衆議院

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第2号 令和5年1月30日(月曜日)

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令和五年一月三十日(月曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 小林 鷹之君 理事 中山 展宏君

   理事 古川 禎久君 理事 堀井  学君

   理事 牧原 秀樹君 理事 逢坂 誠二君

   理事 後藤 祐一君 理事 青柳 仁士君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊東 良孝君    伊藤 達也君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      亀岡 偉民君    神田 潤一君

      菅家 一郎君    熊田 裕通君

      小森 卓郎君    下村 博文君

      杉田 水脈君    鈴木 貴子君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      田中 和徳君    辻  清人君

      土屋 品子君    萩生田光一君

      平沢 勝栄君    古川 直季君

      古屋 圭司君    牧島かれん君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      宮下 一郎君    八木 哲也君

      保岡 宏武君    山本 有二君

      鷲尾英一郎君    大西 健介君

      岡田 克也君    源馬謙太郎君

      階   猛君    末次 精一君

      鈴木 庸介君    堤 かなめ君

      西村智奈美君    藤岡 隆雄君

      本庄 知史君    森山 浩行君

      山井 和則君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    渡辺  創君

      阿部  司君    池畑浩太朗君

      掘井 健智君    庄子 賢一君

      高木 陽介君    中野 洋昌君

      浜地 雅一君    鰐淵 洋子君

      斎藤アレックス君    宮本  徹君

      緒方林太郎君    櫛渕 万里君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   総務大臣         松本 剛明君

   法務大臣         齋藤  健君

   外務大臣         林  芳正君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   文部科学大臣       永岡 桂子君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      西村 康稔君

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    西村 明宏君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (デジタル大臣)

   (デジタル改革担当)

   (消費者及び食品安全担当)            河野 太郎君

   国務大臣

   (復興大臣)       渡辺 博道君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)

   (海洋政策担当)     谷  公一君

   国務大臣

   (孤独・孤立対策担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   小倉 將信君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   後藤 茂之君

   国務大臣

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (経済安全保障担当)   高市 早苗君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (アイヌ施策担当)    岡田 直樹君

   財務副大臣        井上 貴博君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            山中 伸介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  下田 隆文君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  齋藤 秀生君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    渡邊 国佳君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 竹谷  厚君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            市川 恵一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    中込 正志君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       齋田 伸一君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長)   片岡宏一郎君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            松尾 剛彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  塩見 英之君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    土本 英樹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月三十日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     菅家 一郎君

  亀岡 偉民君     瀬戸 隆一君

  下村 博文君     杉田 水脈君

  鈴木 隼人君     古川 直季君

  辻  清人君     神田 潤一君

  三谷 英弘君     萩生田光一君

  藤岡 隆雄君     山井 和則君

  本庄 知史君     階   猛君

  吉田はるみ君     岡田 克也君

  渡辺  創君     堤 かなめ君

  庄子 賢一君     浜地 雅一君

  鰐淵 洋子君     高木 陽介君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     辻  清人君

  菅家 一郎君     加藤 竜祥君

  杉田 水脈君     下村 博文君

  瀬戸 隆一君     亀岡 偉民君

  萩生田光一君     保岡 宏武君

  古川 直季君     松本  尚君

  岡田 克也君     吉田はるみ君

  階   猛君     本庄 知史君

  堤 かなめ君     末次 精一君

  山井 和則君     藤岡 隆雄君

  高木 陽介君     鰐淵 洋子君

  浜地 雅一君     庄子 賢一君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     衛藤征士郎君

  松本  尚君     小森 卓郎君

  保岡 宏武君     鈴木 貴子君

  末次 精一君     米山 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  小森 卓郎君     鈴木 隼人君

  鈴木 貴子君     三谷 英弘君

  米山 隆一君     鈴木 庸介君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 庸介君     渡辺  創君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算、令和五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官下田隆文君、内閣官房内閣審議官齋藤秀生君、警察庁刑事局長渡邊国佳君、外務省大臣官房地球規模課題審議官赤堀毅君、外務省大臣官房審議官竹谷厚君、外務省総合外交政策局長市川恵一君、外務省欧州局長中込正志君、外務省中東アフリカ局アフリカ部長齋田伸一君、水産庁長官神谷崇君、経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長片岡宏一郎君、経済産業省通商政策局長松尾剛彦君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君、国土交通省住宅局長塩見英之君、防衛省防衛政策局長増田和夫君、防衛装備庁長官土本英樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。萩生田光一君。

萩生田委員 おはようございます。自由民主党の政務調査会長萩生田光一です。

 今年も予算審議が始まりました。与党としては全力でこの予算の早期成立を期していく、それこそが最大の景気対策であり、国民に対する政権与党としての責任でもあります。政府、内閣におかれましても、国会審議に真摯にかつ全力に当たっていただきたいというふうに願っております。

 今日、パネルのお手伝いは、神奈川六区の古川先生にお願いさせていただきました。(発言する者あり)

根本委員長 萩生田光一君、パネルを掲げる方の、委員の名前は言わないことになっておりますので、以後御注意ください。

萩生田委員 済みません、それはちょっと失念しました。存じ上げませんでした。

 さて、私たち自由民主党が友党公明党の皆さんとともに政権を奪還して、十年がたちました。

 政権奪還前、私は浪人中でありましたけれども、ここにいる自民党の多くの仲間も本当に苦しい野党時代を経験しました。有権者の皆さんから厳しい声もたくさんいただいたと思います。そして、それを糧に、私たちは十年前、政権を奪還しました。

 しかし、一旦失われた信頼を取り戻すことはそう簡単なことではありません。政権を取り戻してからも、高い緊張感の下、まさに薄氷を踏む思いで政権運営に当たっていた安倍元総理の言葉を思い出します。私たちは政権奪還の初心を決して忘れてはなりません。信なくば立たずであります。

 この十年間の経済、外交における成果に静かな誇りを持ちながらも、おごることなく、次の十年に向けて、政権奪還の際の、強い日本を取り戻す、国民の皆さんとの約束を更に前進させていかなくてはなりません。

 そのように考えますが、まず、岸田総理の決意を改めてお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 強い日本を取り戻すと訴えて成し遂げた政権奪還の初心あるいは強い気持ち、これを忘れてはならないという御指摘、私もそのとおりだと思います。

 この十年間、安倍政権、そして菅政権の下で、経済あるいは外交面で大きな成果が上がったと思っています。二人のリーダーの貢献、努力に心から敬意を表し申し上げます。

 そして、その上で今、ポスト冷戦、そしてグローバリゼーションによって繁栄するとされてきた世界が大きな転換点を迎えています。その中にあって、複雑なこの安全保障環境の中で国民の命や暮らしを守り抜く、また、気候変動問題とエネルギー安定供給の両立を図っていかなければならない、さらには、サプライチェーンや技術力を経済安全保障の観点から考えていかなければならない、また、少子化問題を人口減少問題の深刻化として捉え、持続可能性について考えなければならないなど、待ったなしの課題が山積しています。

 是非、この十年の実績と成果の上に立って、この時代の局面に強い覚悟を持って臨んでいかなければならないと考えております。

萩生田委員 この十年間、我が国は強い外交を展開してきました。その大半を、総理は外務大臣として最前線に立って仕事をしてまいりました。また、後半は、党の政策責任者として外交も支えてきたというふうに思います。

 まず、CPTPPです。米国が離脱した後の交渉を日本がリーダーシップを取って立て直しました。欧州との経済連携協定、さらには、日本と米国、オーストラリアにインドを加えたクアッドという新たな枠組みも立ち上げました。昨年、少数国でもスタートを急ぐ米国を引き止め、アジアの多くの仲間も加わるIPEFの立ち上げに御尽力いただいたのは、まさに岸田総理であります。

 我が国が提唱した自由で開かれたインド太平洋は、米国やアジアを始め世界各国・地域で共有され、具体的な連携や協力が始まっております。NATOの事務総長が来日されるようでありますが、このことを高く評価し、このことを総理としっかり話をしたいということを報道でお聞きをしました。

 本年は、G7議長国及び国連安保理非常任理事国として、引き続き外交をリードする年となります。これまで皆さん誰もが思い描くお決まりの外交とは思いますが、大事なことは、日本とASEANの友好協力五十周年でもあるということです。ややもすると、日本はアジアの優等生で、西側に渡ってしまって、自分たちは置いていかれたのではないかとここ数年思っているアジアの国々に、もう一度、自分たちはアジアのど真ん中にいる国だと示す一年にしていかなくてはならないと思います。

 コロナ禍の三年間、対面での外交の機会がなかなかできない中、中国はしたたかにアジア各国との外交を展開していました。大変な危機感も感じております。

 総理は所信表明の中でもしっかり訴えていただきましたけれども、日本とASEAN友好協力五十周年の本年、いま一度アジアに軸足を置いて、党としても積極的なアジア外交を展開したいと思っています。その皮切りに、先日、私自身、タイやシンガポール、そしてG20の議長国となるインドを訪問してまいりました。

 世界的インフレに伴う景気後退懸念、そのインフレの一因でもあるエネルギーや食料の供給不安も、アジアの国々にとって大きな課題です。特にエネルギーでは、各国が猛烈なスピードで電気自動車への転換を進めていることです。ただ、そうすると、電気需要が伸びますが、これを単に非効率な火力発電で賄うことになれば、結果的にカーボンニュートラルに逆行することにもなります。

 アジアにはいまだ石炭火力が多く存在しますが、ここに日本のアンモニア混焼の技術を活用する、さらには、LNGや水素を活用する、各国の事情に応じた現実的なエネルギートランジションを進めていく重要性を改めて実感しました。

 私も経産大臣時代から取り組んでまいりましたが、岸田総理は、アジア・ゼロエミッション共同体構想を打ち出しておられます。

 本年日本が議長となるG7サミットでは、先進国目線で現実から乖離した理想論を振りかざすのではなく、現実的なエネルギートランジションの重要性、さらには、食料安全保障や世界的なインフレ、景気不安への対応など、アジアの国々の思いをしっかりと反映させる、そしてその成果をインドでのG20サミット、その先の年末のASEAN会合へとつないでいくべきと考えますが、改めて総理のお考えをお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、ASEANを含むアジアの国々が重要だという御指摘、私も全く同感であります。

 今、アジアの国々の存在感が、経済的にも、また政治的にも、国際社会の中で増しています。また、ロシアによるウクライナ侵略によって生じている影響、これは、アジアを始め多くの国々に大きな影響を与えています。その中で行われるG7サミットでありますので、エネルギー、食料安全保障、あるいは気候変動、保健、さらには開発など、地球規模の議論を行っていかなければなりませんが、その中にあって、御指摘のアジア・ゼロエミッション構想など、アジアに寄り添った取組、これは重要な視点となります。

 そして、このG7で得た議論の成果、是非、その後行われます、インドで開催されるG20、そしてインドネシアで開催されるASEAN関連首脳会合、そして十二月に予定されております東京での日・ASEAN特別首脳会合、こうした会議にしっかりとつなげていく努力をしていきたいと考えます。

萩生田委員 我が国の外交姿勢を示す絶好の一年になると思います。総理の、今もおっしゃったような、是非、アジアの中の日本という立ち位置の中で果たすべき役割、しっかり発信をしていただきたい、期待をしたいと思います。

 インドを訪問した際に、現地の日本企業の皆さんと日本人学校の運営について意見交換をしました。現地では、コロナの影響もあって在籍する児童生徒が大きく減少し、苦しい財政状況が続く中、施設の老朽化による建て替えをしたいんだけれども、これがなかなかできないという、こんな相談をいただきました。

 私、文科大臣も経験して、在外の日本人学校や補習校の在り方は、もう一歩やはり政府が前に出るべきだということを当時から申し上げて、少しずつ検討は進んでいるんですけれども、いまだ制度ができ上がりません。

 多分、テレビで御覧の皆さんは、在外の日本人学校というのは、日本の子供たちが日本と同じ義務教育が受けられる学校があるんだろうと、多分多くの皆さんは思っていると思いますよ。これは全く違うんですね。

 在外の日本人学校というのは、海外で働く企業の人たちが、その子供たちの教育のために、みんなでお金を出し合って、言うならプライベートスクールとしてスタートしているものがほとんどです。

 そして、一定規模になって文科大臣の認定があると日本人学校と呼び、そこに届かない、主要科目だけを勉強するのは補習校という形で、これが何と全国に、在外日本人学校は九十四校、四十九か国、一地域、また、今申し上げた補習校は二百三十校、五十四か国、一地域に存在をしております。

 私は、これから、まさに政府全体で国際化ということも一つの大きな課題で取り組みます、留学生の、三十万人を更に拡大していこう、また受入れも増やしていこう、これも大事な政策だと思いますけれども、まさに今、小学校や中学校の段階で在外の日本人学校に通う子供たちというのは、将来の我が国を背負ういわばグローバル人材の原石だと思うんです。

 少なくとも、ある程度の実績を有する学校に対しては、例えば私学助成のような仕組みも参考にしながら、財政的な支援をするべきではないかと思っているんです。

 教員の派遣も文科省から行っておりますけれども、なかなか行き手がないんですね。今は、例えば、各自治体で採用が決まったけれども、しかしまだ現場に立てない、採用待ちの教員を、私、一年とか二年、期間つきで海外の日本人学校で働いてもらったらどうだということを当時提案したんですけれども、なかなかこれは仕組みもできません。

 言い換えれば、海外からの留学生に対しては物すごく手厚い支援をする我が国が、本来義務教育で学ぶ権利のある子供たちに、現場任せといいますか、もう本当に中身はばらばらです。もちろん指導要領に沿って一生懸命授業をやってくれていますけれども、先生の数も足りません。私は、日本人学校こそ力を入れて応援するべきではないかというふうに思っています。

 また、日本とASEANの次なる五十年の友好協力に向けて何よりも重要なことは人的交流だと思っています。大学間の留学生マッチング機能の充実など、高等教育の国際化を通じた人的交流の拡大。

 また、きちんとした日本語教育、技能、能力を持って、もう荷造りを終えて、日本に来ることを心待ちにしている実習生たちの入国、特にASEANの人たち。

 これは、いろいろな理由があるんだと思いますけれども、もう既にこの実習制度を長くやっているので、送り出し機関の信頼性というのはもう大体法務省も分かっているんじゃないですか。この団体から来る学生、実習生は辞めないし、ちゃんと働いているしというのは分かっているわけですから、そこを少しやはり、機械的に、ある子などは三か月以上待っているんですね。荷造りを終えて三か月。何かこれは間違ったメッセージに、日本が海外に発信することになるんじゃないかと思っているので、きちんとした、きちんとしたというのはちょっと分かりづらい言い方かもしれませんけれども、きちんとした実績があって問題がない団体の送り出し、ブローカーまがいのものはしっかり精査しなきゃいけないと思っていますけれども、ここは機械的じゃなくて、少し濃淡をつけて、きちんと入国をさせてあげるべきじゃないかと思っていまして、ASEANの若者たちの実習の場、是非、直ちに整えなくてはならないと思っています。

 また、提案なんですけれども、アジア、ASEANで、なかなかオリンピックや万博、国際会議など大きなイベントができません。できませんというか、環境的にもできないものもあるかもしれないんですけれども、日本、中国、韓国は果たしましたけれども、ほかのアジアの皆さんもこれをやってみたいという気持ちはあるんですよね。気候の問題など解決しなきゃならない地政学的な問題もありますけれども、何よりも、私、そのマインドはやはり共有してあげるべきだと思っています。

 そこで、総理、提案なんですけれども、二〇二五年の大阪・関西万博には、ASEAN各国の若手の官僚、準備段階から運営側に入っていただいて、要するに、お客さんじゃなくて主催者側として経験してもらったらどうかと思うんです。将来、自国での万博、ひいてはオリンピック開催、こういったことを考えたときに、国際イベントの準備ってこんなことなんだとしっかり分かってもらえるような、そういう人たちに組織委員会に入っていただいたらどうかと思うんです。

 同時に、これが開催になれば、多くの外国からのお客さんをお迎えするんですけれども、圧倒的にASEANのお客さんが多いんですよ、過去の万博を振り返っても。ですから、それのコーディネートなどもしてもらったらいかがかなと思っています。

 ASEANは六億五千万人の人口を抱える巨大な共同体であり、その潜在力は申すまでもありません。海外の日本人学校への支援ですとか高等学校の国際化を通じた人的交流の拡大、そして、今申し上げた関西万博での協力について、総理の見解をお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 幾つか御質問いただきましたが、まず、海外の日本人学校については、その国情を知るグローバルな人材を育成するという意味からも、重要な存在であると思います。

 海外においては様々な教育機関がありますが、選ばれる在外教育施設づくりに向けて、先進的な特色ある授業づくりを支援するとともに、国内同等の環境整備を目指す、こうした学校づくりを考えていかなければならないわけですが、政府としましても、教育の中核を担う派遣教師の充実、そして何よりも海外においては安全対策、また専門分野のアドバイザーによる支援など、こうした日本人学校の環境整備にこれからも努力を続けていきたいと思っています。

 また、技能実習制度等についても御指摘がありました。

 このありようについては、政府においても有識者会議において議論を始めたところですが、この現状をしっかりと見据えて、どうあるべきなのか、こうした議論は引き続き続けていかなければいけない課題であると思います。

 また、大阪・関西万博について御提案がありました。

 大阪・関西万博においても、ASEANを始めとする国際機関と連携をし、国際イベントを運営する人材育成に貢献していく、こうした視点も大事であると考えます。

 政府としては、大阪・関西万博の運営、準備を担う二〇二五年日本国際博覧会協会へASEANからの人材を招聘するなど、国際人材の育成についても考えてまいりたいと思います。

萩生田委員 是非、前向きな検討をお願いしたいと思います。

 五月の広島サミットでは、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的な価値を有するG7の皆さんと、世界にその重要性を発信をしていただきたいと願っております。

 特に人権につきましては、G7の貿易大臣会合で提案した流れから、この一月に日米でサプライチェーンにおける人権の促進に関するタスクフォースが立ち上がりました。この動きを是非G7にも広げていくべきです。

 二〇二一年の民主主義サミットでは、カメラや顔認証などの監視技術について、人権侵害に悪用されないよう輸出管理に取り組むとの共同声明が米国主導で発出されましたが、日本はこの声明に参加しませんでした。我が国のサイバー監視システムが人権侵害に利用されるようなことはあってはならず、こうした重要技術に対する輸出管理を国際協調の下に進めることは極めて重要だと思います。

 三月には第二回の民主主義サミットが開催されますが、日本として積極的な役割を果たすべきではないでしょうか。そして、広島サミットにおいても、人権侵害を防止する観点からの輸出管理の重要性について、G7の確固たる意思を世界に向けて発信すべきと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

岸田内閣総理大臣 我が国は、人権を普遍的な価値であり、また、人権擁護は全ての国の基本的な責務であると考えております。そのような考え方から、日本はこれまで、深刻な人権侵害に対してはしっかり声を上げる一方、対話と協力を基本とし、民主化、人権擁護に向けた努力を行っている国との間においては、二国間対話や協力を積み重ねて自主的な取組を促す、こうした姿勢を取ってきました。

 また、企業のサプライチェーンにおける人権尊重については、昨年、日本政府として、業種横断的な人権デューデリジェンスガイドライン、これを公表いたしました。政府調達における人権尊重についても、早期導入に向けて関係省庁間で今議論を進めています。

 その上で、この輸出管理の枠組みが活用可能かどうかについて、これは欧米等の同志国における今後の議論も踏まえつつ検討していきたいと思います。

 そして、G7広島サミットにおいて具体的などのような議論をするか、これは参加国とも引き続き今相談をしているところですが、いずれにせよ、普遍的価値に立脚した国際的な規範や原則の維持強化に向けて着実に努力を続ける、こうした点においてはG7各国と方向性の違いはないと考えます。人権についてもどのような議論を行うのか、しっかり詰めたいと思っております。

萩生田委員 防衛についてお尋ねします。

 昨年末に改定された安保関連三文書は、海外でも高い評価をいただいています。重要なことは、言葉ではなく実行であります。絵に描いた餅に終わらぬよう、しっかりと取り組む必要があります。

 昨年秋に私が質問した海上自衛隊と海上保安庁の連携ですけれども、あの質問以降、両省で早速協議を始めていただいたと報告をいただきました。統制要領なども今考えているし、将来的には合同訓練もしっかりしていただけるんだというふうに思います。

 また、あのときにも申し上げたデュアルユースの技術については、国家防衛戦略の中で、スタートアップ企業などの民生先端技術を積極活用するための枠組みを構築すると明記をしていただきました。新しい戦い方が生まれる時代に、サイバー、宇宙、また、AI、量子、半導体など、民間先端技術を積極的に取り組むことは不可欠です。

 そうした中で、防衛省の中に新たな研究機関を設置するというお話も耳にしますが、五年で四十三兆円という予算を、防衛省による防衛省のためだけの一方通行の予算にしてはならないと思っています。これまでのような防衛省の研究者だけの目線、内向き、縦割りの発想ではなくて、米国では、国防総省のDIU、ディフェンス・イノベーション・ユニットをつくりました。これを参考に、外部から民間技術を積極的に取り組む仕組みにしなければ、イノベーションは生まれないと思うんです。民生技術との融合、好循環を生み出すような双方向の枠組み、いわば日本版DIUが私は必要だと思います。

 補正予算で各省連携で進めている経済安保プロジェクトの枠組みも生かしながら、縦割りを排して、関係省庁が一丸となってデュアルユース技術の活用に取り組む体制を総理のリーダーシップで構築していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 最先端の科学技術は、政府においても、また民間においても活発に研究開発が進められており、そうした成果を防衛目的に活用することは非常に重要であると認識をします。

 国家安全保障戦略の中においても、「研究開発等に関する資金及び情報を政府横断的に活用するための体制を強化する。」、こうした旨、盛り込んでいます。具体的には、経済安全保障重要技術育成プログラムを始めとする科学技術イノベーション政策を通じて、民間が持つ先端的な重要技術について、民生分野だけでなく、安全保障分野の強化に円滑につなげていくことを考えています。

 また、関係省庁が実施する研究開発と防衛省の研究開発ニーズ、これを合致させることによって、総合的な防衛体制の強化に資する科学技術の研究開発を推進できるよう、政府横断的な仕組み、これも創設してまいります。

 政府としては、総合的な防衛体制の強化に向けて、官民の高い技術を取り込むべく、縦割りを排し、そして、関係省庁、連携をしていく取組を進めていきたいと考えています。

萩生田委員 総理、多分各省はそういう我々と同じマインドは持っているんですけれども、やはり、一度入ってしまった自分たちの役所の予算をそれ以外にも使えるから一緒にやりましょうねといって、そこからまた次のアクションを起こすというのは結構苦手な組織なんですよ、みんな。したがって、みんなタコつぼに入っていくというところがあると思います。

 私、そういう意味で、横串を刺してきちんとみんなで情報共有ができる組織を、総理のリーダーシップで是非、今日は答弁結構ですけれども、考えていただいたらどうかな、その方が多分スムーズにいくんじゃないかと思いますので、お願いしたいと思います。

 強い防衛産業なくして防衛力の強化はありません。足下では、企業の防衛産業からの撤退が続く事態を食い止め、防衛調達における利益率改善を進めていく必要があります。また、有志国と安全保障面で連携していく観点からも、防衛装備品の海外移転の在り方についても抜本的に見直していく必要が不可欠だと思っています。

 前回予算委員会でも利益率のお話をしました。三文書の中に、「防衛産業のコスト管理や品質管理に関する取組を適正に評価し、適正な利益を確保するための新たな利益率の算定方式を導入する」というふうに明記されました。ここに書いてある適正な利益というのは一体どのくらいなんでしょうか。

 これまでも最大で七%ということは書いてあったんですけれども、実際に七%の利益が得られないからみんな撤退してきたわけでありますので、コスト管理や品質管理を評価するとありますけれども、防衛省が企業を徹底的に査定しますと、利益が確保されることなく、また撤退してしまうんじゃないかということを私はちょっと心配しています。今こそ企業を育てていくマインドに変えていく必要があるのではないでしょうか。

 大企業はともかくとしても、そこに連なる中堅や中小の防衛産業のサプライチェーンがしっかりと利益の確保をされていけるのか。これは、経産省、中小企業庁の下請政策とも連携して、適正な価格転嫁がなされているかしっかり調査をしていくべきではないかと思いますが、浜田防衛大臣の答弁をお願いいたします。

浜田国務大臣 萩生田委員には、さきの臨時国会でも、防衛産業が多様な課題を抱えているということを御指摘をいただきました。国内産業はいわば防衛力そのものでありますので、基盤の強化は急務であると考えます。

 防衛省は、今後、企業の生産管理に係る努力の評価等に基づき、最大一〇%の利益率に加え、最大五%のコスト変動調整率を付加して予定価格を算定する方式を導入するなどにより、企業の適正な利益の確保を推進してまいります。

 これに際し、官側が、企業の利益を圧迫する要因となる調達事務や企業の負担になっている取引慣行を是正をすることも考えております。

 さらに、サプライチェーン強靱化や製造工程効率化、サイバーセキュリティー強化、事業承継など、装備品等の安定的な製造のため、大企業から中小企業に至る防衛産業基盤を強化してまいります。

 これらを令和五年度から実施するため、必要な予算措置、法整備、金融支援等といった措置を講じるとともに、経済産業省を始め関係省庁とともにしっかり連携してまいりたいと考えております。

萩生田委員 防衛力強化を進めるためには、安定的な財源の確保が必要であることは言うまでもありません。最終的には税をお願いすることも含め、将来世代に負担を先送りしないという岸田総理の強い責任感を、今の世代を生きる政治家の一人として共有いたします。

 私は、岸田総理とこの間いろいろなお話をしてきた中で、メディアは面白おかしく、党と政府が対立しているかのようにおっしゃっているんですけれども、私が特命委員会で今やっている作業というのは、総理・総裁が指示をした内容そのものだと思っています。税以外の防衛財源を議論するために、五年で四十三兆円という防衛予算を賄うのに、どこまで税以外でしっかり積み上げができるのか、あらゆる選択肢を排除せず、聖域なく徹底的に議論していく。

 私は、将来的な増税は否定はしませんが、しかし、今申し上げた努力なしに、国民の皆さんの理解をいただくことは難しいのではないか。このことをしっかり国民に分かっていただく努力を党としてやっていきたいと思っています。

 剰余金の繰入れや国庫納付金などをフル活用する財源確保法が今国会で審議される予定になっておりますので、速やかに党内手続を行いたいと思います。その後、特命委員会で歳出改革、国有財産の利活用、また専門家も交えた、まさにかんかんがくがくの議論を始めますので、これはしっかり見守っていただきたいなと思っています。

 ただ、国有財産の処分、これはワンショットでは効果がありますけれども、本当に処分してしまっていいのかということも考えなきゃならないと思うんです。来年度は、大手町のプレスセンターを売却する予定です。これは、コロナの集団接種の会場として皆さんにも御活用いただきました。かつて、郵政の建物を売ったり高輪宿舎を売ったりしてきましたけれども、一方、やはり新たな行政ニーズが生まれて、今、デジタル庁は民間のビルの中にまた入っているわけですよね。

 売るか売らないかという二者択一じゃなくて、国有財産をもっと高度利用したりして有効利用して、言うならば、民間と一緒にその土地を活用しながら財源も得ていくというようなことも、国有財産ならではできることだと私は思いますので、こういったこともしっかり議論して提案をしてまいりたいと思います。

 そこで、お伺いしますけれども、四分の一という数字はあくまで目安でありまして、目安ですから、逆に増えてしまうんじゃないかと心配する人たちもいるわけです。

 今後、税以外の財源確保の努力をしっかり積み重ね、景気の腰折れや国民の皆様の生活の不安につながらない生活環境も共々努力していく、こんな思いで今一緒に仕事をしているので、改めて、今日は国会の場ですから、総理の言葉で皆さんにもう一度思いを説明していただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、抜本的に強化される防衛力については、将来に向けて維持強化していかなければならず、これを安定的に維持するために、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が不可欠です。

 そして、この財源確保に当たっては、国民の負担をできるだけ抑えるべく、歳出改革など行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一について税制措置をお願いする、こうした基本的な考え方に基づいて、考え方を政府・与党で確認をし、その下で、税制措置の内容について与党税制調査会での議論を経て決定したということです。

 その際に、一般の中小企業の負担が増えることがないよう、この与党の議論を踏まえて、二千四百万円の控除措置を設け、九四%の議論を、対象外とするなど、今回の措置が経済、暮らし、雇用などに悪影響を及ぼさないよう、可能な措置を講ずることとしたところです。

 その上で、自民党においては、今委員の方から御指摘がありましたように、萩生田政調会長にお願いをして、現在、税以外の、歳出改革、そして決算余剰金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の財源確保の在り方について御議論をいただいている次第です。

 また、日本経済は、現在、コロナ禍からの回復や物価高という課題に直面をしています。経済動向や賃上げの状況なども踏まえつつ、予備費の活用を含め、機動的な経済財政運営を行っていく必要があります。

 そして、御指摘の令和九年度までの過程、すなわち、五年間の防衛力整備計画、四十三兆円については、自民党における行財政改革を含めた財源調達の見通し、また景気や賃金などの動向及びそれに対する政府の対応を踏まえて、閣議決定した枠組みの下で税制措置の実施時期等を柔軟に判断する、こうしたことが政府・与党としての方針であります。

 自民党においても、更に内容の具体化を進めていきたいと考えております。

萩生田委員 将来の安定的なスキームはできたけれども、そこまで最大限の努力をせよというのが総裁としての御指示だと思いますので、しっかり努力をしたいと思います。

 次に、子供、子育て政策について伺います。

 これは、何か特効薬があるわけじゃないので、一つ一つ解決していかないと少子化問題の解決にはつながらないという問題意識を持っています。

 昨年の出生数は八十万人を割り込む公算が大きくなるなど、厳しい少子化の現状も踏まえ、来年度予算には出産一時金の八万円増額が盛り込まれました。その結果、皮肉なことに、四月から出産費用を値上げするクリニックが相次いでいるといった報道もあります。これでは、せっかくの八万円も結局は子育て世帯の手元には届かないということになりかねません。そうであれば、給付を行うタイミングを、出産時ではなく、多くの自治体が実施している例えば三か月健診や六か月健診のときに給付をするなんという手もあるかもしれません。

 こう言うと、何か産科の先生方がすごくがつがつしているんじゃないかと誤解をされてしまうんですが、そうじゃないんですよ。そもそも産科の医師が足りないわけですね。したがって、限られた医師の中で出産を支えていかなきゃならない、結果として費用がかかる、これの繰り返しを今までやってきたんだと思います。私は、岸田内閣の目指す新しい資本主義、足らざる人は国家戦略としてしっかり育てていく、この医師の養成も同時にやっていかなくてはいけないと思っております。

 その上で、例えば、子育て支援、少子化につながるであろう住宅の支援というのも考えていかなきゃいけないと思っています。

 公営住宅は、公営住宅法に基づいて、本来は、住宅に困窮する低額所得者に対し低廉な家賃で供給するもので、入居には収入要件がありますが、これを大幅に満たさない高額所得者が住み続けている事例も散見されます。そうした方々の事情というのは様々ですから考慮しなくてはならないんですけれども、本来の趣旨とは違う方たちがいらっしゃるという問題も、まず一つあります。

 その上で、このパネルを見ていただいても分かるように、実は、公営住宅は全国で二十万戸が空き家になっているんですね、北海道から沖縄まで。私は、今までの公営住宅法の概念を超えて、条例などで若い世帯に貸出しをしている自治体も少し出てきましたけれども、これは国の政策でやったらどうかと思うんです。

 まだ収入が少なくて、しかし、収入が少ないといいながら、若い二人が合算しますと要件を満たさない場合があるわけです。そうじゃなくて、もう思い切って、新婚家庭の人たちで希望があれば貸したらどうですかね、空いているんですから。そして、これは、同じ人たちとのスキームじゃなくて、新婚の場合は十年間でしっかり計画を立ててもらって次へ行くというようなことを考えたらどうかと思うんです。じゃ、次へ行くといったって、十年のうちに子供が増えて大変じゃないか、奥さんも育休、産休に入って、奥さんもと言うと問題ですね、御主人もあるかもしれません。こういった形の中で、十分な収入が確保できないということもあるかもしれない。

 その次は、全国に三百五十万とも四百万とも言われている空き家問題、これを解決しなきゃなりません。空き家を持っている人たちで収入を得たいと思っている人たちはもう賃貸に回しているわけですから、この三百五十万から四百万には、その収入を得たいという人じゃなくて空き家になってしまっているという人たちが多分にいらっしゃるんですね。

 例えば、東京でもう家を持ってしまって、実家の方は、両親が住んでいたけれども他界をしてしまって、空き家になっている。今すぐ壊すと、これは税制の問題もありまして、平地にすると税金が上がるという問題もありますけれども、しかしながら、他人様に貸すよりは、しばらく置いておいて、もし子供が独立したら建て直してでも使おうかとかと、みんな事情が違うんだと思うんですよ。

 知らない人に貸すというのはなかなか不安なんですけれども、ここに公が入ると、皆さん、すごく安心感を持ってくれるんです。私、国交大臣やこども大臣との連携で、子育て支援住宅というカテゴリーで、空き家をサブリースしたらどうですか。そして、若い世帯で、収入がなかなかまだ上がらないけれども子育てで頑張っている人たちに、一定の期間、こういう空き家をあっせんしてあげる、低廉な料金で貸してあげる。そして、持ち主の方は、固定資産が減免になって、負担がなければ、いいですよという人は必ずいますよ。是非こういう発想で若い人たちの応援をしていただきたいと思います。

 既に頑張って始めている自治体もあるんですけれども、これは、国がちゃんとルール、制度をつくってあげないと、自治体の長の判断でやれといってもなかなかできないと思います。四月にこども庁が発足する機会を捉えて、国としてこの政策を前に進めていただきたいと思いますけれども、斉藤国交大臣の見解をお伺いしたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 公営住宅の空き室、それから民間の空き家、これを子育て世帯に役立ててはどうかという御提案、大変重要な意義ある提案だと受け止めました。

 まず、公営住宅についてですが、入居後に高額所得者となって公営住宅本来の対象から外れた方に退去を促して入居可能な住居を増やした上で、子育て世帯が優先的に入居できる取組を地方公共団体と連携してこれから拡大してまいりたいと思います。

 その際、将来的に新たな子育て世帯に入れ替わることも考慮して、入居期間を一定期間とすることも有効であると考えており、このような事例を国から地方公共団体に提供し、同様の取組の実施を働きかけてまいります。

 一方、民間の空き家についてでございます。今、いろいろな御提案がございました。

 空き家所有者に活用の意向が必ずしもなく、有効に活用されていないケースがたくさんございます。このため、空き家法の改正も視野に入れまして、NPO等の民間主体が所有者に寄り添った相談対応やサブリースを行うなどの空き家の活用を図る活動を後押ししてまいりたい、そういう体制をつくっていきたいと思います。

 その際、民間ですので、子供がいることで入居を拒まれる、こういうケースがたくさんございます。入居を拒まない民間の空き家を登録していただいて活用いただく住宅セーフティーネット制度におきまして、入居者の負担軽減策の充実を図りつつ、共同賃貸住宅のみならず、空き家の多くを占めている戸建ての活用も促していきたいと思っております。

萩生田委員 これは、是非、こども庁と連携して、しっかりとした国の政策、制度として発信をしていけば、必ず協力してくれる人はいますよ。だって、四百万のうち一割の人が協力したって四十万戸の住居が出てきますよ。公営住宅の二十万戸と合わせたら六十万世帯が、直ちに入居できる家を若い人たちに提供できるじゃないですか。是非検討をお願いしたいと思います。

 昨年、地元の保育所を訪問した際に、保育所を利用しているお子さんが満三歳になると幼稚園に移るケースがあって、そして、四月一日時点で確保した保育士さんを維持するのが大変だという、そんなお話を聞きました。

 幼児教育無償化のときには、言うならば、幼稚園、保育園以外の園について応援するべきだということを、当時、私、幹事長代行として提案して、おかげさまで、政府はそれをしっかりのみ込んでくれました。

 一方、これはちょっと盲点だったんですけれども、要は、二歳の保育園児が途中で満三歳になった段階で保育園に残っていると、これは保育料はずっと払うんです、もちろん。ところが、例えば幼稚園に転園する、要するに、放課後の預かり保育をしてくれる幼稚園だったら今の保育園とほとんど時間が変わらないといって転園しますと、預かり保育の部分は自己負担になりますけれども、幼稚園の費用はただになるんですよ。

 これは、やはり縦割りの大きな弊害だと私は思います。幼児教育、保育の無償化、三歳と言ったんですから、これは三歳に合わせてやはり保育の方も助けてあげないと、こういう事態がどんどん出てくると保育園の運営が厳しくなってしまうということを私は心配しています。

 ちなみに、認定こども園は一型、二型の人たちが同居していますから、同じ認定保育園の中の二歳のクラスでも、無償の子と有料の子が出てくるわけですよ。これはやはり、小倉大臣、直ちに改善するべきだと思います。

 それから、職員の配置も大切だと思います。御案内のとおり、保育園では今、五歳児三十人に一人です。実際には、どこの自治体も上乗せ、横出し、努力をして加配をしていますけれども、小学校を三十五人にしたんですよ。小学校に入る前を三十人を一人で見るって、これはちょっと現実離れしていると思います。補助制度はあるとはいえ、これはルールの見直しをしていかないといけないんじゃないかと思います。

 こうした現実的な課題に対応していかないと、せっかく待機児童対策で増やしてきた保育所も経営が続けられなくなってしまうのではないか。地域の子育て支援の拠点が失われることになれば、それこそ少子化対策に逆行します。

 満三歳児に関する無償化のタイミングや職員配置の問題など、将来にわたって保育所が持つ機能が安定的に発揮されるよう、こうした現実的な課題を解決していくべきと考えますが、小倉大臣の見解を伺います。

小倉国務大臣 お答えをいたします。

 子供政策の充実は、何よりも当事者の声が重要だと思っております。今回も当事者の意見をお寄せをいただきまして、ありがとうございます。

 幼児教育、保育の無償化では、小学校入学前の三年間分、つまり満三歳になった後の最初の四月から小学校入学までの利用料を無償化をすることを基本的な考えとしておりますが、幼稚園につきましては、学校教育法上、三歳になった日から入園できること、従前から進めてきた段階的無償化でも満三歳以上の子供を対象としてきたことなどを踏まえて、満三歳からを対象としております。

 無償化に関する更なる支援につきましては、保育所と幼稚園のこうした違いに基づき無償化が実施されていることを踏まえつつ、ただ一方で、こども家庭庁、四月に発足をいたしますが、縦割りを打破をするというのが大きな役割でございますので、更に何ができるのか、必要な検討を加えてまいりたいと考えております。

 続きまして、配置基準の見直しについてであります。

 保育士等の配置基準を図っていくことは重要な課題と考えておりまして、令和五年度の予算案においても、チーム保育推進加算の拡充等を行うところとしたところであります。更なる配置改善につきましても、見える化を進めつつ、引き続き努力をしてまいります。

 子供政策の強化に向けましては、委員の御指摘も踏まえながら、総理から示された基本的方向性に沿って、私の下に設置をしました関係府省会議において、必要な政策の整理を行い、三月末をめどに具体的なたたき台を取りまとめるべく、全力を尽くしてまいります。

萩生田委員 子育て支援にも関連する百六万円、百三十万円の壁について、先にお尋ねしたいと思います。

 この十年間、私たち、女性活躍を後押しし、定年延長など高齢者雇用も推進してきました。その結果、女性の就労者は三百五十万人以上増加をし、高齢者就労も三百万人以上増えました。

 一方で、パートタイム労働者の時給は約二〇%アップしましたが、年収はほとんど増えていません。それは、時給の上昇に応じて一人当たりの労働時間も減ってしまっているからでありまして、原因は、いわゆる百六万円の壁、百三十万円の壁であります。

 かつてあった百三万円の壁、扶養控除につきましては、今は段階的に改善がされて、百五十万円までになりましたので、これは一つ解決したと思うんですけれども、一方、民間の企業では、相変わらず百三万円を家族手当の基準に使っている企業が少なくありません。税金を払う必要が生じる、配偶者控除や家族手当が受けられなくなる、そして社会保険料を払わなければならなくなる、負担が発生することを防ぐために、年収の壁の手前で抑えようとして、労働時間を調整をしてしまっているわけです。年末、あちらこちらで、労働調整でもうシフトが組めなくなってしまったという、そんな経営者の皆さんのお話も聞きました。

 パートタイム労働者の皆さんの一か月の労働時間は、二〇〇〇年頃は九十五時間程度あったものが、今や七十八時間ぐらいまで減っています。もし元に戻すことができれば、かなりの労働供給増加を見込めますし、何よりも世帯所得を増やすことができます。何としてもこの壁を打ち破らなくてはなりません。

 そのためには、壁を越えて労働時間を増やしたときに、払わなければならなくなる税金や社会保険料、これはいつかは負担してもらわなきゃならないんですけれども、例えば、五年間ぐらい免除する、控除も時限的に継続する、企業が家族手当などを継続すれば税控除する。こうした時限的措置の財源として、例えば、今NPOなどの支援に使われている休眠預金を使うことも一つの案ではないでしょうか。

 壁を乗り越えることで生じる負担をなくすため、これぐらい大胆な政策が必要となりますが、総理のお考えをお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 今の政権にとりまして、賃上げは最重要課題として取り上げているわけですが、賃上げは、消費を喚起し経済成長に資するとともに、若い世代の所得向上を通じて少子化対策にも効果的である、こうした認識を持っています。

 その際に、パートタイム労働者や非正規労働者の方々について、本人の希望に応じて活躍し、収入を増やしていけるようにすること、これが重要であり、いわゆる百三十万円の壁の問題への対応のみならず、正規、非正規の間の制度や待遇面の差の改善、非正規労働者の正規化など、幅広い取組を進めていくことが必要であると考えます。

 いわゆる百三十万円の壁については、これを意識せず働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を進めているところです。また、いわゆる百六万円の壁についても、最低賃金千円への引上げによって、被保険者について解消されていくということが見込まれます。

 しかし、それでもなお、被扶養者が扶養から外れて被保険者に転換するところで、社会保険料が生ずるために就労調整が行われる、こうした指摘があります。このことを考えますときに、議員の問題意識、これは共有するところです。このために、私自身、施政方針演説で、女性就労の壁となっているいわゆる百三万円の壁や百三十万円の壁といった制度を見直す、このように申し上げたところです。

 そして、今委員の方から、社会保険料を免除する、こういった御提案もいただきました。様々な議論をしていかなければなりませんが、直接支援するということになりますと、同様に働いている被扶養者でない単身世帯の方々との公平という問題については考えなければならないと思っています。

 いずれにしましても、問題意識、しっかり受け止めさせていただき、幅広く検討策について議論をしていきたいと考えております。

萩生田委員 これは加藤大臣とも個別でいろいろ相談してきて、今、この穴を、壁を、壁といいますか溝を埋めるのに、例えば税を使った場合どうなるだろうかといって、民間の調査会社、今日、自民党は、ネットカフェの方で、裏番組でこの予算委員会の解説を平議員たちがしてくれているんですけれども、平さんたちとの勉強会で、これを試算をしますと、一時的に税で埋めても、結果として、労働者が増え労働時間が増えると、税収はプラスになるという試算も出ております。いろいろな角度から是非考えていただいて、この壁を一緒にしっかり乗り越えていける環境をつくっていきたいなと思っております。

 時間がなくなってしまいましたので、教育人材の確保、専門性の向上を総理ともう一回確認をしたいと思います。

 総理から、昨年、教師の処遇見直しを通じた教職員の質の向上に取り組むという前向きな答弁をいただきました。私としては、質の高い学校教育実現に向けて、働き方改革の更なる加速、教師の処遇改善、学校における指導、運営体制の充実を一体的にパッケージとして推進する必要があると考えていまして、今後、党の委員会の方で議論を進め、政府に提案をしたいと思っています。

 その際、教師の専門性を高めることも大切でありまして、例えば、いじめや不登校の増加、貧困の課題に対して、スクールカウンセラーですとかスクールソーシャルワーカーといった専門スタッフは学校に常時いるわけではありません。心理や福祉などの専門知識を持った教師が常にいることによって、子供たちが必要なときにいつでも相談できるような体制が必要だと思います。

 実は、スクールカウンセラーというと、スクールカウンセラーという資格があるのかと思う人がいるかもしれないんですけれども、そうじゃないんですよね。たまたま学校に来ていただいているこういった心理の専門家をスクールカウンセラーと呼んでいるので、別の国家資格なんです。

 私は、教員の皆さんが教師としてこれから仕事をしていく上で、もちろん、それぞれの教科、スキルをしっかり持ってもらうことも大切なんですけれども、一定程度勉強すればこういう心理のことも知っている先生を増やすことができるんじゃないかと思います。

 慌てて現場に出す必要はなくて、しっかり勉強してもらって、いつでも学校にそういう専門家がいるという環境をつくらないと、ソーシャルワーカーに相談したいけれども、来週の水曜日の午後三時十分から十五分ねと言われても、担任の先生はとても、自分のクラスの子をその先生に来週の水曜日の三時十分からだけお預けするということでは解決しないと思います。

 家族の構成だとかいろいろな背景を知っている人たちがいて初めて問題の解決ができると思いますので、教師の処遇や指導体制の改善、教師の専門性の向上に向けて、改めて総理のお考えをお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 教師は学校教育の充実発展に欠かせない存在です。

 御指摘のように、教育の質の向上に向けて、学校における働き方改革、処遇の改善、学校の指導、運営体制の充実、こうしたことを一体的に進めるとともに、教師の専門性を高めることが重要となります。

 このため、学校の働き方改革を進めつつ、小学校における三十五人学級の計画的な整備、高学年教育担任制の推進、教職員定数の改善、教師をサポートする外部人材の配置の充実等の環境整備に取り組んでいるところですが、これと併せて、本年度実施の勤務実態調査の結果等を踏まえて、教職員の処遇見直しを通じた質の向上に取り組んでまいります。

 そして、御指摘のとおり、学校において心理等の分野の専門性を有する人材が日々子供の教育に当たること、これは重要なポイントになります。

 このような観点から、教師について、教職の専門性に加えて心理、福祉分野の専門性を身につけられる教員養成が制度的に可能になるように、改革を進めていきたいと考えます。

萩生田委員 是非お願いします。

 最後に、原発についてお伺いします。

 年末のGX実行会議で岸田総理が原子力の最大限活用を打ち出したことを、私は高く評価します。ただ、再稼働だけでは原子力人材が枯渇しかねません。大きな課題があります。また、二〇一一年の福島第一原発事故を決して忘れてはなりません。安全性は全ての大前提です。

 そこで、今、再稼働しようと思っている原発は、あの事故が起きた時代と何が変わったのか。そして、原子力の再稼働を進める上で、安全性や経済効果を発信していくべきではないかと思います。また、今後のGXを進めていく上で、リプレースの具体的な推進など原子力の活用に向けた取組について、総理にお伺いしたいと思います。

 また、原発を再稼働したらどれだけ電気代が下がるのか、西村大臣にお尋ねしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、今、世界的に歴史上初のエネルギー危機に直面していると言われています。

 その中で、エネルギー政策については、エネルギーの安定供給と脱炭素、これをいかに両立させるか、こういった視点が重要だと思います。我が国の厳しいエネルギー供給の実情を踏まえると、再エネ導入を最優先としつつ、原子力を含めたあらゆるエネルギー源の活用、これを進める必要があるという認識を持ちます。

 年末で示したGXに向けた基本方針では、原子力について、安全性の確保、これを大前提に、既存の原発の再稼働や運転期間の延長、そして廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え、最終処分を含めたバックエンドに政府を挙げて全力で取り組む、こうしたことを盛り込みました。

 安全性については、厳しい規制基準の下で、電源や冷却手段の多重化等、抜本化を行っています。さらに、次世代革新炉では、抜本的に安全性を高めるための新たなメカニズムの実現、これを目指している次第です。

 原発のサプライチェーンは多岐にわたり、極めて高い水準の技術そして人材が求められます。このため、再稼働や次世代革新炉の開発、建設は、立地地域を含めた経済への波及効果に加え、具体的な物づくりの技術、この高度化にも資します。

 そして、原発の効果については経産大臣の方からお答えをさせます。

西村(康)国務大臣 お答えします。

 規制料金の水準は、各電力会社の電力構成、燃料費、人件費など様々なコストの積み上げで決まっておりますので、今回の値上げの申請幅につきましても、電力会社ごとに異なっています。

 そして、原子力発電所が再稼働した場合の電力料金への影響でありますけれども、不確定な要素も多いことから試算は困難でありますが、原子力発電所の再稼働が進み、火力発電の燃料費が抑えられれば、電力料金の抑制に寄与するものと承知しております。

 その上で申し上げれば、原子力の再稼働が進んでおり、規制料金の算定上の原子力発電量の比率が高い電力会社、関西電力二三%、九州電力三九%、四国電力一九%と想定されておりますけれども、これらの電力会社におきましては、規制料金の水準や燃料費調整制度による値上がり幅は、これまで他の電力会社よりも低く維持されてきております。今回、関西電力、九州電力では値上げ申請もなされておりません。また、四国電力におきましては、今回の認可申請における値上げ幅を他の電力会社よりも低く抑えられております。

 ちなみに、関西電力、二〇二一年度の原子力比率は、想定の二三%よりも高い二八%ということで、関西電力は、二〇一七年、高浜三、四号機の再稼働を踏まえ、三%の値下げを行っておりますし、二〇一八年、大飯三、四号機の再稼働を踏まえ、四%の値下げを行っております。

 いずれにしましても、原子力の再稼働を進め、安定的な電力料金の実現を目指していきたいというふうに考えております。

萩生田委員 終わります。

根本委員長 この際、牧原秀樹君から関連質疑の申出があります。萩生田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 令和五年の国会がいよいよ本格的に、予算委員会も今日から始まるということでございます。

 この令和五年という年は、恐らく、将来、未来から見たときに、非常に重要な年だったと記憶される年になるのではないかと思います。

 間もなくロシアがウクライナに侵略を開始してから一年たとうとしておりますけれども、いまだこの戦争の終わりは見えていない、こういう状況です。また、世界を見回しますと、今年、インドが中国を人口で抜かす、こう言われております。様々なパワー・オブ・バランスが大きく変動をしております。

 また、大体時代の転換期に起こると言われております世界的なパンデミック、今回は新型コロナウイルス感染症ですけれども、これも三年間続いてきましたが、先日、五月八日から五類に変えるということが決定をされ、いよいよコロナは終わって新しい時代を迎える、こういうようなことが予想されております。

 こうした時代の大転換期、非常に厳しい時代における私たち国会議員の責任というのは与野党超えて非常に重いものだと思いますし、また、岸田総理を始め政権の皆様にも、この我々の厳しい時代の責任をしっかり担っていかなければいけない、こういう思いでございます。

 総理は、令和三年の十月四日に第百代の内閣総理大臣として御就任をされ、現百一代内閣総理大臣でございます。

 今日、一月三十日で在職が四百八十四日ということで、一昨日、民主党の野田佳彦総理大臣を超えました。このことによりまして、歴代の内閣でも長期政権だった小泉政権、そして、二〇一二年の政権交代後の安倍政権を除けば、二〇〇〇年の四月五日に御就任された森総理以降では岸田総理が三番目に長い、こういう政権になっているわけでございます。そして、今年の四月には宏池会の先輩であります大平総理、そして七月には宮沢総理を超えるということになります。

 逆に言うと、そのぐらい日本の総理大臣というのは非常に重責で、そして一年強で辞められることが非常に相次いでいるということでございまして、私は、世界の中において、一年ちょっとで総理大臣がやはりころころ替わるようでは、国としての存在感はなかなか示せない、こう思います。

 そういう意味で、総理は今、長期政権の入口に立って本年を迎えるということだと思います。改めて、この令和五年の年頭において、岸田総理御自身の、日本国の総理大臣としての歴史的な使命をどうお考えか、お答えをお願いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 委員おっしゃるように、我々は歴史の転換点を迎えて、国際社会の平和の秩序が今弱体化している、さらには、我が国を取り巻く安全保障環境も戦後最も厳しく複雑な環境の中にある、また、気候変動問題、感染症対策、あるいは世界で生じている格差の問題など、こうした広い意味での持続可能性の問題、さらにはグローバリゼーションの変質、変容、こうした現実に直面をしています。

 こうした時代に政治家あるいは内閣総理大臣の職責を負う者として、これ以上先送りできない様々な課題に正面から、そして愚直に向き合い、一つ一つ答えを出していく、結果を出すことが重要であると認識をしています。

 よりよい日本、これを次の世代にしっかりと引き継いでいく、これが歴史的な使命であると認識をしております。

牧原委員 改めまして、そのような歴史的な使命を負っているという中でありますが、私は、二〇〇五年の初当選以来ずっと、駅に立ったり、つじに立ったり、また様々なイベントに出たりしておりまして、こうすると、だんだん世論の雰囲気というのが肌で分かるというようになってくる気がします。

 そしてまた、三年ぶりにこの年末年始は新年会や忘年会が復活をして、恐らく多くの国会議員の方が忙しくそうしたイベントに出られたということで、そこでまた直接的にいろいろな意見を聞く機会が久々に多かったというふうに思います。

 この感じたことによりますと、私は、非常に厳しい、特に自民党や政権に対する厳しい風やあるいは意見というものを感じました。そして、これを考えると、二〇〇九年のことを思い出すような厳しさというのをやはり感じたような気がします。

 御承知のとおり、二〇〇九年に総選挙が行われて、二〇〇五年の選挙で自民党は二百九十六議席を獲得しましたが、当時、二〇〇九年では百十九議席ということで、三分の一とはいきませんが、そのぐらいの大惨敗を喫して民主党に政権交代をしたわけです。もちろん、その後二〇一二年の選挙では、そのときの選挙では三百八議席と歴史的な大勝をした民主党は、今度は九十七議席、これは本当に文字どおり三分の一以下になって、政権交代が起きたわけです。

 何が申し上げたいかというと、今、世論の動向によっては、特に小選挙区制度では一気に政権が揺れ動くという可能性があるということでございまして、改めて、先ほど萩生田政調会長からもありましたけれども、やはり、政権交代後十年たって、改めてこの二〇〇九年の政権交代時というのを私はかみしめる、こういう必要があるんだというのがこの世論の厳しい風に表れていると思っております。

 今日は、政権を失ったときに、翌年、谷垣総裁が言った総裁演説を、資料でお配りをさせていただきました。私、これは座右の銘としていつも置いておりますけれども、このときに、我が党が与党の座に長くいたがためにそこに安住して政権運営に緊張感を失い、内部対立をさらけ出し、的確斬新な政策の実行が滞ることになったとき、そして、一部の人間が利益を分配して、内輪の権力闘争に明け暮れる、もはやそんな自民党とはきっぱりと決別します、国民から遠いところで政治が行われている自民党であってはならないというふうにあります。

 こうした当時の総括を思い出しながら、先日、菅前総理が総理の派閥離脱について御指摘をされました。私は、こうした派閥離脱についても、二〇〇九年のときには自民党は三役全員が派閥を離脱するというようなこともやってきたり、小泉総理や安倍総理は派閥を離脱したという菅総理の指摘もございます。改めて、岸田総理の派閥離脱についての指摘に対する思いをお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、谷垣元総裁の言葉ですが、内輪の権力闘争に明け暮れる自民党とは決別する、国民から遠いところで政治が行われる自民党ではあってはならない、この言葉については、国民政党であり、そして同時に責任政党である自民党にとって、最も大きな原則を述べられたものだと思います。そうした思いを改めてかみしめなければならない、委員の御指摘、そのとおりだと思います。

 自民党という政権内部で権力闘争している余裕はないほど、日本を取り巻く状況、先ほど申しましたように、緊迫度を高めています。派閥のありよう、性格、これは時代とともに変化していますが、その中にあっても、国民の皆様から疑念や批判を浴びるようなことはあってはならない。疑念や批判を浴びることがないよう、派閥との関係についても適切に対応しなければならないと考えています。その上で、緊張感を持って、先送りできない政策課題に一つ一つ取り組んでいきたいと考えます。

牧原委員 私、林大臣と一緒に中国の古代の様々な古典を勉強する勉強会の中で、貞観政要というものがございまして、それは、とにかく厳しい意見も、むしろ厳しい意見こそ耳を傾けるのがリーダーの使命だ、こういうものでございます。改めて、派閥の問題ということも含めて、総理には、先ほど申し上げたように長期に政権を担われるというふうに思いますので、是非そうした様々な御意見を聞いていただくようお願いを申し上げます。

 改めて、チルドレンファーストの勉強会というのを中堅そして若手でやりまして、これは自見さん、山田さんという参議院議員の方が事務局を務め、木原官房副長官と私が代表世話人を務めて、そして、子供を取り巻く様々な問題を考えたときにこども庁が必要だと当時の菅前総理に提言をさせていただきました。それが一つのきっかけとなってこども家庭庁の創設が決まり、今年の四月一日にはいよいよ発足をする運びとなっております。

 この勉強会で、総裁選のときに当時の総裁候補の方をお招きして、子供政策についての御意見を伺った中、当時の岸田総裁候補は、子供政策にはしっかりと力も入れ、また予算も大幅に増やしていきたいと、すごく自らの子育て経験も触れながら語っていらっしゃったことを大変力強く感じた次第でございます。

 そして今年は、とにかく子供については次元の異なる政策を強化していきたい、こういうようなことをおっしゃっていただいて、その本気度もうかがえる次第でございます。

 他方で、若い人に話を聞くと、例えば、子供の予算を増やしても結局この借金が将来自分たちに回ってくるんじゃないか、あるいは、年金は将来自分たちはもらえないんじゃないか、そして、もらえないのに年金保険料や税金だけは一方的に上がるんじゃないか、こういう不安感をおっしゃって将来に不安を抱く方が非常に多いことも、これまた事実でございます。そういう意味で、この財政、財源の問題というのは非常に大切です。

 そしてまた他方で、防衛のことについて、昨年、自民党でもかなりの議論が行われましたけれども、総理がリーダーシップを発揮されてまとめられた歴史的な防衛三文書、この中の中核でもあります国家安全保障戦略において、初めて国家安全保障戦略として財政基盤の強化、ここが明記されました。

 具体的には、我が国の経済は海外依存度が高いことから、有事の際の資源や防衛装備品等の確保に伴う財政需要の大幅な拡大に対応するためには、国際的な市場の信認を維持し、そして、必要な資金を調達する財政余力が極めて重要となる、こうあります。

 私は、いろいろな政策で、政治は時に理想主義や希望的なものを、楽観的なものを述べることも必要だと思いますが、財政とか防衛というのは、大丈夫だろうと楽観してはいけないものの二つだと自らは思っております。そういう意味で、国家安全保障戦略の中に財政余力をきちんと残すことが大事だということが明記されたのは非常に大事なことだと思っております。

 総理は防衛費に関連して、将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が将来世代への責任としての対応ということを施政方針演説でもおっしゃっておりますけれども、改めて、子供関連予算の財源確保への方針や決意、そして財政基盤強化そのものに対する思いをお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、経済財政運営に当たりましては、有事に十分耐えられる財政基盤を平時より備えること、これが不可欠であり、だからこそ、財政運営に対する市場の信認が将来にわたって失われないよう、経済再生と財政健全化の両立に取り組んでいく必要があると考えます。

 今回の防衛力強化についても、国民の命、暮らし、事業を守るために、我が国の防衛能力を抜本的に強化するためには、責任ある財源を考えるべきであり、将来世代に先送りするのではなく、今を生きる我々が対応すべきであると考えました。

 そして、子供、子育て政策についても、まずは充実する内容を具体化した上で、この具体化した内容に応じて、社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方、こうした財源について、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくのか、これを考えていきたいと申し上げています。六月の骨太方針までに、将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠、これを提示いたします。

 そして、先ほど若い方々の不安ということが御指摘ありましたが、だからこそ、政策における様々な持続可能性の問題が、今の時代、重要だということを申し上げている次第です。

 経済財政ということにつきましても、一貫して経済あっての財政だという立場を申し上げてきました。この基本に立って、新型コロナや物価高騰等、足下の経済状況に機動的に対応する、これは重要だと思いますが、それと併せて、財政や社会保障制度の持続可能性への信認が失われないよう、歳出と歳入両面の改革を続けて、責任ある経済財政運営に努めていくことが重要であると認識をしております。

牧原委員 今の総理の明確なメッセージというのは私は非常に重要だと思っておりまして、やはり、国際的な信認、そして将来への不安の除去、これに努めていただきたいと思います。

 岸田内閣発足後の最初の予算委員会で、私、高市当時政調会長の後に質問をさせていただきました。これは令和三年十二月十三日のことでございました。そのときに、いじめ、虐待、不登校、子供の貧困等を、子供を取り巻く環境というのは非常に厳しくなっているということをフリップでお示しをしましたが、そのときには、岸田総理には、政権の最重要課題として取り組むということを答弁いただきました。

 昨年、令和三年のデータが出てきたので、改めてアップデートさせていただきますと、いじめの認知件数につきましては、令和二年に一回減ったんですが、令和三年は再び増えて、令和元年と並ぶ過去最多に近い、こういう状況に戻ってしまいました。そして、児童虐待の相談対応件数についても、伸びは少し緩やかになっているとはいえ、過去最多を更新するという状況になっております。

 次に、学校に行かないという不登校の児童生徒ですが、こちらに至っては、令和二年から令和三年に大幅にむしろ増えまして、初めて二十万人を超えて、二十四万四千九百四十人と過去最多を記録しておりますし、また、新型コロナが不安だということで学校に行かれないという方も含めて、長期欠席者の方は大幅に増えているという状況でございます。

 政府の方に聞くと、いろいろやっているんだということで、確かに、オンライン授業をなかなか学校へ行けない子には取り入れていただいたり、カウンセラーの方が御活躍いただいたりするんですけれども、正直、私も子供がいるんですけれども、なかなか、そういう問題、問題ではありませんが、学校に行けないという悩みを抱えた立場の人たちからすると、実はそんなに解決策が見えるというものではありません。

 したがって、私は、このことについては、やっている、やっているというふうに言うのは一回ちょっとリセットして、つまり、やっているのならこれは減って解決に向かっているはずなんですけれども、残念ながらそうではありません。もちろん、令和三年は岸田総理が就任をされたのは最後の二か月でございますので、この後のデータからが本格的な岸田政権としての実績になっていくわけですけれども、しかし、一年待ってどうなるかを見るというような余裕のある段階では私はないと思います。この子供たちは将来を担う子供たちでございます。

 改めて、この不登校の問題、学校になかなか行けないという問題については、非常に重要な問題として、担当大臣をつくる、あるいはほかの手段でも結構ですから、改めて、岸田政権として最重要課題として取り組むんだという総理の御決意をお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 不登校の児童生徒が増加をし、多くの子供たちが学校の学びから置き去りにされている状況、これは誠に憂慮すべきことであり、喫緊の課題であると考えます。

 そして、やっている、やっていると言うだけでは駄目だ、そのとおりなんですが、ただ、努力は来年度の予算の中でも引き続き続けているということで、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の充実、あるいは新たにオンラインカウンセリング等の実施、不登校特例校の設置準備、こうした様々な取組は続けています。

 そして、今後のことを考えた場合、この不登校の問題、さらにはいじめや虐待というものは、教育とそして福祉、両方にまたがる課題であるという視点が重要だと思っています。こども家庭庁の下で、こども政策担当大臣を中心に、教育と福祉、両方にまたがる課題について、子供の立場に立って、悩んでいる子供たちをしっかりと受け止めて、誰一人取り残されることなく政策を進めていく、新しい組織をしっかりと活用する形でこの問題に正面から取り組んでいく、こういった姿勢を改めて確認をしていきたいと考えております。

牧原委員 是非最優先で取り組んでいただきたいんですが、これは、一部の方は、やはり学校教育の在り方と今の子供たちのニーズだったりやり方というのがずれていて、必ずしも学校に行かせるというような強制的な考え方が今適切ではないということもございます。是非、子供の多様性だったり今後の社会の多様性だったりということも考慮に入れていただきながら、問題の解決をしっかりと、我々もやりますので、やっていきたいと思います。

 先ほどちょっと平和の話をしましたけれども、第二次世界大戦後、あるいは大戦中からなんですけれども、なぜ、第一次世界大戦で反省し、いろいろなことをやったのに、また第二次世界大戦が起こってしまったかという反省の中で、貧富の格差等がある、貧しさというのが戦争につながってしまう。こういう反省の下、ブレトンウッズ体制と言われるIMFや世界銀行という体制を一方でつくり、そして、ハバナ憲章等で、自由で公正な貿易体制をつくっていくんだということで、ガット、そして、ウルグアイ・ラウンドを経ていわゆるWTOというものにつながっていったということがございます。

 私は、これを、日本にとっても貿易は鍵であり、また平和の鍵だという思いで、民間時代は通商法の専門弁護士として活動もさせていただいた次第でございます。

 現在、こうした努力をやってきたんですけれども、WTO自体が停滞をし、各国がまたWTO協定上明らかに違反ではないかと思われる自国優先の貿易措置を取り始めているという状況でございます。

 この点、総理も、そしてまた林外務大臣も、様々、やはり法に基づく、ルールベースドの秩序が大切だとおっしゃっていただいておりますが、WTOを補完するものとして、フリー・トレード・アグリーメント、日本ではエコノミック・パートナーシップ・アグリーメント、EPAを推進してきて、各国ともそれをやっております。これは私非常に重要だと思いますが、この路線で日本はやってきて、そして、CPTPPやあるいはRCEPなど、本当に難しい交渉もやってきたのは事実だと思います。

 その際、いろいろなメリットがありますよと説明をしてきたわけですけれども、改めて、日本がこうした過去のFTAについてどういうメリットを得てきたのかという総括をここでいただきたいと思います。

西村(康)国務大臣 お答えします。

 まさに御指摘のように、世界的に保護主義が台頭している中でも、日本は自由貿易の旗を高く掲げ、まさにリードしてきたわけであります。

 具体的には、御指摘のCPTPP、RCEP、日・EU・EPA、さらには日米貿易協定などを含め、EPA等の締結国の貿易額は日本の貿易額全体の約八割を占めております。また、これらの国々は世界のGDPの約八割を占めるということで、巨大な市場との間で貿易・投資の自由化を実現してきたと言えます。

 こうしたグローバルなサプライチェーンを強化することによって、大企業から、オンリーワンの技術を持つような、まさに我が国が誇る中小・小規模事業者まで、幅広い事業者、企業にとって、世界を舞台に大きなチャンスが広がってきております。

 結果として、例えば、ASEANとのEPAが二〇〇八年末に発効してからコロナ危機までの十年間で、日本からASEANへの輸出額は約一・五倍に増加をしております。さらに、昨年一月に発効したRCEPでは、自動車部品など鉱工業品から酒などの食品まで、幅広い分野において日本から中国、韓国に輸出する際の関税が削減され、日本のメーカーが輸出を大きく増やし始めております。

 こうした関税削減のメリットに加えて、デジタル、知財、投資、政府調達、通関手続などを含むいわゆるルールですね、CPTPP等で合意されましたハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていくことによって、例えばコピー商品を防ぐ、あるいは投資が保護される。こうした、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の構築、それに基づく地域の安定、そして繁栄の確保につながってきたというふうに考えております。

牧原委員 非常に大きなメリットがあったということだと思いますし、今、世界で平和が揺らいでいる中では、やはり経済でしっかりいろいろな民間交流も含めてあるということは私は平和構築に非常に重要で、日本が法に基づくそうした公正な貿易体制や経済体制をつくっていくということは非常に大事だと思っております。

 今、八割という話がありましたけれども、例えば南米とかアフリカとか、そういうところとはまだまだなんです。

 今日は資料で、人口の多い国ということで、一九五〇年、二〇二〇年、二〇五〇年、二一〇〇年と、比較の表を配らせていただいておりますけれども、二〇二〇年、現在、日本は残念ながら昨年か一昨年に人口が多い十位からは落ちまして、十一位ということになっておりますが、二〇五〇年になると、例えばアフリカの国は現在三か国ぐらいしか入っていませんが五か国に、それで、二一〇〇年になると七か国に。これは上位十五か国という表ですけれども、つまり、世界人口はどんどんそうした途上国にシフトしていってということになります。

 先日、私、アフリカ議員連盟の事務局長としてセーシェルとモーリシャスにもお伺いしまして、モーリシャスでは、アフリカのほとんどの国と自由貿易協定を自分たちがやっていて、是非ともうちとFTAをやってくれなんという申出もあったんです。

 是非、今後、途上国も含めて更に自由貿易体制を構築していくと考えますけれども、政府の方針をお伺いします。

林国務大臣 今、牧原委員から御指摘がありましたように、経済連携の推進、これは、貿易・投資の促進という経済的意義にとどまらず、相手国との二国間関係の強化、また、今お話のあったルールに基づく自由で公正な経済秩序の構築、こういった外交的、戦略的意義も有する重要な取組です。

 直近で、昨年、イスラエルとバングラデシュ、それぞれとの間で、両国との貿易・投資関係強化の重要性を踏まえまして、あり得べき経済連携協定に関する共同研究の立ち上げが決定をいたしました。今お話のあったメルコスール等の南米諸国、また、モーリシャス等のアフリカ諸国との経済連携協定についてお話がありましたが、メルコスールとの経済連携協定については、年始に私がブラジル、またアルゼンチンを訪問した際にも、政府や企業関係者から関心が示されたところでございます。こうした国々との経済関係強化の在り方について、国内の様々な意見も踏まえながら、引き続き検討してまいりたいと思います。

 自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを我が国は発揮してきておりまして、外務省としても、関係省庁と連携して、戦略的観点、これを踏まえながら必要な体制を整備しまして、経済連携を推進していきたいと考えております。

牧原委員 ありがとうございます。

 実は、TPPとかRCEPは、TPPの場合には専門の大臣、当時は甘利大臣でしたけれども、外務省ではなく、そこに交渉体制を置きました。RCEPの場合は、経済産業省がヘッドになってやりました。総理には、外務省だけがヘッドでやるとロジの関係でちょっとマンパワーが足りないということもありますので、是非、戦略的に必要なものは、そうした特別な体制を築いてでも、いち早くやっていただきたいと思います。

 FTAとかの場合には、メリットもありますが、デメリットもありまして、例えば韓国、同じような産業がある韓国が先に結ぶと、そっちとは関税が優遇されたり手続が優遇されるのに日本は重荷を負うということになれば、不利益を被る場合もありますので、是非ともそうしたグローバルな視点での体制を築いていただきたいと思います。

 環境政策についてちょっとお伺いをします。

 私、環境政務官をやって以降、環境政策には力を入れていまして、というのは、どんなにいろいろなことがよくても、地球自体が壊れたら、これは元も子もないわけです。やはり、地球温暖化の問題というのは、我々が遠い将来まで向かってこの地球を守るという責任がある、こういう話だと思っております。

 菅前総理がカーボンニュートラル二〇五〇年を打ち出され、そして総理はGX政策というのを新しい資本主義の中核として位置づけられて、大幅に予算も増やすなど、本当に隔世の感を持って、この環境政策が進められていることに、私は本当に意を強くしているところでもございます。

 最後は、しかし、この政策を担っていくのは人でございます。例えば、原子力政策につきましては、十年強なかなか原発の再稼働が進まない中、総理がその方針を転換されたわけですけれども、しかしこの間、なかなか若い人が原子力分野に、これを将来の仕事としていこうという人材供給が細っているということを、現場で、あるいはアカデミアの皆さんにもお聞きをするところでございます。

 総理が本当に、GX戦略というのを打ち出されて、そして非常に大きな決意をされている中、是非とも、原子力、あるいは私が議連の会長を務めますカーボンリサイクル、あるいは再エネも含めて、こうした分野にこれから行こうかなと思っている、悩んでいる、あるいは、今はそう思っていないけれどもそれが選択肢に入っている、こういう次の世代の若い人たちに対するメッセージを是非ともお願いします。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

岸田内閣総理大臣 歴史上初の世界エネルギー危機に直面していると言われる中で、エネルギー政策については、エネルギーの安定供給と脱炭素、これをいかに両立させていくか、これが重要になってきました。

 そして、我が国の厳しいエネルギー供給の状況を踏まえると、再エネ導入を最優先としつつ、原子力を含めあらゆるエネルギー源の活用を進める必要があります。

 こうした認識で、年末、GX実現に向けた基本方針を示したという次第です。

 今後十年間で百五十兆円の官民投資、そしてその呼び水となる二十兆円の国の投資促進策を進める中で、洋上風力を始めとする海洋エネルギーや原子力についても技術革新や実装を後押ししていきたいと考えます。

 次の世代の若者がこれらの分野に希望を持って取り組んでいこうと考えてもらえるよう、基本方針、これをしっかりと取組を進めていきたいと考えております。

牧原委員 是非、そうした若い皆さん、やはり人が大事なので、政権としてもメッセージを出していただきたいと思います。

 次に、メンタルウェルネスということについてお伺いします。

 米日カウンシルという、米国と日本が非常に様々なことについて語り合う大きな場があって、岸田総理も冒頭出席をされたものでございますけれども、そこで私はパネラーを務めまして、メンタルウェルネスあるいはリーダーシップということについてのものでした。これは自分でも余り聞き慣れないことだったので、むしろ私がお聞きする立場だったんですけれども、欧米を始めとして、メンタルヘルス、健康を超えて、メンタルウェルネスというのは、より心身健全で、判断能力も、適時にできる、適切にできるというものを保つという考え方で、グローバルではもうこれがスタンダードになりつつあるということです。

 考えてみますと、私、アメリカで弁護士事務所にいたときに、カウンセラーという人がいて、常時相談ができたり、そして月に一回は面談があったりして、皆さんが病気になるというすれすれではなくて常に心の健康というのを保つということを重視されていたことを思い出しました。

 前に小泉総理と話したときに、日本だと、むしろリーダーというのはいかに根性があるかとたたくのが何か筋になっていて、例えば、総理もそうですけれども、日本の総理大臣の国会の出席日数は世界一多いとか、それから、分刻みのスケジュールが明らかになって、そうしたこともなかなか大変であるとかという話を、小泉総理が辞められた後、話をされた思い出があります。

 アメリカの場合は、大統領というのは、別荘もあったりして、とにかく、日程もそんなに明らかではなく、常に健康でいるという、リーダーの健康というのも非常に重視する。もちろん、末端の、全ての労働者の皆様の健康も重要であると思います。こうしたメンタルウェルネスというのを私は是非日本でも広めて、そして進めるべきではないかと思います。

 例えば、こころの耳というメンタルヘルスに関する相談窓口があるんですけれども、これは〇一二〇から始まる難しいものなので、これを分かりやすい三桁の番号にするなど、メンタルヘルスを更に推し進めて、メンタルウェルネスというのを社会全体で重視するようにしたらと思いますが、政府の御見解をお伺いします。

加藤国務大臣 今、メンタルウェルネスという話がありまして、まさに精神的によりよい状態を目指していくということで、そうした視点に立って、幅広く、心身共に健康で働くメンタルヘルス対策、これを進めることが非常に大事だと思っております。

 そのため、今お話がありましたけれども、メンタルヘルスのポータルサイト、こころの耳というのがございまして、そこからは、情報発信、あるいは研修に必要な資材の提供、さらには電話、メール、SNSなどによる相談、あるいはストレスチェック制度を通じた職場環境の改善、こうした取組を行っていただいております。

 今、三桁のお話もありました。これは別途、総務省等で、有限希少な番号資源という観点からの御議論も必要だというふうには承知をしておりますけれども、ただ、メンタルの不調に至らない前に、あるいはいい状態にキープしていく、そのためには様々な相談対応というのが必要で、現在でも相談件数は増加傾向にはありますけれども、引き続き、電話のみならず、SNS等多様なツールを使った積極的な対応、また、それに対する周知広報、また、利用していただきやすい環境をしっかりつくっていく、しっかり努力をしていきたいと思っています。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

牧原委員 ありがとうございました。

 質問はほかにも用意をさせていただきました。

 例えば、今法務省で検討しております家族の在り方、これについて、共同親権を含む検討なんかをされていただいております。齋藤法務大臣の御意見もお伺いしたかったです。

 今、本当にコロナで、家族関係なんかも、なかなか愛する子供に会えないというような問題もあります。他方で、今回、DV法や性犯罪に関する罰則強化、あるいはWPSと言われている女性と安全保障、こういう問題も岸田内閣では積極的に取り組んでいただいております。

 是非とも、こうした、人のことを鑑みて、温かい心豊かな日本が実現できるようにお力を賜ることを最後にお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 この際、鈴木貴子君から関連質疑の申出があります。萩生田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 こうして予算委員会の場に立たせていただけることを大変光栄に思っております。

 私は、二十七でバッジをつけさせていただきまして、おかげさまで今年で議員在職十年の節目を迎えさせていただきました。そういった若手の世代の一人としても、これからのこの予算委員会の質疑においても、中長期的な見立て、そしてまた、世界の中の日本から世界を引っ張っていく日本、この視点とともに質疑をさせていただきたいと思っております。

 まずは農水大臣に、食料安全保障についてお伺いをさせていただきたく存じます。

 もう私が言うまでもなく、今、農業を取り巻く状況というのは、極めて不透明かつ大変厳しいものになっております。私の地元においても離農者というものが相次いでおりまして、まさに、産業のみならず、その地域全体の存亡にも関わっている、そのような危機感を抱いております。

 そういった中において、まさに新たな食料・農業・農村基本計画というものが策定の見込みであります。現行法の中で食料安全保障が、実は、不測時における食料安全保障という項目で示されております。ここで言う不測時というのは、予期せぬ事態の方の不測という漢字であります。

 この安全保障という考え方、そしてまた現状に照らしても、いわゆる予期せぬ事態、不測時に特化するのではなくて、平時からの備え、国内生産基盤の体制の強化、そしてまた確立という意味でも、食料安全保障の強化という考え方を明確に打ち出していくべきだと考えますが、農水大臣、見解はいかがでしょうか。

野村国務大臣 ただいま鈴木委員から食料の安全保障に関するお問合せがありました。

 食料の安全保障は、私も、生産者だけではなくて、消費者を含めた国民一人一人に関わる国全体の問題だというふうに思っております。

 他方で、最近の輸入食料や生産資材の価格高騰等が国内で食料製造やあるいは農業生産にも大きな影響を及ぼしておりますので、我が国の食料安全保障上のリスクは高まっているというふうに思わないといけないのではないか、こんなふうに思っております。

 まず、昨年末に制定いたしました食料安全保障強化政策大綱に基づき、輸入する食料品やそれから生産資材への過度な依存を低減していくための構造転換対策を進めるとともに、スマート農林水産業の推進なり、あるいはまた農林水産物、食品の輸出促進なり、みどりの食料システム戦略の施策を進めてまいりたいと思っております。

 ただいまおっしゃいましたように、不測時における食料安全保障というのは、現行の基本法の第十九条に制定してございまして、実はこの法律は二十年前にできた法律でありまして、現行に照らし合わせてどうかということを、今現在、食料・農業基本法の見直しの検証を行っておりまして、国民的なコンセンサスを形成しながら検証を進め、六月をめどに政策の新たな展開方向を取りまとめてまいりたいと考えておるところでございます。

鈴木(貴)委員 大臣、大臣は、農水、この基幹産業、もうまさにライフワークとして取り組まれているということで、私も日頃、御指導いただいているところであります。

 この食料安全保障において、まさに二十年前から今はもう大きく様変わりをしている。是非、大臣がここで、この食料安全保障、今のこの令和の五年に我々が掲げる食料安全保障は、平時でも有事でもないんだ、有事のための備えとしての平時があるんだ、平時をいかにしっかりと機能させていくか、それが有事の際に効果を発揮する、まさに不可欠な要なんだと。いわゆるフェーズフリー、平時でもない、有事でもない、特に、この食料安全保障においては、生産者があって、生産体制があって初めて国民の皆さんにいついかなるときも安定供給ができる、こういうことだと思っています。

 端的に、一言で結構です。平時も有事もない、食料安全保障、いついかなるときもしっかりと体制の基盤、取り組むと、一言、ストレートにお答えをいただけますか。

野村国務大臣 まさしく同感でございまして、鈴木委員がおっしゃいましたように、有事でも、それこそ今ありましたように、不測時だけの問題ではないということはもう常々考えておりまして、今回、その基本法を見直そう、その議論もしていただいておるというところだけは御理解いただきたいと思います。

 変えられるか変えられないかというのは、これは国会の方で御審議いただく話でございますので、私どもはそういう努力をしていきたいと思っております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 大臣も共通の認識をいただいているということが伝わってきた答弁でありますので、後は私どもでしっかりとまた議論を進めさせていただきたいと思います。

 この不測の事態というのは、決しておかの上だけではなくて、沖でも起こっている問題であります。日本漁船が北方四島の周辺海域で行います、いわゆる安全操業について質問をさせていただきます。

 この安全操業の枠組みでありますが、元々は、ロシアからの拿捕などを避けるために、一九九八年に結ばれた日ロ両政府間の協定に基づいたものであります。期間であるとか漁獲量、また魚種、こういったものを、毎年交渉を、政府間で決めた上で行っております。

 しかしながら、この政府間協議の実施時期、現時点で調整することができないと、ロシアが通知をしてきました。また、昨日でありますけれども、ロシアの外務省のザハロワ情報局長が、対ロ制裁など岸田政権のいわゆる、ここはかぎ括弧でありますが、「反ロ的対応により」交渉実施ができない、こういったこともロシア外務省の報道の会見において述べられたところであります。

 漁業者にとっては、この安全操業、まさに死活問題であります。なぜ、中断、漁業者が沖に出れないのかというのは彼らの問題ではなく、中断と相なった背景というものを鑑みても、漁業者への支援というものは国としての責務である、不可欠であると考えております。

 是非、漁業者への支援、速やかに行っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

野村国務大臣 現在、日ロ関係は全体として大変厳しい状況にあることはもう御承知のとおりでありますが、ロシアとの漁業交渉につきましては、我が国の漁業活動に係る権益の維持、確保の観点から適切に対応する必要があると考えております。

 議員御指摘の北方四島周辺水域操業枠組み協定に基づく操業は、地域経済にとって、また我が国全体にとっても大変重要なものだというふうに認識しておりまして、農林水産省としましては、日本漁船の操業を確保するため、外務省とも連携しながら現在も進めておるわけですが、一日も早く協議を開催できるようにやっていきたいというふうに考えております。

 その上で、現時点におきましては、羅臼の地域のスケトウダラ刺し網漁業者に対して、漁場転換等の取組に関わる経費を実情に応じて支援することといたしております。

 ただ、まだこのことにつきまして最終的にどうなっていくのか、我々農水省でやっておるわけじゃありませんで、外務省とも連携を取りながら進めてまいりたいと思っておるところでございます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 スケソウダラと出ましたけれども、あとはホッケ、そしてまたタコ漁があります。タコ漁は今の時期とそしてまた秋の時期と二段階あるわけでありますけれども、今回、スケソの方で支援策を打ち出していただいて、地元でも安堵の声も上がっているところでありますが、今、体制の維持があって初めて次の秋の漁にも出れるわけですね。今ここで支援がなければ、秋のタコ漁に出ていく人員であるとか整備であるとか体制というものは取れないんです。

 この北方四島周辺地域の皆さんというのは、まさに体を張って沖に出て、ある意味、外交の最前線で日本の国益を、権益を守ってくださっています。その北方四島隣接地域の皆さんに対しての、今のこのロシアによるウクライナ侵略を経ての様々な中で、まさにしわ寄せは、ここ永田町でも霞が関でもなく、まさに地域の暮らしに及んでいるということ、その上では支援策というものは欠かせないと思っております。

 あわせて、今、タコ漁の話が全く出ておりませんが、タコ漁の皆さんも大変不安を感じています。スケソのみならず、タコ漁、この安全操業枠組みに係る皆さんの必要な支援、しっかりと考えていくということを、大臣、一言、よろしくお願いいたします。一言で結構です。

野村国務大臣 スケトウダラの六隻分については検討も進めておりますが、これから始まるであろうタコ漁等についても、そのことは十分考えながらやらせていただきたいと思います。

 不足のところは、今日は長官も連れてきましたので、私もなかなかそこまで分かっていないところもあったものですから、長官に陪席をさせておりますので、詳しいことをお聞きだったら、今日は長官、是非答えてください。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 まさに、この安全操業枠組み、維持すべく、外務省も含めて交渉を今行っていただいておりますので、この支援策というのはあくまでも最悪の事態といいますか、そういったものだと思っております。今からこうして、大臣の答弁にもあるように、頭づくりというか心積もりをしていただいているということは、大きなメッセージになることと思っております。

 農水大臣に、最後もう一点、いわゆる国内の課題と国際協力という形で質問をさせていただきたいと思います。

 私、実は、一月の九日からエチオピアに出張に行ってまいりました。まさに農水省出身で、今自民党の青年局長も務めていらっしゃる鈴木憲和先生と私で行ってきたわけでありますが、何を見てきたかといいますと、ソマリアとの国境に近い、エチオピアのジジガというところを訪れました。学校の現場を、日本の支援、現場でどのように今裨益されているのかということ、そしてまた学校現場においての教育の問題、そしてまた給食支援の在り方、こういったものも見させてきていただきました。

 今現在、例えば私がこの短い期間訪れたエチオピアのオロミア州とソマリ州というところだけでも、約二十二万を超える栄養不良の子供たちがいます。十万人以上の妊婦、また授乳中の女性というものは緊急栄養支援というものを必要としているという切実な声というものを聞いてまいりました。

 ただ一方、国内に目を向けますと、例えばですが、脱脂粉乳の高止まり、そしてまた、今回、需要と供給のバランスが合わないということで生産現場には生産抑制をお願いをし、もっと言えば、早期乾乳、早期淘汰のために、逆に我々は今予算をつけているわけです。

 しかしながら、今、先ほど申し上げたように、世界に目を向ければ、栄養がままならない子供たち、人たちは多々いるわけです。こういったときに、まさに国内外への食料援助、これは非常に重要だと思います。

 特に今年は、我々日本はG7のホスト国であります。そういった中においても、世界の中の日本から世界を引っ張っていく日本に変わっていく、そのためにも、日本としてできること、国内課題と国際協力、これはマッチングができれば、私は双方にとってウィン・ウィンな形ではないかと思いますが、この食料援助の重要性、意義について、農水大臣、いかがお考えでしょうか。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 鈴木委員のおっしゃること、よく分かります。特に、今じゃなくてその前も、米の問題もありました。米を今、七十七万トン輸入をいたしております。一方では、農家の皆さん方には生産の調整もしていただいているわけでありますが、なぜそういうときに輸入したりするのか、七十七万トンなんか、米をとにかく作らせろというのが米作農家の皆さん方の言い方でありましたが、今回のこの脱脂粉乳の問題にしても、これを余っているならばそういう食料不足のところにやればいいじゃないかという、それはもう当然お考えになっていく、あるいは私どももそういう考えを持つこともありますが。

 しかしながら、世の中なかなかそううまくいかないものでありまして、実は、WTOなりFAOできちっとその辺の議論がされておりまして、例えばFAOでは、食料、余剰生産物は国際市場への不当な圧迫を避けるよう秩序ある方法により処理するとか、あるいはWTOでは、閣僚会議での決定では、国際的な食料援助は以下のとおりであることを確保する、ニーズに対応して行うこととか、こういうようなやはり制約がございまして、日本の方から要請もないのに送り込むということはなかなか難しい状況であります。

 したがいまして、これは外務省ともそういう話を、林大臣ともしておるんですけれども、要請がありましたなら、これは余剰の脱粉があるわけですから、是非これは、そういうのはできるんですけれども、今のこういう状況の中では、相手国からの要請がない限り、日本から押しつけるとまでは言いませんけれども、そういうような支援というのはなかなか国際制約上難しいということでございますので、是非そのところも御理解をいただきたいと思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 今、要請がないという話でありましたけれども、まさに要請をいかほど酌み取れているのかというのも私は日本が抱える大きな問題の一つだと思っておりますし、また、開発協力大綱見直しの時期であります。

 今回、何が見直しの中で大きな一つの傾向かといえば、まさに大臣が今指摘をされた要請主義からの脱却が今回の大綱の目玉の一つなんです、これは外務省からの説明でありますから。私自身も副大臣時代にODAも担当させていただきましたが、これはまだまだ、要請主義から提案型へというもの、これは大きな一つのいい転換期を迎えたとも思っておりますし、例えば新型コロナウイルスのときに日本がまさに提起をして主導したラストワンマイル支援、これというのは提案型のまさに好事例の一つだと思っております。

 このように、日本も要請主義から提案型主義へとうまく変わってきている、世界の中でもしっかり評価をいただいていると思います。食料の部分においてもまさにそれを是非推し進める必要があると思いまして、総理にちょっと今日は具体的に、この場をかりて提案をさせていただきたいと思っております。

 総理は、国連の総会の挨拶の中で、私は、教育は平和の礎という信念の下、教育チャンピオンに就任をし、国連教育変革サミットの成果も踏まえ人づくり協力を進めますと述べられました。

 そこで、先ほども申し上げたように、この間、視察のときに学校の給食を見てまいりまして、非常に給食というのは大きな意味があるなと。それは、家庭の中において子供に満足に食べ物を食べさせることができない親が、学校に行って一食ありつけるということであれば、学校に親は子供を送るんですね。

 そして、地域によっては、学校というのは子供のまさに安心、安全の居場所なんです。なぜかといえば、いまだに文化的、宗教的、そういった慣習が残っていて、例えば児童婚というものがいまだにはびこっています。女性器切除、いまだにはびこっています。

 この間、一月、私がエチオピアに行ってきたときに目の前で話していた、学級委員を務めているような十四歳の女の子、この子が、実は私は十一のときに売られたと。児童婚のまさに被害者だったんです。でも、彼女が帰ってくることができたのは、学校という場があり、そしてそこに給食がある、親も子供に一食を、おなかを満たせるためにも学校に行こうというインセンティブになる、いい好循環が生まれておりました。

 そこで、食料支援、特に学校給食に私は日本は力を入れてもいいと思うんです。

 例えば、GPEという組織があります。このグローバル・パートナーシップ・フォー・エデュケーション、教育のためのグローバルパートナーシップ、世銀が二〇〇二年に主導して設立したものでありますが、実は、日本のGPEへの拠出金の比率、G7の中でも最下位であります。

 総理、教育チャンピオンに就任をされた岸田総理でありますので、是非とも、GPEへの拠出というものを引き上げる、若しくは、エデュケーション・キャンノット・ウェート、紛争下における、緊急事態下にある子供たちにも教育をしっかりと、安定的な教育の学びの場を保障する、こういったことをうたっているECWへの新たな拠出というものをすべきではないでしょうか。この中で学校給食を進めていく、そこに先ほどの国内課題、脱脂粉乳であるとか、栄養価の高いものをしっかりと送っていく、こういったこと、是非取り組んでいただきたいと思いますが、総理、是非とも前向きな答弁のみお願いをいたします。

岸田内閣総理大臣 まず、委員御指摘のように、さきの国連教育変革サミットにおいて、国連の方から教育チャンピオンへの就任の依頼があり、受けさせていただきました。

 従来から、我が国としまして、人間の安全保障の推進の観点からも、教育分野、重視をしてきました。そして、GPEやECWへの支援、前向きに取り組むべきだという話ですが、まさにそのとおりだと思っています。

 額については、まだまだこれからなのかもしれませんが、最近の例でも、GPEを通じて、イエメンの教育回復支援のために六百二十万ドルの拠出を行っております。是非これは実績を進めていきたいというふうに思います。

 一方、ECWの方はまだ拠出は行っておりません。しかし、国連から指名を受けて教育チャンピオンに就任した私としても、新しい資本主義の下で、人への投資、これを推進すると申し上げてきたわけでありますが、どの程度が効果的なのか、これはこれから具体的に詰めなければいけませんが、是非こうした支援は行っていきたいと思っています。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 今、なぜ予算委員会の皆さんから拍手が起きなかったのか私は驚いているんですが、初めて日本政府がECWに拠出をすると前向きに表明をしていただいた、大変うれしく思っております。

 よく私たちは、御飯を食べるときに、お米粒一つ残すんじゃないよと教えられてきたと思うんですけれども、世界にはその最初のお米の一粒にもありつけない子供がいるということなんです。

 そして、今、日本ができること、是非とも新たな知恵を使って、様々な取組、挑戦をしていただきたい。

 その上で、林外務大臣に、一つ質問といいますか提案もさせていただきたいと思っております。

 今の話の中で、同時に、日本がやはり国際協力していくのであれば、日本が、日の丸が見えるということが大事だと思っております。

 エチオピアに行って、日本から来ましたと子供たちに言って、日本のイメージってみんな何と聞いたら、何と一番最初に言われたのが、チャイナと言われたんです。愕然といたしました。それだけ、日本も様々な支援をしている中で、日本の存在感というか、顔が見えていない。

 こういった意味では、例えば、今回、教育分野の支援などに関して、JICAが、GPEのグラントエージェント、いわゆる資金運用機関の資格というものを取得をすることで、GPEの拠出の受皿となることができれば、ますます、日本の国内課題と、そして海外での緊急支援等々のマッチングがうまくつながることによって、お米が例えば日本のものになる、使われている脱脂粉乳が他の国ではなく日本のものになる、こういったいい好循環ができると思っております。

 是非とも、林大臣からJICAに、このGPEのグラントエージェントの資格の取得について積極的に推進をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 今日は久しぶりに鈴木貴子節を堪能しておりますが。

 外務省としても、顔の見える支援の実現が極めて重要であると考えております。今後も、そうした考え方に基づいて対外支援の実施に当たっていきたいと思っております。

 今お話のあったグラントエージェントですが、GPEからの資金、これを受け取って、パートナー国とともに資金の運営や業務の実施、モニタリングなどを行うための認証を受けた組織を指すというふうに理解しております。

 JICAがGPEのグラントエージェントとなりますと、JICAがGPEに対する日本の拠出の受皿となって、事業の実施に関与するということになるわけです。そのことによって、日本の顔の見える支援の実現、強化につながるという大きなメリットがあると考えております。

 既にJICAは、実はGPE側との間で、人員や資金の確保等の条件が整うことを前提に、グラントエージェントの認証に向けた協議、これを進めてきております。

 政府としては、引き続き、GPEとの連携を強化して、教育分野において、日本の顔の見える支援、これが実現、強化されるように取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 やはり、G7のホスト国ということでもありますし、まさに日本も、唯一の被爆国として、世界が、あと百年は草木も生えないであろうと言われていた中で、広島そして長崎、そして日本は奇跡の復興を遂げた、こういったイメージというのはやはり諸外国にはしっかりと根づいている。そういった日本のイメージも活用しながら、顔の見える支援というものを積極的に、私も自分の立場で頑張ってまいりたいなと思っております。

 次に、私も五歳と三歳の娘の母親でありますが、子育て政策についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、総理にお伺いしたいのは、こどもまんなか政策ということによる、例えば総理はどんな社会を描いていらっしゃるのか。

 そして、ちょっとこの週末、ネットでもにぎわせてしまったのが、参議院の代表質問の、リスキリングと育休の話題であります。正直、私の周りでも、育休、産休中にリスキリング、それ本気で言っているのという反応が相次いだところであります。

 私、これは総理にその真意のところを是非答弁でいただきたいと思うんですけれども、もっと重要なのは、魔女狩り等ではなくて、何が問題なのかというと、例えば、育休においては、男性が育休をしても、取るだけ育休と呼ばれている実態があるんです。これは何かというと、育休中の男性の約三人に一人が、家事、育児時間が一日二時間以下。そういった、誤った育休の認識を持っている若しくは育休の時間の使い方をしている人たちこそ、リスキリング、まさに学び直しが必要なんじゃないのかな、こんなふうにも思っています。

 総理が考えていらっしゃる、いわゆるこどもまんなか政策が描くこれからの社会、若しくは、総理が常に掲げていらっしゃる新しい資本主義とこの子育て政策、若しくはこどもまんなか主義、こういった位置づけというものを改めてお聞かせいただけますでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、お尋ねがあったのは、こどもまんなか政策、どんな社会、イメージを持っているかということですが、これは、子供は国の宝であり、そして、希望する方々誰もが子供を産める社会、そして、ストレスを感じることなく子供を育てられる社会、さらには、子供の笑顔あふれる国、こうしたものを目指していきたいと思います。そのためには、子供の視点で、常に子供の最善の利益を第一に考え、子供に関する取組、政策が我が国社会の真ん中に据えられる、こうしたこどもまんなか政策、これが重要であると考えています。

 そして、子供、子育て政策は、最も有効な未来への投資です。個々の政策の内容あるいは規模面、もちろんこれは大事ではありますが、これまで関与が薄いと指摘されてきた企業や男性、さらには地域社会、また高齢者や独身の方も含めて、社会全体の意識を変えて、子供、子育てを応援するような、次元の異なる少子化対策、これを実現したいと考えています。

 それから二問目が、リスキリングに関する本会議での発言の趣旨ですが、私自身も三人の子供の親です。子育てというものが経済的、時間的、さらには精神的に大変だということ、これは目の当たりにしましたし、経験もいたしました。そうした中で、産後、育休時の大切さ、これも承知しているからこそ、例えば、私自身、政調会長のときには、産後八週間以内に取得できる産後パパ育休、これを含めて育休制度の拡充に取り組み、そして今、次元の異なる少子化対策に取り組んでいる、こうしたことです。

 本会議の発言で申し上げたのは、リスキリングに関して、ライフステージのあらゆる場面において、学び直しに取り組もうとする際に、本人が希望した場合にはそれをしっかりと後押しできる、そうした環境整備を強化していくことが大事である、あらゆるステージにおいて、本人が希望したならば、そうしたことを、そうしたリスキリングに取り組める環境整備を強化していくことが重要だという趣旨で申し上げたわけであります。

 そして、新しい資本主義とこどもまんなか社会の関係についてが三問目でしたが、これは、要は、新しい資本主義というのは、包摂的で持続可能な新たな経済社会をつくっていくための挑戦だというふうに申し上げてきました。我が国の経済の持続性やあるいは包摂性を考える上で最重要政策と位置づけているのが子供、子育て政策であると考えています。こうした持続性あるいは包摂性、この観点から、新しい資本主義の中にあっても、こうした子供、子育て政策は重要であると認識をしております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 まさに子育ての仕方も様々、十人十色といいますか、十家庭十色だと思っております。総理がおっしゃるように、選択肢をしっかりと示していくというのは、まさにこれからの多様な社会、働き方等々の上でも非常に重要だと思っておりますが、育児、子育てというものは一筋縄でもありませんし、親も、子供が生まれたから親になるのではなく、子育てを通して親になっていくという、この感覚というものが私は非常に重要なんだと思っております。

 子供の関連でちょっと質問させていただきたいんですけれども、あってはならない話でありますが、子供の自殺の問題であります。

 このコロナ禍で自殺が実は増えてしまう、高止まりという言い方が若しくは正しいのかもしれませんが。先般も速報値が出ましたが、二年ぶりに増加。そしてまた、今回の自殺の速報値の特徴の一つは、男性や中高年の自殺が十三年ぶりに増加をしたとも言われております。また、子供たちの自殺というものは一方で高止まりを見せています。

 これだけ今我々も、ようやくこの永田町でも、こどもまんなかという言葉が日々飛び交うようになり、未来への投資だと言っている中においても、日本の子供たちは将来に絶望し、自ら命を絶ってしまう子供がこれだけ多い。これは私は、やはり個人の問題ではなく、社会課題として、我々一人一人がしっかりと向き合っていくべき重要な問題だと訴えさせていただいております。

 そこで、厚労大臣に是非ともお願いを、そしてまた提案をさせていただきたいんですが、これは、月別で具体的に見ていくと、やはり著名人等の自殺の相関性、つまり、メディアの報道等の仕方、ウェルテル効果、この部分によるところが非常に大きいんじゃないかと思っております。

 著名人の自殺があった場合には、WHOのガイドラインにのっとって、例えば厚労大臣から、若しくは官房長官会見でも、この問題、指摘をしていただいておりますが、全く今のところその相関関係というものが断たれていない。具体的な、更なる一歩進んだ対策というものが急務だと思っております。

 厚労大臣、もちろん放送法との関係もありますから、メディアの皆さんに放送するなとは言いません。しかしながら、報道関係各社もこの問題をどう考えるんだと。子供たちが、報道によって、自殺がどうしても引っ張られてしまう、この状況について、我々はもっと打つべき手があるんじゃないか。具体的な施策が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今お話がありましたように、自殺報道、それを契機として自殺が誘発されている、こうした可能性がある、また、そうした影響があるということは指摘をされておりますし、今委員の質問にもありました、WHOにおいては、メディアが適切な自殺報道を行うよう自殺報道ガイドラインというのを作成しておりまして、具体的には、例えば、報道を過度に繰り返さないこと等、やるべきでないことを明示をしているわけであります。

 私どもも、これまで、いのち支える自殺対策推進センター、これは議員立法をベースにつくられているセンターでもありますが、そこと連携しながら、著名人の自殺が報道されるなどした際には、報道機関に対してWHOガイドラインを踏まえた報道を行うよう何回か要請もさせていただいています。また、メディア向けにはいろいろな勉強会もさせていただいているところであります。

 昨年十月に、自殺総合対策大綱も策定をいたしました。いのち支える自殺対策推進センターと連携をして、自殺に関する報道やその影響に関する情報の収集、モニタリング、その分析、評価を通じて、効果的な対応につながっていけるような取組、これをしっかり進めていきたいと思っております。

 また、本年の四月から、民放連が作成している放送基準に、自殺の誘引を避けるための配慮が新たに加わることになったところでもございますので、こうしたことも踏まえて、報道関係者やSNS事業者と協力して、その理解を深めていく取組を進めていきたいと思っております。

 なお、三月は自殺対策強化月間でもあります。様々な施策をしっかり進めるとともに、特に各自治体の取組、しっかり連携しながら、そうしたところともしっかり連携して、自殺対策強化をしていきたいと考えています。

鈴木(貴)委員 ありがとうございました。

 ストレートニュースでの報道ぶりというものは善処が見えてきておりますが、いわゆる情報番組系若しくは社会情報番組系では、いまだにこのガイドラインを守っていない報道が散見をされております。是非とも、一つの部署だけではなく、企業、社に対して全体に呼びかけるというような具体的な取組というものを是非お願いをしたいと思います。

 ありがとうございました。

根本委員長 この際、松本尚君から関連質疑の申出があります。萩生田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。松本尚君。

松本(尚)委員 自由民主党の松本尚でございます。

 予算委員会での質問の機会をいただきまして、委員の皆様には感謝を申し上げます。

 まず、コロナ対策の感染症対策についてお伺いしたいと思います。

 喫緊の課題は、五月八日から感染症法上の類型変更に関わる諸問題でございます。新型コロナ感染症を五類として扱うということは、この三年間のパンデミックの出口を我々はくぐるということだろうと思っています。

 そこで、この出口をくぐる前に少しだけ後ろを振り返ってみたいと思うのですけれども、岸田総理は、この三年間の我が国のコロナ対策の対応、これをどのように評価、現時点でされているでしょうか。伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 新型コロナ発生以降、国民の命と暮らしを守るという観点から、感染拡大と社会経済活動、このバランスを取りつつ、科学的知見やエビデンスを重視しながら、コロナ対策に最大限取り組んできました。

 その中で、まずは、その間、医療、介護の現場で働く職員の皆さんを始め、国民お一人お一人に御理解をいただき御協力をいただいたことについて、改めて感謝を申し上げなければならないと思います。

 そして、こうした取組によって、これまでのところ、新型コロナの人口当たりの感染者数等は、他のG7諸国等と比べても低い水準に抑えられ、GDP等も既に新型コロナ前の水準を回復していると承知をしております。

 そうした中で、今委員御指摘のように、五月八日から新型コロナを五類感染症と位置づける方針を先日確認をいたしました。

 今後、引き続き、ウィズコロナの取組について、家庭、学校、職場、地域、あらゆる場面で日常を取り戻すことができるよう、歩みを着実に進めていきたいと考えております。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 三年間のコロナの対策を振り返りますと、感染の制御と、それから一方で経済活動の維持、この二つから成るある道路幅があって、その幅の中を、ハンドルを右に切ったり左に切ったりというふうにして、こう我々は前に進んできたんだろうというふうに私は思っています。

 例えば中国では、左の方をずっと走っていたのを、急にハンドルを右に切った、こんな状態が先月あたりあったというふうにも思いますし、一方で、欧米では、それよりもハンドルを切る切り方は緩やかだったかもしれませんけれども、車は結構左右に振れていた。

 そういう見方をしますと、我が国は、比較的狭い道幅を緩やかに左右にハンドルを切りながら、それでも正しい道をしっかりと進んできたんだろうというふうに思います。これについてはもちろん様々な意見もあるというふうに思いますが、我が国は非常に安全運転をしてきたというふうに評価できるのではないかなと私は思っております。

 その一方で、水際制限の解除時期というものを、例えばこれを例に取れば、欧米と比較して経済活動の再開や回復ということに後れを取っていたのではないかといったような批判もあるわけでありますけれども、どういった点にそのような批判を受ける原因があったのかということを、国務大臣にお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 コロナ禍におきまして、我が国経済の、飲食や旅行等の対面型サービス部門の回復、これが北米諸国と比較して遅れてきたことは事実でございまして、その背景としては、相次ぐ感染拡大の波に対しまして、複数回の緊急事態措置や蔓延防止等重点措置によりまして、経済社会活動を一定程度制限してきたことがあると思います。

 一方で、これらの行動制限を伴う感染対策は、科学的知見やエビデンスに従いまして、感染状況に応じて、国民の命を守るということに重点を置いて実施してきたわけでございまして、こうした対策の効果もあって、我が国では、諸外国に比して、人口当たりの感染者等も抑えられてきたというふうに考えております。

 感染状況が経済に与える影響は二〇二二年度以降弱まってきておりますけれども、さらに、秋以降の全国旅行支援の効果、水際対策の緩和の効果、そうしたことによって持ち直してきていると思います。

 今後とも、平時の生活を取り戻せるように、ウィズコロナの取組を更に進めてまいりたいと思います。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 今、後藤大臣がお話しになったように、いろいろと、そのときそのときの状況を鑑みながら我々は進んできたわけですけれども、やはり、そこの部分において、今どういう理由で、どういうハンドルの切り方をしているのかということを国民の皆さんに、しっかりと納得感のある説明をしていかなければいけない。これは、この先も同じだと思います。是非、政府には、そういったリスクコミュニケーションの部分に重点を置いて、これから先の政策を進めていただきたいと思います。

 さて、感染症法上の類型変更に関しては、ここで急にハンドルを切ると大きな影響があるに違いありません。特に、医師の視点から言えば、まだしばらくの間は、医療機関やあるいは医療従事者の皆さんへの配慮と支援を十分に行っていただきたいというふうに、私からも政府にはお願いをしたいと申し上げます。

 五類になることで、コロナの感染症が季節性インフルエンザと同等の扱いになるということになっております。

 従来、季節性のインフルエンザであっても、実は、外来と入院、どちらも一定レベルの隔離というのは行っておりました。その中で通常診療をこれから行わなければいけないわけですけれども、このことはコロナ感染症でも全く同じで、新型コロナであれ、インフルエンザであれ、院内の隔離というのは一定程度は必要なわけであります。

 したがって、指定医療機関でなくてもコロナの診療ができる、イコール、どこの医療機関でも診療ができるということでは、実はないわけであります。

 こういった、相応の感染対策のできない、どうしたって、その構造上やいろいろな人手の問題、いろいろなことでできない医療機関というのは、コロナの類型にかかわらず、インフルエンザが蔓延していたような、これまでの同様のときと同じような診療体制しか取れないわけで、この点においては、国民の皆さんに誤解のないように説明していかなければいけないというふうに思います。

 これについて、政府の方はどのように今後診療体制を維持していくのか、あるいは、現状以上にコロナ患者を診療する医療機関というのを、どの程度これから増えていくんだというふうに予測されているか、厚生労働大臣に伺いたいと思います。

加藤国務大臣 委員から御指摘がありましたように、今回の感染症法上の位置づけの変更によって、外来あるいは入院の在り方、取扱いが、原則として、インフルエンザなどと、他の疾病と同様になるということと、現状はいわゆる発熱外来という形で指定されているものから、より幅広い医療機関に診療をしていただける、そういう体制をつくっていかなきゃならない。

 しかし、見直しをすればすぐそうなるわけではないというのは委員の御指摘のとおりでございますので、それに向けてどう感染対策をしていくのか、あるいは、更にどういう準備、あるいは様々な設備面の体制が必要なのか、そういった支援もしっかりさせていただきたいと思っておりますし、あわせて、移行をどう考えていくのかということに加えて、現在の診療報酬上の特例措置等もあります、それをどういうふうにしていくのか、さらに、入院に関していえば入院調整をどうするのか、あるいは高齢者施設に対する支援をどうするのか。

 こういったこと全般について、これはできるだけ早い時期にということで、三月上旬を目途にそうした考え方をお示しをさせていただいて、五月八日に向けての移行がスムーズにいくように取り組んでいきたいと考えています。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 入院機能を持つ病院にあっては、時に、コロナ感染を契機に原疾患が悪化して死亡する例もあります。臨床医としては、同様のことは、別にコロナ前にも、季節性のインフルエンザでもよく見られたことであります。そういった事態というのはこの先一定程度やはり許容していかなければいけない、こういう時代になってしまったというふうに思います。

 その中において、外来患者への対応、それから重症化率の高い変異株に対する監視、そして高齢者福祉施設への医療支援などをベースにしながら、今後は、医療資源は変わらないんだけれども、これらの、これまでの世の中にあった疾患群の中にコロナの感染症というものが一つ加わったという考え方を医療界を含んで国民全体が受容していくことが、これから通常状態に復帰することにつながっていくんだろうというふうに思っております。

 これについて、総理の考えをお聞かせいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のように、五月八日から五類感染症に新型コロナを位置づけるということを先週決定したわけですが、入院や外来といった医療体制について、幅広い医療機関で新型コロナ患者が受診できること、これは国民の皆さんにとってメリットではあると思いますが、それに向けて、委員御指摘のように、様々な準備が必要であり、国民の皆さんの理解が必要であるということで、少なくとも三か月はその様々な準備に必要であるということから、五類感染症に位置づけるタイミングについても専門家の意見も聞きながら決定をした、こうしたことであります。

 そして、委員の方から先ほどハンドルの切り方という御指摘がありましたが、これはまさに、そうした、五月八日に向けて様々な準備を進めていくわけですが、国民の皆さんの安心を確保する観点からも、これは段階的に移行していく、こうした必要もあると考えております。

 国民の皆さん、そして医療機関、今回の感染法上の位置づけの変更の考え方はもちろんですが、具体的な内容についてもしっかり説明をすることによって、御理解と、そして御協力をいただける、こうした環境をつくっていかなければならないと思います。

 そういった考え方に基づいて、この感染法上の位置づけの変更について、丁寧に政府としても取り組んでいきたいと考えております。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 是非、そのハンドルの切り方を、急ハンドルにならないように、上手に進めていかなければいけないと思います。

 次に、感染症危機対応の司令塔となる内閣感染症危機管理統括庁、これは仮称ですけれども、について質問したいと思います。

 危機管理ということですけれども、私は、この二十年余り救命救急の現場で仕事をしておりました。救命救急の医療というのは、毎日危機管理の連続であります。ゆえに、危機管理というのがどういうものであるか、それがたとえ救急室の中であろうが官邸の中であろうが、どちらも、患者、国民の生命を預かるという部分においては、基本的な考え方は、私は一つ、基本的に同じだろうと思っています。

 そこで、総理に伺いたいんですが、危機管理の要諦というのは、これは一体どこに、何であるかということをお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 危機管理の要諦ですが、これは、常に最悪の事態を想定するということだと申し上げてきております。

 平素より、幅広い観点から発生し得る事態を予測をし、その備えを着実に進めて、その上で、事態の発生時には迅速かつ冷静に対処する、これが肝要であると考えます。

 このような認識の下に、緊急事態への対応に当たっては、縦割りを排し、省庁の壁を乗り越えて、政府の総力を挙げて対応できる、こうした危機管理体制の確保に万全を期してまいりたいと考えます。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 まさに、最悪を予測してそれに備えるということ、非常に大事なことだと思いますし、私もそのようにこれまで仕事をしてきたわけであります。

 その中において、やはり危機管理、今、予測をして備えて、それに対応していくというためには、危機管理の組織というものをしっかりとシンプルにつくっておくこと、それから緻密に情報収集と分析をすること、それから、やはりリーダーは即断即決をすること、そして、リスクコミュニケーションにもつながりますが、広報をしっかり一元化すること、こういったこと、あとは、最後はリーダーが責任を取るということでございますけれども、私はその五つだろうというふうに思っています。

 こうした観点から、この危機管理庁の設置についてですけれども、この司令塔組織というのは、感染対策に対する意思決定、つまり政策決定を行う組織なのでしょうか、それとも、どこかで決定されたものを単に実行するためだけの調整組織なのか、この点について後藤大臣に伺いたいと思います。

後藤国務大臣 統括庁は、感染症危機への対応に係る企画立案や各省庁の総合調整機能など、内閣総理大臣が司令塔として最終的な意思決定や判断を的確に行うことを助けるための所掌を持つ、そういう機能の役所でございます。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 まさに国民の健康危機に対応する唯一無二の司令塔でありますから、今、総合調整というお言葉もありましたけれども、いろいろな意見があって、いろいろな組織の対策があって、それをいわゆる調整するというだけにとどまらず、しっかりとした意思決定の機関をつくっていただきたいというふうに思います。

 それが、国民にどうそれを見せるかということによって、先ほど言った感染対策、危機管理の道を、どこに向かっているのかということを国民にしっかりと示すことができるのではないかと私は思います。

 是非そういった組織をつくっていただきたいし、そういう機関をつくることこそ、個人的に言えば、私が国会議員になった理由の一つでありますから、是非、この庁が一つの指揮命令系統に統合されて、情報の収集、分析から政策決定に至るまでの意思決定がきちんとできる組織につくっていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、内閣官房は、この庁とは別に、内閣危機管理監の所掌する事態対処・危機管理組織があるんですけれども、この感染対策の管理庁というのはそこから特出しをされました。

 災害というのは、感染症もそうですけれども、健康危機事案というくくりでいくと、初期に危機の種別が判然としない場合、あるいは複合的な危機事案というのもございます。単に医学的な適正性だけじゃなくて、社会学的側面や国民の暮らしに目を向けたマネジメントというものも必要だと思います。

 ゆえに、私は、オールハザードを視野に入れた健康危機から国民を守る組織というものを最終的にはつくるということが必要じゃないかというふうに思っておるんですけれども、その点において、この危機管理庁の対象を感染症に限ることなく、次のステップとして、災害等を含む国民の健康危機に広く対応できる組織へと発展させるということを強く希望するのでありますが、担当大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

後藤国務大臣 感染症に係る危機管理については、今、先生からも御指摘がありましたけれども、社会経済への影響も長期に及ぶため、迅速な初動対応だけではなくて中長期的な視点での対応が求められること、医学や公衆衛生に係る専門的知見を踏まえた政策判断が重要であること、また、国民の行動によって影響の程度も変化するために、国民を巻き込んだ息の長い取組が求められることといった点で、災害等とは異なる対応も必要であるということで、今回、感染症危機管理に特化した統括庁という組織をつくって対応しようということになっております。

 災害等の緊急事態につきましては、事態ごとに特徴や必要となる専門性が異なることから、各事態の対応についてそれぞれ専門的に当たる機関が定められているわけでございまして、それぞれの事態の対応を担う機関を中心として対応するということだろうと思いますけれども、統括庁においても、感染症危機への対応を積み重ねていく中で得られる、災害等において生じた健康被害への対応に有益と考えられる知見を提供することで、これらの機関における対応にもしっかりと協力し、貢献してまいりたいと思います。

松本(尚)委員 ありがとうございます。

 是非、この感染症の危機管理統括庁、これの設置をきっかけにして、危機管理がしっかりとできる国にしていきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

根本委員長 この際、神田潤一君から関連質疑の申出があります。萩生田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。神田潤一君。

神田(潤)委員 自由民主党の神田潤一でございます。

 本日は、予算委員会で質問の場をいただきまして、委員の皆様には大変感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 私は、二〇一七年まで二十三年間、日本銀行に勤めておりました。その間に二年間、金融庁にも出向しておりました。その後、マネーフォワードというスタートアップに転職をいたしまして、執行役員として四年間勤めた上、一昨年の衆議院議員選挙で初当選をして、本日、初めての予算委員会での質問ということになりました。本日は、こうした経験を踏まえまして御質問をさせていただきたいと思います。

 本日は日本銀行の黒田総裁にもおいでいただいておりますので、金融政策について、まずは岸田総理に伺ってまいりたいと思います。

 四月に退任を迎える黒田総裁。この十年間を振り返りますと、十年前は、二〇〇八年のリーマン・ショック、そして二〇一一年の東日本大震災と、非常に経済も社会も混乱した時期の、そこからの回復の始まりの時期というふうに感じております。

 例えば、二〇一二年末の経済指標を見ますと、日経平均株価は、やっと一万円を回復した、一万三百九十五円だったと記憶しています。また、為替レートは、八十六円という大変大幅な円高水準にありました。

 こうした中で黒田総裁が日本銀行の白川総裁から引き継ぐ形で総裁に就任され、約十年。二〇二二年の年末の日経平均株価は二万六千円台となっております。また、為替レートも百三十二円台、大幅な円高水準は是正された状況にあります。

 こうした経済指標の上では改善しているように見える経済の状況にありますが、岸田総理に伺いたいのは、この十年間の日本銀行の金融政策についてどのように御評価をされているのか、伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、為替相場についてコメントすることは控えますが、この十年間を振り返りましたときに、日銀と政府、それぞれの政策を実施する中で、その結果としてデフレではないという状況をつくり出したこと、これは大きな成果だったと認識をしています。

 政府と日銀は、緊密に連携しながら、経済、物価情勢に応じて機動的な政策運営を行い、構造的な賃上げを伴う経済成長と物価安定の目標の構造的、安定的な実現、これを図っていくことで、認識において一致をしております。

 日銀には、引き続き、政府との連携の下、経済、物価、あるいは金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営、これを行っていただくことを期待をしております。

神田(潤)委員 岸田総理、ありがとうございます。

 それでは、日本銀行の黒田総裁に二つほどお伺いいたします。

 十年間という在任期間は、日本銀行総裁としては歴代最長となります。非常に重い、重要な職責に対しましてどのような姿勢で臨んでこられたのか、伺いたいと思います。

 そしてもう一つ、総裁が就任される二〇一三年に指名されたのが安倍元総理でありました。その後、七年半にわたって、内閣総理大臣と日本銀行総裁として、緊密に連携をしながら、経済のリーダーシップを取ってこられたことと思います。その安倍総裁は、昨年七月に凶弾に倒れ、亡くなりました。もしよろしければ、安倍元総理に対する黒田総裁の思いも伺えればと思います。よろしくお願いします。

黒田参考人 安倍元総理は、様々な分野で大変に大きな功績を上げられたと思います。

 経済の分野におきましては、長期間続いたデフレからの脱却と持続的な経済成長の実現に向けて多大な成果を残されました。強力なリーダーシップにより我が国経済の発展に尽くされたことに、心より敬意を表します。

 その上で、私の職務に臨む姿勢についてでありますけれども、私は、二〇一三年の就任以来、中央銀行としての最大の使命は物価の安定であるというふうに考えておりまして、二%の物価安定目標の実現に最大限の努力を払うという姿勢で金融政策運営を続けてまいりました。

 これまで実施してきた量的・質的金融緩和は、政府の様々な政策とも相まって、日本経済に、デフレではない、デフレには見られなかった変化、例えば、九年連続のベースアップ、あるいは女性や高齢者を含めた四百万人を超える雇用の増加をもたらしまして、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況が実現いたしました。

 物価安定の目標の持続的、安定的な実現には至らなかったのは残念でありますけれども、この間の大規模な金融緩和は、経済、物価の押し上げ効果をしっかりと発揮しております。時間がかかっているのは事実でありますけれども、金融緩和を続けていくことで、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的、安定的に実現することは可能であるというふうに考えております。

神田(潤)委員 黒田総裁、ありがとうございます。

 それでは、続いて、足下の物価動向についてお伺いしたいと思います。

 二〇二二年十二月の消費者物価指数、生鮮食品を除く総合指数ですが、これは四・〇%となりました。これは四十一年ぶりの高い水準となっております。また、昨年一年間を振り返りますと、四月から十二月までの九か月間連続で二%を上回り、また、一年間の平均では二・三%という水準になりました。

 この数字だけを見ますと、日本銀行が掲げる物価の目標である二%は十分に上回っているようにも見えます。ただ、日本銀行では、これは持続的で安定的な物価上昇ではないというふうに評価をして、大規模な金融緩和を継続している状況にあります。

 そこで、黒田総裁に二つほど伺いたいと思います。

 まず、この足下の物価動向が持続的、安定的な物価上昇ではないという理由について教えてください。そして、どのような状況になれば持続的、安定的な物価上昇と言えるのかについても教えてください。

 そして三つ目として、岸田政権では、現在、新しい資本主義の下で成長と分配の好循環を達成するために、特に物価上昇を上回る賃上げを実現するといった形で経済成長あるいは経済政策を進めていこうとしております。こうした現在の岸田内閣の経済政策について、黒田総裁がどのようにお考えなのかについても教えてください。

黒田参考人 ただいま委員が御指摘されましたとおり、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は昨年十二月に四・〇%となりましたが、これは、主として輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響によるものであります。この点、輸入物価の前年比プラス幅は縮小しておりますほか、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあって、消費者物価の前年比は、来年度半ばにかけて二%を下回る水準までプラス幅を縮小していくというふうに見ております。

 物価上昇が持続的、安定的なものになるためには、賃金と物価が共に上昇する好循環の実現が必要であります。この点、消費者物価の基調的な上昇率は、需給ギャップの改善や、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率の高まりなどを背景に、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと考えておりますが、それにはなお時間がかかるというふうに見ております。

 また、海外の経済、物価情勢やウクライナ情勢、感染症の影響など、我が国経済をめぐる不確実性は極めて大きいと見ております。こうした経済、物価情勢を踏まえますと、現在は、経済をしっかりと支え、企業が賃上げをできる環境を整えるということが最も重要であるというふうに考えております。

 日本銀行としては、こうした面から、金融緩和を継続し、賃金の上昇を伴う形での物価安定の目標の持続的、安定的な実現を目指していく考えであります。

 最後の三点目の御質問でありますけれども、もちろん、私から具体的に政府の経済政策とかその考え方について評価するようなことは差し控えたいと思いますが、日本経済にとって、人への投資などによって成長力が高まるとともに、その果実が賃上げ等の形で幅広く行き渡るということが極めて重要であるというふうに認識しております。

 この点、政府は様々な施策によって構造的な賃上げの実現に取り組んでおられるというふうに認識しておりまして、日本銀行としても、先ほど申し上げたとおり、企業が賃上げをできる環境を整え、賃金の上昇を伴う形での物価安定の目標の持続的、安定的な実現を目指して、金融緩和を継続していく考えでございます。

神田(潤)委員 黒田総裁、ありがとうございました。本日は、御退席いただいて構いません。ありがとうございます。

 それでは次に、鈴木金融担当大臣にNISAの抜本的拡充と恒久化について伺ってまいりたいと思います。

 岸田政権が掲げる資産所得倍増プランの大きな柱として今回打ち出されたのが、二〇二四年一月、来年一月から適用されるNISAの抜本的拡充と恒久化です。NISAは、少額投資非課税制度として二〇一四年から開始され、主に資産形成を始める投資初心者を中心に利用が広がってきたところでありますが、今回、十年を機に大きく拡充されることになりました。

 このパネルが今回の抜本的拡充と恒久化の概要となります。これを見ますと、例えば、年間投資枠は従来の二倍から三倍に、また非課税保有限度額もこれまでの二倍以上の一千八百万円、非課税保有期間は無期限化、また口座開設期間は恒久化と、まさにNISAのモデルとなったイギリスのISAに勝るとも劣らない大幅な拡充となりました。

 そこで、鈴木大臣に二つ伺いたいと思います。

 今後、物価が緩やかに上昇する健全な経済となることが期待される中で、岸田政権が掲げる新しい資本主義により資産所得倍増や成長と分配の好循環を実現していく、この道筋に当たって、今回のNISAの抜本的拡充や恒久化が国民一人一人にとって、また経済全体にとってどのような意義を持つのか、教えてください。

 また、二つ目として、こうした政策を国民に広く浸透させ、大きな流れをつくっていくために、金融教育を含めて、政府としてどのような取組を行うことを予定されているのか、これについても御説明ください。

鈴木国務大臣 新しい資本主義によります成長と分配の好循環の実現には、人への投資を促進することが重要でありまして、そうした観点からも、貯蓄から投資へのシフトに取り組んでいく必要がございます。

 先生御承知のとおり、我が国には一千兆円を超える家計の現預金がございます。それを投資につなげることで、勤労所得に加えた、金融資産所得を増やしていく、そして、家計の投資が企業の成長の原資となれば、企業価値の向上によりまして家計の金融資産所得は更に拡大する、こうした成長と資産所得の好循環を実現させていきたいと考えております。

 NISAの抜本的拡充や恒久化は、中間層を中心とした幅広い層が若年期から高齢期に至るまで長期、分散、積立投資による継続的な資産形成を行うための環境を整える上で、中心的な役割を担うものと考えております。

 また、こうした好循環の流れをつくっていくためには、税制面の取組とともに、個人の金融リテラシーを向上させ、ライフプランに応じた適切な資産形成を支援する体制を整備すること、これも極めて重要であると考えます。

 そうした観点から、資産所得倍増プランでは、中立的な立場から金融経済教育を提供できるよう、金融経済教育推進機構、これは仮称でありますけれども、これを設立をいたしまして、官民一体となって金融経済教育に関する戦略的な対応を進めていくことなどが盛り込まれているところであります。

 金融庁といたしましては、この新しい組織の設立を含めまして、金融事業者等による顧客本位の業務運営の定着、底上げ、NISA制度の積極的な広報活動などの政策を動員しまして、貯蓄から投資への流れ、これを実現させていきたいと考えております。

神田(潤)委員 鈴木大臣、ありがとうございました。

 それでは、最後に、デジタル田園都市国家構想とウェブ3やスタートアップ政策について岸田総理に伺います。

 成長と分配の好循環を実現するに当たりましては、NISAの抜本的拡充や恒久化などで貯蓄から投資へと動き始めた資金が成長分野へと流入していくことが期待されます。

 これに関して、岸田総理は施政方針演説の中で、GX、グリーントランスフォーメーション、DX、デジタルトランスフォーメーション、また、科学技術のイノベーションやスタートアップなどを成長分野として挙げられてまいりました。

 私は、そこに是非地方を加えていただきたいと考えています。私は、地方こそ日本の成長のフロンティアであると考えています。地方の課題を解決し、活力を高めていく大きな力になるのがデジタルやDXであると考えています。

 特に、近年では、新潟県の山古志地区や北海道の余市町、岩手県の紫波町などで、スタートアップが主体となり、自治体とも連携しながら、インターネットの新分野であるウェブ3やNFT、DAOと呼ばれる仕組みなどを活用して、地方の課題を解決し、活力を高めていこうとしています。

 岸田総理は、まさにデジタル田園都市国家構想で、デジタルを活用して、地方の個性を生かしながら課題を解決していくことを表明しております。

 そこで、私からの提案になりますが、国際会議や国際的なイベントの開催、税制や規制の大胆な見直しによってこれらの動きを力強く推進していくべきではないかと考えますが、岸田総理のお考えを伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 デジタル技術が劇的に進化し、今や、地方であっても都市と便利さにおいては遜色がない時代になりつつある、こういったことですが、こうした時代だからこそ、デジタルの力を活用しつつ、地域社会の生産性や利便性を飛躍的に高め、産業や生活の質を大きく向上させ、地域の魅力を高めるチャンスであると認識をしています。御指摘のように、最先端のデジタル技術を取り込んでいくことで、地域の活性化が更に加速化することを期待したいと思っています。

 例えば、メタバースは、地理的制約を超えた活動や交流を可能とする技術の一つです。こうした新しい技術を活用することで、新たな人的交流が生まれる、地域の暮らしやすさが向上する、こういったよい影響が期待されると考えています。

 そして、御提案の点ですが、新しい技術の普及と発展を日本がリードするとともに、国民のリテラシー、これを高めていくために、御指摘のような国際イベントの検討を含め、政策を前に進めていくことは重要であると認識をいたします。

神田(潤)委員 岸田総理、ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

根本委員長 これにて萩生田君、牧原君、鈴木君、松本君、神田君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 短い時間でございますので、総理、端的によろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、子育て、教育支援について伺いたいと思います。

 昨年の日本の出生数、統計を取り始めた一八九九年以降初めて八十万人を下回ると見込まれています。少子化は想定より八年以上早いスピードで加速化しており、もはや待ったなしの課題でもあります。

 こうした中、岸田総理は、年頭の記者会見で、異次元の少子化対策に挑戦することを表明した上で、本年六月の骨太方針までに将来的な子供予算倍増に向けた大枠を提示することとされました。

 子育て政策というと、子供を育てている家庭だけの支援で、子育てを卒業した高齢者の方、子供のいない方々、また、結婚をしていない若者など、自分には関係ないと思われている人が多くおります。しかし、年金、介護、医療など社会保障を支える現役世代が減少すると、一人一人の生活を直撃することは間違いありません。我が党の山口代表も隠れた安全保障と言うように、少子化対策は我が国の最大の課題でもあります。

 子供を持つことをリスクと考える若者が増えている、このように指摘されている中で、子供を持ちたいという若者が安心して産み育てられる社会をつくるため、公明党としては、昨年の十一月ですが、子育て応援トータルプランを発表いたしました。結婚、妊娠、出産から子供が社会に巣立つまで、ライフステージに応じて、その支援が体系的、継続的、一貫したものとしてつながっていることを見える化しています。

 資料、パネルを御覧ください。

 これは同プランの一部ですが、例えば、同プランでは、結婚前からの支援、妊娠、出産時では育児休業制度の拡充、また、産後ケアや訪問家事、育児支援、〇―二歳児の保育料無償化の対象拡大、また、高校、大学など高等教育の無償化の拡大など、きめ細やかな支援策を訴えています。

 子供予算の倍増に当たっては、是非、公明党のこの子育て応援トータルプランを参考にして、教育を含めた幅広い検討をすべきと考えておりますけれども、まず、岸田総理の見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 子供、子育て政策は、最も有効な未来への投資です。その際に、個々の政策の内容ですとか規模面、これはもちろん大事でありますが、これまで関与が薄いと指摘をされてきた企業や男性、さらには地域社会、そして高齢者や独身も含めて社会全体の意識を変えて子供、子育てを応援するような、次元の異なる少子化対策、これを実現したいと考えています。その際に、御党の子育て応援トータルプラン、これを参考にさせていただきます。

 その上で、まずは、こども政策担当大臣の下、子供、子育て政策として充実する内容を具体化し、御指摘のように、六月の骨太の方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠を提示をしたいと思います。

 そして、御指摘、教育も含めてということでありますが、教育面でも、高等教育の負担軽減に向けて、出世払い型の奨学金制度の導入、あるいは給付型奨学金の中間層への対象拡大、こうした取組も進めていきたいと考えております。

高木(陽)委員 参考にしていただくということ、大変ありがたいと思います。

 次に、児童手当について伺いたいと思います。

 総理、児童手当の歴史というのは御存じですかね。これは、ここにいる委員の皆様方、そしてテレビを御覧になられている国民の皆様方も認識をしていただきたいんですが。

 まず、この児童手当は、公明党の全国の地方議員が各自治体の当局に働きかける中、五十一年前です、一九六七年、昭和四十二年、東京都の武蔵野市、岩手県の久慈市でスタートいたしました。翌一九六八年、昭和四十三年には、千葉県の市川市、新潟県三条市などに広がりました。

 初めは小さな制度でした。武蔵野市では、一番目のお子さんも二番目のお子さんももらえません。三番目のお子さんももらえません。四人目になって初めて、月額千円の僅かな児童手当からのスタートでした。一九六九年、昭和四十四年には、都議会公明党の働きかけで、東京都の制度としてでき上がりました。

 その一年前、六八年には、公明党は児童手当法をこの国会に提出をいたしました。しかし、当時、野党でありましたので、なかなかそれが実現しない。そういった中で、国は、一九七二年一月、ようやく国の制度として児童手当が実現をしました。

 それから更に時がたって、一九九九年です。連立政権に公明党が参画をするに当たりまして、公明党の提案で、連立政権合意に児童手当の拡充を明記いたしました。当時、まだ三歳未満までで、第一子、第二子は月額五千円、それが今は中学校修了前まで、給付額も増額をいたしました。

 しかし、まだまだこれは足りない部分があります。まさに公明党は児童手当の生みの親であり、育ての親であると自負をしております。理想としては、将来的には、対象年齢を十八歳まで拡大するとともに、所得制限の撤廃、また、支給額も増額すべきと考えています。

 岸田総理は、異次元の少子化対策の基本的な方向性の一つとして、児童手当を中心に経済的支援を強化することを挙げられました。東京都では、十八歳以下に月額五千円を所得制限なく給付することとしています。是非、国においても、東京都に遅れることなく、十八歳までの対象拡大や所得制限の撤廃など、大幅な拡充に着手するべきです。

 児童手当の大幅拡充について、岸田総理の御見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、子育てに係る費用負担の重さ、これは子供を産み育てたいという希望がかなわない障壁の一つとなっています。そして、昨年末の全世代型社会保障構築会議の報告書においては、幅広い年齢層の子育て世帯に対する経済的支援の充実の必要性が指摘をされ、児童手当の拡充などを検討することについて提言をいただいております。

 こうしたことを踏まえて、子供、子育て政策の充実を検討するに当たっての基本的方向性の一つとして、児童手当を中心とした経済的支援の強化、これを挙げているところです。こども政策担当大臣の下で検討を進め、充実する内容、これを具体化していきたいと思います。

 是非、御党の提言等も参考にしながら、連携しながら取組を進めていきたいと考えております。

高木(陽)委員 ありがとうございます。

 続いて、〇―二歳児の支援について伺いたいと思います。

 これまで手薄だった〇―二歳児への支援として、第二次補正予算と新年度の当初の予算案では、公明党の主張も踏まえまして、妊娠期から身近で寄り添って相談に乗る伴走型支援、さらに、妊娠時、出産時に合計十万円相当の経済的支援をパッケージ、これが計上されております。この事業は来年度以降も恒久的に実施すべきでありますが、より有効的に機能していくためには、伴走型支援によって公的支援につながった方々が、必要に応じて多様な支援を受けられる環境を整備していくことが重要です。

 例えば、産前産後の心身の負担を軽減するために、希望する全ての方々が産前産後ケアを利用できる体制整備と、利用者の負担の軽減が必要です。また、〇―二歳児の約六割、この方々は保育園を利用していない未就園児であり、専業主婦を含むそうした御家族が一時預かりなどを定期的に利用できる保育制度、環境を整備すべきです。

 東京都は、〇―二歳児の保育料につきましては、第二子の保育料を所得制限なく無償化する方針を示していますが、国としても、所得制限の緩和や第二子以降の無償化など、対象を拡大するべきと考えています。

 産後ケアや一時預かりを始め、全ての子育て世帯が希望に応じて利用できる多種多様な子育て支援の充実について、総理の御見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 〇―二歳児の保育料については、住民税非課税世帯を対象に無償化にしているところですが、昨年十二月に取りまとめられた全世代型社会保障構築会議報告書では、未就園児の親への一時預かりなどの充実を含め、〇―二歳児へのきめ細やかな支援が提言をされています。

 更なる支援については、どのような施策が効果的であるかや乳幼児期の生育の観点から議論する必要があると考えています。

 多様なサービスが必要であるという御指摘がありましたが、例えば専業主婦家庭の保育所利用については、令和五年度予算案について、保育所の空き定員等を活用して、保護者の働き方にかかわらず未就園児を定期的に預かるモデル事業、これを実施しているところです。どのような取組ができるか、更に検討をしていきたいと考えております。

 いずれにせよ、こども政策担当大臣の下で、子供、子育て政策として充実する内容を具体化する作業を進めていき、六月の骨太方針までに大枠を提示する、こうした作業を進めていきたいと考えております。

高木(陽)委員 続いて、育児休業について伺いたいと思います。

 共働き世帯の割合、年々増加しています。資料、パネルを御覧いただきたいと思うんですが、二〇二一年で、男性雇用者と専業主婦の世帯、これは四百五十八万世帯。一方、共働き世帯は一千百七十七万世帯、大変多いです。子供のいる世帯の約七割に上って、そのうち約六割の女性はパートタイムで働いています。また、近年はフリーランスで働く方々も増加しておりますが、こうした方々も育児休業給付の対象外になっています。

 厚生労働省の調査によりますと、女性の育児休業取得率、二〇〇六年以降、八、九割まで推移していますが、パートや派遣など非正規で働く女性のうち約六割は第一子の出産を機に退職されており、こうした方々は育児休業給付の対象外となっています。

 社会経済状況の変化に適切に対応し、働き方の違いによるセーフティーネットの格差を解消していくことが不可欠であると思うんです。子育てと働き方をめぐって、例えば短時間勤務制度、これらについて、短時間勤務を選択した場合の所得減少に対する支援など、制度の拡充も求められています。

 総理、この育児休業について、御見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 子供を産み育てたいと希望する全ての人が、働き方にかかわらず安心して子育てができる環境の整備を進めること、これは重要であると考えており、先ほども引用させていただきました、昨年末の全世代型社会保障構築会議の報告書において、こうした観点から、議員御指摘のような、仕事と子育ての両立に向けた様々な支援策について御提言をいただきました。

 私自身、子供、子育て政策の充実を検討するに当たって、出産を契機に女性が非正規雇用化するいわゆるL字カーブの問題を含めて、仕事か子育てか、この二者選択を迫られるような状況、これを是正しなければならないと考えており、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実、これを柱の一つとして掲げました。

 その中で、男女とも、子育て期における長時間労働の是正、また、柔軟な働き方に対応した育児休業制度の強化、こうしたことについても、こども政策担当大臣の下で検討し、内容の具体化を進めていきたいと存じます。

 御党とも連携しながら、取組を進めてまいります。

高木(陽)委員 子育て支援、子供、その御家庭に視点を当てる、これは最も重要なんですが、その周辺にもしっかりと目配りをしなければいけないと思うんですね。

 そこで、保育士の問題について質問したいと思います。

 我が国では、待機児童解消に向けて、保育の受皿は着実に増加してまいりました。一方で、昨年の通園バス置き去り死事件、また、保育士による園児の虐待事件が発生して、これらのことに対しまして、断じて許されない、どうして起こったのか、安心して子供を預けられない、様々な声が上がっています。私たち政治が保育の現場にしっかりと向き合わなければいけないと思うんです。

 指摘される背景に、保育現場の人手不足、業務過多など、深刻な課題があります。コロナ禍で保育士の業務も増大しました。今求められるのは、保育の質の向上に向けた保育士の負担軽減や処遇改善です。ここを本気で食い止める覚悟の対策をするべきと考えます。

 そもそも、保育士の配置基準はかねてより課題とされてきました。総理は三人のお子さんの父親でもあります。私も三人子供がいるんですが、大体、私たちの世代というのは、余り子育てに関わってこなかった。まあ、ここにいる委員の皆さん方も、子育ての、やっている方もいるんですけれども、任せっ切りの男性の方もたくさんいらっしゃると思うんですね。

 そういう中にありまして、実感しない、政治がもっと真剣に取り組むということで、例えば、現在は、一歳、二歳児なら、子供六人に一人の保育士が配置されている。三歳児なら、二十人に一人。四、五歳児は、三十人に一人です。一人の子供を面倒を見るだけでも本当に大変なのに、保育の現場がどんなに大変なのか。実態を踏まえて、国としての配置基準の在り方を検証し、適正な見直しを図るべきです。

 配置基準の見直しは、必要な人材がそろって初めてできる話ですが、なり手を増やし、人材の裾野を広げることも大変重要。そのために、処遇改善もこれまた大変重要な課題だと思います。

 公明党は、保育士や看護師などの処遇改善を一貫して政府に要請してきました。その結果、昨年二月から九月までの保育士や介護職員の収入を月三%程度、月額九千円程度引き上げました。公定価格の見直しで昨年十月以降も措置を継続しています。それでも、保育士などの賃金基準は全産業の平均以下です。更なる拡充と処遇改善に向け、保育現場の実態に即した公定価格になるよう見直すべきだとも思います。

 保育現場の実態に即した保育士の処遇改善、また配置基準の見直しについて、総理に伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、保育士等の配置改善ですが、この配置改善、これは重要な課題だと考えており、平成二十七年度から、三歳児に対する職員の配置改善に取り組んでいます。更なる配置改善についても、引き続き、見える化を進めつつ、努力をしていきたいと考えています。

 令和五年度予算案においては、現場の保育士の負担軽減を図るために、大規模な保育所においてチーム保育推進加算の充実を行うほか、見落としなどによる園児の事故を防止するための支援員の配置を推進することとしております。

 そして、もう一つの御指摘、保育士等の処遇改善の方ですが、これについては、給与を恒久的に三%程度引き上げるための措置など、これまで累次の処遇改善を講じてきたところですが、今後も、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえて、見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善、そして業務の効率化、また負担軽減、こうした取組を進めていきたいと考えます。

高木(陽)委員 前向きな答弁であったと思います。よろしくお願い申し上げたいと思います。

 あと、今の若い世代、子育て世代の不安の一つは、教育費の負担の問題です。

 児童手当が拡充すれば子供を産むのか。また、育児休業など働き方が変われば子供を産むのか。一人一人の若者の持つ不安を一つ一つ取り除かなければなりません。少子化対策のためには、子供が幼いときだけではなくて、高校や大学までのトータルな子育て、教育費の支援が重要と考えています。

 総理が施政方針演説において出世払いにも言及されている、奨学金問題。子育て世代又は若者の不安を払拭するためには、給付型の支援は重要と考えております。そのために、給付型奨学金の対象拡大をするべきです。欧米では給付型が当たり前です、給与型奨学金。

 総理のお考えを伺いたいんですが、もう一つ、いわばこれは教育ローン、貸与型の奨学金。今現在、この返済をしている方々も含めて、若者たちに重くのしかかっております。貸与型の月々の返済額を柔軟に変えられる減額返還制度、これらについても併せて伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 御指摘の給付型の教育費支援については、これまでも高校等の授業料支援とか高等教育の無償化等を行ってきたところですが、さらに、令和六年度から、給付型奨学金等について、多子世帯や理工農系の学生等の中間層への対象の拡大、こうしたことを行うこととしており、対象の年収目安等、具体的な内容を早急に明らかにできるよう進めているところです。これと併せて、御指摘の出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組んでいきたいと思います。

 そして、今後についても、子供、子育て政策として必要な政策、この内容を具体化していく中で何ができるのかを考えていきたいと思いますし、そして、御指摘の貸与型の給付について、返済の負担を、ライフステージに応じてどのような負担軽減の方策があるのか、こういった観点から具体的に考えていくことも大事であると考えます。

 是非、これから進める様々な政策の具体化の中で何ができるのかを考えていきたいと思っております。

高木(陽)委員 総理、少子化対策というのはこれだけやればいいというものではないと思うんです。我が党が子育て応援トータルプランで出したように、どの世代でも安心して結婚、妊娠、出産、子育て、教育ができる状況を提示しなければいけないと思うんです。

 あと、一番大きな問題は意識の問題。男性が、又は経営者が、そして私たち政治家が本当に意識改革をしなければ、少子化対策というのはできない。制度だけじゃないと思うんです。先ほどあった、例えば働き方で、育児休業を取りたい、中小企業ではなかなか取れない、こういう現実もあります。そういったものも含めて、やはり意識を大きく変えていく、それがまさに次元の異なる、異次元の少子化対策になるということを申し上げておきたいと思います。

 さらに、次には、賃上げについて伺いたいと思います。

 総理は年頭の会見で、力強い経済成長の基盤をつくるため、物価上昇率を超える賃金、賃上げの実現、これを目指す方針を示しました。経団連などは賃上げに積極的な姿勢を示していますが、問題は中小企業、小規模事業者です。

 原材料が上がり価格転嫁をしたくても、取引先と交渉しても全く応じてもらえない。取引先からこの価格が嫌なら他社へ仕事を回すなどと言われたり、交渉できてもコスト上昇分の一部しか転嫁できないといった声も聞かれます。

 資料、パネルを御覧いただきたいと思います。

 これは、中小企業庁が昨年九月、価格交渉促進月間のフォローアップ調査で分かったものです。

 まず、右側のグラフ、これを御覧いただきたいんですが、直近六か月の価格交渉で話合いに応じてもらえたと回答した割合は六割。二七%は、コスト上昇がなかったり、自分の会社で吸収可能と判断して協議申入れをしなかったというものですが、一方で、全く交渉できないという回答、これが一割、一三・九%存在している。

 左側のグラフを見ますと、次の価格転嫁の状況では、全く転嫁できていない会社は二割。転嫁できていても、コストの上昇分の三割以下の転嫁しかできていない会社も二割近い状態です。

 業種別によりましては、様々この転嫁状況が違いまして、例えば建設関係、これは、コストに対する価格転嫁率は四四・八%、半分は転嫁できていないんです。また、トラック運送、これは大変ですね、僅か二〇・六%しか転嫁できていない。八割はもう本当に苦しんでいるんです。賃金を上げたくても、このような状況では上げようがありません。

 総理、現場で苦しんでいる人に寄り添うのが政治です。政府は下請Gメンなどの拡充などを行う予定ですが、苦しんでいる中小企業の価格転嫁について、総理の見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、中小企業において賃上げを実現するために価格転嫁が大変重要でありますが、ポイントは、この価格転嫁政策が実効的なものであるかどうかという点だと思います。

 この価格転嫁対策をより実効的なものにするため、中小企業庁における下請Gメン、あるいは公正取引委員会の大幅な増員を行ったということです。

 価格交渉促進月間の調査において交渉や転嫁の状況が芳しくない親業者に対しては、こうした増員の効果を発揮して、助言あるいは指導、これをしっかりと実施してまいります。また、次回の月間は三月ということになるわけですが、三月についても、下請Gメンによるヒアリングなどを通じて、価格転嫁が適正に行われるよう、働きかけを具体的に行ってまいります。

 さらに、民間企業が互いに協力するシステムでありますパートナーシップ構築宣言、サプライチェーン全体の共存共栄を目指す構築宣言、これを拡大し、そして実効性を強化していく、こうした取組も進めていきたいと考えます。

高木(陽)委員 次に、賃上げをするためには、中小企業の収益、これを高めるための支援が必要であります。

 政府は、事業再構築補助金、ものづくり補助金、持続化補助金、またIT導入補助金など、様々なメニューが用意してあります。しかし、中小企業の経営者は、一体自分の会社はどの補助金が使えるのかよく分からない、そういう現実があります。

 子育て支援では、妊娠、出産、〇―二歳児の時期に一人一人に寄り添う伴走型支援、これが動き始めました。

 一つちょっと例を挙げたいと思うんですが、実は私、二〇一四年から三年間、経済産業副大臣を務めまして、同時に、福島の東京電力第一原発の事故、政府にも今、災害対策本部がずっと継続しておりますが、現地対策本部長を三年務めました。

 そのときに、十二の浜通りの市町村で、これがどんどん解除していく。ところが、戻るためにはなりわいが必要だ。では、どうしたらいいか。

 一番は、元々そこで事業を持っていた人たちが戻るべきだよねということで、実は八千社が避難しました。この八千社、どういうような状況か、全部違うんですね。そこで、相双復興推進機構という官民合同チームというのを、これは経産省からもメンバーも入りまして、県からも入りまして、民間も応援していただいている。そして、この八千の事業者にお手紙を出しました、訪問したいと。

 返事が返ってきたのは六千。中には、もう結構ですよ、私は廃業しましたと。それで、四千の会社をまず回りました。そうすると、最初は、何をしに来たんだと。ところが、何度も何度も足を運ぶと、やはりふるさとに戻りたいね、こういう話になった。

 そのときに、戻るには何が足りないのか。例えば、もう全くなくなってしまったので、最初のスタート、設備もないね、ではこういうものを応援する補助金をつくろうね、いろいろとやりまして、その後、コンサルティングチームをつくった。販路の開拓もやった。中にはちっちゃな商店みたいなところもありましたから、高齢者の方々が、補助金の申請なんてやったことがない。そこに一緒になって、それも書いてあげる。そういうメンバーを、訪問チームを二人一組、いわゆる五十チーム百人でずっと回って、今もずっと回り続けています。まさに寄り添っているんです。

 そうすると、ああ、自分はこういうものが足りない、そのときに、こんな補助金がある。ところが、今言ったように、様々な、生産性を向上させるための補助金なんですけれども、先ほど申し上げたように、私は何を使ったらいいの、こういう話がある。だからこそ寄り添う必要があるわけです。

 ただ、人の問題もある。そこで、まず、中小企業の支援のために、全国都道府県によろず支援拠点がある、各地に商工会、商工会議所もある、また、自治体に商工課などの部局もある。この支援、これらの機関が本当に連携しなきゃいけない。ワンストップでできる、まさに、そこに行けばこういうことができるねという。なかなか、上から目線、縦割りでいくと、補助金だけの説明、そうじゃないんです。その人に合ったものをどうするか。

 こういうことを含めた、ワンストップで中小企業の伴走型支援、これが必要だと思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、事業再構築補助金、あるいはものづくり補助金、IT導入補助金など、中小企業の様々な課題に対応するための様々な支援制度、これは用意はしておりますが、それを最大限の効果を発揮させるためにも、御指摘の寄り添った伴走支援、これが重要になると認識をします。

 そして、そのために、専門家の配置に加え、新たに指導員向けの研修など、各地の商工会、商工会議所の相談体制、これを強化するということも重要ですが、御指摘のワンストップの無料相談窓口であるよろず支援拠点、これは年間四十五万件以上に及ぶ相談を受けていることになります。この相談内容を充実することによって、より具体的に寄り添ったアドバイスを行う等、意思疎通を図っていく、これも大変重要な取組であると思います。

 こうした種々の政策を有効活用していただけるような伴走支援のありようについて、より充実を図っていくよう努力していきたいと考えます。

高木(陽)委員 今のお話で、官民合同チームということで福島でやったときの官僚の責任者が、今、中企庁長官をやっています。いろいろなモデルをつくろうとしている。私とコンビを組んでやりました。要は、そういう話を、経産大臣もそう、そして総理も聞いてもらいたいと思うんです。政治がやろうと言えば、そういう体制になっていきますから。どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。

 さらに、次に、物価高の中での電気・ガス料金について伺います。

 昨年秋の総合経済対策、この一月から、電気、都市ガス料金の前例のない負担軽減策がスタートしています。しかしながら、エネルギーの原料高騰から、大手電力会社のうち七社から規制料金の値上げが申請されました。多くの国民は、電気、ガスの負担軽減策、これは評価しています。一方で、えっ、また上がるの、そういう声も聞かれているのが現実です。

 二月の請求分から、負担軽減策、これが実感すると思いますが、春になれば電気の使用量も下がってくる。ところが、この四月以降、再び規制料金が上がったときに、夏はまたエアコンを使って使用量が上がりますから、国民の負担感というのは増すと思うんですね。ですから、更なる料金が高騰する場合には、状況に応じて予備費の投入で国民の生活を守るべきと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 電気料金支援の水準については、春以降想定される全国の御家庭における平均的な負担増が二割程度と見込まれることを踏まえて、その水準と同程度の値下げとしています。

 これまで値上げ申請があった七社の申請値上げ幅は電力会社ごとに異なっておりますが、今回の電気料金支援を行うに当たっては、公平性や迅速性の観点から全国一律の値下げ幅とする一方で、値下げは一月に前倒しして、先行して値下げを実施する、こうした取組としました。

 まずは、こうした取組、着実に需要家の皆さんにお届けできるよう、予算執行に取り組んでいかなければならないと思いますが、その上で、今後の経済状況も注視しながら、必要な対応ということであるならば、ちゅうちょなく取り組んでいきたいと考えます。

高木(陽)委員 これは通告してありませんので、総理、要望として聞いていただきたいと思うんです。

 今回、電気、都市ガスは、負担軽減策、大幅に展開されますけれども、LPガス、いわゆるプロパンですね、この利用者は、私はどうなっているの、こう思っている方々がいっぱいいます。

 昨年十月末の時点で、LPガスの小売価格はコロナ禍の最低価格と比べて一割の上昇、ほかの都市ガスと比べたら大変低いんですが、やはりLPガス会社、これも手を打とうということで、配送合理化などの補助、又は地方創生臨時交付金による支援などを行っております。

 ところが、各県の臨交金による支援を事業化している県、これはまだ二十三県なんですね。検討中が十二県。問題は、予算の枯渇などを理由に事業化が難しいと言っている県が十二県あるんです。

 総理、やはりこのLPガスの状況もよく見て、予備費など、この臨交金への投入、そういったことも検討していただきたいと思います。これは要望です。回答はいいです。

 続いて、高齢者の問題。

 我が党は、地方議員約三千人のネットワークで、現場の一人一人に寄り添って、様々な問題を見つけては対応しています。

 少子高齢社会、人口減少社会にあって、高齢者の買物弱者について伺いたいと思うんです。

 農林水産省が、店舗まで五百メートル以上、かつ自動車利用困難な六十五歳以上の人口を食料品アクセス困難人口と定義しているんです。二〇一五年の調査ですけれども、八百二十四万人が存在している。高齢者の中では二四・六%、四人に一人です。四人に一人が買物難民。しかも、過疎地だけではなく、三大都市圏でも二三・三%の高齢者が買物難民となっている。

 これらの対応は各自治体で行っていますが、この資料を御覧いただきたいと思うんです。

 買物弱者の支援対策を必要としている市町村、いろいろと調べていただきました。小さな自治体ほど必要と感じています。その背景では、高齢化が一番です。地元の小売業の廃業、中心市街地の衰退、公共交通の廃止によるアクセス条件の低下などが挙げられています。

 自治体では、民間事業者と連携して、コミュニティーバスなどの移動支援、宅配、移動販売など様々な対応を行っているんですけれども、各自治体の共通課題は、予算、財源の不足、課題やニーズ分析が不足している。

 総理、デジタル田園都市構想、これを掲げました。この旗印の下、デジタルの力を生かして対応していく、これが一番いいんですが、現実は、高齢者の皆さんがスマホ一つで注文をして配送してもらって、買物難民を克服できるか。まだそこまで行っていない。現実はそう簡単ではない。

 その中で、自治体の先進事例を一つ紹介したいと思うんです。

 秋田県の横手市、ここで、地域丸ごとスマートテラスストア、STSの実証実験が昨年の九月から十一月まで行われました。

 どういうものかというと、まず、横手は、食料品のアクセス困難人口の割合は三二%、七十五歳以上だと四四%になるそうなんです。横手市における交通手段の八五%、地方ですから、八五%が自家用車。免許を返納した高齢者は大変厳しい状況になっている。

 そこで、横手市は、民間業者と連携して、地域センター、いわゆる公民館ですね、そこに食料などの商品注文用の端末、これはちょっと大きいそうなんですが、それを設置して、利用者が端末、タッチパネルを押すだけ。翌日に、市内のスーパーがそれをまとめてそこに持ってくる。ここで、STS、このストアで商品を受け取って、セルフレジで代金を支払う。

 実は、各省庁に伺ってみますと、農水省、国交省、厚労省、経産省、様々な買物支援スキームがあるんですね。ところが、現場を抱える自治体はどう対応していいか分からないという、さっきの中小企業と一緒です。

 総理、縦割りを排して、関係省庁と連携して、先進事例など、各自治体や、こういう情報共有、デジタル田園都市交付金など関連予算を駆使して、制度の周知、自治体、そしてその先にいる買物弱者への支援となるよう対策を進めるべきと思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 人口減少や少子高齢化を背景とした流通機能や交通網の弱体化などによって、日常の買物機会が十分に提供されない、いわゆる買物弱者の皆さん、これは全国的に増加しているということは承知しています。その中で、皆さんお一人お一人に安心して生活していただける、健康な生活を享受できる環境整備は不可欠であり、そうしたお困りの皆さんに寄り添って解決に取り組んでいる地域を後押ししていく、こうした取組は重要だと思います。

 それに際して、委員御指摘のように、地域公共交通の維持ですとか、商店街の支援ですとか、中心市街地の活性化ですとか、孤独、孤立対策など、これまで各省、様々な取組は行っています。ただ、地域においてどれを使ったらいいか分からない、これは不親切ではないかという御指摘です。

 それぞれの対策においてもそういった点に配慮しなければいけないと思いますが、昨年十二月に閣議決定したデジタル田園都市国家構想総合戦略において、ICTを活用した高齢者の買物支援に対応できるプロジェクトを位置づけたところであり、今、関係省庁が連携して、まずは日本の中山間地域百五十か所でこうしたプロジェクトを実施していくこととしています。

 その百五十のプロジェクトの中で、様々なICT技術、ドローンですとか自動運転ですとか見守り支援ですとか、MaaSといった公共交通機関を活用するシステムの利用ですとか、そういった様々なメニューを用意して実施していく、こうした各省庁が連携した取組を是非進めていきたいと考えています。

高木(陽)委員 今、各省庁連携ということでお言葉をいただきました。

 要は、これはずっと調べてみますと、各自治体も窓口がはっきりしていないんですね、買物難民というのは。福祉の分野なのか、又は町づくりの分野なのか。だから、いろいろとこういう補助金がありますよという発信があったとしても、それを受け止める自治体の窓口もはっきりしていない。

 一方で、役所の方もそれぞれ、農水だとか経産だとか、農水は食料品という形ですけれども、経産省は商業関係の方からいくだとか、国交省は交通アクセスの問題からいくだとか。そうすると、そういうものがばっと発信されても、窓口が、受皿の方もしっかりしていませんから、困る。

 だから、そういう意味では、まず、国の方がしっかりと、こういう問題があるよと統一してもらって発信をしてもらうと、自治体、現場の方は、なるほど、これは使えるねと。いわゆる、これは使えないけれども、こっちの方でうちはできそうだね、こういうような形になっていくのがこの買物難民の問題。

 これは買物難民だけではありません、医療の問題もそうです。本当に過疎地、地方の方が苦労している。ところが、先ほどのパネルにもありましたように、都市部でも大変になっている。例えば私の地元の多摩地域でも、都営住宅、公営住宅がかなり高齢化している。そうなると、団地の中にあったスーパーがなくなっちゃった、買物に困っていますという地域もあるわけです。

 だから、本当に、過疎地だけの問題じゃない、まさに高齢社会の中の問題だよと捉えてやっていただきたいということで、お願い申し上げたいと思います。

 時間も参りましたので、最後の質問です。

 防災・減災、国土強靱化について伺いたいと思います。

 今年で東日本大震災の発生から十二年となります。震災でお亡くなりになられた方々、その御家族にとっては、十三回忌に当たります。

 被災地の復興は着実に進んでいるものの、難しい課題がまだ山積しています。東日本大震災から得た教訓を踏まえて、これからも防災・減災、国土強靱化を着実に進めなければなりません。

 昨年十月のこの予算委員会で、国民の命を守るために、防災・減災、国土強靱化の加速化五か年の終わった後も予算を確保するよう申し上げました。現在、自民、公明の与党のPTで、防災、減災を進めるための法改正を目指して議論を進めています。でき得れば、今国会中に議員立法として、野党の協力も得ながら、提出して成立をさせていきたい、こんなふうに考えています。

 しかし、河川改修や道路、港湾の整備など、これは時間がかかります、ハードの部分は。しかし、地震、豪雨災害、豪雪など、自然災害は待ったなしでやってきます。国土強靱化を今後更に効果的に進めるためには、それぞれの地域が直面する大規模自然災害リスクなどを踏まえて策定する各自治体の国土強靱化地域計画に基づいて、国土強靱化の取組を進めることが求められています。

 地域計画においても、ハードとソフトの両面の取組が必要です。とりわけソフト対策の実効性を上げることが重要であると考えます。

 これまで公明党は、国会議員と地方議員のネットワークを生かして、大規模水害に対する高齢者や障害者等を守る個別避難計画、災害の発生を予測し、関係機関が防災行動を時系列にまとめたタイムラインの策定を推進してきました。また、公明党の地方議員は、防災士の資格を持っている人が多くおります。平時から地域防災力の向上に積極的に取り組んでいます。

 流域のタイムラインは、国管理の河川では百九の水系でできていますが、大切なのは一人一人です。この一人一人の災害弱者がどう避難して命を守るか。マイ・タイムライン、これを国交省は普及啓発に取り組んでいますが、ハード、ソフトの両面にわたって、防災・減災対策についての総理の決意を最後にお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 激甚化、そして頻発化する災害に対応していくためには、委員御指摘のように、ハード面はもちろん大事でありますが、例えば、いつ、何をするかをあらかじめ時系列で整理した住民一人一人の防災行動計画であるマイ・タイムラインを用意するなど、ソフト対策をハードと効果的に組み合わせて取組を強化していくこと、これが不可欠であると思います。

 そして、五か年加速化対策を着実に進めるとともに、対策後も、中長期的かつ明確な見通しの下に、継続的、安定的に国土強靱化の取組を進めていくことが重要であると考え、新たな基本計画の策定など、国土強靱化対策を着実に進めていきたいと考えております。

高木(陽)委員 総理、命を守るというのが政治の使命ですので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上で終わります。

根本委員長 この際、浜地雅一君から関連質疑の申出があります。高木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 私は、安全保障関連について数問質問をしたいと思います。

 安保三文書、計十二回、昨年末にかけまして、自民党そして公明党の実務者でのワーキングチームでの議論を反映をさせていただきました。この中の論点を少し絞って質問をしたいと思っています。

 まず、この三文書のうちの最上位文書でございます国家安全保障戦略、ここで議論となったのが、我が国の中国に対する安全保障上の認識をどう表現するかでございます。具体的には、中国を安全保障上脅威と表現するかどうかで議論をさせていただきました。

 この安全保障上の脅威とは、いわゆる単に恐れを感じているということではなく、安全保障上の脅威となりますと、ある国が自分の国を攻める意思と能力を有していることを表に表明することにほかならないわけでございますので、これはどうかということでございました。

 確かに、中国の軍事面、これを捉えますと、尖閣への領海侵入は大幅に増加をしています。東シナ、南シナ海での一方的現状変更の試み、そして、昨年八月には、台湾沖合に発射されました弾道ミサイルが我が国のEEZ内に着弾をいたしました。中国の弾道ミサイルが我が国のEEZ内に落ちたことは初めてのことでありまして、看過し難い深刻な状況であることは間違いございません。

 ただ、国家安全保障戦略は、言うまでもなく、防衛力のみならず、外交力、経済力、技術力、情報力を総合した安全保障戦略の最重要文書でございます。その国力の柱として、外交力が第一である、そのように明記をしてあるわけでございます。当然、この外交力は防衛力に裏打ちされたものであるべきことは言うまでもございません。

 岸田総理は、昨年十一月、習主席との間で、まず安保対話を開始をしよう、そして不測の衝突を回避するための日中連絡メカニズムをしっかりと運用を開始しようということで合意をされました。さらには、気候変動問題など、中国との協力が不可欠な共通の課題についても認識を共通とされたわけでございます。

 やはり外交を駆使して、中国のリスクをコントロールしながら日中関係を適切にマネジメントできる環境、これが私は大事であろう、そのように思っております。

 また、加えて、公明党としましては、アメリカの対中国に対する情勢認識にも注目すべきだと主張をさせていただきました。当然、日本だけでなく、日米で歩調を合わせながら中国のリスクをコントロールすることが不可欠と思ったからでございます。

 そこで、米国の表現を見ますと、米国も中国を脅威とまでは表現をしていないということでございまして、結果、このワーキングチームでは、我が国の対中国認識については、安全保障上の深刻な懸念事項である、これは間違いない、また、最大の戦略的挑戦であるという旨を記載したわけでございます。

 そこで、岸田総理にお尋ねしますが、先日、日米首脳会談を終えられまして、我が国の対中国に対する認識、これは日米で歩調を合わせてしっかりと中国と向き合う上で有益であった、そのようにお考えか、総理の御答弁をいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、委員御指摘のように、国家安全保障戦略においては、中国と我が国を含む国際社会との対話と協力の必要性に言及しつつ、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、現在の中国の対外的な姿勢や軍事的動向、これは戦略的な挑戦であり、我が国の総合的な国力と同盟国、同志国との連携により対応すべきものである、このようにされたところであります。

 そして、その中で、まず、日米の方から申し上げるならば、一月十三日の日米首脳会談では、バイデン大統領との間で、日米両国の国家安全保障戦略、これは軌を一にしていること、これを歓迎した上で、中国をめぐる諸課題への対応に当たっても引き続き日米で緊密に連携していくことで一致をし、そして、共通の課題については中国と協力をしていく、こうした重要性を日米の間で確認をした次第です。

 その上で、中国との間では、昨年十一月の日中首脳会談において得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、そして中国に責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め、首脳間を始めとする対話を重ね、共通の課題については協力をする、こうした建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築をしていく、こうした方針で日中関係を考えていきたいと思います。

浜地委員 今年は日中平和条約締結四十五周年でございますので、しっかりと目に見える形での成果を総理には期待をしたいと思います。

 次に、反撃能力について幾つか質問をいたします。

 反撃能力の保有の必要性につきましては、現在、変則軌道のミサイル、またマッハ五を超える極超音速弾の登場によりまして、今ある迎撃を中心としたミサイル防衛だけでは確実に国民の皆様方の命を守り切れないかもしれない、そういう危機意識の下、公明党としても、この保有を是としたわけでございます。

 今日は、専守防衛との関係や、武力の行使、自衛権行使の三要件との関係で少し細かく整理をしたいと思います。

 まず、基本的なところから。そもそも、反撃能力に用いるスタンドオフミサイル、大体、射程は千キロ以上と言われていますが、これは、専守防衛の観点から、まず、そもそも我が国が保有できるのか、こういう問いでございます。専守防衛の定義の三の部分ですね。

 当然、専守防衛というのは不変のものでございますが、三の、保有できる防衛力の必要最小限度というのは、周辺の安全保障環境によっては時代に合ったものになる、相対的なものであると私は思っています。

 ただ、どれだけ安全保障環境が変わっても政府は保有できない装備として、一つに核兵器、ICBM、五千五百キロ以上の大陸弾ミサイルですね、そして戦略爆撃機を例示をしています。

 戦略爆撃機は、相手国の上空まで飛んでいって爆弾を落とす。スタンドオフは、我が国の領域から相手国の領域に向かって撃つ。相手国の領域を攻撃することは同じように素朴に思いますけれども、専守防衛の観点から、なぜスタンドオフミサイルは保有できるのか、防衛大臣、お答えください。

浜田国務大臣 我が国が保持できる自衛力は自衛のための必要最小限度のものでなければなりませんが、その具体的な限度は、その時々の国際情勢や科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面を有する、先生おっしゃるとおりでございます。

 一方、政府としては、例えば長距離爆撃機、戦略爆撃機といった、性能上、専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されないというふうに考えております。

 その上で、スタンドオフミサイルについては、相手の艦艇や上陸部隊等に対処することを目的とした通常弾頭の精密誘導ミサイルであり、いわゆる攻撃的兵器とは異なり、憲法そして専守防衛の基本方針の下で許容される自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものではないと考えております。

浜地委員 今、スタンドオフは精密の誘導弾という話がありましたので、当然、ワーキングチームでは、反撃を加えられる対象としても、これは国際法上の軍事施設に限るということですので、精密にそれは誘導できるということの表れだったというふうに私自身は今感じました。

 次に、一番上の反撃の定義、我が国に対する武力攻撃が発生しとありますから、これは相手国の攻撃が発生してから行使するものです。当然、この発生には、相手が攻撃に着手することも含みますよ、含みます。先制攻撃はできません。自衛権の一環である以上、当然といえば当然でございます。

 ただし、自衛権の三要件のうちの第三要件ですね、相手方の武力攻撃を排除するために必要な最小限度の行使でなければ自衛権はいけないわけです。したがって、相手が、仮に攻撃があっても、今ある迎撃システムで防げるのに反撃まで加えた場合には、この第三番目の要件の必要最小限度を超える行使に当たる可能性があるわけでございます。つまり、武力攻撃があっても、必ず反撃能力を行使するものではないんだと私は思います。

 そこで、防衛大臣にお答えいただきたいんですが、反撃能力を行使すべきとの判断はどのように行うんでしょうか、答えてください。

浜田国務大臣 御指摘のとおり、武力行使の三要件の第三要件においては、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこととされております。反撃能力についても、防衛出動下令時に無条件で行使されるものではなく、我が国に対する武力攻撃の規模、態様等に応じて、個別具体的な状況に即して判断すべきものであります。

 したがって、実際に発生した状況に即して、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐためにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置としていかなる措置を取るかという観点から、個別具体的に判断していくこととなります。

浜地委員 当然、手のうちを明かしてはいけませんから個別具体的なんですが、公明党としては、ワーキングチームで、国会承認のときの対処基本方針に事態の推移等を明確に書くことになっています、ここに、反撃を行使すべき、すべきでないということまでは求めませんけれども、どういう状況なのかということを分かりやすく対処基本方針には明示してほしいということも訴えておりますので、その点、御留意をいただきたいと思っております。

 次に、反撃能力は自衛権の一環である、武力の行使の三要件に基づきですから、定義は。ですので、平和安全法制で認めました限定的集団的自衛権の行使の場面、すなわち存立危機事態においても反撃能力は行使し得るとワーキングチームでは整理をいたしました。この自衛権の要件の第一要件です、右側。いわゆる、我が国に対する武力攻撃だけでなく、我が国と密接な関係にある他国に攻撃があった場合でございます。

 ただ、その存立危機事態における反撃能力の行使の必要性を、ここは防衛出動の任命権者でございます総理にお聞きしたいんですが、この必要性をどう考えていらっしゃるか。具体的に、存立危機事態において反撃を行使する、この具体的な想定される場面についてどのようにお考えか、総理、御答弁をいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘の存立危機事態における対応、これは、他国の防衛ではなく、あくまでも我が国の防衛のために行うものであるということをまず確認しておかなければなりません。個別具体的な状況に照らして、我が国の国民の命と平和な暮らしを守るための措置を判断して対応していく。これは武力行使の三要件に該当するという厳格な縛りがありますので、この三要件にあるように、我が国の存立が脅かされ、国民の命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、こうした条件に合った事態に対して対応していく、こうしたことであると思います。こうした考え方に基づいて具体的に対応する。

 それ以上、個別具体的なものについては、これは当然、安全保障の世界ですので、手のうちを明かすことにもなりかねない。今言った考え方に基づいて、政府としては、我が国の国民の命や暮らしのために、こういった対応をするべきかどうかを厳密に判断していくということをしっかり明らかにしていかなければならないと思っています。

    〔委員長退席、牧原委員長代理着席〕

浜地委員 総理、ありがとうございます。

 私、個人的には、反撃能力の有用性の一つとしては、より遠方で侵攻勢力を阻止する。日本にミサイルが飛んできてから当然迎撃を行うんですが、やはり、そのとき、もし、撃ち落とせないという場合もございます。ですので、より遠方で、とにかく近づけないという部分の有用性もあろうかと思っています。当然、自衛の措置の三要件に合致した場合です。ここは日米の共同対処になろうと思っておりますので、様々なシミュレーションをお願いしたいというふうに思っております。

 次に、テーマを変えまして、国民保護についてお尋ねをしたいと思っています。

 特に、ワーキングチームでは、沖縄の先島諸島の皆様方の避難について集中的に議論をいたしました。先島諸島には十一万人の住民、加えて観光客は常時一万人は大体滞在しているだろうと。十二万人の皆様方が避難をしなければならないということになります。

 国民保護法に基づく避難指示は、武力攻撃の発生の前段階である武力攻撃予測事態になれば発動できます。ただ、逆に、武力攻撃事態になれば、恐らく自衛隊は戦闘の準備で使えないと思います。したがって、予測事態にとどまる間にいかに早く避難し切れるかがポイントであります。

 そこで、実効性のある避難計画を国民の皆様方に目に見える形で早くお示しすることが重要だと思いますが、官房長官に、この住民避難の体制整備について御答弁をいただきたいと思います。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 有事の際に住民の避難等をできるだけ早く実現するためには、平素から関係機関が連携して必要な検討、訓練を進めることが重要であると認識をしております。

 特に、沖縄県の離島の住民避難については、島外避難となる場合、輸送手段の制約という特有の困難があることから、国が積極的に支援することとしています。今年度末には、国、沖縄県、先島諸島の五市町村等が協力して、武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を実施し、避難の手順を確認、具体化することとしているところであります。

 今年度は、このほか、全国で四十七回の、国と地方公共団体が共同で行う住民避難などの国民保護措置に係る訓練を実施することとしており、こうした訓練等を積み重ね、練度の向上や課題の改善を図り、迅速な住民避難が行われるよう実効性の向上に努めてまいりたいと考えております。

浜地委員 三月には図上訓練を行うということでございました。実際の、全島避難の訓練というのはなかなか厳しいですが、やはり実際の実施の訓練も体制整備をお願いしたいというふうに思っています。

 特に、先島諸島では、港や空港から何日で運べるかというのも大事なんですが、集合場所に島民の皆様方が集まれるかどうかということも、マイクロバスが足りなかったりするという指摘もございますので、そういった点も是非詳細に検討をいただきたいと思っております。

 最後の質問にします。防衛費の財源について総理に質問したいと思っています。

 ワーキングチームでは、どれが必要な装備かを一つ一つ積み重ねました。結果、今後五年間で総額四十三兆円の防衛費が必要との結論に達しました。特に、四十三兆円のうちの十六兆、これは、弾薬とか装備品の整備費とか、基地とか施設の耐震化が不十分だったということで、実はここに十六兆、以前の予算の二・五倍を使うことになりました。結果、毎年毎年積み重ねていって、令和九年には、令和四年度と比べて約四兆円強の財源が必要であると。

 当然、この防衛費は、経済対策と異なり、一時的なものではなく毎年必要でございますので、安定財源が必要なのは言うまでもありません。そのうちの四分の三については、歳出削減努力をしっかり行っていただくということです。ここをしっかりやっていただきたい。残りの四分の一強を税負担でお願いしたいという整理を年末されたわけでございます。

 公明党としては、まず、中小企業や個人に過度な負担とならないことを強く求めました。

 結果、まず、法人税の方、これは、付加税ですから、法人税率を上げるのではなくて、本来納めるべき法人の納税額に四%から四・五%付加させていただきたい。しかし、全ての法人ではなくて、納税額が五百万以下の法人には課税をしない。かえって言うと、課税される法人の割合は全体の六%にとどまるという整理です。これも、当初は百七十万までの控除だったわけでございますが、公明党の主張で五百万に引き上げていただいたわけでございます。

 次に、個人の所得税は、現在、令和十九年まで、復興の財源として復興特別所得税が、これも納税額の約二%付加されております。大体、年収五百万の御家庭で年間二千円程度。このうちの半分を防衛費に回させていただいて、ただし、復興財源が不足してはならないので、令和十九年までとしていた復興特別所得税を令和三十二年度ぐらいまで延ばそう、つまり、毎年の個人の負担の水準は変わらないけれども期間は延びるという整理だったわけでございます。これにたばこということです。

 ただ、開始時期については決まりませんでした。令和六年度以降の適切な時期と整理をされたわけでございます。問題は、この適切な時期です、総理。

 今、やっとコロナが終えんをしている。年初に、地元の商工会議所と私は何度も面談をしました。この問題を話しました。コロナ融資の返済が本格化をしてくる、若干、実は倒産も増えてきている、そういう声でございました。これに物価高です。先ほどの高木政調会長のお話にもあったとおり、原材料の高騰分は、なかなかこれはまだ企業は転嫁できていないというのが私の正直な感想でございます。これに賃上げも総理はお願いをされているわけでございます。確かに、法人の上位六%しか対象じゃないといっても、やはり、大企業、もうかっている企業が賃上げできないと下請の中小企業は賃上げできないというのが切実な現場の声でございました。

 ですので、このような状況ですから、総理、開始時期はくれぐれも慎重に慎重に今の経済状況を勘案しなければならないと思いますが、最後に総理の御答弁をいただきたいと思います。

    〔牧原委員長代理退席、委員長着席〕

岸田内閣総理大臣 抜本的に強化される防衛力については、将来にわたって維持強化していかなければならないという考えに基づいて、これを安定的に支えるため、令和九年度以降、裏づけとなる毎年度約四兆円のしっかりとした財源が必要と考えました。そして、財源確保に当たっては、国民の皆さんの御負担をできるだけ抑えるべく、政府としてあらゆる行財政改革の努力を最大限行った上で、その上で、それでも足りない約四分の一について、将来の世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々が対応するべきものであると考えた次第です。そして、その際に、委員御指摘のように、法人あるいは個人においても最大限の配慮を行う、こうした工夫をしたということです。

 そして、その上で、税制措置の実施時期について御質問いただきました。

 この令和九年度までの過程、すなわち、五年間の防衛力整備計画、四十三兆円については、行財政改革を含めた財源調達の見通し、あるいは景気や賃金の動向、またそれに対する政府の対応も踏まえて、閣議決定した枠組みの下で、税制措置の実施時期等については柔軟に判断をしていかなければならない。今申し上げた様々な要素を勘案した上で実施時期を確定していく、こうした方針であります。是非、こうした考え方についても丁寧に説明をしていきたいと考えます。

浜地委員 今年年末、しっかりまた話し合いたいと思います。

 時間になりました。終わらせていただきます。ありがとうございます。

根本委員長 これにて高木君、浜地君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。

 今日は基本的な問題について、総理を中心に議論させていただきたいと思います。

 まず、四十三兆円の妥当性であります。

 さきの参議院選挙で、自民党はGDP比二%、目指すということを言われました。総理は、選挙の期間中、私の記憶ではその数字は言われなかったと思います。むしろ、防衛力強化の内容と予算と財源をセットで考えなきゃいけないというふうに言われてきました。ただ、結局、終わってみると、五年後にGDP比二%、四十三兆円という数字になりました。これは国民の貴重な税金です。

 もちろん私も、今の安全保障環境が厳しくなってきている、いろいろな環境が変わってきている、そのことは認識していますし、余り総理と認識において違いはないんだろうというふうに思っています。アメリカの抑止力も、相対的には、対中国とか比べると、落ちてきていることも事実。そういう中で日本が何をしなきゃいけないのか、そういう議論だというふうに思っています。

 しかし、それにしても四十三兆は巨額ですから、やはりこれをきちっと精査する、その責任があるというふうに思っております。

 今日は限られた時間ですから基本的な幾つかだけ聞きたいと思いますが、その四十三兆の中で、スタンドオフ防衛機能として五兆円という数字が出ています。一つの柱は、トマホークミサイル、アメリカから買う。これは、艦船、自衛艦に設置をして、そして艦対地、地上を狙う、こういうものだと私は認識しています。来年度予算で、購入費それからその周辺も含めて、約三千二百億円の予算が計上されています。

 このトマホークですけれども、これを五年間で一体何発買って、トータル幾らぐらいになるのかということを、簡単で結構ですから説明していただけませんか。

浜田国務大臣 トマホークミサイルの取得数については、これを明らかにすれば我が国の具体的な防衛能力を明らかにすることとなるため、お答えできないところでありますが、我が国への侵攻を防ぎ、阻止するための、抑止するための必要数を整備する計画であります。

 令和五年度予算案では、現時点で構想しているトマホークミサイルの総取得数に要する経費約二千百十三億円に、関連経費千百四億円を合わせ、計約三千二百十七億円を計上しているところであります。

 また、これ以外に、イージス艦の改修経費等が必要となりますが、所要の調査をした上で、令和六年度以降に関連経費を計上していく予定であります。

岡田委員 何発か言えないということですが、多くのメディアは五百発と書いていますよね。それが正しいかどうかは分かりませんが、その程度のことも言えないというのはどういうことですか。

 そして、トータルの費用。トータルの費用を言えなければ、どうやってこの四十三兆円が正しいかどうか検証できるんですか。中身をきちんとある程度説明して、国民に理解を求めて、これは大変な負担ですから、最低限の説明というのは私は絶対すべきだと思いますが、総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 委員御指摘のように、我が国の防衛力を抜本的に強化するに当たって、国民の皆さんに丁寧に説明をしなければならない、この御指摘はそのとおりだと思います。ですから、安保三文書を明らかにし、その中でできるだけ具体的な内容については明らかにしていく、こうしたことを行っております。

 ただ、具体的に、何発等、その詳細まで明らかにすることは安全保障上適切ではないということを防衛大臣も説明させていただいたと認識をしています。

 できるだけ日本の手のうちを明らかにしない、防衛、安全保障上の配慮をした上で最大限の説明努力をする、三文書の公表を始めとして丁寧な説明を行うことは重要であると考えています。

岡田委員 トマホーク以外のその他のことは、三文書には細かい数字は書いてありませんが、防衛省の資料としてはかなり細かいところまで書いているものもあるんですね。なぜトマホークが書けないのかなと、私、非常に不思議に思っているんです。

 では、もう一つ、一二式対艦ミサイル能力向上型。これは、量産に五年間で一兆円、そのうち地上発が七千億というふうに防衛省の資料には書いてあります。ここは割と詳しく書いてあるんですね。この地上発射型については、技術開発を二〇二五年に終わって、二六年から配備をするというふうに書いてあります。

 そこで、二つお聞きしたいんですが、一つは、これはかなり技術開発が要ると思うんですよ。今、二百キロぐらいと言われていますよね。それを千キロに延ばす。そうすると、燃料代も、それだけたくさん燃料を積まなきゃいけませんし、当然、スピードが落ちないようにエンジンも大きくしなきゃいけないとかいうことで、私は技術開発の難易度というのはかなり高いと思うんですね。それが本当にこんな短期間で確実にできるのかということを、これは防衛大臣に是非お聞きしたいと思います。

 そして、もう一つは、来年度の予算の中で、九百三十九億円、量産開始予算として計上されていますね。まだ二〇二五年まで開発が終わらないものを、一方で量産開発予算を計上するというのは、これはどういうことなんでしょうか。説明していただけませんか。

浜田国務大臣 防衛力を抜本的に強化するためには、可能な限り早期に部隊に装備を届ける必要があります。こうした早期装備化のために、これまでの研究開発のやり方を踏まえ、研究開発のめどが立ったところで速やかに量産に着手する必要があります。

 この観点から、地上発射型の一二式地対艦誘導弾能力向上型については、令和三年度から継続している研究開発のこれまでの成果、既存の対艦ミサイル技術やノウハウの蓄積等によって量産のめどが立ったことから、研究開発が完了してから量産を開始する従来のやり方を変更して、研究開発と並行し、令和五年度から量産に着手することとしております。

 こうした取組を通じて、開発完了後に量産を開始する場合に比べて配備時期をおおむね三年前倒しすることを目指しておりますが、量産と研究開発双方が適切に進捗するよう、事業を計画的かつ着実に進めていくところであります。

岡田委員 よく分からないんですが、普通は、研究開発して、それが大丈夫だということが確定された上で量産の契約に入るんじゃないですか。まだ研究開発が終わっていないのに、もう量産の契約しちゃっているんですか。

 もし研究開発がうまくいかなければ、それじゃ、国産にこだわらずに海外のものを買うという選択だってそこにはあるわけですね。もう最初から決め打ちして、これはうまくいくはずだと、量産のお金も一年間で九百何十億もつぎ込んで。

 だって、契約していないはずでしょう、量産についての契約は、研究開発段階なんだから。していたらおかしいですよね。その辺はどうなっているんですか。

浜田国務大臣 例えば、研究開発事業で作成した物づくり用の詳細な設計を量産事業での製品の設計に活用する等、研究開発事業の成果を量産事業にタイムリーに反映することを考えております。

 また、遅延、失敗等の可能性というものについては、これらのミサイルに係る研究開発事業については、これまで実施した試験やシミュレーションを通じて、所要の性能を達成する一定の見通しを得ております。

 その上で、研究開発事業について、リスク管理を行いつつ着実に進捗しているところでありますが、仮にリスクが顕在化した場合であっても、速やかに対処していく予定であります。

岡田委員 対処できるような程度のものであればいいと思いますけれども、そのことも全く保証はありませんよね。私は明らかに急ぎ過ぎだと思いますよ。普通のやり方じゃないです、これは。だって、まだできていないのに量産の契約に入っているわけですから。

 というようなことで、今二つの事例を挙げましたが、一つ一つ見ていくといろいろな疑問が湧いてくるんです。だから、四十三兆円について、やはりきちんと、私たちも検証したいと思いますが、是非、政府の方ももっと説明責任をしっかり果たしてもらいたい、そうでないと国民は納得できないと思いますよということをまず申し上げておきたいと思います。

 もう一つ。先般、本会議で、二十六日ですが、順番が逆じゃないかという話がありました。つまり、日本で国会の議論もやっていない、予算の審議もやっていないのに、アメリカに行ってバイデン大統領とか2プラス2で説明している、それはおかしい、そういう指摘に対して、総理はこう答えられたんですね。米国に対しては日本の現状について説明したものであり、国会と米国への説明の順序が逆ということではありませんと。

 つまり、説明しただけだということですね。そういうことでいいんですか。アメリカには説明しただけなんですか。

岸田内閣総理大臣 先日の答弁のとおりであります。

 我が国の現状、このような安保三文書について明らかにしたということ、政府として、閣議決定を行い、こういう方針でいるということ、この現状についてアメリカに説明を行った、こうしたことであったと認識をしております。

岡田委員 これは林外務大臣に聞いた方がいいかもしれないんだけれども、2プラス2でこういう表現があるんですね。日米双方は、米国との緊密な連携の下での、日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間で協力を深化させることを決定した。つまり、反撃能力を前提に、日米で深化させましょうということを決めているじゃないですか、2プラス2では。

 それと、今の総理の発言は明らかに矛盾します。どっちが正しいんですか。

林国務大臣 今、岡田委員から御質問がありましたけれども、2プラス2では、総理がおっしゃったように、我々としても、我々の今の状況を御説明し、それを前提に、今おっしゃったようなことも含めて議論したということでございますので、総理との間で今お話のあったことについて何かそごがあるというふうには考えておりません。

岡田委員 協力を深化することを決定したと書いてあるんです。まだ私たちは予算の審議もしていません、説明もしっかり聞いていません、議論もしていません。そこで米国と決定したというのは、それはやはりおかしいんじゃないですか。順序が逆じゃないですか、総理。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、アメリカには日本の今の現状について説明をしました。そして、政府としての考え方、今後の取組について説明をしたということであります。そして、それを前提として、日米で今後どういった協力が考えられるか、こうしたことについて確認をした、決定をしたということであると理解をしています。今の現状の考え方を前提とした取組ということであります。

 これはもちろん、そうした決定について実現するためには、こうした内容を今の令和五年度予算案ですとか関係法案の中に盛り込んでいるわけですから、これを実行することは、これは国会の審議をいただかなければ実行に至らない、これがその考え方であると思っています。

 是非こうした、段階を踏んで実行に向けて取組を進めていく、この厳しい安全保障環境、複雑な安全保障環境、迅速に対応しなければいけない、こういった問題意識の中で、今申し上げました取組を一歩一歩進めていく、こうした姿勢は重要であると考えています。

岡田委員 総理の御説明は分かりますが、効果的運用に向けて日米間で協力を深化させることを決定したというふうに書いてあるんですね。私はやはり、いろいろ言われても、どんどん日米で進めてしまっているということがこういう表現にもなったと思うんですよ。やはり国会無視であり、国民無視なんですよ。四十三兆円も使いながら、きちんと説明もせず、審議もしないままで、日米間でどんどん先に走っているということだと思います。

林国務大臣 先ほど岡田委員から、日米双方は、米国との緊密な連携の下での、日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間の協力を深化させることを決定したと御紹介があったとおりでございます。

 その前段として、日本側から、新たな戦略の下で防衛予算の相当な増額を通じて、反撃能力を含めて防衛力を抜本的に強化する決意、これを改めて説明をし、米側からは、日本の新たな国家安全保障政策を、同盟の抑止力を強化する重要な進化であるとし、強く支持する旨表明があった、そして今御紹介のあったところに続いていくということでございますので、先ほど申し上げたとおりでございます。

岡田委員 今、文章を読まれたんですが、何の説明にもなっていませんよね。

 次に行きます。子供政策予算。

 昨日、いろいろありましたけれども、所得制限について、茂木幹事長が、過去に所得制限を入れたことについて反省していると言われました。

 総理にお聞きしたいのは、総理はこの所得制限を入れたことについてどう考えているのか。所得制限はもう入れないというふうに茂木幹事長が言っておられますが、同じ考えなのかどうか、確認したいと思います。

岸田内閣総理大臣 今の御指摘の茂木幹事長の発言については、今この児童手当をめぐって様々な議論が行われている、その中で一つの意見であると認識をしております。

 政府としては、従来から申し上げております。児童手当については、この見直しが、前回見直しが行われてから十年が経過しています。さらに、少子化が進展するなど社会経済状況が大きく変わるとともに、これまで取り組んできた政策強化の方向性から、今後重点的に、抜本的に取り組むべき子育て支援政策の内容、これも変化しているということで、今、内容の具体化に取り組んでいるところです。

 政府としては、現状をしっかり受け止めつつ内容を具体化していく、これが今の政府の立場でありますので、その議論の中で児童手当の在り方についても判断をしていきたい、こう考えております。

岡田委員 与党幹事長の意見を、一つの意見であるというふうに切って捨てたわけですから。それは、それなら幹事長にもよくそれを伝えてくださいよ。全然、与党第一党の幹事長と総裁の、総理の意見が食い違っているというのは、これは非常に誤解を招きますから、よく注意をしておられた方がいいと思いますよ。

岸田内閣総理大臣 政府として、今、その様々な政策、内容を具体化しよう、そういう作業をしているところであるということを説明させていただきました。

 その中で、与党、野党それぞれの立場でいろいろな意見があるということ、それはそれぞれ尊重しなければなりません。そうした意見もしっかり踏まえた上で、政府としてもしっかり議論を深めて、そして判断、決定をするということが大事だと思います。

 その過程において、この一つの意見が出たこと、決して切って捨てたというものではありません。一つの意見が出た、それもまた一つ政府として受け止めながら、今、内容の具体化を進めている、この作業を行っていきたい、このように申し上げております。

岡田委員 実は、この子供対策で、私、非常に気になったフレーズがあるんですよ、総理。

 総理は、これも一月二十六日の衆議院本会議で、社会全体で子供、子育てを応援するような、中略ですが、次元の異なる少子化対策を実現したいと。つまり、次元の異なる少子化対策というのは、社会全体で子供、子育てを応援するようなものであるという趣旨のことを述べられたと思うんですが、これをよく説明していただけませんか。

岸田内閣総理大臣 その趣旨は、まず、子供、子育て政策において、個別の政策の内容、また、それぞれの政策の程度、数字的なものももちろん大事でありますが、個別の政策を並べただけではなかなか結果につながってこなかった、こうしたことも振り返りながら、やはり、こうしたことについて今まで関与が少なかったと言われている男性ですとか企業、こういった方々にもしっかり意識を持ってもらう、また、高齢者であっても、また独身であっても、この問題は自分たちの未来に関わる問題であるという意識を持ってもらう、さらには、地域社会においても子供政策を共に考えてもらう、こういった社会の雰囲気、こうしたものをつくっていくことが大事であるということを申し上げています。

 こうした個別の政策レベルにとどまらず、日本の国全体として、子供、子育て政策、これはそれぞれの国民が自分たちの未来に関わるものだという意識を持って取り組む、こうした雰囲気をつくることが大事だということを申し上げた、これが発言の趣旨であります。

岡田委員 社会全体で子供、子育てを応援する。私はすばらしい言葉だと思いますよ。

 我々、民主党政権のときに言ってきたのが、社会全体で子供、子育てを支援する、そういう社会を目指しますと言ってきたんです。

 それに対して当時の自民党は、そのイデオロギーは駄目だ、家庭中心だ、こういうことを言ったのは安倍総理ですけれども、それは極論としても、やはり家庭中心じゃないか、社会全体で支えるということじゃないと激しく批判されたんですね。

 これは、やはり、子供、子育て政策をやる際の基本的スタンスの問題ですから、私、はっきりさせておきたいんですよ。総理が今言われたように、社会全体で支えるということが、応援するということが大事なんだと。これが子供政策を考えるときの基本スタンスですね、総理は。よろしいですね。

岸田内閣総理大臣 家族という存在、これは引き続き重要な存在であると思います。しかし、その家族であっても、従来、男性の方々、我々男性は関与が薄いと言われてきました。こうしたことについてもしっかりと目を向けることによって社会の雰囲気を変えていくことは大事であり、そして、みんなで個別の政策を支えていくべく努力をしていくことが大事だということを申し上げています。

 家族か社会かという二者択一で物事を考えるという考え方は取りませんが、こうした、従来、関与が薄い方々にも我が事として感じてもらう、こうした雰囲気を日本としてつくっていくことは重要だということを申し上げております。

岡田委員 家族が大事なことは当然です。だけれども、それだけじゃどうしようもないような事態になっているから、社会全体でそれを支えていこう、私たちが十数年前に申し上げたのはそういうことなんですよ。それを、いや、家族第一だ、社会全体で支えるとか育てるとか、それはおかしいと自民党の多くの議員が言いましたよ。議事録を見てくださいよ。もちろん、若い議員とか女性議員の中にはそういう議員じゃない人もいましたよ。私、答弁をずっとしていましたから。でも、あのことが、やはり今回の事態を私は招いてしまったんじゃないかというふうに思うわけですね。

岸田内閣総理大臣 平成二十四年度の児童手当への見直し、これは、当時の民主党、そして自民党、公明党、これは三党合意に基づいて法改正が行われたわけですが、その目的規定において、父母その他の保護者が子育てについての一義的責任を有するということを基本認識としてという文言が記載されております。家族という存在、第一義的な責任を担うという意味で重要だという認識、これは今でも重要な認識であると思います。

 その上で、こうした子供、子育て政策を今まで関与の薄い方々まで広げていく、こうした努力が大事である、こうした認識に立って、これからの政策を考えていきたいと思っております。

岡田委員 ですから、そういう認識に立つのが十数年遅れたんですよ。恐らく自民党の中にもいろいろな議論はあることだと思いますが、やはり、社会全体で子育てを支援する、その基本認識に立って、これから具体的な政策を議論していきたいというふうに思っております。

 さて、総理は、防衛費倍増、それから子供対策倍増、こう言われます。それぞれ重要な政策であることは間違いありませんが、私が非常に奇異に感じるのは、ほかにもあるはずですよね。例えば、二〇二五年問題で、社会保障費、これからも高齢者の割合が増えることで増えていくことはもう間違いのない事実。それから、先般の金利の上昇がありましたが、これから国債費の支払いも確実に増えていくだろう。

 いろいろな歳出を増やす要因がある中で、どこにどれだけ予算を配分していくのか、その財源をどうするのか、それをしっかり全体を見ながら決定していくのが政治の重要な役割だと私は思うんですね。それを、何か防衛費四十三兆円まずありきで、これはもう触りませんよ、そういう議論が私は全くおかしいと思うんですよ。

 やはり、国の将来を考えたときに、何にどれだけ、もちろんいろいろな議論が出るでしょう。それをきちんと説明し、説得しながら、減らすところも出てくるでしょうし、もっとつけなきゃいけないところも出てくるでしょう。そして、そのための財源をどうするのか。ちゃんとした議論をしませんか、総理。何か、何で四十三兆円まずありきなんですか。是非説明してください。

岸田内閣総理大臣 まず、四十三兆円につきましては、まず数字ありきという御指摘は当たらないと思っています。先ほど来申し上げてきたように、一年以上にわたって議論を積み重ね、現実的なシミュレーションを行って、必要とされる防衛力の内容を積み上げ、規模を導き出した、こういったことであります。

 そして、その防衛力についても、これは、最大限、行財政改革を行い、そして足りない分については国民の皆さんにもお願いしなければいけない、こういったことを申し上げているわけですが、歳出改革、行財政改革、これは法律に書いてありますが、社会保障関係費以外の経費を対象とする、こうした整理をさせていただいています。子供、子育て対策についても、幅広い社会保障の問題としてしっかり取り組んでいかなければなりません。

 いずれにせよ、委員御指摘のように、全体を考えながら様々な予算を考えていかなければいけない、これは当然のことであり、全体の経済、財政、しっかりと見通すことによって、日本の財政の市場あるいは国際社会における信頼をしっかり維持していくこと、これが何よりも重要だと思います。こうした、我が国の財政の信頼の維持、持続可能性の信頼におけるその維持、こういった点は、全体を考える上で大変重要な考え方であると認識をいたします。

岡田委員 そして、その前に徹底した歳出構造改革、これをやることは大前提ですよね。私は、そういったことも含めて、現在の財政健全化目標、これは二〇二五年度がゴールになっていますね。しかし、まあ、これはできないだろうと多くの人が認めていると思います。

 新たな財政健全化目標をきちんと作って、そして、そこで、徹底的な歳出構造改革も、必要な経費の算出も、そのための財源をどうするかという議論も含めて、今年の六月までに新たな計画を作るということをお約束いただけませんか。

岸田内閣総理大臣 まず、今の経済財政目標、これは到達不可能であるから見直せという御指摘でありますが、先日、一月二十四日の経済財政諮問会議において報告された中長期的な試算においては、成長現実ケースで示された成長率が実現し、これまでの歳出改革努力を継続した場合には、足下の税収増にも支えられ、国と地方を合わせた基礎的財政支出、これは二〇二五年度に黒字化する、こういった姿が示されました。

 この前提となる実質二%、名目三%、この成長自体が非現実的ではないか、こういった御指摘があります。委員もその点を指摘されているんだと理解をいたしますが、こうした目標、確かに大変高い目標ではありますが、しかし、現状を考えますと、歳入歳出両方で様々な変化が今生じています。

 今までの財政の状況を見た場合、感染症対策あるいは物価高騰に対する対策、これを何とかして経済的に下支えするための支出、これが大幅な赤字の大宗を占めています。今後、新型コロナを乗り越え、そして物価高騰を乗り越え、そして経済を再生させていく。この歩みの中で、従来、多額に必要とされたコロナ対策費等は、これは当然減額していくことになります。こうした歳出における変化。

 そして、歳入における変化。これは既に、令和三年度から税収の増加、三年度は九・六兆円の上振れ、また、四年度は三・一兆円の上振れを見込んでいます。こうした経済の回復の中で税収が増加している、こういった要素もあります。

 確かに、二%、三%という成長目標、これは高い目標ではありますが、今言ったように、歳出歳入両方において今変化が生じていき、今後の見通しを考えますときに、是非、これに政府の歳出改革努力をしっかり積み重ねることによって、今、目標とされている基礎的財政収支、二〇二五年度黒字化、この目標に向けて努力を続けていきたいと考えております。

岡田委員 総理、答弁を読むのはいいですけれども、誰も信じない計画を言ったって、国の信用が下がるだけですよ。もっと深刻に考えるべきだと私は思いますよ。

 次、原発に行きます。

 原発政策の大転換。従来は、可能な限り原発依存度を低減する、これは去年作ったエネルギー基本計画ですよね。それから、歴代政権は新たな原発の建設は想定しないと言ってきたのを、将来にわたって持続的に原子力を活用する、次世代革新炉への建て替えを考える。これは大転換されました。

 どうしてですか。これは説明がほとんどないんですよ。

岸田内閣総理大臣 まず、大転換とおっしゃいますが、まず、一昨年決定した第六次エネルギー基本計画では、御指摘のように、原発依存度は可能な限り低減していく、こうした記載をする一方で、原子力について必要な規模を持続的に活用していく、こういった記載も併せて行っています。この点は、GXに向けた基本計画においても、方針は変わらないと認識をしています。

 今、去年の二月以降、ロシアによるウクライナ侵略によって世界的なエネルギー危機が生じていると言われる中で、世界各国、少なくとも先進国は皆、エネルギーの安定確保と、そして気候変動との対応、この両立をしていくのが国家的な課題であるという認識の下に取組を続けています。

 GX実行会議でも、エネルギーの安定供給と、そして気候変動対策、脱炭素、これをどう両立させるのか、そのためには、安定的な供給体制を構築するためにあらゆる選択肢を確保していく、こうした方針を明らかにしているということであります。

 是非、このGX基本計画において示したエネルギー安定供給と、気候、温暖化対策の両立のために、今後とも原子力について必要な規模を持続的に活用していく方針を続けていきたいと思っています。

岡田委員 ウクライナの問題はここ数年続く可能性はあります。だけれども、新しい原発を造るという話は五年や十年の話じゃないじゃないですか。だから、時間軸が全然違うわけです。この機に乗じて、原発を造るということを言ってこなかったのをひっくり返して、では、原発やりますと。

 そして、総理も言っておられるように、ゼロリスクはないと総理は言っていますね、原発について。確かにそのとおりですよ。今の原発、いろいろな、規制委員会もできて、従来と比べれば安全性は高まっていると思いますが、でも、リスクゼロとは言えない。

 じゃ、本当に、冷却水が供給できなくなったときに、どうやって、原発、例えば水素爆発とか、あるいはメルトダウンとか、そういうことが起こらないための対策って、どうやって講じるんですか。

 私たちは、それは東日本大震災のときに本当に苦しい思いをした。やはり、核エネルギーというのは暴走したときに止めるすべがないんじゃないかと私は思っているんですよ。そこは何かいい手はあるんですか、総理。

岸田内閣総理大臣 まず、基本的に、先ほど申し上げました世界的なエネルギー危機の中で安定的にエネルギーを確保しなければいけない、こういった点を考えましたときに、我が国の置かれている立場、先進国でも最低レベルのエネルギー自給率、そして世界の中でもかなり高い中東依存度、さらには再エネ適地が大変限られている、山と深い海に囲まれた我が国の地形、こうした状況を考えましたときに、あらゆるエネルギーを確保していくことが将来を見通すために大事だという基本的な認識に立っています。

 そして、あらゆる選択肢を用意する際、原発であったならば、次世代の革新炉一つ開発するにしても、これは二十年レベルの大変長いスパンが必要とされます。こうした取組に向けて人材や技術を維持していくことが大事だという考え方に基づいています。

 その上で、今、質問としては、リスクの問題、御指摘がありました。

 原子力については、安全神話に陥ってしまった東京電力福島第一原子力発電所事故、この反省を踏まえて、いかなる場合もゼロリスクはないという認識に立ち、世界で最も厳しい水準の新規制基準の策定など、措置を講じてきました。この点については、今後とも高い独立性を持った原子力規制委員会が厳格に規制を行っていく、この方針は変わりありません。

 そして、今の、現在の原発、この再稼働に当たっては、福島第一原発のような事態に至らないように、電源の多重化などの電源確保策の抜本強化、あるいは、電源喪失時にも外部から原子炉の冷却ができる設備の導入、また、水素除去装置や放射性物質の大気中への放出を抑制する装置の導入など、原子力規制委員会の厳しい基準に従って対応し、そして、地元の理解を得た上で再稼働していく、こういった方針は堅持するものでありますし、また、検討されている次世代革新炉の中においては、万が一外部電源を喪失した場合にも人の操作を介せず自動的に燃料棒を冷却させるシステム、仮に炉心溶融に至った場合にも溶融燃料を自然冷却させるコアキャッチャーを導入するなど、最新の技術、これが検討されている、こうしたことであります。

 こうしたことを一年間にわたり、関係省庁の専門家会合で百回以上の会議を行う中で議論を積み重ねてきました。今申し上げた再稼働における安全対策、また次世代革新炉における安全対策、こうした議論を積み重ねてきたわけであります。是非、この積み重ねの上において、確定したGXの基本方針について、国民の皆さんに丁寧に説明を続けていきたいと考えております。

岡田委員 私が議事録を読む限り、GX実行会議で、最悪の事態、これを避けなきゃいけないということは言っているけれども、どうやって最悪の事態に対応するかということは議論されていませんよ。結局、原発推進の人を多く入れている、最初から結論ありきだったと私は思いますね。

 それから、もう一つ言っておきます。

 諸外国がと言われましたが、例えばドイツはどうですか。ドイツは、今年の四月まで原発廃止の期限を延長しました、確かに。だけれども、同時に何を決めているか。二〇三〇年までに電力に占める再生可能エネルギーの割合を、従来六五%だったのを八〇%に引き上げるという決定も行っています。そして、二〇五〇年には全て自然エネルギーで賄う。水素やアンモニアも、グリーン水素、グリーンアンモニアでやる。そういう道筋をしっかり描いてやっていますよ。私は日本も同じ道を行けるはずだというふうに思っているんですね。そのことをまず申し上げておきたいと思います。

 では、その原発のリスクの中で、ミサイル攻撃というものについてこの前も議論させていただきました。これはどうするんですか。

 議論をちょっと省略するために、総理の答弁を持ってきました。

 ミサイル攻撃については、規制委員会は、その対象ではないというふうに言っています、これは民間事業者で防ぎようがないんだということを言っています。

 では、政府はどうするか。ここに書いたとおり、ミサイルによる武力攻撃に対しては、イージス艦やPAC3など我が国の防衛力によって対処する、加えて日米で共同して対処する、そうした事態であると認識していますと。

 でも、これじゃ対処できないミサイルがあるとさっきも議論に出ていたじゃないですか、超々高速とか変則軌道とか。対応できないから、今、反撃力の議論になっているわけでしょう。そういうミサイルに対して対応できないわけですね。

 聞かれて、総理は、事態対処法や国民保護法の枠組みの下で原子力施設の使用停止命令あるいは住民避難等の措置、こうしたことを準備しています、こう答えられました。

 だけれども、ミサイルが飛んできてから止めたって遅いんですよね。あるいは、察知して止めたって、やはり一週間ぐらいは冷えませんから。そして、結局、逃げるしかないということですよ、これは。逃げるしかない。

 そういう状態で、原発そのものはちょっと横に置きましょう。だけれども、私が少なくともこれだけはちゃんとやってくださいと言っているのは、使用済燃料、これはエネルギー供給と何の関係もありません、使用済燃料を原発建屋の中のプールに大量に保存しているという事態は、これは国の責任でしっかり早く解消しなければ、ここに当たったときにどうするんですかということを私は言っているんですよ。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 ちょっと幾つかまとめて発言されたので、一言だけ触れますが、まず、原発の安全性についてGX会議で議論した形跡がないということですが、それについては、まさに先ほど答弁させていただきましたように、一年間にわたり、各省庁の専門家会合で百回以上にわたって安全性について議論を積み重ねてきて、その上においてGX会議というものが存在いたします。

 そして、ドイツと違うのではないか、こういった指摘がありました。

 確かに、ドイツとは違います。ドイツとは置かれている状況が違う。エネルギーの安定供給という観点から考えましても、日本の置かれている自給率の低さ、中東依存度の高さ、そして再エネ適地の少なさ、これは置かれている状況が違うわけですから対応が違う、これはそのとおりだと思っています。

 その上で、原発へのミサイル攻撃について御質問をいただきました。

 おっしゃるように、ミサイルからの安全ということにつきまして委員とはこれまで随分と議論をしてきましたが、極超音速滑空兵器やあるいは変則軌道のミサイル等を考えますと、これは迎撃がより難しくなっている、これは事実だと思います。だからこそ、我が国として国民の命を守るために防衛力を抜本的に強化しなければならない、こういった問題意識に基づいて、防衛力の強化について議論を行ったわけであります。

 こうした脅威に対応するために、三文書においては、イージス艦やPAC3に加えて、警戒管制レーダーや地対空誘導弾能力の向上、イージスシステム搭載艦、SM6、新しい迎撃ミサイルですが、こうした整備をするなど、ミサイル迎撃能力の更なる向上に努めた。そしてさらに、それに加えて、統合防空ミサイル防衛能力によって、反撃能力によってミサイル攻撃そのものを抑止していくことを考えていく。さらには、日米同盟の抑止力、対処力を強化することによって、我が国に対する武力攻撃そのものの可能性を低下させる。こうした取組が重要であるということで議論を進め、政府として、この三文書という形で方針を決定したということであります。

 こうしたミサイルに対しての安全性ということについても、政府として、真剣に防衛力の強化という観点で取り組んでいかなければならない、こういった認識で取り組んできたということだと思っております。(発言する者あり)

 いっぱい、いろいろ聞かれたので、あれです。

 使用済燃料についてありましたが、この使用済燃料の保管方法については、原子炉等規制法に基づいて、原子力規制委員会が最新の科学的な知見あるいはIAEA等の安全基準を参考にしつつ必要な基準を策定し、それに照らして厳密に安全性を確認している、このように承知をしています。この原子力規制委員会の厳しい審査を経て、認可を受けなければ運転ができない、このことについては従来と全く変わっておりません。

岡田委員 原子力規制委員会は、ミサイル攻撃で原子炉の建屋が破壊されたということも審査に、対象にしているんですか。それはしていないという前提で、だから政府しかそれは何とかできないということで私は申し上げているんですよ。

 どうして、明らかにリスクがある、それはミサイル迎撃でいろいろなことができるでしょう、抑止力もあるでしょう。だけれども、そういうのを打ち破られたときに、建屋の中のプールにある使用済燃料がばらけて、そして、場合によっては日本の国土の何割かが失われるかもしれないんですよ。

 それだけのリスクがありながらそれを放置して、やろうとすればできるわけですよ、プールから移せばいいんですから。乾式に移して、もう少し安全なところに持っていけばいいわけですよ。業者に任せておけばそれはやらないかもしれないけれども、政府ができるのにやらなければ、私は、福島第一原発のときに、津波は来ないと言って放置して、そしてあれだけの甚大な被害を招いた。同じ責任を総理自身が取らなきゃいけなくなりますよ。

 国民のために、もう少しそこは何とか考えてくれませんか。

岸田内閣総理大臣 使用済燃料の保管方法については、今の保管方法に代えて何かほかの方法をという御指摘でありますが、例えば、使用済燃料プールによるものではなくして乾式キャスクによる保存ですとか、様々な議論はありますが、いずれにせよ、どういった方式を取っても、原子力規制委員会の厳しい審査を経て、認可を得なければならない、この点については変わりはありません。

 ですから、ミサイル攻撃については、我が国の防衛力強化、国民の命や暮らしを守る観点から、どういった装備を充実させるべきなのか、これが重要だということを申し上げています。だからこそ一年間かけて議論を続けてきた、こうした重要な課題であると認識をしております。

岡田委員 もし総理がそういうことをおっしゃるんだったら、今、航空機の衝突までは規制委員会が対応することになっていますよね。じゃ、ミサイル攻撃も規制委員会の対応項目に加えたらどうですか。でも、規制委員会は、それはできません、それは民間事業者ではどうしようもないことなんです、政府の問題なんですと言っているわけですよ。ここは政府の中でお互い責任の押しつけ合いになっているんですよ。だけれども、重大なことなんですよ。国民の命が懸かっているんですよ。

 だから、今日はこの辺にしますが、是非検討してもらいたいというふうに思います。国民の命の問題です。

 時間が限られていますが、ちょっと最後、反撃能力について。もう余り時間がございません。

 私が想定する、政府が言う存立危機事態における反撃力の行使というのはこういうことかなというふうに思って、作ってみました。私はこれに賛成しているわけじゃありませんよ。

 日米が共同ミサイル防衛をやっている、そのときに、米国の艦船にある国がミサイル攻撃を加えた、存立危機事態の要件に該当するということで、日本がそれに対して反撃をする、そのミサイル基地に。こういう場合を想定しておられると考えていいですか、一つのケースとして。

岸田内閣総理大臣 実際のところ、個別具体的な事案に即して対応を考えなければいけませんが、基本的な考え方として、存立危機事態とは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態であり、そして、なおかつ、他に適当な手段がなく、必要最小限度の行使にとどまる、こうした条件を満たすものであります。

 よって、この存立危機事態、これは図をお示しいただきましたが、米国を始めとする他国に対する武力攻撃が発生したからといって、無条件で認定されるものではありません。個別具体的な状況に即して、攻撃国の意思ですとか、能力ですとか、事態の規模ですとか、こういったものを総合的に考慮するわけですが、基本的に、我が国の国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態において、こうした存立危機事態の発動を考えていく、これが基本でありますので、全く我が国とは関係ない事態で米軍が攻撃を受けたとしても、我が国として対応することは考えられないということであります。

岡田委員 総理はいろいろおっしゃったので、存立危機事態そのものも、とても曖昧な概念なんですよ。

 これは安倍さんの答弁をお示ししたいと思いますが、新三要件の判断に当たっては、事態の個別的、具体的な状況に即して、主に攻撃国の意図、能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することとなります。

 何を言っているか分かりませんよね。すごくこれは政府に大きな裁量権が与えられているに等しいんですよ。

 存立危機事態に当たるかどうかというのは、総理、集団的自衛権を行使する際に、存立危機事態に当たれば、政府の考え方によれば合憲だ。存立危機事態に当たらなければ違憲ですよね。だから、合憲と違憲を切り分ける大事な概念なのに、定義そのものも曖昧だし、その運用に当たっては更に。こんなことを言われたら、政府が勝手に決められるに等しいですよね。

 だから、私は、存立危機事態の概念そのものがおかしいし、その運用も明確にしないと、もし認めるとしても、結局何でもやってしまう、集団的自衛権の行使というのは限定なくやられてしまうことになるんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。

 その上で、今日議論したかったのは、存立危機事態における反撃力の行使の話なんですね。

 先ほどの図を見ても、日本から相手国本土にミサイルを撃ち込むわけですから。これはどういう場合があるんでしょうか。日本自身は攻撃を受けていないんですよ。だけれども、米艦が攻撃を受ければ相手国本土にミサイルを撃ち込む。私は、およそちょっと想像できないんですね。

 だから、総理に、もう時間ですから、求めたいのは、安倍さんと安全保障法制を議論したときに、いろいろなポンチ絵を政府は出されました。ほとんど使えなかったけれども、こういう場合は存立危機事態だとかいうようなことをいろいろ説明されましたよね。だから、存立危機事態における権力の行使について、反撃力の行使について、具体的にこういう場合は可能性があるということを、幾つか具体例を挙げて説明してもらいたいんですよ。抽象論の世界ではないんですよ。私は非常に危ないと思いますよ。

 日本が攻撃を受けたときに、それに対して一定の条件の下で反撃するというのは、それはあるかもしれません。だけれども、日本が攻撃を受けていないときに、例えば米軍が戦っている、日本は攻撃を受けていないのに相手国の本土に撃ち込むわけですからね、ミサイルを。これはどういう場合でしょうか、教えてもらいたいですよ。

 これが専守防衛なんでしょうか。私は一線を越えていると思いますよ。だから、きちんと具体的例を示して御説明ください。

岸田内閣総理大臣 まず、存立危機事態の概念が曖昧だということでありますが、これは先ほど申し上げましたように、存立危機事態とは、我が国の存立が脅かされ、国民の命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態。我が国の安全に関わる場面であるということはしっかり確認した上で、もしこの存立危機事態に至ったときは、政府は、その事態の認定、その前提となった事実、武力の行使の必要性が認められる理由などを明記し、この対処基本方針について、国家安全保障会議の審議を経て、閣議決定し、直ちに国会の承認を求める、こういった手続になっています。

 これは、曖昧だということでありますが、そういった国会手続をしっかり経ることで国会の承認を得る、こうした手続になっているということであります。

 そして、具体的な事態を説明するべきだというお話がありました。

 基本的な考え方を分かりやすく図式等で説明することはあり得ると思いますが、具体的な事態を細かく説明する、こういった場合はこうする、こういった場合はこうするという細かいことを具体的に説明するということについては、これはもう安全保障の世界の常識でありますが、我が国の国民の命や暮らしを守る手だてを、手のうちを明らかにするということになるわけですから、そうした細かい具体的な説明までは行うことを控えなければならないということだと思います。基本的な考え方については、丁寧に説明することは重要だと認識をいたします。

岡田委員 少なくとも安倍政権の下で安全保障法制を議論したときのような、幾つかのケース、極めて不十分だったとは思いますが、具体的なケースについて、細かいことを言っているんじゃないですよ、こういう場合は該当し得るということでいいんです。それをきちんとこの予算委員会の場で説明してもらいたいし、国民に対して納得させるためにも、それだけのことは是非お願いしたいというふうに思います。

 終わります。

根本委員長 この際、階猛君から関連質疑の申出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 さて、私の選挙区の盛岡市は、一月十五日の、アメリカ、ニューヨーク・タイムズに取り上げられまして、世界で今年行くべき五十二か所の二番目として取り上げられました。新年早々大変うれしいニュースではあるんですけれども、他方、同じ岩手でも、三陸沿岸の方は人口減少が進んでおりまして、復興はいまだ道半ばです。

 そうした中、岸田総理が就任以来おっしゃっていた、東北の復興なくして日本の再生なしという言葉が今回の施政方針演説では消えてしまいました。非常に残念です。

 加えて、岸田政権は、防衛費に充てられる新たな付加税というものを設けて、復興特別所得税の一部を実質的に防衛費に横流しし、その結果足りなくなった分を補うために、課税期間を延長することを国会閉会中に閣議決定されたわけです。

 文章だと分かりづらいので、別のパネルを見ていただきたいと思います。これはNHKのニュースサイトから引用したものです。

 そもそも、復興特別所得税、これは、民主党政権時代に、復興財源を調達するために、国民の理解と協力を得て二〇三七年までの期間限定で導入したものです。この期間を最長で十三年間も延ばすこと、また、約半分の使途を防衛費に変えることは、元々の国民との約束に背くだまし討ちではないかと思いますが、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の復興特別所得税ですが、これについては、現下の家計の負担増にならないよう、復興特別所得税の税率を引き下げるとともに、課税期間を延長することとされており、その延長幅は復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとされているところであるため、復興事業に影響を及ぼすことはないと考えています。

 さらに、廃炉や福島国際研究教育機構の構築など、息の長い取組についてもしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復興復旧に要する財源を引き続き責任を持って確保してまいります。

 そして、二〇三八年以降も付加税が続くことになるという点については、経済成長と構造的な賃上げの好循環を実現し、持続可能性をしっかりと回復するとともに、こうした経済全体の中で負担感を払拭できるよう、政府としては努力をしていきたいと思っています。

 こうした内閣の方針において、国民の皆さんに御理解を深めていただけるよう、国会での議論を丁寧に行っていきたいと思いますし、こういった方針について、まさにこの国会において、予算とそして関連法案、提出させていただいているということであります。

 是非、国会において丁寧に審議に応じていきたいと思っております。

階委員 負担感を払拭するよう努めるということですが、払拭されるのは負担感であって、客観的には負担が増えています。増税ですよね。これは認めざるを得ないと思います。

 そこで伺いますけれども、昨年十二月八日、岸田総理は、個人の所得税の負担が増加するような措置は行わないと政府・与党懇談会の場で明言していました。これと矛盾するのではないでしょうか。信頼と共感の政治というふうに岸田総理は言われますけれども、これでは国民の不信と反感を招くと思いますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 個人の負担感の増加につながらないということについては、先ほど説明させていただいた形で、負担感の増加につながらないよう、この仕組みを考えたということであります。

 いずれにせよ、こうした取組を進めるに当たっては法律等が必要とされます。国会においてしっかりと議論を続けていきたいと考えております。

階委員 答えていないと思います。

 十二月八日の発言、岸田総理は何とおっしゃったか。個人の所得税の負担が増加するような措置は行わないということだったんです。負担、増加するじゃないですか。矛盾しています。それは認めますか。

岸田内閣総理大臣 おっしゃるように、二〇三八年以降も付加税が続くことについては、経済全体の中で負担感を払拭できるよう政府として努力していく、このように説明をさせていただいております。

階委員 負担は増えるということは認めているんだと思います。

 それで、負担を増やさないとおっしゃっていたわけですから、これとは明らかに矛盾しているということを厳しく指摘しなくてはいけません。

 負担は明らかに増えます。そして、十二月八日におっしゃっていたこととは明らかに矛盾します。これはいいですよね。

岸田内閣総理大臣 二〇三八年以降負担が増えるということについて、先ほど、政府としてどう考えるかということを説明させていただきました。

 負担が増えるということについて、政府として負担感払拭に努力したいと考えております。

階委員 これ以上やっても堂々巡りなんですけれども、負担が増えるということは認めました。前回言っていた、十二月八日に言っていたことと矛盾しているということは指摘させていただきます。

 次の質問に移ります。

 パネルの二を御覧ください。これは、令和五年度から令和九年度の五年間の政府の防衛費の財源確保に関する見取図です。

 これによると、十四・六兆円を新たに防衛財源として調達するわけですが、その内訳として、できるかどうか分かりませんけれども、一応、政府としては、特別会計や基金の余っているお金をかき集める防衛力強化資金で五兆円程度、そして、予算に計上して使わずに残った決算剰余金で三・五兆円程度、無駄の削減でお金を浮かせる歳出改革で三兆円余り、これを予定しています。

 この図にはなぜか書かれていませんが、今の三つの数字を十四・六兆円から差し引くと、三兆円程度が復興特別税の横流し増税などで調達する必要がある、こういう計算になると思いますが、総理、それでよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 今後五年間の税制措置で確保する財源は、計算上、三兆円程度必要ということでいいのかという御質問だったと思います。

 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置につきましては、与党税制改正大綱におきまして、令和九年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和九年度において一兆円強を確保する、税制措置の施行時期は令和六年以降の適切な時期とされたところです。

 更なる詳細について、今後改めて与党税制調査会において議論をされるものと承知をしておりまして、お尋ねの点について、今これ以上確たることをお答えできる段階ではございません。

階委員 三兆円という数字は出ませんでしたけれども、やはり最終的には一兆円強ということになるということです。そして、引き算していくと、三兆円余りを調達しなくちゃいけないということです。

 しかも、段階的に実施するということですから、一兆円程度になるのは最終年度であって、それが徐々に徐々に数年前から増えていって一兆円程度になるということですから、単純に一兆円ずつ集めても三年かかるわけで、段階的に集めるとすれば、これは三年じゃ間に合わないわけですね。少なく見積もっても四年はかかる。四年かかるということは、来年の四月から増税を始めざるを得ないということになります。

 一方、岸田総理は、昨年末、あるテレビ番組で、国民に負担をお願いするスタートの時期までには選挙があるといったようなことを語っていました。ということは、遅くとも来年四月より前に岸田総理は衆議院を解散して総選挙を行う、こういうことになると思うんですが、それで間違いないですか。

岸田内閣総理大臣 増税の開始時期については、従来から申し上げていますように、歳出改革等様々な努力、そして税収の状況など、様々な状況を勘案して、スタートの時期を、令和六年度以降適切な時期からスタートさせる、複数年かけて段階的に令和九年度に向けて増やしていく、こうしたことを明らかにさせていただいています。

 そして、御指摘の発言につきましては、これは、いつでも総理大臣として状況の判断の下に衆議院を解散する、これは専権事項である、その時期は適切に判断するということを申し上げています。ですから、増税の前において選挙がある可能性は決して理屈上排除はされない、こういったことを申し上げた次第であります。

階委員 何か話が変わっていると思うんですね。

 国民に負担をお願いするスタートの時期までに選挙があるということをおっしゃっていたわけです。負担をお願いする時期は、論理的に考えていくと、段階的に増税するわけだから、四年間は最低かかるんですよ。四年間かかるということは、もう来年の四月から増税しないと間に合わない。間に合わないのであれば、その手前で選挙をするという話になると思うんですね。

 今まで言っていたことを踏まえると、論理的には必ずそうなるんですけれども、それも違っていたということでよろしいですか。

岸田内閣総理大臣 その点につきましては、テレビでの発言以降、度々説明をさせていただいています。

 これは、時の総理大臣の専権事項であるからして、増税がスタートする前の解散も可能性としてあり得るということを申し上げたということ、これは再三申し上げているとおりであります。私の発言の趣旨はそのとおりであります。

階委員 やはり、いろいろなところで発言が食い違っている、ぶれている、矛盾している、そう言わざるを得ません。

 またパネル二に戻ってください。五年経過後の防衛費についても申し上げたいと思います。

 五年後の八・九兆円という数字がありますが、これがそのままその後も維持されるように見えます。しかし、これを維持するとなると、引き続き、特別会計や基金、決算で余ったお金、無駄の削減で浮いたお金、全て防衛費に充てなくてはならないことになります。

 一方で、先ほど来議論がありますとおり、子供、子育て予算を倍増すると総理はおっしゃっていますが、倍増にはこれも四、五兆円かかるわけです。また、長期金利の水準が今より一%程度上昇すると、三年後に提出される令和八年度の予算では、国の借金の元利払いに充てる国債費が今より四、五兆円増加する。これは先週末に財務省が公表した試算です。さらには、高齢化によって毎年社会保障費は増え続け、五年後には今より二、三兆円増える。これは一月二十四日に内閣府が試算したものです。合計すれば十兆円以上も防衛費以外で予算を増やさなくてはなりません。

 加えて、岸田総理は、脱炭素社会を実現するために総額二十兆円のGX経済移行債を発行すると言われていますけれども、その返済に充てる資金、具体的にどう調達するのか、これもあやふやです。後で議論しますけれども、金融政策を正常化する過程でも、日銀に大きな損失が生じ、国の財政支援が必要となるかもしれません。

 そうした中で、将来にわたってこれほど巨額な防衛予算を確保できると総理はお考えですか。

岸田内閣総理大臣 確保することを考えております。

 そして、防衛力の増強につきましては、必要となる財源のうちの四分の三、歳出改革、決算剰余金の活用、あるいは防衛力強化資金の創設、こういったあらゆる工夫をしておりますが、これは社会保障以外の経費を対象としているということも併せて申し上げております。

 そして、社会保障費を含め、子供、子育て政策については、防衛費と違って、全ての国民が裨益するのではなくして、地域とか、あるいは職業、立場によって、政策によって裨益する方々は変わっていきます。だからこそ、政策を決めた上できめ細かな財源を考えていかなければいけない、こうした政策の性質があるんだと思っています。だからこそ、社会保険との関係や、国と地方の関係や、様々な関係について、丁寧に財源について考えていく、こうしたことを申し上げています。

 そして、GXについてですが、GX経済移行債については、GX実現に向けた基本方針の中で、償還方法については、今後新たに導入する炭素に対する賦課金と発電事業者に対する有償オークションの収入、これによって二〇五〇年までに償還していく、こうした方針を明らかにしています。

 それぞれの政策の内容に合わせて適切な財源を確保していきたいと考えております。

階委員 抽象的なことだけだとなかなか国民は納得できないと思います。単に確保できるということだけではなくて、その具体的かつ客観的な裏づけが欲しいと思っています。

 私は、安易な増税で防衛費を増やしたり、他の予算を犠牲にして防衛費に回したり、財源が足りないからといって更に国の借金を膨らませるのは、国力の低下につながる、かえって安全保障にとってマイナスになると思っています。

 日本の国力が揺るぎがないものであることを内外に示すためには、防衛費だけに特化した五年間の計画を作るのではなくて、先ほど触れたGX経済移行債の償還方法であるとか、子供、子育て予算の倍増方法であるとか、金利上昇に伴う国債費の増加への対応策、こういったものを盛り込んだ今後五年間のトータルの中期財政フレームを早急に策定すべきだと考えます。それを示していただけませんでしょうか。お願いします。

岸田内閣総理大臣 おっしゃるように、各政策を進めていく中で、全体として経済財政政策をどう進めていくのか、日本の財政における信頼性をどう維持していくのか、日本の持続可能性に対する信頼を国際社会の中でどう維持していくのか、これは大変重要な取組だと思います。だからこそ、政府としても、経済財政諮問会議において、中長期的な見通し等をしっかり示しながら、全体の見通しについて議論を行っています。

 こうした中長期的な見通しについても国民の皆さんに説明をしながら、個々の政策の実現性について考えていただく、こうした説明の仕方は政府としても重要であると認識をいたします。

階委員 今いろいろお話しされましたけれども、私が申し上げたような形の中期財政フレーム、これを国民に示す、そういうお考えはありますでしょうか。端的にお答えください。

岸田内閣総理大臣 具体的な形はともかくとして、中長期的な経済フレーム、財政フレーム、こうしたものを示しながら個々の政策の議論を行う、こういった姿勢は重要だと申し上げております。

階委員 最後のところで私もちょっと力が抜けたんですけれども、姿勢を示すじゃなくて、フレームそのものを示してください。

岸田内閣総理大臣 そもそも、毎年、骨太の方針を始め、政府の基本的な全体の経済財政政策のありようについては説明を今日までも行ってきました。これからも、中長期的な見通し、これをしっかり示してまいります。

階委員 中長期財政フレーム、この五年間は極めて重要です。しかし、私が申し上げたような具体的かつ客観的なフレームというものは出されておりません。民主党政権のときは三年間のフレームを出しておりました。

 数字が入った形できっちりとしたフレームを出していただきたい。最後にもう一度答弁をお願いします。

岸田内閣総理大臣 具体的な形式はともかくとして、国民の皆さんに説明するための資料、こうしたものを作っていきたいと思います。

階委員 それでは次に、金融政策に話を移したいと思います。

 昨年十月には一時一ドル百五十円台まで円安が進み、我が党では、止まらない円安への当面の対策ということで、この紙に書いてあります二つ目です、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化」というものを提案しました。イールドカーブコントロールというのは、日銀が現在行っている異次元の金融緩和の方法です。

 十月当時は、十年の長期金利の上限を〇・二五%、短期金利をマイナス〇・一%にするために必要な市場介入を日銀が行っていました。我々は、このやり方が海外との金利差を拡大させ、金利の低い円が売られて円安に拍車をかける大きな要因になっていると考えていました。

 そこで、次のパネルを見ていただきたいと思います。

 ここに書いてあるように、柔軟化、具体的には、長期金利の上限を〇・二五%から〇・五%に引き上げることを国会で提案しましたが、十一月二日の段階では、黒田総裁は、二%の物価安定目標の実現が見通せる状況になったときに、その前段階で柔軟化していくこともあり得ると述べていました。

 その後、昨年十二月二十日に、突如、我々が提案したとおり、〇・五%への引上げを日銀が決めたわけです。これは、私への答弁でおっしゃったとおり、二%の物価安定目標の実現が見通せる状況になったからだという理解でよろしいのでしょうか。日銀総裁、お答えください。

黒田参考人 昨年の十二月に決定いたしましたイールドカーブコントロールの運用の一部見直し、これは、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図ることで、金融緩和の効果がより円滑に波及し、金融緩和の持続性を高めるという観点から実施したものでありまして、二%の物価安定目標の安定的、持続的な実現が、達成が見通せるようになったということで、金融緩和自体をいわば正常化していくという観点から行ったものではありません。

 もちろん、委員がおっしゃったことは十二月の改定の際に頭にあったことは事実ですけれども、その趣旨は、先ほど申し上げたように、金融緩和を正常化していくということではなくて、あくまでも、緩和的な環境を維持しながら、市場機能の改善を図ることで、金融緩和の効果がより円滑に波及して、金融緩和の持続性を高めるという観点から実施したものであります。

階委員 これも岸田総理と同じで、前に言っていたことと話が違うわけですよね。要は、物価安定目標の実現が見通せるような状況になったら見直すと言っていたものが、今度は、市場機能の改善ですか、別の条件を持ち出してきて勝手に見直したということです。

 加えて、次のパネルを見ていただきたいと思います。

 そういうことで、市場機能の改善、具体的には、このイールドカーブというのは、一年から始まっていますけれども、年ごとの金利、これを時系列で並べたものです。

 この市場機能がなぜ改善を図らなくちゃいけないかといいますと、十年のところでぼこっとへこんでいるわけですね。このへこんでいる、いわゆるゆがみを直すためにやったわけです、〇・五%への引上げを。しかしながら、やる前が青の点線です。やった後、直近のものが赤の線です。全体的に金利水準は上がっていますけれども、へこみは直っていない。市場機能の改善というのは今も必要な状況です。にもかかわらず、今月十八日の金融政策決定会合では、今度は、長期金利を引き上げず、維持したわけです。

 最近の金融政策を見ていますと、一貫性とか予測可能性、全く欠如していると思います。

 黒田総裁は、以前、慶応大学で講演された際、金融政策の有効性を確保していくためには、民間部門が予想していないショックを与えることではなく、一貫性、予見性の高い政策対応を継続していくことが重要だというふうに述べられています。全くもってこれも話が違います。言行不一致だと思いますが、この点についてはいかがですか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、イールドカーブコントロールの運用の見直しの考え方を申し上げました。

 日本銀行は、従来から、金融緩和の効果と副作用を比較考量しながら最も適切と考えられる政策を実施していく必要があるという金融政策運営の基本的な考え方については常々説明してまいりました。そして、昨年十二月に、先ほど申し上げたような趣旨で、イールドカーブコントロールの運用の一部の見直しを行いました。

 その後の状況を見ますと、御指摘のとおり、イールドカーブのゆがみはまだ解消していないわけですが、運用の見直しからさほど時間がたっておりませんので、これらの措置が市場機能に及ぼす影響を評価するにはなお時間を要すると考えております。今月拡充を決定いたしました共通担保資金供給オペも活用しながら機動的な市場調節運営を行うことで、今後、市場機能は改善していくというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、毎回の金融政策決定会合における具体的な対応については、その時々に得られる様々なデータや情報に基づいて経済、物価、金融情勢を詳細に点検し、それらを踏まえて決定されるものでありまして、具体的な議論や決定の内容を先取りするような形で情報発信を行うということは通常行っておりません。

 日本銀行としては、決定した内容やその背後にある考え方について分かりやすい説明を行うことが重要であるというふうに考えておりまして、実際、様々な形で情報発信を行ってきております。今後とも丁寧な説明を心がけてまいりたいというふうに考えております。

階委員 全く分かりにくい説明でした。

 次のパネルを見てください。今、金利を引き上げてもゆがみが直っていないという話もしましたけれども、もう長期金利操作は限界に来ているということを示すもう一つのデータです。

 日銀による国債の買入れが急増しているんですね。一六年から直近まで出しておりますけれども、一番最後の二三年は、まだ一月終わっていませんけれども、終わっていない段階で断トツで月間の買入れ額が過去最高になっているわけです。物すごい買入れです。これは長期金利の操作の限界が露呈していると思います。

 先週、国際通貨基金、IMFの方から、長期金利の操作を更に柔軟化し、金利を上げたり、もっと短い期間の金利を操作したり、長期金利の操作をやめて国債の買入れ量を目標とすべしといった提言までされています。

 金融市場の警鐘や海外からの指摘にどのように対応していくべきか、これが今、日銀には求められています。そうしたことをないがしろにしたまま今までと同じようなことをやっていても、私は国民からの信頼は得られない。

 そして、目標達成はまだまだ道半ばというふうに日銀総裁は言っていますけれども、次のパネル七を見ていただければと思います。

 目標である二%の物価安定目標ですけれども、岸田政権になって物価はどんどん上がっています。生鮮食品を除く消費者物価指数は、全国レベルで十二月に四%の上昇、先週発表された東京都区部では一月に四・三%上昇。また、二月には、飲食料品が何と四千二百八十三品目も値上がりするそうです。カロリーメイトなどは、一九八三年の発売以来、初の値上げに踏み切るというふうに報じられています。

 一方、もう一つのグラフ、青い方のグラフですけれども、岸田政権になってから、物価を上回る賃金の伸びを示す実質賃金は下落し続けています。ここ八か月は連続でマイナス。直近では、消費税を五%から八%に引き上げた直後の二〇一四年五月以来、八年半ぶりに三・八%ものマイナスとなっています。このグラフを見れば、今上げなくてはいけないのは、物価ではなく実質賃金だということは明らかです。

 午前中の当委員会で黒田総裁は、実質賃金が上がっていないので金融緩和を続ける必要があるというふうに答弁されていましたけれども、これも、このグラフから明らかなとおり、これまで十年間、異次元の金融緩和をずっと続けてきたのに、実質賃金がプラスになったことはほとんどないんです。このまま同じことを続けたとしても実質賃金が上がるとは思えません。

 私たちの提言一つ目に書いてありますように、本当に実質賃金を上げたいのであれば、実質賃金を上げることを政府と日銀の共同目標にすべきだと私たちは考えます。そのために、政府は労働生産性を引き上げる。日銀は、デフレに陥らず、かつ金融政策を柔軟に変更できるように、物価目標を、今までのように二%といった数値ではなくて、プラスの領域という幅のある表現にすべきだと思います。

 日銀総裁、お答えいただけますか。

黒田参考人 まず、最近の実質賃金上昇率がマイナスになっているのはそのとおりでありますが、その主たる理由は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、消費者物価の前年比がプラス幅が拡大しているというためであります。

 先行き、名目賃金が労働需給の引き締まりなどを反映して伸びを高めていく一方で、消費者物価の前年比は、先ほど来申し上げているとおり、プラス幅が今後縮小していくために、実質賃金のマイナス幅は徐々に縮小していくというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、二〇一三年以降の大規模な金融緩和が経済や物価の押し上げ効果を発揮していることは事実でありますけれども、緩和的な金融環境を実現して、政府の様々な施策と相まって、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況は実現できたわけですけれども、足下の物価上昇は、先ほど申し上げたとおり、輸入物価の上昇によるものでありまして、いまだ二%の物価上昇が賃金の上昇とともに持続的、安定的に実現される状況になっておりませんので、私どもとしては、引き続き、二%の物価安定目標を維持して金融緩和を続けていく必要があるというふうに考えております。

 なお、共同声明云々につきましては、私から特に申し上げることはございません。

階委員 同じことをやっても効果は出ないと思います。

 それと、同じことをやることを正当化するために、今の日銀の物価見通しというのは非常に恣意的なものになっているということも指摘させていただきたいと思います。

 黒田総裁が就任した直後、三か月ごとの日銀展望レポートに示される物価見通しは、二年後に二%上昇するという右肩上がりの見通しがずっと続いていました。しかし、最近では、目先は物価高でも、二年後には二%を下回るという右肩下がりの見通しとなっています。要は、日銀の金融政策を正当化する根拠とするために御都合主義で恣意的な見通しを示している。これは全て外れたわけであります。今後は、物価見通しの客観的根拠を明らかにし、見通しを公正中立なものにするべきだ。

 この件についても答弁を求めたいところでしたが、時間が来たようですので、ここで今日は終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

根本委員長 この際、山井和則君から関連質疑の申出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山井和則君。

山井委員 三十六分間、質問をさせていただきます。

 まず最初は、統一教会の問題を質問させていただきます。

 私も、この半年間、二十五人の被害者の方々と直接会って、一人大体二時間ぐらいずつお話をお聞きしました。この方々は、本当に、こういう被害を訴えると、統一教会側から嫌がらせを受けたりバッシングを受けたり、大変な御苦労をされながらも、この統一教会における多額の、高額献金の被害をなくさねばならないということで、橋田達夫さん、小川さゆりさんを始め、多くの二世や家族の方々が声を上げてくださっております。

 今も話がありましたけれども、この統一教会の問題は残念ながらまだ終わっておらず、これからが本番だと思います。そのような二世の方々の声を受けて、岸田総理も決断していただき、また、野党も議員立法を提出し、年末に被害者救済法が成立をいたしました。このことについては、統一教会の被害者の二世の方々も岸田総理には大変感謝をしておられます。この統一教会の問題については、政争の具ではなくて、与野党、政府協力して、是非とも被害者の救済、再発防止をしたいと思います。

 しかし、非常に残念ながら、私たちも被害者救済法が成立したら献金というものは下火になるかと思いましたが、ここの配付パネルにありますように、今年の一月三日、八ページの配付資料を御覧ください、韓鶴子総裁の新年の挨拶というものがございました。その中で、どういう挨拶か。ここに書いてありますように、全てのものを包容し抱くことのできる統一の祝福家庭、天寶家庭となり、天と人類の前に勝利者として誇らしく尊敬される皆さんになるように願います、これが総裁の言葉です。

 これは分かりにくいですけれども、天寶家庭というのは、先祖解怨四百三十代といいまして、四百三十代遡って先祖供養していくという、意味しまして、何回かに分けていいんですけれども、これを実行するには一千万円以上の献金が必要になるわけです。

 岸田総理、統一教会からは謝罪も反省もなく、配付資料の八ページでございますけれども、やはり、こういう天寶家庭という名の下に合計一千万円以上の献金の呼びかけがいまだに行われておりますし、この団体においては韓鶴子総裁の言葉というのは絶対ですから、いずれ一千万円の献金をしてくださいという呼びかけを新年早々やっているわけです。

 これは、もちろん、お金が十分余裕のある方が自由意思でやることについては問題ないのかもしれませんが、今まで問題になってきたように、例えば、橋田達夫さんの奥様は一億円の献金をする中で家庭が崩壊して、残念ながら、息子さんは自ら命を絶たれることにもなりました。

 また、献金をするために家庭崩壊になった、子供が進学を断念せざるを得なくなった、食事も十分に食べさせてもらえなかった、奨学金まで献金に吸い上げられた、アルバイト代も献金に吸い上げられた。挙げ句の果ては、子供名義で勝手にカードローンをつくられて、勝手に知らぬ間に献金をさせられて、気がついたら数百万の借金が子供に負わされている、こんなひどいことは私はないと思います。

 ですから、被害者救済法の配慮義務の中で、本人や御家族の生活に迷惑を与えないようにという配慮義務が入ったわけですけれども、いまだに一千万円以上の献金を求める、天寶家庭になってくださいと言っているということは、配慮義務に違反しているおそれもあるのではないかと思います。

 それと、もう一枚、次の九ページ、読売テレビの「ミヤネ屋」でも報道をされました。世界平和統一家庭連合の田中富広会長は、一月十二日の伝道出発式においてこうおっしゃっているんですね。宗教迫害の絶頂を迎えていく二〇二三年と覚悟して挑戦していかなければならない、我々がぶれない限りサタン側が必ず崩れていく。サタンというのは、これは悪魔です。

 岸田総理、被害者救済法を私たちも必死になって作りましたよね。何とか被害者を救いたい、被害を防止したいと、本当に政府を挙げて、国民を挙げてやっている中で、サタン側が必ず崩れていく。これはもしかしたら、岸田総理や政府、私たち国会議員もサタン、悪魔になっているかもしれないんですね。

 これは質問通告はしておりませんが、岸田総理にお伺いしたいんです。全く反省なく献金の呼びかけをして、サタン側が必ず崩れていく、こういう姿勢に対して、岸田総理、いかが思われますか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のような点を聞きながら、改めて思うこととして、政府あるいは立法府の立場からも、従来から申し上げているように、こうした組織の実態把握と、そして被害者の救済と、そして再発防止、この三点について、改めて法の原理に従ってしっかりと取組を進めていく、こうしたことの重要性を改めて強く感じています。

 新たにできた新法ももちろんでありますし、今、質問権の行使等も行っております。そして、様々な相談体制の拡充も努めています。また、こうした法律の実効性を高めるための様々な取組も進めています。

 こうした法律に基づいて、こうした事態にしっかりと対応し、被害に遭われている方を救い、これ以上被害が広がらないように全力で取り組んでいきたいと考えています。

山井委員 私は、宗教は人間にとって大切だと思います。私も宗教の高校に学びまして、多くのすばらしい教えを学ばせていただきました。しかし、このような、自分たちに反するものはサタンで悪魔だ、こういう反社会的な、宗教というよりカルト、こういうものについては、今まで三十年間、残念ながら、日本の政府も国会議員も対応できなかったんです。ここは私たちの責任として、二世や子供たちを守るためにも、何としてもやっていかねばなりません。

 そんな中で、次のチラシをお見せしますが、この間、必死になって被害者の救済のために声を上げてこられた宗教二世ネットワークの方々がおられます。山本サエコさん、団作さん、高橋みゆきさん。そして、このチラシは、何時間も徹夜して、ゆとりさんとか多くの方々、宗教二世ネットワークの方が作ったチラシなんです。

 とにかく、今、岸田総理がおっしゃったように、被害者救済法を成立させただけじゃなくて、多くの人に知ってほしい。その中で、願いとしては、この左下にありますように、書面送付制度を是非広めてほしいということをおっしゃっておられます。

 具体的には、親がもうその世界に入ってしまって、家庭が苦しくても献金ばかりしてしまう、家庭が崩壊するまで献金をしてしまう、子供はそれが止められない。そのために、例えば、この書面送付制度においては、お子さんたちが、家族が法テラスに相談して、弁護士さんを使って、内容証明郵便を統一教会側、消費者庁、もし必要であれば信者である家族や親に送ることによって、それ以上の献金にブレーキをかけたり、また、消費者庁が取り締まる行政措置の基礎資料にしたり、あるいは、もしかしたら、その書面が行ったら、親が、ああ、やはり献金やめておこうかと思いとどまったり、もしかしたらその洗脳が解けていくかもしれない。こういう書面制度を宗教二世ネットワークの、被害者の方々が切に要望されております。

 是非ともこれを後押し、岸田総理、していただけないかということと、この被害者の方々はかなり生活が困窮されている方が多いので、二問、質問を一気にしますが、できれば、この書面送付制度、弁護士費用を無料で、数万円かかるところを無料にしてもらえないか。その二点、通告しておりますので、岸田総理、お答えください。

岸田内閣総理大臣 まず、御提案の書面送付制度ですが、御提案の趣旨の一つは、新法の運用に当たって、消費者庁に必要な情報が集約されることが重要であるということだと思います。法テラスを始め、政府や自治体等の各種相談窓口に新法への違反が疑われるような事案について相談があった場合には、消費者庁に情報提供すること、これを徹底すること、これは重要な取組であると認識をいたします。

 そして、消費者庁への情報集中は今言った点で重要だと思いますが、ただ、その当該法人ですとかそれから寄附者本人への書面送付については、これはいろいろなケースがあります。その本人や法人への送付がどのような影響を及ぼすのか、こういった点は丁寧に見ていかなければいけないので、これは、個別事案に応じて弁護士等が適切にサポートしてどうするべきかを考えていく、こうした姿勢は大事なのではないか、このように認識をいたします。

 そして、弁護士費用についてですが、法テラスにおいて、宗教二世被害者を含む資力の乏しい方に対して弁護士による無料法律相談等を実施する民事法律扶助を積極的に活用し、被害者救済に万全を尽くすこととしております。

 消費者庁においては、現在、新法の本格施行に向けた準備を進めているところ、まずは必要な体制を整えた上で、着実に法の運用をしていきたいと考えます。

 そして、法の運用の過程で明らかになった課題について、運用実績を踏まえて救済策を考えていかなければならないわけですが、今言った委員のこの趣旨は、書面送付制度を支援してもらいたいということかと思いますので、今はまず、法律を運用し、そしてその実効性を高める努力をいたしますが、その中で、消費者庁に情報を集める上で必要な制度というようなことについて、何が実効的な策なのか、これは、その法律の実効状況を高めた上で、状況を見た上で判断をしていきたいと思います。

山井委員 岸田総理、答弁されたように、もちろんケース・バイ・ケースで、この書面送付が親にとって、ますます親子関係が悪化するケースもあるかもしれません。しかし、重要なのは、親がどんどん献金をして家庭が崩壊していく、自分も進学できなくなる、周りの人も迷惑する、一歩間違えたらその献金の借金を自分が負わされる。何とかブレーキをかけるために、こういうのも選択肢の一つではないかというふうに宗教二世ネットワークの方もおっしゃっています。

 去る十一月二十九日、昨年ですが、この予算委員会の場で岸田総理に質問をさせていただきました。この中野さんのケースも本当に悲惨です。お母さんのケースですが、一億数千万円の献金。結局それで、何度にもわたって、一千万、二千万、三千万と献金をさせられて、明らかに悪質と思われるわけですが、残念ながら念書を書いておられた、返金要求をしませんと。そのことによって、そのことも一つの要因で、地裁、高裁で敗訴して、今、最高裁で係争されております。

 この中野さんのケースに関して、十一月二十九日、岸田総理から、そのような繰り返し不法行為を行っている団体の献金の返金請求は駄目だというような念書は、逆に不法行為が認められやすくなるという非常に前向きな答弁をいただきました。

 それを受けて、何と、その答弁が十一月二十九日でしたが、早速十二月に二千四百万円、ほぼ全額の献金が、念書を書いた被害者の方、六十六歳の女性、十一月までは、献金を返してくれと言ったけれども統一教会側は応えなかった。ところが、十一月二十九日の岸田総理の、念書は無効の疑いがあるという、そのような答弁を受けて十二月から一気に進み、そして全額返金をされたということであります。

 そういう意味では、やはり私たちの国会審議で救われる方も少しは増えてきておりまして、この先ほど言った中野容子さんのケースが今後、最高裁ですけれども、逆転で勝訴になるかどうか。これによって、念書が無効であれば、念書を書かされて返金できないとなっている方は日本中に千人以上いると言われているんですね、高額献金で。

 そういう意味では、私たちとしても、こういう悪質な念書というものはやはり無効なのではないかということを繰り返し訴えていきたいと思いますが、そこで、岸田総理にお伺いをさせていただきます。

 そして、このケースも佐々木弁護士、梅津弁護士が取り組んでくださったんですけれども、岸田首相の上記の答弁が本件の解決に重要な影響を与えたと考えられ、念書を書かされたがために泣き寝入りをする被害者が少なくない中、同種の事例の被害者救済のモデルケースになり得る画期的な事案だというふうになっております。

 そこで、お伺いします。

 先日も、一月二十五日、おおつき紅葉議員にも岸田総理は答弁されましたけれども、統一教会による返金逃れを目的とした念書は、念書がない場合よりも、逆に、この念書がある場合の方が勧誘行為の不当性が認められやすくなると考えてよいか。

 それと、もう一つセットでお伺いしますが、また、念書のみならず、中野容子さんのようにビデオ撮影までされて、陳述書まで撮影された場合は、念書だけでは不十分なくらい自分たちの不法行為責任を負うリスクが高いと考え、より用意周到に、計画的に返金逃れ対策を講じたと推認されることから、念書だけの場合に比べて違法性を基礎づける要素が加算され、より不法行為が認められやすくなると考えるが、いかがか。

 質問通告二つをセットでお聞きしました。よろしくお願いいたします。

岸田内閣総理大臣 まず、基本的には個別の事案によって裁判で判断されるものでありますが、一般論として、過去の複数の裁判例と同じ法人から類似の手法による勧誘を受けた場合には、先日も答弁したとおり、そのような裁判例を援用しつつ、寄附勧誘の不当性を主張することにより、その主張が認められやすくなるといったことはあると考えています。

 そして、ビデオについても御質問がありましたが、これも個別の事案により裁判所で判断するものでありますが、これは、損害賠償請求をしないことや返金逃れを目的とした念書の作成やビデオの撮影、こうしたことをしていることや、さらに、そのような行為を重ねて行っていることがむしろ法人等の勧誘の違法性を基礎づける要素となるとともに、民法上の不法行為が認定されやすくなる場合がある、このように考えております。

山井委員 これは非常に重要な答弁であります。

 残念ながら、統一教会側は、高額で悪質な献金ほど念書で返金させないという、返金請求しませんという念書を取って、更に駄目押しでビデオ撮影までする。これは、今の岸田総理の答弁にあったように、逆に、そこまでやればやるほど、統一教会側がこれは違法なことをやっていると自分たちが分かっているということですから、損害賠償請求が認められる可能性が高いという重要な答弁でありました。

 それでは、次に、ちょっと議題を変えさせていただきます。リスキリングについてでございます。

 先日の国会答弁で岸田総理は、育休中、産休中の方々に、このリスキリング、学び直しを後押しする、こういう答弁をされました。しかし、これについては、できるはずがない、育児を軽く見ている、育児は大変、現実とずれた発想、育休は暇にしていると思っているのではないか、感覚がずれているという非常に強い批判が出てきております。

 この点について、岸田総理、やはりこれは認識がずれ過ぎているんじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 御指摘については午前中も一回答弁させていただきましたが、私自身、三人の子供を持つ親であり、まず、子育て自体が経済的にも精神的にも、また時間的にも大きな負担であるということは経験しておりますし、目の当たりにしているところですし、そして、その中でも、産後そして育休時の大変さを認識しているからこそ、私自身、政調会長時代に育休制度の拡充に取り組んだ、こういったことでもありました。

 そして、御指摘の答弁については、是非、答弁、いま一度ちょっとよく確認していただきたいと思いますが、私の答弁の部分は、これはリスキリングに関して、ライフステージのあらゆる場面において、学び直しに取り組もうとする際に、本人が希望した場合にはそれにしっかり応援できる、後押しできる、こうした環境整備を強化していくことが重要だということを申し上げました。

 御指摘の点は、これはしっかりと受け止めなければいけませんし、ただ、育休、産後を決して甘く見るという趣旨ではないということは御理解いただきたいと思います。こうした御指摘は謙虚に受け止め、今後、発言についてはより丁寧に、誤解のないように発信をしていきたいと考えます。

山井委員 でも、この質問自体が、産休中、育休中のリスキリングの後押しということですから、全ての年代にという話とは違うと思うんです。

 そこで、確認しますが、ということは、やはり、育休中の学び直しは事実上困難だ、そういう認識でよろしいですか。

岸田内閣総理大臣 今申し上げたように、産後、産休の状況の中で、更に様々な取組を行うということは大変難しい状況にある、大変な負担であるということは十分認識しております。

 いずれにせよ、申し上げたのは、本人が希望した場合にはしっかり後押しできる環境は大事だ、あらゆるライフステージにおいてそういった考え方をしっかりと徹底していきたい、こういったことを申し上げた次第であります。

山井委員 私も、この答弁を聞き、多くの方々が非常に怒っておられるという姿を見て、私も思い出しましたのが、結局、家庭中心、社会全体での応援が非常に薄い。私は、申し訳ないんですけれども、この十数年の自民党の考え方というのは、家庭、家庭と言う余り、家庭は重要なんですよ、でも、やはり社会による支援が薄かったと思うんです。

 それで、私は忘れられない経験があります。私、議員、二十三年させてもらっていますけれども、一番大変だった思いは、忘れもしない、二〇一〇年の三月、子ども手当の法案を衆議院厚生労働委員会で採決するとき、大変な思いをしたんです。

 当時は子ども手当と言っていました。それまで小六だった児童手当を中三まで延ばす、そして所得制限をなくす、まさに民主党政権の、社会で子供たちを育てるというこの法案。責任者は当時の長妻昭厚生労働大臣。私も厚生労働大臣政務官として一緒に、二〇一〇年の三月、採決しようとしました。

 自民党から罵詈雑言、やじ、怒号、採決はさせてもらえませんでした。ばらまきだといって大反対をされました。ぼろかす言われました、ばらまきだ、ばらまきだ。それで、結局、やじと怒号の中を、残念ながら、長妻厚労大臣や私はその採決をせざるを得なかったんです。それが十三年前です。

 しかし、その後、自民党の力によって、一旦私たちが所得制限をなくした子ども手当が児童手当という名前に戻り、所得制限が入ってきた。やはり、この失われた十数年というのは、私は非常に罪は大きいと思うんです。

 ただ、茂木幹事長も今回、所得制限を撤廃しようと茂木幹事長もおっしゃってくださった。私は、これは大歓迎です。こういうのは本当に、子供政策は与野党協力して是非やりたいと思っていますので大歓迎です。しかし、あの苦い思い出がある以上、岸田総理に一言やはり確認したいんです。

 やはり、所得制限をなくして中三まで延長するという民主党政権の法案に大反対を、ばらまきだと言ってした。あれについては、今から考えると、反省している、あるいは間違っていたなという、そういう振り返りを一言お願いします。

岸田内閣総理大臣 まず、基本的な考え方として、家族という存在は、子育てを考える際にも基本的な存在であると思います。

 ただ、今まで関与が薄いとされていた男性や企業など幅広く関与してもらい、高齢者や独身、あるいは地域社会においても、これは我が事のことであるという意識を持ってもらうことは重要であり、取組を進めたいと申し上げています。

 そして、その中で、児童手当を始めとする経済的支援は大事だということで、担当大臣に指示した三つの柱のうちの一つに掲げています。

 ですから、その中で、具体的にどうするのか、所得制限等についてどうするか、これは今議論しているさなかでありますので、その様々な意見、茂木幹事長の意見も今御指摘がありました、旧民主党の皆さんのそうした御苦労もありました、そういった経緯もしっかり頭に入れながら、政府として、今言った形で具体的な政策を詰めていきたいと考えております。

山井委員 私は、是非ともここは与野党協力して、子供たちのために頑張っていただきたい。ついては、一つ提案があるんです。

 今までのことを反省するというのであれば、この児童手当、今、所得制限の撤廃が大きな議論になっています。これは当然やるべきです。私たちもやってきました。これとセットで、やはり、単に所得制限を撤廃するだけでは、手当が増えるのは中高所得者だけなんですね。逆に、一番貧困で苦しんでいる貧困家庭の子供たちは置き去りになってしまうんです。

 ですから、所得制限の撤廃とセットで、児童手当を高校三年生まで延長させる。公明党さんもおっしゃっています。それと更にセットで、貧困家庭のための児童扶養手当の増額、拡充をする。この三点セットで、是非とも前向きな答弁をいただきたいと思いますが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 前回、児童手当の見直しを行ってから十年がたとうとしています。その間に社会も変化をし、少子化、人口減少もより深刻な状況になっています。その中で具体的な政策を考えていかなければならないということで、今その内容の具体化を行っているということであります。

 ですから、結論については今この場で申し上げることはできませんが、十年たった中でいろいろな意見が今出てきています。委員の御指摘等もしっかり受け止めながら、どうあるべきなのか、政府として成案を得たいと思っています。

山井委員 残念ながら、一度所得制限をなくしたものを所得制限を入れてきたのは自民党なわけで、やはり、その反省の下、是非ともスピーディーに、今言った低所得の子供たちにも配慮した児童手当の大幅拡充を実現していただきたいと思いますし、そのためには私たちも一緒に力を合わせたいと思っております。

 それと、話題は変わります。

 こういうことは質問したくないんですが、松野官房長官の秘書の方が、酒気帯び運転、お店で焼酎三杯ということで、道路交通法違反の疑いで交通切符を交付されました。全国で警察がこの取締りに頑張っている中で、身内の官房長官の秘書がこういうことになるというのは、私は非常に残念なことであります。やはり問題があるのではないか。

 それと、こういう質問も予算委員会でするのは忍びないんですが、翔太郎秘書官のことでありますが、この間、週刊新潮の報道で問題提起され、テレビ、新聞でも連日取り上げられておりますが、イギリスなどの外遊の際に、翔太郎秘書官が、バッキンガム宮殿、また、下の、ビッグベンと言われる国会議事堂に観光に行ったのではないか、また、世界一の高級デパート、ハロッズでお土産物を買いに行ったのではないか、こういう疑惑、問題点が指摘をされております。

 これについては、行ったかどうか教えてくれと、三日間、要望しましたが教えてもらえませんので、心苦しいんですが、この場で質問をさせていただきます。

 事実関係として、翔太郎秘書官はバッキンガム宮殿、ビッグベン、ハロッズに行かれましたか。

中込政府参考人 総理随行者各人の訪問先につきましては、従来より公表しておりませんけれども、先般の欧州及び北米訪問時の、御質問ありました岸田翔太郎総理秘書官の各地での行動、総理同行業務以外の個別行動につきましては、これから申し上げますとおりであるというふうに承知をしておりまして、岸田翔太郎総理秘書官は、いずれの訪問地におきましても、これから申し上げる三つの類型の視察、訪問を行ったほか、これ以外の行動は認められなかったということでございます。

 類型でございますけれども、第一は、各訪問地の国際機関やシンクタンク等への訪問でございまして、この際には関係者との意見交換等を行っております。第二が、総理訪問についての対外発信に使用する目的での町の風景やランドマーク等の外観の撮影でございまして、これはあくまでも写真素材集めのための、近傍に立ち寄ったのみであり、いずれの観光施設についても、その中には一切入っていないというふうに承知しております。第三が、政治家としての総理の土産等の購入でございまして、岸田翔太郎秘書官御自身やあるいは私用の目的での買物はしていないというふうに承知しております。

 以上のように、個人の観光動機による行動は一切なく、観光施設訪問時も、ただいま申し上げた目的による以外の行動は取っていないということでございます。

 以上でございます。

山井委員 岸田総理、今、国民に防衛増税をお願いしている立場で、結局自らの御子息、秘書官がこういう疑われる行動を取っているということに関しては、私は、やはり、税金である公用車で行って、税金で雇われた大使館の方が随行している以上、説明責任は必要だと思います。

 岸田総理、もうイエスかノーかでお答えいただきたいんですけれども、今、言えない、具体的にここに翔太郎秘書官が行ったか言えないということですけれども、否定はされませんか。

岸田内閣総理大臣 今政府委員から答弁があったように、具体的な場所については特定しないということでありますから、それは肯定も否定もしないということだと認識をしております。(山井委員「いいです、もういいです」と呼ぶ)

 一言いいですか。

 いずれにせよ、こうした行動については、今政府委員から答弁があったとおりでありますが、こうした行動について今様々な御指摘をいただいているということはもう事実であります。こうしたことを考えますときに、今後、総理秘書官を始め関係者において、より緊張感を持ってこうした行動について考えていかなければならない。これについては改めて徹底をさせたいと考えております。

山井委員 やはり否定をされないということですから、まあ、行かれたんでしょう。私も様々な方からそういう話を聞きました。

 そしてやはり、御子息さんがこういう秘書官をされている、周りも気を遣うと思うんですよね。大使館の人も、そんな行っている場合ですかとか買物に行くんですかと言えないですよね。

 そこで、ちょっと二問お聞きしたいんです。

 私、びっくりしたのは、今の外務省は、公務で、広報のための写真撮影にバッキンガム宮殿と国会議事堂に行ったということになっているんですけれども、その広報の写真は、イギリス視察が終わってからまだアップされていないんですよ、翔太郎さんの写真は。かつ、広報担当者は別に行っているんですよ。ということは、写真を撮ってその写真を使っていないということは、やはり観光だったんじゃないのかというのが一つ。

 それと、公務、公用車で大使館の方がついて、お父さんの、総理大臣のお土産を買う、これは税金でやるべきことかなと。これは税金でやるべきことですか。そしてまた、岸田総理、差し支えなかったら、そのお土産、どういう方に上げられたんですか。

岸田内閣総理大臣 御指摘については、要は、身内であろうがなかろうが、総理秘書官として行動することが適切だったかどうかということで考えなければならないと思います。

 そして、まず一点は、その映像について、まだアップされていないということですが、従来から、映像は取りまとめた上で、年一回、活動報告を作る際に使うとか、ずっと資料を取り集めている、そういったことでありますし、そして、土産を誰に贈ったかということでありますが、内閣の閣僚ほか関係者に土産を買っております。

 以上二点です。

山井委員 もう時間ですので終わりますが、例えば、この写真はフリー映像といって、無料で使える写真なんです。こういうのがあるんです。さらに、閣僚にお土産、はっきり言って、それより国民に対して仕事をしてほしいので、閣僚にお土産を買うのに、公費の車で、公費の大使館の人を使って、世界一の高級デパート、ハロッズに行くというのは、私は、防衛増税を国民に求めておられる岸田政権としては、余りにも不適切ではないかと思います。

 以上で終わります。

根本委員長 この際、逢坂誠二君から関連質疑の申出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。逢坂誠二君。

逢坂委員 立憲民主党の逢坂誠二でございます。

 まず第一問目、ネット上で募集された、いわゆる闇バイトによる実行者による強盗、これが全国で頻発をしております。ただ、この闇バイトの関係なんですけれども、これを指示している人が、フィリピンの入管の収容施設にいる人間がこういうのを指示しているようだということでありますけれども、まず警察庁に伺うんですが、こうした類似の事案というのは、二〇一九年、二〇二〇年もあったかというふうに承知しているんですが、そこでそういう事案があったのであれば、今回もっと、今回の強盗の端緒といいましょうか、そういうのは早くつかむことができたのではないか。その間、一体どういう状況だったのか。これを説明いただけますか、警察庁。

渡邊政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の特殊詐欺事件でございますけれども、二〇一九年の十一月、我が国で発生しておりました特殊詐欺の拠点をフィリピン当局が摘発をいたしまして、日本人三十六人を拘束していたと。これらの者が順次退去強制となったことを受けまして、二〇二〇年二月以降、関係都道府県警察においてこれらの者を逮捕してきていると承知しております。

 今の特殊詐欺事件につきましては、現在も引き続き関係都道府県警察において捜査中でありまして、継続的にフィリピン当局との情報交換も行ってきているところでありますけれども、捜査上の支障等がございますので、これ以上は差し控えさせていただきたいんですが、一般論になりますけれども、国外に所在する被疑者がおります場合には、国内の関係機関あるいは外国の関係機関とも連携して、早期の検挙に努めていくこととなると考えております。

逢坂委員 総理、捜査中だから余り言えないということなんですが、二〇一九年にも似たような事案があったわけですね。だから、これは、もっともっときちんとやっていれば、今回の強盗というのは、ある種、早い段階で端緒がつかめたのではないかというふうに思っています。

 そこで、総理に二つお願いです。

 一つは、今、このことによって、全国の皆さん、非常に不安に思っておられます。だから、このことに対して、不安を少しでも払拭するような、こういうことを政府として考えているんだということを、まず一つ発信すべきだと思います。

 二点目、同様の事案を発生させないために対策が必要だというふうに思います。法整備が必要か、あるいはまた、海外の、例えば今回の場合でしたらフィリピン政府とやり取りをするとか、様々なことがあろうかと思いますが、再発防止のためにどういうことをするのか。

 この二点、お伺いします。

岸田内閣総理大臣 御指摘の一連の強盗事件については、警察においてこれまでに多数の実行犯を検挙しているところですが、残る実行犯、さらには首謀者の解明、検挙に向けて、先週、警察庁において、関係都府県警察を招致して会議を開催し、捜査情報の共有を図るなど、全容解明に向け捜査が進められていると承知をしておりますが、まずは、警察から今回の件について、メール、SNSを始め様々なツールを使って、宅配業者を装う不審な訪問者に注意することなど防犯対策について情報発信を徹底していくこと、これがまず第一だと思います。

 情報発信によって国民の不安の払拭に努める、これが重要であると思いますし、今申し上げた徹底した捜査によって全貌を解明することを急がなければなりません。そして、全貌を解明した上で、結果として、取り組むべき課題、これを抽出した上で政府として適切な対策を講じていく、こうした取組を進めていきたいと考えます。

逢坂委員 いずれにしましても、総理、これは相当不安が広がっていますので、がっちりと対応をお願いしたいと思います。

 それでは、次のテーマに入ります。

 今回、総理が異次元の少子化対策、総理の言葉は途中言い直したようでありますけれども、でも、結論的に言えば、異次元の少子化対策でありますけれども、それに取り組むということ、私は、これは極めて大事なことだと思いますし、日本の将来を考えると、これに取り組まなければ我が国は消えてなくなる危機すらあるというふうに思っています。

 ただし、その際に、今の日本のこの少子化の要因、原因、これは何なんだというところをやはりしっかり把握をした上で対策を講じなければ、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものだというふうに私は思っております。

 幾つもこの少子化の要因はあるというふうに政府は言っておりますが、その中でも私は重視すべきもの、それは、若い世代の皆さんの職が不安定である、あるいは、若い世代の皆さんの収入が少ない、このことが、望んでもなかなか結婚しづらい、そういう状況になっているのではないかというふうに思うんです。

 そこで、まず、お手元にこれを出しておりますけれども、日本で、実は今、結婚された御夫婦、お手元にあるグラフは、日本で結婚された御夫婦が一体どれぐらいのお子さんをもうけるかというものを表したグラフであります。

 これを見ると、確かに今、日本は少子化が進んでいるんですが、結婚したカップルに限って言えば、大体この数十年、お二人子供をもうけているんですよ。だから、結婚すれば、子供の数が減るということではなくて、この数十年、大体お二人の子供、最近ちょっと減っています、二を切っていますけれども、お二人子供をもうけるという状況なんですね。

 ところが一方で、婚姻の数、これが大幅に減っております。一九七二年、この年、百九万組結婚されておりました。ところが最近は、御結婚される方、大体五十万組台です。半分ぐらいに減っているんです。結婚しさえすれば大体お二人子供をもうけるのに、結婚する数が少ないということなんですね。せっかく望んでいるのになかなかできないというのが今の日本の実態であります。

 それで、それじゃ結婚できないというのは、相手がなかなか見つからないとかいろいろな理由はあるんですが、客観的に顕著な相関関係のあることがあります。それが次のグラフ。

 総理、このお手元の資料を御覧いただきたいんですが、この資料を見ていただくと、やはり収入の多い方の有配偶者率が高いということ、収入が多ければ、要するに結婚できるチャンス、そういうものが多いということ。それからもう一つ、正規の社員であるか非正規であるか、パート、アルバイトであるかによって、この有配偶者率も大幅に変わってくるということなんですね。

 だから、まず、少子化対策をやるときには、非正規あるいはパート、アルバイト、こういうところを少しでも改善をしていくということをやらなければいけない。さらにまた、賃金をしっかりと上げていく、こういうことがなければ、少子化の改善にはなかなかつながらないというふうに思うんですが、総理、今の指摘を聞いてどう思われますでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、基本的には同感であります。

 若い世代の非正規雇用労働者の未婚率は、特に男性で、正規雇用に比べて顕著に高くなっています。このことを見ても、雇用の安定を図り、経済的基盤を確保することで若者が将来にわたる展望を描けるようにすること、これが重要であると認識をしています。

 こうした雇用のありよう、そして収入のありよう、こうしたことにおいて将来の不安を払拭するという取組は大変重要であると認識をいたします。

逢坂委員 こういう実態があるわけですから、総理、これまで、どちらかといえば、自民党政権、自民党政府、非正規雇用を増やすということをかつては政策としてやられていた、それは、やはり多くの反省が必要だと私は思うんです。私たちは、非正規を少しでも減らそうということをずっと主張してきたんです。ところが、それはなかなかうまくいかなかった。もちろん、安倍内閣後半になってから、非正規をゼロにするというようなことも言っておりますけれども、現実にはなかなかそうなっておりません。したがいまして、是非、これから先、若い方の職を安定させること、それから収入が少しでも増えるような政策、その方向へ持っていくということをしっかりやっていただきたいと思います。

 具体策についてはこの後また次回の質問の中でやりたいと思いますので、今日はとにかく、こういう要因があるんだということをしっかり受け止めていただきたい、そう思います。

 次です。次は、これは日本農業新聞の記事であります。

 もう総理も御承知だと思いますが、今、全国の酪農家が大変な状況になっています。一つは、餌代が高い。飼料と言われるものです、餌代が物すごく高騰している。あるいは、燃料、電気代、これが相当高騰しているということ。それからもう一方、脱脂粉乳、この量がだぶついているので、乳を搾る量を制限してください、乳を搾らないでください、こういうことを言われています。更に加えて、乳を搾る牛の頭数、まだまだ乳を搾れるんですが、その牛をなるべく減らしてください、すなわち、売ってください、肉に回してください、こういうことが今、全国の酪農家の中で行われているわけです。

 飼料が高い、電気代が高い、乳を搾らないでください、牛を売ってください、そうなるとどうなるか。経営が立ち行かないんですよ。大変な状況です。しかも、経営が立ち行かない、そうなればどうなるか。これ以上やっていたら赤字がどんどんどんどんかさんでいく、じゃ、早めに離農した方がいいんじゃないか。離農がどんどんどんどん進んでいるんです。

 そこで、総理にお願いです。

 まず一つは、農水省にお伺いしたら、今の離農の実態を余り把握しておらないようであります。二月一日に毎年酪農家の戸数をチェックするんだけれども、例年やっているその体制のままで酪農家の数をチェックしようとしているようなんですが、それでは全く対策が取れません。だから、緊急的、臨時的に、今、どの程度のペースで酪農家が減っているのか、それを政府としてしっかり把握をするということが一つ大事なこと。

 もう一点。こんなに国内で乳を搾るな、乳を搾るなと言っているんですが、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときの約束で、生乳換算で、今、海外から十三・七万トンの生乳を輸入しています。もちろん、日本で今、一年間に七百万トン余りの生乳を搾っていますから、そのうちの十三・七万トン、そんなに多くないだろう、そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それは全く違います。感覚として、我々に搾るな、搾るなと言っているのに輸入するのは、どう見てもおかしいだろう。しかも、今年、北海道が生乳の抑制をする一年間の量、十四万トン余り。ほぼニアリーイコールなんですね。

 だから、総理、この十三万七千トンのいわゆるカレントアクセスと言われるもの、これを一時的に停止をする、これをやはり判断すべきではないか。酪農家の皆さんもこんなに苦労している、だからそれはやめるべきだ。

 この二点、いかがですか、総理。

岸田内閣総理大臣 まず、離農についての実態把握が重要だという点につきましては、具体的にどのような方法が可能なのか早期に実態を把握するということについては重要である、これは論をまたないと思います。どういったことが可能なのか、農水省にそれを検討をさせます。

 そして、もう一点の、要はガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の結果、WTO協定に基づいて、一定数量の乳製品の輸入機会を提供する法的義務を負っている、この問題についてですが、この運用について、国内需給に極力悪影響が出ないように、国家貿易として、需給動向を踏まえながら、脱脂粉乳やバターなど、要はそれぞれの乳製品のバランスについて工夫しながら輸入している、これが現状であります。

 今後とも、こうした法的義務を負っている中でどう対応をするべきなのか、委員はこれをやめてしまえということでありますが、ちょっと、今はその法的義務の範囲内でできるだけ国内需給に配慮しながら製品を輸入しているという状況であります。

 それ以上何ができるのか、これについては、農水省として何ができるかは考えていかなければならないとは思いますが、具体的に法的義務との関係でどうなのか、これは、政府として検討をした上で、方策についてこの議論を進めていきたいと思います。

逢坂委員 実は、これまでも、国会答弁、農水大臣も、法的義務を負っている、それから、もしこの十三万七千トン、輸入を止めるということになれば、訴えられる可能性もあるというような国会答弁もされています。

 しかし、総理、それでは、海外の国はガット・ウルグアイ・ラウンドで約束したその数量をどう扱っているのかということなんです。

 アメリカ、牛肉の枠、ある程度輸入枠というのを持っているようです。ところが、その枠に達していません。アメリカは年間七十万トンだったと、数字、ちょっと記憶、違うかもしれませんが、七十万トンだったと思いますが、その枠があるにもかかわらず、実際には四十万トン程度しか入れておりません。EUもいろいろな農作物について枠を持っています。あるいは韓国もそういう枠を持っています。ところが、いずれも品目によってはその枠に達しないんですね。

 だから、やはり、国内の状況を見てそういう調節をしているのかどうか私は分かりませんけれども、日本のようにきちんと守っている国ばかりではないんです。

 だから、このことも踏まえて、総理、酪農家の皆さんの思いをやはりしっかり受け止めてください。こんなに厳しく生産抑制されている一方で十三万七千トンも入っている、おかしいじゃないか。泣く泣く自分たちの牛を手放す、今、そして牛の価格も安い、前のように十万円とか十五万円で買ってもらえないんです。だから、これは是非、総理、しっかり検討していただきたい、そう思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、次の話題に移りたいと思います。

 総理が今回、原子力発電所、これの活用に非常に前のめりになっている、いろいろな事情があるんでしょう、しかし総理、日本の原子力発電所には致命的な欠陥があると私は思っています。致命的な欠陥です。

 それでは、その前に一つ。総理、今回の、原発を活用するに当たって安全性の確保が大前提だというふうに言っておられますが、それは一体どういうことでしょうか、安全性の確保が大前提。

岸田内閣総理大臣 安全性の確保が大前提、すなわち、原子力発電所を稼働するに当たって、世界で最も厳しいと言われる新規制基準に基づいた原子力規制委員会の審査、検査、これをしっかりとクリアしない限りは動かさない、クリアし、なおかつ地元の理解をしっかりと得た上でなければ動かさない、こうした基本的な考え方を申し上げた次第です。

逢坂委員 そうですね、原子力規制委員会の新規制基準に適合すること、これが一つの条件だというふうに思います。地元の理解ということも、もちろん一つの条件だと思います。

 もう一つあるんです。それは、総理も繰り返し言っているとおり、原子力発電所、ゼロリスクではない。すなわち、事故は起こり得る。事故が起こったときに、国民の皆さんの命、これを守るために何が必要か。避難計画、これがしっかりしていることが非常に大事だと思います。避難計画がやはり十分でなければ原発は動かせない、これは当然のことだというふうに思うんですね。

 ところが、総理、日本の原発というのは、避難できることを前提に造られているんでしょうか、立地は考えられたんでしょうか。これは違うんですよ。日本の原子力発電所は、三・一一以前、過酷事故は起きません、それが前提なんです。事故が起きないから、避難計画も、万が一事故が起きたときのことを想定して立地をさせているわけではないんですね。

 私の経験を申し上げます。

 二十五年ほど前のことになりますが、私は、北海道のニセコという町の町長をやっていました。そこは泊原発から十キロ余り離れています。当時は、十キロ離れていれば、避難計画の策定の義務はありませんでした。ところが、町の議会からたくさんいろいろな声が出て、万が一、泊で事故があったときにどうするんだ、避難計画を作らなきゃいけないだろうということがあって、私も、事故が起きないことが前提だから、本当に避難計画は要るのかということを繰り返しやり取りしたんですが、でも、議会の皆さんからの声も受けて、分かりました、泊原発の万が一の事故に備えて避難計画を作りましょう、そういう答弁を議会でしました。

 具体的に作業に入ろうとしたんです。そうしたところ、北海道庁からどういう連絡が来たか。原子力発電所の事故は起きないことが前提です、事故が起きないのにそういう避難計画をあからさまに作るということについては慎重に対処をお願いします。慎重に対処をせいということは、役所用語で言うと、やらないでくださいということですね。それが二十五年ほど前の実態なんです。

 だから、日本の原子力発電所というのは、万が一の事故のときに避難できるかどうか、それを合理的、客観的に考えて立地をさせていない、私はそう思うんです。そこがこの日本の原発の大きな私は問題点ではないかと思うんですが、総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、原発について、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、地元の理解を得ながら再稼働を進めていく、これが政府の一貫した方針だと先ほど申し上げましたが、その上で、政府としてこれまでお答え申し上げているとおり、しっかりとした避難計画がない中で、建設中の原子炉への核燃料の取付けや、再稼働が実態として進むことはないと考えています。特に、三・一一以降、この点は徹底してきております。

 そして、国としては、各自治体の避難計画を含む緊急時対応について、原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であることを、地域ごとに設置されている地域原子力防災協議会で確認するということにしております。その際、自治体がその避難計画について具体的かつ合理的でないと考える段階で、地域原子力防災協議会で確認することはないと考えております。

逢坂委員 総理、私の質問より一歩先んじて言っていただきましたけれども、しっかりした避難計画がなければ新設の原発には核燃料は入れない、しっかりした避難計画がなければ実態として原発を再稼働させることはない、こういう答弁をいただきました。これは極めて重要な答弁だというふうに思います。

 加えて、総理、例えば東海第二原発、ここは、半径三十キロ以内に約九十万人の方が住んでおられます。九十万人です。あるいは、私の元々のふるさと、北海道泊エリア、ここはそんなに人口はおりません、数万の人口しかおりませんが、冬期間、たくさんの観光客が来ます。冬期間は、私はあの地域に四十年余り暮らしていましたけれども、冬期間、避難できるとは思われません。夏だって相当にお客さんが来る。そういう中で本当に避難できるのかどうか。今の泊地域の原子力防災計画を見ると、観光客のことを想定しての避難計画ではありません。

 したがいまして、客観的に見て、総理、そもそももう避難計画を作るのは無理だ、そういう原発については、これはやはり使い続けられない、そういう判断をするのが政治の役割なんじゃないでしょうか。これは、民間企業にやってくれと言ってもそれはできませんよ。民間企業は投資もしているし、回収もしなければいけない。でも、どう考えてみたって、そこに長い間こだわって、再稼働だ、再稼働だとやっているのは、私は相当に無理があると思うんですが、総理、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 先ほど総理からも答弁がありましたけれども、エネルギーの安定供給、それから価格を安定的に確保していくこと、そしてGXを進める、この三つの観点から全ての選択肢を考える、その中で原子力も重要な位置づけにあるというふうに考えております。

 御指摘の避難計画については、先ほどもやり取りがございましたけれども、国としても、自治体に任せるのではなく、まさに、避難先の施設あるいは避難手段の確保など、地域が抱える課題に対応した避難計画が策定できるように、地域の協議会の枠組みの下、一体となって具体化、充実化を行うこととしております。

 いずれにしましても、御指摘の点も含め、避難計画の策定、しっかりと支援していきたいというふうに考えております。

逢坂委員 聞いてもいない答弁をされて、時間の無駄なんですけれども。

 総理、アメリカのニューヨーク州に、一九八四年、ショアハムという新しい原子力発電所ができました。ところが、ここの地域で、この原発で事故が起きたら避難できるかな、危ないんじゃないかという議論が持ち上がりまして、訴訟もあったんですが、最終的に、一九八九年、新設原発が完成してから五年間、ただの一度も使うことなく廃炉になっているんですよ。これは、本当の意味で国民の命を守る、そういう判断をする、そういう政府なら私は信用できるんです。

 ところが、今の日本政府のやり方を見ていると、電力が足りないとかウクライナのことだとかいろいろ言いながら、とにかく原発にすがりついているわけですよ。いや、規制基準もクリアされる、あるいは避難計画もきちんとできる、地元の皆さんも納得する、そういうことがあれば、それは、場合によっては原発という選択肢も私はないわけではないというふうにも思いますよ。だがしかし、そもそも避難計画がもう無理だろうというところもあるんですね。

 例えば、愛媛県伊方原発、どういうところにあるか、総理、御存じかどうか分かりませんけれども、細長い半島の根元にあります。そこで事故が起きたら、原発から半島の先まで、ここに二千人ぐらいの方が暮らしていると承知していますが、この方たちは避難できるとは私には思われません。

 あるときにこの質問をしたら、いや、船で避難すればいいんだということを言った方がいましたけれども、原発の事故が起きるときは、これは津波があったりするかもしれません。だから、そういう逃げられないところに原発を造っているケースがあるんですよ。

 総理、この避難計画について、実態上なかなか機能しないとなれば廃炉の検討をする、それが政治の判断すべきことなんじゃないですか。総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、新規制基準に合致しないものは稼働させない、地元の理解を得ないものは稼働させない、避難計画が準備されなければ稼働させない、こうした方針を徹底していきます。

 ですから、御指摘の点についても、たしか前者の泊原発の方においては、あれは様々な自治体が地域に集中しておりますので、地元の理解を十分得るということで大変難しいという状況が続いていると理解しております。そして、後者の伊方原発の方は、避難計画を作り、基準をクリアしているからこそ、そして地元の理解を得て進めているからこそ、こうした原発が稼働しているんだと思います。

 いずれにせよ、ルールに従って、先ほど言いました課題をしっかりクリアするかどうか、これで判断をしていくことは重要であると思っております。

逢坂委員 総理、やはり国と自治体の上下関係というのは結構ありまして、やはり国に言われると、不十分な避難計画でも、これで一応いいかというふうに納得をするような自治体も中にはあると思っています。具体的に今日はここでは言いませんが、地元では随分不満が出ているのに、国の指導だからこの程度でいいんだろうというふうなこともありますので、そこはもう少し丁寧に見ていただきたいというふうに思います。

 それと、先ほど公明党の高木委員からも出ていましたが、電気料金のこと。

 これは今大変な状況になっているのは総理も御承知のとおりだと思いますが、特にオール電化の住宅の皆さん、これはとんでもない状況になっています。昨日も私のところに、一か月の電気料金が十万を超えたという方も来ました。

 総理がおっしゃるとおり、今度、去年の補正予算で、電気料金、二割程度相当額引き下げるということでありますけれども、例えば北海道電力でいいますと、今年の夏から三五%の電気料金の引上げ、これを今、国に申請をしております。総理、二割、引き上げると言ったけれども、三五%上がるとなれば焼け石に水なんですね。

 だから、もちろん、効果がないとは言いませんよ。総理、先ほど公明党の高木さんも言いましたけれども、予備費を使うなりなんなりして、緊急事態には電気料金に対してもしっかり備える、それはいかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のように、今回の引下げについては、全国の御家庭における平均的な負担増が二割程度になるので、その同等の引下げをするということになっていますが、制度として、これは使用量に応じて引下げの割合は増えていくということになるという制度になっています。ですから、そういった制度であるということが一つ。

 それから、実際の引上げ、電力会社の引上げより先行して引下げを行うということ、こういったことで、全国一律の制度にはしておりますが、様々な配慮もこの制度の中に盛り込んでいるというのが現実であります。

 まずはこの制度を実施することが大事だと思っておりますし、その上で、更に状況をしっかり把握した上で、政府として支援することがあるとしたならば、これはちゅうちょなく対策を講じていきたいと考えます。

逢坂委員 総理、是非よろしくお願いします。

 それでは、次です。

 これは、総理は余り見たくないかもしれませんが、異次元の大臣などの辞任、異次元の。個別には一々申し上げませんが、総理、総理の任命責任というのは何ですか。総理は、これらの大臣の皆さんが辞任されるたびに、任命責任がある、任命責任があるというふうに言っています。辞めてしまえば任命責任というのはなくなるんですか。総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 一つだけ、先ほどの答弁で使用量が増えると割合が増えると申し上げましたが、使用量が増えると割引の額が増えるというのが正確ですので、ちょっとそれは訂正させていただきます。

 その上で、今の質問でありますが、任命責任というものは、これは辞任したから済むというものではない、これは当然のことであります。辞任したことによって内閣あるいは政治に対する信頼を傷つけたわけでありますから、その辞めた後についても任命した任命権者としてしっかり責任を負い、そうした辞任が国会での議論ですとかあるいは政治の取組に支障を来さないように最大限努力をして、国民の生活あるいは事業を守るための取組を進めていく、こうしたことを行うことによって、私自身、任命責任を果たしていく、こういった姿勢が引き続き求められるものであると考えております。

逢坂委員 そこで、総理にお願いなんです。

 ただ辞めれば済むというものではない。それで、実は、ここに書いてある方々、個別にはもう名前を申し上げませんけれども、ここでいろいろ疑問に思われたこと、これは何も解消されていないんですよ。例えば、政治資金規正法に抵触するんじゃないか、公選法に違反するんじゃないか、影武者なんということもありました。大臣を辞任された後、それを公式にどこの場でも説明していないんです。辞めさえすれば不問に付される、そういうことではないと思うんです。

 総理に任命責任があるのなら、これらの方々に、きちんと記者会見を開くなり、この疑問に答えるようなことをやりなさい、そういうことを言うべきではないですか。総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 大臣を辞任したとしても、本人は政治家であります、公人であります。これは、有権者の信頼、国民の信頼、これをしっかりと取り戻すための努力をしなければいけない、この立場は変わらないと思います。それぞれの立場で説明責任を果たしていくべく、引き続き努力をしなければならないと考えます。今後、政治活動の中で、また選挙の中で、国民のそうした様々な批判にしっかり応えていかなければ、本人も政治家として活動を続けることは難しくなってしまう、これが厳しい現実だと思います。是非、こうした事態にしっかりと対応していかなければならない。

 そして、政党としてもそういった姿勢を大事にしていきたいと考えています。ガバナンスコードの策定等、党としても様々な取組を進めていますが、その中でそれぞれの信頼回復の努力を続けてもらいたいと考えております。

逢坂委員 以上で終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次回は、明三十一日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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