衆議院

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第20号 令和4年5月27日(金曜日)

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令和四年五月二十七日(金曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 今枝宗一郎君 理事 島尻安伊子君

   理事 谷  公一君 理事 西村 康稔君

   理事 葉梨 康弘君 理事 大串 博志君

   理事 重徳 和彦君 理事 浦野 靖人君

   理事 稲津  久君

      青山 周平君    秋葉 賢也君

      秋本 真利君    井野 俊郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    奥野 信亮君

      加藤 勝信君    門山 宏哲君

      金田 勝年君    亀岡 偉民君

      木原  稔君    工藤 彰三君

      後藤田正純君    櫻田 義孝君

      下村 博文君    田中 和徳君

      武井 俊輔君    土屋 品子君

      中谷 真一君    平沢 勝栄君

      藤丸  敏君    古屋 圭司君

      山本 有二君    若林 健太君

      鷲尾英一郎君    渡辺 博道君

      石川 香織君    江田 憲司君

      落合 貴之君    近藤 和也君

      階   猛君    鈴木 庸介君

      長妻  昭君    馬場 雄基君

      道下 大樹君    山岸 一生君

      山田 勝彦君    足立 康史君

      青柳 仁士君    市村浩一郎君

      岩谷 良平君    藤田 文武君

      堀場 幸子君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    中川 宏昌君

      玉木雄一郎君    前原 誠司君

      宮本  徹君    緒方林太郎君

      大石あきこ君    櫛渕 万里君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   総務大臣         金子 恭之君

   法務大臣         古川 禎久君

   外務大臣         林  芳正君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   文部科学大臣       末松 信介君

   厚生労働大臣       後藤 茂之君

   農林水産大臣       金子原二郎君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      萩生田光一君

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    山口  壯君

   防衛大臣         岸  信夫君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (デジタル大臣)

   (規制改革担当)     牧島かれん君

   国務大臣

   (復興大臣)

   (沖縄及び北方対策担当) 西銘恒三郎君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (国家公務員制度担当)

   (防災担当)

   (海洋政策担当)     二之湯 智君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   野田 聖子君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   山際大志郎君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     小林 鷹之君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)   若宮 健嗣君

   財務副大臣        岡本 三成君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  溝口  洋君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  高橋 一郎君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     小池 章子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     井野 俊郎君

  北村 誠吾君     田中 和徳君

  下村 博文君     若林 健太君

  山本 有二君     藤丸  敏君

  鷲尾英一郎君     秋本 真利君

  江田 憲司君     山岸 一生君

  城井  崇君     鈴木 庸介君

  足立 康史君     藤田 文武君

  市村浩一郎君     青柳 仁士君

  岩谷 良平君     堀場 幸子君

  前原 誠司君     玉木雄一郎君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     鷲尾英一郎君

  井野 俊郎君     加藤 勝信君

  田中 和徳君     櫻田 義孝君

  藤丸  敏君     工藤 彰三君

  若林 健太君     下村 博文君

  鈴木 庸介君     山田 勝彦君

  山岸 一生君     馬場 雄基君

  青柳 仁士君     市村浩一郎君

  藤田 文武君     足立 康史君

  堀場 幸子君     岩谷 良平君

  玉木雄一郎君     前原 誠司君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     門山 宏哲君

  櫻田 義孝君     武井 俊輔君

  馬場 雄基君     江田 憲司君

  山田 勝彦君     城井  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  門山 宏哲君     山本 有二君

  武井 俊輔君     北村 誠吾君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和四年度一般会計補正予算(第1号)

 令和四年度特別会計補正予算(特第1号)


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 令和四年度一般会計補正予算(第1号)、令和四年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官溝口洋君、国土交通省海事局長高橋一郎君、防衛省防衛政策局長増田和夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 昨日の泉健太君の質疑に関連し、大串博志君から質疑の申出があります。泉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。立憲民主党の大串博志です。

 早速質疑に入らせていただきます。

 まず、私の方から、細田議長の件について取り上げさせていただきたいと思います。

 この立法府の長として、衆議院の長として任に当たっていらっしゃる細田議長、三権の長の一人として、極めて大きな責任を持っていらっしゃいます。国民の義務、権利、予算等々を決める国会ですから、そのお立場、その身の在り方に関しては、高い信頼を国民の皆さんから得ておかなければならないと私は思います。

 この細田議長に関しては、昨日、城井議員からも話がありました。十増十減に関する国会のこれまでの議論をほごにするような発言や、あるいは、百万円しかもらっていない議員が増えても罰は当たらない等々、国民感情から大きく離れた発言、極めて私は遺憾です。

 さらに、今回、セクハラに関する疑いの報道が続いています。これが事実かどうか、これを明らかにすることは、私は非常に大切なことだと思います。

 なぜなら、細田氏は公人です。しかも、三権の長という極めて重要な立場にいらっしゃる公人です。みじんも疑念を持たれてはいけない立場にあられると私は思います。そういった中での細田氏のこのセクハラ疑惑でございます。

 総理は、昨日、行政の長として、立法府の方に対して何がしかのことを言うことはできないというような答弁でいらっしゃいました。私は、しかし、細田氏は自らきちんと説明をし、もし自分がおっしゃるように、疑念は、疑念でない、つまり事実でないとするのであれば、きちんと国民の皆さんに分かるように説明していただく必要があると思います。

 国会閉会後、訴訟を視野に検討するというようなメモを、昨日出されていらっしゃいます。またかという気がしました。国会閉会後、つまり先送りです。事が大ごとにならないように先送りするというスタンスなのかなとお見受けしてしまうような文書でした。

 しかし、国会は今動いています。あと一か月弱、重要なこの補正予算、さらには、重要な議案がまだまだあります。そういう中で執務を行っていただかなければならない、その執務を万端の信頼を持ってやっていただかなければならないのであれば、しっかり国民に、国会に説明していただく必要があります。

 私たちは、議院運営委員会の場で、議長はお出になるわけですから、そこで、かくかくしかじかで事実でないなら事実でないときちんと説明をしていただく、そういう場があるわけですから、そこで説明していただきたいと繰り返し申し上げておりますが、なぜか自民党さんの方から異論が入り、それは成っていません。

 是非、総理、総理としてではなくて自民党の総裁として、自民党の議院運営委員会の皆さんに、細田議長からきちんとその場で事実関係を説明していただくよう指導、指示をしていただきたい。いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の十増十減に関する発言、それから議員定数を含めた選挙制度に関する発言につきましては、これは議会の在り方に関わる重要な課題であり、こうした発言は重要な発言だとは思いますが、先日来申し上げておりますように、私は行政府の長という立場でもありますので、その立場から立法府の在り方について、立法府の議長の発言についてコメントすることは控えなければならないと思います。

 そして、一部報道において伝えられている事案も含めて、三権の長の発言の在り方、これは大変重たいものがあります。三権の長たる議長において、これは適切に対応されるものであると思っております。この点につきましても、行政府の長として、コメントすることは控えさせていただきます。

大串(博)委員 行政府の長としてではなく、自民党総裁としてお答えいただきたい。

 今、議長において適切に対応がなされるべきとおっしゃいましたが、国会閉会後まで引っ張った上で、訴訟を視野に検討する、今説明しない。その間ずっと、このセクハラに関する疑惑がある中で、この衆議院が、議長の下で、私たち、議論をすることになる。これが自民党総裁として適切と思われますか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 おっしゃるように、私は自民党総裁であります。しかし、行政府の長であることも間違いありません。三権分立の考え方からしましても、行政府の長として、立法府の議長についてコメントすることは控えなければいけない、これは当然のことだと思っております。

 三権の長たる議長において、これは適切に対応されるものであると考えます。

大串(博)委員 セクハラを軽く見られているのではないでしょうか。

 セクハラは、男女雇用機会均等法にも規定のある、非常に重要な、問題のある課題です。それで仕事を辞められる方もおられる。(発言する者あり)

根本委員長 御静粛にお願いします。

大串(博)委員 心を病んだり、そういう方もいらっしゃる。極めてゆゆしき課題です。

 それを、今のような、三権の長に関わるような大きなマターであるにもかかわらず、今の態度でいいんでしょうか。セクハラを是非軽く見ないでいただきたい。

 例えば、先ほど申しました男女雇用機会均等法ではこう書かれています。事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他雇用管理上の必要な措置を講じなければならない、こう書かれています。

 今回の報道においては、自民党の職員の皆さんにもそのような行為があったのじゃないかという報道もあります。自民党の事業主、自民党における、雇用をされている雇用主は総理です。自民党という組織の中でもしそういうことがあっていたら、そういうことがないようにきちんと管理する、この法律にも書かれている。それは総理です。

 例えば、自民党の中でそういう疑念があることに関しても、きちんと第三者を交えて調査される、そういうことはなさらないんですか。

岸田内閣総理大臣 セクハラにつきましては、個人の尊厳また人権にも関わる大変重要な課題であり、政府として、このセクハラの問題について軽く考えてはならない、これは当然のことだと思います。

 そして、自民党においても、こうした問題について軽く考えていることはないと信じております。具体的に何か自民党の中でそうした動きがあったということについて報告は受けておりませんが、自民党においてもこうした考え方はしっかりと尊重しながら政党としての活動を続けていく、これは当然のことであると思っています。

 ただ、先ほど来申し上げておりますのは、私が行政府の長であるという立場でありますから、立法府の議長の発言についてコメントすることは控えるということを申し上げているわけであります。

 そして、十増十減、さらには議員定数を始めとする選挙制度の発言については、まさにこれは議会に関わることでありますから……(大串(博)委員「聞いておりませんから、総理」と呼ぶ)先ほど来、聞いておられます。その問題については、各党各派こそしっかりと御議論いただきたいと私は思っております。

大串(博)委員 委員長、是非適切な委員会さばきをお願いします。聞かれていないことを答えて、是非、時間を奪わないようにお願いします。

 今申し上げましたように、男女雇用機会均等法などでもきちんと雇用主としてやらなければならないことが定められています。そのぐらい大きなことなんです。今の発言は、極めて残念、極めて残念と言わざるを得ません。

 引き続き、私たちは、国会の場で、きちんと細田議長に議院運営委員会の場で説明していただくよう求め続けていきたいと思います。

 さて、続きまして、知床遊覧船の事故の問題に関して取り上げさせていただきたいと思います。

 二十六名の方が、命を奪われた方、行方不明の方、本当に残念、悲しいという言葉で言い切れない。私の地元でも、実は、佐賀県なんですけれども、三名の方が巻き込まれていらっしゃいます。私が非常に親しかった方も実は中にいらっしゃるんです。御家族の皆様のことを思うと、胸が張り裂けそうというか、先週末も近所の方にお会いしてきましたが、ちょっと何とも言えない気持ちになります。

 一刻も早い事故の原因の解明、そして救助、救出に是非全力を尽くしていただきたいと思いますし、二度とこういう事故は起こしていただきたくない。そのためには、今回なぜこの事件が起こったか、事故が起こったか、徹底的に私は洗わざるを得ないと思うんです。それは、国会の機能でもあります。政府の役割でもあります。その観点から質問させていただきたいと思います。

 まず、カズワン、引揚げ作業がやっと進みました。一回、しかし、落下をしてしまいました。救難救助、そして引揚げに当たっていらっしゃる皆さんの御労苦は非常にありがたいと思いますが、しかし、一回落下した。今日引き揚げられた。この落下したことは、原因の特定に困難を加えるということはないのでしょうか。斉藤大臣、お願いします。

斉藤国務大臣 この落下による影響でございますけれども、落下した船体をサルベージ事業者の水中カメラにより確認したところ、船底を下に着座しており、手すりが船体から外れた状態である以外に目立った損傷は認められないとの報告を受けております。また、船体のつり上げ前には、サルベージ事業者が水中カメラ等による捜索に併せて詳細な船体調査を実施しており、その際には撮影も行っていることから、今回の落下で傷がついていたとしても、沈没時の傷と判別することは可能であると考えております。

大串(博)委員 是非、これからの作業も慎重に慎重を期して進めていただいて、一刻も早く、御遺族の皆さんに対して少しでも情報提供できるように、そして原因究明ができるようにお願いしたいと思います。

 ただ、総理、私、今回の事件は実は避けられたと思っているんです。防ぐことができたと思っているんです。なぜなら、昨年の六月に、この知床遊覧船会社に関しては、昨年五月、六月と二回にわたり事故をこの会社が起こしているものですから、国土交通省が特別監査に入っています。そして、そのときに行政指導を行い、改善報告書も受け取り、指導を行ってきています。そのときの対応がきちんとされていれば、私は今回の事故は防げたと思うんです。その点で、私は政府の責任は極めて大きいと思っているんです。その点を、今日、議論させていただきたいと思います。

 まず、一番問題になっています、運航管理者、そして安全の統括管理者としての桂田氏に関してです。この資質を見抜けていれば、去年の段階で、私はこの事故は防げたと思うんです。

 今日のパネルは、東京九区、私たちの仲間の山岸一生さんにお願いしております。

 資料をお届けしておりますけれども、一枚目の資料です、総理。運航管理資格証明書。ここに、桂田氏が届出を出した、私は運航管理者としての資格がありますという証明書です。

 船舶の運航管理に関して三年以上の実務の経験を有する者として彼は届出をしています。その資格要件に関し、以下の業務経験を有していますということで、下に彼が書いています。その二つが、船舶の運航管理補助、そしてもう一つが小型船舶協議会会長、これをやっていたから実務の経験を有しますと彼が届出してきているんです。

 国交大臣にお尋ねします。この、彼が申請してきている二つの業務のうち、小型船舶協議会会長というのは実務経験とみなされますか。

斉藤国務大臣 小型船舶協議会会長の業務経験は、海上運送法に基づく安全統括管理者及び運航管理者のいずれの要件も満たすものとは考えておりません。

大串(博)委員 総理、いいですか。彼が書いてきた小型船舶協議会会長をやっていましたというのは、実務経験にみなされないんです。そんなことを表面に書いてきているんです。

 ちなみに、船舶の運航管理補助という残りの要件、これは、斉藤大臣、昨年の特別監査の折に、本当に運航管理補助を実務としてやっていたのか、確認されましたか。

斉藤国務大臣 昨年の特別監査におきましては、そこの書類にありますように、三年の経験があるといって提出をしてきたものでございます。

大串(博)委員 私が聞いているのは、昨年の特別監査のときに、運航管理補助というここの項目に関しては、本当に運航管理補助をしていたんですかということは確認されたんですか。

斉藤国務大臣 今般の事故を受けて、北海道運輸局が四月二十四日から実施した特別監査において、桂田氏は運航管理の実務の経験がほとんどなかったこと、そして、有限会社知床遊覧船は、同氏が運航管理者の資格要件に該当しないにもかかわらず、該当する旨の虚偽の届出を行ったことが確認されております。

大串(博)委員 すなわち、去年の特別監査のときには、本当に運航管理補助をやっていたか、確認していないんですよ。ところが、去年の特別監査のときには、桂田氏は、担当者からの質問に答えられず、特別監査のヒアリングの折に、運航管理者あるいは安全の統括管理者としての自覚をもっと持ってほしいという指摘すら受けているんです。そういう人なんですよ。

 今回の事故対応、事後対応を見ても、斉藤大臣も記者会見等でおっしゃっていました。一言で言うとこの人は適格でないということを、何度も繰り返して記者会見でもおっしゃっていましたよね。そういう人を前回見逃しているんです。この段階で、あなたは運航管理者として駄目じゃないですかと。しかも、小型船舶協議会会長という、適格性をみなされないものをここに書いているんですよ。書いているのに、おかしいじゃないか、何かあなた大丈夫かと、一言このときにきちんと言っていれば、運航管理者としての資格をそのときに取り消していれば、このような事故は防げたと思うんです。

 総理、行政の落ち度、認められませんか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、昨年の事故後、特別監査が行われ、それに加え、抜き打ちで改善内容の確認も行ったという報告を受けていますが、にもかかわらず事業者の安全意識の欠如を十分に把握できなかったこと、このことは真摯に重く受け止めなければならない事案であると認識をいたします。

大串(博)委員 それだけでいいんでしょうか。その特別監査、もうちょっとフォローアップしたいと思います。

 特別監査が去年の六月の末に行われて、去年の七月二十日には行政指導が出されて、七月三十日には改善報告書が出されています。しかし、その改善報告書は、ぺらっとした紙でした。そのぺらっとした紙、ここに資料があります。総理の元にも資料をお届けさせていただいております。

 この資料を見ていただきますと、左側なんですけれども、この左側の方が、これは私が質疑をして明らかになったんですけれども、私が先週、国土交通委員会で質疑をして、この行政指導を七月に行って、それから改善報告書を七月三十日にいただいた。改善報告書が、ぺらっとしたものしか出てきていない。この改善報告書をきちんと確認して、本当に改善されているかを確認していれば事故は防げたんじゃないか、今回、という論点があるんです。

 今回、改善報告書を北海道運輸局が受け取るときにどうやって受け取ったのか、きちんと確認したのか、中身を精査したのかということを確認したところ、国交省の方で、メールで当時、知床遊覧船会社とやり取りしたということを明かしてくださいました。そして、そのメールはどういうものだったかということも、私たち、資料としていただきました。

 そして、そのメールを見てみたら、私、驚きました。この資料、ちょっと見にくいですけれども、左側です。メールにひな形をつけて知床遊覧船会社に送っているんですよ。この左側がひな形です。北海道運輸局が知床遊覧船会社に、改善報告書を作るとするとこうやって書いてくださいといってひな形を送っている。そして、一字一句同じ文字を、コピペして知床遊覧船会社が北海道運輸局、国交省に送り返しているだけなんです。

 読んでください。一番上、船舶の改造等を行う場合は検査機関であるJCIと連絡を密にし、JCIの検査を合格した上で運航することを確認した。右側、船舶の改造等を行う場合は検査機関であるJCIと連絡を密にし、全く同じじゃないですか。一字一句で同じじゃないですか。

 真ん中の方を読んでください。安全に関するところです。全社員、安全管理規程の理解が不十分であったため、会議の場で改めて読み直し、変更しなければならない点や、やらなければいけない点等を再確認した。右側を見てください。改善報告書、全社員、安全管理規程の理解が不十分であったため、会議の場で改めて読み直し、一字一句同じじゃないですか。ひな形を北海道運輸局から示されて、コピペして出してきているだけなんです。

 これが改善報告書なんですか。これで改善が得られると思っていたんですか。これが国交省のやることなんですか。これで本当にきちんとした行政指導、改善報告の受取、去年の七月、行われていたんでしょうか。

 総理、どう思いますか。率直な御意見をお聞かせください。総理の率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。

根本委員長 ちょっと、事実関係があるでしょうから、国土交通大臣斉藤鉄夫君、簡潔にお願いします。

斉藤国務大臣 細かいことですので、私がお答えさせていただきます。(発言する者あり)内容については。

 昨年七月二十日に、北海道運輸局から改善指導文書を有限会社知床遊覧船に発出した後、同社担当者から、改善報告書を作成した経験がないため記載の仕方が分からない旨の電話相談があったと聞いております。運輸局担当者が口頭で指導してもなお同社担当者から記載が難しいとの申出があったことから、既に聴取している同社の改善措置の内容と国からの指導事項とを対応させた報告書のイメージを作成し、同社に示したものと承知しております。

 これは、事故の再発を防止し、輸送の安全の確保を図るという特別監査の目的を果たすため、同社による改善事項を適切に記載し、国と事業者との間で確認するべく行ったものでございます。

 私たち、担当した方、真面目な方でしたけれども、に聞きました。私が直接ではない、上司が聞いたわけですけれども、彼は、向こうが報告をしたこと、この報告したことを、こういうことをやろうとしているということを書類に書きなさい、しかしそれが書けないということで、向こうが言った範囲内で、こう書くんですよという意味でこの書類を作った。これは、我々もいつも、行政にいる立場として、中小の方には丁寧に対応をしなさい、こういうことを実践した一つだと私は考えております。

大串(博)委員 丁寧に対応したというふうに言われますけれども、丁寧に対応して、この一字一句同じことを返してくればよしとする、これは、総理、正しいですか。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のあった書類の内容が同一であるという点については、その書類のやり取りが背景にあり、今、国交大臣の方からその背景にあるやり取りについて説明がありました。全体として国交省としての努力が十分だったかどうか、これが問われなければならないと思います。

 いずれにせよ、結果としてこの事業者の安全意識、そして実態等について十分把握できなかったことは重く受け止めなければならないと思います。

大串(博)委員 重く受け止めなければならないの一言で済まされていますけれども、それで本当にいいんでしょうか。このような検査だったんですよ。このような監査だったんですよ。見抜けなかったんですよ。その責任はないんでしょうか。

 今、斉藤大臣は、先方が言ってきたことをこうだろうということで北海道運輸局の方で書いてあげて、だから、それを同じように書いて出してきた形になったんだと言われていますけれども、ちょっと違う面もあります。

 ひな形には、波線の部分です、今後、安全教育を定期的に行うよう計画表を作成した。これは肝です。この安全管理規程に基づく安全教育をきっちり行っていれば、間違いなく今回の事故は防げています。電話、通信の問題もなかったでしょう。あるいは、波が高い、風の予報もある中で発航するなんてこともなかったでしょう。安全管理規程に基づく安全教育がなされていなかった、このときの改善がなされていなかったことが一番の大きな問題なんです。

 それについて、ひな形では、今後、安全教育を定期的に行うよう計画表を作成したと書いて送っているにもかかわらず、実際出てきたものは、安全管理規程で定める体制を全従業員が実施できる体制を維持していくためにも定期的に勉強会を開くなど安全管理体制の構築を図っていくことを確認したと、ちょっと緩んでいます。緩んだ内容が出てきているんです。

 これはこれでよしとしたんですか。大臣、どうですか。

斉藤国務大臣 御指摘の経緯につきましては、北海道運輸局の担当者は、知床遊覧船の担当者から、今後も勉強会を開催するなど安全教育を実施していくことを社内で確認した旨の説明を受けたことから、七月二十一日に送付した報告書のイメージに計画表を作成した旨を記載しましたが、同月二十八日に知床遊覧船から送付された資料では当該記載がなかったため、同社が計画表を作成していなかったとの認識に基づき、メール本文で、安全管理規程の理解を維持していくことが大切である旨を伝えつつ、同社が実施する改善事項を正しく表現する文章として、定期的に勉強会を開くなど安全管理体制の構築を図っていくとの記載を提案したものと聞いております。

大串(博)委員 総理、今聞かれましたね。この一番肝の部分ですよ。安全管理規程に基づく安全教育を定期的に行ってください、これが肝なんです。そこのところを指導したにもかかわらず、この業者さんはやっていなかったから、北海道運輸局の人が、改めて、ではということで、ちょっと緩んだ形になっちゃいますけれども、安全管理規程で定める体制を全従業員が実施できる体制を維持していくためにも定期的に勉強会を開くなど安全管理体制の構築を図っていただくことを確認したと。やってくださいねということの、提案をと言われましたよ、提案をした形になっているんです。提案したものが返ってきているんです。それだけなんですよ。改善報告書とは言えないんですよ。行政から提案したものが書かれて、オウム返しに書かれてきただけなんです。

 更に問題があります。

 十月に、国交省、抜き打ち検査に入っています。抜き打ち検査に書かれて、この改善報告書がしっかり実行されているか確認されています。それはよいこと。

 この点に関する結果はどうだったか。国土交通省からいただいている改善確認チェック表があります。この改善確認チェック表を読むと、こう書かれています。二ポツ、1安全管理規程に係る安全教育計画及び記録、まさにこの部分ですね。確認結果、斜め線。指摘、指導事項等、事務所内の書類を管理している者が不在であったため確認できず、これで終わっているんです。改善報告書のときにもできていなかった、確認できなかった、だから、こうやってくださいねと言って終わっていた。そのことを、抜き打ち検査のときにも、事務所内の書類を管理している者が不在であったため確認できずで終わっているんです。

 国交大臣にお尋ねします。

 十月の抜き打ち検査でも見落とした、というか、見られなかった、担当者が不在であった。では、この後、この安全管理規程に係る安全教育計画、記録、改めて確認したりしたんですか、国土交通省は。

斉藤国務大臣 昨年十月の抜き打ち検査で本船及び事務所を訪問した際、勉強会の記録については、事務所の書類を管理している担当者が不在であったため、確認できておりません。これにつきましては、事業者への更なる確認や指導が十分にできていなかったと認識しており、これを真摯に受け止め、監査の方法等について改善を図る必要があると考えております。

 二度とこのような痛ましい事故が起きることがないよう、総理の御指示を受けて設置した知床遊覧船事故対策検討委員会で議論をしっかり行い、抜き打ち、リモートによる監視強化、指導事項、改善事項の継続的、徹底的なフォローアップを含めた総合的な安全対策を、国土交通大臣として私自身が主導し、責任を持って実施してまいります。

大串(博)委員 斉藤大臣、端的にお答えください。

 改善報告書のときに緩んで出てきたこの部分、抜き打ち検査のときに確認しようとしたら、事務所内での書類を管理している者が不在で確認できなかった。では、後から、事後に、フォローアップで確認したんですか、していないんですか。その一点だけお答えください。

斉藤国務大臣 以降、確認しておりません。

大串(博)委員 これです、総理。安全管理規程に係る安全教育、これが肝なんですよ。今回、絶対に出航するべきでなかった。しかし、出航してしまった。だから、事故になってしまった。この安全管理規程に基づく安全教育がなされていれば、基準がそこで決まっていますから、絶対船は出なかったはずなんです。

 それを、去年の特別監査のときにチェックする機会があったにもかかわらずチェックし漏れていた、のみならず、抜き打ち調査のときにもチェックしていなかった。さらに、抜き打ち調査でチェックできなかったからといって、その後も調査していなかった。三回、国土交通省は見逃しているんですよ、去年。三回ですよ。三回もチェックできる可能性がありながら、見逃しているんですよ。

 二十六名の方の命、生存、政府は責任あり、こう総理はお考えになりませんか。

岸田内閣総理大臣 今委員が御指摘になられたやり取りがあり、いずれにせよ、結果として、この事業者の安全意識の欠如やその実情をしっかりと把握できなかった、このことは真摯に受け止めなければならないと考えます。だからこそ、今回の事案を重く受け止めて、私自身も、国土交通省に対して、第三者委員会での検討等を指示をしたところであります。

 こうしたことが二度と起こってはならない、こうした思いを胸に、しっかりと改善に努めなければならないと考えます。

大串(博)委員 いいですか。私は今日、きちんと時間を使って、どれだけの落ち度が国土交通省にあったかを説明申し上げました。桂田氏の資質も見抜けなかった、一言聞けばよかったのに。なおかつ、特別監査の結果、三度も安全管理が行き届いていないことを見抜ける機会があったのに、三度とも見逃してしまった。

 二十六人の命、政府に落ち度、責任があったとなぜ言えないんですか。真摯に受け止める、その一言でなぜ片づけるんですか。二十六人の命ってそんなに軽いんですか、総理。

 この事故は確かに前政権で起こったことです。この特別監査自体は前政権で起こったことです。しかし、今、どうこれに向き合うかは岸田総理の問題です。岸田総理が、国土交通省に落ち度があった、反省して、責任があると言わない限り、第二、第三の知床遊覧船事故、第二、第三、起こりますよ。

 是非ここで、落ち度があった、国土交通省に落ち度があった、責任ありと認めてくださいよ。

岸田内閣総理大臣 特別監査等を通じて事業者の安全意識の欠如等を把握できなかったこと、これは、国土交通省として責任を十分果たすことができていなかった、こうしたことであると認識をいたします。

 そうした責任を感じるからこそ、二度とこうした事故は起こしてはならない、そうした強い思いで、事態を改善していくよう、私の方からも指示を出したところであります。

大串(博)委員 なぜ、責任があった、落ち度があった、認められないんでしょうか。

 私は、この岸田総理の決断力のなさ、やはり、誤りは認めるべきときは認めるべきだと思います。そうしないと、必ず第二、第三の事故は起こる。これは禍根を残しますよ、総理。極めて私は残念です。

 総理は聞く力はお持ちだと言われる。しかし、決めていただきたい、責任を取るときは取っていただきたい、是非そう思います。非常に残念です。

 最後に、一つだけ聞かせてください。

 このメール、私、衝撃だったんです、これを見て。こういうふうにひな形を作って出していた、ひな形を作って渡して、コピペして出させていた。これをもらったのはつい最近です、国土交通省から。

 国土交通省で、先ほど繰り返し、有識者の対策検討会議で議論して改善していくと言われていますけれども、斉藤大臣、こんなふうにコピペして渡していたということを有識者の皆さんには知らせていますか。

斉藤国務大臣 はい。お知らせ申し上げておりますし、今日、第三回目の委員会を開催いたしますが、そこに提出をして議論いただきたいと思っております。

 今回の件、国土交通省、二度の監査、また抜き打ち検査をやってなお見抜けなかったということについては、大変これを重く受け止めておりまして、私も国土交通大臣として、全身全霊を込めて、二度とこのような事故を起こすことがないように、この検討委員会の議論をしっかり行って改善を行ってまいります。

大串(博)委員 有識者に渡していると言われました。私たち、これをもらったのは先週です。有識者に渡されたのはいつですか。

斉藤国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、今日の検証委員会でお渡しをするということになっております。

大串(博)委員 そういうことなんですよ。検証委員会は先週も行われていますしね。検討委員会は先々週も……(斉藤国務大臣「委員長、訂正を」と呼ぶ)

根本委員長 ちょっと、もう一度、訂正。国土交通大臣斉藤鉄夫君。

斉藤国務大臣 訂正させていただきます。

 昨日お渡しをいたしました。

大串(博)委員 昨日の午後に私が国土交通省の方に、こんな重要な書類、有識者の皆さんに見ていただいて、国土交通省に落ち度がなかったのか判断してもらわなきゃならない、有識者の方々は知っているのかと言ったら、昨日の昼の段階では知らなかったんですよ。伝えていないということだったんです。

 昨日、私から質問を受けて、そして今日取り上げられることが分かって、おっ取り刀で有識者の皆さんに昨日お伝えした、これが事実じゃないですか。違いますか。今までの答弁からすると、そういう事情ですよ。

 総理、もう一度総理にお尋ねします。

 国土交通省は、自分たちのこういう問題でさえ有識者検討会に伝えていなかった。総理に、時間が来ましたので、要りませんけれども、私は、許可取消しを受けるのは、事業者もそうですけれども、国土交通省もそれに値すると思っています。第三者で有識者の検討会をやり直していただきたい、そのことを申し上げて、終わります。

根本委員長 この際、階猛君から関連質疑の申出があります。泉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 私は、立憲民主党の生活安全保障三本柱のうち、1物価高と戦う、これを中心に、総理ほか閣僚の皆様にお尋ねしていきたいと思っております。

 まずは、パネル一、御覧になっていただければと思います。

 総理に、現在の物価状況について認識を伺いたいのですが、物価上昇には二種類あるということで、悪い物価上昇とよい物価上昇です。

 悪い物価上昇の方は、海外の物価高と円安で仕入価格が上がったので、一部の事業者は販売価格を引き上げるけれども、割高感から消費が低迷する。そこで、一部の事業者は販売価格を据え置くんですが、これは収益を圧迫するため、雇用や賃金に悪影響を与え、購買力を落とし、経済全体で見るとやはり消費は低迷することになります。さらに、一部の事業者は、コロナの影響もあって、販売価格の低迷とダブルパンチになって、事業継続が困難となっている、こんなことが悪い物価上昇で見られる。

 一方で、よい物価上昇は、事業者が賃上げして購買力が上がり、消費が活発化して、需要が増え物価が上昇し、その結果、事業者の収益が増えてまた賃上げということになって、景気の好循環が生まれるということであります。

 現在起きている物価上昇は、このよい物価上昇、悪い物価上昇、どちらなのか。これは今年の国会冒頭の基本的質疑でも私が総理に尋ねましたが、そのときには明確にお答えいただけなかったので、まずはその点について確認させてください。

岸田内閣総理大臣 今、物価上昇に対する認識を御質問いただきましたが、物価上昇によって、今、日本国内においても、多くの国民の皆さん方また事業者の方々が大きな負担増の中で苦しんでおられる、このことは重く受け止めなければならないと思います。

 しかし、この物価上昇と合わせて、今、経済政策として、賃金の引上げ等様々な政策を行っているわけであります。ですから、先ほど図を示していただきました、これは説明上、単純化するということで作られたものだとは理解いたしますが、現実は、そうした様々な政策、また海外の物価高による国内経済への影響など、様々な要素が複雑に絡んでおりますので、この図のように単純に、よいか悪いか、これを選別する、判断する、これは難しいのではないか。

 逆に、余り単純化してしまうということになりますと、また新たな誤解を生むことにもなりかねません。現実の厳しい状況、複雑な状況に一つ一つ丁寧に対応していくというのが、政府としてあるべき姿ではないかと考えます。

階委員 今、賃上げに力を入れてくるということだったんですが、例の、今年から制度を拡充した賃上げ促進税制、財務省に聞いたところ、この適用を予定しているところが、大企業全体の九%、中小企業全体の三%にすぎないということであります。これで本当に景気の好循環が起こるのでしょうか。

 今起きていることは、よい物価上昇の方ではなくて、悪い物価上昇。もちろん、一部の企業は販売価格に転嫁をできていて、むしろ潤っている。大企業の決算などを見てもそういう状況はあるんですけれども、多くの中小企業や生活者、消費者にとってはマイナスの方が大きい、悪い物価上昇だということを考えています。

 それで、総理も、だからこそ物価高騰対策、これをやろうということだと思うんですが、それで、今の物価の状況を踏まえた上で今後の見通しもお聞きしたいと思います。総理としては、今後、消費者物価は上がると見ているのか、下がると見ているのか、それとも高止まりすると見ているのか、この三つのうちいずれか、端的にお答えください。

岸田内閣総理大臣 結論から申し上げますと、これから先の見通し、極めて不透明であると思います。コロナ禍から我々は脱するべく努力を続けているわけですが、そういった中で、ウクライナ情勢についても今後の成り行き、この確たるものを申し上げることは難しいと思います。

 こうした様々な複雑な要素が絡んでいることからして、今後の見通しにつきまして私の立場から申し上げることは難しいと考えます。

階委員 今後は不透明だということなんですが、日銀の方は、むしろ、今は物価高だけれどもこれは一時的なものだというふうに言っていたと思います。ただ、高止まりするかどうかについては明確なことは言っていないような気がします。

 日銀総裁に伺いますけれども、今後、物価は高止まりするのか、下がっていくのか、上がっていくのか、この点について、総理と見解を一にするかどうか、お答えください。結論だけで結構です。

黒田参考人 御案内のとおり、四月の消費者物価の前年比はプラス二・一%になりまして、これは、昨年実施された携帯電話通信料引下げの影響が剥落する下で、エネルギー価格の大幅な上昇が影響しております。この間、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価の前年比はプラス〇・八%となっております。対前年同月比ですので、当然、エネルギー価格が大幅に下がらない限り、この二%程度の物価上昇率は十二か月は最低続くと。

 ただ、その後は、現在の見通しでは、二〇二二年度がプラス一・九%に対して、二〇二三年度はプラス一・一%までプラス幅を縮小すると見込んでおりますが、一方で、変動の大きなエネルギーを除いたベースで見ますと、やはり緩やかにプラス幅は拡大していくというふうに見ております。

階委員 要は、物価が下がるとは見ていないわけですね。高止まり若しくは上がっていくということなわけですよ。それならば、なぜ、原油価格高騰対策の予算が今回の補正予算で上期分しか計上されていないのでしょうか。

 そして、原油価格高騰対策以外にも、私が言うところの悪い物価上昇による悪影響を防いで、よい物価上昇に転換していくためにやるべきことはいろいろあると思うんですね。なぜこうした事業への予算は含まれないのか、ここが私は最大の問題だと思っています。

 これは重徳委員も本会議で言ったように、小さ過ぎる、中身がないということだと思うんですが、なぜ、物価が今後当面下がるというふうには考えられないのに、高止まりか上がっていくとしか考えられないのに、こんな中途半端なものになっているんでしょうか、お答えください。

岸田内閣総理大臣 まず、基本的には、今後の物価について不透明な状況にあると認識をしております。

 ですから、まず足下の物価高騰にしっかり備えなければいけないということで、十三兆円の総合緊急対策を用意いたしました。あらゆる事業者あるいは生活者に大きな影響のある燃料油価格に対する激変緩和措置を用意をし、そして、九月まではしっかりとした体制を用意し、そこから先につきましては、不透明であるからして、引き続き機動的に対応していく、これが基本的な対応でありますが、基本的に、不透明であるからこそ、予備費等をしっかり用意して、あらゆる事態に対応できる体制も併せて用意をした、こうしたことであります。

 少ないという批判につきましては、これも先日来申し上げておりますように、昨年十一月に用意した七十九兆円の経済対策、これを今実施しているところです。この対策をしっかり進めながらも、その後の新たな状況に対応するために、十三兆円の総合緊急対策を加えて実施をする、こうした体制を説明させていただいております。

階委員 本当に矛盾した補正予算だと思っていて、九月まで万全の対策を取ったと言いながら、予備費は一・五兆円埋め戻して元の五・五兆円にしている。万全の対策を取ったら、九月まではこの予備費は埋め戻ししないで、このままの、予備費を抜きの予算でやって、九月頃になったらそのときの状況に応じて補正予算を組めばいいわけで。

 予備費というのは、そもそも予見し難い予算の不足に充てるというものが予備費ですから、その予備費の使い方としてもおかしいわけでして、ちゃんと、物価が高止まりする、あるいは上がっていくということに懸念を持っているのであれば、予備費ではなくて、万全のことをまず九月までやったとしたら、その段階で補正予算を組むべきだと思うんですけれども、おかしくないですか。

岸田内閣総理大臣 まず、九月までの燃油費等の激変緩和措置をしっかり用意をし、そして、それに併せて、不測の事態にしっかり備えていく予備費を用意したということを先ほど説明させていただきました。

 九月までの間においても、ウクライナの情勢を始め、原油あるいは物価に関わる様々な状況、どのように変化するか分からない、そうしたことを考えましたときに、こうした予備費を併せて用意することは大事だと思いますし、そして、九月以降、状況がはっきりしないからこそ、それから先については機動的に対応することもしっかりと考えておかなければいけない、このように申し上げています。

 いずれにせよ、先ほど来申し上げておりますように、この物価をめぐる状況、不透明であります。今全てを予想することができれば、予算等においてもしっかりとした項目を立てて準備することはできるかもしれませんが、不透明な要素が多いからこそ、機動的に対応するために、不測の事態にもしっかりと対応できるために、御覧のような補正予算を用意したということであります。

 この補正予算をもって、あらゆる事態に政府としてはしっかりと対応を行っていきたいと考えております。

階委員 予見し難い事情としてウクライナの情勢なども挙げられましたけれども、だとすれば、そういうことも含めて物価高騰が国民の生活に支障が及ばないような対策をこの時点で打っておくべきではないかというふうに思っていまして、ウクライナの情勢で、海外の物価は確かに上がることはあるでしょう。ただ、円安については、これは海外とは関係なく、政府、日銀でコントロール可能だと思うんですね。

 そこで、円安による物価高を是正、防止することがなぜ政府の物価高騰対策に含まれないのかということを申し上げたいと思うんです。

 昨日も泉代表が問題にしたのですが、直近の統計では、輸入物価は前年比で四五%も上昇していて、その約三分の一、一五%分は円安の影響によるものなんですね。大変影響が出ているわけです。

 物価高騰対策を進める上で、当然、円安を防ぐことも考えるべきだと思うんですが、その点は考えなくていいんですか。総理、お答えください。

岸田内閣総理大臣 為替について具体的に申し上げることは控えますが、今回の原油あるいは様々な物価高騰の背景には、やはり主には国際的な市場の変化、国際的な原油、原材料の価格高騰、こうしたものが主にあるんだということを、昨日の予算委員会でも申し上げさせていただいた次第です。

 いずれにせよ、こうした複雑な要素によって価格が高騰している、国民の皆さんが苦しんでいる、こういったことに対して直接何が政府としてできるのか、こうした観点から、原油、原材料費の価格高騰にしっかり対応していく。また、本当に困っておられる方々に対しては、直接給付金等を用意する。また、地方で苦しんでおられる中小企業等に対しては、自治体が直接支援ができるように臨時交付金を用意する。こうした総合緊急対策を用意して、国民の皆さんの生活あるいは事業を支えていこうと政府としては考えております。

階委員 私が聞いたのは、円安対策、政府として考えないのかということを言っていますが、考えないということでいいですか。

岸田内閣総理大臣 具体的に市場の動きに対して何か政府として申し上げることは控えなければならないと思いますが、円安ということに関して、政府の政策として、再エネ、原子力等を使うことによって資金ができるだけ海外に出ていかないように、インバウンド等をしっかりと進めることによって資金をできるだけ国内にとどめるように、こうした様々な政策を通じることによって、結果として為替の安定につながるような政策、これはしっかり進めていかなければならないと思います。

 しかし、直近の、足下の為替の動きに関しましては、様々な要素が絡んでいるからして、いずれにせよ、国民の皆さんの生活あるいは事業を守るために様々な具体的な支援策を政府として用意することがまず優先されるべきではないか、このように思って政策を進めております。

階委員 資金を国内にとどめることが円安対策として間接的に役立つみたいなことを、今おっしゃられましたよね。

 この間ロンドンでは、貯蓄から投資へというお話をされていました。貯蓄から投資へといった場合にちょっと御覧いただきたいパネル。

 これは、金融庁が今、動画なども作成して、高校生のための金融リテラシー講座なるものを公開しています。面白かったのが、資産形成シミュレーターで、何に幾ら投資すれば二十年後どれぐらい殖えるかということが、金融庁は出しているんですよ。

 総理、私と同じ金融機関出身なので、当然詳しいと思うのでお聞きしますが、今、お手元にもこのグラフがあると思うんですが、シナリオ一から三までありますよね。シナリオ一というのは二十年後に百万二百円、シナリオ二というのは二十年後に百十四万九千七百円、シナリオ三は四百一万六千九百円、こういう数字になるということなんですが、それぞれ、どの金融商品に投資した場合か、総理だったらこれを見ただけで分かると思うんですが、お答えいただけますか。

岸田内閣総理大臣 済みません、たちまち、ここにシナリオ一、二、三、これは運用率が書いてあるんだと思いますが、具体的に何に投資したらこうなるのか、ちょっと具体的なものについてはすぐお答えができません。

階委員 総理だったら答えられるかなと思ってお尋ねしたんですが、多分、内々分かっていらっしゃるとは思うんですが、シナリオ一は国内で銀行に預金した場合です。そして、シナリオ二は国内で債券に投資した場合です。シナリオ三は外国株式に投資した場合です。複利で運用していくと、二十年たつとこれぐらい差がつくわけです。これは高校生が見たらどう思いますかね。銀行にお金を預けるんじゃなくて、外貨で運用した方がいいよねというふうになりますね。

 別に、貯蓄から投資へを悪いという話じゃないんですよ。ただ、現下の円安において、さっき総理もおっしゃった、国内に資金をとどめるということもおっしゃいました。また一方で、そんなに元手がない人は、外国債券とか外国株式というのはなかなか視野にないわけですよ。これを見ると、うんと格差が広がっていきますね。

 そして、更に言えば、円安が進んでいくと、またここでも格差が広がっていく。さっき言ったように、円安によっていい面と悪い面、これは総理もおっしゃっていますけれども、円安によってプラスになるのは大企業中心、円安によってマイナスになるのは中小企業、生活者です。だから、この面でも円安が進むことによって格差が広がっていく、いろいろな面で格差が広がっていくわけですよ。

 こうした格差が広がっていくことを直していこうというのが新しい資本主義だったはずじゃないですか。むしろ、貯蓄から投資へと言ったり、円安を放置したりしていくことによって、格差を広げていってしまう。これは新しい資本主義と全然矛盾しているんじゃないですか。お答えください。

岸田内閣総理大臣 貯蓄から投資へと申し上げたわけですが、それはまさに、一つは、こうした、お示しいただいた資料にあるように、外国での運用と国内での運用の差が開いてしまっている。だからこそ、一つは、国内の資金運用の環境、市場をより魅力的なものにしようではないか、こうしたことを申し上げ、そしてもう一つは、資産を運用するに当たって、金融資産二千兆のうち一千兆が預金であるからして、これをしっかりと動かす、要は、中間層の方々の資産もしっかり動かしていく、ここに日本の経済のポテンシャルがあるのではないか、こうした思いで申し上げています。

 是非、国内において魅力的な市場をつくり、そして、国内の中間層を含めて多くの方々が自らの資産をしっかりと活用できる環境をつくる。この二つをそろえることによって、是非、日本国内においてお金がしっかり動いていく、こういった体制をつくっていきたいと考えております。

階委員 何か岸田政権がやろうとしていることが、あちこちで矛盾が生じている気がするんですね。物価高対策と言いながら、円安は放置する。格差を是正すると言いながら、貯蓄から投資へで格差がますます広がっていく。そして、挙げ句の果てには、貯蓄から投資へで、国内の金利は低いのでどんどん海外にお金が流れていって、円安も進んでいく。こういったことで、全く何を目的にしているのか、何を目指しているのか分からないんですよ。

 そこで、こうした状況を変えていくために、政府の方針と日銀の方針、共同声明を出していますけれども、これはやはり見直す必要があると思っているんですね。

 私は、今の共同声明で、昨日、泉代表も取り上げておりましたけれども、次のような一文があると思います。「日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とする。」というふうになっています。政府、日銀は、物価安定の目標をとなっているところを、わざわざ持続的、安定的な物価安定というふうに枕言葉をつけて、今は二%に達していても、持続的、安定的じゃないから金融緩和を続けていくんだ、こういう話をしているんですね。

 でも、一般の方からすると、今二%上がっていて、なお二%を目指すというのもおかしな話だし、そもそも、物価が上がって困っているときに物価上昇を目指していくというのもおかしな話だと思うんですね。

 大事なことは、政府も日銀も、こちらで言うよい物価上昇を目指しているんだということを対外的に明らかにする必要があると思うんですよ。つまり賃上げですよ。賃上げというものを目指していく。これは名目でも実質でもプラス、実質というのは物価上昇率を差し引いた後の賃上げ率ですね。ですから、物価に負けない賃金上昇率、これを確保していくということを政府と日銀の共同目標にして、金融政策は日銀の範疇かもしれませんが、それ以外のことについては政府として全力で取り組んでいく、このよい物価上昇のために賃上げを目指していくということを共同声明に入れ込んでいくべきではないかと思うんですが、総理のお考えをお尋ねします。

岸田内閣総理大臣 まず、政府としては、平成二十五年の共同声明に基づいて、日銀において物価安定目標を掲げて努力を続けていかれることを期待しております。是非、そうした声明に基づいて、政府としても構造改革や財政政策をしっかり進めていきたいと考えています。

 そして、それと、そうしたマクロ経済政策を維持しながらも、おっしゃるように賃金は引き上げなければいけないということで、先日来、政府においても、人への投資を中心に様々な賃上げの政策、これを提案させていただき、そして実行させていただいている、こうしたことであります。賃上げの努力は、政府として大きな責任を持って進めていきたいと思っております。

階委員 どっちつかずじゃなくて明確にすべきだと思うんですね。明確にメッセージを発するべきだと思いますよ。

 物価を上げるのと賃金を上げるのと、どっちが大事なんですか、端的にお答えください。

岸田内閣総理大臣 要は、物価を安定的に引き上げることによってデフレから脱却するということは大事なことであります。そして、賃金を引き上げるということは、経済の好循環を実現するために大事なことであります。共に重要な政策目標であり、それぞれの立場で、政府、日銀、努力を続けていきたいと思っております。

階委員 このままの共同声明では、一体どちらの方向に向かっていくのか分からないですね。悪い物価上昇が止まるのか、よい物価上昇に転換できるのか。今まで九年間、アベノミクスを続けてきたけれども、転換できなかったわけですよ。

 転換できないまま悪い物価上昇になりつつあるということで、私は日銀総裁の責任も重いとかねがね申し上げてきましたけれども、日銀総裁、この共同声明はなお有効だと、今のまま続けていって、本当に、よい物価上昇、できるんですか。私は、もう九年やってできないものができるわけないと思っていますけれども、いかがでしょうか。お答えください。

黒田参考人 御案内のとおり、この二%の物価安定の目標は、二〇一三年一月に日本銀行政策委員会が自ら決定したものでありまして、物価の安定という使命を果たすためにはこれを実現していくことが必要であるというふうに考えております。

 御指摘の共同声明は、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために、政府と日本銀行が、それぞれの役割をしっかりと果たしながら、連携してマクロ経済政策の運営に当たるということを示したものでありまして、昨年十一月にも、政府と日本銀行の間でそうした考え方を再確認したところであります。

 日本銀行としても、今後とも、共同声明の考え方に沿って、政府と緊密に連携しながら、二%の物価安定目標の実現に向けて努力してまいりたいと思っております。

 なお、先ほど委員が御指摘になった物価と賃金、これはまさに、総理が答弁されたように、共に重要ですし、賃金が上がっていかなければ、物価も持続的に、安定的に上がるということはないと思いますので、まさに賃金が上昇するということが極めて重要だということはそのとおりです。ただ、日本銀行の金融政策の目標は、あくまでも物価の安定ということであるということは申し上げたいと思います。

階委員 賃金が上がることがまず先にあって、それで物価が上がる、ここで私は賃金の方が重要だと思っているんですよ。二者択一を言っているわけじゃない。どっちが重要かという話をしているわけですよ。いいですか。(発言する者あり)足立議員、静かにしてください。やじはやめてください。委員長、指示をお願いします。

根本委員長 御静粛に。

階委員 それで、こういう悪い物価上昇が進む中で、コロナ禍もあり、販売価格も低迷して事業の継続自体が困難になっている。そして、コロナ債務の負担も大きいということがあるわけです。

 委員のお手元には、資料八ページを御覧になっていただけますか。今、コロナ禍において特別融資、保証つきの融資を受けて、今現在、残高は三十兆円ぐらいコロナ前より増えているということが出ております。この三十兆円、返せるところはいいんですけれども、返せないところはどうするんだという問題がこれから深刻になってきます。

 私の隣にいる馬場さんも、金融機関出身で、日頃こういう債務を抱えた皆さんの相談に向き合っているわけですよ。やはり、コロナ債務の減免法案、これが必要ではないかということで、我々の方で提案させていただいている。ポイントは三つです。

 一つは、資金繰り支援を継続しても債務の圧縮にはつながらないので、債務減免、これをするべきではないかということです。

 二つ目は、これまでの政府の再生ガイドラインなどを見ていますと、政府というか民間ですかね、これは民間の協議会だったかもしれませんが、いずれ、今、公に使われているガイドラインでは、債務減免等には中小企業の経営責任が求められるということで、これを言い出すと中小企業の皆さんも減免ということがなかなかやりにくい。そこで、その経営者に帰責性がない、コロナ債務においてはそういうふうに言えると考えて、経営責任を求めない。これは、金融機関においては、昨年、資本強化法で経営責任を求めずに資本注入できるということになりましたので、同じように、中小企業の皆さんも経営責任を求められることなく債務の圧縮ができるということをするべきではないか。

 そして、三点目については、金融機関の方も減免すると損失が生じるので、なかなか簡単には債務減免に合意できないということなので、金融機関がこの件について債務を減免したならば損失を公的に補填するということで、これによって中小企業の事業継続を支援したらどうかということを提案しています。

 総理も金融機関出身ですので、この辺りのことはお詳しいかと思いますので、総理、この点についてどうお考えになりますか。お答えください。

岸田内閣総理大臣 まず、新型コロナ禍によって大きな影響を受けた事業者が事業の継続、雇用の維持に万全を期すために資金繰り支援を行う、こうしたことはまず基本的に重要であると思います。

 だからこそ、政府としましても、金融機関に対して、貸付条件の変更等について、事業者の事情に応じて迅速かつ柔軟に対応することを要請しているほか、銀行法第二十四条等に基づいて、金融機関による条件変更の取組状況の報告を求め、公表しています。

 かつて、これは民主党政権の時代だったと思いますが、中小企業金融円滑化法という法律がありましたが、あの法律と同様の対応を行い、結果として実行率は九九%ということでありますので、政府としても、こうした事業者の資金繰り支援ということについては大きな問題意識を持って取り組んでいるところであります。

 その中で、一律に債務について減免等を考える、こうしたことについては、返済に向けて事業改善を行う動機を失うといった典型的なモラルハザードの発生についてどう考えるか、また、借入れをせずに頑張っている事業者、あるいは経営改善に取り組んで返済を開始した事業者との公平性の観点からどう考えるか、こうしたことについては慎重に考えるべきところがあるのではないか、このように認識をいたします。

階委員 時間がないので省略しますが、我々もモラルハザードを防ぐための方策は法案の中に入れております。

 もう一つ、このコロナによる影響と物価高による影響、ダブルパンチを被っているのが米作りをされている農家の皆さんです。

 この米作りの農家の皆さんは、従来から米の値段が下がって困っているのに加えて、物価高でいろいろな値段が、燃料も上がり、また肥料も上がりということで困っているんですが、今回の補正予算では余り米作りの農家に直接的な支援はないというふうに伺っています。

 そこで、我々としては、やはり、民主党政権時代に行った米の戸別所得補償交付金、これを復活すべきだというふうに考えていますし、また、今般、水田活用の直接支払交付金というものを政府は見直して、今後五年間で水張りをしない場合は対象外の方針、これは一部例外があるとは聞いていますけれども、そういう方針だと聞いています。そうした方々にもちゃんと補償ができるような交付金を整備すべきだという二つを私ども提案しております。

 これは、農水大臣、今の米作り農家の窮状を鑑みればやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

金子(原)国務大臣 米の需要量が減少が続く中で、需要に応じた生産を行うために、毎年、主食米から麦、大豆、高収益作物への転換を進める必要がありまして、水田活用の直接支払金などの拡充によって、バランスのよい生産を進めているところであります。

 米につきましては、十分な国境措置があり、価格変動は国内需給で決まる中で、恒常的に生産コスト割れを起こしているものではありません。

 また、旧戸別所得補償制度のように米の生産数量目標を個々の農家に割り当てるのであれば、自らの経営判断により需要に応じた生産が行われにくくなると考えています。

 なお、米の価格変動等に伴う所得減少に対しましては、ナラシ対策や収入保険があり、当面の資金繰り対策として、農林漁業セーフティネット資金について、本年四月まで四十五億円の融資が決定しているところであります。

 水田の活用直接支払交付金についてのお尋ねでございますが、水田活用の直接支払交付金につきましては、主食用米の需要が減少する中で需要のある作物への転換を進めていくことが重要であり、毎年の米の需給状況などに応じて柔軟に対応し、作付転換が効果的に図られるよう、必要な予算の確保を図っていくことが重要であると考えております。

 さらに、予算確保のためにも法制化すればよいのではなくて、一応、そういうことで、交付金は今後も見直しをさせていただきたいと思っております。

階委員 従来からの答弁で、今の物価高の状況を考えていないと思うんですね。このままだと米作りの人はいなくなっちゃいますよ。

 委員のお手元には十一ページ、配っているものを見てほしいんですが、これは、いろいろな業種で、ロボットなど自動化技術で代替可能な仕事なのか、あるいは現地に常にいる必要がある仕事なのかどうか、この二つの観点から、業種ごとに代替可能指数、在宅勤務可能指数、これを調べたデータなんですけれども、稲作農家を含め農林水産業というのは、自動化にもなじみにくいし、かつ現地にいないと仕事にならない、リモートワークには向かないということで、農家の皆さんというのは本当に現地にいて何ぼということなわけですよ。

 その現地にいる人がどんどんいなくなっちゃう、こういう状況を先手を打って止めていかなくちゃいけない。そうでなければ、まさにウクライナ情勢で食料安全保障が問われる中で、私は将来に禍根を残すことになると思っています。

 これは、総理には、大局的な観点から、目先のことだけではなくて、ちゃんと食料安全保障のためにも米は守っていく、そのために所得補償もちゃんとやっていく、こんな姿勢を示していただきたいんですが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 元々農業というものは、食料自給率も当然でありますが、国土の保全を始め、様々な観点から我が国にとってなくてはならないものであると思っています。この農業が、食料安全保障の観点からも今大きな注目を集め、政府としてもしっかり支えていかなければいけない、こうした大きな問題意識を持っています。

 何よりも農業者の方々が希望を持って仕事に励んでいただけるように所得を向上していかなければいけない、そういった観点から様々な取組を進めているところであります。収益性の高い、需要のある作物への転換等、こうしたものを進めることによって、所得の向上、そして食料自給率の向上、こうした結果につなげていくべく政府としても努力を続けていきたいと思っております。

階委員 是非よろしくお願いします。

 最後に、中央官僚の不祥事が続発しています。

 先日も、財務省の官僚が暴力事件だったというのがありました。また、先ほど来、国交省の不祥事、問題がある行政の対応が指摘されていました。そして、不祥事が増加するのに伴って辞める人も増えていると。先日、新聞には、安倍政権が本格的に始まった二〇一三年度から二〇二〇年度までの間に若手キャリアの退職者が四三%も増えていると。まさにゆゆしき事態です。こうした不祥事防止、人材確保のためには、信賞必罰の公務員制度、これを確立する必要があると思うんですね。

 ところが、先般、私も財務大臣には厳しく言いましたけれども、求償権の行使、佐川さんの問題で、国家賠償請求訴訟途中で真相解明をうやむやにして、一億一千万請求を認諾したにもかかわらず求償権を行使しないという問題がありました。これはおかしいではないかということで、国家公務員制度基本法にも、「求償権について、適正かつ厳格な行使の徹底を図るための措置を講ずる」というふうに書かれているわけです。そして、具体策については、改革推進本部の決定で定められている。ところが、この具体的なところも全く財務省では行われていなかったということなんですよ。

 公務員制度担当大臣、これはちゃんと信賞必罰で、間違ったことをやったらしっかり責任を取ってもらう、これをやるべきだと思うんですけれども、どうですか。

二之湯国務大臣 御指摘の国家公務員制度改革基本法の規定を受けまして、平成二十三年当時、全閣僚が参加した国家公務員制度改革推進本部が決定した改革の全体像の中で、国家賠償法の求償に係る規定を周知すること、さらに、求償権の存否を判断する体制、手続等を明確化すること、そして、求償権の存否の判断に当たり、必要に応じて法務省の法律意見照会制度、現在は予防司法支援制度となっておりますけれども、これを活用することとなっております。

 この本部決定を踏まえて、各府省において対応することとされたところでございますけれども、委員の御指摘も踏まえて、今般、各府省への周知徹底を改めて行っており、現時点において、本部決定を踏まえた対応が各府省で取られていると承知をいたしております。

根本委員長 階猛君、申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

階委員 これで終わります。

 佐川さんの証人喚問を要求していますので、併せてよろしくお願いします。

根本委員長 これにて泉君、長妻君、江田君、城井君、大串君、階君の質疑は終了いたしました。

 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 総理、まず最初に、私たち日本維新の会は、今、日本は戦後最大の危機にあると思っています。戦後最大の危機と言うと言い過ぎだとおっしゃるのであれば、戦後最大の危機の一つである、こう思います。

 内憂外患といいますが、核兵器国が侵略をした、これはもう私たちの想定を超える大変な事態であります。国内にあっては、いろいろ私は意見が違いますが、野党の皆様から御指摘があったように、経済も大変難しい。今はまだ違うかもしれませんが、下手をするとスタグフレーションに陥るリスクさえあると思っています。

 そうした現状の危機感というか、厳しい認識をどれぐらいお持ちか、教えていただけないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 私も、従来から申し上げておるように、私たちの国は今、歴史を画するような大きな課題、事態に直面をしている、こうしたことを申し上げております。委員がおっしゃるように、戦後最大か戦後最大のうちの一つかはともかくとして、大きな歴史的な転換点、大きな課題に直面している、大変難しい状況にあるんだということ、これは全く同感であります。

足立委員 総理、申し訳ありません、私は、戦後最大の危機あるいは戦後最大の危機の一つだ、そうした大変な危機だということを伺ったわけですが、総理は今、それはともかくとしてとおっしゃいました。ちゃんとその危機感を共有したいと思いますので、改めてお願いします。

岸田内閣総理大臣 言葉足らずで、失礼いたしました。

 それはともかくとしてと申し上げたのは、どう表現するかはともかくとして、実態は、大変大きな歴史的な課題に直面している、大きな転換点に位置している、こうした強い問題意識を持っており、この点については委員と問題意識を共有しているということを申し上げた次第であります。

足立委員 昨年、岸田内閣、岸田政権が発足してからずっと拝見をしていますが、正直、そうした戦後最大の危機に直面して、自公政権、岸田内閣は、私たちから見ると、立ちすくんでいるように見えます。外交、安保も、そして内政も、立ちすくんでいるようにしか見えないんですね。やるべきこと、決めるべきことがたくさんあるのに、それを決断し、実行しているようには見えません。

 ただ、立ちすくむ気持ちはよく分かります。難しいからです。だからこそ国会で議論をしなければならないのに、先ほどの立憲民主党、何か私の名前を出されましたが。

 昨日、立憲民主党の泉健太代表は、紙を出されて、円安を是正するために、異次元の金融緩和を見直すんだとおっしゃいました。見直すとどうなるか。その目的は、日米金利差を埋め合わせようという、その気持ちは分かりますよ。しかし、そんなことをしたらどうなりますか。金利を上げたら景気は失速して、まさにスタグフレーションに陥るわけです。そんなことが分からないんですか、立憲民主党は。だから、立憲民主党の中でも、まあ私は政治家としては余り尊敬していませんが、江田憲司さん、昨日、江田憲司さんはここに立たれて、金利を上げることはできないとおっしゃいました。そのとおりですよ。だから、みんな苦しんでいるわけです。

 今日は、私たち日本維新の会は、私、そして、新人でありますが、青柳仁士議員、私の下で、政調で代行をしていただいています。そして、若手、四十代で今幹事長をしております藤田文武代議士、三人で今日は質問をさせていただきますが、私たちが伺うのは、大きく三点です。

 外交、安保、まあ安保ですね。ウクライナを受けた安保、どうするんだと。それから、経済をどうするか。さらには、デジタルを始めとした改革です。この三つについて三人で質問をさせていただきたいと思いますが、その前に一点だけ、文通費ですね。

 この国会、昨年からこの文通費が大変な問題として取り上げられています。昨年十月三十一日の選挙の後、一日で百万円ということが喧伝をされ、私たちはかねてからこういう法案を出していますが、中でも、使途の公開ですよ。だって、税金を使っているんだったら、どこに使ったかを言うのは当たり前じゃないんですか。これを求めているんだけれども、なかなか維新の会以外は、一部、与党の方、野党の方、立憲民主党の中にも少しだけいい方がいらっしゃって、自主的に公開されている方がいらっしゃいます、かつて同じ党にいた方ですけれども。しかし、大切なのは、国会全体でこの当たり前のことを決めることです。大変、今、遠藤国対委員長、やっていただいていますが、御苦労されていると聞いています。

 総理、これは、いろいろ伺っても、いや、それは国会の問題だということでかわされるのはもう分かっていますが、しかし、余りにひどい。行政ということでいうと、財務大臣には伺いませんが、普通、税務署で、国民の皆様には、領収書は出しません、いいよと税務署が言いますか。国税が、政府が認めていないようなことを何で国会議員だけ認めることができるのか、私は分からないんです。

 総理、もしその辺、理解の仕方があれば、自民党的な理解の仕方があれば御紹介いただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 御質問は、領収書が出されないようなケースがあっていいのかという御質問かと思いますが、そうした取扱いについては、過去様々な経緯があったと想像はいたしますが、具体的に、どうしてそういうことになったかということについては承知をしておりません。しかし、今のルールにおいてそういった取扱いが行われている、こうしたことであると思っております。

 様々なルールに従って手続は進められなければならないと思っております。

足立委員 一人の国会議員として、問題意識はおありですか。

岸田内閣総理大臣 文書通信交通滞在費、これに対する議論につきましては、私も関心を持って、様々な議論、マスコミ等を通じまして拝見をさせていただいております。様々な指摘において、なるほどなと思う意見もあります。

 しかし、これについては、議員活動の在り方、全議員が縛られるルールということを決めるわけでありますから、是非、各党各会派において、誠実に議論を続けていくことが大事だと思いますし、今、実際、御議論は続いているんだと承知をしております。

足立委員 重ねてで恐縮ですが、今国会中に結論を得るべきだと私は思いますが、どうですか。

岸田内閣総理大臣 国民の皆様方にも関心のある課題だと思いますので、できるだけ早く結論を出すべきだと思います。しかし、いつまでと区切って議論をするということではないと承知をしております。

足立委員 こういうふうに、いや、総理が悪いわけじゃありませんが、日本の国会はとにかく決めるのが遅い。これぐらいのことを今国会中に決められないようでは、本当に、与党もそうですが野党もそうです、恥ずかしいことであると思いますので、遠藤国対委員長を中心に、何としても今国会中に結論を得るように党を挙げて努力していきたい、各党と調整を進めていきたい、こう思います。

 さて、本題の外交でございます。

 二月二十四日に、核兵器国ロシアがウクライナに侵攻、侵略をいたしました。私は、岸田総理のいろいろ御発言を聞いていて、腑に落ちないことが一つあります。

 たちまち、まだウクライナ戦争が終わっていないにもかかわらず、まだ終わっていないです、大変な事態、今まで想定もしていなかった事態が起こっている、それがまだ終わってもいないのに、私の政権は非核三原則は指一本触れないんだ、専守防衛は当然なんだ、そこはタブーだとは言っていないけれども、タブー視しているようにしか見えないような御発言を繰り返されています。

 私は不思議なんですね。タブーなく議論するのが今世界は当たり前ですね。フィンランド、NATOに加盟する。ドイツ、防衛費を倍増させる。これが普通の大国の行動ですよ。ところが、岸田総理は、これとこれはやらないんだと。何で戦後最大の危機にあってそんな予断を持つことができるのか、教えてください。

岸田内閣総理大臣 今、激動する国際環境の中で、安全保障の分野においてもあらゆる選択肢を排除することなく議論をしていく、こういった基本的な姿勢は大事だと思っています。

 しかし、安全保障の議論の中で様々な兵器が議論になるわけですが、核兵器というのは今までの歴史を見ましても特別なものであります。安全保障の大きな枠組み自体を変えてしまう、大きな影響力のある存在であると思います。戦後、多くの先達たちが、NPTを始め様々な枠組みの中でこれをどうコントロールしていくのか、こうした議論が行われてきました。

 こうした核兵器の国際社会における意味を考えますときに、我が国として、唯一の戦争被爆国として、戦後大切にしてきた基本的な考え方、これはしっかり維持するべきだと考えております。そうした考えに基づいてこの核の議論はしっかりと整理していかなければならない、このように考えております。

足立委員 総理がおっしゃっていることは私も理解をします。ただ、先ほど申し上げたように、もちろん、我が党も、それを持とうと言っているんじゃないんですよ。これだけの日本の国の、国民の危機に直面しているわけでありますから、タブーなく、あらゆる選択肢をテーブルにのせた上で選ばないならいいですよ。でも、考えてもいないんだから。

 そういう御意見を伺っていると、被爆者の思いとか、いろいろな国民の思いとか、それは分かりますが、私も共有していますが、大事なことは、唯一の被爆国日本にとって大事なことは、もちろん、核兵器を自ら持たない、作らない、そして使わない、当たり前ですよね。当たり前です。でも、同時に大事なことは、二度と落とされないことですよ。北朝鮮から、中国から、ロシアから、二度と日本の国民の頭の上に核兵器を落とさせないためにどういう抑止体制を取ったらいいかということが最大のテーマであるにもかかわらず、タブーがあるというのは私はやはり理解ができないんですね。

 何か、核に関するある種の、ドクトリンというか、テーゼというか、イデオロギーというか、そういうものが国民の命よりも大事に見えるんです、大事に思っているように見えるんです。違いますか。

岸田内閣総理大臣 国民の命や暮らしを守る、これが政治にとって最も大事なことであるということ、これは言うまでもありません。

 その中にあって、どのような安全保障体制を取るのか、これをしっかり議論をしていかなければなりません。そして、その中で、核の取扱い、考え方、これは大きなポイントであるということはおっしゃるとおりだと思います。

 だからこそ、こうした問題について、今まで大切にしてきた基本的な考え方、枠組み、これはしっかり守るべく、まず努力をすることが第一であると思います。

 こうした基本的な考え方、これから外れてしまうと、まさに、この国際社会の中で、そして安全保障の議論の中で大変大きなものである核をどうコントロールするか、どのように安定して取り扱うのか、こうした枠組みが崩れてしまうことにもなりかねません。

 軽々に、この問題について扱うことを考えるというのは、慎重でなければならないと思っています。

 そして、国民の命を守るためには、日本としては、我が国の防衛力を強化するのと併せて、日米同盟の抑止力、対処力、これを向上させること、この二つを併せることによって、核兵器国に囲まれているこの厳しい安全保障環境の中でも、国民の命や暮らしを守るためにしっかりと対応していく、こういった説明を政府としてさせていただいているところであります。

足立委員 御答弁は、これまでの枠組みとおっしゃいました。まさに、これまでの枠組みと国民の生命と財産を比べて、これまでの枠組みを大事にしているようにしか私には聞こえない。

 ちょっと具体的な話をしましょう。

 これは、まさに、安倍政権下の、平和安全法制に先立って閣議決定された新三要件でございます。これはまさに、ロシアが、核兵器国がウクライナに侵略する前につくられた解釈であります。憲法解釈であります。

 この憲法解釈について、公明党の衆議院の憲法審査会幹事のお一人である北側議員が、その衆議院の憲法審査会の場で、先々週、五月十二日だったと思いますが、これが九条の限界なのである、限界まで、九条の解釈の限界まで突き詰めたものがこれなのであると高らかに宣言をされていました。

 総理もそう思われますか。

岸田内閣総理大臣 御質問は、御指摘の、新三要件が憲法の限界であるという発言についてどう思うかということであるならば、私自身、あの平和安全法制の議論の際に、担当大臣、外務大臣でありましたので、一月から九月まで延々と国会を開き、この平和安全法制について議論をし尽くした一人でありますので、その中で、この新三要件、これは、昭和四十七年の政府見解に現状の厳しい安全保障環境を当てはめた結果として出てきたものであり、憲法との関係において大変重要な考え方である、今の現状の中で、憲法との関係において、政府が対応できる考え方を整理したものであると認識をしております。

足立委員 これは本当に、この場だけで整理をし尽くせるテーマではないわけで、それこそ、三時間でも、何時間でも、一週間でも、合宿をして議論し、実際されてきたわけですから、北側議員も、また総理も。その議論をされてきたお立場から、もう限界なんだと。この気持ちは分かります。しかし、私は、本当か、こう思っているわけです。

 先日も、我が党の勉強会に河野克俊前統合幕僚長にお越しをいただいて、いろいろ議論しました。

 この新三要件の議論もそうですが、あと専守防衛の定義ですね。専守防衛の定義の中にも必要最小限が出てくる。そして、今のこの新三要件も、三つ目に、これは従来からの旧要件と同じですが、必要最小限度の実力行使ということです。これでいいんだとおっしゃる方は、必要最小限度なんて、どうせ誰も分からないんだから、決めればいいんだから、これは抑えにはなっていないんだからいいと思っている方もおられるように仄聞することもありますが、やはり、この必要最小限、必要最小限度という言葉は、私は大きい。

 そして、河野克俊前統合幕僚長は、現役のときは、立場上、政治家に何も申し上げることができなかったが、本音はみんな、みんなじゃないな、みんなは僕が今作りました、自衛隊の幹部、だって、河野前統幕長は幹部ですから、自衛隊の幹部は、そう思いながら、でも、言わない、言えない。

 そういう中で今日に至っている中で、私は、党としてどこまでこの議論をできるかはまだ分かりませんが、松井代表も、タブーなく議論しよう、国会でタブーなく議論してくれ、こう言われていますので、今日も議論しているわけであります。

 例えば、この新三要件とは異なる、これは、我が党で議論している、まさに今申し上げた、松井代表から、タブーなく議論してくれ、こう指示がありましたので、防衛費の増額、中距離ミサイル、そして拡大抑止、今申し上げた専守防衛の定義にある必要最小限に限るとの規定の再検討、それから自衛隊法のネガティブリスト化、今ポジティブリストですから、ネガティブリスト化、そして集団的自衛権の行使要件というのは、まさに今の新三要件の問題であったり、あるいは平和安全法制の規定ぶりの話でありますが、そして自衛隊員の処遇、戦争被害の処理の仕方、自衛官の殉職者の追悼の在り方、こういうことについて、私たちはタブーなく議論していくという立場であります。

 そういう中で、野党の皆様、与党の皆様、今いろいろなテーマを議論されていますが、日本維新の会、特に私は、ロシアのウクライナ侵略を受けて、今一番議論しなければならないテーマが九条だと思っています。

 そういう観点から、私たちは何年も前から、三つ、教育無償化、統治機構、そして憲法裁判所の三つを、憲法改正原案を公表してきましたが、五月十八日に、改めて四つ目の柱として、九条の二を新しく立ち上げて自衛隊を明記する案、これを出させていただいています。

 自衛隊を明記するのは、早く明記したらいいと思います。しかし、問題は自衛権ですよ。私が自衛隊を明記すると言ったら、国民民主党の玉木代表が、自衛隊を明記するだけで済むのか、自衛権はどうするんだ、幾ら自衛隊を合憲化しても、自衛隊の任務が合憲化されないじゃないかと胸を張っていらっしゃいましたが、じゃ、自分の意見を言えよと私はいつも残念な思いをしているわけでありますが、じゃ、議論しようと。

 自衛権について議論するときに、一番極端な意見は、ここにちょっと出ていますが、この真ん中辺にある芦田修正説であります。芦田修正というのは、まさに、この一項が侵略戦争をしないということを書いているのに対して、それを受けて、侵略戦争のための戦力は持たないという含意のある修正であります。

 政府はこの立場を取っていない。だから、さっきの新三要件になるわけですが、私が総理に改めて教えていただきたいのは、なぜ自民党政権は芦田修正を取っていないのか、教えていただきたいと思います。

岸国務大臣 今委員御指摘の芦田修正論につきましては、一般に、憲法第九条第一項は侵略戦争を放棄していると解した上で、第二項は、前項の目的を達成するため、すなわち侵略戦争を放棄するために戦力の不保持を定めているとし、侵略戦争ではない自衛のための、あるいは集団安全保障のための実力保持や武力の行使に制限はないとする考え方である、このように承知をしておるところでございます。

 しかし、政府の憲法解釈には論理的整合性や法的安定性の確保が必要であり、いわゆる芦田修正論は、これまでの政府の憲法解釈、すなわち、武力の行使や実力の保持が認められるのは自衛のための必要最小限度に限られるとするこれまでの政府解釈とは論理的に整合しないために、政府として採用はできないと判断をしております。

足立委員 大臣、ありがとうございます。

 政府の立場はよく分かります。私もあほじゃないので政府の立場はよく分かるし、自民党、公明党を中心に、公明党もそうだな、北側さんもそうだな、つくられたロジックとか、今大臣がおっしゃった安定性とか、経緯がある、安定性がある、まさに自民党が積み上げてきた、要は、社会党の相手をしながら自民党がつくってきた論理体系です。

 でも、私たちは関係ありません、私たちは野党ですから。野党がやるべき仕事は、こういう議論ですよ。政府は縛られているけれども、私たちは縛られる必要はない。論理の整合性、法的安定性、それは、自民党政権がずっと続いているからそれに縛られているわけです。それを乗り越える方法は政権交代しかないんです。

 だから、私たちは、自民党の理屈は分かるんです、今までこう言ってきちゃったもんね、急に変えると国民がびっくりするよなと。しかし、芦田修正説に立つことは、経緯と安定性を抜きにすれば、そこに配慮しながらやれば、私は排除されるものではないと思いますが、総理、どうですか。

岸田内閣総理大臣 今大臣からも答弁がありましたように、この芦田修正につきましては、侵略戦争でない自衛のための武力の行使、あるいは集団安全保障のための実力の保持や武力の行使、これには制限がない、こういう考え方であると承知をしておりますので、これは我が国の基本的な考え方と一致しない、整合性を問われる、こうしたことであると思います。

 政府としては、あくまでも、従来の憲法解釈に基づいて、武力の行使等についても、先ほど御紹介いただきました三要件等において整理をしています。それ以外にも、平和安全法制において、我が国としてどういった事態に対応するのか、こういったことについてもしっかり整理をしています。

 こうした整理に基づいて安全保障に対する法体系をしっかり用意しているわけですから、この体制はしっかりと維持していかなければならない、そういった考え方に基づいて安全保障の法体系を考えていきたいと思っています。

足立委員 もうこれ以上しませんが、総理からの御答弁、私が伺っていると、まさに従来の自分たちが言ってきたこと、今、基本的考え方とおっしゃいました、政府がこれまで取ってきた基本的考え方からはみ出るからできないんだと。じゃ、自民党の立場というものが国民の生命と財産よりも重たいことになりますよ。

岸田内閣総理大臣 いや、我々は、従来の考え方にとらわれているというのではなくして、憲法に対する議論、平和安全法制の議論の中で、我が国としてどこまで武力行使等が認められるのか、こういったことについて議論を行っています。あくまでも、憲法や関連法に基づいて、政府としてどこまで対応できるのか、現実に対応するためにはそのぎりぎりの限界をしっかりと明らかにしていかなければいけない、議論を積み重ねてそういった限界を明らかにしてきた、これが先ほどの新三要件を始めとする様々な議論であると認識をしております。

足立委員 御答弁ありがとうございます。

 私たちは、とにかく、国を守る、国民の生命と財産を守るのが最大の価値である、そういう観点からタブーなく議論していくということを国民の皆様にお誓いしたいと思います。

 さて、今日やりたいことは安保だけではありません。国民の皆様が困窮し、あえいでいらっしゃいます。まさにここに書かせていただいた、原油、食品、電力、もちろんこれだけではありませんが、国民負担が重くのしかかっています。そうした中で、今回の補正予算は、私たちは、びほう策に過ぎる、余りにびほう策に過ぎる、そう思っています。

 私たちが四月二十一日に国会に提出した国民負担軽減法案には、これはトリガーじゃないんですよ、ガソリンは。トリガーというのは下げて上げるんです。そうじゃなくて、これからは税金の力で車に乗るなという時代ではありません。それは昔の時代です。今、激変緩和措置が二十五円から三十五円、二十五円を突破しているんだから、今こそ、トリガーではなくて、そもそも暫定税率を廃止したらいいじゃないかと。

 そして、食品については、せっかく、私たちは反対ですよ、私たちは反対だけれども、公明党さんの力で軽減税率が入ってしまった。せっかくそこにあるんだから、ああ、大臣、失礼しました、せっかくあるんだから、今使わないでいつ使うんですか、今使うためにつくったんじゃないんですかということを申し上げています。

 あと、原発の再稼働であります。

 これは、総理、細かいことは伺いませんが、世界の百か国以上の国が消費税を減税しています。コロナ、戦争。世界の百か国以上の国が、消費税とは言いませんが、いわゆる付加価値税を柔軟に品目ごとに変えています。これが世界標準です。なぜ日本だけかたくなに減税しないんですか。

岸田内閣総理大臣 消費税につきましては、その使い道など、国によって様々な税体系を持っています。

 一部の欧州諸国においては、物価高騰への対応として一部品目の付加価値税率を引き下げた、こうした事例があるということは承知をしています。

 ただ、我が国においては、消費税については社会保障の安定財源と位置づけております。この消費税について今触ることは考えていないということを申し上げております。

足立委員 大変理解に苦しみます。だって、私たちが今求めているのは景気対策ですよ。未来永劫、消費税軽減税率ゼロにしようなんて言っていないんです。一時的な景気対策をお願いしているわけです。財源の議論、関係ありますか。

岸田内閣総理大臣 今、足下の厳しい状況、物価高騰に対してしっかり対応しなければいけない、これは委員おっしゃるとおりだと思います。

 だからこそ、消費税については、先ほど申し上げたように、今触ることは考えておりませんが、それに代わって、総合緊急対策、困っている方々への支援、あるいは地方に対する支援、様々な支援を用意して、できるだけ生活そして事業を支えるために政府としても努力を続けていきたい、このように思っております。

 是非、こうした対策を重層的に用意することによって国民生活、事業を守っていきたいと思っております。

足立委員 先ほど総理は、社会保障の財源になっているとおっしゃった。関係ないですね。この政策判断、この景気対策をどう打つかという政策判断に財源の問題は関係ないですね。それだけ確認。

岸田内閣総理大臣 国民生活を守るために足下の厳しい状況に対応しなければいけない、そのとおりでありますが、しかし、基本的に、安心な生活を維持するために、社会保障、これもしっかり維持していかなければなりません。これを両立させていくためにどうあるべきなのか。

 我が国においては、消費税が社会保障の安定財源として位置づけているからして、そこは触りませんが、しかし一方で、国民生活を支援する様々な対策は政府として用意をしていきたいと思っています。

足立委員 明確に間違っていると指摘をさせていただきます。

 今回の補正予算、今回、私は大変ずさんだと思います。ただ、今回ずさんなだけじゃない、ずっとずさんなんです、自民党がやってきたことは、財務大臣に大変失礼ですが。これを見てください。ああ、財務大臣じゃないな、これは。

 これは、いわゆる住民税非課税世帯に対する臨時特別給付金十万円です。今配っています。そして、この補正予算では更に、低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金などなどを措置されるわけですが、実は、プッシュ型、プッシュ型と胸を張っていらっしゃいますが、あくまでも税務情報に基づいた所得制限ですから、過去の、昔の、昨年より前にどうだったかという情報に基づいて線引きしているわけです。だから、政府もそれは、やはりひどいよな、自分たちでひどいよなと思っているので、急変世帯は別途助けますとなっているんです。

 その結果、ここに書いていますが、まだ実態が掌握されていないということなので、これは予算ベースですが、一千四百万世帯に配りますが、足下で急変して下振れした家計、世帯については、五十万世帯分ぐらいは申請してくださったらお配りしますとなっています。

 しかし、不思議なんですね。急変は両方ありますよね、下振れと上振れ。上振れ世帯は既に給付の要件を満たしていないが、もう面倒くさいから差し上げますということですね、この制度は。

岸田内閣総理大臣 まず、基本的に、給付金、迅速にお届けするためにプッシュ型の支給を行うこととしておりますが、その家計の状況を反映するために、把握できる限り直近の年間所得を活用する、こうしたことを制度として用意をいたしました。

 御指摘のように、直近の変化について対応できるのかという部分につきましては、それぞれの方々に申請していただく形で対応していくというのが今の制度であります。上がった場合はどうするのかということについては十分把握できないという指摘については、政府としても考えなければいけない点ではないかと思います。

足立委員 だから、私たちは、こういうことを自民党はずっとやっていますけれども、もうやめた方がいいと。

 マイナンバーをしっかりとフル活用して、そしてもっと公正公平な、公正な給付と負担を実現をしていく、これが大事であるということで、今日、次の次のバッターの藤田文武幹事長から、大改革プラン、私たちは、こういう自民党がつくってきたずさんな行政、これを直す、どうやって直すかを御説明したいと思っています。

 もう時間かな、最後一点。

 マイナ保険証、報道もされています。これがまたずさんなんですね。ちょっと時間がないので、一番下に赤いところで、個人から申請があったら古い保険証も続けますと言っているんですよ。全然義務化じゃないじゃないですか。言っていることとやっていることがむちゃくちゃ。

 これは何でですかと厚生省に聞いたんですよ。そうしたら、牧島大臣が頑張っているのは分かるけれども、デジタル庁がマイナンバーカードを義務化していないからですと。そうでしょう。マイナンバーカードが義務化されていないから、マイナ保険証を義務化できるわけがないじゃないですか。

 やる気がないんですよ、自公政権は。だから、私たちは、私たちにもう少し力を下さいということで頑張っているわけでありますが、総理、マイナンバーカードを義務化しないと全てが止まっています。マイナ保険証を義務化できません。どうですか。

岸田内閣総理大臣 マイナンバーカードを普及させなければならない、これはおっしゃるとおりであり、政府としても大きな問題意識を持っています。

 マイナンバーカードは、最高位の身分証として、厳格な本人確認の下で交付する、こうしたものでありますが、そうした本人確認を考えますときに、カードに顔写真を表示する、対面での厳格な本人確認が必要である、こういったことから、義務化をすることは控え、そして申請によるとしたところでありますが、だからこそ、よりカードの普及に向けて、利便性、メリット、こういったものをしっかりとつけ加えることによって、普及に向けてしっかり努力を続けていきたいと考えております。

足立委員 時間が来ましたので後続に替わりますが、今、結局、自民党の中に反対があるんです。余り透明で公正公平な社会にされると困るという人たちがいるんです。

 しっかりと改革を訴え、決断し、実行していくことをお誓いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

根本委員長 この際、青柳仁士君から関連質疑の申出があります。足立君の持ち時間の範囲内でこれを許します。青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 ただいまの足立議員に引き続きまして、外交、安全保障について、もう少し私の方から具体的なことについてお伺いできればと思っております。

 まず冒頭、今週開かれた日米首脳会談について。

 首脳会談の中で、日米同盟の抑止力、対処力の強化を合意したとあります。また、更に踏み込んで、核の傘を含む拡大抑止を維持強化するため閣僚級で緊密に意思疎通を図ることで合意した、こういう新聞報道があります。また、首脳会談後の共同声明では、弾道ミサイルに対処するためのいわゆる反撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除しないことを、これは岸田総理が会談の中で述べたということをおっしゃっております。

 アメリカの大統領の前で、反撃能力、また拡大抑止についての踏み込んだ議論をしておきながら、今日ここにいる皆さんもお分かりのとおり、こういった予算委員会の場、本会議の場では、専守防衛の見直しも、非核三原則の見直しも、全くするつもりはない、核共有についても議論するつもりはないと非常に腰砕けの答弁が続いております。

 総理、どっちなんですか。やるんですか、やらないんですか。外向きに安全保障強化を勇ましく言いながら、国会に戻ると何一つ踏み込まない。これは、本当にやるのか、やらないのか、誰も分からない。

 私の質問は、日米同盟の抑止力、対処力の強化と言いますけれども、今回、首脳会談で決まったことの中で、これから日本がやることとして、何か新しいことはあるんですか。

岸田内閣総理大臣 やるのか、やらないのかという質問ですが、やるべきことをやるわけであります。

 日米首脳会談の結果について御紹介いただきましたが、その中で、大変重要なポイントを改めて確認したことの意味を是非考えていただきたいと思います。

 まず、日米安保条約の下で、あらゆる種類の能力に裏づけられた対日防衛、アメリカがコミットする、これを改めて確認をした。そして、拡大抑止を確保するために信頼をしっかりと積み上げていく、こうしたことを確認したわけです。

 そして、具体的に何をするのかという質問ですが、こうした具体的な拡大抑止において日本とアメリカが具体的に何をするのか、これは世界に向けて明らかにするべきものではありません。これは、有事に対してしっかり対応することでありますから、日本とアメリカの中で、しっかりとした信頼関係の下に、閣僚レベルも含めて、しっかりと議論を積み重ねながら具体的な結果を積み上げていくべきものであると思っています。

 こうした先ほど申し上げました基本的な考え方に基づいて日米同盟の抑止力、対処力を高めていくことが、我が国自身の防衛力の強化と合わさって日本の国民の安心と安全につながっていくと信じて、政府としては取組を進めてまいります。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

青柳(仁)委員 今の答弁を聞いて、これから何をやるつもりなのか分かった方って、一人もいないと思うんですね。やるべきことをやる、それは当たり前ですよ。やるのかやらないのかを聞いているのに対して、やるべきことをやるというのは答えになっていないと思います。

 では、もう少し具体的に伺います。

 反撃能力ということについて言及をされたということは、これは共同声明でおっしゃっているわけですから、これは日米の首脳会談の中で話が出たということだと思いますが、これは、じゃ、反撃力については何か、何も新しいことは決まっていないし、特にやるつもりもない、そういうことでよろしいですか。

岸田内閣総理大臣 首脳会談後の記者会見でも申し上げたように、いわゆる反撃能力を含めてあらゆる選択肢を排除せず議論をいたします、それを新しい国家安全保障戦略の策定の議論等においてしっかりと議論を進めていきます、このことを日米首脳会談においても確認をいたしましたし、その後の会見において明らかにした、こうした次第であります。

青柳(仁)委員 ということは、反撃力に関しても、拡大抑止に関しても、こういった新聞報道、共同声明がありましたから、これから議論していくということでよろしいですね。

岸田内閣総理大臣 拡大抑止についても、また我が国の防衛力についても、従来から日米の間で様々な議論を行っています。拡大抑止協議の中で、日米の間において、核兵器を含む日米同盟の在り方について議論を積み重ね、信頼を醸成してきた。今日までもやってきたところであります。これを改めて確認し、そして、今の変化する厳しい安全保障環境に対応するために更に何を充実していかなければいけないか、こういった点についても、引き続き、こうした閣僚レベルの協議あるいは拡大抑止の協議、こうした様々な場でしっかりとやってまいりましょうということを両国で確認した次第であります。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

青柳(仁)委員 つまり、今までやってきたことをこれまでも続けますということを確認した、こういうことでよろしいですね。

岸田内閣総理大臣 今、ウクライナ情勢を始め国際秩序の根幹が揺るがされるような事態を前にしています。それを前にして、引き続き、日米同盟の抑止力、対処力を強化していくためにしっかり取組を続けていくことを確認したわけです。これからも、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、これを日米同盟の観点からもしっかりと議論をして、結果を出していきたいと考えております。

青柳(仁)委員 今までの議論をしっかりと続けて、今の現状を踏まえて様々なことを考えていくということなんですが、今回の日米の首脳会談を受けた報道あるいは政府の発表を見ていますと、やはり何かが進んだような印象が国民の間にあるというのは私は間違いないと思うんですね。

 ところが、今の御答弁を聞いていると、特段、何かやることが決まったわけではないし、それから、これから何かに踏み込むということが決まったわけではないと。ここはやはり、国民の皆さんが新聞報道等で感じておられる印象と、今の総理のおっしゃったことの間には、非常に大きなギャップがあると私は思っております。

 それからもう一つ。拡大抑止に関して、これは首脳会談で議題に上ったというふうに共同声明でもおっしゃっているわけですけれども、先ほど足立議員の質問の中で、総理は、核兵器については特別だとおっしゃいました。

 ただ、拡大抑止という言葉は、皆さんも御存じのとおり、核兵器の話です。これは、米国が持つ核兵器で米国を守ることを直接抑止、そして、それをもって同盟国を守ることを拡大抑止というわけです。つまり、核兵器の話です。

 この核兵器の話である拡大抑止について、今、先ほど御答弁がありましたとおり、昨今の、現状の国際状況を踏まえて、これから議論していくことで確認したということですから、日本の防衛についてですね、核兵器による日本の防衛について日米間で議論するということは確認をしたということでよろしいでしょうか。

 それからもう一つ。核共有については議論しないというふうなお話をされておりましたが、核共有を議論しないのであれば、拡大抑止についてはこれから何を議論しようと総理はお考えでしょうか。

岸田内閣総理大臣 核をめぐる議論につきましては、戦後、NPTを始め様々な国際的な枠組みの中で議論を行い、そして国際社会として核をどのようにコントロールしていくのか、これは、各国の国民の安全、安心に関わる重大な課題として様々な議論を積み重ねてきて、今のこの秩序ができ上がっていると思っています。そして、その中の一つが日米同盟のありようでもあると思っています。その中における核の位置づけ、拡大抑止の扱いについては、基本的にこれからも変わらないということを日米でしっかり確認をいたしました。

 しかし、今、ウクライナ情勢を始め国際情勢の変化の中で、この拡大抑止の信頼性について議論があるということも事実であります。だからこそ、この拡大抑止を含む日米同盟の対処力、抑止力、これを改めて日米のトップで確認し、そして、これからも信頼を高めていくためにしっかりと努力をする、これを確認したことは大変大きな意味があったと思います。

 是非、核抑止力の信頼をしっかりと高めていくために、日米で引き続き努力を続けていきたいと思っています。

青柳(仁)委員 今、拡大抑止に関してはその信頼性に議論があるとおっしゃいました。これは、総理の認識、日本政府の認識だと思います。

 その議論をもう少し具体的に言うと、要するに、今、ウクライナ問題を通じて、ロシアによる核の威嚇ということが行われていることに対してアメリカが極めて及び腰になっているために、自国で、核保有国が核兵器を使った脅しをしてきたときには、我々日本を含め各国が、アメリカの防衛に余り期待ができない、自ら守らなければ私たちの国民の命を守れない、そういうことが認識としてあるということが、拡大抑止の信頼性に議論があるということだと思うんです。

 そういった観点で、連日テレビで放映されております、新聞でもあります、ウクライナの情勢を見て、今たくさんの国民の皆さんが不安を感じています。これがもし日本だったらどうだろうか、こうなった場合に日本の今の防衛力でしっかりと守ることができるんだろうか、攻め込まれたら終わりなんじゃないか、こうみんな思っているわけです。

 ですから、今、核に対して、じゃ、どういうふうな防衛ができるかという話をしているときに、拡大抑止の扱い、核兵器の扱いは変わらないと。つまり、一歩も踏み込まないということですね。

 それから、先ほどおっしゃっていました、今の御答弁の中でおっしゃっておりましたが、努力を今後もしていくことを確認したと。今までは努力していなかったということですか。これから努力するんですか。

岸田内閣総理大臣 委員おっしゃるように、国民の皆さんの中にいろいろな議論があるということについてはそのとおりだと思いますが、だからこそ、改めて、日米のトップが、日米同盟、そして核を含むあらゆる手段に裏づけられた日米安全保障体制、こうしたものの信頼性を改めて確認し、そして世界に向けてそれを発信することの意味は大きかったと思っています。そして、この信頼性を高めるために引き続きしっかりと意思疎通を図っていく、こうした姿勢も新たにした、この意味も大変大きかったと思います。

 是非、こうした難しい時代だからこそ、改めて、日米同盟の重要性、拡大抑止の重要性、こうしたことについて確認するとともに、国民の皆さんに理解をしていただき、結果として、我が国の国民の命や暮らしを守る大きな責任、政治の責任が果たされることに対して信頼をいただけるように努力をしていきたいと思っています。

青柳(仁)委員 だから、今の答弁もそうなんですが、何となくもっともらしいことをおっしゃっているんですけれども、結局、議論は、一歩も核兵器については踏み込まないとおっしゃっているわけですから、核の抑止力は政府として強化するという方向性にはなっていないし、それから、日米同盟の中でもそれらを具体的にどうするという話はしていないと今おっしゃっているわけなんですけれども、そういった現状、しているんですか、しているんだったら言ってくださいよ。していないと言っているから今申し上げているんです。していないのであれば、今、この現状、国民が抱えているウクライナ問題に対するこの不安というものの解消ということを考えたときに、極めて不十分ではないかということを申し上げているんです。

 何か、この日米の首脳会談でいろいろなことが決まって、これから日本は安全になっていくんだというような雰囲気だけ、やっている感だけを醸成しながら具体的なことは何も進んでいない、こういう状況があるということをまずは申し上げておきたいと思います。

 我が党は、ロシアによるウクライナ侵略を目の当たりにして、多くの国民が日本の安全保障について不安を感じているということを非常にひしひしと感じております。にもかかわらず、岸田政権は、今やっている感を醸成するだけで、国民の命を守る気概が全く感じられない、このように考えております。

 こうした不安、国民の不安を根本的に解消していくために、将来にわたって、戦争を起こさずに、国民の生命と財産を確実に守るために、軍事、非軍事、国際秩序の抑止力強化、すなわち積極防衛能力の強化、整備が必要だというふうに我が党としては考えております。

 維新は、イデオロギーに左右されずに、時代が求める変化を起こすということを党是としておりまして、右とか左とかの二極政治にくみしないということを考えております。現状に対して合理的な外交・安全保障政策ということを議論しておりまして、そうした我々の外交政策の柱にあるのは、これは我が党の松井一郎代表が繰り返し発信しておりますが、私たちの子供たち、孫たちが安心して幸せに生きられる持続可能な日本と世界をつくりたい、こういう思いなんです。

 そういった中で、政権を守るとか自分の保身をするとか、政治がそんな姿勢では絶対に駄目だというふうに考えております。そのためであれば、タブーに切り込み、批判を浴びてでも、変化を起こし、そして政治が役割を果たしていくべきだと考えております。これは是非、総理も、そしてこの政権の政府に関しても、外交、防衛の議論から逃げずに、しっかりと必要な体制整備、そして政策の実施ということを行っていただきたいと考えております。

 それから、経済安全保障についてお伺いをしたいんですけれども、中国の上海電力の日本法人が日本企業と共同出資で運営している会社が大阪のメガソーラー発電所の運営を始めたことについて、安全保障上の問題が指摘されております。日本国民の基幹インフラである電力を中国企業が提供する状況というのは極めて懸念されるものです。

 また、これが、中国の国家政策である一帯一路の成功例としてこの会社にPRされてしまっているということも、これは非常に問題があると思います。実際に、中国は、超限戦と言われる、ほかの国の経済的な依存度を中国に高めることによって、戦争ができない、あるいは、そういった国と戦争したときには非常に圧力を加えやすいような、そういうことを平時からつくっていこう、そういった戦略の下で一帯一路を中心とした政策を打ってきているわけであって、また、中国の会社、企業の中には必ず、一定企業以上の人数がいれば共産党組織がありまして、そして政府への情報提供義務というのがある、これは法律的なものですね。ですから、これは非常に問題があるわけです。

 これに関して当時の大阪市長の責任を問う声もあるんですけれども、当時の大阪市は、外国企業を日本企業と同等に扱うルールになっている再エネの振興策、FIT、そしてWTOの国際競争入札のルール、さらには外為法、こういったものに基づき、公正な手続、行政手続を行ったにすぎません。問題は、こうした経済安全保障の整備が、法制度の整備が遅れていたことだというふうに思うんですけれども、つまり、これは国の責任だと思うんですね。

 この経済安全保障の法整備が遅れていたことによって、この件だけではなくて、外国人の資本家あるいは企業が日本の安全保障上懸念される日本の土地を買いあさっている、こういうことも事実として判明しているわけですけれども、総理として、こうした経済安全保障の整備が遅れていること、また、それによって、今回の事案のようなものを含む、多くの取り返しのつかない安全保障上の損失が実際に生じてしまっているということについて、責任をどう考えておられますか。

小林国務大臣 安全保障を経済を含めて多角的に捉えていかなければいけない、また、その経済安全保障政策、論点は多岐にわたっております。それをできるだけ可及的速やかに進めていかなければいけない、その点については委員と問題意識を共有していると感じています。

 その上で申し上げますと、まず、外国投資家による発電事業への投資などに当たりましては、外為法による事前届出が原則義務づけられておりまして、国の安全などの観点から厳格な審査が実施されていると承知をしています。したがって、外国投資家たる上海電力及びその関連会社から発電事業への投資などについては、外為法に基づき、しっかりと政府として把握をしているところでございます。また、電気事業法におきましても、電力の安定供給に支障があるような場合につきましては適切に対処されていると承知をしております。

 その上で、この国会で成立しました経済安全保障推進法、委員とも様々議論させていただきましたが、基幹インフラに関する制度がございます。この基幹インフラに関する制度は、外国投資家による基幹インフラへの投資また外国企業の参入そのものを規制するものではございませんが、基幹インフラ役務の安定的な提供が妨害されることによって国家国民の安全が損なわれる事態を未然に防止するために、外為法や各業法などの既存制度に上乗せしていく形で、電気分野を含めた基幹インフラ事業者が重要設備の導入また維持管理などを委託するその前に、政府がその設備などに関するリスクを審査することを可能とするものでございます。

 いずれにしても、経済安全保障の観点からは、我が国の基幹産業が抱えている脆弱性を幅広く不断に点検、見直しを検討していくことが必要だと考えています。したがって、関係省庁の局長級の職員から成る経済安全保障重点検討会議というものを既に立ち上げまして、重要な産業のリスクの把握、分析、これは様々な状況を想定した上で洗い出しを指示しております。

 引き続き、関係省庁で連携して取り組むとともに、制度につきましては不断に検証を行ってまいります。

青柳(仁)委員 済みません、時間が限られておりますので、総理にお伺いした質問は総理にお答えいただきたいんですが。

 私の質問は、今政府が何をやっているかということではなくて、これまで経済安全保障の整備が遅れていたことによって、今回の上海電力を含め、我々の、国民にとってのライフラインとなる電力、水道、あるいはそういった基幹インフラが一定程度そういった中国企業あるいは他国の企業に既に押さえられてしまっているということ、それから、それ以外の、土地に関しても、既に買われてしまっていて、日本の法律上は取り返しがつかないという状況になってしまっていることについて、総理の責任をどう考えているかということをお伺いします。

岸田内閣総理大臣 経済安全保障という問題意識については、今までも、外為法であったり、あるいは電気事業法において様々な取組が行われてきました。

 委員のおっしゃる個別の案件について発言することは控えますが、こうした様々な積み重ねの上に立って、今、今日、経済安全保障が改めて安全保障の議論の中で大きな議論として取り上げられ、ようやくこの国会において、経済安全保障推進法、これを国会においてお認めいただきました。是非、この法案の活用、そしてさらに、これに加えなければいけない様々な法案、課題について、これからもしっかり政府として検討、議論を続けていきたいと思っています。

青柳(仁)委員 何か、今までこういった失敗がたくさんあって学んだので、今回、この経済安全保障の法案ができてよかった、そういうふうに聞こえたんですけれども、これはそんなに、こういう学びがあったとかで済むような状態では今はないと思うんですね。この電力の問題もそうですが、土地の問題も非常に、もう取り返しのつかない状況になっているわけです。これは私は、総理の責任、政府の責任だと思うんですが、まあ、それはおいておいてですね。

 じゃ、今おっしゃったとおり、そういったことがあったのでこういう経済安全保障法を今回、今国会で成立させましたと今おっしゃいました。では、経済安全保障法案が今回通りましたので、今後はこういう上海電力みたいな例というのはなくなるという理解でよろしいですか。

岸田内閣総理大臣 委員がおっしゃるように、これまでの様々な経緯の中で、いろいろ我々として考えなければいけない課題も存在します。そして、国際情勢はどんどんと変化をしています。こうした変化にも、そして今まで残された課題にも対応していかなければいけない、これが政府の立場だと思います。

 経済安全保障推進法、この成立は大きなことであると思いますが、これで終わったとは決して申し上げておりません。こうした法案の充実等も状況の変化もしっかり見据えながらしっかりと考えていかなければいけませんし、それ以外にも、政府としてやるべきことについて絶えず検証し、考えていきたいと思っております。

青柳(仁)委員 今ちょっと質問させていただいたのは、今この現状でもう既に問題が起きているということを申し上げているんです。

 ですから、それに対して、今回、経済安全保障法案が通ったので、じゃ、こういった上海電力みたいな、基幹インフラ、基幹インフラは今回の四つの法案の中の一つでしたから、法案というか経済安保の施策の一つでしたから、これがありますから今後はこういう事例はなくなるという理解でいいかどうかということを聞いています。

岸田内閣総理大臣 ですから、過去の事例においても、問題のある部分について今後どうするか。終わってしまったからもう何もしなくていいということを申し上げているわけではありません。現実に対してどう対応していくか、こういったことについてもしっかり考えていく、なおかつ、未来に向けても変化していく、こうした事態にもしっかり対応していくことを考える、このように申し上げております。

青柳(仁)委員 だから、全て、考えていくとか検討していくとかそればかりなんですけれども、私が申し上げているのは、今現在大変な問題が起きているということなんです。

 そして、今もうこれ以上聞いても同じ回答だと思いますから言いますが、実は省庁に聞いてみました。実は、今回の経済安全保障法案では今回の上海電力のような例は止められないということです。なぜか。外為法は通過しているんです、ですから止められないわけです。ですから、そういった中で、なぜ止められないかということなんです。

 これは、基幹インフラ、ここに、これは正確に、今回内閣官房が用意した資料をそのまま読みますが、今回、基幹インフラ役務の安定的な供給の確保に関する制度ということがあるわけですが、これに関しては、基幹インフラに関する重要設備の導入、維持管理等の委託の事前審査、勧告、命令等を措置する、こういう法律が今回通ったわけです。つまり、この事前審査が重要なんですが、事前審査の段階で落とせるかどうかということなんですが、これは、実は経済安全保障法案のときにさんざん議論させていただきました。我が党からは、ここに罰則をかけるべきだと。

 つまり、基幹インフラ役務として政府に認定された事業者に関しては罰則がかかります。強制力がかかります。ところが、どういった事業者が危険性があるのか、安全保障上の懸念があるのかということを調べるときのヒアリングや聞き取り調査への回答は努力義務なんです。ここには罰則がかかっていないんです。

 ですから、今回のような例で、日本企業と組んでステルス参入をしようというような企業がいたときに、その企業に対して、じゃ、今回の法案に基づいて、経済安全保障法案に基づいて政府が聞き取り調査をしたとしても、罰則がないから情報を引き出すことはできないんです。そして、さらに、そういった企業はまだ入札に参加していませんから、政府の重要物資の、基幹インフラのグループの中に入っていませんから、ここは法の網を抜けるんです。

 つまり、今回成立した経済安全保障法制では、上海電力のような事例というのは止められないんです。だから、我が党はさんざん、経済安全保障のときに、そこに罰則をかけるべきだと何度も何度も強く言いました。そして、修正法案まで出しました。しかし、一行たりとも修正することなく、現行の法案が成立しました。これについては、我々は、我が党の、党の立場を超えて、日本のために必要だということで主張していたにもかかわらず、全く聞く耳を持たないこの政権に本当に失望しております。

 こういった状況を是非よく考えていただき、また、今既に起きてしまっている問題についての総理の責任、政府の責任を考えていただきたい。これから様々なことを考えていく、検討していくというのであれば、今すぐ検討してください、今問題が起きているんですから。その点を強く申し上げたいと思います。

 最後に、デジタル庁について、これも政府が混乱しているということですから、一つお伺いいたします。

 デジタル庁が今非常に混乱していまして、そして、成果が全く出ていないということは、多くの国民あるいは政府関係者も分かっていることだと思いますが、新聞報道で例えばこんなことが出ています。

 民間からの出向者二百人を含む約六百人で立ち上げられたデジタル庁なんですが、民間の活力が生かされると思ったら、仕事ができるとされる二、三十人の官僚が兼務の形であらゆる案件に絡んできて全く自由に仕事ができない、会議が多過ぎる、書類を何度も作っている、不毛な業務の水位はほかの役所に比べても異常な水準ということがあります。また、働き方の満足度を尋ねたアンケートでは、五段階の三を下回る部署もあったということです。それに対しての幹部からの謝罪メールが昨年末に一斉送信された、そういったことまで報道されております。

 それを、責任を取ってか、デジタル監という民間のトップが辞められたわけですけれども、この方、デジタルの専門家ではないということなんですね。組織の専門家ということです。ところが、組織が混乱しているんです。組織が大混乱しているときに、一定やり切ったといって辞めてしまった。これは非常に不思議です。

 私は、これだけ組織が混乱をしてしまって問題が生じているのであれば、責任を取るべきは、デジタル監という民間の方ではなくて、やはりトップである大臣、又は、デジタル庁は内閣直属の組織ですから、総理大臣が責任を取るべきじゃないかと思うんですが、これについてお伺いいたします。

牧島国務大臣 お答え申し上げます。

 現時点でデジタル庁の成果がなかなか実感できる形ではないのではないかという御指摘、厳しい声があることは真摯に受け止めなければならないというふうに感じております。

 デジタル庁は、今までの霞が関の組織とは全く違う形で運営をさせていただいています。官民融合の組織でございますし、プロジェクトベースのチーム編成という、そうした組織文化の上ではチャレンジングではございますが、官民共に大変優秀な人材がそろって、それぞれの知見を生かした政策をつくらせていただいております。

 誤解のないように申し上げなければならないのは、石倉前デジタル監についてでございますが、石倉前デジタル監は、新しい組織の立ち上げからデジタル庁の組織文化の醸成に大変御尽力をいただきました。組織運営という点では、石倉デジタル監は大変その御知見をお持ちの方でございましたし、その御尽力によって、ワン・オン・ワン・ミーティングですとか、個々の職員の担務の見える化、見直しなど、大分進んだということは申し上げておかなければならない。そして、一定の成果を出されたということが一つの理由となって、石倉デジタル監は交代をするということになったわけでございます。

 デジタル庁は、デジタル社会の実現のための司令塔機能がございます。だからこそ、政府全体のデジタル戦略である重点計画を昨年十二月、閣議決定しています。この重点計画には工程表がついてございます。この工程表に基づいて、各省庁と連携しながら、その進捗のフォローアップをするという責務がデジタル庁にはございます。

 また、一元的なプロジェクトの管理、情報システム関係予算の一括計上などを通じて各省庁とも連携し、また、地方自治体や民間の皆様の御知見もおかりしながら、しっかりとデジタル社会の司令塔機能を果たし、デジタル社会の推進を進めてまいります。

 そして、デジタルによって便利になったと国民の皆様が感じていただけるように、恩恵をいち早く届けることを引き続き努めてまいります。

青柳(仁)委員 つまり、大臣としては何の責任も感じていない、そういうことですね。ということですよね。責任を取って辞められるとか、そういうことはないわけですか。

牧島国務大臣 デジタル社会の司令塔としての責務はデジタル庁全体で持っておりますし、私自身、大変大きな責任を感じながら、日々の業務、力を合わせて進めさせていただいているところでございます。

 国民の皆様にデジタルの恩恵を届けられるよう、そして、国民の皆様にとって分かりやすいデジタル施策を引き続き取り組んでまいります。

青柳(仁)委員 何か、大臣も、そこで笑っている自民党議員も、本当に緊張感がないなと思うんですね。だって、デジタル庁というのは何でつくったか、皆さん覚えていますか。

 デジタルトランスフォーメーションというのは、新しい資本主義でも、また、政権の成長戦略の目玉ですよね。これは当たり前のことですけれども、民間企業の方に聞けば、デジタルトランスフォーメーションが次の世界の競争力になるなんということは誰も疑いの余地もないわけです。

 ところが、世界のデジタル競争力ランキングとかを見てみますと、日本は、欧米やシンガポールに負けているだけではなくて、中国にも韓国にも負けていて、また、どんどん下降している状況なんですよ。こういった中で、デジタルトランスフォーメーションを進めるために政府がリーダーシップを取ってやるということだったんじゃないんですか。これ、官僚に任せていて進むと本気で思っているんですか。

 先ほど、一定の成果を得てデジタル監が辞めたとおっしゃっていましたけれども、就任して八か月で、組織がこれだけ混乱しているときに組織の専門家が辞めるのが、何が成果が出ているんですか。ただ、それを石倉さんのせいにするのもおかしいですよ。それを任命したのは政治家ですし。

 それから、大阪でも維新の会はしっかりとこれまでやってきましたが、大きな改革を進めようと思ったら、これは政治のリーダーシップがなかったらできるわけないじゃないですか。そんな、省庁に任せて、省庁の間でやっていることで、できるわけないんです。

 例えば、今回のデジタル庁、千百ある政府システムのうちデジタル庁が関与しているのは、そのうちのどれぐらいか御存じですか。これは一割ですよ、一割。それから、ワクチン接種証明アプリ以外ほとんどデジタル庁の何か成果というのは全く感じないわけですけれども、そうしたものも進まないのはなぜか。これは、各省の持っているデジタル化できるもの、ここを手放さない、あるいは連携が全く足りていないということだと思うんですよね。

 そういったこと、先ほどの話の中でも、働き方の中でも指摘させていただきましたが、こうした、働き方を含む中でも、やはり官僚のこれまでの働き方、今の省庁間の、省益が国益よりも重視されているという状況、こんなのは、でも、当たり前なんです。当たり前なんです。だから、改革をするときには、それを超えるための政治のリーダーシップが必要なんです。それができないんだったら大臣を辞めるべきだと私は言っているんです。それを聞いて笑っている自民党議員もどうなんでしょうね。やはり全然緊張感のない最低の内閣だなと私は思いますね。

 これは本当にしっかりと、デジタル庁というのは規制緩和の最先端を行かなきゃいけない省庁ですから、しっかりと政治のリーダーシップを発揮していただきたい、このように思っております。

 いろいろ申し述べてまいりましたけれども、補正予算に関して、もうこれまで各党が指摘しているとおりです。繰り返すまでもありませんが、年度が始まって二か月しかたっていないのに、なぜ今、補正予算を編成するんですか。通常予算があって、それを調整する予備費があって、そして補正予算というのが財政規律ですよね。これを全く、今である必要がない。誰もが分かっていますよ。これは選挙前のばらまきなんですよ。そういう茶番につき合わされたくないんです、もう我々は。

 何より、今回、予備費の積み増しで、政権与党に対して補正予算の使い方を白紙委任してくれ、こういう内容ですよね。私が再三申し上げてきたのは、今の岸田内閣、こういった白紙委任をするような信頼性は全くないと思いますので、補正予算についても、全くこれについては信頼性がないということを申し上げたいと思います。

 以上で私からの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

根本委員長 この際、藤田文武君から関連質疑の申出があります。足立君の持ち時間の範囲内でこれを許します。藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 足立議員、そして青柳委員に続いて、多分私が一番柔らかい質疑になると思いますが、新しい資本主義、それから勤労者皆保険、この二つですね。

 これからの経済の在り方、そして社会保障の在り方、我々も、大きなプランを提示して、議論を巻き起こしたいと思って努力してやってきました。そのためのグランドデザインや詳細設計まで提示したら、大きな賛同を得ることもあるし、批判も得ることもある。これは健全だと私は思っているんですね。

 その中で、岸田総理が昨年の九月の総裁選で花火をぶち上げた新しい資本主義、この政策体系というのはどういうものなんだろうと、私も、真面目な方なので、かなり勉強してまいりましたが、いろいろな専門家に聞いたり又は官僚の皆さんに聞いても、今この時点でも、まだよく分かりませんという声が多いというか、何か説明を聞いてもよく、私自身も余り理解できないんですね。

 新しいと言うからには、これまでの資本主義のある種の否定なのか、修正なのか。全てにおいて、これが、アドバルーンだけ上がって中身が、そのグランドデザインに基づいた中身という検証ができないまま、いろいろな人の声を聞く力で取り入れていくというやり方が、私は合っているのかどうかということを思うわけです。

 例えば、投資を呼び込む。投資家や実業家というのは、ある種の方向性が見えていたら投資しやすいわけですけれども、よく分からないものには投資しません。ですから、それを明確に規定していただきたいというふうに思うわけです。

 昨日、新しい資本主義について、小倉議員でしたかね、小倉議員に対しての答弁で、かなり長めの答弁をいただいて、私も見ていましたから思いは分かりますけれども、ひとつ端的に、何が新しいと呼んでいるのか、何が新しいと言っているのかをお答えいただけたらと思います。

岸田内閣総理大臣 新しい資本主義、何が新しいかということですが、従来の資本主義であるならば、競争や市場に任せることによって、格差の問題、気候変動の問題、こうした外部不経済と言われるような課題が生じ、それとの兼ね合いで競争を続けている、こういったことでありました。

 しかし、こういった課題を横に置いて、一つの障害物として市場を回していくというのでは持続可能性を維持することができないのではないか。この様々な課題そのものに民間の投資を集めて、そして、これを成長のエンジンにすることによって持続可能な資本主義をつくっていこうということを申し上げています。こうしたことによって資本主義をバージョンアップさせる、こうしたことを申し上げています。

 権威主義的な国家の経済が、今、国際社会の中で大きな力を持とうとしているときにあって、資本主義のバージョンアップ、大変重要であるということで、アメリカ、ヨーロッパとも意思疎通を図りながら、こうした取組を進めていこう、首脳間でもこうした確認を今行っているところであります。

藤田委員 今、外部不経済をどうするかというお話がありました。これは経済学では当たり前の話です。そしてまた、環境やグリーン、これは別に新しい資本主義じゃなくて、資本主義の中でここにどう投資していくかということは、もう競争環境に入っていますから、この競争に勝たないといけないという課題設定の方が正しいわけです。

 それから、どうしても、市場の原理を弱めて政府の介入を強めるという考え方なのかなとやはり受け取ってしまうんですね。

 ここでちょっと具体論に入りたいんですが、令和版所得倍増計画、これは、文字どおりの所得が二倍になるという意味ではないと、ちょっとトーンダウンしたわけなんですね。私は、目標として掲げたのはいいなと思ったんですけれども、下げられました。

 そこで、先日出てきたのが資産所得倍増、インベスト・イン・キシダというふうにおっしゃられましたが、これは、具体的な政策メニューはどのようにお考えなのか。NISAを拡大しますということは一つ具体例で挙げられましたが、具体的な政策のメニューを教えてください。

岸田内閣総理大臣 我が国における金融資産二千兆円のうちの半分を超える、一千兆円を超える預貯金、これを動かしていくことこそ日本経済における大きなポテンシャルであるということを申し上げた上で、こうした預貯金を是非投資に回すことを考えよう、こういったことで、先ほど御紹介いただきました資産所得倍増プラン、これを明らかにさせていただきました。

 そして、その預貯金を投資に回す際に当たって大事なことは、中間層にこうした動きをしっかりと広げていくことであるということで、特にNISAの拡充ということを一つ象徴的な政策として挙げさせていただきました。

 こういった考え方に基づいて更に政策を用意しなければいけないということで、この六月までに明らかにするグランドデザインの中で、こうした考え方についても、具体的な政策についてもしっかりと明らかにさせていただきたいと思っております。

藤田委員 他党でありますが、階議員が、資産についての格差が助長されるんじゃないかという指摘、私も一理あるなと思って聞いていたんですけれども、NISAを拡大するのは私は悪くないと思うんですね。

 NISA、いわゆる低所得や中間層のNISAを拡大する、でも、私が一番大事なのは、今、日本における様々な資産、そういうものの流動性が低いということを、環境整備をして、より付加価値の高い使われ方がするようなインセンティブが働く経済に転化すべきだ、これが私は新しい資本主義なんじゃないかと、私自身、好意的に何か新しい資本主義というのはこうなんだと言えないかと思って勉強しているんですけれども、そう思うんですね。

 つまり、我々が目指すべきは流動性とか生産性を上げることであって、言い換えると、様々な資産が流動化して、固定化したものがより力強く付加価値を生むところに流動していく、それには、やはり規制緩和とか、それから我々がずっと言っているフローの減税とかということでインセンティブを与えるべきだというふうに言っているわけです。

 じゃ、金融所得課税についてもお聞きしたいと思います。

 私は、税は、そもそも論として、一つの税だけを取り上げて、上げる、下げるの議論をするのはナンセンスだと思っていて、一つの税を上げるならば、それに関連する違う税を下げるとか上げるとかというのを総合的に、税体系一体で、どのような経済原理が、インセンティブが働くかということを考えるべきだというのはずっと申し上げてきました。

 その中で、この金融所得課税の強化については、これは引っ込められたんですかね。やるとしたら、その政策目的は何なのかということを聞きたいんですが、つまり、インベスト・イン・キシダと、ちょっと舌をかむんじゃないかなと思うわけです。これはいかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今の委員の御発言の中で、規制緩和等を進めるのが先ではないかという発言がありましたが、私自身、規制緩和、さらには税制について、何か否定しているということは全くありません。大きな方向性をしっかり示すために、様々な規制改革あるいは税制、これを考えていかなければいけない、その方向性について申し上げているということであります。

 ですから、流動性という話もありました。この大きな方向性の中で、一つ大きなポイントとして人への投資ということを申し上げていますが、これも、これから成長する分野に労働力がしっかり移動していくために、人への投資を行ってそれを後押しする、こういったことを考えるべきではないか、こんなことも申し上げております。

 そして、御質問の金融所得課税につきましては、こうした流れを考えるに当たって、成長と分配の好循環の中の一つのメニューとして挙げさせていただきましたが、こうした大きな流れを考える際にまず優先すべきなのは賃上げと所得であり、又は資産の活用であり、こちらをまず動かすことによってこうした循環をつくっていこう、こっちを優先するということで政策を今用意させていただいています。

 金融所得課税についても、決して終わったわけではなくして、これは与党税調あるいは自民党の税調においても一つの課題として議論が続いています。この議論の中で、金融所得課税、どうあるべきなのか、しっかり結論を出していきたいと思っております。

藤田委員 順序論はあると思うんですね。ただ、私、総理の発言の推移をいろいろ見ていると、完全にはやはり否定していなくて、だから、私自身は、私の捉まえ方は、総理のやはり持論なのかなと思っているんですね。

 やるんだったら、やるというふうに言って、勝負してもいいと思うんですよ。要するに、私が申し上げたいのは、我々は野党ですから、総理が具体論を出してくださったら、それについて激論して、どちらがいいかを国民の皆さんに見てもらうという勝負をしたいわけですけれども、でも、ちまたに言われるのは、余り中身がない、でも、安全運転で、調整型でと。でも、ぶち上げているものは新しい資本主義で、中長期の新しい経済構想をやろうと打ち上げているわけですよね。それについての具体論がなかなか深まらないと、国会でも我々も苦心しますよ。実際にどの点で、具体論で生産的な議論ができるかどうか。本当に悔しいなというふうに思うわけであります。

 次に、勤労所得についてしたいと思います。

 私は、資産所得は、資産の所得というより、資産の流動性で、投資魅力のある日本というのをつくるべきだというのがやはり根源にあると思うんですね。その中で資産所得というのがあると思うんですが、私は、所得でいうと、やはり勤労所得だと思うんです。

 この三十年にわたって、先進諸国に比べて賃金水準が伸びてこなかった、それから可処分所得は減っていっているということがありまして、その中で出てきた政策メニュー、私もいろいろ見ていますけれども、公的価格引上げとか処遇改善加算とか、介護、看護、保育、幼児教育、こういったものの、労働市場でいうと一部の人たちにまず呼び水で上げようという政策。

 これは、どこまで波及するかのロジックはと前回、前々回お聞きしましたが、ロジックは余りない。そして、取引の適正化、下請いじめはしないでねと。それは当たり前ですよね。

 それから、人への投資。人への投資は、私は否定しません。いいけれども、でも、成長産業というものに携わっている企業さんは、人への投資はもうやっていますよ。それについて実際に補助金を出して、少しのプッシュ効果はあるかもしれない。

 それで、賃上げ税制。これは、私は、賃上げ税制の控除率を上げるというのは、控除率の問題で、余り使われてこなかったから上げたんだというふうに認識しているんですけれども、控除率の問題じゃなくて、構造の問題だということを前は指摘しました。

 例えば、一億円の人件費があるところで三%の給与アップをすると、三百万円、毎年負担増になるわけです、人件費が。そして、その四〇%を税額控除すると百二十万円。百二十万円得するから、一年だけ百二十万円得するから、毎年三百万円ずつコスト増になるということをやる企業があるかどうかということになると、これは構造的にこの制度というのは難しいというふうに判断していて、中小企業の大半は赤字企業ですし、だから、これは制度として余り効果は大きくないんじゃないかと。まあ、やらないよりやる方がましとおっしゃるなら、そうかもしれない。

 じゃ、私が常々聞いているのは、長期にわたって全然上昇トレンドにならない給与水準を大きく変えていく政策をやるべきだと言っているんです。私たちはそれを労働市場改革と言っているんですが、その大きなトレンドを変えるグランドデザインはこの新しい資本主義の中にあるんでしょうか。お答えいただけますか。

岸田内閣総理大臣 まず、おっしゃるように、賃上げは重要であるということで、賃上げ税制ですとか、あるいは価格転嫁政策、さらには、公共調達に人件費を引き上げた企業を優遇するなど、様々な政策を用意しています。

 そして、これが持続するのかどうかという御指摘でありますが、だからこそ、大きな絵柄が大事だということを申し上げています。

 賃上げがこうした大きな経済の循環の中でどういう意味があるのか、この賃上げ、人への投資が必ず次の成長につながるという流れをしっかり示すことが、企業において、こうした人への投資に力を入れようというインセンティブになっていくんだと思います。だからこそ、成長と分配、両方が大事である。

 そうした分配を行うのと併せて、成長をしっかりと示していくことによって、その両方の関係をしっかり明らかにして経済の全体像を示すことが大事だと思っています。持続可能なものにするためには、分配、賃金の引上げ、これはもちろん大事なことでありますが、あわせて、成長の姿もしっかり見せることが持続可能性につながると考えております。

藤田委員 今、質疑時間終了が来ましたので、午後に私、もう一度、冒頭、させていただきます。次は勤労者皆保険、これは裏表ですから、やりたいと思います。お願いします。

根本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 午前に引き続きまして、後半、させていただきます。

 後半は、前半の新しい資本主義に続きまして、主に勤労者皆保険について取り上げたいと思います。

 これは、なかなかちょっと話題になりにくくて、取り上げる方が少ないんですが、非常に大きな議題で、総理が、私どもは何度かやらせていただいて、示された方向性、これは大きな大転換にもつながる可能性があるので、これをちょっと明らかにしたいなと思うんです。

 ちょっと前半の質疑で、足立議員から、臨時特別給付金、住民税の非課税世帯に給付するお金についての不合理みたいな話をさせてもらいました。これは、今回は、非課税世帯と、それから家計が急変して落ち込んでしまった世帯は、申告していただいて、そこにお配りしますよと。でも、逆に急変、逆の意味でよくなったところには、もう把握できないからお配りするしかないという形で、これはある種不公平ですよね。

 こういうことが、あ、ここも必要だ、あそこは要らないとかということを把握できないまま、つまり、こういうコロナとか危機が起こったときに、誰がどの程度お困りになっているかを把握できない、これを把握できるようにしましょうと我が党はずっと提案してきました。それを把握した上で、リアルタイムに、ちゃんと公平公正な給付と負担を実現しようということが一つの策です。

 それも難しいのであれば、もっとシンプルに、給付は一律にして、必要がなかった人は逆に税で公平に徴収しよう、そういうセーフティーネットをそもそもつくった方がいいんじゃないかということで、古くは給付つき税額控除やベーシックインカムの議論を私たちはさせていただいていて、こういうことに取り組まないことには、毎回、何かが起こったときに、この人たちには要るんだろうか、この人たちには要らないんだろうかということが起こって、無駄に配ってしまった分には不公平だ、こういうことが起こるわけです。

 こういうことを是正しようという社会保障やセーフティーネット論を私たちは今こそやるべきだという問題提起をさせていただいています。

 そこで、具体論、勤労者皆保険についてお聞きしたいと思います。

 勤労者皆保険は、具体的に言うと医療保険と年金の話ですけれども、働き方に中立な社会保障を実現しよう、全ての人にセーフティーネットを強化していこう、そういう趣旨、政策目的だと理解しておりますが、それでよろしいですか。

後藤国務大臣 勤労者皆保険の目的は、兼業、副業、フリーランスなども含めまして、どのような働き方をしてもセーフティーネットが確保され、誰もが安心して希望どおりに働くことを可能とすることでありまして、このことは、社会保障の支え手を増やし、全ての世代が支え合う持続可能な社会保障の構築にもつながると考えております。

藤田委員 今、二点あって、漏れ落ちているような人たちを、働き方に中立に、ちゃんとセーフティーネットを用意しましょうねという話と、それから、負担側に回ってもらおう、支え手側に回ってもらおうという、そういう、これは財源の話にもつながりますが、この二点があると思うんですね。

 働き方に中立というのは、さっきちょっとだけ言及がありましたが、雇用形態に中立というところなのか、若しくは、雇用形態を更に超えて、全ての人というふうな意味合いなのか。どこまでの概念なのか、お答えいただけますか。

後藤国務大臣 最近は、雇用以外の形態の働き方も、フリーランスなど、大変多様化してまいりました。そうした多様化した働き方、その働き方に中立的な社会保障制度というのが国民皆保険制度の実現に向けた姿です。

藤田委員 これは、私、一番最初にお聞きしたときに、ちょっと信じられないなと思って。

 要するに、勤労者皆保険は、適用拡大をとにかく頑張りましょう、短時間労働者にもできる限り広げましょうというところまでかなと思っていたら、多様な働き方、フリーランス、兼業、副業、ギグワーカー、パラレルワーカー、様々な人たちを、企業が労使折半で半分負担している、その船にできるだけ乗せようという制度、方針だということを総理がおっしゃられたので、驚いて、そんなことはできるのかということを思ったわけです。

 つまり、これを整理すると、今、被用者性がある人たちで短時間の人たち、これは適用拡大をやりましょうという議論の階層がまずありますね。その次に、それ以外の様々な働き方をしている人たちも乗せてしまおうという方針をおっしゃられたわけですけれども、じゃ、一つ目の話でいいますと、被用者保険の適用拡大、今既に進んでいますけれども、これはまだ全部じゃありませんから、これをまず、その他も全部やると言っているんだから、被用者性がある人は時間に限らず全て、例えば企業規模の要件や非適用業種や時間的な制限というのを、これは行く行くは外していくという方針でよろしいんですか。

後藤国務大臣 本来、被用者である方には、事業形態、業種、従業員数などにかかわらず、被用者にふさわしい保障を確保すべきでありまして、被用者保険を適用することが原則でありますことから、当分の間、経過措置として定められている、今御指摘があった短時間労働者の適用に係る企業規模要件だとか、あるいは個人事業所における非適用業種等につきましては、最終的には撤廃すべきものであると考えております。この旨は、令和二年年金改正法に対する国会の附帯決議等においても確認をされております。

 関係者の御理解も得つつ、更なる適用拡大に向けて、検討、推進を進めてまいりたいと思います。

藤田委員 よく分かりました。

 つまり、適用拡大、今徐々に進めているやつは、最終的には、企業の要件とか時間的な制約とかそういうものは、まずは第一弾ですから取っ払って、その次に行くためには、まずここは全部取っ払って企業の船に全部乗せてしまおうと。

 つまり、労使折半の原則であるこの保険の概念で考えたら、企業の負担を増やしていくという方針でいいんですよね。

後藤国務大臣 今委員がおっしゃっている第一段階の状況からいえば、適用や例外を外していくということでありますから、そこのところは被用者保険の適用拡大を、御指摘のとおり、負担面での企業等への影響がありますから、中小企業等の経営にも配慮して、段階的に進めている段階でございます。

 他方、企業経営にもメリットはございまして、働き方に中立的な制度が実現すれば、働きたい人の能力発揮の機会や、企業運営にも必要な労働力が確保されやすくなるというメリットもございます。

 こうした適用拡大のメリット、負担も企業側にも増えてまいりますけれども、こうしたことをトータルで御理解をいただいて、勤労者皆保険の実現に向けた取組を進めていきたいと思います。

藤田委員 企業の負担を増やしていくということだと明言されたというふうに受け取ります。総理、そういう方向でいいんですよね。

 要するに……(発言する者あり)いや、僕もそう思って。これは、なぜそれを言っているかというと、ちょっと黙ってもらっていいですか。私は、社会保険料を増やすということは、すなわち、お給料と社会保険で合わせて企業は人件費と見ているわけです。これをどんどん増やすということは、つまり、賃金というのを負担と見れば、投資だと言いたいのは分かりますけれども、企業経営の実務を考えれば、負担と考えれば、これをどんどんどんどん拡大しなければいけないということになるんですね。

 賃金と雇用というのは相反関係に基本的にはあるんですよ。ですから、企業に負担を負わすということは雇用には影響が出るし、これは、給料を上げていこう、賃金水準を上げていこう、賃金というのはお給料、そのものを上げていこうというインセンティブをとどめてしまうという効果があるんですね。

 だから、企業に、それでも、こういう時代だから、人手不足の時代だから、雇うからには相応の負担をやってよ、中小企業も、それは激変緩和措置はやるけれども、中長期的には企業の負担を増やすんだよということを明言された方が、僕は分かりやすくていいと思うんです。

岸田内閣総理大臣 今厚労大臣からお答えさせていただいたように、令和二年のこの法改正に基づいて、まずは被用者保険の適用拡大を行っていかなければならないと思います。

 そして、その方向性で、委員がおっしゃるように、企業の負担が増えるという部分、これはあるということは当然認めなければなりません。しかし、こうした勤労者皆保険というものを実現することによって、まさに先ほど厚労大臣からありましたように、企業にとってのメリットというのもしっかりと説明しなければなりません。

 御党も度々強調されております、労働力の移動を可能とする制度改革、規制緩和、こういったことをおっしゃっておられますが、こうした制度がバックにあるからこそ、労働力はより適切な分野に移動することが可能になるわけでありますし、そもそも、企業としましては、この経済の仕組みの中で、企業自体が成長をし、そして成長の果実を得る、こうした経済のシステムを享受する。

 こうした体制もしっかり用意することによって、経済の仕組み全体でのプラス、メリット、これもしっかり感じてもらいながら、今言った社会保障の支え手を増やすことの意味をしっかり考えてもらい、この全体の流れをしっかりと理解した上で享受してもらう。だから、全体の仕掛けが必要だ、新しい資本主義という経済モデルを御理解いただけることが大事だ、こういったことを午前中から申し上げている次第であります。

藤田委員 整理すると、全ての人にセーフティーネット、いろいろな働き方の方にセーフティーネット、つまり、私たちはそれをチャレンジのためのセーフティーネットと言っているんですけれども、いろいろ移動したりチャレンジしたりするときに、失敗したら怖いから、やはりセーフティーネットはあった方がいいよねという、そこは恐らく共通だと思うんですね。

 じゃ、それの手法が、企業を通じてセーフティーネットを提供する、それを強化していく、つまり、企業に負担を中長期的には強いていきますよと。それは、メリットもあるけれどもデメリットもかなりある。それはメリット、デメリットでいうと、中小企業はデメリットの方しか感じませんよ、これは。でも、それをやるというんだから、それは私は選挙前に確認できてよかったと思います。

 これは濁されても困るので、中小企業にとって、中長期的に、実業家や投資家は中長期的にどうなるかを踏まえて投資を考えますから、そして雇用も考えますから、これは中長期的には企業に負わせていくんだということを今日明言していただいたのは、よかったと思います。

 じゃ、次に。適用拡大の範囲は短時間労働者じゃなくてフリーランスにも広げるという、これは大転換の話をおっしゃられているんですね。じゃ、その被用者性というのはどうやって判断するんですか。

後藤国務大臣 先に一言申し上げると、方向性を確認されたので、方向性を確認をさせていただきましたけれども、どのぐらいのスピードで、どのように中小企業、これまでも中小企業の皆さんの厳しい状況を勘案しながら徐々に適用拡大してきましたので、その時期等については、今後とも丁寧に、しかし、制度の趣旨を踏まえて、丁寧にしっかりと、御相談しながら進めていくことだと思います。

 その後、今御質問のあった、全世代型社会保障の、被用者性の考え方についてでありますけれども、全世代型社会保障構築会議の中間整理というのが出まして、その中でも、例えばフリーランスだとかギグワーカーだとか、そうした者への社会保険の適用については、まずは被用者性から考えよう、検討を行うべきとされています。そして、その上で、労働環境の変化等を念頭に置きながら、より幅広い社会保険の適用の在り方について総合的な検討を進めていくことが考えられると。ですから、社会保険の適用の考え方の中で、その上で考えていくということでございます。

 被用性につきまして、特にお尋ねがありましたけれども、厚生年金保険法及び健康保険法においては、適用事業者に使用される者と定められておりまして、この解釈や適用の在り方を検討していくということになります。

 そして、皆保険の、社会保険の適用の在り方の中で、フリーランス、ギグワーカーの問題も、ともかく、一つの社会保険の制度としてしっかりと検討を制度的にしていく、そういう、検討は二段階の進め方ということで提示しております。

藤田委員 今、後藤大臣からのエクスキューズで、その方向性としては、企業に負担を強いていくという方向性は確かにそうなんだけれども、いろいろつらい事情もあるから、そういうことを勘案しながら、スケジュールについてはごにょごにょごにょと濁してくださったわけなんですね。

 じゃ、そもそも政策目的とは、全ての人が漏れ落ちないように、全ての人にセーフティーネットを提供しようというのが政策目的だとしたら、そうしたら、これが達成されるのはいつなんですかね。三十年、四十年、五十年後というと、経済環境はまるっきり変わっているんじゃないですか。

 だから、私が言いたいのは、そのソリューションとして、やるんだったらスケジュールを決めてやってくださったらいい、覚悟を決めて。でも、それは痛みを伴いますよ。でも、それを言ったらいいじゃないですか。そういうことを僕は申し上げたいというのが一つ。

 それから、フリーランスの被用者性を個別、一つ一つ判断して、船に乗せるか乗せないかということを一個一個制度として官僚の皆さんがつくっていったら、膨大な作業です、これ。なぜならば、多様な働き方を皆さんは推進しようとされていません。私もそう思います。

 その多様な働き方というのが、雇用形態もそう、取引先もそう、時間もそう、そしてパフォーマンスの出し方もそう、様々、その被用者性というのが物すごく複雑になってくるんですよ、これからの時代。それを、被用者性があるかないかで、まず入れるか入れないかという議論をしているのは本当にナンセンスで、だから、企業を通じてセーフティーネットを強化するというやり方に限界があるんじゃないか、つまり、漏れ落ちる人を救うというのに三十年、四十年、五十年、百年かかるんじゃないですかという私は課題提起をしているわけであります。

 つまり、今回、コロナでも分かったように、企業を通じた社会保障というものが大半、それがメインであれば、その船に乗れていない人、つまり漏れ落ちている人というのを救済できないんですよ。そして、労働市場の流動化も妨げる。そして、スピーディーに、企業側からするとスピーディーに事業転換することや、成長市場に適切に、マクロとして労働移動が起こるということさえ妨げるような方向性だと私は感じているわけであります。

 つまり、こういう企業を通じて社会保障を提供するという考え方は、多様な働き方、そして経済の元気さというものを阻害するというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 社会保険制度からこぼれ落ちるケースが生じたり労働市場にゆがみを生じさせないような、そういう働き方に中立的な制度をつくっていこうということについては、質問者の御意見と全く変わるところはないと思います。

 ただ、我々、既存の制度と連続的に改革というものを考えていくという中で、おっしゃるように、今の保険制度は被用者保険制度を中心にしてできています。まずは、被用者の拡大、あるいは、その考え方でどこまでやっていけるか、そしてその先に、先ほど申し上げたみたいに、社会保険全体の考え方を弾力的に拡大をする等で、国民皆保険という形で、社会保険にこぼれ落ちることのないように、働き方に中立的な制度をつくっていく必要があるというふうに申し上げております。

藤田委員 ちょっと今、余り、私の頭が悪いのか、理解できなかったんですけれども、国民皆保険はありますよね、今。でも、それは、企業を通じてじゃなくて、個人で。それでは足りなくて、弱いセーフティーネットだから、だから企業に乗せようとおっしゃっているんじゃないんですか。

 ちょっと意味が分からなかったので、では、総理、お願いします。

岸田内閣総理大臣 今、政府として提案させていただいているのは、勤労者皆保険制度、いかなる働き方をしても中立的なセーフティーネットをつくっていこう、こうしたことを申し上げています。

 特に、今、働き方がますます多様化している中でありますので、これは中立でなければ労働移動もスムーズにいかない、こういった問題意識に立って、どうあるべきか、これを考え、提案させていただいています。そして、現実的な手法として、今の被用者保険をできるだけ拡大する形でそうした目的を達することができないか、こうした議論を行っています。大きな目標に向けて、どのように到達するのか、現実を積み上げていかなければいけない。政府としては、そのように申し上げています。

 委員の方から、これについていろいろ厳しい御指摘がありました。これも踏まえて現実的な前進を我々は図っていきたいと思いますが、もしこれが駄目だというのであるならば、どういった形でこの大きな目的を達成することができるのか。

 御党の方からベーシックインカム等の提案をいただいている、これは十分承知をしています。ベーシックインカムという制度、社会保険方式を取っている我が国の現在の社会保障制度との比較において、転換することが本当に現実的なのかどうか、こういったことも考えなければいけない。

 ですから、我々は、今申し上げた方向で、働き方に中立的な社会保障を考えていきたいと思っておりますが、どういった方法がより現実的な方法なのか、こういった議論はこれからも国会等においてしっかりと行っていきたいと思っております。

藤田委員 今、総理の方からわざわざ、我が党の提案についても認識しているというお言葉をいただいたのは感謝申し上げます。

 実際に、そういうベーシックインカムとか最低所得保障とか給付つき税額控除というものは、私たちの問題意識は、やはり、今、企業も大変な時代だから言っているんです。そして、GDPが自然増しないというトレンドだから言っているんです。

 企業に負担を負わせ過ぎて、世界にどんどんどんどん伍していく企業というもののスピード感を下げてしまうんじゃないかという危惧があって、じゃ、漏れなく、しかもその企業の船に乗せるというのは、どこまで乗せるのか問題がずっと永遠に残るわけなんですね。であれば、そういうセーフティーネットを国が直接国民とつながり保障することで企業の肩の荷を少し下ろしてあげて、どんどん後押ししてあげよう、そして労働移動を活性化させようという方がいいんじゃないか。

 つまり、労働者側から見たらすばらしい、例えば厳しい解雇規制かもしれない、最低賃金を上げることかもしれない、同一労働同一賃金で非正規の待遇を正規に近づけることかもしれない。年金、さっきの、適用拡大を無限にやっていきましょう、社会保険料は財源もあるからどんどん上げていきましょう、定年も延長して、できる限りずっと雇ってください、こういうインセンティブを企業にばかりお願いしているわけですけれども、これは労働者側から見たら、それはハッピーですよ。でも、労働者の賃金を上げやすい企業環境をいかにつくるか、それがひいては労働者のためじゃないですか。

 企業のために言っているんじゃないんです。労働者の賃金が上がらないのは、僕は構造の問題だと思っている。だから、企業に対して負わせ過ぎている社会保障というものから転換して、肩の荷を下ろし、そして、労働移動、労働法制にしっかり向き合ってやることで、私は、賃金水準を上げるトレンドをつくれる、そういう対立軸だというふうに思うわけです。

 そこまで話した上で、本当に企業中心の社会保障が、一番最初におっしゃられた、全ての人に漏れなくセーフティーネットを強化していくということ、つまり、私は企業がやる社会保障はユニバーサルにならないと思っているんですが、なると、つまり、多様な働き方に中立な社会保障を全ての労働者に漏れ落ちることなく、こういう危機的状況の中でも漏れ落ちることなくできることが、将来的にやることができると思っていらっしゃるのか、もう一度お考えをお聞きしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、あらゆる種類の働き方に中立的な社会保障制度をつくっていかなければならないと思っておりますし、それに向けての現実的なアプローチとして、先ほど来説明させていただいている手法を取っていきたいと思っています。

 そして、委員の方から、企業に負担が高まる、要は、一つの制度であっても、その立場によって評価が変わるのではないか、こういった話がありました。

 だからこそ、経済全体の仕組みをしっかり説明することが大事だと思います。分配だけではなくして成長もあります。社会保障もしっかりと用意をいたします。その全体があってこそ、それぞれ努力をしようということであります。

 一部の制度だけを見て、これが損か得か、こういったことであるならば、これは永遠に結論が出てこないということになりかねません。是非、社会全体で、こういった経済をつくっていこうという共通意識を持つことによって、それぞれの取組の意味を考えながら社会を改革していかなければいけないのではないかと考えています。

藤田委員 大体分かりました。

 いずれにしても、企業に負担を負わせていこう、そういう方向性で、それはメリットもあるんだよ、でも、デメリットは物すごい大きいということをやるという意思があるということはよく分かりましたので。

 そして、もう一つ、社会保障構築会議の中で給付と負担の話が出てきます。「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心となっているこれまでの社会保障の構造を見直し、」云々かんぬん、こう続いていくわけでありますが、この構造を見直すということは、高齢者の負担も増やしましょう、それは高齢者も払ってもらう人は払ってもらわなあきません、ですから負担を増やしますよという方向性で、この構築会議の提言を受けて進めるということでよろしいんですか。

岸田内閣総理大臣 全世代型社会保障構築会議において先日取りまとめた議論の中間整理では、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心、こういったことになっているこれまでの社会保障の構造を見直そうということを申し上げています。

 要は、将来世代への負担を先送りせずに、能力に応じてみんなが支え合う、これを基本としながら、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障をバランスよく確保する、より支え手をしっかり拡充することによって全体でこの社会保障制度を支える、そうした構造を考えていくべきではないか、こうした問題意識の下の提案であると認識をしております。

藤田委員 さっきの適用拡大を無限に広げていきましょうというのは、これは支え手を増やす話にもなるんですけれども、これは現役世代ですよね。現役世代の支え手をたくさん増やしましょうと。つまり、ここでもう一つ議論に出てきている高齢者中心の給付、負担は現役中心であるという、これの構造を見直そうというソリューションは、具体策はないんですよ、ここには。でも、やらないといけないと言っている。それを出してください。

 私は思うのは、別に、幾つかの、今少し、もしかしたら得をしているのかもしれない人たちに、ちょっときついかもしれないという政策を、負担を強いるということを真正面から言っていただいた方がいいと思うんですよ。その上で、それの是非を問う。

 私は、岸田総理に、お父さんのお名前が文武なのでシンパシーがありますけれども、新しい資本主義も勤労者皆保険も課題設定は私はいいと思うんです。でも、具体策がないとやゆされるわけじゃないですか。じゃ、今まで言っていらっしゃることを一々引き下ろして、何か選挙の前だから何となく乗り切るんじゃなくて、批判を受けることも言っていただいて、そして、その人たち……

根本委員長 藤田文武君に申し上げます。

 簡潔にお願いします。

藤田委員 ごめんなさい。終わります。

 そういう真っ当な議論を私はやらせていただきたいというふうに思います。

 今日はこれで終わらせていただきます。

根本委員長 これにて足立君、青柳君、藤田君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、立憲民主党と日本維新の会の皆さんに、時間の融通をいただいて、感謝を申し上げたいと思います。

 さて、まず、コロナについて総理に伺いたいと思います。

 報道にも出ていますが、来月の十日からですか、外国人の観光客の再開を始めるということで、私はこれは一定評価しております。

 ただ、私も最近アメリカ人の友人と会ったんですが、マスクをしていないですね。テレビを見ても、大谷翔平選手の大リーグの試合を見ても、スタンド、誰もしていないですよね。そういう国々から今度入国が始まるわけですから、ただ一方で、日本ではまだ、一部少し緩和をしても、マスクは基本的に推奨しているということです。

 これはお隣に座っている我が党の鈴木敦議員が一度質問したんですけれども、なかなか難しいと思いますよ。外国の基準と日本の基準が違う中で外国の観光客を受け入れていくので、観光客が入って、みんな、うろうろうろうろマスクなしでしているけれども、日本人はちゃんとしてください、子供たちもしてくださいということになっていくので。

 これは、入国した外国人の方にマスクをどのように徹底するのか、この方針を教えてください。

斉藤国務大臣 具体策ですので、私の方からお答えさせていただきます。

 コロナウイルスの流入リスクが低い国、地域からの外国人観光客につきましては、まずは、旅行代理店等を受入れ責任者とする添乗員つきのパッケージツアーに限り、六月十日より受入れを開始することとし、その旨を昨日発表いたしました。

 訪日観光の再開に当たっては、受入れ地域の皆様の理解や安心感の醸成を図ることが必要です。そのため、国土交通省では、外国人観光客の受入れ開始までに、現在実施中の訪日観光実証事業を基に、外国人観光客の感染防止対策等に関するガイドラインを策定してまいります。

 このガイドラインには、感染拡大防止等の観点から、ツアーの造成から終了に至るまでの各段階で、旅行業者等の関係者が取るべき対応について記載いたします。

 具体的には、最新の我が国としてのマスク着用に関する考え方を改めて明記した上で、例えば、ツアー販売時には、旅行業者等は、ツアー参加者に対してマスク着用を含む感染防止対策の内容を説明し、同意を得ること、それから、ツアー実施前には、添乗員に最新のマスクに対しての考え方を十分に理解させること、そして、ツアー実施中には、マスク着用が必要でない場面も含め、場面に応じた適切な注意喚起を行うことなどを記載し、これに沿って、マスク着用が必要な場面において添乗員がマスク着用を求めてまいります。

 このようなガイドラインをしっかり決めていきたいと思っております。

玉木委員 これは添乗員任せなんですか。

 今、入国する観光客に特化して聞いたので、多分、観光庁所管の大臣としてお立ちになったんですが、ただ、入国者数そのものを増やしますよね、枠を。そうすると、観光客以外の外国人も入ってくる。これは観光庁の対応じゃできませんよね。これは誰がどうするんですか。添乗員さんはいませんよね。旅行以外の方はどうされるんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今国交大臣が説明したのは観光客であります。添乗員つきのパッケージツアーだけまず六月十日からスタートする、添乗員が日本のマスク着用ルールを徹底させる、そして、それが破られた場合は国土交通省がしっかりと指導する、こういったシステムを説明いたしました。

 おっしゃるように、それ以外、従来から、今既に一万人、ビジネスあるいは留学生、こういった方々が入ってきています。これを更に拡大し、そして観光客も入っていただく、こういったことを考えているわけですが、従来から入っているビジネスあるいは留学生の方々は、企業であったり学校であったり、それぞれ責任者を決めて、入国に当たって、そしてその後の行動についてしっかりと責任を持つ、こういった体制を従来からやっております。

 これは従来どおりしっかり進めながら、全体の枠の拡大について考えていきたいと思っています。

玉木委員 それ、徹底できますかね。

 例えば、全くマスク義務のない国から来られた方は、入国した時点でマスクを持っていません。その持っていない人に、どうやって、じゃ、マスクしてください、あるいは、マスクを上げるのは受入れ企業の責任なんですか。それとも、添乗員がいれば添乗員が配りますけれども、二万人とか数万人に枠を広げたときに、まずマスクなしで入国して、日本に着いた途端に、買っていない、持っていないという人も含めて、これは厚労省の所管ですか、どういうふうに徹底されるんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 これは今既に行っているところでありますが、ビジネスあるいは留学生として日本に入っていただく方々には、当然、日本におけるマスク着用のルール、これに従ってもらわなければなりません。

 これは誰が責任を持つかということでありますが、私たちの国に入って勉強したりビジネスをしてもらうわけですから、当然、社会のルールを守りながらそれぞれ活動していただく、これは当然のことであると思います。

 是非、自らの責任、あるいは企業、大学の責任において、こうしたルールに従ってもらうよう指導していただければと思っております。

玉木委員 コロナ対策は、おおよそ、大体、要請とか、そうしていただきたいということでやってきたんですが、なかなか難しくなっているんじゃないかなと思うんですね。

 私の提案は、むしろ、内外のこういった規制のハーモナイゼーションというか、調和を取っていく必要が出てきているんじゃないか。

 つまり、外国人の観光客を受け入れるような状態になってきたのであれば、いわゆる感染症法上の分類を、日本においてもマスクの着用が必要のないようなところまで、検証の上、速やかに見直していく、そことセットで、内外を合わせた形で緩和していくという方が私は様々なそごが生じないと思いますので、これは是非、国内の問題でも、今内閣においても検証しているということですけれども、是非そこは速やかにやって、マスクをまだつけなきゃいけないというのを日本国民がどう思うかということにも想像力を働かせて対応していただきたい。国内の感染症法上の分類についても、この際、見直していただきたいということをお願いしたいと思います。

 次に移りたいと思います。

 このパネルを見てください。何度もこの委員会でも出したんですが、日本における実質賃金指数をこの三十年間書いたものですが、これに尽きると思うんですね。

 私は、この通常国会の冒頭で、この国会を賃上げ国会にしよう、与党、野党、政府関係なく、二十五年以上にわたって落ち続ける実質賃金指数、この右肩下がりのトレンドを変えるためにも、与野党全員、とにかく知恵を出そうということを冒頭に申し上げました。

 労働組合も、連合も頑張って、今年はかなり、かつてないぐらいの賃上げが実現しているところもありますが、ただ、政治としてやるのは、やはり根っこの、賃金が上がる経済状況をつくり出す、経営者の側、使用者側にとっても賃金を上げてもいいような環境を整えるということが私は大事だと思います。

 残念ながら、三月に一番最新の毎月勤労統計が出ましたけれども、実質賃金指数はまたマイナスになっていますね。賃金は上がっていますけれども、物価上昇が更にそれを上回っているので、このトレンドは変わっていないんですよ。だから、これをどうするのか。端的に言うと、物価以上に賃金が上がる経済にどうやって戻すかというのが最大の課題です。

 今、各党各会派から、セーフティーネットをどうしよう、年金生活者をどうしよう、若い人をどうしようとありましたが、賃金が上がるのを取り戻すことが私は何よりだと思います。だから、これがないのに、個別に国がどこを埋めていこうということは限界があるので、やはり、このトレンドが変わる経済状況をつくり出すということが、政治がやるべき今一番の課題だというふうに思っています。

 そこで、総理に伺います。

 資産所得倍増計画というのをロンドンのシティーで発表されて、これは日本語だけ見るとよく分からなくて、資産なのか、所得なのか、何を倍増するのかが分からないので、英語で言うとダブリング・アセットベースト・インカム・プランというふうにたしか名づけておられたと思いますが、これは、いわゆる株や配当の金融所得を倍にするのか、あるいは、そういうことを通じて、やはり給与所得を含めた所得全体を倍にしていくプランなのか、そこの、倍にするものが、対象が何なのかということをちょっと明確に教えていただけますか。

岸田内閣総理大臣 まず、委員の今の発言の前半の部分だけちょっと触れさせていただくならば、おっしゃるように、賃金の引上げ、これをしっかり定着させなければいけない、物価を超える賃金を、引上げを行わなければいけない。だからこそ、経済においても、そうした分配だけではなくして、成長があってこそ企業もそうした人への投資を行えるということであるからして、分配と成長、両方しっかりとした循環を考えていかなければいけない、こういったことだと思います。

 それから、資産倍増について、対象は何かということでありますが、これは金融資産を考えております。ロンドンで申し上げたのはその部分です。ですから、所得においては、従来から賃金等様々な政策を訴えさせていただいています。ロンドンにおいては金融資産について申し上げた、こういったことであります。

玉木委員 英語で聞くとそうかなと思ったんですが、日本語で新聞を見ると、所得を倍増させる計画なんだと思ったら、そうじゃないと。

 ちなみに、二〇一九年の全国家計構造調査だと、いわゆる金融所得、利子、配当を中心にしたものは、平均でですよ、中央値じゃなくて平均で大体二・八万円。つまり、二・八万円を倍の五・六万円にするというぐらいのプランということでいいですよね。

 別に否定していないんです。それでもやった方がいい。私も、貯蓄から投資へというのは長年訴えてきたので、是非そうしてほしいんですが、ちょっとしょぼ過ぎないですかね、これ。

岸田内閣総理大臣 改めて現実を御指摘いただきましたが、私が申し上げているのは、金融資産のうちの一千兆を超える預貯金を動かしていこう、活用していこう、そこにポテンシャルがあるということであります。そして、こうした動きを中間層にもしっかり広げていこう、そういったことにおいて日本の可能性を広げていこうではないか、こういったことを申し上げております。

 今言った数字を倍増するのを目的にしているのかということでありますが、決してその数字にとどまることなく、日本の経済をしっかり動かしていくために、資産をしっかり充実させるべく経済を動かしていきたい、こういった思いを申し上げております。

玉木委員 金融所得倍増もしょぼいなと思うんですけれども、済みませんね、失礼。それだったら、少なくともNISAについては、基になったイギリスのISAという制度があります、あの同じぐらいの非課税枠、大体日本の倍です。そうするのと、あと、時限措置になっている今のNISAはやはり少なくとも恒久措置にするということぐらい是非踏み込んでいただきたいと思いますし、我が党国民民主党はそれを主張していますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 ただ、総理、やはり、元に戻りますが、給料を上げなきゃいけませんよ。そのために何をするのかはいろいろ知恵を絞ったらいいんですが、我々がずっと言っているのは、やはり、積極財政と金融緩和で消費そして投資を活発にして、労働市場をタイトにして、そして、より高い賃金を払わないと人を雇えないような経済状況をつくり出すしかないと思うんです。

 分配と成長という話がありますけれども、これは分配からやるしかないですよ。私は、それで成功したのがトランプ政権の末期とバイデン政権だと思っています。現金給付も三回やったんですよ。千二百ドル、六百ドル、千四百ドル、夫婦で七十万円ぐらいですよ。それで今の、サマーズなんかは警告していましたけれども、やはり、でも、アメリカの場合はインフレも結構、七、八%ですけれども、賃金上昇率も六%台ですからね。それはディマンドプルで、やはり需要も旺盛になっているんです。

 だから、最初の一転がしをどこかでつくって、日本にはお金はあるので、そのごろっと最初に回っていくときに、やはり私は一定の財政出動が必要だということをずっと訴えているので。

 今回結構厳しいのは、いろいろな議論がありましたが、少なくとも今は、まず、金利なんか上げるような状況じゃありません。とてもできる状況じゃない。だって、デフレギャップが十七兆とか二十兆もあるのに、需要を冷やすような政策してどうするんですかということで、逆に、需要追加がまだ私は必要だと思っています。

 その意味では、まず時限的な消費税減税とか、我々はトリガー条項凍結解除は諦めていませんからね。まだ今、いろいろな現場の制度、三党でやったやつを出しますから、年末の税制改正ぐらいに間に合わすようにやりますから、ガソリン減税と、加えて、やはりインフレ手当。一人一律十万円のインフレ手当を私はもう一回配るぐらいでちょうどいいと思っているんです。

 ただ、これは高所得者に配るのはおかしいということもずっと言われてきていまして、そのときはどうするかというと、やはり高所得者に、後で、課税時に通常の所得税に上乗せして課税していただいて、ある意味返していただく。返さなきゃいけないなと思う人はそもそも申請しませんから、真に困っている人だけが申請してくるんです。

 こういうことで、もう一回、国民一人当たり一律十万円のインフレ手当、可処分所得が縮まないように、消費が縮まないようにするための、今こそそういった手当が必要だと思いますが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、政府としましては、午前中から御説明しておりますように、総合緊急対策の中で、低所得の子育て世帯への給付、あるいは地方自治体を通じた事業者あるいは給食に対する支援、こうしたきめ細かな政策を用意させていただいています。

 そして、御提案の消費減税それからインフレ手当についてですが、これについては、今申し上げた様々な政策を用意し、きめ細かく対応するということで、御提案のようなことは政府としては考えておりません。

 トリガー条項については、引き続き今三党で議論が続いていると承知をしています。

 そして、それに併せて、高齢者の方はまだこれからですね。済みません。

玉木委員 なかなか一律給付は踏み切らないんですけれども、今回、予備費を積み増して、批判が多いんです。私もこれはどうかと思いますよ。だったら、やはりこの国会の場で、ある程度、この五兆円、五兆五千億円をそういった一定の給付に使うんだとここでコミットすれば、国会の場でちゃんと、ある程度使途の枠をはめることをやればそういった批判も免れるので、五兆円分、だから、一人五万円分ぐらい配れますから、そういうことをやるとここで総理が言えば、かなりいろいろな問題が解決するのかな。

 ただ、総理、本当に、ちょっと覚えておいていただきたいのは、分配と成長とずっと言ってきて、安倍政権も分配と成長だったんですけれども、成長したはずだったら分配するお金はもうできているはずじゃないですか。どこにあるんですか、それは。だから、やはり発想を転換して、最初に分配してみるとごろごろごろごろ回り始めるので、一回これは岸田内閣で試してみたらどうかなと思うので、改めて提案したいと思います。

 それともう一つ。

 消費を活性化すると同時に、投資が大事ですね。これは、やみくもに積極財政でお金を出せと言っているんじゃなくて、やはり将来の成長につながる分野とか、将来の税収増につながる分野とか、もっと言うと、将来の納税者を増やすような分野には徹底的にお金を出した方がいいです。イーロン・マスクさんから心配されるようなことがないように、人口減少だって、やはりいろいろな、過少投資になっていることが原因だと私は思っているんです。

 そこで、まず一つ確認です。

 報道でも見ましたが、政府は脱炭素国債という使途を限定した国債を発行される、骨太にも載せるという話なんですが、これは事実だと私は大賛成です。これがまず事実かどうかということと、もし、使途を限定した国債の発行が可能であれば、私が、国民民主党が従来から主張をして法案も出している教育国債を発行して、生産性の向上や格差是正にもつながるまさに人への投資を、この教育国債の発行によって速やかに倍増すべきだと思うんですけれども、この二点、お答えください。

岸田内閣総理大臣 政府としましては、炭素中立型社会への転換をするために、少なくとも今後十年間で、官民協調で百五十兆円超の脱炭素分野での新たな関連投資を実現することが必要であると認識をしています。

 この官民合わせて百五十兆円の投資を引き出すためには、まずは官がその呼び水となる投資を行っていかなければいけない。そして、その財源として、御指摘のように、仮称でGX経済移行債などという言葉を使っていますが、こうしたものも使いながら、呼び水として官がこうした投資を引き出す政策を進めていかなければいけない、このように思っています。

 ただ、その際に、財源についても、こうした移行債を発行する際に、成長志向型カーボンプライシング、これはカーボンプライシングもしっかりと考えた上で発行する、ですから、財源もセットでこれを提案させていただこうということを考えています。

 そして、御提案の教育国債、教育が重要だということは異存はありませんが、教育国債の財源、どうあるべきなのか、財政との関係においてこれについてどう考えるか、これもしっかり考えた上で教育国債について考える、こうした姿勢は大事ではないかと思っております。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

玉木委員 でも、総理、建設国債を発行するときにその財源って発行しないんですよ。それは、財務省にだまされているとは言わぬけれども、ちょっと。国債は国債が財源ですから、将来の成長とか、それをある種の財源にする。それは、なかなか、そこの見合いの財源はどうなんだという議論はあるんですけれども、きっちり将来の炭素税とかそういったものを財源にしていると、なかなか難しいと思いますけれどもね。かつ、財政政策としての効果が非常に減じてしまうということで、ちょっと最初褒め過ぎましたけれども、それだったら。脱炭素国債は脱炭素国債でばしっと出していただければと思います。

 総理がおっしゃっている人への投資の倍増は私は大賛成なんですが、この前も答弁されて苦しそうだなと思ったので、もう教育国債を出すしか、速やかに人への投資を倍増する手段はないと私は思います。だから、これは是非また検討いただきたいというふうに思います。

 次に行きます。

 電気料金も上がっているんですけれども、これは大変ですよ。ガソリン価格も高いんですけれども、電気料金も上がっていまして。なので、我々国民民主党は、安価で安定した電力供給を確保するため、安全基準を満たした原子力発電所については活用すべきだということを、既に公約にも、去年の衆議院選挙のときにも書いていますけれども、今回も明確に書きます。

 加えて、次世代の軽水炉や小型モジュール炉、いわゆるSMR、そして高速炉などのリプレース、建て替えも、新増設は我々もやらないことにしていますが、リプレースは、技術あるいはそれを持っている人、これを確保するという広い意味での経済安全保障の意味でも、やるべきだということで提案をいたしております。

 岸田内閣としても原子力発電所のリプレースはやはり行うべきではないかと思いますが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、我が国の今後のエネルギーを考えた場合に、価格の安定、そして安定供給、そして温暖化対策、こうした観点を踏まえた場合に、安全性を大前提としながら原子力を最大限活用していく、こうしたことは大事であると思います。

 そして、御指摘のように、人材あるいは技術、これは我が国においてもこれからもしっかりと維持し、発展させていかなければいけないと思っています。

 その中で、リプレースについてどうするかという御質問ですが、先ほども申したように、安全最優先で再稼働はしっかりと進めていきたいと思いますが、今、政府において、リプレースということについては、現時点では想定していないというのが政府の方針であります。

玉木委員 小林大臣は今回頑張って経済安全保障の法案も通したんですけれども、エネルギーの安全保障なくして経済安全保障はないと思いますよ。

 今、世界で建設されている原発の六割はロシア製と中国製ですから。脱ロシアの電源だといって、天然ガスとか石油の輸入をどうしようという話がある、原子力を回したらいいと。でも、その原子力の技術さえ、絶えざる努力をしていかないと簡単に失われます。アメリカとイギリスは、御存じのとおり、もう国内のサプライチェーンを喪失していますから、自分の国の企業と人で原発を造ったり回したりすることが実はできないんですね。

 だから、そういう日本はぎりぎりのところにあることも踏まえて、本当に経済安全保障を言うんだったら、我が党が言うように、リプレースにも政府として責任を持って踏み込んでもらいたい、これをお願いしたいと思います。

 もう一つ。

 今、電力難民が生じています。これは結構、皆さん、閣僚の皆さんのところの地元からも来ていると思いますが、いわゆる電力価格が高騰して、卸の値段が上がって、新電力がばたばた潰れたり事業をやめたりして、そこと契約したところが、ほかと、じゃ、例えば大手の、従来の東電とか中電とか関電とか契約しようと思ったら、そこはもうできないということで、電力供給を受けられなくなっている。

 この電力難民が生じつつあって、それで倒産だという話も出てきて、これは大変な問題だと思うんですけれども、これについての対策と、そして、いわゆるこの間進めてきた電力システム改革についても一定やはり検証が必要だと思うんですけれども、どうですか。

萩生田国務大臣 電力システムにつきましては、新電力の撤退等により、小売電気事業者と契約を締結できない場合などに備え、一般送配電事業者に供給義務を課す最終保障供給の仕組みをあらかじめ措置し、電力の安定供給に万全を期しております。

 その上で、最終保障供給の利用の増加は、電気事業者や企業等の需要家に様々な影響を及ぼし得るため、審議会において、最終保障供給料金の見直し等について今議論を進めているところです。

 一方で、大手電力会社においても、燃料価格を料金に十分に転嫁することができず、一般論としては、将来的に更なる料金の値上げも否定できない状況にございます。

 このため、先月取りまとめた原油価格・物価高騰等総合緊急対策においては、省エネ投資に対する支援や御家庭の負担軽減につながる対策などを盛り込んでおり、政府全体できめ細かく取り組んでまいりたいと思います。

 加えて、電力システムについては、不断に見直すことにより、安定的かつ持続的な電力供給を実現してまいりたいと思います。今、先生御提案のように、システム、一度足を止めてしっかり見直した方がいいんじゃないかというのは、これは不断の見直しをしたいと思います。

 ただ、一方、メリットもいろいろ出てきました。確かに、自由化して料金は下がりましたし、地域独占がなくなりました。

 他方、私は委員会でもはっきり申し上げているんですけれども、やはりエネルギー分野に参入する企業は、長期安定、覚悟を持って入ってきてくれないと、そんなにうまい話はないですよ。ですから、そこは企業側の皆さんも考えてもらいたいと思います。

玉木委員 萩生田大臣、最終保障供給なんですけれども、一年間の時限なんですよ。今こういうウクライナ情勢が続くと、結構価格の高い状況がひょっとしたら一年、二年続くかもしれないので、新しい次の供給先が見つかるまで、一年間までですよというのは、少し柔軟な見直しも含めて、併せて是非検討いただきたい、総理にも検討いただきたいというふうに思います。

 もう一つ。

 私は、日本の新たな成長のエンジンとして期待されるのがウェブ3だと思うんですね。これはまだまだ一般には知られていない言葉かもしれませんが、インターネットやデジタル経済の構造を根底から覆す可能性があるし、日本にチャンスがあると思っています。

 ただ、問題があって、課税です。暗号資産、いわゆる仮想通貨の課税は、雑所得でなっているので最大五五%取られちゃうんですが、これはFXと同じ、FXも最初はそうだったんですけれども、だんだん、二〇%の分離課税になって円滑になってきたので、二〇%の分離課税にするとともに、あと、発行した法人が保有するトークンというのがあるんですけれども、これは期末に時価評価されてしまって、それでいきなり課税されるので、これは実際に収益が発生したときに課税する方式に見直さないと、今、有望な個人とか企業はどんどんシンガポールとか海外に逃げています。

 これは本当に日本はチャンスなので、ここは課税の見直しを速やかにやるべきだと思いますが、総理、いかがですか。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

岸田内閣総理大臣 御指摘のウェブ3については、先ほど、ロンドンの講演の中でも触れさせていただきましたが、ウェブ3時代の到来を踏まえて、メタバースですとかノンファンジブルトークンといった新しいデジタルサービス、こうしたサービスが生まれやすい社会をつくっていくこと、これが経済成長につながる、こうした話をさせていただきました。

 おっしゃるように、日本にとって、この分野、大きな可能性がある分野であると思っています。

 その中で、課税について御指摘がありましたが、課税について考えます際に、一つは、デジタルサービスの環境整備、これは業界を後押しする方向での議論でありますが、それに加えて、国内の所得税制全体の中でのバランス、そして国際的な動向、こうした辺りを丁寧に検討する必要があるということを考えています。

 また、あわせて、トークンの取扱い、現状の期末時価評価の取扱い、これについて変更する場合には、こうしたトークンが会計上どのように取り扱われるか、こうしたことも念頭に議論する必要があるということであり、この辺りを丁寧に検討していきたいと考えます。

玉木委員 総理、検討使と呼ばれているんですよ。

 これは、丁寧に検討と今答えていただいたんですが、ここは急ぐので、財務大臣、年末の税制改正を待たずにこれは早くやらないと、富がどんどん逃げています。だから、ここだけは、ここというか全部そうなんですけれども、検討ではなくて、スピード感を持って決断を政治が是非やっていただきたいと思います。

 最後に、いわゆる敵基地攻撃能力について伺います。

 我が党も、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境に備えて、踏まえて、戦争を起こさせないための抑止力と自衛のための打撃力、反撃力を整備するために、必要な防衛費の増額ということを参議院選挙の公約に掲げます。

 ただ、相手領域内での反撃能力を保有する場合には、装備体系をどうするか、衛星コンステレーションをどうするのか、攻撃型ドローンをどうするのか、あるいは、そもそものインテリジェンス能力をどうするのか、いろいろなことを考えなきゃいけませんが、もう一つは、国内法の整備が重要だと思っています。

 というのは、相手領域内に例えば長射程のミサイルを撃ち込んだ場合に、誤爆という問題が相手領域内で発生します。つまり、民間人に、本当は軍事施設を狙ったんだけれども、相手の妨害に遭って学校に着弾した、病院に着弾したというときに、その誤爆の責任を一自衛官が負うのか負わないのか、こういう議論はきちんと詰めていく必要があると思うんですが、総理に伺います。

 相手領域内で誤爆で民間人を殺傷した場合、個々の一人一人の自衛官が責任を問われることはないのか、あるいは、問われない場合の条件は何なのか、あるいは、新たな法整備が必要なのか、お答えください。

岸国務大臣 防衛出動を命ぜられました自衛隊員が行う武力の行使については、一般論としての考え方を申し上げますと、武力の行使は、自衛隊法第八十八条に基づいて、国際の法規及び慣例によるべき場合にあればこれを遵守し、かつ、事態に応じて合理的に必要と判断される限度において行われることになります。

 この武力の行使は、刑法第三十五条の規定により、正当行為として違法性が阻却されます。

 自衛隊法第八十八条に言う合理的に必要と判断される限度とは、個々の戦闘場面で判断されるものではなく、全体として判断されるものであり、また、政府全体として判断を行うものであります。

 こうしたことから、武力の行使に際して、個々の自衛官の過失行為が問責されることはありません。

玉木委員 個々の自衛官の過失が問責されることはないという最終的な答えの部分は分かったんですが、その前についている条件がよく分からないですね。合理的に必要と判断される限度、それは個々の戦闘場面で判断されるのではなくて、全体として判断される。

 私は、日本の自衛力を高めるため、抑止力を高めるために、いわゆる相手領域内の反撃能力は必要だと思います。だからこそ、今、定性的には御説明いただきましたけれども、一体どういう条件を満たせば自衛官はそういったことから免責されるのか。

 これは新しい話ですから。今まで、海外における武力行使は、多分、私が覚えている範囲でいうと、ホルムズ海峡の機雷の除去、あれは法的には武力行使だから、あれぐらいなので。だから、相手領域内で被害が発生するということを余り想定していない法体系になっていますから、我が党としてもしっかり提案もしていきますから、是非政府においても、装備体系だけではなくて、法整備、制度整備、ここも併せて行っていただくことを求めて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

根本委員長 これにて玉木君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今、急激に物価が高騰して、電気、ガスは二割、生鮮食品は一二%値上がりをしております。今後も値上げラッシュが続きます。

 今、政治がやるべきは、物価の引下げ、そして、物価高騰に負けないよう国民の収入を増やすことです。ところが、政府の補正予算案は、ガソリン、燃油対策と予備費だけです。

 総理、ガソリン以外にも、政府の決断で価格をすぐ下げられるものがあります。小麦です。今、パンも麺類もお菓子も大変高くなっておりますが、七月にまたパンの大幅な値上げが、もう決まっているわけです。この原因は、四月に政府が小麦の売渡価格を一七・三%引き上げたことにあります。総理、小麦の政府の売渡価格、引下げをやるべきじゃありませんか。これは二百二十二億円でできます。

岸田内閣総理大臣 小麦の価格については、四月一日から九月三十日まで政府売渡価格を設定して、売渡しを行っております。結果として、この時期の前の水準、要は、国際価格が二割以上上昇する以前の国際価格に基づいて設定されているということであります。

 この価格を政府としてはしっかりと維持をしていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 何で維持するんですか。ガソリンは一生懸命下げるためにやっていて、パンは、毎朝食べられている方もたくさんいらっしゃいますよ、麺類が好きな方だっていらっしゃいますし、もう本当に、毎日の食卓に直結する話ですよ。

 何でガソリンは下げられて、小麦は下げられないんですか。政府が上げなければ、こんなに七月から上がることはないわけですよ。これは是非下げてください。

金子(原)国務大臣 輸入の小麦の政府売渡価格は年二回、御承知のとおり、四月と十月の改定のため、今期の輸入小麦の政府売渡価格を踏まえまして製粉企業は小麦粉等の価格改定を公表しておりまして、販売先である食品メーカーと価格交渉が進められています。そうした中で、仮に期中に政府売渡価格の引下げを行った場合は、製粉企業や食品メーカー等の製品供給に混乱を来すとともに、適正な価格転嫁を阻害するおそれがあります。

 また、大豆やトウモロコシ、食用油、輸送料等の価格が高騰する中、小麦だけ価格を抑制することは慎重に考えるべきだと考えています。

 小麦を含む原材料価格の高騰に対しましては、先般の原油価格・物価高騰総合緊急対策におきまして、輸入小麦から国産の米、米粉、国産小麦への切替え、生産方法の高度化によるコストの抑制等を支援するほか……(発言する者あり)

根本委員長 簡潔にお願いします。

金子(原)国務大臣 国産小麦の生産拡大等を支援することといたしております。

宮本(徹)委員 今引き下げたら混乱が起きるかのようなことを言いますけれども、政府が売渡価格を引き上げたことによって国民生活が混乱しているんですよ。そこをちゃんと見てください。やらない言い訳ばかり繰り返されても困りますよ。大体、五兆円も予備費を積んでいるんだから、二百二十二億円、すぐできる話ですよ。

 それから、小麦だけ下げるのはどうかみたいなことをさっき大臣おっしゃいましたけれども、じゃ、こうしましょうよ。

 もう一つ政府が今すぐできる物価の引下げが、消費税の減税です。これをやれば、物価、全部下がりますよ。物価は今二・五%増、生活必需品は前年同月比で四・八%増です。肌感覚で消費税が五%ぐらい税率が上がったような感覚を多くの皆さんが受けております。庶民の暮らしも、事業者の皆さんも大変ですよ。消費税の緊急減税で、物価全般、引き下げる必要があるんじゃないですか、総理。

岸田内閣総理大臣 まず、小麦の政府売渡価格の設定によって、先ほども申し上げましたが、国際価格の比較において、この四月一日の前の段階と、そして今の段階、二割以上この格差が生じています。結果として、二割低い国際価格を基準にして価格を設定する、こうした価格になっています。これをしっかり維持するということを申し上げています。

 そして、大臣の方から小麦だけではという話がありましたが、これは、小麦製品について、例えば食パン一つでも、小麦については八%しか影響がないという事態もあるということを説明した次第であります。

 そして、消費税についてでありますが、消費税については、これは再三申し上げております、政府としては、この総合緊急対策を始め様々な政策を丁寧に、そして重層的に用意しているわけでありまして、消費税については、我が国にとりまして社会保障の安定財源として位置づけられておりますので、今、消費税について触ることは考えていないというのが政府の考え方であります。

宮本(徹)委員 何で考えないんですかね。様々な対策をやっていると言いますけれども、全体を覆う政策じゃないんですよね。確かに、低所得者の子育て世帯の皆さんには五万円あります、いろいろな自治体に配ったお金もありますけれども、物価全体を下げるということには全然なっていないわけですよ。物価増がこれからも続いていくのに、このままだと景気にも本当に影響していくと思いますよ。

 それから、総理は先ほど消費税は社会保障の安定財源だということをおっしゃいましたけれども、是非パネルを見ていただきたいと思います。

 この三十年間、消費税、三回引き上げております。税収は、一九九〇年の六十兆円から昨年の六十三兆円台へ、微増でございます。消費税収は十五兆円増えておりますが、法人税と所得税は十二兆円減っております。消費税増税分は、ほぼ法人税と所得税の減税分に置き換わっただけだということです。法人税率はこの間、三七・五%から二三%台に下がっております。

 総理、内部留保を積み増し続ける大企業に法人税減税を続けるよりも、消費税の緊急減税でちゃんと国民の暮らしを支えていく、そのことによって経済の好循環をつくっていく、この方が大事なことなんじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 消費税につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。

 消費税によって社会保障を維持する。所得税等について家計の負担を考えていく。また、法人税を通じて企業の負担を考えていく。こうした成長と分配、様々な分野においてしっかりとしたバランスを取ることによって、好循環というのが生まれていくんだと思います。

 それぞれの税は、それぞれの意味があります。だから、是非、その税の意味合いについてもしっかり説明しながら政策を進めていくことが大事だと思います。消費税については、社会保障の安定財源としてしっかり維持していきたいと考えます。

宮本(徹)委員 だから私はこのパネルを出したわけですよ、社会保障の財源になったわけじゃなくて法人税減税と所得税減税に置き換わっただけじゃないですかと。これが事実じゃないですか。これは財務省のホームページから作っているわけですよ。共産党が勝手に作っているわけじゃないんですよ。

 それで、本当に、今の総理の答弁を聞いていましても、国民の暮らしとなりわいを守る、この真剣さが感じられません。大変残念な答弁でございます。

 次に、賃上げについてお伺いしたいと思います。

 今、物価高騰で、所得が少ない人ほど打撃を受けております。

 パネルを見ていただきたいんですけれども、世界各国で、政治ができる最大の賃上げ政策として、最低賃金の引上げが行われております。イギリス、フランス、ドイツ、ロサンゼルス、日本円にして、今年、時給千五百円弱から二千円近くにまでなります。一方、日本は、最低賃金は全国加重平均で九百三十円ということでございます。最低賃金では本当に人間らしい生活ができない水準であります。

 総理、今の物価高騰を踏まえて、今年は最低賃金を思い切って引き上げる決断が必要なんじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 政府においても、最低賃金の引上げについて政策努力を続けております。できる限り早期に全国加重平均千円以上を目指す、こうした方針の下に積み上げておりますし、一千円に到達した後も、継続的に引上げに取り組んでいきたいと考えています。

宮本(徹)委員 その総理の答弁、できる限り早期に全国加重平均千円というのは、毎年ずっと、過去と同じ答弁なんですよ。今、物価が高騰しているんですから、そういういつもどおりの答弁じゃなくて、今年はぐんと引き上げる、この覚悟が要るんじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 原油や原材料費の高騰に対しては、政府として、十三兆円の総合緊急対策を始め、様々な政策を用意しております。

 最低賃金については、その様々な影響も勘案しながら、是非、政府の目標どおり、できるだけ早期に全国加重平均一千円以上を目指していきたいと考えています。

宮本(徹)委員 できるだけ早期にというのは、本当にいつもどおりの答弁を繰り返して、本当に、賃上げへの決意がなかなか感じられないですね。大変残念ですね。

 全労連の皆さんが生計費調査というのを全国でやられておりますけれども、全国どこでも、最低限の生活を若者がしようと思ったら、やはり最低賃金は時給千五百円、千六百円、都市部、東京なんかでは千七百円、これぐらいなきゃ大変なんですよね。やはり最低賃金千五百円というのを私は日本でも目指していくべきだと思います。

 そして、もし千五百円、これが実現したら、月収は八万円ぐらい増える。正規も非正規も賃金の底上げができるんですよね。ずっと政府は早期に千円を目指しますということを言ってきましたけれども、もう次の目標を決めなきゃいけないときに来ているんじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 目標を達成するべく、今努力を続けています。是非、千円以上を目指して努力を続けたいと思っています。

宮本(徹)委員 本当に、なかなかやる気が感じられないといいますか、のれんに腕押しといいますか。

 恐らく、政府は、賃上げのことでもっと大きな数字を言えないのは、中小企業の皆さん、小規模事業者の皆さんのことを考えて、いろいろな逡巡があるんだなというふうに思いますが、私は、日本の賃上げ政策で決定的に足りないのは、最低賃金を引き上げる際の中小企業への支援策だと思っております。

 今月、チリがインフレ率を大きく上回る一四・三%の最低賃金引上げを中小企業への補助金とセットで行うということを決めたという報道を見ました。二段階でこれは引き上げるんですけれども、中小企業への補助金は、一段階目では最低賃金引上げ額の七三%、二段階目でも五割以上ということで、かなり賃金を引き上げるに当たっての補助金を出して、中小企業も喜ぶような形で最低賃金引上げをやっているということでございます。

 私は、日本でも、この最低賃金引上げに当たっては、こういう賃金助成だとか社会保険料の軽減だとか、こうしたことに大胆に踏み込むべきだと思っております。

 パネルを見ていただきたいと思うんですね。

 これは安倍政権の間に増えた大企業の内部留保でございますが、百三十兆円増えているわけでございます。ちなみに、この増えたうちの四十兆円は、安倍政権時代に行った法人税減税が積み上がっている、こういう計算になるわけですね。さらに、この円安の中で、この三月期の大企業、上場企業の決算が過去最高益ということになっているわけですね。これは本当にしっかりと賃金に回していく必要があると思います。

 そこで、我が党は、この間、総理にも累次にわたって提案をさせていただいておりますけれども、内部留保への課税を時限的に行おうという提案でございます。最低賃金引上げのための中小企業支援の財源を、これによってしっかりつくっていく。アベノミクスで増えた内部留保に、毎年二%、五年間で十兆円の時限的な課税を行う。その際、賃上げ、グリーン投資は控除を設けて促進をする。

 総理、どの中小企業も小規模事業者もしっかりと助かる形での最低賃金引上げへの支援を行うべきなんじゃないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 質問は、最低賃金を引き上げるという……(宮本(徹)委員「最低賃金引上げへの中小企業への支援ですね」と呼ぶ)

 済みません、最初、内部留保の話だと思っていたので、最後の質問の部分がちょっと違ったので戸惑いましたが、要するに、内部留保については、まず、委員の御提案がありました内部留保への課税ということについては、二重課税に当たるとの指摘があることから慎重な検討が必要だとお答えしております。

 その上で、企業において、やはり、賃金あるいは設備投資、こうしたものに成長の果実を振り向けていく、これが次の成長や持続可能な経済につながるということだと思いますので、こうした企業の成長の果実を賃金やあるいは設備投資にしっかり振り向けていく、こうした道筋をつくっていくことが重要であると思います。

 ですから、まずは、賃上げについてしっかり促していくべく様々な政策を動員し、一方で、デジタル投資やカーボンニュートラル投資、こうした投資の市場をしっかりと手厚くすることによって、設備投資、これにお金を振り向けるべく、この政策を進めていくことが重要だと思います。そのことが、中小企業にとりましても、あらゆる企業にとりましても、賃金引上げにつながっていくと考えます。

宮本(徹)委員 現実には、三月は実質賃金はマイナスになったわけですよ。政府の賃上げ政策では不十分だから、私たちはこういう新たな提案も今国会させていただいているわけですよ。

 私たちはこういう提案をしておりますけれども、じゃ、皆さん、今の話で、中小企業全体に支援が行きながら最低賃金引上げができますか、今の総理の話で。総理はよく賃上げ減税の話をされますけれども、今日午前も議論がありましたけれども、賃上げ減税を使っている中小企業はほんの数%ですよ。全く支援になっていないじゃないですか。

 私たちは、もっと広く、大企業の内部留保は、これは元々は法人税減税をやり過ぎたんだから、少し戻そうじゃないかと。さっき二重課税というお話がございましたけれども、そんなことを言ったら、ガソリン税と消費税も二重課税に見えるという、そういう話は幾らでもありますよ。これは政府のやる気次第だと思うんですよね。

 しっかりと全中小企業に最低賃金引上げの際に支援を行う、このことを私はやるべきだということを申し上げているんです。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 政府としましては、賃上げは大変重要だと認識をしています。だから、賃上げ税制を始め様々な政策のメニューを用意して、賃上げの雰囲気を、社会的雰囲気をつくっていこう、こうしたことを申し上げていますし、これを安定的な賃上げにつなげるためにこそ成長が大事だということで、賃上げを次の成長につなげる、こうした経済システムをしっかりとつくっていくことが重要だ、こういったことを申し上げています。

 しかし、その中にあって、国際的な価格高騰によって、今、国内の原油そして様々な原材料費の価格が高騰している、こうした事態を迎えています。だからこそ、それに対して、昨年十一月の七十九兆円の経済対策に加えて、十三兆円の総合緊急対策、これを用意して、生活や事業を守っていこう、こういった対策を用意した、こういった次第であります。

 是非、こうした価格高騰対策をしっかりやっていきたいと思いますが、あわせて、賃上げが定着するような経済のありよう、システムをしっかりつくっていく、こういった努力も続けていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 先ほども言いましたけれども、賃上げ税制は結局一部の企業しか使わない、そして大企業には内部留保がたまり続けている、これが現実じゃないですか。もうちょっと、現実をどう変えるのか、こういうことを真剣に考えていただかないと、本当に、この物価高騰の中で、低所得者の非正規労働者の皆さんの暮らしは守れないですよ。そのことを厳しく指摘をしておきたいと思います。

 次ですけれども、この物価高騰の中で大変厳しい思いをしているのが、賃上げと無縁な年金生活者の皆さんでございます。

 パネルを見ていただきたいと思います。

 生活必需品の値上がりは、とりわけ年金生活者に影響しております。高齢者の消費者物価は六年で五%も上がっておりますが、年金は増えず、今年は〇・四%の削減であります。

 私、二月にこの場で、このパネル、まだこのときは一番端っこが点線でしたけれども、これを示して、年金削減のストップを総理に求めました。その後、与党の側から年金生活者に五千円配るという話が出てきましたが、ばらまきと批判されて、引っ込んでしまいました。

 五千円を配らなきゃという思いが生じるくらいだったら、初めから年金削減をやめればいいんですよ。かつて、小渕内閣など、何回も、予定されていた年金削減をストップしたことはあります。過去の自民党政権でも例があります。

 総理、今の物価高騰は、年金削減をストップしなきゃいけないような局面なんじゃないですか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 公的年金制度については、将来世代の負担が過重にならないように、長期的な給付と負担のバランスを確保して、将来にわたって持続可能な仕組みとする、こうした考え方に基づいて今の制度を着実に実行していきたいと思っています。

 そして、低所得、そして無年金、低年金の高齢者の方々に対しては、まずは、住民税非課税世帯に対する十万円の給付、二月から三月にかけて支給を開始しています。また、総合緊急対策の中では、地方創生臨時交付金を拡充して、自治体によって低所得、無年金、低年金者への負担軽減を行う、こうしたことも用意しておりますし、また、年金生活者支援給付金、医療、介護の負担軽減、こうした様々な政策を重層的に用意して、年金生活者の方々の負担軽減に努めている、これが政府の方針であります。

宮本(徹)委員 今お話しされたことは全部物価高騰の前の対策でしょうということを昨日さんざん長妻さんに言われていたじゃないですか。

 そして、先ほど総理は将来世代の負担ということもおっしゃいましたけれども、今の仕組みでは、その将来世代が受け取る年金もどんどん減るわけですよ。三割目減りするわけですよ。財源を確保して、高齢者も将来世代も安心できる、頼れる年金制度へ抜本改革することこそ私は必要だと思いますし、何よりも、いろいろな支援をしなきゃいけないと思っているんだったら、こんなときに減らすのは直ちにストップすべきだ。過去の内閣が決断したことがなぜ岸田総理にできないのか。本当にしっかりとしてほしいなという思いでいっぱいでございます。

 その上で、次の質問でございますけれども、軍事費についてお伺いをしたいと思います。

 日米首脳会談で、岸田総理は、防衛費の相当な増額、これを勝手にお約束されてしまいました。自民党は、昨年の総選挙の公約で、GDP比二%以上も念頭に防衛関係の増額を目指すと掲げ、先日は、五年以内に必要な予算水準の達成を目指す、こう提言をしているわけでございます。GDP比二%といったら、今の倍増、十一兆円ということになるわけでございます。これは、世界で見ても、もしそういうレベルになったら、ロシアを超えて世界第三位の軍事大国になるということになります。一体どこからそんな財源が出てくるのかということです。

 ちょっと今日、パネルを、財政制度等審議会の資料を抜粋したものを出しましたが、これ、財務大臣、説明していただけますか。

鈴木国務大臣 端的に御説明申し上げますと、御指摘の資料、これは財政制度等審議会における議論の参考といたしまして、各国の防衛費の規模は税収の水準や国防分野への歳出配分によって特徴が見られることを示した上で、国防費対GDP比を一層増加させるためには、他経費を削減して国防費に一層重点配分するか、国民負担を増加させるかという議論につながるといった論点を紹介したものと理解しております。

宮本(徹)委員 こういうことなんですよね。十一兆円に防衛省の予算を増やそうと思ったら、端的に言えば、増税か、暮らしなどのための予算の切捨てに直結するということなんですよ。

 総理がバイデン大統領にお約束されたことというのは、国民にとってこういうことをもたらすことだという自覚は、総理はお持ちですか。

岸田内閣総理大臣 私は、まず数字ありきの議論はしておりません。国会でも従来から言っておりますように、この厳しい安全保障環境の中で国民の命を、暮らしを守るためには何が必要なのか、これを具体的に、現実的にしっかり積み上げていくということをまず申し上げています。そして、それに必要な予算を確保するということ、これを日米首脳会談においても日本の姿勢として表明をさせていただいた、こういったことであります。

 よって、今後、年末にかけて、国家安全保障戦略の策定、あるいは予算編成作業の中で、具体的な必要とされるものがしっかりと確定をされ、結果としてどれだけの予算が必要になるのか、これが見えてくるということであります。今の段階において、どれだけの予算になるのか、これは数字で申し上げることは、議論の最中でありますので、できません。

 是非、そうした必要な数字をどのように賄うのか、こうした議論も年末に向けて併せてしっかりやっていきたいと考えています。

宮本(徹)委員 数字は考えていない、積み上げていくというふうにおっしゃいましたけれども、積み上げる前からなぜ相当な規模というのが出るんですか。積み上げる前から頭に、念頭にあるから、相当な額というのが出てくるんじゃないですか。

 もっと言えば、GDP二%という数字は、これは岸田総理が総選挙で戦った自民党の公約の中に入っている数字ですよ。

岸田内閣総理大臣 防衛力の抜本的強化に当たって必要なものの裏づけとなる予算を確保するということを申し上げています。日米首脳会談においても、日本は、この防衛力、必要な防衛力、抜本的に強化する、それに相応する予算をしっかり用意する、こうした基本的な考え方を申し上げたわけであります。

 こうした基本的な考え方に基づいて、先ほど申し上げたような形で、年末に向けて議論を積み上げていきたいと思っております。

宮本(徹)委員 二%という数字は自民党の公約にあるから私は申し上げているわけでございます。

 そして、仮にですよ、防衛省の予算をGDP二%にしていくとした場合に、追加に必要な五兆円、これを消費増税でやろうとしたら、消費税率は一二%、二%引き上げなきゃいけなくなる。あるいは、ほかの予算を削る。例えば、医療費の国庫負担を五兆円削ったら、窓口負担は倍増になるか、あるいは保険料の大幅な値上げをせざるを得ないということになるわけです。

 本当に、これはこういうことになるんだということを、私は、国民に対して総理は説明しないのは無責任だと思いますよ。参議院選挙が迫っているわけですよ。参議院選挙の前に、必要な数字は積み上げていきますと。一方では、総選挙でもう、数字で、GDP二%を念頭にということを言いながら、実際には、この場では、これから積み上げるんですと。選挙が終わったら、GDP二%になりました、その財源は増税ですと。こういうやり方は私は絶対あってはならないと思いますよ。

 どれぐらいを目指しているのか、そしてその財源はどこに求めるのか、このことは参議院選挙前にはっきりと示すべきじゃありませんか。

岸田内閣総理大臣 政府にとって、国民の命や暮らしを守る、これは最も大切な役割であります。そのために必要なものが何なのか、そしてそれの裏づけとなる予算を用意する、これは政府として大きな責任であります。そういったことを申し上げています。

 今の段階で、数字の積み上げもできていない段階から、財源について申し上げることはできません。内容と、金額と、そして財源と、三点セットでしっかり議論をこれから行ってまいります。

宮本(徹)委員 結局、じゃ、参議院選挙が終わってから数字も明らかにします、その財源も明らかにします、増税も含めたフリーハンドを与えてくださいという話じゃないですか、今の総理の答弁は。そんなことは許されないですよ。

 少なくとも、増税か、ほかの暮らしのための予算の切捨てに直結する議論をしている、その自覚はあるのかどうかということだけお答えください。

岸田内閣総理大臣 今言った議論を、三点セットで、年末の国家安全保障戦略策定の議論等を進める中で行っていきたいということを申し上げております。今の段階で、まず数字ありきというような議論はしていないということを申し上げています。

 是非、こういった政府の取組、国民の皆さんにもしっかりと説明をし、御理解をいただきながら政策は進めていきたいと思います。この数字等がはっきりしない段階から、財源とか、影響とか、今申し上げることはできないと考えています。

根本委員長 宮本徹君、もう申合せの時間が経過しておりますので、簡潔に。

宮本(徹)委員 これで質問を終わりますけれども、数字がないと言うんだったら、GDP二%という総選挙の公約を撤回してください。そのことは申し上げておきたいと思いますよ。

 際限のない軍拡競争で暮らしを潰すことには断固として戦っていくことを申し上げて、質問を終わります。

根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。

 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 よろしくお願いいたします。岸田総理、よろしくお願いを申し上げます。

 ウクライナの情勢とかそういったことを踏まえて、これほど国の防衛に関心が集まったことというのはなかったのではないかと思うわけでありますが、今日は、資料の二ポツの日本の防衛政策のところからスタートをさせていただきたいと思います。

 今日の議論の中で何度か出ましたけれども、自衛権の行使についてなんですが、過去に、その装備において、そして自衛権の行使において、その両方において必要最小限度であるということが過去の累次答弁で確定をしております。

 それで、私、全部答弁を読んで思ったんですけれども、なぜ必要最小限度なのかということについて、どうもすっと入ってこなかったわけですよね。当たり前のように必要最小限度と書いてある。総理、必要最小限度というのはなぜ必要最小限度でなくちゃいけないのかということについて、答弁いただければと思います。

岸国務大臣 憲法第九条の下において認められる自衛の措置、これは、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためにやむを得ない措置として例外的に認められるものであります。したがって、当該事態を排除するために必要であるのみならず、最小限度でもなければならないという考えであります。

 その上で、専守防衛は、憲法の精神にのっとった我が国の防衛の基本方針であって、防衛力の行使の態様も自衛のための必要最小限度にとどめるものとしておるところでございます。

緒方委員 やむを得ない例外的な措置だからということでありました。

 この必要最小限度というのは日本が自衛権を行使する際に何らかの制約要因になる、まあ当たり前だと思うんですけれども、一応確認までであります、この必要最小限度という言葉は日本が自衛権を行使するときに何らかの制約要因になるのであるということでよろしいでしょうか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 制約要因という意味についてどう理解するかですが、少なくとも、我が国が武力行使をする際の三要件の一つとして、必要最小限という条件、これは掲げられています。そういったことによって、我が国が武力行使する際に当たって考慮しなければいけない大切な要素であると認識をしております。

緒方委員 もう一回だけ確認なんですが、この必要最小限度という条件がかかるときとかからないときでは自衛権の行使の在り方というのは変わるというふうに理解してよろしいですか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 武力攻撃の規模とか状況、態様、こうしたものに関わるものではありますが、少なくとも、そういった条件があるということは、我が国が具体的な対応を考える際に一つの大きな要素になると考えます。

緒方委員 ここで、私、いつも疑問に思っていることがありまして、日本が個別的自衛権を行使をしている、そして日米安全保障条約第五条に基づいてアメリカが集団的自衛権を行使しているという事態は大いに想定されることであって、先般の日米首脳会談でも、しっかりと共同の危機に対して対処していくことが様々書かれていたわけでありますが、そうすると、奇妙なことが起きはしないかと思ったんです。

 日本は個別的自衛権を行使している、そこには日本独自の理由として必要最小限度という条件がかかるわけですね。逆に、集団的自衛権を行使しているアメリカには、彼らにはこういった制約はかからないわけです。全く制約なく自衛権を行使しているアメリカと制約がかかって自衛権を行使している日本と、これで本当にいいのかなというふうに思うんですけれども、岸田総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 我が国の安全保障、国民の権利を守るために、必要最小限のものでなければならないという構成になっています。このことについては、日米安全保障条約が締結されてから今日まで、両国の関係者の中にあって延々と議論を行い、意思疎通を図ってきています。

 ですから、日米安全保障条約に基づいて日米同盟を動かしていくに当たって、両国の関係者においては、十分、それぞれの国がどういった対応をするのか、どこまで対応できるのか、こういったことについては意思疎通をこれまでも図ってきましたし、これからも丁寧に意思疎通を図ることによって、しっかりとした連携が図られるよう現実の運用を考えていく、これが大事であると思っています。

緒方委員 連携が図られるというのは、それはもうよく分かっています。共同でいろいろな訓練もやったりして、分かるんですけれども、それよりももっと手前のところで、自衛権の在り方として、制約のない自衛権を行使しているアメリカというのがあって、そして、日本独自の事情として、必要最小限度という制限がかかっている日本というものの間に差が出ませんかということなんですね。だって、こっちは制約がかかっているわけですから。向こうはかからないわけですから。そう考えたときに、本当にこれでいいのかということを聞いているわけでして。

 もう一回お伺いします。日本が個別的自衛権を行使し、アメリカが集団的自衛権を行使しているときでも、日本は個別的自衛権の行使において必要最小限度という制約がかかるという理解でよろしいですか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 従来から、日米同盟の抑止力、対処力を向上し、そして実行していくに当たって、それぞれの国ができることについてはしっかりと理解をされている、それは当たり前のことだと思います。それぞれ、具体的な事態にどう対応するか、それはその場の判断というものに関わるのかもしれませんが、だからこそ、平素から、日本ができること、アメリカができること、このことについてしっかり意思疎通を図っておき、いざというときにスムーズに対応ができるような体制、信頼関係をつくっておくことが大事であると思っています。

緒方委員 それはもう全部分かっておりまして、全然答弁に、お答えいただいていないんですけれども。

 必要最小限度というものが日本にかかるわけですよね。そうすると、今の岸田総理の答弁だと、何となく、必要最小限度という言葉がほとんど条件づけにならないような印象を受けたんですけれども、岸田総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 我が国の安全保障における対応については憲法の枠内で対応していく、こうした基本的な考え方はアメリカ側においても十分理解されていると思いますし、そうしたことについて具体的に、スムーズに対応できるために、平素からの信頼関係が大事であると思っています。

 我が国の憲法あるいは平和安全法制による我が国ができること、これについてしっかりと平素から説明を行い信頼関係をつくっておく、こういった姿勢が日米同盟の対処力あるいは抑止力を向上する上で重要だと考えます。

緒方委員 議事録をよく見た上で、また精査させていただきたいと思います。本当はよく分かりませんでした。

 質問を経済の方に移したいと思います。

 今日の質疑、そして昨日の質疑も、金利の水準について結構多くの議論があったと思います。岸田総理は現在の長期金利の水準についてどうお考えですか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 金利の水準については、その評価は、経済、財政の状況ですとか海外市場の状況ですとか、様々な要因を背景として評価されるということになると考えます。よって、その水準ということについて、私自身、評価を行うということは控えなければならないと思います。

 金融政策は、日銀において、具体的な手法をしっかりと判断をして行うべき課題であると思っています。

緒方委員 私はずっと懸念していることがありまして、成長率と金利というのは連動しますので、経済が成長すると当然金利が上がっていくわけですよね。現在のようにプライマリーバランスが大幅赤字の中で金利が上がっていくと、公的債務の対GDP比が上がっていくんですね。日本は実は、公的債務が累積しているために、金融緩和によって金利をむしろ低く維持しなくてはならない国になっているんじゃないかという懸念を持つんですね。

 公的債務が経済成長の制約要因になっていると、岸田総理、思いませんか。

岸田内閣総理大臣 公的債務が経済の成長の制約要因になっているかという質問でありますが、公的債務、日本の国の財政というのは、国債市場におけるまさに日本の評価の礎だと思っています。国債市場あるいは国際社会から日本の信認が問われる、信認が損なわれる、そういったことにならないような財政政策を進めていかなければならないと思います。

 そうした日本の財政に対する信認をしっかりと維持しながら経済成長についてしっかり考えていく、政府としてはそうした姿勢を大事にしていきたいと思っています。

緒方委員 もう一回だけお伺いさせてください。

 日本は実は、金利を上げないのではなくて、上げられない国になっているんじゃないか、そう懸念をするわけでありますが、岸田総理、そういうお考えをお持ちですか。

岸田内閣総理大臣 日銀の具体的な金融政策の手法については日銀に任せなければなりませんが、物価安定目標を掲げ、日銀には引き続き金融政策を進めていただくことを期待しております。

緒方委員 しかし、今、物価安定目標を掲げと言いましたが、金融緩和で期待インフレ率に働きかけてという政策は明らかに失敗しているわけですよね。

 デフレの正体をマネーだというふうに言ったのは、あれは私は間違っていたと思うんです。デフレの正体は私は人口動態だと思っておりまして、まだ誤った処方箋に基づく誤った政策が打たれ続けているのではないか、そう思うわけでありますが、岸田総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 マクロ経済政策は維持しながらも、成長を考えるために新しい経済モデルをしっかりと用意をし、政策を進めていきたいということを国会においても申し上げさせていただいています。是非、多くの国民の理解を得ながら、新しい経済モデル、日本においてもしっかりと進めていきたいと考えています。

緒方委員 何度も何度も言いました。金融緩和で何を目標としたかというと、期待インフレ率に働きかけ、そして、それを追っかけるように実態のインフレ率が上がり、二%になると言い続けて、もう何年ですか。失敗したんですよ。そのことに対する、誤った経済政策をまだ続けていることに対する思いはいかがですかとさっきから聞いているんです、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 デフレからの脱却は大変重要な目標であると思っています。物価を安定的に推移させるべく、目標を掲げて努力をする、こうした日銀の取組には引き続き期待をいたします。

緒方委員 金融緩和をこのまま続ければ、物価上昇率を安定的に二%にできると本当にお考えですか、岸田総理。

岸田内閣総理大臣 日銀に金融政策を進めてもらいながら、政府としては、構造改革、財政政策、しっかり進めていきたいと存じます。こうした政策が合わさることによって、是非、安定的な物価目標への到達を達成したいと思っております。

緒方委員 終わります。

根本委員長 これにて緒方君の質疑は終了いたしました。

 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里でございます。

 会派を代表し、本日は、岸田総理に、現在の経済危機からいかに国民を救うのか、お聞きしたいと思います。

 パネルは、大阪五区の大石あきこ議員にお願いをいたします。

 さて、まず足下の経済状況です。

 ウクライナ危機と円安が追い打ちをかけ、原油や原材料高騰によって四月の消費者物価指数が去年より二・一%もアップするなど、物価上昇が止まりません。これは、国内の景気が上がることによるよいインフレではなくて、賃金や所得は上がらず、輸入物価が上がって生活を苦しめる悪いインフレであることは御存じのとおりです。

 資料一を御覧ください。

 総務省の統計を基に、今年の四月と去年の四月の物価を比べてみると、電気二一%、都市ガス二四%の値上がり、ガソリン、灯油、小麦粉、魚介類、食用油に、レタス、リンゴ、何とタマネギは九八%も値上がり。まだまだありますが、この物価上昇で、所得の少ない人には消費税が更に三%上がるぐらいのダメージがあるほどです。

 総理、これだけ物価が上がっておりますが、国民生活が少しでも楽になるように何をやっておられますか。簡潔にお答えください。

岸田内閣総理大臣 物価高騰に関しましては、昨年十一月の経済対策に加えまして、新たに四月、十三兆円の総合経済対策、用意をいたしました。

 燃料費等の高騰に対して激変緩和措置、また、特に困った方々に対しましては給付金、また、地方自治体における地方に対するきめ細かな支援、給食費等の支援など、様々な政策を用意しています。

 そして、今後の不測の事態に備えて、予備費を用意しながら、あらゆる事態に備えていきたいと考えております。

櫛渕委員 そのお金のつけ方では、足下の生活までまるで届いていませんよ。

 総理、物価が上がっているときには物価を下げなきゃいけない。つまり、物価が上がった分、国がそれを吸収する、これをやるべきではないですか。一番即効性のある方法、それは消費税を下げることしかありません。

 今、消費税廃止という場面なんですよ。みんなを救うためには、消費税を廃止する。そして、最低でも減税は絶対です。でも、残念ながら、政府からは減税というキーワードは聞こえてきません。二十五年も景気を低迷させ、経済を壊したのも消費税です。物価が上がっているときに消費税を下げないなんて、めちゃくちゃなんですよ。消費税は減税すると、総理に、政府に言ってほしいんです。

 総理、お聞きいたします。なぜ消費税減税という話にならないんでしょうか。社会保障とか皆さんの老後に関わる、だから減税は難しいというお考えということでよろしいですか。

岸田内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますが、消費税、我が国の社会保障の安定財源として位置づけられています。生活を守るためには、様々な国の支援は必要だと思いますが、その中において、社会保障、安定した社会保障を維持するということは、国民生活の安心という点において大変重要であります。この部分を支える消費税を全てなくすというのは現実的ではないと思っております。

櫛渕委員 消費税は、皆さんの社会保障とか老後などとか言われていますが、実は、事実と違いますよ。残念ながら、ほんの一部しか使われていません。

 では、何のために消費税を取っているのか。こちらです。資料二を示します。

 消費税は、金持ちや資本家に減税するために取られています。一九八一年からの税率の推移を見ると、一九八〇年の終わりぐらいから法人税率がずっと下がり続けていますね。

 そこに、消費税増税のタイミングをはめてみます。資料三です。

 法人税の減税と消費税の増税がセットであることが分かります。消費税の導入の目的は、直間比率の是正でした。つまりは、直接税である法人税を減税し、間接税である消費税を引き上げるというわけです。

 次に、資料四を御覧ください。

 消費税がスタートした一九八九年から二〇一六年までの経緯を見ると、青と赤のグラフになります。青い部分が消費税収が増えた分、赤い部分は法人税収が減ったことを意味します。消費税を引き上げ、法人税は引き下げられ続けてきたことが分かります。

 このグラフを言葉にすると資料五になります。

 法人税収の約七三%が大企業減税の穴埋めに使われてきたと言えます。

 なお、このパネルのここを御覧ください。最後にはてなマークがありますが、ここにはてなマークを入れないとこのパネルは使えないと、今朝、自民党から圧力がありました。不都合な真実を隠すためには、断言させたくないんですね。

 繰り返します。消費税の約七三%は、資本家の減税のために、穴埋めに使われていると言えます。大企業から組織票と献金をもらい続けている自民党はこれで御恩返しをするわけですが、ほとんどの国民には関係ありません。

 その結果どうなったか。資料六を示します。

 企業の内部留保、利益の剰余金、上がりっ放し。大企業はそのおかげで、内部留保は九年連続で毎年過去最高を更新しています。

 そして、一方で、資料七を見ていただきたいんです。

 この国に生きる大勢の人々の所得の中央値は下がりっ放しなんですよ。すごい下降線じゃありませんか。

 そして、資料八、御覧ください。

 二十五年で、その所得は何と百八万円も下がっているんですね。これはまさに、一部の人だけが裕福になり、大多数の国民を貧しくする政策をやってきたのが自民党だということです。

 そして、コロナ前の厚労省調べを資料九に示します。

 生活が苦しいと感じている世帯の割合、五四・四%、母子世帯では八六・七%、ここまで増えているんですよ、総理。この状態に、コロナの災害が来て、戦争まで起こり、そして日用品の物価が上がっているのに、消費税すら下げないおつもりですか。

 これから岸田総理のことは、総理ではなく鬼と呼ばせていただきますよ。

 もう一度繰り返しますが、物価が上がっているときに消費税を下げないなんてむちゃくちゃなんです。二十五年のデフレ、そこにコロナの災害、そして戦争まで影響し、このような非常時のときは、積極財政で大胆に財政出動をして人々を救ってほしいんですよ。

 私たちれいわ新選組は、党首の山本太郎がたった一人で消費税廃止の旗を掲げて立ち上げた政党です。この国の人々を救うには、消費税を廃止して、まずは国民生活を底上げする、そして経済を再生させる。

 総理、れいわ新選組は、立憲民主党、共産党、無所属と共同で、消費税減税法案を準備しています。

 総理にお聞きいたします。

 自民党総裁として、この消費税減税法案に乗っていただけませんか。ここで決断してください。

 自民党総裁として、総裁が決断すれば、与野党が力を合わせて、物価上昇に苦しむ国民を救うことができるんです。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げました。消費税の減税は、私たちは考えません。

櫛渕委員 減税すると社会保障がカットされるかのようなうそはやめてください。財務省がそんなに怖いんですか。

 二十五年の不景気の中、国民は賃金だだ下がりです。一方、毎年、資本家だけ、過去最高利益を上げている。それを大きく支えるのは消費税であることには変わりがありません。

 自民党にこのまま任せておけません。これ以上、国を衰退させるわけにはいかないんです。

 れいわ新選組は、参議院選挙で必ず勝利し、議席を伸ばし、必ず減税を実現する。消費税廃止を実現するために、その決意を最後に申し上げ、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて櫛渕君の質疑は終了いたしました。

 これをもちまして各会派一巡の基本的質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして令和四年度補正予算両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

根本委員長 ただいままでに、れいわ新選組櫛渕万里君から、令和四年度補正予算両案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。

 この際、本動議について提出者より趣旨の弁明を求めます。櫛渕万里君。

    ―――――――――――――

 令和四年度一般会計補正予算(第1号)及び令和四年度特別会計補正予算(特第1号)につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 令和四年度補正予算を撤回のうえ組替えを求める動議について、その趣旨を説明いたします。

 そもそも補正予算とは、本予算で足りていない分を積み増すものです。それならば、政府の言う二・七兆円では足りません。二桁足りません。どうして足りないのかといえば、政府の現状認識が甘いからです。

 歴代政権の失策による二十五年のデフレがまずあり、そこにコロナと戦争情勢が重なって、国民の生活はもう限界を超えています。国民を守る危機意識があるならば、補正予算が二・七兆円というのはあり得ません。

 他党からも、今回の補正予算額が少ないと指摘が出ています。しかし、残念ながら、他党が提案している額も全く不十分なものです。長きにわたる経済不況に、災害と戦争が重なった今、この深い危機を脱却するための補正予算が必要です。れいわ新選組は、百兆円規模の組替え動議を提案いたします。

 この組替え動議で、何にどれぐらいの予算をつけるのか、説明いたします。なお、令和四年度の残り九か月分の予算に相当する金額を盛り込みました。

 まず一点目は、消費税ゼロ、十六・一兆円。

 生活必需品の値段が上がっている今、国民負担を軽減するために最も確実な政策は、消費税を引き下げることです。所得の低い人ほど負担を強いられて、物価上昇で限界を超えています。まず第一に行うべきこと、それが消費税ゼロです。

 二点目は、ガソリン税ゼロ、一・七兆円。

 原油元売への補助金でガソリン価格を引き下げるだけでは不十分です。やるべきはガソリン税を暫定的にゼロにすること。自家用車を持っている人の負担を下げるためだけではありません。トラックなど運送業界のコストを下げ、商品やサービスの値上げを抑制するものです。

 三点目は、季節ごとの十万円給付を提案します。三十七・五兆円になります。

 政府は、過去一回、十万円給付を行っただけです。これで国民が危機を乗り越えられるはずがありません。悪い物価上昇が収まるまで、春夏秋冬の季節ごとに、定期的な十万円の一律現金給付を速やかにやるべきです。すぐに消費に回らなければ給付は無駄という考え方は間違っています。将来の備えが奪われた国民に安心をしてもらうべく、季節ごとに給付を続けるべきです。

 そして四点目は、社会保険料の引下げ、九兆一千五百億円。

 社会保険料の負担は第二の税金です。国民健康保険料や介護保険料などの毎月の社会保険料の支払いの負担感を国庫の補助の増額で軽減いたします。

 五点目に、奨学金チャラと大学院までの教育完全無償化、ここに十三・一兆円。

 どんな子供にも、学ぶ気があれば大学院まで無料で行ける社会にする必要があります。既に奨学金で借金を負った人には、奨学金徳政令で返済を免除します。

 六点目に、毎月三万円の児童手当、これには三兆三千八百億円。

 全ての子供に毎月三万円を給付します。今の中学生までの児童手当を、高校生相当の年齢まで拡充し、金額を二倍にいたします。

 七点目は、住まいは権利、家賃補助に一兆二千八百億円。

 元々所得が低い人、子供ができて広いところに引っ越すのに費用がない人の支援として行います。

 八点目には、介護士、保育士の月給十万円アップ、二兆七千四百億円。

 岸田政権は、介護士、保育士の月給を九千円引き上げると宣言しましたが、これでは全く足りません。全産業平均との差を埋めるため、月給十万円アップを保証いたします。

 そして九点目には、農業従事者への直接支援に一・五兆円。

 農業従事者が生産した農産物について、国がしっかり買い上げる。国の責任で備蓄し、低所得者への食料支援に活用いたします。こうやって自給率を五〇%まで速やかに引き上げることが必要です。

 十点目に、第七波に備えるコロナ対策、四・四兆円。

 第七波に備えるための医療体制確保と医療従事者への感謝のボーナス三十万円など、合計四・四兆円を措置します。

 十一点目に、全国一律最低賃金千五百円、これは三兆七千五百億円になります。

 最低賃金は全国一律千五百円で、地方の活性化につなげます。中小零細には補助金などで支援をいたします。

 二十五年続いてきた経済政策の失敗にコロナや戦争が重なり、国民の生活は危機に瀕しています。大企業のための政治を続けて心を鬼にした人たちは、今は満足かもしれません。しかし、ここで積極財政によって国民の負担を取り除かなければ、日本の社会、経済は二度と立ち上がれない状況に陥ります。

 消費税ゼロを中心としたれいわ新選組の提案に各党の賛同を求め、組替え動議の趣旨説明を終わりといたします。

根本委員長 これにて本動議の趣旨弁明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより討論に入ります。

 令和四年度補正予算両案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 与党を代表し、令和四年度補正予算案に賛成、編成替えを求める動議に反対の立場から討論を行います。

 まず、この度の補正予算の必要性を強く主張してきた公明党として、補正予算の意義を改めて訴えさせていただきます。

 長引くコロナ禍で経済が傷む中、ロシアによるウクライナ侵略が原油、原材料価格の急騰を引き起こし、ガソリン、食料品など生活に欠かせない品目を中心に値上げが続いています。ウクライナ危機の長期化に加え、円安の影響も重なれば、今後ますますの値上げが避けられない状況です。

 こうした懸念から、公明党は、全党を挙げて国民生活総点検運動を実施し、各地で現場の声を聞き、緊急的に必要な対策を取りまとめ、政府に提言もしてまいりました。

 一方、当初予算には物価高騰対策は盛り込まれておらず、使える予算は五千億円の一般予備費のみ。五兆円のコロナ予備費を活用したとしても、今後の感染の再拡大や近年激甚化する自然災害への備えは必要であり、これら予備費を使い切ることはできません。

 こうした観点から、コロナ予備費の使途を原油価格、物価高騰対策にまで拡大するとともに、昨年十一月に措置した七十九兆円の対策費の実施に加えて、更に緊急的に実行すべき対策のための補正予算となっています。

 全てを予見できない中で、参院選の政治空白後に改めて機動的な対応は可能であるため、一部野党の指摘する、遅い、小さい、中身がないという批判はどれも全く的外れなものです。

 以下、主な賛成理由を申し述べます。

 第一に、燃油価格の激変緩和事業です。

 元売事業者に対する支給上限額を三十五円に引き上げ、超過分についても二分の一を補助するものであり、この対策がなければ二百円を優に超えてしまいます。

 第二に、事業者への的確な支援です。

 漁業や農林業に対する補填金の交付や、食品、水産加工業者等に対する代替原材料の切替え支援、観光事業者への支援など業種別の支援のほか、取引の適正化対策を一層強力に進めることとしています。

 第三に、きめ細かい生活者支援が実現します。

 家計に占める食費や光熱水費の割合が高い低所得者世帯や子育て世帯に対するプッシュ型給付、また、公明党の強い主張により、例えば、学校給食費の値上げ対策や介護事業者の食事提供支援、公共交通運賃の値上げ対策、水道料金等の負担軽減など、地域の実情に応じたきめ細かい支援策を実現できる地方創生臨時交付金が確保されています。

 以上、国民生活を守り、安心を届けるための補正予算案に対し、委員の皆様の御賛同を求め、私の賛成討論を終わります。(拍手)

根本委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 私は、立憲民主党・無所属の道下大樹でございます。

 私は、会派を代表いたしまして、令和四年度補正予算について、反対の立場から討論いたします。

 冒頭、予算の提出者である岸田政権の基本姿勢について一言申し上げます。

 知床沖観光船事故によって判明した行政の甘過ぎる検査、監査体制、そして、建設工事受注動態統計の不正問題など国土交通省の不祥事を始め、金額ありきの防衛費増額、安倍元総理が政府の子会社と認識している日銀による急速な円安の原因である異次元の金融緩和への固執など、この間、岸田政権の基本姿勢には、枚挙にいとまがないほどの多くの問題があります。今回の予算委員会を始め、各委員会等でこれらの問題をただしてきましたが、いずれも真摯な答弁がなかったことは極めて残念であります。

 さて、今回の政府の補正予算二・七兆円は、一言で言えば、遅い、小さい、中身がないということに尽きます。

 立憲民主党は、四月八日の時点で、二十一兆円規模の経済対策を取りまとめて、補正予算の編成を求め続けてきました。一方で、政府が補正予算を編成して国会に提出したのはつい数日前のことで、しかも中身は、既に支出した予備費の埋め戻しに充てる分を除けば、一・二兆円の原油価格高騰対策のみです。こんな予算で物価高騰とコロナ禍で苦しむ国民生活は支えられません。

 また、当初予算に計上した予備費について、予算成立後僅か一か月で支出し、しかもそれを補正予算で埋め戻すというのは、財政民主主義を軽視し、国権の最高機関である国会を愚弄する極めて異常な対応であると言わざるを得ません。憲法第八十七条は、予備費について、予見し難い予算の不足に充てるために設けるものと定められています。裏を返せば、今回の常軌を逸した対応は、政府の予見能力の低さを自ら証明しているということではありませんか。

 結局、今回の補正予算は、選挙前に予算委員会を開きたくなかった自民党と、選挙目当てで大規模な補正予算を編成したかった公明党の妥協の産物にすぎず、そこに物価高騰とコロナ禍にあえぐ国民生活を守り抜くという視点は存在しなかったことは、昨日と今日の予算委員会審議で明らかになりました。このような国民の安心と幸福につながらない国民不在の補正予算には到底賛成できません。

 立憲民主党は、物価高と戦う、教育の無償化、着実な安全保障という生活安全保障三本柱を掲げ、引き続き、物価高騰とコロナ禍から国民の暮らしを守り抜くため、必要かつ十分な規模と内容を伴った補正予算の編成を強く求めることをお誓い申し上げまして、私の反対討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。

 私は、日本維新の会を代表して、補正予算案に反対の討論を行います。

 ロシアによるウクライナ侵略という蛮行によって、賃金が上がらない中で物価が高騰し、国民生活に多大な影響が出ています。

 こうしたときに的確な補正予算を組むことは必要なことです。しかし、問題なのは、その内容が本当に必要なものになっているかどうかです。

 今回の歳出総額二兆七千億円の補正予算案は、原油高や物価上昇を受けた緊急経済対策を看板にしているものの、総額の半分以上の一兆五千二百億円を予備費の補填に充てるなど、真に必要性に基づいたものなのか疑問です。その実質は、参議院選挙前のばらまきと言わざるを得ません。

 予備費は、本来例外的であるべきです。しかし、政府は、五兆五千億円もの巨額な予備費の水準を、補正を編成してまで維持するとしており、財政民主主義をないがしろにするものと言わざるを得ません。

 低所得の子育て世帯への給付金や生活困窮者への臨時交付金、燃料価格の抑制のための補助金などが並べられていますが、本気の物価高騰対策ならば、予備費ではなく、しっかりとした予算を確保して、より実効性のある抜本策を打つべきです。

 この点、私たち日本維新の会は、消費税の軽減税率の段階的引下げや、中小企業、低所得者層への社会保険料減免、法人税減税、原発再稼働等を盛り込んだ、より効果的かつ抜本的な国民負担軽減法案を既に提出しています。

 以上、岸田政権提出の補正予算案は、財政民主主義の面からも内容の面からも賛成できません。

 最後に、このように巨額の予備費を積まなければ不測の事態に対応できないこと自体が、我が国のセーフティーネットがいかに有事の際に機能不全であるかを示しています。

 我々日本維新の会は、平時から有事まで切れ目のないセーフティーネットであるベーシックインカム、すなわち最低所得保障制度を含む政策パッケージである日本大改革プランを提示しています。

 場当たり的な対処療法を続ける政府・与党か、それとも時代遅れとなったこの国の仕組みを一からつくり変えようとしている我々日本維新の会か、国民の皆様にその選択をお願いし、私の反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 私は、日本共産党を代表して、政府提出補正予算案に対する反対討論を行います。

 反対する第一の理由は、物価対策の補正予算であるにもかかわらず、ガソリン、燃油対策を除けば、物価高騰に苦しむ国民や中小零細事業主への支援が全くないに等しい、そして、これでは国民の生活が守れないからであります。

 物価高騰は、電気、ガス、食品、生活必需品全般に及び、これからも値上げラッシュが続きます。所得が少ない人ほど打撃を受け、中小企業、小規模事業者への影響も深刻です。今、政治がやるべき仕事は、物価の引下げと、物価に負けないよう収入を増やすことです。

 物価引下げの最も効果的な対策は、消費税の緊急減税です。政府に決断を求めます。また、賃上げに政治が責任を果たすべきです。中小企業支援とセットで、最低賃金、千五百円目指して抜本的に引き上げ、正規も非正規も賃金の底上げを図るべきです。

 物価高騰が続く中、年金の削減や七十五歳以上の医療費の窓口負担の二倍加のような血も涙もない政策は、直ちに中止することを強く求めます。年金カット法など年金減額の仕組みを改め、年金の底上げこそ図るべきであります。

 反対する第二の理由は、本補正予算案での予備費の積み増しは、国民の税金の使い方は国民の代表が国会で議論して決めるという財政民主主義を踏みにじるものだからであります。

 財政法は、予備費について、予見し難い予算の不足に充てるとしており、閣議決定も、災害に起因する必要な諸経費や比較的軽微と認められる経費等へ支出するとしています。

 安倍、菅、岸田政権の下で、新型コロナ対策の名目で巨額の予備費計上が常態化しております。本補正予算案では、二二年度の執行途中の新型コロナ対策の特定予備費の看板を書き換えて、新たに物価高対策へ拡大しています。予見し難い予算の不足とは到底言えません。

 時の政府が財政法の趣旨を無視し、巨額の予備費を積み、国会での議論を経ることなく、政権の財布のように利用することは、財政民主主義を踏みにじるものであり、断じて認めるわけにはまいりません。

 以上指摘し、反対討論といたします。

根本委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 有志の会の緒方林太郎です。

 令和四年度一般会計補正予算の採決に際し、討論いたします。

 我々は、この補正予算に反対をいたします。

 この予算は、どう見てもやっているふりにしか見えません。補正予算としては半分以上が、四月末に閣議決定した経済対策で使用した予備費の補充です。しかも、新型コロナウイルス感染症対策予備費の対象に原油価格、物価高騰を加え、もはや何を目的とした予備費なのかすら分からなくなっています。これは政権の都合でいかようにも使えるものであり、予備費が膨らむことは予算の民主的統制を損なうものです。また、この予備費は、最終的にどのような形で使われたかの検証が難しいです。

 このような観点から、この予算に賛成することはできません。

 このような雑な補正予算は、主要野党がしっかりしていれば出せなかったでしょう。国会審議が民主的統制としての圧力になっておらず、単なる通過儀礼になっています。これは民主主義の危機とすら言えるでしょう。この議場にいる与野党全ての議員は、このような予算がやすやすとまかり通ることそのものが、民主主義のとりでたるべき国会の果たす役割を害するものであるということに思いを致すべきです。

 岸田政権をこれまで見てきて、気づいたことがあります。それは、聞く力を標榜しつつ、実は聞かない、スローガンは掲げるが、中身はよく分からないということです。なので、主要野党が現在の状況である限り支持率は下がらない。そういう政権運営モデルだと思います。しかし、このようなぬるま湯の状態とは裏腹に、国際情勢は激動のど真ん中です。この乖離は目を覆わんばかりです。

 我々は、私を捨ててイバラの道を歩む気概を持ち、この国の難局に立ち向かいます。そのことを述べ、討論といたします。(拍手)

根本委員長 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組は、政府の補正予算案に反対、そして、れいわ新選組提出の組替え動議に賛成の立場で討論いたします。

 今可決されようとしているのは、そもそも補正予算とは何か、全くその本質が理解されていない予算案です。補正予算とは、本予算で足りていない分を積み増すものです。

 本予算では何が足りなかったのか。歴代政権の失策による二十五年のデフレがあり、さらにコロナの影響、そして生活必需品価格の高騰、三重の影響に国民は苦しんでいます。その国民生活を救うための積極財政に基づく予算づけが圧倒的に足りなかったのです。国民の生活はもう限界を超えています。国民が置かれた状況を直視するなら、政府の言う二・七兆円などという補正予算が出てくること自体がおかしいのです。どうしてこんな不十分極まりない補正予算が出てくるのか。それは政府の現状認識が甘いからです。

 物価が上がっているときには、物価を下げなければなりません。つまり、物価が上がった分、国がそれを吸収する政策が必要なんです。そのために一番即効性のある方法は、消費税を引き下げることです。みんなを救うためには、消費税廃止、最低でも減税は絶対なんです。補正予算では、いち早く消費税をゼロにするために必要な予算額を盛り込まなければならないはずです。

 この予算委員会では、繰り返し総理に対して、消費税が国民を苦しめていること、物価上昇分を緩和するには消費税引下げしかないことを訴えました。しかし、総理の答弁からは、窮地にある国民を救う決意は全く見えません。

 テレビの向こうで、総理の答弁を聞いて不安になった国民は多いでしょう。みんなの生活は国が守る、この予算で危機の時代を乗り切ろう、そのメッセージがこもっていない補正予算だからです。

 長きにわたる経済不況に災害と戦争が重なった今、この深い危機を脱却するために、れいわ新選組は、百兆円規模の組替え動議を提案いたしました。消費税をゼロにし、社会保障費を下げ、季節ごとに十万円の給付を繰り返し出す。この危機を乗り切るためのメッセージを込めた予算提案です。本気で国民を守る気があるのなら、与野党を超えて、まず消費税ゼロを実現させないといけません。

 このメッセージをもう一度訴え、反対討論を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより採決に入ります。

 まず、櫛渕万里君提出の令和四年度補正予算両案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

根本委員長 起立少数。よって、櫛渕万里君提出の動議は否決されました。

 次に、令和四年度一般会計補正予算(第1号)、令和四年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して採決いたします。

 両案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

根本委員長 起立多数。よって、令和四年度補正予算両案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました令和四年度補正予算両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

根本委員長 次回は、来る六月一日午後一時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十三分散会


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