衆議院

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第10号 令和4年2月4日(金曜日)

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令和四年二月四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 今枝宗一郎君 理事 島尻安伊子君

   理事 谷  公一君 理事 西村 康稔君

   理事 葉梨 康弘君 理事 大串 博志君

   理事 重徳 和彦君 理事 浦野 靖人君

   理事 稲津  久君

      青山 周平君    秋葉 賢也君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    奥野 信亮君

      加藤 勝信君    金田 勝年君

      亀岡 偉民君    小林 茂樹君

      後藤田正純君    笹川 博義君

      下村 博文君    新谷 正義君

      武井 俊輔君    土屋 品子君

      中谷 真一君    平沢 勝栄君

      古屋 圭司君    松本  尚君

      宮崎 政久君    武藤 容治君

      盛山 正仁君    八木 哲也君

      山本 有二君    鷲尾英一郎君

      渡辺 博道君    石川 香織君

      江田 憲司君    落合 貴之君

      城井  崇君    源馬謙太郎君

      近藤 和也君    階   猛君

      長妻  昭君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    足立 康史君

      市村浩一郎君    岩谷 良平君

      伊佐 進一君    金城 泰邦君

      輿水 恵一君    福重 隆浩君

      山崎 正恭君    鈴木  敦君

      前原 誠司君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    緒方林太郎君

      仁木 博文君    福島 伸享君

    …………………………………

   参考人

   (国立感染症研究所長)  脇田 隆字君

   参考人

   (日本労働組合総連合会副事務局長)        村上 陽子君

   参考人

   (国立大学法人長崎大学学長)           河野  茂君

   参考人

   (一般社団法人反貧困ネットワーク事務局長)    瀬戸 大作君

   参考人

   (亜細亜大学経済学部教授)            権丈 英子君

   参考人

   (慶應義塾大学教授/一般財団法人創発プラットフォーム理事)        松井 孝治君

   参考人

   (放送大学・千葉大学名誉教授)          宮本みち子君

   参考人

   (慶應義塾大学経済学部教授)           井手 英策君

   予算委員会専門員     小池 章子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月四日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     松本  尚君

  岩屋  毅君     武藤 容治君

  加藤 勝信君     新谷 正義君

  亀岡 偉民君     八木 哲也君

  木原  稔君     宮崎 政久君

  北村 誠吾君     武井 俊輔君

  鷲尾英一郎君     小林 茂樹君

  渡辺 博道君     笹川 博義君

  長妻  昭君     藤岡 隆雄君

  伊佐 進一君     山崎 正恭君

  中川 宏昌君     金城 泰邦君

  前原 誠司君     鈴木  敦君

  宮本  徹君     宮本 岳志君

  緒方林太郎君     仁木 博文君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 茂樹君     鷲尾英一郎君

  笹川 博義君     渡辺 博道君

  新谷 正義君     加藤 勝信君

  武井 俊輔君     盛山 正仁君

  松本  尚君     青山 周平君

  宮崎 政久君     木原  稔君

  武藤 容治君     岩屋  毅君

  八木 哲也君     亀岡 偉民君

  藤岡 隆雄君     長妻  昭君

  金城 泰邦君     福重 隆浩君

  山崎 正恭君     伊佐 進一君

  鈴木  敦君     前原 誠司君

  宮本 岳志君     宮本  徹君

  仁木 博文君     福島 伸享君

同日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     北村 誠吾君

  福重 隆浩君     中川 宏昌君

  福島 伸享君     緒方林太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和四年度一般会計予算

 令和四年度特別会計予算

 令和四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 令和四年度一般会計予算、令和四年度特別会計予算、令和四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 三案審査のため、本日の午前、新型コロナウイルス感染症対策等について御出席いただいている参考人は、国立感染症研究所長脇田隆字君、日本労働組合総連合会副事務局長村上陽子君、国立大学法人長崎大学学長河野茂君、一般社団法人反貧困ネットワーク事務局長瀬戸大作君、以上四名の方々であります。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず脇田参考人にお願いいたします。

脇田参考人 感染症研究所所長の脇田でございます。

 本日は、このような機会をいただきまして、予算委員会の皆様に改めて感謝を申し上げます。

 私のただいまの所見について述べさせていただきます。

 まず、現状の問題点といたしましては、現在のオミクロン株による感染拡大は、年末年始などにおける会食などにおける感染者急増から、感染の場が家庭、職場、学校、医療機関、介護福祉施設などに移り、拡大をしております。今週先週比あるいは実効再生産数は減少をし、一に近づきつつある局面であります。一部の地域で減少傾向、上げ止まり、あるいは多くの地域で増加速度の鈍化傾向も見られております。

 今後の推移ですが、まず、若者世代の減少が始まりつつありますが、小児、高齢者など、ほかの世代でも減少傾向がないと全体の減少にはつながらないと考えております。

 既に多くの地域で、若者層中心の急激な感染拡大により、軽症者の健康観察者あるいは自宅療養者が急増し、一部の地域では、その後、高齢者に感染が波及し、コロナ感染による肺炎がなくても、基礎疾患の増悪による重症者が急増、死亡者も増加しております。

 急増した感染者、濃厚接触者の隔離による医療機関を含めた社会機能の低下が懸念されますが、療養期間、待機期間の短縮で対応が進みつつあります。

 小児の感染拡大や職員の感染により、学校休校、保育所休業などによる教育機会の低下、保護者が家庭で子供を見なければいけないことによる社会機能の低下があります。

 感染者、濃厚接触者の急増による保健所機能の低下、崩壊が懸念されております。

 まず、蔓延防止策でございますが、感染の場所が移り変わってきているため、感染リスクに応じた対応が必要と考えます。

 家族以外との飲食を避けること、大人数での集まり、大声、混雑を避ける。職場では、テレワークを再度徹底していただき、職場での接触を減らすために、社内の会議もリモートを活用することが重要と考えます。

 学校、保育園などにおける感染対策と教育の機会と社会機能維持について、小児の感染が社会全体の流行拡大の主要な拡大要因にはなっていないと我々専門家の間で議論はしております。学校、保育園などの休校、休所は最小限にすべきですが、その基準も明確にしておく必要があると考えております。

 学校、幼稚園、保育所などは、学びの場所であると同時に、保護者が就労などの社会活動を継続するための預かりの場の機能もございます。こうした場での感染を防ぎ、休校、休園を最小限にするため、感染対策の徹底、感染リスクの高いプログラムを中止していただくこと、分散登校、リモート授業などを更に活用、教師、保育士など周りの大人へのワクチンの接種の前倒しをお願いしたいと考えます。

 高齢者など重症化リスクの高い人たちを守ることが必要でありまして、介護福祉施設における感染が増加しております。施設での感染者が出た場合には、地域による感染管理や医療の支援が重要です。そうした施設の従事者の定期検査、高齢者の三回目ワクチン前倒しの加速をお願いしたいと考えております。

 医療提供体制では、年齢、基礎疾患、ワクチン接種歴などが重症化の見極めに非常に重要です。最近のデータでも、高齢者でワクチン未接種者はオミクロン株でも重症化リスクがあると考えられます。

 リスクの低い軽症者には効率的な対応、自己検査、自己管理、フォローアップなど、ただ、必ず医療につながることが必要です。重症化リスクのある陽性者はしっかり医療の監視下に置き、地域医療のサポートなどが必要です。

 また、救急搬送困難事案が増加しております。この時期は例年でも通常医療、救急が逼迫しております。柔軟な病床運用が必要と考えております。

 通常医療が必要な方、例えば心筋梗塞、外傷、虫垂炎などで緊急検査、治療、手術など、が入院できる体制を維持することが必要と考えます。

 保健所の体制ですが、保健所は、検査の陽性者について、医療機関からの発生届を確認し、本人に連絡して就労制限や勧告を行い、疫学調査を実施して濃厚接触者を特定、また、本人の療養方針を決定して入院、宿泊療養、自宅療養を決め、自宅療養者のフォローアップをする、最後に療養解除をする、一連の手続で様々な書類の発行や患者のサポートを行っております。

 しかし、感染者の爆発的な急増で保健所の対応は危機的な状況であります。保健所長会からの提言や専門家有志の提言でもその対応が出ております。重症化リスクのある患者を見逃さないような対応が必要と考えております。

 予防接種におきましては、三回目の接種が始まり、二月三日には、一日の三回目の接種回数が五十万件を超えました。まだオミクロン株の流行拡大が続いておりまして、たとえ流行のピークを越えても高齢者の感染がしばらく続くことから、感染予防と重症化予防のため、三回目接種を更に進めることが重要と考えております。

 新型コロナワクチンの効果についてですが、初回シリーズから時間がたつと、ワクチンによってつくられた抗体の量は下がっていきますが、逆に抗体の質については高まることが分かっています。つまり、より幅広い変異株に対応できる抗体ができるようになります。しかし、抗体の量自体は減っていきますので、三回目の接種をすることにより、質の高い抗体をたくさんつくることが可能になり、変異株に対応できる抗体がたくさんつくられます。変異株対策のためにも、三回目の接種を進めることが重要と考えております。

 今後更に四回目の接種が必要なのか、また実施するならどの程度の間隔でに関してはまだエビデンスが十分ございません。

 サーベイランスについてですが、流行状況の把握と評価のため、全数把握を継続することが必要と考えております。しかし、オミクロン株の感染拡大による感染者急増により保健所機能が逼迫し、これまでと同レベルで全数の把握というのは非常に困難になっております。流行対策上、感染者数とその状況の把握は重要です。様々な対策でサーベイランスの継続が必要と考えております。

 今後の見通しですが、ウイルスが進化を続けております。オミクロン株の祖先がアルファでもデルタでもない。インフルエンザと異なって、まだその進化が連続的には起こっていない、起こっているとは言えません。季節性もまだ明らかではありません。どんな変異株が次に出現するかの予想は困難ですが、人と動物で新型コロナウイルスの感染が継続する限り、新しい変異株が出現する可能性がございます。

 その際、新たな変異株が感染拡大するとすれば、これまでに自然感染やワクチンによって獲得された免疫を乗り越えてくる可能性があります。しかし、新たな変異株の病原性について予測することも難しいところです。オミクロン株のように上気道感染が主体となることで感染力を高め肺炎を起こす割合が減るという方向性が維持されるのか、それとも全く別の方向性になるのか、今後もサーベイランスによるモニタリングを継続し、ワクチン、治療薬の開発を継続することが重要と考えております。

 研究開発についてですが、感染性の高い変異株が突然出現して流行拡大しているといったサイクルを繰り返している間は、地域流行への移行を見通すのはまだ難しい状況です。ただ、この状況から抜け出すためには、軽症者も広く使用できる新規治療薬が使用可能となることが重要と考えております。早期治療で重症化リスクを軽減できることが広く認知できることが重要と考えます。現在、臨床開発中の薬剤の有効性が早期に確認をされることを願っております。

 今後のコロナ対策ですが、新たな感染症対策には研究開発が重要です。ワクチン研究開発のファンディング機能の強化、ワクチン研究開発拠点の形成、創薬ベンチャーの育成などの予算化には大変感謝をしております。

 その際、対象となる感染症の選定や研究開発のマネジメントといった司令塔機能が重要です。そこには是非、科学者のレビューが必要です。例えば、専門家によるアドバイザリーボードのようなものの設置を検討していただきたいと考えます。

 我が国あるいは近隣のアジア地域において、重要な感染症を疫学的に調査し、選定をし、その感染症の特性に基づき、どのようなワクチンが必要なのかを検討するステップを置いていただきたいと考えます。また、課題進捗管理においても、科学者による科学的な目利きが重要と思います。

 また、層が薄いと言われる感染症領域の研究者育成も重要です。大学院生、ポスドク、大学のポストを増やすのには限界がありますが、関連をするベンチャー企業育成によって、ベンチャーあるいは製薬企業で、若い企業が、雇用され、活躍できる場が広がると考えます。この領域で研究していくことで将来にわたり活躍できることが見えることが、研究者を育てることに重要と思います。

 最後に、感染研の機能強化についてですが、感染研の役割は、感染症の発生防止、予防及び新たな感染症の発生に関する研究を通して、我が国の感染症対策に役立つことでございます。

 感染研の機能は大きく三つございます。

 一つ目が感染症に関する基礎的な研究、二つ目は予防ワクチンなどの品質保証、三つ目が感染症の実態把握のためのサーベイランス、感染症危機対応などでございます。

 感染研は、その歴史的な背景などから、最初の二つの機能に重点がありました。今回の新型コロナウイルス流行においては、三番目の感染症疫学及び公衆衛生機能が非常に重要です。また、ワクチンや抗ウイルス薬の研究開発も非常に重要でございます。

 既に、予算、定員の増強がございました。機能強化を図っておりますが、日本全体の研究能力を底上げするために、感染研は、地方衛生研究所と連携して、日本の感染症対応力を強化するということが必要と考えております。このため、地方衛生研究所の強化が重要でありまして、その地衛研の設置についての法的な位置づけの明確化を是非お願いしたいと考えております。また、大学、企業とも連携をして、感染症に関する研究能力の底上げが必要と考えておりますので、是非サポートをお願いしたいと考えております。

 私からは以上になります。ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、村上参考人にお願いいたします。

村上参考人 連合副事務局長の村上と申します。

 本日は、意見表明の機会をいただき、ありがとうございます。

 働く者の立場から、雇用保険の問題を中心に、幾つかの点について意見を述べます。

 まず、雇用保険財政についてです。

 御案内のとおり、雇用保険制度は、労使折半の保険料と国庫負担を財源として政府が運営しています。このうち、雇用調整助成金などが含まれる雇用保険二事業については、使用者負担の保険料のみで運営されています。この働く私たちにとって重要なセーフティーネットである雇用保険制度の財政について要望を述べます。

 一点目は、労働者の雇用のセーフティーネットを安定的に運営するための財源の確実な確保です。

 御承知のとおり、新型コロナウイルス感染症の度重なる拡大は、様々な業種に大きな影響を与えています。特に交通、運輸、観光、サービス、飲食を始めとした業種を中心に、経済活動が縮減し、多くの労働者が休業を余儀なくされました。

 当初は、リーマン・ショック時を上回る失業者の発生も想定されていましたが、雇用保険制度が大きな役割を果たし、雇用調整助成金の特例措置や、在籍型出向を通じた雇用維持を支援する産業雇用安定助成金などにより、失業者数が抑えられてきました。

 しかし、雇用保険財政に目を向けると、提出資料三ページ目のとおり、失業等給付の令和四年度予算案においては、支出が収入を上回っており、さらに雇用保険二事業への貸出しも行われるため、令和三年度末に約一兆三千百億円あった積立金はほぼゼロに近い残高となる見通しです。また、雇用保険二事業の令和四年度予算は、現下の新型コロナウイルス感染症の再拡大を踏まえれば、今後も雇用調整助成金や産業雇用安定助成金が担うべき役割は依然として大きく、年度途中で枯渇することは必至です。

 コロナ禍の影響を受ける労働者が安心して就労できるよう、まずは雇用調整助成金や産業雇用安定助成金などに当面必要な予算措置を講じることが必要不可欠です。また、今後の感染症の拡大による雇用への影響に対応すべく、失業等給付の積立金や雇用保険二事業の雇用安定資金を十分確保しておく必要があります。

 政府においては、補正予算の編成や予備費の充当を通じた一般会計から労働保険特別会計への更なる繰入れなど、状況に応じた機動的な財政措置をお願いいたします。

 加えて、育児休業給付についても、早ければ令和六年度に積立金が不足する見通しとなっており、子ども・子育ての支援制度として位置づけ、雇用保険会計によらず、政府の責任により一般会計で実施することなど、制度の在り方について早期に検討を開始していただくようお願いいたします。

 次に、失業等給付の国庫負担の見直しについてです。

 この見直しは、厳しい雇用保険の財政状況下で、雇用情勢等に応じて異なる国庫負担割合を適用するとともに、別途国庫から機動的に繰入可能な仕組みを導入するというものです。これらを含む雇用保険法等改正法案が今通常国会に提出されています。

 失業等給付の国庫負担割合は、提出資料四ページのとおり、本来は四分の一、二五%とされているところ、暫定的な引下げ措置によって、四十分の一、二・五%が適用されています。過去の衆参の厚生労働委員会の附帯決議においては、国庫負担には政府の雇用政策に対する責任を明確にする意義があるという政府の認識の下、早期に安定財源を確保し、四分の一に戻すこと、時限的な引下げ措置は令和三年度までに厳に限ることとされてきました。

 そうした経緯も踏まえ、労働政策審議会においては、労使から四分の一に戻すべきであるという意見が挙げられていましたが、政府の案は、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合にのみ四分の一とし、それ以外の場合には四十分の一とするというものでした。

 また、国庫繰入制度については、国庫繰入れの機動性と実効性が担保されているとは言えず、適切な時期に適切な内容の財政措置がなされるか、懸念があります。

 政府による政策のかじ取りが労働者の雇用に大きく影響する今のような状況だからこそ、本来の国庫負担割合である四分の一とすべきではないでしょうか。

 コロナ禍からの回復の兆しが出てきていた中で、新たな変異株の出現などによる感染再拡大が雇用に及ぼす影響は不透明です。現場からは、雇用調整助成金の特例措置が本当に重要だという切実な声も寄せられています。

 雇用のセーフティーネットである雇用保険が将来にわたる安定的な運営を求められていることを踏まえれば、国庫負担割合を従来の四分の一に戻すことも含めた財政基盤の確立を求めたいと思います。

 次に、保育所、学校等において感染が拡大していることを踏まえた対応についてです。

 保育所の休園や学校の休校等に際して、保護者が仕事を休むことのできる機運の醸成と、小学校休業等対応助成金・支援金など、労働者を支える制度の周知と支援の強化が必要です。

 また、国民が安心して暮らし、社会経済活動を行えるようにするためには、ワクチン接種の体制確保、とりわけ、いわゆるエッセンシャルワーカーに対する優先的な接種体制の速やかな構築を求めます。

 同時に、それぞれの事業所内で感染検査ができるよう、検査体制の整備に向けた事業所への支援強化や、検査キットの安定確保について、医療現場への安定供給と併せて求めます。

 加えて、変異株の特性や、それに応じた感染予防策、ワクチンの副反応情報など、国民への正確な情報提供を行うとともに、ワクチン接種の有無による差別、偏見が起きないよう、改めて啓発の徹底を求めます。

 最後に、提出資料五ページ目のとおり、コロナ禍の最前線で働く医療、介護、福祉等の労働者は、全産業平均に比べて賃金水準が低い状況にあります。今回、政府がこの分野の賃金改善を行うこととしたことは評価いたします。人材確保が困難なこれらの分野での安定的なサービスの提供のためには、働きに見合った抜本的かつ継続的な賃金の改善が重要です。

 補正予算により先行実施される補助金による処遇改善措置では、対象とならない医療機関や事業所、職種があります。全ての従事者を対象に、継続的な処遇改善が行われる施策を講じていくことが必要です。

 また、労働組合のない職場も多い分野でありますので、国と地方自治体との連携で、事業所等への積極的な働きかけとサポートを行っていただき、実効性ある施策にすることが重要と考えております。

 以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、河野参考人にお願いいたします。

河野参考人 アカデミアの立場から、次のパンデミックも見据えて、長崎大学学長河野ですけれども、お話をさせていただきます。

 資料の一ページを御覧ください。

 オミクロンは軽いから大丈夫というのは間違いであります。木を見て森を見ず。

 下のデータは長崎県の入院患者ですけれども、高齢者介護施設のクラスターにより、病床はこのように急増し、逼迫いたしております。

 次の二ページを御覧ください。

 二年前、二月に横浜でダイヤモンド・プリンセスのクラスターが起こりました。その一、二か月後に、長崎では、クルーズ船のコスタ・アトランチカ号のクラスターが起こっております。

 当時はまだまだ、何がどうすべきか分からないままに、県、国の協力を得まして、長崎大学は、学長の迅速な意思決定構築を形成し、豊富な人材を適材適所に用いて、当時ではまだ遺伝子診断が非常に難しかった時期に、三、四日で六百二十数名を本学が開発したLAMP法を用いて検査いたしました。同時に、咽頭拭い液はサンプリングが大変難しいので、唾液サンプルの有用性も検討させていただきました。

 乗員等の診療ですけれども、これは、秋野公造議員を経て自衛隊から調達しましたCT診断車を活用し、船外において、埠頭本部を構築しまして、乗組員の感染対策指導、トリアージを行い、さらに、スマホを利用した健康管理アプリを開発して、感染防止拡大等に当たっております。

 DMATや帰国支援、国、県、市などとの連携により、「死者ゼロの真相」で、ここにこの経緯を示しておりますけれども、一旦は、このときは鎮圧いたしました。

 次の三ページを御覧ください。

 この二年間で感じたことですけれども、今後、日本を感染症の脅威から守るため、現在のこの最大のピンチをチャンスに変える必要があります。この波を乗り越えたから終わりという短絡的な思考では極めて厳しく、感染症のパンデミックは国防という観点からの危機管理が試されております。

 パンデミックを含めた感染症の迅速な情報収集、解析、対応作成は国防の要であります。国立感染症研究所だけでは難しく、現行の保健所体制も脆弱であり、全国からの疫学情報を管理する組織、地方ブランチも含めた新設、そして、保健所機能を抜本的に見直し、拡充するということが必要です。

 また、今、抗原検査が逼迫しておりますけれども、有事の際の診断検査体制の構築、研究機関、企業、アカデミアの協働体制、さらには、予防のためのワクチン、例えばインフルエンザのときのような定期的なワクチンや経口薬、こういったものの治験の迅速な遂行体制の整備、諸外国に負けないためのこういった治験体制をつくるということ、さらには、支援体制、DMAT、DPAT、自衛隊などに感染対策の専門医が少ないということで、パンデミック対応感染制御チームの設立ということも重要かと思います。

 次のページを御覧ください。

 医療ですけれども、現在のように、高齢者介護施設クラスターによって病床は逼迫しております。そして、自宅療養者の死亡の発生ということで、これではいけません。全ての病院で診療できる体制の整備というのが必要であります。そのためには、人材育成、そして、全病院、施設に感染制御チームの設置の義務化、こういったことが必要かと思います。

 そして、今のように、大量の感染者の評価と層別化、このために保健所は逼迫しておりますし、医療機関の負担も偏在化しております。したがって、保健所機能の拡張と開業医も含む全ての医療機関の役割分担の明確化、医師会、病院、アカデミア、行政、オンラインの促進も含めて対応すべきだと思います。

 そして、新しい薬、この治験のプロセス、完全に今海外の開発に頼っていますけれども、やはり、パンデミックのときには、診療と治験を同時進行するのは極めて困難であります。人的、物的支援が必須で、やはり、例えば、軽症で、外来でオンラインを利用した治験ができるとか、重症は、レムデシビルを早期導入したときのように、国産治験薬の早期承認の仕組みの導入など、やはり企業にインセンティブを持たせる必要があろうかと思います。

 次の五ページを御覧ください。

 この五ページの下の方に、今はウイルスですけれども、ウイルス感染症でなく、薬剤耐性菌が大きな問題になる可能性もあります。

 実は、この上に書いてありますように、数年前には、日常診療にも必要な抗生物質が供給停止されました。これは、ジェネリック促進、薬価引下げで企業が国内生産を減らして、海外に拠点を移し、海外で問題が発生したために自国で生産ができないということで、感染症対策は国防であるという意識の欠如が明らかになったと考えております。

 次の六ページを御覧ください。

 今、様々なワクチンに対して様々な意見があります。

 感染症からしますと、予防にはワクチンは基本であります。こういったワクチン接種に対する正しい知識が欠如しているということから、やはりこれは、初等教育から感染症の予防や制御の基本的な教育、したがって、幼児期から高等教育までのシームレスな教育ということで、高等教育においては、恒常的に感染症診療に強い専門医を育てる仕組みとしまして、学部段階から専門医を目指す感染症専門医枠の設置、また、主要な病院に専門医を育成するための恒常的組織の設置ということが必要かと思います。

 そして、今回、やはり理論疫学の専門家と、行政、専門家を橋渡しする、政策実行できる人材養成組織も必要であります。人への投資というのが極めて重要であります。

 次のページを御覧ください。

 七ページですけれども、本学では、こういった人材、為政者、専門家とアカデミアを橋渡しする、学術的エビデンスを効率的に政策に落とし込むことのできる人材養成ということで、博士レベルの公衆衛生人材養成ということで、この十月から、長崎大学プラネタリーヘルス学環を設置し、ドクター・オブ・パブリックヘルスを与えるように、熱帯医学、ロンドン大学、国立国際医療研究センターなど国内外の研究、教育施設と連携して、しっかりこういった人材を育てようと考えております。

 次ページを御覧ください。

 研究ですけれども、やはり未知の微生物、今ない微生物に対応できるようなBSL4など、平時の先端的基礎生命科学と臨床研究、これを推進するためには、やはり、国による十分な研究費の継続的で安定的支援が不可欠であります。それと、制圧ツールの実用化に向けて、産官学の連携の研究プラットフォームを構築ということが非常に必要かと思います。

 また、パンデミックに瞬時に対応できる体制、平時における研究者間の連携、グローバルネットワーク、基礎研究を迅速に臨床できるシステム構築、また、数理モデルを用いた予測、こういったものをしっかり研究する必要があろうかと考えております。

 次の九ページを御覧ください。

 パンデミックが次に国内に侵入すれば、やはり、公衆衛生と医療システムのすり合わせ、ここは極めて重要であります。ウイルスなど微生物に対応することも重要ですけれども、やはり、何といっても、今回分かったことは、人、人への投資が極めて重要であります。

 したがって、医療、国を守るという観点からの危機管理、保健所機能の強化。教育は、初等教育から大学院、臨床現場までの感染症教育、感染症専門医、公衆衛生専門家の養成。研究は、アカデミア創薬を可能にする仕組みと安定的予算の確保ということを是非お願いできればと思っております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、瀬戸参考人にお願いいたします。

瀬戸参考人 よろしくお願いします。一般社団法人反貧困ネットワークの瀬戸といいます。

 今日も、これが終わったら、現場の方の駆けつけ支援が入っています。今日の資料の中で、二ページ以降のところに、二ページの下段の方から駆けつけ支援の活動紹介というのが出ています。

 二〇二〇年の四月以降、ずっとこの二年間、現場の方から、駅だとかネットカフェだとかいろんな場所からSOSがあって、駆けつけをしています。駆けつけしているというのはどういうことかというと、所持金がもう百円もない、冒頭に書いていますけれども、もうこのままでいくと死んでしまう、そういう状況のSOSが各地から入ってきます。そういう状況の中で、僕ら自身が、反貧困ネットワークを含めて緊急アクションという団体をつくって、この二年間、ずっと支援活動をしてきました。

 この間の報道、出ているように、年末年始の相談会、いろんなところで炊き出しを行いました。ずっと、毎回毎回、五百人以上の人たちが並んでいて、コロナ感染の就職における影響、それと、それ以前からあった貧困問題について、このコロナの関係で要するに底が抜ける、その状態が続いています。まさに野戦病院の状態です。

 三ページに出ているように、今の具体的な、社協とか福祉事務所のところで緊急対応の貸付けができない、そういう状況の中で、我々自身、民間のところで基金をつくって、一億五千万、本当に市民からカンパをいただいて、具体的な直接支援としては、約八千万を使って、この間、二千九百人の具体的な直接支援を行ってきました。

 その中で、具体的に、資料に出てきますけれども、僕らのSOSの中で、八三%が、家がないか、家がなくてネットカフェに泊まっている。その合計で、八三%の人たちが実際の家がないわけです。そういう人たちに対して具体的な緊急の支援を行って、数日後に、例えば生活保護の申請の同行を行って、アパートの転宅を行って、その後の就労支援のフォローを行う、そういう実情です。

 その中で見えてくるのは、一点目は、冒頭のところの2、居住貧困の問題ですね。この問題が非常にやはり今の社会の中で大きな問題だということで、なぜこれだけ多くの人たちが、若者たちが家がないのかということですね。このデータに出ていますけれども、東京都の二〇一七年のネットカフェ難民調査、ネットカフェの住人の調査というところで、六二・八%の人たちが、具体的に、アパートを借りる初期費用がないと。ということは、本当に最初から非正規や派遣の仕事しかなくて、そもそもお金を貯蓄することはできない、そういう実情に今あるんだということです。そのことが今でも進行しているんだということです。

 それともう一つは、そういう意味で、公的な、住居確保給付金についても、やはり継続的な制度としてしっかり捉えていただきたい。

 今日、これは文書に入っていませんけれども、全国の中で、公営住宅で、六十歳未満、単身の人たちが入居できない、東京都の場合、入居できないんですね。そういうような公的住宅の活用も是非お願いしたいということです。

 それと、この間、国会でも話題になりましたけれども、扶養照会については非常に改善がされて、厚労省の方から通知が出ていますけれども、相変わらず福祉事務所のところでは追い返しがやはり頻発をしています。

 今日、実は、僕は一時半から、ある都内の区の生活保護の同行に入っていますけれども、僕らの支援団体が生活保護の同行に行かないと、普通に、若いんだから、あなたは働けるんだからということで追い返しが頻発をしています。いつまで僕ら自身が同行をずっと続けるんでしょうか。

 その関係で、例えば、相談しても追い返されるということで、この間、いろんな犯罪も起きているし、出ていますけれども、横浜市のあるお母さん、シングルマザーのお母さんでいうと、生活保護の申請の受理がされて決定まで四十日かかっている。そうしたときに、もうガス、水道、電気も全く払えない、そういう事態も起きています。

 そういう問題も含めて、是非、国会議員の皆さんについては認識をしていただきたいというふうに思っています。

 それと、年末年始の相談会からずっと継続して、この間、五百人以上来ています。非常に、女性の、子供を抱えている女性が並んでいます。先週の新宿都庁下の新宿ごはんプラスの相談会では、七十二名の女性が並んでいました。そうしたときに、相談ブースについては増えていないんですね。とにかく食料が欲しい。

 昨日、ニュースで、カップヌードルが二百十円になる。そうしたときに、生活保護の金額は変わらない。この間、切下げが入っていますからね。だけれども、どんどんどんどん物価が今上がっている。そうしたときに、本当に今の生活保護の金額で暮らしていけるのか。本当に、これについては、予算の中で生活保護費の特別加算をやはり検討していかないと、ますます一番つらい立場にいる人たちが苦しんでいくというふうに考えています。

 それと、求職者支援制度ですね。この間、公明党さんなんかも含めて、非常に頑張っていただいて、要件緩和がされています。

 ただ、僕ら現場でいうと、支援してきた人たちが、具体的に、アパート入居します。だけれども、ほとんどやはり仕事がないんですね。そうしたときに、例えば仕事の、職種の範囲拡大とか、具体的な弾力的運用の中で、より使える制度にしていただきたいなということがあります。

 それと、オミクロンの、今回、この間の傾向の中で、僕らは、駆けつけ支援だけじゃなくて、実は、食料品の配達も行かざるを得ない状態になっています。僕自身も行っているんですね。

 この間の報道でいうと、保健所からの置き配、食料がやはり届いていません。本当に大変な状態になっています。それで、やはり五日たっても届かない、その中で生活困窮だと。やっと僕は来週その方と、東京の北区かな、そこで申請同行に行きますけれども、その間、民間の支援団体のところで食料を運んでいる、そういう事態があります。

 僕は練馬ですけれども、練馬のあったかフードバンクのメンバーでいうと、もう自転車で今走り回って、そういうような経済的に厳しい家庭で感染の疑いがあるという家庭に民間が回っている状態です。

 是非、それについて、ルートの問題ですね。本当に保健所だけでいいのか、バックアップセンターだけでいいのかという問題も含めて、検討をお願いしたい。

 それともう一つは、家がない人たちに対しての、やはりホテル療養とか、保険証を持たない、持っていない、所持金がない人たちについても、ちゃんとしたそういうような医療が受けられるような形にしていただきたいなというふうに思います。

 最後に、外国人の問題です。

 実は、僕らのシェルターに多くの外国人がいます。コロナ感染で、入管にいる在留資格が持てない外国人の人たちが多く外に出て、約六千人の仮放免の人たちが実は地域に来ます。そうしたときに、地域に出ていっても、具体的に、住む家もない、働くことも許されない、医療も受けるべき人たちができない。そういう人たちに対して、我々民間の支援団体が、実は、我々の基金の七割は外国人に使わざるを得ないという事態になっています。

 具体的に言うと、我々のシェルターのところで住居を提供して、生活費を実は提供しています。提供するしかないんです。それと、具体的に、入管に長く入っていますから、非常に体調が悪い。そうしたときに、僕らのところで具体的にお金を出して病院に連れていく。

 今日は、入管行政の話をするところじゃありませんから、それは触れませんけれども、具体的に、やはり生きているわけですよ、その人たちは。最低限のやはり生存については守っていただきたい。なぜ我々支援団体が医療費を出すんでしょうか。

 今、大村入管でネパールの方が、具体的に、足が壊死状態でいます。仮放免でいいから出してくれと言っています。でも、出してくれません。我々は、出していただいて、取りあえず、とにかく緊急対応なので、民間のところでお金を集めて、この壊死の問題については、手術とか、そういう問題についても費用を出すから出してくれという話をしています。そういうようなやはり切迫した状態を、是非、国会議員の皆さんについても認識をしていただきたい。

 僕は、この間ずっと現場に行っているんですね。今日、これからも同行があって、夕方、もう上野からSOSが来ているので行くんですけれども、本当に是非、国会議員の皆さん、今日、岸田総理はいませんけれども、やはり現場のところで当事者の話を聞いてほしいと思います。どんな状態で、本当に、お母さんたちがガス、水道を止められて、そういう状況で厳しい思いをしているのか。そのことについて応えていただくのは、公助としてのやはり国会の役割だと思います。その辺、是非よろしくお願いしたいと思います。

 以上です。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松本尚君。

松本(尚)委員 自由民主党の松本尚でございます。

 よろしくお願いいたします。

 まず、脇田先生に質問したいと思います。

 私は、昨年までは千葉県庁でコロナ対策の陣頭指揮を災害医療コーディネーターとして執っておりました。

 今週、千葉県の医療調整本部とか、前に仕事をしておりました救命センターに確認をしましたところ、この第六波というのは第一波とか三波とかと大体同じ医療負荷がかかっている、すなわち、入院患者のほとんどは高齢者だったり、ハイリスクのある患者さんだったり、既往歴の患者さんだったりしていると。

 一方で、第五波というのは、中壮年層の方々の肺炎が非常に多く見られていたと思います、三十から五十歳代ぐらいの。通常、診療しておりますと、この世代、ふだんは肺炎にならないというのは先生も御存じだと思います。

 そういった意味では、一番注意すべきなのはこの年代層だというふうに私は考えておりまして、昨年の十二月の産経新聞の「正論」なんかでも、そこは、この世代の肺炎の発生率をしっかりモニタリングしろというふうに主張していたんですけれども、思ったとおり、第五波ではそれが現実となりまして、たくさんそういった世代の方々が亡くなったということがありました。今回の第六波は、全然それが違うということであります。

 そこで、質問なんですけれども、今回、今第六波で認められている肺炎、重症肺炎の患者さん、デルタが多いんですか、それともオミクロンが多いんですか、いかがでしょうか。

脇田参考人 お答えいたします。

 現在、第六波での肺炎というのは、委員がお尋ねのとおり、高齢者あるいは基礎疾患のある方ということで、第五波のときの中壮年の、いわゆる三十代から五十代のウイルス性の肺炎とはかなり異なる様相だと伺っております。

 つまり、デルタ株による肺炎というのは、びまん性の、すりガラス状の肺炎ということを呈するということは委員御承知のとおりだと思いますけれども、第六波におけるオミクロン株の肺炎というのは下気道への炎症が少ないという特徴があり、むしろ、いわゆるインフルエンザに合併するような細菌性肺炎であったり、ウイルス性の肺炎は比較的軽症なものが多いという状況でございます。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、全く違う肺炎が出ているというふうに認識すればよろしいというふうに理解したいと思います。

 第三波でも経験したんですけれども、まず感染症というのは必ず若者が出て、それからピークアウトした頃に次の世代、例えば三十、四十代、五十代、六十代というふうに広がっているのは、もう我々は何度かこの波で経験していると思うんですね。

 今回も同じようなところで、最終的にはお年寄りのところに行くんだということはもう分かっていたはずですし、現状、今介護福祉施設なんかが一番ひどい目に遭っているということで、それももう分かっていたはずなんですね。

 そうすると、じゃ、何をすればよかったかという話になりますけれども、例えば、そういった介護福祉施設とか、あるいはそこが集中しているような東京それから大阪といった人口の密集地の介護福祉施設といったようなところプラスその職員さん、そういったところから集中的に三回目のワクチン接種というのはやればよかったんじゃないかというふうに、私なんかはそんなふうに思っているんですけれども、その辺の先生の御見解を伺いたいなと思います。

脇田参考人 委員御指摘のとおり、この流行の波というのが、やはり今回もそうでしたが、年末年始、会食の機会を通して若者世代に広がる、それから、家庭、学校、職場、そして介護施設、医療施設というところへ感染拡大をしていくということで、そこはもうおっしゃるとおりだと思います。

 我々としても、やはり、今回のいわゆる第六波の感染拡大において、高齢者のワクチン接種というものを進めるべきだということは当然のことだと思いますけれども、それだけではなくて、介護施設における従事者の定期的な検査であったり、あるいは、もし感染が起きた場合の感染管理あるいは医療のサポートというものは、地域医療であったり地域の自治体からのサポートを行っていくということで、やはり介護施設というものを今回の新型コロナの感染で守っていくということは非常に重要な点だと、そこは思っております。

松本(尚)委員 私が質問したかったのは、そういう意味では、全国一斉に平等にワクチン接種を進めるんじゃなくて、ターゲットを絞ってワクチン接種を進めるというような方法というのは僕はあるかなと、ある意味、全国一斉というのは悪平等ではないかというふうにも思うんですけれども、その辺りは、例えばアドバイザリーボードの中でそういった議論はあったかどうかお聞きしたいんですけれども。

脇田参考人 もちろん、やはりリスクベースということがありますので、特にこの疾患は高齢者、それから基礎疾患のある方が致死率、重症化率が高いということですから、そういった方を対象に優先的に接種を進めるということが大前提だと思っています。

 その中でも、やはり介護施設、それから医療施設、医療従事者が最優先とは思いますけれども、さらに、介護施設ではクラスターが起きますとかなりインパクトが大きくなりますので、そういったところが優先されるべきだということは、アドバイザリーボードでもかなり議論があったところです。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 医師から政治家になってみると、どうしても平等平等になってしまうんですね。でも、やはり戦略的にワクチン接種というのは僕は必要だというふうにずっと思っていたので、それって言えるのって、逆に言うと、医師しか言えないようなところもなくはないので、是非、そういった戦略的な対策というのはやはり医師の立場からがんがん押していっていただきたいなというふうに思うわけであります。

 ちょっと、出口のお話をさせてください。

 アドバイザリーボードはすごく、専門家集団として細かいデータを出されていらっしゃいますけれども、一方で、将来予測、ここで言う将来予測というのは、もっと全体を俯瞰的に見て、目の前の対応だけではなくて、この先どうなっていくかということの将来予測ですけれども、そういったような視点でいくと、一月二十一日にアドバイザリーボードが、オミクロン株の特徴を踏まえた効果的な対策は、オミクロン株はデルタ株を始めとしたこれまでの新型コロナウイルス感染症とは異なる感染症と考えるべきであるというふうにあります。

 それについて、先生、もうちょっとそこは細かくお話をいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。

脇田参考人 御質問ありがとうございます。

 オミクロン株というのは、これまでの変異株、特にデルタ株と大きく違うと考えております。

 これは、感染力が、感染伝播力が非常に強い、そして、世代時間といいますけれども、ある人が感染をして、その次、二次感染者に感染させるまでの時間も非常に短いということで、感染力と世代時間が短いということで、非常にスピードが速く感染をしてまいります。

 もう一つの特徴は、比較的重症化率が低いということでありまして、これは特に若い世代で、あるいはワクチンを接種している方で重症化率が低いという特徴がございます。

 ですので、非常に軽症者が多くなるということが一方であり、重症化率は低いわけですけれども、感染者が多くなりますとやはり重症者も出てくる、特に高齢者、それからワクチン未接種の方がそういった重症化のリスクがあるということになります。

 それから、それに加えて、今ちまたでも言われていますように、かなり感染者、それから濃厚接触者が増えてきますから、もうこれは諸外国でも分かっていたことですけれども、社会機能の維持に必要なエッセンシャルワーカー、医療機関を代表とするエッセンシャルワーカーが就業ができなくなるということで、社会機能の維持というものが難しくなるような疾患であるということで、これまでのデルタ株までの対応とはかなり違う対応が必要だ、そういう意味で我々は議論をしております。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 二月二日にアドバイザリーボードが、流行拡大期において保健医療体制の確保を図るための感染症法の措置の柔軟な適用について提言をされています。この提言の中で、今後のウイルス変異の予測は現時点で困難で、病原性、感染性が再度高まる可能性は否定できません、感染症法において、新型インフルエンザ等感染症として現在使用されている措置を直ちに解除することは慎重であるべきだというふうに言っています。先ほど、違うものだと考えましょうというふうに言っているんですけれども、一方で、まだまだ慎重ですというふうな書きぶりになっている。

 先ほど先生の意見陳述でもございましたし、私も医師として、やはりこういう書きぶりはしようがないなというふうに思うところで、理解はできるんですけれども、逆に、国民の視点でいうと、じゃ、一体いつになったら元に戻るんだろうというふうな意見というのは、やはりちまたで物すごくたくさん出ていると思うんですね。そういう意味では、そろそろちゃんと出口の議論というのを私はしなきゃいけないんじゃないか、それはある意味必要なことだというふうには思って、ずっとそれは、早く出口の議論をやろうよやろうよといろいろなところで言っていたんですけれども。

 そろそろ、このオミクロン株を違うものだというふうに考えるのであれば、今が一番いい契機だというふうに思うんですけれども、そうなったときにどういった見通しとかがあるんだろうということを、なかなか、先生、ここでお話しされるのは難しいのはもう百も承知なんですけれども、あえて聞きたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

脇田参考人 大変難しい御質問だと思いますけれども、ただ、オミクロン株というものの特徴を踏まえて、そういった今後の見通しというものも一つ考えるきっかけになると我々も考えています。

 これは、先ほども、若者から感染拡大が始まり、そして小児、あるいは高齢者に感染が広がっていくという特徴があるというふうに申し上げましたけれども、例えば、じゃ、今の感染流行の状況がどうなのか、感染の中心はどこにあるのかということで、必要な対策、これまで飲食店の様々な時短要請であったりということをお願いをしてきた、だけれども、そこをいつまで続ければいいのか。それから、これから先は、やはり高齢者施設であったり、あるいは小学校や保育園といったところの感染対策というものに軸足を移していく時期ではないか。あるいは、移動の制限とかもいろいろ議論をされていますけれども、そういったところでも、家族で旅行をしてその先でリスクの高い行動はしないというようなことは、ある程度これから許容をしていくような、そういったこともあるでしょうし。

 ですから、リスクに応じた我々は対策というものを取りながら、生活を元に戻していくということを考える時期にあるんだというふうに思っております。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 なかなか言うのは難しいと思うんですけれども、僕は、これは先回りして、早め早めにインフォメーションする。もしかしたら間違いが起こるかもしれないとはもちろん思うんですけれども、早め早めにきちんとインフォメーションをするということで、僕は、国民の皆さんは理解をしてくれる。たとえそれが結果的に間違ったとしても、きちんとインフォメーションして早めに教えてあげる、見通しを示していくということが僕は大事かなと思っていて、今、同じ医師の立場から見ても、何か失敗をしないようにしないようにというような、そういう守りに入っているところがすごくあるかなとどうしても思ってしまうんですね。先生のお立場からするとそれは非常に大変なことだろうとは思うんですけれども、やはり、早めにいろいろな見通しをインフォメーションしていく、こうなったらこうなるよというような、アルゴリズムではないですけれども、そういったものを国民の皆さんに示すということが僕は大事なのかなと。

 でないと、何か、世の中みんな、梅雨明けになっちゃって、海に行こうぜ、海に行こうぜと言っているのに、梅雨明け宣言はいつしようかという議論をしているような、そういう事態になってしまうような気がするというのは余りみっともいい感じじゃないなというふうにいつも思っているんですけれども、是非その辺の御検討をお願いしたいなと思います。

 河野先生に一点だけ、ちょっとお話を伺いたいと思います。

 先生の出された資料の中の四ページ目に、治験プロセスが遅延しているというのがございました。今回の国会でも、薬機法で緊急にもっと早く薬剤承認をしようというような改正案も出されるところでありますけれども、私は、そういう、早く承認しようという法律を作るとともに、治験の部分のハードルをもっと下げないと、そこはカップリングしていかないと、幾ら法律を作って早く承認するルールを作っても、結局できないという結果になってしまうというふうに思っているんですね。

 今の治験プロセスというのは、私も治験をやったことがありますけれども、非常にハードルが高くなっています。そこのところはやはり上げ下げをする必要があるというふうに私は思うんですけれども、先生の御見解を伺いたいなと思います。

河野参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身も、大学病院で勤務していたときには、抗菌薬の治験をたくさんしてまいりました。当然、当時は日本でたくさんの抗菌薬が開発されて、そして、これに対して、やはり質の高い治験をということで、治験ができる施設はGCPに準拠した極めて高いストリクトなものに沿った治験しかできない、それ以外のデータはもう認められないということでやってまいりました。

 今回、私が最も感じますのは、先ほどもちょっと述べましたように、大きい病院で重症者を診る、治験ができる病院というのは、どちらかというと重症者をしっかり診る病院になってしまっております、コロナに関しては。そういったところでは、例えば軽症の経口薬の治験というのは不可能です。患者さんも来ませんし、そこに人材を割くのは現実的でありません。今回のようなパンデミックに際して、経口薬は絶対に必要であります。これがないと、今後、どんな展望を出しても、もう本当に絵に描いた餅です。したがって、軽症者の治験をそうしたらどこでやるのかということになります。

 従来どおり極めてしっかりした精度を求めるというのはなかなか厳しい。そうなると、しかし、質は捨てていいのかという議論も出てきます。だからこそ、やはり、ここでオンライン、DXを用いて、例えば開業の先生でも、その患者さんの情報は、ちゃんと治験の評価に必要な情報は取れるんだといった、今までにない治験のシステムをやはり構築すべきだろうということで、今までのGCP準拠という、違ったやはりクライテリアがそこに必要になる。

 当然、そこはやはり、国が新しい薬として認めるからには、それは質も必要でしょうけれども、今度は、こういった非常事態において、いかに迅速に必要な患者さんを集めるかという、また別のシステム構築が絶対に必要で、今までのようなやり方だけでは、これはもう不可能です。全て海外から開発された、海外でたくさんの患者さんがおるところで行われたものしかできない。せっかく日本の製薬業界で優秀な薬ができてきても、それが人に使われるとなると、やはり日本人での効果と安全性が必要ですから、やはり、議員おっしゃるように、別の方法を議論すべき、早急に議論すべきだろうと考えております。

 以上です。

松本(尚)委員 ありがとうございました。

 その辺りのところも、我々の側で治験のプロセスというのを高いハードルを一旦決めてしまうと、それを下げるということはなかなか難しい部分もあります。是非、先生方からそういった意見をたくさん出していただきたいなというふうに思うわけであります。

 最後になりますけれども、脇田先生にももう一度、質問というよりも意見ですけれども。

 出口の議論というのを先ほど私、させていただきましたけれども、これはもう最終的には政治判断になるかなと、もうこれでいいよという話は。ただ、それについて、言い出しっぺは誰になるかということがすごく大事だと思っていて、やはり、医療の専門家の側がきっちりと言い出しっぺになってあげないと、政治家の、こちら側に立っていると、なかなかそれって言いづらい部分というのはあると思います。おまえ、言えといえば私は幾らでも言うつもりなんですけれども、そうはいかない部分はあります。

 医療が逼迫してくると、当然、トリアージをやらなきゃいけませんし、トリアージをやるということは、ある意味、誤解を恐れずに言えば、高齢者の人からそういった医療の提供を絞り込んでいくということにもならざるを得ませんから、やはりそういうことも含めて医者が言い出さなきゃいけないというふうに思っています。

 脱コロナ宣言とか収束宣言とか、そういったものも同じだと思うし、やはり是非、医師を含む、まあ、私も含んで結構ですけれども、先導して議論を始めるべきだと思いますから、是非、アドバイザリーボードには、そういったことも含めて積極果敢に攻めていただきたいなというふうに思うんですけれども、最後に先生、その辺りのところ、御意見を伺いたいと思います。

脇田参考人 ありがとうございます。

 アドバイザリーボードは、基本的に医療あるいは公衆衛生の専門家が集まって、リスク分析、リスク評価というものを行っております。ただ、分科会というものもございまして、コロナ分科会では、医療だけではなくて、経済の専門家であったり、あるいは社会学、あるいは自治体であったりと、幅広い方々が集まって議論をしています。

 我々も、そういった場だけで議論をしているわけではなくて、そういった経済の専門家あるいは社会学の専門家とも常日頃から意見交換をして議論をしておるところでございますので、そういった出口戦略というのは、やはり医療だけではなかなか、我々はどうしても患者さんを守るというところに集中をしがちですので、そういった経済あるいは社会、自治体の先生方からの御意見も伺いながら考えて、それで意見を集約していくべきだと考えております。

松本(尚)委員 どうもありがとうございました。これで私の質問を終わります。

根本委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。

 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹です。

 本日は、四名の参考人の皆様、お忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速質問をさせていただきたいと思います。

 まず、村上参考人に伺いたいというふうに思います。

 意見陳述の中でも述べられましたけれども、雇用保険制度の財源の一部であります国庫負担割合について、政府は、現在、本則四分の一、二五%としているものを、雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化している場合は四分の一とし、それ以外の場合は四十分の一、つまり二・五%でございますけれども、に大幅に引き下げるとする雇用保険法改正案を今国会に提出しております。これについて、連合は、極めて遺憾であるという談話を発表されました。

 コロナ禍で、やはり雇用調整助成金が雇用や企業の経営もしっかりと下支えしているというふうに私も思っております。このような状況の中で、国庫負担割合、これが見直されることについて、連合として、再度、もう一度、お考えというか、また問題点だとか、そういったことをお伺いしたいというふうに思います。

村上参考人 先ほどの意見陳述の中でも述べましたけれども、雇用保険の国庫負担というのは、国の雇用政策に対する責任を示すものだと思っております。この間、本来は四分の一だったところを時限的ということで、雇用保険の財政も豊かでありましたので、十分の一を掛けまして四十分の一、二・五%にしてきたということはやむを得ないというところで、労働政策審議会などでも対応してきたところです。

 ただ、今回はその四十分の一の期限が切れるところでありますし、また、こういったコロナの中で、雇用情勢が大変厳しくなってくるところの中で、今こそ国の責任というものを示していただきたいということで、労働政策審議会などでは労働側の委員は主張してきたところでございます。

 この点は、労働側だけではなくて、使用者側、また公益側も、その点、主張されてきたところでありますが、こういった結果になっているということで、私どもとしては、やはり四分の一という本則を大事にしていただきたいというふうに考えております。

道下委員 私も、先ほどの出していただいた資料も含めまして、今財源が枯渇している中で、なぜ政府がこの国庫負担割合を本則、原則、つまり四十分の一にする、これはちょっと、どうしてそのような考えにするのか。先ほども村上参考人おっしゃいましたけれども、そういう、今回、雇用調整助成金、使われていますけれども、財源が潤沢にある場合は暫定的に四十分の一にすることはあり得ても、枯渇しているときになぜ法改正してまで四十分の一に本則を引き下げてしまうのか。これは本当に不思議でならないというか、我々は、これは本当に、連合とともに、遺憾というふうに思っております。

 そうした中で、今、本当に雇用調整助成金等で何とか雇用が維持されているという中で、ただ、やはりコロナ禍で、働いている皆様に本当に多大な影響が出ている。そして、業種によって様々、濃淡はありますけれども、多くの方々にコロナの影響が及ぼされていると思います。

 私、その中で考えるのは、やはり非正規雇用であったり、あとは、お子さんを育てている御家庭の親御さん、働いている親御さん。そうなると、やはり女性の方々に特にこのしわ寄せというか影響というかそういったものが出ているのではないか、影響の度合いは深刻ではないかというふうに思っております。

 連合として、この点について、どのように認識をされ、またどのような支援策等が必要なのか、お伺いしたいと思います。

村上参考人 ありがとうございます。

 この間、先生がおっしゃるように、雇用の、コロナによって最も多くの影響を受けたのは、やはり一番弱い立場の方々だと感じております。それは、女性であったり、特に非正規雇用で働く皆さん方。そして、大きな影響が出ているのは、この間、職場がなくなったり、あるいは月収が落ち込んだりしていることで、お子さんを育てながら働いている女性の方々には大きな影響が出ているというふうに感じております。

 この点については様々なところで調査なども行われておりますが、労働政策研究・研修機構などの調査においても、特に子育て中の女性の生活を圧迫している、貧困化しているということが指摘をされております。

 こういったことは、今、今々の問題もございますが、社会的な格差につながりかねないと考えております。

 この女性の貧困というのは、今出てきたわけではございませんで、元々、女性、再就職をした場合に非正規で働くといったことや、初職から非正規で働いていて所得が低いといったこと、また雇用が不安定だというところから出てきた問題でありまして、それがコロナ禍によって顕在化したというふうに受け止めております。

 抜本的には、中長期的には、やはり非正規の働き方、非正規雇用の皆さんの処遇を改善していくということが重要と考えておりますが、今どうしていくのかということについて言えば、公的な相談体制を整備するということや、先ほども意見陳述にございましたが、NPOの方々、民間団体の方々が様々支援しているという状況にありますので、そういった方々への、そういった機関への財政的な支援も重要と思っております。

 また、新型コロナウイルス感染症対策関連では様々な事業が民間委託、本来公共でやるべきものが民間委託されておりますが、そういったところで雇用を創出していくといった工夫も重要ではないかと考えております。

 以上です。

道下委員 ありがとうございます。

 やはり、これまでのしわ寄せ、なかなか、我々も訴えてはきましたけれども、やはり今回のコロナ禍によって様々な、社会、経済、また政治や医療、教育における課題が浮き彫りになった。それがやはり非正規雇用だとか、やはり女性の置かれている立場とか、これは本当に厳しいところに置かれていたということが今回如実に表れたんじゃないか。そのために、しっかりと変えていく、政策として支援をしていく、そうしたことにつなげていきたいというふうに思います。

 ありがとうございます。

 次に、瀬戸参考人にお伺いしたいと思います。

 本当に胸にじいんとくるというか、本当に私も、様々な、テレビや、あと、超党派の議員の皆さんとともに駆けつけて、そして支援をして、住居だとかまた生活費を提供する、こうした活動に本当に心から敬意を表したいというふうに思います。

 そうした意味で、こうした皆様の活動は本当にすばらしいというふうに思っております。皆さん、本当に、NPOやボランティアや様々な民間団体でされています。こうしたものは必要であり、そして、皆様が行政の様々な支援制度、窓口にお連れして、そして、そうした支援政策につなげていくということは大事だ、私はそのように思います。

 でも、これがずっと続いていいのかと私は思います。

 つまり、何かというと、こういった社会的弱者の方々や、今回コロナで様々な影響を受けている方々に対しての問題というか課題というか、こうした方々が、今我々は、参考人の皆様、瀬戸参考人のお話だとかマスコミ等でも分かっている。行政も分かっている。でも、そのままではいけないと私は思うんです。そのために行政サービスがあって、そうした皆様がやっていることを少しずつでも、私は、理想は行政が、もちろんマンパワーと予算が必要です、そうした中で、皆様がやっているような活動を行政も、若しくは行政がしっかりとやるべきだというふうに思っているわけであります。

 そうした意味で、今この困窮者支援の活動をされている皆様、瀬戸参考人におかれましては、そうしたことも含めまして、今、窓口が本当に消極的というお話もありましたけれども、今、本当にどのようなことを行政に求めるのか、行政は何をすべきなのか、国は、自治体は何をすべきなのか、是非お伺いしたいと思います。特に女性だとか若者の今貧困ということがありますので、そこにちょっと絞っていただいて、お話をいただきたいと思います。

瀬戸参考人 ありがとうございます。

 僕自身が今感じているのは、今日は余り時間がなくて触れなかったんですけれども、非常に今感じているのは、例えば、生活困窮者自立支援が第二のセーフティーネット、第三が生活保護ですね。行くと、第二のセーフティーネットと第三のセーフティーネットが分かれているんですね。

 例えば、今日、文書の中に入れていますけれども、緊急の即日貸付けと書いているじゃないですか。例えば、本当に、先ほど出ていたように、今日ガス、水道が止められる、そうしたときにどこに行けばいいんだ、そうしたときに問合せ先がやはり分かれていくんですね。その中で、やはり、例えば、自立支援のところではこれはできません、生活保護のところではこれはできません、そうしたときに、ワンストップサービスといいながら切れているんですよね。そこを具体的にちゃんとつなげる役割、例えば、家がない人たちが生活保護申請に行ったときに、自立支援のところで一時生活支援事業があるじゃないですか、そこと生活保護のところの居住のところが完全に現場でいうと分かれています。そういうところの抜本的な見直しが非常に必要だなというふうに感じているんですね。

 やはり、この間非常に感じているのは、二〇〇八年から二〇〇九年の年越し派遣村のときの状況と今の状況は本当に変わっています。そういう意味でいうと、今の制度設計が、具体的にこれだけの若者とか女性を想定していない制度になっている、ですよね。ですから、今の、今回経験したコロナ貧困の中で、若者や女性たちの状況に対してどうやって具体的にアプローチしていくのかという制度設計について、もう一回見る必要がある。

 僕がもう一つ若者で気になっているのは、僕らが駆けつけして、そうしたときに、親も大体貧困なんですよ。ほぼ、僕らが駆けつけする人はやはり大学に行っていないわけですね。高卒だとか高校中退です。虐待とかあります。

 そうしたときに、学生の時代からちゃんとしっかり、そういうような、本当に経済的に厳しい家庭の子供たちに対しての具体的な支援、そうしていかないと、多分、その頃から、例えば部屋が狭くて勉強をする環境にないとかそういう問題があって、もう最初から、彼らが本当に十八、十九、二十歳になったときの格差がすごいんですよ。それで、彼らが非正規しかやはり仕事がなくて、先ほど出たように、ほとんど住居がない。ですから、そういうような段階からの、具体的にしっかり捉えていくという政策がやはり必要ですね。

 女性については、先ほど、連合の方がいらっしゃっているので。非常に気になります。この間、女性の人たちが、先ほど、文書には書いていないかな、公園の中で、公園のトイレの中で夜中うずくまっているんですね。そうしたときに、女性が相談に行ったときに、女性のやはり保護施設が全然少ないんです。どこにも行くところがない。DVの一時保護施設についても非常に不足しているし、そういうところについても、僕自身、現場の中でそういう実感をしているというところです。

 済みません、不十分で。

道下委員 ありがとうございます。

 制度と制度のこの隙間というか、これをちゃんとつながるような、やはり仕組みが必要だというふうに伺いました。ありがとうございます。

 次に、脇田参考人に伺いたいと思います。

 第五波そして第六波、今コロナの死亡者数がほぼ同じに、八十九人、九十人になりました。やはり、この第六波について、これだけの感染が広がったのはオミクロン株だと思いますし、私は、もう一つ、政府は専門家の皆さんのお話をもっと伺うべきではなかったのか。つまり、コロナ分科会、実は今日開かれると伺いました。でも、前回は十一月だった。こんなに、もう三か月も空いている。なぜ政府は、この十月、十一月、十二月、コロナの感染が収まっているときに、しっかりと専門家の皆様からお話を伺って、取るべき、これからの最悪のことを想定しつつ、何をやるべきなのかということをしっかりと専門家の皆様から意見を聞くような場を、適宜しっかりとやってこなかったのが、私は、今回コロナの第六波を迎えている要因ではないか。

 特に、年末年始の人流抑制などは、昨年はしっかりとやったんです。今回は、国民に対する呼びかけが弱かったのではないか。さらに、検査キットが不足しています。そして、ワクチンの三回目の接種も、もっと早くやればできたと思っています。

 こうした様々な、先を先を見通して提言をされている専門家の皆さんの意見を政府は聞いていなかったのではないかというふうに私は思いますけれども、是非、脇田参考人から御意見を伺いたいと思います。

脇田参考人 御質問ありがとうございます。

 確かに、この第六波というのは、これまでのいわゆる第五波までとはかなり違う感染症の様相を示しているということで、非常に感染速度も速いということで、素早い対応が求められてきたというふうに思っております。

 専門家の間でも、これまでと違った対応が必要だということで、様々な提言を我々専門家有志の間でまとめて、それを政府にお願いをするということで、アドバイザリーボード等でも提言を出し続けてきたというところです。

 ですから、そういった提言を、アドバイザリーボードだけではなく、コロナ分科会というところでも意見交換をしたいというのは、我々専門家も考えているというところです。

 そういったところでの議論を踏まえて、更に対策につなげていただくということが重要で、専門家、我々、リスク評価、分析というのをアドバイザリーボードで行っていますけれども、リスク管理については、やはりコロナ分科会でしっかり議論をしていくということが必要だと思っております。

道下委員 ありがとうございます。

 もう一つ、今オミクロン株の中、今主流はBA・1なんですけれども、BA・2が確認されて、広がりつつある。こうすると、今、これからもしかしたら収まるんじゃないかと思われているものが、どんどんまた収まらない。また更に感染力が強いBA・2が広がって主流になってくると、これは長い第六波になってしまうんじゃないかというふうに思いますが、どのような見通しをされていますでしょうか。

脇田参考人 BA・2系統についての御質問だと思います。

 現在、BA・1が国内では主流になっているというところですけれども、BA・2についても、検疫ではかなり割合が高くなってきている。つまり、これは海外においてBA・2がかなり増えてきているということを示しております。

 BA・1とBA・2の違いを分析しておりますけれども、約一五%程度、感染伝播力が高いという分析であります。

 したがいまして、BA・1をこれからBA・2が凌駕してくるのかどうなのかということは、モニタリングをしていくわけですけれども、現在の感染対策ですね、蔓延防止等重点措置であったり、あるいはそれ以外の対策というのが取られておりますので、そういったものでBA・2の感染拡大も抑えられてくるのか、あるいはBA・1に置き換わってBA・2が更に感染拡大に向かうのかといったところは、今のところ、実効再生産数で見ますと減少傾向が続いていますので、今後の推移を見ていく、ここで置き換えが起きてくるのか、それともこのまま減少傾向がBA・1もBA・2も続いていくのか、そこはしっかり見ていく必要があると考えております。

道下委員 ありがとうございます。

 次に、河野参考人に伺いたいと思います。

 やはり私も、河野参考人と同じように、医療とか命を守るもの、つまり、今回はワクチンだとか薬だとか、そういったものは国産化をすべきだと思います。そのための研究開発予算が足りなかった。今の高齢社会に向けて医療費の予算を抑制するためにこういうことになってきたと思うんです。だから、私は、こういう研究開発予算に政府の予算をもっともっと拡充すべきだと思いますけれども、河野参考人のお考えを伺いたいと思います。

河野参考人 御質問ありがとうございます。

 どうして、今回、我が国でのワクチンの開発が遅れたかというと、やはり、米国の状況を見てみましても、例えばNIHから研究機関に渡った予算はもう圧倒的な違いがございます。これ一つもってしても、なかなか、やはり今回のメッセンジャーRNAのような新しいタイプのワクチン開発というのが出遅れたなと。

 結局、皆様も覚えておられると思いますけれども、コロナも、今回でなくて、SARS、MERS、ああいったものがあって、諸外国では随分騒いだ、我が国には幸い何も来なかった。また、十数年前には、インフルエンザのパンデミックでしっかりした対応策を提言されていながら、喉元過ぎれば熱さ忘れるで、しっかりした系統が続いていない。

 基礎研究にしてもそうであって、やはり、もちろんイノベーションは大切なんですけれども、ベーシックなリサーチに対して、国は、これはやはり国民のために必要なんだという意識をしっかり持っていただいて、先ほど、感染症はやはり国防だという気持ちでずっと継続的にしっかりした予算をいただくことがやはりその領域の研究者を増やすということじゃないかなと。

 それと、当然ながらそれを実際の薬にする製薬メーカーに対するやはり産官学の連携をしっかりするということで、目の前の効果、利益だけにとらわれるのではなくて、やはり継続的なしっかりした国策としてのそういった対応が必要じゃないかと考えております。

 以上です。

道下委員 四名の参考人の皆様、ありがとうございました。これで質問を終わります。

根本委員長 これにて道下君の質疑は終了いたしました。

 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 参考人の先生方、今日はありがとうございます。脇田参考人中心に伺うこと、時間の制約がありますので、お願いしたいと思いますが、最後に村上参考人にも雇用保険のことで少しお伺いしたいと思います。

 まず、脇田参考人、大変お忙しい中、今日もありがとうございます。

 オミクロンについて、るる議論があります。今、ちょっと最後、新しいタイプが少し入ってきているということですが、感染力は高そうだと。毒性はどんな感じでしょうか。

脇田参考人 お尋ねは、BA・2系統ということだと思います。

 オミクロン株、これはBA・2系統もデンマーク等で今感染拡大をしているということでありまして、感染力、感染伝播力に関しては、その分析で、先ほど申し上げたように、やや高いのではないかということがありますが、重症度、ここが非常に重要なところだと思うんですけれども、いまだに十分な情報がなくて、ただ、入院率に関しては、BA・1、元々の主流の株、これと差がないのではないかといった、これはデンマークの感染研と同じような機関から報告がされていると思います。

足立委員 ありがとうございます。

 少し、安心してはいかぬのですが、また新しいというか、重症化率というか、毒性が余り高いとちょっと怖いなと思いましたので。また、しっかり注視をしていきたいと思います。

 そのオミクロン株ですが、別のウイルスと思った方がいいというか、先生方も、六波はかなりこれまでの五波と、例えばデルタとオミクロン、かなり違うということはいろんな、各所から私たちも聞いております。

 そういう中で、ちょっと抽象的な御質問になりますが、ウイルスの性質と、国会、政府、立法府が用意している制度、これが少し追いついていないというか、オミクロンの性状、性質に対して、法令を始めとする制度が少し追いついていないという印象を私は持っていますが、ちょっと抽象的なレベルから、ちょっと後でブレークダウンしていきますが、抽象的にはそうお感じになることはありませんか。

脇田参考人 この第六波において中心になっているオミクロン、デルタも一部まだ残存しているわけでありますけれども、非常に、重症度からいきますと、軽症の方が多い、特に若者中心にということになりますと、例えば入院勧告であったり様々な措置ですね、そういったものが、これが適切なのかといったところの議論があると思いますので、そういった措置を柔軟に適用できるといった体制は、もちろんウイルスの株がどんどん変わっていくということがありますので、そういった柔軟性というものは必要だと感じております。

足立委員 その柔軟性ということで、先日も我が党は、日本維新の会のコロナ対策本部として厚労大臣のところに、二類相当、感染症法における新型インフルエンザ等感染症という、法律上位置づけてしまっていることについて問題があるんじゃないかと。ここはやはり柔軟に、五類相当。

 法律の技術的な、法技術的な取扱いはまた法律の専門家が議論すればいい、私たちが議論するわけでありますが、今、二類相当に法律上位置づけていることに伴うメリット、なぜ必要かというと、何か、いやいや、税金を投入できるんだとか、あるいは入院勧告だとか、あるいは隔離だとか、いろんな議論がありますが、私、いずれもそのメリットは大分減ってきている、入院と隔離に係る、二類相当に位置づけておくことによる強制力とか、そういうメリットはもう余り必要なくなってきていて、むしろ逆に、それらで縛っていることに伴うデメリットが増えてきているんじゃないかと思っているんですね。

 例えば、よく耳にするのは、濃厚接触であるだけで、もう一般の医療機関には入れてもらえない。交通事故で骨折をしたら熱が出て、熱があるということで、指定医療機関でしか入れてもらえない。

 私は、今の病床の、増えてきていますね、重症病床も増えてきています。でも、その半分は、実はコロナは、オミクロンは軽症だというふうに吉村知事からも私たちは聞いています。

 申し上げていること、御理解いただけると思いますが、結局、今の二類相当と位置づけていることによって増えている、指定医療機関の病床逼迫ということが起こっているとすれば、二類相当に位置づけていることのメリットよりもデメリットが増えてきていると私は強く懸念を持っていますが、もし、お立場上いろいろあるかもしれませんが、是非忌憚のない御意見をいただきたいと思います。

脇田参考人 お答えしたいと思います。

 多分、今、二類相当に置かれているということの主眼は、一つには、感染症の蔓延防止ということがありますし、それから医療体制をしっかりコロナ感染症の患者さんに届けるということでありますので、そういったメリットは十分に、いまだにあるんだと思っております。

 ただ一方で、そういった、社会機能を維持するために様々デメリットが出てくる。例えば、濃厚接触者であったり、それから陽性者となった場合も療養期間が非常に長いというところも。そういったところは適宜、科学的なエビデンスに基づいて緩和をしていくということの対応は必要だと考えております。

 それから、通常の医療がかなり逼迫をしてしまうということは、コロナ病床を確保するということで、特に現在、冬でありまして、様々な急性疾患、心筋梗塞であったり脳血管障害であったり、あるいは、もちろん外傷もありますし、そういった方がしっかりと医療を受けられるというのは、元々もうかなり厳しい状況で、この日本の医療体制があったということですので、そういったところを少し、コロナ病床が空いていればそこを本当に柔軟に動かせればいいんですけれども、なかなかそれが難しいというようなところもあります。

 一方で、五類相当にしてしまって、これは季節性のインフルエンザと同じようにするということになりますと、例えば、外来に、クリニックにかかったときに、高齢者の方がたくさんいらっしゃいますが、そこに、隣に今までもインフルエンザの方はいたかもしれない、だけれども、今もコロナの方が同じところにかかってきていて、それが分からないような状況になるということで、そういった状況を本当に許容できるのかといった問題もあるんだと思います。

 ですから、そういった、コロナが高齢者にとって非常に重症度が高い疾患であることはまだ変わっていませんので、そういったところも見ながら、それについて検討していく必要があると思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 結局、一般の医療機関と指定医療機関、コロナを扱う、これが二分されているんですが、私も、一般のところにコロナの感染のおそれのある方々がどんどん混ざっていくということがいいとは思っていません。しかし、今は指定医療機関にぐっと負担が、負荷がかかり過ぎて、そこには、コロナは軽症で全く入院の必要はないんだが、原疾患が悪化をしたためにそういう重たい状況になっている方が半数以上いらっしゃる。

 つまり、もう少し、ある程度、感染予防というか、部屋を分けるとかそういうことは必要にしても、今の状況は、制度がつくり出している病床逼迫という側面が強いので、私はもう少しそこの、指定医療機関と一般の医療機関のところの柔軟性が要ると思いますが、いかがですか。

脇田参考人 ありがとうございます。

 現在の制度でも、一般の医療機関でもコロナ感染症患者を診察することは可能だと思うんですね。ですから、やはり、これだけ感染者が増えてきますと、感染管理等のノウハウといいますか、そういったものも一般の医療機関でかなり、均てん化といいますか、入れていただいて、そして、そういった患者さんも診れるような体制というものをつくっていくということも必要なことではないかというふうに考えております。

足立委員 どうも御丁寧にありがとうございます。

 ちょっと話題が変わりますが、引き続き脇田参考人に伺いたいのは、特措法が、過料がさきの改正で入りました。そのときに、内閣法制局を含む政府の中でいろいろ議論があったそうでありまして、やはり、飲食店の方々に強い規制、要は罰則をかける、過料ですが、罰則をかけるに当たっては、これは近藤法制局長官の言葉をかりれば、不用意に広がらないように、その措置が、その規制が。要は、緊急事態宣言とか蔓延防止等重点措置とかを発令した途端に罰則がかかるわけです、国民の財産権、営業権を規制するときに罰則でやるわけです。そうすると、不用意にその措置が、安易に発令されるとか、不用意に広がるとか、本当に疫学的な見地から、ここはどうしてもその措置を講ずる必要があるのだと、そこに絞っていく必要があるんだということは、これは内閣の見解として、内閣法制局の見解として国会でも表明をいただいています。

 そういう中で、法律にも専門家の意見を聞くと書いてあるのは、別に審議会とかあれを開いて意見を聞いたらいいということじゃなくて、今申し上げたように、科学的、疫学的な見地から合理性がなければ駄目だということですよね。

 そういう中で、今オミクロンの特性ということを踏まえたときに、本当に緊急事態宣言が有効なのか。そこはやはり、それの専門家が有効だとおっしゃっているのであれば、根拠を持ってですよ、科学的、疫学的に有効だとおっしゃっているのであればありですが、そうでなければ、これは違憲になります、違法になります。要は、憲法二十六条だったかな、財産権を侵害することになります、過度に。

 脇田参考人に伺うのは、今のオミクロンに係る知見を踏まえたときに、緊急事態宣言になだれ込んでいく、を発令することの科学的、疫学的な根拠はあるとお考えですか。あるのであれば、その一端でも御紹介をいただきたいと思います。

脇田参考人 御質問は非常に難しい御質問だと思いますが、緊急事態宣言あるいは蔓延防止等重点措置、それが、発令が直ちに効果があるのかということは、なかなかそれはお答えが難しいと思います。

 感染それから流行の状況と、それから緊急事態宣言あるいは蔓延防止等重点措置でどのような対策を行うのかということで、適切な対策が行われれば、これは当然効果が認められるということになると思いますし、それが、例えば飲食店が流行の今状況の拡大の中心要因だというときに、どういった措置でやるかは別にしまして、飲食店への対策が行われたとすれば、それは感染拡大の要因を止めることができるということになりますので、緊急事態宣言だけがどうかという御質問にはなかなか答えるのは難しいんですけれども、措置が適切であることが必要だというふうに考えます。

足立委員 ありがとうございます。

 まさに、その措置が適切かどうかということについて政府は専門家に意見を聞くことになっていまして、基本的対処方針も含めて、それは、基本的対処方針を定めるに当たって、専門家の皆様の御意見を伺うことになっているわけです。だから、今の基本的対処方針が、特定の方々に罰則つきで規制をすることが有効であるということを科学的、疫学的にバックアップしていただかなければ、これは私は違憲になると思っているんですね。

 だから、今、昨日も蔓延防止、追加をされました。これから東京だどこだということで、緊急事態の議論もあります。政府は、オミクロン株に対応しているよなと私たちが納得できるような基本的対処方針になかなかしてくれません。そういう中で、私は、このまま緊急事態宣言を発令することは違憲だと強く思っています。

 専門家として、それは私たちが、専門的な見地から、冒頭申し上げたような、必要な科学的、疫学的知見は持ち合わせているのであるということでいいでしょうか。

脇田参考人 御質問の趣旨は、多分、専門家が、もし緊急事態宣言が発令される場合において、我々専門家が疫学的に十分なエビデンスを持っているかというところですけれども、当然、流行状況については、そのときの状況、これを分析して御報告するということでありますので、ただ、そのときの状況というのは分析はできるわけですけれども、必ずしも十分な情報が全て整っているかというと、そこは、分析を行うということで補完をするということになります。

 ですから、今、緊急事態宣言が必要かどうかということを問われているわけではないと思いますので、そういったことを問われる際には、我々としては、十分にデータを分析をして、それを提出をしたいというふうに考えています。

足立委員 ありがとうございます。

 脇田参考人を責めているわけではなくて、これは政府の責任なので、専門家の皆様の御意見を賜る、そして判断をするのが政治ですから、政治がしっかりと、立法府が認めた法令を遵守しているかどうか、これはきっちりと国会として精査をしているところであるし、今日も午後、私、内閣委員会で、山際コロナ担当大臣と今のこの点について、今日の脇田参考人の御意見も踏まえながら質疑をさせていただく予定ですので、また国民の皆様には御注目をいただきたいと思います。

 済みません、最後になりましたが、村上参考人、ありがとうございます。

 雇用保険財政、私は、大変問題があると。

 それだけではなくて、コロナ対応で、財政だけではなくて窓口、多分、ハローワークで雇用調整助成金とかいろんなものが措置されているけれども、要は、平時の仕組みなんですね、全て平時の仕組みです。

 税をどんと入れたのは、例えばリーマンで入れた。今回、コロナで二兆円ぐらい入れた。でも、そもそも雇用保険制度自体が基本的には平時の仕組み。有事にも同じ雇用保険制度で対応していること自体が私は間違っていると思うんです。平時と有事を立て分けて、有事法制、有事に対応した支援法制、これをつくらないといけないと思うんですね。

 例えば、ちょっと話題は変わりますが、社会福祉協議会、ここで、平時には、緊急小口資金、年間六百件ぐらい。これは、大阪府。大阪府の社会福祉協議会。年間六百件ぐらいですよ。総合支援基金、年間五十件ぐらいですよ。

 ところが、コロナでどうなったか。月間八千件とか、特例総合支援資金に至っては、ああ、もっとあるな、月間三万六千件。それから、累計でいうと二十万件とかになっているわけですね。ゼロが幾つ増えているんだ。ゼロがたくさん増えているわけです。同じ窓口でやっているんです。

 平時と有事をしっかり立て分けた議論をしない限り、雇用保険財政の議論も、私は本質的な議論はできない、こう思っていますが、御意見ありましたら教えてください。

村上参考人 雇用保険制度も同じようなところはございまして、やはり、通常の時期と、想定している経済状況の悪化、景気変動に対応して雇用調整助成金なども制度設計されてきているかと思います。その点、今回のコロナの急激な影響というものに十分対応できるのかどうか。

 給付の窓口については全国ハローワークがございますし、そういったところで十分かとは思うんですけれども、その仕組みを活用していくことが重要だと思っておりますけれども、ただ、制度の仕組みとか、雇用保険財政で全てをカバーするべきだったのかどうかというところについては、まだ様々検討することが必要だと思っておりますし、また、雇用保険制度のセーフティーネットの適用対象になっていない方々、例えばフリーランスの方々などについても、きちんとした制度は特段ございませんので、そういった方々をどのように救済していくのかということについて、こちらは、緊急時というよりは、むしろ通常時においても今後検討していくべき課題ではないかと考えております。

足立委員 時間が来ました。どうもありがとうございました。

根本委員長 これにて足立君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。

 四人の参考人の皆様、お忙しいところ、今日はありがとうございます。公明党の伊佐進一です。

 まず、冒頭、河野参考人に何問か質問させていただきたいと思います。

 ワクチン、治療薬の開発、国産ですね、この開発については、とにかくここ、開発、我々も相当力を入れて取り組んできたつもりです。コロナ禍が始まってほどなく、開発というものに注目をして、この開発のためのプロジェクトチームを立ち上げて、とにかく、いろんな専門家の御意見であるとか、あるいは開発している企業の皆さんの意見を聞きながら、これはというのをどんどん政府に、厚労省に対して後押しをお願いしてきたというようなことがありました。

 その中でお世話になったのが、今日参考人で来ていただいております長崎大学の河野学長。本当にお世話になりました。さっき、レムデシビルについても触れていただきました。一番最初のこれは承認された薬でありますが、このときも、いろいろ河野参考人にアドバイスをいただきながら、我々は三月に国会で使用を提言して、あの当時は、今理事でいらっしゃる稲津さんが副大臣をされていらっしゃいましたけれども、そのときも、厚労省の中は、レムデシビルという感じで、まだ全面的に厚労省もゴーという感じじゃなかったときに、いろいろ河野参考人からお話を伺って、これはというので、米国との共同治験が始まって、五月に承認されたというようなことがありました。

 その中で、今現在は、日本の国産の経口薬で一番進んでいるのが、今は塩野義と報道されていますので塩野義ですが、この塩野義の治験責任者が、長崎大学の迎先生、河野先生の直弟子だというふうに思いますが、本当に、今の開発の状況もよく河野先生も熟知していらっしゃるというふうに思いますので、ちょっとまず冒頭、質問は、日本の今の国産治療薬の開発の現状、これは、今後の見通しですよね、今治験されていらっしゃると思いますが、今どのような感触を持っていらっしゃるかということを伺いたいと思います。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

河野参考人 御質問ありがとうございます。

 皆様も御存じのように、国民の七割、八割が少なくとも一回、二回、ワクチンを受けている現状であります。

 ワクチンという場合には、開発という場合には、諸外国もそうなんですけれども、一回目、初めてワクチンを打って、そしてどのような効果が出るんだというところからデータを出す必要がございます。ということは、国産ワクチンであっても、今のような状況では、国内で臨床試験がすぐに進むかというと、極めて厳しい状況であります。

 ということは、何ができるかといいますと、既にワクチンを打った方に追加接種した場合にどのような効果があるのかという、そういった新しい評価法が導入されないと、幾ら立派な国産のワクチンができても海外で治験をせざるを得ないということになりますので、こういった基本的な問題は、日本の現状に合わせて、せっかく日本の国内の企業が頑張っているときに、やはり日本人でしっかりした検討ができるような、そういった今回の状況を踏まえた制度設計も是非お願いできればと思っております。

伊佐委員 今、ワクチンの話をしていただきました。

 これは経口薬も同じだと思うんですが、ちょっと私、当然これは、最終的にはPMDAがこの有効性と安全性というものを客観的にしっかりとここは判断していただいて、ただ、その上で、我々の思いとしては、国産、とにかく国産の経口薬、国産のワクチンというものをやはり安全保障上もしっかりと作っていく必要があるんだという中で、厚労省が本気で、国産がやはり大事だと思って一生懸命押してくれているのかなと思うと、ちょっと実は不安に思うようなときもあって、そういう観点で、せっかくこういう場ですから、政府に対して、もう少しこういうような支援があったらというのを是非言っていただければ。

河野参考人 ありがとうございます。

 先ほどもちょっと述べましたように、経口薬の新しい薬は、もう本当に、今から、コロナと、ウィズコロナで共生していく、コロナ後も考えると必須の薬剤です。

 皆さんも、ちょっと想像されると、今、インフルエンザになると、開業医の先生のところに行って、すぐに簡単な検査を受けて、十分か十五分後に診断をつけて、そして、インフルエンザだと診断がつけば経口薬を服用する。これも発症四十八時間以内ということで、早ければいい。

 ですから、全く同じような考えで、やはり、経口薬がないと、今後幾らコロナをどうするかと話しても、将来の展望ができません。そうすると、軽症の方、経口薬、外来で治験をどうやるかというところが、今までのPMDAではなかなか制度設計ができていない。

 先ほども述べましたように、しっかりした質の高いデータを取る、そういった治験のクオリファイされた病院でやるということは、実際、今のような、このような状況ではできませんので、やはり本気で考えるんだったら、これは外来でどうやるか。例えば開業の先生を使うのか、それとも、外来にそういった特別な施設を設けて治験を進めるのかとか、やはり本気で外来の経口薬をどうやるか。この場合には、やはりオンラインを使うことが極めて重要になるだろうと思いますし、そこを是非とも国には早めに考えていただければ、大変国民のためになる。

 やはり日本で作らないと、何かあって海外にこの薬を頼るだけでは厳しいのかなと考えておりますので、是非ともよろしくお願いいたします。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

伊佐委員 河野先生、もう一問だけ、ちょっと伺いたいと思います。

 ちょっともう一つ思い出話をさせていただくと、パルスオキシメーター、あれも河野先生からいろいろとアドバイスをしていただいて、今ではもうパルスオキシメーターって当たり前になっていますけれども、あのときは、ホテル療養をしても何もなかったというようなところの中で、酸素飽和度と呼吸数を組み合わせれば重症化が早期に判断できるんじゃないかというふうにアドバイスをしていただいて、あのとき、さっきの資料にもありましたコスタ・アトランチカ号、この対応で、これを採用されてやっていらっしゃった。

 これを受けて、我々の、公明党の相談にも大分乗っていただいて、国会でも取り上げて、ここから、ホテル療養であるとか自宅療養であるとか、こういうところにパルスオキシメーターの配備が始まっていったというようなこともございました。

 そこで、ちょっと今の現状なんですが、オミクロン株、五十歳未満で基礎疾患がなければ自宅療養というような状況の中で、とにかくこれは、自宅療養といえども、医療へのアクセスというのはちゃんと確保しておかなきゃいけないというふうに思っています。

 既にもう相当の数の方が今自宅療養されていらっしゃるわけで、その中で、重症化を防止する、自宅で亡くなるような方というのを、まさしく先生の本にも書かれている死者ゼロというふうにするためにはどういうところがポイントになるか、アドバイスをいただければと思います。

河野参考人 私、考えていますのは、先ほど述べましたように、もちろん、軽症の方で自宅療養、元気な方ということなんですけれども、報道にありますように、こういった方でも基礎疾患等があれば急速に重篤化するということで、パルスオキシメーターを含めた医療へのアクセス、ここがやはり重要で、公衆衛生と医療システム、これを本気で今回考え直さないといけないのかなと。

 ということは、先ほども御質問があっていましたように、コロナを診ないという診療所、病院がやはりあってはいけないと思うんですよね、患者さんは何でも一緒ですから。これはちゃんとやはり感染症に対する対応をしっかりすべきで、どんな患者さんが見えても対応できる。

 ですから、全ての医師がやはり感染症の患者さんにどう対応するか。そうすると、自宅療養されていても、その方のデータをどこかの例えばかかりつけの先生がちゃんと見られて、おっ、何も訴えはないけれども、これはちょっとやばいね、往診に行こうか、そういった、本当に公衆衛生と医療、ここを根本的に今回見直していただければ、大変、日本の医療もピンチをチャンスに変えるところになるんじゃないかなと思います。

 よろしくお願いいたします。

伊佐委員 ピンチをチャンスに変える、本当にそのとおりだというふうに思います。

 次、脇田参考人に何問か伺いたいと思います。

 この間、本当に、分科会の会長代理であったりとか、あるいはアドバイザリーボードの座長として事に当たっていただいて、まず感謝を申し上げたいと思います。

 ワクチンができて、経口薬もどんどんいろんな種類が今できてきているという中で、ただ、戦う相手も変異を繰り返しながら、今いろんな状況になっている。こういうオミクロン、今主流の敵でありますが、ただ、申し上げたように、武器は今どんどん増えてきているわけです。その中で、本当はもう第六波、これが最後になればいいなと思うわけですが、なかなかそうはいかないかもしれないという中で、どれぐらいこれから先続くんですかというような質問も先ほどありました。

 その中で、参考人がおっしゃったのは、リスクに応じた対応をしていくのが大事なんだということでした。ただ、そのためには、リスクを見極めることが大事だというふうに思っています。つまり、データとか科学的な対応に基づいて、どういう対応が必要なのかというのを考えていく。

 さっき、緊急事態宣言の話も、維新の委員、もう足立さん、いらっしゃらないですが、からありました。そのときにも、本当にこれは意味があるのかというようなこともおっしゃっていましたけれども。ただ、逆に、私は、自治体の首長の方こそがより安全サイドにいろいろと判断せざるを得ない、住民の皆さんと直接接しているわけですから。そういう観点では、奈良県知事は、今ちょっと、同調圧力に屈しないんだというふうに言っていらっしゃいますが。

 その中で、今のこの蔓延防止とか緊急事態宣言の在り方について、これは、だから、効果があるのかどうかという先ほどの質問じゃなくて、データに基づいてしっかりと対応すべきだという観点で伺いたいと思います。

脇田参考人 現在は、流行状況に応じまして、それでレベルの考え方というものを専門家の間では出しております。主には、医療の状況ですね、こちらを捉えながらその地域のレベルを判断していくというところで、レベル2になると強い対策も考慮する、レベル3になったら強い対策が必要というようなことでありますので。

 ただ、そこの、今流行しているウイルス株がどういう特性を持っているのかということによって、感染者数とか医療の提供体制に非常に大きな変化が出てくるということを、今回、デルタ株であったりあるいはオミクロン株、そしてワクチンの接種状況によってもそれが変わってくるということを我々は学んでいますので、今後、ワクチンの接種、三回目の接種も進んでくるといったときに、どういった方がリスクがあって、どういった方は大丈夫なのかということもしっかり見極めて判断をしていくということが必要だと思いますので、そういった情報を我々としては常に提供しながら、今の状況ではこういったところが非常にリスクが高いですよということも情報を提供しながら、そういった判断につなげていただければというふうに思っております。

伊佐委員 もう一問、伺いたいのは、ブースター接種の体制ですね。

 これは、今のままで本当に大丈夫かという、国会の中でもずっと議論がありました。供給量は確保されています、打つ体制をどうやってつくっていくかという中で、今回、自衛隊の大規模接種会場、これも、我が党も山口代表が相当強く働きかけて、その翌日に、この委員会質疑でも、自公、与党の二名それぞれからの議員の質問もあって、一日当たり五千回ということに拡大をしました。これは、でも、大阪は依然、まだ千回いっていないんです。これは何とかしなきゃいけないというふうに思っていますが。

 でも、今、現時点では、ようやく一日五十万回まで来ました。その中で、ただ、ちょっと、本当に厳しい現実は、二回目接種から六か月、七か月で打つので、もう分かっているわけですよ、何人来るか。分かっている中で、七か月前の状況を考えると、例えば、一日、当初少なかったのが百万回を超えて、七月、八月になったら百二十万回になって、百七十万回になって、最後二百万回を超えたような状況もあったわけですよね。その固まりがそのまま六か月後に、七か月後に来るわけです。

 そうすると、今のこの五十万回で大丈夫なのか。本当に、百万回でも実は足らないんじゃないかというような状況になると思いますが、これ、どうやって広げていくか、何がネックになっているか。この辺はちょっと専門的に、実際に体制を組むに当たって、アドバイザリーボードもいろいろ意見されていらっしゃるかもしれませんが、是非御意見を伺えればと。

脇田参考人 ありがとうございます。

 ワクチンが、一回目、二回目の接種と違って、地域の接種においては一回目、二回目はファイザーであった、それから、集団接種会場においてはモデルナ社のものを主に使われたというような状況があったと思います。

 今回は、どちらかというとモデルナ社のワクチンの供給が多いということですので、前回のような区分けがはっきりとなっているわけではなくて、地域の接種でも集団接種会場でも、どちらも選べるような体制にあるのかもしれません。

 ですから、そういったところで、例えばワクチンの保管状況ですね、これがデリバリーのときに、マイナス二十度であったり、マイナス七十度であったりというようなところの難しさが少しあるかもしれないということは伺っています。

 それからもう一つ、昨年の九月ぐらいから三回目接種の議論を始めましたが、その際には、自治体の方が、接種券の準備とか、それから三回目の接種の体制を整えるという準備が、なかなかやはり、あの時点では、前倒し、前倒しというのはかなり難しいというような状況があったと思います。

 ただ、今現状で、かなり、委員がおっしゃったとおり、五十万回の接種が可能になってきたというところで、我々としても接種の状況を見ていますけれども、ここまでなかなか立ち上がってこなかったところが急速に今立ち上がってきているという状況ですから、このペースで集団接種会場も更に開設されていくということを聞いていますので、ここで更に加速をして、委員のおっしゃる、百万回の方々が次々と来るわけですから、そこに対応できるような体制を取っていただく。接種券はきっちり届けていただければ、そういったところで対応が可能になるんだろうというふうに思っております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 次に、瀬戸参考人に伺いたいと思います。

 さっきのお話も私も聞かせていただいて、本当に胸に迫るお話を聞かせていただきました。その中で公明党の名前も挙げていただきまして、ありがとうございます。

 その瀬戸参考人のお話の中で、求職者支援給付金の話がありました。つまり、保険がない、雇用保険の対象でもない、こういう方々に対して、より職業につなげていくために訓練を受けていただいて、しかもその間給付金も出すというこの制度でありますが、より弾力的な運用をしてほしいというお話がありました。

 これは我々も大分政府の方にもお願いをして、要件緩和はしてきたつもりです。例えば、世帯収入が月二十五万以下という要件だったのを四十万以下まで要件は緩和したりとか、あるいは、欠席、これは研修を受けるのが当然、給付金を受ける、訓練が要件になっておりますので、ただ、欠席を何日したら駄目よというのがあります、このやむを得ない欠席、やむを得ない理由以外の欠席でも二割までは認められるとか、ちょっと柔軟にはしてきたつもりなんですが、更にこれはもう少しこうなったらいいよとか、もしあればいただきたいと思います。

瀬戸参考人 ありがとうございます。

 まず前提として、現場の中で、例えば、生活保護を利用されている人たちの現場のところで、なかなかこの制度が案内されていない。先ほど僕が答えたときに、生活困窮者自立支援と生活保護のところがつながっていないと。そういう話と全く一緒ですね。

 それで、本当に、この要件緩和については非常によかったと思っています。ただ、職種の問題とか、そういう職種のところだとか、例えば、この間、労働者協同組合法が、労協法が秋から制定されますけれども、例えばフリーランスの人たちだとか自営業の人たち、そういう人たちが具体的にいろんな職種選択をする中で、いろんなカリキュラムコースの中で、もう少しその範囲が拡大されればいいかなというふうに感じているんですね。今の職種でいうと、やはりなかなか限定がされるということです。

 僕ら自身が今関わる中で、若者たちが本当に、非常に、うつ病とか、やはり長期化の貧困の中で非常に精神的に苦しんでいるんです。この要件緩和で欠席率の問題は非常に助かったんだけれども、その中で、いろんな職種の選択とかいろんな職種の希望を聞いて、汎用性、その範囲が拡大できればいいかなと。

 最大は、やはり窓口で案内してほしいです。ほとんど、僕が関わってきている中で、本当に二、三人ぐらいしか案内がされていないわけですね。やはりその状況が一番でかいかなと。やはり、現場の中でまだ機能しづらいから案内できない、そういう状態になっていないかなということが非常に気になります。

 以上です。

伊佐委員 ありがとうございます。

 そろそろ時間になりました。村上参考人、質問するつもりだったんですが、時間になりまして、申し訳ありません。

 四人の参考人からいただいたお話、今後のコロナ対応にしっかり役立たせていきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて伊佐君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木敦でございます。

 四名の参考人の皆様、本日は御多忙の中をお越しいただきまして、誠にありがとうございます。

 また、新型コロナ対応につきましては、方々におきまして皆様の御協力をいただいております。本当に感謝を申し上げたいと思います。

 まず冒頭、村上参考人にお伺いしたいと思います。

 新型コロナウイルスが日本に上陸をしてから三度目の冬になっております。この間、働き方や生き方、過ごし方まで大きく変化がありました。その中におきまして、リモートワークですとか、あるいは出勤の抑制など、いろいろと現場でも御対応いただいているところではございますが、中でも、日本において、高度経済成長期以降、非常に薄く破れやすくなったのがセーフティーネットでございます。

 働いている仲間たちは、やはり守っていただいている部分もあり、また自分たちで闘っている部分もあるわけですが、今一例として、職場の労働組合や若しくは今現場で頑張っている仲間たちから、今回も御説明をいただきました雇用保険についてどのような懸念や不安があるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

村上参考人 ありがとうございます。

 先ほどの意見陳述の中でも述べましたけれども、今回、コロナの影響、雇用形態ということもございますけれども、産業や業種によって打撃の受け方は違うというところがございます。その中で、やはり交通、運輸関係ですとか、あるいは宿泊サービス、観光、そして飲食などの皆様方の産業には大きな打撃を受けていまして、休業を余儀なくされるといったところがございます。

 そういったところで、この雇用調整助成金という仕組み、あるいは在籍出向型の産業雇用安定助成金というものをつくっていただいたということで、雇用はつながっているということで、本当に大変ありがたいという声をいただいております。

 私ども、今、春季生活闘争ということで賃上げ闘争を、始まっているところでありますが、そういった会議体の中でもこの雇調金が大変重要だということの声が出ておりまして、そのことも踏まえて、やはり安定的な財政運営ができるような財源確保ということを是非お願いしたいと思っております。

 ありがとうございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 私も一般の会社で働いておりまして、一時期は労働組合にいたこともございましたが、その中でも、今まで働いている仲間たちを守ってきたセーフティーネット、国が本来昔はやってきたものが希薄になってきている。

 そして、正規と非正規の問題もございます。私も非正規だった時期が一時期ございました。そのときは、守ってもらえるセーフティーネットが正規とは大きく異なって、更に網の目が粗いものになっています。

 非常にこぼれやすいものに、システムになっておりますけれども、村上参考人、正規と非正規で、組合の方にも御相談、別々に取っていらっしゃると思いますが、特に非正規の皆様から今御要望ですとか御意見ですとかあるのであれば、教えていただけますでしょうか。

村上参考人 ありがとうございます。

 日常から私ども労働相談活動というものをやっておりまして、組合員以外の方からの御相談も受けているところであります。

 そういった中で、コロナに関して言えば、やはり休暇の問題などはありまして、十分、正社員であれば、有給休暇、特別休暇などで措置、休めるといったところがあるところを、非正規ということで、仕事をしていない日はもう欠勤となってしまうといったことがございます。

 また、シフト勤務の課題などもありまして、雇用はつながっているんだけれども、仕事の時間が減ってしまう、仕事の日数が減ってしまうということで、収入が減ってしまうといった御相談も寄せられているところであります。

 そういったことなども踏まえて、やはり、セーフティーネットとして、この間、制度としてはだんだん拡充をしてきております。元々パートタイマーは適用されなかったところをパートタイマーに広げて、さらに、雇用期間の継続の見込みのところについても、リーマン・ショックを受けて拡大をしていただいております。

 そういった様々な事情に応じて、また働き方の多様化に応じてセーフティーネットを拡充してきていただいておりますけれども、今般のコロナを踏まえて、どこが課題だったのかということをしっかり検証して、どういった制度をつくっていくのかということをやはり今後検討していくことは重要だと考えております。

鈴木(敦)委員 非正規の場合も正規も同じですけれども、働いているという点では皆様同じでございますので、この点につきましては私たちもしっかりと認識をして、対応していかなければならないと思います。

 それを申し上げた上で、同じように働いている方、そして、重要な役割を果たしているにもかかわらず、待遇が一向に改善されない職種がございます。

 これは本日の村上参考人の資料の五ページにもございますけれども、介護、看護、保育士等の職種の平均勤続年数と収入ということで資料をいただいております。

 私の身の回りに、同級生が、実は何人か保育士になった方がおられます。高い志を持って、子供たちのしっかりと面倒を見る、そして働いている仲間が安心して仕事ができるようにすると、高い志を持って専門学校に入り、そして教育を受けて、子供たちのために頑張っている仲間たち、非常にいらっしゃいます。

 ただ、村上参考人がおっしゃったとおり、この方々におきましては労働組合がない場合がほとんどでございますし、また、賃金が低く待遇も余り高くないという現状が実はございます。

 本日お伺いしたいのは、総予算、今審査中でございますが、その中でも待遇改善が言われております。しかしながら、この内容で果たして十分なのかどうかは私たち懐疑的に思っておりまして、村上参考人として、組合や若しくは連合として、そういった意見等が入っておられましたら御紹介願えますか。

村上参考人 ありがとうございます。

 先ほど意見陳述でも述べましたけれども、今回、介護、看護、保育等の関係の職種についての年収の引上げの措置について、これは一歩前進だと思っております。やはり、その職場の状況に応じた現実を見た上で処遇改善していかなければならないという認識を皆さん持っていただけたというところはありがたいと思っております。

 ただ、これで全て十分かというと、まだまだ足りない部分があると感じております。やはり、仕事に応じた、その仕事の重要性とか仕事のつらさとか負担感といったことと、ほかの産業と比べた場合どうなのかというところを見ると、やはりまだまだ、初めに仕事に入るときにはやる気に満ちていた方々が魅力を感じなくなってしまうということもあるのではないかと心配をしております。

 公立の施設であれば、私どもも、労働組合もあるところですけれども、それ以外のところは労働組合がない職場が大変多いというふうにも考えておりますので、労働組合をつくっていくということももちろん大事ですけれども、そういったところの処遇改善できるように、政府におかれても措置をしていただきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 引き続き、この待遇改善等々につきましては、この国会でも議論をさせていただきたいと思いますし、また、組合の皆様にも勉強をさせていただきたいところがございますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 さて、瀬戸参考人にお伺いをいたします。

 本日、この国会において貧困の問題を取り上げていただいたこと、また、非正規や、電話、電気、そういったライフラインが止まってしまった方々の声をこの国会に届けていただいたことを感謝申し上げます。

 私自身も、非正規で働いておりましたとき、電気が止まって電話が止まって、そうなると生活ができなくなってきて、次に止まるのはガスですね。それで、水道にバルブがつけられたときに思うんです、どうしてこうなったのか。自分に情けないと思って、非常に悩みました。そんな中で、瀬戸参考人がこうして活動していただいていることに本当に感謝したいと思います。

 一度貧困に入りますと、この日本では簡単に抜け出せません。自助ではどうにもならないときが実はございます。

 実例を挙げさせていただきますが、私が仕事をしていたとき、私は実家がございましたけれども、同期が、社宅があるということで入社をいたしました。賃金が低く、また仕事もきつかったので、仕事を辞めたいと思っても、社宅を出るときにいろんな手当を引かれて、貯蓄もないし手取りもない、そんな中で引っ越しができないので仕事をせざるを得ない、このような状況にある仲間が今もいます。今も彼は仕事をしています。

 そんな中で、私は、この席をいただいて、皆様の前でこうしてお話しをさせていただいておりますので、言わなければならないし、皆様に知っていただかねばならないんです。

 瀬戸参考人、今日の資料にも書いてございますけれども、公的住宅手当、これがなぜ必要なのか、実例を挙げて皆様に御紹介願えますか。

瀬戸参考人 ありがとうございます。

 今日は余り触れなかったんですけれども、コロナ禍の状況が長期化していて、本当に最近、家賃が払えなくて強制退去、そういう事例が増えています。その中で、要するに、僕らは寮つき派遣とかそういうふうに言っているんですけれども、寮というのはあれですよね、住まいではないですよね。そこについてやはりちゃんと認識を共通化させなきゃいけない、それは福利厚生の一環だと。

 そういうところで、本当に寮つき派遣からの追い出しが多いです。僕らは、強制執行されると、その日に荷物を積んで、それで引っ越しまでやる、要するにそういう形になっているんですね。そういう事例がやはり多発をしています。

 僕自身が非常に感じるのが、先ほどのデータにもあったように、このデータではっきりしているように、この間のいろんな報告の中で、若者世代の貯蓄がほとんどない。先ほどの、ネットカフェ、六二・八%の人たちが具体的にそもそも部屋を借りれるような初期費用を持っていない、このことはやはり非常に重たく受け止めていただきたいんですね。

 ですから、そういう意味でいうと、例えば東京でいうと、生活保護基準の住宅扶助手当について五万三千七百円ですけれども、みんな、初期費用のゼロゼロ物件に入るわけです。だけれども、例えばそれで家賃滞納で二か月すると、すぐ出されるわけです。

 それで、シェアハウスですね。僕が非常に気になっているのは、地方から多くの女性たちが東京に出てきます。そうしたときに、保証人もいない、友達もいない、だからシェアハウスに入るしかない。シェアハウスについても、多くのシェアハウスが二か月でみんな出しちゃうんです。

 そうしたときに、今日書きましたけれども、明確に、家賃支援という形でいったときに、まず、そこの入居支援ですよね。入居支援のところについての具体的な補助制度、それと、収入に応じた家賃支援ということですね。住居確保給付金がこの間一歩進んだということはやはり大きいと思います。そのことをちゃんと恒常的にお願いをしたい。

 それと、先ほどもちょっと触れたんですけれども、やはり公営住宅の問題ですよね。

 例えば、都営住宅の自治会長の話を聞いても、たしか狛江市だったかな、八〇%が六十五歳以上の高齢者で占められている。そうしたときに、高齢者ばかりの都営団地についても、逆にコミュニティーが崩壊している。そういうような公営住宅に、若者世代が具体的にちゃんとしっかり入れるようにしてほしい。そうしたときに、コミュニティーの有機的な連携も可能になるじゃないですか。東京都でいうと、六十歳未満は入居要件外です。そういうところも含めて対応をしていただきたいなというふうに思います。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 私自身も一時当事者だった者として、瀬戸参考人のこの御提言、重く受け止めたいと思います。

 更にお伺いします。

 携帯電話のことですね。ここの資料にも書いていらっしゃいますが、確かに携帯電話は、実質上、これが社会的なIDとして使われているというのはまさにそのとおりだと思います。携帯電話が今なければ、情報が得られないとか、連絡が取れないという意味だけではなくて、個人として尊重されないに近い状況のものがございます。

 幾つかの行政サービスにおいても、携帯で問合せをしてくださいという窓口がいまだに多くございます。まあ、メールアドレスを書いてあったり、フォームがついている先進的なところもございますが、幾つかは、これ、私ども国民民主党も何度か提言をしましたが、行政サービスが携帯電話若しくは電話番号でやってくださいと言われたときに、携帯電話が止まった人たちは、じゃ、どうやって助けを求めるのか。

 携帯電話が、音声通話ができなければ、彼らがどうやって助けを求めてくるか、これは我が党の代表だったと思いますが、助けを求める人たちの大半はメールなんですね。これは本日の資料の中にも書いてあります。なぜかというと、携帯が止まった後、フリーWiFiで皆様助けを求めてくるんです。これをしっかりと私たち、認識をしなければならない、自分たちも本当にそれを我がものとして考えなければならない。

 そして、私は実際にやりましたので、皆様に代わってここで申し上げたいと思いますが、行政サービスの中でも、やはり、助けを求めたいという人たちが多くいる中で、音声通話に限定しているこの現状について、瀬戸参考人、何か提言はございませんでしょうか。

瀬戸参考人 要するに、携帯電話、先ほどお話があったように、僕らの問合せについてはあえてメールが中心なんですね。ですから、メールが、要するに携帯電話が止まっている人たちからの問合せがやはり多い。

 そういうことの前提で考えたときに、まず一つ、福祉行政の中で、一部の福祉の窓口でいうと、携帯電話の要するにレンタルをしている自治体が一部あります。でも、本当に一部ですよ。

 具体的に、携帯電話がないと、その後、例えば、アパートを借りたいとか、就労もできないんですよね。ですから、この問題についてしっかり、携帯電話が止まってしまう以前の問題については後で触れます、止まったときに、じゃ、例えば福祉的な支援を受けるときに、一定期間ちゃんと携帯電話が行政のところで貸出しできるサービスがやはり必須だと思います。そうしないと、その後の、具体的にアパートを借りる、それと、例えば仕事をするということについての道がなかなか進まない、そういうことがあります。

 それと、僕は生活保護費の特別加算という話を実はあえてしたんです。というのは、これは直接生活保護の問題じゃないんだけれども、若者たちの生活費、これは、携帯電話が非常に金額が高額の料金を払っていて、止まってしまう、そういう事例がやはり多いです。それでブラックリストに載ってしまう。

 そうしたときに、いろんな制度とか、いろんな支援のことを考えたときに、生活保護の例えば基準の引下げのときの、二〇一二年、二〇一三年の頃と今の時代の若者たちの携帯電話料金の問題というのは全然状況が違うわけです。

 そういう意味でいうと、先ほどの福祉制度の見直しのときに、明らかに状況が変わったんだ、社会の構造も変わっているし、そういうような通信インフラのやはり状況も変わっているということも含めてお願いをしたいなと。

 僕らのところでいうと、携帯電話が止まっていて、もう本当に細いWiFiのエリアですね、僕が待ち合わせするのは大体コンビニなんです。やり取りするときに、どこのコンビニにいる、例えばセブンイレブンの何々店にいる、そこにいてくださいと。そこにいないと会えないんですよね。

 そういう状況になっています。WiFiスポットの問題とか、そういうことについても非常に現場から感じるところがあります。だから、携帯料金の引下げはやはり必要なのかなというふうに非常に思いますね。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

 予算委員の皆さんに申し上げますが、私のように昭和六十三年の生まれは、大学に入学するときにリーマン・ショック、大学を卒業するときに東日本の大震災、社会的にも経済的にも非常に混乱した中で若い世代を生きてまいりました。これから三十代前半、これは私たちよりも少し下の世代までこうした問題が頻発することが予想されますので、国会でも是非御審議をいただきたいと思います。

 最後に一問、脇田参考人に御質問がございます。

 今、オミクロン株が非常に急拡大をしている中で、保健所の機能が非常に逼迫をしているという御説明がございました。

 その中で、厚生労働省も提言をしておりますが、実際に自治体から上がってくるデータと公表しているデータとの間に乖離が発生する懸念がある、このように言っています。実際に、これだけの、何万という数が自治体から上がってくればそれが発生するのは仕方がないのかもしれませんが、少しでもその乖離を少なくする何か具体的な策はございますでしょうか。

脇田参考人 ありがとうございます。

 元々、報告されているデータ、これはHER―SYSに登録されるものでございます。それから、自治体が日々公表しているデータがありまして、そこには多少ラグといいますかがありますし、それから、HER―SYSには様々な入力項目がありますので、それが全て入力されるのにも時間がかかるといったところがあります。

 したがって、陽性となってから報告されるまでのラグというものを我々としては今調査しながら、どういった自治体でそういった報告の遅れが顕著になっているかということはこれまでアドバイザリーボードでもデータを出しておりまして、そういった自治体でどういった問題があるのか、医療機関、保健所、そして、まあ、感染原因といいますか、入力というところになりますので、そこのどこに問題があるかというところを今調査をして、それを改善できるように努めているというところでございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。終わります。

根本委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、四人の参考人の皆様、大変お忙しい中、貴重な意見を賜りまして、ありがとうございます。

 まず、瀬戸参考人にお話をお伺いしたいと思います。

 今日、お話で、駆けつけ支援をやった際に、福祉事務所の対応が、大変、いろいろ問題があるんじゃないかというお話もございました。もちろん、ケースワーカーの皆さんが一人で本当にたくさんの人の対応をしているという問題もあるかとは思うんですけれども、具体的な改善策について、御意見があればお伺いしたいと思います。

瀬戸参考人 お答えします。

 改善策の前に、ここにちょっといろんな事例が出ています。この間、やはり、僕らが生活保護の申請の同行に行かないと十分な対応がされない。例えば、先ほど話したように、追い返しですよね。本当に、若いんだからあなたは生活保護を受けられませんよとか、いろんな形で追い返されます。これ自身が、具体的に、生活保護の趣旨からいって外れているのではないですか。要するに、違法な対応が繰り返されているということです。

 分権という形で僕が非常に気になっているのは、東京都内のところでも、自治体対応格差が非常に激しいです。ですから、ここの福祉事務所に行けば非常にいい対応を受けるけれども、ここの福祉事務所に行けばとんでもないことになる、そういうことが頻発をしているんですね。そういうような対応がなぜ起きるんでしょうか。ちゃんと生活保護法にのっとって、適正な運用をしっかりと行うということについてお願いしたい。

 例えば、東京都でいうと、居所がない人たちが具体的に申請に行ったときに、ビジネスホテルを提供していいですよ、そうしたときに、二十三区のうち十区ぐらいしか出さないんです。そういうようなことがなぜ起きるんでしょうかということです。

 この問題について、よくあります。僕らが、東京の区内で何か問題が起きたときに、東京都に話をします。そうしたときに、それは最終的に自治体の判断ですというふうになるんです。こういうようなばらつきについて、厚労省がしっかり調査をして、お願いしたい。

 もう一つは、施設強要ですね。ここに出ています無料低額宿泊所です。全ての無料低額宿泊所が悪いと言っているわけではありません。実は、僕らの相談者で、生活保護を利用したことがある人たちの三割がこういう施設から逃げ出しています。いまだに集団部屋。例えば、東京都でいうと、生活保護費が全て合わせて十三万六千円ですけれども、十万円以上、十一万円以上が実は施設費等々で抜かれているわけです。

 それに対して、具体的に、福祉の方が放置状態です。ケースワーカーが一度もその施設に訪問したこともないのに、その施設に入れる。その人たちは家がないから自立できるか分からない、だから、その施設に入れて判断するんだと。コロナ禍の中で、これだけ想定外の状態で、居所を失った人たちに対して、なぜ、その施設の中で集団で訓練をして、そこで頑張って、耐えて、三か月、六か月したらアパートで自立していいんだよというふうに言われるんでしょうか。これは男性だけではありません、女性もそうです。

 そういう状態で、ここに出ているように、何で所持金が百円なんでしょう。福祉事務所に相談して、対応してくれなかったからですよ。相談しても追い返されたからですよ。だから、信用できないからこういう状態になって、所持金が百円になっているんです。

 本当に、国として、今福祉事務所の実情がどうなっているのかということについて、しっかり、ちゃんと現場を見てほしい。それと、生活保護の法律が、具体的に、ちゃんと、しっかり自治体でそのまま運用されているのか。これについては、僕が福祉事務所が人を殺すというふうに書いているのは、そのことによって死に至らしめる、そういう事態が起きているんだということです。

 済みません、長くて。

宮本(徹)委員 生活保護の適正な運用については、本当に、厚労省からもしっかり指導、調査という提起がありましたので、取り組んでいきたいというふうに思います。

 それから、あと、居住の貧困というお話がございました。

 先ほどのお話も伺っていましたけれども、やはり日本の住宅の支援というのは、持家に対しては住宅ローン減税でかなりの支援が行われていますけれども、賃貸に対しては本当に支援が乏し過ぎるというのが実情だと思います。

 それから、本来だったら、公営住宅入居基準を満たすぐらいの収入基準の方にはみんな家賃助成制度があってしかるべきではないかというふうに思いますが、そうした、やはり住宅政策の根本的な転換が必要じゃないかと思いますが、現場から見てどうお考えでしょうか。

瀬戸参考人 先ほど、具体的に、いろんな支援制度について話をさせていただきました。

 やはり僕ら自身が非常に感じているのは、公的住宅の支援の問題と、先ほど出ていた、空き家とか、あれだけ空き家住宅があるのに、僕らが福祉事務所に行ったときに、空き家住宅の提供、居住支援協議会、法人を経由して、具体的にそこから情報をもらってそれを提供するという、そのスキームがほとんど出てこないんですね。

 そういう意味でいうと、公的住宅や家賃支援制度や空き家住宅の活用というのは、幾つかそれはこの間ずっと話をしてきました。そこの、住まいの部分についての、先ほどの、横串を刺して、こういう情報が要するに常に循環してその提供ができるということについての、ある意味で、国土交通省や厚労省や幾つかのところで連携をして、お願いをしたいなというふうに思っています。

 それと、アパートに入居できないという理由の中で、やはり身分証明書とか、知人、友人がいない、そこで保証人がいない、緊急連絡先がいない、この問題について、どうやって公のところがしっかりサポートしていくのかということについて、やはり必要かなと。やはり身分証がなければ借りられないんですよね、アパートが。そういう状態もあるのかなというふうに考えています。

宮本(徹)委員 ありがとうございました。

 そうしたところも、しっかりとした制度設計を求めていきたいと思います。

 続きまして、村上参考人にお伺いしたいと思います。

 今、休校、休園が広がっていまして、小学校等休業助成金への問合せも本当に増えているんですけれども、一方で、これが、なかなか企業が使ってくれない、個人申請をしても事業主が協力してくれないという声がかなりたくさん上がっているわけですけれども、この改善についてはどうお考えでしょうか。

村上参考人 ありがとうございます。

 御指摘のような状況があると伺っております。まず、対象の御本人たちに制度が知られていない。小学校等という名前もございますので、保育園等も対象になっているのかどうかというところも理解されていない部分もあるかと思います。また、それ以外にも、制度そのものが知られていなかったりするということ、そして、事業主が申請してもらえないといったようなことは伺っているところです。

 改善策として、まずは、事業主にきちんと申請するようにというところを、改めて制度を徹底していただきたいというところがございます。また、一部、電子申請というものも、本人から事業主を経由しないで支給してはどうかといった御提案もあるとか、様々、以前の仕組みを少し変えていくべきではないかといった御提言もあるというふうに聞いております。

 そういったことを踏まえながら、より使いやすい制度にしていくということが必要かと思っております。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 是非、連合からも政府への働きかけ、お願いを申し上げたいと思います。

 それから、本委員会で、労働政策をめぐって岸田さんが、新しい資本主義だ、新自由主義の弊害を正すということなんかも議論になっているんですけれども、その一方で、解雇規制の緩和を主張する議論も行われていますが、この点についてはどうお考えでしょうか。

村上参考人 解雇規制につきましての議論ということですが、特段、今審議会などで俎上に上っているということではないとは承知しております。

 ただ、一部、解雇の、例えば金銭解決を入れたらどうかといったようなことの御主張は様々なところでなされているというふうに承知しております。その点につきましては、私どもとして、解雇の金銭解決制度は導入すべきでないという考え方で、一貫して対応してきているところでございます。

宮本(徹)委員 ありがとうございました。

 脇田参考人にお伺いしたいと思います。

 幾つかあるんですけれども、一つは学校のことなんですけれども、幾つかの自治体では、休校の基準について、文科省の基準よりも緩和するという対応を取り始めております。

 今、クラスに二人感染者がいたら学級閉鎖ということを決めているのが文科省のガイドラインですけれども、ただ、これだけ感染が広がると、別に学校で感染が広がっているわけではなくて、Aさんの家庭とBさんの家庭でそれぞれ家庭内感染で、クラスで二人感染者がいるということで、それで学級閉鎖というのは、こういうことになると、更にこれから感染が広がるということを考えると、本当にどんどんどんどん学級閉鎖になりかねないというふうに思いますので、これは専門家の皆さんからも、ちょっと、しっかりと整理をして。

 学校で感染が大きく広がっている状況だったら、それはもう当然、そういう、インフルエンザと同じようにしっかり対応しなきゃいけないと思うんですけれども、今の基準についてはもう少し検討が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

脇田参考人 御質問ありがとうございます。

 その点につきまして、我々専門家の間でもかなり議論をしているところであります。

 小中学校、それから幼稚園であったり保育園というところがありますけれども、それぞれ役割というのが、小中学校になれば学びという意味が大きくなりますけれども、保育園、幼稚園というところになると、預かりの場所というところの意味合いも出てくると思います。

 それで、確かに、委員がおっしゃったとおり、小児の感染というものが地域の感染拡大の主な要因というわけでは今ありません。インフルエンザのように、それこそ本当に、そういった、学校における感染拡大が地域の流行につながるというところではないと我々は認識をしていて、できる限り教育の機会を継続するということは重要でありますので、休校であったり学級閉鎖の基準というものをなるべく明確にしていって、一人、二人で止めるということはしないということも重要だというふうに思っております。

 ただ、有症状者、症状がある方がいれば、それはもう、なるべく休んでいただくということ、それから、学校等は感染対策がかなりできると思いますので、感染リスクの高いプログラムを止める。あるいは、部活がかなりリスクがありますので、そういったところもなるべく減らしていくといった対応をしていくということが重要であります。

 それから、休校であったり学級閉鎖の期間ですね、どの程度休む必要があるのかということも、これは科学的なデータもある程度出てきていますので、そういったところも併せて見ていただいて、提言をしていくということも我々も考えております。

宮本(徹)委員 引き続き、脇田参考人にお伺いしたいと思います。

 あと、水際対策なんですよね。

 ずっと外国人は原則入国停止ということがまだ続いているわけです。元々、私自身の感覚からして、別にウイルスは国籍を選んでうつるわけじゃないですから、日本人と外国人と同等でいいんじゃないかという思いをずっと一貫して持っているわけですけれども。

 更に言えば、これだけ日本の中でオミクロン株の感染が広がっている下で、今のような在り方でいいのかと。今のような在り方というのは、防疫上何か意味があるのかという点についてはどうでしょうか。

脇田参考人 水際対策についての御質問だと思います。

 アドバイザリーボードでも、まとめとして、水際対策について書かせていただいておりますけれども、現状でも、かなり検疫で陽性になる方が今検出をされているというところであります。

 日本の感染状況が今かなり拡大をしていて、それの意味があるのかという御質問だと思いますが、一方で、検疫における検出されているのが、今、日本の主流の株、BA・1系統と申し上げましたけれども、検疫においてはBA・2の系統が、その割合がかなり大きくなってきているというところであります。日々百名を超えるような陽性者が検疫で見つかっていますので、そういったものを安易に本当に国内に入れても大丈夫なのかといった議論があるんだと思います。

 それから、海外での流行状況をしっかりと見ていく必要もありますので、そういった対策は必要だと思いますけれども、委員がおっしゃるとおり、国内の流行状況とそれから海外の流行状況、これをしっかり比較考量といいますか分析をして、適切な水際対策というものが必要だと思います。

宮本(徹)委員 私は、どんどん緩めろと言っているという話ではなくて、やはり日本人と外国人でこれだけ異なる対応を取り続けるというのは、何か逆に、ウイルスというのは外国人が広げているんじゃないか、そういう差別にもつながるんじゃないかという思いもありますし、本当に、留学生で日本で学びたいと待っている方々もいる下ですから、やはり科学的にやる方が大事ではないかなという思いを持っております。

 それから、これはもう一問、脇田参考人にお伺いしたいんですけれども、デルタ株までは潜伏期間が四から五日間だということで、発症前からウイルス量がかなりあって、うつすんだと言われていました。オミクロン株はこの潜伏期間がかなり短くなりました。その下で、オミクロン株もデルタと同じように発症前からばんばんうつしているものなんでしょうか、どうなんでしょうか。その辺りをお聞かせください。

脇田参考人 お答えしたいと思います。

 我々、調査していますのが、シリアルインターバルと世代時間というのがあって、感染から感染、発症から発症というものがあります。それから、潜伏期が今御案内のとおりありました。潜伏期は大体平均三日間ということですけれども、世代時間というのはそれよりも短いんですね。短いということは、発症前に感染が起きないとそういう現象は起きないということですので、オミクロン株になっても発症前に感染が生じているということは、我々、推定をしているというところであります。

宮本(徹)委員 多分、いや、数字を引くと、世代時間二・一だ、それから潜伏期間が三日だとしたら〇・九残るし、感染研の発症日と発症日を比べたやつは二・六日というのが出ていたので、もうちょっとその間は短いのかも分からないなと思うんですけれども。

 それと同時に、一月五日に感染研と国際医療政策センターでしたっけ、が一緒に出していたペーパーを見ると、発症前あたりのウイルスを見ると、分離できたわけですよね、感染性があるウイルスというのが分離できた検体の件数は少なかったですよね。それを見ると、何となく、ちょっと違うのかな、これまでのデルタとは、という印象も私は持っているんですけれども。ただ、世代時間と潜伏期間との関係を見ると、そこから見れば、やはり事前にうつしていなきゃおかしいしと。何となく、一月五日のデータとそれぞれの数字が合わないなという印象を私は持っているんですよね。

 その辺りは何か教えていただけるでしょうか。

脇田参考人 ありがとうございます。

 どうしても発症前の検体を多く集めるというところが技術的に難しいというところはもちろんあると思うんですね。今回、検疫で陽性になった方が主に無症状でも陽性になって、その方々が今回全員入院しましたから、検体を採取して、そういう方々で調査をしたというのが、発症前、ウイルスの分離のデータだと思います。

 一方で、様々な調査方法があって、例えば家庭内での感染状況を実地疫学的に分析をしたりというような状況を見ますと、かなり感染源の方とそれから二次感染者が短い時間で感染を起こしているという例も疫学調査では見つかっていますので、必ずしも発症前に感染をしなくなったというふうに我々は理解をしていないところです。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 河野参考人にもお伺いしたいと思っていたんですけれども、ちょっと今、質問時間が終了しましたというのが来てしまいましたので、申し訳ございません。

 どうもありがとうございました。

根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。

 今日は、四人の参考人の皆様方、本当にありがとうございます。

 私、この予算委員会におきましても、国民の命と健康、特にそれを感染症を含めた脅威から守る日本版CDCという組織に関して提言をしてまいりました。そういう中で、今日、脇田先生、そして河野先生に質問しますし、特に河野先生のプレゼンテーションにおきましては、そういったビジョンが共有できるような感じに思いましたので、また後の方で質問させてもらいたいと思います。

 そういう中で、まず脇田先生に質問しますが、それぞれのコロナ感染症、特にウイルスの属性ということで、感染力であったり、あるいは毒性ということがあると思うんですね。感染力ということに関しての、その根拠、これというのはどういう形で出されていますか。それは、毒性と併せてお答えいただければありがたいです。

脇田参考人 委員の御質問は、オミクロン株の感染力、それから病原性といったものをどういった根拠で分析をしているかということでありますけれども、これは、これまで変異株の分析でも我々は行ってきたところですけれども、まず感染伝播力に関しましては、変異株の置き換わりのスピードというものが観察をされます。それによって、実効再生産数の程度がどの程度違うのかということを分析してまいります。そうしますと、デルタ株に比べて、当初、オミクロン株は四、五倍程度あるのではないかということが言われました。ただ、先ほどからありましたように、世代時間が短いということがありますので、世代時間が短いとどうしても急速に感染拡大していくという性質がありますので、実効再生産数では一・六倍程度ではないか、そういったところで分析をしております。

 それから、病原性につきましても、年代別それからワクチンの接種の有無についての重症者それから致死率というものを見ておりまして、デルタ株と比べますと、やはり、ワクチンを接種している、あるいはしていなくても若者世代であれば重症化率それから致死率というのは低いというのは分かっていますが、ただ、高齢者であったり、特にワクチンを打っていない高齢者はデルタ株とほとんど変わらないというようなデータも出ていますので、ウイルスそのものの肺炎の起こしやすさというのはやはり低くなっている。これは、上気道の感染が主であるというところが原因なんですけれども。ただ、高齢者に感染しますと、やはり基礎疾患の悪化であったりといったところで重症化あるいは致死率というのが上がってくるということが分かってきております。

仁木委員 ありがとうございます。

 それにおきまして、後者の、病原性、毒性のことで質問させてもらいたいんです。

 今言われた様々なワードですけれども、そのデータというのは、例えば、私が思うに、最前線で治療しているところからも得られると思うんですが、実際、今、例えば各都道府県における、そういった重症患者さんを診ているICUであるとかそういったところからの生の、あるいはリアルタイムのデータというのは出ていないですよね。特に抽出を選ばれていますよね。その辺をお願いしたいと思います。

脇田参考人 抽出を選ぶ……(仁木委員「抽出を選ぶというか、どこかと提携しているというか」と呼ぶ)ありがとうございます。

 現在、悉皆的に収集をしているのはHER―SYSのデータということになりますので、それは届出の情報になりますから、届出時の重症度というものは全て把握をされています。

 ただ、委員が御指摘のように、現場の病院でその後どのような経過を取ったかということに関しては、必ずしもリアルタイムに全国的な情報が集められるわけではないということになっております。

仁木委員 私、今回は、ある一つのICUの担当教授とお話をした中で、ワクチンが非常に効果があったということを実感しているということを本当に聞きました。やはり、例えば、それをエビデンスとして国が把握する上で、脇田先生、非常に重要なポジションにいらっしゃるんですけれども、例えば、ワクチンを打っている人の抗スパイクたんぱくを測定するとか、患者さん、あるいは中和活性を測定するとか、そういったことをしていくと、例えば、ワクチンが、今回のオミクロン株に関しても、打っている人の方が重症化が低いとかいうメッセージ、そういうのをしっかりとした形で国民の方に出せていけると思うんですね。

 ワクチンが今接種率が低いことも、いろいろ理由があります。これは話が少しそれますけれども、ワクチンの交互接種についても先般質問をしましたけれども、やはり、今、ファイザーの方がモデルナに比べて副反応が低いという偏見みたいな情報がありまして、もちろん量は減らしていたりしています。半量になっていますね。それで、実は交互接種した方が、ファイザー、ファイザー、モデルナのように交互接種した方が、実は抗体価が上がって免疫力が高まるんだというような情報を次から次へと発信していくと、交互接種の、つまりモデルナの使用回数が増えたというふうな今実態になってきています。

 つまり、国民の側からすれば、信用される組織からの情報発信、いわゆるリスクコミュニケーションが非常に大切だということで、その一つを担うのが、私が一つ提言しておりました日本版CDC、そういう疾病を予防するような管理センターの役割ではないかというふうに思うわけです。

 このモニター等々、基礎研究も併せてですけれども、いろんな情報を海外からも、過去に、先生、海外のそういうラボ、研究機関、あるいは行政的な組織とは情報を得ているんでしょうか。これは、例えば、インド由来のデルタ株とか、あるいはイギリス由来のアルファ株とか、今回、南アフリカ由来のオミクロン株とか、そういうのがあったんですけれども、そういう発祥地である、例えば私がさっき言った機関ですね、そういうのも、もちろん、外務省経由か、あるいは個々につながりがあって情報は得ていて、それで日本に入ってくる水際対策に反映させたり、あるいはそんな感染症対策に反映させたということをされているということなんでしょうか。教えてください。

脇田参考人 御質問ありがとうございます。

 海外との情報収集に関しましては、感染研だけではできないというところであります。我々感染研も、WHO、特に西太平洋地域、WPROですね、その地域の事務局とは非常に密接に関連をしておりますし、それから、厚労省の医系技官の感染症専門医官、医務技監ですね、の養成プログラムというものがありまして、それで、米国CDC、それから英国の、今、名前が変わってUKHSAですね、そういったところに派遣をする、それからあとはEUのCDCですね、ECDCといったところにそういった医務技監の研修生を派遣をして情報収集をしているというところで、我々としても、様々な情報をそういったところからいただいているというところで、対策に役立てております。

仁木委員 私は、そういう意味で、様々な情報を得るためには、やはり、エネルギーというか、これは、お金もそうですし、そういう人材も必要になります。そういう情報をやはり得て、そして、今回のような、社会的にも日本国全体に影響を及ぼすような、経済的にインパクトを与えるようなこういう感染症対策、パンデミック対策に生かせるような組織構築というのは重要だということを訴えているところであります。

 実は、この問題というのは、さっきHER―SYSの話をされましたけれども、これは本当に医療の現場でもかなり負担になっていますし、必ずしもそういったことを、医師の指導の下にその情報入力をするメディカルクラーク等々がそろっているわけでもないですし、実際、この感染症対策を担っているドクター、あるいはそのチーム、負担もかかっていると思います。

 こういった情報を、例えば、私がこの前の予算委員会でも申し上げたのは、今、オミクロン株に罹患して、いわゆるリカバーしている人が結構いらっしゃるわけですね、大多数の人が重症化していないわけですから。そういった方々の罹患履歴も例えばHER―SYSに入れるとか、そういったことで経済を回していくということで、与党さんが出されているワクチンパスポートなるものを免疫パスポートに変えるとか、そういったことも提言しているところであります。

 これは、一方、医療的な側面からいいますと、例えば、一昨年の新規のがん登録者数が、通年、いわゆるコロナ禍前の六割になった。これは、四割減って喜ぶんじゃなくて、実は、医療介入する、つまり早期発見される人が減ったというデータでもあります。何が言いたいかといいますと、そういったがん治療、そして通常医療における例えば救急医療、かなり影響が出ています。

 実際、患者の側にとっても、そういった、感染症があるかもしれないというので面会もできないんですね。愛する家族の最期に立ち会えないというふうな、そういう悲しい場面、これは介護施設でも出ています。

 そういった情報も、これは、脇田先生のところには届いた上での、いわゆる今回のオミクロン株に対する感染症対策をアドバイザリーボードに提言されているのかというか、そういったことも実は知りたいわけでございます。

 これは、ある種、先ほど足立委員の方が質問されたことにもつながるんですけれども、やはり、その場その場で、その場その場というのは、感染症を、パンデミックを引き起こしている株に対応した柔軟性というのは必要でありまして、そういった、行き過ぎる、あるいは、従来デルタ株が強かったからとかそういうことで、それを今回も当てはめていくと、やはりそれは難しい。

 もちろん、これは、いろんな組織のありよう、あるいは、立法化に基づく行政のありようもあるわけですけれども、そういったことに対して、何か所見というか、今私が申し上げたことに対して何か御意見ありましたら、お願いしたいと思います。

脇田参考人 ありがとうございます。

 今、大変幅広いところから御意見をいただいたというふうに思います。

 まず、サーベイランスとデータベースということになるかと思うんですけれども、HER―SYSはその両方の役割が組み込まれてはいるんですけれども、どうしてもこういった感染急拡大の状況になりますと、やはり、保健所、医療機関共に、かなり負担が大きくなってきて、入力項目も重点化していく必要がどうしても出てきてしまう。

 そうしますと、患者さんの経過、そういったものを必ずしも把握ができるようなものにはならないということになりますので、データベースの機能としては、しっかりとそこは充実させながら、感染者数の状況をしっかり把握するといったサーベイランス機能、この二つを、切り分ける必要はないかもしれませんけれども、両立をさせていく仕組みをしっかりとつくっていくということが必要だと思います。

 それから、本当に、高齢者施設であったり、それから病院の面会の問題とか、これは、アドバイザリーボード、あるいは分科会のときでも、やはり、面会をしっかりと再開をしていく、そういった社会活動をしっかり再開しなければいけないといった声がよく議論としても上がってきますし、そういった提言をしているところもあります。

 ただ、新規がん登録者の低下とか、そういった、一般、通常これまでしっかりやれてきた医療が、今後、本当に日本の健康問題にどのように影響していくかというところについては、なかなか我々のところだけでは議論が難しいところだと思いますので、先生方の御意見も伺って、我々としても議論を進めていかなければいけないポイントだと思っております。

仁木委員 データベースの取り方、あるいは、そういったスタディーの結果、アウトカムの反映の仕方、これは本当にすごく政治的な問題でもありますけれども、先生も多々、現場にいらっしゃって思われることが多いと思います。

 私は、そういう意味で、改めて、日本版CDC、かなりそういった、これは、河野先生もおっしゃっていました人材育成にもつながることですし、場合によったら、メイド・イン・ジャパンのワクチンを作っていく、あるいはメイド・イン・ジャパンの治療薬を作っていく、そういったことにもつながる組織になるべきだというふうに思っております。

 それでは、河野先生の方に御質問したいと思いますけれども、先生、日本の基礎研究に対しての予算が少ないというのは、本当にこれは、今、日本の様々な国際的な指数の中でも結果が出てきていまして、もうなかなかそれを元の、日本が科学立国で輝いていた時代に戻すというのは難しくなりつつあるんですけれども、今ここで踏ん張らなきゃいけないと思います。

 今、阻害しているものというのはどういったものが、もちろん、予算化に対する国民のコンセンサスをやはりこの際にかなり高めていく。

 実際、私も現場でワクチンを打っていまして、国産のワクチンがあったらいいなとか、あるいは、国産ワクチンだったらもっと、調達も予定どおり政府が、先般も河野大臣がワクチン担当大臣だったときに、入ってくる、職域接種もできますよと言っていたのに供給ができなくなった、ワクチンが調達できなかったということで遅れたこともありましたけれども、そういったときにも国民の声として、やはりメイド・イン・ジャパンのワクチンがあればそういうことはなかったのになという声もありました。

 そういうことを踏まえて、先生、何か御所見はありますか。

河野参考人 ありがとうございます。

 何が予算、研究費を阻害していたかという御質問と思いますけれども、これはむしろ先生方が、国民がですね、先生方が阻害していたんじゃないかというふうにはっきり思います。

 結局、例えば国立大学の運営費交付金は、ずっと、年々、この十何年間、減らされ続けました。もう明らかに、ここはもう体力が落ちております。そして、なおかつ、盛んに諸外国との批判をされますけれども、これだけ手足を奪いながら頑張れというのは、もう無体じゃないかなと思います。

 やはり、おっしゃいますように、国民の理解がないと、こういった、例えば国防としての感染症のための継続的な十分な予算というのは、それはもう無理だと思いますけれども、今回の経験を是非生かして、やはりこういったものは継続的に必要じゃないかということを国民とともに、立法府、行政府の皆さんがしっかり御理解いただかないと、また一過性に、今回コロナで何兆円つけた、それで終わってしまって、終わったらまた元のもくあみとならないように、是非、先生方にしっかり頑張っていただければと思います。

 以上です。

仁木委員 河野先生、ありがとうございます。

 まさに今、五つのグループが新しいメイド・イン・ジャパンのコロナワクチンの開発も進めているという情報があるわけですけれども、もし仮に、製品化できない、いわゆる臨床の場で使われないワクチンになったとしても、例えば、そこで用いた研究を、あるいはそのプラットフォームを、実はバイオヘルスの、ほかの分野にも使うということも言われておりますが、やはりこの際、日本というのはこういった健康面で世界をリードする国にする意味でも、先生おっしゃったようなことをクリアしていく、そしてまた、まず私たち国会議員がそういう認識を持つということはやはり重要だというふうに、今、先生の御所見で改めて感じたところでございます。

 改めて、ちょっと話を戻すんですけれども、このように、このコロナウイルス感染症というのは、社会、そして医療、様々な形で影響を及ぼします。

 今、そこで、疾病分類の話も出ましたけれども、私が感染症法に望むというか、あるべき形というのは、さっき日本版CDCということを出しましたが、そういったCDCの方々によって、同じ、例えばコロナウイルス感染症であったとしても、その方々のいわゆる提言というか、いわゆる示唆というか、そういったことによって分類も変えていけるような形にしていけばいいのかなと思っております。

 さもなければ、いろんなまた法律を作った上で、また設置の根拠をつくり、また専門家会議をつくり、またそこで予算、そうじゃなくて、これからこの病原性というのは、今後、またいろいろな形で日本に起こってくるわけですし、また変異していくわけですし、そういったことに対することで、日本版CDCというのを、改めて、つくっていきたいなということを皆様方にもお願いしたいと思います。

 今日は長くなりましたが、そういったことで質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

根本委員長 これにて仁木君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 三案審査のため、本日の午後、国民生活・経済等について御出席いただいている参考人は、亜細亜大学経済学部教授権丈英子君、慶應義塾大学教授/一般財団法人創発プラットフォーム理事松井孝治君、放送大学・千葉大学名誉教授宮本みち子君、慶應義塾大学経済学部教授井手英策君、以上四名の方々であります。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず権丈参考人にお願いいたします。

権丈参考人 ただいま御紹介いただきました亜細亜大学、権丈です。

 本日は、少し中長期的な観点から、日本の労働市場の大きな変化と構造問題について話をさせていただきます。

 日本は、人口減少社会、特に生産年齢人口が大幅に減少していく社会になっています。そうした社会は一般には労働力が不足していく社会と呼ばれますが、別の観点から見れば、労働力の希少性が増して労働条件が改善していく労働力希少社会に入ったと言うこともできます。

 労働力希少社会については、拙著では資料に書いているようなことを論じています。

 このような労働力希少社会は、これまで社会の慣習や、働こうにも時間などに制約があったために余り労働市場に参加していなかった女性、そして高齢者の参加を求めるようになります。これがドライビングフォースとなって、資料に書いている様々な動きが出ているように思われます。

 スライド三の図は、人口構造の変化から見た労働政策の課題を示したものです。生産年齢人口が減少する一方、六十五歳以上人口は二〇四〇年頃まで増加すると見込まれています。このため、今は労働市場への参加をできるだけ増やしていくことに政策の努力が向けられています。

 男女の就業率を年齢階層別に確認しておきます。男性では、高年齢層の就業率が上昇しています。女性では、M字型が解消されながら、全体的に就業率が上昇しています。つまり、労働力の量的な側面を見ると、その活用は進んできたと言えます。

 次に、女性の出生コーホート別に、各年齢階層が実際にたどった就業率をプロットしたグラフを御覧ください。

 世代の分類については、その世代が、一九八六年施行の男女雇用機会均等法、九九年施行の実質的に女性差別が禁止された均等法大改正、そして二〇一六年の事業主行動計画策定などを含む女性活躍推進法の適用の有無で分けています。

 均等法前の世代として示した一九五五年頃に生まれた女性では、二十代後半から三十代前半に就業率が大きく落ち込み、顕著なM字型が見られるのに対して、左側から参加してくる、より若いコーホートでは、M字型のくぼみが上昇し、同じ年齢に到達したときの就業率が大幅に上回っています。

 女性の就業は、女性労働に関わる法律や、育児や保育の利用可能性などの制度に大きく影響を受けます。若い世代になるほど、女性が働きやすい環境が整ってきています。

 スライド七の図は、それぞれの世代が直面する制度を紹介しています。一口に女性労働とか女性活躍といっても、各コーホートの女性たちは利用可能な制度もかなり異なっていること、つまり、政策により、同じ日本人でも全くの別人のようなライフスタイルを選択していくことになります。

 このように見てまいりますと、日本でも男女平等の意識が高まり、労働市場における女性の参画も相当に進んできたと言えそうです。

 ところが、そうした状況の中で世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数は、最新年で日本は総合順位が百五十六か国中百二十位とのことです。確かに、女性の労働市場への参画や男女平等が進んできてはいるものの、世界ではそれよりも速いスピードで取り組んできたというわけです。

 日本の女性労働の課題には、非正規雇用比率の高さもあります。

 次の図表は、雇用者に占める非正規労働者の割合を年齢階層別に見たものです。男性は若年層と高年齢層が高く、中年層が低いという形である一方で、女性は年齢に伴い上昇しており、女性が男性に比べて圧倒的に高くなっています。このグラフを私は胃袋型と呼んできました。

 二〇一五年十一月に、非正規労働者の割合が男女合わせて四割になったことで注目されました。しかし、女性のみを見れば、非正規労働者の割合が五割を超えたのは二〇〇三年で、そうしたことは問題視されませんでした。

 女性が結婚し、出産後に退職、その後、もし離婚でもするとなると再就職先はほとんどが非正規雇用になるという状況があるため、子供の貧困にもつながっているとも言えます。

 日本の貧困問題は、その多くがシングルマザー問題にたどり着くわけですけれども、その根源的な原因が、子供のいる女性が再就職しようとすると待遇の低いことが多い非正規の雇用機会しか準備されていない労働市場にあるとも言えます。まして、そうしたリスクがあると考える人たちは結婚や出産にもちゅうちょするだろうとも思います。そしてまた、こうした状況は、老後の年金に関する男女間の格差、高齢期の女性の貧困など、深刻な問題にもつながっていくことになります。

 この国の将来を考える上では、女性たちの高い非正規雇用比率、そして、それを促す側面を持つ社会保険における適用除外の在り方などの見直しが強く求められているとも言えます。

 次の図は、二〇一六年十月以降の、短時間労働者への適用拡大により厚生年金保険に新たに加入した短時間被保険者の分布を示しています。新規加入の短時間労働者は女性と高齢者に多い形となっています。ちょうど先ほどの胃袋型グラフがそのまま新規適用者の分布に反映された姿となっています。これは、日本固有の特徴である男女別年齢階層別非正規雇用比率が胃袋型をしている問題を緩和する手段として、被用者保険の短時間労働者への適用拡大の有効性が示されていると言えます。

 次の図は、欧米諸国の女性では日本とは違って中年期の非正規雇用比率は低く、日本の男性の形に近いことを示しています。実のところ、欧米の非正規雇用比率には男女差が余り見られません。

 このような日本の非正規雇用比率の特徴の背景には、日本のパートタイム労働者の特殊性が挙げられます。日本では、パートタイム労働者というと、パート、すなわち賃金や他の労働条件が正規労働者よりも劣る非正規労働者として扱われることが一般的です。これに対して、語源となった英語のパートタイムは労働時間が短いという意味しかありません。このため、パートタイム労働者には正規労働者も多くいます。

 次の表は、雇用者を労働時間によってフルタイムとパートタイム、及び雇用形態によって正規と非正規の別に分類したものです。

 表の上段から、パートタイム、正規の割合は女性でも二%未満にすぎず、パートタイムの正規労働者は非常に限られていることが確認できます。また、下段は、時間当たり賃金、賃金率を示しています。こちらから、例えば女性に注目すると、フルタイム、正規に比べてパートタイム、正規はさほど賃金が低くない一方、非正規では賃金率が相当に低いことが見て取れます。

 EUでは、一九八〇年代以降、フルタイムの正規雇用以外の働き方、すなわち非典型雇用が増え始めました。そのとき、低賃金労働の広がりを避けるため、幾つもの指令を策定し、これに従い各国はパートタイム労働などの非典型雇用の待遇改善に努めてきました。こうしたことは、良質の短時間雇用機会を創出し、働き方の選択肢を広げることにつながっています。

 日本においても、リーマン・ショック以降、非正規雇用の待遇改善への取組が進んでまいりました。また、被用者保険の適用拡大も進んできます。そして、ここには載せていませんが、有期雇用労働者への育児休業制度の適用拡充も行っています。こうした結果、改善はしてきていると言えます。とはいえ、今も正規、非正規には大きな待遇格差があり、そして、非常に多くの女性たちが非正規雇用で働いています。

 最後に、労働力希少社会では、人々はより長い期間にわたって労働市場に参加し、人的資本を蓄積して、それを発揮できる社会が求められています。

 ライフステージに応じて働き方を変えることができ、働き方を変えても余り不利にならない労働市場、労働時間選択の自由の実現といった視点で考えていくことも大切だと考えております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、松井参考人にお願いいたします。

松井参考人 本日は、このような貴重な機会を与えていただきましたことを心から感謝申し上げます。

 私は、緑色のパワーポイントの資料を配付させていただいております。これに沿って御説明申し上げますが、ちょっとスライドのページ番号が見にくくて、スライドの下辺の右から五分の一ぐらいのところに小さいナンバーが振ってあるので、もし分からなかったら、そこのところを見ていただければと思います。

 私は、自分が元々参議院で議席をいただいておりまして、その頃お世話になった先生方もたくさんいらっしゃるわけですが、今、慶應大学で統治機構論を議論しておりますので、それに基づいて御説明をさせていただきたいと思います。

 最初、これは釈迦に説法でございますが、今国会の施政方針演説、岸田首相の演説の、新しい資本主義についてるる演説がございましたが、その冒頭の部分を載せさせていただきました。誠に御指摘のとおりの現状認識であられると思います。しかし、この問題は、別に今始まった問題では私はないと思います。

 その次のページをめくっていただいて、三ページ目ですが、問題解決というのは三類型、大きく言うとあると思いまして、市場が先なのか、政府が先なのか、政府が存在する前から市場というのはあったのかもしれませんが、市場あるいは民間による問題解決というのがまずあったと思います。仮にそれをマーケットソリューションというふうに申し上げて、ひょっとしたら自助という言葉で申し上げても近いのかもしれません。

 しかしながら、もちろん市場の失敗というのはあるわけでありまして、その市場の失敗をいかに是正するかというところで公共の役割が出てきて、政府による問題解決、公助というものがある。ここでは、ガバメントソリューションという括弧書きをつけさせていただきましたが。

 当然、もちろんのことでありますが、政府が全ての資源配分を適正にできるわけではなくて、政府の失敗というのもある。政府の失敗をまたマーケットの力を用いて、二〇〇〇年代に、特に小泉純一郎首相が主導されたような民営化路線、これは遡れば中曽根総理の時代からの大きな方針だったと思いますが、市場と政府のそれぞれのセクターが相補いながらいろいろな問題解決をしてきた。

 その中で、最近といいましょうか、もう常識になっておりますし、岸田首相の演説の中でも触れられておりますが、より幅広いコミュニティーといいましょうか、国民の参画というような形で問題解決をしていくという、サードセクターというふうに言ったりもしていますが、これも、NPO法ができてからNPOの役割が喧伝されていますけれども、実は、御承知のように、地域で様々な地縁団体その他が昔からこういうセクターとして問題解決をしてこられたと思います。

 次のページ、ちょっとページ番号がよく見えませんが、雲のような絵になっている、新しい公共のイメージ図。早いもので、私が鳩山内閣の官房副長官をやっておりましたときに、自分の責任でやっておりました、新しい公共円卓会議というところの一番最後の報告で使った資料なんですけれども。

 左下にあるのが従来型の、政府・行政セクターというのが下にあって、マーケットセクターといいましょうか、民間セクターがあり、国民がいるという、三つのセクターがあって、問題をどう解決するか。公共的な問題は下の政府・行政セクターが解決していくというのが古典的な考え方です。

 それが、真ん中、徐々に、現在と書いているのは、この時点から十二年たっていますから、もう既に過去の問題でありまして、現在は一番右上の、幅広い主体が、官であれ、あるいは民であれ、国民であれ、それぞれが協働して豊かな公を担っていく。まさに、今回の岸田首相がおっしゃっていることもこの考え方と同じであると思います。別に、ここの考え方は私どもが発明したわけでもなくて、一般的に考察されている考え方だと思います。

 しかしながら、次のページ、政と官の仕切り線というところで描いた絵でありますが、これはちょっと、この話をし出すと別の話になってしまいますので、ちょっとだけ申し上げますと、ただ、公的な世界は、今日もここに、議場にお集まりの先生方であるとか、あるいは皆さんのいろいろな政策を支えている霞が関の官僚たちがやはり中心になって仕切っている。ここで問題意識として申し上げているのは、ちょっと官僚が出張り過ぎているんじゃないのという意味で、本来、政治のセクターに対してちょっと官僚がお膳立てし過ぎている。それが官僚の仕事ですから、し過ぎということはないんですけれども、若干そこに依存しているのではないかということを申し上げたのがこの絵の意味するところであります。

 その次、行政改革会議における省庁再編案の検討資料。これは私が役人時代に橋本龍太郎総理の下での行政改革会議というのにお手伝いをしておりまして、そのときに作ったポンチ絵でありまして、要するに、何のために省庁再編するのかということを考えたんですね。ちょうどこの頃の時流でいうと、ニュー・パブリック・マネジメントということが喧伝し始められた頃でありまして、それを、企画と実施を分離し、より高いところで、省庁の縦割りというのをもう少し広い視野あるいは高い視点で統括するための、大ぐくりの省庁再編であったというのがこのコンセプトであります。

 その次、矢印みたいなのが並んでいる、その二というところがそのときの同じコンセプト図でありますが、より強い内閣、あるいは強い官邸、首相のリーダーシップで問題を解決していこう、霞が関の各省庁の縦割りを排していこうというのがこの絵であります。

 見ていきますと、今の二ページ、九七年の七月に行政改革会議で配付した資料というのは、いまだに日本の行政改革というとこういう話をしているというふうに思いますが、既に四半世紀経過しております。

 次に、八ページ目。デジタル田園都市構想というようなことが今回の首相の施政方針演説にも取り上げられていますし、予算の中でも大きく位置づけられていると思いますが、これは、二十一世紀の初頭にエストニアというヨーロッパの、いろいろロシアの影響なんかも強いところの小さな国ではあります、人口百三十万の国でありますが、そこがつくり上げた、もう既に二十年前につくり上げた情報システム、あるいは公共サービスに関するネットワークでありまして、これは見ていただけたら分かるんですが、今までの行政改革の絵というのは基本的に行政セクターの中の話をしていますが、ここを見ていただければ分かりますように、電力とかガスとかエネルギーとか通信とか、要は民間の公共的なものまで含めてネットワークでつないでいるということですね。

 これからデジタル庁で、それが正式に発足して本格稼働するということになろうと思いますが、やはりこういう視野を持って公共サービスを捉える、もちろん、国、地方自治体、全部含めていかに一つのネットワークでつなげるかということです。もちろん小さな国です、エストニアという国も何度となくサイバーアタックを受けていますから、日本というこの何十倍という規模の経済が同じシステムでできるとは思いませんけれども、一つの御参考でございます。

 私が今日申し上げたいことは、要は、なかなか大変です。少子高齢化もあります。それから、国際環境も厳しいです。財政的にもしんどいです。しかし、日本がいろいろな公共的な課題を解決して、そして未来の展望を開くときに、オールパブリック、もう少しパブリックという概念を広げて、もちろん強い内閣、強い国会、そして優れた官僚組織は大事ですけれども、そこだけでパブリックの世界を何とかするというのではなくて、多くの人々の力を結集しなければいけないのではないかということでございます。

 公務員制度一つを取ってみても、ブラック霞が関と言われていますけれども、この在り方を何とかもう少し、僕は余り官僚たちをいじめればいいと思いません、もう少し、彼らが一人で荷物をしょっているのを、もっと社会全体で荷物をしょって高度化していく必要があるんじゃないかと思っております。

 最後に、「官を活かす、そのためにも、官を開く」と書いてありますが、私はこれは官であると同時に国もそうだと思っていますけれども、やはり官僚を生かしていただきたい。そのためにも官僚の世界を、狭い世界で彼らに重荷を押しつけるのではなくて、より幅広い人たちが公共政策に関われるような、そういう統治機構をつくっていただきたいということであります。

 ポンチ絵を描かせていただきました。これは説明すると長くなりますので、もし御質問があれば、また後で御説明したいと思います。

 最後に、余計なことですが、私、かつて演説の草稿を書いたことがありまして、このことを書かせていただいたんですけれども、川崎にチョークの会社がありまして、その二代目の大山さんという方がこういう言葉を残しておられまして、私としてはやはり人の役に立つということはすごく貴重なことなので、これを、政治家や官僚の皆さんは当然でありますが、より幅広く、人の役に立つというその喜びを国民全体でシェアできるような、そういう統治機構をつくっていただきたい。そのことを申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、宮本参考人にお願いいたします。

宮本参考人 宮本でございます。

 私は、資料に書いてありますように、社会の支え手をどう支えるかということを中心にしてお話しさせていただきます。

 十分の発言の要旨でございますけれども、二つ目に書いてありますが、失われた二十年で経済格差が拡大し、これは言うまでもないことですが、それまでの時代に確立した結婚、持ち家、子育てのセットになった標準生活、これを中流生活と言ってきたわけでございますけれども、これを営むことのできない人々が増加した。経済の悪化と孤立という現象は密接に絡まっています。これが、この新型コロナ禍の中で、コロナの前から一般化していた事情をより一層明らかにしたというふうに思います。

 求められている政策は何か。二つ挙げました。格差拡大を防止し、全ての人々が社会に参画できる支援施策。二つ目は、社会の支え手であるべき人々への支援を強化すること。このことで話を進めさせていただきます。

 三つ目のスライドですが、生活困窮者が多い理由って何だろうかということでございますが、六点くらいあると思います。

 一つ目は、言うまでもなく、失われた二十年の日本経済の不振でございます。

 二つ目に、社会保障制度の恩恵が十分に受けられない、こういうタイプの人々が増加していることでありまして、例えばミッシングワーカーという用語があります。これはアメリカでつくられた言葉のようですけれども、特に四十、五十代の中年世代、この世代の中で長期間働かず社会的にも孤立している人々、そしてまた、その方々はもろに仕事でつまずいているのと親の介護等が重なった形でミッシングワーカーになって、統計にも出てこない、そういう意味でございます。そういうような傾向が日本においても見られるということ。

 三つ目に、社会の急速な変化によるダメージを受けて、家族崩壊の危機に瀕する家庭が増加をしているということ。例えば、原因としては、ここに書いてありますとおりですけれども、所得、不安定な仕事以外に、病気、特にメンタルヘルスへの影響が非常に大きいと思います。そして、事件や事故によるダメージということ。結果として、DV、虐待、子供の不登校、引きこもり、健康状態の悪化、離婚、失踪、自殺というような、もろもろの現象がつながって出ていると思われます。

 四つ目は、非正規雇用等の不安定労働者の増加ということであります。

 五つ目に、生活保護を必要とする困窮者に対して保護制度が十分にカバーできていない。これは、いろいろな試算の中で捕捉率は二〇%に満たないとずっと言われてきたことでございます。必然的に生活保護受給をしないで働いて生計を立てるワーキングプアが非常に多くなるという結果になっております。

 そして、最低賃金が低く抑えられてきたこと。最低賃金額は生活保護支給額よりも低いという状況がずっと続きましたが、近年是正の方向にあることは大変結構なことでございますけれども、今後とも、この問題に関しては、十分にフォーカスすることが必要だろうと思います。

 四ページ目ですけれども、これは、生活困窮の典型として四つの層を挙げて、少しまとめてみました。

 一つ目ですけれども、就職氷河期世代の問題です。この世代、今、四十代ですけれども、雇用と結婚の大きな変化に直面した最初の世代と言うことができます。つまり、人口構造上の大きな転換を就職氷河期世代がもろに受けたということ。それから、それまで標準型とされてきた中年期ライフスタイルが、結婚、子育て、教育、持ち家、貯蓄が条件、が弱体化しているということ。そして、脆弱な生活基盤しか持てない人々が増加をしているという現象が伴っているということですね。この傾向は就職氷河期世代に限らず、この世代よりも若い世代で続いているということに着目しなければいけないだろうと思います。

 五ページ目ですけれども、二つ目のタイプは、子供の貧困は女性の貧困とセットであるということでございます。

 子供の貧困に関しては、この間、政府でも重要な課題として取り組んできているところでございますけれども、女性の経済的に自立できる環境条件が弱体のまま、家族の在り方が変わり、女性が子供を主に育てなければならないような家庭が増えたということでございます。

 それから、日本の社会保障制度は、年金、医療、失業保障が中心でありまして、家族支援は極めて弱体のまま現在まで続いていること。住宅支援も同じだと思いますが。

 三つ目として、子供の養育、教育費は親の責任とされ、賃金からの支払いのみに委ねられていること。これが貧困な母子世帯を救済できない大きな原因になっていると思います。

 四つ目、離婚に際して養育費支払いが不履行であるということ。これもつけ加えておかなければいけないことだと思います。

 しかし、子供の貧困というと母子世帯と言われますけれども、実際には貧困状態にある子供の七割は両親がそろっているということを見過ごすことはできません。つまり、ワーキングプアの夫婦が子育てにおいて非常に苦労をし、家庭崩壊する例も後を絶たない、こういうことが言えると思います。

 次に、スライド六ですけれども、仕事と家庭の両方から排除される女性が増加しているということを押さえておきたいと思います。

 かつて、女性はある年齢になれば結婚することでセーフティーネットを得た、こういう形になっておりましたけれども、現在、その構図に乗れない女性たちが増えているということであります。

 なぜかというと、まずは恵まれない労働条件の問題があり、これを仕事からの排除と呼んでおります。

 二つ目、結婚が自由度と選択性が高まる一方で、結婚できない人々が急増している。これは、非婚化は若い男性に顕著でありまして、経済的に結婚できないという男性が低所得層には圧倒的に多いという状態にあります。その結果として結婚できない女性たちが生まれている、こういう構図。

 三つ目として、将来、経済的に不安定で親族も少ない女性が増加することが懸念されます。

 そして、一握りの恵まれた女性たちが一方にいて、片方に増加する非正規、低賃金のシングルの女性労働者たちが増えていく、こういう構図があるのではないかと思います。

 その次のスライドですけれども、四つ目は、親に頼ることのできない若者たちの存在です。

 例えば、最も厳しい状況に立たされている若者たちを見てみますと、養護施設あるいは里親の中で育った社会的養護出身者の若者たちが実社会に出るときの困窮状態に関してです。もう一つは、虐待、ネグレクトの下で育った子供や若者の問題でありまして、社会的養護でも保護されることなく社会に出るような状況になった若者たちですが、家出をしてネットカフェ難民になっている例は背景にこういうものがかなりあると思います。そして、困窮する若い母子世帯の問題です。

 親任せの若者政策においては、これらの若者は放置され続けていると言うことができると思います。

 スライドの八ですけれども、今の四つの層を通してまとめてみますと、日本の社会の中でアンダークラスが拡大をしていると一言で言うことができるだろうと思います。

 不安定な仕事、際立つ低賃金、困難な結婚、家族形成という特徴を持つ一群が日本の社会の中でできていると思いますけれども、その割合は二割くらいあるのではないかということが言えると思います。

 それから、従来の労働者階級とも異質な一つの下層階級が構成されつつある。

 そうやって、職業人として、家庭を持つ人として、親としての、もろもろの権利と義務を持てない人々が若年期を経て増加しているのではないか。そしてまた、その方たちの背景に貧困な児童期があるということも重要な特徴だと思っております。

 最後のページですが、何が必要なのかということなんですが、一つは、社会を支える側を支え直す。現役層、子育て世帯、若者層、女性層など、社会を支えるべき人々を支え直す必要があるということです。

 二つ目は、支えられる側の参加機会を広げて、社会につなげる公共政策が必要だろう。高齢者、失業者、障害者、心身の疾患のある人、引きこもり、介護の担い手というような人々のことです。

 以上を共生保障と呼びたいと思いますけれども、この政策は目下の難題を解決するものとしての有効性が高いだろうというふうに思っております。

 最後、支え手を支える政策と共生保障ということですが、時間があれなので、箇条書にしてある具体策のところですけれども。

 一つは、低所得者への多様な所得補償、二つ目は、不利益をカバーする職業訓練や就職支援、三つ目、無業者を含む就労困難層への支援、四つ目に、女性の就労支援、子育て支援、五つ目、住宅支援、そして最後、社会的企業の普及や新たな住宅政策なども考えられるかと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、井手参考人にお願いいたします。

井手参考人 今御紹介をいただきました井手でございます。

 本日は、貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 今日は、分配と成長という言葉が与党、野党を問わずあちこちで聞かれるようになっておりますが、それらに関する私なりの思い切った提案をさせていただこうというふうに思っております。

 まず、おめくりください。

 お手元の資料にございます青い線と赤い線がありますけれども、これは、青い方の線がお年寄りに向かっている社会保障の対GDP比であります。その横に小さな赤い線がございますけれども、それは現役世代に向かっている社会保障の対GDP比であります。

 教育費はここには入っておりません。高等教育費、御覧いただきますと、自己負担の割合は先進国で二番目に高うございますので、実は現役世代にとって非常に厳しい社会ができているということを御覧いただけるのではないかと思います。

 皆さんも少し考えていただきますと分かりますように、老後の備え、子供の教育費、あるいは大きな病気をしたときの備え、全て貯金で賄う社会ができ上がっております。このことが一目で分かる図が、今お手元の図でございます。

 おめくりください。

 成長が前提の社会ですね。しかしながら、高度経済成長期、七〇年代、八〇年代、そしてバブル崩壊後、経済成長率はどんどん低下して、とうとう一%も成長できない経済になっております。

 ちなみに、アベノミクス、そして五輪特需、更に申し上げれば百か月を超えるアメリカの好景気があったにもかかわらず、実は安倍政権期も成長率は一%程度にとどまっております。

 ここで私たちが確認すべきは、かつてのような成長がもはや不可能になっているという厳しい現実であります。

 おめくりください。

 平成の間の変化を少し御覧いただこうと思うのですが、まず、共稼ぎ世帯が六割増えました、平成の間にですね。したがいまして、一人が家族を養う生活から二人で家族を養う生活に変わったにもかかわらず、勤労者世帯の収入のピークは今から二十五年前の九七年であります。

 世帯収入三百万未満が全体の三割、四百万未満が四五%、これは平成元年とほぼ同じ割合であります。これは平成の最後のデータでありますけれども、先祖返りをしたような形になっております。

 二人以上世帯の三割、単身世帯の五割が貯蓄なしと答える。一人当たりのGDPも、平成の初め、世界四位から二十六位にまで落ちる。

 企業のトップ五十社を御覧いただければ、平成の初めに三十二社が日本企業であったものが僅か一社になり、相対的貧困率を見ても、ジニ係数を見ても、貧しい人が多く、格差の大きな社会ができ上がっております。

 まさに、平成の貧乏物語と呼ぶべきではないのかと思われるような厳しい状況がやってきたわけであります。

 おめくりください。

 そうしますと、私たちは、分配なくして成長なし、分配することで成長を何とか引っ張り出そうじゃないか、こう言い始めます。これは、与党であれ野党であれ、このメッセージが飛び交っておりました。

 しかしながら、先進国の経済を見てみましょう。十年単位で見ておりますが、実は他の先進諸国も僅か一・三%程度しか成長できない、ということは、私たちがどんなに頑張っても、せいぜい目指せる成長率というのは一・五%から二%程度だということであります。高度経済成長期には九%以上成長しておりましたので、それを前提につくられている社会では、とてもではないが自己責任で生きていくことはできないという厳しい現実がお分かりいただけるかと思います。

 おめくりください。

 分配と成長、私の聞く限り、分配をしなければならない、なぜならばそうしないと成長しないからだ、皆さんそうおっしゃっているように聞こえます。しかしながら、それは本当に正しい問いでしょうか。

 私はこう思います。かつてのような成長はもう無理だ。中長期的に一・五%から二%ぐらいの穏やかな成長を目指していこう。そして同時に、このコロナ禍が私たちの生きづらさを可視化した状況の中で、成長を前提にしない、成長に依存しないような新しい社会モデルをつくっていく、こういう考えが重要なのではないのかと思います。

 おめくりください。

 このときの一つのヒントになります考え方に、アクセス保障という考え方があります。マニュエル・カステルという社会学者がこのように言っています。不平等の問題はどこに表れるの、それは、一定の集合的な様々なサービスへの接近可能性、そしてその利用に関わって生じる新しい社会的分裂の中に表れている。

 少し難しいでしょうか。端的に申し上げます。

 格差是正といいます。じゃ、どこまで是正すればいいのかを言える方がこの中に一人でもいらっしゃるでしょうか。そうだとするならば、完全に平等な社会を目指すしかなくなってしまいます。それは不可能です。

 そうではない、格差があり、貧しい人がいる、そのことによって、その人たちが医療や教育、介護、その他の様々なサービスにアクセスできない、貧しいというそれだけの理由で病院に行けずに命を失ってしまう、もしそのような状況があるとするならば、それは理不尽である。したがって、全ての人々に医療、教育、介護、そういったサービス、全ての人々にアクセスできる権利を保障しようじゃないか。

 これがアクセス保障の考え方であり、私が提案をし、また、国際的にも近年あちこちで議論され始めているベーシックサービスという考え方の原点であります。実は、こうした方向性は世論ともぴったり寄り添っていると私は思います。

 御覧ください。

 国民皆が安心して暮らせるよう国は責任を持つべきだ。つまり、困っている誰かを助けようではない、私自身も含めた全ての人たちの暮らしを保障してほしい、そう思う国民がこの調査では八割近くに達しているということであります。

 おめくりください。

 この中で、私は今、ベーシックサービスという考え方をお示ししました。サービスとお金の区別を是非つけていただきたいと思います。

 今、私は皆さんにお金は差し上げておりません。願わくば知的な、教育的な、願わくばではありますけれども、サービスを提供させていただいております。

 サービスと現金を区別することによって、決定的な違いが出てまいります。何か。サービスは安上がりだということです。

 今回、特別定額給付金で十万円が配られました。これで救われた方々は多かったと思います。しかし、このことによって十三兆円ものお金が飛んでしまいました。十三兆円あったとしたら何ができたのかを、皆さん、考えてみましょう。

 例えば幼保の無償化、安倍首相が、七十年ぶり、歴史的な大改革とおっしゃった幼保の無償化、これにかかったお金は僅か九千億円です。その十四、五年分のお金が僅か一年で吹っ飛んでしまった。なぜか。サービスは安上がり、現金は高くつくからです。幼稚園に、無償化されたからといって入り直す人はいません。なぜならば要らないからです。病気でない人は病院に行きません。なぜか。要らないからです。しかし、お金はみんなが必要とする。したがって、全ての人々にお金を届けようとする、だから高くつく。

 もしベーシックサービスと現金を効率的に組み合わせたらどうだったでしょうか。例えば、千二百万世帯の低所得層に月額二万円、年間二十四万円で住宅手当が出せた。リーマンのピーク時は三百五十万人失業者がいました。月額五万円、年間六十万円配ることができました。そして、大学、介護、障害者福祉を無償化し、医療費の自己負担を半分にすることもできました。

 つまり、包括的な生活保障が可能となる。中間層にはサービスを届け、貧しい低所得層にはお金とサービスを届けることで、全ての人々が真に幸せな社会を目指せる状況がつくれたと私は思います。ここがサービスを組み込むことの極めて重要なポイントです。

 おめくりください。

 ベーシックサービスの無償化を目指しましょう。義務教育を完全に無償化しましょう。これは、つまり、給食費はかからない、学用品費もかからない、そういう社会です。就学援助も要らなくなります。看護師、介護士、保育士の給与も引き上げていいでしょう。しかし、それだけでは不十分です。生活扶助をきちんと出す、失業給付を充実する、住宅手当を創設する。

 これら全てひっくるめてもし実施をするとすれば、消費税にして約六%程度の増税が必要になります。無論、これは、法人税その他の税を組み合わせることでこの水準を下げることは可能です。

 重税国家と皆さんはお考えでしょうか。違います。この増税をもってしても、先進国の平均以下の国民負担率にしかなりません。ポイントは一つ。分配すれば成長するではない、成長よりも分配が大事だということです。そして、この分配を徹底的に進めていくことで、結果的に潜在的な成長率が高まっていく。なぜならば、大学を無償化してください、今までためていたお金は全部不要になります、これが一気に消費に回ります、結果として経済の成長率が引き上げられていくわけであります。

 お時間になりましたので、最後のスライドを御覧ください。

 全ての人々にサービスを給付することで何が起きるか。全体を五つに分けます。左側が低所得層、右側が高所得層です。左側の方が明らかに所得の改善率が大きいことが分かります。全ての人々の生活を徹底的に保障する。困った人を助ける社会ではなく、困っている人を生み出さないような社会を目指す。救済ではない、施しではない、一人一人の全ての人々の権利を保障する。誰もが堂々と学校に行ける社会をつくる、病院に行ける社会をつくる。それが格差を小さくする大切な方法だと申し上げたいと思います。

 以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。奥野信亮君。

奥野(信)委員 皆さん方からいただいた資料、昨日もらったやつを前提に考えていたものですから、今日新しい資料が出てきて、あれっと思ったのはあるんですけれども、ちょっとその辺のやり取りはこちら側に任せていただいて。余り細かい質問は私は得意じゃないので、大ざっぱに聞きますから、よろしくお願いします。

 皆さん方、大変貴重な時間を割いて国会へ来ていただきまして、大変ありがとうございました。

 私は、サラリーマンとして大会社で三十年働いてきまして、役員も経験したし、その間はいろいろなポストを経験し、外国の子会社へも派遣され、最後に、中堅の子会社をマネジメント・バイアウトという形で購入し、社長も経験しました。残念ながら、社長を経験するについては、その前に社長としてのトレーニングは全然できていなかった、しかしながらそれまでの経験で何とかやりこなしたという感じでありますけれども、その後、五十九歳で政治の世界へ入りました。民間時代の経験を生かしながら、今の政治の議論に参加させていただいております。

 私の政治信条は、清潔な政治、信頼される政治をしなくちゃいけない。それから、正しい自由、利己主義は許さない。それから、住みよい郷土をつくろうよ、豊かで格差のないまちづくりということを訴えてきているんですけれども、この考え方は、民間時代に経験したことが生きてそれということになったわけであります。

 当時、これも政治の世界では大変革というふうに言われたように思いますけれども、しかし、今、日本には一層の変革が必要だろうと思います。今、井手さんなんかが熱弁を語っていただきましたけれども、やはり日本も変えなくちゃいけないという時代に来ているんだろうと思うんです。特に、その要因は、デジタル化、カーボンニュートラル、感染症、こういったことが要因になって、個人の生活スタイルも、産業界の構造も、それから企業のマネジメントも競争力ある企業を目指して変えていかなくちゃいけない、そういうことが鍵だろうと思います。

 そうした中で、松井さんは、昔から私は主張されていることは理解しているんですが、私も松井さんと同じであって、国会を変えなきゃ駄目だよというのがベースにあるんですけれどもね。政治家が役人の力をかり過ぎているという気がしているんですけれども、やはり国会の場の議論というのは政治家同士が議論するところであって、行政の人たちが入ってきて手助けをするなんというのはナンセンスだ、私はこう思っております。

 いずれにしても、個人の生活スタイルも産業構造もみんな変えなきゃいけない。日本を競争力ある強い日本にするためには、基本的にはGDPの六〇%を占める個人消費ですよね、個人消費がしっかりとベースになかったら日本は育たない、こういうふうに思います。そんなことで、できるだけ企業は消費者を自分のところに取り込むということが大事なことだろうと思います。

 こんなことで、私は政治の世界を経験しているんですけれども。

 私がさっきマネジメント・バイアウトといった言葉を使いましたけれども、マネジメント・バイアウトで買った企業でやったことというのは、今までの日本のやり方とは基本的に違うやり方を随分しました。人の採用についてはジョブ型雇用、それから女性の管理職登用、それから年金については確定拠出、そういうやり方を積極的に取り込んで、従業員に納得してもらったわけであります。そして、ジョブ型雇用ですから、仕事の質に見合った給料を渡す、仕事をしない人には渡さない、だからいつでも辞めてもらって結構だよ、こういう理屈を通したわけでありますけれども。

 ただ、私がやっていた中に、ファンドが金を貸してくれたものですから、とにかく稼がなくちゃいけないというので、一部に非正規雇用を使ったんです。それが最大の間違いだったと思います。

 いずれにしても、大企業から中企業の社長になったんですが、そのときに社長のトレーニングを受けないで社長になったということは、今から考えると大変残念なことだったなという気がしております。

 いずれにしても、こういった日本の社会では、社長をやれる人、あるいはチーフファイナンシャルオフィサーをやれる人、そういう人たちをしっかりと育て上げるような組織が必要だろうと思うんですが、そういったことも含めながら日本を改革していかなくちゃいけないんだろうと思っております。

 そうやっていくと、昔の常識は今の非常識になると思います。昔の常識は今の非常識、昔の非常識が今の常識、そういう感覚で物を考えないと、やはり全体としては動いていかないだろうなという気がしているんです。

 いずれにしても、そんなことを考えつつ今いろいろと仕事をしておりますけれども、今日は皆さん方に質問をするということだったんです。質問をさせていただきますけれども、余り細かいことを言っても、聞いている方が分からないんだから、大ざっぱに、一人一つずつ質問させてください。

 権丈さんについては、社会保障。特に今、日本全体が格差社会になってきていると思うんですけれども、この格差をできるだけなくして社会保障を充実させるためにはどうしたらいいんだ、こういうことを一つお尋ねしたいなという気がします。

 それから、松井さん。これはもう、国会改革をもっと雄弁に物語ってくださいよ。さっきのはちょっと違うなという感じがしていたんだけれども。まあ、言いたい放題言って構いませんから。後は私が責任を取りますから。

 そして、宮本さん。これは私は、やはり、子供たちに対する非常に思い入れが強い方と理解しましたけれども、子供たちへの社会保障というのはどうあるべきなんだ。先ほどは、家庭でちゃんと子供を面倒見切れなかったら駄目だよというようなこともおっしゃったと思うけれども、それだけじゃ足らないだろう。じゃ、子供たちの社会保障というのはどうあるべきなんだろう。

 それから最後に、井手さんは、ベーシックインカムじゃなくて、ベーシックサービスだと。それは、私は今日初めて聞いたというか、昨日初めて見たものですから、へえという感じがしましたけれども。否定しているんじゃないですよ、面白いじゃん、こういう感じなんですけれども。是非、消費税の使い方というものの前に、消費税だけじゃなくて税の考え方というのがあるはずなんですね。今、個人の所得税とかといった形でやっていますけれども、僕はこれはやはり世帯所得でやるべきだという気がしているんですけれども、それに対してもし意見があったら教えていただきたいという気がします。

 勝手なことを言いましたけれども、そういうことで、順繰りに、言いたい放題言ってください。お願いします。

権丈参考人 ありがとうございます。

 おっしゃること、はい、そのとおりというふうに思いながら伺っておりました。

 私に課せられた課題というのは、格差を是正するため、社会保障を充実させるためにはどうしたらよいかということでございます。非常に大きな課題だと思っております。

 社会保障は、二次分配、再分配の仕組みとなります。ですので、社会保障は、まずは労働市場、一次分配でしっかり稼げるようにする、そういった点がまずは基本になるかと思います。その際に、一次分配のところ、先ほど申し上げましたような非正規雇用といったところに対応していくということが一つ。

 そしてまた、かつての社会保障、その中心となっていた社会保険、こちらが勤労者全員にカバーできていないというところも課題になっております。ですので、そういった被用者保険の適用拡大というところはしっかり進めていただければいいと思います。

 また、社会保障全体で申しますと、既に問題意識ということもあり対応も進んでいるところでございますけれども、医療の提供体制の見直し、そしてまた保育や介護の労働者の問題や整備の問題といったところもございます。そういった、総合的に様々に、課題とされているところ、しっかりと取り組んでいくということが大切だと考えております。

 以上でございます。ありがとうございます。

松井参考人 御指摘ありがとうございます。では、好きに言わせてもらいますけれども。

 資料の真ん中にこういう絵を描いたものがあったと思いますが、一言で言うと国会が機能していないということだと思います。国権の最高機関であり、パブリックセクターのある意味ではトップに位置する国会が、パブリックセクターについての、どんな悩みを我々国民が抱えているかということ、それに対してどんな解決策を提示し合っているのかということについて、国民に魅力ある議論、それはしんどい議論も含めて、魅力ある議論を提示していないと思います。

 その一番根源は予算委員会にあると思います。ここが国会の華ですよね。その国会の華である議論を僕は学生に毎学期見せるようにしています。彼らは正直言って失望すると言います、多くの八割、九割は。何をやっているんですか、揚げ足ばかり取って、お互いにもっと議論してくださいと。

 同じような議論を、例えば英国のプライムミニスターズクエスチョンを見せます。そうすると、中身は、英語で言うと立派に聞こえるんですけれども、そんな深い議論をしているわけでは必ずしもない。三十分間、毎週議論をしていて、その中で、総理大臣と野党第一党の党首の議論は六往復か七往復ぐらいですよ。十何分ですよ。そんな大したことを議論していないけれども、あの時間だったら、彼らは見て、そしてお互いにフェアに議論するということを大切にしているという文化を学生たちは学び取って、こういう議論をしてほしいとやはり彼らは言います。

 別に、僕は全てが英国がいいとは思いません。日本型の予算委員会で、徹底して官僚とか閣僚も全部を従えて議論を積み上げていくというこの議論も意味はあると思います。

 ただ、やはりこれの印象が非常に強過ぎて、特に、野党が一方的に、質疑というと、今日もそうですけれども、先生方に質問は許されないわけですね、答弁者というのは。だから、それをやはりもうちょっと双方向で、しっかり国民に、我々日本国民が抱えている問題点は何なのか、どういう解決策をお互いが競っているかということを見せ合わないと、パブリックな世界に対して、僕がさっき言ったようなことについて、国民が関心がなくなる。

 うざったい世界だ、そんなこと、先生が言っていることだったら自分たちで、社会問題の解決は民間企業でできるじゃないか、そっちでやりたいという人たちを増やしてどうするんだと。

 やはり、みんながここでの議論に憧れて、私たちも是非この場で議論したいというふうに、多くの国民が憧れるような議論をしていただきたい、そのための国会改革をしていただきたいと思います。

 失礼いたしました。

宮本参考人 どうもありがとうございました。

 子供たちへの社会保障はどうあるべきかという御質問でございますけれども、一言で言えば、親の状況に左右されることなく成長し、自立に向かって歩みを進めることができることということになるかと思います。

 現在の状況では、もろに親の状況が子供に影響を及ぼしてしまう、そういう構造になっていること、これが子供の貧困を生んでいるのではないかと思います。

 さらに、子供の後、若者期のことについてもう少しお話ししますと、今の日本では、親が子供の年齢のいつまで親の責任を果たさなければならないかが極めて不明確な社会でありまして、場合によっては三十や三十を超えても親の責任が続いてしまう、こういう状況にあると思います。

 一方では、それのできない若者は進学することも就職することも一人で住まうことも不利な状況がずっと続く、こういう状況になっております。若者期に関しては、一番重要な時期に教育、職業訓練、あるいは社会経験の機会を得ることができること、それができないまま放置されるということのない社会、これが重要だと思います。

 EUの国では既に二十年前から、学校を終わって四か月間学校にも仕事にも行っていない場合には、直ちに、職業訓練、それから相談サービス、その他いろいろな選択肢の中で経済給付つきで若者の自立を保障するということをやっておりましたけれども、それは日本にとって今非常に必要なことではないかというふうに思っているところでございます。

 ありがとうございました。

井手参考人 どうもありがとうございました。

 結局は、世帯所得とおっしゃいましたが、それは恐らく、より累進度を高めていくというメッセージではないかというふうに思いました。それ自身は私は基本的には賛成ですが、一方で、例えば女性が働かない方が税金が安くなるような、そういう形にもしなってしまうとすると、女性の就労に対してニュートラルではないというような問題もございますので、これは世帯所得がよいのかどうかというのは、利害得失を総合的に考えて判断するものと思います。

 他方で、現状のままでも累進性をもっと強化していくことは可能ですし、これは税率を動かせばよいわけでありますし、かといって、その所得税の累進性だけにこだわるのではなく、今度は取った税金をどのように使うのかということによってまた格差を正していくことも可能になりますので、税の内側、そして税と給付のバランス、総合的に考えてやっていくことが肝要かと思います。

 以上でございます。

奥野(信)委員 皆さん方から意欲的ないろいろなコメントをいただきまして、ありがとうございました。これに懲りずに、またチャンスがあったらお話をさせていただきたいと思います。

 今日はありがとうございました。

根本委員長 これにて奥野君の質疑は終了いたしました。

 次に、落合貴之君。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 大変ためになるお話をありがとうございます。

 私からは、権丈先生から順番に、四人の先生に同じ質問をまずさせていただければと思います。

 岸田総理の経済政策といえば、新しい資本主義ということで打ち出していますが、それに対する感想と、それから、今回の予算案で、ここを改善すれば大分違うのにというところがありましたら、教えていただければと思います。

権丈参考人 御質問ありがとうございます。

 新しい資本主義ということで、私は、基本的に、重要な点、分配をしっかりやるというところに目を配ることがされた、重要なことだというふうに考えております。そして、具体的な制度の中についても、様々に取り上げていただいておりますので、是非進めていただくといいのではないかというふうに考えております。

 取りあえず、以上でございます。ありがとうございます。

松井参考人 御質問ありがとうございます。

 新しい資本主義という考え方は、私は賛成なんです。というのは、常に、資本主義の在り方とか、あるいはデモクラシーの在り方というのは、それを問い直すのが皆さんの仕事だと思うからであります。

 今回の予算の中身あるいは政策の中身を私はつまびらかに承知はしていません、ある程度は拝見しておりますけれども。ただ、思うのは、ちょっと本格的に新しい資本主義と振りかぶられる、あるいは今民主主義の在り方が問われていると振りかぶられる割には、やはり時間がまだ短かったのか、根源的なところに手がついていないんじゃないかと。それは恐らくこれからの課題だと思います。それは、失礼ながら、野党も含めて同じじゃないかなと思います。

 資本主義が曲がり角に立っている、あるいは民主主義の在り方が問われているときに、例えば、私がさっき申し上げたことの関わりでいえば、公務員制度。公務員の定年だけを延長してどうするんですか。人々の公務に対する関わり方を根本から見直すべきじゃないですか。

 あるいは、予算のつくり方。今回、委員部の方から資料をいただきましたけれども、財務省が苦労してつくっておられるのは分かりますよ。だけれども、従来どおり、薄くそいで、政策的な経費に重点化する。全く同じつくり方をずっとしていますよね。

 さっきの井手先生のベーシックサービス論は、いろいろ私は思うところがあります。ちょっと、そんなにうまくいかないと思う。要するに、サービスを誰が提供して、どういうふうに効率的に本当に国民が満足できるサービスが提供できるかというのが自然に保障されるわけではない。そうだとしたときに、だけれども、ああいう井手先生のような考え方もある中で、どのように負担と給付の在り方を抜本的に見直していくのかみたいなことをやはり議論していただきたいし、それをされるには恐らく時間がなかったと思います、この十二月までに予算をつくるというのは。ですから、そこは是非、与野党を含めて、参議院選挙がありますから、堂々と議論をしていただいて。

 えてしてマニフェストなんというのも、これは僕らの責任でもあるんですが、マニフェストって信用できないというものの代名詞になってしまって、国民に何かもっときちっと日本の問題点と、我々だったらこういうふうに解決するよという解決の在り方を競うというふうな政治にしていかないと。

 うちらのキャンパスは問題解決のキャンパスと言われていて、問題解決の一番トップに立つ国会議員がなじり合いをしていてどうするんですかというのが、いつも先生は言うけれども、あなたが所属していた世界って駄目ですよと。こんなんじゃ、我々の世代からいうと、なじり合いばかりしていても役に立たない、お互いに意見を聞き合って、根本として何を変えるのかということを提示しなきゃ駄目ですよと、よく学生にいじられている立場で申し上げさせていただきました。

 ありがとうございます。

宮本参考人 新しい資本主義ということで、資本主義を分配に戻って問い直そうという、そのスタンス自身は歓迎すべきものだというふうに思っております。

 問題はどこにポイントがあるかということでありますけれども、例えば、若い人でいい暮らしが待っていると信じている人は本当に少ないというふうに言われております。つまり、自分の将来に対する期待がない状態にあるわけなんですね。

 分配に関して、経済の好循環ということを考えて非常に心配なのは、例えば親世代は、これは現役の年齢の人たちですけれども、子供の教育と自分の老後のためにお金を使うことができない、とにかくためなければいけないというふうにしております。十万円もらえば、十万円を全部残そうとしますよね。教育と老後のためです。

 それから、高齢者は今ちょうど年齢的に、相続の問題で、非常に相続相談が活況を呈していると聞いていますけれども、高齢者が何を考えているかというと、子供や孫の将来が不安で、少しでもお金を残してやりたい、こういう発想になるわけです。ですから、年金生活になっても、多少なり余裕があれば、年金も含めて貯金をしようとしております。これでは好循環が起こるわけがない。ここのところにメスを入れるようなことをしないと新しい資本主義にはならないというふうに思います。

 その点で、こうやっていけば日本の社会の中でそれなりの生活ができるんだという明確で具体的な展望、これを示せるかどうかということが問われているのではないかと思います。

 ありがとうございました。

井手参考人 ありがとうございます。

 今回の予算を見ていまして、まず一つには、例えば介護士、看護師、保育士等の給与の引上げが行われました。さらには、国庫債務負担行為を活用して単年度主義の弊害を是正する。更に申し上げれば、これは予算とは少し離れますが、最賃の引上げについてもかなり意欲的に首相は態度をお示しになっているようにお見受けします。これら一つ一つはすばらしい政策だと思います。かつ、今回の首相演説にもありましたように、市場原理主義からの決別を明確におっしゃっている、これはすばらしいことだと思っています。

 ただし、残念ながら、これらの施策は全て安倍政権の中で実は実施されていた施策であったことを認めざるを得ないと思います。したがいまして、個々の政策が優れたものであることを認めた上で、新しい資本主義かと問われるならば、そうではないというふうにお答えせざるを得ないと思います。

 一方で、今回、私が申し上げましたように、お金を配るという発想だけではなくて、例えば大学の授業料や医療費や介護の自己負担や、そういうサービスにまで切り込んでいくことができていれば、もっと広範に、もっと効率的に人々の暮らしを保障することができたように思います。そういった議論がなかったことを非常に残念に思っています。

 この際、もう一言だけ申し上げたいのですが、税に関する皆さんのイメージを変える必要があるとさえ思います、新しい資本主義を語るのであれば。

 と申しますのは、例えば、朝日新聞の世論調査で、朝日は消費税に非常に厳しいデータが出ますけれども、二〇一九年十月の増税前には反対が五四%だった、賛成は三九%だったと思います。ところが、増税後、増税に納得していますかとアンケート調査をしたところ、納得しているが五四%、そうではない、納得していないが四割。見事に逆転したわけであります。

 消費税というと人々の痛みが大きい税とすぐに観念しますが、そうではなくて、受益がきちんとある、幼保の無償化、低所得層向けの大学の授業料の無償化、この受益と負担のバランスで国民は判断をしている。この辺の観念、理念の転換も非常に重要なポイントになってくるように思います。

 以上でございます。

落合委員 ありがとうございます。

 今、最低賃金の考え方が出てきましたが、権丈先生に伺えればと思います。

 労働移動が重要だということもおっしゃっていらっしゃいますが、今、非正規雇用が四割ということは、最低賃金に左右されている方がかなり多いわけです。これはちょっとずつ是正を、賃金の高い正社員になるべくなってもらうということが重要だと思うんですけれども、同時に、最低賃金についてはどう考えておられるかを伺えればと思います。

権丈参考人 ありがとうございます。

 労働市場の中で非常に重要な考え方として、柔軟性と保障、その組合せが重要であるという考え方があります。つまり、フレキシビリティーとセキュリティー、それは相対するものではなくて、両者を上手に組み合わせることで、労働市場で人々が意欲を持って働き、生活も守られていく、そういった考え方です。

 そうした中で、それをベースに置きながら、そのちょうどいい組合せ、労働移動も含めて、必要な産業があり、一方で衰退していくところがあるとすれば、労働者の生活を守りながらいかに次につなげていくのかというところが重要になると考えております。そのためには、職業訓練とか人への投資ということで今回の予算でも入っておりますが、そういった点は重要だと考えます。

 また、最低賃金についても、これは労働者の生活のために上げていくというところは重要かと思います。その上げるペース、そして目標、こういったものをしっかりと議論して進めていく。そうすると先の見通しが立ってきますので、用意もできていくということだと考えております。

 以上でございます。

落合委員 ありがとうございます。

 あと、宮本先生に伺えればと思います。

 就職氷河期世代についての記述もございました。私もその世代の最後の方なんですけれども、やはり、同窓会をやってもほとんど正社員がいない、地元でやってもというのが現状です。もう学校を卒業してから二十年ぐらいたっているわけで、一回も正社員として働いたことがない人たちもたくさんいます。今までと同じような職業訓練ですとか、そういう感覚でやっても、そういう職業訓練は数年間が空いている人のためにやったりするわけですので、なかなか難しいものがあると思います。

 就職氷河期世代の問題を抜本的に解決するための有効な政策というのはあるのかどうかについて伺えればと思います。

宮本参考人 どうもありがとうございました。

 現在、就職氷河期世代に関しては、厚生労働省等が就職氷河期対策ということで各地でやっている状態ですけれども、その状況というのを先日聞く機会があったんですけれども、何がネックになっているかというと、非正規雇用等で不安定な状態で働いてきた方々は、空白はなく、ずっと働き続けているけれども非正規であった人たちですね、この方たちは、企業が非正規雇用の人に対しては本格的にトレーニングをしなかった、つまり表面的なことだけで終わらせて使い続けてきたということでありまして、四十代になって、就職氷河期対策ということで、国としては正社員化ということが目標になっておりますけれども、にわかに正社員にするということが非常に難しいということなんですね。

 そういう意味でいうと、やはり非正規雇用の使い方というものをもっと本質的なところで見直す必要があって、非正規雇用であってもきちんと育てられる、チャンスがあれば正規雇用にも変わることができる、あるいは非正規雇用であっても正社員並みに働く能力が持てているというようなことをやらない限りは、ちょっと景気が悪くなって非正規雇用が増えてその方たちが中年になると、その人たちに対して何かやるといっても効果が上がらない、そこに問題があるように思っております。

 以上でございます。

落合委員 もう一つ宮本先生に伺えればと思うんですけれども、先生のいろいろな文章を読んでいるときに、コミュニティーから貧困層が孤立してしまっているという、お金だけの問題じゃない問題も何十年か前と比べるとありますよということでございます。ほかの先生方もコミュニティーの重要性というのは今日陳述されているわけですけれども、具体的に、コミュニティーを再生していく、社会保障の意味でも再生していくにはどういう手を行政とか政治が打っていくべきだと思いますでしょうか。

宮本参考人 ありがとうございます。

 コミュニティーに関しては、例えばこの間、過去二十年の間で見てみますと、全国的には多くの支援団体ができてきて、二十年前とは大分違ってきていると思います。

 一番の課題は、一番最先端でサービスの必要な受け手に対してアプローチしているのは非営利組織だと思いますけれども、非営利組織だけで課題を解決できるわけでは決してなくて、いかにして公的な機関と手をつなぎながらやれるかというところにあると思います。あるいは、財源的にいえば、民間の企業がどれだけそのコミュニティーづくりに参加していただけるかということが非常に重要だというふうに思うんですね。そういう意味で、コミュニティーは官民の連携によって取り組むことが非常に重要だと思われます。

 先ほど井手先生がアクセスの問題を言われておりましたけれども、いろいろな制度があってもアクセスできない人々の問題というのが現在の困窮者層の増大の中で目立っているわけですけれども、そのアクセスを保障するためにも、連係プレーによる、そして人への対人サービス、そこの部分を地域の中に密につくるという課題があるのではないかと思います。

 ありがとうございました。

落合委員 では、次に井手先生に伺えればと思います。

 住宅はかなり重要で、これからの日本の社会保障にとってかなりの重要な論点になってくると思います。

 具体的にどうするか。例えば、昔は都営住宅とかをいっぱい造っていたわけです。今は空き家もあります。あと、民間に借りてもらって家賃補助を入れるというやり方もあると思うんですけれども、一番効果があるやり方というのは具体的にどう考えられているか、教えていただければと思います。

井手参考人 ありがとうございます。

 公営住宅、ヨーロッパでは社会住宅というふうに申しますが、どうしても社会的スティグマがつくという問題がございますね。所得審査があり、時には、ずっと同じ服を着た人が出入りしていると、あれっ、公務員がいつも来ているぞ、これは生活保護利用者だなというようなことがばれてしまうようなこともやはりあります。ですから、そうではなくて、家賃支援、家賃補助を軸にすること、そうすることで貧しい人たちが自分の住みたい場所を選べるようにしてあげるということが非常に重要だと思います。

 あわせまして、空き家のお話もございましたので、例えば、自治体がその空き家を借り上げて、これを低所得層に対して安価に提供していくようなやり方もあるかもしれません。

 これからは、今までのような、公営住宅を造ってそこに貧しい人たちを押し込めていくというようなやり方ではない手法を目指すべきではないかと考えます。

 以上でございます。

落合委員 今日は、勉強になる話をありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

 ありがとうございます。

根本委員長 これにて落合君の質疑は終了いたしました。

 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 本日は、お時間のない中、四名の方に参考人として来ていただき、ありがとうございます。

 早速ですけれども、質問に入りたいと思います。

 まず、松井さんにお伺いしたいと思うんですけれども、今日の資料の中にも省庁再編の話が出てくる部分がありました。今国会ではないですけれども、こども家庭庁の議論が若干スタートしております。幼保一元化とうたって三元化になって失敗をした事例があるわけですけれども、またもや、こども家庭庁について同じ轍を踏まないかという心配を私はしております。

 たてつけ上、松井さんから見て、果たして政府が目指すこどもまんなかの政策がこども家庭庁によって実現するのかどうか、率直な御意見を伺いたいと思います。

松井参考人 ありがとうございます。

 今まさに超党派でいろいろな取組もされているところですから、水を差すようなことを申し上げたくないんですが、それは一歩前進するんじゃないでしょうかね。かつて消費者庁をつくられたときのやり取りを想起しますね、報道を見ている限り。消費者庁がつくられて僕はよかったと思いますよ、前進していると思います。

 ただ、根本的に、行政各部中心主義、各省の縦割りの中でブリッジをかける、そういう政策ですよね、それをかけまくってきたわけですよ、ずっと。いろいろなものをつくってきましてね、宇宙にしても海洋にしても。そこの根源のところをどう見るかというところはやはり議論はしていただきたいと思います、将来的にですね。せっかくここまで皆さん方がいい役所をつくろうとしておられるのであれば、その先にどういう行政編成の在り方がいいのかという議論をしてほしいと思います。

 私どもは、御記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、自民党さんもかつてそういう御議論をされた方もいらっしゃいましたが、今の国家行政組織法とか各省設置法の在り方自体を一回見直したらどうかという話を二〇〇〇年代の半ばぐらいには結構していたんですね。そういう議論も含めてなさった方がいいのではないかなと。今取りあえずやらなければいけないことをやられるというのは貴重なことだと思いますが、同時並行で、本当に、古くなってしまったいろいろな国家行政組織法体系をどう見直すかというところは、同時並行で中長期的な視野を持って議論しておかれた方がいいような気がします。

 他方で、省庁再編ってすごくエネルギーがかかるんですね。橋本龍太郎内閣は恐らく相当神経をそこに取られて、経済の非常に危機的な状況に対する、まあ、関係者はそれぞれ一生懸命やっておられたと思いますが、やはり例えば首脳レベルでの意識というのはちょっと省庁再編に取られちゃったというところがありましたから、これはなかなか魔物なんですけれども。だけれども、やはり中長期的視野で皆さん方が御議論いただくことがすごく大事で、そういう意味では、これがびほう策にならないように、より本質的なところで御議論いただきたいと期待しております。

浦野委員 ありがとうございます。

 松井さんとは我々はいろいろな場で議論をさせていただける機会が多くありますので、またお話を聞きたいと思いますけれども、オールパブリックというお言葉がありました。公共性を考える中で松井さんがおっしゃっているような形の好事例みたいなもの、今まさに世界中でそういった新しい形の取組が前に進んでいる、成功している。エストニアというのは一つのそういう事例だとは思うんですけれども、そういうものがほかにあれば御教示をいただけたらと思います。

松井参考人 ネット上の問題というのはなかなか難しくて、エストニアは例えば電子投票を完全に実現しましたね。じゃ、あれが本当に日本で同じようにできるか、あるいはヨーロッパでできるかというと、いろいろな国々が調査して、そう簡単にはいかないと。やはりセキュリティーの問題というのがより大きくなってくるとそう簡単にはいかないというふうに言われているそうで、ああいう電子ネットワークで官民含めたネットワークを組めるというのは、やはり百三十万という一つの都市のようなレベルだからこそできることかもしれません。

 ただ、大事なことは、そうやっていろいろなデータが今や住民から見れば、例えば市役所であっても県庁であっても厚生労働省であっても、ある意味では電子的な窓口ということからいったら同じなわけですね。そこがやはりできるだけつながるような試みを、今まさにやっておられると思いますよ、マイナンバーと例えば自動車免許のリンケージとかですね。だけれども、それをもうちょっと抜本的にやる努力をしていただきたいし、僕らが、一人の住民から見たら、市役所のシステムと県庁の情報システムがばらばらだとか、国税庁と特許庁と社会保険庁、今は年金機構ですが、それぞれがばらばらのコンピューターを持っているとか、もうやってしまったことはしようがないんですけれども、そこをどういうふうに再整理して統合していくのか、セキュリティーの高いものをつくっていくのかというのはすごく大事だと思います。

 ちょっと話が違いますけれども、具体的な事例でいうと、さっき井手先生がおっしゃったこととも関わるんですが、自民党政権時代に当時の民主党の方も一部乗り入れて実現したのが、コミュニティースクールという、もうこれは今はデファクトスタンダードになっていますが。

 やはり、学校教育は文部省と教育委員会とそれから学校長を含めた教職員が提供する教育サービスという考え方を、地域の住民とか、もちろん保護者とか、それから生徒、学生本人も含めて、そこがお互い寄り合いながら、いかにいいサービスをつくっていくかということを垣根を越えて議論するというフレームワークを小泉内閣のときにつくられて、それがすごく普及していったんですね、学校現場の人々もそれを受け入れて活用して。全てのものが全部うまくいっているわけではないけれども、課題もあるけれども、うまくいった。

 要するに、行政の垣根を越えるというのは決してネットワークのことだけではないと思うんです。

 ですから、国と地方の関係も含めて今の電子政府の議論をするときに僕がずっと気になっているのは、総務省の、総務のテレコムの人たちは一生懸命やっているんだけれども、自治の人たちがもっと本気になって、国と地方行政の垣根をどういうふうにもっと伸縮自在なものにしていくのかということを考えていかないと、幾らネットワークだけをつないでもうまくいかないのではないか。

 例えば、西村大臣が非常に御苦労して奮闘されましたけれども、感染症対策というのを、国と自治体の役割というのを一つの法体系でずっとやるのがいいのか、場合によってはそれは、ある局面においては国がもっと大きな指導力を持たなければ、各地に委ねたら各地の首長さんも気の毒だという部分もあるかもしれません。だから、それが伸縮自在な仕組みを国会も含めてどうやってつくっていくかということですね。

 例えば、ドイツは連邦参議院というのがあって、地方の行政の代表者が立法府に集って、そこで国と地方の在り方を含めて議論するというハウスがあるわけですね。そういうことを立法府も含めてどう考えていくか、この垣根というものをどう取っ払っていくかということは、ネットの問題だけじゃないのではないかと思っております。

浦野委員 ありがとうございます。

 続いて、権丈さんにお聞きしたいと思うんです。

 レジュメの最後の方で、ライフステージに応じて働き方を変えると。非正規雇用の皆さんのことはもちろんなんですけれども、正規労働者の皆さんの働き方も見直すべきだというふうにここに書かれているんですけれども、例えば正規労働者の皆さんの働き方の見直し、具体的にはどういったものがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

権丈参考人 どうもありがとうございます。

 正規労働者の方の働き方の見直しというところでは、これも長く既に取り組むようになっておりますが、ワーク・ライフ・バランスということで、正規、非正規も含めた日本全体の働き方の改革に、二〇〇七年のワーク・ライフ・バランス憲章から始まっております。そしてまた、働き方改革ということで、長く、これも最近も力を入れてやっているところです。

 そうしますと、範囲としては非常に広いんですけれども、少し労働時間の辺りの話をさせていただきますと、長時間労働の是正というところが正社員の、特に男性正社員にとっては非常に大きな課題になっているかと思います。また、職種によっても厳しいところがございます。そういった長時間労働の問題を改善していくというところが重要である。これは、過労死、過労自殺を防ぐということももちろんですけれども、多くの人々が労働時間の満足度が余り高くない、労働時間を短くしたいと考えておりますので、幅広い層にとって重要な問題だと考えております。

 また、長時間労働の状況というのは、先ほども申し上げた女性の働き方、そこにも影響を与えます。フルタイムで、しかも残業つきでとなりますと、子育て中は非常に厳しい。そうなりますと、正社員を諦めざるを得ないということも起こってまいります。

 ですので、労働時間についてもう少し柔軟性があるようになっていけば、子育て期でも、そういったときには少し短時間勤務を入れたり残業しなかったりというふうな働きをしつつ、また、状況が許せばフルタイムでしっかり働いていくというふうな形ができるかと思いますので、正社員の方の働き方の見直し、こちらも進めつつ、非正規の方も先ほど申したような形で進めていくと、人々の働き方の選択肢が広がり、働きやすい環境になっていくのではないかと考えております。

 以上でございます。

浦野委員 続けて、権丈さんにお伺いしたいんですけれども。

 デジタル技術の発展に伴って、将来、機械に取って代わって失われていく労働というものが出てくると。既に何個かありますけれども。デジタル技術の進展によって失われていく労働市場、そういったものに対してこれから日本が取るべき形、技術が発展すれば自然とそういうふうに置き換わっていくのはある程度仕方がないとは思うんですけれども、権丈さんから見てその技術というのはどういうふうに見えているのか、お聞かせをいただけたらと思います。

権丈参考人 ありがとうございます。

 デジタル技術によって、AIの進化によって多くの仕事が失われるのではないか、そういった問題提起もあり、ここは非常に重要なところだと考えております。

 そうした中でも、AIには置き換わることのない、あるいは置き換わりにくい、そうした仕事もたくさんある。特に対人サービスについては、効率化が非常に難しいところでございます。そして、介護労働者の不足も言われているところもありますように、人との交流、コミュニケーションといったところは機械とはまた違ったものになるのではないかと考えております。

 また、デジタル化の進展は、単純作業のようなところですね、日々の業務を改善し、より快適なものにしていくというふうなことも期待されます。

 このコロナ禍で、テレワーク、リモートワークが急速に進みました。こちらもなかなか進まなかったわけなんですが、やってみたらできたというふうなこともあるかと思います。テレワークについては幾つかの問題とか課題というのもありますが、しっかり積極的に活用していくことによって、より多くの人にとって働きやすい環境になるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

浦野委員 こう見えても私は元保育士でして、機械に置き換えられない職業のうちの一つだと思っているんですけれども。

 子供関係のお話でいきますと、宮本さんの今日のお話は重要なお話だったと思うんですね。先ほどの落合委員からの質問にお答えになったことにも少し重なるんですけれども。

 私も、本来あるべき社会保障、社会資源、福祉の資源ですね、それが用意されているにもかかわらず、そこにアクセスできている子供たちはそれでもまだ助かる機会もありますし、福祉サービスを利用できる機会もあるんですけれども、そこにアクセスできない子供たちというのが一番やはり問題になる。それを、先ほどの御答弁の中には、コミュニティーを活用してキャッチしていくというお話があったと思うんですけれども、私、これがなかなかやはり難しいというふうに、同じように思っているんですね。

 枠から漏れてしまう子がどうしても出てきてしまう、そういった子をいかにキャッチしていくのかというのが、私、保育園、社会福祉施設を運営している中で、どうしても出てきてしまうというのを実感しているんですけれども。ちょっと同じ内容になるかもしれないんですけれども、いま一度、そういった子をどういうふうにして、言い方は悪いですけれども、からめ捕っていくのかというのをお聞かせいただけたらと思います。

宮本参考人 どうもありがとうございます。

 困難な状況に置かれる方がどうやってアクセスを発揮できるのかということですけれども、例えば、今、各地でそれについての取組というものが出てきております。

 例えば、東京の足立区は、孤立死問題で、全国で最初に白骨死者が発見されたということもあって、それ以来、区長が先頭を切って、高齢者の孤立を防止するために、町内会が全戸を回りながら、まずニーズを把握し、その後は、今年で取り組んでから十年近くなるんですけれども、定期的に回っていく。それは、御本人に意思を聞いて、回ってきてほしいかどうかということを聞きながら、回りながら、そして、そのうちに地域にいろいろな居場所をつくりながら活動している。そういうようなことで、このコロナの中で少し停滞したようですけれども、そうやって、くまなく地域の居住者の状況を把握していくというようなことをやっている。足立区は下町ですからそのタイプでありますけれども、都市部が全てその方法でうまくいくとは限らないわけですけれども。

 例えば、それこそ子供であれば、子供の学校、それから学童保育、その他子供の来るところで、そこに働く人がきちんとアンテナを張ることができれば、つまり、アンテナというのは、その感度を持って子供の様子から必要なニーズを酌み取る力なんですけれども、その力を持った人材が地域の中にいれば、何かあるということで発見する。その発見をして、自分では対応するのが難しければ、どこそこに対応を委ねるというような形のネットワーク、これがうまく構築されると、本当に放っておけば誰も分からないような家族なり人なりが日の目を見ることができる。こういうものを地域のそれぞれのタイプに応じてつくるというようなことが必要になっているかと思います。

 ありがとうございます。

浦野委員 だから、まさに、昔、僕らが子供の頃にはおった近所のおせっかいなおばちゃん、おっちゃんが必要なんだと僕は今でも思うんですね。そういう人を育てていくというか、そういう目でアンテナを張って見られる人を増やすには、やはりそれは教育しかないんじゃないかなと私は思いますけれども。

 社会福祉についていろいろ学校で学ぶ機会は昔よりはたくさんありますけれども、表層的な福祉じゃなくて、そういった社会問題に対してもうちょっと時間をかけて教育を、高等教育を含めてやっていただけたらいいんじゃないかなというふうに、今お話を聞いていて思いました。

 最後に一問、井手さんに。先ほどのお話で、税に対する考え方を変えるべきだというお話があったんですけれども。

 私は、ちょっと視点は違うかもしれないんですけれども、日本は確定申告はサラリーマンの皆さんは会社が全部勝手にやってくれていますけれども、例えばアメリカなんかは全国民が確定申告を自分でしている国です。私は、日本も自分たちの手で自ら確定申告をしていけば、自分の税がどういうふうに使われているのかとか、そういった税に対しての認識というのが変わるんじゃないかというふうに思っているんですけれども、その点についてお考えをお聞かせいただけたら。

井手参考人 ありがとうございます。

 もし理念でお答えしてよろしければ、おっしゃるとおりだと思います。

 しかしながら、まず行政組織、徴税機構を相当人員を増やすということも含めてやってまいりませんと、みんなが一斉に確定申告をやったときにはかなりの混乱が生じようかと思いますので、そのコスト・アンド・ベネフィットの関係で議論すべきかというふうに考えます。

 ありがとうございます。

浦野委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

根本委員長 これにて浦野君の質疑は終了いたしました。

 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、四人の先生方から本当に貴重な、大事なお話をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 初めに、宮本先生の方に御質問をさせていただきます。

 先生の方からは、仕事と家庭の両方から排除される女性の増加、あるいは親に頼ることのできない若者の存在、こういったお話をいただきました。まさに社会的孤立が非常に問題になっている、そういった視点かと思います。

 実は、私たち公明党は、これまでも社会的孤立の問題を一生懸命取り組んでまいりました。そして、コロナ禍において更に深刻化している実態を把握し、迅速に国、地方で対策を講じなければいけない、そういった視点の下、昨年の二月十六日、公明党の中に、竹内政調会長を全体の本部長、そして山本香苗参議院議員がその本部長という形で、公明党の社会的孤立防止対策本部を立ち上げました。

 そして、本部設置後からすぐに、全国の地方議員とともに、有識者や民間支援団体等から計九回のヒアリングをし、さらに、三月十四日から四月末までは、全国各地で社会的孤立の実態や孤立防止のための方策についてNPOやあるいは様々な団体からヒアリング等調査をさせていただきました。

 その結果の一つの結論が、最終的には社会的な孤立は個人の問題ではなくてまさに社会の問題、個人ではどうしようもない、そういった状況になっているんだ、そういった結論を得たわけですけれども、この点について先生の見解をお聞かせ願えますでしょうか。

宮本参考人 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりだと思います。特に、社会的孤立が顕著になったこの二、三十年間を考えてみますと、とりわけ孤立に至る背景というものは非常に明快であるように思います。

 最初のお話をさせていただいたところでもありますけれども、一つは仕事。そして、仕事とお金は表裏一体ですので、お金の問題。それから、病気ですね。病気というのも非常に重要な要因になっていまして、病気をすれば仕事はなくなり、お金がなくなるというようなことですけれども、特に病気に関しては、長期にわたる病、いろいろな病がありますけれども、そのことによって社会から孤立していくというような状況にあります。

 かつてであれば親族の網の目があったわけですけれども、今、親兄弟といっても兄弟の数も少なくなり、おじ、おば、おい、めいという斜め関係も非常に少なくなっている中で、仕事やお金や病気その他のことでつまずくと頼れる人がたちまちいなくなるという状況にあると思います。

 そういう意味でいうと、孤立する人を自己責任だと言わずに、これは社会の環境の結果である、その状態になるのはその人だけでなく、いつ自分もそうなるか分からないということを、どれだけみんなが共有できるかということにあると思います。その辺りのところの認識が深まっていけばコミュニティー形成というのはできると思います。実態としては、このコロナの中でかなりそういう共感というものが生まれたという面もあると思いますけれども、まだまだ他人の困り事はその家族なり親族の問題だという傾向が強いというところ、ここを何とかしなければならないだろうという感じがいたします。

 どうもありがとうございました。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 そういった孤立の問題というのは他人事ではなくて、いつ自分もそういった状況になるか分からない、そういった思いを共有をしていく、そういったことの大切さを本当に感じております。そして、社会的孤立は、様々なこのような問題を生み出すだけではなく、先ほどの健康の悪化、経済の不安定化、さらに、社会保障給付費の増大等、社会に大きな影響を及ぼすことが懸念されているわけでございますけれども。

 私たち公明党は、孤立、あるいは孤独・孤立対策のための十か年国家戦略、こういったものをしっかり策定し、複数年にわたって事業を継続的に実施する体制を構築すること、また、官民連絡協議会で定期的に施策の進捗状況等をフォローするとともに、支援現場における課題を吸い上げ、施策にタイムリーに反映していく新たな取組を構築するべきだというふうに提言させていただいているわけですけれども、この点についての御見解をお聞かせ願えますでしょうか。

宮本参考人 済みません、今、さっきのことを考えていて、申し訳ございません、後に回していただければ。

輿水委員 じゃ、済みません、今の御質問は後ほどまた聞かせていただくと同時に、今、宮本先生が大事なお話で、その困難というのを共有していくということで、今度は井手先生にお伺いします。

 井手先生の一つの書物というか、読ませていただきましたが、弱者を助けようというふうに声をかけるとほかの人たちも、大勢の方が、自分もこんなにひどいんだ、今はそういう状況だ、そういった中で優しさや寛容さが社会に失われているんだ、そういうお話を先生はされたことがあると思いますが、このお話に大変私もショックを受けました。全体的にそういうふうになっている。まさに先ほど先生がおっしゃられたように、低成長の時代は、成長による富の分配、これではなく、先生は、成長するためのサービスの分配、こういったことを御示唆されたんだと思います。

 まさに、その中で先生が今述べられたベーシックインカムではなくてベーシックサービス、こういうことでございますが、私も非常にこのお話は興味を持って更に勉強を深めたいと思っているところでございますが、先生はこのベーシックサービスということをいろいろなところで多分御講演されていると思うんですけれども、ベーシックサービスに対して反対している方もいらっしゃると思うんですけれども、どのような意見をお持ちの方がベーシックサービスに対して反対というか、後ろ向きな意見を持っているのかについてお聞かせ願えますでしょうか。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

井手参考人 ありがとうございます。

 ベーシックサービスの一番重要な肝はと申しますと、所得制限をつけずに全ての人たちにサービスを提供していこうとする、まさにこの部分でございます。

 これは、今までの施策を見ましても、例えば特別定額給付金もそうですし、消費税の軽減税率もそうですが、全ての人たちが受益者になるような仕組みをつくっていくと、国民のかなりの人々が支持するんですよね。ですから、ベーシックサービスの考え方そのものに反対をする意見というのを直接聞いたことは余りございません。反対に、ベーシックインカムを考えておられるような方は、いや、やはりお金を自由に使えた方がいいからそちらがいいよとおっしゃる方もおられますし。

 ただ、私は、限られた予算の中でどのように配っていくかということを考えれば、ベーシックサービスの方がはるかに安価に効率的にやっていけると。

 私の場合は、税をセットで、財源論から逃げてはいけないということを正面から申し上げますものですから、むしろ、ベーシックサービスへの反対ではなくて、税あるいは消費税ということを言ったときの反発が非常に強いというのが正直な感想でございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに税という部分になったときに相当な圧力や抵抗もあるのかな、そういうふうに感じるんですけれども。

 私がまた先生のお話の中で一つ感動したのは、ベーシックサービスを実現するための例えば増税が必要になったとしても、それは増税ではなくて、先ほど宮本先生のお話もあったんですけれども、いつ自分がそういった状態になるか分からない、病気になったときに社会的な孤立状態になるかもしれない、そういったときのためにベーシックサービスというものがあれば、そんなときに保険として、自分が社会に守られて安心して暮らし続けられるという意味では、保険料、そういった考え方の中で世間の皆様の理解を深めていく、そんな考え方も述べられていたんですけれども、その点についてもうちょっと詳しく教えていただけますでしょうか。

井手参考人 ありがとうございます。

 私自身は保険料というふうに申したことはございませんで、基本的には税というふうに申し上げております。

 税というのはいわば暮らしの会費のようなものでございまして、例えば消費税に固執するつもりはございません。これは、所得税、法人税、様々な税の組合せがあろうかと思いますが、仮に消費税だとすれば、毎日スーパーに行って買物をするときに暮らしの会費を上乗せして払っているわけですね。その代わり、自分が病気をしても、子供を何人産んでも、あるいは失業をしても、長生きをしても、安心して生きていける社会ができ上がる。もちろん、低所得層に関しましては消費税の負担が大きいということはあろうかと思います。これは必ず出てくる批判でございますが。

 ですけれども、私の場合は、今日申し上げているように、住宅給付を創設してこれをセットとして議論しておりますので、現実には、全体の所得階層の中の下、二割の人たちはむしろ消費税の負担があってもなお得をするような制度設計にしております。

 ですので、あくまでも暮らしの会費、いわば貯蓄がゼロでも不安がゼロの社会をつくっていく、そういうふうに考えるべきではないかと思っております。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

輿水委員 どうもありがとうございます。

 確かに保険料と言ってしまうと、保険的な考え方、そういう内容だったと思います、済みません。

 そういった中で、先ほどの宮本先生の質問に戻るんですけれども、こういったベーシックサービス、そういう論点も含めた上で、孤独・孤立対策のための十か年国家戦略、まさに国家戦略としてこういった孤立とか孤独をどう解決していくかが日本の新しい未来を占うのではないか、このように感じているわけでございまして、宮本先生がおっしゃるように、地域の現場でそういった、支え合うというか、互いに見守り合う社会、そういった中での官民の連絡協議会という形でしっかりと進めていくことも必要なのかなと思うんですけれども、その点についてお聞かせ願えますでしょうか。

宮本参考人 どうも、先ほどは失礼しました。

 地域の中で協議会とおっしゃっておられます。実は、協議会という名前のものは今非常にたくさんあって、あらゆる事業が連携、連帯、そして協議会づくりということになっているんですけれども、協議会が具体的に機能した例というのが極めて少ない状態にあるわけなんですね。関係者が名前の違う協議会に出て、毎回同じような人が出ているというようなことが言われているわけでございます。その協議会を実質的に機能させることが課題だというふうに思います。

 どのようにして実質的に機能させるかということですけれども、一つは、例えば支援が早急に必要だというような人がいたというときに協議会が機能できるかどうかですけれども、現状では直ちに具体的に機能できない協議会が非常に多いわけですけれども、関係の担当者が、違う部局あるいは分野の人が集まって具体的にAさんの議論をするというようなことができるようになれば、大分話は違ってくると思います。

 そのためには、それに必要な予算を立てること、それから、連携して働くような意識と、訓練を受けた人材をつくっていくこと、これは、行政はその役割を果たすとても重要なキーパーソンになると思うんですけれども、行政がまさに、縦割りの行政ではなくて、横に連携、取っ払った形で支援が必要な人たちに支援できるためのコーディネーターになること、そして、その地域の中にどういう必要な支援があるかをしっかり頭に入れて、組み合わせながら具体的に働いていただけるように、そういうような環境整備が必要ではないかというふうに思っております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 本当に、協議会とか一口で言っても、やはりそこをコーディネートする人材の必要性、また、そういった全体観に立った形で孤立とか孤独の問題をしっかり解決に導ける、そういったコーディネーターというか、そういった人材育成も含めて、しっかりとした対策が打てるように頑張っていきたいと感じました。ありがとうございます。

 続きまして、権丈先生にお伺い申し上げます。

 労働力希少社会が求める労働市場の在り方ということでお話をいただきました。まさに私も同感でございます。

 そんな中、女性あるいは高齢者の労働力、このことに言及されているわけでございますが、まさに自分の生活や体力に合わせた働き方ができる多様な労働時間の選択をした労働者、こういった労働者がまさに非正規ではなく正規になるための壁というのはどんなところにあるのかにつきまして教えていただけますでしょうか。

権丈参考人 ありがとうございます。

 非正規から正規の壁ということでございますけれども、一度非正規になるとなかなか正規になりにくい、企業側が雇いにくいといったこと、先ほどの宮本先生のお話などでもあったかと思います。

 私が特に考えておりますのは、非正規の多くが女性であるというところを考えますと、女性たちの多くが出産、育児などを契機に辞めてしまいます。その次にある仕事というのは、非正規、パートの仕事ということが主流です。

 そして、私が強調したいところは、女性が非正規でパートでも不思議はないというふうな考え方といいますか、日本では割とそういったところが一般的にきていたというところに一つあるのではないかと思います。

 正社員の方の働き方がより柔軟であれば、女性も辞めずに済みます。特に、育児休業制度の改正によりまして、育児短時間勤務が今利用可能になっております。この制度の利用者は非常に多くなりまして、女性の継続就業が大きく増えました。そうはいっても辞められる方も多いんですけれども、そうした労働時間の柔軟性、育児休業の制度のバリエーションといったところは非常に有効かと思います。

 また、非正規労働として新卒で入ってしまうと、なかなか職業経験の機会を得ることができずに、そうすると、正規の雇用が難しいということもあります。有期雇用から無期雇用への転換という仕組みもありますので、是非、広く利用していただけるようなそういった仕組み、そして職業訓練も充実していただきたいというふうに考えております。

 ありがとうございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさに、そういった新しい女性のキャリアパスというか、そういったものがしっかりこの日本でも築かれるような、そういった社会にできればと思います。ありがとうございます。

 松井先生、私は、松井先生のオールパブリックで公共性を考え実行する時代、まさに、何でもが公共ではなくて、民間と公共が協力をしながら多様な行政サービスというか公共サービスを実現していく、そういった時代になった、このように思っているわけでございますが、大事なことは、新しい公共の質と安全性をどう評価して確保するのか、こんなことが必要なのかなということでございますが、今日は時間が来てしまいまして、また今度の議論にさせていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 大変にありがとうございました。よろしくお願いいたします。

根本委員長 これにて輿水君の質疑は終了いたしました。

 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 まず、四人の参考人の先生方、今日は、御多用のところ、わざわざお越しをいただきまして、また、貴重な意見陳述をいただきまして、誠にありがとうございました。心から御礼申し上げます。

 まず、簡単に私の問題意識からお話をさせていただきたいと思います。

 先ほど宮本先生が失われた二十年ということをおっしゃいましたけれども、バブルが崩壊してから三十年間、二十年、三十年、本当に日本というのは凋落を続けております。例えば、国際競争力ランキング、いろいろな指標がございますけれども、スイスのIMDなどは三十年前は日本は四年連続一位でございましたけれども、直近のデータでは日本は三十一位までそのランクを落としているということがございます。

 また、これは先ほど井手先生がおっしゃったことでありますけれども、時価総額ランキングでは、三十年前はトップテンには七社、トップ二十だと十四社、トップ五十だと三十二社入っていたのが、今や二十九位のトヨタ自動車が五十位以内に一つ入っていて、その次はどこかと言われれば、ソニーが今九十二位ぐらいだと思います。つまり、百位には日本の企業が時価総額ランキングで二つしか入っていない、こういう状況であります。

 それを背景に、賃金が先進国の中でほぼ唯一上がらない状態が三十年間続いておりますし、大学のランキングも、東大でも三十六位ぐらい、京大でも五十二、三位、そして、ほかの大学は百位にも入っていない。

 これが現状だと思いますし、これからの経済を引っ張っていくであろうユニコーン企業と言われているものについても日本は非常にお寒い状況であるということでございまして、何とかこれを局面転換するために何をしていったらいいのかということを、本当に国会議員全員が我が事のことと思っていろいろな分野でやっていかなくてはいけないというふうに思います。

 その問題意識に立って、まずは、お一人お一人にお伺いしたいと思います。

 権丈先生にお伺いしますけれども、労働の問題についていろいろとお話をいただきました。そして、胃袋という面白い言い方、まさにその形をしているわけでありまして、女性そして高齢者の雇用が増えていっているというお話、しかしながらなかなか女性の賃金も上がらないし非正規雇用が多いという、今の問題点をおっしゃいました。

 その中で一つよく言われていることに、賃金が上がらない大きな原因の一つは労働規制であるということが言われます。つまりは解雇しにくい。これは主に企業側から、解雇しにくいから賃金を上げられない、低いところからスタートしなきゃいけない、あるいは、解雇できないから非正規雇用で、お互いにとってそれがいいんだ、こんな議論がございます。

 そういったものを見直していく中で、一つ、スウェーデンのような、解雇規制というものは緩やかにする、しやすいような状況にするけれども、しかしセットでセーフティーネットを張るということで、いわゆる職業訓練、そして日本よりもはるかに手厚い失業手当、リカレント教育、こういったものをセットにして、より解雇しやすいようにして労働の流動性を高めるという意見がございますけれども、先生はどうお考えになられるか、御所見をいただければ幸いでございます。

権丈参考人 ありがとうございます。ただいま、解雇しにくい、解雇しやすい、その点についてどう考えるかということでお話をいただきました。また、スウェーデンの事例ということだと思います。ありがとうございます。

 スウェーデン、そしてまたデンマークも、今お話しくださったのは、ちょうど先ほど私が申し上げたフレキシビリティーとセキュリティーのちょうどいい組合せ、フレキシキュリティーということかと思います。

 デンマークの黄金の三角形ということで、柔軟な労働市場、寛大な失業給付、そして職業訓練、積極的労働市場政策、これをちょうどうまく回すことによって、一時期デンマークでも非常に厳しい経済状況があり、失業率も非常に高かったというところから回復してまいりました。そして、今お話しくださったように、職業訓練、積極的労働市場政策としてスウェーデンが長く取り組んでいたところでございます。

 私は、このフレキシキュリティーというのは非常に重要な考え方で、フレキシビリティーも、そしてセキュリティーもないとこれはうまく回っていかないと。それがうまくいくことによりまして、成長といいますか、うまい循環がありつつ、社会も伸びつつ、そして人々も安心して暮らせるということだと思います。

 そして、EUではこのフレキシキュリティーの原則ということで取り組んでいるわけなんですが、フレキシキュリティーの形は一つではないということです。

 デンマークなどでは、確かに、正規雇用の解雇もしやすいといいますか、転職回数も一生のうち六、七回平均とアメリカに次ぐくらい多くなっているわけなんですけれども、そういった国と、そうではなくて、むしろ典型雇用と非典型雇用を上手に活用しながらフレキシキュリティーを高めているというところもございます。

 そうしたときに一つ大切になるのは、人への投資、職業訓練などができるかどうかというところです。日本については、解雇しにくいと言われているところもありますけれども、一方で安心して働けるというところもあり、それがあるゆえに企業内での訓練投資もされております。そうしたところを大切にする必要があるかと思います。

 デンマークの例ですと、その部分、企業の中での人的投資ということがされずに、そこをどう補強するかということでこうした仕組みをつくってまいりました。

 ですので、日本ではやはり、しっかりとした雇用や職業訓練というところも重視しつつ、さらに、それ以外の部分で併せて訓練ができる仕組み、また、そこから漏れてしまうことのないような仕組みということで、少し両にらみになりますけれども、そうしたことを考えております。

 ありがとうございます。

前原委員 ありがとうございました。

 次に、松井参考人にお伺いしたいと思います。

 松井さんとは長いおつき合いをさせていただいていて、考え方はよく理解をしているつもりでありますけれども、コミュニティーソリューションという言葉を初めて聞いたのも松井さんから聞いたことですし、私にとっては、ミスター新しい公共、これが松井孝治参考人だというふうに思っております。

 この図、雲のやつ、新しい公共のイメージ図ということなんですけれども、ここに国民、そして市場、企業、そして政府、行政、こういったものが言ってみればより大きな新しい公共というものをつくり出していく、こういうことなんですけれども。

 この間、この場所で岸田総理と議論したときに、新しい資本主義はよく分からないけれども、一つ、私が水を向けて、それに対して答えられたのは、株主資本主義からの転換ということは明確におっしゃったんですね。

 株主資本主義、これを私が問題意識として申し上げたのは、いわゆる株主配当が多い、それは、配当と、あとは自社株買いの、まあ、言ってみれば株主に対する還元が多いということで、それをもっと、給与とかあるいは設備投資とか研究開発とか、こういうものに向けると、もっと違う、いい循環が出てくるんじゃないかということで。

 岸田総理はステークホルダー資本主義という言葉を使われておられましたし、また、公益資本主義と言う方もおられますけれども、松井参考人の新しい公共の観点から、株主資本主義からの転換というものについてはどのように考えたらいいのか、また、それはどういうふうに実現していったらいいと思われているか、その点についてお話しいただけますか。

松井参考人 とても難しい御質問をいただきました。

 私の友人には株主資本主義の権化みたいなやつがいまして、いつもけんかになったんですね。だって、おまえ、法律にそう書いてあるじゃないか、おまえは商法を否定するのかという議論にいつもなるんですが。そうしたら、やはりルールをちゃんと変えた方がいいんじゃないかと思うんですよ。

 基本は私は、大阪の人がよく言う、僕は京都なのでちょっと大阪はライバルでもあるんだけれども、大阪人がいいことを言うなと思うのは、稼ぎができて半人前、勤めができて半人前、両方併せて一人前ということがあって。やはり、企業にとって務めとは何かということだと思うんですよ。

 今の企業がやっていることは、ルールにはのっとっているけれども、全然次の世代に投資していない、ため込んでいる、お互い株式を持ち合っている。この構造とか空気の支配というのはやはり僕はとてもよくないと。でも、じゃ、どこが悪いのかということをちゃんとルールにしなければいけないですね。

 僕は、CSRというようなことが新しい公共だというふうな考え方をする人がいるんですけれども、それは本チャンじゃないと思うんですよ。やはり企業は本業において社会にいかに貢献するか、貢献し続けるかということを考えるべきであって、これをルールにするのは非常に難しいんですけれども。

 でも、やはり、例えば自動車会社であれば、いかに安全で、環境負荷が低くて、本当に住民のモビリティーをちゃんと確保するようなサービスをどう提供するかと。MaaSと言われる世界になってくると、自動車会社の利益なのか、地域社会のお年寄りも含めたモビリティーをどう確保するのかということが、まだらなんですよね、入れ子になっているわけです。

 これをどう考えるかというのは、決して社民主義的な考え方は僕は取らないんだけれども、だけれどもやはり、地域の自治体と、国全体と、それから会社が、どういうふうに自分たちが貢献し合いながら、地方の、私も存じ上げているような、例えば中山間地域で人口消滅自治体というふうにかつて言われたようなところに、さっきのお話でいうと、非常に孤立した状況で住んでおられるお年寄りがいらっしゃる、その方々に対する社会保障サービス、医療とか福祉が全部整っていっても問題は解決しないんですね。

 要するに、安否確認がどうできるのかみたいなことを日々どうやってやるのか。小規模自治体ネットワークの方々が苦労しておられるのは、その安否確認をどういうようなやり方で自分たちがやるか。それは行政ではなかなかできないんですよ。何かというと、お茶飲む場所もないからお茶飲む場所をつくるとか、コンビニもないような山間地にコンビニ代わりの売店をどうつくっていって、その足をどう確保するかということに物すごく汗をかいておられるんだけれども、その個々人の汗かきだけでは足りないんですよ。

 それを、どう自治体としてモバイルサービスを提供するかということを例えばトヨタ自動車と一緒になって考えていくようなことをトヨタ自動車にはやってもらいたいし、そういう制度をどうつくっていくかということを国会議員の皆さん方が地域の人たちやあるいは民間企業とも知恵を出し合ってつくっていただきたい、そんな感じのことを私は思っています。

 アバウトな答えで済みません。

前原委員 ありがとうございました。

 そのルール化について、また松井教授の御高見もこれから伺わせていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

 宮本先生にはちょっと後でお聞きをしたいと思います。

 井手先生、ありがとうございます。私は井手門下生でございまして、十年来、ずっと井手先生とは勉強会をやっていただき、そして御指導いただいていることを本当に感謝を申し上げたいと思いますし、ですから、余り質問することはないんです。井手先生のお考えは基本的によく分からせていただいているつもりですので。

 ただ、十分間という短い時間でしたので、先生がおっしゃりたくておっしゃれなかったことというものもあると思いますので、僭越ながら、それを引き出すような質問を少しさせていただきたいというふうに思っております。

 井手先生の根本にあるのは、日本の社会の分断をなくしていくということが根本にあって、そして、その分断というのは、所得による分断であったり、あるいは年齢による分断だったり、様々な分断というのが社会にあると。それをなくしていくためには、オール・フォー・オール、私もこれは本当に生涯大事にしていきたい考え方でありますけれども、みんながみんなのために。みんなの税でみんなが受益者になっていく、こういう考え方というのは私はすばらしい大事な前提だというふうに思っているんです。

 私、今回、選挙で教育の無償化というものを一つの、先ほどの問題意識の中でやはり教育というものに対して先ほど井手先生が一番初めのページに、いかに現役世代への投資が少ないのかということを分かりやすく国際比較でおっしゃっていただきましたけれども、そういう意味では教育の無償化ということを訴えたわけでありますけれども、よく言われたのが、御高齢の方から、我々のこともちゃんと考えてや、こういう話をやはり、今シルバーデモクラシーですので、そういった方々の声をたくさん聞きます。

 先生はその辺はちゃんと、もちろんオール・フォー・オールですから分かっておられて、つまりは世代の分断を生まないということでしっかりお考えになっておられるわけでありますけれども、高齢者への、シニアへの安心というものをどういうふうに捉えておられて、そしてその中核となる年金ですね、年金については先生はどういうお考えなのかということをお聞かせいただければと思います。

井手参考人 どうもありがとうございました。

 まず一つ目のお答えですけれども、僕はパッケージポリティクスという言葉をよく使います。

 要するに、今まさにおっしゃっていただきましたように、例えば大学を無償化すると、子供のいないカップルとか御高齢の方とかは何も受益がない、したがって政策は常にパッケージで出さなければいけない。例えば介護の自己負担とか医療費の自己負担、総合合算制といってよく議論してきましたけれども、支払う額に例えば上限を設けてあげて、段階的に無償化に近づけていこうと。やった瞬間に、子供のいないカップルは子供がいないだけに老後が心配ですから老後が安心になり、あるいは今の高齢者も今の暮らしが安心になる。

 ですから、政策をうまく組み合わせて出していくということが御質問へのお答えかと存じます。

 あとは、年金のお話もございましたが、私は基本的に、所得を増やすという二十世紀型の考えではなくて、経費を軽くすることで実質的な所得を増やすという考えを取ります。ですので、様々なお金がかからないことによって、医療や介護や障害者福祉ですね、そうすることによって実質的に所得を増やしていこうと。

 もう一つだけつけ加えるとするならば、結局、無年金の高齢者は生活保護利用者になるしかないわけですね。であれば、高齢者のその生活保護の名称を例えば最低保障年金のような形に変えてあげて、それを生活保護として救済するのではなく、年金受給者にしていくような発想の転換もあり得るかもしれません。

 以上でございます。

前原委員 ありがとうございました。

 宮本先生、今日は問題意識を御披露いただきまして、全てについて問題意識を共有するところなんですが、一番最後のページに、先生が具体策ということでいろいろなことごとを御提言いただいております。先ほど井手先生がおっしゃったこととかなり重なってくると思うんですが、こういうことをやろうと思ったら、財源が必要ですよね。財源について宮本参考人はどう考えておられるのか。

 いや、それはあなたたちが考えろということであればそれで結構です、一言で結構ですし、もし参考人が、こういう具体策を実現していくに当たって、財源についても御自身のお考えをお持ちであれば、お聞かせをいただければありがたいと思います。

宮本参考人 どうもありがとうございました。

 財源に関してですけれども、日頃から感じていることは、例えば消費税の値上げのときに国民がどういう意識を持っているか。そうすると、いろいろ社会の問題を考えている人まで含んで消費税値上げ反対なんですね。

 なぜかというと、政府を信用することができない、それから、消費税を値上げしたとしても、自分たちの生活上の負担、つまり税金を通してではないもろもろの生活費用がかかり過ぎていて、とても税金で持っていかれるのは我慢できない、こういうことでして。ですから、非常に意識の高い人まで含めて、税金を払うことによってこの日本の社会を転換させようという高い意識がないという、ここに大きな問題があるように思います。

 私は、今日ここで先生方からもたくさん出ているような新しいタイプへの社会の転換を考えるのであれば、国民はそれを信頼して自ら税金を払う、少なくとも消費税値上げに反対しないというふうになっていかないといけないと思うんですけれども。

 そのためには、これは本当に理念的なことだけでありますけれども、新しい社会の構想というものを具体的に提示し、それに国民が納得をして、子供の教育費も老後の費用もそんなにためる必要がないんだから税金を払おうとか、あるいは、最近コロナの中で寄附をする人が増えているということもあるんですけれども、そういうような行為を国民が進んでやるようにならないといけないのではないか、そんなことを考えております。

前原委員 参考人の皆様方、本当にありがとうございました。参考にさせていただき、政策を実現していきたいと思います。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 今日は、四人の参考人の皆様方、大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 私の方から質問をさせていただきます。ずっと質問が続きますと、さきの質問者がたくさんのことをお聞きになりますから、私の方では、今までの質問とダブらないようにということをちょっと心がけながら聞かせていただきたいと思うんですが。

 私、権丈先生のお話、それから宮本先生のお話でも、女性のジェンダーギャップ、男女格差、ジェンダー格差ということのお話がありました。それで、この大本にどういう問題が横たわっているかと。私たちは、やはりいろいろあるけれども、その大本に男女間の賃金格差というものがやはり非常に深刻に横たわっているんじゃないか、こういうふうに思います。

 年間二百四十万円に上る男女の賃金格差、生涯でいうと一億円近い差になるという報告もあるわけですけれども、ここを本当に解決しないとやはり根本的解決に向かわないだろうと考えるんですけれども、これについて、普通は女性の方に聞くだけで終わることが多いんですが、今回は、先生方四人、皆さん方にひとつ御見解をお伺いしたいと思います。

権丈参考人 ありがとうございます。

 女性の労働の問題で、男女間賃金格差が非常に重要であるという御指摘だと思います。全くそのとおりというふうに認識しております。

 そして、要因としましては、男女間の賃金格差を様々に、管理職比率や勤続年数や働く分野など、そういったものに要因分解をしますと、一番大きな要因というのは、管理職比率、女性管理職、役職による男女差というところが出てまいります。次に勤続年数ということでございます。

 男女雇用機会均等法、八五年成立以降、全体としての男女間賃金格差は減っており、そしてまた、こういった女性管理職比率や勤続年数、そちらについても格差は小さくなってきているといったところはございますけれども、やはりまだ、特に重要なのが管理職ということです。

 勤続年数の方は、女性もだんだんと継続就業できるようになってきた、そのためのサポートが多くされるようになってきたというところがあります。

 そして、役職の方は、なかなかこちらは難しい。急に、女性の管理職、女性にぽっと管理職を与えるというわけにはまいりませんで、やはり、女性の働く方を増やしていくという、採用の段階から、継続して働き、そして育成していく、そして評価、登用ということですので、幅広い取組が必要な、そういった重要な問題かと思います。

 是非、取り組んで、進めていっていただければと思います。ありがとうございます。

松井参考人 全く専門性がありません。しかしながら、自分がかつて、例えば役人をしていた、政治家もそうかもしれません、やはり女性に対してある種の固定観念を持っていたと思いますね。それから、役人時代なんかは、毎日残業が多かったりとか、急に呼ばれて、早朝にたたき起こされるようなこともあるとか、職によってはね。そういうのはなかなかできへんのちゃうかということもあったし、逆に言うと、子供を産み育てるということについての物すごい敬意は他方で持っているわけですね。それがやはりどうしても固定的な考え方となって、日本の社会の隅々に行き渡っていると思います。

 例えば、女性のかつて同僚の政治家の議員、あるいは地方議員で女性で頑張っておられる方々に対するある種の地域社会の偏見とか、どうせおまえらはこうだろうとかいうようなのが、まだやはりいろいろなところに残っている。これをどうやって、頑迷固陋な考え方の部分をより柔らかく、しかし別に日本の伝統を全部否定するわけではないんですけれども、つくり直していくかということを抜きには、今のクオータみたいな話も少しずつそういう固定観念を解きほどくためには意味があるかもしれませんけれども、やはり、しみついた固定観念をどうやって社会全体で取り除いて、相互にリスペクトしていけるような社会をつくるかしかないと思います。

 何の答えにもならなくて済みません。

宮本参考人 私の方から違う角度を申し上げますと、やはり、日本の女性の地位及び経済的な力というものが先進諸国の中でも著しく低くなった一つの理由というのは、経済成長時代に男性の労働力人口が極めて潤沢であった。人口ボーナス時代と言われているわけですが。やはり、人口ボーナス時代に豊富な男性労働力に依拠して産業社会をつくってきたということが気づいてみたらもう逆転した、労働力人口が非常に枯渇する状態になった。人口オーナス時代といいますけれども。その人口オーナスの時代に転換したにもかかわらず社会の構造も価値も規範もボーナス時代のまま続いているというところにあって、それに対する手当てが遅れているがために日本の社会全体が停滞をしているというふうに思うわけです。

 人口オーナス時代に一番期待できるのは十分に活用されていない女性労働力で、この労働力が一人前に力を発揮すれば、にわかに外国人労働力に依拠しなくても日本の社会の発展というのは可能だというふうに思います。

 それをやることによって経済発展をやるようになった国はいろいろありますけれども、先日も、アイスランドなんかは女性の社会進出を徹底して進め、大統領まで女性ですけれども、そのことによってすばらしい経済発展をしている。そういうような国に比べると、日本がいかに遅れてしまっているかということのように思います。

 以上です。

井手参考人 ありがとうございます。

 男女の間の賃金格差をどの局面からつかまえるかによってお答えは変わろうかと思いますが、ひとまずお答え申し上げたいのは、九〇年代の後半以降に女性が労働市場に参入するようになっていったという事実であります。これは実は男性の所得補完でありまして、したがって、非正規雇用として足りない部分を補っていくという形で労働市場に出ていった。

 御存じのように、九八年以降、男性労働者の自殺者数が急増いたしましたけれども、収入の稼ぎ手の一部になった女性が今いて、今度はコロナ禍で、所得を支え切れずに死んでいくような女性の数もまた増えてきている。こういう問題の根源がどこにあるかと考えたときに、私は、一言で申し上げれば、家事労働から女性が解放されていないことに理由があるように思います。したがって、非正規雇用でしか労働はできない。

 ではこの家事労働からの女性の解放をどう考えるかというときに、二つ答えがあろうかと思います。

 一つは、日本にも部分的にありますが、フランスのような保育ママのような仕組みを取り入れることで、女性を具体的に家事労働から解放するというやり方。

 もう一つは、男性が家事に参加できる状況をつくることだと思います。そのためには、私の議論でいうならば、ベーシックサービスをというふうに今日申し上げているのは、老後の心配、子供の子育て、学費の心配をしなくていい社会をつくることで、男性労働者が長時間労働に対して異議申立てをできるような状況をつくっていきたい。そうすることでいわば男性が定時に帰れる、そして定時に帰れれば育児参加、家事参加もできるようになっていく、そういったトータルでの取組が重要になろうかと思います。

 ありがとうございます。

宮本(岳)委員 ともすれば女性議員だけが、また、ともすれば女性の参考人だけに聞くということが従来繰り返されてきましたけれども、やはり男性の方々がしっかり考えるということが大事だと自分自身も思いましたので、皆様に聞かせていただきました。

 それで、宮本参考人のお話の中で一つ、先ほどじゃないですよ、一番最初のお話の中で、誰もが、セーフティーネットということ、これは否定されないと思うんですが、日本におけるセーフティーネットである生活保護ですね、これの捕捉率が二〇%にしかすぎないという話が出てきます。私たちも随分、身の回りでお伺いすると、なかなか率が低いですよね。

 なぜこれほど生活保護を必要とする方々が生活保護をお受けになっていないのか。これは、どんな要因をお考えになりますか。

宮本参考人 捕捉率の低さの一つの理由は、生活保護に対する忌避感といいますか、保護を受けることを非常に屈辱と感じ、受けたがらない人が多いということが言えるかと思います。

 元々、生活保護制度というものが成立したときに、やはり、どうやっても生活の成り立たない人々だけを特別に取り出して生活費を補填するということでありますので、社会的に見ると、生活保護を受けたらおしまいだという意識が現在でも非常に根強い。これは各地で言われることで、年齢が高い人でも若い人でも同じだというわけなんですね。これがまず大きいと思います。

 それから二つ目は、やはりこれは行政の方針ですけれども、生活保護をできれば出したくないと。特に地方自治体は、昨今のように生活保護受給者が増えてくると地方自治体の財政を圧迫しています、窓口で拒絶するようないろいろなやり方が横行するわけでございますね。なので、生活保護受給のために、例えばそれを支援する民間団体がついて役所へ行けば簡単に取れることが、それがなかったら絶対に取れないというような実態があります。そんなようなことがあるのではないかというふうに思います。

 もう一つ、三つ目は、やはり生活保護費というものが柔軟性がなくて、規則どおりにやっているわけですけれども、実際に今の生活困窮の実態というのを見ると、ある時期生活費が足りない、そのところを補填してあげればやがては回復できるような人たちが結構多くいるわけですけれども、制度が柔軟性がないために、受給すれば受給しっ放しで再び実社会に戻ることができない、あるいは多少の可能性があると見られて保護費をもらえないということで、課題としては、もっと柔軟なものにしていき、入りやすく出やすい生活保護制度へと変えていくということが重要ではないかというふうに思っております。

宮本(岳)委員 生活保護制度というのは憲法二十五条に根拠を持つ制度でありまして、健康で文化的な生活を営む権利を私たちは保障しているわけでありますから、今お話があったような問題、いかに乗り越えるかというのは、これは政治の課題でもあるというふうに思っております。

 だんだん時間が迫ってまいりましたけれども、松井参考人の方から、最後のページのお話、人の役に立つことがやはり社会の大きな目的だ、こういう話がございました。

 それで、今日の議論の最初からを振り返っても、やはり新しい資本主義、そして今の政権、岸田さんも新自由主義からかじを切り替えるということをおっしゃっているわけであります。それは、競争とかあるいは弱肉強食とかという方向で進めてきたけれども、ちょっとこれは、それではいかなくなったということを示していると思うんですけれどもね。そこで、かじを切り替えると。

 今、私たちが考え始めているのは、じゃ、これまでのような厳しい競争が強い経済で、優しいことを言うていると弱くなるのか、少々弱くなってもこういう競争の行き過ぎを是正するためにはちょっとぐらいは経済成長を諦めるのかというたら、そうじゃないだろう、むしろ、今、優しい経済、持続可能な経済、あるいは本当に人々の暮らしを支える経済に移ってこそ競争力を取り戻すことができると。優しく強い経済と私たちは呼んでいるんですが、そういうふうに物事をこの先は展望する必要があるんじゃないか、こう考えているわけでございます。

 これは全員に聞こうと思っていたんですが、時間の関係がございまして、まずは松井参考人、そして権丈参考人、お二人に少しお聞かせいただきたいと思います。

松井参考人 ありがとうございます。

 私、参議院議員時代に大門実紀史先生の御質疑をずっと聞いていて、本当にいつも、考え方が違うところもありますけれども、非常に勉強になりましたし、今、大門先生もそういうことをおっしゃっていると思います。

 大事なことは、さっき井手先生が成長を前提としないというようなことをおっしゃったんですけれども、確かに、成長を当然の前提にしない、数値のマジックで、ある収入が実現できるということを当てにしないということは大事だと思います。と同時に、だけれども、やはり優しくあるためには強い経済でなければ支えられません。さっきのオール・フォー・オールといったって、結局オールが力を失ってどんどんいろいろな国に抜かれているような状態では、それを支えられませんから。

 僕は、もう一点、先進国だからもう成長は無理だという考え方の人もいます。私の昔の同僚はそういう考え方の人が多いです。だけれども、やはり、いろいろな規制とか、既成概念を取っ払うことによって、高い成長も実現して、そしてちゃんと優しい社会をつくる。やはりそれは、僕は、居場所だけをつくるのではなくて、いろいろな人たちの出番をつくらなければいけない、さっき支える側を支えるという話もありましたけれども、支えられる側と支える側というのを固定的に捉えないというような社会にしていかなければいけないと思います。

 ありがとうございました。

権丈参考人 ありがとうございます。

 優しく強い経済ということでございますね。全く賛成でございます。

 効率と公平のトレードオフというふうに経済学でよく言いますけれども、効率と公平はトレードオフではなくて、両者の適切な組合せがやはり必要だというふうに考えております。今日何度か申しましたフレキシビリティーとセキュリティーというのが労働市場でよく使われる言葉ですが、その組合せが大切である。そのバランス、今どこにいて、どちらに向かっていくのか、それをしっかりと判断して考えていくということが必要かと思います。

 分配の話も、市場での一次分配、貢献原則に基づく一次分配、そしてこれを補完する形の二次分配、社会保障などになりますけれども、そういった必要原則に基づくもの、しっかりとこれらを組み合わせて優しく強い経済を進めていくということは、とても大切なことだというふうに考えております。

 ありがとうございます。

宮本(岳)委員 四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。

 私たちも、皆さんの御意見をしっかり受け止めて、予算の審議、これからも、過ちなきを期して頑張っていきたいと思います。

 本日は、誠にありがとうございました。

根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 今日は、四人の参考人の先生方から本当に貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

 女性の問題、子供の問題、非正規の問題、あるいは若者の問題、その全ての背後には、もっと大きな世界の流れ、あるいは日本が抱える少子高齢化、さらには財政の制約、成長の限界、そうした様々な大きな問題の中、日本の社会が抱える問題の大きさを改めて再確認させていただき、政治に携わる身としては若干重苦しい気持ちにもなりました。我々に求められるのは、そうした様々な課題をどう解決するかということだと考えております。

 私は今日は、四人の先生方がいらっしゃいますけれども、主に私の先輩でもあった松井先生にお聞きを申し上げたいんですけれども、どんな政策を掲げても、課題に対応する政策を実現することができなければ国は動かせない。私は平成七年に通産省に入って松井さんの後輩になったわけですが、そのときに感じたのは、この国は統治のシステムがもう壊れている。どんなに官僚が一生懸命頑張ったとしても、官僚が出しゃばり過ぎていたと言いましたけれども、官僚組織だけでは世の中の様々な問題は解決ができません。じゃ、政治の場はどうかといえば、なかなか政治の場でも、国民の期待に応えられるような場に残念ながらなっていない。

 そうした思いで当時多くの私の仲間たちが、霞が関を飛び出して松井さんに、ハーメルンの笛吹きについていくように民主党に入りました。ここにも、その辺りに何人かいらっしゃいますし、有志の会、五人おりますけれども、私以外の北神さんや緒方さんも同じ時期に、民主党の政権の交代の前にみんな落選して浪人しているんですよ。それでも、この国の政治を変えなければならないというのを霞が関にいて感じたからこそ挑戦いたしました。

 私は、ずっと十年間ぐらい大学院で実は政策過程論というのを教えていたんですけれども、そのときの最初の授業では必ず、松井さんが心血を注いで作られました平成九年の橋本内閣のときの行政改革会議の最終報告書を必ず配ります。私も、当時の通産省の大臣官房で、若輩者ながら末席で、この裏方の仕事をさせていただきました。

 ここにこう書いてあるんですね、「日本の官僚制度や官民関係も含めた国家・社会システムは、一定の目標を与えられて、それを効率的に実現するには極めて優れた側面をもっているものの、独創的な着想や新たな価値体系の創造、あるいは未曽有の事態への対応力という点では、決して第一級のものとはいい難い。」と。

 先ほど四人の先生から述べられてきた現状の認識というのは、これまでの延長線じゃないことがこの国や世界で起きている、そうしたことに対してこの国の統治機構がなかなか対応できてこなかったということが私は失われた二十年、三十年の要因じゃないかというふうに思っているんですけれども、松井先生、具体的に、どういう行政の仕組みが、そしてどういう政治の仕組みが、どういう政治と官僚の、行政の仕組みがこうした失われた二十年、三十年を生んだのか、重いテーマなんですけれども、思いのたけをお話しいただければと思います。

松井参考人 一時間ぐらいいただければ存分にお話しするんですけれども、そういうわけにもまいりませんので。

 そこで書かせていただいた「行政改革の理念と目標」ですね、私が書いたというよりも、私も書いたんですけれども、佐藤幸治先生という京都大学の、今は名誉教授の憲法学の権威、佐藤先生のお宅に上がり込んで私が一緒に書かせていただいた文章であります。私がそこで書かせていただいたのは、やはり、最終的に、被統治者意識というものを国民が持っている以上この問題は解決しないのではないかということを、その文章の中でも書かせていただきました。

 要するに、私たちは治められている立場で、いろいろな要求をし、不満をぶつけるんだというふうに国民が思っていたのでは、いつまでたってもエリートも育たないし、国民はいつまでたっても依存し、そして不平不満を言うと。だから、公共の世界を自分たちがつくっているんだというふうに国民が認識しなければ絶対に日本という国は豊かにならないと思いました。その意識は私は今もそんなに大きく変わっていません。

 例えば、当時私が勤務していたときの官邸に比べて今の官邸の危機管理機能とかは飛躍的に増していますし、それから、やはり、NSCのようなものができて、とても外交、安全保障が現実的に機能している、物すごく進歩をしていますけれども、例えばこんなことを私が、今日は午前中の参考人じゃないので、言うのは申し訳ないんですけれども、例えば、ある一定の空気ができてしまうと、それにあらがえないという国民性がやはり残っていると思うんです。

 恐らく先生方も、皆さん大学の教員の先生方ですから同じ思いかもしれませんが、例えば、これだけオミクロン株が支配的になっても、海外から来る人は、それは全部、行動管理を大学の方で責任持ってします、あるいはオーケストラで責任持ってオペラハウスでしますと言っても、その一人の人間をなかなか入れられないという、その問題をちゃんと議論していただける国会であってほしいと思います。

 やはり、僕らはどうしても、自分も含めて、空気による支配に弱いです。それは、空気を読むというのは日本人の一つの特性かもしれないし、優れた面もあるかもしれないけれども、やはり、あえて空気を読まないで、いろいろな議論をしていただいて、そして同意できる点を見出していくような国会であってほしいと思います。

 それから、多くの国民に今日の国会の議論なんかは恐らく、今日私は自分のゼミ生を一人随員として入れていただきましたけれども、今日の議論をちゃんと聞けば先生方が真摯に国会で議論されているというのは分かるんですが、例えば、ふだんのテレビ中継の、国会の一部分だけを切り取ってまた報道される、その部分だけを見ると、あたかも憎しみ合った人々が日本国の将来ということよりも党派的な議論を先に置いているように見えてしまっている、そうすると国民が国会に対して不信を抱く。

 要するに、パブリックなるものに対して、自分たちの、我が物ではない、むしろあそこに関わりたくない、都合のいいときだけそこに要求したい、そういう意識をいかに国民から払拭して、これは我々の代表者の議論なんだ、反対意見であってもそれをリスペクトするんだ、そういう国会であってほしい。そこから変えていかなければ、国民のパブリックに対する意識は変わらないのではないかと思っております。

福島委員 ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりだと思います。被統治者意識、つまり、自分たちはお任せをしていればいいんだ、誰か、偉い人や権威のある人にお任せをしていればいいんだという意識から、国民自らが選択をしなければならないということだと思います。

 そして、今多く抱えている問題、先ほど来先生方からあった話も、例えば増税をして、配分をするのかどうするかというのは常に価値選択が問われます。何が大事かという、価値を選択しなければ政策を動かすことができない。その価値を選択する場こそが私はこの国会であるというふうに思うんですね。

 異なる価値を持った政党同士が選挙で国民の皆様方に支持を訴えかけ、そして、その得た支持を基に国会の中で与党と野党がそれぞれの価値を持ち寄って議論して解決を見出す、私は、それが本来の国会のあるべき姿であり、それを行うのが本当の意味での政治主導であるというふうに思っているんです。

 ちょうど私も無所属になりましたので、一点、松井先生にお聞きしたいのは、我々はそうやって民主党に入って政権も取ったんですけれども、何で民主党政権は失敗したのか。

 政治主導といって、私は誤った政治主導だと思っていたんです。官僚がやる仕事を政治家が代わりにやることが政治主導ではない。まさに私が今申し上げました、価値を選択する、国民からお預かりした価値観を、それを国会の場で法案を通すこと、予算を通すことによって実現していく、汗をかくのが政治家の役割であると思うんですけれども、なかなかそれができなかったのが民主党政権の失敗の原因かなと思っているんですけれども、先生はその点、どのようにお感じになっていらっしゃいますでしょうか。

松井参考人 今日の議論にふさわしいお話ができるかどうか分かりませんけれども、やはり思い上がっていたと思いますね。

 やはり本来であればもっと官僚たちを、自分たちの仲間ですし、国民の代表なんですから、官僚であろうといろいろな一般の国民であろうとそうですけれども、一緒の組織で一緒に仕事をする人間を、きちんと意見を聞くということがなかなかできなかったというのが、あのときの、狂騒というのはちょっと、余りよくない感じですけれども、狂騒の中でそういう状態に陥っていたんじゃないかと思います。それはやはり、我々が選挙のときに国民に選択肢を提供し、そしてその選択肢を信任いただいて、それに基づいてやらなければいけないという思いが強過ぎた方もいらっしゃる。

 さはさりながら、継続性とかいろいろなことを考えていったら、現実に本当に国をマネージするという意味においては、やはりいろいろな人の意見を聞いて謙虚に国政に向き合うという姿勢が足りなかったというのは、私自身も含めて反省しなければいけないし。

 大事なことは、そういう経験をした方々で、私はリタイアしてしまったけれども、皆さんはいらっしゃるわけだから、その中で、今からでも遅くないので、もしそういう気風が残っているとすればそれは取り除いていただきたいと思いますし、これは別にどこの党がどうこうとかいうことではなくて、今の与党でも野党でもいろいろな考え方の方がいらっしゃって、やはりそれは、選良、国民の審判を得た人、一人一人の行動というのが重いのは事実ですし、責任を取れる立場にいるというのが皆さん。官僚というのはなかなか責任を取る立場にいないのでね。そのバランスを取りながら国政に立ち向かっていただきたいと期待しております。

福島委員 もうちょっと遠慮なくお話しいただいてもいいんじゃないかなと思いましたけれども、今日午後、この話をしたら自民党席の皆様方が盛り上がっておりますけれども。

 じゃ、その後にできた安倍政権がどうだったか。モリカケの話は今日はしませんけれども、確かに金融政策など、うまくいったことはあると思います。先ほど松井先生がおっしゃったNSCの設置とか、官邸の機能強化といった様々な点で、うまく政権を運営するという面では民主党政権よりも優れていたと言わざるを得ないというふうに思っております。

 しかし一方、官邸に権限が集中することによる弊害というのもあったんじゃないかと思っております。

 それは、一言で言えば、官邸にいる官僚たちが専門性を持っているわけではありません。専門性を持っているのは、やはりそれぞれの各省の現場の、ふだんから業界と接していたり、様々な統計データなどに接しているそれぞれの官庁であるけれども、そうじゃない専門家の人が時の世論を意識したり思いつきでやる政策、それはまあ、象徴が今まだ問題になっているアベノマスクでありますけれども、そうしたことを行ったことによって、長期的に腰の据えた本質的な政策をつくり、それを実現するということができなくなっていたんじゃないかという思いもあります。

 あれだけ長く続いて、野党が弱い中で権力が強い国会であるんだとすれば、例えばエネルギー政策、三・一一の後、原発か脱原発かという二元論の議論が続いておりましたけれども、この間、本質的な政策転換というのはほとんど行われておりません。IT化がどんどん進む中で、電子政府とかいろいろな議論がありますけれども、じゃ、具体的に私たちの中をどう動かすのか。根本的に多くの法律を変えていかなければならない、予算の配分を大胆に変えていかなければならない、そうした本来官邸が強い力を持っていればできるはずの政策が実現しなかったという面も、私は残念ながら安倍政権であったと思うんです。

 それは、官邸にいる少人数の、確かに優秀かもしれないけれども、数人の人たちが私はこれをやると言って、キャッチフレーズをつくってやったから物事が動くわけじゃない、何かそこに、日本の政策の立案、そして決定の過程にまだまだ多くの問題があるんじゃないかと思うんですけれども、松井先生、その辺りの御見解はいかがでしょうか。

松井参考人 私が配付させていただいた資料だけちょっと見ていただきたいんですけれども、ちょっと私のはページが見えにくくて申し訳ないですが、九ページに、オールパブリックで公共性を考え実行する時代と書かせていただいています。その資料に書いているんですけれども、例えば国会と官僚の関係を言ったときに、各部署、とにかく、その部署が日々どういうルーティンをやっている部署であったとしても、官僚というのは、議員御承知のように、それぞれつかさつかさがあって、そのつかさの役人を必ず呼ぶわけですね。それは、広報もそうだし、予算もそうだし、国会対応もそうなんですね。

 結果として何が起こっているかというと、国会に当たってしまうとか、ちょっと世間を騒がせてしまうと、それがいわゆる炎上状態に入ってしまうと、そこの部署というのが、次の政策の仕込みも、それから客観的な評価も、全部できなくなってしまうんです。ですから、働き方を少し変えないと、さっきアベノマスクの批判をされましたが、官邸官僚に聞いても、彼らもやはり国全体の、霞が関の在り方をいろいろ思っていて、そして、この状態で本当にいいのかと思っているわけです。

 その状況で何が起こっているかというと、官僚たちが一人一人が総国会対応。その人は、総お客様対応係というふうに言っていましたけれども。

 本来だったら、次に向けてのいろいろなマーケットリサーチをして、国民が何を望んでいるかということを考えたり、どんな政策手法が、例えば、ヨーロッパではうまくいった、アジアではうまくいかない、日本でうまくいくかということの分析をしたり、今行っている政策がどういう効果を上げているのか、うまく回っていないのか、そういうことを官僚たちにしっかり議論させなければいけないのに、連日連夜つるし上げの状態にしてしまって、その対応だけを一生懸命やっているということで時間が終わってしまうような働き方を、それが官僚であれ、皆さんのブレーンであれ、政策の協力者に対して身をすり減らすような形にしてしまったら、この国は滅びますよ。

 したがって、そこは、国会対応はすごく大事ですけれども、それをやる係、あるいは、そこを追及するのもいいけれども、その人間たちが将来の政策の在り方をきっちり実地で学んで、人々とともに議論をし、つくり上げていくということを、政策スタッフの中にそういう役割をしっかりもう一回ビルトインし直してほしいんです。

 そうすると、官邸の一存だけで政策なんかできないということが分かります。官邸が幾ら言ったとしても、それが実地に合わなければ回らない。その実地というものに対してもう一回官僚が取り組めるような、そういう政官関係をつくっていただきたいというのが私のお願いであります。

福島委員 そういう意味では、我々国会の側の問題というのは非常に大きいと思っているんです。

 我々国会が憲法で与えられている機能は立法府であるというものにもかかわらず、多くの委員会でも、法案の審議になると、なかなか、法律の条文に従った、いわゆる逐条審査と言われるようなことも行われませんし、政府が提出してきた法案に欠陥があったとしても、私は幾つか野党のときに欠陥を見つけたんですけれども、それを修正することはできません。できるんですよ、本来はできるにもかかわらず、修正をするという慣習とかルールが存在しないがゆえに、立法府として、立法府で与党と野党で議論を行って法律を作っていくということができない、そうした国会になってしまっていると思います。

 そして、様々なスキャンダル追及。私はずっと森友問題の追及を行ってきましたけれども、これも野党ヒアリングという形で行うんじゃなくて、三・一一、東日本大震災の後に国会事故調というのをつくって、国会の中で、専門家を入れて、第三者を入れて調査を行って、行政監視を行いました。

 私は国会の行政監視の役割というのも非常に重要で重いものだと思っておりますけれども、そのやり方がカメラの前のパフォーマンスであってはいけない。そうだったと思いませんけれども、そうではなかったと信じたいですけれども、それであってはいけない。別途そこはきちんとした調査機関をつくることを行って、国会とそして行政の仕事の役割の分担をしっかりさせなければならない。それは我々自体が変わらなければならないんだと思うんですけれども、松井先生、御認識はいかがでしょうか。

松井参考人 何度も恐縮です。ありがとうございます。

 この絵、私が日経の経済教室に寄稿したこの絵ですけれども、要するに、私が一番問題だと思うのは、例えば日本共産党さんというのは、私は見解を異にしますけれども、リスペクトするのは、自らの調査機関を持っておられるんですよ。

 私は、立法府というのは自らの調査機関を持つべきだと思いますよ。時々モリカケ問題とかで私が見受けたのは、結局、自分たちの調査機関に役人を使って、それが不十分だと言って、たたいているように見える。やはりそれは不健全だと思うんですよ。

 だから、私は、立法府はもっと強い立法府で、自らが調査機関を持って、その調査機関の調査に基づいて堂々と霞が関と議論したらいいし、それから、僕の昔の記憶でいうと霞が関の官僚たちは、政府委員を廃止しましたよね、僕はもっと限定的に政府委員を復活させるべきだと思います。閣僚がいなくても、今おっしゃったような、条文の基本的なところは、政府委員はそこで答えられなかったら失格ですから、立案しているんですから、質問通告が甘くてもできるんですよ。

 夕方五時から七時まで、分科会をつくって、そこで政府委員と専門性を持った議員で議論するということを徹底してやってほしいし、本当のことを言うと、そういう議論であれば、閉会期間なんて要らないんですよ。そういう議論は常にやったらいいと思います。

 ただし、大臣とやるときはちゃんと質問通告して日程どおりやらないと、それはお互い、大臣と官僚の資質は違いますから。そこで大臣にクイズのような質問をするのは僕は大反対でありますけれども。

 政府委員を復活して、技術的な事項は政府委員と、徹底して、毎日でもいい、二時間限定でフリーディスカッションをやるぐらいのことをやった方がいいし。

 昔の政府委員は、あれで物すごくプライドを持っていました。いい答弁ができたときには、うん、どう、松井君、どうだったとか言って、帰りの車の中ですごく幸せそうに。俺たちがこれで世の中の役に立っているんだという意識が公務員にあった。このプライドをもう一回取り戻していただきたいと思います。

福島委員 ありがとうございました。

 時間が参りました。あとの三人の先生方、済みません、質問ができず、申し訳なかったんですけれども。

 まず、国会の機能をきちんと取り戻さなければ、どんなことを言っても実現しないので、我々国会議員一人一人の行動に懸かっているということを最後に申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて福島君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして午後の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る七日午前八時五十五分から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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