衆議院

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第11号 平成30年2月14日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十年二月十四日(水曜日)

    午前八時五十七分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 菅原 一秀君

   理事 田中 和徳君 理事 橘 慶一郎君

   理事 福井  照君 理事 星野 剛士君

   理事 逢坂 誠二君 理事 津村 啓介君

   理事 竹内  譲君

      あべ 俊子君    安藤  裕君

      伊藤 達也君    石崎  徹君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      江渡 聡徳君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    大西 英男君

      大見  正君    岡下 昌平君

      門  博文君    金田 勝年君

      亀岡 偉民君    菅家 一郎君

      古賀  篤君    佐藤ゆかり君

      田所 嘉徳君    竹本 直一君

      武井 俊輔君    中村 裕之君

      根本  匠君    野田  毅君

      原田 義昭君    平井 卓也君

      平沢 勝栄君    藤井比早之君

      三ッ林裕巳君    村上誠一郎君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山本 幸三君    山本 有二君

      渡辺 博道君    阿部 知子君

      青柳陽一郎君    石川 香織君

      枝野 幸男君    尾辻かな子君

      岡島 一正君    岡本あき子君

      落合 貴之君    松田  功君

      山内 康一君    山崎  誠君

      青山 大人君    井出 庸生君

      伊藤 俊輔君    稲富 修二君

      小熊 慎司君    大西 健介君

      後藤 祐一君    緑川 貴士君

      伊佐 進一君    遠山 清彦君

      中野 洋昌君    鰐淵 洋子君

      原口 一博君    広田  一君

      藤野 保史君    遠藤  敬君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         野田 聖子君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         河野 太郎君

   文部科学大臣       林  芳正君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (領土問題担当)     江崎 鐵磨君

   国務大臣

   (少子化対策担当)    松山 政司君

   国務大臣

   (人づくり革命担当)   茂木 敏充君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山田 重夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 和夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  菅原 隆拓君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山脇 良雄君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   日下 正周君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     川口 康裕君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    舘内比佐志君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            鈴木  哲君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    鈴木 量博君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   三上 正裕君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           安藤よし子君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 保坂  伸君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   高橋 憲一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 田原 克志君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  前田  哲君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  西田 安範君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  武田 博史君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           鈴木 敦夫君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    鈴木 良之君

   政府参考人

   (防衛装備庁技術戦略部長)            三島 茂徳君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十四日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     田所 嘉徳君

  今村 雅弘君     岩田 和親君

  岩屋  毅君     大見  正君

  江藤  拓君     武井 俊輔君

  衛藤征士郎君     三ッ林裕巳君

  平沢 勝栄君     大西 英男君

  藤井比早之君     岡下 昌平君

  渡辺 博道君     亀岡 偉民君

  岡本あき子君     山崎  誠君

  落合 貴之君     尾辻かな子君

  山内 康一君     松田  功君

  稲富 修二君     青山 大人君

  大西 健介君     伊藤 俊輔君

  後藤 祐一君     緑川 貴士君

  伊佐 進一君     鰐淵 洋子君

  中野 洋昌君     遠山 清彦君

  篠原  孝君     広田  一君

  遠藤  敬君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     門  博文君

  大西 英男君     平沢 勝栄君

  大見  正君     中村 裕之君

  岡下 昌平君     江渡 聡徳君

  亀岡 偉民君     渡辺 博道君

  田所 嘉徳君     石破  茂君

  武井 俊輔君     江藤  拓君

  三ッ林裕巳君     菅家 一郎君

  尾辻かな子君     石川 香織君

  松田  功君     岡島 一正君

  山崎  誠君     枝野 幸男君

  青山 大人君     稲富 修二君

  伊藤 俊輔君     大西 健介君

  緑川 貴士君     後藤 祐一君

  遠山 清彦君     中野 洋昌君

  鰐淵 洋子君     伊佐 進一君

  広田  一君     篠原  孝君

  下地 幹郎君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     藤井比早之君

  門  博文君     今村 雅弘君

  菅家 一郎君     衛藤征士郎君

  中村 裕之君     安藤  裕君

  石川 香織君     落合 貴之君

  枝野 幸男君     岡本あき子君

  岡島 一正君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     岩屋  毅君

同日

 理事宮下一郎君同月十三日委員辞任につき、その補欠として星野剛士君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に星野剛士君を指名いたします。

     ――――◇―――――

河村委員長 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算、平成三十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山田重夫君、内閣官房内閣審議官増田和夫君、内閣官房内閣審議官菅原隆拓君、内閣府政策統括官山脇良雄君、内閣府政策統括官日下正周君、消費者庁次長川口康裕君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省訟務局長舘内比佐志君、法務省入国管理局長和田雅樹君、外務省大臣官房審議官飯田圭哉君、外務省総合外交政策局長鈴木哲君、外務省北米局長鈴木量博君、外務省国際法局長三上正裕君、財務省理財局長太田充君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、厚生労働省職業安定局長小川誠君、厚生労働省人材開発統括官安藤よし子君、資源エネルギー庁次長保坂伸君、防衛省大臣官房長高橋憲一君、防衛省大臣官房衛生監田原克志君、防衛省防衛政策局長前田哲君、防衛省整備計画局長西田安範君、防衛省人事教育局長武田博史君、防衛省地方協力局長深山延暁君、防衛省統合幕僚監部総括官鈴木敦夫君、防衛装備庁長官鈴木良之君、防衛装備庁技術戦略部長三島茂徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 本日は、外交・安全保障等についての集中審議を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山口壯君。

山口(壯)委員 自由民主党の山口壯です。

 きょうは、外交・安全保障についての集中審議ということで、日米安保体制の歴史的経緯も振り返りながら、質問させていただきたいと思います。

 まず、安倍総理、先週末、韓国に行かれて、私(わたくし)的には大いに成果があったと思っているんですけれども、その辺を振り返っていただいて、文在寅大統領、あるいは北朝鮮のナンバーツーとも言われる金永南氏とも会話をされたというふうに伺っております。

 振り返ってみるに、北朝鮮のトップクラスとトップ同士で接触をするというのは相当なかったように思うんです。多分、二〇〇四年の小泉総理以来かもしれません。その意味で、少しの時間の対話、対話というか会話であったとしても、大きな意味があったとは思うんです。

 総理、その辺を振り返られて、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、日韓首脳会談について申し上げますと、日韓首脳会談では、文在寅大統領に対し、日韓合意は最終的かつ不可逆的な解決を確認したものであり、国と国との約束は二国間関係の基盤であるとの日本の立場を明確に、かつ詳細に伝えました。また、未来志向の日韓関係をつくり上げていかなければならないとの認識を共有したわけであります。

 さらに、文大統領に対しては、日韓合意に達したときに私は国内で相当の批判を受けたが、リーダーというものはある程度の批判を受けることを甘受した上で決断していかなければ、物事は前に進んでいかないということも申し上げたところであります。

 北朝鮮問題については、私から文大統領に、対話のための対話には意味がないことをはっきりと伝えました。北朝鮮にその政策を変更させ、北朝鮮の側から対話を求めてくるよう、日韓米の緊密な連携のもと、圧力を最大限まで高めていくことで一致をいたしました。

 一方、その日のレセプションにおいて、同じテーブルに北朝鮮のナンバーツーである金永南最高人民会議常任委員長が座っておられましたので、この機会を生かしまして、私は、丸テーブルでございましたから、順番に一人一人、ちょっとおくれて参りましたので、挨拶をしつつ、その先に金永南委員長がおられましたので、この機会に日本の立場、拉致、核、ミサイル問題を解決していくという日本の立場、特に拉致問題について日本の意思、決意についてはっきりと伝えておく必要性がある、こう考えましたので、私から、拉致問題、核・ミサイル問題を取り上げ、日本側の考えを強く伝えたところであります。

 特に、全ての拉致被害者の帰国を求め、拉致問題の解決を直接強く求めたところでございます。

山口(壯)委員 総理は、韓国に行かれる前、直前に、アメリカのペンス副大統領とも会談されました。

 そのペンス副大統領ですが、帰りの飛行機の中で、ワシントン・ポストの記者との懇談のようですけれども、何か本音とも思えるような言葉が出ているようなんですね。最大限の圧力を維持する、しかし、南北対話の進展次第では前提条件なく直接対話を行う用意があるとの見解を示したやに、その報道によればなっている。

 そういう意味で、ワシントン・ポストは、北朝鮮が非核化の意思を示すまで対話に応じないとしていたトランプ政権の方針の重要な転換ではないのかなという観測も示しているんですが、総理の受けとめはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ただいま山口委員から御紹介をいただいたペンス副大統領の発言、これは多くの外交関係者、専門家が注目をしたところでございますが、ペンス副大統領は、ワシントン・ポスト紙の報道を受けて、十二日のツイートで、話合いに対する報酬はない、そして、新しい強力な制裁がすぐに科され、最大限の圧力キャンペーンは北朝鮮が核計画を放棄するまで強まるのみであろう、全ての同盟国が同意していると表明をしております。

 ペンス米国副大統領とは、訪日の際にも、更に加えて平昌においても、今後の方策について綿密にすり合わせを行っておりまして、北朝鮮の完全、検証可能、不可逆的な非核化に向け圧力を最大限まで高めていくとの方針について完全に一致をしております。

 なお、米国政府関係者に対しても、この方針に変わりがないことについては確認済みであります。

山口(壯)委員 アメリカとのすり合わせということを総理は言われました。この辺が一番大事なポイントだと思うんです。

 今、北朝鮮というのは、我々の外交、安全保障の中での一つの大きな、最大のポイントと言ってもいいかもしれません。それを日米韓の連携ということで来ています。その根底にあるのは、やはり日米のすり合わせだと思うんですね。

 戦後、日本の外交あるいは安全保障の政策ということで、これは、アメリカの対日防衛コミットメントというものをどうやって確保するかということが歴代の総理やあるいは政権の最大の課題だったと思います。そういう意味でいきますと、ペンス副大統領、昨年にまた日本に来られた際に、アメリカは全戦力でもって日本を守るということもはっきり言われております。このことの意味というのは、私は非常に大きいと思うんです。

 それを大きな意味で捉えられて、総理、受けとめをどういうふうにされたでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今の御質問にお答えをする前に一言つけ加えさせていただきますと、今、山口委員が言われたとおり、日米間にはお互いにサプライズはないということは確認し合っておりまして、政策協議をしっかりと行いながら、どう対応していくかということについては綿密に打合せをしております。これからさまざまな出来事があるかもしれませんが、いずれにせよ、前もって綿密にしっかりと連携をとっているということでございます。

 御指摘のとおり、ペンス副大統領は、米国の対日防衛へのコミットを累次にわたり明確にしています。先週訪日した際も、ペンス副大統領は、日本の人々には安心していただきたい、米国は引き続き持てる全ての軍事力を用いて日本を守ると共同記者発表において述べています。日本の防衛に対する米国のコミットメントを改めて確認をしたところでございます。

山口(壯)委員 このアメリカの日本を守るというコミットメント、あるいは義務という表現が当たるかもしれません、これは一九六〇年の日米安保改定によって成り立ったわけですけれども、実は、一九五一年に当時の吉田茂総理兼外務大臣が結ばれた旧の日米安保条約にはこのことが入っていなかったんですね。

 その意味では、我々は、つい日本はアメリカに守ってもらえるんだということを当然視する嫌いがあるんですけれども、経緯を振り返ると、必ずしもそれが当然のことではないということが実はわかると思うんです。

 日米安保条約の起源はもちろん吉田茂さんです。

 占領後の安全保障について、当時の吉田茂兼外務大臣は、占領が終わってアメリカ軍とかみんなが帰った後、どうやって日本を守るんだということで、外務省に作業を命じたんですね。相当長い間をかけて出した外務省の結論が、当時は国際連合に守ってもらおうという結論だったようです。

 それを見た吉田当時の外務大臣兼総理は激怒したというんですね。それが、今配付資料でお配りさせていただいた中に、極秘となっていますが、これは当時極秘で、今は文書が公開されていますので極秘ではありません。外務省の出した報告書の表紙に吉田茂さんの書いた直筆が残っているんですけれども、書いてあるのは、野党の口ぶりのごとし、無用の議論一顧の値なし、経世家的研究につき一層の工夫を要す、SY、シゲル・ヨシダです。

 その意味で、吉田総理的には、当時、単独講和、要するに、アメリカ等との、単独講和かあるいは全面講和かで揺れていた世論の中で、基地を提供することによってアメリカに守ってもらうんだということをほぼ構想されて、それからその交渉に入っていかれるわけですね。その際の最大のポイントは、条約の文言上、対日防衛のコミットメントを取り付けるということでした。

 ただ、今から思うと若干意外な感もあるんですけれども、当時のアメリカは、条約上の対日防衛コミットメントをゼロにしたいという思いがどうも本音としてあったようです。それは、アメリカの当時の軍部としては、次の大きな戦争はヨーロッパで起こるだろうから、極東の日本に回す戦力、そういうコミットする戦力に余力がないということだったようです。

 それでも、吉田茂としては、基地提供によって何としても条約文言上のコミットを取り付けるんだということをしたわけですけれども、何とかいきそうな気配もあった中で、最後は土壇場で、日本側の事務当局のミスで、条約文言上のアメリカの対日防衛のコミットメントが入らなかった。失敗してしまいました。

 これは、交渉の最終段階、当時は、一九五一年の七月の三十日なんですけれども、アメリカ側からいわゆる極東条項というものが提案されてきたんです。これは、何度も何度も交渉でお互いに修文案を出す中で、このときは、たくさん修文案、ある意味で細かい修文案がほとんどだったんですけれども、その中にぽこっとこれが紛れていたんです。そこには、結局、日本に駐留する米軍というのは極東の平和と安定のために使用することができるという文言を入れていたんですね。

 これを見た当時の外務省、条約局長は西村さんという人で、それから条約課長は藤崎さん、前の大使のお父さんですけれども、彼らは、当時、朝鮮戦争の真っ最中だったわけです、ですから、日本に駐留している米軍が極東のために使用することができる、原文はメイ・ビー・ユーティライズドなんですけれども、それを見て、しようがないな、当たり前だなというふうに思ってしまった。

 これが実は、吉田総理的には物すごくつらいところですね。何とかこれをとろうと思って頑張ってきて、葉巻も断って頑張ってきたのが、最後の最後に。多分、ホウレンソウが抜けていたんだと思うんです。最後に吉田総理兼外務大臣に、こういうことを言ってきましたけれども、いいでしょうかねと相談があれば、多分彼は、それが一番大事なことじゃないか、だめだというふうに言ったと思うんですけれども、多分それが抜けていたんだと思うんです。

 この趣旨というのは、もちろん国防総省、要するにペンタゴンの対日防衛コミットメントをゼロにしたいというふうな意向によるものでした。

 旧の安保条約、国民の皆さんにもこの辺の経緯をよく理解していただければありがたいと思って、パネルを用意させてもらいました。

 日本語の文言で、最後に、「使用することができる。」と。何かいかにも「使用することができる。」とやわらかい書き方なんですけれども、原文では、下に書いてあるように、メイ・ビー・ユーティライズドです。メイ・ビー・ユーティライズドというのは、要するに、使われるかもしれないということなんですね。それを、使用することができるというのは、苦肉の策というか、翻訳的に非常に苦渋の念がにじみ出ているんだと思いますけれども。したがって、これがアメリカの当時の本音だったということだと思うんです。

 こういうことを経てアメリカの対日防衛コミットメントというのが、アメリカは拒否したわけですけれども、我々は、これは事実として、やはり心のどこかで、アメリカとのすり合わせというのは物すごく大事なんだ、少し油断するとやはりいろいろなことが起こりかねないということをよくわかっておくべきだと思います。

 吉田茂としては本当に悔しかったと思うんですね。画竜点睛を欠くという格好で、本当に努力して努力して、サンフランシスコ講和条約もまとめ、そして最後に安保条約ということにいったわけですけれども、この条約が実は画竜点睛を欠いていたということは、自分にとって本当につらかったと思うんです。だけれども、世の中になかなかそういうことは言えない。

 結局、安保条約に署名するときには、アメリカ側はディーン・アチソンという国務長官、あるいはジョン・フォスター・ダレスという人たち、四人署名するんですけれども、吉田茂は一人だけで署名した。それは多分、側近の池田勇人さんも連れていっていたんだけれども、この条約については自分で責任を負うしかないと、はっきり言えないけれども、そういうことだったと思うんですね。

 だから、その意味で、我々、対日防衛コミットメントというのはその後十年かかるわけですね、取り付けるのに。一九六〇年の、岸信介総理によって安保改定がなされる、そのことによって初めて取り付けることができた。

 当時の安保改定の意味について、そのことだったんだと、理解はなかなか難しかったんだと思うんですね。これは六十年以上前のことです。六十年たってもなかなかその理解ができていないというのが、この安保法制の理解が難しいということの一つの大きなあらわれだと思うんです。

 多分、岸信介総理としたら、心中察するに、吉田総理がそのときにこうだったから自分はこうだったとは言えなかったと思うんですよ、あるいは言わなかったと思う。そこはもう武士の心構えみたいなものだと思うんです。だけれども、そのことによって岸信介さんは退陣を余儀なくされた。そういう大きな、ある意味で代償を払いながらのアメリカの対日防衛コミットメントのまず取付けだったんだと思います。

 この辺について、実は、西村条約局長は正直に告白しているんですね。

 配付資料を配らせていただいた中で、彼の「日本外交史 二十七」という著書があるんですけれども、私がアンダーラインというか傍線をつけさせていただいた部分を読みますと、

 最も重要なのは、いわゆる「極東条項」の挿入である。その結果、それまでの案文では在日アメリカ軍隊は外部からの攻撃に対して日本の安全に寄与するためにあるとされていて、在日アメリカ軍隊による日本防衛に疑問はなかった。ところが「極東における国際の平和と安全の維持」という一句が新たに加わり、しかも、末尾の文言が「……寄与するために使用することができる」となったために、在日アメリカ軍隊による日本防衛の確実性が条約文面から消えてしまった。

 次のページをあけていただいて、彼が脚注で言っているところが一番大事なんですね。

 充分考慮を払わないで「同意あって然るべし」との結論を総理に上申したことは、今日に至ってなお事務当局として汗顔の至りである。

  これらすべては一九六〇年一月十九日の日米相互協力及び安全保障条約で是正された。せめてもの慰めである。

この辺が事の真髄だと思うんですけれども、なかなか、このことを知っている人は日本の中でも少ないと思います。

 こういうことで我々はアメリカとのつき合いをやっているわけで、アメリカの大統領的にはいろいろなタイプの方もおられますから、それぞれの歴代の総理というのは本当に苦労されていると思うんです。総理も今非常にいろいろな意味で努力されて、トランプ大統領とがっちりすり合わせをされていると思うんですけれども、片やトランプ大統領、アメリカ・ファーストと言い、あるいは駐留米軍経費の問題をめぐって、これは選挙当時ですけれども、同盟に対して後ろ向きともとられかねないことをよく言われておられました。

 そういう意味で、このアメリカの対日防衛コミットメントに現在揺るぎがないかということで質問を一つさせてください。

安倍内閣総理大臣 日米関係の根本である日米同盟の今までの来歴について御紹介をいただいた、このように思います。

 まさに六〇年安保のときに、岸信介首相が、安保改定については、まさに米軍に日本防衛義務がない、いわば防衛することもできるという書き方であり、かつ、日本国内における内乱、騒擾的なものに対しましても使うことができると書かれていること等から、これをやはりしっかりと防衛義務、いわば新安保条約五条と、そのセットで六条というものがまさに改定の一番の主眼であったということでありまして、国民的な理解を得ることができると最初は考えていたということだそうでございます。

 五条においても共同対処ということはもちろん書いてあるわけでありますが、しかし、そこでしっかりと、米国が日本の防衛に対して、米国の意思としてその任務を果たすということを明確にすることは、日本の抑止力を確固たるものとするわけでございます。

 米国は、昨年二月の私の訪米の際や昨年十一月のトランプ大統領訪日の際を始め、累次の機会に、日米安全保障条約のもとでの米国のコミットメントを確認してきています。数多くのトランプ大統領との電話会談でも、日本の防衛に対する米国のコミットメントが揺るぎないものであること、日米両国が一〇〇%ともにあることを何度も確認してきております。政府としては、米国が日米安保条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いているところでございます。

 大切なことは、もちろん日米同盟、五条には書いてあるわけでありますが、信頼のない同盟は紙切れにしかすぎないわけであります。だからこそ、信頼関係を強固なものにしていく必要が常にある、このように考えております。

山口(壯)委員 この対日防衛コミットメントという観点からすると、先般米国政府が発表したいわゆるNPR、「核態勢の見直し」というのは、日本を含む同盟国への拡大抑止を公にコミットメント、明らかにした点で、私はその部分はよしとしてよいと思うんです。河野外務大臣も多分そういう趣旨で言いたかったんじゃないかと思いますけれども、このアメリカとのつき合い、難しいですね。

 トランプ大統領、きのうの報道にありますけれども、いわゆる相互税ということを突然言い出している。これは正直、違和感が強いんですけれども、トランプさんの頭の中では、中国や韓国と同様に、日本についてもそういうことを考えるかもしれない、その意味で、同盟国であっても、貿易の同盟国ではないと。ちょっと違和感が強いんですけれども、そういうことを言っておられる。

 そういう意味では、一筋縄ではいかないんですけれども、この辺について、これはもう外務省の事務当局から答えていただければいいんですが、今、どういう実態でしょうか。把握している限りで教えてください。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、トランプ大統領が、米国につけ込んでいる国々に対して、報道されていますが、これは多分、米国を巧みに利用して利益を受けている国に対して相互税、レシプロカルタックスを課すという旨述べたということは承知しております。

 詳細については触れられておりませんが、これは、他国が米国の企業や製品に対して税や関税を課すに対し、米国が同様の措置をとっていないということについて指摘をしたものというふうに思われますけれども、このような貿易投資に関する米国の関心事項、また米国の関心事項だけではなくて日本の関心事項については、アメリカときちっと話合いをしていくということは重要と思っておりまして、これは日米経済対話等でしっかりと意見交換をしてまいりたいというふうに思っております。

 いずれにしても、このような措置が日本企業に影響を与えるということも十分考えられますので、それにも引き続き十分注意をして対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

山口(壯)委員 日本を含め、いわゆる自由諸国と言われている我々が中心になって、特にアメリカが中心になって戦後の秩序をつくってきたと思うんです。

 一つには、武力行使を禁止してということで、国際連合をつくった。もう一つは、保護貿易だから戦争になったんじゃないかということで、自由貿易体制を一生懸命アメリカが中心になってつくってきた。

 その中心になってきたアメリカがこの相互税を言い出すというのは、正直、私には非常に違和感が強いんですけれども、その辺、先ほど審議官が言われたように、アメリカとのすり合わせ、それは麻生副総理も中心になっておられる経済対話を中心にすり合わせをすることによって、やはり今の、みんながハッピーになるという仕組みをしっかり進めていっていただきたいと思います。

 河野外務大臣にきょうは一問お聞かせいただきたいんですけれども、集団的自衛権の話です。

 今、アメリカとの信頼関係が非常に根底で大事だという話、総理からもいただきました。その意味で、この信頼関係の一つとして、アメリカのコミットメントと密接に関連するのが集団的自衛権の話だと思います。

 日本が攻撃された場合にアメリカが日本を守る、その場合には、どうしても集団的自衛権を援用しなきゃいけないわけですね、自分は攻撃されていないんですから。他方、逆にアメリカが攻撃された場合、日本としては集団的自衛権は持っているけれども使えないという解釈で来たと思います。その辺、アメリカが相当フラストレーションもたまっているのではないのかなというふうな気もしますが、外務大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 おっしゃるように、平和安全法制が成立する以前においては、例えば、日本のために弾道ミサイルの警戒に当たっているアメリカのイージス艦が公海上で攻撃を受けても、日本が直接攻撃を受けていなければ、自衛隊は、守る能力があってもそのイージス艦を、米国のイージス艦を守ることができなかったわけであります。

 しかし、この平和安全法制は、日本国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とするために、我が国として主体的に取り組みました。この法制により、日本を守るために、日米はあらゆる事態に対し切れ目なくお互いに助け合うことを可能とすることになりました。助け合うことができる同盟は、そのきずなを強くすることができるんだろうというふうに思います。

 また、昨年の二月十日に発出した日米共同声明では、「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない。」というふうに明記されております。また、昨年八月の日米2プラス2や昨年十一月のトランプ大統領の訪日のときにも、同様のコミットメントを再確認しております。

 そういう意味で、今、日米は、かつてないほどに高い信頼関係のもと、すぐれた能力を発揮できる状況にあるというふうに認識をし、我が国としては、米国が日米安保条約上の義務を果たすことに万全の信頼を置いているところでございます。

山口(壯)委員 アメリカにはこれまで、同盟といいながら片務的ではないか、日本を守るときには、我々は攻撃されていなくても集団的自衛権を使って守る、自分が攻撃されたときには、日本は集団的自衛権を持っているけれども使えない、そういう意味で片務的じゃないかというフラストレーションが高かったと思います。それは、不公平ではないかという言葉でもあったと思うんです。その意味では、このコミットメントが空洞化しかねないということがない、その懸念が払拭されるようにということが大事だという話だと思うんですね。

 先ほど外務大臣が言われた二〇一五年の平和安全法制の位置づけ、これは、フルの集団的自衛権ではなくて、極めて限定的に、存立危機事態と呼び得る場合に限って抑制的に集団的自衛権の援用を可能にしたということで、少しでもアメリカの気持ちに対応しようとしたという部分があるのではないかなという気もしています。その意味で、最小限、不可欠な対応だったのではないかなというふうに思います。

 外務省の事務当局からもう一度ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども、この集団的自衛権、そもそも集団的自衛権というのはどういうふうにして世の中に出てきたのか。これは国際連合によってつくられた自衛権ではないのかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 歴史的には、かつて、戦争が合法であった時代がございました。その時代においては、あえて自衛権により武力の行使を正当化する必要はなかったというわけでございますけれども、その後、武力行使の違法化が進み、国連憲章のもとにおいては、自衛権の行使等を別にすれば、武力の行使一般が禁止されるようになったということでございます。

 集団的自衛権は、このような過程において、国連憲章の起草に際して確立された概念であると考えられているということでございます。

山口(壯)委員 そうなんですね。

 国際連合憲章二条四項というのが武力の行使を禁止している。だけれども、今の現状の国際社会においては、武力の行使を禁止したら戦争がなくなるわけではない。そういう意味では、自衛権というものを認めざるを得ない。

 自衛権を認めざるを得ないけれども、もう一つは、東西の冷戦が進んでいると、自分が攻撃を受けなくても仲間を助けなきゃいけない場合も出てくる。例えば、イギリス、まあこれは昔の仮定の話ですけれども、ソ連がイギリスに万が一攻めてきたときに、イギリスは自分で自衛権を使えるけれども、アメリカとしては、イギリスを助けようと思ったら助けられない。それが集団的自衛権ということになったんだと思います。

 その意味で、国際連合によりつくり出された集団的自衛権であるとすれば、一九五六年に日本が国際連合に加盟したときに、他の加盟国と同様に、国連憲章によって武力行使が禁じられるということと同時に、国連憲章の五十一条により個別的、集団的自衛権が認められるというふうにしてよかったんだと思うんですが、それは、実はブレーキを自分でかけたと思うんです。というのは、多分、戦後の日本としては、ほかの国の猜疑心というものを気にしたのか、その意味では、持っているけれども使えないというふうに自分でブレーキをかけたんだと思うんですね。

 ただ、これは結局、憲法から見てみると、自衛権の文字というのはないわけですね。自衛権の文字というのはなくて、文言上は、いいとも悪いとも言っていない。ということは、これは解釈の問題としてそれをしたのではないのかなというふうに思います。ただ、誰がそれを決めたのかはいまだにはっきりしない。

 ただ、今、五六年の国連加盟から六十年以上たっているわけです。日本がまた戦争を起こすというふうに本気で思っている国は、もう私はないと思います。だとすれば、このみずからかけているブレーキを緩めるか、あるいは放してもよいのではないかという考え方は十分にあり得るんじゃないんでしょうか。憲法の文言に自衛権が触れられていない以上、これはひとえに解釈の問題ではないかというふうに思うわけです。

 ちなみに、これも外務省事務当局から答えていただければと思いますけれども、国際連合憲章によって認められたこの集団的自衛権について、日本と同じく、持っているけれども使えないというふうにしている国は、あとどういう国があるんでしょうか。

鈴木(哲)政府参考人 お答えいたします。

 我が国として、必ずしも網羅的かつ確定的にお答えすることは困難でございますけれども、かつての日本のように、集団的自衛権は有しているが行使はできないといった立場をとっている国は、ほかにあるとは承知をしておりません。

山口(壯)委員 多分そういうことだと思うんです。

 その意味では、総理、集団的自衛権については、実は、国際連合憲章によって導入されたものだという背景がまずある。それから、日本は、国連加盟をした際に認められたはずの集団的自衛権について、あえてみずから解釈によってブレーキをかけてきた。もう一つは、同盟のパートナーであるアメリカの、片務的だ、あるいは不公平じゃないかというフラストレーションに対して対処しなければいけないということを踏まえると、アメリカの対日防衛コミットメント確保の観点からも、集団的自衛権についてもう少し深掘りして考えることも重要だと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 国民の命と平和な暮らしを守るために何をなすべきか、このことを考え抜いていくことは政府の重要な責任であると思います。

 今御紹介をいただいたように、集団的自衛権については、我が国は主権国家として国際法上これを保有していることは当然である。他方、憲法第九条のもとにおいて許容される自衛権の行使は、砂川事件の最高裁判決が述べるように、必要な自衛の措置に限られるとなっておりまして、それでは必要な自衛の措置とは何か、考え抜いた結果が、新三要件に基づく限定的な集団的自衛権の行使であり、平和安全法制ということであります。

 また、委員が言われたように、日米は同盟関係であるわけでありますが、いわば米国の専門家は日本の今までの歴史等を理解しておりますし、実際問題として我々がこういう制約を受けていることは理解をしておりますが、大半のアメリカ人は、同盟ってやはり助け合うものだろう、こう思っているわけであります。

 お互いに民主国家ですから、もし日本のために、先ほど河野大臣が答弁したように、日本を守るために展開している米国のイージス艦にミサイル攻撃があって、助けることができるのにそれを助けなかったという中においてアメリカのイージス艦が被害を受け、死傷者が出たときに、彼らには恋人もいるし、結婚している相手もいるし、両親がいます。彼らが、果たしてこれは同盟なのか、そういう疑問が当然湧いてくるだろう、こう思うわけであります。

 その瞬間に同盟の基盤が揺らぎかねない、こう思うわけであります。それがまさに脆弱性になっていくわけでありまして、日本を攻撃しようということを考えた人たちにとっては、よこしまなことを考えた人たちにとっては、この脆弱性につけ込む危険性も出てくるわけでございます。

 そこで、私たちは、新三要件のもとに集団的自衛権の行使を可能としたわけでありまして、まさに、日本を守るために展開をしている米艦隊については、我々は守ることができるようになったわけであります。

 平和安全法制により、日本を守るため、日米はあらゆる事態に対し切れ目なく互いに助け合うことが可能となったわけでありまして、まさに助け合うことができる、同盟はそのきずなを強くした、こう思うわけでありまして、実際、トランプ大統領は、日米は今日、かつてないほどに高い自信と信頼関係のもと、すぐれた能力を発揮できる状況にある、こう述べているというふうに承知をしているところでございます。

山口(壯)委員 これは仮定の問題ですから、そういうふうにお聞きいただければと思いますけれども、北朝鮮が例えば韓国との間で武力の攻撃を行った、その場合に、日本の人がいっぱい逃げなきゃいけないわけですけれども、飛行機ばかりで逃げるわけにもいかない、船でも足りない、その場合に、例えばアメリカの軍艦に乗っけてもらって何百人も帰ることがあり得るかもしれない。そのアメリカの軍艦が攻撃されたときに、個別的自衛権だけでは守れない。それを存立危機事態と、その五百人の日本人の人たちを乗っけていることをもって存立危機事態と認定することも十分あり得るんじゃないかと思います。そういうことを言われんとしたんだと思います。

 日米安保体制を考えるときに、対日防衛コミットメントのほかに、もう一つの要素というのが、統合司令部という概念。というのは、吉田茂さんは、この共同対処ということの前に、アメリカが統合司令部というのを言ってきたのを頑として断っているんですね。

 これはほとんど歴史の中で知られていないんですけれども、いわゆるNATOというものが、当時、一九四九年にはできていた。その中では、アイゼンハワーを呼んだわけですね。戦争に勝ったイギリス、フランスは、アイゼンハワーさん、統合司令官として来てくださいと。アメリカ的には、戦争に負けた日本がまさか断るとは思わなかったんでしょうけれども、吉田茂さんは断り切っている。

 このことについて、小野寺防衛大臣、NATOの場合、あるいは米韓の場合もあり得ると思います、この指揮命令系統についてどういうふうになっているのか。そしてまた、現在、日本とアメリカとの間の指揮命令系統について、この統合司令部ということを念頭に置きながらお答えいただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 御指摘のNATOの軍事機構におきましては、作戦連合軍最高司令部が設置されており、その体制のもと、各国が拠出する部隊に対する軍事作戦上の全般的な指揮権については作戦連合軍最高司令官が行使することになっております。現在の司令官は米国から出ております。

 また、米韓同盟において、米韓連合司令部が設置されており、その体制のもと、平時の際は、韓国軍合同参謀議長が韓国軍に対する指揮権を、在韓米軍司令官が在韓米軍に対する指揮権をそれぞれ行使し、そして有事の際は、在韓米軍司令官が兼務する米韓連合司令官が米韓両軍に対する指揮権を行使するということになっております。

 一方、日米間におきましては、自衛隊及び米軍は、緊密に協力し及び調整しつつ、おのおのの指揮系統を通じて行動することとしており、このことは日米ガイドラインにも明記をしております。

 おのおのの指揮系統を通じて行動するとの前提であっても、平時から緊急事態まで、日米間で緊密な協議や適時の情報共有、政策面、運用面の調整を適切に行うなどにより、事態に際して自衛隊と米軍で整合のとれた対処ができると考えております。

山口(壯)委員 今の小野寺防衛大臣の最後の部分ですね、日本について、それぞれの指揮命令系統によってと。ということは、吉田茂さんのときにアメリカが統合司令部と言ったものを断ったということが今も続いて、だからガイドラインが必要になる、あるいは共同作戦計画が必要になる、あるいは緊密な調整が必要になるということだと思うんです。

 このとき、吉田茂さんは相当苦渋の決断をしているんですね。吉田さん的には、こういうことを認めたら、統合司令部というのを認めたら、国民的には日本がアメリカの駒になってしまったというふうに思われるんじゃないか、それはよくない、日米は対等のパートナーだという趣旨でこれを最後まで突っ張り切るんですけれども、ただ、アメリカからは相当なおどしも来ていたようです。

 外交文書ではっきりしているんですけれども、もしもこれを日本がのまないんだったら、当時、ダレスが言ったんです、ダレスは上院でサンフランシスコ講和条約と安保条約の批准のために走り回っていましたから、そのダレスがおどしてきて、もしもこれを日本が認めないんだったら、もうサンフランシスコ講和条約の上院での批准は俺は手を引く、もうやめる、だから日本は占領に戻ればいい、そこまでおどしてきているんですね。

 だから、吉田茂さん的には、統合司令部をのむか、のんで独立を回復するか、あるいは、突っ張り切って結局占領に戻るかもしれないという苦渋の決断の中で、最後まで突っ張る。

 最後、実は、吉田茂さんもいっときちょっと揺れるんです。揺れるんですけれども、このときには今度は国務省が国防省を説得して、いや、もう余りそういう無理押しをすると日米の同盟関係というのが危うくなるから、そういう意味では、ここは日本の言い分をのんだ方がいい、そういうことをやっているんです。

 私(わたくし)的には、物すごい交渉をしたものだなというふうにびっくりするわけです。我々もアメリカとの調整というのは非常に難しい部分がありますけれども、やはり吉田茂さんというのは相当苦労してこういうこともやられたんだなというふうなことを感じる次第です。

 この意味で、振り返ると、くしくも吉田茂さんのつながりの麻生副総理がおられ、あるいは岸信介総理のつながりの安倍総理がおられするわけですけれども、やはりこのお二方によって、ある意味で戦後の日本の外交、安保体制というものができ上がってきたんだなということを思います。

 最後、残された時間で少しお聞きしたいのは、アメリカ中心の一極構造から、今、ある意味で中国、ロシアが相対的に台頭してきているようにも見えます。アメリカ・ファーストを唱える大統領が出てき、そのことによって、また世界の秩序というのは大きく変容しているんじゃないのかというふうにも思うわけです。

 そういう意味では、日米安保体制というものもそれに呼応して深化が求められているのかもしれませんが、歴史を振り返ると、やはりシーパワーたる日本は、同じくシーパワーであるアメリカあるいはイギリスと組むときがやはり国として運気がいいんじゃないのかなというふうにも思います。

 その意味で、ランドパワーである中国あるいはロシアとのつき合い方というのはおのずから差があってしかるべきだとは思いますけれども、ことしはちなみに、日中平和友好条約が一九七八年に締結されてちょうど四十周年なんですね。ある意味ではフルの本格的な日中の首脳会談というもの、要するに、例えば安倍総理が向こうに行かれる場合には、人民大会堂で儀仗兵の閲兵を受けながらフルの会談をするということはまだ行われていない。また、あるいは向こうから来る場合には、今度は皇居で儀仗兵の閲兵を受けるということを含んでフルの会談というものがまだ行われていないわけですね。

 その意味で、この四十周年を迎えることし、本格的な日中の首脳会談について、安倍総理の意気込みをお聞かせいただけますか。

安倍内閣総理大臣 今御紹介があったように、ことしは日中平和友好条約締結四十周年でありまして、日中関係が大きく改善をしたと両国の国民が感じることができるような、認識できるような一年にしたいと考えています。引き続き、戦略的互恵関係の考え方のもと、大局的観点から、あらゆる分野で協力と交流を推し進めてまいります。

 そのためにも、相互に都合のつくできるだけ早期に日中韓サミットを開催し、李克強首相を日本にお迎えをし、その後、私が適切な時期に訪中し、その後には習近平主席に訪日をしていただきたい、このように考えております。

 このようなハイレベルの往来を重ねる中で、日中関係を新たな段階へと押し上げていきたいと考えております。

山口(壯)委員 戦後の秩序というのは、アメリカを中心として、アメリカも頑張ってつくってきた。それが、今や世界の秩序が大きな地殻変動を起こしつつあるように思う中で、これは原因は北朝鮮だけではないと思うんですね。その中で、中国の習近平さんが一帯一路ということを言っている。多分、中国は中国流の国際秩序をつくりたいという、ある意味で大きな野望なんでしょう。

 このことについて、我々の距離感のとり方は決して簡単ではないんですけれども、安倍総理的に、一帯一路の発想、このことに対して日本はどのようにつき合っていこうとされているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 アジアの旺盛なインフラ需要に日本と中国が協力して応えていくことは、両国の経済発展にとどまらず、アジアの人々の繁栄に大きく貢献をしていくわけであります。

 そもそも、アジアにはインフラ需要が存在をするわけであります。それに応えていくことが大切だろうと思いますが、一帯一路については、インフラの開放性、そして透明性、経済性、さらには対象国の財政健全性等、国際社会共通の考え方を十分に取り入れることで、地域と世界の平和と繁栄に前向きに貢献していくことを期待しています。

 我が国としても、こうした観点から協力をしていきたい。いわば、日本が中国とともに行う、例えばインフラに対して対応していくということは、今申し上げた開放性、透明性、経済性、対象国の財政健全性が担保されていくことにもつながっていく、このように考えております。

山口(壯)委員 今総理から概括的な発想についてお述べいただいたわけですけれども、具体的にどういう協力があり得るかということについては、確かに、中国を中心としたAIIBとかを始めとするマネジメント、まだまだ日本的には精査していかないと心配な面もあります。他方、やはりシンボリックな面も含めてどうやって協力を進めていくかというのは案外大事かもしれません。

 その意味で、また安倍総理の一つの大きなイニシアチブでもって、この一帯一路にのみ込まれることなく、やはり日本のイニシアチブも十分大事にしながら、日中間の対話、世界の秩序をどうやって平和に持っていくかということを、アメリカとのすり合わせは根本に置きながら、なおかつ、いろいろとランドパワーたるこういう国々とも上手につき合っていただければと思います。

 終わります。

河村委員長 この際、江渡聡徳君から関連質疑の申出があります。山口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。江渡聡徳君。

江渡委員 自由民主党の江渡聡徳でございます。

 久々の予算委員会の質問ということで多少緊張しておりますけれども、頑張って質問させていただきたいと思っております。

 さて、冒頭にですけれども、昨日の委員会のやりとりを聞いておりまして、今回の国会におきましての働き方改革、これは大変大きな、あるいは、ある意味最大のテーマではないのかなというふうに思っておりまして、しかし、きのうの委員会のやりとりで、私自身も多少おやと疑問に思うような点もあったので、冒頭、この裁量労働制の拡大についてお聞きしたいと思っているわけであります。

 昨日の質疑におきまして、平成二十五年度労働時間等の総合実態調査の矛盾をどう考えているか、誤った根拠で答弁したのではないか、このような指摘があったわけでありますけれども、そのことに対しまして、厚労大臣が精査するというふうに答えていましたけれども、精査がきちんとできたのでしょうか。もし、まだまだこの精査というものが長く時間が続くようであれば、私は、一度白紙に戻されてはいかがかな、そのように思っているところでございます。

 そこで、まず厚労大臣にお答えいただきたいと思いますし、また、そのことについて総理の所見もお伺いしたいと思っております。

加藤国務大臣 御指摘の労働時間等総合実態調査については、今、一万を超えるデータを利用しておりますので、その個々のデータについて、また調査の手法などについて精査をさせていただいておりまして、時間を要しているというのは御指摘のとおりでございます。

 この点については、昨日も野党の委員から強い御指摘をいただきました。また、きょう、与党の江渡委員からも御指摘もいただいたところでございます。

 私ども、そうした今、御指摘も踏まえて、こうした精査に相当の時間を要するようなデータをお示しをしたということについては、これは撤回をさせていただきたいというふうに思いますし、また、こうしたデータをお示しをする中で、国会の皆さんに対しても、また国民の皆さんに対しても御迷惑をおかけしたことに対しては深くおわびを申し上げたいと思います。

安倍内閣総理大臣 事実関係については、ただいま厚労大臣が答弁したとおりでございます。

 引き続き精査が必要なデータをもとに行った一月二十九日の本委員会における私の答弁は撤回をするとともに、おわびを申し上げたいと思います。

江渡委員 今、大臣からも、そして総理からも、大変誠実な答弁がいただけたというふうに私は思っておるところでございます。

 しかし、やはりデータというのは大変重要であります。ですからこそ、答弁等々におきましては、しっかりと精査していただいてお答えいただければありがたいなと思っているところでございます。

 では、質問に入らせていただきたいと思っております。

 まず冒頭、二月五日に佐賀県の神埼市で陸上自衛隊のヘリコプターAH64Dが墜落した事故につきまして、大きな被害を受けた住民の方々におかれましては、謹んでお見舞いを申し上げたいと思いますし、また、亡くなられた自衛隊員二名におかれましては、心より冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 このような事故が起きたということは大変遺憾でありますけれども、しかし、被害者への補償や殉職隊員、家族への補償については、しっかりとした対応をお願いしたい、そのように私は考えております。

 また、今回の事故を起こした部隊の整備の担当の方々、この方々は、大変大きなプレッシャーを感じているのではないのかな、もしかして自分たちの責任が大ではないのかな、そんなような思いもしているのではないのかなと思っております。ですからこそ、隊員の心のケアということも大変重要であると思っておりますけれども、その点について防衛大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 まず、改めて、今回の事故では、国民の命と平和な暮らしを守るべき自衛隊が住民の方々の安全を脅かし、多大な被害を生じさせたことは極めて遺憾であり、心からおわびを申し上げます。

 墜落による火災の被害に遭われた方のほか、現時点において、屋根の損傷といった七件の近隣への建物等への被害等も確認しており、これらについてもしっかり補償させていただくよう調整を行っております。また、被害に遭われた皆様の生活の再建や心のケアについても、御要望を伺いながら誠心誠意対応させていただきたいと考えております。

 今般の事故により亡くなった二名の隊員について、今委員から丁寧なお話がございました。平成三十年二月七日付で公務上の災害と認定しており、御遺族に対しては、法令に基づき、遺族補償等を支給するほか、賞じゅつ金の支給についても、事故の状況を踏まえ、適切に対応してまいります。

 また、今般の事故に関係する隊員の心理的ケアについては、目達原駐屯地において、事故の翌日から、毎日カウンセリングを受けられる体制を強化するとともに、自衛隊内の心理の専門家である心理幹部等を四名現地に派遣して、関係隊員の面談等を実施しております。

 防衛省としては、今後とも、被害者の方々や隊員、御遺族への補償を誠心誠意行い、関係者のケアについても適切に対応してまいります。

江渡委員 しっかりとした対応をしていただければありがたいなというふうに思っております。特に、殉職隊員の御家族の方々の思いというのを我々もきちんと受けとめて、対応するべきところはお願いしたいというふうに思っております。

 さて、昨年来、自衛隊機の事故が続いております。特に、昨年五月十五日には陸上自衛隊の連絡偵察機LR2が、八月二十六日には海上自衛隊の哨戒ヘリSH60Jが、十月十七日には航空自衛隊の救難ヘリUH60Jが墜落し、先週二月五日には陸上自衛隊の攻撃ヘリAH64Dが墜落するという事故が発生いたしました。

 これらの事故というものは、それぞれ、急患輸送という実任務、あるいは各種の訓練、定期整備後の試験飛行というように、自衛隊の活動するさまざまな状況において発生しているものであるというふうに承知しておりますけれども、今後このような事故を防止するために、防衛大臣の決意というものをお聞かせいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 御指摘のとおり、昨年においては、五月の陸上自衛隊偵察機LR2の墜落、八月の護衛艦「せとぎり」搭載ヘリSH60Jの青森県竜飛崎西方海上での墜落及び十月の空自救難ヘリUH60Jの墜落など、自衛隊において事故が相次いで発生しました。そして、残念ながら、今月五日の第三対戦車ヘリコプター隊AH64Dの墜落により、住民の方々の安全を脅かし、多大な被害を生じさせてしまったことは極めて遺憾です。

 事故が続くことは、住民の方々の安全を脅かすのみならず、自衛隊員の命にかかわる事柄であり、また、自衛隊の運用、訓練等に関して国民の皆様に大変御心配をおかけするものであるということを重く受けとめております。

 昨年十月には、私から、各種事故等の防止に関する大臣通達を発令し、各幕僚長等に対し安全管理の徹底を指示したところですが、今回の事故においては、事故当日に大野大臣政務官を現地に派遣したほか、十日及び十一日に私自身が現地を訪問し、事故現場の状況を直接確認をいたしました。

 引き続き、私が先頭に立ち、徹底的な原因究明を行った上で、いま一度、隊員一人一人が安全管理にかかわる認識を新たにし、防衛省・自衛隊全体として再発防止に全力を挙げて取り組んでいく考えでございます。

江渡委員 今大臣から答弁があったわけでありますけれども、しっかりと大臣が先頭に立って対応を進めていただければありがたいなと思っておりますし、また、自衛隊が日々活動していく上においては、国民の理解というものが一番大事であります。そのことをしっかりとできるようにするためにも、これからも全力を尽くしていただければありがたいなと思っております。

 次に、北朝鮮情勢について、この関連について伺いたいと思っております。

 昨年来の北朝鮮による相次ぐミサイルや核実験などによりまして、朝鮮半島をめぐる情勢というものは緊迫の度を非常に増しているところでございます。東シナ海などの情勢も含め、我が国を取り巻く安全保障環境は格段に厳しくなっていると私は考えております。

 自衛隊は、各種任務等の現場で、この厳しさというものを肌で感じているのではないのかなと思っておりますし、また、我が国を守り抜くという重い職責とあわせて、非常に大きなプレッシャーがのしかかっているのではないでしょうか。

 ですからこそ、このような状況も昨年来の事故の遠因になっているのではないのかなというような、そんな考え方もできるわけでありますけれども、ここで改めて、北朝鮮情勢についてどのような認識にあるのか、防衛大臣にお伺いしたいと思っております。

小野寺国務大臣 北朝鮮の核・ミサイル開発は、我が国の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっており、我が国を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しいと言っても過言ではないと思います。

 北朝鮮は、一昨年、二〇一六年来、広島型原爆の十倍の約百六十キロトンという、過去最大出力と推定される規模の核実験を含む三回の核実験を強行いたしました。また、二回連続で我が国を飛び越える弾道ミサイル発射、我が国の排他的経済水域への弾道ミサイル発射、ICBM級の長距離弾道ミサイル発射を行ったほか、四発の同時発射、潜水艦からの発射など、四十発もの弾道ミサイルの発射を強行しております。

 とりわけ、我が国を飛び越える発射や我が国の排他的経済水域への発射は、現実に国民の命にかかわるものであり、航空機や船舶の安全確保の観点からも極めて危険な行為であります。

 さらに、北朝鮮が、日本列島を核爆弾で海中に沈めるなど、我が国に対する核兵器による攻撃意思を繰り返し示していることは、過去に例を見ない挑発であり、断じて容認できません。その上で、北朝鮮は核・ミサイル開発のための活動を継続する姿勢を依然として崩しておらず、今後もさらなる挑発行動に出る可能性も考えられます。

 こうした状況の中、防衛省・自衛隊は、二十四時間体制で我が国の領土、領海、領空を守るため、今この瞬間も全力で任務に当たっております。

 私としては、引き続き、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしを守り抜くという、政府に課せられた最も重要な責務を全うしていく所存であります。

江渡委員 今、防衛大臣の方から、朝鮮半島情勢というものが戦後最大の危機的な状況である、本当に厳しい状況であるということが述べられたわけでありますけれども、そうであれば、万が一に備えまして、日ごろから危機管理の万全を図るべく平和安全法制を整備したところであるわけでありますけれども、朝鮮半島の有事が起こった場合、つまり北朝鮮有事が起こった場合、韓国にいる邦人をどのように保護するのか、これは簡単なことではないというふうに思っております。

 このような事態を想定して、NSCにおいては、あるいは種々の会議等においても議論されていると思いますけれども、この点について、韓国側とも何らかの調整も行っているのでしょうか。そして、どのような対応を考えているのでしょうか。その点について総理にお伺いしたいと思っております。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮による核・ミサイル開発は、我が国に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威であり、今、我が国を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しいと言っても過言ではありません。

 国民の命と平和な暮らしを守るため、我々は厳しい現実に向き合い、さまざまな準備を行っておく必要があります。

 その中で、海外で邦人が危機にさらされたとき、邦人の保護、救出に全力で当たることは、国として当然の義務であります。特に、北朝鮮をめぐる厳しい情勢が続く中、在韓邦人の安全確保は極めて重要な課題であります。

 政府としては、邦人の安全確保を含め、いかなる事態にも対応できるよう、司令塔たるNSCを中心に、平素から幅広く議論を重ねてきています。また、内閣官房を中心に、関係省庁が連携し、さまざまなケースを想定して、政府の対応について検討を進めてきているところであります。

 その中で、在韓邦人の安全確保についても、在韓邦人の保護や退避が必要となるさまざまな状況を想定し、必要な準備、検討を行っているところであります。

 また、韓国政府とのやりとりの具体的内容については、事柄の性質上、また先方との関係もありまして、つまびらかにはできませんが、韓国政府との間で、在韓邦人の安全確保について平素から緊密に連携をしています。

 引き続き、万全の準備を行い、国民の安全確保のため全力を尽くしていく考えであります。

江渡委員 ありがとうございます。

 邦人の、そしてまた国民の生命財産をしっかりと守り抜いていくんだ、そのためのあらゆる努力をしているということを今総理からお伺いしたわけでありますけれども、引き続き万全の体制を築いていただきたい、そのように思っておるところでございます。

 また、北朝鮮は、日本に届く約三百基ものミサイルを保有していると言われております。昼夜構わず、いつでも突然に発射してくるような状況であるわけであります。現在の体制ではイージス艦及びPAC3により対応することとなるわけでありますけれども、現場には、その対応に対して大変大きな負担となっているというふうにも伺っております。

 このため、補正予算でイージス・アショアの導入という流れになったというふうに私は理解しておりますけれども、しかし、国民の多くは、このイージス・アショアというものがどのような装備なのか、あるいはそのことが具体的によくわからないという声を多く聞きます。

 ですからこそ、この点について防衛大臣のお答えを求めたいと思います。

小野寺国務大臣 イージス・アショアについては、私の先任の防衛大臣であります江渡大臣もよく御存じだとは思いますが、私の方から説明をさせていただきます。

 イージス・アショアは、BMD対応型イージス艦と同様のレーダー、指揮通信システム、迎撃ミサイル発射機などで構成される防衛システムを陸上に配備した装備品であり、大気圏外の宇宙空間を飛翔する弾道ミサイルを地上から迎撃する能力を有しております。いわば、自衛隊のイージス艦の船以外の部分をそのまま陸上に固定したというような装備品であります。

 現在、北朝鮮情勢が緊迫する中、防衛省・自衛隊としては、高度の警戒態勢を維持し、イージス艦やPAC3を展開しておりますが、例えば、イージス艦は船でありますので、整備、補給で港に戻るすき間の期間が避けられません。また、洋上勤務が繰り返される乗組員の勤務環境を考えれば、極めて厳しい状況にあります。

 現在のような、二十四時間三百六十五日切れ目なく守る体制ということであれば、むしろ、船についているイージスシステムを陸上に揚げて配備するイージス・アショアの方が能力的にも費用的にも効率的ではないかと思っておりますし、私どもとしては、専守防衛のもと、我が国に対する弾道ミサイルの脅威から国民の生命財産を守るための必要不可欠な装備と考えており、引き続き速やかな導入を図ってまいりたいと思っております。

江渡委員 ありがとうございます。

 また、政府といたしましてはイージス・アショアを二基導入するということでありますけれども、一基ではなく二基必要である理由というものをわかりやすく説明していただきたいと思いますし、また、イージス・アショアを秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場に設置する方向で検討しているというような報道もあったわけでありますけれども、候補地の検討状況はどのようになっているのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 委員御案内のとおり、我が国を二十四時間三百六十五日防御する能力ということで、今回イージス・アショアを導入することになりました。その際、イージス・アショアに搭載予定の能力向上型迎撃ミサイルでありますSM3ブロック2Aの基本的な能力に鑑み、我が国におけるイージス・アショアを適切な場所二カ所に配備すれば、我が国を北海道から沖縄まで常時、持続的に防御し得ることから、今回、二基の導入ということを検討させていただいております。

 そして、イージス・アショアを配備するに当たっては、地形や地質、電波環境等の調査や測量といった配備可能性の調査をあらかじめ実施し、防衛上有効な場所に確実に配備できるか否か確認する必要があります。

 御質問のありました配備先の候補については、まさにこのような観点から現在検討を行っているところであり、具体的な場所について現時点でお答えすることは困難ではありますが、現在御審議いただいております平成三十年度政府予算案においては、配置に必要な地質測量調査や施設の基本設計等のために必要となる経費を計上していることから、候補地に関する検討を可及的速やかに進め、今後、適切な形で地元にお伝えし、理解を得る努力をしていきたいと考えております。

江渡委員 今の大臣のお答えですと、まだ具体的には決まっていない、しかし、この平成三十年度の予算が通ったら速やかに検討させていただいて地元との調整を図っていくということであるわけでありますけれども、しかし、候補地になっていると報道された地元では、電波の影響など不安の声も上がっているというふうに聞いておるところでございます。

 先月の三十一日に開催された参議院の予算委員会におきまして、宇都議員の質問に対して小野寺大臣は、特に電波の影響等々そういう形で健康に影響が出るというものではないという旨を明確に述べられたわけでありますけれども、改めて、地元の不安をどのように払拭していくのか、その点について防衛大臣にお伺いしたいと思っております。

小野寺国務大臣 弾道ミサイル防衛のためには、当然、相手の弾道ミサイルを捕捉するためのレーダーが必要ということになります。

 このレーダーの使用に当たっては、電波法及び電波防護指針等により電波の安全性の基準について規定されているところであり、自衛隊が既に全国各地に配備している警戒管制用レーダーに限らず、我が国において使用される全てのレーダーは、この規定によって適切に運用されております。

 イージス・アショアに搭載するレーダーについても、当該規定に基づき安全に運用することは当然であり、この点について、地元の皆様には十分な理解をいただくことが重要と考えております。

 その上で、イージス・アショアに用いられるレーダー波は、無線LANや空港の監視レーダーにも使用されていますSバンド帯と言われる周波数帯であり、現にイージス艦の乗組員は、このようなレーダーの真下において何ら健康上の被害なく任務を遂行しております。

 また、私が本年一月、米国のイージス・アショアの試験施設を視察した際、実際にレーダーが稼働している状況で問題なく視察を実施することができたほか、米側から、ルーマニアで、米軍の運用において、必要な対策により人体や通信機器との関係で問題なく運用されている旨、直接説明がありました。現在稼働しているイージス・アショアはこのルーマニアにある施設でありますので、そのことについての説明を受けたわけであります。

 イージス・アショアの候補地につきましては、現在検討を行っているところでありますが、今後、こうしたことも踏まえ、防衛省として、候補地となる皆様に影響が生じないように必要に応じて対策を講じるとともに、このような問題について丁寧に説明を行ってまいりたいと考えております。

江渡委員 ありがとうございました。

 そのほかにも、地元からこんなような声もあります。イージス・アショアを設置すると攻撃の際に標的にされるのではないかという不安の声もあるわけでありますけれども。

 また、大臣も御承知のとおり、私の地元青森県におきましては、陸海空の自衛隊、そして米軍の三沢基地、あるいは大湊にはガメラレーダーがありますし、車力にはXバンドレーダーがある。ですから、青森県の方々も、万が一あった場合においては標的にされるんじゃないか、そういう不安もあるわけであります。

 ですからこそ、イージス・アショアを設置するのではないかというふうに報道された地元の方々というのは、そういう不安というのは大変大きいのではないかと思っております。

 ですからこそ、そのような危険性というのはあるのかないのか、その点について大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 江渡委員の御地元の青森県におきましては、自衛隊だけではなく、在日米軍の重要な施設も多々ございます。大変、日ごろから日本の安全保障に、地元の皆様も含めて御理解をいただき、感謝を申し上げます。

 イージス・アショアについて、これが、候補地となっている場所が攻撃の標的にされるのではないかという不安、そのような声を私どもも報道で聞いております。

 イージス・アショアは、弾道ミサイルを迎撃することを目的としたシステムであり、他国を攻撃する能力はなく、国民の生命財産を守るために必要な純粋に防御的なシステムであることから、周辺国に脅威を与えるものではまずありません。

 また、弾道ミサイル防衛システムは、弾道ミサイルを物理的に破壊することで国民の生命財産を守る対処力であるとともに、弾道ミサイル攻撃を物理的に阻止する能力を保持することにより、敵に対して弾道ミサイル攻撃を断念させる抑止力でもあります。

 したがって、イージス・アショアを配備し、我が国の弾道ミサイル防衛システムを強化することにより、敵に日本への弾道ミサイル攻撃を断念させる抑止力も大きく向上し、標的にされる危険性はむしろ減少するものと考えております。

 万が一、他国から弾道ミサイルを発射された場合にあっても、みずからのシステムでこれを迎撃することができるようになるため、配備先の住民の皆様も含めた国民の生命財産を守ることができるようになります。

 また、当然のことながら、イージス・アショアは重要な防衛装備となるため、適切な警備が求められます。

 イージス・アショアは陸上自衛隊が運用することになりますが、例えば武装工作員などがイージス・アショアを破壊しようとする行為に及ばないよう、警備には万全を期す考えであり、関係機関、これは警察、海上保安庁でありますが、とも連携をしていきたいと考えております。

江渡委員 ありがとうございます。

 しっかりと抑止力も高まる、と同時に警備を万全に行っていく、ですから逆に危険性は高まることはないんだ、そういう答弁であったと思います。しかし、やはり住民の方々の不安というのはそう簡単には払拭できないと思っておりますので、丁寧な説明をしていただいて、御理解をいただくように努力していただければありがたいなというふうに思っております。

 さて、このイージス・アショアを導入したとしても、北朝鮮からの飽和攻撃を受けた場合、その全てに対応するということは、私は大変難しいのではないのかなというふうに考えています。

 先月にはSM3のブロック2Aの発射試験、これは失敗しています。そうだとすれば、より多層的な防衛システムを構築していく必要というものはあるのではないのかなと私は考えております。また、いざとなった場合、自衛官の生命を守りつつ国を防衛するというためには、現在の自衛隊の種々の装備では余りにも反撃できる距離が短いのではないかと私は考えています。

 このような状況で、スタンドオフミサイルという足の長いミサイルを導入することになったわけでありますけれども、一部のマスコミでは、イージス・アショアやスタンドオフミサイルは、即、敵基地攻撃を行うとか、専守防衛から逸脱するといったような報道もありまして、国民の中にはこれらの導入に対して不安視している方々もいることも事実であります。

 総理、ですからこそ、国民に対して、日本国として専守防衛の理念というものは決して変わらないんだと、そのことをしっかりと示してもらえないでしょうか。よろしくお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 専守防衛は、憲法の精神にのっとったものであり、我が国防衛の基本方針であります。今後とも、これを堅持してまいります。

 また、いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で、米国の打撃力に依存しており、今後とも、日米の基本的な役割分担を変更することは考えていません。

 同時に、我が国を取り巻く安全保障環境が戦後最も厳しいと言っても過言ではない中、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、しっかりと備えをしておくことは私たちの大きな責任でもあります。

 イージス・アショアもスタンドオフミサイルも、いずれも専守防衛のもとで自衛隊の装備の質的向上を図るものであり、いわゆる敵基地攻撃を目的としたものではありません。

 政府としては、今後とも、専守防衛のもと、我が国の防衛に万全を期していく考えであります。

江渡委員 ありがとうございました。

 まさに、専守防衛の理念は決して変わることはないんだ、そして、日米の同盟の枠の中において、日本は日本としての役割をきちんと果たしていく、そのお答えをいただいたというふうに思っています。

 さて、そしてまた、皆さん方にも考えていただきたいと思う点がございます。

 自衛隊員。自衛隊員は、隊員でありますし、でもその前に一人の国民であるというふうに私は思っております。我が国を守るためにその身を賭している国民であります。国としてこのような隊員の安全確保のために全力を尽くすというのは、私は当然であると思っております。そのような意味で、今回のスタンドオフミサイルの必要性というのは理解できます。

 そこで、隊員の安全確保の観点から、なぜスタンドオフミサイルの導入が必要なのか、改めて総理の見解をお伺いさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 自衛隊員の任務は危険を伴うものであり、命がけのものであります。それゆえ、自衛隊員のリスクをできるだけ低減し、より安全に任務を遂行できるよう適切な装備を整えることは、これも政府の責任であると私は考えています。

 我が国としては、今後とも専守防衛の方針を堅持していくと同時に、国民の皆様に御理解をいただきたいのは、専守防衛は、純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しいものであるという現実であります。

 あえて申し上げたい、こう思うわけでありますが、それは、相手からの第一撃を事実上甘受し、かつ国土が戦場になりかねないものでもあります。その上、今日においては、防衛装備は精密誘導により命中精度が極めて高くなっています。一たび攻撃を受ければこれを回避することは難しく、この結果、先に攻撃した方が圧倒的に有利になっているのが現実であります。

 また、技術の著しい進展により、武力攻撃が行われる場合、その脅威が及ぶ範囲は、侵攻してくる部隊の周囲数百キロ以上に及び得る状況となっています。こうした中で、現状では自衛隊は相手の脅威の中に入って対応せざるを得ないわけであります。これでは隊員の安全確保が困難であり、ひいては我が国の守りは困難となります。

 このような厳しい現実を踏まえれば、専守防衛のもとで自衛隊員の安全を確保しつつ我が国防衛に万全を期すため、相手の脅威の圏外から対応できるスタンドオフミサイルが必要不可欠と考えています。

 今後とも、専守防衛のもと、自衛隊の装備の質的向上を図り、我が国の防衛に万全を期していく考えであります。

江渡委員 大変ありがとうございました。

 まさに今、各国とも軍の近代化がどんどんどんどん進んでいるわけであります。その中において、日本の専守防衛をしっかりと堅持しつつ、隊員の生命もいかに守っていくか、と同時に、限られた資源をどう有効に活用していくか。そのためにおいて日本の自衛隊の近代化も私は必要であろうと思っていますので、総理の考え方、ありがたいというふうに思っているところでございます。

 次に、限られた防衛省・自衛隊の資源というものを有効に活用するためにも、私は、統合運用の強化というのは大変大事なことであろうというふうに考えております。

 本年三月には陸上総隊ができ、自衛艦隊、航空総隊と並んで、陸海空自衛隊のそれぞれの持つ能力を各自衛隊において束ねる機能が整うこととなりますが、さらに、これら陸海空自衛隊の能力を我が国防衛のために有効に機能させるためには、統合する統幕の役割というものが一層重要となります。

 安倍総理は年末に向けて防衛計画の大綱を見直す考えを示されて、そして、これからその議論が進んでいくと理解しておりますけれども、統幕の体制、役割を含め、統合運用の強化をどのように考え、進めていくのか、防衛大臣の見解をお知らせいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 自衛隊の運用については、十年以上前から陸海空自衛隊が一元的に統合運用され、その司令塔たる統合幕僚監部については、平成十八年の設置以降、その機能強化を図ってきております。中でも、統合幕僚監部への実際の部隊運用に関する業務の一元化に関しては、江渡委員とともに取り組んだ防衛省改革の成果の一つであり、改めて江渡委員の御尽力に感謝を申し上げます。

 防衛省・自衛隊においては、現在の防衛大綱、中期防のもと、事態にシームレスに、かつ状態に臨機に対応して機動的に行い得るよう、統合運用の考え方をより徹底した統合機動防衛力の構築を着実に進めておりますが、厳しさを増す安全保障環境の中で、これまで以上に陸海空自衛隊がそれぞれ持てるアセット、人員を最大限活用し、陸海空自衛隊の総力を結集する形で統合の運用をより一層進めることが必要だと認識をしております。

 本年末を目指して進めております防衛計画の大綱の見直しと新たな中期防の策定に当たっては、まず何よりも、現実から目をそらすことなく、真正面から向き合うことが不可欠と考えております。その上で、サイバー空間や宇宙空間など、新たな領域の活用が死活的に重要になっていることを踏まえれば、もはや陸海空という従来からの区分で発想するだけでは不十分と考えております。

 従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定め、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、すきのない防衛体制を構築してまいります。

江渡委員 ありがとうございます。

 私は、まさに、今大臣が述べられたように、統合運用をどうしっかりとした体制に持っていくか、このことが一番大事ではないのかなと思っています。特に、今の近代戦におきましては、多分一番最初には電子戦が行われると思っております。その後、どのような形で各国が持っているアセットをそれなりに活用していくかという形になろうかと思っています。

 そうであればあるほど、この統合運用というものを今まで以上に確固たるものにしていかなければならないと思います。ただ、その段階においては、陸海空がしっかりとしたお互いに支え合うという体制をどうつくっていくか。そう思った場合においては、今の統幕の人員で果たして足りるのかどうなのか、その辺のところも全体的にしっかりと見据えていただきながら、よりよい形のものをつくり上げていただければありがたいな、そう思っているところでございます。

 次に、この防衛力を支えていく人的基盤の充実強化についてお伺いしたいと思っております。

 現在の日本における人口減少等の社会情勢とか、あるいは良好な経済情勢から、曹士の募集環境というのはかなり厳しい状況に陥っております。ですからこそ、この今の募集状況、それを踏まえたこれからの取組というものを大臣はどのように考えていくのか、そして、しっかりとした体制を築いていくのか、このことについてお伺いしたいと思っております。

小野寺国務大臣 近年、少子化に伴い、募集対象人口、これは十八歳から二十六歳でありますが、減少傾向にあり、また、大学進学率が向上し、さらに有効求人倍率が高いことから、募集環境は厳しさを増しております。

 こうした状況にありまして、自衛官等の募集については、全国五十カ所の地方協力本部が、広報官を中心に、都道府県、市町村、学校、募集相談員等の協力を得ながら、きめ細やかに、かつ粘り強く実施しているところであります。

 防衛省としては、引き続き、それぞれの地域において効果的な募集、採用活動を行うため全力を尽くしてまいりたいと考えておりますし、そして、私どもとしては、お預かりをしたお子さん、将来を担う有望な人材を防衛省挙げてしっかり育て上げ、そして、この国を守る優秀な自衛官として育った後は社会人としても立派な人材になるように、省を挙げて努力してまいります。

江渡委員 今、省を挙げて努力していくというお話があったわけでありますけれども、それでもなかなか、現場の自衛隊の方々からのお話を聞きますと、思うように集まらないんだという声が多く上がっております。

 特に、海、海上自衛隊。船に乗りますと、練習航海やさまざまな訓練等々におきまして、長い間陸地を離れていくことになる。そうなると、今の若い人たち、船の上でスマホも使えない、あれも使えない、これじゃあなというような声がよく聞こえてきます。

 ですからこそ、今の、現在の若い方々に対してもある程度の対応ができるような体制もしっかりと考えながら、そして、防衛省・自衛隊に入った場合において、ある程度の、こんなメリットもあるよ、こんなこともできるよ、そういうような形で広く考えていただければありがたいなと思っています。

 また、今のような状況を踏まえますと、私は、今まで以上に女性自衛官の活用というものの重要度というものが増してくるのではないのかなと思っております。

 現在の幹部クラスの女性自衛官の数と、今後どのような職域を女性自衛官に開放していくことを考えているのか、そのことをお伺いしたいと思っております。

小野寺国務大臣 御案内のとおり、自衛隊の募集環境については、今後、募集人口が更に減少していくことなどにより、ますます厳しくなることから、女性自衛官の活躍を推進していくことは必要だと思っています。

 全自衛官に占める女性自衛官の人数は、平成二十八年度末で一万三千七百七人、六・一%となっており、そのうち女性の幹部自衛官の人数は二千百五十人となっています。今後、採用者に占める女性の割合を一〇%とすることで、二〇三〇年までに女性自衛官の比率を九%以上という目標を達成した上で、その後、できる限り早期に女性自衛官の比率を現状から倍増すべきと考えております。

 私も、全国の部隊を回る中で、女性自衛官の活躍を見ております。例えば、さまざまな監視業務等においては、男性自衛官よりも、女性の特質というんでしょうか、きめ細やかで着実に仕事を進めるという中で、むしろその能力がまさっているということもありますし、既に幹部自衛官の中には、海であれば艦長で立派に務めを果たしている隊員もございます。

 これから女性活躍が必要な分野は、自衛隊も同じだと思っております。

江渡委員 ありがとうございます。

 ますます、私は、女性の活躍というものが期待されるのではないのかなと思っております。

 それゆえに、例えば、結婚してお子さんを持たれた自衛官等がしっかりと働きやすい環境を整えてあげるということも私は大事ではないのかなと思っております。今、全国各地の駐屯地等々においても保育園等の整備が進んでいるわけでありますけれども、その辺のところもしっかりと対応していただければありがたいなというふうに思っています。

 続きまして、防衛医科大学校の今後のありようについて伺いたいと思います。

 防衛医大が養成する自衛隊の医官については、隊員や一般の方々の日常の診療、いわば一般医としての活動もさることながら、まさに各種事態に対応する自衛隊の医官として、災害における救急対応、万が一の生物化学兵器への医療対応もできるようなスペシャリストの育成も非常に重要というふうに考えております。

 これらの分野における自衛隊医官の能力を一層充実させるために、防衛省・自衛隊として今後の取組について、大臣にお伺いしたいと思っております。

小野寺国務大臣 御指摘のとおり、災害における救急対応や生物化学剤への医療に対応できる人材の育成は重要と考えており、自衛隊医官の能力向上のために継続的な取組を実施しております。

 防衛医科大学校では、防衛医学講座を設けて、災害医学や生物化学剤などの特殊戦傷病学について卒前教育を実施するとともに、生物化学剤などへの対処能力の向上に資する特殊衛生防護分野の研究に取り組んでおります。

 また、防衛医科大学と自衛隊中央病院が連携して、戦傷外科手術の取得、向上を目的とした戦傷外科救命処置コースを行うとともに、爆発テロなどを想定した大量傷者を受入れする訓練や、米軍を含む国内外の関係機関への留学を通じて、生物化学剤に対する医療能力の向上を図っております。

 私も、昨年十月、中央病院において、このテロあるいは化学剤等の対処の演習を視察させていただきました。自衛隊であるからこそできる対応能力だと思っております。

 防衛省・自衛隊としては、今後とも、このような取組を通じて、自衛隊医官のより一層の能力向上に努めてまいります。

江渡委員 ありがとうございます。

 私は、可能であるならば、防衛医大を卒業してお医者さんになった方々に、例えば生物化学テロ等々に対しての専門医としての資格というのを授けるような形、そういうことができないのかなというふうにも思っているところでございます。そういう観点も含めて御検討いただければありがたいなというふうに思っています。

 関連しまして、自衛隊医官の活用に関して、一つ大臣に見解を伺わせていただきたいと思っています。

 私の地元もそうなんですけれども、地方における医師不足というものが今後ますます深刻化していくというのは論をまちません。過疎化が進む地域医療のために自治医科大学があるわけでありますけれども、自衛隊医官についても、そういった医師不足に悩む地域に派遣するなど、さまざまな形で貢献することができれば、私は、防衛省・自衛隊への国民の理解というのが今まで以上に一層深まることができるのではないかな、そう考えております。

 今後どういったことが可能か、そのことを検討していただきたいというふうに思っておりますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 自衛隊医官の地域医療への貢献につきましては、自治体の御要望に基づき、これまでも可能な限り協力をしております。

 一方、自衛隊の任務が多様化し、自衛隊衛生についても、国内外で活動する機会が広がる中で、自衛隊医官に関して、実は、定数に対して現員が八割程度の充足率であります。

 自衛隊の任務への影響も考えます中で、医師不足の状況にある地域への医官の協力については難しい状況もあるということは事実ですが、このような中でも、私どもとして、自治体からの依頼があった場合には、自衛隊の任務への影響を勘案しながら適切な判断をして、できるだけの協力をしていきたいと思っております。

江渡委員 ありがとうございます。

 質問を終わります。

河村委員長 これにて山口君、江渡君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山委員 おはようございます。公明党の遠山清彦でございます。

 本日は、外交・安全保障がテーマの集中審議でございますけれども、喫緊の課題として、福井県を始めとした北陸地方の豪雪の問題がございますので、幾つかその関連の質問をさせていただきたいと思っておりますが、官房長官が十時四十五分には御退室ということでございますので、先に官房長官へ一問、御質問させていただきます。

 去る二月四日、沖縄県名護市で市長選挙が行われまして、御承知のとおり、自民党、公明党、そして日本維新の会が推薦をしました渡具知武豊氏が、相手候補である現職市長に三千四百五十八票の差をつけて初当選をいたしました。

 昨日、安倍総理も渡具知市長にお会いをしたと報道で伺っておりますが、私も、公明党沖縄方面本部長という立場で全力で応援をさせていただいた立場から、この場をおかりして、御支援くださった皆様に心から御礼を申し上げたいと思っております。

 渡具知新市長には、選挙後は、協調と融和を旨として、沖縄本島北部の中核である名護市の発展に全力を注いでもらいたいと期待をしております。

 さて、公明党と渡具知新市長は選挙前に政策協定を結んでおり、それに基づいてしっかりと政策を実行していくことが大切と我々は考えております。

 これに関連して伺います。

 まず、在沖米軍に関しまして、特に海兵隊の県外、国外への移転を進めること、及び、日米地位協定の改定を検討してほしいということを政策協定で明記をさせていただいております。

 後者、日米地位協定の改定につきましては、昨年、公明党の在沖米軍基地問題プロジェクトチームとして、官房長官に申入れをいたしております。その中で、殺人や強姦などの凶悪犯罪事案については、容疑者の起訴前の身柄引渡しについて、これは運用上、米側の好意的配慮として既に五件の実績がありまして、私どもとしては、既に実績があるわけですから、これを地位協定に明記してもよいのではないかと考えております。

 もちろん、この問題には、日米の刑事司法制度が根本的に違うという面もございまして、簡単ではないことは承知をいたしておりますけれども、仲井真前沖縄県知事の時代から、またその前から、地元からも求められていることでもありまして、私は政府に真剣に検討していただきたいと思っております。

 この点につきまして、官房長官の答弁を求めたいと思います。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

菅国務大臣 まず、今般の名護市長選挙において与党の推薦する候補が当選したことは、政府としても大変心強く感じているところであります。

 渡具知新市長はきのう、総理に御挨拶にお見えになりました。総理からも、選挙で公約して掲げたそうした政策の実現に政府としてもしっかり支援をしたい、そう申し上げたところであります。

 いずれにしろ、沖縄の基地負担軽減については、総理から、目に見える形で実現をする、できることは全て行う、そうした指示のもとに、政権の中で全力で取り組んでおります。

 今、具体的な御指摘をいただきました海兵隊の移転でありますけれども、実は、この移転については、民主党政権時代、移転先をめぐって迷走した時期がありました。そのことによって、実は、米国でその移転先となるグアムの予算が凍結をされていたわけでありますけれども、私ども、政権交代をして、そしてこの埋立承認をいただく、そういう中で、米側にも解除を働きかけをいたしまして、今、グアムでその移転先の工事が進んでいるところであります。最終的には、今沖縄にいると言われております米軍約二万八千人のうちの九千人が海外に移転をする、そういう方向で進んでおるところであります。

 いずれにしろ、政府としては、沖縄の負担軽減を早期に実現するために、引き続き、日米間で緊密に協力をしながら、グアム移転事業、ここをできる限り早く実現できるように取り組んでいるところであります。

 そして、もう一点、日米の地位協定でありますけれども、安倍政権のもとで、日米地位協定締結から半世紀を経て初めて、環境及び軍属に関する二つの補足協定の策定、ここが実現をしたところであります。

 また、御質問にもありましたけれども、昨年、公明党沖縄二十一世紀委員会、在沖縄米軍基地調査ワーキングチームから陳情をいただきました。凶悪犯罪について、現在の運用に関し、日米地位協定に明記することを検討すること、そうした御要望をいただきました。政府としては、重く受けとめて取り組んでいるところであります。

 今後とも、さまざまな御意見に謙虚に耳を傾けながら、事案に応じた最も適切な取組を積み上げていくことによって、日米地位協定のあるべき姿、ここをしっかりと追求してまいりたいと思います。

 また、御協力もお願い申し上げます。

遠山委員 大変心強い御答弁、ありがとうございます。

 この沖縄におけます基地負担軽減の課題というのは、どんな選挙があっても、それが終わっても、最重要の課題だと思っておりますので、総理また官房長官を先頭に、また防衛大臣も、取組をよろしくお願いいたします。

 さて、ちょっと順番が変わりましたけれども、福井の、あるいは福井以外の北陸の自治体の雪害の対策について何問かお伺いをしたいと思っております。

 強い寒気や低気圧の影響で、二月四日から日本海側を中心に記録的な大雪に見舞われまして、市民生活に大きな影響が出ております。亡くなられた方々も出ております。心から追悼の意を表するとともに、被害に遭われている方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 福井県では、国道八号で車約千五百台が立ち往生して、自衛隊の災害派遣などにより通行解除できましたけれども、生活道路の除雪作業はまだまだ進んでいないということでございます。公明党の太田昌孝衆議院議員あるいは山本香苗参議院議員、現地に入って視察をしておりまして、いろいろな声が私に伝えられております。

 小野寺防衛大臣にお伺いをしたい。

 要望に近いと思いますけれども、福井の市民を始め現地の方々から、やはりこの生活道路の除雪を自衛隊にお願いできないかという声が届けられているということでございます。

 この自衛隊の災害の派遣については、三つの要件があるということは十分承知をしております。一つは公共性。私道みたいなところの除雪はできないという意味でございますが、公共性。もう一つは緊急性。そしてもう一つは、自衛隊でなければできないという非代替性。こういう要件があるということは十分承知をしているわけでありますが、きのうもきょうも大雪が現地で降っているという状況でございますので、更に被害が拡大しかねない状況だと認識をいたしております。

 ぜひ防衛省として、福井県等からさらなる要請があれば柔軟に対応を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小野寺国務大臣 二月六日から降り続きました記録的な大雪に伴い、福井県知事から人命救助等に係る災害派遣要請を受け、防衛省・自衛隊は、関係省庁及び自治体と緊密に連携しつつ、最大約千三百六十名規模の隊員を派遣いたしました。

 そして、福井県あわら市から坂井市にわたる国道八号線において立ち往生していた車両への飲料水、食料、燃料の配付、除雪支援など、昼夜を分かたず二十四時間態勢で行い、九日未明に約千五百台に及ぶ車両の立ち往生は解消いたしました。

 その後も、福井県から追加要請を受け、福井市、越前市、永平寺町において、駅構内や線路上の除雪支援、及び、大雪による民間のタンクローリーが通行できないガソリンスタンドへの給油支援などを実施していたところでございます。

 十日、福井県知事から活動終了の要請を受け、災害派遣活動を現在は終了しております。

 ただ、一昨年からの大雪に関しても、防衛省・自衛隊としては、関係省庁等と緊密に連携しつつ、必要な情報収集に努めているところでありまして、福井県等から新たに災害派遣要請があった場合には、これまでと同様、私どもとして迅速かつ適切に対処していきたいと思っております。

遠山委員 大臣、ぜひよろしくお願いいたします。

 私も、実は幼少期、大臣の地元の宮城県、あるいは青森県、東北で育ったことがございますが、隊員たちの除雪作業というのはテレビの画面で見る以上に大変な作業でございまして、県民の皆様、地元の市民の皆様は大変感謝していると伺っております。更に必要があれば、ニーズがあれば前向きに御対応いただきたいと重ねてお願い申し上げます。

 続いて、野田総務大臣にお伺いをいたします。

 これも地元から要望が具体的に来ております。道路、鉄道の除雪体制を強化して円滑な交通を確保することが必要だと指摘がございます。そのために、除雪等に対する財政支援を充実してもらいたいということで、具体的に次の三点が私のところに届いております。

 まず一点目は、特別交付税の措置について、繰上げ交付等を含め特段の配慮を行っていただきたい、これが一点目です。

 二点目、地域鉄道事業者の施設整備に対する特別交付税については、現行法上、三割が特別交付税で措置されておりますが、豪雪地域においてはこの割合を引き上げることを検討していただけないか、これが二点目でございます。

 三点目、現在、措置の対象となっていない鉄道事業者、これは具体的にはえちぜん鉄道、福井鉄道というものでありますが、それらの対象になっていない鉄道事業者が管理する踏切等の、インフラ回りの除雪作業を地方自治体がやっている、その地方自治体に対する補助についても特別交付税の対象にできないか。

 以上三点の御要望でございます。大臣、よろしくお願いします。

野田国務大臣 まず初めに、この大雪で亡くなられた皆様方に心から御冥福を申し上げます。あわせて、いまだ被害で御苦労されている皆様方にもお見舞いを申し上げたいと思います。

 今お話がございまして、御視察、御苦労さまでございました。私のところへも、毎日、この大雪の被害に遭われた各市町村の皆様方の御要望やお話が続々と来て、いただいております。現場の本当にすさまじい雪の模様の写真等々もいただいて、本当に心痛む日々が続いているところです。

 地方団体の除排雪経費につきましては、普通交付税の算定において標準的な所要額を措置するとともに、実際の所要見込み額が普通交付税措置額を超える場合は、今お話ありました、今回、三月分の特別交付税により措置をしてまいります。総務省としては、地方団体の除排雪経費の実態を丁寧にしっかり把握して対応をしてまいります。

 なお、福井県を始めとして大雪に見舞われた地方団体の積雪の状況や御要望をお聞きした上で、今お話ございましたように、三月分の特別交付税の一部を繰り上げて交付することを検討してまいります。

 鉄道につきましては、石井大臣としっかり御相談を申し上げた上、取り組んでまいりたいと思います。

遠山委員 野田大臣、ありがとうございます。

 石井国土交通大臣にも簡潔に一問お伺いをしたいと思います。

 福井県等の道路の除雪に対する追加的な財政支援措置、これは国交省の予算の枠組みでできるということで、臨時特例措置という名称だと伺っておりますが、これもぜひお願いをしたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。

石井国務大臣 地方自治体が管理する道路の除雪費につきましては、積雪寒冷地域における道路交通の確保に関する特別措置法に基づきまして、年度当初に社会資本整備総合交付金を配分し、支援を行っているところであります。

 また、各地域の降雪状況に応じまして、三月には、この交付金とは別に、道府県、政令市を対象に除雪費用を補助金として追加配分をしております。さらに、全国的に積雪が著しい場合には、市町村に対し、臨時の特例措置といたしまして、除雪費の補助金を追加で配分をしてきたところでございます。

 この冬は、福井で昭和五十六年以来の豪雪となるなど、例年に比べて降雪量は極めて多い状況であります。引き続き、降雪の状況を踏まえつつ、必要な追加措置についても検討してまいりたいと考えております。

遠山委員 ありがとうございます。

 市町村に対する臨時特例措置が可能ということでございます。福井に限らず、石川、富山、新潟、日本海側、相当な市町村が大変な除雪を求められている状況でございますので、国交省におかれましても、柔軟に、機敏に御対応をしていただきたいということをお願い申し上げます。(発言する者あり)あと北海道ですね。はい、わかりました。

 続きまして、安倍総理にお伺いをいたします。

 先ほど官房長官にも御質問させていただきました、名護市で渡具知新市長が誕生したわけでございます。この新市長の民生面での公約は、公明党が重視する医療、福祉、あるいは子育て支援などの分野にかかわるものが多数ございました。

 主なものとして、例示でございますが、北部基幹病院の設置、子供医療費の高校生までの無償化対象の拡大、給食費の無償化などが掲げられたわけでございます。

 この病院設置の公約以外につきましては、全国の他の自治体でも広がっておりまして、例えば、九州では大分県豊後高田市が、来年度、つまりことしの四月一日から、高校生までの医療費の無償化と小中学校の給食費の全無償化を開始するわけでございまして、取組が拡大をしてきております。

 今回の名護市長選挙の最中も、大変多くの名護市民から、これらの政策の実現についての期待の声を、私、直接伺ってまいりました。ぜひ、国、県、地元の自治体が連携をして実現をしていかなければならないと思いますが、省庁横断型の課題でもございますので、総理から御答弁をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 昨日、私も渡具知新市長とお目にかかりました。就任のお祝いを申し上げるとともに、選挙で公約として掲げられた政策について、これはまさに、自民党、公明党、そして維新の会が一緒に、一生懸命応援した結果でもございます。

 その際、渡具知さんが公約をした、その公約の実現について、政府としてもしっかりと支援をしていく旨お伝えをしたところであります。昨日の段階では具体的な支援策については話はしておりませんが、再編交付金については防衛省において対応を検討しているものと承知をしています。

 政府としては、渡具知市長としっかりと連携をしながら、名護市を始め沖縄の発展のため、一層力を入れてまいりたいと考えています。

遠山委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、日韓関係について総理に伺います。

 二月九日、平昌オリンピックの開会式に総理は参加をされました。私も、日韓友好議連の一員として参加をさせていただきました。大変、寒かったですけれども、すばらしい式典だったと思います。

 この開会式の前に、総理は、平昌市内のホテルで文在寅大統領と首脳会談に臨み、両国間の諸課題について率直な意見交換を行ったと伺っております。昨年十一月、公明党の山口代表とともに青瓦台で文大統領と会見をさせていただいた私としては、非常によかったと思っております。外交にはさまざまな駆け引きがございますが、やはり、国を背負っているトップ同士が直接会って対話をすることにまさる外交の交渉というのはないのだろうと考えているわけでございます。

 私の文在寅大統領の印象は、バランス感覚に富んだ政治指導者というものでありました。もちろん、韓国政府内ではかなり異なる意見が大統領周辺に提起されている印象が強く、その中でのかじ取りというのは容易ではないのかもしれません。

 しかし、私ども日本にとって大事なことは、慰安婦問題の合意についてはきちんと相互に履行していくということを確保することだと思っております。韓国政府はこの合意の破棄も再交渉もしないと明言しているわけでありますけれども、この合意の相互の履行の見通しについて、今回の訪韓も踏まえて、総理から御見解をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日韓合意については、これは両政府が相当時間をかけて突っ込んだ話合いをしながら、最終的に合意に至ったものであります。

 慰安婦問題をめぐるこの日韓合意は、日韓両国がさまざまな分野で協力を進め、そして未来志向の日韓関係を構築していく上で欠くべからざる基盤であります。この合意は国と国との約束であり、政権がかわっても約束を守ることは、国際的かつ普遍的に認められた原則であります。

 日韓首脳会談では、文在寅大統領に対し、日韓合意は最終的かつ不可逆的な解決を確認したものであり、国と国との約束は二国間関係の基盤であるとの日本の立場を明確かつ詳細に伝えました。さらに、文大統領に対しては、日韓合意に達したときに私は国内で相当厳しい批判を受けましたが、リーダーというものは、ある程度の批判を受けることを甘受した上で決断していかなければならない、物事は前に進んでいかないということを申し上げたところであります。

 韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れることはできません。日本側は、約束をしたことを全て、誠意を持って既に実行しています。韓国側にも引き続き、約束を実行するよう強く働きかけていく考えであります。

遠山委員 ぜひ、この日韓関係、重要な隣国関係の一つでございますので、総理のおっしゃられた方針で、政府一体となって進めていただければと思います。

 続きまして、北朝鮮問題について一問伺いたいと思います。

 平昌オリンピックへの北朝鮮の参加を契機に南北対話が始まっております。総理も御出席された開会式には、金正恩委員長の事実上の特使として実の妹の金与正氏が派遣をされて、また、その後に、文大統領には訪朝の招請がなされたと報道されているわけでございます。

 しかし、私どもから見て最大の問題は、今回の一連の南北対話で、北朝鮮は核・ミサイル問題について何の方針変更にも言及をしていないということでございます。

 報道によれば、南北首脳会談、北朝鮮と韓国の首脳会談の前提条件として次の二つが報道されております。一つ、南北関係改善のスピードアップ、二つ目、米朝間の早期対話が必要ということであるようでございます。

 ペンス合衆国副大統領は北朝鮮に対して、ちょっとけさの報道は若干違うトーンの報道がされておりましたが、私の理解では、ペンス副大統領は北朝鮮に対して全く融和的な姿勢を示していないと認識をいたしております。

 安倍総理御自身は、平昌入りの前にペンス副大統領と会談をしております。また、現地で北朝鮮側と短い接触もあったと伺っております。

 総理に改めて、この日米の北朝鮮問題に対する基本姿勢というのは何なのか伺いたいということと、この今オリンピックを契機として進んでいる南北関係の、南北対話の進展が今後どういう影響を日米の基本姿勢に与えるのか、その点も含めてお答えをいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 平昌オリンピックの成功に向けて、南北対話が進められたことは評価をいたします。しかし、北朝鮮は、平昌オリンピック開会式の前日に平壌で大規模な軍事パレードを行いました。そこでは、昨年、日本の上空を飛び越えて発射された二発の弾道ミサイルや、我が国のEEZ内に撃ち込まれたICBM級弾道ミサイルと同じものと見られるものを含め、四種類の弾道ミサイルが登場しました。

 日韓首脳会談では、私より文大統領に対し、北朝鮮は平昌オリンピックを機に南北対話を進める一方で、核・ミサイル開発を継続しており、北朝鮮のほほ笑み外交に目を奪われてはならない旨指摘をし、率直な意見交換を行ったところであります。そして、北朝鮮に政策を変えさせ、核・ミサイル計画を放棄させるために、あらゆる方法で圧力を最大限まで高めていかなければならないこと、日韓、日韓米でそれぞれ緊密に連携していくことについて完全に一致をしたところであります。

 ペンス副大統領とは、訪日の際に加えまして平昌でも、ペンス副大統領が私がおります部屋にやってこられまして、そこで、短時間ではありましたが、更に情報交換をしながら意思の疎通を図ったところでございます。そして、レセプションの会場まで一緒に同じ車に乗って、更に情報交換をしながら、やはりこれは日米が一緒に行動しているということをしっかりと示していこうということでもあったんだろう、こう思うわけでありますが、一緒にレセプション会場に向かったわけであります。

 北朝鮮の完全、検証可能、不可逆的な非核化に向け、圧力を最大限まで高めていくとの方針について完全に一致をしているところであります。つまり、今後、北朝鮮への圧力を最大限まで高め、そして、北朝鮮の側から対話を求めてくるという状況をつくらなければならない、政策を変えるということにおいて対話を求めてくるという状況をつくらなければならないということであります。

 交渉でございますから、今後さまざまなことがあるかもしれませんが、日米は常に完全に連携を密にしていこう、そのために、私と副大統領の間もそうですし、防衛大臣同士もそうですし、谷内局長とマクマスター、NSC同士の対話もしていきますし、私とトランプ大統領との対話も電話会談を通じて頻繁に行っていくという方針でございます。

遠山委員 総理御承知のとおり、今、南北対話をやっている、そして、北朝鮮は従来から米朝対話を望んでいるという話になってきて、そうすると、日本がこの二つのトラックの対話、もちろん米朝は進んでいないわけでありますが、の中でどういう働きかけをしていくかということは、非常に大事な局面がこれからあろうかと思っております。

 特に、文大統領が訪朝すると実際になっていく流れの中で、日本の河野外務大臣もいろいろと御活躍されているわけでありますが、外務省としても深く思慮して対応していかなければならない状態が近い将来あるのではないかと個人的に感じておりますので、ぜひしっかりとした御対応をよろしくお願いいたします。

 続いて、日中関係について伺います。

 本年は、日中平和条約締結四十周年、また、公明党創立者である池田大作創価学会名誉会長が日中国交正常化を提言されてから五十周年という歴史的な節目に当たります。昨年は国交正常化四十五周年ということもあり、両国関係は改善の基調で大きく前進したと感じております。

 私自身、昨年だけで四回訪中をさせていただき、そのことを肌身で感じました。特に、年末の日中与党交流第七回会議に際して、二階、井上両幹事長を先頭に訪中した際には、両国ともに、安定政権のもとで、両国間にある諸課題について一つ一つ着実に解決していくことの重要性が共有されたと感じております。

 私が国会に初当選をさせていただいた十七年前は、著しく経済成長を続ける中国を脅威とみなす論調が日本では強かったと記憶しておりますが、安倍総理自身が最近繰り返し御発言されているように、今や、中国の平和的発展は日本にとっての脅威ではなくチャンスである、こう捉える方々が日本でもふえているのではないかと思います。

 一方で、安全保障の分野では、東シナ海地域、尖閣諸島周辺での中国公船の動向など、懸念材料も存在をしております。

 こういう状況の中で大事なことは、両国の首脳会談を始めとするハイレベル交流の頻度を上げていくとともに、草の根交流の裾野を更に広げていくことだと思います。総理の、日中関係のさらなる改善に向けた御決意を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 遠山委員には、昨年四回訪中をされ、特に、昨年の八月と十二月に日中与党交流協議会の開催に当たりまして、公明党の取りまとめや中国側との調整に当たっていただくなど重要な役割を果たしていただき、日中関係の発展のために大変な御貢献をいただいたことに敬意をまず表したいと思います。

 日本と中国は、北朝鮮問題を始め、アジアの平和と繁栄に大きな責任を共有しております。私はいつもこのことを強調するわけでありますが、日本と中国、そして私と習近平主席は、地域の平和と発展にその責任を共有しておりますし、その責任を果たしていくことを地域や世界の皆さんは期待をしていると思うわけでありまして、また、経済的には、中国の平和的な発展は、今、遠山委員が指摘をされたように、日本にとって大きなチャンスであるというのが私の認識であります。

 同時に、日本の領土、領海、領空は、これは断固として守り抜いていかなければならない。安倍政権のこの断固たる決意を見誤るべきではないと強く申し上げたい、こう思うわけでありますし、先般の潜水艦の事案においても、中国側がこの日本の意思を見誤るべきではないという意思を示す対応をとったところであります。この決意のもと、尖閣諸島をめぐる状況については、毅然かつ冷静に対処をしていきます。

 本年は、日中平和友好条約四十周年であり、日中関係が大きく改善したと両国の国民が認識できるような、そういう一年にしたいと考えています。引き続き、戦略的互恵関係のもと、大局的な観点から、あらゆる分野で協力と交流を進めていく考えであります。

 人と人との交流も盛んでありますし、多くの中国人の観光客が日本を訪問していただき、そしてそれは、地方を含め、日本にとって大きな利益を生んでいるのは事実だろうと思います。

 日本は、さまざまなものを輸出し、あるいは中国に投資をし、大きな利益を得ている。しかし同時に、中国は、日本にしかできない半製品を輸入し、それを加工して海外に輸出をして利益を得ていますし、日本の企業の投資によっていわば雇用をつくり出しているのも事実であります。まさに、日本と中国がお互いに切っても切れない関係となっているということのこれはあかしではないのか、こう思うわけであります。

 そのためにも、両国関係を安定的に発展させていくことは、両国の利益のみならず、地域の安定と平和にも資するだろう、こう考えています。

 そこで、そのためにも、相互に都合のつく、できるだけ早期に日中韓サミットを開催して、李克強首相を日本にお迎えをして、その後、私が適切な時期に訪中し、その後には習近平主席に訪日をしていただきたいと考えています。このようなハイレベルの往来を重ねる中で、日中関係を新たな段階へと押し上げていきたいと考えております。

 同時に、党間交流、あるいは草の根レベルの交流もしっかりと進め、裾野を広く厚くしていくことも大変重要だと認識をしております。

遠山委員 ありがとうございます。

 日中平和友好条約締結四十周年の本年に、この日中関係のさらなる改善への流れの基盤を固めていきたいと思っております。

 さて、最後の質問になるかもしれませんが、自律型致死兵器システム、これは英語でリーサル・オートノマス・ウエポンズ・システムと呼ばれておりまして、頭文字をとって、略してLAWSとも呼ばれている兵器でございますが、この規制に関する国際的な取組と日本の立場について伺いたいと思っております。

 これは総理、人間の関与なし、すなわち、人間の人道的、倫理的判断を経ないで、兵器に搭載された人工知能、AIが自律的に攻撃目標を設定して殺人を行うことができる兵器のことを指しております。この特徴から、これを問題視しているNGOなどからは、完全自律型AI兵器とかキラーロボットとも呼ばれておりまして、二〇一三年、五年ほど前から、開発の禁止を求める運動が始められております。

 国際NGOのヒューマン・ライツ・ウオッチによれば、米国、ロシア、イスラエル、韓国、中国、イギリスなどを含む十数カ国が開発中ということでございます。

 これらの兵器につきましては、かなり以前から、我々人間の想像の世界では日常的に登場してきているわけであります。例えば、日本の漫画、麻生副総理はお詳しいかもしれませんけれども、日本の漫画でも手塚治虫さんとかに人を殺すロボットというのは出てくるわけでありますし、アメリカの「スター・ウォーズ」とか「ターミネーター」などの人気映画を通して、こういうものは想像の世界では広く知られてきたわけでございます。

 しかし、人工知能の技術が急速に進む今日、これが現実のものとなるとすると、事態は深刻でございます。

 実は、NGOだけでなく、産業界からも警鐘が鳴らされております。昨年の八月ですが、テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEOは、銃と核兵器に続く第三の革命を、このAI兵器ですね、戦争にもたらすと警告をし、そのまま本人の言葉を読みますが、我々は、自律兵器に転用される可能性のある人工知能やロボット工学のテクノロジーを構築する企業として、この警告を発する責任を特に感じると公開書簡で述べているわけでございます。

 このような懸念の高まりを受けまして、国際社会も動いてきております。昨年の十一月には、CCW、特定通常兵器使用禁止制限条約の枠組みで、最初の公式な政府専門家会合も開催をされました。今後もこの専門家会合は継続されるということでございますが、防衛大臣と外務大臣に伺います。

 日本政府として、人間が関与しない、致死力を有する自律型兵器を日本が研究開発することは容認しないことを防衛大臣に確認をしたいと思います。また、外務大臣には、今後のCCW等での国際議論の場で、そのような兵器の定義を確立した上で、開発、製造、使用を禁止していく方向に主導する意思があるかどうか、お伺いをしたいと思います。

小野寺国務大臣 お尋ねの自律型致死兵器システム、LAWSであります。その定義については国際的なコンセンサスがまだ得られていないと承知しておりますが、その上で申し上げれば、防衛省・自衛隊において、人間が介在しない致死性の兵器は現存せず、また、これに関する研究開発を行う具体的な計画はなく、当然のことながら、国際法や国内法により使用が認められない装備品の研究開発を行うことはありません。

 他方、防衛省としては、隊員の安全確保や負担軽減を目的として、AI、人工知能や無人装備について、研究開発を含め、積極的に技術基盤の向上に努めていく必要があるとは考えております。

 そのため、ただいま申し上げた目的での無人装備等の利活用への影響や、自律的な機械が人間の生死に関与することの倫理上の問題といった観点から、LAWSに係る国際的な議論に適切に参画し、日本の考え方をしっかり述べていきたいと思っております。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

河野国務大臣 CCWにおけるLAWSの議論は昨年の十一月にスタートしたばかりでございますが、まず、LAWSの定義について、さまざまな観点から議論が行われている現状を踏まえると、すぐにコンセンサスを得るのは難しいのではないかというのが率直な意見でございます。将来的な展望あるいは技術の現状といったものを各国が共有して、現実的な議論を進めていきたいというふうに思っております。

 今防衛大臣から御答弁ありましたように、人間が関与しない完全自律型の兵器の開発を我が国が行う意図は有しておりません。他方、AIなど民生分野における健全な発展が阻害されることがないよう冷静に議論する必要性も我が国としてCCWで指摘をしているところでございます。

 こうした我が国の立場を踏まえつつ、国際的な議論に積極的かつ建設的に関与してまいりたいというふうに思っております。

遠山委員 ロボットから人が殺されるような時代にならないように、政府としてもしっかり取組をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

河村委員長 これにて遠山君の質疑は終了いたしました。

 次に、枝野幸男君。

枝野委員 立憲民主党の枝野でございます。

 通告していました順番をちょっと変えて質問させていただきますので、御了承ください。

 先ほど江渡委員との質疑において、厚生労働省、働き方の時間、これについての調査結果の報告を撤回をされました。

 昨日、我が党の長妻代表代行がこの予算委員会で取り上げたパネルと同じものであります。「一般労働者の「平均的な者」の法定時間外労働の実績」ということで、これまで厚生労働省が公表してきた。

 一日一時間三十七分なのに一週間で二時間四十七分というのはどう考えても理屈に合わないというようなことを指摘をいたしましたら、精査するということで、きょう撤回をされた。

 撤回をされたのはこのデータということでよろしいですね。

加藤国務大臣 平成二十五年度労働時間等総合実態調査に基づくデータ、それも含めてでありますけれども、それについて、この委員会でもいろいろ御指摘をいただきました。現在その精査をしているところでありますけれども、時間を要しております。

 この点に対しては、昨日までも、野党の議員からも御指摘をいただき、与党の議員からも御指摘をいただいたところでございますので、こうした精査に時間を要するような調査のデータをお示しをしましたことについて、また答弁をしたことについて撤回をし、国会に対して、また国民に対して御迷惑をおかけいたしましたことに対しておわびを申し上げたところでございます。

 したがって、今お話しいただきました指摘も含めた総合実態調査についてでございます。

枝野委員 総理も発言を撤回されていますが、要するに、総理は、一般の労働者の方が、いわゆる裁量労働制の働き方よりも時間外労働が長いということもあるんだということをこれまで繰り返し述べてこられた。

 このデータが撤回されたということで、その根拠になるデータはなくなったということでよろしいんですね、厚生労働大臣。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、私の方からも、また総理からも、その調査を踏まえたデータをお示しをしたということでございまして、そのデータについては、またそのデータを含む答弁に関しては撤回をさせていただいた、こういうことでございます。

枝野委員 これまで総理からも、裁量労働制の方がむしろ、時間外労働、トータルの労働時間は短くなるんだというような趣旨の答弁が繰り返される中で、いわゆる働き方改革についての議論がなされてきました。

 どうも、このデータの出た時期を考えると、この間の労政審などの議論においても、こうしたデータに基づいて、実は、裁量労働制にしたらむしろ時間が短くなるんだなんという間違った根拠に基づく議論がなされ、それに基づいて法案が出され、国会で審議をされていたのではないかという重大な疑義が出ています。

 まずは何よりも、この間、本会議以来、こうしたデータを前提にして議論のやりとりがなされてきた、ただでさえ野党の質疑時間を減らすというようなことがなされてきている中で、こんな時間を空費させた責任、委員長、しっかりととらせてください。

河村委員長 理事会において協議をさせていただきます。

枝野委員 理事会の前に、委員長も目の前で聞いておられましたよね。目の前で聞いておられて、この間ずっと、こういうデータに基づいて、間違った事実に基づいて説明が政府からなされてきた、それが撤回をされたということについては、委員長はどういう認識なんですか。

河村委員長 理事会で、皆さんの意見を聞きながら、調整いたしたいと思います。(発言する者あり)

 速記をとめて。

    〔速記中止〕

河村委員長 速記を起こしてください。

 データ的に瑕疵があるという指摘もあって、このような結果になったことは、私も遺憾に思いますが、しかし、それに基づいて、総理からも、また厚労大臣からも、撤回をして再調査をきちっとするという言葉がございましたので、そういう方向で受けとめております。

枝野委員 時間が浪費をさせられてきた、間違ったデータに基づいた答弁で議論をさせられてきたということについては、これから理事会においても厳しく指摘をさせていただきたいということをまず申し上げておきますが、きのう長妻委員からの質疑があってから約二十四時間、どういう精査をして、それでもきょうの段階では精査が終わらないと。どういう精査をしたんですか。

加藤国務大臣 ここの委員会で、例えば一日十五時間超の人がいるではないか、あるいは、今御指摘を踏まえた、一日と一週間の時間が余りにもアンバランスではないか、こうした御指摘をいただいたところでございますので、今、その個々のデータ、約一万を超えるデータがございますので、そのデータの一つ一つに当たらせていただいております。

 それからまた、具体的に、これは、監督官が実際現地に行ってヒアリングをして聞いているということでございますから、実際その調査においてどういうことだったのか、それらも含めて精査をさせていただいておりまして、残念ながら、先週から御指摘をいただいておりますけれども、今申し上げた作業にこれだけの時間を要しているということ、このことを申し上げたところでございます。

枝野委員 いい答えを一ついただきました。

 午後に佐川国税庁長官についても御指摘をしたいと思っていますが、このベースになっていたデータは全部残っているようですね。ですから、当然、どこの事業所においてとかというデータの部分は、その固有名詞は消さなきゃいけないと思いますけれども、全部出してください。それから、どういう計算根拠に基づいて、どういう計算の仕方でこうした平均時間を出してきているのか、そのデータを出してください。

加藤国務大臣 今、実際の調査票はなくなっているということでありますが、それを踏まえて……(発言する者あり)いやいや、それを踏まえてデータに、打ち込んだ個々のデータはあるということでございますので、今それを精査させていただいておりますし、今、委員の要望については、どういう形でお出しできるかを含めて対応させていただきたいと思います。

枝野委員 打ち込んだデータということであるならば、事業所名などについて以外のところだけ打ち出していただくのは簡単だと思いますので、きょうじゅうにも出していただきたいと思います。

 委員長、しっかりとお手配ください。

河村委員長 理事会でも協議いたしますが、最大限努力をしてください。

枝野委員 この問題は、裁量労働制というのが今回拡大されようとしている。裁量労働制ということになると、実はいわゆる時間外ということが基本的にはつかなくなる。そうすると、時間外、どうせつかないんだから、長い時間働いてもらっても一緒じゃないかと、給料を払う側からすれば、普通はそういうことになって、むしろ長時間労働がますます進むのではないか。この分野を拡大をするというのが安倍さんの言う働き方改革だという、本質的な、そして今回、これはきょうは議論しませんが、どうも営業職一般に適用されかねないような条文になっている。

 こうしたことは皆さんの働き方にも直接かかわってくる問題で、そのもとになっているデータが、国会で繰り返し質疑をされた中で、ようやくおかしいんじゃないかという精査がなされている、こういう問題だということを、ぜひ多くの皆さんにも知っていただきたいと思いますし、厳しく追及をしてまいりたいというふうに思っております。

 予定をしていたテーマの中で、法務大臣と法務省に来ていただいております。

 平成三十年一月三十日、東京高裁で判決がありました。平成二十九年行コ一五七号事件について、この裁判がどういう裁判であったのか、二分ぐらいで訟務局長、答えてください。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の訴訟につきましては、自衛隊の自衛官は防衛出動命令に服従する義務がないことの確認を求める裁判、こういうのをやったところでございます。それについて、第一審、第二審の判決が出されたということでございます。

枝野委員 法務大臣、これは、被控訴人、原審、地方裁判所では、被告人が国でその代表者は法務大臣である、上川陽子法務大臣である、こういうことでよろしいですね。

舘内政府参考人 そのとおりでございます。

枝野委員 この判決を、まず要旨を読んだときに、ちょっとびっくりすることが書いてありました。判決要旨のところに、「存立危機事態が生じることや防衛出動命令が発令されることがおよそ想定できないという被控訴人の主張は、」という言葉がありました。

 要約だけでは危ないと思ったので、判決文全文を取り寄せてみました。「現時点で存立危機事態は発生しておらず、国際情勢に鑑みても、将来的に存立危機事態が発生することを具体的に想定し得る状況にはない。」、これは、被控訴人の主張です。国の主張です。間違いないですね。

舘内政府参考人 係争中の個別の事案のことでありますので、詳細についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、自衛官が存立危機事態における防衛出動命令に服従する義務がないことの確認を求める訴訟を適法に提起するためには、現に当該自衛官の権利や法律的地位に具体的な危険や不安が存在することが必要であるところ、国は、訴訟の中で、その要件を欠く理由といたしまして、防衛出動命令が現に発令されていないこと、現に存立危機事態が発生しておらず、また防衛出動命令を発令するための存立危機事態の認定等についての作業が進められていないこと、将来的にも、いつ存立危機事態が発生するかについて確実なことが言えず、防衛出動命令が発令される具体的蓋然性が認められないことなどと主張してきたものでございます。

枝野委員 いろいろおっしゃっていますが、政府として、つまり国、その代表者、法務大臣が代理人を通じて、昨年の十一月二十七日、国難だといって衆議院解散があった後です、北朝鮮情勢が緊張している、今にも北朝鮮からミサイルが飛んでくるかもしれないというような危機があおられているど真ん中で、政府が裁判所に提出した準備書面の中には、こういう記載です。

 現時点で存立危機事態も発生しておらず、また現時点における国際情勢に鑑みても、本件訴訟が係属する当面下において、将来的に上記事態が発生することを具体的に想定し得る状況にはない。

 繰り返します。判決ではありません。法務省、国が裁判所に出した国側の主張です。

 ちなみに、アメリカと北朝鮮との間で武力衝突が発生した場合ということの主張も、あくまでも抽象的な仮定を述べるものにすぎず、上記主張をもってしても、将来、武力攻撃事態又は存立危機事態が発生するか否かや、その時期が具体的にいつであるのかを何ら示唆するものでないことは明らかである。

 法務大臣、法務大臣の認識ですね、これが。

舘内政府参考人 先ほどお答えしたとおりでございまして、自衛官が存立危機事態における防衛出動命令に服従する義務がないことの確認を求める訴訟を適法に提起するためには、現に当該自衛官の権利や法律的地位に具体的な危険や不安が存在することが必要であるというところ、国は、訴訟の中で、この要件を欠く理由として、先ほどの三点について主張してきたものでございます。

枝野委員 大臣が、これは国の代表者ですから、後ほど法務大臣にお答えいただきたいんですが、今の訟務局長の主張は、それはその後で、前後でやっているんですよ。この具体的に訴訟を起こした自衛官が、その命令が発動されるかどうか、そういう対象になり得る部隊なのか、そういう発動、命令が下されるような可能性のある仕事に従事しているのか、そうした、この当該原告が実際に命令を受けるかどうかという具体的な危険性があるかないかは、ちゃんと別途主張しているんですよ。

 そのほかに、そもそも、存立危機事態が発生したり防衛出動が命令されるような具体的な可能性がないということは明らかだということを主張しているということが、これは国の主張でしょう。

 法務大臣、国として主張したんですよね、法務大臣。

上川国務大臣 御指摘の、さまざまな準備書面等での記載部分についての訴訟ということでございますが、先ほど訟務局長からの答弁のとおり、訴訟は今係属中ということでございまして、内容の詳細についてお答えをするということについては差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で申し上げるわけでございますが、いずれも原告が適法に訴えを提起することができる要件を欠く理由といたしまして、本件訴訟が係属する当面下で武力攻撃事態又は存立危機事態が発生し得ることの具体的危険性を肯定できないということを国として主張したということでございます。

枝野委員 要するに、政府は、一方では、いかにもすぐにでも存立危機事態が生ずるかもしれないといって安保法制を急いだんですよ。そして、北朝鮮との関係、いや、客観的にはもしかすると危険があるのかもしれない、そこについて断定することは避けたいと思います。しかしながら、一方で、何かいかにもすぐにもミサイルが飛んできそうな危険をこっちであおりながら、一方では、同じ国が、違うところでは、そんな具体的な危険はないと堂々と国として正式に主張している。こういうのを二枚舌というんじゃないでしょうか。

 法務大臣、いかがですか。

舘内政府参考人 先ほどお答えしたとおりでございまして、係争中の個別の事案のことであるため、一つ一つの主張について個別にお答えすることは差し控えたいと思います。

 なお、先ほど、確認の訴訟を適法に提起するためには、現に当該自衛官の権利や法律的地位に具体的な危険や不安が存在することが必要であるということから、国は訴訟の中で、この要件を欠く理由として先ほどの主張について主張してきたものでありまして、存立危機事態は想定できないといった主張はしておりません。

枝野委員 先ほど、国の主張自体は明確に朗読させていただきました。国が準備書面として裁判所に提出している文書ですから、これはどう言いわけしても、国としてこういう認識であるということでないと、裁判では違うことを言って、こっちではあっちのことを言ってと、こういうことを裁判でやるということになったら、司法自体がおかしなことになります。

 これは、裁判で存立危機事態が起きるのか起きないのかということだけではありません。

 安倍総理にお伺いします。

 安倍総理は、憲法九条の改定についていろいろおっしゃってきているようですが、九条を変えても自衛隊の活動範囲は変わらない旨の発言をしていると伝えられていますが、それで間違いありませんか。

安倍内閣総理大臣 憲法について、まさに、今ここに私が立っておりますのは内閣総理大臣として立っておりますので、我が党の中における議論についてここで申し上げる立場にはないわけでございます。

 しかし、あえてお答えをいたしますと、これは、私が述べている、一項、二項を残した中において自衛隊の存在だけを明記するという形にするのであれば、一項、二項からくる制約を受けるということになりますから、新三要件のもとでしか防衛出動はできないというのが、武力行使ができないということが、変わりはないという立場には変わりはないということでございます。

枝野委員 内閣法制局長官、体調がお悪いようですが、インフルエンザじゃなかったということで来ていただいているということでございますが、一般論、法解釈の一般論をまずお尋ねします。

 項が幾つか並んでいた場合、一項、二項、三項、四項、五項、六項と並んでいた場合、その項の中で一見すると矛盾するような規定があった場合は、どういう解釈をするのが大学の法学部の一年生で学ぶ法の解釈の基本原則ですか。

横畠政府特別補佐人 あくまでも一般論でございますけれども、同じ法令の中で相入れないというか矛盾するような規定を設ける場合には、本則とただし書きという形で例外を規定する、あるいは、ある条項の例外として、例えば、○○条の規定にかかわらずこうであるというような例外規定を明示的に書く。まさに例外を書く、特則を書く場合には、特則であるということを明示するような形で記述するというのが一般的な例でございます。

 そうでない場合について言うならば、ちょっと、具体的な条文というか案文がない以上、何とも申し上げられないのですけれども、それは矛盾しないという、いずれも成り立ち得る、両立し得るという前提で合理的に全体を解釈するということになろうかと思います。

枝野委員 もう一つ、法解釈の一般原則を聞きたいと思います。

 新法と旧法で矛盾するような規定があった場合はどちらが優先する、私も四十年ぐらい前、もうちょっと最近か、大学一年生のときに教わりましたが、どういう一般原則ですか。

横畠政府特別補佐人 原則、例外の扱い方といたしまして、いわゆる特別法は一般法を破るという法諺、言い方、あるいは、後法は前法を破るという言い方がございます。これもまた、具体的にどのような条文を規定するのかということによるわけで、一概には申し上げられないわけで、先ほど申し上げたように、我が国の法体系は、他国の場合と違いまして、大変、既存の規定と矛盾するような新たな規定を設ける場合には、既存の規定にも手を入れて、それを修正するとか削除する。そういう形で、一見矛盾するような、あるいは、前法、後法の関係でどちらが適用になるかという議論を生まないような形で、法令の規定を整備しているという現状でございます。

 したがいまして、一般的な、後法が前法を破るということから、先ほど申し上げたような全体として合理的に解釈すべしというような条文があるときに、それが、後から入った方が優先するということにはならないと考えます。

枝野委員 ありがとうございます。

 実は、答えていただきたいことは答えていただきました。一概に言えない、具体的な条文、規定を見ないとわからない。ですよね。

 安倍さん、総理、条文を見せてください。三項に自衛隊を明記しても今までと変わらないと、ここで御答弁されています。どういう条文を想定されているのか示していただかないとわかりませんけれども。

 条文の書き方によって、一概に言えないんですから、本当に安倍総理のおっしゃっているとおり、今までの解釈と変わらないのか、それとも変わるのか、それは全部変わってくるじゃないですか。

 それなのに、その条文が具体的に示されていないのに、変わらないというのは、どういう根拠ですか。

安倍内閣総理大臣 まず、私は、再々述べておりますように、ここは総理大臣として立っておりますから、予算について、あるいは法案について、あるいは条約について答弁する義務は負っているわけでございますが、自民党の、例えば案等々について申し上げる立場にはないわけであります。

 いつも、あえて申し上げればということを申し上げているところでございますし、まだ自民党の中でも、これは再三申し上げている、再三再三申し上げているわけでありますが、我が党の中においてもまだ議論が進行中でありまして、確たることは申し上げることはできませんがということをいつも、たびたび申し上げているわけであります。話を短くしろと言われるのでこれを省く場合もありますが、基本的にはそれを私は申し上げているわけであります。

 そこで、一項、二項を残すのであれば、基本的には、ただ、書き方にもよりますがということも申し上げながら、一項、二項を残しているのであれば基本的な制約は受けるということを申し上げているわけでございます。

 と同時に、一項、二項を残しているとしても、政府の考え方としては、我々は、自衛隊の存在は合憲であり、そして自衛権の行使についても、個別的自衛権は合憲であり、そして新三要件のもとでの集団的自衛権も合憲であるという立場でありますから、一項、二項と、我々は、それを肯定することは矛盾するものではない、こう思っているわけであります。

 その範囲内で書くことであれば、当然それは今までの立場とは変わらないのではないかということを申し上げているわけでありまして、実際に、では示してくださいということであれば、それはまさに、この場ではなくて憲法審査会においてまさに議論をしていただきたいということでありまして、まだ発議にも至っていないわけでありまして、まず発議するために議論をするわけでありますから、それはまさに、基本的には予算を審議するこの場ではなくて、憲法審査会という場があるんですから、そこで議論をしていただきたいというのが私の基本的な考え方でございます。

枝野委員 ここで私が取り上げたのは、総理が、先ほど法制局長官の答弁をよく聞いていただければわかるとおり、実際にどういう書き方をするかによって、従来の解釈が維持されるのか、それとも解釈が変わるのかというのは、実際の条文の書き方を見てみないとわからないんです、わからないのに、一項、二項は変わらないという予断を与えるようなことを、国会の外とはいいながら繰り返しお話しになっているので、それは違いますよということで国民の皆さんにしっかりと知っていただかないと、一項、二項をそのまま残せば今までの自衛隊と変わらないんだという刷り込み、もしかすると、それは間違った刷り込みかもしれない、その間違った刷り込みの中で議論が進んだりすると禍根を残す。だから、ここでお尋ねをしてきたわけであります。

 もう一点、総理の、国会では答弁されていないんでしょうが、大事なことですから、これまでの御発言を確認をしたいんですが、仮に今自民党内で議論されているような、九条の、自衛隊を加えるという発議が国民投票で否決されても、自衛隊の合憲性は変わらない、今と変わらない、こういう御発言をされているようですが、事実関係として確認したいと思います。

安倍内閣総理大臣 枝野委員にも、私の言っていることもよく聞いていただきたいと思うんですが、私は、従来から申し上げているとおり、まさに今我が党の中で議論が行われている、しかし、その中で、一項、二項を残し、そして、もちろん書きぶりにはよりますが、私が想定しているのは、一項、二項の制約は当然受けるでしょうということを申し上げていて、その中で自衛隊についての存在を書き込むということにおいては、まさに一項、二項の制約を受けるから、いわば、今受けている制約は変わりがないということを申し上げたわけであります。

 ただ、詳細を見てみないとわからないというのは枝野委員のおっしゃるとおりでありますが、それ以上のことはまさに憲法審査会でやっていただきたいし、そして、私の思いどおりに我が党の案がなるわけでも、これはないわけでありますから、それは……(発言する者あり)私は、そもそもこの場には総理大臣として立っておりますから、立場にはないということは再三申し上げているじゃないですか。だけれども、答えろと言うからあえてそこまではお答えをさせていただいているということでありまして、なぜ答えるんだというやじが今ございましたが、それは非常に、外野の方がそういうやじを飛ばしておりますが、それは全く私の議論を聞いていないものではないのかな、こう思うところでございます。

 そこで、いわば我々は、申し上げているのは、既に政府の立場は、これはもう四十七年見解で明らかになったように、既に合憲であるという立場は揺るぎないわけでございます。

 つまり、自衛権があり、そして自衛権が行使できる、しかし、その中の自衛権においては、四十七年見解においては集団的自衛権は行使できないというものであったものを、我々は当てはめる形において、基本的論理を変えずに、国際情勢の変化に合わせて、平和安全法制を制定する前年に憲法の解釈を変えて、この当てはめを変えたという経緯があるわけでありますが、この立場には変わりがないわけでありますし、新憲法草案がどういうものになるかは、これはまだ完全に条文ができてみなければわからないわけでありますが、その上において、行われた国民投票において今までの政府の見解が変わるわけでは基本的にはない、こう考えております。

枝野委員 国民投票を行うと、今の憲法改正国民投票法が成立したときの、これは議員立法ですので、議員立法でも、税金を使うことが必然の場合の法案は、必ず具体的な、幾らかかるのかということを提示しないと、議員立法は審議できません。そして、それに対して政府の見解も示されます。そのときの、議員立法での施行に要する経費というのは、国民投票実施に要する費用として一回当たり約八百五十億円の見込みである。つまり、国民投票をすれば八百五十億円、税金が使われるということです。

 今のお話のとおり、九条に自衛隊を書き込んでも基本的には今までと解釈は変わらない、もしその発議が否決されても今までの解釈は変わらない。八百五十億円かける価値があるのか、意味があるのか。

 ちなみに、多くの皆さん、誤解をされている方がいらっしゃるし、時々変なデマがありますから、念のため申し上げておきますが、立憲民主党は、自衛隊の存在は合憲だと考えています。そして、専守防衛、個別的自衛権の範囲内における自衛権行使は合憲だというふうに思っています。

 先ほどの過去の政府見解についての解釈、それは政府の解釈の仕方は間違っていると思っていますので、集団的自衛権の一部行使容認、つまり海外で戦争ができるかどうかという点については、今の政府と考え方は違いますが、日本の領土、領海、領空が攻撃をされた場合、自衛権を発動して国を守るということについては、我々は明確に合憲の立場ということであり、私は国会の中を見ても、大方の皆さんはそういう立場に立ってきた。

 なぜならば、新人や若い方は別としても、自衛隊を含む予算に賛成した経験のある、私も提出者、自衛隊を含む予算の提出側に回ったこともあります、それに賛同しているんですから、違憲のものに賛成をしたら、それは矛盾ですから、多くの国会議員が、自衛隊は合憲である、少なくとも専守防衛、個別的自衛権については合憲であるということについては、政治的には私は決着がついている話であるということについて、八百五十億円の税金を使うということの意味はなかなか理解しがたいところがあります。

 法制局長官に聞いた方がいいのかなと思いますけれども、イギリスとドイツの議会の解散のルールについて日本政府としてどういう認識と評価をしているのか、お答えください。

河野国務大臣 イギリスでは、議会の下院は一定の要件のもとで任期満了前に解散されることがあるものと承知しております。

 具体的には、首相が、下院が繰上げ総選挙を決議する、あるいは政府に対する不信任を決議した上で一定期間内に改めて信任を決議しないとの要件を満たすことにより、下院の解散を実現することができると承知しております。実際、昨年四月、メイ首相は下院の解散・総選挙の意向を示し、これを受け、下院が繰上げ総選挙を決議して解散し、六月に総選挙が実施されております。

 ドイツでは、例えば、首相の信任案が連邦議会の過半数の同意を得られず、連邦議会が過半数により別の首相を選出しなかった場合に、大統領は首相の提案に基づいて議会を解散できるものと承知をしております。信任案を与党議員の棄権によって否決されることで議会が解散された例もあるというふうに承知をしております。

枝野委員 議院内閣制の先進国、代表的な国で、誰も異論はないと思いますが、どちらも、内閣あるいは首相が独断では解散はできないという仕組みということでよろしいですね。

河野国務大臣 この両国は議会の採決その他が必要だと思いますが、ということなんだろうと思います。

枝野委員 どなたがお答えになるのかなと思っていたんですが、外務大臣にお答えいただいたので、そのまま外務大臣にお答えいただくんだと思いますが、ドイツ、イギリス、それぞれ、いつからか御存じですか。

河野国務大臣 イギリスは、二〇一一年の議会期固定法からだと思います。二〇一一年の九月の十五日に制定をされております。(枝野委員「ドイツは」と呼ぶ)ドイツについては、これはドイツの基本法六十三条ではないかと思います。

枝野委員 日本では、解散権は総理大臣の権限ということで当たり前。私も、実は十年ぐらい前までそう思っていました。

 ところが、ドイツは第二次世界大戦後のボン基本法、ドイツは、東西ドイツ合併まで、ボン基本法という名前の実質的な憲法で西ドイツは動いていました。そこで、実は、首相あるいは内閣が勝手に解散できない制度を導入しました。それは、ナチス・ドイツを生んでしまったということの原因の一つとして、頻繁な解散が政治の不安定化と政治不信を招いたという反省、教訓に基づいていると言われています。

 一方、まさに議院内閣制、議会制度の父と言ってもいい英国においても、二十一世紀に入って、内閣、政府が勝手に議会を解散することはできない、議会の解散はあくまでも議会が自主的に解散をするということで、先日、メイ首相の解散も、メイ首相が恐らく与党の党首としてのイニシアチブを発揮したんでしょうけれども、野党も合意をして応じて、議会で議決をして解散がなされました。

 まさに時代の変化に合わせて、多くの議院内閣制の先進国がこうしたプロセスを踏んでいます。

 そもそも、行政府に議会の解散権があるというのはどういう歴史的な意義を持っているか、御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 衆議院の解散権は、内閣が、国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えてその判定を求めるということを狙いとし、また、立法府と行政府の均衡を保つ見地から、憲法が行政府に与えた国政上の重要な権能であると考えております。

 今の御質問が、我々がどういう権能であるというふうに考えているかということにおいては、今のがお答えであります。

枝野委員 政府の今の見解は、そのとおりなんでしょう。

 そもそもが、議会の解散というのは、憲法という仕組みは、ヨーロッパの王制を前提として、そこから社会は立憲主義と民主主義へと動いてきた。そのプロセスの中で、王権を制約する存在としての議会というものがヨーロッパで順次できてきた。そして、もともと王権がオールマイティーであった社会の中で、議会が権限を持って、そして、納税者の意見を反映させないで税金を課しては困るというような話で歴史的に推移をしてきた。

 その中で、王権とそして議会、その緊張関係をしっかりと確保するための手段として、議会がいろいろなことを言って王権を制約しようとするのに対して王権は議会の解散によって対抗する、これが、恐らく憲法史の先生方、八割以上の方が同じ答えを言っていただける、解散制度の歴史的な経緯です。

 ですから、民主政治のもとでは、議会の解散権というのは、その歴史的な経緯からすると、実は存在意義はなくなっているというのがオーソドックスな見方です。

 なぜなら、議院内閣制では、議会と政府が対立しません。議院内閣制というのは、議会の多数派が政府を構成するというのが議院内閣制です。王様と議会が対立するときには、その緊張関係のために王様に解散権があった、それはよくわかります。ところが、議会の多数派が行政府を持っているという議院内閣制においては、議会と内閣が実は一〇〇%対立することはない。議会の多数派と行政府はむしろ連携協力関係にないと、議会の多数派と内閣が対立関係になったら、それは内閣不信任が通って内閣は倒れてしまうわけですから。

 ですから、実は議会の解散権を持たせるということについては、歴史的な意義はない。

 そうはいっても、総理が今御答弁されたとおり、国政の新たな重大事項が発生をして、これは民意を聞かなければならないというときには、行政府が解散権を行使するんじゃなくて、議会みずからが解散をして、そして民意を問う。これがドイツやイギリスでこの一世紀ぐらいの間に進歩してきた民主主義と議院内閣制の進歩だと思うんですが、総理の見解をお尋ねします。

安倍内閣総理大臣 それはまさに憲法改正にかかわる議論でございますが、まさにそれについては憲法審査会において議論がなされる内容であろう、こう思うわけでありまして、行政府と議会の関係についてお述べになったわけでありますから、それはまさに、憲法改正については、この審査会について、大いに議論をしていただければ、こう思う次第でございます。

枝野委員 まさに今の御答弁が、内閣が行政権をオールマイティーで持つということがいかにおかしなことかということを私はお答えになっている話だというふうに思うんですね、先ほど来の御答弁が。

 安倍総理はここで、先ほど憲法の九条の話についても、ここは行政府の長として出てきているんだと言って、自民党内の議論あるいは自民党総裁としての発言については基本的には答えないとなっています。それ自体が、議院内閣制の理解として、違っておられるんじゃないでしょうか。

 財務大臣、今回の予算は、与党の中でこの予算でいいという了解をとって国会に法案を提出されていますよね。

麻生国務大臣 予告質問に入っていませんでしたね。入っていないね。(枝野委員「はい。それでも、今のはお答えできませんか」と呼ぶ)いや、入っていないというのを確認させていただいています。座ったまま答えないで、立って答えてもらいたいんですが。

 基本的には、私どもといたしましては、行政府と与党との間で十分に論議させた上で提出させていただいております。

枝野委員 予算も、それから政府が提出する法案も、与党の中で十分議論をして、基本的には異論がなくなって、つまり、与党はそろって賛成するという状況にならないと、法案は、与党・政府は提出をされない、こういう慣習、慣行でずっとやってきています。

 確かに、政治ですから、時々イレギュラーなことが起こる。先ほど後方から不規則発言で郵政解散みたいな話がありましたが、まさに、与党が与党の中をまとめ切れなかった、内閣が与党の中をまとめ切れなかったというようなイレギュラーな事態が与党の中で起こったときにそういうことが生じるのであって、基本的には、内閣と与党は一体となって、与党の同意がなければ法案も予算も国会には出せないということでやっているんですから、そこで総理大臣が、それは行政府の立場で答える話じゃない、それは党の立場だというような話ではぐらかすこと自体が実は議院内閣制の本質と矛盾をしているというふうに思いますし、まさに、そうした矛盾の中で、行政府は勝手に解散していいんだという、解散権をオールマイティーで持っているということが、実はもう時代に合わなくなっているのではないかということが、もし今、日本の憲法についてしっかりと議論をしなければならないことがあるとすれば、まさに、世界の潮流との関係で見ても、この問題こそが最大の課題ではないかということを申し上げておきたいというふうに思います。

 もう一点だけ、午前中、憲法の話を聞いておきたいと思います。

 これは法制局でいいんだと思いますが、憲法五十三条後段の法的効果について御説明ください。

横畠政府特別補佐人 憲法五十三条後段のことだと存じますが、憲法五十三条の規定により、いずれかの議院の総議員の四分の一以上から国会の臨時会の召集要求があった場合には、内閣は、臨時会で審議すべき事項等をも勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないと考えております。

枝野委員 合理的期間内に召集しなければならないというのは法的義務でよろしいですよね。過去に答弁ありますよね。

横畠政府特別補佐人 まさに憲法に規定されている義務であろうかと思います。

枝野委員 ところが、昨年、通常国会が閉会をした後、野党から今の憲法五十三条後段の規定に基づいて臨時国会の召集要求が憲法の手続にのっとって適法に行われましたが、結局、秋の解散の、召集した当日に解散をするというその日まで、臨時国会は召集されませんでした。

 憲法五十三条後段の合理的期間を超えていないという論拠を説明してください。

横畠政府特別補佐人 先ほどお答えしたとおりでございまして、臨時会で審議すべき事項等をも勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないということでございまして、合理的な期間と申しますのは、召集に当たって整理すべき諸課題によって変わるものであるため、一概に申し上げることはできないと考えております。

枝野委員 一概に言えないというのはわかっているので、昨年のあの臨時会召集までの期間は合理的な期間を超えていないという説明をしてくださいと言っているんです。

河村委員長 横畠内閣法制局長官、法解釈をお願いします。

横畠政府特別補佐人 憲法の規定の理解、解釈については先ほどお答えしたとおりでございまして、私どもの所掌といたしまして、憲法の解釈について申し上げるということはございますけれども、具体にどのような事情によってそのような期間になったのかということについてお答えする立場にはございません。

枝野委員 期待していた答えをいただきましたので、総理、大丈夫ですよ。

 要するに、法的に判断できない。つまり、自由裁量に任されてしまっていて、法的義務ではあるけれども、時の政治判断でどうでもできちゃう規定になっているんですよ。でも、一方では、合理的な期間内に召集しなきゃならないという法的義務だ、これも明確なんです。法的義務でありながら、実際には政治判断で、いつ召集しようがしなかろうが済んでしまっている、こういう、法のあり方としてゆがんだ状況にある。

 これは自民党の、中身はめちゃくちゃなんだけれども、ごく一部だけまともなことが書いてあるそのごく一部、自民党の改憲草案と称するものの中のごく一部のまともなところとして、まさにこの五十三条後段の召集期限については、数字を明記すべきだ。私は、自民党の改正草案は短過ぎると思いますけれども、もうちょっと期間をとらないと、そうはいったって政府として準備をして臨時国会召集はできないと思いますが、数字を入れるべきである。

 これこそが、もし今、八百五十億円もの税金を使って国民投票をしなきゃならないような重要課題があるとすれば、先ほどの解散権の話と、そしてこの臨時国会の召集に期限が書かれていないという法の欠陥、これこそがしっかりと議論しなきゃならないことであるということを申し上げて、午前中の質疑は終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。枝野幸男君。

枝野委員 立憲民主党の枝野でございます。

 午前に引き続いて質問をさせていただきます。

 立憲民主党は、草の根の暮らしの声、現場の声とどうつながっていくのか、その声をしっかりと受けとめて政治の場に届けていく、そんな役割を果たしていきたいということで、党に、つながる本部というのをつくりました。党本部だけではなくて各地方組織においても同様の組織をつくって、津々浦々の暮らしの声、働く現場の声を国民の皆さんからお寄せをいただき、それを国会論戦、政策づくりに生かしていきたいというふうに思っております。

 その第一弾として、まさにこの予算とも絡み、喫緊の課題である待機児童問題。当事者、保活に御苦労された方、さまざまな経緯の中でなかなかうまくいかなかった方、そうした皆さんに具体的なさまざまな話を先日聞かせていただいたところでございます。

 それで、この問題についてお尋ねをしたいんですが、どなたに聞いていいのか、ちょっと我々もよくわからないところがある。厚生労働大臣と人づくり革命担当大臣と少子化担当大臣と、自分が担当だという方が手を挙げてお答えをいただければというふうに思います。

 まず、そもそも待機児童は何人いるのか。待機児童問題、何人分の施設を、受皿をつくれば解消すると考えられているのか。一応、政府の話を聞いていると、二〇二〇年度までに三十二万人分の受皿整備を進めると。これで待機児童問題は解決すると考えていらっしゃるのか。算定根拠を含めて御説明ください。

加藤国務大臣 今、二十九年四月現在で待機児童数は二万六千八十一人、こういうことで認識をさせていただいておりますけれども、この待機児童の解消ということで、待機児童解消プランで努力をさせていただきましたが、残念ながら今申し上げた状況になっているわけでありまして、この問題は待ったなしの課題ということで、最優先で取り組んでおります。

 今、子育て安心プランでありますけれども、必要な保育の受皿については三十二万人分というものを、女性の就業率の動向、それから就業率と相関しております保育の利用の申込率、これらも踏まえて必要な整備量を推計したものが今の三十二万人分でございまして、これに加えて、今般、子育て安心プランを二年前倒しをして、二〇二〇年度末までにこの三十二万人分の受皿を確保するということでございます。

 また、実際に保育の受皿整備を行うに当たっては、保育の実施主体、これは市区町村でございますから、市区町村において、保護者の意向などを丁寧に確認し、潜在的なニーズも踏まえた必要な整備量を的確に把握をし、年度年度、整備をいただいているところでございますので、そうした的確に把握されたニーズ、それを踏まえた受皿整備が進むよう、国としても支援をしていきたい、こう思っております。

枝野委員 その御説明がなかなかわからないところがあるのは、いわゆる隠れ待機児童ということが、その三十二万人の試算にどう反映されているのか。

 例えば、一般的に、今、二万六千人余という待機児童の中には、地方単独事業、いわゆる認証を利用されている方は入っていない。それから、結局、保育所が、入る先が見つからなかったために育児休業を継続、まあ継続できるということは恵まれた条件、その限りではその部分であるわけですが、育児休業中の方、それから、保育所があれば働きたい、家計の状況などからも働かざるを得ないと思っていながら、保育所が見つからないので求職活動を休止をしている方、こうした隠れ待機児童は現状の二万六千人には入っていないと思うんですが、三十二万人の試算の中には入っているんですか。

加藤国務大臣 先ほど、推計の概略を申し上げました。一つは就業率、それからもう一つは就業率と相関して保育の利用申込率というものを想定しております。

 したがって、現在保育所に入っておられる方のみならず利用申込みをされた人、これをベースに、それを伸ばして、先ほど申し上げた三十二万人という推計をしている、こういうことでございます。

枝野委員 そうすると、今の推計には、申請自体もう無理だと思って諦めていらっしゃる方は、試算の前提には入っていないということでよろしいですか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げた、申込みをされているそのデータをベースにしておりますから、申込みをされていないという方は入ってはおりません。

枝野委員 これがやはり、実態とずれていると言わざるを得ないと思っております。

 そもそも、申込みが多くて認可保育園の数が足りないと利用調整をするわけですが、その選考基準はそもそも適正、公平だというふうに考えていらっしゃいますか。

加藤国務大臣 選考基準というのは、それぞれ各市町村において、その必要度を、一つの基準をそれぞれ持っておられますから、それに応じて利用者調整をされている、そのベースのことをおっしゃっておられるということでありますけれども、それについては、それぞれの市町村において適切な選考基準を選択されておられる、こういうふうに考えております。

枝野委員 細かいところは通告していませんから、詳細は聞きませんが、その市区町村ごとの選考基準というのは把握はされているんですか、厚生労働省として。そのことだけはわかりますか。

加藤国務大臣 全ての市区町村を把握しているわけではございません。

枝野委員 ぜひ、一つはまず、これは提案というか要請というか、四月に保育園に新たに入るに当たって、前年の秋に申込みを受け付ける。実は、毎年、一年ごとにその選考基準が変わる。例えば兄弟を保育園に預けているかどうかとか、そういったいろいろな条件ごとに点数がついて、その点数の高い人から入れるということになるわけですが、これが、年によって市区町村ごとにころころ変わる。こういう前提だと思って、入れると思っていたら、急に前の年の秋、夏ごろに基準が変わって、そして急に大変なことになるというようなケース、現場の声を聞いているんですが、そうした声が認識をされているか、されていないとすれば、本当にそれでいいのか、ぜひ厚生労働省として考えていただきたいんですが。

加藤国務大臣 どの程度の頻度で今おっしゃるような基準の変更がなされているのかということは承知をしておりません。

 ただ、それぞれの自治体が、その状況を踏まえながら、適宜、そうした必要な利用調整をするに当たって、基準を、あるいは、そこにおられる保護者方の状況等々を見ながらされているんだろう、こういうふうに思います。

枝野委員 地域主権、地方自治の観点に基づいて、地域の事情に合わせて基準をつくっているということ自体は、私は、保育という、非常に家庭ごとに、ということは地域ごとにもいろいろな状況が違っている問題ですから、理解をするんですけれども、それ自体をゆがめてはいけないと思うんですが、ただ、一般的な原則として、入学試験制度なんかを変えるときも、少なくとも、例えば大学入試制度を変えるのには、新たに入ってくる高校生が新たな制度ということで、例えば三年ぐらいの余裕を持って新たな制度が導入されるというようなことが常識だと思うんですよね。

 そうした意味では、どういう条件をクリアすれば、どういう条件で入りやすくなるという点数が加算されるかということについても、せめて二、三年前には示されて、変える場合も、例えば二年後から変えるとか三年後から変えるとか、これが常識だと思うんですけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 御指摘の点もありますので、まず、それぞれの市町村でどういう選考基準を持っているのかということをきちんと周知をするということが大変大事だというふうにも……(発言する者あり)いやいや、市町村がそれぞれの保護者の方に対して、自分たちの地域はどういう選考基準を持っているのかということについてしっかり説明をしていくということが必要ではないか、そういった意味での周知をしていく必要が当然あるというふうに思います。

 その上で、先ほど申し上げた、それぞれの市区町村において利用調整が行われているわけでありますから、そのときにどういう選考基準をとるのか。今御指摘のあるように、できるだけ前広にそういったことをお示しする方が適切だというふうに思いますけれども、それらも踏まえて、それぞれの市町村で対応していただいているものというふうに思います。

枝野委員 前向きのことを言っていただいたかと思ったら、最後は、していただいているものと思いますと。

 実際に、現場の当事者の皆さんからの声で、例えば、認可に入っていると点数がつくとか兄弟がいると点数がつくとかということで、ある程度安心していたら、直前に変更になって入れなくなったみたいな声を現実に聞いているからお尋ねをしているので、これはやはり厚生労働省として、もちろん地方自治で現場に任せるべきこともたくさんありますが、変えるときには一定の猶予期間を持ってというぐらいの指針は示してもいいんじゃないかなと。もう一歩前向きのお答えをいただきたいと思いますけれども。

加藤国務大臣 もちろん、子供さんを持ち、そして一つのスケジュールを持ちながら、自分がどこで仕事に復帰していこうかと考えておられる方にとっては、その状況が具体的に自分の住んでいるところにおいてどうなるか、これは大変大きなポイントだというふうに思います。

 そういう意味で、それぞれの皆さんが一体どういうタイミングで考えていかれるのか、その辺も見きわめながら、今おっしゃったような選考基準というものの改定、どういうタイミングでやればいいのか、その辺は、今御指摘もございますので、また私どもの中でも検討してみたいと思います。

枝野委員 これは深刻な話ですので、待機児童がゼロになれば問題ないわけですけれども、現状はそういう状態じゃないということの中で、大変大きな問題だということをぜひ御認識をいただきたいと思います。

 その上で、もう一つ。

 先ほど、申請をしていない人は三十二万人の計算に入っていないと。申請していないんだからいいんじゃないかという人がいるかもしれませんが、今の話のとおり、こういう条件で点数が加わって、基準をクリアできるできないということは、逆に言うと、当事者の皆さんはよく知っておられます。周知を十分されるとかなんとかというよりも、まさに切実な問題として、十分承知をしておられます。

 結果的に何が起こっているのか。例えば、フリーランスで働いていらっしゃる方、あるいは非正規で働いていらっしゃる方、こうした方は、やはり正規雇用などの方と比べると大変条件が不利になって、とても自分では申請をしても入れっこないというようなことで、初めから諦めておられる方が少なからずいるという実態をどう考えていらっしゃいますか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたけれども、実際の整備を進めるに当たって、各市町村で潜在的なニーズも含めて御検討いただく。そのときには、今お話があったことも含めて、特に今、コンシェルジェ等を設置されているところもおられます。そういった方からもその地域等々の状況等も聞いていただいて、それを踏まえて各年度の必要な整備を進めていただく、そして我々はそれをしっかりと支援をしていく、こういうふうに考えております。

枝野委員 各自治体がさまざま工夫して努力をされて、潜在的な需要を含めて頑張っていらっしゃる自治体もあることはよく承知をしています。

 今の一連の質問は、三十二万人を二〇二〇年までに整備をする、その三十二万人の算定の根拠には、今のような、申請をしていない潜在的な待機児童は入っていないとその前おっしゃったので、そうしたら、三十二万人ではそもそも全体の数が足りないんじゃないですかとお尋ねしているんです。

加藤国務大臣 三十二万人の根拠はさっき申し上げたところでございます。

 これは、マクロ的に押さえる意味において、女性の就業率がこれからどう伸びていくのか、申込率がどうなっていくのか、そういったことで算出をさせていただき、そして、もう委員御承知のように、都度都度の、年度年度の整備は、先ほど申し上げたように、各市町村がその地域の潜在的ニーズも含めて整備計画をお出しになり、そして我々がそれに対して予算をつけて、その整備の支援をしていく、こういうことでありますから、まずは各市町村において、先ほど申し上げたように、コンシェルジェ等々を活用していただきながら、その潜在的ニーズも含めて的確に把握をし、そしてその受皿整備を進めていただく、そして我々はそれを、予算面を含めて応援していく、こういうことであります。

枝野委員 済みません、大臣はよくわかっておられてお答えいただけないんだと思うんですが、だから、そのマクロの計算をする三十二万人には、申込みをしていない人は勘定しないで三十二万人を試算しているという趣旨のお答えをしたから、お尋ねをしているんです。まず、その事実関係。

 三十二万人の試算には、今、申請をしていない、つまり、フリーランスであったりとか、あるいは非正規であるために、当該自治体ではとても申し込んでも無理だ、諦めていらっしゃる。現実に僕らは声を聞いていますから、相当な規模でいる、これは間違いないんですよ。そういう人たちは、三十二万人の試算に入っているんですか。

加藤国務大臣 それは、先ほど申し上げました、利用の申込率をベースに算出をしているわけでありますから、そこには今おっしゃったような数字は前提にしていないということでございますけれども、ただ、この利用されていないという方を的確に把握することは、これはなかなか難しい、こういう長期の計画において、しかもマクロ的にというのはなかなか難しいと思います。

 実際は、それぞれの市町村で、やはり現場に近いわけでありますから、その状況状況を踏まえながら、先ほど申し上げた形で年度年度は整備をさせていただく、こういうことであります。

枝野委員 申込みをしていない方を把握するのは難しい、それは理解します。ただ、今、実はここで問題になっているのは、一方で無償化という話が出てきているからであります。

 じゃあ、逆に、こういう聞き方をしましょう。

 先ほど、待機児童二万六千人の中には、いわゆる隠れ待機児童と言われる、地方単独事業、認証保育所を利用している人たちは入っていない。でも、三十二万人の計算には、この認証保育所が入っている。これはこれでいいんですね。

加藤国務大臣 認証に行かれた方も、申込みをされているわけでありますから、その中には当然入っている、こういうことです。

枝野委員 じゃあ、逆に、こういう聞き方をしましょう。

 二〇二〇年までに三十二万人分の受皿整備が整えば、少なくとも、現在想定されている女性の就労率と現在の申込率、今、三十二万人というマクロで計算しているその前提で考えれば、認証保育所はなくなっても大丈夫な状況になる、こういう理解でよろしいですね。

加藤国務大臣 多分、その御質問の趣旨は、そうなれば待機児童はいなくなるのかというのと多分同義の御質問ではないかというふうに思います。

 したがって、私どもは、先ほど申し上げたように、待機児童の解消を最大限進めていく、最優先で進めていくということで、今回一つの推計をいたしまして、まず三十二万人分をということで計画を出させていただいて、そして、ただ、具体な話を先ほど申し上げたような形で進めていくことによって、待機児童の解消をしっかりと行っていきたいと思っています。

枝野委員 済みません、聞き方が悪かったかもしれませんが、三十二万人分の受皿整備というものの中には、認可以外の保育所は含まれているんですか。つまり、現在は地方単独事業で出されている、いわゆる認証保育所みたいなものが、三十二万の中に含まれているんですか、含まれていないんですか。含まれていないならば、つまり、認可保育所で三十二万人つくるのですか、どうなんですか。(発言する者あり)

河村委員長 ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

河村委員長 起こしてください。

 加藤厚労大臣。

加藤国務大臣 今申し上げた三十二万人分の中には、認可等でありまして、認証は含まれていない、こういうふうに考えています。

枝野委員 となると、先ほどの問いには、要するに、全て、つまり今の就業率、今想定されている就業率と今の申込率を前提にすれば、二〇二〇年度には認証保育所は要らなくなるという計算をしているということなんですが、本当にそうなるんでしょうかね。

 先ほど言いましたとおり、フリーランスや非正規の皆さんなどで、そもそも申請をできていない人がいるということに加えて、現状で認可保育所に入れているかどうか。諦めてしまって、初めから認証保育所に入ったり、あるいはベビーホテルやシッターさんなどを頼んでいたりという人が少なからずいると思うんですが、その一方で、保育料の無償化という政策を進めています。

 まず、確認的に聞きましょう。

 どこまで無償化の対象になっているのか、現時点で決まったんですか、決まっていないんですか。

茂木国務大臣 三歳児から五歳児の無償化を進める、こういった中で、幼稚園、保育所、認定こども園については無償化をすると決めております。

 さらに、我々は一度も、それ以外を無償化しないということを申し上げておりません。

 それ以外について、無償化の措置の対象の範囲、対象者等につきましては、専門家の声も反映する検討の場を設けまして、幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会ということでありますが、これを一月の二十三日に立ち上げたところであります。

 第一回目の会議は私も出席をしまして、幼児教育や保育施設の利用者の方などからお話を伺ったところでありまして、二回目以降も、こうした施設であったり、さらには自治体など現場や関係者の声にも丁寧に耳を傾けつつ、一つは保育の必要性、さらには負担の公平性、こういった観点からしっかりと検討していきたい。

 その上で、夏に予定しております人生百年時代構想会議の基本構想の取りまとめまでにしっかり結論を出してまいりたいと思っておりますが、必要性がある、こういった人たちがきちんと無償化できるような形をとっていきたい。また、さまざまな施設間で公平性が確保できるような形の措置として、この無償化を進めてまいりたいと考えております。

枝野委員 私たちも、幼児教育、保育料を含めて無償化の方向に向かうことは望ましいことだというふうに思っています。子育てを社会全体で支え合うという考え方は、私たちも理念としては大賛成です。

 ただ、優先順位が高いのかどうか。

 厚生労働省に、例えば港区でどうなっているのとかということを聞いたら、市区町村に任せてあるのでということで、ホームページがありますといってその情報をくれましたので、厚生労働省の方も把握をしていると思うんですが、これは意外と知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、認可保育所の保育料については、そもそも収入によって大きな差があります。

 例えば、住民税が非課税世帯の皆さんは、お子さんを預けるに当たって、負担はゼロです。払わなくていいということになっています。今問題になっている三歳児以上ということでいうと、例えば、これは港区だと思うんですが、所得割の課税基準によって十何段階に分かれていまして、課税額が七十万円以上の世帯で、これが一番最高なんですが、三歳児のクラスの標準保育ですと二万九千三百円ということになっています。

 おおむねこういう線だということでよろしいですね。

加藤国務大臣 今のは多分、港区の保育料についておっしゃったんだというふうに思います。

 港区においては、全部で、済みません、ちょっと今ざっと見るのであれですけれども、二十五程度の階層に分かれて、それぞれゼロ歳、二歳、三歳、四歳、五歳、これはもちろん保育標準時間の人、あるいは保育短時間の人という形で、それぞれが保育料、いわゆる利用者の負担額が示されている、こういうふうに認識しています。

枝野委員 ですので、保育料を無償にしても、例えば、親御さんが御病気で働けないということで収入がないという方は、もともと保育料を払っていませんので、負担軽減には全くならないんですね。で、住民税の所得割課税額が七十万円以上の方は、二万九千三百円、保育料が、新たに無償化をすると、免除になるということなんですね。

 つまり、無償化というのは高額所得者に手厚い政策ということになりますよね、客観的事実として。

 担当は、どなたでしょうか。

茂木国務大臣 今、枝野委員がお示しをいただいた点に限って言えばそういう面もあると思いますが、幼児教育、生涯にわたる人格形成の基礎を培うものでありまして、我が国の経済成長への寄与という観点から、幼児期から人材への投資を拡充することが人材の質を高め、日本の活力を向上させていくことにつながると考えております。この意味で、全ての子供に質の高い幼児教育の機会を提供することは極めて重要だと考えております。

 また、幼児教育が将来の所得の向上や生活保護受給率の低下等に著しい効果をもたらすことを示す、世界レベルの顕著な研究成果もありまして、諸外国におきましても、三歳から五歳児の幼児教育について、所得制限を設けずに無償化が進められているところであります。

 このために、広く国民が利用している三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、そして認定こども園等の費用を無償化する、こういった形にしたわけでありますが、例えば幼稚園でいいますと、私立幼稚園はかなり値段に差がありまして、高いところは年間百万円を超える。そこまでやはり全て無償化というのは公平性の観点からどうかということで、私立につきましては、その平均額、そこまでについて対応しようということで今検討しているところであります。

 また、ゼロから二歳児につきましても無償化を進めますが、ここにつきましては、待機児童の解消、これを最優先で進める。同時に、低所得の世帯については無償化を進める。

 また、高等教育につきましても、住民税非課税家庭、本当にやる気がある、しかし、家庭の事情等によって高等教育を受けられない、こういう子供の意欲を我々としては後押しをするために、低所得の家庭につきましては無償化を進める、授業料を免除する。さらに、生活費につきましても、給付型の奨学金、こういった形で、学業に専念できるような形をつくっていくということでありまして、全体のスキーム、三歳から五歳児だけではなくて、〇―二歳、さらには高等教育の無償化を含めました、政策全体としては低所得層に手厚い政策、こういったことをとっているところでございます。

枝野委員 今もおっしゃられた、社会全体で子育てを支援するという理念は大賛成であると申し上げました。

 高校授業料を無償化したときに、金持ちまでやる必要ないじゃないかと国会で激しく批判をされていた方がそちら側に座っていらっしゃるんじゃないかなということを申し上げたいというふうに思いますし、もし財政に余裕があるんだったら、それは無償化したらいいんです。問題は、待機児童の問題が、先ほどの三十二万人で、二〇二〇年度までに本当に解消するのか。

 先ほど来のお話の中で、潜在的待機児童、つまり、申込みすら初めから諦めてしまっている皆さんの数は含まれていないということははっきりしているわけでありまして、じゃ、この人たちはどうなるんだろう、三十二万人で足りなかったときにはどうなるんだろうという話が間違いなく出てきます。

 それから、本当に保育所の整備が進めば、今は、例えば、お子さん一人、保育所に入れるときに大変苦労したので、二人欲しいと思っていたんだけれども、そこで諦めたというような話はたくさん聞きます。そうした方々が、保育所がそろえばそろうほど、実は、それなら安心して子供を産み育てることができるよねということになって、そもそも出生率自体、本当に受皿整備が進んでいけば相当上がっていくことを期待したいというふうに思っています。

 本当に、三十二万人で足りるんですか。

加藤国務大臣 同じ答弁の繰り返しになって申しわけないんですけれども、先ほど申し上げたような推計にのっとって三十二万人という数字を出させていただいております。ただ、年度年度については、これまでもそうですけれども、それぞれの市町村からお出しになっていただいたその数字をベースに、我々は支援をさせていただいているということでございます。

 それから、今お話があったように、少子化という意味においては、待機児童の問題というのは、今おっしゃるような、これから子供を持ちたいという方にとって一つの壁であることは事実でありますから、我々はそれも解消していきたいと思いますが、他方で、子育てに当たって、保育料等々の負担ということも他方ではあるわけでありますので、そういった負担を軽減していく、そうした無償化というものも少子化に資するもの、こういうふうに考えております。

枝野委員 負担の話は、確かに、例えば七十万円以上だと、いろいろな方があり得ますから、私の手元にある、港区の例だと思いますが、住民税の所得割課税額が六十三万円以上七十万未満の方でも月二万七千六百円、決して安い値段ではないと思いますから、そういったものが軽減されるということはいいことかもしれませんが、しかし、それ以上に、待機児童が出るということの方が当事者の皆さんには深刻だ。そして、万が一にも我が家が待機児童になってしまったら、その御家庭、相当さまざまな意味で人生設計が変わってしまう、狂ってしまう。

 時間がないので、そこまできょう詰められませんが、例えば、転勤などで転居すると、もとの場所では保育園に入れていたのに新しい場所では入れないというようなことなどのケースにも対応できるように、待機児童ゼロというんだったらやらなきゃならないということを考えたときに、なぜ今急いで無償化を前のめりに進めるのか。まずは全入を徹底する、無償化の前に全入化をということにあらゆるエネルギーを注ぎ込んで、本当に間違いなく、お子さんが生まれて希望すれば保育所に入れるという社会にでき上がった先で、財政的な余裕があれば無償化ということにするべきではないかと思いますが、これは総理の認識を伺います。

安倍内閣総理大臣 まず、無償化を進めていく上においては、そもそも、我が党また与党としては、幼児教育の無償化というのを公約として掲げてきたわけであります。しかし、そのためには恒久的な財源が必要であります。その恒久的な財源として、来年引き上げる消費税の引上げ分を使うことを決めたわけであります。

 ですから、その機会にしっかりと恒久財源を、恒久財源をしっかりと確保するチャンスというのはそうないわけでありまして、だからこそ一九年の消費税引上げに合わせて私たちは幼児教育の無償化を一気に進めるという判断をさせていただいたところであります。

 もちろん、私たちは待機児童ゼロを後回しにしているわけではありません。我々が野党時代のことをおっしゃったから、私たちも言わせていただければ、皆さんのときのこの受皿づくりのスピードの二・五倍のスピードでつくっているんですよ。五十九万人分つくり、そしてさらには三十二万人分で、ちょっと重なっておりますが、更に前倒しして三十二万人分をつくる、これは、この補正でも来年度の予算でもやっている。それをやった上において、一九年度から一部始めますが、基本的には二〇年度から幼児教育の無償化を進めるわけであります。

 既に厚生労働大臣が答弁をしているように、今回の無償化の基本は三歳から五歳でありまして、三歳から五歳の方は既に九割以上の方が認可施設を利用できていることから、ここから始めるわけであります。ですから、ゼロ歳から二歳については所得の低い方々に限ってということにさせていただき、そちらの方は受皿づくりを先行させていただいているということであります。

 もちろん、二〇年度に三十二万人分をつくったけれどもまだ足りないという状況になれば、更にそれは対応していくことにはなりますが、しかし、幼児教育の無償化をしっかりと進めていく、そして、先行して受皿づくりをちゃんとやっていくというのが私たちの政策であり、この機会を逃せば、またさらに、次なる、例えば恒久財源を手に入れなければ難しいという状況に私はなってしまうのではないか、こう考えているところであります。

 いずれにいたしましても、そのために選挙を行い、国民の信を問うたところでございまして、選挙でお約束したことはしっかりと実行していきたい、このように考えているところでございます。

枝野委員 受皿づくりに努力をしていないというような御批判は申し上げていません。

 ただし、現実の、さまざまなきょうの議論の中でも、足りない可能性がむしろ高いのではないかと危惧をしているし、当事者の皆さんからも、やはり無償化よりも全入化をという声が大変大きいということを聞いている、そうしたことを申し上げているし、恒久財源ができた機会にって、実は、受皿整備するのにも恒久財源は必要なので、受皿をつくっちゃったら恒久財源は要らないのかといったら、その受皿の人数分だけ恒久財源が要るわけですから、恒久財源をどちらに優先して使うべきかという問題ではないかというふうに思います。

 その上で、これはぜひ申し上げておきたいと思います。

 私たちは、いい方向に変えるのであれば、公約を変えたからといって、公約違反だなんということで、鬼の首をとったように追及したりはしません。いい方向に公約を変えるのであれば、大賛成をいたします。ここは、無償化よりも全入化を優先するということでぜひお願いをしたいということを申し上げて、次の質問に参りたいと思います。

 残念ながら、佐川長官の問題を最後に聞かなければならない状態が続いております。

 まず、会計検査院にお伺いします。

 このいわゆる森友学園問題で、昨年十一月に報告書を出しました。これは会計検査院法三十条の三に基づく報告というふうに聞いておりますが、通常の会計検査とどう違うのか、御説明ください。

河戸会計検査院長 お尋ねの報告につきましては、会計検査院が昨年三月六日に参議院予算委員会からの検査要請を受け、学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関し、貸付価格及び売却価格並びに価格算定手続の適正性等について検査を実施し、十一月二十二日にその結果を御報告したものでございます。

枝野委員 これは財務大臣にお尋ねすべきだと思うんですが、この森友学園問題の土地に係るさまざまな文書が破棄されたという国会での佐川当時の理財局長の答弁が繰り返されたわけですが、そもそも、こうした行政文書についての管理責任者は誰だったんでしょうか。

麻生国務大臣 森友学園に対します国有地の貸付け、売却に係る決裁文書の文書管理責任者は、近畿財務局の統括国有財産管理官であります。

枝野委員 ということは、その管理官が、記録は残っていないという報告を佐川当時の局長にしていたという理解になるんですが、そういうことなんでしょうか。

麻生国務大臣 その財務官の報告に基づいて佐川が答弁をしたというように御理解いただければと思います。

枝野委員 そうすると、これは、処分をしていた、捨ててしまっていたという証言自体が、先週の金曜日にも二十項目ですか、新文書が出てきたというようなことで、そもそも処分していたという説明自体が違っていたということが一つあるんですが、処分が適切でなかったとすれば、その処分をした責任者はその近畿財務局の担当者、こういう理解でいいですね。

麻生国務大臣 処分をした文書に関しましては、私どもとしてはきちんと規則にのっとってやっておりますので、今回出させていただきましたのは、いわゆる法律相談の文書なのでありまして、私どもの個別の面会記録ではないということで、法律違反ということではないというように御理解ください。

枝野委員 だけれども、今回出てきた文書の中に、一五年四月二日付の文書の中には、将来学園側から損害賠償を請求される可能性があると法務担当者が指摘をして、やりとりを整理し、可能な限り証拠を収集しておく必要があると。

 そもそも、皆さんがお出しになった文書の中で、法務担当者がそういう指摘をしているんじゃないですか。違法かどうかじゃなくて、適切だったかどうかということをお答えください。

麻生国務大臣 御指摘の文書は、平成二十八年三月に新たなごみがいわゆる発見される前の平成二十七年十二月に作成をされております法律相談でありまして、ごみが発見されて以後のやりとりとは関係ないというように御理解いただければと思います。

 この件に関しましては、当時森友学園と結んでおりました売買予約権の行使に関する手続的な手順について相談したものでありまして、新たな埋設物が発見された後の売買契約の話とは全く関係ないものであります。

枝野委員 何が関係ないのか、説明していただかないとわかりません。

 一連の、初めは土地を賃貸借するという話だった、そうしたら、売ってくれ、買ってくれという話になった、ごみが出てきた、それは全部一連の流れで、その途中から突然、売ってくれ、買ってくれとか、突然ごみが出てきたわけじゃないじゃないですか。将来トラブルになるかもしれないということで証拠書類を残しておかなきゃならないという状況は、ごみが出てこようが、賃貸借が売買に変わろうが、一緒じゃないですか。

麻生国務大臣 文書を廃棄していたというのに対して、今般新たな法律文書が出てきたということなんだと思いますが、今般公開をした法律相談の内容につきましてはこれまでも説明をいたしているものであると思いますので、開示請求への対応の中で文書の存在が判明ということで、国会より提出の御要請をいただいたことから、確認作業を速やかに行わせていただいた上で、先日、二月の九日でしたか、お示しをさせていただいたということでありまして、今般開示した法律相談の文書というものは、法的な論点について近畿財務局の検討を行っていた資料でありまして、検討を行うために必要な情報として相手方の主張や当方の考え方ももちろん含まれておりますが、これまで佐川やらが議員に質問を聞かれて、念頭に置いて答弁した、いわゆる森友学園との交渉記録ではございません。

 なお、法律相談の文書で検討している内容につきましては、これまでも国会や検査の過程で説明しているものでありまして、殊さら文書を隠していたというものではないというように考えております。

枝野委員 委員長、今、答えておりません。私が聞いたのは、公開の話じゃなくて、破棄の話についてです。

 ちゃんと時計をとめて、整理してください。(発言する者あり)

河村委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河村委員長 速記を起こしてください。

 財務大臣。

麻生国務大臣 御質問を勘違いしているわけではないと思いますが、文書を廃棄したと答弁していたのに対して、いわゆる法律文書が出てきたということなので、私どもとしてはというのを今、御説明申し上げたとおりです。

枝野委員 破棄をしたことが適切でしたかと聞いているのに対して、破棄しちゃったから出してこなかったのは当たり前ですと答えていても、答えになっていません。

 破棄したことは適切じゃなかったんじゃないですか。指摘を受けて、法務担当者から、証拠書類を残しておかないと後でトラブったとき困るよと言われていたのに、もし本当に破棄していたとしたら適切じゃないんじゃないですか。

 違法でないということの説明は何度も聞きました。適切だという説明は聞いていません。

麻生国務大臣 私どもが再三御説明を申し上げておるとおりなんですが、法的論点につきましては、これは先ほど申し上げましたように、近畿財務局内の検討の文書というのは法律相談の文書でありまして、私どもとしては、破棄をしたというのは応接メモとか記録メモとは、これは面会記録ではありませんので、きちんとこれは、規則にのっとって法律相談の文書は保存してあったということだと思います。(枝野委員「答えになっていない、答えていないじゃない、捨てたことが適切だったか聞いているんですから」と呼ぶ)

河村委員長 枝野君、もう一度、質問してください。(発言する者あり)

 麻生財務大臣。

麻生国務大臣 私の勘違いとも思えませんけれども、御指摘のありました文書につきましては、私どもとしては、再三申し上げるにいたしましても、いわゆる財務省において公文書管理法に基づく規則にのっとって文書管理の記録を行っているというのが事実でありまして、そのとおりさせていただいたということだと思っております。

 この法律相談に関しましては、これは貸付契約を締結する前に行われたものでありますから、新たに地下埋設物が発見された、森友学園からの損害賠償を求められたときとは時期が全く異なっておると思っております。

 また、貸付けに関しましては、実際には地盤の状況を交渉するなどして貸付契約というものを締結しておりますので、森友学園との紛争を念頭に、殊さらに資料を残しておくような状況にはなかったということだと思いますが。

枝野委員 この契約は、異例のことですが、買戻し特約がついていたと。買戻し特約がつくというのは、途中でトラブルが起こって予定どおりにいかないから買戻し特約が発効するのであって、予定どおりにいかないことを想定していなければ買戻し特約なんかつきません。一般的に売買にはつきません。今の答弁は矛盾しています。

麻生国務大臣 交渉を、商売をされたことはおありなんだと思いますが、私どもも土地の売買というのはいろいろやらされたことがありますので、その条件によっていろいろと異なってくるということはありますから、改めていろいろなことを想定しておくのは当然のことだと思いますが。

枝野委員 だから、想定をしているんだから、買戻し特約が発効しなきゃならないような状況というのは、つまり、予定どおりに学校の建設が進まないで、ということはトラブルになって、トラブルになったときのために書類を残しておかなきゃならないという状況は、むしろ深刻化していたから、買戻し特約をつけるんじゃないですか。

 それなのに書類を捨てたというのは、少なくとも適切ではなかった。違いますか。

麻生国務大臣 相手が学校法人等々のことを考えれば、買戻し特約等々を検討しておくというのを考えるというのは、これは事前に検討するというのは当然のことだと思いますが。

枝野委員 検討したことは、買戻し特約をつけたことが悪いとは言っていないんです。

 買戻し特約がつくということは、予定どおりいかないことが想定されている。予定どおりいかなかったときには、どういう経緯でこれの売却になって、どういう価格になって、実際にこれは今回買戻し特約が発効をしているのか、契約不履行に基づくのか、戻そうとするときに、向こうの支払い能力があるなしで、なかなか、全部戻ってくるのか、土地を平らにする費用は誰が持つのか。実際にトラブっているわけですよ。そうしたときには、実際にどういう経緯、やりとりの中で契約に至ったのか記録を残していくのは、逆に当たり前のことじゃないですか。

 普通、民間の、個人の皆さんが家を建てるときだって、そのプロセスにおけるいろいろな業者とのやりとりは、家が建ち終わって、引渡しを受けて、ローンが終わらないと、なかなか捨てませんよ、そうじゃないと何が起こるかわからないから。

 それなのに、国が、十億近い土地を売るのに対して、途中の経緯の話は、もう終わったから一年で捨てちゃいました。適切なわけないじゃないですか。

麻生国務大臣 規則どおり、交渉記録に関しましては一年未満の保存期間ということになっておりますので、そのとおりやったということであって、法律違反でも何でもありません。

枝野委員 私は法律違反なんという話をしていません。適切であるのかということを聞いているんです。

 まさに、適切であるのかということで言えば、佐川国税庁長官が今のような趣旨の答弁を、捨てちゃいましたという話、これは明らかに、これは国民の皆さん、法律関係の問合せの文書だから残っていました、聞かれていたのは応接記録とかだったからそれは出しませんでした、こんな子供だましみたいな言いわけが通用しますか。

 国会の中で、長期にわたって、このやりとりで、どういうことがあったのか、どういうふうに財務省は判断をしてこういう値下げをしたのか、このことが問われ続けてきている中で、資料を出せ、資料を出せというやりとりをやってきて、これは法律相談文書だから請求された文書とは違う、だから出しませんでした、こんな子供みたいな言いわけが通用しますか。

 違法じゃないかもしれない。でも、少なくとも、国民に対してできるだけ事実関係を明確にして、そして納得してもらおうという意欲があったら、そういう記録をみずから探して出してくるのが当たり前じゃないですか。

麻生国務大臣 これはたびたび太田の方から答弁をいたしておりましたとおり、その法律相談の文書というものが、これは保存期間が五年になっておりますので、その五年に関しては、少なくとも担当している部署が違ったので発見できなかったというのは甚だ残念だということを本人も申しておるのであって、そのとおりやっておりますので、事法律相談のことに関してはきちんと五年以内、ありましたし、交渉記録に関しましては一年未満ということだというので、ずっと答弁をこの一年間させていただいたとおりであります。

枝野委員 この法律相談の記録のやりとりは理財局として出してきました。理財局が法務担当と省内でやりとりをしていたんでしょう。理財局の局内で、いや、一年未満で捨ててしまったものがあるかもしれないけれども、法律相談を担当していた担当者は財務省の中には残っていたでしょうし、ということは、それの記録は五年だから残っているはずだということは一年前だってわかっていて、出そうと思えば出せたんですよ。

 国民の皆さんに、こういう文書がありますということをしっかりと最大限開示をして、その中で納得してもらおうという意欲があったら、一年前に出せたものを出さなかった責任者が佐川局長だったわけです。違いますか。

麻生国務大臣 少なくとも、私どもは交渉記録についての請求を受けていたんだと記憶をいたしております。したがいまして、それに基づいて、私どもは、交渉記録に関しましては一年未満という規則でありますので、そのとおりにされていたということを申し上げ、何の虚偽もありません。

枝野委員 交渉記録はないけれども、交渉について関連して法律相談した記録は残っていた。これははっきりしているわけだし、法律相談をして文書をやりとりした担当者は財務省に、理財局にいたでしょうから、わかっていた。それでこれだけ、このやりとりはどうなっているんだ、財務省に不正があったのではないかという、あえて言えば嫌疑がかけられている。

 それを晴らすために文書をたくさん出した方がいい、そういう状況なら、こういう文書なら出しますと、むしろ積極的に、説明を積極的にしますという、これは総理も似たような答弁をしていたじゃないですか。積極的に説明するんだったら、何で今まで出さなかったのか。

 どういうふうに答えるんですか。

麻生国務大臣 法律相談の文書に関しましては、これは近畿財務局の中にあったということであって、理財局の中にあったわけではありません。まずここははっきりさせておかないかぬところだと思いますが。

 その上で、太田の方からたびたび御説明申し上げましたとおり、この文書が、御指摘のありましたように、この段階で、法律相談で、セクションが違ったとはいえ、その部署にあったということを発見できなかったことは甚だ残念ということを申し上げておるのでありまして、隠匿するとか隠す必要がありませんので、私どもはそのとおり申し上げております。

枝野委員 私も注意して、隠匿しただの隠しただの言っていないじゃないですか。政府として積極的に説明する、国民の理解を求めるという姿勢で、それをお示しになってきたじゃないですか。

 そうしたことの中で、例えば、直接的な交渉記録じゃないにしても、交渉のいきさつについて証明する文書が残っていたら、それは積極的に出すのは当たり前じゃないですか。当時の理財局長は、それを近畿財務局に対して、そういう文書でも残っていないのかという指示をしたのか、しなかったのか。しなかったのなら、なぜなのか。

 これは、財務省として、理財局として、どういう判断を適切と考えているかじゃなくて、昨年、彼が理財局長のときに、近畿理財局に、例えば今回の文書について、こういった文書は残っていないのかと問合せをかけたのか、調査をしろとかけたのか。

 これは当時の彼の認識を聞かなきゃならないので、証人として要求いたします。

河村委員長 理事会で検討させていただきます。

枝野委員 これは、財務省のことだから担当者が答えればいいという話ではありません。一年前の理財局長の主観的認識を聞くんですから、本人じゃなければ答えられない話ですから、本人に出てきていただかなければいけないというふうに思っています。

 そして、まさに今、多くの国民の皆さんから、財務省が、まず一年で交渉記録を捨てたことについて、それが本当だとしたら、まさに先ほど来のやりとりのとおり、交渉のプロセスであり、契約が成立したとしても、代金が納め終わって、そして買戻し特約がついているんですから、買戻し特約が発令されないような、そういうところまでいって契約が完了するのであって、その途中で、契約書を結んだからといって、それでやりとりの経緯を捨てるだなんということは、それこそ民間じゃ普通考えられないことを、本当に捨てたんだとしたら、その指示をした人は大きな責任があると私は言わざるを得ないというふうに思っていますし、国会に対して、ちょっと調べれば出てくるような記録を、調べもせずに出さないで、ありません、ありませんと答え続けてきた方、大きな責任があると思っています。

 その方が、国民の皆さんには、確定申告のときに、ちゃんと申告した後も帳簿を残せ、書類を残せということを何年間も国民の皆さんには強いる、その最高責任者をやっているんですよ。説得力ないじゃないですか。

 私は罷免するべきだと思いますが、百歩譲って、罷免しないならば、ここに証人として来ていただいて、どうしてああいう判断をしたのか、どういう説明をしたのか、本人の主観の問題としてしっかりと説明していただかなきゃいけないと思いますが、委員長、お取り計らいください。

河村委員長 理事会において協議をさせていただきます。

枝野委員 財務大臣は、先日、もしかすると、何という表現をしたんですかね、トラブルが起こるかもしれない、問題が生じるかもしれないと、この佐川さんが今国税庁長官をやっていることについて若干御答弁になりました。本当にそういう認識で、いよいよ確定申告が本格化する、これを税務署の現場の職員さんたちに強いるおつもりですか。

麻生国務大臣 佐川のことに関しましては、所得税等々、今、申告税制でやっておりますので、私どもとしては、納税者の方々から、各年、得られた所得を自主的に確定申告というものを行っていただいて、納税というものを、税金を納付していただくということになっておるんですが、少なくとも、毎年のことではありますけれども、私どもとしてはこれまできちんとして取り組んできておりますので、今、佐川のところに関して、いわゆる納税拒否とかいうような話の騒ぎがあるようなことを御心配いただいておるんだと思いますが、そういったことがないように、私どもも全力で取り組んでまいりたいと考えております。

枝野委員 それは、拒否したらペナルティーを科せられるんですから、拒否したくたってできないですよ、国民は。

 しかしながら、税というのはやはり、そうはいったって少ない方がいい、払わないで済んだ方がいいと思う気持ちが半分ある一方で、みんなのために、社会のために納めなきゃならないよねという納得感、私は、日本は相対的に、世界各国の中でも、納得をして税金を納めるという意識は高い、特に所得税に関しては高い国民だと思っています。

 にもかかわらず、そのトップが、国会でどうもいいかげんな答弁をしたんじゃないか、捨てちゃいけない書類を捨てた責任者じゃないのか、そうした疑義を持たれている中では、それは、拒否したらペナルティーをとられるから、拒否までできる人はそうそういないかもしれませんが、税務署の現場で、国民の皆さん、納税者の皆さんと対応される職員の皆さんは、相当な嫌みを言われたり、その現場で相当なトラブルが起こることは、残念ながら想定されます。

 それは、ことしの確定申告、納税の問題じゃなくて、日本の国民の納税意識というものに対して深刻な、長期にわたる禍根を残す、そのことを指摘をして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて枝野君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 希望の党の後藤祐一でございます。

 平昌オリンピックの前に、まず、二月七日に安倍総理はペンス副大統領と会談されて、この一週間ぐらい、外交は大きく動いたと思います。お疲れさまでございました。

 この平昌オリンピックの開会式に総理が行くかどうかについては一時期ちゅうちょされていたようですが、世論調査の結果を見ても、やはり行ったことは正解だったというふうに私も思います。

 そこで、北朝鮮問題について伺いたいと思いますが、まず、この北朝鮮というのは核兵器保有国なのかどうかについて、総理に伺いたいと思います。

 昨年十月八日の党首討論会では、核は保有している、核保有国が非核保有国を脅かしたのは初めてでありますとおっしゃっておられますが、一方で、二月七日のペンス副大統領との共同記者会見では、核武装した北朝鮮は決して受け入れられない、こういうふうにおっしゃっておられます。

 現時点で北朝鮮は核保有国なんでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮は、核実験を数度にわたり行いました。先般、昨年の直近の核実験においては、広島型の十数倍の威力を持つ核の実験を実行し、事実上成功させているところから、核を保有している、こう考えております。

 ただ、いわばICBM級のミサイルに搭載できるかどうかということについては、これはさまざまな疑問が呈されているところであろう、こう考えております。

後藤(祐)委員 一月十六日の北朝鮮に関する関係国外相会合では、閣僚は、北朝鮮が核保有国として受け入れられることはないと明確に宣言しておられますが、核保有国ということでよろしいんでしょうか。

 聞いていていただけますか、総理。(安倍内閣総理大臣「ごめんなさい。済みません」と呼ぶ)質問のときはぜひお聞きいただけるとありがたいんですけれども。

 一月十六日の北朝鮮に関する関係国外相会合では、閣僚は、北朝鮮が核保有国として受け入れられることはないと明確に宣言されておられます。それでも、北朝鮮は核保有国と日本国としては認めるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いわば、我々は、核を廃棄をさせなければいけないということで、北朝鮮に、既に今保有しているものも含めて、完全、検証可能そして不可逆的に廃棄をさせなければならないと考えております。

 先ほど申し上げましたように核を保有しているわけでありますが、核兵器国ということにおいては認定はしていないわけでありますが、核実験を既に成功させていることから、いわば核は保有している、このように考えているわけであります。

後藤(祐)委員 核保有国としては認めないけれども、核は保有しているんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 核兵器国というのは、持っている核をいわば核兵器として完全に使用できるようになっているかどうかということでありまして、核保有国というのは、核実験を既に成功させているということでありますから、いわば核を爆発させる能力はあるということであります。

後藤(祐)委員 先ほど、ICBMはまだ完成させていないというふうにおっしゃっておられましたが、総理、先ほど私の質問をお聞きになられないで秘書官のお話を伺っておられたので、ちょっとお聞きいただけるとありがたいんですけれども、ICBMはまだ難しいんじゃないかというお話がございましたが。委員長、ちょっと。

河村委員長 ちょっと、質問中ですから。

後藤(祐)委員 質問の最中に、一度はまだともかく、先ほど一回、私の質問を総理は聞き損ねていらっしゃるのに、ちょっといかがなものかなと思いますね、秘書官の方。

河村委員長 以後、気をつけてください。

安倍内閣総理大臣 一々確認しておりますのは、今までの国際的な場での発言と整合性を、正確な発言が必要でありますから、ですから、例えば、先ほども核兵器保有国と核保有国を分けて発言をさせていただいたわけでありますが、一応もう一度、私が発言したことが正しいかどうかを確認する必要がございますので、それで今確認をしたところでございます。

 また、事前に細かいことも通告していただければ事前に用意をしておくわけでありますが、いわゆるどこに、例えばICBM級のものには、搭載については先ほど申し上げましたとおりでありますが、ノドン級にこれは移りそうでございましたから、ノドン級については、今まで、過去の答弁との整合性と、現時点での最新の認識について今確認をしたところであります。

後藤(祐)委員 まだノドンの話は伺っていないんですが、日本の本土をほぼ射程におさめるノドンについては、これは日本を攻撃できる状態になっているという御理解でしょうか。

安倍内閣総理大臣 このノドンミサイルについては、既に数百基配備されているという認識であります。

後藤(祐)委員 核を載せてノドンで攻撃できる状態になっているという御理解でしょうか。もう総理、ここまで答弁されているわけですから、総理にお聞きしたいと思います。だって、今の総理の答弁に対して私は聞いているわけですから。

河村委員長 ちょっと確認を。

 防衛大臣小野寺五典君、専門的立場で解説してください。

小野寺国務大臣 確かに、ノドンにつきましては、北朝鮮は既にさまざまな配備をしているということでありますが、核弾頭が載せられ、それが有効に機能するかということについては、私どもとしては、今、北朝鮮はさまざまな実験を繰り返す中で、その実現性に至っているかどうかについては慎重に分析しておりますし、事柄上、日本の判断についてはお答えを差し控えさせていただきます。

後藤(祐)委員 ノドンに核兵器を積んで日本を攻撃できる可能性は少なくともあるということで、総理、よろしいでしょうか。総理に今聞いているわけですよ。先ほど一回答弁されているじゃないですか。

河村委員長 防衛大臣、今の確認を。

小野寺国務大臣 私どもとしては、例えばノドンミサイルを含め、さまざまな弾道ミサイル攻撃に関して、日本をしっかり守るためのBMD体制をとっているということでありますので、これは、核を積んでいる、積んでいないにかかわらず、日本を攻撃するような弾道ミサイルが来た場合にはそれをしっかり防ぐ努力をしていくということだと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま防衛大臣から答弁させていただいたとおりでありますが、いわばノドンに果たして、核兵器を搭載するほど小型化し、そして完全に起爆できるかどうかということについては、さまざまな情報に私たち接しているわけでございますが、私どもの情報もあれば同盟国の情報もありますが、現在のところについては、まだ、今大臣が答弁をさせていただいたように、そういう意味においても確たることを今お答えすることはできないということでございます。

後藤(祐)委員 総理、自信がないんですかね。総理の得意分野だと思ったので、総理にお伺いしているんですよ。

 ノドンに核兵器を積んで日本に落ちるかどうかなんて、一国の総理として一番基本的なことじゃないですか。それを防衛大臣に何か、総理、この辺は非常に得意だと思っていたのに、ちょっと残念ですね。

 じゃ、総理の次の得意分野に行きたいと思いますが、日ロ関係に行きたいと思いますけれども、北方領土問題について行きたいと思います。

 プーチン大統領が、おととしの十二月、山口県に来られました。その後の日ロの首脳の共同記者会見のときに、北方領土問題についてこのように述べておられます。米国と日本との間の安全保障条約の枠内における条約上の義務が念頭にありますが云々とあって、全ての微妙さとロシア側の懸念を考慮することを望みますと。

 これは、その下にありますけれども、日米安保条約の六条というので、アメリカは、陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することが許される、つまり、日本のどこにでも米軍は基地なりを置いていいという安保条約六条というのがあって、北方領土がもし日本の帰属になった場合には米軍の基地が置かれてしまうのではないか、だとすると、なかなかどうぞというわけにはいかないですよねということをプーチン大統領はおっしゃっていると思うんですが、これは明確にこう言っているわけですね。

 安倍総理の御理解も同じでよろしいでしょうか。安倍総理に、これは通告していますし、基本的なことですし、総理との共同記者会見の話ですから、総理にお願いします。

安倍内閣総理大臣 六条においては、当然これは日本の同意が必要となるわけであります。

後藤(祐)委員 いえいえ、プーチン大統領が、北方領土の問題についてなかなかいいよという話にまでいかないのは、六条に基づいて米軍が基地を置いてしまうかもしれない、だからなかなか返せないよねということをちゃんと考えてほしいと。これはある意味合理的だと思うんですよ。なかなか領土問題が解決しない理由は、プーチン大統領ははっきり言っているんですよ。総理も同じ認識ですか。

安倍内閣総理大臣 私とプーチン大統領とのやりとりの中身については、これはまさに交渉中でございますから、ここで発言することは控えさせていただきたいと思います。

 これは横に置いておいて、他方、安保条約の六条において、米軍が望めばどこにでも置けるということでは全くないわけでございまして、先ほど私が申し上げましたとおり、日本の同意が必要であります。

後藤(祐)委員 質問にお答えください。

 北方領土問題がなかなか進まないのに、プーチン大統領はその理由を言っているわけです。安倍総理も、この北方領土問題がなかなか進まない理由を、プーチン大統領が懸念されている安保条約六条の問題にあるという認識かどうかを聞いておりますが、これについてお答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 六条について、これは日本の立場を申し上げたところでございますが、いわばプーチン大統領の認識、あるいはプーチン大統領と私たちのやりとり、あるいは領土交渉等については、今の段階でお話しすることはできません。

後藤(祐)委員 いや、交渉の中身を聞いているんじゃなくて、プーチン大統領はこれが理由だと言っているわけですから、安倍総理も、少なくともプーチン大統領がこういう懸念を持っているということについては理解されているということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 中身ではないとおっしゃりながら、非常にうまく、まさに中身のところについて私に答えさせようとしておられるような受けとめをしているんですが、まさに交渉の中身につきましては、ここでお答えすることは控えさせていただきたいと思います。

 他方、六条につきましては、先ほど私が答弁させていただいたとおりでございます。(後藤(祐)委員「答弁されていないですよ」と呼ぶ)

 つまり、中身か中身じゃないかを知っているのは私だけでございまして、そうではないことをここで皆さんに公開しなければ、では中身か中身ではないかということになるわけでございまして、今の御質問にお答えさせていただくことはまさに交渉そのものにかかわってくることでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 プーチン大統領が表で言っている話なんですよ。プーチン大統領が表で言っていることを総理は理解されていますか、プーチン大統領はこういう御懸念を持っておられてなかなか難しいよねというふうにおっしゃっているということを総理は御理解されておられますかと、非常にシンプルな、表で言ったことを理解されているかどうかを聞いているんですよ。お答えください、これは、総理。総理、お願いしますよ。

安倍内閣総理大臣 プーチン大統領が発言をしておられることについては承知をしておりますが、これについて私が今どういうコメントを述べるということにつきましても、これはまさに交渉そのものにかかわっていくことでございますから、控えさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 少なくともプーチン大統領がこう言っているということは御理解されていると理解しましたが、一方で、ここが進まないとなかなか進まないわけですよ。総理は、いわゆる特別な制度のもとで共同経済活動を行うという、新しいアプローチとおっしゃっていらっしゃるんでしょうか、これで幾らやっていっても、この安保条約六条の問題がクリアにならないと前に進まないんじゃないですか。

 実際、ロシアのラブロフ外務大臣は二月十二日のインタビューで、これは配付資料に、皆さん、ありますけれども、一部の我々の同僚が一時期提案していたような、国家の枠を超えた何らかの機関を創設する必要は全くないと。一時期特別な制度って、これのことを言っていたんじゃないんですか。そして、我々には、この共同経済活動をいかにしてより効果的に発展させるかに関する政府間協定を締結する用意があると言っていますが、これは、一時期何らかの国家の枠を超えた機関を創設するという話があって、それを特別な制度と呼んで、それでいくのであれば日本の国益を害しなかったかもしれませんが、ラブロフ外相はこれを明確に否定しているんですよ。

 特別な制度というのは、このラブロフ外相の言っている、一部の我々の同僚が一時期提案していたような国家の枠を超えた何らかの機関の創設のことなんでしょうか。もしそうなのだとすれば、それを実現しなければ国益を害することにつながるんじゃないでしょうか。

河野国務大臣 今の政府の方針は、北方四島の帰属の問題を粘り強く交渉し、解決し、平和条約を締結するということでありまして、その間に先方がメディアを通じて発言すること一々に政府としてコメントすることはいたしません。

後藤(祐)委員 いや、オープンで言っている話ですからね。相当ばかにされているんですよ、これは。特別な制度で、一瞬これでいけるんじゃないかと沸き立ったときがありました、去年。ですが、もうこれはメンツ丸潰れじゃないですか、総理。実際、昨年の十一月には択捉と国後にロシアは地対艦ミサイルを配備しました。そして、一月三十日には択捉の空港を軍民共用化しました。二月の六日には国後島で軍事演習を、二千人以上と言われます、行いました。いいようにやられちゃっているじゃないですか。

 こんな状況で、日米安保条約六条の問題をクリアしないと前に進まないよとはっきり言っている、特別な制度は、そんなの知らないという感じに近いことを外相が言っている中で、本当にことし、総理、ロシアまで行くんですか。

 プーチン大統領と安倍総理は深い信頼関係があるからこそ、私は期待しているんです、北方領土を解決することに。かつ、トランプ大統領とも大変親しい、本音で話せる関係であられるということは私はすばらしいことだと思うんです。

 だからこそ、この北方領土問題を前に進めるには、アメリカに対して、今、例えば米艦防護もやりました、きちっとアメリカがまずいときは日本も助けますと、歴史上なかった状態なんですよ。ですから、この北方領土が日本の帰属になったときには米軍を置かない、これだけはトランプ大統領、ちょっと確約をくださいと、安倍総理だからこそできるんじゃないかと期待するから私は申し上げているんです。その確約をとれれば、プーチン大統領にそのことを話せば進むじゃないですか。

 総理、そこまで備えてプーチンに会いに行くんだったらいいですよ。そうでないんだとすれば、ばかにされているだけじゃないですか。安保条約六条の話をクリアにしないで、これだけ軍事演習までされて、プーチン大統領に会いに行くんですか、ことし、総理。これは総理が会いに行くかどうかの話です。

安倍内閣総理大臣 大変御激励をいただいたことに御礼を申し上げたいと思います。

 そこで、いわば新しいアプローチというのは、四島については、もう七十年間、事実上向こうが実効支配をしている中において、残念ながら日本の島民は既に外に追い出されてしまっているわけでありまして、ロシア人が代を継いであそこで生活をしている、彼らのお墓もあるという状況、現実があるわけであります。

 そこで、いかにしてこの帰属問題を解決するかということについては、あそこに住んでいる人たちも含めて、帰属がかわっていくということについて理解を得なければそれはなし遂げられないわけでありまして、ただこちら側から主張していても、法的に正当性があることを、我々は正当性があると思っていますよ、国際法上も。ただそれを主張していただけでは、この実効支配をしているという状況は一ミリも変えることはできないわけでありますから、まずは、四島に住んでいる皆さんと我々日本人がお互いにさまざまな仕事をしていく、そこに雇用をつくっていく、そこに利益を日本人が実際に生み出していくという中において、彼らの理解も得ながら、あるいは、ロシアが日本と協力して前に進んでいくことがロシアの未来だということを理解していく中でなければ我々はこの問題が解決をしないという判断のもとに共同経済活動を行う。そしてさらには、元島民の自由な墓参を可能にする。これが一昨年の長門合意だったわけでありますが、二回、共同経済活動については調査団を出し、そして初めて航空機による墓参も可能となったわけでありまして、長門合意は間違いなく進んでいるわけであります。

 他方、後藤議員が提議をされた安全保障の問題でございますが、いわばそういう極めて機微なことについてもしっかりと話をつけていく必要は確かに、もちろん当然あります。

 ただ、それ以上のことにつきましてはまさに交渉の中身に至るわけでございまして、発言は控えさせていただきたいと思いますし、事情が許せば、私は、大統領選挙が終わった後となるわけでありますが、ロシアを訪問して首脳会談を行いたい、こう考えております。

後藤(祐)委員 今は一拍置くべきタイミングだと思いますけれどもね。これだけ軍事演習までされて、地対艦ミサイルまで配備されて、ちょっといかがなものかと思います。

 さて、この北方領土については、江崎大臣に前回、先週、北方領土の日にお聞きしたときに、この北方領土の問題は、領土問題担当大臣ではありますけれども、どうしても外交交渉、今のような問題にかかわってくると。この外交交渉の状況というのは江崎大臣に情報は入っているんですかと伺ったところ、最初は入っているのか入っていないのか自信がなくて後ろから御説明いただいて、三度目ぐらいに適宜伺っていますというお話でありました。

 逆に、江崎大臣は大変人情味あふれる政治家だと思うんですね。実際、北方領土に深くかかわる皆様方のお話をたくさん聞いておられると思うんです。その聞かれた思い、当然外交交渉にかかわるような話も多いと思うんです、聞かれた思いで、これは外交交渉で反映していかなきゃというようなものを聞いた場合には、それは例えば外務大臣ですとか総理にお伝えされているんですか。具体的にどういった形でお伝えされているんでしょう。

江崎国務大臣 お答えします。

 絶えず私は総理、外務大臣にお話をいたしますし、特に、後藤先生からお話がありましたが、何よりも、戦後七十年余りが過ぎましたときに、今、日ロ関係最大の懸案はこの問題が解決していないということであります。

 先日も、元島民の方、そして後継者の方々から直接お話を伺う機会がありました。元島民の方からは、ふるさとを追われて、過ぎた年月に対する無念さ、そうした思い、そしてその後、後を継ぐ後継の皆さん、若い人々の強い意思は、特に、総理始め、外交を通して、沖縄北方担当大臣としてしっかり物をおっしゃっていただきたいと。したがって、外務省そして事務方の皆さんに、元島民の方、そして、これから後継としていち早く北方四島の帰属を解消できるような対応をとっていただきたいと。

 特に皆さんが期待しておられることは、今、総理が、何とプーチン大統領と二十回前後の首脳会談を行っておられますが、そこで、特に今度の日ロの共同経済協力活動、これをもって活路を見出す、ぜひ北方四島の帰属の解消に努めてもらいたいといった大きな期待もありますので、ここは、これからの経緯をしっかり私どもも関心を持って見詰めながら、いい結果が出ることを特に願うものであります。

後藤(祐)委員 外務省の事務方にしか伝えていないということですか。(江崎国務大臣「いえいえ」と呼ぶ)外務大臣とか総理に伝えていないんですか。(江崎国務大臣「いえ、あの……」と呼ぶ)

河村委員長 どうぞ、江崎大臣、ここで御答弁ください。

江崎国務大臣 特に外交状況の進捗ですが、内閣府の事務方から随時、あるいは首脳会談など大きな節目では外務省担当者から直接、必要に応じて報告を受けておりますのが実情であります。

後藤(祐)委員 外交の状況を事務方から聞くとかいうことじゃなくて、地元の熱い思いを伺ったことを河野大臣だとか安倍総理には伝えていないということですよね。それだと、何のために大臣がおられるのかという話になるんですよ。

 実際、中根外務副大臣は、先週二月七日の北方領土の日に根室に行ってお話をされて、伺ってきているんですよね。ロシア担当ですよ。ロシア担当の外務副大臣が根室に来たら、そっちに言った方が直接伝わるじゃないですか。そういう話になっちゃうじゃないですか。もうちょっと頑張っていただきたいなと思います。

 もう一つ、沖縄でちょっと似たような話があって、昨年の十二月十三日に、普天間の小学校のグラウンドにアメリカの軍のヘリの窓が落ちたことがありました。このとき江崎大臣はちょうど沖縄におられたというふうに伺っておりますけれども、このとき、どうされたんでしょうか。

江崎国務大臣 当時、ちょうど公務の視察に入っておりましたが、宜野湾の小学校に落ちたという連絡を伺って、直ちに宜野湾の市役所に訪ね、市長と直接、そして議会の方たちとも、どうこれから対応するべきかといったお話を伺いました。

 ちょうどあれは、沖縄選出の、希望の党か、国会議員から、どうして江崎は公務中に立ち寄らぬのかと言われる前に、もし宜野湾の小学校に行きますと、調査中で、かえって混乱を来してはいけませんので、直接私は宜野湾の市長にお目にかかって状況報告を受けております。

後藤(祐)委員 市長に聞くんだったら、それはだって防衛省でもできますし、せっかく大臣が沖縄担当大臣として沖縄におられるときなんですから、小学校のどこまで立ち入るかという問題はあるかもしれませんが、学校長さんにお伺いするとか、けがをされた児童の御父兄さんに少し聞くですとか、あるいは米軍の現場での対応がどうなっているのかですとか、そういう現場感ある状況を聞くべきだったんじゃなかったんですか。

江崎国務大臣 よろしいですか。

 既に、私も現場へ駆けつけたかったんですが、現場は混乱が生じておりまして、私どもが現場に行くことがいかがなものかと。したがって、市役所へ出かけ、市長と直接、お話を伺ったというのが実情であります。

後藤(祐)委員 そうしますと、大臣って一体何のためにいるのかなというような話になっちゃいますよね。沖縄担当大臣ですから、やはり現場のできるだけ近いところに行って、ある一定以上行っちゃいけないところはあると思いますよ、もうちょっとやり方があったんじゃないかなと思います。

 それと、沖縄に関しては、先週のこの委員会で、基地の再編交付金というお金がまずあります。これは、新しい市長になって、もしかしたら受け取られるかもしれません。今までは受け取っておられませんでした。二つ目に、名護の三つの自治会に対する特別支援事業費というのがございます。これ以外にはさすがにこの辺野古の移設に関連して予算はないですねと聞いたら、江崎大臣は、ない、こういうふうにおっしゃっておられましたが、本当にほかにありませんか。

江崎国務大臣 これは、ございません。

後藤(祐)委員 今年度予算でもございますが、名護市を含む沖縄北部十二市町村に交付している北部振興事業予算というのが、二十九年度、二十六億円ございます。三十年度予算案でも同額がございます。これは、一九九九年に、当時の稲嶺知事と岸本名護市長が辺野古移設を容認して、普天間飛行場の移設に係る政府方針というのが閣議決定されて、それでできた予算なんですよ。

 これはまさに、辺野古への移設を前提とした予算の三つ目なんじゃないんですか。私は、これはいけないと言っているわけじゃないんですよ。あるんじゃないですか、江崎大臣。

江崎国務大臣 特に沖縄県土の均衡ある発展、先ほど申しましたが、そうしたときに、産業の振興や定住条件の整備などに資する振興事業を実施するものはございます。

後藤(祐)委員 つまり、この北部振興事業予算というのは、辺野古移設容認を前提とした予算の三つ目なんじゃないんですか。それに対してお答えいただけますか。

江崎国務大臣 これは、辺野古移設とは関係ないといったことであります。

後藤(祐)委員 じゃ、普天間からの移設とは関係ないんですか。

 だって、これは、一九九九年十二月二十八日の普天間飛行場の移設に係る政府方針という、閣議決定されたその中に、沖縄県北部地域の振興として新たに北部振興事業制度を創設し、こういう閣議決定された文書であって、それを踏まえてできた予算なんですよ。それがもし違うというんだったら、そういう説明をしていただけますか。

江崎国務大臣 同じことを繰り返します。

 北部振興事業は、沖縄県土の均衡ある発展を図る観点から、産業の振興や定住条件の整備などに資する振興事業を実施するものであります。(発言する者あり)

河村委員長 後藤君、もう一度ちょっと確認してください。

 ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

河村委員長 起こしてください。

 江崎担当大臣。

江崎国務大臣 辺野古関係とは廃止をされております。

後藤(祐)委員 辺野古関係とは廃止されておりますって、どういう意味ですか。

江崎国務大臣 御指摘の閣議決定は廃止されております。

 以上です。

後藤(祐)委員 いや、そんなことは聞いていなくて、これは普天間からの移設と関係してできた予算ではないですか。

 じゃ、もう一つ聞きましょう。

 本日の産経新聞によると、名護市に新たな補助金を交付する検討に入ったことがわかったと。これは四つ目になるわけですが、再編推進事業費補助金というのが三十年度予算で三十五億円あります。これはもう既にあるんですけれども、これまでは名護市は、交付要件である米軍再編に向けた円滑な実施のために必要な協力を行っていると認められなかったために交付されていないんですが、これも該当する可能性があるんじゃないですか。

 再編推進事業費補助金というのを名護市が受けるということになった場合には、これも辺野古移設容認を前提とした予算の四つ目になるんじゃありませんか、江崎大臣。江崎大臣に今までの答弁との関係を聞いています。

河村委員長 防衛大臣、ちょっとお答えください。

小野寺国務大臣 ただいまの再編推進事業補助金につきましては、報道については承知をしております。

 再編推進事業補助金は、私どもの再編交付金とは別です。特に進捗を図るべき重要な再編に関連する市町村が行う公共用の施設の整備について補助を行う制度として、平成二十九年度から開始したものであります。

 いずれにしても、名護市に対して再編推進事業補助金の交付を検討したという事実はありません。

後藤(祐)委員 助けてもらわないと沖縄の予算についても説明できない。沖縄担当大臣、北方大臣として本当に大丈夫なんでしょうか。予算についてやはりしっかりと勉強していただきたいなと思います。

 最後、ちょっと森友をやりたいと思いますが、今まで、交渉の記録があったけれども捨てちゃった、面会等の記録があったけれども捨てちゃった、この話をちょっと整理したいんです、先ほど枝野議員もやられておりましたけれども。

 近畿財務局の中に、保存期間一年未満のもので、面会等の記録はこれに該当するから廃棄したという説明をされているわけですね、佐川前局長は。ですが、そのほかにも、保存期間三十年の決裁文書ですとか、保存期間十年のもの、五年のもの、いっぱいあるんです。この中の、法律に関する解釈のところがちょろっと出てきた。あれは保存期間五年でした。

 麻生大臣、ほかにもあるなら出すということをきのうおっしゃっておられましたけれども、あの法律に関する解釈以外に、保存期間一年未満でないたくさんの資料があるんじゃないですか、森友に関連して。あるいは、一年未満のものでも、まだあるものもあるかもしれない。法律の解釈に関する文書だけではなくて、あの二十五個の文書だけではなくて、森友学園に関する全ての資料を出していただけませんか、麻生大臣。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 これまでも、国会からの御要請も踏まえて、文書を特定していただいた上で提出をさせていただいております。四千五百ページ以上、それから先般の法律文書は四百ページほどございましたので、それを足せば五千ページに近いという数字のものを出させていただいております。

 森友関連と一言におっしゃられますけれども、それがどこまでのものかというのは大変定義が難しゅうございまして、そこをきちんと、情報公開法でも特定をいただくようになっておりますので、特定等をいただいた上で、もちろん、私どもとして一生懸命調べて、あるものがあるのであれば、そういうものがあるのであればお出しをさせていただくという方針で臨んでおります。

後藤(祐)委員 いや、一年間そうやってやってきたわけですよ。面会等の記録がないかと言うと、それをすごく狭く解釈して、これが載っているようなものも去年は出さなかった。これを出してくださいと言うと、すごく狭くゆがんだ解釈をしてまともに出してこないから、我々はチェックしようがないわけですよ。そういうことを繰り返してきたわけですから、全部出してくれと申し上げているんです。麻生大臣、きのう、きちっと出すとおっしゃったじゃないですか。

 実際、では、一つ具体的に言いましょう。この「面会等の記録」というのは、点々々で上にこうやってありますけれども、例えば、今まで、音声データが出てきたものがございました。二〇一六年三月十五日の籠池理事長と国有財産審理室長との地中ごみのやりとり、あるいは二〇一六年三月下旬の地中ごみのやりとり、あるいは二〇一六年五月十八日のやりとり、これは音声データが明らかになっていて、それは全て真実であると既に認められていますけれども、これは、手書きのものも含めて、何らかの文書にされているんじゃないですか。それはまさに面談等の記録であって、ある瞬間は少なくとも文書になっていたんじゃないですか。ある瞬間、面会等の記録としてこれらの音声データを文字起こししたものというのは、ここの「国有財産の管理及び処分の実施に関する重要な経緯」に当たるんじゃないですか。だとすると、面会等の記録に該当したとしてもこの「重要な経緯」に当たるのであれば、少なくとも保存期間一年未満にはできない。これは財務省の規則でもそうなっているんです。

 つまり、この音声データで明らかになったやりとり、これは真実と認めています、これを文字にしたものはあったんですか。今は捨てちゃっているかもしれないけれども、少なくともある瞬間あったんですか。財務大臣に聞きますからね。あったんだとすると、それはこの「重要な経緯」に当たるので、面会等の記録に当たるか当たらないかにかかわらず、それは保存期間一年未満にはできなかったんじゃないですか、麻生大臣。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今ほど委員から御指摘をいただいたその類いの文書は、一年未満という文書で整理をしております。それは基本的に一年未満ですけれども、最終的に決裁文書の形で集約をするということが基本的な考え方であって、そのもとでそういう取扱いをしているということでございます。

 それで、今委員の御指摘は、では、一年未満の文書は、一回はつくったんじゃないか、それが廃棄されたのか、それともつくらなかったのかということだと思いますが、一年未満の文書は、それを、保存の文書、保存の記録ということもありませんので、廃棄した、あるいはいつ廃棄したという記録もないような、そういう今のシステムになっておるものですから、そこはわかりかねます。

 ただ、音声データのお話は、音声データは先方が一方的に録音されたもので、こちらは先方に了解もなく録音しておりません。そういう状況のもとで、音声データそのものを、それから起こすということは別ですけれども、その場のやりとりのものを記録したということはなかなか難しいかと思います。

 一点だけ確認できておりますのは、平成二十八年の三月十五日に、籠池夫妻が私どもの当時の国有財産審理室長の田村君のところに来て、そのやりとりが音声データとして流れておるのは承知しておりますが、この点は田村君に確認をしておりますのであれなんですが、彼はそのことを当時の担当課長に口頭で報告をした、それだけだということでございますので、そのときのものは確認をしておりますが、特に書類というものはつくっていなかったのは事実でございます。

後藤(祐)委員 音声データを文字にしたかどうかわかりかねますじゃ済まないんですよ。これは公文書管理法違反なんですよ。文書にしたものはちゃんととっておかなきゃいけないんですよ、この「重要な経緯」に該当する可能性があったんですから。そこの責任者は誰だと、さっき枝野議員がやっていましたけれども、その責任者である管理官の報告に基づいて佐川前局長は答弁されておられるわけですから、これは佐川前局長の責任もあるわけですよ。

 ぜひ、この音声データを文字にしたものがあったかどうかを確認した上で、あったんだとしたら、これは「重要な経緯」に該当するから、法律に背いて廃棄をしていたのではないかということを確認した上でこの委員会に御報告いただきたいということと、佐川局長にもう一度ここに来ていただいて、証人喚問としてお話しいただくということを、ぜひ委員長、お取り計らいを願います。

河村委員長 理事会で引き続き協議をさせていただきます。

後藤(祐)委員 世耕大臣、きょうはちょっと聞けなくて済みませんでした。

 終わります。

河村委員長 この際、井出庸生君から関連質疑の申出があります。後藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井出庸生君。

井出委員 信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 冒頭、裁量労働制をめぐる答弁と調査について伺います。

 まず、総理に伺いますが、午前中の質疑、それから先ほど立憲民主の枝野代表との質疑の中でもございました。

 事実関係は厚労大臣が御説明をされた。

 「精査が必要なデータをもとに行った一月二十九日の本委員会における私の答弁」について撤回をされましたが、答弁を一度されていることですので、答弁の内容をきちっと説明していただいた上で、もう一度撤回を求めたいと思います。

加藤国務大臣 答弁の内容というのは、厚生労働省が平成二十五年に実施した労働時間等総合実態調査結果を踏まえて答弁をさせていただいたということでございますけれども、総理の答弁を全て読み上げろという趣旨でございましょうか。

井出委員 総理の答弁ですので、答弁を読み上げて、撤回していただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 通告がございませんので、今、答弁を捜しているところでありますが、通告していただかないと読み上げようがないということは申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)朝の答弁ですか。朝の答弁じゃないでしょう。何か今、朝の答弁だと。(井出委員「いやいや、当該答弁。済みません、お願いいたします」と呼ぶ)ちょっともう一度、じゃ。

井出委員 改めて伺いますが、けさ、きょうの委員会において撤回されたその答弁を、その中身をきちっと、撤回されるのでありますから、読み上げた上で、撤回を改めて御本人から求めます。

安倍内閣総理大臣 それは、きょう朝答弁しているわけではございませんので。昨日答弁をしていることについて、撤回の答弁をしたわけでありますから。

 撤回の答弁を読み上げろということではなくて、いわば本会議での答弁ということでおっしゃっているわけですね。そういうことですね。それは、通告していただかなければ正確に読みようがないということは申し上げておきたい、このように思います。あっ、これは委員会での答弁でありますが。

 ちょっと、今、この字の小さいものしかちょっとございませんので。

 「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということは御紹介させていただきたいと思います。」ということは申し上げたわけでありますが、これは、他方、長いということについて言われたことで、それを否定はしてはいないわけであります。

 こういうデータもあるという言い方でありまして、これをこのデータだけでやっているということでは、このデータだけで基本的に法案づくりをやっていたということではもちろんないわけでございまして、こういうデータもあるということを……(発言する者あり)

河村委員長 御静粛にお願いします。答弁中です。

安倍内閣総理大臣 ということでございますので、ちょっと静かにしていただかないと、急な御答弁でございますので、整理をしながら今慎重にお答えをさせていただいておりますので、ちょっと静かにしていただきたい、こう思います。

 つまり、ということで今申し上げたとおりでございまして、いわば裁量労働制の方が長いというデータを否定しているわけではありません。しかし、そういうものが、そういうデータがあるということは当然我々も認識をしておりますし、そういうデータは認めつつ、こういうデータも平均な方ではあるということを申し上げたわけでございます。

 しかし、その申し上げた、引用した平均的なデータということについては、きょう厚労大臣が答弁をさせていただいたように、引き続き精査が必要なデータをもとに行った一月二十九日の本委員会における私の答弁は撤回するとともに、おわびを申し上げたわけでございまして、厚労大臣も同じように厚労大臣の答弁を撤回させていただいた、こういうことでございます。

井出委員 一月二十九日の総理の予算委員会の答弁を受けて、我が党の玉木代表が、二月の五日にこのことを問いただしている。裁量労働制を拡充することで、労働時間が短くなりますか、証拠があれば示してください、この議論が一つのきっかけであったのかなというふうに思っております。

 玉木代表は、この質疑の中で、その最後に、やはり事実に基づいて政策を進めていくことが大事だと思いますと。

 精査が必要なデータで答弁をされた、それを今、撤回された。玉木代表のおっしゃった、事実に基づいて議論を進めていく、このことを重く受けとめていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まさに重く受けとめた上において、きのうのやりとりもございました、これは、精査が続くのであれば、総理大臣として厚労省の上げてきたデータをもとに答弁をしておりますから、総理としての答弁は重たいということで、これは早目に撤回をし、そしてこれはおわびをした方がいいという判断をいたしまして、きょう、我々はおわびをさせていただき、そして撤回をさせていただいたわけでございます。

 ただ、繰り返し申し上げますが、いわばこのデータを全ての基礎として法案づくりをしたわけではないわけでありまして、データの一つにあるという紹介をさせていただいたわけでありますが、紹介をさせていただいたデータにいまだに精査が必要であるということからこれは撤回をさせていただいたということで、御了解をいただきたいと思います。

井出委員 この件に関して、二月の九日には我が党の山井議員が、具体的に数字を挙げて、このデータがおかしいのではないかと追及をいたしました。

 山井議員は大変熱いお方でして、そのとき閣僚の方から、どならなくても聞こえるというような不規則な発言もございましたが、その山井議員の特に厚生労働行政にかける思いというものはきちっと感じていただきたいと思います。大変失礼な発言であったと思います。

 その上で、精査が必要なデータに基づいて答弁をつくった、この責任について、厚生労働省、大臣、どのように考えるか、伺いたいと思います。

加藤国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、これまでの、今、山井委員のお話もございましたけれども、野党の委員からも、平成二十五年度の労働時間等総合実態調査を踏まえたデータに関していろいろ御指摘をいただきました。

 実際、精査をすると申し上げましたけれども、その精査に時間を要しておりまして、そうした時間に精査を要するようなデータをお示しし、答弁したことについては撤回をし、おわびを申し上げたいと思いますし、特に、国会におけるそれぞれの委員方の御質問に対して、また国民の皆さんに対してもおわびを申し上げたいと思います。

井出委員 同趣旨の答弁でございますが、第百八十九国会衆議院厚生労働委員会、平成二十七年七月の三十一日のことでございます。平成二十七年の夏のことでございますが、このときも山井委員ですね、残業代ゼロ法案について入らせていただきますという質問をしております。

 当時の塩崎厚生労働大臣がこのように答弁されております。「例えば平均時間でいきますと、専門業務型の裁量労働制だと九時間二十分、企画業務型の裁量労働制だと九時間十六分、むしろちょっと専門業務型よりも少ない。一般労働者でいきますと九時間三十七分ということで、若干、むしろ一般労働者の方が平均でいくと長い。」と。このときは、平均とはっきりとおっしゃられております。平成二十七年、もう二年半前のことでございます。

 この答弁についても当然撤回をするべきだと思いますが、いかがですか。(安倍内閣総理大臣「確認させてください」と呼ぶ)

河村委員長 確認。

 加藤厚生労働大臣、答弁できますか。

加藤国務大臣 当時の大臣の発言なので、今の私がそれを云々ということがどこまでということはございます。

 それから、今お話があった、ちょっと物自体は持っておりませんが、ただ、いずれにしても、当時の塩崎大臣も、ベースとしたのは先ほど申し上げている平成二十五年度の労働時間等総合実態調査結果ということでございますので。

 今申し上げたように、それについて、今私が申し上げられるのは、それについてお示しをしたデータ、答弁については撤回させていただきたい、こういうことでございます。

井出委員 総理に伺いますが、このデータだけで法案を作成したわけではないと先ほど繰り返しおっしゃられましたが、少なくとも、この数年間、この答弁をもとにこの法案を議論してきたんじゃないですか。

加藤国務大臣 今の塩崎当時の大臣の御答弁もあったと思いますけれども、これについては、今の問題以外もさまざまな観点から御議論があった、こういうように承知をしております。

井出委員 このときの塩崎厚生労働大臣は、「例えば平均時間でいきますと、」と言って答弁を始められ、最後に「一般労働者の方が平均でいくと長い。」と。

 ここ数日の議論ですと、平均な者ですとか、平均ですとか、厳密な議論をしてまいりましたが、私は、一月二十九日の予算委員会の総理の答弁とこの塩崎大臣の答弁を見比べて、その調査が本当に、国民の大多数がこれは平均だという平均ではなくて、抽出で、聞き取りで、そういうことを知っておったんじゃないんですか。知っていて、二十七年からこうした答弁をしているんじゃないですか。

加藤国務大臣 今の平成二十五年度の労働時間等総合実態調査結果というのは、これは一つの冊子になっております。

 そこに全てのデータが入っているわけではありませんけれども、どういう人を抽出しているか等についてもそこに記載がありまして、平均的な者についてはどうしているかとか、ちょっと今、物自体は見ておりませんけれども、それぞれについて、どうした人をどういう形でとっているかということについてはそこに記載があり、そういった意味で、平均的な者ということで記載がされており、私どもは、平均的な者、あるいは平均的なもの、あるいは平均的な働き方、若干そこの言い回しはありましたけれども、そういった言い方をさせていただいた、こういうことであります。

井出委員 私も、以前、会社勤めをしていたときに、裁量労働制という言葉があったんですが、就職したての私は、その裁量というものは、労働者の裁量ではなくて会社側の裁量なんだろうなと、ずっと、しばらくの間、勘違いをしておりました。詳しくは申し上げませんが、そういう実態を感じて、私はそういうふうに思い込んでいたこともございます。

 更に申し上げますが、平成二十九年二月の十七日、これは予算委員会です。このときも、塩崎国務大臣は同じような答弁をされております。「厚生労働省自身の調査によりますと、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べますと一般労働者よりも短いというデータもございまして、例えば一般の平均的な方が九時間三十七分働いていらっしゃいますが、企画業務型の裁量労働制の方は九時間十六分」「約二十分短いというデータもございます。」と。二十七年、二十九年と、この答弁がたびたび使われてきております。

 この法案につきまして、これは法案の提出そのものがかつての国会でも議論になってきた。総理も、今国会最も重要な法案である、そういう認識であろうかと思いますが、ここ数年間の前提の中で、精査が必要なデータをもとに、裁量労働制にした方が短いというデータもある、そう言ってきている。これはもう、議論の前提が大きく、実態が狂っているんじゃないか。これまでの議論を見返して、法案を出し直すことをお願いしますが、総理の答弁を求めます。

加藤国務大臣 まず一つは、いろいろなデータがあるということは常に申し上げてきているわけでございまして、そうしたデータも踏まえながら議論をさせていただいているということです。

 今、出し直しというお話がありましたが、正確にはまだ提出をしていない状況でございますけれども、これまでの労政審においても、そうしたさまざまな観点に立って御議論いただいて、そして、それを踏まえて、今鋭意法案の提出する準備をさせていただいている、これが今の現状でございます。

安倍内閣総理大臣 ただいま厚労大臣から答弁をさせていただいたとおりであります。

 まだ我々は法案を提出していないわけでございますが、委員からも御紹介をいただいたように、そういうデータもあるというふうに話をしているわけでありまして、私も、平均的な方でこういうデータもあるという紹介をさせていただいたわけでありまして、いわば、これが絶対的なものとして、これのみを基盤として法案を作成したものではないわけでございます。

 その中におきまして、例えば、労使委員会が決議した健康確保措置を必ず実施させる、客観的な方法によって労働時間を把握し、実際に働いた時間が長時間となった方には医師による面接指導を行うことを使用者に義務づけているわけでございます。つまり、しかし、そうして健康管理はしっかりとやらなければいけませんねということをしっかりとこの法案の中の骨子として入れているわけであります。

 加えて、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合には、労働基準監督署がその適正化に向けた指導を行っていくということになっているわけであります。

 このように、裁量労働制の見直しは、働く方の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものであり、他の内容とともに一つの法案で可能とするものであるということは申し上げておきたい、このように思います。

井出委員 健康確保対策などは当然必要でございますが、裁量労働制と普通の労働と、その労働時間の差を数値で比較するということはまた別の、全く別の、そして、こちらの方がもっと根本的な問題で、その制度設計をする上で重要な問題であろうかと思います。

 先日の山井委員の話の中では、最低賃金の方が裁量労働が認められるというような議論もございました。到底あってはならないことだと思います。

 この法案を提出される前に、きょう撤回された答弁が労政審などでどのように使われてきたのか、まず検証をしていただきたい。

 それから、二月の五日に玉木委員が厚生労働大臣にお願いをしました。裁量労働のもとの労働者と普通の労働者の労働時間の平均、これを出していただきたいとお願いをしております。

 その二つをまずやっていただくことを、法案を提出するのはその後だと、そのことを強く求めたいと思いますが、お願いいたします。

加藤国務大臣 まず、玉木委員から御指摘がありました平均でございますが、これは、これまでも御答弁させていただいたように、平均な者、データ一つだけをとっておりますから、その会社全体の、その会社というか全体の裁量労働者の平均値というのを出すというとり方をしていないので、唯一出せるのは、平均な者としてピックアップしてきた、それを平均したらどうなるか、これは数字を出させていただいたわけでありますけれども、もちろん、それは答弁として撤回させていただいていますけれども、ということでございますので、おっしゃっているような意味での平均を出すという意味においてのデータを我々は持っていないということでございます。

 それから、一点目の労政審の議論でありますけれども、労政審でどういう議論がされたか、我々しっかりチェックをさせていただきたいと思いますけれども、労政審においては、そういったことのみならず、さまざまな観点から御議論されて、労政審からこうしたお話を、労政審から御議論をいただいた、こういうことでございます。

井出委員 さまざまな議論があったという部分は、それはそうかなと理解をするからこそ、この当該答弁が、政府の考え方が労政審の中でどのように発言をされてきたのか、きちっと精査をして提出をしていただきたい。

 委員長にもこのことを強くお願いを申し上げます。お取り計らいをお願いします。

河村委員長 理事会で協議をさせていただきます。

井出委員 それともう一つ、先日、二月九日の山井委員の質疑の中で私が疑問に感じた点がございます。

 これは加藤大臣の答弁でございますが、裁量労働制が営業の中で広がっていくんじゃないか、そういう疑問をずっと呈されておりますが、加藤大臣が、営業職というもの自体が正直言って定義がございません、そういう答弁をされているんです。

 営業職というもの自体が正直言って定義がない、それはそのとおり受け取ってよろしいんでしょうか。

加藤国務大臣 その定義があるというのは、法律的な意味でという意味において営業職という意味での定義というのは承知をしていないということでございまして、ただ、一般に営業といってもかなり幅広いということを私は申し上げたというわけでありまして、本当に、物販、物を売るとかサービスを提供するという狭い範囲から、さらに、それを売るためにさまざまな企画を立案していくという意味では、相当外延の広いという意味で私は申し上げさせていただいたつもりでございます。

 そういった意味で、外延が広い営業の中でどうかということになると、それはなかなか、どこまでが外延かということを定義しにくいので難しい。しかし一方で、今回私どもが申し上げていることについては、いろいろ限定を重ねているわけでありますから、いわゆる単純な営業、これは入らないということもあわせて申し上げさせていただいたわけであります。

井出委員 営業の外延は極めて広いと。その一方で、単純な営業。営業の外延は広くてわからないと。単純な営業だけ、どうしてわかるんですか。

加藤国務大臣 ですから、単純なというのは、まさに、物をすぐ売るとか、サービスを提供するように契約をするとか、そういった意味、そこの部分を申し上げているわけでありまして、さっき言った幅広いところという意味については、かなり、営業にかかわる部分というのは相当幅広いということなんだろうと思います。

 さらに、今回、要綱で御議論させていただいているのは、課題解決型の開発提案業務ということに関して申し上げれば、これまでは自社の事業に対して、顧客である法人の事業全体に影響するような重要な事業計画や方針の企画立案業務を対象とするものであって、かつ、その成果を活用して、商品又は役務を専ら顧客のために開発し、提案する業務、こういうことであります。

 あくまでも、企画、立案、調査、分析、これを主とするものであり、また、主として商品販売を行う営業所等で働く方は対象になり得ない、このことは法律において明確にするということを要綱の中でも示されているわけであります。

井出委員 私のいた会社では裁量労働制というものが当時ありまして、私の当時の、もう十年ぐらい前の話、もっと前ですが、管理職の一歩手前の方が裁量労働制の対象になる、専門職何とかとかという名称があったかと思いますが。では、実態、何が行われているのかというと、当時の私のような若い社員が長時間連続勤務になってくる、そうすると労働管理として問題がある、そのかわりに、朝早く、夜遅くとか、不規則なところにそういう裁量労働制の方が業務をかわるわけですね。

 その裁量というのは、先ほど私も申し上げましたが、労働者の裁量ではなくて、組織、会社の裁量になっているのが実態じゃないですか。もう十年、十五年前の話ですから、その裁量労働制が若い方まで拡大をしてきている。さらに、法律では、最低賃金の方の裁量労働も認められている。

 こうした裁量労働制の根本的な実態、問題を議論せずに、営業を、広い外延があって、単純な営業があって、営業と販売だって私は異なると思いますよ、そういうところを進めていこうと。

 その前に、裁量労働制の実態というもの、それを見直さなければいけないし、その象徴が今回の答弁の撤回である。法案を提出する前に、まず、この裁量労働制の実態について、厚生労働省としてしっかりと把握を一からやり直した方がいいと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 今委員の御指摘の御自身の経験については、ちょっと具体性がよくわからないのでコメントは控えさせていただきたいというふうに思います。

 私どももこれまで、裁量労働制を適用しているそれぞれの事業所に入り、そこに問題点が見つかり、監督指導もさせていただいてきているわけでありまして、必ずしも、これは、裁量労働制を適用しているところもそうでありますし、一般のところにおいてもいろいろ課題があるということはおっしゃるとおりの事実でありまして、それに対してはしっかりと是正をしていく。

 また、今回、今予定をしております法案の中においても、例えば、実際働いている時間と裁量労働制で考えていた時間とが大きく乖離をする、こういった場合には法律に基づいて是正ができる、こういったことも今考えているわけでありまして、そうしたことをしっかりやっていくということは当然必要だと思います。

 ただ一方で、裁量労働制で働いている方に関して、私も実際企業に行かせていただきましたけれども、それに対してメリットを感じておられる方もいらっしゃるわけでありますから。

 前から申し上げておりますように、メリットを感じている方に対してはしっかりメリットを享受していただく、しかし、この制度を悪用する、濫用する、これに対してはしっかりと対応していく、こういったことが必要なんだろうと思います。

井出委員 メリットを感じている方は、恐らく、大分その組織の、その会社組織の個人に対する配慮が行き届いて、一人の方が裁量労働制でお休みするときは、ちゃんとほかの方が、かえの人材がいる。

 そういう環境が整っていれば、裁量労働制が、大臣がおっしゃるように、労働者個人の裁量で恩恵を受けられるような業務形態もあろうかと思いますが、例えば、中小企業、それから小規模事業者、そうしたところを見たときに、社長も社員も会社が忙しいときは一緒にやろうと。それは決して嫌々とかじゃなくて、一緒になってやることもあると思います。でも、結果として、労働時間が個人の裁量ではなくて会社側の裁量になる。

 私、これを突き詰めて議論、これは簡単な話だと思うんですよ。組織の中に個人がいて、例えば、私が政治活動していて、自分の地元の活動だったら、いろいろ予定はありますけれども、ある程度裁量ききますよ。だけれども、それが政党本部の活動になったら、裁量もへったくれも、もう全部、組織の裁量で動くことになりますよ。

 それが、法律が、法律の定めが余りにも実態と、法律があるから大丈夫だと。ただ、その実態が余りにも、もうこれまでも見えてきていないし、現実に若い方が亡くなっているような事例が幾つもある。

 この法案で、幸いにして、この裁量労働制というものがここまで大きく取り上げられて、その一つのデータをもとに、精査が必要なデータをもとに議論があったことも明らかになった。これは、まず徹底的に裁量労働制について審議を尽くした上で、法案を出すか出さないかを考えるべきだ。

 委員長には、ぜひ、この裁量労働制について集中審議をお願いしたいと思います。お取り計らいお願いします。

河村委員長 理事会でお諮りをいたします。

井出委員 それから最後に、先日、山井委員が、三百万人の営業マンがいると。三百万人の……(発言する者あり)ちょっと静粛に。加藤大臣が質問が聞こえないそうなので、静かにお願いします。

 三百万人の営業マンがいる、法改正によって、それはどのぐらい、百万人なのか十万人なのか、どうなるのかと。そのことについても、はっきりとした数字は大臣から答弁がなかったと思います。

 そうした客観的なものも示せず、それから、裁量労働制の考え方について、精査されていないデータがここ数年用いられてきた。一から裁量労働制の議論をまずやる、そのことを大臣に強くお願いをしたいと思いますが、答弁を求めます。

加藤国務大臣 さっき、ちょっと委員の御質問、あるいは今のおっしゃる中で、裁量労働制をしている人がやめて、代替する、これはちょっと裁量労働制とはまた別の考え方なんだろうというふうに思いますので。裁量労働制というのは、あくまでも自分の仕事をどの時間でどうやるかというのは本人に任されて処理をしていくということでございますので、それが前提になっているということでございます。

 その上で、委員から三百万人云々、これはもう正直言って、実際、三百万人の方が何をどういうふうにやっているかわかりませんから、そのうちどれだけが対象になるかということは、実際、これを運用してみなければわからないということでございます。

 その上で、審議するかしないかというのは、これは私が申し上げる話ではなくて、国会での御議論なんだろうというふうに思います。

井出委員 その審議の前提となる裁量労働制についての考え方をもう一度、きょう幾つかお願いをいたしましたが、厚生労働省の方でよく調べていただいて、その上で議論を進めてまいりたいと思います。

 時間が来ましたので終わります。どうもありがとうございました。

河村委員長 この際、小熊慎司君から関連質疑の申出があります。後藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小熊慎司君。

小熊委員 希望の党の小熊慎司です。

 本日は二月十四日、総理、きょうは何の日か。バレンタインデーでもありますけれども、きょうはふんどしの日でありまして、緊褌一番、しっかり気合いを入れてやっていきたいと思いますし、また、戊辰百五十年。義をもって倒れるとも不義をもって生きず、これは会津藩の松平容保公の言葉でもあります。こういった思いを胸に質問をさせていただきます。

 まず、河野大臣にお聞きをいたします。

 古くて新しい話題ではありますけれども、外務大臣の専用機の話です。

 これは大臣が提案を昨年されて、一部新聞にはおねだりとか、最近の大臣は小型核の問題でも変節漢とかいろいろ書かれて大変だとは思いますが、これは冷静に検証しなきゃいけないというふうに思っています。

 この外務大臣専用機を検討するに当たっては、それでは、今、年間どのぐらい大臣が行かれたときにかかっているのか、過去数年の間で、年々によってそれはばらつきはあるでしょうけれども、どのぐらいかかったのかというのをまずお示しをいただかなければ、いいか悪いかというのも検証できないと思いますので、その数字について、もしあればお願いをいたします。

河野国務大臣 政府の専用機、あるいはさまざま、外務大臣あるいはその他の閣僚がもう少し合理的、効率的に移動するための手段ということを、今、政府内で、費用あるいは効果その他について検討を始めたところでございますので、おいおい、そうした資料をそろえて皆さんとも議論させていただきたいというふうに思っているところでございます。もう少々お時間をいただきたいと思います。

小熊委員 大臣が、おねだりと言われて、その後の記者会見でも、それは大分、新聞社に対してきつく言ったみたいだと思いますけれども、そのときにもいろいろな選択肢を大臣は挙げておられました。

 大臣が指名したあのアメリカの飛行機は、およそ七十億を超えるというふうにも聞いております。あと、記者会見の際には、チャーター、レンタルといった方法論も大臣は示しておりますので、外務大臣専用機なのか、また政府専用機でやるのか、これが、今政府専用機が運用されている自衛隊でパイロットを頼むのか、それとも外務省が直接やるのかでも大きく変わってきますし、レンタルだと大型機でも一回当たり三千万というような数字も聞いているところでもありますので、あらゆる角度から、これは外務大臣として、また、そもそもこの政府専用機は、一九八五年のイラン・イラク戦争の折のあの邦人救出の際に飛行機がなかったという反省を踏まえ導入されたもので、閣僚ありきではなかったというふうに思っています。そうした意味でも、邦人救出といったことも、もし新たに加えるのであれば、それをしっかり入れていかなければなりません。

 またさらには、飛行機がそろったからといっても、やはり国会改革もしなきゃいけないというのは、昨日、我が党の古本伸一郎議員の本会議質疑でもありました。

 これは冷静に、与野党を超えて日本の国益に資するということをやっていかなければならないと思いますが、もう一度答弁をお願いいたします。

河野国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 さまざまな目的を考え、用途を考え、あるいは効果をどうはかるか、費用をどういうふうに計算するか。

 また、私の前任の岸田外務大臣と私で五年間におよそ延べ百十カ国行きましたが、中国の王毅外務大臣は同じ時期に延べで二百七十カ国訪問をしている。この差を、単純に数を埋めるのは難しいと思いますが、効果をどういうふうに埋めたらいいのか、そういうことも考えていかなければいけないと思いますので、さまざまな観点からしっかり議論をしてまいりたいと思います。

小熊委員 その際に、大臣、記者会見かぶら下がりで答えていたのは、MRJは、足が短いと言ったらちょっとあれですけれども、航続距離が短いという指摘をされていましたけれども、逆に、航続距離が短くてもMRJを使うことによってまさに国益に資する、しっかり国産の飛行機を宣伝していくという意味でも国益に資するというふうにもなってくると思いますので、あらゆる選択肢を否定せずにやってほしいと思います。

 ただ、これは高額な予算になってきますから、やはりこれは国民的理解を得られなければならないというふうに思いますので、この検証の中でも、しっかりと情報を開示しながら議論していただきたいと思います。

 国会改革については、これは与野党の枠を超えてやらなければなりませんが、ただ、これまで、自民党が野党時代に言って、与党になって前言を翻したり、国会改革にしておりますので、こういう信頼をまず取り戻してからじゃないと我々も冷静な議論はできないということを指摘させていただいて、次の質問に移らさせていただきます。

 江崎大臣にお伺いをいたします。

 国際的な風評被害、この払拭のために、外務省も一生懸命やっていただいております。また、科学的根拠のないいろいろな規制の撤廃も、まだまだ残っているところはありますが、進んでいるのも事実であります。

 今、海外とのいろいろな電子商取引、またインバウンドで三千万人近い方が日本に来られているという中で、やはり消費者庁としても、そうした海外との取引をどうしていくのか、又は、海外の方々が来たときに、どう消費者教育、リスクコミュニケーションしていくのかというのは、非常に重要な取組になってくるかと思います。

 これは、消費者庁の努力でもちろん風評被害は減っていって、底打ちしているとも言われています。一〇%以上二〇%の間を、国内でも、福島県産のものに対しての不安を持っている人がおるというふうになっていますけれども、ただ、海外の方に行くと、これは地元新聞に出たやつですけれども、親日的な台湾が八一%もですよ。韓国はもう七割近い。中国も六六。この三つの地域、国が、インバウンドでも七割ぐらい来ているんですよ。こういった国をどうしていくのか。

 来た人にもどうやってちゃんとした事実を伝え、いい印象を持ってもらって、こういうものを解消していくのかというのは、消費者庁の役割にあると思いますが、大臣、答弁をお願いいたします。

江崎国務大臣 小熊先生にお答えいたします。

 現在、日本を訪ねる外国人の方に対して、食の安全、安心の確保は、消費者庁として力を注ぐべき重要な課題であります。

 特に、外国人等への食品中の放射能物質に関する理解増進に向けた情報発信についても重要であると認識し、消費者庁では、正確な理解増進のため、「食品と放射能Q&A」を作成、配布しております。その英訳版も作成して、日本を訪ねられる外国人を念頭に、正しい知識の啓発をして今日に至っております。

 今後とも、QアンドAの内容の充実を図るとともに、関係省庁とも連携をとりながら、地方公共団体と、これも連携しつつ、より効果的な周知に取り組んでまいりたいと思っております。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

小熊委員 今ちょっと言いましたけれども、アジアの国々が多いんですけれども、英訳版だけですか、あるのは。中国版とかもなかったでしたっけ、大臣。

江崎国務大臣 小熊先生から指摘ありましたが、早速、中国版とか、アジアに向けた、訳したQアンドA、こうしたものもつくる努力をしてまいります。(小熊委員「今までなかったんですか」と呼ぶ)今まで英訳のみだったですね。

小熊委員 こういった点は、消費者庁はやっている、風評被害払拭をやっているといいながら、これは抜けているんですよね。

 これは、安倍総理が、昨年、不幸なことに今村前復興大臣が失言でやめられたときに、安倍政権は全ての閣僚が復興大臣というつもりでやっていくと言ってもらった。この言葉はいいです。しかし、実行に移っていない。

 大臣、国内の国民生活センターの中で、居住外国人の相談を受けているところは五割ぐらいしかないんですよ、実は。観光客に対応しているというのは、九割以上実はないんですね。まさに今言われたように、いろいろな関係機関でやっていくといいながら、やっていないんですよ。

 これは、人はどんどん来る、だけれども窓口もない、説明するツールもない。もう震災から丸七年たとうとしている。風化が始まっているんですよ、これは。政府においてもそういうことです。閣僚一人一人が復興大臣という気持ちなんというのは言葉だけですよ。

 大臣、もう一度。

江崎国務大臣 御指摘、肝に銘じて、これからしっかり取り組んでまいります。

小熊委員 大臣におかれては、先週の金曜日の質疑で、福島県のお酒もたしなんでおられるということで、飲み過ぎには注意していただきたいと思いますが、その際、聞いていないけれども、ワラビも食べていると。

 ワラビは結構規制がかかっていて、それは本当に福島県産のですかね、大丈夫ですか。違うところのを言っていませんか。

江崎国務大臣 ぜひ小熊先生には、規制のかかっていない福島県の地域もあります。ワラビもゼンマイもしっかりごちそうになっておりますので、ぜひそうしたことも念頭に置いていただきますようお願いいたします。

小熊委員 これは、そういう意味でも、大臣、自分から食してやっておられるということでありますから。

 とりわけこの山菜とかキノコは、科学的根拠といいながら、広いエリアで規制がかけられているんですね。これはしっかり、身をもって福島県のものを体験しておられるので、そういったことも関係省庁にしっかり連携をとってやっていただきたいなというふうに思っています。

 この国民生活センターの窓口、インバウンドの人に九割以上対応していないという点については、今後どうやってやっていきますか。

江崎国務大臣 御指摘の件、これからよく周知徹底しながら、消費者庁として、生活センター並びにそれぞれで……(小熊委員「国民生活ね」と呼ぶ)国民生活センターに連携をとって、しっかり指導してまいります。

小熊委員 これは、そうすると言語の問題もあって、人員の確保、簡単に、やりますという努力目標ではなくて、もう三千万人近く来ているわけですよ。いろいろな言語の方がです。まあ、アジアの方が多い。アジアといっても、台湾の方、中国、北京語をしゃべられる方、韓国語と多いわけですから、多言語にも対応しなきゃいけない。人員確保だって相当の予算が要りますよ。これは簡単に、やりますと言える問題じゃないですけれども、そこをちゃんと詰めてやれますか。

江崎国務大臣 これからしっかり努力して、対応してまいります。

小熊委員 しっかり頑張りますは誰でも言えるんですよ。具体的にどうするか。今まで検討していなかったということなんですね、この指摘を受けるまで。これはしっかり意識があれば、だって、あれは消費者庁のデータですよ、国民生活センターで九割以上何もしていなかったというのは。データを自分のところで持っているのに、それに対してどうかというのはないじゃないですか。

 大臣、これはほかのデータじゃないですよ。大臣の所管の消費者庁でとっているデータで、居住外国人には五割ぐらいの相談しか窓口がない、海外のお客様には九割してない、それで海外の人にちゃんとした正しい日本の姿を見てもらいましょうといったって、言葉だけじゃないですか、大臣。

江崎国務大臣 今、小熊委員、消費者庁として、特に国民生活センターに事業移管し、平成二十七年四月より国民生活センターに事業移管をしながら、今後徹底をしてまいります。

小熊委員 大臣、福島県のもの、お酒を飲んだり、物を食べてもらうだけじゃなくて、そういうのをしっかり政策に、実行に移していただきたいと思います。

 時間がないので次に行きますけれども、総理にお伺いをいたします。

 今、北東アジアでは、北朝鮮の脅威など、その核に対する国民の心配度も高まっているところでありますけれども、一方で、国際的には、日本がプルトニウムを大量貯蔵しているということに対する関心も高まっているところであります。

 まず最初に確認をさせていただきたいと思いますけれども、日本の国が今持っているプルトニウムの量、これは、国内には十トン程度あって、ほか、フランス、イギリスにまた日本のものが置かれているということでありますが、直近のデータ、保有量はどのようになっていますか。

山脇政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国のプルトニウム保有量は、二〇一六年末時点で約四十七トンとなっております。

 二〇一七年末時点の保有量については、今後集計を行いまして、今夏に公表する予定であります。

小熊委員 この保有量、新しく出たら、また資料提供をお願いいたします。

 数年前に日本の政府も、最小限のレベルに維持をしていくということを言っていますが、定量的に、最小限のレベルというのは何トンぐらいのことを想定して努力していますか。

山脇政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国としては、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を堅持しているところでございます。このために、我が国が保有するプルトニウムについては利用目的のあるものに限られておりまして、余剰のものは保有しない、余剰のプルトニウムは持たないとの原則でございます。これに従って、内閣府原子力委員会で確認をしていくという方針でございます。

小熊委員 今、現時点で「もんじゅ」も廃炉が決定をして、プルサーマルも進んでいないという状況の中で、どれだけ使うのかというのは明確には言えませんか。わからない。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を堅持し、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮しつつ、プルサーマルの推進等によりまして、プルトニウムの適切な管理と利用を行うこととしてございます。

 プルトニウムの消費につきましては、現在、プルサーマルを行っている高浜原発三、四号機のほか、プルサーマルを計画する原発のうち七基が原子力規制委員会の審査を受けておるところでございまして、安全最優先で、再稼働が進めばプルトニウムの消費も進んでいくものと見込んでおります。

小熊委員 我が国の立場としても、これはしっかりと明確にしなきゃいけないのは、国際的な不安を払拭していかなきゃいけないんです。これは明確でない。プルサーマルだって「もんじゅ」だってだめになっている中で、これを使っていきますと言ったって、何の国際的信用もありません。

 これはやはり、この際、白昼夢のような核燃料サイクルというのを追いかけるよりも、長期的削減目標を具体的に策定して、その達成に進むべきだとは、総理、思いませんか。

安倍内閣総理大臣 核燃料サイクルは、高レベル放射性廃棄物の量及び放射線レベルを格段に減少させ、長期的な管理をより安全にする観点、そして、資源を有効利用し、エネルギー安全保障を向上させる観点から、我が国にとって必要なプロセスと考えています。

 かかる観点から、核燃料サイクルについては、国として責任を持って、安全性の確保をもちろん大前提とし、自治体や国際社会の理解を得ながら取り組む考えであります。

 その上で、我が国としては、国際的な理解を得るため、これまでも利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を堅持しており、引き続き適切に対応してまいります。

 実際、我が国が保有するプルトニウムについては、毎年IAEAが評価を行い、平和的活動にあるとの結論を得ております。

小熊委員 使いますよと言っていても、それがちゃんと使われていないわけですし、それが国民的理解が今得られるとは思っていません。

 次に、同じ話題に行きますけれども、パリ協定の中でも、パリ協定、この目標達成のためにも、二酸化炭素排出をしていかなければならない。でも、今の安倍政権の前提は、原発を今二%しか動かしていないのに、これを二〇%以上にしなければならないんですよ。これを達成すると国民的合意をとりながら、また、いろいろな規制を乗り越えながらということ、これはなかなか難しいですよ。

 これはやはり、再生可能エネルギー、自然再生エネルギーを、自然エネルギーをしっかり利活用していくということの方が、パリ協定を、しっかり目標を達成していくという国際約束を果たす、そういった方向性にもなると思いませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 現在、多くの原発が停止をしている中、震災前に比べて、一般家庭では平均で約一〇%電気代が上昇しています。国民の皆さんに経済的に大きな御負担をいただいているという現実があります。

 資源に乏しい我が国にとって、こうした電気料金のコストに加えて、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えないと考えています。

 原発については、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。

 こうした方針のもと、政府一体となって、二〇三〇年の温室効果ガス排出削減目標を達成する考えであります。

 ただし、福島第二原発については、福島県の皆様の心情を察すると、これまでに新規制基準への適合性審査を申請している他の原発と同列に扱うことは難しいというふうに認識をしております。(小熊委員「そこまで聞いていない」と呼ぶ)一応申し上げておりますが。

 それと、原発依存度を可能な限り低減していくという考え方のもと、徹底した再エネルギーの推進とあわせ、再生可能エネルギーの最大限の導入に取り組むことが安倍内閣の一貫した方針であります。

 最大の課題は国民負担の抑制でありまして、固定価格買取り制度のもと、既に二兆円の追加的な負担を国民の皆様にお願いをしているという現実もあるわけでありまして、再生可能エネルギーのコストについては、欧米とは日照、風況などの自然条件が違い、これにより稼働率も異なることから単純に比較することはできませんが、現時点では、太陽光発電や風力発電のコストは、欧米と比べて二倍程度と高額であります。

 このため、革新的なコスト削減を図るための技術開発を推進すると同時に、昨年、固定価格買取り制度を大きく見直しをしました。国民負担の抑制と再エネの導入の拡大の両立を図っております。これからも全力で取り組んでいきたい、このように考えております。

小熊委員 長々と答弁、ありがとうございました。

 ずっと安倍総理は一貫してどこでも言っていますけれども、経済性と言いますけれども、総理が言われるとおり、世界でいろいろな気象条件というのは変わりますけれども、世界の潮流は、もうこれはコストが下がっていて、脱原発ですよ。まして、安全を経済は上回りません。国民の命を上回る経済というのはありません。これをしっかりやっていけば、国民負担という名のもとにやっていない、サボタージュしている再生可能エネルギーはもっと進むんですよ。

 経済のことを考えても、原発再稼働をしても、有効需要がふえて経済成長にはつながりません。原発を再稼働せずに自然エネルギー投資を行えば、有効需要がふえてきます。

 仮に、原発、今ある五十基分、太陽光発電に全てかえたとすれば、七兆五千億ですよ、七兆五千億の設備投資がかかって、それによって、乗数効果で計算すれば三十兆円の経済効果があるんですよ。さらには、全てをですよ、全てのエネルギーを自然エネルギーに切りかえれば、一八%の経済成長率が見込まれる。まさに、こういう方向に進むのが日本の責任あるエネルギー政策じゃないですか。これが我々の目指すべき正しい道じゃないですか。

 脱原発こそが、そしてまた地域にお金が回っていくんですよ。全て東京に集中をしていく。今でも、この東京、関東の電気だって、福島の原発はとまっています、新潟の原発はとまっているけれども、只見川や猪苗代湖の水で発電した電気がこの関東に流れているんですよ。まだまだ猪苗代湖のポテンシャルだってある。只見川の水量だってまだまだ確保できて、もっともっとポテンシャルは上げられる。こうした自然環境エネルギーをしっかりやっていくということが、まさに地域経済の活性化にもなっていくわけです。

 さらに、もちろん、化石燃料を日本は使っていますから、これで年間二十五兆円も使っていますけれども、これを全部国内の自然エネルギーにかえていけば、二十五兆円が国内のあらゆる地方に、そのお金が投資されていくんですよ。

 これこそエネルギーの、こうした自然環境エネルギーを……(発言する者あり)では、原発の、何の責任もとらない皆さん、いろいろなやじが飛んでいるけれども、では、使用済み核燃料はどうするんですか、総理。十万年ですよ。軽水炉で処理したって八千年ですよ。高速炉、ありもしない今の高速炉でやったって三百年ですよ。それ、三百年責任を持つと政治家として言えるんですか。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 まず、エネルギーについてはそれぞれ特性があるわけでありまして、ですから、私たちはベストなエネルギーミックスについてそれを構築していくという話をさせていただいているわけであります。

 ある側面を見れば、それは再生可能エネルギーにすればいいということになるわけでありますが、しかし、それが果たして安定的に供給できるかという大きな問題もあるわけであります。

 あの原発ゼロを目指しているドイツも、あれは、しかし実際、EUの中でつながっているわけでありまして、原発でつくり出しているフランスの電力も、需要と供給を平らにしていくためには、一時的にはフランスからも買い取るわけでございます。そうやって、いわばピーク時にどうするかということでならしていくというのが電力を安定的に供給していく道であろう、こう思っております。

 なお、最終処分については、これは相当量の使用済み燃料が既に存在をしているわけでありまして、再稼働のいかんにかかわらず、決して次世代に先送りしてはいけない課題であります。国が前面に立って取り組むべき問題だ、こう考えております。

 こうした観点から、安倍内閣としては昨年七月に科学的特性マップを公表したところでありまして、広く国民の皆様の理解を得ながら一歩一歩着実に前進させてまいりたい、こう考えております。

小熊委員 ドイツの話は少し認識が違うので、後でまた議論をしたいというふうに思いますけれども、台湾だって韓国だって宣言しているじゃないですか。ドイツ、台湾、韓国と、日本の技術や人材が劣っているとは思いません。

 そしてまた、原発をやめなければ、今存在もしていますけれども、これからも動かし続ける、もし、新規の原発も総理は否定していませんけれども、新規の原発をつくれば、十万年後にこれが解決する、八千年後に解決する、三百年後に解決するではなくて、そのゴールはずっと永遠の三百年、八千年、十万年になっちゃうんですよ。これを四十年、六十年だけ動かして、我々は恩恵を受けて、あと、子孫たちに長い間負の遺産を残していくというのは、我々の正しい生き方じゃない。

 こうした不義に生きることなく、脱原発でまさに日本の再生、地域の再生、そして未来に対する責任をこれからも我々は追求していくことを改めて宣言を申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて後藤君、井出君、小熊君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 民進党の原口一博でございます。無所属の会として、通告に従い、質問をさせていただきます。

 まず、資料の三をごらんください。対外有償軍事援助について、総理、資料を見ていただきたいんですけれども、会計検査院が指摘をした事項です。

 今回、佐賀にヘリが墜落しました。葬送式に参りましたけれども、小さなお子さんの手を引かれたお母さんの姿、もう二度とこういうことを起こさないという観点から、きょう質問したいと思います。

 これをごらんになってください。この十年間で不具合報告書を送付していたケースの件数、百七ケース、二千二百七十六億円です。自衛隊は、こういうふぐあいとの戦いをさせているんじゃないですか。

 そして、防衛大臣に聞きます。会計検査院から、このとき、何と六百七十一億円も出荷証書と計画書の記載内容が違うと。六百七十一億円ですよ。これはさきの国会で指摘をしました。その後、アメリカからどういう答えが来ましたか。

小野寺国務大臣 まず、原口委員には、目達原の事故におきまして、現地に御視察をいただき、また二名の隊員の葬送式にも御参列いただき、感謝を申し上げます。

 会計検査院から、昨年十月に二件の指摘を受けたところです。

 一点目は、FMS調達の実施に当たり、米側より受領した防衛装備品のふぐあい及び同じく米側より受領した計算書の誤りに対し、不具合報告書による日本側からの是正措置の要求を速やかに行うことを周知徹底するよう、防衛省に是正改善の措置が参りました。

 二点目として、米側から送付される計算書と日本側の受領検査調書との照合の過程や結果を書面等に記録及び保存するとともに、計算書と受領検査調書の項目において極めて多くの記載の内容が一致していないという根本的な原因を米国政府に協力を求めるなどして、適切な照合を行うための効果的な方策について検討する旨の表示がありました。

 防衛省としては、この会計検査院から受けた指摘を真摯に受けとめ、昨年十二月に開催したFMSの諸問題に関する日米協議の場や、ことし一月、防衛装備庁長官を米国に派遣しまして、米国政府にしっかりと協力を求めております。米国との協議の詳細については、相手国との関係もありますからお答えは差し控えさせていただきますが、日本側からの指摘を受け、こうした課題の改善に向けて米国側でも検討がなされているということであります。

 いずれにしても、引き続き、米国に対して改善に向け積極的に働きかけ、しっかりとした形で、会計検査院の指摘を受けないよう、努力してまいります。

原口委員 いや、相手側があるとかいったって、番号が合わなければ、調達のところはどうするんですか。本当にそのものかどうかわからないじゃないですか。

 このグラフ、この間も出しましたけれども、安倍内閣になってから、このFMS、物すごくふえているんです。しかも、未納金、未精算額、お金を払ったら物が来るでしょう。それが来ないということはどういうことか。

 総理、強く言っていただきたい。私たちも、この国会が閉じたらアメリカへ行こうと思います。そして、このようなアンフェアな状況を続けていたら日米同盟も危うくなるということを申し上げたいと思います。

 さて、これを出すのはつらいですが、戦闘ヘリコプターAH64D、これはFMSではなくて、いわゆるライセンス国産ですね。しかし、この四ページ、資料の四をごらんになってください。これは、もともと六十二機購入する予定が、途中で余りにも高額になった、そしてボーイングが生産打切りを通告した、そこで、十三機で打ちどめになっているんです。そして、我が政府は富士重工に訴えられて敗訴して、三百五十億ぐらいお金を払っているでしょう。これは一体どういうことなのか。

 今回墜落した五〇二号機というのは、二〇〇二年に入った最初の初号機です。二〇〇二年には一機六十億だったのが、二〇〇六年には百五億にもなっているわけです。まさに、いいようにやられている。

 私は、このような事態を変えないといかぬというふうに思っていますが、防衛大臣の基本認識を伺います。

小野寺国務大臣 御指摘のAH64Dは、二〇〇一年に機種選定を行い、六十二機調達することを念頭に置いていましたが、二〇〇七年三月、ボーイング社のAH64Dの製造中断に伴い、関係企業は、機種選定時に安定供給を保証していたにもかかわらず、防衛省が取得していたAH64Dの調達を継続するためには二百二十億円の追加費用が必要となる旨を防衛省に予告をいたしました。

 これに対して防衛省は、二〇〇七年八月、この提案は莫大な追加費用を前提としたものということで、AH64Dの長期かつ安定的な供給の保証に反すること、対戦車ヘリコプターAH1Sの運用年数を延長し、AH64Dと併用することで必要な防衛力を維持可能と判断したということから、AH64Dについては十三機をもって調達を中止することにいたしました。

 その後、この初期費用の一部が未払いになっているとして企業側から三百五十一億円の支払いを求めた提訴を起こされ、最終的には、国が上告受理申立てを行ったものの、最高裁は上告審として受理しないと決定したということであります。

原口委員 あなた、それは経過をお話しになっているだけじゃないですか。

 私は、こういう事態を変える必要があるんじゃないか、ライセンス費用だけでも二百億を超え、そして裁判費用だけで三百五十億、こういったものが現場に多くのしわ寄せを与えているんじゃないか、そう思うんです。

 五ページをごらんになってください。これは類似の事故です。

 同型機、これは、小野寺大臣も一緒に行かれましたから、周りの方のお話も聞かれましたね。屋根を貫通して巨大なかけらが畳の上に突き刺さったとか、もう音を聞くだけで怖い、そういうお声を聞かれたでしょう。本当に、私、ここで抗議をしておきたいのは、駐屯地がある自治体にもこの墜落の事故が伝わるのが遅い。それから、あなたは三自治体だけ行ったけれども、この飛行ルートはもっとたくさんあるんですよ。

 佐賀県は、軍人やあるいは司法関係者が多いです。ですから、自衛隊や秩序を重んずる人たちをずっとサポートしてきました。しかし、その人たちも、本当にこんなことでいいのかということを言っています。

 アメリカの事故は日本にちゃんと伝わっていますか。アメリカ政府からは伝わっていないでしょう。ボーイングから、単にこういうことがあったよというのが来ているだけじゃないですか。このテキサスの事故とテネシーの事故について、どのように伝わっていますか。(発言する者あり)いや、通告していますから。

小野寺国務大臣 今回御指摘のあった二つの事故の報道については私どももしっかり把握をしており、そしてまた、その内容についてもし必要であれば、メーカー側から日本側に通報が来ております。今回の二つの事案については、米側から、これはメーカーを通じてさまざまな情報が寄せられているということであります。

原口委員 本当ですか。これは技術料を払っているんですよ。しかし、このまさにメーンローターが外れるという、よくネットで、田んぼが近くにあるのに回避できただろうと。できやしませんよ。揚力を失ってからもう十秒足らずで激突しているんです。パイロット、この熟練した彼にもどうにもならなかった、そういう事故ですよ。こんなことを二度と起こさないことが、総理、自衛隊を守ることじゃないですか。

 憲法に自衛隊を明記する、それも一つの案でしょう。しかし、こんなに、二千億を超えるふぐあいの品を自衛隊員に持たせて、そしてこのようなものが来て、それで本当に私たちは自衛隊を大切にしていると言えるんですか。

 安倍政権下で伸びている。トランプ大統領は日本に更に武器を買うようにおっしゃっているようです。しかし、トランプ大統領に言いたい。日本はあなたの財布じゃない。私たちは独立した国家です。

 そして、米国側のずさんな管理によって現場は大変苦労している。製造元からの海外の事故情報も、私は、共有は十分にされているとは思いません。

 総理に伺いたい。現場の負担や労力を減らす、まさに、アメリカにも直接言ってください。あなたはトランプ大統領とも直接お話ができます。こういうFMSの状況を看過できないということを言っていただきますように、総理から答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 このFMS契約は、経済的な利益を目的とした装備品の販売ではなく、米国の安全保障政策の一環として、同盟諸国等に対して装備品を有償で提供するものであります。米国の武器の販売は、どこにでも売るということではなくて、同盟国に限ったもの、あるいはその中の一部に限ったもの等もあるわけでありまして、こうした仕組みによって、一般では調達できない軍事機密性の高い装備品や、米国しか製造できない最新鋭の装備品を調達できる点で、FMS調達は我が国の防衛力を強化するために非常に重要なものと考えております。

 他方、FMS調達は、会計検査院からの指摘など、さまざまな課題があることも事実でありまして、防衛装備庁長官と米国防安全保障協力庁長官との間の協議の枠組みを立ち上げまして累次にわたって改善を求めているほか、価格の透明性確保について小野寺防衛大臣からマティス国防長官にも強く働きかけているなど、FMS調達の適正化に向けて積極的に取り組んでいるところであります。

 また、自衛隊が保有する米国製の航空機について、海外で事故等が発生し、点検や整備要領の変更が必要な場合には米軍や製造企業等を通じて情報提供を受けているところでありまして、自衛隊が保有する装備品を安全に運用するに当たって必要となる情報は入手できているもの、こう思っているところであります。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、今後とも米国製の装備品を取得することは不可欠であることから、FMS調達に関するさまざまな課題や米国製機体に関する情報共有について、日米間で一層緊密な連携を図りつつ適切に対応してまいりたい、こう思うところでございます。

 また、このFMS調達は、急に安倍政権になってどんとふえたわけではありません。ただ、確かに調達は増加を……(発言する者あり)調達は今説明しますが、調達が増加しておりますが、FMS調達全体の四分の一はF35Aの導入に関する経費が占めているものでありまして、このF35A四十二機の導入を決定したのは、我々の前の民主党政権時代に決定しているわけであります。それがいよいよ入り始めているわけでございまして、実際に先般一機入ってきて、これからも入ってくる高額なものでございまして、そうした観点も、我々が急にこれを始めてふやしているということではないということは申し上げておきたい、こう思うわけでございます。

 このF35については、九カ国による国際共同開発された航空機でありますが、武器輸出三原則等の制約もある中、我が国はこの共同開発プロジェクトには参加できなかったわけでありまして、その結果、このため、我が国は機体の製造に関与することはできず、基本的に、でき上がった機体をFMSで調達するしか道がないのが現状であります。

 そこで、我々は、防衛装備移転三原則を新たに策定しまして、諸外国との国際共同開発・生産に適切に対応することができるような枠組みを整えたわけでありまして、今後は、我が国もそれに参加できるわけでありますし、価格についても、今までとは違う形で価格を設定することも可能となってきているのではないか、こう思うわけでありますが、我が国の防衛生産、技術基盤の維持強化が可能となるような努力を行っているところであります。

原口委員 もう終わりますが、正しく入れてくださいと言っているんですよ。あなたの政権で十倍になっています。私たちが決めたものもあるでしょう。F35も必要でしょう。しかし、正しく動くものを前金どおり搬入するように、それを言ってくださいと言っているんです。

 終わります。

河村委員長 この際、広田一君から関連質疑の申出があります。原口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。広田一君。

広田委員 無所属の会の広田一でございます。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 まず、北朝鮮からのミサイル発射への対応についてお伺いをします。

 昨年の八月十日、北朝鮮は国営メディアを通じまして、グアム周辺に中距離弾道ミサイル火星12を四発同時に発射すると、具体的な作戦計画を発表したところでございます。しかも、それが、島根、広島、そして私の地元高知の上空を通過して、グアム島周辺三十から四十キロの海上に着弾すると、具体的な飛行経路まで示したわけでございます。

 名指しをされた地域、県も含めまして、これによって国民の皆さんの関心そして危機感というものは大変高くなったところでございます。

 それぞれの県に対しましてPAC3を配備してくださったこと、これは高く評価をしたいというふうに思いますが、しかし、それで全域をカバーすることができていない、そういった現実もぜひ国民の皆さんにも知っていただきたいというふうに思います。

 私は、この報道を聞きまして、かつて安保関連法を審議する際に、武力行使に当たり得る事例、活動ということで、八事例の一つに、グアムなど米国に向け我が国を横切る弾道ミサイル迎撃に関する事例を思い出しました。

 これは、以前、小野寺大臣自身も、平成二十七年の六月十八日、この衆議院の予算委員会において、安倍総理に対しまして、集団的自衛権が必要な事例として挙げられました。それに対して、安倍総理自身も、これは、今自分たちがこの安保関連法を推進している、整備しようとしている核心的な話だというふうな旨の御答弁もされているわけであります。

 こういう事例でございますが、まず、その前に、私自身、この集団的自衛権につきましては、これは、安倍政権以前の歴代政権が明確に述べているとおり、憲法違反でありまして、そして、それを認める存立危機事態、新三要件は廃止をすべきという立場でございます。

 そもそも、集団的自衛権というのは密接な国からの要請、同意に基づいて行使をされる、こういったことからもわかるとおり、その本質は他国防衛でございまして、攻撃される第三国から見れば、これは日本からの先制攻撃を受けるというふうに見られても仕方がないものでございます。

 そういった観点から、さらには専守防衛の議論も当時したわけでございますけれども、専守防衛とは、守りに専念する、このように書くわけでございます。その専守防衛とも明らかに矛盾をするというのが私の考えであります。

 そういったことを踏まえて、まず、これは安倍総理にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、グアムなど米国に向け我が国を横切る弾道ミサイルの迎撃、これについては、存立危機事態として、新三要件を満たせば集団的自衛権に基づき武力行使は可能なのか、この件について簡潔に御答弁をいただければと思います。

小野寺国務大臣 平和安全法制が成立以前においては、例えば、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合には、米国に対する武力攻撃の一環として発射された弾道ミサイルが我が国上空を横切り、自衛隊に迎撃する能力があったとしても、我が国が迎撃することはできませんでした。

 その上で、あくまでも一般論として申し上げれば、平和安全法制のもとでは、実際に発生した状況の全体を評価した結果、これが新たな新三要件を満たす場合においては、我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置として、米国に向かう弾道ミサイルの迎撃をすることも可能であると考えております。

 なお、実際にいかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に照らし合わせて、政府が全ての情報を総合して、新三要件に照らして客観的、合理的に判断することになります。

広田委員 つまり、武力行使は可能だということでございます。

 そこで、政府参考人にお伺いしますけれども、この存立危機事態への対処のための手続について、これは具体的にどのような流れになっているのか、簡潔に御説明をいただければと思います。

菅原政府参考人 お答え申し上げます。

 武力攻撃事態等又は存立危機事態に至ったときには、事態対処法第九条に基づきまして、政府は、事態の経緯、事態の認定及び当該認定の前提となった事実、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由等を明記した上で対処基本方針の案を作成いたしまして、国家安全保障会議の審議を経て閣議決定し、これについて直ちに国会の承認を求めることとなります。

 以上でございます。

広田委員 先ほど答弁があったように、存立危機事態の発生、先ほどはございませんでしたけれども密接な国からの要請、同意、さらには対処基本方針の作成、これは総理がやられるわけでありますけれども、そして、総理から国家安全保障会議への諮問、また総理への答申、さらには対処基本方針の閣議決定、こういった一連の手続というのは、シビリアンコントロールを考えた場合には必要不可欠な手続になるわけであります。

 しかし、これも小野寺防衛大臣の方から御答弁がございましたように、そもそも、いかなる事態が存立危機事態に当たるのか、これは、事態の個別具体的な状況に即して、政府は全ての情報を収集して客観的、合理的に判断をする、しなければならないということになっております。つまり、単に北朝鮮がグアムに対してミサイルを発射しただけとか、さらには米国が日本に対して集団的自衛権の行使を要請しただけでこの存立危機事態になるわけではないわけであります。

 そこで、お伺いしたいのは、この存立危機事態と認定するに当たって、何を客観的そして合理的に判断するのか。つまり、新三要件がございますけれども、この明白な危険というものを判断する基準は一体何なのか、この点についてお伺いします。これは総理にお願いします。

小野寺国務大臣 まず、今、存立危機事態の認定について御説明がありましたが、これは我が国として武力の行使を行うか否かの重大な判断であり、閣議決定や国会承認など、法律に定められた手続に厳格に従う必要があると思っております。

 このため、平素から、関係機関が連携してさまざまな準備や検討を行うとともに、各種のシミュレーションや訓練を行うことにより、事態発生時には時間的な制約がある中で的確な判断を行うことが政府が果たすべき役割だと思っております。

 そして、このような事態の認定が必要となる場合には、我が国及びその周辺の軍事情勢は緊張度を増しており、情報収集及び警戒監視体制も強化されていると考えております。

 政府としては、こうした状態におきまして、攻撃国の言動や部隊の動きなど、各種の情報を総合的に分析しつつ、必要な準備を行い、シームレスに迅速な対応を行うということであると思っております。私どもとしては、しっかりとした対応をし、万が一のときは速やかに判断ができるような体制を総理を中心につくっていくことが大切だと思っております。

広田委員 大臣、ちょっと質問を聞いていただいて、それにお答えいただきたいんです。

 新三要件に基づいて、これはさんざんぱら議論したんですけれども、明白な危険、明白な危険ですよ、これを判断する基準、これをクリアしなければ存立危機事態と認定できないんです。ですから、確かに大臣がおっしゃったこともるる検討しなければなりませんけれども、それを踏まえて、たしか五つの基準があったわけでございまして、これについてまず明確に御答弁いただければと思います。

安倍内閣総理大臣 他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ国民に対して我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということ、この要件に該当するか否かは、事態の個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることとなる犠牲の深刻性そして重大性などから客観的、合理的に判断をするということは、もう法案審議のときに答弁しているとおりでございます。

広田委員 そのとおりなんです。

 これを受けて一点確認したいのは、これらの基準について、存立危機事態が発生する以前に、基準を満たしていると判断をして対処基本方針を作成する、こういったことなんかはあるんでしょうか。

小野寺国務大臣 政府としては、あらゆる事態に迅速かつ的確に対応できるよう、現行法に基づく武力攻撃事態等への対処に関し、平素からさまざまな検討、準備を行っていることは当然であります。

 御指摘の点も踏まえて、事態の対処のために、私どもとしては、重要なものについてさまざまな準備をしておくということが重要かと思っております。

広田委員 これも明確に答弁がございません。

 先ほどの総理が述べた五つの基準について、存立危機事態が発生する前に、政府としてこの基準を満たしているというふうに判断をして準備をすることがあるのかということであります。

小野寺国務大臣 これは、さまざま、その状況、態様、相手の意思その他を勘案して準備をしておくということが必要だと思っております。

 ただ、具体的にどういう場合にどういう判断をするかということは、これは事柄の性質上、その詳細について申し上げることは控えさせていただきたいと思います。

広田委員 つまり、個々具体的に判断するわけであって、この五つの基準について、事前に、基準を満たしているかどうか、そういった判断はしないということであります。

 このるるの質問、手続について今質疑をしているわけですが、これでもうほとんど質疑時間がないぐらいかかっております。

 テレビをごらんになっている皆さんも感じられているというふうに思いますが、こういった武力攻撃事態また存立危機事態に基づいて武力行使をするか否か、これを判断するのは、とても短時間でできるものではありません。そういう中で、一方で、北朝鮮のミサイルがグアムに到達するのは約二十分以内というふうに言われております。

 総理にこれはお伺いしたいんですけれども、私は、この存立危機事態は反対であります。しかし、もし法的に武力行使といったものが可能になった場合、実際は、しかしながら、現行の法制度、先ほどるる御答弁のあったような、さまざまな事態、現象、事象を客観的、総合的に判断をするというふうな物理的、時間的なことを考えれば、特に最初のミサイル攻撃についてはとても間に合わない、つまり迎撃することができないのではないか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、広田委員がおっしゃっていることを二十分の中で全部やるということではなくて、これは、我々、平素からもちろんさまざまな準備をしております。

 その中で、最初私が申し上げました明白な状況、明らかな状況かどうかということについては、さまざまなシミュレーションをしながら、当該国の部隊の運用等を勘案しながらシミュレーションを行い、これに当てはまるかどうかということを見るわけでありますが、突然起こるわけではないわけでありまして、事前からの情報収集、我が国だけではなくて同盟国とともに、そういう事態が近づいてくれば、相当高度の情報収集を行いつつ、実際上、存立危機事態や武力攻撃事態の認定が必要となるかどうか、なるような場合には、我が国及びその周辺の軍事情勢は緊張度を増しており、情報収集及び警戒監視体制も強化されていると考えるわけであります。

 政府としては、こうした状況において、攻撃国の言動や部隊の動きなど各種の情報を総合的に分析しつつ、必要な準備を行うということで対応していきたい、こう考えているわけでありまして、さまざまな情報をしっかりと集めながら分析をし、的確に対応をするようにしたい、こう思っている次第でございます。

広田委員 そういった答弁があったんですけれども、総理、警戒監視しながらさまざまな情報収集をする、しかしながら、この法的手続に入るのは存立危機事態が発生してからなんです。そこから対処基本方針をつくる、そして国家安全保障会議に諮問をし答申を得る、さらには閣議決定をする、そして、小野寺防衛大臣の話だと、国会の承認まで要るというふうに言っているわけです。これはとても間に合わないわけでありまして、そのことを考えたら、これはとても迎撃をする時間的余裕がないということであります。

 これを私がなぜ質問するかというと、シビリアンコントロールは非常に大事です。しかし一方で、私たちは、それ以上に大事なのは、国民の生命財産を守ることであります。武力攻撃事態や存立危機事態になったにもかかわらず、国会を含めた手続によってこれが実行できないというふうなことになれば、まさしく行政の不作為ということになってしまいます。だからこそ、私は、この一連の手続の短縮化というものをやはり図っていかなければならない。

 閣議決定というものを迅速化する。今、グレーゾーンで電話閣議もできるようにしました。事前の閣議決定も不必要かもしれません。そういった不断の検証をしていかなければ、今の手続だととても間に合わない、迎撃できない、そして武力攻撃事態だったら時間が半分になってなおさらだ、そういうふうな問題意識を持って質問をしておりますので、この手続の見直しということについて、最後、総理にお伺いします。

安倍内閣総理大臣 広田委員の御指摘は、大変重要な御指摘だと思っております。実際に対応できるかどうかということでございますので。

 そこで、一つは、委員も御存じのように、国会承認は事後でもいいわけでございますが……(広田委員「じゃ、訂正してください」と呼ぶ)いや、これは法律上、基本的にはもちろん国会承認が要るんですが、事後でもいいということでございまして、そして、基本計画等も、基本計画そのものではなくて、大体どういう状況になるということを予測しながら、一応ひな形的なものはあらかじめつくっておくことができるだろう、こう思うわけであります。

 そして、NSC九大臣会合におきましても、あるいは閣議におきましても、これは電話でできるわけでございまして、いわばそういう状況になれば直ちに連絡ができるという体制を全ての閣僚にとらせておくことは十分に可能であろう、こう思う次第でございます。

 もちろん、そうしたことを予測しながら事務方においては何回も訓練等を行っているところでございますが、今、広田委員がおっしゃったような問題意識、果たしてこれは本当に大丈夫かどうかということについても、しっかりと認識しながら、常に改善していくということを考えていかなければならない、こう思っております。

広田委員 総理、まさしくシビリアンコントロールは大事です。しかし、一方で、国民の生命や財産をいかに守っていくのか、これはより一層大事な観点になっていくわけでございまして、先ほどの、今のままの制度だと、これは、存立危機事態はもちろんのこと、武力攻撃事態でも対応することができない。だからこそ不断の見直しをしていかなければならない。これからもそういった政策提言をしていきたいというふうに思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げて、質問を終了します。

 どうもありがとうございました。

河村委員長 これにて原口君、広田君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 まず冒頭、豪雪被害で亡くなられた方に心から御冥福を申し上げます。また、今も被害に遭われている皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

 私は、北陸信越ブロックから国会に送っていただいております。福井始め石川、富山、新潟など、今も大変な状況が続いております。政府には万全の対応を求めたいと思います。

 その上で、質問に入ります。

 アメリカのトランプ政権は二月二日、核態勢見直し、いわゆるNPRを発表いたしました。NPRとは、今後五年から十年間のアメリカの核政策や戦略、態勢を見直すもので、これまで、一九九四年、二〇〇二年、二〇一〇年に策定されております。今回のNPRは、オバマ政権からトランプ政権に交代したことを受けて策定されたものであります。きょうは、この新NPRについて聞きたいと思います。

 長崎市の田上富久市長は、今回のNPRについてこうおっしゃっております。「核兵器の役割を拡大し、小規模の核保有国やテロリストに対して、また通常兵器による攻撃に対しても、核兵器の使用の可能性を示唆する内容」だ、こういうコメントであります。

 総理にお聞きしたいんですが、総理は、オバマ大統領と広島を訪れ、核兵器のない世界を目指すと宣言されました。なぜ、核兵器の役割を拡大し、核使用の可能性を高める今回のNPRを高く評価するのでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私がオバマ大統領とともに広島を訪問し、核なき世界を目指して努力すると世界に向けて発信した立場は一貫したものであり、この方針にいささかの変更もございません。

 他方、昨年、北朝鮮は、広島に投下された原爆の十倍以上の威力を持つ核実験を強行し、日本列島を核爆弾で海の中に沈めるべきといった極めて挑発的な声明を発出していることは、藤野委員もよく御存じのとおりであります。

 北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の進展は、我が国の平和と安定に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威でありまして、政府には、何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任があります。そのためには、日米同盟のもとで、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠であります。

 このような状況のもと、今回、米国が発表した「核態勢の見直し」、NPRは、米国のみならず同盟国の安全を確保するという核による拡大抑止に明確にコミットしており、我が国はこれを高く評価しているわけであります。

 同時に、米国は、核兵器等の究極的廃絶に向けたみずからの取組に引き続きコミットすることや、NPT体制の強化、核兵器のさらなる削減を可能とする安全保障環境の追求にも言及しています。

 我が国としては、現実の安全保障上の脅威に的確に対処しながら、唯一の戦争被爆国として、米国を含む核兵器国と非核兵器国双方に働きかけ、双方の橋渡し役を務めることにより、現実的な観点から、核兵器のない世界を実現するための努力を積み重ねていく考えであります。

藤野委員 私たちも、北朝鮮の核あるいはミサイル開発、これは断固反対であります。

 しかし、アメリカが核の軍拡を進めて核を使いやすくする、これが北朝鮮の核・ミサイル開発を抑えることになるのか。むしろ、北朝鮮が核あるいはミサイル開発を一層加速する口実を与えてしまうんじゃないかというふうに思います。

 総理にお聞きしますが、今回のNPRは、北朝鮮にさらなる核開発の口実を与えて、際限のない核軍拡競争を招くことになる、とてもじゃないが高く評価することなどできないんじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮は、米国がNPRを発表するはるか以前から、例えば一九九三年、四年から核の開発を延々と続けてきて今日に至っているわけであります。つまり、NPRの発表とは全くかかわりがないわけであります。

 他方、では、米国がオバマ政権時代にいわば核なき世界に向けて政策を発表した中においても、北朝鮮が恐れ入りましたといって核を廃絶すると宣言をしたわけではなくて、その間も延々と核開発を続けてきたというのが現実であろう、このように思います。

藤野委員 ドイツの外務大臣は、二月四日に発表した声明で、今回のNPRが新たな核軍拡競争を引き起こすことになるという警告を発しております。

 同声明は、欧州における安全保障環境の悪化、これを指摘しながらも、解決は核軍拡競争によることであってはならない、我々に必要なのは、新たな軍拡ではなく、新たな軍縮のイニシアチブだと述べています。私は、この点が重要だと思います。

 北朝鮮問題の解決は、対話によるべきであります。

 今、韓国と北朝鮮の間で対話が始まっております。

 先日、ペンス米副大統領も北朝鮮との直接対話に言及しました。ワシントン・ポストの報道では、ペンス副大統領は、最大限の圧力キャンペーンは継続され強化される、しかし、彼らが対話を求めるならば我々は対話すると述べています。そして、記者が、現実に制裁解除を得るために北朝鮮は具体的に何をしなければならないのかと尋ねたのに対して、わからない、だから対話をしなければならないのだと答えたそうであります。

 ティラーソン国務長官も、前提条件なしでの協議と言っております。

 それなのに安倍総理からは対話という言葉が出てこない、だから私は指摘をしているわけであります。

 北朝鮮問題の解決の道は対話と外交にこそある、日本政府がこの点でイニシアチブを発揮することを強く求めたいと思います。

 そして、今回のNPRは、核兵器使用の可能性を広げるものとなっております。NPRの中にこのことを示す記述があります。

 二十一ページ、私の方で少し読ませていただきますが、この二十一ページにはこういう記述があるんです。重大な非核の戦略攻撃には、これに限定されるわけではないが、米国、同盟国及びパートナー国の民間人人口、社会基盤に対する攻撃、さらに米国と同盟国の核戦力、その指揮統制、あるいは警戒及び攻撃評価能力に対する攻撃も含む、こういう一文であります。

 外務省にお聞きします。NPRにこうした趣旨の記述があること、間違いありませんね。

鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の核兵器使用の可能性についての米国の宣言政策に関しましては、米国は、米国、同盟国及びパートナー国の死活的利益を守るべき極限の状況においてのみ核兵器の使用を検討する、極限の状況には重大な非核戦略攻撃も含まれ得る、重大な非核戦略攻撃には、米国、同盟国及びパートナー国の一般市民やインフラへの攻撃、米国や同盟国の核戦力、指揮統制、警戒及び攻撃評価能力への攻撃を含むが、これに限定されないと記されていると承知しております。

藤野委員 今答弁があったとおりであります。つまり、非核の戦略攻撃というのは、核ではない通常兵器などによるものであります。インフラへの攻撃、民間人への攻撃、いろいろ例示をされておりまして、これだけでも十分に対象が広いわけですが、この文書の中には、これに限定されるわけではないという記述もあるわけであります。

 つまり、今回のNPRというのは、過去のNPRと違って、核兵器使用の可能性を大きく広げるものになっている。だから、被爆者を始め、世界じゅうから懸念の声が寄せられているわけであります。

 パネルを見ていただきたいんですが、具体的に、この核をどうやって役割を拡大しようとしているのか。例えば、原子力潜水艦が搭載している核戦略ミサイル、SLBMを小型、低出力の核弾頭に取りかえる。あるいは、退役が決定していた核トマホークにかわる新型核巡航ミサイル、SLCMの開発、配備を行う。さらには、米軍機F15やF35に搭載する新型核爆弾B61、これはもう11までいっておりますが、これをさらに開発を進めていく。

 外務省にまた確認いたします。こうしたことがNPRに盛り込まれている、間違いありませんね。

鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の核戦略ミサイル及び新型核巡航ミサイルに関しましては、今回のNPRにおいては、例えば米国は、特にアジアにおいて数十年にわたり抑止及び同盟国の保障に寄与した当時の核搭載の海洋発射型巡航ミサイルの退役を二〇一〇年のNPRで公表した。第二に、米国は、短期的には低出力オプションを提供するために少数の既存の潜水艦発射型弾道ミサイルの弾頭を改修していくとともに、長期的には現代的な核搭載の海洋発射型巡航ミサイルを追求していくこと。第三に、海洋発射型巡航ミサイルについては、ロシアの継続的なINF全廃条約違反に対抗する措置であると位置づけた上で、しかしながら、もしロシアがINF全廃条約の軍備管理義務を再び遵守するようになり、非核戦略兵器を削減し、そしてその他の不安定性をもたらす行動を正すのであれば、米国は海洋発射型巡航ミサイルを追求することを見直すかもしれない、そういった旨が記述されていると承知しております。

藤野委員 要するに、こうした中身が盛り込まれ、これによって核の使用可能性を広げ、そして具体的にはこういう形で展開していこうということが記述されているということであります。日本の米軍基地、横須賀や佐世保、嘉手納、岩国、横田、三沢などを拠点とする米軍の第七艦隊所属の艦船や、あるいは第五空軍所属の米軍機にも核兵器が搭載される可能性があるということであります。

 具体的にお聞きをしたいと思います。

 今回のNPRはこういう記述もしております。米国は、世界じゅうで核搭載爆撃機及びDCAを前方配備する能力を有し、維持し、必要に応じて強化する。

 今、DCAと申し上げましたが、このDCAというのは、デュアル・ケーパブル・エアクラフトといいまして、要は核兵器も通常兵器も両用搭載できる、そういう戦闘機のことであります。F35はその代表格であります。

 そして、今、世界じゅうで配備する、必要なら強化すると言いましたが、NPRにはこういう記述もあるんですね。必要な場合、米国は、DCAと核兵器を北東アジアなど他地域に配備する能力を持っている、四十八ページにこういうふうに明記をされております。つまり、世界じゅうにというだけじゃなく、北東アジアということもわざわざ記述をしている。

 米軍は、昨年十月、F35Aを十二機、沖縄の嘉手納基地に配備すると発表し、既に配備をされております。

 総理にお聞きしたいんですが、今回のNPRのもとで、米軍がF35に核爆弾を搭載する可能性が非常に高まっております。そうなれば、今後、日本に核が持ち込まれてくる、そういう危険が一層高まるんじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になったものは、F35に機種を変更するわけでございまして、機種の変更ということであろう、こういうことでございます。

 そして、核の配備につきましては、当然これは事前協議の対象になるわけであります。

藤野委員 機種変更というのは、要するに搭載能力の問題ですかね。

 確かに今、現時点で、F35、その能力を変更しつつある、そういう機種があるのも認識してはおりますが、いずれにしろ、方向として米軍がこういう方向性を持っている、米軍機の中には日本に配備されるものもある、そういうもとで日本に核が持ち込まれるんじゃないかというのが私の質問であります。

 そして、じゃ、別のものでもお聞きしますけれども、この配備されないという理由、今までどういう理由で配備されない、あるいは持ち込まれないというふうに言われていたんでしょうか。

河野国務大臣 冷戦終結後、米国は、太平洋地域から前方配備の核兵器を撤退させました。こうした、これまで公になっている米国の核政策あるいは空軍の核兵器に係る任務の特殊性に加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解していることから、米国が核兵器搭載の航空機を我が国に配備するようなことは現状において想定しておりません。

藤野委員 想定されないとおっしゃいました。その前提として、非核三原則とあわせて、公になっている核戦略だというふうにおっしゃったんですね。私は、この公になっているアメリカの核戦略が今回変わったじゃないかということを言っているわけであります。

 アメリカ自身が、今までは配備しない、あるいは今までは撤去すると言ったトマホークとか、こういうものを復活するとか配備するというふうに今回のNPRで変えたわけです。ですから、公のアメリカの核戦略が変わった。変わったわけですから、今まで想定できないという前提が変わったんじゃないかということなんです。

 そして、同じことで聞きますけれども、トマホークの問題をおっしゃいましたけれども、これは前回のNPRでは退役をしたと先ほど北米局長は言いました。今回、復活するわけです。復活するわけですね、新型が。これだけでも本当に大きな変化であります。これによって、日本に艦船等によって、このトマホークを積んだ船が入ってくる可能性がある、危険が高まっているんじゃないか。

 これは私だけではありません。オバマ前政権の核政策担当特別補佐官のジョン・ウォルフスタール氏は、このミサイルを搭載した米艦を日本に寄港させようとしたら日本はどうするだろうか、こういうふうにおっしゃっているんですね。私と同じ懸念であります。

 総理にお聞きします。

 今、手を挙げておられました。米国は、水上艦や潜水艦に配備すると言っているわけですね。そうなれば核が日本に持ち込まれる、そういう危険性が高まるんじゃないですか。

小野寺国務大臣 まず、正確にお話をしておきますが、現在米軍が保有するF35には核兵器を搭載、運用する能力はないということでありますし、現在のトマホークにも核を搭載する能力はないということであります。

 いずれにしても、現時点での私どもの状況については今お話ししたとおりでありますし、日本は非核三原則を堅持している国でありますから、当然米側もそのことは十分承知していると思っております。

藤野委員 私がお聞きしたのは、こういう方針転換がありましたと、二月です。ですから、直ちにそういう能力がつくとか、そういうことを言っているんじゃないんです。

 今後の話として、アメリカがこういう方針転換を行った、公の核戦略の転換を行ったと。今までの日本政府の説明というのは、日本に核が持ち込まれない理由として、アメリカの公の核戦略が、そういうものは配備しないとか、撤去するとか、能力を取り払うとか、そういうことを言っているから、日本には持ち込むことが想定されないと言っていたわけですね。その大前提が変わるじゃないか、すぐ何か能力がつくとかいうことではなくて、前提が変わるではないか、そういう質問なんです。

安倍内閣総理大臣 前提が変わるわけでありますが、その上で申し上げれば、前提が変わるわけでありますが、しかし、米国は、非核三原則に係る我が国の立場、これは十分理解をしているわけであります。

 米国が、核兵器を搭載した米軍機を我が国に飛来させたり領空を通過させたり、あるいは、今委員が御指摘になったように配備をしたりということは現状において想定はしておりません。

藤野委員 前提が変わったということをお認めになりました。この前提が変わるというのは大変大きなことになるわけですね。

 非核三原則ということもおっしゃいましたけれども、今までの答弁は全て、この公の核戦略があるわけです、配備しない。そもそも配備されないから、それが持ち込まれることは想定されない、こういう答弁なんです。

 この答弁は変えられる、こういうことでよろしいですか。

河野国務大臣 SLCMにつきましては、米軍の今回のNPRも追求すると言っているだけであって、別に開発、導入に触れているわけではございません。我々としては、その前提は変わっていないというふうに考えております。

藤野委員 今のはちょっとおかしいと思いますよ。追求するわけですね。方針転換なわけです。今までは退役させると言っていたんです。全く違うんです。退役させるものから、新たなものを開発するというふうに変わってきている、これが大きな前提の変換ではないか、前提が変わったのではないか、こういうことなんです。

 ちょっと、もう一回、今の答弁をお願いします。

小野寺国務大臣 実態として、現在も米国は、例えばSLBMといって戦略核を持ち、また、B52やB2爆撃機といって核を搭載できる航空機を持っておりますが、そういう核の能力を持ったとしても、日本に対しては、日本の非核三原則ということをよく理解しているので、私どもとしては、委員が御指摘するようなことは想定されないのが現在でありますし、今後、新しい例えば能力を持つようなものを開発したとしても、現在の政府のスタンスは変わらないということだと思います。

安倍内閣総理大臣 NPRについては確かに変わっているわけでありますが、しかし、現実としては外務大臣が答弁したとおりであります。

 いずれにせよ、米国は、日本の非核三原則について十分理解しているということでございますので、想定はしていないということでございます。

藤野委員 非核三原則とばかりおっしゃるわけですが、この問題は、安保法制との関係でも大問題になるわけであります。

 総理は、ことし一月二十二日の施政方針演説で、こう述べております。「三年前、私たちは平和安全法制を成立させました。北朝鮮情勢が緊迫する中、自衛隊は初めて米艦艇と航空機の防護の任務に当たりました。互いに助け合うことのできる同盟は、その絆を強くする。」「日米同盟は、間違いなく、かつてないほど強固なものとなりました。」こう言っているわけです。

 これは防護の話なんですが、この新しいNPRのもとで、日本が核兵器を搭載した米艦艇や爆撃機を防護するのではないか、これも出てくるんです。持込みの話だけじゃなくて、海外でも日本が米国の核兵器を防護するのではないか。これを、そうはやらないということで安保法制のときには答弁があったわけですね。

 パネルを見ていただきたいんですけれども、これがその答弁であります。少し長いですが、紹介させていただきます。

 米国の核政策、例えば一九九一年のブッシュ・イニシアチブにおきまして、水上艦船及び攻撃型潜水艦を含む米海軍の艦船及び航空機から戦術核を撤去する旨を表明しています。また、一九九四年、核態勢の見直し、これはNPRです、として、水上艦及び空母艦載機から戦術核兵器の搭載能力を撤去することと決定しています。また、二〇一〇年、核態勢の見直しとして、冷戦終結後、米国は、水上艦及び通常型潜水艦から核兵器を撤去することを決め、太平洋地域から前方配備の核兵器を撤退させた。こうした政策を明らかにしております。

 こうしたさまざまな政策、そしてなおかつ核兵器の持つ特殊性を考えた場合に、米国が我が国に対しまして核兵器を搭載した航空機や艦船等を警護することを要請すること、これは考えられない、想定されない。

 こういう答弁なんですね。

 つまり、結局、こういうNPRなどで、核を配備しない、こういうことが大前提となって、日本は米国の核兵器を防護しないんだということになっているわけですね。これは答弁を変えられるということですか。

小野寺国務大臣 御指摘のことでありますが、米国は、繰り返しますが、非核三原則に係る我が国の立場をよく理解していることから、米国が核兵器を搭載した米軍機を我が国に飛来させたり領空を通過させたりするようなことは現状において想定されません。

 また、核兵器の特殊性を踏まえれば、米軍が自衛隊に対して核兵器を搭載した航空機や艦艇等の防護を要請することは想定されません。同じでございます。

藤野委員 結局、三原則に持っていくわけですね。

 今までは、アメリカの戦略がこうだから想定されないと言っていた。これがもう維持できなくなるわけです、今回のNPRで。そうしたら三原則ときた。

 いいですよ。その三原則も、これは大問題なんです。

 この問題は、いわゆる核の持込みに関する密約に重大な関連を持ってくる。核密約というのは、核兵器を搭載した米艦船や航空機が事前協議なしに日本へ寄港、飛来することを認めた秘密の合意のことであります。

 日米両政府の間に核持込みも認める密約があったことは、二〇一〇年、民主党政権で明らかになりました。我々は、日本共産党はこの密約を正式に破棄せよと求めたわけですが、しかし、当時の政府は、アメリカがまさにこのNPRで核を配備しないと決めている、だから持込みの問題は生じない、それこそ想定できない、配備しないんだから、こういう理由で核密約を正式には廃棄しなかったわけですね。

 総理にお聞きしたいんですが、大前提として、アメリカの核戦略は変わりました。配備することになりました。その一方で、核密約は廃棄されておりません。

 今、アメリカがこの密約に基づいて日本に核を持ち込んでくる危険性、アメリカの核戦略の転換に伴って、一方で核密約は破棄されていないもとで、現実のものになっているんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 先ほどから答弁をしておりますように、いわば、米国は、同盟国たる日本の非核三原則を十分に理解をしているわけであります。理解しているわけでありますから、彼らが配備をする、あるいは領海を通過する等々、寄港する等は想定できないということでございます。

藤野委員 いや、非核三原則のもとでも核密約があったではないか。しかも、それが廃棄されないままでアメリカが戦略を転換したことで日本に核が持ち込まれる危険が現実のものになろうとしている。これは絶対に許すわけにはいかない。

 委員長に求めたいんです。

 先ほどの答弁も全く納得できません。整合性がない。想定されないというのを維持しようとしている。そして、今の密約の問題、これも全く答弁になっておりません。政府のこうした問題、国民は強い関心を持っております。ぜひ政府の統一見解を出させることを求めたいと思います。

河村委員長 理事会で協議をさせていただきます。

藤野委員 終わります。

河村委員長 これにて藤野君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 きょうは外交問題なので、北朝鮮の問題についてまずお話を伺いたいと思います。

 亀井静香前衆議院議員と話をしたときに、私にこういうことを言ったことがあるんですね。

 反日、反米、親北の韓国の大統領が誕生したら、朝鮮半島問題は大きく変わる、同胞意識が再燃して韓国と北朝鮮が融和の方向に進み、韓国が間に入って米国と北朝鮮がミサイル問題を交渉する、また、韓国が間に入って日本と北朝鮮の拉致問題を交渉する、これが朝鮮半島問題を解決する、安定の方向に進む一番のシナリオだ、こういうふうな話をしておりました。

 私もそのときはそういう方向に簡単に行くのかなと思っておりましたが、今、その方向に、どこまで進むかわかりませんが、進んでおります。

 今、安倍総理は圧力と対話ということを申し上げておりますが、国連安全保障常任理事国に対しても、安倍総理は圧力を今かけなければならないということを強く申し上げていますし、アジアの地域のインドネシアとかフィリピン、オーストラリアについてもインドにおいてもそのようなことを合意している。また、バルト三国へ行ってもこのことについてお話をしているわけなんです。

 この最大限の圧力をかけるということを地道にやってきた成果が、今の、ほほ笑み外交と言われるような、北朝鮮が今とっているような外交を行う最大の要因になっているのかどうなのかということをまず総理に一点お聞きをしたいというのと、文在寅大統領が金正恩氏の早期の訪朝の要請を受けましたが、これに対しての安倍総理の考え方、そして、IOCのバッハ会長が、今度、オリンピックが終わりましたら、閉幕後に平壌を訪問すると言っておりますが、それについて安倍総理はどういうふうにお考えをしているのか、そのことの二つをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これまでも、北朝鮮の行動には一つの、ある種のパターンがあるわけでありまして、九四年の核合意のとき、あるいはまた二〇〇五年の六者協議の共同宣言のときもございます、いわばその時々に大きな圧力がかかるわけでありまして、大きな圧力がかかる中において北朝鮮が話合いを求めてくるということであります。

 しかし、そのときに、いわばこちらの対応がある種の幻想を持って、対話を信じることによって、例えば二〇〇五年は核の放棄を宣言したわけでありますが、翌年には核実験を行っているわけであります。そして、その後、彼らは、更に核施設を廃棄するということを宣言し、六者から重油をせしめた後は、実際にそれを破棄していくというパターンで来るわけであります。

 だからこそ、最大限の圧力をかけて、彼らの政策を変えさせるということとともに、しっかりと北朝鮮の側から話し合いたいと言ってこさせなければならない、こう考えておりますが、平昌五輪を契機に北朝鮮が南北対話を進め、ほほ笑み外交を展開している背景には、国際社会による北朝鮮に対する圧力強化が作用していると考えております。

 昨年十二月に国連安保理が、石油精製品の供給を約九割削減するなど、前例にない厳しい制裁措置を科す決議を、中国、ロシアも賛成し、全会一致で採択しました。私も、各国を訪問する際、これをしっかりと履行するように求めてきたところであります。

 と同時に、米韓合同演習や日米合同演習、日米韓の防衛協力を通じ、北朝鮮に対する抑止力が目に見えて強化されたことなどが大きな理由と考えられる、こう考えております。

 そこで、南北対話でございますが、現在、平昌オリンピックの成功に向けて南北対話が行われていることについては評価をいたします。しかし、北朝鮮は、平昌オリンピック開会式の前日にも平壌で大規模な軍事パレードを行ったわけであります。北朝鮮が、一九九四年の枠組み合意、二〇〇五年の六者会合共同声明を時間稼ぎの口実に使い、核・ミサイル開発を進めてきたとの反省を踏まえれば、北朝鮮とは対話のための対話では意味がないだろう、こう思うわけであります。

 過去にも韓国の首脳が訪朝をしたことはあるわけでありまして、二度首脳会談を行っています。そこで大切なことは、そこから成果が生まれるかどうかということでありますが、彼らは、今までは一貫して核とミサイルの開発をやり続けてきたのは事実でございます。

 北朝鮮との意味のある対話を行うためには、北朝鮮が、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄するとコミットし、それに向けた具体的な行動を示すことが必要であります。そのため、あらゆる手段を通じて圧力を最大限まで高め、北朝鮮に政策を変えさせ、北朝鮮の方から対話を求めてくるよう、引き続き日米韓で緊密に連携していかなければならない、このように考えております。

下地委員 簡単に、バッハIOC会長の訪朝と韓国の大統領の訪朝についての総理の考え。

安倍内閣総理大臣 韓国の大統領の訪朝については今申し上げたとおりでございまして、韓国の大統領については、金大中大統領も訪朝しました。盧武鉉大統領も訪朝しました。果たして結果がどうなったかということ等についても、しっかりと分析をしていく必要があるだろうと思います。

 つまり、対話のための対話では意味がないということであって、先ほど申し上げましたように、核兵器の完全、検証可能そして不可逆的な方法で廃棄をさせるということにコミットさせ、具体的な行動をとらせる必要があるんだろうと思います。それが必要だろうと思います。

 また、バッハ会長はまさにIOCの会長として訪問されるわけでありまして、いわば今後のオリンピック運動の延長線上で対応されるんだろう、このように理解をしております。

下地委員 今の総理の御答弁をお聞きすると、今の韓国の大統領が今訪朝することはタイミングではないというようなお話だったと思うんですけれども、そういう理解でいいんですか。

安倍内閣総理大臣 これは韓国の外交方針でございますから、一々私が申し上げることは差し控えさせていただきますが、今までの経緯については御紹介をさせていただいた、こういうことでございます。

下地委員 先ほど話があったように、総理の圧力が効果を奏して、今、平昌におけるいろいろな外交が生まれたことは確かだと思うんですね。

 しかし、大統領の今までの経緯というのを見ると、盧武鉉政権時代の太陽政策のときの秘書室長、こういうふうなことをやられている大統領、また、お父さん、お母さんが北朝鮮の出身だというような大統領である。また、今回においても、制裁措置があるにもかかわらず、この制裁措置を緩和しながら、崔輝国家体育指導委員長を韓国に招き入れるとか、万景峰号の入港を手続を解除しながらやるとか、私たちが考えている以上に、韓国の大統領は太陽政策を地でいっているようなものなんですよ。そういうふうな状況が今続いている。

 しかも、私から見たら、今まで北朝鮮のカードと言われていたロシアや中国のカードもそう大きな成果を出すようなところにいっていないということなどを考えると、私は、この今の流れを見守るというか、私たち日本は、今までの経緯はいっぱいあったにしても、今の大統領が今やろうとしていることを、米韓の軍事演習をやるべきだとか、今、従軍慰安婦問題をもって会談をするとかそういうふうなことは置いておいて、見守るというのが、今、新しい朝鮮半島における一つのスキームという意味では、私は試みとしてはおもしろいんじゃないかというふうに思うんです。

 だから、総理にお伺いしたいんですけれども、今の平昌の流れをとめないようにするためには、日本という国家は何をしなければいけないのか。今総理が言っているように、厳しい圧力というステップをずっと続けるのか、それとも、総理の圧力によって、外交によってここまで来た、次のステップに移るというようなときに、新しい考え方のもとにやるのか、今までどおり圧力をかけていくのか。

 この韓国の新しい大統領というのは、私は、今までの中で盧武鉉政権の太陽政策を一番実行したいと思っている大統領がいるという現実を踏まえて、総理は新しいステップに入るつもりなのか、今までどおりやるのか、どっちなのか、少しお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今後の北朝鮮対応について今軽々に申し上げることはできないわけでございますが、大切なことは、今対話ができているからといって制裁を弱めていくというのは思うつぼになるわけであります。韓国もそれはとらないということであろう。

 今、対話をすることによって、対話に対して対価を払っていけばいわば対話のための対話になっていくわけでありまして、私たちの目的は、対話ではなくて、北朝鮮の非核化であります。これをしっかりと彼らにコミットさせていく、そして行動をとらせていくことがとても大切であろうと思います。

 そして、実際、九割の石油製品をとめるというのは、これは大変な圧力になっているはずであります。これを実際に我々は各国に履行させる。そして、いわば不法な取引も阻止していく。ですから、私たちは、実際、瀬取りに対して対応し、そして何回かその瀬取りを阻止しております。そして、瀬取りをやっているタンカーを公表しつつ、これをなくしていくことによってより圧力を高めていくことが大切であろう、このように思うわけであります。

 彼らは今まで何回も国際社会を欺いてきたわけであります。長い年月、ずっとそうであります。いわば、こちら側の国は民主国家でありますから、対応する人がかわっていきますからまた同じことが起こるんですが、向こうは大体同じ家系でずっとやっているわけなんですね。同じ戦略で、同じようなパターンで来ているんですが、ところが、同じことが繰り返されておりますから、まさにここが私は正念場なんだろうと。だからこそ、日本、アメリカ、日米、日韓、日韓米で、現状認識とこの戦略をともにする必要があるんだろう、このように思います。

下地委員 私は圧力を弱めろと言っているわけじゃありませんが、今までの大統領と違う韓国のこの大統領のカードというのは、私は、ある意味、新しい北朝鮮、半島の問題では活用できるのではないか、こういうことを申し上げておきたいというふうに思います。

 もう一つですけれども、小野寺大臣に申し上げたいんです。

 これは復帰後四十五年間で沖縄で起こった事件、事故ですけれども、五千九百四十九件。そのうちの二十七件が殺人事件、そして三十件が交通事故、五十七人の人が亡くなって、凶悪犯は、強盗や放火や強姦が六百六あるんですよね。これが今の現状なんですよ。

 もう一枚ちょっと見せてもらいますが、今大きな問題になっています米軍機による事故。事故は、見ていただくとわかりますが、二〇一六年から十五回起こっています。横の方には自衛隊の事故も見えますが、これも六回起こっていますね。

 こういうふうな状況がずっと続いているということ、事件、事故が五千九百回ある、そのうちの六百六回が凶悪事件だというようなものがずっととまらないでいるという状況について、今まで事件が起こるたびにいろいろな発言をしてきましたが、米軍に対しても大臣がいろいろな要望をしていますが、一向に効き目がありません。

 そういう意味で、本当にこれをとめるためには、大臣は、何をすればこういう事件、事故がとまるというようなことを本気でお考えになっているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 沖縄県で発生した米軍人軍属等による犯罪検挙の状況については、今示された沖縄県の統計資料でも、私ども、大変重く受けとめております。

 米軍の我が国への駐留に当たっては、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはならないもので、安全の確保については最優先の課題であります。

 ヘリの事故や予防着陸、緊急着陸が続いていることについては、私もマティス長官に強く申し入れ、マティス国防長官からは謝罪もありました。再発防止について、重大な課題として取り組むという表明もありました。

 今後ともしっかり努力してまいりますが、例えば現在の普天間所属のさまざまなヘリの事故については、やはり一日も早く、普天間の危険性除去のためにも、私どもとしては、辺野古を含めた新しい場所へ移して、そして一日も早くこの危険性の除去をする、さまざまな米軍再編の事業を着実に進めていくということ、これも一つの解決につながる道筋じゃないかと考えております。

下地委員 普天間基地の辺野古移設の問題とこの事件と事故とは関係ないんです。

 今私が申し上げているのは、どういうふうにしたらこういうふうな墜落の事故とか部品が落ちるとかいうものがなくなっていくのか、それと事故、事件がなくなっていくのかということを言っているんです。

 小野寺大臣も、もう何度も何度も、飛行の自粛を求めていますとか再発防止に協力しますとか言っていますが、全く効果がないんですよ。そこを本気で考えているのか。

 ニコルソン四軍調整官、そして、これだけ五十七人も沖縄の県民の人が亡くなっているにもかかわらず、防衛大臣が辞任したとか、陸上幕僚長が辞任したとか、四軍調整官がやめたというのは一回もありませんよ。やはりここはおかしいと思わないかということなんです。

 もう一個パネルを見せていただきますが、米国は日本を防衛する義務がある、日本はそのために米軍に施設・区域を提供する義務を負う、こう書いてあるんですよ。だから、沖縄での事件、事故があった場合に、最高責任者はあなたなんですよね、あなたが本当にどうするかということを決めないと、これはだめなんです。

 私は辞任しろとは言わないけれども、今まで事件、事故があったにしても、誰一人として責任をとっていない。アメリカの司令官も、私が二十年間見ている範囲では一人も、強姦殺人事件があっても謝るだけ、それだけで終わっている。

 私は、そういうふうな意味においては、その責任をとるという人が明確にならないと、部下はしっかりと、緊張感を持って事件、事故を解決することはできないと思うんですね。

 殺傷能力を持つ武器を持つのは軍人だけなんですよね。この殺傷能力を持つ武器を持って、平和のためにということではあるけれども、それを行使するというのは、やはり、尊敬されて、信頼があって、規律を守って、そして品質が高い軍事行動をとれる、こういう人の信頼があるから、自衛隊や米軍に対して私たちは信頼を持って、殺傷能力のあるいろいろな武器を提供しているわけですよ。しかし、そういう信頼がもう失われている。

 このままの状況では、この五千九百回という数を見ても、私は沖縄もそろそろ限界かなと思うんですけれども、防衛大臣、この二十四年、二十五年で、自衛隊員が自殺して亡くなった数、何人かわかりますか。

小野寺国務大臣 済みません。通告がありませんので調べて御報告しますが、もしかしたら、委員は既に知っているのではないでしょうか。

下地委員 これは知っていますよ。二十四年が八十三人、二十五年が八十二名、そして二十六年が六十九名。やはり、こうやって自衛隊という崇高な役割をやろうとした人が自分で命を絶っているということは、私は重いことだと思うんですよ。

 今度、働き方改革を安倍総理が一生懸命に取り組まれていますが、いろいろな背景があったと思いますが、電通の高橋まつりさんの過労自殺がありました。そのときに、電通の石井直社長は辞任しました。この辞任をしたというところからこの会社が変わり、そして、今の働き方改革をどうしようかという論議が生まれてくるんですよね。

 私は、そういう意味では、やはり政治家とか軍人のトップが責任をとるという仕組みをつくらないと、この問題は解決しないんじゃないかと思うんですね。これをやるつもりがあるのかないのか。

 本当に、もう一回こういう事故が起こる、そういうふうなことが起こったときに、私が責任を持ちますというようなことをおっしゃる。これはアメリカの責任じゃないですよ。後ろでアメリカだとか言っていますけれども、違う。ここに、法律どおり私たちの国が認めている以上は、この責任は防衛大臣にあるんですよ。あります。駐留を認めている、安全保障の役割を持っている認識、この話で、こうやって小野寺さんが笑ってやられるところに私は問題があると思うんですよ。

 この日米安保条約というのは、今、あなた方防衛省と米軍との間によってこの役割を担っているんでしょう。(小野寺国務大臣「委員長」と呼ぶ)いや、委員長じゃないよ。いや、いい。(小野寺国務大臣「いや、ちょっと誤解がありますので」と呼ぶ)いや、誤解って、これは俺が質問するんですよ。違う、違う。座ってください、座ってください。(小野寺国務大臣「今、済みません、日米安全保障条約の問題でありますので、これは防衛省の責任では、というよりは、日米の関係の問題だと思います」と呼ぶ)いや、座ってください。これはちょっとおかしいでしょう。いや、あなた、座ってください。いやいや、それは違うって。

河村委員長 大臣、ちょっとお待ちください。

下地委員 質問する人が終わって、委員長が指名してから来るんですよ。当たり前のことをちゃんと守ってくださいよ。

 これは、日米安保条約の中にその項目が書いてある以上は、その地域で米軍を管理する役割も、米軍との共同使用の役割も、それは小野寺さんにある。私は、そういう意味では、小野寺さんが私に責任はないとおっしゃる以上は、もうそんなものだろうなと思いますよ。だから、沖縄の人たちもそろそろ目覚めなければいけない。事件が起こっても事故が起こっても、それを外務省や防衛省にお願いして何かを変えようといっても、これは無理なんですよ。こういうふうなことでやっていても無理。

 だから、これからは、事件、事故が起こったら、やはり県知事がしっかりと自分で米軍と話し合って、本当にこれが許されないことだったら県知事の権限で水道事業をとめるとか、県知事の権限で県道に米軍のYナンバーを入れないとか、そろそろ自分の権限で米軍との関係を考えていかないと、やはり僕は無理だと思うんです。(発言する者あり)あり得ないことなんですけれども。あり得ない数字だろうが。これだけの数の人間が死んでいることがあり得る数字だと思うんですか、石破さん。おかしいでしょう、それは。(発言する者あり)権限というのは、日米同盟の中で誰がこの場所を指摘しているかと言っているわけですよ。(発言する者あり)いやいや、あなたが言っているから僕は答えているんですよ。これは間違いなく、間違いなくここは……(発言する者あり)やじを言うんだったら、やじを聞く……

河村委員長 下地君、政府側に向かってやってください。

下地委員 そういうふうな態度でやっているからだめだと私は思いますよ。(発言する者あり)意味がわからなかったら……。わからないのかね。こんな事件、事故をなくそうと思っているということを言っているだけの話であって、このことが意味がわからないのかね。

 では、総理、お願いしますよ。

安倍内閣総理大臣 いわば、日米安保条約において米軍が駐留し、そして、いざというときには日米で共同対処するわけであります。

 米軍においてこうした不祥事が続いていることはまことに残念で遺憾なことだと思いますし、そうした負担を沖縄の皆様に強いているということについては、これは我々も大変申しわけない思いでございます。そして、その中でいわば沖縄の負担を軽減していくための努力を進めていきたいと思いますし、まさにそうした出来事を減らしていく上においても、海兵隊のグアムへの移転を一日も早く、これは九千人ですから相当の規模の移転になるわけでありまして、やっと予算の凍結が解除されたわけでございますので、こうしたこともしっかりと進めていきたい、こう思っております。

 また、いわば飛行停止等の申入れについても、米軍機の事故への対応については、平成十六年の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故の際には米側に飛行停止を求めたところでありますが、それ以降も、非常に残念ながら米軍機の墜落事故や飛行中の部品落下事故等の発生が続いてまいりました。しかし、日本政府としてはこれまで飛行停止を実は求めてこなかったのが現実でございますが、これに対しては、我々の政権においては、地域住民の方々の安全確保が最優先であると考え、重大な事故について、今回、小野寺大臣からもしっかりと飛行停止を求めているところでございます。

 私ども、いわば、まさに日米同盟において我々は抑止力をしっかりと維持しているわけでございますが、こうした被害については、これは政府の責任者として責任を感じているところでございます。いわばこれは日本全体で引き受けなければいけないことだ、責任について、こう思っているわけでございます。内閣として責任を感じておりますが、これはもちろん小野寺大臣に帰するものではない、こう考えております。

 いずれにせよ、今、下地委員から言われたことについては、沖縄の皆様に寄り添いながら、しっかりとこういう現実を見据えながら我々も今後対応していきたい、こう考えております。

下地委員 もう終わりますけれども、これだけ五十七人の人が亡くなって、これだけの事件、事故がある。それは沖縄に基地があるからそういうことが起こるのであって、そういうことを考えた上で、この沖縄に事故が起こったり事件が起こったりすると、これは私の責任だと思うぐらいの気持ちで米軍と話し合いをして物事をやっていくような防衛大臣が来ないと、この問題はいつまでたっても変わらない。

 だから、私はもう一回言っておきますけれども、もし沖縄でまた殺人事件があったり強盗事件があったりなんかした場合には、防衛大臣が自分で辞任する、そういうふうな迫力で米軍に対して絶えず臨む、こういう姿勢でやっていかないと安全保障は守れませんよということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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