衆議院

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第4号 平成30年11月26日(月曜日)

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平成三十年十一月二十六日(月曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 野田 聖子君

   理事 井野 俊郎君 理事 後藤 茂之君

   理事 坂本 哲志君 理事 田中 和徳君

   理事 堀内 詔子君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 渡辺  周君

   理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    石破  茂君

      今村 雅弘君    小田原 潔君

      小野寺五典君    門  博文君

      金田 勝年君    河村 建夫君

      笹川 博義君    田野瀬太道君

      高橋ひなこ君    竹本 直一君

      中山 展宏君    野田  毅君

      平沢 勝栄君    古屋 圭司君

      松本 洋平君    宮澤 博行君

      村上誠一郎君    盛山 正仁君

      簗  和生君    山口  壯君

      山本 幸三君    山本 有二君

      吉野 正芳君    小川 淳也君

      落合 貴之君    武内 則男君

      本多 平直君    山尾志桜里君

      早稲田夕季君    奥野総一郎君

      源馬謙太郎君    後藤 祐一君

      階   猛君    西岡 秀子君

      太田 昌孝君    高木美智代君

      大串 博志君    藤野 保史君

      宮本  徹君    浦野 靖人君

      松原  仁君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   法務大臣         山下 貴司君

   外務大臣         河野 太郎君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   農林水産大臣       吉川 貴盛君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国務大臣

   (経済再生担当)     茂木 敏充君

   国務大臣         片山さつき君

   国務大臣         櫻田 義孝君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           柴田 裕憲君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十六日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     簗  和生君

  奥野 信亮君     中山 展宏君

  鈴木 俊一君     高橋ひなこ君

  盛山 正仁君     松本 洋平君

  川内 博史君     落合 貴之君

  武内 則男君     山尾志桜里君

  西岡 秀子君     源馬謙太郎君

  岡本 三成君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋ひなこ君     鈴木 俊一君

  中山 展宏君     門  博文君

  松本 洋平君     盛山 正仁君

  簗  和生君     宮澤 博行君

  落合 貴之君     川内 博史君

  山尾志桜里君     武内 則男君

  源馬謙太郎君     西岡 秀子君

  高木美智代君     岡本 三成君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     奥野 信亮君

  宮澤 博行君     衛藤征士郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(内外の諸情勢)


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     ――――◇―――――

野田委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

野田委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、内外の諸情勢についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省入国管理局長和田雅樹さん、財務省主税局長星野次彦さん、経済産業省大臣官房審議官柴田裕憲さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井野俊郎さん。

井野委員 おはようございます。自由民主党の井野俊郎でございます。

 本日、三十四分いただきました。このような貴重な機会をいただきまして、先輩議員そして各同僚議員の皆様に本当に改めて御礼を申し上げます。

 早速ではございますが、質疑に入らせていただきたいと思います。

 十一月二十四日未明、先週末の土曜日でございますけれども、大阪万博が決定されました。これまで誘致に取り組んでこられました地元大阪の皆様、そしてまた政府関係者の皆様に、改めてその努力に対し敬意と感謝を申し上げる次第でございます。

 自民党といたしましても、二階幹事長を本部長として推進本部を設け、誘致に取り組んでまいりました。今回の誘致成功によって、日本経済の成長、そしてまた日本の技術力などを改めて世界に発信し、そして日本の発展につなげていっていただきたいというふうに考えております。

 そこで、まず総理に、この大阪万博決定を受けてどのような万博にしていきたいと考えていらっしゃるのか、その意気込みについて改めてお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 今回、二〇二五年の国際博覧会の開催国として日本が選ばれて本当によかったと思っております。

 私の遠い記憶におきましても、一九六四年の東京オリンピック、そして七〇年の大阪万博、まさに、日本が成長し、そして世界の中の日本として、当時の私たち、まだ子供だったんですが、体に力を感じるような思いをしていたことを思い出すわけでございます。

 今回、BIE総会にあっては、世耕大臣だけではなくて、自民党から河村議員や竹本議員、さらには地元から松井知事、吉村市長、そして経済界からは榊原会長、松本関経連会長など、皆さんがパリに乗り込んで最後まで頑張っていただいたわけでありますが、また、これまで、地元大阪、関西の皆さんや、あるいは民間の誘致委員の皆さん、そして二階幹事長を筆頭に自民党推進本部を始め万博議連の皆さんなど、オール・ジャパンの献身的な誘致活動の成果ではないか、こう思います。

 まさにこれからが本番でございまして、世界じゅうの人々に夢や驚きを与えるようなすばらしい万博にしていきたいと思いますし、日本全体を元気にするような万博を実現するために、引き続きオール・ジャパンの体制で全力で取り組んでいきたい、こう思っております。

井野委員 安倍内閣のもとにおいて、東京オリンピック、そして大阪万博の招致が成功されたわけであります。ぜひ、こういった実績をよりよいオリンピックそして万博に向けて使っていただきたいと思っていますし、これからも我々自民党としては後押しをしてまいりたいというふうに思っています。

 それでは、日ロ交渉についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 十一月十四日、シンガポールにおいて、総理はプーチン大統領と二十三回目の首脳会談に臨まれました。

 この会談の二年前には、やはり、山口・長門、総理の地元であります山口県においてプーチン大統領との首脳会談も行われておりまして、その二年前の会談以降、かなり私は、日ロ交渉、日ロ首脳会談というものを緊密になされ、そして、平和条約に向けての、今回の会談を受けて、一気に機運が進んだのかなというふうに思いました。

 総理は、二年前の山口での会談において、まず、新しいアプローチによって日ロ交渉を進めていくというようなお話をされました。そしてまた、今回、課題を次の世代に先送りすることなく、私はプーチン大統領との間で終止符を打つ、そのような表現をされて今回の会談を総括されております。

 こういった表現について、まず、どのような意味を含めてお話をされているのか、その点についてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この平和条約交渉につきましては、残念ながら、領土問題、七十年以上解決してこなかったわけでございます。もちろん、日本としては、日本の正当性をずっと主張してまいりました。歴史的経緯、国際法上の日本の正当性について述べてきたところでございますが、残念ながら大きな進展がなかったのは事実でございます。

 そこで、私たちは新しいアプローチをとることといたしました。その新しいアプローチとは、領土問題の解決のためには、過去にのみとらわれるのではなくて、日ロ間で北方四島の未来像を描き、その中から双方に受入れ可能な解決策を探し出すという未来志向の発想であり、これが新しいアプローチの基本的な考え方であります。

 二年前の長門における長門会談におきましては、この新しいアプローチで問題を解決しようという方針のもと、元島民の方々の航空機による墓参、そして共同経済活動の実現に向けた現地調査の実施等、北方四島における日ロのこれまでにない協力が実現をしています。

 今般の日ロ首脳会談では、一九五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることでプーチン大統領と合意をしたところでございまして、来年の大阪のG20においてはプーチン大統領をお迎えすることになりますが、その前に、年明けにも私がロシアを訪問して日ロ首脳会談を行いたいと思います。

 私は、戦後七十年以上残されてきた課題を、次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという強い意思をプーチン大統領と共有していると考えております。

井野委員 ぜひまた、そういった意味で日ロ交渉をしっかりと進めていっていただきたいと思います。

 そこで、この日ロ交渉において、日ソ共同宣言を基礎とされるというところでありますけれども、この日ソ共同宣言においては、歯舞、色丹を平和条約締結後に返還するというふうに期待がなされております。この点を捉えて、よく一部のマスコミ等においては、四島一括返還から後退したのかというような一部マスメディアによる論説等も散見をされましたが、これまでの政府姿勢と変わった点があるのか、そういう論説に対してどのように説明、反論があるのか、ぜひその点をお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 政府のこれまでの姿勢は一貫しておりまして、領土問題を解決して平和条約を締結する、この方針に一切変わりはないということは申し上げておきたいと思います。

井野委員 この点について、外務省のホームページについてでありますけれども、ここにもやはり、我が国政府は、我が国固有の領土である北方四島の帰属に関する問題を解決して平和条約を早期締結するという一貫した方針を堅持しています、また、北方四島の我が国への帰属が確認されるのであれば、実際の返還時期、態様については柔軟に対応する考えです、このように記載があるわけでございます。

 すなわち、四島一括ということをこれまで前提にしたということではなくて、もちろん現実問題として、択捉、国後には、そこにもうロシア人、もちろんほかの島にも住んでいるんですけれども、いるわけでありますから、そういった中において、なかなか、私は、四島一括というのは、すぐに一括でというのはやはり難しいのではないのかなというふうに考えておりますし、その返還の時期、態様については、それぞれの事情またロシア側のさまざまな事情等を考慮しながらやはり進めていかざるを得ないというのは、私もそのとおりであるというふうに思っています。

 もちろん、当然、いろいろなこれから日ロ交渉というものがより本格化し、さまざまな厳しい条件を突きつけていかなければならないというふうに思いますけれども、ぜひ、そういった意味で、我々が求めているのは、やはりしっかりとした平和条約締結とともに、この島を国民の手に、そしてまた、我々日本のために少しでも資する形で返還してもらうということだというふうに思っております。

 そういった中において、私は、日ロ交渉の後押しとなるのは、やはり国民の後押しといいましょうか、理解がなければこの平和条約、また北方領土交渉というのは進まないんだというふうに思っております。

 私の同僚議員である鈴木貴子議員から、少し新聞等の写しをいただきました。お配りいたしました北海道新聞に記載がありますけれども、鈴木貴子議員はまさにこの地元を選挙区としておりますけれども、この千島連盟の方、河田さんという方が、この今回の会談を受けて、前進に向け、これまでにない話合いをしたというふうに感じたと話しておりますし、また、宮谷内さんという方も、日ソ共同宣言を出発点として段階的に返還を求める選択肢もあるのかなと思った、一歩でも半歩でも島を動かすことが元島民の求めていることではないかと。もちろん、複雑な気持ちではありますけれども、このように理解を示していらっしゃる元島民の皆様もいらっしゃいます。

 やはり、こういった元島民の皆様の後押しがあって、我々はしっかりとこの日ロ交渉に臨んでいけるのだというふうに思っております。

 また、私もちょっと速報値でお伺いした限りですけれども、今回の世論調査においても、もう六〇%から七〇%ぐらい、ちょっと済みません、数字は定かではありませんけれども、この交渉について、理解というか、支持するという世論調査の結果もあるようでありますけれども、そういった世論調査を受けて、改めて総理に、この日ロ交渉に向けての意気込みといいましょうか、今後についてお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 今、井野委員から、元島民の皆さんの気持ちに寄り添うべきだという趣旨のお話がございました。

 残念ながら、今、四島に住んでいるのは、事実上、三島でありますが、ロシア人だけでございます。ですから、例えば、プーチン大統領の頭の中でも、島民といえば、そこに住んでいる人たちのことが頭にあるんだろう、こう思いますが、しかし、ぜひ、プーチン大統領にも、元島民、もともとそこに住んでいた皆さん、そこにお墓がある島民の皆さんの気持ちも知ってもらいたいという思いで、長門会談の折には、元島民の皆さんが書いていただいた手紙をプーチン大統領にお渡しいたしました。

 ぜひ必ず読んでいただきたいと思いまして、私は、お渡ししたと同時に、ロシア語に訳したものもございますので、私の目の前で読んでいただいたわけでございますが、熱心にプーチン大統領はその手紙を読んでおられました。その中には、自由にお墓参りをしたい、そしてまた、島で朝を迎えたいという切実な思いがつづられていたわけでありまして、プーチン大統領も胸を打たれた様子でございました。

 また、写真もお見せをしたんですが、まだ日本の島民の方々が住んでおられるときに、入ってきたロシアの人々と仲よく生活をしている姿を写した写真もあったわけでございます。そうした写真等もお見せをしながら、まさに四島の新しい未来をともに力を合わせて切り開いていかないかという話をさせていただいたところでございまして、今後も、島民の皆様の思いを実現するために全力を尽くしていきたい、こう思っております。

 元島民の皆さんもだんだん年を経て、お年を召されたわけでございまして、一日も早く北方領土の問題を解決して平和条約を締結したい、このように決意をしているところでございます。

井野委員 ぜひ、総理におかれては、長年懸念だったこの日ロ平和条約締結に向けて頑張っていただきたいと思っておりますし、我々も後押しをしていきたいというふうに思っております。

 さて、日ロとはちょっとまた話がかわりまして、最近ちょっとなかなかうまくいっていないと私なりに思っているのが日韓関係でございます。徴用工の裁判、そして慰安婦財団の解散など、韓国は立て続けに、日韓関係を悪化させるような一方的な対応をとり続けているように感じられます。我々も、正直言って、あきれ果てているといいましょうか、大変これについては困惑しているというか、どうしたらいいのかというような感じでありますし、その分、我が国民の多くは、やはり冷静に対応しているのかなというふうに思っております。

 こういった韓国の感情といいましょうか、そういった感情的に対応している外交に対して、やはり我々は、もう一度きちんと冷静になってもらいたいというふうに思っておりますし、冷静になってもらうために、ただ抗議するというだけではやはり私は足りないのかなというふうに思っておるんですけれども、以前、韓国の在韓大使を一時帰国させたりという措置をとったように思いますけれども、今後、このような韓国に対してどのような対応をとるのか。まず外務大臣、教えてください。

河野国務大臣 ことし初めから、未来志向の日韓関係を築いていこうという話を先方の外務大臣と繰り返ししていたにもかかわらず、それと逆行するような動きがずっと続いているのは極めて残念だと思っております。

 日韓合意については、先方は、日韓合意の破棄は考えていない、あるいは再交渉を求めることもないということを繰り返し述べておられますので、日韓合意についてはしっかりと韓国側の履行を求めていきたいと思っております。日本側としては、日韓合意で課せられた義務は全てやってきているわけでございますので、先方にもしっかり履行していただきたいと思っております。

 また、先般の大法院の判決は、これはもう一九六五年の国交正常化以来の日韓両国の法的基盤を根本から覆すようなことでございますので、これはもう韓国側にしっかりとした対応をしていただく以外にはないわけでございます。それがない場合には、国際裁判も視野に入れ、あらゆる選択肢を考えていかんというふうに思っております。

 そういうことも考えておりますので、とりあえず、ハイレベルの交渉を維持するために大使はこのまま置いておくつもりでございまして、一時帰国は今のところ考えておりません。

井野委員 我が国としては、まずは冷静に対応していくということだということであります。それについては、我々も一緒になって感情的になってもだめだという先ほど外務大臣のお話だというふうに感じました。それはそれで、私も、そういうふうに交渉をきちんと進めていき、対応を改めていくということが何より大事だと思いますし、さはさりながら、やはりこのままではいけないんだというふうに思いますので、ぜひその対応を誤らないようにしていただきたいというふうに思います。

 もちろん、韓国では、実際問題、経済活動を行っている企業もあります。こういった日本企業の経済活動が萎縮しないように他方でしなければならないというふうに思いますけれども、この点について、まず世耕大臣はどのように考えているのか。

世耕国務大臣 韓国は、日本にとりましては、中国、アメリカに次ぐ三番目に貿易額が多い国であります。また、投資額の面で見ると、韓国から見たら、対内直接投資は日本が一番なんです。そういう意味では、いろいろな意味で企業のビジネスが日韓間では盛んに行われているわけでありますけれども、今起こっている諸問題が、両国企業の貿易ですとか投資の意欲を冷やすことになれば、これはもう、日韓はお互い補完的な経済関係があるわけでありますし、今サプライチェーンはグローバルにいろいろな形でつながっていますので、こういったサプライチェーンを毀損することにもなりかねないというふうに思っています。

 こういった状況にならないように、まずは、日本政府として、外務省とも連携をしながら、韓国政府に直ちに適切な措置を講ずるよう求めていくということ、そして、日本企業に対しては、日本政府がどういう立場をとっているか、あるいは関連訴訟をめぐる韓国内の状況について、経産省、外務省で連携をして情報提供をしっかりとやっていくということが重要だというふうに思っています。もう既に、今裁判で提訴を受けている企業向けの関係省庁合同説明会というのも何回も開かせていただいているところでございます。

井野委員 ぜひ、世耕大臣、そういった日本企業の経済活動にも支障がないように、さまざまなレベルで配慮していただきたいというふうに思いますので、ぜひその点もよろしくお願いいたします。

 世耕大臣はもう結構でございますので。

野田委員長 じゃ、世耕大臣、どうぞ御退席ください。

井野委員 続きまして、今度は多国間交渉のTPPについてお伺いをしたいと思います。

 TPPについては、いよいよ十二月三十日、ことしの年末に発効されるということになりました。また、このTPPについても、米国が抜けたという意味においては、日本国、日本経済が参加国の中で一番経済規模が大きい国になったわけであります。

 さきの十一月二十から二十一日には、東京でTPPの首席交渉官会合が行われたというふうに聞いております。その中においては、今、参加を検討されているタイの参加も検討しているというような話があったやに聞いております。

 やはりこれから、経済規模、このTPPの枠組みを大きく拡大していくに当たって、日本の交渉のリーダーシップ、そういったものはとても大事になってくるかと思います。ぜひその点、どのようにリーダーシップを発揮していくのか、担当大臣であります茂木大臣にお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 ありがとうございます。

 TPP11につきましては、昨年の一月二十三日に米国の離脱表明以降、一時、TPPが漂流してしまうのではないか、こういう懸念も広がりましたが、我が国が一貫して議論を主導して、昨年十一月、ベトナムのダナンで大筋合意、そして三月の八日にはチリで署名式を行いました。ここまで来れたのはまさに日本のリーダーシップと調整力のおかげ、これが参加国の共通認識であると考えております。

 TPP11、六カ国が国内手続を終了すると六十日後に発効ということでありまして、メキシコ、日本から始まりまして、十月の三十一日に六カ国目の豪州が国内手続を終了したため、御指摘のように、年内、十二月の三十日に発効することが確定いたしました。また、十一月の十五日にはベトナムも国内手続を終了するなど、他の参加国も国内手続、加速をしているところであります。

 さらに、TPPがこの十二月三十日に発効した後は、井野議員御指摘のタイ、タイは日本にとっても企業のサプライチェーン的に極めて重要な拠点になっておりますが、こういったタイを始め、新たな国そして地域の参加によりまして、TPPの新しいルールを世界に広げていくことが視野に入ってきます。

 このため、発効後速やかに、来年一月にも第一回のTPP委員会を我が国が議長として日本で開催をし、発効後のTPPの運営であったり、今申し上げた新規加盟地域に対する方針について決定する予定であります。

 先週、東京で首席交渉官会合を開催いたしまして、その準備を行ったところでありまして、今後も各国との連絡調整等の役割も日本が行っていくこととなっております。

 今世界で保護主義、こういった動きが広がる中で、TPPの二十一世紀型の新しい、公正で自由なルール、共通のルール、こういったものを世界に広げていく動きを日本として引き続き主導していきたいと思っております。

井野委員 ぜひ日本がこれからも、茂木大臣のもとリーダーシップを発揮されて、幅広い自由貿易協定を築いていっていただきたいというふうに思っています。RCEPだとかさまざまな多国間交渉もまた控えているように思いますので、ぜひそういった多国間貿易交渉においても日本の存在感をしっかりと発揮していただき、国益に沿う形で最終合意をしていただきたいというふうに思います。

 さて、続いて、今ちょっと問題といいましょうか議論になっております入管法の改正について、質疑を進めていきたいというふうに思っております。

 私も法務委員会に所属をしておりまして、この議論に初めから参加をさせていただいているわけであります。

 まず、大変残念なところが、やはり、この入管法の改正の、今の前提となっております技能実習生の失踪調査といいましょうか、調査についてのミスがあったという点でございます。

 技能実習生、今我が国においては約二十七万四千二百人来て、そして、日本でさまざまな技能を習得してくれて、働きながら技能を習得しております。その中で、約二%ぐらいの七千人の方が残念ながら失踪をしている、当初予定されていたところからいなくなってしまうというようなことでありまして、それについて、今法務省としてもどういった原因で失踪したのかということの調査をした結果、その調査内容、最終的には数字の部分に誤りがあってしまったという点、この点が私も大変残念に思っておりますし、これについては、今後もぜひ正確な調査をしっかりとこれから国会に出していただきたいというふうに思います。

 まず、この技能実習の、あくまでも技能実習生の調査なんですけれども、今回の入管法の改正というのは、また技能実習とは別に、より高度で専門的な技術を習得した人にこの日本で働いて活躍してもらおうというような法案のたてつけだったと思います。

 まず、この調査のミスについてなんですけれども、累計ミスなんですけれども、これについて、今回の入管法の改正案について、これが前提となっているのか、それとも全くこれはまた別の調査として行っているのか。要は、この法案についての影響というのはあるのか、その調査ミスがこの法案に影響しているのかどうなのか、まずその点、お伺いさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、御指摘の、平成二十九年における技能実習生の失踪に関する法務省における集計のデータの誤りであるとか集計資料の表現ぶりに誤解を招く点があった点については、集計時における作業ミス等が主な原因であって、故意に改変を行ったものではございませんが、いずれにせよ、あってはならないことであり、心からおわび申し上げます。

 その上で、技能実習制度と今回の受入れ制度はもともと異なる別の制度でございます。そして、御指摘の調査自体は、専ら旧制度下、具体的には平成二十九年十一月施行となっている技能実習法、これが施行される前の技能実習生の失踪原因について実態を把握するというものでございます。これが新たな受入れ制度の設計に影響を与えたということはございません。新たな受入れ制度の制度設計に当たり、二十八年十一月に成立し、そして二十九年十一月に施行された技能実習法の、特に外国人保護の仕組み等を一部参考にしたということはございますけれども、この調査結果自体が新たな入管法等の法案に影響したということはございません。

井野委員 二年前に、私も当時、法務大臣政務官という仕事をさせていただいておりまして、入管法の改正案については、審議に当然、答える立場として参加をさせていただいたわけでありまして、当時から、さまざまな技能実習生については問題があるというような議論でありました。

 もちろん、そういった問題を少しでも解消できるのであればという形で、二年前に入管法改正案が、当時、自民党、公明党だけではなくて、民進党の皆様の御賛同をいただいて、技能実習法の改正がなされたわけでございます。

 もちろん、この法案ができたからといって、全ての技能実習生が失踪せずになったかということではないのかもしれませんけれども、やはり私は、少しでも制度としてはよくなっていったわけであるというふうに思ってはおりますし、そういった意味で……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

井野委員 まあちょっとやじの方で、答えるわけではないですけれども、現実問題として、速報値としては今時点で、二年前の改正以降、二%から、そしてことしは速報値で一・三%という形で、失踪の技能実習生は減っているというような、実際問題として結果も出ているわけでございます。

 ぜひ、そういった意味では、この取組をしっかりと進めていきながら、少しでも技能実習生の失踪が減り、より日本でいい人材が働いてもらえる環境はつくっていくべきではないかと私も思っております。

 そして、我々、この入管法の改正において、自民党内のさまざまなけんけんがくがくの議論を行いました。やはり日本人のこれまでの文化というものが壊されるんではないか、例えば、多くの外国人が入ってくることによって我々の社会保障が傷つくんではないか、さまざまな住民トラブルが起きるんではないか、そういった我々自民党内におけるさまざまな議論がありました。

 そして、きょうは資料にもお配りさせていただきましたとおり、入管法の改正についての自民党の決議案というものもつくり、そして、あくまでも特定技能二号の適用条件の認識、説明については、現在、就労、家族滞在が認められている専門的、技術的分野の在留資格に必要とされる技能と同等又はそれ以上の技能での厳格化を行うというようなことで決議をさせていただきました。

 我々、やはり国民としてはこういったさまざまな不安を感じながらも、また私としては、そういう不安はこういった形で厳格に運用していただけるのであれば解消されるのではないかと思い、賛成をさせていただいたわけでございますけれども、改めてこういった不安に対して、総理、ぜひ国民の皆様に説明をしていただき、不安を解消していただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 もう既に井野議員の方から大分御説明をしていただいたんですが、今回新設する特定技能二号の在留資格を得るためには、熟練した技能を有している必要があります。この技能水準は、現行の専門的、技術的分野の在留資格と同等又はそれ以上の高い水準を求めています。

 特定技能二号の技能水準については、まず、法案成立後に閣議決定される基本方針において明らかにした上で、基本方針にのっとって策定される分野別運用方針において、このような高い技術水準であることをはかるための試験等を定め、これを法務省令でも定めることを予定しているところでございます。

井野委員 ありがとうございました。

 ぜひともこの国民の皆様の懸念払拭に、これからも審議しながら応えていけるように努力していきたいと思います。

 ありがとうございました。

野田委員長 これにて井野さんの質疑は終了いたしました。

 次に、伊藤渉さん。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 続いて、私は、まず冒頭は、国民生活の身近なところから一問御質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのも、報道等でも取り上げられておりますけれども、本年に入りまして、風疹患者数が、厚生労働省の調査による十一月十四日時点の暫定値で二千人を超え、二千三十二人というところまで広がっておりまして、感染の拡大が心配をされております。

 先日、我が党の代表の山口から政府に対しまして、対策を更に強化すべき、首相が編成を指示した二〇一八年度第二次補正予算案に対策費を盛り込み、全国的な感染防止策を総合的につくってもらいたいとお願いをさせていただいたところでございます。

 特にこの風疹で我々が心配しておりますのは、妊娠初期の方が感染をいたしますとその影響が胎児に及ぶ可能性がある、この点でございます。ぜひとも、予防接種を受けやすくし、抗体保有者をふやす取組を強化していただきたい。

 私、昨日、三重県の桑名市におりましたけれども、そこでも、たまたま間もなく結婚をされる女性とお話をする機会がございまして、その方もやはりこのことを大変心配されておりまして、予防接種を受けに行く、こういうことをおっしゃっておられました。

 現状は、各自治体による抗体検査、予防接種費用等に対する助成制度に対して対象や額のばらつきがありまして、また、周知徹底が課題だと考えております。

 そこで、ぜひ、根本厚生労働大臣には、この風疹予防接種を予防接種法にまず位置づけて、その上で、第二次補正予算の編成に当たっては助成対象者の拡大などを検討していただき、各自治体のばらばらの取組に対しては厚生労働省が統一的なガイドラインを示し、それに沿った予算措置を考えていただきたい、このことをまず冒頭、根本厚生労働大臣にお願いを申し上げます。

根本国務大臣 伊藤委員今御指摘のように、ことし七月以降、委員御出身の愛知を含め、風疹の患者数が増加している地域があって、厚生労働省として既に対応を進めております。

 委員お話がありましたように、妊娠中の女性が感染すると目や耳などに障害を持つ先天性風疹症候群の子供が生まれる可能性があり、それを防ぐ必要があります。

 現在、患者の増加数が多い愛知県を含む五都県を中心に、ワクチンの供給量をふやす、こういうことを通じて、妊娠を希望する女性などが抗体検査や予防接種を受けやすくする環境整備を行っております。

 また、風疹患者の状況を見ますと、三十代から五十代の男性の患者が全体の三分の二を占めております。これは、この年代の男性は、公的に予防接種を受ける機会がなかった三十九歳から五十六歳の男性、この抗体保有率が約八〇%、他の世代に比べて低いことが一因であると指摘されております。この点については、WHOでは、風疹の感染拡大を防ぐためには八五%以上の方が抗体を十分に保有していることが必要である、こうされております。

 今後のさらなる対応、対策として、厚生労働省では、WHOの考え方を踏まえ、このような年齢の男性の抗体保有率を上げ、風疹にかかりにくい人をふやすための全国的な対策について、審議会、有識者の御意見を伺いながら、早急に取りまとめたいと思っております。

 今、委員から御提案がありました。一つは、現在行っている抗体検査に対する補助事業の対象範囲の拡大や、予防接種法上の位置づけも含めた風疹の予防接種の推進方策。さらに、働いている方が抗体検査や予防接種が受けやすくなるよう、事業者団体との連携を更に徹底する。それから、ばらつきという話がありました。これも、自治体の取組に対するガイドラインを国が主導して示す。要は、委員もおっしゃられた総合的な取組対策を今検討しておりまして、スピード感を持ってしっかりと取り組んでいきたいと思います。

伊藤(渉)委員 大臣、正確に御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 ポイントは、やはり、風疹について予防接種法に位置づけて対策をする、これは極めて重要だと思いますので、ぜひスピード感を持って御対応いただきたいと思います。

 続きまして、麻生副総理・財務大臣に消費税の関連で御質問申し上げたいと思います。

 もう御存じのとおり、明年十月、消費税率一〇%への引上げは、急速な少子高齢化に伴って増大する社会保障費の安定財源を確保するとともに、増収分を幼児教育の無償化といった子育て支援にも活用することで、全世代型の社会保障制度を確立するために必要不可欠であります。

 また、加えて、年金生活者への支援給付金の支給や介護保険料のさらなる軽減といった社会保障の充実策を行うことにもなっておりまして、全ての国民の皆様が心の底から安心できる社会保障制度の実現へ、確実に実行していかなければならないと考えております。

 こうしたことをるる取りまとめさせていただきまして、去る十一月十六日に、総理宛て、菅官房長官に申入れをさせていただいたところでございます。

 この中では、軽減税率制度の円滑な実施、需要の平準化策としてのプレミアムつき商品券、住宅、自動車の購入支援、中小小売事業、商店街の活性化策、下請企業の転嫁対策強化など提言をさせていただいておりますが、きょうは、この中で、価格の表示方式の特例について特段のお願いをしておきたいと思います。

 価格の表示につきましては、御存じのとおり、現在、税込み価格を表示する総額表示、いわゆる内税表示方式が義務となっております。一方で、転嫁対策の一環として、二〇二一年三月末までの間は、一定の誤認防止措置を講じれば、税抜き価格表示、いわゆる外税表示方式が特例として認められているところです。

 これについて、長年、税抜き価格表示、外税表示を続けてきたスーパー等の事業者の皆様からは、この総額表示に切りかわるだけで消費者に大きな値上げ感を与えて、売上げの減少につながるのではないかと、大変心配の声が上がっております。

 こうした事業者の声も含めて、価格の表示方式の特例期間の延長あるいは恒久化、これは、消費税は国民の皆さんに消費していただいて初めて入る税なので、消費が減退しないように手を打つということが極めて重要だと考えますと、この特例期間の延長、恒久化、これはぜひとも検討に値すると考えておりますけれども、麻生財務大臣の御答弁をお願いします。

麻生国務大臣 これは、消費税が最初に導入されたときからの思い出があるんですけれども、ビールが一番そのとき話題になったと思いますが、ビールが仮に外税表示になっていたら、飲む人がいるだろうか。半分が税金ですから。そういった意味で、冗談じゃないですということが、その当時、随分話題になったのが最初のころです。

 それ以来この問題はずっと続いている話なんですが、消費税を含めたいわゆる総額表示方式にするというのは、これは原則ということになっていますが、今御指摘がありましたように、転嫁対策の一環として、誤認防止措置を講じていればいわゆる総額表示を必要としないという例外を今特例的に設けさせていただいているんですが、これが、二〇二一年三月までに、この一年半後ということですが、消費税一〇%に引き上げさせていただいてから一年半後ということになりますが、期限としておりますが、その取扱いについての今お話だと思いますので。

 これは消費者利便の観点とかいろいろなことを勘案して、転嫁の状況等々を踏まえつつ、これはちょっとその状況を見て引き続き検討させていただくことになっております。

伊藤(渉)委員 大臣、ありがとうございます。

 ぎりぎりの前向きな御答弁をいただいた、こう理解させてもらいます。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。

伊藤(渉)委員 続いて、今最も国会で議論をされております外国人受入れの拡大について、御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、法務委員会、連日大変熱心に御議論をいただいておりまして、この中で、幾つかの論点、整理をされてきていると思います。

 改めて紹介をさせていただきますけれども、今回の制度は、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお労働力が不足をする分野に限り、新しい在留資格を設けることとし、来年四月から制度をスタートさせることを目指す議論が行われている。

 また、今回の受入れ制度は、永住を目的として受け入れるものではなく、深刻な人手不足の状況に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人材の受入れ制度を拡充し、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れようとするものである。

 るる論点整理がなされている中で、今、一つ大きくクローズアップをされているのがいわゆる技能実習生の失踪のことですけれども、これも先週の法務委員会で我が党の浜地議員が質問をしておりまして、その中で、まず一つは、技能実習制度の連携で行われている建設業界の外国人建設就労者受入事業、これは移行の割合が三割から四割と言われていますけれども、その中で、失踪者が、二千九百八十三名に対して三十五名、一%程度ということも明らかにしていただきました。

 また、技能実習制度は、昨年十一月から改正を施した上で再施行されておりまして、本年六月には海外からも評価を受けているということも明らかになりました。

 また、失踪者の発生率は、平成二十九年度で約二%、そして本年、まだ途中ですけれども約一%、一・三%という答弁だったと思いますけれども、割合は着実に低下をしておりまして、もちろん、まだまだなすべきことはありますけれども、制度としての論点は整理をされてきていると、私は法務委員会でのやりとりを聞いていて認識をいたしました。

 その上で、もう一つ、この制度を入れる上で大事な観点は、日本人側の意識改革だと私は思っています。

 実は、愛知県の豊橋市に、大きな、岩田団地という団地がございまして、愛知県中部は物づくりの集積地ですので、もともと海外の方が多い。この団地は、実は十六棟、六百世帯から成る団地なんですね。階段ごとに十世帯から成る組がありまして、組長がその組のまとめ役を担うんですけれども、六十七組ある組の中で、何と四十組が外国人が組長をやっていますという団地があるんですね。

 長年、自治会の取組は、これは愛知県からも多文化共生の表彰を受けています。こういう話、自治会の役員の方の話も紹介させてもらうと、例えば、最初は回覧板一つとっても、外国人から意味がわからないと苦情がありました、でも、それは当然です、日本語が理解できない人もいるし、お国には回覧板の文化はありません、ごみの仕分も日本独自ですからと。こういうことが現場で一つ一つ丁寧に対応されているというのが実態なんです。

 その中で、例えば、これは毎月、組長会議ということも行われておりまして、それぞれの通訳も加わって率直な意見交換が行われて、加えて、海外の、外国人の方にとって大きな支えとなっているのは、何でも気軽に相談できる集会所の存在。これは午後七時から午後九時まで、団地の真ん中にある集会所で、自治会役員が常駐して、生活上の悩みや相談を受けている。これはぜひ参考にしていただきたい、政府がつくる仕組みにおいても。

 こういったことを踏まえると、例えば、日本国際交流センターの毛受氏はこうやって言っています。日本人の心構えとして最も重要なのは対等性である、相手を一人の人間として見るという基本的なマナーが求められると言っています。

 今回の法改正は、海外の方を単なる労働力、ひいては他人と見るのか、それとも、地域をともに担う一人の人間と見るのか、我々日本人側の意識が問われている。そのことを強く認識をする必要があると思っております。

 また一方で、ある造船の現場でお話をお伺いすると、造船の現場の方はこうやって言っていました。日本人には、外国人を働かせてあげているという思いがあったのだと思います、この意識を改めることが大切だと感じましたと。

 つまり、私が言いたいのは、現場は進んでいるんです。早く制度を整備してあげなかったら現場が困るということを大臣はよく理解をして、この議論に参加をしていただきたいと思います。

 そういう意味で、技能実習制度を含めて、海外の方に我が国で活躍をいただくという方向性は着実に日本社会に定着しつつありまして、外国人の方を安価な労働力などとしか見ない古い意識の経営者は淘汰されていくと私は確信をいたします。

 その上で、法務大臣にお伺いをいたしますけれども、本制度の細部にわたって点検をし、我が国の人手不足を補うという経済的な側面はもとより、一人の人間として日本に来た、日本を選んだ海外の方々に日本を好きになってもらって、外国人受入れを通して国際貢献につなげていく、そうした心のこもった制度の実現に向けてぜひ引き続き努力をしていただきたいと思いますが、答弁を求めます。

山下国務大臣 お答えいたします。

 伊藤先生の御地元の本当にすばらしい取組も御紹介いただきまして、しっかりと参考にさせていただきたいというふうに考えております。

 御指摘のとおり、今回の入管法改正案は、我が国の喫緊の課題である深刻な人手不足に対応するためのものでございます。しかしながら、やはり、委員御指摘のとおり、文化の異なる外国人の方々との共生について更に環境を整えていくいい機会だと思います。人手不足のところにも来てもらって助けてもらうという部分もありますので、その中でしっかりと見ていく。

 そして、大切なことは、それぞれの国の文化を互いに理解し合い、尊重することであり、法務省では、そのような観点も踏まえつつ、現在、外国人の受入れ環境の整備について、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の年内取りまとめに向けて作業を加速化させているところでございます。

 法務省としては、これまでも、技能実習やそのほかの在留資格による外国人の受入れを通じて国際貢献につながろうというふうなことで考えておったわけでございますけれども、今回の受入れ制度においても、我が国だけでなく、外国人材の母国の経済発展にもつながるよう、お互いに裨益する形で運用されていくということが重要であると考えておりまして、外国人の方を単なる労働者としてではなくて、我が国で働き、学び、そして生活する一員として迎え入れるための適正な受入れ環境を関係省庁ともしっかりと協議しながら準備していく。そして、そのために、この外国人の受入れ・共生のための総合的対応策の取りまとめ、しっかりやってまいりたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いします。

 もう間もなく時間ですので、総理にも御質問したかったんですが、お願いだけ申し上げて終わりたいと思います。

 米国がリーダーシップを発揮してつくり上げてきたグローバル経済の中で、一国だけの繁栄を目指すことはもう不可能な時代だと思っております。その中にあって、そのアメリカが、アメリカ・ファーストの名のもとに、中国との貿易摩擦を始め、これまでと異なる価値観で行動しているように拝見をいたします。

 総理におかれましては、アメリカ、EUのみならず、対中国、そして、きょうも出ていた、これからも出るであろうロシア、オーストラリア、インド、外交における日本の振る舞いがますます重みを増している、こう思いますので、ぜひとも、全体を、まさに地球儀を俯瞰する外交、総理には全力で取り組んでいただきたい、こう申し上げて私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

野田委員長 これにて伊藤さんの質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里さん。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 私は、外国人受入れ制度の拡大について、主に総理大臣にお尋ねをしたいと思います。

 委員長にお願いいたします。

 これから私がお伺いすることは、外国人受入れについての本質的な問題、国民がやはり非常に気にしているテーマ、このことについて総理の認識を問う、あるいはこれまで総理がされてきた答弁の中身を確定させる、こういうことに三十分を使いたいと思っていますので、ぜひ適切な采配をしていただいて、そしてまた、法務委員会では、私ども、総理入りの審議を求めていますけれども、与党の皆さんにまだ認めていただいておりません。このことについて総理自身の認識を聞く貴重な、大事な機会ですので、適切な采配をお願いしたいと思います。

 まず、この外国人受入れ制度ですけれども、総理、永住の可否についてお伺いをしたいと思います。

 代表質問における私の総理への質問に答弁がありませんでした。私は、この新制度により、これまでの永住許可の要件が緩和されるかされないかを問うたのではありません。今の要件が維持されることを前提として、新しい制度によって入ってきた特定技能労働者が、この要件に該当して永住が許可される可能性がありますかという質問をしました。これについてお答えがありません。

 総理、答弁を求めます。

安倍内閣総理大臣 我が国での永住が認められるためには、素行善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、引き続き十年以上我が国に在留していること、就労資格を持って引き続き五年以上在留していることなどの厳しい条件が課されているところであります。

 そこで、特定技能一号については、期間限定の就労資格であることに鑑み、永住許可に関するガイドラインに言う就労資格には含めず、他方で、特定技能二号については、従来の専門的、技術的分野における在留資格と同等のものに位置づけられることから、ガイドラインに言う就労資格に該当するとの方向で、法務省において検討されているものと承知をしております。

 もっとも、特定技能二号の在留資格を得さえすれば我が国での永住が認められるというものではなく、個別に許可要件が審査されるものであり、今回の新たな在留資格について、永住許可要件を緩和するものではありません。

山尾委員 つまり、今、この新制度が国会で審議されているにもかかわらず、少なくともこの二号について、新しい技能実習生が一号を得て、その後二号を経て、その後永住資格を経ていくという、こういう新しいルート、これが開かれる、そういう制度なのか否かということは、今、法務省において検討中であり、安倍政権として判断をしていないということが明らかになりました。

 これについて、二ページの資料をごらんください。平成三十年十一月十三日、私の本会議における総理に対する質問の総理の答弁です。一番上の段、真ん中に四角囲いがしてありますが、その二行前をごらんください。今、私が提起した、この制度というのは新しい永住ルートを開くんですか、こういう質問に対して、これは永住許可の運用の問題であり、法務大臣において判断されるものでありますがと、こういうふうに総理はお答えになっているんですね。

 お伺いします。

 私は、これは法務大臣が決めるべき運用の問題ではなく、安倍政権が、安倍政権としての判断のもと、政策判断をした上で、国民に、立法府に問うべき政策判断だと思いますけれども、そうではないんですか。なぜ、法務大臣にこの点を委ねて、総理は判断をみずからされないんですか。理由をお答えください。

野田委員長 法務大臣山下貴司さん。(山尾委員「いえ、総理の認識ですから」と呼ぶ)まずは法務大臣から。少々お待ちください。その認識を聞く前に。(山尾委員「法務大臣には答えられない」と呼ぶ)この後に答えます。

 山尾さん、まずは、法務大臣の話が出ましたので。ぜひ、法務大臣の話を聞いてから。

山下国務大臣 御指名でございますので、お答え申し上げます。(山尾委員「法務大臣には答えられない問いかけです。総理の認識です」と呼ぶ)

野田委員長 総理、答弁しますから、この後。(山尾委員「総理の答弁の中の、総理の認識です。委員長、采配がおかしいです」と呼ぶ)

 では、法務大臣にまず、簡単に。

山下国務大臣 入管法の構造にかかわることでございますので、所管大臣である私からお答え申し上げるのが適当と考えます。(発言する者あり)

野田委員長 その後、総理が答えます。御静粛に。皆さん、御静粛に。

 総理は答弁しますが、その前に、所管の大臣から少しだけ答弁させます。

山下国務大臣 入管法の構造にかかわるお話でありますので、所管大臣である私からお答え申し上げます。

 今回の新たな受入れ制度というのは、永住権の要件自体を緩和するものではございません。永住権につきましては、永住権の判断ということで、法務大臣がその裁量の範囲内において判断するということでございます。

 入管におきましてどのような外国人を受け入れ、また在留資格を認めるかということに関しましては、これは在留資格の更新にかかわる判断ではございますが、最高裁の判例にもございまして、ここで法務大臣の広範な裁量権が認められております。

 ただ、その広範な裁量権において認められているというだけではということで、今、我々は、永住の要件、素行が善良である、独立生計を営む、そして日本国の利益に合することという要件を法律上立てた上で、そして、国益に合する要件の中において、永住権を認めるためのガイドラインというものを設けている。そして、そのガイドラインに基づいて、そして、その法令の要件に基づいて法務大臣が判断するということになっているわけでございます。

 こうした枠組みの全体像につきましては、例えば、委員も恐らく……

野田委員長 法務大臣、簡潔にお願いします。

山下国務大臣 はい。

 という構造になっているということでございます。

安倍内閣総理大臣 ただいま所管する法務大臣から答弁をさせていただいたところでございますが、今、法務大臣から答弁をさせていただいたように、まさに……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 よろしいでしょうか。

 まさに永住権が認められるためには、素行善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、引き続き十年以上我が国に在留していること、就労資格を持って引き続き五年以上在留していることなど……(発言する者あり)

野田委員長 今、答弁の最中なので御静粛に。少々お待ちください。総理答弁中です。

安倍内閣総理大臣 厳しい条件が課されているところでございまして、ということでございまして、このガイドラインに言う就労資格に該当するとの方向で法務省において検討されているところでございます。特定二号についてはですね。

 従来の専門的、技術的分野における在留資格と同等のものに位置づけられていることから、ガイドラインに言う就労資格に該当するとの方向で法務省において検討されているものと承知をしております。

 そして……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 考え方については、先ほど法務大臣から答弁させていただいたとおりでございます。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にしてください。

山尾委員 結局、新制度が新しい永住許可のルートを開くものかどうか、こういう本質すら、いまだ安倍政権は決めていない。そして、決めるのは、法案が通って世間の注目度が下がってから法務省に丸投げする。そういうことが私ははっきりしたと思います。

 なぜ、この難しい決断について総理自身が自分の決断から逃げるんですか。決断して、国民と立法府の議論にしっかりと立ち向かうべきじゃないんですか。どうして一番本質的な議論を法案成立後に先送りにし、自分の判断から逃げるんですか。

 同じようなことを更に問いたいと思います。

 二点目。この新制度で受け入れる外国人に上限はあるのかどうかという点であります。

 法務大臣は、この五年で三十四万人につき、上限ではありませんと言っています。この点、総理は、代表質問に対する答弁で、上限として運用するというような趣旨を答弁されました。

 総理にお伺いします。

 上限として運用するというこの答弁の中身をわかりやすく御説明ください。総理の答弁、総理のその答弁の中身を総理自身で確定させてください。

安倍内閣総理大臣 これは、私は本会議でも答弁をしておりますが、委員会において更に法務大臣も答弁をしていることであります。上限という特定の事柄でありますから、私は法務大臣から答弁することが適当と考えたわけでございますが、私がここで答弁すれば、当然本会議で答弁したことと同じことになるのが当たり前であろう、こう思います。

 政府としては、法律に基づいて策定することとされている分野別運用方針において、五年ごとに向こう五年間の受入れ見込み数をお示しすることとしております。

 分野別運用方針に明記する数字は、受け入れる業種における大きな経済情勢の変化、つまり、各業種の雇用情勢全般にかかわる事項についての大きな変化が生じない限り、五年間は受入れ数の上限として運用することとなります。

 したがって、この数字を超えた受入れが行われることは基本的に想定されていないということとなるところでございます。

山尾委員 それでは、基本的に安倍政権が想定しないとしても、受入れ数を超える申請がなされた場合の対応はどうなさると決めているんですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 分野別運用方針において定められた上限値を超える場合どうなるのかということについてお尋ねがございました。

 これにつきましては、当該分野においてどの程度の、これは在留資格認定証明書の発行数などで把握できるものですから、上限に近づいた場合に、法務省において的確に把握することができます。

 上限に近づいたと判断された場合には、業所管省庁の大臣などに注意喚起をして、受入れ停止措置、これを求めるかどうかということを注意喚起します。そして、受入れ停止の求めがあれば、法務大臣としては停止するということでございます。

 そして、法務大臣としても、上限があった場合、この上限を超える場合には、在留資格認定証明書、これを上限を超えて発行しないということになりますので、上限を超える人数は受け入れないという運用になります。

山尾委員 つまり、これは、法制度としての上限ではないということを法務大臣がおっしゃったわけです。受入れ枠を超える申請があったときには、法務大臣が決める、法務省の采配だ、法制度としてキャップをはめるわけではない、そういう答弁なんですね。

 改めて総理にお伺いをいたします。これは国民の関心事です。総理の答弁を聞きたいと思っています。

 法務大臣は上限ではないと、しっかり議事録に残っています。総理は上限として運用をすると言っています。

 質問、聞き方を変えます。これは、法制度としての上限規制ではないというふうに私は答弁で伺いましたけれども、法制度としての上限なのか否か、明確にお答えください。総理に聞いております。総理の、上限として運用するという、上限として運用するというのは総理しか言っていないんですね。その中身を聞いております。

野田委員長 今、法制度の確認なので、法律を所管している山下大臣からまず見解を聞きます。

山下国務大臣 結論から申し上げますと、私が三十四万五千人について上限ではないと申し上げたのは、その数値というのは、これは先ほど総理がおっしゃった分野別基本方針に示された数値ではないからなんです。それは、その分野別基本方針の数値、運用の目標を定めるために各省庁が精査して最近出してきたもの、いわば素材でございます。ですから、その素材自体は上限ではないということを委員会で申し上げたわけです。

 そして、本法律案においては、特定技能外国人の人数について……(発言する者あり)

野田委員長 静粛にお願いします。答弁が聞こえなくなります。

山下国務大臣 数値として上限を定めることを義務づける規定は設けておりません。

 しかしながら、別の規定であります受入れ停止措置、これを的確に運用して、そして、分野別運用方針に記載される五年間の受入れ見通しの見込み数、これを上限として運用するという形で図っていくということでございます。

山尾委員 つまり、法律上の制度としての上限規制はつけないということを繰り返しおっしゃっているんですね。法務大臣の広い裁量の中でうまくやりますから任せてください、そういうことをおっしゃっているわけです。

 引き続き、総理に伺います。

 総理自身の議事録、もう一度ごらんください。二ページ、本会議です。総理は二つの数字を言っているんですね。業種別の受入れ見込み数をお示しする予定ですと。これを受入れ数の上限として運用する。そして、後半のパラグラフ、今度は違うことを言っています。分野別運用方針に明記する数字、受入れ数の上限としてこれを維持することになっていると。

 お伺いをします。

 私たち立法府は、そして国民は、どちらを受入れ数として信用したらよろしいんでしょうか。つまり、現在提示されている業種別おおよその見込み数なのか。これが五年三十四万人です。あるいは、法案が成立した後、法務省がつくりますと言っている分野別積み上げ見込み数なのか。どちらのことを総理は運用する上限としてこの答弁の中でおっしゃっているのですか。確定させてください。

安倍内閣総理大臣 もう既に法務大臣が答弁していると思います。

 いわば、私が本会議で申し上げましたのは、これは精査した後の数字である分野別運用方針でありまして、分野別運用方針に明記する数字は、受け入れる業種における大きな経済情勢の変化、つまり、各業種の雇用情勢全般にかかわる事項についての大きな変化が生じない限り、五年間は受入れ数の上限として運用することとなる、こう答弁していることでございます。

 したがって、この数字を超えた受入れが行われることは基本的に、基本的に想定していないということでございます。

山尾委員 よく議事録を皆さんも読んでいただいたらいいと思います。

 総理自身が、まずはこの議事録の前半のパラグラフで、今もう既に、この答弁の当時は、これからお示しすると言い、そして、今示された業種別の見込み数について、これを受入れ数の上限として運用すると、はっきり議事録に残っております。

 しかし、これは実は違うんだ、実は、法案が通った後につくる分野別運用方針に明記する数字を受け入れるというのが本来の趣旨なんだ、こういうふうに今答弁の修正をされたというふうに思います。

 そう思うと、結局、今存在しない数字、法案が通ってから法務省がつくりますという、今よりまだましかもしれない分野別の積み上げ数字、この今存在しない幻の数字を待ってくれ、こういうことになるんですね。

 そうしたら、今の数字、五年間で三十四万人、これをもとにして積み上げてきている議論は無駄になるんじゃないですか。法案が通った後に、いや、分野別で積み上げてみたら数字が変わりましたとなるんじゃないですか。五年間三十四万人を前提に、国民も世論を形成し、メディアもメディアとしての意見を形成し、私たちもその数字を前提に議論しようとしても、今はっきりしました、法案が通った後に分野ごとに積み上げる数字こそが、法務省として、安倍政権として本来よりどころにすべき数字なんだと。そうしたら、この立法府の議論というのは何なんでしょうか。

 四つ目、お伺いをいたします。拡大する労働の対象です。

 総理は、単純労働には拡大しないという単純労働とは何でしょうか、こういう私の質問に対して、特段の技能、技術、知識又は経験を必要としない労働に従事する活動を行う外国人を受け入れる政策については、これをとることは考えておりません、この議事録二ページの上段左側です。

 総理にお伺いいたします。これは大事なことなので。

 特段の技術も技能も知識も経験も要らない仕事とはどういう仕事ですか。

野田委員長 まず、客観的に、そのことについて、法務大臣の方からどういうものかを聞いて……(発言する者あり)まず、その言葉について、法務大臣の方から。

 では、内閣総理大臣、お答えください。

安倍内閣総理大臣 ただいま、どんなものですかということについてお伺いがございましたから、これは所管する法務大臣が適当だろうという判断を委員長がされるのは、私は当然のことであろう、こう思うところでございます。

 これまで……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 なかなか冷静なやりとりができないので、ちょっと、委員長、少し注意していただけますか。

野田委員長 ちょっと、答弁を聞きましょう。御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 これまで政府が示してきた外国人労働者の受入れの基本方針は、専門的、技術的分野の外国人労働者は積極的に受け入れ、いわゆる単純労働者の受入れについては、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応することが不可欠というものであり、引き続き、政府としては、特段の技術、技能、知識又は経験を必要としない労働に従事する活動を行う外国人を受け入れる政策については、これをとることは考えていません。

 今回の……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 今回の新たな受入れ制度は、あくまで、専門的、技術的分野を拡充し、一定の専門性、技能を有する外国人材を受け入れようとするものであり、従来の基本方針を変更するものではなく、ましてや、これは委員が今言われているように、特定の労働分野又は仕事を単純労働か否かで分類するものではありません。

 そこで、今の御質問については、では、特段の技術、技能、知識又は経験を必要としない労働の具体例は何かという御質問だろう、こう思います。

 そこで、今回の受入れ制度は、いわゆる単純労働者の受入れを認めるものではなく、特定の労働分野について、試験や技能実習による、実務経験などによる一定の専門性、技能を有する外国人を受け入れるものであります。

 お尋ねの点については、さまざまな作業が考えられるものの、こうした場において個別具体的に例を示すのは控えた方がよいと考えております。

山尾委員 私、総理の言っていること、半分わかるんです。これが具体的に特段の技能や技術を要しない仕事だと特定することは、その仕事に従事している方の尊厳を壊すことになるんじゃないか、そういうことをもし言っていらっしゃるなら、私もそれを懸念しております。だから私、この質問をしているんですね。

 法務省は、ヒアリングの中では、例えばと、土を右から左に動かすだけの仕事と例示をしました。この例示、維持されるんですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 今回の受入れにおいては、個別の作業に着目して単純か否かを判断するものではなく、従事する業務を総体として、例えば、各業務を構成する複数の作業の内容とか、手順であるとか、要求されるスキルであるとか、知識であるとか経験などを、全体として評価するわけでございます。その上で、一定の専門性、技能を有するかについて評価するものであります。

野田委員長 大臣、簡潔に。

山下国務大臣 ということで、一般的、抽象的にここで例を示すということは、先ほど申し上げた総合的な評価、それをやることになるということを御理解いただいた上であれば、やはりここは適当ではないということになります。

山尾委員 では、法務省の例示は撤回するということでありました。

 総理に伺います。

 こういった、今回外国人には拡大をしない、特段の技能、技術、知識又は経験を必要としない労働は、この日本社会で誰が担うことになるんですか。

安倍内閣総理大臣 単純労働についてどうかという質問については、既にこの予算委員会において山下大臣からお答えをさせていただいて、大臣として、多くの方々がなりわいのために一生懸命なされている仕事を単純労働といわば切り分けていく、簡単に切り分けていくことはするべきではないという趣旨の答弁は、大臣としてはそう答弁をされているところでございます。

 そこで、実際に今既にさまざまな分野において人手不足が深刻になっているわけでございますが、その中においても、しかし、その分野で頑張ろうという日本の方々もたくさんいるわけでございますし、生産性の向上にも全力を挙げ、政府としても支援をしているところでございまして、そういう中で、さらに努力を重ねてもなお足りない分野について、外国人の人材を活用していこうということでございます。

 しかし、そこで、御質問は、では単純労働はどうかということでございますが……(山尾委員「誰が担っていくんですか」と呼ぶ)それが誰かということを私は今ここで答弁することはできないのでございますが、いずれにいたしましても、これは需要と供給という関係で成り立つものでございますが、さまざまな形で、今……(山尾委員「答弁できないならもうやめてください」と呼ぶ)今……(発言する者あり)

野田委員長 お静かにお願いします。

安倍内閣総理大臣 済みません、答弁している最中に、質問されたのに、やめてくださいというのはどうかと思うわけでございますが、今まさに、まさに答弁の途中でございます。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 それは、今、さまざまな形でいろいろな事業が成り立っているわけでございますが、なかなかその作業自体に、その作業からどんどんステップアップしていく見込みのないものについては、例えばアルバイトという形でさまざまな人がかかわっているものもたくさんあるわけでございまして、そうした形で補充されていくということもあるんだろうというふうに考えております。

山尾委員 つまり、諸悪の根源は、単純労働なんて割り切れる仕事はないんだけれども、単純労働は入れないからそんなに拡大しません、こういうふうに言いたいがために、例示をやはりこういう場で一つも挙げられないような幻の単純労働なるカテゴリーを無理につくるから、こういう苦しい答弁になるんじゃないですか。

 今の話でいったら、外国人に拡大しない単純労働は、じゃ、誰が日本社会で担うのか。日本人が担うことになる、なぜこの答弁ができないんですか。

 職業に貴賤なしという社会の価値観を壊したり、一部の人の仕事を無理やり単純労働と切り分けて、そこは日本人にとっておきますというアナウンスをせざるを得ないような、労働者を分断したり労働者の尊厳を傷つけるようなことはもうやめていただきたいというふうに思います。法務大臣、結構です。

 次に、総理に伺います。これは移民についてですけれども、シンプルな質問です。

 総理は、安倍政権としては、国民の人口に比して一定規模云々、いわゆる移民政策をとることは考えていませんと言っておられます。これは議事録に出ておりますので見てください。

 この定義は、安倍政権あるいは日本政府独自の定義なのか、それとも同様の定義を用いている組織や学説があるのか、それを教えてください。

野田委員長 では、まず、定義について、山下法務大臣、簡単に。

山下国務大臣 移民という言葉は、さまざまな論者においてさまざまな文脈で用いられており、明確に定義することは困難であります。

 安倍政権としては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとするといった政策はとる考えはないということでございます。

山尾委員 つまり、具体的な、じゃ、総理に伺います。この定義は、ほかにこういう定義をとっている組織や学説があるんですか、ないんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、なぜこういう、いわゆる移民政策ということでお話をさせていただいたかということでございますが、我々、移民の定義ではなくて、こういう、私たちが考えている、いわば国民の多くの方々が懸念を持っておられるような政策をとることは考えていないという意味において、私たちはいわゆる移民政策をこのように考えている、懸念があるところの移民政策をとる考えはないということでお答えをさせていただいたところでございます。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 この問題は大切な議論でございますから、外野からどんどんやじりまくるとかいうのはもう皆さんやめましょうよ。しっかりと冷静に議論するべきだろうと思いますし、また、労働者の方々を私が一方的に何かおとしめているような、そういう決めつけをするのも生産的な議論では全くないのではないのかな、そんなように感じているわけでございまして、いわゆる移民政策ということにつきましては先ほど山下大臣がお答えをさせていただいたところでございまして、これは私たちの……

野田委員長 総理に申し上げます。

 質問時間が終了いたしましたので、簡潔にお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 はい。

 いわばこれは、学説がある、あるいは海外の基準ということに準拠するものではなくて、懸念にお答えする形で、いわゆるこういう移民政策をとることは考えていないということをお答えさせていただいたところでございますが、いずれにいたしましても、静ひつな環境の中で冷静な議論をしたい、このように考えております。

野田委員長 質問時間が終了しています。

山尾委員 結局、これは日本政府、安倍政権独特の定義であって、準拠するような定義や学説や組織はないということがはっきりいたしました。

 なぜこういう質問をしたかというと、国際社会のスタンダードから見たら移民に該当する政策を、ほかに類を見ない独特の定義づけをして移民ではないと言うことが有害無益だからです。国際社会を誤解させるし、国内においては国民が政策選択するための正確な情報を提供しないことになります。だから、こういった答弁はやめていただきたい。

 そして、しっかり、大事な論点については逃げずに安倍政権として決断をして、この立法府と国民に問うていただきたい。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

野田委員長 この際、逢坂誠二さんから関連質疑の申出があります。山尾さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。逢坂誠二さん。

逢坂委員 立憲民主党の逢坂誠二でございます。

 今のやりとりを聞いて多くの皆さんが理解をされたと思うんですが、今回の入管法の改正、実は中身は、何にも決まっていないんです、すかすかなんです。新たな在留資格をつくるんだということだけは明確であります。しかしながら、永住権の扱い、あるいはどれぐらいの人数の方を受け入れるのか、あるいは単純労働とはいかなるものか、総理が言っているところの移民政策というのは何か、こういうことも全く決まらない中で議論させられているというのが実態であります。これでは決断のしようがないというのが私の強い思いであります。

 現在、私は、確かに日本、人口減少社会、労働力も不足をしている、そういう観点から考えて、外国の方にこの国内で活躍をしてもらうということは非常に重要なことだと思っております。しかしながら、この制度設計をあやふやなままでやってしまいますと、将来に大きな禍根を残します。特に、現在、国内での事実上の労働力になっている技能実習生の皆さん、あるいは留学生として労働されている皆さん、こうした方々の実態、現状、これを把握して、それへの対応、対策もしっかりやる、その上で新たな制度設計も考えていくんだということでなければ、本当に私は、将来大きな過ちを犯しかねない、そう思っております。

 その意味で、総理には、きょう、基本的な事項でありますけれども、しっかり答弁をいただきたい、そう思います。

 まず、その前に、委員長にお願いしたいと思います。

 現在、技能実習生の個別の聞き取りの調査、これが政府の方で行われていると承知をしております。二十九年は二千八百名から聞いているわけですが、この個別の個票について、現在、各会派一名しか閲覧ができないということになっておりますので、せめて予算委員会のメンバーにも各会派二名閲覧できるようにしていただきたい。

 加えて言うならば、あれのコピーがとれないなどということは、私は異常な姿だと思います。今、写経するかのようにみんなが手分けしてあれを書き写している、こんな無駄なことはやめさせていただきたい、コピーをとれるようにもしていただきたい、このことを強く申し上げさせていただきます。

野田委員長 後刻、理事会にて協議、お諮りいたします。

逢坂委員 よろしくお願いします。

 それでは、総理にお伺いします。

 全く基本的な事項なのでありますけれども、今回の入管法の改正は、人手不足、これがある種の立法事実になっているというふうに思います。

 人手不足だから労働力として海外の方に来ていただくということでありますけれども、私は、海外から来ていただく方、確かに労働力として来ていただくんでしょうけれども、その方々も技能実習生の皆さんも、単なる労働力ではないというふうに思うんですね。一人の人間、みんな、泣いたり、笑ったり、怒ったり、悩んだり、遊んだり、買物をしたり、あるいは食べたり、あるいは人を好きになったり人を嫌いになったり、一人の人間だ、そういうふうに思うわけですが、総理は、今回のこの入管法の改正で枠が拡大される、そうやって入ってこられる方々も、単なる労働者ではなく一人の人間である、そういう思いをしっかりお持ちになられておられるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 それはそのとおりであろうと思います。

逢坂委員 例えば、それが総理の言うところの移民政策であろうが移民政策でなかろうが、どんなものであろうといえども、国内へ入ってこられる方は一人の人間である、そういう意識であるということに間違いはございませんか。

安倍内閣総理大臣 それは間違いございません。

逢坂委員 次に、多くの人が悩ましく思っているポイントがあります。それは、今回の在留資格が拡大される皆さん、あるいは技能実習生の皆さん、この方々が、日本人よりも安い賃金で働く、いわゆる安価な労働力なのではないか、そういう認識の人もいるようにも思います。

 しかし、私は、日本人と同じような仕事をするのであれば、日本人と同じような環境の中で同じ程度の賃金が保障される、そういう方々ではないかというふうに思うわけですが、総理は、この点、どう考えておるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 それはもう既に今まで再三答弁させていただいておりますように、日本人と同等以上の給与が払われなければならない、このように申し上げているところでございます。

逢坂委員 日本人と同等以上の給料を払う。

 それでは、例えば、日本よりもいわゆる経済力の低い国というのは世界にあります。そういう国から来られる方々に対しても、日本人と同程度の賃金できちっと働いてもらうんだ、仮にそういう方々が来ても低賃金で働いてもらうということはない、こういう認識でしょうか。

安倍内閣総理大臣 いわば、例えば、雇う側がより安価な労働力を求めようとして人を入れるということではだめですよということでございまして、もちろん最賃以上であるのは当然でございますが、その分野において日本人と同等以上、またその分野において、その地域においてということでもありますが、同等以上でなければだめだということでございまして、でなければ、結果として、それは日本人が得ているいわば給与にも、これはそれを低減させる方向に向かっていく圧力にもなるわけでございますから、そういうことにはしないというのが私たちの考え方でございます。

逢坂委員 明確に余りおっしゃっていただけませんでしたけれども、日本よりも経済力の弱い国から来た方々に対しても、日本人と同様、同じような仕事についているのであれば、同程度以上の給与を払う、そういう認識であるということを改めて確認させてもらいます。

安倍内閣総理大臣 今委員がおっしゃったように、いわば日本人と同等ということ、同等以上ということは、その方々の出身国がどういう経済的状況であろうと、あるいは所得水準がどうであろうと、それは変わらないということであります。

逢坂委員 それと、もう一つ総理は言いました、外国人の労働者の方々の賃金が下がるということによって日本人の賃金も下がっていくようなことにはしないんだという答弁もされましたけれども、これはこの認識でよろしいかということを改めて確認すると同時に、これはどうやって担保するんでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 今回は、人手不足が深刻な分野に限って入れる、そしてその前提として、国内人材の確保そして生産性の向上、これを前提としております。

 そして、制度の運用に当たっては、業所管省庁においてしっかりと把握して、外国人材が確保され、その分野において人手不足の状況が解消されつつあるという段階で、前広に外国人の新規入国の一時的な停止に向けた対応をとるということになります。

 また、同等賃金のものに関しては、これは今回受入れ機関に対して指導助言あるいは命令であるとか立入検査ができるようなことになっておりまして、そうしたことでしっかりと実効性を図っていきたいというふうに考えております。

逢坂委員 山下大臣は、今、受入れ機関に対して指導助言をすることによって日本人の賃金が下がらないようにするんだということですが、現行の技能実習制度でそれはうまくいっているんでしょうか。

 先般、私も、技能実習生の調査、あの個票を見せていただきました。時給三百円というものがありました。労働時間百三十時間というものもありました。現行でも指導助言、その役割を政府は担っているはずです。でも、それでもうまくいっている、だから同じ制度を続けるのか。違うんじゃないですか。うまくいっていない、にもかかわらず同じ制度を続けるのであれば、問題の解決にならないじゃないですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 先ほど逢坂委員がおっしゃった個票というのは、平成二十九年の失踪技能実習生のことでございますが、これは、二十九年十一月から施行された新たな技能実習法施行前の失踪した実習生ということになります。

 そして、今般、確かに、おっしゃるように、報酬についてしっかり把握できていなかったんじゃないかというふうな御指摘がありました。それについては新たな技能実習法でしっかりと担保していくということでございますし、また、今回の調査結果を受けまして、改めて、法務省内に大臣政務官をヘッドとする技能実習の運用に関するプロジェクトチームを設けて、そしてこの運用について検討していただく。

 そしてさらに、聴取票がございましたけれども、それにおいて違法あるいは不正が認められる、そういった対象者あるいは対象機関に対しては、しっかりと個別に調査する、徹底的に調査するということを入管局長に大臣として指示させていただいたところでございます。

逢坂委員 先ほど私が例に出した個票は二十九年の旧法のものであるんだと。であるならば、大臣、三十年、ことしももう既に四千名の方が実習先からいなくなっていて、調査もしているわけですから、この半年間の調査結果を出してくださいよ。本当に新法が機能しているのかどうか、それは検証しなきゃならないじゃないですか。それもやらないで、大丈夫です、指導監督しますと。そんなのにわかには信じられませんよ。出していただけますね。

山下国務大臣 申し上げます。

 まず、大前提として、技能実習、それと今回の新たな受入れというのは別だというところでございます。それがまず一点。

 そして、今、新たな制度に基づくことにつきましては、現在それは、集計、精査、作業中ということでございます。

逢坂委員 新法による効果がどうなっているのか、精査、作業中である。しかし、今回の新たな在留資格は、技能実習制度の上に積み重ねるものです。制度としては別であるとの主張を百歩譲って認めるにしても、技能実習制度を前提にしているわけですから、技能実習の実態がどうなっているのか、これを明らかにすることは法案議論の大前提だと思います。

 しかも、後に多分、他党の議員がやってくださると思いますが、今回の新たな在留資格においては、技能実習から一〇〇%移行してくる分野もあるんです。試験ではなく技能実習から一〇〇%移行してくる分野もあるにもかかわらず、今の技能実習の実態、これを明らかにできないなんというのは、法案審議の前提が壊れているじゃないですか。大臣、早目にそれを出してくださいよ。

山下国務大臣 お答え申し上げます。

 今、例えば新法においては、外国人技能実習機構が、本年九月末現在で三千七百件の実地検査を行っております。そしてまた、二国間取決めを十カ国との間で締結している。そうしたものを総体として検討する必要がある。

 だから、個票の集計、それ自体で見るというのではなくて、例えば三千七百件の実地検査であるとか、そうしたものをしっかりと調べた上で、的確に現状を把握し、運用について検討をしてもらう、そのことを大臣政務官をヘッドとしたプロジェクトチームでやっていただくということを今大臣として指示しているところでございます。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

逢坂委員 さまざまな調査、それを総体として点検をして考えていくんだということですけれども、それはこれからやられるわけですよ。今、法案審査をしているこの段階で、我々にその結果が示されているわけではないんですよ。個票の結果も出ない、ほかの調査の結果も出ない、何にも出ていない。

 個票だって、これは野党の多くの皆さんが頑張って主張してやっとそれが開示されるようになった。その結果、皆さんはミスだ、ミスだと言いますけれども、調査項目にもないような、より高い賃金を求めてなんていうまとめをしていることが明らかになったじゃないですか。

 だから、今大臣が、いや、個票を出すことだけではないんだ、ほかにもいろいろな調査があるんだと言うのならば、その調査結果をしっかり出した上で法案の議論をしようじゃないですか。こんなもの、議論できないじゃないですか。実態は後から教えます、法律だけ通してくれ、あとは白紙委任してくれなんて、こんな無責任なこと、立法府としてやれませんよ。

 よろしいです。総理、次の論点に行きます。

 先ほど総理は、労働力だけではなくて、人としてということを言われました。私も全くそのとおりだと思います。やはり、一人の人間として受け入れるということが非常に大事なことだと思います。

 ただ、私は、今回の法案を見ておりますと、労働環境あるいは入管の管理、こういうところについては随分力点があるようですけれども、総理が言うところの人としての処遇をする、そういう点においては、非常に心もとない法律ではないかというふうに思います。

 人として受け入れるための対策、対応、計画、これはどうなっているでしょうか。

安倍内閣総理大臣 外国人材を受け入れるに当たり大切なことは、例えば、賃金を含む労働条件や労働法制の充実、安全、安心で暮らせる生活環境、多文化共生社会の実現などにより、外国人の方々が働き、暮らし、学びたいと思っていただける環境を整えることであります。

 そのため、政府としては、外国人の方々を、我が国で働き、生活する方として迎え入れ、社会の一員としての生活環境を確保するよう、現在検討を進めている外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策をしっかり実行に移し、在留のための環境整備について関連施策を積極的に推進していく考えであります。

逢坂委員 対応策はいつまでにできるんですか。簡単にお願いします。

山下国務大臣 総合的対応策につきましては、年内にというふうに考えております。

逢坂委員 これも、生煮えどころか全く示されていないわけですよ。入国管理、これを強化するということ、これは法案上多少見えるところはあります。しかしながら、新たに入ってくる外国人の方を人として受け入れる、そのための対応策は年内だ、これでは法案の議論のしようがないじゃないですか。一体どうなっているんですか。これも白紙委任しろというんですか。

 それでは、次にお伺いします。

 総理、これもよく議論になっていることです。医療保険、年金、介護、労働保険、これらの適用については、今回法律が提出されておりませんので、現行技能実習生に適用されている考え方、日本人と同一の条件でこれら社会保険を適用するという考えでよろしいですか。

野田委員長 厚生労働大臣。(逢坂委員「総理、総理」と呼ぶ)

 まず、厚生労働大臣根本匠さん、事実関係、簡潔にお願いします。

根本国務大臣 基本的には、日本人に適用されているものについては、基本的に社会保険、医療保険、適用されることになります。

逢坂委員 それでは、来年四月以降も、法律が提出されない限りは、日本人と同じ条件でさまざまな社会保険が適用されるということを確認させていただきました。

 もう一つ懸念されていることが、総理、あります。今回の外国人の労働者の方が来ることによって日本人の職が奪われるのではないか、こういう懸念があるわけですが、これについては、総理、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

安倍内閣総理大臣 であるからこそ、特定の分野に限ったわけでございます。

 今回の受入れを考えている分野においては相当人手不足が深刻であるという分野でございまして、その中において、更に、生産性を向上させていく、機械化を進めていく等々の、また待遇等々の改善も図りながら、なるべくこの不足分をこれは縮小していくという努力をした上においてもなお不足するという分野に限っているわけでございまして、その観点から、それがいわばその分野で働こうとしている日本人の就業に対して影響を与えることはない、このように考えております。

逢坂委員 今の答弁、非常に心もとない感じがするんですが、そのときに、総理、大事になるのが、人手不足あるいは人手が充足された、それを判断する基準が非常に大事になると思います。

 人手不足を判断する基準、人手が充足された基準、これがそれぞれ違っていれば、それは使い物にならないわけですけれども、この人手不足を判断する基準、これについては、明確に客観性のあるもの、現時点で決まっているでしょうか。

安倍内閣総理大臣 人手不足の状況を判断する指標としては、有効求人倍率のほか、各業種における公的統計、業界団体を通じた所属機関への調査等を用いることとしているところでございます。

逢坂委員 それは、具体的に客観性のあるものになるという保証はありますでしょうか。例えば、声の大きい業界からだけ聞いてしまうとか、あるいは、本当は人手不足なんだけれども、政府とのつながりが薄いので声に出せないとか、そういった声はどうやって酌み上げるんでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、公的統計、これは、客観的な、例えば雇用動向調査の欠員率でありますとか、あるいは介護であれば介護保険事業計画であるとか、そうした公用的な信頼できるデータに基づくことになっています。

 そして、具体的な人手不足に基づいて、分野別にどのような上限を設けるか。例えば、要するに五年間の上限を設けるかにつきましては、これは政府全体、具体的には関係閣僚会議で検討するということになりますので、一つの業態が言ったからといって、それがふえるというものではありません。政府全体で、全体の労働市場等のバランスを見ながら判断していくということでありますので、委員御懸念のようなことはないというふうに考えております。

逢坂委員 山下大臣、せっかく答弁いただきましたので、今おっしゃったような具体的に客観性のある指標、それはいつ決まるんですか。

山下国務大臣 具体的には、本法案成立後、基本方針、これを閣議決定で決めます。これが全体的な分野別の方針。そして、各分野につきましては分野別運用方針で決めるというのが法律のたてつけでございます。

逢坂委員 すなわち、日本人の職が奪われるかどうか、それが懸念されている、それの判断の非常に重要なもとになる人手不足を判断する指標、これも法律が通った後に決めるんだと。

 結局、これも丸投げじゃないですか。新しい在留資格をつくるということだけ判断してください、あとは全て政府にお任せください、白紙委任してくれと。こんな法律、我々も外国人の労働者の皆さんに国内で活躍してもらうことは重要だと思っていますよ。だけれども、こんなものは危なくて、不安で、おいそれといいですねと言える判断の要素がないじゃないですか。

 これは、もし政府がそういった個別のものに対しての考え方が定まっていない、例えば今の人手不足に対してもよくわかっていない、永住権の付与についてもよくわかっていない、単純労働についてもまだよく政府としては考えが定まっていないというのであれば、きちっと考えを定めた上で最終的な議論をしようじゃないですか。あるいは、国会審議の中で、それを繰り返す中で政府の方で考えをまとめていってもいいですよ。

 だから、これは、この法案はきょうやあすに通すなどというような、そういう内容のものではない、そのことだけは明確に言っておきたいと思います。

 それから、実はきょうはほかにもやりたいことがあったんですが、私、第二次安倍政権がスタートしてから本当にまずいなと思うことがたくさんあります。

 資料がお手元に配られていると思いますが、この中で、共謀罪、二〇一六年のところに書いてありますけれども、共謀罪については、法案が提出されたのは二〇一六年度で、成立したのは二〇一七年ということでありますけれども、いずれにしても、特定秘密保護法、あるいはカジノ法案、共謀罪、あるいは安保法制、こういったものは、国民の中でもいろいろ議論が割れていた、賛否が分かれていた、こういうものに限って安倍政権は強行採決をしているんですよ。共謀罪に至っては、参議院の委員会で採決もせずに、中間報告という形で本会議に報告をして強行的に成立をさせたわけです。一体どうなっているんですか。

野田委員長 逢坂さん、質問時間が終了いたしました。

逢坂委員 それと、ほかにもデータのミス、こういったことがたくさんある。このことについても、改めてまた指摘をさせていただきたいと思います。

 終わります。

野田委員長 これにて山尾さん、逢坂さんの質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一さん。

後藤(祐)委員 国民民主党の後藤祐一でございます。

 国民民主党は、「つくろう、新しい答え。」これをスローガンに、厳しい追及と建設的な提案を織りまぜてまいりたいと思います。

 まずは、ちょっと順番を入れかえまして、立憲民主党からも厳しい追及のありました外国人労働者の関係で少し議論を先にさせていただきたいと思います。

 我々国民民主党も、この法案が極めて生煮えであるということ、永住資格、あるいは上限の問題、単純労働とは何か、こういった問題意識については全く意識を共有するところでございますが、今かなり議論がありましたので、別の論点を提示させていただきたいというふうに思います。

 まず、これは総理にお伺いしたいと思いますが、この外国人労働者の確保というのは地方で特に深刻だと思うんです。現行の技能実習制度は大変問題の大きい制度でありますが、転職できないんですね。入った会社で、失踪しない限りはその会社で勤め続けなきゃいけないので、地方のお給料の安いところでも、ずっとそこにい続けるわけです、法律を守る限りは。ところが、今度の法律で、特定技能一種というものは同じ業界であれば転職ができます。そうしますと、お給料の高いところに合法的に転職できるわけですよ。

 そうしますと、今まで、技能実習制度、大変問題は大きいんだけれども、地方のお給料の安いところでも外国人労働者の方がい続けていただいた、ところが、今度の法律で技能実習の方が新しいのに移ると、どんどん給料の高いところに移動してしまうのではないかと思うんです。

 地方における労働力の確保という観点から見たときに、この法改正では、より給料の高いところに集まってしまって地方は大変困ることになると思うんですが、総理の基本的認識を問いたいと思います。これは基本的な話ですので、総理に聞きたいと思います。

野田委員長 まず、今の現状をしっかり把握してもらって。

 山下法務大臣、簡潔にお願いします。

山下国務大臣 お答えいたします。

 これは、就労の在留資格というのは、法律上、本邦において行う活動を定めるものということで、一般法である入管法上、特定の地方に限定した活動を法律で定めて外国人を地方に強制的にとどまらせるという御趣旨であれば、それは困難と言わざるを得ません。

 ただ、今回の制度で、人手不足の状況に応じてその分外国人の方々が入ってこられれば、大都市圏に限らず地方においても人材の受入れが進むものと考えておりますが、いずれにせよ、地方で人手不足が深刻な業種にも配慮しつつ、必要な外国人材を適切に確保していく方策を検討していくこと、政府全体で考えていくということが考えられます。

安倍内閣総理大臣 今委員の御指摘は、確かにそういう側面はあるだろう、こう思います。

 しかし、不足している総数というのは、例えば東京だけが不足しているのでは、その数ではなくて、日本全体の総数でございますから、全てが東京に集まるということではなくて、そこにあきがなければ、例えば山口県から東京には行かないわけでございます。

 と同時に、その地域においての物価の指数も違うわけでございまして、いわば、食費、居住費等々は、それぞれの地域は、最低賃金は安いけれども、住環境においてはより賃貸料も安いし、食費も余りかからないということも当然あるんだろうと思うわけでございます。

 そういう中において、それでもなお同じ業種で高いところに移ろうという人たちはいるかもしれませんが、しかし、現下の状況を考えれば、その中においては、まずは、そういう懸念点があるということは留意しつつ、今、とにかく地方においても大都市部においても人手不足が深刻になっている中において、これは喫緊の課題であろう、こう考えているところでございます。

後藤(祐)委員 総理はこれが課題であることをお認めになられました。

 実際、私、この週末にも、地元の、外国の方を技能実習で受け入れておられて、非常に立派にやっておられる方のケースですけれども、今度の法律だと転職自由なんですよと言ったら、ええっと驚いていましたよ。そうしたら、自分のところで働いている方々はどこへ行っちゃうのと。でも、この法案では、それで給料の高いところにある程度移ることは予想されますよね。

 地方の人手不足問題をどう解決するかということについて、この法案では一体どういう対策を講じるつもりなんですか、総理。

野田委員長 まずは、山下法務大臣、対策について。

山下国務大臣 今回の制度では、地方での人手不足が深刻な業種にも配慮しつつ、必要な外国人材を適切に確保していく方策を政府を挙げて検討中というところでございます。

 そしてまた、簡単にかえられるのかということにつきましては、一つは、やはり受入れ機関、これがかわるということになりますと、その都度在留資格の変更ということになりますので、そうしたことで、しっかりと情報を集めながら対応をしていきたいというふうに考えております。

後藤(祐)委員 検討中。地方の外国人労働者の方はどうするんですか。今、技能実習で、制度としては問題があるけれども、何とかそこで働いていらっしゃる方が東京に集まってきちゃう。全員じゃないですよ。改悪だと現場では言われていますよ。

 では、もう一つ論点を提示したいと思いますが、技能実習の現場で、お給料が手取りベースで見たときに、安い、最低賃金を割っている、その原因の一つとして、会社側がなかなか厳しいというのもあるんですけれども、中間マージンを取っている方々がいろいろなところにいるんですね。例えば、送り出し国のいろいろなブローカー。あるいは、ちょっと前まで、JITCO、公益財団法人国際研修協力機構というところがありました、そこに対しての会費みたいなもの。あるいは、監理団体の中には、立派にやっているところとそうでもないところがあったりします。

 いろいろなところに中間マージンが取られて、会社としては、いろいろなところに払っちゃうから、自分のところで働いている外国人労働者の方にお給料が最低賃金レベルでしか払えなくて、そこから寮費だとか食費だとかを引くと最低賃金を割ってしまうというような現実があると思うんです。

 これも総理にお伺いしたいと思いますが、この中間マージン、これを減らしていかないと、外国人労働者の方で日本で働いている方の問題というのは解決しないと思うんですよ。この中間マージンが非常に問題があるということについて、総理の御見解を聞きたいと思います。

野田委員長 まず、山下法務大臣、中間マージンの話をしてください。

山下国務大臣 お答えいたします。

 中間マージンを取るような悪質ブローカーにおいて、この悪質ブローカー対策につきましては、例えば、新たな技能実習法のもとで、二国間取決め、要するに、ブローカーは外国にいる場合もございますので、二国間において取決めをすることによって、そうした悪質な業者、送り出し機関、これをしっかり把握していって排除していくということでございます。

 技能実習につきましては、そうしたことで、例えば監理団体などについても管理をしっかりやっていく。

 そして、今回の新たな受入れ制度についても付言させていただければ、これは、ブローカーなどの介在を防止するために、外国人材又はその親族が保証金等を徴収されている場合は受入れができないということを省令等でしっかりと定めるということを検討しております。

 そして、在留資格認定証明書、これは入国審査のときに必要なわけですが、保証金等を徴収されていないことの確認を行う、そして受入れ機関や登録支援機関等に対してもしっかりと周知、指導するということで、悪質なマージンを取るブローカー排除をしていきたいというふうに考えております。

後藤(祐)委員 もともと不適切なやり方でやろうとしている方にそういったことを守るインセンティブがどれだけあるかと思うんですが。そもそも、今の研修制度は、監理団体は許可制なんですね。ところが、今度の法案ですと、登録支援機関という制度になって、登録制なんですよ。今までより緩くなるわけですよ。いろいろな人が出てくるかもしれない。今大臣がおっしゃったような担保措置がとてもきくと思えないんですね。

 この中間マージンについてはもっと問題な点があって、先ほど少し触れましたけれども、JITCO、公益財団法人国際協力研修機構というのがありまして、去年の法改正までは、ここがお墨つきを出すと入管の許可が出るというので、ここに会費をたくさん納めて、ここにお墨つきをもらって入管を通してもらうというのが、去年の法改正までの実態上の実務でした。去年の法改正で別の機構というのができて、少し、このJITCOにお世話になる意味はあるのかどうかという話になってきているんですけれども。

 これはJITCOのページからとったものですが、会費をこれだけ、資本金によって違うんですけれども納めている。この会費収入の総額が十七億ぐらいある。そして、ここの人件費というのが十五億円ぐらいある。

 実は、JITCOの所管というのは公益法人担当の片山大臣だと伺っていますが、片山大臣、これで事実関係に間違いないですか。

片山国務大臣 お答えをいたします。

 委員御指摘の点につきましては、当該法人に御確認させていただいたところ、平成三十年の三月三十一日現在において、企業を含めた賛助会員数が計二千二百七十二団体、十六億八千万円余の賛助会費収入であり、内訳につきましては、監理団体が千八百五十一、約十五億九千六百万円の収入、企業は四百二十一社、約八千六百万円の収入ということでございました。

 以上でございます。(後藤(祐)委員「人件費、答えていない」と呼ぶ)

野田委員長 片山大臣、人件費。

片山国務大臣 このうちの人件費につきましては、ちょっと今手元に持ち合わせてございません。御通告がなかったので。

野田委員長 片山大臣、今の質問の答弁はできますか。

 ちょっと速記をとめます。

    〔速記中止〕

野田委員長 じゃ、速記を起こしてください。

 片山国務大臣。

片山国務大臣 お答えいたします。

 人件費につきましてという細かい御質問がなかったので、ちょっとこちらにお持ちしておりません。

後藤(祐)委員 これはこの前、内閣委員会でやったときに、その前にきちんと通告しています。ですから、もう調べ終わったものがあるはずです。

片山国務大臣 お答えいたします。

 内閣委員会で、確かに、天下りにつきましての人数ですとかそういったことは御通告があったのでお答えはしておりますが、こちらの委員会の方ということでは一切通告をいただいておりません。

 以上でございます。

野田委員長 後藤さん、質問通告はしておられますか、きょうの。

後藤(祐)委員 内閣委員会の同じ質問のときにしております。きょうの特定ではしておりませんので、私から紹介します。

 このJITCO、二つに人件費が分かれているんですね。事業費の方の人件費で十二億八千万、管理費の方の人件費で約二億、合計するとこの十四億八千五百万ぐらいになるというのが、これはJITCOの方のホームページに掲げられているものでございます。

 これは明確に、天下りの話を先ほどされておられましたけれども、このJITCOに中央省庁からの再就職者、役員のうち何人行っておられますか。

片山国務大臣 お答えをいたします。

 当該法人に御確認したところ、十一月二十日現在、役員十五名のうち中央省庁からの再就職者は七名、それから、常勤職員二百三十三名のうち中央省庁からの再就職者は二名、役員及び職員の中から、中央省庁からの現役出向者はいないということでございます。

 内訳も言った方がいいですか、省庁別に。それはいいですか。

 以上でございます。

後藤(祐)委員 つまり、日本じゅうの外国人労働者を受け入れている会社やそれを監理している監理団体から十七億の会費を集めて、天下りも含めて人件費で十五億使っているんですよ。中間マージンが問題だ、中間マージンをたくさん会社が払わなきゃいけないので外国人労働者の方のお給料が最低賃金割れするという中で、天下りがそのお金を取ってどうするんですか。

 更に言うと、去年、法改正でできた外国人技能実習機構という組織があるんですけれども、ここは、天下りはいないそうなんですが、中央省庁からの現職出向という方が二百三十六名いる。これは先日の内閣委員会で、既に厚労省の実務担当者から答弁でいただいております。

 このように、中間マージンが役人の天下りに使われているわけですよ。ここを改めていかなきゃいけないじゃないですか。

 総理に聞きたいと思います。

 この外国人労働者問題は、中間マージンを減らして、会社が外国人労働者の方にお支払いできる給与の分をふやすべきだと思いますが、この中間マージンについての基本的な御認識をお答えください。これは総理に。もうここまでの議論をしているわけですから、総理に。

野田委員長 先に基本的認識。

 山下法務大臣、簡潔に。

山下国務大臣 お答えいたします。

 中間マージンの問題は、例えば、巨額の保証金であるとか、あるいはそうした借金、それを抱えるということが一つ問題であったということでございます。その解消のために、技能実習法を新たに制定したり、あるいは機構が今さまざまな監査をしている、実地調査を行っているというところでございます。

 そして、先ほど、JITCOの問題であるとか、あるいは外国人技能実習機構の問題でございますが、これは、技能実習制度の適正な運用のために、必要な予算に基づいて必要な人員を配置しているというふうに承知しております。

後藤(祐)委員 地方の人材をどうするのか、あるいはこの中間マージンの話をどうするのか。もう目の前の課題じゃないですか。解決策が示されていないではないですか。これから検討しますじゃないですか。

 我々国民民主党は、この入管法に関して対案を取りまとめています。つまり、この法案はざる法であります。今まで挙げられたような問題点をしっかり半年ぐらい議論しようじゃないですか。きょうにもあしたにも強行採決とかいううわさが流れておりますけれども、まず、六カ月間、法案の施行を延期して、以下の八点について集中検討する。

 例えば、今申し上げた、地方の人材確保というのはどうするんですかとか、あるいは受入れ上限について、先ほども議論がありましたけれども、産業別だけじゃなくて地域別に設定するということも考える必要があるんじゃないんですかとか、あるいは、会社側と労働者の間でできるだけお給料を払えるようにするための中間マージンの話なんかも含めて、適切な外国人労働の待遇を確保するためにはどうしたらいいんですかとか、こういったことをしっかり検討した上でもう一回出し直すべきだと思うんですよ。

 我々国民民主党は、こういった検討をした上で、日本が世界に選ばれる国に、もうむしろ外国人労働者は各国で人材のとり合いになってくる面もありますから、世界に選ばれるような国になるような、いい制度設計をしなきゃいけないんですよ。

 我々は、外国人労働者の方に日本に来ていただくことはまず必要なことだと思います。ですが、今言ったような問題点をほったらかしにしたまま今回法案を通すというのは、これは絶対許せないと思いますので、申し上げておきたいと思います。

 では、次のテーマに行きたいと思います。

 北方領土の話について行きたいと思いますが、これは総理が中心になってやっている話なので、総理にお伺いしたいと思います。

 北方領土については、総理が長年、そして、プーチン大統領とも何度となく御議論されているということについては敬意を表したいと思います。

 その上で、四島返還が本来の日本のあるべき姿だということを改めて申し上げた上で、なかなかこれでロシア側がイエスと言わないという中でいろいろな話が出てきているわけでございますが、きょうの新聞なんかの世論調査でも出てきておりますが、歯舞、色丹の二島をまず先行的に返還して、国後、択捉についてはその先の交渉に委ねるべきではないかというような考え方が一つあります。

 そのほかに、二島プラスアルファというような話がありますが、これは、国後、択捉をその先に検討するということではなくて、もう国後、択捉は諦めてしまう、歯舞、色丹だけで日本の領土というのはもうしようがない、その上で、共同経済活動を国後とか択捉でもやらせていただけませんかというような、このプラスアルファは領土じゃなくて、経済的な活動ですとかそういったものが得られるのであればいいのではないかというような考え方が一つあります。

 これがいいということではないですよ。我々は、玉木代表が代表質問で申し上げたように、四島一括がもちろんいい。ですが、もしそれがかなわない場合は、二島先行というのは選択肢として考えないわけではないということを申し上げておりますけれども、この二島で終わりというのは問題だと思いますし、更に言うと、この三つ目にあるんですが、これはロシア側が言っている話ですね。

 これは、十一月十四日、日ロ首脳会談があった後、ロシア側のテレビの討論会で、ロシア科学アカデミーの日本研究センター長であるバレリー・キスタノフ氏がこう言ったそうですね。プーチン大統領なら、共同宣言にある二島は引き渡す、歯舞、色丹ですね、ただし、レンタルだ、レンタルだから主権はロシアにあると言うかもしれないと。つまり、プーチン大統領は、歯舞、色丹ですら主権はロシアにあって、日本にレンタルしますよというふうに考えている可能性があるんですね。

 これは総理にお伺いしたいと思いますが、まず、この二島レンタルというのは、選択肢として日本としては全くのみ得ない話だと思いますし、この二島プラスアルファのプラスアルファが、主権が返ってくることではなくて、経済活動だとかそういったものがプラスアルファだということだとすると、これも問題だと思いますが、これについての総理の御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 領土問題を解決して平和条約を締結するというのが政府の一貫した立場でありまして、この点に変更はないということでございます。

 日ロ間では、これまで、一九九三年の東京宣言あるいは二〇〇一年のイルクーツク声明を始め、多くの諸文書や諸合意が作成されてきておりまして、これらの諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきております。

 その中でも、一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有しているところでございます。この中におきまして、これは御承知のように、一九五六年の共同宣言において、この第九項でありますが、平和条約交渉が継続されること、及び、平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを規定しているところでございます。

 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であると一貫して解釈をしているところでございまして、この考え方のもとに、今後も、プーチン大統領と緊密にこの協議をしながら、双方に受入れ可能な解決策に至りたいと考えております。

 一々の発言に対しては、今後交渉を進めていく上において、反応することは差し控えさせていただきたい、このように考えております。

後藤(祐)委員 3、二島レンタル論も選択肢としてあり得るんですか。これだけは、総理、否定してくださいよ。でも、今の御答弁ですと、この二島レンタル論も選択肢の中に入っている。

 もう一度聞きます。この歯舞、色丹二島レンタル論も選択肢の中に入っているということですか、総理。

安倍内閣総理大臣 選択肢に入る入らないということではなくて、私が申し上げていることは、さまざまな、恐らく、ロシア側あるいは日本側の有識者がいろいろな発言をされると思います。そうした発言について、これは入ります、これは入らないと言うことは適切ではない、こう思っておりますので、まさに交渉の中でしっかりと議論していきたい、交渉外においては交渉の対象となるいわば島々についてのコメントは差し控えたい、こう考えているところでございます。

後藤(祐)委員 歯舞、色丹レンタルという選択肢も否定しないという答弁です。

 これは深刻なことだと思いますが、総理、これを国民がどう見ているかということについて、きょう、ちょうど読売新聞と日経新聞が世論調査をしていまして、けさの読売新聞によりますと、二島の返還を先に実現し、残りの島の返還交渉を続ける、つまりこの1ですね、二島先行返還論、五八%。四島一括して返還されるようにする、二五%に対して、二島の返還で決着させる、一一%です。これは2ですね。そもそも3なんて選択肢に入っていません。

 けさの日経新聞。歯舞、色丹の二島をまず先に返還、1ですね、四六%。四島一括返還、三三%。歯舞、色丹の二島だけの返還、五%です。

 国民は、3はそもそも選択肢に入っておらず、2の二島で終わりというのも五%とか一一%の方しか支持していない。二島先行返還で、国後、択捉はこれから先の交渉ですよというところについては、かなりの国民の方が容認しているようにも受け取れます。

 この国民の受けとめについて、総理、どうお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 今、私が3の二島レンタルを容認しているかのごとくの御理解は、それは間違っていると思います。いわば……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 今、例えばこういう発言をしていますよということに対して私のいわば考え方を述べられては、今後、さまざまな有識者がいろいろな発言をしますよ、それについて私が一々反応するというのは、まるで場外で交渉しているかのごとくになりますから。私が交渉する相手はプーチン大統領ただ一人でありますから、私自身が。つまり、そこでしっかりと交渉はします。そういう中においては、先ほど申し上げましたような基本的な考え方にのっとって交渉をしていくことになるわけでございます。

 同時に、今まで七十年以上この問題が解決をしてこなかったのは事実でありまして、その中で、今回初めて、五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるということで合意が成ったわけでございまして、まさにこれから具体的な交渉が始まるわけでありますから、具体的な交渉に入っていくことについて一々私どもが反応していくことは、これは、ここでの私の発言ということについてはまた反応を呼び、例えば島民の皆さんも今、元島民の皆さんもおられますが、同時に四島に住んでおられる方々もおられて、そういう方々の反応を呼び、悪循環に入っていくことは避けるべきだろう、こう考えているところでございまして、答弁は差し控えさせていただいたところでございます。

 同時に、いわばこの世論調査の結果でございますが、国民の皆様の考え方を反映しているこの世論調査につきましても受けとめていきたい、こう考えております。

後藤(祐)委員 総理、最後のところで、国民の御意見を受けとめてということでありましたので、世論調査は二つ出ていますから、ぜひこの国民の思いを受けとめて交渉に臨んでいただきたいというふうに思います。それは、二島レンタルはそもそも選択肢にはない、二島で終わりというのは五%、一割の人、二島先行返還は選択肢としてあり得る、本当は四島一括なんだ、これが国民の思いだと思いますので、ぜひそれを踏まえて交渉していただきたいと思います。

 この北方領土交渉に関して一つネックになるのが、これは私も今まで予算委員会で何度も扱わせていただきましたが、米軍の問題でございます。

 配付資料にもありますが、これは、「日米地位協定の考え方増補版」という、昔、外務省の中にあった機密文書と言われるものですが、これが今本になっていますので、引用させていただきました。

 返還後の北方領土には施設・区域を設けないという法的義務をあらかじめ一般的に日本側が負うようなことをソ連側と約することは、安保条約、地位協定上問題があるということになる。

 そういう文書があったわけですけれども、この文書があるないとかいうことを問うつもりはありません。総理に中身を聞きたいと思います。

 今の時点で、返ってきた北方領土に米軍を置くことはしないということをロシアに対して約束できますか。

河野国務大臣 交渉の中身でございますから、先ほど総理からも御答弁ありましたように、今、日本側の手のうちをこうした公の場で申し上げることは日本側の利益になりませんので、今、交渉の内容について日本側の考え方を申し上げるのは交渉の中でのみとさせていただいておりまして、交渉外で日本側の考え方を申し上げるのは差し控えていることを御理解いただきたいと思います。

後藤(祐)委員 交渉しているのはロシアとの間ですよね。アメリカとの間じゃないですよね。

 長門にプーチン大統領が来られたとき、総理、思い出していただきたいんですけれども、プーチン大統領は、平成二十八年十二月十六日、山口県での日ロ首脳会談の後の記者会見でこういうふうに言っているんですね。

 日本と米国との間の関係の特別な性格及び米国と日本との間の安全保障条約の枠内における条約上の義務が念頭にありますが、この関係がどのように構築されることになるか、我々は知りません。

 つまり、日本側がアメリカと、仕切ってくれないと交渉しようがないじゃないですか、自分の国のことを何で決められないんですかとプーチン大統領から言い放たれているんですよ。

 総理、やはりこれはまず決着をつけて、なかなか大変な問題だと思いますよ、ですが、こんな昔の古文書なんかどうだっていいんですよ。プーチン大統領に、返ってきた北方領土に米軍を置くなんて非現実的ですから、それはしないということを確約をとっていただいて、そうしないと、ロシアとの間の交渉の入り口に立てないと思うんですね。ぜひそこはしっかり確約をとっていただきたいと思います。

 それでは、残りの時間を、消費税の増税に伴う緩和措置の話に行きたいと思います。

 先週の木曜日、突然、消費税増税後の措置として、キャッシュレス、例えばカードで払ったりとかQRコードとかいろいろなものがありますけれども、キャッシュレス決済に対してポイント還元するという話は以前からありました。二%還元するという話がありましたが、突然、五%還元するという話が先週木曜日になって出てまいりましたが、総理、これは、カードを使っていない人にとっては物すごく評判が悪いですよ。今までもそうでしたし、この週末も、カードはどれだけ使っちゃうかわからないから怖くて使えない、カードを使う人だけ五%も返ってくるというのは不公平じゃないかと怒っていますよ。

 これについて、総理、どうお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 消費税率引上げに当たっては、前回の三%引上げの経験を生かして、あらゆる施策を総動員して、経済に影響を及ぼさないように全力で対応していく考えであります。

 ポイント還元による支援策の具体的な内容は、今後の予算編成過程において検討してまいりますが、期間を集中して十分な還元率を確保する観点から、期間を九カ月間に限定した上で、還元率を例えば五%程度まで引き上げるといった方策も含め、検討してまいりたい、こう考えております。

 もちろん無駄な歳出等を行うつもりは全くございませんが、駆け込み需要、反動減を抑制し、経済に変動を及ぼさないように万全を期すため、期間、対象を限定して行うものでございます。

後藤(祐)委員 けさの読売新聞の世論調査によりますと、クレジットカードなどで買物した人に五%分のポイントを期間限定で還元する案に賛成二九%、反対六二%です、総理。しかも、反対の割合というのは、五十歳代以上では七割台に上る。年が上の人になればなるほど、反対なんですよ。

 消費税増税の悪影響を緩和するのは、所得の少ない方に配慮しなきゃいけないわけです。所得の多い方は、消費税が上がったって、同じように物を買う方が多いと思うんです。ですが、所得の少ない方は、それによって消費減退効果が必ずある。ですから、お年寄りに配慮するというのは当然のことですし、所得の少ない方に配慮するというのが本来あるべき消費税増税のときの緩和措置だと思うんですね。それに全く沿っていないということがこの世論調査でも明らかだと思うんです。

 期間についてもう一つ聞きたいと思います、総理。

 東京オリンピックが始まるまでの九カ月間に限定して、財政にもかんがえてという答弁がありましたけれども、そもそも心配なのは、景気が落ち込むのは、東京オリンピック・パラリンピックの後、景気が落ち込む心配があるんじゃないんですか。この五%還元措置を東京オリンピックの前までやって、五%還元終わりました、景気がそもそも悪くなるおそれのあるオリンピックの後、この五%が終わって、景気落ち込みに拍車をかける、それはまずいから、やはりこの五%還元はもう一回延期します、どうせこんなことになるんじゃないんですか、総理。

 この五%還元、九カ月で打ちどめですか。それから先、延長する可能性はありますか、総理。

安倍内閣総理大臣 これは、先ほど申し上げましたように、消費税率を三%引き上げたときの我々経験から、次の四半期において急激に消費が落ち込んだということに鑑みまして、今回は、ある程度期間を限定することによってより効果を発揮させたいと考えているところでございまして、その九カ月が適当であろう、こう考えたところでございます。

後藤(祐)委員 では、九カ月は延長しないということを約束していただけますか。

安倍内閣総理大臣 今の段階において、我々は、九カ月が適当であろう、こう考えたところでございます。

後藤(祐)委員 今の段階において、どこかで聞いたようなせりふじゃないですか。消費税増税の一〇%への先送りの話と同じじゃないですか。まさか、二〇二五年の大阪万博まで延ばすつもりじゃないでしょうね、総理。これは財政規律のことも少し考えていただきたいと思います。

 最後、時間が少しになってまいりました。

 櫻田大臣、お伺いしたいと思いますが、櫻田大臣の自民党千葉県第八総支部が、政治資金規正法で定める上限百五十万円を超えて、二百万円のパーティー券を同一団体に購入してもらっていたことが明らかになりましたが、その後、上限を超える五十万円、お返ししたと伺っていますが、何で返したんですか。

櫻田国務大臣 御指摘の、政治資金パーティーに関する政治資金規正法の規定については認識しておりました。

 そして、一方で、国家ビジョン研究会の具体的な購入額についてはやりとりを行っておらず、私としては、法律の上限を超えているとの認識はありませんでした。(後藤(祐)委員「そんなことは聞いていないです」と呼ぶ)

野田委員長 大臣、五十万円、なぜ返したのですかという質問でした。

櫻田国務大臣 百五十万という制限があるから、それをオーバーしていたものについては返還したところでございます。

後藤(祐)委員 ということは、五十万円返還するまでは違法状態だったということでよろしいですね、大臣。

櫻田国務大臣 御指摘の、政治資金パーティーに関する政治資金規正法の規定については認識をしておりました。

 一方で、国家ビジョン研究会の具体的な購入額についてのやりとりはやっておらず、私としては、法律の上限を超えているとの認識はありませんでした。

 また、今回御指摘のあった件は、政治資金規正法に基づく規定に違反しなかったかどうか、確認が十分でなかったことが原因であり、故意に法違反を行ったものではありません。

野田委員長 櫻田大臣、簡潔に。質問時間が終了していますので。

櫻田国務大臣 しかしながら、結果として、法律の定める上限を超える金額を受け取る結果となったことについては、深くおわび申し上げたいと思います。

 今回の問題を重く受けとめ、私としても早急に是正を図る必要があると判断し、十一月十九日付で超過分である五十万円を返金するとともに、同日付で、千葉県選挙管理委員会に対し、該当する収支報告書の訂正を届けました。

 法令遵守の徹底を図るため、事務所の管理体制を更に強化していく所存でございます。

野田委員長 後藤さん、質問時間が終了しています。

後藤(祐)委員 時間が来ましたので、総理に最後。

 違法状態にある大臣は罷免すべきだと思いますけれども、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 みずから襟を正して職責を全うしてもらいたいと考えております。

後藤(祐)委員 終わります。

野田委員長 これにて後藤さんの質疑は終了いたしました。

 次に、大串博志さん。

大串(博)委員 無所属の会の大串でございます。

 早速、質問に入らせていただきます。

 まず、日ロ北方領土問題に関して質疑をさせていただきたいと思いますが、私、超党派議員連盟、北方領土返還促進そして四島交流促進の超党派の議員連盟の仕事をさせていただいております。会長さんは自民党さんの岸田文雄政調会長さんでいらして、私はそこで幹事長をさせていただいております。

 四島の返還、これは私は日本の国民全体の願い、思い、そして決意だというふうに思います。であるにもかかわらず、先ほどの総理の答弁を聞いていると、私は大変不安になった感じがいたしました。多く国民も、今回のプーチン大統領との合意に関しては、そう思っているんじゃないかと思います。

 これは端的に総理に基本的な認識をお尋ねさせていただきたいと思うのですが、北方四島は現在ロシアに不法占拠された状態にある、こういう認識でよろしゅうございますね。

安倍内閣総理大臣 政府の法的立場には変わりはないということでございます。

大串(博)委員 はっきり言ってください。北方四島は現在ロシアによって不法占拠されている状態にある、この認識でよろしいですね。総理に。

野田委員長 まず、外務大臣。

河野国務大臣 これから日ロで交渉をしようというときに、政府の考え方ですとか交渉の方針ですとか内容というものを対外的に申し上げるのは日本の国の国益になりませんので、今一切差し控えさせていただいているところでございます。御了解、御理解をいただきたいと思います。

大串(博)委員 これは大問題の答弁ですよ。これまで累次の政府答弁において、北方領土、北方四島はロシアにおいて不法占拠されているということを、政府の答弁書でも累次確認してこられている。日本の、北方四島を交渉する、北方領土問題を交渉するにおいての一番基本的なポジションなんです。それをないがしろにしてしまうんですか。

 今の外務大臣の答弁でいいんですか、総理。もう一回お願いします、総理。

安倍内閣総理大臣 北方領土は我が国が主権を有する島々であります。この立場に変わりはないということでございます。

大串(博)委員 不法占拠をロシアによってされているのかどうか、この一点なんです。ぜひお願いします。総理ですよ。なぜ総理が答えられないんですか。交渉をやっているのは私だとさっき総理はおっしゃっていたんだから。

野田委員長 まずは、河野外務大臣。

河野国務大臣 これから日ロの機微な交渉をやろうというときに、先ほど総理からも答弁がありましたけれども、場外乱闘になることは日本にとって決してメリットはありません。

 さまざまなことについての交渉は交渉の場の中で行いますので、交渉の外で、日本の政府の考え方、方針、そういったものを申し上げれば、当然ロシア側もそれに対してコメントをしなければならなくなり、場外乱闘になります。それは日本にとって決してメリットにならないことを御理解いただきたいと思います。

大串(博)委員 これまでも、交渉はずっとやってきていました。その中で、政府は、累次の政府答弁あるいは政府答弁書の中でも、北方四島はロシアが今不法占拠しているんだということを言われてこられたんです。それを、今になって交渉に影響があるからこちらの立場は言わないとなると、つまり、こちらの立場が譲歩した立場から議論をし始めていると言わざるを得ないじゃないですか。だから心配しているんですよ。

 この件は、総理が、五六年の日ソ共同宣言を基礎として議論を加速させることを合意したというふうに、プーチン大統領と今回合意されたことも、私は非常に心配するところにつながっていると思っているんです。というのは、なぜかというと、その後も、五六年以降も、日ソ間、日ロ間では、領土問題に関していろいろな交渉を積み重ねて、日本の立場を向こうにのませてきているんです。

 北方四島の領土問題、帰属の問題を、四島に関してですよ、四島に関して帰属の問題を解決して平和条約を解決するということ、総理は先ほど日本の立場だとおっしゃいましたけれども、日本の立場だけではないんです。九三年の東京宣言においては、日ロの合意事項として、紙にちゃんと書かれて、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すると日ロの合意事項として書かれているんですよ。

 今回のプーチン大統領との合意事項の中には、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶという合意はなされていないんですか。

安倍内閣総理大臣 今までの、日ソ時代も含めて、日ロの交渉をずっと見ておりますと、確かに、こちらの立場、主張というのは、法的に主張は変わっておりません。ただ、この国会でのやりとりが原因となって交渉がとまったことは実はあるんです。それは御承知のとおりだと思いますよ。

 ロシアの中にも、この平和条約交渉については、実はもう進めたくないという方もたくさんおられるのは当然だと思いますよ。実際、そこにはロシア人が今住んでいるわけであります。そういういわば現状がある中に、私たちは今、私たちの正当性を主張し、これに挑戦をしているわけでありまして、そこで、新たなアプローチとしては、過去にとらわれて、お互いを非難し合うのはやめようということなんですよ。

 四島の未来をともに描きながら、解決策、お互いが受入れ可能な、お互いが受入れ可能な、交渉ですから、私たちの主張をしていればそれで済むということではないんですよ。目いっぱい主張していればいいということでは、それで七十年間全然変わらなかったのが事実なんですよ。ですから、今やるべきことは、私たちは、両国が受入れ可能な解決策に至るということだろうと思うわけでございます。

 そこで、今例として挙げられた九三年の東京宣言、そして二〇〇一年のイルクーツク声明。このイルクーツク声明のときに私は官房副長官として森総理とともにイルクーツクに行っておりましたから、交渉の過程から知っております。これももちろん重要な文書であります。

 同時に、では、何で今度、一九五六年の共同宣言を基礎としてということにしたかといえば、これは、まさに両国の議会が承認、批准をしている唯一のいわば宣言であるわけであります。そこで、我々は、ここから始めようと。この五六年宣言すらもう無効とされていた期間も、随分長い期間もあったのも事実であります。プーチン大統領は、まさに森総理と会談を行ったときに、この五六年の宣言ということにもプーチン大統領として重視をするという基本的な考え方を示されている中において、今回、まさにここ、これを基礎として、かつ、平和条約交渉を加速させるということで合意をしたという意味は大変大きい、こう考えているところでございます。

 これはそう簡単なことではないですし、ロシアの中にも現状の中で反対する人はいるでしょうし、四島に住んでいる人たちがいるんですから、この人たちがあくまでも反対したら、なかなかこれは交渉がうまくいかない中での交渉だということは御理解をいただきたい、このように思います。

大串(博)委員 交渉が難しいことはよくわかります。かつ、新しいアプローチを考えていかなきゃならない必要性もよくわかります。

 ただ、日本の立場を余りに弱めるような形になってしまうと、私は非常に、やはり結果として、最終的な結果が、先ほど二島先行になるのかどうかということもありましたけれども、結果が伴わないんじゃないか、二島すら返ってこないんじゃないか、そういう結果になるんじゃないかということを心配しているわけです。

 加えて申しますと、先ほど申しましたように、東京宣言、九三年は、日ロ間の合意事項として、四島の帰属の問題を、ちゃんと四島の名前も記した上で、これを解決して平和条約を結ぶということを両国間で合意をしているんですよ。

 五六年共同宣言が基礎、両国の議会でも承認されたと言われましたが、当然です。だって、国交を回復するための文書ですから、国会で承認するのは当然ですよ。それはそれでいいんです。

 ただ、五六年以降、日本の立場をロシアに認めさせるためにいろいろな外交努力が行われ、そして積み上げてきた結果、得られた結果があるんです。それが東京宣言だった。その立場を、今回一気に逆戻りして五六年日ソ共同宣言まで戻って、私はそれは日本の立場が弱まっているというふうに思うものですから、非常に心配しているわけです。

 東京宣言に戻るということを、ぜひ総理にはこれからの交渉の中でも合意事項としてプーチン大統領の間では話し合っていただきたいと私は思います。

 次に、残りの時間で消費税の問題を話させていただきます。

 今、話がありましたように、消費税の引上げに関しては逆進性が非常に強くあります。消費税自体が低所得の皆様に重くのしかかるという面があるのは確か。であるから、私たち、民主党時代には、消費税を引き上げて、それを社会保障、子育て支援を含めた社会保障に還元する、社会保障と税の一体改革ということで推し進めてきたわけです。

 ところが、今回は、逆進性をむしろ強める内容ばかりが聞こえてくる。だから心配なんです。軽減税率の導入もしかり、そして、そのための財源を得るものとして、総合合算制度四千億をやめた、たばこ税等の増税をやった、あるいは免税業者の課税業者への移行、これも財源とするやのことが言われてしまっている。

 そして、先ほど話が出た、消費平準化策としてキャッシュレス購入時のポイント還元。私、これは中小事業主への支援策として以前政府の文書に書かれていたのでそういうことかなと思ったら、消費税導入時における消費平準化策として堂々と言われ始めているものですから、正直申し上げて物すごく驚いているんです。キャッシュレス購入をして、それによってポイントを得て、ああ、よかったな、それで購入は減らさずに済むなという所得の低い方が日本にどのぐらいいらっしゃるのかということなんですよ。

 総理にはぜひ、日本全体の消費の現場あるいは中小企業の現場、中小事業者の皆さんからも話を聞きましたけれども、うちでキャッシュレス購入の人だけにポイント還元するなんと言われたら、うちのお客さんは来なくなっちゃうよというふうに言う地方の事業者の方々もたくさんいらっしゃいました。中小事業者の支援者にもならない、私はそう思うんですね。

 今回の消費税をめぐるいろいろな諸施策に関しては、逆進性、つまり所得の低い方々に対してより重い結果となるものが私は盛り過ぎだというふうに思います。そういった意味で、今回の諸施策、私はいま一度考え直すべきじゃないかなというふうに思いますが、安倍総理の答弁を求めたいと思います。

麻生国務大臣 消費税率の引上げに当たりましては、今も御指摘のありましたように、逆進性という点につきましては、これはもう御存じのとおりでありますが、したがいまして、この軽減税率というのは、それに合わせて逆進性を緩和するという意味において私どもは導入させていただいたという経緯というのは御存じのとおりで、低所得者への配慮というのは大変大事なところだというのは御指摘のとおりだと思います。

 また、いわゆる消費税を引き上げたことによって、増収分を活用して低所得の方々に対していろいろな形で、医療とか介護の保険料とか、また住民非課税世帯を対象にしたゼロ歳児から二歳児の幼児の無償化とか、それから、年金生活者支援給付金という形で月額五千円、年額六万の形で支給させていただく等の処置を講じることとさせていただいております。

 加えて、消費税率引上げ時の影響を緩和するという観点から、所得の低い方に対する措置とか、駆け込みとか反動減の平準措置などについて具体的な内容を今検討しているところですが、こういった措置を総合的に考えるとすれば、結果として逆進性に対しても十分な緩和策になるのではないかと考えております。

 それから、今お示しのそこの図のところですけれども、総合合算制度というものにつきましては、これは私どもとしても決定をさせていただいておりますが、たばこ税の増税とか免税事業者の課税事業者での納付に関しては、決定しているわけではありません。

野田委員長 大串さん、質問時間が終了しました。

大串(博)委員 来年十月、家計に極めて重い形になってしまうことを危惧するということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

野田委員長 これにて大串さんの質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史さん。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 入管法等改正案についてお聞きします。

 総理は、十三日の本会議で私の質問に対して、新しい外国人受入れ制度と技能実習制度は趣旨、目的が異なる、こう答弁されました。つまり、別物だと説明してきたわけであります。これは配付資料でも御紹介しております。

 しかし、実際調べてみますと、技能実習生からの移行が非常に大きな部分を占めるということがわかりました。これを見ていただきたいんですが、これは、法務省が提出した資料をもとに、十四業種ごとに初年度どれだけ技能実習生からの移行を見込んでいるか、その割合を示したものであります。

 素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、農業、自動車整備業、実に十四業種のうち五つが一〇〇%を見込んでいる。しかも、建設業あるいは造船、こういうものを含めますと、ここも大体九割以上なんですね、ですから十四業種のうち七業種、半分までが九割あるいは十割と技能実習生の移行を見込んでいる。政府の資料であります。漁業や飲食料品製造業も七割、八割と、大変高い比率であります。下の方にゼロのはありますけれども、ここはまだ技能実習生が入っていないとか、入ってまだ一年とか、そういう、そもそも移行すべき技能実習生が少ないわけですから、これは数字が少ないのも当然であるということであります。

 総理にお聞きしたいんですが、総理は私に対して両者は別だと答弁されたんですけれども、ほとんどが技能実習生からの移行ではありませんか。技能実習生がなければ新しい制度は成り立たない、これが実態じゃないんでしょうか、総理。

野田委員長 まず、山下法務大臣。まずその資料の説明をしてください。

山下国務大臣 まず、お示しのパネルのデータですが、これは法務省が提出したデータ自体ではございません。これは、恐らく先生の方でお変えになられたと思いますが、我々法務省としては、一〇〇%であるとかそうしたパーセンテージを示しておりません。

 加えて、自動車整備業が一〇〇%と書いてありますが、この数字も誤りであります。

 そして、私どもが提出した数字につきましては、素形材産業、製造業に関しまして、試験は若干名ということで明示しております。すなわち、これから試験をしっかりとつくっていくという中において、特定の数字があらわせなかった、それを丸めて一〇〇%という記載をされるのは、残念ながら……(藤野委員「ちゃんと書いてあるじゃないですか、三七・五」と呼ぶ)いや、私は、一〇〇%という数字は法務省としては提出しておりません。

 ですから、その上で議論をするというのは、若干、テレビを見ておられる国民の皆様に誤った印象を与えるのではないかというふうに考えております。

 そして、その上で、技能実習生とこの新たな外国人の制度は違うということでございます。

藤野委員 今、法務省は出していないと言いましたけれども、これはまさに法務省が、法務委員会に、理事会に提出した資料であります。しかも、これは、法務委員長自身が、まとめろ、一つのページにしろということで、出された資料なんですね。しかも、そこに数字が書かれている。この数字自体は、もう法務省が提出しているわけです。私は、その数字をパーセントに変えただけであります。(発言する者あり)そうです。何の加工もしていない。何を言っているんだ。ごまかしてもらっては困ります。

 次は、総理に聞きます。

 総理、要は、各業界も含めてこういう数字になっているわけであります。資格が違うのはわかりますよ、両制度。法律のたてつけが違うのもわかります。しかし、同じ人が、同じ仕事をずっと続けていくわけです。それを前提にされて制度をつくっていらっしゃる。

 総理、聞いてください。これは、この資料から見ても、両者が全く別であるというのは全く形式論であって、実質、二つの制度は密接不可分だ、これは否定できないんじゃないですか、総理。総理、次は総理がお答えください。

安倍内閣総理大臣 その資料については、法務省として別の見解を持っておりますので、この資料に基づいて私が答弁することはできないわけでございますが、これまで繰り返し答弁してきたとおり、技能実習制度と今回の受入れ制度は趣旨、目的を異にするものであります。これは委員もお認めになっていると思いますが、三年間の技能実習を修了した技能実習生については、特定技能一号に必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしていると認められることから、資格の変更を可能とするものである、こう考えております。

 技能実習制度の方の適正化についても答える必要はありますか。(藤野委員「それはいいです」と呼ぶ)これはよろしいですか。

藤野委員 総理がこれをもとに答えられないというのは、そもそもおかしいですよ。これは、正式に理事会に提出された資料ですよ。(山下国務大臣「違います。それは違います」と呼ぶ)

野田委員長 ちょっと大臣、静かに。

藤野委員 しかも、それに基づいて委員長がまとめろと言って、こういう表ができているわけです。この表を私はパーセントに変えただけであって、これは予算委員会の理事会も通っているわけです。何を言っているんですか。これを否定するなんというのは、議論の土台そのものを否定することになりますよ。ちょっと確認してください。

野田委員長 山下法務大臣、しっかりと確認、答弁してください。

山下国務大臣 私が申し上げた、そのパネルに載っている一〇〇%とかいうパーセンテージ、それは提示しておりませんし、また、一〇〇%と書いておられますが、この表においては、若干名であるとか、こういうものも明示しております。そして、自動車整備業の数字も、例えば、今読み上げさせていただきますと、一〇〇%とお書きですけれども、自動車整備業は、初年度においては、技能実習三百程度、うち試験が五百程度ということで、一〇〇%ということにはなっていないわけでございます。

 ですから、そのパネルに基づいて申し上げるというのは、国民の皆様に対してミスリーディングではないのかということを申し上げたわけでございます。

藤野委員 まさに今、御飯答弁といいますか、私が言っているのは、この一〇〇という数字は、確かに私たちが計算したものです。しかし、数字は、全く同じ数字が提出されているわけです。ですから、私たちは、これをもとに答弁すべきだと思います。

 そして、その上で聞きますけれども、私は、こういう実態があるわけだから、技能実習生の実態をしっかりつかまなければ、新しい制度の議論にならないということであります。

 総理は、七日の参議院予算委員会で、我が党の小池晃書記局長の質問に対して、こう答弁されております。今でも九割の方々は、技能実習生、まさに目的に沿った形で日本で技能を身につけ、母国に帰ってその技能を生かして活躍しておられるんだろうと。これも配付資料で紹介しておりますが、技能実習の九割がうまくいっていると。

 これまで政府は、技能実習生が失踪した理由について、より高い賃金を求めてなど、実態と全く異なる、実習生側にあたかも理由があるかのような説明をしてきました。そして、制度そのものは問題ないんだと。

 しかし、我々が先日来提出を求めております聴取票の個票、この個票を見ますと、この政府の説明がうそだということはもう浮き彫りになっております。

 衆院メンバーが百八十四枚の聴取票を調べましたが、これですと、七〇%以上が最賃割れです。参議院のメンバーが四百六十五枚の個票を調べますと、八五%以上が最賃割れなんです。サンプルがふえると最賃割れの数値は上がっているわけです。まさに、これは実習生の側ではなくて、受け入れている使用者の側に失踪の責任があるということであります。

 野党のヒアリングでは、中国やベトナムの実習生本人から深刻な実態が語られました。段ボール工場で仕事中に左手の指を三本切断したが、治療費は自己負担を求められ、会社からは帰国を迫られた、時給三百円、一日十六時間労働を強いられた、いじめやパワハラに遭い、配置転換の願いも無視され、飛びおり自殺を図った。涙ながらの訴えでありました。

 総理にお聞きしますが、まさにこうした声なき声があるわけですね。失踪に至るというのはよほどのことであります。技能実習制度ではこういう最賃以下の賃金や暴力というのが横行している。九割の実習生がうまくいっているという総理の認識は違うんじゃないですか。総理、総理の答弁です、総理の答弁ですよ。

安倍内閣総理大臣 我々の認識では、既に私が答弁をしているとおりでございますが、技能実習制度については適正化を図らなければならない、こう考えているところでございまして、昨年十一月に技能実習法を施行し、外国人技能実習機構のもと、受入れ企業等に対する実地検査や技能実習生に対する母国語相談対応、これはやはり、皆さん、言葉が通じないことから、さまざまな受入れ状況について自分の悩みを聞いてくれるところがないということもあったんだろうと思いますが、母国語相談対応等の取組を進めているほか、悪質なブローカー対策として、二国間取決めによる送り出し機関の適正化にも努めているところでございまして、さらに、今般新設する出入国在留管理庁のもとで、在留管理を抜本的に強化していく所存でございます。

藤野委員 今、いろいろおっしゃいましたけれども、昨年の技能実習法の施行以降も、むしろ失踪している技能実習生はふえているんですね。増加のペースは上がっております。だから、その検証自身も必要であります。

 今、二国間協定とおっしゃいましたが、総理は施政方針演説でベトナムの例を出されましたけれども、日本とベトナムの協力覚書では、ベトナムの実習生が送り出し機関に払っていい借金というのは四十万円と決められております。ところが、この四十万円を上回っているものが、四十万円以上というのが八六%というのがこの聴取票個票の調査でも浮かび上がっている。うち、百万円以上というのは半数に達しているんですね。だから、実質どうなのかという議論なんです。

 厚労省が提出した資料によりますと、二〇一七年に監督指導を実施した事業場五千九百六十六のうち、七割で労基法違反が見つかっております。これはよく出ておりますが、しかし、これは氷山の一角であります。この五千九百六十六というのはあくまで行ったところだけでありまして、実際に外国人技能実習生を受け入れている事業所は四万八千三十三事業所あるんですね。

野田委員長 藤野さん、質問時間は終了しました。

藤野委員 ですから、五千九百六十六というのはわずか一二・四%。

 ですから、総理、こうした実態を踏まえてやらなければならないと総理は本法案についておっしゃいませんでしたか。

野田委員長 藤野さん、質問時間が終了しています。

藤野委員 はい。

 本法案というのは、まさに、世論調査でも、六割から八割を超える国民が今国会で成立にこだわるべきではないと言っております。今必要なのは、外国人労働者の実態を踏まえて……

野田委員長 藤野さん、質問時間が終了しています。

藤野委員 徹底的な審議を行うことであります。

 このことを強く求めて、質問を終わります。

野田委員長 これにて藤野さんの質疑は終了いたしました。

 次に、浦野靖人さん。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いをいたします。

 まず、万博の話題に触れないわけにはまいりません。大阪の人間として、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。安倍総理を始めといたしまして、世耕大臣はきょうはもう先ほど出られましたのでいらっしゃいませんけれども、本当にたくさんの方々にお力添えをいただきまして、万博、大阪、関西で決定をさせていただくことができました。

 榊原経団連名誉会長、そして、もちろん、議連の二階会長、事務総長の河村先生、そして、私、地元で日ごろは選挙で戦っております竹本事務局長も、本当に、政治生命をかけるとまで言っていただき、しっかりと活動していただきました。そのおかげで、あと松本経済連会長も、挙げればもう切りがないんですけれども、本当にたくさんの方々に御協力をいただいて、この大阪・関西万博、決定をさせていただくことになりました。本当にありがとうございました。

 この万博ですけれども、そもそも、二〇一四年の八月に我々大阪維新の会の大阪府議団が中心となって提案をさせていただいて、その提案を受けて、当時の松井大阪府知事、その当時はまだ橋下徹さんが大阪市長であったころです、その取組をスタートさせていただいて、皆さんに、政府にもお願いをさせていただき、今回、四年かかって実現をさせていただきました。

 これから、この二〇二五年に向けていろいろな取組をしていかなければなりません。そこで、総理ももちろん、先ほど、朝、答弁ありましたけれども、これから、我々地元関西はもちろん頑張ってまいりますけれども、万全の体制を組んでいただいて、大阪・関西万博をバックアップしていただきたいと思っております。その点について、総理、一言よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 今回のBIE総会に当たっても、世耕大臣だけではなくて、松井知事や吉村市長、さらには榊原会長、松本関経連会長など経済界の皆さんや、名前を出していただいた河村議員等万博議連の方々がパリに乗り込んで、最後の最後まで活動を続けていただきました。

 また、これまで、地元大阪、関西の皆さんを始め民間の誘致委員会の皆さんや、浦野議員を始め万博議連の皆さんに本当にオール・ジャパンの献身的な誘致活動を行っていただいた結果の勝利であろう、こう思いまして、改めて敬意を表したいと思います。

 まさにこれからが本番でございまして、世界じゅうの人々に夢や驚きを与えるようなすばらしい万博にしたい、こう考えております。大阪、関西のパワーで日本全体を元気にするような万博を実現するために、政府としても、皆さんと力を合わせて、引き続きオール・ジャパンの体制で全力で取り組んでいく考えでございます。

浦野委員 ぜひ、よろしくお願いをいたします。ありがとうございます。

 続きまして、我々日本維新の会と与党の方で入管法の修正協議に応じていただいて、感謝を申し上げます。我々、法案提案権がありませんので、修正協議ということでお願いをしておりますけれども。

 これは、総理がおっしゃるように、人手不足というのは実際事実だと思います。我々もやはり地元で、何とかならないかということで相談を受けることもあります。移民政策ではないということですけれども、外国人がふえるという一点では同じだと思うんですね。

 日本は、島国で、ほぼ単一民族国家としての歴史を積み重ねてきました。だからこそ、大量の外国人の方々が移り住んでくるという状態には多くの日本国民がなれていないというふうに思います。一対一とか、少人数の皆さんなら問題はないと思います。

 ただ、例えば大阪でも、公営住宅、府営住宅なんですけれども、大量に外国人の皆さんが住んでおられる府営住宅もあります。そこで、その皆さんとの文化の違いが生み出すトラブルというのは、非常に大阪府議会でも問題になったことがあります。

 例えば、府営住宅のベランダに大量の土を持っていって、そこで畑をしたりとか、夜中じゅう時間構わず、日本人なら下の階の人に気を使ってゆっくり歩いたりしますけれども、ばたばたと平気で夜中じゅう歩いたり、そういったことが、本当にささいなことかもしれませんけれども、トラブルがどんどんふえています。

 小学校では、その国の方々のために、日本語以外の表記までしないといけなくなるような事態にもなっている小学校も実際出てきております。それを嫌がって、その校区から引っ越しをしていく日本人の方々も実際もう出てしまっているんですね。

 私は、だから、それがこれからクリアをしていかないといけない文化の違いというか壁だというふうには思うんですけれども、これは時間をかければ恐らく解決をしていくと思っております。

 ただ、やはり日本以外でもそういった、海外では移民でですけれども成り立ってきた、移民で成り立ってきたアメリカでさえ大きな問題を抱えています。ヨーロッパでも今非常に大きな議論で、国を二分するような事態、EUの中でも賛成派と反対派が国同士で議論しないといけなくなっているような、そういう状態が出てきています。

 我々も、技能実習生の失踪や低賃金、社会保障のあり方とか、これは本当に問題だと思っています。どの分野で、どれほど人材不足で、どのくらいの人数を受け入れていくのかという明確なルールと、その根拠となるエビデンス、そういったものもやはりしっかりと、これも従来各野党の皆さんも指摘をしておりますけれども、これは本当に大事な問題だと思うんですね。さらに、来てもらった外国人の皆さんの実態をどう把握していくのか、そういったことも仕組みとして重要になってくると思うんです。

 これは今既にある課題なんですね。その課題をまずどう乗り越えるのかというのは非常に重要だと思っています。これらの課題を明確に乗り越える仕組み、これは本当に重要だと思っています。我々日本維新の会と協議、まだ続いていますけれども、政府としても真摯にこの我々との協議、耳を傾けていただいておりますけれども、この点についていかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本維新の会が、新たな外国人材の受入れ制度をよりよいものとするため、入管法の改正案の必要性や内容について極めて実のある真剣な検討をされていることに、まずもって敬意を表したいと思います。

 その上で、対案の中身については、現在与党との間で協議が行われていると承知をしておりまして、政府としてコメントすることは差し控えますが、いずれにせよ、よりよい制度にするため、建設的な議論は大いに歓迎するところであります。

浦野委員 ぜひ、よろしくお願いをいたします。

 それと、内閣委員会で私が質問したことなんですけれども、これも逢坂野党筆頭からも指摘がありました。今、個票を手書きで写しているという問題ですけれども、そのとき、その書き写した個票を自分たちが公開することについては問題がないのかという問いをしたんですけれども、それは我々が承知する範囲ではありませんという答弁をしておられました。

 であるならば、手書きしたものを外に公開してもいいんだったら、もう今、手書きの原本をコピーして公開してもいいんじゃないかというふうに私は思いますので、それはぜひ考えていただけたらと思います。

 個人情報保護の観点からとかいろいろ理由を述べておられましたけれども、手書きをしたものをその後その人たちが公開してもいいというのであれば、全く同じですので、ぜひその点はしっかりと政府としても対応していただきたいと思います。

 これは、答弁がもしあるのであればですけれども、通告していませんので。

山下国務大臣 この点については、理事会の御協議に従いたいというふうに考えております。

 一般論として、やはりこういった個人情報や、あるいは捜査の端緒となるものについて広く公にすることにつきましては、やはり差し控えたいというふうに考えております。

浦野委員 以上で質問を終わります。

野田委員長 これにて浦野さんの質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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