衆議院

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第1号 令和元年10月10日(木曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(令和元年十月四日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 野田 聖子君

   理事 井野 俊郎君 理事 後藤 茂之君

   理事 坂本 哲志君 理事 堀内 詔子君

   理事 逢坂 誠二君 理事 渡辺  周君

   理事 伊藤  渉君

      あきもと司君    伊藤 達也君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君   うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    小野寺五典君

      奥野 信亮君    金田 勝年君

      神山 佐市君    河村 建夫君

      笹川 博義君    棚橋 泰文君

      根本  匠君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    古屋 圭司君

      村上誠一郎君    山際大志郎君

      山口  壯君    山本 幸三君

      山本 有二君    渡辺 博道君

      小川 淳也君    大串 博志君

      奥野総一郎君    川内 博史君

      後藤 祐一君    武内 則男君

      西岡 秀子君    本多 平直君

      松原  仁君    森田 俊和君

      早稲田夕季君    太田 昌孝君

      岡本 三成君    藤野 保史君

      宮本  徹君    杉本 和巳君

    ―――――――――――――

十月四日

 野田聖子君委員長辞任につき、その補欠として棚橋泰文君が議院において、委員長に選任された。

令和元年十月十日(木曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 棚橋 泰文君

   理事 井野 俊郎君 理事 後藤 茂之君

   理事 坂本 哲志君 理事 葉梨 康弘君

   理事 堀内 詔子君 理事 山際大志郎君

   理事 大串 博志君 理事 渡辺  周君

   理事 伊藤  渉君

      あきもと司君    秋本 真利君

      安藤  裕君    伊藤 達也君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君   うえの賢一郎君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      小渕 優子君    大岡 敏孝君

      奥野 信亮君    金田 勝年君

      神山 佐市君    河村 建夫君

      岸田 文雄君    小林 鷹之君

      古賀  篤君    笹川 博義君

      鈴木 憲和君    田畑 裕明君

      武井 俊輔君    武部  新君

      中山 泰秀君    西田 昭二君

      根本  匠君    野田  毅君

      原田 義昭君    平沢 勝栄君

      藤丸  敏君    堀井  学君

      宮内 秀樹君    宮澤 博行君

      村上誠一郎君    山口  壯君

      山田 賢司君    山本 幸三君

      山本 有二君    渡辺 博道君

      青山 大人君    浅野  哲君

      池田 真紀君    今井 雅人君

      小川 淳也君    大西 健介君

      岡本 充功君    川内 博史君

      玄葉光一郎君    後藤 祐一君

      関 健一郎君    高木錬太郎君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      本多 平直君    馬淵 澄夫君

      前原 誠司君    山本和嘉子君

      石田 祝稔君    國重  徹君

      濱村  進君    藤野 保史君

      宮本  徹君    杉本 和巳君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 高市 早苗君

   法務大臣         河井 克行君

   外務大臣         茂木 敏充君

   文部科学大臣       萩生田光一君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       江藤  拓君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      菅原 一秀君

   国土交通大臣       赤羽 一嘉君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    小泉進次郎君

   防衛大臣         河野 太郎君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       田中 和徳君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       武田 良太君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (海洋政策担当)     衛藤 晟一君

   国務大臣

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     竹本 直一君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (全世代型社会保障改革担当)

   (経済財政政策担当)   西村 康稔君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (地方創生担当)     北村 誠吾君

   国務大臣

   (男女共同参画担当)   橋本 聖子君

   財務副大臣        遠山 清彦君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            更田 豊志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  松本 裕之君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   青柳 一郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   荒木 真一君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山田  弘君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  白川 靖浩君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  中島 淳一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (国税庁次長)      田島 淳志君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官)    小澤 典明君

   政府参考人

   (経済産業省電力・ガス取引監視等委員会事務局長) 佐藤 悦緒君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 高橋 泰三君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            蒲生 篤実君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  眞鍋  純君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   片山  啓君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   予算委員会専門員     鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月四日

 辞任         補欠選任

  野田 聖子君     秋本 真利君

  逢坂 誠二君     辻元 清美君

  奥野総一郎君     岡本 充功君

  武内 則男君     今井 雅人君

  西岡 秀子君     大西 健介君

  松原  仁君     馬淵 澄夫君

  森田 俊和君     玄葉光一郎君

  早稲田夕季君     前原 誠司君

  太田 昌孝君     濱村  進君

  岡本 三成君     國重  徹君

同月十日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     小渕 優子君

  今村 雅弘君     武井 俊輔君

  衛藤征士郎君     堀井  学君

  笹川 博義君     岸田 文雄君

  根本  匠君     藤丸  敏君

  平沢 勝栄君     宮内 秀樹君

  古屋 圭司君     山田 賢司君

  山本 幸三君     古賀  篤君

  渡辺 博道君     鈴木 憲和君

  大西 健介君     玉木雄一郎君

  岡本 充功君     池田 真紀君

  後藤 祐一君     青山 大人君

  本多 平直君     高木錬太郎君

  前原 誠司君     関 健一郎君

  濱村  進君     石田 祝稔君

同日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     西田 昭二君

  岸田 文雄君     笹川 博義君

  古賀  篤君     山本 幸三君

  鈴木 憲和君     渡辺 博道君

  武井 俊輔君     今村 雅弘君

  藤丸  敏君     根本  匠君

  堀井  学君     田畑 裕明君

  宮内 秀樹君     武部  新君

  山田 賢司君     大岡 敏孝君

  青山 大人君     浅野  哲君

  池田 真紀君     岡本 充功君

  関 健一郎君     前原 誠司君

  高木錬太郎君     山本和嘉子君

  玉木雄一郎君     大西 健介君

  石田 祝稔君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     小田原 潔君

  田畑 裕明君     宮澤 博行君

  武部  新君     平沢 勝栄君

  西田 昭二君     安藤  裕君

  浅野  哲君     後藤 祐一君

  山本和嘉子君     本多 平直君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     秋本 真利君

  小田原 潔君     小林 鷹之君

  宮澤 博行君     中山 泰秀君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     古屋 圭司君

  中山 泰秀君     衛藤征士郎君

同日

 理事田中和徳君九月十一日委員辞任につき、その補欠として山際大志郎君が理事に当選した。

同日

 理事宮下一郎君九月十三日委員辞任につき、その補欠として葉梨康弘君が理事に当選した。

同日

 理事逢坂誠二君同月四日委員辞任につき、その補欠として大串博志君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

棚橋委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 皆様方の御推挙によりまして、予算委員長に選任されました棚橋泰文でございます。

 まことに光栄に存じますとともに、その職責の重大さを痛感しております。

 微力でありますが、委員各位の御協力を賜り、公正かつ円満な委員会運営を図ってまいる所存でございます。

 何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

棚橋委員長 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が三名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

棚橋委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      葉梨 康弘君    山際大志郎君

   及び 大串 博志君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

棚橋委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

棚橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

棚橋委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁雨宮正佳君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官松本裕之君、内閣府政策統括官青柳一郎君、内閣府政策統括官荒木真一君、公正取引委員会事務総局審査局長山田弘君、警察庁生活安全局長白川靖浩君、金融庁企画市場局長中島淳一君、法務省民事局長小出邦夫君、国税庁次長田島淳志君、厚生労働省保険局長浜谷浩樹君、経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官小澤典明君、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会事務局長佐藤悦緒君、資源エネルギー庁長官高橋泰三君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史君、国土交通省総合政策局長蒲生篤実君、国土交通省住宅局長眞鍋純君及び原子力規制庁次長片山啓君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

棚橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

棚橋委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岸田文雄君。

岸田委員 おはようございます。自由民主党の岸田文雄でございます。

 参議院選挙が終わって初めての予算委員会が始まりました。

 参議院選挙においては、我々自由民主党、まずは一昨年の衆議院総選挙の公約二百五十七項目について進捗状況等を検証した上で、七カ月かけて選挙の公約というものをつくり上げました。

 選挙が終わった今、ぜひ、参議院選挙の公約、国民の皆さんとの約束、こうした国会の論戦等を通じまして一つ一つ実現していく、こういった努力をしっかり続けていきたいと存じます。

 そして、きょうは、最初に二つだけ、総理に、明るい話題でコメントをお願いしたいと存じます。

 まず一つは、これは大変ホットな話題ですが、ノーベル化学賞を吉野彰さんが受賞された、こういったニュースが昨晩飛び込んでまいりました。心からお喜びを申し上げたいと思います。

 日本人で二十七人目、また、最近は毎年日本人の受賞が話題になる、こういった状況が続いています。昭和の時代、あるいは平成の時代、我が国の科学技術、研究、こういったものへの取組の成果がこういった形であらわれているんだと思います。そして、ぜひ令和の時代も引き続きこうあってもらいたいと心から思います。

 まず総理、吉野さんの受賞について一言お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 昨日の吉野彰先生のノーベル化学賞受賞の一報を受けまして、本当に心躍る思いでございました。国民の皆様とともに喜び合いたいと思いますし、リチウムイオン電池の開発、この技術によって、携帯電話にしても、あるいはノートパソコンにしても、あるいは電気自動車、まさに社会や世の中を大きく変える力となった、こう思っています。

 今後、地球温暖化対策の上においても、こうしたイノベーション、まさにこのイノベーションの力によってさまざまな課題の克服にもつながっていくわけでございますし、多くの研究者に力を与える受賞だったのではないかと、本当に日本人として私も誇りに思うところでございますし、また、子供たちに夢を与えるような受賞だったと思います。

 これからも更に吉野先生には御活躍をいただきたい、こう思っています。

岸田委員 ありがとうございました。

 そして、もう一点だけ、ちょっと総理にコメントをお願いしたいことがあります。それは、今行われているラグビーのワールドカップについてです。

 私は、このラグビーのワールドカップ、いろんなことを私たちに考えさせてくれる、こういった多くの要素を含んでいると考えています。もちろん、このラグビーのワールドカップ、日本じゅうが沸き上がっています。そして、日本チームが強豪チームを打ち破る、こういった善戦が続いています。世界最高レベルのスポーツを楽しむことができる、こういったことでも大変魅力があるわけですが、例えば、政治の立場、日本の社会のありようということについてもいろいろ考えさせられる要素があるのではないか、このように思っています。

 例えば、日本代表チーム、外国籍の選手が七人含まれています。また、帰化した選手、八人含まれています。こうしたチーム構成で、日本代表として一丸となって戦う。日本の社会の多様性のあり方ということについても考えさせられるのではないか。また、こういったさまざまなチームが、それぞれの特性を生かして、それぞれの役割分担のもとに、勝利に向けて努力をする。社会においてそれぞれの個性をどう生かしていくのか、こういったことについても考えさせられるのではないか。さらには、この厳しい国際社会の中で日本はどうやって生きていかなければならないのか。こういった点についても考えさせられる。政治の立場からも大変興味深い要素がたくさん含まれているのではないかと私は感じています。

 さまざまなヒントも与えてくれる貴重な経験だと思いますが、総理は、このラグビーワールドカップ、試合をごらんになられて、どんなメッセージをこのラグビーのワールドカップから得ておられるか、一言お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 そもそも、このラグビーワールドカップの開催が日本に決まった段階においては、まだこんなにラグビー熱は充満しているわけではなくて、予選も突破できないのに日本に誘致して大丈夫なんだろうか、こうみんな思っていたのでありますが、四年前のロンドン大会において南アフリカを破り、一気に、日本チームすごいじゃないかと、四年後のこの大会開催がみんな楽しみに思えるようになったのでございます。そして、今回のチームの活躍で、本当に日本じゅうが沸いていると思います。私も少しルールに詳しくなってきたところでございますが。

 そして、まさかと言っては失礼なんですが、まさかアイルランドに勝てるとは思わずに、ワントライ、七点差だったら一点だななんて思っていた人もいるんだろうと思いますが、選手の皆さんのコメントは、自分たちは必ずこの四年間の努力の成果が出てくると自分たちを信じていたというコメントに大変感動したところでございます。

 そして、チームのメンバー構成についても、今政調会長から言及がございましたが、四年前のロンドン大会から既にそうだったわけでございますが、今回は約半数近くが日本国籍に帰化した方あるいは外国籍の方が、まさにワンチームという日本チームのこの信念のもとに、多様性を認め合い、そして、お互いに切磋琢磨しながら協力し合ってチーム一丸となって戦った結果、成果が出ているということであり、まさにこれは多様性の持つ力ではないか。

 その教訓とは何か、教えられるところは何かといえば、決して諦めずに頑張っていくことのとうとさと、そしてこの多様性ではないのかな、こう思っております。

岸田委員 ありがとうございます。

 さまざまなヒントを与え、そして大きな影響を与えているラグビーのワールドカップ、これはアジアにおいて、そして日本において初めて開催されるラグビーのワールドカップですが、本当に多くの方々がこの開催に向けて努力を積み重ねてきました。

 その中で、最近よく聞きますのは、二〇〇三年、イラクで殉職された奥克彦大使も、貢献された、大きな力を与えた一人であるという話を聞きます。

 私も、かつて文部科学の副大臣を務めていた時代にヨーロッパ視察をした際、英国大使館におられた奥大使に、同窓の御縁もありまして、数日間にわたってアテンドしてもらった、一緒に過ごした時期がありました。その際に、ラグビーについて、また留学先のオックスフォード大学について、本当に熱い思いを語っておられた。大変懐かしく思い返しています。

 この奥克彦大使が命をかけて取り組んだ課題、ラグビーのほかにも、中東の安定というものがあります。しかしながら、残念ながら、中東情勢、今なお大変不安定なものがあります。前日、サウジアラビアの石油基地の攻撃もありました、また、きのうから報じられているところによりますと、トルコの軍事行動も開始された、こういったことであります。中東の安定、エネルギー問題一つとっても我が国の国益に大変大きな影響がある、大変重要な課題であると認識をしています。

 その中にあって、総理は、米国とイランの関係が深刻化する中にあって、この両国の緊張緩和に尽力をされてこられました。

 たしか、ことし六月には、日本の総理として四十一年ぶりにイランを訪問された。福田赳夫総理以来、イラン革命後は初めての日本の総理の訪問ということでありました。また、先日の国連総会の際にはロウハニ大統領と首脳会談を行った。その際に、イランは核兵器を含む全ての大量破壊兵器に反対する、こうした明確な発言を引き出されました。一方、米国トランプ大統領とも緊密に意見交換を繰り返しておられる。

 総理はこうした努力をされておられるわけですが、米国とイランの関係。米国は、言うまでもなく、我が国の外交、安全保障の基軸である日米同盟があります。また、イランとの関係も、かつて日章丸事件等のさまざまな経緯の中で、歴史的な友好関係にある。日本はそういった関係にあると評価されています。

 日本は、米国、イラン、この大国同士の関係を安定させるために橋渡しができる、こうしたポジションにあるわけですが、一歩間違えますと、これはもう両国との関係で身動きがとれなくなってしまう、こういった状況にもなりかねない、こうしたポジションにあるとも認識をしています。まさに日本外交の外交力が問われる、こういった事態ではないかと思います。

 この米国とイランの関係、私も日本・イラン友好議員連盟の会長という立場をいただいております。この状況を大変大きな関心を持って見詰めています。

 総理は、今後、米国とイランの関係、どのように橋渡しをし、そして中東の安定を実現して、我が国の国益をどうやって守ろうとされているのか、ひとつ思いをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 この中東情勢というのは、長年にわたって不安定な状況が続いておりますし、大変複雑な関係にもなっているわけでございまして、その安定化を図っていく、緊張緩和もそう簡単なことではないわけでございますし、地域を安定化させていくという努力も、一朝一夕に成果を出し得るものではないわけでございます。

 しかしながら、我が国の原油輸入の約八割が通過するホルムズ海峡における航行の安全を確保することは、例えば我が国のエネルギー安全保障上、死活的に重要であり、この地域の平和と安定は我が国の国益に直結をしているということでございます。

 その中で、岸田政調会長にも、外務大臣時代に中東、イランも含めて足を運んできて、努力を重ねてきていただいたところでございますが、このホルムズ海峡付近では、六月の我が国関係船舶への攻撃事案を含め、航行の安全に影響を及ぼすような事案が複数発生しておりまして、先般のサウジアラビアの石油施設への攻撃などにより、中東情勢が深刻の度を増していることを強く懸念をしております。

 今御紹介いただきましたように、六月にはイランを訪問しまして、ハメネイ最高指導者、そしてロウハニ大統領と首脳会談を行いました。その際、ハメネイ最高指導者からは、核兵器を製造せず、そして保有せず、さらには使用しないということを、この三つを禁止しているということを明確に発言されたわけでございますし、また、ロウハニ大統領も、決して戦争、武力衝突は望んでいないという言葉もあったわけでございますが、今回、国連総会の場においてもロウハニ大統領と首脳会談を行い、その際、イランは核兵器を含む全ての大量破壊兵器に反対するとの明確な発言がロウハニ大統領からあり、地域の平和と安定へ向けた意思を改めて確認をいたしました。

 この会談を踏まえまして、その後、トランプ大統領と会談を行った際に、中東情勢について、そして緊張緩和に向けて、相当突っ込んだ率直な議論を行ったところでございました。

 今後も、日本としてできる役割を果たしていきたい、地域の緊張緩和と安定化に向けて粘り強い外交を展開をしていきたい、こう考えております。

岸田委員 ぜひ、我が国の国益のために、中東の安定のために、総理、引き続き御努力をお願いいたしたいと思います。

 そして、我が国の国外のさまざまなリスクの中に、今の中東問題ももちろんありますが、身近なところでは北朝鮮問題があります。

 先般も弾道ミサイルの発射が行われ、ことし十二回目。また、今回は新型のSLBMではないか、こういった指摘もあります。こうした北朝鮮の軍事技術の進化、これは重大かつ差し迫った国民にとっての脅威でありますし、国際社会の安定、安全、こういったものを損なうものである、このように認識をします。

 しかしながら、総理に私たち自民党の党内の議論の雰囲気を率直に申し上げるならば、政府の対応あるいはこうした北朝鮮の動きに対する説明、これに対する大変な歯がゆさを感じている、こういった雰囲気があります。そして、毎回毎回、ミサイルが発射されるたびに開かれる会議で、このフラストレーションはますます大きくなっている、こういったことを感じてなりません。

 私も、先ほど総理に触れていただきましたように、かつて外務大臣も務めました。また、短期間ですが、防衛大臣も兼務した時期がありました。よって、この手の問題が、我が国の外交、安全保障の機密にかかわる部分がある、そう簡単にこれは公にすることができない、こういった事情はもちろんわかります。なおかつ、朝鮮半島の安定に向けて米朝協議が進められている、この米朝協議を支持し、後押しする、こういった立場からいろいろな配慮をしなければならない、こういった事情もあるのではないか、これも想像をいたします。

 しかしながら、こうした配慮を続けている間に、言葉をかえて言うならば、北朝鮮が時間稼ぎをしている間に、日本国民の不安が、ミサイル技術等がどんどん進化する中で高まっていってしまう、こういったことでいいのか。さらには、ミサイルが発射されるたびに、米国を始め関係国と連携をしながら対応してまいりますという説明だけで済ますというのでは、これは国民の不安、不満は募るばかりだと思います。

 このような党内あるいは国民の雰囲気の中、少なくとも、国民の命や暮らし、これは絶対に守り通すんだという強い覚悟、こうした強いメッセージをせめて国民に示していただく、こういったことが大事なのではないかと思いますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 弾道ミサイル発射が安保理決議違反であることは明白であり、こうした立場について、例えば先般のG7の際に行った日米首脳会談で、冒頭、私から、北朝鮮の短距離弾道ミサイルの発射は安保理決議違反であり、極めて遺憾である旨述べ、トランプ大統領から、完全に理解する旨の発言があるなど、累次の機会に確認をしてきているところでありまして、今後とも、我々、国民の命そして平和な暮らしを守り抜くという決意のもとに、しっかりと外交努力を重ねていく考えでございますし、同盟国たる米国と緊密に連携をし、そして国際社会と協力をし、そして国民の命を守っていく、この方針には変わりがないわけでございます。

 今、岸田委員が言われたように、では、私たちが何をしているかということでございますが、私もこの北朝鮮の問題にずっと、二十数年来かかわってきているのでございますが、小泉総理そしてブッシュ大統領との間で、対話と圧力という基本的な考え方によって北朝鮮の政策を変えさせていくという方針を定めました。残念ながら、まだその成果が出ているわけではないのでございますが。しかし、その中で、かつては日本はほとんど制裁もできなかったのが事実であります。しかし、今は、制裁を可能にする法律ができ、我々としてはかなり、制裁においては最大限の制裁、圧力をかけているわけでございますが、安保理決議によっても国際的に制裁をかけている中において、日本は、例えば瀬取り対策については日本が主導して、自衛隊が中心になって瀬取り対策を行い、米軍、あるいはカナダ、イギリス、フランス、豪州等からも参加を得ているわけでございます。

 今まで、どちらかといえば、こういうものはアメリカが主導して、日本がいろいろ考えながら、しばらくたって参加するということだったわけでございますが、これはまさに日本が主導し、多くの国に参加を呼びかけ、海上、航空から瀬取り対策を行い、それなりの成果を上げているわけでございますし、また、当然、中国への働きかけも強めているわけでございますが、要は、大切なことは、しっかりと国連決議を完全に履行していくことが大切であります。我が国はもちろん完全に履行しているわけでございますが、更に多くの国々が履行するよう強い働きかけをこれからも行っていきたいと思います。

 同時に、今、懸念についてお話がございましたが、我が国としても、弾道ミサイルの発射を始めとする北朝鮮の軍事行動について、引き続き、米国と緊密に連携をしながら、必要な情報の収集、分析及び警戒監視に全力を挙げていくとともに、このミサイル防衛能力の強化を着実に進めていく必要があるわけでございまして、しっかりとそれを進めていきたい、こう考えております。

岸田委員 ありがとうございます。

 ぜひ、総理の国民の命を、暮らしを守るこの覚悟、これからもしっかりと発信をしていただければと思います。

 そして、外交問題、最後にもう一つだけお伺いいたします。

 先ほど、日本の社会の多様性ということ、ラグビーのワールドカップの際に申し上げましたが、国際社会の多様性ということについてです。香港問題についてです。これは外務大臣に一つお伺いしたいと思います。

 香港においては、今月一日、デモに参加した高校生が銃で撃たれる、こういった事案が発生しました。中国の国内問題であるとはいえ、この香港の誇る多様性、これが危機に瀕している。また、香港には、現実、多くの邦人が今生活をしているわけですから、現下の状況を強く憂慮するところです。

 本年の八月、フランスでG7サミットが開催されました。総理も御出席になられました。

 G7の首脳宣言で、中国政府が返還後五十年の間香港の高度な自治を尊重するとした一九八四年の英中共同宣言、この共同宣言の重要性、これを改めてG7の首脳宣言において確認をしています。香港において自由や多様性が尊重されるべきである、こうした国際社会の思いも確認をされています。

 こういったことを踏まえて、平和的に香港の自由や多様性が維持されること、これをぜひ期待したいと思います。

 この昨今の香港情勢について、どのように認識し、また日本はどのように対応しようと考えているのか。これは外務大臣にお伺いいたします。

茂木国務大臣 岸田政調会長には、外務大臣として四年八カ月にわたって日本外交をリードしてこられたと改めて敬意を表し、また、引き続き御指導をよろしくお願い申し上げたいと思っております。

 さて、昨今の香港情勢でありますが、毎日、報道でもされていますように、デモ隊と警察等の衝突によりまして多数の負傷者が出ているわけでありまして、そのことを大変憂慮いたしております。自制と平和的な話合いを通じた解決を関係者に強く求めるとともに、事態が早期に収拾され、香港の安定が保たれることを期待いたしております。

 確かに、G7の首脳会談、八月二十六日、政調会長が引用されたように、一九八四年の英中の共同声明の存在と重要性を再確認をして、暴力を回避することを求める、こういう明確な宣言も出しているところであります。

 そして、香港、私もこの一月、経済再生担当大臣時代に訪問いたしましたが、我が国にとって、緊密な経済関係、さらには人的交流を有する極めて重要なパートナーでありまして、多様性を持っている、自由で開かれた香港社会というのは、日本を含むこの地域の繁栄と発展にとっても極めて重要だ、このように考えております。

 中国に対しては、さまざまなレベルで、引き続き、一国二制度のもと、自由で開かれた香港が繁栄していくことの重要性、これを指摘をしているところでありまして、引き続き、高い関心を持って、情勢を注視をしていきたいと思っております。

岸田委員 昨今、国際社会を見ておりますと、力による外交、あるいは強権的な政治の動き、さまざまなものを見ます。どうも息苦しさを感じるような気がします。そういった中ですので、こうした多様性あるいは自由に対する動きについては、我が国もぜひ敏感でありたいというふうに思います。引き続きの努力をお願いいたします。

 話題を国内にかえたいと思います。

 総理は、今回の内閣改造に当たりまして、安定と挑戦という言葉を掲げられました。安定あってこその挑戦であって、別の言葉で言えば伝統と変化、これはまさに十八世紀の保守思想の父と言われましたエドモンド・バークの保守思想、伝統と変化という言葉、こういった言葉に通じるものではないかと思います。きょうは、この安定と挑戦という言葉の中身として、私が考えます幾つかの政治課題についてお伺いしたいと思います。

 まず最初に安定の方ですが、今月から消費税率八%から一〇%に引き上げられました。もとより、税率の引上げが目的ではないわけであります。十月一日、消費税率の引上げと同時に、幼児教育、保育の無償化がスタートし、介護保険あるいは低所得の年金者に対する支援が始まり、そして、来年四月からは、真に必要とされる方には高等教育の無償化が行われる。十月一日からは、こうした全世代型の社会保障が具体的に動き始めた、このように理解するべきだと思いますし、そして、そのための安定財源として消費税は重要である、こういったことなんだと思います。

 一方、消費税は、経済や生活に大きな影響を及ぼすことが心配される。さまざまな懸念の声に真摯に応えて、円滑な引上げ、これを実現するために、令和元年予算にも臨時特別の措置として二・三兆円の予算を計上する。あるいは、駆け込み需要、反動減対策、あるいは予算、税制の支援などさまざまな準備をしてきた、これが今日までの経緯でありました。

 税率の引上げ、そしてさまざまな措置、スタートしてきょうでちょうど十日となりました。これまでの経緯、総理はどのように見ておられますか。

安倍内閣総理大臣 まさに、この十月の一日から消費税が八%から一〇%に引き上げられたわけでございますが、三歳から五歳の全ての子供たちの幼児教育、保育の無償化が始まり、来年四月からは、真に必要な子供たちの高等教育の無償化が始まるわけでございまして、全世代型社会保障へ向けた大きな一歩が踏み出された日であるとも言える、こう考えております。

 今回の消費税率引上げに当たっては、教育の無償化や軽減税率に加えまして、思い切ったポイント還元、そして、プレミアムつき商品券、自動車や住宅に対する大胆な減税など十二分な対策を講じているところでございまして、これらの対策が円滑に実施されるかについては、引き続き注視をしていく必要があると考えているところでございますが、こうしたいわば十分な配慮を行いながら、景気に対する影響、消費に対する影響について十二分に目配りをしていきたい、こう考えているところでございます。前回の五%から八%へ引き上げた際の消費あるいは経済に対する影響も十分に踏まえながら今回の対策をやっている、こういうことでございまして、今の状況についての御質問ということですか。(岸田委員「はい。この十日間です」と呼ぶ)ということですね。

 そこで、例えば軽減税率については、関係省庁が連携して、事業者団体等を通じた情報収集もしながら、周知、広報も含め、その円滑な実施や定着に向けて取り組んでまいりたい、こう思っております。

 また、ポイント還元については、現在の参加店舗数は五十万店でございまして、申請店舗数は八十五万店を超えておりまして、一日一万店のペースで申請が増加をしている、こう思っているところでございますが、より多くの中小店舗に参加をいただけるよう、決済事業者による審査体制の強化、制度のさらなる周知にしっかりと取り組んでまいりたい、こう思います。

 引上げによる影響に十分目配りするとともに、各種制度が円滑に実施されるよう政府一丸となって対応することで、経済の大宗を占める国内消費をしっかりと下支えをし、経済の好循環を確保してまいりたいと考えております。

岸田委員 総理おっしゃるように、まず、国民は冷静に対応しておられるというふうに思います。そして、さまざまな措置も成果が上がっていると思います。しかしながら、やはり混乱が生じている部分もある。このことを私たちは忘れてはならない。ぜひ、こういった部分にもきめ細かく目配りしながら、丁寧に説明、対応していかなければいけない、これは引き続きお願いいたします。

 そして、こうした経済の影響は、国内の中だけで推移する、完結するものではありません。先ほどの中東情勢もそうですが、米中貿易摩擦あるいはブレグジットなどさまざまな、我が国の経済の下振れリスクは海外にも存在するわけでありますから、こういったものにもしっかり目配りをしなければいけない。

 そして、こうした世界経済が抱える下振れリスクも含めて、総理は、仮にリスクが顕在化すれば、ちゅうちょすることなく、機動的かつ万全な政策対応を行う、これを表明されています。私も全く同感であります。

 これは、状況、必要であるならば、与党の政調会長として、思い切ったマクロ的な経済対策も含めて、日本経済と国民の暮らしを支えていかなければいけない、このように強く思います。

 ただ、問題は、その見きわめ、タイミング、あるいはその見きわめ方法ではないかとも思っています。

 例えば、十月―十二月期のGDP一次速報、来年二月になります。普通に考えれば、既に来年度の予算審議が始まっている時期、この時期で判断をするというのでは遅いかもしれない。やはり、必要であるならば、年末の予算編成の時期にも対策を考えることも準備しておかなければいけないのではないか、こんなことも思います。

 政府として、いつどのように経済情勢を把握して対策等の判断を行うのか。これは経済財政担当大臣にお伺いいたします。

西村国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほど安倍総理から答弁させていただきましたとおり、今回の消費税引上げに際してはさまざまな対策を講じているところでございます。まずはこれらの対策を、しっかりと広報もしながら、着実にまず実行していきたいというふうに考えております。そして、その効果も見きわめていきたいというふうに考えております。

 そして、御指摘ありましたとおり、経済の動向についてしっかりと注意深く見ていかなきゃいけないなというふうに考えているところでございます。

 御指摘のとおり、世界経済の動向、これも注視をしながら、さらに、引上げ後の経済動向について、月次のデータを待っていますとこれはおくれてしまう可能性もあるという御指摘のとおりでありますので、ヒアリングを行いながら、また現場への視察も行い、さらには、週次のデータあるいは日次のデータ、こういったものも含めてきめ細かく経済状況を把握して、分析してまいりたいというふうに考えております。

 日々こうした緊張感を持った取組を続けることで、経済の変調をしっかりと見きわめながら、必要が生ずれば、後手に回ることがないよう、機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行してまいりたい、このように考えているところでございます。

岸田委員 ぜひしっかりとしたタイミング、そして判断をお願いしたいと思います。

 そして、安定ということでもう一つお伺いいたします。災害への備えということです。

 ことしも各地で豪雨災害、台風の被害、発生をいたしました。改めて、被災された方々にはお見舞いを申し上げ、そして、復興復旧、救出等に御尽力されました地方自治体、消防、警察、自衛隊、ボランティア始め多くの皆様方の努力に心から敬意を表し申し上げたいと思います。

 こうした災害への備え、これは完璧というものはありません。過去の経験や反省に照らして、絶えず実効性の高いもの、これを模索していかなければならない、こういったことなんだと思います。

 今回、その災害の中で一つ取り上げさせていただくとしたならば、千葉県における長期の停電についてであります。改めて、電力、これは人々の生活にとって欠くことができない、こういったものであると思いますし、停電が長引いたことによって、暮らしへの影響はもちろんですが、産業においても、在庫の毀損等、長期的な大きな影響をもたらすことになった。電力の安定供給の重要性、強く感じたところです。

 そして、送配電網の強化については、さまざまな取組が指摘をされているわけですが、鉄塔や電柱の施設基準、これも見直すことが必要ではないかとか、あるいは電柱の地中化、無電柱化、こういった議論もあります。

 この無電柱化ということで言うのならば、パリやロンドン、ヨーロッパの主要都市、あるいは香港やシンガポール、アジアの主要都市、これは一〇〇%無電柱化、これが達成されている。その中で、日本は、東京二十三区で八%、大阪市で六%、こういった状況です。

 この点も含めて、災害への備えという観点から、電力システムの強靱化についてどう考えるのか、経済産業大臣、お願いします。

菅原国務大臣 先般の台風十五号によりまして、大変長期にわたって停電が発生をいたしました。被災地の住民の皆様に大変な御不便をおかけしたことを、電力の安定供給をつかさどる経産大臣としておわびを申し上げたいと思っております。

 その上で、今、岸田先生からもるるお話ありましたとおり、経産省といたしましても、専門家によるフルオープンの審議会を立ち上げまして、停電の範囲、原因や、あるいは復旧のプロセスについて徹底的に検証していきたい、その結果を踏まえて、お話ありました送配電網の強靱化を進めていきたいと思っております。

 一つ目は、まず電柱のお話。景観だけではなく、やはり無電柱化推進計画及び防災・減災、国土強靱化のための三カ年緊急対策をしっかり進めまして、電力会社や国交省とともに連携して、この無電柱化、地下埋設を進めていきたい、このように思っております。

 二つ目は、今回の災害で非常に鉄塔が倒壊をいたしました。その原因を検証して、鉄塔の構造などの技術基準の見直しも検討してまいります。

 三番目に、鉄塔の約六割が建設後三十五年以上たっている、いわゆる高経年の鉄塔が多うございますので、こうしたものもしっかりと、メンテナンスや追加の投資の必要性について、費用負担のあり方も含めて検討してまいります。

 最後になりますが、停電の軒数はメーターですぐ把握できたんですが、復旧を見誤ったという経過がございます。

 これは、今後、カメラつきのドローンを山奥とかにしっかりと敷衍させるようにする、あるいは、そうして早期の情報の把握や復旧見通しをしっかりと提示をする、そして、電力会社間の連携をとって、電源車やポータブル発電機といったものをプッシュ型で支援をしていく、さらには、病院等の重要な施設に早期の配備をするためには、自治体との連携をする、また、倒木の処理についても、いわゆる、本当に現場力を一番発揮してくれた自衛隊の皆さんとともに提携していく、このようなことをしっかり進めて、今回のことを糧としてしっかり次に備えていきたい、こう思っています。

岸田委員 電力というもの、改めて、国民生活あるいは産業にとって切っても切れないものだということを感じています。それだけに、国民の信頼、これはまことに重要であると考えます。電力会社、これは公的な責任もしっかり担っている、こういったことも感じます。

 そういった点から考えますときに、今回の関西電力の金品受領問題、これは言語道断の事態であると、強い憤りを感じるところです。

 これは、今、第三者委員会の動き等もありますが、まずは実態、これをしっかりと明らかにしていかなければいけない、そして責任の所在をしっかり明らかにしなければならない、さらには、今後の再発防止、こういったものについてもしっかりと取り組んでもらわなければならない、これは当然のことだと思います。(発言する者あり)

棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。

岸田委員 加えて、経済産業省においては、ぜひ、ほかの電力会社も含めて、しっかりとした監督責任、これはしっかりと果たしてもらわなければならない。これは、ぜひ、こうした国民の大きな関心を呼んでいる課題です、大臣にはしっかりと監督責任を果たすべく努力をしていただきたい、これを強く申し上げておきたいと思います。

 そして、その上で、今度は挑戦の部分について一つ申し上げます。これは、成長戦略への挑戦、あるいはチャレンジ、こういった部分です。

 さまざまな統計、企業収益等を考えますときに、私は、アベノミクスによって経済、これは安定成長の軌道が持続されていると認識をしていますが、しかし、経済の活力、これを持続させる、更に飛躍をさせる、こういったことを考えたならば、経済の基礎体力、さらには潜在成長力の引上げ、こういったものが必要であり、大胆な成長戦略、こういったものへの挑戦、これは欠くことができない、このように思います。

 自民党においても、五月の十四日に成長戦略を取りまとめ、政府に提案をいたしました。二十一世紀の石油と言われるデータの利活用、データ駆動社会の構築を中心に据えての成長戦略を提言したわけですが、総理も、ダボス会議あるいはG20の場で、こうしたデータの利活用の重要性、こういったものを訴えておられます。

 データの利活用、データ駆動社会の鍵ですが、データ、これは何よりも利用できる形にすること、そのためには、データフォーマットの統一、汎用化、あるいはデータ項目の統一など、省庁横断的な取組、これが不可欠です。これについてどのように取り組んでおられるのか。

 さらに、もう一つお伺いしたいのは、データ技術の発展、データの利活用、これは、国内的な取組だけでは活用することができません。国境を越えたルールづくりが必要だということで、米中あるいは米欧、こうした対立が深刻化する中で、日本がルールづくりを主導していっていること、これは大変重要である、こういった認識が高まっています。

 総理も、ダボス会議、G20の場でアピールされたDFFT、データ・フリー・フロー・ウイズ・トラスト、こうした実現に向けて総理のお考えもお聞かせいただきたいと存じます。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 ただいま岸田政調会長から、大きく分けて二問いただいたと思います。

 まず、AI、IoT、ビッグデータなど、第四次産業革命が世界を一変させようとする中において、デジタルデータこそが新しい時代の付加価値の源泉であります。岸田議員御指摘のとおり、こうしたデータの利活用が国際競争力を左右する時代となっていると認識をしています。変化のスピードが一層加速する中で、データの利活用を促すインフラづくりが急務となります。

 特に、データの量が集まれば集まるほどその価値が高まっていく。御指摘のとおり、フォーマットなどの統一を図ることが重要でありまして、政府において、現在、官民が有するデータについて、共有を容易とするインフラとしてデータ連携基盤の整備を進めています。

 同時に、デジタル時代の到来を踏まえた制度面でのインフラづくりも重要でありまして、政府として、今般、デジタル市場競争本部を設置しました。データ独占による競争上の問題や個人情報保護のあり方など、デジタル市場の新たなルール整備を加速していきます。

 こうした取組を通じて、我が国においてソサエティー五・〇を世界に先駆けて実現をし、日本経済の持続的な経済成長につなげていきたいと思っていますが、その中で、国際的なルールづくりが必要ではないかというお話がございました。

 現在、新しい付加価値の源泉であるデータをめぐって、世界で熾烈な争奪戦が繰り広げられているわけでありまして、そのような中で、データの利活用を通じてイノベーションを加速するためには、データの自由な流通を確保することが重要であります。

 しかし、現在、データの自由な流通の前提となるプライバシーやセキュリティーの適切な保護については、米国やEUなどの間でさまざまな考え方の違いも存在をしているわけであります。

 こうした違いを乗り越えて、透明性が高く、公正かつ互恵的な国際ルールをつくり上げるために、先ほど御紹介いただきましたが、私は、ことしの一月のダボス会議においてデータ・フリー・フロー・ウイズ・トラストという基本的な考え方を提唱したところでございますが、六月のG20サミットでは、こうした考え方に対して多くの国々から賛同をいただいたわけでございまして、そして、トランプ大統領、習近平国家主席、またあるいはメルケル首相、マクロン大統領のほか、WTOの事務局長らの参加を得て、ルールづくりに向けた大阪トラックを立ち上げることができたと思います。

 ただいまお話があったように、米国とEUが対立をしている、あるいは米国と中国が対立をしている、このデータをめぐる考え方についてもさまざまな考え方の違いがあったんですが、あのG20の際に、今申し上げましたような首脳が、ちょっと狭目の部屋だったので、でも、かえってみんなが集まった感があってよかったかなと思っているんですが、そこで一堂に会して、この考え方のもとに大阪トラックを立ち上げることができたと思っています。

 現在、WTOの屋根のもと、八十カ国が加わって、データを含めた電子商取引に関する国際ルールづくりの交渉を進めておりまして、早期に結果が得られるように、日本として引き続きリーダーシップを発揮していく考えであります。

岸田委員 総理、ありがとうございました。

 ちょっと時間が大分押してきましたので、あと、簡潔に幾つかお伺いします。

 今総理からお話がありましたデータ駆動社会の実現ですが、これを支えるためには、AI、このデータ時代にふさわしい人材をしっかりと育てていかなければいけない、我が国の教育システムも大きく変えていかなければいけない、こういったことなんだと思います。最新の技術を活用して、子供たちの関心等にも配慮したパーソナルな教育、光ファイバーあるいはローカル5Gの駆使など、さまざまな変革が必要となります。

 自民党におきましてもこうした取組を提言しているわけですが、政府での取組、文部科学大臣にお伺いいたします。

萩生田国務大臣 委員も触れていただきましたが、昨日、日本人の吉野彰先生のノーベル化学賞受賞が発表されました。その成果でありますリチウムイオン電池により社会にICT機器が急速に普及し、今やソサエティー五・〇の時代を迎えようとしております。

 この新しい社会を生きる子供たちにとっては、情報技術を手段として活用していく力が一層求められており、プログラミング教育などを通じて、デジタル社会に対応できるICT人材を育成することが重要だと考えています。

 しかしながら、我が国の学校におけるICT活用状況は世界から大きく後塵を拝しておりまして、また、学校のICT環境は地方自治体間で整備状況にばらつきが見られるなど、文科省としても現状に危機を抱いているところです。

 このため、文科省としては、最終的に児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ってICTを十分活用することのできるハードウエア、ネットワーク等の環境整備を達成するため、日本人のすばらしい研究成果、その恩恵が受けられるように、その整備促進を図ってまいりたいと考えています。

 今後とも、関係省庁や産業界とも連携をしながら、令和の時代にふさわしい、といいますのは、平成の時代はパソコンやタブレットというのは学校にあったらいいなという教材でしたけれども、いよいよ令和の時代は、なくてはならない教材としてしっかりICT環境の実現を図ってまいりたいと思っております。

岸田委員 ありがとうございました。

 そして、挑戦のもう一つの課題として社会保障があります。

 政府におきましては、全世代型社会保障検討会議を立ち上げました。また、先日の総理の所信表明演説においても、最大の挑戦は急速に進む少子高齢化への対応である、このように述べられました。

 社会保障改革については、こうした政府の動きを受けまして、党においては人生百年時代戦略本部で論議を進めています。九月二十四日、一回目の会議を行い、今週も二回目の会議、ヒアリング等を精力的に進めているところですが、この会議の冒頭で、私の方から、この問題に取り組む際の三つの原則ということを申し上げさせていただきました。

 一つは、就労を阻害しない社会をつくっていかなければならない。さらには、多様性と個性、これを尊重できる制度でなければならない。また、持続可能性の重視を考えていかなければいけない。この三つの原則を提唱して議論を始めさせていただきました。

 これにつきましては、この次、質問に立ちます小渕優子政調会長代理が質問をさせていただきたいと思いますので、ぜひこの問題についても、党としてしっかり取り組んでいくということ、政府とともにしっかりと成果を上げるべく努力をしたいと思っておりますこと、これを申し上げさせていただくことにとどめておきたいと思います。

 そして、この国会、これは今触れさせていただいたさまざまな課題以外にも、日米TAGですとか日韓関係ですとか、本当にさまざまな課題に取り組んでいかなければいけない、こういったことだと思います。

 そして、その中にあって、今国会においても、憲法をどう取り扱うのか、これが大きな議論になっています。

 この憲法の改正の方向性、あるいは内容、これについては、国民の中にあっても、また、党においてもさまざまなものがある。こういったことは認識しますが、しかしながら、議論をするべきかという点において考えますときに、例えば世論調査を行いましても、各党が国会で議論すべきかという問いに対して、多くの大手のマスコミの世論調査の結果、議論するべきである、賛成だという答え、七七%、七六・五%、多くの国民が議論するべきであるということを訴えている。野党支持層でも六七%が賛成、あるいは無党派層でも七一%が、議論は行うべきだ、こういった答えが寄せられている、こういったことです。

 憲法は国民のものです。主権者である国民が憲法論議を求めているときに、国会としてどうあるべきなのか。ぜひ、憲法の議論、憲法は国民のものであるからして、代表であるこの国会議員の議論、これを見てもらい、聞いてもらい、考えてもらい、そして判断していただく、こういったことを考えるべきではないか、このように思いますし、そもそも、憲法改正の手続には国民投票というものが規定されています。その前提である発議をするこの国会が議論を行わないということ、さらには国民投票の手続すら議論しないということ、ある意味では、国民の意思表示の機会が損なわれる、こういったことになるんだと思います。これは政府に質問するものではありません。これは問題提起として、ぜひ申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、総理、きょうは十月十日です。五十五年前、まさに五十五年前のきょう、青空のもとで東京オリンピックの開会式が行われた、この当日であります。

 終戦から十九年後に我が国はこの東京オリンピックを開催いたしました。このことによって、我が国は国際社会における立場を確かなものにし、そして国民は自信を取り戻しました。そして、その後、発展の道をたどり、今日の発展につながっている、こういったことなんだと思います。

 いよいよ来年は二回目の東京オリンピックが開催される、こういったことです。大きな時代の区切り、これを感じます。ぜひ見事に成功させ、そして新しい時代を切り開いていかなければならない、このように思います。ぜひ、私も政治家の一人として、その役割を果たしていきたいと存じます。

 引き続きまして、総理、内閣の御健闘をお祈り申し上げます。

 質問を終わります。

棚橋委員長 この際、小渕優子君から関連質疑の申出があります。岸田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小渕優子君。

小渕委員 自由民主党の小渕優子でございます。

 きょうは、新しい内閣になりましてからの一番最初の予算委員会ということであります。大変貴重な機会、質問の機会を与えていただきましたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に移らせていただきたいと思います。

 少し順番を変えて質問をさせていただきます。

 まず初めに、先月の台風による停電の被害について御質問させていただきます。

 先月九日、関東地方を襲った台風十五号、これによりまして、千葉を中心にして大きな被害が生じました。改めまして、被害に遭われた皆様方に心からお見舞いを申し上げます。

 今回の台風による被害の特徴、これは、長期にわたる停電だけでなく、通信の障害が続いたということ、これが大きなことではあったと思います。

 私たちは、当たり前のようにいつも携帯電話を持っていますし、また家には固定電話があります。そういう通信手段が全く使えなくなってしまった。家族の安否も確認できないですし、自分自身、助けを求めたくても求められない。また、テレビを通じていろいろ情報をとることもできない。本当に、住民の皆さん方は、さぞかし不安な日々を過ごされていたのではないかと思います。

 停電につきましては、現場の関係者、皆さん、必死になって復旧作業をしていただいたと思いますが、当初東京電力から示された停電復旧の見通し、これは大変楽観的なものであったと思います。

 この停電の復旧見通しは大変大事なものです。仮に復旧が一週間後になるということであれば、例えば、住民の方がみずからの判断で避難所に行くですとか、都道府県も自衛隊の災害派遣要請を行うですとか、次の一手を打つことができたと思います。

 そこで、菅原経済産業大臣にお伺いをいたします。

 まず、今回の停電被害の概要と現在の復旧状況、そして、なぜこのように東電による復旧見通しが二転三転し、復旧に大変時間がかかってしまったのか、お答えをいただきたいと思います。

菅原国務大臣 ただいま小渕委員からお話しのとおり、今回の台風の十五号で、最大の停電の戸数が、関東地域で九十三万軒、千葉県で六十四万軒、これは高圧線部分でシステム上すぐわかるんです。それから、低圧線から引込線で、自宅についてはスマートメーターで数はすぐわかったんです。

 ただ、御指摘があったように、東電の方で復旧見通しについて非常に拙速な判断と、公表してしまった。去年は、北海道胆振の地震は、最低でも、あれは地震であったんですが、一週間若しくは二週間かかる、しかしながら、結果として二日で復旧したんです。

 今回、台風ということで、私も現場に即座に入りましたけれども、電柱と電柱の間に電線があって、そこに倒木がばんばんばんばん、それでぐんと電線が引っ張られて電柱が抜けてしまう。その電柱、引っ張られた数が、抜けた数が二千本以上という、こういう実態がございました。

 そこで、お話にございましたとおり、今後、このような拙速な公表等がないようにしなければなりません。そのためには、先ほどもお話し申し上げましたが、カメラつきのドローンを使う、そして、巡視といって現場を見る、と同時に、そうした新たな技術を使い、またAI等を使って、山奥でも林道でも、被害状況がこういう状況で、かつ復旧にはどれくらいかかるかということを、しっかりと正確な情報を出すような体制を進めていきたい、このように思っている次第でございます。

 復旧については、九月二十四日におおむね復旧をいたしております。

 以上でございます。

小渕委員 ありがとうございます。

 今回の反省をしっかりしていただいて、次の災害に備えていただきたいと思います。

 次に、電力システムの強化について伺います。

 先ほども岸田政調会長も御指摘をされていましたが、今回の台風被害を受けて、倒れた鉄塔や電柱の強度基準の見直しや電線の地中化、そうしたハード面での対策の議論、これはたくさん出てくると思います。

 こうしたハード面の対策は当然やっていかなければならないことで、大変重要なことではありますけれども、しかし、時間もかかりますし、コストもかかることであります。まずは、今からすぐにでもできること、例えば、いざ停電が起きたときに少しでも早く復旧をするためには何をすればいいのか、そうした減災対策を講ずるべきだと考えています。

 今回の災害対応では、応援に来てくれた電力会社が持ってきた工具だとか資材だとか、そうしたものが東京電力のものと違うということで、作業に時間がかかってしまったりですとか、現場で指揮命令が混乱して何台もの電源車が同じところに行ってしまったりですとか、そうしたことが起こったということであります。

 こうした問題が起きないようにするためには今後どのようにしていくのか、菅原大臣にお伺いいたします。

菅原国務大臣 今、小渕委員からお話がございましたとおり、東電が今回所管であったんですが、全国の九の電力会社から電源車を一気に集めました。ところが、それぞれスペックが違ったり、接続がなかなか困難であったということもございましたし、電源車が現場に赴いて通電をする作業をするに当たっても、いわゆる新たな作業者が必要であり、そこにまたマンパワーが必要であり、こういった総合的な取組によって早急な復旧作業をしなければいけないということであったわけですが、なかなかそれがかないませんでした。

 したがって、今御提言があったとおり、今回は東電が現場を見たわけですが、いつ、どこで、どういう状況で台風や地震が起こるかわかりませんから、当該の電力会社が現場を見つつ、その周りの九の電力会社が常日ごろから、例えば復旧作業の手順の統一化をしっかりと図るとか、こういう状況の中で、新しい技術を使った察知能力を発揮をする。かつまた、復旧をしっかりと進めていけるような体制をとるために、現在、専門家によるフルオープンな経済産業省の審議会を立ち上げまして、停電の原因、復旧プロセスについて徹底した検証を行い、かつ、それを実装化を図っていきたい、このように思っております。

 貴重な御提言、ありがとうございます。

小渕委員 ありがとうございました。

 ぜひ、そうしたしっかりとした体制、これをつくっていただきたい、そのように思います。

 九州や沖縄地方のように、毎年のように強い台風が来る、そういう地域では、災害対応になれているというところがあるかと思いますが、しかし、全国を見ますとそういった地域ばかりではありません。災害は、もはや、忘れたころにやってくるものではなくて、私たちは常に災害と隣り合わせでいるということを自覚し、できる限りの準備というものをしなければならないと考えます。

 特に、災害対応の拠点となるのは市役所であったり町役場であったりするんですが、そこが停電となってしまうと、司令塔機能や情報伝達機能などを失ってしまいます。ぜひとも、こうしたところは平時から十分な燃料を確保していただいて、自家発電が使えるようにしていただきたいと思います。

 また、和歌山県と関西電力は、昨年の台風二十一号による被害が出たときに、たくさんの木が倒れてそれの処理に時間を要した。この教訓から、ことしの四月に協定を結んで、電力会社の安全確認があれば自治体がこの倒れた木の処理を行うことができる、そういった、災害が発生した際の具体的な対応の手順を決めている、そのようなことを聞いています。

 重要なことは、日ごろから各自治体の初動対応また災害対応能力、これを向上させていくということだと考えますが、具体的にどのように取り組んでいくおつもりか、これは武田防災担当大臣にお伺いしたいと思います。

武田国務大臣 まずは、台風第十五号によりお亡くなりになられました方の御冥福をお祈り申し上げますとともに、全ての被災者の皆様方に心からお見舞いを申し上げたいと存じます。

 委員御指摘のように、ここまで毎年大きな災害が発生する状況の中、対応力の強化充実というのは、これはもう物すごく重要性を増してきておると思いますし、ただ一方で、先ほどのお話にもありましたように、経験、練度、なれている地域となれていない地域では対応力にかなりの格差というものが生じておることもこれまた事実であります。

 各地方自治体等も、地域防災計画等に基づいて、関係機関、団体等との災害時における応援協定の締結を進めるなど対応の準備を進めているわけでありますけれども、我々としては、常日ごろからの各種研修、自治体との共同訓練、市町村向けの災害対応の手引の作成などを行うとともに、発災時には専門的な知識を有する職員を自治体に派遣し、政府の過去の災害経験を踏まえて被災自治体等の初動態勢の確立に向けた助言等も行うなど、災害対応力の向上に向けた取組を行っていく所存であります。

小渕委員 ありがとうございました。

 やはり、災害時における自治体の役割、これは大変大事だと考えます。実効性のある取組をぜひお願いしたいと思います。

 現在、日本の南には、新たに、ことし最大級とされる台風十九号が発生し、この週末にも日本に上陸する可能性が高まっています。国民の皆様からすれば、自分の地域に今度は来るのではないか、あるいは、東京のような大都市で同じような被害が発生するのではないか、また、いまだ復旧の途上にある地域で二次災害が発生するのではないか、大変心配をされていることと思います。

 台風の場合、事前に進路はある程度予測できますので、事前にしっかり準備をし、仮に何かあったとしても、初動から関係者がしっかり連携をして被害を最小化する、これが可能だと考えます。

 次の災害、特に週末、大きな台風のニュースがありますので、こうしたことに備え、政府として、災害対応の体制、準備、これについて武田大臣からお伺いいたします。

武田国務大臣 台風十九号に対する対応でありますけれども、かなり大きな、大規模な台風が日本列島に近づいてきておるという情報をつかみまして、去る八日、私自身が出席をし、早速、関係省庁災害警戒会議を開催いたしました。これは全省庁が集まった会議であります。

 会議では、各省庁や都道府県から市町村へのリエゾン派遣、電源車の確保や自家発電施設の燃料の確認そして補給など、台風第十五号の経験も踏まえた具体的な対応というものを改めて確認し、各省庁に対し十分な事前の備えを指示するとともに、十九号の暴風域に入る可能性がある都道府県、これは九州全県と島根、広島、山口県を除く全ての都道府県でありますけれども、にも同様の内容を周知したところであり、しっかりと対応してまいる所存であります。

小渕委員 ありがとうございました。

 皆さん大変不安な思いでおられることと思います。ぜひとも万全な体制を整えていていただければと思います。

 次に、日米通商交渉について、内閣府特命担当大臣の時代から引き続き担当をされてきています茂木外務大臣に質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、タフなアメリカとのこの交渉に、一歩も引かず、そして国益をかけて臨まれた茂木大臣、心から敬意を表したいと思います。

 TPPにおきまして、多国間のバランスの中でそのアメリカの影響力をどう位置づけていくか、そうしたことを目指していたかと思うんですけれども、突然アメリカがTPPから離脱をするということで日米通商交渉が行われることとなりましたので、交渉のスタートはいろいろ大変厳しい状況であったのではないかと思います。

 そうした中、まずはアメリカを除くカナダ、メキシコ、オーストラリアなど十一カ国で、まず最初にTPPを先にまとめ上げて、その後にアメリカとの交渉に臨むという、これは茂木大臣の戦略ではないかと思いますが、これが成果につながったのではないかと思います。

 まず、最初にお伺いしたいのは、日米通商交渉について、我が国が誇れる成果、これはどのようなものであったのか、特に農業分野と、自動車を始めとする工業品分野、これを中心に茂木大臣に御説明をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 ありがとうございます。

 小渕委員のお父様、小渕恵三元総理が外務大臣を務められていた、たしか二十二年前だと思いますが、私、当時、外務委員会の一番若い理事でありまして、当時の小渕外務大臣に日米関係の強化について質問させていただいた。今でも鮮明に覚えておりますが、今、新しい時代を迎える中での日米の関係の強化にもつながります今回の日米貿易協定、日米双方にとってウイン・ウインで、かつバランスのとれた協定になっていると考えております。

 その上で、日本の農林水産品、TPP11が昨年の十二月三十日に発効する、アメリカとしては他国に劣後した状況を一日も早く解消したい、こういった中で、日本の農産品については全て過去の経済連携協定の範囲内におさまる、そして、常に貿易交渉になりますと問題になってきた、また農家の皆さんが心配をされた米については完全除外、林産品、水産品、さらにはTPPワイド割当て対象の三十三品目、全く譲許をしていない、こういった項目も多数あるわけであります。

 一方、工業品につきましては、日本企業の輸出の関心が高い、また、貿易量も多い品目を中心に、早期の関税撤廃、削減というものが実現をしております。

 米国の自動車・自動車部品につきましては、さらなる交渉によります関税撤廃というものが協定に明記されたほか、通商拡大法二三二条に、追加関税を発動しないこと、これは安倍総理がトランプ大統領に明確に確認をしております。そして、数量規制のような管理貿易的措置は求めない、この旨も米国に確認をとっているところであります。

 さらには、厳しい原産地規則、こういったもので、日本の自動車メーカーはUSMCA等で大変懸念を持っていたわけでありますが、こういった保護主義的で、グローバルなサプライチェーンをゆがめるような措置、これを幅広く排除した点でも大きな意義があると考えております。

 自動車工業会、談話を発表していただいておりますが、我が国の自動車産業、産業界にとっても日本の貿易を安定的に発展させる上で評価をしていただいていると思っておりますし、また、農家の皆さんにとっても、JA全中の談話にもありますように、生産現場は安心できる、こう評価してもらえるような内容になっていると思っております。

小渕委員 ありがとうございました。

 日本政府としては、ただいま茂木大臣がお答えいただいたような成果を上げたものと承知をしております。

 そして、ただ、いろいろと御批判また御指摘、御懸念というものもあったかと思いますが、それにつきましても、今まとめて大臣からお答えをいただけたかなと思います。いろいろ、そうした懸念についても、大臣の口からきちんと国民の皆さんの不安を払拭をしていただけるということ、これは大変いいことだと思います。これからも、どうか丁寧な、国内において御説明をしていただいて、引き続きこの交渉についても頑張っていただきたい、そのように考えています。

 改めまして、日本は、申し上げるまでもなく、四方を海に囲まれ、遣隋使、遣唐使、そうした時代、また、その昔から他国との貿易を通じて日本は豊かに、また彩られてきた、そういう国であります。まさに自由貿易が成長の礎となってきました。しかし、今、世界では保護主義的な動きが台頭しつつあるように思われます。

 これまで自由貿易の恩恵を受けてきた日本こそが、自由で公正な国際ルール整備の先頭に立たなければならない、そうしたときだと考えていますが、改めて安倍総理に、自由貿易の旗手として、その先頭に立つ決意と覚悟をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本は、戦後まさに自由貿易によって発展をしてきたわけでありまして、しっかりとしたルールのもとの自由貿易によって日本の成長がなし遂げられた、こう考えております。

 であるからこそ、日本は、WTOのもとによるルールを遵守しながら、かつ、保護主義が台頭する中において、我々、先ほど小渕委員からも御指摘があったように、TPP11、米国が抜ける中においても日本が主導権を持ってTPP11を成就し、そしてまた、日・EUのEPAについても、これもなかなか難しいのではないかと言われたわけでございますが、この一月に発効したところでございます。まさに、保護主義が台頭する中においてこの二つをなし遂げたというのは、世界に対してもいいメッセージになったのではないかと思います。

 そして、今や、この日米の貿易交渉が妥結したことによって、日米そして日・EU、さらにはTPP11によって、世界のGDPの約六割の自由な経済圏ができた。その中心にいるのが日本でございますが、今後更に、TPPには入っていないインド、中国等々が加わったRCEPに向けて、レベルの高いルールを目指して、質の高い自由貿易協定を目指して日本が主導権を持って妥結を目指していきたい、このように考えております。

小渕委員 ありがとうございました。

 それでは次に、社会保障分野についてお伺いをしていきたいと思います。

 まず、私自身の基本的な認識といたしまして、国民皆保険制度を始めとする日本の社会保障制度、これは世界に誇るすばらしいものであると思っています。この社会保障制度の確立、また充実については、多くの先人の方々が、本当に知恵を絞り、苦労をして築き上げてきたものだと思います。

 自立をすること、これは基本でありますけれども、私たち、こうやって毎日生きていれば、突然働けなくなるかもしれない、突然大きな病気に見舞われるかもしれない。そしてまた、私たちは同じように年をとっていきます。

 こうしたことというのは、個人ではなかなか準備することができない。そうした状況に陥ったときに、じゃ、みんなで助け合おうよ、みんなで支え合っていこう、そういう仕組み、これがまさに日本の社会保障制度だと考えています。

 こうした仕組みによりまして、日本の国民の皆さんが安心を持って生活を営むことができる、そして社会の安定に大きく貢献をしてきたものと思います。こうしたすばらしい社会保障制度は、私たちの世代だけでなく、何としても子供や孫の世代にしっかり引き継いでいかなくてはなりません。

 ただしかし、どのような制度であっても、時代や状況の変化、こうしたものに対応をしていかなければならないのも事実です。例えば、人口構成の変化、昨今の少子高齢化の進展、働き方の多様化がそうしたものであります。

 このような変化とともに、我が国においては、社会保障の給付が、どうしても高齢者向け、医療、年金などに偏り、子育て世帯の支援というものが手薄であったというふうに言われてきました。

 今回、安倍総理におかれましては、子育て世帯への支援強化、これを国債発行という形ではなく消費税の増税分という安定財源を使って実行を決断されました。私は、この三歳から五歳の幼児教育そして保育の無償化の取組というのは、まさに安倍内閣が掲げている全世代型社会保障制度、これの大きな第一歩であると考えています。

 決断をされた総理御自身から、この幼児教育そして保育の無償化の意義についてお話をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今月から始まりました幼児教育の、そして保育の無償化については、まず、これは生涯にわたる人格形成の基礎やその後の義務教育の基礎を培う幼児教育の重要性という点、もう一点は、今委員も御指摘になった、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るという少子化対策の必要性という点に鑑みて行うものでございまして、これは、まさに戦後、小学校、中学校、九年間の普通教育を無償化して以来の大改革であろう、こう思っています。

 我が国においては、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、子供たちからお年寄りまで、全ての世代が安心できる全世代型社会保障制度へと転換をしていく必要があり、今般の無償化をその重要な第一歩として、引き続き、社会保障全般にわたる改革を進めていきたいと考えています。

小渕委員 ありがとうございます。

 内閣府の調査によりますと、理想の数の子供を持たない理由として、やはり、子育てや教育にお金がかかり過ぎる、そうした回答がトップとなっています。ですので、このように経済的な負担が軽減されるという無償化の取組は、子供を持つ親にとって大変ありがたいことだと思います。

 そして、この取組と並行をして、待機児童対策、質の向上、そして人材の確保、こうしたことも重要であります。

 政府は、あわせて子育てのしやすい環境整備、これを進めていただいていると承知をしていますけれども、子を持つ親といたしますと、こうした経済的な負担の軽減ももちろん大事なんですけれども、やはり子育てしやすい環境をしっかり整備をしていただくこと、このこともあわせて大事なことであります。

 ちょうどこの時期というのは、保活のシーズン、保活が本格化する時期であります。改めて、待機児童の解消に向けた取組や子育てしやすい環境整備について、加藤大臣より御発言をお願いいたします。

加藤国務大臣 待機児童の解消を始めとした子育て支援については、今、幼児教育無償化とまさに車の両輪として取り組むべき課題でありますし、また、安倍政権スタート以来これに取り組んでおります。

 そして、昨年度からは、子育て安心プランということで、二〇二〇年度末までに三十二万人分の保育の受皿の確保を図って待機児童の解消を目指すべく取り組み、昨年度においても約十二万人分の受皿整備を行い、また、特に受皿整備と並行して処遇改善ということにもこれまで取り組んで、例えば保育士の年収は、平成二十五年が三百十万が平成三十年には三百五十八万と、約五十万近く上昇している、こういう状況でもあります。

 そういう中で、待機児童数も二年連続して減少し、ことしの四月時点では一万七千人弱ということでありますが、しかし、まだ一万七千人の待機児童がおられるということを私たちは真摯に受けとめなければなりませんし、また、各自治体を見ると、かなり減少したところ、あるいは、ここに来てふえてきたところ、恒常的に待機児童が発生しているところと、それぞれであります。あるいは、全く待機児童がないところももちろんありますけれども。

 そうした特性を踏まえながら、きめ細かい支援をしっかり行いながら、総合的に子育て支援、これにしっかりと取組をさせていただきたいと思います。

小渕委員 ありがとうございました。ぜひとも、しっかりこの取組を進めていただきたいと思います。

 もう一問、加藤大臣にお伺いをしたいと思います。

 二〇二二年から団塊の世代が七十五歳以上になっていく、いわゆる二〇二五年問題、これは大きくクローズアップされていますけれども、もう一つ、中期的な視点として、二〇四〇年問題も、これも全世代型社会保障制度を考える上でしっかり見ていかなければならないポイントだと考えています。

 この二〇四〇年問題でありますけれども、これは、二〇四〇年ごろに、今度は、その団塊世代のジュニアの世代が六十五歳以上となり、高齢者人口がピークを迎え、社会保障費が膨らんでいく、また、労働力人口、支え手が大きく減る、こうしたことを問題にしているわけであります。

 今週の新聞報道に、出生数が九十万人を割れてくる、そうした記事がありました。これは、推計より速いペースで出生数の減少が起こる、そうしたことであったわけでありますけれども、こうしたことは、当然のことながら、社会保障、経済成長、こうしたことに一定の影響を及ぼすということは言うまでもありません。

 将来の支え手となる子供たち、これは、残念ですが、今後減り続けていく。それが見えている中で、団塊ジュニア世代、これを始めとする、まさに、現役、若者世代の活力、これをしっかり維持していかなければならないと考えます。でないと、この社会保障制度を次の世代に引き継いでいくことが難しくなります。現役、若者世代の活力を引き続き保つということ、そして、この支え手の負担が過重になり過ぎないようにするにはどうしたらいいのか。

 私自身も団塊ジュニア世代の一人でありますので、やはり、こうした現役、若者世代の不安、そうしたものについてもしっかり声を上げていかなければならないと考えています。

 加藤大臣におかれましては、二〇二五年問題とあわせて、二〇四〇年問題についてもこれまで言及をいただいています。社会保障問題に長年取り組んでこられたスペシャリストでありますので、現役、若者世代、将来の負担への配慮、また、この世代の活力をどう維持していくのか、お答えをいただければと思います。

加藤国務大臣 やはり、社会保障を議論するためには、もちろん足元もありますけれども、これから先行き、人口構造なり社会構造がどうなっていくのか、よく見きわめていかなきゃいけない。

 そういった意味で、二〇二五年に団塊の世代が七十五歳を超える。そうすると、これから数年かけて七十五歳を超える方が急激にふえるわけでありますけれども、それから先はむしろ高齢者が増加はかなり落ちつく中で、いわゆる生産年齢人口、二十代から五十代、六十代前半の皆さんの人口が減少し、そして二〇四〇年には団塊ジュニアの方々が六十五歳を超える。

 やはり、そういった状況を見据える中で、これからの社会保障制度、ニーズも変わってまいりますから、どうあるべきなのか、そういったことについてしっかりまず見据えて考えなければいけないと思います。医療も介護も年金もそうであります。

 そして、やはりその中で、今申し上げた、支え手が減少するという中でありますから、いかに支え手をふやしていくのか、あるいは維持をしていくのかということと同時に、そうした先行きを見た中の社会保障それぞれの制度が、給付がどうあるべきなのか、そしてその中で負担がどうなっていくのか、まさに給付と負担の関係、これについてもしっかり目配りを、どうあるべきなのかについて議論をしていかなきゃいけないと思いますし、また、負担だけではなくて、やはり給付もしっかりしているということが、若い方々が、今は二十代ですけれども、二十年たてば四十になり、四十年たてば六十になるわけですから、今度は給付の受け手にもなるわけで、そういった意味での制度の持続可能性、そういったことも含めて、若い皆さんも、そして今高齢者の皆さんもやはり安心してこうした社会保障の制度の中で生活していただける、そういった状況をしっかりつくるべく、今、全世代型社会保障の検討会議等を含めて、しっかりと議論をさせていただきたいと思います。

小渕委員 ありがとうございました。

 本当に大変難しい問題だと思います。しかし、ぜひ大臣には、中長期的な視点というものを持っていただいて、今お話があった給付と負担のバランス、そうしたことも考えながら、この難しい課題にぜひリーダーシップを持って当たっていただきたい、そのように考えています。

 このこととともに、私自身、もう一つ大切だと考える二つ目の視点があります。それは、これから先、支える側と支えられる側、この線引きですね、これをどう考えるのかということであります。

 現在は、御承知のように、この支える側、支えられる側は特定の年齢で分けられています。しかし、申し上げたいのは、これを固定化して考えるべきではないのではないかということであります。

 内閣府の調査によりますと、六十歳以上の働いている方に伺ったところ、七十歳以降でも働くことを希望している方は八割にも上るという結果が出ています。まだまだしばらくは支える側にいてもいい、そのように考える意欲や力のある方々にはぜひとも引き続き活躍の場があってもいい、そのように思います。

 そのためには、働き方にも中立的な仕組みの検討というものが必要だと考えますが、全世代型社会保障制度を検討される上で、この支える側と支えられる側の線引きについて、西村大臣にお伺いしたいと思います。

西村国務大臣 お答え申し上げます。

 小渕議員御指摘のとおり、支え手の厚みを増していくこと、これが社会保障の基盤をより確かなものにしていくということでありますので、大事な視点だというふうに考えております。

 実際、これまでのアベノミクスの成果として、雇用情勢が大幅に改善をしました。雇用、所得の環境が改善をし、厚生年金の被保険者の数がこの五年間で四百三十九万人ふえております。そうした中で、今年度の年金額をわずかですけれども増額改定をすることができております。

 ぜひ、御指摘のとおり、元気で意欲あふれる御高齢の皆さんが年齢にかかわらず働くことができる環境を整えていくこと、非常に大事なことだというふうに考えております。七十歳までの就業機会の確保の法制化であるとか、あるいは年金の受給開始年齢の柔軟化、こういったことをぜひ検討を進めていきたいというふうに考えております。

 いずれにしましても、全世代型社会保障検討会議におきまして、人生百年時代を見据えながら、御指摘の支え手をふやすという視点を踏まえながら、しっかり検討してまいりたいというふうに考えております。

小渕委員 西村大臣、ありがとうございました。

 この会議、しっかり進めていただきたい、御期待申し上げたいと思います。

 最後に、社会保障の質問、総理に質問させていただきたいと思います。

 現在私は、党におきまして、財政のあり方検討小委員会の委員長を務めております。国会議員の中でも若手の皆さん方がメンバーに入っていただいていまして、この夏の活動といたしましては、やはり、これから将来を担う若い世代の方々に、財政ですとか社会保障ですとか、そうしたことを理解していただき、みずからもそうしたことについて考える機会を持ってほしい、そういうことを思いまして、この小委員会のメンバーで、この夏に全国幾つかの大学を歩きまして、学生の皆さん方と、財政に関する大学キャラバンということで、膝詰めの議論をさせていただきました。

 現在、政府・与党が進めている全世代型社会保障、また、先ほど御答弁いただきました幼児教育、保育の無償化、このことについては、まさに現役、若者世代に光を当てるものだということで、大変好意的に受けとめられていました。一方、自分たちが年をとったときどういう世の中であってほしいか、そうしたことを議論する中で、将来自分自身が受益をする福祉水準、それと負担についてといった議論をしたんですが、これは皆さん本当にさまざま、いろいろな意見が出てきました。

 ある学生さんは、やはり自己選択の幅を広げたいから低負担がいいんだ、でも、低負担だったら低福祉、これはしようがないよねというようなお話もありましたし、ある学生さんは、将来の安心を考えたときにやはり手厚い福祉が欲しいよ、だから高福祉高負担がいいんだ、そのような御意見もありました。

 これはどれも正解ということはありませんし、こちらとしても、こっちがいい、あっちがいいということを示すものではなくて、やはり、こういうことについて一緒に考えようね、そういう機会を持ったということが大事だと思いますが、やはり、この社会保障制度を持続可能なものにしていくための重要な論点として、この受益と負担のバランスをとるということが大事だということ、これは学生さんからも御指摘をいただいたところであります。

 今を生きる私たちの責任として、当然のことながら、この今をしっかり一生懸命生きていくということ、もうこれは言うまでもないことでありますが、我々の責任のもう一つは、次世代に対してもその責任を果たしていかなければならない、そのことではないかと思います。

 こうした受益と負担のバランス、そうした観点も踏まえて、全世代型社会保障制度の構築に向けて、先頭に立ってリーダーシップを発揮される安倍総理の御決意、最後にお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 全世代型社会保障への改革は安倍政権の最重要課題でありまして、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めていくことが不可欠だと考えています。

 そこで、全世代型社会保障会議においては、先ほど加藤大臣から答弁させていただきましたが、人生百年時代を見据えて、年金、医療、介護、労働など社会保障全般にわたる持続可能な改革を更に検討してまいります。

 まさに、働き方も随分多様化しました。その中で、今小渕委員がおっしゃったように、学生の皆さんも、こういう形がいい、そういう将来像はそれぞれ違うんだろうと思います。

 大切なことは、その中でさまざまな選択肢があることなんだろうと思うんですね。自分は七十を超えても働きたいという人がいれば、そして、在職老齢年金等々についても選択肢を広げていったらどうか、あるいは受給時期を、一体どこでもらい始めるか、七十あるいは七十を超えていくかということについても、これはもちろん年金財政的には中立なんですが、しかし、いわば働き手となり支え手であり続けるわけですね。税金も払っていただきますし、生産活動にも参加を七十を超えてもしていただく方がふえていけば、それはそれだけ経済にとっても社会にとってもいいことなんだろう、こう思います。

 それは、要は、選択できるということであるからこそ、年金、医療、介護だけではなくて労働についても、社会保障全般にわたる改革の中でしっかりと働き方についても議論をしていくということだろうと思います。

 給付と負担のあり方については、このような検討の中でしっかり議論をしていくべき問題だと思っておりますし、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様になる中で、誰もが安心できる社会保障を大胆にこれは構想してまいりたい、このように思っております。

小渕委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、以上とさせていただきます。ありがとうございました。

棚橋委員長 この際、葉梨康弘君から関連質疑の申出があります。岸田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 おはようございます。自由民主党・無所属の会の葉梨康弘でございます。

 まず、総理に一問と思います。

 全世代型社会保障に関連して、お答えの仕方はもしかしたら同じになるかもわかりませんけれども、ちょっと別の観点を申し上げたいなというふうに思います。

 厚労省が六月七日に発表した人口動態統計では、平成三十年の出生数が九十一・八万人、合計特殊出生率が一・四二と、平成二十七年の一・四六から三年連続で低下しました。

 これを、低い低い、本当に少子化が大変だ、そういう面はあるんですけれども、一つやはり私たちが考えていかなければいけないのは、このパネルにもあるように、平成十七年の一・二六と比べると長期的には上昇しているということだと思います。これは、このパネルにもありますように、東アジアの先進国・地域の中ではまさにまれな現象です。この大きな理由として、厚労省では、雇用状況が改善し、子供を産もうと思った人がふえたことが考えられるとしています。

 確かに、平成十七年当時は、ニート、フリーターと言われるような若者が町にあふれていました。そして、就職氷河期世代が今や五十になろうとしている。昨年の五十歳までの未婚率は、男性が二九%、女性が一四%。これが、子を産む時代になかなか結婚ができなかったということもあって、平成十七年は一・二六。これが一・四六まで上昇しているけれども、この三年間、ちょっと下がっている。

 ですから、やはり、てこ入れをしなければいけないし、てこ入れをすれば、日本はここまで戻してきたわけですから、できるんじゃないかというふうに思います。

 翻って、他の諸国、アジアで考えてみますと、韓国は昨年は一・〇を切りました。台湾、香港、シンガポール、日本に次いで先進国の仲間入りをした国・地域は、一・一台で低迷しています。聞いてみますと、教育費の負担が非常に大きくなっている、これがやはり二人目をなかなか産むことができない理由だ、そういうようなお話をよく聞きます。

 その意味では、今、日本の出生率の現状で考えると、この時期に幼児教育の無償化、あるいは、必要な世帯には高等教育まで無償化をしていく、そういうような全世代型の社会保障に門戸を開く、道を開くということは、ひいては、出生率を下げどまらす、下げどまり、そして年金財政等をやはり将来にわたって安定させる、こういうことにも私はつながっていくんじゃないかと思います。

 総理から御決意をお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに、今委員がおっしゃったように、社会保障を考える場合、支え手をしっかりとふやしていくということは極めて重要だと思っております。

 その意味におきましては、例えば出生率なんですが、希望出生率に実際の出生率を近づけていくために、そういう環境を整えていくのは我々政治の責任なんだろう、こう思っています。

 その中で、十月一日から実現をした幼児教育、保育の無償化は、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るという少子化対策の観点からも大変有効であろう、こう思っております。

 と同時に、やはり経済を強くすることによって、若い皆さんの所得が上がり、出生率が上がっていく、と同時に、支え手となっていただく方もふえていくわけでございまして、我々が政権をとる前、例えば正規雇用は五十万人減っていたんですが、我々が政権をとって以降、百三十万人正規雇用がふえたわけでございまして、若い皆さんが子供を持つ余裕がそれだけ増してきたということにもなるんだろう、こう思います。

 と同時に、この間、生産年齢人口が五百万人減る、こう言われていたんですが、その中で、実は、三百八十万人働き手がふえたことによって、厚生年金の被保険者が五百万人増加をしたということになります。

 こうした大きな変化のもと、例えば、マクロ経済スライドについても、〇・九と言われていたものが〇・二に大きく改善をしてきたわけでございます。

 このような支え手をふやすための取組を継続しつつ、今後、年金、医療、介護、労働など社会保障全般にわたって、人生百年時代を見据えた改革を検討し、誰もが安心できる社会保障制度を大胆に構想してまいりたい、このように考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 五十歳までの未婚率が二九%男性である、これが今の八〇五〇問題の淵源にもなっているかと思います。そういった意味で、就職氷河期世代への対策もぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、豚コレラ対策について質問させていただきます。

 私は、自民党の養豚農業振興議員連盟というのがございまして、その幹事長をさせていただいています。養豚農家、それから役所、さらにはいろいろな議員さん方、いろいろな要望等を聞きながらその調整等に当たってきたわけですが、残念ながら、昨年九月に岐阜県で発生した豚コレラは、本年二月に愛知県での発生を見た後、七月以降、三重、福井、滋賀、埼玉、長野に拡大、加えて、野生イノシシは、石川、富山、群馬でもウイルスを媒介する野生イノシシが発見される、そこまで広がっています。

 農水省は、特に、最初は岐阜県だけだったんですけれども、複数県での発生が拡大したということで、やはり本格的にこの二月以降に対策に乗り出しました。

 まず、飼養衛生管理と言うとちょっとなかなかわからないので、要は、人とか動物とか餌とか、農場に入ってくるいろいろな媒体、これがウイルスを持ち込まないようにしていく、そういうような対策なんですけれども、これをしっかり徹底する。さらには、野生イノシシに対して経口ワクチンを投与する、あるいは野生イノシシが外に行かないように、防護策を打ち出す、そういった方針を打ち出しました。

 そして、私自身も、当時も岐阜県の農家からは、ワクチンを打たせてほしいという話もあったんですけれども、期間限定、地域限定という話だったんです。期間を本当に限定して地域を限定をしたワクチンを、その場で何のリスクコミュニケーションも消費者に対する情報提供もなしに打ってしまったら、その肉は本当に流通させることができるのかということの問題がありました。

 ですから、その意味では、当時の段階、つまり七月前の段階では、とにかくウイルスに対する防護策を徹底するということでこれを抑え込むことができれば、それにこしたことはない。

 ということで、こちらの石川県の西田昭二議員、野生イノシシが発生している、さらには、岐阜県の金子俊平さんとか若手の議員から、じゃ、いつになったら議連では、ワクチンの接種というのを判断する分水嶺があるんですかというようなことをよく聞かれました。それは、まず、岐阜、愛知以外の県に野生イノシシが伝播して、つまり防護柵から逃げ出した野生イノシシが広がっている、さらには、その県において、しっかりとウイルス防護策をとっている農場でも飼養豚の豚コレラが確認されるという状況になったら、なかなか考えていかなければいけないねというようなお話は彼らにはしていました。

 ただ、そうはいっても、単にやみくもに打てばいいというわけではありません。やはり、ある程度広い地域で、養豚農家や自治体の協力というのを必ず取り付けていくことが必要です。しかも、さっきも言いましたとおり、消費者に対して、このワクチンを打った豚の豚肉は流通するわけなので、消費者に対してのリスクコミュニケーション、これをしっかりと徹底していくということが絶対必要だというふうに思います。

 ですから、七月に三重で、これは結構ウイルスの防護策はしっかりしている農場だったんですけれども、そこでも豚コレラの発生を見てしまった、そのころからいろいろと農水省ともお話をしまして、どういうような準備ができるんだろうかというお話もいろいろとさせていただきました。

 その意味で、まだワクチンの備蓄がちょっと足りないという話もございますけれども、今回、農水省が飼養豚に対してワクチンを接種するという方向に指針を改定するというのは、タイミングとしては非常に私は妥当なんじゃないかなというふうに思います。(発言する者あり)一番苦労している人間が言っているんだよ。

 今後、飼養豚への予防的ワクチンの本格的な検討が始まるということになります。消費者、生産者の安全、安心がともに確保されるように、リスクコミュニケーションの徹底、生産者、自治体の意見集約、営農の再開支援等、ぜひ農水大臣には万全の対策をお願いしたいと思います。

 農水大臣。

江藤国務大臣 葉梨先生には、いつも大変ありがたい御指導等いただいておりまして、ありがとうございます。

 御苦労されている皆様方にはお見舞いを申し上げたいと思います。

 とにかく、一生懸命やらせていただきます。

 衛生管理基準をしっかり守っているところにも入ってしまいました。相手はウイルスですから、非常に難しい。そして、今回はイノシシにも出ている。イノシシは移動しますから、これは特殊な事例でありまして、これから秋に向かって、山が実りの秋を迎えると、更にイノシシは動きます。

 ですから、そういうことも考えて、経口ワクチンの投与の仕方も、今までは穴を掘って埋めておりましたけれども、これからは、防衛大臣には相談をさせていただきました、防衛省にも御相談をして、例えば、空中散布も含めて、経口ワクチンのベルト帯をつくることも今検討を進めております。

 そして、予防ワクチンの接種ということでありますけれども、御指摘のとおり、地方自治体の御協力、御理解がないとできません。そして、与党の先生方、野党の先生方からもいろいろありがたい御提言はいただいております。

 そして、これが、私が大臣になって省内で検討したときには、私は決して役人の皆さん方にこうしろと言ったことではなくて、例えば消費・安全局、それから生産局畜産部、この辺が担当になりますけれども、これは農林水産省全体としてみんなで考えよう、水産庁の人間も林野庁の人間も、省議メンバー、課長クラスも全員集まって意見を出し合って、どうすべきかと。ワクチンを接種するということは必要かもしれないけれども、決して最善の策ではない、飼養衛生管理基準と防護柵で守るのがベストなんですから。どうするかという議論をして、みんなの議論のもとに、やはりワクチン接種だという結論に達したところであります。

 今、指針の改定作業を進めておりますけれども、これからの支援について若干申し上げます。

 殺処分した豚への補償をすることは、これは当然のことであります。それから、今後の技術の指導も行います。それから、生産者の方々の負担をできるだけ小さくする形での柵の設置も進めていこうと思っております。これに対する、経営再開に対しての支援金も交付することを考えております。

 それから、風評被害のお話を今いただきました。これはとても大事で、きのうも対策本部で議論をいたしました。

 とかく、農林水産省のホームページを見ると難しい言葉が並んでおりますので、なるべくアクセスしやすい情報の出し方、例えばアニメとかを使ってやるように指示をいたしまして、政務官が担当になっています。

 この機会に申し上げたいんですが、我が国は、一九六九年から二〇〇六年までの三十七年間、日本の飼養豚にはワクチンを接種しておりました。私は今五十九歳でありますので、私の人生の三十七年間はワクチンを接種した豚肉を食べていたということであります。この期間に日本の中で衛生に関する問題とか健康に関する問題が出たことはありません。

 ですから、消費者の方々には、ぜひ安心して御購買いただきたいということを最後に申し上げます。

葉梨委員 ありがとうございました。

 豚コレラと全く別の株であるアフリカ豚コレラ、これが全世界的に蔓延しています。資料二にあるとおりです。もう韓国にも来ています。これは有効なワクチンが存在しません。水際対策が決定的に重要です。

 農水省でもいろいろな形での水際対策をやられているわけですけれども、一罰百戒というのも結構大切なんですね。

 検挙事例も幾つか出ていると聞いています。アフリカ豚コレラに感染した豚由来の肉等の持込みについてですけれども、この防衛線が突破されますと、ワクチンも効かない、致死率も高いということで、これは国家的な大問題になります。単なる特別法違反ではありません。

 その意味で、国家公安委員長から、持込み事案に積極的に対処していただきたいという、意気込みをお願いしたいと思います。

武田国務大臣 OBならではの御指摘だというふうに思いますけれども、御指摘のとおり、この感染を予防するためには、水際対策の強化というものは大変重要になってくると思うんです。

 警察も今日まで、農水省の関連機関等々と連携しながら、こうした海外からの畜産物持込み、特に悪質な事犯に関しては厳正に対処をしてまいりました。家畜伝染病予防違反によりまして、三件四名を検挙いたしておるところであります。

 今後も、関連機関と連携しながら、厳正に対処していくべく指導してまいりたい、このように考えております。

葉梨委員 ありがとうございます。

 ただ、考えたくないことですけれども、もしもアフリカ豚コレラが我が国に入ってきた場合、この場合のウイルスの防護策というのは、養豚農場だけではありません。餌の製造、流通や屠畜といった、豚とかかわるあらゆる施設について面的に行っていくということが必要です。そういった意味での心の準備というか、しっかりした準備も、考えたくないことだけれども、考えておいていただきたいというふうに思います。

 次に、台風等に係る被害です。

 台風十五号、千葉県中心なんですが、私の茨城県においても六十億円、計で約五百億円に上る農業被害をもたらしました。

 ただ、農水省は九月の十日、発災、台風が通過したすぐその後から事務方が現地に入りました。江藤大臣も九月の十四日、茨城、千葉の現場を見ていただいて、早速、被災農家を励ましていただきました。ありがとうございました。非常に初動対応は私はよかったと思います。

 今週末、台風十九号が我が国を直撃する、そういう事態も予想されます。農水省だけではなくて、政府には迅速かつ万全な対応をお願いしたいと思います。

 ただ、その上でなんですが、ここのところ、資料三にも記載いたしましたけれども、この十年間、大規模災害が例年のように発生して、農林水産関係の被害額でも、毎年、一千億円を超える年が続いています。このため、実は農水省もいろいろな形で蓄積がありまして、きめ細かな災害復旧のための予算措置を用意されているということは伺っています。ただ、農家にとっては、きめ細かいということは、時には複雑であるというふうに映ることも事実なんです。

 それともう一つ、特に今回、ハウスがやられたわけですけれども、ハウスをすぐに復旧して、イチゴ、メロン、そういった園芸作物の作付に間に合わせなきゃいけない。その意味でのスピード感というのが、特にこういった農林水産被害の場合には大切だろうと思います。

 その意味で、農水省として、きめ細かなメニューを農家の皆さんに周知徹底するためにどのような工夫をしているのか。さらには、復旧復興のスピードを確保するためにどのような取組を行っているのか。江藤大臣、よろしくお願いします。

江藤国務大臣 まずは、被災された皆様方にお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 八月、九月の前線に伴う大雨、これにつきましては、農林水産関係被害につきまして、早期の復旧に向けて、農業用ハウス再建支援、停電対策などを内容とする総合的な農林漁業者への支援対策を十月一日にまとめたところであります。

 特にハウスの御指摘がございました。これにつきましては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金、これの被災農業支援型、これを発動することとなっております。

 共済に入っていただいておればかなり農家の負担は極小化されますが、共済に入っていないと若干負担が出ることは御承知だと思います。

 そして、こういうことがあっても、なかなか、事前着工できますよとか、ビニールの撤去も早くできますよというメニューはいっぱいあるんですけれども、説明して、伝わらなければ何にもならないという御指摘だと思います。

 それを受けて、今月の七日から、委員の御出身である、鉾田市、これは七日、それから水戸市、九日、それから千葉県の、六県十二カ所でも対策の説明会をやる予定でありますが、必要があればもっと回数をふやしていこうと思っております。

 スピード感につきましては、まず資材の確保、これが大事ですので、資材の確保については今一生懸命やっておりますが、何とか資材については確保できそうですけれども、職人さんがなかなかいないということもあって、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

葉梨委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 そして、資料四にもありますけれども、このところ、この農林水産の被害額、一千億円を超えるということが本当に常態化をしています。

 ということになると、これは異常気象ということでは片づけられないんですね。異常気象が常態化しているということ、これが通常の状態になってしまっているということが非常に大きな問題だろうと思います。

 そして、農業の分野でも、九州、中国、四国などでは、もう既に高温障害ということで、水稲になかなか実がつかないというケースが日常的に起こっています。

 この間も、私の地元の田んぼを案内されたら、どうも私の地元でも、茨城県でも、高温障害かなというような水稲の被害が結構出始めている。これは資料四にもございます。

 さらには、水産の関係ですと、北海道で今までとれなかったブリが大量にとれるようになって、北海道の人たちはこのさばき方を知らないものだから、どうやって食べたらいいかわからないという何かもったいないことも起こっている。

 ですから、これは昔の感覚で同じ作物を作付したり同じ魚をとろうとしたりしても、気候自体が昔の気候に戻るわけではありません。むしろ、これから数十年間は、いかに悪化を最小限のものとするか、これが課題なんだろうと思います。このため、土地とか海を利用する産業の側にも、国土を保全する側にも、既に変動してしまった気候に適応した産業や国土をいかに構築していくかという問題に取り組まなければならないと思います。

 江藤大臣からは二問お答えいただきましたので、国土保全という意味で、この変動してしまった気候にしっかり対応するための防災・減災対策の徹底、そして、安心、安全のメッセージを国民に対して発信することが大切と思います。赤羽大臣から見解をお願いします。

赤羽国務大臣 お答えさせていただきます。

 葉梨議員、御提案には全く私も同感でございます。

 私自身も、国土交通大臣を拝命してこの一月間で、近年全国各地で発生しました激甚災害の被災地十カ所を訪問させていただきましたが、改めまして、気候変動によりまして災害が激甚化、頻発化し、その被害の規模も甚大化していることを目の当たりにいたしたところでございます。今後、予測される降雨量の増加ですとか海面水位の上昇等を反映した防災対策への転換が必要であるということを痛感したところでございます。

 また、政府としまして、こうした激甚災害を踏まえまして、緊急の総点検を行って、再発防止を目指して、現在、事業規模総額七兆円の防災・減災、国土強靱化のための緊急三カ年対策、取り組んでいるところでございます。

 例えば、治水対策も、これまでと違って、国、県、市、連携しながら、河川流域全体の治水対策を行うなど、取り組む事業になっておりますので、国交省としてもまずこの緊急対策をしっかりと進めるということが第一でございます。

 また、今回お会いしました被災自治体の首長の皆様は、この三年で終わることなく、三年後もしっかりと、さらなる充実した取組を進めていただきたいということを強く要望を受けました。二〇二一年度以降も、こうした地元の皆様の要望に応えて、引き続き必要な予算の確保に努めていきたい、こう考えております。

 それに加えまして、国民の皆さんの命と暮らしを守るためには、私は、自助、共助、公助の取組が必要だと考えております。今申し上げましたようなハード対策に加えまして、ソフト面での対策も重要でございまして、国民の皆様の防災意識を喚起して、平素より、例えばハザードマップなどを活用して、実効性のあるマイ・タイムラインなどの避難体制づくりを促進していきたい、こう考えております。

 いずれにしましても、国交省として、これらの取組を通しまして、防災、減災が主流となる安全、安心な社会づくりに全力を傾けてまいる所存でございます。

 以上でございます。

葉梨委員 ありがとうございました。

 今の気候というのはもう既に変動してしまった、それを前提として、今、それに安心、安全が確保できるようにしっかりとした防災・減災対策をとっていくというわけですけれども、その気候変動のスピードが更にアップしてしまったら、またこれは、もうイタチごっこになってしまいます。

 ですから、それを更に悪化させないためにも、やはり、これは例えば農水省も同じなんです。品種改良をした、それで、ある程度の、三十六度まで対応できる水稲はつくった、でも、それが三十八度になってしまったら今度は役に立たない、これまたイタチごっこになってしまう。やはり根本的には、そういうような社会システム自体を大きく変えていくということも極めて大事だし、それに適応していくことも大事なんだけれども、やはり悪化を食いとめるという取組、これがもう本当に大切なんだろうと思います。

 このため、昨年は気候変動適応法が成立しました。昨年十二月に施行されて、これは、私自身は、省庁の垣根を越えて取り組まなければならない問題だと位置づけられたんだと認識をしています。実際、気候変動に関する政府間パネルの報告では、世界的に気候変動が更に深刻化することが指摘されています。気候変動対策は、今まさに政府が取り組まなければならない喫緊の課題と考えます。

 環境大臣がその司令塔となっていくわけですけれども、現在の気候変動についての認識と、その影響を回避、軽減する、適応における環境省の役割について、環境大臣から御決意をお願いします。

小泉国務大臣 葉梨先生には農林部会長時代も特にお世話になりまして、先ほどお話がありました、さまざまな気候変動に伴う対応に御苦労されている現場の農業者の皆さんにもお会いをしました。印象的だったのは、どんどん北限が上がってきまして、一番直近では、最近、国産のバナナを私はいただきました。そういったことになってきたときに、環境省の気候変動に対する役割、責任、大変重いものがあると思います。

 具体例を一つ申し上げますと、昨年十二月の一日に、葉梨先生の御地元でもあります茨城県に環境省が所管をする国立環境研究所というのがあります、そこに設置をした気候変動適応センターを核としまして、将来の気温や降水、米や果樹への影響など、気候変動影響に関する予測や情報発信を研究機関と連携して実施をしています。

 このような最新の科学的知見に基づく予測を踏まえ、政府一丸となって計画的に対策を進めることが重要でありますので、関係省庁や地方公共団体等において、農林水産業や防災、健康など、さまざまな分野で適応策が検討、実施されているところであります。

 そして、環境相は、平成三十年、昨年の十一月に閣議決定された気候変動適応計画に基づき設置された気候変動適応推進会議の議長でもありますので、関係府省庁と連携協力をしながら、熱中症の注意喚起など、幅広く気候変動適応策を政府の中心となって推進していく決意であります。

葉梨委員 ありがとうございました。

 それでは、最後の課題であります今後の憲法論議についてということで、資料をお手元にお配りしております。資料の五でございます。

 これは、平成十七年ですから、今から十四年前の二月の十七日、当時衆議院に設置されておりました憲法調査会における委員の発言でございます。読み上げます。

 「私自身は具体的に考えておりまして、」中略「選挙からある程度時間がある段階までにしかるべき政党はそれぞれの考え方」、これは憲法調査会ですから憲法に関する考え方です、「考え方を示して、その上で、選挙に当たっては、我々の考え方はこうであるが、どの党が政権をとっても選挙後にはこういう政党の中で一致点で発議をしたいということについて国民に示す、こういう合意がもしもあと一年ぐらいの間にできれば建設的な話になるのかなというふうに思っております。」

 これは現自民党総裁の安倍晋三議員の発言かと思いきや、そうではございません。現在の立憲民主党の代表、当時の憲法調査会長代理の枝野幸男さんの発言です。十四年前です。

 これは、私、当時一期生だったんですけれども、いろいろと、この部分だけを取り上げてということで申し上げるわけでは全然ございませんで、ずっと流れの中で、憲法調査会の中で、当時は中山太郎会長でございましたけれども、議論をしてまいりました。そして、じゃ、憲法改正ということをどういう形であれば合意を形成することができるんだろうか、そして、当時一期生であった私の方から、やはりそれは国が分裂するという形じゃなくて、国がやはり合意形成を図って一つにまとまっていく、その中には意見の違いもあるだろう、けれども、やはり選挙のある程度前の時期では、本気で政権を担おうとする政党は、具体的な憲法についての案を示して、そして選挙の後にはしっかりとそこら辺の合意形成を、違いがありながらも図っていこうというようなことをやるべきではないですかということを私から申し上げたことに対する回答でございます。

 それから十四年たったわけですけれども、なかなかこういう建設的な議論というのが今のところ行われていない。

 この当時、この議論の中では、そういう文脈ですから、立憲主義がどうだとか、あるいは自民党の案がどうだとかということではなくて、本気で政権をとろうとする政党が憲法に対してどういう姿勢をとるべきかということで議論をしていたことを今でも覚えています。

 これは通告はないんですけれども、やはり真摯な議論というのは私自身は必要だと思いますけれども、総理から御感想があれば、よろしくお願い申し上げます。

安倍内閣総理大臣 ただいま葉梨委員から紹介がございました枝野当時の委員の発言のポイントというのは、これは、本気で政権をとるという中においてはやはり考え方を示すべきであろう、こういうことなんだろう、こう思うわけでございます。

 大切なことは、まさに最終的に決めるのは、憲法については、国民の皆様が国民投票によって、憲法のどこをどのように変えるのか、あるいは変えないのかという判断をされる、そのための議論を行い、発議をする責任がやはり国会議員にはあるんだろう、このように今お話を伺っていて感じたところでございます。

葉梨委員 全くそのとおりだと思います。

 当時の議論は、まさに、本当に憲法の基本に返っていろいろなことを議論していたんです、憲法調査会におきましては。中山太郎会長の非常に公平な運営というのも当然あったわけですけれども。

 ただ、私も政治に身を置いていますので、それはもちろん、憲法改正が絶対にだめだという党の、選挙でも支援を受けなきゃいけないとか、いろいろな事情はもしかしたらあるのかもわからない。でも、それはそれとして、やはり私たちは、政治家である以上は、国会議員である以上は、国民のために一体私たちはどう考えるんだ、国家のためにどう考えるんだということを真剣にやはり考えていかなきゃいけないし、考えている以上は、それを腹の中に隠しておく必要は全くないわけですから、表に吐露をして、国民の判断をしっかりと仰いでいくという必要はあるんだろうというふうに思います。

 この件に関しては、実はスペインで、一回、三分の二の発議をして、一回総選挙をやった。スペインというのは物すごい硬性憲法なんです、日本以上です。そして、その後もう一度三分の二の合意形成をできたら、ある部分の憲法改正ができますよというような憲法になっているんです。それでもスペインは何回も憲法改正というのを行ってまいりました。それはやはり真摯にいろいろな政党が、あそこは比例代表だったと思いますけれども、比例代表ですからなかなか多数というのはつくりづらいんですよね、にもかかわらず、それぞれ真摯にいろいろな政党がいろいろな議論をする、そういう中での合意形成が図られてきた、そういう歴史なんだろうというふうに私は思っています。

 だからこそ、私たちはそういう諸外国のいろいろな歴史に学んでいかなければいけないし、我が国においても、別に、必ず憲法を変えろとか、そういう話を私は言っているわけではありません、国民のため、国家のために、どういう国柄が大切なんだということを、この令和の時代にあっては、私たちは議論をしていかなければならないなというふうに思っているところです。

 一問、実はあったんですが、途中で飛ばしてしまったものですから、また江藤大臣に聞くわけにもまいりませんので、ここで私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

棚橋委員長 この際、井野俊郎君から関連質疑の申出があります。岸田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井野俊郎君。

井野委員 自由民主党、井野俊郎でございます。

 先ほど葉梨先生が憲法についての議論をされておりましたので、私は若手なので、どしどし総理にも憲法についても聞いていきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、憲法施行、一九四七年に施行されてから、ことし、もう七十二年が経過しました。その間、やはり一度も改正もされてこなかったということがございますけれども、先ほど葉梨先生も、ほかの外国では憲法改正は普通に行われていることだとお話をされていましたが、なぜ日本ではこのような憲法の改正議論といいましょうか、行われてこなかったのか、その点について、もし総理の御所見があれば教えていただければと思います。国会議員の先輩として教えていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 憲法改正の議論につきましては、基本的には、内閣総理大臣としてこの場でお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、その上においてお尋ねでございますので。

 例えば、自民党においては、結党以来の、憲法改正は党是としてきたところでございます。昭和三十年、自民党は結党されたのでございますが、では、このとき、自民党の結党の目的は何だったか。一つは、やはり憲法改正をしようということだったんだと思います。もう一点は、当時日本は貧しかったわけでございますから、安定的な政治基盤の上に安定的な経済政策を進めていこう、こう考えていたんだろう、こう思います。

 そこで、やはり当時の国民的な課題としては、今二つ目に挙げました、とにかく衣食住足る豊かな暮らしをつくり上げていきたい、こういうことだったんだろう。それに基本的には応えてきた。ただ、自民党はこの旗は掲げ続けてきたのでございますが、なかなか最初の目的には到達できなかったという歴史ではなかったのかな、このように思うところでございます。

 そのためにも、やはり国民的な議論、関心が高まっていくことが大切であろうと思います。その中で、第一党たる自由民主党がその責任を果たしていくことを期待したい、このように考えております。

井野委員 やはり私も、憲法というものは不断に見直しをしていってもいいものだというふうに思っています。基本法だから一切手をつけないということではなく、やはり政治状況、国際状況というのはさまざま変わりつつあるわけであります。

 一九四七年当時は、当然終戦後であります。ところが、その三年後には、一九五〇年、お隣、朝鮮戦争が勃発。まさかそんなすぐにお隣に、しかも、こんな隣で戦争が始まるとは恐らく誰も予想はしていなかったんだと思います。当然、GHQも予想はしていなかったんだと思います。

 だからこそ、それ以降、東西冷戦が始まり、そしてその後、警察予備隊、保安隊、そして自衛隊、そういった組織が改編されてきたわけでありました。

 そして、自衛隊におかれては、今、自然災害派遣のみならず、国際貢献としてPKO活動等、その活動が国内外の人々に評価され、多くの国民、そして世界の人々からもその活動を要望を受ける、そういう時代になってまいりました。

 他方で、現在、先日も北朝鮮のミサイル発射等がありました。そしてまた、中国の台頭、海洋進出、さまざまな政治状況の変化、そして安全保障環境の変化というもののスピードは速くなっているように感じます。

 そういったさまざまな状況において、やはり私は、憲法のあり方、もちろん自衛隊に限らず、この国のあり方として、憲法を議論するというのは、やはり我々国会議員にとっても大事なことだと思っていますし、自民党だけじゃなく、さまざまな政党で改憲案、改憲案とは言いません、もちろん護憲でもいいんだと思います、憲法について議論していくということは大事なことではないかと思います。

 例えば、九条に対しては、確かに我々、一つの改憲案を示していますけれども、それで護憲だ、改憲だという、マスコミもレッテルを張りますけれども。

 じゃ、例えばですよ、第一章、天皇制について言えば、恐らく我々自民党は護憲になるんだと思います。他方、共産党の皆さんは恐らく改憲派になるんだと思います。(発言する者あり)即位の礼に参加しないんじゃないんですか。小池さんは、まあ、やじに答えるつもりはないけれども、きのう、小池さんは、国民主権に反する……(発言する者あり)

棚橋委員長 御静粛に。御静粛に。

 また、井野委員におかれましては、質問をお続けください。

井野委員 はい。

 国民主権に反するから即位の礼に参加しないと共産党の皆さんはおっしゃっておりました。別に、それはどういうスタンスなのか、それだけではわかりませんけれども、こういったさまざまな議論をすることは、やはりこの言論の府ではとても大事なことだと考えます。

 ぜひ、憲法改正の議論、これをしっかりやっていくべきと思いますが、総理の御見解、教えていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 大変、井野委員からわかりやすい論点について御質問をいただいた、このように思います。

 まさに憲法については、最後に決めるのは国民の皆様でございます。その中において、憲法について、どのような条文についてどう変えるべきかというのは、これはまさに国づくりの基本なんだろう、このように思うわけでございまして、この基本について、しっかりと国会の場において、憲法審査会の場において議論をする中において、国民の関心も高まり、そして、いわばこの議論がしっかりと盛り上がってくる中において、国会の場で、もし発議が行われれば、その上において国民の皆様が国民投票で決めていくということになるんだろう。

 やはり大切なことは、あらかじめ決めつけるのではなくて、しっかりと議論することが大切なんだろう、こう思うところでございまして、国民投票が一度も行われていないということは、国民の皆様が判断する機会が失われているのではないかとも言われているわけでございまして、その中において国会議員がそれぞれの責任を果たしていくことが求められているのではないか、このように考えております。

井野委員 ぜひ、我々はやはり憲法議論を進めていくということが大事だというふうに思っています。

 そして、そのたたき台として、例えばさきの参議院選挙で、我々自由民主党は、自衛隊の明記、そして緊急事態対応、そして参議院の合区解消、はたまた教育の充実という四つの改正案をまとめて、さきの参議院選挙を戦わせていただきました。

 もちろん、これは総理がおっしゃるように、全てこれだと、あくまでも議論のたたき台として我々はお示しをしたわけであります。そして、私も一法曹、弁護士でありましたので、法曹の端くれとして、一つ憲法議論の提案をさせていただきたいと思います。(パネルを示す)

 その一つが、憲法前文になります。

 私、この前文もとても大事な一つの要素だというふうに思っております。この前文というのは、まさに、我が国がどういうふうな憲法を制定し、どういう国づくりをしていくか、それを具体的に示したものが私は憲法前文だと思っております。まさに党の綱領であります。どうやってこの国づくりをしていくか、どういう国づくりをこれから我々は決意を持って進めていくのか、その理想像を書いたのが前文であります。だからこそ、我々は前文をまず、私は前文を議論することはとても大事なことではないかと思っています。

 そして、その一節としてちょっと御紹介をさせていただきたいんですけれども、前文の第二段落に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こういうふうな記載があります。

 これについて、普通に読むと、我々は戦争をしてしまったが、これは二度としません、軍隊は持ちません、だから、平和を愛する周りの多くの国々の人々を信頼して、守ってもらって、我々は自分たちの安全を保持しようというような記載になっているんですね。

 私は、これは、やはり我々としては、自分たちの国を自分たちで守る、これは当たり前だと思います。いつまでもアメリカに守ってもらっているようでは、いつまでたっても自立した国家としては言えないんじゃないかなというふうに思っています。だからこそ、こういった前文からしっかりと、これについては多分与野党は、理想の国家像を語ることは私は与野党に異論はないと思います。

 ぜひともこの点、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 前文についてどのように考えるかという御質問でございますが、その御質問に答える前に、私は、いわば自民党の一議員として従来から申し上げてきたわけでございますが、なぜ憲法を改正すべきかということでございますが、我が党の結党時の話をさせていただきました。

 昭和三十年でございますが、当時、結党時の自民党の国会議員は、ほぼ全て、いわば、現行憲法がどのような過程で成立をしたかということはよく知っていたのであります。この現行憲法が占領下でつくられたということは厳然たる事実であり、それを多くの議員が身をもって経験してきた。その中で、やはり自分たち自身で我が国の憲法は書き上げていくべきではないか、こう考えたんだろう、こう思う次第でございます。

 そして同時に、憲法制定からもう七十年余りが経過をしたわけでございまして、その経過の後において、やはり、もちろん、この国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の基本理念は今後も揺らぐことはないわけでございますが、七十年が経過した中で、時代にそぐわないところを改正すべきではないか。そしてもう一点は、やはり憲法は国の理想を語るものでございまして、次の時代への道しるべであろう、こう思うわけでございます。

 そこにはやはり、例えば、今、井野委員が言われたような、前文においては、どういう国をつくっていくか、どういう国にしていくかということの思いが込められていなければならないんだろうな、こう思うところでございます。

 具体的には、今、井野委員が挙げられたような論点について、私も若い議員のときにはさまざまな議論をさせていただきましたが、ここで具体的に中の条文について逐条的に論評することは差し控えさせていただきたい、こう思うところでございます。

 いずれにいたしましても、令和の時代にふさわしい憲法のあり方について、憲法審査会においてしっかりとした議論が行われ、そのことを通じて国民的な議論が広がっていくことをぜひ期待をしたいと思いますし、井野委員のような若い議員の皆さんには、ぜひ多くの国民の皆さんの前で活発な議論を行っていただきたい、このように思います。

井野委員 憲法についてはとりあえずこの程度にとどめて、経済について続いてお伺いをしたいと思います。

 まず、現在の経済情勢の見通しについてなんですけれども、内閣としては、デフレではないというような話、宣言をされているかと思いますけれども、これは、今、現時点ではデフレから脱却したというふうな認識なのか、現在の経済情勢の見通しについてお伺いしたいと思います。

西村国務大臣 お答え申し上げます。

 政権交代後、アベノミクスの三本の矢によりまして、デフレではないという状況をつくり出すことができました。これは議員御指摘のとおりであります。

 足元の物価を取り巻く状況を見ましても、消費者物価指数の基調を示す、いわゆる生鮮食品、エネルギーを除くコアコアと言われるものですけれども、これで見ましても、二〇一七年の七月以降、二十六カ月連続で前年同月比のプラスとなっております。GDPギャップも三四半期連続でプラスとなっております。そういう判断をしているところであります。

 ただ、御指摘のデフレ脱却の判断に当たりましては、足元の物価状況に加えて、再びデフレに戻るおそれがない、そういうことを確認することが必要でありまして、そういう意味において、まだ完全にデフレからは脱却したと言える状況にはないと考えております。

 日本経済は長期にわたり景気回復が続いておりますけれども、賃上げについても、今世紀に入って最も高い水準の賃上げを六年連続で実現しております。デフレ脱却に向けた改善は引き続き続いているものというふうに考えております。

 引き続き、政府、日銀で緊密に連携しながら、あらゆる政策を総動員して、デフレ脱却に向けて力強く成長を目指してまいりたいと思います。

井野委員 ちょっとまだまだ不確定要素というか、危険な要素があるから脱却宣言まではできないというようなお話だったと思います。

 ちょっとこのパネルを見ていただければと思います。

 これはどういうパネルか。政府と企業の、民間と政府の資金需要の相関関係図でございます。茶色の部分が下に行けば行くほど借金をして、とにかく民間がお金を借金して、どんどんお金を使っているというような状況です。これがゼロから上に行くと完全に貯蓄をしているというような図になります。ですので、この茶色い折れ線グラフが民間の企業の貯蓄率になりますので、当然、茶色が下の方に行けば行くほど、同じように下がっていくというような関係です。ちなみに、赤い折れ線は政府の収支、すなわち、赤い線がゼロより上に行けば黒字、下に行けば赤字というような状況になっています。

 そして、直近の数字を見てみると、一九九一年とかバブル期に比べてまだまだ、要は、企業はお金をため込み、そしてまた、積極的に借金をして投資をしていく、資金需要というのはまだまだ弱いのかなというふうに感じますけれども、この点、まず日銀、どういうふうに考えているか、教えてください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、一九九〇年代後半以降、企業部門全体として見れば、かつての投資超過、貯蓄よりも投資の方が多いという状態から、貯蓄超過主体に転じております。

 この背景には、バブル崩壊以降、長期にわたる低成長やデフレのもとで企業の投資スタンスが慎重化したことですとか、あるいは、金融危機の経験などから、流動性、手元の現金に対する選好が高まったといったようなことがあると考えられます。

 企業部門が現在も引き続きなお、御指摘のとおり、貯蓄超過主体であるということは、こうした影響が完全には払拭されていないということを示しているものだと思います。

 もっとも、私どもが金融緩和を進める中で、企業の資金需要が増加していることも事実でありまして、銀行貸出残高でございますけれども、二〇一〇年代の前半から前年比プラスに転じ、このところ二%台の伸びを続けておりますし、企業の投資スタンスも、徐々ではありますけれども、積極化しておりまして、こうした中で、企業部門の貯蓄超過幅が縮小してきているということも御指摘申し上げたいというふうに存じます。

井野委員 もう少し、ちょっとこのパネルについてお話をさせていただきたいと思います。

 直近においては徐々に貯蓄が、最後の部分で下がってきているというのはそのとおりですけれども、もっとマクロの視点でやはりこれを議論していかないと誤ると思っておりまして、一九八一年ぐらいまでは、簡単に言うと、これが下に来ていますので、企業がどんどん借金して、とにかく、当時は円が三百六十円の時代ですから、どんどん借金して、どんどん物をつくって海外へ売っていたという時代でした。それが、八六年、ちょっと上に来ました。資金需要が減ったということになります。これは何が起きたかといったら、プラザ合意ですね。プラザ合意でいきなり円高になったから、資金需要が減って、上に来たんですね。

 当然、その後、バブルがまさに起きたということで、また下に来た。民間がとにかくお金を借金して、いろいろなものを買って、不動産をばんばん買っていたというような時代でありました。そして、一九九一年、バブルが崩壊して以降は、もう一気に企業は守りに入っていって、資金需要が減って、その分、企業の貯蓄率がどんどん上がっていってというような流れになっております。

 そしてその後、リーマン・ショックが〇八年に起きて、またきゅっと。徐々によくなって、いろいろ、不良債権処理が終わったんでしょう。その結果、企業もだんだん貯蓄を下げていって、投資していこうと思った瞬間に、またリーマン・ショックがばっと起きて、また茶色い貯蓄率が上がっていってしまったというような状況になっております。

 こういう今の経済情勢になって、今、我々は日銀を通じて金融緩和をやっているんですけれども、結果、民間企業の資金需要というのはなかなか起きていない、まだまだ弱いような状況になっています。民間の資金需要を直接喚起していかないと、やはり民間も、将来のインフレを期待して、どんどん借金して投資していこうという環境にならないんじゃないのかなというふうに私は考えております。

 ですので、私は、景気対策というものはやはりしっかりとやっていかないと、多少の財政出動というもの、残念ながら、日銀から金融緩和をやって市中の銀行へ流しても、結局そこでとまって終わっているんですね。だからこそ、やはり政府の財政出動によって景気の下支えをやっていかないと、いつまでたっても上に張りついたままです、これは正直言って。

 これは、おもしろいのが、お金というのは、例えば、いいものをつくったから自然に生まれる、高いものをつくったからお金が生まれるというものではないんですよね。麻生財務大臣はうなずいていただいていますけれども。何かというと、誰かが日銀から銀行券を持っていかないとお金は生まれないんですよね。

 だから、それを、バブルのときは、要するに、民間企業がさんざん銀行から日銀券をごそっと持っていって、だから景気がよくなっていたんです。いいものをつくったから景気がよくなったのではなくて、銀行券をさんざん持っていったからよくなったのであって、それがバブルだったわけです。

 問題は、では、今はみんな民間が貯蓄していて、どうしているか。残念ながら、今は政府だけが一生懸命お金を日銀から持ってきて、よっこいしょよっこいしょといって、民間に開放して、何とか景気を下支えしているというような状況にあるわけですね。

 だからこそ、私はやはり、バブルほど、とにかく銀行券を日銀から引っ張ってきて市中に流せと言うつもりはありません。バブルにしろと言っていません。あくまでも適正なインフレになるまではしっかりと景気を下支えしていく、財政出動していくということが大事なのではないかというふうに思いますが、麻生財務大臣、どうでしょうか。

麻生国務大臣 今、井野先生の御指摘がありましたけれども、ここに至るまでの経緯の説明としては、あれはすごく大事な指摘です。あれがわかっていない人がしゃべると、話が全然意味が通じませんので、あそこが一番肝心なところです。

 一番肝心なところは、今、バブルという言葉が、多分、いろいろな人が言うんでしょうけれども、プラザ合意が起きました一九八五年、一ドル二百四十円が百二十円台までぼんと、一年ぐらいで円が上げた。あのときから、円高不況とかいうわけのわからぬ言葉がよく当時は使われていましたけれども、現実問題としては、企業が一斉に、国際的に見て、倍の金持ちになったわけですから、その金を持って海外に一斉に出ていって、海外でいろいろなマージン、マージンというのは、企業を買ったり、買収したりしましてね、それで金をどんどんどんどん、企業を膨らませていった。それは間違いないですよ。国内で投資しないで、国内で投資しても、円高になりましたので、とてもじゃないというので、海外で工場をというような形にしていったのが歴史なんだと思いますが。

 それが、一九八九年の十二月二十九日、株価が三万八千九百十五円、これが史上最高値で、これ以後、三万八千九百円を超えたことは一回もありませんから。どんと株が下がり始めて、おっしゃるように、九一年までまだ土地は上がっていたんですけれども、九一年には土地も下がって、何が起きたかといったら、債務超過になったんですな、企業は全部。だって、持っていた担保の株も七分の一、土地も四分の一、五分の一に下がりましたから、債務超過になった。だから、みんな企業は借金を返済しないと、債務超過では金は借りられないよという状態になって、あのころ、貸し剥がしだ貸し渋りだ何だといろいろな言葉が出ましたよ。もう今は全く使われない言葉ですけれども。そういう流れの中でこの話が起きていますから。

 今、多くの企業は債務超過は消えて、自己資本比率が極めて高い企業に化けております、間違いなく。そういった中で何が起きたかといえば、新しい金を借りるのではなくて、全て利益は借金の返済に充てたんですな。設備投資はしない。そういった形で借金を返済しないと新しく仕事はできませんから、債務超過で。それがずっと続いたら、また二〇〇八年、リーマン・ショックでまたどんと来たというのも確かです。それは全部、そういう流れでお金の動きが決まっていったんですが。

 したがって、今、何というのか、傷、思い出、結構あの当時いじめられたいわゆる財務課長、資金班長等々は、今、ちょうど常務とか何か偉くなっているんですよ。絶対あの銀行からだけは金は借りねえと思っていますよ。企業家に聞いてごらんなさいよ。ほとんどそのころのやつは、絶対借りない、だから自己資本でやる、絶対銀行なんてと。

 その銀行の方も、これは今、頭取とか、あの辺、副頭取、みんなずらっといますから、あのやろうがいる間は絶対、それはみんなそういう感情になっているんですって。経営者の友達はいっぱいいますから、みんな同じことを言いますから、多分そう。したがって、これはなかなか直らないんですが。

 問題は、経済といたしましては、間違いなく起きているその事情に合わせてふむふむと言っているだけではどうにもなりませんので、GDPは間違いなく、個人消費がふえる、企業の設備投資がふえる、若しくは政府の財政支出、この三つですから、GDPの基本は。小さいのはいっぱいありますよ、純輸出とか。大きいのはその三つ。

 その三つが全部とまっていれば、それはやはり財政がある程度出ていかざるを得ないというので、私ども、この六年間の間、そういった方向で、少しずつやらないと、またわあんというようなことになりますと、何となく、そんなに言うならもっと予算を出せ出せ出せ出せなんて自民党がわんわん言ったりなんかすると非常におかしなことにまたなりかねませんから、私どもとしては、そこをどれくらいバランスしていくかというのが最も財務省としては頭の痛いところであります。

井野委員 麻生大臣の話を聞いていると、何か今の銀行の頭取というのはかわらないと日本経済がよくならないのかななんてちょっと思ったりもしちゃうんですけれども、それはそれとして。私は、大臣、ばらまきをやれだとか、無駄な公共事業をやれ、昔の自民党に戻れなんというのは一言も言っていません。

 私も、ちょっと今、お隣にいる安藤先生と一緒にMMTについての議論というか勉強会もさせていただいていまして、国債は借金だから将来世代にツケを回していくんだという議論がよくあるんですね。

 これは何度も言いますけれども、日銀券が市中に出回らないと経済はよくならないし、インフレにならないんですよ。では、今は誰が市中に流しているかというと、やはり政府なんですよ。だって、民間は持っていかないんですもの、銀行からお金を。先ほど、銀行の頭取が嫌だから持っていかねえという大臣の話がありましたけれども、持っていかないんですからインフレになりようがないんですよ。だから、二%目標もなかなか達成できていない、こういう状況なんですよ。だから、やはり、では誰がとっていくしかないかといったら、私はやはり日本政府なんだろうと思っています。

 では、国債発行をがんがんしていったら、よく言われるハイパーインフレが起きるんだ、若しくは将来世代にツケを回すんだというような議論があるんですけれども、私は、MMTの根幹として一番大事なことは、自国通貨建ての国債においては国家が破綻する現実的リスクはないという部分だと思っております。すなわち、円で、自国通貨で国債を発行しているときは破綻するリスクはない。だからといって、もちろんばらまけとは言っていません。

 ちなみに、これは財務省のホームページからちょっと引っ張ってきた資料になります。ここにも、要は、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」というような記載があります。

 まず、これについて、ちょっとどういう趣旨なのか、大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今頂戴したこの資料は、いわゆる外国格付会社宛て意見、趣旨書の内容の話なんだと思うんですが、これは大前提をちょっとまず理解していただかないかぬな。

 ボツワナという国がありまして、その国の国債より日本の国債の方の格付が低いというのが出されたんですよ。プア・スタンダードかスタンダード・プアーズかどこか知りませんけれども、極めてプアなスタンダードだったんだと思っていますよ。

 そこで、日本政府は反論を書いた。ふざけるな、何をといってざっと書いたのが、今の日銀総裁、黒田さんが当時、国際局長かな、財務官か何かのときに書かれた文書ですよ。僕はその文書の記憶があるんですけれども。こういう事態に反論するためにこの文書が出されたというちょっと大前提があるので。

 格下げをされたんですけれども、客観的な説明を求めるときに使わせていただいたものなので、財政健全化の必要性というものを否定したわけでも全くありません。

 その上で、日本財政というものの状況について申し上げさせていただければ、今、私どもとしては、あの当時の借金は総額六百九十八兆。今が一千百二十兆ぐらいになっていますから、そういった意味では、国債というものはそうなっておるのが実態ですよ、約倍近くになっていますから。

 そういった意味ではふえているんですけれども、金利は下がっておるんですよね。借金がどんどんふえたら、普通は金利が上がる。ところが、日本の金利は下がっておるという、全く今までの経済学では全然考えられない事態が起きておるというのも事実なので、信用は極めて高い国債であるんだと思っております。

 したがって、これだけふえても金利は下がらないという事態が、少なくとも奇跡的な状態が今続いて起きておるというのが私どもの正直な実感ですよ。もとお金を借りた経験のある方から言わせていただければ。

 したがって、私どもは、こういった信頼が高いという大前提は、日本は、将来は確実に、例えば国税というか、いわゆる消費税を上げさせていただいて、ちゃんと返そうとしている努力はしているということをインターナショナルなマーケットで認めてもらえると、何となくそれは、あいつらはちゃんと金は返すから、ずっと、というのは、信頼がある間は間違いなく国債は売れます。しかも、日本の通貨で。

 御存じのように、自国通貨だけで自国国債を発行して、そしてそれを自国の通貨だけで消化している国は、今、日本とアメリカとスイスと、デンマークかどこかもう一カ国、四カ国あるんだと思いますが、それ以外は必ず外債で売っていますから、返済するときはドルで返さないかぬ、ユーロで返さないかぬということは日本はありません、日本円だけで売っていますから。外国人も買っていますけれども、それは全部日本円で買っていますから。そういった意味では、日本の通貨というのはそういう形になっております。

 だけれども、それは今は確かにそうなっているけれども、未来永劫続くかというと、それはなかなか心配しておかないかぬところなので、ちょっとそこのところの対応はバランスを保たないかぬというのが最も頭の痛いところです。

井野委員 大臣のおっしゃるとおり、確かに未来永劫、円だけ、円建てでできるかというのは、確かにそこは一つの課題だと思います。

 例えば、今話題の仮想通貨、リブラみたいなああいう通貨がもし万が一我が国でばんばん流通するとなった瞬間にこの理論というのはもう破綻をしますので、その点は大臣のおっしゃるとおりなんですけれども。

 ただ、やはり今の現時点で、要は、バブル期に比べたら全然資金需要というのはないし、市中に回っているお金の量は圧倒的に少ないんですよ。誰かが借金しなきゃならないといったらやはり今は政府だろうというのは、私は本当にそのとおりなんだろうというふうに思っています。

 ましてや、破綻のリスクもないし、将来世代にツケ回しをということでもないというのであれば、例えば、インフレになったときに国債を買い取って、お金を、市中から買い取って償却していくというようなやり方で、私は十分、将来世代にツケ回しにもならないし、真っ当な政策なんだろうと。この点は、私は、MMTについても一理あるな、多くの国会議員の皆様にぜひ勉強してもらいたいな、そのように感じているわけであります。

 ちょっともう一つ、この表について一つ言わせてもらえば、ちょうどバブル絶頂期の一九八九年に、消費税導入、三%入ったんですよ。だけれども、バブルは全然、そういうインフレのときにやったものだから全然影響はなかったわけです。むしろ、総量規制でばっとバブルが崩壊していったわけですけれども。

 それぐらい、インフレのときに消費税を上げるというのはいいことなんです。ただ、やはりまだ経済が弱いときというのは、私は財政出動をもっともっとやっていくべきではないかというふうに思っているので、ぜひその点は私の意見として聞いていただければと思います。

 次に、これからまたパネル四をちょっと示していきます。

 これから先は、今度は、これは経済のとても大事な部分に当たる、これからはやはり賃金が、我々、内部留保をため込んでいる企業を、内部留保を吐き出して、安倍総理含めて、賃金で出せ、企業はため込むんじゃないと我々もすごい言っていますし、本当にそれは大事なことだと思っています。

 これは、日本企業の資本金十億円以上の売上高の推移とか、要は、簡単に言うと、大企業はどういうところにこの二十年ぐらいの間に金を使ったかということなんです。

 一九九七年を一〇〇とした上で、これは企業統計なんですけれども、売上高一〇七、ほとんど変わっていないですね、約二十年前と。ところが、経常利益は三倍、三一九、要は三倍に上がっているわけです。これを見ると、何となく、下請でもいじめたのかなと言いたくなっちゃうんですけれども、私からすると。売上高が変わっていないのに経常利益が三倍になるということはおかしなことですから。

 更にふえたのが配当金、六倍。他方で、従業員の給与は若干目減り。設備投資も目減りで、従業員の給与はもっと目減り、九六ですから。

 大企業の経営者というのは、私は本当に残念に思いますね、ROE経営を重視しているのかどうなのかわからないけれども、いつからこんな配当ばかりに目が行くようになってしまったのかと。これについて、やはりこれはどうにかしていかなければならないというふうに思っています。

 やはり、これはピケティも言っているとおり、資本収益率は成長率よりも高く出てしまいますから、ほっておけば格差が是正できなくなる。これをどうやっていくかということ、ぜひ、経済再生大臣、答弁をお願いします。

西村国務大臣 お答え申し上げます。

 井野議員御指摘のとおり、アベノミクスの成果として、企業が有する現預金が五十兆ふえて、今二百四十兆円となっています。これをぜひ生かして、長期的な視野に立った投資であるとか、人材への投資であるとか、あるいは大企業と中小企業との取引の適正化であるとか、こういうところにぜひ使っていただきたいと考えております。

 特に、技術革新がこれだけ速い中で、世界が大きく変わってきております。御指摘のとおり、企業の経営者の皆さんには、ぜひ思い切って、リスクもとって投資をしていただきたいというふうに考えているところであります。

 既にサンドボックスとかグレーゾーンとか各種特区制度がありますし、必要な規制改革は引き続き取り組んでいきたいと考えております。

 その上で、更に申し上げれば、やる気のある企業がスタートアップ企業をMアンドAするとか、あるいは共同研究を行う、こういったケースに、それをやりやすくするような支援策、ルールづくり、これを検討しておりまして、環境整備をしていきたいというふうに考えております。また、成長著しいアジアの企業ともぜひ連携して、いろいろなビジネスに挑戦していただきたいというふうに考えております。

 こうしたことによって、イノベーションを速やかに社会実装して、生産性の向上に向けた設備や人材への大胆な投資を促していきたいというふうに考えております。

井野委員 ですので、やはりこういう、企業経営のあり方自身も、いろいろな形で政策誘導していきながら見直しをしていくということが賃金アップにつながっていくんだと思っております。

 これは簡単な図です。要は、給与が、一九九五年をマックスで五百五十万、世帯所得、簡単に言うと従業員の給料です、これをピークにどんどん減っていっている。これは本当に、インフレになっていないから減っているということなんですね。これがインフレだったら、絶対ふえていっておかしくない。だって、一人当たりの生産性は確実に上がっていますから。IT化されているわ、設備も少なくとも二十年前よりよくなっているはずなんですから。生産性は絶対上がっているのにこれが下がっているというのは、やはりこれはインフレだからこうやって所得が下がっていっている。これはやはりゆゆしき事態ですよねということであります。

 そして最後に、もう一つ問題なのは、こういう、所得が減っていっている結果、今ちょっと、格差の問題も、これはやはり政策でどうにかしていかなければならないというふうに思っております。

 これは二〇〇七年からのデータしかなかったのは本当にちょっと残念だったんですけれども、金融資産を保有していない世帯の推移ということであります。簡単に言うと、金融資産ですから、いろいろな余裕資産、今直ちに手元で、預貯金とかそういう現金とかとは違う、今直ちに使う必要がない余裕資産がまさに金融資産に行くわけでありますけれども、これは二〇〇七年からのデータでちょっとあれなんですけれども、最近、私はアベノミクスの一つの成果として、現役世代の三十代から五十代は若干こうやって落ちてきたんですけれども、二十代だけはやはり、赤い線で、上がっちゃっている。この若い世代に対してしっかりと手当てしていかないと、やはり結婚もできないし、少子化の問題も私は解決できないんだなというふうに考えております。

 ぜひ、この格差是正について今後どのように取り組んでいくのか、最後にお伺いして、終わりにしたいと思います。

西村国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 先ほどの世帯所得の中央値、これは、御高齢の方々が、引退されて、年金での生活を始められた方々の世帯がすごくふえておりますので、そういったものも含めた中央値になっていますから横ばいだということもぜひ御理解もいただければと思います。

 その上で、格差についての御質問でございました。

 御指摘のように、格差を示すさまざまな指標がございますけれども、安倍政権、アベノミクスによって、子供の貧困率も大きく改善しておりますし、それから、例えば一人親家庭の子供の大学進学率、これが二〇一一年度の二四%から一六年度は四二%と大きく上昇しておりますし、加えて、生活保護世帯の高校進学率も上昇を続けて、約九四%と過去最高の数字になっております。まさに、家庭の経済事情に左右されずに、意欲ある子供たちが学べるような環境を整えてきたというふうに認識をしております。

 さらに、来年四月からは、年収五百九十万未満の世帯を対象とした私立高校の授業料の実質無償化や、真に支援が必要な学生に対する授業料減免を通じた高等教育の無償化を実現することとしております。

 いずれにしましても、貧困の連鎖や格差の固定化、これは何としても避けなければいけないというふうに考えております。意欲、能力のある若者がその能力を十分発揮してチャンスをつかめるような社会をしっかりつくってまいりたいというふうに考えております。

井野委員 本当に、きょうは貴重な機会、ありがとうございました。

棚橋委員長 これにて岸田君、小渕君、葉梨君、井野君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

棚橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前の質疑の中で、公党に対して誤解を与えるような発言がありました。今後、委員におかれましては、発言には十分注意していただきたいと存じます。

 質疑を続行いたします。石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。(発言する者あり)うるさいよ。人の党の質問のときにわあわあ言うんじゃないよ。

棚橋委員長 静粛にお願いいたします。

石田(祝)委員 済みません。ちょっと、質問に入ろうと思いましたけれども、失礼いたしました。

 きょうはまず、非常に喜ばしいニュースが昨日入りましたので、その点からお聞きをいたしたいというふうに思います。

 ノーベル化学賞、吉野彰博士が受賞することになりました。昨年の本庶先生に続きましてということで、分野は違いますけれども、私は、大変これは喜ばしいことではないか、こういうふうに思っております。

 それで、総理にまずお聞きしたいんですけれども、日本人として、アメリカ籍の方もいらっしゃいますけれども、大変多くの方がノーベル賞を受賞されている。しかし、今心配されているのは、日本人の書いた論文の引用回数が減ってきている、そしてまたドクターに進む人も非常に少なくなっているんじゃないのか、こういう指摘もございます。ですから、これから先、日本人はノーベル賞をとれるチャンスがだんだん減ってくるんではないか、こういう質問の声もあるんですが、私は、この科学技術に対して、もっともっと我が国として力を入れていくべきではないかと思いますけれども、総理の、このノーベル化学賞受賞についての御感想と、それから先ほど申し上げた点について、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 本年のノーベル化学賞を吉野彰先生が受賞されたことは、大変うれしいニュースでございまして、昨日、先生と電話でお話をし、祝意を伝えさせていただいたところでございます。

 資源の乏しい我が国にとっては、科学技術立国を目指して、やはり科学技術が極めて日本の成長と繁栄には大切であるという観点から、科学技術の振興に力を入れてきたところでありますが、今回の受賞によって、改めて、日本の科学技術の力を世界に示すことができたと思っています。

 先生が開発をしたリチウムイオン電池は、携帯電話や電気自動車などに不可欠なものでありまして、世界じゅうの人々の暮らしを一変させた革新的な技術であろう、こう思います。

 このようなすぐれた技術が日本人の手によって開発されたことは、日本人の一人として大変誇らしく思うところでございますし、先生の偉業は、後に続く多くの若手研究者の皆さんにとっても大きな励みになっていくんだろうな、このように思います。

 我が国としても、今後ともしっかりと、科学技術立国という精神のもとに、政策的な支援も行っていきたいと思いますし、また、先生もこれからも大いに活躍をしていただきたい、このように期待しております。

石田(祝)委員 これはちょっと通告をしていないんですけれども、このリチウムイオン蓄電池について、将来、非常に重要な分野を更に担っていただけるんじゃないかと思っているんですが、それは、一つは再生可能エネルギー。これは、最大の課題は、いわゆる電池をためるということ、これが最大の課題になるわけですね。

 それについて、これは環境大臣になると思いますけれども、突然の質問で恐縮でありますけれども、これをどう生かしていくかということを、小泉大臣、御答弁いただけましたらお願いします。

小泉国務大臣 石田先生におかれましては、このノーベル賞という喜ばしいニュースにあわせまして環境省に触れていただいたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 ほとんど知られていないことだと思いますが、実は二〇〇七年から、環境省としても、どうやってリチウムイオン電池を電気自動車に積載できるか、その技術開発の支援をしてまいりました。ちなみに、初めての搭載は日産のリーフになりますが、今回、こういった形で吉野先生の長年の研究の成果がノーベル賞としてつながり、その背景の中には環境省というプレーヤーもあったこと、このことを多くの国民の皆さんにも知っていただきたいと思いますし、今後まさに再エネをどうやって主力電源化していくか、こういったところにおいては、先生がおっしゃったとおり、この蓄電、こういった技術についても、安倍総理が言われているように、非連続のイノベーションを次々に生み出して、今後も、環境省が支援する技術開発の中でノーベル賞の受賞とかそういったことが出てくるように、引き続き支援をしていきたいと思います。

石田(祝)委員 では、台風十五号の関係の質問をいたしたいと思います。

 今回の台風についてはもう一カ月、台風十五号ですね、一カ月過ぎたわけでありますけれども、さまざまな取り組むべき課題、今後の教訓にすべき課題も私はあっただろうと思いますけれども、特に、停電ということが長期に続いた。私も出身が高知県ですから台風常襲地帯ということで、水の問題とか、さまざまございますけれども、今回は、強風によって架線が切れる、そして鉄塔が倒れる、長期にわたって停電をするという今までにない災害だったというふうに思います。この災害に遭われた方々にお見舞い申し上げますとともに、また、お亡くなりになられた方にも心からお見舞い、お悔やみを申し上げたいと思います。

 総理、この台風十五号、千葉県の、特に長期停電等について、どういうふうにこれからお取り組みになるか、お願いします。

安倍内閣総理大臣 まず、今回の台風十五号によりお亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、全ての被災者の皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。

 政府においては、台風第十五号の接近前から、防災担当大臣が出席をして関係省庁災害警戒会議を開催したほか、停電の解消に時間を要している状況等を踏まえ、関係省庁災害対策会議を合計十五回開催し、閣僚懇談会でも議論するなど、関係省庁が緊密に連携して、切れ目のない対応に当たってきたところであります。

 こうした中で、内閣府や経済産業省等の連絡員や専門的な知識を有する者を順次千葉県庁や各市町村に派遣したほか、食料品等のプッシュ型支援、自衛隊員延べ五万四千人を動員しての倒木除去作業やブルーシートの展張作業、被災地への自治体職員の広域応援派遣を行うなど、被災地のニーズを踏まえたさまざまな支援策を講じてきたところであります。

 一方、今回の台風においては、長期間にわたり、停電及びその復旧プロセスなどのさまざまな課題が認められました。それらの課題を検証、検討するため、先般、官房副長官をトップとする検証チームを立ち上げたところであります。

 今後、このチームのもとに設置をした実務者検討会において、メンバーである防災分野等の有識者の御意見も伺いながら、長期停電の原因、その復旧プロセス及び鉄塔等送電網のハード対策、通信障害に関する関係者間の情報共有・復旧プロセス、国、地方自治体の初動対応、災害対応にふなれな自治体への支援等について徹底的かつ客観的な検証をしていきます。

 今回の災害から得られた教訓を踏まえて、防災・減災対策を不断に見直していく。やはり不断に見直していくということが極めて重要だろう、こう思っております。国民の生命、暮らしを守るために万全を期してまいりたいと思います。

石田(祝)委員 それで、激甚災害について、これは非常に早く指定をしてほしい、こういうお声が上がっていると思いますけれども、そういう予定だということはお聞きしておりますけれども、これは、私の認識不足でなければ、まだ指定されていないというふうに思っておりますが、この激甚災害の指定について一体いつ行うのか。これは武田大臣にお願いします。

武田国務大臣 被災地の早期復旧復興のためには、被災自治体の方が財政面の不安なく事業に取り組めるようにすることが肝要だと思っております。

 台風第十五号を含む本年八月から九月の前線等に伴う大雨による被害、災害については、激甚災害の指定政令の手続を進めておるところでありまして、間もなく指定する見込みとなっております。

石田(祝)委員 大体、間もなくというのはよくわからないんですよね。ここから、喉元まで出かかっているけれども言えないんだろうとは思いますけれども、もうちょっと皆が、そうだ、頑張ろうとなるような答弁をお願いしますよ。

武田国務大臣 できるだけ早く頑張ってまいりたいと思います。

 やはり一定の、これはルール等々もある中で、しっかりとした調査に基づいて積算していかなきゃならない部分もありますので、しかしながら、被災地の皆様方のお気持ちを考えれば、全力を挙げて、一刻も早くこれを、指定政令を、手続を進めてまいりたい、このように思っております。

安倍内閣総理大臣 総理大臣として補足をさせていただきますと、激甚災害にしてまいりますので、ですから、自治体の皆様については、財政面では安心して全力の投球をしていただきたい、このように思います。

石田(祝)委員 私も思わず拍手をしてしまいましたが、やはり総理がそこまでおっしゃるということでございますから、これは被災地の方も復興に向けて希望を持って進んでいただけるんじゃないかというふうに思っております。

 それで、今回、一部損壊、これは特に屋根ですね、この屋根が吹き飛んだときにどういうふうに見てくれるのかということが、屋根だけだと一五%とかいう、そういう考え方があるようなんですけれども、これは確かに部材としてはそういう一五%というウエートかもしれませんけれども、これは屋根が飛んだら、雨が降ってきたら全部ぬれますからね。そんなことはわかっている話でありますが。

 これについて、赤羽大臣が一番最初に、何かしなきゃいけないんじゃないかということをおっしゃったように記憶しておりますので、赤羽大臣からそのことについてちょっとお触れいただきたい。武田さんにその後ということで。

赤羽国務大臣 それでは、お答えさせていただきます。

 今回の台風十五号の被害につきましては、私も、九月十一日に国土交通大臣を拝命した翌日の十二日、そして十四日と被災地に入らせていただきました。その時点で上がっていた報告より、はるかにひどい住宅の被害の状況を目の当たりにしたわけでございます。

 その被災地の首長の皆様からも、異口同音に、屋根等に被害を受けた一部損壊が大変多い、しかし、その一部損壊の住宅について言えば、残念ながら国の支援はないので何とかしてほしいという要望をいただきまして、そして、そうした強い要望がたくさんあったものですから、政府全体の中で鋭意検討させていただき、これは所管は武田担当大臣でございますけれども、災害救助法に基づく住宅の応急修理制度、支援制度は、これまで対象であったのは半壊以上でございましたが、そこを広げていただき、住宅損害割合が一〇%以上二〇%未満、半壊から下の、一〇%以上あればということで、一部損壊世帯まで拡充することになったわけでございます。

 これは内閣府防災のところの仕事でございますが、それでもなお、支援対象とならない損害割合が一〇%未満の一部損壊の被災者も数多くいらっしゃるという話も聞きましたので、そこについては、国土交通省としても、被災者の皆さん、また、被災地の皆さんに寄り添う観点から、このたび新たに、国交省の防災・安全交付金と、また、総務省の特別交付税を活用させていただきまして、結果としては国が九割、地元自治体で一割を実質負担する形で、被災した住宅の補修に対して上限三十万円までの支援を行わせていただくことになりました。

 こうした措置によりまして、被災者の皆様方の生活再建が加速されることを期待するわけでございますし、なお、一つ余計なことでございますが、現在台風十九号が接近しておりますので、国交省としても、従来からそれぞれの地方自治体とのホットラインがございますので、そのホットラインを生かしながら、また、国交省から各自治体に派遣をしているリエゾンを通じて状況を的確に把握して、次なる万全の対応を期してまいりたい、こう考えております。

 以上でございます。

武田国務大臣 ただいま御説明がありましたように、災害救助法の制度を拡充しまして、恒久的制度とさせていただきます。そして、一部損壊住家のうち一定以上の被害が生じたものについてその支援の対象とすることとさせていただきました。

 具体的に、先ほど赤羽大臣の方からありましたけれども、住家の損害割合が一〇%以上二〇%未満の住家を支援の対象と考えておりますが、今後の災害に向けては、罹災証明書においてもその旨が判別できるよう、被害の程度に新たな区分を設ける方向で、速やかに検討する必要があると考えております。

石田(祝)委員 こういう形で、恒久制度にするということで、大変これはすばらしいことだと思いますが、私は、この一部損壊のうちの一〇%以上二〇%未満という、ここを準半壊とか名前をつけて、カテゴリーとしてはっきりさせた方がいいと思うんですけれども、武田大臣、どうでしょうか。

武田国務大臣 大変いいアドバイスをありがとうございます。今後、参考にさせていただきまして検討させていただきたいと思います。

石田(祝)委員 そして、これはいつも災害のときに、被災を受けられた方が、まず、罹災証明書、これが必要なんです。これがないと何もできないわけですから。

 そして、これに対口支援で応援に来たところは、自分のところでやっている罹災証明書の書式と、要するに、その当該のところの書式が大分違っていて、なかなかスムーズに罹災証明書の発行のお手伝いができないという声が出ているようでありますけれども、これはそれぞれの地域で独自にさまざまな手を打っていることはよくわかりますが、これはやはり基本的なところは書式を統一する、そうしたら、対口支援で応援に行った人も、これは私は同じようなやり方でスムーズにお手伝いができるんじゃないかと思いますけれども、この点はどうでしょうか。

武田国務大臣 今委員の方から御指摘がありましたように、書式については、本当は統一、もう全ての自治体、国も統一するのがベストであろうか、このように我々も考えております。

 しかし、現状さまざまでありまして、内閣府では、自治体が災害発生後に罹災証明書を円滑に交付できるように、業務マニュアルというものは作成をさせていただいて周知しているところであります。マニュアルというのは、少なくとも、被災者の住所、氏名、被災住家の所在地、罹災原因、被害の程度については必ず記載することとなっております。

 御指摘も踏まえまして、応援職員の利便性向上等の観点から、必須記載事項を判別しやすくなるなど、罹災証明書の様式のあり方についても、今後検討を重ねてまいりたいと思います。

石田(祝)委員 これは大臣、応援職員の利便性じゃないんですよ。被災者にとってスムーズにやっていかなきゃいけない、そのために、応援に行った人が仕事が実質的に進められるようなことが大事じゃないかということですから、ぜひこれは御検討いただいて、対口支援というのは、当該の被災自治体と応援をしましょうというところ、そこがやはりスムーズに被災者の立場に立ったさまざまな仕事を前に進めていけるように、ぜひお願いをいたしたいというふうに思います。

 それで、今回の災害で、いかに電気が大事か、このことを、私もまたほとんどの国民の方も、この電気の重要性、ふだん、スイッチをひねったらすぐ電気がつく、そして冷蔵庫はずっと冷えている、そういうのを普通の生活だと思っていると思いますけれども、いざこれが途切れたときが一体どうなっているのか、それがまた長期化したときにどうだと、私は改めて電気の重要性というものを実感をいたしました。

 災害のとき、私も実は、先ほど申し上げたように、高知県で、台風がよく来るところでございますから、そういうところで、私も被災地にすぐ急行するんですが、私が行くより大体早く来ているのが、四国ですから四国電力、そこの四国電力の工事をやっておる四電工という会社、そこの何とか班という、班単位で動いていますよね、何々班というのが必ず来ているんですよ。そして、そこで復旧していれば、テレビを見て、そして道路が啓開されるのを待てばいい、また、御飯も電気釜で炊ける、こういうことで安心しているんですね。ですから、この電気について、非常に重要だということを改めて私は実感をいたしました。

 そういう電気が大事だということ、これは自由化にもまたなっていますけれども、当然、今までは地域独占でやっている。そして、費用についても、総括原価方式というんですか、それに利益を乗せてやれる。こういうことで、私は、それぞれの電力会社、どことは言いませんけれども、特に今回は関西電力、これは、この金品の受領問題というのはとんでもない話だ、こういうふうに私は怒りを持って申し上げたいというふうに思います。

 この後、菅原大臣にお聞きをして、そして、ちょっと後で私からもコメントしたいと思いますけれども、まず総理に、この金品の授受問題について、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 電気事業は、電力料金を支払う利用者の皆さんからの信頼で成り立っています。そうした意味では、今回の問題によって関西電力が利用者の皆さんから不信を持たれているという事態は重く受けとめなければならないと考えています。重要なことは速やかな信頼回復であり、まずは、独立した第三者の目を入れて徹底的に全容を解明し、その上で、経営問題も含め、再発防止等の措置を講ずることで信頼回復に努めるべきであると考えています。

石田(祝)委員 それでは菅原経済産業大臣にお聞きをいたしますが、電力を所管している大臣として、電気事業法に基づいた報告徴収、これからどうするのか、また、第三者委員会を関西電力は立ち上げたというふうに思いますが、またさらに、会長も社長もやめる、こういうことも発表になったわけでありますが、このこととあわせて、また、電力会社はほかにもたくさんありますから、ほかの電力会社にもそういうことはないのかということについて、ちょっとあわせて御答弁をお願いします。

菅原国務大臣 ただいま石田先生からお話がありました件、まず、電気事業という極めて公益性の高い事業を担う、民間会社といえ、この関電が、いわゆる社会との信頼関係を築いた上で事業を進めていくべきにもかかわらず、こうした電力会社の役職員が不透明な形で多額の金品を長年にわたって受領していた件、極めて大きな問題であります。

 今お話があった報告徴収の件でございますが、九月二十七日に、私ども報道で初めてこの案件を聞きました。去年の九月に社内的な報告書がまとまっておったにもかかわらず、経産省に全く一年間報告がなく、こういう意味では、その点も極めて大きな問題だというふうに認識いたしました。

 そこで、二十七日即日、私の方から事務方に調査を依頼したわけでございますが、いわばじかに関電からその日午前中に報告を受けたんですが、結果として一年前の報告書に基づく内容だったものですから、これはやはりもっと厳格なものをやらなければいけないということで、今、石田先生お話あったように、電事法に基づく、虚偽の報告があった場合には罰則がかかる電事法上の報告徴収を求めたわけであります。そして、具体的には、役職員が福井県の高浜町の元助役から多額の金品を受領していたという事実、そしてまた、その原因の究明、他の類似の事案がないかどうかといったことの報告を求めたわけでございます。

 重ねて、九月三十日に、関電の役職員を一切含まない外部の独立した第三者のみから成る委員会、これを設置すべきであるという要請をいたしました。

 そして昨日、御案内のとおり、四名の方、御存じかと思いますけれども、元検事総長である但木敬一弁護士、また元第一東京弁護士会の会長、奈良道博弁護士、そして元東京地裁の裁判所長でありました貝阿彌誠弁護士、そして元日弁連会長の久保井一匡弁護士、この四人にあわせまして、プラス十五名の協力のもとで、この第三者機関で内部の調査を行っていく、このように今取組が始まったところでございます。

 そして、この徹底した調査を受けとめ、それをしっかり厳正に処する、そうした流れを考えているわけでございます。

 最後に、他の電力会社についてどうかということでありました。

 こうした事案が九月二十七日に起きたゆえに、九月三十日に、ほかの電力会社にもないかどうか、これをいわば、電事連を通じて、コンプライアンスをしっかり遵守すべきであるということを申し上げました。

 そして、一旦、ほかの電力会社にはない、そういった事案がないということが返ってきたんですが、なかなかそれもどうかというような思いの中で、重ねて二回目、十月四日に再度各社に、今度は各社長宛てに、コンプライアンスの状況を不断に確認して、その結果に基づいて国民への説明責任を果たすべきだということを依頼をいたしまして、その結果、電力会社並びに原子力関連の十二社全てから同様の事案の有無について聞き取りをしましたところ、今回のような類似の事案、いわゆる金品を受け取ったということは、ほかの電力会社等にはないということでございます。

 いずれにしても、コンプライアンスの遵守をしっかり不断に取り組むべき、しっかりと指導していきたい、このように思っております。

石田(祝)委員 私は、先ほど申し上げたように、ちょっとコメントを申し上げたいと思ったのは、きょうは、理事会のお許しもいただいて、一冊の本を持ってまいりました。「黒部の太陽」という本で、黒四ダム、映画でも有名でありますから、皆さん御存じと思いますけれども。

 関西電力がこの黒四ダムをつくった。そのときの社長が太田垣士郎さんという人。この人が大変な苦労をして、まあ、社長もそうだけれども、現場の人も。この工事で実は百七十一人殉職しているんですよ。そういう難工事をやって、日本の電力を、どんどんと高度経済成長に向かうときですから、幾らあっても足りない、そういうところで命がけで仕事をなさった、こういう方です。

 どういうことを書いてあるかといいますと、破砕帯にぶち当たってほとんど進まない、一秒間に六百リットルも水が出る、そういう中で、切り羽という一番最前線のところに社長が足を運ぶ、そのときにこう言っているんですよ。社長、余り奥まで行くと、いつ崩れるかもわかりませんよと。社長は、危ないって、君、みんなそこで仕事をしてくれているじゃないか、仕事を言いつけた僕が行かないという法はないよと。こういうことで最前線まで行かれるわけです。

 そういうことが書かれておりまして、それから電気についても、電気は要る、生活のためにも産業のためにも、電気は空気や水のように要る、それは単なる産業といったものではないのだ、こういう電気に対する強い思いがあった。百七十一人の殉職者を出しながら、完成をさせたわけです。

 そして、これは私は一番心にとどめていただきたいのは、電力会社とはどうあるべきかというところで最後の方に書いているんですけれども、「電力会社は何よりも清潔な会社でなければならなかった」、こういうことも太田垣士郎さんという社長さんがおっしゃっているんです。おっしゃっているというか、本ですから私がもちろん直接聞いたわけでありませんが、そういうことが書かれている。

 これは、関西電力がそこまで、初期のころには電気が要るんだということで頑張ってこられたわけですよ、そういう精神が関西電力になくなっているんじゃないのか、私はそのことを非常に感じまして、きょうは理事会のお許しもいただいて、あえて本の紹介をさせていただきました。

 そこまで昭和三十年代に努力をして営々としてと築き上げてきたものを、今回のこの問題で全てがこれはもうゼロに戻った。マイナスではないのか。ですから、これから先、信頼回復の道は大変私は厳しいであろうと思いますけれども、どうしてもやってもらわなきゃならない。

 電気はやはり要るんですよ。これを私は千葉の台風十五号を見て、ああ、本当に電気というのは社会の最たるインフラなんだ、公益会社が要するにお金を払ってくれている方々から信頼を失ったらこれは大変なことになるんだ、こういうことを改めて実感をいたしましたので、ちょっと時間を使って、本の中身の、当時の関西電力の初代の社長だと言われていますけれども、そういう人がどうやってきたのか、こういうことを私は関西電力にはもう一度思い起こしていただきたいな、そして、公益のためにぜひ心を入れかえるというんですか、新たにスタートしてもらいたいな、こういうことで申し上げたところであります。

 そして、今回のあの千葉の台風十五号についてちょっと心配な点というか、これは江藤農林水産大臣にお伺いしたいんですが、農業被害、これは大変な被害が出ているということはもう御存じのとおりだと。特にハウスの復旧、そしてもう一点は、さまざまな作物の被害がありますけれども、特に私が思うのは、去年の西日本豪雨災害でも、特に愛媛県の南予の方でミカンの樹園地、ここがいわゆる地層ごと崩れちゃったんです。

 それで、ミカンは、これは果物で、昔から桃栗三年柿八年と言いますけれども、植えてその年にならないんですよ。何年間か未収益期間というのがある。その間、辛抱しなくちゃいけないんですよ。

 こういう問題について、江藤大臣、どういうふうにしてそういう人たちの思いにお答えいただけるのか、御答弁をお願いします。

江藤国務大臣 お答えさせていただきます。

 大変大きな被害が出ております。改植のことと未収益期間のことについては、とても大切な案件だと承知しております。

 もう先生はよく存じですけれども、改植につきましては、苗木と撤去費用、このミカンなんかは、大体かんきつ系は二十三万、普通のやつ、ブドウ等は十七万ですけれども、この機会にぜひ新しい手法を取り入れていただきたいなと思っています。ジョイント栽培とかそういうのをやると、十アール当たり三十三万円までお金が出ますので、このお金をぜひ利用していただきたい。

 それから、未収益期間につきましては、四年分を一括として交付することになっておりますけれども、十アール当たり一年五・五万円、ですから四年分二十二万円。これは途中かかる経費とか、経費の内容は肥料とか農薬とかそういうものですけれども、それで十分だとは正直私自身は思っておりませんが、そういったものが今は措置されているということであります。

 ハウスにつきましては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金、これの被災農業支援型、これを決定いたしましたので、共済に入っていただいているということ前提であれば、ほぼほぼそんなに大きな負担なく、それから、さらには当該自治体の方で支援をしていただければ、農家の方々の支出はほとんどなくて再建が可能ではないかというふうに考えております。

石田(祝)委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 それでは総理にちょっと最後にお聞きしますけれども、台風十九号がもう来ている。そして、コースも大体十五号と似たようなコースを通るんじゃないのか、そして勢力も十五号と同等以上ではないか、こういうことも言われております。

 これ、総理、不思議なものでして、台風というのは一回道ができちゃうんですよ。道ができるというのは変なんですけれども、同じようなコースを通る場合があるんですね。ですから、今回、まあ全く同じということはないと思いますけれども、今言われているコースを見ると、これは大変だなという感じが率直にいたします。

 ですから、今のうちにやれること、これはさまざまあると思いますので、政府として、十九号、これはもちろん来るだろうという前提で考えているわけでありますけれども、どういうふうに総理としてやるのかと。

安倍内閣総理大臣 大型の台風第十九号は、非常に強い勢力を維持して西日本から東日本に接近、そして上陸をし、今週末には日本の広い範囲に影響を及ぼすおそれが高くなっています。

 政府においては、昨日、武田防災担当大臣のもとで関係省庁災害警戒会議を開催するなど、警戒態勢を強化しているところであります。

 関係省庁や都道府県から市町村へのリエゾン派遣、電源車の確保や自家発電施設の燃料確認、補給など、台風十五号の経験も踏まえまして具体的な対策を改めて確認をし、そして、関係省庁に対して十分な事前の備えを指示したところであります。また、台風の暴風域に入る可能性がある都道府県にも同じ内容を周知したところであります。引き続き、先手先手で対策を講じてまいります。

 国民の皆様におかれましても、最新の気象情報や地元自治体からの情報に十分に注意をしていただき、早目早目に事前の備えを行うようにお願いをしたいと思っております。

石田(祝)委員 公明党でもこの台風十九号に対しては連絡室を設置をいたしまして、とにかく、来てからの対応ではなくて、その事前にできることについても党として取り組んでいこう、こういうことで連絡室を設置をいたしました。

 続いて、十月からの消費税率の引上げについて、きょうで十日目になるわけでございます。十日を経過をいたしましたけれども、同時に軽減税率も導入をされたわけですが、十日間、これは西村大臣だろうと思いますが、どういう状況か、お答えいただけますか。

西村国務大臣 お答え申し上げます。

 消費税率引上げ後の状況につきましては、まだきょうで十日目ということでありますので十分なデータの蓄積はございませんが、日次データ、週次データなどを見ているところでございます。ただ、対象範囲も限られておりまして、消費の全体像を見きわめるためには、もう少しいろいろなデータをきめ細かく見ていくことが大事かなと思っております。

 その上で、そういう前提、制約がある上で申し上げますと、ヒアリング情報等もあわせて申し上げますと、食料品や雑貨といった日次でとれる一部のスーパー販売額を見ると、平均して見れば、前回の増税時よりも小幅な減少にとどまっている。また、家電製品につきましては、テレビや白物家電を中心に、九月の後半から売上げが大幅に増加したのが見られます。一方、自動車では、政策効果もあって、二〇一四年のような大幅な駆け込みは見られなかったんですけれども、十月に入って前年比で減少、この若干の数日間でありますけれども、している様子であります。そうした動向をしっかりと注視してまいりたいと思います。

 消費動向は、これら個別の商品の動きだけで全体像を捉えるものでもございませんので、各種データを丁寧に見きわめていきたいと考えております。その際、消費者マインドも重要でありますので、景況感が消費に与える影響もしっかりと注視してまいりたいと考えているところでございます。

石田(祝)委員 軽減税率が導入されて、スムーズな導入という観点から麻生大臣にも御答弁をお願いをいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、これは、消費税率が導入されまして三十年たっていますけれども、軽減税率というのを採用したのは今回が初めてということでもありますので、十分にこの制度の、本質はまあそこそこ、いろいろ低所得者の方々向けということの理解をいただいているにしても、うまくいくか、例のイートインとかテークアウトとかいろんな話がありましたので、そういった意味で、私どもとしては広報に努めてきたところだと思いますけれども。

 いろんなところでいろんな話があるように聞きますけれども、私もいろいろ個別に地元やら何やらでも、全部、その日、当日に行けと言うので、いろいろやってみたんですけれども、そこそこのところでみんな動いているような感じがいたしておりますので、さまざまな対応が、いろいろ小さなことはいっぱいあるんだとは思いますけれども、大きな騒ぎになっているというような感じではないと思って理解をしております。

 引き続き、まだ十日目でもありますので、ちょっとしばらく、もう少し様子を見た上で御報告ができるかと思っております。

石田(祝)委員 公明党としても、一〇%にするという前に、党としても平準化対策本部というものをつくって、いわゆる駆け込み反動減にならないような、さまざまな政策も提案もしてまいりました。

 党としても、きょう十日目で、きょうの予算委員会ですからお聞きをいたしましたが、一カ月ぐらいたったときに、政府から現状につきましてまたお聞かせをいただいて、さまざま考えていきたいというふうに思っております。

 それで、ちょっと時間の関係で飛ばさせていただきますけれども、これは加藤厚生労働大臣にお伺いしますが、この消費税を上げるというときに、所得の少ない方の対策として幾つか行われました。その一つが年金生活者支援給付金、これの申請状況について。

 これは、年金機構から手紙が届く、そこに名前を書いて、切手を張って、投函してくれればいいんですけれども、この切手を張るのがちょっと一手間かかるというお声もあって、九月から十月に六十二円から六十三円になったとか、そういうこともあったかもしれませんが、この申請状況についていかがですか。どういう状況ですか。

加藤国務大臣 今回の年金生活者支援給付金は、これは請求をしていただくということが前提になりますので、本年四月一日時点で基礎年金を受給して、いわゆる給付金の支給対象に該当される方については、簡易なはがきの形式で請求をお送りをさせていただいております。

 九月二十七日までに約七百六十八万件送付をさせていただいて、返送期限は十月十八日でありますが、十月八日時点では約八八%に当たる約六百七十六万件が返送されております。

 なお、四月二日以降に基礎年金の受給が始まる方については、誕生日の三カ月前に基礎年金の請求と同時に給付金の請求書をあわせて送り、逐次それにも対応させていただいている、これが今の状況でございます。

石田(祝)委員 これも、年を越して返送するとそれまでの分はもらえなくなる、こういうことですけれども、ぜひ、一〇〇%になるように、大臣の方もしっかりとまたPR等お願いをいたしたいなというふうに思っております。

 そして、プレミアムつき商品券についてお伺いをいたしたいと思いますが、これはまあさまざま、マスコミ報道によると、申請状況が余りよくない、こういうお話もございます。そして、私たちもお聞きする声としても、私は誤解があるんじゃないかと思うんですが、これについて、一度に二万円のお金が要る、そして二万五千円分の商品券をもらう、こういうひょっとしたら誤解がありやしないか。これは五回に分けて買える仕組みにしておるわけですから、お金が余り手元になければ、一回分四千円だけ構えていただいて、五回に分けて買えるんだ、こういうことのちょっと周知を更に私はお願いしたいと思いますけれども、これは西村大臣でしょうか。

西村国務大臣 御指摘のプレミアムつき商品券事業でありますけれども、もう御案内のとおり、対象となる、所得の少ない方とか、あるいは小さな乳幼児、ゼロ歳から三歳未満のお子さんのいる子育て世帯の方々に日常的な消費の中で使っていただこう、負担を少しでも下げて消費の下支えをしていこう、そういう仕組みで用意をしているところでございます。

 今、石田委員から御指摘があったとおり、二万円で二万五千円分の商品券が買えるということで、五千円分得になるわけですけれども、それを、御指摘のように、五千円単位で、四千円で五回に分けて買える、そういう仕組みにもしておりますし、商品券一枚当たりの額面は、多くが五百円となっておりまして、小口で利用しやすい額としております。また、小さなお店や大型スーパーでも、地域の幅広い店舗で使えるようにしておりますので、日常の生活の中で使えるようにしっかりと用意をしておるんですけれども、御指摘のとおり、まだまだ、〇―三歳未満の御家庭にはもう既に引きかえ券が行っているんですけれども、所得の少ない方には申請をしてもらわなきゃいけないという仕組み、これは過去もこういう仕組みでやっておりますので、そうした点も含めて、自治体において、広報誌を活用して更に周知徹底を、個別の周知も図っていきたいと思いますし、国におきましても、ポスターを六十万枚用意して、もう既に駅、医療機関、自治体などには張っておりまして、チラシも二千万枚を用意して、かなり配っているところでありますけれども、更にきめ細かな周知に取り組んでいきたいと考えております。

 十月一日からほぼ全ての市町村で使えるようになっておりますけれども、十月、十一月に集中的に広報をやりたいと思っておりますし、申請は十一月以降まで受け付けているところが多い、多くの、ほとんどの市町村でそうでありますので、ぜひ御活用いただければというふうに考えております。

石田(祝)委員 この商品券も来年の三月までということに使用期限がなっておりますから、ぜひ年内に、ある意味では暮れの買物等に使っていただけるように周知をお願いいたしたいというふうに思います。

 それで、今回の消費税の増収分で教育費の充実、教育を充実させよう、こういうことで、さまざま、幼児教育の無償化、また、来年からの私立高等学校の実質無償化、また真に必要な方への高等教育の無償化、こういうことをやることになっておりますけれども、これで、幾つか我々にも、こういうところがちょっと抜けているのではないか、こういう御意見もありまして、これ、順次、まとめてちょっと文部科学大臣にお答えいただきたいというふうに思うんですけれども。

 幼児教育の無償化の対象範囲で、いわゆる類似施設、ここのところが抜けているんではないか、いわゆる認可施設や認可外についてはもちろん入れましたし、幼稚園のその後のものについてもやったわけでありますけれども、ここのところをどうするかということ。

 そしてもう一つは、国立大学の授業料についても、真に必要な方ということで、住民税非課税の御家庭の方が行かれると授業料の免除、また奨学金、さまざまありますけれども、我々のところに来た意見では、今まではいわゆる国立大学法人の運営費交付金を使って、中間所得層の方で奨学金、授業料の免除、こういうのを受けていたんだけれども、これがなくなってしまった、こういうお話が来ておりますけれども、これはやはり善後策を講じていただかなきゃならないと思いますが、萩生田大臣も幾つか、どこかでおっしゃったりしていると思いますけれども、ぜひ答弁をお願いします。

萩生田国務大臣 まず、幼児教育、保育の無償化の、関連した幼児教育の類似施設についてお答えします。

 今般の幼児教育、保育の無償化の対象範囲については、法律により幼児教育の質が制度的に担保された幼稚園、保育園、認定こども園を基本としながら、待機児童問題により認可保育所に入りたくても入れない方のいる代替的な措置として、認可外保育施設も対象とするということにしました。法律上、一定の線引きはなされなくてはならないと思っております。

 その結果、私もこの二月に予算委員会で、当時は党を代表して質問したんですけれども、幼児教育の類似施設がその施設の枠の中に入ってこないものですから。これは、実は、法令上の定めや基準がない中で多種多様なものが存在しています。各地域に固有の、さまざまな歴史的な経緯を経て、現在も地域や保護者のニーズに応え、重要な役割を果たしてあるものもあると考えています。

 すなわち、我々国にとっては、その類似施設が今後も存続していくことが望ましいかどうかという判断はなかなかつかないんですけれども、自治体の長などがきちんとそのことを認めていただき、相談に来ていただいているものについては、さまざまな今アドバイスをさせていただいております。

 認可基準は満たしていないものの、地域において欠かすことのできないというニーズは地域によってさまざまであると考えられることから、これらの施設について、今、国と地方と協力した支援のあり方について検討しているところでございます。

 文科省として、大臣として、法律上の無償化の枠の外となる施設についても何らかの支援が届けられるように、関係省庁と連携をしながら、支援のあり方を検討していきたいと思っております。

 大学の件ですが、先生御指摘のとおり、これは、入学後に制度が変わって、今まで各学校の基準によって配付をされていた、あるいは基準で支払いが免除されていた授業料が、突然、二年度から払えということになれば、その学生の皆さんの将来設計、学生時代の設計が立たないことになりますので、高等教育の修学支援新制度のもとでは、国公立、私立を通じて、真に支援が必要と考えられる低所得世帯の学生を対象とした全国で統一的な基準をつくりますけれども、現行の各大学の授業料減免を受けている学生で新制度において対象にならない学生については、ぜひしっかりとした支援をしていきたいと思っています。

 各大学が新制度を踏まえてどのように授業料の免除制度を設計するかによりますけれども、文科省としては、各大学の状況をしっかり把握しながら、年末の予算時期に向けて検討を加えていきたいと思います。

 少なくとも、この制度によって学校をやめるとか通えなくなるという学生が出ることのないように、しっかりサポートをしていきたいと思っています。

石田(祝)委員 文部科学大臣から大変前向きな力強い御答弁をいただいたと私は思っております。

 そういう方々が、ある意味では、はじかれると言ったら変ですけれども、今までそういうつもりで入っていたのが突然はしごを外されるようなことが私はあってはならないと思っております。

 それで、これをいろいろお聞きすると、国立大学の場合は国立大学法人運営費交付金、これが非常に大きなウエートを占めているんですよ。ですから、運営費交付金はぜひ減らさないようにお願いいたしたいというふうに思います。何か、ちょっと沈黙がありますけれども、これは非常に大事だと思いますよ、私は。ぜひお願いしたいというふうに思っております。

 続きまして、全世代型社会保障についてお伺いをいたしたいと思います。

 これは、総理の大変な肝いりで、九月のたしか二十日だったと思いますが、全世代型社会保障検討会議がスタートしたと記憶いたしております。

 この全世代型社会保障検討会議が政府に設置をされましたので、公明党としても、全世代型社会保障推進本部、これをつくりまして、政府の中で、メンバーを拝見いたしますと、もうちょっと違う角度の方のお話も聞いた方がいいのではないか、こういうふうに私たちは思っておりますので、政府の検討会議は検討会議として、我々は我々として、与党として政府に提言をするという前提で、もうちょっと幅広く御意見をお伺いをしたいな、こういうふうに思って、今進めているところであります。

 総理、この全世代型社会保障検討会議、どういうテーマで、そしてどういうふうに議論を進めていかれるのか、このことをまずお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 まず、テーマでありますが、テーマはまさに、人生百年時代を見据えて、七十歳までの就業機会の確保、年金受給開始年齢の選択肢の拡大、さらには、医療、介護など社会保障全般にわたる改革を進めていくことになりますので、相当幅広い議論になっていくと思います。

 基本的には、人生が百年ということで、七十歳までは働きたいと思う人もいるでしょうし、七十歳を超えても働きたいと思う人もいるでしょうし、年金の受給開始年齢を、じゃ、いつにしようか、例えば七十で今でも四二%、この給付がふえていくというものもありますが、更にそれをもうちょっと延ばしていく中において給付をふやしていく、そういう選択肢もあるでしょうし、そうしたことも含めて大きな議論をしていきたい、こう思います。

 このため、社会保障に関係する政府内の会議から代表者を集め、全世代型社会保障検討会議を設けることとしまして、九月二十日に第一回の全世代型社会保障検討会議を開催しました。

 メンバーをもっと幅広くという御意見も確かにあります。ですから、さまざまな方々からも恐らくヒアリングをしていくことになるだろう、こう思っています。

 そして、スケジュールでありますが、今後の会議の進め方としては、年末に中間報告、来年の夏、来夏には最終取りまとめを行いたいと考えています。

 第一回の検討会議においてさまざまな御意見をいただきました。そこでの意見や与党での御議論も、公明党においても御議論をいただけるということでございますから、十分に踏まえつつ、今後の進め方についても検討してまいりたいと思います。

石田(祝)委員 いろいろと検討会議についてお伺いをすると、年内に中間報告を出す、そして、来年の六月、骨太方針の時期に最終報告、こういうふうにお聞きをしておりまして、それで、年内には特に年金についてというふうにもお伺いをいたしておりますので、我々もそれに沿って、政府に我々の提言も取り入れていただく、こういう前提で、党としても今議論を進めていることは申し上げましたが、十一月いっぱいぐらいに、党としても、特に年金を中心に提言ができるようにこれはまとめていきたい、こういうふうに今思っております。

 特に、総理もお触れになりましたけれども、今、六十五歳が基準になって年金受給、それを一カ月繰下げすると〇・七%ふえる。ですから、今、七十までですね、七十までで、一年八・四%、五年間で四二%ふえるという仕組みになっているわけですね。もうちょっと先まで延ばしてもこれは全くふえないわけでございますので、これをどういうふうにするかということは大きな課題だろうというふうに私も思っております。それをすればですよ。

 それで、私は、総理、参議院選挙でも、年金の問題が非常に大きな課題になったというふうに思っております。それで、財政検証が五年に一度行われまして、この財政検証においては所得代替率は若干上がりました。それを踏まえても、年金の制度そのものはこれは大丈夫だということは皆わかっていただいたと思いますけれども、しかし、じゃ、それは大丈夫だけれども、自分の生活はどうなんだ、こういうことになってくるわけです。

 特に、私は、国民年金の方、これは要するに使用者負担分というのがないわけですから、夫婦そろってそれぞれ掛けなきゃ、払わなきゃならない、こういう課題もあるわけです。

 そして、これから一番ふえる世帯の類型は、単身高齢世帯。これが、私は、一番のこれから大きな課題だ。

 国民年金も例えば繰下げをして受給額をふやす、そして、そこで自分の例えば持家がある、まあ、大きな家もあるし小さな家もあると思いますけれども、それだと何とかという人も、そして若干の蓄えもしておく、これはそういうこともできると思いますけれども、国民年金の方が、どちらかがお亡くなりになったときに、一人になったら、これはもう私は大変だと思います。

 ですから、これは、特に今回、間に合うかどうか、議論が。単身高齢世帯、また国民年金のみの方、この方々を、その将来生活をどう支えていくかという観点で、これは私はしっかり考えていかなきゃいけない、こういうふうに私は、党としても取り組んでいかなきゃいけないというふうに思っておりますが、国民年金のみの方、また単身高齢者、こういう方々について、将来の年金という観点からどういうことができるのか、どうしていかなきゃいけないのか。

 これは、自民党で社会部会長もなさっていた総理も大変その辺はお詳しいというか、御心配だと思いますので、総理から御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 質問にお答えさせていただく前に、先ほど台風十九号に対する質問でお答えをさせていただきました、政府においては昨日武田防災担当大臣のもとで関係省庁災害警戒会議を開催するなどとお答えしたわけでございますが、これは、昨日ではなくて一昨日でございましたので、おわびし、訂正をさせていただきます。

 国民年金についての御質問でございますが、我が国の年金制度は、退職等により収入の道がなくなる被用者を対象とした厚生年金と、一方、老後も一定の生計の手段を有し緩やかに引退していく自営業者などを念頭に置いた国民年金により、国民皆年金を実現してきたわけでございます。これはまさに、創設された当初の社会の状況を今反映した形でどうだったかということを申し上げているわけでございますが、このうち、国民年金については、当初の所得捕捉の困難性の制約もある中で、国民皆年金を達成するため、定額負担、定額給付としたものでありまして、基礎年金だけで生活の全てを賄うという設計になっていないというのも御承知のとおりなんだろうと思います。

 当初は、いわば自営業者の方々が中心であったわけでございますが、その後、私がまだ社会部会長を務めていたころは、大宗の方々が割とこの自営業者だったわけでございますが、その後、近年、働き方の多様化を背景に、国民年金の第一号被保険者の中でも、被用者の方もふえておられます。いわゆる非正規労働者の方々もふえてきたということもあるわけでございますが、こうした方に対しては、被用者にふさわしい保障が受けられるよう、被用者保険の適用拡大を進め、生活の安定を確保していくことが重要と考えています。

 今般の財政検証結果においても、被用者保険の適用拡大は、厚生年金のみならず、基礎年金の水準を確保する上でもプラスの効果を持つことが確認されたところであります。

 なお、単身高齢者を含めた低所得や低年金の高齢者の方には、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮、年金生活者支援給付金の創設、そして年金給付から天引きされる医療、介護の保険料軽減を実施してきており、今後とも社会保障制度全体で総合的な対応を検討してまいりたい。

 もちろん、先ほど申し上げましたように、厚年の対象を拡大をしたところで、それは全ての被用者ということにはならないわけでございますが、いずれにせよ総合的に支援をしていくこととしていきたい、こういうふうに思います。

石田(祝)委員 この十月からは消費税が増税されましたけれども、それと同時に、いわゆる最低賃金もこの十月一日から全国で上がった。これは、安倍内閣になって大変な、毎年毎年、それまでは一円とか二円とかいう一円玉の争いをしていたわけですけれども、これがもう二十七円、二十八円ということで、これは使用者の方にとっても大変な御苦労もいただくと思いますけれども、やはり最低賃金は私は上げていかなきゃいけない。

 党としても、参議院選挙のときのイの一番に最低賃金。党としては、二〇二〇年代前半に全国加重平均千円、こういうことを申し上げて、また半ばには四十七都道府県の半分が千円以上になるように、こういうことをお約束しております。

 今回、十月一日から東京都が初めて千円を超えた、こういうことでございますが、そういう中で、私はやはり、上げるということは、それは私も大賛成なんですけれども、しかし負担をする方のことも考えていかなきゃいけない。

 そう考えたときに、そのうちの一つとして、今、雇用保険料は軽減措置がなされていますが、来年の三月でこれが終わっちゃうんですね。ですから、これについて、私はこの雇用保険料率の軽減措置、これは引き続きやるべきだと思っておりますが、加藤大臣に御答弁をお願いいたしたいと思います。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、雇用保険料の保険料については、この三年間、〇・八が〇・六、これは労使折半になるわけですけれども、時限的な引下げがなされておりまして、今年度で終わりますので、今後どうするかに関しては、ことしのいわゆる骨太の中で、消費税率の引上げ後の国民所得環境にも配意して、雇用保険の積立金の積極的な活用と安定的な運営の観点から、雇用保険料と国庫負担の時限的な引下げの継続について検討するというふうになっておりますので、そういった意味において、やはり、雇用情勢が引き続き安定しているという状況も踏まえながら、しっかり検討をさせていただきたいと思っております。

石田(祝)委員 まあ、大臣、まだ言えないのかもしれませんが、来年の三月で終わるものを検討するといったら、延ばす以外ないですよね。うなずいていらっしゃるから、多分。いつまでということは申し上げませんけれども、これは延ばすという、今、終わるものを検討するといったら延ばす以外ないわけですから、検討しなきゃそのまま終わっちゃいますので、これはぜひお願いをいたしたいというふうに思っております。

 それで、もう一点。これはパネルを用意いたしましたので、ちょっと見ていただいて、出産育児一時金、これについてお伺いをいたしたいと思います。

 過日の新聞によりますと、ことしは出生数が九十万人を割るんじゃないのか、こういう記事も出ておりました。これは一年終わってみないとわかりませんけれども、一月から七月までのデータをとると、どうもそういう可能性が高い、こういうことでございます。

 それで、私は、この出産育児一時金、これはグラフで、このオレンジ色が出生率ですね、合計特殊出生率、今一・四二、一八年で。そして、九十一・八万人、これが出生数ですね。

 ですから、出生率については、これはいわゆる分母と分子の関係でありますから、一・四二、数字としては、少なくと見るのか、頑張っている、まあ頑張っていると言ったら変ですけれども、見るのか。しかし、絶対数そのものが減ってきているわけです。

 これはどういう理由があるかというのは、まあこれはいろいろ理由があると思いますけれども、私は、総理が、これを一・八にしたい、理想の数としてみんながそう言っていると。これは一・八にしたいという、ちょっとまだ数字が遠いわけですね。ですから、これは私は、もうやれることは全てやる、そして、今回は特に、教育費の負担について軽減をするということで思い切った措置をとられている。選挙もそれで訴えて、消費税の使い道を教育に充てるんだ、こういうことで、一昨年の十月の総選挙を私たちも頑張ったわけでございますが。

 それで、私は、やれることは全てやるということで、特に、まず結婚するということ、そしてその次に子供を産んでもらわなきゃなりませんので、そのときに、やはり出産費用について、これは病気ではありませんから保険がきかない。ですから、出産育児一時金を今出しているわけですが、今、四十二万円。その中に保険料が入っていますから、実際はもうちょっと低い。そういう中で、もう東京は平均費用が五十万を超えているんですね。

 ですから、ここは加藤大臣、どういうふうに加藤大臣がお考えかわかりませんけれども、私は、ある意味でいえば、もうやれることは全てやっていく、こういうことで、ぜひ、理想の子供数という形で一・八、これに近づけていく必要があるんじゃないのかと。

 ですから、これはもう何度も繰り返しますけれども、一・四二、数字だけ見るのではわからない。実際にお生まれになる子供さんの数、これはどんどん減ってきている。こういうことは大臣ももう百も承知であろうと思いますけれども、私はぜひ、この出産育児一時金、三十万円で創設をされて、現在四十二万円。これを私は参議院選挙でも五十万円ということを公約として出したわけです。ですから、これは加藤大臣、ぜひ大臣の英断で、いい御答弁を全国に向けておっしゃっていただきたい。

加藤国務大臣 今委員もおっしゃった出生数、七月時点から一年前とその一年前を比べると約五%ぐらい下がっているという意味で、やはりこの少子化に対する対応、これをしっかりやっていかなきゃいけない、その認識は一緒であります。

 その上で、出産一時金については、これまでも、原則として公的病院における出産費用等を勘案して定め、そうした調査をしながら逐次上げてきたという歴史がございますので、骨太二〇一九には、医療保険制度についても見直しの議論を行う、来年の春に向けてということがございますので、そうした中において、この出産一時金について、出産費用の動向、それから各保険者の財政状況もあるかもしれません、そういったことも勘案をしながらも、これはしっかりと検討していかなければならない課題だというふうに認識をしております。

石田(祝)委員 これはぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。

 ことし生まれた赤ちゃんが、いわゆるいろいろな意味で節目になる二〇四〇年、ことし生まれても二十ですよ。ですから、これはやはりもっともっと大事に考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。きょうは大臣として精いっぱい御答弁いただいたと思いますけれども、今後ともよろしくお願いしたいというふうに思います。

 時間もなくなってきましたので、日米貿易協定についてお伺いをいたしたいと思います。

 これは茂木大臣が大変御苦労されただろうというふうに私は率直に思っておりますが、どういう点に苦労されたのか、短く、ひとつ。

茂木国務大臣 日米貿易交渉は、最初から、米側の交渉責任者でありますライトハイザー通商代表と意見が一致していたわけではなくて、まさに国益と国益がぶつかり合うという非常に厳しい交渉でありました。

 そこの中で、日本の立場、過去の経済連携協定で譲許した内容が最大限である、こういう立場を守りながら、しかし、日米でウイン・ウインなものにしていかなくてはいけない、こういったことでは苦労があったと思っております。

 相当交渉の回数も重ねまして、ことしの四月から本格化しましたが、八月、最終合意するまでに八回にわたりまして交渉を行う、最後の八月二十一日から二十三日は合計で十一時間、こういう厳しい交渉でありました。

 なかなか今、米中の間でも、それからアメリカとヨーロッパの間でも交渉が難航するという中で、日米間でこの交渉をまとめることができた。それはやはり、いろいろな要因があったと思いますが、日米の信頼関係、安倍総理とトランプ大統領の信頼関係、これをベースに交渉した結果が最終的な一致につながった、そう考えております。

石田(祝)委員 安倍内閣になって、日豪EPA、また、TPP12、アメリカが離脱しましたから11になっていますけれども、それから日・EUと続いて、自由貿易の枠をある意味では広げてきた、こういうことだと思いますが、今回も私は非常にいい合意だったというふうに思いますが、必ずしもそう評価していない方もいらっしゃいます。

 ですから、せっかくですから、この総理がおっしゃるウイン・ウイン、お互いが勝ったんだ、勝ったというか、お互いによかったんだという点について、特に日本のメリットについて、ぜひ国民の前で語っていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 こうした貿易交渉は、どちらかが一方的に勝つというのは、そもそもまとまらないわけでありますし、それは果たしていい結果かというと、必ずしもそうではないんだろうと思います。そういう意味では、今回、本当にウイン・ウインという形になったな、こう思います。

 メリットについては、日米貿易協定により、幅広い工業品について、米国の関税削減、撤廃が実現します。

 そしてまた、日本の自動車・自動車部品に対して、二三二条に基づく追加関税は課されないことを直接トランプ大統領から確認をしました。

 そして、農林水産物については、過去の経済連携協定で約束したものが最大限であるとした昨年九月の共同声明に沿った結論が得られました。とりわけ、我が国にとって大切な米については、関税削減の対象から完全に除外をしました。

 さらには、米国への牛肉輸出に係る低関税枠が大きく拡大するなど、新しいチャンスも生まれています。

 そうした中で、当事者である、例えば我が国の自動車工業会から、自動車分野における日米間の自由で公正な貿易環境が維持、強化されるものであるとの評価が既に発表されております。また、JA全中からも、中家会長の談話として、合意内容は、昨年九月の日米共同声明の内容を踏まえた結論と受けとめ、特に、米については、米国への関税割当て枠の設置が見送られることとなり、生産現場は安心できるものと考えているとの評価が発表されたものと承知をしております。

 また、消費者の皆さんにとっては選択肢がふえるわけでございますから、もちろん消費者の皆さんにとっては利益になるものであろう、このように考えております。

石田(祝)委員 最後の質問になりますが、これはやはり国内対策を私はどうしてもやらなきゃいけないと思っています。これは、やはり予算を伴うもので、しっかりやっていただくということですので、ぜひ、補正予算を組むということも含めて、最後に総理の御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 対策につきましては、与党の皆様のお力もかりながら、総合的なTPP等関連政策大綱を改正する考えであります。

 新たな市場の開拓や生産基盤の強化などに取り組むことで、今回の協定を、全国津々浦々、我が国経済のさらなる成長につなげていきたいと思います。

 そこで、補正予算についてでございますが、補正予算の編成については、現段階において具体的に想定しているものではありませんが、今後適切に判断してまいりたいと思います。

石田(祝)委員 終わります。

 ありがとうございました。

棚橋委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 立憲民主党、国民民主党、社民党、社会保障を考える国民会議から成る新会派を代表して質問いたします。

 まず、災害対応について伺います。

 今、台風十九号が近づいています。進路に当たる皆さんには十分に警戒を促したいと思います。

 さて、総理、この稲を見てください。これは佐賀県の稲なんですが、実はしょっぱいんです。これは塩害の被害を受けていて、非常に風が強かったので倒れた稲もあるんですが、倒れていない稲もあるんですけれども、江藤大臣よく御存じのとおり、農業共済は収量保険なので、量がある種被害を受けないと、質だけ悪くなると共済の対象にならないと少なくとも懸念する農家がいます。

 それぞれ個々の農家の状況というのはさまざまですので、きめ細かな対応をしていただきたいと思いますし、今、台風十五号の対応の話をこれからしますけれども、九州北部豪雨の被害も決して忘れることなく、しっかりと対応をしていただきたい。特に多くの農家が困っていますので、この点についての対応、万全を期していただきたいということをまず申し上げたいと思います。

 そして、台風十五号に対する対応であります。

 千葉県を中心に甚大な被害が、そして大規模な停電が発生をいたしました。しかし、台風十五号の接近の際に、八月の台風十号で開催をした関係閣僚会議さえ開かず、内閣改造ばかりに意識が向いて対応がおくれたのではないでしょうか。それが倒木処理のおくれなど、特に初動対応のおくれにつながり、大規模かつ長期の停電につながったのではないかと思います。

 思い出していただきたいんです、一九九九年ですけれども、東海村のジェー・シー・オー事故が起こったときには、当時の野中官房長官が進言をして、小渕内閣の組閣は四日間延期をされました。今回も本来であれば、組閣をおくらせて、万全の対応でこの十五号対策に臨むべきではなかったんでしょうか。菅官房長官からそういう進言はなかったんでしょうか。

 総理、組閣をおくらせてでも万全の対応をすべきではなかったか、こういう指摘に対してどうお感じになりますか。

菅国務大臣 私の名前が出ましたので、私からまず答えさせていただきたいと思います。

 当時の事故というのは、東海村によって放射線被曝を受けた作業員の方が一人亡くなられた事故でした。当時として、原子力事故としては、我が国にとって前例のないものでありました。そういう中で、当時の内閣が御判断をされて、今委員言われましたように、五日間延ばしたということは私も承知をしております。

 今回の十五号について、初期対応について私から御説明させていただきたいと思いますが、実は、上陸したのが九月九日の未明なんです。九月六日の日、三日前に、当時、山本防災担当大臣のもとに災害警戒会議というのを開催をいたしました。そして、警戒態勢を確保し、情報を収集しながら今日まで取り組んできたわけでありますけれども、その中で閣僚懇談会を三回開催をし、また、関係省庁災害対策会議、これも十五回行っています。

 こうした中で、未明にはもう千葉県に自衛隊の先遣要員というのを派遣をしています。そして、各省庁からそれぞれ自治体にも派遣をして情報を収集をする中で、毎日、総理に御報告をさせていただいておりました。

 そういう中で総理御自身が御判断をされて、この初期対応については、迅速、適切に行ってきたというふうに思っています。そういう中で総理御自身が御判断されたんだろうと思います。

玉木委員 今、検証されていますよね。検証されているということは、万全じゃなかったということの自覚があるはずですから、そこは謙虚に私は今回の対応をレビューすべきだと思いますよ。

 総理にも、ぜひこれは今後の対応に生かしてもらいたいと思いますけれども、もう重ねては聞きません。

 一つ提案があります。

 今回、大規模停電が起こって、これは総務大臣にも考えていただきたいんですが、行政が指定した避難所が全国にあります。今回も、電気がつかないので、まず避難所に行こうと思って何とかたどり着くわけですね。でも、その避難所に発電機がないんです。

 発電機については、千葉県にいっぱいあったけれどもなかなか現場に行かなかったという話もありましたけれども、さまざまな、十九号もそうですけれども、大規模災害が予測されますので、ぜひ、一斉点検をして、少なくとも行政が指定した避難所については、発電機があるのかどうか、現状がまず何%それが備え付けられているのか、ないとしたら、一定、国の責任で、もちろん地方公共団体の責任もありますけれども、この発電機の配備について、早急に確認して実行されることをぜひ提案したいと思いますので、総理のリーダーシップで、また、総務大臣も、地方自治体とよくコミュニケーションをとって進めていただきたい、そう思います。

 次に、これは通告していませんけれども、大事な話なので、まず冒頭伺いたいと思います。

 北朝鮮の漁船と水産庁の取締り船との衝突事案についてであります。

 七日、大和堆周辺海域で、水産庁の取締り船「おおくに」が、北朝鮮船籍と見られる漁船と衝突しました。北朝鮮の船は沈没し、乗組員が、約六十名が漂流、「おおくに」の救命艇二艇がこれを救助したとされています。しかし、六十名はそのまま、後で来た別の北朝鮮の漁船に移乗させて帰国させています。

 これは違法操業のおそれもあります。なぜ、せめて事情聴取だけでもして、我が国としてのしっかりとした法執行をしなかったのか、北朝鮮のやりたい放題を許していいのか、そういう声もありますけれども、総理の考えを聞かせてください。

安倍内閣総理大臣 通告がございませんでしたが、私の確認している範囲でお答えをしたい、こう思います。用語的に正確になるかどうかというのはちょっと、それは御容赦いただきたいと思いますが。

 今回の事案につきましては水産庁の船が対応したところでございますが、ここはEEZ内であったわけでございますが、同時に、これは公海でも御承知のようにあるわけでございます。

 そこで、では、身柄を確保できるか、そういう強制措置ができるかどうかということについては、違法操業をしている、いわばそこで操業しているということが確認されなければならないわけでございますが、水産庁の船に乗っている者の証言においては、そこでいわば漁獲をしていたというところは確認をしていないわけでございます。さらには、実際そういう釣ったものも視認できていなかったということでございまして、ただ、その場から、我が国のEEZであるということを伝えつつ、そこから外に出るようにということも含めて、漁船に対しましては、放水等も、しっかりとした、毅然とした対処をしていたわけでございますが、ここは国際的なルールに従ってしっかりと水産庁の皆さんは対応していただいた、このように考えております。

玉木委員 今の状態だと、見つからなければいい、違法状況が我が国当局から把握されなければやりたい放題ということになってしまいます。

 ただ、水産庁の方も、海保の方も、現場は本当に一生懸命やっておられます。我々政治がやらなければいけないのは、多分、一番悔しいのは水産庁の職員の方だと思います。現行法の中では、彼らも苦しい。ましてや、漁船だと思って近づいたら実は武装していたということになれば、取締りを安易にやろうとすると反撃される可能性もある。

 であれば、どういった法整備が必要なのか、あるいは携行する装備、武器、こういったものはどこまで許されるのか、こういったことをやはり、これは与野党を超えてしっかり議論していかなければならないと思います。そうじゃなければ、こういう状況がずっと続くことになるので、私たちもしっかりこれは考えて提案していきたいと思いますので、政府においても、現状、国際海洋法条約上ここまでしかできませんとかということもいっぱい聞きましたから。ただ、現状、本当にこれを許していいのかという大和堆の問題は、我が国の国益に関する問題としてぜひ考えていただきたい、そう思います。

 それと、写真は見せていただきましたけれども、動画での映像もあるやに聞いておりますので、こういった情報公開についてもできる範囲で進めていただきたいというふうに思います。

 次に、安倍総理に改めて伺いますが、来月、総理は、桂太郎総理を抜いて史上最長の総理大臣となられます。残された任期の中で何をなさろうとしているのか、何を歴史に残すのか。やはり憲法改正なんでしょうか、あるいはデフレからの脱却なんでしょうか。総理のやる気をこれから一番何に傾けるのか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 私は、何を歴史に残そうかとかそういうことを意識しているわけではなくて、私の使命とは何かということを考えて、ひたすら毎日努力を積み重ねているわけでございますし、玉木委員の厳しい質問にも耐えているところでございますが。

 いわば、我々、政権を奪還する際に私どもが掲げましたのは、経済最優先であり、デフレ経済から脱却をし、みんなにちゃんと仕事がある、収入が上がっていく、きょうよりもあした、ことしよりも来年がよくなっていくという日本を実現したいということでございます。

 デフレ脱却ということについてはまだ、デフレではないという状況をつくり出すことはできましたし、雇用環境を大幅に改善することはできましたが、デフレ脱却という段階には至っていない、これにも全力を傾けていきたい。大きく変化する国際情勢の中で、平和で安定した、繁栄する日本をつくっていきたい、このことだけをひたすら考えているところでございます。

玉木委員 余り憲法改正についての言及がなかったんですが、どうなんでしょう、総理。総理のやる気がだんだんなくなっているんでしょうか。党内も大変なんだと思いますけれども、二階幹事長とかは大丈夫なんでしょうか。

 今週、大島議長が国民投票法案を臨時国会で成立させたい旨の発言をして問題となりましたけれども、私たち国民民主党は、CM、広告規制等を盛り込んだ国民投票法改正案を既に提出しております。また、立憲民主党の枝野代表も、CM、広告規制は必要だという立場を何度も表明をされておられます。

 ただ、与党の皆さんと今議論していると、いわゆる七項目、公職選挙法改正に伴う、船員さんが洋上で投票できるとか、そういった機械的、技術的な改正についてのみやろうということで提案がありまして、その点について我々として反対するものではないんですが、ただ、現行の国民投票法についてはやはり幾つかの問題点があって、抜本的な改正が必要だというのが我々の立場であります。

 その一つが、やはり、お金の、資金力によって打てるCM、広告量、ネット広告も含めて差が出て、国民投票というものが公平に行われないのではないかという懸念についてはしっかり手当てをしなければならないと思っています。

 もう一つ、これは国民の皆さんにも現行国民投票法の問題点を提起したいんですが、それは、国民投票活動を行う団体等に対する外国人の寄附規制であります。

 例えば、憲法九条の改正案が国民投票に上ったことをイメージしてみてください。その賛否について、こちらいいですよ、こちら悪いですよという活動をする団体に対して外国勢力から資金的なサポートが大量に行われて、それに基づいてまさにCMとかさまざまな活動が行われていたときに、それは果たして我が国の基本法である憲法を議論するその手続、プロセスとして適正なのかということは、これは国民の皆さんにもぜひ、特に保守派を名乗る皆さんに提案したいと思います。

 我々国会議員は外国人から寄附を受けられませんよね。受けられません。それは、我々が国政に身を置く者として、外国の勢力を受けなくしているからです。ましてや、国の基本法たる憲法の国民投票において、その活動が外国の勢力の下に入るなんということはあってはならないと思います。

 ですから、もちろん七項目の議論はしたらいいと思います。しかし、単にそれだけ通して次に行って、中身の議論、では次ですということではなくて、この手続法をきちんとやはりしないと、まともな憲法改正の議論もやはりできないんじゃないか。あるいは、いい議論をしてそれを発議してかけたとしても、今言ったような問題が生じていたのでは正しい結論に至らないと思うんですね。

 そこで、総理に改めて伺います。

 国民投票法案に外国人の献金規制を導入することが私は不可欠だと思いますが、総理の考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 国民投票法は、もうこれは委員御承知のように、平成十九年に議員立法で制定されたものでありますが、その際、各党各会派でさまざまな議論がなされた。結果として、国民投票運動については基本的に自由とし、投票の公正さを確保するための必要最小限の規制のみを設けることとするなど、現在の制度となったものと承知をしております。

 いずれにせよ、御指摘の寄附に関する規制を含めて、国民投票運動のあり方などについては、国民投票制度の根幹にかかわる事柄であろう、こう思うところでございまして、まさに憲法審査会等において御議論いただきたいと思いますが、まさに今、玉木委員から、皆さん傾聴していたところでございますが、御意見に対して、そうした堂々たる御議論をしていただきたい。

 私も、自民党総裁という立場で憲法論議をぜひ引っ張っていきたいという立場と、総理大臣としての立場ということがございまして、まさに議会が発議するものでございまして、自民党の方からは、私はもう、総理大臣はもう中身には入るな、まさに中身は自分たちに任せてくれと言われておりますので、まさに、ここはしっかりと今の御議論を展開していただきたい、このように思うところでございます。

棚橋委員長 ちょっと指名をしてからにしてください。

 玉木雄一郎君。

玉木委員 早く指名してください、時間がないですから。

 私も最初気づかなかったんです、これ。国民民主党としても一回法案をつくって出したんですが、後で追加したものです。なぜかというと、アメリカとロシアの関係とか、アメリカとウクライナの関係とか、今さまざまな国際状況のことを考えると、やはり、一つの独立国家として、外国の勢力をいかに適切に排除するかということは今日的な課題なので、こういうことも踏まえた本格的な議論をやはり国民投票法の議論でやるべきだと思います。これなくしてやはり、私は、では七項目だけやって次に行こうというのは、かえって実のある憲法議論を損ねてしまうのではないかと思います。

 最後に、総理、憲法についてもう一問です。

 二〇二〇年、来年に憲法を改正して施行しようというのは読売新聞でたしかおっしゃったんですが、そのスケジュール感にお変わりはないのかということと、あと、本当に円満、円滑にやるのであれば、今の自民党の条文イメージ案、特に九条の改正案は取り下げませんか、一旦。

 その方が、やはり、私は九条も含めて議論すればいいという立場なんです。ただ、与党の中にも野党の中にも、九条に関してはやはりさまざまな思いがありますよ。だから、コンセンサスをとってやはり物事を進めていくという憲法調査会、憲法審査会の伝統から考えれば、一旦これを取り下げるということが審議促進になるかと思うんですけれども、スケジュールと、この中身について、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 憲法論議について、残念ながら遅々として進まない中において、一石を投じる思いで読売新聞のインタビューには答えたところでございますが、そこで一定のやはりスケジュール感について私の希望を申し上げたところでございます。これはあくまでも希望でございまして、発議するのはこれは国会でございますから、スケジュール、私が述べたスケジュールどおりになるとは私も毛頭思っていないわけでございますし、まさにそれは国会でお決めになることだろう、こう思っております。

 その中で、それがこのスケジュールに対する私の考え方、スケジュールありきではもちろんございませんが、一定の私の希望を申し上げたところでございますが、そして、では九条をどうするかということでございまして、玉木議員から、自民党が出している四つのイメージの中からこの九条の部分を除外すれば議論に応じるということだったんですかね。そういう……(玉木委員「とは言っていません」と呼ぶ)ちょっと何かそれに近い御議論だったと思いますが。

 まさにそういう議論も、私は、自民党の総裁としては、これは党大会で、この四項目のイメージ、そして、やはり九条に自衛隊を明記するということは大変大切なことだと思っておりますから、それを御議論いただきたい、こう思っておりますが、ただ、中身をどうするかということについては、まさに憲法審査会で御議論いただく。

 我々も、私たちの条文イメージどおりになるとは、それぞれが、これは三分の二というのは高いハードルでございますから、それは、やはりそこで御議論いただければ、どうするかということをその場でまさに議論していただきたい、このように考えております。

玉木委員 あくまで総理の希望ということなんですが、総理が希望を言うとそんたくする人がいっぱいいるので、現場で非常にワイルドな議論になってしまうので、憲法はやはり静かな環境の中で議論するということが大事ですから、与野党のコンセンサスをしっかりととれるようなマイルドな議論となるように、ぜひ与党の担当者の皆様にも総理から御指導いただければと思っております。

 次に、日米貿易協定について伺いたいと思います。

 先ほど公明党の石田先生からも話がありました、メリットは何なんだということなんですが、総理はウイン・ウインと言いますね。私、いろいろ文書を調べましたが、アメリカ側でウイン・ウインという言葉を使っているところは一カ所も見当たりませんでした。ライトハイザーさんの記者会見も全部読みましたけれども、ウイン・ウインという言葉は、アメリカ側はなかったんですね。

 これ、一部出しますけれども、パネルを見てください。日米貿易交渉のライトハイザーさんの言葉なんですが、こう言っていますね、まず。アメリカが払う犠牲、特にこれは自動車関税のことですけれども、これはTPPより著しく少ない、英語で言うと、サブスタンシャリー・レス・ザン・ハズ・ビーン・ペイド・イン・TPPということを言っていますね。さらに、自動車関税、この後議論しますが、この協定に含まれていないと。ディドント・インクルードといって、明確に言っております。

 要は、アメリカからとったらウインは多かったんだと思いますが、日本側にとっては、これは単に農産物の関税を譲るだけになっていて、しかもセーフガードはTPPのままで一緒ですから、例えば牛肉なんかにすれば、実質、やはりTPPよりも低下しているとも言えるわけですね。

 まず総理に伺います。先ほど総理が二番目のメリットとして石田委員に答弁した、追加関税の回避についてであります。

 無理難題言ってきて、二・五%の関税を二五%にするなんてむちゃくちゃ言うのは、アメリカがけしからぬと思いますよ。だから、そういうけしからぬことを言うトランプさんやトランプ政権と、茂木担当大臣も含めて対応されたことは高く評価しますよ。ただ、総理がおっしゃるように、追加関税の回避って本当にできていますか。

 首脳会談で確認したということで今も答弁がありましたけれども、質問です。この追加関税の回避については、文書上どこに明記されていますか。明確な答弁を求めます。

茂木国務大臣 まず、パネルをお示しいただいたので、正確にパネルについて申し上げますが、日米貿易交渉で合意した内容、これは、日米貿易協定、さらには日米デジタル貿易協定に全て反映されております。

 その上で、ライトハイザー代表の言葉として、レス・ザン・TPPというのをお示しいただきましたが、まさにこれは日本の農産品、これも、TPP、これで譲許した内容よりは少ない。これは先ほど総理の方からも答弁をさせていただいたように、今まで常に貿易交渉で日本にとって一番の関心項目であった米について、TPP12では七万トンの枠というものを設けたわけでありますけれども、調製品も含めて、一切アメリカの枠は持っていない。さらには、TPPワイドで譲許しておりました三十三品目、乳製品等も含めて、これについてはアメリカの枠は持っていない、こういう状況であります。

 さらに、自動車の関税について、オートタリフは含まれていない。確かに高い追加関税は含まれていない。一方で、カスタムデューティーズ、これについては御案内のとおりきちんと明記をされておりますので、これは、エリミネーションですから、削減について更に協議をするということが盛り込まれているわけであります。

 そして、お話のありました、追加関税は課さない、このことにつきましては、今回の日米首脳会談におけます共同声明、ここの最後の部分の中で、この共同声明、さらには、今後協定が発効しましたらこの協定を履行していくわけでありまして、これが誠実に履行されている期間においてはこの精神に反する行動はとらない、こういった内容が明記をされております。

 そして、この趣旨につきましては、高い追加関税、二三二条に基づきます追加関税は課さないということを、少人数の会合、安倍総理、そしてトランプ大統領、私とまたポンペオ国務長官、その間で確認をし、さらには、大人数の会合におきましても改めて同じことを確認をさせていただいております。

玉木委員 不思議な答弁です。

 総理、覚えていますかね。二〇一六年の四月、TPP特別委員会で、私は質問したんですよ。何と質問したかというと、要は、協定の間のさまざまなやりとりもあるし、発言もあるから、それも全部含めて情報公開してくれと。出てきたのが、あの真っ黒のまっくろくろすけだったわけですね。

 総理が当時おっしゃっていたのは、交渉というのは結果が全てで、文書に、テキストに残っているのが全てなので、そっちを見て議論してくれと言われたんです。

 ただ、今聞いていると、協定の文書とか関連の附属文書ではなくて、少人数会合で確認したこととか首脳間で約束したことの方を重視するように、何か随分ダブルスタンダードになっているなという気がするんですね。(発言する者あり)これは大事なので聞いてください。

 それで、じゃ、伺います。

 共同声明の中の最後の、日本語で言うと、この協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動はとらないということなんですが、この協定の精神って何なんですかね。確認していますか。議事録はありますか。

 協定の精神とは一体何を指すのか、明確に協定の中から条文で教えください。

茂木国務大臣 冒頭申し上げたように、私、答弁の先ほどの最初で、今回の日米貿易交渉で合意した内容については日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定に反映をされている、こういったことを申し上げているところであります。

 そして、今ちょっと通告がなかったので、協定の本文、見ましたらすぐにわかりますので、そのことについてはいつでも答弁を差し上げます。

安倍内閣総理大臣 今のことは事務方で後で答弁をさせていただきますが、そこで、いわば協定の精神ということについては、協定の精神に反することは何かということについて、私はトランプ大統領との間で、二三二条による追加関税は課さないということですねということを確認したところでございます。

 これは、私と茂木大臣とトランプ大統領とライトハイザー通商代表との四人の会談で申し上げ、さらには……(発言する者あり)失礼しました。ポンペオ、訂正していただいてありがとうございます。ポンペオ国務長官との四人で確認し、更にライトハイザー等が入った大人数の会合でも確認をさせていただいたところでございまして、これは首脳間の約束ですから極めて重いものでありまして、ただの口約束とか、そういうことではありません。

 実際、一年前の共同声明においても口頭で確認して、この交渉をしている間は二三二条による追加関税は課さないということを確認して、トランプ大統領はそうだということを確認したわけでございますが、その約束をもちろん米国は守り、今日の締結に至った、このように考えております。

玉木委員 ちょっと確認しますが、その口頭の約束は議事録はありますか。公文書ですか、それは両国の。

安倍内閣総理大臣 両国の共通した議事録ではございませんが、我が国の、もちろん会談においては記録をとっておりますから、その記録にはもちろんあるわけでございますし、米側にも、これは少人数の場もあり、かつ大人数の場でもとって、テタテに近い場合は議事録が米側に必ずしも残るかどうかということはわからないところでございますが、この大人数のところでは、これは、恐らく、間違いなくあるんだろう、こう私は推測をしているところでございますが、米側のことについて私が申し上げることはできませんが、日本側にはあるということでございます。

玉木委員 委員長にお願いです。

 今総理が言及された、両国首脳間あるいは少人数会合におけるやりとりの議事録をこの委員会に提出いただくことをお取り計らいお願いしたいと思います。

棚橋委員長 後刻、理事会で協議いたします。

玉木委員 私は、これはなぜ言っているかというと、追加関税を回避できるかどうかというのは非常に大きな問題なんですが、先ほど、唯一の根拠が、誠実に履行している間はこの協定あるいは共同声明に反することはしないということなんですが、私が何で、じゃ、協定の精神というのは一体何なのと聞いたのは、協定の四条の二項に何て書いてあるかというと、この協定は、自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める措置を適用することを妨げないと書いてあるんです。

 どういうことかというと、安全保障上の懸念があったときにはこの協定の限りではないというのがこの協定の趣旨なんです。ということは、わかりますか、皆さん、この協定に反しないことをする形で追加関税は可能なんです。なぜなら、二三二というのは安全保障に基づいてアメリカが課していくという理由になっているからです。

 だから、ここは非常に私は重要なところで、追加関税を回避することができました、その根拠が、この協定に反することはしないですよということが根拠なんですが、この協定に何が書いてあるかというと、安全保障の観点からはいろいろできますよと書いているんですよ。だから、そこはきちんと詰めてほしいし、文書で残っているものと単に口頭でやっていることがずれたときにどっちが優先されるかということは、リーガルにぎりぎり詰めないとだめだと言っているんですよ。

 繰り返しになりますが、何で私がこういうことを言っているかというと、いっぱいそれを私は言われたからです、二〇一六年に。こう言ったんですよ。妥結した結果が全てであって、文書が全てであって、それに至る過程、交渉過程で相手の言った言葉については重視しない、安倍総理の言葉ですよ、これは。

 だから、水かけ論は避けたいので、今委員長にお願いした、追加関税を回避するための大きな根拠になっている両首脳間のやりとり、関係の会合のやりとりについての議事録を、全てこの委員会に提出することを改めて求めたいと思います。

 次に、もっと重要なことをやります。

 今回の交渉は、大変な相手の中でよく頑張ったと思いますよ、茂木大臣は本当に。ただ、越えてはいけない一線を越えているから、私は問題にしているんです。

 端的に言いましょう。今回の合意内容はWTO協定違反です。ここについての明確な反論をいただくために、今から質問したいと思います。

 ガット二十四条は、この業界では非常に有名な文書ですけれども、基本的に、最恵国待遇というのがあって、ある国と結んだ優遇措置は加盟国全てにひとしく及ぼそうというのがWTOの原則です。ただ、例外があって、一部の国とだけ、あるいは二国間だけでお互いいい感じでまとめることを必ずしも否定していないんです。

 ただ、そのときには条件が幾つかあって、一つが、実質上全ての貿易について関税を撤廃するということが、例外的な措置としてやるときの条件として定められています。

 これは、過去の政府の答弁、役所から、外務省等からの答弁もありますけれども、大体二つ基準があって、九割、大体金額ベースで九割ぐらいの、全貿易、例えば日本からアメリカに輸出している物品の九割ぐらいを全部関税撤廃する。これは量的な規制、量的な条件です。

 二つ目は、質的な条件というのがあって、これは主要品目が省かれていないということです。日本からアメリカの主要品目は明確に自動車と部品ですから、この二つが明確に関税撤廃の対象になっているということがないと、その協定はWTO協定違反、二十四条違反です。

 それで、伺います。

 自動車とその部品を除くと、これは私はちょっと調べてきましたけれども、大体、日本からアメリカに輸出している品目のうち、三割ぐらいは自動車、完成車です。部品が六%で、原動機と書いています、これはエンジンですね、これが六%ぐらいで、これが全て関税撤廃の対象から外れると、単純計算すると五九%で、六割いくかいかないかです。

 これは改めて伺いますが、自動車と自動車のパーツについてはライトハイザーさんが、さっき言ったように、今回の協定には含まれていないんです。それはアメリカが明確に、さっき言いましたよね、自動車か、オートタリフ、オートパーツもそうですね、含まれていませんと。含まれていないんですよ。

 含まれていないということは、今回の協定で確実に関税撤廃になる、この比率って一体幾らなんですか。これは本会議でも聞かれていたので改めて聞きますが、お答えください。

茂木国務大臣 玉木議員もおわかりの上であえて言われているんだと思うんですが、今回の日米貿易協定、この主な目的、これは、日米両国の二国間の貿易、これを安定的で互恵的な形で拡大する、これが基本的な目的でありまして、さまざまな経済連携協定で安全保障上の措置はとれる、これは当たり前のことなんです。別に日米に限ったことではなくて、安全保障上の措置というのはWTO上も担保されている。これは当然のことだと思っております。

 その上で、日米貿易協定におけます関税撤廃率、本協定で新たに譲許した品目につきまして、WTO協定の枠組みのもとで無税としているものを含めますと、貿易額ベースで申し上げまして、日米でそれぞれ、日本が八四%、米国が九二%となります。そこの中には当然、先ほど申し上げました、米国の、カスタムズ・デューティーズ・オン・オートモービル・アンド・オート・パーツ、これが含まれるということです。

玉木委員 いや、それは説明がうそですよ。だって、じゃ、聞きますよ。関税撤廃は、自動車と、完成車と部品については全くこの合意の中には入っていないわけですよ。

 将来の、確かに、一部将来撤廃するということが約束されたら、それもカウントすることはあります。ただ、そのときには幾つかまた厳しい条件が、それは抜け駆けする国が多いから。

 WTOというのはよくできていて、一九九四年のWTOの、ガットの規定の中で、確認、ここに書いていますが、解釈了解というのがあるんですよ。そういう何か抜け駆けを、決まってもいないのに、将来やるから、継続協議にするからカウントしてもいいということを言うような国がいっぱい出てくることを予想して、今の日本みたいに。それで、そういうことを防ぐために、九四年ガット二十四条の解釈に関する了解というのがあります。これは外務省のホームページにも載っています。そこの中で、確かに継続協議していっていいんだけれども、妥当な期間の中で関税撤廃しないと、さすがに何でもかんでもそこに入れられませんよとなっている。御存じですよね。

 その妥当な期間というのは、これは原則十年以内になっています。ただ、例外的に、例えばTPPのときそうでしたけれども、たしかピックアップトラックは三十年、パッセンジャーカーは二十五年といって、十年を超えたものも、ただ、決めれば認められるんですよ。ただ、原則十年以内となっていますね。

 伺います。

 今回の、今、茂木大臣は九二%ということで、自動車も自動車部品も含めて、確実に関税撤廃される対象として計算の中に入れておられましたけれども、この関税撤廃の期限は一体どこに協定上明示されていますか。

茂木国務大臣 協定におけます期限の確定ということでも、決まっていないものはたくさんございます。

 例えば、直近のTPP11でも、凍結の解除、これは二十二項目について凍結をいたしておりますが、その期日が決まっていない項目、これが二十二項目あるわけでありまして、さらに、これまでの協定におきましても、日本とフィリピン、日本とそれからシンガポール、さまざまな協定におきまして、関税の撤廃、さらには関税の削減の期日が決まっていない、こういう協定を結んでおります。

玉木委員 日本とアメリカの関係で典型的なこの自動車のように、主要品目において関税撤廃期限を定めずに締結したFTAはありますか。

茂木国務大臣 何を主要品目とするか、その定義にもよりますが、今回の御指摘のあります自動車・自動車部品につきましては、米側の譲許でありますので英文になりますけれども、「カスタムズ デューティーズ オン オートモービル アンド オート パーツ ウイル ビー サブジェクト ツー ファーザー ネゴシエーションズ ウイズ リスペクト ツー ザ エリミネーション オブ カスタムズ デューティーズ」、こういうふうにされておりまして、これは日本語にいたしますと、さらなる交渉によります関税撤廃。それで、ウイズ・リスペクト・ツーですから、言葉の書き方として。これは……(発言する者あり)

棚橋委員長 ちょっと御静粛に。

茂木国務大臣 静かにしてください。

 さらなる協議は、単なる継続協議ではなくて、関税撤廃がなされることを前提に、ウイズ・リスペクト・ツーですから……(発言する者あり)

棚橋委員長 御静粛にお願いします。

茂木国務大臣 その具体的な関税撤廃等について交渉を行うということになります。

玉木委員 テレビを見ている人は何が何だかわからないと思いますが。

 これは不思議なんですよね。今、茂木大臣が読み上げたのは、この協定書の附属文書2というものです。附属文書2というものです。今、茂木大臣も英語が堪能なので英語で言われたんですが、これは、皆さん、大体、協定書というのは英語と日本語で正文を二つつくるんです。ただ、この協定書の第十一条で何と書いているかというと、「この協定は、日本語及び英語をひとしく正文とする。ただし、附属書2は、英語のみを正文とする。」と書いています。今大事なところを言ったのは、英語しか正文がない。

 私も多少英語ができるので言いますと、今おっしゃったのは若干誤解があって、約束されているのはファーザーネゴシエーション、つまり、さらなる交渉であって、関税撤廃が約束されているわけではありません。ですから、まさにそこを根拠に関税撤廃ということを言うのであれば、それは間違っています。

 実際、ライトハイザーさんもそのことを記者会見の中で言及しておりますけれども、繰り返し申し上げますが、約束されているのは交渉であって関税撤廃ではないので、一体いついかなる形で関税撤廃が行われるかわからない自動車や自動車部品を入れて、それで関税撤廃率を計算して発表するのは、それは国民を欺く行為です。

 それだけではなくて、では、総理にこれは伺います。総理の本会議の答弁なので総理に伺いたいんですが、八日の代表質問で総理が答弁した中に、自動車及び部品についてはあくまで関税撤廃が前提となっている、あくまで関税撤廃が前提となっているということなんですが、それもやはり、先ほど茂木大臣がおっしゃった、あの同じ部分を指して関税撤廃が前提になっているということでおっしゃっている理解でよろしいんですね。

安倍内閣総理大臣 既に茂木大臣から答弁しているとおりでありまして、それが政府の考え方であります。

玉木委員 ということは、書いていないんですよ。総理の本会議答弁も根拠がない。根拠はないんです。正文が英文しかないので、ここも日本のメディアもなかなか報じていないんですけれども、これは、改めて、委員長、求めたいんですけれども、公式には附属書2というのは英文しか存在していないことになっていますけれども、これはきちんと日本語に訳して、日本語としての正しい文書をつくって、この委員会に提出を求めたいと思います。それに基づいて同僚議員が更に議論を深めていくと思いますので。

 今の説明では全く納得ができません。ますます、WTO協定違反の協定を無理無理結んで、九二%も関税撤廃しているような、そんなわけないじゃないですか。これは厳しく追及をしていきたいと思っております。

 なぜ私はこういうことを言っているかというと、自動車工業会からの歓迎声明が出ましたとか、農協から歓迎声明が出ました。私は、個別の会社とか個別の業界がどうなるかは関心ありません。

 総理は所信表明演説の中でこう述べているんです。我が国は、これからも、自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく経済圏を世界に広げてまいりますと言っているんですよ。なのに、こんな抜け道をつくるようでは、これから中国とかインドとか、あるいは南米とか、どんどんやはり自由貿易を広げていくときに、こういうことを見ると、つまり、他国から、日本は、アメリカに対してWTO違反あるいは脱法行為をしてまで妥協する国だと見られたら、厳しく、高い自由化率を求めることができなくなるじゃないですか。

 現に、多分もう当局には、メキシコとか、農業なんかでアメリカと競合するオーストラリアとか、そういうところから問合せが来ているんじゃないですか。日本はこんなのを認めるんですか、だったら、うちにも強く言わないでくださいねと、当然私なら言いますよ。

 つまり、今回のことは、こういうことをやっていると将来の日本の交渉力を著しく減じるという実害が生じるんですよ。アメリカと中国が、お互いWTOのルールを破ろう、あるいは守らないようにしてやっている中で、日本がWTOのルールを守らなくてどこが守るんですか。その根っこが筋を違えようとしているから、私はこの問題を厳しく皆さんに申し上げているわけですよ。

 ですから、改めて、出ていない資料がいっぱいありますから、首脳間の会合の議事録や、あるいは附属書2の日本語訳、こういったものをしっかり出していただいて、同僚議員としっかりとこの点、更に詰めていきたいと思っております。

 次の質問に移りたいと思います。

棚橋委員長 一度御答弁を聞かれませんか。

 では、外務大臣茂木敏充君。

茂木国務大臣 まず、基本的に、個別業界がどうなってもいい、そういう玉木議員と我々の考え方は違います。やはりそれぞれの、農業であっても自動車産業であってもしっかりと守っていく、これが安倍政権の考え方であります。

 それから、先ほど附属書の話、日本語が正文になっていないという話がありましたが、例えば、最近結びました日豪EPA、これも附属書は英文です。それから、TPPの場合は、正文も含めまして、正文も含めて、これは英語とフランス語とスペイン語が正文です。さらには、日・EU・EPA、一番最近発効したものでありますが、これも附属書につきましては、EUの二十三カ国語、これが正文になっておりまして、日本語は正文でありません。

 また、合意した内容、この経過につきましては全て今回の協定に反映されておりますが、その上で、さまざまな文書等につきましては、日本、アメリカがそれぞれの国内の行政手続に従って保存をする、処理をする、こういったことで了解を得ているところであります。

玉木委員 何かよくわからない答弁でしたけれども……(発言する者あり)

棚橋委員長 ちょっと、御静粛に、御静粛に。

玉木委員 我々、私も、茂木大臣も安倍総理もよく御存じだと思いますが、私は農業業界とかいろいろなところのことも考えてやってきましたよ。それはもう皆さんよく御存じだと思います。

 ただ、私が申し上げたいのは、日本はやはり資源のない国で、この自由貿易という恩恵を戦後最も受けながら成長してきた国です。かつ、自動車業界は、これから新しい、まさに別の業界に今大きく変わりつつあるような、最も大きな変化にさらされている業界ですし、加えて、アメリカがこれだけ関税をかけるなんということをやり始めている中で、やはり自動車業界としても私は心配です。その根っこはもちろん、今回、当面追加関税がかけられなかったということは、自動車工業会としても私はそれはウエルカムだと思います。

 ただ、我々政治家としてやらなきゃいけないのは、日本がずっと戦後守ってきたこの自由貿易のルールに、まさに旗手としてこのルールを世界の中で守っていくんだ、その先頭に立つんだという覚悟を我々が失ってはならない。少なくとも、他国から、何か抜け駆けして、抜け穴を通って何か当面の短期的な成果だけ得ようとするような国だと見られることは屈辱であります。だから、そういうことがないような交渉をしてほしい。

 そして、セカンドステージがあるということでしょう、今回、ファーストステージだから。セカンドステージをやるときは、今私が指摘をした、期限をきっちり設けるとか、自動車や自動車部品も削減対象になるようにやはり交渉してくださいよ。我々は、立法府としてもそれはしっかり、逆に厳しく言って、それを使って、外交交渉に使ってくださいよ、それは。だから、それは、これからのまさに交渉にかかっていますからね。期限の定めをきちんととる、そういうことを常に頭に入れて交渉してもらいたいと思います。

 最後に、消費増税の日本経済への影響について伺います。

 安倍総理、これは二回延期して、今回増税ということですが、これまでもそれで、延期のたびに議論させてもらいました。それぞれ、こうおっしゃっているんですね。二〇一四年十一月の延期のときには、二%の引上げは個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくする。そうですね。二〇一六年六月、伊勢志摩サミットのときでしたか、再延期では、あのとき何か、リーマン・ショックが起こるという怪しげなペーパーが出たときですよ、内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきという新しい判断を示されたわけですね。

 その横です。景気動向指数で、一致指数と先行指数をプロットしてみました。

 私、心配しているのは、一致指数もそうなんですが、先行指数の、二〇一七年半ばからのこのフリーフォールのように落ちていく、極めて、先行指数ですから、ちょっと先を見た動きなんですけれども、これが真っ逆さまに落ちていっていますね。過去延期したときに比べても、赤線も大体同じレベルですが、青線は更に悪化しているわけですね。

 私は、ここは総理と一致するんですが、デフレ下でやはり増税しちゃだめだと思うんですよ。ただ、その環境を整えてきたということなんですが、このままやるとデフレに逆戻りするんじゃないのかなと。

 私は、今、世界経済も日本経済も、さまざまな指標を見ていますけれども、いずれも、リーマン・ショックからもう百カ月以上たって、世界的な大きな不況の入り口にあるのではないか、不況よこんにちはという状況に今なっているのではないかなと思っているんですね。つまり、税率を上げても税収が必ずしも上がらないような状況にさえ今陥りつつあるのではないのかなと思います。

 そこで、総理に伺います。

 デフレ脱却が十分実現していない中での今回の消費増税というのは、日本経済に致命的な影響を与える懸念もありますけれども、総理の認識を伺います。

安倍内閣総理大臣 前回の消費税引上げの際には、耐久財を中心に大きな駆け込み需要と反動減が生じ、その後の回復にもおくれが見られるなど、結果として見れば、需要変動に対する対策が必ずしも十分ではなかった、こう考えています。

 今回の消費税の引上げに当たっては、こうした前回の反省の上に、教育の無償化や軽減税率に加えまして、思い切ったポイント還元、またプレミアムつき商品券、また自動車や住宅に対する大胆な減税など、十二分な対策を講じてきたところでございます。

 そこで、今後どうなっていくかということについては、英国のブレグジットについての懸念、あるいは米中の緊張、この貿易摩擦の状況等も見つつ、また今回の消費税の消費に対する影響も見つつ、基本的には、必要があればちゅうちょなく対応していくということでございます。その中で景気回復の基調を確かなものとしていきたい、こう考えております。

玉木委員 総理、大丈夫ですか、本当に。

 これは、私、相当心配しています。私も、ある程度やはり歳入歳出両面の改革が必要だと思っていますけれども、今回は、あえて言うと、やるのなら今までにやっておく方がよかったと思いますよ。ここは、一番やってはいけないタイミングで、一番やってはいけない形で増税をしようとしていますよ。

 これは本当に、場合によっては、日本経済だけではなくて世界経済にも影響を与えたとしたら、総理、どう責任をとられますか。

 私は、今やるべきは増税ではなくて積極的な財政拡大だと思いますよ。特に、将来の成長や税収増につながる分野については、私は大胆にやはりお金を投じることが今必要ではないかなと思います。

 いわゆるアベノミクスということで金融緩和をやってきましたけれども、幾らやっても、物価上昇率二%、いかないですよね。

 ただ、私、非常に安倍総理を評価しているのは、アベノミクスをやることによって、金融緩和だけではだめなんだという壮大な社会実験が終わったんですよ。そして、その結果、金融緩和だけではだめなんだということがわかったという意味で、私、歴史的に意味があったと思うんです。

 問題はこれからなんです。

 私は、財政の季節に入ってきたのかなと思います。アベノミクス、あるいは世界の金融緩和の一つの副作用であり、私は、これをメリットに転じたらいいのは、この低金利、これをどう活用していくのかということを実は積極的に考えたらいいと思っています。

 これは今回の、増税した、あるいは総理がおっしゃるような、アベノミクスは成功して自然増収が上がったという、この間のお金がふえた分を一体何に使ったかということを整理してみました。

 そうすると、これは三党合意でまさに約束したように、一対四で社会保障の充実、教育を含めた、それと、赤字国債の発行抑制がその一対四のうち四つ、その意味では、社会保障の充実と新規国債発行とかには確かに充たっているんです。

 これを見ていただきたいのは何かというと、文教科学は〇・〇四減っています。公共事業も安倍さんになってからふえたというのがそんなにふえていなくて、地方交付税はどんと減っていますね。

 つまり、増税してもなお、これから将来の、まさに未来への投資として必要な教育とか科学、こういうところにお金が行かないんですよ、増税しているのに。増税しなかったらもっと行かないですよね。こういうことで、日本のこれからの科学技術とか成長の種は大丈夫なのかということなんです。

 吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されました。心からお喜びを申し上げたいと思うんですが、こういう方が将来出てこなくなるかもしれない。

 そこで、麻生大臣に伺いたいんですが、私は、これから一番大事な資本は人的資本だと思うんですね。ネットを中心とした、このナレッジソサエティーという知価社会になっていっていますから。その意味では、教育や子育てやあるいはそういった科学技術に対してどんどん投資していくことが必要だと思います。まさに人づくりこそ国づくりですから。あるいは、教育は国家百年の計と言われますよね。

 今のこの低金利やマイナス金利を生かして五十年債や百年債のような超長期国債を発行して、戦略的な投資の財源を今こそ私は見つけて、そしてそれを大胆に投資することによってデフレを脱却していく、こういう政策に大きく転換していくチャンスだと思うんですけれども、麻生大臣、いわゆる五十年債、百年債といった超長期国債の発行について、財務省として検討されるお考えはありませんか。

麻生国務大臣 予告はなかったと記憶しますので、急な御質問だと思いますが、今、ただいまの段階で百年債を考えているということはございません。

玉木委員 アメリカは、今度五十年債を発行するやに聞いております。

 ぜひ、よくライアビリティーマネジメントと言いますけれども、この負債の管理をどうしていくのかというのは、やはり金利の動向をよく見ながら、そして今、日本社会に何が求められているのかということをよく考えて、積極財政で私は臨むべきだと思います。

 リーマン・ショックが起きたときに、イギリスは、一七・五%あった消費税率を一時的に一五%まで、二・五%減税しました。

 これから、あってほしくないんですが、そういった世界的な景気の悪化、特に消費が急速に縮むようなときには、私は、消費税の減税も含めてさまざまな経済政策の手段を検討しておくことは必要だと思うんです。その一つが、今の長期国債、超長期国債であり、あるいは消費税に限らないさまざまな減税策だと思っています。

 そういった消費減税も含めた機動的な財政運営について、安倍総理、いかがでしょうか。お考えになりませんか。

安倍内閣総理大臣 二点、ちょっと玉木委員に誤解されているのかなと思うんですが。

 一点は、いわゆるアベノミクスというのは、金融政策の一本足打法ではなくて、まさに三本の矢でございますから、いわば異次元の金融緩和を含めた金融政策。そして、機動的な財政政策でありますから、御承知のように、我々が政権奪還したときには、補正予算十兆円という思い切った財政出動をしたところでございます。そして、成長戦略を実施していく。この三本の矢で、我々、デフレではないという状況をつくったと思っておりまして、財政政策は非常に重要だと私も思っているわけでございまして、元財務省の玉木委員から重要性について語っていただいて、大変心強く思っているところでもございます。

 今後、いわば、今の懸念が、世界経済に対するさまざまな懸念がございますが、顕在化すれば、ちゅうちょなく我々はマクロ政策によって対応していきたい、こう考えておりますし、何をやるべきかということも含めて、それは常に考えておくべきだろう、こう思います。

 あと、先ほど貿易交渉について言ったことは、誰が言ったということは意味がないと言ったのは、誰かが言っていることは、いろいろなことで伝えられていることが我々が約束したことではないから意味がないと言っているわけでございまして、約束したことは、これは首脳間であれば非常に重いものであり、当然アメリカもそう受けとめている、こういうことではないかと思います。

棚橋委員長 玉木雄一郎君、恐縮ですが、時間が来ておりますので、手短に。

玉木委員 三本の矢というふうに言いましたけれども、二本目の矢も、これは、悪夢の民主党政権とよくおっしゃいますけれども、公共事業のレベルはかなり下がってきていますよ。加えて、三本の矢の三本目というのは思いつかないんですよ。一体何で、経済を爆発的によくした三本目の矢というのは思いつきますかね、皆さん。

 私たちは、今野党ですけれども、しっかりとした、本当にこれからの経済そして社会に必要な経済政策をしっかり打ち出して、自民党にかわるもう一つの選択肢をつくっていきたいと思いますので、ぜひ徹底論戦させていただきたいと思います。

 終わります。

棚橋委員長 この際、今井雅人君から関連質疑の申出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今井雅人君。

今井委員 略称、立国社会派の今井雅人でございます。質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 きょうは十月の十日でありますけれども、総理、前回予算委員会がいつ開かれたか覚えていらっしゃいますか。三月の一日、何と二百二十二日間も審議が拒否されてきました。

 その間、いや、我々は予算委員会の開催について何度も何度も申入れをしています。でも、与党側は全く応じてくれなかったんですね。その間に、消費税の引上げの問題もありました、日ロの問題もあるし、統計不正の問題もいろいろありましたけれども、総理御自身にお伺いしなければわからない、直接やっていらっしゃる日ロとか日米とか、総理に直接聞かなければわからないことだらけだったので予算委員会を開いていただきたいということをお願いしたんですが、全く応じていただけなかった。もう残念でなりません。

 今、きょう、あす、基本的質疑が行われていますけれども、我々は、まだまだいろいろなテーマがありますから、集中審議も含めて予算委員会をこの臨時国会中も開いてほしいということをお願いしていますが、今のところ、お応えできないということで、全く消極的であります。私たちは議論がしたいんですね。

 ぜひ予算委員会をこれからもしっかり開いていただきたいんですけれども、総理、憲法審査会はあれだけ積極的に議論してほしいとおっしゃっているんですから、予算委員会についてもぜひ開いて積極的に議論してほしい、まずそのことを言っていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、御要請があればここでお答えする義務を負っているわけでございます。

 しかし、今井議員の今の御議論の印象は、私が国会に余り出ていないのではないかという印象を与えておられると思いますが、例えば世界の首脳を見てみれば、一年間に大体四十時間前後であります。イギリスもそうですし、どこもそうなんですね。私は二百時間を超えているわけでございまして、一年間に、かなり圧倒的な、G7では圧倒的でございます。(発言する者あり)後ろからここは日本だという声が上がったわけでございますが、確かにここは日本でございますから応じているわけでございますが、今は、しかし、世界においては、グローバル化する中においては、経済においても首脳がそれぞれ交渉しなければならない、そういう時代に入っているということも政府の立場としては御勘案いただきたい、こう思っている次第でございます。

 委員会の運営については、これはいつも申し上げているように、まさに、当委員会において、国会においてお決めをいただきたい、このように考えております。

今井委員 外交交渉は積極的にやっていただきたいと思いますけれども、私たちもいろいろ国会で質疑をしなきゃいけない内容があるからお願いしているんですよ。(安倍内閣総理大臣「ほかにも委員会はある」と呼ぶ)ほかにも委員会はありますが、総理じゃないとお伺いできないような内容のものがあるわけです。だって、トランプ大統領とどういう交渉をしているかは、ほかの大臣に聞いたってわからないじゃないですか。プーチン大統領との交渉、わからないじゃないですか。

 そういうことをお伺いしたいのでぜひ出てきていただきたいということで、先ほどから総裁と総理の両方のお立場でお話しなさっていますし、憲法審査会に関しては、もっと積極的に議論しろと所信でもおっしゃっているじゃないですか。ですから、予算委員会でも、皆さんに積極的に議論をしてほしい、私も言われたら出てきますということをぜひお伝えください。

安倍内閣総理大臣 今、例えば日ロ交渉においても日米交渉においても、いわば例えばテタテの交渉については、ほとんどこれはここで申し上げることができないということをいつも申し上げているわけでございまして、外務委員会において外務大臣が政府の立場を御説明させていただいているわけでございます。また、日米交渉についても、日米交渉のほとんどは茂木・ライトハイザー間でやっているわけでございますから、委員会においては、テレビ中継はないかもしれませんが、議論ということであれば、そこでしっかりとやっていただければいいのではないかと思います。

 国会議員としては、私も政府に入る前は一国会議員でありましたが、まさに議論することが、国会で議論することが大きな仕事でございます。憲法調査会はまさに議員同士が見識を闘わせる場であるわけでございまして、いわば政府がそこで答えるということとは趣を異にする委員会でございますから、まさにそこで見識を各党各会派に発揮をしていただきたい、こう思ったところでございますし、憲法審査会は憲法審査会で、予算委員会をやっていたって開くことだって十分に可能なんだろう、こう思うわけでございます。

今井委員 ぜひ開いていただきたいと思います。

 それで、きょうは実は関西電力のことについてお伺いしようということで、参考人を五人お願いして、質問も五十問用意してきたんですが、いらっしゃっていただけないということで、せっかく用意した質問、全く質問できないんですよ。報告書も読みましたし、会見も聞きました。現地にも行って、いろいろな方に話も聞きました。しかし、何も、当事者がいないんです。

 先ほど、私、お伺いしようと思ったら公明党の方がお聞きになられましたので、総理は、この問題は公共料金、電気料金にかかわる問題だからという、重大な認識だということをおっしゃいました。経産大臣も、極めて公共性の高い事業だというふうにおっしゃいました。公共性が高いからこそ、これは民間の企業ではなくて国会で審議しなきゃいけないということで、来ていただきたいということを言っているんですけれども、ちっとも応じていただけないんです。

 それで、先ほど質問された自民党の岸田政調会長は派閥の総会でこうおっしゃっています。国民の電気料金が金品に流れているのではないかという指摘もある、額の大きさにも驚いた、与党、野党は立場を超えて実態を明らかにしなければならない、こうやっておっしゃっているんですね。

 そして、公明党の北側副代表、これは会見で、当然国会で論議されるべきだ、関電にはできるだけ早く内容を報告してほしい、こうおっしゃっているんですよ。

 与党の皆さんもそうやって積極姿勢を最初見せておきながら、実際、予算委員会になると呼ばない。どういうことなんですか、これは。何か、呼ぶとまずいことがあるんでしょうか。

 総理、あれだけ問題意識を持っていらっしゃる、電気料金にかかわる問題とおっしゃったなら、ぜひ関電の皆さんを呼ぶように指示していただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど委員がおっしゃったように、まさに今、私がせっかく出席しているんですから、私にしか答えられないことを御質問されるんだろう、こう思っておりましたが、しかし、参考人としてどなたを呼ぶかということは、まさにそれは委員会においてお決めになることであり、政府としてそれを指示することはないということでございます。

今井委員 いや、ちょっと残念ですね。

 どうしてそんなに、何か、関西電力の方をここに呼ぶとまずいことがあるんですかね。

 今、これだけ社会的な問題になっていて、しかも電気料金に影響があるかもしれないという事案です。そうですよね。あれだけの方が辞任をされるということまで発表された重大な事態です。

 もちろん政府にも調査をしていただきたいですけれども、我々国会もこれを、真相を究明する責務があると思います。ですから、ぜひ参考人を呼んでいただきたい。

 委員長、理事会で諮っていただきまして、必ず参考人を呼んでいただいて集中審議をしていただく、そのことをお願いしたいと思います。

棚橋委員長 今井雅人議員に申し上げます。

 本日昼の理事会において、与野党の筆頭理事間で引き続き調整するということになっております。

今井委員 じゃ、引き続き協議をした上で……

棚橋委員長 調整でございます。

今井委員 調整をした上で、ぜひお呼びいただきたいということをお願いを申し上げておきたいと思います。

 経産大臣にもこれからいろいろお伺いをしなければいけないんですけれども、その前に一つちょっと確認事項でございます。

 今回の関電の事案は、森山さんという人が金品を皆さんに配ったということが契機になっている問題でありますけれども、一応これは事実の確認だけさせてください。

 本日、週刊誌の記事が出ておりまして、菅原経産大臣が有権者の皆様に贈答品、金品を配られているという話がありました。もしこれが事実だとすると、明らかに公職選挙法に抵触するという事案だと思いますけれども、この記事に関しましての事実関係をまず教えていただきたいと思います。

菅原国務大臣 その記事、私も目を通しました。

 そうしましたらば、今から十二年前のほかの週刊誌に書いてあったことが大宗でございまして、念のため、事務所を通して確認をさせていただきました。公選法や政治資金規正法等にかかわることはないというふうに認識をいたします。

 私、独身なんですが、愛人がいると書かれたり、そんなことがあったり、いろいろ週刊誌は書くんですが、一つ一つ政治家として説明をしていきたい、このように思います。

今井委員 詳しいことはまた説明責任を果たしていただきたいと思うんですけれども、私がちょっとお話ししたことにお答えいただいていないので、有権者の皆さんに金品を渡したことはないということでよろしいですか。

菅原国務大臣 そのようなことはございません。

今井委員 ありがとうございます。

 もう一点だけ確認したいと思いますけれども、この記事の中に、元秘書だったという方が、何か写真入りのものを出していらっしゃいますけれども、裏帳簿、政治資金規正法の報告書、収支報告書には載っていない裏帳簿があって、それは正式なものには載っていなかったという記事がございますけれども、これも事実関係を確認したいと思います。

菅原国務大臣 今、今井委員がおっしゃった裏帳簿というのは、その週刊誌の中の表現であります。うちには裏も表も、特にそうしたきちっとした報告書に出すときに、資料としては、いわゆるそこで言う表はあるわけですが、裏というものはございません。十二年前のことでもありますし、全くそれはございません。

今井委員 今、両方とも事実無根だということで御答弁をいただきましたので、確認をさせていただきました。

 いろいろ証言されている方もいらっしゃるようですので、今後いろいろな話が出てくるかもしれませんけれども、きちっと説明責任を果たしていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

 その上で、先ほどのちょっと続きなんですけれども、経産大臣、先ほど、関電の方から経産省に報告があったというふうにおっしゃっていましたけれども、報告書についての報告だったということですが、もう少しちょっと詳しく教えていただけますか。

菅原国務大臣 九月二十七日に報道でこのことを聞きました。役所内にも確認をいたしました。去年の秋に関電が内部で調査をして報告書をまとめた、それを全く役所内の誰も聞いていない、こういう事実関係があったものですから、報道が出た九月二十七日の午前中に事務方に指示をして、午前十一時前後に関電の幹部を呼び出しました、経産省に。

 そこでるる話を聞いたところ、その後に会見をした内容とちょっとそごがあったり、会長と社長の言い分が違ったり、これはその去年の報告書に基づくものであるし、それをもとに話をするということは、事実関係はどうなのかと、わからないわけですから、先ほど来お話し申し上げているとおり、電気事業法の報告徴収、つまりこれは何か虚偽があったらば罰則がかかる厳しいものですから、いわゆる電気事業法の報告徴収を求めて、そしてその後、九月三十日に、外部の独立した第三者機関から成る委員会、ここで徹底して事実解明を行って、経産省の方に関電からその事実関係を求めたい。

 そして、きのう、但木弁護士、元検事総長始め四名の方プラス十五名の弁護士の皆さんと一緒になって、この機関で関電内のかなり昔まで含めてさかのぼって徹底調査をするということで、今その段になっておりますから、それを受けてまた経産省として判断をしていきたいと思っています。

今井委員 第三者委員会が行われるということなんですけれども、それはそれでやっていただければいいんですが、これは別に国会も並行してやればいいだけの話なんです。だから、第三者でやりながらも、我々も調査をしたいんですね。

 大臣は、第三者委員会で正しいものが出てからとおっしゃっていますけれども、じゃ、これは一体いつ出てくるのかということなんですけれども、きのう、新しくこの検証委員会の委員長になられた但木さんが会見されていましたけれども、中途半端に調査は打ち切れず、期限は約束できない、いつになるかわからない、こういうことをおっしゃっているんですよ。

 大臣、年内なんというのはとても遅過ぎるとおっしゃっていましたよね。でも、委員長は期限は約束できないとおっしゃっています。これでは一体いつこの検証結果が出てくるかわからないですね。このまま何カ月もずっとやり過ごすんですか。

菅原国務大臣 私ども経産省として、関電の独自的な調査結果等がなかなか信じがたい、それゆえに、厳格な立場で、外部の目を含めた第三者機関を設けて、そこで関電の役員も社員も一人も入れずに公正性を高める中で調査をすべきということで要請をして、きのう、但木委員長を始めとする四名プラス十五名の体制が立ち上がったわけでございます。

 国会でるるのお話は国会に、あるいは予算委員会の理事会等に委ねたいと思いますけれども、まずは経産省としては、関西電力を所管する官庁、省庁として、その事実関係を明確に出していただく。

 私も確かに、最初、関電の幹部が言ったときは、年末まで云々と言っていたので、それはちょっと遅いだろう、そう言いました。しかし、但木委員長、元検事総長がきのう、いつまでということについては、森山なる方やその他のもろもろの経緯について、五年前、十年前だけではなくて、もしかすると二十年以上前にさかのぼるかもしれないということも耳にいたしました。そういうことを考えると、なかなか、いつまでということについては、第三者機関で独立した機関でありますから、そこに私としては何ら申し上げることはできない、こういう状態であります。

今井委員 今回の依頼は電気事業法百六条第三項の規定でお願いしているというふうに思いますが、これは別に報告の期限、切れますよね。いつまでに報告してくださいという報告徴収の依頼、できるはずです。通常、期限を切って出しています。ですから、これは、そういうものをしっかり出さないと、ずっと先送りにしていると思われますよ。

 期限をちゃんと切って、まずそこで、じゃ、中間報告を出すとか、そういうことをしっかりやってください。

菅原国務大臣 繰り返しになりますが、関電の幹部が年内、年末までと言ったものですから、私は、それは悠長な話だというふうに申し上げました。独立した第三者機関がきのう立ち上がって、厳格な、あるいは、これまでさまざまなキャリアを積んで経験のある方々が四名、委員長、委員として、また顧問として、そしてまた十五名が一丸となってこの事案を内部的に解明をするというふうにおっしゃっていますから、民間企業における、外部からそうした機関を入れるということにおいては、経産省としては、そこはその厳格性に委ねたいと思います。

 ただ、申し上げるならば、可及的速やかにお願いしたい、この思いは変わりません。

今井委員 我々は早く真相にたどり着きたいので、そんな悠長なことは待っていられません。

 じゃ、大臣、ぜひ、国会で呼ぶ呼ばないは、これまた委員会でやりますから、関西電力の関係者の皆様に、政府関係にもちゃんと説明をする、それから、マスコミにも会見をしたわけですから、国会の要請があったら国会でしっかりと説明するように、そういう指導をしていただけないでしょうか。

菅原国務大臣 昨日、御案内のとおり、八木会長始め計七名が辞任を表明いたしました。岩根社長に関しては、この第三者機関の終わるまで無給で社長職にとどまってさまざまなヒアリングを受けるという立場という状況の中において、やめた方もその対象には当然なるんだと思いますけれども、そこについて、報告については、先ほど来申し上げているように、九月の二十七と、その後の三十日と、私どもが求めた内容について、去年の九月の報告書の内容を丸々報告をしてきました。そこにやはりいささかの疑義があるとするならば、これは第三者機関に委ねるべきであるということで、私どもから、第三者機関を設けてしっかりとやるべきだというふうに申し上げた次第であります。

今井委員 答えていただいていないんですけれども。関西電力に御指導いただけないでしょうかという質問をしました。

菅原国務大臣 一つ言えることは、第三者機関が立ち上がりましたから、今、その報告を受けるまでは、関電に関しては、そこの第三者機関、公正な外部の目を持った委員会に委ねているわけですから、関電の当該の方々が、そこの第三者機関における厳格な調査、審査等にしっかりと合致するように、誠意を尽くして答えるべきだということは言えるんだと思います。

今井委員 第三者委員会に説明するのも当然ですけれども、国会の要請があったら国会でもしっかり説明するようにということをお伝えしていただきたいということです。

菅原国務大臣 先ほど安倍総理からもお話があったとおり、国会に対しての説明等については、当予算委員会の理事会あるいはさまざまな国会のそれぞれの場所に委ねたい、こう思っております。

今井委員 ちょっと、本当に非協力的で困っているんですけれども。

 監督官庁としてそういう指導をしてくださいとお願いしているんです。ちょっと、端的にもう一度お願いします。

菅原国務大臣 今、最後のところで申し上げたつもりでございますが、第三者委員会という厳格な外部の目を持った委員会が、関電のある意味外というか中というか、そこに立ち上がったわけですから、その委員会に対してしっかりと説明を果たすべきということは関電側に言えると思います。国会については国会でお決めいただくことだと思います。

今井委員 ちょっとらちが明きませんけれども。

 こっちに、国会の方にお呼びするかどうかは我々が決めますが、そのときはちゃんと来て説明するようにという指導をしてくださいということを申し上げているのに、そのことは無回答ですよね。もういいです。時間がないので、もういいです。

 もう一点お伺いしたいんですけれども。

 実は今回の、今、第三者委員会という話がありましたが、きのう四名のメンバーを見ましたけれども、委員長の但木さんですか、この方はいわゆる赤れんが組で、法務省の官房長、法務省事務次官、ほとんど政府寄りにおられた方で、関電がほとんど選んだ四人ですから、果たして本当に中立性が保てるかどうかはちょっと疑問なんですが、それはまた別の方がお聞きすると思いますので、その指摘だけにしまして、財務大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども。

 私は、この第三者委員会で一つ、調査されないんじゃないかということを心配しているのは、原資の方なんです。このお金が一体どこから出たか。いわゆる本当に原発マネーとか違法なお金から出ているのかどうかということもとても大きな争点ですけれども、これは関電側の調査しかしなかったらわからないんですよ。

 ですから、当然、お金を贈った側の原資が何だったかということも明らかにしなきゃいけないんですが、それを明らかにするためには、今一番情報を持っているのは国税庁なんですね。国税庁が査察をして、この裏金を発見してこれが見つかったということは報道されていますから、そこが一番わかっているのは国税庁、つまり、財務省の傘下にあるわけです。

 この解明のためにぜひ国税庁も協力をしていただきたいということをお願いしたいと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 個別のいわゆる事案について財務大臣が国税庁長官を指導しろというように聞いておられるんですか。そういうことはございません。

今井委員 これだけの話題になっていて、しかも、関電側からだけではわからない情報なので協力をしていただきたいということなんですが、なかなか協力をしていただけないということで、何を言ってもゼロ回答ということで、大変残念です。

 総理、ちょっと一点だけお伺いしたいんですけれども、今回の事案に関しまして、この森山さん関連のいろんな企業から与党の議員の方が献金を受けているという報道がございます。

 一人は稲田さんですけれども、稲田さんは、森山氏が筆頭株主の会社とその関連会社から、合計で二千、全部で三百七十五万円の献金を受けておられます。これは法律的には問題ないかもしれませんけれども、私が問題にしているのは、これが、原資が何かということです。

 先ほども言いましたように、裏金をつくっていていろんな人に配っていたんだとすれば、稲田さんがいただいているお金も、ひょっとしたらそういうのが原資かもしれません。わからないですけれども、その可能性は否定できないですね。だから、まず、そのことはよく調べなきゃいけない。

 そしてもう一つ、今度は世耕元経産大臣ですけれども、こちらの方が私は非常に不思議なんですが、以前もこの問題を実は取り上げたことがあるんですけれども、ちょっと名前を言うといけないので、Y社ですね、Y社、ここはやはり森山氏が顧問を務めておられたところなんですけれども、原発のメンテナンス工事などを受注しているんですけれども、関電から、二〇一四年から一八年で何と百四十九億円の受注をしています。ここの社長が、二〇一二年、一三年、一四年、一五年と、個人献金の上限である百五十万ずつ世耕元経産大臣に献金をしております。二〇一二年というと、震災があったその翌年であります。そこから始まっています。世耕さんはそのとき内閣官房副長官になられました。

 もう一つ、こちらの方が非常に不思議なんですけれども、二〇一三年に社長が百五十万、個人献金されていますが、同じタイミングで役員の四名がやはり百五十万円ずつ献金をしていまして、合わせると七百五十万円、その年に世耕さんに献金が行っています。

 これは、実質的には会社から献金をしたものをみんな個人献金に振り分けたんじゃないかということで、一度問いただしたことがありますけれども、あくまでも個人献金ということで違法ではないという答えでありましたけれども、これも原資が何かわからないということで、確かに法律的には問題ないかもしれませんが、そういう観点から考えると、道義的には非常に問題があるんじゃないかな、ちゃんとしっかり調べて説明をする必要があるんじゃないかなというふうに思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 政治活動については、一人一人の政治家が、国民から信頼を得られるよう、みずから説明責任を果たすべきものと考えております。

今井委員 ぜひ、稲田さんにも世耕さんにも、この問題、しっかりと調査をして説明責任を果たしていただきたいと思います。

 ちょっと時間がございませんので次の話題に行きたいと思うんですが、昨年、加計学園の問題がありまして、まだ実態が解明されていないので大変残念なんですが、私は同時に思っていたのは、この国家戦略特区という制度そのものに欠陥がないのかなということで、ずっとこの間ヒアリング等をやってきました。

 問題は、いわゆる利権の温床になる可能性がないかということです。国家戦略特区の諮問会議の方は規約がございまして、利害関係者を排除することができるというふうになっています。できる規定なのでもうちょっと強くした方がいいと思うんですが。ところが、その下にあるワーキンググループ、ここには何の規定もございません。

 ですから、このワーキンググループのところが、利害関係者が入って利益の温床になるんじゃないかということをずっと議論をしてきたわけですけれども、資料を見ていただきますと、この間、内閣官房のホームページにこういうものが出ました。毎日新聞社の国家戦略特区をめぐる報道への抗議文、内閣官房のホームページにこういう抗議が出るというのは本当にびっくりしたんですけれども、こういうのを載せていいのかなとも思いましたが、次のページを見ていただきますと、こう反論があるんですね。

 まず最初、線を引いたところですけれども、特別ワーキンググループは、制度改革を行うためであり、審査、査定は目的ではありませんというふうに言っています。その二ポツ下ぐらいにも、特別ワーキンググループは審査、選定はしませんと書いてあるんですね。

 それで、これがそのワーキンググループの見解なんですけれども、実は私がそのときずっと申し上げていたのは、平成二十九年の十月二十四日に、国家戦略特区等における規制改革事項に係る提案募集要項というのがあるんです。これは内閣府が出しています。そこにワーキンググループのことが書いてありまして、御応募いただいた提案は、ワーキンググループにおいて選定し、適宜、ワーキンググループの委員によるヒアリングを実施します、ヒアリング対象となる提案者に対しては追って連絡いたしますと。ここに選定すると書いてあるじゃないですかということをずっと議論をしてきたんです。

 そうしたら、何と、今週なんですけれども、十月七日に新しい募集要項が出ていまして、そこのところを見てください。募集した提案のうち、本提案募集の趣旨に資するものについてはという、選定という言葉が削除されました。

 それまで選定と書いてあったのが、ワーキンググループの人たちが私たちが選定はしないと言ったら、表現を内閣府も変えたんです。びっくりしました、これは。

 内閣府としては、選定はワーキンググループではしない、こういう認識でよろしいんですか。

北村国務大臣 簡潔にお答えをさせていただきます。

 御指摘の文書は、事業者の募集、選定にかかわるものではなく、規制改革事項の提案の募集に関するものでございます。

 その上で申し上げれば、御指摘の文書に記載がありました選定という言葉は、提案された内容が、補助金の要望であるなど規制改革事項でないもの、あるいは、厳密に解釈したところ既存制度のもとでも実現可能なものなどを含み、必ずしも規制改革の議論をする必要がないものについて整理をすることを指したものでございます。

 もちろん、選定という言葉が誤解を招くとの御指摘もあったことから選定という言葉を削除したものでありまして、これより運用の実態が変わるものではございません。

 以上です。

今井委員 じゃ、もう一度簡潔に確認をいたします。

 この国家戦略特区のワーキンググループは選定をする場所ではないということが内閣府の正式見解ですか。

北村国務大臣 ワーキンググループは、選定をする場所ではございません。

今井委員 それは、今までの政府の答弁と実は違うんです。

 平成三十年の、去年の五月十四日のこの衆議院の予算委員会、江田憲司さんの質問でございました。その場で江田さんは、安倍さんが、加計問題の話をしていましたけれども、加計問題で、国家戦略特区諮問会議のあなたは座長なんだから、決められる立場にいたんだから、だからそれは問題なんじゃないですかということを質問をされました。

 それに対して安倍総理が答えられたのを、ここに議事録がございますので、読みます。

 民間がまさにワーキンググループを形成していて、そこでいわば主導して進めていくという意味で申し上げているわけでございます。その主導の中で、いわば選定等も事実上行われているわけであります。ワーキンググループが物事を決めていって、前さばきといって、前さばきというのは資料を決めるということではなく、事実上、実質をほとんど決めることであって、事実、ここで決まったことを私が覆したことは一度もありません。この国家戦略特区諮問会議はまさに、中身が決まったことを決定する場でしかないわけです。こう答弁しておられます。

 ですから、あのときは、ワーキンググループが選定を、全部選んで上に持ってきて、それをしゃんしゃんとして我々は決めるだけだから、私はそんな決める権限なんかございません、そういう御説明をされていたんですけれども、今、ワーキンググループはそういう選定をする場じゃないとおっしゃっています。

 これは言っていることが真逆ですね。普通に聞いているだけでわかります、真逆なんですよ。どちらが正しいんですか。

安倍内閣総理大臣 私が、今井議員も含めて繰り返し答弁させていただいてきたのは、国家戦略特区のプロセスにおいては、規制改革項目の追加、事業者の選定、いずれについても、民間有識者が入った特区諮問会議やワーキンググループが主導し適正に行われてきたというものでありまして、その趣旨は、いずれのプロセスも民間有識者が主導しているということを申し上げようとしたわけでございまして、そのときの私と江田さんとのやりとりは、まさに、それは、安倍さん、あなたが決めているんじゃないかという言い方だったので、そうではございませんよ、民間人が入ったプロセスにおいて決めていますよということでございました。

 民間人が入ったプロセスとしては、この特区ワーキンググループと、あと、事業者の公募については分科会にて検討するわけでございますが、正確を期してもし答弁していれば、このワーキンググループと、あるいは分科会、あるいは諮問会議との具体的な役割分担について、厳密に答弁したかったのでございますが、これは厳密な正確性を欠いた表現となり、誤解を生じかねないものとなった点については、これは率直におわびを申し上げたいと思います。

 政府の考え方としては、ただいま北村大臣が答弁したところでございまして、あのときは、政治家、いわば私が決めているのではないかということであったので、そうではないということを御説明する中において、厳密に、このワーキンググループと、また事業者の公募の後の分科会の検討、あるいはまた諮問会議と、厳密にこれは分けて、役割分担を分けて、正確に答弁したものではなかったことで誤解が生じたということでございまして、これは率直におわびを申し上げたい。

 繰り返しになりますが、正確には北村大臣が答弁したとおりでございます。

今井委員 私は、自分の言葉で言ったのではなくて、総理の答弁をそのまま読んだだけなんです。そこに、まさに言っているんですよ。(安倍内閣総理大臣「だから、誤解を生じさせて申しわけない」と呼ぶ)いやいや、これは誤解じゃないですよ。ワーキンググループで物事を決めて、事実上そこで全部選んで決めて、上に上げてきたら、もうその場で覆すことはありませんから、実質もう決まっています、そういう答弁ですよ。(安倍内閣総理大臣「だから、あの答弁が正確性を欠いたんです」と呼ぶ)正確性を欠いたのが間違っていたんですか。間違っていたんだとすれば、あの加計学園の我々の議論は一体何だったんですか。

安倍内閣総理大臣 今、何だったんですかとおっしゃいましたよね。

 あの議論というのは、あなたは、大体、一貫して私が決めていたんじゃないかとおっしゃっていたわけですよね。(今井委員「私は言っていません」と呼ぶ)いやいや、でも、何人かはそうおっしゃっていたんですよ。ですから、江田さんもそうなんですよ。江田さんもそうだったんですよ。

 だから、私は、そうではなくて、民間人が決めていた、こう言ったわけでありまして、ちょっと複雑なんですが、こういう仕組みになっているわけでありまして、そこで民間人が決めて、議長である私が最終的に報告を受けてそのとおり決めているという答弁でありますから、それは全く変わっていないんです。それは変わっていない。しかし、その中で、この特区ワーキンググループと、あと、分科会における検討というところについて、これを明確に細かく私も、そのとき急な御質問等もございましたので、そこを分けて答弁をしていなかったので、正確性を欠いたということでございまして。

 ということでございますから、それが、例えば、そうではなくて、私が決めていたということであれば、それは大問題でしょうけれども、そうではなくて、民間人が決めていたことには変わりがないわけでありますが、その場が、この特区ワーキンググループではなくて、決めているのはこの分科会であり、そして最終的に決めているのは、関係者を排除した、いわば諮問会議であるということでございます。

 まあ、あのときももっと長く時間を使って答弁をすればよかった、こういうことでございます。

今井委員 今ヒアリングをずっとやっている中で、ワーキンググループの皆さんは、ワーキンググループはあくまでも何か前さばきをするだけで、実際に決めるのは国家戦略諮問会議で決めますというふうに言っているんです。国家戦略諮問会議で決定すると言っているんです。でも、総理は、ワーキンググループで全部決めてきて、自分たちはそこで上がってきたものは覆したことがないとおっしゃっています。じゃ、ちょっと北村さんが何か手を挙げていらっしゃるから。(安倍内閣総理大臣「ちょっと、もう一回」と呼ぶ)ちょっと、ずっと手を挙げていらっしゃるので。

棚橋委員長 まず委員長が指名します。

 まずは、内閣総理大臣安倍晋三君。

安倍内閣総理大臣 私が答弁した後、北村大臣から答弁をさせていただきますが。

 特例措置の創設等々については、まさにワーキンググループで決めます。これは非常に重要なことでありますから、ここで議論していく。しかし、最終的に、もちろん決まるのは、形式的にはこの諮問会議で決まっていくということなんだろうと思うわけでございますが、そういう趣旨の答弁をしていたということでございました。

 そこで、先ほども申し上げましたように、この関係している、いわば私のそのときの答弁を正確性を期せば、分科会において検討して決めていくということであった、こういうことでございます。

 また大臣から答弁をさせたいと思います。

北村国務大臣 簡潔にということでありましたから申し上げましたが、ただいまは、委員より、事業者の選定に関する制度的なことについてお尋ねであるというふうに存じますので、三点述べさせていただきます。

 第一に、公募によって事業者を選定し、その際、必要に応じて、関係分野の専門家や関係省庁も交えた各区域の分科会を開催し、検討を行った上で、さらに、国、自治体及び公募の結果選ばれた事業者で構成する区域会議が区域計画案を策定いたします。そして、その区域計画案が、諮問会議における議論を経た上で認定を受ける仕組みとなっております。

 そもそも、制度的には、当初申しますように、ワーキンググループは事業者の選定に関与する仕組みとはなっておりません。

 以上であります。

今井委員 国会で一度こうやって明確に答弁されたものは消えませんから。だって、国家戦略特区の会議にいつも出ていらっしゃるわけでしょう。そこで一度も覆したことがないとおっしゃっているわけですよね。(安倍内閣総理大臣「でも、それだと意味なくなっちゃうよ」と呼ぶ)いやいや。

 いや、そうですよ。ですけれども、ワーキンググループの皆さんは、私が、そこの中でいろんな利害関係のところが起きているんじゃないでしょうかということをお話をしたときに、今度は、私たちは選定にかかわっていないということをおっしゃるので、もうどっちが、本当に、その場その場で、こうやってなすりつけ合いをしているようにしか見えないんですね。(発言する者あり)いや、それはそうですよ、先ほども読んだ議事録はもうはっきりしていますから。

 ちょっとまだいろいろと議論したいんですけれども、時間が来てしまいましたので、これで終わりますけれども、やはり私は、国家戦略特区はガバナンスが全然きいていないと思います。また新しい提案もしていきたいと思いますけれども、このままではやはり利権の温床となることが排除できません、可能性が。ですから、そのこともまた北村大臣と議論していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

棚橋委員長 この際、馬淵澄夫君から関連質疑の申出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 御無沙汰しております。立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの馬淵澄夫でございます。

 きょうは、第四次安倍第二次改造内閣の閣僚の皆さんに質疑の機会をいただきました。

 私自身は、二年前の総選挙で落選をし、ことしの二月の五日に繰上げ当選でこちらに戻りましたが、無所属の活動を続けておりました。国会での質疑の機会がございませんでしたが、このたび、共同会派に参加を表明し、無所属の立場でこの予算委員会での質疑の機会をいただいたわけであります。

 閣僚の皆さんを眺めれば、当選同期の皆さんが五人もいらっしゃる。幼稚園の同級生もお一人いらっしゃいますが。このような内閣で、皆さんに質問をさせていただくということでありますが、私自身は、予算委員会、四年ぶりです。どうも質問の仕方を忘れてしまったんじゃないかな、そんなふうにも思いますが、しっかりとただしていきたい、こんなふうに思っております。

 さて、私は、本日は、関電の金品の授受の疑惑について、問題について質疑をさせていただきます。

 もう繰り返し皆様方でもお話しされているように、電力は何よりも公正さが求められる公共インフラであります。とりわけ原子力発電は、福島第一原発の事故の反省に立って、再稼働のために厳正な審査とそして国民の信頼の回復が必要であるということで取り組まれてこられた、そのように承知をしています。

 それにもかかわらず、このたびは、関西電力の経営陣が、原子力事業の推進に影響力を持つとされるこの人物から多額の金品を受け取っていた事実が発覚した。これは、関電経営陣、原発立地の有力者との間の癒着の発覚でもあり、原子力発電の持つべき公正性の国民への信頼を著しく失わせるものでもあります。

 私自身も、エネルギー政策に取り組んできた議員として、原子力事業、ひいては原子力政策の根幹を揺るがしかねないこの疑惑に対して、事態の構造的な問題の検証、そして行政監視機能の観点からも事実を明らかにしていかなければならない、このように考えています。

 本日は、先ほど来、同僚議員もお話がありましたが、参考人として委員会への出席を要請してきた関電の経営陣が出席されないということは非常に残念であります。そもそも参考人を求めない与党については、事態の隠蔽すら図っているのではないか、このように受け取れる行為でもあることを強く改めて申し入れさせていただきたいと思います。

 その上で、先ほど来、理事間で御協議をいただいているということでありますから、私としては、この問題については、きょうは本人不在、すなわち、関電の経営陣はいらっしゃいませんが、関係する政府各省庁の見解を伺いたいというふうに思っております。

 今回の事件が発覚する発端は、これは昨年の一月に、関電役員に金品を渡していたとされる森山栄治元高浜町助役と深い関係にある福井の企業、吉田開発に国税局が査察に入った、これがきっかけであります。

 ここから疑惑の発覚につながる流れは、報道だけで見ると少しわかりにくいところがあります。少し整理をしてみたいと私は思っておりますが、これも、関係する国税庁、個別具体的な事案には答えられないということは私も承知をしておりますので、まず一般論として伺います。

 国税庁、きょうは次長にお越しいただいておりますが、そもそも、国税局による調査の形式として、強制的な調査、任意の調査に、代表的なものとしてどのようなものがありますか。端的にお答えください。

田島政府参考人 お答えいたします。

 税務調査は、法令上、いわゆる今御指摘のありました強制調査と任意調査に分けられます。

 強制調査は、査察部門において、裁判官から許可状を得て臨検、捜索、差押えを実施する調査でございます。

 また、任意調査は、質問検査権に基づいて実施する調査であり、この中には、いわゆる反面調査もございます。

 さらに、任意調査の中には、国税局の調査部門である資料調査課が行う特別調査もございます。

馬淵委員 査察は強制的な調査であり、帳簿などの押収もできるということであります。任意調査、これはあくまで任意に応じるだけ、こういうことでありました。

 今お話しいただきました任意調査の中での反面調査というのは、どういう場合に行われますか。端的にお答えください。

田島政府参考人 お答えいたします。

 反面調査とは、本人、納税者の調査に加え、取引先等に対して、その資金の流れなどを調査する調査でございます。実施する調査でございます。

馬淵委員 この査察における、すなわち資金の流れ、あるいは授受の趣旨、こういったものについて聴取をするのが反面調査ということであります。

 こうした中で必ず確認をとっていくということでよろしいですか。これはイエス・オア・ノーで、イエスかノーかでお答えいただけますか。次長、どうぞ。

田島政府参考人 お答えいたします。

 調査においては、一つ一つ事実を確認しつつ進めてまいります。

馬淵委員 つまり、今回、吉田開発に査察が入りました。そしてそこで、会社やあるいはその先の金銭の流れの中で、個人の不正な金銭の流れが発覚した場合には、取引先に対して反面調査で実態並びに趣旨、これについて供述をとってくるということであります。

 さて、今回の事例は、報道によりますと、先ほど申し上げたように、二〇一八年一月に吉田開発に対する国税局の査察が行われたとされています。吉田開発に対する査察で、吉田開発と深い関係にあった森山氏への多額の金銭の提供の証拠が押さえられた、このように報道をされています。

 関電は、吉田開発が査察を受けたことを知り、行く行くは森山氏への反面調査がなされ、さらに、森山氏の持つ証拠から、関電に対しても反面調査が行われるであろうことを察知した。関電の岩根社長は十月二日の会見で、そういううわさというか、そういう話を聞きましたのでとはっきり語っておられます。

 そして、二〇一八年の二月、森山氏から金品を受け取っていた一人である豊松元副社長が、いわゆる六名役員、会長以下六人分、約一億六千万円の金品を取りまとめて森山氏に返却した。これも会見で、また調査報告書でもそのように書かれています。つまりは、みずからへの調査を察知した関電幹部が、今なら受け取ってくれそうだ、これは岩根社長のお言葉でありますが、慌てて返却した。

 吉田開発への一月の査察開始から森山氏への反面調査、これは数カ月後だと、このように報道に上がっています。そしてその後、関電にも吉田開発査察の反面調査が入り、それを契機として関電コンプライアンス部門による事実関係調査が行われました。さらに、内部の調査委員会が設置をされた。これが七月であります。

 つまりは、一月に査察が入り、それを知った関電幹部は二月に慌てて一億六千万円の金品を返却に行く。今なら受け取ってもらえそうだ。数カ月後に森山氏、関電への反面調査が入る。それで、事態が公になっていく過程の中で調査委員会の設置、これが七月なわけであります。この調査結果を検証し、さらには追加調査の実施、評価、原因分析、再発防止策の提言、報告書がまとめられたのがその年の九月の十一日です。

 関電は、つまりは、それから一年以上、翌年の、つい先日の九月の二十七日に報道で疑惑が発覚するまで、事態を公表しないどころか、ある意味沈黙をしてきた。社内のコンプライアンス委員会にも報告をしない。社外取締役会はもとより、監督官庁の経産省にもこれは沈黙をしてきたというのが、経産大臣の御答弁とも整合を持つという流れです。

 さて、今申し上げたような流れの中で、この関電役員の金品授受、これについては御当人たちがいらっしゃらないとなかなかわからないんですが、それでも、傍証で確認できることが幾つかありました。

 私の調査の中で、手元に関電役員の金品授受を告発した二種類の文書があります。告発文と称されるものであります。

 一つは、二〇一九年の、すなわちことしの三月十日付、これは岩根社長宛てに今回の事案を告発したものです。そしてもう一方は、外部への告発文書です。これについては年月日は不記載でありますが、中を見ますと、六月二十一日開催の株主総会資料に言及をしておりますので、少なくとも関電のことしの株主総会招集通知発表の六月三日以降に出されたもので、同様に今回事案を告発しているものであります。

 この二種類の文書、岩根社長宛ての文書、少しだけ読み上げます。

 二〇一九年三月十日、関西電力株式会社岩根社長宛てですね。

 岩根社長に忠言いたします、中略しまして、吉田開発の脱税、森山氏に対する利益供与だけであれば、国税の査察も入り、既に解決、安堵されているやもしれません、しかし、残念ながら、問題はそこにとどまりません、以下の大罪が挙げられます、一、利益供与された金が、関西電力の八木会長を始めとする原子力事業本部、地域共生本部などの会社の幹部に還流されていたこと、二、利益供与の原資は、協力会社や発注工事費、特にゼネコン、プラントエンジニアリング会社、管理会社等を介して渡されていたこと、三、その原資はコストとして計上され、ほかならぬ、お客様からいただいている電気料金で賄っていること、四、原子力事業本部で開催された倫理委員会なるものは、実質、隠蔽工作のための作戦会議場としてしまったこと、五、官権、国税、地検まで手込めにとり、官権と共謀して闇に葬ろうとしていること、以上の五つの大罪に対してどう釈明なさるおつもりかという文書であります。

 そして、これは岩根社長に三月十日に発出されたわけでありますが、岩根社長が動かないということを受けとめたこの告発者は、先ほど申し上げたように、六月三日から六月二十一日の間に、まあ地域の方々がどこに送ったかはわかりませんが、文書を発出されています。

 これも少し読みますが、四十年を超える長年にわたり大きな不正が行われてきました、この手紙はそれを内部告発するものですと冒頭に書かれ、以下、先ほど来申し上げたようなお金の流れがある、このように書き、そして、このことに対して、私どもは、岩根社長及び現監査役全員に、不正に関与した幹部の退陣と人心の一新を書面にて求めました、しかしながら、原子力事業本部内で開催された調査、コンプライアンス委員会は、過去、現状の把握と、隠蔽工作の作戦会議体と化しました、来る六月二十一日に開催される予定の株主総会資料によりますと、私どもの訴えは全く無視され、コーポレートガバナンスは全く機能していない、期待できない組織になっていることを確信いたしました、問題人物のリストを以下に示します、問題と考える関西電力原子力事業本部の幹部、八木会長、豊松副社長、森中常務、右城常務、大塚副事業本部長、鈴木副事業本部長、その他水増し発注を指揮、遂行した副事業本部長諸氏、このように記されているわけであります。

 これは、確かに、発出者、あるいはどのような経路でどのような方々に渡ったかわかりません。これらの文書を怪文書の類いと切り捨てるのは簡単でありますが、余りに実態に即した内容で、金品を受け取ったとされる者の氏名は、関電公表の金品授受をした者と完全に一致をしています。

 経産省は、菅原大臣は、一切知らなかった、このようにおっしゃっておられましたが、改めて、まずは、私、ちょっと総理にお聞きをしたいんです。

 総理は、これは官邸として、すなわち、総理がまさに内閣を総理されているわけですが、この文書の存在というのは総理は御存じでしたでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は存じ上げません。

馬淵委員 菅原大臣、この文書の存在について御存じでしょうか。

菅原国務大臣 一部報道で一ページ目が出ていたことを知っております。

 それと、今、馬淵委員からるるお話を承ったのが二回目でございます。

馬淵委員 お二方とも、この告発文書、直接御存じない、このようにおっしゃったというふうに受けとめます。

 この文書、この存在が一部に知られることになったのは、先ほど申し上げたように、一つ目は三月の十日です。そして、二つ目は六月の三日以降ということになりますが、ことしの八月ごろです、こういった文書が出回っているという情報が福井あるいは北陸地域で流れました。

 調べによると、当時周辺地域では、これは、そのままおっしゃった言葉を私は言いますから、ちょっと失礼な物言いで恐縮なんですが、福井のじいさんから関電が金をもらっている、こういう話が出回っておりました。何やら雲をつかむような話でしかなかった、このようにおっしゃっておられましたが、しかし、その後、この告発文書によって徐々に関係者周辺に詳細が知れるところとなり、そして、この九月の二十七日の疑惑発覚につながっていくことになる。これが本事案の大まかな時系列です。

 そこで、今、経産大臣からは、この告発文書の存在については関知していなかったという言葉をいただきました。しかし、原子力行政を担う経産省としては、このような情報はいち早くつかみ、厳正な対処を行う必要があります。まあ、手元に入らなければどうしようもなかったんでしょうが。

 こうした中で、改めて、経産大臣、私は、こうした状況を経産省として、所管する立場として、まさに企業のコンプライアンス、電力会社のコンプライアンスということを所管する立場として、これをしっかり関知するような仕組みが必要ではないかと思っておりますが、改めて問いとしてお尋ねいたします。

 経産省はこうした事態を一切把握していなかったということでありますが、監督官庁として、いわゆるこうした関連企業、電気事業者に対してのコンプライアンス調査というのは行っているんでしょうか。あるいは、電力会社の不祥事に対して、普通、どういう範囲で報告を受けるということになるのか、御答弁いただけますでしょうか。

菅原国務大臣 馬淵委員からお話しのとおり、極めて公益性の高い事業を担っている電力会社、水道やガスもみんなそうでありますが、その方々が、国民の払う電気料等が、いわば総括原価方式等で原資になっているとすれば、やはり大切なことは、そのことに鑑みてしっかりとコンプライアンスを遵守をする、そして、そのことについて私どもも監督官庁として報告を受けるべくしっかり監視をしなければいけない、こう思っております。

 ところが、先ほども申し上げたとおり、九月二十七日の報道で初めて私も知りましたし、次官、エネ庁長官始め、役所内全部聞きましたところ、二十七日に初めて聞いたということが省内の私への報告でございますから、それが今の現実でございます。

馬淵委員 つまりは、経産省は、電力事業者のコンプライアンスに関しては、これはみずからがさまざまな形で情報収集、あるいは報告を受ける義務をまさに責任官庁として負っているという認識はお持ちなんでしょうか。

菅原国務大臣 当然、監督官庁として負っております。

 ですから、先般の関電側の報告が、なかなか全部が信じがたいという状況がありましたから、報告徴収という罰則つきの電事法上のやり方で、いわば監督を更に強めた状況にあります。

馬淵委員 いや、報告徴収で、事態が発覚してから聞くじゃだめなんですよ。常に電力事業者に対するコンプライアンスの監視が必要なんです。

 まず、吉田開発に査察が入ってから二年近くにわたって、原子力行政がゆがめられる可能性を見過ごしてきたという現実があります。その上で、大きなお金が動いている、国民になくてはならない巨大インフラが、それこそ、会社の調査が十分に行われず、会社任せになっているから、結局は、経産省としては誰も知らないというような御答弁しか返ってこないんです。

 つまりは、このコンプライアンスに対しては、経産省は結局は企業任せになっている。関電のこの疑惑解明についても同じ状況だと私は思っています。

 先ほど来、菅原大臣は、報告徴収を待って対処をする、このようにおっしゃっています。単にこれは報告徴収を待つ立場、みずからがコンプライアンスをいかに強化するかということの、その能動的なアクションに入っていないんじゃないですか。いかがですか。

菅原国務大臣 今お話あった報告徴収については、御案内のとおり、電気事業法にかかわる法律を根拠にしたいわば指導であります。

 そして、お話るるありますとおり、電力会社というのは、公共事業を担う事業者である以上、株式会社であって、株式会社は、国から指導を受けるまでもなく、株主を始めとするさまざまなステークホルダーに対する説明責任を負っているわけでございますから、まずはその企業がコンプライアンスを遵守することが当然でありますが、そこをしっかり監督をしながら、不断の取組を進めていくということだというふうに認識しております。

馬淵委員 いや、結局は、経産省は能動的にこのコンプライアンスの部分にかかわっているという、国民の理解できるような御答弁じゃないですよ。

 今、報告徴収は第三者委員会を設置してということを何度も、きょうも御答弁されておられますが、この第三者委員会、先ほど来、これも、関電の人間がかかわらない、特定利害関係人がかかわらない第三者機関で、まさに公正な機関だ、このようにおっしゃっておられますが、この第三者委員会の委員長はどのように任命されたか。

 これは昨日の記者会見でもはっきりと但木委員長はおっしゃっておられました。岩根社長から依頼を受け、そして、委員の選任を一任いただけるならという条件でお引き受けした、このようにおっしゃっています。

 これは、菅原大臣、繰り返し申し上げますが、査察が入って、そして、それを感知して、金品授受を長年にわたって、そして、それを預かりと称してそのままにしておいた。あるいは、中には、スーツなどに費消した人たちもいる。ばれそうになったら、困るからといって、慌てて金品を返しに行く。反面調査が来て、内部調査が行われ、さらには調査報告書が出ても、それも、コンプライアンス委員会どころか社外の取締役会にも報告をしない。あげくの果てには、一年放置して、ようやく知った。こういう状況に置いてきた関電の経営者が委員長を指名しているんですよ。

 この第三者委員会の選定方法はおかしくはないですか。これはどう考えても、関電と関係ないじゃなくて、関電の社長が任命しているんですよ。一任を受けられるなら受けるといって、但木さんはこのことを受けとめられたと思います。

 ただ、私がここではっきり申し上げたいのは、その但木委員長あるいは三名の弁護士、十五名の方々とおっしゃっていましたが、こういった方々の人格、識見を私は問うているのではありません。そもそも、大臣がおっしゃるような第三者性を本当に持たせるならば、関電の経営者が指名するなどということはあってはならないはずです。菅原大臣、どうお考えですか。

菅原国務大臣 私どもが九月二十七日以来、関電に対して報告を求めた。しかしながら、それが公正性やあるいはさまざまな事案というものがなかなか疑念が生じている。そういう状況の中で、繰り返しになりますが、外部の目を持った第三者機関、しかも、検事総長を務めた但木弁護士を始め、それぞれ、いわば司法の大変経験を持った方々であります。その方々については、それぞれ人格もありますし、今、馬淵委員おっしゃったように、その可否を問うものではない。しかし、いわば社長がとか会長がとかいうことではなく、関電の方と協議をしながら、この四名を選び、十五名の弁護士がそこに総合的に一丸となって、この関電の中を調べるということでありますから、それは、それ以上、私どももそこはタッチできない。

 つまり、一方で、繰り返しになりますが、関電の誠意を持った答弁等は、報告義務がありますし、これは日弁連のガイドラインに沿ったやり方でございますから、四条、そこを御理解していると思いますが、しっかりそこで説明を果たしてもらえると信じております。

馬淵委員 いや、この第三者委員会に対しては、これはきょうも産経で出ておりますが、問われる独立性ということで、いわゆる名ばかり第三者委員会、これは逆に企業価値を毀損する事態を招くという声明を、これは企業法務が専門の弁護士らでつくる第三者委員会報告書格付け委員会、これは昨年二月にこのように声明を出しているんですね。つまりは、現状、日本の第三者委員会というのは、多くが会社側に選ばれて、これは会社の保身に使われる可能性があるわけですよ。聞いていませんから。

 このように、この事案というのは、関電の経営者が隠蔽をし、かつ、公共事業、公益性の高い電気事業の中で、一切監督官庁にも知らせずに、それこそ逃げおおせようとしている過程の中で、なぜこの経営者たちに第三者性を持たせる委員会の指名をさせるのか。

 いや、むしろ、大臣は、この第三者委員会に対して、大臣自身がみずから、中立性を持って、違う方々からの指名を持った新たな第三者委員会をつくれと命じるべきですよ。大臣自身が、この第三者委員会、今からでも遅くない、新たな指名をして、新たな第三者委員会につくり直すんだと言わなければ、関電に任せている構図は変わらないですよ。大臣、いかがですか。

菅原国務大臣 これまでのさまざまな企業にかかわる不祥事等の事案の中で、第三者委員会のガイドラインというものが、馬淵先生御存じだと思いますが、日弁連から出ております。そこには、説明責任、第三者委員会は、不祥事を起こした企業等がみずから設置する委員会というふうになっておりますので、そこで関電として設置をしたわけであります。

 ただし、私どもは、日弁連のガイドラインに沿って、経産省、監督官庁として、その委員会とはコミュニケーションをとりながら、情報等も共有しながら、しっかりと監督をしていく、このことに尽きるわけでございます。

馬淵委員 だから、実態としては、もうそういう第三者委員会は名ばかり第三者委員会だと言われ出しているんですよ。そのことに目を向けなければ、菅原大臣、これは本当に、関電問題を覆い隠そうとしている、あなたはその先頭に立っていると言われかねませんよ。

 改めて申し上げますが、この第三者委員会はきのう立ち上がった、このように繰り返しおっしゃっておられますが、大臣がみずからのリーダーシップで、関電の経営者の指名などとは一切かかわらないような形、あるいは関電の社外役員という選択肢もあるかもしれませんが、少なくともかかわらない形で、第三者性をより強化した第三者委員会の設置を行った上での報告徴収、あるいは、先ほど来ありました電事法の立入検査も含めたさまざまな方法をとるべきだということを私ははっきりと申し上げておきたいと思います。

 このことに対しての答弁は結構です。

 さらに、過去の関電の取引に着目して、少し今回の事案を考えたいと思います。

 二〇一四年、五年前です、近畿一円で送電線の設置の工事業者六十六社が関電発注の送電線工事について価格を下げないように相談をした。これは価格調整というんですが、要は、みんなで値段を下げないでおこうねと。これは、談合というのは公共事業になってしまうので、民間の場合はこれは談合とは呼ばないということだそうですが、いわゆる世に言う談合ですね。そして、予定者が受注できるようにしていたということです、相談しながら。

 これに対して、五年前、公正取引委員会は、この受注業者六十六社に対して排除措置命令と課徴金納付、これを行いました。公取が出す行政処分、この排除措置命令は、年によって違うんですが、大体年間で十件程度ですよ。直近の数字で出ているのは、二〇一七年度、これは十三件。決して多くはない行政処分、すなわち、大変厳しい行政処分が、この二〇一四年の関電の調達の工事の中で公取が厳しく指摘をしました。

 そこで、公取委員長、きょうはお越しいただいていますが、この事件について公取委員長にお尋ねいたします。

 この事件については、発注者である関電が、予算情報をこの事業者に先に伝えるなどして受注業者側の受注調整にかかわっていた、いわゆる一枚かんでいたという、この事実を公取が認定したという理解でよろしいですか。お答えいただけますか。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 公正取引委員会は、委員御指摘のように、平成二十六年に、関西電力が発注する送電工事の工事事業者が受注調整、いわゆる談合でございますが、これを行っていたとして、排除措置命令等を発出しております。

 その際、発注者側でございます関西電力の一部の社員が、契約価格に関連する非公表情報、予算価格と言われたりしていたものでございますが、こういったものを教示するなどして受注調整を誘発し、又は助長したものであると認定をしております。

馬淵委員 つまりは、関電側も当然ながらここに、先ほど、一枚かんでいたと私はちょっとげすな言い方をしましたが、いわゆる受注調整にかかわっていたということです。

 これに対して、業者を罰したわけですが、当然ながら、この受注調整を促すようなことをやった関電に対しても公取は対応されていますね。どのような対応をされましたか。

杉本政府特別補佐人 今申し上げましたとおり、公正取引委員会は、発注者である関西電力の一部の社員の行為が受注調整を誘発し、又は助長していたものであると認められたことから、関西電力に対しまして、同様の行為が再び行われることのないよう適切な措置を講ずるとともに、発注制度の競争性を改善して、その効果を検証することなどの申入れを行っております。

馬淵委員 つまりは、発注側の関電にも、これを改善しなさい、そしてその効果の検証をしなさい、公表しなさい、こういう、ある意味、まあ命令とは言わないそうです、申入れと言うそうですが、こういった形で公取から関電に申し入れた。

 そして、関電は、公取申入れに対して、翌月にプレスリリースを行い、検証結果と再発防止策を公表したんです。

 これはプレスリリースでありますが、関電側から、工事の設計を行う部署などにおいて、取引先からの求めに応じ、予算情報を開示するなどの行為を行っていたことが判明しました。ということで、当社は、コンプライアンスの徹底を図っている中で、こうした独禁法違反行為について、このような行為を行っていたこと、グループ会社が独禁法違反を行っていたことについて深く反省し、二度とこのようなことを起こさないよう再発防止対策に取り組んでまいりますと公表しているわけです。

 これが五年前です。しかし、五年たった今、どうでしょうか。

 先ほど申し上げたように、今、現時点においては報告徴収中で詳細は明らかではありませんが、森山氏と関連が深い吉田開発に対して関電の発注が集中しているという事実がもし見られるならば、既に報道では数倍に膨れ上がっているとさまざまな数字が出ていますが、出された資料は黒塗りだからわかりません、もしこれが明らかになるならば、公正な取引が行われたとは言いがたく、競争性の改善はなされていないことになります。

 つまり、五年前の不祥事を受けても、公正な競争を目指すと関電は約束しても、今回、明らかに、吉田開発に対して受発注の調整を行わなければ森山氏に渡る裏金を捻出することはできませんから、そして、結果としてその金を原資として経営陣が金品を受け取っていたとするならば、公取の申入れを関電は全くもって真摯に受けとめず、約束を守っていなかったことになります。こういう状況が、繰り返しますが、残念ながら、関電の経営陣の体質としてあります。

 公取委員長、もう一点だけお伺いしますが、こういう状況の中で、五年前に申入れもし、あるいは行政処分もされてきたわけでありますが、今回、この疑惑に重大な関心を私は公取としても払うべきだと思っておりますが、公取としての対応はいかがでしょうか。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会の先ほど申し上げました申入れを受けまして、関西電力からは、コンプライアンスの再徹底、発注の仕組みに関する見直し、再発防止等のモニタリングなどを含む再発防止策の報告を私どもは受けたところでございます。

 私ども公正取引委員会としては、独禁法違反の疑いについては絶えず注視しているところでございまして、今後とも、独禁法違反行為があれば厳正に対処していくという方針でございます。

馬淵委員 公取にもぜひ厳しい目を向けていただきたいわけですが、これは、経産大臣、通告外ですが、このような公取からの関電への申入れ、そして関電が約束をしていた、こういった事情も菅原大臣は御存じでしたでしょうか。これは通告外ですから、端的で結構です。

菅原国務大臣 その報告は受けておりません。

 あわせて、先ほどの御指摘ですけれども、関電のことをかばうようなことは全くありませんから、はっきり言っておきます。

馬淵委員 菅原大臣、通告外で恐縮でしたが、御存じないということでありますが、繰り返し申し上げますけれども、このように、公表して、改善しますと約束をしていても、それができていない経営層なんですよ。

 私も所管内の奈良に住まう人間でありますから、大変お世話になっています。しかし、現場で働く方々とは別に、今回の金品授受の疑惑が大変な批判を浴びているのも、余りにもかけ離れたその常識、あるいはコンプライアンスの欠如ということに多くの方々が驚いているわけです。そして、その体質はこうして、見るように、公取が指摘をしてきたことも含めて、全然変わっていないということ、これを改めて大臣にはお伝えしておきたいと思います。

 その上で、きょうは原子力規制委員会の委員長にもお越しをいただいております。

 今回の疑惑で、国民の原発の再稼働に対する信頼性は大きく揺らいでいます。再稼働を厳正に審査する原子力規制庁、ひいては原子力規制委員会、この皆様方にも疑惑に対する見解を聞いておきたいと思います。

 更田委員長は、十月二日の規制委員会の記者会見で、今回の疑惑発覚を、驚き、憤り、あきれという表現を用いて評しておられました。委員長は、さらには、関電の経営層の組織運用、運営はどうなっているかを直接聞くような機会を設けるという趣旨の発言もされておられますが、これらの発言の真意というのは、更田委員長、どこにおありでしょうか。御答弁いただけますか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、原子力に携わる全ての者が強い反省を胸にそれぞれの責任を果たさなければならない中で、このようなことが伝えられたことは大変驚きましたし、文字どおり、憤りを感じたところであります。

馬淵委員 相当強い憤り、そしてあきれ、このようにおっしゃっておられたわけであります。

 本来、規制委員会は技術的な安全性ということの厳格な審査がそのお立場でありますが、更田委員長は、当日の会見の中でも、やはりコンプライアンスというものが実は重要な要素としてこの審査の中にも加味される部分はあるのではないかというようなことも言及されておられました。

 私自身もそのように感じますし、加えて、今回の森山氏との関係を見れば、立地地域の理解を得るために、いわゆる地元有力者との関係が重視されていますが、このような状況で、同意を取り付けるためにさまざまなことが起きてしまうということを考えると、電気事業者のコンプライアンス性、さらには地元同意のプロセスということもしっかり重視するという、この再稼働のさらなる厳しい基準の再設定が私は必要になるのではないかというふうに感じていますが、更田委員長、御意見、いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力事業にかかわる事業者の経営層がリーダーシップをきちんと発揮し、組織のガバナンスやコンプライアンスを健全な状態に保つことは非常に重要だと考えております。

 このため、私どもは、原子力事業者の経営層との間で意見交換等を実施して、技術上の安全はもとより、原子力の利用に当たって優先されるべき安全を認識し、継続して実践する安全文化の醸成について理解を共有すべく取り組んできたところであります。

 原子力の安全文化の醸成に向け、今後も引き続き事業者との対話を進めてまいりたいと考えておりますが、ただし、事業者のコンプライアンスに係る事項については、科学的、技術的観点から行う審査になじむものではないというふうに考えております。

馬淵委員 ここは、今後、事態の解明の中で、やはり、さまざまな観点からということでの、このプロセスをしっかり見直すということも私は必要ではないかということを改めて申し上げておきたいと思います。

 こうした、きょうは関電の役員の皆さんがいらっしゃいませんから、今申し上げたように、各関係省庁の傍証の中で、いかにこの問題が重大で、かつコンプライアンス上相当な疑義がある経営層の手によって運営されてきたことが明らかではないか、私はこのように感じるわけでありますが、総理にお伺いします。

 今回の疑惑、このような状況の中で、総理が今日まで進めてこられた原発政策の信頼性の根幹にかかわる問題であるとの認識、先ほどもおっしゃっておられましたが、改めて、今私がるる申し上げた中で、その認識はおありでしょうか。端的にお答えいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 電気事業は、電気料金を支払う利用者の皆さんからの信頼で成り立っているわけでございまして、そうした意味では、今回の問題によって関西電力が利用者の皆さんから不信を持たれているという事態は重く受けとめなければならないと思います。

 重要なことは速やかな信頼回復であり、まずは独立した第三者の目を入れて徹底的に全容を解明し、その上で、経営問題も含め、再発防止等の措置を講ずることで信頼回復に努めるべきであると考えております。

馬淵委員 本当に重く受けとめていただいているということであれば、繰り返し申し上げますが、国会で明らかにしていかなければなりません。関電の経営陣の参考人招致は、これは国会でお決めになることとおっしゃると思いますが、それでも強く、これは私、党のリーダーとしてしっかりと指示を出していただきたいということを改めて申し上げたいと思います。

 そして、もう時間もありませんが、このような状況の中で、関電の職員の皆さんのお気持ちです。私のもとにもたくさんの関電の社員の方々からのメールが届きました。一つだけ読み上げます。

 東日本大震災以降、給料やボーナスのカットなどがしばらく続き、生活に不安を抱えながらも電力の安全、安定供給のために私たちは頑張っています。電力の自由化によって競争も厳しいです。さらに、台風など自然災害への対応も皆不眠不休で頑張っています。昨年、ようやく賃金カットもなくなり、ボーナスも安定して支給されるようになりました。でも、今回の件で、家族を含め、仕事への不満が高まって、職場のモチベーションが下がってしまうのが心配です。女房からも、作業着を干すの気を使うわと言われます。関電のオレンジの作業車で工事に行くのが心苦しいとの部下からの嘆きも耳にします。

 このような切実な声が幾つも届きました。こうした思いを、政府、そして官庁、しっかりと受けとめてチェック機能を果たすべきであります。

 役職を辞任することでその責務から逃れられるというようなことはありません。これ以上表に出てこないようにしようとするような関電経営陣や、あるいは参考人招致に応じようとしない与党の姿勢に憤りを覚える国民は多数いらっしゃるはずです。

 ぜひとも、この国会で、そして、きょういらっしゃる閣僚の皆さん方も、この問題をしっかりと徹底して明らかにすることを強く求めてまいりたいと思いますし、与党の方々の中では、かつて二〇一一年の九電やらせメール問題で経営陣の国会招致が実現しているが、あれは安全性の問題だ、今回のは一民間企業の金銭スキャンダルだ、このようにおっしゃっておられるようでありますが、原発の再稼働の公正性が問われているわけです。

 まさに、安全性も含めて最も重要なことがこの国会で明らかにされようとしなければ、国民の信頼の失墜となるということを重ねて申し上げ、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

棚橋委員長 この際、川内博史君から関連質疑の申出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 私は、残り十一分ぐらいですので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 経産大臣、報告徴収、百六条三項に根拠があるということで、「経済産業大臣は、」「小売電気事業者等、一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者又は発電事業者に対し、その業務又は経理の状況に関し報告又は資料の提出をさせることができる。」と、これが報告徴収の根拠になるわけですけれども、その百六条の上の百五条、電気事業法百五条では、「経済産業大臣は、毎年、一般送配電事業者及び送電事業者の業務及び経理の監査をしなければならない。」と。「業務及び経理の監査をしなければならない。」報告徴収は、業務又は経理の状況に関し報告を求めると、業務又は経理という全く同じ言葉が使われていて、毎年監査をしなければならないと書いてございます。

 昨年も関西電力に対する経済産業省としての監査が行われているわけでございますが、これはいつ行われましたか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の十二月十七日から二十一日にわたって行われました。

川内委員 五日間にわたって監査をしていると。

 この監査をしている間にいろいろな担当の部署の方と面談をするわけですが、当然、コンプライアンスを担当する監査、関西電力の監査チームというか監査部門というところとも面談をしているという理解でよろしいでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 詳しく調べておりませんが、コンプライアンス部門も監査の対象になっているというふうに考えております。

川内委員 経済産業大臣、笑うのは、ことしの五月にその去年の監査についての報告が、いろいろな電力会社に監査に行っているので、それをまとめた報告書なんですが、報告書が出ていて、関西電力だけ褒められているんですよ。

 良好事例、いい事例だということで、これは別な、工事の部門の監査においての良好事例だということで褒められているわけですが、いずれにしても、コンプライアンスを担当する監査セクションとの面談もしている。

 しかし、関西電力からは、その報告が、本件事案、役職員が金品を受領していたということに関する、もう報告書も出た後ですからね、報告がなかった。

 経済産業省側から、コンプライアンスに関して、あるいは会社の全般的な状況に関して、最後に何か関電さん側からおっしゃりたいことありますか、御報告いただけることありますかと必ず聞きますよね、会合で。いかがですか。面談のときに。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論としてはあり得ると存じます。

川内委員 いや、一般論としてあり得るじゃなくて、必ず聞くでしょう、ほかに報告することありますかと。それ、ちゃんと言わないと。もちろんですと。

佐藤政府参考人 普通あり得ると思います。

川内委員 私が何を申し上げたいかというと、経済産業大臣にここは御答弁いただきたいんですけれども、コンプライアンス事案についても報告を受ける義務を負っているというふうに先ほど大臣は答弁されたんですね。コンプライアンス事案についても報告を受ける義務を負っていると。

 そうすると、監査、五日間も、これは八人で行っているそうですけれども、八人で関西電力に乗り込んで、さまざまに五日間調査をして、コンプライアンスのことについても聞いて、しかし見抜けなかったわけですよ。まあ、言ってもらえなかったというのもあるでしょうけれども。

 しかし、報告を受ける義務を負っていると経済産業大臣がおっしゃられた。この監査が非常に不十分であった、その義務を果たせなかった。昨年十二月、本来なら、その時点でわかっていてもおかしくはなかった。しかし、それがわからなかったということは、この監査が非常に不十分であったということについてはお認めになられますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 実際にやっております監査は、約款の運用に対するものでありますとか、財務諸表の細かなものでありますとか、分野別収支に関するものですとか、そういったものに実際は限られておったということでございます。

川内委員 いや、今、事務方の方に、要するに、監査の内容が甘かったです、本来調べるべきことを調べていませんでしたという御答弁なんですよね。だから、そのことが、監査をすべき、監査を統括すべき経済産業大臣として、非常に不十分であったということをお認めになられますかということを聞いているんですけれども。

菅原国務大臣 電気事業法で電力会社への監査は当然のことであります。そして、今お話があった電力・ガス取引監視等委員会が監査を行ったわけですけれども、監査能力については、いろいろとお声は甘んじて受けたいと思いますが、事実関係からすると、その際に関西電力から報告がなかったということが事実でありまして、ましてや、昨年九月に自分のところで報告をまとめていながら、九月二十七日の報道が出るまで、全くもって経産省、エネ庁にその情報を入れていない言語道断の状況でありますから、今回、いわば、私ども、経産省でありますから、捜査機関ではないんです。ただし、いわば報告徴収という電事法に基づく極めてぎりぎりの厳しい判断をして、この今の第三者機関を設けているわけでございますから、そこの報告を受けて、しっかりとその後は処していきたいと思っています。

川内委員 結局、関西電力に対して経産大臣は言語道断だと閣議後会見でおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、私は、経産省も言語道断だと。結局、見抜けないわけですから。

 これは法律にのっとっているわけですよ、私が言っていることは。法律上、業務及び経理を監査するというのは、大臣自身がコンプライアンスを含んでいるのだと先ほど御答弁されたので。いや、コンプライアンスは含んでいませんとおっしゃるのであれば、わからなかったということも、それは正当化されるかもしれない。しかし、含んでいるとおっしゃっていらっしゃるわけだから、そのことをきちんと関西電力から言葉を引き出すことができないというのは経済産業省として反省をしなければならないし、その経済産業省が、私は、報告徴収でいいんだ、第三者委員会に任せるのだとおっしゃっていらっしゃるのは、今まで累次、同僚議員から発言が出ていますけれども、やはり国民からすれば、それで大丈夫かな、本当のことがわかるのかなと。それは関西電力の経営者に直接やはり聞かないとなかなか納得できないよねということがたくさんあるのではないかというふうに思います。

 そこで、あと一分しかないので、総理、通常国会で総理は、森羅万象を総理大臣というのは担当しているんだ、こういう御発言があったんですけれども、森羅万象を担当していらっしゃる総理大臣というのは、税務情報、査察情報についても御存じだったのではないか。だって、森羅万象を担当するわけですから。それを人に言うかどうかは別ですよ。人に言うかどうかは別だけれども、関西電力で役職員が金品の受領問題で何か大変らしいねということを知っていたのか知っていなかったのか、森羅万象を担当する総理大臣として教えていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私が森羅万象を担当していると言ったのは、まさに森羅万象について私は責任を持たなければならない立場だ、こういうことでございまして、森羅万象を全て残念ながら知っているわけではもちろんございませんし、税務情報を、例えば川内さんの税務情報を私が知り得るわけが当然ないですよね。そんなことはあり得ないということでございます。

川内委員 私がこのようなことを申し上げるのは、内閣総理大臣として、本件は、日本のエネルギーの政策とか、あるいは、政府的には原発を推進されていらっしゃるわけですけれども、その原発政策とか、あるいは、電気の安定供給とか、国民の皆さんの電気事業に対する信頼にかかわる重大な問題であるという御答弁を先ほどされたので、それであれば、その端緒となった事柄から把握をしていらっしゃったのかなというふうに思ったので、あえてお尋ねをしたわけでございます。

 財務大臣はいかがですか。財務大臣は御存じでしたか。

麻生国務大臣 これは国税庁から入っていたんだから財務大臣が知っていてもおかしくないんじゃないかという理屈にされたいんだと思いますが、そういった関係にないということで、御存じのとおりです。

川内委員 いや、関係にあるかないかは、国税庁長官は財務大臣の指揮命令に従うことになるわけですから、それは関係的にはあるんですよ。実態として知らなかったということですよね。

麻生国務大臣 これは、先生、すごく大事なところなので、時間外で恐縮ですけれども。少なくとも、財務大臣がいわゆる国税庁長官を使って川内を査察せいという、私が命令権があるように聞こえますけれども、それはございません。

川内委員 いや、そういうことができるということを申し上げているわけではなくて、じゃ、国税庁次長に最後お尋ねしたいと思いますが、税務情報、査察情報を総理や財務大臣に報告することは何らかの法令に触れますか。

田島政府参考人 お答えいたします。

 個別の事柄についてはお答えすることは差し控えさせていただきますが、その上で、お尋ねの点ですが、国税庁としては、法律上、総理大臣と財務大臣に報告することは禁止されているとは考えておりませんが、個別の調査事案について報告は行っておりません。

川内委員 法令上は禁止されていないということなわけでございまして、だから、念のために一つ一つ確認しないと、事態の実態が解明できないというふうに思うわけです。

棚橋委員長 川内君、恐縮ですが、時間が来ておりますので手短にお願いいたします。

川内委員 わかりました、委員長。委員長が早くしゃべってくれればいいんですけれども。

 この問題は本当は、総理、根深いと思うんですよ。だから、与野党を超えて本当にしっかり解明しないと、また同じことが起きるし、それは国民の電気料金にはね返る。だから、私たちが言うことにも耳を傾けていただいて、電力会社の偉い人にここに来ていただいて、みんなで議論する、そしてみんなで解決するということじゃないかなということを、またあした朝、ツー・ビー・コンティニュードで。

 終わります。ありがとうございます。

棚橋委員長 次回は、明十一日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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