衆議院

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第5号 平成31年2月12日(火曜日)

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平成三十一年二月十二日(火曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 野田 聖子君

   理事 井野 俊郎君 理事 後藤 茂之君

   理事 坂本 哲志君 理事 田中 和徳君

   理事 堀内 詔子君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 渡辺  周君

   理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    石破  茂君

      今村 雅弘君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      奥野 信亮君    神谷  昇君

      河村 建夫君    小林 茂樹君

      笹川 博義君    鈴木 俊一君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      中山 泰秀君    野田  毅君

      平沢 勝栄君    福山  守君

      古屋 圭司君    村上誠一郎君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山本 幸三君    山本 有二君

      吉野 正芳君    阿部 知子君

      石川 香織君    小川 淳也君

      尾辻かな子君    大串 博志君

      岡田 克也君    神谷  裕君

      川内 博史君    武内 則男君

      中谷 一馬君    長谷川嘉一君

      堀越 啓仁君    本多 平直君

      宮川  伸君    村上 史好君

      矢上 雅義君    早稲田夕季君

      青山 大人君    泉  健太君

      奥野総一郎君    後藤 祐一君

      近藤 和也君    階   猛君

      関 健一郎君    西岡 秀子君

      太田 昌孝君    岡本 三成君

      志位 和夫君    藤野 保史君

      宮本  徹君    浦野 靖人君

      下地 幹郎君    松原  仁君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 石田 真敏君

   法務大臣         山下 貴司君

   外務大臣         河野 太郎君

   文部科学大臣       柴山 昌彦君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   農林水産大臣       吉川 貴盛君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    原田 義昭君

   防衛大臣         岩屋  毅君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       渡辺 博道君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       山本 順三君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (海洋政策担当)     宮腰 光寛君

   国務大臣

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     平井 卓也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)

   (男女共同参画担当)   片山さつき君

   国務大臣         櫻田 義孝君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補)       井上 誠一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  原  宏彰君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部統括官)        小野田 壮君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    北村 博文君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    大石 吉彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         小林 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   政府参考人

   (水産庁長官)      長谷 成人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           島田 勘資君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        塚原 浩一君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  蒲生 篤実君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田端  浩君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩並 秀一君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  鈴木 敦夫君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  中村 吉利君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           齋藤 雅一君

   参考人

   (厚生労働省前政策統括官)            大西 康之君

   参考人

   (独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)   樋口 美雄君

   参考人

   (統計委員会委員長)   西村 清彦君

   予算委員会専門員     鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十二日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     神谷  昇君

  笹川 博義君     福山  守君

  川内 博史君     中谷 一馬君

  武内 則男君     岡田 克也君

  早稲田夕季君     神谷  裕君

  奥野総一郎君     青山 大人君

  後藤 祐一君     関 健一郎君

  階   猛君     近藤 和也君

  西岡 秀子君     泉  健太君

  宮本  徹君     志位 和夫君

  浦野 靖人君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     小林 茂樹君

  福山  守君     笹川 博義君

  岡田 克也君     堀越 啓仁君

  神谷  裕君     宮川  伸君

  中谷 一馬君     矢上 雅義君

  青山 大人君     奥野総一郎君

  泉  健太君     西岡 秀子君

  近藤 和也君     階   猛君

  関 健一郎君     後藤 祐一君

  志位 和夫君     宮本  徹君

  下地 幹郎君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 茂樹君     河村 建夫君

  堀越 啓仁君     阿部 知子君

  宮川  伸君     早稲田夕季君

  矢上 雅義君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 知子君     尾辻かな子君

同日

 辞任         補欠選任

  尾辻かな子君     長谷川嘉一君

同日

 辞任         補欠選任

  長谷川嘉一君     石川 香織君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 香織君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  村上 史好君     武内 則男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成三十一年度一般会計予算

 平成三十一年度特別会計予算

 平成三十一年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

野田委員長 これより会議を開きます。

 平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算、平成三十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として厚生労働省前政策統括官大西康之さん、統計委員会委員長西村清彦さんの出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補井上誠一さん、内閣官房内閣審議官原宏彰さん、内閣府子ども・子育て本部統括官小野田壮さん、警察庁交通局長北村博文さん、警察庁警備局長大石吉彦さん、厚生労働省大臣官房長定塚由美子さん、厚生労働省雇用環境・均等局長小林洋司さん、厚生労働省子ども家庭局長浜谷浩樹さん、厚生労働省政策統括官藤澤勝博さん、水産庁長官長谷成人さん、経済産業省大臣官房審議官島田勘資さん、国土交通省水管理・国土保全局長塚原浩一さん、国土交通省鉄道局長蒲生篤実さん、観光庁長官田端浩さん、海上保安庁長官岩並秀一さん、防衛省整備計画局長鈴木敦夫さん、防衛省人事教育局長岡真臣さん、防衛省地方協力局長中村吉利さん、防衛省統合幕僚監部総括官齋藤雅一さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野田委員長 去る八日の川内博史さんの質疑に関連し、岡田克也さんから質疑の申出があります。川内さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也さん。

岡田委員 立憲民主党・無所属フォーラムの岡田克也です。

 きょうは総理と北方領土問題を中心にしっかりと議論したいと考えておりますが、その前に一つ。

 先般の自民党大会で、総理は、あの悪夢のような民主党政権が誕生したというふうに言われました。もちろん、民主党政権時代の反省は我々にあります。しかし、政党政治において頭から相手を否定して議論が成り立つのか。私たちは、政権時代に、その前の自民党の歴代政権の重荷も背負いながら政権運営をやってきました。そのことを考えたら、あんな発言は私は出てこないはずだと思います。撤回を求めます。

安倍内閣総理大臣 まさに、政党間で議論をする、私は別に議論を受け入れていないわけではなくて、先週も、七時間、五日間ずっと議論をさせていただきました。

 皆さんは、自分たちの政権の正当性であればいろいろな場所で演説されたらいいんですよ。私は自民党総裁としてそう考えている。そう考えているということを述べる自由は、まさに言論の自由なんですからあるわけでありまして、少なくともバラ色の民主党政権でなかったことは事実なんだろうな、こう言わざるを得ないわけでありますが、そこで……(発言する者あり)

野田委員長 お静かにお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 そこで、では何が私が一番言いたかったかということは、やはりあのとき、若い皆さんの就職率、低いじゃないですか。だから、岡田さんにはそういう反省は全然ないんですか。

 我々は、政権を失ったとき、まさになぜ政権を失ったかということを……(発言する者あり)

野田委員長 皆さん、お静かに願います。

安倍内閣総理大臣 こういう雰囲気で果たしていいのかどうかということも含めて申し上げたいというんですが、なぜ政権を失ったか、我々は深刻に反省したんですよ。その中において、全国でずっと車座集会を開きながら真摯に耳を傾け、我々は生まれ変わろう、そういう決意をしたわけでございます。

 皆さん、悪夢でなかった、それを否定しろとおっしゃるんですが、では、なぜ民主党という名前を変えたんですか。私はそれが非常に不思議だ。

 自民党は、自民党という名前を変えようとは思わなかった。私たち自身が反省して生まれ変わらなければならないという大きな決意をしたんです。別に名前のせいで負けたわけではないんですよ。皆さんはこの民主党というイメージが悪いから恐らく名前を変えられたんだろう、こう推測する人はたくさんいますよ。そういう意味では、皆さんもそう思っておられるんじゃないですか。

岡田委員 驚きました。もちろん私たちは政権運営について反省があるというふうに今申し上げました。しかし、その前の自民党政権時代の反省はないのかということを私は申し上げているわけです。その重荷を背負って私たちは運営した部分もある。

 あなたが本当に自民党政権時代の反省をしたと言うのであれば、あんな言葉は出てこないはずですよ。一方的に、民主党政権、レッテル張りしていますけれども、あなたたちがやったことで私たちも苦しんだこともある。そういったことについて、謙虚な気持ちで、総理ですから、発言してもらいたいと思うんです。

 今の発言、全く了解できませんよ。取り消しなさい。

安倍内閣総理大臣 取り消しなさいと言われても、取り消しません。それを明確にさせていただきたいと思います。

 そこで、ですから、反省がないというわけではないということは申し上げましたよね。でも、皆さんに重荷を背負わせたというのは、これはわからない。皆さん、政権をとったんですから、自分たちの政策を進めればいいじゃないですか。重荷というのは何ですか。(発言する者あり)財政赤字……(岡田委員「そんなこと言っていない。やじしないで」と呼ぶ)

野田委員長 皆さん、御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 今、何か、岡田委員もそういうやじを飛ばされると迷惑だということですから、静かにしていただきたいと思います。

 例えば、財政赤字ということについては、財政赤字ということについて言えば、もちろん我々も財政赤字がたまってきた。しかし、これはそれぞれ必要があって行ったことであって、漫然と行ってきたわけではない。それぞれ、あえて赤字を覚悟しても出さなければいけないときというのはあるんですよ。

 ですから、例えば、先ほど申し上げましたように、就職氷河期等をつくってはならない。皆さんはずっと苦労するんですよ。そういうときには財政政策をするわけであります。ただ、皆さんの……(岡田委員「委員長、委員長」と呼ぶ)誰かがそうおっしゃったから答えさせていただいたわけであります。

岡田委員 私が聞いていないことに延々と時間を使わないでもらいたい。

 私は、民主党政権時代の最大の苦しみ、そして申しわけなかったと思うことは、原発事故ですよ。あの福島の原発事故。もっとうまく対応できなかったか、私たち、反省はありますよ。だけれども、同時に、その前の自民党政権にも責任があるんじゃないですか。そこにあなたは責任を認めないんですか。はっきり答えてください。

安倍内閣総理大臣 原子力政策について、ああした過酷な事故が起こってしまったということについては、それは、歴代の政権として、第一次安倍政権のときも含めて、反省をしております。

 しかし、総じて見れば、この原発事故のことについて皆さんの対応をどうこう言おうというつもりはありません。そうではなくて、経済政策について、私は、その後の文脈、私の演説の文脈を見てくださいよ。

 経済政策において、この間、まさに失業率が、今よりも、有効求人倍率においては我々の半分ぐらいですよね。都道府県について見てみれば、有効求人倍率については一倍を超える県、今は四十七全ての都道府県が一倍を超えています。これは史上初めてのことでありますが、民主党政権時代には七県、八県であったのも事実じゃないですか。そういう時代を超えていかなければいけない、そういう時代を解消しなければいけないということで、我々も努力をしてこういう状況をつくり出したわけであります。ですから、そういう批判をさせていただいた。

 大体、批判をするなと言うこと自体がそれはおかしいわけであって、皆さんが自由民主党に対して批判をすれば、それに対して反論しますよ。批判自体をやめろとか、そういうことを言ったことは私は一回もないですよ。

岡田委員 批判するなと言っているんじゃなくて、全否定したようなレッテル張りはやめろと言っているんです。

 では、原発事故について……(発言する者あり)

野田委員長 皆さん、静かにしてください。

岡田委員 原発事故について、全会一致で設けた国会事故調、ここの報告書は何と言っていますか。総理、原発事故の根源的な原因は何だと国会事故調の報告書は結論づけていますか。述べてください。

安倍内閣総理大臣 全否定するなとおっしゃいますが、皆さん、例えば採決のときに、安倍政治は許さないと全否定して、プラカードをみんなで持っていたのはどこの党の皆さんですか。名前が変わったらそれがもうなくなったということになるんですか。

 そこで、事故調の調査について、見解を述べろということについては、それは質問通告していただかないと、政府としては統一見解を述べなければいけないわけでありますから、既に述べていると思います。ですから、それは、個人の見解は述べることはできませんから、この場においては。政府を代表して私ここに立っているんですから。それはちゃんと通告をしていただかなければ、これは答弁することはできません。

岡田委員 総理の見解を述べろと言っているのではないんです。国会事故調の報告書にどう書いてあるかということを聞いているわけです。

 私は驚きました。そんなことも総理は知らないんですか。

 国会事故調の報告書にはこう書いてありますよ。原発事故の根源的な原因ですよ、私が聞いたのは。「根源的な原因は、」「平成二十三年三月十一日以前に求められる。」これが結論じゃないですか。その反省もできていないんですか。いや、調査報告書、覚えてもいないんですか。

 つまり、三月十一日以降の対応について私たちは反省しなければいけないし、もちろんその前も、私たちも責任は負いますよ。だけれども、あなたたちが、三月十一日以前に、歴代自民党政権が一体何をしてきたのか。この国会事故調の中にもはっきり書いてあるじゃないですか。規制と推進を同じ役所の中に、経済産業省の中に置いたこと、そして、さまざまな提言を先送りした結果としてあの事故に至った。これが事故調の結論じゃないですか。

 そのことの反省はあなたにはないんですかということを聞いているんですよ。

安倍内閣総理大臣 事故調に何が書いてあるか、ここで述べろと言われたら、私はその事故調のちゃんと文書を見て述べなければいけない立場なんですよ。大体、覚えていることをここで述べる立場には、内閣総理大臣ですから、ないわけですよ。そこでまた、一語一句、私が記憶の中で答えたら、ここは違うではないか、こう言われるわけでありますから。

 これは、岡田さんもこちら側に立った立場があるんですから、その質問がどういう質問であったかということは、これは考えていただかないといけないと思いますよ。お互いそういう質問をし合うというのは非生産的の最たるものなんだろう、私はこう言わざるを得ない、こう思っています。

 そこで、反省はないか、こうおっしゃるわけでありますが、先ほどから、その点については我々も反省している、こう述べて、一番最初に述べたじゃないですか。その上で申し上げているわけであります。

 政党同士ですから、いろいろお互いに戦い合っていくわけでありますよ。その中で、相手の政策は間違っていたということで申し上げているわけであって、私の党大会におけるこの演説というのは、いわば経済政策において主にこれは批判をさせていただいているわけでございまして、原発の政策について一言も私は述べていないわけでありますから。

 ほかにもありますよ、それは。外交にだって言いたいことはたくさんありますよ。全部言う時間がありませんでしたから、経済について述べさせていただいた。つまり、仕事がなかった、連鎖倒産が続いていたということを述べたわけであります。マクロ政策においても、皆さんのときのマクロ政策は私は間違っていたと思いますよ、明確に。

 ですから、私たちは三本の矢という新たな政策を打ち出したわけでありまして、その中で、もはやデフレではないという状況をかなり早い段階でつくり出すことができた。雇用状況が改善をしているのは事実ですよ。昨年の十二月の一日時点での大卒者の就職内定率は、過去最高となっているわけであります。若い皆さんが、働きたいと思う人が、やはり仕事があるという状況をつくることが政治の大きな責任だと思っている。

 申しわけないんですが、皆さんのときには残念ながらそれを果たすことができなかったのは事実ですから、この事実を受けとめないのであれば、全く反省していないと言わざるを得ないのではないですか。

岡田委員 私が聞いてもいないことを長々と答弁されるわけですけれども、あの原発の事故のときに本当に残念だったことは、津波が来て、そして水につかった、予備電源が失われた、そして、電源を失われたことによって水素爆発やあるいはメルトダウンが生じてしまった。もちろん、我々の対応にも問題はあったと私は思うけれども、なぜ予備電源が地下にあったのか、なぜ津波の水が越えてきたときに水没してしまうようなところに予備電源を置いておいたのか、この本当にばかげた失敗、これはやはり自民党政権の時代の話なんですよ。そのことがわかっていたら、今のような答弁にならないですよ。

 私は、三月十一日以前にあったというこの事故調の報告書について、もう一度総理がしっかりと読み直していただきたい、そういうふうに思っています。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

岡田委員 民主主義というのは、お互いに相手を全否定しては成り立たないんです。だから、私は議論をこれからもします。だけれども、総理の党大会における言い方は、ほぼ全否定に近いような言い方。それでは、私は、議論は深まらないし、民主主義がどんどんおかしくなってしまう、そのことをまず申し上げておきたいと思います。

 さて、北方領土問題について、時間も大分少なくなってしまいましたので、申し上げたいと思います。

 まず、総理はたびたび、平和条約を締結するという決意を何度も示しておられますが、平和条約の法的意味というのは一体どこにあるのか、お答えいただきたいと思います。法的な意味、平和条約を結ぶことの法的な意味。

河野国務大臣 一般に言う平和条約は、主として、戦争状態の終結、それに伴う領土問題の解決及び戦争賠償等に係る問題の解決等に関する事項を含むものであると承知しております。

岡田委員 今、外務大臣は領土問題の解決と言われたんだけれども、外務大臣は国会答弁の中で、領土問題の解決と言われたときもありますが、領土の画定という言葉を使われたこともありますね。まず、そのことは事実として認めてください。寺田委員に対する外務委員会の答弁です。

河野国務大臣 通告がございませんでしたので、議事録を見ておりませんので、お答えのしようがございません。

岡田委員 自分の答弁ぐらい覚えておいていただきたいと思いますが。

 いずれにしても、領土問題の解決と今お答えですが、私は領土問題の画定も同じ意味だと思っています。

 この中の戦争状態の終結と、賠償、補償問題の解決は、既に日ソ共同宣言においてなされている。日ソ共同宣言は、単なる宣言ではなくて、国会でも承認されている、いわば条約ですね。したがって、残されたのは領土問題の解決、あるいは、私に言わせれば領土問題の画定ということになります。

 では、総理、領土問題の解決と領土問題の画定というのはどこが違うんですか。領土問題の解決の方がやや広いかもしれませんが、その一番のコアの部分は領土の画定ですよね。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 従来から述べておりますように、まさに領土問題の画定と領土問題の解決はどう違うのかという意味かもしれませんが、従来から政府が述べておりますように、領土問題を解決して平和条約を締結するということであります。そこで、基本的に、国境線が画定されたことをもって、この領土問題、いわば平和条約を締結するという考え方にのっとっているわけでありますが、我々も基本的に、領土問題を解決して、そして平和条約を締結するという考え方にのっとっているということでございます。

岡田委員 総理から明確に述べていただきました領土問題の解決、私は領土問題の解決というのはもう少し幅広い概念かなと思いますが、国境を画定するということですね。総理は今明確にそう述べられましたので、それを前提に議論を進めていきたいというふうに思います。

 そうすると、領土問題が、国境が画定しないと平和条約は結べないということになりますね。

安倍内閣総理大臣 これは従来から恐らく述べているんだろうと思います。従来は、かつては条約局長が述べていたんだろうと思いますが、基本的には、国境を画定するということによって平和条約を締結する、平和条約を締結するということは国境を画定するということでもあります。

岡田委員 それでは、次に行きたいと思いますが、ちょっと今までの経緯を振り返りたいというふうに思います。

 冷戦時代は、ロシアは、ソ連ですけれども、領土問題は存在しないと。それに対して日本側は、いや、領土問題は存在するし、それは四島の問題であるということで、ずっと交渉を続けてきている。その中で東京宣言というのがある。東京宣言の評価は河野大臣に聞いても大臣は答えられませんでしたので、事実の問題として、ここにあるように、歯舞、色丹、国後、択捉、この四島の名前を挙げて、その帰属に関する問題について真剣に交渉する、両国の間で合意の上作成された諸文書、法と正義の原則を基礎として解決する、そのことによって平和条約を早期に締結する、これが東京宣言ですね。

 こういう基本的な考え方がずっと引き継がれてきたというふうに思うんですね。例えば、二〇〇三年の日ロ行動計画でも、日ソ共同宣言、東京宣言、それからイルクーツク声明、その他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決することによって平和条約を締結するための交渉の基礎であるというふうに述べてあります。

 これは、安倍総理とプーチン大統領の二〇一三年の日ロ首脳共同声明です。ここでも、四島の名前は具体的には出てこないんですけれども、日ロ行動計画においても解決すべきことが確認されたその問題、すなわち、それは四島の帰属の問題だということですが、双方受入れ可能な形で最終的に解決することによって平和条約を締結する。それからもう一つは、これまでに採択された全ての諸文書及び諸合意に基づいて進めることで合意している。これは、総理、二期目の安倍内閣になった後の話、二〇一三年のプーチン大統領との間の合意ですね。

 こういう全体の流れがある中で、昨年十一月の日ロ首脳会談の合意になるわけですね。ここでは、領土問題を解決して平和条約を締結する、一九五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることをプーチン大統領と合意したということです。ここで、今までとは違う表現になっている。つまり、四島の帰属という問題がない。そのことはちょっと横に置きましょう。だけれども、一九五六年共同宣言を基礎としてということになって、それまでは、東京宣言、その他の諸文書、諸合意、全てについて基礎としてと書いてあったのが、ここでは五六年共同宣言だけが出てきている。

 これはなぜなんでしょうか。せっかく日本外交が、ソ連からロシアに変わるその中で、ゴルバチョフ大統領やエリツィンの時代に、いや、問題は四島だよというふうに確認してきた。そして、その諸文書がずっと受け継がれてきた。それが、去年の十一月に突然、五六年の共同宣言だけになったということは、私は腑に落ちないんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 行動計画については、当時、私、官房副長官で交渉にも同席をしておりましたし、その後、政府の立場を説明する官房副長官として、ずっとテレビ等でこの意義等について述べておりましたからよく承知をしておりますが、日ロ間においては、今ずっと挙げられましたが、一九九三年の東京宣言、二〇〇三年の日ロ行動計画、そして二〇一三年の日ロパートナーシップの発展に関する共同声明を始め、これまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これら全ての諸文書や諸合意に基づいて交渉を行ってきているわけでございます。

 今回は、まさに五六年、五六年については、これは歯舞、色丹の引渡しについての言及が明確にあるということと、それと、両国においてまさに両国の国会が承認をしたものであり、現在でも有効であるということでございます。であるから、これを基礎とする。しかし、今、岡田委員が挙げられました諸文書については、当然その諸文書を踏まえて交渉しているということは言うまでもないわけであります。

 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であると、一貫した立場には変わりはないということでございます。

岡田委員 私は、日本側の立場を聞いているんじゃないんです。日ロ両国政府で合意してきた文書です。つまり、ロシア側も今までの諸文書には拘束されるわけです。

 その拘束される諸文書を今回落としてしまった。そして、五六年の共同宣言だけにしてしまった。これは交渉する上で大きなビハインドになるんじゃないですか。なぜそういうことをしたのか、私、総理に聞きたいんですよ。

安倍内閣総理大臣 ここで皆さん拍手しておられますけれども、今までの交渉を果たして本当に御存じなのかということを言いたいんですが、この五六年については、この五六年宣言自体が否定されていた時期が随分あるんですよ。御承知なんでしょうかね、この五六年宣言自体が。随分長い間ありますよ。その間、途中も飛んで、これは否定されたこともあるわけであります。

 なぜ否定されたかといえば、そこには、繰り返しになりますが、日ロ間ではこれまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これら全ての諸文書や諸合意に基づいて交渉を行ってきています。その中でも、一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有していることから、昨年十一月の日ロ首脳会談では、五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで一致をしました。一九五六年の共同宣言の第九項は、平和条約交渉が継続されること、そして、及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを想定しているわけであります。

 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるとの一貫した立場であります。これから後退していることは全くないわけであります。

 委員も外務大臣を務めておられましたからよくおわかりになっておられるんだろうとは思いますが、交渉がうまくいくかいかないかは静かな交渉ができるかどうかにかかっているわけでありまして、交渉内容にかかわることや我が国の交渉方針、考え方について、交渉に悪影響を与えないためにも、この場においてお答えできないこともあるわけであります。

 先般も元島民の皆さんとお目にかかったところでございますが、それぞれ皆さん御意見があるんですが、自分たちの中にもいろいろな意見があるけれども、とにかく自分たちが年を重ねる中においては解決をしてもらいたい、そういう中で自分たちもいろいろ気をつけていることは気をつけているということをおっしゃってくれています。

 恐らく、それは、岡田委員がおっしゃっていることも、いわば日本人の、これは今までの交渉を続けてきた方々も含めて、さまざまな方々の気持ちを代弁しておられるんだろうということは私もよくわかります。しかし、その中において、私たちは、何とか次の世代に先送りすることなくこの問題を解決しよう、こう考えているわけであります。

 その中で、今申し上げましたように、まさに歯舞、色丹が引き渡されるということが明確に書かれているということ、平和条約交渉を続けていくということが明確に書かれていること、ですからこれを基礎として交渉を進めていく、それを今回判断したところでございます。

岡田委員 総理はたびたび、一九五六年共同宣言について現在も有効であるということを、書かれた、一九五六年共同宣言を挙げられた理由として言われていますが、非常に気になるんですね。

 つまり、一九五六年共同宣言以外の諸合意は、これは現在は有効ではないんですか、それとも、それは現在も有効なんですか。日ロ間で有効であるということは確認されていますか。

安倍内閣総理大臣 有効であるということについて言えば、なぜ有効であるかということについて強調したかといえば、これは既に両国の国会で批准しているということについて有効である、批准したということは今も変わらないということでございます。

 今でも諸文書というのはもちろん有効ですよ。しかし、それは国会で批准したわけでは残念ながらないわけでございまして、この今まで書かれたものについては、どこを対象にするかということについて、まさにそれは、書かれているのは事実でありますし、これはこの考え方のもとで交渉しているわけでございます。

 しかし、引渡しについて書かれているのは五六年宣言だけであると言ってもいいんだろうと思います。

岡田委員 この五六年共同宣言の引渡しについて、歯舞、色丹について書いてある、平和条約を締結して引き渡す。しかし同時に、この共同宣言では、国後、択捉は全く言及されていない。そういう共同宣言だけをここで基礎とするということは、国後、択捉の交渉にとって私は大きなマイナスではないかというふうに考えているんです。

 今まで認めてきた文書をあえて今回書かなかった、十一月に書かなかったということは、それは相手方に、国後、択捉についてはもう解決済みであるという、その主張に根拠を与えることになりかねない。これは外交の常識だと思いますよ。そのことについては総理はどう考えているかということを私はお聞きしているわけです。

安倍内閣総理大臣 私はそのようには考えておりません。

 ずっと四島について、当然、我々は北方領土問題の解決についてずっとこの交渉を続けてきているわけでございますし、今お互いに挙げた文書等々についても、その諸合意の上に交渉を続けているということは当然のことではないか、こう考えております。

岡田委員 総理がどう考えているか、あるいは日本側がどう考えているかの問題ではなくて、ロシアも含めてどう考えているか、プーチン大統領はどう考えているかという問題なんですね。

 だから、今までの諸文書というのは合意されているわけですから、これはロシアも当然、プーチン大統領も含めてロシア政府も拘束されるわけです、その結果については。ところが、その文書が今回なくなってしまったことをもって、今まで日本外交として築き上げてきたものを一挙に後退させることになっているんじゃないかと私は思うものですから、総理の意見を聞いているんです。

 あなたがどう考えているかじゃなくて、日ロ両国政府としてこれはどうなのかということを聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 それは、後退しているかどうか、向こう側がどう考えているかということを私に聞いているわけですよね。ですから、私は、当然、交渉の中で、今までの諸文書にのっとって交渉していますよ。それで議論をしているんですから。

 ですから、当然、岡田さんがおっしゃるとおりであれば、これはあなたはもう今までのことを全部捨てたんですねということであれば、もう交渉しませんよということになるわけでありますが、そういうことにはなっていません。そういうことにはなっていないんですから、今までの諸文書の上に交渉を行っているということであります。

 それ以上、これから交渉のまさに中身に入っていくわけでございますから、ここで述べることは差し控えさせていただきたい、このように考えておりますし、先方が、つまり、どう考えているかということについては、先方がどう言っているかということにもかかわってくることでございますから、ここでの答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

岡田委員 私は、日本の交渉ポジションが非常に弱くなってしまっているんじゃないかということを申し上げているわけです。

 では、ちょっと話題をかえますけれども、総理はプーチン大統領との間で、たしか二十五回、首脳会談を重ねてこられました。その間、二人だけで、通訳だけを入れて話されたことも多いと思います。先般も随分長く話されたというふうに聞いているんですが、その通訳というのは、当然、外務省の職員ですね。

安倍内閣総理大臣 当然、そうです。

岡田委員 そうすると、その通訳者のメモは残っているわけですが、そのメモは公文書になっていますか。

安倍内閣総理大臣 当然、メモは残っております。当然、メモが残っている以上、公文書であることは間違いありません。

岡田委員 公文書として保存されているということですね。後で検証ができるということですね。

安倍内閣総理大臣 もちろん後で検証はできますが、これは二人だけのやりとりでありますから、相当長い間、いわば、どうするか、秘密として何年間非公開にするかということを決めていくんだろう、こう思いますが、当然、プーチン大統領と二人だけのやりとり、これは本音で話さないとできないわけでありますから、今ここで、すぐにそれを公開するということを言えば、もう次の段階から本音では話せなくなりますし、私も本音では話せなくなっていくわけであります。

 そういうことでありますから、当然、それを踏まえて、この公開等の基準を考え、判断をしていくんだろうと思いますが、基本的には、これは私とプーチン大統領との二人だけのやりとり。

 では、なぜ二人だけでやるかといえば、大勢人がいてはなかなかお互いに話せることも話せないということでありまして、この二人だけの会談に持ち込むということ自体がなかなか大変なことでありますが、やっと二人だけの間の話になった以上、その二人だけの話というのは基本的には秘匿されてしかるべきものだろう、こう考えております。

岡田委員 私も、すぐ公開しろとかそういうことを言っているわけではなくて、それは、事の性格上、かなり先に公開されるということになるんだと思います。文書が残してあることを聞いて、安心はいたしました。

 ただ、こういう二人で長く話すというのは、もちろんお互いの信頼関係をつくる上で非常に重要なことだというふうに思いますが、同時に、リスクもあるわけですね。一方のペースにはまってしまうという可能性もあります。

 そういう意味で、私は、総理が任期中に必ず平和条約を締結するんだ、この問題を解決するんだというふうにみずからお尻を切っておられるだけに、相手方のペースになってしまうリスクというのはあるんじゃないかと思いますが、もう少し、二人だけの話も結構ですが、幅を広げて議論するということも重要なんじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは岡田委員も外務大臣をやっておられたから御承知だと思いますが、首脳会談というのは、こちらがずらっと事務方が並ぶこともありますが、事務方がしゃべるということは基本的にほとんどないですよ。九九・九%、首脳間で話をします。

 相手方が外務大臣に振る場合があります。その場合はこちらも外務大臣に振ることもありますが、基本的には、特にこの領土交渉のようなことについて、むしろ他の大臣が、どちらのペースになるかということなんですが、むしろ、これは二人だけで話した方が、これは基本的に、まさに向こうの首脳の、お互いの覚悟のぶつけ合いでありますから、それはお互いが一対一にならなければ、実際どう考えているかということについては述べにくいということはあるわけでありますから。ですから、一対一に持ち込んだら向こうのペースになるということでは、これは全くないわけであります。

 そもそも、ペースはどうかということについて言えば、お互いに、これはその時々によって、どういうペースになっていくかということは確かにありますが、基本的には、どちらかのペースで一方的に進むということは、どの交渉においても余りそれはないのではないのか、こう思います。

岡田委員 私が思うに、プーチン大統領から見ると、今、北方領土問題を解決しなければならないインセンティブというのは余りないんじゃないか。そもそも、その気はほとんどないんじゃないか。そうでなければ、国後、択捉にあれだけの軍隊を展開し、二〇一六年に地対艦ミサイルも配備しましたよね。最近は戦闘機も配置したと言われている。本当に返す気があればそんなことをするのかなというふうに、不思議に思いますね。

 そういうこともあり、一方では必ずしも解決しなくてもいいというふうに思っている、他方は任期中に必ず解決すると思っている。その非対称性の中で、私は交渉が一方的になるリスクというのはあるというふうに思うんですね。

 ずばり聞きたいと思いますが、総理、二島だけで国境線を引く、そういうおつもりはありますか。

安倍内閣総理大臣 基本的に、今まで、日ソ時代も含めて、日ロになってからも、この平和条約交渉というのは本当になかなか大変だったですよ。今までの交渉の記録を見てきても、いわば向こう側から平和条約交渉をやろうということは基本的にないわけでありますから、基本的に日本側が求めているということであります。

 岡田委員は、どちらかが要求が、ウオンツが強い方が弱くなるのではないかということを懸念しておられるんだろうと思いますが、しかし、その中において、我々は、どういう状況であってもこの問題を解決しなければならないと私は思っています。どういう状況であってもですね。

 それは、申し上げるように、七十年以上解決されていない問題でありますからそう容易なものではないということは、もとより私も十分承知をしておりますが、であったとしても、私は、まさに、元島民の皆さんの熱意、そして日本国として当然やらなければいけない交渉として、私は内閣総理大臣としての義務としてもこの交渉を前に進めなければならない、こう決意をしているところでございます。

 そこで、今委員が御質問になられたことは、まさに我々の姿勢は領土問題を解決して平和条約を締結するという姿勢でございまして、それ以上のお答えについては、まさに交渉の中身に入っていくわけでありますから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

岡田委員 二島返還論というのは、二島プラスアルファとか言われますが、私は全く違った二つの考え方があるというふうに思うんですね。

 つまり、四島についての国境線を引かないで、二島はまず日本のものであるということを確定する。国後、択捉については引き続き交渉する。こういう二島プラスアルファ論。しかし、そのときは、最初に総理に確認したように、国境線が画定しませんから、平和条約は締結できない。総理が平和条約を必ず締結すると言っている以上、そういう答えはないんだろうなというふうに私は思っています。

 そうすると、どこかで国境線を引く。二島で引いて、あと、つまり国後、択捉はロシア領であるということになって、しかし、そこに経済権益を一定程度認める。あるいは、人道的見地から墓参の自由化とかそういうことが入る。そういう二島プラスアルファというのは一方で考えられるわけですね。

 総理、お答えになれないと思いますから答えは求めませんが、私はやはり、歯舞、色丹だけで国境線を引く、これはやってはいけないことだというふうに思っているんです。総理もそこの思いは同じじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 従来から申し上げておりますように、政府の方針としては、領土問題を解決して平和条約を締結する、この方針に変わりはないということでございます。

 これ以上については、交渉の中身に入ってくるわけでございますので、答弁は差し控えさせていただきたい、このように考えております。

岡田委員 答弁できないことは一定程度わからないわけではないんですけれども、でも、その答えでは、私は納得しませんし、国民も納得しないと思いますよ。(発言する者あり)だから聞かないと言っているじゃない。

 歯舞、色丹、面積でいうと七%ですよね。九三%は国後、択捉だ。そこで国境線を引くというのは、私はとても引き分けとは言えない。やはり引き分け以上を求めて交渉するのが総理の務めだし、それができないのであれば、無理に平和条約を結ばなければいけない、そういったことではなくて、もう少し柔軟に考えるべきだと思いますが、その柔軟性が総理にありますか。

安倍内閣総理大臣 柔軟性というのはどういう柔軟性なんですか。

岡田委員 柔軟性というのは、無理に総理自身が領土問題を解決して、そして平和条約を結ぶ、そういうことを総理は何度もおっしゃっているんだけれども、必ずしも、状況を見て、領土交渉、次の世代にこれを先送りするということも私は重要な判断だというふうに申し上げているわけです。

安倍内閣総理大臣 無理に国益を害するというつもりも全くございません。

 この間、私もずっと何回か島民の皆様とお話もさせていただきました。

 基本的に、我々、領土問題を解決するというのは、いわば北方領土問題を解決する、この北方領土というのは国後、択捉、歯舞、色丹群島であるということは申し上げているとおりでございます。

 現在、約一万七千人近いロシア人がこの四島に住んでいるわけでございますが、戦前に住んでいた日本人の数も大体一万七千人ぐらいであります。そのうち、一万一千人ぐらいが国後、択捉で、六千人ぐらいが、歯舞に大体五千人なんですね、そして、あと色丹ということになっております。多くの方々、歯舞群島は非常に小さいですから、非常に人口が少ないのではないかと思っておられる方が多いんだと思いますが、当時は昆布漁等が盛んでありましたから、歯舞群島というのは五千人住んでおられて、色丹が千人ちょっとということでございます。

 そういう中において、皆さんといろいろとお話をさせていただく中においては、例えば、まずは、自分たちとしては自分たちの故郷で朝を迎えたいという話を、切実な思いをしておられます。その手紙については、スズキさんという方が書かれたんですが、ロシア語で書かれた手紙はプーチン大統領にもお見せをしたわけでございます。

 その結果、例えば航空機による墓参、皆さん、年を重ねてこられましたから、航空機の墓参というのはずっとなかなか難しかったんですが、それが今回初めて航空機の墓参が実現をしました。ことしの夏にも第二回目が行われることになっていくわけでございますが、なるべく島民の皆さんにお墓参りを、自由な墓参を可能にしていきたい。

 そして、できるだけもっと広い地域にわたって、さまざまな地域、これは制限もかけられていますから、そういう地域をなるべく広げていきたいということで努力も重ねている中において、この皆さんは、とにかく自分たちがまだ行けるうちにこの問題を解決してもらいたいという熱意があるわけであります。

 一方、冷静に国益を判断しなければいけないという、その岡田委員の主張もよくわかります。その中で何とか結果を出していきたい、こう考えているところでございます。

岡田委員 総理が御努力されて、飛行機による墓参り、墓参が可能になったということは、私は評価しています。

 ただ、もし国境線を歯舞、色丹だけで引いてしまうということになれば、国後、択捉は戻ってこない。もちろん、一定の自由度は確保されるかもしれませんが、ロシア領に明確になってしまう。そうであれば、やはり元島民の皆さんのその気持ち、国後、択捉にかつて住んでおられた島民の皆さんの気持ちからすれば、それはとても許容できないことだというふうに思うわけですね。したがって、私は、粘り強く交渉すべきだということを申し上げているわけです。

 国後は大体沖縄本島と同じ広さ、択捉は鳥取県に相当する、かなり大きな面積ですね。それをみすみすロシア領にしてしまうということは、私はあってはならないことだと思います。

 ただし、もちろん、私も、総理が何度もおっしゃるように、外務大臣も経験して、四島全部というふうに、それでなければ絶対にだめだと言っているわけではありません。それは、やはり交渉の結果。しかし、少なくとも引き分け以上に持ち込むべきだ。それは、歯舞、色丹という七%だけでは、とてもそういうことにはならないということを申し上げているわけです。

 私のこの考え方を十分踏まえて、これから交渉に当たっていただけますか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、今委員がおっしゃった考え方は、多くの国民の皆さんが確かにそれは共有しておられると私も思います。その中において私も交渉していきたい、こう思っています。

 ただ、先ほど申し上げましたように、表現の仕方なんですが、領土においては七%ということでございますが、そこがたかだか七%ではないかという言い方、我々も聞かれたら七%とお答えするんですが、たかだか七%というお答えの仕方は、例えば歯舞群島に住んでおられる方々にとっては、それは何か自分たちがちっぽけな存在だと思われているようで不愉快だということも言われました。これは事実を申し上げているわけでございまして、そこのところ、もちろん、そういう中において、ぜひ多くの島民の皆様に御了解をいただくために努力をしていきたい。

 その中で、これはお互いがいわば了解にならなければ、お互いが受入れ可能とならなければこの問題は解決をしないわけでありまして、日本側の主張をしていればいいということには、これはやはりならないんですよね。これは、お互いが受入れ可能なものはどこかということを突き詰めていく必要があるわけでありまして、では、次の世代、次の世代といって二十年、三十年たって、百年経過したら、これはもう歴史のかなたに行ってしまうという問題になるかもしれないということであります。

 もう大体、元島民の皆さんも平均年齢が八十歳近くになってきている、八十歳を超えてきているわけでございますので、そこは、我々、何とかここでお互いに受入れ可能な解決策に到達をしたい、こう思っています。

岡田委員 多分、私と総理の間で一つ違うのは、やはりプーチン大統領に対する見方だというふうに思うんですね。

 総理は何度も何度も会談を重ねられて、見きわめておられるわけですから、そちらの方が確かなのかもしれませんが、私はやはり、ソ連からロシアになる中で、ゴルバチョフ大統領やエリツィン大統領、窓が開いた時代、それから見ると、今のプーチン大統領のロシアというのは、また時計がもとに戻ってしまったようなところがある。いわば帝国主義じゃないですけれども、少なくとも、民主化に向かって進んでいる、そういう印象は受けないわけですね。

 ですから、プーチン大統領はこの領土交渉の相手として適切なのかどうか。私は、状況を見て、余りにも不利な答えになるということであれば、それは次に先送りする、そういう勇気もあわせて持っていただきたい、そうでないと、場合によってはとんでもないことになるというふうに思っているんです。

 同時に、今度、参議院選挙の前にG20があって、そこでプーチン大統領とお会いになる。参議院選挙を意識して、そこで取り繕うような、一瞬前進したような、そういう印象を与えるようなことは総理はまさか考えておられないと思いますけれども、そういうふうにすると、交渉全体がおかしくなってしまいます、長い目で見たときの。そのことについての自覚もぜひ持っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この交渉というのはそう簡単なことではないわけでありまして、では、ゴルバチョフ大統領時代に交渉の窓が開いていたかといえば、交渉記録を見ていけば、それは必ずしも開いていないわけでありまして、五六年宣言についても、ゴルバチョフ大統領はそれを完全に認めていたかといえば、これは必ずしもそうではないわけでございます。

 エリツィン大統領との交渉においても、これはさまざまな経緯がありましたが、しかし、最後の段階で、これは果たして向こう側が、ロシア側が本当に受け入れられるかどうかという大きな壁があるわけでありまして、これを越えられるものでなければなかなか実態としては難しいわけでございまして、だからこそ、今、四島の共同経済活動について、具体的に実現しようということで交渉を進めているわけでございます。

 そうなれば、初めて四島に日本人が行って、一緒にロシア人と経済活動をして、そこで、まさにその経済活動から生み出される富についてはお互いが享受することができるようになるわけでございます。もちろん、これはビジネスベースでありますからODAとは違いますが、しかし、一緒に日本人と今住んでいるロシアの人々が仕事をして、やはり豊かになったなという実感を持つということは大きなことなんだろうと思っております。

 そういう中で、交流が深まっていく中において信頼関係ができてくるのではないか、こう期待をしているわけでありまして、まさに今までになかった協力が進み始めているということは事実だろうと思います。

岡田委員 共同経済活動についても、新しい法的な枠組みというのは私は議論が全然進んでいないと。ロシアはロシアの法律と言い、日本はそれを認めるわけにいかないという中で、新しい仕組みづくりは私は停滞しているというふうに思っています。

 そして、主権の問題と経済活動は全然別です。もし、国後、択捉がロシアのものになって、その中で経済活動がかなり自由にできるからいいじゃないかと考えているとすると、もちろんそれは間違いで、やはり、主権の問題、これは国益そのものですから、総理にはしっかりとそこを踏まえてこれからも交渉していただきたいと思います。

 終わります。

野田委員長 この際、小川淳也さんから関連質疑の申出があります。川内さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也さん。

小川委員 立憲民主党・無所属フォーラムの小川淳也です。

 先週に引き続いて、統計不正の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 先週の質疑に対して、本当に多くの御意見また反響をいただきました。これは全部そうなんですけれども、もう数えられないぐらい。それは私、なぜだろうと。統計不正の問題もさることながら、その背景にこの政権の体質があるという指摘に対して、多くの有権者、国民が、その不安なり、もっと言えば脅威を共有していただいているということだと私は受けとめました。

 その前提で、これは手を緩めずにお聞きしたいと思っています。

 官房長官、今会見で外されているようですので、戻り次第、官房長官にお聞きしたいことをお聞きするんですが、きょうはちょっと、勤労統計そしてGDPと改めて追跡をしたかったんですが、職責上、これも大事な務めでありまして、まずは大西前統括官に、この間の経緯確認、簡潔にさせていただきたいと思います。

 ちょっと時間の都合もありますので、二、三まとめての質問になることをお許しいただきたいと思います。

 前統括官にお聞きします。

 あなたの前任である酒光統括官は、この統計不正を知っていました。あなたの着任は昨年の七月でしたね。酒光統括官からの引継ぎは本当になかったのか。

 そして、翌八月、着任早々でしたが、統計委員会でこの数字の上振れについて、結果としてうその説明をさせられたことになっています。これは、当時部下だった野地室長は真相を知っていたはずです。ということは、あなたは、着任後、野地室長にだまされて、もし知らなかったとすれば、うその説明を統計委員会でしたということになります。

 酒光統括官から本当に引継ぎはなかったのか、そして、結局、八月には部下である野地さんにだまされたという認識でよいのか。この二点、御答弁いただきたいと思います。

大西参考人 お答えいたします。

 七月三十一日に着任したときの引継ぎの関係でございますが、毎月勤労統計につきましては、前統括官のときに調査方法の変更等があったわけでございますが、その引継ぎは、私の記憶によりますと、今は落ちついているというお話がございまして……(小川委員「落ちついているというのは、受けたということですか。引継ぎを受けたのね」と呼ぶ)毎月勤労統計については、その一言、今は落ちついているという……(小川委員「不正はあったけれども落ちついている」と呼ぶ)いや……

野田委員長 ちょっと、小川さん、やりとり、ちゃんとして。

大西参考人 落ちついているというのを受けまして、それ以上の特段の説明は受けておりません。

 それから、八月の統計委員会のことでございます。

 これにつきましては、私が、この抽出調査につきまして復元をしていなかった、抽出調査であることや復元をしていなかったことを初めて知ったのは十二月十三日でございまして、統計委員会には出席しておるわけでございますが、その時点で抽出調査あるいは復元していないことについては説明を受けておらず、知りませんでした。

小川委員 今の御答弁ですが、酒光前統括官は知っていたのに明示的に引継ぎをしなかった。ということは、二つのことが考えられます。

 一つは、暗黙のうちに隠蔽する気があった、隠蔽できるだろうと思った。もう一つは、危機管理能力の欠如があった。いずれかであります。

 酒光前統括官の参考人招致を求めたいと思います。

 同時に、上司たる大西前統括官に、真相を知りながら当時の野地室長は、八月の時点でうその説明をし、そのうその説明を統計委員会であなたに強いたことになる、結果的に。

 野地室長そして野地室長の前室長である石原室長、両者の参考人招致を求めます。

野田委員長 この件につきまして、後刻、理事会にて協議いたします。

小川委員 大西参考人の言を、この後、信用して、これまでの御発言の上に立って質疑をしたいと思いますが、あなたは、十二月十三日、総務省に説明するに際して、ついに事きわまったわけです。野地さんも、これ以上うそをつけないというふうに観念したわけですね。それで、あなたに正直に状況を告白した。

 しかし、先週の委員会で問題になった点なんですが、十三日に説明を受け、そして宮川厚労審議官、定塚官房長そして総括審議官の三名に、部下である野地室長から口頭で簡易な報告をさせている。十八日にですね。

 ということは、あなたが知ってから十八日の報告まで、五日間の空白期間があります。なぜ、早々に報告しようということにならなかったのか。この時点であなたは事の重大性を見誤ったというふうに私は考えますが、いかがですか。

大西参考人 委員が今御指摘いただきましたが、十二月十三日に初めて私が本件につきましてお聞きした後、十八日に担当部局の参事官から官房の幹部に御説明申し上げたところでございます。

 そのときのことを記憶を振り返りますと、調査は開始しておったわけですが、その時点でまだ、具体的に、いつからそういうことになったのかとか、あるいは復元についてどういう状況であったのか、そういう状況については、残念ながらよく把握し切れていなかったということでございます。

小川委員 恐らく事態の把握には時間がかかったと思いますが、それにしても、直ちにまず一報を入れるという判断は、管理者として、私はあり得た判断だと思います。

 翌十九日です。十九日に、今度は、大西参考人みずから、事務次官、そして宮川審議官、定塚官房長に説明をしています。これは、十八日同様、口頭なのか。

 私は、これは必ずしも統計の専門家でない方に説明していますので、しかるべき文書をもって説明したのではないかと思いますが、まずこの点をお聞きします。文書で報告したんですね。

大西参考人 お答えを申し上げます。

 十九日の説明でございますが、これも記憶によりますと、手持ちの資料を携えて見せた、見せたのではないかと思うのですが、内容についてはさらなる調査が必要であるということを説明した記憶があります。そのときには、もっとしっかり調べるように指示を受けたところでございます。

小川委員 当時お持ちになっていた手持ちの説明資料の委員会への提出を求めたいと思います。

野田委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

小川委員 定塚官房長にお聞きします。

 この十九日に、何らかの文書を手渡されるか、あるいは見せられた形で概要の説明を受けたと思います。私は、十八日の報告と十九日の報告は質的に異なると思っているんです。

 なぜなら、十八日の報告は、本来やるべき全数調査ではなくサンプル調査が行われていたという報告でした。したがって、適正に復元されていれば、数値そのものは統計の誤差の範囲内におさまった可能性がある。

 しかし、十九日の報告は、適正な復元がなされていなかったという報告でした。したがって、この時点で、賃金水準の数値が大きく変動することが予想されます。さらに、これは国民に対する保険給付に影響することが予想されます。そして、これに合わせて国民は保険料を納めなければならない。さらに、次年度予算に影響するということが容易に想像できたと私は思います。

 したがって、十八日の口頭報告と、この十九日の補正が行われていなかったという報告は、極めてその重大性において質的に異なるものだという前提でお尋ねしますが、官房長、この説明を受けた時点で、その事の重大性にどの程度気づいたか、気づいていないのか、御答弁ください。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から指摘がありましたとおり、十八日の報告は口頭でございましたけれども、これは、全数調査とすべきところを東京都において抽出調査を行っていたという報告でございました。

 一方で、十九日については、資料を持たれて説明を受けたと記憶をしておりますけれども、今の、抽出調査を行っていたということだけではなくて、抽出調査の結果に必要な統計的処理、すなわち、適切な復元処理を行わずに集計していたということが報告されたということでございます。(小川委員「その重大性の認識は」と呼ぶ)はい。

 したがいまして、抽出調査をしていたということだけではなくて、抽出調査を行えば当然に復元を行うべきということを、復元をしていなかったということで、重要であるということに気がついたわけでございますけれども、ただ、その時点では、どの程度まで復元をされていなかったなど事案の具体的な内容、それから影響がどの程度だということは全く明らかになっておらず、しっかり精査するようにということを指示されたというふうに聞いているところでございます。

小川委員 その点、前任の野地統計室長は、石原室長から、最大でこの誤差は〇・二%に達するという引継ぎを受けているんですね。ということは、野地さんは、その時点で〇・二内外の誤差があるということを知っていたはずだ。それも含めてあなたたちは、私は聞いていた可能性があると思う。

 十二月二十日に根本大臣に報告が上がるわけですが、この前後の事の重大性に対する認識、そして、当然、その後の危機管理は極めてお粗末と言わざるを得ない。

 そこで、私ちょっと聞きたいんですが、この保険給付への影響や次年度予算への影響に最初に気づいたのは、どこの誰ですか。いつ、どこの誰ですか。

 私の邪推を申し上げれば、これ、財務省なんじゃありませんか。大西参考人、御答弁ください。

大西参考人 お答え申し上げますが、ちょっと済みません、どこの誰が最初にというのはちょっと、済みません、よくわからないところでございます。

小川委員 これ、改めて、財務省に一報を入れたのは、いつ、誰が入れたのか調べてください。そして、どの時点で、誰が最初に事の重大性に気づき、その後、予算のやり直しにまで至ったのか。この経過の一覧、メモにして委員会に提出を求めたいと思います。

野田委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

小川委員 もう一点、今度は賃金構造基本調査について伺います。

 十二月に入管法が改正され、調査対象に外国人を含める必要が出ました。その報告を担当室長から受けた大西参考人は、実際には訪問調査をしなければならないのに、そのほとんどが郵送調査であるという報告を受けた。これに対して、計画と実態を合わせるべきだという指示をされましたね。ちょっと首だけ縦に振っていただければ。はい。

 これは、後に厚生労働省の会見、二月一日です。翌月、一月の二十四日に総務省が総点検を求めているんですね。そこで統計室長は問題なしと回答しています。問題なしとの回答を統計室長が意図を持って報告したのは明らかであり、隠蔽の意図を否定できないと、後に厚生労働省は会見で表明しています。しかし、大西統括官の隠蔽の意図は現段階で不明であり、再確認したいということでありました。

 そこで、お聞きします。

 この十二月の段階で調査方法を変更するように指示したこと自体が隠蔽に該当し、そして、一月二十四日に部下である室長が問題なしとうその回答をしたことをあなたは知っていたと私は思いますが、事実関係を述べてください。

大西参考人 まず、外国人労働者の調査に関して、郵送調査にするという最初の点でございますが、記憶によりますと、この十二月の、ちょっと日にちを覚えていないんですけれども、下旬にそのような説明を受けておりまして、私は、異なっているという点があるのであれば、郵送調査とするという変更申請を出して対応すべきという指示をしました。

 郵送調査自体については、他の統計にもそういう動きがあるので、その郵送調査自体、悪いものとは当時捉えておりませんでした。

 また、一斉点検のときにつきましては、その十二月の二十四日の当日に室長とちょっと時間的な余裕がなかったのでお話ししてはおらないというぐあいに考えております。

小川委員 ということは、当日、問題なしと回答したのは室長の独断であり、後に根本大臣が述べておられるんですが、大西参考人は、翌日、二十五日にこれは本来報告すべきことだったと気づいたということであります。

 しかし、追いかけて申し上げますと、その結果公表が二十八日ですから、更に四日間、このこともだんまりだったということにならざるを得ません。

 最後に、賃金構造基本調査の予算について伺います。

 本来、訪問調査をやるという名目で、九千万円の人件費が計上されています。その他もろもろ含めますと、総額で一億五千万円の予算計上がされています。しかし、この調査は約八万事業所に対する調査で、そのほとんど全てが郵送によって行われていたとしますと、単純計算ですが、一事業所当たり約二千円という調査費は、郵送にしては過大ではないかと思います。

 したがって、質問です。この一億五千万円の予算計上は、実態に照らして過剰計上であり、そして、本来費目が違うはずですから、不適切な流用が行われていたのではないかと思いますが、その点について御答弁をお願いします。

大西参考人 御答弁を申し上げます。

 まことに申しわけございませんが、当時、予算の詳細については確認しておりませんでした。

小川委員 以上の点について、きちんと、どういう予算計上であり、それがどう使われたか、メモにして委員会への提出を求めたいと思います。

野田委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

小川委員 それでは、もう少しお聞きしたいこともあったんですが、時間の制約があります。

 官房長官、お帰りなさい。お待ちしておりました。

 統計改革について、私は、この勤労統計が、相当いろいろな議論があって、変更されないという厚労省内の研究会で結論がついたのに、なぜ、その後、統計委員会に議論が召し上げられて、ちなみに申し上げますが、統計委員会は本来、統計法によって申請主義をとっています。各省が申請して初めて統計委員会は審査する。

 ところが、この時期、未諮問審査事項という聞きなれない概念がつくり出されている。つまり、長年諮問していないやつは俺たちから見直しを指示するぞというトップダウンの形式にまでなって、結果として、厚生労働省での研究会をすっ飛ばす形で結論に至っている。

 そのときに、私は、麻生大臣の発言は極めて重い意味を持っていると前回指摘しました。しかし、それは一五年の十月なんです、麻生発言は。一五年の九月には、厚労省は既に研究会を終えている。これが立ち上がったのは六月です。

 そこでなんですが、実は、一三年、一四年の賃金が大きく下振れしたそのデータをとったのは、一五年の一月なんですね。そして、そのデータが公表されたのは一五年の四月なんです。とすると、このデータで下振れが明らかになった一五年の四月から、厚労省が具体的に各方面から意見があると言って不承不承立ち上げた研究会、一五年の六月、四月から六月までの間に何らかの政治的な力学が働いたというふうに想像しています。

 官房長官、一昨日の報道で、厚生労働省の研究会において、ある委員の方が、サンプルを入れかえて数字が悪くなるやり方に官邸か菅官房長官がかんかんに怒っている、激怒しているということで、厚生労働省の職員は当初から相当気にしている。恐らく震え上がったでしょうね。

 官房長官、この四月から六月の間に、厚労省からこの説明を受け、そして、あなたは激怒したという事実があるかないか、お答えください。

菅国務大臣 私、この新聞記事を見て激怒したいぐらいでした。

 実は私は、官僚に激怒することはありません。これが政治家としての、横浜市会議員当時から今日に至るまで、私の姿勢です。私は官僚と議論します。官僚と闘うときは理論で勝たなければできないということは市会議員のときからよく知っていましたので、そのことを一貫して貫いていますので、感情的に激怒することはまずあり得ない、このことを申し上げたいと思います。

 そして、今の話は、四年ほど前の話でありました。その記事があって聞かれましたから。それで、当時の私の担当秘書官に聞いたところ、厚生労働省から、毎月勤労統計について数年ごとに調査結果に段差が生じることに関して、統計の専門家の意見を聞いて検討する旨の説明を受けた、そういうことのようでした。

 いずれにしても、毎月勤労統計の調査方法の見直しについては、統計委員会を始めとする専門家の検討を経て統計的な観点から行われたものである、このように承知をしています。

小川委員 官房長官、私も思うんですよ。激怒する官房長官はそんなに怖くない。激怒しない官房長官の方がもっと怖いんですよね。

 これは、ある意味、政治家の先輩として、本当に素直にそう申し上げています。ですから、感情的に激怒したかどうかは聞いていません。当時説明を受け、それに対する官房長官の反応なり意見が厚生労働省にとっては恐らく相当なプレッシャーだっただろうと、その可能性について聞いているわけです。

 委員長、これは今、官房長官がお認めになりましたから、厚生労働省から説明を受けたことは事実ですね。これに関する説明資料なり応答録、厚生労働省における応答録、官房長官からどう言われたのか、この応答録の委員会提出を求めます。

野田委員長 小川さん、官房長官から。指名します。

菅国務大臣 今申し上げましたけれども、新聞に出て、私に問合せがありました。四年前の話です。私は全く覚えておりませんでした。それで、当時の秘書官から説明を受けました。その説明によれば、厚生労働省から、毎月勤労統計の数年ごとの調査結果に段差が生じることに関して、統計の専門家の意見を聞いて検討する旨の説明を受けた、そういう説明でありました。

 いずれにしろ、私自身、統計に正直言ってそんなに関心を持っておりませんでした。ですから、専門家から対応する、これはある意味では当然のことだろうというふうに思います。

小川委員 御自身の立場からはそうおっしゃるでしょうが。

 私、前回以来、官房長官、霞が関の人事権を全権掌握した史上初の官房長官です。史上最大の権力者ですよ、戦後最大の。総理が二番目じゃないかと思うぐらい。(発言する者あり)いや、その自覚がないと、つまり、この間、霞が関で起きている不祥事の数々について、官房長官にその自覚がない限り、根本的には治癒しないんですよ。あなたの表情一つ、目線一つ、言葉尻一つがどれほど影響があるか、霞が関にとって、ということを私は申し上げているわけです。

 もう一点、指摘します。

 最近、この厚生労働省の勤労統計研究会そして統計委員会の委員に対して、官邸官僚が、総理や官房長官の秘書官か補佐官か、あるいはそれを補佐する人たちかが、当時の経緯を余り外でしゃべるなという圧力をかけているといううわさがあります。私も、私だけじゃない、会派内の委員、いろいろと当たって当時の経緯を聞いているんですよ。だんだん口が重くなってきていることはひしひしと感じている。

 これはあってはならないことだと思いますが、官房長官、ここでちょっと指示してください。当時の事実をねじ曲げたり、あるいはうその説明をしたり、あるいは説明すべきことを説明しないなんということは、官邸官僚としては不届きだ、そういうことがあったら俺は厳しく処罰すると、この場で言ってください。

菅国務大臣 まず、私や官邸からそういう指示をすることはあり得ません。今、霞が関で、何を言ってもすぐ表に出てしまうじゃないですか。言わないことさえ、こういう形で、この国会の場で議論をされるわけでありますから、そこは細心の注意、自制のもとに私は仕事をさせていただいております。

小川委員 私は、そうであっても、みんながそんたくするんですからと言っているんですね。みんな、そんたくしているんですよ。どうやったら喜ばれるか、どうやったら喜んでもらえるか、かわいがってもらえるか、出世させてもらえるか。そういうことなんですよ。そういう前提に立ってください。

 もう一点、これはどうも、野党ヒアリングでも指摘しているんですが、勤労統計研究会の議事録、佳境に入った一五年の七月、八月、九月だけ、四年たった今も公開されていないんですね。これは一刻も早くやってください。根本大臣、頼みますよ。これは絶対に、一刻も早く出していただきたいと思います。

 もう、ちょっと時間が迫ってきたんですが、中身に入ります。本当は勤労統計の矛盾から、あるいはGDPに至るまで行きたかったんですが、限られた時間で一点だけ。

 今回の、二〇一八年の賃金水準は極めて高いです。その理由には幾つか背景がある。そして、きょうは、その中で一点だけ聞きます。

 根本大臣、日雇労働者を調査対象から外したことは、相当これは二〇一八年の賃金を高く上振れさせていると思いますが、根本大臣、その事実をまず認めてください。

根本国務大臣 統計調査における労働者等の区分等に関するガイドラインというのがあるんですけれども、これは、そもそも、統計調査のあり方については、総務省において、新たなニーズや社会経済情勢の変化にも留意しながら、統計相互の整合性の確保、向上、こういうことの観点から見直しをしてきたんですよ。そして、そうした中で、常用労働者と臨時労働者の区分については、ここが肝心なところですが、事業所や企業を対象とする統計調査と世帯や個人を対象とする統計調査との間で直接的な比較が困難との指摘があって、統計調査同士の整合性をとるためにガイドラインが策定されました。

 そして、そういう……(発言する者あり)

野田委員長 根本大臣、簡潔にお願いします。

根本国務大臣 その結果、今回の定義変更に伴う労働者数の変動は一%以内であると試算しておって、賃金の伸びに与える影響はわずかであると考えるため、常用労働者の定義の変更に伴う賃金の伸びへの影響については試算をしておりません。

小川委員 問題はそこなんですよ。労働者数について一%の変動があるということは認めている。統計委員会は、この点、かなり懸念していまして、定義変更に伴う賃金等への影響について十分な情報提供を行えと統計委員会の答申の中で書いています。

 そして、私がよく議事録を調べてくることは前回おわかりいただいたと思うんですが、この点は何度も何度も統計委員会の部会で議論されているんですよ。

 そして、ここで幾つか紹介したいと思いますが、ある委員は、この定義変更に伴う評価をしていかないとまずい、急に定義の変更で数字が変わったのか、それとも実体経済の影響で起きたのかがわからない、それは統計としての役割が半減するという指摘をしている委員がいます。

 大体、労働者数で一%、賃金で最大〇・三%考えられますよという指摘があったことは前回御紹介しました。これに対する厚労省側の答弁なんです。厚労省の当時石原室長は、かしこまりました、一六年十一月二十四日、方法論も含めていろいろと検討してまいりますという答えをきちんと言っているんですよ。翌年一月にも言っています。定義変更のインパクトが大きいのか小さいのか、これを示すべきだという問いに対して、石原室長は、かしこまりました、賃金基本構造統計なりを使って評価したいと考えます。

 責任が生じていますよ、これ。根本大臣、今みたいな御答弁じゃだめです。統計委員会の懸念をこういう形で反論して振り切ったんだから、きちんとこの定義変更に伴う影響は試算して国民に示しますと、もう一回答弁してください。

根本国務大臣 今般の見直しについては、統計調査同士の整合性をとるための見直しを図る中で、平成二十八年十一月二十四日の統計委員会サービス統計・企業統計部会において、雇用契約期間一カ月以内で、前二カ月、十八日以上労働者数の試算や雇用契約期間一カ月ちょうどの労働者の占める割合の試算を行った上で、今回の定義変更に伴う労働者数の変動は一%以内であることなどを説明し、御理解を得たものと承知をしております。

小川委員 それは誤解だ。

 労働者数の変化率は一%で結構ですよ。賃金はどうなるんですかと盛んに聞かれているわけです。それに対して、こういうことも言っていますよ。もちろん、だから、結局試算しますと言っているんですが、具体的に、二十九年の十二月と三十年の一月で定義が変わるわけですね。その定義が変わるときに、一部企業は定義を変更せずに前の定義で測定しますから、この変化を追えるはずですという議論が議事録の中にある。

 それで、さっき事務的に確認したら、やっていますよ、これ。二十九年の十二月に日雇入りの数を計上し、三十年の一月から本来日雇を抜くんだけれども、三分の一の事業所、最終の、一月が最終である三分の一の事業所では日雇を入れて計算している、数字をとっている。そこから分析すれば明確に推計できるはずだ。大臣、それをやっているんですから、推計してください。

 もう一つ。十二月にここまで言っています。もし、十二月と一月の調査票で、これは石原室長ですが、人数が違っているところがあれば、それは定義の変更によるのか景気の変動によるのかわからないから、電話連絡して調査しますということまで言って委員を納得させているわけです。

 それこれ総じて、統計委員会の委員の認識としては、あらゆる努力を講じてこの定義変更に伴う影響をきちんと国民に知らしめるという前提のもとに承認している。

 根本大臣、もう一回答弁してください、やると。

根本国務大臣 今、委員がるるお話をいただきました。これについては、この事実関係については、まず確認をさせていただきたいと思います。私も今初めてそこを聞きましたから、そこは事実関係をしっかり確認させていただきたいと思います。

小川委員 これは、さんざん事務的に何日も何日もやりとりしていますからね。もし、大臣、これ、全く聞いていないということになると、この勤労統計の問題に限らずですが、あらゆることで大臣の把握力なり危機管理能力なりが問われることになりますよ。その前提で慎重に御答弁ください。

 では、私の方から出しますよ、どのぐらいぶれていた可能性があるか。私が試算しました。

 一八年の賃金水準は、上の数字、この間発表になりましたね、三十二万三千六百六十九円、これが公式発表です。しかし、一七年には入っていた日雇が一八年には抜かれている、それがどのぐらい影響するのか。

 いろいろと数字を拾ってきました。下に推計根拠と書いてあります。日雇平均賃金を厚生労働省は実は今から十二年前に調査しているんです、みずから。その試算を拝借いたしますと、月に十四日勤務の日雇労働者の平均賃金が十三万三千円です。しかし、この勤労統計の調査対象は十八日以上勤務する方が対象ですから、これを十八日以上に引き直しますと十七万一千円になります。この賃金水準は〇七年の水準ですから、現在、それから十二年たって、名目でマイナス二・四%、当時より賃金は下がっています。ということは、去年の水準に仮に置きかえるとすれば、十六万六千八百十一円という計算になります。

 全労働者の最大一%が日雇労働者だというのは、厚生労働省がみずから言っていることです。それを前提に、九十九人がいわゆる正社員含めた常用雇用者、一%がここで言う日雇労働者、十八日勤務以上の日雇労働者として数字を合成、試算すると、この赤字にあるとおり、三十二万二千百円。現在の公表値より、もし日雇を入れていれば、千五百円安くなっていた可能性がある。

 ということは、右の数値を見ていただきたいんですが、現在、名目一・四%増、実質でプラス〇・二%というのが対外的な公式説明ですが、これは実態と合っていないんじゃないですか。本当は、名目で〇・九%、実質は何とマイナス〇・三%、こうなると私は試算しました。

 この試算が大筋、あらあら正しいか、あるいはどこかに根本的な認識違い、計算ミスがあるか。根本大臣、どちらでも結構です、大筋この試算を認めていただけるか、あるいはこの推計はかくかくしかじかで間違っていると指摘していただけるか、いずれでも結構ですから、答弁してください。

根本国務大臣 まず、この定義の変更については、いろいろな統計できちんと整合性をとろうねということで、常用雇用労働者等々の定義をすり合わせた結果で簡素化したということがまず前提にあります。

 それから、今私も委員から説明を受けました。私も確かに大臣をやっておりますけれども、こういう具体的なのは、行政のそこの担当分野の専門家がしっかりと私はこれを見るべきだと思います。

 そして、強いて言えば、あらあら認めろと言われても、私、たった今これを聞いて、やはりここで答弁するには、これを理解した上で答弁しないと、あらあらというのは、私は、統計をつくる側としては、やはりそこはあらあらは難しいなと改めて思います。

 そして、これは精査させていただかなければいけませんが、この小川議員指摘の算定式は、平成十九年に厚生労働省が実施した日雇い派遣労働者の実態に関する調査、これをもとに推計しているものと推察されますが、一カ月以内の有期雇用労働者や日々雇用の者であって前二カ月それぞれ十八日以上働いたもの、これについては、必ずしもここの日雇派遣労働者と同じ概念ではないと思われますが、少なくともこれについてどう認識するか、あるいはどう判断するか、これは先生の推計根拠をここに書かれておりますが、これはやはり、我々もそこは精査しなければいけないと思っております。

小川委員 それで結構なんですよ。精査して答えてください。根本大臣、精査して答えてくださいよ、これが正しいのか、間違っているのか。精査して答えてください。

根本国務大臣 これ、私もたった今見せられたんですよ。ですから、それは、後刻、精査して対応したいと思います。

小川委員 お言葉ですが、大臣、これは朝八時過ぎの理事会に提出しています。そこから、厚生労働省には当然行っているでしょう。それで……(発言する者あり)いや、いいんですよ、ここで直ちにという御答弁は受けとめます。が、日雇労働者の賃金水準がどうなっているかという、これは経済実態にかかわる話ですから、専門家の意見が必要だとか、専門家が専門的に見るべきだという話じゃないんです。政策的、政治的に、これは極めてウオッチしなきゃいけない、政府として。そういう数字だから申し上げているんです。

 安倍総理、根本大臣はあの調子ですから、総理大臣として。今回日雇を除いたことは重大なんですよ、恐らく数字に相当影響している。総理大臣として、今ここで、この日雇を除いた影響が、実際、一八年、どの程度あるのか、それによってどの程度賃金が上昇振れしている可能性があるのか、実態とかけ離れてですよ、私は興味がある、関心がある、関心を持たねばならないので、調査しろとここで指示してください。

安倍内閣総理大臣 大臣も、誠実に、正確に答弁したいと考えているんです。ただ、きょう八時過ぎの御通告であると、我々、もう九時の委員会に備えておりますから、これはちょっと無理なんですよね。

 これは、この定義の仕方が、両方とも果たして比較の前提条件が同じなのか、あるいは、十八日勤務で仮試算をしておられますが、実態としては、では、大体、実際は平均は何日なのかということも含めてよく精査していく必要があるんだろうな、こう思いますので……(小川委員「精査していただけますか」と呼ぶ)当然、精査すると大臣答えさせていただいておりますので、誠実な根本大臣でございますから、しっかりと誠実にお答えをさせていただきたい、このように思います。

野田委員長 小川さん、答弁中にやりとりは遠慮してください。

小川委員 気をつけたいと思います。気をつけたいと思いますが、余りに看過できない御答弁も時々あります。時々あります。そのときは、ぜひ委員長の御指導もお願いしたいと思います。

 これは、ある方からお便りをいただいたんですけれども、先週の質疑の中で、日雇が収入の統計から省かれているというお話はショックでした、私は精神障害者ですが、生活ができないので日雇をしています、それでも少ない枠の食い合いで、収入は減る一方です、非常にきつい、この上、非国民扱いされては生きていけません、がっかりしました、このあたりはもっと政府に働きかけてくださいというお便りでした。

 つまり、表面上の数字がどうなっているかに一喜一憂するのはいいんですが、その数字の持つ意味がどういう意味か、その背景で国民生活はどうなっているか、そこに血の通った関心を示していただきたいわけです。

 今回、この勤労統計から日雇を外したということは、つまりこういうことです。それは、今大臣答弁されたように、政府で定義をそろえなきゃいけないとか、そういう事情は受けとめますよ。しかし、これが何を意味するのかということについてなんですが、勤労統計は、景況判断をするに当たっての重要な指標なんです。だからこそ、月々の賃金の変化を追っているわけです。その政府が関心を持つべき賃金のトレンド調査の対象から日雇労働者を外したということなんです。

 全国に三十万人とも四十万人とも六十万人とも言われている日雇労働者がいます。月に十八日以上働くということは、趣味ではありません。それで生計を立てている人たちです。そういう人たちの賃金は、政府の追うべき賃金トレンド、毎月追うべき賃金トレンドの対象外として、射程外だという話はあんまりじゃないかと思うんですね。

 総理、ちょっと今まだ、私、中途半端になっていると思うので、では、これは必ずやってくれますね。日雇の外した影響、日雇の賃金水準をカウントできないんですよ、もう調査票が変わったから。もうカウントできないんです。どの調査を見てもカウントできない。推計するしかないんです。推計して、本当に、この数字、十八年の賃金の上振れはどうだったのか、ちゃんと推計して出させます、総理大臣、もう一回明確に答弁してください。

安倍内閣総理大臣 今、この日雇が外れたということも含めて、この統計との関係については、今、私も初めて小川委員の御説明を伺いながら理解を進めているところでございますので、果たしてそのない状況で、ないということについても私もきょう初めて御説明で知ったわけでございますが、ない中で果たして推計ができるかどうかということも含めて、これは私は答えようが、専門家ではございませんから、私が今答えられないので、それは、そういうことも含めて、先ほど厚労大臣から答弁したとおりでございます。

小川委員 厚生労働大臣、もう一回はっきり答弁してください。

 これは、とにかく、日雇労働者は社会的に強いとは言えない立場の方々ですよね。その方々の賃金水準を政府としてしっかり見ていますよというメッセージになります。同時に、この上振れした、飾り立てられた数字じゃなくて、政府は、本当に国民生活の実際の様子に迫りたいんだ、そこに関心があるんだというメッセージにもなります。

 そして最後に、るる御紹介したこの統計委員会の慎重意見を振り切るに当たって、やります、やりますと何度も言っている、そのみずから吐いた言葉に対する結果責任がある。

 厚生労働大臣、もう一回明確に答弁してください。それを聞いて質問を終えたいと思います。やってくれますね、日雇の推計。

根本国務大臣 これは、いろいろな統計で、きちんと統一的に見ましょうねということで、例えば……(発言する者あり)

野田委員長 お静かにしてください。

根本国務大臣 常用労働者と臨時労働者の定義を、世帯、個人を対象とする統計との整合性を確保するために、前二カ月それぞれ十八日以上働いた人について、整合性をとるために、まず、有期雇用労働者、一カ月未満、日々雇用という概念がありますけれども、そこに整理をさせていただいたということであります。

 それから、今のいろいろなお話については、やはり、まず事実を確認する必要がありますので、事実を確認した上で対応させていただきたいと思います。

小川委員 対応していただけるということで、ぜひ期待して待ちたいと思います。次に、また次回、追いかけさせていただきます。

 ありがとうございました。

野田委員長 この際、阿部知子さんから関連質疑の申出があります。川内さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。阿部知子さん。

阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、貴重なお時間を頂戴いたしましたので、まず、安倍政権の政治姿勢について骨太な論議をさせていただければと思います。

 主に三点にわたってお伺いをしたいと思います。

 一つは、安倍政権の女性観、二つ目は、ただいまも問題になりましたが、働き方の格差、これが今、我が国では深刻な社会問題でもありますが、このことについての認識、三点目は、このたびの消費増税の中でいわゆる幼児教育の無償化ということが打ち出されておりますが、果たしてこれが少子化対策として本当に評価し得るのか、とりわけ、私から見ると、子供たちを守る、命を守るという哲学をお持ちなのかどうかの三点にわたって質疑をさせていただきます。

 冒頭、麻生大臣にお願い申し上げます。

 大臣は、福岡県、地元で、二月の三日に行われた集会で、少子高齢問題に関して、年をとったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違っている、子供を産まなかった方が問題なんだと発言し、その後、二月の四日並びに五日の予算委員会で謝罪され、撤回をされました。

 しかし、大臣御自身よく覚えておられると思いますが、実は二〇一四年の十二月にも全く同じ発言をしておられます。このときも、高齢者が悪いというイメージをつくっている人が多いが、子供を産まなかったのが問題だと、全く同じ発言をしておられます。その後の記者会見で、大臣いわく、人口減は物すごく国力に影響する大きな問題、経済的事情で産めなかったのは放置している話ではないというふうに御説明をされました。

 大臣は二度にわたってこのような発言をされたわけですが、その真意は、いわゆる産む、産まないを個人の責任にしているものではない、とりわけ女性の責任というふうにお考えではないというふうに断言していただきたいですが、いかがでしょう。

麻生国務大臣 先日の私の発言につきましては、今先生からも御指摘のありましたように、撤回、謝罪をさせていただいて、改めておわびを申し上げます。

 その上で、いわゆる子供を産まない理由は、学校に行けるような状態に、学校に行くのにお金がかかるからとか、そういったいろいろな社会的条件でいろいろ話になっておるという話がよくありますから、産めるけれども産まない、理由は経済的理由、その経済的な主な理由は教育費ということになっておりますので、そういったようなことはいかがなものかということにありましたので、私どもとしては、今、幼児教育の無償化とかいろいろやらせていただいているのは御存じのとおりなので、今申し上げましたとおり、先生が言われましたとおりで、私の真意を御理解いただければと存じます。

阿部委員 そうはおっしゃられても、二度あることは三度あると申します。この御発言、繰り返しているところが問題で、その都度、これを聞いた、例えばお子さんを持たない選択をされた方、あるいは持てなかった方、あるいは、特に女性たちが、産まなかったと言われる、そのような圧力を感じるわけです。

 麻生大臣にあっては、絶対に三度目にこのような発言はなさらない、二度あることは三度あるといいますから、なさらないということをここで明確におっしゃっていただき、もしそういうことがあれば辞任をしていただきたいと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 最大限の注意を払います。

阿部委員 今、下を向いておっしゃられたので、よくわかりません。もう一度お願いします。

麻生国務大臣 最大限の注意を払います。

阿部委員 当然です。最大限の注意を払うというよりは、この意識、もし麻生大臣の根幹の中にそのようなものがあれば、これは当然、国の政権を預かる者としての問題が大きいということでありますから、注意を払う以上に、もともとのお考えそのものをしっかりと、私ははっきり言って、改めていただきたいと思います。

 なぜそう申し上げますかというと、きょうは、政権の中枢におられる、特に安倍政権の中枢におられる政治家たちが次々と発言されていることを列記をさせていただきました。

 さかのぼればいろいろありますが、二〇一五年からとっただけでも、菅官房長官、福山雅治さんと吹石一恵さんの結婚に際して、ママたちが一緒に子供を産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいい。まあ、おめでたいことですが、ちょっと違うかな。

 次、山東昭子元参議院副議長、子供を四人以上産んだ女性を表彰することを厚生労働省で検討してはどうか。まあ、あくまでも個人の問題で、表彰云々ということに似つかわしくない。

 最後に、二階幹事長、近々でありますが、昨年の六月、この国の一員として、子供もたくさん産んで、国も栄えていく。

 ちなみに、私は小児科医ですし、子供たちを育み育てることの重要性、また、それを喜びと多くの親御さんにしていただきたいと思う立場であります。しかし、それはあくまでもその方の、個人の、個としての選択であって、国が、産めやふやせ、あるいは表彰する、国が栄える云々、逆転していると思いますが、安倍総理には、相次ぐこうした閣僚の御発言についていかが思われますか。

安倍内閣総理大臣 少子化対策における基本的な目標は、個々人が結婚や子供についての希望を実現できる社会をつくっていくということでありまして、これはもう明確になっている、はっきりしていることであります。

 希望出生率一・八の目標を高く掲げて、一人でも多くの若者の結婚や出産の希望をかなえるための取組を強力に推進しています。これは、結婚したくない人、産みたくない人にまで国が結婚や出産を推奨しようとしているものでは当然ありません。

 今後とも、結婚や出産を希望する方々がその希望をかなえられるような環境整備に取り組み、安心して子供を産み育てることができる社会をつくり上げていきたい、こう考えております。

阿部委員 総理がそう思われて、しかし自民党の中でこうした発言が相次ぐということは、私は残念でなりません。女性たちが本当に産むことを選び、あるいは男性もそうですが、そして慈しむ社会をつくりたい、これが何よりの政治の目標だと思います。

 そうはいいながら、我が国の少子化は、実は、戦後直後の私のようなベビーブーマー、ベビーブーム世代、菅官房長官もそうだと思います、そしてその次に、七〇年代から八〇年にかけて団塊二世というものが生まれて、二つ目の山ができました。しかし、その後はずっと、なだらかに下がって今日に至っております。一・五七ショックというのもございましたが、今もまだ一・四幾つと、そのショックだったときにも及ばないほどの出生率は低下をしております。

 安倍総理は、なぜ、団塊世代から団塊二世の山ができ、それがもう一つ、団塊二世がその次に子供たちを産むことを選び取っていく山ができなかったのか、これについてはどうお考えでしょう。

安倍内閣総理大臣 この少子化の進行は、未婚化、晩婚化の進行や、第一子出産年齢の上昇、長時間労働、子育て中の孤独感や負担感が大きいことなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っておりますが、特に子育てや教育にかかる費用の負担が重いことが子育て世代への負担となり、子供を産みたい、育てたいという希望をかなえるための大きな制約となってきたのは事実であろう、こう思っております。

 このため、我々は、消費税引上げ分の使い道を変更し、本年十月より三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育を無償化する。これは、小学校、中学校九年間の普通教育無償化以来、実に七十年ぶりの大改革でありますが、子供たち、子育て世代に大胆に投資をし、これまでとは次元の違う、異なる政策を実行することによって、子育てや教育にかかる負担を大幅に軽減をし、日本を子供たちを産み育てやすい国へと大きく転換をしていく考えであります。

阿部委員 総理は、ある意味でさらりとおっしゃいましたが、私はもっと深刻な総括が必要だと思います。

 とりわけ、働き方の問題、先ほど小川淳也議員も取り上げましたが、日雇あるいは日雇派遣などという働き方、それも一つ選択をされることもあるでしょう。しかし、不安定で、その後なかなか個人の生活設計をしていきづらい状況があることを、総理には私はもっとしっかりと自覚をしていただきたいと思います。

 晩婚化も確かに原因です。あるいは、子育て費用の負担も原因です。でも、働き方ということを総理の中でどのように思われているのかという点において、私は次の質問をしたいと思います。

 総理は、実は、一月の終わりにダボス会議で、我が国の、ウイメノミクスと言って、女性たちが仕事で活躍することで日本経済もよくなる、六七%、女性が就業しているというお話をなさいました。それはアメリカよりも高い数字だともおっしゃいました。

 その直後に、ニューヨーク・タイムズという新聞が、果たして本当に日本はそう言えるんだろうか、女性たちは家事労働が大変負担である、あるいは、男性に比べて賃金が低い、非正規雇用率が高いなどの指摘を新聞紙上でいたしております。

 安倍総理は、国際的に発信したその御発言が、こうした形である意味反論を受ける、日本の女性の管理職比率も少ないと、そこでは指摘をされております。働くということと、子供を持ち、育てるということがなかなかやりづらい、実際にはそうなっていっていない現状というものを、総理はこのニューヨーク・タイムズの記事を読まれたかどうかわかりませんが、指摘の中でどう受けとめられたでしょう。

安倍内閣総理大臣 質問していただいてよかったなと思うのは、このニューヨーク・タイムズが出している間違った認識をここで正せるからであります。

 安倍内閣においては、政権発足直後から女性活躍の旗を高く掲げて、次々と政策を打ってまいりました。政権交代前の二・五倍のペースで保育の受皿を整備し、この六年間で、子育て世代の女性就業率は八・八ポイント上昇し、新たに二百八十八万人の女性が就業をしました。また、女性の正規雇用者の数は三年連続し増加をするなど、女性の活躍につながる着実な改善が見られています。

 御指摘の記事については、女性の賃金が男性の三分の一という内容は記事の中では見当たりませんが、女性の正規労働者平均賃金は、男性の約七割を超えております。男女間の格差は過去最小となっています。

 日本の女性の管理職は一%以下との記述がありますが、これは間違いです。女性の管理職の割合は九・六%。一%以下ではありません、九・六%です。さらに、上場企業の女性の役員比率は四・一%であることなど、その内容は正確でない面があるということは指摘させていただきたい。こういう指摘をさせていただく機会があってよかったと思っております。

 政府としては、女性活躍推進法を改正し、女性活躍のうねりを中小企業にも広げ、女性活躍を更に推進してまいりたいと考えております。

阿部委員 今の総理の御答弁、私も検証をさせていただきますが、確かに女性の管理職比率はふえてきてはおります。何をとるかによっても変わっておりますので、本日は、総理が今おっしゃったような言葉の裏づけを私も検証させていただきます。

 そして、賃金は三分の一とは申しませんでした。低い、恐らく三分の二というふうな形だと思いますが、やはり男女の賃金格差というものが厳然としてあり、特に非正規雇用問題が横たわっているということは総理も御認識いただきたいと思います。

 これは、女性たち、特に、非正規雇用で働く女性に関する調査、二〇一七年、連合が行ったものからとったものでございますが、女性が初めてつく仕事が正社員であれば、配偶者のいる割合は、その後七割、しかし、非正規であれば三割。子供がいる割合も、正社員だとその後五割、非正規だと二割となっております。すなわち、最初に女性がつく仕事が正社員であれば、御結婚なさって、お子さんを産む方も半数ある。しかし、非正規でスタートが始まった女性たちは、御結婚され、子供さんを産む率は、おのおの三割、二割と。

 これは、連合が七千人に対して行ったアンケート調査から引いたものでございますが、こうした実態が今もあるということを総理はどう認識されるでしょう。

安倍内閣総理大臣 少子化の要因としては、若者の経済的不安定さや長時間労働、そして、仕事と子育ての両立の難しさ、子育ての負担感、孤立感など、さまざまな要因が絡み合っておりまして、そうした要因を一つ一つ取り除いていくことが大切だろうと考えています。

 女性の雇用の質についてであります。

 安倍内閣において、正規雇用者が三年連続で増加するとともに、不本意ながら非正規の職についている方の割合も対前年比で十九四半期連続で低下するなど、着実な改善が見られるのは確かであります。

 今後も、まず、正社員を希望する方々については、非正規から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金、非正規雇用労働者等が国家資格等を取得し正社員就職を目指す長期訓練などを通じ、今後も正社員転換をより一層進めていきたいと考えております。

 いかに正規雇用をふやしていくか、我々はそこに力も注いでいるわけでございますが、有効求人倍率においては、正規の有効求人倍率が史上初めて一倍を超えたわけでございまして、正社員になりたいという人一人に対して一人分以上の正社員の仕事があるという真っ当な社会を初めてつくり出すことができた、こう思っておりますが、また、昨年成立をした働き方改革関連法により、同一労働同一賃金を実現し、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できる社会を実現してまいります。

阿部委員 総理も今御答弁の中に、女性の働き方を、望めば正社員にということをおっしゃいましたが、たまたま、ニューヨーク・タイムズの中の女性の記事は、正社員として勤めて、しかし、妊娠をされたところで、もう少し時間的にゆとりのある仕事についた方がいいんじゃないのと言われて、そして、結果、非正規に変わっていかれたというケースです。

 日本では、当初から非正規で職についた女性は、いわゆるマタニティーハラスメントで、例えば派遣が続かないというような目に遭いますし、正社員で入られても、やはり、妊娠、出産ということを機会にいろいろな圧力が加わるのは、いまだに私は現状だと思います。

 そして、総理は、個々細かにおっしゃいましたが、全体として見れば、実は、女性の非正規率が六割で男性が二割という大まかなところは、いまだ動いておりません。一九八五年に労働者派遣法ができて、男女雇用均等法ができたはず。しかし、そこから、女性たちが産みづらくなり、男性たちも結婚を遠ざけるようになり、そして、今日まで少子化が本当の意味で解決していないというのは最大の政治の課題だと私は思います。

 総理にぜひ、その構造的な問題、働き方の、労働の、いわば派遣法や、あるいは均等法と言われながら母性保護がされない問題を明確に自覚していただきたい。

 そして、この下の段は男性の問題であります。これは、いわゆる男性たちも、今私は女性の問題を取り上げましたが、総務省がまとめました二〇一七年の就業構造基本調査からの抜粋で、男性の未婚率を示したものであります。

 二十から二十四歳であれば大体九五%が未婚でいらっしゃいますが、三十五から三十九となると、正社員の未婚率が二四・七、派遣、契約社員が六〇・六、パート、アルバイトが七九・四と、未婚、非婚が高くなっております。

 もちろん、結婚する、しないは個人の価値観ですから、全てをこれに押しつけるものではありませんが、こういう側面で切ると、現状としても男性にもこういうことがあるということだと思います。

 いかが思われますか。

安倍内閣総理大臣 先ほど委員が御指摘になられた、出産、育児に起因するM字カーブの問題なんですが、これは安倍政権になって、見ていただければわかると思います、相当解消されているのは事実でございますので、それは申し添えておきたいと思います。

 若い世代の結婚、子育ての希望をかなえるためには、安定的な経済的基盤の確保が必要であります。そのため、非正規から正規への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金を来年度から拡充するなど、今後も正社員転換をより一層進めていきます。また、同一労働同一賃金を実現し、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できる社会を実現をしていきます。

 女性の皆さん、いろいろな、結婚あるいは出産、育児、そういうライフステージに応じて働き方を変えたいと思っている方はたくさんおられると思うんですね。変えたいと思っても、硬質的な構造でそれに対応できなかった状況を変えていかなければいけない、これは阿部先生のおっしゃるとおりなんだろう、こう思っておりますので、我々もその方向で働き方改革も進めていきたい、こう思っておりまして、誰もが安心して家庭を持てる環境を整備していきたい、こう思っているわけであります。ということでございます。

阿部委員 私は、主にというか、連合のデータも二〇一七年、総務省も二〇一七年、近々のものを用いたつもりであります。

 何度も申しますが、構造的にはまだまだ不安定な非正規雇用が多いという現実の中で、特に派遣などで働く人は、五年を前にいわゆる派遣切りに遭う、あるいは妊娠、出産。妊娠ということを言っただけで派遣切りに遭う、だからもう子供は諦めるという構造は今もあると思います。政権はもっとこのことに、私は、本当に全力を挙げて、全力を投入しなければ、一・八などという希望の出生率は到底実現いたしません。

 この間の予算委員会でも、GDPの六百兆ということについて、さまざまな統計上の処理があってのことではないかという指摘があると同様に、出生率一・八というのはアベノミクスの三本の矢の一つであります。しかし、総理もお気づきでありましょう。大胆に今の派遣法の問題に切り込まなければ改善はいたしません。まして、毎月勤労統計の中から、日雇派遣の方も含めて、私は、見えなくした、これは大変に問題が深刻であると思います。

 先ほど、根本厚労大臣は、きょう言われたばかりでどう対処すべきかということのお考えの中で、しかし、きっちりとこの点をチェックしていくというふうに御答弁だったと思いますが、安倍総理は、この間の小川委員の質問、そして私が今お示しした二〇一七年の男性たちの、女性はもちろんです、男性たちも含めて厳しい状況にある中で、派遣、特に日雇派遣と言われる働き方の皆さんをきっちりと政策の中で明示して、何が必要であるかをやっていく覚悟がおありかどうか、お伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 ちなみに、平成二十七年の労働者派遣法改正は、派遣先への直接雇用や新たな就業機会の提供などを推進して、派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップを図るものであるということは申し添えておきたい、こう思っておりますが、いずれにいたしましても、今、確かに委員がおっしゃるような問題があるのは事実だと思いますよ。そういう問題をしっかりと向き合いながら解決に力を入れていくことは私たちの仕事なんだろう、こう思っているところでございます。

 しかし、今現状が悪くなっているかといえば、実際に正規雇用は生まれているわけでございまして、我々、政権交代前、五十万人ぐらい減っていた正規雇用は逆に七十万人以上ふえているわけでございまして、こうした傾向をしっかりと進めていくことによって、より有利な条件で働きたいと思う人が働けるようにしていく、あるいは、先ほども申し上げましたように、さまざまなニーズに応えていわば労働環境をつくっていくことが大切だろう、こう思っております。

阿部委員 私がきょうの質疑で御指摘したかったのは、少子化問題の根本には根雪のように、働き方の、派遣、正社員、この格差が横たわっていて、それは男性と女性とを問わず、私どもの社会が子供を産み育てづらい、それを選べなくしているという認識をしっかり持って政権を運営していただきたいということであります。

 そして、そうした少子化の対策として、今回、三から五歳の保育料並びに幼児教育の無償化ということが打ち出されていますが、宮腰少子化対策担当大臣にお伺いをいたします。

 私は、三から五歳の無償化、そしてゼロから二は低所得世帯への補助という、本当に不思議な形で、なぜこれが少子化にきくんだろうか。もちろん、大学生の授業料も低所得世帯を中心に軽減していくと言われています。総理も繰り返し、教育にお金がかかると。そうです。我が国の国立大学の授業料はどんどんどんどん上がって、本当に、家計、特に中間世帯、いわゆる、日本が言うところの、堅実で、この社会を担ってきた中間所得層には重いと思います。

 そこにあって、なぜ三から五歳がプライオリティー、優先順位一位で無償化されるのか。もしかして、鉄は熱いうちに、分娩直後、出産直後、そこの手厚いケアが必要かもしれません。虐待問題を見ていても強くそう思います。なぜ三から五歳の無償化が先んじるのか、明確な御答弁をお願いいたします。

宮腰国務大臣 幼児教育、保育の無償化は、先生御指摘の少子化対策、子育てや教育にかかる費用負担の軽減を図るという少子化対策という観点に加えまして、生涯にわたる人格形成の基礎を培うという意味での幼児教育の役割が極めて重要であるという二つの観点から実施するものであります。

 少子化対策の観点からということでありますと、どのような支援があれば、あなたは子供が欲しいと思いますかとの質問に対し、全ての所得階層で、将来の教育費に対する補助や、幼稚園、保育所などの費用の補助との回答が、最も多い二つの回答となっております。

 〇―二歳に関しましては、今回、住民税非課税世帯のみを対象として進めるということにしておりますけれども、この重要性についても、待機児童が多いという年代でもありますので、重要性はよく理解をいたしております。

 これまで、保育あるいは幼稚園等々につきまして、生活保護世帯あるいは住民税非課税世帯に対しまして合わせて約四千五百億円の公費を投じて負担軽減を図ってきておりまして、今回の無償化による公費負担というのは極めて大きなものがあると思います。

 〇―二歳児につきましてはそれぞれの御家庭のいろいろな事情があるというふうに思っておりまして、三歳から五歳児については、幼児教育、保育の重要性ということに鑑みまして、今回、この無償化を図ってまいりたいというふうに考えているわけであります。

阿部委員 ゼロから二歳が待機児童が多く、この無償化の恩恵にあずからないケースがあるから。一言で言えばそうかもしれません。そういう御答弁だったかもしれません。

 しかし、一番、なれない育児、子供を持って、働きたくても働けない。それは、一つは預ける先、保育所の問題でもあり、そのほかにもろもろの、子供を持ったことに対する支援が最初から、子供は、グッドスタート、いいスタートを最初から切るということが、その子の生涯にわたる人格形成につながるんです。

 私は、三から五歳の無償化は、政策として比較検討が不十分だと思います。そこに、あえて言えば飛びついたようになさいましたが、その結果、何が起こるか。

 今回の無償化は、実は、さまざまな保育士の基準、施設基準を満たさない、あるいは指導監督をきっちり受けていないところにも無償化が及びます。そのことによって、逆に子供が危険にさらされる。いわゆる認可外の保育所には、事故等々、多発をいたしております。経過措置といっても、五年間そこに国がお金を補助して、あえて言えば子供を危機にさらすような方向は間違っていると思います。

 きちんとした指導監督基準、あるいはその監査が行き渡ったところならまだしもです。ここは、三から五、どんなところにいようと前例になりました。本当に、政策的に子供の権利を、子供の安全を第一に掲げたものであるのかどうか、大きな疑問があります。安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 本年十月から実施する幼児教育の無償化は、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るといった少子化対策と、そして、生涯にわたる人格形成の基礎や、その後の義務教育の基礎を培う幼児教育、保育の重要性に鑑み行うものであります。

 やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々についても負担軽減の観点から無償化の対象とし、指導監督基準を満たさない施設が基準を満たすために五年間の経過措置期間を設けることとしているわけであります。

 この経過措置期間において子供の安全が確保されるよう、児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、認可施設に移行するための運営費の支援を拡充することとしておりまして、まさにこの無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上を図っていく考えであります。

 確かにそれはいろいろな課題というのがあるのは事実でありますが、しかし、現実に、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人もおられるという中において無償化を進めていく中においては、こうした質の確保、向上を図っていくということとともに、こうした方向で無償化を実施していきたいと考えております。

阿部委員 認可外の保育施設になぜ問題が多いのか。一言で言えば、保育士さんの数が少ない。いないんですよ、基準からして。なぜ、そこに、いたいけない子供たちを送らねばならないのか。

 私は、何度も申しますが、やはり安全性第一に、例えば保育士さんの配置を国が予算をつけてきちんとしたものにする、それから始められたらどうですか。三から五歳を無償化といって、なかなかそこに到達していないところに子供を送り込む、それが五年間ですよ。五年間、何が起こるかわからない。そこでの死亡事故は、果たして総理が責任をとれますか。私はこれは極めて危険な政策だと思います。

 きょうは、もう時間が終わりましたので、指摘させていただいて、なおこれからも、子供たちの権利を守る政治がどうあるべきかを御一緒に論議していきたいと思います。

 ありがとうございます。

野田委員長 これにて川内さん、大串さん、逢坂さん、岡田さん、小川さん、阿部さんの質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周さん。

渡辺(周)委員 国民民主党・無所属クラブの渡辺周でございます。

 この後、午後、我が党の質問者が三人おりますが、まず冒頭、私から口火を切らせていただきます。

 まず最初に、日韓関係について伺います。

 先般、ブルームバーグという外資系のメディアのインタビューに答えて、韓国の文議長が、この場で口に出すと腹立たしい思いをするようなことをあえて発言をされました。この点について、河野外務大臣は、訪問中のフィリピンで意見をされ、そして日本のメディアでは、苦言を呈したなどということで、非常に抑制的な書きぶりで報道されています。

 しかし、この慰安婦の問題については、完全かつ不可逆的に解決したという日韓合意がある中で、またここへ来て、三権の長である韓国の議長がこのような発言をする。しかも、我が国の、平成最後の御代に、退位される今上天皇陛下のお名前を出してまでこのような発言をした。

 その後、韓国のスポークスマンは、そのような意図ではないというような釈明をしておりましたけれども、この発言に対して日本国政府はどのように対応するのか、その点について、まず安倍総理のお考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この発言を読みまして、私は本当にこれは驚いたところでございます。

 我が国として直ちに、外交ルートを通じ、韓国側に対して、今般の文喜相議長の発言は甚だしく不適切な内容を含むものであり、極めて遺憾である旨、厳しく申入れを行いました。強く抗議をするとともに、謝罪と撤回を求めたところでございます。

渡辺(周)委員 外交ルートなんですけれども、相手は三権の長である議長であります。これは、どのような形で韓国の立法院、議会なり議長のもとに届くのか、その点について、どのような外交ルートということについてお尋ねをしたいことと、それに対して何らかの説明が韓国側からあったかどうか、その点についてはいかがですか。

河野国務大臣 金杉アジア大洋州局長から、金敬翰在京韓国大使次官公使を招致し、申し入れたところでございます。

 この後、韓国側がどのような対応をするかまだわかりませんが、こうした問題に鑑み、誠意を持った対応をされるというふうに期待をしております。

渡辺(周)委員 また、我が国と韓国をめぐるさまざまな問題について、三・一、非常に韓国側からすれば愛国的な日、三月一日、これがちょうど百周年である。それに向けて、非常に国威発揚的な、韓国のさまざまな、我が国との歴史戦を恐らく展開するんだろう。

 その上で、ちょっとあと二つほど聞きたいのは、一つには、四月にモナコで開催される国際水路機関、IHO。韓国が、日本海の呼称に対して、東海という呼称を併記せよと。これはかねてから韓国が主張していることでございまして、我が国としてこれにどう対応するのかということが一点。

 そしてもう一つは、連休前の八日の日が締切りでありました、いわゆる徴用工問題の政府間協議の、こちらが指摘をした期日についてもまだ返答がない。その点について、今後日本は韓国にどう相対するのか。その点についてはいかがですか。

河野国務大臣 まず、日本海について申し上げましたら、日本海は国際的に確立したただ一つの呼称でありまして、これを変更する必要性及び根拠はございません。このことを政府としては国際機関及び国際社会において引き続き断固として主張し、正しい理解と我が国への支持を求めてまいりたいと思っております。

 旧朝鮮半島出身労働者の問題につきましては、現在に至るまで、韓国政府が日韓請求権協定違反の状態を是正する具体的な措置をとっておりません。極めて深刻に考えております。

 一月九日に、韓国による協定違反の状態を解決すべく、韓国政府に対し、日韓請求権協定に基づく協議を要請しているところでございます。これまで、まだ韓国政府の同意が得られておりませんので、本日、改めて協議要請への回答を督促したところでございます。

渡辺(周)委員 特に呼称の問題についてですが、当初韓国は、この問題について、日本海という呼称は日本の拡張主義や植民地支配の結果広められてきたというような主張をしていたんですね。我が国の調査では、古文書を調べたところ、もう既に十九世紀の初頭には、日本海の呼称はほかを圧倒して使われていたという調査結果、これが事実であります。

 当時、この時代というのは、日本は江戸時代、鎖国政策をとっていたんですね。鎖国政策をとっていた我が国の歴史的な時代考証をあえて韓国が無視して、日本海という名称は日本の拡張主義や植民地支配の結果広められてきたんだ、こういうことをやはり国際社会に向かって言ってきたわけですね。

 この日本海の呼称をめぐって、世界の一体どの国がどこまで理解を持っているかといったら、もうこれはほとんどないのであろう。ですから、極東の二つの国の問題を国際社会の問題として取り上げる、あたかも我が国が理不尽であるかのような主張をしてきている、この点について、ぜひとも、IHOの要請に基づいて協議をするということでございますが、恐らく当事者間で幾ら話をしても、これはもうお互いの主張がぶつかり合うだろう。だとするのであれば、国際社会の中で我が国の正当性をやはり主張していただきたいと思うわけでございまして、海外メディアを使っての歴史戦に対して、この二つの問題についてぜひとも我が国の決意を伺いたいと思うんですが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 日本海は国際社会に確立した唯一の呼称であり、これを変更する必要性及び根拠はありません。このことを政府としては国際機関及び国際社会において引き続き断固として主張し、正しい理解と我が国への支持を求めてまいります。

 国際水路機関が加盟国間の非公式協議の開催を呼びかけており、現在調整されているものと承知をしておりますが、我が国としても、責任あるメンバーとして、この非公式協議には建設的に貢献する考えです。この協議においても、日本海は国際的に確立した唯一の呼称であり、これを変更する必要及び根拠はないことを断固として主張し、正しい理解と我が国への支持を求めていく考えであります。

渡辺(周)委員 この質問の最後に、総理の基本的な認識を伺いたいと思うんですが、総理は、今の政権の前に、韓国は、基本的な価値と利益を共有する、最も重要な隣国です、日韓の間には難しい問題もありますが、日韓双方で新政権が成立した機会を生かして、二十一世紀にふさわしい未来志向の関係を構築するため、当時の朴槿恵大統領と協力していく考えでありますと。

 これは平成二十五年三月四日の衆議院の本会議での総理の発言ですけれども、今、韓国の政権がかわって、基本的な価値と利益を共有する、最も重要な隣国であるというこの御認識について、今どのようにお思いですか。

安倍内閣総理大臣 旧朝鮮半島出身労働者の問題あるいはレーダー照射の問題等々の問題が起こっているわけでございます。

 特に、旧朝鮮半島出身労働者の問題については、日韓両国の関係の基礎となった、この基礎自体を否定するかのごときの態度をとっていることは大変残念でございます。

 今後とも、それぞれ適切な措置を韓国側がとることを強く期待をしております。

渡辺(周)委員 ぜひ、この点について、既に請求権協定を始めとして決着がついた話を蒸し返されぬように、そしてまた、そのことが国際社会の中で、韓国の言い分が国際メディアの中を使って歴史戦を展開する、その上で、我が国として、やはり国際メディアの中で、国際世論の中で、ぜひとも我が国の正当性が損なわれないように我々も取り組んでまいりたいと思っております。

 この質問を終えまして、北朝鮮のいわゆる木造船の漂着についてお尋ねをしますが、北朝鮮の木造船が、近年、北海道から日本海沿岸の各海岸に漂着をしております。中には上陸をした例もあるわけなんですけれども、ことしに入ってからどれぐらいの数が一体確認されているのか、政府は把握していますでしょうか。

山本国務大臣 警察におきまして、本年、平成三十一年一月八日、島根県隠岐の島町において、住民からの通報により、国籍不明の男性四名を発見いたしまして、付近の海岸で、男性らが乗っていたと見られる……(渡辺(周)委員「数だけで結構でございます」と呼ぶ)はい。

 それと、あともう一件が、青森県深浦町の沖合において、男性二名が乗った木造船、これを認知をいたしております。

渡辺(周)委員 いわゆる確認された、人の確認と船の確認は、ことしに入ってどれぐらいありますかという質問でございます。答えられますか。

大石政府参考人 本年に入りまして二十九件確認しておりまして、そのうち生存者を確認したものは二件でございます。

渡辺(周)委員 二十九件も確認をされている、拉致事件が頻発したあの時代と同じように日本海側に船がたどり着いて。それまで、我が国が果たしてどこまで把握できていたのか。

 北朝鮮の船が、あの拉致をされた時代と変わらずに今も漂着をしている。しかも、上陸までしている。この上陸した人間が、漁船なのかあるいは工作員なのか、その点について、やはり当然、沿岸の住民は不安を持つところでございます。

 それに対して、ひとつ啓発活動を。やはり、島国である我が国に対して、今もこうやって北朝鮮の船が安易に、今そこにある危機、容易に来ることができるという現実。何よりも、エンジンが壊れて流れ着いた、その船ですらここまで来れるのであれば、何らかの機能を持った、エンジン等を持った船ならば、もっと安易に目的地に来ることができるじゃないかというふうに思うわけでございます。

 この質問は余り長くできませんが、最後に、この船に対して、帰還をした、帰した漁民、人道的な保護をしてくれたということで北朝鮮の赤十字から謝辞があったと。しかし、あの北朝鮮に赤十字などという組織がちゃんと組織されているかどうかというのは、これはとても信じがたいわけでございますし、それよりも、我が国が、本当に北朝鮮の上陸した人間が何者であるかということについて必要な調査をしているのかどうか、これを一点伺いたいと思います。何らかの形で、例えば、従来の難民と同じように通訳なり法律家がつくことによって、その人間の情報収集をするということはやはり必要なことであろう、安易に帰すべきではないということが一点。

 それからもう一つは、漂着した、特に、松前小島の事件がありました。この船が倉庫に保管されているということなんですが、この上陸した船を、期間限定でも、何らかの形で、国民の目に触れるような形で展示をして、今そこにある危機に対して啓発すべきじゃないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

山本国務大臣 今ほどのお尋ねでございますけれども、一般に、お尋ねのような漂着事案を認知した場合でございますが、関係機関と連携して、漂着した経緯等について、予断を持たずに慎重に事情聴取を行うことにいたしております。

 あわせて、当該生存者の所持品の検査、木造船等の船内の確認等も実施をいたしまして、生存者の供述内容と矛盾しないかなどの観点から、慎重に見きわめを行うことにいたしております。

 いずれにいたしましても、警察といたしましては、カメラを用いての警戒システム等の導入の検討を行うほか、引き続き、関係機関や自治体等と連携して、沿岸地域のパトロール等の諸対策を徹底して、国民の安全、安心の確保に万全を期してまいりたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 この、船の展示をするという考えについてはいかがですか。

大石政府参考人 御指摘の木造船につきましては、刑事処分の証拠品として、地検、検察庁において保管しており、一応処分は終わりましたが、一応そのまま保管していると思っておりますので、御指摘の点につきましては、そういった点も踏まえて対応していくものというふうに考えております。

渡辺(周)委員 前向きなお答えをいただいたと思うんですね。これはもう既に、特定失踪者家族会あるいは問題調査会からこのような要望は出されているんです。日本海が安全な海でないということについて啓発するために、やはり何らかの形で、国民の目に触れるような形での展示、啓発をぜひしていただきたいというふうに思います。

 この質問については、以上です。

 では、北方領土問題についてお尋ねをいたします。

 先ほどの立憲民主党の岡田議員の質問とも幾つか重なる部分がございますので、その点を極力避けて質問をさせていただきます。

 もうこれは、総理、何回も質問して、今までもお答えになられないんですけれども、固有の領土、この定義はどういう意味でありましょうか。

河野国務大臣 主権を有している領土ということだと思います。

渡辺(周)委員 本当にそれでいいんですか。

 日本固有の領土の意味は、これはもう実は過去に、政府に対する質問主意書に小泉内閣が答弁しているんですが、もう時間がないから申し上げます。これは違いますよ。

 平成十七年十一月四日の、質問主意書に対する小泉内閣の答弁書は、日本固有の領土というのは、政府としては、一般的に、一度もほかの国の領土になったことがない領土という意味で、固有の領土という表現を用いていると。

 これでよろしいですか。

河野国務大臣 通告いただいていないものですから、これまでの主意書の回答も確認しておりませんので、後刻、回答したいと思います。

渡辺(周)委員 いや、これは基本的な問題ですよ。

 だって、これまで、北方四島は日本固有の領土なのかというふうに質問をすれば、それには答えないで、何と言うかといったら、主権が及ぶ島々だというようなことを言ってきたのに。

 それで、これは政府の答弁ですからね。政府の言う、これは固有の領土という、このことに対して質問すると、総理は、ロシアとの今後の交渉に支障を来すおそれがあるから、答えは差し控えるということを言っているんですよ。

 日本政府のこれまでの見解からいえば、政府としては、一般的に、一度もほかの国の領土になったことがない領土という意味で、固有の領土という表現を用いているというふうに答えている。今もこの認識は変わっていないんですか。

安倍内閣総理大臣 政府の法的立場には変わりはありません。

渡辺(周)委員 それ、わからないです。もう一度答えていただきたい、そこは大事なところですから。

 日本固有の領土というふうに聞くと必ず返ってくる答えは、我が国が主権を有する島々だというふうに言うんですが、それでは聞きますが、主権というのは、これはどのように日本は定義しておりますか。

河野国務大臣 主権とは、一般に、国際法上、国家が自国の領域において有する他の権力に従属することがない最高の統治権のことをいいます。

渡辺(周)委員 そうなんですね。これは、そのように政府が既に同じ日の質問主意書で、かつて平成十七年十一月四日に小泉内閣の答弁書の中に書かれている、これが定義だろうというふうに思います。

 であるならば、我が国が主権を有する島々ということは、言いかえれば、ほかの権力に従属することのない最高の統治権を持つ島々だということでございますが、それでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 まさに先ほど申し上げましたように、これは、表現は異なっておりますが、意味するところは同じでございまして、政府の法的立場には変わりがないということでございます。

渡辺(周)委員 意味するところが同じならば、なぜ言いぶりを変えたんですか。

 そこに、やはり今、これだけ国民運動をやってきた、私も二月七日の返還要求の大会に行ってきました。その中で、例年よりもたくさんの方が来た。しかし、これまでの言いぶりが変わってきたではないかということで、一体何をそんなに恐れて言いぶりをここまで変えているんだろうかというやはり不安があるわけです。

 交渉事ですから、拳を振り上げて強い言葉を言ったり、あるいは精神論で解決する生易しい問題とは私も思ってはおりません。ですから、交渉に対して、つまびらかにできないということは、こんなことは私どももみんな承知であります。ただ、なぜここまで、何におびえて、何を恐れて言いぶりをどんどん変えていくのかということについて、非常に我々としては不安を持つわけなんです。

 それでは、ここで聞きますが、我が国が主権を有する島々、同じことを言っているのであれば、この、我が国が主権を有する島々の島々というのは四島のことでいいんですね、総理。

安倍内閣総理大臣 それは四島のことでございます。

渡辺(周)委員 なぜこの言いぶりを変えてきたのか。

 先ほどの、日本固有の領土の意味は、政府としては、一般的に、一度もほかの国の領土になったことがない、固有という意味で、これもそのままでよろしいですか、そのままで。それについてはいかがですか。

安倍内閣総理大臣 政府の立場には変わりがないということでございますので、そこで御理解をいただきたい。変わりがないということでございます。

渡辺(周)委員 私が理解するとかしないじゃなくて、この北方領土の返還要求運動というのは日本の歴史なんです。昭和二十年の終戦の後、二十年後に、昭和四十年の八月十五日に札幌の駅前から署名運動が始まり、元島民の方々、千島連盟の方々がその署名に思いを込めて運動を始め、その前からマッカーサー元帥に書簡を出したというような歴史的ないきさつもございます。これは私たちの国の歴史なんです。

 ですから、これが、今の言いぶりを変えることによって、ここから先、何か日本の方針が転換されたんじゃないかということになりやしないだろうかという、やはり関係者は一様に複雑な思いを持っているんですね。

 こうした言いぶりは、つまり、固有の領土が、主権を有する島々、中身は、言っていることは一緒なんだけれども言葉が違うといいながら、少しずつ変わっていく。不法占拠という言葉も使われなくなった。そういう中で、我が国の国民運動が自粛するようなことになってはいけないわけなんですけれども、そこについては、総理が交渉の中でどうお話ししているかというのは我々はわかりません。しかし、それを支える世論を高揚させるというのが、内閣府の北方対策室のホームページなんかにも書いてあるんですね、国民の役割として。

 その点について、この言いぶりはこれからもずっと続くんですか。いかがですか。あるいは、今まで使っていた当たり前の言葉すら使わなくなる、このことがこれから続くんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは、その時々の状況を、まさに返還要求運動も反映をしているのは事実なんだろうと私は思います。

 かつて、五六年宣言の後、安保条約を改定し、しかし、その後、彼らは、この五六年宣言はもう無効になった、領土問題は存在しない、こう言ってきたわけでございます。その中において我々は、四島一括返還、こう強く拳を振り上げたのは事実であります。

 しかし、そこからは、対話すらお互いに、日ソの対話、交渉の対話というのは全く進まなくなったわけでございますが、今回、まさに平和条約交渉そのものに、外務大臣が、あるいは私の代表する政府において、代表する代表者、交渉担当者も交渉するというところに至った、具体的に交渉するに至った中において、これはもちろん、日本にも世論はございますが、向こう側にも強い世論があるのは事実でございます。その民主国家同士の中において、世論が激しくヒートアップしていく中においては、なかなか静かな環境での交渉はできないということは事実であろう、こう思っております。

 そういう意味におきましては、元島民の皆様も、そのことは十分に御理解をいただいているところでございまして、とにかく政府においてしっかりと結果を出してもらいたいというのが島民の皆さんの声であるのは事実でございます。

 そこで、この我々の言いぶりについては、まさに、この私たちの言いぶりについて渡辺委員がおっしゃった気持ちというのは、国民の多くの皆さんがそれは共有しておられるということは、私もよく理解をしております。

 しかし、交渉を前に進めていかなければいけないということでございまして、過去に、さまざまな段階で、いわば日ロ間のこうした話合いが途切れてしまったということも考慮しながら、我々も政府の立場として申し上げているわけでございますが、しかし、今申し上げましたように、我々の立場、法的な立場は一貫しているということは申し上げておきたいと思います。

渡辺(周)委員 やはり、これまで、この長い、非常に、国民各層が例えば集めてきた署名というのは、もう恐らく今日で九千万人には達しているんじゃないかというふうに言われてもおります。このさまざまな国民運動の中で、少なくとも民間の運動が萎縮しないように、あるいは、そんたくをして自粛することがあってはならないように、あるいは、これまで、政府の機関のホームページにも、こうしたことがこれまでも書かれてまいりました。

 やはり、歴史的に不法占拠をされて、我が国が、八月十五日が終戦記念日だと言うけれども、実は、その後に、北方四島に、当時のソ連軍が攻め入ってきた、それで一万七千人の方々が、もう家も荷物も何も置いて出ていった、そして今日まで来ているという。戦艦ミズーリ号の上で、まさに降伏文書に調印しているその日も、実は、この北方四島では、ロシアがそこにいて、住民を追い出していた。こういうことを我々は学んできた中で、果たして、ここへ来て、何も我々が物を言わないという。

 先ほど申し上げたように、これはロシアだって、国内ではもう、ラブロフ外相も、外務省も発言をしています。何よりも、日本の主張は、そもそも議論のスタートからして、百八十度変えろと。それは、第二次世界大戦の勝利の戦利品なんだ、北方四島は、それを日本はまず認めろと。そして、我が国の国内法であります北方領土の特措法についても、この法律はけしからぬということも、河野大臣はお話をされませんが、その後のラブロフ外相の記者会見の中では、非常に詳細にそうしたことを言っているんです。

 我が国としては、恐らく、きょう聞いても、交渉に差し支えがあるからお答えしないということでしょう。ですから、もう聞きません。ただ、ロシアの言い分だけが通って、我が国は、交渉に差しさわるから言えませんという態度をいつまでも示して、そして、言う言葉も、だんだんだんだんトーンダウンをしてきたら、日本は負けたのか、もう既に交渉の時点で屈しているんじゃないかと、国民運動がだんだんなえてきてしまうのではないかというおそれもあるんですけれども、その点について総理はいかがですか、私が申し上げたこと。

安倍内閣総理大臣 私は、渡辺委員が、国民民主党の代表として、あるいはまた、多くの国民の皆様の声を代表して、私たちの、いわば日本がとってきた立場、日本の正当性、歴史について述べられるということは当然のことだろう、こう思うわけでございます。

 他方、私どもは交渉の当事者でございまして、交渉の当事者としては、何とかこの問題について、両国が、また受入れ可能な到達点に到着しなければ、これは当たり前なんですけれども、こちらが主張していればそのとおりになるんだったら、これは簡単な話で、七十年もかからないんですよ。なぜ七十年かかってしまったかということは、これは、向こう側がずっと、いわば拒否をしてきたからであります。これは拒否されて、じゃ、三十年、四十年、五十年たっていっていいのかということなんですよ。

 それは、主張していれば、あなた立派だなと言われるのであれば、ずっと私も主張していけますよ。しかし、次の世代に引き渡していくべきではないという判断を、私たちは政治判断をしました。その中で、何とか結論を出したい、両国にとって受入れ可能な案にたどり着きたいということで、今、交渉を続けている中において、その交渉の中身についてつまびらかにすることは控えさせていただきたいということを繰り返し申し上げさせていただいておりますし、私どもが、何とか交渉を続けていきたい、やっと本格的に交渉のテーブルにのってきたわけでありますから、この機を逃してはならない、こう考えているところでございますので、どうか御理解をいただきたい、こう思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ、この言いぶりが、国民の運動を萎縮しないように、あるいは、そんたくして自粛しないようにという点についてはいかがですか。そういう指示は出さない。

 先ほど総理もおっしゃった、言論の自由ということを岡田議員とのやりとりの中でおっしゃっていましたけれども、総理が時々使う、静かな環境の中でというのは、国民はもう余り高揚しなさんな、あるいは、国民に余り明確に物を言わないということと同義語ではないと思いますけれども、いかがですか。

 この国民運動に対しては、今までどおり、今までの言葉を当たり前に使ってやって構わないということでここで断言していただきたいんです。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、私の口から発することと渡辺委員が言葉で発することは、ロシアに与える、今後の交渉に与えることでは、恐縮なんですが、これは全然違うわけでございまして、ですから、どうぞ御自由にどんどん、立場を、考え方を述べていただきたいと思います。それはむしろ、日本の国民の声はどういう声なのかということをロシア側も理解をしていただく一助になるかもしれないという考え方もあるんだろう、こう思うところでございます。

 ですから、もちろんそれは、国民運動を展開されている方は、今まで本当に血のにじむような思いで運動を展開してこられました。それはもうまさにその立場に立って展開される。これを私たちが、何か私たちの考え方を押しつけるということは全く、毛頭考えてはいないということは申し上げておきたいと思います。

渡辺(周)委員 ロシアの言い分だけがまかり通って、我が国の主張がこの国際舞台の中での歴史戦に負けることがないような、ぜひとも、我が国の歴史をしょった毅然たる交渉をしていただきたいというふうに思います。

 もう時間がなくなりました。最後にちょっと一つ。聞きたかったことはまた改めて質問をすることにして、一つだけ国土交通省に伺いたいんですけれども、がらっと変わった質問でございますが、JR東日本とJR東海、このいわゆる交通系ICカードの乗り入れができない。私鉄ともできない。しかし、来年、もうオリンピックが近づいております。私の地元の静岡県でも自転車競技が行われる。

 こうした中で、このたび国際観光税が導入されたことによって、さまざまな外国人の方々の利便についても図られるということを期待していますが、こうした、日本人でもよくわからないんだけれども、交通系のICカードがエリアを越えたら使えなくて、一回精算してからまた乗るなどという、あるいは私鉄と互換性がないということについては、これまでも国土交通省の検討会でも指摘をされてきました。

 そして、その上で、簡易改札の読み取り機なんかについては、極めて高価なものでもありますけれども、オリンピックを機にこういうことが導入されるということについては、国土交通省、いかがですか。

石井国務大臣 交通系ICカードシステムは、対象駅の数がふえるに従いまして加速度的にシステムの規模が大きくなる仕組みとなっておりまして、鉄道各社におきましては、このシステム特性や利用の実態を踏まえ、エリアを区切ってシステムを構築をしてきたところであります。

 JR東日本及びJR東海からは、両社のエリアをまたいだICカードの利用を可能とするためには、運賃設定の対象駅数が大きく増加をし、システム改修等にかかるコストが膨大となること等の課題があると聞いております。

 一方、交通系ICカードの利便性向上につきましては、訪日外国人旅行者のストレスフリーな交通利用環境の実現という観点から、重要な課題と認識をしております。

 このため、国土交通省といたしましては、各社に働きかけを行いまして、駅員の増配置など、降車駅の窓口におけるICカードの精算体制の強化、特に、両社のエリアをまたいでの利用の多い静岡県の沼津駅、三島駅、御殿場駅等の駅への、窓口と同様の処理が可能な新型自動精算機の導入といった対応の強化を図っております。

 東京オリンピック・パラリンピック大会で多くの外国人旅行者の訪日が想定されることを踏まえまして、ICカードを利用する外国人向けの周知の強化と事業者における利用者の利便性向上の取組を進めてまいります。

渡辺(周)委員 もうぜひこの機会にやっていただきたいですね。キャッシュレス社会、あるいはポイント還元などのこうした施策に取り組む、これからやっていくというのであれば、ぜひ早急にやっていただきたい。

 何より、北方領土の返還でありますとか憲法改正ということに比べたら、このJRと私鉄の乗り入れなんというのは全然大きな問題でもなくて、これはもうその気になればできることでございます。それだけに、こうした問題はぜひともやっていただきたいと思うんです。

 本来なら、総理のおっしゃった、都道府県の六割が募集業務に対して非協力的だということについて最後に伺いたかったんですが、まだ時間はありますね。

 その六割の都道府県というのは、どういう意味ですか。何が一体非協力的なんですか。その点について総理のお考えを示してください。これは、そうしないと印象操作ですよ、きのうの自民党大会で言ったことは。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 おとといですね、おとといの自民党大会における私のスピーチについての御質問でございましたが、自衛官募集に対する自治体の協力については、本年一月三十日の衆議院本会議において自民党の二階幹事長への答弁でも申し上げたとおり、防衛大臣からの要請にもかかわらず、全体の六割以上の自治体から、隊員募集に必要となる所要の協力が得られていない状況であるというのは事実でございます。

 具体的に申し上げれば、自衛隊法第九十七条により、都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行うとされており、自衛官募集は法律上自治体の事務とされています。これを受けて、自衛隊法施行令第百二十条により、防衛大臣は、自衛官の募集に関し必要があると認められるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができると定められております。

 これらの規定に基づき、防衛大臣は、全ての都道府県知事及び市町村長に対し、自衛官募集に必要な氏名などの情報に関する資料の提出を求めておりますが、全体の六割以上の自治体は、法令に基づく防衛大臣の求めに応じず、資料を提出していないということでございます。

 一昨日は都道府県と申し上げましたが、正しくは都道府県と市町村ということでございまして、自治体ということでございます。

渡辺(周)委員 これは改めてやります。憲法に自衛隊が明記されていないから、自衛隊の募集業務、どんな因果関係があるのかということについて、これは改めてやりますので、総理が印象操作をするような、ミスリードな発言をされたことについては、また改めての機会にやりたいと思います。

 終わります。

野田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、泉健太さんから関連質疑の申出があります。渡辺さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。泉健太さん。

泉委員 国民民主党の泉健太でございます。

 この予算委員会の場、やはり予算委員会ですから、しっかりとこの予算を練り上げたいというふうに思っております。

 私は、国民民主党の議員として、やはり重要政策を真剣に審議をして、そして国民の期待に応えてまいりたい、そう思っております。我々国民民主党もそうですし、また野党もそうですけれども、権力におもねることなく、やはり正義感あふれる仲間、議員たちがたくさんおります。その力を結集させて、国民の声に応える、そして、政権の不正は許さない、国民目線で政策を提案する、そう心がけてまいりたいと思います。

 まず、統計問題なんですけれども、野田委員長、実は、きょうお呼びをしていた西村統計委員長、この場におられません。いろいろな御事情があると伺っておりますのでいたし方ない面もあるんですが、この抽出調査の問題を指摘した西村委員長、私は、連休前に質問通告をして、そしてそこでは予定されているということでしたので、来られるということで質問通告をしたんですけれども、残念ながら、連休中に欠席という連絡が入りました。ただ、通告は事前にしていますので、かなり質問のやりくりですとか、そういったものがややこしくなりました。大変質問権が侵害されたというふうにも思っております。

 ぜひ、この西村委員長については、改めて私自身も質問の機会、質疑の時間を設けたいと思っておりますので、そのことをお約束いただきたいと思います。

野田委員長 この件につきましては、後刻、理事会にて協議いたします。

泉委員 そして、そもそも統計不正の問題にかなり質問時間が予算委員会全体でとられているんじゃないでしょうか。多くの国民は、真相究明と被害者の救済、二千万人にも及ぶ、これを求めているわけです。

 この統計問題の解明、これは委員長、いつぐらいまでに解明されるべきだと考えていますか。

 というのは、要は、予算委員会開催中というのは基本的に他の委員会は開かれない、これが国会のルールですね。そうしますと、我々野党も、何もこの統計問題以外にも、外交、安全保障、社会保障、経済、やりたいことはいっぱいあるんです。だけれども、やはり国民が真相究明を求めている。だからこの統計問題を扱わねばならない。そうなると、この統計問題、やはり少なくとも、年度内、この衆議院の特に予算の審議の中でしっかりと、国民から見て、ああ、事態が解明されたなというふうになる必要があると思うんです。

 そういった意味で、委員長、この統計問題というのは、この予算委員会の場で解明されるということでよろしいですか。

野田委員長 御指摘の件につきましても、後刻、理事会において協議いたします。

泉委員 私は、これはそうは思えないんですね。やはり、国会の主導権を握られているのは与党であります。よく、この統計の問題でいえば、与党の議員の皆さんからも、与野党を超えて真相究明だというふうに言われているわけですね。

 でも、ふたをあけてみたら、理事会で呼んだ人がなかなか来ないとか、あるいは要求した資料がなかなかこちらに来ないとか、これはやはりちょっと、委員会で要求してもというか、野党が要求しても与党が主導の理事会ではねられるということであれば、理事会がブラックボックスになっているんじゃないのかと言わざるを得ないわけですね。

 私は、委員長のある意味決まり文句である、後刻、理事会で協議しますということを、そのまま何か決まり文句として許すわけにはいかないというふうに思っております。

 例えば、先ほど立憲民主党の小川淳也委員も質疑でされましたけれども、異常ですよ。二〇一五年の政府の中、厚生労働省の中の毎月勤労統計の改善に関する検討会の議事録、二〇一五年のものが出ていない。ぜひ、国民の皆さんにも、この厚生労働省のホームページからこの検討会のページを見ていただきたいと思います。そこだけ議事録がないんですよ、本当に、四、五、六回。

 これはおかしいですよね。恐らく総理も、やはり統計の問題だとかあるいは政府のこういった問題、透明性ということからしてもこれはおかしいだろうと思っておられると思うんですが、これは早く出してくれと野党ヒアリングで再々言っても出てこない。

 委員長、改めてですけれども、私たち野党として、この検討会の議事録を正式に要求したいと思いますし、そして、これは、理事会で協議をしていただくだけじゃなくて、委員長として主導権をとっていただきたい、私はそう思いますよ。

 ぜひ、この検討会の議事録は、野党が要求しているんじゃなくて、与野党一致して政府に要求しようじゃありませんか、委員長。

 ぜひお答えをお願いしたいと思います。

野田委員長 この件につきましても、先ほど申し上げたと同様、与野党の真摯な協議をいただいて、理事会にてお諮りいただければと思います。(発言する者あり)御静粛に。

泉委員 一月二十一日、特別監察委員会、厚生労働省の中の第三者委員会と言われた、この報告書の中にも、いろいろと書かれています。しかし、我々国会議員には、この報告書がもたらされただけで、実は、その報告書の参考資料とも言えるような、いわゆる現物というものが示されているわけではありません。

 例えば、この報告書の中には、厚生労働省の統計情報部長名で各都道府県知事に通知された文書があると。やはりこういうものをちゃんと出していただくということが、私は、与党だ野党じゃなくて、国会として政府に求めることではないのかというふうに思うんですね。

 やはり、アメリカでも、よくさまざまな調査委員会というのは国会に設けられますが、非常に強い権限を持って、ちゃんと政府に情報を要求して、政府から情報が出てきますね。

 ですから、ぜひ、与党、野党ということではなしに、この予算委員会として、こういった、今お話をした通知も私は出していただきたいということも理事会で協議をしていただきたいと思いますので、ぜひとも、ここは、私は、与党の、予算委員長の本気度が問われているというふうに思いますので、この資料提出を求めたいというふうに思います。

 また、ぜひ、この問題に関しては、先ほど言いましたように、外交、防衛、経済そして社会保障、さまざまなことを議論したい、本来、集中審議というのはそういうところのために使われるものです。ただし、こうやって、ある意味政権の中の問題として新たな問題が出てきたのであれば、別途、一回プラスをして集中審議をお願いしたいと思います。その件も要求したいと思います。

野田委員長 泉さんの御指摘を踏まえ、与野党協議、しっかり、円満そして公正に進めていけるよう、委員長として取り組んでまいります。

 これらの件につきましては、後刻、理事会にて協議をしていただきます。

泉委員 ありがとうございます。

 次の問題というか、まずはこの統計の問題について少しお話ししたいことがございます。

 まず、パネルで、この問合せ専用ダイヤル。延べ二千万人にも及ぶ方が被害者になっているというか、支給不足ではないかと言われております。でも、皆さん、この電話番号、覚えていただいている国民、おられますかね。非常にわかりにくくないですか。

 四つに分かれて、しかも何で船員保険は二つに分かれているのかよくわかりませんけれども、やはり被害者の方々というのは、家族の中にも、また同僚の中にもたくさんおられるケースはあるでしょうというふうに考えますと、人づてに、あなた、ここに電話したのと、すぐわかりやすいようにしていく必要があると思います。そういった意味では、この問合せ専用ダイヤルは非常にわかりにくいと私は思います。

 ぜひ、統一ダイヤルというものをつくっていただいて、わかりやすく救済をしていただくべきではないかと思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 追加給付に関するお問合せについては、追加給付の対象となる雇用保険、労災保険、船員保険ごとに問合せ専用ダイヤルを設置して対応しているところであります。

 専用ダイヤルを各種制度ごとに設置している趣旨としては、雇用保険、労災保険、現在受給中の方や過去に給付を受けたことがある方は、御自身がどの制度の給付を受けていたか御存じの方も多いので、各種制度ごとに専用ダイヤルを設置することで問合せをスムーズにできるものと考え、各種制度ごとに専用ダイヤルを設置したところであります。

 その上で、対応できる回線を少しでも多くする観点から、いずれの番号でも各保険制度に係る問合せに応じられるよう、柔軟な運営を行っているところであります。

 今後とも丁寧な対応に心がけていきたいと思います。

泉委員 これは、今、どこにかけてもどこにも行くようになっていますというのは、便利なようで不便なような、よくわからないような話ですね。

 今いろいろと国民の皆さんからは、電話をかけたけれども具体的なことは何も教えてもらえないと。いましばらくお待ちください、通知が来ますから、そういう返答らしいですね。これは本当に、いつ、何、どうなるのかというのが全く今、国民からするとわからない。

 早くシステムを構築していただきたいということをお願いしたいと思いますし、ぜひ提案なんですが、その被害者の方は、ある意味、通知が届かないケースがありますよね、住所が変わって。そういったことも考えれば、厚生労働省のホームページなんかで、御自身の情報を入力して自分の不足額が算出できるような、そういう自動入力で計算できるようなシステムを導入していただきたいというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

根本国務大臣 委員が御提案あったようなことは、いい御提案だと思います。

 その意味では、我々、御自身の情報を入力していただければ、例えば御自身の給付額はこのぐらいになりますという、そういう簡易な資料をつくって、そして公表したいと思っております。そこは丁寧にやりたいと思います。

泉委員 続いて、先ほど西村統計委員長の話をしましたけれども、本当はお呼びしたかったのは、幾つかお伺いしたいことがあったんですね。

 これは、内閣府の中で、統計委員会ではなく、統計の改善に関する研究会というのが行われたときに、委員からさまざまな発言が出てきております。

 例えば、小峰委員という方からは、このGDPの基準改定については、政府が掲げている名目GDP六百兆円の目標との関係はどう説明するのか、目標を設定した時期と目標を達成する時期でGDPの計算方法が違っているので、どちらかにそろえて比較することがフェアではないのかと。非常に真っ当なお話を、意見を述べられているわけですね。

 こういうことについて、私は、やはり統計委員長に統計委員長としての御見解というのを聞きたかったということでありますし、そのほかにも、この研究会の中では、別な委員からは、今回の基準改定については、幾つか元気になる材料があるので、基準改定が元気になる材料に使われていいのかどうかというのはあるんですが、そういう漠然とした不安感を打ち消すことに使えないかと。そういう漠然とした不安感というのは、景気ウオッチャー調査なんかを見ると、国民の中に先行き不安だという人がふえているということについて、その不安感を打ち消すためにこの基準改定を使えないかと。

 これは、統計というものをどういう利用の仕方をしているのかということを言わざるを得ないわけですね。

 こういったことも含めて、非常にやはりおかしな、この研究会での議事が出てきているのではないか。この辺もやはりしっかりと西村統計委員長に今後聞いていきたいと思っておりますので、また改めてというふうに思っております。

 さて、実際に、この統計問題から次に行きまして、防衛問題に行かせていただきたいと思います。

 私たち国民民主党は、野党としても、我が国の防衛のあり方、これを真剣に考えております。

 まず一つ目ですが、スクランブルについてですね。

 中国のスクランブルは、今、この数年、少し減りましたけれども、しかし、依然高水準ということでありますし、沖縄の南西方面航空隊を中心に負担が非常にありますので、ぜひ防衛大臣におきましては、この空自のスクランブル体制の負担軽減というものを考えていただきたいというふうに思います。パイロットの養成ですとか、あるいは機体の整備等々にも力を入れていただきたいというふうに思います。

 ここで、一つお話ししたい事例がございます。

 二〇一七年、尖閣の領海内に中国の公船、海警が進出いたしました。そして、そこからドローンが飛んだんですね。この船の上に黄色い点々で丸を囲ってあるのがドローンですけれども、ドローンらしきものが飛んだというふうに、一応、政府見解ではなっております。

 このとき我が国はどのように対応したかということでいいますと、ドローンは飛行物体でありますので、領空侵犯という解釈になりました。そして、スクランブルとして、F15が二機、そしてE2DとAWACS、合計四機が現場に急行しました。ただ、急行したといっても、当然遠方から、那覇から来るわけですから、着いたころにはドローンは既にもとに戻って船の中にありましたし、そして、そもそも超高速の戦闘機からドローンを捕捉できるのかという話ですよね。

 そういったことからすると、恐らく数万円のドローンが一回飛ぶごとに四機も飛んでいれば、一千万以上経費もかかるかもしれません。更に言うと、パイロットの負担ですよね、現場の負担、通信も含めて。こういったもので空自は疲弊してしまうんじゃないかと私は思っております。そういった意味では、このドローンの時代に、領空侵犯イコールスクランブルではやっていられない、私は現場はそう考えていると思いますよ。

 そこで、幾つか確認をしたいと思います。

 まず、外国の船舶が我が国領海内でドローンを飛ばす、私はこれはいわゆる無害通航権というものを侵しているんじゃないかと思うわけですね。一九八二年の国連海洋法条約第十九条というところには、外国船舶の航行は、当該外国船舶が領海において次の活動のいずれかに従事する場合には、沿岸国の平和、秩序又は安全を害するものとされるというふうにありまして、この中に、沿岸国の防衛又は安全を害することとなるような情報の収集、あるいは、航空機の発着又は積込み、軍事機器の発着又は積込み、調査活動又は測量活動の実施というものがあるわけです。

 改めてですけれども、防衛省としては、この事案でドローンが飛んだということは、スクランブルをかけたということでありますから、そして、スクランブルをかけたということは、この無害通航に反するという解釈をしたというふうに私は考えますが、それでよろしいですか。

岩屋国務大臣 泉委員にお答えいたします。

 今御紹介いただいた事例は、おっしゃるとおり、平成二十九年の五月十八日、尖閣諸島周辺の我が国領海に侵入した中国海警の船上からドローンが発射をされたということでございますが、国際法上、国家は領空について完全かつ排他的な主権を有しておりまして、ドローンを含む無人機が領域国の許可を受けないでその領空を飛行することは認められていない。

 したがって、防衛省は、ドローンといえども、必ずしも小型のものだけではないだろうと思います、やはり、そういう飛行物体を認めたときには、自衛隊法の八十四条に基づいて必要な措置をとるということにしているわけでございます。

泉委員 大臣、改めて、無害通航に反するということを私はこの場で明確にしていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

 とめてください。

野田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 速記を起こしてください。

 岩屋防衛大臣。

岩屋国務大臣 基本的には、シカゴ条約第一条、これは国際民間航空条約、ICAO条約でございますが、これによりまして、各国は領域上の空間において完全かつ排他的な主権を有するということでございますから、ドローンによる、つまり無人機による領域内の飛行については、やはり自衛隊法の八十四条による対応というものが基本になるというふうに考えております。

泉委員 ここで明確に、無害通航にも反するという言葉をいただきたかったわけですけれども。

 今お話しいただいた、自衛隊法八十四条のお話ありました。ここには何も、航空自衛隊はとは書いていないわけであります。あくまで「防衛大臣は、」と書いてあって、そして、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又は我が国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じるなわけですね。イコールスクランブルではないというふうに私は思うわけです。

 そこで、ドローンにスクランブルは割が合わないということを考えれば、私は、緊急を要する現場対応という意味では、やはり海自にも協力していただかなければいけない、あるいは海上保安庁にも協力していただかなければいけないというふうに思います。

 例えば、ドローン、なかなか、撃ち落とすということは、緊張感が一気に高まることでありますけれども、当然、海保の船や自衛艦に向かってきた場合は、緊急避難的、正当防衛的には何かできるでしょう。しかし、例えば、そのまま島にドローンが行ってしまったらどうなるか。あるいは、硫黄島や南鳥島でもそうかもしれません。防衛施設がある、そういうところに、いきなり島にドローンが行ってしまったときに、しかも、その周りには、船舶、日本の自衛艦やあるいは海保の船がない場合がありますよね。

 では、どうするんだということでいったら、私はぜひ、島そのもの、特に防衛施設のある島そのもの、そして海保の巡視船や自衛艦には、いわゆる通信電波の妨害装置、これを設置すべきじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

岩屋国務大臣 その前に、先生の問題意識は、ドローンに対して、一々スクランブル発進、戦闘機が出ていくというのはパイロット等にとっても負担ではないかという御心配をいただいたことに対しては、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 その上で、今御提案の、そういった我が国の島においてドローン等の妨害のための装置を置くべきではないかということは、御提案を承って、すぐさまちょっとお答えはできませんが、さまざま対応策を検討させていただきたいというふうに思います。

泉委員 これは、今お話ししたように、今のままでは、海保の船や自衛艦がないところでは飛んでいてもわからないわけですね。密漁と同じような話かもしれません。そういったときにそれをしっかりと禁止できるような、あるいは防止できるような状況をつくっておく、極めて大事だと思います。

 これは予算委員会ですし、防衛予算を審議する場でもありますから、そういったこともぜひ検討していただきたいと思いますし、きょうは石井大臣もお越しですので、海上保安庁についても、防衛、いわゆる海上自衛艦よりも、海保の船の方がいわゆる領海内には多いわけですから、ぜひこういった重要なところの通信電波の妨害ということについても考えていただきたいと思います。

 更に言うと、私はかつて、平成二十七年に、ドローン法というのを超党派でつくらせていただきました。ここでも、当時、検討事項で自衛隊の施設も加えるべきだという提案もさせていただきました。

 ぜひ、このドローン法も改正をして、やはり、アメリカ軍の施設も含めて自衛隊の施設また訓練海域、こういうところはそもそもドローンの飛行禁止区域に設定するべきではないかというふうに思っております。石井大臣、いかがお考えでしょうか。

石井国務大臣 今御紹介いただいた小型無人機等飛行禁止法は、残念ながら国土交通省が所管している法律ではございませんので、お答えする立場にはございません。(泉委員「ドローン法はどちらですか」と呼ぶ)内閣府だと思います。

泉委員 済みません。所管は内閣府ということで、内閣府、では、お願いします。

山本国務大臣 お答えをいたします。

 昨年末に関係府省庁連絡会議がございまして、そちらで決定した小型無人機に係る緊急安全対策、これを法案化するということで今作業しているところでございます。

 具体的には、その上空等において小型無人機等の飛行が禁止される小型無人機等飛行禁止法の対象施設に防衛関係施設を追加する等の措置を講ずるとともに、九月に開幕を控えるラグビーワールドカップ大会や来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全な実施に向け、大会関係施設や主要な空港を同法の対象施設とみなす等の措置を講ずるものでございまして、現在、法案の立案作業を鋭意行っているところでございます。

泉委員 ありがとうございます。ぜひこういったドローン対処を進めていただきたいと思います。

 さて、次の防衛問題に移らせていただきます。

 次は、イージス・アショアでございます。

 総理、安倍政権はアメリカから兵器を買い過ぎじゃないですかね。しかも、アメリカの言い値とも言えるFMS方式、これが莫大に膨らんでいるんじゃないかというふうに思います。トランプさんがアメリカ・ファーストというのはいいんですが、総理までアメリカ・ファーストじゃないのかというふうに思わざるを得ないですね。

 このFMSというのは、アメリカに全面的に、ある意味、契約方法も提供方法も委ねるということでありまして、契約をしたら、過去の例でいいますと、理由をつけられていつの間にか値上げをされているケース、こういったものもありました。

 そういった意味では、これは我が国の防衛産業にもなかなか貢献しない、資しない政策というか契約方法だと言われている。これは、御党、与党の中谷・元防衛大臣なんかもそういった発言をされております。

 ちなみに、F35Aなんかでいいましたら、選定時、最初に機種を選定したときは一機八十九億円という値段でしたね。それが、いつの間にか概算要求では百二十一億円まで値上がりしています。そして、今は百四十七億円ですよ、一機当たり。物すごい値上がりですよね。まとめ買いをすれば安くなるなんて言い方をしていますが、そもそも、最初のカタログの時点からすれば大幅に値段が上がっちゃっているわけです。

 そして、今、組立て、最初、日本でやるという話もなくなって、全部輸入するという話になっているんですね。

 これは、こうなると、本当に我が国の防衛産業にも全く何もおいしいところはない。今、安倍総理は、きのうでしたかおとついでしたか、悪夢の民主党政権とおっしゃられましたが、恐らく防衛産業にとっては悪夢の安倍政権じゃないかというふうに言ってもいいんじゃないかというふうに思います。

 ちなみに、このFMSはというか、防衛予算における輸入比率、二〇一一年のころは七・四%ですよ、まだ十分の一以下。これが、安倍政権、二〇一六年度には二三・三%です。輸入が物すごくふえている。そして、昨年は、過去最大の、額でいいますと七千十三億円がFMS。これはちょっと異常だなと思いますね。その中の代表格がイージス・アショアということになります。

 では、このイージス・アショア、必要かということをちょっと触れたいと思うんです。

 まず、このイージス・アショア、過去の大綱、今回、三一中期防には初めて明記をされたわけですが、二六中期防にはそもそも書かれていなかったわけですね。

 防衛大臣、改めて伺いますが、このイージス・アショア、これは、例えば海自が、イージス艦だけでは日本のミサイル防衛はできないからイージス・アショアを導入してくれ、そんな話はありましたか。

岩屋国務大臣 その前に、FMSですけれども、小野寺前大臣の時代から改善、改革に取り組んでおりまして、成果を上げてきていることも事実でございます。更にその改善を進めてまいりたいというふうに思っております。

 それから、イージス・アショアにつきましては、現場から要求が上がったというよりも、今の日本のミサイル防衛体制は、先生御存じのとおり、二段階、二層体制になっております、イージス艦と地上のPAC3ですけれども。ただ、それだけでは二十四時間三百六十五日しっかりと対応することがなかなか難しいという判断のもとに、これを三層体制にし、また、地上に固定した形のイージス・アショアで日本の全空域をカバーすることによってすきのない体制をつくりたい、こういう発想で今般導入を決めたところでございます。

泉委員 あららですよ、これは。岩屋防衛大臣、だまされていますよ。今の御発言が本当に大臣の御発言だとしたら、これはまずいと思いますよ。

 なぜか。きょう、これはパネルをごらんいただきたいと思います、ちょっと小さいですけれども。イージス艦の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上、これは防衛白書の資料ですけれども、イージス艦を八隻に増勢して、平成三十三年ごろの体制のイメージ、イージス艦が八隻になると日本全体をカバーするのは二隻ずつでできます、常時二隻体制で継続的に防護が可能となると書いてあります。ちなみにイージス艦は来年度に既に八隻体制になります。

 これが中期防以来ずっと我が国が目指してきた防衛体制でありまして、今お話しした二層式というのは、PAC3とこのSM3の二層体制であります。ですから、イージス・アショアはミサイルが一緒ですから撃ち落とす場所は一緒になりますので、これが多層化されるわけではまずありません。

 そして、更に言うと、これまで我々は、イージス艦で、四隻や六隻では、守ることはできるけれどもローテーション上きついから、八隻体制にすれば二十四時間三百六十五日守れると言ってきたわけですよ。なのに、今大臣はこのイージス・アショアがあれば守れるとおっしゃった。これは間違いじゃないですか。

 いいですか。これは防衛白書にも書いてある。私はちゃんと撤回していただきたいと思いますよ。防衛白書も書きかえが必要だと思いますよ。なぜか。(発言する者あり)

野田委員長 少しお静かにしてください。

泉委員 この防衛白書の三百二十六ページ、わざわざイージス・アショアについてという項があります。「イージス・アショアを導入すれば、わが国を二十四時間・三百六十五日、切れ目なく守るための能力を抜本的に向上できることになります。」と書いてある。これはイージス艦だけでもできるんですよ。できるんですよ。違いますか。

岩屋国務大臣 イージス艦はもちろん、ミサイル対処能力、防衛能力があるわけでございますけれども、本来は、イージス艦の役割は、諸外国の対艦攻撃能力の向上等を踏まえて、護衛隊群の艦隊防空に万全を期すために導入を図ってきたところでございます。

 したがいまして、イージス艦をもうミサイル防衛だけに使うということであれば、常時二隻体制、ミサイル防衛だけに使うという体制をとれると思いますけれども、いわゆる海上監視でありますとか護衛隊群の艦隊防空等の任務というのもどんどんふえている中でございますので、また、イージス艦は船でございまして、乗組員の負担も非常に大きいということもありまして、イージス・アショアを導入することによって、イージス・アショアはミサイル防衛だけに専念をする施設、部隊でございますので、総合的なミサイル防衛体制を充実強化することができるというふうに考えているわけでございます。

泉委員 これは総合的なでごまかしちゃだめですよ。

 総理にもお伺いしたいと思います。

 イージス艦八隻体制というのを我々ずっと今まで目指して、中期防でやってきたわけですね。そこの中期防にも書かれていないものを総理は御購入になられたわけですよ。

 では、このイージス艦八隻体制とPAC3で今まで我が国の防衛体制を組んできたのに、ここにイージス・アショアを乗っける。そうすると、今防衛大臣がおっしゃったように、総理、イージス艦八隻体制は、この防衛白書に書いているような二艦で守るという体制を緩めて、イージス・アショアにミサイル防衛を任せていく、イージス艦の役割を変えていくということですか。

安倍内閣総理大臣 これまで我が国の弾道ミサイル防衛は、ミサイル発射の兆候を早期に察知してイージス艦などを展開することを基本としてきました。他方、例えば北朝鮮は、移動式発射台、TELによる実戦的な発射能力を向上させ、また潜水艦発射型、SLBMを発射するなど、発射兆候を早期に把握することはより困難になってきているわけであります。

 御承知のように、いわば、イージス艦についてはさまざまな任務についているわけでございまして、そこで、かなり早い段階でその端緒について把握していれば、そういうフォーメーションをとっていくことができるわけでございますが、今申し上げましたように、SLBMについての彼らの開発も進んでいるという中において、常時日本全体をカバーできるものが必要であるという考え方に立っているということでございます。

 また、現状のイージス艦では、整備、補給で港に戻るすき間の期間が生じることは避けられず、これに加えて、長期間の洋上勤務が繰り返される乗組員の勤務環境は極めて厳しいものとなっているわけでございます。

 もちろん、だからその中でこの艦数をふやしていくというのもありますよ。しかし、艦数をふやしていったとしても、いつ撃たれるかもしれないという状況がもし長い間続く中においては、相当疲弊していくのは事実でございますから、それプラス、これは明らかにプラスになりますよね、イージス・アショアを置けば。マイナスにはならないですよね。それはお認めになると思いますね。

 プラスになれば、プラスになっていくとすると、当然負荷は下がっていくわけでございますし、今、繰り返しになりますが、移動式発射台による実戦的な発射能力が向上しているのは事実でございますし、SLBMを開発しているという状況にも我々直面をしているわけでございまして、その中で必要だ、こう判断したところでございます。

泉委員 これは全然議論されていないんですよ。全然、議論される前に閣議決定されているんです。しかも、アメリカ・トランプ大統領と安倍総理の間での話合いみたいな話ですよ、これ。全然国民的にも議論されていないし、中期防の中でも議論されていないじゃないですか。おかしいですよ、こんな進め方は。

 我が国の防衛計画というのはちゃんとルールに基づいてやっていただきたい、そう思いますよ。こんなことが許されたら、あなたたちで何でもかんでも変えてしまうじゃないですか。

 総理は今、あった方がいいと。それはあった方がいいでしょう。でも、皆さん、これを見てください。一基一千二百二億円ですよ。三十年運用して四千三百八十九億。物すごいお金がかかるものですよ。

 防衛というのは、それは、あればあるほどそれにこしたことはないけれども、我々はずっと、今までイージス艦にもお金をかけて、そして、先ほども示した表にも書いてある、平成三十三年ごろの体制では、検査などを考慮しても日本全国を二隻で継続的に防護が可能となる。今総理がおっしゃったような休暇、検査、そして錬成、そういうものを考慮しても回せるようになったのが、このイージス八隻体制なんですよ。

 にもかかわらず、これにまた大きなお金をかけて、しかも、この下、見てください。劣る、隠密性、抗堪性、機動性と書いてありますが、イージス・アショアというのは動かせませんよね。狙われるんじゃないですか。

 イージス艦というのは秘匿性がありますよ、機動性がありますよ。だけれども、イージス・アショアというのは固定式で秋田と山口に置かれるわけでしょう。これは動かせないですよ。それは当然狙われやすいわけですよ。テロも含めて、原発と同じぐらい、いや、それ以上の危険な施設を地域に置くことになるわけですよ。何で私はこれが効率的な予算の使い方かわからない。

 ミサイルは多ければ多いほどいい。であるならば、イージス・アショアを陸上に配備するんじゃなく、今のイージス艦にもう少しミサイルをふやしたらどうですか。まだその方が効率的な予算の使い方じゃないですか、総理。

安倍内閣総理大臣 我々は国民の命を守らなければいけないわけであります。だからこそ、その値段の多寡について御議論されたわけでありますが、我々は国民の命を責任を持って守り抜いていくという中においてこういう判断をしているわけでございます。

 陸上に配備されている利点については先ほど岩屋大臣から答弁をさせていただいたわけでございます。船であれば、出港していって、その間はずっと洋上にいるということになって、その中でローテーションしていくわけでございますが、陸であれば、まさにいわば陸上においての勤務となるわけでございます。それについては……(発言する者あり)いや、これは大きな差なんですよ、全然御存じないかもしれませんが。

 いわば、ずっと外に出ている、一カ月間とか出ているということと、これは自分の自宅から通えるわけですから、近くに勤務があれば、それは全然勤務状況としては違うんですよ。そういうことも考えていかなければいけないんだろう、こう思いますよ。それは実際に皆さん、そういう勤務をされたことがないからそういうことをおっしゃっているんだろうと思います。(発言する者あり)それはそうですよ。実際……

野田委員長 御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 勤務する人たちの、その人たちの……(泉委員「私の質問ですよ。やじに答えないでください」と呼ぶ)済みません、やじがちょっとひどくて、声が大きいものですから、泉さんの質問とちょっと混同してしまいましたが。

 そこで、まさにそういう中においては、我々、そういう勤務環境をしっかりとある程度確保して向上させていくということも必要ですし、最初に申し上げましたように、いわば最初のこの端緒の段階において、この移動式発射台による実戦的な発射能力を向上させている、あるいは、潜水艦発射型、SLBMを開発しているということで、発射兆候を早期に把握することはより困難に、これは、より困難になっているということはかなり決定的なことになるわけでありまして、それに対応していかなければいけないということでございます。

 そして、それは更に進んでいくということでございまして、御承知のように、このイージス・アショアを発注してすぐに、例えば来月とか来年にそれを取得できるかといえばそんなことは全くないわけでございまして、前もってこれはいわば発注をして、導入までかなり時間がかかるわけでありますから、そういう意味においてまさに私たちはそういう判断をした、こういうことでございまして、更に詳しくは防衛大臣から答弁させたいと思います。

泉委員 防衛大臣、改めて先ほどの答弁、私、訂正していただきたいと思いますよ。今のイージス艦の体制というのはまだ八隻体制になっていない、この状況であれば、整備、補給で港に入るすき間の期間が生じるとか負担が高いというのはわかります。それを変えるために八隻体制にしているんですから、八隻体制にしたら、そういうことを言っちゃいけないんですよ。違いますか。それで、これは現地、地元の秋田の人たちにもそういう説明をしているんですよ。これはぜひ撤回していただきたい。ちゃんと正しい説明をしていただきたいと思いますよ。

 今回のアショアの導入は、イージス艦の負担軽減にはつながらないですよ。イージス艦の負担軽減というのは、八隻体制になったら負担が軽減されるのであって、アショアが来たから負担軽減されるんじゃないんじゃないですか。そこをはっきり言ってください。

岩屋国務大臣 先ほどもお答えしたように、イージス艦八隻体制にして、イージス艦というものを常時ミサイル防衛のために使うということができればいいわけですけれども、イージス艦の本来の任務を果たさなければいけない、非常に厳しい安全保障環境の中にあります。

 したがって、八隻体制はしっかりと構築をしてまいりますが、それに加えて、ミサイル防衛に専念をすることができる、しかも、二基で日本の全空域をカバーすることができるというイージス・アショアを置くことによって、これは明らかにイージス艦は本来の任務というものもしっかり今まで以上に果たすことができるようになるわけでございますから、総じて国民の皆さんの安心を増すことにつながる、そういうミサイル防衛体制を構築することができるというふうに考えております。

泉委員 今お話を伺っていても全く納得できないですね。こうして大綱にも中期防にも書いてなかったものを閣議決定で、高額なものを導入して、しかも、二重になってしまっている、ここには予算の重複がある、こういった意味では、この防衛予算というのは私は見直すべきだというふうに思います。

 予算委員会ですから、ぜひ、こういった野党の議論もしっかりと受けとめていただいて、効率的な防衛費、これを目指していただきたいということを言って、私からの質問を終わらせていただきます。

野田委員長 この際、後藤祐一さんから関連質疑の申出があります。渡辺さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一さん。

後藤(祐)委員 国民民主党の後藤祐一でございます。

 まず冒頭、統計問題について質問したかったんですが、残念ながら、西村統計委員長、先ほど泉健太さんも申し上げておりましたけれども、お越しいただけないということについて強い抗議を申し上げて、次の五%ポイント還元の話から始めたいと思います。

 この五%ポイント還元、ことしの十月に消費税が、八%から一〇%に上げる予定であります。中小企業でキャッシュレス決済、クレジットカードなんかを使ってお金を払った場合には五%ポイント還元がある、こういう制度でございますが、来年度予算に二千八百億円も計上されている。さらに、その次の年度も合わせると四千億円。国民一人当たり三千円以上のいわばゲーム参加費を強制的に払わされて、このキャッシュレス経済、これに参加してくださいという大胆な予算でありますが、これは大変、特にお年寄りの方に評判が悪いんですね。

 これは十二月十四日から十六日にかけての日経新聞の調査ですが、このポイント還元に賛成の方二九%、反対の方六〇%です。中でも六十歳以上の方に限りますと、賛成わずか一七%、反対七二%です。

 お年寄りの方にとっては、カードを持つのも嫌だ、あるいは、使うといってもなかなか使い方がわからない、いろいろな方がいらっしゃると思いますし、お店の方も、お年を召した方がやっているような零細企業なんかですと、なかなかそういったものに対応することができないというお店もいっぱいあると思います。

 そういう意味で、不公平なやり方ではないかということをまず申し上げておきたいと思いますが、不公平なだけでなくて、幾つか問題点がありますので、きょうはそのことを明らかにしていきたいと思います。

 まず、コンビニは五%じゃなくて二%還元になるということですが、経産大臣、間違いないでしょうか。

世耕国務大臣 今回の政策は、あくまでも今回、消費税を上げるに当たって、今までは、ガイドラインでセールとかやっちゃだめとしていたんです。でも、今回は、セールはやっていい、表現には一定のルールはありますけれども、十月一日を機会にセールはやっても構わないとした。そのために、大企業は多分自力でやれる、だけれども、中小企業はそういうことができないから、中小企業にポイント還元をしっかりやって、大企業と対等に戦える条件をつくってあげよう、これが今回の趣旨です。

 コンビニですけれども、コンビニは、我々から見て同じマークで同じコンビニだと思っていても、コンビニの本社直営のお店と、フランチャイズで地場の中小企業がやっておられるお店があります。本来、この制度の趣旨からいけば、本社直営のコンビニについては我々は一切応援しない、本社の判断で自力でやっていただいて、そして、フランチャイズで中小企業が、小規模事業者が自分でやっているコンビニについては五%のポイント還元ができるというのが、これが理想です。

 ただ、使う側からしたら、同じコンビニで本社直営かフランチャイズかなんというのは、これは見ていませんので、ここは、中小企業が経営しているお店とはいえ、フランチャイズということで、いろいろな大企業のブランドとか仕入れルートの支援を受けている、そういう判断に立って、コンビニにおいては、ややこしくならないように、本社直営も含めて二%。ただし、本社直営の二%分は大企業がしっかり自力で負担をしていただく、中小企業がやる分の二%については、これは国が補助をさせていただく、そういう考え方にのっとっております。

後藤(祐)委員 質問にだけ答えていただきたいんですが、要するに、コンビニは二%ポイント還元なんですね。

 これをちょっと見ていただきたいんですけれども、食料品をカードで買った場合を考えましょう。もともと軽減税率の話がございますから、持ち帰りの場合は、消費税率八%に軽減になります。店内で食べた場合は、レストランなんかと同じで一〇%の消費税率になります。

 これに対して、ポイント還元されない大手スーパーで買った場合は、持ち帰りだと、ポイント還元はありませんから差引き八%。コンビニで買った場合は、二%ポイント還元なので実質六%。中小企業たるスーパーですとか何らかの中小企業で買った場合は、五%還元ですから実質三%。店内飲食の場合も同じようにやると、一〇%、八%、五%。これは六つに場合分けできるんですが、八という数字がちょっと重なっていますけれども、三、五、六、八、一〇%と、たった一つの物なのに、五つも割引が変わってくる、消費税率に実質変わってくるわけですね。

 総理、これは複雑で、今テレビの前で見ていらっしゃる方も、二%コンビニというのを知らなかった方も多いと思うので、こんなに複雑なのわからないよと。特にお年寄りの方なんかは、もう複雑過ぎてわからないよという方が多いと思うんですよ。

 率直に言って、この軽減税率とポイント還元を組み合わせると、もうわかりにくくてしようがないと思うんですが、総理、どう思いますか。これは総理にお答えいただきたいと思います。

野田委員長 まず、世耕経産大臣から今の仕組みについて……(後藤(祐)委員「総理にお聞きしています」と呼ぶ)その後、答えますから。

世耕国務大臣 軽減税率とポイントは分けて考えた方がいいと思います。軽減税率は確かに二種類、ポイントは二%還元と五%還元の、これは店単位できっちり分けますから。そして、お店には共通の掲示をして、対象となっているお店には掲示をして、そして、五%なのか二%なのか、わかりやすいようにしてまいりたいというふうに思います。

 今でも民間でポイント制はあるんです。私だってポイントカードを二十枚や三十枚は持っていますよ。それぞれ店によっていろいろあるわけですよ。それは、家電量販店とかデパートとかを入れたら、たくさんありますよね。それを、やはり消費者は一つ一つどれが自分にお得になるかというのを考えながら買物をするわけであります。

 今回のポイント還元制度もその延長で、私は国民には十分御理解がいただけるというふうに思っています。

後藤(祐)委員 わかりやすいか、わかりにくいかは、国民の皆様に御判断いただきたいと思います。経産大臣は、わかりにくいわけじゃないという御答弁のようでございますから、じゃ、一つずつわかりやすく聞いていきましょう。

 このポイント還元の対象となるお買物、どんな物だとかサービスが対象になるのかということをちょっと確認したいと思います。

 これは事務的に、私、実は、経済産業省の流通政策課というまさに小売業を所管する課で課長補佐をやっていたことがあるので、お仕事そのものをやっていたんですけれども、商品券だとかプリペイドカードをチャージするとか切手だとか、こういった換金性のあるものは除外されるというふうに説明を伺っていますが、例えば、たばこだとか新聞だとか本だとか金だとか、あと公共料金の支払いだとか、これらは対象になるんですか、ポイント還元の。

世耕国務大臣 基本的な考え方としては、今回のポイント還元制度は、消費税率引上げ後の消費喚起全体を目的としていますので、幅広い物品やサービスを対象としてまいりたいと考えています。

 御指摘の新聞とか書籍については、店頭で買われるということを前提にした場合には、今回の事業の対象となるというふうに思っています。新聞も、いわゆる定期購読ですね、これを例えば新聞販売店でクレジットカードで月々お支払いをされていれば、当然、その分、ポイント還元になるわけであります。

 また、御指摘のように、切手、商品券、プリペイドカード、これはもともと消費税非課税のものでありますから、こういったものはいわゆる物品とかサービスの購入とかとは違ってまいりますので、これは今回の制度の対象外になります。

 たばこについてでありますけれども、基本的には、たばこは消費税がかかっていますから、対象になる可能性はあるわけですが、一方で、これは、別の法律でたばこは定価販売が義務づけられています。このポイント還元といったものがいわゆる値引きに当たるのかどうかについては、これは少々整理をする必要があるというところでありまして、現在、関係省庁と調整しているところであります。

 公共料金については、これは、カードで払うということであればポイント還元になろうかと思います。

後藤(祐)委員 すごくわかりやすいですね。わかりにくいということが、わかりやすくわかりました。

 公共料金をコンビニなんかで払うとポイント還元の対象になるという答弁ですが、これは結構大変なことですよ。電気代とか電話代とか水道代とか、みんな自動引き落としでやっている人が、これだとポイントがつかないから、やっぱりやめたといって、みんなコンビニに駆け込んじゃうんじゃないんですか。

 あるいは、コンビニだと二%ですけれども、もしかして、五%還元が受けられるような中小スーパーなんかで公共料金のお支払いができる場合は、何と公共料金が五%引きで払えるとなると、公共料金は、全部合わせると一月五万円ぐらい払っている家庭はざらにありますから、この五万円の五%ポイント還元といったら二千五百円ですよ、月。結構でかいですよ。

 でも、もしこれをされちゃったら、電力会社とか電話会社からするとたまらないですよね。せっかく銀行引き落としで取りっぱぐれがないように確実にお客様にお支払いいただく体系をつくってきたのに、やっぱりやめたといって一月ずつコンビニに行かれちゃったら、これは大迷惑ですよ。公共料金のお支払いがそういう形でできるとなると、これは大混乱が起きると思いますが、大臣、どうですか。

 あと、聞かれたことだけにお答えいただけますでしょうか、時間稼ぎが多いので。(世耕国務大臣「いや、わかりやすくお答えしていますから」と呼ぶ)

野田委員長 大臣、私が指名してから発言してください。

 世耕経済産業大臣。

世耕国務大臣 公共料金といっても、ほとんどは電力会社とか大企業ですから、基本的には、公共料金を窓口に持っていったりしている限りは、これは対象にはならない。ガスなんかは、中小の公共料金もありますから、そういった意味では対象になるというわけであります。

 いずれにしても、何が対象になって対象にならないのかということについては、お店への掲示とかホームページ等でしっかりと周知をしていきたいというふうに思っています。

後藤(祐)委員 さっきの答弁を変えるということですか。

 電気代なんかを、コンビニに持っていって、公共料金をお支払いするときはポイント還元になるんですか、ならないんですか、どっちなんですか。

世耕国務大臣 私、冒頭に申し上げたように、これはあくまでも中小・小規模事業者が対応のポイント還元でありますから、そのことを前提にお話をしています。

 ただ、当然、公共料金をクレジットカードで払っている人もいますよね。これはクレジットカードのポイントがつくという可能性はあるわけでして、それはクレジットカード会社が判断してつけているわけでありまして、今回我々がいわゆる補助金の対象にするものではないということは御理解をいただきたいと思います。

後藤(祐)委員 委員長が首をかしげていますよ。

 大企業たる電力会社の電気代を中小企業たるコンビニで払ったら、クレジットカードはちゃんとポイント還元の、今、教えてもらっているじゃないですか。大丈夫ですか、大臣。大臣、答弁能力のすごい高い大臣として総理も安心していらっしゃるのに。二%ポイント還元の対象となるコンビニでちゃんと対象となるカードでお支払いした場合に、ポイント還元の対象になりますかと聞いています。

世耕国務大臣 そもそもコンビニは公共料金は現金ですから。基本的にカードでは払えません、コンビニにおいては。(発言する者あり)訂正ではありませんよ、コンビニは基本的には現金でしか収納をいたしませんので。

 ただ、私が申し上げたのはクレジットカード。クレジットカードで引き落としている人がいますよね。これもキャッシュレスですよ、クレジットカードで引き落とし。これが東京電力とか大企業だったら、それは、カード会社がポイントをつけるかどうか、カード会社オリジナルのポイントをつけるかどうかです。これが、中小のガス会社とか、あるいは最近、中小の電力会社もあるかもしれません、そういう会社への支払いであれば、ポイント還元の対象、政府の施策のポイント還元の対象になるということであります。明確にお答えしているつもりです。

後藤(祐)委員 何か最初の答弁を変えたということなのかもしれませんが、現金以外で払える状況が出てきたらどうなるんでしょうかね。そこは引き続き議論していきたいと思います。

 例えばタクシー代なんかはどうなるんですか。個人タクシーは中小企業だと思いますが、キャッシュレスでお支払いした場合は五%還元だけれども、大きな会社の場合は対象にならない。そして、キャッシュレスじゃなくて現金だけだよというところは、当然対象にならないということでよろしいですか。

世耕国務大臣 タクシー会社が中小企業であった場合、キャッシュレスでお支払いになり、そのキャッシュレスの事業者がポイント制を持っている場合は、当然ポイント還元の対象となります。明確だと思います。

後藤(祐)委員 タクシー業界にかなり影響が大きいと思うんですけれども、どんな影響を与えるかということをちゃんと業界にお聞きになられたんですか。

世耕国務大臣 基本的には、今回のポイント還元というのは、クレジットカード会社やあるいはプリペイド型のカードを発行している会社、いわゆる決済事業者、この決済事業者がポイントを発行するということになるわけであります。キャッシュレスで払えば、その分、五%、中小企業であればつくということであります。決済事業者が、そのタクシー会社が中小企業であるかどうかを判断して、五%ポイントを還元するということであります。

 タクシー業界への影響はそんなに出ないと思いますよ。大企業であれば明確ですし、中小企業であればポイントの対象になるということであります。(後藤(祐)委員「影響を聞いたかどうかを聞いているんです」と呼ぶ)

 私は今、聞いたという報告は受けておりません。基本的には、小売業界、サービス業界の反応は私に上がってきていますが、タクシー業界については、私にはまだ報告は上がっていません。

後藤(祐)委員 タクシー業界には聞いていないけれども、影響は出ないと断言されましたね。

 影響は出るんじゃないですか。これは五%違うわけだから、それは結構、消費者が選ぶかもしれませんよ。

 あと、これはいろいろな業界に影響を与えるんです。例えばスーパー、小売業については聞いたということですが、皆さんのお手元にはスーパーマーケット協会からの経産省に対する御要望というのが、紙が行っていると思います。パネルにはしていないんですけれども。このポイント還元については、「自由競争の環境を大きくゆがめる制度であると考えておりますので、是非、再考をお願いします。」と言っているんですよ。

 なぜかというと、ここにも書いてあるんですが、この対象となる中小企業というのは、資本金五千万以下、あと従業員数とかもあるんですけれども、この資本金五千万以下のスーパーマーケットは全国にいっぱいあるんですね。この中にも、スーパーマーケット協会が書いているので多分正しいと思いますが、店舗数五十店から百店舗を有し、売上げも五百億から千億いっているようなスーパーマーケットでも対象になる企業が多くありますと。

 つまり、何が起きるかというと、全国で、中小企業たるスーパーに行けば五%ポイント還元がカードで払えばもらえる。でも、大手のスーパーに行っちゃうとそれがもらえない。

 スーパーは、一円、二円を競争しているわけですよ。それを、国が税金でこっちにだけ五%と有利なことをやるというのは、これはまさにスーパーマーケット協会の会長が言っているように、自由競争の環境を大きくゆがめる制度だと思うんですけれども、いかがですか。

世耕国務大臣 先ほど申し上げたように、これは恐らく、十月一日以降、大手のスーパー、大企業は、やはり何らかの還元策が打てるわけです、自分のお金で。それに対して、中小、小規模の小売店は対抗できない。それをこのまま放置しておいたら、大企業にどんどんお金が流れちゃうじゃないですか。地場のスーパーとかが非常に苦しい状況になるわけです。そこを、中小・小規模事業者に限る形で国がポイント還元制度をしっかり支援をして、実現をしていくという考え方です。これは、我々は中小企業を救う政策だと思っています。

 中小企業政策というのは、もう委員よくおわかりのとおり、どこかで線は引かなければいけないということになるわけであります。これは、基本的には、中小企業基本法が規定する中小・小規模事業者の定義をしっかり使って、その中小企業に対してしっかりと支援をしていくということが重要。大手スーパーと地場のスーパーがしっかりイコールフッティングで戦える状況をつくるということが、この政策の大きな目標の一つであります。

後藤(祐)委員 スーパーマーケット協会、大きいのから小さいのまでいろいろある協会が、会長名で正式に、自由競争の環境を大きくゆがめる制度であると考えていると言っているんですよ。どんなヒアリングをされておられるんですか。私、まさにこの課の課長補佐だったんですよ。どんなヒアリングをされておられるんですか。

 総理にお聞きしたいと思いますが、これは通告もしていますのでしっかりお答えいただきたいと思いますが、今、経産大臣がおっしゃったように、中小は五%ポイント還元してあげたらいい、大手は力があるんだからついてこれるでしょうと。ついてくるということは、値下げするということですよね。あるいは、大手のスーパーも、ポイント還元、同じようなことをやるということですよね。これはデフレじゃないですか。デフレ促進になっちゃうんじゃないですか、総理。

安倍内閣総理大臣 前回、八%に引き上げたときに、予想以上に消費が低迷をしました。反動減が随分あった。あのときには、いわば、例えば消費税を下げませんとか、そういうセールはしないようにということでやったんですが、しかし、諸外国の例を見ておりますと、これは各メーカー等が、実は、駆け込み需要のころから例えば値上げをしているところもありますし、他方は、それを、引上げになってもそれは全く上げないという工夫をしていることによってなだらかになっているねというのを我々も研究をしてきたわけでございます。

 その中で、今回、そういうことは今度はしないわけですから、いわば、二%例えば引き上げていく上において、二%はちゃんと上げてくださいねということはしないわけでございまして、そこで、その中においては、大企業は、消費税の引上げ後、自己負担でセールを実施できるのに対して、中小・小規模事業者は、今まで大臣が答弁してきているとおりであります。事実、そういうことを諸外国ではやっている例が多々見られるわけでございますので。

 そうなると、体力の弱い中小企業、小規模事業者は競争上の不利もありますので、そのため、中小企業団体からは、消費税率の一〇%への引上げに当たり、強力な需要喚起策などを講じるよう強い要望が寄せられているところでございまして、今回のポイント還元は、こうした現場の声を踏まえて、中小・小規模事業者に限定した上で、消費をしっかりと下支えするため実施することとしたものでございます。

 また、いわばキャッシュレスが実際は進んでいく中において、こうした中小企業、小規模事業者の皆さんがこれを契機としてキャッシュレス化を進めていく、それを国としても支援をしていく。海外からの観光客の方々、約七割の方はキャッシュレスであればもっとお金を使っている、こう言っているわけでございますので、こういう需要にも対応できるように国としても支援をしていくということでもございます。

後藤(祐)委員 国がデフレ促進策を講じるというのはいかがなものかと思いますね。

 先ほど経産大臣が、大企業はついていけるというふうにおっしゃいましたけれども、大企業たるスーパーは、こういうことをやっちゃうんじゃないですか。

 例えば、資本金五千万円以下だったら中小企業となるわけですから、今、資本金五千万以上の会社も、減資というんですけれども、資本金を減らして五千万円以下にしちゃったら中小企業になりますよね。これはスーパーだけじゃなくて、家電量販店とかドラッグストアとかいろいろなのがありますよ。資本金五千万以下に減資すれば対象になるのでしょうか。

 あと、もう一つのやり方は、例えば、お店ごとに別の会社にするとか、分社化することで中小企業にすることもできますよね。こういった場合でも五%ポイント還元の対象になるんでしょうか。

世耕国務大臣 基本的には、先ほど申し上げたように、中小企業基本法が規定する中小・小規模事業者の定義を使って中小・小規模事業者を決めていきたいと思います。

 ただ、御指摘のとおり、例えば、誰もが知っているような、まさかここが中小企業じゃないでしょうというような会社が、資本政策の結果として非常に小さな資本になっていて、中小企業に当たるというケースはあり得ます。これについては、これから少し詳細は詰めますけれども、過去も、税制上の租税特例措置を中小企業だけに当てはめるというときはいろいろなルールをつくって、そういったところははじいているんですね。私は、今回もそういった形で、それに準じた形で対応は可能だと思っています。

 では、減資をしたり分社化、この施策、九カ月ですよ、九カ月のために会社を分けたり減資をする、そういう経営者がいたら私はお会いをしてみたいと思います。

後藤(祐)委員 本当にそういう会社、ないですかね。それは、もし出てきたらお会いしていただきたいなと思いますね。

 あともう一つわかりにくい点が、先ほどカードのお話をされていましたけれども、例えば、VISAカードだとかマスターカードだとか、カードの表側にマークが入っていますよね。ところが、カード発行会社というのは結構ばらばらなんですよね。そういうマークが入っていても、それぞれ別々の、かなり多様なカード会社がそのカードを発行していたりするんです。

 例えば、VISAカードだとかマスターカードと書いてあるカードは全部このポイント還元の対象になるのか、それともカード発行会社ごとに違うのか、どっちなんでしょうか。

世耕国務大臣 基本的にはカード発行会社、今まさにカード発行会社と対話を進めているわけであります。

後藤(祐)委員 つまり、VISAとかマスターと書いてあるカードでもポイント還元の対象にならないカードはあるという答弁ですね、今。

世耕国務大臣 私は、できる限り多くのカード発行会社に参加してもらいたいというふうに思います。

 しかも、国のお金で五%追加で還元になる政策であります、中小、小規模で買えば。私は、皆さん、これから顧客の囲い込み、カード業界も非常に厳しいわけですから、当然、御賛同をいただいて参加をいただけることというふうに考えています。

後藤(祐)委員 要するに、VISAとかマスターと書いてあっても対象にならないカードがあり得るということなんですよ。そんなのお年寄りにわかりますか、これは。皆さん、自分のカードが、カード発行会社はどこだったっけと結構忘れている方も多いんじゃないですか。

 総理にちょっとお伺いしたいと思いますけれども、今このポイント還元の話、幾つか問題点があることが明らかになりました。

 まずは、お年寄りだとか地方だとかは、こういったキャッシュレスあるいはカードというのは使いにくくて不公平じゃないか。実際にお年寄りは、これは非常に賛成する人が少ないという世論調査の結果にもなっているわけですね。

 二つ目に、公正な競争をゆがめるんじゃないかということを先ほど申し上げましたし、スーパーマーケット協会からもそういうストレートな御要望が来ているわけですね。

 それと、三つ目として、何を買うにしても、ここにあるように、一個の物を買うにもどの買い方をしようかというのを一々消費者は考えないと、損しちゃうんじゃないかということをずっと考えていなきゃいけないし、これは、流通業にとっても、あるいはメーカーにとっても、場合によっては決済事業者にとっても、一個一個のことについて物すごくよく考えなきゃいけなくなる、大変面倒くさい、現場の混乱をもたらす制度なんじゃないか。これが三つ目。

 あと四つ目は、今申し上げた、カードによってこれは入るの入らないのと、またこれも気にしなきゃいけない。

 五つ目として、これは前回、テレビが入っていないところで指摘させていただいたんですけれども、例えば、百万円のダイヤモンドの指輪をAさんからBさんに売ります。BさんからCさんに売ります。ずっと転売していって、その間、VISAカードにしたりJCBカードにしたり、決済を変えていったら、こんなの防げないですよね。

 同じカードだったら、ずるい人はわかるかもしれないけれども、どんどん転売していったら、百万円の指輪をカードで買って、五万円のお金が天から降ってくるというのをどんどんどんどんやっちゃったら、これはどうやって防ぐんですかという話は、これは前回聞いたのでお聞きしませんが、カード会社に頑張ってもらうという答弁なんですね。

 総理、これは余りに問題点が多過ぎると思うんです。しかも、全国民に、日々のお買物に影響する話なんです。これは、まず、先ほど小売業については聞いていると言っていましたけれども、タクシーについては聞いていないとか、そもそも公共料金のところについて、これはかなり大きな話だと思いますけれども、大臣自身がよく把握されておられていなかった。

 ぜひ、まず、どういう影響が及ぶか、よく調査をすべきだと思うんです。その上で、やはりこれは問題が大きいということになったら撤回すべきだと思うんですが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 幾つか後藤委員の問題点を指摘されました。

 わかりにくいのではないか、消費者がですね、特にお年寄りの皆さんが、カードなんかないし。確かに、例えば私の地元でも、なかなか高齢者の方々、七十歳以上の方々、カードをつくりにくいのは、銀行のカードをつくりにくいのは事実でございますが、例えばプリペイドカード等をつくってもこれは活用できるわけでございまして、この前も、私も実際に初めてつくったんですが、これは結構簡単、あっという間にできて、これは簡単だなと思いました。それを持っていけば、一瞬のうちに買物ができるわけでございます。

 それと、iPad、私もスマートフォンを持っていないものですから、櫻田大臣は持っておりますが、私は持っていないものですから、iPadは持っているものですから、iPadでQRコードでやったんです。これは、QRコードの方は、花屋さん、まさにこれは紙を一枚、QRコードを張った紙を置いておけば、それでもう行くわけでありますから、これは思いのほか簡単だなと思います。先入観がある方は多いんでしょうけれども、これは、お年寄りの皆さんたちにとってもそれは簡単です。

 そこで、じゃ、いろいろ今そういう差があるけれども、それがわかりにくいではないかということでございますので、ポイント還元の対象となる店舗に、還元率を明記したポスター等を張っていただいて、わかりやすくしていく、こういうことにもしっかりと心を砕いていきたい、こう思っている……(後藤(祐)委員「調査と撤回」と呼ぶ)調査、撤回ですね。

 調査等については、もう既に大臣の方からも答弁をさせていただきましたが……(後藤(祐)委員「いえいえ、していないですよ」と呼ぶ)調査については、また大臣が、今もう手も挙がっていますから、お答えをさせていただくと思いますが、今のところ、我々も撤回は考えておりません。

世耕国務大臣 タクシー業界については、私が報告を受けていないというだけで、経産省として調査しているかしていないか、これはまだ未確認ですので、ここは御注意いただきたいと思いますが、できるだけ幅広い業界の方としっかり対話をして、この制度の周知徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

後藤(祐)委員 これはかなり多くの業界に影響しますので、よく調査していただいて、その結果をゆがめることがないよう、実際、各業界がどういうお答えか、一番足元のスーパーマーケットが反対しているんですから、ぜひよく、その結果を、調べていただいて、この委員会に御報告いただきたいと思いますが、委員長、お取り計らいを願います。

野田委員長 今の件につきましては、後刻、理事会にて協議をいたします。

後藤(祐)委員 それでは、次のテーマに行きたいと思いますが、日米通商交渉の話に行きたいと思います。

 昨年九月二十六日の日米首脳会談がありましたが、その共同声明では、自動車について、「米国としては自動車について、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること。」というふうにされて、大変心配なことが書いてあるわけであります。

 そして、アメリカとメキシコとカナダというのは、もともとNAFTAというのがあって、自由に輸出輸入をしていたわけですけれども、トランプ大統領になってこれを見直すということになって、カナダからアメリカ、あるいはメキシコからアメリカに輸出するときは、二百六十万台を超えたら、いわゆる追加関税、一〇%とか二五%とかという追加関税の対象になる、そういう取決めまでされてしまったわけですね。この二百六十万台を超えたら、物すごい高い関税が付されてしまうと。

 まさか日米通商交渉で、日本からアメリカに輸出する自動車についても、このカナダやメキシコのような、何万台を超えたらすごい高い関税というようないわゆる数量規制、これをおりてしまうということはないんでしょうね。これは総理にお伺いします。これは通告していますので、これはもう通告をきちっとしておりますので、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 詳しくは実際に直接交渉した茂木大臣から答弁させますが、我が国の交渉方針や考え方について交渉の場以外で言うことは、交渉に悪影響を与えることになりますので差し控えますが、日本としては、いかなる協定もWTOルールに整合的であるべきと考えております。

 これは、委員は元経産省におられましたからよく御承知のとおりだろうと思いますが、その旨は、昨年の日米共同声明に向けた協議の中で、茂木大臣からライトハイザー通商代表に明確に伝えているところでございまして、必要があれば、担当大臣から答弁させたいと思います。

後藤(祐)委員 メキシコとカナダは、この二百六十万台を超えたら高い関税にしちゃいますよということについて、これはWTO違反だとして訴えているんですよ。EUも中国も、このカナダとメキシコと一緒にWTOに訴えて、アメリカのいわゆる二百三十二条、米国拡大通商法二百三十二条というんですが、安全保障に関係するから関税をぼんと上げるぞ、こういうのはWTO違反だと訴えているんですよ。

 今の総理の答弁からしますと、もし、メキシコとカナダと同じような、何万台というのを超えたら高関税をかけるぞというようなことになりそうになったら、これは日本も、カナダ、メキシコあるいはEUと一緒に、WTOにアメリカを訴えるということでよろしいですか、総理。

野田委員長 その前に、担当の茂木国務大臣。

茂木国務大臣 九月二十六日の日米共同声明五項目めの後半に米国の立場というのが書いてあるわけでありますが、これは、一般的な米国のこれまでの自動車に対する考え方を述べている、このように今考えておりまして、日本としては、いかなる国ともWTO協定に整合的でない合意をする考えはない。この点については、先ほど総理の方からも答弁させていただいたように、私から、カウンターパートでありますボブ・ライトハイザー通商代表にはしっかりお話をさせていただいているところであります。

 それで、具体的な交渉、これは、この共同声明を踏まえて、まさにこれから始まるわけでありまして、相手のある話でありますから、今の段階で交渉が完全にどうなる、これを予見するのは難しいんだと思います。

 さらに、交渉の入門書、交渉問題の入門書、「ゲッティング・ツー・イエス」という本があるんですけれども、いかに自分の情報を出さずに相手の情報をたくさん得るか、これによって交渉の優位が決まってくると言われておりまして、こちらから現段階で手のうちをさらす、これによって国益を害することは避けたいと思っております。

後藤(祐)委員 こういう議会で、こんなところでおりちゃだめだぞということを、アメリカはもうさんざんやっているわけですよ。業界団体からもいっぱいもらっているんですよ。それを紙にまとめて、これが交渉方針だというのをアメリカのUSTRがまとめて、これで交渉するとやっているんですよ。

 ですから、交渉当事者がなかなか言いにくいのはわかります。ですが、例えば、こういう議会のところですとか、あるいはいろいろな関係当事者から厳しい声をいただいて、少なくともカナダ、メキシコはWTO違反だと言っているわけですから、これと同じレベルに行かなかったら、アメリカに対して日本は弱腰だねという話になっちゃいますから、そこをよく考えて交渉に臨んでいただきたいと思います。

 もう一つ心配なのが農水産品でございますけれども、今申し上げたアメリカの通商代表部、この交渉するUSTRというところですが、具体的な交渉目的という本が出ているんですね。それによりますと、農産品について、関税の削減若しくは撤廃により、日本における米国農産物の包括的な市場アクセスを確保するとされているんですね。つまり、日本の農水産品市場を関税撤廃してこじあけろと書いてあるんですよ。

 ただ、これは、総理、これも通告しているからしっかりお答えいただきたいんですが、最初に申し上げたように、九月二十六日の日米首脳会談の日米共同声明の中で、農水産品については、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であることとされていて、農水産品は、TPP、その後、日本とEUのEPAも入るという答弁が茂木大臣からいつかありましたけれども、少なくともこの二つで日本が譲ったレベルよりも譲ることはない、このことを改めて約束していただきたいと思いますし、アメリカにその了解がとれているのかどうか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 改めて、大変いいポイントを御質問いただいたと思っておりますが、詳細は、この後、ライトハイザー通商代表と調整に当たった茂木大臣から説明させますが、農林水産品については、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意をしたわけでございます。

 いずれにせよ、我が国として、国益に反するような合意をするつもりは全くないということでございます。

後藤(祐)委員 はっきり断言し切らないところがちょっと残念なんですけれども、そこをはっきり言っていただきたいなと思いますが。ここにおられる近藤和也さんは我が党の農水委員会の理事でございますので、しっかりと我が党として、この点、監視をしてまいりたいと思います。

 この農水関係に関しては、ちょっと気になる話があるんですね。ちょっと話がそれますが、吉川農水大臣、よろしいでしょうか。

 昨年十二月二十日に、御子息の吉川統勝氏が、四月の統一地方選、北海道の道議選、札幌市東区の自民党公認になりました。昨年十二月二十日です。その翌日、十二月二十一日に、農林水産大臣秘書官に任命されておられます。

 これは、いわゆる選挙に有利になるように自分の息子を箔つけする人事そのものじゃないですか。

 吉川農水大臣、何で、道議選候補の自民党公認が出ていた御子息、しかも翌日ですよ、農林水産大臣秘書官に任命したんですか。お答えください。

吉川国務大臣 全く通告をいただいておりませんけれども、あえて、御質問いただきましたので、お答えをさせていただきたいと思いますけれども、秘書官に任命というのは時間を要します。それで二十一日ということになりましたけれども、私の息子であります吉川統勝は選挙には出ません。

後藤(祐)委員 選挙に出るか出ないかという話じゃなくて、なぜ、公認を受けた次の日に大臣秘書官にしたんですか。

 つまり、農水大臣秘書官というのは農水省の税金からお給料をもらうわけですよ。この統勝さん、フェイスブックなんかを見ますと、一月の間は、地元の業界団体の新年会のところに大臣の代理でたくさん出ていらっしゃるわけですよ。

 別に、農水省からお給料をもらっていなきゃいいですよ。ですが、農水省からお給料をもらった大臣秘書官というのは、東京だとかあるいは大臣がほかの地元でない地方に視察に行くときについていくとか、そういったのが本来大臣秘書官の仕事であって、大臣の地元を守るのが仕事じゃないですよね。

 大臣、地元回りしているのは大臣秘書官として問題じゃないですか。

吉川国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、政務秘書官には手続の時間が必要でございまして、たまたま、その公認申請の後にということになりました。

 地元におきましては、政務秘書官の仕事として、しっかりと業界団体の皆さんですとかそういったことをサポートしてくれております。

後藤(祐)委員 大臣の地元のサポートをしてもらっちゃ困るんですよ。東京で、例えば農協の方とお話しするとか、それだったらわかりますよ。大臣の地元で業界団体の方々とお会いするのに、農水省のお給料を使ってもらっちゃ困るんですよ。大臣の職権濫用じゃないですか。

 吉川大臣の御長男は、もう既に道議でおられて、それはそれでいいですよ。三男の方は公設秘書だというふうに伺っておりますが、一家で国と北海道の税金からたくさんお給料をもらって、選挙一直線じゃないですか。これはちょっと……

野田委員長 大臣、下がってください。まだ質問を受けています。

 ごめんなさい。後藤さん、続けてください。

後藤(祐)委員 農林水産大臣秘書官が地元で業界団体の方と会ってお仕事するのは、農水省のお給料をいただいた秘書官の仕事として適切ですか、大臣。

吉川国務大臣 私は、今、極めて心外な質問をいただいた、こう思っております。

 政務秘書官としては、政務に対する地元等々でサポートや調整、大臣のですね、いろいろなことをやっております。

後藤(祐)委員 つまり、適切だということですね。農林水産大臣秘書官として農水省のお給料をもらっている方が大臣の地元で活動する、これは適切だということでよろしいですね、大臣。

吉川国務大臣 もちろん、地元での大臣としてのサポートや調整もですけれども、地元だけではございませんので、私は適切だと思っています。

後藤(祐)委員 地元でどれほど活動されて、どの程度、東京ですとか、大臣がまさに地元活動ではない活動にその御子息が一緒についていったのか、ぜひそれは、これまでのところの記録を提出していただけますでしょうか、大臣。

吉川国務大臣 大臣としての政治活動にかかわる問題でもございますので、また必要であれば、いろいろと御報告はいたします。

後藤(祐)委員 出してくださいと必要だから申し上げているんですけれども、出すことをお約束いただけますか。

野田委員長 では、もう一度、吉川農林水産大臣。

吉川国務大臣 政務のことでありますから、私は出す必要はないと思いますけれども、いろいろな報告が必要であれば、後ほどまた委員会で御協議をいただければと思います。

後藤(祐)委員 委員長にお願い申し上げたいと思いますが、農水大臣秘書官が、選挙と関係なければまたちょっと違うのかもしれませんが、選挙に出る、公認になっている方を地元活動で、しかも農水省からいただいたお金で、箔つけ人事であることはまず問題ですし、それで地元でそういう活動をしているということもまた問題だと思いますので、今申し上げた、どの程度地元活動をされていて、どの程度大臣に張りついてそれ以外の公務をしていたのかについて、資料を提出いただくよう、委員会として請求していただけますでしょうか。

野田委員長 それでは、後刻、理事会にて協議をいたします。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

野田委員長 この際、奥野総一郎さんから関連質疑の申出があります。渡辺さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。奥野総一郎さん。

奥野(総)委員 国民民主党の奥野総一郎でございます。

 きょうは西村統計委員長にお越しをいただいているはずなんですが、もうお見えでしょうか。まだですかね。そもそも、きょうは朝からというお話だったんですが、三時と伺っていますが、できれば最初からいていただければ助かるんですけれども、改めて抗議を申し上げておきたいと思います。

 それでは、最初、まず第一問目ですけれども、私は千葉県選出でありますから、野田市の栗原心愛さんの虐待死について最初に伺いたいと思います。

 総理におかれましては、先週の金曜日ですか、迅速な対応策を閣僚会議を開かれて決定されたと承知しています。現在把握している全ての虐待ケースについて、一カ月以内に緊急安全確認をするでありますとか、あるいは、児童福祉司の来年度千人増員などの体制強化などなど、迅速な対応をされたというふうに思いますけれども、きょうはさらなる対応をお願いしたいと思います。

 と申し上げますのも、昨年もこのような事件がありました。船戸結愛さんという方が、昨年七月、虐待で亡くなられて、その直後に緊急対策が閣議決定をされたわけであります。その中におきましても、介護福祉士の増員でありますとか、あるいは児相間の、引っ越した場合の連携でありますとか、あるいは警察、学校、病院の連携、そして、今回問題になりましたリスクアセスメントシートの活用などが決定されているわけであります。

 一応、昨年そういう対策を打ったにもかかわらず、なぜ今回こういうことが起きてしまったのか。

 機能した面もあると思うんですね。児相間の連携も最初はうまくいっていた。一時保護まではこの仕組みが機能していたように思われますが、その後、アンケート用紙のコピーを教育委員会がお父さんに渡してしまうとか、あるいは、リスクが高いにもかかわらず帰宅をさせてしまう、そういう判断をしてしまうとか、また、一度も、自宅へ帰った後に学校もそして児相も訪問していないとか、さまざま、問題が明らかになったと思います。

 ですから、今回新たな対策をしたから終わりではなくて、きちんと過去の時間を分析をして、検討して、教訓を引き出して、二度とこうしたことがないようにやっていただきたいというのが、きょうの私の質問の趣旨であります。

 それで、今、児童福祉司の話を申し上げましたけれども、来年度千人増員ということで打ち出されていると思いますが、昨年の対策では、二〇二二年度までに二千人の増員ということで、これを前倒しされているということなんですけれども、私が気になっているのは質の問題なんですね。

 新聞報道ですけれども、児童福祉司というのは、一人前になるには三年はかかると言われていると。柏は、これは去年の対策の結果かどうかわかりませんが、増員をされて、児童福祉司の平均年数は四年余りということであります。これをどう評価するか。三年で一人前だから大丈夫と評価するのか、いやいや、ベテランがいないんじゃないか、こういう評価もあると思うんですね。

 今回、この事件のポイントは、一つは、なぜ、二月の二十八日、児相が援助方針会議で心愛さんを自宅に戻す決定をしてしまったのか、これが一つ大きなポイントだと思います。このときにやはり鍵になったのは児童福祉司だと思われるんですね。児童福祉司は、常に両親とか御本人にも会っていますし、関係者と接しているわけですから、そこの判断がすごく影響するわけです。

 千葉県の虐待防止マニュアルでは、家庭復帰の際、一時帰宅を認める際には、児童福祉司の援助方針を意見書として援助方針会議なるものに提出をすることになっているということですね。それは、児童福祉司が常に当人と接したり両親と接したりということもあると思います。重要な役割を果たす。だから、その判断を示す、しかも、文書で示しておきなさいということが、千葉県のマニュアルには定められていた。

 ところが、確かにこの会議には心愛さん担当の児童福祉司は出席をしていたんですが、紙で残っていないと。なぜかと問うたところ、これは報道ですけれども、忙しくて意見書の作成が間に合わなかったということで、しかも事後の作成も忘れてしまったということで、残されていないんですよ、こんな大事なことがですよ。やはり児童福祉司の役割というのは、今回非常にポイントだったと思います。

 まだ全容が明らかでありませんので、一般論として問いたいんですが、今回増員をしますけれども、質の問題ですよね。ただふやせばいいというものではないと思うんですね。どうやって質の高い児童福祉司を確保していくか、どうやって質の足らざるところを補っていくかということを伺いたいと思います。

根本国務大臣 委員お話しのように、質の確保、向上、これは本当に私も大事だと思います。

 児童福祉司の資質の向上の観点からは、平成三十一年度予算案では、平成二十八年改正児童福祉法により義務づけられた児童福祉司の任用後研修等の実施費用の補助、そして児童相談所職員等の研修センターを全国一カ所から二カ所に拡充、国が主催するブロック単位の児童相談所職員への研修の開催といった方策を講じて、資質の向上を図ることにしております。

 そして、今回、職員の資質向上策も含めた児童相談所の体制強化を図るための改正法案、これを提出する予定であります。

 具体的には、児童相談所における弁護士等の配置や、あるいは児童相談所の業務に対する評価を実施する、あるいは児童福祉司等任用要件の見直し、児童心理司の配置基準の法定化、これらの取組を通じて、引き続き、児童福祉司の資質の向上に取り組んでいきたいと思います。

奥野(総)委員 これは今回急に決まった話じゃないと思うんですけれども、息の長い話だと思いますので、私が申し上げたいのは、ふやしたから終わりというのだけはくれぐれもやめていただきたい。きちんとチェックをして、跡づけをしていただきたいということです。

 それから、もう一つ、今回問題だったのは、一月八日から、七日に欠席の連絡があったんですが、八日から長期欠席をしているにもかかわらず、児相も学校も家庭の訪問をしなかったということなんですが、そもそもなんですが、学校からこの欠席の連絡というのが児童相談所の方にあったんでしょうか、あったとすればいつなんでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 本件に関しまして、平成三十一年一月二十一日に児童相談所が小学校へ連絡いたしまして、欠席の状況を確認いたしております。

奥野(総)委員 これは、すぐ伝達される仕組みにはなっていないんですか。例えば一週間休んだ、これは一時保護を受けている方ですから、一週間休んだ時点で、学校から児相にきちんと報告が行く仕組みにはなっていない、具体的にはどういう仕組みなんでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 現在のルールでございますけれども、児童虐待が疑われるケースにつきましては、学校、児童相談所などの関係機関の間で、それぞれが把握した状況を情報共有することとしております。中でも、学校と児童相談所等の間におきましては、出席の状況等につきまして、おおむね一カ月に一回程度、定期的に情報共有をすることといたしております。

 また、定期的な情報共有のほか、不自然な外傷が見つかった場合、あるいは帰宅を嫌がる等の虐待の兆候、状況の変化があった場合には、定期的な情報提供の期日を待つことなく、学校から児童相談所等へ情報提供を行うこととしております。

 さらに、本年二月八日に関係閣僚会議で決定した対策におきましては、新たなルールを設定することといたしまして、理由の有無にかかわらず、学校の欠席が続く場合には、全て学校が児童相談所へ速やかに情報提供を行うことなどが盛り込まれております。

奥野(総)委員 まだ、原則のルールだと一カ月に一回なんですよね。これは、だから、もう少しルールを細分化して、一週間以上の長期とか、そういうときは直ちに、直接行くように、これは要対協という団体で報告が行くわけですよね。そうではなくて、速やかに児相に連絡が行くような仕組みをつくるべきだと思うんですね。これは今回の教訓ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

根本国務大臣 情報共有は、本当に私は大事なことだと思います。今政府委員から答弁させていただきましたが、やはり、我々、今政府委員から答弁したように、これらを徹底することによって、学校と児童相談所がしっかりと連携し、適切に対応できるように努めていきたいと思い、今申し上げたことを徹底するということで対応していきたいと思います。

奥野(総)委員 なかなか、これは裁量の余地があると思うんですね。だから、例えば一週間なら一週間ときちんと決めて、欠席した場合は必ず連絡が行くように、そして、連絡があった場合は必ず、そこから先ですが、児童相談所あるいは学校が家庭訪問をしなきゃいけないと思うんです。

 今回、不自然なのは、これだけリスクが高いにもかかわらず帰宅をさせてしまった。しかも、その後、一回も、誰も自宅の方には行っていないんですね。面談はしていたかもしれないけれども、自宅の様子も確かめに行っていない。今回も、じゃ、沖縄に帰るんだと言ったときに、本当かといって、誰も確かめなかったわけですよ。

 もう一度確認しますが、今回の対策では、連絡が来ればきちんと直ちに確認に行くという仕組みにはなっているんでしょうか。

根本国務大臣 今回、二月八日に決定した対策、これについては、新たなルールを設定することとし、理由の有無にかかわらず、学校の欠席が続く場合には、全ての学校が児童相談所へ速やかに情報提供を行う、こういうことを盛り込んでおります。

奥野(総)委員 その先ですよね。家庭訪問、家を訪ねるかどうかについては決まっていないわけですね、今の答弁だと。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 二月八日の閣僚会議決定におきましては、家庭復帰の際には、その条件といたしまして、あらかじめ家庭訪問の頻度や通所指導の頻度を示すなど、安全確認することを保護者に提示し、それに基づき指導すること、これを盛り込んでおります。

奥野(総)委員 やはり今のを伺うと、総理は、対策として、把握している全ての虐待案件について安全確認をするんだ、こうおっしゃっているわけです。これは報道によると三万件とも言われていますが、大変なことなんですよ。

 これを一過性に終わらせないためにも、毎回、怪しい事案について、怪しいというか、一定の要件を満たす、例えば一週間、長期というのがまた曖昧だと思うんですけれども、どのぐらいの期間かというのもあるんですが、欠席の場合については必ず児相ないし学校が連携をして家庭訪問をする、そういう仕組みをやはりつくるべきじゃないですか。今の答弁だと、そこがないような気がするんですよね。

 せっかく全部調べると言っていて、その後、調べ終わったら、これだとまた同じことが起こる可能性がありますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回の心愛さんの事案においては、本人を自宅に戻す決定をした後、学校を長期欠席している間に起こってしまったことなどを踏まえまして、万が一にも今回の事案と同様のことが起きていないか、見落としはないかなどについて改めて緊急確認をするために行うものであって、仮にリスクが高いと判断される場合にはちゅうちょなく一時保護をする方針であります。

 また、先ほども既に委員の方からも御紹介がございましたが、言うまでもなく、日常の安全確認については、四十八時間ルールなどの定められた手順にのっとり、関係機関が連携若しくは共同して行うことが重要であり、その徹底を図っていきたい。

 この四十八時間ルールにつきましては、虐待の通告を受けた場合に、児童相談所や関係機関は四十八時間以内に安全確認を行うことが望ましいとするルールでありまして、昨年の七月に、あの結愛ちゃんの事件を受けまして、四十八時間以内に安全確認が行えない場合は必ず警察と情報共有しなければならないというルールが追加されたところでございまして、いわば、そういう意味におきましては、しっかりと安全の確認をしに行く、と同時に、ちゅうちょなく、必要であれば一時保護をするという方針で臨んでいくことになります。

奥野(総)委員 今のは、私の疑問には必ずしもお答えいただいていないと思うんですね。

 長期欠席の場合は通報するルールをつくりましたというのはいいのですが、今回の教訓というのは、そういう通報がおくればせながらもありました、あってもなお、自宅訪問をしていないわけですよ。だから、逆に、ちゅうちょなく自宅を学校の先生なり児相が連携して訪ねていく、これが大事なんじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げました、ちゅうちょなく一時保護するというのはそういうことで、一時保護するためには、そこに行って、場合によってはそれは解錠して中に入っていってしっかりと確認をし、そして必要であれば保護をする、こういうことでございます。

奥野(総)委員 いや、それはそうなんですが、かみ合っていないのは、今回の対策の中で継続的に家庭訪問するような仕組みが組み込まれているかというのが私の疑問なんです。こればかりやっていてもいけないので。

 年間八十人近い方が児童虐待で死に至っているわけですね。この状況、減らないんですよ、なかなか。どうやってやっていくかというのは、今回の件をきちんと分析をして、これからまたいろいろな、新聞報道だけでありますが、くれぐれもこれを、そもそも、これは自治体、千葉県が第三者機関でやっているわけでありますけれども、きちんと国の方でフォローして、必要なところは今回の対策をちゅうちょせずに手直しをしていただきたいと思います。

 総理にそこはお願いをして、三万件、一カ月というのもいいんですが、そうではなくて、継続的にきちんと対応する仕組みをつくっていただきたいと思います。この件はこれで、以上にしたいと思います。

 続きまして、お手元にパネルを写しておりますけれども、内閣官房の官邸の報道室長からということで、記者会にこういうペーパーが出されているわけであります。東京新聞の特定の記者による質問について、事実誤認等があったと。再び事実に反する質問が行われたことは極めて遺憾であると。よってもって、貴記者会に対して、このような問題意識の共有をお願い申し上げるとともに、問題提起をさせていただくと。

 問題意識というのは、官房長官記者会見の意義が損なわれることを懸念、こういったことだと思いますが、この特定の記者による質問についての事実誤認というのは、一体どういうことなんでしょうか。

菅国務大臣 ぜひ、貴重な機会でありますので、申し上げさせていただきたいと思います。

 例えば、官房長官の記者会見の趣旨というのは、質問に対して政府の見解、立場、これを記者の皆さんに答えることであるというふうに思っています。ですから、厳しいスケジュールの中で二回、午前、午後、記者会見を行っております。

 そしてまた、この会見の様子というのは、官邸ホームページ上のインターネット動画配信、それだけでなく、他のメディアを通じたライブ配信等も現在行われております。そのやりとりは、私の発言のみならず、記者の皆さんの発言についても、国内外で直ちに視聴することができるようになっております。その場で事実に基づかない質問が行われ、これに起因するやりとりが行われる場合は、内外の幅広い視聴者に誤った事実認識を拡散をされるおそれがあると思っています。

 ですから、記者会見の意義が損なわれる、まず、この懸念であります。

 そして、例えば、過去に何回もあったんです。昨年の一月の十六日、私、質問されました。私が国連人権委員会の特別報告者からの面会依頼をドタキャンしたと。なぜドタキャンしたと言われたんです。それは私、記憶がなかったものですから、調べたら、面会依頼の事実がなかったんです。しかし、こうしたことが報道されているんです。そして……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

菅国務大臣 このことについて、当記者の所属会社というのは、事実誤認があったという……(発言する者あり)

野田委員長 傍聴席の方、静かにしてください。

菅国務大臣 回答を受けています。

 さらに、昨年の五月でありますけれども……(奥野(総)委員「質問に答えてください。端的に、本件について」と呼ぶ)いや、午前中に私が発言しなかったのを、あたかも発言したという形で質問したんです、午後の会見で。それも事実誤認だということで、所属の新聞社から私に対して、本人の記憶違いだった、こういうことがあります。

 こうしたことがずっと続いていましたので、今回のことについても、官房長官会見の主催者である内閣記者会に対して、正確な事実に基づく質問を心がけていただくよう協力をお願いをしたということであります。

奥野(総)委員 このペーパーには別紙がついていまして、沖縄の件ということなんですね。要すれば、これは、我が党の原口国対委員長、山井代理が沖縄に行って撮ってきた写真ですけれども、辺野古の埋立てに赤土がまじっているんじゃないかという話です。それによって海が濁っているんじゃないか、多分、そういう趣旨の質問をされたかと思うんですね。

 事実はともかく、これは見ると赤いですよね。赤い写真が、赤いんです、赤いんです。それに対して……(発言する者あり)いや、違う、事実はともかくとして、本当に濁っているかどうかとか、そういうことも含めてという意味ですが、これは赤いんです。

 これを見て、赤土で心配だと思う方はたくさんいらっしゃると思うんですよ。海が濁るということで心配だと思う方はたくさんいらっしゃると思うんですね。だからこそ質問をしたんじゃないかと。

 実際、レクを受けたときには、沖縄県はこれを調査したいと言っているんだけれども、見解の相違で、防衛省は、この中、この中までは立入りを認めたけれども、この赤土の成分については検査を認めていないんだと。これは見解の相違ですよ。赤土の成分の検査をしたい、立入検査をしたい、それを認めていないということは、見解の相違だと思うんですが、全くそれを事実誤認だと言い切れるかということだと思うんですね。

 それで、何を言いたいかというと、なぜ取材をするかといえば、事実がわからないから取材をするんだと思うんですね。事実に基づかない報道は問題だと思いますよ。事実に基づかない報道は問題だと思いますが、事実を知らないからこそ取材をするわけですよ。だから、事実に基づかない取材を封じるということは、まさに取材の自由、表現の自由、国民の知る権利を封じることにつながらないでしょうか。

 しかも、もし特定の記者にだけ問題があれば口頭で話をすればいいだけであって、なぜ内閣記者会という場に、多くの新聞社が集う場にこういう申入れをしたんでしょうか。こういうことをすること自体が報道の萎縮を招くんじゃないかというのがきょうの私の質問の趣旨なんです。決してこういう紙で、僕はこういうのはないと、まさに報道への干渉だと思います。取材の自由への干渉だと思います。いかがですか。

菅国務大臣 今委員は、埋立ての現場で赤土が広がっている、その部分だけ言っています。しかし、その後に、琉球セメントは県の調査を拒否していた、沖縄防衛局が実態把握できていない、実はこういう発言もあったことも、これは事実ですよ。

 ですから、事実と異なる発言、先ほど申し上げましたけれども……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

菅国務大臣 何回となく事実と異なる発言があったということも事実でありますので、実は新聞社には抗議をしています。かつて、たしか九回ほど。そして、今回は、これは、記者会見の主催はまさに記者会でありますから、何回となく続いているものでありますから、記者会に申し上げたということです。

奥野(総)委員 いろいろ官房長官も言いたいことがあるんでしょうが、その言いたいことを取材の場で答えればいいんじゃないでしょうか。なかなか、お忙しい中、一日二回の会見をこなしているのは大変かもしれないけれども、やはりきちんと取材を受けて立って、明らかに事実誤認の意見であればその場できちんと反論をしていく、あるいはその記者会見の場を通して反論していくのが筋でありまして、こういう文書を記者会に渡すのは、私は報道への干渉につながると思うんですよね。

 もっと丁寧にきちんと、メディアもそうですし、安倍総理に伺いたいんですけれども、きょうは、私にも言論の自由があるとおっしゃいましたけれども、やはり言論の自由を守るというのであれば、もっと丁寧に対応を、国会答弁もそうですし、メディアにももっと丁寧にきちんと答えるべきだと思うんですよ。

 もう一度言いますけれども、誤報だったり事実に反する報道をしてしまったことについては、それは抗議をしなければいけないと思いますね、きちんと。謝罪報道というのがありますから。でも、取材の段階において、こういう紙を出して、事実に反することを聞くなというのは、私は民主主義国家としてはあっちゃいかぬと思うんですが、総理、どうでしょうか。

野田委員長 もう一度、菅内閣官房長官、御当人ですから。

奥野(総)委員 いや、ここは、最後、もうこれは次に移りたいので、総理に最後伺いたいんですよ。

野田委員長 では、先に官房長官。

菅国務大臣 取材じゃないと思いますよ。決め打ちですよ。事実と異なることを記者会見で、それを事前通告も何もないわけですから、私だって全て承知しているわけじゃありませんから。しかし、ドタキャンしたとか、そして、午前中質問していないことを、こういう発言があったけれども、それは幾ら何でもやり過ぎじゃないでしょうか。お互いにルールを守って記者会見というのは私は行われるものだろうと思っています。

 沖縄のことについては、防衛大臣から事実関係をここの場で答えさせていただければと思います。

奥野(総)委員 菅長官の御意見も伺いましたし、私が申し上げたいのは、内閣記者会というところにこういう紙を出して、これは一般論になってしまっているんです。一般論として、事実に反することについて取材するのはよくないと、一般論としてなってしまっているんですよ。これは、一般論としてこういう紙を出すのはいかがなものか。

 総理、いかがですか。これは時間がないのでこの件については終わりにしたいと思うんですが、総理から伺いたいと思います。

野田委員長 まず、事実確認、防衛大臣岩屋毅さん。

岩屋国務大臣 官房長官に対してなされた質問に関して、事実関係、逐一は申し上げませんが、防衛省からは、質問の内容については事実に反するという回答を、防衛省担当者から総理大臣官邸広報室長にさせていただいております。

 当該記者の方も防衛記者クラブにもお越しになったんですが、沖縄の件については毎回記者クラブで御質問があって、丁寧にお答えさせていただいているつもりですが、突然お越しになって、これまで説明してきた事実について御承知なく質問を重ねられました。それでもしっかりお答えをしましたが、やはり、記者会見というのはある意味の真剣勝負でございますから、十分に事実を把握して、準備してきてから御質問いただければありがたいというふうに思っております。

安倍内閣総理大臣 国民の知る権利、これは当然大切なものであって、我々は尊重しなければいけないということでございます。

 ですから、日本においては、私も官房長官を経験をいたしましたが、世界の例と比べてみても、ほかの国々は報道官とかそういう人たちが対応していく、いわば日本のように、内閣の一員であり、かつかなめである人物が一日二回務めるということは恐らく他の国には例がないんだろう、こう思います。その中でこちらも最大限の努力を尽くしているということは御理解もいただきたいと思いますし、菅官房長官も、国民の知る権利、当然尊重しなければいけないということについては全く同じだ、このように考えております。

奥野(総)委員 総理は知る権利に配慮していくという趣旨の発言だったと思いますが、であるならば、確かに官房長官は大変だと思うんですよ、だけれども、それを補う形で官房副長官が対応するとか、あるいは外国みたいに報道官を置くとか、できるだけきちんと答えるべきだと思うし、やはり、事実に反する質問があった場合は、そこはきちんと毅然と、そう思われるならですよ、反論を記者会見の場で、官房長官が忙しければほかの方がやられればいいんですよ。

 何度も言いますけれども、そういう紙を出すことは私はおかしいと思うんですよね。最後、もう一度聞きますけれども、官房長官、この紙を撤回してくれませんか。

菅国務大臣 知る権利には私どもは十分にお応えをさせていただいていると思います。

 そしてまた、委員から、ある意味で私、大変ありがたい御提案をいただいたというふうに思います。官房長官が一日二回記者会見する国はありません。いわゆる閣僚等の記者会見が、フランスで一日だけです。あとほかは、閣僚が記者会見する国は主要国にないということを申し上げたいと思います。

奥野(総)委員 これは時間が、統計委員長、来られているのかな、なくなってしまうので申し上げますが、やはり、安倍内閣になって報道の自由度ランキングは急降下しているんですね。私はずっとメディアの問題をこうやって取り上げて、私の関心事でもありますから。きちんと対応されればまた報道の自由度ランキングは上がるかもしれませんよ、総理。

 ということで、統計の話に最後移らせていただきたいと思います。

 統計委員長、お見えですかね。

 改めましてお願いですが、国会の審議の場にはできるだけ、万障繰り合わせて、きょうは朝からという話になっていたわけでありますから、お越しいただければと私からもお願いを申し上げます。

 それで、時間も大分なくなってきたんですけれども、きょうの朝の質疑の中で大西統括官に小川委員から質問がありましたけれども、これは大西統括官に伺いたいんですけれども、普通、役人であれば、何か問題が起きたときに、私も役人でしたから、これはどういう影響があるんだろう、その影響に対してどういう対処をすべきだろう、それはいつまでにやるべきだろうというのは考えるものなんですよ。

 十三日にわかって、まあ、それ以前に知らなかったということを信じるとすればですが、十三日に初めて知った、十八日まで影響があるかないか見きわめていましたと。しかし、報告したときは何の対処方針も何もなくということは、影響がないと思われたんでしょうか。ないということは、このまま公表しないで済まそうと思ったんですか。伺いたいと思います。

大西参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、十二月十三日に私は初めて知りまして、大臣に報告したのは二十日でございます。時間がかかった理由でございますが、毎月勤労統計のこの事案の調査に時間を要していたということでございます。

 また、影響につきましては、その時点ではわからなかったわけではございますが、これは、いずれにしても、早急に上司に報告が必要であるというぐあいに考えていたわけでございます。

奥野(総)委員 今度は、定塚官房長。報告を受けたときに、影響についてはかりかねていたとおっしゃっていますが、しかし、十二月二十七日になって急にヒアリングを始められますよね。それから、総理官邸に二十八日に報告が行きますよね。

 これは、誰が判断して、なぜ、何がきっかけに、その間に調査が進んだんですか。どういう判断でそれをされたんでしょうか。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども事務方幹部に対しては、十二月十八日あるいは十二月十九日に報告があったところでございます。また、大臣には十二月二十日に事案の一報があったということでございまして、その際、大臣からは、経緯、原因等について速やかに徹底的な調査を行うようにという指示があり、この指示を受けて、担当部局あるいは全省的に協力をいたしまして、その事案の具体的な内容や影響について調査を続けたというところでございまして、十二月二十七日までの時点に、抽出を復元しなかった結果、統計上の賃金額が低目に出ていた可能性があるということ、また、国民経済計算や雇用保険、労災保険給付への影響の可能性があるということについて担当部局から報告があったということでございます。

 これを踏まえまして、監察チーム、具体的に発足をして調査を始めるべきということで私から指示をした、このような経過でございます。

奥野(総)委員 それはいつ報道発表するつもりだったんですか、いつ世の中に明らかにするつもりだったんですか。

定塚政府参考人 この今申しましたような経過を踏まえ、十二月二十七日の、先ほど申したようなことまでが判明したわけでございますけれども、更に影響度合いはどの辺かということを見定めるようにという指示もございましたので、年末年始、担当部局あるいは給付の関係部局を含めて検討を進めていった。

 その結果として、一月十一日に事案の概要等について公表を行ったというところでございます。

奥野(総)委員 今、指示がありました、更に影響を見きわめるようにと指示がありましたとおっしゃっていましたが、これは大臣の指示なんでしょうか。

定塚政府参考人 十二月二十七日には大臣に対して報告がなされまして、大臣から、先ほど申したように、影響について見定めるようにという指示があったということでございます。

奥野(総)委員 これは、大臣、一刻も早く報道発表すべきだったんじゃなかったですか。これだけ影響が、今わかったと言っていましたよね、さまざまな影響が。なぜ、そこで第一報、報道発表されなかったんですか。二十八日の夕刊には出るわけですよね。これは取材で出ているわけであって、大臣のイニシアチブで発表されたわけじゃないわけでしょう。大臣は先送りしろと言っていたんですね、今の答弁だと。

 どうなんですか、責任者として一刻も早く発表すべきだったんじゃないですか。

根本国務大臣 まず、時系列で申し上げたいと思います。

 昨年十二月二十日に、事案の一報を事務方より受けました。(奥野(総)委員「短く。わかっていますから」と呼ぶ)じゃ、これは省略しますね。

 そして、私は、事案の報告を受けましたから、経緯、原因等について速やかに徹底的な調査を行うよう指示をいたしました。そして、十二月二十七日に、抽出を復元しなかった結果、統計上の賃金額が低目に出ていた可能性がある、これは低目に出ていた可能性があるということ、そして国民経済計算や雇用保険、労災保険給付への影響の可能性があるという報告を受けたので、影響について見定めるよう私は指示しました。

 なぜなら、ある程度の事実がしっかりしないと、私は、そこは、ある程度の事実を把握して、そして公表すべきだと思いましたが、その時点ではそこの具体的な事実がまだはっきりしておりませんから、私は、影響について見定めるように指示をいたしました。

奥野(総)委員 せっかく統計委員長にお越しいただいていますから、ここで伺いたいんですけれども、統計委員長は、十二月十三日の日に室長、参事官ですかね、から、今回のサンプル調査、全数調査をしていないという件、復元していないという件を聞いたということが中間報告に書かれていますけれども、その後なんですけれども、十七日の統計審議会で大西統括官が、これまでの対応の説明をしれっとしているわけですよ。全数調査をしている、続けているかのごとく、統計委員会に行って、段差についてこういうふうに説明できますということを説明、資料に載っていますよね、大西統括官は説明しているんですよ。

 これを統計委員長はなぜとめなかったんですか。もう事実を知っていたわけですよね。知っているにもかかわらず、なぜそういう報告をこの十七日の統計委員会で認めたのか。

 さらに、二十一日には、そのまま、修正されずに毎月勤労統計が公表されているわけですけれども、統計を所管する総務省、そして統計委員長として、これはとめるべきだったんじゃないですか。せっかく頑張って認めさせたのに、なぜそれを、世の中をミスリードするようなことを認めてしまったんでしょうか。

 あるいは、厚生労働省の方からどういう報告があったんですか。当然、厚生労働省からは今後の対応について話があったと思うんですよ。そういう報告を平場でする以上、じゃ、いつそれを世の中に告げるのか、統計委員会的にいつ告げるのかという話は当然厚労省からあったはずなんですよね。その辺をきょう伺いたくて、お呼びいたしました。

西村参考人 お答えいたします。

 まず、事実関係ですが、十二月の十四日ではなくて、十二月の十三日です。

 それからもう一点は、そのときにわかったことは、全数調査をしていないというふうな報告というか、ことを教えていただいただけで、もう一点の、復元をしていない、その部分に関しては一切何もありませんでした。その時点で、私は直ちに、経緯をきちんと調べるようにという形の指示を出しました。

 そのとき以降、私は報告を受けていません。二十一日に、それについての報告を間接的に政策統括官室からお聞きしただけです。

奥野(総)委員 統計委員会として、その事実を公表しようとは思われなかったんですか。少なくとも、二十一日の日にはそのままの形で毎勤統計が出てしまうわけですよね。しかも、今もその十七日の統計委員会の資料というのは総務省ホームページにアップされていて、見ることができるわけですよ。

 なぜ、そこまで一生懸命この問題を解明したのにもかかわらず、放置したんですか。

西村参考人 お答えします。

 まだこの段階では、全数調査をしていなかったのかどうかということについての事実関係も決まっていなかったわけですね。したがって、本当にそうなのか、どの時点までさかのぼるのかとか、そういったことについての基礎的な情報がありません。

 それから、もし全数調査でなかったとしても、きちんと復元がなされているならばバイアスはない形の推計は可能になりますので、そうすると、そのケースの場合においては、我々としては、まずはとにかく厚生労働省側の判断を待とうという形でこの時点では判断したということです。

奥野(総)委員 たしか、中間報告を見ると、十四日に総務省の方から厚生労働省に報告を求めたという記載があったと思うんですね。

 しかも、統計委員長は、そもそも段差について疑念を持っておられたようですね。全数調査であるはずの五百人以上のところが段差があるのはおかしいと御疑問をお持ちだったはずなんですよね。だから、全数調査をしていないという話、そういう話があったわけですよね、そうすると、当然、結果についてもおかしい、統計自体が信頼性が揺らぐという話はわかったはずなんです。だからこそ、総務省から厚労省に報告を求めたんじゃないんですか。

西村参考人 お答えします。

 先ほど申し上げましたように、報告を私は受けていませんので、その段階で私は判断することはできません。

 したがって、統計委員会は、統計委員全体の合議制ですから、ほかの統計委員に対してもきちんとした説明ができなきゃいけないわけですね。それはまだ、統計委員会に対して一切説明ができているような状態ではありませんでしたから、この状態では統計委員会として何かするということはまだできない状況であったというふうに、私は今でも判断しております。

奥野(総)委員 しかし、委員長なんですから、少なくとも、例えば、統計委員会の開催を動かすとか、あるいは二十一日の発表について意見を述べるとか、何らかの手を打つべきだったんじゃないでしょうか。

 この件は、私は非常に気になるのは、今大臣に伺ってもそうなんですが、先送りで、誰も究明をきちんとやろうとしていない。本来であれば、きちんとお尻を切って、究明して公表しなきゃいけないんですよ、政府の側から。結局、新聞の側から、朝日新聞の側から書かれてしまって、年が明けたら急激に動き出すわけですよね。一月四日に総務省から報告要求が行って、十七日にそれに対して回答が行くと。大臣は一月八日の会見で、事実を認めて、徹底究明をすると。

 やはり、集中審議で徹底的にこの間の経緯を解明する必要があると思います。もし朝日新聞が書かなかったらどうなっていたかということだと思います。

野田委員長 奥野さん、質問時間が終了しております。

奥野(総)委員 最後に、大臣、反論があれば。

野田委員長 質問時間は終了しております。

奥野(総)委員 では、委員長、終わりたいと思います。

野田委員長 これにて渡辺さん、泉さん、後藤さん、奥野さんの質疑は終了いたしました。

 次に、志位和夫さん。

志位委員 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

 来年度予算案の最大の焦点である消費税増税について質問します。

 ことし十月から消費税を一〇%に増税する総理の方針に対して、消費税に賛成という方も含めて、こんな経済情勢のもとで増税を強行していいのか、景気が悪化するのではないかという批判、懸念の声が広がっております。

 日本銀行が一月九日に発表した生活意識に関するアンケート調査の結果を見ますと、一年後の景気が今よりも悪くなると答えた人の割合は三九・八%。よくなるの七・八%を大きく引き離し、安倍政権になって最悪となりました。多くの国民が、消費税増税によってことしの景気が悪くなると感じているのであります。

 企業はどうか。東京商工リサーチが全国の企業八千社以上を対象に行った消費増税に関するアンケート調査では、消費税増税で景気はどうなると予想されますかという問いに対して、景気は悪くなると答えた企業が五七・八%、景気は現状維持と答えた企業が三七・二%となっています。多くの企業もまた、消費税増税による景気の悪化への懸念を強めています。

 我が党は、消費税という税金のあり方そのものに反対ですが、きょうは、こんな経済情勢のもとで増税を強行していいのか、この点に絞って総理の認識をただしていきたいと思います。

 まず伺いたいのは、こんな深刻な消費不況のもとで増税を実施していいのかという問題です。

 パネルをごらんください。

 これは、総務省の家計調査をもとに作成した、二人以上世帯の実質家計消費支出の推移のグラフです。

 グラフで明らかなように、実質家計消費は、二〇一一年の東日本大震災の年をボトムとして、一二年、一三年と、弱々しいが回復傾向にありました。それが、二〇一四年の消費税八%への増税を契機にどんと大きく落ち込み、増税前の一三年の平均三百六十三・六万円に比べて一八年平均は三百三十八・七万円と、年額で約二十五万円も落ち込んでおります。二月八日の政府の発表でも、家計消費は五年連続でマイナスとなっていました。

 総理に伺います。

 家計消費が八%増税による打撃を回復するに至っていない、この事実はお認めになりますね、総理。

安倍内閣総理大臣 家計消費について、世帯当たりの消費を捉える家計調査の家計消費支出について、今、そのパネルはそうなんだろうと思いますが、それはまさに家計の消費でありますから、家計全体ですよね。おじいちゃん、おばあちゃんがいて、お父さん、お母さんがいて子供たちがいれば、それ全体ということになりますから。

 しかし、それが今、世帯人員が減少しているわけでありまして、これは二人以上ですから、おじいちゃん、おばあちゃんということが大変多いんだろう、そう思います。そういうことも含めて、長期的に減少傾向となっているのは事実だろうと思います。もちろん、駆け込み需要との関係はありますよ。それを含めて、今申し上げた点もベースとしてあるということであります。

 一方で、一国全体の消費を捉えるGDPベース、恐らくこの次のパネル、次はそれが出てくるんだろうと思いますね。出てきますが、それを出してくださいと言うわけにもいきませんから、その後見ていただければいいんですが、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ると、二〇一六年以降についてはこう、増加傾向、最近ちょっと折れているんですが、増加傾向にあるという。志位先生は別の解説をするかもしれませんが、私の解説はこうだということを申し上げておりまして、持ち直している、こういうことでございます。

志位委員 私は、まず、家計調査のベースで落ち込みを回復していないと聞いたわけですが、これは否定できませんでした。

 世帯人員の減少が影響していると言われましたけれども、その世帯人員の減少でこのグラフは説明できないですよ。二〇一三年から一四年、一五年に世帯人員が急激に減少したわけないじゃないですか。これは増税の影響なんです。

 GDPベースということをおっしゃいましたので、次のグラフをごらんください。

 これは、内閣府のデータをもとに作成した、GDPベースでの実質家計消費支出です。実体のない、統計上の架空の消費である帰属家賃は除いています。GDPベースで見ても、実質家計消費は八%への増税を契機に大きく落ち込み、増税前の一三年平均二百四十一・〇兆円に比べて直近は二百三十七・九兆円と、約三兆円も落ち込んでいる。

 総理に伺います。

 あなたは持ち直しているとおっしゃった。ただ水面下に沈んだままなんですよ。GDPベースで見ても、家計消費が八%増税による打撃を回復するに至っていない。明らかじゃないですか。事実をお認めください、総理。

野田委員長 先に、担当の茂木大臣。

 志位さん、その後に答弁いただきます。

茂木国務大臣 先ほどのグラフもそうですが、このGDPベースの家計消費支出につきましても、二〇一三年というのはやはり特殊な年でありまして、我々、今回、消費税引上げに当たって、駆け込み需要そして反動減を平準化する。まさに、大きな駆け込み需要というのが二〇一三年に起こってしまった。ですから、さっきのグラフもこのグラフも、二〇一三年のあたりがぼこっと上がって、逆に二〇一四年の四月以降のあたりが大きく下がる、そこの中で長期的なトレンドをとるということになるんだと思っております。

 そして、家計消費支出ということでありますけれども、帰属家賃を除いて計算を志位委員はされておりますが、この帰属家賃、これは、借家住まいの人が家賃を払って住宅サービスを購入しているのと同じように、持家の人も自宅に対して家賃を支払って住宅サービスを購入しているとみなして消費に計上することでありまして、国連が定めました国民経済計算の国際基準、SANに基づくものでありまして、これをすることによって、例えば国によって文化的、制度的な背景は違います、持家比率が異なる国々でも消費水準やGDPが比較可能になってまいります。その上で……

野田委員長 茂木大臣、簡潔にお願いします。

茂木国務大臣 簡潔にやります。

 その上で、委員御指摘のGDP統計の家計消費支出について、帰属家賃も含むベースで見てみますと、帰属家賃を除くベースで見ても、二〇一六年以降増加傾向で推移をしている、そのことについては変わりません。

志位委員 今、帰属家賃ということを言われました。この帰属家賃というのは、持家について借家と同じように家賃を払ったものとみなして、家計消費とみなす計算上の家賃なんですよ。架空の消費にすぎず、これがふえても商店の売上げは一円もふえません。

 国際比較ということをおっしゃった。これは、持家が多い国と賃貸が多い国の比較ができるようにする指標であって、国際比較の上ではこれを含めることは合理性を持ちますが、一国の消費の推移を見る上では、これを除いて見ることが当たり前なんです。

 総理に聞きますよ。総理が御所望のパネルですから、ちゃんと答えてください。

 今、一三年はぽこっと上がっていると言いましたけれども、ぽこっとというものじゃないです。一二、一三とやや上がってきて、それがどんと一四年に下がって回復していないじゃないか。この事実をお認めいただきたい。

安倍内閣総理大臣 先ほど私が申し上げましたのは、こう線を引けば上がっていて。今のような形で線を引いていただければ、ジグザグしながら回復しているのは、まだもちろん水面上には顔を出していませんが、水面上に向かっているんですね。水面上に向かい始めているということで申し上げているわけでございまして、ですから、ぽこっと上がって下がったというこの経験を生かして、今回は十二分な対策をとらさせていただいているということでございます。

志位委員 総理も、水面の上に上がっていないということはお認めになりました。

 それで、世帯当たりの消費を捉える家計調査ベースで見ても、今の、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ても、家計消費は、八%増税による打撃を回復するに至っていないんですよ。これは、総理も今お認めになりました。

 総理、家計消費は、日本経済の六割を占める、文字どおりの経済の土台です。この土台が増税の痛手を負ったままなんです。そこに更に五兆円もの消費税増税の追い打ちをかけたらどうなるか。消費はいよいよ冷え込み、日本経済に破滅的影響を及ぼすことは明らかではないか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 先ほど、水面下というのは、いわば一三年平均の、志位委員がつくられたものの、この上に出ていないというのは事実でありますが、これに向かってだんだん近づきつつあるのは事実でございます。

 そこで、消費を取り巻く環境を見ますと、二〇一二年から二〇一八年までの六年間で、生産年齢人口が五百万人減少する中にあっても三百八十万人就業者がふえたということでありまして、景気回復により仕事が増加したことによって、正社員の有効求人倍率は初めて調査開始以来最高の水準となっている。こういうことでございまして、賃上げも、連合の調査によれば、五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが実現をしておりますし、中小企業の賃上げは過去二十年間で最高となっているのも事実でございます。

 つまり、雇用と賃金が伸びているという中において、また、今回の消費税の引上げにつきましては、まさに少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するために必要なものでございますし、また、幼児教育の無償化を一気に進めていく、また、来年の、真に必要な子供たちへの高等教育の無償化を進めていくということも含めまして、引上げを行っていきたい。

 また、繰り返しになりますが、今回は、前回の……(志位委員「繰り返しはいいです」と呼ぶ)繰り返しも大切なことなので。非常に簡潔に言いますと、いわば、前回の反省点を踏まえて、今回は、いただいたものを全てお返しする形で、しっかりと消費喚起の対策を行っていきたいと考えております。

志位委員 消費税の増税分を全て還元するという対策をやるんだと言われましたけれども、返すぐらいだったら、最初から増税をやらなきゃいいじゃないですか。

 大体、増税分を上回る対策を言わねばならないということ自体、今の日本経済が増税に耐える力を持っていないことをみずから認めるものです。あなたは、三百八十万人就業者がふえた、連合の調査では今世紀最高水準の賃上げだと。後で、この問題、しっかりやります。

 今の日本経済が増税に耐える力を持っていないという懸念は、立場の違いを超えて、多くの人々から寄せられています。

 セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏は、文芸春秋に寄せた一文で、消費税増税は必要としつつも、今のタイミングで消費税を上げたら、間違いなく消費は冷え込んでしまうことになるでしょう、国内景気が更に悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある、当然、消費税だけでなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねませんと警告されておられます。

 今の日本経済にいかに増税に耐える力がないか、更に明らかにしていきたいと思います。

 次に見ていきたいのは、賃金、所得はどうかという問題です。

 総理は、今も、五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが続いている、所得環境は着実に改善していると繰り返していますが、本当か。私は、きょうは、この問題を三つの統計をもとに検討していきたいと思います。一つは、厚生労働省の毎月勤労統計です。二つ目は、連合が発表している賃上げの調査です。三つ目は、総雇用者所得です。

 まず検討したいのは、厚生労働省の毎月勤労統計です。

 毎月勤労統計は、不正調査により、二〇一八年の賃金上昇率が実態よりもかさ上げされていたことが大問題となっております。

 パネルをごらんください。

 これは、毎月勤労統計から作成した二〇一八年の実質賃金増減率のグラフです。青い棒線は、調査対象を変えたために伸び率が過大になった政府公表値です。赤い棒線は、共通の事業所で比較したもので、より実態に近いものです。共通の事業所で見ますと、六月を除いて全ての月がマイナスとなり、実質賃金は年間平均でマイナス〇・五%となりました。

 野党が行ったこの試算について、厚労大臣は、おっしゃったとおりと、事実上追認しました。総務省の統計委員長も、賃金の増減を見るには共通の事業所での比較が適切だという見解を示しております。

 総理に伺います。

 毎月勤労統計では、あなたの言う所得環境は着実に改善しているという主張に真っ向から反する結果、すなわち、前年比で実質賃金がマイナスという結果が出ているじゃないですか。どうですか、総理。

根本国務大臣 毎月勤労統計のお話ですから、私の方から、まず申し上げたいと思います。

 整理して申し上げますと、委員のこの共通事業所推計値というのは志位委員の事務所で計算したもの、こう書いてあります。

 そして、一定の前提で、この実質値については、共通事業所の問題はいろいろな課題がありますから、我々統計をつくる側としては、まだ実質値は計算しておりません。ただ、ユーザーの方がいろいろな加工をする。それは私はユーザーの皆さんの判断で、その意味では、例えば消費者物価上昇率を前提にして出せばこういう数字にはなると思いますが、それはあくまでもそういう前提ということであります。我々の方では、実質賃金のこの指標は出しておりません。

 まず二つの観点で申し上げますが、九月に統計委員会でも言っています。労働者全体の賃金の水準については、新設事業所の影響が反映され、標本数も多く、標本誤差が小さい本系列、これが実はメーンであります。ただ、もう一つは景気指標としての賃金変化率、これは、一定の同一事業所で出す共通事業所というものがありますが、賃金変化率としては、景気指標として同一事業所の平均賃金の変化を示す共通事業所。これが、それぞれ重視していくことが重要との見解が示されました。

 ですから、我々が見ているのは、この本系列で見ていますから……

野田委員長 大臣、簡潔にお願いします。

根本国務大臣 この共通事業所の推計値は我々の出したものではありませんので、私は答弁は控えたいと思います。

志位委員 今の答弁でも、賃金の増減をはかるには共通事業所が適切だということは否定していない。だったら出しなさいよ。実質賃金はどうなっているか、きちんと示しなさい。賃金の増減を見る数値はこれしかないんですから。出すことを改めて強く求めます。

 次に私は進みたいと思うんですよ。

 次のパネルを見てください。

 二〇一八年だけでなく、この六年間の推移を見るとどうなるか。もう一枚、毎月勤労統計からグラフを作成いたしました。二〇一二年から一八年までの平均実質賃金の推移を、これは政府公表値から作成したものです。

 今度は総理に聞きます。

 実質賃金は、二〇一四年の消費税八%への増税を契機に大きく落ち込んで、一三年平均で三百九十二・七万円ですが、それに比べて一八年は三百八十二・一万円と、十万円以上落ち込んだままなんですよ。これは政府の公表値です。総理、一人一人の労働者の実質賃金を示す毎月勤労統計でこの六年間の推移を見れば、政府の公表値でも、所得環境は着実に改善しているというあなたの主張に真っ向から反する結果が出ているじゃないですか。この六年間の推移について、総理、真っ向から反するじゃないですか。総理、答えてください。

茂木国務大臣 名目賃金につきましては、間違いなくプラスで推移をしております。

 そして、この実質賃金の推移でありますが、これは何度も説明をさせていただいておりますが、我々も、伸び悩んでいる、こういう説明をこれまでも繰り返してまいりました。

 その要因は二つありまして、一つは、景気回復に伴って雇用が増加しております。六年間で就業者数が三百八十万人増加する過程において、女性であったりとか高齢者は、比較的時間が短く、パートで働く方もふえた。実際、昨年一年間だけでも女性の就業者数は八十七万人増加をしております。

 そして、我々として、デフレというのがやはり一番の問題だ。このデフレから脱却をしていく、こういった取組や、また、原油、エネルギー価格の上昇によって物価が上昇した、こういうことが要因になりまして、実質賃金、ただし、これは計算上の数字でありますから、これまでも申し上げているように、分母がパートの人も含めて大きくなれば、つまり、十人の会社で、今までフルタイムの人がいた、パートの人が二人入る、そうすると、分母の方は、従業員数は十二になりますけれども、給与の方はそこまで大きくならないということであります。

志位委員 伸び悩んでいるということはお認めになりましたけれども、これはパートがふえている中だという説明でした。しかし、このグラフの変化、パートがふえていることで説明がつきますか。一三年から一四年、一五年にかけてパートが急増したんでしょうか。

 これは増税の影響なんですよ。増税の影響によって平均実質賃金が、所得環境は着実に改善しているという総理の主張とは真っ向から反する結果になっている、つまりマイナスになっている。これを聞いているわけですね。総理、これはお認めになりますね。認めてください。

安倍内閣総理大臣 もちろん、消費税を上げれば実質賃金においてはその分押し下げられるのは当然のことでございますが、それプラス、先ほど茂木大臣が答弁をさせていただきましたように、ベースとしては、安倍政権になってから新たに三百八十万人雇用がふえました。女性の方だけで二百万人ふえた。でも、この方々はいわば、働き始めた、また働きに戻った、あるいは今まで正規だったのが、定年を迎えた後、非正規になったという方が多いものですから、収入は下がっていく。

 これを頭数で割りますから、当然、そうなれば、いわば毎月の勤労統計におきましては下がっていくという、これは名目でも下がりますが、まさに名目では下がるということですが、更に実質は物価でこれを掛け戻しますから、デフレではないという状況ができ上がったこと。さらにはまた、石油価格等の変化もある、こういうことではないか、こう思います。

 ちょっとつけ加えさせていただきますと……

野田委員長 総理、簡潔にお願いしますね。

安倍内閣総理大臣 先ほどのGDPベースの家計消費支出について、水面下というお話をさせていただいたんですが、これをよく見てみると、一三年の平均なんですよね。これは、要するに、一三年の平均というのは駆け込み需要があった年の平均ですから非常に高く出ているんですが、一二年からの平均で見れば、これはもう実は水面上に顔を出しているということでございます。

志位委員 これは一二年比でも水面下です。

 今、総理がいろいろとおっしゃったけれども、私が聞いたのは、この平均実質賃金の推移で見れば、所得環境は着実に改善しているという総理の主張と真っ向から反しているじゃないか、そういう結論が出ているじゃないかということを聞いたんですが、否定できませんでした。毎月勤労統計ではあなたの主張を真っ向から否定する結果が出ている。そういう否定しようのない現実がこのパネルにあらわれているじゃないですか。

 次に私、検討したいのは、連合が発表している賃上げの調査についてです。

 総理は、先ほど、連合の調査では五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが続いているとおっしゃいましたね。私、総理が強調してやまない、今世紀に入って最高水準の賃上げなるものは、二重の上げ底の主張だということをきょうは指摘していきたいと思います。

 第一は、これが名目ベースの数字だということです。賃金の水準をはかるとき、物価上昇を差し引いた実質賃金が何よりも大切になることは言うまでもありません。買える物やサービスも、水準は何よりも実質賃金で決まってくるからです。

 パネルをごらんください。

 これは、連合の調査に基づいて作成した、春季労使交渉における賃上げ率のグラフです。青い棒線のグラフは名目ベースでの賃上げ率で、連合の調査をもとに政府が作成したグラフをそのまま書き込んだものです。政府は、二〇〇二年以降を三つの時期に区分けして、賃上げ率の平均値を計算して書き込んでいます。濃い青の横棒線ですね。

 この濃い青の横棒線、名目ベースで見ますと、二〇〇二年から七年の賃上げ率の平均は一・七三%、二〇一〇年から一二年の賃上げ率の平均は一・七%、二〇一三年から一八年の賃上げ率の平均は二・〇一%と、最近の六年間の賃上げ率が一番高くなっています。

 総理は、名目ベースのこの数値をもとに、五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げということを強調されているんだと思います。

 しかし、実質ベースではどうか。私は、連合の調査をもとに試算してみました。赤い横棒線がその結果であります。煩雑になるので、三つの時期の実質賃上げ率の平均値だけをグラフに書き込みました。

 二〇〇二年から七年の実質賃上げ率の平均は二・一四%。二〇一〇年から一二年、総理が悪夢と悪罵を投げつけている民主党政権時代の実質賃上げ率の平均は二・五九%。あなたにとっては不都合な数字かもしれないけれども、これが出てくるんです。二〇一三年から一八年、安倍政権のもとでの実質賃上げ率の平均は一・一%なんですよ。一三年から一八年までの期間は、消費税八%への増税などで物価が上がったために、実質賃上げ率がどんと大きく落ち込んでいるんです。

 総理、実質賃上げ率で見れば、最近の六年間、安倍政権の六年間は、今世紀に入って最高水準ではなくて、今世紀に入って最悪水準じゃないですか。答えてください。

安倍内閣総理大臣 よくぞ聞いていただきました。一つ一つ反論させていただきたい、このように思います。

 一般の方々が、仕事をして給料をもらいます。明細に書いてあるのが、これはまさに名目賃金であります。ここから、これをいわば物価で割り戻したのが実質になっていくということであります。

 そこで、これは、実質が高いのはなぜか。デフレだからなんですよ。高いのを自慢しているのはデフレ自慢をしているようなものでありまして、当時は名目GDPの方が実質GDPより低いという、名実逆転という異常な経済状況なんですよ。これはまさにデフレスパイラルに入っていくということですよね。

 よければ、実際にいいのであれば、では、仕事はどんどんふえているんですか。違うでしょう。違いますよね。当時、有効求人倍率は〇・八台じゃないですか、〇・八二。今は一・六、四十四年ぶりの高さになっていますよね。これは、四十七都道府県で見てみても、一倍を超えているのはたった八つじゃないですか。八つの県と都。あとは、一人の求職者に対して一人分の仕事がないという状況ですよ。

 その中で、これは、まさに労働市場もそういうふうに需給で決まっていきますから、そこで実際にもらう給料がふえているわけがないんですよ。だって、今よりも三割多く中小企業が倒産しているんですから。

 そういう中において、これをやっても、まさにこれはそういうデフレスパイラルにいかに入っていたかということを示す数字であって、大切なことは、しっかりと名目GDPが実質GDPを上回っていくということですね。しっかりと成長していくということであります。毎年の賃上げがしっかりと確実に上がっていくということではないんだろうか、こう思います。

 毎勤統計の場合は、これはまさに事業所で見ていて、一人の人の賃上げを見ているわけではないんですから。普通の人というのは、大体一年間で、四月の賃上げで賃金が上がっていきますよね。これはまさに、連合の皆さんが計算したというのは、もちろん、連合に加盟している組合員というのは限られているとはいえ、そこで賃上げがどれぐらい行われたかという平均値なんですよ。

 では、毎月毎月変わるのはなぜか。毎月毎月賃上げをやっているところなんというのはないわけでありますから、これはやはり、事業所でふえたりすれば、二人だったところが四十万円、四十万円もらっていたとすると、これは平均は四十万円と出るんですが、忙しくなってパートの人たちを十万円、十万円で雇って、百万円を四人で割ったら二十五万円。(志位委員「毎勤の話でしょう」と呼ぶ)四十万円から二十五万円に下がっているのは、これは毎勤との関係ですからね。

 ですから、私は、総雇用者所得が大切だということと、連合の話のこの賃上げは、実際に賃上げが行われているということであって、この名目と実質の関係はそういうことではないか、こういうことでございます。

志位委員 私は、あなたが今世紀に入って最高水準とおっしゃるから、それは名目でしょうと。名目なんですよ。実質は、さっき言ったように、消費税増税による物価上昇に追いついていないじゃないか、これを見なくちゃいけないと言っているんです。

 確かに、デフレは問題ですよ。しかし、デフレのときは、これは、賃金が名目で上がらなくても購買力は保たれるわけですよ。しかし今は、物価上昇に賃金が追いつかないんだから、これは、今世紀最高の賃上げなんということは言うべきじゃない。今世紀最悪水準じゃないかと。実質で見なさいよ。物やサービスを買えるのは、実質賃金ではかられる。名目じゃないんです。

 そしてもう一つ。しかも、この数字は定期昇給を含んだ数字になっている。

 定期昇給というのは、年齢や勤続年数に応じて賃金が上がる制度で、それを確保することはもちろん大切ですが、確保したとしても、労働者全体の賃上げにはなりません。賃上げと言うなら、ベースアップ、労働者全体の賃金水準の引上げが何よりも大切になります。総理自身、多くの企業で五年連続となるベースアップが行われ、その水準も昨年を上回っていますなどと、ベースアップを強調してきました。それがどうなっているか。パネルをごらんください。

 これは、二〇一四年から一八年までの五年間の定期昇給を含む賃上げ率とベースアップ率についてのグラフです。連合の資料から作成いたしました。連合は、定期昇給分とベースアップ分をちゃんと区別して調査、発表しています。青の棒線は定期昇給を含む名目賃上げ率、緑の棒線は名目ベースアップ率。そして、赤の棒線をごらんください、物価上昇を差し引いた実質ベースアップ率であります。

 赤の棒線、実質ベースアップ率を見ますと、二〇一四年がマイナス〇・一二%、一五年がマイナス二・五三%、一六年がマイナス〇・五五%、一七年は〇・五八%ですが、一八年はマイナス〇・〇六%、五年平均でマイナス〇・五四%になるわけであります。

 総理、あなたは五年連続のベースアップを盛んに強調されてきましたが、この五年間のベースアップは物価上昇に追いついていない。労働者全体の実質での賃金水準はマイナスじゃないですか。これ、お認めになりますね。

安倍内閣総理大臣 これもよく聞いていただきました。

 このベースアップ、ありますね、これは一四年から。この前どうなっていたと思いますか。実は民主党政権時代、私は悪夢と呼びましたが、連合は、ベースアップ、集計すらできなかったんです。していないの。なぜかというと、ベースアップの要求をしていないからですよ。とてもそういう状況じゃなかったんですよ。

 いわば、安倍政権になってこれは久々にベースアップが復活したんですね。私の地元の山口銀行というところ、ベースアップ、復活したんですが、それまでそのソフトもなかったんですから。そういう状況からベースアップができるという状況になったんですよ。ですから、そういう意味ではよく出していただけたと思いますよ。この前はそういう要求すらないから、そういう統計もとっていないんですよ。

 ですから、それがやっとこういうことになってきたということでありまして、ベースアップだけではなくて、この上にしっかりと報酬全体が乗っているということでございます。

 大切なことは、ちゃんと働きたい人が仕事があるという状況なんですね。先ほどの中で、実質にしろ名目にしろ、失業している人たちはそこに入っていないんですから。まさに三百八十万人の人たちが仕事を得てプラスがふえたわけじゃないですか。

 また、正規雇用だって、我々が政権をとる前の政権、民主党政権、悪夢と呼びましたが、あれは五十万人、正規雇用が減っているんですよ。我々は七十六万か八万、恐らく六年間を見ればもっとふえていると思いますよ。正規雇用をふやしたんですよ。これはもう明らかにファクトですから。

 その中において、当然名目賃金が上がっているということであります。

志位委員 三百八十万の就業者増については後で論じたいと思うんですが、かつてはベースアップという言葉すらなかった、それが復活しただけでもいいじゃないかとおっしゃった。しかし、私が聞いたのは、今の現実は実質で見ればベースアップになっていないということなんですよ。ベースアップどころかベースダウンじゃないですか。この事実をちゃんと認めていただきたい。

 この事実を見ないで、いやいや、名目ではベースアップでございます、今世紀最高の水準での賃上げが続いています、こういうやり方は私はフェアじゃない。ですから、これはベースアップじゃなくてベースダウンじゃないか、実質では。事実じゃないですか。赤の部分ですよ。ベースダウンじゃないですか。ちゃんと認めてください。

茂木国務大臣 まず、分けて考えなくちゃいけないのは、連合は額面でしか出しませんから、名目の賃上げ率もベースアップ率もブルーとグリーンのラインだけです。赤は恐らく先生の方で独自に計算をされた結果ではないかな、そのように思いますけれども。

 その上で、大切なことは、例えばその前のグラフにもありましたけれども、実質の賃金は高い。しかし、その分はほとんどがデフレによる影響、それによって経済が縮んでしまう。これはよくなかったわけですよ。有効求人倍率が〇・八二の時代です。今は一・六三になっている。そして、いろいろな人が仕事ができるようになってきている。

 更にこの好循環を我々は回していきたいと思っておりますが、この名目のベースアップにしても、今まで企業は、やはりデフレの時代は、ベースアップをやると固定費がふえるということでちゅうちょしていたのを、このアベノミクスによりまして、ベースアップに踏み切る、大きな一歩を踏み出しているんだと思います。

志位委員 全然答弁になっていない。

 私は、名目だけで見ちゃいけない、実質を見なくちゃいけないと何度も言っている。国民の暮らしに心を寄せるなら、名目でなく実質で見るのは当たり前じゃないですか。それを、調べてもいない。それはもうどうでもいいと。これは、国民の暮らしに関心を持っていないと言わざるを得ません。

 今世紀に入って最高水準の賃上げという総理の主張は、名目ベースの数字、定期昇給を含んだ数字という二重の上げ底の数字をもとにしたものでした。二重の上げ底を取り払ってみれば、賃上げどころか、賃金はマイナスなんですよ。連合の調査から都合のよい数字だけをつまみ食いにして、今世紀に入って最高水準の賃上げとか、所得環境は着実に改善しているなどというごまかしを言うのは、金輪際やめるべきだと言っておきたいと思います。

 さて、最後に、この問題で総理が強調してやまない総雇用者所得について検討したいと思います。

 総理は、安倍政権において就業者が三百八十万人ふえた、こうした形で総雇用者所得が増加していると強調しておられます。働く人がふえたからみんなの稼ぎがふえた、所得環境は改善していると言われますが、この三百八十万人の中身はどうかということです。

 次のパネルをごらんください。

 これは、安倍政権の六年間、二〇一二年から一八年の就業者増の内訳のグラフです。総務省の労働力調査から作成しました。

 この六年間で、就業者は、総数では三百八十四万人ふえています。その内訳を見ますと、下から、十五歳から二十四歳までで九十万人増。二十五歳から六十四歳までの現役世代では、女性の就業者はふえておりますが男性が減っているために、トータルではわずか二十八万人増。そして、六十五歳以上の高齢者で二百六十六万人増となっています。

 就業者の増加の七割は高齢者ですが、高齢者が働く理由は何か。内閣府が高齢者を対象に行った国際比較調査、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査によりますと、高齢者が就労の継続を希望する理由は、ドイツやスウェーデンでは、第一位が、仕事そのものがおもしろい、自分の活力になるからとなっているのに対し、日本では、断トツ一位が、収入が欲しいからとなっています。年金だけでは生活できない、年金が減らされてこれからの生活が不安だ、働けるうちに少しでも将来のために蓄えを残したい、こういう思いから、多くの高齢者が無理をしてでも働かざるを得ない。これをもって所得環境の改善と言えるのか。

 もう一つ。就業者がふえているのは十五歳から二十四歳ですが、この世代の九十万人の就業者増のうち、調べてみますと、学生と高校生の就業者増が七十四万人となっております。高過ぎる学費のもと、仕送りだけで生活ができないと、アルバイトをやらざるを得ない。日本学生支援機構の調査では、夏休みなど長期休暇中のみのアルバイトは減少し、授業期間中に行うアルバイトが増加し、約八割の学生が授業期間中にアルバイトに従事している。

 総理、年金だけでは生活できないと高齢者が無理をしてでも働かざるを得ない、仕送りだけでは生活できないと学生が勉強の時間を削ってアルバイトをやらざるを得ない、総理は、こういう現状をもって所得環境は着実に改善しているとおっしゃるんですか。

安倍内閣総理大臣 まず、生産年齢人口が五百万人減っているという事実があります。当然、生産年齢人口が減る中において、これだけ、三百八十万人ふえるわけでありますから、その中では、先ほど来説明しておりますように、六十五歳以上の方が増加をしている。ですから、毎勤統計で見れば、名目においても実質においても、これは下がってくる要素になってくるということを今説明していただいているんだろう、こう思います。

 そこで、高校、大学の、例えば、これは大学生ということでアルバイトということなんでしょうけれども、同時に、昨年の十二月一日時点において、大学卒の方の就職内定率は過去最高になっております。ということは、まさにこれは、学生の皆さんが会社を選べる状況になっているということになるわけでありまして、有効求人倍率が〇・八二だったということは、一人の求職者に対して一人分の仕事がなかったんですから、今はまさに選べる状況になってきたということを申し上げているわけでございます。

 それと……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 それは非常に重要なことなんですよ。

 六十五歳以上の方、もちろん、収入をふやしたいから働く方、しかし、収入をふやしたいから働こうと思ったって、普通は六十五歳を超えてすぐに仕事というのはなかなかなかったんだけれども、これは今まさに、仕事があるという状況を私たちがつくり出すことができたということではないんでしょうか。

 そうでないと、いきなり、リーマン・ショックの後も、そのとき、みんな収入は高かったんですか。そうじゃないですよね。しかし、そのときは残念ながら、仕事をしようと思ったってそう簡単には仕事がなかったのは事実であろう、こう思うわけでございます。

志位委員 私は、高齢者の現状、学生の現状、これを具体的に指摘をして、こういう現状をもって所得環境は改善していると言えるのかと質問したんですよ。まともな答えがない。いろいろとまた同じことの繰り返しです。

 高齢者が年金だけでは生活できないと言って働いている、そして、学生が高過ぎる学費に苦しんでアルバイトに追われている、これは事実です。しかも、授業期間中にアルバイトをやっている、八割の学生が。これは事実なんですよ。

 こういう現実を踏まえるなら、政治がやるべきことは、低過ぎる年金の底上げを図ることであり、高過ぎる学費を抜本的に引き下げることじゃないですか。消費税を一〇%に増税することは、生活に苦しむ高齢者、学生、女性、多くの人々に追い打ちをかけることであり、絶対にやってはならないことじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 だからこそ、来年度からは、真に必要な子供たちに対する高等教育の無償化を行います。

 と同時に、既に始めていることでありますが、いわば返金不要の奨学金を拡充をしてまいります。それのみならず、授業料を減免して、なおかつ、生活費にも充てることができるような形で、我々、奨学金を出していくということで、そういう学生の皆さんがアルバイトをしなくて学業に専念できるような環境をつくるために、しっかりと取り組んでいるわけでありますし、更にそれを進めていきたい、こう考えております。

志位委員 給付制奨学金を創設したとおっしゃったけれども、何人ですか。わずか二万人でしょう。三百万人の学生の一%足らずですよ、現状は。それから、学費の無償化を検討していると言うけれども、要件が厳し過ぎて、これはごく一部のものです。

 ですから、本気でやるというんだったら、給付型奨学金、どんとやらなくちゃいけない。学費の値下げも大幅にやる必要があります。私はそのことを聞いたんです。そして、こういうもとでは消費税の増税は絶対やってはならないと聞いたわけであります。

 総理は、所得環境は着実に改善していると主張し、十月からの消費税一〇%の増税の最大の根拠とされてきました。

 しかし、きょう議論してきたように、毎月勤労統計でも連合の調査でも、安倍政権になってからの労働者の実質賃金はマイナスでした。名目名目とおっしゃるけれども、実質賃金はマイナスなんです。

 そして、総雇用者所得とあなたが強調してやまないその実態も、三百六十万人ふえているというその実態も、私が話したように、所得環境の改善の根拠とはなっていない。(安倍内閣総理大臣「なっていますよ」と呼ぶ)なっていないですよ、高齢者だって学生だって女性だって。

 私は、消費税一〇%の増税の根拠は総崩れになったと思います。ですから、増税計画をきっぱり中止することを強く求めたいと思います。

 更に問題点をただしていきたいと思います。

 安倍政権が行おうとしている消費税増税に対する景気対策なるものが、前代未聞の、異常で奇々怪々なものになったことへの強い批判が広がっております。特にポイント還元は、複数税率とセットになることで、買う商品、買う場所、買い方によって税率は五段階にもなり、混乱、負担、不公平をもたらすとして怨嗟の的となっています。

 ところが、総理は、本会議での私の質問への答弁で、ポイント還元について、中小企業団体などからの現場の声に応えたものだと述べました。一体どこにそのような現場の声があるのか。

 昨年十二月、日本スーパーマーケット協会など流通三団体は、ポイント還元の見直しを求める異例の意見書を政府に提出しています。

 意見書では、「一般の消費者にとっては極めて分かりづらい制度となり、日々の買い物において必要のない混乱が生じるのではないか」、「事業者間の競争環境に大きな影響を与え、かえって過当な競争を招き込む」などの強い懸念が表明されています。

 総理に伺います。

 ポイント還元、これを批判する声、懸念する声はたくさん聞こえてきますが、中小企業団体の中で、これを手放しで歓迎する声が一体どこにあるんですか。具体的に示してください、あなたの答弁ですから。

野田委員長 経済産業大臣世耕弘成さん。(志位委員「総理の答弁」と呼ぶ)具体的な答弁ですので。

世耕国務大臣 今回は、やはり八%引上げの際に予想以上に消費が低迷をして、その後景気の回復に力強さを欠いたということ、これを受けた施策であります。

 このため、消費税率一〇%への引上げに当たって、中小企業団体からは、これは商工会議所あるいは中小企業連合会から、まず今回は強力な需要喚起策を講じてほしいという要望がありました。それを受けて、我々は、ポイント還元、しかも五%という形でやらせていただいています。

 その上で、商工会連合会からも、キャッシュレスを行うんだったら、事業者が意欲の湧くような支援策をしてほしいということですから、端末購入費用の補助ですとか、あるいは支払い手数料の補助という仕組みも入れているところであります。

 しっかり中小企業団体の声に耳を傾けた施策になっていると考えております。

志位委員 だめですね。具体的な団体名を挙げられない。そして、やるんだったらこれをやってほしいというような話でした。

 私、先日、東京北区の十条銀座商店街を訪問し、経営者の方々から、消費税増税とポイント還元について意見をお聞きしました。

 経営者の方々からは、消費税引上げには反対だが、一〇%に上げるなら、品物によって税率を変えるとかポイント還元とかはやらないでほしい、私の周りのほとんど全員が今度のやり方に怒っている、こうした強い批判の声が寄せられました。

 パネルをごらんください。

 ポイント還元については、次のような懸念、不安、批判が寄せられました。大まかに言うと三つです。

 一つは、キャッシュレス決済に対応できなくなる商店が出てくるということです。売上げの少ない商店、高齢者のやっている商店などでは、対応できなくなる商店が出てくる。対応できない商店はお客がほかにとられ、潰れてしまう、商店街潰しだという批判であります。

 二つ目は、カード会社に払う手数料が心配だということです。増税実施から九カ月間に限って、手数料は売上げの三・二五%以下、そのうち三分の一は補助ということですが、それでも、売上げの一部、二%以上を手数料としてカード会社に払わなければならない。九カ月たてば、三・二五%の制限はなくなり、補助もなくなり、手数料が引き上がる。中小小売店の場合、手数料は五%から一〇%にもなる。そのときは品物の値段に乗せるしかない。それができなければ利幅が減る。商店の経営にとって大きな重荷になる。こういう批判であります。

 三つ目は、キャッシュレスになると、商品が売れても現金がすぐに入ってこなくなる。半月先、一月先にならないと現金が入ってこない。それでは資金繰りが苦しくなる。小さな商店では、お金が回らなくなって潰れてしまう。こういう不安であります。

 総理に伺います。

 総理は、先日、東京品川区の戸越銀座商店街を訪問したそうですが、中小小売店の皆さんからこうした懸念、不安、批判、そういう声は出なかったんですか。

安倍内閣総理大臣 私も戸越銀座に行きましたので、志位さんにもちょっと足を運んでいただけたらな、こう思いますが。

 先日、商店街に足を運びましたが、先ほどもお話をさせていただいたように、QR決済は、店舗にQRコードを、一枚紙を置いておくだけで町の花屋さんも簡単に導入できた、こう言っていたわけでございまして、今回、幅広い決済手法を対象としますが、中小・小規模事業者の皆さんに対しては、決済端末導入を支援し、負担をゼロにするとともに、手数料についても、三・二五%以下とした上で、更にその一部を補助するということにいたします。

 いわば、我々も、今回政府として、先ほども世耕大臣から答弁をさせていただきましたが、こうした形を進めていくことによって、今まで手数料が少し高くてなかなかこのキャッシュレスの中に入れなかったという方々も、ここに入ってくることが可能になってくるのかな、こう思っておりますし、また、例えばレジ締めの手間の削減による現場の生産性向上もありますし、海外では、御承知のように、急速に今、キャッシュレスが進んでいるんですね。その中で、果たして日本だけがそうでない状況を続けられるかといったら、やはりそんなことはないんだろう、こう思います。

 日本を訪れた観光客の七割が、キャッシュレスがあればもっとお金を多く使ったと言うほどでありまして、今、海外からの観光客の皆さんは、例えば銀座とかそういうところだけではなくて、戸越銀座にも足を運び始めています。そこの魚屋さんにも、いわば随分たくさんの海外からのお客さんにも来ていただいているというお話も伺っています。

 かつては、海外からの観光客は、まさに中央区の銀座にしか行かなかったんですが、今はそこだけではなくて、いろいろなところにも結構足を運んでいただいて、そういうところにおいてキャッシュレスのこの流れをしっかりとつかみ取ることができるように、政府としても、この機会を活用して支援をしていきたいと考えております。

志位委員 私は、戸越銀座でこういう不安の声を聞かなかったかと聞いたんです。こういう不安の声はたくさんありますよ。ちゃんと歩いてください。そういう都合のいい話ばかりじゃないんです。

 手数料一つとったって、三・二五%に制限する、補助を一部出すというけれども、それは九カ月に限ってじゃないですか。だから、みんな不安なんですよ。キャッシュレス、キャッシュレスというけれども、現金がすぐに入ってこなくなる、これも不安なんですよ。

 中小小売店のためといってこれを導入しようとしながら、現場の中小小売業者の皆さんからは非難ごうごうなんです。そして、この間行われた毎日、読売、共同の世論調査のどれをとっても、国民の六割以上はポイント還元に反対なんですよ。

 ですから、中小小売業者からも国民からも総スカンの天下の愚策は、絶対に私は認められません。

 最後に、増税するならば、空前の大もうけを手にしている富裕層と大企業への優遇税制にこそメスを入れるべきだということを主張したいと思います。

 富裕層の株のもうけ、軽過ぎます。二〇%です。これに欧米並みの課税を行うべきです。

 それから、大企業と中小企業。中小企業の方が法人税の実質負担率が高い。この不公正を正して大企業に中小企業並みの税負担を求める、これをやっただけで五兆円ぐらい出てくる。消費税一〇%増税分の税収は確保できます。消費税に頼らない、別の道を選択すべきです。

 総理に、一点に絞ってお聞きしたいと思います。

 パネルをごらんください。

 これは有名なグラフですが、所得税の負担率は所得一億円がピークになっておりまして、これを超えると、所得がふえればふえるほど逆に下がっていく。株取引にかかる税金が一律二〇%と大変に低い。その結果、こういう逆転現象が起こっているのであります。

 もう一つ、パネルをごらんください。

 この異常に軽い富裕層への証券課税については、さすがに二〇一六年の経済同友会の提言でも、株式譲渡所得及び配当所得課税の税率を五%程度引き上げるという提言が出ております。それから、一七年のOECDの対日経済審査報告書でも、キャピタルゲイン、配当、利子所得への税率を二五%に引き上げることで、税収を増加させるという提案が出ている。

 総理、経済同友会、OECD、この提案は、誰が考えても当たり前の、最小限の提案じゃないですか。真剣に実行すべきじゃないですか。いかがですか。

麻生国務大臣 今、金融所得課税等々いろいろお話があっておりましたけれども、御存じのように、平成二十六年から、いわゆる上場株式の譲渡利益については、従来の一〇%から倍の二〇%にさせていただいたところです。したがって、高所得者ほど所得税の負担率が上昇する傾向が見られて、所得配分機能の回復に一定の効果があったのではないか、よく御存じのとおりだと思いますが。

 また、金融所得に対する課税のあり方については、与党の税制改正の大綱の中におきましても、家計の安定的な資産形成を支援するとともに、税負担の垂直的な公平性を確保する観点から、検討されるということとしておりますほか、経済への影響をどう考えるべきかといった点につきましてもいろいろやらせていただいたところでありまして、所得税の最高税率も四〇から四五に引き上げておりますし、また、所得税の基礎控除も二千五百万円超で消失ということにさせていただいたり……

野田委員長 財務大臣、質問時間が終了しておりますので、簡潔に。

麻生国務大臣 いろいろなことをさせていただいておるところであります。

野田委員長 ありがとうございました。

 志位さん、質問時間が終了しております。

志位委員 はい。

 二〇一三年の末に株取引への税金を二〇%にする見直しをやったと言いましたけれども、経済同友会の提言もOECDの提言も、その後に、それでは不十分だということで出されたものなんですよ。こんな五%の課税もやらないのか。消費が冷え込み……

野田委員長 志位さん、質問時間は終了しております。

志位委員 はい、わかりました。

 賃金が、所得が落ち込む中で、庶民に五兆円もの大増税をかぶせながら、空前のもうけをしている富裕層への課税はかたくなに拒否する。こんな間違った政治はありません。

 私たちは、消費税一〇%への増税の中止を重ねて強く求めて、終わります。

野田委員長 これにて志位さんの質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎さん。

下地委員 日本維新の会の下地幹郎でございます。

 きょうは、三十一年度予算の冒頭の予算委員会なので、我が党の考え方、方針みたいなものをお話をしてから質問に入らせていただきたいと思います。

 与党でもない、野党でもない、政策提案型政党だと、ずっとそのことを言ってまいりました。中途半端だとか、与党の補完勢力だとか、いろいろなことを言われましたが、やはり政党は政策提案能力がなければいけないというようなことをずっとこれからも続けてまいりたいというふうに思っています。

 野党の基準というのは、予算委員会の予算に反対すること、不信任案に賛成すること、そして首班指名で与党の候補者に投票しないこと、これが野党の基準でありますが、もう一つ、完全野党となると、閣法、政府が出す閣法に全て反対して、そして与党議員とは……(発言する者あり)議法を提案しないというようなことが完全野党なんですよね。

 しかし、先ほど小川さんからも話しましたように、立憲民主党でも七一%、閣法に賛成するし、国民民主党は七六%、共産党も三六%、自由党も六三%、社民党は六三%、希望の党は九三%、我が日本維新の会は九八%、閣法に賛成するんです。だから、完全野党というのは、この国会にある政党にはないんですね。

 そういうふうな意味においても、今の野党と私どもの違いは何かといったら、国民が二分するような対立法案が出たときに、反対をして、最後まで反対するのか、私どものように修正協議をやるのか、この二つに野党が分かれるわけですよ。

 だから、私たちは、テロ準備罪のときには可視化を入れました。修正協議をやって可視化を入れました。それから、働き方改革のときには、私たちは中小企業対策を入れました。去年の入管法のときには、地方の役割とか、これからマイナンバーを使うべきだとか、修正協議をしたんですね。

 そういうふうな意味においては、この修正協議をしながら法案をつくっていくというようなことをやっていく方が国民には理解を得やすいというような認識でこれからも日本維新の会はやっていきたい。

 きょうは、私が質問しますけれども、全てで提案をさせていただくというようなことで質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

 きょう一番目には、北方領土の問題をちょっとやらせていただきたいと思います。

 一九七二年に沖縄が返ってきましたけれども、施政権下がアメリカだったことはもう皆さん御承知。領土問題じゃないと言うかもしれませんが、立法、行政、司法、全てが占領下に置かれているということからすると、領土問題そのものだというふうに私は思うんですよ。

 総理にぜひお聞きしたいんですけれども、私の認識論では、ことしが非常に領土問題を解決する大事なタイミング。総理も、二十五回もプーチン大統領とお会いになって、積み上げをなされてきた。

 よく言われますが、一九九八年のエリツィン・橋本会談、川奈会談、本当に、あのころ以上の今もう機が熟しているんじゃないか、ことしなければ来年もないと言われるような状況になっているのではないかと思いますが、総理がこの北方領土問題をことしどうしても解決するんだと、強い思いであるかどうかということをまずお聞きをさせていただきたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 ことしは、G20の機会にプーチン大統領が日本を訪問する、来日をされますから、その際に日ロの首脳会談を行いたいと思っております。そういうチャンスがある年である、重要な年だと思っておりますが、いわば、ことしという、そういう期限を切るつもりはございません。とにかく少しでも平和条約交渉を進めたい、このように考えております。

下地委員 それで、総理、ちょっと二つの私の歴史の中における教訓みたいなものを示させていただきたいと思うんですけれども、ここにありますように、これ、密約と書いてありますが、ここの一九五五年から一九七五年まではベトナム戦争だったんですよ。このベトナム戦争の中において沖縄を返還するというのは、非常に政治的決断というのはすごいことがありました。

 これは、今、北方領土問題でもいろいろと総理も御苦労なされていると思いますが、あのときも、核抜き本土並みかということがありました。

 そして、原状回復のお金を誰が持つのかというような論議も、相当にこれは交渉が難航したと聞いております。

 そして、VXの神経ガス、一万三千トン、一回これは事故が起こりましたから、これの撤去についての合意も大変だった。私の政治の師であります山中貞則先生は、このVXガスの撤去については、墓場に行くまで俺は内容は話さないというようなことを言っておりました。

 そして、日米織物交渉、繊維交渉でも、米側の要求をのんで合意したと書いてありますが、これは、当時の通産大臣は田中角栄通産大臣、沖縄のことがあったから、この問題も自主規制ということで解決をさせたというように言われていますよ。

 だから、私が一点目に申し上げたいのは、問題があるけれども、余りすぐに解決しようとせずに、時間をかけること。今、国家間でもめていることでも、三十年後、四十年後になってみたら、まあ密約と書いてありますけれども、どこかで妥協していると必ず理解を得られるときがある、今この問題を絶対に解決しなければいけないというと前に進まない、こういうふうなことがありますねということを一点、北方領土交渉の中ではお考えいただきたいというふうに思います。

 もう一つ申し上げたいと思います。

 これは奄美諸島の返還の問題でありますが、奄美諸島の返還は、一九五三年、返還します。

 そして、この返還時に、当時のダレス国務長官、ここにも書いてありますけれども、沖縄と小笠原のような戦略的な諸島の支配権を放棄することは困難であるとか、この下の方で、一般教書演説ですよ、アイゼンハワー大統領の一般教書演説でも、沖縄にとどまらなければならない、無期限にと。こういうことを言ったら、奄美の返還のときにも日本側は、奄美も小笠原も沖縄も一括して返還すべきだという声が強くありましたけれども、あのとき一歩前に進んでいたから今があるんですよね。だから、沖縄は十九年後、そして小笠原は十五年後、こういう解決の仕方があるわけなんです。

 だから、私が申し上げるのは、この二つ目の教訓としては、まず目の前の解決できるものを解決していく、こういうふうな考え方で領土問題を前に進めていかないと、もう七十年たっていますけれども、同じことの何度も繰り返しで一歩も前に進まないというようなことをこれまで以上に続けていいのかどうなのかを私は考えていくべきだというふうに思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 いわば、領土問題、領土交渉というのは相当難しい問題であり、さまざまな国益がそこには存在するわけでございまして、その中でいかに双方が受入れ可能な形にしていくかということが一番重要なことではないだろうか、このように思います。

 日米の密約問題ということについて、もし、では、あのときああいう約束をしていなかったら沖縄が返還できたかといえば、そうではないんだろう。そのときそのときに非常に苦しい重い決断をしなければ、こうした問題は前に進んでいかないんだろう、このように考えております。

下地委員 私が申し上げた、一歩前に進めるというようなことをしていかなければいけないというふうに思っています。

 そこで、総理、私の方からの提案なんですけれども、ここで提案、二島返還論、決着論、私は、この問題について前向きに検討して結論を出すべきだと思うんです。これは、十一月のシンガポールで日ロ両国が決めた、日ソ共同宣言、一九五六年を基礎にして交渉を加速するということになりますが、なぜ日ソ共同宣言、一九五六年なのかといえば、これは、総理もおわかりのように、日本の国会においてもロシアの最高議会においても決議をしているからなんです。ほかの東京宣言とかいろいろなこととはこれは違うんですよね。

 だから、このことをまず一歩前に進めることがどうしても重要になってくるんです。これを前に一歩進めるという、二島返還、決着というようなことをまずお考えになったらどうかというのが一つです。

 それと二つ目には、安全保障の問題。プーチン大統領が、沖縄の問題についてもいろいろな意見を言う、そして在日米軍についてもいろいろな意見を言う。私は、ここは、安全保障の特別区みたいなものをつくって、日米安保の適用範囲外、そして、ロシアも軍を置かない、自衛隊も置かない、米軍も置かない、こういうふうな特別区みたいなものをつくって、これで前に進めていくという一つの提案も必要ではないかというふうに思います。

 三番目ですけれども、スピッツベルゲン島方式というのがあるんですね。これはもう皆さんもおわかりかと思うんです。ノルウェーとロシアの問題で、領土問題が非常に複雑な状況になってきたときに、ここはノルウェーが主権下に置いて、そして、このスピッツベルゲン島においてロシアが経済活動を自由に行う。これにも書いてあるように、石炭の採掘が実施できるとか、ロシア人がそこに住むことができるとか、こういうふうなことをやりながら信頼関係を深めていって、最終的には境界線をつくった。これがスピッツベルゲン島方式と言われるものであります。

 なぜこれを言うかというと、ロシアがこれに合意しているからなんです。これの逆をやればいい。国後、択捉においては、主権下はロシアになるかもしれないが、下の方に書いてあるように、国後、択捉に自由に日本人が行けるような状況をつくる、そして、島民が向こうに行って特別に資産を持つようなことができるとか、日本の企業が国後、択捉で投資ができる、ロシア側は、ここで集まった税金については、ロシアが取るんじゃなくて、この島民、国後、択捉のためにだけ使う。

 これは、スピッツベルゲン島でもその方式を使っているんですよね。そのまま経済が活性化したら、ロシアが税金を取っていく、ノルウェーが取っていくんじゃなくて、その島のためにだけこの税金を使う、こういうやり方をしているんです。

 もう七十年たちます。もう元島民の方々も、年齢も非常に高齢になってまいりました。

 今大事なことは、逆に言えば、領土問題よりも、通えるようになること、その地域に行けるようになること。そういうふうな経済状況というものをつくりながら、島民が行けるようになって、その時間をかける。その時間をかけることによって、奄美諸島の返還から十九年後に沖縄が返ってきたみたいに、一歩前に進めておけば、次のステップが次の世代の政治家ができる。そういうふうなことが私は可能になるんではないかと思うんです。今その決断をしないで、ずるずるずるずるいったら、いつまでたっても同じようなことになる。

 だから、私がきょう申し上げたいのは、二島返還で決着して、安全保障の特別区をつくって、スピッツベルゲン島方式で経済の活性化を図りながら理解とお互いの関係を深めていって、最終的に、ここは申し上げませんが、最終的に、私たちが歩んできた歴史の中で沖縄が返還されたようなことを期待する、こういうふうな考え方でこの北方四島問題を考えていくというのが必要ではないかと、総理、私は思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 「スピッツベルゲン」ニ関スル条約は、我が国も締約国となっておりますが、この条約では、四十六カ国の締約国がスピッツベルゲン諸島に対するノルウェーの主権を認めると同時に、各締約国に同諸島での経済活動に関する一定の権利を認めていると承知をしています。

 それぞれの領土問題にはそれぞれの経緯がありますが、この四十六カ国もの国が参加している条約の例が北方領土問題の解決に資するかについては、一概にお答えすることは困難でありますが、その上で、交渉がうまくいくかは、静かに交渉できるかにかかっていると考えております。

 我が国の交渉方針、考え方について、今ここでこの評価について申し上げることは、交渉方針にもかかわってくることでございますので差し控えさせていただきたい、こう思いますが、いずれにせよ、この問題については、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもとに、そして、私たちの世代でこの問題に終止符を打ちたい、このように考えているところでございます。

下地委員 スバーバル条約というのは、四十カ国を超える国が条約に加盟していますけれども、実質的にスピッツベルゲン島で経済活動をやっているのはロシアだけなんです、実質的には。だから私はこれを事例として挙げているということであります。このまま、どこの国も、ここで経済活動を大きくやっているというわけではない、これは改めて申し上げておきたいというふうに思います。

 この問題、最後になりますけれども、一歩前に進めるというようなことが非常に大事。総理が一番おわかりのように、佐藤栄作総理が、沖縄の返還なくして日本の戦後は終わらないというようなことを言いました。この言葉は、まさに沖縄の方々の心の支えでしたよね。これはもう間違いない。この言葉にずっと支えられて、返還を待っていたわけです。

 そういう意味では、日本の戦後を終わらせるためには北方領土の問題を解決することが大事、こういうふうな強い認識のもとにこの問題をやっていく。しかし、やり方はダイナミックに変えていかないと、同じことをずっとやっていたらだめだと改めて申し上げておきたい。総理も一番おわかりだと思いますが、ぜひ解決をする、二島決着しながら新たに政策をしていく、このことをぜひ進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、今度は外交ですけれども、今、韓国との間で非常に大きな問題が生じています。韓国の議長の発言がありましたが、これはもう許されるような発言ではありません。この発言に対して、日本側の正式なコメントという意味で外務大臣の御答弁をお願いします。

河野国務大臣 到底受け入れられるようなものでもございませんし、極めて無礼な発言でございます。政府として、謝罪と撤回を求めているところでございます。

下地委員 この発言は、まさに許されるような状況じゃありませんから、しっかりと外交的な観点から謝罪を求めるということは大事だというふうに思っています。

 韓国の間でさまざまな問題がありますよね、徴用工の問題、そして、自衛隊のレーダーの照射の問題とかありますけれども、岩屋大臣、岩屋大臣は、この韓国のレーダー照射の問題、十カ国の国に、十カ国語で説明をしてあると。防衛省はいろいろな説明をしていますと、国際社会に。やっていますでしょう、情報発信していますでしょう。これは、国際社会の中で、防衛省が発信している内容は十二分に理解されて、韓国側よりも、日本側のこの発信の方がよく理解されている、支持されている、そういうふうな自信はおありですか。

岩屋国務大臣 私どもの見解は一月二十一日に公表した最終見解のとおりでございまして、要は、韓国側に、このレーダー照射の事実を認め、再発防止をしっかり行ってもらいたいということでございますが、これは、十カ国語ではなくて、日本語、韓国語、英語にしております。英語で十分だと私どもは考えておりますが。

 私どもの考え方というものは、例えば自衛隊の哨戒機の飛行のあり方についても、NATOや米国も、ほぼ同様の基準で行っているところでございますし、十分に御理解をいただいているものというふうに考えております。

下地委員 国際社会で十二分に御理解をいただいている。アメリカの方からの理解を得ているというコメントはありますか、アメリカ側からの。

岩屋国務大臣 例えば東アジアの安全保障全体を考えましても、日韓関係、日米韓の関係は極めて重要でございますので、米側もこの案件について、特段はっきりとしたスタンスを示しておられるわけではないというふうに思いますが、機会のあるたびに、又は問われるたびに、しっかりと事案については説明をしておりますので、そこは御理解をいただいているというふうに考えております。

下地委員 公式の反応はないということですけれども。

 それで、岩屋大臣、朝鮮半島が、核、ミサイル、この問題が解決をするというふうなことになると、今まで、この朝鮮半島の脅威に対して、イージス・アショアとかイージス艦とかさまざまな装備を充実させてきたわけですけれども、この朝鮮半島の安定につながるということで、防衛省として根本から、もし解決した場合には、この安全保障の見直しというのは起こる可能性はあるんでしょうか。

岩屋国務大臣 難しい御質問だと思いますが、少なくとも現段階では、北朝鮮が我が国を射程におさめる数百発のミサイルを実戦配備しているという現実に変わりはない、近い将来にそれが変わるという確実な見通しもないということですから、差し迫った脅威であることに変わりはないというふうに思っております。

 今や、我が国防衛のためには、陸海空、さらに、ミサイルの開発はある意味世界じゅうで進んでいるわけでございまして、ミサイル防衛、そして宇宙、サイバー、こういった多領域にわたる防衛力をしっかり構築していかなくてはいけないというふうに思っておりますので、堅固なミサイル防衛体制をつくっておくということは今後ともに重要なことだというふうに考えております。

下地委員 総理、一番我が国が信頼しているアメリカの大統領が、この核、ミサイルについて、この二月の後半にも二回目の米朝首脳会談をやる。我が国が一番信頼を置いている国のトップが北朝鮮と会談をするということになりますが、それはやはり私たちとしては期待しますよね。そして、核、ミサイルがなくなるということは、根本的に日本の安全保障が変わる、装備が変わる、これは当たり前のことだと僕は思うんです。脅威があるからこれだけ予算を使って北朝鮮に対応してきたわけだから、我が国が一番信頼するトランプ大統領がその成果を上げたら、それは間違いなく変わってくることは、これは否めない。

 そういう中で、総理はこれからトランプ大統領と電話会談をなされるというふうに聞いていますが、どういうふうな主張で電話会談をなされるのか。例えば、譲歩することはあってはならない、強い姿勢で臨んでもらいたいというような電話会談なのか、一歩でも前に進めてもらいたいというようなことなのか、また、日朝首脳会談、もう私たちはやる用意があるということを伝えてくれと言うのか、どういうふうな、この電話会談においてトランプ大統領に対して総理は発言をしようと思っているのか。それをぜひお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 我が国として、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決をし、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指すという考え方には変わりはないわけでございます。

 昨年六月の歴史的な米朝首脳会談によって、北朝鮮をめぐる情勢は大きく動き出しています。次は私自身が金正恩委員長と向き合わなければならないと考えております。

 北朝鮮には豊富な資源があり、勤勉な労働力があります。北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、明るい未来を描くことができる。相互不信の殻を破り、北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題を解決するとの決意で、引き続き全力で取り組んでいきたいと考えておりますが、既に北朝鮮については、トランプ大統領とさまざまな機会で相当突っ込んだ話をしております。私の考え方について、また米朝の首脳会談、昨年、第一回目が行われましたが、米朝の首脳会談にどういう期待をしているか、どういう交渉をすべきかということについては、既に大体もうお話をしているわけでございますが、またさらに、米朝首脳会談の前に電話首脳会談を、状況が整えば首脳会談を行い、日本としての考え方を伝えていきたい。

 どちらかということを今申し上げることはできませんが、日本の基本方針について、その基本方針に資する会談になるよう、しっかりと電話においてこちら側の考え方を伝えていきたいと思っております。

下地委員 私は今、この会談に物すごく期待をしていて、それで、その会談の成功によって日本の安全保障が相当大きく変わるというようなことになってくるという認識を持っているんです。

 そして今、こういう状況になったのは、文在寅大統領というような方が韓国に大統領として存在したというのが大きいと思うんです。彼は左側の方ですよね。非常に北朝鮮寄りの考え方、親日でもなければ親米でもなくて、親北と言われるような、そういうふうな方なんです。だから、そういうふうな方がいるから、今のこの朝鮮半島の問題が、こうやって北朝鮮を引っ張り出して、この状況まで持ってきたというのは、彼の役割というのは物すごく大きなもので。

 だから、日本が今、徴用工の問題、レーダーの照射の問題、さまざまな問題があるけれども、日本の安全保障を変えるぐらいの大きな、朝鮮半島の核とミサイルがなくなろうというような状況を予測するならば、ここは外交的に冷静な対応をしていく。いわゆる、日本でいえば、福島みずほさんが総理大臣をやっているようなものですよ、さっき質問していた志位さんが総理大臣をやっているようなものですよ。それぐらいの認識論を持ったら、ここは冷静に、そう考え方はすぐに変えられないけれども、そこは冷静にしながら物事を見ていって、最終的に、私たちが望む、本当に核とミサイルがなくなる朝鮮半島をつくっていく、こういうふうなことをやっていくことが大事だというふうに私は思っています。

 だから、冷静な、冷静な外交の姿勢、決してどの党においても過激な発言をしない、じっくりと見守っていく、これが必要だというようなことを申し上げていますけれども、河野外務大臣、どうですか。

河野国務大臣 日本の国の平和と安定を守るために、しっかりとやってまいりたいと思います。

下地委員 余りいい答弁じゃありませんでしたね。

 もう一個、今度、消費税について、麻生大臣、ちょっとお聞きをさせていただきたいんです。

 今度、消費税が上がりますが、二〇一九年から二七年までの主なイベントがここに書かれております。皇太子殿下の御即位から始まって、G20から始まって、ラグビーのワールドカップ、東京オリンピック、そして大阪の万博、アジア大会、リニアモーターカー、これは全部で見ると七十二兆円ぐらいの経済効果があるそうなんです。すごくあります。

 これは、消費税が五%から八%に上がるときにこれだけのイベントが、まあ国事行為みたいな感じで行われたかというと、ないんですね、全くないんですよ。これは、物すごく経済効果があるというふうに言われています。

 それで、この経済効果を見ると、財務大臣、非常に標準化した中で、今、財務大臣の方が消費税の引上げに対応した対策で二兆三千億ぐらいの対策を見ておりますが、このイベントの効果と消費税の対応策、これを見ても、このイベントの効果の方は、経済政策をしっかりと引っ張る効果が出るのではないかと言われているんですね。

 イベントによる経済効果が出てくるというようなことを考えると、改めて軽減税率とか消費税の対策で二兆三千億の予算を使わなくても、政府が考えているように、二%の消費税が上がることで、一%で二兆七千億、五兆四千億の税収を上げて、それをそのまま、軽減税率は使わないで、低所得の人の対策とか教育の対策に使った方がいいんではないか。

 軽減税率をやらなくても経済は動く。後は、これをしっかりと吸い上げて、半分近いお金を軽減税率のために、対策に使うんじゃなくて、一回全て税収として上げてから低所得者対策をやった方がいいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうかね。

麻生国務大臣 今、この資料を頂戴しましたけれども、日本経済について、御指摘のありますように、確かにいろいろイベントがメジロ押し、メジロ押しというか、いろいろその中から大きく景気等々に影響し得る大きなイベントがあるのは間違いないんだと思っております。

 それに比べて、前回のものはそういったものが全くなくて、結果として、大きな反動減とかその前に駆け込み需要とか、いろいろあったというのは事実なんだと思いますので、そのときに反省を深めて、いろいろ経済の指標が落ちたというのは事実ですから、その対応に関しては、今回は絶対にそういったことのないように対応せないかぬというのが我々政府の立場です。

 したがいまして、今回の消費税に当たっては、いわゆる消費税の引上げによって影響を受けやすい低所得層等に関して、いろいろなものをやらせていただくものの一環として軽減税率もその中に入っているんですが、いわゆる増収分を活用させていただいて、全世代型の社会保障制度を構築するという。これは、今後、少子高齢化という状況の流れが変わらない、当分の間、というのであれば、今やろうとしている社会保障制度というものを、いわゆる皆保険とかいろいろな医療の制度等々社会保障制度の維持をやっていこうと思うのであれば、少なくとも、今後、保育所の施設をやるとか、幼児教育の無償化をやるとか、保育士をやる、いろいろ、ざっと今申し上げてきておりますけれども。

 そういった中で、特に所得の低い方という方に対して、介護保険料の軽減を拡充するとか、それから年金生活者とか、給付金に月々五千円とかいうようなものを支給する等のことを考えているんですけれども、特に低所得者として、プレミアムという商品券とか、五%とか、いろいろな話が出ていますけれども、そういったものをやらせていただくということをやっていかないと、先ほど言われたこちらの方は、これはほとんど民間の、オリンピックも民間といえば民間ですけれども、そういったもののイベントで得られるであろうこれに期待をして、結果として、そうじゃなかった場合はということもこれは考えておかねばなりませんので。

 私どもとしては、そういったものも含めて、両々相まっていかないといかぬところなので、オリンピック以後のことも考えないけませんし、いろいろなことを考えながら対応させていただくのであって、今言われたような御意見というのは、私どもとしてわからぬわけではありませんけれども、同時に、危険も考えておかないかぬというのも事実ですから、そういった意味では、前回のようなことには決してならないような対応をきちんと打っておくというのが政府としての立場であります。

下地委員 先ほどのイベントのところにリニアモーターカーの二七年度完成がありましたけれども、もう愛知県なんか、今、非常に好景気というか、これを見込んで、しかも、リニアモーターカーの料金がそんなに高くないというようなことから、当地が本当に動いているというようなことをこの前、知事が来て話していましたよ。

 だから、反動減が出るということをもう思い込まないで、これだけのことを自分たちがやったから、反動減は出ないんだというような考え方のもとに次の対策を立てた方がいいというのが私の考えなんです。

 それで、これを見ていただきたいんですけれども、二兆三千億ありますからね。これは二兆三千億ありますから、この二兆三千億で介護職員や保育士の給料を上げると、月二万円上げると、五年間はこの皆さんに対して、今問題になっている介護の給料についてもしっかりできますよね。

 二番目のところを見ると、保育の受皿、待機児童がいるといいますけれども、これは八十万人分を施設として準備できますから、二兆三千億あったら。これでもう待機児童はゼロになりますよね。

 それで、あと給付型奨学金がありますけれども、これについても、二十万人ぐらい対応できる。今、二万人ぐらいですからね。これが二十万人ぐらい対応できるとなってくると、これは物すごく低所得の人たちに対応できるものになりますよね。

 あとは幼児教育。今度も三千九百億組んでいますけれども、全ての子供にやるとしたら、あと四千億必要ですよ。四千億必要ですけれども、四千億このままこれに充てると、本当に教育の無償化の対策ができる。

 だから、軽減税率はやめて、反動減はないという自信を持って、そしてこの対策をした方が国民のためにはなるのではないかというのが私の考えなんですけれども、もう一回御答弁をお願いします。

茂木国務大臣 御意見としては傾聴に値する御意見だと思いますが。

 例えば、リニアの経済波及効果、発現するのはどちらかといいますともう少しおくれる部分が多くて、確かに、下地議員おっしゃるように、二〇二〇年オリンピック以降さまざまなプロジェクト、そしてまたイベントがありまして、その経済効果は極めて大きいだろうと考えておりますが、消費税率の引上げ、これはことしの十月一日を予定しております。その前後の駆け込み需要、そして反動減をどうするか、この対策が極めて重要で、その点につきましては、先ほど麻生財務大臣の方から答弁をさせていただきました。

 さらに、二・三兆円あれば、こういうことで大切な施策を並べていただいておりますけれども、我々、この対策を打ちますのは、二〇一九年そして二〇二〇年の臨時特別の措置としてやるわけでありますが、ここで書かれてあるものは恒久の措置としてやることでありまして、限定した措置と恒久の措置の二・三兆円というのは違うと思っております。

 ただ、いずれにしましても、介護職員、保育士の処遇改善、さらには保育所の施設整備、そして、本当に、どんな家庭に生まれても、進学したい、そういう思いさえあれば進学できるような環境を、給付型の奨学金を充実し、そしてまた学費を免除することで図っていく、しっかり進めていきたいと思っています。

下地委員 茂木大臣、経済というのは前の前の前を見てから動くので、こうやって、リニアモーターカーが動きます、万博が動きますといったら、それに向かって企業は動いていくので、これは最初のところだけじゃないんです。でき上がったら、万博とIRができたらずっとまた動くんですよ。だから、そういうふうなことをずっと引っ張っていける要素がここにあるというのが一点目。

 それともう一つは、短期だとおっしゃいますけれども、二兆三千億。反動減があるというこの時期だけでも低所得者対策をやることは非常に大事なんです。だから、五年で終わるかもしれないけれどもやるというようなことを考えた方が私はいい対策ができるというように思っています。

 もう一回申し上げます。すごいですよ、この経済対策。これは今までになかった経済対策ですから、それを生かして、そして自信を持ちながらやっていくというのが大事だと思っています。

 もう一つ、自信を持ってもらいたくないのが一つだけあるんですけれども、これはキャッシュレス。キャッシュレスですけれども、志位さんの考え方はさっき聞かせていただきましたが、それとは全く別。キャッシュレスの時代をつくらなければいけないというのが私の考えですということは前もって申し上げます。キャッシュレスをやらない方がいいというわけじゃなくて、この軽減税率対策でキャッシュレスが必要なのかという問いかけをしているということなんですね。

 これを見ていただきたいと思いますけれども、五百万円以下の中小企業ですけれども、この中小企業が、もし二割、クレジット決済が今百万円だとしたら、手数料で三%取られて、四%は四万円取られて、五%なら五万円取られる、こういうふうな、五百万円のうちの百万がキャッシュレスで今の現状のものが、右の方を見ていただいたように、これが、政府がキャッシュレスだキャッシュレスだと大きな声を出せば、五百万円のうちの四百万がキャッシュレスになったというふうになったら、三%で十二万円になるんですね。それで、三分の一は政府が出してくれると。しかし、四%以上になったら出さないで、対策しないで十六万、そして五%になったら二十万。

 これは麻生大臣もよく御存じだと思いますが、この手数料の規定というのは信頼度に当てはまっていくわけですね。だから、いつもよく使ってしっかりと信頼度があるところはパーセントは低いんです、手数料の。しかし、この五百万円以下の企業なんかになると、手数料、間違って七%ぐらいある場合があるんですね、信頼がないから。だから、マチヤグヮーというか、沖縄でいえば、もう本当に小さな町の定食屋で、年間三百万とか四百万でやっているところにキャッシュレスが来たら、もうもたないんですよ。

 私が申し上げたいのは、このポイント還元で消費者として使う人のメリットを得るのもいいけれども、同じキャッシュレスをやるんだったら、小さい会社で手数料で困る人たち、これまで対策をした方がいいんじゃないかというのが私の考えなんですけれども、世耕大臣、どうですか。

世耕国務大臣 まず、キャッシュレス社会実現には御賛成いただいているということを感謝したいと思います。

 その上で、今のパネル、申し上げると、ちょっと、さすがに今回の施策でいきなりクレジット比率が八割まで行くとは、なかなか、そこまで効果が出たらうれしいんですけれども、それと、あと、これは売上げが横置きになっていますけれども、先ほどから総理が答弁されているように、インバウンドで、やはりキャッシュレスだったらもっと買うという人がいますから、売上げがふえる可能性があるんじゃないか。

 それと、あと、やはり手数料が高いというのは本当なんです。日本は高いです。ひどいところだと七パーとか取られています。これを、我々は三・二五まで下げることを前提に補助をするということですから、我々の施策に一定の効果はあるというふうに思っています。

 しかも、これからクレジットカード業者はQR決済業者と競争していかなければいけません。一部の業者はもう手数料ゼロと言っています、これはちょっとキャンペーン的なところがありますが。また、ほかの事業者は、銀行口座と直結することによって、恒久的に手数料〇・五みたいなところも出てきています。いつまでも高い手数料で成り立つビジネスモデルは私は持続不可能だというふうに思いますから、この辺はよくクレジットカード業界も考えていただきたいと思っています。

下地委員 何度も申し上げますが、キャッシュレスの時代はいいんですよ。これを消費税の軽減税率対策でやるのはちょっと違うんじゃないかと。

 これは、やってはいけない。逆に言えば、小さいお店なんかの場合には、キャッシュレスを余り進めると、今のような、手数料が高くなって、なかなか難しい。比率がこんなに簡単に変わるわけないとおっしゃるかもしれませんが、それぐらいの変わる勢いでやっていますでしょう。

 それと、こういう小さいお店で、外国人が来て売上げが伸びるって、そう簡単なものじゃありませんよ。それはもう間違いないようにした方がいいと思う。

 そういうふうなことも踏まえて、私が申し上げたい、提案したいのは、こういう小さいところの手数料についても、還元というか、同じ方法をやるんだったら、しっかりと見た方がいいんではないかというような提案をさせていただきたいというふうに思っていますから、よろしくお願いします。

 時間がもう過ぎてきますから、総理、憲法問題についてちょっと、二点お伝えをさせていただきたいんですけれども、今度、憲法調査会がなかなか動かないんですけれども、これは見ておわかりのように、憲法改正、日本国憲法の制定のときには、憲法改正案ができて、その後、憲法を中心とした総選挙が行われて、こうして議会で審議をして、国民投票がなかったわけですね。その後、この日本国憲法が公布された。こういう流れになっているわけです。

 だけれども、私は、今回の参議院選挙が一つの大きなポイントになってくると思って、経済政策をやった、何政策をやったと言って、勝って三分の二をとったから憲法改正をやるというのでは、やはり僕は憲法問題にとってよくないんではないかと。

 ここは、この参議院選挙を憲法改正の予備的国民投票と位置づけて、各党が憲法改正の項目をしっかり出して、これは総理がもう、今の与党のトップである総理が、お互い、立憲も国民も維新も全て、共産も、憲法の内容を出してこいよと。それで、堂々と選挙を戦わす。そして、この選挙の中で、この国民投票的位置づけを、これで、憲法改正でやっておいて、その結果によって選ばれた、憲法改正を主軸にして選ばれた参議院議員を中心にして憲法改正をやっていくというような考え方、この参議院選挙を憲法改正の国民投票の予備選挙みたいなものの位置づけというような考え方で選挙を戦うというようなことを一遍やるべきではないかというのが一点。

 時間の関係でもう一つ申し上げますが、この後、九条を中心にやる。下村博文憲法調査会の会長が、教育無償化、教育に関する、イデオロギーではなくて、九条をやるとイデオロギーが出てくるから、教育という観点からして、この項目を一本に絞ってやっていくことも一つの方策だというのが新聞記事に出ていましたね。

 それの場合にも、私が一番心配するのは、国民投票で失敗したり、やると、もう十年も二十年も憲法改正はなかなかできない。だから、国民に、一番自分の生活にわかりやすくて、自分の生活に影響を及ぼす教育の問題、自民党も項目として挙げています、維新も挙げています、他の党も挙げてくるかもしれない、そういう項目で一回国民投票をやって、その後、イデオロギーでぶつかりがあるような九条の改正とかいろいろなものは二番目にやっていくような、そういう憲法改正を大事にしていくようなやり方というのも一つの方法ではないかと思うんですけれども、この選挙における国民投票的予備選挙みたいな考え方と今の項目についての考え方、総理のお考えをちょっといただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本維新の会が憲法改正について具体的な考え方を示し、真摯に議論しておられますことに対しましては敬意を表したいと思います。

 憲法改正の具体的な内容等について、私は今、内閣総理大臣として答弁しておりまして、この場でお答えすることは差し控えたいと思いますが、その上でお答えさせていただきますと、いわば予備選挙的に参議院選挙をやられる、それは一つの考え方でございますが、しかし、基本的には、三分の二の国会議員がいわば憲法について改正を発議して、そしてその上で、そこで国民投票をしますから、ここで私は関係するのではないのかな、国民との関係においてはですよ。そこで条文を示して、いわば国民の皆さんが一票の票を入れる。

 我が党も既にお示しをしておりますし、さきの、おととし行われた選挙においても、四項目について初めてお示しをさせていただいて、選挙で国民の皆様から力強い御支持をいただいたというふうに我々は考えておりますが。

 いずれにせよ、これをお示しして、どの党が示しても、それがそのまま、恐らく三分の二、なるべく多くの議員の皆さんの支持をいただく中で発議をして国民投票にしよう、こういう考え方、我が党もそういう考え方なんだろうと思いますが、それがそのままいわば国民投票に、その党の考え方がそれがそのままいくというふうには思えないわけでございまして、恐らく憲法審査会で議論しながら、その中で、いわばこういう案でいこうということが決まっていくのが望ましいのではないかな、こう思いますが。

 自民党がお示しをした改憲四項目の中にも教育の充実が含まれているところでありまして、私は、子供たちこそこの国の未来そのものであり、世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、家庭の経済事情にかかわらず、子供たちが夢に向かって頑張ることができる、そのことが憲法において保障されるべきではないかと認識もしていたわけでございますし、我が党においてもそういう議論によって、我々、四項目のイメージを既に党で決定をしておりますが、ああいう形になっているんだろう、こう思います。

 いずれにせよ、この議論がしっかりとこの国会で行われることを期待したい、こう思っております。

下地委員 総理がおっしゃいますが、今、憲法調査会がなかなか動かないんですね。だから、私は、憲法調査会がなかなか動かない、総理がおっしゃったように、選挙をやっても憲法調査会が動くか動かないかわからないとおっしゃいますが、そうではなくて、やはりこの位置づけを、参議院の位置づけを、憲法だという位置づけを本当に明確にして戦えば、憲法調査会をとめることはもうできないんですよね。

 そういうふうな、一つの手段として明確にした上でやるというようなものも一つの方法だということを改めて申し上げておきたいというふうに思いますね。

 それで、最後になりますけれども、菅官房長官にちょっとお聞きします。

 県民投票が行われます。

 私は、県民投票については、認識論として、翁長さんにも、昔、私も県民投票をすべきだという話をしたときに、翁長前知事は、県民投票じゃなくて、私が選ばれたら県民投票と同じようなことだというようなことを言っていましたよ、私に、討論会でも。しかし、この県民投票というのはワンイシューで賛成か反対かをやるようなものでありますから、翁長さんに入れる人でも辺野古を賛成の人がいるかもしれないから、県民投票をやった方がいいんじゃないですかと言ったら、いや、やらないと。私が選ばれたらそれが県民投票と同じ意味だというようなことを言っていました。

 その後、これは、裁判をやって最高裁の判決で負けた。最高裁の判決で負けたものを県民投票をやるというのは、本来からすると間違っているんですよね。私からすると、それはおかしいというのははっきりしているんです。しかし、私がおかしいと言っても、沖縄の県議会は賛成多数で県民投票をやると決まったわけだから、やると決まったものはやればいいんですね。しかし、五億五千万のお金をかけてやるんですけれども、この県民投票は法的根拠は全くありません。

 これがどういう数字になるのかということは関係ありませんが、私の基準としては、私の個人的な基準としては、県知事選挙で得た、投票率六四%、玉城知事が得た三十九万票、これは非常に基準として私はオーソドックスなものじゃないかなと思うんですね。これが五〇%を切る、投票率が切る、玉城知事がとった三十九万票を切っていくというようなことになると、これはまさに、私からすると、県民投票の基準としては弱いものになる。

 そういうふうな強い覚悟でおやりになると思うんですけれども、これはなかなか厳しいものですよ。

 菅官房長官は、この県民投票についてコメントをしないという答弁になることはもうよくわかります。しかし、実際的に国が進めているこの辺野古の埋立てにおいての県民投票になるわけだから、それは、そういうふうな沖縄県がやる県民投票は関係ありませんというのではなくて、自分たちがやっている行為に対する県民の投票なので、やはりどこかで国としても考え方を示すべきではないかと思うんですね。それがあってしかるべきだと思うんです。

 これが県の行事だったらいいですよ。しかし、国が行おうとしている行為に対しての県民投票ですから、そういう意味では、何らかのコメントをしっかり出す。どの基準が評価できる基準で、どの基準が評価できない基準なのかと出すべきだと思うんですけれども、官房長官、いかがですか。

菅国務大臣 県民投票、よく申し上げるんですけれども、地方公共団体が、条例に基づくものであって、政府としてはコメントはすべきじゃないというふうに思います。

 ただ、その上で、せっかくですから申し上げれば、やはり大事なものは、普天間飛行場の辺野古移設をめぐる問題点の原点というのは、市街地に位置し、住宅、学校に囲まれて、世界で一番危険と言われるこの普天間飛行場をどうするかということだと思いますよ。このことが極めて大事だというふうに思います。

下地委員 時間が来ましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

野田委員長 これにて下地さんの質疑は終了いたしました。

 次回は、明十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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