衆議院

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第14号 平成30年2月20日(火曜日)

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平成三十年二月二十日(火曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 菅原 一秀君

   理事 田中 和徳君 理事 橘 慶一郎君

   理事 福井  照君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 津村 啓介君

   理事 竹内  譲君

      あべ 俊子君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    衛藤征士郎君

      金田 勝年君    神田 憲次君

      工藤 彰三君    小林 茂樹君

      古賀  篤君    國場幸之助君

      佐藤ゆかり君    竹本 直一君

      武井 俊輔君    中村 裕之君

      中山 展宏君    根本  匠君

      野田  毅君    原田 義昭君

      平井 卓也君    平沢 勝栄君

      星野 剛士君    務台 俊介君

      村上誠一郎君    盛山 正仁君

      山口  壯君    山本 幸三君

      山本 有二君    渡辺 博道君

      阿部 知子君    青柳陽一郎君

      岡本あき子君    落合 貴之君

      長妻  昭君    山内 康一君

      浅野  哲君    井出 庸生君

      伊藤 俊輔君    稲富 修二君

      小熊 慎司君    大西 健介君

      源馬謙太郎君    後藤 祐一君

      西岡 秀子君    山井 和則君

      伊佐 進一君    浮島 智子君

      中野 洋昌君    濱村  進君

      金子 恵美君    黒岩 宇洋君

      原口 一博君    高橋千鶴子君

      藤野 保史君    遠藤  敬君

      丸山 穂高君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   文部科学大臣       林  芳正君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       齋藤  健君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣        

   (国家公安委員会委員長) 小此木八郎君

   国務大臣        

   (経済再生担当)

   (人づくり革命担当)   茂木 敏充君

   内閣府副大臣       あかま二郎君

   総務副大臣        奥野 信亮君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            更田 豊志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  多田健一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       植田  浩君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          森永 耕造君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   北崎 秀一君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        羽尾 一郎君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  黒田武一郎君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   茶谷 栄治君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            義本 博司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         村田 善則君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (水産庁長官)      長谷 成人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            多田 明弘君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    安藤 久佳君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         田村  計君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 奥田 哲也君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  西田 安範君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     中山 展宏君

  江藤  拓君     武井 俊輔君

  古賀  篤君     國場幸之助君

  星野 剛士君     小林 茂樹君

  山内 康一君     長妻  昭君

  井出 庸生君     伊藤 俊輔君

  稲富 修二君     西岡 秀子君

  小熊 慎司君     源馬謙太郎君

  後藤 祐一君     浅野  哲君

  伊佐 進一君     浮島 智子君

  中野 洋昌君     濱村  進君

  原口 一博君     金子 恵美君

  藤野 保史君     高橋千鶴子君

  遠藤  敬君     丸山 穂高君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 茂樹君     星野 剛士君

  國場幸之助君     古賀  篤君

  武井 俊輔君     神田 憲次君

  中山 展宏君     工藤 彰三君

  長妻  昭君     山内 康一君

  浅野  哲君     後藤 祐一君

  伊藤 俊輔君     井出 庸生君

  源馬謙太郎君     小熊 慎司君

  西岡 秀子君     山井 和則君

  浮島 智子君     伊佐 進一君

  濱村  進君     中野 洋昌君

  金子 恵美君     原口 一博君

  高橋千鶴子君     藤野 保史君

  丸山 穂高君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     江藤  拓君

  工藤 彰三君     中村 裕之君

  山井 和則君     稲富 修二君

同日

 辞任         補欠選任

  中村 裕之君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  務台 俊介君     岩屋  毅君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算、平成三十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官多田健一郎君、内閣官房内閣人事局人事政策統括官植田浩君、人事院事務総局職員福祉局長森永耕造君、内閣府大臣官房長北崎秀一君、総務省自治財政局長黒田武一郎君、財務省主計局次長茶谷栄治君、財務省理財局長太田充君、文部科学省高等教育局長義本博司君、文部科学省高等教育局私学部長村田善則君、文化庁次長中岡司君、厚生労働省医政局長武田俊彦君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、水産庁長官長谷成人君、経済産業省大臣官房審議官中石斉孝君、経済産業省製造産業局長多田明弘君、中小企業庁長官安藤久佳君、国土交通省土地・建設産業局長田村計君、国土交通省自動車局長奥田哲也君、防衛省整備計画局長西田安範君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 本日は、社会保障・人づくり革命等についての集中審議を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。あべ俊子君。

あべ委員 おはようございます。自由民主党、あべ俊子でございます。

 本日の集中におきまして予定した議題に一つ追加をさせていただきまして、先日来、裁量労働制のデータ問題で、国民の皆様が本当に混乱を来しているのではないか。昨日のこの予算委員会におきましても、野党が退席をするまでに至った。この働き方改革、重要課題であることは改めて認識したとともに、我々与党といたしましても、この制度についてしっかりとした説明を行っていくことが必要だというふうに感じたところであります。

 この問題に関しまして、何といっても政治は命や暮らしに直結をしていきます。この問題、昨日の予算委員会においても、隠蔽していたのではないか、この問題が指摘をされておりましたが、国民の皆様も、前後関係を含めまして、一体事実は何なのか、大変不安に感じているところだと思います。

 改めまして、厚生労働大臣、時系列に沿った正確な説明を求めます。

加藤国務大臣 私どもの調査をいたしました労働時間等総合実態調査結果につきまして、この委員会始め、国会に対して、精査をしなければならないデータをお示しをし、答弁をさせていただき、また、精査をした結果において、一般的な労働者と裁量制における労働者における平均的な者についての時間の選び方が異なっておりまして、異なるデータを比較してお示しをしていた、これは大変不適切であり、こうしたことに対して、国会の皆さん方に、そして国民の皆さん方に大変な御迷惑をおかけしたことをまず心からおわびを申し上げたいと思います。

 その上で、今、経緯をということでございました。

 この国会でも、野党の皆さんからも含めて、いろいろとこのデータについて御指摘をいただきました。あるいは、この国会の場以外においても、さまざまな形で御指摘をいただきました。

 私の方には、二月の七日でありますけれども、事務方から、データに問題があるのではないかという御指摘を野党の先生方からいただいているということ、また、それぞれ、この実際のデータでありますけれども、事務局が調べたところ、一般の労働者の平均的な者については、月当たりで平均的な者を選び、その者の一週間、一日の長いデータを採用していた、他方、裁量労働制についての平均的な者については、どういう形で選んでいたのか不明である、そういったことの報告がございました。

 私の方からは、過去の資料をしっかり調べるなり、あるいは、実際の監督指導、すなわち調査に当たった監督官にしっかりヒアリングをするなどして、そういった具体的な、どういう選び方をしてきたのか、そういったことを含めて、個々のデータについてしっかり精査をするようにということを指示させていただきました。

 その後、事務局において、監督官等の聞き取り等を行い、また、私どもの事務所というか役所の中において、これは、今回、平成二十五年度のものではありませんが、同じような調査をした平成十七年度の調査において、今申し上げた裁量的な労働者の平均的な者をどういうふうにとるのか等々の質問が地方局からあり、それに対する答えをしていた、これは疑義応答というのでありますが、それが見つかり、そのことについて、二月十四日の午後、私に報告がございました。

 私の方からは、その疑義報告について、改めて基準監督官にも確認するとともに、また、さまざまなデータについての御質問もありましたから、それらを含めて、精査の結果を速やかにまとめるように指示をしたところでございます。

 そして、二月十六日の午後において、平均的な者の労働時間等々について最終的な確認ができましたので、二月十八日に理事会への御報告内容を取りまとめ、昨日、御報告をさせていただいたところでございます。

あべ委員 大臣の非常にわかりやすい時系列の説明の中で、決して隠蔽ではなかった、このことがわかったわけであります。

 しかしながら、比較するのが不適切であったデータに基づいて国会で答弁をしたことは、与党議員としても大変遺憾に思うところであります。

 しかしながら、裁量労働制の見直しを議論した労政審、労働政策審議会では今回問題となっていたこのデータを含めまして一般労働者との比較の資料は一切使われていなかったかどうかということは、非常に重要だと思っております。

 改めて、大臣、このことに対して答弁を求めます。

加藤国務大臣 企画業務型裁量労働制の見直しについては、平成二十五年から二十七年にかけての労働政策審議会において議論されたところでありますが、平成二十五年度労働時間等総合実態調査の結果、これは冊子の形になっているのでありますが、それは事務局から資料として提出をさせていただいております。

 ただ、その冊子としてお示しをさせていただいた中には、今御議論いただいているような一般労働者の一日の時間外労働の実績については含まれておりません。また、企画業務型裁量労働制と一般労働者の方のそうした時間を比較しているような資料も提出をしていないところでございます。

 いずれにしても、労働政策審議会においては、さまざまな観点から御議論をいただき、おおむね妥当という結論をいただいたところでございます。

あべ委員 ありがとうございました。

 そういう中にあって、やはりまだまだ国民の皆様の不安は大きい。命あっての仕事であります。どういう働き方をしていくかということが非常に重要な中、この裁量労働制に関しましては、不安の中にあっても、この制度がうまく運用されることも、効率的に仕事を進めて、また、ワーク・ライフ・バランスが確保できる、そういう目的であったのではないかと私は与党の中で説明を聞いたときに思ったわけであります。

 改めて、この制度の本来の目的は何だったのか、大臣に確認させてください。

加藤国務大臣 裁量労働制度は、みずからの裁量で時間配分や出勤時間などを決めることができ、そして自律的で創造的に働くことができる、そういうことを目的とした制度でございます。

 御指摘のように、この制度、現行もあるわけでありますけれども、その中においても、その制度に対してメリットを感じている方もいらっしゃいます。また、他方で、濫用あるいは法に適さない、そうした運用がなされているという事態もございますので、こうしたメリットについてはしっかり享受をしていただく、しかし、そうした濫用等、デメリットといいますか、そういったことに対しては、しっかり監督指導して、是正を図っていきたいと思います。

あべ委員 大臣のおっしゃるとおり、メリットだけではない部分に関してはしっかり配慮をしていくことが重要だというふうに思っておりますが、やはり何といっても皆様が今不安なのは、裁量労働制において、長時間労働の温床になるのではないかという方々が多いようにも思います。

 しかしながら、この日本、しっかり前に進んでいく中で、働き方改革をしていかなければいけない、多様な働き方をまた見ていかなければいけない。

 総理は、みずから、賃金を上げろと経団連に申入れをし、日本の働く人たちを守ろうとしています。そういう中で、今回の法案が、この温床になるために出しているわけではない、逆に、多様な働き方を支えていき、バランスのとれた、ワーク・ライフ・バランス、特に女性に重要であるこの働き方を支えていくんだと私は思っております。

 本人や御家族のことを考えれば、長時間労働による過労死、これは根絶すべきであります。そうした声を認識しながら、健康確保のための措置、これを確保していくことが本当に重要だと思っておりますが、改めて、大臣、働く人たちの命をどうやって守っていくか、この制度の中にどう組み入れてくださったのか、御説明をいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、どういう働き方であったとしても、過労死を引き起こすようなこと、これは絶対に避けていかなきゃならない、また、起こらないように、我々はしっかり対応していかなければならないというふうに思います。

 今回の裁量労働制についてでありますけれども、まず労働時間の状況をしっかり把握をするということが大事でございます。そして、その上において、実際の労働時間、働いておられる時間と、裁量労働制において前提となっている時間、これはみなし労働時間といいますけれども、この乖離があれば、それについてしっかりとチェックをしていくということでございますし、また、かなり乖離があれば、その是正指導をしているということでこれまでも対処させていただいております。

 今回の提出を予定している法案要綱においては、政府、厚生労働省において指針というのを定める、そして、その指針に対して、裁量労働制を導入することを決める労使委員会というのがありますが、それを遵守、守っていかなきゃいけない、そしてまた、厚労省はその指針に基づいて労使委員会を監督指導するという根拠規定も置かれるということでございますから、そういったことを含めて、先ほど申し上げた適切でない運用に対してはしっかりとした是正指導をしていきたいと思っております。

あべ委員 ぜひとも、指導も含め、この法案を前に進めていただきたい。私は、日本が停滞するという余裕はこの国にはないんだと思っております。

 これとかわりまして、私の本来準備していました質問の方に移らせていただきます。地域医療構想に関してであります。

 資料を見ていただきたいと思います。

 二〇一五年度、全国の医療機関、病気やけがで支払われた医療費の総額、国民医療費は四十二兆三千六百四十四億。九年連続して上昇であります。

 では、この医療費は誰が払っているのか。

 平成三十年度の予算におきましては、社会保障関連費三十三兆、三十二兆九千七百三十二億円でございます。過去最大を更新する状況。そのうちの三割が医療費であります。

 我々政治家は、次世代のための日本を考えていく、次世代のためにしっかりとした日本を送り継ぐという役割を持っています。今回、診療報酬含め、トリプル改定がありました。私は、もっと切り込みが必要だったと思っています。

 そうした中、個人の医療の例を見てください。七十五歳以上の方が風邪を引いた、薬をもらった、そうした中で、本人負担は一割であります。一割である中、では、この一割のほかは誰が支払っているのか。本人たちが払っている保険料は六・八%、現役世代からの支援金が三六%、税は三四・八%入り、公債金は一二・五%であります。

 医療をこれからどうしていくのか。この国のあり方が私は大きくかかっているんだと思っています。

 そこで、これからの日本の医療がどうなっていくかということがかかっている地域医療構想、これに関してでございますが、今、各地域においてこの協議をしております。

 地域ごとの事情において、医療の機能分化、連携を進めているところでありますが、しかしながら、地域の取組だけでは機能分化、連携が進まない場合には、都道府県知事、医療法上の役割を適切に発揮して医療機関への命令、勧告ができるなど、この構想の実現に向けて、知事の権限の強化が定められているところであります。

 特に、公的な医療機関は、みずから担う病床機能の見直しについて積極的に取り組む必要があります。

 政府の出した二〇二五年の病床数の必要量をもとに、平成二十八年時の実際の病床数を基準として、機械的に私が計算をしてみました。

 日本は、諸外国に比べ、ベッド数が多く、平均在院日数も長いとされています。高度急性期、平成二十八年の十七万床から、二〇二五年には十三万床となり、二三%減らしていく必要があります。急性期は、五十八万床から四十万床で、三一%減らしていく必要があります。回復期は、現在の十四万床から三十七万床と増加することになり、一七〇%と増加が見込まれます。

 この変化を、開設の主体ごとの病床機能別に私自身が機械的に推計いたしました。地域で話し合っても結論が出るようには見えないからであります。都道府県知事は決めることはできません。政府がしっかりと、また政治がしっかり責任をとって、この指標を出していくべきであります。

 二〇二五年には、公立病院で二万八千床減らす必要があります。公的病院とされている日赤でも七千床、済生会で二千床、平成二十八年と比べて余剰となるということになります。

 病床整備に関しましては、判断の根拠となる何かの指標や基準がないと、各地域で話合いをして知事が最後決めろというのは余りにも無責任ではないかと思います。今後、地域医療構想を進めていく中で、その判断根拠となる基準がないまま知事の権限の行使に踏み切ることは、現実的に難しいのではないかと思います。

 そこで、厚生労働大臣、地域医療構想において都道府県知事が命令、勧告の権限を行使するに当たり、その判断基準をさらに明確にすべきではないかと思いますが、御見解をお伺いいたします。

加藤国務大臣 今委員御指摘の地域医療構想でありますけれども、その地域の全ての患者さんの状態に応じて必要な医療が適切な場所で受けられるようにということで、そうした二〇二五年の状況を見ながら病床数の必要量を推計しているわけでありまして、都道府県に設置されている地域医療構想調整会議では、この推計結果を踏まえて、地域の医療関係者が協議をしながら、病床の機能分化あるいは連携、そういった取組を進めていただいております。

 その上で、地域医療構想調整会議での協議を踏まえた自主的な取組だけでは病床の機能分化や連携が進まない場合には、医療法上、委員お話がありました、都道府県知事に与えられている地域医療構想を進めるための権限、これは幾つかありますけれども、それを適切に行使をしていくことになります。

 ただ、公的医療機関に対して等々のお話がありましたけれども、公的医療機関などが地域で担うべき役割やその必要な病床数については、地域の医療需要の動向や他の民間医療機関との役割分担など、これはもう地域の実情によってさまざまでありまして、あらかじめ、こうだということを一律に国の方からお示しをする、都道府県知事の権限行使の基準とか設置できる病床数についての基準を一律にお示しをできるものではないというふうに考えております。

 しかしながら、厚労省としては、地域医療構想調整会議において適切に協議が進むよう、地域の議論の状況を的確に把握しながら、きめ細かな助言など支援をしていきたいと思っております。

あべ委員 地域それぞれが決めていく、それは一見、非常に地域の事情を鑑みて重要だと思いますが、決められない。ある程度の指標が必要だと思っています。

 そうした中にあって、公立病院の役割、これを総務省にお伺いいたします。

 公立病院は、地域医療において重要な役割を担っております。例えば、そのために、平成二十七年度の繰入金額、これに関しましては、特に、全体の経常収益は約四兆百八億円でございます。ここに、他会計の繰入金の、地方公共団体の一般会計から繰り入れられた収入の約六千九百五十九億円が含まれております。これに対して経常費用は約四兆六百五十六億円でございまして、約五百四十八億円の赤字でございました。病院単位では、全八百十二病院中の四百七十五病院、全体の五九%が赤字となっています。

 しかしながら、公的、公立病院は、地域の医療を担ってくれているわけであります。

 そうした中、単純計算すると一床当たり年間三百七十五万円、一ベッドに出ているこの公立病院、自治体会計のサポートが必要とされているところでございますが、総務省が平成二十七年三月に新公立病院改革ガイドラインを策定いたしました。公立病院に期待される主な機能を示すとともに、民間病院を対象に含めた地域医療構想を踏まえ、各地方公共団体の改革プランにおいても公立病院の役割を明確にすべきだということが出されております。

 一方、公立病院における地方交付税措置におきまして、特別交付税として、不採算地区に該当する病院への措置がございます。これは今、二種類あるところでございますが、特に、不採算地区病院第一種は、一年間に百三十四万九千円出ているところでございます。

 総務省にお伺いします。この不採算地区の定義は、どこでどのように決まったんでしょうか。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 不採算地区病院の地域要件につきましては、従来は、市町村内唯一の病院である、これを基本としておりましたが、市町村合併の進展に伴いまして、多くの自治体からその見直しを求める意見が寄せられておりました。

 このため、行政区域ではなく、実質的な生活圏や立地地域の人口集積に着目しまして構造的な不採算性を判定することとし、平成二十一年度より、僻地診療所の定義などを参考に、最寄りの一般病院までの移動距離が十五キロメートル以上である病院、及び、周辺の人口規模を勘案し、国勢調査における人口集中地区以外に所在する病院、この二つを対象とする見直しを行いました。

 さらに、この周辺の人口規模の要件につきましては、人口集中地区以外に所在していても周辺人口が多い病院が対象となるなどの課題がありましたので、平成二十七年度におきまして、対象を病院の半径五キロメーター以内の人口が三万人未満であることとしたところでございます。

 これらにつきましては、最終的な定義としては、特別交付税に関する省令で定めております。

 以上でございます。

あべ委員 地方において、病院は、命を守るためのライフラインであります。特に僻地医療、私はこれは国がしっかりと守っていくべきだというふうに考えているところであります。

 そうした中、先ほどの説明にございました不採算地区病院、僻地診療所の定義ということが最初参考にされたというふうにも聞いておりますが、厚生労働省にお伺いします。

 この僻地診療所の定義のうち、設置予定地から最寄りの医療機関まで三十分以上要するという基準は、いつどのような根拠で決まったんでしょうか。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 僻地診療所についての御質問でございますけれども、この僻地診療所につきましては、昭和三十一年度に厚生省が策定した第一次僻地保健医療対策におきまして、無医地区及び準無医地区における地域住民の医療を確保することを目的に、予算上補助すべき対象として設けられたものでございます。

 この僻地診療所の設置基準につきましては、僻地保健医療対策実施要綱におきまして、設置予定地を中心としておおむね半径四キロの区域内にほかの医療機関がなく、当該区域内の人口が千人以上であり、設置予定地から最寄りの医療機関まで通常の交通機関を利用して三十分以上要することなどを要件としておりまして、この三十分以上という規定でございますけれども、昭和五十年策定の第四次僻地保健医療対策において定められたものと承知をしております。

 この基準を規定した根拠を示す十分な資料は現在残っておりませんけれども、僻地における医療提供体制の整備がほかの地域と比較しておくれており、通常想定される日常生活の活動範囲における医療提供体制が確保されていない状況を念頭に設定されたものと想定をしております。

あべ委員 僻地の診療所のこの根拠が曖昧な状態である中、不採算地区病院と僻地の診療所では対象が大きく異なります。また、同じにはかることができない。

 医療で本当に重要なのは何なのか。発症したときに六十分以内に到着できる病院があることだということを、さまざまな有識者の方々からお伺いしております。

 私は、何度も申し上げます。地方の医療は守らなければいけない。僻地の医療は守らなければいけない。ここにしっかりと税を入れていくことは重要であります。しかしながら、総務省の今の不採算地区の定義は私は見直しをする必要があると思いますが、総務副大臣、いかがでしょうか。

奥野副大臣 不採算地区の病院の地域要件については、さまざまな地域における実態や地域医療関係者からの意見を踏まえつつ、過去に、平成二十一年度及び平成二十七年度において、実質的な生活圏や立地地域の人口集積に着目したものとなるよう見直しを行ってきたわけであります。

 今後とも、地域における人口や移動手段などの実情及び社会情勢の変化を始めとするさまざまな観点を勘案するとともに、不採算地区病院の実態を踏まえながら、地域要件について多くの関係者の意見を丁寧に聞いてまいる所存であります。

あべ委員 不採算地区病院、経営が特に厳しいと聞いています。

 経営が特に厳しい中、経営が厳しいから税を入れるのではない。経営が厳しい状況が続いているのは、その病院が地域にとって本当に重要な医療を担っているのであれば、我々は、税をその中に投入するのは全く問題ないと思っています。

 しかしながら、ほかの医療機関にその公立病院を飛び越えてかかっているという実態はないんだろうか、それで患者が来ないという実態はないんだろうか。市町村の職員が出向で事務長をやっているようでは、病院の経営はわかりません。

 そういうことをやっているのではないかも含めて経営状況をしっかり見ていかなければいけないというふうに考えるところでありますが、この公立病院、地方公営企業として法律に位置づけられています。地方公営企業法第三条です。企業の経済性を発揮するとともに、本来の目的である公共の福祉を増進するように運営しなければならないという基本原則が適用されているところであります。しかしながら、政策医療、第十七条の二の第一項の第二号でございますが、これを担っていく以上、公立病院の半数以上は経営が安定しません、これで自治体からの財政支援を受けている現状にあるわけであります。

 私は、公立病院というのが地方公営企業としてのこの法律に位置づけられることに非常に無理があるのではないかと思っています。なぜかといえば、医療は国民にとって非常に重要なものだからであります。民間ができることは民間がしていきながら、民間ができないことを公立病院がしていくということが重要だと思っています。中山間地域、さらには僻地の医療を守っていくためには、企業としての経済性と公共の福祉を両立することは難しいです。こういう役割を担う公立病院、地方公営企業法にある企業としての経済性の基本原則の遂行は難しいと考えています。

 私は、法律からしっかりと外しながら、地域の医療はしっかりとこの国が守るんだということをしていかなければいけないと思いますが、総務省の見解を求めます。

奥野副大臣 公立病院は、おっしゃるとおり、民間病院の立地が困難な僻地における医療を始め、救急、周産期、小児医療等の不採算・特殊部門に係る医療や高度先進医療などを提供する重要な役割を担っていると認識しております。

 このような中、総務省においては、地域において必要な医療提供体制を確保することを目指しつつ、公立、民営の適切な役割分担のもと、公立病院の経営改革に取り組むため、平成二十七年三月に新公立病院改革ガイドラインをつくらせてもらいました。

 このガイドラインにおいては、地域医療構想を踏まえ、公立病院が果たすべき役割を明確にした上で、公立病院間だけでなく、他の医療機関との統合再編や事業譲渡も含めた再編・ネットワーク化などに取り組むよう要請しております。

 今後とも、地域医療確保の観点から、公立病院の再編・ネットワーク化の取組に対する地方財政措置などを通じて公立病院改革の取組を支援してまいりたいと思っております。

あべ委員 特に、僻地医療を守っていくという公立病院のあり方を考えたときに、この公立病院における地方交付税の措置のところの交付団体であれば出ている一床当たり七十五万五千円、これは私は、僻地医療、地方の、地域の医療を守るというところにしっかり予算づけをするために、見直しをするべきだというふうに考えております。ぜひともそこは、公立病院のこの改革、やっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、特定機能病院でございます。

 この特定機能病院に関しましても、単純計算をしたベッド数の計算の中では、一万五千床ほどの病床を減らさなきゃいけないというふうになっております。大学附属病院がほとんどでございますが、所管は文部科学省でございます。

 この機械的計算、特に、平成二十八年の六万六千七百七十二床から、二〇二五年には、機械的に計算すると五万床という、四分の一少ない病床数となることが計算されるわけであります。

 しかしながら、大学附属病院は、研究、教育、臨床を担うところでもございます。臨床の必要病床が減っていく中、教育としても、初期研修の領域が専門化されている病院の中で行うだけでは、地域の医療を担う人材の、この医師を養成していることが本当にされているのか。特定機能病院という名前はありますが、何が特定の機能なのかということが私は整理がされていないのではないかと思っております。

 そこで、文部科学大臣にお伺いいたします。

 地域医療構想においての大学附属病院の果たす役割並びに地域医療構想にどうかかわっていくかの見解をお伺いいたします。

林国務大臣 世界に先駆けて超高齢社会が進む中で、従来の高度医療を担う人材育成のみならず、多様な疾患を抱える患者に総合的に対応しまして地域医療に貢献できる人材を育成することも大学医学部附属病院の重要な役割である、こういうふうに考えております。

 このため、文科省においては、平成二十五年度から未来医療研究人材養成拠点形成事業を開始いたしまして、患者を幅広い視点で診ることができる総合診療医の養成を推進する大学医学部附属病院の取組を支援しているところでございます。

 また、二〇二五年に向けた医療提供体制を実現するために都道府県が定める地域医療構想でございますが、既に全都道府県で策定をされまして、現在、各都道府県において、その実現に向けて関係者による議論が進められている、先生の御指摘があったとおりでございます。この検討の場に各大学の附属病院の病院長、医学部長等も構成員として参画をして、大学附属病院がそれぞれの地域医療における中核的な医療機関として今後担うべき使命、役割を定義する、こういうことをしているということでございます。

 さらに、地域医療構想の実現に向けた大学附属病院のあり方について、例えば、医学部を有する四十二大学で構成される国立大学附属病院長会議では、病院長等によるグループ討論を開催するなど、活動を展開しております。

 文科省としては、各大学附属病院に対して、引き続き、特定機能病院としての機能を果たしつつ、地域医療に貢献できるすぐれた医療人を育成するとともに、各都道府県とも緊密に連携して、地域医療構想の実現に向けて積極的に協力、貢献していくよう各種会議等を通じて促してまいりたい、こう思っております。

あべ委員 医療の人材育成は非常に重要でございます。大学附属病院で、また大学教育の中で臓器別の医療が中心になっていく中、地方においては、高齢者は、膝が痛く、整形外科のお世話になり、目の問題があり、眼科に行き、高血圧があって、内科に行く。総合診療医の育成が本当に必要だというふうに思っております。文部科学大臣には、ここはしっかりとやっていただきたい。

 また、資料の五に移らせていただきます。開設主体別の医療機関の財政、税制上の措置であります。

 ここの部分は、特に、公的病院と言われるところの、国税の法人税、地方税の事業税また固定資産税も含めた、いわゆる非課税、減免が入っております。

 私は、これは、設置主体別にこういうことを一律にやるべきではなく、政策医療をやっていくところにしっかりと手当てをしていくべきだと思いますが、この国の政策医療は本当に定義が曖昧だというふうに思っているところであります。

 特に、個別の病院における優遇状況を調査した上で、民間医療機関と公的医療機関のイコールフッティングを進めていくということも私は一方で必要だと思いますが、厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。

加藤国務大臣 今、委員から、地方交付税措置、税制、財政上の措置等について御紹介がありました。

 これは、それぞれの経緯、あるいはこれまでの議論の中で培ってきた制度なんだろうというふうに思っておりますが、地域医療構想調整会議の協議を進めるに当たっては、開設主体によって税制、財政上の措置に違いがあるわけであります。

 この点を踏まえて、本年の二月に都道府県に対し、全ての医療機関について、医療機関ごとの各種補助金や繰入金等の活用状況を地域医療構想調整会議に提示をしていただくということ、また、公的機関については、二〇二五年に向けた対応方針が公的医療機関でなければ担えない分野へ重点化されているか確認することを要請しております。

 そうした状況等について開示、共有した上で、公的医療機関が地域の実情に応じて果たすべき役割をしっかりと果たしていただけるよう、地域医療構想調整会議において十分な協議を行っていただくことが重要であると考えておりますし、また、それに対して私どもも、データの提供、他の地域の参考例の紹介など、きめ細かな助言等を行っていきたいと考えております。

あべ委員 本当に、この医療の問題、若者たちにどれだけのツケを送り継いでいくのか。しかしながら、国民の命はしっかり守っていくという観点からは、非常に重要な課題であります。

 財務大臣にお伺いいたします。

 我が国の医療の将来像ともなる地域医療構想、特に公的な資金を投入している医療機関に踏み込んだ質問をさせていただきました。

 ここまでの議論を踏まえ、日本の医療という全体、包括的な視点から、大臣の御見解をお伺いいたします。

麻生国務大臣 この地域医療構想につきましては、昨年度でしたか、三月ぐらいだと記憶しますけれども、全都道府県においてこの策定がなされたんだと思っております。

 その実現に向けて、各都道府県において二年間程度で集中的な検討を進めているというところだと承知しておりますが、その過程において、今、この構想の内容についてですけれども、公的病院につきましては、これはいわゆる僻地とか過疎地とかそういった、他の医療機関、医療機関というのは民間の医療機関、ではなかなかできないような役割をどのように担当していくのかを明らかにしてもらった上で、いわゆる費用の効率化とか、その地域の病院の再編を含めまして、効率的な経営に取り組む観点から改革を進めていくということは極めて重要なんだと思っております。私どもの地域でも、民営化とかそういうのをやらせていただいていますけれども。

 大学附属病院につきまして、いわゆる特定機能病院という指定になっていますけれども、これにつきましては、総合診療医といった、すごく専門化が最近されていますけれども、総合診療医というようなものは、地域医療を支える人材の育成に極めて適切に取り組んでいただくことなどが求められているというふうに考えております。

 これは、団塊の世代というのがいわゆる二〇二二年だったかに後期高齢者となっていかれますので、そういった方々の中で地域の医療ニーズが当然変化してきますので、それに適切に対応してそれぞれの医療機関が役割を果たしていただかないかぬということになろうとは思いますが、効率的な医療というものが提供できる体制づくりというのをしていかないけませんので、これは関係者が、これは何も公共医療等に限りませんけれども、取り組んでいただく必要があるんだというように私どもとしては基本的に考えております。

あべ委員 ありがとうございました。ぜひともしっかりと議論を進めていただきますよう、よろしくお願いいたします。

 また、経産大臣、在職老齢年金、聞こうと思いましたが、時間がなくて申しわけありませんでした。また在職老齢年金の撤廃も含めしっかりと党内で議論してまいりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

河村委員長 この際、佐藤ゆかり君から関連質疑の申出があります。あべ君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 自由民主党の佐藤ゆかりでございます。

 久しぶりの予算委員会での質問、ありがとうございます。よろしくお願いをいたします。

 本日は社会保障と人づくり等というテーマの集中審議でございますが、人づくりに若干触れさせていただきながら、等ということでございますので、お許しをいただきまして、アベノミクスの波及効果について、これは大変重要な課題ではないかと私自身考えておりますので、質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、アベノミクスについてでございます。

 安倍総理も、この五年間、政権交代をしていただいていまして、その間に大変アベノミクスの成果というのは出てまいった、津々浦々そういうお声も聞きますし、総理自身も御答弁なさっているところでございます。

 数字上は、この政権交代後の五年間のアベノミクスで、足元二十八年ぶりになりますが、八四半期連続のプラス成長。そしてまた、四年連続の賃上げ。そして、生産年齢人口は、日本はやはり少子高齢化でございますから三百九十万人が減少しているわけでありますが、にもかかわらず、雇用は逆に百八十五万人もふえている。そして、有効求人倍率も、これは四十七全ての都道府県で一倍を超えている。これは高度成長期でもなかった実績でございまして、こういう統計がマクロ経済全体として出ている。GDPも、この五年間で五十兆円以上も増加している。こういう、続々とプラスの数字が出ているわけでございます。

 しかしながら、一方で、評論家の方々、あるいは、私どもも地域を歩いてまいりますと、景気がよくなってきたという地域と、地域によっては、まだまだ私たちのところにはどうもアベノミクス伝わってこないなという声と、さまざま聞かれるわけでございます。

 この数字が見せる成果とやはり地域でこういうお声があるということの乖離は、やはり原因を究明しながら、いよいよデフレ脱却に向けてこういったところにも政策を打っていくということが大事ではないかなというふうに考えておりますので、そのあたりをきょうはお伺いをさせていただきたいと思います。

 安倍内閣の政策のアベノミクス。経済政策は、よくトリクルダウンというふうに言われるわけでございます。私も経済のモデルをつくる側で長年仕事をしておりましたが、トリクルダウンといいますと、大きな木があって、雨が降って、そして、理論の世界であれば、このトリクルダウンの木も左右に一本ずつ枝があるぐらいの抽象化されたものでありますから、雨の水も滴りやすい、すぐに効果があらわれるということでございます。こういったものを前提として、評論家の方々もトリクルダウンはあらわれないじゃないかということをよくおっしゃるんだろうというふうに思います。

 しかしながら、現実はそんなに易しいことではありません。現実の木はさまざま枝葉が茂っておりますし、そういう中で、雨がぶつかって水が散るところもあれば、下に落ちるところも出てくる。なかなか根元に水がおりてこないエリアとおりてくる場所とさまざまというのが実際のトリクルダウンの木ではないかというふうに考えるわけでございます。

 そうすると、そういう落ちるところ、落ちないところのでこぼこを政策的な支援でできるだけスムーズにして水が落ちやすくしていく、それが課題としてあるのではないかと思われるわけでございます。

 そこで、これは幾つかの要因はあると思いますが、きょうは時間もありますけれども、私が一つ腰を据えた議論をできる限りお伺いしたいと思っておりますのは、経済政策のトリクルダウンの波及の経路。

 経済というのは、情報コストが低くて、できるだけ規制がなくて、障壁がなくて、自由に物が動けるときに一番速やかに効果が及ぶわけでございますけれども、一方で、政治、行政の仕組み、特に国と地方の関与のあり方、こういった政治、行政の制度的なものが中に入りますと、国の予算も都道府県でなかなか着実にそのまま執行に至らないというような、意思の疎通の乖離が、実はトリクルダウンを難しくしている一つのステップではないかというふうに思われるわけでございます。

 そこで、今回、そのあたりの御質問をさせていただきたいのでございますけれども、例えば、幾つかイメージとして先に事例を述べさせていただきたいと思います。

 さまざまな省庁で、国の政策的な予算が地域におりないという課題があるかと思います。一つは、例えば文科省。国から地方に税財源移譲をしたり交付税措置で、行政サービスとしての、ナショナルミニマムで最低限の義務教育水準ですとかあるいは経済の最低限のサービスの水準、こういうものを普通交付税や交付金、補助金等でできるだけ均一に、地域のばらつきが出ないように維持するための予算を国から地方に出しているわけでございます。

 例えば、文科省の私学経常費助成費補助金、これは、文科省が、私学振興助成法第九条によりまして、幼稚園から高校までの私学助成のために補助金を都道府県に支給をしているわけでございます。法律では都道府県に対して学校への配分を義務化しておりませんので、都道府県によっては、十分に配分するところとそうでないところとばらつきが出る。しかし、幼稚園から、中学までは少なくとも義務教育でありますから、都道府県で配分のばらつきが出るということは、いささか私は違和感を感じるわけでございます。

 それから同時に、著明な例としては図書購入費などがございまして、例えば、東京都と青森県で、これはよく出される事例ですけれども、図書購入費、国から都道府県におろす費用が、東京都は破格に多いんですよ、青森県では破格に少ない。しかし、お子さんにとりまして、図書へのアクセス、親しむということは義務教育の一環であって、こうしたところに配分の格差が出るのはいかがなものか、そういう問題があろうかと思います。

 さらに、国交省の関連で申しますと、運輸事業振興助成交付金、これは運輸事業者向けの国交省の補助金でございますが、例えば大阪府で申しますと、トラック協会、こうしたところに対する交付率が、国交省を通じて都道府県におろされたものが、いまだ交付率が五割強にとどまっているという現状がございます。

 また、経産省の例で申しますと、小規模事業者経営支援事業費、これは小規模事業者関連の経産省の補助でございまして、小規模事業ですから、本当に経済にとりまして、全国でナショナルミニマムを維持するという観点で、私は非常にこれは重要な補助金だというふうに考えているわけであります。これは実施機関であります商工会議所や商工会に交付されるわけでありますが、その実施機関に対する都道府県からの交付率が例えば五、六割にとどまっているというような都道府県もあるわけでございます。

 こういうばらつきがある中で、トリクルダウンが起きるところと起きていない地域、交付率の差によってやはり予算が執行されるところ、されないところが出てまいりますと、相当ばらつきが出ると思います。そういうことを鑑みますと、GDPが五十兆円拡大した、有効求人倍率が全国で一倍以上になっているということは、アベノミクスの政策的な努力が相当見えないところでもあるんだろうということを私はまず認識をしなければいけないというふうに思うわけであります。

 その上で質問させていただきたいと思いますが、確かに政策が打たれて改善したと見られる部門もあるのではないか。

 国交大臣にお伺いしたいと思いますけれども、運輸事業振興助成交付金の交付についてですが、都道府県の努力義務規定を設けた運輸事業振興助成法、これは平成二十三年に制定されましたけれども、それ以降、トラック協会に対して運輸事業振興助成交付金の交付基準額に対する執行率が上がった、いわゆる立法効果があったというふうに考えてよろしいでしょうか。

石井国務大臣 運輸事業振興助成交付金制度に関しましては、制度の透明性の向上及び交付基準額の確実な交付を確保するため、平成二十三年に運輸事業の振興の助成に関する法律の制定により法制化をされております。

 運輸事業振興助成交付金の基準額の算定方法につきましては、この法律に基づきまして、総務省・国土交通省令において算定式が定められているところであります。

 トラック協会に対する交付につきまして、平成二十三年度と直近の平成二十八年度を比較いたしますと、交付基準額に合わせて交付を行っている都道府県の数については、二十三年度の二十四自治体から二十八年度は四十三自治体に増加をしておりまして、また、実際に交付された交付金の額の交付基準額に対する割合は、全都道府県計で、二十三年度の約八八%から二十八年度は約九七%に増加をしているところでございます。

佐藤(ゆ)委員 確かに、今御答弁いただきましたように、義務化をすることによって立法効果はあったということだと思います。ちなみに、これは自民党の方で議員立法でやったというふうに記憶をいたしているわけでございます。

 また次に、経産省の方になりますが、先ほど申しました小規模事業者経営改善普及事業でございます。これは、全国に小規模事業者は三百二十五万者程度ありまして、ここで均一的に経営を改善していただく指導事業というのは、ある意味、私は、ナショナルミニマムを維持する国の責務ではなかろうか、大事な政策であろうというふうに考えているわけでございますけれども、この事業は、本来国や都道府県が実施すべきところを、関係法令によって、全国各地の商工会議所や商工会に実質委託をするような形で実施をしていただいております。

 ただ、この事業にかかわる交付金を目的外に使う、いわゆる予算執行においての都道府県でのばらつき、執行率のばらつきというものが見られるわけでございまして、確かに、先ほど申しましたように、都道府県によっては、交付税算入額に対して実際支出している割合が六割程度にとどまっているという県も、大阪府もそうですけれども、あるわけでございます。

 そこで、こうしたばらつきを避けるために、今国交大臣の方からお答えいただきましたように、こういう個別法で努力義務規定を一つ入れるだけで立法効果が出るということがもしあるならば、世耕大臣、地方の、国の政策の着実な執行、アベノミクスのトリクルダウンの着実な実現に向けて、法改正というのはいかがお考えでしょうか。

世耕国務大臣 小規模事業者支援法では、今御指摘のとおり、商工会、商工会議所が実施をする経営改善発達に資する事業、これについて、かつては国が二分の一、そして都道府県が二分の一ということになっていたわけですが、これは地方分権改革の中で、平成十八年度に全部財源を都道府県に移管をして一般財源化をされています。

 ということで、現状においては、一般財源化された予算の中で都道府県がどう執行していくかということになると思います。自分の地域に立地する小規模事業者を責任を持ってしっかり経営改善を応援するというのは、これはまさに地方分権の中でも都道府県がしっかりと行っていかなければいけない業務だというふうに思っています。

 ただ、国として何もしていないかというと、そうではなくて、平成二十六年に小規模企業振興基本法というのができまして、その基本計画というのがありまして、小規模事業者の持続的発展を位置づけて、小規模事業者を対象とした施策の充実を図ってきたところであります。

 一方で、小規模企業振興基本法においては、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、小規模企業振興施策を策定、実施する責務を有するということになっているわけでありまして、都道府県においては、まず、この基本法の趣旨にのっとって、必要な小規模企業振興策をしっかりと進めてほしいというふうに思います。

 今御指摘の小規模事業者支援のあり方については、今後とも、小規模企業振興基本計画の改定の議論にあわせて必要な検討を行ってまいりたいと思います。

 私は、トリクルダウンという考えには立ちませんけれども、史上空前の好決算の大企業、この利益がしっかり中小企業に回るようにしなければならないというふうに思っていまして、経産省としても、中小・小規模事業者の生産性革命もしっかりと後押しをしてまいりたいと思いますし、下請取引の適正化ということで、地場の小規模事業者にもお金が回っていく仕組みをしっかりと進めてまいりたいと思っています。

佐藤(ゆ)委員 お金の回り方はさまざまでございますので、さまざまなルートで目詰まりをなくしていくという努力が必要ではないかなというふうに思います。

 そこで、地方分権が私はよい悪いという議論は毛頭、申し上げるつもりは全くございません。これは政治、行政の仕組みでございます。あくまで経済の流れということで申し上げているわけでございますけれども、平成十二年の地方分権一括法改正において、国の地方への関与のあり方というものが、法定主義というものが明確にうたわれるようになりました。それまでは、予算執行状況が悪い都道府県があれば、例えば局長通達で、執行率をよくしてくださいというような通達を出したりすることもあったわけでありますが、この法改正以降は、法律にのっとらない場合には地方が反発をする場合も出てくるわけでございます。

 そこで、やはり執行率を上げるには、逆にこの法定主義にのっとってしっかりとやっていくということが大事ではないかと思われますけれども、この地方分権一括法における法定主義に基づいて、今後、都道府県における着実な予算執行に関する国の要請に関しては、個別の法律の改正若しくは政令などによって交付金執行の努力義務を設けて、実効性を高められるのではないかと。

 これは一般的な議論で結構なんですが、奥野総務副大臣、いかがでしょうか。

奥野副大臣 地方交付税の基本的な性格は、皆さん方も御承知だろうと思いますけれども、地方自治体がみずから集め、みずから使途を決める地方税と何ら異なるところがなく、地方自治体が独自にその使い方を決めることのできる一般財源とされているわけであります。

 国が地方交付税の使途を制限したり条件をつけたりすることは地方交付税法により禁じられていることも御承知だろうと思います。

 一方で、地方団体は、その行政について、合理的かつ妥当な水準を維持するように努め、少なくとも法律又はこれに基づく政令により義務づけられた規模と内容とを備えるようにしなければならないとされていることも事実であります。

 交付税で措置されている各種政策において、地方自治体に義務づけをするか地方自治体の裁量に任せるかについては、政策の実効性を担保する観点で、地方自治体の自主性、自立性を確保する観点から、地方自治体の意見を踏まえて、それぞれの政策の所管官庁において検討されるべきものではないかなというふうに考えておるわけであります。

佐藤(ゆ)委員 この総務省の議論、地方の地財計画と決算の乖離の問題になりますと、地方の単独事業が枠計上されて、その枠の中がどのように使われたのかわからないというような、透明性拡大の課題ですが、こうなりますと財務省さんもかかわってまいるかと思いますが、この長年の議論というのになかなか終止符が打たれないわけでございます。

 少なくとも、安倍総理、これはやはり、地方が着実に国の政策の予算を執行していただくということは、津々浦々アベノミクスの成果を感じていただくというところにおいて重要な一つの課題ではないかと思われますけれども、総理の御所見を最後に伺えればと思います。

安倍内閣総理大臣 地方交付税は一般財源であることから、その使途は、各地方自治体において地域の実情を踏まえて自主的に判断されるものであります。

 他方、議員御指摘のとおり、アベノミクスを始めとする国の重要政策を地方まで浸透させるには、国と地方自治体が相互に連携して取り組む必要があります。

 そのため、政策の目的や各地域の実情などを踏まえ、地方自治体の理解のもと、それぞれの政策において適切な政策手段を選んできました。

 例えば、医療、介護、子育て支援のように、全国的に統一して行うことが望ましい施策については、法令で地方自治体の役割や全国的な基準を定めています。また、地方創生による地域経済の活性化のように、地方の意欲と創意工夫を引き出すことが望ましい施策については、別に交付金を創設し、具体的な成果目標を設定しつつ、自由度の高い仕組みとしているところであります。

 今後とも、こうした対応を適切に講じることによって、国の重要政策を全国にしっかりと展開してまいりたい、このように考えております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 今、法令ですとか交付金ですとか、さまざまなメニューを使いながら国の政策を地方に浸透をさせるという御意見を伺ったわけでございます。ぜひ、きめ細やかな、そういうバリエーションを駆使しての政策をお願い申し上げたいというふうに思います。

 特に、財政再建の観点からも、地方の財源がしっかりと効率的に使われるということも重要な観点ではないかと思われますので、地方の予算執行におきましては、KPIですとかPDCAサイクルをきっちりと確立していくということ、きょうは残念ながら財務大臣にお伺いする時間がないんですけれども、ぜひこういったことも政府の方で進めていただきたいというふうに思います。

 さて、次の質問に移らさせていただきたいと思いますが、やはりこの経済、事業承継を確実に中小企業で進めるということは、デフレ脱却にとっても重要な課題であります。

 実際のところ、中小企業の黒字企業の中で、五割以上が後継者がいなくて廃業をしている。これは日本経済として、非常にデッドウエートロスといいますか、損失をしているわけでございまして、こうしたところが着実に承継できれば、もっと経済は活性化するわけでございます。そういう課題が残されているということでございます。

 政府の方は、そういったことを受けまして、二〇一八年度から向こう十年間を事業承継の集中対応期間というふうに設けまして、このたび、平成三十年度税制改正では、自民党の大綱の中でも初めて事業承継における中小企業のMアンドA税制というものを創設するということで、大綱に盛り込まさせていただいたところでございます。

 これは、スタートは小さくということで、登録免許税ですとか不動産取得税を減免するという措置にとどまっているわけでございます。ぜひこの集中対応期間十年間のうちに中小企業の事業承継をしっかりと進めるということであれば、やはり、後継者がおらず廃業する黒字企業が半分以上あるわけですから、残すところは第三者への事業承継しかないわけでございます。そうすると、MアンドA、合併が非常に重要なツールになってくること、これは紛れもない事実でありますので、承継税制の中でMアンドA税制というものを今後更に拡充すべく、中期的な方向性を定めていただきたいというふうに思います。

 このグラフをごらんいただきたいのですが、これはよくあるグラフでございますが、赤い太線が二〇一五年時点、この一番ピークのところは、中小企業の経営者の方々の平均年齢なんですが、一番年齢層が分厚い経営者の御年齢が七十歳近いというところでございます。これが、ちょうど二十年前の青い太線、一九九五年には、経営者の方々の年齢層が一番分厚かったのが五十代前半であったということでございまして、この二十年間で二十歳近く中小企業の経営者の方々はお年をとられたということでございます。

 そして、右側のグラフでございますけれども、黄色い棒線が、年齢階層別に、中小企業経営者の方々で売上高が過去三年間上がったと回答した割合、青が減ったと回答した割合でございます。三十代で、上がったという方々が五一・二%おられる。

 これを、上がったという方々の割合から下がったという方々の割合を差し引いた、要するに、純粋に上がった、純に上がったという割合を、左側のグラフで黄色い面積で示しております。そうしますと、三十代から四十代までが、差引き売上高が上がった方々が多い。そして、残りの五十代から八十歳以上までが水色で、差し引いて売上高が下がった方々が多いわけでございます。

 このように、やはり今後は、事業承継におきまして、若い方々の新しい発想力などを駆使して、稼げる中小企業基盤というものをぜひこれは政策的にも支援をしていかなければいけないというふうに思うわけでございます。

 そこで、少しMアンドA税制についてお伺いをしたいと思いますけれども、実際、中小企業が合併をする、MアンドAをするとなりますと、今は情報が非常に全国津々浦々散在をしていて連携をしていない状況の中で情報がセグメント化している、結果として情報を取得するコストが高い、MアンドA市場に競争が働いていないという状況にあるわけでございます。

 例えば、買収規模が一億円から二億円程度の企業を買収する場合、仲介手数料、情報をくれた金融機関などに対する仲介手数料やデューデリの費用を含めた費用の総額が大体四千万から五千万円ぐらいかかるわけでございます。まさに、買収規模の金額の三分の一ぐらいをこの仲介手数料等で払わなければいけない。大変コストの高い負担が中小企業にあるということでございます。

 麻生大臣にお伺いさせていただきたいのですが、このMアンドAの仲介手数料ですけれども、これは手数料ですから、本来、会計基準では損金算入されているわけでございますけれども、本来はこれは資産価値のないサンクコスト、手数料ですから埋没費用なんですけれども、税法上、これは合併資産の一部とみなされて、損金算入できないケースが多いと聞いております。これは事実でしょうか。

麻生国務大臣 これはもう知っていて聞いておられるんだと思うんですけれども、仲介手数料といっても、これはさまざまなものがありますからね。

 そういった中で、これは一概に申し上げることは困難なんですが、例えば、買収にかかわります事前相談等々のコンサルティング等々の費用などであれば、手数料が発生した場合でもこれは損金に算入されるということになっていますよね。また、買収に当たって対象企業の株式の購入ということのために要した手数料となれば、それはその株式の取得価額ということになりますので、それは支出したら損金ということにこれはならないものだと思っております。

 それで、他の資産と同様で、費用と収益のタイミングを一致させるという考え方から、株式の購入の際に要した手数料等々は、これは取得価額に算入して、その売却の際に費用とすることにしております。大体、イギリスなんかもみんな同じようなやり方をしていると思いますが、こうした取扱い自体を見直すということになっては、ちょっとこれは慎重な検討が必要なんだと思いますが。

 いずれにしても、この事業承継というのは、少なくとも、今、三百六十万者と言われましたけれども、そのうち、この十年間で後継者がないと言っておられる企業というのは、商工会議所の調べで百二十五万者だったかな、そういったことになっていると思います。

 これは極めて喫緊の課題なので、私どもとしては、この百二十五万者というものが黒字倒産ということになるのであれば、これは国といたしましても、事業税だ法人税だ、そういった意味の収入の面から考えましても極めてゆゆしき問題でもあります。

 私どもとしては、中小企業、いわゆる資本金一億円以下というのを定義にしておりますけれども、そういった企業の税制というもの、また、今回、事業承継税制等々、党の方からの御意見等々もとらせていただいて、これをゼロにさせていただく等々、いろいろ細目にわたって今から御検討いただくことになりましょうけれども、そういったことをさせていただいて、少なくとも中小企業の世代交代というものが円滑に進むということを大いに期待をし、事実、この四十代、三十代のところの収益が多い等々の話は事実でありますので、そういったことも考えてやらせていただければと思っております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございました。少なくとも、財布どころの財務省には前向きに考えていただきたいと思うわけでございます。

 通常は、合併というのはやはり株式譲渡で行われるケースが大半でございますので、そうすると、仲介手数料は基本的には税法上資産扱いになり、損金算入できないという企業が多くなってくる。

 確かに今、中小企業も、合併を進めている元気のある会社も多く出てきております。そうしますと、中小企業の経営戦略として、合併を繰り返しながら会社規模を大きくしていくというような戦略もありますが、そうしたときに一回一回合併で仲介手数料が資産計上されますと、これはもう、このサンクコストが雪だるま式に上がっていくということで、なかなかこれは中小企業にとっては負担感が大きいというところであります。そういった現実も踏まえてお考えいただければと思います。

 それと同時に、合併をいたしますと、今度は、買収先の企業、買われる企業の欠損金の問題がございます。買収しますと、欠損金は今、引き継げない、適格条件という厳しい条件のもとでしか引き継げないという状況でございます。適格条件というのは、同種の業種であるですとか同じ規模の会社であるですとか、非常に厳格な条件であります。ですから、一般的には欠損金は引き継げないわけでございます。

 これは世耕大臣にお伺いしたいんですけれども、例えば、MアンドAを進めるに当たって、欠損金を引き継ぐことによって合併のインセンティブが出てくる案件は多いと思います。こうしたところは課税逃れにならないように、欠損金を単に使うというペーパーカンパニーに利用されないようにしつつ、ですから、最初の三年間ぐらいは実態のある企業経営をその後するかどうかということを見守りながら、欠損金というものを引継ぎできるような形で条件緩和を進める検討はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 御指摘のように、今回、我々、税法に盛り込んでおります事業承継税制、抜本拡充をされまして、親族外によるMアンドAによる承継についても、登録免許税、不動産取得税の軽減といった部分になっていますけれども、優遇措置が初めて盛り込まれたところであります。

 そして、今お話しの繰越欠損金の取扱い、これは財務省でお答えいただくべき問題だと思いますが、今御指摘のように、意図的な租税回避行為が誘発されるんじゃないかというような懸念もあるわけですから、その辺を慎重に議論していく必要があるだろうというふうに思っています。

 ただ、経産省としては、親族外によるMアンドAによる事業承継というのは非常に重要だと思っていますので、税制面の扱いだけではなくて、その他いろいろやはり障害になっていることもたくさんありますので、中小企業のMアンドAにおけるいろいろな課題について、しっかりと現状を把握して改善を進めてまいりたいと思っております。

佐藤(ゆ)委員 ぜひその試みに期待をしたいというふうに思います。

 それで、中小企業のMアンドA市場、まさに問題意識としては、やはり事業承継するに当たって、黒字の中小企業の半分以上が後継者がいない、要するに、後継者探しとしては第三者を探すしかない、そこで、合併という手法が出てくる、その意義性が高いという問題意識であります。

 そういう中で、総理、事業承継のための中小企業のいわゆるMアンドA市場という、全国市場というものが日本にはまだまだできていないわけでありまして、中小企業でMアンドAをしたい企業の財務データですとか、あるいは、もう売却をしたい企業の財務データですとか、こういうデータというのは、例えば、中小機構の所管であれば、各都道府県の事業引継ぎ支援センターというようなところに情報がありますし、あるいは、地銀さんが持っていたり銀行が持っていたり、さまざま情報がセグメント化されていて、地域に偏っているという現状がございます。

 ただ、今、工場を合併しても、IoTなどで工場を遠隔地でつないで生産活動を進めることができる時代になりました。そうしますと、中小企業の事業合併といっても、地域の中での合併ではなくて、例えば、北海道と沖縄県の方々が合併をしてIoTで工場をつなぐというようなあり方も中小企業の可能性として出てきている。

 ひいては、中小企業のMアンドA市場というもののデータを、ビッグデータとして全国のプラットホームに個々のデータをつないでいくという作業が非常に望ましいのではないかと思われるわけでございますが、こうしたこと。それから、MアンドAの税制の課題、今出ました。こうしたことについて、総理、向こう十年間、集中対応期間というふうに政府はおっしゃっておられますので、総理の意気込み、もしありましたらお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 佐藤委員から、大変わかりやすい重要な指摘をいただいたと思っております。

 今後十年間で中小・小規模事業者の経営者の六割が七十歳を超える、うち半数は後継者が決まっていないという現実があります。後継者が決まらないまま黒字廃業という事態は、我が国経済にとって大きな損失になります。事業承継問題は、日本経済の屋台骨を揺るがしかねない待ったなしの大きな問題である、こう考えております。

 その中で、後継者の確保が困難な場合にはMアンドAも事業承継の有効な方策の一つであり、委員御指摘のとおり、そのコストを低減させていくことは非常に重要であります。

 安倍内閣では、事業引継ぎ支援センターの全国展開を実施し、既に二万件以上の相談を受け付けてきたところであります。実際はもっともっとニーズはあるんだろうと思います。きょうのこの委員会をごらんになった方は、ぜひ事業引継ぎ支援センターに連絡もしていただきたい、相談もしていただきたい、こう思うところであります。

 こうした情報については、全国的に広く活用可能なデータベースとして整備を進めています。今後、事業承継を更に進めていくために、先ほど御紹介いただいたように、地域に根差した金融機関や税理士、商工会、商工会議所など支援機関のネットワークを強化し、情報共有を始め連携を強化していく考えであります。

 今後とも、我が国のまさに国の宝と言ってもいい中小・小規模事業者を次世代へとしっかりと引き渡していくため、マッチング機能を不断に強化をしていく考えであります。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 総理から強いお言葉をいただきましたので、ぜひこれは積極的に進めていただきたいと思います。

 その絡みで、きょうは日銀の総裁にお越しいただいております。時間も限られておりますので本当に短い時間で恐縮でございますが、事業承継、政府の方は、向こう十年間、集中対応期間というふうにおっしゃっているわけでございます。

 その中で、かつての日銀政策としては、企業金融の方により積極的に資金を提供していくという政策がございました。今も継続してはおりますが、どちらかといいますと、今の日銀政策というのは、長期金利を抑えるイールドカーブのフラット化の方に軸足が置いてあるというふうに見えるわけでございますが、日銀が進めております成長基盤強化支援資金供給の枠組みの中に、このMアンドA、買収にかかわる資金供給、こういったものを積極的に含めながら、デフレ脱却へのよりきめ細やかな道を探っていただきたいと思います。

 日銀の政府人事案が先週金曜日に提出されたばかりでございますので、私たちも国会で判断をするに当たって、黒田総裁から一言御意見をいただきたいと思います。

黒田参考人 確かに、地域金融機関が、中小企業の事業承継を含むMアンドA関連ビジネスなどを通じて企業の金融ニーズに対応していくということは、地域経済の成長につながると同時に、地域金融機関自身の収益力の強化にも資すると考えております。

 佐藤委員御指摘の「成長基盤強化を支援するための資金供給」におきましては、成長基盤強化に資する中小企業MアンドA関連の投融資も対象となっておりまして、地域金融機関にも広く利用されているところであります。

 日本銀行といたしましても、引き続き、中小企業のMアンドA関連ビジネスに関しても本制度を積極的に活用していっていただきたいというふうに考えております。

佐藤(ゆ)委員 どうもありがとうございました。黒田総裁、どうぞ御退室いただいて結構でございます。

 最後になりますけれども、本日のテーマ、人づくり改革でございますが、生産性革命とそれから人づくり革命、これは一つの組合せであるというふうに私は思っております。

 今、人づくり革命は、いわゆる幼児教育無償化の方を進めていただくことになるんだろうと思いますが、茂木大臣にお伺いしたいと思います。

 生産性向上の設備投資をしましても、実際にその先端設備を使いこなせる人材がいない、設備だけ導入しても生産性は上がらないという実態がございます。

 その人材育成のために、工場の稼働率を半分に下げて人材育成をするだけの余裕がある中小企業というのはまた少ないわけでございまして、そのあたり、専門家を雇ったり、あるいは先ほどのビッグデータの中小企業のいわゆるMアンドA市場情報の中に、大企業の退職者の方々の人材のデータベースを併設したりして、MアンドA、事業承継にあわせてそういった人材をマッチングする支援ということも含めて、茂木大臣、いかがお考えでしょうか。

茂木国務大臣 ありがとうございます。

 まず、佐藤委員、最初にトリクルダウンのお話をされていました。

 確かに、経済、一つの変化が他のセクターにどのような影響を及ぼすかというのは極めて重要な視点だと思っておりますが、安倍政権としては、一部の経済をよくして、それが他の部門に滴り落ちる、こういうトリクルダウンの政策はとっておりませんで、基本的には、成長と分配の好循環、こういったものをつくり出す、こういう方針でありまして、生産性革命でも同じようなことを進めたいと思っております。

 生産性の向上、大企業にとっても重要な課題でありますが、御指摘のように中小企業にとっては更に重要な課題である、このように考えておりまして、そういった中小企業の生産性を上げるために、ものづくり補助金でいいますと、設備投資を行った中小企業の九一%が売上げを伸ばしておりますし、八四%が賃上げを実施するなど、効果があらわれてきているところであります。

 このような中小企業の攻めの投資、これを後押しするために、平成三十年度の税制改正案では、新規設備投資について、自治体の自主性に配慮しつつ、三年間固定資産税をゼロにする、まさに画期的な制度を創設いたしました。また、二十九年度の補正予算におきましては、設備投資を支援しますものづくり補助金であったりとか、生産性向上に必要なITツールの導入支援など、一千五百億円規模の予算措置を講じているところであります。

 そして、設備投資をするという段になりますと、委員御指摘のように、単に設備を導入するだけではなくて、その使い方であったりとかノウハウの習得、そのための人材というのが極めて重要になってくるわけでありまして、例えばものづくり補助金につきましては、設備導入の際にメーカーの専門家による使い方の指導等につきましても補助金の対象とする、こういう形をとっております。

 さらに、今後の人づくり革命の中では、リカレント教育、これを大幅に充実をしていくことにしておりまして、その中で、さまざまな業種で今、IT人材、このニーズが高まってきているところでありまして、基礎的なITスキルを身につけるための職業訓練の充実であったり、専門的、実践的な教育訓練に対します給付について、ITデータ分野の対象講座の拡大等々を図っていきたいと思っておりますし、そういう企業のニーズとそれを習得した人材のマッチングということもあわせて進めてまいりたいと考えております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございました。これで質疑を終えさせていただきます。

 農水大臣、申しわけありません、時間が来てしまいました。恐縮でございます。

河村委員長 これにてあべ君、佐藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、浮島智子君。

浮島委員 公明党の浮島智子でございます。

 本日は、質問をさせていただく機会をいただき、感謝を申し上げます。大変にありがとうございます。

 まず、質問に入らせていただく前に、北陸地方を中心とした豪雪被害でお亡くなりになられた方々に心よりお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げさせていただきたいと思います。

 実は、先週の木曜日、私のところに一本の連絡がありました。大雪の影響で伝統工芸産地が打撃を受けてしまっているということで、私も急遽、一昨日の日曜日、十八日に現地に入らせていただき、余りの惨状に驚いたところでもございます。

 この写真を見てもおわかりのとおりに、越前和紙の原料工場、これが倒壊するなど、大きな被害に遭っています。

 約六十の事業所が加盟する福井県和紙工業協同組合の副理事長さんに、被災された工場を何軒も同行していただき、御説明をいただきました。

 景観の保持のため道路が狭く、過去最高の積雪により、通勤ができず、物流が全く途絶えて出荷や原料の仕入れができず、出勤がたとえできたとしても、屋根の雪おろしなどで仕事ができない状態が二週間続いているとのことでございました。また、和紙を乾かすための重油が届かないことも課題であると。

 しかし、この状況がなかなか皆様に理解をしていただくことができず、商品がなぜ届かないのかなどと言われてしまい、県外から、顧客からの取引の中止が発生したり、また、時期的にもバレンタインの時期でもございましたので、バレンタインなどのイベントの包装資材のキャンセルが相次ぎ、出荷不能のこの期間に安価な西洋紙へと移ってしまう、一旦西洋紙にかわると二度と和紙に戻ることがないというお話も伺ったところでもございます。

 また、祖父の代より受け継いできた、この倒壊した工場の七十七歳の社長さんでございますけれども、お国のために越前和紙を守りたい、外国に越前和紙を輸出しているお得意様に絶対に迷惑はかけられない、日本の文化を外国に紹介するルートを絶つわけにはいかないんだと、笑顔で、本当に気丈にお話をされている姿に、私は胸がいっぱいになり、涙が出そうになりました。

 和紙一ロール約十万円という製品が幾つも入っている倉庫も倒壊してしまっておりました。当然ながら、雪水でぬれてしまえば商品にはなりません。和紙組合は約六十者で、その九〇%以上が木造でできていて、建物が古過ぎるため保険もないそうです。

 このパネルの二の方にお示しさせていただきましたが、瓦屋根が雪の重みで、本当にこんなにも波打ってしまうのかと思うほど変形している工場も幾つもありました。この写真からはちょっと見にくいところもあるかもしれませんけれども、雪で瓦が落ちてしまっている。また、奥の方をよく見ていただきますと、瓦の上に雪が乗っている、でも、その手前は雪がなくなっておりますけれども、これは全て瓦も一緒に落ちてしまっているという状況でございます。

 建物の撤去、再建、従業員の雇用、売上げも通常の三分の一になってしまっている。また、顧客離れなど、本当に厳しいのが現況でございます。

 伝統産業に特化した災害復興に対しての直接支援はないとは承知をしておりますけれども、経産省としての対応の状況、伝統産業の復興の取組についてどう支援していくのか、御見解を大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

世耕国務大臣 今回の大雪で被災をされた中小企業に対しては、今、経産省の方で、商工会議所、商工会などで特別相談窓口を設置していただく、あるいは日本公庫などによる災害復旧貸付けですとか、あるいは信用保証協会によるセーフティーネット保証四号の適用など、資金繰り支援を行っております。また、既にある借入金の返済条件の緩和などの対応についても、政府系金融機関への配慮の要請も行っています。また、小規模企業共済の災害時貸付けなども始めておりまして、こういった措置を講じております。

 特に、伝統的工芸品産業に対しては、例えば、去年の七月、九州北部豪雨災害の被害を受けた福岡の小石原焼というのがあるんですが、こういった産地に対しては、直接の災害復旧支援ではありませんけれども、例えば、販路拡大のいろいろな補助金などを使って事業再建の支援をさせていただいたという例もありますので、今回も、被災地の声をよく聞いて、寄り添った対応をやってまいりたいというふうに思います。

 今、もう異常気象ではなくて気候変動となっている中で、やはり、中小企業の事業継続プラン、BCP、あるいは中小企業の強靱化ということを抜本的に考えていかなければいけない時期が来ていると思います。

 例えば、こういう屋根の補強ですとか、あるいは水害に対する倉庫のかさ上げ、こういったところに何か支援ができないだろうかとか。あるいは、いつも我々、災害で中小企業が困っているときに直面するのは、例えば、災害救助法の適用になるのか、激甚災害法の適用になるのか、これによって支援のメニューは全然変わっちゃうんですが、災害救助法というのは人命救助を目的にしている、激甚災害法というのは国土保全を目的にしていて、必ずしも中小企業の被害の実情とぴったり合わないわけであります。

 今、私は経産省内に指示をして、この災害に直面したときの中小企業の支援のあり方というのを根本的に少し考えてくれと。この議論は、経産省だけではなくて政府の中でしっかりと今後行って、適切な対応をとってまいりたいというふうに思っております。

浮島委員 ありがとうございます。

 今、大臣の方からも、現場に寄り添ったというお言葉をいただきましたけれども、ぜひ現場の声をよく聞いて対応していただきたいと思っております。

 この越前和紙は、今までも補助金などに頼らず、元気に、本当に活気に頑張ってきたところでもございます。今回のこの大雪の影響で倒壊したから、今後工場が再開することができない、このすばらしい日本の伝統文化が引き継がれることがなくなってしまう、こんなことがないように、ぜひとも全力を尽くしていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 また、越前和紙は重要有形民俗文化財の指定を受けていると伺っております。また、重要無形文化財に越前鳥の子紙も認定されていると承知をしているところでございます。

 でも、この大雪のダメージを受けてしまった必要な特殊器具、こういう器具などを文化庁からしっかりと補助してほしいのと同時に、大切なのは、認定されていないところへの支援が重要であり、支援すべきと考えますが、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 福井県内には、越前和紙の製作用具及び製品二千五百二十三点が重要有形民俗文化財に、越前和紙の一つであります越前鳥の子紙を製作する技法が重要無形文化財にそれぞれ指定されております。

 文化財につきましては、いずれも今回の大雪に関する被害は出ていないと聞いております。仮に、大雪の影響で用具等への被害が生じた場合の補助制度といたしましては、重要有形民俗文化財及び重要無形文化財ともに、用具等の修理に係る費用について補助が可能となってございます。

 また、文化財指定されていないものにつきましては、経済産業省等の関係省庁と情報共有を行いながら、県や市とも緊密に連携をし、必要に応じて、文化財調査官を派遣したり、未指定の文化財への支援スキームを活用したりするなども可能となっております。

 いずれにいたしましても、我が国が誇る地域の大切な宝を後世に残すため、しっかり対応してまいりたいと考えております。

浮島委員 ありがとうございます。

 この越前和紙は、ルーブル美術館の文化財修復にも使われているところでございます。この日本の誇るべきすばらしい伝統文化を守り、和紙の産地を後世に残していくために、しっかりとした補助をしていただきたい、全力を尽くしていただきたいということをお願いをさせていただきたいと思います。

 また、次に、この雪で希望する大学の入試、入学試験が受けられなかった生徒さんに、再度受験を求めたいという声をお聞きいたしました。

 私も以前、中学生の方が高校入試のときにインフルエンザに罹患をしてしまって、そしてインフルエンザのまま受験を受けなければならなかったということもありまして、また、質問をさせていただき、今では、例えばインフルエンザに罹患してしまった子供たちなどは、ちゃんと、医師の証明は要りますけれども、そういうのを出していただければ別日に受験ができる体制を、いろいろなところでも、各都道府県でもとっていただいているところでもございます。

 今回、この大雪で受験が、入試ができなかった、この入試における再試験についての文科省の取組と大学の状況についてお答えをいただきたいと思います。

林国務大臣 文科省では、入学志願者の進学の機会を確保する観点から、日ごろより、災害等の不測の事態に対応できるよう各大学に呼びかけております。

 このたびの大雪では、北陸からの受験生が多い関西の私立大学を中心に、受験生からの問合せ、試験の欠席者の住所等を踏まえて、大雪に対する対応が実施されております。

 具体的には、例えば立命館大学でございますが、三月に福井会場を新たに設けて入試を実施すること、また関西大学では、当初の会場とは異なる会場での受験を認めることや別の日程での受験に振りかえる対応をとるなど、受験生に配慮をした入学者選抜の実施を行っているところでございます。

 文科省においても、関係自治体からの依頼を踏まえまして、入学者選抜を実施するに当たり、大雪による影響を受けた受験生に配慮するよう、各大学に要請する通知を発出したところでございます。

 受験生におかれては、大雪の影響等で受験が困難な場合には、各大学のホームページ等で情報を収集していただいて、大学の窓口に連絡をするなど、落ちついて対応していただければ、こういうふうに考えております。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

浮島委員 一人一人の将来を決めると言っても過言でない、大切なことであります。ぜひしっかりとした対応をお願いしたいのと同時に、諦めずに大学への確認をしていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 それでは、本日のテーマでもあります人づくり革命について御質問をさせていただきたいと思います。

 まさしく、もう言わなくても、国づくりは人づくりでございます。未来の希望、人類の宝である子供たちを取り巻く環境が厳しさを増す今、少しでも、家庭、そして地域、学校の教育力、これを高める手だてはないのだろうかということを私は常に考えております。

 教育の目的は子供の幸福であり、どこまでも一人を大切にとの人間主義による、価値を創造する教育、教育のための社会、これを実現しなければなりません。

 学校は、学ぶ喜び、生きる喜びの場であります。風邪を引いたときに風邪薬が服用されるように、どの子も喜んで学べる、普遍的な教育の技術、教育の方法を教員は磨くべきであります。医師も教育者も人の命が対象であり、医学や医師が日進月歩発達をしているように、教育技術も進歩し、教育者は教育技術で立たなければいけないと私は思っております。楽しくてわかりやすく、能率的な指導ができなければなりません。

 しかし、昨年の四月末に文科省から、教員勤務実態調査、この速報値が公表され、大変厳しい教員の勤務実態が明らかになったところでございます。

 現場からは、教師の仕事は世間の人が予想もできないほど多過ぎて、子供に向き合う時間がとれない、処理できる限界を超える量となっている、そして、そのことが教師の教材研究の時間と授業の準備やその処理の時間を奪い、なおかつ精神の安定を損なわせ、結果として学力の低下を招いている、また、本来やるべきことに集中して気持ちよく取り組むことができるような職場環境をつくることが必要だとのお声をたくさんいただいております。

 公明党は、この速報値が公表され、直ちに教員の働き方改革プロジェクトチームを立ち上げ、集中的に議論を重ねてまいりました。総理そして林文科大臣に三度にわたり直接提言もさせていただいたところでございます。

 政府においても、私ども公明党の議論を受けとめ、昨年六月、当時の松野文科大臣がこの問題について中央教育審議会に諮問した後に、中教審は昨年末に中間のまとめを出されました。文科省は、直ちに学校における働き方改革に関する緊急対策を取りまとめ、先々週の二月九日の金曜日になりますけれども、これに基づく通知を出すなど、ここまで迅速な対応をしていただいていることに感謝をしております。

 しかし、大事なことは、これらの対策が学校現場にきちんと届き、全国百万人の教員の働き方が確実に改善され、そのことが学校教育の質の改善につながっていく、これが大切であります。教員が一人一人の子供たちに向き合い、教育の専門職としてしっかり仕事に打ち込むことができるようにすること、全ては教育の質の向上のためにこそあるとの理念を社会全体で共有することが大切であると思います。単に教員に楽をさせるためではないのかとか、子供たちのために献身的に働く教師像を否定するのかといった誤解がある限り、学校におけるしっかりとした働き方改革は前には進まないと思っております。

 また、改革をしながら教育の質を向上させる、そんなことができるのかという御指摘もあるかもしれません。しかし、今、全ての産業、全ての職業において、生産性革命、すなわち、より短い労働時間で最大の効果や成果を上げるためにこそ知恵を絞り、投資をすることが求められております。

 日本の学校教育には百四十年にわたる豊かな蓄積があります。知識の確実な習得と、知識を活用して考え、表現する力を育成、そして、これらの知識を社会や人生をよりよくするために生かそうとするその意思、これらを育むことは日本の学校教育のお家芸だと私は思っております。

 しかし、教員も代がわりの時期を迎えており、若い教員がふえている中、日々の授業や生徒指導、保護者対応や事務の作業に手いっぱいになってしまって、せっかくのこの蓄積や財産をしっかりと受け、引き継いで、自分のものにして、更に発展させる、そういう余裕が今の教員には残念ながらありません。

 だからこそ、この教員の負担軽減、働き方改革の目的は、教育の専門職としての教員がみずからの専門性を最大限発揮して教育活動に全力投球できる環境を整備することにより、教育の質の向上を図ることにあると私は思っております。

 そこで、最も基本的な考え方について、総理にお伺いをさせていただきたいと思います。

 この教育の負担軽減、働き方改革というのは、全ては子供たちのためにある、つまり、心身ともにこんぱいした教員がふらふらになりながら教壇に立つのではなくて、日本の教育が豊かな蓄積を学び、更に改善するため、授業研究の時間を確保したり、子供たちのわずかな変化や変容、これを見逃さずに対応したりするその余裕を確保し、教育の質の改善を図るためにこそ必要なものだと私は考えますが、この教員の働き方の改革の理念について、総理にお伺いをさせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 学校における働き方改革については、教員が子供と向き合える時間を確保し、そして教員が今まで以上に誇りとやりがいを持てる環境を目指すものでありまして、子供たちの教育の質の向上を図るためのものであります。

 このため、昨年末、適正な勤務時間管理の実施、業務の効率化、さらには学校の指導、事務体制の効果的な強化などについて緊急対策を取りまとめ、必要な経費を平成三十年度予算案に盛り込んだところであります。

 今後とも、学校における働き方改革にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 繰り返しになりますが、教員の皆さんが子供たちと向き合う時間をしっかりと確保していく、その大切さをしっかりと頭に入れながらこの改革を行っていきたい、このように考えます。

浮島委員 ありがとうございます。

 ぜひ、心にしっかりと今いただいたお言葉を置きながら改革を進めていっていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 それでは、具体的なことをお伺いさせていただきたいと思います。

 昨年の末の緊急対策の重要な柱の一つが、勤務時間管理の徹底と適正な勤務時間の設定であります。

 現場の先生から、公立学校では給与に関する特別措置法があるから勤務時間管理がなされないのだ、また、教師の仕事は特殊だから一般の企業のような時間管理はできないのだというお話を伺います。

 確かに、自宅に持ち帰っての授業の準備であったり、修学旅行や部活動の引率、また、時には家庭訪問をして保護者の対応をしたり、何か問題を起こした生徒がいた場合、その生徒指導など、学校外で処理しなければならない業務が多く、時間管理が難しい側面があるのは事実だと思います。

 しかしながら、どの教員がどのような業務にどのくらいの時間をかけているのかということを把握することは、組織的な学校運営の基本であり、教員の働き方改革の出発点であると言っても過言ではありません。また、先生方の健康面を考える上でも、勤務時間の管理は、できないということでは済まされないことだと思います。

 文科省の勤務実態調査の集計では、タイムカードなどで出勤時刻を記録している、又は校務支援システムなどICTを活用して出勤時刻を記録していると回答した学校は、わずか二割でございました。残りの学校は、報告や点呼、目視などで管理職が確認をしておりますが、このことにより、特に教頭先生は全ての教員が帰宅するまで帰れず、教頭先生の一日当たりの勤務時間は十二時間を超えるという事態が生じているのも現状でございます。

 そこで、林文科大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 校長先生や教育委員会には、教員の勤務時間を適正に把握する責務があると私は思います。管理職や個々の教員の事務負担に配慮しながら勤務時間の管理の徹底を進めるべきと考えますが、その具体的な方法を含めて、見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 教師の勤務時間につきましては、労働法制にまずはのっとって、各学校において適正に管理する責務があるということでございます。

 今委員からお話がありましたように、平成二十八年の文科省の教育政策に関する実証研究の委託事業として実施をいたしました教員勤務実態調査では、出退勤時刻についてタイムカードやICTにより記録をしている学校は三割に満たない、御指摘のとおりでございます。

 これまでも、文科省では、各教育委員会に対して、教師の勤務時間の適正な把握に関する取組を求めてきたところでございますが、先ほど触れていただきました、二月九日付で発出した学校における働き方改革に関する通知においても、「ICTの活用やタイムカードなどにより勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムを直ちに構築するよう努めること。」こうしておりまして、各教育委員会に勤務時間の適正な把握を促したところでございます。

 引き続き、先ほど総理からお話もありましたように、教師が心身ともに健康を維持して教育活動にしっかりと携われるように指導してまいりたいと思っております。

浮島委員 ぜひとも、管理の徹底をよろしくお願い申し上げます。

 次に、具体的にどのように業務改善、業務の負担軽減を図っていくのかについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 昨年の四月に公表されましたこの教員の勤務実態調査では、月八十時間以上の残業をしている教員は、小学校で三割、中学校では六割に及んでおります。

 教員の業務負担の軽減は、三つのフィルターで、専門職としての教員が本当にしなければならない業務かどうかを見きわめる必要があるかと私は思っております。

 まず第一のフィルターは、そもそも学校が担うべき業務かどうかでございます。例えば、学校給食費の徴収や管理、これを教育の専門職である教員が行っていること自体が大きな問題だと私は思います。公会計化すること、これが基本であり、一刻も早く全国展開する必要があると思います。

 また、第二のフィルターは、学校が引き受ける業務でたとえあったとしても、それが教員が担うべきものかどうかということでございます。中学校の教員の大きな業務負担となっている部活動などは、この観点から見直すことが必要です。

 また、第三のフィルター、これは、教員が担う業務であったとしても、サポートスタッフや専門スタッフと連携することにより、業務の負担の軽減を図ることができないかということでございます。例えば、個別の支援が必要な子供たちへの対応に当たっては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの連携が欠かせません。

 この三つのフィルターを使って、学校の業務の改善を大胆に進めることが重要であると私は思います。

 そこで、お伺いをさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げさせていただきました学校給食費の徴収や管理、この学校給食費の公会計化については、現在どの程度実施がなされており、その全国化に向けてどう具体的な手だてを講ずるおつもりなのか。

 また、他方、スクールカウンセラーは各学校に週一回程度の派遣で、ほとんどの方が非常勤といった体制では不十分とも指摘がされているところでございます。私も子供たちから話を聞いたところ、行きたいんだけれども、予約をしなければならないから、なかなか行きにくいなどという声が上がっているのも事実でございます。

 いじめや不登校対策を始めとする課題への対応はもちろん、そして教員の働き方改革を進める上でも、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの体制を一層強化するとともに、常勤化することについても検討するべきだと思いますけれども、見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 文部科学省におきましては、昨年度、学校給食費の徴収、管理の状況について、自治体に調査を行っております。

 その調査結果によりますと、約四割の自治体において、学校給食費の徴収、管理について公会計処理を行っているということでございます。公会計になった場合でも、また、その実施主体が本当に自治体なのか学校なのかというところがまだ残っているわけでございますが。

 このため、文部科学省としては、学校給食費の徴収、管理業務については、今先生からお話がありましたように、教育の負担軽減の観点から、学校ではなく自治体が担っていくということが重要である、こういうふうに考えておりまして、このため、文科省としては、自治体による学校給食費の公会計処理が円滑に行われますように、来年度、学校給食費の徴収、管理業務に関するガイドラインを作成することにしておりまして、これにより自治体に対して学校給食費の公会計化を促してまいりたいと思っております。

 また、もう一つ御指摘のございました、いじめや不登校等のさまざまな課題を抱える児童生徒への対応でございます。

 心理や福祉に関して高い専門性を有するスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーがより効果的な対応ができる業務について、教員と連携をしながら、両者がやはり中心となって行うということが重要であると考えております。

 このため、文科省としては、来年度、スクールカウンセラー等の配置を拡充し、体制強化を行いながら調査研究等をあわせて進めてまいりたい、こういうふうに思っておりまして、こういういろいろな取組によりまして教員の負担軽減を図ってまいりたいと思っております。

浮島委員 今、御紹介させていただいたこの三つのフィルターを使った学校の業務改善、また学校の業務の負担軽減ということが図れるよう、ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 次に、教員の勤務実態でも明らかになりましたが、最も大きな課題の一つである部活動についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 部活動は生徒の自主的そして自発的な参加により行われるものでございますが、スポーツや文化、芸術に親しむ基盤となるだけではなくて、ふだんの授業とは異なった、上級生又は下級生との交流を深めたり、活動を通じて責任感や自己肯定感を高めたりできるなど、教育的意義は私は高いと考えております。

 一方、近年ではブラック部活動という言葉も聞こえてきます。教員の勤務実態調査でも、土日に中学校の教員が部活動に従事している時間は、平成十八年度は一時間六分であるのに対しまして、平成二十八年度は二時間十分、ほぼ倍増しております。

 この状況を打開するためには、教員にかわって実技指導や大会への引率などを担うことのできる部活動指導員、この配置は不可欠であり、平成三十年度予算案に地方公共団体に対する補助制度が新たに盛り込まれたことは大変大事であると私は考えております。部活動指導員の適任者をいかに探し出すかが、これからの成功の鍵になってまいります。アスリートを含め、スポーツ団体等と協力をして、部活動の指導者の確保に向けて各自治体を支援していただきたいと思っております。

 同時に、部活動自体の抜本的見直しも必要であると思います。この指導の過熱化、一部の部活動におきましては、お聞きしたところ、お盆とお正月以外は毎日部活であると。保護者からの期待もあって、勝利至上主義に陥っているのではないかという事態が見受けられます。

 今から二十年以上前の平成九年には、当時の文部省が、運動部活動の休養日の目安として、中学校は週二日以上、高校は週一日以上という基準を示しました。しかし、残念ながら、現場には浸透しませんでした。

 今回、スポーツ庁において、運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインを作成することとしており、先般公表された骨子によりますと、最低でも平日一日、土日の一日の休養日を設けるとともに、一日の部活動時間は、長くとも平日二時間、土日三時間という案を示されたと伺っているところでございます。

 そこで、この基準は、週十六時間以上スポーツ活動するとスポーツの外傷、障害の発生率が高くなるというスポーツ医科学の見地から設定されたものであり、子供たちを守るという観点からガイドラインを徹底させる必要があると思いますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 運動部活動は、学校教育の一環として行われ、体力や技能の向上のほか、好ましい人間関係の構築に資するなど、教育的意義が高いものと考えています。一方で、活動時間の過多により、生徒の健康への影響や、日常の部活動の指導や大会引率に係る教員の負担が大きいなどの課題もあります。

 このため、スポーツ庁において、適切な活動時間や休養日についての設定、遵守とともに、専門的な指導が行える部活動指導員の配置等を盛り込んだガイドラインを今年度中に作成する予定であります。

 今後とも、子供たちの心身の健全な成長や教員の負担軽減を図るため、運動部活動のガイドラインが徹底され、適切に行われるよう、取り組んでまいりたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。

 子供たちを守るという観点からも、今回、このガイドライン、しっかりと現場に浸透するようにお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、教員の負担を軽減させるためには、先ほどの三つのフィルターによる業務負担の軽減とともに大切なのは、教職員定数の改善が不可欠であります。なぜなら、教員の一日の勤務の大半を占めるのは授業であります。そのための準備、そして成績処理といった、まさに教員にしかできない業務だからでございます。

 私も現場の視察をたくさん重ねさせていただきましたけれども、現場の視察を重ね、たくさんのお声をいただき、私ども公明党は、この教職員定数の改善が必要であるということを必死に訴え、闘い抜いた結果、十六年ぶりの義務標準法の改正にもなりました。重い扉をあけることができたことを誇りに思っております。

 そして、今回の政府予算案では、千五百九十五人の定数改善が盛り込まれ、その中核を占めるのが、ことしの四月からスタートする小学校三年生からの外国語教育に必要な千人の専科教員であります。

 一時的には、学級閉鎖などに備えて確保している授業時間を英語に回せば新たな教職員定数の改善は必要ないなどとの議論がなされたこともありましたけれども、何とかこの新しい学習指導要領の移行措置の初年度にふさわしい形にまとめられたのではないかと考えているところでございます。

 現場のお声を聞きましても、小学校の先生からは、内心ほっとしたというお声もいただきました。これまで、小学校の先生方が、必死になって研修を受けながら、英語の教育を何とかしなければと思い込んでおられたと思います。

 今回、この英語教員のことに関しましては、中学校の英語教員の免許を有するなど、一定の英語力、これを備えた専科教員という要件が示されたことは、英語教育の質の担保と教員の働き方改革の二つの意味で価値があるものだと考えております。

 そこで、二〇二〇年の小学校学習指導要領全面実施に向けて、今後とも、教職員定数の改善、これを進めることが何よりも必要、また重要であると考えますけれども、総理の力強い決意をお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今日の学校を取り巻く環境は複雑化、困難化しており、学校に求められている役割も拡大をしています。

 御指摘の教職員定数の改善については、このような状況を踏まえ、発達障害や日本語能力に課題のある子供たちへの教育に対応するため、昨年三月の法改正により、これまで加配として措置されてきた項目の基礎定数化を図ったところであります。これに加えて、平成三十年度予算案において、小学校外国語教育のための専科指導教員の確保など、必要な経費を盛り込んだところであります。

 教育の質を高めていくため、新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革に向けて、引き続き、学校の指導、事務体制の効果的な強化を図ってまいりたいと思います。

浮島委員 やっと十六年ぶりの法改正がなされたところでもございます。やっとスタートラインに立ちました。しっかりとした教職員定数の改善、総理のリーダーシップをお願いしたいと思います。

 次に、教員の給与の特例措置法、いわゆる給特法についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 先月の二十二日、一月の二十二日でありますけれども、過労死の御遺族が中心となられてつくられた教員の働き方改革推進プロジェクトのメンバーが丹羽文部副大臣と面会し、約五十万人分の署名を提出したというニュースを私は拝見しました。

 この方々が要望されたのは、とにかく時間外勤務の上限規制の設定などの抜本的な見直しに向けて実効性のある法制度を構築することという一点だと伺っております。

 昭和四十六年に制定されたいわゆる給特法、これにつきましては、公立学校の教員については、時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しないかわりに、全ての教員に約八時間分の手当に相当する教職員調整額を支払うという制度でございます。

 この一月当たり八時間というのは、現在の長時間調整額の水準を大幅に引き上げるべき、時間外手当を支給し勤務に見合った処遇をすべきとの声が上がるのも当然だと思います。

 一方、現在の過酷な勤務状態が維持されたまま、お給料だけが上がって、それで先生方は本当に報われるのかという指摘もしっかりと踏まえる必要があります。

 そこで、この給特法については、単なる処遇の問題にとどまらず、いかに教員の長時間勤務を抑制する仕組みを構築するのかという幅広い観点から見直しを検討すべきと考えますが、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

林国務大臣 昨年十二月に取りまとめられました中教審の中間まとめには、教師の勤務の特殊性や児童生徒の学びの質を担保するために持続可能な勤務環境のあり方も考慮しながら、給特法のあり方も含む教職員の勤務時間等に関する制度のあり方について、引き続き議論を進めていく必要がある、こういうふうにされております。

 まさに、今委員から御指摘があったように、単なる処遇の問題にとどまらずに、いかに長時間勤務を抑制する仕組みをつくるのかということが大事なことであるということが中教審においても述べられているわけでございまして、この給特法のあり方については、こういうさまざまな御意見をいただいているところでございますので、こうした議論を踏まえてしっかり慎重に検討してまいりたいと思っております。

浮島委員 ありがとうございます。

 幅広い観点からしっかりとした見直しを検討していただきたいと思いますので、お願いをさせていただきたいと思います。

 また、初めにも申し述べさせていただきましたけれども、国づくりは人づくりであります。子供たちは日本の宝、教育の目的は子供たちの幸福にあります。

 平成二十四年の十二月の第二次安倍内閣発足以降、教育再生は大きな動きを加速させました。教育委員会制度の改革、十六年ぶりの義務標準法の改正、学習指導要領の改訂、いじめ防止法、また教育の機会確保法、さらに、昨年の十二月の政策パッケージにおける幼児教育から高校教育、また私立高授業料の実質無償化、また給付型奨学金、そして費用負担の軽減など、教育再生は大きく前進したと私は思っております。

 本日もさまざまな議論を今させていただいているところでもございますけれども、日本の教員がみずからの職務に誇りと自信を持ち、一人一人の子供たちのやる気や志に灯をともすような教育活動がさらに全国であふれるようにするため、今、いろいろな議論を聞いていて、総理の思いを聞かせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 浮島議員が現場の状況をよく見られた上できょう質疑を行っていただいた、このように思います。

 日本の社会が大変複雑化している中において、また、家族のあり方、地域のあり方も大きく変わってくる中において、多くの教育にかかわる仕事が教員の肩に背負わされているというのが現実であろうと思います。

 そして、さまざまな事務処理手続等々もあるわけでございまして、その中で、やはり、教員が子供たちと向き合いながら正しく指導していく、この基本に戻れるようにしっかりと効率化を図っていく、そして、スクールカウンセラーを含めたいわばチーム学校の層を厚くしていくことによって、やはりチーム学校全体によって子供たちの正しい育ちをしっかりと促していくことが大切ではないか、こう思った次第でございまして、教員の皆さんが誇りを持って、矜持を持って、そして自信を持って子供たちを指導、教育していくことは、子供たちの成長にも間違いなく大きなプラスになっていくだろう、このように思います。

浮島委員 ありがとうございます。

 ぜひとも、日本の教育、総理にリーダーシップを出していただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 また、最後に一問、二年前に総理に予算委員会で質問をさせていただいたんですけれども、総理による未来へのタクトということで、二〇一五年の八月に総理に提言をさせていただき、二〇一六年のこの予算委員会でも質問をさせていただきました。

 いよいよ、平昌オリンピック・パラリンピックが終われば東京一色になると思いますけれども、この安倍総理による未来へのタクト、これはどういう趣旨かといいますと、二〇二〇年東京大会への機運を盛り上げるため、国権の最高機関たる国会において、二〇二〇年東京に向けたキックオフイベントとしてオーケストラの演奏を行い、二〇二〇年東京がスポーツの祭典であり、文化の祭典であることを高らかに示すということでございます。

 そしてまた、可能であれば、インターネットの配信、また各国の大使館等に協力を得て、各国でも同時に同じ曲を演奏する行事を設定してみたいということで、御質問させていただいたときの総理の御答弁は、この国会においてオーケストラ演奏を行う、私自身の音楽的才能に大きな問題があるわけでありまして、私自身がタクトを振るかどうかは別といたしましても、私は、大変興味深い提案ではないか、このように思いますというふうに言っていただきました。

 再度、こういう催物をしていただけないかということで御提案をさせていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、スポーツの祭典のみならず、文化の祭典でもあり、文化、芸術を通じて大会の機運を盛り上げていくことは重要である、このように思います。

 御提案のこの国会において演奏を行うというのは、大変興味深い御提案ではないか、こう思っております。

 東京大会に向けての取組については、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会や関係自治体と連携しながら検討を進めております。本年夏には、パリを中心とするフランス各地で日本文化や芸術を多面的に紹介するジャポニズム二〇一八を開催することとしております。

 日本には、世界に誇る文化財や、伝統的な芸術、現代的な芸術など、多様な文化があります。こうした日本文化の魅力を世界に向けて発信してまいりたい、このように考えております。

浮島委員 ありがとうございました。

 これで質問を終わります。

河村委員長 これにて浮島君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 長妻昭でございます。

 まずは、全国で豪雪の被害に遭われた皆様方にお見舞いを申し上げると同時に、政府におかれましては万全の対策を講じていただきますよう、お願いを申し上げます。

 まず、裁量労働制のデータについて総理にお伺いするんですが、先月、私に対する答弁、答弁を撤回されたということなんですけれども、私の全然あずかり知らないところで、総理サイドから何の連絡もなく一方的に撤回だということで、どういうことなんでしょう。何を撤回されたんですか。

 いやいや、総理に聞いているんですよ。ちょっと待ってください、委員長。

 委員長、総理が撤回したんでしょう。何で総理が答えないんですか。何を撤回したのかと聞いているんですよ。初めから何でこういうふうになるんですか。(発言する者あり)いや、力まないでって、だって、菅原理事、総理に聞いているんですよ、総理が撤回をされたんだから、何を撤回されたんですかと。こんなことになるとは私も想定していないですよ。

河村委員長 総理の発言の前に……(長妻委員「総理、総理が撤回されたんですから、何を撤回されたんですかと総理に聞いているんです」と呼ぶ)厚生労働大臣、その前段について説明してください。

加藤国務大臣 今御指名がありましたので、私の方から御説明をさせていただきたいというふうに思います。

 委員からも御指摘をいただき、私どもの方で精査をさせていただいておりましたけれども、精査に時間を要するということに対していろいろと御議論いただき、野党の長妻先生からも白紙に撤回すべきだという御指摘をたしか受けたように思っておりますし、また、与党からもそうした御指摘もございましたので、そうした精査に時間を要する、そのことも大変申しわけないわけでありますが、そうしたデータをお示しし、答弁をさせていただいたこと、これについて撤回をし、そしてそれぞれの皆さん方に、国会また国民の皆さん方に御迷惑をおかけしたことをおわびを申し上げたところでございます。

安倍内閣総理大臣 ただいま厚生労働大臣から答弁したとおりでございまして、引き続き精査が必要と厚労省から報告があったため、精査が必要なデータに基づいて行った答弁について撤回をし、そしておわびをさせていただいたところでございます。

長妻委員 そうすると、総理が撤回したデータというのはどのデータ、どういうデータなんですか。

 一般労働者よりも短いというデータもあると総理が答弁されたわけですね。総理御自身です。このデータを撤回されたと。このデータは、では、……(発言する者あり)菅原理事、では、どういうことですか。どういうことですか。(発言する者あり)ちょっと、やじを飛ばさないでください、やじを、真面目にやっているんだから、自民党は。委員長、注意してください。

河村委員長 御静粛に願います。

 安倍総理が答弁いたします。

安倍内閣総理大臣 お答えをいたします。

 私が撤回をいたしましたのは、先ほどの答弁を繰り返させていただきますが、引き続き精査が必要と厚労省から報告があったため、精査が必要なデータに基づいて行った答弁について撤回し、おわびをさせていただきました。

長妻委員 総理、では、知らないで答弁しちゃったんですか、そのデータを。データというのはどんなデータだったんですかと私は聞いたんですが、では、総理は知らないということですね、そのデータを。

加藤国務大臣 そこで、先ほど申し上げましたように、平成二十五年の私どもの厚労省の調査の結果を……(発言する者あり)

河村委員長 御静粛に願います。

加藤国務大臣 踏まえてお示しをしたデータで、私どもが精査が必要だといったデータ、これについてお示しをしたことについて、そしてそれに基づき答弁をしたことについて撤回をさせていただいたということでございます。

長妻委員 別に我々野党は敵じゃないですからね、総理。働き方改革、いい方向に持っていきたいですよ、我々も。ただ、事実が、違う事実を現状把握して間違えた方向に政策が進むというのは、これは不幸なことですよ。だから、それを冷静に議論しているわけですから。

 だから、総理、ちょっと今のやりとりで驚いたのは、このデータの中身を御存じなくて答弁されていた疑いを今私は非常に強く持つわけでございますけれども、そうすると、総理にちょっとお伺いしますが、撤回されたということは、総理のこの答弁というのは虚偽だった、事実と異なるということでよろしいんですね。

安倍内閣総理大臣 先ほど来丁寧に説明をさせていただいているところでございますが、私が答弁をいたしました、いわば撤回をいたしましたのは、データを撤回するというふうに申し上げたのではなくて、引き続き精査が必要と厚労省から報告があったため、精査が必要なデータに基づいて行った答弁について撤回し、おわびをしたところでございます。

 この段階では……(発言する者あり)済みません、少し……(発言する者あり)

河村委員長 総理答弁中は静粛に。

安倍内閣総理大臣 NHKを見ておられる方は聞こえないかもしれませんが、大変な声量のやじなものでありますから、これは落ちついて、皆さん、議論をしましょうよ。

 そこで、私が申し上げたのは、いわば精査をしている最中でありますから、精査をしているさなかにおける私の答弁でありましたが、しかし、引き続き精査が必要なデータについて答弁したことについては、これは撤回をさせていただいた、こういうことでございます。

 そして、その上において、さらに今週月曜日、精査したものを厚労省がお渡しをしたんだ、こういう時系列でございますから、そのとおり私は申し上げているところでございます。

 そしてまた、長妻委員が、私が知らないで答弁した、どこまで知っているかという問題でもあるわけでございますが、これは、担当大臣は厚労大臣であります。つまり、詳細について答弁するのは……(発言する者あり)

河村委員長 総理が答弁中です。

安倍内閣総理大臣 詳細について答弁をさせていただくのはもちろん厚労大臣でありますし、この問題について詳細に事実を全て把握しているのは、これは厚労大臣であります。

 私の場合は、もちろんこの予算について、森羅万象全てのことについてお答えをしなければならない立場ではありますが、全てのことについては、しかし、それは全て私が詳細を把握しているわけではありません。

 私がお答えをさせていただいたのは、まさに厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるという旨の答弁が、これは厚労省から上がってくるわけでありまして、そして、それを私が参考にして答弁をさせていただいた、こういうことでありまして、これ以上のものではない、こういうことでございます。この中のそれ以上の詳細については、厚労大臣がおりますから、厚労大臣と議論をしていただければいいのではないか、このように思います。

長妻委員 総理、総理の言うことは半分は正しいと思いますよ。だって、厚労大臣が厚労行政を詳細に把握すると。だから、総理はこういう答弁をしちゃだめだったんですよ。詳細に把握していないのに、我々の長いという追及に反論したかったのか、いや、裁量労働制は短いということを総理が、御自身がおっしゃって、でも実は自分は余りよく知らなくて言ってしまった。今、そんなような御答弁だったと思うんですが、それは無責任ですよ、総理。そういう責任をどうとるんですか。

 答弁は撤回したけれどもデータは撤回しない、こういう御答弁がありました。データは撤回をしたんですか。つまり、裁量労働制の方が長い、一般の労働者に比べて平均的な者では裁量労働制の方が長い、こういう逆のデータがある、データになった、こういうことでよろしいんですか。

加藤国務大臣 私は、答弁の中で具体的な数字、データをお示ししておりますので、そうしたデータをお示しさせていただいたこと、これも私は撤回させていただいたところでございます。

 いずれにしても、そうしたものを撤回しているわけでありますから、今委員御指摘のように、たしかJILPTというところ、そこにおける、一般の労働者と裁量労働者について、実際働いている方に対するアンケートといいますか、とった調査の結果で比べると、平均時間においては一般の労働者の方が裁量労働者よりも短いというデータがあるということは承知をしているところでございます。

長妻委員 裁量労働制、これは、みなし残業時間をつけて、そして、それ以上働いても残業代は出ない、しかも労働時間の上限の規制もないということでございます。

 大体、みなし残業時間は、厚労省の調査によると、平均で八時間十九分、裁量労働制ですね。でも、実際に平均では九時間十六分働いておられるというようなことで、非常にみなしをオーバーしてしまう。政府は、裁量労働制が入れば短い働き方ができますよ、こんなような話をおっしゃっているんですが、現実は全く逆である。過労死がふえる。過労死の御家族、遺族の方もおっしゃっておられます。

 その中で、平成二十五年度労働時間等総合実態調査というのを厚労省が出され、そこで一日の労働時間について、平均的な者では、裁量労働制が九時間十六分、一般の方が九時間三十七分で、やや裁量労働制の方が一般の方より短いから、そういうデータもあるんだ、こういうようなことで世論を誘導したんではないか、私はこういう強い疑いを持っているわけであります。

 そうすると、そういう軽率な答弁の責任というのはどういうふうにとるんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 ですから、いわば精査が必要な調査について答弁したことについては撤回をし、おわびをしたところでございます。

長妻委員 おわびすれば済むという話なんですかね、これは。

 我々は三年間、ある意味ではだまされ続けてきたんですよ。国民の皆さんもそうかもしれません。一番初めにこのデータが出たのは、民主党の厚生労働部門会議というところに、我々も昔のスタッフに確認しましたら、二〇一五年の三月二十六日に厚労省から提示をされたと。その当時は、裁量労働制というのは相当労働時間が長くなる、こんなようなことを我々も問題視していたさなかでございまして、その中で、いやいや、裁量労働制の方が短い、こういうデータもあるんですよ、バックデータなしでありましたけれども、民主党の厚生労働部門会議に初めてそれが出てきた。

 経緯を見ますと、その前から、その前年もそうですけれども、総理に対しても当時の塩崎大臣に対しても、相当追及が強まっていたんですね、野党から、裁量労働制、長いじゃないか、おかしいじゃないかと。独立行政法人の労働政策研究・研修機構のデータでは、平均労働者では通常の労働者よりも企画業務型裁量労働制の方が長い、こういう平均時間のきちっとしたデータがあるので、そういうデータがあるじゃないかと追及していたときに、二〇一五年の三月に出てきた。非常にうま過ぎる話なんですよ。

 そして、今回、そのデータがインチキだったということがわかったわけでありまして、捏造ではないのかということを私は非常に強く疑うわけです。捏造というのは、事実でないことを事実のようにこしらえること、でっち上げることというふうに辞書にはありますけれども、捏造であれば、政策をゆがめる意図が働いたということで、これは大変なことだと思いますよ。本当にこれは捏造でないのかどうか、きちっとした調査をして確認したんですか。

 あるいは、当時も総理は追及されていました、裁量労働制は長くなるといって、前の年にも。首相官邸サイドから、つぶやきとか、あるいは何かそういうデータがないのかとか、あるいは何かそういうデータを探さなきゃいけないというそんたくが働いたのかとか、このデータはやっちゃいけないことをやっているんですよ、総理、笑っていますけれども。笑い事じゃないんですよ、総理。わかっているんですか、この重大性を。

 政策は、政策はあれですよ。(発言する者あり)いやいや、だから、決めつけるとかいうやじを飛ばすから、私も言わざるを得ないんですよ。決めつけじゃなくて、インチキなデータだったんですよ、これは。そういう、私も厚生労働行政に携わっていましたけれども、データに基づいて現状を冷静に把握していかないと、それは間違うわけですよ。だから私は言っているんです。

 捏造でないということはぜひ証明していただきたい、調査していただきたいと思うんですが、本当に捏造じゃないんですか、これは。

安倍内閣総理大臣 官邸から指示があったのではないかという疑いをかけられましたので、まず私の方からお答えをさせていただき、資料については厚労大臣からお答えをさせていただきたい、このように思います。

 まず、一月二十九日の予算委員会で長妻委員から、裁量労働制について質問の通告をいただきました。その朝の勉強会、いわばその日、七時間やる予算委員会、全ての質問について私は勉強会を早朝から開くわけでございまして、一つ一つの質問についてはそれほど実は長い時間をかけられないというのは、長妻委員も御承知のとおりだろうと思います。

 その朝の勉強会の際に、JILPTのアンケート調査があるが、厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるという旨の答弁が厚生労働省から上がってきているという説明を受けました。

 かねてより、JILPTのデータかどうかは定かではないが、委員を始めとする野党の皆さんから、裁量労働制の方が一般の方よりも労働時間が長くなるとの御指摘を受けてまいりました。

 そうした御指摘を受けてきたことを踏まえて、一月二十九日の答弁においては、厚労省から上がってきた答弁にはデータがあったことから、岩盤規制、労働生産性について質疑の際、厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均の方で比べれば一般労働者よりも短いデータもあると御紹介をさせていただいたところでございます。

 そこで、今委員が御指摘になったように、当時の民主党の部門会議に提出する資料の作成についてでございますが、そのときについてどうだったかという経緯を、いわば官邸内でもう一度よく調べたわけでございます。その結果、私や私のスタッフから指示を行ったことはありません。

 さらに、一月二十九日の答弁に当たっても、私が先ほど答弁したことですからね、私や私のスタッフから指示を行ったこともないわけであります。厚労省の所管に属する事項については本来厚労省において責任を持って資料を作成すべきものでありまして、これは当然のことであろうと思うわけであります。

 しかしながら、今般、結果として性格の異なる数値を比較していたことは不適切であり、私からも深くおわびをしたいと思いますが、厚労省については厚労大臣から答弁をさせたいと思います。

長妻委員 総理、ちょっとお答えになっていないんですよ。

 このデータが、先ほど申し上げたじゃないですか、つくられたのは今じゃなくて、このデータについて、二〇一五年の三月の直前につくられたんでしょう。そのときに初めて民主党の部門会議に出てきましたから、そのときに首相官邸サイドや、あるいはいろいろなところから、何かデータはないのか、責められる一方だ、裁量労働制は長い長いと言われているから、そういうような話があったんですかというようなことをお伺いしたのに、今の話じゃないんですよ、二〇一五年の三月より前の話でお伺いしているわけでございますけれども。

 そうしましたら、厚労省は、いかがですか、当時、塩崎大臣でしたけれども、決裁は上がっているんですか。

安倍内閣総理大臣 今、済みません、私、お答えいたしました。

 それは、一月二十九日のことは一月二十九日としてお答えをさせていただきましたが、そして、その後、当時の民主党の部門会議に提出する資料作成について私や私のスタッフから指示を行ったことはないと、その前にそのときのことを調べ、こういうふうに答弁をさせていただいておりまして、その後にまた一月二十九日の答弁について触れておりますが、二つそれぞれ私はお答えをさせていただいております。

加藤国務大臣 委員御指摘のように、それぞれ異なる形で選んだデータを比較してしまったということ、これは不適切である、それはそのとおりでありまして、これは深くおわびをしたいというふうに思います。

 その上で、平成二十七年三月、御指摘のように、当時の民主党の厚生労働部門会議において、この裁量労働制を始めとした議論がなされておりました。

 具体的な経緯、詳細は残っておりませんけれども、そこの場において裁量労働制についていろいろ御指摘をいただいた、それにお答えをしていくということで、二十枚以上の資料を提出した中に、今御指摘いただいている御提出した資料があったわけであります。

 そのときには、具体的な手続として、決裁とおっしゃいましたけれども、決裁というと、私のイメージでは決裁書をつくって回すということでありますが、そういう手続は厚労省はとっていないようでございますが、こういう文書を今、民主党のそうしたところに出しますよということで、課長、そして当時の局長に説明があり、そしてその了解を得たということで、大臣には説明に行っていない、こういうことは確認しております。

長妻委員 これだけの資料を野党に出すときに、私の経験では、大臣に説明に行くはずだと思いますよ。だから、そこも検証して、きちっと紙で後日出していただきたいと思うんです、本当に捏造でないのかどうか。

 これは委員長にも、採決までにそういうデータ、資料をお出しいただきたいということを要請いたします。

河村委員長 理事会で協議の上、対応させていただきます。

長妻委員 そして、総理から二十九日の答弁レクの話がございましたけれども、そのときには、この七枚目にありますけれども、これは、御存じのように、先ほど申し上げました独立行政法人労働政策研究・研修機構がつくった企画型裁量労働制、これを今回営業に拡大するということでありますけれども、だから企画業務型が焦点になっているんですが、労働時間はいずれのデータでも、労働者に確認をすると、通常の労働者よりも長い、こういうデータがある。

 総理はこのデータを、では、二十九日の朝、知っていながら片方だけ答弁されたということなんですか。総理の答弁レクの話なんですよ。総理の答弁を我々は聞いているので。総理、何でそういうふうに答弁されないんですか。

安倍内閣総理大臣 長妻委員、予算委員会の前の総理のいわば答弁レクというのは、短い間に、七時間で出てくる十七、八人の答弁を全部やるわけですよ。ですから、一つの質問について二分とかそれぐらいしか、百問近いものでありますから、当然それぐらいしか時間をかけることができないわけであります。

 一つについて深く深くやっているのであれば、それは、例えば五日前ぐらいから質問通告していただいてがっちりやっていけば別ですよ。私のところに上がってくるのは当日の朝ですから、秘書官を経て。そこで勉強するわけでございまして、一つ一つの資料で、これをブレークダウンして正しいかどうか確認しろなんということはあり得ないんですよ、それは。

 役所から上がってきた資料については、その資料をある程度信頼して答えざるを得ないわけでありまして、これは当然のことであろう、私はこう思うわけでございまして、そして、いわば答弁が上がってくる上においても、相当夜遅くまで役所もそして我々の秘書官も作業した上で早朝出てくるわけでございます。

 ですから、私の答弁においては、一般労働者よりも短いというデータもあるというふうにお答えをさせていただいているわけでありまして、そういうお答えをさせていただいて、それ以外のデータを否定する答弁にはなっていないわけでありまして、事実、私の答弁のもともとの資料もそういう答弁になっていたところでございまして、この答弁を私は行った、こういうことでございます。

 繰り返しになりますが、いわば、予算委員会でありますから、この問題だけをやっているわけではないわけでございまして、さまざまな質問が出てきて、質問される方の中には私に結局質問されない方もたくさんおられますが、しかし、質問されなかったものも含めて全て我々は答弁レクをしながら、そこで、短い間ではありますがディスカッションをして、どういう答弁をしていくかということを決めていくわけでありますから、百問以上ある中においては、当然、ある程度、一つ一つの質問については短い時間で効率的にやるしかない、こういうことでございます。

長妻委員 総理、間違った答弁をした責任を全然感じておられないような答弁ですよね。だから、レクのときにこれが示されたのかとシンプルなことを聞いているのにお答えにならない。全然質問にお答えいただいていないわけであります。

 結局、塩崎大臣当時、その後国会でもいろいろな答弁をされているんですよ、その間違ったデータに基づいて、意図的にというか。

 例えば、私が平成二十九年の二月十七日に塩崎大臣に「結局、裁量労働制を拡大するとそういう人たちの労働時間は今よりもふえるのか減るのか、どちらになるんですか。」と聞きましたら、例の厚生労働省調査によりますとということで平均的な者の話を持ってきて、「約二十分短いというデータもございます。」「残業時間がふえるということで一方的に御指摘をされることは必ずしも当たっていないというふうに思っております。」とか、国会で何度かそういう答弁をされているんですよ、塩崎大臣も。

 そして、恐らく官僚の方も、そういうデータを頭に入れて法律をつくっているわけですよ。三年間ずうっとそういう間違ったデータが、恐らく与党の議員にも説明されたんじゃないですか、我々に資料を出しているぐらいですから。そういう形で政策形成がゆがめられたというふうに私は言わざるを得ないわけでございます。

 総理もおっしゃっておられますが、これは最近の答弁でありますけれども、法案について、ことしの二月十四日のこの委員会でありますけれども、インチキだったこのデータですね、「このデータを全ての基礎として法案づくりをしたわけではないわけでありまして、データの一つにあるという紹介をさせていただいた」、これは法案を撤回せよというような質問に対しての答弁だったわけです。そして、安倍総理の同じ日の答弁でも、「私も、平均的な方でこういうデータもあるという紹介をさせていただいたわけでありまして、いわば、これが絶対的なものとして、これのみを基盤として法案を作成したものではない」、こういうふうにおっしゃっているわけですね。

 ある意味では、逆に言うと、これのみではないけれども、これも参考にしたということをみずからおっしゃっておられるわけでございまして、当然、政策を立案するときには、一つのデータだけに基づいて、それで政策をつくるということは余りあり得ないわけで、いろいろなデータをもとにつくる。

 ただ、これだけ政府が強調して、総理までおっしゃっておられるデータというのは、恐らく政府の中では、野党が、裁量労働制が長いと。野党だけじゃないですよ。過労死の御遺族の方々もおっしゃっておられますよ。裁量労働制を拡大すると過労死がふえる、やめてほしいとおっしゃっているわけで、そういう中で、恐らく政府や与党、政府の中では非常に重点的な重みを持ったデータとして扱われたと私は思うわけであります。

 そういう意味では、このデータも法案作成の基盤となったわけでありますけれども、このデータもです、であるから、このデータが間違っているということは、一からやり直してください、法案。

加藤国務大臣 委員も御承知のとおり、こうした労働関係の法案というのは、労働政策審議会で御議論いただいて、また、その結果を踏まえ、建議をいただいて、その結果を踏まえて要綱をつくり、そしてその要綱に対して御答申をいただく、こういう流れになっております。

 そのプロセスの中において、これまでも御説明を申し上げているように、労働政策審議会には一般労働者の方の一日のデータについては提供しておりません。そして、裁量労働制は裁量労働制として、一般労働者については一般労働者として、長時間労働の議論とか裁量労働の議論にそれぞれお使いいただいたんだろうというふうに思っておりますので、したがって、そこでの議論に関してはこうした比較表をお出ししていないわけでありますから、そこの議論においてはそうした比較をベースにした議論は行われていなかったということでございます。その上で、私どもは、そうした要綱を踏まえて今度は政府側において法案を作成し、前回提出、前回の話ですよ、前回提出した、こういう流れでございます。

長妻委員 これは、大臣、へ理屈というものじゃないでしょうかね。

 労政審は基本的に、今回の経緯、大臣もよく御存じだと思うんですよ。今まで、民主党政権、その前の麻生政権、その以前の自民党政権と比べて今回の第二次安倍政権、労働法制の意思決定の仕方が相当変わりました。官邸主導になりました。

 御存じのように、これは、一番初め、二〇一三年の六月、日本再興戦略、官邸の会議で閣議決定された。企画業務型裁量労働制を始め、労働時間法制について早急に実態把握調査、分析を実施せよというようなことで、今問題になっているこの調査が指示され、そして二〇一三年の九月に労政審がスタートした。

 つまり、企画業務型の裁量労働制を拡大するというのはもう既定路線で、そして労政審におりてきているわけでありまして、二〇一三年の九月、このキックオフの企画業務型の拡大のときに厚労省の方が説明しているんですよ。一般の方の実労働時間、裁量労働制も実労働時間をとる、この調査を議論の出発点にしたい、こういうふうにおっしゃっておられるわけであります。

 その課長にお話を聞きますと、この調査は実は実労働時間を調べていなかったということを認められて、先日ですけれども、昨日か一昨日でありますけれども、今回調べたのは所定労働時間と法定外時間だけで実労働時間は調べていない、申しわけなく思っている、こういうふうにおっしゃっておられるわけで、労政審に示したデータも非常に問題があるデータである。

 例えば、この資料でいえば六枚目でございますけれども、これは労政審に示されたデータで、説明もあるんですね、厚生労働省から。これについても、説明をしているのは、一般労働者、平均的な者の一週間の法定時間外労働の実績というのを説明しているんですが、厚労省は何と言っているかというと、この一週の法定時間外労働の実績は、平均的な方においては云々かんぬん、十五時間以下である事業所の割合が一・五%ポイントふえて九七・九%となっておりますと、二〇一三年十月三十日の労政審でも説明しているわけですね、この資料をもとに。

 ところが、これは一般的な労働者の平均的な者なんですが、実はこれは私も知らなかったわけで、びっくりしたわけでありますけれども、これについても、一カ月の中で一番長く働いた一週間だけを取り出して調査した調査だったということで、そんなの全然説明が労政審でないですから、委員の先生方はわからないですよ、それは。

加藤国務大臣 ちょっと私も一つ一つつまびらかに、どういう形で労政審で議論がされたか承知しておりませんが、今委員が御指摘のこれは、ただ、これと例えば裁量労働制の一日を比較したわけではなかったということはまず承知をしております。

 これは、長時間労働の議論をしているわけでありますから、長時間労働をいかに是正していくのかという意味において出された資料だというふうに承知をしておりまして、そのときに、平均的な者において逆に言えばより高いデータが出ているということでございますから、それはむしろ、そういった議論、まさに長時間労働の是正といった観点においてはそういったデータが出されていた。

 ただ、委員御指摘のように、労働政策審議会の方がどこまでそこを理解していたか、これはちょっと私は承知をしておりませんけれども、ただ、当時は長時間労働の是正についても議論がなされていたということだと思います。

長妻委員 労政審にこういう説明をするというのは、普通はあり得ないですよ。

 それで、労政審のみならず、さっきも申し上げたじゃないですか、官邸主導でこの案件が進んでいって、その後、どうなったんですか、法案は。廃案になったんですよ、去年の十月。

 その前に実は、これは何回の国会を経ているんでございましょうかね。裁量労働制の拡大は、二〇一五年の四月に閣議決定をして、以後、五回前後の国会を経ても成立しなかったわけです。

 ところが、これについて、例の働き方改革実行計画、昨年の三月、そこで改めて、裁量労働制の営業への拡大について、法案の早期成立というのが盛り込まれたわけです。一旦そこで断念するかに見えたんだけれども、去年の三月に、今度は働き方改革実行計画ということで、労政審じゃないですよ、そこでやるということが決定されたわけですよ。

 ですから、そういうところに塩崎大臣も出席されておられるわけですから、そういうデータを念頭にいろいろな議論が、そこで直接的に言及されたかどうかは別にして、始まっているわけでありまして、そして法案が廃案になったということで、また一から議論して出すということではなくて、三月の働き方改革実行計画なわけでありますから。

 報道によると、今月の二十七日に閣議決定して国会に法案を出す、ただ、それがいろいろ問題があって三月の上旬にずれ込むというようなことでありますので、今回、ぎりぎりこのタイミングでインチキなデータというのが発覚をいたしましたので、ここで、この閣議決定、国会提出というのを一旦見送る、こういう決断をぜひしていただきたい。

 裁量労働制と高度プロフェッショナル制度、これは、労働時間の上限を撤廃して過労死がふえる、現状をつぶさに見るとそう言わざるを得ないわけでありますから、分離をして、そして一旦国会に提出するのは待つ、やめる、こういうような判断を今していただかないと、この予算委員会で、働き方改革、予算委員会のみならず安倍総理の最大のテーマですよね、今国会で。ですから、ぜひここで歯どめをかけないと、本当に過労死はふえますよ。

 ぜひここで、総理、おっしゃっていただきたいんです。いかがですか。

加藤国務大臣 これは、これまでもここで御答弁申し上げましたとおり、労働政策審議会においては多様な論点に立って御議論いただいて、そしておおむね妥当という結論をいただき、また今回も改めてお出しをし、そうしたことをいただいたところでございますので、今、それを踏まえて、提出日の話がございましたけれども、私ども準備をしているということでございまして、それが整い次第提出をさせていただきたい、こう思っております。

長妻委員 幸いというか、不幸中の幸いというか、まだ出ていないんですよ、国会に法案が、ぎりぎり。

 総理、全然お答えになっておられないんですけれども、さっき私が聞いたのは、二月十四日の総理の御答弁、これのみを基盤として法案を作成したものではないと。それはそうかもしれません。これだけ、にせデータだけではないと思いますけれども、それも基盤として入っているということをお認めになっておられるわけですから。

 総理、別に野党は敵じゃないんですよ。本当につぶさに現状を見て、過労死の御遺族の方や企業経営者あるいは現場の監督官の皆さんと意見交換をすると、これは本当にまずい。今の裁量労働制、小さく運用されていますけれども、それでさえ取締りがほとんどできない、ざるになっている。こういうことで、死屍累々ですよ、本当に。

 総理、いかがですか、基盤の一つではないけれども、これに基づいているとおっしゃっておられるわけですから。

安倍内閣総理大臣 これは既に厚労大臣も答弁をしておりますが、JILPTなどのデータでも見られるように、裁量労働の方の労働時間が長くなるという懸念があることから健康確保措置を強化することとしたわけでありまして、自分の能力や才能を生かしながら、そしてしっかり健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていく考えであります。

 裁量労働制の見直しは、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるようにするために必要な改革であると考えておりますが、裁量労働制については、一定の知識や経験を有して働く方本人に、会社が決めた一律の定時に縛られることなく出勤、退勤時間を自由に決めていただき、仕事の進め方をお任せして、そしてより効率的に成果を上げていただこうというものであります。

 今回の見直しによって、例えば情報システム関連企業など、法人顧客の課題解決のために必要なシステム開発に従事する方が、担当する企業との交渉の中でより具体的なニーズが把握できたときに開発業務に集中する。一方で、会社が決めた九時から十八時などの定時にとらわれることなく業務調整が可能となることで、子供の送り迎えやリフレッシュのための半日休みなどが自在にできるようになるといったように、画一的な枠を取り払って、その方本位のめり張りをつけた働き方ができるようになるわけでありまして、こうしたメリットの一方で、労働時間が長くなるとの御指摘があるのも事実であります。

 そこで、今回の見直しにおいては、労使委員会が決議した健康確保措置を必ず実施させること、客観的な方法によって労働時間を把握し、そして、実際に働いた時間が長時間となった方には医師による面接指導を行うことを使用者に義務づけているところでございまして、そうした措置をとりながら自由な働き方を可能とする法案であり、まだ提出はさせていただいていないところでございますが、この法案の取扱いについては、厚労大臣から答弁をさせていただいたとおりでございます。

長妻委員 総理は私の質問に答えておられないんですけれども。

 総理、働き方改革、別に与野党が対決する話じゃないと思うんですね、私は。総理が最終的に目指すのは、稼ぐ力を上げる、労働生産性を上げるということだと思います。私も、結果として労働生産性が上がる、稼ぐ力が上がる働き方をしないと実質賃金も上がらない。先進国で二十位ですよ、日本の労働生産性。

 総理がおっしゃるように、労働法制は岩盤規制だ、ドリルで穴をあけりゃいいんだ、そういうふうに言わんばかりの答弁をされて、緩めれば緩めるほどいいような話をされる。非正規雇用が四割を超えた、労働生産性は下がりました、内閣府も認めました、非正規雇用と労働生産性の関係、だからこそ、労働法制は働く人の権利を守る最後のとりでなんですよ。

 今、馬車馬のように働いて、単純労働で世界と勝負するなんて、そんな時代錯誤のこと、あり得ないですよね。やはり、ゆとりある働き方、高付加価値を生み出す人材を多く抱えた国が世界で勝つんですよ。そのときに、どうするんですか、こんな緩めて、馬車馬のように働かせて、過労死ふやすような。

 職業訓練が先進国で日本は一番脆弱です。そこも強めた上で、働き方改革は、規制を強めるところは強める、こういうことをしなければ、日本の労働生産性はさらに私は下がると思う。

 そういう意味で、私が聞いているのは、総理も先ほどおっしゃったように、このデータのみを基盤として法案を作成したものではないけれども、基盤の一つであるということをお認めになっておられるわけですから、このデータが、総理も他者のことは相当批判しますよね、真っ赤なうそだとか、あるいは裏取りをしていないとか。総理自身もそうじゃないですか。ぱっと言っちゃって、で、間違えて開き直るような御姿勢である。

 総理、これも、ですから対立する話じゃない。ぜひ、現状を見て、今の総理の認識というのを変えていただいて、一旦この法律を撤回する、撤回というか、まだ出ていないわけですから、お願いします。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 まるで対立をあおっているような言い方だと私は思いますが。

 我々は、何も馬車馬のように単純労働で働かせようということでは全くないわけでありまして、そうではないということをるる私たちはずっと説明をしてきたんだと思いますよ。そこを全然相手にしていただけないというのは大変残念なことでございます。

 我々の政権が発足をして、いわばまるで非正規がどんどんふえているかのごとくの印象を与えられましたが、それは全く間違いでございまして、例えば正規雇用については、我々が政権奪還前は約五十万人正規雇用は減っていたんですよ。我々が政権をとってから、この五年間で七十八万人正規雇用がふえたんです。これは一番新しいデータであります。いわば労働市場が非常に画期的に改善しているのは事実でございます。

 その中において、我々は、しっかりとやるべき改革をやっていこう、一人当たりの生産性を上げていく、そして稼ぎを上げていく。と同時に……(発言する者あり)

河村委員長 ちょっと静かにしてください。

安倍内閣総理大臣 と同時に、我々は、しっかりと健康管理の措置をさせていただく、そのことも大変必要なことでございますし、大事なことでございますから、先ほどは答弁をさせていただいたところでございます。私たちがそういう対応をしているところについて答弁をさせていただくと、答弁をやめろ、こう言われるわけでありますが、それではこの私たちのやろうとしている働き方改革の本質を御理解いただくことが難しいから、こうやって丁寧に説明をさせていただいているところでございます。

 と同時に、我々、今回、働き方改革の中においては、時間外労働の上限規制を罰則つきで初めて導入するわけでございますし、これは労使が合意をして行うことになっているわけでございます。これは経営者側にも御理解をいただきながら進めているところでございまして、さらには、やはり働き方について、いわば長時間労働を是正していくことによって生産性が上がっていくということについては、これは委員と私は見解を同じくするところでございます。

長妻委員 全然総理はまた答えておられないんですけれども。

 総理がおっしゃったので申し上げますけれども、非正規雇用をこれまで自民党政権はどんどんどんどんふやしていったじゃないですか。あの派遣法の解禁をしてから、どんどん加速度的に非正規がふえて、どんどん緩める一方じゃないですか。こういう自民党の大罪も私はよく理解をしていただきたいというふうにも思うところであります。

 それで、総理、実態を本当に御理解いただきたいんですね。

 裁量労働制というのは取締りがなかなかできないということで、裁量労働制違反で罰金を食らった件数ってわからないというんですね、厚生労働省は。ですから、わからないんですよ、裁量労働制の違反というのは。なかなかつかめないわけであります。

 例えば、夫を過労死で、自殺された、奥様がおっしゃっておられました、やはりチームプレーだと裁量なんというのは働かないと。一人が単独で仕事をするということであれば裁量というのはあるかもしれませんけれども、営業まで拡大すると、これはチームプレーだし、年収二百万円でも、二十代でも、裁量労働制は適用を別に妨げないわけであります。

 あるいは、自身が過労で自殺未遂された方は、裁量労働は、仕事ができる人ほど仕事が回ってくる。社労士の方は、ブラック企業がホワイト企業になる、つまり残業時間がなくなっちゃうわけですから。

 夫を二〇〇九年に過労自殺で亡くされた女性は、私は本当に涙が出ましたけれども、詳細に聞いて、この国は国民を守ってくれない、安心して働ける国になるようにしていただきたいということで、実際に完璧に取締り体制がきちっとあって健康確保措置があればいいんですけれども、今でも裁量労働制はざるなんですよ。

 過労死の御遺族の方は、今でさえ裁量労働制で働く労働者の過労死、過労自殺が後を絶たない現状にもかかわらず適用範囲を更に拡大すれば、労働時間の歯どめがなくなり、過労死が更にふえることは目に見えています、家族の会では、これらを阻止するため、警鐘を鳴らし続けます、こういうこともおっしゃっておられるわけで、多くの過労死された方の事例、たくさんここにあります。全部を読み上げませんけれども、こういう現状をわかった上で法律を議論しなければならない。

 というデータもあるというデータが事実と違うデータだったわけでありまして、それを基盤の一つとしてこの法律は成り立ったわけであるというのは総理もお認めになっておられるので、総理、もう一度聞きますけれども、まだ法律が出ていないわけです。来月の上旬の予定であります、国会に。ぜひ、一旦出すのを停止していただけませんか。総理、いかがですか。

 ちょっと待ってください。もう時間もないので、総理。先ほどお答えしていないじゃないですか。だめです、だめです。総理、お答えください。総理がおっしゃっているんですよ。

河村委員長 政策責任者の判断を聞きます。

長妻委員 いや、総理がおっしゃっているんですから、ちょっと待ってください。総理にお伺いします、総理が基盤の一つだとおっしゃっているので。提出するのはやめてください。

加藤国務大臣 今委員から御指摘がありましたけれども、確かに、現状においても監督指導すべき、そうした是正すべきことがあることは全くおっしゃるとおりでございまして、私どもも、そういったもの、例えば本来裁量労働制が適用されるべきでないものに適用されている、あるいは裁量であるべき時間に対して規制をされている、そういったものについてしっかりとチェックをさせていただいております。

 その上で、もし裁量労働制の適用が認められなければみなしがなくなりますから、それに基づいて、三十二条、あるいはそれぞれの残業代がきちんと支払われているかどうか、これについてチェックをし、そして、残業代が払われていなければ、それに基づく罰金が適用されている。(長妻委員「罰金は何件ですか」と呼ぶ)罰金、今それについては精査をさせていただいているところでございます。

 それから、監督指導件数についても委員から御指摘いただいておりますので、これは全国で、裁量労働制ということではなくて、結果において、今申し上げたように残業代未払いとかそういった結果が出てくるので、そのうち裁量労働制の監督指導によってそうした指摘がなされたものは何件なのか、これは今、一生懸命に精査をさせていただいているところでございます。

 いずれにしても、そういった部分と、それからいろいろメリットがある部分、要するに、メリットがある部分はしっかり運用し、委員がおっしゃるように、裁量的に働いていただくことによってその力を十二分に発揮していただく。他方で、今御指摘のあるような労働時間等の問題があればそれはしっかり是正をしていく。そして、今回の法案では、より一層そこをしっかりやれるという中身を盛り込んでいるわけでございます。

 いずれにしても、今回、先ほど申し上げた法案については、労働政策審議会からおおむね妥当という答申もいただいておりますので、今、それを踏まえて法案の作成の準備をさせていただいているということでございます。

安倍内閣総理大臣 今、まさに担当大臣が答弁をさせていただいたように、準備をさせていただいているということでございます。

長妻委員 いや、だって、データがこれだけ事実と違う。それだけ、鬼の首をとったように総理がおっしゃったこのデータは、政府の中でも相当重要視されているデータだと思いますよ、塩崎大臣の答弁始め。それが間違っていたのに歩みをとめないんですか。一旦とめるというような御判断をされないんですか。こんなことあり得るんですか、本当に。

 ちょっと理事会でよく議論していただきたいと思うんですね。だって、データが……(発言する者あり)まだ出ていないというふうに自民党おっしゃりましたけれども、出たらもう終わりじゃないですか。出たら戻せないでしょう。いや、自民党からこれほどやじが飛ぶとは思いませんよ。これだけ間違ったデータで、単なる凡ミスなんですかね、これ。一番肝となるデータじゃないですか。それでこんなのんきなやじ飛ばしているんですか、自民党は。

 これはちょっと信じられないわけでありまして、ぜひ精査をして、捏造だったのかどうかも含めて、そうなると、これは法案提出する前にやはり予算委員会の理事会としても、ここで問題が発覚したわけですから、議論していただきたいと思うんですけれども、委員長、いかがですか。

河村委員長 理事会においても、当然、そういう御提言があったということを踏まえて協議をいたします。

長妻委員 ぜひ総理、一回立ちどまって、総理、そんなにやにやしないで、ちょっと立ちどまっていただきたいと思います。

 それで、もう一点、これは細かいことなのでありますけれども、このいただいたデータの中に、見ておりますと、一日の労働時間なのに二十四時間を超えるデータが散見されるんですが、これは何件ぐらいあるんですか。

加藤国務大臣 この中で、一般労働者について、これは法定時間外労働の実績に法定労働時間の八時間を加えたもので計算させていただきましたが、二十四時間を超えるものについて、最長の者では十二件、平均的な者では三件ございます。専門も……(長妻委員「どうしてなの。正しいんですか」と呼ぶ)済みません、それでよろしいですか。

長妻委員 いや、しれっとおっしゃりましたけれども、一日二十四時間を超えるデータというのは正しいデータなんですか。

加藤国務大臣 その平均的な者の件については、たしか理事会に御報告をさせていただいた件で、明らかに間違いであるということも指摘ができるというふうに思います。

 それから、今、最長の方も、実際、現実として二十四時間を超えることはあり得ないわけでありますので、そういった意味では間違いなんだろうと思いますが、ただ、その背景において、数字を間違えているということと、それから、場合によっては、本来は二十四時間で切らなきゃいけないんですけれども、そのまま足してしまっているという例があるのかもしれませんが、ちょっとそこはよくわかりません。

長妻委員 これほど閣議決定で調査をした調査でミスがあるし、これは一日ですけれども、一週間のデータもとっているのは、同じ方からとっているわけですよね。

 ですから、本当にこのデータそのものの、今回は、このデータ、答弁を撤回されましたけれども、そのデータ全体、労政審に示されたものもきちっとやはり精査しなければいけないと思っておりますので、委員長、お取り計らいいただきたいと思います。

河村委員長 理事会で先ほどの件とあわせて協議をいたします。

長妻委員 総理に本当に最後申し上げたいのは、これだけ、三年間、にせのデータが国会でも答弁され、恐らく官僚の皆さんの頭の中にも入っていて、働き方実現会議も含めてこの法案が議論されてきた。三年間の時間を返してほしい。

 これだけ、加藤大臣も、七日に報告が上がったわけですよね。にもかかわらず、その翌日の八日から十五日まで、このデータが、一カ月の中の平均的な者を選んで、その一カ月の中で一番働いた日の時間を教えてください、こういう聞き方だったわけですね。全然初めの話と違っていたというのは七日に加藤大臣は知ったのにもかかわらず、ずっとこれはみんな質問しましたよ、精査、精査、精査で、何で本当のことをおっしゃらなかったんですか。

加藤国務大臣 たしか八日の段階から精査ということを申し上げさせていただきました。たしか七日の段階で、私の方に、野党の方からさまざまな指摘がデータについてあるということ、そして、それを踏まえて調査票を見たところ、一般の労働者については平均な者について一番長い一週間また一日を選んでいた、他方で、裁量労働制については、これはどういう形で選んでいるかわからない、こういう指摘がございました。

 ここでの議論は、その対象を、比較について御議論いただいていたわけでありますから、両者について正確にわかったところで御答弁をすべきということで、精査をさせていただいているということを申し上げさせていただいたところでございます。

長妻委員 これはおかしいですよ。加藤大臣はこの紙を見たのが、これは調査票ですけれども、七日ということでありますよね。この調査票で見ると、一般の労働者については「一日の時間外労働の最長時間数」と書いてあるわけですよ。

 ですから、裁量労働制を吟味するのは別にして、今までは一般労働者の平均的な者の一日と答えていたから、それについては間違いというのはこの時点でわかったわけですよ。裁量労働制を精査する必要はないんですよ。ここでわかった。しかも、一万数千件を精査する。必要ないじゃないですか。この調査票でわかるじゃないですか、一目瞭然で。

 これについて、時間が参りましたけれども、加藤大臣のこういう不誠実な対応についてもこれから我々は追及をしないといけないと思いますし、何よりも総理に本当にお願いしたいのは、本当にお願いしたいんです、お願いしたいのは、この法案、ぜひ、閣議決定、国会提出を一旦ストップしていただいて、再度正しい調査をしていただきたいということをお願い申し上げまして、総理に対して本当にお願いなんです、これは。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、逢坂誠二君から関連質疑の申出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 総理、実はちょっと通告はしていないんですけれども、ことしの豪雪ですけれども、これはやはり異常な状況だと思います。いろいろな委員の方が質問されておられますけれども。

 私は、雪国生まれ、雪国育ちであります。私の地元の北海道、もともとの生まれ故郷のニセコも大変な状況ですし、今住んでいる函館も本当にひどい状況になっています。それから、先日、新潟へ行ってまいりました。本州の日本海側も大変な状況になっておりますので、この豪雪、大雪の対策、これは本当に喫緊の課題だと思います。

 そこで、まず一つ。地方自治体の財源を確保するという意味で、地方交付税、総務省ですね。それから、交付金、これは国土交通省。さらに、一次産業の施設なども、これは随分と倒壊をしたりしております。こういう点でいうと農林水産省。さらにまた、文化財、こういったものも壊れているというところもあるように思います。これは文部科学省。さらに、生活困窮者への対策、厚生労働省。さらに、中小企業や物流対策、これは経済産業省。さらに、災害対策全般、内閣府。そして、予算全体ということで財務省。

 こういった関係省庁に対して、万全かつ早急な対策を総理の方からもがっちりと確実に指示をしていただきたい、そう思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回の豪雪につきましては、雪国にお住まいの方にとっても今までにないスピードと量だということでございまして、多くの方々が、被害を受けておられる方々がたくさんいらっしゃるわけでありまして、改めてお見舞いを申し上げたいと思います。

 今、逢坂委員が御指摘になったように、さまざまな支援については、特別交付税の前倒し等財政支援をしっかりと行っていきたい、このように考えております。

逢坂委員 これほどの豪雪になると、実は今この瞬間も結構大変なんですけれども、融雪災害、雪が解けるときにまた新たな災害が出るということも懸念されますので、これから春に向かって気を抜くことのないように、総理、対応をお願いしたいと思います。

 それから、予算の関係ですけれども、今まさに現場で対応しなければならないというときに自治体では予算が足りないという状況が生まれておりますので、今金はないけれども、将来間違いなく、例えば交付税でも交付金でも、さまざまな対応をするんだということで、しっかり安心感を与えていただきたい、そのことをお願い申し上げさせていただきます。よろしくお願いします。

 それでは、次……(発言する者あり)ありがとうございます。与党の皆さんからも、よい質問だというお褒めをいただきました。ありがとうございます。

 次に、先日、二十九日に私が予算委員会でやらせていただきました原子力発電に関して、簡単に確認だけをさせていただきたいと思います。

 まず最初に、原子力規制委員会の委員長に確認でありますけれども、現在の日本の原子力の規制基準、これをしっかり満たしたとしても一〇〇%安全であるということはない、したがって、これは事故の発生を完全に否定するものではないんだということ、さらにもう一点、現在の日本の原子力規制基準の中には避難計画は含まれていない、このことを確認したいんですけれども、いかがですか。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 一つ目ですが、原子力規制委員会は、厳正な審査などを通じて原子力施設における安全の確保に努めておりますが、新規制基準への適合は、一〇〇%の安全であるとかリスクがゼロであるとかということを保証するものではありません。

 原子力の安全につきましては、リスクは決してゼロにはならないという認識のもと、残されたリスクを低減させる活動に規制当局と事業者との双方が不断の努力を続けてまいることが重要であると考えております。

 二つ目の御質問ですが、原子力規制委員会の役割の一つは、原子炉等規制法に基づいて、原子力施設の新規制基準への適合性などを確認し、必要な措置を講じることであります。

 新規制基準は、原子炉等規制法に基づき、原子炉等を設置しようとする者からの申請について、施設の構造等に着目して、災害の防止上支障がないかどうかを確認するための基準でありまして、避難計画は含まれておりません。

逢坂委員 そこで、問題になるのが、原子力発電所が、万が一の事故が発生する、事故が起きたときに十分な避難計画がなければこれは安全とは言えないということでありますが、先日の答弁の中で、世耕大臣からは、避難計画というのはやはり地域のことをよく熟知している自治体を中心につくってもらう、そういう答弁がありました。さらに加えて、実態として、しっかりとした避難計画ができていない、そういう中で再稼働するということはない、こういう答弁もございました。

 もちろんこれは再稼働だけではなくて原子力発電所の稼働一般に言えることだと思いますけれども、この答弁で間違いないということでよろしいでしょうか。

世耕国務大臣 避難計画は、原発の稼働状況にかかわらず、地域住民の安全、安心の観点から早期に策定することが重要でありまして、そういう意味で、しっかりとした避難計画がない中で原発の稼働が実態として進むことはないと考えています。

逢坂委員 世耕大臣、もう一点確認ですが、この避難計画の策定主体は地域のことをよく熟知している自治体を中心にやるということでありますけれども、その避難計画そのものがきちんと機能するかどうか、万全であるかどうか、それを判断する主体も地域のことを熟知している自治体であるべきと私は思うんですが、この点はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 自治体が中心になって避難計画をつくっているのは、これは日本だけではなくて、イギリスもフランスも同様であります。

 その上で、各地域の内容が、規制委員会がお示しをいただく原子力災害対策指針などに照らして具体的かつ合理的なものになっているかどうか、これは国の原子力防災会議において確認をして、そして了承していく形になっております。

 これは、イギリスやフランスもこれに近い仕組みになっているというふうに認識をしております。

逢坂委員 世耕大臣、仕組みとしては、その原子力防災会議で了承するという仕組みは私は理解はしておりますけれども、事実上、でも、そのつくり上げた避難計画が実態に合っているかどうか、それがきちんとワークするのか、機能するのかどうか、この判断の主体はやはり地域のことがよくわかっている自治体でなければならない、私はそう思うわけですが、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 まず、しっかりとつくっていただく段階では、やはり地域のことがわかっている自治体につくっていただくということが重要であります。

 ただ、それが、やはり国もしっかりと前面に立って支援するという意味も含めて、そしてまた、しっかりとした規制委員会という専門家がつくった指針にきっちり合っているかどうかということを確認するという点においては、やはり国が了承することが妥当ではないかというふうに思っていますし、これはイギリス、フランスにおいても同様の形をとっているわけでございます。

逢坂委員 仕組みとしてはそうであることは私は、繰り返しますけれども、理解はしております。ただし、やはり地域で避難計画をつくった際に、これはどうも機能しないなということも私はあり得ると思うんです。

 例えば、ことしのような豪雪の状態、こうなりますと、北国では、夏の状態とは全く違います。道路も、ふだん四車線あるところが一車線しか確保できないなんというところもたくさんあるわけであります。

 だから、そういうときに事故が起きない保証はありませんので、そういったことも含めて、計画がうまくいくかいかないか、その判断の主体、国がいろいろ支援することも、国の基準に適合していることを国が判断することも理解はいたしますけれども、計画が機能するかどうかの判断の主体というのはやはり私は自治体でなければならないと思うんですが、この点、いかがですか。

世耕国務大臣 繰り返しになりますけれども、今御指摘のような例えば豪雪のときにどうするかということも含めて、地域の事情を一番わかっている自治体にまず計画をつくってもらう。その計画がきちっと指針に沿っているか、ワークするかどうかというのはやはり国で確認、了承させていただくことが重要だと思っています。

逢坂委員 これは重要なポイントなので。

 自治体で計画をつくる。それでは、自治体で計画をつくる段階において、これは十分な計画がつくれないということも私はあり得ると思うんですよ。

 例えば、私が住んでいる函館なんというのは、原子力発電所から避けようとすると北へ避難しなければならない。北へ通ずる道は国道一本しかない。そういうような状況で三十万人近い住民が避難できるかどうか、確実性が極めて危ういということもあります。そうなると、なかなか避難計画はつくりにくいということもある。

 そういうことも含めて、計画の策定は自治体が中心になってやるという理解でよろしいでしょうか。

世耕国務大臣 これは、根拠となる法律は災害対策基本法、ちゃんとこういった根拠法規がありまして、これに基づいて、地域の実情を熟知する自治体が中心となってしっかりとつくっていただくということになるんだろうというふうに思っていますし、政府としても、自治体と一体となって積極的にこの避難計画を具体化する、充実化するというところは協力して取り組んでまいりたいというふうに思っています。

逢坂委員 きょうは、これが主題ではありませんので、この程度にとどめさせていただきますが、ぜひ、きちんとワークする避難計画がなければ原発を稼働させることはあってはならないということを改めて指摘しておきたいと思います。

 さて、そこで、きょうのまた本題の一つでありますけれども、午前の長妻委員の質問に引き続いてお話をさせていただきます。

 今回、裁量型労働について、勤務時間の比較、一般の勤務者と裁量型労働の勤務者のデータ、政府がつくったというか調査したデータの比較が不適切であったということで、答弁の撤回、さらにまたおわび、こういうことがありました。

 この答弁については、今国会だけではなくて過去の国会でも幾度もこれは答弁されているわけでありますけれども、過去の答弁の扱いはどうなるでしょうか、加藤大臣。

加藤国務大臣 まず、私が、そうしたデータに基づいてお示しをし、答弁をさせていただいたことについては撤回をさせていただきましたし、そのことについてはおわびを申し上げたいというふうに思います。

 その上で、過去の、要するに私の前までの答弁ということでございますけれども、私自身にそれを撤回する権限があるかどうかというのは、正直、ちょっと私、にわかには判断できませんが、きのうも申し上げたんですけれども、ここで撤回したということは、その効果は当然過去の答弁についても遡及をするんだろうというふうに思いますし、もし仮に私にその権限があるとするならば、それは撤回させていただきたいと思います。

逢坂委員 過去の答弁にも遡及するという話をいただきましたので、それで私は了としたいと思いますが、ぜひ、過去の答弁もいろいろなところでしておりますので、そのことの影響に対して十分な配慮をしていただきたいと思います。

 そこでなんですが、しつこいようですけれども、この間、一般の労働者と裁量型労働者を比較すれば裁量型労働者の勤務時間の方が短いといったデータもあるということを繰り返しおっしゃられていたわけですが、このことによって私たちのこの日本の社会に、裁量型労働の方がもしかしたら勤務時間が短いかもしれないという印象が本当に振りまかれたわけですね。一部新聞の社説などにもこういうことが書かれたということは多分大臣も承知をしていると思うんですが、ある種誤った印象を振りまいてしまった、これを私は修正する必要があると思うんですが、これについては、大臣、どうお考えでしょうか。

加藤国務大臣 まさにそういった意味も含めて、そうしたデータをお示しし、答弁をさせていただいたことについて、国会そして国民の皆さん方に大変御迷惑をおかけをした、そのことはおわびを申し上げたいというふうに思いますし、また、こうした国会等でお取上げをいただきながら、今申し上げた点についてはしっかり説明をさせていただきたいと思います。

逢坂委員 国会等で取り上げていただきということでありますので、これは国会の方の話でありますけれども、これからもこの問題は国会の中で十分に議論させていただきたいと思いますので、菅原筆頭、いませんね、河村委員長、質疑時間の十分な確保をよろしくお願いしたいと思います。

 さて、そこで、私、午前の長妻委員の質疑を聞いておりまして、若干違和感を覚えたところがございます。

 それは何かといいますと、今回、労政審で議論をするときに、平成二十五年の労働時間等総合実態調査、このデータを出した、労政審では一般労働者と裁量型労働者の比較はしていない、だから、とにかくデータを出した、冊子を出したんだという御説明でありました。しかも、このデータ以外にも、以外といいましょうか、このデータだけが絶対的ではないんだと、ほかにもあるかのような話をされていたんですけれども、労政審には、この平成二十五年の労働時間等総合実態調査以外に、どのような裁量労働に対する労働時間のデータを出されて議論されたんでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働政策審議会に提出いたしました資料でございますけれども、御指摘をなされました実態調査に関する資料に加えまして、裁量労働制で働く方についての満足度などについて資料を提出しているところでございます。

 労働時間のデータにつきましてはこの実態調査に記載されているデータを提出している、裁量労働の労働時間については提出しているということでございます。

逢坂委員 局長、確認ですが、裁量労働に関する労働時間に関しては、この平成二十五年の労働時間等総合実態調査のデータのみということでよろしいですか。

山越政府参考人 裁量労働制の実労働時間については、この実態調査の資料を提出しているところでございます。(逢坂委員「質問は、のみか」と呼ぶ)労働時間についてのデータについては、この実態調査のデータでございます。

 ただ、例えばこの裁量労働制についての満足度とか、そういった別途の資料は出しているところでございます。

逢坂委員 こんなところで時間を食いたくないんですよ。事実の確認なんですよ。

 労政審に出したのは、この平成二十五年の労働時間等総合実態調査、裁量型労働に関する労働時間についてはこのデータだけですね。

山越政府参考人 裁量労働の労働時間については、この実態調査のデータのみを出しております。

逢坂委員 今局長から、このデータのみだという話がございました。

 私のもしかして聞き違いであるならばあれなので、午前の長妻委員の質問の中では、労働時間に関して、あたかもこのデータ以外にもほかのデータが出ているかのような印象を私は受けたのでありますけれども、労政審においては政府が調査したこのデータしか出ていないということであります。

 それで、労政審で問題になっているのは何か。労政審で問題になっているのは、労政審の答申にもつけられております。あたかも政府の皆さんは、労政審で議論されている今回のこの働き方改革の法案の要綱について妥当だというようなニュアンスのことをおっしゃっておられるんですが、そこには付記がされているんです。

 労働者代表委員から、企画型裁量労働制の対象の拡大、それから高度プロフェッショナル制度の創設については、対象業務の範囲の明確化、健康確保措置の強化といった修正がなされたが、長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらず、実施すべきではない、こういうことが付記されている、これは間違いないですね。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この答申でございますけれども、おおむね妥当という答申をいただいておりますけれども、そういった労働側の意見が付記されているのは、そのとおりでございます。

逢坂委員 大臣、労政審で問題になっているのは、裁量型労働を導入すると勤務時間が長くなるんじゃないか、こういう懸念がずっと言われているわけです。だから、勤務時間がこの労政審の一つの大きな焦点だったわけです。特にそれは労働側から、働く者の立場からそういうことを言われているわけですね。

 ところが、実際には政府がその議論の出発点として出したデータというのは一つしかない、平成二十五年の労働時間等総合実態調査しかないわけであります。しかも、この総合実態調査では、一般勤務者と裁量型労働者のデータが比較できない状況になっているんですね。

 だから、これはほとんど議論のプラスにならないデータを出してしまった、労働時間の点でいえばですよ、というふうに私は思うんですよ。

 ただし、世の中にはほかのデータもあるはずなんです。裁量型労働が勤務時間が長いんじゃないかとか、場合によっては短いんじゃないかというデータもあるかもしれません、私は存在は知りませんけれども。なぜほかのデータを出さなかったんですか。

加藤国務大臣 足らないところはちょっと事務方から説明をさせていただきたいというふうに思いますけれども、当初の議論において、私どもの方から議論に資するデータを出させていただき、その後は、委員の御議論の中で追加的な資料が必要であればそれにできるだけお応えするということで運営をされているというふうに思います。

 そういう運営の中において、結果的に、今委員御指摘のように、例えばJILPTの労働時間に関するデータについては提供されていなかった、こういうことだと思いますが、もし、詳細……。

逢坂委員 いや、このJILPTというのは半分公的な組織であるというふうに私は認識しているんですね。

 山越局長、お伺いします。

 山越局長は、JILPTとの関係は、どんな関係でありましたか。私の記憶では、理事を務められていたというふうに思うんですが、二〇一三年から二〇一五年まで二年二月余りにわたってここの理事を務めておられませんでしたか。

山越政府参考人 御指摘のとおり、JILPTの理事を務めておりました。

逢坂委員 大臣、JILPTの調査、調査の手法はいろいろあると思いますけれども、それによれば、企画型裁量労働者の方が勤務時間が長いという結果が出ているわけですね。

 私は、労政審で議論になっているのは、勤務時間が長くなるのか短くなるのか、それがまさに議論の焦点でありますから、こういったJILPTのデータもあるんだということをきちんと正直に出す、正直であったかどうかは別にしても、出すべきだった、そういうことで議論をするのが多角的な、多面的な議論をすることにつながっていく。今の政府のデータの出し方だったら一面的なものしか見えないのではないか。

 大臣、そう思われませんか。

加藤国務大臣 先ほど御説明したように、そうした資料が出なかった経緯については私が先ほど説明したことなんだろうというふうに思いますけれども、労政審において、例えば裁量労働制は一般で働く人よりも短くなるんだとか、あるいは長くなることはないんだとか、そういう議論はなかった。

 むしろ、やはりそういった可能性は内在している、その上においてそれをどう抑制していくべきなのかということで、結果的に労政審の方から、ちゃんと労働時間の状況の把握をしっかりやっていかなきゃならない、そして、実際労働時間の状況と、要するに実の労働時間とみなしの労働時間について乖離があったりすることがないようにしっかりと労働省等が監督指導できる権限を付与しろとか、そういったことが指摘をされ、今、それを踏まえて法案作業を進めているところでございます。

逢坂委員 余り加藤大臣にしては説得力のない答弁だったと思うんですね。

 労政審の議論の中で労働側が言っているのは、対象業務の範囲の明確化とか健康確保措置の強化といったいろいろな疑問が出されて修正もしたんだ、だけれども、長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらないから実施すべきではない、こういう指摘をしているんですよ。今の大臣の答弁はこの域を出ないわけですよ。

 我々は、こういう疑問に答えられるのかどうか、答えられないのであるならばこの制度は導入すべきではない、そう思うんですよ。私はそう思っています。

 さらに、やはり議論の立て方がおかしいと思う。

 それは、自分たちに有利なデータしか出していないというところまでは私は言うつもりはないけれども、自分たちの論に否定的なデータがあることを知りながら、しかもそれは政府も関与しているJILPTという団体、まさに労働局長が理事で行っているような団体で、裁量型労働の方が時間が長い、そういうデータも持っているのであるならばそれもきちんとお出しをして、こういう実態だから裁量型労働を入れることの是非についてどう思うかという議論をしなければ私は誤った方向に行くと思うんですが、いかがですか。

加藤国務大臣 先ほどの答弁と重複することがあったらお許しいただきたいんですけれども、平成二十五年度の厚生労働省の調査において、今申し上げたように、比較をしているわけではなくて、実態としてどういうふうになっているかということをお示しさせていただいております。

 それから、この議論においても、それぞれの方が、ここにあるように、長時間労働を助長するおそれということは認識をされる中で、では、それをどう抑えながら、そして他方で、そうした自律的な働き方をする人、その力を発揮してもらうか、まさにそのバランスを御議論いただいた、そしてその結果において、対象を拡大しつつも、そうした労働時間の状況をしっかり把握しろ、あるいは、それに、労働時間の状況とみなし時間が乖離するのであればそれがしっかり是正できるように、こういった措置をあわせて御答申いただいている、こういうふうに思います。

逢坂委員 私は、労政審の議論をきのうからきょうにかけても随分また読ませていただきました。私が感ずるのは、やはり労政審の議論をやり直すべきだと思いますよ。生煮えですよ。

 それで、今回は労働側も賛成できるような内容も含まれていることも事実なんです。だから、どうしても労働側にも歯切れの悪いところがあるんだとは思うんですが、いずれにしても、裁量型労働と高度プロフェッショナル制度、これについては私は実施を見合わせるべきだというふうに思います。

 そこで、午前中と同じことになりますけれども、今回出そうとしている法案については、法案の提出を踏みとどまる、そして労政審の審議をやり直す、このことを強く申し上げたいと思います。

 そこで、もう一点、私、この労働時間の調査というのは、これは非常に難しいと思っています。午前中の質疑の中でも、加藤大臣から、もし仮に裁量労働制が導入されたら労働時間の把握が大事だという話がございました。

 ところが、私、今回の平成二十五年のこの労働時間等総合実態調査のあり方をいろいろと勉強させてもらいました。そうしたら、これは労働時間の調査を専ら専門にやっているわけではないということに気がつきました。

 それは何か。これは労働基準監督局の調査的監督、こういうものの一環として行っている、だから労働時間の調査を専門的に行うものではないんだ。その点は間違っていますか。いかがですか。

加藤国務大臣 調査を専門的という意味においては、例えば統計等をとるためにそれぞれの御自宅に回る、そういう調査員みたいな方がいらっしゃる。もちろんそうではなくて、現地に向かったのは監督官でございますから、監督指導を行う。ただ、監督指導を行うときには、そうした時間も見ながら指導を行っているということだと思います。

逢坂委員 実は、今回のこの調査的監督はどの場面で行うのかということが、厚生労働省から全国に発出した文書の中に書かれています。それは臨検監督で行う。臨検監督ですね。

 臨検監督、これは労働業界の人しかわからない言葉だと思いますけれども、実際に労働時間がどうなっているかということをいわゆる統計的に調査をするのではなくて、場合によっては法令違反もあるかもしれない、だから、そういう監督的な意味合いで現場に出向いていって聞き取りをしながら行う、そういう業務の一環としてこの労働時間の調査が行われているわけです。

 すなわち、調査を受ける側からすると、場合によっては、我が事業所、事務所の労働時間の長さや不適切な労使関係やそういうところが暴かれるのではないか、チェックされるのではないか、そういうおそれを持ちながら答えるわけですよ。これでよろしいですか。

加藤国務大臣 おそれを持つかどうかはちょっと主体的な判断で何とも申し上げられないわけでありますけれども、臨検というのは、今委員が御指摘のように、この日に行きますという事前の通知がなく、突然に入らせていただく。そして、そこの場において例えば賃金台帳などを見ていただきながら、例えば時間はどのくらいですか、そして向こうから、こんなものですと。そしてそれを場合によっては監督指導官が見ながら、いや、そうじゃないんじゃないですか、こっちじゃないですかという議論をしながら出してくる、こういったものなんだろうと思います。

逢坂委員 すなわち、労働時間の実態をきちっとあるがままに聞くというよりは、どちらかといえば監査的な意味合いというか検査的な意味合いというか、事業所の側にしてみるとある種怖い、あらかじめ何の準備もない中でぽっと来られて、いかがですかということをやるわけですから。

 そういう状況の中で、正しい労働時間の申告や報告やそういうことが行われるところもあるかもしれないけれども、労働時間を短く言いがちな部分というのも場合によってはあるのかもしれない。どちらかというと、調査に来る側が権力的な側面があるわけですね。だから、そういう中でいうと、きちんと労働時間が表へ出るのかというところについては相当に疑問が私はあるんです。

 したがいまして、ここで、ぜひ国においては対応いただきたいんですけれども、この労働時間の調査のあり方はよく検討いただきたい、どうすれば実態がちゃんとわかるようになるのかということを十分にお考えいただきたいというふうに思います。

 実は、自治体においても、労働時間を調べるというのはなかなか困難をきわめているようであります。

 私の地元の函館市においても、これは昨年の秋ですかね、学校栄養士の先生の勤務時間を調査するということがあったそうなんですが、そのときに、一週間の勤務時間について、道の条例で定められている勤務時間三十八・七五時間以内に修正するように求められたなんということも何かあるらしくて、実際にはもっと長い時間働いているのに、当局が調査に来ると、勤務時間はこれでいいのかということを言われて短くしてしまったなんという実態もどうもあるようでございますので、この勤務時間の調査については、従前の枠にとらわれることなく、きちっと実態が把握できるように御検討いただきたいんですが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 この監督指導においても、先方からいろいろお話をいただきますけれども、最終的には、そこにある賃金台帳等をベースにそれの中身を監督指導官がチェックする、こういうやりとりであります。

 ただ、委員御指摘のように、賃金台帳そのものがでたらめというか違う形で書いてあれば、これはなかなか端的にはいかない部分、確かに御指摘のとおりだと思いますので、それは、私ども、また別の手法で、そこのところをチェックするという手法も更に磨き上げていかなきゃいけないと思います。

 いずれにしても、委員御指摘のように、実態というものをしっかり把握して、その実態が、就業規則等々あるいは労使協定で決めたこと、もちろん法律に違反をしていないかどうかをしっかりチェックしていく、それは委員御指摘のとおりだと思いますし、私どももそれに向けて更に監督技術等を高めていきたい、こう思っております。

逢坂委員 そこで、これは大臣よりも局長に聞いた方がいいでしょうかね。

 局長、国において労働時間の調査、特に裁量型労働の時間について調査した直近のデータというのは、この平成二十五年のものだけですか。それ以降はないんですか。

山越政府参考人 裁量労働に特化して調べたものは、この二十五年のものが直近のものであるというふうに思います。

逢坂委員 改めて提案というか指摘をさせていただきたいと思うんですが、裁量型労働を導入したいという政府の意向は痛いほど何か伝わってきます。もう何が何でも入れたいんだというふうに私には感じられるんですが、それにしても、この裁量型労働を入れることによって、多くの皆さんが長時間労働で苦労され、過労死の方もたくさんおられるという現実があります。私自身も、裁量型労働って結構過酷なものだというふうに思います。

 私自身、首長を務めておりました。首長も実は勤務時間がございません。ある種の裁量型労働だと思っています。自分がやりたいといってやる仕事ですから、それは自分の責任においていろいろなことはやりますけれども、なかなか、裁量型労働というのは、労使の力関係によっては相当悲惨な状況を生むというふうに私は思います。

 そこで、今回、労政審ではデータは一つしか使っていなかったということでありますし、データの収集の仕方についても、この臨検的監督で行ったデータというのは信憑性に随分と疑義が私自身はある。したがって、もう一回、労働時間の実態をちゃんと調査すること。そこから始めるという声が今ありましたけれども、それをもう一回やらなければ、本当の意味での現実はわからないと思うんです。

 まず労働時間の調査をもう一回やり直す、これはいかがですか。

加藤国務大臣 労働時間の調査は、今回、平成二十五年度のをこうした形で実施させていただいて、それに基づいて議論をさせていただきました。したがって、委員御指摘のように、それがなければ、それをしなければ先に進まない、法案作業は進まないということにはならないんだろうというふうに思っております。

 ただ、一方で、ここから先は仮にの話で恐縮ですけれども、あるいは現行が続くということでもいいんですけれども、それにおいて、この裁量労働制について非常にメリットを感じて、非常にうまくやっている企業やそういった方々も一方でおられます。

 しかし、他方で、我々がこれまでも監督指導したように、不適切な形あるいは非常にひどい状況にある方もおられますから、そういったことに対してはしっかりと監督指導を行って、そうした是正に取り組んでいかなければならない、こう思っております。

逢坂委員 残念ながら労働時間の再調査はしていただけないということでありますけれども。

 総理、改めて、労政審での議論、データは政府が調査したものしか出していないということ、それから、この労働時間の調査は臨検的監督というやり方でやっている。どちらかというと検査ですね、その中でやられているわけであります。私はここで労働現場の実態が必ずしもつまびらかに明らかになるものではないという印象を持っているんですけれども、総理、もう一回労働時間の調査をやって法案を出し直す、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 裁量労働制度については、これはまさに労働者みずからの裁量で、仕事の進め方や時間配分、またあるいは出勤、退勤時間などを自由に決めることができる制度でありまして、働いている方がより効率的な働き方ができるという、いわば柔軟性を持った働き方ができるということでございます。

 ただ、労働時間がふえるのではないかという種々の指摘もございました。しかし、そうしたことも踏まえまして、健康管理等に対応していくということでございます。

 また、既に厚労大臣から答弁をさせていただいておりますように、我々といたしましても、既に労政審等々で御議論をいただいたわけでございますが、その中におきましては、労働時間等についての資料も含め審議をした上での御議論だった、こう了解をしているところでございます。

 もちろん、現在、裁量労働制が既に行われている企業においてさまざまな指摘があるのも承知をしておりまして、そうしたものにどのように対応していくかということもしっかりと念頭に置きながら法案の作成準備を進めていきたい、このように考えております。

逢坂委員 総理からも、労働時間の再調査と法案の提出をとりあえず見合わせるというようなことはやらないという答弁でございます。私は非常に残念であります。これは将来に禍根を残さないように、私はこれからも、この問題、がっちり議論をしてまいりたいと思います。

 そこで、次です。

 森友事件といいましょうか森友学園問題ですけれども、総理、この問題に早く私はピリオドを打ちたいんです。この問題をいつまでもやりたくないんです。

 ただ、なぜこの問題がこんなに尾を引くのか。情報公開が不十分だからです。情報公開がしっかりされれば、この問題はそんなにいつまでもいつまでも尾を引くというふうに私には思われない。

 ただ、まず一つ、総理の奥様、私人である安倍昭恵さん、私人だ、私人だということで閣議決定までいただいたようでありますけれども、私は、やはり安倍昭恵さんのこれまでのさまざまな活動、言動、言動といいましょうか発言を見ると、この森友学園と相当大きくかかわっていたということは思わざるを得ないわけであります。

 例えば、二〇一五年九月五日の講演、その中で言っている。籠池園長、副園長の本当に熱い熱い思いを何度も聞かせていただいて、この瑞穂の国記念小学校に何か私もお役に立てればいいなというふうに思っておりました、こちらの教育方針が大変主人もすばらしいというふうに思っていてというような発言を講演でされている。

 あるいはまた、この幼稚園でやっていることが本当にすばらしいんですけれども、それがこの幼稚園で終わってしまう、ここから普通の公立の学校に行くと、普通の公立の学校の教育を受ける、せっかくここまで芯ができたものが、またその学校に入った途端に、こう、揺らいでしまうということが先生はすごく残念がっておられたので、ここで培ったものを、瑞穂の国記念小学院に入って、またさらにその芯を、こう、できたものを太く太くしていくということがきっと大事なんだろうというふうに思います、こんな発言をされているわけです。

 去年の今ごろ、ちょうどこの議論をしていたわけですけれども、こんなことも言っているんですね。

 主人も私も、瑞穂の国というのは本当にすばらしい名前の小学校だなというふうに思って、この小学校がたくさんの生徒さんたちが集まられて、まあ、発展していったらいいなというのを主人も私も望んでいるところでございます、こういう発言を奥様は講演でされているわけですが、総理、これは認めますよね。これはというのは、籠池さんあるいは森友学園と奥様が何らかのかかわりがあった、こういう講演をするような、そういう関係であったということは、もうこれは認めざるを得ないところでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 これは何回も答弁をさせていただいておりますが、事実、一時、名誉校長を引き受けていたわけでありますから、そういう意味でのかかわりはあったということでございます。

逢坂委員 それで、総理自身は、私も妻もこの問題にかかわっていたら国会議員も大臣もやめるという発言をされているんですが、私、総理夫人におつきになっておられた谷さんという職員、国家公務員の方でありますけれども、この方が籠池さんに出したファクスを見ると、最後の方にこう書いてあるんですね、本件は昭恵夫人にも既に報告させていただいておりますと。

 だから、この森友問題に奥様は全く無縁ではなかったことが推測されるわけですが、このことに対して総理は、このファクスの回答ではゼロ回答だったんだ、だから何にも昭恵夫人は関係がないかのような答弁を過去にされているんですけれども、それでよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この件について、さまざまな角度から昨年は何回も、相当何回も答弁をさせていただいておりますが、同じことを申し上げますと、私や妻がこの国有地払下げに、もちろん事務所も含めて一切かかわっていないということは明確にさせていただきたい、こういうふうに申し上げてきたわけでありますが、これには変わりがないわけでございます。

 その上で、夫人付からのファクスの件については、念のために申し添えますが、国有地売却の議論がなされる前の貸付けの段階の話でございますので、そもそも根本が全く別でございまして、私がお答えをさせていただいておりますのは、国有地の払下げについて一切かかわっていないということで申し上げてきたところでございます。私も妻も一切かかわっていないということでございますが、これは国有地の払下げとはかかわりのないことでございます。

 そして、その上でお答えをさせていただきますと、事実を申し上げれば、私の妻は、籠池氏から何度か留守番電話に短いメッセージをいただいたわけでございますが、土地の契約に関して、十年かどうかといった具体的な内容については全く聞いておりませんでした。

 また、私の妻に対してではなくて、夫人付に対して十月二十六日消印の問合せの書面が送られてきたということでございまして、また、妻には何回も電話があったわけでございますが、妻はほとんど電話には出ていないというのも事実でございます。

 この書面に対して夫人付からファクスにて、籠池氏側の要望に沿うことはできないときっぱりとお答えをしたと承知をしておりまして、ゼロ回答であったということでございまして、そんたくしていないことは明らかであります。

 また、回答内容については、財務省に問合せを行った結果として夫人付が作成したものであり、法令や契約に基づく対応を説明したものでありまして、国有財産に関する問合せに対する一般的な内容であって、仮に籠池氏側から財務省に対して直接問合せがあったとしても同様に答える内容であると承知をしております。

 なお、妻は、あくまで夫人付から回答を送る旨の事実の報告を受けただけでありまして、要望に沿うことはできないとお断りの回答をする内容だったと記憶している、こう言っていたところでございまして、内容については関与していない、これははっきりと言っているところでございます。

逢坂委員 今の答弁を改めて聞いてみて感ずるんですけれども、払下げには関与していないけれども貸付けには関与していたというふうに聞こえるんですが、払下げには関与していない、それはあくまでも払下げだというような話をしておられました。

 それから、内容には関与していない。内容には関与していないけれども、関与っていろいろな方法でできるんです。内容には関与していないという答弁はありましたけれども、それ以外の関与の方法っていろいろあると思います。

 それから、ゼロ回答だったという話でありますけれども、結果として、土地の売却価格は引き下げられました。結果として、土地の売却において代金の支払いは分割になっています。結果としてですよ。

 この時点でのかかわりはゼロ回答だったかもしれませんけれども、そういうところがやはり明らかにならないので、いつまでたってもこの問題、私は、何というか、化膿した傷口のように、いつまでもじくじくじくじくしているんだと思います。

 そこで、太田理財局長、この問題に昭恵さんはかかわっていたんですか、かかわっていなかったんですか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 この件は、私どもとして、財務省としてお答えをするような話ではないと思っていますが、いずれにいたしましても、これまでも国会で御答弁を申し上げておりますけれども、国有財産の管理、処分については、その相手方の役職にどのような方がついていらっしゃるか、あるいはその相手方がどのような方と関係をしていらっしゃるかということに関係なく、法律に基づいて行っておるというふうに思っております。

逢坂委員 太田局長、答える立場にないんですか。それでよろしいですか、答える立場にないということで。

 では、この間、何度、何のために答弁しに来ていたんですか。答える立場にないんだったら、今までの答弁をみんな取り消して、別の人に答えるように言ってくれればよかったじゃないですか。

太田政府参考人 立場にないという表現を使ったとしたらちょっとあれですけれども、基本的に、昭恵夫人がどういうふうに関与していらっしゃったかということは財務省の方が知り得ることではないということを申し上げたつもりでございます。

 ただ、その上で、昭恵夫人との関係については、総理からお答えがあっているということが全てだろうと思っておるということを申し上げています。

逢坂委員 太田局長、これまでの交渉記録はもう廃棄して、ない。それはそれで、どうもそれが事実のようでありますから、それは認めざるを得ないんですが、なぜ知り得る立場にないということが言えるんですか。なぜそういうことが言えるんですか。交渉の経過は知っているんでしょう。交渉の経過も知らない、忘れたというのであればもう答弁の資格がないからここへ来る意味がないんですけれども、そこはどうなんですか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 当然、交渉の経緯は重々承知をしておるつもりでございます。その上で答弁に立たせていただいております。

逢坂委員 それでは、太田局長にお願いしたいんですけれども、交渉の経過は重々承知をしているというふうにおっしゃいました。交渉記録は廃棄して、ないということでありますけれども、重々承知している内容を、知り得る限り、文字に起こして提出いただけませんか。

 委員長、これを理事会で協議していただけますか。

河村委員長 理事会で協議をいたします、理事会で。

逢坂委員 自分の半生を語るなどというやじがありましたけれども、そんなことはございません。たった三年ぐらい前の、この森友事案に係ることだけ、交渉の経過を重々承知しているということでありますから、それを明らかにしていただきたいんです。できますよね。

太田政府参考人 これまで承知していることをもとに御答弁を申し上げているつもりでございます。

 そういう意味で、いろいろな意味で特に委員からは御指摘をいただいていて、交渉経過と申しますか、そういう過程について、情報公開がスピードが遅かった、あるいは、情報公開請求があって出てくるというようなことは大変情けないといったことを御党のPTでも御指導いただいていると思っています。

 そういう過程の中で、これまで、いろいろな意味で、当初の二月、三月、なかなか、毎日の質問あるいは毎日の報道に追われていたので手が回りにくかったことは事実かもしれませんが、四月以降、衆参の財務金融委員会の委員長の御指導をいただいて、理事会の御指導をいただいて御答弁を申し上げ、あるいは、さきの特別国会、今通常国会を通じて、いよいよ、仮に文書がないとしても、当時の担当者に記憶を呼び戻していただいて、それを確認して答弁するということも含めてやらせていただいているつもりです。

 先般、法律相談文書というのをお出しさせていただきました。その中で、交渉記録ではないかという御指摘を頂戴しているのは承知をしております。

 ただ、そういう中で、全体四百ページほどの中で交渉記録ではないかと言われているようなものは何ページか、私どもはそう思っていませんけれども、そう言われているものが何ページかあるというふうに思っておりますが、そこに出てきておる経過なり交渉記録の中身については、これまで国会で御答弁申し上げていることの中身と基本的に同様であるというふうに思っています。

 そういう意味で、いろいろな意味で至らず、遅くなってというようなことはありますが、中身については丁寧に丁寧に御説明をさせていただいているということだと思ってございます。

逢坂委員 太田理財局長も、交渉の経過については重々承知をしているというふうにおっしゃっていますけれども、実は御本人がわかっているところはそんなに多くはないと私は思うんですよ。実際直接かかわった職員の皆さんに聞いた上で、どうであるかということを答弁しているだけですよね。

 だから、そういう意味でいうと、太田局長、今回のこの森友事案で最も問題なのは、情報公開が不十分だということであります。情報をしっかり公開してもらえば、この問題は相当程度霧が晴れると私は思っています。

 そこで、今回、その理事長や副理事長や学校法人関係者、工事や設計関係者、いろいろな人と財務省は交渉なり接点を持っていると思われますので、それら接点を持った方全てに話を聞いていただいて、どういう交渉経過であったかということをおまとめいただくということは、これはやれますよね。だって、聞かれたところだけ、部分部分だけ答えていてもこれは霧が晴れないんですから。我々、全体像が見えないんですから。そういうことは当然事務方としてやれますよね。いかがですか。

太田政府参考人 基本的にこれまで国会でお答えを申し上げているというふうに思ってございますが、今の委員の御指摘については、よくよくちょっと考えさせていただきたいと思います。

逢坂委員 これで最後にしますけれども、総理、この問題を明らかにするのは、やはり情報公開が私は鍵だと思っています。

 今、太田局長は検討するようなニュアンスのことを言っていましたけれども、総理から御指示いただければ、書類はなくても記憶をたどれば、三年前からのことですから、ある程度は全貌が明らかになると思いますので、総理の方から御指示いただけませんか、交渉の経過について知っている職員がそれぞれ明らかにするということで。いかがですか。そうすれば随分と霧が晴れると思います。もし所管が財務大臣というなら財務大臣にお答えをいただいた上で、総理に御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 今、太田が御説明申し上げましたように、重々検討すると言っておりますので、その上で、よく話し合った上で御返事申し上げます。

逢坂委員 総理、いかがですか。重々検討ではなくて、確実に実行していただきたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 所管の大臣が言っているとおりでございます。

逢坂委員 以上で終わります。ありがとうございます。

河村委員長 これにて長妻君、逢坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井委員 これから四十三分間にわたりまして、働き方改革、過労死防止について安倍総理と議論をさせていただきたいと思います。

 十分質問通告させていただいておりますし、私は、詳細な話はする気は全くありません。基本的な認識、働き方改革が長時間労働是正になるのか助長になるのか、働き方改革が過労死を減らす改革なのかふやす改革なのか、ごくごく基本的なことを、安倍総理がこの国会の目玉法案とおっしゃっていますので、どういう思いで安倍総理が働き方改革を目玉としてやっていかれたいのかということを議論させていただきたいと思っております。

 本日は、約十名の過労死家族の会の御遺族の方々が傍聴にもお越しをくださっております。私のこの質問の中では、私の意見というよりは、その御遺族が思っておられる裁量労働制拡大、働き方改革法案への心配、つまり、裁量労働制を拡大すると過労死がふえる。ふえるどころか、きょうも、既に裁量労働制で御家族を亡くされた御遺族がお見えになっておられます。

 そして、過労死で大切な御家族を亡くされた方々は、裁量労働制でなくても、例えば、おそば屋さんの店長で三百六十五日働いたり、あるいは小児科の医師であられたり、真面目で、家族思いで、そして人のために尽くすというすばらしい方々が、労働時間規制が不十分であった、緩かった、いわば、大なり小なり、今、過労死になられている方々のほとんどが裁量労働制的な働き方によって命を落とされております。

 その方々の御冥福を心よりお祈り申し上げたいと思います。その方々の無念の思いをしっかりと肝に銘じて、私たちは、長時間労働を減らす、過労死を減らす働き方改革にしていかねばなりません。

 予算委員会は、言うまでもなく、予算を審議する場でありますし、同時に、国民の命を守るのがこの予算委員会であります。この予算委員会で人の命を奪う法律が通ることがあっては、絶対に許されません。

 さらに、この裁量労働制は、もしかしたらごく一部の人の問題と思われるかもしれませんが、こういう労働時間規制がなくなることによって残業規制が弱まれば、残業代を今もらっている人も、もらっていない人も、結局長時間働くのが当たり前、そういう社会になれば、本当にこれは全ての国民の健康と命にかかわる。重大な議論だと思っております。

 今も、安倍総理、私の配付資料を見てくださいましたが、ここにもありますように、裁量労働制や裁量労働制に似た働き方で多くの方々が亡くなっておられます。

 長時間労働の末に亡くなられた電通の高橋まつりさん。若くて亡くなってしまわれました、二十四歳で。長時間労働の末であります。

 さらに、報道記者であられた佐戸未和さん。二百時間以上の月の残業をして、それで過労死をされた。そのとき、上司からは、事業場外みなし制ということで、あなたの娘さんは裁量労働のようなもので、自己管理ですと言われた。つまり、この裁量労働制というのは、労働時間把握が緩くなる、かといって、名前と違って裁量がほとんどないんですよ。その結果、過労死や体を壊す方が続出しているわけです。

 この配付資料をめくっていただいたら、「裁量労働で過労死認定」。午前三時ごろに起床して、朝から働いて、晩まで働く。一カ月の残業時間は百三十三時間。過労死の末に、この方は会社のアナリストでしたけれども、御遺族は、裁量労働制で労働実態がわからず泣き寝入りしている御遺族はたくさんいると。つまり、過労死にすら認められないんです。労働時間の実態が把握されないんです。

 そのお隣の、大手の印刷会社の方も、二十七歳で、入社した翌年から裁量労働制。一時過ぎ、夜中ですよ、一時過ぎに帰宅、三時就寝、六時半起床、七時過ぎ出勤。毎日午前様で、あすは徹夜かもと本人が書いておられます。ところが、みなし労働時間は一日八時間ですよ。八時間しか働いたことになっていなくて、残業代もそれしか払われていないのに、実際は百時間以上の残業があった。結果的には、サービス残業を正当化するために、会社は裁量労働を押しつけてきたのではないか。

 さらに、ここにも一冊の本がありますけれども、「たっちゃん起きて!九時ですよ」。

 二十代の若い、編集のお仕事の若者が、毎日深夜二時、三時まで働くことになった、裁量労働制で。それで、朝、二時か三時に帰ってこられて、寝たのが四時。お母様が、たっちゃん、あした何時に起こせばいいのと二時、三時に帰ってきたたっちゃんに言って、九時に起こしてと。それで、お母様が九時に、たっちゃん起きて、九時ですよと言ったけれども、そのときにはもうたっちゃんは息を引き取っておられました。

 しかし、続きがあります。この五ページの配付資料にありますように、この本です、お母様が書かれた本、「二年後の労災不支給決定」、こういう厳しい働き方をしても労災不支給決定。理由は、裁量労働制の職場なので、自分で勤務時間が調整できたはずだと。若い、入社二年目の若者に裁量なんかほとんどないんですよ。

 役所の説明によると、息子さんのような実務は労働時間の割り振りが自分の裁量に任されている、いわゆる裁量労働で、厳密な労働時間を特定できないとのことでした。ひどいじゃないですか。

 お母さん、書いておられます。しかし、入社して日の浅い、経験の少ない者が自分に有利な仕事を選択できたでしょうか、実務の過重性は証明できなかったという役所側の証明は納得できません。

 つまり、裁量労働制というのは、過労死がふえているだけじゃなくて、労災申請も通らないんですよ。

 そういう中で、きょうもお見えになっておられる過労死の御遺族の方々は、一枚目にありますように、「過労死・過労自殺を増やす「企画業務型裁量労働制の拡大」に反対します」と二〇一五年、三年前から言い続けてきているんです。

 そして、この過労死の御遺族に反論するかのように出されたのが今回のデータなんです。裁量労働制では一般より労働時間が短い。これは国会議員に出されたデータというよりは、過労死の御遺族の方々が、裁量労働制やそれに似たような働き方で自分の家族が死んでいます、これ以上過労死をふやさないでくださいと言ったことに対して、労働者の命を守る厚生労働省が水戸黄門の印籠のように出してきたのが、労働時間は裁量労働制の方が短いんですというのを出してきたわけです。

 まず、安倍総理にお伺いします。

 働き方改革が目玉だとまでおっしゃっています。その働き方改革の目玉の中の目玉が、この働き方、裁量労働制の拡大。確かに、経営者の方々の五一%が、働き方改革で一番願っているのは裁量労働制の拡大だと。経営者の要望のトップであります、確かに。安倍総理が目玉とされる働き方改革の目玉の裁量労働制の拡大、しかし、一番切実に働き方のことを考えておられる過労死の御遺族の方々は大反対をされておられます。

 安倍総理は、この裁量労働制の拡大が過労死の増加につながる、長時間労働の増加につながるという認識を安倍総理は持っておられますか。

安倍内閣総理大臣 裁量労働制については、一定の知識経験を有して働く方本人に、会社が決めた一律の定時、就業時間に縛られることなく出勤、退勤時間を自由に決めていただき、仕事の進め方をお任せして、より効率的に成果を上げていただこう、こういうものであります。

 さまざまな御指摘があり、今回の見直しにおいては、労使委員会が決議した健康確保措置を必ず実施させること、そして、客観的な方法によって労働時間を把握し、実際に働いた時間が長時間となった方には医師による面接指導を行うことを使用者に義務づけることとしております。

 これは、今までの裁量労働制度にはなかったものを、今言ったものを見直しにおいてつけ加えるということになるわけでありまして、あわせて、労働基準監督署においても、労働基準法に指導のための根拠規定を設け、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合には、その適正化に向けて、より厳格な監督指導を行うこととしています。

 加えて、そもそも、裁量労働制の対象にならない業務につかせていたり、一律の出退勤時刻を定め、それに従うよう指示していたりすれば、みなし労働時間は無効となります。その場合、残業代が不足していれば支払い義務が生じ、罰則の対象にもなるものであり、企業には厳格な運用を求めています。

 今回の働き方改革は、長時間労働となっている方の労働条件を改善していくという目的も有しているわけでありまして、自分の能力や才能を生かしながら、そしてしっかりと健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていく、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるよう裁量労働制についても見直しを行うものであり、一本の法案の中でお示しをするのが適当と考えているところでございます。

山井委員 原稿を読み上げるのは余り好ましくないと思うんです。私は基本的なことしかお聞きしませんから。それで、今おっしゃったような趣旨は、もう百回ぐらい私聞いておりますので。

 私が質問したのはそういうことではなくて、端的に、今おっしゃった趣旨だけれども、過労死の御遺族の方々が大反対をされていて、実際、過労死と長時間労働で体を壊す若者が続出している、だから、もちろん裁量労働制で喜んでいる人もいるかもしれません、それは否定しませんけれども、過労死がふえて深刻な問題に裁量労働制というのはなっている制度だという認識はお持ちですかということを総理に聞いているんです。

 ちょっと、ちょっと待ってください。そんな難しい質問、ちょっと待ってください、総理の認識を聞いている。ちょっと待ってください。そんな難しいことは聞いていません。その認識を総理が持っていられるかと聞いている、大臣の認識は聞いていませんので。ちょっと、総理。だめだめ、もう時間も限りがあるから。いい、時間がもったいないですから。だめです、総理の認識を聞いています、大臣の認識は聞いていませんので。

加藤国務大臣 裁量労働制、委員も御承知のように、自律的で創造的な仕事ができる、そうした機会をつくっていこうということでございます。その中で、長時間労働等については、特に、みなしと随分乖離があるとか、そういった場合に対しては、先ほど総理が答弁をされたように、しっかりと対応していきたい、こう思っております。

安倍内閣総理大臣 政府としてお答えをするわけでありますから、担当大臣からも答弁させていただくのは、私は当然のことではないかと思うわけでございます。

 それと、先ほど答弁させていただいたように、我々は、いわばこれは、この裁量労働制の中においても今までさまざまな事例があったことは十分に承知をしているわけでございます。

 その中において、組合側とも、労働組合ともさまざまな御意見を伺うという場を設けながら、そうしたお話も受けながら見直しを行ったわけでございまして、それは先ほど答弁させていただきました。

 労使委員会が決議した健康確保措置を必ず実施させること……(山井委員「もう結構です、結構です」と呼ぶ)つまり、これが大切なことなんですから、それは聞いていただきたい。

 聞かれたんですから聞いていただきたいと思いますが、客観的な方法によって労働時間を把握し、実際に働いた時間が長時間となった方には医師による面接指導を行うことを使用者に義務づけることにしたわけでございまして、これは今までの裁量労働制度にはなかったことをそういう中において行っているということは申し上げたわけでございます。

 そしてまた、先ほど厚労大臣が答弁させていただいたように、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合には、その適正化に向けて、より厳格な監督指導を行うこととしているところでございます。

山井委員 命にかかわる問題を真剣に、深刻に議論しているんです。聞かれたことに端的にお答えください。よろしくお願いします。

 さまざまな事例があるということですが、今深刻なのは、きょうの六ページにも配付しておりますが、最低賃金の方々や若者、そういう方々に裁量労働制が拡大しているということなんです。裁量なんかあるはずないじゃないですか、最低賃金で働く新入社員に。結果的には、残業代を払わず、夜中まで働かされて。

 次のページ、お願いいたします。

 先日もお目にかかりました、ある三十代の女性。入社一年目から裁量労働制、社員全員が裁量労働制。残業代はほとんどつかず、しかし、実際は百時間の残業、月に。そして、夜中一時ぐらいまでの残業も忙しいときにはすることになり、昨年の十一月二十七日には深夜に会社で意識を失った、倒れました。そして、たまたま同僚が来られたから一命は取りとめましたけれども、過労死寸前でした、この三十代の女性が。そして、結果的には適応障害で退職。

 こういう深刻な、最低賃金で働く若者、低所得者にも裁量労働制が加わって、きょうも来られていますけれども、長時間労働で体を壊して、本当に大変つらい目をされている方々も続出しています。

 これも質問通告していますので安倍総理にお伺いしたいんですけれども、最低賃金のような低所得者の若者に裁量労働制が広がっている、やはり裁量労働制の趣旨とかけ離れているんじゃないんですか。

 ちょっと、加藤大臣には聞いていませんので。これは基本的なことです。安倍総理が働き方改革が目玉だとまでおっしゃるから。

 こういう、若者から定額働かせ放題だと恐れられている、一番恐れられている、体を壊される働かされ方が裁量労働制に今なっているんです。深刻な問題なんです。目玉とおっしゃる以上、質問通告もわざわざしましたので、難しい質問ではありません、こういう最低賃金の若者に裁量労働制が今多く適用されていることについて、安倍総理、どう思われますか。

河村委員長 まず、厚労大臣。政府の基本的な考え方を。

加藤国務大臣 済みません、まず私の方から……(山井委員「だめだめ、総理の認識を聞いているんですから」と呼ぶ)委員長から御指名をされましたので、答弁をさせていただきます。

 企画業務型裁量労働制の対象労働者についての賃金、労働契約の期間、雇用形態、勤続年数及び年齢に関する要件、これは委員御指摘のように、ございませんが……(発言する者あり)

河村委員長 静かにしてください。

加藤国務大臣 労働基準法第三十八条の四の第一項の規定により、対象業務を適切に遂行するための知識、経験者を、有する労働者であることなどが必要であり、これらの要件に該当する労働者に限り、企画業務型裁量労働制を適用することができるとなっております。

 さらに、法案要綱においては、「対象業務に従事する労働者は、対象業務を適切に遂行するために必要なものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する知識、経験等を有するものに限るものとすること。」とされており、これを企画業務型裁量労働制の対象労働者の要件として定めることを検討し、具体的には、法案が成立をしていただければ労政審で議論をしていただくということでございますので、いずれにしても、そういう議論において、今お話があった点も含めてしっかりと御議論いただきたい、こう思っております。

山井委員 いや、私、びっくりです。安倍総理が働き方改革が目玉だとおっしゃるから、どういう見解をNHK生中継で全国におっしゃるのかと思ったら、ごくごく基本的な質問をしても全て逃げておられるじゃないですか。目玉法案じゃなかったんですか。何か国民にこの法案のことを言いたくないんですか。やはりやましいことが何かあるんですか。

 実際、きょうも質問主意書で返ってきましたが、裁量労働制で、八時間ということでみなし労働時間の人が、最低賃金で働いて、実際、二、三時間残業させられたら、時給で割ったら最低賃金以下になります。これでも合法だという質問主意書の答弁がきょうも返ってまいりました。つまり、悪く使えば最低賃金以下で働かせることができるのが裁量労働制の恐ろしさであります。

 それで、安倍総理にお聞きしたいと思います。

 今回のデータは撤回されたわけなんですけれども、これは念のために申し上げますが、読売新聞や日経新聞が悪いというわけじゃありませんけれども、安倍総理が長妻議員に答弁されたせいで、読売新聞と日経新聞には、例えば、安倍首相は「裁量労働制で働く人は、一般労働者より労働時間が短いとの調査もある。」というふうに答えたと社説に書き、日経新聞も、安倍首相は「裁量労働制で働く人の労働時間は平均で一般の労働者より短い」ということが新聞に出ちゃっているんです。

 だから、何と今、ちまたでは、働き方改革といえば、裁量労働制で労働時間を短くしようみたいなムードが出ちゃっているんですけれども、このデータは間違っていたんですよね。

 ついては、安倍総理、撤回だけではなくて、裁量労働制の方が労働時間が長いというデータしかないということを、ぜひ、それは事実ですからね、先ほどもあったように、裁量労働制の労働時間の方が長いというデータしかないということは、そうしないとこれは取り消したことになりませんからね。間違った情報をこの予算委員会でおっしゃったのは安倍総理ですから、もう一度、安倍総理の方から……。

河村委員長 加藤厚労大臣。(山井委員「ちょっと待ってください。質問まだ終わっていません。ちょっと、質問中ですよ。まだ質問中ですよ、委員長」と呼ぶ)

加藤国務大臣 今、委員長から御指名をいただきましたので、答弁をさせていただきたいと思います。

 平成二十五年度の調査について、私どもが異なる選び方をして出た数字を比較した、そのことは心から、不適切であり、おわびを申し上げたいというふうに思っておりますが、ただ、委員御指摘のように、それぞれの企業ごとにおいて導入をしているわけでございますから……(発言する者あり)

河村委員長 静かにしてください。

加藤国務大臣 皆さんがお使いになっているJILのデータを見ても、一定の時間より短い者は、もちろん一般で働く方もいらっしゃいますけれども、裁量労働で勤める方もいらっしゃる、そういう事実もあるということでございます。

山井委員 ちょっと、まだ質問終わっていないんです、私。

 ですから、これが、先ほども答弁あったように、労働政策研究機構の、裁量労働制の方が一般より労働時間が長いというデータしか認めていないということですから、ぜひ、そのことを安倍総理、この場でおっしゃってください。

安倍内閣総理大臣 その前に……(山井委員「いや、もういいです、その前はいいですから。もうやめて、その前はいいですから」と呼ぶ)いや、最低賃金との関係で質問をされましたので、先ほど厚労大臣が答弁しているとき大変ざわついておりましたので、大切な答弁でございますから……(山井委員「いや、もういいです、それはいいです」と呼ぶ)いや、これは大切な、私から聞きたいと言われたわけでありますから答弁させていただきますが、裁量労働制は、仕事の進め方、時間配分などをみずから自由に決定し、効率的に仕事を進めていただくためのものでありまして、そういう趣旨から、一定の知識経験を有する方を対象と想定しております。そこで、最低賃金で働く方が対象になるとは直ちには想定しがたいわけであります。

 制度の趣旨に沿った運用が徹底されるよう、厚生労働大臣にしっかりと検討させたい、こう思うわけでございます。

 それと……(山井委員「もう結構です。これをお願いします」と呼ぶ)ああ、もういいですか。よろしいですか。

 それと、JILPTのアンケート調査によると、一カ月の実労働時間を見た場合、裁量労働制の方が一般労働者の方よりも労働時間の平均値が長いとのデータとなっています。

 ただし、このアンケートは、調査時点で裁量労働制で働く方と一般労働者の方の労働時間をそれぞれ調査したものであり、裁量労働制が適用されることによって、適用される前よりも労働時間が長くなることを示したものではないと認識しております。

 そして、私が撤回をいたしましたのは、私の答弁を撤回をしたということでございます。

山井委員 私は、ひどいなと思いますね。裁量労働制の方が短いときはそのことしか答弁せず、いざ、もう裁量労働制の方が長いというデータしかなくなったら、その調査はこれこれ不十分な点があると。

 結局、余りにも、何か不都合なんですか。裁量労働制の方が労働時間が長いということは不都合なんですか。

 それに、さらに今、最低賃金で裁量労働制で働くことは想定していないと。想定していないけれども、それが蔓延しているじゃないですか。だから問題だと言っているんですよ。

 さらに、もう一つの、今回、安倍総理、私は、単に不適切なデータでは済まないと思うんです。私は、今回の件は捏造ではないかと思わざるを得ません。

 この配付資料を見ていただきたい。安倍総理、十一ページを見てください。今回厚生労働省が出した資料というのは、一日の残業時間が一時間三十七分。しかし、同じ調査では、一週間は二時間四十七分、一カ月八時間五分。

 小学生が考えても、算数、合わないんじゃないんですか。もし一時間三十七分と出てきたら、一週間、五日間で割ったら三十三分じゃないですか、一カ月、二十一日の労働日数で割ったら二十三分じゃないですか、誰が見ても、一時間三十七分、おかしいよねとわかるんです。課長さん、局長さん、大臣がこれを見て、気づかなかったなんてことはあり得ない、考えられません。これはもう故意です、改ざんです。ミスのはずがあり得ないんです、これは。改ざんです。

 厚労省の方々とも議論を重ねました。ある方はこういうことをおっしゃっていました。安倍政権が裁量労働制の拡大ということを、方向性を出しているときに、裁量労働制の方が労働時間が長いようなデータというのはなかなか表に出せないんですよ、こういう声もありました。つまり、森友や加計問題と同じようなそんたくで、こういう中で明らかに、今回は改ざんをされた。悪質だと思います。

 ついては、安倍総理、裁量労働制の拡大を目玉法案でやりたいということは、安倍総理にお聞きしますよ、加藤大臣、出てこないでくださいね。もう本当にいいかげんにしてくださいよ、安倍総理入りのきょうは質疑なわけですから。裁量労働制の拡大によって労働時間はふえると考えておられるんですか、減ると考えられているんですか。現在の安倍総理の認識を、安倍総理にお聞きします。

加藤国務大臣 ですから、委員御指摘のように、JILPTのデータでは、そうした、一般で働く方の労働時間の方が裁量労働制よりも短いというデータがあることは、御指摘のとおりであります。

 ただ、それぞれの事業所においてこれを入れていく、自律的で創造的な仕事をしていただく、それに当たって、私どもは、みなし労働時間と実際の労働時間が乖離しないように、そして長時間労働が是正されるように、しっかりと対応していきたいと思います。(山井委員「委員長、二重に答弁するのをやめていただけますか。なぜ二重にするんですか、私が総理に聞いているのに。時間潰しじゃないですか」と呼ぶ)

安倍内閣総理大臣 これは厚労大臣が所管をしている法案であります。当然、既に今までの答弁の積み重ねがあるわけでありまして、その積み重ねの上に政府としての見解をまずは厚労大臣が述べるのは私は当然のことだろうと思うわけでありまして、我々は時間稼ぎをしようと思っているのではなくて、厚労大臣もそんな延々と答弁をしているわけではございません。

 そこで、長いか短いか、基本的な考え方は厚労大臣からお答えをさせていただきました。

 しかし、私どもも、いわばしっかりと健康に対する対応をして、健康確保措置をしなければならないということで、先ほど申し上げたとおりでありまして、みなし労働時間と実労働時間の乖離があれば、それを是正するようにしなければいけない、そういう対応をしているわけであります。

 つまり、それは、絶対に裁量労働時間の方が必ず短くなるという考え方ではないわけでございます。ですから、そういう対応をとっている。そして、現在の裁量労働制度にはないさまざまな義務をつけている、こういうことではないかと思います。

山井委員 残念ながら、答弁は撤回したと言いながら、裁量労働制で労働時間が長くなるのか短くなるのか、そのことに関しては政府見解は今ないわけですね。これでは何のための予算委員会かがわかりません。

 委員長、ぜひとも、政府として、裁量労働制で労働時間が長くなるのか短くなるのか、その統一見解を出していただくようにお願いします。

河村委員長 理事会で協議をいたします。

山井委員 それで、東京過労死を考える家族の会の、きょうもお越しをいただいています中原のり子代表は、この虚偽データ問題について、昨日のヒアリングの中でこうおっしゃっていました。本当に残念なことです、厚生労働省が出すデータに限っては間違いないものだと信じてきた、誠実な対応をしてほしい、きちんと実態調査をして、納得ができる形で法改正をしてほしい。当たり前ですよね。

 長時間労働になるのかならないのか、裁量労働制で。政府は、わかりませんと言っている。私たちは、長時間労働になる、過労死がふえる、被害者の相談はいっぱい来ている。死屍累々だと長妻さんもおっしゃっています。にもかかわらず、安倍総理がわからない、わからないと言うのであれば、実態調査、先ほど逢坂さんもおっしゃりましたけれども、してください、実態調査。実態調査なくして法改正なしだと思いますが、そうじゃないですか。

 ついては、今、実は、何と厚生労働省は実態調査をしているんです。ところが、ここにありますけれども、この実態調査は非常に不十分で、一万三千の事業所による、事業主にしか聞かない実態調査なんです。実際、この配付資料にもありますように、企画業務型裁量労働制について、一律の出退時間があるというのが、事業場調査では一九・六%、しかし、労働者に聞くと、四九%が出退勤時刻が決まっていると。つまり、二倍以上もデータが変わるんですね。

 ですから、安倍総理、実態として裁量労働制で労働時間が長くなるのか短くなるのか、過労死がふえるのか減るのか、政府としては全くわからないのに、拡大しますなんて、そんな無責任なことありませんよ。何よりも、安倍総理が、一旦この場で裁量労働制で労働時間が短いという答弁をされて、さらに、撤回したけれども、まだどうなるかわからないとおっしゃる以上、多くの国民が裁量労働制で今後働くことになるわけです、国民には、裁量労働制の実態がどういうものであるのか、法改正の前に知る権利があるんじゃないでしょうか。

 安倍総理も、裁量労働制がそこまでいい、目玉だとおっしゃるんだったら、正々堂々と労働者に対する実態調査をして、一週間、二週間で、少ないサンプルだったらできますよ、その上で私たちに開示をしてもらえませんか。それが謝罪だと思いますよ。撤回して済む問題じゃありません、命にかかわる問題ですから。

 安倍総理、これも質問通告しております。ぜひとも、労働者に対する実態調査を何としてもやってください。安倍総理、お願いします。

加藤国務大臣 まず、委員御指摘がありました資料は、これは、事業主みずからが点検して、報告を求めるということで、現在の裁量労働制を適正に運用していく、そういう指導の一環として行うわけでございまして、そこで具体的に調査して、それ自体を調査ということではなくて、あくまでも、自主点検をし、それによって適正な運営ができるような指導を行うための措置でございます。

 その上で、今委員、調査をすべきというお話がありましたけれども、これも先ほど他の委員に御答弁させていただきましたけれども、これまでの労政審の中における議論、そしておおむね妥当ということを踏まえて、今、法案の作業を進めさせていただきたいというふうに思っておりますし、また、それがしっかりと適用される、あるいは現行がしっかり適用されるように、我々は常に監督指導を行っていきたいと思っております。

山井委員 安倍総理、何か人ごとみたいですね、目玉法案で、働き方改革するとおっしゃっていた割には。全然難しい質問をしていませんよ。法改正するためには、過労死がふえないように実態調査すべきじゃないですかと。そのことにすら答えず、私の方も見られない。ずっと原稿をそこで読んでおられます。

 きょうの配付資料の二枚目にもありますが、電通で高橋まつりさんがお亡くなりになりました。そして、その高橋まつりさんのお母様の幸美様と昨年面会をされた際に、安倍総理は、長時間労働是正、何としてもやりますと約束をされました。しかし、この配付資料にもありますように、昨年の年末にお母様は手記を発表されまして、政府の残業規制には疑問があると。この赤線を引きました、「労働時間規制の例外の拡大は絶対にあってはならない。」、つまり、高度プロフェッショナルや裁量労働制の拡大は絶対にあってはならないとまでおっしゃっているんです。

 さらに、このポスターにもありますように、これは過労死防止法制定のためのポスターでありまして、安倍総理にも賛成していただいて、三年前に成立しました。このポスターにもありますように、お父様を亡くされた当時小学校一年生のマーくんの「ぼくの夢」という詩があるんですね。少し読み上げさせていただきたいと思います。

  大きくなったら

  ぼくは博士になりたい

  そしてドラえもんに出てくるような

  タイムマシーンをつくる

  ぼくはタイムマシーンにのって

  お父さんの死んでしまう

  まえの日に行く

  そして「仕事に行ったらあかん」ていうんや

と。当時小学校一年生のマーくんの詩です。

 きょうも御遺族来られていますけれども、過労死で亡くなられた方というのは、真面目で責任感の重い方ばかりなんです。家族思いの方々なんです。亡くなられた御家族は、地獄の苦しみを味わっておられるんです。幾ら活動しても、亡くなった御家族は帰ってこない。しかし、同じ地獄の苦しみをほかの人に味わわせたくないということで、過労死防止法をつくって、必死で運動されているんですよ。

 その方々が涙を流してやめてくださいと言っている裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル、過労死の御遺族の方々は過労死促進法と呼んでおられるんですよ。過労死の御遺族が涙を流してまでやめてくださいと言うことを押し切るのが働き方改革なんですか。人の命を守るのが国会じゃないんですか。働き方改革って、与党と野党がけんかして、過労死の御遺族の反対を押し倒して、無理やり強行採決するものなんですか。

 安倍総理、ぜひとも立ちどまっていただきたいんですよ、ぜひとも。やはり、この亡くなられた方々の命というのは重いと思います。安倍総理、残念ながら、この裁量労働制の拡大をすれば必ず死者は出ます。過労死は必ず、申しわけありませんが、ふえます。ふえますじゃないんです。きょうも来られているように、既に裁量労働制や労働規制の緩い働き方で過労死の方が出ているんです。既に出ているんです。

 私たちは、体を張ってでも、この裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナルを阻止します。なぜならば、国会議員の仕事は国民の命を守ることだからです。国民の命を奪う法律なんて、許すわけにはまいりません。

 安倍総理、人の命を奪うこの裁量労働制の拡大、実態調査すればいいじゃないですか。今回も、虚偽データ、見つかったじゃないですか。人の命にかかわることだから、私たちも必死なんですよ、これ。死者が出るんですから。実際、死者が出ているんですから。

 何とか、安倍総理、この裁量労働制の拡大、一旦、実態調査をして、今回は裁量労働制の拡大は法案から削除すると、ぜひとも安倍総理、答弁をお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この調査でございますが、全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問し、そして聞き取り、書類の確認をしながら、全国一万一千五百七十五事業場の労働時間を調査してつくったものと承知をしているわけでございます。その際、一般労働者、裁量労働制、それぞれの調査結果自体が否定されるものではないと考えています。労働調査を行うことは考えておりません。

 しかしながら、今般、性格の異なる数値を比較していたことは不適切であり、私からも深くおわびを申し上げたい、こう思うところでございます。

 裁量労働制については、一定の知識経験を有して働く方本人に、会社が決めた一律の定時に縛られることなく出勤、退勤時間を自由に決めていただき、仕事の進め方をお任せして、より効率的に成果を上げていただこうというものでありまして、まさに裁量によって働き方等々を決めていくわけであります。

 そこで、これは繰り返しになりますが、労使委員会が決議した健康確保措置を必ず実施させること、そして、客観的な方法によって労働時間を把握し、実際に働いた時間が長時間となった方には医師による面接指導を行うことを使用者に今度は義務づけることにしているわけでありまして、今まではそれはなかったところに今委員が御指摘になったような問題の発生にもつながった可能性もあるわけであります。

 あわせて、労働基準監督署においても、労働基準法に指導のための根拠規定を設け、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離がある場合には、その適正化に向けて、より厳格な監督指導を行うこととしています。

 加えて、そもそも、裁量労働制の対象にならない業務につかせたり、一律の出退勤時刻を定め、それに従うよう指示していたりすれば、みなし労働時間は無効となります。その場合は、残業代が不足していれば支払い義務が生じ、罰則の対象にもなるものであり、企業には厳格な運用を求めるものであります。

 今回の働き方改革は、長時間労働となっている方の労働条件を改善していくという目的もあるわけでございまして、自分の能力や才能を生かしながら、そしてしっかりと健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていくものでありまして、そして、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるようにするものでありまして、これはあくまでも希望する方であるということであります。裁量労働制についてもそういう見直しを行うものであるということは明確に申し上げておきたい、このように思います。

山井委員 もう時間が来ておりますが、終わりますが、希望する人にとおっしゃいましたけれども、別にこれは希望しない人もなかなか断れないし、全従業員が裁量労働制というところもありますし、気がついていない間に自分が裁量労働制にされたという人もいっぱいいます。

 この四十分の質疑を通じて、本当にがっかりしました。目玉法案といいながら、答弁からは逃げる、そして、まともに質問には答えない、答え出したら、原稿を長々と読んで時間を潰す。人の命がかかっている法案なんですから、それなりの真剣さを持ってやっていただきたいと思います。

 私たちは人の命を守りたいんですよ。人の命を奪う法律をつくるのであれば、私たちは体を張って阻止します。そのことを申し上げて、終わります。

 ありがとうございます。

    ―――――――――――――

河村委員長 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣府総合海洋政策推進事務局長羽尾一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申出があります。山井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 希望の党の大西健介でございます。

 我々希望の党、昨年の選挙、当選者の平均年齢が四十九・四歳と一番若い政党であります。玉木代表四十八歳、私四十六歳ですけれども、この後には四十七歳稲富委員が質問させていただく予定になっております。こういう若い仲間で玉木代表をしっかり支えて頑張ってまいりたいというふうに思っております。

 私も、きょうは、いろいろな質問を用意してきたんですけれども、今、山井委員から大変熱い質問がありましたこの裁量労働制の問題について、私からも質問をせねばならないというふうに思っております。

 改めて、テレビをごらんの皆様に、この問題、何が問題かというのを簡潔にちょっと御説明をしたいというふうに思いますけれども、このパネルにありますように、裁量労働制を拡大すれば労働時間が延びるんじゃないかということに対して、これまで政府は、それに反論する形で、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということを繰り返し答弁をしてきました。ところが、その答弁の根拠となっていたデータが不適切なものであったということで、撤回をし、謝罪をしたということであります。

 このデータというのは、先ほどもたしか逢坂委員の質疑の中でありましたけれども、調査的監督という形でとられたものであること、また、平均的な者ということであること、さらには、実労働時間になっていない、もっと言えば、異常値が含まれているということで、非常に問題が多いデータであります。

 ただ、そもそも、きょう何度も言われているように、比較できないものを比べているという点で、これは私は捏造と言っても過言ではないというふうに思います。

 ここにありますように、一般の労働者については一日の最長の残業時間を聞いているにもかかわらず、裁量労働制で働く労働者には普通に一日の労働時間を聞いている。最長を聞けば、長くなるのは当たり前ですよね。ですから、これは本当に比べているのがおかしいんです。

 左側にあるのが、こちら側にあるのが、これが実際にこの調査をしたときに用いられた付表です。これもたびたび出ておりますけれども、この上の方が一般の労働者なんですけれども、こちらの方には最長時間数と書いてありますね。最長時間数と書いてあります。しかし、下の方、この裁量労働制で働いている労働者の方は、ここには最長という字はないんです。ですから、普通に労働時間を聞いているということであります。

 これを見れば、精査、精査と言うけれども、精査なんかしなくても一目瞭然で、これはもうおかしい、このデータはおかしい、本来比べちゃいけないものを比べているんだからおかしいということがわかるわけです。

 そこで、まず、この調査の付表がこういう形になっていたということをいつ知ったのか、担当の課長、局長、そして大臣がいつ知ったのかというのを事務方から簡潔にお答えをいただきたいというふうに思います。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この付表について、課の担当者が認識をしましたのが二月一日でございます。課長と私に報告がございましたのが二月二日でございます。大臣に報告いたしましたのは二月七日でございます。

大西(健)委員 課長が一日に知って、翌日、局長に報告をした。ところが、大臣に上がったのは七日ということでありますけれども、これは、今言ったように、比べちゃいけないものを比べている、また、それに基づいた答弁を繰り返ししている、これは重大な問題で、これはまずいと思って、普通だったら、局長、すぐに大臣に報告すると思うんですけれども、何で二日に知ったのに七日まで報告しなかったんですか。

山越政府参考人 課長と私がこの付表について報告を受けたのは二月二日でございますけれども、この付表におきましては、例えば、裁量労働制について、一日の労働時間、どのように選ぶとか、そういったことについてはこの付表だけではわからないわけでございまして、そういったことについて調査するということでやっていたわけでございます。

大西(健)委員 先ほども申し上げましたけれども、一般の方は最長の時間数と書いてあるけれども、下の方には最長という言葉はないわけです。これは、明らかにおかしい、まずいと思うのが普通だと思うんですけれども。先ほど言ったように、これを見ればもう一目瞭然、精査なんかする必要ないんですよ。それを七日まで大臣に報告しなかった。

 大臣は七日まで知らされていなかったわけですけれども、実は五日に、我が党の玉木代表がこの予算委員会の場でこの問題について質問をしています。配付資料の二ページ目に会議録をつけておりますけれども、二月五日ですけれども、玉木委員が、加藤大臣、裁量労働制を拡充することで労働時間は短くなりますか、証拠があれば示してください、こういうふうに質問したのに対して、加藤大臣が、平均的な働く人の時間で見ると、一般労働者が九時間三十七分、企画業務型裁量労働制が九時間十六分、こういった調査結果もあるという、この問題の答弁をしているんですよ。

 ですから、今言ったように、既に局長は二日にこの付表のことを知っているわけですから、大臣にこういう答弁をさせちゃまずいんじゃないですか。させちゃいけないんじゃないですか。

 私は、大臣にこんな答弁をさせてしまったこと自体に大きな責任があるというふうに思っていますけれども、これは間違った答弁なんですから、間違った答弁を国会でさせてしまった、このことに大きな責任があると思いますけれども、加藤大臣、そのようにお思いになりませんか。

加藤国務大臣 私自身、このときの状況を申し上げれば、まさにそうした手元に資料があり、そのことを申し上げて、玉木委員に質問させていただいたということでございます。

大西(健)委員 ですから、私は、加藤大臣は知らなかったのでしようがないと思うんですよ。でも、局長は知っていたわけですよ。

 国会答弁というのは、課長や局長もちゃんと見た上で大臣に答弁していただくんでしょう。さっきも、たしか安倍総理の答弁の中で予算委員会の答弁レクの話がありました。まさに、答弁書を用意して大臣に説明をするわけですから、もうこの答弁は使っちゃいけないんだ、まずい、この答弁をこのまま国会で使い続けることは虚偽答弁になるおそれがあるということを気づいていながら、まあ、大臣は知らなかったからしようがないですよ、でも、それをさせてしまった。

 これは局長に責任があるとお思いになりませんか。

加藤国務大臣 ちょうどそこに至るまでの、今お話がございました、局長も二日に御存じだったという答弁はさせていただきました。この答弁は五日の答弁でございます。その間、どういう中で議論があって、そして、こうした答弁が私の中に上がってきたのか、ここはよくチェックをしなければならないと思います。

大西(健)委員 いや、少なくとも、精査をするからといって撤回をしたわけですから、同じ考え方でいうと、この答弁はまずいかもしれないんですよ。ですから、そのまま使い続けたらまずいかもしれないとわかっていて答弁しちゃっているわけですよ。そして、結果として虚偽の答弁、うその答弁をこの国会で行ったということなんですよ。これは私は大きな責任があると思いますよ。

 大臣、局長を処分されるつもりはありますか。

加藤国務大臣 いずれにしても、その経緯についてはよく聞きたいと思っております。

大西(健)委員 だって、何ではっきりさせなきゃいけないかというと、わかっていて虚偽の答弁をするんだったら、ここで、予算委員会で審議する意味なんかないじゃないですか。我々が何を聞いたって、この答弁は間違いかもしれないとわかった上でその答弁をさせてしまうというんだったら、こんなの何時間やったって意味ないですよ。だから言っているんです。

 総理、思いませんか。局長が、この答弁をこのまま続けてしまうとこれは虚偽の答弁になってしまうかもわからないと少なくとも気づいているのに、それをそのまま大臣に上げた。そして、結果として虚偽の答弁を我が党の玉木代表の質問に対して行った。こんなことが許されるんだったら、国会で議論する意味ないじゃないですか。総理、そう思いませんか。

安倍内閣総理大臣 私も、この調査結果の上に答弁をさせていただいたところでございます。また、加藤大臣も答弁をしたところでございますが、しかし、私も答弁をした以上、これは私の責任で答弁をしているわけでございますから、私の答弁については私に責任があるわけでありまして、その上において撤回をし、おわびを申し上げたところでございます。

 また、加藤大臣も、それは加藤大臣も加藤大臣として答弁をしているわけでありますから、加藤大臣に責任があるわけであり、そして、その意味においておわびをし、撤回をしているわけでございます。

 他方、どのような経緯でこの資料、いわば比較する点に問題もあったわけでございますので、そうした経緯についてはしっかりと省内で精査する必要があるだろう、このように思います。

大西(健)委員 確かに、私も、別に部下のせいに全部しろという話ではなくて、おっしゃるように、答弁は大臣や総理がされているわけですから、最終的な責任はある。

 ただ、今申し上げましたように、二日に知っていたけれども七日まで報告をしなかった、そのことによって結果として虚偽の答弁を国会で行ったということについては、この経緯、今おっしゃっていただきましたけれども、しっかりとこの経緯についても精査をして、しっかりまたこの委員会にも報告をいただきたいというふうに思っております。

 そして、もう一つ、先ほど総理が、午前中の質疑だったと思いますけれども、一月二十九日のこの予算委員会の勉強会、朝の勉強会で厚労省から上がってきた答弁資料にこういうものがついていたんだみたいな話をされていました。

 先日、私、テレビ朝日の番組を見ていたら、その中で、総理の答弁書本体にはこのデータは入れておらず、参考資料としてついていたと聞いている、それを見た総理が野党に反論したくて使ったのではないかという、これは厚労省幹部のコメントということでその番組では紹介されていました。

 さっきの朝のレクの話とちょっと符合するところがあるのかなと思ったんですけれども、ただ、腑に落ちないのは、さっきも話題になっていましたけれども、これは平成二十七年の七月三十一日、当時衆議院厚生労働委員会で当時の塩崎大臣がこの同じ答弁をもう既に使っているんですね、三年前に。

 それから、これもさっき話に出ていましたけれども、最初にこのデータを、比べちゃいけないデータを比較する形で提出したのは、当時の民主党の厚労部門会議に平成二十七年の三月二十六日に提出をしたということで、ただ、そのときの経緯は、先ほどの加藤大臣の答弁では、経緯は詳細は残っていないのでよくわからないということなんですけれども、私が最も知りたいのは、まさに、最初にこの比べちゃいけないデータを並べるという形でこれをつくったのは一体誰なのか、あるいは誰の指示でやったのか、そして、それはいつから始まっていて、何の目的でやったのか、これが知りたいんですよ。だから、まさにこれがわからないとこの問題の本質というのは私はわからないと思うんです。

 いつ、誰が、あるいは誰の指示で、これは何の目的で、それまで並べちゃいけないデータが、調査の段階では、ただその調査の中に含まれる数字だったわけですけれども、並べた形で、我々が知る限りでは、初めては三年前の民主党の部門会議に出たということですけれども、一体いつから、誰の指示で、何の目的で使い始めたとか、そこは大臣はわかりますか。

加藤国務大臣 まず最初に提出をさせていただいたのは、今委員御指摘のように、平成二十七年三月の民主党の厚生労働部門会議に出させていただいた、資料として出したのはこれが最初であったというふうに認識をしております。

 具体的な経緯については、正直、記録が残っておりませんのでわかりませんけれども、関係者に聞くところ、毎週これはそれぞれ説明する機会があり、その前の週にいろいろな宿題をいただいた、そして、その宿題にお返しをする中においてこの資料を提出させていただいた、そして、それについては担当課において作成をし、そして、それを、先ほど申し上げましたが、課長、局長の了解を得て提出をした、こういうことでございます。

大西(健)委員 いや、ただ質問があったからつくるというデータじゃないんです。何回も言っているように、不適切な、まさに並べて比較しちゃいけないものを比較しているわけですから。担当課の職員だったら、これを並べたらいけないということはわかっているはずなんです。わかった上でつくった。

 何のためにつくったのか、それから、誰にそんなことを言われてやったのか、ここをはっきりしてもらわないと、この問題というのは私は腑に落ちないんだと思うんですね。

 ですから、そこのところをもう一回、私はぜひ、加藤大臣、省内調査をもう一回してもらえませんか。そして、ここに報告してください。それができないと、私は予算の出口なんという話はないというふうに思いますけれども、必ずそれを調査して、出してもらえませんか。

加藤国務大臣 国会の審議との関係について私がとやかく言う立場じゃありませんが、委員から調査をせよということでございますので、私も一応確認して先ほどの答弁は申し上げましたけれども、もう一度確認をさせていただきたいと思います。

大西(健)委員 というのは、安倍政権が高度プロフェッショナル制度の創設とかあるいは裁量労働制の拡大を含む労働基準法を閣議決定したのが平成二十七年の四月三日なんですよ。だから、この三月二十六日というのはその直前、もっと言えば、労政審の審査は終わって閣議決定する間にこのデータが初めて表に出てきている。それから、その後七月から、少なくとも確認できるところでは、塩崎大臣が既にこの答弁を使っているということなんです。

 これを考えると、やはりこの高プロと裁量労働制の拡大の法案を通すためにこういうデータを捏造したんじゃないかと思うのが私は自然ではないかというふうに思うんですけれども、総理、そうお思いになりませんか。

加藤国務大臣 今、もう一度確認させていただくということを答弁させていただきましたが、私が聞いたときには、聞いた範囲においては、担当の者、それを作成した者において、データの選び方が異なっているということを認識していなかった、こういうふうには聞いております。

大西(健)委員 いや、そんなことは担当の職員であればあり得ないことだと思います。ですから、これはやっちゃいけないことをやはりやらざるを得なかった。誰の指示でやったのか、何の目的でやったのか、そこをしっかり調査をしていただく必要があるというふうに思います。

 次に、きのうの加藤大臣の答弁で私がちょっとおかしいなと思ったところがあるので聞こうかなと思っていたら、先ほど山井委員の質問に対してもまた同じ答弁を繰り返していました。

 それは何かというと、これがちょっと追加で配った会議録ですけれども、昨日の我が党の井出委員の質問に対しての答弁なんですけれども、井出委員が、裁量労働制の方が一般の労働者より労働時間が短い、そうした認識を今も持っているのか、こう聞いたのに対して、加藤大臣はこう答えています。同じJILのデータを見ても、一定の時間で区切って比較をすれば、その時間よりも短い範囲で働いている人の割合について、一定程度裁量労働制の方もおられるわけでありますから、それを比較すれば、必ずしも裁量労働制になれば直ちに長くなる、直ちに長いとか長くないとかということは必ずしも言えないんだろうなというふうに思いますと。

 これは、何か、ちょっと聞くと一見もっともらしいことを言っているように聞こえるんですけれども、私は、これはめちゃめちゃでたらめな答弁だというふうに思います。

 というのは、これは例えて言うなら、大臣の答弁というのは、ほかの例えでいうとこういうことを言っているのと一緒だと私は思います。

 例えば、A校とB校という二つの学校が、どっちが成績がいいですかということを比べる。これは、平均点で比べるとA校の方が成績がいいですよ。まあ、これだったらわかりますよね。ところが、大臣が言っているのは、ただ、A校の方が平均点で比べると成績はいいんだけれども、ある点数以下の生徒の数はA校にもかなりいますよ、こういうことを言っているだけなんです。これは全く意味がないですよ。

 ですから、これをもって、いやいや、JILのデータでも必ずしも裁量労働になれば労働時間が長くなるということではないんだということの根拠には全くならないと思うんですけれども、これはでたらめな答弁なので撤回してもらえますでしょうか。

加藤国務大臣 今委員おつくりになった比較を少し使わせていただきたいと思いますが、では、A校とB校の平均点がどっちがいいかといえば、おっしゃるとおりだというふうに思います。ただ、A校にいる学生とそしてB校でそれぞれ学んでいる学生とどっちが点数がいいかというと、それはそれぞれだということになるんじゃないでしょうか。

大西(健)委員 それはそれぞれなんですけれども、それは当たり前のことなんですよね、分布しているから。当たり前で、何も言っていないのと一緒なんですよ。どっちの、A校にもB校にもそれは成績のいい子も悪い子もいて散らばっているので、これは平均点で比べないと、A校とB校とどっちが成績がいいですかということの論拠にはならないんですよ。

 だから、事ここに至ってもそういうことをいけしゃあしゃあと答弁をして、あたかも裁量労働の方が労働時間が長くなるということではないかのように言われるというのは、本当に私は不誠実だというふうに思います。ぜひ、テレビの前でそういう間違った印象を与えるようなことは、私は大臣に慎んでいただきたいなというふうに思います。

 それでは、改めて確認しますけれども、これも何度も聞かれていることですけれども、裁量労働制の方が一般の労働者より労働時間が短いというデータは、現時点であるんですか、ないんですか。

加藤国務大臣 これも前からお話をしておりますように、JILPTにおける調査においては、一般労働者の方が裁量労働制の労働者に比べて、平均においては一般労働者の方が短い、逆に言えば裁量労働制が長い、こういうデータはございます。

大西(健)委員 今大臣が言ったとおりで、裁量労働制の方が長いというデータはあるけれども、裁量労働制の方が一般労働者より短いというデータは、現時点では見当たらないわけですよね。

 ですから、私は、何回も皆さんが言っているように、事ここに至っては、やはり、その根拠がもうなくなっているわけですから、裁量労働制の拡大というのは法案から削除すべきだと思うんですが、何度言っても、大臣も総理もそれはしないと言っておられる。

 きょう発表になっている朝日新聞の世論調査というのが手元にありますけれども、これは十七日、十八日の調査ですから、非常に直近ですね。直近の調査ですけれども、この世論調査の中で、このような設問があります。「安倍政権は、「働き方改革」の一つとして、裁量労働制の対象を、法人営業の一部などに広げようとしています。裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた時間を働いたとみなして会社が賃金を支払う制度です。安倍政権は「柔軟な働き方につながる」と説明していますが、野党は「長時間労働を助長する」と批判しています。あなたは、裁量労働制の対象を広げることに、賛成ですか。反対ですか。」この結果ですけれども、賛成一七、反対五八ですよ。その他、答えない二五。これは圧倒的に反対の方が多いんです。

 総理、これを見ても、この今の世論調査の結果、賛成は一七、反対は五八。あべさんがごちゃごちゃ言っていますけれども、黙ってください。今、ちゃんと私、設問を読み上げたじゃないですか。どこがこれにバイアスがかかっているんですか。バイアスがかかっているんだったら、根拠を言ってくださいよ。

 この読み上げた質問に反対と答えた人が五八、賛成は一七しかいないんですよ。これを、総理、どのように受けとめられますか。

安倍内閣総理大臣 これは、どのような受けとめがあったかということも大切なんだろうと思いますが、再三私も答弁をさせていただいておりますように、これはまさに、みずからの裁量で働く時間あるいは出勤時等を決めていくものでありまして、希望した方にのみ適用されるものであるということ、そしてまた、健康確保措置が実施されるということ、そして、新たにこれは見直しを……(大西(健)委員「世論調査をどう思われるかということです」と呼ぶ)いや、見直しをされたということ等は、その世論調査の中にも設問においてそうした言及が、説明がないとなかなか判断も難しいのではないかということを言っている人もいます。これは私の意見ではなくて、そういうことを言っている人もいるということでございます。

 と同時に、みなし労働時間と実労働時間の乖離があれば、しっかりとそれに対して是正がなされるということもあるわけでありまして、既に行われている裁量労働制に対して今申し上げましたような健康確保措置等々がしっかりと措置をされる中において、これは御本人が希望される中において柔軟な働き方が可能になるというものであるということについて、我々もよく、今後、法案を準備そして提出する中において国民の皆様に説明をする必要がある、このように感じた次第でございます。

大西(健)委員 それでは、ちょっとこの問題については最後にしたいと思いますけれども、先ほど来あった労政審の議論なんですけれども、これは第百三回の労政審の労働条件分科会というところで、厚労省の課長が、これは日本再興戦略の中で企画業務型裁量労働制の見直しをやろうということが書かれている、それに当たっては、早急に実態調査、把握、分析をした上でやるんだということが書かれている、その実態調査なるものに当たるのがこの平成二十五年度の労働時間等総合実態調査であるということを説明しているんですね。

 さっきから、何か、比べて出していないからいいんだみたいな話をしているけれども、私は、これは逆じゃないかと。まさに労政審の労働条件分科会では、この調査を分析した上で見直しをしましょうと言っているわけですよ。その分析した上でというのは、まさに裁量労働制、企画業務型裁量労働制を拡大しても労働時間が長時間労働につながったりしないですよねというようなことを分析した上でということを指していて、だから、それをやってないんですよ。だから、やってないんです。やはり私は、これは手続に瑕疵があるというふうに思うんですね。

 それから、課長は、この平成二十五年度労働時間等総合実態調査がそれですと言っているけれども、それじゃないんですよ。それだけを見ただけじゃわからないんです。だから、やはりこれは私、労政審の手続にも瑕疵があるというふうに思っています。

 いずれにしろ、何度も言っていますけれども、多くの国民の皆さんもこれは反対だと言っておられるし、そして、過労死遺族、家族の皆さんも、きのう、本当に涙を流して、これ以上本当に命を粗末にしないでいただきたい、どうしてもやめてほしいというふうに言われているんです。

 これはもう裁量労働制のところを除いてもらえれば、我々は高プロもと思っていますけれども、ほかはいいものも含まれているわけですから、我々も協力しますよ、そこは。長時間労働、罰則つきの上限規制の話だとか、中小企業の割増し賃金率の猶予とか、こういういいこともあるんですから。だから、そこだけしっかり削除してもらえば、これは我々だって協力できるわけですから、ぜひ総理の英断でそれをしていただきたい、このことを重ねて申し上げておきたいと思います。

 残りちょっと、もう十分ぐらいですけれども、連日、ここ数日、ギャンブル依存症とか、あるいはカジノ法案の中身について、いろいろな話が報道等にも出ています。

 そこで、きょうは、小此木国家公安委員長に、このカジノ法案との関連で、パチンコ、パチスロについてちょっとお聞きをしたいんです。

 二月一日からパチンコ、パチスロの出玉規制というのが施行されていますね。例えばパチンコであれば、大当たりのときの出玉数が、従来二千四百個だったのが千五百個に制限をされている、また、標準的な遊技時間というのは四時間と言われているんですけれども、この四時間で獲得できる出玉が発射総数の一・五倍ということで決められているということですけれども、小此木国家公安委員長、この目的は、ギャンブル性を抑えるためにやっているということでしょうか。

小此木国務大臣 今回の規制により、パチンコ遊技における遊技玉数の増減の波がより穏やかになると考えられることから、過度な遊技が抑止され、一定の効果があるものと考えています。(大西(健)委員「何が抑止されるの」と呼ぶ)過度な遊技が抑止され、一定の効果があるものと考えています。

 パチンコへの依存防止対策、出玉規制のみならず、業界において進められている依存問題を抱える人等への相談対応等を含めて、総合的に推進することが肝要であると認識しており、しっかりと取組を進めてまいりたいと思います。

大西(健)委員 今、答弁書を読まれましたけれども、ギャンブル依存症対策という言葉も出てきましたけれども、過度な遊技という言葉がありましたが、過度な遊技とはどういう意味ですか。

小此木国務大臣 射幸心という言葉がありますが、こういったものを抑えるという意味があろうかと思います。

大西(健)委員 ちょっとこのパネルをごらんいただきたいんですけれども、今、遊技という言葉が出てきましたけれども、下の方ですけれども、いわゆる風営法の二条には、「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」ということで、パチンコ店は遊技営業ということで風営法のもとにあるということなんです。

 上が、平成二十六年の衆議院内閣委員会の答弁ですけれども、これは賭博は何で罰せられるかということについて答弁をしている。「刑法上賭博等が犯罪とされておりますのは、賭博行為が、勤労その他の正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、社会の風俗を害する行為として処罰することとされている」と承知しておりますと書いてあります。

 今、大臣、射幸心という言葉を使われましたけれども、まさに賭博罪が、なぜ刑法上罰せられるかといえば、射幸心を助長するからですよね。

 下の、風営法のパチンコも、これは射幸心をそそるおそれのあると書いてありますけれども、いずれも射幸心ですけれども、パチンコはギャンブルじゃないんですか。何が違うんですか。

小此木国務大臣 委員のおっしゃるように、パチンコはギャンブルじゃないかと言う方もこの世の中にはおられると思うんです。そして、射幸心について、あるいは依存することにおいて非常に苦労されている方もおられると思います。

 そこで風営法というものが私はあると思います。パチンコ営業については、おっしゃったように、風営適正化法において、客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業とされています。一方、御指摘の政府参考人の答弁では、今示された内閣委員会での、これは刑法上賭博等が犯罪とされている理由として、賭博行為が射幸心を助長すること等を挙げているものと承知しています。

 パチンコ営業は射幸心をそそるおそれのある営業であって、風営適正化法の規制の範囲内で行われる限り射幸心を助長するに至らないものであると認識をしておりまして、よって、刑法第百八十五条に規定する罪に該当しないものであると承知しています。

大西(健)委員 以前に、我々の同僚議員だった緒方林太郎議員が質問主意書を出して、「射幸心とは、何を意味するのか。」と。これに対する答弁は、「「射幸心」とは、偶然に財産的利益を得ようとする欲心をいう。」というふうになっているんですけれども、射幸心をそそると射幸心を助長、何が違いがあるのか。

 委員の皆様やテレビをごらんの皆様の中にもパチンコで遊んだことがある方は多いと思いますけれども、出玉を景品に交換して、そしてそれをパチンコ屋さんの出入り口付近にある景品交換所というところに行って買い取ってもらうと換金をしてくれるということを経験されたことがあるというふうに思います。

 まさに、今言った射幸心というのは、財産的利益を得ようとする欲心ということで、パチンコであろうが、上の、ギャンブルであろうが、ともに射幸心、まさに財産的利益、そしてもっと言えば、交換してもらえる、景品を景品交換所に持っていけばお金にかえるということでいえば、いずれもこれは金銭的利益を得る欲心、射幸心じゃないんですか。何の違いがあるんですか。

小此木国務大臣 賭博罪に関する助長と風営法のそそるという意味の違いについては、一概には申し上げられないと思いますが、だからこそ、先ほどから申し上げているように、風営適正化法というものがあって、そこで取締りが行われている、違反をしている者についてはしっかりと取締りをするということになっております。

大西(健)委員 では、もう一つお聞きしますけれども、今私が言ったように、出玉を景品にかえて、その景品を景品交換所に持っていけば換金してくれるということを、警察は、政府はこれを認めていますか。認めている、要は、そういうことがあるんだということを承知していますか。

小此木国務大臣 客がパチンコ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、パチンコ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知しています。

大西(健)委員 これも以前は、政府、警察は、知らぬ存ぜぬ、あとは知らない、店の外に出ていったら知らないと言っていたんですけれども、これも公式に質問主意書に対する答弁書の中で、そういうこともあるということを認めているんですね。いわゆる三店方式という、まさに換金できるということを認めているわけです。

 そうすると、先ほど、そそると助長するの違いは一概には言えないとおっしゃったけれども、いずれもお金になるわけですよ。これからカジノをやろうという話ですけれども、カジノに行くとスロットマシンがありますよ。私もラスベガスとかでやったことがありますけれども、やると、あれはコインが出てきますよね、そのままお金が出てくる。チップの場合もありますけれども。でも、パチンコの場合も換金できるわけですよ。パチンコ屋には、パチスロ、パチンコスロットマシンというのがあるんです。これは何が違うんですか。どちらもお金が手に入るわけじゃないですか。何が違うんですか。

小此木国務大臣 我が国で営業することとなるカジノにどのような機械が設置されるかは、現時点では明らかでありません。

 外国の例を仄聞するに、一般にカジノに設置されているスロットマシンは、現金を得るか失うかを争うものであると承知しています。

 他方、パチンコ営業における回胴式遊技機を用いた遊技については、風営適正化法により、現金又は有価証券を賞品として提供することが禁止されるなどしており、こうした規制の範囲内で許可を受けて営まれるパチンコ営業は賭博罪に該当しないと認識しています。

大西(健)委員 先ほども一概に言えないと言いましたけれども、例えばカジノだって、レートの低いスロットマシンから高いスロットマシンまでありますよね。

 パチンコの場合は、玉一つ最大で四円とたしか決まっていますけれども、まさにこれは、先ほど最初に出玉規制をやりましたよねという話をしましたけれども、まさにカジノを入れる、あるいはカジノ法をやる、あるいはギャンブル依存症対策をやる、だから、慌てて今、出玉規制をやって射幸心を抑えにかかっている。

 そそると助長するの境目はわからないわけですから、健康的な、何と言うのかな、まさに遊技、遊びの範囲にパチンコをするのか、それとも、まさに依存症になるような、のめり込んで、もうちょっと突っ込んだらもうかるんじゃないかといって一日じゅうパチンコ屋に座り続けるようなものにするのかというのは、まさにそこにかかっているんだと私は思うんですね。

 もう一つ言えば、いつもカジノの議論を聞いていて私は非常に違和感があるのは、パチンコは、最盛期、三十兆円産業と言われました。二〇一六年のパチンコ、パチスロ売上げの推計値は、約二十一兆六千二百六十億円です。対して日本のカジノ市場は、たとえ日本に十カ所できても二・二兆円という予測なんです。つまり、パチンコの方が十倍大きい市場なんです。しかも、十カ所できたとしても、家のすぐ近くにあるというようなものじゃない。でも、日本じゅう、どこへ行ってもパチンコ屋さんはある。

 このパチンコを、ギャンブルじゃない遊技だと言い続けて、そして結果的にはお金が手に入るということでやっている限り、私は、カジノの方を幾ら議論したって、パチンコの方が野放しになっているんだったら、これは何か非常に議論がいびつだというふうにいつも思うんですね。

 この問題について、ちょっと総理、今、御感想でもいいので、どういうふうに思われますか。パチンコが全く、十倍のパチンコは野放しで、日本じゅうどこにでもあるわけですよ。でも、カジノがもしできても、十カ所できたとしても、自分の住んでいるところにあるかどうかわからない。だから、カジノの方をしっかり議論するのは、規制を議論するのは必要ですけれども、ではパチンコの方は全く野放しなんですかということは、私は非常に議論としていびつな感じがするんですけれども、総理、どのように思われますか。

安倍内閣総理大臣 パチンコについての政府の認識は、小此木大臣から、国家公安委員長から答弁をさせていただいたとおりでございますが、IRにつきましては、これはいわゆるギャンブルとは違うという、総合遊技場でしたっけ、という考え方でございまして、今まさに法案づくりを進めていると承知をしております。(発言する者あり)統合リゾートということで、ちょっと訂正させていただきます。統合リゾートということでございます。

 そこで、いわばギャンブル依存症については、同じ対策が必要ではないかという指摘もあることはよく承知をしております。いずれにしても、そうした依存症になる方たちの対策をしっかりと整えていくことが重要であると考えております。

大西(健)委員 時間が来たから終わりますけれども、まさにギャンブル依存症の多くの問題は、むしろパチンコで家庭不和になったりとか虐待が起きたりとか借金だとかいろいろな問題を引き起こしているわけですから、まさに先ほどの定義でいえば、私は何らほかのギャンブルと変わらないというふうに思いますので、警察庁もそういう問題意識を持っているからこそ出玉規制等を行っていると思うんですが、果たして、ずっとこれが遊技だと言って警察が所管し続けて自分の縄張りにしていること自体も、私は、いかがなものか、この際、ほかのギャンブルとかと一緒にしっかり規制をする必要があるんじゃないかということを申し上げて、私の質問を終わります。

河村委員長 この際、稲富修二君から関連質疑の申出があります。山井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。稲富修二君。

稲富委員 希望の党の稲富でございます。

 きょうは、こういう質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私の質疑に入る前に、先ほど大西委員から、データの件で、二月二日の、調査方法、定義が不明確であることを労働基準局長が認識しながら、五日、大臣が答弁をしている、その間の経緯について、大臣が調べるという御答弁がございました。

 委員長、この経緯について、ぜひ、当委員会に文書で提出をお取り計らいをお願いできないでしょうか。

河村委員長 理事会で協議をさせていただきます。

稲富委員 きょうは、先ほど山井議員、そして大西議員から質問がございましたこの働き方改革のデータについて、私からも質問してまいりたいと思います。

 まず、厚労大臣、もう非常に端的にお伺いをしたいんですが、裁量労働制と一般労働、労働時間はどちらが長いんでしょうか。

加藤国務大臣 先ほども御答弁させていただきましたけれども、JILPTという、そこが調査した結果においては、一般の労働者の方が裁量労働制で働く人よりも労働時間は短い、こういうことでございます、平均値はですね。

稲富委員 JILPTはではなく、先ほどこれは山井さんの質問にも大臣は答えていらっしゃいましたけれども、厚労省としてはどう考えているか、ぜひお示しください。

加藤国務大臣 どう考えているかというのは、まず、データにおいては今申し上げたとおりでございます。

 ただ、個々の労働者、例えば裁量労働を採用しているA社で働いている人と、そして、一般労働の形で働いている、例えばB社で働いている方と比べて、どちらが高いか低いかというのは、これはそれぞれということで、先ほども大西委員と一つのデータをもってお話をさせていただいた、こういうことでございます。

稲富委員 先ほどもありましたけれども、JILPTの中で、それぞれによってそれぞれだというのは当たり前のことでありまして、今議題になっているのは、裁量労働か一般の労働者、どちらが労働時間が長いかということが決定的に大事だという認識に立って質問させていただいております。

 もう一度お答えください。

加藤国務大臣 同じ答弁になって恐縮なんですけれども、裁量労働制になったからすぐ長くなるか、あるいは一般にその方が戻れば短くなるか、こういう問題ではないんだろうというふうに思っています。

 ですから、私ども、それぞれ、裁量労働制においても、もちろん一般の労働制においてもそうですけれども、長時間労働にならないように、特に裁量労働制の場合には、みなしというものと実際の労働時間、こういうのがございますから、その乖離について、それが相当あればそれはしっかり是正していく、こういう対応をとっていきたいと思っております。

稲富委員 けさ、大臣、御答弁の中で、労働時間をしっかり把握することが大切であるという趣旨の御答弁がございました。

 現時点では、全体として、裁量労働そして一般労働、どちらが長いかということは言えないということでしょうか。繰り返しになって恐縮ですが、お答えください。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げておりますけれども、裁量労働制で働いている、そしてそうでない通常の働き方で働いている、それについて平均値をとったものに関しては、先ほど申し上げたJILPTのデータしか今私が承知しているのはございませんから、その平均値においては、一般的に働いている方の方が短い、これはそのとおりであります。

 ただ、実際、ではその制度に入っている方がどうかと個々で見れば、それはそれぞれでありますから、そこは、一般的に働こうがあるいは裁量労働制のもとで働こうが長時間労働にならないように、そういった対応をしっかりとっていかなければならない、こういうことを申し上げております。

稲富委員 先ほど大西議員から御説明がありましたけれども、今回、厚労省が撤回したデータについては、一般労働者の九時間三十七分が不適切であったと。我々は、これは隠蔽ではないか、その疑惑があるということを申し上げていますが、この部分が不適切であったということを、撤回をされました。

 そこで、この二十五年の実態調査の中でも、私は、これ自体は、大臣もお認めですけれども、このデータ自体、そのものが間違っていると言っているわけではない、あくまで、違うものを二つ比べたことが不適切であったということを御答弁されております。したがって、より近いところで比べられないかということでございます。近い条件のもとで比べるということができないかということでございます。

 そうすると、あくまで試算にすぎませんが、一般労働者の一カ月の法定時間外労働の実績は、これは帳票の中で聞いている数字でございます、八時間〇五分というのが出ております。それを、仮にかたく見積もって、一カ月の労働が十五日間というふうにした場合には、八時間〇五分を十五で割って約三十二分ということになります。法定時間が八時間ということになりますと、一カ月、ざっくり言うと、平均で八時間三十二分ということになります。

 あくまでこれは、もちろん、正確かと言われれば、それは十五日間か二十日間か、その方の出勤は違いますので、言えませんが、少なくとも、大臣、私は、この二十五年の実態調査においても、一般労働者が裁量労働者よりも労働時間が少ないということは言えるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 これはもう、私どもが訂正して、適切じゃないということで撤回をし、おわびをしていることにつながるんですけれども、それぞれの、上の方の裁量労働制と一般労働者においては抽出、選び方が違いますので、選び方が違うデータをそこから先どう加工しても、なかなか比較するのは難しいのではないかな、こういうふうに思っております。

 ただ、先ほど申し上げておりますように、このデータというよりも、JILPTのデータがあるということは私どもは承知しております。

稲富委員 だったら、何のためにこれをとったんですかね、このデータ。要するに、比較することに不適切だということであれば、一体、これは何のためにこのデータをとったのかということになります。

 もう一度御答弁いただけないでしょうか。

加藤国務大臣 まず一つは、一般労働者において労働時間がどうなっているか。これはいわゆる長時間労働、長時間是正の議論ということでございます。それから、裁量労働制の方は裁量労働者としての実態を把握するということで、それぞれ目的が違うといいますか、狙いが違う。どう言っていいか、ちょっとあれですけれども、そういった意味で、扱い方が違っている、そういうことでございます。

稲富委員 そうしますと、やはり、裁量労働、そして一般労働、労働時間がどちらが長くなるか、現時点ではわからない、現時点ではそれがどちらかはわからないというのが結論ということでよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 わかる、わからないではなくて、それぞれの制度の中で、具体的にどうなるかというのは、まさにその企業における、あるいはその方の働き方、それにかかってくるわけでありますから、そういった意味で、それぞれの制度の中において適切に運営していくようにしていく、そのことが肝要だと思います。

稲富委員 済みません、そうなると、今、この働き方改革の中で、裁量労働制の枠を広げようとしているわけですよね。でも、それぞれがそれぞれによって場合が変わると言われれば、労働時間の短縮ということが働き方改革の大きな柱じゃないんでしょうか。にもかかわらず、それぞれ、それぞれによってわからないということであれば、そもそも、この働き方改革の柱であった労働時間の短縮という、その目的には資することがないんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 働き方改革の目的は、多様な働き方が選択できるようにしていくということであります。

 そして、長時間労働の是正。これは、フルタイムで働く方については、どうしてもフルタイムでいけば長時間労働になりがちだ、そうすると、本当はフルタイムで働きたいんだけれども、残業まで考えるととても自分の制約条件の中では選択できない、したがって、長時間労働を是正することによってフルタイムというものも選択肢の中に入れていく、それでもっと多様性が広がるということでありますし、また、高プロであり裁量労働制も、自律的に物事をしていきたい、そういう希望を持っている方に対する働き方を提供しようということでございます。

稲富委員 長時間労働の是正ということが大きくこの基本的な考え方のところにございます。それは、ここにありますけれども、健康確保だけではなく、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因になっているということで、どうやってこれを抑制するかということですよね。

 そうすると、繰り返しになって恐縮ですけれども、裁量労働になったら労働時間がふえるかどうかわからないということであれば、これは、制度として本当に広げていいかどうかというのは、一般労働者の方が判断できないんじゃないでしょうか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げていますように、これは、自律的に創造的に働く、またそういった事業を対象にするわけでありますが、そういうことで自分の時間を裁量的に使うことになれば、例えば子供を迎えに行く時間を自分でつくってみたりとか、そういったこともできるようになる。そうすると、まさにワーク・ライフ・バランスということにも資する、そしてそれは子育てにも資するのではないかな、こう思います。

稲富委員 そうすると、実態調査をという話が先ほど来、委員からもたくさん御意見がございます。やはり客観的なデータがどうしてもないとこれは判断できないと思うんですよね。

 例えば、ある労働者が、裁量労働制になったらどれぐらいの労働時間、あるいは広がるかわからないということで、どうやって判断すればいいのかということは、客観的に、今あるのはJILPTと今のこの二十五年実態調査だけであるということであれば、これはいいか悪いか判断のしようがないと思うんですけれども。

 何度も同じことで恐縮ですけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 ちょっと議論がかみ合わなくて大変申しわけないんですけれども。

 これを議論するときには、もちろん、私どもが調べたデータも含めて、労政審において議論をいただきました。そして、おおむね妥当ということで、今、法案を提出すべく作業を進めさせていただいております。

 ただ、その上で、長時間労働を助長するのではないかという懸念、これは労働委員側からもお示しをいただいておりますから、そうならないような措置も入れさせていただいておりますし、実際の、仮にこうした制度が導入された場合においては、そうならないように監督指導等をしっかりやっていきたい、こう思っています。

稲富委員 総理、これはやはり、拡大した場合にどういう働き方になって、どういう労働時間になるか、長時間になるのではないかという不安は、実はたくさんございます。それに対して、客観的な実態調査、これは私、やはり必要だというふうに思うんですけれども、総理、御見解はいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この裁量労働制度は、これは柔軟な働き方が可能になる、いわば選択肢をふやすというのがまず第一点であります。そしてそれは、人々がそういうニーズを持っているという現実があるわけでありまして、そういうニーズに対応して、より柔軟な働き方を可能にしようということでもあります。

 その中において、裁量労働制度については、一定の知識経験を有して働く方本人に、会社が決めた一律九時―五時という定時に縛られることなく出勤、退勤時間を自由に決めていただき、それはいわば働く方が自由に決めていただき、働く方が希望し、そして柔軟な働き方をするというのがまず基本であります。

 その基本の中で、しかし、現実の実態、今ある制度の中でさまざまな課題、指摘があるのは事実でありますから、拡大するに当たって、健康確保の措置をとる、あるいは、みなし労働時間と実労働時間に乖離がある場合はしっかりと是正をさせる等々の新たな規則を入れていこうということでございまして、そういう中において、より効率的な、あるいは御本人が望んだ働き方を可能にしていこうというものであります。

 と同時に、どちらが長いか短いかという議論がありました。それはまた厚労大臣と御議論をいただいた、こう思いますが、これはやはり、業種業種、あるいは御本人御本人によっても、それぞれのケースで見ていく必要もあるということではないか、このように思うわけでありますが、いずれにいたしましても、我々は、多様な働き方を可能にするこの仕組みを、健康確保措置をしっかりと入れ込みながら法案を準備していきたい、こう思っているところでございます。

稲富委員 時間が少なくなりましたので、財務大臣、通告をしている件でお願いします。

 佐川長官、きょうもお越しいただけなかったんですけれども、きょうは国税庁長官はどちらにいらっしゃるんでしょうか。(麻生国務大臣「きょうですか」と呼ぶ)十六日でも結構です。

麻生国務大臣 十六日、盛岡税務署、岩手県の盛岡市、大船渡税務署、これは岩手県大船渡市、及び仙台北、仙台中、仙台南の各署による合同会場、これは宮城県の仙台市にあるんだと思いますが、そこに訪れておりますので、国税局等々の職員等々との意見交換を行ったと聞いております。

稲富委員 十六日の財金の委員会においても御質問がありましたけれども、この国税庁長官の件で、今、確定申告が始まり、さまざまな御議論がございます。

 財務大臣は、その任にたえ得るという御判断をずっとこの委員会でもおっしゃっておりますけれども、その見解は変わりないでしょうか。

麻生国務大臣 今まで申し上げてきたとおりです。

稲富委員 国税庁のレポートというのがございまして、その中に国税庁の使命というものが書いてあります。その中に、納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する、あるいは行動規範の中で、任務に当たっての行動規範ということで、税務行政の透明性の確保に努める、あるいは職員規範で、納税者に対して誠実に対応する等々ございます。

 私、当委員会でも、実は税に関しては何度も大臣にも御質問させていただきました。やはり納税意欲が湧くような国にしなければ、国の根幹は私は揺らぐのではないかというふうに思います。

 その意味で、これは総理、ぜひ御答弁いただきたいんですけれども、この国税庁長官人事についてお考えいただけないかということでございますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 国税庁長官の人事については、所管の大臣から答弁させます。

麻生国務大臣 佐川の件につきまして、たびたび私も答弁をさせていただいておりますけれども、大阪国税局長、また国税庁の次長等々のこれまでの識見、また本庁の主税局の審議官等々の経験を見ましても、それまでのあれをずっと見ました関係を調べてみましても、極めて有能だと思っております。

稲富委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

河村委員長 これにて山井君、大西君、稲富君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 きのうに引き続きまして、きょうは総理に、裁量労働制にかかわるデータの不適切な実態というものについて質問をさせていただきたいと思います。

 そもそも、皆さん、裁量労働制というのは、どんなに長く働いても一定の賃金しかもらえない、だから労働時間が長くなるんじゃないかと我々も、そして多くの皆さんも指摘してきました。

 しかし、このことについて、厚労省の実態調査の結果は、総理の答弁でも、裁量労働制で働く人の方が、一般の労働者の平均的な方の労働時間よりも本来長いと思われる裁量労働制の労働者の方が労働時間が短いという、我々の予測と全く違う結論が総理の答弁からも発せられた。おかしいおかしいと、一月二十九日の予算委員会でこの発言がされ、二週間以上、我々は議論してきました。

 そして、きのうの朝、厚労省から、この調査結果についての報告書が出ました。四枚のペーパーから成りますけれども、そのうちの一枚の文書を見て、我々も一目瞭然で、ああ、こういうわけだったんだと謎が解けたんです。その文書が、この調査票なるものですね。

 要は、厚労省の実態調査で、労働基準監督官がどうやって事業主に労働時間の実態を調べる質問をしたか。ここにありますように、国民の皆さんもごらんいただくと一目瞭然だと思います。一般労働者については最長の時間ですよ。一般労働者については、一日の最長の時間は何時間何分ですかと聞いている。裁量労働制については、これは平均的な者の状況ということで、普通の時間だけ聞いている。

 ああ、それだったら、一般労働者は最も長い一日の労働時間を聞いているわけですから、法定外労働時間を聞いているわけですから、それは長くなるよねと。もともと聞き方も二つ違うわけですから、これを比較するなんてことは、これはあってはならないよねと。この調査票を一枚見ただけで、我々国会議員、今までなぜだなぜだと思っていたけれども、きのうの朝、一気にこの疑問が解けたんです。それほどこの調査票というものはわかりやすくて、そして重大で、決定的な文書だったわけですよ。

 そこで、じゃ、この文書自体を厚労省の皆様がいつ知ったかと聞いたら、担当課長は二月一日だ、局長は二月二日だ、そしてきのうの議論で、加藤大臣は二月七日の時点でこの文書を見たと。これはもう国民の皆さんはわかりますね、これを見た瞬間に、ああ、比べちゃいけない、最長の者の一般労働者の法定外労働時間を聞いているわけですから。

 さあ、ここで総理にお聞きしますけれども、総理、この文書、調査票を総理がごらんになられたのは何月何日ですか。

安倍内閣総理大臣 厚生労働省の調査に関する精査の状況については、十六日夕方に、調査手法の確認、当時調査に携わっていた労働基準監督官等からのヒアリングなどを行っている、一般労働者と裁量労働制のおのおのの調査の仕方に違いがあるようだ、更に確認を行って、週末に予算委員会さらに理事会への報告資料を取りまとめる旨の報告がありました。これは十六日の夕方であります。

 その上で、十八日の夜に、理事会に提出される資料の報告があり、一般労働者と裁量労働制で調査の仕方が異なっていて、性格が異なる数値を比較していたことを知ったということでございます。

黒岩委員 総理、確認しますけれども、十八日の夜までは、この調査票、総理は知らなかったんですね。

安倍内閣総理大臣 そもそも、その調査票は見たこともございませんでした。

黒岩委員 びっくりしました。一般の国民の皆さんでも我々議員でも、このペーパーさえ見れば、この調査結果の摩訶不思議な結論や、そしてずさんなデータというものがなぜつくられたのかというのが一目でわかる。これが、七日に加藤大臣が知ってから十一日間、総理に知らされていなかったということですよ。

 総理、総理は一月二十九日に、このデータについて、裁量労働制の労働者の方が一般労働者の平均な方よりも労働時間が短いというデータもあるとおっしゃって、その後議論がありながら、二月十四日に撤回する前の二月十三日の時点でも、総理は、全く同じ答弁をして、修正をすることもない、ましてや否定をすることもない。

 ということは、総理、そのときは、加藤大臣も労働基準局長も、また厚労省の皆さんもみんな、総理以外誰もがこの調査票、すなわちこのデータが不適切どころか捏造に近いということがもうわかっている。裁量労働制の方が短いという結論は導き出せないということは少なくともわかっている。みんなわかっている中で総理だけ知らなかったんですよ。それで総理は答弁させられたのですよ。

 総理、この尋常ならぬ状況をどうお考えですか。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 いずれにしても、最終的に答弁を行うのは私でございますから、私自身に責任があるわけでございますので、答弁自体を撤回させていただいたところでございますが、十三日の時点においては、厚生労働省の調査について、厚生労働大臣が精査をしておりということでありまして、その旨答弁しているとの報告を受けたところでございます。

 その中におきまして、十四日でしたか、精査がずっと続いているという中において答弁をした、その答弁については撤回をさせていただいたところでございます。しかし、その段階においては、その調査票等も含めて、まだ私に対しての報告はなかったということでございます。

黒岩委員 この重要な、一目瞭然のたった一枚のペーパーが担当大臣から総理に上がるのに十一日間もかかっている。それも、ただの事案じゃありませんよ。この目玉法案と言われる働き方改革で、そして大きな柱の裁量労働制について、予算委員会でこれだけ疑義を招いている、この内容について。

 本来、加藤大臣、当然役所として、組織として、何かトラブルが起これば、まずわかったことを迅速に上司に上げる。もっと言えば、きのうも申し上げましたけれども、ここは予算委員会という、我々の後ろには国民の皆さんもいるわけですから、行政府の長として国民の皆様に事実をしっかりと述べる。自分の知った事実は、ここにある一目瞭然の事実を述べるのは大臣の役目じゃないですか。だから私は申し上げた。

 二月八日以降、再三再四、二月の十五日まで、加藤大臣にこのデータについて質問が飛んでも、加藤大臣は、この調査票については一切触れなかった。もうわかっていることを明らかに隠蔽しながら、私たち国会議員や国民の皆様に知らせなかった。この責任についてどうお考えですか。

加藤国務大臣 きのうも委員と御議論させていただいたところでありますけれども、委員はそれを見たら一目瞭然ということなのかもしれませんが、下の方に書いてあるのは平均的な者の状況ということでありますから、じゃ、その状況をどういう形で把握しているのか、これがわからなかった。上は明らかに一番長い一日であり、週である、それは確かにおっしゃるとおりでありますが、下がどういうふうになっているかわからなかった。そういうことで、精査をするということを申し上げ、それは総理も、精査をしているということは御認識をいただいていたというふうに思います。

 それから以降、正直、それだけ何で時間がかかったんだという御指摘等があるかもしれませんが、私としても、そもそも比較ということが今委員御指摘のようにありましたから、じゃ、それぞれがどういう形で選ばれていたのか、選んでいたのか、それをはっきり御説明することが必要だということで、まず精査をさせていただきますということを申し上げ、そして精査結果を、いろいろなことがわかってきたので、きのうの予算委員会の理事会で御報告をさせていただいたということでございます。

黒岩委員 非常にわかりづらい答弁をお聞きしていますけれども、国民の皆さんに判断してもらいましょうよ。今ここでごらんになっている、テレビの前でごらんになっている方、これを一枚見れば、最長の者と平均の者を比べて、それは一般労働者の方が労働時間が長いのは当たり前だよねと、これは誰もがわかることなんですよ。

 やはり、加藤大臣、もうちょっと誠実に国民と向かい合っていただきたい。決定的にわかったことについては、つまびらかに、迅速に国民に知らせていただかなければならない。

 そこで、時間に制約がありますので、総理、重ねてお聞きしますけれども、総理は、二月十四日に本委員会において御自分の答弁を撤回されましたよね。十三日までは全く、この裁量労働制の労働者の方が短いという答弁は修正もしていませんでしたけれども、十四日に撤回をした。

 決定的に撤回したのは、何を知り得たから、何で撤回したのか、国民にわかりやすく説明してください。

安倍内閣総理大臣 十三日の質疑については、私もこの質疑を聞いていたわけでございます。その上で、二月の十四日の朝に、厚生労働省が引き続き精査が必要であると言っている報告を聞いたわけでございます。

 一月二十九日の答弁は、引き続き精査が必要なデータをもとに行ったものであったため、撤回し、おわびを申し上げたわけでございます。いわば、十四日の朝になった段階においてもまだ精査が必要だということでございまして、そうであるならば撤回をしようという判断をしたところでございます。

黒岩委員 私が申し上げたいのは、総理、総理の言葉というのは重いわけですよ。予算委員会の答弁というのは限りなく重いんですよ。それを撤回するときに、誤りだとか、何か新たな事実がしっかりと伝えられずに、そんなに軽々と答弁というのは撤回できるものなんですか。

 いやいや、総理、総理。総理は自分の責任で撤回したと言ったじゃないですか。

加藤国務大臣 まず最初に私の方から、こうしたデータをお示ししたこと、答弁を撤回をさせていただきますと申し上げましたが、今お話がありました十三日の委員会においても、それぞれ野党の皆さんから、とりあえず、精査するのなら一回白紙に戻せ、こういう強い御主張もございました。そして、与党の方からもそういう御指摘もいただきました。

 したがって、大変その精査に時間がかかっていること、我々は大変申しわけなく思っているわけでありますけれども、そういうものであるならば、そこで撤回をさせていただいた、こういう経緯であります。

黒岩委員 総理、御自分の責任で答弁を撤回するとまでおっしゃられました。

 そもそも、このデータについて一月二十九日に答弁するときも、これも厚労省からの説明があったから自分はこう答弁したと。そして、きょうの話でも、厚労省から精査中だから撤回しろと言われて撤回したと。これでは役所の言いなりで、単に発言するだけの、そんな存在になってしまうじゃないですか。

 総理の御判断として責任を持ってというんだったら、自分の答弁の撤回という重い判断をされた、このことについて国民にわかるように説明してくださいよ。

安倍内閣総理大臣 もう何回も答弁をさせていただいているんですが、最初の私の答弁については、厚労省から、調査結果も含めてこの応答要領が来ておりました。これについては、基本的に、役所から資料、調査結果、データ等が来れば、それを一々、もう一回これを再調査しろとか言うことというのはあり得ないわけでありまして、これはまさに答弁をする直前の朝の中で、一つの答弁については一分か二分、せいぜい一分ぐらいしか時間をかけて議論ができないわけでございますから、当然、それはそのまま答弁をしたところでございます。

 しかし、その後のやりとりを見ていて、いわばさまざまな議論の中で調査を精査しなければならないという状況になった中においては、先ほど私は答弁しましたよね、これは私が答弁したことですから、私が判断して、撤回をするという判断を私がしたわけでありまして、厚労省から撤回してくれと言われたわけではなくて、私が撤回をするという判断をし、その日のうちに撤回をし、おわびを申し上げたところでございます。

黒岩委員 総理、やはり何事も事実に基づいて、予算委員会でも審議はしなきゃいけませんし、政策立案もしなければいけません。総理も、事実に基づいてこの調査結果について一月二十九日に答弁された、そういう認識だと思っています。

 ですから、撤回するにしたって、決定的な事実がなければそう簡単に総理の重い言葉というのは覆せないんですよ。

 そして、これは総理の言葉だけじゃありません。結局は、きょうまでの議論の中で、加藤厚労大臣を始め、塩崎大臣からの三年間、厚労大臣の発言自体も、この裁量労働制の実態調査については撤回すると。すさまじいことが起こっているわけですよ。

 私は、こんな状況で、この不適切データというこの背景には、総理に全く情報も上がらない、そして、この出発点である調査自体が明らかに誤っていた。このことがつまびらかになったわけですから、これは明らかに調査をし直して法案を出し直す、この点を私はつとに総理に申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

河村委員長 この際、金子恵美君から関連質疑の申出があります。黒岩君の持ち時間の範囲内でこれを許します。金子恵美君。

金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。

 地元に戻りまして各地を回らせていただきますと、やはり国民の皆様の抱えている課題というのは、医療、介護、福祉という、生きるための本当に大きな課題であるということを感じます。

 週末、私の地元の南相馬に入りまして、そこで障害者団体の方々と懇談をさせていただきました。当事者の方々、そして当事者の方々を支える福祉事業所の方々、そしてまた大切な子供を置いて死ねないというふうに訴えられた親御さん、本当に大切な、貴重な意見をお伺いさせていただきました。

 その中で、やはりお訴えされていることは、例えば、当事者の方々であれば移動支援をお願いしたいということであったり、そしてまた、さらには、職員の皆様からすると、なかなか職員を確保することができない、そういう状況であったりということで、これは障害者福祉だけではなく、介護という分野でも同じだというふうに思っております。

 ほかの自治体に移動しまして、そこで社会福祉協議会からの情報等も聞きました。やはり登録ヘルパーさんが大変少なくなっている、あるいは高齢化ということで次の世代の方々の人材確保というのがどうしてもできにくい、そういう情報もいただいてきました。

 きょうは、限られた時間でありますので、介護の問題を取り上げさせていただきたいと思いますが、二〇一四年の介護保険制度改正、介護保険法改正ですね、平成二十六年でありますが、それまでの全国一律の介護予防給付から、地域の実情に合わせて自治体が運営する地域支援事業の中の介護予防・日常生活支援総合事業へと移行されてまいりました。

 特に、介護予防給付。訪問介護、通所介護から、これは要支援の方々のサービスでありますけれども、これが自治体の裁量で事業を展開する地域支援事業に移行され、そしてそれが新しい介護予防・日常生活支援総合事業というふうになっています。

 総合事業の中では、例えば生活支援サービス等がありますけれども、それは住民のボランティアといった多様な担い手というものも期待できるというようなことで今までは御説明がありました。そして一方では、やはりリハビリや介護予防のためのトレーニングとか認知症の利用者のケアなど、重度化を予防するためには、介護専門職の提供するサービスも当然不可欠であるということです。

 こちらにあります訪問型サービス、通所型サービス、特に専門的なそういう知識というものが重要になってくるということで専門家がやはり必要になってくるわけなんですが、報道によりますと、お手元に配らせていただいています新聞記事をごらんいただきたいというふうに思うんですが、そちらの方で、財政状況の厳しい自治体が従前の単価より安い単価を設定し、それを原因として事業者が撤退している、そういう事態が起こっているのではないか、そういう記事が掲載されております。

 共同通信社が独自に調査をされたということでありますが、昨年六月から九月に全国自治体に軽度介護サービスについてアンケートをしたところ、三百自治体が担い手不足などで運営不安を感じていると回答した、その後、昨年末から年明けにかけて個別に取材した結果、百九の自治体で業者を十分に確保できないというふうに言っているわけですね。

 この調査についての御所見を総理にお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今、一部の大手事業者が総合事業のサービス事業を廃止する動きがあるとは、報道は承知をしております。

 現在、私どもも、事業者の動向等について、関係省庁に対し照会を行っております。

 現段階で回答があったところ、これは本年一月時点でありますけれども、総合事業のサービス事業者としてのみなし指定を更新しない意向、いわば廃止するということでありますが、事業所があると回答した市町村は二百五十市町村でございます。

 なお、サービス事業を廃止しようとする場合には、利用者が継続してサービスを受けられるよう、他の事業者等の関係者との連絡調整等を行う義務が課せられているわけでありますが、このうち、サービスの継続について調整を要する利用者がいると回答がされている市町村は約五十市町村、こういうふうになっているところでございます。

金子(恵)委員 総理に御所見を伺いたかったんですね。この記事のような形で、実際に厳しい状況があるということでありますけれども、それについてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

 この改正が行われる平成二十六年の段階で、実は、とても重要な法案だということで、総理は厚生労働委員会でも御答弁されているんですね。そのときに、「多様なニーズを持つ要支援の方々に対して、よりふさわしいサービスを提供していくことができるものと考えています。 実施に当たっては、こうした改正の意義や効果を国民の皆様にしっかりと丁寧に説明しながら不安を払拭していきたい、このように考えております。」というように、間違いなくこの仕組み、新たな仕組みが機能すると安倍総理は答弁されている。ただ、実際には、残念なことに、この調査を見るように、いろいろな課題がまだまだあるということなわけですね。

 御所見を伺います。

安倍内閣総理大臣 この総合事業は、介護保険の地域支援事業として、市町村が地域の実情に応じて多様なサービス提供を行うものでありまして、地域包括ケアシステムにおける生活支援や介護予防のサービスを充実させていく上で必要な取組であると考えています。

 今後とも、国民一人一人が状態に応じた適切な介護を受けられるように、優良事例等のノウハウの横展開を進めるなど、市町村における取組を更に支援してまいりたいと思います。

金子(恵)委員 では、具体的にどのように支援をされるのか、お伺いします。

加藤国務大臣 市町村に対して、事業者が適切な対応をとるよう指導を徹底していく、また、都道府県に対し、総合事業が円滑に実施されるよう市町村に対する支援を依頼するなど、利用者が必要とするサービスを継続的に受けられるよう必要な対応を講じていきたいというふうに思っております。

 それから、移行が、二十九年度から全員で、二十七年度から先行実施している自治体がございます。そうした二十七年、二十八年から先行実施した自治体について、調査を昨年度いたしましたが、その調査によると、総合事業への移行の前後で比較して、総合事業への移行を前に予防給付を実施していた事業所数に対して、総合事業を実施する事業所数は約二五%増加しているということもございます。

 ぜひ、そうした流れで、しかも、これは多様な形で、そこにありますけれども、さまざまな多様性を期待しているわけでありますので、そういった地域地域の実情に応じて多様な形で今回の総合事業が展開していけるように、我々もサポートしていきたいと思っています。

金子(恵)委員 多様なサービスを提供する人材はどなたになりますか。

加藤国務大臣 もちろん、いろいろ資格を持っている方もいらっしゃいますし、さまざまなボランティアの形で支援をする方もいらっしゃるわけであります。

金子(恵)委員 この問題というのは、介護費を削減するために住民の方々あるいはボランティアの方々に頼っていく、そして、その方々を活用し、もしかすると十分にサービスが提供できない結果となっていく可能性もある。

 本来、やはり介護というのは予防という部分がとても重要です。要支援一、二の方々、介護度が低いということで軽度者というふうなことで呼ばれていますけれども、そういう方々でさえ、一つ間違えば、あるいはきちんとしたケアというものを受けることができないことによって、介護度が上がっていくという可能性があるわけです。

 だからこそ、当然のことながら、多様なサービスの担い手であるボランティアの方々に対しても、ある一定の知識というものも持っていただきながらもお手伝いをいただくということになっていくのだというふうに私は理解をしています。しかし、それが本当にきちんとできているのかどうかということが課題になっていくということが一つ。

 そして、先ほども申し上げました訪問型あるいは通所型サービス、この部分については、本当に専門性の高い方々にしっかりとお願いしていくということになっていきますが、ここは実は、やはり人が足りないという状況にあるというふうに思うんです。そこについて、どのようなお考えをお持ちですか。

加藤国務大臣 介護人材の確保、そしてその処遇改善ということの御指摘だというふうに思います。

 まず、私ども、介護離職ゼロの実現に向けて、二〇二〇年度初頭までに、五十万人分の介護の受皿を整備していく必要があると思っております。その目標に向かって、処遇改善や参入促進に取り組むなど介護人材の確保への取組を強化していきたいと思っておりまして、介護人材の処遇改善については、既に自公政権で月額四万七千円の改善を行い、リーダー級の職員の皆さんを対象に更に八万円相当の給与増を行えるような処遇改善を新しい経済政策パッケージに盛り込んでおりますので、それを実現し、他産業との賃金格差の是正を図っていきたいと思っております。

 また、あわせて、一旦離職された方が再び介護の仕事につく場合の再就職準備金の貸付け、また、介護福祉士を目指す学生への返済免除つきの奨学金制度による就業促進、さらには、IC、介護ロボットを活用した生産性向上の推進による業務負担の軽減や職場環境の改善による離職防止、こういったことにも取り組んで、介護人材の確保、また、そこで働く方々が働きやすい環境をつくるべく努力をしていきたいと思っています。

金子(恵)委員 今、介護人材確保のために、勤続年数十年以上の介護福祉士の方々に対して八万円という話があったわけなんですけれども、実際に大臣は介護職員の方々の勤続年数の平均というのは御存じですか。余りこの委員会で数字のことを言うべきではないかもしれませんけれども、厚生労働省も調べていらっしゃると思いますね。

加藤国務大臣 介護職員の方の賃金の水準という御指摘……(金子(恵)委員「勤続年数」と呼ぶ)勤続年数、失礼をいたしました。

 介護福祉士について申し上げれば、十年以上勤めている方は約三〇%というふうに認識しています。

金子(恵)委員 三〇%が多いか少ないかという話なんですけれども、ただ、勤続年数の平均でいいますと、実は、ホームヘルパーさんは六・三年、そして福祉施設介護員六・三年、ケアマネジャーさん八・六年ということで、十年に到達しないわけですよ。

 多くの方々は、例えば勤続年数十年以上の介護福祉士で月額八万円相当いただけるという話になっても、そこに到達するまでにやはり処遇改善をしっかりとやっていかないと続かないということだというふうに思うんですね。その件について、いかがですか。

加藤国務大臣 今の御指摘は、初任の給与のお話もあるんだろうと思います。

 それから、やはり、長く続かない理由、いろいろあると思いますけれども、一つは、将来の賃金体系が上がっていかない、こういったこともあるんだろうと思いますから、そういった意味で、今申し上げた政策パッケージの中において十年以上について八万円というこの制度をうまく活用して、一定勤めればそれだけの給与をもらうことができる、こういったことによって長く勤めていただく、こういう環境にもつながるのではないかと思います。

金子(恵)委員 時間がないものですから、お伺いさせていただくんですが、資料二をごらんいただきまして、ちょうど傍線を引いてあるところなんですけれども、このように書かれています。

 ちょっと読んでいただいて、「制度改革に関わった財務省幹部は「軽度の介護なら、住民主体による助け合い事業に置き換えても十分カバーできると思った」と振り返る。」ということで、先ほども申し上げました要支援一、二の方々の介護予防・日常生活支援総合事業に移行したことによっての課題についておっしゃっているんですね。

 財務大臣、このことについてどう思いますか。

麻生国務大臣 要支援者に対するいわゆる訪問介護、通所介護につきましては、これは平成二十六年度の介護保険法の改正で、地域支援事業の対象として、市町村が必要なサービスというものを、国じゃなくて地域の実情に応じて提供できる仕組みというものに見直させていただいたところです。

 この地域支援事業の実施に当たっては、これは御存じのように、ボランティアなど住民主体によるサービスのほかに、専門的なサービスが特に必要という人たちもおられますので、指定された事業者によるサービスを実施することができるようになっております。

 いずれにしても、この地域支援事業というのは、要支援者の方々を介護保険の対象外とするものではなくて、市町村における適切なサービスの提供が確保されるよう、国というか厚労省としても介護保険制度の枠組みの中でしっかりと指導するということになっておりますので、支援していくものと考えております。

金子(恵)委員 時間が参りましたから終わらなければいけないんですけれども、ここでの問題意識というのは、介護費をいかに削減していくかという財務省の考え方によってこの仕組みがつくられた、しかし、やはり機能していない、そういう問題意識を持っている財務省の幹部の方もいるからこのような報道がされるということだと思うんです。

 私は、政治というのは人をまず中心に考えていくものであるというふうに思いますし、そして、やはり今政府がやらなくてはいけないことは、今、少子高齢社会のこの中で、いかに私たちが本当に国民をしっかりと守っていけるか、そういう仕組みづくりをしていくかということです。

 介護難民が出てはいけない。介護難民が出るというこの問題は、現実味を本当に帯びている問題になってきています。ぜひしっかりと取組をしていただきたいということをお願いしまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

河村委員長 これにて黒岩君、金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本題に入る前に、本日八時四十分ごろ、青森県三沢市にある米軍三沢基地を離陸した直後の米空軍三五戦闘航空団所属F16戦闘機のエンジン部分から出火し、燃料タンク二本を上空から東北町小川原湖に投棄いたしました。きょうは、約百人がシジミ漁に出ていたといいます。

 これまでもF16は、緊急着陸や墜落事故、模擬弾や実弾投下も繰り返されてきました。シジミ漁やワカサギ漁が盛んな小川原湖は米軍の訓練場ではありません。再発防止という言葉は我々何度も聞いてきた言葉であります。徹底した調査、解明を行い、住民を脅かす訓練はやめるべきであります。

 総理、一言お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 本日午前、米空軍三沢基地所属のF16戦闘機が離陸直後、エンジントラブルが発生し、同基地に着陸する際に、燃料タンク二本を当基地北側に所在する小川原湖に投棄したとの報告を受けています。

 政府としては、発生後直ちに米側に対して、安全管理の徹底と原因究明、再発防止について申し入れたところであります。

 在日米軍は日米安全保障条約の目的を達成するため必要な訓練を行っているところでありますが、日々の訓練を含め、米軍の運用に当たっては、地域住民の方々の安全確保は大前提であります。

 政府としては、引き続き米側に対して、安全管理の徹底と原因究明、再発防止について強く求めてまいります。安全の確保については、最優先の課題として日米で協力して取り組んでまいります。

高橋(千)委員 再発防止の言葉だけでは絶対にだめであります。

 私たちは、もう何十年もF16撤去を求めてきました。だけれども、それだけではなくて、やはり一つ一つの事象、墜落なりトラブルなりが起こるたびに、それに厳しく対峙することがそのためのプロセスだと思ってきたからです。

 逆に言えば、それに対して、常に米軍のよき理解者であり、調査がまだ解明されていないうちに、沖縄がそうでありますけれども、飛行再開をしてしまった、そういうことが積み重なってきているからこそ、米軍との関係が曖昧になり基地の強化を許してきた、そう言わなければならないと思います。今度のことでも厳しく対処していただきたい。重ねて指摘をして、本題に入りたいと思います。

 総理は施政方針演説で、働き方改革を断行しますと強調されました。戦後の労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革であると、答弁でも繰り返し強調されています。

 労基法は、昭和二十二年、一九四七年四月七日、日本国憲法第二十七条の勤労権を保障するものとして具体化、制定されました。第一条には「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、こうあります。

 まず、加藤大臣に伺います。

 この第一条は七十年間変わっておりませんが、まさかこの一条を変えることはないですね。一言で。

加藤国務大臣 御指摘のとおり、労働基準法第一条第一項は労働条件の原則を定めており、働き方改革において、また今回の法案の議論においてこの原則を変えることは考えておりません。

高橋(千)委員 では次に、総理に伺います。

 今、変えないと答弁がございました。第一条の二項には「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」とあります。

 働き方改革法案は、人たるに値する生活を保障するために労働条件を向上させるものだと言えるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 働き方改革は、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するための、労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革であります。

 働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、子育て、介護などさまざまな事情を抱える方々が意欲を持って働くことができる社会に変えていきます。こうした社会を実現するためには、労働時間法制の見直しが急務であります。

 これを実現するための働き方改革関連法案は、史上初の罰則つきの時間外労働の上限規制、そして中小企業の割増し賃金率の向上、年次有給休暇の取得促進、健康確保措置を講じつつ、高度プロフェッショナル制度の導入、裁量労働制見直しを行うこと、同一労働同一賃金を進めることなど、労働基準法第一条に規定されている労働条件の原則の考え方に沿うものであり、労働条件を向上させるものと考えております。

高橋(千)委員 総理からも、この第一条の趣旨は変わらないんだと答弁がありました。七十年ぶりの大改革であるけれども、ここは変えないんだと。なのに、どうして、今出されている法案は全く真逆じゃないか、こう言わなければならないと思います。

 罰則つきの上限規制が必要だと、私たちはずっと言ってきました。でも、その上限の中身が違います。過労死ラインを認めるものです。こんなものを、本当にこの趣旨に合っているなんて言えるはずがありません。

 まず、きょうずっと質問されておりますが、過労死が今もふえ続けているこの状況を変えることが前提のはずなのに、裁量労働制の方の労働時間は一般の方より短いとする総理の答弁を本委員会で撤回するという残念なことが起きました。

 今国会に上程を準備している働き方改革法案では、企画業務型裁量労働の対象を拡大するということで、野党からは、長時間労働になるのではないか、時間の把握が難しいから労災が決まりにくい、そういう指摘を繰り返し受けたものだから、何とか苦し紛れにつくったのではないでしょうか。

 裁量労働制の労働者が一般労働者より労働時間が長いという傾向は、もう既に何度も議論されているように、独法の労働政策研究・研修機構の二〇一四年の調査でも明白です。なのに、わずかでもいいから、結果として二十分ですよね、裁量労働制の方が労働時間が短い、そういうデータをつくれないかと無理やりつくり出した偽りの結果であることは、既に疑う余地がありません。

 偽りのデータを操って影響を少なく見せようとするこそくなやり方に、断固抗議します。この際、法案提出もやめるべきではありませんか。

加藤国務大臣 今御指摘がございました平成二十五年度の労働時間等総合実態調査についてのデータに関して、この国会等で答弁をさせていただきました。精査が必要なものということで撤回をし、またさらに、先日、平均的な労働者、平均的な者の労働時間について、一般労働者と裁量労働制で異なる仕方で選んだ、こうした数値を比較をした、これは大変不適切でございまして、深くおわびを申し上げるところでございます。

 その上で、今回の働き方改革関連法案の検討過程においては、労働政策審議会等において、さまざまな視点に立って御議論をいただきました。そして、労働政策審議会においては、意見が付されてはおりますけれども、おおむね妥当、こういう答申も頂戴いたしました。

 今回の働き方改革については、多様な働き方を実現していく、そして裁量労働制の見直しにおいても、働く方の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる、そうした働き方の選択を可能にしようとするものでございますので、これについて、労働政策審議会において答申していただいた要綱に沿って今法案の作成の作業を進めているところでございます。

高橋(千)委員 いろいろな意見があったけれども、おおむね妥当と言われたから続けるんだというお話でありました。

 私は、やはり今回の問題が起こった根っこには、野党が指摘したことが当たっているからだと思うんですね。だから、こういうふうに避けようとするんです。これは、やはり裁量労働制が持つ大きな弱点だと思うんですね。

 あえて、厚労省が出した資料の中にあるデータをもとにこのパネルをつくりました。

 裁量労働制、一日のみなし時間を決めて、それよりも多くても少なくても残業代を払いません。そのみなし時間の分しか払わないわけです。だから、みなし時間が九時間であれば一時間分の残業代が入るということになります、当然ですが。深夜勤務にも払われます。

 今回、対象を拡大しようとする企画業務型裁量労働制の一日のみなし労働時間と実際の労働時間の比較であります。

 一番上がまずみなし労働時間ですけれども、水色のところを見ていただきたいんですが、八時間以下に設定している事業場が五割以上あるわけですよね。十時間以上に設定しているところは赤なんですが、ほとんど見えません。〇・一%しかないんです。

 だけれども、実際に労働時間で見ると、平均的な者であっても、八時間でおさまっている人は二割もいないわけです。それどころか、さっき〇・一%だったのに、十時間超というのは三一・七%です。そして、最長の者では七五%も十時間超働いている、こういう状態になるわけですよね。

 そうすると、このみなしと実際の労働時間との差、そこは、はみ出した部分は、残業代が出ない、ただ働きの部分になるわけです。だから、私は、これはサービス残業合法化と言えるんじゃないかなと思うんですね。

 このような状態で更に裁量労働を広げるというのは、それが狙いなのかと思われても仕方がないと思います。どうですか。

加藤国務大臣 今、こういう図ではなかったと思いますけれども、ベースになる資料はこの労働政策審議会においても提出し、御議論をいただいたところでございます。

 そういう中で、長時間労働に対する懸念、こういったこともあり、今度これは省令の形になりますけれども、労働時間をしっかり把握するということ、そして、このみなし労働時間と実労働時間の乖離が大きいといった場合にはそれに対してしっかりと監督指導を行えるように、厚生労働省がつくる指針に沿って、これは労使委員会というところが対応するわけでありますけれども、労使委員会が決める決議においてしっかりそれを遵守していく、そしてまた厚生労働省等がこの指針に沿って労使委員会に対して指導していく、その根拠規定も法律の中に盛り込む。こういうことで、こうした長時間労働にならない、特にみなし労働時間と実労働時間が乖離しない、そういった施策も盛り込ませていただいているところであります。

高橋(千)委員 こういうことがあり得るということをお認めになっているからこそ、今、指導するとおっしゃったんだと思います。指導も何もしないとなったら、これは大変なことですけれどもね。

 東京労働局は、年末に、裁量労働制を社員に違法に適用して残業代の一部を支払わなかったとして、不動産大手の野村不動産本社あるいは関西支社など全国四拠点に是正勧告を行いました。約千九百人のうち約六百人に裁量労働制を適用して、その大半を個別営業などの業務につかせていたということで、これは違法だとなった。

 ですから、裁量労働制を隠れみのにただ働きや長時間労働をさせている、そういうことがあり得る、そして、それがちゃんとわかっていなければ今拡大するということはもっと起こり得る、その危険意識を持っているということですよね。一言でいいです。

加藤国務大臣 今御指摘の野村不動産も一つの事例でありますけれども、この裁量労働制の中でそれなりにメリットをうまく活用されている方もいる、またそうしたことをしっかり進めている会社もある。一方で、今の野村不動産を始めとして、適切に運用していない、こうした事業所等もございますから、そういったものに対してはしっかり監督指導を行っているところでありますし、今後とも更に進めていきたいと思っております。

高橋(千)委員 メリットを感じている人がいる、このことを否定するわけではないんです。私自身が厚労委員会でも取り上げたことがございますし、実際にJILPT、労働政策研究・研修機構の調査でも、満足しているという人がいるわけなんですね。

 ただ、仕事に熱中し過ぎて時間を忘れているとか、それは余り満足と言わないのかな、そういうこと自体を危険だと見なきゃいけないんじゃないかなと思うんですが、この不満の内訳を見ていきますと、非常に深刻な特徴がわかると思うんです。トップファイブを並べましたけれども、やはり労働時間が長い、在社時間が長い、業務量が過大である、そうならざるを得ない仕組みなんですね。給与が低い、それはそうなんです、決まったお金しか出ないですし。人事評価が不透明とか、みなし時間の設定が不適切、こういうことが起こっている。私は、こういうことが起こっていることをとても理解できるんですね。

 というのは、例えば外資系の企業で企画業務型裁量労働で働いている男性は、労働時間は自己申告なんだ、だから少なく申告しますと言っていました。なぜかと聞いたら、自分はプロジェクトマネジャーだからチームの成果に責任を持たされるんです、長く働くやつは仕事ができないやつとみなされる。チームの成果が遅いのはあなたのせいよと、そういう仕組みをつくっちゃっているんですよ。それが今の成果主義のやり方そのものなのではないか。自分で自分を管理する仕組みなんです。これが一般的になっているのではないでしょうか。

 総理は、このような自分で自分の首を絞めるような仕組みを、やはり生産性向上だと言ってしまうおつもりなんでしょうか。裁量労働制の問題をしっかりと認め、検証することが先ではありませんか。

加藤国務大臣 済みません。まず私の方から。答弁は同じことになるので、そこはもう省略をさせていただいて。

 先ほどありましたように、今、こうした事例は、マネジャーの方がどういう形でされているか、いま一つわからないところはありますけれども、しっかりとした適用がなされていけるように、裁量労働制がしっかりと適用されるように、私どもも監督指導に努めていきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の働き方改革は、長時間労働となっている方の労働条件を改善していくという目的も有しているわけでありまして、自分の能力や才能を生かしながら、そしてしっかりと健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていく、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるよう、裁量労働制についても見直しを行うものでございます。

高橋(千)委員 今大臣が、プロジェクトマネジャー、私が取り上げた方の話ですけれども、そういう働き方はわからないとおっしゃいました。わからないとおっしゃったんですよね。だから、現場でそういうことが起きていると言っているのに、わからないと言っちゃって、広げていいんですか。そういうことが問われるわけでしょう。

 今はまだ、お給料も収入も一定高くて、自律的な人が一定いるかもしれません。でも、それを広げるということは、当然この不満な分野が広がっていくということじゃないですか。わからないんだったら、わかってから言ってくださいよ。

加藤国務大臣 わからないというのは、今御指摘の点について私たちが具体的に掌握をしていないという意味においてわからないということを申し上げたということでありまして、ただ、その上で申し上げましたのは、そうした事態がないように、適正に運用されていくように、しっかりと監督指導等に努めていきたいと思います。

高橋(千)委員 これは改めて実態調査を行っていただきたいと、強く求めていきたいと思います。

 資料の次のパネルを見ていただきたいと思うんですが、裁量労働だけではなくて、今回総理が、初めて罰則つき上限規制を書くんだと強調していますが、それすら適用にならない、対象とならない人たちもたくさんいるんです。

 本当はこれは一つ一つやりたいくらいなんですが、管理監督者がそのまま適用除外のままで残ることや、過労死の多い建設や自動車運転の分野、これは合わせて約五百六十万人に上るんですけれども、五年間適用が猶予されます。あるいは、新技術、商品等の研究開発業務はそのまま除外なんです。これは全然納得できません。

 中でも、きょう問題にしたいのは、医師です。プラスされています。

 医師は実は、これまでは労基法上では特に除外はされていませんでした。ところが、施行後五年間猶予ということは、その五年間は新法の基準が適用されないということですね。なぜそうなんでしょうか。

加藤国務大臣 医師については、現行では限度基準告示に基づく規制が適用され、その上で、今般の時間外労働規制の見直しにおいては、働き方改革実行計画において、時間外労働規制の対象とはするが、規制のあり方については別途検討の場を設け、同計画決定後二年後を目途に、今現在検討しているわけでありますが、規制の具体的なあり方を検討するとともに、労働基準法の改正法の施行期日の五年後を目途に規制を適用する。

 この趣旨は、医師の場合には他の職種と比較して長時間労働の実態にあるということはありますが、他方で、医師法に基づく応招義務等特殊性を踏まえた対応が必要でありますから、そうしたことを踏まえてこのような取扱いをさせていただき、また、規制の適用までに必要かつ十分な準備期間を設けたものでございます。

高橋(千)委員 救急車が来れば断れないからという、今に始まったことではないんです。応招義務の問題を引き合いに出して、これまでずっとその問題があったのに、働き方改革のついでに医師を今外そうというのは許せません。命を救う医師が自分の命を犠牲にしてもよいと、誰が決めたのですか。医師の過労死や医療機関に対する是正勧告などが連日のように報道されています。

 このパネルは医師の働き方改革検討会議の資料ですけれども、全産業と比べて、一週間の労働時間が医師だけ、この赤のところです、六十五時間以上でくいっと上がるんですね。これはつまり、過労死ライン、月にならすと八十から百時間という残業に近い、あるいは超えているという意味になるんです。

 配付している資料をちょっと見ていただきたいんですが、同じ検討会に出された、医療機関における三六協定の実際であります。特別条項として、一月百五十時間、年千時間、あるいは規模が大きい病院になりますと月二百時間、年千四百七十時間などが紹介されています。

 そして、最後のページに、日赤医療センターは、過労死ラインの二倍になる残業月二百時間を協定で結んでいたけれども、それすら守れない医師が二十人もいたとなっているんですね。

 現在、特別条項を結べば上限がないから、今回法定をすることにしたはず、上限にすることにしたじゃないですか。だけれども、五年間猶予ということは、この月二百時間、年二千時間だって、そのままいいことになるじゃないですか。それで許されるんですか。

加藤国務大臣 高橋委員もお話しのように、医師も、医師である前に一人の人間であります。長時間労働による健康への影響が懸念をされるということは決してあってはなりませんし、また、医師の方の場合には患者さんの命にもかかわるという大変重要な仕事をされているわけでありまして、そういった意味においても、医師について、働き方改革をしっかりと進めていく必要があるというふうに思います。

 そういう中で、ただ、先ほど申し上げましたように、今も、特別条項があればこれは青天井になっているわけであります。それについて二年の検討をし、その五年後にはカバーをするということを決め、そしてそれに向けて努力をしていくということが当然必要になってくるわけでありまして、検討会において先ほど議論していると申し上げましたけれども、現在七回開催をしておりますけれども、平成三十年二月末までには中間的な論点整理とともに緊急的な取組も取りまとめて、まずこうしたことについて実施していただくべく我々も努力をしていきたいと思います。

高橋(千)委員 検討しているのは知っています。だけれども、それがやはり本筋に触れていないと思うんですね。しかも、五年間猶予ですから、施行されてから五年間ですから、足し算すると七年かかるんですよ。七年この状態が放置される、それをそのままでいいのかということを指摘しています。

 新潟市民病院の研修医で、昨年七月に労災認定された女性医師三十七歳は、もともと看護助手をしていたのに、国立の医学部に入り直して、誇りを持って医師として働き始めました。なのに、医者になんかなるんじゃなかった、気力がない、病院に行きたくないと言うようになって、一昨年一月、市内の公園の雪の上でみずから命を絶ってしまいました。最長で月二百五十一時間もの残業でした。

 昨年の十二月の働き方検討会議でもこうしたことがるる紹介をされて、御自身の夫さんが過労自殺で亡くなった中原のり子さん、もう二度とこういう思いをしないでいただきたいということを繰り返し言っているんです。だけれども、なぜそれを本格的に改善をしようとしないのか。私は、医師をふやすべきだと思うんですね。

 私、中原さんのことを取り上げたちょうど十年前の予算委員会で、最後に一言、文科大臣に伺いたいと思うんですが、深刻な医師不足の背景には勤務医の過重労働があるとして、人の命を預かる医師が人間らしく働ける条件、まさに、ゆっくり休めて家族の顔も見られる、そういう条件を整えなければ解決にならないと追及しました、二〇〇八年二月二十六日。そのときに、当時の舛添厚労大臣が医学部の定員抑制をしてきた閣議決定を事実上撤回し、その後、医師の増員を図ってきました。だけれども、十年かかって、ようやっと今、地方に医師が波及されてきた。ようやっと今、その段階なんです。

 だから、これを今、立ち消えにしては全然だめなんですね。この予算をしっかり確保するということ、そして医師も人間らしく働ける条件をつくるんだという決意を述べていただけますか。

林国務大臣 地域の実情に応じた医療提供体制を構築するために、地域における医師の確保は喫緊の課題であるというふうに認識をしております。

 文科省では、各大学における地域医療に従事する医師を養成するための選抜枠等である地域枠、この設定を推進するとともに、平成二十年度から、将来地域医療に従事することを条件とする都道府県の修学資金の貸与枠と連動して、医学部の入学定員増を認めてまいりました。

 この結果、平成二十九年度には、九百四人の定員増を含む千六百七十四人の地域枠が七十一大学で設定をされてきております。これらの学生は、六年間の大学での教育及び二年間の卒後の臨床研修を終えて地域医療の現場にまさに今出始めたところでございまして、今後、地域での医師確保の効果が出てくるものと考えておるところでございます。

 今後とも、地域枠の推進を図るとともに、平成三十一年度で期限を迎える医学部定員増については、そのあり方について、厚生労働省とも連携して検討してまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 残念ながら時間が来ました。人たるに値する労働条件、改めてこのことを求めて、引き続き訴えていきたいと思います。

 終わります。

河村委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私で最後の質疑ですが、おつき合いのほど、よろしくお願い申し上げます。

 きょうは集中審議ということで、働き方改革ということですが、これまで長時間にわたりましてるる協議されてきました。私も見ておりまして、かなり行ったり来たりというか、なかなか見えにくい委員会だなというふうに思ったんですけれども、総理、率直に、これまでの審議を踏まえまして、今どのようにお感じになっているのか、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 今回、働き方改革はこの国会の大きなテーマでございます。我々も、今回私の答弁を撤回することになったことについてはおわびを申し上げる次第でございますが、しかし、七十年ぶりの大改革であります。いわばさまざまな働き方を求める多様性の時代でありますから、それに合わせて働き方を変えていきたい、こう思っている次第でございますし、また、ワーク・ライフ・バランスをよりよくしていく、それによって女性や高齢者も働く機会がふえていくのではないか、こう期待しているところでございますが、そうした方向に向けて充実した議論をこれからも行っていきたい、こう思っております。

丸山委員 議論を聞いていますと、今回、特に裁量労働制の超過労働時間の調査資料について、いろいろな委員から御指摘がありました。

 そもそもこの資料にそごがあって、データは、比べるに値しないデータじゃないかというお話ですけれども、それが隠蔽なのか、不適切かどうかとか、そんな言葉尻ではなくて、また、法案をもう出さないでほしいという委員もいらっしゃいましたけれども、国会自体はきちんと、閣法、内閣が法律を出してきたものをしっかり審議して、問題があれば修正協議をして、そして問題があるのなら先には廃案だって、これまでいろいろな法案も廃案になってきたわけですから、しっかり議論はしていくというのが国会のあり方としては重要だと思います。

 でも、私、ちょっとお聞きしていて、非常に国民の皆さんも、あれ、これはおかしいな、しっかりしてほしいと思っていることも御議論の中であったと思います。それは、やはり調査をもう一回ちゃんとやりましょうよと。

 申し上げておきますと、法案を出すためとか出さないとか関係なくて、今出ている調査、政府側もお認めになっていますけれども、そごがあるわけで、今後のことを考えても、平成二十五年以来全く調査、追加でされていない、またこのデータ自体も、不確かだというものに関してしっかり調査自体はすべきだ、法案いかんにかかわらず、私、それはすごく思いますし、ごらんになっている国民の皆さんも、それはしっかりやってよと思っていらっしゃると思うんです。

 総理、これは引き続き精査が必要なデータだとは御答弁いただいていますけれども、どうも、法案を出す出さないに絡めて、そういった意味で、御答弁としては再調査すべきだとなかなか言いづらい状況にあるのかなとは思いますけれども、国民の皆さん、ここは、法案関係なく、しっかり検討はいただきたい、調査する、もう一回きちんとデータを見ていくんだというのは非常に大事な点だと思うんですけれども、総理、どうですか、お感じになられませんか。大臣で構いません。

加藤国務大臣 今、丸山委員も御指摘のように、異なる仕方で選んだデータを比較するという、これは全く不適切な対応でございまして、これについては、その前に精査が必要なデータということで撤回いたしましたけれども、これはおわびを申し上げなければならないと思っております。

 その上で、調査ということでございますが、ただ、今回、やった調査そのものを比較したということにおいては不適切でありましたけれども、それぞれは監督指導という中で調査をしてきたその結果でございますし、それも踏まえて労働政策審議会で御議論いただきましたので、それにのっとって、我々は、法案を提出すべく今作業を進めさせていただいております。

 ただ、今後において、その時々において実際の裁量労働がどうなっているかということを把握していくことは非常に大事なんだろうというふうに思います。

丸山委員 結局、最長と平均がごちゃまぜになっている状態ですし、統計といっても、労働者の方に聞いたわけじゃなくて事業者に聞いていて、非常にわかりにくい。本当にそのデータが適切なのかというのは、国民の皆さんは非常に、そうだ、おかしいと思っていらっしゃると思いますので、そこは委員各位の指摘をしっかり受けとめて、きちんと今後の審議のためにも調査いただきたいと思います。

 まだこれは法案も出ておりません。そうした中で、出てきた場合にはしっかり我々としても精査して、問題があれば修正を我々としても提案していく、そしてその中で協議を求めていくというのは、我々維新の会、常にその姿勢でどの法案でも臨んでおりますし、今回のこの働き方改革の法案についても、必要があればその姿勢で臨むという方向性でございます。

 うちの党が出している百本法案というのがありまして、これまでの政策をいろいろ並べたものがあります。その中に入っている同様の方向性のものもありますので、そういった意味では協議していきたいというふうに思うんですが、総理、そうしたものがもし、まだ法案自体も出されていません、可能性のお話ですが、各党からいろいろなものが出てくる、特にうちの党も出してきた場合に、きちんと修正も含めて御協議いただけるということでよろしいでしょうか。総理、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 各党が法案を議員立法という形で提出をされれば国会において審議をいただければ、こう思う次第でございます。まだその中身を見ておりませんから何とも評価のしようがないわけでありますが、いずれにせよ、国会においてよく御議論をいただきたい、このように思います。

丸山委員 教師だとかお医者さんだとか、いろいろな職業について残業時間、超過労働のお話、きょう、委員でもいろいろな御意見が出ています。

 私からは、一つ、公務員の皆さんの労働の状況についてお話をお伺いしていきたいと思います。

 総理、日本の生産性を高めていくんだ、そして過労死をなくしていくんだという御決意だと思います。きょうも野党側も何度も、人の命がかかっているんだという重い指摘がありましたけれども、じゃ、一体、総理のお膝元の公務員の皆さん、特に霞が関中心に、どんな状況なのかというのをまず最初に率直にお伺いしたいんです。霞が関の国家公務員の勤務状況、超過勤務の状況だとか過労死の状況。

 公務員の皆さんは、今回の提出予定の法案で、労働基準法という形で基本的に保護されるのをふやそうとしていますね、七百二十時間を超えた場合に、それはおかしいというような法案を盛り込まれるんだと思うんですけれども、しかし、国家公務員の皆さん、これはかからないんじゃないんですか。もしこの法案が仮に出されて成立したとしても、これに関しては国家公務員の方は適用除外だと思うんですけれども、その辺の事実関係を含めまして、役所の方で構いません、お答えいただけますか。

森永政府参考人 お答えいたします。

 霞が関における職員の超過勤務の状況でございますが、平成二十九年に実施した国家公務員給与等実態調査によれば、平成二十八年の本府省における超過勤務の平均年間総時間数は三百六十六時間となっており、年間三百六十時間超の超過勤務を行った職員は四六・三%、年間七百二十時間超の超過勤務を行った職員は七・九%となってございます。

 また、国家公務員の過労死の状況でございますが、平成二十八年度の一般職の国家公務員の過労死の公務災害認定状況は、脳・心臓疾患を原因とする死亡件数が二件、精神疾患を原因とする自殺による死亡件数が三件となってございます。

 次に、国家公務員について労働基準法等が適用除外となっております理由につきましては、一般職の国家公務員につきましては、国家公務員法附則第十六条において、労働基準法等の適用が除外されてございます。

 一般職の国家公務員につきましては、争議権と労働協約締結権が制限され、人事院が職員の利益の保護に当たるという仕組みがとられてございます。こうした仕組みが導入されましたことに伴いまして、労働基準法等の適用が除外となり、勤務条件に関しましては、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律などが国家公務員法体系において整備されているところでございます。

 以上でございます。

丸山委員 テレビを見ていただいている皆さんは何のこっちゃと思われるかもしれませんので、パネルを用意しました。

 霞が関、省庁でどれぐらい超過勤務が行われているのかというデータなんですけれども、この平成二十八年のデータによると、年三百六十時間、これは過労死するかもしれないと言われているライン、四六・三%、半分近い方。さらに、七百二十時間、今回法案で、この時間以上は、民間の事業者に対してこれは禁止だ、だめだという時間に対して七・九%の方が霞が関で残業されている。そして、過労死の認定件数を見ても五件。野党側からも人の命は大事だという話をしていて、一方で、総理のお膝元のこの霞が関でもこういう状況なんです。

 民間企業の方がこれを見たらどう思われるかといったら、企業には残業をやらせるなという法案をつくるのに、一方でこの霞が関はどうなんですかと。

 厚労省、労働基準監督署、この間、電通に捜査に入る映像が生々しくテレビでも出ていましたけれども、では、その労働基準監督署を所管する厚労省も、ほかのデータでは霞が関の中で一番残業が多いんじゃないかという話もある。そもそも、役所自体も非常に残業している状況です。

 これは、いろいろな問題点があるんだと思います。もともと、私も役所におりました、業務が多過ぎる、そういった部分もあると思います。

 一方で、この国会の状況を見てもいろいろな、与党さんは今回与党の質疑時間をふやしたいという国会改革の話をされていましたけれども、実は質疑時間というよりは、この霞が関の残業の状況を考えますと、もっと根本的に、例えばこの予算委も前日になるまで審議があるかどうかもわからない。そうなれば、野党側に幾ら早く質疑を出せという話になっても、結局野党側はそれが決まってから質疑の準備をすることになって、それを受けて答弁を考える霞が関。それは遅くなりますよ。そして、それを受けて総理も朝から五分単位、数分単位で一つ一つの質疑を見ていかなきゃいけない。

 この国会の審議のあり方自体もそうですし、霞が関のあり方自体も変えていかないと、総理がおっしゃる働き方改革、隗より始めろの霞が関自体がこんな状況なんじゃないですか。

 総理、この点をどのようにお考えになって、この改革もやりましょうよ。ぜひやっていただきたいんですけれども、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 長時間労働を前提とした働き方を改め、生産性の高い働き方へと変えていくことは、民間だけではなくて官も含めて、官民共通の重要な課題と考えています。

 政府としても、国家公務員の長時間労働の是正については従来から重要課題の一つとして、長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や業務効率化等を通じた超過勤務の縮減、そして超過勤務を実施する際にその理由や見込み時間等を上司が把握するなど、超過勤務の適切な管理の徹底等に取り組んできたところでありまして、引き続き、国家公務員の長時間労働の是正に向けて実効性のある対策に取り組んでいきたい、こう思います。

 なお、御指摘の国会対応については、例えば質問通告の時刻が遅い質問者が一人でもいますと、どの分野の問いが入るか、いわば、厚労大臣に対して入りますと厚労省が待つわけでありますが、総理大臣に対して待たせる場合は、これは全省庁を待たせることになるわけであります。大変多くの省庁の公務員が待機をしなければならなくなってくるということであります。

 これは、もちろん残業ということプラス、結局、ある時間を超えて質問が入ってまいりませんと、相当大量の方々が電車がなくなった後タクシーで帰らなければならないという事態にもなるということも指摘をされております。

 具体的な国会改革のあり方については国会がお決めになることであり、各党各会派においてしっかりと御議論をいただきたい、このように思うところでございます。

丸山委員 総理、具体的な国会改革については各党会派で決めていただきたい、どの答弁でもそうおっしゃるんですけれども、実はこれは、今がチャンスだと思うんですよ。

 というのは、かつて民主党政権だった方々が今下野されて、かつて自民党が野党だったときもありました。そして、今は与党になられている。当時を見たら、民主党政権のときは、例えば岡田外相だったときに、岡田さんが非常にこれに対して、霞が関の業務を軽減するためにこういうのをやってほしいと具体的な提言を出されているわけですね。岡田代表は今、無所属の会の代表です。岡田さんだけじゃなくて、枝野さんもそうですし、またほかの党の議員の皆さんも、皆さん、この国会改革、与党のときにいろいろ言われています。

 同時に、自民党さんが野党のときには、実は同じように質問通告が遅かったという話も聞いています。でも一方で、今は与党になられて、しっかりやろうよという話が出ているわけで、今がチャンスなんですよ。

 これを今やらないと、総理が、働き方改革をやるんだ、民間の皆さんには残業の上限七百二十時間をしっかり守っていこうよと、非常に大事な論点で議論しようとしているのに、足元のこの霞が関で結局やっていないじゃないですかと言われてしまったときにどうするんだということです。現に過労死でお亡くなりになられている方もいるわけで、これは非常に大事な話です。

 総理、与党の総裁でもいらっしゃると思うんです。そういった意味で、リーダーシップをとって、各党の代表にこの国会のあり方をもう一回呼びかけていただきたいんです。

 去年ちょうど、議会制度協議会というのがこの衆議院にもできて、ようやく動き始めようとしたんですけれども、結局、この一年たってもほとんどこの現状は変わっていません。私が役所にいたときからもこの霞が関の現状は変わっていないですし、議員になって五年、まだ短い五年ですが、この五年も全く変わっていない。

 こういったところにしっかり、働き方改革だとおっしゃる総理ですから、リーダーシップをとっていただきたいんですけれども、総理、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 国会にかかわることでございますので、行政府の長である私が国会改革を迫るというのは若干問題があることでございますので、ぜひ国会において、我が党においても幹事長なり国対委員長なりがおられますので、自民党を中心ということでもないでしょうけれども、また御党とか、そういう有志の方々とそういう改革について大いに議論を進めていただくことを期待したいと思います。

丸山委員 民間の企業さんと比べますと、国会は本当に非効率だという声があります。答弁に来られるのに、一つ一つ御指名いただいて歩いてこられる、この時間はどうなんだとかですね。また、この衆議院で審議をやっていますけれども、参議院があいているわけで、この時間に議員提出の議法を先に議論するとか、非常に効率的にもっと議論できるような、幅が広がるような国会のあり方はできると思います。

 我が党はいっぱい提案しています。今国会は非常に、この働き方改革ということで、チャンスだと思いますので、与党の皆さんも、そして野党の皆さんも、ぜひ建設的な議論に乗っていただきたいというふうに思います。

 残りの時間、少し話はかわるんですけれども、私がこの予算委員会でずっとお話しさせていただいている話題をさせていただきたいと思います。外資による、安全保障上重要な土地の取引に関するものでございます。

 自衛隊の基地とか水源とか離島など、そういった部分、安全保障上重要な土地が外資によって買われているんじゃないかという問題、この予算委員会、テレビ入りでも私、たびたび取り上げてきました。

 本当に、調査を今、ようやくやり始めていただいているんです。これは評価したいと思います、率直に。でも、残念ながら、自衛隊基地の本当に周辺だとか一部の離島、そういった部分にまだまだとどまっています。そもそも、日本国全体で所有者不明の土地もふえています、登記がないということで。その意味でも、この部分も今回法改正が前向きに進んでいます。これも評価できます。

 でも、根本の部分で、万が一、問題のある取引自体を規制する法整備がないんだという、これを何とかしっかり前に進めてくださいよ、総理というお話をずっとさせていただきました。

 例えば、調査はないんですけれども、北海道庁が調査しています。水源地だけなんですけれども調査していまして、東京ドームの四百個分。これはまだ二十七年の調査で、大体一年、二十六年から二十七年で大体百七ヘクタール、東京ドームでいうと二十二個分、一年間で買われているということです。これは二十七年からもう何年たっているんですかという話です。

 総理、この話に対して、対応を検討しますという前向きな御答弁をいただいているんですけれども、あれからもう一年半たっています。これに関して、一年半たっていれば、では、どれだけの量がふえているんですか。水源地だけで一年間で東京ドーム二十二個分以上、ほかのところも考えれば非常に多い土地が、状況がわからない、買われている、この問題が生じていると思います。

 国交省さんにお伺いしたいんですけれども、こうした状況の中で、これは規制も大事なんですけれども、一方で、取引の中で、安全保障上重要じゃないところに関しては、確かに取引をきちんとやっていただくためにマニュアルは要ると思うんですけれども、この規制のない前に国交省さんは外国人との不動産取引マニュアルみたいなものをおつくりになっていて、これによると、こういうふうに外国の方のときの取引に対して、役に立つような資料はこんなものがありますよとか、韓国語や中国語でこういう書類を使ったらいいですよみたいにやられているんです。

 これをやられる前に、しっかり国として安全保障の分野を守っていってから、それでこの促進の分野をやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、国交省、これに関してどのように考えられているのか、お答えいただけますでしょうか。

石井国務大臣 近年、外国人を相手方とする不動産取引におきまして、我が国の制度に関する知識の不足や、商慣習、生活習慣の違い等に起因するトラブルが増加している状況でございます。

 御指摘の資料は不動産事業者のための国際対応実務マニュアルでありますが、これは、こうした現状を踏まえまして、我が国事業者や近隣住民との間でこのようなトラブルが発生することを未然に防止するために、我が国の不動産事業者向けに留意すべき事項をまとめることを目的といたしまして、国土交通省として作成をしたものでございます。

 したがいまして、御指摘の資料は、外国人による不動産取引を促進するものではございません。

丸山委員 国交省の意図としては、これはそういう意図でつくったわけじゃない、促進させる意図じゃないというお話をされるんですけれども、現実面、結果としてこうした土地の買収につながるような促進になっているわけですよ。

 他国の事例を見ても、アメリカなんかは、有名なエクソン・フロリオ修正条項という形で、しっかりこれをチェックする機関、そして取引停止や禁止できる規定もあります。中国は、そもそも所有禁止。韓国にしてもベトナムにしてもタイにしてもインドネシアにしても、あらゆる国で、安全保障上重要な土地をきっちり監視していく、そして問題があれば取引を停止する、この法案が普通にあるわけですよ。

 総理、日本はないんです。検討いただくだけじゃなくて、しっかり前に進めていただきたいんです。党でも議論していただいているという御答弁をいただいていますけれども、総理のリーダーシップで形を出していただきたいんです。総理、御答弁いただけますか。

安倍内閣総理大臣 丸山議員には従来から御指摘をいただいております。

 政府としては、まず現状把握を進めることが必要との考えでありまして、安倍政権発足後、我が国として初めて策定した国家安全保障戦略に本件について明記をし、これに従い、土地所有の状況について計画的に把握に努めています。

 防衛施設周辺については、昨年度までに約五百三十施設の調査を行っており、更に今年度末までに約三百施設の調査を終える予定であります。これにより、対象となる自衛隊及び米軍施設の全てについて一通りの調査を終えることになります。

 また、国境離島についても、新たに、領海保全等の観点から、領海基線近傍の土地の所有状況の調査を開始したところであります。今後、土地利用等のあり方について、有識者の意見も伺いながら検討することとしております。

 また、本件については、かねてより自民党の安全保障と土地法制に関する特命委員会において議論を行っているところでありますが、これと並行して、昨年には、自民党と公明党が与党として具体的な法律案の概要を作成した上で、法制化に関する議論を行っているものと承知をしております。

 ここまで進んできたところでございまして、政府としても、調査の状況を踏まえ、また法制化に関する与野党の議論も注視しつつ、国家安全保障の観点から必要な施策についてさらに検討を進めてまいりたいと思います。

丸山委員 総理、歯切れが悪いのはよくないと思いますね。

 非常に大事な話で、もうこの御答弁もずっと同じなんです、検討する、与党側で議論されている。非常に大事だというのは、総理もずっとうなずいていただいていると思うんですけれども、これは本当に総理のリーダーシップ一つ、大きいと思うんですよ。

 与党だけじゃなくて政府でも検討いただきたいんですけれども、お言葉をいただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ちょっと歯切れが悪いような感じを与えているかもしれませんが、ただ、前回の御質問をいただいたときから比べれば、今、法制化に関する議論を行っているというところまで来ておりますので、まずはそれを見守っていきたい、このように思っております。

丸山委員 時間の関係であれですけれども、引き続きこの件、私としても前に見ていきたいと思いますし、ぜひ前向きに進めていただきたい、政府としても進めていただきたいと思います。

 最後、お伺いしたいのは、今上天皇の御譲位に関して、改元の必要性が出てくるということで、新元号の公表のタイミングについてお伺いしたいというふうに思います。

 報道では、御譲位に関しての改元の、和暦ですね、平成の次が何になるかという和暦の話なんですが、公表が年末以降になるんじゃないかと。一年もない、数カ月で改元されるような状況。つまり、御譲位が四月、五月ですから、公表されてから本当に数カ月で実際に改元になるみたいな報道もあります。

 これは、タイミングが非常に国民生活にとって大事だと思います。システムの問題でも、書類一つにしても、これを和暦で使っている部類はいっぱいあります。また、和暦自体が非常に今、国民になじみが薄れているという指摘もあります。

 これはしっかりと早目にやはり公表していただいて周知をする。政府も今、働き方改革を総理はおっしゃっているんですから、手間を強いるというのは逆行すると思いますし、しっかりこの和暦を、ますます広げていくという意味でも、早目に公表いただきたいと思いますけれども、御配慮いただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 報道されているような内容については承知をしておりませんが、改元に当たっては、新たな元号が広く国民に受け入れられ、日本人の生活の中に深く根差していくものとなるよう、慎重な検討が必要と考えます。

 新たな年号の公表時期については、国民生活への影響等も考慮しつつ、今後適切に検討を進めてまいりたいと思います。

丸山委員 国民生活に影響がないといっても、でも、非常にこれは大きな影響を与えます。しっかり早期に公表いただけるかどうか、もう一度御検討いただけますか。

安倍内閣総理大臣 今申し上げたとおりでございまして、国民生活への影響等も考慮しながら、公表について考えていきたいと思います。

丸山委員 非常に国民の皆さんの関心も高い分野でございます。しっかりと、国民生活に影響のないように、適切な時期に、タイミングに公表いただけるようにお願い申し上げまして、時間が参りましたので、私、丸山穂高の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて丸山君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十一日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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