衆議院

メインへスキップ



第7号 令和5年2月6日(月曜日)

会議録本文へ
令和五年二月六日(月曜日)

    午前九時十九分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 小林 鷹之君 理事 中山 展宏君

   理事 古川 禎久君 理事 堀井  学君

   理事 牧原 秀樹君 理事 大西 健介君

   理事 後藤 祐一君 理事 青柳 仁士君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊東 良孝君    伊藤 達也君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      奥野 信亮君    亀岡 偉民君

      熊田 裕通君    下村 博文君

      鈴木 隼人君    田中 和徳君

      田畑 裕明君    辻  清人君

      土屋 品子君    平沢 勝栄君

      古屋 圭司君    本田 太郎君

      牧島かれん君    三谷 英弘君

      宮下 一郎君    八木 哲也君

      山本 有二君    若林 健太君

      鷲尾英一郎君    梅谷  守君

      おおつき紅葉君    奥野総一郎君

      源馬謙太郎君    小山 展弘君

      鈴木 庸介君    西村智奈美君

      野間  健君    藤岡 隆雄君

      本庄 知史君    森田 俊和君

      森山 浩行君    山岸 一生君

      吉田はるみ君    渡辺  創君

      市村浩一郎君    遠藤 良太君

      高橋 英明君    藤巻 健太君

      掘井 健智君    和田有一朗君

      庄子 賢一君    中野 洋昌君

      鰐淵 洋子君  斎藤アレックス君

      鈴木  敦君    穀田 恵二君

      宮本  徹君    緒方林太郎君

      大石あきこ君    櫛渕 万里君

    …………………………………

   総務大臣         松本 剛明君

   法務大臣         齋藤  健君

   外務大臣         林  芳正君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   文部科学大臣       永岡 桂子君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   経済産業大臣       西村 康稔君

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   国務大臣

   (原子力防災担当)    西村 明宏君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小倉 將信君

   国務大臣

   (新しい資本主義担当)  後藤 茂之君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (デジタル田園都市国家構想担当)         岡田 直樹君

   内閣府副大臣       和田 義明君

   財務副大臣        井上 貴博君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  廣瀬 健司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中田 昌和君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   荒木 真一君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  原  邦彰君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 中村 仁威君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    中込 正志君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    新川 浩嗣君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    三村  淳君

   政府参考人

   (文化庁次長)      合田 哲雄君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           川又 竹男君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大西 証史君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          山田 英也君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    茂木  正君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           門松  貴君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房公共交通・物流政策審議官)  鶴田 浩久君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  上原  淳君

   政府参考人

   (観光庁次長)      秡川 直也君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    石井 昌平君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 鈴木 健彦君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 茂木  陽君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  町田 一仁君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        坂本 大祐君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月六日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     若林 健太君

  鈴木 隼人君     本田 太郎君

  三谷 英弘君     田畑 裕明君

  逢坂 誠二君     おおつき紅葉君

  源馬謙太郎君     梅谷  守君

  藤岡 隆雄君     小山 展弘君

  本庄 知史君     奥野総一郎君

  森山 浩行君     森田 俊和君

  吉田はるみ君     山岸 一生君

  渡辺  創君     野間  健君

  阿部  司君     高橋 英明君

  池畑浩太朗君     藤巻 健太君

  掘井 健智君     和田有一朗君

  斎藤アレックス君   鈴木  敦君

  宮本  徹君     穀田 恵二君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     三谷 英弘君

  本田 太郎君     鈴木 隼人君

  若林 健太君     衛藤征士郎君

  梅谷  守君     鈴木 庸介君

  おおつき紅葉君    逢坂 誠二君

  奥野総一郎君     本庄 知史君

  小山 展弘君     藤岡 隆雄君

  野間  健君     渡辺  創君

  森田 俊和君     森山 浩行君

  山岸 一生君     吉田はるみ君

  高橋 英明君     市村浩一郎君

  藤巻 健太君     遠藤 良太君

  和田有一朗君     掘井 健智君

  鈴木  敦君     斎藤アレックス君

  穀田 恵二君     宮本  徹君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 庸介君     源馬謙太郎君

  市村浩一郎君     阿部  司君

  遠藤 良太君     池畑浩太朗君

同日

 理事逢坂誠二君同日理事辞任につき、その補欠として大西健介君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事逢坂誠二君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に大西健介君を指名いたします。

     ――――◇―――――

根本委員長 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算、令和五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官廣瀬健司君、内閣官房内閣審議官平井康夫君、内閣官房内閣審議官中田昌和君、内閣府政策統括官荒木真一君、総務省自治財政局長原邦彰君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長松下裕子君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、外務省大臣官房長志水史雄君、外務省大臣官房審議官實生泰介君、外務省大臣官房審議官中村和彦君、外務省大臣官房参事官中村仁威君、外務省北米局長河邉賢裕君、外務省欧州局長中込正志君、財務省主計局長新川浩嗣君、財務省国際局長三村淳君、文化庁次長合田哲雄君、厚生労働省社会・援護局長川又竹男君、厚生労働省老健局長大西証史君、農林水産省大臣官房統計部長山田英也君、農林水産省農産局長平形雄策君、農林水産省経営局長村井正親君、経済産業省大臣官房商務・サービス審議官茂木正君、経済産業省大臣官房審議官門松貴君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君、国土交通省大臣官房公共交通・物流政策審議官鶴田浩久君、国土交通省鉄道局長上原淳君、観光庁次長秡川直也君、海上保安庁長官石井昌平君、防衛省大臣官房衛生監鈴木健彦君、防衛省大臣官房審議官茂木陽君、防衛省防衛政策局長増田和夫君、防衛省整備計画局長川嶋貴樹君、防衛省人事教育局長町田一仁君、防衛装備庁プロジェクト管理部長坂本大祐君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田畑裕明君。

 ちょっと速記止めてください。

    〔速記中止〕

根本委員長 速記を起こしてください。

 田畑裕明君。

田畑委員 おはようございます。予算委員長の御指名がございました、自民党の田畑裕明でございます。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 岸田総理のリーダーシップの下、岸田政権は、持続可能で多様性を認め合う包摂的な社会を目指すことを政権の重要課題の一つとして取り組んでいるというふうに認識をしてございます。

 そうした中で、先週、総理の側近である総理秘書官の一人が、性的マイノリティーや同性カップルの方々を差別しているとも受け止められても致し方ない発言を行い、その職を追われるという事態が発生をいたしました。発言には大変強い憤りを感じるものでございます。

 そこで、松野官房長官に、改めて、岸田政権の性的マイノリティーの方々等に対するスタンス、考え方をここで確認をさせていただきたいと思います。また、その上で、今回の総理秘書官の発言をどのように受け止め、今回の人事上の措置を決断するに至ったのか、その考え方をお聞かせをいただきたいと思います。

松野国務大臣 田畑先生にお答えをさせていただきます。

 岸田政権は、持続可能で多様性を認め合う包摂的な社会を目指しています。性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えており、政府として、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、引き続き、様々な国民の声を受け止め、しっかりと取り組んでまいります。

 荒井元総理秘書官の発言については、オフレコの場での発言であり、その詳細を承知していませんが、見たらどう思うか、隣に住んでいたらどう思うか、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる、他の秘書官も同じ考えではないかといった発言については、不当な差別と受け取られても仕方がないものであり、また、政府の方針と全く相入れず、言語道断であり、遺憾であると認識をしております。

 このため、岸田総理が、総理秘書官としての職務を解くという判断を行ったものであります。

田畑委員 ありがとうございます。

 今、長官から、政府の方針と全く相入れないという発言がございました。国内外を含めまして、このことにつきまして丁寧な説明を引き続き求めたいというふうに思います。

 それでは、改めて質問に入らせていただきたいと思います。

 長官は御退席いただいて結構でございます。

 まず、構造的な賃上げにつきまして質問を申し上げます。

 岸田総理は、施政方針演説で、構造的賃上げに向けて三位一体の労働市場改革を行うと述べられました。物価上昇を超える賃上げ、持続的に賃金が上がる構造をつくり上げる、公的セクターや政府調達、企業で働く方々の賃金を引き上げることを明言をされております。

 まず、岸田政権の重要テーマであります構造的賃上げ実現に向けまして、後藤大臣の決意をお聞かせをいただきたいと思います。

後藤国務大臣 賃上げは新しい資本主義の最重要課題でございまして、意欲ある個人の能力を最大限生かしながら、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつなげる好循環をつくって、持続的な賃上げを実現していくことが重要でございます。

 まずは、この春の賃金交渉に向けまして、物価上昇を超える賃上げに取り組んでいただくべく、政府としては、賃上げ税制や補助金における賃上げ企業の優遇などに取り組むとともに、特に中小企業における賃上げの実現に向けまして、生産性向上などへの一層の強化や、公正取引委員会や中小企業庁における大幅な増員による下請取引の適正化、価格転嫁の促進などに取り組んでまいります。

 さらに、今お尋ねありました、意欲ある個人の能力を最大限生かしながら企業の生産性向上を図り、構造的賃上げを実現するということで、意欲ある個人に対するリスキリングによる能力向上支援、職務に応じてスキルが適切に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革に官民連携で着実に取り組んでまいります。

 これに加えて、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXを重点分野として、官の投資を呼び水として民間投資を大胆に喚起することで生産性や付加価値を向上させるとともに、適切な価格づけを通じてマークアップ率を高め、物価上昇に負けない賃上げや、コスト上昇の転嫁のできる適切な支払いをしっかり確保していく、このような連続的に拡大が続く成長と分配の好循環を実現をしてまいります。

 持続的な賃上げである構造的賃上げや、人への投資、設備投資を行うことを後押ししてまいりたいと思います。

田畑委員 引き続き後藤大臣にちょっとお伺いしたいと思いますが、今、答弁の中でも、日本型の職務給の言及もございました。導入するに当たりまして、指針を六月までに取りまとめる、六月に取りまとめるということが、政府は方針を示していらっしゃいます。

 ここで政府が目指す日本型の職務給とはどのような内容を想定すればよろしいんでしょうか。導入される対象、これは全年代の方々なんでしょうか、それとも若年層を中心とするのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

後藤国務大臣 職務給の確立については、職務に必要なスキルと、それに見合う給与体系を明確化することで、年齢や性別を問わず、あらゆる労働者が自らの希望に従ってリスキリングを行い、成長分野への企業間、産業間の労働移動を行えるようにしたり、企業内であっても新たな職務に就けるようにする環境を整備するものであります。これによって賃上げが行われる構造をつくる必要があると考えています。

 その際、職務給については、個々の業界や、御指摘のような従業員の年齢構成を始めとした企業の特性等に応じた導入の在り方が考えられるというふうに思います。例えば、企業によっては職務給を一度にではなく順次導入する、これは、例えば、管理職など一定層以上の人から導入するとか、ITだとか一部の組織にまずは導入するとか、中途採用者など高度専門人材から導入するとか、いろいろな導入の仕方があると思います。

 そのほかに、その適用に当たっても、職務、スキルだけではなくて、個々の能力の高さを勘案する、そういった自由度があった方がより機能するということも考えておりまして、六月、御指摘のあった労働移動円滑化のための指針では、日本企業に合った職務給の導入方法を類型化し、モデルをお示ししてまいりたいというふうに考えています。

田畑委員 ありがとうございます。

 今日、加藤大臣もいらっしゃいますので、ここは、後藤大臣も前の厚労大臣でもございます、しっかり連携をしていただきまして、労働政策、大変、賃上げについて肝になる部分だと思いますので、お取組を是非お願いしたいと思います。

 ここで、ちょっと私から意見を申し上げますが、予算委員会で議論がなされている、いわゆる百三万ですとか、百六万、百三十万円の壁についてであります。

 総理も、答弁におきまして、社会保険料が生じることによる、いわゆる就労調整が実際に生じているということ、この問題意識を共有をし、制度をしっかり見直すということを表明されています。

 政府は、昨年の十二月の全世代型社会保障構築会議におきましても、取りまとめに、働き方に中立な社会保障制度の構築として、既に論点が整理をされているところであります。

 一義的には、社会保険の適用拡大をしっかり進めるということが壁の解消だというふうには考えます。直近では、昨年の十二月に、企業要件ですとか等々撤廃をされ、累次の進んできた社会保険の適用拡大が進められてきています。これは、段階的な拡大ですとか周知をしっかり行って取り組んできているという経緯があります。

 また、年金制度で第三号被保険者の扱いについても、これは一緒に連動しながら論点になるのではないかと思います。被扶養者でない単身世帯の方の扱いへの配慮であったりですとか適用拡大の進め方につきまして、これは我々自民党内でもしっかり、積極的に、丁寧な議論を行ってまいりたいと思いますし、政府においても、業所管別にしっかり協力を得て、メリットの広報ですとか周知について、啓発活動ですか、これをしっかり行っていただきたいということを求めるものであります。

 また、構造的な賃上げと同時に、特に勤労世代の雇用環境の整備、不本意の非正規労働者の正規化、また、個人の多様な選択を支えるしなやかな労働市場の構築、これは大変大事な分野であるというふうに思います。これも、労働政策パッケージ、昨年の十二月に定めてございます、これをしっかりスピード感を持って、着実に進めることを改めて求める次第でございます。

 それでは次、勤務間インターバルにつきまして、ちょっと加藤大臣にお聞きさせていただきたいと思います。

 睡眠不足が、労働生産性であったりですとかワークエンゲージメントの低下等をもたらしているという専門家の指摘もございます。男女とも、子育て時間をしっかり確保しつつ働くことのできる雇用環境、職場環境をしっかり整備をしていくことが重要であります。

 現在、事業主の努力義務であり、政府は、閣議決定で導入企業の割合を一五%という目標を立てているところでございますが、とりわけ中小企業におけるこの勤務間インターバルの推進における整備環境、どのように取り組んでいかれるのか、厚労大臣の御答弁をお願いします。

加藤国務大臣 その前に、今委員から、しなやかなというお話がありました。いわば働き方に中立的な制度、これをしっかり構築をしていきたいというふうに思いますし、また、いわゆる百三万、百六万、百三十万等々の壁、そのことは当然認識をしながら、ただ、委員おっしゃったように、社会保険の適用拡大、そしてそのメリット、こういったこともしっかりと周知を図り、理解を広めていきたいと思っております。

 その上で、今、勤務間インターバルのお話がありました。

 この勤務間インターバル制度、働く人の健康の維持向上、ワーク・ライフ・バランスの確保につながるものとして大変重要と考え、企業における制度導入の促進を取り組んでまいりました。残念ながら、コロナ禍で少しその取組が停滞をしている。また、中小企業における導入割合が低いということ。

 そうした中で、昨年十一月、田畑議員が座長を務める自民党のPTからも、中小企業への支援の強化を含めた緊急提言をいただきました。提言の内容も踏まえて、制度導入の参考となるマニュアルの作成、周知、導入促進セミナーの開催、これは従来取り組んできたものでありますが、それに加えて、社会保険労務士等の専門家によるアウトリーチ型のコンサルティング、中小企業が勤務間インターバル制度に関する研修を実施した際の支援の拡充、こういった取組を進めていきたいと考えております。

田畑委員 ありがとうございます。スピード感を持って、是非お願いしたいと思います。

 ここで加藤大臣に、ちょっと通告の順番を変えますが、介護人材の関係の質問にちょっと移らせていただきたいと思います。

 介護福祉士国家資格の受験者数、合格者数、合格率の中身でありますが、受験者数が過去五年間、下がり続けています。介護分野への人材供給を考えますと、大変ゆゆしき問題であるというふうに捉えております。また、介護福祉士養成施設の今春の入学者につきましても、去年の秋に行われている学校推薦型選抜公募であったりですとか一般選抜前期試験の受験者数から大変厳しい状況であるということが、その旨を仄聞をしているところであります。

 養成施設の努力だけではなく、政府や地方自治体、教育委員会等も巻き込み、若い人材が自ら福祉分野へ就労する仕組み、仕掛けをしっかりつくり出していく必要があろうかと思います。

 そこで、介護福祉修学資金等貸付事業についてでありますが、これは現在、都道府県ごとに所得制限があり、必ずしも必要な学生に対して支援が行われていないという状況も聞くわけでございます。その状況につきましてどう理解をされているのか。また、より幅広く新たな介護人材を確保する観点から、この所得制限は撤廃すればよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今お話がありました介護福祉士修学資金等貸付事業、これは、介護人材を確保していくため、介護福祉士養成施設に通う学生に対する修学資金の無利子貸付け等を実施するものであります。都道府県が事業主体として取り組んでいるところであります。

 この貸付事業の対象者については、家庭の経済状況等から貸付けが必要と認められることが局長通知で要件の一つと示され、そして、この家庭の経済状況について、国は一律の基準を設けているわけではありませんが、各都道府県が地域の実情に応じて一定の所得制限を設けており、現在、三十七都道府県においてそうした所得制限が設けられているものと承知をしております。

 実際の貸付状況でありますが、本事業への応募者四千八百二十一人に対して、所得制限により貸付けの対象外となった者は六県で二十二人でありますが、これだけではなくて、それがあるから貸付けの申込みをしていないという方もいらっしゃるのではないか、あるいは、それがあるがために、そもそも希望を残念ながら断念されている方もいらっしゃるんじゃないかというのが御指摘だと思います。

 介護人材の確保、これは喫緊の課題でありますし、また、そのために本貸付事業も実施をしているわけであります。これには都道府県等の負担等もございますから、都道府県とも相談をしながら、家庭の経済状況等から貸付けが必要と認められること、こうした要件をどう考えていくのか、検討はしていきたいと思っております。

田畑委員 前向きな答弁、ありがとうございます。

 家庭の経済状況を勘案するのはもちろん当然だというふうに思いますが、やはり、介護人材を確保するというこの観点をしっかり意識した政策の遂行を求めるものでございます。

 それでは、薬の関係、創薬、医薬品産業につきまして質問に入りたいというふうに思います。

 ここで、後藤大臣、済みません、これで通告はございませんので、御退席いただいて結構でございます。

 資料をちょっとお願いします。一ページ、二ページ、これは二〇二〇年末のスナップショットでの国内未承認薬についての資料であります。国内の患者の皆さんにイノベーティブ新薬が早期に届きにくいのではないかという問題意識から質問をいたします。

 近年の毎年薬価改定により、日本の医薬品市場の魅力度低下によるいわゆるドラッグラグ、ドラッグロスにつきましては、ずっと指摘がされ続け、その声が大きくなっていると思います。国内未承認薬は、臨床的に重要度の高い医薬品が多く含まれてもございます。

 資料にありますように、一ページにありますが、二百六十五品目中、現在、我が国で開発情報がない製品が百四十五品目に上るということであります。これは、医薬品へのアクセスの観点からも見過ごすことができません。

 我が国の中で未承認薬が増えている現状をどう認識をし、どう取り組もうと考えていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 まさに、欧米等で使える薬が日本で使えない、中には審査の期間等々があった問題もありますけれども、最近は、そもそも承認すら求めてこない、あるいは承認が行われていない、こういった課題があることは承知をしております。

 そのために、一つは、患者の皆さんの話、声を聞きながら、我が国で使用できない医療上必要な医薬品や適応を解消する取組として、二〇一〇年から、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議を開催し、患者団体や学会から医療上の必要性の高い医薬品の開発に向けた要望を受け、そして、医薬品の海外における承認の状況、対象疾患の重篤性や他の治療薬の有無等について検討を行った上で、製造販売業者に対して開発の要請等を行っているところであります。

 この間、検討会では、千二十九の要望を受け、うち医療上の必要性が高いとされた四百六十四件のうち、日本国内に開発企業がある四百十九件については厚労省から企業に対し国内向け開発の要請を、日本国内に開発企業がない四十五件については関連団体等に対して開発の要請を実施し、現在、四百六十四件のうち三百七十一件が薬事承認をされているところでございますし、残余の部分についても企業等の開発等の対応を行っているところでございます。

 これは今、検討会という中でありますが、こうした患者の皆さんの声を伺いながら、必要な医薬品が医療現場に届くよう対応してまいりたいと考えております。

田畑委員 ありがとうございます。

 国際共同治験の日本の組入れ率が低いということも要因ではないかというふうに思いますし、新興企業を始めとする外資系の企業が、答弁の言及もございました、そもそも日本に承認すら、しないという現状、これは本当にゆゆしき問題でございます。対策はもちろん講じているということでありますし、患者の声をしっかり反映をしながら、救える命、また国民の医療アクセス、こうしたことをしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 一方、日本の薬剤費は、過去十年、おおむね八兆円から九兆円台で推移をしてございます。薬価改定ですとか後発薬への置き換え等の薬剤費削減の効果もあり、二〇一八年から二〇二二年の五年間の累計で五千九百四十一億円の削減効果が出てございます。これは国民の負担軽減の実績とも言えるとも思いますが、製薬企業、製薬産業への調査として、近年の薬価制度の抜本改革が八割の企業において経営に影響を与えたとの回答もございます。中でも、新薬創出等加算の見直しが最も多い影響を受けたとの調査結果もございます。

 そこで、質問でありますが、革新的創薬のために、当然、薬価制度が重要でございます。十二月には中間年改定の結論が一旦出ているところでありますが、今後、薬価制度改革、このことにつきまして、まず加藤厚労大臣の御意向、見解をお聞かせをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 薬価制度については、国民皆保険の持続性を図りながら、一方でイノベーションをどう推進していくのか、この両立が大変重要であります。

 また、そもそも、薬価そのものは市場実勢価格に基づいて改定をしていく。しかし、そういう中で、イノベーションを推進していくということで新薬創出等加算制度等も盛り込ませていただいておりますが、令和五年度薬価改定では、臨時特例的な対応として、イノベーションにより配慮する観点から、新薬創出等加算の加算額を増額し、対象となる品目について、従前の薬価と遜色のない水準にさせていただいたところでもございます。

 薬価に関しては、今も言われたイノベーションの問題、あるいは、今、ジェネリック等、こういったものの供給が滞っている等、様々な課題がございます。そうした観点から、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会を昨年九月から開いており、流通や薬価制度など幅広い観点から検討をしているところでございます。

 この議論、また関係者の意見も踏まえながら、これからの薬価制度、今申し上げたように、イノベーションが一方で進む、しかし他方で、国民皆保険の持続可能性を維持をしていく、さらには、今申し上げた現下にある様々な課題、それにどう対応していくのか、検討を進め、答えを出していきたいと思っています。

田畑委員 ありがとうございます。

 今、言及がありました有識者会議、この議論、我々も大変注視をしてございます。これは、この春ですか、取りまとめだというふうに聞いてございますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 ここで、鈴木財務大臣にお聞きをしたいと思います。

 同じく薬価に関することでございますが、直近の財政審の資料から、真にイノベーティブな新薬等については一定期間維持するものとしつつ、薬剤費の伸びと経済成長率が乖離しない薬剤費総額に係るルールを設けること、給付費の伸びと整合性を取ることに一定の合理性があるとも財政審は指摘をしているところでございます。

 改めて、四大臣会合のもちろん当事者のお一人であり、大変重要な財務大臣でございますが、今後の薬価制度の在り方につきましての御見解をお聞かせをいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 国民負担の軽減という観点から、薬価改定につきましては市場価格に合わせた薬価引下げを行っていくこと、これは重要な取組であると考えております。

 こうした考え方の下で、令和五年度予算におきましては、国民負担の軽減のための毎年薬価改定を実施したところであります。

 同時に、令和五年度薬価改定におきましては、原材料費の高騰と安定供給問題に対応するため、不採算となっている医薬品の薬価を引上げを行うとともに、イノベーションに配慮する観点から、加藤大臣からも御答弁ありましたけれども、革新的な新薬の薬価を従前の薬価と遜色のない水準にするということにいたしました。

 今後も、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性、これが両立することができますよう、両者のバランスを取りながら取り組んでまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

田畑委員 ありがとうございます。

 財政審は、他の医薬品薬価改定率を調整するマクロ経済スライド制導入にも言及がなされているところであります。少なくとも、中長期的な経済成長率に見合った薬剤費成長を担保する仕組みの創設というのは、私も必要ではないかなというふうに思います。

 これは、これからしっかり議論をしながら、先ほど申し述べられました特例は令和五年度に限りということも仄聞するわけでありますから、六年度以降も含めて、製薬産業、イノベーティブをしっかり支える、そうした薬価制度となりますよう、議論を深めてまいりたいというふうに思います。

 続いて、バイオ医薬品関係につきまして、バイオシミラーを含めてちょっと二問、同じくお聞かせをいただきたいと思います。

 そもそも、我が国においても、創薬ベンチャー企業を育てる取組は非常に遅々としているのではないかというふうに思いますし、また、バイオ医薬品製造を支える人材の育成、これも非常に予算の投入も細いというふうに思わざるを得ません。

 是非、バイオ医薬品ベンチャー企業の育成、また人材の育成についての御見解をお聞かせをいただきたいと思いますし、また、バイオシミラーに関しましても、骨太において、いわゆる医療費適正化効果を踏まえた目標値を今年度中に策定ということがうたわれております。目標に係る検討状況及び具体的な取組につきまして、併せて厚労大臣にお聞かせをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今、医薬品開発の主流、このバイオ医薬品が主流となってきております。創薬技術が高度化し、大変激しい競争が展開され、研究開発のスピードもますます速くなっていますし、また、こうした開発の担い手というのは、特定領域に特化した技術を有するベンチャー企業、これがかなりのシェアを占めているというのが今の実態であります。

 このため、政府としても、ベンチャー企業を対象とした相談窓口を設置し、研究開発から実用化に至るまで、法規制対応、マーケティングに関する相談など、専門家によるきめ細かな支援を提供すること、また、これは経済産業省でありますが、創薬ベンチャーエコシステム強化事業において、創薬ベンチャーに対する資金援助を行う等のベンチャー企業支援も行っているところであります。

 先ほど医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会の話をさせていただきましたが、同検討会においてもベンチャー支援に向けた課題の検証を行っているところでありますので、結果を踏まえて必要な取組を検討していきたいと思っております。

 また、バイオ医薬品の製造、開発を支える医療人材であります。こうした人材を幅広く育成をしていく、関係省庁とも連携して必要な取組を進めていきたいと思っております。

 一方で、バイオシミラーについて、バイオ医薬品とともに医薬品分野の中でも成長領域であります。医療費の適正化が図られるという観点だけではなくて、我が国の産業を育成するという観点からも使用の促進を図っていく必要があります。

 御質問がございました、バイオシミラーの普及促進のための目標値については、今年度中の設定に向けて、現在、有識者や業界団体へのヒアリングを進めているところであります。

 また、目標の達成に向けては、今、様々な使用促進を図るための措置に加えて、安定的な供給のための製造設備の整備、人材育成といった供給者による課題、あるいはバイオシミラーの認知度向上に向けての有効性、安全性の周知、広報といった医療提供者等における課題等に対して一体的に取り組むことが重要と考えており、こうした課題に対応する観点からも、総合的な対応について検討を進めていきたいと考えております。

田畑委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間が押しましたので、最後、意見だけでありますが、原料、原薬ですね、この調達、これもしっかり意識をしていただきたいと思います。

 今日はちょっと質問できませんが、是非、日米の厚労大臣、外務大臣を併せた2プラス2的なものをしっかりつくって、国際的な枠組み、日本がしっかり主導していかれることを御期待を申し上げたいと思います。

 以上で質問を終わりたいと思います。

中山委員長代理 これにて田畑君の質疑は終了いたしました。

 次に、本田太郎君。

本田委員 おはようございます。自民党の本田太郎でございます。

 予算委員会での質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 早速ですが、質問に入らせていただきたいと存じます。

 私は弁護士でもありまして、現在は司法制度調査会の事務局長を拝命しておりますことから、まずは、性犯罪、死刑制度、再審制度について法務大臣にお考えをお聞きしたいと思います。

 二月三日の法制審議会刑事法部会におきまして性犯罪に係る要綱案が取りまとめられまして、強制わいせつ罪等の抗拒不能の要件や性交同意年齢の引上げが示されました。今後、二月十七日の総会で審議が行われることと聞いております。

 その点も含めまして、まずは性犯罪についてお尋ねをしたいと思います。

 以前の法制審議会の部会でも意見として出ておりましたが、性被害の被害者の多くから報告された反応は恐怖でありまして、その恐怖は一年も二年も続くことがあるということであります。また、被害者への聞き取りの結果として、身体的暴力を受けなくても、逆らったらどうなるのか、また、相手の体が大きいので逆らえないと思ったなどという答えもありまして、加害者に心理的に圧倒をされているということが分かります。

 考えるよりも先に体が勝手に反応して、膝が震え、足に力が入らない、思考停止状態に陥って動けない、また、そのつもりはないのに相手に受動的に従ってしまうなどのように、危機的状況では生存に関わる脳の部分が急激に活性化をされて、生物学的な生存が優先される、そういう状態になることが科学的にも説明をされているそうであります。

 このような心理的、生理学的な反応を理解しないままに、抵抗できたのではないか、また、逃げられたのではないかというようなことを言うことは、被害者に不可能を強いることになり、極めて残酷です。

 他方で、悪質な加害者ほど、被害者が逃げられない、抵抗できない、訴えることができない、そのような被害者を選びます。能力や力関係の差を利用して、自分がしたいことをしたいようにでき、後から訴えられそうもない人を選ぶわけであります。そうした中で、被害者は沈黙させられ、訴えることもできず、仮に訴えても信用されず、被害を不自然だと判断をされて、なかったことにされるという悲劇が繰り返されるわけでございます。

 平成三十一年に、岡崎市で、実の父親が当時十九歳の娘と性交した事案の裁判がありました。

 一審では、父親は娘である被害者に長年性的虐待を行ってきており、問題となった性交の際にも被害者の同意はなく、被害者にとって極めて受け入れ難い性的虐待に当たるとしましたが、被害者が抗拒不能の状態にあったとは認定できず、無罪とされてしまいました。

 令和二年に行われた二審では、被害者である娘さんが抗拒不能の状態にあったとして有罪となりましたが、こうした事案や類似の事案がマスコミ等でも取り上げられ、犯罪の成立には必要な抗拒不能、すなわち抵抗できない状態という要件が今のままで本当によいのかという世論が沸き上がりました。

 こうしたことから、私は、抗拒不能の構成要件を改正をしたり、現在は性交を自分の判断で同意できる年齢が十三歳とされていますので、十三歳未満の者に対する性交は犯罪となりますが、同意できる年齢を十六歳に引き上げるなど、性犯罪の実情に即して処罰対象を考えることが望ましいと思います。

 そうした中、法務省として、性犯罪に関する法改正について今現在議論されているわけですが、その進捗状況についてお聞かせをいただきたいと存じます。

齋藤(健)国務大臣 まずもって、本田委員がこの性犯罪問題に熱心に取り組まれておられることに敬意を表したいと思います。

 性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けるものであって、決して許されるものではありません。

 自民党の司法制度調査会からは、性犯罪、性暴力の根絶が急務であるとして、根絶に向けた取組が徹底的かつ確実に進められることを切に求めるとの提言をいただいているところであります。

 性犯罪につきましては、平成二十九年に刑法改正が行われましたが、その附則におきまして、施行後三年を目途として、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることが求められておりました。

 これを受けまして、法務省では、性犯罪に関する刑事法検討会を開催するなどいたしました上で、令和三年九月、性犯罪に対処するための刑事法の整備について法制審議会に諮問がされまして、その後、法制審議会の部会において十四回にわたり調査審議が行われ、今月三日、暴行、脅迫、心神喪失、抗拒不能の要件の改正、いわゆる性交同意年齢の引上げ、公訴時効の見直しなどを内容とする要綱案が部会として採択されたものと承知しています。

 今後、法制審議会の総会において調査審議が行われる予定でありますが、性犯罪への適切な対処は喫緊の課題でありますので、答申がなされたときは速やかに国会に法案を提出できるよう、準備を進めたいと考えております。

本田委員 法務大臣、ありがとうございます。速やかに法案提出に挑んでまいりたいという御決意をいただきました。誠にありがとうございます。被害者の皆様の心情を察するに余りあると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、死刑制度についてお尋ねします。

 死刑制度を残すか、それとも廃止するか、これを判断するに際しましては、死刑という刑罰が、被害者、遺族や国民の感情、また加害者の更生、社会の防衛など、様々な観点からの検討が必要になります。また、我が国の文化、伝統、生死観などとも深く関わるのみならず、人の生命を国家権力によって奪うという非常に峻厳な行為であることから、極めて慎重で深い国民的議論が求められると考えます。

 死刑を廃止すべきとする立場からは、死刑廃止は国際的な潮流であるですとか、死刑は一度執行すると取り返しがつかないから、裁判に誤判の可能性がある以上廃止すべきであるとか、死刑に犯罪抑止効果があるのか疑わしいなど、論拠が示されております。他方で、死刑を残すべきとする立場からは、人を殺すなどの重罪を犯した者は自らの生命をもって償うべきである、また、死刑制度の威嚇力は犯罪抑止に必要である、さらには、被害者、遺族の心情からすれば死刑制度は必要であるなど、それぞれの立場から一定の説得力のある根拠が示されています。

 そこで、法務大臣の下、死刑制度の存廃につきましてどのように考えておられるのか、改めて見解を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の死刑制度の存廃につきましては、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題でありまして、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現など、種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えています。

 国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない、そういった状況等に鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ないのでありまして、死刑を廃止することは適当ではないと考えております。

本田委員 ありがとうございます。明確な答弁をいただきました。

 現在の国民の多く、世論等々を、時の流れはいろいろ変わってまいりますので、その時々の流れもしっかり見極めながら、しかし、社会の正義、そしてあるべき姿を求め続けることが大事だと思いますので、引き続き、慎重に日々検討を続けていただきたいと存じます。

 最後に、再審制度についてお尋ねをします。

 再審制度は、刑事事件の確定裁判に誤りが見つかった場合に、裁判のやり直しをする手続です。被告人側から裁判のやり直しを求める再審請求がなされ、これが認められると、つまり再審開始決定がなされるとやり直し裁判である再審公判が開かれるというふうに、二段階の手続となっています。

 過去に、死刑の確定判決に対して四件の再審無罪が出ており、四名の無実の者が死刑から生還をしているという事実もございます。今年の三月にも、死刑判決が確定している袴田事件について、再審開始の可否を決定する方向だと言われております。

 こうした中、再審を求める再審請求審において、検察官の手持ち証拠を開示すべきではないか、また、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止すべきではないか、そういう意見が日本弁護士連合会から出されているほか、令和四年十月五日までに、全国で百十二の自治体からも再審法の改正を求める意見書が採択をされています。

 他方で、再審は特別な手続であって、改正の必要はないという意見ももちろんあるわけでございますが、法務大臣の下、再審法の改正につきまして現在どのように考えておられるのか、見解を伺いたいと存じます。

齋藤(健)国務大臣 現行法の下で、再審請求審における証拠の提出等に関しましては、検察当局において、裁判所が再審開始事由の存否を判断するために必要と認められるか否か、証人側から開示を求める特定の証拠につき必要性と関連性が十分に主張されたか否か、あるいは、開示した場合における関係者の名誉やプライバシーの保護、将来のものも含めた今後の捜査、公判に与える影響などを勘案しつつ、裁判所の意向等も踏まえ、適切に対処しているものと承知をしています。

 その上で、再審請求審において証拠開示制度を設けることについては、かつて法制審議会の部会において議論がなされておりまして、その際、再審請求審における証拠開示について一般的なルールを設けること自体が困難である、それから、再審請求審は通常審と手続構造が異なるので、通常審の証拠開示制度を転用することは整合しないといった問題点が指摘されたところでありまして、これらを踏まえて慎重に検討する必要があると考えております。

 不服申立てについても御答弁しますと、検察官が再審開始決定に対し抗告をし得ることは、公益の代表者として当然のことでありまして、これにより、再審請求審における審理、決定が適正かつ公正に行われることが担保されるものと考えています。

 仮に、検察官の抗告権を排除するとすると、違法、不当な再審開始決定があった場合にこれを是正する余地をなくしてしまうという問題があり、また、司法制度全体の在り方とも関連するものであって、慎重に検討する必要があると考えております。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

本田委員 ありがとうございました。

 再審法の改正につきましても、またこれも日々検討を続けていただきたいと存じます。

齋藤(健)国務大臣 先ほどちょっと読み間違えたところがありまして、証拠開示のところで、請求人側から開示を求める特定の証拠につき必要性と関連性が十分主張されたか否かというところを、証人側というふうに申し上げましたので、訂正させていただきたいと思います。

本田委員 ありがとうございました。

 それでは、法務大臣、これで御退席いただいて結構でございます。

 それでは、続きまして、別の話題に入らせていただきます。

 コロナで疲弊した地域公共交通の再生についてお尋ねをしたいと存じます。よろしくお願いします。

 私の選挙区である京都府北部がそうでありますように、地方部、特に田舎と言われる地域では人口減少が加速しておりまして、従来から鉄道やバスといった地域公共交通の利用者が落ち込みを続けています。それに加えて、コロナ禍の直撃を受けて、更に利用者数が落ち込んだわけでございます。

 国土交通省のデータによりますと、一九九〇年を一〇〇としますと、二〇二〇年時点での地域鉄道の利用者数は五九となり、路線バスに至っては三五という驚くべき数字になっています。また、コロナ前後の赤字事業者の割合を見てみますと、路線バスでは、コロナ前の二〇一九年が七四%であったのが、コロナ後の二〇二〇年には九九・六%になっています。地域鉄道についても、七八%であったのが九八%という悲惨な数字になっているわけであります。

 こうした状況から、地域公共交通が減便されたり、場合によっては廃止される路線が出てきております。しかし、こうした地域に住まう方々、特に高齢者や通学の学生さんにとっては地域公共交通が不可欠であり、様々な知恵を絞って地域公共交通を再生していかなければならないと考えています。

 そこで、いわゆる田舎と言われる地域の公共交通を再生に向けるその考え方、具体的な方策について国土交通大臣にお尋ねをいたします。

斉藤(鉄)国務大臣 私も、本田委員の御地元の京都府北部を視察をさせていただきました。人口減少とコロナで大変苦しんでいらっしゃる、しかし、いろいろな工夫をされているところを見させていただきました。

 こうした中にあって、地域交通については、地域の関係者が共創、すなわち連携、協働し、ローカル鉄道を始め、地域の路線バス等も含めて、全国で利便性、持続可能性、生産性の高い地域交通ネットワークへのリデザイン、再構築を進めていく必要があると考えております。

 このため、令和五年度予算案において、社会資本整備総合交付金に新たな基幹事業として地域公共交通再構築事業を追加するなど、予算面での実効性ある支援策を講じることとしているところでございます。

 さらに、ローカル鉄道やバス等の再構築を図る仕組みを創設するために、法案を今国会に提出することを予定しておりまして、今年を地域公共交通再構築元年とすべく、全力で取り組んでまいります。

本田委員 ありがとうございます。元年ということで、力強い御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 今おっしゃられました地域公共交通の再生に向けた方策について、大変ありがたく思います。その中で、特に鉄道については、JR各社が輸送密度二千人を下回る路線、区間ごとの収支を公表しましたり、大変厳しい状況が一般的に知られるようになってまいりました。

 そうした状況の中、地域公共交通の活性化再生法の、いわゆる先ほどおっしゃられた法案の中で、ローカル鉄道の持続的なサービス維持が困難な線区について、国が再構築協議会というものを組織して、関係者が一丸となって、望ましい地域公共交通の在り方を議論した上で再構築の方針を決定するということになっておりますが、このことに対して、自治体によっては、我が町の線区が廃線ありきで議論が進むのではないかというような心配をする向きもございます。

 そうした心配が払拭されるような議論の在り方で進めていただきたいと考えておりますけれども、この点につきまして国土交通大臣の御見解を伺いたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 まず、廃線ありきでは全くございません。

 JRの上場各社については、JR会社法に基づく大臣指針により、赤字という理由だけで廃線を行うことは容認されませんが、大幅な輸送需要の減少等により、大量輸送機関としての鉄道の特性を生かした輸送サービスの持続可能な提供が困難な線区については、鉄道事業者のみの努力で地域公共交通としての機能を維持していくことが難しくなっていることも事実でございます。

 そのため、鉄道事業者と沿線自治体が連携、協働し、鉄道輸送の利便性向上による輸送需要の回復か、輸送需要に見合った他の輸送モードへの転換か、いずれかの方法により地域公共交通の機能の回復を図ることが急務でございます。

 まだ法案の国会提出前ではございますが、今般の法改正においては、自治体や事業者からの要請を受け、国が関係者の連携、協働を促すための協議会を設置できることと考えております。当然ながら、この協議会では、廃止ありき、存続ありきという前提を置かず、沿線自治体や利用者を始めとする地域の声をよく聞いて、丁寧に進めていきたいと思っております。

 なお、この協議の場で、地域づくりの一環として、利便性や持続可能性の向上によって鉄道の維持を図ることとした地域に対しては、社会資本整備総合交付金等も活用し、しっかり支援してまいりたいと思っております。

本田委員 ありがとうございます。

 廃線ありきでないという明確な答弁をいただきまして、心配されている自治体の方では安心して協議に取り組んでいけるものだと思います。ありがとうございます。

 先ほど来いただきました様々な施策のほかに、今後は、テクノロジーの進展によって、自動運転の技術等々で、公共交通以外でも高齢者の方等々が使える、そういう未来が来ることを私も期待をしているところであります。ありがとうございます。

 次の質問に入らせていただきたいと存じます。

 次は、コロナの後のウィズコロナ、後といいますか、ウィズコロナの中における観光インバウンドについてお尋ねをしたいと存じます。

 新型コロナ以前は、政府を挙げて観光インバウンドの振興に努め、二〇一九年のピーク時には三千万人を超える外国人観光客が訪日をし、二〇二〇年に四千万人達成を目標に掲げていました。

 ところが、新型コロナの蔓延によりまして、世界的に旅行需要が激減したのは御存じのとおりでございます。最近になってようやく新型コロナの感染が徐々に収まってまいりまして、五月八日には二類から五類に変更され、水際対策、マスク着用、イベント等での対応が大きく変化します。既に海外からの観光客は増加してきていますが、五類への移行を契機に、更なるインバウンドの増加が予想されます。また、二〇二五年には大阪・関西万博も開かれ、インバウンド増加の後押しになることが期待されています。

 こうした状況の中、今後の観光インバウンドをどの程度伸ばしていきたいと考えているのか、政府の目標や具体的施策についてお伺いをしたいと存じます。

斉藤(鉄)国務大臣 インバウンドの目標とその具体的な施策について本田委員から御質問をいただきました。

 目標につきましては、総理の施政方針演説において、訪日外国人旅行消費額五兆円の早期達成を目指すことを表明しておりますが、現在、今年度末に向けて新たな観光立国推進基本計画の策定作業を進めており、その中で更なる具体的な目標について検討してまいります。

 そして、インバウンド回復に向けて、委員御指摘のとおり、これまでの観光の課題も踏まえ、地方誘客促進、消費額拡大に特に留意し、集中的な取組を推進することが重要であると考えております。

 具体的には、地方も含めた全国各地での特別な体験など、日本各地の魅力を全世界に発信する観光再始動事業や、観光消費の旺盛な高付加価値旅行者、いわゆる外国人富裕層の地方への誘客に向けた高付加価値なインバウンド観光地づくり等を進めていく、こういう具体的な方策を今実行していこうとしているところでございます。

本田委員 御答弁ありがとうございました。

 政党間協議の結果を受けまして、時間前ですけれども、私の質問を終わりたいと存じます。

 済みません、来ていただきました大臣の皆様方、大変申し訳ございませんが、私の質問は終わらせていただきます。

根本委員長 これにて本田君の質疑は終了いたしました。

 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

根本委員長 速記を起こしてください。

 この際、一言申し上げます。

 本日、委員会がこのような形で開会することとなりましたのは遺憾に思っております。

 これからしっかりと与野党間の協議をいただきながら委員会を進めてまいります。

 質疑を続行いたします。奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 まず、野党を代表して質問させていただきます。

 松野官房長官に伺いますが、荒井秘書官発言について、事実関係、そして政府としてどのように考えるかということをまず伺いたいと思います。

松野国務大臣 奥野先生にお答えをさせていただきます。

 荒井元総理秘書官は、二月三日夜、オフレコを前提とした記者団の取材に応じた際に、報道されているような発言を行ったと聞いています。

 荒井元総理秘書官の、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる、見たらどう思うか、隣に住んでいたらどう思うか、他の秘書官も同じ考えではないかといった発言については、荒井元総理秘書官自身が総理秘書官の職にある者としてふさわしくないものであるとの理由から、その後のオンレコの取材において問題の発言を撤回し、謝罪しました。

 荒井元秘書官の発言は、政府、岸田内閣の方針とは全く相入れるものではなく、断じて容認できるものではありません。こうしたことから、岸田総理は荒井秘書官を直ちに更迭いたしました。

 岸田政権としては、多様性のある包摂的社会を一貫して目指しており、国民に誤解を生じさせたことは遺憾であり、おわび申し上げます。

奥野(総)委員 ここからは私の質問に移らせていただきますけれども、先ほど官房長官は、荒井元総理秘書官の発言については、オフレコの場での発言であり、その詳細を承知しておりません、こう答弁されています。私は、政府の姿勢として非常に不真面目だと思うんですね。

 これだけ国際的にも話題になっている、日本の国益を損ねるような発言であるにもかかわらず、官邸を仕切る官房長官がそういう答弁をされたのは非常に私は残念なんですが、荒井秘書官についてはきちんと聞き取りをやっておられるんでしょうか。どういう趣旨で発言されたかとか、この発言を詳細にきちんと聞き取りをされたでしょうか、官邸として。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 荒井元総理秘書官は、嶋田政務秘書官を通じて、岸田総理に報道されている発言は事実であると報告し、また、総理秘書官の職にある者としてふさわしくない発言であり、謝罪したと聞いています。

奥野(総)委員 承知していたということですよね。承知していないとおっしゃっていましたけれども、詳細は承知されていたということですね、朝の時点で。いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 私が詳細と申し上げましたのは、先生御案内のとおり、オフレコの場の発言でございますので、記録を取っているもの、また録音しているもの等がなく、細かい発言のところまで詳細ができるものではないということでありますが、聞き取りの結果、また、御本人がオンレコでのぶら下がりにおいて申し上げた中において判断しても、十分に内閣の方針と相入れない、断じてこれはもう言語道断であるということで、岸田総理が解任をしたということを申し上げたことでございます。

奥野(総)委員 そうすると、朝の答弁は非常に不誠実というか、何を詳細と言うかはありますけれども、内容については承知しておられたということでありまして、そうであれば、そのようにきっちり言っていただければ我々もこういう感じにはならなかったと思うんですが、非常に不誠実な対応だったと思います。

 それで、もう一点不誠実と思うところがありまして、この発言で傷ついた方はたくさんいらっしゃると思うんですよ、当事者の方々。その方々への謝罪がないんですね。

 発言したことに対する、あるいは撤回したということに対する謝罪はあったかもしれません。発言したこと自体の謝罪があったかもしれません。あるいは、官邸として、多様性とか持続可能性、そういうものに、官邸の価値観から反するからという話はあったかもしれませんが、当事者の皆さんへのおわびというのは、総理の口からもなかったし、秘書官御本人の口からもなかったかと思います。

 ここで、政府を代表して官房長官の方から、当事者の皆さんへおわびというのをしていただけないでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど答弁させていただきましたとおり、岸田政権としては、多様性のある包摂的社会を一貫して目指してきております。

 今回の荒井元秘書官の発言によって傷つかれた方、また、不快な思いをされた方もいらっしゃるかと思います。そういった皆様に関しましてはおわびを申し上げますし、また、内閣の方針に関して誤解を生じさせてしまったことに関しましては、遺憾であり、これもおわびを申し上げる次第であります。

奥野(総)委員 昨日は総理のぶら下がりもありましたけれども、まずそこだと思うんですよね。政府の方針に反したから更迭した、それはそうなんですが、まず当事者へのおわびがあって、その上で更迭するということですね。

 更迭の理由は政府の方針に反したということだけのように思いますが、そうじゃなくて、多くの方を傷つけた、不快な思いをさせたということが私はまず一番の理由だと思うんです。そこに思い至らないというところが、やはり私は岸田政権の問題があると思うんですね。ずれているんです。明日、恐らくまた、あさってか、総理に聞く場があると思いますが、総理の口からもしっかり御説明いただきたいというふうに思います。

 さらに、これも総理の話になるんですが、内閣としての任命責任があると思うんですね。政府の方針に反するような方を任命した、考え方を持っている方を任命した、それを言ってしまうような方を任命しているということで、任命責任についてはどのようにお考えでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 総理御自身も任命責任を感じるということはお話をされていますけれども、任命責任を感じているからこそ、荒井元総理秘書官について、総理秘書官の任を解くという判断をしたということでございます。

奥野(総)委員 当たり前ですが、任命責任を認めているということでよろしいですね。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 これも、総理も申し上げているとおり、任命責任を感じているということでございます。

奥野(総)委員 撤回されたとおっしゃっていますが、いろいろなことをおっしゃっています。おわびはしていただきましたが、秘書官室はみんな嫌だと言っている、こういう発言があるんですが、これは事実なんでしょうか。官邸全体がそういう雰囲気なんでしょうか。これは聞かれましたか、どういう趣旨でされたか。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 これも荒井元総理秘書官からもお話をさせていただいているとおり、そういった事実はないということでございます。

奥野(総)委員 しかし、反対の人が多いんじゃないかという趣旨で発言した、この国は嫌だと思う人がいるんじゃないかと思って話をした、こういうふうな、新聞記事によれば言われているんですが、火のないところにはという話もありますし、この発言ですけれども、私が気になるのは、オフレコとはいえ、総理のこの前の、家族観や価値観、社会が変わってしまうという我が党の西村委員に対する答弁について解説している中で話されているんですね。

 こういうオフの取材というのは、総理の考え方や政府の姿勢を補足して説明する場だと思うんですよ。そうした中でこういう発言が出てくるということであれば、総理自身がそういう考えじゃないか、あるいは、官邸全体、秘書官がここで言っておられる秘書官室全体がそういう空気じゃないかというふうに思われるんですが、いかがなんですか。本当に明確にこれは否定し切れるんでしょうか。ほかの秘書官はそういう考えを持っていない、総理自身もそういう考えを持っていないと。いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、荒井元総理秘書官は、他の秘書官も皆反対だと思うとの発言そのものを撤回をいたしました。その後、本人も、他の秘書官と話したものではなく、著しく誤解を与える表現だったと陳謝をいたしました。

 今先生から御指摘の点でございますけれども、総理はもちろん、官邸としても、荒井秘書官が話をされた方向については、全く内閣の方向とは相反するものであります。

奥野(総)委員 先日の答弁、家族観や価値観、社会が変わってしまうという同性婚に対する答弁、これは恐らく荒井秘書官が書かれたんじゃないかというふうに言われていますが、これは荒井秘書官の考えなのか、総理の考えなのか、どちらでしょうか。

松野国務大臣 答弁自体に関しては、これは法務省をベースとしてのものでございますけれども、総理の方から変わってしまうというような御発言があった旨ですが、同性婚制度の導入については、親族の範囲やそこに含まれる方の間にどのような権利義務関係等を認めるかといった国民生活の基本に関わる問題であり、国民一人一人の家族観等に密接に関わるものであるから、これに対して慎重な議論が必要だという趣旨かと承知をしております。

奥野(総)委員 これは、私も総理答弁をやったことがありますが、原局が書くんですが、手が入りますよね。秘書官が全部見てチェックの上、上がっていくんですよ。相当手が入ることもあるし、その際に、総理のお考えを踏まえて書く、あるいは秘書官自身の考えを入れるということはよくあると思うんですが、こういう発言を荒井秘書官がしている以上、その答弁は荒井秘書官が書いたんじゃないかというふうに思われますし、そういう、秘書官室ですよね、これに限らず、今回の発言もそうですけれども、もう一回確認しますが、総理は、今回の、秘書官室もみんな嫌だと言っている、こういう話、あるいは、見るのも嫌だ、こういう発言については全く賛同しない、総理もLGBTについては理解をされておられるということでよろしいですね。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど申し上げましたけれども、今回の荒井元秘書官の発言は、政府、岸田内閣の方針とは全く相入れるものでなく、断じて容認できるものではありません。

 岸田政権としては、多様性のある包摂的な社会を一貫して目指しております。

奥野(総)委員 どうも言っていることと、包摂的な社会を一貫して目指していると言っている割にはこういうことが足下から出てきたり、どうも疑念を持たざるを得ないんです。

 もう一回伺いますが、さっきの答弁の話ですけれども、秘書官は手を入れていないということでよろしいですね。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 荒井元秘書官は関与していないと承知をしております。

奥野(総)委員 そうすると、やはり総理自身のお考えということになりますが、そこはいいですね。いや、答弁に手が入っていないんだとしたら、原省の、原局の答弁がそのまま上がってきて、それを総理が認めたということで、流れとしてはいいですね。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 お尋ねの総理の答弁は、質疑者の方とのやり取りの中での発言と承知をしております。

 具体的には、質疑者から通告があった質問に対する答弁案については法務省が作成したものでありますが、質疑者と質疑応答を繰り返す中の一部にお尋ねの発言があったと承知をしております。

奥野(総)委員 答えになっていませんが、流れからいくと、今、法務省が作成したと言っていますが、法務省が作成して、秘書官が見て手を入れずに総理がそれを読まれて、総理はそれを承認されたということでよろしいですね。総理はそういう考えだということでよろしいですね。もう一回確認です。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 もうこれは先生御案内のことでありますけれども、政府としての答弁でございますから、所管の省庁によってたたき台が書かれ、また、そこに様々な議論の下に答弁が作り上げられていくわけでありますけれども、最終的には、総理が答弁をされ、また、これは政府見解としての答弁でございますから、責任の所在ということは政府にあるということでございます。

奥野(総)委員 ほかもありますのでこれ以上言いませんが、総理が同性婚についてはそういうお考えである、あるいは、官邸全体が、LGBT問題、この発言を認めているということは否定されましたけれども、そういう空気感が全体としてあるんじゃないかというふうに思われます。

 それで、そこについて海外からも報道がいっぱい出ていまして、BBCとかロイターとかが書いていますが、BBCなどは、日本ではなお伝統的な男女の役割や家族観が強く、主要七か国、G7で唯一同性婚を認めていない、こう書かれています。最後のところで、岸田政権はここ数か月の間に様々なスキャンダルで多くの閣僚が辞任をし、政権の支持率が急落している、そうした中で、荒井氏の更迭は政権にとってまた一つ新たな打撃となったということなんですが、サミットを前に日本異質論みたいなことが世界に広がっていく懸念があります。

 それを払拭しなきゃいけないと思うんですが、我が党は、従来から、西村委員を始め提唱してきた、LGBT差別解消法というのを提案してきて、議連の場でもこれをたたき台に議論いただいていると思いますが、公明党さんもこのような話をたしかされていたと思いますが、こうしたものをこの国会できちんと話し合って成立させるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 政府としても、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えています。

 御指摘の法案につきましては、議員立法として議論があると承知をしており、まずは、国会での取扱い、御議論に関しましては国会でお決めをいただくことかと存じますが、政府としてもその動きをしっかりと注視をしていきたいと考えております。

奥野(総)委員 被害者救済法なんかは閣法になったわけですよね、性格上というのはあるかもしれませんが。例えば、政府としてそれを前向きに捉えて進めていくということはないんでしょうか。

松野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、政府、岸田内閣の姿勢としては、性的指向でありますとか自認の問題に関して、これによって不当な差別があってはならないということは一貫して申し上げてきているとおりであります。

 法案の審議、進め方につきましては、これは議員立法によるものと承知をしておりますので、国会においてその進め方においてはお決めをいただくということかと思います。

奥野(総)委員 私が申し上げているのは、本当にこれでいいんですか、国際社会から、日本社会、日本政府自体、異質なものじゃないかと思われるかもしれないという中で、やはり政府として、そういう答弁ではなくて、しっかりやっていくという趣旨で答弁いただきたかったんですね。

 建前論でいえばそうかもしれないけれども、政府として立法化に乗り出すとか、あるいは、与党でいらっしゃるわけだから、与党の中をしっかり総裁が回していくという決意を伺いたいんですが、いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど来答弁をさせていただいておりますとおり、岸田内閣の姿勢としては申し上げているとおりでございますし、先生の方から、国際的にもしっかりとその意味、内閣としての姿勢、考え方を発信していくべきではないかということは先生の御指摘のとおりだと思いますので、丁寧に、内閣の考え方を御理解いただけるように、説明、発信をしてまいりたいと考えております。

奥野(総)委員 だから、繰り返しそういう答弁をおっしゃるんだけれども、結局足下からこういうのが出てきてしまって、本当に政権の姿勢、与党の姿勢が問われるというふうに思います。

 まして、昨年の臨時国会から四人の大臣が辞任され、更迭され、政務官も更迭され、年明けは首相の御子息の観光疑惑とか、今度は秘書官に話が飛び火をして、政権自体が本当に足下大丈夫かという空気になってきています。

 今、大事なときなんですよ。物価問題もありますし、やはりしっかりやっていただきたい。こういう発言は本当にあっちゃいけないことですし、撤回されたとはいえ、また引き続き岸田総理本人に伺うことになろうかと思いますけれども、今日は私はこの辺にしておきたいと思います。

 官房長官が本来は会見の予定だったんですけれども、最初から、朝からこういう形で進めていれば会見に支障は出なかったと思うんです。非常に残念です。会見も私は重要な公務だと思っていますが、その時間を割いていただいたというのは評価をしたいと思いますが、そもそも、やはり最初の朝のときにきちんと誠実に、先ほど申し上げましたけれども、誠実に答弁いただければ、オフレコの発言であり詳細は承知していないではなくて、きちんと答弁いただければこんな無駄はなかったというふうに思います。

 官房長官は結構であります。

 次は、防衛大臣にお越しいただいていますが、ちょっと順序を変えますが、四十三兆円という数字が出ていますね。資料にも出ていますが、四十三・五兆円か、出ています。これが本当に上限を超えないのかというところなんですが、例えば、資料に出ているイージスシステム搭載艦〇・四兆円。これは一隻当たりずっと前から二千億と言われていたんですが、ただ、レーダーの改修とか、イージス・アショアを載せ換えてやるわけですから、新しく船を建造して、その上にイージス・アショアを改修して、SPY7、新しいレーダーを載せて、それを海上用に改修して、更に中距離ミサイルを搭載するということで、そもそも最初のこの二千億で足りるのかということで、この数字自体にまず疑義がある。報道によってはライフサイクルコスト一兆円という報道もありましたが、ライフサイクルコストとイコールではないと思うんですが、本当にこれでいいのかという話もあります。

 それから、今朝の「風知草」なんかにも出ていましたが、一二式のミサイルの改修、これが本当に一兆円余りの金で済むのかということを、元海上自衛隊の自衛艦隊司令官の香田さんが本の中で述べていますが、射程を延ばすのには、改修で、巡航ミサイルのトマホークの約二倍の十メートルの大きさ、しかも重い。重いから、空気の薄いところを飛ばさなきゃいけないということで、巡航ミサイルとしては世界最大となるということで、改修の費用もかかるし、実際、そんな目立つ大きなものがゆっくり飛んできたら迎撃されてしまうんじゃないかと、費用対効果の面の指摘もあります。

 その香田さんの本に「防衛省に告ぐ」という本があるんですが、こうしたスケールメリットや改良のためのコストを含めて考えれば、今検討されているGDP比二%でも足りないことは明白である、防衛省はこの点も含めて国民に説明しているんだろうか、こういう記載があるんです。

 非常に私も危惧するところでありまして、えいやで、二%ありきでいろいろなものが詰め込まれているんですが、実際これがきちんと実現したときに、本当にこの範囲で収まるのかということをまず御答弁いただきたいと思います。

浜田国務大臣 今般策定された防衛力整備計画の実施に必要となる四十三兆円程度という規模は、防衛力の抜本的強化が達成でき、また、防衛省・自衛隊として役割をしっかり果たすことができる水準としてお示しした金額であり、超過することを考えておりません。

 仮に、所要経費が上振れの場合には、防衛力整備の一層の効率化、合理化を徹底することにより、見積もった経費の範囲内に所要経費を収める努力をしてまいりたいと考えております。

 以上です。

奥野(総)委員 今いみじくもお認めになりましたが、上振れする場合があり得るということなんですね。一つのポイント。それから、その中で収めるということは、ほかの例えば訓練費とか、まさに香田さんの本にも出ていましたけれども、弾薬とか、肝腎な経費をこれまで削ってきたというんですが、またそういうことが行われかねないんですよ。

 だから、正直に、全て私は四十三兆円を認めるとは言っていませんが、まず、議論の土台として、最大限幾らになるかというのを示すべきだと思うんですが、上振れの話はされましたけれども、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 整備計画に記載されておりますとおり、内外の諸情勢を勘案し、必要に応じて整備計画を見直すこともあり得ると考えておるわけであります。

 いずれにせよ、防衛関係費の財源を捻出するために各分野の歳出改革を含めた様々な工夫をしていただいている中で、関係者や国民の理解をいただくためにも、防衛省自らが大胆な資源の最適配分に取り組むことが不可欠と考えております。一層の効率化、合理化を徹底してまいりたいと考えております。

奥野(総)委員 結局、今伺うと曖昧なんですよね。やはり枠があって、その中で欲しいものを全部並べて、上振れの可能性もあるけれども、その枠の中で結局調整していく、こういう話なんですよ。だから、議論になかなかならないんですね。この予算がそもそも正しいかどうかというのもよく分からないということなんですよ。

 財務大臣、通告していないですけれども、いかがですか、もっときちんと査定すべきじゃないですか。

鈴木国務大臣 五年間をかけて四十三兆円程度ということで、今ほど防衛大臣から、この枠内で行う、こういうことでございまして、財務省といたしましても、この水準を超えることは考えておりません。

 そして、物価の動向の変化とかありますが、これまた防衛大臣からお話ございましたけれども、防衛力整備の一層の効率化、合理化を徹底する中でそこを吸収するということでございました。この実際の効率化、合理化については防衛省において考えていただけるものと思っております。

奥野(総)委員 こういう事業でよくあるのは、後で増えてきて増額というのはあり得るんですが、もう一度財務大臣に確認しますが、この枠は絶対的なものであって、後で増えることはないということは明言していただきたいと思います。

鈴木国務大臣 今時点では、この枠内で行うということを考えております。

奥野(総)委員 やはり今時点ではということになるんですよね。だから、そこはやはりもっときちんと国民に説明すべきであります。きちんと説明していただかないと判断のしようがないと思うんですよ。

 それで、私はなぜこういうことを言っているかというと、今までは専守防衛というのがあって、矛と盾の役割があって、おのずと装備も上限が、歯止めが見えていたと思うんですが、今回、新しい歯止めというのは何なのかということを伺いたいと思うんですが、ずっと政府は専守防衛は変えないと言ってきて、それはそうだと思うんですが、ただ、専守防衛というのは何なんですかというと、その中身が変わってきているように思うんですね。

 昭和四十七年の田中内閣総理大臣の本会議答弁か何かがあるんですが、専守防衛というのは、防衛上の必要からも相手国の基地を攻撃することなく、専ら国土及びその周辺において防衛を行うことと答弁しています。従来、専守防衛といえば、日本の国土、領海、領空、領土に入ってきた敵を排除するというのが専守防衛の考え方だったはずです。まさにこの答弁はそこを言っていると思うんです。そこが今回変わってきたんじゃないですか。

 今回の反撃能力の保有という決定は、今言ったような従来からの専守防衛の考え方の大きな変更じゃないかと思うんです。私は、変更すること自体が悪いと言っているわけじゃなくて、そこをあたかも何も変わっていないかのように、専守防衛は変わっていませんと言い続けることが問題だと思うんですね。ですから、どうですか、そこは。

浜田国務大臣 専守防衛については、相手からの武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針であります。

 御指摘の田中総理の答弁は、我が国の防衛の基本的な方針として、こうした専守防衛の趣旨を説明するとともに、あわせて、相手基地を攻撃することなくと述べておるとおり、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に憲法上許されないことについて述べたものであります。

 政府は、従来から、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の措置を取ることは、他に手段がないと認められる限り、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であると解してきております。田中総理の答弁は、専守防衛の考え方がいわゆる敵基地攻撃を否定するとの趣旨を述べたものではないと認識をしております。

奥野(総)委員 ただ、戦う場は、基本として国土、日本国ということですね、周辺ということであります。

 そこがまさに海外派兵の話に関わってくるんですが、先日の本庄委員への答弁の中で、海外派兵の禁止の例外として、当時の安倍首相の答弁、ホルムズ海峡の機雷の排除、これは特別な例外だと当時の安倍総理は言っていますが、例外が存するということを認めておられるんだと思うんですが、その例外の範囲というのがはっきりしていなくて、例えば、東アジア地域で存立危機事態が起きて自衛隊が補給か何かに入っていて、そこで攻撃を受けたような場合に、海外の地域、他国という意味で受けた場合に、そこで反撃能力を行使するということは否定はされないですか。

浜田国務大臣 御指摘のホルムズ海峡での機雷掃海については、平和安全法制の議論に際して、武力行使の三要件を満たす場合に例外的に外国の領域において行う武力の行使として、ホルムズ海峡での機雷掃海のほかに、現時点で個別具体的な活動を念頭には置いていないと説明したものであります。

 同時に、政府は、従来から、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、一般に、自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないが、仮に他国の領域における武力行使で自衛権発動の三要件に該当するものであるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動を取ることが許されないわけではない。この趣旨は、昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会で示された政府の統一見解によって既に明らかにされているところであります。そして、この説明は、憲法上の理論としては、いわゆる敵基地攻撃は、いわゆる海外派兵の一般的禁止の例外として許容されるということが基本的な考え方であります。したがって、ホルムズ海峡での機雷掃海は、いわゆる海外派兵の一般的禁止の法理上の唯一の例外ではありません。以上のことは、平和安全法制の議論に際しても、政府として申し上げているところであります。

 なお、反撃能力として申し上げれば、ミサイル攻撃をしのぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする能力を保有することといたしましたが、現実の問題として、長射程のスタンドオフミサイルにより自衛隊員の安全を確保しつつ遠方から対処できるという選択肢がある中においては、相手国の領域外から対処することが基本となることを考えております。

奥野(総)委員 もう一度確認します。

 ホルムズ海峡が唯一の例外ではないということは、例えば、東アジア地域の存立危機事態が認定された際に、他地域、他国の領土において三要件を満たした場合に武力を行使する、反撃能力に限らずですよ、ということはあり得るということですね。もう一度確認します。

浜田国務大臣 反撃能力は、防衛出動時に無条件に行使されるものではなく、武力攻撃を受け、さらに、自衛のため万やむを得ないと認められない限り、行使されません。仮に万やむを得ず反撃能力を行使する場合であっても、必要最小限の行使にとどまるものであります。

奥野(総)委員 だから、結局、唯一の例外ではないし、国名とかは今出せないからあれですけれども、東アジアの有事の際にはそういうこともあり得るということでありますね。そういうふうに理解しました。

 結局、昔言っていた専守防衛と随分変わってきたんじゃないかと思うんですが、専守防衛の定義、これは法制局に伺います。

 これも同じく昭和三十一年の答弁がありますが、我が国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段として我が国に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合に、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置を取ること云々ということが定義として上がってきていますが、これは今も定義としては変わっていないですか。

近藤政府特別補佐人 お答えをいたします。

 今御指摘の昭和三十一年の答弁でございますけれども、まさしくその答弁を踏まえて、海外の、相手国の領域における武力活動で憲法上例外的に認められるものがあるというふうな法理を従来から御説明してきておりますけれども、これは、具体的な法律上の定義ということではなくて、具体的な例のときにおける基本的な考え方を述べたということだというふうに理解しております。

 このような考え方は、その後も、存立危機事態におけるものも含めまして、そのまま当てはまる旨、政府としては繰り返し御説明をしてきているというふうに理解しております。

奥野(総)委員 今の時点は、存立危機事態が入ってきて、この定義でいうと、我が国に対して急迫不正の侵害が行われるということで、我が国に対してと書いてありますが、この場合は、我が国又は密接な関係にある他国としなきゃいけないんじゃないかと思いますし、その侵害の手段として我が国土に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合とありますが、存立危機事態で海外に出ていっているときに攻撃を受けたときも武力行使になるわけですよね。この定義でこの答弁は本当に維持されているんですか。防衛大臣、あるいは内閣法制局、どっちでもいいです。じゃ、まず防衛大臣。

浜田国務大臣 一九五六年の、昭和三十一年の政府見解は、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限の措置を取ることは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能としたものであります。

 このような考え方は、新三要件の下で行われる自衛の措置、すなわち、他国の防衛を目的とするものではなく、あくまで我が国を防衛するための必要最小限度の自衛の措置における対処の手段、態様、程度の問題としてそのまま当てはまると考えており、これは平和安全法制における審議でも御説明してきたとおりでございます。

奥野(総)委員 我が国土に対し攻撃がある、ここが決定的に違うと思うんですが。どう見ても、我が国土に対しというところで広がって、海外に出ている自衛隊、国土とは明確に地理的概念ですから変わっていると思うんです。変わっていると言っていただかないと議論にならないんですよね。同じです、結構そこがマジックワードになっていて、専守防衛で何も変わりません、だから国民の皆さん大丈夫です、こう言っているんですが、そこをきちんとこういうことですということを言っていただかないと議論にならないと思うんですよ。いかがですか。

浜田国務大臣 先ほどから説明をさせていただきましたが、専守防衛は、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、保持する防衛能力も自衛のための必要最小限であり、そしてまた、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢を我が国の防衛の基本方針としたところであります。ここでいう相手から武力攻撃を受けたときが、初めて防衛力を行使し、我が国の武力行使はあくまで憲法上許容される自衛の措置に限られるということを意味しておるわけであります。

 存立危機事態における武力行使についても、他国防衛ではなく、あくまでも我が国防衛のための措置として憲法上許容される自衛の措置であって、したがって、専守防衛の範囲内と考えております。

 この考え方は平和安全法制の審議においても説明しているとおりでありまして、専守防衛の定義を修正する必要があるとは考えておりませんが、国民の皆様方に理解されるように丁寧に説明してまいりたいと思います。

奥野(総)委員 時間もなくなってきたんですが、法制局長官に伺いますが、ここの定義の中で、答弁の中で、我が国土に対しと、地理的概念が入っていますね。国土が攻撃を受けたときにという地理的な縛りがあるんですけれども、これは今も生きているんですか。だとすれば、海外に出ていっている自衛隊が攻撃を受けたときに反撃できないということになるんですが、どうなんですか、この専守防衛。

近藤政府特別補佐人 お答えをいたします。

 ただいまの、従来の敵基地攻撃能力の憲法上の適合性の問題は、いわゆる三要件の必要最小限度というところに入ってくるわけですけれども、基本的には、最小限度であるかどうかというのは、今流に申しますれば、我が国に対する武力攻撃、又は、我が国の存在が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険をつくり出している我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るため、我が国を防衛するための必要最小限度という意味というふうに理解しておりまして、そういう意味からすると、あくまでも、最小限度の観念からすると、我が国を守るための最小限度ということで共通の理解ができている、今の武力攻撃自身が我が国の存立を全うするような状態をもたらしているのであれば、そこは同じ概念で適用できるというふうに理解しております。

奥野(総)委員 いや、どう考えても、この答弁、昭和三十一年時点と今は明らかに広がっていると思うんですね。広がっているんだったら広がっているでちゃんと説明していただかないと国民に私は不誠実だと思うんですよ。そこを言っているんですよ、いいとか悪いとかじゃなくて。専守防衛はずっと変わっていませんと言っているんだけれども、中身は実際は変わっているわけですよね。

 だから、例えば私が質問主意書を出してもいいんですが、きちんと今の現状に合った書き方をしてほしいんですよ。これはお願いしておきたいと思います。

 この話をなぜしたかというと、結局、歯止めがなくなると思うんですね。専守防衛という、地理的概念があったからこそ、長距離爆撃機を持ってはいけないとか、海外に出ていく装備を持ってはいけないということがずっとあったわけですよ。ここが今回変わるわけですから、実際に平和安全法制のときに変わっているわけですけれども、新しい歯止めは何ですか、必要最小限とは何ですかということです。

 抑止力というけれども、拒否的抑止と懲罰的抑止というのがありますけれども、じゃ、どこまで持てばいいんですかという新しい歯止めについてどうお考えですか。

浜田国務大臣 政府としては、従来から、憲法第九条の下で我が国が保持することが禁じられている戦力とは、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものを指すと解されております。

 これに当たるか否かは、我が国が保持する全体の実力についての問題である一方、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、これにより直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されないと考えてきているところであります。反撃能力の保有によって、この一貫した見解を変更するものではありません。

 以上です。

奥野(総)委員 いや、今のは明確にお答えいただいていませんよね。

 よくある議論として、本当に、じゃ、ミサイルの発射台だけを狙うのか、敵の基地を狙うのか、その周辺の施設、住宅地まで狙うのか、攻撃するのかという話がありますけれども、ほかの民間の施設を狙うということはないと思いますけれども、じゃ、どれだけの兵器が必要で、この四十三兆円でその要件を満たすのか、相手がそれで攻撃してこないということになるのか、伺いたいと思います。

浜田国務大臣 我が国が保持できる自衛力は、自衛のための必要最小限度のものでなければなりませんが、その具体的な限度は、その時々の国際情勢や科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面を有するものであります。

 一方、政府としては、例えば、長距離戦略爆撃機といった、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のために用いられる、いわゆる攻撃兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されないと考えております。

 その上で、スタンドオフミサイルについては、相手の艦艇や上陸部隊等に対処することを目的とした通常弾頭の精密誘導ミサイルであり、いわゆる攻撃的兵器とは異なり、憲法そして専守防衛の基本方針の下で許容される自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものではないと考えております。

奥野(総)委員 ほかの大臣にも来ていただいているのでこのぐらいにしたいんですが、要は、きちんと説明していただきたいんですね。何も変わっていませんではなくて、こういうふうに変わりました、平和安全法制でこれだけ変わりました、海外へも出ていきます、そこで武力行使することもあり得ます、装備も変わってきました、じゃ、必要な装備はこれだけかかりますということをきちんとテーブルに出していただいて議論していかないと、全く議論が進まないわけですよ。まして、増税なんという話になってきたときに国民は納得しないと思うんですね。そこを、これからまた同僚もやると思いますが、しっかり我々は議論していきたいと思っています。

 最後、もう時間がなくなってきたので、地方創生を伺いますが、二〇一四年、当時の安倍首相が会見で打ち出したローカルアベノミクス、こういうふうに言われました。その目標は、二〇二〇年までに東京圏への転入超過をゼロにする、それから、出生率の低下を防ごうということで、結婚希望実績指標を八〇%、夫婦子供数予定実績指標を九五%に向上させるということで、地方の人口低下に歯止めをかけて、消滅可能自治体をなくしていこう、こういう趣旨だったと思いますが、この二つの目標は達成されないままに、今、いわゆるデジ田構想に引き継がれているんですが、なぜうまくいかなかったと思いますか。もう八年たっていますが、なぜうまくいかなかったのか、どのような反省に立って今回のデジ田構想ができているのかということを伺いたいと思います。

 もう時間がないのでまとめて聞きますが、地方創生臨時交付金はちょっと聞く暇がないんですが、結局、地方創生臨時交付金も、十七兆もつぎ込んで、これは、もちろん重要なマスク購入とかはあったんですが、地方単独事業の部分はどちらかというと地方のインフラ整備だったりするんですが、こういうやり方が本当によかったのか。むしろ、私は、松本大臣に伺いますが、一般財源である地方交付税の交付金を増やして、自治体の責任でいろいろなことをさせるべきだったんじゃないかと思うんです。

 結局、自治体は、政府が指示してくるからそのとおりにやりましたと言って、責任がないわけです。例えば、今回の交付金で富山県は電気自動車を六台も買っているんですけれども、そういうことを、結局、国が買えと言っている、国がやれと言っているからやっていますと言って、無責任になると思うんですね。

 ですから、まず、このスキーム自体を見直して、一般財源である地方交付税交付金でやっていけばどうかと思いますが、そこを松本大臣に伺いたいと思います。

 以上、二問続けて。

岡田国務大臣 お答えを申し上げます。

 昨年十二月に策定したデジタル田園都市国家構想総合戦略におきましても、地方と東京圏との転入転出均衡、また、結婚希望実績指標、夫婦子供数予定実績指標を引き続きKPIとして位置づけているところであります。

 地方と東京圏との転入転出の均衡に関して、東京圏の転入超過数は、第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略策定前年の二〇一九年に約十四・六万人だったものが、二〇二二年には約九・四万人と三年間で約五・二万人減少いたしました。これには、新型コロナウイルス感染症の影響にも留意をする必要があると思いますが、地方への人の流れの拡大に向けたこれまでの様々な取組は一定の成果を上げてきたものと考えております。

 他方で、進学や就職を契機とした十代後半から二十代の若年層の東京圏における転入超過は依然として継続しております。現状では、地方と東京圏との転入転出の均衡はいまだ達成できていない状況にございます。

 結婚希望実績指標や夫婦子供数予定実績指標といった少子化に関するKPIが目標と比べて低位で推移している背景には、若者の出会いの機会の減少や、子育てしながら暮らしやすい環境が十分に整っていないなど、個々人の結婚や妊娠、出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。

 しかし、こうしたこと、また、デジタルの力も活用して、地方の課題を解決し、魅力を向上する中で、引き続き全力を挙げて地方創生に取り組んでまいりたいと存じます。

松本国務大臣 奥野委員に御回答申し上げたいと思います。

 地方創生臨時交付金は、地方自治体が新型コロナウイルス感染症や物価高騰への対応に自由度高く取り組むことができるよう措置されてきたものと承知をしており、この交付金の取扱いについては、先ほど岡田大臣からも御答弁申し上げましたが、所管する内閣府において適切に御検討いただくものと考えております。

 その上で、地方の行財政を運営する総務省といたしましては、地方自治体が地方創生や地域のデジタル化の推進に当たって、地域の実情に応じて自主的、主体的に取り組むことが重要であると考えており、そのための財源を確保するため、これまで地方財政措置を講じてきております。

 令和五年度の地方財政対策においては、まち・ひと・しごと創生事業費について、地方創生推進費に名称変更した上で引き続き一兆円を確保、地域デジタル社会推進費二千億円については、事業期間を令和七年度まで延長するとともに、マイナンバーカード利活用特別分として五百億円増額し、これらを内訳として、デジタル田園都市国家構想事業費一兆二千五百億円を創設いたしました。必要な経費を充実した上で、地方交付税の総額について、前年度を〇・三兆円上回る一八・四兆円を確保したところです。

 地方自治体が地方創生や地域のデジタル化などの重要課題にしっかりと取り組めるよう、必要な財源の確保に取り組んでまいる決意でございます。

奥野(総)委員 済みません、時間がなくなってしまって、小倉大臣、本当に申し訳ございませんでした。また、海上保安庁の質問もしたかったんですが、済みませんでした。

 以上で終わりたいと思います。

根本委員長 これにて奥野君の質疑は終了いたしました。

 次に、小山展弘君。

小山委員 立憲民主党、衆議院議員の小山展弘です。

 まず冒頭、岸田総理が児童手当の所得制限撤廃の方針を打ち出し、茂木幹事長からも所得制限を主張してきたことについて、反省するとの発言がありましたが、ようやく安倍晋三さんなどによる民主党政権に対する批判ばっかりの姿勢が転換されたと感じておりますし、その意味においては、私は、評価、歓迎したいと思っております。

 他党の政策や民主党政権のよい部分は取り入れていこうという姿勢こそが、本来の自民党さんの持っていた保守の姿勢であり、また、ようやく建設的な議論を展開できる環境が整ってきたのではないかと思っております。

 それでは、質問に入りたいと思います。

 週刊東洋経済に、元日銀理事の三名の方々の対談が掲載されております。十年に及ぶ異次元緩和は、タイトルにもありますが、成果がなかったことがこの十年間の成果であった、リアルの経済指標では大した成果はなかった、財政規律が弛緩する結果を招いた、日銀が二%を目指し緩和しさえすれば経済が全てよくなるみたいな見方があったが、結局は成長力を地道に高めていく努力が必要との認識が浸透したと述べています。

 まさに、アベノミクスなるもの、異次元の金融緩和は、さほどの経済成長はなく、それすらも、世界経済の回復の波に乗った要素が強かったのではないでしょうか。

 児童手当の所得制限撤廃に認識が変わるまで十年かかったのと同様に、成長力を地道に高めていく努力が必要との認識が浸透するまで十年もかかったわけで、この間に一人当たりのGDPでは韓国にも追い抜かれるなど、まさに停滞の十年、失われた十年の象徴であると考えております。

 ところで、この対談の中でも指摘がありますが、国債市場の機能低下、機能麻痺、金融機関の収益悪化の問題が起きております。長期にわたる長期金利の超低金利は、金融機関の収益を圧迫いたしました。国債市場の機能麻痺によって、金融機関、とりわけ地方の規模の小さい金融機関は、日本国債運用の機会すら奪われ、やむなく外債運用に走り、比較的安定的と思われていた米国債を購入し、昨年の米国金利の上昇で大きな含み損を抱えてしまった金融機関もあるやに聞きます。

 もちろん、直接的にはそのような運用に走った金融機関の自己責任かもしれませんが、異次元の金融緩和が、地域金融機関の収益悪化と日本国債運用の機会を奪い、外債運用に追い詰めた結果になると思いますけれども、黒田総裁はこのことについてどのように認識され、責任を感じていらっしゃいますでしょうか。

黒田参考人 金融政策運営に当たりましては、金融緩和の効果と副作用を比較考量しながら、最も適切と考えられる政策を実施してきております。

 長期にわたる金融緩和の副作用につきましては、金融機関収益、ひいては金融仲介機能に悪影響を与える可能性や、国債市場の機能度の低下が挙げられております。

 この点、我が国では、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されていると判断しております。また、国債市場の機能度に対する配慮から、従来より、国債補完供給の要件を緩和するなど、様々な措置を講じてきているほか、昨年十二月にはイールドカーブコントロールの運用の一部見直しを実施いたしました。

 今後とも、物価安定の目標の持続的、安定的な実現を目指し、金融緩和の副作用にも配慮しながら、適切な金融政策運営に努めてまいりたいと考えております。

小山委員 非常にまだまだ、微害微益だったというような発言もありますが、私は、この点についてはやはり違う見解を持っております。

 今の黒田総裁の発言というのは、とりわけ地方の金融機関、小さな金融機関に対しては、非常に、私は現場の状況が御認識されていないんじゃないかと言わざるを得ない御答弁だと思います。

 海外に大きく運用できるようなそういう金融機関であれば、外債の運用もリスク管理体制を整えてやることができようかと思いますけれども、しかし、例えば信用金庫さん、信用組合さん、マリンバンクである信漁連さん、こういったような金融機関は、規模が小さい中で、まさに経営環境の厳しい漁業者に専門金融機関として融資を行い、それで漁業を支えているわけですね。あるいは、信用組合であれば、こういった地方の中山間地域などの中小事業者やあるいは個人の家計を支えておられる。

 そういったところでは貯蓄過剰の場合が多いですから、なかなか、資金需要、貸出先というところも少ない。だからこそ、国債運用というところで運用して何とか収益を稼いでいるわけですけれども、それに対して、今の御発言というのは、余りにも現場に寄り添っていない発言であると思います。

 どうかもう一度、そういった地域の経済を支えている、そして、まさに、こういったような地域金融機関が倒れれば、地域経済、地方創生もおかしくなるわけです。そういったことにも思いをはせて、もう一度答弁していただきたいと思います。

黒田参考人 もとより、私どもといたしましても、地域金融機関の重要性ということはよく認識しております。

 したがいまして、様々なことを行ってきておりますけれども、一昨年来行っております地域金融機関の支援というオペは一定の効果を上げておりまして、一方で、経費の節減ということも必要だと思いますけれども、他方で、業務純益がプラスになるような新たな金融活動を後押しするということもしておりまして、私どもとして、地域金融機関の重要性ということはよく認識しておりますし、その収益状況その他も常にモニターしております。

 その上で、申し上げましたのは、現時点で、十分な資本を地域金融機関も全体として有しておりますし、融資活動自体も比較的活発でありまして、地域金融機関も含めた金融機関の融資はこのところずっと増加をしているということであります。

小山委員 なかなか、貯蓄過剰なところで、確かに融資が伸びているというような話もありましたけれども、結局、地方では、信用金庫さんも合併をする、あるいは信漁連さんなんかは、かつては漁協で金融事業をやっておりましたけれども、今や、東日本信漁連と西日本信漁連、そこを目指してやっていかなければならない。それだけの合併が行われると、それだけ組合員さんとの距離というのは離れるわけなんですね。そうすると、じゃ、一人一人の組合員さんに対するきめ細かな融資といったものは、これは信金さんでも信組さんでも、あるいは信漁連さんでもなかなか難しくなってくる。このことがまさに地方の衰退につながっているんだと思うんです。

 このような、中央にいてなかなか感じられない、そのような微害微益だということで済まさないようなところが必要だと思いますし、是非、このことは、今日、日経新聞にも次の日銀総裁の人事について少し記事がございましたけれども、今後の金融政策の中で、やはり金融市場を正常化していくということが何よりも大事なことではないかと感じております。

 次の質問に移りたいと思いますが、白川総裁のときに物価上昇二%の目標が掲げられました。白川総裁は、ETFの購入や国債の購入なども行いましたけれども、金融市場に禍根を残してはいけないとの観点から、それらは市場を刺激する呼び水程度と、極めて限定的かつ抑制的なオペを行いました。異次元の金融緩和などは行わなかったわけです。黒田総裁が就任されてから異次元の金融緩和を行ったわけですけれども、どのようなことが要因で、日銀は政策転換をしたのでしょうか。

 当時、自民党の安倍総裁は、二〇一二年衆院選の選挙公約で、明確な物価目標二%を設定、その達成に向け、日銀法の改正も視野に、政府、日銀の連携強化の仕組みをつくり、大胆な金融緩和を行うことを掲げました。白川総裁は、安倍総裁は過激な表現を使って日銀に対し大胆な金融緩和の実施を要求したと回顧しております。まさに異論を許さない社会の空気を思いっ切りあおったと思います。

 当時の安倍政権から黒田総裁に強い要請があったんでしょうか。

黒田参考人 御案内のとおり、日本銀行は、二〇一三年四月の量的・質的金融緩和の導入以前も、ゼロ金利政策、量的緩和政策、包括緩和政策の、様々な金融緩和策を講じてまいりました。もっとも、こうした政策の積み重ねによってもデフレが解消しなかったということから、物価安定の目標の実現に強く明確なコミットメントを行うとともに、そうしたコミットメントを裏打ちする手段として、量、質両面で思い切った金融緩和を行うこととしたわけであります。

 なお、この量的・質的金融緩和は、二〇一三年一月に日本銀行が自ら決定した二%の物価安定の目標を実現するために必要な政策として、金融政策決定会合にて決定されたものでありまして、御指摘のような外部からの要請等に基づくものではありません。

小山委員 では、黒田総裁になられてからこの異次元の金融緩和、白川総裁のときにはそこまではやらないということで回顧、回想されていらっしゃいますけれども、どういうロジックで、異次元の金融緩和を行えば物価上昇二%が達成できると考えたのか、そしてまた、何年ぐらい異次元の金融緩和を行えば二%達成できると考えていたのか、お尋ねしたいと思います。

 当時言われていた日銀批判、いわゆるリフレ派や期待派のように、金融政策以外の要因が物価に影響を与えるということを文字どおり全否定し、日本の低成長の原因はデフレであり、そのデフレは貨幣的現象であり、日銀が大胆に金融緩和をすれば期待に働きかけて問題は解決するという、そのような考えに沿ってこの異次元の金融緩和に踏み込んだんでしょうか。

黒田参考人 まずもって最初に申し上げたいのは、二%の物価安定目標を設定されたのは、私が総裁になる前の、白川総裁の下での金融政策決定会合で、一月に決定されたものであります。

 そこで、私も含めた新たな金融政策決定会合で議論いたしましたのは、二%の物価安定目標を実現するためにどうすればいいかということでありまして、その面では、先ほど申し上げたように、量、質の両面で思い切った金融緩和を行うことで名目金利を引き下げ、それと同時に、二%の物価安定の目標に対する明確なコミットメントによって人々の予想物価上昇率を引き上げるということを意図したものであります。

 これによりまして、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利を引き下げることを起点として、資金調達コストの低下、金融資本市場の改善といった緩和的な金融環境を実現して、経済、物価に好影響を及ぼすことを想定しているわけであります。

 金融緩和を継続することで、時間はかかるものの、賃金の上昇を伴う形で二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現することは可能であるというふうに考えております。

小山委員 今、黒田総裁から御答弁ありましたけれども、白川総裁のときには、二%という目標は掲げても、異次元の金融緩和ということは踏み込まなかったわけですね。

 なぜ、黒田総裁になられて、なったのか、その黒田総裁の認識について、お考えについてお尋ねをしているということと、あと、何年ぐらいで、当時、二%の達成は可能だとお考えになったのか。その二点について、今御答弁がなかったので、お尋ねしたいと思います。

黒田参考人 当時も、現在もそうですけれども、一般的に金融政策の効果というのはタイムラグを伴うということで、二年程度のタイムラグがあるというのが世界的な常識でありました。

 したがいまして、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということが一月の政府と日本銀行の共同声明に明らかに示されておりましたので、金融政策決定会合で議論いたしましたのは、二年程度を目途にして、二%を実現するためにどの程度の金融緩和が必要かということを様々な側面から議論いたしまして、量的・質的金融緩和というものを導入し出した次第であります。

小山委員 今の黒田総裁のお話の中で、二年ぐらいのタイムラグがあるので、二年ぐらい緩和をすれば効果が出てくるのではないかというお話がありましたが、十年たっております。

 黒田総裁も、今でも、今の物価上昇は急性インフレ、コストプッシュ型のインフレであるということで、デフレマインドはまだ解消されていないから金融緩和を続けるというような御発言もされておられますけれども、十年続けて、それでもまだ続けなければいけないというのは、元々の、貨幣さえいじくれば期待が、先ほども黒田総裁の話にもあったかもしれませんけれども、貨幣さえいじくって大量に金融緩和をすれば、期待が集まって、物価が上がって、それで経済が成長していく、この考え方、当時の日銀批判をしていた安倍さんの考え方が間違っていたということではないでしょうか。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますように、金融政策の効果が発現するためには、名目金利の低下と、加えて予想物価上昇率が上昇して実質金利が低下する、それによって金融緩和の効果が経済全体に及んでいき、経済、物価にポジティブ、プラスの影響を及ぼすということが期待される、これは今でも変わっておりませんし、世界中の金融政策担当者の考え方もそのとおりであると思います。

 ただ、御指摘のとおり、十年にわたって量的・質的金融緩和を続けたにもかかわらず、物価上昇が二%に達しないまま来た。そして、足下で四%の物価上昇になっているのは、ほとんど全て輸入物価の上昇が消費者物価に転嫁されているものでありまして、輸入物価の上昇率は既に低下してきております。したがいまして、今年度の半ばにかけて物価上昇率は下がっていき、本年度の全体としての物価上昇率は二%を割るという見込み、見通しであります。ちなみに、これは民間の見通し等も同様であります。

 ということは、残念ながら、十年間、量的・質的金融緩和を続けてまいりましたが、まだ、賃金の上昇を伴う形で持続的、安定的に物価が二%に達するという状況にはなっていないということは認めざるを得ません。そういう意味では、当初見通したような、中期で、まあデフレではない状況にはなりましたけれども、二%の物価安定目標を持続的、安定的に達成するには至っていないということは、まさに御指摘のとおりであります。

 ただ、先ほど来申し上げているように、足下の四%の物価上昇はほとんど輸入物価の上昇によるもので、今年度全体としては、やはり二%を割るという見通しでありますので、私どもとしては、引き続き経済をしっかり支えて、企業が賃上げを行う下で二%の物価安定目標が安定的に達成されるように努めてまいりたいというふうに考えております。

小山委員 ちょっと確認だけしたいと思いますけれども、二年、当初予定をしていて、十年たっていまだに達成されていない、その要因についてはどのようにお考えですか。

黒田参考人 この点につきましては、政策委員会でももう何度も議論してきたところであります。

 一番大きな理由としては、やはり、一九九八年から二〇一二年まで、十五年間デフレが続いた。物価が持続的に下落する、ベアがない、失業率は高い、成長はしないという下で、いわば、企業も組合も、賃上げに対して、あるいは価格引上げに対して非常に慎重というか消極的というか、そういうマインドセットというか、そういう期待というか、そういうものが根づいていたということが非常に大きいと思います。その意味で、時間を要しているということはあると思います。

 ただ、基本的なメカニズムとしては、やはり、金融緩和によって経済活動を刺激し、労働市場をタイトにして、物価や賃金が上がりやすい形にしていくということは必要であり、これはどこの中央銀行も同じように考えていることでありまして、私どもが何か非常に特殊な考えを持ってやっているということではありません。

 その意味で、現在に至るまで二%の物価安定目標が持続的、安定的にまだ実現していない、足下四%という物価上昇にもかかわらずですね、これは、先ほど来申し上げているように、輸入物価の上昇によるもので、今年度中には二%を割る見込みということでありますので、その意味で、十年たっても二%の物価安定目標が持続的、安定的に実現するということになっていないということは大変残念だと思いますが、しかし、金融政策として、それ以外によい方法があるとは思われないということであります。

小山委員 今、世界的にも中央銀行の取り得る最善の道だったというお話がございましたけれども、白川総裁は、こういったデフレマインドの原因として、人口減少や少子高齢化、あるいは企業の日本の潜在成長率の低下、こういったこと、あるいは生産性の向上がなかった、こういうことこそ、実体経済こそ問題だったのではないかということをお話しになっていますが、この白川前総裁の認識についての黒田総裁のお考えをお尋ねします。

黒田参考人 一つ、先ほど、今年度は二%を下回ると申し上げましたが、正しくは二〇二三年度が二%を下回るということであります。

 人口減少あるいは少子高齢化ということは、働き手の減少などから経済の長期的な成長力を低下させる要因となり得るということはそのとおりでありますが、もっとも、二〇一三年以降は、政府の施策の効果もあって女性や高齢者を中心に労働参加が大幅に増えまして、生産年齢人口が大きく減少する中でも四百万人を超える雇用の増加が見られました。また、働き手不足を解消するための投資とか、あるいは、新たなイノベーションが生まれたり、少子高齢化に伴う新たな需要が創出されたりするということも考えられます。このように、人口減少や少子高齢化が経済に及ぼす影響というのは多面的であります。

 日本銀行としては、こうした人口減少や少子高齢化が経済、物価に与える影響も踏まえた上で、賃金の上昇を伴う形での物価安定の目標の持続的、安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営に努めていく方針であります。

小山委員 今、黒田総裁から答弁がありましたけれども、まず、資料二の消費者物価指数のところを御覧いただきたいと思うんですが、確かに、異次元の金融緩和以降、物価上昇がゼロからゼロ以上になったということは言えるかもしれませんけれども、じゃ、二〇〇七年、二〇〇八年、あるいは二〇〇五年から二〇〇六年にかけてもゼロ以上になっているんですね。

 一方で、資料五の二を見ていただければと思いますけれども、マネタリーベースは約五百兆も増えて、確かに信用創造でマネーストックも五百兆増えましたけれども、だけれども、日銀当座預金が四百兆も増えて、ほとんど当座預金にたまっているんですね。

 こういったことを考えますと、消費者物価指数をよく見れば、これだけの金融緩和を行った割には余り変わっていないとも言えるのではないでしょうか。

 この辺りのことももっとお尋ねしたいところですが、質疑時間が少なくなってまいりましたので、最後に、野村大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 安倍農政の中で、安倍政権は、農協中央会制度を廃止し、農協中央会の農協法に基づく指導権限を廃止して、全国監査機構が民間監査法人のみのり監査法人となり、会計監査は行われるものの業務監査が行われなくなりました。

 当時も議論されましたが、全国監査機構と農協中央会の指導権限があればこそ、業務監査によって、問題が発生すれば速やかに対応、全中や、あるいは県中央会、農林中央金庫も含めて情報共有して問題に対処するということができたわけですけれども、このような利点を失ってまで中央会制度と全国監査機構制度を廃止したわけですけれども、この制度改変によってどんなメリットがありますでしょうか。

野村国務大臣 小山委員にお答え申し上げます。

 小山さんと私は、同じ、農林中金とJA中央会とは、組織は違いましたけれども、目指す方向は一緒でありまして、協同組合運動に、ずっと一緒にやってきたという思いがございます。

 そこで、ただいま御質問のございました、今度みのり監査法人に変わったわけですけれども、どういったようなメリットあるいはデメリットがあったんじゃないのかという御指摘だったと思うんですが、私どもは、これが出てきたときは、確かに今お話のあったようなことも申し上げました。

 しかし、一番否定されたのが、要は、外部監査と内部監査だと。それで、中央会が幾ら外部監査だという、公認会計士がその頃は三十人ほど入っていましたから、公認会計士もちゃんと入った外部監査じゃないかということも申し上げたんですけれども、なかなかそのときに話が合いませんで、やはり外出しをしないときちっとした外部監査にならないぞということだったものですから、それで、みのり監査法人、いわゆる、それまであった監査機構、これは全中の中にありました。この監査機構をそのままそっくり外出しをして、そしてその中で公認会計士を入れてきちっとやれば外部監査になるじゃないかということを申し上げながらやってきました。

 その結果、どうだったかといいますと、これは非常にメリットが出てきました。それは何かといいますと、やはり、中央会の監査士が監査する仕組みと外から出てきた公認会計士が主体になってやるのでは手続が違う。その手続たるものは非常に簡素化された形で、大体、お金の計算をしますときに、幾らその費用がかかるのかというのは、一時間幾らでの監査の報酬だったんです。それをやはり簡素化することによって、私どもは相当の金が要るんじゃないかと思っていましたが、それもほぼ従来どおりの費用で賄えるようになったし、そして、外部の目で、公認会計士が専門的な目でいろいろな形でやっていただくようになったし、それからもう一つは、やはり、今度は受ける側が、内部の中央会の職員ではなくて、そして公認会計士が必ず入りますから、そういったような外部の方が入るということでいわば緊張感も出てきたということで、メリットも相当出てきたなというふうに思っているところでございます。

小山委員 今、野村大臣からメリットも出てきたというお話もありましたけれども、実は、この当時、議論された際に、公認会計士の方から、結局、監査法人の監査というのは相対になります。そうすると、どうしても手心を加えてほしいというような話も出てきて、そういう中から何の事件が起きたかというと、東芝の粉飾決算事件がちょうどこの議論の頃に起きたんですね。

 ですから、公認会計士の方々の中でも、例えば、上場している企業さんから、その上場企業から一定の、まさにかつての賦課金のような形でお金をいただいて、そうすれば完全な相対、お客様に対する監査ではなくなるから、もうちょっと厳正な監査ができるというような指摘もあったんですけれども。

 もちろん、今、新たに制度が変わったことで不祥事が発生しているとかそういうことはありませんし、またそういうことは起きていないと思いますけれども、しかし、やはり、あのとき中央会の権限を廃止して、中央会の法制度を廃止してまでやったということについて、是非、元職員の方として、このような誇りと思いを踏みにじったような、看板のかけ替えだったんじゃないか、あるいは当時の経営局長の自己満足だったんじゃないかということについて、どうかもう一回、御答弁いただきたいと思います。

根本委員長 農林水産大臣野村哲郎君、申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

野村国務大臣 はい。

 まさしく小山委員がおっしゃることは私もその当時思っておりましたが、しかし、今となって、こうしてやはり外からの目で監査をしていくというのはいい方向だったというふうに思っていまして、先ほど、なれ合いという言葉がございましたが、そういうことが全くなくなったということだけは申し上げられると思いますし、ただ、制度を変えたからどうなったかということはもう少し様子を見ないとまだ分からないと思いますので、今後の推移を見ながら、また変えるべきは変えていかなきゃいかぬ、そういうことは思っておるところでございます。

小山委員 時間が来ましたので、以上で質問を終わります。

根本委員長 これにて小山君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 鹿児島三区選出でありまして、野村農水大臣と同じ鹿児島の出身であります。

 今日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 大臣、一月の二十三日に岸田総理が施政方針演説をされました。その後、私も地元の農家の方から電話がありまして、野間さん、岸田総理の演説を聞いていたんだけれども、あれっという間に農業についての話が終わってしまった、これはどういうことなんだろうか、こんな話がありました。調べてみますと、この総理の施政方針演説、全部で一万一千四百九十四文字あるんですけれども、農業について言及したのがたった百二十一文字でした。

 私、ちょっと調べてみたんですね。過去二十年、どうだったのだろうかと思ったら、過去二十年で一番農業について言及していない総理なんですね、今回。例えば、二〇一八年、安倍総理のとき、一万一千九百二十六文字の演説がされましたけれども、このときは千二百四十六、演説の一〇%ぐらいを農業に割いているんです。

 ですから、これはちょっと余りに、農家の方も、岸田さんに期待しているんだけれども、農業に関心がないのかな、どう思っているのかなと。

 とりわけ、野村大臣は、戦後最大の、この食料安全保障、危機の状態にあるわけですから、総理がどうもちょっと危機感が足りないんじゃないか、農業をやっている方はちょっとそういうふうに思っていますけれども、どうお考えでしょうか。

野村国務大臣 野間委員にお答えを申し上げます。

 確かに、字数でいきましたら総理の演説は短かったんだろうと思いますが、ただ、限られた時間の中で、国政に臨む総理のお考えの一端を申し述べられたものであり、農政の重要性についても言及いただいているものだと思っておりまして、その後、閣議でも私の方にいろいろな指示がございまして、今取り組んでいる最中であります。

 農水省としましては、岸田総理が施政方針演説で述べられた、特に、肥料、飼料、主要穀物の国産化推進、これも総理からの指示でありますが、食料安全保障の強化や更なる輸出拡大、それからスマート農業等について、昨年末に策定した食料安全保障強化政策大綱に基づいて今後とも推進をしてまいるというふうに思っておりまして、総理は、こういうことも十分御承知のとおりでありまして、私どもに指示をしていただいておるところでございます。

 なお、令和五年度当初予算については、昨年度と比べて減少しているものの、当初予算と補正予算を一体として必要な予算措置を講ずるとの政府方針の下で、令和四年度補正予算と併せ、食料安全保障の強化などの政策課題には必要な予算を確保しているところでございます。

野間委員 それにしても、過去二十年で一番言及がなかった、農家の皆さん、本当に残念であります。ここは、半世紀以上農政に携わってこられた野村大臣がリーダーシップを発揮していただいて、総理も、総理に対しても、認識を新たにしてもらいたいと思います。

 今、私ども、子ども手当の問題もそうなんですけれども、もし十年前にこういう政策を打っておけば少子化がとどめられたんじゃないかということで、いろいろ指摘をさせていただいて、失われた十年があったんじゃないかということで、いろいろと政策の検証をさせていただいています。

 農業についても、十年前にこういう手を打っていたらということがいろいろあるわけですけれども、十年前、民主党政権が倒れ、そして自民党政権、安倍政権ができたときに、これは野村大臣も関わっておられたと思うんですけれども、農業・農村所得倍増目標十カ年戦略というものが二〇一三年の四月二十五日に公表されました。おおむね、その後の農政、いろいろ名前が変わったりはしておりますけれども、このときに立てた様々な目標を達成するためにこの十年間の農政があったと思うんです。

 十幾つの数値目標なり、いろいろな目標が出ました。全てをお聞きはしませんけれども、達成状況が一体この十年間でどこまで来たのかということを教えていただきたいと思うんですが、例えば、二〇二〇年に食料の自給率をカロリーベースで五〇%にする、生産額ベースで七〇%にする、そういう大きな目標が当時掲げられましたけれども、これは、進捗状況、達成されたんでしょうか。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 令和三年度の食料自給率はカロリーベースで三八%というのは御承知のとおりでございまして、平成二十二年の食料・農業・農村基本計画でカロリーベース五〇%、生産額ベース七〇%という自給率目標を掲げておりましたが、平成二十六年の審議会において、減少が続く米消費が五%以上の増加に転じること、それから二つ目は、二毛作可能な全ての水田で小麦等を生産すること等、現実に見合わない品目別の需要量、生産量の見通しに基づいており、適切でない旨の分析がされているところでございます。

 こうした検証も踏まえて、現行の基本計画では、食料自給率の目標をカロリーベースで四五%、それから生産額ベースで七五%と定めておりまして、令和三年度のカロリーベース食料自給率は一ポイント上昇しておりますが、これは小麦と大豆の国産化が少し進んだことによるものでございまして、今後とも、輸入リスクの大きい穀物、飼料作目等の国内生産の拡大にしっかり取り組んでいきたいと考えているところでございます。

野間委員 いずれにしても、なかなかこれは目標に遠いのが現状だと思います。

 それから、そのとき、これから十年間で、新規就農、そして定着してくれる農業者を年間一万人から二万人にする、そして四十代以下の農業従事者を四十万人にする、こういう計画も出たんですけれども、これはどうなったんでしょうか。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 今委員の方から御指摘がございました四十代以下の新規就農者、農業従事者については、令和三年で、それぞれ一万八千人、二十二万六千となっておりまして、これまで以上にしっかりと新規就農対策を推進する必要があるというふうに考えておるところでございます。

 そのために、令和四年度からは、これまでの支援に加えて、新たに経営発展のための機械、施設等の導入を、今までやっておりませんでしたが、親元就農も含めて支援するとともに、地域におけるサポート体制の充実も支援することとしたところであり、このような総合的な支援により、新規就農者の確保から育成、定着までを一層推進してまいりたいというふうに考えております。

野間委員 これも厳しい、達成していないということであります。

 あと、十年間で飼料の自給率を一・五倍にするんだ、二六%から四〇%にする、こういう目標も出ましたけれども、これはいかがでしょうか。

野村国務大臣 平成二十五年に飼料の自給率は二六%でありましたが、令和三年では、一%減りまして、二五%に減っております。

 国産飼料の生産、供給の拡大に向けて、飼料生産の労働力の確保が難しい等の課題がありますので、これらに対応するために、地域の飼料生産を担うコントラクター等の飼料生産組織の機能強化を図ってまいりたいというのが一点、それから二つ目が耕種農家が生産した飼料を畜産農家が利用する耕畜連携の推進、それから三つ目が国産粗飼料の広域流通の取組への支援、それから飼料用トウモロコシ等の高栄養な飼料の生産拡大、五つ目が、草地の整備等による牧草の収量、品質の向上などを講じていくことであります。

 委員も御承知のように、一昨日か、地元の新聞にも出ましたけれども、鹿児島のペレット、いわゆる堆肥を使ったペレット肥料を宮城の方に送って、宮城からは粗飼料を送ってもらう、こういういわば耕畜連携が実際に県域を越えてなるようになりました。それから、熊本とそれから福岡でも同じような形で、耕畜連携で、足らないものは同じ九州内で、我々の鹿児島は宮城と、そこに手を結んで、すばらしい稲わらを今手に入れようとしているところでございまして、国内にあるものを最大限利用してやっていこう、こういう考えで、できるだけ自給飼料の、自給率を上げていこうと、考え方で進めているところでございます。

野間委員 今のお話ですと、一・五倍増やすんだというのが、逆に減ってしまっているという結果であります。

 あと、農商工連携、地産地消、六次産業化で、この市場規模を一兆円から十兆円に十年間でするんだ、こういう目標も出ておりましたけれども、これはどうでしょうか。

野村国務大臣 議員御指摘の目標は自由民主党が二〇一三年四月に公表した目標でございまして、政府としては、二〇一三年十二月に農林水産業・地域の活力創造プランにおいて、二〇二〇年までに六次産業化の市場規模を十兆円に増加を目標に掲げていたところでありますが、二〇一三年度の四・七兆円から、二〇一九年度には七・六兆円と増えておるところでございます。

 しかしながら、六次産業化については、売上げ増加が必ずしも経常利益の増加をもたらしていない等の課題もあることも事実でございます。市場規模の拡大を目標とすることを取りやめ、二〇二一年十二月の農林水産業・地域の活力創造プランからも六次産業化の市場規模についての目標を削除したところでありまして、今後は、農山漁村のあらゆる地域資源をフル活用した農山漁村イノベーションを推進するなど、農山漁村における所得と雇用機会の確保に努めてまいりたいと思っております。

野間委員 もうこれ以上はお聞きしませんけれども、とにかく、この十年間、様々な大きな目標を掲げられてきましたけれども、残念ながら、ほとんど達成できないで来た。

 ただ、もちろん輸出については、もう既に一兆円を超えて、これは大きな成果が表れているところだと思います。これはすばらしい結果が出ていると思います。

 資料をお配りさせていただきましたけれども、例えば資料一ですと、農家一戸当たり、今どれぐらい手取りがあるんだろうか。令和三年ですと、年間百十五万二千円。ですから、月十万円にもならないんですね。本当に厳しいです、人件費は全く出ない状況で。ですから、やはり兼業、そして年金をもらいながら農業をやらないとできないというのが現状であります。

 資料二では、十年前は百七十四万人、基幹的な農業従事者がおられたんですけれども、残念ながら、今百二十二万人。五十万人も減ってしまっている。当時六十六・五歳だった平均年齢も、今六十八・四歳。七十歳に近づいております。

 そしてまた、資料三、先ほどお話がありましたけれども、食料自給率がなかなか、横ばい、上昇していかないというのが現状であります。

 したがって、この十年間なかなか、皆さん、農家の皆さんももちろん、農水省の皆さんも大変な努力をしてこられたことは事実なんですけれども、いわゆる安倍政権でやってきた農政、これは手放しで喜べる成果ではないと思うんですけれども、農政のプロとして、野村大臣の総括といいますか、どういうふうに評価され、これからどうしていくべきかということをお聞きしたいと思います。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 今、野間委員がおっしゃいましたように、農家数が減ってきている、あるいはまた、若い人たちが、なかなか後継者がいないとか、いろんな状況がございます。

 しかしながら、先般も同じような質問がありましたので、そのときお答えしたんですけれども、今、野間委員の資料でいきますと、確かに平均年齢は六十八歳であります。しかしながら、これを今役所の方でも分析させますと、作目別に、あるいは地帯別に全然違うんです。

 それはなぜかといいますと、例えば、野間委員の御地元の、特に畜産が盛んでありますが、こういうところの平均年齢というのは、それこそ六十八歳とかそういう高年齢ではありません。もう少し若い人たちがいる。特に、養豚農家の人たちは五十代です、平均年齢が。それは、十分地元を回っておられる先生のことですからよくお分かりのとおりでありますが、ただ、一番問題になるのは、委員のところもそうでありますが、米地帯です。水稲地帯は高齢者が多い。

 だから、こういうところの人たちの、農地バンクによる農地の集積なり集約化なり、あるいは、農林水産物あるいは食品の輸出促進、こういったようなことで農村政策を進めるなど、産業としての農業だけの進め方ではなくて、いろんな形で、産業政策と連携した形で双方を推進していくということでございまして、その結果、生産農業所得は八年間で四千億以上増加しておりまして、農林水産物、食品の輸出額は、先ほどおっしゃいましたけれども、一兆四千億を超えました。ありがたいことでございます。

 したがって、政策の成果は着実に表れておりますが、岸田政権においても、二〇三〇年、五兆円という輸出目標に向けた輸出促進施策などを引き続き進めることと、それから輸入生産資材への過度な依存を低減していくための構造転換対策を進めて、食料安全保障を強化してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

野間委員 今、輸出についてのこれからの明るい展望は述べられたんですけれども、ただ、残念ながら、それ以外のところ、確かに、畜産農家、若い女性なんかも随分就農していますし、明るいところだとは思っておりますけれども。

 大臣は、就任直後、MBCのインタビューの中で、自給率を高めていかないと、国外に食、食べるものを求めていくようなことは間違いの元だった、今までのこれは反省ですという言葉を述べておられますけれども、もうはっきり、実際この十年、ある意味、失われた十年だったと思います。

 これは本当に、翻って考えて反省をして、新たなやはり転換をしていかなければいけない時期だと思いますけれども、今のお話ですと、いろいろとこれまでやってきたことをいろいろ継ぎはぎをしながら何とかやっていこう、輸出は輸出で伸ばしていこうということなんですけれども、例えば、私どもが民主党政権時代、戸別所得補償制度ということで、自給率を上げる、様々なプラスの要素があったんですけれども、後ほど申し上げますけれども、こういう大きな転換の時期に今農政は来ているんじゃないんでしょうか。

 これも農政のプロだからこそできることだと思いますけれども、今までのびほう策ということではなくて、やはり大きく転換させていく時期に来ていると思いますけれども、どうでしょうか、大臣、転換させていただけないでしょうか。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 今さっき出ました、地元のマスコミの、新春の対談で申し上げたのは、ちょうど昨年の一月の四日だったと思いますが、私は、とにかく自給率も低いし、それから県民所得のところも上がっていないので、これからいよいよ農業の大転換を図っていく、鹿児島県の農業を変える時期だ、こういうことを実は申し上げました。

 そして、大臣になりまして、農水省の幹部の皆さん方への最初の訓示で、今年はターニングポイントだよということを申し上げました。それは何かといいますと、いよいよ日本の農業の大転換をしていかなきゃならない、過度な外国依存というのは、これは安定した食料を国民に届けられなくなってくる、そういう時代が来ているんだということを申し上げたところであります。

 今、それに向かって、農業基本計画も、あるいは基本方針も一生懸命検討をしているところでございまして、これから、おっしゃるような形で、大転換を図っていかなければならない、そういう時期に来た、それが昨年がターニングポイントだったというふうに私は捉まえておりまして、今年からその実行に移すということで、食料の安全保障費を、補正予算で八千二百億程度組ませていただきました。こういった予算を通じまして、転換を図ってまいりたいというふうに思っているところでございます。

野間委員 是非転換を図っていただかなきゃいけないと思います。

 ただ、今、戸別所得補償には言及されませんでしたけれども、戸別所得補償制度を入れたとき、これは短い期間だったのでそれほどデータがありませんけれども、例えば農業所得、これは、二〇一〇年、一番最初に戸別所得補償制度を入れたときは前年から一七%アップしています。二〇一一年にはその五%アップして、一二年には九%アップしている。そして、新規需要米、今も出ましたけれども、米粉用ですとか飼料用、これは二〇〇九年は四・六万トンだったのが二〇一二年には二十一・八万トン、五倍以上になる。こういう実績が、本当に三年間の短い間でしたけれども、戸別所得補償制度によって実現をしております。

 これは大臣もお分かりのことでありますけれども、今、EU始めヨーロッパ型の農業に転換していく時期ということは御認識のとおりだと思いますけれども、やはりどうしても、安倍政権が、農業を成長産業にするんだ、稼げる農業にするんだ、これもいいことですけれども、残念ながら、例えば、六次産業化ということで、A―FIVEというんでしょうかね、農林水産事業の投資ファンドを農水省がつくられて、これが九十何億も焦げついて全然役割を果たしていなかったというようなこともあって、こういう方向、成長産業化とか稼げる、ある一定のところはいいんでしょうけれども、鹿児島県のような中山間地や零細なところ、なかなかこれはできません。

 二〇一三年から、国連でも家族農業の年ということで、この十年間やっております。そういうEU型の環境保全、そして、中小零細、小さなところでも何とか所得の補償をもらって食べていける農業ということを果たすことで、自給率を上げていくということが可能になると思いますけれども、大臣、戸別所得補償制度をどう思って、やはりこれはあるところで導入していかなきゃそういうことは達成できないと思いますけれども、我々の試算ですと、もしこれを十年間やっていたら、今、自給率は五割ぐらいはいっていたということも出ております。どうお考えでしょうか。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 私どもも現職でおりましたので、戸別所得補償制度についていろいろお話を申し上げたこともございました。

 全ての主食用米の販売農家を対象に交付金を支払うものでありましたので、やはりこれの弊害というのも出てまいりました。それは何かといいますと、やはり米が過剰な中で米の作付をどんどんされてしまったという欠陥もありました。

 しかしながら、米農家の皆さん方は大変喜んでいただいて、そして、十年前の民主党政権の補償はよかったという声も、我々、地元を回りますと、確かにございます。

 しかし、私はそのときにも申し上げたのは、何で米だけですかと。鹿児島の牛はどうなりますか、あるいは、麦を作っている人はどうなりますか。そのときの民主党政権の公約は、全ての作目の戸別所得補償をやりますということだったものですから、それはすばらしい、こう思っていたんですが、三年間、米しか出しませんでした。

 法律を早く出してくださいと我々は民主党の皆さん方にもお願いして言ったんですけれども、ほかのものは出てこなかったということでありますから、この米だけというのが、やはりこれは大きな問題だったんじゃないかな、こんなふうに思っておりまして、私どもの政権になりましてから、これを縮小してしまったわけであります。

 これから、どういう形で、では農家の所得を確保していくかということになりますと、先ほど申し上げましたように、これは、一つ大きなテーマとしては、輸出だと思います。それは、特に鹿児島の方ですから、鹿児島の肉をどんどん外国に輸出していって、農家の手取りを上げていくとか。

 それからもう一つは、私どもも経験しているんですが、お米でも、ソバと、あるいは小麦に代わるような、そういったような米が、種類があります。ですから、パンも、それから麺類も、米でやりましょう、米粉で。これを、一段と米粉の拡大をしていこうと思っておりまして、そうしないと、小麦が入ってこない、あるいはほかの食材も高くなってきている、であれば、米粉を中心に何とか拡大することによって、水田農家の皆さんの所得を上げていける仕組みもでき上がってくるのではないか、こんなことも思っておりますので、これからやります、そういうことも、予算をいただきましたので。

野間委員 今、戸別所得補償制度、米だけということでしたけれども、実際、麦、大豆等にもお金が出ておりまして、ただ、これは、三年間ですから、なかなか成果が出なかったというのもおっしゃるとおりであります。

 それから、確かに、畜産、水産物、輸出が増えていますけれども、これは、反面、そのためのまた原料とかいろいろなものを輸入しないといけないんですね。ですから、輸出が増えても、実は、また今輸入も八兆円、九兆円増えています。ですから、これは痛しかゆしのところもありまして、輸出だけどんどん伸びればいいというものでもありません。

 いずれにしても、今おっしゃったような農業の大転換、野村大臣の中にも、この十年間の安倍農政を転換させていかなきゃいけない、ターニングポイントに来ているということで、それを認められて、御認識があるんだと思いますので、是非そこをやっていただきたいと思いますし、また、私どもも、そういう政策については大いに協力して、日本の農業をよくするために頑張っていきたいと思います。

 もちろん、今、目の前の鳥インフルエンザの問題、飼料の高騰の問題、いろいろと、いろいろな要望も私どもも受けておりますので、そこはしっかりと対応していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

 続いて、これは農業と密接に関係がありますけれども、地方、田舎の方、地方創生ということで、非常に我々は期待をしておりました。もう少し人口減少が止まるんじゃないか、大都市部に出る人が少しでも田舎に残ってくれないかということで期待したんですけれども、予算だけ見ますと、二〇一四年から二〇二一年までで地方創生関連の予算が十五兆九千億円、十六兆円ぐらい、これはお金を使っています。どんな成果、結果が出たんでしょうか。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 これまで地方創生に向けた取組を進めてきた結果、地域の魅力向上、にぎわいの創出の観点から、地方創生関係交付金の活用などを通じまして、地域の創意工夫を生かした取組が全国各地で繰り広げられてまいりました。また、地方への資金の流れの創出、拡大の観点から、一千団体以上の地方公共団体において企業版ふるさと納税が活用されるようになりました。また、地方への人の流れの観点から、地方創生移住支援事業を活用して、東京圏からの移住促進に約一千三百市町村が取り組んでまいりました。こうした点で一定の成果を上げてきたものと考えておりますし、また、野間委員御指摘の東京圏への転入超過数、これは、二〇一九年に約十四・六万人でございましたが、二〇二二年には約九・四万人と、三年間で五万人余り減少いたしました。

 しかし、これは新型コロナの影響というものを考えなくてはいけません。事実、二〇二二年の東京圏の転入超過数は、二〇二一年から比べるとやはり少し増えておりますので、要注意と思っておりますし、転入超過を減少させていきたいと思っております。

 また、進学や就職を契機とした十代後半から二十代の若年層における東京圏の転入超過は、依然として全体の中で大きな比率を占めております。地方への人の流れをもっと力強いものにする必要があると思っております。

 このため、昨年十二月に策定したデジタル田園都市国家構想総合戦略では、人の流れをつくるということを重要な柱の一つとして掲げております。企業の本社機能の配置見直し、企業の地方移転の更なる推進、また、デジタル田園都市国家構想交付金において、移住における子育て世帯加算額をかなり思い切って子供一人当たり最大三十万円から百万円に増額するなど、地方移住に対する一層の支援や、地方創生テレワークや転職なき移住の更なる推進を図ってまいりたいと考えております。

 これをもって、東京圏への過度な一極集中の是正を図ってまいりたい、このように考えております。

野間委員 十六兆円というのは大変な金額ですから、それで、やはり目に見える成果が求められるわけですけれども、一番政治の決断でできると思われるのは政府機関の地方移転だと思うんですけれども、これは、文化庁がという話は聞くんですが、あとはどうなっているんでしょうか。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 政府関係機関の地方移転につきましては、平成二十八年に決定した政府関係機関移転基本方針に沿いまして、中央省庁七機関、そして、研究機関、研修機関等二十三機関五十案件に関して進めてきたところであります。

 具体的には、中央省庁においては、今お話のありました京都における文化庁の全面的な移転については、今年度中に京都で業務開始を予定しております。また、徳島における消費者庁の恒常的拠点の設置についても、令和二年七月に徳島市で消費者庁新未来創造戦略本部を設置いたしました。また、和歌山県においても、平成三十年に総務省統計局の統計データ利活用センターを設置いたしました。

 また、農業のお話が先ほどからございますけれども、畜産業が盛んな島根県において、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が島根県と共同研究を実施しておりますし、また、伝統工芸品を多く有する石川県には、東京の独立行政法人国立美術館の東京国立近代美術工芸館が国立工芸館という名前に変わりまして金沢市に移転、開館されるなど、入館者数も増えている。

 一定の成果は上がっておりますが、今後とも、今年、二三年度中にこの総括的な評価というものを行うことになっておりますので、こうした政府関係機関の地方への移転は、評価もしっかり行い、しっかり踏まえながら、粘り強く取組を進めるべきものと考えております。

野間委員 これは、全国知事会からも、早く移転を具体的に進めてほしいという要望も出ています。

 せっかく野村大臣がいらっしゃるものですから、私は常々、例えば農水省の畜産局、これは東京にある必要はないと思うんですよね。本当は、北海道とか鹿児島、宮崎、本当に現場に近いところで、職員の皆さんも生の声を聞いてやってもらうのが一番いいんじゃないかと思うんですけれども、是非そういうことを検討してもらえないでしょうか、畜産局を鹿児島や北海道に移してもらえないでしょうか。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 全国各地区に、畜産の試験場も県も持っておりますし、また、農水省の出先もあります。ですから、私は、先般ちょっと視察に、農水省の施設を見に行ったんですけれども、やはり粋を集めたところで、人もたくさん、三千人ぐらいおりましたが、やはり集中的にああいうところで研究すべきなのかなとも思いました。ただ、実務的なところは、やはり地方に移せるものは移した方がいいのかもしれないというふうに思います。

 それから、先ほど御答弁申し上げた中で、戸別所得補償制度は米だけと言いましたけれども、これは、麦や大豆への支援、ゲタという対策を打っていただきましたし、それから、私、こういうのを言ったのかなと思って後ろの事務局にも聞いたんですけれども、過剰作付は所得補償によって拡大したとかというようなニュアンスで物事を言ったと思いますが、それはもう私の完全な間違いでございまして、その以前から過剰作付はあったわけでありますので、それだけとは限っていないということであります。

野間委員 是非、畜産局、現場に近いところに移転させるように検討していただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

根本委員長 これにて野間君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

根本委員長 この際、お諮りいたします。

 本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官柴田紀子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 次に、山岸一生君。

山岸委員 東京都練馬区から参りました、立憲民主党、山岸一生です。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速質疑に入ってまいります。

 荒井前総理秘書官の差別発言に関して、松野官房長官にお聞きをしてまいります。

 長官、午前中からるる御答弁いただいておりますけれども、確認でございます。今回の荒井前秘書官の一連の発言の中で、差別に当たる、これは問題であるというふうに判断をされたのはどの部分になるか、改めて具体的にお示しいただけますか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 荒井元総理秘書官の発言のうち、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる、又は、見たらどう思うか、隣に住んでいたらどう思うか、他の秘書官も同じ考えではないかといった発言については、荒井元総理秘書官自身が、総理秘書官の職にある者としてふさわしくないものであるとの理由から撤回したものと承知をしています。

 これらの発言については、不当な差別と受け止められても仕方がないものであり、また、政府の方針と全く相入れず、言語道断であります。このため、岸田総理が総理秘書官としての職務を解くという判断を行ったものであります。

 政府として、引き続き多様性を尊重し、包摂的な社会の実現を目指すという方針について国民に誤解を生じさせたことは遺憾であり、また不快な思いをさせてしまった方々におわび申し上げる次第であります。

山岸委員 今、官房長官から、主に三種類の発言について不当な差別であったという発言がありました。

 私、日本語、私の理解が足りなかったら申し訳ありません。不当な差別と不当でない差別というものがあるのか、あるいは、ないのであれば、明快に差別表現、差別発言とおっしゃってほしいと思いますけれども、この点、長官、いかがでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 差別に法律上の明確な定義はないと承知をしておりますが、一般的に申し上げますと、差別は、それが使われる前後の文脈の趣旨などから取扱いに差異を設けるといった意味、平等に取り扱うべきにもかかわらず平等でない取扱いを行うこと、不当に権利利益を侵害する行為など、様々な意味があると承知をしております。

山岸委員 今回の荒井秘書官の発言は、今の長官の定義に従いますと差別表現であった、よろしいですか。

松野国務大臣 先ほど申し上げたとおり、不当な差別と取られてもしようがないという表現であったと考えております。

山岸委員 私、ここにこだわったのは理由がございまして、つまり、長官が、三つ、類型といいましょうか表現を挙げられましたので、これが全て差別として、認められないという認識に立っていただけているのかどうかということを確認したかったからなんでございますけれども、一応そこは認識を共有しているんだろうというふうに理解をいたしました。

 長官から三つの御紹介がありました。今回、荒井さんは、大きく分けて三種類の発言をしています。一点目が、個人の好き嫌いのことですよね。これから御紹介するのは、当事者の皆様にとっては非常に不愉快かつ不本意な発言とは思いますけれども、議論のために御紹介を申し上げます。

 荒井さんは、一として、自分の隣に性的マイノリティーの方がいたら嫌だということをおっしゃった、個人の嫌悪が一。そして、二として、秘書官室全体として同性婚には反対であるという、この岸田官邸の、本音かどうか分かりませんけれども、体質について発言をしているというのが二。そして、三番目として、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる、こういういわば社会認識といいましょうか政策評価、これが三。

 以上、三つの主に類型の発言をしていて、先ほどの官房長官の御説明によりますと、この三つともが不当な差別に当たり、認められない、こういう判断をされているという理解でよろしいでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる、見たらどう思うか、隣に住んでいたらどう思うか、これらの点は不当な差別に取られる可能性が高いものだと考えております。

 他の秘書官も同じ考えであるかということに関しては、これは、元秘書官も発言しているとおり、確認したわけでもなく、全く根拠のないものであるということでございます。

山岸委員 今の秘書官室の部分に関しては、この後で聞いてまいります。

 今、長官からお認めがあったように、好き嫌いという発言の部分と、国を捨てる人が出てくる、こういう部分は差別的発言であるというふうなお話でございました。今僕が紹介した順番の三番目の、国を捨てる云々の話に関して議論していきたいと思うんですけれども。

 確かにこの発言、そもそも現状認識として誤っていると私は考えています。同性婚を認めたら国を捨てるというどころか、今、逆で、多様性を認めない社会であるということが、若者が国をいわば見限る理由であったり、あるいは世界中の人材が日本に来なくなってきたりする。当事者の人権はもちろんですけれども、日本の活力をも損なっているということが私は大きな問題だろうと思っていますから、この秘書官発言のうち、国を捨てる人が出るということを官房長官がこれは非常に問題があるとお認めいただいたこと自体は、この一連の残念な出来事の中で、私は一つの見識だというふうに思います。

 であればこそなんですけれども、この発言は不当な差別に当たるとおっしゃるのであれば、私、やはり総理答弁、これが、こっちがよくてあっちが駄目だというのがどうしてもよく分からないわけなんでございます。

 総理はこうおっしゃっています。同性婚は、全ての国民にとって、家族観や価値観が、社会が変わってしまう問題である、こういうことをおっしゃっていたわけです。

 一方、先ほど官房長官から御答弁あったように、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくるよ、つまり、何か日本が滅びてしまうみたいなそういった発言というのは明らかに間違いであるということを官房長官がお認めいただいたわけなんですね。

 じゃ、なぜこっちが駄目で総理答弁は認められるのか。私は、根っこは同じように思うわけなんですけれども、この答弁、違いはどこにあるんでしょうか。教えてください。

松野国務大臣 お答えさせていただきます。

 総理の御発言は、同性婚制度の導入については、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものであるので、社会各層の様々な御意見を受け止めることが大切だという趣旨だと認識をしております。

山岸委員 趣旨はそうだけれども、具体的な言いぶりとして社会が変わってしまうということを総理はおっしゃっているわけで、その社会は変わってしまうという話と、国を捨てる人が出てくるよ、本当に日本は大変だよという、こういう問題意識というのは、同じことを言っているのではありませんか。何が違うんですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 総理の答弁の中にあります、社会が変わるという部分に関してでございますが、その趣旨に関しましては、同性婚制度の導入については、国民生活の基本に関わる問題であり、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものであり、その意味で、社会全体に影響を与え得ると認識をしているということかと承知をしております。

山岸委員 これは総理本人に伺うよりないのかも分かりませんけれども、じゃ、どうして、今長官がおっしゃった趣旨とも、やはり総理の答弁、言いぶりは全く僕は違うと思うんですけれども、何でこういう答弁が作られてしまったのかということをちょっと議論していきたいと思うんです。

 先ほど奥野委員とのお話でもありましたが、この総理答弁、二月一日の当委員会における西村智奈美委員への答弁ですけれども、この答弁の作成に荒井秘書官御自身は関わっていなかったと先ほど官房長官、御答弁いただきましたけれども、これはどういう意味なんでしょうか。

 というのが、総理答弁というのはもちろん各担当省庁が作るんでしょうけれども、それをやはり官邸で全秘書官を交えて議論をして、赤を入れたりして、修正したりして作っていくというふうに思うんですけれども、これに荒井秘書官が関与をしていないというのは、どういう根拠でもっておっしゃっているんでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほどの答弁の中で、関わっていないというふうに申し上げましたのは、先ほども答弁させていただきましたとおり、この答弁の土台、ベースに関しましては、法務省による作成であります。当然のことながら、その土台を基に官邸の中においての議論があるかと思いますが、今回の総理、今、山岸先生の方から御指摘があった部分に関しましては、質疑者と質疑応答を繰り返す中において、その一部としてお尋ねの発言があったと承知をしております。

 従来より答弁書の中に文言として記されていたというよりは、質疑者との答弁の中において、答弁として発出したということでございます。

山岸委員 まさに、総理のアドリブであった、総理御自身の問題意識を表明されたということですね。

 これはもうしっかり伺っていかなければいけないけれども、ちょっと今日、せっかく齋藤法務大臣にお越しいただいておりますので、大変恐縮でございます、これは通告が間に合っておりませんので、もし無理なら参考人でも構いません。

 この二月一日の予算委員会での西村智奈美委員への総理答弁、この原案は法務省が作成をしておりますけれども、その法務省作成の答弁案に、社会が変わってしまう課題であるという、結果的に総理答弁になったこのくだりはあったのかなかったのか、教えてもらえますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 官房長官からも御答弁ございましたとおり、法務省が土台を作って官邸にお送りしていますが、それをどう扱うかというのは、最終的には官邸の御責任でされているところですので、その段階でどうだったかということにつきましては、答弁作成過程の問題ですので、差し控えたいと思います。

山岸委員 今官房長官から土台が法務省という御発言があったので、その土台は何ですかということをお伺いしているわけで、今の御答弁は、今のさすがにこれは差し支えはないと思いますので、その土台に関して教えてください。

金子政府参考人 これも官房長官から御答弁ございましたが、質疑者とのやり取りの中での発言ということでございます。当初予定していた質問の準備としては、そこまで及んでいなかったと思います。

山岸委員 当初予定の問答にはなかったということで、まさに総理御自身の言葉として発せられたということでございました。

 じゃ、なぜ岸田総理がこういう、社会が変わってしまうという踏み込んだ表現をされたのか。先ほど官房長官からお話があったように、同性婚を認めるともう世の中大変だみたいな趣旨の発言は、これは不当な差別に当たり得るということが先ほど官房長官の説明でしたけれども、それに類するような発言をやはり総理がされている。なぜこういうふうになってしまったのかということで、私は、もちろん総理にこれは聞かなければいけないけれども、やはり荒井秘書官の一連の発言を見ますと、こういった答弁を作っていく秘書官室の中に一体どういうふうな議論があったんだろうかということなんでございますね。

 これは通告しておりますから、官房長官から御答弁をお願いしたいんですけれども、秘書官室において、荒井秘書官が今回発言をしたような差別意識というものが、日頃から、まさに荒井さんの発言にありましたけれども、みんな同じ考えだということが本当にあったのかどうなのか、これを是非、長官の方で全ての総理秘書官に聞き取りをしてもらって御報告願いたいということを、これはお願いをしておりましたけれども、長官、教えてもらえますか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 まず、先生の方から、先生御指摘の部分に関して不当な差別と私の方でというお話をいただきましたけれども、私からは、不当な差別と受け止められても仕方がないという表現であったので、そのことは加えさせていただきたいと思います。

 総理室の中でそういった議論があったのかということに関しては、総理室の方においては、秘書官室に関する荒井元秘書官の発言は全く根拠のないものであります。念のため、週末に嶋田政務秘書官が、全総理秘書官に対して、政府の基本方針に従って引き続き職務に取り組んでいく考えであることに何ら変わりがないことを確認をいたしました。

山岸委員 今後そう取り組むということを確認したということはよく分かりました。

 私がお伺いしているのは、今回荒井さんがおっしゃったみたいに、日頃から総理秘書官室ではこの同性婚の問題あるいはLGBTの問題について非常にネガティブな問題意識でもってみんなが仕事をしているということであるとすれば、これは非常に深刻な問題なので、そういう意識はないということを確認してもらえましたかということをお伺いしております。

松野国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、秘書官においては、政権の基本方針に従って職務に取り組んでいくということを確認をさせていただいたということでございます。

山岸委員 これも間接的な確認、長官が嶋田秘書官を通じて各秘書官に聞いてもらったという確認でございますので、やはりあさっての審議でしっかり総理御本人に伺っていかなければいけない問題かなというふうに思います。

 先ほど来御紹介している、総理の、社会が変わってしまうという御発言がありました。私は、やはりこれは認識において間違っているだろうと。社会は既にもう変わっているんです。変わっていないのは政治の方であって、私は政治を変えていかなければいけないと思います。

 しかしながら、今、秘書官室のことも、官房長官、せっかく調べてもらったけれども又聞きだということで、非常にやはり閉鎖性が高い空間の中で、いわば同質性の高いメンバーが何か特定の偏見を持って議論をしている限り、やはり政治というのはなかなか変わっていかないんではないかというふうに思うわけなんです。

 そこで、これは御提案なんですけれども、是非当事者の声を聞いていただきたい、これは官房長官へのお願いでございます。今後、こうした非常に信頼を損なう出来事が起きた後に政治がどういう姿勢で向き合っていくかは非常に大事であって、まず第一歩として、官房長官の下でも構いません、官邸に、性的マイノリティーあるいは同性婚をめぐって当事者からのお話を伺う、そういう場を設けていただけませんか。いかがでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 どういった形、どういった方法論によるかは今後議論しなければいけませんけれども、先生から御指摘があったとおり、様々な御意見をお聞きをするということは極めて重要なことであると考えておりますので、今後、その取組方について検討したいと思います。

山岸委員 是非、もう一歩踏み込んでいただきたいと思うんですね。

 というのが、少し自分の話になりますけれども、私自身も、四十一年間生きてきて、これまで性的マイノリティーの方やあるいは同性婚ということに対して一度も一切偏見がなかったかといえば、やはりそれはそうではないということを認めざるを得ないと思います。

 しかし、私には一人の友人がおります。親友と申し上げてもいいと思います。あるとき、彼から個人的にカミングアウトを受けました、彼はゲイであると。ちょっと驚きましたけれども、しかし、その前もその後も、私たちの友情には何一つ変わることはありませんでした。これからも彼とは友人として、荒井秘書官の言葉をかりれば、隣人として、心の隣人として僕は生きていきたいというふうに思います。

 だけれども、もしかしたら、こういった個人的な縁がこれまであったりなかったり、そういったことによって、同性婚や性的マイノリティーの皆さんに対して様々な意見をお持ちの方がいらっしゃることも事実です。だから、当事者の声をしっかり聞いていただきたい。

 これを、だから、官房長官、検討というのは霞が関用語ではやらないということになりがちでございますから、是非とも、やり方はともかく、やりますということは言ってもらえませんか。お願いいたします。

松野国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、積極的に様々な立場の方の御意見をお聞きをしたいと思いますが、どういった方法、どういった場を通してそれを実現するかに関して検討したいと申し上げたところであります。

山岸委員 明確に、聞きたいという御答弁でございました。ありがとうございます。是非、これはやっていただきたいと思います。

 といいますのが、今、日本の国際的な評価に直結をしている問題でもあります。今日、林外務大臣にお越しをいただいておりますので、お伺いしていきたいというふうに思うんですけれども、まさに今年、G7サミットを控えている中で、日本の人権意識の遅れというものが厳しく問われております。日本も諸外国の人権状況に関して、我々自身も当然様々な問題提起をしているわけであって、であればこそ、我が身はどうかということが問われるわけでございます。

 林大臣に二つお伺いしたいと思うんですけれども、まず、今回の発言、この問題が国際関係に与える影響をどういうふうに評価されているかということと、この失われた信頼を取り戻していくために日本政府としてどういう行動を取らなければいけないとお考えなのか、以上二点、お願いいたします。

林国務大臣 今お話のあった件については、一昨日総理が述べられておられることに尽きると思いますが、政府の基本的な考え方は、多様性が尊重され、全ての方々の人権あるいは尊厳、これを大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向けて、引き続き様々な声を受け止めて取り組んでいく、これに尽きると考えております。

 こうしたことを改めて国の内外に対して政府として丁寧に説明をしていく、そういった努力を続けていかなければならないと思っております。私としても、外務大臣の立場で、その職責をしっかりと果たしていきたいと考えております。

山岸委員 林大臣から、丁寧に説明をと。もちろん、それはやっていただきたいんですけれども、やはり説明の先に行動が伴わなければいけないと私は思います。

 官房長官、このテーマは多分最後になると思いますけれども、やはり信頼を損ねたという現実がある以上、これを回復していくために行動が必要だろうと私は思います。

 我々立憲民主党は、LGBTに対する差別解消法ということを提案してきております。もちろん、これは超党派の議論の中で、現在、理解増進法という形を取っておりますけれども、まず最低限の取組として、この理解増進法については今国会で、とりわけ、G7を控えております、それまでに前に進めるべきではないでしょうか。

 午前中、長官から、これは国会の話という御答弁がありましたので、それなら結構ですじゃなくて、国会はもちろん頑張りますけれども、政府としても国会と連携をして責任を持って取り組んでいく、こういう政府側の決意をお示しいただけませんか。お願いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 まず、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない、これはもう、岸田内閣としては一貫してそう考えております。

 先生の方から、では、それを解消するに当たっての取組というお話でありますが、様々な方から意見もお聞きをするようにという御指導もいただきました。そういった活動も取り組んでまいりたいというふうに考えておりますし、この問題に関して、政府としての打ち出し、丁寧に説明をしていくやり方に関しても、引き続き取り組んでまいりたいと思います。

 議員立法に関しての話ということでありますけれども、これはもう国会でのお話でございますので、かえって政府が、議員立法の取扱いについてどうするべきだという発言は、これは控えなければならないものだと承知をしております。

山岸委員 議員立法で準備したものを閣法にしたというケースがつい直近ありました。それは言い訳にならないと思います。なぜやっていただけないのかなと。

 今日は前向きな議論をしたいというふうには思っていましたが、やはりこれは言わざるを得ない。LGBT問題、同性婚合法化は慎重に扱う、こういう表現が最近ございました。これは、旧統一教会の関連団体が、衆議院議員選挙の際に、自民党の一部の候補の方と交わした確認書の一項目でございます。

 多様性ある社会をつくっていく上で、先ほども言葉があった、失われた十年をもたらしてきた政治の責任、そこに旧統一教会がどう関わってきたのかということは、引き続き解明をしなければいけない大きな問題でございます。

 残りの時間で、この議論、永岡大臣とお願いしたいというふうに思っております。解散命令請求に関してでございます。

 統一教会、残念ながら、年明け以降、救済法の成立以降も、まだ高額献金を相変わらず勧めていたりということで、全く改善の状況が見られておりません。こうした中で、解散命令請求の手続について、私は判断を急ぐべきタイミングに来ているんじゃないかと思いますけれども、永岡大臣の見解を求めます。

永岡国務大臣 山岸委員にお答え申し上げます。

 解散命令の要件は、宗教法人法に厳格に定められております。

 解散命令を請求した場合には、裁判所におけます審理に堪え得るためには、法人の活動に係る十分な実態把握と、そして具体的な証拠の積み上げが不可欠と考えております。

 そのため、報告徴収、質問権の効果的な行使等を通じまして、旧統一教会の業務等に関して、具体的な証拠や資料などを伴います客観的な事実を明らかにするための対応を、スピード感を持ちつつも丁寧に、その上で、法律にのっとって必要な措置を講じてまいります。

山岸委員 証拠集めをしているということなんだけれども、そのための質問権の行使ですよね。今、三回目を行っていて、たしかあしたが期限ではなかったかと承知をしております。もう少なくとも、この三回目の質問権行使が最後である、これをもって判断をしていく、これぐらいのことは御答弁いただけるんじゃないかと思います。

 この三回目の質問を踏まえて、さすがに今日、明日とまでは言いません、少なくとも、二月、三月、年度内には結論を見ていく、これぐらいの決意は、大臣、お示しいただけないでしょうか。

永岡国務大臣 予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきますけれども、提出されました資料の分析も踏まえまして、更に報告を求めたり質問をしたりすることはあり得ると考えておりますが、いずれにいたしましても、やはり、報告徴収、質問権の効果的な行使等を通じまして、旧統一教会の業務等に関し、具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにするための対応、これをしっかりとやってまいります。

山岸委員 じゃ、これは四月をまたぐということもあるということでしょうか。四月には統一地方選挙がございます。ここでいうところの統一は、統一教会とは関係ございません、各地の地方選挙でございますけれども。まさかと思いますけれども、この統一地方選挙で統一教会の関係者の方から支援を受ける候補者が自民党にはたくさんいるからそれまで判断できない、そんなことはさすがに許されないと思いますよ。

 今日お話をしてきたように、セクシュアリティーに関する認識、非常に特殊な考えを持っているこの統一教会と関係を絶ち切れないから判断が延びる、そんなことはまさか大臣、ないと思いますが、幾ら何でも年度内には判断をする、この点はお認めいただけませんか。

永岡国務大臣 お答え申し上げます。

 現在、報告徴収、質問権を行使しているところでございますので、やはり、申し訳ございませんが、予断を持ってお答えするということは差し控えさせていただきたいと思っております。

山岸委員 やはり、関係を絶てない県連が多数あるということがこういった背景にあるんじゃないか。非常に残念な思いがいたします。これからもしっかり議論をしてまいります。

 浜田大臣、失礼しました。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて山岸君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党の栃木県第四区、藤岡隆雄と申します。

 本日も、まず地元栃木県第四区の皆さんに心からの感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げまして、質疑に入らせていただきたいと思います。

 まず、西村経産大臣にお聞きしたいと思います。

 いわゆる荒井前秘書官、更迭をされましたが、経産省に四日付で官房付で戻られたと思います。改めて申し上げますけれども、同性婚法制化について、社会が変わっていく問題だと総理が答弁したことについて、記者からの質問に対し、僕だって見るのも嫌だ、隣に住んでいるのもちょっと嫌だというふうな発言をしたとのことですが、差別発言、また人権意識を欠いた発言は絶対にあってはならないと思います。西村大臣の見解をお伺いしたいと思います。

西村(康)国務大臣 まさに岸田総理がお話しになられたとおりでありまして、私も言語道断の発言だというふうに認識をしております。

 秘書官の職を解かれて今は官房付でありますが、まだ私は本人と話ができておりませんけれども、まずは本人の認識をしっかり改めてもらわなきゃいけないというふうに思っておりますし、もちろん個人の様々ないろいろな信条の自由はありますが、政権の大きな方針がありますので、それに従っていただくということは重要であるというふうに思っております。

 私の立場で、しっかりと方針に従ってもらうことを確認をしながら、猛省を促していきたいというふうに思っております。

藤岡委員 今、政権の方針が分からないという話がありました。まさにそのとおりだと思います。

 そして、今、西村大臣は、言語道断という話がございました。松野官房長官のいろいろな話を聞いていまして私は思うんですけれども、これは傷ついた方がいらっしゃるんですね。そこの皆さんに対するおわびというのを、今は経産省の職員でございますから、これは表明していただく必要が私はあると思うんですけれども、西村大臣、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 まさに多くの方のお気持ちを、お心を傷つけたものというふうに思いますので、私の立場でも謝罪をしたいというふうに思います。今は私の部下になっております。その発言について、多くの方のお気持ちを傷つけたことを改めて謝罪をしたいというふうに思います。

藤岡委員 今、謝罪という話がございました。そして、まだ荒井前秘書官からお話を聞いていないという話がございました。これは本当にすぐに聞いていただいて、そして、もう二度とないように省内に徹底をしていただきたいということを思います。

 では、続いて、マスクの着用に関して永岡大臣に質疑に入らせていただきたいと思います。我が党の柚木道義先輩議員が取り上げた卒業式におけるマスクの着用に関してでございます。

 私も、実はPTAでまだ現役の役員を務めておりまして、週末、声を聞いてまいりました。そうすると、その話を聞くと、ちょうど昨日もそういう話で子供としたんだよとか、非常に皆さん戸惑っております。大臣の答弁が二転三転されているものですから、これが非常に戸惑いを与えております。

 そこで、柚木議員の質疑に対する最後の答弁が、改めて、家庭任せというふうな方針を示したと言われてもしようがない答弁になっています。大臣、役所からの答弁とかじゃなくて、想定じゃなくて、子供たちや保護者のためにしっかり一回撤回していただいた方がいいと思います。是非、改めて、撤回していただけませんか。

永岡国務大臣 藤岡委員にお答え申し上げます。

 一月の二十七日の政府対策本部決定におきまして、マスクにつきましては、行政が一律にルールとして求めるのではなく、個人の主体的な選択を尊重して、着用は個人の判断に委ねることを基本として検討するとされたところでございます。先日の柚木議員からの御質問に対しましても、私はその趣旨にお答えしたところでございます。

 このように、本部決定の方針の趣旨をお答えしたものでありますので、答弁を撤回することは考えておりません。

藤岡委員 この答弁は趣旨を説明したと言われるんですけれども、実際これを見ますと、個人個人が、マスクをしなければ嫌だとか、出席したくないというお子さんはマスクをし、マスクは外して行きますと御家庭で決められた方はマスクを外しての参加となろうかと思っていますというふうに、一つの方向性を明確に示されてしまっているんですね、この答弁では。その後に、改めて、大臣は、決めたという事実はございませんと答弁されているんですよ。

 これは別に撤回しても、これからの方針をしっかり決めればいいと思うんです。これは意地を張るところじゃないと思うんですね。改めて、これは撤回した方がいいと思います。子供たちや保護者のために、改めて、この場で撤回をお願いします。

永岡国務大臣 先月二十七日の政府対策本部決定では、マスクの取扱いの検討に関しまして、感染状況等も踏まえて行い、そして、今後早期に見直し時期も含めてその結果を示すとされたところでございますので、文部科学省といたしましては、政府全体での検討を踏まえ、卒業式等を含めました学校におけるマスクの着用に関しまして、今後どのような対応をしていくかについて、速やかに検討してまいりたいと考えております。

藤岡委員 非常に残念な答弁でございます。ここはこだわることはないと思います。撤回して速やかに子供たちや保護者に方針を示すということでいいと思うんです。間違えることはありますから、これは素直に撤回した方がいいと思います。

 次に行きますけれども、政府として、今の御答弁ですと、今後どのような対応をしていくのか速やかに検討というふうな話でした。ということは、そういう政府として方針を示すかどうかも含めて今後検討というふうに今聞こえたんですけれども、これは政府として卒業式のマスクの取扱いに対して方針を示さないということですか。

永岡国務大臣 繰り返しになりまして申し訳ございません。卒業式等を含めました学校におきますマスクの着用に関しては、今後どのような対応をしていくかについては、速やかに検討してまいります。

藤岡委員 もう卒業式の案内、連絡が始まるんですよね。御案内がもう既に始まっているところもあるかもしれません。私も関係者に聞いてきましたけれども、今週中ぐらいには示していただかないと間に合わないと思います。

 是非、大臣、いつまでにそれを示されますか。

永岡国務大臣 繰り返しになり申し訳ございませんが、卒業式等を含めました学校におきますマスクの着用に関しましては、今後どのような対応をしていくかは、速やかに検討してまいります。

藤岡委員 その速やかにということで、大至急検討していただきたいと思うんですが、資料をお配りしておるんですけれども、大臣は隣の選挙区なので御存じだと思いますけれども、地元の下野新聞に共同通信配信の記事で、リークされたと思われる記事が載っております。資料を御覧いただければと思うんですけれども、「「着用を推奨しない」との指針を示し、」というふうに、こういうことが報道で出ております。

 この着用を推奨しないというのも、私も、保護者にお聞きしていると、非常に分かりづらいという話も聞いています。着用を推奨しない。では、逆に、着用することはこれは駄目なのかとか、いろいろな、この推奨しないということについて分かりづらいという声があるんです。これだけでは分かりづらいので、ちゃんともっと分かりやすくやっていただきたいと思うんですけれども、大臣の見解をお伺いいたします。

永岡国務大臣 先月二十七日の政府対策本部決定では、マスクの取扱いの検討に関しては感染状況等も踏まえて行い、今後早期に見直し時期も含めてその結果を示すとされたところでございますので、やはり、政府の全体での検討を踏まえまして、卒業式等を含めた学校におきますマスクの着用に関して、速やかに検討してまいりたいと考えております。

藤岡委員 その推奨しないということだけだと分かりづらいという声がありますので、それを踏まえて検討していただけるということでよろしいですか。

永岡国務大臣 速やかに検討してまいりたいと考えております。

藤岡委員 マスクのことで最後の質問にさせていただきますけれども、政府としてきちっと方針は示していただけるということでよろしいですか。

永岡国務大臣 政府の対策本部決定におきまして、マスクの取扱いの検討に関しては感染状況等も踏まえて行い、今後早期に見直しまして、時期も含めまして検討し、その結果を示すということでございます。結果を示させていただきます。(藤岡委員「方針を示すということですか。方針を示すかどうか、政府として」と呼ぶ)時期も含めましてその結果を示すとされたところでございますので、マスクの着用等に関しましては、しっかりと速やかに検討していくということです。

根本委員長 藤岡隆雄君、きちんと質問してください。

藤岡委員 非常にまだ曖昧なんですけれども、政府として方針を示すんですか、それとも家庭任せなんですか、そこをはっきりしてください。そこだけ。

永岡国務大臣 政府としてしっかりと方針を示すということでございます。

藤岡委員 今初めて政府として方針を示すと、ようやくはっきりと御答弁いただきました。

 それでは、その方針を示す、今週中に示していただけるということでよろしいですか。

永岡国務大臣 卒業式を含めました学校におけるマスクの着用に関しては、どのような対応をしていくかにつきましては、やはり速やかに検討していくということでございます。

藤岡委員 先ほど方針を示すとおっしゃっていただいたのはすごく前向きに捉えたいと思うんですが、今週中に示さないと間に合わなくなるという認識はありますか、大臣。

永岡国務大臣 速やかに検討してまいります。

藤岡委員 非常に残念な答弁ですけれども、速やかに是非検討し、そして、今週中には是非示していただきたいと思います。

 では、永岡大臣はこれで結構でございます。ありがとうございます。

 続きまして、クールジャパン機構の損失の話に移らせていただきたいと思います。

 今日、資料を幾つかお配りしております。この中で支援先の経営状況とか書いておりますが、あくまでこれは事実関係を書いただけで、最初に申し上げたいと思いますのは、この個別企業のことの批評をするつもりはございません。そういうことではなくて、あくまで、クールジャパン機構が投資をしていること、そこの三百九億の損失が出ていること、こういうところについてどうなのか検証させていただきたいからこそ公表されている事実を出しておりますので、その点だけは丁寧に申し上げてから質疑に入らせていただきたいと思います。

 まず、西村大臣、このクールジャパン、ある意味鳴り物入りという話で入ったと思いますが、現在、累積損失三百九億、この現状認識をどう受け止めますか。

西村(康)国務大臣 御指摘のとおり、二〇二一年度末時点での累積損失、これは、長引くコロナの影響等もございました、そうした影響も受けながら、一昨年に設定した二百五十七億円という目標を約五十億円下回る三百九億円となったことは事実であります。

 こうした現状を踏まえて、様々な分析、検討も行って、昨年十一月に、収益性を早期に改善させる視点から、案件組成あるいは投資先への支援の強化、専門人材の確保、活用の強化、それから投資先の管理、資金回収の強化、こういった方向性、抜本的な経営改善策を打ち出したところでありますので、まずはこの抜本的な経営改善策を着実に遂行していくということで、また、機構を監督する経産省としても、この経営改善が進むように取り組んでいきたいというふうに考えております。

藤岡委員 今の認識を聞いて非常に心配になりました。コロナでという話をしましたけれども、コロナ前からかなり失敗していますよ、はっきり言って。全く今、現状認識が私はおかしいと思いますよ。西村大臣、見ていますか、本当に。役所からちゃんと支援先の経営状況を聞いた方がいいですよ。どうですか、大臣。

西村(康)国務大臣 資料にお示しいただいているとおり、損失、あるいは、次のページのものを見ていただいても、ずっと経営状況は悪い状況ですので、この間、様々な形で話題になってきております。私自身もそのことを認識し、改善計画、改善などを聞いてきたところでありますけれども、コロナのためだけとは言っておりません。がくっと落ち込んできているところはコロナの影響もあるというふうに申し上げているわけで、抜本的に経営改善が必要だという認識であります。そのために、昨年十一月に先ほど申し上げたような抜本強化策を打ち出しているところであります。

藤岡委員 その抜本計画も、投資先を増やすとか、逆に何か焼け太りになってしまっているんですよね。これは、過去二回計画を立てて二回とも未達なんですね、計画が。財投の分科会からも統廃合だというふうな指摘も出ていて、しかも、次、もうこれは最後のチャンスじゃないかとか、いろいろな厳しい指摘が出ているんですね。

 この中で、例えば、その資料の中で見ていただきたいんですけれども、じゃ、例えば、ラフ&ピースマザー社というこの事業について、これも非常に、事実関係ですよ、対外的に公表されているものですけれども、非常に赤字も膨らんでいる。私、これは改めて中も見てみたいと思って、ちゃんと有料会員にもなって見てみました。その中でいろいろなことがまた見えましたけれども、こういう個別の状況、非常に今厳しい状況にあると思います。

 大臣、全部ちゃんと確認して、それで、本当にこの機構の事業をこのまま継続するのがいいのかどうか検討するべきだと思いますよ。大臣、どうですか。

西村(康)国務大臣 幾つかのデータもお示しいただいて、全体と幾つか今御紹介がありましたけれども、個別のものについて公開情報以上のものは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、確かに、様々な取組の中で厳しい状況にあるものが多いのも事実でありますが、中には、非常に好調に、一風堂のラーメンのようなものとか、あるいは、寧波阪急、二一年四月に開業しましたけれども、コロナ禍でありましたけれども、これも非常に好調に推移しているものもあります。

 いずれにしても、個々の案件、財務状況、そして経営状況の確認を強化をしているところであります。しっかりと、事業連携先の紹介とか経営人材の採用とか、そうした改善策も含めて、支援策も含めて、既存案件の徹底的な見直しを私自身が指示して今進めているところでございます。

藤岡委員 私は、この機構の業務をこのまま継続するなら、国がやはりこういうところを関与してやっていくのが本当に妥当なのかどうか、そこからちゃんと洗った方がいいと思いますよ。

 この機構が、最初はまずやってみようということは分かりますよ、まず最初はやってみようと。ただ、ここまで非常に損失が膨らんできて、しかも、お示ししていますけれども、本当に厳しいですよ。しかも、今おっしゃった一風堂さんはもうエグジットされていると思いますけれども、さらに、その他のところは分からないわけですよ、経営状況も。

 せめて、そうしたら、今お示ししているところ以外の状況を、個別名を挙げなくても、例えばA社、B社でもいいですよ、全体としてちゃんと経営状況を開示していただけませんか。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、公的資金を活用しておりますので、透明性の確保の要請に対して説明責任を果たしていくことは大事だというふうに思っております。

 御指摘の、機構の損益計算書を含む年度の決算状況については、ホームページなどで公表しているところであります。

 他方、個別の案件についてどこまで公表するか、おっしゃったようにA社、B社ということでありますが、事業規模とか、あるいは投資の時期とか、あるいは収益の状況を含めて、いろいろな形で推察されるところがありますし、さらに、エグジット済みの案件の個別の売却額なども、公表してしまうと、次なるエグジットを計画しているものの公表額に影響を与える、あるいは売却先に影響を与えるということになりますので、なかなか難しいところでありまして、そうしたことから、秘密保持契約の対象となっているのが通例でもございます。

 いずれにしても、御指摘のように、できる限りは公表していきたい、開示をしていきたいと思いますので、合意の得られた範囲で公表していくという方針で臨んでいきたいというふうに思いますし、できる限り更に情報開示を行ってまいりたいというふうに考えております。

藤岡委員 できる限り開示して、投資のときに、改めて、これは開示できるところ以外は投資を私はしないでほしいですね、むしろ。それぐらいのことをやらなくちゃいけないと思いますよ。国がこれは関与すべきかどうなのか、やはり根本的に問い直さなければいけないと思います。

 その中で、資料の中に御用意させていただきましたけれども、元々これは海外需要の獲得ということでございますよね。実際それが本当に果たされているのかなというところも多くあるわけですよ。財務状況が厳しいということだけじゃないんですよ。海外の需要を取ると言いながら、そういう取組がほとんど行われていないように思えるところもあるわけですね。

 例えば、アジア広域でのライブホールの展開ということでございますけれども、例えば、クアラルンプールで今ホールを造られたということでございますが、クアラルンプールで開場したホールで公演が紹介されているものを全部見ましたけれども、五十六公演というふうに見えました。その中で日本人アーティストが公演しているのは何件ですかといったら、一件だけなんですよね。韓国のアーティストの公演はもっと多いわけなんですよね。これは一体何の宣伝をやっているんですか、本当に。日本の魅力を発信するということだったんじゃないんですか。私は非常に疑問に思います。

 それから、クールジャパンパークのことに関しても、実際、他言語の対応というのはされていないというふうに回答されるんですよね。他言語対応もしていなくて、日本の魅力は発信できないじゃないですか。

 さらに、ラフ&ピースマザーの事業に関しても海外展開は遅れている。これは前萩生田大臣も認めておりますけれども、直近で担当者に確認しても、遅れているということでございます。

 こういうふうな、海外需要の取り込みと言いながら全くできていないこの状況について、大臣、どうお考えですか。

西村(康)国務大臣 幾つかの投資先が海外で、いわゆるコンテンツの展開、ライブの展開なども考えていたわけでありますけれども、御指摘のものは、Zeppの話であったり、あるいは、海外で日本コンテンツのクリエーター人材の育成を行うカドカワコンテンツアカデミーの事業ではないかと思いますが、ここ数年コロナもあって伸び悩んでいたことも事実でありますけれども、現在は回復基調にあるということと、例えば、Zeppにおいては、台湾、マレーシアにライブホールをオープンして日本人アーティストのライブ映像の上映イベントを行うなど、そうした需要開拓の取組も進んでおります。

 確かに、ホールを年間運営するわけですから、全て日本人のというわけにはいかないと思いますが、御指摘のあった点を含めて、基本は日本のアーティストを広げていくわけでありますので、アーティストのそうした展開を支援するものでありますので、まさに御指摘のあった点も含めてしっかりとチェックをしながら、引き続き、日本の文化、クールジャパンとしての文化芸術、そうしたものの展開を支援していきたいというふうに考えております。

藤岡委員 真面目に見ましょうよ、本当に。国のお金が入っているわけで、今回も財投の計画では八十億計上されていますよね、財務大臣。本当に、既存案件じゃなくて、新規案件をやるかどうか、一回立ち止まるべきだと思いますよ、私は。

 この中でクールジャパン戦略会議を所掌される岡田大臣、全然戦略会議を開いていないですよ。一体どうなっているんですか、この日本のクールジャパン戦略は。何か言葉だけが躍っていますけれども、全然やっていないというのは。やっていないんですか、本当に。

岡田国務大臣 お答えを申し上げます。

 藤岡委員から御指摘をいただきましたクールジャパン戦略会議は、二〇一九年九月に決定したクールジャパン戦略に基づいて設置したものであります。クールジャパン戦略に係る大きな方針の決定や新たな施策を打ち出す際に、クールジャパン担当大臣と各施策を担う関係省庁の連携を強化する観点で、各省庁の副大臣も出席して、これまで三回開催をいたしました。

 一昨年、二〇二一年九月に第三回戦略会議を開催して、デジタルの更なる活用など、新型コロナによる社会の変化などを踏まえた施策の再構築を図るということを議論して以降、それらの施策について随時関係省庁間で情報共有を行いながら進めているところであります。

 今、ようやく国際的な人流が活発化しており、これをインバウンドや輸出の増加につなげられるよう、日本の魅力を発信するための新たな施策の展開が必要と考えておりまして、次回取りまとめる予定の知的財産推進計画に向けて、関係省庁との意見交換を進めているところであります。これに合わせて、適切な時期にクールジャパン戦略会議を開催し、関係省庁と連携を強化していきたいと考えております。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

藤岡委員 以前、平井大臣も国会の中で、そういう支援先の内容がクールジャパン戦略に見合うかどうかチェックもしていかなくてはいけないというような趣旨の答弁などもされているんですよね。

 そういう中で、非常に厳しい状況に機構があって、何にも会議も開かずに連携、これは私はないと思いますよ、はっきり言って。なぜやらなかったんですか。

岡田国務大臣 お答えを申し上げます。

 クールジャパン戦略会議は、クールジャパン戦略に係る大きな方針の決定や新たな施策を打ち出す際に、クールジャパン担当大臣と各施策を担う関係省庁の連携を強化する観点で開催するものであります。

 御指摘をいただきましたようなクールジャパンの具体的な投資先あるいは経営状況等については、これは金融等の専門的な知見が必要となることから、クールジャパン戦略会議の大きな方向性を決めていくという性質上、クールジャパン機構の具体的な投資先とか経営状況を議論する場としては……(発言する者あり)今の御答弁を申し上げますと、これはこうした投資先や経営状況等について議論する場では必ずしもないというふうに考えておりますけれども、先ほども申しました次回取りまとめ予定の知的財産推進計画に向けて各省庁としっかり連携を取るということは大事でございますので、これは、できるだけ速やかに、適切な時期に開いて議論をいたしたいと存じます。

藤岡委員 本当に速やかに開いていただきたいと思いますが、今お聞きいただいたように、大変この機構の状況は厳しい、また、海外の需要獲得という目的に照らしても非常に現在疑義もある、こういう状況だと思います。しかも、戦略会議は開かれていない。

 鈴木財務大臣、予算書とともに財投計画八十億、これは修正するべきじゃないですか。

鈴木国務大臣 クールジャパン機構につきましては、経済財政諮問会議が決定いたしますいわゆる工程表におきまして、累積損失の解消のための改善計画が未達となった場合には組織の在り方も含め抜本的な見直しをするということとされているところでありますが、二〇二二年三月末時点の実績を検証いたしますと、改善計画が未達となっているということを確認をいたしました。このため、クールジャパン機構において、組織の在り方も含め抜本的な見直しの内容を検討し、昨年十一月の財政制度等審議会の財政投融資分科会において、累積損失の解消の見通しとして、最低限達成すべき投資計画が示されたところと認識をいたしております。

 財務省としても、クールジャパン機構の累積損失が大きいことについては懸念をいたしております。財務省は、出資者の立場から、クールジャパン機構及び経済産業省が示した累積損益の見通しについて、今後、財政投融資分科会で各年度の達成状況を報告させ、必要な対応を促してまいりたいと思っております。

藤岡委員 本当にそういう厳しい状況を懸念されているのであれば、今回は財投計画への計上は私は止めるべきだと思いますよ。

 財務省はしっかり支援先の中身まで含めて査定した方がいいですよ。これは査定されたんですか、今回。

鈴木国務大臣 査定をいたしまして、要求約三百億のところ、八十億としたところでございます。

藤岡委員 三百億を八十億だとすごく削っているイメージがあるんですが、去年も九十億ぐらいですよね。そんなに実は変わっていないんですよね。ただ、財務省として厳しい懸念を示しているということは理解します。だけれども、八十億、これは全然削り方が私は足りないと思いますよ。大臣、どうですか。

鈴木国務大臣 クールジャパン機構につきましては、先ほど申し上げたような、今いろいろな計画が出されるわけでありますので、そういうものをしっかりと踏まえて、これからも、大きな懸念を持ちながらも、しっかりと見ていきたいと思っております。

藤岡委員 本当に、今、増税という話が飛び交っている中で、やはり国民負担につながる話というのは私は避けるべきだと思うんです。だから、これは本当に大至急、もう一回厳しく査定をして修正するべきだと私は思います。

 その中で、今、ちょっと資料にも御用意させていただきましたけれども、こういう状況になっている中で、アベマTVの中で、夏野剛さん、クールジャパン機構の元社外取締役がこのような発言をされておりました。これはそのままですからね、書かれていること、言われていること。何をクールジャパンの対象にするかについて、政治的な思惑が入ることはあったのも事実だし、最も口を利いてきたのは政治家たちだというふうに語っております。

 大臣、これはどう思われますか。

西村(康)国務大臣 まず、クールジャパン機構の投資決定のプロセスでありますけれども、これは、経産省が定めた支援基準に基づいて、機構自ら投資案件の選定、その審査を実施しております。その上で、最終的には、投資決定は、機構法に基づき設置された外部有識者を含めた中立的な投資委員会が判断しております。公正公平な手続を経て決定されているということであります。

 もちろん、機構には様々なルートからの案件の相談はあると思います。あると思いますけれども、その意思決定に当たっては、全ての案件で今申し上げたような投資委員会の判断、外部有識者を含めた中立的な判断がなされておりますので、そういうプロセスを経ておりますので、政治家が意思決定に関与しているとの指摘は当たらないものというふうに思います。

 その上で、先ほど来御指摘がありますように、様々な御指摘をいただいております。まずは機構における経営改善をしっかり取り組みたいと思いますが、先ほど財務大臣からもございました、非常に厳しい御意見を財政投融資分科会でも昨年十一月にいただいております。

 私ども、経営改革をやると同時に、ようやくコロナからのインバウンドも、海外の需要も戻ってきておりますので、これを生かしてしっかりと取り組みたいと思いますが、いわばラストチャンスということを思って経営改革をしっかり進めていきたい。その上で、どうしようもない、成果が上がらないときには、御指摘いただいておりますように、統合、廃止を含めて具体的な道筋を検討するということで進めていきたいと思っております。

 まずは、しっかりと経営改革、十一月に示したものを行い、そして、コロナ禍から脱却しつつある世界の需要をしっかりと取り込めるように、そして、日本のクールジャパンが進展するように支援をしていきたいと思っております。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

藤岡委員 今回、抜本的な改善というのが、結局、投資対象を拡大して、むしろ当初の目的から逸脱すると思えるようなことも増えているわけなんです。だから私は警鐘を発しております。

 財務大臣、本当に厳しく検証して、間違っても、次、改めてこの計画が下回ったときは当然これは統廃合ということでよろしいんですか。

鈴木国務大臣 今、経産大臣から、強い、ラストチャンスだという思いも込めてのお話がございました。

 しっかり、そういう強い決意がどういう成果に結びつくのかどうか、財務省としてきちんと見届けて最終的な判断をしたいと思います。

藤岡委員 私は、今回きちっと修正をして臨むべきだということを申し上げまして、次の質疑に入らせていただきたいと思います。

 では、次の質疑に入らせていただきますが、小倉大臣にお伺いしたいと思います。

 今、子供関連予算、総理は倍増ということを話しておりますが、倍増のベースがよく分からないんですが、結局どこがベースなんですか。

小倉国務大臣 お答えいたします。

 子供政策に関係する予算としては、現在、様々な整理がありまして、例えば、令和四年度における少子化社会対策大綱に基づく少子化対策関係予算は、当初予算ベースで六・一兆円、令和五年度のこども家庭庁関連予算案は、当初予算ベースで、国費のみでありますが、約四・八兆円、地方負担分を含めた公費ベースは八・一兆円となります。

 このように様々な整理があるところでありますが、岸田総理はこれまでも、期限、規模ありきではなく、子供の視点に立って、必要な子供政策が何かをしっかりと議論をした上で、将来的に倍増を目指していきたい、こう述べております。

 私としても、まずは、期限、規模ありきではなく、三月末を目途として、子供、子育て政策として充実する内容を具体化していきたいというふうに思っております。

藤岡委員 失礼しました。西村大臣、岡田大臣、御退席いただいて結構です。どうもありがとうございました。

 小倉大臣、今ちょっとお答えされていなかったというふうに思います。これは少なくとも三月までには倍増のベースを示されるということですか。

小倉国務大臣 繰り返しになりますが、ベースを示すということは規模も示すということであります。期限、規模ありきではなくて、子供、子育て政策として充実する内容を具体化することが先決と考えておりまして、私の下での検討会議でそういった議論を詰めていきたいというふうに思っております。

藤岡委員 そうしたら、今声が上がっていますけれども、何で倍増と言えるんですか。だって、倍増と総理は言っているんだから。しかも、これはもう今年の年頭会見でも話していて、当然、自民党の総裁選のときにも言われていると思います。

 倍増と言っているんだから、普通、倍増と言うなら、どこから倍増か示すべきだと思いますよ。それを今示さないというふうに私は聞こえました。これは倍増は示さないんですか。

小倉国務大臣 私どもが申し上げていることは、総理もそうでありますが、六月の骨太の方針に将来的な子供予算の倍増の大枠をお示しをするということであります。ですので、三月末のたたき台に関しては、まずは必要な子供予算を整理をしていく、こういうことになるんだろうと思います。

藤岡委員 はっきりお願いしたいと思います。

 では、倍増ということは、どこから倍増か、これは示さないということなんですか。それをお願いします。

小倉国務大臣 繰り返しになりますが、少なくとも、現時点におきましては、期限、規模ありきではなく、子供、子育て政策として充実する内容をしっかり具体化していくことが先決であろうというふうに思います。

藤岡委員 であれば、倍増は撤回ということでよろしいですか。

小倉国務大臣 先ほども答弁いたしました六月に子供予算の将来的な倍増に向けた大枠を示すということでありますが、子供政策の担当大臣として総理から指示をいただいておりますのは三月末のたたき台の話でありまして、そのたたき台におきましては、必要な子供予算の中身を具体化していくということに尽きるのではないかと思います。

藤岡委員 財務大臣にお伺いします。

 倍増は撤回でよろしいですか。

鈴木国務大臣 そこの点については、今ほど小倉大臣から答弁があったとおりでございます。従来から、倍増を目指して頑張っていきたいという、そういうことが言われているということを私も十分認識をいたしております。

藤岡委員 私は倍増するべきだと思いますよ。早くこういうふうなベースをしっかり示して、本当にこの少子化、もっと危機感を持って私は対応するべきだということは申し上げたいと思います。

 小倉大臣、これでありがとうございました。結構でございます。

 続きまして、鈴木財務大臣にお伺いしたいと思います。予備費の件でございます。

 今回も五兆円という多額の予備費を計上されております。本来、国会開会中は、予備費というものの執行というのは当然行われないというのは原則だというふうに思います。それで、コロナが二類から五類に、五月八日だということでございますから、国会会期中には五類にという方向だと思います。

 こういういろいろなことを踏まえますと、あくまで、当然、財政というのは、当たり前の話ですけれども、事前の国会の議決が必要、節度を持って対応しなければいけないと私は思います。

 改めて、今回予備費をこれだけの巨額を引き続き計上されているということ、私は財政民主主義に反していると思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 ただいま藤岡先生から、令和五年度予算におきます予備費計上の妥当性等について御質問いただいたと思っております。

 この妥当性につきましては、令和五年度予算においては、コロナ、物価予備費四兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費一兆円、それに一般予備費〇・五兆円の総額五・五兆円の予備費を計上いたしております。

 これは、令和五年度の政府経済見通しが昨年の年央時点よりも上方に見込まれる中、ウィズコロナの進展とともに、年々新型コロナ対応を主たる目的とした使用は減少していると見受けられること、一方で、足下の物価高騰が国民生活や事業活動に与える影響は依然として大きく、先行きについても当面物価は上昇していくものと見込まれること、また、世界的な金融引締め等が続く中、引き続き経済の下振れリスクに備える必要があることなどを踏まえまして、直面する難局に機動的、弾力的に対応するため、令和四年度当初予算と同様、総額五・五兆円の対応余力を確保することとしたものであります。

藤岡委員 今の物価上昇のところは日銀と見方が違いますね、恐らく。日銀は、大分輸入物価が落ち着いてきていて、落ち着いてくるという話がありますけれども、今、非常に物価上昇のことを、逆にそこを厳しく見ているということだと思いますけれども。

 これは、当然、予備費を計上した段階で、私もレクでも教えていただいておりますけれども、改めて、国債を執行するときに発行するわけじゃないですよね。予備費を計上すれば、その分国債を発行するということになりますから、新発国債は〇・五%、今、当然、日銀の金融政策の変更によって利回りは上がっているというところで、予備費を計上することにコストがかかっているわけなんです。はっきり言えば、ざっくり言えば二百五十億くらいかかっているとも言えるかもしれません。

 もちろん、短期、長期の入り繰りがありますから、二百五十億が必ず正確だとは言いません。これだけ予備費計上にもコストがかかっていて、しかもコロナの状況もあって、もろもろ考えると、やはり予備費を計上し過ぎだと思いますよ。改めて節度を持った対応を大臣にお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど御指摘ございましたとおり、予備費を組むに当たってもコストはかかるということでありますが、先ほど予備費を組むことについての意義について申し上げましたように、諸般のまだ様々なリスクがあって、そのリスクに適時適切に対応するために予備費を計上したということでございます。

 やはり、国民生活を守る、また、経済の状況を守るために、臨機応変に対応するために予備費が必要であるという判断をさせていただいたところでございます。

藤岡委員 本当に予備費は極めて例外的であってほしいと思います。

 これも、今、失われた十年という話がありますけれども、こういうふうに財政民主主義がおかしくなってきているのも私は失われた十年の一つと言っていいのではないかとすら思います。

 そして、この予備費の問題の中で一つあれなんですけれども、例えば、令和四年度の補正予算で計上された予備費も現在執行されていないと思います。これは、例えば決算剰余金を通じて防衛財源ということに今回なりかねないということもあります。もちろん防衛をしっかりやることも重要ですけれども、それはもちろん重要だと思いますけれども、だけれども、こういうふうなやり方というのは非常に国民の不信感を招くと思います、結果としてですよ。

 もちろん、最終的に、決算剰余金はどうかというときに、特例公債の発行額をどうするんだとかあります。しかし、機械的、画一的にその金額を決めるわけではございませんから、予備費、そしてそれが防衛財源というふうに、分かりづらく入ってしまうというふうな流れもあると思います。

 こういうことはやはり国民の不信感を招くということになりますから、改めて、こういう視点からも予備費を本当に節度を持って考えていただきたいと思いますけれども、大臣の見解をお伺いします。

鈴木国務大臣 その点は重要な御指摘である、そういうふうに思っております。

 防衛費整備との関係で先生の御指摘を今いただいたところでありますけれども、防衛力を将来にわたって維持強化していくための財源について、これは国民の御負担をできるだけ抑えるべく、あらゆる工夫を検討する中で、決算剰余金の活用にも取り組むこととしております。

 先ほど申し上げましたとおり、予備費につきましては、予見し難い予算の不足に充てるための万全の備えとして計上しているものでありまして、今後の経済情勢等の変化について予断が持てない中で、その使用予定や不用の見込みを申し上げることは困難でありますが、その上で、予備費を含めた歳出予算については、結果として不用が生じること、これはあり得ますが、歳出に不用が生じることが見込まれる場合には、税収等の動向も見極めながら、特例公債法の規定に基づいて特例公債の発行額の抑制に努めることとしており、その全額が直ちに決算剰余金となるわけではございません。

 そのため、御懸念が示されたわけでありますけれども、予備費を例えば意図的に何か余らせることで決算剰余金の金額を大きくして、それを防衛財源に充てるということは、これは全く考えていないところであります。

藤岡委員 本当に隠れ防衛費的になってしまうということの懸念を私は伝えておきたいということを思います。

 では、続いて、日銀総裁、黒田総裁、済みません、お待たせいたしました。大変お疲れのことだと思いますけれども、ありがとうございます。一点お伺いをさせていただきたいと思います。

 資料をお配りしております。日銀総裁の記者会見で、十二月に金融政策決定会合で、いわゆるイールドカーブコントロール、これを柔軟化といいますか、プラスマイナス〇・五%まで許容変動幅をしたという中で、総裁は、九月二十六日の大阪での会見では、〇・二五%程度となっています、この許容上限を日銀が引き上げることは総裁がおっしゃる金利引上げあるいは金融引締めになるのか、改めて教えてくださいというふうに問われて、そうなると思いますというふうにお答えしているわけなんですよね。その後、また、今回の新たな変更後の十二月二十日の記者会見におきまして、事実上の利上げには当たらないんでしょうかというふうに問われて、資料に線を引いていなかったです、済みません、答えの六行目に、利上げではありませんというふうに答えているんですね。

 これはある意味違うことを話しているんですけれども、総裁、これはどういうことでございましょうか。

黒田参考人 御案内のとおり、我が国の金融資本市場については、昨年の春先以降、海外金利の上昇局面を中心に、市場機能の低下が見られてきておりました。その後、昨年末にかけて、海外金利は低下局面に入ったんですが、それにもかかわらず市場機能の低下が常態化していたということでございました。

 そこで、昨年十二月の会合では、こうした状況が続いた場合、企業の起債など、金融環境に悪影響を及ぼすおそれもあるというふうに判断いたしました。そこで、変動幅の拡大を含むイールドカーブコントロールの運用の一部見直しによって市場機能が回復し、改善していくことで、イールドカーブコントロールを起点とする金融緩和の効果が企業金融などを通じてより円滑に波及していって、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めるというプラスの効果が期待されるというふうに判断したわけであります。

 他方で、確かに、変動幅を拡大することは、その点だけを取り上げますと、金融緩和の効果を低下させる側面があります。実際、昨年十二月の会合以降、十年物を中心に国債金利が若干上昇しております。もっとも、昨年を通じてインフレ予想が上昇して、実質金利が大幅に低下しているために、金融緩和の効果は大きくなっておりまして、こうしたマイナスの効果は以前より軽減されております。

 イールドカーブコントロールの運用の一部見直しの決定は、こうしたプラス、マイナス両方の効果を勘案した上で、金融緩和の円滑な波及と持続性の向上というプラス効果の方が大きいと判断して行ったものでございます。

藤岡委員 市場機能の低下に追い込まれたということが非常に改めて問題だということを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて藤岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村委員 日本維新の会の市村でございます。

 二十八分いただきまして質疑をさせていただきたいと存じますが、私の発言の冒頭に当たりまして、会派を代表いたしまして、ちょっと見解を申し述べさせていただきたいと存じております。

 本日午前十一時から再開された委員会冒頭で、根本委員長の方から、本委員会の運営に関し、与野党協議が調わなかったことに関する遺憾の意が示されました。また、松野官房長官からは、更迭された荒井総理秘書官による問題発言に対して、政府の方針と相入れない、言語道断の不当な差別であるとの認識の表明と、国民の皆さんや発言によって不快な思いをされた方々に対する謝罪がありました。

 これに対し、まず、根本委員長の御発言については、今国会の冒頭より、与野党協議が調わず、本委員会が委員長職権により開会されたこと、その後の委員会運営においても与党側の強硬な姿勢が目立つことについて、改めまして、会派を代表して、抗議を申し上げたいと思います。

 また、松野官房長官の御発言については、この問題は、本委員会における岸田総理の答弁に関連し、政府の見解や答弁書の作成において中心的な役割を担う総理秘書官の発言であり、政府全体の基本認識に疑義が生じているものと理解をしています。そうした問題に対し、国会の開かれていない週末の秘書官更迭をもって何事もなかったかのように扱うのは、国民に対する疑念を深めるものであり、憲法に定められた国会の行政監視機能や国会と内閣の連帯責任といった観点から、国会と政府のあるべき関係ではないと考えています。

 我が党としましては、今回の問題に対する政策的な方向性については、他の野党と詳細に至るまで全く同じ見解というわけではなく、他の会派の質疑の内容にまで完全に賛同しているわけではありませんが、多様性と包摂性のある社会を目指す方向性は与野党とも一致していると認識しており、今回の発言には大きな問題があったと考えています。

 今後とも、委員長におかれましては、与野党協議が円滑に進み、本委員会が適切に運営されるよう一層の御配慮を求めますとともに、政府におかれましては、国会に対する説明責任を自ら果たすべく一層の努力を求め、私の質疑に入らせていただきます。

 さて、本日、お時間をいただきまして、本当に光栄でございます。

 本日は、総理の所信の中で、公益法人改革を行われるという一言がありました。公益法人改革を含みます非営利法人制度につきましては、私もライフワークとして取り組んできた課題でありまして、この公益法人改革の中身、大変気になったところでありまして、早速に資料を取り寄せ、政府の方針について見解を深めたところでございます。それについて、今日、せっかくの機会ですので、より認識を深めるべく質疑をさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 今日、松野官房長官にもお越しいただきまして、感謝を申し上げます。

 そもそも、公益法人改革というのは、私の記憶でも、今から遡ること十五年ぐらい前ですかね、もうちょっと前かもしれませんが、いわゆる行政改革の一環でいろいろ議論をされてきたというふうに認識をしていますが、その認識は正しいでしょうか。まず官房長官の方からお願いします。

松野国務大臣 市村先生にお答えをさせていただきます。

 平成二十年の公益法人制度改革は、公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的としたものであるとともに、公益性の判断基準の不明確さや天下りの受皿といった批判などを踏まえた行政改革の観点から始まったものであると承知をしています。

市村委員 ありがとうございます。

 当時の政府の方針として、行革の一環として始まったわけでありますが、しかし、そもそも、これは行革のみならず、公益法人改革というのは、実は、民法三十四条の削減という、明治の三十一年に制定された民法の条文を削除するというところまでの話だったんですね。

 じゃ、なぜそうなったのかといいますと、今、松野官房長官からもありましたように、民法三十四条というのが公益法人を規定していたんですけれども、公益法人が基本的には主務官庁の許可に関わるものとしてつくられていたんです。許可というのは、御存じのとおり、基本的には禁止だけれども主務官庁が認めたらいいですよということでありましたから、今官房長官の御発言の中でもありましたように、天下りの一つの大きな受皿として旧公益法人が利用されていた、こういう姿があったんです。

 ですから、そういった意味でも行革ということなんですけれども、そもそも、もっと根本的なところで考えていただきたいのは、今日はお手元に資料も届けさせていただいておりますけれども、日本という国における非営利法人制度の根本的な欠陥があったということがこの根本にあると私は思っています。

 そこで、松野官房長官及び今日お越しの大臣の皆様に、公益法人はNPOでしょうか、そこについての御認識をお伺いしたいと思います。まずお一人から、ちょっと短く、公益法人はNPOという御認識でいらっしゃいますでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 御指摘のように、いわゆるNPOについては、特定非営利活動法人という法人格に限られるものではなく、公益法人や一般社団、財団法人なども含まれ得るものと承知をしています。

 公益法人制度を民間にとっての利便性向上の観点から改革することにより、民による公益が一層増進されることを期待をしています。

市村委員 ちょっと短く、公益法人はNPOだと認識があられるかどうかを、お一人ずつ、四人、せっかく今日お越しいただいていますので、お答えいただければと思います。

後藤国務大臣 基本的に、今官房長官が答弁されたとおりだというふうに思います。

 ノンプロフィットオーガニゼーション、NPOというのは、特定非営利活動法人というような狭い意味じゃなくて、全般的に一般社団、財団等も含まれる、そういう定義のものだと考えております。

齋藤(健)国務大臣 法務省の関係で申し上げますと、一般社団法人及び一般財団法人は、社員や設立者に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を付与することができないという意味で、非営利性が求められていると理解しています。

鈴木国務大臣 官房長官、法務大臣、後藤大臣が申し述べられたことだと私も思います。

市村委員 ありがとうございます。

 私もこの制度改正に関わってきてから、常に、この特定非営利活動法人がイコールNPO法人であるということに対しては、違いますと、本まで書いて違うんですということを言い続けてきまして、大分その認識は深まっているとは思うんですが、いまだにNPO法人という言葉を、特定非営利活動法人、私は特活法人と略していますが、そのことに言及するときに使われている方がまだ散見されるということでありまして、今日この機会にそういう認識は是非とも改めていただきたい、このように思う次第であります。

 ちょっと今日、資料に間に合わなかったんですが、大臣に、ちょっとでっかくしましたから。基本的に、民法三十四条が規定していた世界というのはこの公益法人の世界だったんです。日本には、そもそもこの非営利法人を規定する制度がなかったんです。一般的な非営利法人を規定する制度がなくて、公益法人だけを規定する民法三十四条があったんですね。それが、しかも、さっき申し上げたように、主務官庁による許可に関わっていたものですから、天下り先等に利用された、悪用されたという形になったんです。

 私はずっと、やはり一般的な非営利法人制度をつくらなくちゃいけないということをこの三十年来にわたって主張してまいりまして、過去の、十五年前のときに、民法三十四条は削除、もうしつこく当時の内閣委員会で毎日のように、毎週のようにやっていましたので、民法三十四条は削除になったんですね。

 今、それでできた制度が一般法人制度なんです。この一般法人制度こそ、私は、いわゆるNPOだということを今日は是非とも強く申し上げたいし、そういう認識をやはり深めていただきたい、そして、その上でいろいろなNPOの議論を進めていただきたいなというのが思いなんですね。

 今日は齋藤法務大臣にいらっしゃっていただいていますのは、まさに十五年前に、この新しい非営利法人制度といいますか、済みません、先に答えを言っちゃ駄目なんですけれども、この一般法人制度ができたときに、これは十五年前のですけれども、「知って! 活用! 新非営利法人制度」、これは法務省の資料です。

 まさに法務省が、この一般法人制度、いわゆる非営利法人制度、そしてNPOの制度の根幹を実は担っているという省なんですね。そのことをちょっと確認だけ、大臣、させていただいてよろしいでしょうか。それで認識が正しいかどうか、お願いします。

齋藤(健)国務大臣 御案内のように、一般社団法人及び一般財団法人は、そういう趣旨で法務省が今所管しているということであります。

市村委員 ありがとうございます。

 ベースは法務省さんが一般法人を管掌されているということでございまして、その中の特に公益性の高いものが公益等認定委員会によって公益法人となるという制度になったわけでありまして、これは、だから私は、旧公益法人と新しい公益法人はしっかりと区別すべきだ、こういうふうに思っているんですね。

 今回の公益法人制度改革は、その新しい公益法人制度改革を更に、もっと一歩前に進めようという今回の志だと私は思っていまして、資料も取り寄せさせていただいた上で、今回、今後の政府が考えている制度、新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議中間報告、多分これに基づいて政府はこれから公益法人制度改革を、今年度中に、令和五年度の夏ですから、来年度というんですか、令和五年度中の夏に、新しい資本主義実行計画、骨太方針、予算要求、税制改革要望予定ということで、そして、来年度、これは度というよりも、六年と書いていますから、ひょっとしたらカレンダーイヤーなのかもしれませんが、改正法案国会提出を目指す、こういうことです。

 中身は、今日はちょっと時間がないので具体的にしませんが、私が思うところ、この公益法人制度改革の方向性は是非とも推進していただきたい、こういう思いの制度なんです。一つには、法人活動の自由度の拡大、そして、自由度拡大に伴うガバナンスの充実、こういうことになっています。

 そこで、とても大切な、細かいことは今日申し上げませんが、是非とも、この方向性においてこれから議論が進むことに対しては、私もこれからいろいろな委員会等でまたいろいろ発言を、又はいろいろ質問というか質疑をさせていただきたいと思っていますが、この中で特にやはり何が大切かといいますと、資金を還流させなくちゃいけないということなんですね。

 官房長官、済みません、官房長官はもう一言で最後で、もう行っていただいてもいいと思うので。

 行政改革で始まったこの公益法人制度改革ですけれども、政府を挙げてこれから取り組んでいただけるというふうに思いますので、その意気込みを最後にちょっと述べていただきまして、官房長官はそれで御退出いただいていいと思います。よろしくお願いします。

松野国務大臣 市村先生からお話、御指摘がありましたとおり、公益性を担うという観点においては、このところ公益の概念も広がっている中でありますし、多様化をしております。そういった中で、例えば、民間の非営利における活動等も含めて、そういった公益法人が社会的に貢献できる分野というのは広がっているし、政府としてもしっかりと後押しをしていかなければならないと認識をしております。

市村委員 官房長官、御退出いただいて結構でございます。ありがとうございます。お時間いただきました。

 それで、あと、済みません、齋藤法務大臣も、もしあれだったら御退出いただいて結構でございます。ありがとうございます。

 済みません、鈴木大臣と後藤大臣には、ちょっと今からいろいろ質疑をさせていただきたいと存じます。

 それで、後藤大臣が、とにかくこれから公益法人制度改革を担う、担当でいらっしゃいますので、是非とも、いい議論をして、よりよいものになるように、また話をさせていただきたいんですけれども。

 じゃ、こうやって新しい非営利制度ができました、そこで特に公益性が高いものが公益法人として公益認定等委員会で認められて、できるようになりましたということで。

 そこで、以前からの、誤解されていた特定非営利活動法人の方なんですけれども、これは、ちょっとここにも書いてありますように、この新しい一般法人制度ができますと、非営利活動法人制度は、非営利法人、つまりNPOの一類型にしかすぎなくなっているんです。

 そもそも、本当は、一般法人みたいに、登記によって非営利法人がつくれる、NPOがつくれるという制度を元々目指していたところ、当時、この特定非営利活動法人制度ができた頃は、残念ながらそこまでいかなかったんですね。登記までいかずに、認可じゃなくて認証という形で、しかも、理事が、というか役員が十人以上とかいうような条件がついた上で特定非営利活動法人になるということで、これじゃ足りないということの中から一般法人制度というのが議論されて生まれたという私は認識でございます。

 そうなってくると、この特定非営利活動法人というのは、そもそも、ほぼ一般法人と変わらないという状況になっていますので、これは、特定非営利活動法人そのものは一般法人に、私は、法律を作って、自動的に移行できるような制度をつくった方がいいのではないかなと。公益法人の場合も、前提として一般法人がありますので、公益法人制度改革の一つの方向性として、特定非営利活動法人を一般法人として自動的に移行させるということも私は必要ではないかと。

 というのも、元々そういう、特定非営利活動法人法ができたときの議論に私は中心的に加わっていましたので、ただ、そのときは残念ながら認証であって登記ではなかったということ、しかも十人の役員がいるとか、非常に、いわゆる、一般法人よりはちょっとまだ厳しいといいますか、そう簡単にできないようになっているんですね。そんなに難しくは、かつてよりはないですけれども。という見解を私は持つんですが、後藤大臣の御見解はいかがでしょうか。

後藤国務大臣 委員の大変熱心なお気持ちとこれまでの御議論での御貢献について敬意を表するところであります。

 NPO法人、特定非営利活動法人というのは認証でできますけれども、これについては、市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することで目的としてはつくることができます。

 ただ、認定NPO法人になりますと、寄附についての控除、税額控除の仕組みがつくわけですが、一般法人には税額控除の仕組み等がないということもありまして、経緯的にはそれぞればらばらにできたもので、一元的な制度でつくられていないという委員の御指摘はそのとおりだとは思います。

 しかし、若干、公益の程度とかそういうところにおいて扱いの違いもあるところもありますので、検討については丁寧ないろいろな検討が要るだろうと思います。

市村委員 ありがとうございます。

 今、いわゆる認定特定非営利活動法人のことに御言及いただきました。

 これが、実は、ちょっとこの図で、なぜここの真ん中が重なっているかというと、要するに、これは公益法人なんですね。だから、一般法人になって公益等認定委員会で公益法人になる道と、特定非営利活動法人になってパブリック・サポート・テストを受けて、該当すると認定特定非営利活動法人になる道があるんです。でも、結果として、効果は今の一般法人とそれから公益法人と変わらないんですね。変わらないんです、効果としては。

 だから、ある種、私は、特定非営利活動法人というのは歴史の中のあだ花だと。本当は一般法人のようなものをつくりたかったのに特定非営利活動法人になっちゃったというのがありますので、この際、また議論されるのであれば、その議論の結果、やはりこれで、二本立てでいくんだというのもあるのかもしれませんが、是非とも、せっかく公益法人制度改革をやるのであれば、こういうもうちょっと本質的な議論もしていただければなというのが私の思いでございますが、大臣、いかがでございますでしょうか。

後藤国務大臣 委員の問題意識は私も共有をするところでありますけれども、今申し上げたように、公益認定における公益性の判断と、それから認定NPO法人を認定するときの公益性の判断と、これが全く一緒のレベルということではないように思っておりますし、その辺のところも含めて、また、認定NPO法人の仕組み自身は、これはボランティア活動等、資金をもらって行うような活動に幅広く使われておりまして、そういうことも含めて、社会が制度をどのように使って、社会になじんでいるのかということや、細かい制度のたてつけ等、丁寧に検討すべき課題もあるだろうと思っております。

 一つ申し上げておくと、今回の公益法人制度の改革は、公益法人のこの認定に当たっての要件とか、あるいは車の両輪としてのガイドラインだとか、透明性を高めるだとか、そういうことをやっていくことを一応政府としては念頭に今作業は進めております。

市村委員 ありがとうございます。

 是非とも御議論いただきたいと思います。ただ、制度が変わるといいますか、もっと一般法人の方が多分私は自由度が高いと思いますので、実際変わったところで今の社会的認知が変わるかというと、私はそうではないと見ていますので、それはまた引き続き議論させてください。

 それで、もう時間がないので、あとはやはり、法人制度は、これはこれでいろいろまた改革が進んでいくといいますか、でも、一番肝は何かといいますと、事業費なんですね。NPOだって、事業をして皆さんから評価されるわけでありまして、ただNPOだから、皆さんから、NPOですばらしいですね、非営利法人ですからすばらしいですねというわけにいきません。そのNPOが具体的にどういう社会的事業を行い、世の中に受け入れられるかというところでやはり試されてきます。もちろん競争もあります。非営利の世界にも競争がなければなりません。

 しかし、一番大切なのは資金なんですね。やはり、資金がもっとNPOのセクターに、私はこれを民の公のセクターと呼んでいますが、民間の知恵とか民間の柔軟性、迅速性、先駆性を生かしてそうした財・サービスの提供を行う主体がNPOでございますから、こういう民の公のセクターを担うNPOに対して資金がやはりもっと還流させるような仕組みをつくっていかなくちゃいけないわけです。

 日本の場合は、アメリカに比べたら本当にまだ寄附市場がお寒いです、とても。それで、ふるさと納税というのを今やっておられます。これは税額控除なんですね。かつて私、三十年前、アメリカにいた頃、研究していた頃は、日本は法人には一般寄附金枠というのがあるんです、個人にはないんですが、アメリカには私はあったと認識しているんですが、アメリカもかなり税制、いろいろ変化されますので、どうも今はないということらしいんですが、ふるさと納税のように、NPO、特に公益法人に寄附した場合、例えば、これは一万円でもいいです、三万円とか、本当は十万円ぐらいですけれども、税額控除の制度をつくったらどうかという思いがあるんですが、鈴木大臣、いかがでございましょうか。

鈴木国務大臣 一般的に言って、寄附文化の醸成というものを図っていくということ、これは重要なことであると考えております。

 個人の寄附を後押しするため、所得税の優遇措置が講じられているところであります。具体的には、控除限度額について累次の引上げを行いまして、主要諸外国に比べて遜色のない水準に達しております。また、主要諸外国には見られない、所得控除と税額控除の選択制を採用しているところでありまして、充実した内容になっていると思っております。まずはこういった制度を十分に活用していただくことが重要と考えます。

 そして、先生が御提案になりました、上限を幾らにするかということは別にいたしまして、全額を税額控除にする、そういう御提案について申し上げれば、一般論としては、寄附の意義、これは、寄附者自身が自らの負担の下、広く社会貢献を行うことにある、そういう考えがございますので、そういう考えを踏まえますと、慎重な議論が必要なのではないか、そのように思っております。

市村委員 また議論を続けさせてください。

 最後に一点だけ。財務大臣としての鈴木大臣に、ちょっと一言だけお答えください。

 国債償還費の繰入れについて、諸外国はやっていない、日本だけだという話がありますが、これが事実かどうかだけ最後にお聞きして、終わりたいと思います。

鈴木国務大臣 国債の償還ルールのお話だと思いますが、日本は六十年償還ルールを取っております。これにつきましては、国債の償還財源を確実に確保しつつ、償還のための財政負担を平準化するといった観点から定められているものであります。

 そして、この六十年償還ルール、これは、財政健全化の精神をしっかりと体現するものとして定着したものであると考えておりまして、これを見直すことについては、市場の信認への影響に留意する必要があって、慎重な検討が必要なのではないかと思っております。

市村委員 終わります。感謝いたします。

根本委員長 これにて市村君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。

 それでは、早速質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、グリーントランスフォーメーション、GXに関しまして御質問させていただきたいと思いますけれども、昨年十二月、GX実行会議においてGX実現に向けた基本方針が出たというところで、再生可能エネルギーの活用を高めていくと。電源構成については、再生可能エネルギーの比率が二〇一〇年は九%であった、一九年が一九%、二〇三〇年には三六%から三八%を目指していく、これを確実に達成するということを目標にされているところなんですけれども、一〇年から一九年にかけて二倍近く増えてきている中で、更にこれを二倍、二〇三〇年に向けて三六%、三八%を目指していくという、なかなか野心的な目標なのではないかなというふうに思うんですけれども、この再生可能エネルギーについて、個別に見るとどの程度増やしていこうかというところをお伺いしたいと思います。

西村(康)国務大臣 まず、お答えします。

 FIT制度の導入以降、御指摘のように、再エネ比率は震災前の約一〇%から二〇二一年度二〇%まで増加をしておりまして、二〇三〇年度に再エネ比率三六から三八という、御指摘がありました目標に向けて、今、最大限導入を進めようとしているところであります。

 その内訳のお話ですかね。内訳は、太陽光が一四から一六、風力が五%、それから地熱一%、水力一一%、バイオマス五%ということで、三六から三八の数値を目標に、様々な取組を進めていっているところであります。

遠藤(良)委員 大臣、ありがとうございます。

 そういう中で、太陽光、風力、地熱といった再生可能エネルギー、御紹介いただきましたけれども、これは北海道や九州などが非常に設備が多くて、地域間の偏りがあるんじゃないか。これを電力を大量に消費する首都圏に大量に送る、そのためには送配電網の整備が必要であるというところなんです。

 その中で、北海道と本州を送配電網で結ぶのが非常に重要だなというところなんですが、この試算が、二〇五〇年までには六兆円から八兆円が必要になるという試算が出ているというところなんですが、この六兆円、八兆円に対しては、これは電力会社が負担するのか、若しくは個人が負担していくのか、これをお尋ねしたいと思います。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、再エネを大量導入していくには、地域間の電力融通を円滑化する連系線の整備、これを加速していくことが重要であります。

 御指摘の全国の送配電網のマスタープラン、本年度中の完成を目指して今最終の検討をしているところでありますけれども、御指摘のように、約六兆円から七兆円必要と。複数のシナリオを分析しておりまして、最大八兆円となる試算もございます。こうした連系線の整備に関する費用につきましては、再エネ賦課金あるいは全国の託送料金を充てて、全国で広く支える仕組みとしております。

 いずれにしましても、再エネの大量導入に向けまして、電力の安定供給の確保と併せて、系統整備にしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

遠藤(良)委員 コストの負担は、資金の負担については、これは個人になるのか会社になるのか、これをお尋ねしたいと思うんですけれども、もう一度お願いします。

西村(康)国務大臣 基本的に、託送料で広く国民の皆さんにお支えをいただく、全国で支えていくということになってまいります。

遠藤(良)委員 これは、太陽光発電を含めて、再生可能エネルギーについては、エネルギー安全保障の観点からエネルギーの自給率を高めていくことができるという側面もあるんですが、先日、予算委員会において我が党の小野議員が、日本維新の会としては原発の再稼働を迅速に進めていってほしいということを要望したんですが、その中で、今やはり電気代が非常に高くなっている中で、これは本当に、エネルギーの在り方については各家庭に直結する重要な事象でありますので、是非経産委員会でも、引き続いてエネルギーやGXについても議論させていただきたいと思います。

 引き続いて、地域医療についてお尋ねしていきたいと思いますけれども、先日、私の地元の兵庫県の豊岡市において、ある先生方と意見交換をさせていただきました。

 その中で、地方の開業医が高齢化しているんだというところで、開業医というのは、地域包括ケアの中で中心になってくる方々であります。その中で、十年もすれば開業医が半減する可能性があるんだということで、本来は、開業されている方のお子様がまたお医者さんをされるということが多くあると思うんですけれども、その中で、今地方で起こっているのは、医者のお子様が医者になられて、そして引き継いでいくんだということが本来あるんだと思うんですけれども、それが、開業医の先生が子供に対して、親心なのか、ちょっとあれなんですけれども、帰ってきてもなかなか、地元自体が高齢化していて、診療をなかなか継続するのが難しいんだということを聞いていました。これは、地域の医療が立ち行かなくなるという現状が本当に迫っているんだというふうに思います。

 その中で、また一つの事例は、これも同じく兵庫県の北部のある都市で、産婦人科が半年前から実際もう回らなくなってきている、その中で、場合によっては、隣の都市に出産するために一時間をかけて行く、こういうケースも実際起こっています。

 これは厚労大臣にお伺いしたいんですけれども、こういった地域の医療をどのように支えていくのか、お尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 今、遠藤委員御指摘の状況、私の地元も僻地が多いところでございますので、まさに直面をしている課題だ、これをしっかり対応しなきゃいけないと考えております。

 基本的には、各都道府県が地域の実情を踏まえながら医療計画を策定をし、医療従事者の派遣などの取組を行うことで、こうした僻地における必要な医療提供の体制の確保を図っているところでありまして、私ども厚労省としては、こうした各都道府県の取組に対して、僻地診療所に対する医師、看護師等の派遣調整を行うなど僻地医療対策の総合的な企画調整を実施しているへき地医療支援機構、これは各都道府県が事業主体でありますが、それの運営、また、僻地医療拠点病院による僻地診療所への医療従事者の派遣、僻地診療所の運営や施設整備についての財政支援を行っているところであります。

 また、令和六年度からの八次医療計画において、僻地の医療の状況を勘案して医師の確保に関する事項を検討すること、また、国は自治体におけるオンライン診療を含む遠隔医療の活用について支援を行うことなどを盛り込むこととしておりまして、こうした議論を深めながら、僻地における医療提供体制の確保に努力をしてまいりたいと考えています。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 先週、ちょうど大臣の地元の岡山も私も視察させていただいて、いろいろその現状、本当に医療について同じような課題認識をお持ちだと思います。

 その中で、様々な対応をされてきているというところなんですが、医療法及び医師法が平成三十年に改正された、各都道府県の医師確保対策の実施体制の強化が進められているということを承知しているんですが、この改正によってどのような効果が出てきているのか、それをお尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 平成三十年に成立いたしました改正医療法で、国において、都道府県ごと及び二次医療圏ごとの医師の多寡を比較、評価する医師偏在指標、これを算出いたしました。そして、その下位三分の一地域が計画期間中に下位三分の一の基準値を超えられるよう、都道府県において医師確保の方針などを盛り込んだ医師確保計画を策定し、取り組むこととしております。

 例えば、具体的に申し上げれば、医学部の入学定員に地域枠を設定する、また、専門医の取得などの本人のキャリアパスに配慮しつつ、医師不足地域等で診療に従事することができるようなキャリア形成プログラムを策定し、充実する、こうした取組を地域医療介護総合確保基金によって支援をしているところであります。

 現在の評価ということであります。

 令和二年度から令和五年度の計画期間の途中でありますけれども、令和六年度から始まる新たな計画に向けて算出した、これは令和二年でありますけれども、データを用いて、医師偏在指標の暫定値では、平成二十八年と比較しますと、医師少数県の約四割、医師少数区域の約三割において当初の下位三分の一を超えるということでありますが、ただ、これは令和二年度の段階でありますので、この間の効果がどこまで反映しているというのは必ずしも言えないと思っております。

 その上で、令和六年度から開始する次期医師確保計画を策定する際に、今年度末に公表予定の医師偏在指標の確定値、病床機能報告、都道府県が独自に把握している情報、これをまず把握し、そしてその活用によって、今期の医師確保計画の効果を検証することとしております。

 そうしたことをしっかり踏まえながら、また各自治体の意見もお聞きをしながら、医師偏在是正に向けた取組をしっかり進めてまいります。

遠藤(良)委員 日本維新の会は、かかりつけ医の制度化を提案してきました。地方では、かかりつけ医になってもらいたい中で、なかなかかかりつけ医が見つからない可能性が出てきている。かかりつけ医を確保していくためには、医師の偏在是正措置について検討していくべきだというふうに思うんですけれども、この点について御意見をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 令和六年度からの次期医師確保計画の策定に向けて、現在、地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループで議論を行っていただいております。

 そこにおいては、例えば、医師偏在指標については、非常勤として勤務している従たる従事者を勘案する、実態に即した見直し、今そちらはゼロとしていますけれども、例えば、主たるところで〇・八、従たるところで〇・二であれば、その按分できちんと実態を把握するということ。あるいは、大学医学部における地域枠、地元出身者枠の設定や、医師派遣を通じた医師確保の促進、寄附講座の設置による医師少数区域等の医師確保の推進、地域医療センターにおける医師確保が必要な診療科、医師数や派遣元医療機関の候補の調査、こういったことに取り組むよう御意見をいただいているところでございますので、こうした意見も踏まえ、次期医師確保計画策定のためのガイドラインの策定を進めております。

 そうした中で、医師の具体的な偏在対策をまとめていきたいと考えています。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 後ほどのまた介護関連にも関わるんですけれども、今、二〇二二年度、診療報酬が改定された。オンライン初診料、オンライン再診料、オンライン外来診療が新設されたというところで、オンライン診療では通常の診療報酬とは一定の差を設けている、触診であったりとか聴診ができないということで、そういう一定の診療報酬の差を設けていると思うんですが、地域医療を確保しつつ、オンライン診療の報酬体系の見直しを進めていく、この辺り、いかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 先ほども、僻地医療の対応として、オンライン診療を含む遠隔医療の活用の支援についてということを申し上げさせていただきましたが、令和四年一月にオンライン診療の適正な実施に関する指針を改定して、初診からオンライン診療をまず可能といたしました。

 そして、それを踏まえて、令和四年度の診療報酬改定で初診料の新設を行い、各種の点数の引上げ、算定できる医学管理料の拡充、さらには算定要件の緩和をした結果として、令和五年一月一日時点で、六千九百医療機関が算定のための施設基準の届出を出していただいているところであります。

 また、令和四年度の診療報酬改定の際の答申書附帯意見で、改定による影響の調査、検証を行うこととされておりますので、今後、活用状況、運用上の課題を把握し、また、いろいろな御意見も伺いながら、適切な形でオンライン診療が提供されていけるように取り組んでいきたいと考えています。

遠藤(良)委員 是非、このオンライン診療、過疎地域であったり医者不足の地域、非常に重要な役割になってくると思いますし、一方で、医師確保、これも同時にやっていかないといけない課題だと思います。

 続いて、介護についてお尋ねしていきたいと思います。

 二〇二一年度の介護会社、事業者の全体の平均の利益率が三%だ、二〇二〇年よりは〇・九ポイント悪化したんだというところで、これの原因としては、コロナ禍の利用控えであったりとか、人件費の高騰が、人件費にかける費用がどんどん上がっていったということが影響しているんだというところなんですが、介護報酬も二〇二四年に改定をされると思いますけれども、先日公表された介護事業者経営概況調査において、二一年度の法改正の中でプラス〇・七%と影響したことを加味して、二四年度改定の基礎資料ということにされるということをお伺いしているんですが、介護報酬の改定の方向性について、まずお尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 まず、令和四年度の介護事業経営概況調査で、今お話がありましたように、令和二年度決算では収支差率が三・九%、令和三年の決算では三%。ただ、令和元年は二・四%ということで、それぞれいろいろな事情の中で収支差は動いているところではございます。今後、令和四年度決算の状況について調査をすることにしております。

 令和六年度の介護報酬改定においては、そうした調査結果も踏まえつつ、大事なことは、介護が必要な方に必要なサービスを持続的に提供していくということでありますから、そうした観点に立って、関係者の御意見もしっかり聞きながら検討していきたいと考えています。

遠藤(良)委員 介護事業所、これは非常に経営は厳しい中にあります。電気代も高騰していますし、人材確保、非常に厳しいと思います。先日、我が党の一谷議員も指摘しましたように、介護に従事する人材は減少している、そしてまた採用するのにも非常にコストもかかってきている中で、介護報酬の改定については、厳しいこういった状況を是非御認識いただきまして進めていただきたいと思うんです。

 その中で、実際、この人材不足についてはどういうふうな対応があるのかというところで、外国人の人材活用があると思います。留学生で、今、現状、訪問介護をしている、アルバイトをしたりしている人が実はいたりする。本来は、技能実習生であったりとか特定技能については身体介護はできないんですけれども、留学生については、一方、できている、そういう状況があります。

 これは、同じ外国人なんですけれども、ビザの資格によって違ってきている状況があるんですけれども、訪問介護事業所としては、実際、働いている方は徐々に高齢化していっている中で、若年層の方は定着しにくいという傾向があります。一方で、外国人の採用をしていく中で、若年でありますし、体力がある方がいる。こういう方が入浴の身体介護を行っていただけるというところは、事業所からすると非常にありがたいんだという意見が多く言われています。

 一方で、介護の外国人の活用についての大臣としてのお考えをお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 介護の現場における人手不足というのはまさに恒常的な状況になってきており、これをしっかり対応していかなきゃいけない。そういった意味で、先ほど委員からお話がありました、まず介護現場における処遇改善等をしっかり図っていく。

 また、他方で、外国人として介護職に就いてこられる方に対する期待もございます。現在、四つの在留資格で、いわゆるEPAに基づくもの、また、在留資格「介護」に基づくもの、技能実習で来られる方、特定技能の四つのルートがございますが、先ほどちょっとお話があった訪問系サービスについては、まさに利用者の居住のところに行って一対一で提供するということから、技能実習と特定技能の在留資格では現在認められていないという格好で対応させていただいているところでございます。

 今現在、在留資格における外国人介護人材の業務の在り方については、法務省で技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議で議論が行われております。それらも踏まえて、また、介護現場の実情、また関係団体等の意見も聞きながら、今後検討を深めていきたいと考えています。

遠藤(良)委員 大臣から御紹介がありましたけれども、この四つの、技能実習生であったりとか特定技能とかで介護現場に入れるというところを御紹介いただいたんですけれども、その中で、実際は、身体介護、先ほどもるる紹介がありましたけれども、いろいろな課題があるんだというところなんですが、実際、技能実習生であったり特定技能についても、これは身体介護をやってほしいという要望も現場の方からも聞いています。

 様々な今在留資格がある中で、これを整理していく方向もあると思うんですけれども、大臣、この辺りはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 どういうサービスをそれぞれでやっていただくのか、また、訪問となると一対一になりますし、施設であれば、いろいろな形の、専門のスタッフと一緒にということもあるんだと思います。その状況状況によっても異なるんだろうと思っておりますが、それらも含めて、まずは、技能実習また特定技能制度についてはまさに法務省を中心に議論が行われておりますので、そうした議論も踏まえながら、他方で、介護は介護としての事情もございます、それらも勘案して検討していきたいと思っています。

遠藤(良)委員 技能実習制度と特定技能制度で有識者会議が検討されていると。この中で、今後、この二つの制度の見直しを厚生労働省と協議を進めていく、そういったお考え、法務大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の有識者会議においては、技能実習法及び入管法等改正法の附則に定められた検討条項に基づいて、両制度の施行状況を検証し、課題を洗い出した上、外国人材を適正に受け入れる方策を検討することを目的として設置をされたものであります。したがいまして、委員御指摘の介護分野に特化した検討を行っているわけではないんですが、両制度の制度趣旨や、外国人材を適正に受け入れる方策といった論点について議論がなされているところであります。

 もっとも、両制度の在り方については、まさに昨年十二月から有識者会議における議論が始まったばかりということもありますので、現時点でどういうふうになっていくかということについてお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思いますし、また、制度が確定された後、それぞれの分野でどうするかという議論もまた進んでいくんだろうと思っています。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 二つの制度が、いろいろな形で増えていった中で、これは制度をしっかり見直していくという方向性が非常に重要だと思いますし、是非積極的に検討いただきたいと思います。

 続いて、最後に、キャンプに関する質問をさせていただきたいと思うんですけれども、今、キャンプ場、コロナ禍になって非常に増えてきた中で、いろいろなサービスも多様化しています。

 その中で、キャンプ場を造ろうというところがあった場合、土地が非常に、所有者、地権者が誰か分からないという現状があって、これをスピーディーに事業活用していくために、非常にこの権利関係を明確にする必要がある。こういった課題についてどのように対応されていくのか、お尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 一般に、他人の土地を取得するためには、その土地の所有者と売買契約等を締結する必要がありますが、御指摘のように、所有者が不明である場合には、契約を締結することが困難になってくるわけです。

 土地の所有者が不在者であるときは、現行法でも、裁判所で不在者財産管理人の選任を受けて、その管理人との間で売買契約等を締結することが可能ではあるんですが、もっとも、現行の不在者財産管理制度につきましては、管理人が不在者の財産全般を管理しなければならないということで、管理人の報酬等の費用がその分高額になるといった指摘もあったわけであります。

 そこで、令和三年の民法改正で、個々の所有者不明土地の管理に特化した新たな管理制度が創設されて、本年四月一日から施行されることとなっています。新たな管理制度の下では、御指摘のような場合について、裁判所で所有者不明土地管理人の選任を受け、その管理人との間で売買契約等を締結することも可能になるということであります。

遠藤(良)委員 これは本当に、地域創生であったり、中山間地域においても課題解決の一つの一助になるかというふうに思いますので、是非積極的に御検討いただきたいと思います。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

根本委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 質問取りで通告していましたとおりの順番で質問を進めたいと思います。

 まず最初は、台湾有事についてお伺いをしてまいります。どう抑止をしていくのかということに絞って私はお聞きしたいと思うんです。

 その前に、ちょうど今でウクライナの戦争が始まって一年になります。台湾有事はまさにこのウクライナの戦争と表裏一体、非常に関わりのある話だと私は思っています。ですから、一年を迎えたということもありますので、おさらいを兼ねて、まず、ウクライナで戦争が始まったときに日本は事前にその兆候をつかんでいたのかということを確認したいと思うんです。

 これは、私は一年間、外務委員会でも何回かお聞きしたと思いますし、あるいは、いろいろな場でいろいろな委員の方がいろいろな角度で議論をし、お聞きになったと思うんですけれども、改めてもう一度ここで確認をしたいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 今の御質問ですが、インテリジェンスや外交上のやり取り、これにも関しますので、詳細をお答えすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げますと、二〇二一年の十月、ですから、この侵略が始まる三か月前ということになりますが、この十月の後半以降、ウクライナの国境周辺におけるロシア軍増強、これは確認されておりました。予断を許さない状況が続いていたということでございます。

 こうした中で、事態が急速に悪化する可能性が高まっていたということから、政府としても、ロシア軍の動きを重大な懸念と高い警戒感を持って注視し、国際社会とともに事態の平和的解決に向けて懸命な外交努力を重ねてきたところでございます。

和田(有)委員 今までもお聞きするとそういうお答えなんです。すなわち、重大な懸念を持って外交努力をしてきたと言うんですが、結果としては止めることはできなかったし、その中身というのは我々は全然分からないわけですよ。懸念を持って言いましたと。それは確かに、あんたらやめてくれとか、危ないですよ、それは言いますけれども、それだけで確信犯の人はやめるわけがないわけです。ですから、何がしかのしっかりとした裏づけをもってやめさせる力というものがこういう場合は必要だと思うんですね、私は。

 そういう意味で、もし今言われたようにつかんでいたとしたら、外交努力をしましたとか、あるいは懸念を表明しましたとか言いますが、具体的にどんな抑止のためのことをされたんでしょうか、もう一回お伺いします。

林国務大臣 今申し上げましたように、ロシアによるウクライナ侵略に至るまでの中で、我が国を含む国際社会は、事態の平和的解決に向けたロシアへの働きかけ、これを含めまして、懸命な外交努力を重ねてきたところでございます。

 昨年二月十七日でございますが、日ロ首脳電話会談というのを行っております。岸田総理からプーチン大統領に対しまして、力による一方的な現状変更ではなくて、外交交渉によって関係国にとって受け入れられる解決方法を追求すべきである、こういう旨、働きかけております。

 また、私が出席をいたしました二月十九日のG7外相会合でございますが、ウクライナの周辺におけるロシアの軍備増強について重大な懸念を共有しまして、仮にウクライナに対する侵略があれば、ロシアへの制裁を含む甚大なコストを招くということを確認いたしまして、これを対外的に発信をしていたところでございます。

 こうした国際社会の外交努力にもかかわらず、ロシアによるウクライナ侵略が発生をしたということでございます。

 侵略が今長期化する中で、我々として、今年G7議長国としてのリーダーシップを発揮しながら、引き続き高い緊張感を持って、G7を始めとする国際社会と連携して、対ロ制裁とウクライナ支援、これを強力に推進していきたいと考えております。

和田(有)委員 外交交渉でとかG7でと言いましたけれども、G7の中で実は日本だけが唯一ロシアと国境を接しているんですね。領海をもって接しているんです、十二海里の。アメリカはベーリング海、北極海を挟んでいますけれども、これは直接領海では接していないと私は承っているんです。ひょっとしたら私の知識不足で若干違うかも分からないですけれども、たしかそのはずなんですよ。

 そういう中で、本当に我々は隣の国の問題として緊迫感を持つべきだったんです。G7のほかの国、ドイツでもイギリスでも、みんな一つの国や二つの国を挟んだ話なんです。我々は真隣の我々の話なんですよ。そういう緊迫感があれば、抑止のためのもっといろいろな対応が取れたんじゃないかと思うんです。

 今、アメリカもドイツも戦車をウクライナに送っています。それは今でも必要ですよ。でも、今更という感じが私はするんです。あのときに、今お聞きしているような段階のときにあの東部戦線にアメリカの、ドイツの最新鋭戦車をずらっと並べて大砲を向けていたら、恐らくロシアは、これはまずい、出れぬな、こうなっていたんじゃないかというぐらい私は思うんです。これが抑止ではないかと思うんです。

 例えばの話、今、アメリカの上を気球が飛びました。アメリカはあれを撃ち落としました。その前に、あれは中国の気球だ、我が国の、我が国とはアメリカの、アメリカの軍事状況を偵察しているんだ、こういうことをはっきり言っているんです。

 日本をしばらく前に飛びましたよ。それまで気づかないときも、多分、私は聞きませんけれども、把握していたんだと思いますよ、日本は。でも、公に、中国の気球が飛んでいる、自衛隊のどこそこの基地を何か調べている、そんなことを言ったためしはないですよね。それを言うことが、やはり、あっ、日本は分かっているんだ、ちょっとしたことをしたらまずいな、こう思わせる抑止になると思うんです。

 ここで、この気球について大臣はどうお考えになりますか。

林国務大臣 二月五日でございますが、アメリカ政府が、中国が打ち上げた高高度監視気球につきまして、バイデン大統領の指示によって米国領空で撃墜した旨発表したというふうに承知しております。

 いかなる国であっても他国の主権を侵害することは許されないわけでありますので、米国政府は、今回の事案について、中国側によって容認し難い主権侵害が行われたとした上で、自国の主権また国民の安全を守るため、慎重かつ合法的に対処している旨を説明しております。我が国としても、こうした米国の立場を十分に理解をしております。

 本件については、中国側が十分な説明責任を果たすことが重要だというふうに考えております。

和田(有)委員 これはこれ以上聞きませんけれども、しかし、これは中国側が説明するんじゃなしに、日本はこうするんだということを言うべきだと思うんです。

 これもいろいろな見方があって、中国がわざとアメリカがどんな対応を取るかを見るために見せてみたという一つの物の見立てもあるんですよね。そういうところで、例えば、以前ペロシさんが台湾に行ったときに、日本のEEZの中にミサイルを撃ちましたよ、中国は。あれだって、日本がどう対応するか、どう発言するか、どの時点で何をするかというのを見ていたはずなんです。そういう意味でも、しっかりとそういうことについては抑止をする観点から物事を捉えなきゃいけないと思うんですね。

 そこで、台湾有事を、今後、もうこの頃、CIAの長官は二千何年だとか、以前のアメリカの国務長官は二千何年だとかいうふうに言うような時期になっている中で、台湾有事がもう目の前に迫っている、この中で、抑止するために具体的に何が我々にはできて、必要だと思われますか。

林国務大臣 台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えたいと思いますが、政府として、台湾海峡の平和と安定、これは、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとって重要であり、台湾をめぐる問題が対話によって平和的に解決されることを期待するというのが従来からの一貫した立場でございます。こうした立場を中国側に直接伝えるとともに、各国の共通の立場として明確に発信していくということが重要だと考えております。

 こうした観点から、先週行われました日中外相電話会談におきまして、私から秦剛外交部長に対して台湾海峡の平和と安定の重要性について述べたところでございまして、昨年十一月の日中首脳会談においても、岸田総理から習近平国家主席に対してその重要性について改めて強調したところでございます。また、一月の日米首脳会談、2プラス2を含めて、米国やG7を始めとする各国との間で台湾海峡の平和と安定の重要性について一致をしておりまして、これを対外的にも発信をしているところでございます。

 その上で、あくまで一般論として申し上げますと、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、我が国と我が国国民の安全と繁栄を確保するために、政府として、いかなる事態に対しても対応できるように、平素から体制の整備を含めて万全を期していくということは当然であるというふうに申し上げておきたいと思います。

和田(有)委員 こうやってるる述べても、やはり態度で示さなきゃいけないと思うんですよ、私は。

 今ちょうど、シンと読むんですかね、かの国の外務大臣、あの方との電話会談の話が大臣から出ましたので申し上げますけれども、このときに、報道によると、右翼勢力の挑発を制止せよとか、あるいは、歴史や台湾の問題で言動を慎め、こう言われたというふうに報道されています。こんなことを言われるのは、内政干渉をされているということですよ。

 こんなことを言っちゃまずいな、日本にこんなことを言うべきじゃないなと思わせる態度を我々は持たなきゃいかぬと思うんですけれども、その点について、これは事実なんでしょうか、いかがでしょうか。

林国務大臣 秦剛部長からは、着任の挨拶がありまして、また、一月下旬に発生した長崎県男女群島西方沖における香港籍の貨物船沈没事案等に対する日本側の捜索救助活動に対して謝意が表明されたところでございます。

 私からは、日中関係は多くの課題、懸案に直面しておりまして、日本国内の対中世論は極めて厳しいという旨を述べつつ、尖閣諸島をめぐる情勢を含む東シナ海、ロシアとの連携を含む中国の我が国周辺での軍事的活動の活発化、それから、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念、これを改めて表明をするとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性について述べたところであります。また、中国における邦人拘束事案等についても、我が方の立場に基づき改めて申入れをいたしました。さらに、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃も強く求めたところでございます。

和田(有)委員 私は、歴史や台湾の問題について言動を慎めとか言われたんですかと聞いたんですけれども、その点についての御答弁がなかった。どうでしょうか、もう一回聞きます。

林国務大臣 中国側の発表にそういう記述があったということは承知しておりますが、通常、こういう会談があったときに、我々の方から申し上げることは我々として発表しておりますので、それ以上のやり取りについては、こちらから申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

和田(有)委員 こうやって日本外交はやってきたから、尖閣の周りには十二海里の中に船が入るようになったんだと私は思うんですよ。この話をするために今日は時間を私はつくっていませんから、この辺にしますけれども、しっかりとそこら辺は、こういう意見があるということを理解していただきたい。

 次に、じゃ、具体的に何ができるのかという話なんですが、例えばの話、日本の在外公館として台湾には交流協会というのがある。そこでは、大使館としての外交特権というんでしょうか、外交官の待遇をしっかり与えられて、しっかりと日本を、聞くと我々は民間ですとすぐ皆さんはお答えになるんだけれども、そうじゃなしに、しっかりと大使館としての業務を向こうからその立場を与えられてやっているんですね。

 ところが、じゃ、翻って日本ではどうかというと、台湾の代表処や弁事処というのはありますけれども、全くそういう外交官の待遇というのはないんですね。何しろ外交官ナンバーの車もなければ何もないわけです。

 よく、いろいろと今までも外務大臣に外務委員会でお聞きしたら、台湾は大切なパートナーです、大変大切な友好国です、友好国という表現は返ってきませんけれども、パートナーだ、大切なんだと言う割には全然大切そうに見えないんです。

 これだけ緊迫している中で、意思疎通をもっと図っていかなければならないし、対中国という面で毅然とした態度を見せる中でも、やはりこういったことを改善する、外交官の待遇を、彼らの外交部で日本に駐在している皆さんに、そういう機関に与えていくということが一つの姿勢になると思うんですが、いかがでしょうか。

林国務大臣 今委員からお話がありましたように、台湾は、日本にとって基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来、これを有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であります。台湾との間では、我が国の民間窓口機関である日本台湾交流協会を通じて、平素から様々なやり取りが行われておると承知しております。

 例えば、新型コロナの感染拡大という未曽有の困難に直面する中においても、日本から台湾への四百二十万回分のワクチン供与、それから、台湾から日本へのマスクや酸素濃縮器の供与等も極めてタイムリーに対応ができておりまして、こうした案件も含めて、日本と台湾との間での意思疎通は緊密に行われているものと考えております。

 台湾との関係について、今御指摘のあった点も含めて、我が国の台湾に関する基本的立場を踏まえて、引き続き適切に対応を検討してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 これも全然答えないわけですよね、弁事処に対して、代表処をどうするとか。次に移りますけれども、台湾と情報交換をするためには、もっと緊密な、そういうことをするためにはいろんな状況整備というのが要るはずなんですよ。今だったら、向こうの外交官の皆さんと日本側が打ち合わせるとき、一定以上の方は日本の外務省も防衛省も中に入れないわけです。じゃ、近所の喫茶店に行って話しましょうかという話になるんですよ。こんな話がありますかね。私はこれじゃ話にならないと思う。

 そこで、次は防衛省の関係に移るんですが、台湾との安全保障に関して情報交換というのは、外務省においては、その所管する法令で、外交関係がない台湾とも禁止されていないということを、私は去年の四月十三日の外務委員会で当時の上杉副大臣から御答弁いただきました。

 じゃ、防衛省はどんな状況になるんでしょうか。何か法令で規制されているんでしょうか。どうなんでしょうか。

浜田国務大臣 防衛省が所管する法令の中で、特定の相手との間で情報共有を行うことを禁止するものはございません。

和田(有)委員 分かりました。

 では、それを一歩前に進めて、時間がなくなってきたのでとんとん行きますが、防衛駐在官が台北にもおります。おりますと言ったら、皆さんは、いや、あれは違うんです、OBですから民間人ですと答えるけれども、そんな話は世の中にないわけで、今、台北の日本のところには防衛駐在官の代わりにOBの方が一人いる。これでは心もとないと思うんです。

 やはり現役で、現役と言うと、いや、現役は行けないんですと言うけれども、ほかの省庁はみんな現役のお役人でも立場を変えて行っているんですから、そうやっていって現役の方が行く。そして、陸海空それぞれ三人体制にする必要があると思う。こうすることが、やはり中国に対して、日本は本気なんだな、手を出しちゃ駄目だ、台湾にも手を出しちゃ駄目だ、こういうことになると思うんですが、いかがですか。

浜田国務大臣 台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要だと考えております。台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決することを期待するのが我が国の従来からの一貫した立場でございます。

 日本台湾交流協会では、現在、自衛官OBが勤務しているものと承知をしておりますが、政府としては、台湾との関係は、一九七二年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持していくとの立場であります。御指摘の点を含め、台湾との関係については、こうした立場に基づき適切に対処していく考えであります。

 いずれにせよ、防衛省・自衛隊としては、御指摘も踏まえつつ、台湾情勢をめぐる各種動向について、引き続き強い関心を持って情報収集、分析を行ってまいります。

和田(有)委員 全然前に進まないわけでございまして、私としては、やはり、私としてはではない、多くの皆さんが恐らく、何でこんな状況にまでなってOBの人が一人行っているんだという感じに思っていらっしゃると思います。抑止をするためにはそういうことも必要なんです、やはり。

 もう一回、この抑止という観点から大臣はどういうふうにお考えになりますか。

浜田国務大臣 我々とすれば、今、現状においてはこのような体制を取っているわけでございまして、これに現役の自衛官を行かせることがなくても情報収集ができるということを目途として、我々は前に進んでいきたいというふうに思います。

和田(有)委員 しっかりとやってください。ある一定以上の方が防衛省の外へ出て近所の喫茶店で話をするような状況ではないようにまずしていただきたいと思います。

 次に、拉致問題に行きます。

 今回の施政方針演説を見ておりましたら、本気かいな、最重要課題だと言っていた割には全然最重要じゃないじゃないと私は思ったんです。

 拉致担当の大臣、帰っちゃったんですよね、官房長官。

 そこで、今の話を見ていると、今の所信なんかを見ていましたら、拉致、核、ミサイルを解決して、それを越えて平壌と平和条約を結ぶために云々かんぬんと、何かそのための一つのワンパーツにしか聞こえない。

 一体これは、本当に本気なのか、最重要課題と認識しているんですかね。どうでしょうか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 拉致問題は、重大な人権侵害であり、岸田内閣の最重要課題であることには変わりはございません。

 日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指す。とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、拉致問題は時間的制約のある人道問題でございます。岸田総理御自身、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意を表明しております。

 政府として、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するべく、全力で果断に行動してまいります。

和田(有)委員 全然重いと思えないんですよね。包括的な何とかの一部分としか聞こえない。

 ここで私は改めて聞きたいんですよ。拉致問題の解決というのは何をもって解決なんでしょうか。具体的にお答えください。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 拉致問題の全面解決とは三点から構成されますけれども、まず一点目、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、二つ目は、拉致に関する真相究明、そして三点目は、拉致実行犯の引渡しが実現することが必要だと考えております。

和田(有)委員 帰国という言葉が出ましたけれども、既に拉致された人ではお亡くなりになった方もいるんですよ。誰だっけな、何人かいますよ、もう既に分かっている人。いや、横田さんは生きていますよ。有本さんも生きていると僕は思う。でも、いるんですよ、寺越さんだっけな。

 これは、我々ここに生きている人、ここに座っている人たちも五十年したら誰もいませんよ、死んで。拉致されている人も五十年後には誰もいませんよ、お亡くなりになって。そうしたら、それで解決なんですか。違うでしょう。いずれはみんな亡くなりますよ、生あるものですから。じゃ、亡くなったときに、ああ解決しましたねと言うんですか。私は違うと思う。

 それは、やはりこの国のありようをどうするかということに関わるんだと思うんですよ、戦後のこの国のありようを。私たちは、この拉致の皆さんに対して知らんぷりを決め込んで、無視をして、耳を塞いで、それは私たちもそうだし、一国民もそうだし、マスコミもそうですよ、報じなかったんだから。政府もそうですよ。政府だけの責任じゃない、私たち一国民の責任でもある。それをどうするかということを考えることが解決だと思うんです。だから、一有権者に返ったときに、安倍さんは恐らく、これが最重要課題で、戦後を解決するためにはこれが大事だと言ったんだろうと私は一有権者としては思った。

 そういうことが皆さん方は分かった上でこの拉致問題に取り組んでいるんですか。もう一回教えてください。

和田副大臣 お答えを申し上げます。

 繰り返しになりますが、拉致問題は岸田内閣の最重要課題であること、これはいささかたりとも変わってございません。

 政府として、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国、これを実現するべく、全力で果断で頑張ってまいります。

和田(有)委員 全ての拉致被害者はもうないんです。それだけは理解しておかなければ駄目ですよ。この先そうなってくるんだから、もっと。

 もう一点だけ最後に聞きます。

 映画「めぐみへの誓い」という映画があります。大変すばらしい映画です。涙が出ますよ、これは。この実写版映画、原田大二郎さんなんかがお父さん役をやるのかな。それで、これを海外で上映するというグループがあって、Mプロジェクトというのがあるんですが、それを、私は以前も聞きました、どうも外務省とのやり取りがうまくできていないということをお聞きしました。

 今、チェコで上映されようとしています。チェコの大使館の皆さんは非常に熱心にやっていて、チェコの大使館の皆さんは全員ブルーリボンバッジをつけているらしい。

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから、おまとめください。

和田(有)委員 はい。

 これはどうなっているか、お聞きしたいと思います、最後に一点。

林国務大臣 このチェコでの上映会も含めまして、後援名義の使用申請があった場合には、本省と在外公館の間で緊密に連携しながら、また、各在外公館から申請者に対して許可基準、手続を分かりやすく説明させるなど、外務省として丁寧な対応を行ってきておるところでございます。

和田(有)委員 じゃ、しっかりとやってください。

 終わります。

根本委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦でございます。

 本日、委員会が始まってからになりますが、十時過ぎにトルコで大規模な地震があったということでございまして、多数の死傷者も出ているようでございます。地震立国の我が国としても、心からお見舞いを申し上げたいと思いますし、支援も検討していただきたいと思います。

 また、トルコはロシアとウクライナの間を仲介したという経緯もありますし、昨年、トルコの企業がロシアに対して、車両やゴムといった、禁制品になっておりますけれども、これを輸出していることが、戦争遂行、作戦遂行を下支えしているという情報もありますので、これは防衛省としても引き続き注視をしていただきたいと思います。直近のことですので、通告もしておりませんし、本来外務大臣の所管だと思いますので、御答弁はいただきませんが、引き続き政府としてよろしくお願いいたします。

 最初に防衛費のお話をさせていただきますが、まず、お金のかからない話からお願いしたいと思いますが、今ほど和田委員からもありましたとおり、中国の高高度偵察気球というものが撃墜をされました。我が国で、二〇二〇年、宮城、二〇二一年に小笠原と青森で確認されたものと画像を見る限り同一のもの、類似しているものと思われます。

 その際、アメリカは撃墜をいたしましたが、我が国はその直近の事例でどのように振る舞ったか、防衛大臣、お願いします。

浜田国務大臣 外国の気球であっても、我が国の許可なく領空に侵入すれば、領空侵犯となることには変わりがありません。そしてまた、領空侵犯のおそれのある航空機の探知などのため、防衛省においては、二十四時間三百六十五日、全国のレーダーサイトなどによる警戒監視を行っております。その中で、仮に領空侵犯事案などが発生した場合には、必要な公表を速やかに行ってきているところであります。

 令和二年六月に東北地方上空で白い飛行物体が目撃された際には、防衛省として公表すべき事象は確認されていませんが、詳細については引き続き分析を進めているところであります。

 いずれにせよ、平素からの警戒監視は切れ目なく行われていたところであります。引き続き警戒監視を切れ目なく行い、我が国の領土、領海、領空を守り抜くべく、対応に万全を期してまいりたいと思います。

鈴木(敦)委員 領空侵犯になり得るというお話がありました。

 では、航空自衛隊がこの国に対して領空侵犯等々の措置を講ずるようになってから、領空侵犯が発生した事案は何件ありますか。

浜田国務大臣 外国の航空機が許可なく他国の領空に侵入する場合には、国際法上、被侵犯国は必要な措置を取ることが認められておりますが、自衛隊においても、領空侵犯機に対しては、自衛隊法第八十四条に基づいて、武器の使用を含む必要な措置を取ることが可能でありますが、実際に取ることとなる措置は個別具体的な状況に応じ判断することになるため、一概に申し上げることは困難でありますが、いずれにせよ、取り得る措置を適切に行ってまいりたいと思います。

鈴木(敦)委員 ですから、防衛大臣、今までに我が国の領空を侵犯した回数です。諸外国、あると思います、ほとんどはロシアとソ連だと思いますが。その他、領空を侵犯したと我が国が認めたのは何件あるんでしょうか。

浜田国務大臣 領空侵犯の事案に対しての、手元に今資料がございませんので、お話をするあれにございません。

 そうした中、気球による領空侵犯について確認して公表した事例はございません。

鈴木(敦)委員 では、二〇二〇年と二一年に我が国の上空を飛行した物体は領空を侵犯していない、こういう見解で今いらっしゃるということでしょうか。

浜田国務大臣 はい、そのように思っております。

鈴木(敦)委員 民間の気球であっても、我が国の許可なく領空に入ってくれば領空侵犯になり得るというお話でしたが、我が国の上空を通過したにもかかわらず、それは領空侵犯に当たっていないと。それはいいでしょう。

 では、切れ目なく対応したということですが、我が国の領土の上空を飛び越えた後、太平洋上で我が国はどこまでその気球を監視したんですか。

浜田国務大臣 警戒監視に関しての細かな状況については、今ここでお話しするものを持っておりません。

鈴木(敦)委員 これは安全保障の問題だと思います。

 アメリカがなぜ大西洋上に出るまで撃墜しなかったかといえば、中に何が積んであるか分からないからですね。化学兵器や生物兵器、ましてやこれはダーティーボムかもしれません。何が積んであるか分からないから海で撃墜をした。

 これは日本においても同じことだと思いますが、なぜこれがどこから来た何なのかということに疑問を持たれないんでしょう。これは中国から来たかどうかは別の問題ですが、あの物体が我が国の上空を飛び越していった、それがどこの国の誰が飛ばした何であったのか、どういう意図があってやってきたのかということも、なぜ確認しないんでしょう。領空侵犯でもなければ何なのかの原因究明もなさっておられませんが、これはなぜなんでしょうか。

浜田国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、我々とすれば、警戒監視に万全を期すとともに、様々な各種の情報収集、分析に努めてきているところでありますが、我々の、米国とのやり取りの有無を含めて、一つ一つの情報については、事柄の性質上、お答えできないことを御理解いただきたいと思います。

鈴木(敦)委員 細かい状況はそうだと思いますが、三年前に我が国の上空を通過したものが何なのかについて御興味はないんですか、防衛省として。あれは何だったんだろうか、まあ、防衛大臣はそのとき大臣ではありませんでしたが、あの物体は何だったのか、なぜ我が国の上空に飛来をしたのか、何も考えないんですか。

 これは安全保障上の極めて重要な問題です。いかがですか。

浜田国務大臣 令和二年六月や令和三年九月に我が国上空で飛行物体が目撃されたことについては承知しておりますけれども、その詳細については、今般の米国における事案との関連も含め、引き続き分析を進めているところであります。

鈴木(敦)委員 もう三年もたっていますし、気球なんかとっくに落ちていますから、もう何だかなんて分かりません。これが我が国の国防です、皆さん。これで我が国の防衛を今議論しています。

 まずこれは、防衛大臣、お金のかからない防衛力強化ですよ。こういったところ、考え方を改めていただかないと、どんなに高い兵器を買ってきても、それは運用できません。是非、これは意識改革していただきたい。我が国の上空を飛んできたものが何なのかについて興味を持って分析するぐらいのことはしていただかないと、防衛費を上げるなんという話は二の次だと思いますが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 我々自衛隊の、今、この情報収集を含め、自衛官が一生懸命になって情報収集を重ねているところでありますので。

 これは、興味がないのではなく、我々がこれをどのように判断するかに関わっておるわけでありますし、その詳細について我々が今ここでお話しする段階にはないということでございますので、今我々の自衛隊が一生懸命やっていることは、これは認めていただいた上で、これに対してどのような判断を下すかということについては、また公表の機会があれば我々もしたいと思いますが、この内容について、今御指摘の点については、なかなか説明が難しいわけでありますけれども、今後とも我々はしっかりと情報収集に努めてまいりたい、このように思っております。

鈴木(敦)委員 私も、十四年間、予備自衛官をやっていましたから、重々承知しております。自衛官の皆さんがどんな苦労をされているか、分かっておりますので。引き続き、これは警戒監視だけではなくて、しっかりとした関心を持つということは、はっきり対外的にもおっしゃっていただきたいと思います。

 次に、お金のかかる話を財務大臣とさせていただきたいと思いますが、今回、予算総則の中で初めて、自衛隊が使用する艦艇について、これは公債費対象経費ということで認められております。具体的には、令和元年度の甲5型警備艦及び潜水艦についての経費が計上されておりまして、今年だけでも一千七百億円以上、艦艇だけでです、が建設国債で賄われることになっております。

 であれば、資料としてもお示しをしておりますけれども、そもそも、五・二兆円という令和四年度当初中期防対象経費の中に、この船舶の建造費用も入っていたわけであります。予算書の中では、予算のコードの番号が二から一に変わっただけでございまして、全体的には、この五・二兆円の中で使っていた部分が建設国債になるんですから、五・二兆円から対象になる金額の分が浮いているはずなんです。ですから、お金が足りないというよりは、むしろ余っているはずだと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 防衛力を抜本的に強化して、これを安定的に維持していくための安定財源につきましては、国民の御負担をできるだけ抑えつつ、負担の先送りは行わない、そういう考え方の下、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入、税制措置等、歳出歳入両面において所要の措置を講じることによりまして確保することとしております。

 令和五年度予算におきましても、こうした考え方に立ちまして、防衛関係費の増額に対応する財源は、歳出改革で〇・二兆円程度、税外収入一・二兆円程度で、その全額を確保、一・四兆円でございますが、したところでございます。

 その上で、今お話がございました、令和五年度予算から防衛関係費の一部を建設公債の発行対象とすることといたしました。これは安全保障に係る経費全体で整合性を図るために実施するものでありまして、防衛関係費の増額の財源とするためではありません。

 したがいまして、先生がお示しになられましたこの図でいいますと、この図の赤いところは、今後、GDPの、二倍に向けて増やしていく部分ですけれども、この下に従来の中期防の、土台となる部分がございます。ここの部分につきましては、今までも自衛隊の艦船等に赤字国債で対応してきていたものを、今度はそれを建設国債にするということで、これは建設国債に振り替えることということでございます。これまでの赤字国債を建設国債に振り替えるということでありまして、防衛関係費の増額の財源とするために行うことではありません。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

鈴木(敦)委員 だとすると、少し疑問が出てくるんですが、本来、建設国債は、これは公共事業に充てるためということで、ただし書で認められているはずです。もう少し言えば、特例国債、つまり赤字国債については、公共事業に使ってはならないということになっていたはずです。なのにもかかわらず、これが防衛費に一部使われていたとなりますと、ここでちょっと訳が分からなくなってくるんですね。

 艦船を造るのは公共事業であるのか否か、今年でそこの議論がされたということなんでしょうか。

鈴木国務大臣 さっき言いました、従来の中期防の、根っこの土台の部分ですけれども、そこにおきましては、もう既に赤字国債を使って、自衛隊の艦船等の建造費に使っていたということであります。

 これは、今、税収で全ての政策経費を賄えない状況でありますから、どうしてもその差額分は国債を発行して対応しなければならないという現実があります。その中で、今まで対応してきたということであります。

鈴木(敦)委員 ですから、公共事業以外には使わないということを、これは財務省のホームページに書いていますよ。公共事業以外の歳出に充てる資金を調達することを目的として特別の法律にということで書いてあります。

 ですから、今回、建設国債に護衛艦の建造費が入ること自体はそれは構いませんけれども、公共事業であるか否かという解釈が変わったということになりますが、その点はどうですか。

鈴木国務大臣 自衛隊の艦船につきましては、護衛艦、掃海艇、潜水艦等、平時から警戒監視や災害対応など様々な任務に当たっておりまして、長期的な保有、使用を前提とした資産としての側面を有しております。

 実際に艦船の運用実態を見ても、耐用年数十五年から二十年は、他省庁においてその建造費が公債発行対象経費と分類されている船舶と遜色なく、運用上も耐用年数を超えて使用されているところです。

 このような艦船の有する性質に着目すれば、負担の公平性の観点からも、他の省庁の船舶と同様に、将来世代に負担を求めることが十分に許容される資産であると考えているところでございます。

 そして、今回は、これに他の、例えば海上保安庁等の船舶と整合性を取るためにも建設国債の対象経費としたということであります。

鈴木(敦)委員 ですから、公共に有する、何十年も使えるものですから確かにそれはそうなんですが、それは、今までそうだったのであれば、今までだって建設国債でできたはずなんですよ。

 でも、そうじゃなくて、今年から建設国債になるのであれば、今年からこれを公共事業だというふうに判断をされたのかということなんです。解釈が変わったんですかということです。

鈴木国務大臣 従来の経緯の中で、自衛隊の艦船については、建設公債の対象にしていなかったということであります。

 そして、建設公債の発行対象経費については、財政健全主義の下、財政法第四条におきまして、公共事業費、出資金及び貸付金に限って例外的に認められているものであります。

 具体的な公共事業費の範囲につきましては、投資的な経費であるか、国民経済の発展に資するか、世代間の負担の公平の観点から相応の耐用年数等を有するかといった観点から整理することとしております。

 今回の見直しはこの解釈を変更するものではなくて、あくまで建設公債の発行対象経費の取扱いを変更するものであります。

鈴木(敦)委員 取扱いが変更になっているじゃないですか。

 護衛艦を造ることにそうやって建設国債で借り換えなきゃいけない、確かにそれはそうなのかもしれません。でも、それを防衛力の強化にかこつけて財政健全化に使っては、私はならないと思います。建設国債を発行できるということであれば、五・二兆円の中に含めるのではなくて、艦船だけだって今後五年間で四千六百億円以上かかっているんですよ。その分が建設国債で賄えるのであれば、お金が足りない足りないと言うのではなくて、あるところから引っ張ってくるということは、普通、考えなきゃいけないと思いますよ、足りない足りないと言うのではなくて。

鈴木国務大臣 従来赤字国債で発行していたものを建設国債に振り替えるわけですから、国債の発行額はその分変わらない。建設国債の対象にした分が増えるのであれば今おっしゃっていることは分かるわけでありますけれども、単に振り替えるということで御理解をいただきたいと思います。

鈴木(敦)委員 建設国債が発行できるのであれば、この額でいいんですかということもありますよ。護衛艦だけではなくて、ほかの防衛力の整備に使ったって別に構わないんじゃないかと私は思います。

 ちょっと時間がないので先に進みますが、この防衛力強化資金、外為特会から繰り入れるということでありますが、外為特会は、私、昨年も、使った方がいいと申し上げました。今まで使わないと言っていたものを使うというのは、別にそれは構いませんが、なぜこの規模になったのか。どういう基準でお選びになったんでしょうか。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木国務大臣 今回、外為特会の一部を防衛費の強化に使わせていただくことにいたしました。

 それで、今、鈴木先生から金額の考え方についてお尋ねがございました。

 外為特会の剰余金につきましては、三割以上を、逆に言いますと最低三割を外為特会に留保することを基本として、外為特会の財務状況や一般会計の財政状況を勘案して、残りを一般会計に、一般会計への繰入額を決定することとしております。

 そして、令和四年度分につきましては、昨年成立した令和四年度予算で見込んでおりました剰余金の七割、これはこれまで同様に一般会計の一般財源として活用することとした上で、本来特会の留保分となるべき残り三割、これは〇・四兆円でありますが、それと、昨年の予算策定時の見込みからの上振れ分の全額一・五兆円、合わせまして一・九兆円を追加的に防衛財源として活用することとしております。

 そして、外為特会について言いますと、さらに、進行年度となります令和五年度についても、剰余金相当額の見込みのうち、為替、金利の動向等を踏まえて現時点で確実に発生が見込まれる一・二兆円の全額について、先日国会に提出した財源確保法案による特別の措置によりまして、臨時的に一般会計に繰り入れ、防衛財源に充てることとしております。

 このように、防衛費の臨時的な追加財源に充てるため、外為特会から可能な限りの繰入金、合計三・一兆円を確保したところであります。

鈴木(敦)委員 分かりました。今後も運用は続いていくと思いますので、多年度にわたって議論していただければと思います。

 では、防衛の話はここまでにいたしますので、防衛大臣、ありがとうございました。

 次に、賃上げについて厚労大臣に議論させていただきたいと思いますが、今年の施政方針演説の中で、総理は、希望する非正規の方の正規化という言葉を使われました。

 これは非常に、私、非正規の出身としては勇気づけられたわけでございますが、今法律にのっとってありますのは、労働契約法十八条に基づいて、有期雇用を無期に転換する、そういう申入れができる権利が発生するということは法的に定義をされていますけれども、その際に、労働条件については基本的に同一とすると書いてあるんです。ですから、賃金はもちろんですけれども、労働時間についても同一のままで、例外以外は原則としてならなきゃいけないということですが、これは必ずしも賃上げには結びつかないわけでございますが、この点、どのようにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 今の鈴木委員からお話がありました無期転換ルール、これは、有期契約雇用の雇用が不安定であること、また、雇い止めを恐れて年休取得等の権利を十分に行使することができないといった課題を解消することが重要であるということで、まずは無期転換により雇用不安をなくし、安心して働き続けられることができる、したがって、今、労働契約法第十八条でも、別段の定めがある場合を除き、従前と同一の労働条件にするとなっているわけであります。

 他方で、厚労省では、無期雇用労働者について一定の賃上げと併せて正社員へ転換した事業主について、キャリアアップ助成金による支援を行っております。こうした賃上げを伴う形で希望する非正規雇用労働者の方が正規雇用化すること、これをしっかり後押しをしていきたいと考えています。

鈴木(敦)委員 一問飛ばさせていただきますけれども、ちょっとここで改めて厚労大臣から、念押しというか確認をしていただきたいと思います。政府が今進めようとしているのは、無期雇用に転換することではなくて正規雇用にするんだ、こういうことでよろしいでしょうか。

 私は、二〇一一年、東日本の震災の後で大学を出て、正規雇用なんかない中で生活してきたんです。そのときにこの言葉があったらどれだけ救われたことかと私は思います。政府が、総理がそうおっしゃるのであれば、国としてしっかり、無期にするのではなくて正規雇用を進めるんだ、そういう決意を述べていらっしゃるんだと、もう一度御確認を願います。

加藤国務大臣 総理がおっしゃっている希望する非正規雇用の方の正規化、これは単に無期労働契約になるのではなく、いわゆる正社員としての待遇、まさに無期雇用フルタイム、そして直接雇用という正社員の待遇で働くことであります。

 厚労省では、正社員転換を図った事業主を支援するキャリアアップ助成金で、有期から正社員というだけではなくて、無期から例えば正社員に転換する場合も含めて助成をしてまいりますし、また、一定の訓練により能力向上を図った上で非正規雇用を正規雇用に転換する企業への支援も強化したところでございますので、こうした施策を通じて、まさに正社員として働いていくことを希望する方には正社員になっていただける、そうした支援にしっかり取り組んでまいります。

鈴木(敦)委員 そのお言葉が十年前に欲しかったです。ありがとうございます。これで我々、本当に非正規で働いている人たちというのは、星を眺めるようにして正社員を夢見ているんです。是非よろしくお願いします。

 次に、賃上げが直接影響する健康保険組合についてお話をさせていただきたいと思いますが、後期高齢者については数が増えていきますので国庫の負担が入っておりますが、数が減っていくということで、前期高齢者に対しての国庫負担というのは入っておりません。

 ところが、一方で、加入者の数によって負担額が変わってくるというものですから、その性格上、健康保険組合が耐えられないということも発生し得る、しているわけです。保険料を上げなければ健康保険組合がやっていけない。解散したとしたら協会けんぽに行くわけですから、更に負担が増えていくわけですから、この点は、前期高齢者の数が減っていくとはいえ、しばらくの間は国庫が負担するとか、ある程度何かしらの措置を講ずるべきと思いますけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 高齢者医療、特に六十五歳から七十四歳までの方の給付については、高齢者が偏在することによる負担の不均衡を是正するため、保険者間で財政調整をする仕組み、前期財政調整の制度が設けられております。

 健康保険組合、これは公的医療保険の重要な担い手であります。これまでも、こうした高齢者医療への拠出に対する負担が重くなっている健保組合に対して、国費による財政支援も行ってまいりました。

 また、現在、急増する七十五歳以上の医療費について、これは後期高齢者医療制度における高齢者の方の保険料負担割合を見直すとともに、六十五歳から七十四歳までの方の給付費に係る保険者間の財政調整の仕組みについて、被用者保険者間では部分的に報酬水準に応じた調整を導入する、これまでは頭割りでありました、導入するとともに、あわせて、健保組合への国費による財政支援を拡充すること等を内容とする法案を今国会に提出すべく、現在、準備を進めさせていただいているところでございます。

 現役世代の負担増を抑制しながら、全ての世代が能力に応じて公平に支え合い、そして必要な方に必要な医療サービスが提供されるよう、持続可能な医療保険制度の構築にしっかりと取り組んでまいります。

鈴木(敦)委員 この話をなぜさせていただいたかというと、保険料が増えると、賃上げしても意味ないんですよ。ですから、賃上げを実効的に可処分所得を増やすという意味でやっていくのであれば、この点、しっかりと議論していただければと思います。

 では、厚労大臣、ありがとうございました。

 経産大臣、お待たせいたしました。

 一番最後に、国家の基本政策の中でも非常に重要な部分についてお話をさせていただきます。半導体についてです。

 昨年も半導体について議論させていただきました。各国は、中長期的なスパンで計画を立てていますし、補助の金額も額が違います。

 先日もちょっとお話を半導体メーカーともしたんですが、我が国は様々な部分で負けていると。なぜ負けているかというと、ラインが細い。

 もちろんそれもそうなんですが、一方で、二年前にNEDO法を改正して、外国の半導体メーカーを日本に誘致をいたしました。最新の技術を持ったメーカーでございます。そのメーカーが持っている最新型の、最新鋭の極小半導体について、我が国にはお客様がいないというんですよ。なぜかというと、これは、GAFAを始めとしたプラットフォーマーのようにデータセンターを大規模に設けるのであれば、極小半導体は確かにニーズがあるだろう、ただ、日本で作って日本の国内にお客さんがいないのであれば、日本で極小半導体のラインをつくるのはなかなか困難であるということでもあります。

 また、今、GX、DXで半導体の支援が入っておりますけれども、短期的なものだけだと経営判断にも全然役に立たぬのです。二年も三年もかかって経営計画を立てていく中で、ラインをつくろうと思ったら五年ぐらいかかる中で、その時点において補助金があるかないかが分からないと、なかなかラインをつくれない、これはメーカーの大きな意見でもありました。

 なので、我が国も、GX、DXだけではなくて、中長期的に、どこどこまでの年間でどれぐらいやりますだとか、あるいは技術的にどこまで実現しますとか、具体的な中長期的な計画表、これを是非是非作って公表していただくべきだと思いますが、いかがでしょう。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、半導体、この二十年、三十年にわたって、日本の世界におけるシェアが縮小し、競争力を失ってきたというのは事実だと思います。まさに、企業の数も多く、大きな投資ができなかった、人材も分散していた。国も、思い切った投資、これは産業政策をアメリカから否定されたこともあって、できなかった。官民両面で大きな投資ができずに、また、先を見通せずにここまで来たというのが現実だと思います。

 そうした反省の上に、教訓の上に立って、御指摘のように、これから、現時点で最先端のものを使う企業はないかもしれませんが、将来、AIがあり、自動運転があり、量子コンピューターがあり、まさに最先端のものを使っていく、そういう、日本でそれを先導していくんだという大きな方針の下に、最先端のものを二〇二七年には量産しようということで、ラピダスという会社をつくり、日米欧で今その開発を進めている、進めていこうとしているところであります。

 そうした背景の中で、半導体は、御指摘のように、まさにDX、GX、様々な面でキーテクノロジー、重要なテクノロジーでありますので、昨年度、半導体・デジタル産業戦略を公表しまして、御指摘のような、まさに将来に向けての取組の方針、今後十年間で官民合わせて約十二兆円の半導体関連の追加投資が必要であるということをお示しし、昨年末の補正予算でも一・三兆円を確保したところであります。

 御指摘のような、将来を見据えた形で、民間の投資を引き出すような官のしっかりとした支援を引き続き継続して行っていきたいというふうに考えております。

鈴木(敦)委員 時間になりました。

 半導体は、何度も言いますけれども、地政学上重要なものです。よろしくお願いします。

 終わります。

根本委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 性的少数者や同性婚の在り方をめぐって差別発言をした荒井総理秘書官更迭問題について聞きます。

 官房長官、荒井秘書官は同性婚の導入について、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる、見るのも嫌だ、マイナスだと発言。到底許されない、言語道断の差別発言であることは論をまちません。

 問題は、総理が二月一日の予算委員会で、こうした制度を改正するということになりますと、「全ての国民にとっても、家族観や、価値観や、そして社会が変わってしまう」と同性婚の法制化を否定する答弁を行った、ここが重大だと私は思います。本音のところで荒井秘書官と変わらない、一緒じゃないのか。どこがどう違うのか、述べてほしいと思います。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 同性婚制度の導入については、親族の範囲やそこに含まれる方の間にどのような権利義務関係等を認めるかといった国民生活の基本に関わる問題であり、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものと認識をしています。

 その意味で、社会全体に影響を与え得るものと認識を示されたものであり、総理も同性婚をめぐる議論を否定しているわけではなく、まずは国民各層の意見、国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の動向、地方自治体におけるパートナーシップ制度の導入や運用の状況等を注視していく必要がある旨述べたものであります。

穀田委員 今の説明では、違うという話はさっぱり明らかになりません。要するに、議論を否定しているわけじゃないんだと言っているだけじゃないですか。本来、本質的に違うというのであれば、私は、同性婚やLGBT法の実現にこそ政府として努力すべきだと考えます。

 午前中の官房長官の発言を聞いていると、議員立法、国会での議論にと人ごとみたいに話をして、政府の責任を放棄しているということは明らかであります。官房長官は、姿勢として国際的に発信すべきとまで発言しています。本気で推進の立場に立つんだったらば、岸田内閣として、閣法として提出すべきではありませんか。岸田内閣の、性的少数者や同性婚、LGBT法に対する認識と姿勢が問われています。

 先ほどの答弁の中で、官房長官はこう言っているんですよね。社会が変わってしまったという文言、文章というのは、答弁の中で発出した総理自身の考え方だと言っているわけですよね。ここが大事なんですよ。だから私は、だとすれば、岸田総理出席の下、この問題に対する集中審議を改めて求めたいと思います。

 次に、敵基地攻撃能力の保有について聞きます。

 政府が閣議決定した国家安全保障戦略など安保関連三文書は、戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものと位置づけています。その内容は、反撃能力という名で敵基地攻撃能力の保有を初めて盛り込み、二〇一五年の安保法制で可能となった集団的自衛権の行使の際にも発動することを明記するなど、歴代政府が建前としてきた専守防衛さえ投げ捨てるものと言わざるを得ません。

 そこで、浜田大臣に聞きたいと思います。

 皆さんにお渡ししている資料、これが一枚目ですけれども、これは防衛白書に掲載された解説です。例えば、ここにあるように、政府はこれまで、先制攻撃とは、いまだ武力攻撃が発生していないのに、武力攻撃のおそれがあると推量されるだけで他国を攻撃することで、憲法上も国際法上も許されないとしてきました。他方、相手が武力攻撃に着手したときには、現実の被害の発生を待たずとも、自衛権を発動し、敵基地などを攻撃することは可能と説明してきました。浜田大臣も、昨年十二月二十三日の記者会見でそうした趣旨の説明をされています。

 しかし、こうした武力攻撃の事実認定というのは極めて困難であって、正確に判断することなどできないのではないか。結局、やられる前にやるということで、先制攻撃につながるのではありませんか。

浜田国務大臣 まず、我が国に対する武力攻撃の発生に係る一般的な考え方については、政府は、従来から、我が国に対する武力攻撃が発生した場合とは、攻撃のおそれがあるにとどまるときではなく、また我が国が現実に被害を受けたときでもなく、他国が我が国に対して武力攻撃に着手したときであると解してきておるわけであります。

 もっとも、現実的な事実認定の問題として、どの時点で武力攻撃の着手があったと見るべきかについては、その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものであり、個別具体的な状況に即して判断するべきものと考えているところであります。

 この考え方は、反撃能力であるか否かにかかわらず、我が国の自衛権の発動に係る法理上の一般的な考え方であり、反撃能力の保有後も変更はございません。

 その上で、反撃能力の行使との関係について、我が国の対応能力を踏まえた実態的な観点から申し上げれば、周辺国、地域におけるミサイル関連技術の運用能力の著しい向上に伴い、相手側のミサイルの発射、特に第一撃を事前に察知し、その攻撃を阻止することは難しくなっていることは事実であります。

 こうした状況も踏まえ、国家安全保障戦略においても、ミサイル防衛網によって、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力を保有すると記載したところであります。

 その上で、具体的な対応について更に明らかにすることは、我が国の手のうちを明らかにすることから、安全保障上控えるべきと考えております。

 いずれにせよ、反撃能力については、憲法及び国際法の枠内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使されるものであり、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないことは言うまでもありません。

穀田委員 従来の答弁をずっと繰り返しているわけですけれども、つまり、どの時点で攻撃の着手があったとするのかは、この間ずっと議論しているわけですよね。結局、そのときの状況で判断するしかないということは大臣はよく述べておられます。うなずいておられるから。

 それで、名古屋大学の松井芳郎名誉教授は、昨年の十一月二十五日付の朝日新聞で、「いつ相手が攻撃に「着手」したかが重要になるわけです。その判断は客観的事実によって裏付けられたものでなければなりません」と。しかし、「政府は武力攻撃の発生時点について、具体的な定義をはっきりさせていません。」「日本が敵基地攻撃をした際、相手からの武力攻撃を証明できなければ、日本が侵略者になってしまうことになります」と警告しています。武力攻撃の事実認定はそういう極めて重大な問題だということをまず押さえなければなりません。

 林大臣にお聞きします。

 敵基地攻撃を行った場合、日本は国際社会から挙証責任を問われることになる。この問題について、ある防衛関係者はメディアに対し、幾ら日本がその行使の正当性を主張しても、国際的な批判を招きかねず、実際は相当難しいだろうと語っています。

 林外務大臣、敵基地攻撃を行った場合、国際社会からも先制攻撃とみなされる可能性が極めて高いのではありませんか。

林国務大臣 我が国は、周辺に巨大な軍事力が集中をし、また、北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の透明性を欠いた軍事力の急速な強化など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面をしております。

 こうした中、今般保有することとなった反撃能力は、憲法及び国際法の範囲内で、武力の行使の三要件を満たして初めて行使され、その対象も、攻撃を厳格に軍事目標に対するものに限定するといった国際法の遵守を当然の前提とした上で、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の措置として行使するものでございます。

 我が国がやむを得ず反撃能力を行使する場合には、国際社会には我が国の考えを丁寧に説明していく考えでありますが、同時に、平素から諸外国に対しては、反撃能力を含む我が国の安全保障政策、これを透明性を持って説明してまいりたいと考えております。

穀田委員 三つ言っているんですよね、憲法と、国際法と、それから丁寧に説明と言っているだけで。要するに、国際社会からも先制攻撃とみなされる可能性があるんじゃないのかと言っているわけですよね。

 安保法制を審議した二〇一五年七月三日の衆院特別委員会で、当時外務大臣であった岸田総理は、「着手の時点」というのは、「国際法においても大変難しい議論が行われており、」「国際法違反につながる、あるいは他国に口実を与える、こういったことにもつながる」問題だと認めています。

 林大臣、この答弁からも、敵基地攻撃の行使というのは国際法違反の先制攻撃につながる、他国に口実を与えるということになるのは明白ではありませんか。

林国務大臣 これも従来から申し上げているとおりでございますが、武力攻撃が発生して、その手段として日本に対して誘導弾などによる攻撃が行われた場合は、そうした攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の措置を取るということ、例えば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、ほかに手段がないと認められるときに限って、敵の誘導弾等の基地をたたくということは、法理的に自衛の範囲に含められると考えておりまして、国際法上も問題はないと考えております。

 こうした対処は、武力の行使の三要件の下での武力攻撃の発生を前提としておりまして、何ら武力攻撃が発生していない状況で行われる先制攻撃に当たらないということは明らかでございます。

 このように、反撃能力の行使、これは先制攻撃には全く当てはまらないということでございます。

穀田委員 私は、当時の岸田外務大臣が、着手の時点というのは、国際法違反につながる、そういう難しい問題だということを言って指摘しているわけで、それはどうやねんと聞いているわけですやんか。

 敵基地攻撃を行った場合、客観的事実に基づき、国際社会を、今、丁寧に説明するとかいろいろ言っていましたけれども、納得させる根拠を示さなければなりません。それは極めて困難であるのは明白であります。

 元航空自衛隊の林吉永第七航空団司令は、二月三日付の朝日新聞で、ウクライナ侵攻から何を学ぶべきかと聞かれ、「ロシアによる侵略を自国の深くまで受けながらロシア本土を攻撃することに抑制的な今のウクライナは、まさに専守防衛的な戦いをしています。自らの戦いの正しさを示すことで国際社会の支援を得ようと努める、現実的で重い決断が見えます。もし敵本土を攻撃すればロシアに攻撃をエスカレートさせる口実を与えてしまい、核兵器による攻撃さえ誘発しかねない現実も考慮しているでしょう」と述べている。政府は、こうしたウクライナの現実から学ぶべきだと私は思います。

 同氏は、一九九〇年代に第七航空団司令を務めた当時、緊急発進するパイロットに、引き金を引くなということを指導したと述べています。「相手に先に撃たせることで初めて、こちらが攻撃を行う正当性が確立されるのだと指導しました。相手に先に撃たれて脱出することは批判をされるし恥辱でもあるだろうが、その覚悟と忍耐によって日本の正義が保証されるのであればパイロットは真のヒーローたりうるのだ。そう説きました」と語っています。大変重い発言です。

 林氏は、当時の指導について、「司令の権限を越えた指導であり、処分を覚悟した行動でした。国を危うくする蓋然性がある以上、自衛隊の行為で戦争を誘発させないよう職を賭しても努めるべきだと考えた結果です。」と述べています。

 問題は、現場の指揮官がこうした並々ならぬ覚悟で、引き金を引くなと指導している中で、当時、防衛庁の本庁では一体何を考えていたのか。

 配付資料の二枚目です。皆さんにお配りしている、これです。

 二〇〇五年四月八日付の産経新聞の一面の記事であります。一九九三年末から一九九四年にかけて、防衛庁では、当時、「北朝鮮のミサイル基地を「先制攻撃」する作戦を検討、航空自衛隊の戦闘機による攻撃のシミュレーションを行っていた」とあります。「その内容は、北朝鮮沿岸部に近いミサイル基地で「ミサイル発射が迫っている」との前提状況で、空自のF4要撃戦闘機、F1支援戦闘機が石川県小松基地や鳥取県美保基地から北朝鮮に飛行。目標に関する情報や敵の地上レーダーの攪乱などで米軍の支援を受けながら、高高度で接近、低高度でミサイル基地を攻撃、再び高高度で離脱する「ハイ・ロー・ハイ」による作戦シミュレーションだった。」と報じています。

 この産経新聞の報道が出た日に行われた当時の大野防衛庁長官の会見概要が資料の三枚目であります。大野長官は、報道の事実関係について問われ、「そういう事実があったかどうかチェックをいたしまして、あっただろうという報告でございます。」と答え、報道が事実だと認めています。

 浜田大臣、改めて聞きますけれども、当時、防衛庁では、一九九三年末から一九九四年にかけて、北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃する作戦を検討していたことは事実ですか。

浜田国務大臣 お尋ねの件については、当時の防衛庁は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという任務遂行の観点から、平素から各種の研究を実施しており、北朝鮮の弾道ミサイル、ノドンの試射、核開発疑惑が問題となった一九九三年から一九九四年の当時においても、任務遂行の観点から種々の研究を行ったと承知をしております。

 その上で、北朝鮮のミサイル基地を攻撃する作戦を検討したとの報道の事実関係については、二〇〇五年四月十五日の衆議院安全保障委員会において、当時の大野防衛庁長官が、「研究項目、研究内容などにつきましては、事柄の性質上、明らかにすること、このことは差し控えさせていただきたい、」と述べたとおりであります。

穀田委員 要するに、認めたことは事実なんですよね。そうですよね。

 つまり、問題になった新聞の記事について、その当日の会見で、当の防衛庁長官が事実だと認めている。今あったように、詳細は言わないけれども、それは事実だということですわな。それでいいですよね。

浜田国務大臣 当時の大野防衛庁長官の記者会見における発言については、いろいろ研究していたことは事実であるとの趣旨を述べたものであり、敵基地攻撃の可能性について研究を実施していたか否かについて述べたものではないと承知をしております。

穀田委員 事実はお認めになったと。

 問題は、今、任務遂行に関わってといいますけれども、種々の検討といいますけれども、結局のところ、いわば、この文書にありますように、先制攻撃、そういう事実であったということを当時の防衛庁長官は述べておられる。

 結局、政府はこれまで、反撃能力を含め、我が国の防衛政策は特定の国や地域を念頭に置いたものではないと説明をしてきました。ところが、北朝鮮という特定の国を想定した攻撃を研究していた。しかも、その攻撃は米軍の支援を受けながら行うことを想定していた。

 記事には、「内局が陸海空各幕僚監部に「有効な方策の有無」を極秘に検討させた」とありまして、先ほど大臣が述べた二〇〇五年の四月十五日の安全保障委員会では、「防衛局長、統幕議長の指示のもと、当時の防衛局、統合幕僚会議事務局を中心に実施した」と書いておることは事実であります。

 だから、部内研究というけれども、そういう意味でいうと、そういう研究は、種々のことをやっているということだけれども、それこそ、内容は、政府自らが憲法上も国際法上も許されないとしてきた先制攻撃ではないかということは明らかだと思います。

 私は、そこで、もう一つお聞きしたいと思うんですけれども、部内研究がやはり極めて大事な問題をやっていたということは明らかではあるわけです。問題は、次に、集団的自衛権の行使との関係であります。

 今回の安保三文書では、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことが明記されました。ここに現実的危険があります。

 浜田大臣、防衛省は安保法制の審議の際、存立危機事態に該当する状況は同時に武力攻撃事態などに該当することが多いと説明してきました。

 日本が集団的自衛権を行使した場合、その後、相手国から日本が武力攻撃を受けることはない、日本に被害が及ぶことはないと言えますか。

浜田国務大臣 存立危機事態に該当する状況は、武力を用いた対処をしなければ、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様の深刻、重大な被害が国民に及ぶことが明らかな状況であり、我が国としては、我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、武力の行使の三要件に基づき、武力を行使して対処することになります。

 その上で、我が国が限定的な集団的自衛権を行使した場合に具体的にそのような状況が生じるかについては、個々の事態ごとに異なると考えられることから、一概にお答えすることは困難であります。

 一方で、これまで、存立危機事態に該当する状況は同時に武力攻撃事態等に該当することが多いと説明してきているとおり、我が国が限定的な集団的自衛権を行使した後、事態の推移によっては、存立危機武力攻撃を行う他国から我が国に対する武力攻撃が発生し、我が国に被害を及ぼす場合もあり得ると考えております。その場合には、こうした武力攻撃を排除するために必要な措置を取ることとなります。

穀田委員 今、日本が集団的自衛権を行った場合、その後、相手国から武力攻撃を受け、日本に被害が及ぶことがあるということを認められたことは非常に重大な答弁だと私は思います。

 つまり、日本は武力攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカが始めた戦争を存立危機事態と認定して集団的自衛権を行使する、敵基地攻撃能力を使って自衛隊が相手国の領域に攻め込む、その結果、日本は相手国から報復攻撃を受け、国民に被害が及ぶということになるわけです。ここが大事なんですよ。

 今おっしゃったように、他国から我が国に対する武力攻撃が発生し、我が国に被害を及ぼす場合もあり得るということをお認めになったことは極めて重大と言わなければなりません。

 更に伺いたいと思います。

 日本が集団的自衛権を行使したその後に、相手国から日本に対する武力攻撃が発生した場合、大規模な被害が生じることも完全に否定できないのではありませんか。

浜田国務大臣 存立危機武力攻撃を行う他国から我が国に対する武力攻撃が発生し、我が国に被害を及ぼす場合もあり得ると考えておりますが、具体的にどのような被害が生じるかについては、攻撃の規模の大小、期間の長短や、攻撃が行われる地域、攻撃の態様等も様々であることから、一概にお答えすることは困難であります。

 その上で、我が国に対する武力攻撃が発生した場合、自衛隊としてはその被害を局限すべく全力で対処することになりますが、あくまで一般論ということで申し上げれば、大規模な被害が生ずる可能性も完全に否定できるものではないというふうに考えております。

 このため、そもそも我が国に対する武力攻撃が発生しないよう、抑止力を強化することが重要であると考えております。

穀田委員 今答弁がございましたように、大規模な被害が生ずるという可能性もおっしゃられた。だから、日本が武力攻撃を受けた場合、大規模な被害が生じる可能性があると認められた。これも私は、驚くべき、極めて重大な答弁だと思います。しかも、相手国から攻撃を受ければ、その攻撃を排除するために必要な措置を取る、更なる攻撃を行うと答弁される。

 結局、こうなりますと、まさに全面戦争ということになる、日本の国土が焦土化し、廃墟と化すおそれがあるということが現実のものに、今我々としては直面している、そういうことを考えているということなんですよね。

 そういう、今日、私、質問したのは、二つの点を言っているわけですよね。やはり、相手国によってそういう大規模な被害が生じるということと併せて、現実的な危険を、武力攻撃を排除するために必要な措置を取るという二つの点は述べているということは、今回の質問で明らかになったと思います。

 私は、先ほど述べたように、相手国から武力攻撃を受け日本に被害が及ぶことがあるということと、その場合、大規模な被害が生じるということと、それと、さらにそういう意味でいうと、排除するためには必要な措置を取る、更なる攻撃を行うということでいうと全面戦争になる、この三つの問題が極めて明白になったと思っています。

 私は、沖縄の問題について一言述べておきたいんですけれども、沖縄の琉球新報社とそれからJX通信社が先月に行った世論調査では、安保三文書で打ち出された防衛力強化の方向に対して、過半数の五一%の県民が支持しないと回答しています。敵基地攻撃能力の保有にも五五%が反対、敵基地攻撃能力の保有によって周辺国との緊張が高まるとの回答も六一%に及んでいます。

 このように、世論調査では、敵基地攻撃能力が地域の緊張を生み、不測の事態に巻き込まれることへの強い懸念が示されている。私は当然だと思うんですね。

 大臣は、こうした沖縄県民の懸念をどう受け止めているか、一言。

浜田国務大臣 沖縄は、さきの大戦で悲惨な地上戦の舞台となり、県民は筆舌に尽くし難い苦難を経験をされました。戦後も、復帰まで長い年月を要し、県民は多大な苦労を味わった。このような歴史は決して忘れてはならないと思います。

 有事において沖縄が攻撃されるとの懸念もあることは認識をしております。我が国を取り巻く安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中で、南西地域の防衛体制を目に見える形で強化し、抑止を高めてまいりたいと考えております。

穀田委員 世論調査には、今大臣もお話があったように、一連のこの間のあの戦争の時代の教訓、事実、これが深くしみ込まれています。かつての沖縄戦のような惨状を二度と繰り返してはならないという県民の切実な願いが表れています。そうした願いと全く真逆の方向に日本が進んでいることへの不安と憤りの、これが表明だということに私は思いを致さなければならないと思います。この世論調査の現実は、極めて深刻な皆さんの意見を私は反映していると思います。

 安保法制を審議した二〇一五年六月二十二日の衆議院特別委員会で、当時、その委員長は大臣ですよね。阪田雅裕元内閣法制局長官は、集団的自衛権の行使は、「国民を守るというよりは、進んで国民を危険にさらすという結果しかもたらさない」と指摘しましたが、まさに日本国民を危険にさらすことになる。

 安保三文書は、日本を守るどころか、アメリカの戦争に日本を巻き込む、日本に戦火を呼び込み、甚大な被害を及ぼすものにほかならない、そのことが今日の議論で明確になったと思います。

 私は、安保三文書の閣議決定の撤回を強く求めて、質問を終わります。

根本委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。

 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大阪五区、大石あきこです。

 まず、岸田政権による今国会の予算案は、異次元の少子化対策と言っていますけれども、その実、異次元の売国棄民予算である、そのことをはっきりさせ、国民の皆様にこのままでは駄目だと立ち上がっていただきたいと思い、質疑を行います。

 その前に、これだけは述べておきます。

 先日、二月三日、旧優生保護法の熊本地裁での違憲判決に対し、国はあろうことか控訴を行いました。優生思想の下で障害者に不妊手術を強制し、深刻な被害をもたらした、国による人権侵害。真摯な謝罪と補償を求められているのに、それを裏切りました。国の控訴に抗議します。

 岸田政権は、今、その同じ手で、この国に生きる多くの人々の権利を奪い、棄民にしているんです。二月四日に更迭された荒井秘書官の性的少数者や同性婚への差別もその一つの表れです。

 さて、本日は、棄民政策の中でも、国が放置し続け、崩壊している学校現場、学校の先生、教員が足らなさ過ぎる問題についてです。

 今、教育現場で何が起きているでしょうか。パネル二を御覧ください。

 今の小中学校の先生の平均の残業時間、過労死ラインの月八十時間を超えた状態です。文科大臣、この状況をどのように受け止めていますか。

永岡国務大臣 大石議員にお答え申し上げます。

 平成二十八年度の教員の勤務実態調査等を踏まえた推計では、時間外勤務については、小学校で月五十九時間、中学校で月約八十一時間程度であると認識をしております。

 また、毎年行われております、全国の都道府県、市町村教育委員会を対象にいたしました、実施している別の調査結果におきましては、時間外勤務は改善傾向にあり、働き方改革の成果が着実に出つつあるものの、依然として長時間勤務の教職員も多く、引き続きまして取組を加速をさせていく必要がございます。

 今後は、本年度実施の勤務実態調査におきまして教師の勤務実態等をきめ細かく把握をし、そして、その結果等を踏まえまして、教師が教師でなければできない仕事に全力投球できるよう、環境の整備を図ってまいります。

大石委員 このような答弁で、本当に、じゃ、来年、この不法状態とも言える状態、過労死ラインを超えている状態を改善できるのかなと思う先生はいらっしゃらないと思うんですね。すごく危機的な状況なんです。

 先ほどの資料の数字も、あくまで平均です。お答えになった、中学校で月八十一時間、過労死超え、これはもっと多い人もいるわけですね、平均ですから。家での持ち帰り残業など、数字に表れない残業もあります。

 この結果、何が起きているか。今、精神疾患で学校を休んでいる教員がどのくらいいらっしゃるのかが、このパネル三です。

 精神疾患で休職中の教員、二〇二一年度には五千八百九十七人、一か月以上の病気休暇者を含めると一万九百四十四人です。教員の数自体は減っている中で、病休者の数は高止まりしている。若い人の退職者も増えているといいます。精神的に追い詰められている人の数といえば、この何倍もおられるでしょう。

 そして、今、異次元の教員未配置が起こっているんですね。先生が体調を崩したり産休などで休みを取っても代わりの先生が来ない、これが常態化しているというんです。学校内で待機児童、待機生徒が続々と生まれている、このことを皆さんは御存じでしょうか。

 やむを得ない措置として、免許外の先生が教育委員会が出す臨時の免許で教えてしのいでいるという、体育の先生が数学を教えたり、美術の先生が英語を教えるのが当たり前だというんです。中学校の免許を持っている人に臨時で小学校の免許を与えたり、果てには、教育免許を持っていない人にも臨時免許を与えようという方向になっている。これは大臣、御存じですか。

永岡国務大臣 そちらのお話がどういうところの、教育委員会等からのお話かということは存じ上げませんので、申し訳ありませんが、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

大石委員 大臣が御存じないということでは、この実態は改善されるんでしょうか。

 実態調査されますか、このことについて。

永岡国務大臣 全国的な教師不足の実態につきましては大変憂慮をする状況であるということを危機感を持って受け止めております。

 文部科学省の実施の調査におきましては、年度当初の実際に学校へ配置されている教師の数が、各教育委員会におきまして配置することとしている数を満たしておらず、欠員が生じる状態を調べたものでございます。各教育委員会において工夫をして教員を配置した場合、その数は欠員には含まれておりません。

 なお、今年度後半の教師不足の状況につきましては、具体的な数については調査は行っていないものの、文部科学省が各教育委員会から聞き取ったところ、年度後半の方が深刻化する傾向もあると聞いておりまして、各教育委員会等からも現状も伺いながら、引き続きまして必要な対策を講じてまいります。

大石委員 今お答えになったのは違う質問への回答だと思うんですけれどもね。実態調査はしているということをおっしゃっていると思うんですけれども。

 とにかく実態として、トイレに行く間もなく、際限もなく授業、教育指導が続く。へとへとになって、それで病んでいっているんですね。でも、先生方は、子供に向き合う時間、それから、よりよい教育のための教材の研究の時間が必要なんですが、その時間が取れない。やりたい教育ができないということに絶望する教師が増えているということに危機感を持っていただきたい。

 教員不足は文科省も認識しているはずなんだという質問のお答えであったかと思います、今のは。

 文科省は、教員不足についての実態調査を行っていて、先ほどおっしゃったような、教員の配置予定だったけれども欠員があるということですね。二〇二一年度四月時点での、全国で二千五百五十八人の教員不足というものが文科省の調査結果になったと。だったら、ここは教員を計画的に採用して増やすしかないじゃないですか。

 ところが、文科省は、二〇二一年四月で、実態よりも低い数字なんですけれども、二千五百人を超える教員欠員があったと。でも、その翌年の四月、去年の二〇二二年の四月ですけれども、文科省は三千三百二人の教員の予算を削減しているんですね。増やすのではなくて削減している。

 そして、パネルの四です。去年、三千三百二人教育予算を削った。じゃ、この四月はどうなのか。この四月、どうするつもりなのか。財務省の予算案です。四月からは二千四百七十四人相当の教育予算が更に減らされる。これは、教科担任制で教員を増やしたんだなど、おっしゃっている二千名の増加はあるんですが、そもそも、少子化と学校統廃合などを理由に四千人以上減らしているので、プラスマイナスで二千四百七十四人、またこの四月から減らすという予算案になっています。

 それから、文科省調べの、二〇二一年四月時点の教員の欠員二千五百人という、さっき大臣が説明されていた調査ですね、これも実態が反映されていないというんです。

 民間団体、ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会などによれば、例えば英語の先生が欠員になっても、先ほど出てきました、体育の先生が英語を教えるとやった場合に、これは欠員カウントされないというんですけれども、それで合っていますか。大臣、お答えください。

永岡国務大臣 文部科学省実施の調査では、年度当初の実際に学校へ配置されている教師の数が、各教育委員会において配置することとしている数を満たしておらず、欠員が生じる状態を調べたものでございます。各教育委員会におきまして工夫して教員を配置した場合、その数は欠員には含まれておりません。

大石委員 英語の先生が欠員になったのを体育の先生がカバーしたときに、欠員カウントはされないよという指摘のとおりで合っていますか。

永岡国務大臣 今、そのことを申し上げたと思っております。

大石委員 そうだということで。ということは、これは実態を反映していないと。先ほどお答えになったように、年度の後半はもっと悪化してくるだろうということも、文科省も認めているというか、可能性があるということですから、実態はもっとひどいんだよと、欠員問題は。

 その中で、計画的に教師を育成、採用していこう、そういう構造がなくなっていると考えております。ですので、この問題の解決に必要なことをもっとお伺いしたいと思うんです。

 二〇〇五年までは教職員の定数改善計画がありました。これはなぜ廃止されたのでしょうか。

永岡国務大臣 お答え申し上げます。

 義務標準法の制定以降、これまで中期的な定数改善を行ってきておりまして、直近では、定数改善計画と名づけられた計画は、御指摘の平成十七年度までの第七次定数改善計画となっておりますが、現在も、法律改正を行うなどにより、計画的な改善は行っているところでございます。

 このため、障害のある児童生徒に対する通級による指導等のための教職員定数について、平成二十九年度から令和八年度までの十年計画で基礎定数化を進めているほか、小学校の三十五人学級につきましても、令和三年度から令和七年度までの五年間で計画的な整備を図るなど、計画的なこれは基礎定数の改善に取り組んでいるところでございます。

 加えまして、加配定数につきましても、できる限り見通しを持った改善を図ることが望ましいと考えておりまして、小学校の高学年におけます教科担任制の推進について、令和四年度から四年程度をかけまして計画的に進めているところでございます。

 今後とも、中期的な見通しを持った教職員定数の改善に努めてまいります。

大石委員 そんなに計画的にやっていたら、なぜ二千五百人も欠員が出たんでしょうか。お考えを教えていただけますか。

永岡国務大臣 お答え申し上げます。

 初年度の四月の一日に、これで大丈夫ということでスタートした学年ではございますが、教職員の方々が、やはり、途中で妊娠等があったり、それからあとは、体調不良になりまして欠席ということになる可能性もあるかと思います。

 その場合、以前ですと、これは正規職員の教員ではございませんが、いらっしゃいました。そこのところが、大変今は人員の確保が困難となっているということだと思っております。

大石委員 人員が困難と言いますけれども、教育予算を減らしているということが大きいと思いますし、それから、計画的な育成、採用というものをやめていったということが大きいと考えております。

 ですので、この教職員定数改善計画、復活させるべきだと私は考えます。構造的な問題があるからです。

 二〇〇五年までは、教職員定数改善計画の中で、小学校は計画的な教員の育成と採用をやってきました。でも二〇〇五年以降は、市場原理に任せ、その時点で調達するとなっていったんです。

 この背景として、小泉政権の三位一体改革があります。建前は地方自治の推進でしたが、現実には予算削減であった。財政が厳しくなったとして、教職員給与が削減のターゲットになっていった。人件費を削る、規制緩和を進める中で熱心にやったことは、結局、先生の賃下げであり、非正規化です。このようにして、国は金を出さない、地方は国と戦わずに予算削減に屈する。そのツケが全て教育現場に回っています。

 ちなみに、その教員に対して、ねぎらうどころか、追い打ちをかけている地方が大阪、維新の会の首長らです。二〇一八年当時、大阪市長をしていた吉村現知事は、大阪市内の学力テストの結果に逆切れ、教員に向かって、万年最下位でいいと思うなよなどと汚い言葉で罵り、来年は教員評価に反映するなどと言って、教員を脅したんです。

 大阪の例は最たるものですが、国が責任を持ってこの構造的問題を変えなくてはいけません。小泉構造改革の影響を受けた悪循環、その結果として、教員の過密労働の現状があります。

 文科省に伺います。小学校、中学校の先生の週当たりの担当こま数、それぞれ何こまですか。

永岡国務大臣 学校教員統計調査によりますと、令和元年度における公立小学校の授業を受け持つ教師の週当たりの平均授業時数は二十四・六こまでございます。中学校につきましては十八・〇こまとなっております。

 一人の教師が担当する授業時数につきましては、各学校の教師の配置状況、また、各教師が担当する教科などによって異なってくるところでございます。したがいまして、一概に多いか少ないかということを申し上げることはできませんが……(大石委員「結構です。こま数を聞いているので」と呼ぶ)

根本委員長 大臣、簡潔に。

永岡国務大臣 各教育委員会や各学校におきまして、特定の教師に過度な負担が生じないように配慮しながら、柔軟に対応するべきものと認識をしております。

大石委員 長い回答はやめていただけますか。

 パネル五にありますように、またお答えのとおり、小学校で週二十四・六こま、これは、一年平均で、約五こま、日で平均で五時間も授業をしているということです。民間の試算ではもっと多いんだという試算もあります。このような、ひたすら授業をする、続けるしかない日常だと現場の悲痛な声が上がっている。だからこま数を減らす、そのためにも、教員定数は増やさなきゃいけない。

 大体、これは一・五倍ぐらいにしなきゃいけないんだという現場の声があります。どのぐらいお金がかかるでしょうか。

 資料八です。教員を一・五倍にするために必要な予算、これは計、年間約二兆一千四百億円の追加となります。先ほど、教師のなり手がないんだ、欠員が、ないんだと政府は言い訳しましたけれども、教育予算削減、小泉構造改革以降、今なお続いている問題です。だから、教員を計画的に採用する仕組みを取り戻さなければいけないんです。取り戻すためには、あとはお金の問題。合計二兆円程度……

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから、おまとめください。

大石委員 国には通貨発行権があります。できますよね。お金の順序が今は資本家優先で、防衛費四兆円増額にはゴーサインを出している状況、これを変えなければいけません。今日は総理、来ていないんでしょうか。次に聞いてみたいと思います。

 私たちれいわ新選組は、岸田政権の異次元の売国棄民予算を許さずに、真の子供支援のため、大幅な教員予算増加を求めてまいります。

 終わります。

根本委員長 これにて大石君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る八日午前八時五十五分から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.