を犯して刑務所に再入所するケースが極めて多い数字となっています。

 私は、受刑者は、満期釈放するのではなく、できるだけ仮釈放し、その後の生活をフォローできるように対策を講じることが非常に重要だと思っています。特に重要な保護観察所の職員の増員、対象者の多い都市部での保護司の増員を必ず実現しなければならないと考えています。大臣の見解を伺いたいと思っております。

 続いて、更生保護サポートセンターを全国の保護区全域に急いで設置すべきと思いますので、この点もお尋ねいたします。

 保護司の人員は昨今減少傾向で、平均年齢も一貫して上昇をしております。私は、昭和五十八年以来三十四年間、保護司を務めておりますけれども、昨今の保護司の業務も、自宅での対象者との面接で家族の理解が得られないとか、あるいは薬事犯の数がふえる、また障害を抱える方がいらっしゃる、対応が困難な対象者の増加が著しい昨今の状況がございます。守秘義務も厳しく、地元自治体の協力も得にくいところもはっきり言ってあります。活動に厳しさを、難しさを感じている保護司が増加しているということを、やはり私たちはもう一度よく考えなければいけないと思います。

 今回の法律で、再犯防止のリーダーを務める保護司の皆さんが活動しやすい環境を整えることは国と地方自治体の責務でありますし、その具体策として、保護司の活動拠点となる更生保護サポートセンターの整備が急務であります。

 全国の保護区八百八十六カ所のうち、平成二十年度からこのサポートセンターの設置がスタートしまして、平成二十九年度末までに五百一カ所が設置されました。全国八百八十六カ所のうち未設置は三百八十五カ所となっておりますが、今後、予算等どのようになっているのか伺いたいと思います。概算要求では全ての箇所に設置するということになっていたと思いますが、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

上川国務大臣 まず、御質問いただきました仮釈放の件でございますが、仮釈放につきましては、先ほどデータでお示しいただきましたとおり、大変、刑事政策上、重要な意義を持つものであるというふうに思っております。出所後でありますが、保護観察官や保護司が指導監督あるいは補導援護を行うということで、再犯を防止するとともに、実社会への適応を促して社会へのソフトランディングを図るという意味でも大変重要と考えております。

 仮釈放につきましては、法務省におきまして積極的に施策を進めておりまして、平成二十四年、五三・五%でありました仮釈放率でありますが、平成二十八年には五七・九%まで上昇をしているところでもございます。

 ただ、これを更に促進をするということでございますが、そのためには、行き場のない受刑者の帰住先の確保、そして出所後に指導を行う保護観察所の体制の一層の整備が必要であるということでございます。

 平成三十年度の予算、政府案でありますが、処遇困難な刑務所出所者等の帰住先確保を促進するための更生保護施設の人的体制強化等に必要な経費、あるいは保護観察所、保護観察官四十人の増員など、保護観察所におきましての処遇の充実強化を図るために必要な経費をそれぞれ計上したところでございます。

 長崎には南高愛隣会さんがございますし、農業の分野で、知的障害のある方たちや高齢者の方たちの受皿として大変大きな役割を果たしていらっしゃいます。今後も、こうした施設につきましてしっかりとスクラムを組んで展開できるように、効果的な実施に努めてまいりたいというふうに思っております。

 二点目の更生保護サポートセンターの件でございますが、まだ未設置である三百八十五の保護区のうち、今回の平成三十年度の予算政府案におきましては、新たに三百一カ所の保護区に設置するための経費が計上されたところでございます。

 引き続き、サポートセンター、全保護区に設置できるように、支援に努めてまいりたいと考えております。

田中(和)委員 厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 覚せい剤取締法違反による検挙者数が年間一万人を超える。覚醒剤事犯の出所後二年以内の再入率が二〇%、五年以内の刑務所への再入率は四九%になっております。平成二十八年の全薬物事犯検挙人員のうち、覚醒剤事犯の検挙人員の割合が最も多く、七六・六%を占めておりまして、次に大麻事犯、さらに、コカインやヘロイン等を含む麻薬、向精神薬事犯の検挙人員と続きます。

 薬物依存に関する治療を受ける保護観察対象者が少なく、受けた者はわずか四・四%で、九五・六%は治療を受けていない実態があります。薬物事犯者が薬物依存から回復するためには、本人の努力はもとよりでありますけれども、地域における長期かつ継続的な支援が不可欠となります。

 専門的な治療プログラムを行う医療機関等が少なくなっておりまして、実施機関が複数ある十七都道府県に対し、実施機関が一カ所のみが二十府県、実施機関が全くない県が十県、すなわち、担当医が一人もいない県が十県もあるということです。

 薬物依存症に対する治療、支援体制の強化が必要なことは言うまでもありません。対象者の住居は実施医療機関に通院できる場所でなくてはならないというようなルールもつくっていかないといけないし、また、費用の問題も、公費で面倒を見てあげないと、お金がないから、お金がなかったからお医者さんには行かなかった、このようなことを言われたときにどう対応するかということが明確でありません。

 こういうことも含めて、厚生労働大臣にぜひお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 薬物依存症の方が、今御指摘のように、それぞれのお住まいの地域において適切な治療や支援が行われるようにしていく、これは大変重要なことでございます。

 それを支援するという意味においても、今年度から、全都道府県、指定都市に対して薬物依存症の専門医療機関の選定を働きかけて、そうした整備を進めていこうと思っております。現時点では、年度内に十二の自治体で選定がされる見込みでありまして、それとは別に二十三の自治体で今選定作業が進んでいる、こういうふうに認識をしております。

 ただ、こうした専門医療機関の選定をしていくに当たっては、薬物依存症に特化した外来診療が行えるということ、また、薬物依存症に関する研修を修了した医師がおられる、こういうことが必要になってまいりますので、まずは、こうした専門的知識を持った人材の養成を進めることが大変肝要でございます。

 今、国立精神・神経医療研究センターなどで、依存症に関する専門的な研修も実施をしているところでございます。またさらに、今、全国の都道府県、指定都市が精神保健福祉センターを設置しておりまして、こうしたところにおいても薬物依存症に関する相談支援も行っております。

 厚生労働省として、こうした取組に対して技術的な、あるいは財政的な支援を行って、更に進んでいくように、今申し上げた専門医療機関の選定の拡大を始めとして、薬物依存症の方々が適切な医療や支援を受けられる機会が確保できるように、更に努力をしていきたいと思います。

 なお、御指摘の、薬物依存症の治療機会や継続医療を図るための医療費の公費負担等に対する支援ということでございます。

 私、そういった意味での治療機会をしっかりとつくっていく、継続治療を図っていく、これは大変大事な視点だというふうに考えるわけでありますけれども、他の疾病におけるそうしたものがどうなっているのか、あるいは、当然財源が必要になってまいります。そういったさまざまな課題について、これは少し慎重に検討させていただかなければならないのかなというふうには思っておりますが、そうした継続医療、あるいは治療機会がしっかり確保されていく、その重要性はしっかり認識をしていきたいと思います。

田中(和)委員 なかなか出所者にどこに住みなさいということを命ずるということが難しい状況にあることも明らかになっておりますし、また、全く県内に専門医がいない、一人もいない、この事態はやはり非常に深刻だと私は思っているんです。そして、今、医療費の公費負担の問題をお願いをしましたけれども、その前に、確かに専門医が少ないし、専門医を少し、何か、頑張ってみようとドクターの皆さんに思っていただけるようなやはり対応をしなければいけないと思います。

 いずれにしましても、ぜひ、厚労大臣、法務大臣と協力しながら、お力をお願いをしたいと思っておるところでございます。

 続いて、文科大臣にお伺いしたいと思います。

 率直に言って、日本の高校進学率は今九八・七%まで上がっておりますし、そのうち中退が、全日制は一%ですけれども、定時制は一一・一%、通信制は七%になっています。

 私は、全国の高等学校定時制通信制教育振興会の副会長で、神奈川県の会長を務めておりまして、こういう分野に実はかかわっている者の一人でございます。

 実は、刑務所の受刑者の学歴は、中学卒が三七%、高校中退が約二五%を占めておりまして、非常に、高等学校を出たかどうかというのが大変な格差になっておるわけです。この実態を私たちは目を背けてはならない、こう思っています。

 確かに高校は義務教育ではありませんが、でき得れば高校に上げて、そして、入学を許した高校には、申しわけございませんが、何があろうとも最後まで、卒業まで面倒を見ていただく、そして就職、進学をきちっとサポートする、このような流れがない限り、過去の犯罪歴とあわせて学歴を照合されると大変なハンディキャップになっていくわけでありまして、ここはどうしても再犯防止としてさわらざるを得ない分野となっておるわけです。

 文科大臣として、どのような対応をしていこうとしておられるのか、どういうふうに問題意識を持っておられるのか、要望も過去にさせていただきましたけれども、お願いをいたしたいと思います。

林国務大臣 退学を始めとする懲戒につきましては、各教育委員会、学校で適切な基準及び手続を定め、周知をした上で、校長が適切に判断するものでありまして、これは少年院等に入院した生徒についても同様であるというふうに考えております。

 文科省においては、これまでも、こうした透明性、公平性を確保しつつ、必要な配慮を行った上で適切に対応するように指導してきたところであります。

 一方、少年院に入院した生徒への教育上の支援については、先生が大変御尽力をいただきました、昨年十二月に策定された再犯の防止等の推進に関する法律に基づく再犯防止推進計画において、学校教育の中断の防止、それから学校等において再び学ぶための支援、こういうものが既に位置づけられておるところでございますので、今後、これを踏まえて、法務省と連携しながら、矯正施設等と学校との連携事例の周知等、取組の充実を図ってまいりたいと思っております。

田中(和)委員 時間の関係で、あと二つ申し上げて失礼をさせていただきたいと思っております。通告をたくさんしておりましたけれども、お許しをいただきたいと思っております。

 パネルをごらんいただきたいと思います。

 私は、測量設計議連の会長を務めております関係で、地籍調査の推進を図っております。

 地籍調査の数字は、見てのとおり、都市部は大変な事態になっております。我が県の相模原市などはまだ一%。東京二十三区も非常に低い数字になっておりますし、いずれにしても、岡山県の岡山市は別格なんですけれども、非常に高いレベルなんですけれども、他は大変な事態でございます。

 この地籍調査が終わらないと、どんなにデジタル化した社会をつくろうとしても、ベースがないわけですから、実は砂上の楼閣的な現象になっていくわけでございます。そして、私たちは今、官民境界確定を先行して、役所が管理している土地建物等を先行して確定をすることによってこの地籍調査は飛躍的に前進をすることが明らかになっているわけですから、とにかくやっていかなきゃいけない。

 しかし、今の制度は、地方自治体が、特に基礎自治体が四分の一、都道府県が四分の一、その上に国が五〇%の予算を乗せていますから、基礎自治体から手が挙がらない限りは、実は全く進まないんです。

 ですから、私は、官と民の境界確定は、とにかく、管理している中央官庁でも地方自治体でも、毎年年次計画をつくって直接にやっていくということが非常に重要でありますし、今、実は面積の整備を国土交通省は発表しておりますけれども、都市部は筆数が圧倒的に多いわけですから、地方自治体の固定資産税の番号を付しているデータを突合させて、筆数によって整備を進めていくということをやっていかなければ意味がないわけです。このことをぜひお願いしておきたいと思っております。

 また、私は、環境関係において、いろいろと議員立法もやらせていただきました。ぜひ国立公園について、日本は外国からお見えになるお客様をお迎えするために数々の政策をもって臨んでおりますけれども、実は議員立法で、その地域の自治体の自主性によって、お金を取って、そのお金を観光資源の、まさしく開発に使うことに、整備に使うことができるようになっておりますので、ぜひひとつその点につきましては、また国交省からもいろいろと地域の皆さんに促進をしていただくようにお願いしていただきたいと思います。

 時間を少しオーバーしたことをおわびを申し上げ、田中和徳の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河村委員長 この際、遠藤利明君から関連質疑の申出があります。岸田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。遠藤利明君。

遠藤(利)委員 自民党の遠藤利明です。

 きょうは、岸田委員、そして後藤委員、また今は田中委員からも質問がありましたので、重複をしないように、また、短い時間ですからコンパクトに質問をさせていただきたいと思います。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック。オリンピック大会までは九百三日、そしてパラリンピック大会までは九百三十五日。あっという間に千日を切り、日々、カウントダウンの日々を過ごしております。

 国民の皆さんの関心も大変高く、二十七年の調査でも、内閣府の調査では、東京オリンピックに関心がある、八九・一%。最近の新聞、テレビを見ますと、もっと国民の皆さんの関心が高いものと思っております。もちろん、中には反対の意見はありますから、丁寧にそうした皆さんの意見を聞きながら、しっかりと進めていかなきゃならないと思っております。

 また、企業にとりましても、二〇二〇年を一つのポイントとして、新しい技術の開発に取り組んでいる。そういう意味でも、この東京オリンピック・パラリンピック、大変大きな期待と、そして成果を得られるものと思っておりますし、何としても成功させなきゃならないと思っています。

 先日、平昌オリンピックに出場する日本選手団の結団式に参加をしてきました。主将を務めるスピードスケートの小平奈緒選手、日本じゅう、さらには世界へ勇気と感動を届け、未来への希望となれるよう、チーム一丸となり精進することを誓いますと決意表明する姿に、改めてスポーツの力の大きさと、そして日本の若者が世界に挑戦する夢と可能性を感じてまいりました。

 JOCの目標は、ソチ大会の八個のメダルを超えて、今回は複数の金メダルと九個以上のメダルの獲得ということであります。

 私はもっと期待しておりますが、総理、予告しておりませんが、率直に、どのようなメダルの期待をお持ちか、もしあればお話しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 諸般の事情が許せば、平昌オリンピックの開会式に出席をして選手を激励したいと考えておりますが、オリンピックにおける金メダルの数は、時の運等もございます。全ての選手が日ごろの練習の成果を十分に発揮され、悔いのないオリンピックとなることを期待しております。

遠藤(利)委員 まずは、この平昌オリンピックで日本選手団の活躍があって、そして、それがまた二〇二〇年の大会の大きな盛り上げにつながってくる、そう思っておりますし、選手団の皆さんも大変な努力のもとに出場されるわけですから、すばらしい成果を上げていただきたいと思っております。

 そして、今総理からも、許せばという話がありましたが、総理みずからも開会式に出席される意向だと聞いております。

 次の開催地の東京をアピールする絶好の機会でありますし、また、開会式は世界の指導者が集まる、まさに外交の場でもあります。とはいえ、国内には、オリンピックが政治利用されるのではないか、あるいは日韓合意が破棄されるのではないか、そういう疑念が、あるいは不安があることも事実であります。

 しかし、二〇一三年、IOC総会の場へ総理が直接乗り込んで、そして東京大会をかち取ったとき、国民の思いが一つになったな、そんな思いをいたしましたし、また、一昨年のリオデジャネイロの大会では、マリオの衣装をまとい、東京大会を世界にアピールされました。世界じゅうの人たちがどぎもを抜かれ、次は東京だと強烈に印象づけていただいたのも安倍総理であります。

 今回の平昌では、ぜひ出席のもとに、次期東京大会を積極的にアピールしていただきたい。そしてまた、平和の祭典であるオリンピックの趣旨を踏まえて、東アジアにおける平和と安定に向け、積極的な外交活動を展開していただきたい。同時に、日本選手の試合の観戦を通じて、選手への激励や応援もお願いしたいと思っております。

 総理のお考えをお示しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 オリンピックは平和とスポーツの祭典でありまして、次は二〇二〇年の東京オリンピックであります。今回の平昌オリンピックの成功に向けて協力をしていきたいと思います。

 あそこに集う各国首脳に東京大会を積極的にアピールし、二〇二〇年東京大会に向けた機運を盛り上げていきたいと思っています。

 また、平昌では、日本選手団を激励したいと思っておりますが、まさにここでしっかりと日本選手団が練習の成果を発揮することによることが、これがやはり一番大きなアピールではないのかな、こう思う次第でございます。

遠藤(利)委員 そして、東京オリンピック・パラリンピック大会ですが、私は、三年前に大臣に就任をさせていただきましたときに、成功の条件は三つあると申し上げました。一つは、安心、安全な運営、二つは、やはりメダルをとること、そして三つ目は、レガシーをしっかりつくること、こんな話をさせていただきました。

 今、国、東京都、JOC、あるいは関係自治体、そして民間企業の皆さん、組織委員会が中心となって、一体となって、この成功のためにいろいろな努力をされておられます。

 組織委員会では、都市鉱山によるメダルをつくろう、あるいはマスコット、これは全国の小学校の生徒さんに投票していただいて決めようと。今、たしか二万の小学校がありますが、一万六千近くの小学校の皆さんに投票していただいているとありますが、そうした子供たちが直接投票してマスコットをつくる。自分が参加したんだよ、そんなあかしになるのではないか、こんな事業。あるいは聖火リレーの検討。そしてまた、開会式、閉会式、オリパラ両方ありますが、これのプロデューサーといいますか、あるいは監督といいますか、こうしたことの選定。一つ一つ、決めなきゃならないことが数多くありますから、いろいろな課題、問題もありますが、しっかりと連携をしながら進めていかなきゃならないと思っております。

 しかし、こうしたときに、大変残念な事件がありました。

 スポーツ、あるいはオリンピック、パラリンピック、多くの皆さんに感動を与える、それは真剣な戦いがあるからであります。先日、カヌー競技で日本人選手による薬物混入事件が起きましたことは極めて残念に思いますし、このような事件の再発防止策を早急に図ることが、東京大会が世界で最高にクリーンな大会として称賛される、その意味で、世界最高水準のドーピング対策をとることが必要と思いますが、文部科学大臣から御所見を賜りたいと思います。

林国務大臣 今、遠藤先生からお話がありましたように、カヌー競技における禁止物質混入事案については大変遺憾でございまして、再発防止に向けて、まずはスポーツ庁において各競技団体の代表者にお集まりをいただきまして緊急会合を開催し、インテグリティーの確保を要請したところでございます。

 文科省では、これまでも、教育啓発活動、人材育成等、国内外のアンチドーピング活動に積極的に取り組んで、国際的にも高い評価を得てきたところでありまして、今後とも、我が国のスポーツ界全体でフェアプレー精神の教育やコンプライアンスの徹底を図ってまいりたいと思っております。

 また、東京大会がクリーンでフェアな大会として成功するように、来年度予算案においては、従来の活動に加えまして、世界最高水準の検査体制を構築するための専門人材の増員、資質向上、こういった取組を強化するべく、昨年度比一・五倍増となる約三億円を計上させていただいたところでございます。

 引き続き、日本アンチ・ドーピング機構を始めとした関係団体と連携いたしまして、アンチドーピング体制の強化に努めてまいります。

遠藤(利)委員 自民党の馳議員を中心にして、アンチドーピングの法律もしっかりつくろう、こんな動きがありますので、ぜひ連動してしっかりお願いをしたいと思っております。

 さて、順番がちょっと逆になりましたが、やはりメダルを欲しいということがありますが、東京大会における日本人選手の活躍に向けた強化の取組。

 実は、昨年、水泳や柔道や体操やレスリングやバドミントンあるいは卓球、多くの選手が世界で活躍をいたしました。やはり二〇一五年のスポーツ庁の設置が大きかったのかなという思いもあります。

 実は、このスポーツ庁の設置、もともとスポーツ基本法の中で議論をしたわけでありますが、なかなか省庁をふやすというのは難しいという中で、二〇一三年の九月七日、ブエノスアイレスでオリンピックが決定した日の夜、安倍総理に、これからのオリンピック、パラリンピック、そしてその後の日本のスポーツを考えたときに、今のスポーツ政策はばらばらの省庁で行われている、一体性がない、ぜひスポーツ庁を設置して、こうしたヘッドクオーターの組織をぜひつくっていただきたいというお願いをいたしました。

 そのときに、総理は、多分オリンピック、パラリンピックの成功の高揚感もあったと思いますが、ぜひつくろうと言っていただきました。それが実は二〇一五年の設置につながった。まさに総理の大英断によってこのスポーツ庁の設置が決定をされた。そういう意味でも、大変、総理の決断に改めて敬意を表したいと思っています。

 そうしたことを踏まえ、スポーツ庁も、今、鈴木大地長官のもとで強化策にしっかり取り組んでおりますが、この強化策について、林大臣の見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 日本代表選手の活躍は、自国開催となる東京大会では特に、国民に夢と希望を届けて、チャレンジをする勇気を社会全体にもたらすものだというふうに考えております。

 文科省としても、平成二十八年度に策定いたしました競技力強化のための今後の支援方針や第二期スポーツ基本計画を踏まえまして、東京大会に向けて、日本が得意とする競技の強化を一層図るとともに、メダルを獲得できる競技の増加に向けて、選手強化支援に取り組んでおります。

 具体的に少し申し上げますと、各競技団体の日常的、継続的な強化活動や、東京大会で活躍が期待される次世代アスリートの発掘、育成等への戦略的な支援、オリンピック競技、パラリンピック競技のさらなる共同利用を見据えたナショナルトレーニングセンターの拡充整備、また、トップアスリートのための強化、研究活動等の拠点であるハイパフォーマンスセンターの機能強化などにより、多面的に支援をしておるところでございます。

 引き続き、関係機関と一丸となって、二〇二〇年東京大会に向けた競技力の向上にしっかりと取り組んでまいります。

遠藤(利)委員 来年度予算案では九十六億円の強化費ということでありますが、なお一層充実を図っていただきたいと思っております。

 さて、先ほどレガシーと申し上げました。オリンピックは、そこで終わるわけではなくて、そこからどういう日本をつくっていくか、これが大きなテーマの一つであります。

 大会ビジョンの一つに多様性と調和という言葉がありますが、これからの日本を考えたときに、ユニバーサルデザインの社会をつくる、高齢者も、そして障害者も、また健常者も一緒になって協力して支え合う、こんな社会をつくる、これも大きなオリンピック、パラリンピックのレガシーの一つだと思っております。これは、実は、安倍総理が日ごろ唱えていらっしゃる一億総活躍の社会でもあると思っております。

 このユニバーサルデザインの社会づくり、新宿駅などに行きますと、六社十二線、どこに行ったかわからぬ、スロープもない、あるいは、案内板もない、車椅子も歩けない、こんな状況でありますが、こうしたバリアを取って、そして、みんなが一緒になって生活できる社会、あるいは安心して通行できる、そんな取組、こうした社会づくりが必要かと思いますが、過般、ユニバーサルデザインの閣僚協議会を開き、その中で、新しい法律あるいは新しい予算、こうしたことを検討されていると話を聞いておりますが、まちづくり、あるいは施設整備等で国土交通省としてどのように取り組んでいかれるのか、大臣にお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 高齢者、障害者を含む全ての人が住みよいまちづくりを進める観点から、バリアフリーを推進していくことは大変重要であります。障害のある選手や観客が集まる東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、更にバリアフリーの水準を高めていく好機と考えております。

 国土交通省といたしましては、昨年二月に関係閣僚会議で決定をされましたユニバーサルデザイン二〇二〇行動計画に基づきまして、東京大会の着実な成功のため、競技会場へのアクセス道路の段差解消、大会関連駅のホームドアの整備やエレベーターの増設など、東京大会に向けた重点的なバリアフリー化を推進しております。

 また、東京大会を契機といたしまして、全国各地におけます高い水準のバリアフリー化を推進するため、これまで予算、税制等のさまざまな支援を講じてまいりましたが、それに加えまして必要な制度面の見直しを進めてまいります。そのため、現在、今月上旬の国会提出を目指しまして、バリアフリー法改正案の準備を進めているところでございます。

 このほか、例えば、ホテルの客室数の基準の見直しについて、この夏をめどに取りまとめを行いますし、また、公共交通機関について、バリアフリー基準、ガイドラインの見直しを進めまして、今年度中にも改正することとしておりまして、更に一歩進んだバリアフリー社会の構築を目指してまいりたいと存じます。

遠藤(利)委員 私、大臣時代に、イギリスの当時のロンドン市長、ボリス・ジョンソンさん、今の外務大臣でありますが、来訪されました。

 そのときに、パラリンピックの成功がオリンピック、パラリンピック全体の成功につながるんです、ぜひパラリンピックに力を入れてくださいと。しかし、実は、ロンドンの成功は、決して施設としてのバリアフリーが日本より進んでいるというわけではありません、百数十年前のメトロ、これはとてもバリアフリーは簡単にできません、しかし、イギリスでは、子供のころから、お互いが助け合う、人を支え合う、こうした教育がしっかりなされている、その結果、成功したんです、そんな話でありました。

 そこで、文部科学大臣に再度お伺いいたしますが、施設等の整備も大事でありますが、そうした心のバリアフリー、人を支える、こうした教育が大事かと思います。たしか今年度、二十九年度から改めてこのバリアフリーの教育を始めたということを承っておりますが、今の取組、そして今後どういうふうに取組をされるのか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 学校教育を通じて、子供たちが心のバリアフリーについて学び、多様性を受け入れて、互いに協働する力を身につけるということは、極めて重要であると認識しております。

 このため、障害者への理解を深める教育については、児童生徒の発達の段階に応じて指導することにしておりまして、小学校で平成三十二年度、中学校で三十三年度から全面実施をされます次期学習指導要領においても、障害のある児童生徒との交流及び共同学習の機会を設けることを規定し、指導の充実を図ることとしております。

 また、平成三十年度、この四月からでございますが、始まります特別の教科、道徳においては、「相互理解、寛容」、それから「公正、公平、社会正義」、こういったものの内容の充実を図りまして、誰に対しても差別することや偏見を持つことなく、公平公正な態度で接することなどについて、指導の充実を図ってまいりたいと思っております。

 また、学校における交流及び共同学習がより活性化されますように、今お話ししていただきましたけれども、平成二十九年七月に心のバリアフリー学習推進会議を設置いたしまして検討を行ってきたところでございまして、まさにきょう、その推進方策についての提言を取りまとめていただく予定になっておるところでございます。

 今後、取りまとめていただいた提言を踏まえまして、交流及び共同学習を通じた障害者理解を推進するモデル事業の成果を全国に普及するなど、さらなる施策の充実を図るとともに、教育委員会や学校等に対して積極的な取組を促してまいりたいと思っております。

 引き続き、これらの取組を通じまして、学校教育における障害者理解、心のバリアフリーのより一層の推進に努めてまいりたいと思います。

遠藤(利)委員 先ほど、一月二十三日にユニバーサルデザインの関係閣僚会議を開かれたと申し上げました。今、国土交通大臣あるいは文部科学大臣からお話しいただきましたが、関係省庁、いろんな分野で関連があると思います。その取りまとめ役は鈴木オリンピック・パラリンピック大臣でありますので、今回も補正予算で三百億円のパラ関係の予算も出していただきました、大臣としての決意をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 まず、遠藤大臣には、専任の東京オリンピック・パラリンピック初代の大臣として、そして今は大会組織委員会の会長代行として東京大会成功に向けて大変御努力いただいておりますことに感謝を申し上げたいと思います。

 共生社会実現に向けての決意ということでございますが、東京オリンピック・パラリンピックの開催、これは、障害の有無にかかわらず、誰もが生き生きとした人生を享受することができる共生社会の実現のための絶好の機会であるとともに、東京大会のレガシーとして共生社会を定着させなければならない、そのように考えております。

 共生社会実現のため、障害者団体等の参画を得まして、昨年二月に関係閣僚会議においてユニバーサルデザイン二〇二〇行動計画を決定いたしました。

 さらに、計画策定から約一年が経過いたしました先月の二十三日、関係府省庁が実施してきた積極的な取組を共有するため、第二回関係閣僚会議を開催し、私から関係閣僚に対して、新学習指導要領に基づく心のバリアフリー教育の確実な実施、バリアフリー法や関連基準の見直し等、心とまちづくりのあらゆる分野においてバリアフリーを加速するようお願いをしたところでございます。

 今後とも、大切なことは、障害のある方の視点を施策に反映をさせるということ、そして、ただいま国交省そして文科省からも御答弁があったように、心のバリアフリーとユニバーサルデザインのまちづくり、これにかかわる省庁はまだほかにもたくさんあるわけでございますので、関係省庁の実施する施策に横串を刺しまして政府横断的に推進をして、政府一丸となって東京大会の最大のレガシーの一つとなる共生社会の実現を図ってまいりたいと思っております。

遠藤(利)委員 三年前の大臣就任時に、安倍総理大臣から、パラリンピックをぜひ成功させてくれ、そして同時に、新国立競技場の建設には、世界最高水準のパラ対応の施設にしてくれ、そんな指示をいただきました。

 このパラリンピックの成功は、オリンピック、パラリンピック通じての最大の課題だと思っておりますので、ぜひ、協力の上、お力添えいただきたいと思っております。

 最後に、ユニバーサルデザインによるアクセシビリティーの改善、あるいは要人に対する警護、そしてまた大会期間中の交通渋滞の緩和、特に、七月二十三日の大会前日、七月二十四日の大会開会式当日あるいは八月十日閉会式翌日、大変な交通渋滞、そしてまた世界百数十カ国の超VIPが来られる中でのセキュリティー、多くの課題があります。

 そうした課題を、安心、安全の大会に向けて、成功に向けて取り組まなければならない、そんな意味で、最後に、この問題について安倍総理大臣から決意をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 二〇二〇年の東京大会を誘致する際に、我々、一緒にIOCの総会、ブエノスアイレスに参りまして、さまざまなアピールを行いました。

 私もスピーチをしたんですが、私たちのアピールの一つのポイントは、いわば東京大会は間違いなく安全、安心な大会になるということであります。そして、日本での大会は、きっちりと、時間どおりに、そして言ったことは確実にデリバーしますよということをお約束をしたわけでありますが、その約束をしっかりと果たしていきたい、こう考えています。

 東京大会については、世界じゅうの多くの人々が夢と希望を分かち合う、歴史に残る大会にすること、東日本大震災から復興をなし遂げた日本の姿を世界に向けて発信する大会にしていくということ、そして、パラリンピックの開催を通じ、我が国が障害者の方々にとって、バリアのない、世界で最も生き生きと生活できる国であることを示す大会としていきたいと思っております。

 その意味におきましても、パラリンピックを成功させることは、日本はどういう国なんだということを示す大きな機会になるだろう、こう思っています。

 このため、政府としては、基本方針を閣議決定し、さまざまな準備を進めております。

 具体的には、サイバーセキュリティー対策やテロなど組織犯罪への対策の強化、そして、円滑な運送のための対策を講じています。また、受動喫煙対策の徹底、ユニバーサルデザインの推進、多様な食文化への対応などに取り組んでいるところであり、この機を生かして、誰もが共生できるまちづくりを進めていく考えであります。

 アスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、そして、全世界に向けて夢と感動を与えるとともに、障害のある人や高齢者も含めて誰もが安全、安心に楽しめる、そんな世界一の大会の実現に向けて、引き続き、政府一丸となって取り組んでいく考えであります。

遠藤(利)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 さて、もう時間もありませんので少しはしょって御質問いたしますが、スポーツ振興で大きなインパクトがあったのは、一つは、二〇〇八年、麻生副総理等が大変尽力されましたナショナルトレーニングセンターの建設、そして二〇一一年、これは議員立法でありますが、スポーツ振興法、そして先ほどの二〇一五年のスポーツ庁の設置、こうした多くの皆さんの取組によって、スポーツに対する関心、またスポーツの力を評価する、そうした声も大変強くなってまいりました。

 しかし、いろいろやるにしても、やはり財源が必要なんです。

 これも実は、麻生副総理また森元総理等々が大変御尽力をされて、サッカーくじ、ちょっと平成になりますが、平成十年に成立して、平成十三年からスタートしました。このサッカーくじ、一時大変苦労したと言われましたが、去年は一千百八十億円、これによって、地方のスポーツの振興や、あるいは学校の芝生化や、そしてスポーツ団体への支援や、あるいは選手強化、こうしたことにおよそ昨年度で二百億円使用できている。大変大きな効果があります、このサッカーくじ。

 しかし、これから二〇二〇年以降のスポーツを考えるときに、なお一層の取組が必要だ。そんなことで、例えば、バスケット、Bリーグの皆さん方からは、ぜひバスケットも入れてくれ、Bリーグを入れてくれ、こんな要望もありますし、場合によっては、野球くじ、あるいはバレー、そしてラグビー等々のプロの団体スポーツ、こんなことも考えられるということかと思いますが、ぜひこの問題についてお伺いしたい。

 同時に、もう一つ、スポーツビジネスあるいは寄附の仕組みをつくって、やはり安定した財源をつくっていく、これがこれからのスポーツ振興にとって最大の課題かと思います。

 時間がありませんので、簡単に文部科学大臣にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 今、遠藤委員からスポーツくじのスタートについては御言及いただいたところでございますが、平成十三年から発売を開始して、売上げが低迷した時期もございましたが、非予想系くじ、いわゆるBIGの発売などにより、近年では年間千百億円程度の売上げで安定しておりますし、また、現在まで、この実施において、八百長などの不正行為等も報告をされておらないわけでございます。

 今お触れいただいた地域のスポーツ施設の整備、グラウンドの芝生化、統合型地域スポーツクラブの育成等々、振興に欠かせない財源になっております。

 昨年八月に、先生も役員をされておられますスポーツ議員連盟総会において、スポーツ振興くじの対象競技をサッカー以外にも広げる議論が再開されるということが決定されておりますので、今後もこの議論をしっかりと注視をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

 さらに、多様な財源を確保していくということに関して申し上げますと、平成二十九年の三月に策定された第二期スポーツ基本計画においても、スポーツに対する寄附や投資を一層活性化させるということが必要とされておるところでございまして、いろいろなことをやっていく上で、各競技団体、企業、地方自治体などが連携した取組というものが広がりつつあるわけでございます。

 また、財源確保が難しい障害者スポーツ団体について、文部科学省政務三役やスポーツ庁幹部が民間企業を個別に訪問するなど、協力、支援を呼びかけておるところでございます。

 引き続き、多様な資金による持続可能なスポーツ環境の実現に向けて、寄附文化の醸成を始めとしたスポーツに対する民間資金の導入を促進してまいりたいと思っております。

遠藤(利)委員 時間が来ましたので、最後に要望だけさせていただきたいと思います。

 一つは、整備新幹線の計画路線の昇格。

 北陸、北海道、そして長崎新幹線は、建設のめどが立ってきましたし、全国多くの地域から、計画路線をぜひ昇格させてくれと。これは、一昨年、自民党の総務会での附帯事項の中にも、計画路線も含めて整備新幹線を、また、これに基づいて我が党の二階議員が本会議で石井大臣に、ぜひそのことについて検討してくれ、それを受けてまた石井大臣は、調査をしたいと。今年度、二十九年度に調査費をつけ、また、三十年度も調査費をつけているという話がございます。

 やはり、高速交通網のネットワーク、速いところと遅いところ、経済的に、あるいは観光や企業誘致、大きな差が出てまいります。ぜひ、そうしたことをこの調査の中でしっかり検討いただいて、この計画路線の昇格について検討をいただきたいと思っております。

 そして、がん対策。

 粒子線の治療の効果は大変ありますが、今のままですと、保険適用がなくてなかなか大変だというふうなこともあります。効果もありますし、今回も中央医療審議会で一部導入をするということでありますが、ぜひ保険適用についてもお考えをいただきたいと加藤大臣にお願いして、時間が来ましたので私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河村委員長 この際、松本洋平君から関連質疑の申出があります。岸田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松本洋平君。

松本(洋)委員 自由民主党の松本洋平でございます。

 きょうはどうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 平成三十年度予算の審議が始まりまして、きょうがその初日であります。そして、きょうはこの予算委員会にテレビ中継も入りまして、多くの国民の皆さんが注視をされる中行われているこの予算委員会であります。

 私自身、この場に立つことを大変光栄に思ってはおりますけれども、一方で、実は、残念な思いもしながら、きょうこの場に立たさせていただいております。

 なぜならば、きょう私が質問をしようとしている中身でありますけれども、ペジーコンピューティング社の斉藤社長が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、いわゆるNEDOでありますけれども、こちらの補助金の不正受給の件で起訴されたということがございました。大変遺憾なことでありまして、こうしたことが二度とあってはならない、そうした思いを持っているところであります。

 言うまでもなく、現在、平成三十年度予算審議が始まりました。また、この通常国会におきましては、現在、内閣から、六十四本の法律案、そして十本の条約、こうしたものが提出をされる予定というふうに承知をしているところではありますけれども、こうしたさまざまな法案や、そして予算に含まれている、そしてその意図する最大の目的というのは、やはり、今我が国が内政において最も直面をしている最大の課題である人口減少や少子高齢化、こうした社会の変化というものに、我が国がどのようにそれに挑戦をし、そしてそれを乗り越えていくのか、こうした観点が最大の目的となって予算編成がなされ、そして、さまざまな法案というものがこれから提出をされようとしているということだと私自身は認識をしているところであります。

 私自身は、地元において、こうした人口減少そして少子高齢化という大きな社会の変化に対応をするためには、日本経済や日本の社会のモデルチェンジというものを今何としてでも実現をしていかなければいけないということをお訴えをさせていただいて、昨年の衆議院選挙も戦わせていただいたところであります。

 その日本経済のモデルチェンジを図るに当たって、大きな柱の一つは、やはり私は科学技術だと思っております。そして、この科学技術の振興というものを私たちはしっかりと進めていく。そして、これを進めることによって、日本が世界の中で競争力を維持し、そして国民の生産性を上げ、そして我が国の経済を維持発展させていく。そして、そこで得られた好循環というものを社会保障へと還元をしていくことによって、少子高齢化社会の中でも国民の皆さん一人一人の安全、安心を守っていく、こうしたことを安倍総理は行おうとされているわけでありますけれども、残念ながら、その科学技術の柱でもありますスーパーコンピューターの問題に関しまして、昨年報道がなされたとおり、ペジーコンピューティング社の斉藤社長が起訴をされるというような、そうした事件というものが発生をしたところであります。

 先ほど、私は、この場に立つのが光栄であると同時に大変残念な思いをしているというお話をさせていただきましたけれども、その思いは、安倍総理を始め皆様方も共通の思いを持っていらっしゃることと思います。

 ぜひとも、きょうの質問を通じまして事実を確認してまいりたいと思います。そして、再発防止を図ることによって、こうしたことが二度と起こらないようにしていただきたいと思います。そして、これからの人口減少そして少子高齢化というこの大きな社会の変化というものをしっかりと乗り越えていくためにも、しっかりとこれらを進めていく、そうした取組をお願いを申し上げたいと思っております。

 そこで、まず最初に質問でありますけれども、我が国の科学技術政策におけるスーパーコンピューターの位置づけ、占める役割というものがどういうものなのか、お伺いをしたいと思います。

世耕国務大臣 今世界じゅうが、やはり、このスーパーコンピューターの処理速度の競争、そして省エネレベルの競争を進めているわけであります。やはりこのスーパーコンピューターの技術を、世界トップクラスの技術をしっかり国内に持っているということ。

 二位じゃだめなんですかという話も一時期あったわけですけれども、これはやはり、ビッグデータを処理することによって、医療技術を進歩させていくとか、あるいはいろいろなシミュレーションができます。まさに天候のシミュレーションというのもあれば、例えば風の流れをシミュレーションすることによって物づくりに反映をしていくとか、そういったこともあるわけでありまして、やはり高いスーパーコンピューターの技術を持っているということは、国民生活やあるいは産業競争力強化に還元されることになるわけであります。

 また、スパコンの技術を高めていくためには、当然その中の半導体、プロセッサーの技術を高めていくということになるわけであります。今回のペジー社も、例えば、大変な微細加工の技術なんかを持っておりました。あるいは、半導体のウエハーを薄くスライスする技術、これはまさにサランラップの半分ぐらいの薄さのウエハーをつくる技術もあったわけであります。

 こういった微細加工の技術ですとか、あるいは、これもペジーの技術なんですが、メモリーを縦に積み上げていく積層の技術、こういった技術が、例えばデジカメですとか、あるいは自動運転で用いられるような画像センサー、あるいは東芝が経営危機になったときに話題になりましたフラッシュメモリー、こういったところに活用をされていくことによって、非常に今苦境にある日本の電子産業が再び飛躍をするための重要な要素技術になり得る、このような位置づけで我々はスパコンを考えております。

松本(洋)委員 ただいま御答弁をいただきましたように、このスーパーコンピューターの存在というのは、例えば医療であったり、また、最先端の技術を通じて社会に変革をもたらし、そして産業振興にもつながっていく、その基本的な技術というようなお話でありました。

 これまで野党の皆さんのお話も私もお伺いをさせていただいておりますけれども、恐らく、今回の問題を大きく大別をいたしますと三つになるのではないかと思います。

 一つは、NEDOのペジーコンピューティング社に対する補助金交付の件。二つ目は、斉藤氏が会長を務めるエクサスケーラー社が、国立研究開発法人科学技術振興機構、いわゆるJSTでありますけれども、この制度を使用した融資の件。三つ目は、斉藤氏が経済財政諮問会議の二〇三〇年展望と改革タスクフォースのメンバーとなっているという、この三点だと思っておりまして、それらにつきまして事実確認をまずはさせていただきたいと思います。

 まずは、基本的なスタンスをちょっとお伺いをいたしたいと思います。

 今回の起訴されたことがそのとおりであれば、当然NEDOはだまされたというようなことになるわけであります。であるのであれば、当然、法的な措置というものを講じるべきだと思いますし、また、それを講じているのであれば、その理由というものがあろうかと思います。それを御説明ください。

世耕国務大臣 御指摘のように、今回、NEDOはだまされた立場にあるわけです。しかし、一方で、国民の皆さんからお預かりした税金をもとにする補助金がだまし取られる結果になったということは、大変遺憾であり、国民の皆さんに申しわけないというふうに思っています。

 NEDOは、検察の捜査への協力の過程で、いろいろ判明してきた情報をもとに、ペジー社、ペジー社が更にかなりの部分を外注に出しているんですね、その外注先に確認をしたところ、外注に関しての不正があったということを把握したわけであります。

 これを踏まえまして、まず、平成二十四年度イノベーション実用化ベンチャー支援事業については昨年十二月二十二日に、そして、二番目に立件をされました平成二十四年度戦略的省エネルギー技術革新プログラム事業についてはことしの一月二十三日に、それぞれ告訴状を東京地検に提出をいたしました。

 また、昨年十二月二十五日に斉藤社長が詐欺の容疑で起訴されたことを受けまして、同日付で、NEDOにおいては、ペジー社が実施中の、まだ続いていた二つの研究開発事業について、事業を停止するとともに、ペジー社に対する新たな補助金交付を停止する措置を講じているところでございます。

松本(洋)委員 ぜひ、政府におきましては、しっかりと対応していただきたいと思いますし、何よりも国民の皆様方からお預かりしている税金でありますから、しっかりとこれらを万全なものにしていただくようにお願いを申し上げたいと思います。

 また、これまでの質疑、またさまざまなマスコミ報道の中に、審査や選定作業に当たって、本来の作業過程ではなくて、外部から圧力があったんじゃないか、そんなことも聞こえてきているところでもあります。

 今回、先ほどお話を申し上げましたように、大別しますと三つの問題に大きく分かれると思っておりますけれども、NEDOからの交付、JSTからの融資、そしてタスクフォースのメンバーへの選定、これらに当たりまして特定の政治家から働きかけがあったのか、また、あった、なかったをどのように確認したのか、それぞれ、経産大臣、文科大臣、内閣府特命担当大臣からお答えをいただきたいと思います。

世耕国務大臣 事業を採択するときには、採択審査委員会の委員の先生方、これはかなり専門の方ですけれども、こういう方々に、事前書面審査ですとか、あるいは、最後、会議をやって決めていただくという手順を踏んでおります。

 これらの委員の先生方は事前には公表しません。特に事業者には教えないわけでありますので、そこに政治家からの働きかけがあるというのはなかなか想定をされにくい。

 でも、政治家から委託を受けた経産省の職員がもしかしたら働きかけているかもしれない、そういった可能性は否定できないということで、私の指示で、ペジー社の採択審査やあるいは事後評価にかかわった五つの事業全ての外部有識者、合計五十六名いらっしゃいますが、その人たちに一人一人確認を実施いたしました。

 具体的には、NEDOの職員が外部の有識者に対して直接電話で連絡をとって、特定の議員や経産省職員からの働きかけがあったかどうかを確認いたしました。

 その結果、五十二名と連絡がついて、それぞれ、そうした働きかけはなかったという回答をいただいております。四名連絡がついていないわけですが、うち二名はお亡くなりになっております。また、一名は海外に異動されていて、今、これもコンタクトをとるべく努力をしております。残りの一名は、大学を退官されて連絡がつかないという状況になっております。

 以上です。

林国務大臣 平成二十八年度補正予算によりまして、科学技術振興機構が実施する産学共同実用化開発事業につきまして、エクサスケーラー社の申請課題の審査にかかわった十六名の外部評価委員、専門委員に対して、政治家から働きかけがあったのかということを確認いたしましたところ、現在までに十四名に連絡がとれまして、そのような事実はないということでございました。

 残りの委員の方についても、出張中等のために連絡がとれていない状況でございますので、至急確認をしたいということでございます。

茂木国務大臣 御指摘の二〇三〇年展望と改革のタスクフォースは、一昨年、二〇一六年の九月に設置をされまして、昨年一月に報告書を取りまとめて終了した内閣府政策統括官の研究会でありました。若干これは、補助金を出すとか委託をするということじゃなくて、まさに研究会でありますが、改めて事務方に確認をしましたところ、そうしたメンバーの選定に当たりまして外部からの働きかけはなかったとの報告を受けております。

松本(洋)委員 それでは、少し個別具体的なところから入っていきたいと思います。

 ちょっと質疑の順番を変えさせていただきまして、まず最初に、タスクフォース委員の選任につきまして伺いたいと思います。

 まず最初に、斉藤氏が選定された理由を教えていただきたいと思います。

田和政府参考人 お答えいたします。

 二〇三〇年展望と改革タスクフォースは、七名の有識者によって二〇三〇年に向けた経済社会の展望を検討する研究会でございまして、その有識者の一人として、AIやIoTといった最新のIT技術に知見のある斉藤氏が参加をいたしました。

 なお、AIやIoT分野につきましては、斉藤氏だけではなく、人工知能の専門家にも参加いただきました。

 また、AIやIoTのほか、社会保障、働き方、地域経済や資源エネルギーといった幅広い分野の専門家に参加をいただいておりまして、学者の方だけではなく、長く民間の商社で食料問題、エネルギー問題に取り組まれた専門家も参加をしております。

 このように、委員の選定に当たっては、幅広い分野からリストアップした候補者の中から七名の有識者を選定いたしまして、私、内閣府政策統括官が決定をいたしました。

 斉藤氏の委員就任が既定路線だったということはございません。

松本(洋)委員 時間が参りましたので、午前の質疑はこれで終わらせていただいて、午後に引き続き行わせていただきます。

河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松本洋平君。

松本(洋)委員 午前中に引き続きまして、質問を継続させていただきます。

 ペジーコンピューティング社の斉藤社長が起訴されたという件につきまして続行させていただきたいと思います。

 午前中の最後は、タスクフォースの委員の選任というところまでお話をさせていただいたところであります。

 このタスクフォースの委員の選任でありますけれども、改めて、念のため確認をしたいと思います。

 このタスクフォースの委員になるということ、これは、当然、そのタスクフォースの会議の中でさまざまな発言をされるわけでありますけれども、ここに選ばれたからといって、他の制度、具体的には今回NEDOやJSTということが問題になっているわけでありますけれども、こちらの方に、何らかの採択に影響を及ぼすということはないということを確認したいと思います。

世耕国務大臣 この内閣府の方のタスクフォースの委員が公表されましたのは、平成二十八年九月三十日であります。一方で、NEDOがこのペジー社に対して助成した五つの事業の一番最後のやつが、交付された事業の採択委員会が開かれたのは平成二十八年五月二十五日でありまして、これは順番からいっても両者には何ら関係はなくて、委員の御指摘のような懸念はないのではないかと思っています。

林国務大臣 JSTの産学共同実用化開発事業における申請課題の審査は外部専門家による評価委員会によって厳正に行われておりまして、御指摘のタスクフォースの委員に斉藤氏が選定されたことがNexTEP事業の審査に影響を与えることはございません。

松本(洋)委員 野党の皆さんからもさまざまな御質問をいただいているところであります。私もお聞きをしておりましたけれども、その中で、予算委員会での議論におきまして、タスクフォースに利害関係者を入れたのは問題と言われております。

 そして、斉藤氏はタスクフォースにおいてどんな主張をしていたのかを教えていただきたいと思います。特に、予算委員会の議論の中で、斉藤氏がこのタスクフォースの中で、スパコンは大事だからどんどん投資をしろというようなことを言っているというようなことが野党の質問の中にあったわけでありますけれども、これの事実確認をさせていただきたいと思います。

田和政府参考人 お答えいたします。

 斉藤氏は、このタスクフォース、計六回の会合のうち五回に出席いたしております。議事要旨によりますと、いずれも、二〇三〇年までの大きな展望と、それに基づく課題や対応の方向性に関する発言をいたしてございます。

 例えば、二〇三〇年には、一台のコンピューターの知能が地球上の全人類の知能の総和を超過する時代になり、エネルギー、食料等の問題を解決する可能性がある、また、大企業は複業を許可し、促進することでベンチャーが育つ、さらに、実年齢ではなく、肉体年齢、生体年齢に合わせた医療制度とすべき、こういった発言をしてございます。

 また、スパコンに投資すべきといった議論ではなく、保有するスパコンの能力イコール国力という時代が近づいている、人工知能エンジンから新産業革命を起こせば経済成長に相当寄与できるといった発言をしてございます。

松本(洋)委員 このタスクフォースの委員に斉藤氏が選ばれたことによって、文科省、経産省、それぞれの制度に対しての影響というものは何もなかったということが大臣の御答弁でありましたし、また、実際にこのタスクフォースの議論の中で、斉藤氏から、スーパーコンピューターに対してより予算を投入すべきということは議論としてなかったということが確認をされたところであります。実際に、二〇一七骨太方針の中にもこのスパコンに関しての記述はなかったというようなことを承知しているところであります。

 続いて、NEDOの件に関しまして質問を移らせていただきたいと思います。

 最初に申し上げましたとおり、ペジーコンピューティング社の斉藤社長がNEDOの補助金の不正受給で起訴されたということは大変遺憾なことでありますし、残念なことであります。こうしたことは決してあってはならない、そのように思っております。

 そもそも、NEDOはこれまで五つの事業に交付実績というものがございます。最初の交付決定は、平成二十二年七月三十日の平成二十二年度イノベーション実用化助成事業、これは菅政権のときであります。そして、現政権下の平成二十八年度IoT技術開発加速のためのオープンイノベーション推進事業までの五つの事業で交付がされているということであります。

 この五つの事業のうち、現在において実際に起訴されているのは二つの事業であります。一つは、平成二十四年八月一日に交付決定をしております平成二十四年度戦略的省エネルギー技術革新プログラム、これは野田政権時であります。もう一つが、平成二十五年四月三十日、現政権下におきまして交付決定をいたしました平成二十四年度イノベーション実用化ベンチャー支援事業ということになっております。

 このように、政権をまたいで国が補助金を交付していたのがこのNEDOの事業であり、そして、ペジー社に対する交付の実績であります。

 こうして長期にわたって補助金が交付されてきたわけでありますが、今回、このような形で起訴されておりまして、同社の採択、またそのプロセスや補助金額の決定について、本当に正しかったのか、経済産業大臣からしっかりと説明をしていただきたいと思っております。

 まずは、NEDOの補助金がペジー社によって詐取された疑いがあるということであります。NEDOの審査プロセスに瑕疵はなかったのか、またペジー社だけが特別扱いされるというようなことはなかったのか、お答えください。

世耕国務大臣 実際我々は詐欺に遭っているわけでありますので、ちょっと胸を張って言える話ではありませんけれども、NEDOは、多数の研究助成をいろんなところに出しておりまして、それぞれ、その採択の過程において、外部有識者による採択審査委員会の客観的な審査を経ております。審査委員については、これも、何か固定の人にやってもらうのではなくて、それぞれの事業の案件の特性とか目的に応じて、その分野に知見を有する、特に学者の先生を中心に審査委員を決めさせていただいているわけであります。

 今御指摘の、平成二十四年度イノベーション実用化ベンチャー支援事業、五つの事業のうちの三つ目、これが一番最初に立件された案件でありますが、これは、まず、半導体の専門家も含めた電子電気工学の専門家を中心とする六名の有識者で、まず、事前の書面審査というのを行いました。これは応募件数が五百九十一件と非常に多かったものですから、書面審査をやってある程度足切りをして、そしてその後、今度はまた別の六名の先生によって採択審査を行うという二段階の審査を行いました。

 審査に当たっては、まず、技術が新規性がある技術なのかどうかということ、そして、NEDOは常に実用化を目指していますので、ちゃんとマーケットを創出するような面があるかどうかという点のチェックが行われました。

 このとき、この三つ目の事業でペジー社が申請したのは三次元積層メモリーの開発という事業でありますが、これについては、審査員の先生方から、いまだに実現していない技術開発であって、このペジー社の開発によって、日本発のメモリー市場創出につながる可能性があるという評価をいただきました。これは点数もちゃんとつけております。五百九十一件あった応募のうち最終的に百四十三件が採択されましたが、ペジー社の採択順位は六十八位であったという報告を受けています。

 ほかの四つの事業においても、それぞれ事前書面審査があったりなかったりとか、いろいろあるんですけれども、基本的には、外部有識者による採択審査委員会の客観的な審査を経た上で採択を行っているということでありまして、何かペジー社が特段の特別扱いを受けたということはないということでございます。

松本(洋)委員 今、世耕大臣から御答弁を頂戴したところであります。

 確かに、本当にだまされたということでありますから、しっかりと対応していただかなければいけないわけでありますけれども、実は、NEDOからの交付をめぐりまして、過去にも不正の事案というものは実際に発生をしております。

 例えば、平成二十六年三月でありますけれども、平成二十四年度補正、イノベーション実用化ベンチャー支援事業というものがありましたけれども、これでは、神奈川県の事業者が不正を働いて、NEDOが交付決定の取消し、補助金交付等停止措置を講じるなど、過去にも不正受給や流用などがあったというふうに承知をしているところであります。

 今回の事案に対してもそうでありますけれども、結局、問題が発生をしたときに、対症療法的にそれに対して対応策を考えるというのではなくて、こうした問題が発生をしたその根本原因というものが一体どこにあるのか、そうしたことをしっかりと掘り下げた上で再発防止策というものを講じていく必要があるのだろうと思っております。

 そうした観点からも、改めて、何でこういう不正受給があったと思われるのか、そしてどのような不正防止策をとってきたのか、それでもなお今回防げなかったということも含めまして、再発防止策をお伺いしたいと思います。

世耕国務大臣 NEDOが独法になってから、不正事案として処分したものは三十五件、過去にあります。これをただそれで済ませていたわけではなくて、いろいろ改善も取り組んでまいりました。

 平成十八年には、ホームページ上に通報窓口を設置いたしました。この通報窓口を開設してから、処分事案の約三分の一がこの通報窓口への情報提供によるものであります。

 また、今御指摘の、平成二十六年三月には委員御指摘の不正事案が判明しましたけれども、これも通報窓口への通報が端緒でありました。この通報を受けて、NEDOは、二十五人体制で複数の研究場所、外注先に対して一斉検査を実施して、そしてその検査の結果、機械装置などの納品事実について購入先と共謀して巧妙に偽装するなど、極めて悪質な不正事案であることが判明をしました。NEDOは、直ちに交付決定の全部取消しを行ったわけであります。

 この事件を受けて、NEDOでは、助成先とか委託先だけではなくて、そこが更に下請に出している外注先にも帳簿類の提出など、必要な協力を求めることをルール化いたしました。また、通常の検査に加えて、抜き打ち検査を実施するなどの対策も講じてまいりました。

 残念ながら、今回事件になっている二番目と三番目の研究助成は、実はこの対策の強化前であったわけであります。ただ、その手口は、外注先と結託して帳票類を偽って、検査の目をくぐり抜けたのではないかというふうに思っています。

 これは、確定検査、民間でいうと精算ということになるんですが、必ず検査員二名で行って帳簿のチェックなどをきちっとやるようにしています。経費のチェックなどもやるようにしています。また、でき上がった製品を見る、成果物も見るということもやっているんですが、今回だまされてしまったというわけであります。

 これは捜査の全容が明らかにならないとわからないわけでありますが、例えば、外注先と結託して必要な書類を周到に用意して、全く別の半導体ウエハーを示して、これができたんですと見せたとか、あるいは、ソフトウエアのライセンスを購入して一旦お金を振り込んだ、振り込んだ記録を通帳に残しておいて、後になってすぐそのソフトウエアを解約して、払戻しを受けてそのお金を取ったとか、あるいは、当然、業務日誌とかを我々は点検、検査員はやるんですけれども、この業務日誌を偽造したとか、こういうことが行われたのではないかというふうに思っております。

 今後の対策ですけれども、まず一つは、外注費が一定割合、一定金額以上の事業については、そしてまた特に外注先とその研究助成先の関係が深いと考えられるものについては、外注先まで徹底的にNEDOがやはり検査をしなければいけないということだと思います。

 そしてまた、必要に応じて、今も検査員は二名行っています、NEDOですから技術系の人間ですけれども、必ずしも半導体の専門家というわけではなかったので、例えばその分野の専門家に臨時に入っていただいて、そういう人たちと一緒にチェックをするというようなこと、あるいは、もっと抜き打ち検査を頻度を高めて行うなどの改善をやっていかなければいけない。

 ただ、いずれにしても、初公判になって、事件の全容がわかっていろいろなことがわかってくると思いますから、それに応じて徹底的な対策を行ってまいりたいというふうに思っています。

松本(洋)委員 ぜひ根本的な対策をお願いしたいと思います。

 ちょっと、時間が大分なくなってまいりましたので、簡潔に質問をさせていただきたいと思います。

 JSTの関係に関しましても質問をさせていただきたいと思います。

 JSTの事業でありますけれども、これは融資という形になっているわけであります。融資ということは、当然、これの回収が必要となったときにはそれを回収するということになるわけでありますけれども、もしそれが必要になった場合の見通しというものをぜひとも教えていただきたいと思います。

 また、エクサスケーラー社に対するヒアリング調査等を実施しているというふうに承知をしておりますけれども、その調査結果、並びに水増し請求等不正が行われていなかったのか、そしてどのように対応していくのか、簡潔に教えていただきたいと思います。

林国務大臣 この仕組みは融資型の開発委託ということでございますので、委員、御専門であります、銀行御出身ですから、完全な融資ではございませんが、仕組みによって融資のような形でやっていくということで、成功した場合、いろいろ場合分けしております。今回の場合は、預金担保というか、預金証書というもので担保をとっておりますので、必要があればそれで回収をするという手だてはとられておるということでございます。

 それから、もう一つ御質問がありましたのは、この調査の状況でございますが、NexTEPについては、開発費の申請可能額は……(発言する者あり)失礼いたしました。ヒアリングでございますが、JSTがエクサスケーラー社に対してヒアリング等の調査を行っておりまして、エクサスケーラー社における開発費の使用状況及び同社の開発計画、体制をしっかりと把握し、その結果を踏まえて今後の対応について検討することとしております。現時点においては、JSTが確認をした経理関係書類の範囲内では不正な点は認められなかったという報告を受けております。

 文科省としても、JSTによる調査の結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと思っております。

松本(洋)委員 大分時間も近づいてまいりましたので、この件についての最後の質問をさせていただきたいと思います。

 今いろいろと議論をさせていただきましたけれども、手続等に関して瑕疵はなかったということでありますが、実際にこうした不正受給というものに発展をしてしまったというのも、これもまた事実であるわけでありまして、こうした点に関しましては、政府においてはしっかりと反省をし、そして対応するべきところは対応していただかなければいけないと思います。国民の皆さんからお預かりしている税金は一銭たりとも無駄遣いできませんし、また、国民の皆さんからより一層の信頼を得るための努力というものは、これは不断の努力というものを進めていくことが極めて重要だと思います。

 一方で、人口減少、少子高齢化という社会の変化に対応していくためにも、科学技術の振興というものは極めて重要な柱だというふうに認識をしているところであります。

 総理に、再発防止や国民の皆さんの信頼を一層得ていくためのそうした努力、そして今後の科学技術の振興について所感を伺います。

安倍内閣総理大臣 お答えをする前に、先ほど、岸田文雄議員に対する答弁の中で、税収について、二番目に高いのは第一次安倍政権のときに記録していると申し上げましたが、税収の伸びでは平成に入って最も高かったのでありますが、二番目に高いのは平成三年度でございましたので、訂正させていただきます。

 国民の税金である以上、予算が不正に受給されるような事態はあってはならないと考えております。担当の省庁、実施機関には、徹底的に原因を究明し、再発防止のために万全の体制をとらせたいと思います。

 その上で申し上げれば、資源の乏しい我が国は、これまでも、自動車、半導体、液晶など、革新的なイノベーションを次々と生み出すことで国際競争に打ちかち、経済成長を果たしてきたわけであります。国を挙げて科学技術立国に取り組むことで、世界に冠たる経済大国を築き上げることができました。

 他方で、近年、新興国の目覚ましい成長によって、国際競争は大変激しさを増しています。こうした中で我が国が力強い成長を続けるためには、常に世界一を目指し、科学技術の振興に全力を尽くすことが必要であります。

 今後とも、人工知能、ロボット、IoTなど、次の時代をしっかりと見据えながら、新たなイノベーションに官民の力を結集し果敢に挑戦していきたい、このように考えております。

松本(洋)委員 ぜひ、国民の皆さんの信頼をかち得て、更に科学技術の力を振興し、人口減少、少子高齢化といった我が国が抱える最大の課題を克服する、そうした取組というものを前へと進めていただきたいと思います。

 残り時間がもうなくなってしまいましたので、本来であれば、私が昨年の八月まで防災担当の副大臣を務めていたこともありまして、防災に関しての取組というものに関しましても質問をさせていただく予定にしておりましたけれども、その時間がありませんので、一点、要望だけさせていただきたいと思います。

 災害が発生をした際には、被災者の皆さんの救助、救出、生活再建、私たちは全力を尽くして前へと進めていかなければなりません。そして、そのためには、国も地方自治体も民間企業も民間団体も関係なく、オール・ジャパンでこの災害対応というものに取り組んでいくことが極めて重要な事柄だと思っております。

 私が座長になりまして、災害情報ハブという取組をスタートさせていただきました。そして、この取組の中には、国だけではなくて、地方自治体や民間企業、民間団体の代表の皆さんにもお入りをいただいて、災害発生時に共通の情報のもとで共通のオペレーションをすることができるような、そうした取組というものを進めさせていただいているところであります。

 日本の国が国難に直面をしております。であるのであれば、国だけではなくて、地方自治体や民間企業、民間団体の皆さんと一体となってこうした課題に取り組むことが大変重要だと思います。そのことを最後にお願い申し上げ、私の質問を、時間ですので、終わらせていただきます。

河村委員長 これにて岸田君、後藤君、田中君、遠藤君、松本君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 総理並びに関係大臣、大変御苦労さまでございます。きょうは時間をいただきましたので、質問させていただきたいと思います。公明党の石田祝稔でございます。

 昨日、平成二十九年度補正予算が成立をいたしまして、きょうからもう日をあけずに三十年度の基本的質疑ということで、これは野党の皆さんの御理解もいただいたと思いますけれども、しっかりと議論をしてまいりたいと思っております。

 私は、まず、この平成三十年度の予算の基本的質疑ということで、ちょっとお許しをいただきまして、見ていただきたいと思いますけれども、これが一般会計の予算書でございます。ページ数が一千七十四ページ。私は、ある意味でいえばこの予算書は平成三十年度の国民生活そのものだ、こういうふうに思っておりますので、非常に大事な、当然、特別会計もありますし、また政府関係機関予算もありますけれども、基本はこの予算だと。

 ですから、この予算を通さないと、当然、三十年度、四月一日からお金は一円も使えない、こういうことになっておりますから、私たちもしっかりと真摯にこの予算の議論をしていかなくてはいけない。このような観点から、少々前振りはありますけれども、申し上げさせていただきたいというふうに思っております。

 この平成三十年度の歳入歳出予算、一般会計、九十七兆七千百二十七億六千九百四十一万一千円、ここまでよく財務省が積み上げたものだというふうに思いますけれども、一千円単位まで出ております。そして、その中で社会保障関係費が三十二兆九千七百三十二億円、こういう金額にもなっております。このことについては、後ほど財務大臣にお聞かせをいただきたいというふうに思っております。

 私は、この九十七兆円の予算、これは数字にしたら、九十七の後に丸が十二個つく、こういうことでありますけれども、なかなかぴんとこない。それで、私は、いろいろなところで、お金の重みということを知ってもらうために、いろいろな例え話をいたします。

 では、一億円というお金、重さは大体十キロあります。そして、一兆円となりますと十キロの一万倍、ということは十万キロ。お札をトンで数える人はおりませんけれども、一兆円だったら百トンあるんですよ、お札が。

 そうすると、九十七兆といったら九千七百トン。今、百兆円と仮に丸めますと一万トン。四トントラックに一万円札を全部積んで並べて走らせると二千五百台。これが、私たちがこの国会で議決をして、そして一年間の国民生活に多大な影響を及ぼす予算の審議だと。

 ですから、私は、この予算の審議はあだやおろそかにしてはいけない、こういう観点で冒頭申し上げたところでございます。

 まず、総理にちょっとお伺いいたしますけれども、ペンス米国副大統領が訪日をされる、こういうことの発表があったようにお聞きをいたしておりますけれども、このペンスさんがお見えになるということで、総理夫妻主催の晩さん会も含めて長時間の会談の時間がとられているようにお聞きもいたしておりますが、総理として、このペンスさん、副大統領と、どういう方向性、どういう方針で話合いをされるのか、冒頭お聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ペンス副大統領との間においては、現下の北朝鮮情勢を始め、地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、ペンス副大統領との間で、地域及び国際社会の諸課題について日米で意見交換を行い、政策をすり合わせるとともに、日米同盟の強固なきずなを内外に向けて発信をしたい、こう思っています。

 北朝鮮問題については、北朝鮮に政策を変更させ、核・ミサイル計画を放棄させるため、日米、日米韓でしっかりと連携して、あらゆる方法で圧力を最大限まで高めていく必要性を改めて確認したい、対北朝鮮における政策において日米の政策をまず完全にすり合わせておく、それをもう一度確認したいと思います。

 その後、ペンス副大統領も平昌オリンピックの開会式に行くということでございまして、私も事情が許せば開会式に行き、その際、日韓の首脳会談も行いたい、こう思っておりますが、そこで更に、日米でがっちりと確認した方針を文在寅大統領との間でも確認をし、日米韓は、しっかりとこの対北朝鮮の政策においての強固な協力関係は揺るぎないということを示していきたい、その最初にペンス副大統領との間で確認をしたい、こう思っております。

 また、日米同盟の抑止力を高め、いかなる事態があっても国民の命と平和な暮らしを守り抜いていくことを確認したいと思います。

 その一方、米軍機によるトラブルが連続して起きていることを踏まえ、安全面に最大限配慮するよう強く求めたいと思っております。

 日米韓が日米韓三カ国の連携を深める上で、良好な日韓関係を構築することがまた必要であります。慰安婦問題をめぐる日韓合意は、日韓両国がさまざまな分野で協力を進めていく上での欠くべからざる基盤でありまして、韓国側が約束を実行する必要がある、こういうことも含めて、現在の日韓関係についてもよく説明をしておきたい、このように考えております。

石田(祝)委員 ぜひ、実りの多い議論、会談になればというふうに願っております。

 総理も今お触れになりましたけれども、日米同盟、これは大変強固になってきた、こういうことを私も実感いたしますけれども、しかし、これは毎日毎日、ある意味では水面下で、ハクチョウが水面下で足を一生懸命かくように、見えないけれども努力を重ねていかなければいけない。これは、強固だからそのままいけるというわけでもない。

 沖縄の例も触れられましたけれども、やはり沖縄の皆さんも、ある意味で大きな苦労をしょいながら、しかし、日本の安全保障にとって沖縄の地政学的な位置、こういうことをしっかりと私は御理解いただいていると思いますけれども、なおこれは、我々としては、そういう御苦労をお願いしている、こういう姿勢はみじんも忘れては私はいけない。そういう点も含めて、ぜひ実りの多い会談を期待したいというふうに思っております。

 それと、続いて、トランプ大統領が初の一般教書演説を先日行いました。これにつきまして、ある意味でいえばいい方向での期待を裏切ったというふうにも言われておりますけれども、非常に落ちついた一般教書演説だった、こういう評価もあるようであります。

 特にこの中で日本についての直接的な言及はなかった、こういうふうに私は承知をいたしておりますけれども、日米同盟、相手方の国として、大統領という大変大きな権力を持っている方のある意味でいえば一年間の方針の演説だ、こういうふうに思っておりますが、それについて、総理としては、このトランプ大統領の一般教書演説、どのように受けとめられたのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回のトランプ大統領の一般教書演説の大きな特徴の一つは、それは北朝鮮問題について相当の時間を割いたということであります。北朝鮮に対する圧力強化に向けた力強いメッセージを発信したことは高く評価したいと考えています。

 また、北朝鮮により拘束された、そして死亡したオットー・ワームビア氏の御両親や北朝鮮からの脱北者を紹介しつつ、北朝鮮の劣悪な人権状況を指摘したことにも大変強い印象を受けたところであります。

 トランプ大統領との強固な信頼関係のもと、日米、日米韓で協力をし、中国、ロシアなど関係国とも緊密に連携をし、拉致、核、ミサイルの問題の解決をするために全力を尽くしていく考えでございます。

石田(祝)委員 今、総理は私が申し上げたことよりちょっと詳しくお触れになりましたけれども、私がサマリーという形でいただいた中では、北朝鮮については、北の核、ミサイルは間もなく我々の本土を脅かすようになる、そうした事態に陥ることを防止するため、北朝鮮に最大限の圧力をかける施策を遂行している、こういうことを述べられて、続いて、北朝鮮について、過去の経験は、認識の甘さや譲歩は敵対行為と挑発を招くだけだということを示している、我々を危険な立場に陥れた過去の政権の過ちを繰り返さない。これはアメリカの中の話でありますけれども、北朝鮮に対しては、総理がおっしゃるように、大変厳しい認識を私は持っていると。

 ですから、そのとき、今、冒頭でペンス副大統領の話を伺ったときに、やはり日米でしっかりとまずやる、そして総理もペンス副大統領も韓国に行かれる、ここでもう一度、日本と米国と韓国、このいわゆるトライアングルを強固なものにしていく、こういう一つのすばらしいきっかけにぜひしていただきたいなというふうに思っております。

 トランプ大統領は非常に率直な物言いをされる方だと私も思いますけれども、この一般教書演説について、総理のお考えを伺ったところでございます。

 ダボス会議の、TPPについては後ほどお伺いをいたしたいというふうに思います。

 それで、今回のこの国会は、総理も、働き方改革国会だ、こういうふうに位置づけをなさっておりますので、まず、幾つかの点で私はちょっと説明を総理の方から、又は担当大臣から、現時点において考えていること、そして、これから法案はさまざま検討なさって最終的に国会に出されるだろうと思っておりますけれども、いろいろと今まで出す準備もしていた、法案もつくってきた、そういう中で、いろんな御意見を受けて、直すところは直してきていると。

 そういう中で、きょうは、三点、大きな柱でお伺いしたいんです。

 まず、脱時間給制度、これについて、総理が、この制度の趣旨、どういうお考えでこういうことを提案されるのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 働き方改革は、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できるような社会を実現するための、労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革であります。

 働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、子育て、介護などさまざまな事情を抱える方々が意欲を持って働くことができる社会に変えていく、こうした社会を実現するために、労働時間法制の見直しが急務であるという考え方であります。

 その中で、脱時間給制度、いわゆる高度プロフェッショナル制度でありますが、働き過ぎを防止するための措置を講じつつ、意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものであります。

 この制度は、時間ではなく成果で評価をする働き方をみずから選択することができる、高い交渉力を有する高度専門職を対象とするものであります。例えば、海外とのやりとりを行う金融商品のディーラーが時差に対応した柔軟な出退勤がしやすくなる、そしてまた、研究職がアイデアが湧いたときに集中して働くことができるようにするなど、健康の確保にはもちろん十分に留意しつつ、意欲や能力、創造性を存分に発揮できる環境をつくるものであります。

 労働時間に画一的な枠をはめる従来の発想を乗り越えて、高度なプロフェッショナルの方々がみずからの創造性を思う存分発揮できる環境を整備していきたいと考えております。

石田(祝)委員 この脱時間給制度、これからさまざま議論がなされるだろうというふうに思いますけれども、このいわゆる高度プロフェッショナル制度、働き方改革の中で大きな位置を占めていると私は思います。

 これは、みんながこの制度に入るんじゃないのか、ひょっとしたらそういう誤解を与えているんじゃないかという気もしますけれども、厚生労働大臣、対象となるような業種というのは、今総理も若干触れていただきましたけれども、そういう職種、そういうものは一体どういうものが想定されているのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今、高度プロフェッショナル制度の対象になる業務といいますか、業種ということでお尋ねをいただきました。

 まず、法案要綱ではありますけれども、この要件としては、高度の専門的知識等を必要とすること、それから、その性質上従事した時間と従事して得た成果との間に関連性が通常高くないと認められるもの、こう記しております。

 じゃ、何がそれに該当するのかという具体的な業務については、法案成立後、改めて労働政策審議会で検討いただき、省令という形で規定をするということになっておりますが、平成二十七年の労働政策審議会の建議で、想定される具体的な対象業務として例示されているものを幾つか申し上げれば、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務、研究開発業務、これらが例示をされているところであります。

石田(祝)委員 今、これから法案成立後に労働政策審議会で詳しく決めるということですけれども、やはり審議をする前にある程度の予見可能性というものがないと、これは私はなかなか難しいと思うんですね。

 例えば、金融ディーラーといったら、自分はそうじゃないよね、こういうことはわかる職種もあるんですけれども、いわゆる、どっちかな、ひょっとしたら自分はそっちの方で、この高度プロフェッショナルの方に入ってしまうのかな、そうすると、なかなか働き方と成果との問題で難しいなと。

 これは何か客観的な、大臣、メルクマールはあるんですか。例えば年収だとか、そういうものが非常にわかりやすいと思いますけれども、どうでしょう。

加藤国務大臣 今、年収のお話がございましたけれども、この高度プロフェッショナル制度の対象となる方の賃金額の要件、これは、労働契約により使用者から支払われると見込まれる年間の賃金の額が、平均の給与額の三倍の額を相当程度上回る水準、こういうふうに法定をすることにしております。

 これも、具体的な年収額については、法案成立後、労働政策審議会で検討の上、省令で規定するということでありますが、やはり先ほどの平成二十七年の労働政策審議会の建議では、想定される具体的な年収額は千七十五万円という具体的な数字も設けられているところでございます。

 それから、この高度プロフェッショナル制度を導入しようとすれば、勝手に会社の意思でできるわけではなくて、経営者側とそして労働者側のそれぞれ半々で構成されている労使委員会、そこの五分の四の決議をもって進めていくということにもなっているわけであります。

石田(祝)委員 そうすると、一千七十五万という、この放送をお聞きになっていらっしゃる方からしたら、自分は入っているのか入っていないのか、これはすぐ大体わかるわけでありますけれども、そうすると、大体、この一千七十五万というのは一体何%ぐらいの給与所得者になるのか、ここのところを、ぜひ大臣、現時点でわかれば、大体ということになりますけれども、教えていただけますか。

加藤国務大臣 国税庁の平成二十七年の民間給与実態調査に基づく、これは推計ということになりますけれども、年収一千万円超の給与所得者の数は、役員を除くと、給与所得者全体の約三%ということでございます。

 ここから管理監督者をまず除くということ、それから、先ほど申し上げました、対象業務全てがかかるわけではありませんから、対象業務も絞られるということでありますから、今申し上げた数字からは更に絞り込まれる、限定されることになるんだろう、こういうふうに考えています。

石田(祝)委員 そうすると、給与という一つの数字で示される、一千七十五万と。その中で、じゃ、どのぐらいの割合かといったら、大体三%だと。さらにそこから管理監督、管理職、そういうところを減していくと、何か、マトリョーシカじゃないんですけれども、最初は大きいんだけれども、どんどんどんどんのけていったら一体何が残るのか。

 これは、大臣、いや、こういうのは外れます、こういうのも外れますといっても、大体どのくらいになるのかというめどはあるんですか。どのぐらいの人が対象になりそうだと。これをお示しいただけるんだったら、御答弁いただきたいと思います。

加藤国務大臣 今申し上げたところまでが現段階の私どもの前提でありまして、これから、先ほど申し上げた、実際、管理者がそのうちどのぐらいあるのかということの推計というものを当然考えていかなきゃいけないと思いますし、それから、対象をどう絞るかということの具体的な議論もしっかりしていかなければならないだろうと思います。

石田(祝)委員 そうすると、今三%程度だと言われているところからさらに少なくなっていく、対象になる人は。三%を超えてということには、これは誰が考えたって、今の加藤大臣の答弁を日本語で理解したら、当然それから減っていく。どこまで減るかは、これは今のところ明示的には言えない、こういうことですけれども。

 三%からどんどんどんどんある意味でいえばそういう対象外の人をのけていくと、給与所得としては一千七十五万を超えておっても対象にならない、こういう理解ということでよろしいと思いますけれども、いいですか。うなずかれましたので、いいと思いますが。

 それで、途中で大臣が、要するに労使でつくる委員会で五分の四以上の賛成が要る、こういうお話でした。私もちょっと計算をしてみたんですけれども、そうすると、労働側と使用者側とが例えば十人、十人で委員会をつくる。そうすると、その五分の四といったら十六人ということですね、二十人だとしたら。そうすると、使用者側が全員やってもらいたいと。そうすると、労働者側が例えば六人以上、そうですね、賛成ですねと言わないとそれは動かない、こういうことでいいですね。

加藤国務大臣 二十人ということですから、二十人の五分の四ということは十六ということになりますので、経営者側が仮に提案したとしても、そこにある労働側の委員六人が賛成しなければ決議にはならないということでございます。

石田(祝)委員 そうすると、この制度、いろいろ御心配なさっているんですけれども、ある意味でいえばこれから制度設計は細部にわたると思いますけれども、今の御答弁の範囲でいくと、労使でそれぞれ同数出て五分の四ということは、いわゆる労働者側としても過半数の人がオーケーだと言わなければ対象にならない、こういうことなんですね。これは数字として切られているわけでありますから、非常にその点は明確だというふうに思います。

 それと、この修正を、この前に、もともと二〇一五年ぐらいからこの案は出ていたと思いますけれども、働き方改革で、去年、経営者側の榊原経団連の会長それから連合の神津会長も入ってこの働き方改革をまとめる、こういう中で、最終的に連合の方も、こういう修正をしてもらいたい、たしかそういう意見が総理のところに提言というんですか提案をされて、そして話し合いが最終的に残念ながらうまくいかなかったというふうに記憶しております。

 修正をしてください、こういうことを修正してくれたらいいですよ、一時期、そういう話だったと思いますが、それは今回、修正の中身に私は取り入れられたと思うんですが、この点については、この会議をつくる段階から総理が非常に、連合会長そして経団連の会長、両方とも入って、トップの二人に入ってもらいたい、たしかこういうことで会議を進められて結論を出されたと思いますけれども、この辺、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 働き方の改革でありますから、いわば経済界の方々と同時にやはり労働界の代表の方にも入っていただいて、できる限り合意を目指そうという努力を重ねてきたところであります。

 高度プロフェッショナル制度に関し、昨年七月に、連合の神津会長から私宛てに、健康確保措置を強化すべきとの御要請をいただきました。政府としても、この要請を真摯に受けとめまして、平成二十七年に提出した法案の内容を修正しました。

 そして、対象となる労働者に対して、年間百四日の休日取得を必ず確保させること、そして、労使委員会の五分の四以上の多数で決議した健康確保措置を実施することを使用者に義務づけることといたしました。

 この法案の修正によりまして、高度プロフェッショナル制度の対象となる方々の健康確保に向けた取組がより強化されたものと考えております。

石田(祝)委員 これは、そういう提案を受けて、通常、話合いがうまくいかなかったら、こう直してほしいというのはなかなか盛り込まれないんですけれども、そこは、そういう要望があったことは全て盛り込んだ、こういうことでありますので、ある程度理解をしていただく労働者側の方もいらっしゃると思いますけれども、なおこれについては心配をしている人がいることも私は事実だろうというふうに思います。

 これから法案が固まっていくわけですけれども、私は先ほど、現時点において大体何%の人が対象になるんですかとか、基本的なことをちょっと確認させていただいたわけでございます。

 それで、ある労働団体の方と私はお話をする機会がありまして、そのとき、百四日という休みの話が出たときに、いや、もう我々の組合は皆百四日休んでますよ、そういう実は話もあって、百四日は条件にならないよということをおっしゃりたかったのかなとも思いますけれども、そういうことを明定されたということも、これは私は非常に大事なことではないかなというふうに思っております。

 この問題については、私は、この国会の最大の、働き方改革の中の一番難しいところではないか、こう思っておりますので、私たちも、法案提出に向けて我々も党内で議論をしなきゃなりませんので、しっかりと議論をしていきたいというふうに思っております。

 それで、もう一つの課題として残業規制。これについては総理も並々ならぬ意欲をお持ちで、昨年、七十年ぶりの労働基準法改正だ、こういう強い意欲もお持ちだったと思います。

 今回のこの残業規制、いわゆる法律で罰則を設けて残業の上限を規制する、極めて画期的な話になっていると思いますが、この法案に盛り込まれた施策の意義について、まず総理からお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、そして女性や高齢者が働きやすい社会を実現するためには、長時間労働の是正が必要であります。

 そのため、今回、史上初めて労働界、経済界の合意、私はここに非常にこだわったわけでありまして、やはり働く方の代表である労働界の代表、連合の神津さんに労働界を代表して合意をしていただき、一緒につくっていくということであったわけでありますが、今回、史上初めて労働界、経済界の合意のもとに、三六協定でも超えてはならない、罰則つきの時間外労働の限度を設けることとしています。

 これは、戦後の労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革であります。安倍政権として、働き方改革関連法案を早期に提出をして、法案の成立に全力を傾注してまいりたいと思います。

石田(祝)委員 この問題につきましては、この議論が、どうしてもこれは残業規制をしなくちゃならないと、その発端となった大変不幸な事件もあったわけでありますけれども、そういうものを受けて、私は、働き方改革というのは休み方改革だ、こういうことを申し上げてきたところであります。

 今まで上限は大臣告示だというところを、もう明確に法律によって上限を規制する、そして、特別協定を結んでも、それを超えられない時間数についてしっかりと法定をしていく、こういうことですから、この点については非常に、先ほどのプロフェッショナル制度と若干違って、残業規制については評価をする声もあります。

 しかし、なかなかわかりにくいところがちょっとありまして、この残業規制が一体どのように変わるか、今とどう違ってくるのか、どのように変わってくるかについて、これは加藤大臣に御答弁をお願いします。

加藤国務大臣 現行は、そもそも一日八時間、週五日で週四十時間、これが基本でありまして、これを超えて働く場合には、いわゆる労働基準法三十六条で、労使協定等に基づく、よく三六協定と呼ばれるわけであります。

 その協定をつくるときに、先ほど石田委員がおっしゃったように、これは現在は大臣告示で一応、ガイドラインというんでしょうか、それが決められている。そして、この上限時間を超過したような協定をしてもすぐ罰則がかかるわけではありません。

 またさらに、臨時的な特別な事情のある場合には更にそれから上に残業時間を増加することができるわけでありますが、これも実は上限がない、よく青天井と言われる、これが今の現状でございます。

 今回の法案の要綱においては、まず、時間外労働の上限は原則として月四十五時間、かつ三百六十時間、これは今大臣告示でもそうなっていますが、これを法律に明記する、今は大臣告示ですから。

 その上で、臨時的な特別事情がある場合に該当すると労使が合意しても、上限は年七百二十時間、そして、その範囲内において、複数月の平均では、これは休日労働を含んで八十時間以内、単月では休日労働を含んで百時間未満、そして、原則として、延長時間を超えることができる回数は一年につき六カ月以内に限る、こういうふうに設定をする。

 そして、これに違反する場合には罰則が科される、こういうことになるわけであります。

 それに加えて、可能な限り労働時間の延長を短くする、このために新たに指針を定める、そして必要な助言指導を行う、こういったことも法律に明記をすることで、時間数の縮減に向けた動きを進めていく。

 また、大臣告示では、建設業や自動車の運転業務、これは適用除外になっていましたけれども、適用の時期は弾力的に対応していくことになりますけれども、これも適用の対象にしていく、こういうことになっているわけで、そういった意味では大きな前進につながっている、こう思っております。

石田(祝)委員 建設とか運輸、適用除外ということは一度言われたこともありましたけれども、これは適用の猶予だ、適用の対象だけれども実行の時期を猶予する、こういうことだろうというふうに思います。

 それともう一つ、大臣、みんな心配しているのは、いわゆる繁忙月は百時間未満という、この百時間という数字が、これは過労死の数字じゃないのか、こういう御指摘も当然あるわけです。ですから、考え方によっては、この百時間未満も何カ月も続けられるんじゃないのか、こう思っていらっしゃる方も私はいると思うんですね。

 まあ、百時間というのは相当なものですから、これは未満ですから、別に百時間やらなきゃいけないわけじゃありませんから、百時間未満で、できるだけ労使で抑えてやっていただくのが私は大事だと思いますけれども、この百時間未満というのは、例えば九十九・五時間として、では、それはその次の月もやれるのか、手前の月でもいいのか、これは一体どうなるんですか。

加藤国務大臣 まず一つは、その百時間も、これまで大臣告示等は休日労働を含んでいなかったんですけれども、これを休日労働も含む、その上で、トータルの所定外、先ほど申し上げた四十時間を超える時間数については百時間未満にするということですから、当然、一カ月について百時間以上することは、これは許容されないということになります。

 それから、御指摘のように、例えば一カ月九十五時間なら九十五時間あったとすれば、では次の月も九十五時間できるかというと、そういうことではなくて、複数月の平均が八十時間以内ということでございますから、ある月九十五時間とすれば、次の月は六十五時間にならないと平均八十時間以内ということにはならない、こういうことでございます。

 それから、加えて、年間のトータル時間数も七百二十時間を超えることは許容されない、こういうことでございます。それから、先ほど申し上げたように、更に長時間労働を是正する努力をしていくという規定を設けておりますから、そうした是正が図れるように更に努めていく、こういうことになるわけであります。

石田(祝)委員 もう一つお聞きしますけれども、同一労働同一賃金についてお伺いをいたしたいと思います。

 これにつきましては、総理も、我が国から非正規という言葉をなくす、こういうお話もあったんだろうというふうに思います。

 我が党としましても、同一労働同一賃金について提言をいたしました。

 そのときに、当初、正規と非正規の方の賃金の差をどこまで書き込むかということで、ヨーロッパ並みにという、そういう文章が最初に出てきたんですけれども、それではわかりにくい。ですから、我が党としては、公明党としては、これは八割という数字を入れようじゃないか、こういうことで、提言で、取り入れていただきたいという趣旨で当然提言をするわけでありますけれども、正規の方の八割、ヨーロッパ並みの八割という数字を私たちは入れさせていただいたわけです。

 そういうものも私は非常に大事な提言をさせていただいたというふうに思っておりますけれども、この同一労働同一賃金について、総理としてはこの制度の意義についてどうお考えなのか、まず御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 同一労働同一賃金を実現し、そして正規と非正規の労働者の理由なき格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにしなければならないと考えています。

 非正規で働く方とお話をしました。お話をした際、現状では、正規と非正規の間には、給与だけではなくて、通勤手当などの各種手当や忌引等にも格差があり、職場で一緒に頑張って成果を上げているのに、そういうところで差がついているということで、本当に気持ちとしてもがっかりするということでありました。そしてまた、みんなと一緒に頑張っているのに自分だけは違うんだということで疎外感も感じている、やる気を失っていくことにもつながっていくとの話がございました。

 パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規雇用労働者に比べて二割低い状況でありますが、日本では四割低くなっているという指摘もあります。

 このような現状を打破し、非正規という言葉をこの国から一掃する、これが、働き方改革の柱の一つである同一労働同一賃金であります。

 御党から、同一労働同一賃金に関し、均衡だけでなく均等にも踏み込んで、労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備を行うことなどを内容とする御提言をいただいています。

 そうした御党の御提言も踏まえて、現在、改正法案の準備を進めており、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の理由のない待遇差を埋め、自分の能力を評価されているという納得感や働くモチベーションを高め、労働生産性を向上させてまいります。これにより、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられる、多様な働き方を自由に選択できる社会を実現していきたい。

 また、実際、事実上同一労働同一賃金に近い働き方をとっている会社で働いている人に話を聞きました。その方から話を聞きますと、やはり、自分は本当にやる気が出たということをおっしゃっていました。

 つまり、それはもう生産性は間違いなく私は上がっていくんだなと、そういうお話を伺い、確信をしたところでありまして、ですから、経営側にも、まさにこの改革は生産性を上げていくところにもつながっていくという認識を持って、協力して進めていきたい、このように思っておるところでございます。

石田(祝)委員 それで、これはまた厚労大臣にお聞きいたしますけれども、具体的に、総理が大分お答えいただいたんですけれども、総理のお答えになっていないところで、こういうこともやるんだよ、こういうことがありましたらお答えをお願いします。

加藤国務大臣 今総理が御答弁いたしましたように、正規と非正規の間の不合理な待遇差の解消を目指していく、また、それを通じて非正規雇用労働者の待遇の改善を図っていくということでありますが、現在も労働契約法というのがあります、あるいはパートタイム労働法というのがございまして、それぞれにおいて、正規と非正規の方の待遇差について、職務の内容、あるいは職務の内容及び配置の変更内容、あるいは職務の成果その他の事情を考慮して、不合理と認められる待遇差を禁止する、こういう規定は現存するわけであります。

 ただし、この規定が、では実際、どういう場合が待遇差が不合理と認められるのか、なかなかわかりにくい、明確でない、こういう課題もございました。

 そこで、今回、私どもが検討している法案の中では、この待遇差、待遇差といっても賃金だけではなくて福利厚生あるいは研修、こういったことも含めて、個々、しかも、賃金でいえば、基本給がどうなのか、賞与がどうなのか、そうした一つごとについて、その待遇がなされている性質、目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべきという判断の基準、視点を明確にするということであります。

 それから、どのような待遇差が不合理であるかを示すガイドラインの根拠規定も整備をしていきたいというふうに思っております。

 それから、派遣の労働者に関してはそういう規定がございませんけれども、今回、同様の趣旨による法の整備を行う、こういうことも考えております。

 それから、加えて、では、不合理か不合理じゃないかといっても、非正規の方から見れば、正規の方がどういう形で賃金を払われている等々、わからないわけですね。ですから、そういったことにも対応するように、特に非正規の方から待遇差に関する、しかも正規の方に関する待遇差についても説明を求め、それに対する説明、会社側に説明の義務を課すということ。

 それから、実際、裁判等で最終的には紛争を解決するわけですが、やはり時間やあるいは費用も大変かかりますので、裁判外の紛争解決手続であります行政ADR、こういったものの整備もあわせて行うことによってそうした待遇差の改善が進む、そうした環境をつくっていきたいと思っております。

石田(祝)委員 いろいろとお聞かせいただきましたけれども、これから法案が国会に出てくる、こういうことでございますので、出てくれば、野党の皆さんからもさまざま御意見があろうかと思いますので、労働者の働く皆さんにとっても、いい改革であったと言っていただけるような法案を仕上げていただきたいというふうに思っております。

 それで、私は続いて、ある意味でいえば国難ともいうべき問題、国内で。

 私も衆議院総選挙の中でさまざま街頭等でお話ししたのは、対外的には北朝鮮の核とミサイルと拉致の問題、こういうものがあると。しかし、国内的には、私は、もうこれはある意味でいえば、あしたから手をつけて好転をしても、例えば、おぎゃあと生まれた赤ちゃんが二十になるには二十年かかるわけです。ですから、これは非常に遅いと言われるかもしれないけれども、これも始めてやっていく以外にない、そういう課題が私はあるだろうと思っています。

 それで、少々ちょっと前段で申し上げたいんですけれども、いわゆる人口の自然減、そういう中での少子高齢社会、間違いなくこういう社会に入ってまいりました。

 例えば、昨年、二〇一七年、これはまだ推計値でありますけれども、お生まれになった赤ん坊、子供さんの数が九十四万一千人、そして亡くなった方が百三十四万四千人、これは人口でいくと約四十万人自然減、こういうことであります。

 約四十万というと、私は出身は高知県でありますけれども、高知県の人口の半分以上なんですよ。ですから、高知県のある意味ではもう半分以上、東半分は人口がいなくなっちゃった。これは極端な例えになりますけれども、それぐらいの人口の自然減。

 それで、この何年間か見させていただきますと、二〇一六年は出生が九十七万六千九百七十八人、死亡が百三十万七千七百四十八人、ここは自然減が三十三万人です。二〇一五年は自然減が二十八万四千七百人。

 こういう数字になってきておりまして、だんだんと自然減の数がふえていっている。ということは、出生数と亡くなられた方の数が、ある意味でいえば、プライマリーバランスで例えられるワニの口のように広がっていっている、こういうことではないかというふうに思います。

 ですから、ここのところ、若干過去にさかのぼって人口の出生数と死亡数を見ますと、二〇〇六年までは出生数の方が実は多かったんですね。二〇〇七年にこれが逆転をいたしまして、ずうっとお亡くなりになる方の数が多い、こういう状況が続いている。そして、昨年は、推計ですけれども、それが四十万人多かった、こういうことになっております。そして、生まれる子供さんの数も、二〇一五年が百万五千人、その後、二〇一六年は九十七万、そして二〇一七年が九十四万、こういう形で差が広がってきているわけでございます。

 これは、人口の自然減の中の、最初に申し上げた少子高齢社会、こういう社会に入ってきているということでございまして、私は非常に、これはこれからどういうふうにやっていくのかということをまた後で財務大臣、また総理にもお伺いしたいんです。

 それで、例えば平均年齢なんかを見ましても、二〇二五年、これが団塊の世代の方、昭和二十二年から二十四年生まれの方、全員七十五歳以上になるわけです。そのときの平均年齢というのは四十九歳になるんですね。しかし、一九六〇年、昭和三十五年、このときは、平均年齢、日本は二十九歳なんですよ。そうすると、考えたら、二〇二五年、一九六〇年、六十五年間の間に平均年齢が二十歳上がっている、今、日本はこういう社会になっている、こういうことであります。

 その中で、ちょっとこれは財務大臣にお伺いしますけれども、今年度の予算、私、最初に申し上げた、九十七兆七千百億円の大変大きな金額の予算だと。そういう中で、社会保障関係費というのは実は約三十三兆円と、三分の一を超えているわけですね。九十七兆の中には借金返しもありますから、では、実際使えるお金の半分ぐらいはもう社会保障関係費じゃないのか。

 ですから、予算を編成された財務大臣として、この状況、どんどんどんどん高進していっていますから、これについてどうお考えか、まずお伺いします。

麻生国務大臣 これはゆゆしき話ですよ、基本的には。

 この社会保障関係費というのは、先ほど言われましたように、これは高齢化プラス少子ということが両方かかってきますので、そういった意味では、この四半世紀で大幅にこれが増加していることは確かでして、平成二年、平成二年というのはいわゆる赤字国債というのがゼロになった年であります。今から二十八年前の話ですが、そのころの社会保障が予算に占める割合は一七%ちょっとぐらいだったんですが、この平成三十年度の今回御審議いただいている予算の中で三三・七%になっておりますから、そういった意味では、間違いなく倍近くになっております。

 そういった意味では、傍ら、生まれる人は、昔二百何十万、今は九十万という段階になってきて、傍ら、平均寿命が延びてくれば、それは社会保障として、いわゆる勤労者六人で一人の高齢者が、今、勤労者二・何人に一人ということになってくる、人口比としてはそういうことになりますので。そういった意味ではこれは非常に大きな問題なので、私どもとしては、世界に冠たる日本の社会保障制度というものを今後維持していくという意味においては、これは非常に長期的というか、先ほど言われましたように短期的にも考えないかぬところなので。

 したがいまして、今回は、診療報酬の改定とか薬価の改定、薬価制度の抜本改革とか、介護、障害福祉等々のサービスとか生活保護とか生活困窮者の自立支援とか、そういったいろいろなものを見直しさせていただいて改革努力を積み重ねさせていただいた結果、社会保障関係の伸び率が大体一兆円ぐらいとよく言われておりましたけれども、それを約五千億円ぐらいでおさめることができております。

 今後とも、この点は急に直るわけではありませんので、そういった意味では、私どもとしては、制度の重点化とか効率化とかいうものは引き続き努力していかないかぬところでありまして、社会保障の持続可能性を確立していくというのは非常に大きな問題だ、私どももさように自覚をいたしております。

石田(祝)委員 今財務大臣が、何人で一人を支えているかというお話で、ずっと私も見ていったら、一番最初は、我々が見る範囲ではおみこし型だったんですね。おみこしというのは担ぐ棒が前後に二本ずつあって、それを二人ぐらいずつ取りついて担ぐ。

 それがその次はどうなったか。騎馬戦型ですね。騎馬戦をやった方は御存じでしょうけれども、馬に一人乗るんですけれども、大体三人でやる。その次はかご型ですよ。前と後ろに一人ずつ。今、これがおんぶ型になるんですね。一人が一人をおんぶする、こういう時代に入ってくる。今のままいったらですよ。こういう思いも私も共通しているんです。

 そういう中で、総理にお伺いしたいのは、今、社会保障関係費が予算の三分の一を超えている。そういう中で、二〇二五年、先ほどもちょっと申し上げましたが、昭和二十二年から二十四年生まれの方が全員七十五歳以上になる。これは、長くお元気で生きていただくということは非常に喜ばしいことでありますけれども、片や、さまざまな面で社会保障のお金もかかってくる、こういう世代にみんな入ってくるわけであります。そういうときに、財政の持続可能性と同時に社会保障の持続可能性、これをどうこれから考えていくか。

 私は、これから六月に骨太方針を決定するようになると思いますけれども、今、私たち公明党も党内で、経済の部分の調査と、そして社会保障をこれからどうしていくのか、この二つの面で考えていかないと、我々与党として、また議員としての務めは果たせない、こういう思いで、そういう動きをこれはしっかりやっていこうではないか、こう今考えているところであります。

 総理は、二〇二五年に向けて、社会保障制度の持続可能性、予算の問題も当然ございますけれども、これについてどのようにお考えになっているか、ぜひお考えを開陳していただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 少子高齢化が進行する中において、いわゆる団塊の世代、毎年毎年、この団塊の世代と言われる方々は二百七十万人生まれていたわけでありますが、今は百万人を切っているということでありますが、この団塊の世代の皆さんが七十五歳以上になる二〇二五年に向けて、社会保障費の伸びが引き続き見込まれます。

 そうした中で、引き続き、社会保障の持続可能性の確保のため不断の改革を行い、国民の理解と安心が十分に得られるように取り組んでいきます。

 具体的には、医療、介護の提供体制改革や、保険者のインセンティブ改革を通じた予防、重度化防止の強化に取り組むとともに、公平な負担のあり方についても検討し、社会保障制度の持続可能性確保に向けた改革を進めていきます。

 それとともに、我が国最大の課題である少子高齢化の克服に向けて、子育て、介護といった、現役世代が直面する二つの大きな不安の解消に大胆に政策資源を投入してまいります。そうすることで、お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障の構築にも取り組み、世界に誇るべき社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たしていきたいと思います。

 その際、医療あるいは介護の改革を行っておりますが、これは、お金を切り詰めるいわば歳出改革をするという観点も必要なんですが、しかし、決して質を落とさない、いわば給付の質は落とさない、しかし改革すべき点はしっかりと改革をしていくという姿勢で臨んでいきたい、こう思っております。

石田(祝)委員 少子高齢社会ということになりますと、子供さんが減ってきている、そして高齢の方がふえてきている。ですから、私は、御高齢の方はいわゆる健康寿命を延ばす御努力も、これは我々もお願いしなきゃならないし、御本人にも健康寿命を延ばして健康で活動していただく、そういう寿命を延ばしていただくことが必要ではないか、一つは。

 そしてもう一つは、子供さんの少ないことについては、もういろいろなデータで今までも言われてきているんですけれども、やはり、お一人産む、そして二人目をどうするかちゅうちょする、悩む、その大きな原因が経済、教育費の問題だ、こういうことを今まで言われてきましたので、私は、ですから、去年の、総理が、全世代型社会保障にする、そして消費税の増税分を子育てに充てる、これは一つの大事な考え方だったのではないかな、こういうふうに思います。

 消費税の増税分について、四対一ではなくて五対五ということでお考えになったんだろうというふうに思いますけれども、昔から五公五民といって、全部とっちゃいけない、半分は公で半分は民だ、こういうお考えもあるわけですから、そういう中で、子育てに、要するに教育に投資をする、これは非常に私は将来的に大きな結果が出てくるのではないか、こういうふうに期待をいたしております。

 幼児教育の無償化また高等教育への支援、そして、私たちがお願いをした、お訴えしてきた私立高校の授業料の実質無償化、こういうことも、総理の力強い決意も何度もいただいておりますので、ぜひこれは実現をしていきたいというふうに思っております。

 そして、この問題は、六月に向けてというよりも、更に長い射程で公明党としては考えていきたい。ですから、この財政の部分と社会保障の部分と、ある意味ではその両方が合わさったようなことで、しっかりとまた政府にも提言をしていきたい、こういうふうに思っております。

 続きまして、事業承継についてお伺いをいたしたいというふうに思っております。

 これはよく言われるわけですけれども、今後十年の間に、七十歳を超える中小企業、小規模事業者の経営者が約二百四十五万人いる、そのうちの百二十七万人が後継者が決まっていない、こういうことを言われている。そして、このままいくと、当然、黒字で廃業する、後継者がいないので仕事をやめてしまう、雇用が失われる、そしてGDPも毀損をされる、こういうことでありますけれども、今回、事業承継税制、私は、全ての株式を対象にする、そして一〇〇%納税を猶予する、これは相当思い切った決断だったというふうに思います。

 これにつきまして、経産大臣から、対象等を含めて、テレビを見ている皆さん、またラジオで聞いている皆さん、できるだけ、ああ、そうかな、そうだとおわかりになるように、コンパクトにぜひ御説明をお願いしたいと思います。

世耕国務大臣 黒字のままで廃業するとか、あるいは地域にとって重要な仕事であるのに廃業するというようなケース、これをしっかり絶っていかなければいけないというふうに思っています。

 事業承継税制自身は十年前からありまして、制度としてはあったんですが、残念ながら二千人ぐらいしか使っておられません。これはやはり使い勝手が悪い部分があった。

 特に、例えば、お父さんから相続したとき、会社の値打ちが一億円あった、十年頑張って仕事をやってきて大企業に身売りをして、それで営業所としてやっていこうというときに、じゃ、売れたお金が三千万円だと、売った瞬間に直ちに一億円分の相続税を払わなければいけないということで、怖くてなかなか使えないということがあったわけですが、今回、抜本的に中身を拡充いたしまして、その売れたときの値段に対して相続税なり贈与税が課税されることになるということで、何か昔にさかのぼって税金を払わなければいけないというような不安はなくなったわけであります。

 あるいは、事業承継といっても、親から子だけではなくて、親族以外にMアンドAという形で売られる、それも対象としましたし、また、親子の場合でも、子供一人には限らないわけですね、複数の子供に引き継ぐというケースもあるわけですから、そうしたところもカバーするようにいたしました。

 今回対象となっているのは、これは会社法上の会社ということになりますので、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社そして特例有限会社がカバーをされています。ただ、個人事業主は対象にはならないという形になります。

石田(祝)委員 私が次に聞こうとすることもお答えいただいたんですけれども、大臣がちょっとおっしゃった売れたときの値段というのは、これはちょっと正確じゃないんじゃないですか。そのときに上がっておったらもとの値段でいいんだけれども、会社の価値がちょっと下がっておったら、下がったときの計算をしますよと。ちょっと、もう一回言ってください。

世耕国務大臣 ちょっと言葉が足りなかったわけですけれども、下がった場合には、下がったときの値段に対して課税をするということでございます。

石田(祝)委員 それで、私がお願いをしたいのは、大臣もおっしゃった、十年前からこの制度はありましたと。確かにそうなんですね。しかし、私、ちょっと、地元の会社経営者の方に、この制度でやれますよということでお話をしたとき、この事業承継税制自体を知らないんですよ。私は、ひょっとしたら新しい制度を知らないのかなと思ったら、どうもそうじゃない。もとの制度を知らない。

 ですから、我々として、経産省として、中小企業庁として、いい制度をつくりましたよ、ホームページにも載せましたよ、パンフレットもつくりましたよ、これじゃなかなか、今の二千件しかいっていないということと同じではないか、こうなってしまうと私は思うんですね。

 ですから、我々も地元に帰って、中小企業の経営者の方に先ほど申し上げたようなお話もして、これはぜひ使ってもらいたい。そして、税理士さんから話を聞いていますかと聞いたら、まだ聞いていないと言うんですよ。

 だから、そういうこともありますので、ぜひこれについては周知方をお願いしたい、こういうことを申し上げておきたいというふうに思います。

 続きまして、ちょっと順番を変えさせていただきまして、バリアフリーについてお伺いをしたいというふうに思います。

 これは石井国土交通大臣にお伺いをしたいと思います。前国会では、通告をしておりましたができませんで、済みませんでした。

 首都圏の鉄道駅や連絡通路等のバリアフリー化の取組についてですけれども、これから東京オリンピック・パラリンピックを控えて、これはどうしてもやっていただかなきゃならない。海外からもたくさんいらっしゃる。

 そうしたら、どういう印象になって帰るかというと、東京はよかったね、日本はよかったね、そう言って帰られるのか、いや、私はちょっと体が不自由だったんだけれども、日本に行きたいと思って行ったんだが、なかなか移動はできなかったね、こう思って帰られるか、非常に差が大きくなると思うんです。

 このバリアフリーをどう進めていくかということと、駅で、今、JRに地下鉄が乗り入れている、私鉄が乗り入れている、では、乗りかえのときにスムーズに行けるか。私は時々四ツ谷の駅を使うんですけれども、四ツ谷の駅でJRから地下鉄に乗りかえる。我々は階段を歩いていきますけれども、お聞きすると、車椅子の人は、真ん中ぐらいのエレベーターで行って、また外に一回出て移動しなきゃいけない。これはお金もかかるので非常に大変だと思います。

 特に大きな駅について、都内の駅で、大臣に、ちゃんとこうやってやっているよというところがあったら、ぜひ御紹介いただきたいと思います。

石井国務大臣 鉄道は首都圏におけます基幹的な公共交通機関でありまして、鉄道駅について、今後、バリアフリールートの短縮化など、バリアフリーの高度化を進めていくことは重要な課題と考えております。

 例えば、JR東日本の新宿駅におきましては、既に各ホームから改札までのバリアフリールートの確保は図られていますけれども、二〇二〇年までにエレベーターの増設や東西自由通路の整備を行いまして、現在遠回りとなっております一部の移動経路を大幅に短縮することとしております。

 国土交通省といたしましては、このような先進的な取組を普及させるために、鉄道駅の新設や大改良を行う際に、バリアフリールートの短縮化や乗りかえ経路のバリアフリー化、さらに、大規模駅の場合にあってはバリアフリールートの複数化を義務づける方向で、今年度中にバリアフリー法に基づく省令の改正を行うこととしております。

 さらに、二〇二一年度以降の新たな移動等円滑化の目標を定める中で、既存の駅も含めた鉄道駅のバリアフリーの高度化の取組を促進してまいります。

石田(祝)委員 これはよくわかりました。

 それでは、ちょっと別の角度でお聞きします。

 私も新幹線を利用するときがあるんですけれども、この新幹線は大体十六両編成。私は東海道新幹線を使うことが多いんですけれども、そのとき、一編成十六両、座席が千三百二十三座席あるんだそうです。そのうち、車椅子のスペースは一つしかない。これは恥ずかしながら私も初めて知った次第なんですけれども、ちょっと、一つでは余りにも少ないのではないか。

 新幹線で、ゴールデンルートで、羽田か成田に来て、それから東京、浅草なんかを見て京都に行く。飛行機で行く人もいるでしょうけれども、新幹線に乗って富士山を見ながら行きたい、こういう人もいると思いますけれども、必ずしも皆、自分の足ですたすたと歩ける人ばかりじゃない。車椅子を使って行きたい、移動したい、こういう方もいると思うんですが、これについては、大臣、どういうことが今考えられていますか。

石井国務大臣 平成十二年以降、新幹線や在来線特急の新造車両につきましては、バリアフリー法に基づく省令に基づきまして、一編成当たり一カ所以上の車椅子スペースを設けることが義務づけられております。

 一方、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を見据えまして、車椅子スペースの義務づけを原則として一編成当たり二カ所以上とするよう、省令改正を今年度内をめどに検討しているところであります。

 そのほか、新幹線に設けられております多目的室を活用することや、既存車両の改造の促進等各種の方策を講じることによりまして、車椅子スペースの増設に取り組んでまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 これは、お聞きをすると、利用率が余り高くない、こういうお声もあるんですけれども、やはりこれで、申し込めばいつでもオーケーだということが広まれば、またそういう需要も出てくるだろうと思います。

 ですから、これについては一編成一つから二つにするということでありますけれども、そういうお声が出てきたら、また対応はぜひ柔軟にしていただきたいな。列車をつくるときにしかなかなかできないということも聞いておりますけれども、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 それから、障害を持っていらっしゃる方もいろいろ利用されるだろうと思いますので、知的、発達、いろいろな、さまざまな障害をお持ちの方、なかなか見ただけではわからない、しかし本人にとっては大変な障害を抱えている。そういうときに、きょう理事会でもお許しをいただきましたので、こういうものですが、このヘルプマーク、こういう人が、障害がありますよとなかなか口では言えない、これはどこにでもつけられるだろうというふうに思います。

 これについて、実は昨年の国会の審議の中で、総理から、しっかりとこれを進めていく、こういう御答弁があったとお聞きしておりますけれども、その後、経産省でJIS規格にも取り入れてと、こういうお話も聞きましたけれども、全体的にはまだなかなか認知が進んでいないように思いますが、この点、総理、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 ヘルプマークは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方又は妊娠初期の方など、周囲からの援助や配慮が必要である方々がそのことを周囲に知らせることができるよう作成されたものでありますが、障害及び障害者への理解や配慮を促進する上で大変意義があるものと考えています。

 御指摘のように、政府としては、このヘルプマークを昨年の七月二十日にJISとして制定し、国としての統一的な規格決定を行ったところです。これにより、ヘルプマークの国民の理解が進み、全国的に普及していくことを期待しているところでありますが、あわせて、地方公共団体におけるヘルプマーク等の普及啓発の取組を支援するなど、ヘルプマークの全国への普及に向けた取組も進めております。

 これがヘルプマークだということを見た人がわからないと、これはまさに意味を持たないわけでございますから、ぜひ普及を進めていきたいと思いますが、今後とも、二〇二〇年に予定されている東京オリンピック・パラリンピックも見据えて、政府として、周囲に援助や配慮を求める多くの方々への理解や配慮が一層進むよう、ヘルプマークの普及啓発を図ってまいりたいと思います。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

石田(祝)委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 このバリアフリーについて最後にお伺いをしますが、鉄道の駅で、一日三千人という基準でバリアフリーを図ると。地方の方はなかなか一日三千人というわけにはいかないんですが、今大臣からも若干お話がひょっとしたらあったかもしれませんが、二〇二〇年度までに三千人という駅については一〇〇%達成する、KPIで。

 では、その後どうするんだという私は疑問も持ちますし、地方の方はどうなんでしょうか。だんだん人口が減っておりますから余計ハードルは高くはなっているんですが、高齢者が多いことは、これはふえていくことは変わりありませんので、この地方についてはどういうふうなお考えか、ちょっと前向きの御答弁もお願いしたいと思います。

石井国務大臣 都市部のみならず、地方におけるバリアフリーの推進も大変重要と認識をしております。

 利用者数三千人以上の駅におけます段差の解消等を二〇二〇年度までに原則として一〇〇%の駅で実現することを目標といたしまして取り組んでおりまして、現時点で約九〇%の達成状況であります。

 利用者数三千人未満の駅につきましても、地域の実情に鑑みまして、高齢者、障害者等の利用の実態等を踏まえてバリアフリー化を進めることを基本方針として取り組んでおりまして、二〇一六年度末時点で約二〇%の駅がバリアフリー化されております。

 まずは、二〇二〇年度の目標の実現に全力で取り組むことといたしまして、さらには、二〇二一年度以降のバリアフリーの整備の目標についても、今後そのあり方を検討してまいりたいと考えております。

 具体的には、現在、今月上旬の国会提出を目指して準備を進めておりますバリアフリー法の改正や、それに基づく制度の見直しなども踏まえながら、新しい目標のあり方について検討する場を、バリアフリー法改正をお認めいただけましたら、改正法施行後に立ち上げたいと考えております。

 その際には、都市部、地方部それぞれにおける課題等に適切に対応することといたしまして、小規模な駅などのバリアフリー化につきましても、ハード、ソフト両面からしっかりと検討してまいります。

石田(祝)委員 続きまして、農林水産関係でお伺いをしたいと思いますが、TPP11の問題でございます。

 このTPPにつきましては、当初十二カ国でいくということで、安倍総理がオバマ大統領から確約をとって議論に入ったというふうに記憶をいたしておりますが、残念ながらアメリカが、トランプ大統領が離脱をする、こういうことでございます。

 その残りの十一カ国で何とかガラス細工のようにまとめていただいたと思いますが、今後の署名に向けた動きについて、これは茂木大臣にお願いしたいと思います。

茂木国務大臣 トランプ大統領が、石田先生がおっしゃるように、TPPからの離脱を表明しましたのは昨年の一月二十三日でありましたが、ちょうど一年後の先週の一月二十三日、東京で開催されましたTPPの首席交渉官会合、雪の日でありましたが、TPPの協定文、これが最終的に確定し、また署名日を確認し、署名に向けた準備をそれぞれの十一カ国で進めるという合意が調ったところであります。

 昨年の七月、箱根での首席交渉官会議、ここから始まりまして、我が国が議論を主導し、私自身も、昨年十一月のベトナムのダナンの会議で議長を務めたり、その後、関係国に出張、電話会談等々でカウンターパートの閣僚と協議を重ね、箱根からでいいますとわずか半年で署名に向けた準備を整えることができたわけであります。署名日も、三月の八日、チリで行うということを確認いたしました。

 各国とも、これからそれに向けて国内手続を整えるという形でありまして、我が国としても、今後、署名に向けた国内手続を進めるとともに、TPP11の協定と関連の国内法案を今国会に提出すべく準備を進めたいと考えております。

 自由で公正な共通ルール、これに基づきます自由貿易体制こそが世界経済発展の源泉であると考えております。日本がこういった新しいルールづくりを主導する、リードするという意味合いは非常に大きいと考えておりまして、それは、世界経済全体にとってもそうでありますが、日本経済の成長にもつながっていく、このように考えております。

石田(祝)委員 冒頭、トランプ大統領の一般教書の発言に触れたときに、ダボス会議でトランプ大統領が、いいものになるんだったらもう一回入るかな、こういうお話があったということでありますけれども、このことに対して総理としてはどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先日のダボスでのトランプ米国大統領の発言が、TPPの意義や重要性への認識を示すものであれば歓迎したいと思います。TPP11の早期発効が米国のTPPの復帰を促すことにつながる、これがTPP十一カ国の共通の期待であります。

 政府としては、アジア太平洋におけるハイスタンダードな貿易・投資と枠組みの早期確立を図る観点からも、TPP11の早期署名、発効に全力を挙げたいと思っております。

 米国に対しては、引き続き、TPPの持つ経済的、戦略的重要性、なかんずく最もグローバル化や技術革新が進んでいるのが米国であることから、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであることを改めて訴えていきたい。

 これは、米国のプラスは日本のマイナスということではなくて、いわば、日本のプラスになることも米国でプラスになるということであります。お互いに、TPPにもしアメリカが入れば、TPP12全ての国々がGDPにプラスの寄与をするという考え方であります。

 これは、一昨年、トランプ・タワーでトランプ当時の大統領予定者と会ったときから、こういうお話はずっと私もしつこいぐらいに続けてきて今日に至っているわけでございますが、これからもしっかりと、改めて訴えていきたい、このように思っております。

石田(祝)委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、質問をするつもりでしたけれども、ちょっと口頭で申し上げたいんです。

 農林水産大臣、TPPと日・EU・EPAの国内農業対策につきましては、ことしも補正予算で三千百七十億措置をしていただきました。国内農業対策についても、また今回、日・EUのEPAについては林業も大きな課題になっておりますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 また、三月八日のチリの署名にまでこぎつけられた大臣、また長く携わってこられた関係者にも、私は心から敬意を表したいというふうに思っております。

 それで、この農業関係で私がずっと取り組んできている、指摘してきたことは、農作業の死亡事故なんですよ。これについて、なかなか減らない。

 一時期は四百人を超えているときもありましたが、今は、平成二十七年で三百三十八名と、いまだ多くの方が農作業の事故でお亡くなりになったり、これは熱中症も入っているわけですけれども、現実的には、悲惨な話になりますけれども、トラクターで移動中に、道路から田んぼにおりるときに転落ということでそのトラクターの下敷きになったとか、そういう話もございます。

 私の友人もそういうことで、お亡くなりになったわけではありませんけれども、やはり機械に挟まれて片腕がなくなってしまった、こういう事故がございました。

 私は、特に死亡事故についてはゼロを目指す、こういうことでぜひ農林水産大臣に取り組んでいただきたいというふうに思いますけれども、このことにつきまして、林業も含めて、林業はこの後またパネルを出しますけれども、農林水産大臣としてどう取り組んでいかれるのか、お答えをいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 農作業中の事故によりまして、近年は三百五十人前後の方が亡くなられておりまして、十万人当たりの死亡事故発生件数が十六・二件と、建設業六・〇件と比較しても多く発生しています。農作業安全の確保は極めて重要な課題と認識をしています。

 実は、私の地元でも、支援者の御家族が農機具の事故で亡くなられるということも実際にございました。

 このため、農林水産省におきましては、警察庁、厚生労働省、農業機械メーカー等と連携した全国的な安全啓発活動や、事故情報の分析を踏まえた安全対策の情報発信ですとか、農業者に対する啓発ステッカー、これは五十万枚の直接配布、それから日本型直接支払制度がございますけれども、それを活用して、農道や農地ののり面等の危険箇所の補修、そういったものを積極的に働きかけて取り組んでいるところであります。

 さらに、三十年度の予算案におきましては、死亡事故の大宗、八割ぐらいなんですが、これは高齢農業者による事故でありますので、その高齢農業者の農作業安全対策として、新たに、例えば自治体の健康診断と連携をしまして身体機能の測定、安全意識の確認を行って、その結果に応じて注意すべき事項を指導するというような取組ですとか、高齢農業者が所有する農業機械を総点検して、安全な使用の観点から指導する取組等々を盛り込みまして、今、増額をお願いしているところであります。

 いずれにいたしましても、今の目標というものは、平成三十年までに農作業事故による死亡者数を二十五年比一五%減少させる、三百人以下にするということなんですけれども、事は生命に関することでありますので、本来ゼロを目標にすべきであろうと思っておりますが、次の目標は平成三十年の状況を踏まえて設定することにしておりますが、ゼロを目指して取組を強化していきたいと思います。

 林業につきましても、これはチェーンソーなど刃物を使って危険でありますので、同様に、緑の雇用の事業等を使いまして各種安全対策を講じているところでありますが、引き続き、現在の目標、これはやはり一五%減少目標が定められているわけでありますけれども、これの達成に向けて努力すると同時に、三十年度以降についても、できる限りの大きな減少目標を定めて努力をしていきたいと思っております。

 以上でございます。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

石田(祝)委員 もう来ましたので終わらせていただきたいと思いますが、最後に一言だけ。

 農業は労災に特別加入できるんですね。いわゆる雇用者じゃないから入れないと思っている人がたくさんいるんですけれども、特別加入がこれはできますので、ぜひこれは、農林水産省、厚生労働省あわせて、こういうことも示していただきたいと思います。

 済みません。きょう質問しようと思っていて通告していた大臣、済みませんです。少子化担当大臣にもお聞きしたかったんですが、また消費者担当大臣にもお聞きしたかったんですが、まことに申しわけございません。もうちょっと時間をいただきたいなということを最後に申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。

河村委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党・市民クラブの西村智奈美です。

 安倍総理は、安倍政権になって経済状況がよくなった、そして相対的貧困率も下がったというふうにおっしゃいます。しかし、生活実感を伴っていない経済成長は何ら意味を持ちません。

 一人親世帯の子供の貧困率は相変わらず五〇%超え、大変深刻な状況です。一人親の、特に女性の一人親の世帯では、非正規雇用にしかつくことができず、ダブルケア、トリプルケア、こういったことを強いられて、そして体を壊してしまう人たちも少なくありません。こういったところに目を向けることが政治に求められている、私はそう思います。

 そして、一人一人の実質賃金指数、これは厚生労働省からいただいた数字ですが、総理は、総雇用者総数でしょうか……(安倍内閣総理大臣「所得」と呼ぶ)総雇用者所得ですね、数年前から突如として新たな定義で新たなデータを出すようになってまいりましたけれども、そうではなくて、一人一人の働いている人たちがどのくらいの賃金を受け取っているかという実質賃金指数で見ますと、二〇一三年以降つるべ落としに下落し、それ以降、五、六ポイントも低いという状況がずっと今も続いています。こういったことに目を向けることが、私は今政治に求められていると思う。

 さてそこで、今回は、働き方改革について、そして幼児教育の無償化等について質問したいと思っております。

 二〇一三年、日本再興戦略、ここで、いわゆる裁量労働制、これの拡大をするということが盛り込まれました。翌年の日本再興戦略、バージョンアップしたものには、高度プロフェッショナル制度の追加が盛り込まれました。このときに初めて、労働の対価は賃金ではなくて成果で評価される制度へと転換するのだ、こういうふうに、いわゆる脱時間給制度ですね、これが初めて盛り込まれたわけでございます。

 その後、労政審を経て、二〇一五年に労働基準法の改正が提出をされました。ここには、高度プロフェッショナル制度、そして裁量労働制の拡大、これが盛り込まれましたけれども、さすがに、国会にこれを出して、大変問題の多い法案でありましたから、審議がされるというふうに霞が関の方も思わなかったのでしょう、審議されることなく、廃案になったり、通常国会、そのまま閉じたりということが続いてまいりました。

 そして、今回、長時間労働を是正するというふうに旗を振って、働き方改革というものが出てきたわけでございます。柔軟な働き方を可能にするということが言われておりますけれども、果たして本当にそうでしょうか。柔軟な働き方で、労働者がこれで喜ぶような制度なのでしょうか。大変疑問です。

 そこで、まず最初にお伺いします。

 高度プロフェッショナル制度、裁量労働制度の拡大、こういったものを導入したら、働き方はどういうふうに変わっていくというふうに考えておられるでしょうか。あるいは、どういう人たちがこの制度の対象となるというふうにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 今、高度プロフェッショナル制度と裁量制の拡大、一緒にお話をされましたので、一緒にお話をさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、今回の改革、一人一人の事情に応じた多様な働き方が選択できるようにする、そういう社会を実現していく、そういったことで取組をさせていただいております。

 当然、働く方の健康を確保していくということは大前提でありますけれども、それぞれの皆さんが、特に高度プロフェッショナルであれば、プロフェッショナルとして仕事をされている方が、余り時間について言われない中で自分の力を存分に発揮をしていきたい、こういう思いを持っておられる。私も直接聞かせていただいた方もおられますけれども、そういった、働く方の健康は確保しつつでありますけれども、その方の能力を思う存分発揮をしていただく、創造性を発揮をしていただくということにつながっていくというふうに思います。

 また、裁量労働制においても、同じように、自分の裁量で働く時間を変更することによってより効率的に働いていくことができる、あるいは、自分の事情が何かあれば、その時間以外のところで働いていく。実際、現在も裁量労働制を使っているある企業でお話を聞かせていただきましたけれども、そういった形で時間をつくり出して自分の時間を確保する、あるいは診療に行く時間を確保する、そういったこと、さらには、めり張りを使った働き方ができるようになった、こういう指摘もあるわけであります。

 もちろん、現行でもきちんと裁量労働制が適用されていない事例もあることは事実でありますから、そういったことはしっかりと厳正に、我々、監督指導をしながら、今申し上げたそうした働き方を希望する方、そういった方々がその力を十二分に、また、さまざまな制約条件がある中でも働くことができる、こういう環境をしっかりつくっていきたい。こういうことで、今回、高度プロフェッショナル制度の創設、裁量労働制の対象の拡大について、今検討をさせていただいているところであります。

西村(智)委員 お答えになっていらっしゃらないので、私、ちょっと先に進めなければいけないんですが、高度プロフェッショナル制度の対象業務について、先ほど大臣、年収が大体平均の三倍以上と言われる方、俗に一千七十五万円の年収の方であったりとか、それからディーラーの方であるとか、それから研究開発をされている方が恐らくその対象になるであろうということでありました。

 では、そういった方々は、高度プロフェッショナル制度が導入されたときに、よりハッピーな働き方に本当になっていくんでしょうか。

 高度プロフェッショナル制度というのは、今働いているその現状で、仕事量が実はそんなに多くなくて、そして時間内できちんと仕事が終わって、時間がたつまで家に帰れないという人たちに対して適用されるのであれば、高度プロフェッショナル制度というのはとても意味のある制度だと思います。

 しかし、そのディーラーの方、研究開発をしている方、今現在どういう働き方をしておられるでしょうか。しかも、年収が一千七十五万円以上という方、これも私はトリックがあると思う。残業代を含めれば、一千七十五万円という年収レベルは、そんなに皆さんが思っているより高くない、低いものだというふうに思います。

 一体どういう人たちがこの高度プロフェッショナル制度になるのか、今現在どういう働き方をしている人たちがこの高度プロフェッショナル制度の対象になるのか、そこを聞かせてください。

加藤国務大臣 年収の方ですが、多分、先ほどの国税庁の調査、これは全体の給与所得でありますから、当然それには残業代も含まれているんだろうというふうに思います。それで計算して、先ほど三%ということを申し上げたところでございます。

 それから、今どういう働き方をされている方が対象になってくるのか。ここにおいては、一つは対象業務ということ、これは先ほど申し上げましたけれども、それを法律に書くことを原則として、具体的な中身は労働政策審議会で最終的には決めていく。その具体例として、平成二十七年の労働政策審議会の建議において、先ほどお話がありました金融ディーラーとかコンサルティングとか、こういったことが指摘をされているわけであります。実際、そうした立場になっていく、やはりプロとして仕事をしたい、しているんだ、こういう自負を持っている方もたくさんおられるわけでありまして、そこは自分の裁量に任せてやらせてほしいんだ、そして、自由にやらせていただく中で自分の能力を発揮していきたい、創造性を発揮していきたい、そう思っている方々が対象になっていくんだろうと思います。

 この制度は、先ほど申し上げたように、労使それぞれ半分ずつ、半数ずつの労使委員会において五分の四の決議、かつ、こうした働き方をするに当たっては本人が書面で同意をする、こういった手続も入っているわけでありますから、あくまでも、そうした思いを持って、そうした制度がその会社の中で労使で合意できて、そしてみずからやりたいということでそれに挑戦をしていく、こういうことになるんだと思います。

西村(智)委員 労使委員会は誰が指名するんですか。これはどういう選び方になるのか。法律案要綱の中には、労働者側から選ぶということは一言も書いてありませんよね。

 それから、書面でサインをする、あるいは本人が希望しなければそういう制度の対象にはならないんだということなんですけれども、使用者と働く人の関係において、やはり立場は使用者の方が上です。使用者の人から、あんた、次から高度プロフェッショナル制になってくれとか、裁量労働制の拡大の範囲に入ってくれと言われたら、これはなかなか断ることができないのではないでしょうか。

 私は、本来であれば、この高度プロフェッショナル制と裁量労働制の拡大を分けて議論しなければいけないんですけれども、大臣もまとめてお答えになっているので私もまとめての質問になってしまうんですが、これは、長時間労働を既に今している人たちに、更に合法的に、残業代を支払わないで長時間労働を強いる、そういう制度になっていくおそれが非常に強いというふうに思います。

 今でさえ、サービス残業という言葉があり、そして労基署が摘発しているさまざまな事例を見れば、そのほとんどの多くは賃金の不払いですよね。そういったところで、労基署の人員、新年度予算で確保するというふうに言っていましたけれども、わずか五十人です。全国に散らばったら、本当にスズメの涙ほどにしかならない。

 私は、この高度プロフェッショナル制度そして裁量労働制の拡大、これは、過労死、過労自死、これを更にふやしていく大変危険な法律だというふうに思っています。

 しかも、時間によって賃金を支払うというのではなく、成果によって賃金を支払うということになっている。しかし、成果をどういうふうに評価するのか、法律の中に、あるいは法律案要綱の中に、どこにも書いていないですよね。職務評価をするんですか。大臣、お聞かせください。

加藤国務大臣 今申し上げた点は、労使委員会における決議の中において、どうした対象業務にしていくのか、どういった対象の働き手にしていくのか、そういったことを決めるということになっているところでございまして、そこの労使の間の中で最終的、同じことになりますけれども、そこで決めていく、こういうことになります。

西村(智)委員 何も答えてくださっていないので、このままですと、本当にこの高度プロフェッショナル制度、裁量労働制の拡大、過労死促進ということを、大臣、反論できないということになりますよ。

 労使委員会も使用者が指名することができる可能性がありますよね。今まだ法律案要綱の段階ですけれども、どういうふうにこれから書かれていくのかわからないけれども、もし本当に労働者の中から労使委員会を指名できるというのであれば、法律案にきちっと書けばいいんだというふうに思うんです。

 それから、長時間労働の、今現在行われているという状況の中で、更にこれを合法的にできるということになる。成果によって賃金を支払うという新たな制度です、これは。今までの労働法制には、こんなことはありませんでした。

 これまでの労働法制は、時間に対して賃金を支払うという考え方だった。それは、いいも悪いも、今まで七十年間ずっと続いてきた考え方だったんです。だけれども、今回、成果によって評価して賃金を支払うということであれば、必ずどこかで、その成果の評価、職務評価、こういったものが必要になってくるはずなんです。それがどこにありますか。どこで行われるんですか。

加藤国務大臣 まず一つは、労使委員会でありますけれども、過半数代表者の選出方法については、使用者の意向による選出は手続違反に当たる、これを省令にしっかりと規定をしていくということでありますから、それに違反していれば、当然その決議は無効になる、こういうことになるわけであります。

 それから、今お話があった評価云々でありますけれども、どういう仕事を対象にしていくのかとか、そういったことはきちんと明確にして、決議の中においてそこをしっかりと明確にしていく、こういう中身になっているところでございます。

西村(智)委員 いや、今何をお答えになったのかわからなかったんですけれども。

 つまり、その職務評価は、どこかではやるということになるということですか。どういうことなんですか、今の答弁。

加藤国務大臣 もちろん、当然、職務評価をする前に、どういう仕事がその人に与えられるかということをはっきりしなければ職務評価はできないわけでありますので、そういったところは、先ほど申し上げた労使委員会の決議、そういったところでやり方を決め、そして、あとは個々の、それぞれの相対の中で、この人間に対してどういう仕事をしていくのかということを提示していく。そして、結果においてそれはもちろん評価をされるということになるわけでありますけれども、それはこういうことをするということを前提に、当然、その年は、一年間なら一年間、そうした形で働く、そして、その結果として、また翌年どうするかというのはまたその中で決めていく、こういうことになるんだろうと思います。

西村(智)委員 成果に対して賃金を支払うわけですよ。これは日本再興戦略の中でも、時間ではなく成果で評価される制度へと変えるのだということだから、成果が出るものに対して対価が支払われるし、そうでなければ対価は支払われないということになりますよね。それは、毎年毎年の更新のことを言っているのではなくて、どうやって評価をされるのかということを私は聞いたんですけれども、今のだと全く答弁になっていないです。これだと、労働法制の大転換に大変理屈の上で大きな欠陥を含んだままということにもなりますので、そういった意味からも、私はこれは賛成できません。

 裁量労働制についてちょっと一点伺いたいんです。

 裁量労働制、現在も問題がある、これは大臣もお認めになりました。たしか年末に、大手の不動産会社が裁量労働制を悪用していて、営業している人たちを大勢、裁量労働制の枠に入れていたということでした。

 これは厚生労働省からのデータでも明らかになっていますけれども、年収三百万未満の人たちも、現在、裁量労働制の対象に既になっております、年収三百万未満の人たちも。

 高度プロフェッショナル制は、まあ、曲がりなりにも一千七十五万という年収の区切りがあるようです。しかし、裁量労働制の拡大は、これは年収三百万未満の人たちもなっている。こちらは年収要件はないんですか。

加藤国務大臣 裁量労働制については、年収については特に要件はございません。ただし、現在で、そうした勤続年数については三年以上ということで指針で示しているということでございます。

西村(智)委員 年収三百万未満ですから、恐らく相当数の方が入ってくるというふうに思うんですね。しかも、今の裁量労働制は企画業務型など大変業務が限られているわけですけれども、今度はそこに二つの類型が新たに加わってくるということになると、私は、相当数の方がこの裁量労働制の枠に入ってくると思います。

 つまり、みなし時間、労働時間に何時間かの残業時間をみなして労働時間として、それに対して対価を支払うということになっているわけですけれども、実際には、皆さん、みなしの労働時間は大体平均すると八時間ぐらいなんです。だけれども、実労働時間は大体九時間を超えています。最長の者の平均でいうと十二時間です。もう四時間も、いわゆるサービス残業的な残業を既に今の裁量労働制の中でやっているというのがこの制度の問題で、それをまた拡大するというのは、私は、サービス残業を更にふやす、長時間労働を更に促進することになりかねない、こういうふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 先ほど西村委員御指摘の件は、ある不動産会社の件でありますけれども、これは、明らかに裁量労働制の適用できない業種に適用していたということで、監督指導を行ったところでございます。

 それから、今の御指摘でありますけれども、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合には、労働基準監督署がその適正に向けた指導を行っているところでございますし、また、みなし労働時間を決めるというのも、先ほど申し上げた、半数以上を労働者で構成する労使委員会の五分の四以上の多数で決議をする、こういうことにもなっております。

 またさらに、今回、今我々議論している法改正においては、裁量労働制の適正化に関する指針について、労働基準法に指導のための根拠規定を設けていく、そして、これにより労使に対し指導助言を行うということでありますから、みなし労働時間と実労働時間に乖離がある場合については、法に基づいた厳正な監督指導を行っていく、こういうことになります。

西村(智)委員 今現在、もう既にそういう乖離があるわけですね。これに対して、大臣は、それは聞かれればちゃんと是正指導はしていきますというふうにおっしゃるんでしょうけれども、今の体制でそれはできていないじゃないですか。

 これでまた対象を拡大すれば、指導すべき事業所数がもっともっとふえますよ。そして、残業時間がどんどんふえる。サービス残業として今は違法なものというふうに位置づけられているけれども、今度、裁量労働制の枠の中に入ったら、それは合法的なサービス残業なんだ、誰もチェックができなくなります。労基署も一生懸命頑張っているのは、それはわかる。だけれども、私は、今のこの現状の中で裁量労働制の拡大をやったら、本当にアリの一穴になって、高度プロフェッショナル制も同様です、どんどんどんどん対象者が広がってくることになる。

 労働者派遣法を思い出してください。対象業務は最初十三でした。だけれども、経済界からの求めに応じて二十六業務にまで拡大をしました。常に、こういうふうに、穴があいたらそこからどんどん広がってきて、働く人たちの権利が脅かされるというのがこれまで何度も繰り返されてきたじゃないですか。

 しかも、この長時間労働は、日本においては、過労死、過労自死と大変密接に絡んでいる本当に深刻な問題です。何人亡くなっているんですか、過労死で、過労自死で。何人亡くなっているか、大臣、御存じですよね。労災の認定件数もふえ続けています。精神障害で過労自死をした人の件数、それから過労死をした人たちの認定件数も決して減ってはおりません。

 こういったケースをもうふやしたくない、一人でもこういう人たちをもうつくりたくない、そういう思いが大臣にはないんですか。

加藤国務大臣 まさに、過労死で亡くなった方々、これまで、それぞれおられるわけでありますけれども、そうした方々に対して、二度とそうしたことを起こさせない、そういうことで我々は取り組んできたわけでありまして、そういった意味で、長時間労働についても、これまで労働政策審議会で議論されてきたけれども答えが出なかった。

 それに対して、今回は、上限規制を入れるということで労使の合意も図ってきたわけでありまして、そうした意味で、私たちは、これまで以上に長時間労働を是正して、日本において、まさに過労死という言葉、これは英語にもフランス語にもないというふうに聞かしていただいておりますけれども、それが、それぞれの国で日本語の過労死という言葉が使われている、こういった状況をなくしていく、そのために全力で取り組んでいきたい、こう思っております。

西村(智)委員 今回の働き方改革の中には、確かにいい項目もあります。中小企業の割増し賃金をちゃんと払うようにするとか、有給休暇をちゃんととらせるようにするとか、そういうところは私たちも賛成したいんです。だけれども、高度プロフェッショナル制度、それから裁量労働制の拡大、こういった、言ってみれば大変おかしな、邪悪な仕組みが一緒になっているものを、私たちはとても審議はできません。抱き合わせでどっちも通してくれ、これはもう、とても虫のいい話だというふうに私は思います。

 それから、今回の法案の中で、同一労働同一賃金について大変評価する声も聞かれるようでありますけれども、我が国のジェンダーギャップ指数、皆さん御存じのとおり、大変低いです。百四十四カ国中百十四位。特に政治分野、そして経済分野、ここでの順位が非常に低いことが問題になっております。

 今回の働き方改革は、どの程度女性の働き方に着目をして行われたものになっているんでしょうか。私は、今回の改革で男女間の賃金格差が是正されていくというふうにはなかなか思えないんですけれども、女性の働き方についてどの程度着目をして今回の働き方改革は話し合われてこられましたか。

加藤国務大臣 一つは、先ほど申し上げた長時間労働の是正を図ることによってワーク・ライフ・バランスを保っていく、バランスをとっていくようにしていく。そうした中で、特に高齢者あるいは女性の方、さまざまな条件もあって、例えばフルタイムプラス今のような残業が前提になっているのではフルタイムでは働けない、それで結果的にパートタイムで働いている方もいらっしゃるわけでありますから。

 そういった意味でも、長時間労働を是正していくということによって、女性の方、あるいはそうした多少の制約条件があってもフルタイムで働ける、そういった可能性もつくっていくことになり、また、それはその方の働く機会をふやしていく、あるいは働くことを通じてその方の思いを実現していける、こういうことにもつながっていくんだろうと思っております。

 それから、同一労働同一賃金の背景にあるのは、非正規で働く方の処遇の改善であります。

 そして、今、日本全体の非正規で働く方は働いている方の全体の四割でありますけれども、特に三十代後半の女性は半分以上が非正規で働いておられます。そういった皆さんも、不本意ながら、本当は正規で働きたいけれどもという方は決して多くなく、約一割少々ということで、残りの方は、さまざまな制約条件がある中でパートタイム等の働き方を選択されている。

 しかし、今現状を見ると、あるいはヨーロッパと比べると、一概に、単純には比較はできませんけれども、ヨーロッパでは、フルタイムで働く方を一〇〇とするとパートタイム等の方は約八〇に対して、日本は六〇、こういったことにもなっているわけで、そういった形での処遇を改善していく。

 そのために、もちろんパートタイムの方の給与の引上げ等を今図っているわけでありますけれども、あわせて、不合理な待遇差の改善、これを図ることによって、そうした形での働き方の処遇の改善、あるいはそういう形で、働くことに対するやる気とか誇りとかそういったことも高まっていく、このように考えております。

西村(智)委員 その不合理な待遇の判断のときに、実は私は、日本型の雇用慣行の中でずうっと問題になってきた女性に対する差別的な雇用慣行、これは実は問題になっていなかったというふうに思っているんです。

 例えば、転勤ができるかどうか聞かれることがあります。それによって雇用管理区分が分かれるということは往々にしてあります。これは生活者にとっては大変厳しい話です。

 転勤を強いられる、そうすると、女性の方などはやはり特に、転勤できませんというふうに言う。そして、それでもうコースが違ってしまって、コースが違うから、あなたはもう低い賃金体系でいいんですということになってしまう。

 ところが他方、転勤できますよというふうに言われて、高いコースに行った男性はどういう賃金体系になっているか。もちろん転勤していく人もいるんでしょうけれども、何と、場合によっては、コースだけ変えた後に、転勤させないでずっと同じ勤務地にいるなんというケースがあるんですよ、大臣。

 こういう差別的な慣行を直していかないと、本当に正規と非正規の壁はなくなっていかない。そこに男女間の賃金格差という目線を入れていかないと、そして、仕事と生活の両立をできるように、合理的な配慮を必要としているんですよというその法規範を入れていかないと、私はここはやはり直っていかないというふうに思っているんです。

 大臣、これをやるつもりはありませんか。

加藤国務大臣 今回の同一労働同一賃金については、現行のパートタイム労働法とか有期契約法の中にありますけれども、職務の内容あるいは変更あるいはその他の事情、これらを踏まえて、その合理性があるかないかということを判断していくということになるわけであります。

 今お話がありますように、全国で転勤する人と、その地域だけで残る方、そこをどう評価していくのかということはあるんだろうと思います。

 ただ、今おっしゃるように、そういうことになっているけれども、見ていると実態はその方はずっとそこにいるということであれば、それはそういった体系になっていないんだろうということにもなっていく、そこはよく見ていかなければならないのかなというふうに思います。

 また一方で、常に転勤が必要なのかどうか、そういった議論というのはもちろんされていくべきところはあるんだろうと思いますが、今回の議論においては、先ほど申し上げた処遇やあるいは配置転換、そういったものについて、現在の法律を前提にしながら、さらに、一つ一つの処遇、基本給において、賞与において、通勤手当において、それぞれがどういうことになっているのか、一個一個見ながら、不合理さがあればそれを是正していこう、こういうことになるわけであります。

西村(智)委員 大変長くお答えをいただいたんですけれども、結論としてはやる気がないということがよくわかりました。

 私たちは、男女間の賃金格差を是正するためのILO条約、これに沿った形で改正案を提出したいというふうに考えています。

 総理は、よく対案を出せというふうに、この場でも何度も何度もおっしゃいました。私たち、対案は出してきたんです。だけれども、提出しているのにそれを国会で審議されないままつるされる、与党の、特に自民党国対の方から、審議しないということをもう最初から言われることがたびたびありました。

 せっかく出す対案です。ぜひ審議をしようと、自民党総裁である総理の方から党の方にも言っていただけませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ここに私は自由民主党の総裁ではなくて総理大臣として、いわば今般提出した予算あるいは行政、外交等について答弁をする義務を負っているわけでございますが、国会については国会がお決めになることだと思います。

西村(智)委員 また逃げられた。そうであれば、すぐ対案を出せとか言わないでいただきたいというふうに思うんですね。

 次に、幼児教育の無償化について伺いたいと思います。

 きょうが二月の二日。一月の末から二月にかけては、多くの自治体や多くの施設で、幼稚園、保育園、こういったところへの入園の許可、不許可、これが通知される時期であります。多くのママさん、パパさんたちは、この時期を本当に複雑な思いで迎えておられます。

 私も、うちも、昨年、保育園に落ちました。途方に暮れました、本当にどうしようかと。幸いなことに多くの方々から人の手をかりることができて、今に至っております。

 しかし、本当に、この時期、途方に暮れている人たちがまだまだたくさんいらっしゃる。待機児童が今なお何万人といる。そして、これから恐らく、女性活躍促進と言われていますから、働く女性がふえてくれば、もっともっとふえてくる。それから、幼児教育の無償化をやって、その対象園が限られるということになれば、その無償化の対象になる園に入りたいということで、希望が殺到することも予想されます。そうしたら、ますます待機児童がふえてくるというふうに思います。

 私は、幼児教育の無償化、お金が無尽蔵にあったら、ぜひやっていただきたいと思います。だけれども、今、限られた予算の中で、そして、この消費税という国民の皆さんからお預かりをする大事な大事な税金、二兆円というお金、これを本当にどこに効率的に使っていかなければいけないかということを考えたときに、優先度、あるいはその使い道、その額、範囲、これについて本当に十分議論がなされたのかというふうに大変疑問に思うんです。

 総理、この幼児教育の無償化については、昨年の総選挙のときに突如として総理が言い出されたことでありました。聞きましたら、自民党の中でもほとんど議論されないまま総理が発言をしたんだということであります。その後、議論をする部会長の方は大変お困りになったというふうにも新聞報道などで読みました。

 この総選挙、大義なき解散というふうにも言われておりました。その大義なき解散を正当化するために、あえて消費税の使い道を変えるという大きな大きな玉を出して、あえてそのスローガンとして使った、こういうことだったのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 いわば大きな玉を出したということはもうおっしゃったわけでありまして、大きな玉であるということは認められたんだろう、こう思います。

 つまり、二兆円規模の恒久的な財源を得るというのは、一気にですね、これは大変なことであります。それをやる上においては、やはり国民の声を聞く必要があるというのは当然のことであろう、こう思ったわけであります。

 解散についてお話をされたんですが、解散というのは、解散したからには、我々は政権を失うリスクをとるわけであります。解散したら、自動的にもう一回我々が過半数をとれるような甘いものではないんだろうと思います。そういう中で私たちはあえて、政権を失うリスクはあるけれども、消費税の使い道を変える以上、我々は解散をするべきだ、こう考えたところであります。

 そして、委員もお認めになったように、これは大きなまさに政策であるということでございます。そのことは申し上げておきたいと思います。

西村(智)委員 この消費税は、社会保障と税の一体改革で大変長い時間をかけて議論して、その使い道を決めました。しかし、今回はわずか二カ月です。大変拙速なやり方だったと思う。その使い方、これまでの経過については、私はやはり問題視しなければいけないというふうに思います。

 それから、今回の幼児教育無償化、全ての園が対象になるというふうに一瞬私も思わされました。何の注意書きもなかったので、認可外の園も含まれるんだというふうに一瞬思った。だけれども、認可外の園はどうも含まれない。そうしますと、認可外から、先ほども申し上げましたように、認可園を目指して競争率が激化して、そして待機児童が更に増してくるということが予想されます。

 ママたち、パパたちの思いは、まずはこの待機児童の問題を先にやってほしいということなんです。そして、そこで働く皆さんの処遇を改善して、いわゆる保育の質、これを改善してほしい、維持してほしいということなんです。それをまずはやるべきではないか。

 総理は、平成二十九年度の末までに待機児童をゼロにすると約束をしました。だけれども、それができないといって、直前になってその約束をほごにして、そして新たなパッケージを出すというふうに言った。こんな、約束をしてできなかったということを見せつけられますと、本当に、子供たちを抱えて、どうやったら仕事と生活を両立できるかというふうに考えているママたち、パパたちの気持ちには決して応えたことにはなりません。

 まずは待機児童対策、そして働く保育士の処遇改善、人件費、ここにしっかりとお金をつけてもらいたい、そこが最優先課題だと思いますが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 西村委員おっしゃるように、待機児童の解消、待ったなしの課題だと捉えておりまして、最優先で取り組んでいきたいと思っております。

 新しい政策パッケージにもあるとおり、幼児教育の無償化につきましては、来年、二〇一九年度から段階的に進めて、二〇二〇年にフルパッケージで実施をしたいと考えておりますが、喫緊の課題であります待機児童対策につきましては、今般の補正予算案に盛り込みました施策を含めて、今年度からスピード感を持って取り組んでいきたい、こんなふうに考えております。

 三十二万人分の受皿整備をきちんと前倒しをして、二〇二〇年度末までに進める、そのために、もし細かく必要でしたらまた御説明を申し上げますが、こういった受皿の整備を進め、同時に人材の確保、これが保育の分野は極めて重要でありますから、保育士さんの処遇改善、こういったことも進めてまいりたい。

 どちらをとるかという問題より、待機児童の解消、そして子育て世代の負担を軽減するこういった幼児教育の無償化、同時に進めていきますが、若干、スピード感としますと、待機児童の解消、こういったことに最優先で取り組みたいと思っております。

安倍内閣総理大臣 一言だけ加えておきますと、認可外の保育所を対象外にするということは、これは誰も言っていませんし、そんなことは決めていません。認可外の保育所をどうするかということは、まさにこれから議論していくことでございます。

 そして、待機児童の解消につきましては補正予算と来年度予算で直ちに措置をしていくわけでございますが、無償化については一九年から徐々に始めまして、二〇年度にということでお約束をしているところでございます。

西村(智)委員 待機児童対策というのは、達成時期がなかなか見込めないものです。総合的にやっていかないと、本当に、同時に幼児教育無償化でやっていくというのでは、これはとても時間が間に合いません。

 幼児教育の無償化は、極論を言えば、財源があればすぐできるんです。すぐできるんです。制度設計さえできてしまえば、そして財源があればすぐできる。しかし、待機児童対策というのは、園をつくったり、あるいは保育士の処遇を改善したり、また土地を探したりということで、時間が非常にかかりますから、まず最優先でここに最大限の力を傾注してほしいということなんです。

 保育士の皆さんの処遇、今、まだ非常に低いです。全産業平均と比べても恐らく十万円近い開きがあります。これまでの待遇改善で一体どのくらいの待遇が改善されましたか。そして、これからどのくらいの待遇改善が見込まれますか。

加藤国務大臣 これまでも、待機児童の解消ということをしっかりやっていく、そのために、今委員御指摘のように、受皿そのもの、ハードをつくると同時に、そこで働く保育士の方々をしっかり確保していく、そして、そのためにも、そうした方々のさまざまな負担の軽減、労働負担の軽減も図りながら処遇の改善をしていくということで取り組んでまいりました。平成二十九年までにおいて合計で一〇%の改善、加えて、技能、経験に応じて月額最大四万円の改善を行ったところであります。

 こうした形で取り組む中で、賃金構造基本統計調査、これは厚生労働省の調査でございますけれども、実は保育士の給与は平成二十五年まで減少しているんですね。二十六年から上昇を始めました。そして、この間、ボトムであります平成二十五年が三百九・八万円、それが平成二十八年では三百二十六・八万円ということでありますから、約十七万円ぐらい上がっているということになるわけであります。

西村(智)委員 しかし、全産業平均と比べればまだまだ大きな乖離があります。何もやっていなかった、何も取り組んでいなかった、そういうふうには申し上げません。だけれども、もっともっと加速する必要があるということは強く申し上げたいというふうに思います。

 最後に、今、このように、働いている皆さん、それから働きながら子育てをしている皆さん、大変な状況です。みんなが払っている税金が適切に使われているのか、そういう意味で、この国会審議、大変注目をされていると思います。その中で、私はやはり、佐川国税庁長官、しっかりと国会に出てきていただいて、今疑惑と言われているものについて長官自身の口から明確に話をしてもらう必要があると思う。

 総理は、適材適所だと佐川長官のことをおっしゃいました。適所にいる適材であれば、しっかりとこの場に出て話すことは可能なはずです。なぜ隠すんですか。国会にしっかりと出てきていただいて、証人喚問を行ってもらうように強く要望して、私の質問を終わります。

河村委員長 この際、阿部知子君から関連質疑の申出があります。西村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党・市民クラブの阿部知子です。

 国民の生命と財産を預かるという政治の第一の仕事、私は、せっかくの予算委員会ですから、きょうはなるべく多く安倍総理に御答弁をいただきたいと思います。実は、きょう午前中、与党の皆さんの御質疑でありましたが、総理が一部手持ち無沙汰のようでもありましたので、私はなるべく総理にお尋ねし、また、通告していないからとかではなく、わかりやすい、平易な言葉で総理に御答弁をいただきたい。国民に思いが伝わるような答弁をしていただければと思います。

 まず一点目は、この委員会でも補正予算の審議の折にも取り上げられました、沖縄の基地負担の問題でございます。

 実は、私は昨日、短い時間でしたが、沖縄の普天間の第二小学校を見に行ってまいりました。これまでのいろいろなやりとりを聞いていて、私がどうしてもこれは実感してこなければよくないだろうと思って、見に行ったわけです。

 総理に一問目です。

 総理は、この小学校の上にあわや七キロのヘリコプターの部品が落下する、場合によっては大事故になったであろうこの現場というものをごらんになったことはあるでしょうか。これが一問目です。

安倍内閣総理大臣 その事故が起こった後の現場については見に行っておりません。

阿部委員 もちろん、事故が起きていないときの現場でもいいのですけれども、実は、小学校の校庭のすぐ横に、小さなブランコがあったり、ゴムの、子供たちが遊ぶようなタイヤが積み上げられて積み重なっていて、あれ、ここは何かなと思ったら、普天間の幼稚園でした。

 すなわち、今小学校の園庭のことを言われていますが、実は、この幼稚園も園庭が使えません、上を戦闘機が飛ぶかもしれないから。ずっと、去年の十二月十五日から、小学校の園庭も使えない、幼稚園の園庭も使えない。成長盛りの子供にとって、外に出られない、学校に行っても幼稚園に行っても。

 こういう状態に国民が置かれている、沖縄県民が置かれている、このことが私はとても異様だと思いましたし、きのうは天気が悪く、空も曇り、今にも雨が降りそうな時間帯でした。でも、その寂しい園庭を見て、私はこれは異様なことだと改めて実感しました。

 小野寺防衛大臣に伺います。

 私は、こうした異様なことが日常化している沖縄の問題というのは、事故が起こる都度、我が国の防衛省はもちろん、沖縄の皆さんももちろん、飛行停止や事故の原因究明をアメリカ側に求められます。アメリカも、それを受けとめてかどうかわかりません、一応文章で、いついつ飛行再開をしました、原因はかくかくです、そういうことを出されます。

 その一覧を防衛省に要求して、出していただいたのがパネルの一枚目であります。

 日にちが入ったところは、日本政府からも飛行停止要請をして、飛行が停止されて、再開。横バーになっているところは、飛行停止を求めていないので再開等の文章もないというものであります。

 改めて見てみると、例えば、普天間のこの小学校の窓の落下問題、下から四段目でありますが、既に防衛省は飛行再開の了解を十二月十八日に出しておりまして、アメリカは十二月十九日から飛んでおります。

 防衛大臣、今ある状態というのは防衛省も認められた上でのこととこれは思わざるを得ませんが、この点についてはいかがでしょう。

小野寺国務大臣 今の、阿部委員からお話がありました、昨年十二月十三日、普天間第二小学校での窓の落下事案ということであります。

 私も現地に参りまして、今委員がおっしゃったように、実は、小学校に隣接する入り口のところには幼稚園があります。一体化しています。大変これは不安な状況だと確認をしております。

 私どもとしては、この第二小学校で発生した米軍CH53Eヘリの落下事故に関して、その後、普天間第二小学校の校庭が使えない状況になっていることに関しては、大変遺憾に思っております。

 この事案が発生した直後から総理の御指示がありまして、米側に確認をしました。米側は、今般の事故の原因については人的ミスであり、同型機の全ての搭乗員、整備員及び地上要員に対して再教育等の再発防止策を講じたほか、普天間第二小学校を含む全ての学校の上空の飛行を最大限可能な限り避けるよう指示をしたとの説明がありました。

 防衛省としては、今回の米側の措置、米側がそう言っているからといって、そうだとは思っておりません。普天間第二小学校にカメラを設置し、監視員を配置し、そうしたところ、本年一月十八日に米軍機が上空を飛行したという報告がありました。米側に強く申入れを行っています。米側はさまざまなことを言っておりますが、私どもとしては、上空を飛んだものと思っております。現在も私どもは監視をしっかりしております。

 なお、上空を飛んだということを確認し、申入れを行った一月十八日以降、米軍機が上空を飛行したという報告は受けておりませんが、私どもとしては、子供の安全が第一です、これからもしっかり監視してまいります。

阿部委員 一体監視をいつまですればいいんでしょうか。ずうっと監視をして、子供たちはせっちん詰めのように園庭にも出られない。子供にとって遊びというのは、安倍総理はわかりますよね、重要な幼児教育の大事な私は要素だと思います。外に出て走ることもできない。監視していればいいという問題じゃないんだと思います。日本側の主張と米側の主張のそご、違い、相手はなるべく飛ばないと言ったけれども飛んでいる、では、どこで詰めていくのでしょうか。

 同じような事態がもう一つあります。これも、我が党の本多平直議員と小野寺防衛大臣のやりとりの中で明らかになったものですが、お手元の赤字の資料の部分であります。

 これは、CH53Eヘリ、同じですよね、同じ型のヘリが、十月十一日、少し前に東村に炎上して着陸した。これも質疑に出ておりました。この事案の場合は、実は、防衛省が了解や理解をする文書を出す前に米側は飛行を再開しております。こんなことで、一体日本の主権はどうなるんでしょうか。

 これは、十八日にはもうアメリカは飛んでいるんです。二十六日に日本は文書を出した。この文書を持ってきてくれと言いましたが、相手側への手紙なのか申入れなのかもはっきりしないような、まとめたものを持ってこられただけでした。

 一体なぜこういう事態は起こるのですか。飛ばないと言っていた飛行機は飛ぶ。飛ぶことも認めていないのに勝手に飛ぶ。

 防衛大臣として、こういうアメリカ側とのそご、どこに詰める場所が、どの場で、どの会議体で詰めようとなさっているんですか。二点目です。

小野寺国務大臣 先般も同種の事案が、本多平直委員から私の方に質問がございました。

 昨年十月十一日に発生した米海兵隊のCH53Eヘリの事故につきましては、地元の皆さんの不安の声や事案の重大性を踏まえ、私から飛行停止を申し入れ、実際に米軍は同型ヘリの飛行を停止させました。さらに、米側は九十六時間飛行停止を行う旨公表しましたが、日本側の要請も踏まえ、実際には約一週間かけて安全確認を行うなど、米側には一定の配慮が見られたところです。

 他方、安全性に関する米側の判断の根拠についての説明が十分とは言えない状況の中で、十月十八日にCH53Eの飛行が再開されたことはまことに遺憾であり、引き続き、安全性に関する米側の判断の根拠について説明を求めてきました。その際、専門的知見を有する自衛官を現地に派遣し、事故現場の状況を確認するとともに、安全性に関する米側の判断の根拠等について確認をしたところであります。

 具体的には、米側の初期調査において、飛行中のエンジン火災がCH53Eの機体の構造上のふぐあいに起因するものであったと判断する材料はなかったということ、日本にあるCH53E全機について、エンジン火災に関係するエンジン本体、燃料系統等について徹底的な安全点検が行われたこと、全搭乗員、整備員に対するマニュアル等の再教育、安全に関するブリーフィング等が実施され、内部規則で定める技能基準が満たされていることが確認されたことなどを確認し、防衛省として、米軍がCH53Eの飛行を再開するまでに飛行の安全を確認するための一定の合理的な措置がとられたと判断するに至り、その旨の公表をいたしました。

 私も、十二月二十五日に事故現場に行き、被害に遭われた牧草地の所有者の方に御意見を伺いました。防衛省としては、適切な補償を行うよう、被害の実態調査や日米間の協議を進めてまいります。

 このようなことに関して、私どもとして、米側に対してあらゆるレベルで申入れを行っております。私からは、マティス長官に対して、昨年来、毎月のように事故が起きているということをお話ししました。マティス長官からは、謝罪の言葉がありました。また、安倍総理からトランプ大統領に対して、在日米軍の運用に対しては、安全の確保が大前提であるとの我が国の立場をしっかり伝えたところであると思います。

 防衛省としては、引き続き、米側に安全を求めてまいります。

阿部委員 るる御答弁いただきましたが、私の問いには答えていないと思います。いいよと言ってもいないのに飛んじゃう、飛ばないと言っているのに小学校の上を通る。こういうことが繰り返されて、一体、属国でもあるまいに、お互いの主権はどこに行ってしまうのでしょう、国民の安全と安心は。

 私は、こういうことが相次いでいる現状、これはどこの場で話されましたかと聞くと、普通では、日米合同委員会の事故の話合いの場所なのですかなどと聞いても、防衛省は一切答えません。どこでやっているかも答えない、国民にも説明できない。そんなことで本当に米軍の駐留というのが認められるのか。

 ちょっと待ってください。私は、これは河野大臣に伺いたいんです。お願いします。

小野寺国務大臣 米軍の最高指揮官は、これはトランプ大統領でありますが、マティス国防長官が私のカウンターパートであります。その大臣レベルで、この問題については、昨年の何月、何月、何月、ことしの何月という具体的な事例を挙げて、私どもとしてしっかり安全性を求めております。

阿部委員 河野さんにお願いします。

 そうやって求めても現実に何もなっていないから、子供たちも不安だし、親御さんも不安だし、沖縄の人々だって不安ですよ。

 どこの場でどう詰めているんですかと私は伺いました。河野大臣、お願いします。

河野国務大臣 在日米軍をめぐる諸問題については、今防衛大臣から御答弁があったとおり、大臣と長官レベルを含め、日ごろからさまざまなチャネルで米側と意思疎通を行っております。

阿部委員 もちろん、さまざまなレベルで行わなければ困るわけですよ。日本の国土であり、主権者国民が暮らしていて、未来である子供たちがそこにいるんだから、そんなことは当然なんです。

 私が今伺ったのは、こうしたお互いの意見が違うこと、約束したのに守られないことはどこで話されるんですかと。その中で、日米合同委員会というものの俎上に上がってきているんですかと河野大臣にはお尋ねをいたしました。

河野国務大臣 日米合同委員会を含むさまざまなチャネルで日ごろ調整をしているところでございます。

阿部委員 そういたしますと、日米合同委員会の内容って一切国民に明らかにならないんです。いつやりましたか、どんなテーマでしたか、言えません、話せません。国民から信頼を得られるわけがありません。沖縄県民から信頼を得られるわけがありません。

 河野大臣、こういう事態に対して、河野大臣はかつて、日米地位協定の改定をすべきだということを御自身でまとめられたことがあるかと思います。特に、合同委員会のあり方については、大臣がおまとめになったものはとてもよくできていると思いますが、例えば、日米合同委員会の公表。何を話したのか、それすら国民は知らない、おかしい。また、地元自治体の声は一切入らない、これもおかしい。この二点を、河野大臣がつくられた原案、私、今も持っておりますが、その中にはあったかと思いますが、今はどうお考えですか。

河野国務大臣 日米間の忌憚のない意見の交換や協議を確保するために、日米合同委員会やその下部での合意事項、議事録については、日米双方の同意がなければ公表されないというのが政府の方針でございます。

阿部委員 そうやって公表しないから、余計国民の不信と、その結果、日米関係は悪化するんですよ。

 大事と思われるなら、総理、伺います。こうやってやぶの中で全てやっています、やっていますと言ったって、国民はわからないですよ。何を信じればいいんですか。私を信じてくださいとおっしゃるなら、公表されたらどうですか。あるいは、地元の沖縄の皆さんをこの合同委員会の中に地域部会のようにして入れたらどうですか。これらは、実は全国の知事たち、基地のある知事たちのまとまった要求で、渉外知事会から出されていることでもあります。

 沖縄だけの問題じゃない。神奈川の空だって落下物があるかもしれない。お地元の空だってあるかもしれない。国民の生命と財産を守るんだったらば、公表して説明責任をきちんと国民にやっていただきたいが、どうですか、総理。

河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、忌憚のない意見の交換や協議を確保するために、日米双方の同意がなければ公表されないことになっておりますが、政府として、米側と協議の上、日米合同委員会合意を可能な範囲で公表し、外務省のウエブサイト上に掲載してきているところでございます。

阿部委員 確かに、沖縄国際大学にヘリが落ちたときにはその合意文書は発表されましたね。そういうときもありました。

 でも、今ここに起きている普天間の事案、あるいは東村の問題、私が指摘した。違っているのにお互いが、勝手に飛んで、何も国民に説明がない。これも公表されるべき事案ですよ、合同委員会でやっているなら。

 総理、お願いします。総理、私はこれだけ丁寧に御説明したんですから、総理にお願いします。

小野寺国務大臣 私も丁寧に説明しているつもりでありますし、先ほど来、今回の米軍のヘリの事案については阿部委員から累次お話がありましたが、その際、私どもとしては、米側に徹底的な検証を求め、再発防止を求めております。

 そして、米側からさまざまな報告がありますが、これは、自衛隊の専門的知見をもって、それが納得できるかできないか、できない場合にはできない状況で、米側には再度確認をする、そのやりとりをさせていただいております。

 そして、その内容につきましては、私どもとして、米側に伝達するだけにとどめず、地元の皆さんにも公表し、情報提供できるようにしております。

 いずれにしても、日米の合同委員会の中では米側の了承がないと難しいという外務大臣のお話がありましたが、私ども防衛当局としては、私どもができる限りの情報提供は、しっかり伝えているつもりでございます。

安倍内閣総理大臣 基本的には防衛大臣から答弁させていただいたとおりでございますが、米軍機の事故への対応については、今、阿部委員が例として挙げられました平成十六年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故があったわけでありますが、その際に米側に飛行停止を求めたわけでございます。

 しかし、これ以降も残念ながら米側はこうした事故がずっと起こり続けてきたわけでございますが、その後は、この国際大学以降は、残念ながら事故があったとしても米側に飛行停止を求めてこなかったのでございまして、我々の政権交代前もそうであります。

 そこで、我々、これに対しまして、安倍政権においては、地域住民の方々の安全が最優先である、このように考えまして、重大な事故については飛行停止を求めているところでございます。

 しかし、残念ながら、それらについて今意見のそごがあるのは事実でございまして、今後、米軍機の事故後の飛行再開に際しても、米国の説明を聞くだけではなくて、米側の調査結果や再発防止策について、自衛隊の専門的知見も活用して確認を行い、我が国としてその合理性を判断していきたい、このように思っております。

 今後とも、安全の確保については最優先の課題として日米で協力して全力で取り組んでいきたいと思いますし、負担の軽減についてもしっかりと結果を出していきたい、このように思っております。

 そして何よりも、確かに委員が指摘されたように、普天間の飛行場については、大変、住宅地、あるいは学校、幼稚園に囲まれた場所であり、危険があるのは事実でありまして、だからこそ、一日も早い移設を最高裁判所の判決に従って実行していきたい、このように思っております。

阿部委員 もちろん、普天間基地の閉鎖は当然のことであります、SACO合意以来の宿題ですし。と同時に、そのプロセスを公表する。だから、合同委員会にきちんと合意されたものを国民に公表してくださいというのが、河野さんがつくった案でも知事会が出している案でも同じだから、そこを国として受けとめていただきたい。

 また、総理には、総理がよくおっしゃる日本を取り戻すという中には、沖縄も入っているんですよね。こんな主権無視の、生命無視の、子供たち無視の状態をこれ以上我慢せよというのは、私は政府の姿勢としてとても容認できません。

 総理、お願いします。日本を取り戻す中には沖縄は入っているんですか。

安倍内閣総理大臣 それは当然沖縄も入っておりますが、戦後七十年以上を経た今もなお、沖縄の皆さんには大きな基地の負担を背負っていただいておりまして、この事実を我々は重く受けとめておりますし、現状は到底是認できるものではないというのが安倍政権の考え方であります。

 沖縄の基地の負担軽減につきましては、これも振り返ってみれば、さまざまなプランを考えても、日米間の調整が難航したり、移設先となる本土の理解が得られないなど、さまざまな事情でなかなか目に見える成果が出なかったのが事実でございます。

 しかし、だからこそ、しっかりと一つ一つ結果を出していくことが大切であろう、我々はこう考えたわけでございまして、七年越しの課題であった嘉手納基地以南の米軍基地の返還について、日米首脳会談で私からオバマ大統領に直接提議をして、面積にしてその約七割の返還について日米合意に達したわけであります。この計画の一つである西普天間住宅地区の返還が既に実現をしておりまして、今後、健康医療拠点として活用することを目指しているところであります。また、宜野湾市の市道を全線開通させまして交通渋滞を緩和する計画を一部前倒しし、普天間飛行場の一部土地の返還を実現しました。

 このように、我々は、一つ一つ結果を出してきているわけでありますが、今後もしっかりとこの負担軽減に取り組んでいきたいと思います。

阿部委員 まず、目前にある子供たちの生活の場を取り戻していただきたい。

 いろいろおっしゃっていただきましたが、それももう繰り返して答弁ですから聞いております。その上でなお、きょう御質問をいたしました。

 続いて、生命にかかわる問題で、あるいは人間の一生の尊厳にかかわる問題で、いわゆる性暴力の問題がございます。

 これは、この予算委員会、あるいは補正予算の審議の中でもお取り上げでありますので、総理も御存じと思いますし、前向きな答弁もいただいているかと思います。

 沖縄では、一九九五年の少女暴行事件、これをきっかけに、もちろん普天間は、落下物もいろいろな事故も起こりますが、特にこの少女暴行事件をきっかけに、日米の間でSACO合意となって、事態が進んでまいりました。

 しかし、一九九五年から今日まで、沖縄における性暴力事件は、二〇一六年、うるま市で二十の女性が軍属に暴行、殺害されるまで、現状でも、とても安心できる状態で暮らしているわけではありません。このことは総理もよく御存じだと思います。

 私は、普天間の第二小学校と同時に、沖縄で、性暴力の被害者の女性たち、あるいは男性でも子供でもいいんです、に寄り添うための強姦センター、REICOというところと、県がつくった性暴力支援センターに行ってまいりました。

 時間の関係で幾つか質問を割愛してお話をいたしますが、野田男女共同参画担当大臣にお伺いいたします。

 実は、二〇〇八年に、中学生の女の子、十四歳が海兵隊によって強姦をされ、しかし、この事案は親御さんが、子供の将来を思ったかもしれません、告訴を取り下げて、結局、その女の子はどうやってその後の人生を生きているだろうかと思うような事案、これは報道されていますので知られているところですが。一体、野田さんは、今、この数多い沖縄の事案についてどのように受けとめておられるのか。

 特に、いわゆる暴行とか脅迫要件、無理無理あるいは暴力を用いてでなければ性暴力と認められない、法改正後もなおですね。そうすると、親告罪はなくなっても、なかなか言い立てることができない状況もあるかと思います。

 現状における性暴力の、沖縄だけでなくてもいいです、問題点、また性暴力被害者の支援のあり方の問題点などはどうお考えですか。

野田国務大臣 阿部先生、熱心に以前から女性の性犯罪、性暴力に対する問題に取り組んでいただいていることに敬意を表するところであります。

 もう言うまでもなく、性犯罪や性暴力は女性の人権を著しく踏みにじる、決して許されない行為なんです。

 今お話がありましたように、性犯罪、性暴力というのは、被害者が被害を訴えることをちゅうちょし、今のまさにそのお話のとおり、また潜在化するケースが多くて、そのときに与えられた体の傷だけではなくて、多くの場合、精神的にも長期にわたる傷跡を残すということで、被害者御自身に大きな負担を強いる重大な、本当に重大な犯罪です。このため、性犯罪、性暴力被害者への支援においては、最も重要なことは、被害者の心身の負担をできるだけ少なくすることだと思っています。

 私自身は、性暴力ではなかったんですけれども、一年生のときに誘拐されたことがあります。そのときのことをまだいまだ、五十年たった今でもいろんなことを覚えていますし、嫌な気持ちになることがあるわけで、たまたま性暴力ではないけれども、そういうときに、どうしていいかわからない。そこに私たちは、今、支援の手を差し伸べなきゃいけないということがあるんだと思います。

 政府としては、被害直後からためらわずにしっかりと警察を始めとして御相談できるように、関係機関が密接に連携して、医療の面、そして精神の面、心理面ですね、あとは法的支援などが可能な限り一カ所で、誰か一人のところに行けば全部ワンストップでいくような、そういう支援センターを全国各地にきっちり整備をして、性犯罪、性暴力の被害者が負担なく支援を受けられる体制というのを構築していくことがまさに重要であると私は考えています。

阿部委員 今、野田大臣の御答弁の中で、もうそのとおりですが、警察に行く率というのは四・三%というデータです。いかに潜在化しやすいか。

 あるいは、沖縄の性暴力支援センター、平成二十五年開設ですけれども、十代からの相談が約三〇%、二十代が二〇%。この支援センターの相談は半分が三十以下。これが、二十四時間の、本当のクライシスのときに駆け込めるようなところだと、未成年が五〇%といいます。これは大阪のSACHICOのデータでもあり、沖縄の中部地区にある、ある病院のデータでも、やはり子供並びに少女が多い。非常に大きな傷を残しますし、その子が警察に行くかというと、そういう方法も、恐らく自分が守られないから。

 そこで、私は、今、野田大臣の御答弁とあわせて、どういうものを充実させていくかということでお尋ねをいたしますが、次のパネルをお願いいたします。

 「受け止められない性暴力被害者の“混乱と衝撃”」と書きましたが、これは柚木議員がお取り上げになった詩織さんという女性の、本も出ていますのでお名前を言っていいと思いますが、経過です。

 彼女は、四月三日に、実は暴行、強姦を、準強姦を受けたということで、御自身で産婦人科に行ってピルを処方してもらおうと。そうしたら、いつ失敗しちゃったのと聞かれた。次、コールセンターに電話をしたら、電話じゃだめよ、来ないとと言われた。次、警察は、約六日ほどたって行ったら、もうこんな遅く来ても証拠をとれないしと言われた。そして、受付、交通課、刑事課、所轄課で同じ説明を何度も何度も何度もさせられた。セカンドレイプですよね。もうしようがないから、妊娠も心配だし、別の産婦人科に行ったけれども、機械的な質問と、その後のケアはなかった。最後に弁護士のところに行ったけれども、これ、立件できないんじゃないのと言われて、ここでもまた心が非常に痛んだという経緯です。

 そして、一枚めくっていただきます。

 これは、私が法案を野党で準備して、先国会解散で今はない状態ですけれども、病院拠点型ワンストップ支援センターであればどういうふうになるか。

 これは、国連の勧告でも、レイプクライシスセンターといって、クライシス、危機介入しなきゃいけないんだと。その直後が大事なんだと。直後を一人にしないこと、支援につながるネットワークを活用すること。先ほど言いました、医療的には、避妊もしなきゃいけない、それから、痛んだ心と体をきちんと診察して、あなたは何も悪くないということをメッセージしなきゃいけない、そのために病院拠点型というのが一番望まれる。

 これは、沖縄の事案でも、民間団体がやっている強姦センター、REICOでも、あと性暴力支援センターでも、みんなコールセンター方式なので、夜間はやれない。医療機関にはつなぎますが、事案の多いのは夜夜中とかでありますから、夜間の緊急の駆け込みがなかなか受けられないということで、沖縄ではいろいろなことを試行、トライアンド、エラーはないと思いますが、やりながら今日までやってこられて、たどり着いた一つの経験の結果であります。

 さて、次。済みません、本当は一つ一つ質問なんですが、飛ばさせていただきます。

 現状で、我が国において性暴力ワンストップ支援センターの整備状況はどうかというと、こういう病院拠点型は、全体四十一整備された中で七つしかなく、二十四時間は二つしかないということです。病院拠点型であれば、例えばレイプドラッグとかを用いた場合でも、すぐ採血できますし、尿もとれますし、証拠もとれますし、ケアもできるとなりますが、それは二カ所しかない。警察に行くと、さっきの対応のような場合もある。全部じゃないと思います。

 まず守られるということが必要で、加藤大臣に伺いますが、私は、厚労委員会でも内閣委員会でもこれを取り上げて、きょうは安倍総理もおられるし、ここが押し出すときと思ってお尋ねをいたしますが、これを病院拠点型とする場合の費用ってどのくらいかかると思われますか。

加藤国務大臣 私も、前任でこのことも取組をさせていただいて、委員からも御指導いただき、実際、SACHICOも見させていただきました。

 本当に、そうした性暴力犯罪、それはもう断固として絶滅をしていかなきゃいけない。しかし、残念ながらそうした被害に遭った方々を、いかに早く身体的にも、そして精神的にも対応していくということは大変大事であります。

 今委員御指摘の、病院拠点型のワンストップ支援センターを設置した場合の必要な経費、これはまちまちだと思いますが、一つの私どもの承知している事例を申し上げれば、設置時の費用としては、病院の改修費用五百万、診察室の備品整備三百万、それ以外含めて約八百五十万円程度、そして一年間の運営費としては約五、六百万円程度がかかっている、こういう例を承知しております。

阿部委員 人件費の試算はちょっと間違っていると思います。大体、SACHICOでは、病院の方で施設は全部準備しても、人を二十四時間体制で張りつけるために三千万から五千万、人件費のところもかかります。

 建物の改修、そして何よりも人材なんです。いつ電話してもちゃんと応えてもらえて、お医者様の当直ないしは看護師がいて受けとめてあげられる体制。今、日本の産科、婦人科は大変な状況です。ですから、必ずしも全部、お金だけあればというわけではないのは承知しています。でも、今、内閣府から出ている今年度の予算を見ても、一カ所二百万から四百万、これではとってもやっていられない。充実していただきたいが、安倍総理、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 ワンストップ支援センターについては、各都道府県がそれぞれの地域の実情を踏まえた形態により整備を進めているものと承知をしています。

 そうした中、都道府県が病院拠点型のセンターを設置しようとする場合には、そのために要する費用を政府として今年度から創設した交付金により支援することとしております。

 最も重要なことは、性犯罪、性暴力被害者の心身の負担をできるだけ少なくすることだろうと考えています。そのためには、御指摘のように、被害者の皆さんからの相談に二十四時間いつでも対応できる体制が極めて重要であると我々も考えております。こうした体制を整えるための都道府県の取組についても、交付金で支援をいたします。

 本交付金は平成三十年度予算において増額をしたところでありまして、各都道府県における被害者目線での体制の構築や充実を政府としてしっかりと応援をしてまいります。

阿部委員 先ほど申しましたように、今年度増額された交付金でも、二百から四百万円、一カ所。到底足りませんので、野田大臣には、ぜひ本当に、SACHICOも行かれているかもしれません、ごらんになって、女性たちを守らなければこれからの日本に未来などはない、もちろん男性もそうですけれども。

 でも、本当に、性暴力という人間の尊厳の否定ということをなくさないと。それには、万が一そういう不幸な事態になったら、まず受けとめる、あなたを守ります、あなたは悪くない、あなたの本当の回復を国は支えます、地域は支えますとやっていただきたい。

 時間がないので、恐縮です、済みません、お手を挙げていただきましたので、やっていただけると確信して、期待しております。

 次、行きます。

 安倍総理、今度はごみ問題であります。

 これは、もう森友学園問題でずっと話題になっておりますが、果たして森友学園には八億円のディスカウントをするようなごみがあったかということであります。

 これは、三月六日、総理が参議院の予算委員会で御発言であったことでありますが、至極ですね、至極当然のことであって、ごみがあるからディスカウントしたわけでとおっしゃいました。

 総理は今も、これはまだ会計検査院の指摘が出る前ですね、今も、至極ですね、当然のことであって、ごみがあるからディスカウントしたとお思いでしょうか。一問です。

安倍内閣総理大臣 御指摘のあった答弁については、当該国有地の売却価格は地下埋設物の撤去費用を差し引いたものとなっているということを申し上げたものでありまして、財務省や国土交通省から適切に処理していたとの答弁があったところであり、私もそのように報告を受けていましたので、そのような理解の上で申し上げたところであります。

 一方、私はかねてから、国有地の売却価格については会計検査院がきっちりと厳正に調査するものと思っているということを申し上げてきたところでございます。

 その後、政府から独立をした機関である会計検査院が検査を行い、さきの国会において報告が提出をされました。その報告については真摯に受けとめる必要があると考えています。

 会計検査院の報告においては、国の行った積算について、撤去、処分費用の算定の際に慎重な調査検討を欠いていた等と指摘をされていますが、他方で、さきの国会において会計検査院からも答弁があったとおり、法令違反あるいは不当事項として指摘されている事項ではないと考えています。

 これらの指摘については、さきの国会において財務省から、この報告の内容を重く受けとめ、これをしっかり検証した上で、国有財産の管理、処分の手続等について必要な見直しを行っていくということに尽きるという答弁がありました。

 国有地は国民共有の財産であり、その売却に当たっては、国民の疑惑を招くようなことがあってはならないと考えておりまして、私としても、国有財産の売却について、業務のあり方を見直すことが必要と考えており、関係省庁において今後の対応についてしっかりと検討させているところであります。

阿部委員 丁寧な御答弁でしたが、ごみがあってディスカウントしたわけでと今も思っていられるんでしょうかと私は伺いました。

 会計検査院が指摘されて、総理も、その指摘はもっともだと、第三者機関ですし、思っていられるのか。今も、ごみがあってディスカウント、これはもう当然なんだと思っていられるのか。

 実は、ごみの内容も、ディスカウントするべきものなのかどうかも根拠が示されていない。量についても、書類を捨ててしまった。そしてさらに、試算妥当性を証明するものもない。

 こうなってくると、佐川前局長は、御自身も見ました、確かに見ました、ごみがあったので値引きを考えましたとおっしゃっていますが、佐川さんを証人として来ていただきたいと野党側から幾らお願いしても、来られないわけです。

 総理が、今もそう、これは思っていない、もっと国民に説明しなきゃいけないと思うなら、やはり佐川局長にもきちんと来ていただいて、今の総理の懸念、疑念、晴らされたらどうですか。どうでしょう。

安倍内閣総理大臣 佐川国税庁長官の証人等につきましては、これは国会でお決めになることだと思います。

 そこで、重ねて申し上げるわけでありますが、会計検査院が検査を行い、さきの国会において報告が提出をされました。その報告については真摯に受けとめる必要があると考えておりますが、会計検査院の報告においては、国の行った積算について、撤去、処分費用の算定の際に慎重な調査検討を欠いていた等と指摘をされていますが、他方で、さきの国会において、検査院からも答弁があったとおり、法令違反あるいは不当事項としての指摘がされている事項ではない、このように考えているところでございます。

阿部委員 慎重な検討がなぜ欠けてしまったのか、それを佐川さんに聞かねばなりません。総理だって聞かねばなりません。あるいは国土交通省航空局に聞かねばなりません。なぜ精密な点検、検討、妥当性が判断されなかったのか。

 総理は、そういう官僚を束ねて、そのトップに立つ方であります。みずからがそのことを明らかにして、国民に説明責任があります。今、多くの国民が、このことは納得できないとどんな調査でも言っています。透明性と説明責任を欠いた政治は、結局は国民から捨てられるんだと思います。

 総理、もう一度伺いますが、ごみがあってディスカウントしたわけですよという、これは撤回されますか。会計検査院の報告を受けたので、今はこうは思っていないと。

 御自身としてきちんと官僚から、総理が自分で見に行ったわけじゃないんだから、官僚が見に行かれたんでしょう。でも、どうしてそんなずさんなことが起きたんですか。このことを解明しないと政治への信頼がなくなりますが、いかがでしょう。

麻生国務大臣 これはたびたび御説明申し上げていると思いますが、この土地の処分については、校舎の建設工事が進んでおります中で新たな地下埋設物が発見され、そして相手が、いわゆる、籠池さんの方から損害賠償請求というもののおそれがあるという状況の中で行われておりますので、我々としては、国が賠償の責任を一切問われることが将来にわたってないようにする、いわゆる瑕疵担保責任というものを排除する特約条項を付すというのが我々としてはぎりぎりの対応であったと考えておるというのが基本です。

阿部委員 今、問題になっているのは、このごみが瑕疵なのかどうかなんです。撤去すべきごみなのか、建築を妨げるようなごみなのか、そのことはもう随所に指摘されています。

 安倍総理、質問通告していないことですが、先日来、三月の十五日の日でしょうか、昭恵御夫人から籠池さんに連絡があって、うまくいきましたかというようなお問合せがあったかどうか、総理は確認してくださるとおっしゃっていましたが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 昨日の参議院の予算委員会で、共産党の辰巳委員から、昨年の三月、籠池氏が財務省の室長と打ち合わせた後、財務省から出た途端に安倍夫人から電話がありましてね、どうなりました、頑張ってくださいと応援の電話があったと籠池氏が発言しているテープが出てきた。

 これは私の妻が発言しているテープでは、これは誤解している人が結構いるんですが、私の妻が発言しているテープではないわけでありまして、あくまでも籠池氏の発言。籠池氏はいろいろなところでテープをとっておりますが、私の妻の発言のテープというのは今まで出てきたことはなくて、一方的に、うちの妻がこうしゃべった、こう言っているわけでございますが。

 これも先般も申し上げましたように、籠池さんの発言というのは、例えば、安倍晋三記念小学校ということで申請した、こう言っていたわけでありますが、籠池氏は、当然、申請した当人でもあるでしょうし、当然その原本のコピーは持っているはずでありますが、しかし、実態は開成小学校であったわけでございます。

 ということ、これはまさに真っ赤なうそであったわけでありますが、これを一応お伝えを、皆様に理解をしていただく必要はあるんだろうと思います。

 その上で申し上げますが、昨日は事前通告がなかったので確認できなかったのでありますが、妻に確認したところ、そのような電話はしていないということでありまして、そもそも私の妻は、籠池氏が財務省の室長と面会していることを全く知りませんし、知りようもないわけでありまして、いわば籠池氏が言っていることをもって一方的に、言ったということを前提に質問されても困るわけでございまして、そのことははっきりと申し上げておきたいと思います。

阿部委員 昭恵夫人に聞いていただいて、それは総理の誠意だと思います。

 ただ、御自身で説明していただきたいと思いますので、昭恵さんと佐川前局長の証人喚問を求めます。委員長、よろしくお願いいたします。

河村委員長 後刻、理事会で検討いたします。

阿部委員 終わらせていただきます。

河村委員長 この際、川内博史君から関連質疑の申出があります。西村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。川内博史君。

川内委員 委員長、ありがとうございます。

 各党の理事の先生方もありがとうございます。

 そして、閣僚の先生方、最後の質疑でございますので、きょう最後の質疑でございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、私も森友学園の問題を取り上げざるを得ないわけでありますが、政治、行政の根本、政策論争以前の信頼の問題にかかわるものとして、この問題がなぜこんなことになったのかということはしっかりと解明をされなければならないということは、多くの皆さんに御賛同いただけるというふうに思います。

 今総理から、あるいは麻生財務大臣も、累次にわたって、会計検査院から法令違反あるいは不当事項の指摘は受けていないよということをおっしゃるわけでありますが、会計検査院の報告書では、法令違反や不当事項を指摘したくとも資料がないからわからない、全く検証できないというのが報告書の内容だったのではないかというふうに思います。

 総理も、私の質問に対して、私の妻が名誉校長を一時引き受けたことから国民の皆様から疑いを持たれた、これはやむを得ない、こう思っております、批判をいただいたことはやむを得ないというふうに言っているわけでありますと御答弁をされていらっしゃいます。

 疑いを持たれたというところまではお認めいただいているわけですが、実は、疑いを持たれている人は安倍総理御夫妻だけではなく、例えば、本件を、財務省を代表して一生懸命御説明をされていた佐川国税庁長官、当時理財局長でございますけれども、この人も疑いを持たれているわけです。

 本当のことを言っていないのではないか、隠しているのではないか、隠蔽をしているのではないかという疑いを持たれているわけでありまして、こういう一つ一つの疑いに対して、当事者として一番事情をよく知る人として、私も、佐川さんは国会で御証言をいただくべきであるというふうに思いますし、また、それは、今まで政府参考人として答弁されていたわけですけれども、証人として、うそをつけない証人として証言をしていただくべきであるというふうに思います。

 佐川国税庁長官の証人喚問を求めます。

河村委員長 後刻、理事会において検討させていただきます。協議いたします。

川内委員 それでは、質問に入らせていただきます。

 きょうは、また会計検査院に来ていただいているんですけれども、今週月曜日の一月二十九日の予算委員会の答弁で検査院長が、ちょっとパネルを……(安倍内閣総理大臣「すぐ帰ってくるからいい」と呼ぶ)どうぞどうぞ。この後、答弁ありますから、なるべく早くお願いします。

 会計検査院長が、「近畿財務局に対する実地検査におきまして、森友学園からの損害賠償請求の可能性について行った法律的な検討につきまして、資料を提示した上での説明を求めております。」と。近畿財務局に対して資料提出を求めたというふうに検査院長はおっしゃっていらっしゃるわけでございまして、法律的な検討の記録というのは、近畿財務局に対して行ったということでよろしいですね。

河戸会計検査院長 一月二十九日の衆議院予算委員会で、「近畿財務局に対する実地検査におきまして、森友学園からの損害賠償請求の可能性について行った法律的な検討につきまして、資料を提示した上での説明を求めております。」と答弁申し上げたところでありますが、この説明は近畿財務局に対して求めたものでございます。

川内委員 近畿財務局という組織に対して資料提出要求をしたということであります。

 さらに、この法律的な相談の記録、ここで言うと、損害賠償請求の可能性について行った法律的な検討につきまして資料を提示した上でというふうに言っているわけでございますけれども、最近財務省さんが明らかにした法律相談書という新たな文書がございます。この五件の文書のうち、損害賠償請求の可能性について行った法律的な検討の記録というのは、まさに会計検査院さんが求めた記録であるということでよろしいでしょうか。

河戸会計検査院長 会計検査院は、参議院からの要請を受けて実施いたしました学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査における近畿財務局に対する実地検査におきまして、森友学園からの損害賠償請求の可能性について行った法律的な検討につきまして、資料を提示した上での説明を求めており、今回財務省が新たに開示しました法律相談書等の資料につきましては、これに該当するものであると認識しております。

川内委員 次のパネルを見ていただきたいと思うんですけれども、まさに会計検査院が求めた資料が、検査のときには出なかった、検査が終わってから出てきましたということなわけですけれども、会計検査院法二十六条、「会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。この場合において、帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出の求めを受け、又は質問され若しくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならない。」、こう書いてあるわけです。資料提出の要求を受けたらこれに応じなければだめですよということが、会計検査院法二十六条に書いてある。

 今、検査院長が、二十六条で求めた資料が、求めたときには出てこずに、つい最近、財務省が公表した資料の中に該当するものがあったんですということをおっしゃったわけでございます。

 これは、この次の第三十一条、「会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。」「前項の規定は、」「第二十六条の規定による要求を受けこれに応じない場合に、これを準用する。」と。要するに、資料提出要求に応じない場合は三十一条の懲戒処分要求に該当する場合があるよ、故意あるいは重大な過失の場合ですね、ということになっているわけでございます。

 先日、やはり検査院長さんが、私の、今回のこの提出要求に応じてもらえなかったということは三十一条の懲戒処分要求を検討する必要があるんじゃないでしょうか、こう聞いたら、必要があるんじゃないでしょうかと聞いたもので、慎重に検討する必要があるとお答えになられたんです。

 慎重に検討する必要があるということは、必要があるということなのか、検討するということなのか。私は、懲戒処分要求を検討する、慎重に検討する、これは重大な故意又は過失に当たるのではないかと想定され得ますので、その辺をもう一度、検査院長さんに御答弁いただきたいと思います。

河戸会計検査院長 ただいま条文を御説明いただきましたけれども、会計検査院法第三十一条第二項後段は、国の会計事務を処理する職員が第二十六条の規定による要求を受けこれに応じない場合は懲戒処分の要求をすることができると規定しております。そして、応じない場合とは、国の会計事務を処理する職員に故意又は重大な過失があることと解されております。

 この点に関しまして、一月二十九日の衆議院予算委員会におきまして、私は、懲戒処分要求につきましては、事実関係を踏まえ、法に定められた要件に該当するかについて慎重に検討する必要があると考えておりますと答弁申し上げているところでございます。

 懲戒処分要求につきましては、要件に該当するかについて慎重に検討するということでございます。

川内委員 三十一条を適用するか否かを検討するということでありますけれども、私も、会計検査院が資料提出要求を近畿財務局に対してした、それに対して応じなかったということは重大な問題だと。すなわち、先ほどから問題になっている瑕疵担保責任免除特約に大きく絡むことが、この新たに出た法律相談書の中に記載があるからでございまして、それはまた後ほど触れるとして。

 今回、この会計検査院の求めに応じることがなかった、提出義務を果たすことがなかった財務省が保有する法律相談書、近畿財務局に対して検査院からこの法律相談書の提出要求があった際、近畿財務局はどのような対応をされたのかということを教えてください。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 私ども、会計検査を受検をする、受ける立場でございますので、その検査の過程についてつまびらかにすることは私どもののりを越えているのではないかというふうに考えてございます。

 ただ、お尋ねでございますので、一般論、一般的に申し上げれば、検査の資料の要求があれば、それに資料を提出すると同時に、制度や事実関係について説明を丁寧に行い、さらに、その上で、実地検査やヒアリングの過程において、質問内容に応じて、又は追加的な要請に応じて、その都度資料を提出するというような形で検査に協力し、対応するというのが私どもの基本的な対応でございます。

 そうした過程において、残念ながら、今回においては法律相談の文書に気づくことがなかったということは申し上げているとおりでございまして、その点についてはおわびを申し上げます。

 その上で、情報公開あるいは訴訟への対応という過程の中で法律相談の文書があるということに気がついて、それから速やかにということで対応いたしましたが、それが結果的に会計検査院に御提出ができたのは十一月の二十一日ということでございます。それは、十一月二十二日の検査報告書の提出の前日であったということでございます。

川内委員 長々と御答弁をされたわけですけれども、一般論としてはちゃんとやっているよ、だけれども今回の場合はわからなかったんだもんということなわけですけれども、それでは国民の皆さんは、一体何なんですかと。

 今回の具体的な問題についてどうなのかということは、総理も累次にわたって、疑問な点があれば真摯に丁寧に説明する、自分のことについては自分が説明するよ、役所のことについては丁寧に説明させるからねということを累次にわたっておっしゃっていらっしゃるわけでございます。

 今の理財局長さんの御答弁は、私は、真摯な丁寧な説明だとはとても思えなくて、もう一度聞きますけれども、この法律相談書について検査院から提出要求を受けたときに、これは近畿財務局全体でその提出要求を共有したということでよろしいですね。

太田政府参考人 先ほどの御答弁で冒頭申し上げましたように、私どもは検査を受検する立場でございますので、今ほどの御質問は検査の過程についていろいろ説明をせよということで、それは私どもにはいたしかねることではないかというふうに思っております。

 その上で、今ほど申し上げたことに加えまして、御議論いただいています法律相談の文書は、確かに委員御指摘のとおり、損害賠償の請求といったような話につながる話でございます。これは国会でも随分御議論はいただいていました。で、私どもも、損害賠償にされるおそれがあるということを一つの論点としてやっておりましたけれども、そのことについて、この文書が、もっと早く気がついていて提出できていれば、会計検査院の過程においてもそういう御説明ができておったと思います。

 会計検査院においては、決裁文書にそうした記載がなかったという指摘も受けておりますが、そういうことは大変残念なことだったというふうに思ってございます。

川内委員 私がお聞きしていることは、委員長、ごくごくシンプルな、川内はシンプルな質問をするなと思っていただけると思うんですけれども、そのシンプルな質問に対して、聞いていないことをだらだらお答えになられるというのは、余計に、国民に対して余りいい印象は与えないのではないかというふうに思います。答えられないなら、答えられないということでいいわけです。

 検査院さんは、先ほど、この提出要求は誰に対してしたんですかという私の問いに対して、近畿財務局に対してしたんだよということをお答えになられました。で、今の問いは、財務省に対して、検査院からの提出要求は財務局全体で受けとめた、近畿財務局全体に対する提出要求ということで共有されたんですよねということを確認しているわけです。

 検査院さんは近畿財務局に要求したんだよと言っているわけですから、それは財務局として全体で受けとめたよというのか、それとも、それは言えませんというのか、どっちなんですか、答えてください。

太田政府参考人 検査院がお答えになられましたことは、私どももそういうふうに受けとめておりますので、近畿財務局に対してお話があったということだと承知をしております。

川内委員 近畿財務局の中に、その法律相談書の回答をおつくりになられる統括法務監査官という方がいらっしゃいます、セクションがあります。

 近畿財務局の統括法務監査官は、検査の対象であるという認識を持っていらっしゃったのかということについて教えていただきたいと思います。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今ほど委員の御質問にお答えをしていくにつれて、検査の具体的な中身について、私どもが検査を受ける立場で申し上げなければいけないということになっちゃうというふうに思っております。

 近畿財務局に対して検査が行われたということは事実でございます。それが全てでございます。

川内委員 安倍総理大臣、今の答弁を聞いていただいていて、検査の内容にかかわることは答えられないと。

 内容にかかわっていないですよ。私が聞いているのは、その実際に書類をつくった統括法務監査官という人は検査の対象であるという自覚をお持ちだったんでしょうかねということだけを聞いているわけでございまして、それに対しても、いや、答えませんというのは極めて不誠実だというふうに言わざるを得ないと思いますし、総理、こうやって一つ一つ聞いても答えない、全ては、まあ答えないというか、要するに答えませんという答えをするわけですけれども、それは国民に対しては、何もわからないことになってしまうので、結果として、総理に対する疑いも晴れなければ、疑念を持たれたことはやむを得ない、それは全部甘んじて受けるわということには私はならぬと思うんですよ。

 総理や財務大臣として、なぜこの検査院の提出要求にしっかりと応じることができなかったのかということについては調査をしっかりとしていただきたい、調査すべきであるというふうに考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 調査の結果、今、川内さんの言われるように、我々としては、法律相談書というものが近畿財務局の中に、全然、今の対象とは、これは答弁しているところと別なところでやっていますのでね、それで、ここのところにあったという書類がもっと早く出ていればこんなことにならなかったろうなという悔いがあるというのは、この間申し上げたとおりです。

川内委員 いや、財務大臣、その認識はちょっと違っていて、近畿財務局の中に法律相談書をつくるセクションがあって、検査院は近畿財務局に法律相談書を提出してねということを求めたと言っているわけですね。

 ということは、近畿財務局の中でこの法律相談書をつくっているセクションは、それを提出しなきゃいけないわけですよ。提出しなきゃいけないんですよ。それが、わかりませんでしたというのは、ちょっと通用しない御答弁なんですよ。

 だから、問題を整理するためにも、なぜ、だって、ほかにも資料がいっぱいあるときのう何か理財局長はおっしゃった。いっぱいかどうかは別にして、ほかにも資料があるとおっしゃったわけですから、なぜ検査院が求めている資料が提出されなかったのかということについては、これは、今後のこともあるし、しっかりと政府として調査をし、国会に御報告をいただくべきことなのではないか、そういう趣旨の質問でございます。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今ほどの委員の御指摘は、要すれば、近畿財務局に対して検査があって、それについて資料を提出するようにということだったんですが、その上で、統括法務監査官、その部門についてはどういうふうにしたかということなものですから、検査の過程に係る情報だと思います。

 で、これは、第一義的に、まず会計検査院がお答えになられるかどうかということだと思っていますので、会計検査院にお尋ねの上で、そのお答えをもとに私が答えるというのであれば、お答えをさせていただきます。

川内委員 いやいや、それは何かちょっと僕は変だと思うんですけれども。

 検査院さん、役所の内部のことは、近畿財務局の内部のことは、近畿財務局の中でどう対応したかということは、会計検査院にはわからないことですよね。近畿財務局の中のことは近畿財務局に聞いてくださいということではないですか。検査院さん、どうでしょうか。

河戸会計検査院長 今回の検査におきまして、提出を受けた資料についてどのような検査を行ったかなどの検査過程に係る情報につきましては、特定の検査事項に対する具体的な検査の着眼点等の検査上の秘密に属する情報を含むものでございますことから、検査過程に係る情報についてはお示しすることが困難であることを御理解いただければと思います。

川内委員 何かちょっと話が込み入っていて、こんがらがってきたんですけれども。

 なぜ提出されなかったのかということについて、財務省は、答えませんと。で、検査院さん、今私が聞いたのは、財務局の中のことは検査院さんにはわからないですよねということを確認したんです。

河戸会計検査院長 近畿財務局の中でどのような検討がなされたかは、私ども承知はしておりません。

川内委員 だから、やはり財務局の中でどう対応したかは財務局に聞くしかないわけで、そして、検査の対象としては理財局も当然検査の対象だったわけで、当時の局長さんは佐川さんということになるわけでございまして、やはり佐川さんの証人喚問はどうしても必要であるということを申し上げさせていただきたいというふうに思うんです。

 そこで、先ほど同僚の阿部議員からもごみの問題が提起をされたわけでございますけれども、理財局長に確認したいんですけれども、森友学園の土地売却に関しては、一回目の貸付契約、それから二回目の売買契約、二回契約が結ばれているということでよろしいですね。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 最初は定期借地の契約、それから、売買予約がついているという形ですが、基本的に定期借地の契約。それから、二回目に、新たな地下埋設物が発見されて以降、平成二十八年の三月以降いろいろやりとりがあって、最終的にでき上がったものは売買契約ということでございます。

川内委員 一回目の貸付契約のときには、土壌汚染やあるいは地下埋設物、地下のごみがあってもいいよ、それは合意するよという契約になっていましたよね。で、処理した部分については有益費で支払いますからねと。そういう契約ですよね、よろしいでしょうか。

太田政府参考人 借地をするときの契約では、浅いところに地下埋設物があるというのは、こちらも承知をしておりましたし、先方にもそれを理解していただいた上で、その上で、その部分を撤去するというようなことで、それが価値を増加させるということであれば、それは有益費として後でお支払いをする、そういう契約でございました。

川内委員 二回目の売買契約に至るのは、新たなごみが見つかったからと。一回目の貸付契約ではカバーしていない、合意していない範囲の新たなごみが、地下埋設物が見つかったからというのが、損害賠償請求のおそれにつながり、そしてまた瑕疵担保責任免除特約をつけた契約につながっていったと。そういうことでよろしいですか、理解は。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成二十八年三月から、新たな地下埋設物だということで、それを確認した上で、一方で、学校の開設が翌年の四月ということで大変迫っておりましたので、そういう中でどういう対応をするかということをいろいろと考えた上で、最終的には、地下埋設物を基本的にきちんと見積もった上で、その価格を減価して、適正な価格を決定し、その価格で売却をする、そういう形の売買契約に至ったということでございます。

川内委員 済みません、ちょっと今書類を見ていたら聞き落としたんですけれども、新たなごみが見つかったから新たな売買契約をしたという理解でよろしいでしょうか。

太田政府参考人 新たな地下埋設物が発見され、それを受けて、翌年四月に学校の開設が大変近づいておった、そういう切迫した状況の中で、損害賠償請求云々ということも含めた上で、最終的に売買に至ったということであります。

川内委員 そこで、まさしく、この法律相談書の「廃棄物混在土壌の残存について」、平成二十八年三月二十四日付の近畿財務局の統括法務監査官の文書なんですけれども、これには、問いとして、管財部から、「学校法人から貸付契約の解除及び損害賠償を要求された場合、これらの状況を踏まえて、どのように対応を進めるべきか。」という問いに対して、統括法務監査官は、「具体的に、どのような経緯、内容で契約解除、損害賠償の請求をされるか不明な段階では、対処方法について回答することは不可能である。 また、賃借人の請求内容を法的に精査することは考えられるものの、本件を具体的にどのように進めるべきかについては、法令照会の趣旨に反するため、この点においても回答が困難であることは、既に述べているとおりである。」と。まあ、照会に対して、ちょっと事情がよくわからぬよということを言っている。

 最後に、債務不履行又は瑕疵担保責任に基づく契約解除、損害賠償請求の可能性がある場合は、事実関係を詳細に調査した上で対処すべきと。詳細に調査した上で対処すべきということをつけていらっしゃいます。

 そこで、お尋ねいたしますが、新たなごみという認識、これは、累次にわたって行われてきた土壌状況調査、あの土地については、森友学園に売却された土地については四回、土壌状況調査を行っているわけですが、その土壌状況調査等を行った地下の専門家あるいは土壌の専門家等に、これは新たなごみが見つかったと思われるんだがというような相談あるいは意見照会などを、近畿財務局はされていらっしゃいますでしょうか。

太田政府参考人 平成二十八年三月十一日に連絡があって、それから三月十四日に、一番最初ですが、現地確認をしている。そういう現地確認の中で、相手方の事業者からのヒアリング、あるいはその場の現地確認等々によって判断をしております。特に専門家の方にお伺いを立てるということをしておるわけではございません。

川内委員 専門家に聞いてはいない、現地を見て新たなごみだと判断した、こう言っているわけですね。現地を見て、これは新たなごみだと。

 それでは、ちょっと質問を変えましょう。

 工事業者、あるいは森友学園側、あるいは設計業者が、貸付契約で合意されている土壌汚染並びに地下埋設物以外の地下埋設物であるという主張をしたのでしょうか。

太田政府参考人 先方からは、現地確認に行った際にいろいろなことを聞かされております。そういったこと、聞かされたことを全て含めて、あるいは、そのとき自体において専門家の意見を特には聞いていないと申し上げましたけれども、委員も御質問の中にありましたように、過去のいろいろな調査、あるいは過去のいろいろな地歴、その土地の歴史ということも全部含めて、総合的に勘案して判断をしたということでございます。

川内委員 理財局長さん、私の質問に答えていただきたいんですけれども、新たな地下埋設物が出たという主張を、そして、この新たな地下埋設物という言葉の定義は、貸付契約で合意されている地下埋設物そして土壌汚染以外の地下埋設物というのが新たな地下埋設物ですけれどもね、という主張を先方がしたんですかということを聞いているんです。していないと思いますけれども。

太田政府参考人 新たなという言葉にこだわられると、ちょっと議論が錯綜しちゃうと思って……(川内委員「錯綜しないですよ。錯綜しないでしょう、理財局長」と呼ぶ)それは、それは、済みません。(発言する者あり)

 新たな、新たなというところだけを言われたので、申しわけありません。

河村委員長 不規則発言は……。答弁中です。

太田政府参考人 それは失礼しました。申しわけありません。おわび申し上げます。

 その上で、この件、先方から、要するに、これだけの地下埋設物があって、これでは基本的に学校建設ができないということをすごく主張されたということでございます。

 もう一点、大きいことは、その二十七年の秋の段階にいわゆる有益費の工事をしていたときの事業者と、それから、二十八年の三月になって、新たに、今度は学校を建設するということで、その事業をしていただいているんですが、その事業者は、実は別の事業者でございます。

 そういう意味で、二十八年三月段階の事業者は、土地の状況をきちんと把握をして、その上で、その上に建物を建てて、その建物が将来にわたってきちんと確保される、きちんと機能するという意味での責任を持っていますので、そういう責任感も含めて、このままでは学校が建てられないということで、いろいろな、こういう状況だということを御説明をいただいているということでございます。

川内委員 今の説明は非常に、逆に問題をややこしくする御答弁で、この、新たに財務省さんが開示された法律の専門家の、やはり、廃棄物混在土壌に関する書類の中には、廃棄物混在土壌が、そもそも本件賃貸借契約第五条記載の本件報告書の土壌汚染、地下埋設物とどのような関係にあるのか、また、なぜ現状のようになっているのかについての事実関係が本書記載の事実関係のみでは不明であるため、明確な回答は困難であると。

 要するに、新たなごみ、新たな地下埋設物という認定をどうやってするんですかということを、この統括法務監査官も疑問を呈しているわけです。

 で、この新たなごみがあるから八億円値引きになるわけですね。八億円値引きになるんです、新たなごみがあるから。今までの認識されていたごみと違う。今まで認識されていたごみはもう、あっていいよと。契約されているわけですから。あっていいよと森友学園側は了解しているわけです。だから、値引くためには新たなごみが必要だったんですよ。値引くために、値引くために。

 新たな地下埋設物という概念は、財務省、財務局側が考えた概念ということでよろしいですね。

太田政府参考人 そういうふうに言われますと、それはそうではないと言わざるを得ません。あくまで、あくまでこれだけのものが出てきて、それを先方も主張し、こちらも見せられてそういう判断をしているということでございます。

 それから、三月二十四日の法律相談の文書のことで盛んにお話をいただきました。

 三月二十四日というのは、三月十一日に連絡があって、三月十四日に初めて現地視察に行ってということです。三月二十四日の時点で全てが把握できているわけではありません。

 したがって、それから以降も、何度も現地視察をして、その上で、あるいはいろいろなことを検討してやっているわけですから、三月二十四日の時点で、逆に言えば、法曹部門がこれだけでは十分でないからもっといろいろ検討しろと言われるのは、それはある意味でむべなるかなというふうに思います。

川内委員 だから、先ほどから僕が確認しているじゃないですか。

 森友学園側から、ここね、非常にやはり財務省さんって頭がいいんですよ、大したものだなと思うのは、新たなごみという言葉は、籠池さんが使う新たなごみという言葉と、契約書上に反映される、今までの貸付契約を破棄して新たな売買契約を結ぶ理由となる新たなごみというのは、違うんですよ、定義が。わかりますか。茂木さん、わかりますか。わからない。茂木さんにわからないとみんなにわからないかもしれない。いやいや、私にはわかっているんですけれども、こういうことです。

 総理、よく聞いてください。籠池さんが新しいごみがあったじゃないかと言うのは、知らなかったからなんですね、そこにごみがあることを知らなかったから。だけれども、財務省も工事業者もそこにごみが埋まっていることは知っているんですよ。知っているんです。いや、一回目の有益費の工事では処理されていないごみがあるんですから。(発言する者あり)だから、深いところというのは財務省がつくり出しているんですよ。菅原さんの質問に答えてもしようがないけれども。

 要するに、新たな地下埋設物、貸付契約第五条で合意されている地下埋設物以外の新たな地下埋設物という概念があるから値引けるわけです。

 総理、ここまでいいですかね。ここまで合点していただけましたかね。(安倍内閣総理大臣「ここまでね」と呼ぶ)そうです。

 だから、この新たな地下埋設物という言葉を、この定義を誰がしたのかということです。この定義は財務省がしたんですよ。そうでしょう。

太田政府参考人 新たな地下埋設物が発見されたという連絡があって、それを受けて現地確認をしてということでございます。

 新たな地下埋設物、それによって、このままでは学校の建設がままならない、それは質的にも量的にも相当のものがあるということを踏まえて、その上で、このままの賃貸契約ではうまくいかない、いろいろなことを考えた上で、最終的には売買契約に至っているということであります。

川内委員 この法律相談の記録の中には、森友側から、新たなごみが出たとか新たな地下埋設物が出たという主張は一切載っていないんです。

 財務局側が書いている部分の中に、三月二十四日、いや、それはまだ新しい段階だから、早い段階だからと理財局長はおっしゃったけれども、「事案の概要」として、「新たに地下から家庭ゴミなどの産業廃棄物が出てきたことから、学校法人から国による廃棄物撤去など早急な対応を要請されているもの。」、新たに地下から家庭ごみなどのと、もう三月二十四日の段階で、新たな家庭ごみなどのという形で地下埋設物の概念を持ち出していらっしゃるわけでございまして、この有益費で算定したもの以外の大幅な値引きにつながる地下埋設物という概念を財務省が考え出し、そして大幅な値引きをしたというのが、森友学園の値引きの根拠になっているわけです。

 そういう意味で、再三にわたって総理にお示ししておりますけれども、売払い前提の定期借地、瑕疵担保責任免除特約、これは得なんだということとは別にして、もし、この瑕疵担保責任免除特約を利用して大幅な値引き、きょう私が主張したように、大幅な値引きが行われる根拠となっているのであれば、これは国に損害を与えるということにもなるし、いずれにせよ、財務省史上、瑕疵担保責任免除特約を付した土地の売買の事例というのはないんですよ。

 延納の特約、それから契約金額の非公表、いずれも特例的な、例外的な特別扱いです。これが四つも重なっている。そしてそれは、総理の奥様も名誉校長として名前を連ねていらっしゃった。

 だから、疑いを持たれることはやむを得ないんじゃないんですよ。疑いを持たれていることについて、やはり役所にちゃんとさせないといけないと思うんですよ。真実を明らかに、総理として、何にもないんだと。何もないんだと言うのであれば、財務省に対して、ちゃんと誠実に資料を全部出しなさいと。まだ出していないものもあるとおっしゃっているわけですから、資料を全部出しなさい、そしてちゃんと説明しなさいと。

 専門の業者に聞いてもいないんですよ、本当に新たに地下埋設物があるかどうか。論理だけですよ。

 財務省は頭いいから、論理は通りますよ。だけれども、本当にそれが本当なのかというのは、ちゃんとここに書いてあるように、事実関係を詳細に調査した上でと指摘されているわけです。事実関係を詳細に調査したとはとても言えない。であるならば、どんなふうにこれが行われたのかということについて、総理なり財務大臣なり、ちゃんともう一度調査しろよということは指示しなきゃいかぬと思うんですよ。

 だって、疑われているわけですよ。疑われているということは自分で認めているわけですよ、総理も。その疑いを晴らすためには、何でちゃんと調査もせずに、専門の業者に聞きもせずに、現地をちょっと見て、わあ、ごみがいっぱいある、じゃ、深いところから出たんだね、じゃ、値引きだね、何でそんなことができたの、それはちょっとおかしいよということをきちんとやはり調査させなきゃいかぬと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

太田政府参考人 その時点において調査をした上で最終的な結論を出しているということでございます。

 今、委員の御質問の中に、新たな生活ごみでしたっけ、という部分のくだりがありました。そういう意味では、そのことを、新たなという認識を当時私どもが持ったのは事実であります。

 その以前においては、ガラス片とか陶器片があるということは承知をしておりましたが、生活ごみ、ビニール片といったものは承知をしておりませんでしたので、そういう意味で、新たなものだという認識を持った一つではあります。

川内委員 そろそろ時間が来ますから、総理、最後、御答弁いただきたいんですけれども。

 不動産鑑定評価書の中では、宅地として使うのであれば今ある地下埋設物は問題がない、だから評価額は約九億だと評価を下しているわけですね。宅地として使うんだったら校庭として使えるじゃないですか。だけれども、それでも理財局は、あるいは近畿財務局は、いやいや、もうこれは大変なことなんだといって八億値引いているわけですよ。八億値引いているんですよ。で、会計検査院が指摘をしているとおり、評価調書もつくらずに、自分たちで勝手に八億値引いて、一億三千万で売却しているわけです。

 これは、会計検査院の検査はもう終わっていますから、何でこんなことになっているのか、そして書類がなぜ出てこなかったのかということについて、総理として、御自分の疑いを晴らすためにも、きちんと財務省理財局、近畿財務局に事情を調査して報告させるということはぜひおっしゃっていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私の疑いとおっしゃったんですが、私が指示したことは、誰もそんなことは……(川内委員「いやいや、そんなことは言っていませんよ、私は」と呼ぶ)いや、先ほど、私の疑いというふうにおっしゃったので、今……(川内委員「いや、総理が御自分で言っているから」と呼ぶ)ちょっと、会話ではありませんから、答弁させていただきたいと思いますが、私は一切かかわっておりませんし、私の妻も事務所もかかわっていない。それを示す証拠というのは今まで一つも出てきていないというのは事実でございます。

 財務省において佐川局長が今まで答弁してきたこととの関係においては、太田局長から既に答弁をしているわけでございます。

 また、ごみのことについて、今いろいろ細かいことをおっしゃったんだけれども、これは専門的にそれぞれの部署が答えないと、私もわかりませんから、宅地と学校の違い等々についてはですね、それはまた別途担当者に質問していただきたい、こう思います。

 いずれにせよ、今後とも、質問されれば、財務省そして理財局に誠実に答弁させていきたい、このように考えております。

河村委員長 川内君、時間が来ております。

川内委員 はい。終わらせていただきます。ありがとうございました。

河村委員長 次回は、来る五日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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