衆議院

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第8号 令和5年2月8日(水曜日)

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令和五年二月八日(水曜日)

    午前八時五十七分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 小林 鷹之君 理事 中山 展宏君

   理事 古川 禎久君 理事 堀井  学君

   理事 牧原 秀樹君 理事 大西 健介君

   理事 後藤 祐一君 理事 青柳 仁士君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊東 良孝君    伊藤 達也君

      石破  茂君    石原 正敬君

      今枝宗一郎君    今村 雅弘君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小田原 潔君

      大野敬太郎君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    下村 博文君

      鈴木 隼人君    田中 和徳君

      辻  清人君    土屋 品子君

      中村 裕之君    平沢 勝栄君

      藤井比早之君    古屋 圭司君

      牧島かれん君    三谷 英弘君

      宮下 一郎君    八木 哲也君

      保岡 宏武君    山本 有二君

      若林 健太君    鷲尾英一郎君

      岡本あき子君    源馬謙太郎君

      神津たけし君    西村智奈美君

      野田 佳彦君    野間  健君

      馬場 雄基君    藤岡 隆雄君

      太  栄志君    本庄 知史君

      森山 浩行君    山田 勝彦君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      渡辺  創君    阿部  司君

      浅川 義治君    池畑浩太朗君

      小野 泰輔君    金村 龍那君

      高橋 英明君    中司  宏君

      堀場 幸子君    掘井 健智君

      山本 剛正君    吉田とも代君

      庄子 賢一君    中野 洋昌君

      鰐淵 洋子君  斎藤アレックス君

      赤嶺 政賢君    宮本  徹君

      緒方林太郎君    吉良 州司君

      大石あきこ君    櫛渕 万里君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   総務大臣         松本 剛明君

   財務大臣         鈴木 俊一君

   文部科学大臣       永岡 桂子君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   経済産業大臣       西村 康稔君

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (こども政策担当)

   (少子化対策担当)    小倉 將信君

   国務大臣

   (全世代型社会保障改革担当)           後藤 茂之君

   国務大臣

   (経済安全保障担当)   高市 早苗君

   国務大臣

   (地方創生担当)     岡田 直樹君

   財務副大臣        井上 貴博君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  加野 幸司君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局次長)      七條 浩二君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   松浦 克巳君

   政府参考人

   (内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局審議官)         内田 幸雄君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室次長)          柳   淳君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房故安倍晋三国葬儀事務局長)    原  宏彰君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房経済安全保障推進室次長)     品川 高浩君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   榊  真一君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    渡邊 国佳君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  吉川 浩民君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    齋藤 通雄君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          藤原 章夫君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            池田 貴城君

   政府参考人

   (文化庁次長)      合田 哲雄君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     中原 裕彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            横島 直彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 宇野 善昌君

   政府参考人

   (国土交通省国土政策局長)            木村  実君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  天河 宏文君

   政府参考人

   (観光庁次長)      秡川 直也君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    土本 英樹君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月八日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     岩田 和親君

  岩屋  毅君     今枝宗一郎君

  熊田 裕通君     藤井比早之君

  下村 博文君     小田原 潔君

  鈴木 隼人君     石原 正敬君

  牧島かれん君     中村 裕之君

  三谷 英弘君     若林 健太君

  藤岡 隆雄君     馬場 雄基君

  本庄 知史君     野田 佳彦君

  森山 浩行君     野間  健君

  吉田はるみ君     岡本あき子君

  阿部  司君     金村 龍那君

  池畑浩太朗君     小野 泰輔君

  掘井 健智君     堀場 幸子君

  宮本  徹君     赤嶺 政賢君

  緒方林太郎君     吉良 州司君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     鈴木 隼人君

  今枝宗一郎君     工藤 彰三君

  岩田 和親君     今村 雅弘君

  小田原 潔君     下村 博文君

  中村 裕之君     牧島かれん君

  藤井比早之君     熊田 裕通君

  若林 健太君     大野敬太郎君

  岡本あき子君     吉田はるみ君

  野田 佳彦君     本庄 知史君

  野間  健君     森山 浩行君

  馬場 雄基君     神津たけし君

  小野 泰輔君     浅川 義治君

  金村 龍那君     中司  宏君

  堀場 幸子君     吉田とも代君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

  吉良 州司君     緒方林太郎君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     保岡 宏武君

  工藤 彰三君     岩屋  毅君

  神津たけし君     米山 隆一君

  浅川 義治君     山本 剛正君

  中司  宏君     阿部  司君

  吉田とも代君     掘井 健智君

同日

 辞任         補欠選任

  保岡 宏武君     三谷 英弘君

  米山 隆一君     山田 勝彦君

  山本 剛正君     高橋 英明君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 勝彦君     太  栄志君

  高橋 英明君     池畑浩太朗君

同日

 辞任         補欠選任

  太  栄志君     藤岡 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算、令和五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官加野幸司君、内閣官房行政改革推進本部事務局次長七條浩二君、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長松浦克巳君、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局審議官内田幸雄君、内閣官房内閣情報調査室次長柳淳君、内閣府大臣官房故安倍晋三国葬儀事務局長原宏彰君、内閣府大臣官房経済安全保障推進室次長品川高浩君、内閣府政策統括官榊真一君、警察庁刑事局長渡邊国佳君、総務省自治行政局長吉川浩民君、法務省民事局長金子修君、外務省大臣官房審議官石月英雄君、外務省中東アフリカ局長長岡寛介君、財務省理財局長齋藤通雄君、文部科学省初等中等教育局長藤原章夫君、文部科学省高等教育局長池田貴城君、文化庁次長合田哲雄君、文化庁審議官中原裕彦君、厚生労働省労働基準局長鈴木英二郎君、厚生労働省保険局長伊原和人君、農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、農林水産省農産局長平形雄策君、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹君、中小企業庁経営支援部長横島直彦君、国土交通省大臣官房長宇野善昌君、国土交通省国土政策局長木村実君、国土交通省都市局長天河宏文君、観光庁次長秡川直也君、防衛装備庁長官土本英樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

根本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

根本委員長 本日は、安全保障及び少子化対策など内外の諸情勢についての集中審議を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきますが、まず、総理に、本来の質問の前に二点お伺いをしたいと思います。

 まず一点目です。

 一昨日、トルコ、シリアで発生した地震により、多くの死者、負傷者が発生しております。被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。既に六日の夜には国際緊急援助隊を派遣されたとのことですが、政府としてしっかりした支援をお願いしたいと思います。

 そこで、岸田総理に、政府としての対応策等についてお伺いをしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 二月六日、トルコ南東部において発生した地震によりお亡くなりになられた方々及びその御家族に対し改めて心から哀悼の意を表するとともに、負傷者の方々にお見舞いを申し上げます。

 そして、地震発生当日の六日、私からエルドアン・トルコ大統領に対してメッセージを発出し、亡くなられた方々に心からの弔意を表し、被災された方々へのお見舞いを伝達するとともに、トルコが必要とする可能な限りの支援を行う用意があること、これを伝達させていただきました。

 そのような支援の一環として、既に日本政府としてトルコへの国際緊急援助隊救助チームを派遣したところですが、引き続き、現地のニーズを踏まえ、被害を受けた地域への必要な支援について検討してまいります。

 また、現時点では、在留邦人の生命身体に被害が及んでいるとの情報には接しておりませんが、今後も、現地の被害状況についての情報収集、そして在留邦人の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。

宮下委員 何とぞよろしくお願い申し上げます。

 もう一点は、この度の秘書官の更迭に関連して質問させていただきます。

 岸田総理は、総裁選出馬のときから、持続可能で多様性を認め合う包摂的な社会を目指すことを掲げられ、その後も政策の最重要課題として取り組んでこられました。岸田総理の著書「岸田ビジョン」の中では、「自営業者も、会社員も、働くお母さんも、主婦も、障害のある人も、LGBT(性的少数者)の人も、必ず社会に居場所や役割はあるはずです。」「多様性を認めるからこそ、自分と異なる個性を排除しない、自分と異なる人も仲間として大切にする、そんな一体感のある社会が構築できる」と記載されております。

 そうした中で、先週末、総理秘書官の一人が、性的マイノリティーや同性婚カップルの方々を差別していると受け取られても仕方ない発言を行い、その職を追われるという事態が発生したことは、痛恨の極みであります。

 そこで、岸田総理に改めて、岸田政権の性的マイノリティーの方々等に対するスタンス、考え方を、御自身の著書に込めた思いも含めてお聞かせをいただきたいと思います。また、その上で、今回の総理秘書官の発言をどのように受け止め、今回の人事上の措置を決断するに至ったのか、その辺りの考え方についてもお聞かせをください。

岸田内閣総理大臣 今の政権においては、持続可能で多様性を認め合う包摂的な社会を目指しております。性的指向、性的自認を理由とする不当な差別、偏見、これはあってはならないことですし、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きと生きることができる社会を目指していかなければならないと思っています。

 委員に今触れていただきました私の著書の中で、LGBTを含む様々な方々が尊重され、活躍できる社会像について記述をさせていただきましたが、これは、私自身も、ニューヨークにおいて、小学校時代、マイノリティーとして過ごした経験ですとか、また、これまでお会いした、女性だからとか、それから高齢者だから、LGBTだからという理由でその役割や能力を十分に発揮できなかった、そうした残念な思いをされてこられた方々の思い、こうしたものが土台になっていると考えています。

 私が著書の中で伝えたかったこと、これは、多様な個性を持った人が活力を持ってそれぞれの役割や能力を発揮することこそが経済や社会を元気にしていく、こうした私の政治家としての信念、考え方、これを記したものであります。

 そして、荒井元総理秘書官の一連の発言については、こうした政府の方針とは全く相入れず、言語道断であるということから、総理秘書官としての職務を解くことといたしました。引き続き、多様性を尊重し、包摂的な社会を実現していくという政府の方針について丁寧に説明をさせていただきたいと思っております。

 政府のこうした方針について国民の皆さんに誤解を生じさせたこと、これは誠に遺憾なことであり、不快な思いをさせてしまった方々におわびを申し上げる次第であります。

宮下委員 ありがとうございました。

 それでは、本来の質問に移らせていただきます。

 本日は、新しい資本主義における主に分配の在り方、また、少子化対策や人口減少を乗り越えるための施策などについて質問させていただきます。

 新しい資本主義が目指す成長と分配の好循環のためには、まず、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GXやDXに取り組むことによって成長を実現することが重要であります。そうした観点で見ますと、グローバルにビジネスを展開する多くの大企業は、様々な課題を乗り越えて、円安のメリットも生かして、着実に成長して利益を上げております。中には、大幅な賃上げを表明している企業もあるところです。

 問題は、分配の部分だと思います。もちろん、利益を上げた企業が着実な賃上げを行うことは分配の重要な要素ですが、更に重要なのは、その企業を支える多くの中小企業に分配することだと思います。

 現在、多くの下請中小企業は、円安などの恩恵がなく、原材料価格の高騰の影響ももろに受け、このままでは賃金を引き上げる余力もありません。大企業を支えている下請中小企業のサプライチェーン全体で収益を公平に分配して、物価高に負けない賃上げ原資を確保してもらうためにも、日本の産業全体で価格転嫁が進むよう、政府の後押しが極めて重要だと考えます。

 こうした観点から、中小企業庁では下請Gメン、公正取引委員会ではいわゆる優越的Gメンを全国に派遣して調査を行い、取引価格の適正化を図る努力をされてきました。

 しかしながら、昨年三月と九月を比較しますと、価格転嫁は進んでいるものの、産業全体ではまだ五割程度であり、中には、トラック業界のように転嫁率が二割程度に低迷するなど、いまだ転嫁が進んでいない業種もあり、更なる改善が必要な状態だと考えます。

 もう一つ、こうした企業間の適正な分配を後押しする仕組みとして、パートナーシップ構築宣言の取組があります。

 パートナーシップ構築宣言は、事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上と大企業と中小企業の共存共栄を目指し、発注者側の立場から宣言するものです。この取組が始まったのは二〇二〇年五月ですが、岸田政権が発足した二〇二一年の秋頃から宣言数が大きく伸びてきており、現在は一万八千社を超える企業が宣言しています。大企業も千百社以上が宣言していますが、まだ大企業の一割弱にとどまっており、より多くの企業が宣言していただくことと、また、その宣言の実効性を高めることが重要だと考えます。

 以上を踏まえ、岸田総理にお伺いいたします。

 昨年来、物価高が進む中で、下請中小企業への価格転嫁を進めるために、岸田総理のリーダーシップの下で政府を挙げて強力に転嫁対策を進めていただいていますが、どのような取組によりどのような成果が上がったと認識されているか、また、今後の取組についてもお考えをお聞かせください。

岸田内閣総理大臣 物価高が進む中にあって、中小企業が賃上げの原資を確保できるよう、価格転嫁を進めていくことが重要だと思っています。

 これまで、例えば、毎年九月と三月を価格交渉促進月間とし、交渉と転嫁のサイクルの確立に取り組んでまいりました。また、御指摘のように、大企業と中小企業の共存共栄を目指したパートナーシップ構築宣言は、政権発足時の宣言数約二千社から、関係閣僚による働きかけにより、現時点で一万八千社まで拡大をしております。こうした取組の結果、昨年九月の調査において、価格転嫁率は昨年三月の約四〇%から半年で五%程度上昇するなど、状況は少しずつ好転はしております。

 価格転嫁の状況を更に抜本的に改善するために、中小企業における下請Gメンや公正取引委員会の大幅な増員を行いました。また、昨年末、多数の取引先に対して協議をすることなく取引価格を据え置いている企業十三社を公表するとともに、昨日には、九月の価格交渉促進月間の調査結果に基づき、親事業者約百五十社の交渉、転嫁の状況を一覧にして、これを初めて公表いたしました。

 委員の方から、まだまだ努力が必要だという御指摘がありました。政府においても、この三月に迫る次の価格交渉促進月間でも、体制強化を生かして、交渉や転嫁の状況がよくない親事業者に対する指導助言、これを徹底的に行っていきたいと思います。引き続き努力を続けてまいります。

宮下委員 是非よろしくお願いいたします。

 次に、成長を分配するもう一つの道である、資産所得倍増プランの実現に向けた取組について質問をさせていただきます。

 パネル一を御覧ください。我が国の家計金融資産二千兆円は、半分以上がリターンの少ない現預金で保有されており、年金、保険等を通じた間接保有を含めても、上場株式、投資信託、債券に投資をしているのは一二・四%にとどまっております。これに対して、米国では五六・二%、英国では二四・七%が上場株式、投資信託、債券に投資されております。

 次に、パネル二を見ていただくとお分かりになると思いますが、米国や英国では、中間層でも確定拠出年金などを通じて気軽に上場株式、投資信託等に投資できる環境が整備されており、米国では二十年間で家計金融資産が三・四倍、英国では二・三倍になっている一方、我が国では一・四倍にとどまっているのは、こうした投資環境の違いが背景にあると考えられます。

 ここに一つの試算があります。最も株価が高かったバブルピーク時の一九八九年十二月に日経平均株価に一括で投資して、その後全く何もしない場合と、昨年の十二月まで三百九十七か月、三百九十七回に分けて三十三年間毎年定額の投資をした場合、そして、三番目のパターンは、それを毎年、投資ではなくて銀行に預金した場合、この三つを比較したデータですが、昨年十二月の時価評価をシミュレーションしてみますと、一括投資して何もしないものは、もちろん今の方が株価は下がっていますので、三二・九%減少になります。一方、長期積立投資では七二・三%増加、原資が一・七倍になる、こういう試算があります。一方、積立預金では、増加はしますが、四・五%増加するだけということで、その差は歴然です。

 長期積立投資をすることで、リーマン・ショックやコロナ禍があっても、預金より有利な投資ができるという試算であります。

 このような長期積立投資が行われている米国や英国では、経済成長が個人の資産増加につながり、成長と分配の好循環が実現しているのに対し、現金や預金が多い我が国では、成長の果実を家計が余り受け取っていないということだと思います。

 こうした状況も踏まえまして、岸田総理は、昨年九月に訪米された際にニューヨーク証券取引所で演説され、日本国内の貯蓄から投資への流れを後押しするために、個人投資家を対象にした優遇税制、NISAを恒久化する意向を明らかにされました。

 さらに、岸田総理が会長であります証券市場育成等議員連盟では、昨年十月に議連の決議を取りまとめ、私も事務局長としてその取りまとめに関わらせていただきました。この決議は、第一に、NISA制度の抜本的拡充、恒久化、第二に、確定拠出年金制度の改革、第三に、資産形成に関する金融経済教育の機会提供という三つを柱としております。

 そして、会長代行であります金田勝年先生を先頭に議連の皆様と要望活動を行って、現在国会に提出されている税制改正法案には、NISA制度の抜本的拡充、恒久化が盛り込まれました。具体的には、無税での年間投資上限が百二十万円から三百六十万円に拡大するとともに、非課税保有限度額も総額で一千八百万円までと大幅に拡充されることとなりました。この大改革は総理のリーダーシップにより実現したものであり、岸田総理に敬意と感謝を申し上げます。

 他方、加入可能年齢の引上げや拠出限度額の引上げなどの確定拠出年金制度の改革については、令和六年の公的年金の財政検証に併せて対応することとなっています。米国や英国では確定拠出年金による投資が多いということも踏まえれば、この制度の改革も大切だと思います。

 同時に、先ほど述べた長期積立投資の特性などを幅広い世代の皆様に正しい理解をしていただき、月々の確定拠出年金の運用先を考えていただくためにも、資産形成に関する金融経済教育の機会提供を推進し、中立的立場からアドバイスを行う公的な資産形成教育機関の創設が必要ではないかと考えます。

 こうしたことを踏まえて、新しい資本主義における資産所得倍増プランの意義や今後の取組などについて、岸田総理のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。

岸田内閣総理大臣 新しい資本主義では、賃上げが重要だということを強調させていただいておりますが、賃上げと併せて、貯蓄から投資を進めて、家計の金融資産所得の拡大によって可処分所得を増やすことによって、これを消費の増加につなげて、そしてこれを次の成長につなげていく、こうした考え方に基づいて、昨年十一月に、資産所得倍増プラン、これも取り上げた次第です。

 具体的には、NISAの抜本的拡充や恒久化を実施することにより、中間層を中心とする層が将来にわたって安定的な資産形成を行う環境を整備するということ、また、iDeCoの加入可能年齢を七十歳までに引き上げ、活用可能性を高めるということ、また、金融経済教育を実施するための中立的な組織を設立し、官民一体で戦略的に対応を進めていくということ、こうした取組を通じて、今後五年間でNISAの総口座数と買い付け額を倍増させるとともに、長期的には、資産運用収入そのものの倍増も見据え、国家戦略として資産形成の支援に取り組み、資産形成と成長の好循環、こうしたことを実現したいと考えています。

宮下委員 次に、少子化対策について質問させていただきます。

 現在、希望出生率一・八の実現を目指しているところですが、一言で言えば、これは、結婚したいと考えている方が全員結婚して、持ちたいと思う子供さんの数を全員が持つ、こういうことができればということなんですが、一番の懸念は、実際の結婚をされる方が減っている、未婚率が上昇しているということです。

 若者が結婚しない理由としては、大きく四つ。断トツが、適当な相手に巡り合わないというのが一番多いわけですが、まだ必要性を感じないとか、自由さや気楽さを失いたくない、また、結婚資金が足りないなどが続いております。

 適当な相手に巡り合わないや結婚資金が足りないという問題については、パネル三にありますように、左側の事業は、地域における結婚支援を強力に支援しようという事業、右側は結婚の新生活を支援するという事業であります。住宅に対する支援も含めて支援するということです。

 こうしたいい取組はあるんですが、この取組はまだ一部の自治体にとどまっているのが現状です。今後、更に予算も拡充し、全国の自治体でしっかり取り組むことが必要だと考えますが、小倉大臣の御認識を伺いたいと思います。

小倉国務大臣 お答えいたします。

 これまで、私自身も若者や有識者からお話を伺っている中で、若い世代が結婚しない理由の一つとして、幾つか委員が挙げられた点に加えまして、結婚した後に子供を持つという希望がなかなか見出しづらいからではないかとのお話も聞いてまいりました。

 したがいまして、今まさに子育てをしている方々への支援を充実させることは、これから結婚しようとする若い世代が結婚や出産に希望を持てる社会をつくることにもつながるのではないかとも感じております。

 ただ一方で、これも宮下先生御指摘のとおり、若い世代の結婚をめぐる状況を見ますと、男女共に多くの方がいずれ結婚することを希望しながら、例えば、かつてあったようなお見合い結婚の減少とともに、適当な相手に巡り合わないですとか、あるいは、自宅住まいの方にとってはなかなか引っ越しとか住居費が出ないという、結婚資金が足りないなどの理由でその希望がかなえられていない状況がございます。

 このため、結婚の希望が希望する年齢でかなうような環境を整備することが必要でありまして、厚労省における雇用の安定など若い世代の経済的基盤の安定を図るための取組と同時に、内閣府におきましては、委員に御指摘をいただきました出会いの機会、場の提供、結婚資金や住居に関する支援などの地方公共団体が行う取組を地域少子化対策重点推進交付金により支援をさせていただいております。

 この交付金につきましては、令和四年度第二次補正予算において前年度の約三倍に増額をしまして、結婚に伴う家賃、引っ越し等の経費の支援に関するメニューの対象世帯の所得要件の緩和ですとか、出会いの機会の創出等に関するメニューの補助率の引上げ、また、結婚支援コンシェルジュ事業の追加といった施策の充実を行ったところであります。

 委員からは、まだ一部の自治体にとどまるというような御意見をいただきましたので、より多くの地方自治体にこうした交付金を活用していただけるよう、しっかりと私の責任の下で働きかけをしてまいります。

 引き続き、結婚を希望する方々がその希望をかなえられるような環境整備に全力で取り組んでまいります。

宮下委員 もう一点、夫婦の平均理想子供数と平均予定子供数に乖離がある問題について質問したいと思います。

 理想は二人以上だが予定は一人と答えた御夫婦や、理想は三人以上だが予定は二人以上と答えた御夫婦が理想の子供数を持たない理由としては、やはり、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからという理由と、高年齢で産むのが嫌だから、この二つが大きな割合を占めております。

 お金がかかり過ぎる問題については、児童手当の拡充や教育費支援の拡充が効果を上げることが期待されますけれども、高年齢出産の問題は、初婚年齢や第一児出産年齢が上昇していることが関係していると考えられます。

 この点では、若者が若い時期に結婚できるような環境を整備するために、例えば、従来の年功賃金から、職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給へ移行して、若者の給与を引き上げることや、働く女性が二十代で出産しても育休後に就業を継続してキャリアアップできる環境を整備すること、また、男性の育児への協力の有無が第二児出産の有無に影響するという調査もあることから、働き方改革を通じて男性も育児に協力できる環境を実現することなどが必要だと感じます。

 こうした点について、加藤厚生労働大臣の御見解をお聞かせください。

加藤国務大臣 希望に応じて男女共に仕事と育児の両立が図れる社会の実現、これは大変重要でございます。

 育休後のキャリアアップについて、本人の希望に応じ、相談対応ができるキャリアコンサルタントの養成を行うなど、必要な支援体制の整備を行っていくとともに、全世代型社会保障構築会議の報告書を踏まえ、男女共に、子育て期における長時間労働の是正、柔軟な働き方を可能にする仕組みについても検討していきたいと考えております。

 また、男性の育児への関わりが促進されるよう、昨年十月から産後パパ育休を導入しております。その周知を図り、男性の育休取得も促進してまいりたいと思います。

 また、日本型職務給でありますけれども、これについては、本年六月までに、企業における導入方法を類型化し、モデルを示すこととしております。今後、新しい資本主義実現会議において議論が進められるに当たって、厚労省としても、関係府省と連携をして取り組んでいきたいと考えております。

 これまでも、働き方に関する各種の施策の検討、実施に当たって、経済界にもいろいろ御議論に参画をいただきました。引き続き、経済界を含む関係者の理解と協力を得ながら、一つ一つの政策を丁寧に進めていきたいと考えております。

宮下委員 ありがとうございました。

 次に、人口減少を乗り越えて我が国が持続可能な発展を実現するための方策の一つとしての、輸出の促進について質問をさせていただきます。

 日本の輸出額は、中国、アメリカ、ドイツに次ぐ第四位ですが、人口八千二百万人のドイツの輸出額は日本の二倍以上あり、そこには大きな差があります。かつて、党の中小企業・小規模事業者政策調査会でドイツに視察に参りましたが、ドイツの中小企業の強みは、フラウンホーファーなどの研究機関とも連携しながら革新的な新製品開発を行うとともに、EU全体を市場と捉え、輸出に積極的に取り組んでいることだと感じました。我が国の中小企業も、我が国がCPTPPやRCEPに加盟し、また各国との経済連携協定を結んでいることを生かして、海外への製品やサービスの輸出に取り組むことが必要だと感じております。

 パネル四を御覧いただきたいと思いますが、経済産業省では、新規輸出一万者支援プログラム、また、コンテンツについてはコンテンツ海外展開促進・基盤強化事業、こうした事業に取り組んでおられると伺っております。多くの企業の皆様にこうした支援策を知っていただいて活用いただくことが今は大切だと考えておりますので、支援の具体的内容について西村経済産業大臣に御説明をいただければと思います。

西村(康)国務大臣 宮下委員御指摘のように、中小企業も海外のマーケットを切り開いていくことは極めて重要だというふうに認識しております。このため、今般、初めて輸出に取り組もうとする中小企業の輸出をサポートするための新規輸出一万者支援プログラムを始動したところであります。

 具体的には、全国にあります二千百を超える商工会議所、商工会などに輸出に関心のある企業を御紹介いただいて、そして、ジェトロの専門家がまずカウンセリングを行う、そして、その結果に応じて、輸出をすべきかどうか迷っている企業に対する個別相談や、あるいは、海外向け商品開発に必要な設備の導入、ブランディング、プロモーションへの補助、そして、輸出商社やあるいは海外のECサイトへのつなぎ、こうしたことをジェトロや中小機構が連携して、事業計画の策定、そして、商品の開発から販路開拓までを一気通貫で支援をするということを進めております。昨年十二月十六日にこのプログラムを開始しまして、それ以降、現在までに八百社以上の事業者に登録をいただいております。

 また、御指摘がありましたコンテンツの海外展開の促進につきましても、経産省では、令和四年度、昨年末の第二次補正予算におきまして約二百億円の予算を計上し、予算の中で、海外向けのローカライゼーション、その地域地域で言語を変えたり、そういったことや、プロモーション、こうしたことに係る支援策を盛り込んでいるところであります。

 こうした事業をできるだけ多くの方に御利用いただくために、まさに御指摘がありますように周知広報に努め、中小企業の海外展開の促進を強力に推進してまいりたいというふうに考えております。

宮下委員 もう一つの輸出の目玉は、農林水産物、食品の輸出だと思います。この点、実績として非常に順調に伸びておりまして、二〇二二年の輸出実績は一兆四千百四十八億円、前年比で一四・三%の増加となりました。今後は、二〇二五年二兆円の目標に向けて様々な取組を更に加速させなければならないと考えます。

 また、物流コストの上昇なども踏まえ、サプライチェーンの効率化、高度化を図るとともに、輸出先のニーズも捉えた上で、現地の適正価格での販売を行い、利益の上がる輸出を実現しなければ、日本の農林水産業の発展につなげることができないと考えます。

 こうした現状を踏まえまして、今後の農林水産物、食品の輸出増加に向けてどのように取り組まれるのか、野村農林水産大臣にお伺いをしたいと思います。

野村国務大臣 宮下委員に御答弁を申し上げます。

 今お話がありましたように、昨年一年間の輸出総額は一兆四千百四十八億ということで、十年連続で最高を記録をいたしております。今後、国内の食市場が縮小する中では、やはり、大きく拡大すると見込まれております世界の食市場を、輸出拡大に取り組むことが我が国の国内生産を維持拡大する上で不可欠だというふうに思っているところでございます。

 このため、今お話がありましたように、輸出拡大実行戦略に基づきましてマーケットインの発想の下でやっていきたい、こんなふうに考えておりまして、現在、認定品目団体を中核とした輸出促進を展開しておりますが、現在七団体できております。そして、さらに、輸出支援プラットフォームの体制強化でも六か国でき上がりました。

 こういったようなことを図ることとするほかに、議員御指摘のサプライチェーンの効率化や加工食品の輸出については、生産から流通、販売まで一気通貫のサポートが必要だというのが一点。それから二つ目が、中小の加工食品事業者の連携や、添加物の代替利用促進などに取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

 農水省としましては、二〇二五年二兆円目標の前倒し達成を目指して更なる輸出拡大に向けた支援を進め、我が国の農林水産業の稼ぐ力を強化してまいりたいと思っているところでございます。

宮下委員 農林水産業の輸出、食料安全保障、農業を元気にするためにも重要であります。大臣のますますのリーダーシップに期待をしたいと思います。

 最後に、人口減少を乗り越えるための戦略としての、地方創生とインバウンドの振興について質問をさせていただきます。

 現在、全国の地方では、農林業や物づくり企業など、あらゆる産業で担い手不足に直面していますけれども、コロナ禍を通じてアウトドア志向が高まり、長野県のキャンプ場などもにぎわっております。テレワークの広がりによって地方で仕事をする人が増えたり、また、自然の中で子供を育てたいと移住する人が増えるなど、新たな人の流れも生まれています。

 私の住む長野県では、昨年、二十二年ぶりに流入人口が流出人口を上回ったという報道がありました。一方、一昨年転出超過であった東京二十三区が昨年は転入超過に戻ったという報道もあり、東京一極集中の是正が進んだとは必ずしも言えない状況にあります。相対的に出生率が高い地方で子育てをする人を増やすとともに、交流人口や関係人口、さらにはインバウンドで地方を訪れる人を増やすことが地方創生と地域経済の活性化につながると考えております。

 このうち、特に、訪日外国人観光客の地方への誘客や地方における消費拡大に向けては、移動の利便向上や多言語対応、キャッシュレス対応等の多様な受入れ環境整備の促進が重要と考えます。こうした点について具体的にどのような政策を考えておられるのか、斉藤国土交通大臣にお伺いしたいと存じます。

斉藤(鉄)国務大臣 インバウンドをまず回復させる、そして、回復したインバウンドが地方に行っていただくということが非常に重要だと思いますけれども、地方部における観光地や宿泊施設の受入れ環境の整備、そして、観光と連携した公共交通の利便性の向上など、様々な場面における受入れ環境の整備が必要になってまいります。

 これまで、国土交通省においては、各種の支援策を講じて、観光地や公共交通機関における多言語対応、今宮下委員からお話がございました多言語対応、それからキャッシュレス決済対応、それから無料WiFiの整備などの取組を促進してきましたが、地方部においては更なる改善の余地がある、このように認識しております。

 国土交通省としては、引き続き、令和四年度第二次補正予算、これは予算をいただきました、これを活用して財政支援を行うことによって、インバウンドの満足度向上や消費拡大に資する受入れ環境の整備をしっかりと進めてまいりたいと決意しております。

宮下委員 ありがとうございます。

 人口減少があっても、インバウンドがあれば経済は大きく前に進むと思います。オリンピック前には年間三千万人訪れていたインバウンド、ようやく今年から回復に向かっているというところでありますけれども、将来は、本来の目標であります六千万人も視野に入れて是非とも後押しをお願いしたいと思いますし、そのためには、やはり既存の観光エリアだけでは受け入れ切れませんので、地域を元気にして、地域でどんどん海外の方を受け入れる、それがますます重要だと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 また、地方創生の実現のためには、少子高齢化の中でも快適に暮らせる地域づくりが必要であり、デジタル田園都市国家構想の実現が重要なときを迎えていると感じます。

 パネル五を御覧ください。私の住む長野県伊那市では、地元の企業やイノベーションに取り組む大手企業が参加して開発した、様々なデジタル田園都市国家構想の取組が稼働しております。十種類ぐらいあるんですけれども、今日は、四種類、代表的なところをちょっと拾ってきました。

 例えば、右上のドローンデリバリーと書いたやつですが、これは取組名はゆうあいマーケットと申しますが、地元のケーブルテレビのリモコンで地元のスーパーの商品を数百種類から選んで朝に注文すると、午後に、スーパーマーケットの人がドローンに積み込んで近くの公民館まで飛んでくる、これを地域のボランティアの方が家まで届けてくれる。朝注文すると、お総菜の材料が午後届くという非常に進んだシステムです。

 それから、左上のモバイルクリニックという取組は、ケーブルテレビや電話で診察を予約すると、看護師さんが乗った移動診察車が家の前まで来てくれて、車椅子のまま車に乗り込んで、診察の際には聴診器の音や血圧のデータなどが通信でお医者様に送られて、オンラインで医師と話しながら診察や服薬指導などを受けられるモバイルクリニックという取組であります。既にこのモバイルクリニックは青森県、秋田県、岩手県、島根県などにも広がっているそうです。

 そのほかにも、電話やケーブルテレビで乗り合いタクシーが予約できて、複数のお客様の乗車や降車の順番やルートをAIが計算するAI乗り合いタクシー、右下にあります。

 それから、自動運転トラクターや自動給水栓などを活用したスマート農業など、地域の課題をデジタル技術で解決する様々な取組が行われております。

 伊那市も含め全国各地で進められているデジタル田園都市国家構想の優れた取組について、全国で社会実装を進めるために、岡田大臣には、交付金の活用等により横展開のサポートを是非お願いしたいと考えております。

 また、交流人口、関係人口を増やすために、山村留学や子供たちの農山漁村体験を広げ、第二のふるさとを持ってもらうことは大変重要だと考えています。こうした点についても併せて岡田大臣のお考えを伺いたいと思います。

岡田国務大臣 お答えいたします。

 デジタル田園都市国家構想実現のためには、宮下委員御紹介の伊那市の事例のように、地方公共団体が、地域の実情に応じ、自主的、主体的にデジタル実装を通じた社会課題の解決に取り組むことが重要と考えております。

 本構想の実現を図るために、令和四年度第二次補正予算においてデジタル田園都市国家構想交付金を創設し、令和四年度第二次補正と令和五年度の当初予算案を合わせて、合計千八百億円を措置したところであります。関係省庁と連携し、政策分野を横断的に支援する本交付金の活用等を通じて、各地域の優良事例の横展開の加速化を図ってまいりたいと存じます。

 また、子供の農山漁村体験については、子供の生きる力を育むとともに、将来の地方UIJターンの基礎となることが期待されます。特定の地域と継続的なつながりを持つ関係人口を創出、拡大させていくためにも重要であると考えております。

 デジタル田園都市国家構想総合戦略において、人の流れをつくるという施策として位置づけたところでありまして、関係省庁と連携の下、農山漁村体験に参加する送り側の学校等と、また、体験の実施地域である受入れ側の農山漁村等への支援など、必要な施策をしっかり推進してまいりたいと存じます。

宮下委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。よろしくお願いいたします。

根本委員長 この際、大野敬太郎君から関連質疑の申出があります。宮下君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大野敬太郎君。

大野委員 自由民主党の大野敬太郎でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたことを、理事の先生方には心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず冒頭、トルコで起きた地震に関しましては、被害に遭われた皆様には、心からお悔やみあるいはお見舞いを申し上げさせていただきたいと思います。

 昨年、昨年末でありましたけれども、いわゆる安全保障関連の戦略三文書が改定をされました。今の国際情勢を見ますと、連日安全保障関係の報道がなされているわけでありますし、安全保障の裾野というのが経済あるいは民間の領域に広がっている、あるいは、対処すべき領域というのも宇宙やサイバーといったところにも広がっておりますので、戦略も当然変えるべきでありますし、的確な方向性を三文書ではお示しをいただいたものだと高く、強く支持をしたいと思います。

 そこで、まず冒頭に、総理にお伺いをさせていただきたいと思います。

 戦略三文書は、これからの方向性を示していただいたいわゆるビジョンペーパーでありますが、私、この中身は非常にすばらしい中身が盛り込まれていると認識をしておりますので、全部しっかりとやっていくことが重要なんだ、実現していくことが重要なんだと思いますので、総理には、是非この予算委員会の場で、全部やっていくんだというコミットメントをいただければと思いますし、また、優先順位が総理の中にございましたら是非お示しをいただければと思います。

岸田内閣総理大臣 戦後最も厳しくそして複雑な安全保障環境に私たちは対峙していると言われている中で、伝統的な外交力そして防衛力にとどまらず、経済力あるいは技術力を含む総合的な国力を最大限活用し、三文書に示した施策の実現に早急に取り組んでいきたいと考えています。

 まずは、首脳レベルを含め積極的な外交を展開することによって、我が国にとって望ましい国際環境を実現してまいります。

 同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要であり、我が国への攻撃が行われたとしても我が国が主たる責任を持って対処できるよう、五年後の二〇二七年度までに防衛力を緊急的に強化をいたします。

 また、総合的な国力を活用し、我が国を全方位でシームレスに守っていくという考え方に基づいて、海上保安庁の能力強化ですとか、経済安全保障政策の促進など、政府横断で早急的に取り組んでいく考えです。

 さらに、防衛力の抜本的強化を補完するものとして、研究開発、公共インフラ整備、サイバー安全保障に取り組むなど、総合的な防衛体制を強化いたします。

 そして、三文書は、その内容が実施されて初めて完成するものだと考えています。各政策が戦略的かつ継続的な形で適時に実施されるよう、国家安全保障会議において適切に進捗管理、これも行っていきたいと考えております。

大野委員 ありがとうございます。

 できるだけ前倒しに、粛々、淡々と、的確に、これは実効的な制度整備、設計を行っていただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 私は、特に重要な部分というのは、まさに今、総理がお触れになりましたけれども、実現するためのアプローチの中で、総合的な国力によって我が国が主体的にというか能動的に国際秩序を創出するというふうに書かれている部分でありまして、まさに外交力が中心になっているわけであります。その中で、お触れになられましたとおり、防衛力と経済力、さらには技術力と情報力、これをしっかりと強化をしていくことによって、行き着くところ、外交力によって国際秩序を強化するんだ、こういうことが書かれておりますので、まさに今日は、その外交力を支えるという意味での四つの分野について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、経済力について、特に今日は経済的威圧について取り上げさせていただきたいと思います。

 昨年、西村大臣はG7において経済的威圧について議論をリードいただきましたし、2プラス2でもお触れになられました。また、今年の総理訪米のときにも、日米共同声明でも、この経済的威圧というのをどう取り扱うのかといったことが声明に盛り込まれております。

 まさに、中国やロシアといった国による経済的威圧、これはまさに国際社会にとっては安全保障上の極めて重要な課題であると認識しておりまして、日本もかつて中国によってレアアースの禁輸という経済的威圧を経験したわけでありますが、そのときは、技術力の革新、技術革新によってそれを何とか乗り切ることができたんですけれども、今後は、もちろん対処力というのも必要なんですが、いかにそういうことをさせないという抑止力、これをどうやって持つのか、担保するのか、ここは非常に重要なポイントなんだと思います。

 そこで、西村大臣にお伺いさせていただきたいと思いますが、今年のG7広島サミットあるいは貿易大臣会合にて主要な課題にもなると思いますけれども、外国勢力からの経済的威圧、これにどう対処するのか、あるいは、既存の制度だけで抑止力というものをしっかりと担保できるのか、あるいは、有志国とともに平仄を合わせてどうやって連携をしていくのか、あるいは、もっと言えば国際秩序というのを今後どうやって構成していくべきなのか。これは是非、西村大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

西村(康)国務大臣 非常に重要な御指摘だと思います。

 まさに経済力を用いた威圧行為、いわゆる経済的威圧、これにつきましては、昨年九月にドイツで開かれましたG7貿易大臣会合で、これはもう参加国全て一致して、深刻な懸念を表明すると同時に、まさにそうした行為への備え、抑止それから対処、そのためにG7を始めとする国々で協力することに合意したところであります。

 こうした議論を踏まえて、まさに御指摘のように、本年、日本がG7の議長国を務めますので、その中で経済的威圧への対応についても議論をする予定でございます。

 その中で、経済的威圧の抑止、それから影響緩和の観点から、既存の政策ツールの運用で不足する部分はないのか、あるいは新たに必要な政策的な対応は何か、こういったところを議論を始めているところであります。同志国としっかりと議論をして、連携して取り組んでいきたいというふうに考えております。

 その上で、経済的威圧の抑制のためには、まさに国際ルールの基盤である例えばWTO、これがしっかりと機能していくことが重要であります。WTOのルールメイキング機能を強化するとともに、今止まっております紛争解決機能、これを早期に回復させるべく、WTO改革の議論を主導していきたいというふうに考えております。

 いずれにしましても、国際的な同志国の中で、しっかりと経済的威圧への対応を考えていきたいというふうに思います。

大野委員 ありがとうございます。重要なポイントだと思いますので、是非お取り組みをいただければと思っております。

 経済的威圧以外にも、今、西村大臣は、半導体の分野で、日、米、オランダ等々で国際連携の協議をまさに進められていると思いますけれども、そういった分野。例えば、現在、ワッセナー・アレンジメントなどの国際的な貿易安全保障管理のルールはありますけれども、まさにそれを超えたような領域に、今、時代は差しかかっているんだと思いますので、そういったものを超えたようなことを、是非政府の中で、原理原則はどうするんだというふうなものを定めていただいて、乗り切っていただいて、その次には、やはり国際秩序をしっかりと構築するということで取り組んでいただければと思っております。

 西村大臣は御退席をいただいても結構でございます。

 次に、情報力について、特に今日は経済インテリジェンスについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 経済的威圧もそうなんですけれども、安全保障の裾野が経済分野にまで広がってきて、民間にも関わるようなことになってきたということでありますので、まさに日本全体の、ある種細部に至るようなところまでのリスク管理というのをしっかりとしていかなくちゃいけない、そういう時代になったんだと思います。

 そういった意味では、日本の弱み、チョークポイントというのは把握は必要でしょうし、あるいは、日本が持っているような安全保障に関わるような技術や情報というものを海外の勢力が日本国内である種調査したり、そういったものを、どういうことになっているのかということをしっかりと把握をしていかなくちゃいけない、そういう時代になったわけですね。

 そうしますと、そういった情報というものの収集、分析あるいは集約というものを、ある種、場合によっては実質的な権限も伴った形で、しかも情報の保全体制をしっかりとした上で、政府の各省庁が意識を合わせて一体的に取り組んでいかなくちゃいけない、そう考えておりますけれども、ある種、オール・ソース・アナリシスと三文書では書いておりますけれども、その御認識を松野官房長官にお伺いをさせていただきたいと思います。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 我が国を取り巻く国際情勢が不確実性を増す中、我が国の国益を守り、国民の安全を確保するためには、情報の収集、集約、分析が極めて重要であると認識をしております。

 このような認識の下、これまでも情報コミュニティー各省庁が、内閣の下に相互に緊密な連携を保ちつつ、経済安全保障の分野においても、関連情報の収集、集約、分析体制の強化に取り組んできたところであります。

 昨年十二月に決定されました国家安全保障戦略においても、国際社会の動向について、政治、軍事、経済にまたがり幅広く、正確かつ多角的に分析する能力を強化するため、多様な情報源に関する情報収集能力を大幅に強化するとされていることも踏まえ、体制や能力の強化に向け必要な検討を進めてまいりたいと考えております。

大野委員 ありがとうございます。

 現在、サプライチェーンの強靱化というのはどの国でも結構関心を持っている領域でありまして、ただ一方で、かなり国際化が進んでおりますので、非常に複雑な構造になっております。したがって、把握がなかなか例えばサプライチェーンについては難しいというのがありますが、例えばビッグデータ分析とか、そういった新たな手法も是非検討いただければと思いますし、先ほど触れた保全体制というのも非常に重要なポイントだと思いますので、是非よろしくお願いをしたいと思います。

 それでは次に、技術力について、今日は特に重要技術育成についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど、外交を支える防衛と経済と申し上げましたけれども、このどちらについても技術というものが極めて鍵を握る、そんな時代になりました。すなわち、日本が強みを持てるのかどうかという観点では、非常にその育成、強化というのは重要なポイントなんだと思っております。

 例えば、半導体、AIあるいは量子技術、こういったものは安全保障にも関わるということで、各国がしのぎを削って争っておりますけれども、この部分、経済的な価値と安全保障的な価値、両方持っている場合もあれば、経済的価値がすなわち結果的に安全保障的な価値として理解をされる、こういう部分もあって、その総体として、外交力が総体的に強化される、そういうことになるんだと思います。

 そこで、高市経済安全保障担当大臣にお伺いをさせていただければと思いますが、現在、経済安全保障推進法の中のプログラムに従って、重要技術育成プログラムというのがまさに実行されておりますけれども、関連してシンクタンクの設立がなされるというふうに伺っております。

 このシンクタンク、将来日本がどのような技術力、技術領域に投資すれば、他国からの不当な干渉をされることなく、堂々と国際社会の中で我が国がプレゼンスを発揮でき、維持できるのか。極めて日本の将来にとって命運が懸かっているような、そういった部分になるんだと思うんですね。

 そういった意味で、その中身、このシンクタンクにおきましては、有志国の連携、あるいは、例えば人材の招聘あるいは育成、あるいは、グローバル・スタートアップ・キャンパスも検討されておりますが、そういったものとの連携でありますとか、新しいこの分野に適したようなファンディング機関、こういったものの新設とかも含めて、是非大臣の御認識をいただければと思いますし、また意気込みも是非お示しをいただければと思います。

高市国務大臣 近年、科学技術、イノベーションが国家間の覇権争いの中核を占めつつございます。先端的な重要技術の研究開発ですとか、その成果の活用というのは、我が国の国民生活や経済活動、さらには安全保障にとっても非常に重要でございます。

 このため、経済安全保障推進法に基づきまして、重要技術の研究開発等を強力に支援するため、常に変化する技術動向などに関する調査研究を進めることといたしております。こうした調査研究というのは、知見の蓄積ですとか内外機関とのネットワークの構築、人材の養成確保を図るためにも、中長期的な視点から継続的に行うべきものだと認識をいたしております。

 この一端を担うことが期待されるのが、大野委員がおっしゃってくださったシンクタンクなんですが、その設立に向けまして、その果たすべき機能や役割につきまして、現在、内閣府の下で関係省庁が連携して検討を進めております。

 その際、科学技術政策の一環として、シンクタンクからの情報の政府横断的な活用ですとか、また、研究成果の社会実装の加速に向けた、分野や組織を超えた資金配分機関の連携など新たな枠組みの構築、さらに、シンクタンクとグローバル・スタートアップ・キャンパスとの連携といった要素についても今後検討を深めてまいりたいと思っております。

 いずれにしましても、シンクタンクが魅力ある組織として英知を結集できるように、私としても精力的に検討を進めてまいります。

大野委員 前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 特に、その中でも、連携をしていく、そして各国のエース級の研究者もしっかりと関与をいただいて、かつファンディング機関につきましても、この分野というのはある種特殊で、研究サイドに偏っていてもなかなか難しい、だけれども、産業寄りになっていてもまた難しい、かつ安全保障的な知見、国際政治の分野、こういったものも必要なので、是非お取組をよろしくお願いしたいと思います。

 松野長官と高市大臣におかれましては、もしあれだったら御退出を賜って結構でございます。ありがとうございます。

 それでは次に、お待たせしました、防衛力についてお伺いをさせていただきたいと思います。特に、防衛装備品の開発体制について今日は取り上げさせていただきたいと思いますけれども。

 三文書の中でも、防衛予算、GDP二%を目指していくんだという方向性が示されておりますので、私はこれは大いに賛同するところでございます。

 一方で、多額の予算をお預かりをするわけですから、これはかなり効率的な、効果的な防衛力整備というのが必要になってくるんだと思います。

 日本の防衛産業にとって一体マーケットというのはどこなんだと言われると、当然政府だけですから、マーケットは小さいと一般的には言われています。小さいので、結果的に生産効率というのは当然落ちるわけでありますので、個社にとりましては収益が落ちる。したがって、ある種、撤退を余儀なくされるというケースも最近出てまいりまして、いわゆる安全保障の産業構造のサプライチェーンのリスクというふうに言われている部分であります。

 一方で、研究開発に十分な投資が行われているかというと、ここもこれまではそれほど大きな額の投資が行われてこなかった。したがって、効果的な装備品も開発できない。効果的な装備品が開発できないので海外の調達に頼るという部分がありまして、調達を海外に頼るから、逆に日本のマーケットが小さくなって、また収益が落ちる。こういう構図にこれまではなってきたんだと思います。

 その中で、三文書の中では、それを、抜本的に改善すべき的確な方向性を示していただいたので、大きく私は期待をしたいところでありますが、問題は、例えば、予算を増やしたから効果的な装備品ができるかというと、そうではない。

 あるいは、私は、防衛装備品の移転につきましては、むしろ積極的にやっていくべきだ。これは、なぜならば、その本質は、同盟の強化あるいは国際秩序の強化につながってまいりますので、基本的には推進をするべきだということなんですが。海外に売ったからといって、個社が、収益が改善されるかというと、例えば、先ほど宮下先生が農業、農産品の輸出にお触れになりましたけれども、過去から比べれば何倍もなっている中で、じゃ、農家の収益がそれだけ伸びているのかという問題に触れますと、これは容易に想像できるわけであります。

 したがって、ポイントは、産業政策を本格的にやれるのかどうかということに私は懸かっているんだと思うんですね。ここ最近、防衛省は、産業政策、かなり本格的にやり始めた、こういうふうに認識をしておりますけれども、今、この防衛予算が、まさに抜本的に増やす方向になってきた今の時点で、産業政策をある種本格的にやれるような、研究開発から、技術ベースの戦略立案、そして整備計画、こういったものまで、一連の流れを紡ぎ出せるような、そういった組織体制をしっかりと今の時点で構築していくべきだと認識しておりますけれども、大臣の御見解、御認識をいただければと思います。

浜田国務大臣 今回、防衛省は、必要となる防衛力の内容を積み上げ、五か年で四十三兆円程度という防衛費の規模を導き出していますが、議員御指摘のとおり、これから予算を効率的、効果的に執行していくことが必要不可欠であります。これに際し、装備品のライフサイクルの各段階を担っている防衛産業の基盤強化を進めることが重要と考えております。

 こうした観点も踏まえ、先月、私の下で防衛力抜本的強化実現準備本部会議を開催をし、内部部局、各幕僚監部、防衛装備庁を挙げて全省的に事業の執行を管理、推進していく体制を整えましたが、御指摘も踏まえ、防衛省における研究開発から防衛力整備までの組織の在り方については不断に見直しを行ってまいりたい、このように考えております。

 防衛産業は、いわば防衛力そのものと位置づけられております。装備品を、一体不可分でありますので、御指摘の収益性の問題や知的財産の問題等、企業とよく対話をして、双方が持続可能な形で、出口を見据えながら進めていくことが必要と認識しております。そのためにも、私自身、先月、プライム企業十五社と意見交換を行ったところであります。

 いずれにせよ、防衛省としては、事業の迅速、適切な実施や国内防衛産業の維持強化を図って、防衛力の抜本的な強化を実現していきたいと考えております。

大野委員 前向きな答弁、ありがとうございました。

 ちなみに、防衛予算が増えても海外調達が増えるだけじゃないかという御指摘が一部にあるんですけれども、実は、初年度は当然ばっと増えていく、全体の二割、三割ぐらい増えていくんだと思いますけれども、ただ、整備計画全体の、長期の中で、契約ベースでいくと、恐らく一割ぐらいに収れんされると思っておりますので、是非、そういった取組をしっかりとやっていただいて、産業政策の取組をしっかりやっていただいて、そして、先ほど申し上げたような移転についての本質、これは何をやろうとしているのかという本質が国民の中に共有できれば、より一層効果的、効率的な予算の執行というのができていくのだと思いますので、是非、政府全体でお取り組みをいただければと思いますので、よろしくお願い申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

根本委員長 この際、石原正敬君から関連質疑の申出があります。宮下君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石原正敬君。

石原(正)委員 おはようございます。自由民主党の石原正敬でございます。

 本日は、予算委員会の集中審議ということで、先輩方あるいは同僚議員の御理解によりましてこの機会を得ましたことを、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 さて、一昨日、トルコ共和国で大きな地震がありまして、お亡くなりになった皆さん方にお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆さん方に心からのお見舞いを申し上げます。

 日本政府も、緊急国際援助隊というものを編成して、現地にいち早く駆けつけたと聞いております。この後、更なる支援が必要になろうかと思いますので、現地での情報収集を含めて、しっかりとした支援をしていただくよう期待するところでございます。よろしくお願いします。

 さて、質問に入らせていただきます。

 私は、衆議院議員になる前は、三重県北部にあります菰野町という人口四万人の町の町長をしておりました。

 それを踏まえて今日は質問するんですけれども、結論的なことを先に申し上げますと、一つは、都道府県や市町村が今、子育て施策、様々行っています。まず、これをしっかりと調査研究をして、そして、政府としてやれること、そしてまた政府として支援すること、これをしっかりやってほしいというのがまず一つでございます。

 もう一つは、やはり社会の変化というものがございまして、当時、事業を始めたときにはそういうような想定をしていなかった、あるいは、社会の変化によって事業そのものが変化してきているという現実がございます。

 例えば、基礎自治体では福祉医療費助成制度というのがございまして、これは当初、乳幼児と一人親家庭と障害者、これに対する福祉的な意味で医療費の援助をしていたというものが、この乳幼児の部分が拡大して、就学前、あるいは小学校卒業まで、あるいは中学校卒業まで、そして今では、十八歳までそれを引き延ばそうというような市町村も出てきました。

 これは、最初、セーフティーネット、福祉として始まったものが、いつの間にか、時間の経過を経て、子育て支援策というような形で拡張していった。この拡張の是非については私はここで申し上げるつもりはございませんけれども、やはり最初に事業の目的があったわけです。

 その事業の目的をきちっと明確にしていくことが、すなわちこれが説明責任だと私は思いますので、社会の変化によって変わってきた、こういうことをもう一度、再度見直して、他の類似した施策、あるいは、ほかの様々な多種多様な施策を行っています、市町村がやったり政府がやったり、それを整合性を持つ形で再構築するのが、まさしく次元の異なる少子化対策、これだと私は思っています。

 これは、児童虐待の相談件数、平成二年度以降のグラフなんですけれども、増加の一途をたどっています。当初想定していなかったこういった新たな社会問題、これから先も出てくるかも分かりませんけれども、こういったことが出てきたときは、今まで行ってきた事業をもう一回見直して総合的に検討し直す、こういう視点も必要かと思っております。そういう観点から、今日はここで質問をさせていただきたいと思います。

 総理と私、実は、衆議員になる前に御縁をいただいていまして、東海ラジオという東海地方の局で私は「石原まさたかの痛快!風雲放談」という番組を持っておりまして、そこにゲストとして総理に来ていただきました。これは二年前なので、総理になる前なんですけれども。

 その際に、生意気ながら、ラジオパーソナリティーとして、政治家岸田文雄さんはこれから国家のために何を役割を果たしていきますかという、今では到底聞けないような質問をさせていただきました。

 そのときに、当時の衆議院の岸田文雄さんは、資本主義の在り方を見直す、そして、分配というものに着目しながら貧困と格差についてしっかりと対策を練りたい、こういうことを述べられたということであります。

 そして、そのときから二年たったわけでありますが、立場も総理という立場に変わられて、この貧困と格差に加えて更に重要な点、あるいは、それを更に深掘りした形で、今、現時点で何か、子供、子育て支援策で大切なこと、そういうようなことがあれば御答弁願いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 委員御指摘のように、一昨年でしたが、委員がパーソナリティーを務めるラジオ番組に出演させていただいたこと、大変よく覚えています。

 当時は、やはり子供の貧困等が大きな話題になっておりました。経済格差が教育の格差を生み、教育の格差が経済の格差を生む、この負のスパイラルなどというのが話題になっていた、そうしたことがラジオ番組の中でも話題になったのを覚えています。その中で、新しい経済モデル、新しい資本主義という経済のモデルを考え、資本主義ですから、もちろん成長はしなければならない、しかし、それをどう分配するかが、そうした格差の問題にも通ずるところがある、こういった話をさせていただいたと記憶をしています。

 そして、この分配、人への投資ですとか、あるいは企業における設備投資そのものも、大切な次の成長につながる分配だというふうに思います。こうした様々な分配の中で、特に若い人たちの所得、それから多くの方々の賃上げ、こうした点は子供、子育て政策の中においても大事だと考えています。

 特に、子供、子育て政策、この十年、二十年の歴史を振り返ってみますと、社会の変化の中で、強調される政策、求められる政策、これは刻々と変化してきたと思います。

 その中で、特に最近は経済的な支援を求める声が高まっている、こういった変化も感じています。そして、若い人たちの所得、賃上げ、これはその中でも特に大きな声であり、そして、子供、子育て政策に大きな影響のある課題であると感じています。

 もちろん、それを、そうした経済的な支援を生かすためにも、社会全体で、今まで関与が少ないと言われていた男性や企業を始め、多くの方々が子供、子育てを我が事として考えるような雰囲気をつくっていく、こういった環境整備をパッケージとして打ち出して実現していく、こういった考え方も重要であると考えています。

石原(正)委員 ありがとうございます。

 更に少し、今年の初め、一月四日、伊勢神宮に総理は参拝いただきまして、私も三重県選出の国会議員として同行させてもらいました。

 その年頭記者会見の際、伊勢神宮の中で行われたわけなんですけれども、その際に、総理は、日本経済の新しい好循環の基盤を起動することと、次元の異なる少子化対策に挑戦すること、この二点を挙げられ、少子化については、一つに、児童手当を中心とした経済的支援の強化、二つは、学童保育や病児保育を含め、幼児教育や保育サービスの質、量両面からの強化、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの充実、そして三つに、働き方改革とそれを支える制度の充実、この三点を挙げられ、小倉大臣に指示をするというようなことを表明されました。

 私、昨年の臨時国会から年末にかけて防衛の問題がすごく活発に行われていましたので、この年頭の御挨拶の中で、会見の中で子育てがど真ん中に来たのに少し衝撃を受けたところでございまして、政府の中でいろいろな議論があったんだろうなというふうにして思いました。

 是非ここで、その間、この三つの方向性を示すに至るまでの政府の中の議論等々があれば、総理にお答えいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 急速に進展する少子化により、昨年の出生数は八十万人を割り込むと見込まれ、我が国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況にある、置かれていると感じています。

 要は、この少子化の問題は、社会や経済を維持していく土台の部分にあるわけですから、こうした基本的な問題に正面から取り組んでいかなければならない。そして、その状況を考えますと、こうした子供、子育て政策への対応、これは待ったなしの、先送りの許されない課題である、こうした認識を持ちました。

 そして、理想の子供の数を持てない理由として、例えば子育てや教育にお金がかかり過ぎるからなど、経済的な理由で子供を持てないといった方が相当数いる、こういったことを承知しています。

 そして、それと併せて、昨年十二月に取りまとめられた全世代型社会保障構築会議報告書において、妊娠、出産、子育てを通じた切れ目のない包括的支援を早期に構築すべきであること、また、子育て期の長時間労働の是正、柔軟な働き方の促進、そして育児休業取得の一層の促進、こうした制度的な取組の改善も指摘をされているところです。

 こういったことから、御指摘のように、経済的支援と、サービスの内容の拡充と、そして働き方改革さらにはそれを支える制度、こうした三点につきまして、小倉大臣に対してたたき台の作成の指示をしたということであります。

石原(正)委員 この三つの方向性、非常に興味深く感じているんですが、一つ目の経済的支援というのは、家計といいますか、家庭といいますか、それに対する支援だと。二つ目のサービスの拡充というのは、自治体とか行政に対する支援になると私は思っています。三つ目の働き方改革やそれを支える制度の拡充というのは、これは企業に対する支援だろうというふうにして、私は三つに分けて考えております。

 第一にと、こう出てきますと、第一があって、第一がメインで、第二、第三が補助的な役割かと勘違いする向きもあるんですけれども、私は、第一、第二、第三とも並立的な関係で捉えながら、それを総合的に検討していくというふうにして捉えております。ただ、特に、私は町長経験者ですので、第二の自治体とか行政に対する支援をしっかりとしていただきたいというのが思うところでございますので、引き続きの検討をよろしくお願い申し上げます。

 そして、時間もそろそろ迫ってきたんですけれども、やはり財源の問題は非常に重要でございまして、私も、町の予算を組むときに、やはり歳入歳出を合わせないといけませんので、大変苦労した思いがあります。その中でも、優先順位をつけながら、何とか住民の要望に応えていこうというような努力をしてきました。

 そこで、文科大臣と厚労大臣にお尋ねするんですけれども、所得制限がかかったいろいろな政策があると思います。特に、大学の授業料減免とか奨学金給付の問題、あるいは、厚労省も、障害児に対する手当の問題で所得制限がかかっていると思います。それらの制度の成り立ちとか所得制限の考え方について、簡潔に両大臣にお尋ねします。

永岡国務大臣 石原委員にお答え申し上げます。

 少子化の様々な要因の一つに、やはり教育費のことも指摘されていると承知をしております。

 授業料等減免と給付型奨学金を行います高等教育の修学支援新制度は、住民税非課税世帯に加えまして、これに準じる世帯として、目安を年収三百八十万円程度の世帯までを対象としております。これは、高額な授業料負担がやはり出生率向上のネックとなっていることを踏まえまして、進学率が低い低所得者世帯に限って支援を行うという考えによるものでございます。

 高校でございますが、高等学校等就学支援金につきましては、平成二十六年度に支給対象を年収九百十万円未満の世帯といたしました。所得制限を設けることで捻出いたしました財源を有効活用して、そして、私立高等学校へ通う生徒の就学支援金の加算拡充など、低所得の世帯の支援を拡大しているところでございます。

 教育に係ります経済負担、これを負担することを軽減するために、教育の機会均等、これに努めてまいります。

加藤国務大臣 所得制限を設けるかどうか、委員がお話しのように、個々の制度の目的、支援方法などに応じて、制度の持続可能性あるいは公平性、こういった観点から判断をしております。

 特別児童扶養手当や障害児福祉手当、これは、精神又は身体に障害を有する児童の生活の安定に寄与するとともに、これらの児童の福祉の増進を図るということを目的に支給されることになっております。こうした目的に照らして必要な範囲で支給をする、こうしたことから、制度発足当時から世帯の所得に応じて制限を設けているところであります。

石原(正)委員 ちょっと時間が迫ってまいりましたけれども、今、児童手当の所得制限に議論が集中している部分もございまして、やはり各種、ほかの政策の所得制限も一緒になって考えなければ、もしかすると制度設計自体が大きく変わってしまう、全体の制度設計自体が変わってしまう可能性もございますので、小倉大臣におかれましては、その辺り、ほかのいろいろな所得制限がかかった給付についてもしっかり視野に入れて、総合的な判断を私はしてもらうべきだというふうにして思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 最後なんですけれども、ちょっと時間がございません、要望にさせていただきます。

 先ほど、第二の方向の話、行政の支援をしてくださいよ、基礎自治体あるいは自治体の支援をしてくださいといったことの一つに、やはりマンパワーの問題がございます。現場で働く皆さん方、給付という形、現金という形じゃなくて、人を介したサービスというのは、非常に私はこの子供、子育て支援の中で重要だと思っています。それを主に担っているのが基礎自治体であったり都道府県である。でありますと、やはりそこに対する支援をしっかりしていかなければ、実際、現場がワークしていかないということになります。

 児童虐待の問題もそうですが、これは、保健所とか市町村とかあるいは警察が連携して、今、相談体制を確立して対処をしています。こういうところに対してやはり目くばせをしていかないと、前向きな施策だけやっていても、ちょっとネガティブなといいますか負の部分、そういうところに光も当てていかなければ、社会全体として分断を引き起こす、そういうことも可能性もなきにしもあらずでございますので、前向きな施策、どんどんやっていただきたいと思いますけれども、もう一方で、こういった社会問題化している部分についても光を当てて、それを対処していくのはやはり基礎自治体だ、行政なんだというところも踏まえながら、この三つの方向性をしっかり堅持しながら、最後の最後まで検討いただければというふうにして思っております。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

根本委員長 これにて宮下君、大野君、石原君の質疑は終了いたしました。

 次に、鰐淵洋子君。

鰐淵委員 公明党の鰐淵洋子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 質問に入ります前に、二点発言をさせていただきます。

 二月六日、トルコ南部で大規模地震が発生をいたしました。心からお見舞いを申し上げます。

 地震の被害はトルコ、シリア両国に及び、死者や負傷者等の全容が把握できていない状況でございます。政府として、既に国際緊急援助隊が、第一陣をトルコに派遣しておりますが、今後も、現地の状況に応じて、適時、追加的な支援を行う必要がございます。我が国としてもできる限りの支援、対応をしていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 次に、総理秘書官の差別発言について申し上げます。

 岸田政権は、持続可能で多様性を認め合う包摂的な社会を目指すことを政権の重要課題の一つとして取り組んでいると承知をしております。

 そんな中、性的少数者、LGBTや同性婚をめぐる差別発言で、総理秘書官が更迭をされました。元秘書官の発言には強い憤りを感じ、言語道断であります。

 今後、総理御自身が、当事者の声に耳を傾け、多様性を認め包摂性に富んだ社会をつくるという政府の方針を改めて国民の皆様に訴え、その実現に取り組んでいただくことを強く求めます。

 社会の差別意識を解消するためにも、LGBT理解増進への法制定の意義は大きく、我が党としましても、政府・与党の環境整備に努めてまいります。そして、G7サミット前に、我が国としても意思を明確にすべきであると申し添えておきます。

 それでは、私の質問に入らせていただきます。

 本日の予算委員会のテーマの一つが、少子化対策でございます。

 公明党は、子供たちは未来の宝であり、子供たちの幸せを最優先する社会を目指して、結党以来、義務教育の教科書無償配付や児童手当の創設、拡充、教育費の負担軽減等に取り組んでまいりました。

 今、私たちが少子化対策に取り組む上で、その一つの方向性といたしまして、常に子供の視点に立ち、その最善の利益を第一に考え、子供に関する取組、政策を我が国社会の真ん中に据えたこどもまんなか社会を実現することであると思っております。

 本日は、その観点から、また私自身、岸田総理の下で文部科学大臣政務官を務めさせていただきましたが、その間、児童生徒、保護者、学校関係者、首長、また地方議員の皆様から様々な声をいただきましたので、そういった声を基に質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、給付型奨学金の拡大と減額返還制度の見直しについて、総理にお伺いいたします。

 公明党はこれまで、希望する人が学ぶことができるよう、一貫して、奨学金の充実等、教育に関する経済的支援に全力で取り組んでまいりました。

 公的奨学金につきましては、一九九九年から始まったきぼう21プランを皮切りに、貸与人員の大幅増や貸与基準の緩和などの改善に取り組んでまいりました。そして、二〇一八年には返済不要の給付型奨学金を導入、二〇一九年には幼児教育、保育の無償化、私立高校の授業料実質無償化、そして二〇二〇年には大学や専門学校等の高等教育の一部無償化を実現、このように、我が党は、希望する人が学ぶことができるよう、教育に関する負担軽減を一貫して推進してまいりました。

 そういった中で、近年、コロナ禍や物価高等の影響もありまして、御家庭の経済状況が厳しくなり、一度は進学を諦めようかと考えたが、これらの支援制度があって諦めずに進学することができました、そういった喜びの声もいただいております。学びたいと希望した人が家庭の経済状況によって諦めるようなことがないよう、更に支援制度の充実に取り組む必要があると改めて実感をしております。

 中でも、高等教育の無償化につきましては、子供が大学生になったときに教育支出が大幅に増加することはデータでもはっきり示されており、子育て期における高等教育の負担軽減は、子育て支援、少子化対策の観点からも非常に重要な施策でございます。

 昨年四月に、我が党といたしまして、二〇二〇年に開始されました高等教育の修学支援新制度につきまして、特に負担軽減の必要性の高い多子世帯と理工、農工系の学部学生を始めとする中間所得層まで拡充することを提言させていただきました。岸田総理からは、昨年六月の予算委員会、浮島智子衆議院議員の質問に対しまして、我が党の、年収の上限六百万円までという考え方をしっかりと受け止めたい、そのような答弁をいただいております。

 令和六年度からの実施に向けまして、高校生の進路、人生に関わることでございますので、制度の年収目安等、拡充を早期にお示しいただきたいと思います。そして、丁寧な周知にお取り組みいただきたいと思っております。

 また、奨学金の減額返還制度につきまして、有利子奨学金の受給者や既卒者も利用可能にし、貸与型奨学金の月々の返還の額を減額することができる年収要件の緩和も提言をさせていただいております。

 これは、若い方々から、奨学金の返還が重くのしかかり、結婚することや子供を持つことに不安やためらう声が多く我が党にも寄せられておりまして、少子化対策の観点からも、結婚や出産などライフイベントに応じて柔軟な返還ができるよう、制度の改善、見直しに早急に取り組むべきであります。その際、月々の返還額を減額することによって返還期間が長引いたとしても、利息の負担が増えることがないようにすることも重ねて要請をさせていただきます。

 岸田総理に、我が党が求めております給付型奨学金の拡大と減額返還制度の見直しについて、取り組む決意をお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 経済的な困難を抱える学生の皆さんの支援のために、令和六年度から給付型奨学金等の見直しを行うこととしているわけですが、その中で、給付型奨学金について、多子世帯や理工農系の学生等の中間層への対象を拡大するということにしており、そして、御質問は、対象の年収目安等を早急に明らかにするべきだという御指摘ですが、この点につきましては、御党からの御指摘もしっかり踏まえながら、今、早急に明らかにするべく作業を進めているということであります。

 そして、奨学金の減額返還制度については、ライフイベントを踏まえて柔軟に返還できるように、御提案いただいた利息負担の取扱い等も含めて、具体的な枠組みをつくってまいりたいと考えています。

 今回、子供、子育て政策の様々な制度について、こども政策担当大臣の下、充実する内容を具体化することとしております。これと併せて、教育の分野につきましても、今の社会において必要とされる施策、取組を進めていきたいと考えています。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 是非、岸田総理のリーダーシップの下、着実に進めていただきたいと思います。今申し上げましたことは、特に子供たち、若い方々の希望に資する重要な政策であると思っております。是非とも着実に、早急にお取組を、改めて要望させていただきたいと思います。

 続きまして、不登校対策について質問させていただきます。

 令和三年度の不登校児童生徒数は、小中学校合わせまして約二十四・五万人と、過去最高となっております。これは社会問題である、そういった指摘のある中、学校現場や各自治体の教育委員会、そして文科省も、重大な課題であるとの認識の下、必死になって取り組んでいただいておりますが、しかし、残念ながら、九年連続で増加の一途をたどっております。

 そんな中、特に、不登校支援策の一つとして、不登校特例校が今注目をされておりますが、その一つ、岐阜市立草潤中学校をここで紹介させていただきたいと思います。

 ここは、自治体主導としては初の公立不登校特例校として、二〇二一年四月に開校いたしました。不登校特例校では、不登校の子供に配慮した柔軟な教育課程が実施できておりますが、ここで、草潤中学校の日課を御紹介させていただきたいと思います。

 資料を御覧いただきたいと思います。

 草潤中学校には登校モデルが三つ設定をされておりまして、まず、全ての授業がオンラインで配信をされております。自宅でも学校と同じ授業が受けられるようになっております。そして、生徒の登校の頻度別にコースが設けられておりまして、まず日課表の一番目、家庭での学習を基本にする学びのモデル、次に二番目、家庭で学習し、週に数日登校する学びのモデル、そして三番目が毎日登校する学びのモデル、この三つの中から子供自身が選べるようになっております。

 さらに、授業にも特徴がありまして、自分で興味のあるテーマに取り組むセルフデザインという科目、これは二と三のコースの火曜日にございます、グリーンの部分ですけれども。セルフデザイン、これは自分の興味、関心のあるテーマを学べる、そういった科目となっております。

 そのほかの特徴といたしまして、この資料にはございませんが、時間割は生徒と教師が相談しながら一緒に決める、また、学級担任は生徒が選ぶことができ、その後も変更が可能、また、開校時の教師は、通常の異動ではなく、希望する教員を募って異動させるということでございました。

 このように、草潤中学校の方針は、生徒が学校に合わせるのではなくて、学校が生徒に合わせ、一人一人の個性を伸ばす教育となっております。

 このような教育の中で、子供たちにも大きな変化があり、入学前に毎日登校する学びのモデルを考えていた生徒は四十人中十八人でございましたが、一か月たった四月下旬には、七割近くの二十七人が毎日登校する希望を選ぶようになったそうです。生徒からは、気軽に学校に来られる、また、保護者からも、子供が学校に通うようになってよかった、そういった声が寄せられております。

 登校という結果のみを目標とするわけではございませんが、多様な児童生徒の教育機会の確保や、誰一人取り残さない学校づくりという観点からも、草潤中学校のような、一人一人に光を当てた教育が今こそ求められているのだと思います。

 不登校対策の確実な一手にもなる不登校特例校を各都道府県、政令指定都市に一校以上設置することを促進させ、また、全ての小中学校が、多様な子供たちが生き生きと学ぶことができる、一人一人に光を当てた教育へ転換することが今こそ重要であると考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 不登校児童生徒が増加をし、多くの子供たちが学校の学びから置き去りにされている状況、これは憂慮すべき事態です。

 このため、政府としては、来年度の予算案において、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の充実を行うとともに、新たに、御指摘の不登校特例校の設置準備に要する経費に関する支援、これを盛り込んだところです。

 そして、今委員の方から草潤中学校について御紹介がありました。不登校特例校のノウハウ、これを広げるために、文部科学省において報告書を取りまとめ、特色ある不登校特例校の取組の周知等を行っているということを承知しております。

 政府としては、不登校特例校を含め、全ての学校で、子供たちが誰一人取り残されることなく多様な学びを実現できるよう、しっかり取り組んでまいりたいと考えています。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 不登校児童の対策だけではなく、やはり多様な全ての子供たち一人一人のための教育の実現を思ったときに、今総理からも具体的な答弁をいただきましたが、そういったことも含めまして、抜本的な教育の改革、一人一人のための教育の実現ということを改めてしっかりと取り組んでいく必要があると思っておりますので、私自身も、また我が党としてもそれに尽力をしていきたいと思っております。

 その上で、改めて具体的に、文科大臣の方にも不登校対策について質問させていただきます。

 不登校児童生徒への支援につきましては、我が党からも、不登校特例校の設置促進のほかにも、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーや養護教諭の配置拡充、また早期発見、早期対応の充実等、昨年十月に、具体的に提言をさせていただいております。

 この提言を受けまして、文部科学省におきましてもしっかりと対応していただきたいと思っておりますが、私といたしましては、学校現場におきまして、専門性を生かし、常に子供たちと接しながら健康面や心理面の支援を行っている養護教諭の役割が大変に重要であり、配置拡充をしっかりと進めていただきたいと思っております。

 不登校の原因や背景には、生活リズムの乱れや無気力、不安等が絡み合っているケースも多いため、養護教諭が日常的な健康観察を通して児童生徒の心身の不調を把握したり、直接児童生徒から相談を受けるなど、既に活躍をしてくださっております。

 しかし、養護教員は各学校に一名の配置でありまして、責任や業務が大変大きくなっておりますので、養護教員の配置拡充にもしっかりと取り組んでいただき、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとともに、不登校児童生徒に寄り添った支援のための体制を構築、強化すべきであると思います。

 我が党の提言を受けまして、不登校対策にどのように取り組むのか、文部科学大臣にお伺いいたします。

永岡国務大臣 鰐淵委員にお答え申し上げます。

 不登校への対応につきましては、委員おっしゃいますように、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーだけではなく、その原因や背景にあります児童生徒の心身の健康課題を踏まえた対応を行う、養護教諭による支援というのも大変重要である、そう思っております。

 文部科学省におきましては、養護教諭に関しまして、令和五年度予算案におきまして、いじめ問題などの課題のある学校にも対応するための加配定数の改善を図るとともに、繁忙期等の体制強化ですとか、資質、能力の向上のための研修機会の確保等のため、退職養護教諭等を学校に派遣する事業を実施することとしております。引き続きまして、養護教諭等の業務の支援、この充実にしっかりと取り組んでまいります。

 また、不登校対策につきましては、令和五年度予算案で所要の経費を盛り込んでおりますが、これに加えまして、御提言いただきました内容、また有識者の御意見も伺いながら、今年度内を目途に、実効性のある不登校対策をしっかりと検討し、実施をしてまいる所存でございます。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

鰐淵委員 ありがとうございました。

 不登校は誰にでも起こり得ることでありまして、早期発見、早期対応が大変に重要であると思っております。

 そういった認識に立ちまして子供たち一人一人に関わっていくことが重要でございますが、その最前線にいらっしゃるのが学校の先生方でございます。子供たちの最大の教育環境は先生方であり、子供たち一人一人に光が当たる教育を実現するためには、先生方の働き方改革を推進し、先生方が子供たちに向き合う時間を確保する、本来の役割を果たせる環境をつくっていくことが重要であります。

 それが大前提の下、多様な先生方の確保もしっかりと取り組んでいく必要があると考えております。

 先日、一般紙で、多様な人材確保の観点から、留学や他の資格取得との両立を目指す場合には、特例的に教員免許を最短二年で取得できる、そういった報道がございました。

 この件につきましては、一月二十六日に、我が党から永岡大臣に対しまして、子供たちの学びを充実させるための緊急提言をさせていただきまして、その中で、多様な教員を確保するため、理数、スポーツ、ICT、発達支援、語学など、多様な専門性を持つ者が教育学部に入り直すことなく普通免許が取得できる仕組みの確立、これを求めさせていただいておりまして、私たちの提言に合致するものと評価をさせていただいております。

 これまで教職課程を履修することが難しかった学生が教員免許を取得できるようになることで、多様な先生方が教壇に立つようになり、子供たちの豊かな学びにつながるという点でも、また、能力ある先生が活躍できる環境をつくるという意味でも、是非ともこの改革をしっかりと進めていただきたいと思います。

 改めて、大臣に、どのように取り組むのか、お伺いしたいと思います。

永岡国務大臣 お答え申し上げます。

 様々な教育課程への学校の対応能力を高めるには、多様な専門性を有する質の高い教職員の集団を形成する必要がございます。

 一方、学生が大学四年間に留学ですとかほかの資格取得を目指す場合、両立できずに教職課程の履修を断念するというおそれが指摘されております。

 昨年十二月の中教審答申でございますが、心理や福祉、データ活用や語学力などの強みや専門性を身につける科目の履修との両立を可能とする、柔軟な教職課程の開設につきまして提言をされているところでございます。

 文部科学省といたしましては、強みや専門性との両立可能なカリキュラムを四年制大学が実施いたします場合、二年程度で必要単位を修得できます教職課程を特例的に開設できるよう、令和五年度に制度改正を行う予定でございます。これは令和六年度以降に大学からの申請を受け付けまして、令和七年度から新しい教職課程を開設できる方向で検討を進めているところでございます。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

鰐淵委員 ありがとうございました。

 是非、今のスケジュールも含めまして、当事者の皆さんにしっかりと周知をしていただいて、しっかりとこういった制度に結びつけられることができるように、周知も含めて対応をお願いしたいと思っております。

 また、この提言、今申し上げたことと併せまして、もう一つ提言もさせていただいておりまして、学校や自治体の教員不足が深刻であることを踏まえ、学校における働き方改革を確実に推進し、学部にかかわらず、大学在学中に学校ボランティアやプレ教育実習などに参加し、一定の科目を修得した大学生については、仮教員免許を与え、積極的に教員試験の受験を促したり、講師等として採用すること、これも提言をさせていただいております。

 この点につきましてはまた改めて議論をさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、教員の働き方改革、これを着実にする上で、多様な教員の確保は、子供たちの学びの環境を育てる上でも大変に重要な課題だと思っております。またこの課題は引き続きしっかりと議論をさせていただき、具体的に進めてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、総理に、GIGAスクール構想について質問させていただきます。

 我が党は、二〇一九年に、一人一台端末の整備を掲げまして、子供たちの個別最適な学びと協働的な学びを実現するためのGIGAスクール構想を強力に推進してまいりました。その後、二〇二〇年三月に、コロナ禍のような緊急時に子供たちの学びを保障するためにも、GIGAスクール構想を早期に実現するよう政府に提言をさせていただきました。

 その結果、二〇二〇年第一次補正予算におきまして、当初四年間の計画を前倒しして、一年で整備を進めるための予算が盛り込まれました。今では、全国の学校におきまして一人一台端末が整備され、授業などでの活用が広がっております。

 活用が進んでいる学校では様々な成果が出ておりまして、私自身もこれまで幾つかの授業を見せていただきましたが、端末を活用することによりまして、学びが深まり、先生や友達と積極的に意見交換をしたり、楽しく学ぶ姿が大変に印象的でございました。学校のデジタル化が進み、多様な子供たちの学びが豊かになり、一人一人の能力や個性を引き出す教育が実現する、これこそがGIGAスクール構想の大きな成果であると思っております。

 また、そのほかの成果といたしまして、文部科学省の調査では、学びの保障に関する効果につきまして校長先生に尋ねたところ、肯定的な評価が示されております。

 熊本市におきましては、コロナ禍の臨時休校期間中に、不登校児童生徒の三割から五割がオンラインでのやり取りやオンライン授業に参加できるようになり、学校再開後には三割から四割の児童生徒が登校できるようになったそうであります。

 多様な子供たち、先ほど申し上げた不登校児童生徒、またそのほか、病気療養児、こういった様々な環境の中で頑張っている子供たちがいますが、そういった方々も含めて、学びの保障の観点からも、GIGAスクール構想の推進は大変に重要でございます。

 しかし一方で、これも文科省の別の調査になりますが、地域間や学校間、先生の間でも様々な格差があったり、また、端末の活用頻度に大きな格差があるということも報告がなされております。

 またそのほか、教員や教育委員会の研修やサポート体制がまだ十分ではない、端末の活用によってもっと先生方の働き方改革を進めたい、また、使えば使うほど故障も増えてくる、そのような様々な課題も指摘をされております。

 また、首長の皆さんや地方議員の皆さんからは、今後、端末の更新費用がどうなるのか、国にしっかりと取り組んでもらいたい、そのような強い御要望もいただいております。

 これまで明らかになったGIGAスクール構想の成果や課題、また現場の声を踏まえ、GIGAスクール構想を子供政策の基盤にも資する政策として、国がしっかりと責任を持って推進すべきと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 御指摘のGIGAスクール構想ですが、委員の方からも、様々な重要性、御指摘がありました。

 岸田政権の掲げる人への投資、あるいはデジタル田園都市国家構想の実現、こうした取組の上でも重要な政策であると認識をしています。

 国においては、これまで、一人一台端末の整備や学校支援体制の整備に要する経費の支援等を行ってきましたが、令和五年度予算案においても、地域間、学校間の端末活用の格差を是正するための経費等も盛り込んでいます。

 私も、昨年も学校現場に足を運ばせていただきまして、実際に端末を操作するなど、授業の雰囲気の一端を体験させていただきましたが、近々また学校現場の視察も予定しております。是非、GIGAスクール構想の現状を把握してきたいと思っています。

 これまで明らかになった成果や課題、また現場の声、これを踏まえて、今後ともGIGAスクール構想をしっかりと推進していく考えです。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 昨年、総理御自身も視察をされたと伺いました。また近々行っていただくということですけれども、やはり学校現場の端末を活用した授業自体も本当に変化、変化で変わってきておりますので、また今回改めて行っていただけるということで、大変にありがたく思っております。

 その上で、やはり、繰り返しになりますけれども、先生間、また学校間、地域間の格差、これをしっかりとなくしていく。そして、一人一人の個性を引き出す、能力を引き出す教育の充実という上で、しっかりと今申し上げた課題も含めて取り組んでいくことと併せまして、繰り返しになりますが、次の更新、これに向けて、やはり首長の皆さん、地方議員の皆さん、次がどうなるのかという、一つの不安というか、大きな懸念の声としていただいております。

 これは、令和六年度中にも次の更新に向けて取り組んでいかなければならない、そういった自治体も出てまいりますので、是非とも、今後の方向性を、先ほども総理におっしゃっていただきましたが、現場の実態を踏まえた上で、そして現場の声をしっかりと伺った上で、今後の方向性をしっかりとお示しいただきたいと改めて要望させていただきますが、その点、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 おっしゃるように、GIGAスクール構想において、現場の状況は刻々と変化をしています。また、その変化の中で様々な問題意識や要望も出てきている、こうした状況にあるということ、これを認識することは大事だと思います。そのためにも、現場に足を運び、何よりも現場の声を大事にしながら、変化に対応していく姿勢を政府もこれから持ち続けていかなければならないと考えます。

 御指摘の点、しっかり受け止めて、政府としましても、今後とも変化をしっかり見据え、そして何よりも、今後の方向性について政府として示せるような対応を行っていきたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。是非よろしくお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、公立小中学校等の施設整備について、総理に質問させていただきます。

 公立小中学校は、児童生徒の学びの場であるとともに、地域の防災拠点、コミュニティーの拠点としての役割もございます。ですので、安全、安心の確保は何よりも重要でございます。

 そこで、これまで公明党は、学校の耐震化を地方議員の皆さんとともに推進してまいりまして、現在、耐震化率は九九・七%になりました。また、夏は厳しい暑さが続きますので、熱中症対策などから、子供たちの健康を守るために、普通教室への空調設置も推進をしてまいりまして、九五・七%まで設置をすることができております。

 しかし、老朽化対策や、天井や外壁等の非構造部材の耐震化、また、バリアフリー化、トイレの洋式化、避難所ともなる体育館への空調設置、脱炭素社会に向けた施設の整備、こういった課題も引き続きしっかりと対応していかなければなりません。

 学校施設整備を進める自治体では、施設整備を進めたいという意欲があるものの、厳しい財政事情の中で国による支援が一層求められており、重要であります。特に、近年の建材、資材や労務費の上昇により、国が定める建築単価も毎年引き上げられておりますけれども、実際の工事費用に乖離が発生しているという声も伺っております。

 公立小中学校をめぐる様々な課題に対応した整備につきまして、必要な予算をしっかりと確保した上で、自治体の取組を更に支援し、子供たちが学校において安心、安全に、有意義に過ごせる施設整備を進めることが重要であると思います。総理の御見解をお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 公立学校の施設は、子供たちにとっての学びの場であること、これはもちろんでありますが、災害時には地域の避難所ともなることから、老朽化対策、バリアフリー化あるいは省エネなどの様々な課題に対応しつつ、安心、安全な環境を確保する施設整備を進めていくこと、これが重要となります。

 令和五年度当初予算では、公立学校施設の整備費として六百八十七億円を計上するとともに、御指摘の建築単価について、資材費の動向等を踏まえ、対前年度比一〇・三%引き上げております。令和四年度第二次補正予算で千二百四億計上しておりますが、これらと併せて、地方公共団体の整備計画に適切に対応できると考えています。

 引き続き、政府として、自治体による公立学校の施設整備に関する取組、これを支援してまいります。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 それでは、最後に、部活動の地域移行、要望だけ最後に大臣に申し上げたいと思います。申し訳ありません。

 部活動は、子供たちがスポーツ、文化芸術に親しむ多様な体験の場として貴重な機会でございます。これが、これから少子化の流れ、また教員の働き方改革を進めていく上で、地域に移行するという、そういった大きな転換期になっております。

 それを迎えるに当たりまして、引き続き、地域の皆様、首長の皆さん、また保護者、子供たちの意見をしっかりと聞いていただいて、こういった改革をしっかりと進めていただき、子供たちのための部活動の維持、これにしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 改めて、本日は、子供たちの幸せ最優先の社会を目指すことをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 大変にありがとうございました。

根本委員長 これにて鰐淵君の質疑は終了いたしました。

 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 立憲民主党の野田佳彦です。

 持ち時間五十分でございますが、総理、よろしくお願いします。

 質問に入る前に、トルコで大きな地震が発生をし、大変大きな被害が出ているようでございますが、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、日本も世界有数の地震国でございますので、トルコ国民の抱えている困難は一番よく分かる国の一つだと思います。できる限りの支援を政府に要請をしたいと思います。

 それでは、質問に入りたいと思います。

 昨年の十二月十六日に閣議決定をされた国家安全保障戦略を読ませていただきました。その中で、総合的な国力の主な要素として、外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力と掲げられておりましたけれども、イの一番に書いてある外交力、これはまさに今年と来年、問われる年だと私は思います。日本外交の真価が問われる年だと思うんです。一つはG7の議長国、一年にわたって務めるということと、国連安保理の非常任理事国、任期二年ですよね。この間に日本の外交力を発揮できるかどうかというのは極めて大事だと思います。そうした観点から、まずは質問をしていきたいと思うんです。

 まず、外交戦略の端緒を切るために具体的に入っていきたいのは、対ロシア外交なんです。

 昨日、北方領土の日であって、全国大会が開催をされました。これは、一九八一年に北方領土の日を定めて以来、ずっと全国大会には日本の総理大臣が出席をして、決意の表明をしていますよね。昨日も総理は出席をされました。そのときに、今回はロシアのウクライナ侵略が行われた後の大会でございますので、どういうメッセージを出すかというのはとても注目をされていました。

 全国大会でどういう決意を表明されたかをお尋ねしたいんですが、漫然と全体的なことを聞くのではなくて、私が注目していますのは、二〇一九年以降、総理の決意、方針の表明の中に、シンガポールにおける日ロ首脳会談について言及があって、そして決意が述べられるというパターンが続いているんです。昨日はどうだったのか、まずお尋ねしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 昨日、令和五年北方領土返還要求全国大会が開催されました。総理大臣として、私自身、出席をさせていただき、御挨拶をさせていただきましたが、その内容につきましてですが、戦後七十七年が経過した今もなお、北方領土問題が解決されず、日本とロシアとの間に平和条約が締結されていないことは誠に遺憾であり、ロシアによるウクライナ侵略によって日ロ関係は厳しい状況にあるも、政府としては、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持していく考えである、こうした旨、述べさせていただきました。

 そして、今、御質問として、シンガポール合意についてどのように触れているかということですが、シンガポール合意という文言は昨日の挨拶の中には含まれておりません。

 しかし、四島の帰属の問題を明らかにし、平和条約を締結する、この基本的な方針、これは変わらないということを申し上げた上で、シンガポールでの首脳会談における合意を含め、これまでの諸合意やそれ以降のやり取りを踏まえて取り組んでいくというのが政府の基本的な方針であります。

野田(佳)委員 そこで、資料をお配りをしておりますし、パネルも御覧をいただければと思うんですが、二〇一九年以降の総理の御挨拶でシンガポールの首脳会談にどう触れているかなんですね。

 二〇一九年、二〇二〇年、安倍総理は、シンガポールでの合意という表現をしているんです。二〇二一年の菅総理の御挨拶ですが、私の内閣でも二〇一八年のシンガポールでの首脳会談のやり取りをしっかりと引き継いで。しっかりと引き継ぐと言っている割には、合意ではなく、やり取りになっているんですね。

 二〇二二年、去年、岸田総理は、二〇一八年のシンガポールでの首脳会談のやり取りを含め、これまでの諸合意を踏まえ、二〇一八年以降の首脳間でのやり取りを引き継いで。やり取りと合意を使い分けているんですね。

 やり取りと合意、どう違うんですか。

岸田内閣総理大臣 やり取りというのは、そのときに行われた合意も含めて、その場で両国間での様々な議論が行われた、それを全部、それを合わせてやり取りと表現しているものであると認識をしております。

野田(佳)委員 私の解釈ですけれども、合意というのは、いろいろな意見交換があった中で意見の一致を見た場合が合意。意見交換しただけだと、やり取りだと私は思います。

 一致まで行った場合には合意という言葉を使うのではないか。これが二〇二一年以降変わってきたという理由があるのではないか。

 一つは、プーチン大統領と安倍さんとの間では、首脳間では意見の一致を見たかのような印象を多分総理は持たれたんだと思います、当時。だけれども、ラブロフ外務大臣と、このときはもう岸田外務大臣ではないですよね、河野さんだったでしょうか、協議をしたり、あるいは外務当局同士が議論をしたら、どうやら合意という感じではなくて、例えば、北方の島を返したとしてもそこに米軍の基地を造られたら困るとか、あるいはさきの大戦の結果を認めろとか、とても合意とは思えないようなやり取りになったから、やり取りという言葉を使うようになったのではないかと私は思います。

 あるいは、四島返還という基本線から残念ながら二島返還に踏み出してしまったことに対する軌道修正をしたいという思いが政府にあったのかもしれません。

 合意とやり取りの違いというのは、そういうことではないんですか。

岸田内閣総理大臣 合意とやり取りの違いは先ほど申し上げたとおりでありますが、その使い分けに今おっしゃったような思惑や背景があったのではないかという御指摘ですが、政府としては、その時々において、外交努力を続けているわけですが、そういった思惑でもって言葉遣いを変えたというようなことは、少なくとも私自身は全く認識をしておりません。合意を始め当時の意見交換、議論、そうしたもの全体を指して、やり取りであると認識をしております。

野田(佳)委員 シンガポールでの合意、もうちょっと詳しく言っておきますけれども、要は、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約を加速させるということだということですが、その五六年の共同宣言というのは平和条約締結後に歯舞、色丹を、二島を引き渡すということで、二島返還論に要はかじを切ったというのがシンガポール合意ということなんですね。

 私は、これは、結局そこまで、経済協力まで進めながら島の返還が進まないから、日本の発射台を下ろしての交渉をしてしまった。結局、でも、二〇二〇年にロシアは憲法を改正して、領土の割譲を禁止をする。せっかく交渉の発射台を下ろしてまでやったのに石ころ一つ返らなかったという意味では、私は禍根を残す交渉だったと思うんです。

 シンガポール合意なり、あるいはやり取りと言い張るのならば、どちらにしろ、それはどこかでシャッフルしていかなければいけないんだけれども、プーチン大統領は、来年三月、大統領選がありますが、勝ち続ける可能性がありますよね。合意と安倍元総理が思ったことを、プーチン氏の頭の中には残っているので、だとすると、四島返還を日本は諦めたんじゃないかという、私は日本の外交にとっては負の遺産になりかねないということを極めて憂慮しているということを申し上げたいというふうに思います。

 その上で、このシンガポールの合意というかやり取りは、交渉再開のときには、これからもまた基礎となるわけですね。ということは、じゃ、生き残っているということでよろしいんですか。

岸田内閣総理大臣 まず、シンガポールでの首脳会談における合意を含め、これまでの諸合意や、またそれ以降のやり取りも踏まえて今後を考えていくということなんだと思います。

 そして、このシンガポール合意、一九五六年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるということでありますが、これは確かに、おっしゃったように、まず二島の取扱いから入るということになっていますが、少なくとも、今の政府の基本的な方針、四島の帰属の問題を明らかにして平和条約締結に向けて交渉を進めていく、この四島の帰属の問題を明らかにするという基本的な線は、これはこれからも変わるものではないと認識をしております。

野田(佳)委員 そこで、じゃ、次の質問に参りたいと思いますけれども、二〇一六年、新しいアプローチと称して、日本から八項目の経済協力を申し出ました。これは、ロシアのウクライナ侵略によって、今、凍結をしていますよね、経済協力は。同じ二〇一六年の暮れに、これは長門で合意をしましたけれども、北方四島の共同開発の協議に入るということになりました。これは、日本の制裁に対してロシアが日本を非友好国という扱いにして、この協議から今離脱をしています。ということで、新しいアプローチの中の経済に関することは止まっているはずなんですね。

 だけれども、まだ残っているものがあります。それは、ロシア経済分野協力担当大臣。二〇一六年の九月に世耕当時の経産大臣が兼務するようになってから、歴代の経済産業大臣が引き継いでおり、昨年八月の内閣改造で西村経産大臣になりましたけれども、今もなおロシア経済協力担当大臣を兼務されていますよね。もう実務もないのに、何で大臣を置き続けるんですか。副大臣も置いていますね。政務官も置いていますね。何の意味があるんですか。今、経済制裁をやっているんでしょう。経済制裁を担当する大臣が、何でロシア経済協力担当大臣であり続けるんですか。意味が分かりません。御説明いただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、現在のロシアのウクライナ侵略といった情勢を踏まえれば、ロシアとの間において、これまでどおりというわけにはいかないわけでありますし、八項目の協力プランについても、ロシア経済に資するような取組を行うこと、これは全く想定しておりません。

 そして、委員の方から、仕事がないのにどうしてこういった大臣あるいは副大臣のポストがあるのかという御指摘でありますが、昨年来の情勢を受けて、ロシアによるウクライナ侵略によって、関係する日本企業等、これは様々な影響が及んでおります。そして、かつてはロシアとの経済協力ということも想定しながらロシアに進出した日本企業が多くあったわけですが、逆に、情勢を踏まえて、ロシアからの撤退に向けた資産整理ですとか、あるいは送金の手続、こうしたことに時間を要しています。

 このことを踏まえて、協力プランに沿って投資等を行ってきた日本企業に対して、現地法への対応のための情報提供や相談対応を行い、事態の展開に応じて円滑な撤退等を支援する必要があると認識をしております。このため、担当大臣については、現在のところ廃止することは考えていないということであります。

野田(佳)委員 全く理解できませんね。撤退担当ということですか。撤退担当が何で経済協力担当大臣というポストであり続けるんですか。撤退だけだったら、ほかの誰かに任せればいいだけでしょう、経産省の中の。あえて大臣ポストを据え置く必要まではないと私は思いますよ。分かりにくいですよ、それは、今のは。

 しかも、G7の議長国で、G7の結束が大事なときに、日本だけが経済協力担当大臣みたいなのを置いているというのは、二枚舌外交に映りませんか、おかしいと思いますよ。

岸田内閣総理大臣 五項目の協力プランに基づいて、多くの企業がロシアに様々な進出を行いました。そうした大きな枠組みの中で協力を考えた企業が、今、事態の変化の中で大変苦慮しているということであります。

 そもそも、そのプラン全体をどう今後収束させていくのか、変化させていくのか、この全体を考えた上で、そして、結果として日本企業に対するどういった支援が必要なのか、こういったことを考えなければいけない。協力プランの大きな枠組みの変化の中で、今、具体的な対応が引き続き求められているということから、協力担当大臣がこうした日本企業の対応についても様々な支援を行っているということであります。

 こういった考え方に基づいてポストを用意している、こういったことであると認識をしております。

野田(佳)委員 聞けば聞くほど分かりません。なぜならば、撤退をするための企業の支援をすることは必要です。やるべきだと思います、実務として。一生懸命支えるべきだと思いますが、経済協力というポストを残しておいてやるということとは別だと思いますよ。変な誤解を生むからやめた方がいいということを重ねて申し上げたいと思います。是非考慮をしていただきたいと思いますね。

 その上で、今年は、今度は少し前向きな話にしていきたいと思うんですが、G7の議長国、この役割として私が求めたいことをまず申し上げたいと思うんですが。

 まず、去年二月にウクライナの侵略が起こったとき、私は、岸田総理は二つの選択肢でまさに決断が迫られたと思うんです。二〇一四年のクリミア併合時のように、日本は領土問題を抱えているから、G7並みというのはちょっときついなと。緩やかな措置で、当時は真空切りと言われたけれども、やっているふり感のある、一応制裁、緩やかな措置にするのか。でも、G7の一員として、ウクライナで起こっていることは東アジアでも起こり得るんだということに危機感を持って、厳しい措置をするか。どっちの措置をするか迫られたと思います。

 「どうする家康」じゃないけれども、どうする岸田と迫られたときに、厳しい措置を選んだ。このことによって、NATO対ロシアの対決の構図ではなくて、力による現状変更は国際社会が許さないんだというメッセージを日本が主導したという意味では、私は総理の立場は支持をします。

 逆に、今度は議長国なので、ウクライナの問題で日本が踏み切ったわけですから、今度は、東アジアにも地政学リスクはいっぱいあるんですよ、その地政学リスクを軽減するために欧米各国を関与させるという戦略の下で私は議長を務めてほしいなというふうに思います。

 広島のサミットでは、当然、核のない世界を目指すためにどうしたらいいか、各国首脳と議論することは大事だと思います。それに加えて、広島では、今申し上げたように、東アジアの地政学リスクを減らすための議題を設定する。台湾、尖閣、北朝鮮、こういう問題、議題を設定することによって欧米の関与を引き出していく。幸いにして、これはアメリカだけではなくて、イギリスもドイツもフランスもみんな、今、インド太平洋の問題に深く関わっていこうという意向が強くなってきていますね。チャンスだと思います。

 という戦略的な発想でG7の議長国を務めていただきたいと思いますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、今年開催されるG7サミットにおいては、力による一方的な現状変更は許さない、また、核による威嚇、使用は許さない、法の支配に基づく国際的な秩序を守るという決意をG7でしっかり世界に向けて発信しなければならないと思っています。そしてあわせて、気候変動を始め地球規模の課題、経済安全保障、その他、こうした国際社会が今直面する様々な課題についても議論をする場ともなります。

 そしてあわせて、日本は唯一のアジアからG7に参加している国であり、今回、アジアで開催されるサミットであります。そして、今委員御指摘のように、今多くの国々がインド太平洋に関心を高めているという国際的な機運が高まっています。こういったときだからこそ、アジアで開かれるサミットにおいて、アジアの地域情勢についても深い議論を行う、これは大きなチャンスであると思います。

 是非、日本としても、法の支配に基づく国際秩序を守るという観点からも、アジアの、そしてインド太平洋の情勢について、各国首脳と深い議論を行いたいと考えます。

野田(佳)委員 戦略的な取組の中で、議題の設定、議長国として。今一つ取り上げましたけれども。

 もう一つ、議長国の特権というのは、招待する国を決められるということではありませんか。これをどう生かすかだと思うんですね。

 私は、もう内々では決められたのかもしれませんけれども、まず、今年、G20の議長国はインドじゃありませんか。これは、インドは是非呼ぶべきだろうと思います。

 そして、去年のG20の議長国はインドネシアでしたね。私は、あのとき見事に声明をまとめたと思うんです。G20にはロシアが入っているじゃないですか。ロシアが入っている中にもかかわらず、ロシアを非難をする決議をまとめていますよ。もちろん、異論があったということも書きながらでも。でも、すばらしい粘り強い交渉で、私は、G20をまとめた手腕というのは、インドネシアの外交力というのは大したものだなと思いました。そのインドネシアが今年はASEANの議長国ですね。ASEANとのつながりを考えた上でも、インドネシアは呼ぶべきだと思います。

 そして、北朝鮮の問題も議題に上げるならば、これは、やはりいろいろあっても韓国も呼ぶべきではないかなと私は思います。徴用工の問題とかいろいろあるけれども、でも、私は呼ぶべきだと思います。

 加えて、クアッドのメンバーのオーストラリアなどを加えて、まさに欧米各国においてインド太平洋地域におけるリスクの問題も一緒に感じ取ってもらって意見交換をするという機会にすべきだと思いますが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、現状、招待国についてはまだ決まってはおりません。しかし、その中にあって、最終的には議長として招待国を決定をしなければならない。もちろん、参加国とも相談しながら決定しなければならないわけですが。

 その際に、具体的な国はともかくとして、委員おっしゃるように、様々な国際的な議論の枠組みとの関係ですとか、あるいは国連を始め様々な国際機関との関係ですとか、あるいはインド太平洋という枠組み、我々も自由で開かれたインド太平洋というものを実現するために各国に働きかけている立場から、それに関連する議論を行う際に参加してもらう国がどの国がいいのか、こういった観点から招待国を選定する、選ぶ、このことは大変重要な視点であると思います。

 様々な御指摘や意見があります。様々なこの現状、足下の変化もありますが、そんなものをしっかり踏まえながら、今おっしゃった大きな考え方に基づいて、議長国として招待国を決定したいと思っています。

野田(佳)委員 外交戦略ばかりの話になってしまいましたけれども、やはり少し安保戦略についても触れていきたいと思うんですけれどもね。

 三文書を読ませていただいたんですけれども、防衛力の中核となる人的基盤の充実という観点が希薄過ぎると私は思いました。表現を見てみると、「より幅広い層から多様かつ優秀な人材の確保を図る。」とか「隊員の処遇の向上を図り、」とかと、おざなりの言葉は書いてあるんですけれども、しっかり人的基盤を充実していこうという、思いの強さみたいなのは全く感じないんですよ。

 防衛装備の充実は、もちろんパンチ力のある装備を充実させていくという観点は必要だと思いますよ。必要だと思う。だけれども、どんな装備を用意したって、人が足りなかったら使えないじゃないですか。

 警察予備隊以来、定員に対する実員、いわゆる充足率は一〇〇パーに届いたことがないんですよ、日本は。今、九割台じゃないですか、充足率。士に至っては、第一線で働かなければいけない若い隊員たちは、これは八割を切っているんじゃないですか。予備自衛官は七割台じゃないですか。

 静かなる有事は自衛隊の足下にも忍び寄ってきていて、少子高齢化、人口減、若手が集まってこない状況がある。深刻ですよ。人の手当てもできないで、いろいろ書いているけれども、そんなことできるのかと。私は、二流、三流の武器を購入するよりも、人的基盤充実にもっと力を入れるべきではないかと思います。その観点が足りな過ぎる。

 宇宙、サイバー、電磁波、新しい領域も提示されました。そのとおりですよ、安全保障の。しっかりこれから手当てしなきゃいけない分野だと思います。だけれども、今サイバー部隊って五百四十人でしょう。中国は十七万人でしょう。どうやって確保するんですか。

 それには、もっと、自衛隊、自衛官になることが誇りを持てるし、魅力ある職場にするためには、給料が安過ぎる。隊舎、宿舎は貧しい、貧弱。

 若年退職制ですから、早く辞めるんですよ。消防も警察も海保も六十歳まで。だけれども、十六階級、御存じですか、自衛隊の。防衛大臣はお分かりだと思いますが、階級ね。二士、一士、士長から始まって、将補、将まで十六段階あるんですけれども。例えば二曹、三曹で定年退職したら五十三歳から五十四歳ぐらいです。一佐、旧軍でいうと大佐ですね、五十七歳ですよ。ほかに比べれば相当若い。もちろん、自衛隊、精鋭でなければいけない。その精鋭を担保するために若年退職制ですけれども。でも、私のおやじも自衛官だったけれども、再就職、再々就職、大変でしたよ。

 やはり、待遇の問題も含めて、もっと、人的手当てどうするか、充実どうするかという観点がないと、いろいろなことを言っているけれども、絵に描いた餅ですよ、この戦略はと思いますが、総理、いかがでしょう。

岸田内閣総理大臣 まず、委員おっしゃるように、人的基盤の強化が何よりも重要だという点は、まずそのとおりだと思います。文書にその熱意が乏しいという御指摘は謙虚に受け止めなければならないと思いますが、この内容において、装備の充実と併せて、人的基盤の強化については様々な内容をこの三文書の中に盛り込んでいると考えています。

 例えば、宿舎や隊舎の整備、もちろんでありますが、備品や被服の確保といった生活、勤務環境の改善、こうした予算についても、令和五年度予算では、前年度比二・七倍、二千七百億円を計上しているわけですが。様々な装備と併せて、自衛官の給与面の処遇の向上を図るべく、超過勤務の実態調査を行い、適切に処遇していくとか、さらには、こうした取組を通じて第一線を担う自衛官の充足率の向上に努めていく。さらには、人を重視する関係から、ハラスメントについても今回この三文書の中に盛り込んでいるなど、やはり、人が装備とともに重要であるということ、このことはこの三文書の中にしっかり盛り込んでいるというのも是非御理解いただくべく、説明をしていかなければならないと考えています。

野田(佳)委員 私はどうしても、有識者会議の議論から含めて、背広組の意見はあっても、やはり制服組の観点が足りないし、しかも、サーベルをぶら下げた士官ばかりじゃなくて、地をはう兵隊たちの声が届いていない。もっと隊友会とかOB組織なども含めてよく意見を聞いた方がいいと思いますよということを、これはアドバイスというか、進言とさせていただきたいというふうに思います。

 少し、今度、じゃ、金目の話なんですけれども。防衛費の増額、借金か増税か、この話はいろいろ出ていると思います。私が一言だけ言いたいのは、これは突然、復興所得税の話が財源として出てきました。私は復興増税をやったときの総理大臣なんですよ。被災地の復興のためにと一生懸命国民に御理解をお願いをして、そして御理解いただいたと思いました。強い反対があったとは思いません。被災地のためならばということで御理解をいただいたというふうに踏まえているんですが。

 丁寧な議論をやったつもりで、二〇一一年の九月に、法人税と所得税を増税するという形で復興に資するいわゆる財源手当てをしようとしたときに、野党の声もよく聞いて、例えば、所得税については、十年間、震災のために率を付加していただくという構想だったのを、自民党や公明党さんから二十五年の方がいいというお話があって、それを踏まえてつくったんです、枠組みを。

 苦労して震災復興のための財源手当てをしましたけれども、防衛でどうしても国民の負担はお願いするというんだったら、何かこういう人のふんどしを使うようなやり方じゃなくて、正々堂々と、防衛のためにこれだけお金が必要だと、足りないんだったら増税というやり方をすべきだと思うんです。

 その前に、しかも、自民党が増税の話を言うのならば、私はやってほしいことがある。

 二〇一一年の党首討論で、私は、消費税の引上げ、社会保障と税の一体改革を推進するために、身を切る覚悟が必要だ、議員定数の削減を約束しましょうと当時の安倍さんと約束をして、その後、文書も交わして、翌年の通常国会では議員定数削減をするということになっていました。そして、安住淳君ほかの連名で四十五人の定数削減の法案も提出をして構えていましたけれども、一顧だにされずに、二〇一六年に、私が予算委員会で安倍さんにどうなっているんだという質問をする直前に、多少衆議院の定数を減らしたんですよ。でも、その後は参議院を増やしたから、結局、全く、議員定数削減の魂は、全然、何となく守られていないまま来ちゃったなと。

 せめて、国民にお願いしようというんだったら、今度こそ身を切る覚悟で、議員定数削減ぐらい言ったらどうなんですか。

岸田内閣総理大臣 まず、今回の防衛力の抜本的強化に関する財源の問題ですが、当然のことながら、まず増税ありきで議論を始めたものではありません。まずは政府の努力を最善のものとしなければならない、こうした観点から、あらゆる工夫をしなければいけないということで、歳出改革ですとか決算余剰金の活用、また、様々な努力を集めて、計画的、安定的に防衛力整備に充てるための防衛力強化資金の創設など、必要な財源の約四分の三は努力で賄わなければならない、こうしたことを申し上げました。その上で、約四分の一について、令和九年度に向けて、将来の世代への責任として、今を生きる我々の力で税制措置を考えていかなければいけない、こうしたことを申し上げました。

 そして、御指摘の復興所得税ですが、これは、その努力の中で、税制措置については、現下の家計の所得あるいは九四%の法人にとって負担増とならないよう十分な配慮をすることとしました。この現下の家計の所得に負担増とならないという観点から、御指摘の復興所得税の議論になったわけです。

 そして、その際に申し上げなければいけないのは、復興の予算については、その影響は生じないということであります。今、復興に対して必要な予算は、必要なものは復興債という形でしっかりと財源を確保するという形で復興努力を続けています。復興所得税は、その復興債に返済をしていく財源を確保するということですから、現実の復興の取組に何か支障が生ずるということは全くないということは申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、議員定数の削減ということについては、委員御指摘のように、この議論があり、そして、平成五年に衆議院の定数を五名削減した、平成二十八年に衆議院の定数を十名削減した、こうした取組を進めてきました。そして、議員定数の削減については、引き続き、これは民主主義の根幹に関わる重要な問題でありますので、この議論を続けていくという姿勢は重要だと思います。

 このように、今日おっしゃった合意以降においても何度か削減を行っているということでありますし、そうした経緯から、安倍元総理も、過去、党首討論の約束を誠実に守っていないとの指摘は全く当たらないと答弁をされていると承知をしております。(発言する者あり)

根本委員長 御静粛にお願いします。

岸田内閣総理大臣 このように、今日までの、党首討論後の、政権交代の、定数の削減の取組も併せて、今の御指摘について考えなければならないと思っています。

野田(佳)委員 私は、防衛費の財源の問題は、財務金融委員会にも属しておりますので、今後、鈴木大臣としっかり議論をしていきたいというふうに思います。

 次に、経済、金融、財政に移りたいというふうに思います。

 ちょっと幾つか、時間がなくなってきたので質問を飛ばしたいと思いますけれども、端的にお伺いしたいと思いますね。

 総理は、アベノミクスを踏襲するのか、それとも脱アベノミクスを目指すのか、どちらですか。

岸田内閣総理大臣 アベノミクスは、経済政策を進める中で、デフレではない状態をつくり出す、GDP等の向上に大きな成果を上げた経済政策であったと思います。

 私自身はどうかということでありますが、このアベノミクスの成果の上に立って、新しい時代の経済を考えていかなければならないと思っています。市場やマーケットに全て任せるのではなくして、官民の協力によって社会課題とされる分野を成長のエンジンに変えていく、このことによって、資本主義の持続可能性をしっかり確保する経済モデルを考えていくべきである、このように考えています。

 アベノミクスの成果の上に立って、是非、新しい時代に向けて、持続可能な経済をつくっていきたいと考えています。

野田(佳)委員 成果があるとかないとかじゃなくて、何だって成果があった部分はあると思うし、追悼演説でも光と影と申し上げました、光もあったと思いますし。ただ、総括しなければいけない部分はあると思うんですよ。

 少なくとも、金融政策については、これまでどおり異次元の金融緩和をずっと続けるというわけには私はいかないと思うんですよね。それはやはり、出口を探っていく、正常化していくという流れではないのかと思うし。新しい資本主義というのは、だから、その成果にのっとって、その上にということもあるのかもしれない、そういう言い方しか言えないのかもしれませんが、でも、新しい岸田カラーというのは、やはり脱アベノミクスになっていくんだろうと私は思うんです。

 一月四日の記者会見で、この三十年間、企業収益が伸びても、期待されるほど賃金は伸びず、想定されていたトリクルダウンも起きなかった、私はこの問題に終止符を打つとおっしゃっているわけですから、これはまさに脱アベノミクス発言だと私は受け止めました。トリクルダウンはアベノミクスの核たる考え方ではないかと思われていたわけですから、それが出てこなかった、終止符を打つとおっしゃったということは、私は脱アベノミクス宣言だと受け止めました。

 このトリクルダウンというのは、例えば、ここにコップが置いてあって、水がある。なみなみ注いでこぼれ落ちる。こぼれ落ちることがトリクルダウンじゃないですか。これはこぼれ落ちさせるわけにはいかないけれども。

 総理もお酒が大好きだから、分かりやすく言うと、大衆酒場で私はコップ酒を頼むんです、よく。一升瓶を持ってきて、店員さんがなみなみと注いでくれて、こぼれ落ちるんですよ。下の受皿までたまる、升までたまる。そうすると、飲んべえは、口元から運んで、表面張力の張ったお酒を飲んで、二、三センチ空く。その空いたところに下の受皿からもう一回お酒を入れる。これが一番幸せなときです、分かると思うんですけれども。

 なみなみと入れようと私はアベノミクスはしてきたと思います。成長力を何とか上げようといろいろやってきた。輸出型の企業がもうかるように円安の流れもつくっていこうといろいろやった。だけれども、下で待っている受皿には来なかったんですよ、届かなかった。届かなかったから、届いたところと届かないところの格差が広がってきた。だから分配に力を入れようというのが岸田さんの新しい資本主義なんじゃないんですかと私は解釈しているんですよ。

 だとすると、その方向で金融政策も考えて、新しい日銀総裁の人事を行うべきだと思うんです。

 日銀総裁の人事、これは具体名、今挙がってきちゃっていますけれども、これは本当かどうか分かりませんが、どういう人がふさわしいと思いますか。

岸田内閣総理大臣 まず、アベノミクスについて申し上げるならば、資本主義は、やはり基本的に、市場やマーケットに基づいて経済が動くということではありますが、その中で、成長、もちろん大事です。しかし、その成長が分配されてこそ次の成長につながっていくということだと思います。

 アベノミクス、これは、成長において大きな成果が上がったと思います。ですから、是非、その成果に基づいて、そしてそれをしっかり伸ばしながらも、成長の果実をしっかり分配と次の成長につなげていく、この好循環をつくることによって経済の持続可能性を維持したいというのが私の考え方です。

 そして、御質問の日銀の総裁人事についてですが、これについては、経済政策の基本的な方向に関わるものであり、金融界、経済界から多くの注目を集めておりますので、金融市場に与える影響などについて細心の注意を払いつつ、今、人選をしているところです。

 その中で、リーマン・ショック後には、主要国中央銀行トップの緊密な連携、そして内外の市場関係者に対する質の高い発信力と受信力ということ、これらが格段に重要になってきているという認識を持っています。こうした点に十分配慮して人選を行っていきたいと思います。

 それ以上は、今の段階で私の方から申し上げることは控えます。

野田(佳)委員 一般論としてはそうだと思うんですけれども、さっき出口のことも考えるのかということを聞きましたね。人事というのは、政策の方向性で決めると思います。

 ということで、私は、昨年、四人の閣僚がドミノのように次々辞めました。今回の人選ミスは絶対許されないと思いますよ。任期五年ですよ。とても大事です。この任期の間に金融政策の正常化もやっていかなければいけないわけですから、これは本当にしっかりと御提案をいただいて、もちろん、国会同意人事ですから、国会の中でもよく吟味をしたいと思いますけれども。

 少なくとも、いろいろな時限爆弾はセットされたんですよ、異次元の金融緩和で。マイナス金利だとか、イールドカーブコントロールとか、ETFとか。それぞれ弊害が出てきていますよね。それを、一つ一つ時限爆弾を解除する。これは、赤いコードを切る、青いコードを切る、黄色いコードを切る、順番とか、丁寧にやっていかなければいけない。その専門知識を持った人じゃなければいけないということは当然ですけれども、そういうことをやることに対してきちんと市場と対話できる、コミュニケーション能力がある人も必要ですね。そういう観点で、是非確かな人を御推薦をいただきたいと思います。

 その上で、問題は、新しい総裁と今度は二〇一三年一月のように共同声明を結ぶのかどうかだということなんですが、令和臨調が、政府と日銀に新たな共同声明作成を提言をされました。これを総理はどのように受け止めているかをお聞きをしたいと思うんです。

 資料を御覧いただければと思いますけれども、二〇一三年の共同声明なんですけれども、上の方に、日銀は物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とする、そして、できるだけ早期に実現をすると。

 このできるだけ早期というのが金融政策を硬直化させてしまったので、もっと長期という形にしたらどうかというのが提言の中身ですね、令和臨調の。そして、政府は競争力と成長力の強化とか持続可能な財政構造と、政府の責務を書いているけれども、こっちはやっていなかったなと。厳しい批判の下に、もう一回共同声明を作るべきだというのが令和臨調の御提言だと思います。

 私は大事な御提言だと思いますけれども、総理は、この令和臨調の御提言をどう受け止めていますか。

岸田内閣総理大臣 令和臨調によって、政府、日銀の連携により、生産性向上、賃金上昇、安定的な物価上昇が起こる持続的な経済成長が実現するための環境をつくること、また、二%の物価安定目標を長期的な目標と新たに位置づけること、そして、財政に対する信認を回復するために実効性のある仕組みと体制を構築すること、こうした提言がされていると承知をしています。

 政府としても、この生産性の向上、賃金上昇、そして財政に対する信認回復などの課題にしっかり取り組んでいくこと、これは重要であると認識をしております。

 ただ、共同声明ということで申し上げますと、今、先ほど言ったように、まだ新しい総裁の人選中でありますので、今の段階で新たな共同声明の中身について何か申し上げることは時期尚早だと思っております。

野田(佳)委員 時間が参りました。ありがとうございました。

根本委員長 この際、岡本あき子君から関連質疑の申出があります。野田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡本あき子君。

岡本(あ)委員 立憲民主党・無所属の岡本あき子でございます。仙台市の出身になります。

 私からは、今ほど野田元総理からお話がありました中身では、人を大切にすること、それから分配をしっかり届けること、このやり取りがあったと思います。共感をさせていただき、この立場で質問をさせていただきます。

 冒頭に、トルコ、シリアで発生した大地震について、犠牲になられた方に心からお悔やみを、そして、今も救助を待っている方々が一人でも多く救出されることを願っております。私の出身の仙台、東日本大震災でも本当に御支援をいただきました。今、政府それから民間も含めて全力で支える、このことをお伝え申し上げたいと思いますし、岸田総理始め、もう既に動いていらっしゃる報道は聞いておりますので、更なる支援をしていただきたい、このことをお伝えさせていただきます。

 さて、パネル一になりますけれども、失われた十年ということです。この間、日本は、国際社会においても人権意識では周回遅れの国となってしまいました。先ほど、人を大切に、分配をしっかりというところでも、児童手当、選択的夫婦別姓、同性婚、この部分、何一つ進まない、あるいは後退をしているこの十年、その背景に旧統一教会の動きがあったのではないかと指摘をさせていただきます。

 多様性を認め、包摂する社会は、経済や社会的な信頼の意味でも国際の標準となっております。信頼を得るためにも、今、まずは秘書官の件に関しては謝罪、撤回ということで、先ほど自民党さんの質問に対して謝罪をされておりました。

 私は、これだけではなくて、岸田総理が、同性婚を認めると社会が変わってしまう、この発言に対しても非常に大きな批判が出ております。BBCやロイターでも報道されておりますし、また、国連の報道官も、誰を愛し、誰と一緒にいたいかを理由に誰も差別をされてはならないと報道されております。

 岸田総理が、同性婚を認めると社会が変わってしまう、この表現もやはり当事者からは非常にネガティブな表現として受け止められております。この点も謝罪と撤回を求めたいと思います。お答えください。

岸田内閣総理大臣 まず、今回の総理大臣秘書官の発言、これは、不当な差別と受け取られても仕方ないものであり、政府の方針と全く相入れず、言語道断であり、不快な思いをさせてしまった方々におわびを申し上げなければならないと思います。

 その上で、私の発言についてですが、これは、同性婚制度の導入については、国民生活の基本に関わる問題であり、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものであり、その意味で、全ての国民に幅広く関わる問題であるという認識の下に、社会が変わるということを申し上げたわけであります。

 これは決してネガティブなことを言っているのではなくして、もとより、議論を否定している、こういったものではありません。こうした問題であるからして、議論が必要だということを申し上げております。国民各層の意見、国会における議論、あるいは同性婚に関する訴訟の動向、また地方自治体におけるパートナーシップ制度の導入、こうした運用の状況を注視していく必要がある、こうした慎重な検討が必要である、議論が必要である、こういった意味で申し上げたわけであります。

 ですから、今言った意味で社会が変わるということを申し上げたものであり、議論まで否定しているとか、そうしたネガティブな発言を申し上げたつもりはありません。

岡本(あ)委員 パネル二のとおりです。G7の中で、LGBTに関するところ、それから同性婚の法制化、これを認めていないのは日本だけです。

 先ほど、先日のやり取りの中で、変わってしまうという表現を使ったのは岸田総理の御自身の言葉だと。法務省の答弁のたたき台は、社会が変わるというのはあったのかもしれません。ただ、変わってしまうとあえて重ねておっしゃいましたよね。そこの真意を伺っております。もう一度お答えください。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、国民生活の基本に関わる問題であり、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものですから、こうした制度を導入するということになりますと、全ての国民に幅広く関わる問題であるということで、社会が変わるということを申し上げました。

 変わってしまうというのは、変わることになる、だから議論が必要であるということを申し上げているわけでありまして、これが、私自身がこうした議論を否定しているとか、そういった意味ではないということは是非御理解いただきたいと思いますし、こうした同性婚ということについて、是非、幅広く議論していくことが重要だということは国民の皆さんにしっかりと御理解をいただき、この問題についてどのように考えるか、国民全体で考えていきたいと強く思っております。

岡本(あ)委員 やはり、変わってしまうと言い直したという点は当事者の方々からは重く受け止められています。これが、総理自身がそういう意味はなかったということですけれども、質疑のやり取りの中、西村智奈美議員とのやり取りの中で、重ねてというか、言い直しておっしゃっているというのは議事録を見ていただければ明らかになると思います。

 やはり、その中で、議論をするということで、岸田総理、これは議論を前に進めていく、議論を展開していく、その決意をここで示されているということでよろしいでしょうか。

岸田内閣総理大臣 私の表現については、このように家族観とも密接に関わる大きな、国民に幅広く関わる課題であるということを申し上げたかったということであります。

 そして、この問題について、先ほど申し上げました国民各層の意見、もちろん大事です。そして、国会における議論ももちろん大事です。そして、今現在、同性婚に関する訴訟が行われている、こういった動向、さらには、地方自治体においてパートナーシップ制度の導入、こういったものが行われています。こうした状況もしっかり注視した上で、この問題について国民幅広く考えていくことが重要である、このように認識しております。

岡本(あ)委員 自治体でパートナーシップ制度を導入しているところ、増えてまいりました。岸田総理の御地元、広島市でも入っております。そして、ここ東京都でも入っております。人口カバー率でいくと六五%になっております。当事者の方で喜ぶ声は聞いておりますが、社会が変わってしまって混乱するとか、あるいは、困っているという声は……(発言する者あり)総理がおっしゃっているんじゃないですよ。混乱するとか、あるいは、困るという発言は……

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから、おまとめください。

岡本(あ)委員 ごめんなさい。はい。じゃ、これは後半にいたします。

 困っているという声は私のところに聞こえておりませんということを申し上げて、また午後に展開させていただきます。

 ありがとうございます。

根本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本あき子君。

岡本(あ)委員 午前に続き、質疑に立たせていただきます。

 このパネルにありますとおり、前段もお伝えしましたが、G7各国、資料二のとおり、比べると、日本だけが、同性婚、それからLGBTQの差別禁止法、夫婦別姓、何一つ行われておりません。

 報道等によると、LGBTの理解増進法、これを今まで超党派で議連でやっておりまして、残念ながら自民党さんが総務預かりとなっていたということで、西村智奈美議員のやり取りのときに、総理は、確認をするとおっしゃっておりました。その後の報道でも総理が指示をしたという報道も漏れ聞こえたんですが、このLGBTの理解増進法、前に議論を進める、前に進める、法律を作っていく、その覚悟はおありか、お答えください。

岸田内閣総理大臣 御指摘のLGBT理解増進法ですが、自民党においても、政調の性的マイノリティに関する特命委員会が中心となって法案を検討してきたと承知をしております。議員立法の法案であり、自民党においても、引き続き提出に向けた準備を進めていくことを確認をしております。

 政府としては、まずは、こうした議員立法の動きを尊重しつつ、見守っていきたいと考えています。

岡本(あ)委員 見守るというか、是非、ここは、先ほど御答弁で、議論をするという、これは同性婚でしたけれども、議論をするという話もありました。

 G7が開かれる際には、やはり世界各国を見ますと、LGBTの当事者も誕生しておりますし、G7に限らずですけれども、G7の閣僚やスタッフにも、これは日本ももちろんですけれども、LGBTQの当事者、あるいはアライ、理解者の方々が当然いらっしゃると思うんですね。こういう方々が来日をして、やはり人権の問題、G7は昨年はコミュニケも発表しております。

 差別があってはならない人権の問題、それから、LGBTQ、この方々に対して、法律を作ることで日本の態度を示すということにもなります。改めて決意を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 各国を取り巻く環境は様々ですので、単純に比較することは難しいとは思いますが、日本以外のG7諸国は、何らかの形の同性婚制度又はパートナーシップ制度、これを有しているものと承知をしております。

 この問題、この課題についての法整備につきましては、先ほど申し上げたように、議員立法として議論が進んでいます。自民党においても、こうした取組を、議論を進めていくことを確認をしている、こういった状況であります。

 是非、こうした議論が進むことを政府としてもしっかりと見守り、対応を考えていかなければならないと思っています。

岡本(あ)委員 スケジュール的には、やはりG7を開催する前までに実効が上がる判断、こういうスケジュール感はおありでしょうか。

 先ほど、各国あるとおっしゃいましたが、これはやはり先進国においては世界標準なんだと思います。私、残念ながら、日本は周回遅れの位置にいると思います。是非、G7を開く議長国、開催の国として、スケジュールを示して判断をするべきだと思います。お答えください。

岸田内閣総理大臣 この議論については、今まで様々な議論の結果として、議員立法で法律について考える、こうしたことで議論が続けられてきております。こうした取組は尊重されなければならないと思いますし、自民党も、こうした議論、引き続き法律の提出に向けて準備を進めてもらっているということであります。

岡本(あ)委員 私は、やはり、G7を開く、閣僚会議は早ければ春からありますので、そのときには、日本が周回遅れだ、今回、世界的な報道に載ってしまっている、日本は人権意識を問われる報道がされている、このことを払拭するためにも意思を示すべきだと思います。

 そして、同性婚と一緒に三点セットでパネルに示しております選択的夫婦別姓、資料五のパネルですと、岸田総理、選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議連の呼びかけ人になっておりますよね。先ほど私は三点セットと申し上げました。是非これの議論も進めるべきだと思います。

 呼びかけ人という岸田総理として、是非、政府として推し進める、その決意も伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 私自身は今自民党の総裁でもありますので、個人の考え方、もちろん大事ではありますが、総裁として発言をしなければいけない立場ではあると思います。

 そして、おっしゃるように、選択的夫婦別氏制度については、自民党の中にも議員連盟というものが存在し、そうした議論が行われています。こうした議論を行うことは重要であると思いますし、そうした議論がどのように進んでいくのか、これは注視していきたいと思っています。

岡本(あ)委員 今は自民党総裁というお話をされました。資料六では、総裁選の際にも、導入を目指して議論をすべきだということをおっしゃっております。突然、公約からは消えたんですけれども、総裁選を戦う場では、メディアの前では、もう一つ、資料九ですか、お手持ちの資料でも、テレビでおっしゃっているということです。

 やはり、総裁として、それから、先ほどから再三申し上げている、世界の標準に追いつきましょうよ、人権上は。是非ここは総理のリーダーシップを求めたいと思います。

 ここで、実は高市大臣にお越しいただいております。夫婦別氏制度に対しては否定的な立場を取っていらっしゃると伺ったんですが、やはり閣僚内を、この人権感覚の三項目、統一をしていく努力を総理としてはするべきですし、高市大臣は閣僚となって、今、議論を進めるという答弁はいただいているんですが、その件に関して、高市大臣、閣僚になっていらっしゃる高市大臣としての御見解を伺いたいと思います。

高市国務大臣 夫婦別氏制度についての御質問だと思いますけれども、今、内閣において夫婦別氏制度に変更するという方針が決まっているとは承知をいたしておりません。

岡本(あ)委員 ただ、議論は進めていくということはあると思うんですが、総理はこの夫婦別氏制度、別姓制度についてはどうなんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 自民党の中に議連もあり、議論は行われているのはそのとおりであります。そして、今、高市大臣から答弁がありましたように、政府としてはまだこの問題について方針が決定したというものではありません。

 ですから、これから方針が決定したならば、内閣において一致した方向で努力しなければならないと思いますが、今の段階では、まだ自民党の中でも議論が行われている、こういった段階ですので、その議論の行方を注視していきたいと思っています。

岡本(あ)委員 岸田内閣の中で議論を進める、私からすると、先ほど再三申し上げているとおり、世界の水準から取り残されている、その感覚はおありでしょうか。やはり議論を始めるべきですし、方針を持つべきだと思います。この点、総理、お答えください。

岸田内閣総理大臣 こうした選択的夫婦別氏制度等の議論、従来から答弁で申し上げているのは、国民に幅広く関わる問題であるからして、国民の議論、理解、これが重要だということを申し上げてきました。

 是非、自民党の議論については今申し上げたとおりでありますが、こうした議論が広がることによって国民の理解や議論も進み、そして、それをしっかり受け止めて政府として判断をしていきたいと考えています。

岡本(あ)委員 国民の理解というお話をされていましたが、議論をずっと止めていらっしゃいましたよね。議論をして方針を出すべきだと私は考えます。しかも、再三申し上げているとおり、やはり世界に対して、人権、ジェンダー平等、この日本の立ち位置というのをしっかり示すべきだと思います。

 議論を始めることについては、高市大臣も、閣僚としては、それは問題ないという認識でよろしいでしょうか。もう一度伺います。

高市国務大臣 自民党内では随分昔から議論をいたしております。

 今は閣僚の立場ですが、一国会議員としては、自民党の政調会に対して、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案を自ら起草し、提出をいたしております。親子、夫婦のファミリーネーム、戸籍上の同一氏、これは保った上で、婚姻前の氏をより便利に、社会のあらゆるところで使えるようにという法律案は、一議員としては提出いたしております。

 ただ、この内閣として、例えば法務省が法律案を提出して夫婦別氏を進めるかどうかといったことも含めて、その方針はまだ決まっていないと承知をいたしております。

岡本(あ)委員 是非、議論をしていただきたいですし、やはりスケジュール感を持っていただきたいと思っています。

 今ほど高市大臣から、いわゆる通称使用を拡大していくという意味での法律案を出されたのかなと思いますが、私も通称を使用している一人としては、やはり限界があると思っています。特に、税金の関係、相続の関係。逆に言うと、IDを二つ持ってしまうリスクもあるということが通称使用の限界かなと思っております。

 決して強制をするものではありません。あくまでも選択できるようにしろというものですので、是非この点は議論を、自民党の中では議論が出ているということでしたので、政府の立場を示すときになってきているんじゃないかと思います。岸田総理に改めて伺いますし、三点セットで取り組むべきだということを申し上げたいと思います。お答えください。

岸田内閣総理大臣 まず、三点セットで取り組むというのは、資料一の三点ということですか。(岡本(あ)委員「資料二ですね」と呼ぶ)資料二の三点ということでありますが、それぞれ課題によって状況は様々ですので、これをまとめてということはなかなか難しいのではないかと思います。それぞれ重要な課題であります。議論を行うこと、これは当然重要なことであると認識をしております。

 そして、政府としてどうするかということについては、今申し上げたように、例えば選択的夫婦別氏制度であるならば、自民党の議論、各党の議論、これをしっかり踏まえながら政府として判断をするということであると思っています。

岡本(あ)委員 高市大臣の御説明ですと、党の中の議論は進んでいると伺っておりました。政府としてどう取り組んでいくのか、この点が問われていると思います。

 高市大臣は、個人的な見解のところでは、かつてですけれども、「クタバレ「夫婦別姓」」と題した雑誌の対談に載っていたりとか、かなり夫婦別姓については辛辣な立場を取っていらっしゃると思います。是非、党内の議論は進んでいるんだというお答えがあったので、やはり政府としての姿勢を示す時期に来ていると思います。この点を指摘させていただきます。

 続いて、子供に関してですが、資料三、失われた十年の中に子ども手当がありました。この中で、私たちが、所得制限の撤廃、これをうたっていたときに対して、当時の安倍元総理は、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化ということ、それから、子育てを家族から奪い去るとおっしゃっているものがあります。岸田総理はどうお考えでしょうか。

岸田内閣総理大臣 子育てに関する議論は、この十年だけを振り返ってみても様々な議論が行われました。具体的な政策についても、その議論の中で、国民のニーズも変化している、求められる政策も変化をしてきました。

 そして、委員が今御指摘になられたのは、かつて政治の場で、子育ては家庭が行うのか、あるいは社会で行うのか、こういった議論が行われた、その際の発言を指摘されたと思います。

 それについてどう思うかということですが、かつて、子供、子育ての議論も、御紹介いただいた議論等も含めて、家族か社会か、二者択一のような議論が激しく行われた、こういった時代があった、これは事実であります。しかし、先ほど言いました、この十年間の変化を見ましても様々な議論が行われてきた。

 私自身はどうかといいますと、子供、子育てにおいて家庭というのは大変重要な存在ではあると思いますが、それを社会がしっかりと応援していく、サポートしていく、こうした社会をつくっていくことが重要だということを申し上げています。

 是非、このような形で社会全体で意識を改革をし、従来から関与が薄いと言われていた男性や企業や地域社会を含めて、社会全体で応援していく、こうした雰囲気をつくっていくことが重要であると思っています。

岡本(あ)委員 十年前にその発言をしてくれていたら、これだけ遅れなかったんじゃないかと私は思いますし、あと、家族か社会かという二者択一を突きつけたのは、民主党政権時代の当時の野党でございました。私たちは家庭を否定したことは一度もございません。社会で応援する仕組みがなければ少子化は加速するということ。

 それから、やはり子供を分断するということには私は賛同いたしません。それは所得制限ということも一つです。子供を分断させるということには全く賛同……(発言する者あり)

根本委員長 場内で議論するのはおやめください。

岡本(あ)委員 賛同しておりません。

 ただ、社会で支える、地域社会、それから企業、それから全体社会でサポートするという言葉を総理から伺いましたので、全面的に。一点、やはり子供を分断しないでいただきたい、その点は強く求めたいと思います。所得制限に関しては、やはりその点が大きいと思いますので。

 これは、十年間の所得制限がかかったために子供に届かなかったものです。資料の四になります。これの詳細は、後ほど同僚議員、先輩議員が聞いてくださいます。

 私からすると、やはりこういう所得制限をかけるということが子供を分断するということにつながるのではないか、この点を懸念しております。岸田総理はどう捉えますでしょうか。お答えください。

岸田内閣総理大臣 従来から申し上げているように、所得制限を設けるということは、政策の目的ですとか、あるいはそれを支給する際の様々な仕組みですとか、そういったことに関わる課題であると思っています。

 分断を生ずるという御指摘がありますが、子供政策というのはたった一つしかないものではありません。様々な政策を重層的に用意することによって、様々な立場に置かれた子供さんであったり家庭であったり、それぞれに支援を行うためにこうした重層的な政策が用意されているということであると理解しています。

 そのトータルを考えた場合に、一つの制度が社会を分断していくということにはならないと思いますし、それはあってはならないことですし、今言った形で、決して分断を生ずることがないよう、政治としてしっかり配慮していくことが重要であると思っています。

岡本(あ)委員 やはり、分断があるというのは、子供、当事者、それから子育てをしている当事者の方々にとって本当に心を傷つける部分になります。

 重層的にやった結果、効果があるというのであれば、子育て罰とか親ガチャとか、そういう言葉がこれだけ氾濫することはないんじゃないかと思います。是非、分断をさせないという点に心を置いていただきたいと思います。

 あと、済みません、ちょっと質問を飛ばしまして、産科医療の方、資料十一になります。パネルはないんですが、資料十一で、昨年の一月から、子供が生まれる際に、出産に伴って重い障害を持ったお子さんを対象を広げて救済をすることになりました。これはとても歓迎しますし、障害を持ったお子さんの子育てを応援する意味でもとても喜ばれています。ところが、一昨年の十二月までに生まれたお子さんは対象外ということになってしまっています。ここも分断が起きています。

 子供、少子化、こういう取組を真剣にやるのであれば広く救済をするべきだと思いますが、この点、お考えをお聞きしたいと思います。

加藤国務大臣 産科医療補償制度でありますけれども、これは、運営組織である日本医療機能評価機構が設置する運営委員会等において、その時点の医学的知見や医療水準を踏まえて、また、学識経験者や医療保険者等による議論を踏まえて定められたそうした基準で運営をされ、実際、補償をされているところでございます。

 今委員おっしゃったように、この間、考え方が少し変わってきたということはありますけれども、そもそもこれは、日本医療機能評価機構と保険会社が保険契約を締結し、医療保険者がその掛金を負担する、いわば民間の保険契約と言っていいんだと思いますけれども、そこにおいて、どういう場合に補償するのか、それが決められて、そしてそれにのっとって支払われる、こういう仕組みで運営されているところであります。

岡本(あ)委員 今、制度上の理由を説明されました。

 私、これは政治判断も必要なんだと思うんです。総理として、やはり、障害を持って生まれたお子さんを社会で支えていく、障害を持っても二人目、三人目、子供を持つというのは幸せなことだし、障害を持ったお子さんを幸せにしていくこと、このことも少子化対策としては必要だと思います。

 取り残さない、それから分断をさせない。あらゆる知恵を絞って、こういうお子さん、それから子育てを頑張っている方々を分断させない、そういう知恵を一緒に絞りませんか。是非、総理、お答えいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 今の厚労大臣からの答弁は、民間の保険であるからして、現状、この制度での救済というのは難しいということであると私も承知をしております。そして、まず、運営組織において、こうした困っておられる親御さんの声をよく聞いていただき、丁寧な検討とそして説明が重要であると思います。

 その上で、政治としてどのように考えるのか、これは、まずは今の制度の中で関係者に御努力いただいた上で考えるべき課題だと思います。

岡本(あ)委員 政治的にどうあるべきかというお言葉はあったと思います。制度の説明はもう再三されているんです。それで取り残されているという現状を受け止めていただきたいと思います。

 いろいろと聞きたいことはまだありましたが、総務大臣、申し訳ありませんでした。マイナンバーカードを持っていないと給食費を無償化にしない、春からは有料化にするよ、そういうような子供の、児童の分断を起こすような例も出てきております。これは決定ではないので、是非ここは、マイナンバーカードを所管する大臣としては、子供を分断させない、カードの理由で分断をさせないということに御配慮いただきたいと思います。

 時間がないので、最後、文科大臣に、卒業式、入学式のマスク着用、するのかしないのか。速やかに、速やかにと言ってもう一週間以上速やかが続いておりますが、決断されましたでしょうか。

永岡国務大臣 お答え申し上げます。

 一月二十七日の政府対策本部決定では、マスクの取扱いの検討に関しましては、感染状況等も踏まえて行い、今後早期に、見直し時期も含めて、その結果を示すということでございました。

 政府全体での検討を踏まえまして、卒業式等を含めました学校におきますマスクの着用に関しまして今後どのような対策をしていくかということは、早急に検討してまいります。

岡本(あ)委員 いまだに早急というのが本当に残念でなりません。もう卒業式の案内、文書は出ておりますので、子供たちに対して、例えば服装とかはかなり厳しく、ちゃんと上着は着なさいよとか、冬用の服で、制服で出席しなさいよとか、かなり細かく学校がやっている中で本当に混乱を来しておりますので、この点、今週中に是非決断をしていただきたいと思います。

 最後まで、世界水準に追いつけということを、人権上追いつけということを申し添えて、私、岡本あき子の質問を終わります。

 ありがとうございました。

根本委員長 この際、渡辺創君から関連質疑の申出があります。野田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党、宮崎一区選出の渡辺創でございます。

 まず、農政と食料安全保障の問題から質疑をしたいというふうに思っておりますが、総理、今日はテレビ入りでもあります。国民の皆さんに直接、総理のお考えを聞いていただける場面でもありますので、具体、詳細なことは農水委員会で改めて農水大臣とも議論したいと思いますが、総理のお考えになっている大きな方向性について、是非国民の皆さんに御理解いただけるような質疑になればというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 ちょうど一週間前になりますが、この予算委員会で総理と議論をさせていただきました。その中で、私たちの国は、高度経済成長期、バブルの時代、デフレの時代、どの時代も、お金があれば食料は買える、食料は輸入すれば大丈夫という、今の時点から考えれば誤った認識を持ち、国もそういう政策を進めてきてしまったのではないか、その結果が、食料確保に関する過度の海外依存という深刻な状況を招いてしまったのではないか、それが、昨年はロシアとウクライナの紛争などの影響もあって、国民が食料供給、生産力の低下というところに危機感を強めたんじゃないかという指摘をさせていただきました。

 最初のパネルを御覧いただきたいと思いますが、その議論の中で、赤い線で示しておりますが、その際に、総理は、その指摘を重く受け止めなければならないというふうに御答弁をされたところであります。

 まずは、この答弁があったことを前提にしてお伺いをしたいんですけれども、なぜそういう過ちを私たちは犯してしまったのでしょうか。どこかの時点で、こういう状況を踏まえて、食料確保の軸をもっと明確に強く国内に持ってくる、スライドさせるという判断があれば現状は違ったのではないかというふうに思うんですけれども、総理はどのように御認識されていますでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、委員が御指摘になられた前回のやり取りについてですが、食料に限らず、グローバル化を進めることによって経済は発展する、幸せがやってくる、そうした一方的な考え方が、農業のみならず、世界経済、貿易を始め様々な分野で、今そういった反省が指摘をされています。

 そして、その中で、日本においても、おっしゃるように、グローバル化が進むことによって食料の確保は大丈夫だという思いがあったのではないかという御指摘について、重たく受け止めると申し上げた次第です。

 しかし、その中にあっても、日本において、振り返りますと、食料・農業・農村基本計画においては、古くは平成十二年から食料自給率目標というものを掲げています。ですから、今から二十年以上前になりますが、そういった時点から、やはり自給率というのは高めなければならない、そういった問題意識は持って取り組んでいたんだと思います。

 そして、御指摘のように、昨年、ロシアによるウクライナ侵略を受けて世界的規模の食料危機が生じて、そして食料安全保障上のリスクが顕在化し、輸入依存からの脱却に向けた農業の構造転換の重要性が改めて強く浮き彫りになった、これがこれまでの歩みではないかと思っています。

 是非、この状況を重く受け止めて、食料安全保障強化政策大綱に基づいて、食料安全保障の強化に向けた政策、これを進めていかなければならないと思っております。

渡辺(創)委員 総理が衆議院に初当選されたのは一九九三年だと思いますけれども、一九九三年の時点でも、カロリーベースの食料自給率は三七%です。今とほとんど変わっていないわけです。

 二十年前から食料自給率への認識はあったというふうに総理はおっしゃっていますけれども、いや、二十年どころじゃない、三十年前から同じ状況が続いている。岸田総理が国会議員に、衆議院議員になられた時点から根本的な状況は変わっていないわけです。私は高校一年生です、そのとき。それから四十五歳になる今まで、何ら状況が変えられていないというのは事実だと思うんですね。

 やはり、様々な貿易交渉等々の中で、これは印象でしか言えませんけれども、常に農産物、農業が犠牲になってきたのではないか。そうやってこの国がこれまで長き戦後を歩いてきた。そのこと自体をもう一回しっかり点検をして、そこに過ちがなかったかということを見詰め直して、今回大転換をある意味図らないと、本当に国民の皆さんの不安につながってしまうという状況だと思って質問していますので、もう一度、その観点を捉えて、総理から御答弁いただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 グローバル化が進めば食料の確保は大丈夫だというような考え方があったのではないかということについては、重く受け止めなければならないと申し上げております。

 そして、昨年からのロシアのウクライナ侵略によって生じた世界的な食料危機に備えなければならない。改めて食料安全保障の重要性が再認識された、改めて強く認識された、こういったことであったと思います。

 こうした世界的な食料情勢など、我が国の食料、農業を取り巻く課題の変化、これを踏まえて、是非、来年度中に食料・農業・農村基本法の改正案を国会に提出することを視野に、六月をめどに、食料安全保障を含め、食料、農業、農村政策の新たな展開方向、これを取りまとめていきたいと思います。

渡辺(創)委員 今総理からありましたように、今年は基本法の改正が予定されているわけですね。だからこそ、これまでのこの国の農政の歩み自体をやはりきちんと点検し、総括をして、次の絵を描くということが大事だと思いまして、御指摘をしているところです。

 宮崎県の綾町という町があります。この綾町というところは、照葉樹林の町でもあって、条例も作って自然生態系農業の推進を図っているところでありまして、ユネスコエコパークでもあります。

 この綾町の方から、農林水産業を、第一次産業というふうに統計上の整理のような呼び方はやめてくれ、この間もちょっと申しましたけれども、むしろ、生命維持産業と呼んでくれというお話がありました。確かにというふうに強くうなずいたところであるんですけれども。

 私は、この話を聞きながら、この言葉の背景には、人間が生きていくために必要な食であったりとか、また、林業であれば二酸化炭素の吸収であったり、人が暮らす建物につながっていくことでありますけれども、そういう仕事をしているということの、人間が生きていくことを支えているということの矜持であったりプライドみたいなものが裏にありながら、同時に、しかし、今はそういう農林水産業がどんどんどんどん難しくなっていく、維持していくことが非常に厳しい状況にある。こういう現状に対する焦り、プライドと焦りみたいなものが折り重なって、複雑な心境がこの言葉の裏にはあるのではないかというふうに私は感じました。

 今国会での施政方針演説では、総理が農業に関して、農業、農林水産業に触れたのは、繰り返し申して申し訳ありませんが、一万一千四百九十四文字のうち、僅か百二十一文字ということでありました。残念だったというのは先週も申し上げたところでありますが、この十年間でも最も少なく、昨年の半分でもありました。

 総理は、農林水産業に関わる方々の、先ほど申した苦境だったりとか焦りであったりとか複雑な心境みたいなもの、こういうものを十分に感じながら国家運営をなさっていらっしゃるのか、そのことを改めてお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、農業は、我々が生きていく上でも必要な、食料の安定供給が不可欠であるということを考えてみても、極めて重要な存在であるということは言うまでもないと思っています。

 そして、様々な声を聞いてきているのか、聞きながら政策を行っているのかという御指摘がありました。関係者の皆さんの声を聞くことは重要であると思うからこそ、私も、政権を担ってから、車座対話という形で、全国各地、様々な分野の方々と意見交換をさせていただいてきましたが、農業に関わる皆さんについても、生産者という立場の方々からも、様々な話を聞きました。

 もちろん、消費者側の意見も、話も聞かせていただきましたが、特に、生産者の方々の御意見として、肥料、飼料の高騰の中で苦しんでいる、価格高騰の中で苦しんでいる、そういった話ですとか、様々な地域で創意工夫をしながら、地元の様々な資源を活用するべく努力をしている、そうした様々な前向きな取組についての話ですとか、様々な話を聞かせていただき、何よりも、女性や若者、様々な人材が生かされることが重要であるというような点等も、いろいろ考えさせていただきました。改めて、意欲と誇りを持って多くの方々が活躍できる魅力ある産業というものを目指さなければいけない、こういったことも感じてきたところであります。

 施政方針演説の文字数について御指摘がありました。もちろん、当然のことですが、文字数が政策の重要性や優先順位を示すものではないということは改めて申し上げながら、ただ、その点もしっかりと、御指摘はしっかり受け止め、今後とも、今言った、現場の方々に寄り添いながら、未来に希望を持てるような農政を進めていく、こうした強い覚悟を持って取り組んでいかなければならないと考えています。

渡辺(創)委員 次のパネルを御覧いただきたいと思うんですが、日本が食料調達の海外依存を深める中で、この国の農業生産力は低下の一途をたどっています。

 これはこの十年間の日本の農地面積と農業従事者の推移を示したものですが、ずっと右肩下がりで、以前からこの傾向は続いているわけですけれども、ストップをかけられないでいるというのはお分かりいただけるというふうに思います。

 この間の日曜日に、宮崎県の国富町というところで座談会をやりました。今日は、隣の与党筆頭理事の席に同じ宮崎県の古川委員もお座りになっていますけれども。

 総理も御存じのように、宮崎は畜産と施設園芸が大変盛んなところであります。この座談会に農業委員の方が出席をされていたんですが、地形的に不利な環境にある地域では畜産と施設園芸以外ではやっていけない、だから田んぼがどんどん減っていっている、普通の畑もどんどん減っている、だから、結果的には耕作放棄になって、今、人・農地プランに基づく地域計画の地図作りをしていても、耕作者がいないところばかりになっているというふうにおっしゃるわけです。

 私は、こういう状況を踏まえると、効率性であったり経済合理性の追求だけではなくて、主要穀物などについては、やはり生産すればきちんと利益を担保できるという仕組みに大きく切り替えるべきだというふうに感じます。なぜなら、それが国民の安心につながるわけですし、食料危機という有事への備えにもつながるからであります。是非、そこにはしっかり国の資金も投じるべきではないかというふうに考えるところです。そうしないと、農業用地も農業者も維持することができず、このままだと、仮に不測の有事になった際にも、転換する農地もなければ生産に当たる方々もいない、まして、農業者以外が生産に当たらなければならない際に指導する人材もいないということになりかねません。

 総理、いかがでしょうか。生産に対する直接支払いの要素を強めるなど、思い切った農業政策の転換が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 主食用米の需要は毎年減少しています。そして、余剰が見込まれる中で、食料安全保障の強化を図りつつ稼げる農業としていく、こうしたことを進めることを考えた場合に、主食用米から小麦、大豆などへの作付転換を支援し、米の需給の安定を図りながら、輸入依存からの脱却に向けた農業構造の転換を進めていく、こうしたことが重要であると考えて政府としては取組を進めている、これが今の考え方です。

 このために、麦、大豆等の諸外国との生産条件に関する不利を補正する交付金の交付、あるいは収入保険制度等によって農業者の経営安定を図りつつ、総合経済対策において、畑作物の産地形成に必要な一定期間の畑地化支援、これを創設した、こうしたことも行いました。麦、そして大豆など需要のある作物への本格的な転換を一層強力に進めていく、こうしたことを行っていきたいと思います。

 そして、御指摘の価格保障あるいは収入補償ですが、一般に、需給動向や需要者のニーズを考慮しない生産を助長するのではないか、こういった御指摘もあります。そして、農業の体質強化にはつながらないのではないか、こういった考え方に基づいて、そういった政策ではなくして、今申し上げた政策を行っているというのが現状であります。

渡辺(創)委員 ちょっと後段のところには納得できない答弁もあったかと思いますが、私は、戸別所得補償制度、結局骨抜きになってしまいましたけれども、そうではなくて、戸別所得補償制度の足りないところを補って、よりその要素を充実させるような方向にもし進んでいれば、この十年の状況は大分変わったのではないか、これも失われた十年ではないかというふうに思いを述べまして、次に進みます。

 未利用国有地の問題についてお伺いをしたいと思います。

 昨日、私ども立憲民主党と日本維新の会の共同の行政改革・身を切る改革プロジェクトチームで、東京都新宿区戸山の旧公務員住宅若松住宅跡を視察してきました。このプロジェクトは、政治改革や行政改革、国会改革など、両党の基本的なマインドが重なる部分について、共に政府や国会の姿勢を改めて問い直して、積極的な問題の指摘や提案に取り組もうというものであります。

 パネルを御覧いただきたいと思いますが、上が昨日の視察の様子でございまして、下は若松住宅の外観であります。敷地面積は六千四百平米、地上十二階建ての全八十七戸の建物が残され、国有財産台帳上の価値は約三十億円というふうにされています。

 路線価や公示価格などを考えると、仮に売却した場合であれば実勢価格はもう少し高くなる可能性もあるのではないかと思いますが、鈴木大臣、この財務省管理の国有財産、御存じだったでしょうか。

鈴木国務大臣 本日、先生から質問通告を受けて、レクチャーを受けて知りました。

渡辺(創)委員 この物件は、民主党政権下で公務員住宅の削減計画が始まったばかりの平成二十三年に、最も早い段階で廃止が決まった住宅の一つであります。

 つまり、活用の具体案が最も早く決まってよかったものの一つだというふうに思うわけですが、それから十二年放置されたまま、えとが一回りしてしまったということになります。なぜこのような状態になってしまったのか。

鈴木国務大臣 合同宿舎若松住宅でありますが、先生から今御指摘がございましたとおりに、平成二十三年十二月に公表されました国家公務員宿舎の削減計画に基づいて廃止がなされたところでございます。

 それで、国有財産の有効活用のためには、境界確定協議や土壌汚染の調査など、手続を行う必要があるわけでありますが、この若松住宅におきましても、廃止以降、財務省において、これまで発掘調査、それから土壌汚染調査を実施しまして、一部省庁においてこの地の活用を検討していた等の経緯があり、結局はそれが実現できずに現在に至っているという状況であります。

 この財産につきましては、財務省において、今後、公用、公共用の利用を優先するという考え方を基本として、売却又は貸付けなども含めて有効活用を進めていきたい、そのように考えております。

渡辺(創)委員 余りにも時間がかかり過ぎているんですよね。今御説明にあったいろいろな作業も細かく当局から聞いていますが、十二年もかかる中身ではないですよ。

 公用での活用といいますが、厚生労働省の医薬・生活衛生局というのが検討していたという話ですが、二年間検討していて何の返事もないまま、使わないということで、またこの状態になっているということなんですね。十二年前に閉まっているものですから、本当に厚生労働省で真剣に活用しようと思っていたんだったら、調査をやっている段階からできたと思うんですね。ところが、それをやらずにだらだらと時間がかかっている、これが現実だと思います。

 こういう表現は余りしたくないですけれども、大臣も一度前を通っていただきたいんですが、これは一等地にある廃墟ですよ。昨日ニュースで流れていましたけれども、周りの方もお化け屋敷とかとコメントされていました。こういう状況を許していていいのかということだというふうに思います。

 ちょっと次のパネルを見ていただきたいと思うんですが、民主党政権の際の公務員官舎の削減で、ここに示しているように、いろいろな工夫を施して、二千九百三十九億円という財源を捻出したのは御存じのことだというふうに思っております。

 いろいろな取組が続いていると思いますが、やはり、平成二十九年に一旦取組を、歩みを緩めたというか、その後、少し動きが悪いことは事実だというふうに思いますし、実際に若松住宅のように停滞をしているものもあるわけです。

 ちょっと次のパネルを御覧ください。

 これは、私どもが財務省の公開情報を基に調べたところ、行政目的を既に失って普通財産となった未利用の国有地は、東京二十三区内だけで少なくとも百十九か所、台帳に登録されている金額だけで計二千五百三十三億四千五百五十一万二千九百七十一円というふうになります。二千五百億円です。

 主要なものをパネルにも出しておりますけれども、もちろん、いろいろ事情があると思いますし、すぐに売れないものもあるというふうに思いますけれども、今、これはやはり売却であったりとか、定期借地権がついた形で貸し出すとか、いろいろなやり方はあると思いますから、そこは工夫の余地があっていいと思いますが、もう一回しっかり、現金に換えられるものは換えるという形での見直しを、もう一回エンジンをかけるべきではないかというふうに思うところであります。

 なぜなら、岸田政権は今、防衛や子供、子育て施策の重要性を説いて、国民に新たな負担、つまり増税を求めようとしている政権ではないですか。やはり増税の前にできることを必死でやるという姿勢をしっかり示すべきだというふうに思いますが、総理の見解をお伺いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、委員御指摘のように、未利用国有地の適切な処分、これを一層推進する。そして、定期借地権を活用した貸付けなど、有効利用を最大限行う。こうした取組は重要であると思いますし、おっしゃるように、引き続き進めていかなければならないと思います。これはしっかりやらなければならない。

 ただ、最後の部分で防衛財源との関係をおっしゃいましたが、国有財産については、不要な資産の売却、これまでも進めてきました。そして、結果として、未利用国有地のストック、これは大きく減少しています。令和三年度末の時点で、ストック全体で四千八百四十一億円であるということであります。

 これもできるだけ適切な処分や有効活用を進めていかなければならないと思いますが、こういった努力もしっかり進めつつ、防衛力強化等の財源についてどう考えていくのか、これは引き続き、政府としての考え方を丁寧に説明していかなければならないと思っています。

渡辺(創)委員 進めて、今までも来たし、これからも進めるというのはもちろん当然だと思います。

 ただ、先ほど、最後のところの見解は若干総理と違うのかもしれませんが、多くの国民の皆さんは、これから、意味がないと言っているわけじゃなくて、少なくとも、政権が言うことでいえば必要性の高い施策をいっぱい打ち出すために、新たに国民の皆さんの負担も検討しなければならないかもしれないということは間違いなくおっしゃっているわけですから、それを国民に求める前には政治サイドの姿勢が問われるということだと思います。

 ですので、そのことをやはりしっかりと、明確に取り組むという趣旨を、是非総理の立場からきちんと述べてもらいたいと思うんです。是非、そこはいかがでしょうかね。

岸田内閣総理大臣 当然のことながら、国民の皆さんの負担ありきではないと思っています。まずは政府として、歳出改革、おっしゃるような様々な努力、これを進めるのが大前提であるということであります。

 ですから、防衛力の強化につきましても、最大限努力することによって四分の三、何としても国の努力で安定財源を確保したい、そして、残りの四分の一について財政措置をお願いできないか、こういった説明をさせていただいています。

 政府の努力がまず大前提だということは、おっしゃるとおりだと思っています。

渡辺(創)委員 我々は、必要なものまで何でも削ればいいなどということを決して申しているわけではありません。ただ、近年、行政改革、政治改革、国会改革、ある意味では少し歩みが緩んでしまっているところが、我々国会議員自らのことも含めて、今日、議員定数の話も野田総理からありましたけれども、そこがやはり、少し緩んでしまったんじゃないかという危惧を持っています。

 そこは改めて、しっかりまず点検をして、見直すべきものは見直すべきだという主張を我々はしているところですので、そのことをきちんと申し述べておきたいというふうに思います。

 次に、宗教法人法に関する質問をしたいと思います。

 済みません、財務大臣、ちょっと別の国有地のことも質問を予定しておりましたが、また改めての機会にしたいというふうに思います。

 先週の予算委員会で、宗教法人法に関する議論をいたしました。旧統一教会の問題ではなくて、宗教法人法で年に一回宗教法人に対して提出が義務づけられている事務所備付け書類の未提出が全国で一万三千法人ほどあり、宗教法人の一割弱に及ぶということを指摘しました。その上で、未提出で活動実態のない可能性が高い不活動宗教法人が、宗教法人法の税制上の優遇を狙って、事実上、宗教法人法で想定されていない売買の、隠れみのになっているのではないかと指摘をしたところであります。

 岸田総理も、あってはならないことだというふうに答弁をされて、実態把握と、現行法が十分活用、適用されているか検討した上で、文化庁は全力で取り組むよう指示したいというふうに御答弁をいただいたところであります。総理、きちんと問題点を理解していただいたことを感謝申し上げます。

 さらに、今回、その中で分かってきたのは、文化庁は、全国で活動する宗教法人、つまり県境をまたぐような宗教法人ということになりますが、そこを所管しています。法人が提出義務のある事務所備付け書類を未提出だった場合、通常は、督促を繰り返し、それでも未提出の場合は、裁判所に過料を請求するということになるのがルールです。

 ところが、元年、二年の二年間、未提出法人に対して督促を行っていないということが分かりました。黄色く囲んでいるところを見ていただければ分かりますが、通常九〇%後半前後のところが、この二か年、八四・一%、七九・七%、落ち込んでいます。

 コロナ対策を理由にやらなかったというふうにおっしゃっていましたけれども、これはやはり行政の対応としては不平等であり、おかしい。みんなに同じ条件で求めるならいいですが、出していないところ、義務を果たしていないところにだけおかしな対応をしたということだと思います。

 この評価を前回大臣からははっきり聞けませんでしたけれども、これは問題はどこにあって、どういう問題だと整理されていますか。

永岡国務大臣 お答え申し上げます。

 令和元年度そして二年度につきましては、新型コロナウイルスの状況を踏まえまして、宗教法人の負担軽減の観点から督促を控えたというところでございます。このことにつきましては、やはり法律に基づき提出義務が課せられていることを踏まえれば、反省すべき点であった、そういうふうに認識をしているところでございます。

 このため、文部科学省といたしましては、宗教法人法の規定を踏まえまして、宗教法人に対して、提出義務を果たすように、改めて速やかに督促を行っているところでございます。

 先日の総理の御指示も十分に踏まえまして、全ての宗教法人が備付け書類の提出義務を果たすように、これは督促の徹底、そして過料の措置の適正な実施を図るとともに、不活動宗教法人対策の更なる推進に取り組んでまいります。

渡辺(創)委員 この二年間は督促していないので、過料の請求もしていないはずですよね。まず、していないのかどうかということをはっきり答えていただいた上で、していない過料の請求についてはどうするんですか。

合田政府参考人 申し訳ございません、事実関係でございますので、端的にお答えさせていただきます。

 過料の措置は、手続はいたしてございません。したがいまして、現在、督促をいたしておりますが、督促してもなお年度内に提出してこない法人については、過料の措置を確実に取りたいと存じております。

渡辺(創)委員 今の御答弁でも分かったと思いますが、法律で定められていて当たり前に国がやるべきことを、地方ではやっている、所管している地方、都道府県はやっていることを、二年間国はやらなかったんですよ。法律で定められていることを、どういう恣意的な判断か分かりませんが、国だけがやらなかった。大問題だと思いますよ。

 これはある意味、旧統一教会のものとも共通しているのではないかと思いますが、文化庁は、信教の自由との関係があることはもちろん分かりますよ、しかし、それを理由にして、本来法律で定められている当たり前のことを二年間もきちんとやらなかった。大問題だと思いますよ。

 参考人の答弁じゃなくて、大臣、どう思われているんですか。大問題ですよ。

永岡国務大臣 先ほども申し上げましたように、法律に基づき提出義務が課せられていることを踏まえれば、本当に反省、反省に反省を重ねて、しっかりと対応していかなければいけない、そういうふうに考えております。

渡辺(創)委員 こういうことは総理に質問したくなかったですけれども、大臣ははっきりおっしゃらない。

 総理、いかが思いますか。法律で定められている当然のことを役所が二年間もやらなかった。しかも、真面目にやっている人たちだけが、不利益というか、対応を受けられなくて、提出義務のあるものを出さなかった人たちだけがその恩恵を被っていた。これはもう根本が揺らぐような話だと思いますが、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 文部科学省、文化庁が法律に従って行うべきことについて十分対応していなかったのではないかというそしりを招いたことは、これは重く受け止めなければならないと思います。

 その上で、先ほど文化庁からもありましたように、督促、過料、この法律に基づいて徹底して行うことが重要であると認識をいたします。

渡辺(創)委員 私たちは、真っ当に、真摯に活動している宗教法人の活動に疑義を唱えるつもりは全くありません。しかし、宗教法人を隠れみのにして起きている犯罪行為や社会問題にはきちんと向き合う社会でなければならないと思っているわけです。

 なぜなら、ここで活動実態が見受けられない宗教法人、活動していない不活動宗教法人というのは、暴力団であったりとか、いろいろな方々の関与があって、場合によっては、脱税であったりマネーロンダリングであったり、そういう犯罪に使われている可能性が高いという指摘がたくさんあるわけですね。だから、こういう指摘をしています。

 その上で、大臣にお伺いしたいと思いますが、宗教法人法の中に定められている手続の中で、宗教法人の役員が暴力団関係者であるかということをチェックし、排除するということは、現行法上可能ですか。

永岡国務大臣 宗教法人の設立時には、所轄庁が宗教法人法に基づきまして規則の認証の審査を行うこととなりますが、その際、当該団体が暴力的行為、反社会的な活動又は公序良俗に反する活動を行っていないか疑われる場合には、これを解明するための調査を行うこととなっております。

 また、法人設立後には、規則の変更の認証に際しまして所轄庁が同法に基づく審査を行いますが、変更前と変更後の宗教法人の同一性に疑義がある場合には、責任役員等の選任過程につきまして調査を行うこととなっております。

 これらの調査の結果、宗教法人法の求める要件が満たされない場合は、認証することはございません。

 なお、法人格が悪用される場合には、宗教法人の宗教団体性に疑義が生じることから、同法の八十一条に定めます解散命令の請求も視野に入れまして、事実関係を把握することも考えられます。

 以上です。

渡辺(創)委員 実際、そういう運用が本当にされているのかは、これからまた議論したいと思います。

 最後にします。質問はしませんが。

 福岡県などが、特定危険指定暴力団などが事件の背景にいるような形のものがあるので、宗教法人法の欠格事由に暴力団の構成員等を指定するようにというふうに繰り返し求めているかと思いますが、そのことは文科省も御承知のことというふうに思います。まず、これをきちんと受け止めて、きちんと検討することは大事じゃないかと思いますので、指摘にとどめて、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

根本委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申出があります。野田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 立憲民主党の大西健介です。

 私からも、冒頭、トルコ、シリアで起きた地震によって被害に遭われた皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。我が国と特にトルコは、エルトゥールル号の海難事故以来、長い長い友好関係で結ばれております。最大限の御支援を政府にもお願いしておきたいというふうに思います。

 通告した質問に入る前に、先ほど我が党の岡本あき子委員から高市大臣に質問をされたときに言及をしましたけれども、これは二〇〇二年の「諸君!」という雑誌で、高市早苗議員、それから西川京子衆議院議員、山谷えり子衆議院議員、この三人が鼎談をされている記事なんですけれども、これはなかなか、私も見て、ちょっとびっくりしました。

 表題は「クタバレ「夫婦別姓」」となっていますけれども、副題がついていまして、「ネコ撫で声の「男女平等」に騙されるナ!」、さらに、野田聖子のフェロモンと福島みずほのフェミニズムに幻惑される国家観喪失の男性議員に問う、こういう副題がついているんですよ。これは別に雑誌社がつけているわけじゃなくて、実は、この中で高市さん自身がそういう発言をされています。野田聖子さんのフェロモンと福島みずほさんや田嶋陽子さんのラディカルとが共闘すると手ごわいんですよ、こういう発言をしていて、今のような副題がついているんです。

 この中を見ると、例えば、狙いは家族制度の解体とか、あるいは家族のきずなを弱体化するとか、そういう話がずっと繰り広げられているんですけれども、最後の最後のところで高市さんがこのように発言をされています。選択的夫婦別姓のことを指して、「「社会の秩序」や「家族の絆」を破壊する個人主義的政策に保守系の議員が協力するのは愚かなことです。」こういう発言をされているんです。

 総理にお伺いしますけれども、夫婦別姓の導入というのは、社会の秩序や家族のきずなを破壊する個人主義的政策というふうに思われますか。

岸田内閣総理大臣 選択的夫婦別氏制度については、御指摘の議論も含め、様々な議論が今日まで行われてきました。逆に、自民党の中にも、前向きに取り組もうとしている議員連盟も存在するということで、様々な議論が行われています。ですから、その一つ一つについて私が判断するということは控えます。

 こうした議論が、様々な議論が行われることは、国民の理解にもつながるものであります。議論を行うことは重要であると思っています。

大西(健)委員 少なくとも、私は、選択的夫婦別姓、特に、選択ですから、それぞれの選択に任されているわけですから、社会の秩序や家族のきずなを破壊する個人主義的政策かどうかというのは、総理、そう思うか思わないか。思わないなら思わないと、はっきりと否定していただいた方がいいかと思います。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、自民党の中にも様々な議論があります。総裁として、そういった議論を注視しています。

 そして、政府としては、そうした議論を踏まえて方針をこれから決定していくということになるんだと思っています。政府の方針が確定したならば、一致結束、その方向で努力する、これが内閣の姿勢であると思っています。

大西(健)委員 党内にいろいろな意見があって、そして議論をして、結論が出たらそれをみんなでやっていく、これは当たり前のことなんです。

 そうじゃなくて、今日も議論になっているのは、G7を主催する、サミットを主催する我が国が世界の標準と比べてどうなんだという話なんですけれども、この選択的夫婦別姓が社会の秩序や家族のきずなを破壊するものという考え方は、そういう世界の標準と合うんでしょうか。総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 世界にも様々な議論があると思いますが、G7各国を見る限り、日本以外の国においては、選択的夫婦別氏制度等の制度を認める国が日本以外は全てであると思っています。

大西(健)委員 そういうことを聞いているんじゃなくて、ちょっと今、そういう選択的夫婦別姓が、私が今申し上げたような、社会の秩序や家族のきずなを破壊するもの、そういう認識を明確に否定を総理がされなかったということは非常に残念なことでありますけれども、これ以上やってもあれですので、時間がもったいないので、次に進ませていただきます。

 私は、先日のこの委員会で、過去に、岸田内閣の閣僚の中において、子ども手当に所得制限をつけるべきだと発言している方が複数いらっしゃいますということで、永岡文科大臣、それから加藤厚労大臣、そして西村経産大臣の名前を挙げました。そうしますと、私の質問を視聴してくれていた方が、ほかにもいますよとメールをくれたんです、御丁寧に。

 それで、それは後藤大臣なんですけれども、今日は後藤大臣に来ていただいていますけれども、後藤大臣、国会での発言ではありませんけれども、二〇一一年の八月七日の御自身のブログ、覚えておられるか分かりませんけれども、少なくとも昨日までは普通に、誰でも見ることができたものですけれども、子ども手当の廃止の三党合意を受けて、このように書かれています。

 全ての子供に頭割りの現金のばらまきを行うことは、社会主義と言えます、所得制限をつけることの意味は重大です、子供を社会で育てるとした民主党の基本政策とは異なりますが、この子ども手当の撤回はこうした社会政策の基本を変更することを意味しますということです。

 後藤大臣に改めて御確認をしますけれども、二〇〇〇年の、後藤大臣、初当選は民主党でいらっしゃって、岸田政権では厚労大臣もお務めになられましたけれども、所得制限なしの子ども手当はばらまきで社会主義という考え方を今もお持ちでしょうか。

後藤国務大臣 当時、確かに私自身は、財源の問題や、また待機児童対策など喫緊の子育て対策、現物給付等、やるべきことがあるという考え方でありましたから、より必要性の高い方に対して支援を集中していくべきだというふうに考えて発言をしたものでございます。

 ただし、一方で、先日も総理からも御発言があったとおりでございまして、少子化の背景には、個々人の結婚や出産とか子育ての希望だとか、そういう社会的な事情もいろいろある、それが今回の、多くの問題を抱えた少子化、子供対策を構造的に解決していくという問題点であるということで、相当に例えば子育ての受皿対策のようなものが進んできた中で、こうした新しいステージの中でいろいろなことを幅広く検討していくことは必要であるというふうに思っております。

大西(健)委員 当時、一般的にやはり、岸田内閣の閣僚だけでこんなにたくさんいるんです、党を挙げて、ばらまきだとか社会主義だということを喧伝したんです、この話は後半でもしますけれども。

 そういう中で、総裁選挙で岸田総理陣営の選対本部長を務められた盟友である遠藤利明総務会長は、あの当時の判断が仮に間違ったとすれば謝って、そして見直せばいいと言われています。私も全くそのとおりだというふうに思います。

 一方で、今ちょっと後藤大臣もおっしゃいましたし、先日、私の質問に対して西村大臣は、私は、限られた財源の中で、その方々に配るよりかは、より厳しい状況にある方に上乗せをするなり、別の形で子育て支援、厳しい状況にある方への子育てを支援すべきだという考え方を今でも持っています、こういうふうに西村大臣は答弁されました。

 それ自体は、実は、西村大臣の、より厳しい方に上乗せすべきだというのは、ある意味で、私、間違っていないと思っているんです。

 ただ、同じ日の質疑で、総理、覚えておられると思いますけれども、私は、児童手当の特例給付を削って、それを待機児童対策に回すみたいな子供予算の中でのやりくり、こういうのはもうやめてくださいという話を言ったと思います。

 ですから、何を言いたいかといえば、所得制限なしで高校卒業年次まで私たちはやればいいと思っていますけれども、所得制限撤廃か、より厳しい人への支援か、これは二者択一じゃなくて、両方やればいいと思うんです。立憲民主党は、児童手当の所得制限なしでの高校卒業年次までの延長と併せて、児童扶養手当を加算して、一人親だけじゃなくて、二人親の低所得者世帯にも支給するという提案をしています。

 NPO法人のしんぐるまざあず・ふぉーらむさんが、昨年の十一月に、物価高を受けて一人親家庭への影響を緊急調査されました。これによりますと、主食の米が買えないことがあった、五五%、子供の靴や衣類を買えないことがあった、八〇%、六割以上の親が自分の食事を減らして子供たちだけには何とか食べさせようとしており、暖房を使わない、トイレをできるだけ流さないなど、本当に厳しい実態が浮かび上がってきました。

 また、児童扶養手当にも実は所得制限というのがついていまして、一人親のシングルマザーの方が頑張ってフルタイムで働くと、子供が一人の場合ですけれども、収入が百六十万を超えると減額される、さらに、三百六十五万円を超えると児童扶養手当がもらえなくなってしまいます。

 総理、所得制限の撤廃など児童手当の拡充と同時に、より厳しい状況にある方々への、児童扶養手当の増額であったり所得制限の緩和、これを是非やっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今の委員の御意見の中で、一つ、二人親世帯への支給というのが一部ありました。その部分については、一人親世帯等の家庭の生活の安定と自立の促進という制度の目的について、いま一度考える必要がある課題ではあると思います。

 そして、児童手当の拡充と併せてこの政策を用意するべきではないかということについては、まさに今、こども政策担当大臣の下で、今の現代の状況の中で求められる子供政策は何なのか、これを整理し、そして具体化する作業を行っておりますので、その中で、今言った御指摘等についてもどうするのか、政府として考えを整理して、明らかにしていきたいと思います。

大西(健)委員 今盛んに議論されている所得制限の撤廃というのは、中間層以上の方によりメリットがある話だと思いますけれども、やはり、より厳しい方、西村大臣や先ほど後藤大臣も触れられたような、その方々の部分も同時にやらないと、結局、子育て世帯間の分断が私は生まれるというふうに思いますので、是非お願いしたいというふうに思います。

 それから、それは是非検討していただきたいんですけれども、目の前のこと。今、卒業シーズン、それから、これから入学シーズン、新学期のシーズンになります。制服、かばん、靴、体操服、教材など、出費がかさむ、そういう時期です。せめてそれだけでも何とかならないか。

 低所得の子育て世帯に対して、予備費などを活用していただいて、以前にも給付した五万円の子育て世帯生活支援特別給付金をもう一度支給していただきたいと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 様々な支給、更なる支給を行うべきではないか、低所得者あるいは子育て世帯に対して支給を行うべきではないか、こうした提案につきましては、それこそ様々な政策が行われているということ、これをまず整理する必要があると思います。

 昨年六月から、児童一人当たり五万円の給付をしている。また、昨年十月には住民税非課税世帯への五万円給付が開始され、現時点で対象世帯の七割に給付金が支給されている。また、地方創生臨時交付金のメニューにおいても、保護者の負担軽減のために学校給食費等の支援などの支援を行うことが可能とされている。こうした様々な政策、重層的に支援を行っています。

 加えて、子供、子育て政策ということではありませんが、電気・ガス料金の負担緩和ということで、今年の九月まで、平均で四・五万円程度、直接負担を軽減する、こういった対策も取っています。

 こうしたものを重層的に行っている、その上で、特に、更にお困りの世帯があれば政治としてそこに焦点を当てることを考えていくということだと思っています。

大西(健)委員 さっき言ったように、卒業シーズン、入学シーズンはもう目の前ですから、時間がありませんから、検討していただきたいと思います。

 それでは、我々立憲民主党は、失われた十年政策検証プロジェクトチームというのを立ち上げました。誤解なきように申し上げておきますけれども、これは別に民主党政権を正当化しようとか、そういうものではありません。実際に民主党政権もたくさんの反省すべき点があったと思いますし、かつ、立憲民主党は新党ですから、当時、民主党政権にいなかった仲間もたくさんおります。私たちがやろうとしているのは、もっといい未来に進んでいくために、ファクトをしっかり検証していこうということであります。

 そこで、検証チームで、もし、民主党政権が行った所得制限なしの子育て支援、これを続けていれば、これまでに支給されていたはずの額というのを試算してみました。

 まず、児童手当については、先日も森山委員が指摘をしましたけれども、二〇一二年の所得制限導入以降、減額された児童が約一千六百万人に上り、約十一年間で総額一・一兆円、これが不支給になっている。次に、高校無償化ですけれども、これは二〇一四年に所得制限を設けましたけれども、もし所得制限がなければ、これまでにおよそ八千七百三十二億円、これが給付されていたことになります。合わせると約二兆円、これが、逸失利益というのが言葉として適切かどうか分かりませんけれども、子育てをしている国民の皆さんが得られたであろう給付がこれだけあるということであります。

 岸田総理、この二兆円、子育て世帯の皆さんに返していただけませんか、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 十年間で、所得制限がなければ支給されていたはずであるということで数字を挙げていただきました。

 この間、では、政府・与党として何をしていたのかということを考えますと、幼児教育の、あるいは保育の無償化を行う、保育の受皿整備を行う、また、待機児童対策を行う、こうしたことで、少子化対策関連予算だけで、平成二十五年と令和四年度を比べても、予算を三兆円増やしています。様々な予算の使い方が行われているということであると認識をいたします。

 また、高等学校等の就学支援金については、平成二十六年度に所得制限を設けることで捻出した財源を有効活用し、私立高校等へ通う生徒への就学支援金の加算拡充を行ったり、あるいは授業料以外の教育費の支援である高校生等の奨学給付金の創設を行う、こういった見直しも行っています。

 要は、まさに委員がさっきおっしゃったように、どこに焦点を当てるのか、こういった政策判断であると考えています。

大西(健)委員 何もしてこなかったとは言っていないんです。ただ、所得制限がなければ、ファクトとしてこれだけのものがもらえた人たちがいる、そして、児童手当がもらえていれば、あるいは高校無償化の対象になっていれば、もう一人子供が欲しかったなという人は私はいるというふうに思います。

 次に、先日、今もいろいろなことをやってきたという話がありましたけれども、保育士の配置基準の話がこの委員会でも議論になりました。一歳児、二歳児については五十年以上、それから四歳児、五歳児に至っては、基準制定以降、七十年以上一回も改善をされていないということでありますけれども、昨年は、保育園での園バスの置き去り事故死がありましたし、それから保育士による園児への暴行事件というのも起きました。この配置基準では、質の高い保育どころか、子供たちの命さえ守ることができないというふうに私は思います。

 しかし、この話をすると必ず返ってくる答弁というのは、一歳児や四、五歳児の保育士の配置基準の改善については、消費税以外で財源を確保するとされている、いわゆる〇・三兆円の質の向上、これに含まれており、引き続き、財源を確保し、実現に向けて努力をしていきたい、こういう答弁が必ず返ってくるんです。

 それで、資料を御覧いただきたいんですけれども、これは、二〇一二年の子ども・子育て関連三法に対する参議院特別委員会での附帯決議でありますけれども、十五として、「〇・三兆円超について、速やかに確保の道筋を示すとともに、今後の各年度の予算編成において、財源の確保に最大限努力するものとすること。」と書かれています。しかし、この附帯決議、各年度の予算編成と言われていますけれども、自民党政権でもう十年以上放置されてきたんです。

 ところが、防衛費の増額については、一兆円の増税のほか、防衛力強化資金で〇・九兆円程度、決算剰余金の活用で〇・七兆円程度、歳出改革で一兆円強と、財源確保が短期間で出てきました。

 十年かけて子供の予算をひねり出せないのに、何で防衛の予算はすぐ出てくるんですか。この違いというのは、総理、何なんですか。

岸田内閣総理大臣 保育士等の配置改善を図っていく、これは重要な課題であり、平成二十七年度から、三歳児に対する職員の配置改善を行っています。

 そして、その〇・三兆円超の努力の前に、令和五年度予算案においては、現場の保育士の負担軽減のために、大規模な保育所においてチーム保育推進加算の充実、あるいは、見落としなどによる園児の事故防止のための支援員の配置、これを推進することとしています。

 そして、御指摘の、いわゆる〇・三兆円超の質の向上事項である一歳児や四歳、五歳児の配置改善については、これは引き続き、見える化を進めつつ努力をしていきたいと考えております。

 こうした取組も含めて、子供、子育て政策、様々な政策を組み合わせて全体としてのパッケージをこれから示すことが大事であるということで、今整理をしているところであります。

大西(健)委員 努力していきます、努力していきますと、十年やっていないんですよ。でも、防衛費の方はすぐ出てくるわけですよ。何で、〇・三兆円ひねり出すのに十年かけてできないのに、防衛費はすぐできちゃうんですかと、その違いを私は聞いているんです。だって、防衛費の確保のためには年金のお金だって流用するんですよ。この違いは一体何なのか。

 地元を回ると、高齢者の皆さんから、子育て支援もいいけれども、物価高で俺たちの生活も大変だよ、こういうふうに言われます、与党の皆さんもそうじゃないかと思いますけれども。その上、四月から年金は〇・四%下がることになっています。防衛費に回すお金があるんだったら年金を下げるのをやめてくれ、これが高齢者の本音じゃないですか。

 先日、本委員会で、地域医療機能推進機構の積立剰余金三百二十四億円、これを年金特別会計に戻すべきだ、これを防衛費に充てるのはルール違反だ、こういう議論がありました。

 そこで、地域医療機能推進機構法案というのが国会で審議されたときの議事録を調べてみました。皆さんのお手元に会議録を配っていますけれども、当時の厚労大臣は長妻さん、そして、ここで質問しているのは加藤厚労大臣です。線を引きましたけれども、その病院が元々厚生年金でできているならば、病院の維持管理に必要なものはともかくとして、それを超えた譲渡益があれば厚生年金勘定に戻さなきゃいけないじゃないですか、こう言っているんですよ。この日の質疑をずっと読むと、加藤さんは、年金特会に戻すだけじゃ不十分だ、勘定に戻せ、元々の勘定に戻せと、厳しく厳しく長妻大臣を追及しています。

 加藤大臣、ここまで言っていた大臣が、どうして年金の防衛費への流用を許すんですか。

加藤国務大臣 今回、そもそもの地域医療機能推進機構、これについては、必要な業務の財源に充てるために繰越しが認められた額を除き、年金特別会計に納付されるとされているところでございます。経緯は、前回もお話をさせていただきましたけれども、元々、社会保険料を財源として設置された旧社会保険病院等を前身にしている等々の経緯があって、そういう仕組みにしております。

 今のやり取り、私も覚えておりますけれども、ただ、今般の積立金というのは、病院の譲渡益ではありません。それから、あわせて、診療事業をベースにするというよりは、むしろ、今回、一般財源を原資として措置した病床確保料に係る収益、これを対象としたものでありまして、そもそも、平成二十五年の閣議決定で、診療事業は全て自己収入で行っていることに鑑み、積立金は、次期の中期目標期間中に必要な施設整備等の財源に充てられるよう配慮する、こうした閣議決定もございますので、そうしたことも踏まえた上で、政府の方針として、防衛力を維持強化していくに当たって、国民の負担をできるだけ抑えるべくあらゆる工夫を検討するということで、今回の対応を取らせていただいたところでございます。

大西(健)委員 これは会議録の一番上段のところに線を引いておきましたけれども、ここで議論しているのは、売却、譲渡した場合、あるいはこの病院等が大きな収益を生んだ場合と書いているんですよ。だから、別に譲渡のときだけじゃないんです。

 私が総理にお伺いしたいのは、厚労大臣がルールをねじ曲げてまで年金を防衛費に流用することについては、今テレビ中継を御覧になっている高齢者の皆さんも、さっき言ったように、そんな金があるんだったら年金を下げるのをやめてくれよ、こう思っているんじゃないですか。そういう皆さんに、総理、テレビを御覧になっている高齢者の皆さんにどう御説明されますか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の地域医療機能推進機構の積立金のうち、病院等の運営に必要としない積立金等については、中期計画期間満了後に、必要な業務の財源に充てるために繰り越す額を除き年金特別会計に納付する、このようにされている、これは御指摘のとおりであります。

 しかし、今回の件は、今般の積立金の国庫への納付は、新型コロナ対応として一般財源を原資として措置した病床確保料に係る収益のみを対象とするものであります。であるからして、年金特別会計ではなく一般会計に納付する、このようにした次第であります。

 新型コロナ対応として一般財源から措置した病床確保料に係る収益のみを対象にするということから一般会計に納付するということにした次第であり、法律をねじ曲げてまでということではないと考えております。

大西(健)委員 何回も言いますけれども、年金は下がるんですよ、四月から。テレビを御覧になっている高齢者の皆さんが、年金は下がるのに、本来年金特会に戻すお金を防衛費に回しますという今の説明で、私は納得されるとは思いません。

 それでは、連日、我が党の仲間が失われた十年というテーマで質問していますが、そのうち主なものをここに並べてみました。

 児童手当の所得制限、高校無償化の所得制限、これはさっき私がやりましたけれども、撤廃されないまま、子育て世帯への二兆円が不支給になっている。それから、保育士の配置基準は、〇・三兆円が確保されないからといって、いまだ放置されたままです。それから、農業者戸別所得補償制度、これは復活しないままになっています。そして、統一教会も強く反対をしてきた選択的夫婦別姓の導入や同性婚の法制化は一向に進まず、先進国として恥ずかしい状況が続いています。そして、今日、野田元総理も触れられましたけれども、議員定数の削減は僅か十減でお茶を濁して、身を切る改革もせずに、防衛費の新たな増税を行おうとしています。

 ここに挙げたのは本当にごく一部ですけれども、こうやって並べてみても、この十年、進んでいないことがたくさんあるというふうに、総理、お思いになりませんか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の点については、まとめていただきました、これは決して否定するものではありませんが、これによって、失われた十年、何か、全て失われてしまったというのは、これはミスリードではないかと思います。

 先ほど申し上げました様々な政策、これと並行して様々な取組を進めてきております。幼児教育、育児の無償化、こうしたものも我が国において前進をいたしました。ピークで二万六千人であった待機児童も三千人まで減少するなど、様々な取組が進みました。何よりも、子供予算一つ取りましても、年度で三兆円増えているという現状もあります。こうしたことを考えますときに、全て、失われた十年と片づけてしまうのはミスリードではないかと思います。

 それぞれ重要な課題であります。丁寧に取り組んでいくことが重要であると認識をしております。

大西(健)委員 我々も、何もしてこなかったなんて、何回も言っているように、言っていないんです。

 でも、ここに挙げたものだけでも、それで、今総理が言っていただいたように全てこれは一つ一つ重要なことだけれども、十年、残念ながら前に進んでいませんよねということが一つと、それから、失われたというのは、さっき言ったように、二兆円、本来だったら子育て世帯に給付されたものが給付されなかったという意味では、これは失われているんじゃないか。いずれにしろ、我々はその十年というのをちゃんと検証していこうと思っているんです。

 その十年のうちの七年半は安倍政権です。ここに、今日、これは理事会の承認をいただいて掲示させていただきますけれども、本日発売の「安倍晋三 回顧録」というのを持ってまいりました。これは、三十六時間に及ぶ安倍元総理のインタビューをまとめたものであります。

 お手元に資料としても配らせてもいただいていますが、まず、資料に今日配っていないところですけれども、二百六十二ページというところに次のように書かれています。「民主党政権はダメだったよね、というムードは、私がさんざん発信した影響もあって社会に定着していました。」こういうことなんですね。

 だから、私たちがこのタイミングで十年間を虚心坦懐に検証しましょうと申し上げているのは、まさに安倍氏が述べているように、民主党政権は駄目だったというプロパガンダが、それこそ、愚か者めがTシャツなんかも作って、そういう刷り込みを行った結果、いいこともあったんですけれども、その評価がゆがんでしまって、さっき言ったように、やるべきことが進まなかったんじゃないかというふうに思っているんです。

 今の言葉で言うと、今のというのは最近の言葉で言うと、相手を徹底的にディスるというこの手法、これはトランプ氏にも通じるものだと思いますけれども、岸田総理はこういう政治手法をどう思われますか。また、御自身はこういう政治手法を取られるかどうか、お伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 まず、政策ですので、政策の中身、評価、これをしっかりと行うことは重要であると思っています。

 私自身、こうした児童手当を始め様々な政策、失われた十年だと指摘をされる中で、例えば児童手当の経緯を振り返りますと、民主党は、平成二十一年のマニフェストで、月額二・六万円の子ども手当に加えて、揮発油税等の暫定税率を廃止、高速道路の無料化、合わせて十六・八兆円に及ぶ政策を掲げましたが、残念ながら財源が難しいということで、平成二十三年、三党合意という形で児童手当の所得制限も設けられた、こういったことであります。こういった辺りを丁寧に説明することが大事だと私は思っています。

 このように、政策一つ一つについて丁寧に説明をしていくことが重要であると私は認識をいたします。

大西(健)委員 私が言っているのは、ですから、一方的にこっちは駄目だったというふうにディスって、それを刷り込むということじゃなくて、虚心坦懐に、今総理が言っていただいているみたいに、十年を振り返って、一つ一つ丁寧に検証していきたいと思っているんです。

 この回顧録にはほかにも興味深い記述が多くありまして、例えば三百十三ページですけれども、資料として該当部分をお配りしましたけれども、このように書かれています。「私は密かに疑っているのですが、森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない。財務省は当初から森友側との土地取引が深刻な問題だと分かっていたはずなのです。でも、私の元には、土地取引の交渉記録など資料は届けられませんでした。」と書かれています。

 まず、財務省に確認します。事前に通告してありますけれども、ここに書かれていることは事実ですか。つまり、森友問題では、財務省は安倍総理に土地取引の交渉記録などの資料を故意に届けなかったのか、また、安倍降ろしの意図があったのか、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 故意か故意じゃないかは別といたしまして、その資料は届けていなかったそうであります。

大西(健)委員 そこに安倍降ろしの意図というのはあったんでしょうか。

鈴木国務大臣 今先生がお配りになられました資料にございますけれども、私はひそかに疑っているんですがと安倍総理は述べられておりますが、安倍総理が何をもってひそかに疑っておられるのか、これは国会の場でありますから、私が何か臆測で、ここで何か申し上げることは適当ではない、そういうふうに思います。コメントのしようがありません。

大西(健)委員 その前段の部分を見ていただきますと、安倍政権は、歴代政権と違って財務省主導ではなかったために、財務省にとって不愉快だったのではないか、財務省と党の財政再建派議員がタッグを組んで安倍降ろしをしかけることを常に警戒してということが書かれています。

 岸田総理は、安倍内閣で四年半外相を務められて、その後も政調会長を務められるなど、傍らで安倍首相をずっと見ておられました。この財務省の安倍降ろしというのを感じることがあったか。

 また、こうも書かれているんですけれども、目先の政権維持しか興味がない政治家は愚かだ、やはり国の財政を預かっている自分たち、これは財務省のことですけれども、一番偉い、国が滅びても財政規律が保ててさえいれば満足なんですというふうに書かれていますけれども、そういうふうに傍らでずっと安倍首相を御覧になっていて、そういう安倍降ろしみたいなものを感じたか、あるいは、今、総理の座にあって、財務省は国が滅びても財政規律さえ保たれていれば満足と考えているというふうに感じることがあるか、総理にお伺いします。

岸田内閣総理大臣 まず最初の、財務省による安倍降ろしの動きを感じたことがあるかという質問については、感じたことはありません。

 そして、財務省ですが、これは、内閣として、財務大臣の下に財務省をしっかりとコントロールして、内閣としての政策目標を達成するために努力する、これがあるべき姿だと思います。財務省にも内閣の一部としてその責任を果たしてもらうべく、政治としてコントロールしていく、リードしていく、その責任があると考えています。

大西(健)委員 これは、私が言っていることじゃなくて、回顧録に書いてあることですからね。

 それで、最後に申し上げますけれども、本日、フィリピンのマルコス大統領が来日して、明日、岸田総理と首脳会談を行うということですけれども、資料で配付しましたけれども、これは東京新聞の記事ですが、日本が年間二千億円の開発支援を表明して、期間は五年未満になると書かれています。

 フィリピンは安全保障上重要な国であって、そして、両国政府の間では、今、日本で起きた広域強盗事件に関して、フィリピン入国管理施設で拘束中の日本人について、二人は既に送還されていますけれども、残る二人の強制送還に向けても調整が進められています。

 したがって、必要な支援というのは私はやればいいと思いますけれども、ただ、ネット上には、年間二千億円超え支援表明、防衛費の一部一兆円を増税しようとしてもめているのにという声であったりとか、子供には一円でもけちる岸田、フィリピンには二千億円毎年ばらまき、こういうような声もあります。

 この二千億円の支援というのが事実なのか、また、こうした国民の声に対して、総理、どうお答えになるのか、お答えいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 日本とフィリピン、これは、歴史的なつながりで結ばれた隣接する海洋国家であり、基本的な価値を共有する戦略的なパートナーです。今回のマルコス大統領の訪日を通じて、両国の協力関係を一段と深めたいと思っておりますが、御指摘のように、首脳会談の内容については、これは恐らくぎりぎりまで調整が続くんだと思います。今予断を持ってお答えすることは控えなければなりません。

 日本とフィリピンの関係全体をしっかりと安定したものにするために、様々な課題について議論を行うことになるだろうと想像はしております。

大西(健)委員 あしたのことですから、もう決まっているはずで、数時間後には明らかになると思いますが……

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから、おまとめください。

大西(健)委員 はい。

 時間が来ておりますので終わりますけれども、「安倍晋三 回顧録」の前書きには、回顧録は、歴史の法廷に提出する安倍晋三の陳述書であると書かれています。私は、今まさにこのタイミングで十年間をしっかりと冷静に検証していくことが必要である、このことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて野田君、岡本君、渡辺君、大西君の質疑は終了いたしました。

 次に、金村龍那君。

金村委員 日本維新の会の金村です。

 総理に質問させていただくのは、昨年の通常国会から二度目になります。一年前は大変緊張しまして、今も緊張しております。しっかり我々の問題点を挙げて、しっかり政府の政策に反映させてまいりたいと思います。

 まず初めに、少子化対策です。

 私は、少子化対策とは、やはり子供支援そして子供政策であり、今盛んに議論されているいわゆる児童手当の所得制限の撤廃などは、子育て支援策だと理解しています。子育て支援策は、やはり福祉に軸足を置いて、家計支援、家庭支援につなげていく。そうであれば、本質的な少子化対策に私はつながらないと認識しています。

 その上で、総理にまず認識を問わせていただければと思います。この異次元の少子化対策と銘打った中で、今回盛んに議論されている児童手当の所得制限の撤廃、これは子育て支援策という認識で間違いはありませんか。

岸田内閣総理大臣 御質問の趣旨は、要は、まず、少子化対策と子育て支援は別物であるという御趣旨かと聞いておりました。

 結論から言うと、これは全く別というものではないのではないか、重なる部分も大変多いのではないか、このように考えております。

 少子化の背景として非婚率の増加というものもありますが、その背景として、若い世代の経済力が問題であるという問題意識があります。そして、経済力ということを考えますと、経済的な支援というものが重要になってくる、児童手当についても拡充することが必要なのではないか、こういったことでありますので、結果として、少子化対策と子育て支援というのは重なる部分もあるんだということで、どちらかに峻別するということは難しいのではないか、このように理解をしております。

金村委員 もちろん連動はしているんですね。ただ、例えば児童手当における所得制限が撤廃されたことで、結婚適齢期の皆さんが、家計支援があるから結婚しよう、出産しようには至らないと思うんですね。やはり本質は、若者の貧困、そしてそれが非婚化につながっている。ここを打開していかなければ、少子化対策に貢献、好転することはなかなか難しいと考えています。

 その上で、やはり、子供支援、子供政策をしっかり手厚くして、子供自身の選択肢を増やしていく。

 私は、今、四十三歳なんですけれども、同世代の話、そして少し年齢の低い結婚適齢期の皆さんと話をしても、やはり自分が受けた教育環境を自らの子供に提供できないと結婚に踏み切れないと考えている方は結構多いんですね。つまり、以前よりも家庭環境がなかなかうまく、所得が低くなったりとか塾代が高くなったりとか、いろいろな状況はあると思うんですが、少なくとも自分が受けたものをそのままスライドして子供に伝えたい、それがかなわないから控えてしまう。そういった問題を改善していくためには、やはり若者の時点で結婚、出産、育児というものがどれだけ見通しが立っているか、ここが大きな問題だと思うんですね。

 我々は、そういう意味では、少子化の本丸は、やはり教育の無償化。

 平成二十六年に内閣府が行った調査によると、複数回答なんですが、最も課題認識を持っていたのが、やはり、将来にわたる教育費の補助を受けたいというのが、結婚適齢期の皆さんの意識調査で明らかになっています。

 それから、いわゆる大卒と収入が大きく関連している、そして大卒者の方が生涯にわたって子供を持つ機会が多い、これも統計的に出ています。

 親ガチャと呼ばれるように、生まれ落ちた御家庭の環境によって教育の機会を奪われて、その結果、残念ながら、学歴を取得せずに、低賃金の中で、結婚、出産、育児を選択できない。

 こういうことをしっかりと改善していくためには、やはり私は教育の無償化が、最も、若い人たちにとって、子供にとって選択肢を増やす政策だと思うんですが、総理の見解をお伝えください。

岸田内閣総理大臣 まず、委員の問題意識、若い人たちが将来の結婚、出産、育児を考える際に、将来の見通しを立てるために、若い人たちの経済的な状況、これが重要であり、そしてその中で教育というものが重要であるという指摘、これはおっしゃるとおりだと思います。

 だからこそ、今、こども政策担当大臣に対して、子供、子育て政策の整理と具体化を進めてもらっていますが、その際に、経済的な支援と、そして様々なサービスの内容と、そして働き方、さらにはそれを支える制度について検討を進めてもらいたいという指示を出していますが、それと併せて、教育も大事だということを再三申し上げているところであります。

 是非、教育も結婚、出産、育児の将来の見通しを立てる意味で大変重要な要素であるという点、私もしっかり念頭に置きながら、今後、政策の取りまとめ、そしてパッケージの作成に努力をしていきたいと思います。

金村委員 今お伺いした中で、やはり少子化対策はシンプルなものがいいと思うんですね。説明の要る政策であればあるほど自分が当事者である認識を国民が持てない可能性がありますので、是非、教育の無償化、改めて検討いただきたいと思います。

 その上で、若者の貧困の中で私が問題視しているもののうち、構造的な問題ですね。

 一つは、高校を卒業して、そのまま社会に出ていく人たちが、離職、転職を繰り返して、なかなか低所得の中から脱出できないという構造的な問題。それから、職が余りない。例えば、地方、とりわけ女性なんかは地元で大学に進学する進学率は三〇%と言われています。その上、障害児を含めたいわゆる発達に偏りのある子供たち。こういった三パターンの人たちが、なかなか低所得から脱出できない傾向が散見されると思っています。

 地方の女性であれば、先ほど言ったとおり、大学進学率が低い。そして、例えば、地方の中でも職としてすぐ就職できるものの一つに福祉とか介護があるわけですね。そうすると、専門学校を出て介護職に就いても、なかなかいい所得のループに入っていけない。

 障害児であれば、これは文部科学委員会でも私質問したんですが、今、障害児を子育てしている私も当事者ですけれども、やはり、障害児が者となって働き、賃金を得て納税する、これは大きな達成感なんですね。しかしながら、残念ながら、高等学校の中で、働くことを前提にした教育というものがなかなか提供されていないんですね。ここは、今まさに東京都で産声を上げ始めたところなんですけれども、まだまだ障害児にとっての選択肢につながらない。

 今日は、この高卒の人に少し注目して質問したいと思います。

 高校を卒業して、高校は一般的には学力を高める場所ですので、働くことを教えるカリキュラムとかは特別に組んでいないと思うんですね。そういう中で、進学を選択できずに働き出した。でも、その職場が自分と相性が悪い。結局転職する、転職先でキャリアをまた一からスタートさせると、またうまくいかない。これを、離職、転職を繰り返すことで、フリーターのような生活を前提としてしまう。これが大卒より高卒の方に多く見られることが構造的な問題だと思うんですね。

 そうであれば、私は、今の高等学校の中で、割と働くことに特化した、昔の工業高校や商業高校ではなく、スペシャルな高校を地域に何校かしっかりとつくって、そこで働く能力をしっかりと磨いていく、その上で雇用の最適化を実現していくというのが、回り道ですけれども、結果として若者の貧困から脱出するんじゃないかと考えているんですが、担当大臣の見解をお願いします。

永岡国務大臣 委員にお答えいたします。

 高校生がやはり社会的、職業的自立に必要な能力ですとか態度を身につけることができるように、キャリア教育、また職業教育の推進は大変重要なことでございます。

 高等学校におきましては、就職希望の生徒に対しまして、就職ガイダンス等の指導、また支援が行われております。

 また、就職の割合が高い農業高校、そして工業高校などの専門高校におきましては、働く上で必要となります専門的なスキルを身につける教育ということを行っております。

 委員御指摘の、働くスキルを提供する場や機関を地域に創設することにつきましては、設置者でございます自治体の判断ということになりますが、文部科学省といたしましては、専門高校がそのような役割を果たせるように、令和五年度の予算案におきまして、産業界と連携をいたしまして、地域の企業で実習を行うなど、最先端の職業人材を育成するためのマイスター・ハイスクール事業費を盛り込んでいるところでございます。

 今後とも、高校生が仕事や進学など自らの希望がかなうような、高校教育の充実に取り組んでまいります。

金村委員 専門学校でその役割を担うというのは構造上は別に問題ないと思うんですけれども、少子化対策で若者の貧困をターゲットにしていくと、やはり高校をしっかりとダイナミックに変えていくことの方が効果が伴うんじゃないかと考えています。これは、別に全ての高校が分校のように持たなきゃいけないわけではなくて、やはり、地域の中でそういうニーズに合った生徒を受け入れられる規模感で、エリア感でやることが望ましいんじゃないかという提案をさせていただきました。

 その上で、総理、育休中のリスキリングみたいに、政府として本意じゃない反論や批判というものがあったと思うんですが、私、妻からよく言われるのが、あなたは育児経験じゃなくて育児体験だよねと言われるんですね。つまり、大して経験していないと。

 しかも、子育てというのは時代時代で大きく変化していく。総理自身であれば二十年、三十年前の体験に基づいたお話だと思いますので。

 私は、今国民が総理に子育てを経験してほしかったなんということは絶対思っていないと思うんですね。今の切実な声をしっかりと聞いて、その困難を取り除いていく、行政府のトップとして、一国のリーダーとして、それをしっかりと実現してほしいというのが国民の願いだと思うんですね。

 是非、もっと現場に赴いて、声を聞いていただきたい。僕自身も、たった一年間ですが、自分が現場で経験してきたことと、この一年間経験していないことでずれを感じることがたくさんありますので、是非現場に赴いていただきたいと思います。

 その上で、政治改革についてお伺いさせていただきます。ちょっと順番は前後しますが、議員定数についてお伺いします。

 我々日本維新の会は、議員定数の削減、発祥した大阪でもそうですし、国会の中でも身を切る改革、しっかりと声を上げてまいっております。小選挙区が導入されて、これまで大きく二回、定数が削減されているんですね。一度目が二〇〇〇年、そして二度目が二〇一六年。これは両方とも、二〇〇〇年は、自民党と自由党の連立政権の合意に基づいて二十削減しているんですね、五百から四百八十に。二〇一六年は、二〇一二年の当時の野田総理と安倍総裁の下行われた党首討論に基づいて、結果として、議長に附属する機関によって十削減しているんですね。

 元々、自民党は、調べてみると、いわゆる小選挙区比例代表並立制を議員立法で提出したときに、実は四百七十一という定数を置いていたんですね。今は四百六十五ですから、ある意味、当時自民党が求めた議員定数と今の議員定数というのは似ている数に至っているんですけれども。少なくとも、五百から削減してきたときが、何か自民党にとって、政権与党にとって、うまみと言ったら大変失礼な話ですけれども、政権運営を安定させるため、それから総選挙を実施するためと、何かが起きないと議員定数を削減しない。これは、まるで自民党が積極的じゃないように見えてしまうんですね。

 まして、今、少子化対策というのは個人に対して支援する政策ですから、どちらかというと、これまで自民党が重きを置いてきたいわゆるサプライ側や供給側に軸足を置いた政策から、直接支援に大きく転換するタイミングだと思うんですね。

 そうであれば、議員定数削減というのは、総理の強いリーダーシップの下、やはり実現を果たしていきたいと私なんかは望むわけですね。

 そういう意味では、議員定数削減についてどのようにお考えか、お答えいただけますか。

岸田内閣総理大臣 議員定数削減については、御指摘のように、平成二十五年あるいは平成二十八年に行ってきた実績はありますが、これは民主主義の根幹に関わる話であり、引き続き、国民の皆さんに対する信頼をしっかり維持するためにどうあるべきなのか、議論を続けていくべき課題だと思っています。

 そして、その中で、今、議員定数の削減をする際に様々な議論が行われていますが、例えば、小選挙区比例代表並立制、その中で小選挙区の定数を削減すると、今、一票の平等の関係で、定数を削減していくことによって大都市に国会議員の定数がより集中してしまう、こういった問題があるのではないかとか、それから、比例代表の方の定数を削減することになりますと、少数政党の意見を反映する機会をより縮めてしまうのではないか、こういった議論があるのも事実であります。そうした今の制度の中での定数削減についてどうあるべきなのか、こういった議論も丁寧に進めていかなければならないと思います。

 いずれにせよ、こうした国民の政治に対する信頼ということを考えましたときに、議員定数についても、絶えず国会議員が真摯な議論を通じて合意を得るべく努力を重ねていくべき課題であると認識をいたします。

金村委員 議員定数削減は選挙制度に密接に関わっているというお答えだったと思うんですね。

 私は、アダムズ方式を取り入れた段階で、これは邪推ですけれども、自民党にとっては、もう小選挙区は限界なんじゃないかと。その限界を分からせるためには、アダムズ方式で人口によって小選挙区を決めた方が、圧倒的に地方が選挙区が少なくなるわけですね。選挙区が少ないということは議員数が少なくなるので、これは日本の国土の開発や日本の成長にやはり限界があるんじゃないかというのを知らしめるために入れたんじゃないかと邪推したくなるぐらい、あのアダムズ方式というのは、僕は余り今の制度にとってはよくないと思っているんですね。

 その上で、国会の改革、活性化について、ちょっと最後に一つ質問したいんですけれども。一九八九年に、いわゆる当時の竹下登総理が政治改革元年と言って、九四年に小選挙区制度ができて、九九年に今の自公連立政権がスタートした。この十年間、権力闘争に明け暮れたから、その後を失われた三十年なんという表現をする方もいるんですが、私は逆だと思うんですね。政治改革が徹底されなかったから、結果としてそういった方向に進んでしまったんじゃないかなというふうに私は捉えているわけですね。

 仮にも、中選挙区時代は個人の選挙、小選挙区は政党選挙であるのならば、九九年に成立した国会活性化審議法案というのがあるんですけれども、これで党首討論と、副大臣、政務官というのがスタートするんですね。党首討論は、当初、毎週水曜日、一回当たり四十分やるということで申合せができたんですけれども、ほとんど開催されていない。しかも、予算委員会も基本的質疑だけの出席と、委員会側の出席を削って党首討論をやるという申合せの内容になっているんですね。

 そういう意味では、私は、自民党総裁としてお答えいただきたいんですが、党首討論を活発にやるお気持ちはあるのかどうか、お答えいただけませんか。

岸田内閣総理大臣 具体的な政策の違いを国民の皆さんの前で明らかにしながら正々堂々と議論をする、こうしたことを行っていくことは大変重要であります。

 党首討論を行うかどうかについては、これは国会に判断いただくことになるかと思いますが、こうした、党首討論に限らず、様々な形で政策の違いを国民の皆さんの前で明らかにする、こういった姿勢は政治家として大事であると考えます。

金村委員 時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

根本委員長 この際、山本剛正君から関連質疑の申出があります。金村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山本剛正君。

山本(剛)委員 日本維新の会の山本剛正でございます。

 総理、大分お疲れの御様子でございまして、ちょっと私も戯れでも言って総理をリラックスさせようかなと思ったんですけれども、時間がないので、早速入りたいと思います。

 まず、安倍元総理が、政治は結果が全てだということをよくおっしゃっておられたのを覚えていらっしゃいますでしょうか。私も、結果は政治のみならず様々なところで重要だというふうに思っておりますし、ある意味、政治は結果が全てだというところがあるのではないかなというふうに思っております。総理はいかがでしょうかね。

 私は、政治とは何だと聞かれたときに、有権者の人からよく聞かれるんですが、そのときは実感だということを言うんですね。政治がもたらす結果をいかに実感として国民にお届けをするか。政治がこれをやっていくのに、いい実感もあれば悪い実感もあって、総理がやろうとされている増税をやれば、お財布の中がきついなとか、生活が厳しくなるなというような実感が国民にもたらされるわけであります。

 総理は、さきの国会でも聞く力をおっしゃっておられましたが、聞く力を言っているんだったら、増税というのはなかなか難しいんじゃないのかなと今の国民世論を見たら思うかと思うんですけれども。是非、その聞く力を遺憾なく発揮されて、すばらしい、いい政治をしていただければなと思うんです。

 まず、西村大臣にちょっとお尋ねをしたいんですが、燃油価格の激変緩和事業、いわゆるガソリンの補助金について、ちょっとお尋ねをさせていただきます。

 まず、補助金なんですが、補正、予備費合わせて、予算ベースで、令和四年の一月二十七日から十二月末で三兆一千七百八十一億円、本年一月から九月までで三兆二百七十二億円、合計六兆二千五十三億円が措置されているということ。また、大臣が本年一月二十三日の記者会見で、本来ならば二百円程度に上昇するガソリン価格を百七十円程度に抑制するなど、原油価格高騰による国民生活や経済活動への影響、これを緩和してきたものと思いますということを発言されたんですが、この二点、間違いないでしょうか。

西村(康)国務大臣 御指摘のとおり、これまで約六・二兆円の予算を確保、そして、それを使いながら、それを原資として、本来二百円程度に上昇するおそれのありましたガソリン価格を、これはリーマン・ショック後の最高値が大体百七十円程度ということでありまして、ちなみにロシアのウクライナ侵略の前の一月もこのぐらいの金額でありますので、百七十円程度に抑制し、国民生活そして経済への負担を軽減するということを実施してまいりました。

山本(剛)委員 ということで、総理、六兆二千億ですよ、来年の九月までで。

 この費用対効果をちょっと計算したんですね。令和四年一月から今年の九月までの事業規模と暫定税率廃止による減税額の比較でございます。

 ガソリン、軽油に充てられる補助金は、ガソリンが五〇%、軽油が二〇%ぐらいと言われているんですが、それで約四・三兆円、九月までに突っ込むことになるんですね。引下げ額の平均がリッター当たり二十七・一円ということになっています。

 一方、同じ期間暫定税を廃止すると、その暫定税の減収規模は二・八兆円、リッター当たり暫定税率二十五・一円でございまして、これは二重課税でもありますけれども、消費税もありますから、その分が引き下げられるということになっています。

 差額が、これは四・三兆円突っ込んで二・八兆円で済むということですから、一・五兆円もあるんですね。ほぼ同じような効果なら、我々が提出した、暫定税の廃止とかトリガー条項の凍結解除の法案をやっておけばよかったんじゃないですか。

 一月二十七日の時事通信の記事で、価格抑制実感なし、ガソリン補助金、支給から一年、六兆円投入、見えぬ出口というものがありまして、この中では、残念ながら国民には余り価格抑制効果は感じられていないんです。多分、皆様方も地元を歩かれていて、ガソリン、補助金を入れられて安くなったよねなんということを言う方はなかなかいらっしゃらないと思うんですね。

 暫定税をなくしてガソリン価格を下げておけば、補助金投入額は一・五兆円も安上がりで、暫定税がなくなったという、国民に実感はもたらすことができるわけでございます。

 でも、そもそも、この一・五兆円、どこに行っちゃったのかなと。同じ効果だったら同じぐらいの金額でできるはずなのに、どこに行ってしまったんでしょうか。一兆円ですよ。総理が増税してまで探している財源じゃないですか。

 総理、補助金をやめて、トリガー税制を活用したらどうですか、暫定税をなくせばいいんじゃないですか。お答えください、総理。

西村(康)国務大臣 まず私から事実関係を申し上げたいと思いますが、御指摘のトリガー条項についてでありますけれども、仮に凍結解除された場合、まず、ガソリンと軽油のみが対象になっておりますが、私どもの軽減策は灯油と重油も対象になります。その違いがあります。

 それから、低減額についても、ガソリンについては、御指摘のように、それほどの大きな差は、二円ほどの差ですけれども。軽油の方は、トリガー条項の凍結解除で約十七円下がりますけれども、私どもの支援で約三十円超の負担軽減となっております。

 さらには、トリガー条項を凍結解除した場合には、地方税の減収となるということで、地方財政を含めた自治体の運営に大きな影響がある。また、ガソリンの買い控えや、その反動による駆け込み需要など、流通の混乱が生じる可能性もあるという課題があるというふうに承知をしております。

 このため、三党の検討チームにおいて、これらの課題を解決するための方策について引き続き検討するものとされているということに承知をしております。

山本(剛)委員 事実関係を今述べられましたが、暫定税、大体一・三兆円から一・五兆円、一年間税収があると言われているんですね。一年間、去年の一月から今年の十二月までで、三兆円以上補助金を導入しているんですよ。その中の内訳は、ガソリンが五割、軽油が二割、一五%ずつが重油と灯油というふうに私は聞いています。大体そういうふうになっていると思います。そうすると、七割近くがやはり暫定税に係るわけですよ。そうすると、実際問題、一年間だけでも一兆円以上の差額が出るんです、実は、計算すると。

 総理、いかがですか、先ほどの質問。

岸田内閣総理大臣 トリガー条項あるいは暫定税率で対応するべきではないか、こういった御質問ですが、まず、今の経産大臣の答弁は、トリガー条項では対象にならない灯油や重油も政府の激変緩和事業においては対象にしている、こういった説明をさせていただきましたが、あわせて、実際、これまでの実績を考えますと、トリガー条項を凍結解除した場合を上回る形で支援を行う、こういった時期もあったということも間違いないところでありますし、そして、さっき委員の方からありました、実感が乏しい、実感が大事だという話がありました。この御指摘については、消費者に広く実感いただけるように、ガソリンスタンド等において毎週の支給額や抑制効果を周知する、こういった取組も始めました。

 こういった形で、効果、この上回る効果があるということ、これをこれからも丁寧に説明し、実感につなげていく努力が大事だという委員の御指摘はそのとおりだと思っています。

山本(剛)委員 重油も灯油も、まあ、灯油とジェット燃料はほぼ一緒なので、もうやっているからという意見ですけれども、それはそれでやればいいんですよ。

 ただ、やはり、暫定税で、当分の間税とも言われますが、いつかこれは決着をつけなきゃいけない問題だと思います、ある意味。それはもう本当に国会で議論をしなければいけないと思いますし、どういう方向でやっていくのかというのはこれからの議論になると思いますけれども。

 今、国民が本当に苦しんでいる中で、どういう効果を出して、どういう実感をもたらせるかということを、是非政府の方では真剣に考えていただきたいというふうに思います。

 次に、ちょっとマイナ保険証について、全くがらっと変わって、兆の話をしていたのを、今度は一円、二円の話をさせていただくんですが。

 これはちょっと丁寧にやりたいんですけれども、マイナ保険証、使えるところでは非常に便利です。でも、この使えるところが驚くほど少ないんですね。

 まず、一枚目のパネルで、導入状況と補助について御覧をいただきたいと思うんですが。令和二年からの取組にもかかわらず、このようなお粗末な状況なんです。なかなか実は導入が進んでおりません。このグラフを見ると、笛吹けど踊らずの状況がずっと続いているというのが分かります。これは、こんなことできるわけがない、どうせ無理と、たかをくくって、申込みすらしていない状況。昨年の六月に、今年の四月から義務化の方針が出たら、慌てて申し込んでいるのがこのグラフを見れば分かります。

 医療機関等だけに責任があるのかといえば、そうではありません。補助金の執行状況です。国は潤沢に交付金を出しているんですね。執行されていないのが分かります。交付額千二百七十億円に対して、執行は僅か四百八十二億円です。予定の半分も執行されていないこれを、ずっと放置をしてきたわけであります。

 カードリーダーの無償提供だけではなく、様々なメニューがそれに用意されて、手厚く講じられているのが分かると思います。そして、丁寧に、加速化プランなんというものまで設けているのに、全く加速化されていないというのは、どういうふうに説明するのかなと思うんですが。国側も、お金は十分に出しているんだからいいだろうと言わんばかりのこれは管理体制なのではないでしょうか。

 つまり、医療機関などは義務化などできるわけがないというふうに思い、国はお金は出しているんだから使わない方が悪いみたいな状況が放置をされてきたのではないかと思っております。遂行していく責任の所在が曖昧なのに、導入が進むわけがありません。

 先日、導入が進まないことに対して、怠慢が招いた結果だよと私が言ったら、ある他党の議員が、補助金が足りないんだよと不勉強なことを言っていましたよ。議員からしてこの認識ですから、がっかりなんですけれども。

 問題の本質は、実はここじゃないんです。

 現場では、義務化を受けて導入できていない言い訳に、申し込んでいるんだけれどもメーカーが対応できていないと、メーカーのせいにしているところもあると聞いています。実際、私は聞きました。そもそも、メーカーさんは、注文も入らないのに十分な生産ラインをしくわけがないんですね。これは民間の論理です。実際、初期の頃に注文された医療機関では、メーカーも仕様も選べたというところもございます。

 ここまででも大きな問題なんですが、更なる問題、本質は、ここから先にあります。

 マイナ保険証を使用すると様々なメリットがあります。これだけマイナンバーカードを作って、作ってと言っているわけですから、インセンティブぐらいつけなければいけないわけでありますけれども。ところが、このような導入率ですから、メリットが受けられないんですね。受けられないどころか負担になっているということをちょっとお話をさせていただきます。

 昨年十月までは、マイナンバーカードを推奨しているにもかかわらず、マイナ保険証の方が、初診料、再診料、調剤共に、マイナ保険証を利用する方が負担が大きかったんです。

 でも、これは理解不能なんですけれども、昨年の十月以降、初診料と調剤はマイナ保険証を利用した方が負担が少なくて、四月以降は再診料も同様になります。これは一年特例措置があって、その先はまた戻るらしいですけれども。

 ですが、先ほども申しましたとおり、対応している医療機関が少ないから、この恩恵を患者さんが受けられないんです。つまり、マイナ保険証の方が窓口負担が安いのに、マイナ保険証を使えないから元の保険証を持ってきてくれと言われるんですね。それを提示せざるを得ない状況なんですが、そうなると、高い点数で計算されるから、差額分も患者さんが払わなきゃいけないんです。

 つまり、導入が進んでいないことは患者さん側の何の不備でもないんですよ、患者さんは何も悪くないのに、残念ながら、その負担、小さな負担かもしれませんけれども、それを全ての患者さんに押しつけているんですね、マイナ保険証を持っている全ての患者さんに。

 見ると、初診で二点違いますから、一点十円の三割負担で、窓口負担が六円増える。四月からは四点も違いますから、窓口で十二円も負担増になるんです。

 たかだか十円、五円の話だから、そんなこと言うなよと思われるかもしれませんが、ちりも積もればでございますし、そもそもこれは患者さんに負担させるようなものなんでしょうか。少額だからいいとでも思っているんですか。それが政府の姿勢なんでしょうか。そもそもが間違っていないのか。

 今、賃金が上がらない中で、物価高で家計が苦しいと、多くの方が苦しんでおられます。そういう中で、総理は増税を言う。国は、制度をつくっても導入が進まなければ、少額だからと筋違いの負担を平気で国民に強いる。こんなことで国民が納得するとお思いですか。

 せめて患者への負担をなくすように、総理、指示していただけないでしょうか。いかがでしょう、総理。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバーカードの保険証化につきましては、導入が進んでいないという御指摘でございましたけれども、一月二十九日時点で、九八%の医療機関から、義務化対象施設についてカードリーダーの申込みをいただいております。そして、その半分の施設で既に運用が始まっております。そういう意味で、導入が進んできております。

 先ほど先生の方から患者負担に関しまして御指摘をいただきました。それで、まず説明させていただきますと、オンライン資格確認のシステムが稼働していないところでは、患者負担が追加的に発生するとかそういうことはございません。あくまでもオンライン資格確認が稼働している医療機関につきまして御負担があるわけですが、じゃ、なぜそういう扱いになっているかと申しますと、こういう医療機関に参りますと、薬剤情報や特定健診情報といった患者情報をそこで御覧いただきながら診療を受けることができます。そういう意味で、いい医療が受けられるということから診療報酬上の加算を設けております。こうした医療機関に行ったときにマイナンバーカードを使っていただくと、むしろ、患者負担は、使わない場合に比べて低くする、こういう扱いをさせていただいております。そういう意味では、配慮しながら、御負担を減らすような形での取組をさせていただいております。

 いずれにつきましても、まだ半分、稼働していないところがございますので、しっかりと、できるだけ早く稼働できるように進めていきたい、このように思っております。

岸田内閣総理大臣 申請の数はかなりの数に上ってきた、こういった説明がありました。それを実際に現場で稼働させるべく努力を続けていかなければいけない、そういった答弁でありました。

 そのとおりであり、政府としても環境整備にしっかり努力を続けていきたいと思っています。

山本(剛)委員 時間なので。

 五割はまだ導入が進んでいないんです。患者負担は絶対におかしいと思います。是非、是正していただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

根本委員長 この際、中司宏君から関連質疑の申出があります。金村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中司宏君。

中司委員 日本維新の会の中司宏です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、増税なき防衛費の増額について伺います。

 先日の予算委員会で我が党からも重ねて質問しておりますので、繰り返しになりますけれども、防衛費の増額そのものについては、我々、この緊迫する国際情勢の中で、基本的には賛成の立場であります。しかしながら、その中で、令和九年度以降必要となる財源の四兆円のうち一兆円分を法人税などの増税で賄う、この方針に対しては、やはり我々は繰り返し反対を訴えて撤回を求めているところでございます。

 増税なき財政再建と昔言われましたけれども、増税ありきというのは順序が違います。行革が先でなければ、国民の理解は得られないと思うんですね。

 今国会では、立憲民主党とともに政治改革あるいは身を切る改革プロジェクトを立ち上げまして、今私は共同座長ですけれども、昨日もメンバーが遊休国有地の視察に行ってきております。この若松住宅の件は、先ほど渡辺議員の方から質問がありましたのでこの場ではお聞きしませんけれども、これはあくまで行革の入口だと思っています。我々の目標は、こうした単発の効果額を見据えているのではなくて、今まで動かなかった国政の改革にメスを入れて、そして財源を生み出すことであります。行政、政治の構造改革に大胆に踏み込んでいく、これが私たちの目標でございます。

 総理、何も増税に頼らなくても、一兆円分は改革で確実に捻出することができると思っています。小手先の増税で乗り切るということではなくて、これまで我が党の質問でも、基金とかそれから剰余金とか、その例も示してきましたし、また、大阪での改革、これは、府民に新たな負担なしに教育の改革、教育の無償化を進めてきた、その事例も説明をさせていただきました。

 にもかかわらず、総理はなぜかたくなに増税論、増税ありきということを繰り返されるのか、そのことをお聞かせいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、防衛力の抜本的な強化を考える際に、安定的な財源を確保しなければならないということで、その財源を考える際に、当然のことながら、これはまず増税ありきで議論を始めたというものではありません。まずは国による様々な工夫、国民の負担をできるだけ抑えるための工夫、歳出改革ですとか、決算剰余金の活用ですとか、税外収入の活用のための防衛力強化資金の創設ですとか、様々な努力を行い四分の三を確保する、これをまず行った上で、それでも足りない四分の一について、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での協力をお願いしたいと考えているところです。

 税制措置、これはあらゆる行財政改革の努力、これが大前提であるということは言うまでもありませんし、この税制措置についても、現下の家計の所得には全く負担は生じません。法人税につきましても、九四%の法人については負担増はありません。こうした十分な配慮を行うことにしております。こうした丁寧な説明を行ってまいりたいと思っています。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

中司委員 努力、配慮ということをおっしゃいましたけれども、なぜ四分の三、四分の一にこだわられるのか、そこがちょっと納得できない部分がありますので、次の質問に移らせていただきます。

 私はかつて、新聞記者時代に総理番記者として中曽根総理から直接伺ったことがありますが、中曽根さんは、いつか総理になったときになすべきことを大学ノート何冊にも書きつづってこられたわけであります。そして、総理になってそれを実行されました。その後ろ盾の一人が土光敏夫さんでした。第二次臨時行政調査会、いわゆる土光臨調の答申によって、中曽根総理の手で、国鉄など三公社の民営化を始め、数々の行革が成し遂げられたわけでございます。

 岸田総理も、十年間で三十冊のノートに国民の声をつづってこられました。政治に国民の声が届いていない、そういう思いの中でのことだと思いますけれども、こうした聞く力を人一倍持っておられる総理にお尋ねしますけれども、読売新聞の一月十六日の朝刊では、防衛費の財源としての増税について、反対は六三%、賛成は僅か二八%だったわけです。これを見ると、今、国民の声は、増税しないでほしいということではないのでしょうか。総理、この厳しい時代に、民のかまどから煙は立ち上っているのでしょうか。説明をお願いいたします。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、これは決して増税ありきの議論を行ったものではありません。まずは政府としてあらゆる工夫をしなければいけない、しかし、それでも足りない部分について、今の世代として、将来の世代に先送りするのではなくして、努力をしなければいけない、税制措置をお願いさせていただきたい、こうしたことを申し上げさせていただきました。

 それに加えて、先ほど申し上げましたが、税制措置についても、現下の家庭の所得には負担増はありません。そして、法人税も、九四%の法人、これは控除等で工夫することによって負担増にならない、こういった仕組みになっています。こうした配慮をした上で、今の世代として、将来へのツケ回しをするのではなくして、税制措置をお願いできないか、こういったことを考えているところです。

 こうした丁寧な説明を行い、我が国の国民の命や暮らしを守るための備えをどのように安定的に維持をしていくのか、是非国民の皆様にも考えていただけるような説明を続けていきたいと思っています。

中司委員 丁寧な説明を続けていただきたいとは思うんですけれども、やはり今こそ是非聞く力を発揮をしていただきたい、こう私は思います、なぜできないのかということですけれども。

 中曽根内閣の前の鈴木内閣が掲げられた最大の政策は行政改革でありました。中曽根さんは鈴木内閣の行管庁長官として行革の旗を振られたわけであります。行革は当時まさに国民運動として風に乗っていたわけでありまして、宏池会で岸田総理の大先輩に当たられ、第二次臨調を立ち上げられた、それは鈴木元総理であります。

 今、鈴木財務大臣は、父上が培われた行革の道筋、これをどう引き継いでいかれるのか、お聞きしたいと思います。

鈴木国務大臣 今からもう四十二、三年前になりますけれども、鈴木内閣において、増税なき財政再建との旗印の下で、昭和五十六年三月、第二次臨時行政調査会を立ち上げて行財政改革に取り組んだことを承知をいたしております。

 臨調での議論を踏まえて、民間と行政の役割分担、国と地方の仕事の配分、各種の制度、施策について不断の合理化、適正化が必要であることとの認識の下で、簡素で効率的な行政の確立と財政の健全性の回復を図る行財政改革に取り組んだものと認識しております。

 この第二次臨時行政調査会の成果は、その後に行われた当時の三公社の民営化、年金、医療保険制度改革、行政組織の再編合理化を実現するなど、極めて大きなものがあったと考えております。

 その上で、時代の要請に応じた簡素で効率的な行政の確立と財政の健全性を回復する行財政改革は、今日においても、経済社会の変化等を踏まえつつ、不断に取り組んでいくべきものであると考えております。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

中司委員 大臣、御丁寧にお答えいただきまして、ありがとうございます。是非その理念を引き継いでいただきたいと思うところでございます。

 このように、増税なき財政再建を旗印にされた第二次臨調の時代から四十年がたったわけであります。少子高齢化、人口減少が進んで、コロナ禍の中で、物価の高騰などで格差も広がっています。地方は疲弊し、行革に血のにじむ努力をしています。安全保障の環境も大きく変わりました。社会の様々なシステムで制度疲労が起こっている。そして、改めて国の在り方を見直し、改革すべきときに来ているのではないかと思っています。

 しかしながら、総理の施政方針には、改革の理念とかその意気込みというのが全く感じられない。これについては、本当に残念に私は思っております。総理、この辺りで、増税路線から改革路線に大きくかじを切られてはどうなんでしょうか。

 そこで、提案ですけれども、総理直属の第三次臨時行政調査会、いわゆる第三次臨調を立ち上げて、内閣の重要課題として正面切って構造改革に取り組んではどうでしょうか。民間でも、いわゆる、今、令和臨調が組織をされまして、提言もされています。また、新たに制度や規制改革についても会議が開かれるなど、機運も高まっているところであります。

 是非、増税なき財政再建の理念を踏襲されまして、そして、増税なき防衛費の増額、また、増税なき子供予算の倍増を断行されてはどうでしょうか。それが本当の国民の声ではないのでしょうか。どうか、総理の聞く力で国民の声を聞き取っていただきたい。約束できませんでしょうか。改めて総理の見解を伺います。

岸田内閣総理大臣 行政の無駄あるいは非効率を排除し、行政機能を高めるために、時代の変化もしっかりと捉えながら、行政改革に不断に取り組む必要があると私も認識をしております。

 そして、現在、デジタル化の急速な進展を踏まえて、デジタル改革、規制改革、行政改革に係る横断的課題を一体的に検討するため、デジタル臨時行政調査会の下で、デジタル時代にふさわしい政府への転換について議論を進めており、今国会においても、アナログ規制、これを一括して見直しをする、こうしたデジタル改革を推進するための法案、これを提出することを予定をしております。

 その上で、防衛費の財源確保に当たっては、国民の皆さんに負担をお願いする以上、政府として徹底して行財政改革の努力を行うべきとの御指摘、これはそのとおりであります。あらゆる行財政改革の努力を尽くし、将来にわたって維持強化していく防衛力を安定的に支えるしっかりとした財源を確保できるよう、最大限努力をしていきたいと思っています。

中司委員 そこに増税があるからこそ、我々はその話をしているわけでありまして、この件につきましては、これからも提言を行っていきますので、是非英断をもって検討いただきますようにお願いいたします。

 次に、国葬儀について伺います。

 去年の安倍元総理の銃撃事件はいまだに信じられない出来事であり、心から御冥福をお祈りいたします。

 維新の会は基本的には国葬儀に賛成の立場でありまして、私たちも参列をさせていただいています。残念ながら、実施についての法的根拠、判断の基準、また国会の関与や予算など、国民への説明不足から、国論を二分する結果となったわけでございます。

 国葬儀について総括を行い、今後の在り方を検討する必要から、国葬儀の検証等に関する各派代表者会議が議運で設置をされまして、これと並行して政府も有識者へのヒアリングを行って、それぞれ論点整理が去年の年末に取りまとめられたわけであります。けれども、国葬儀についてどうされようとしているのか、その後の動きが全く見えてきません。

 時間がないので質問をはしょりますけれども、我々維新の会は、当初から一貫して国葬儀についての法整備が必要と考えて、去年の臨時国会で国葬儀の法案を提出をしております。また、臨時国会での我が党の馬場代表の質問に対して岸田総理は、幅広い有権者の論点を整理し、一定のルールを設けることを目指します、このように答えておられます。

 そこで、これまでの論点を踏まえて、国葬儀のルール化について、今後、どのような手順、スケジュール、また、どう進められるのか、総理にお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 安倍元総理の国葬儀に関して、幅広く有識者から意見を聴取し、論点と意見を整理したものを昨年十二月に公表し、先月の衆議院議院運営委員会理事会に官房長官から報告をさせていただきました。

 今後のスケジュールや一定のルールの在り方については、これは公表したのは年末、そして報告したのは先月でありますので、その後の国民の皆さんの反応も見ながら、国会との関係、あるいはどのような手順を経るべきか、こういったことについて引き続き政府として検討していきたいと考えています。

中司委員 時の政権が恣意的な判断を行い得る、そういう形であっては国民の理解は得にくいと思うんですね。ですから、是非、このルール化については、スピード感を持ってこの際進めていただきますようにお願いをしておきます。

 最後に、東京一極集中の是正と副首都についてお伺いいたします。

 トルコで大きな地震がありまして、現地は大変なことだと思いますけれども、心からお見舞いを申し上げます。

 そして、今年は関東大震災から百年目の節目に当たりますけれども、東京、首都圏でもう一度あのような大規模な災害が起こった場合に、そしてその他の非常事態が長期で発生した場合に、首都中枢機能をバックアップする拠点をどう確保するかということ、そしてまた一方で、大きな課題としては、東京一極集中によって首都圏と他の地域との格差が一層拡大をしている、この現実にどう向き合って格差を解消していくのか、国民経済の均衡ある発展に向けてどう取り組んでいくのか、これは大きな課題であって、お聞きしたいと思います。

 ただ、時間がないので質問を重ねますけれども、我々維新の会は、こうした東京一極集中に起因する様々な課題を解決するために、東京以外の地域を新たに副首都として定めるということ、そして、すなわち、それは、我が国全体の成長を牽引する、引っ張っていく、経済の中枢機能を有していく、そして同時に、災害その他非常事態が発生した際には首都中枢機能をバックアップすることができる地域を副首都集積地域として整備する、そのことを検討しているわけでございます。

 国家としての危機管理の観点からも、そして東京一極集中を是正するためにも重要な取組と考えますが、総理の考えをお伺いいたします。

岸田内閣総理大臣 東京圏への過度な一極集中の是正を図る観点からも、地方から全国にボトムアップの成長を目指すデジタル田園都市国家構想を実現することが重要だと考えています。

 これまで、テレワークや移住の推進のほか、関係人口の創出、拡大、政府関係機関の地方移転、また、スマート農林水産業や観光DXの推進による地方の所得の引上げ、こうした取組を進めています。

 このように、デジタルの力を活用しながら、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を実現することで、東京圏への過度な一極集中の是正や地方の所得の引上げによる地方活性化、これを図ってまいります。

 その中で、例えば、大規模災害等への備えとして、各府省の地方局が集積する都市を中心に、首都直下地震の際に緊急災害対策本部の代替となる拠点の確保、こうしたことについては検討を行っております。

 引き続き、首都機能のバックアップ体制の整備は推進してまいりたいと考えています。

中司委員 バックアップということもそうですけれども、多極分散、二極、三極ですね、そして日本の国全体を引っ張っていく、そういうような体制というのはやはり私は必要だと思っています。

 今国会中に、仮称、副首都機能集積地域整備推進法としてこれを提出させていただきたいと思っておりますので、どうかこの国の将来のために検討いただきますようによろしくお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

根本委員長 この際、高橋英明君から関連質疑の申出があります。金村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。高橋英明君。

高橋(英)委員 日本維新の会の高橋英明でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今日は、地方への交付金、補助金等々について質問をさせていただきます。

 まず、我々日本維新の会は、地方から国を変える、そして将来的には、国でやるべきこと、地域でやるべきこと、これを明確に分けていこうというのが我々の考え方でございます。その観点から質問させていただきたいと思います。

 まずは、地方創生事業、たくさんあろうかと思いますけれども、その中で、都市再生緊急整備地域制度という、ちょっと長いんですけれども、制度があろうかと思いますけれども、これは非常にハードルが高いと思うんですね。

 この目的、内容、財政支援の中身等々、ちょっと確認のために教えてください。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 都市再生緊急整備地域制度は、都市の再生の拠点として、都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域を、都市再生特別措置法に基づき、政令で都市再生緊急整備地域として指定するものでございます。

 指定地域に対しては、支援措置を講じることで、民間投資の喚起や都市空間の質の向上を図り、我が国の活力の源泉である都市の魅力や国際競争力を高めることを目的といたしております。

高橋(英)委員 ありがとうございます。

 ただし、指定されている都市の数というのは極めて限定的で、やはりどう考えてもハードルが高いというふうに思います。是非、もっと幅を広げて考えていただきたいというように思います。

 地方創生事業、ほかにもいろいろあると思いますけれども、次に、これは国交省の方ですね、社会資本整備総合交付金というのがございます。

 これは、大臣、非常に使い勝手がよくて、多岐にわたって、私、市会議員のときから本当にこれはいい制度だなというふうに思っているんですけれども、これは、主な事業、どういった事業に主に使われているのか、ちょっとお聞かせください。

斉藤(鉄)国務大臣 社会資本整備総合交付金は、地方による創意工夫を生かした取組に対して総合的な支援を行うことを目的としております。成長力強化や地域活性化等につながる事業に対して幅広く交付をしているところでございます。

高橋(英)委員 ありがとうございます。

 ところがなんですが、このパネルにもありますけれども、これは年々予算が減っているような状況でございます。令和五年予算でも、ここだけ見ると、前年度より三百二十五億四千百万円ですか、減っているんですけれども、これはどういったわけなんでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 もう一つ、非常に使い勝手がいいということで御評価をいただいている交付金に、防災・安全交付金がございます。これは防災・減災対策に使うというものでございます。こういう交付金もあるということ。それから、ここ数年、特定の事業に対して確実かつ集中的に支援をする個別補助制度を創設をいたしました。この個別補助制度を拡充することによって地方への支援を拡充している、これも、予算が、いわゆる総合交付金、社会資本整備総合交付金が減ってきている一つの原因でございます。

高橋(英)委員 そうしましたら、相対的には変わっていないという認識でよろしいんでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 社会資本整備総合交付金、また防災・安全交付金、また個別補助制度、年々の額はちょっと今つまびらかではありませんけれども、基本的には、地方を応援するその金額は、大きく下がっているということはないと思っております。

高橋(英)委員 ありがとうございます。

 変わらないという話ですけれども、これは是非とも増やしていただきたいというふうに、予算ですけれども、いただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 そして、この交付金の中に、町づくり的な、都市再生整備計画事業というのがあるんですけれども、これは、交付金、交付率がおおむね四〇%。ところが、国の重要施策に合致した場合は四五%交付されるというふうになっているんですけれども、この重要施策というのはどういったものなのか、お聞かせください。

斉藤(鉄)国務大臣 今、高橋委員お話のありました都市再生整備計画事業、これは、先ほどお話をさせていただきました社会資本整備総合交付金の中の一つの事業でございます。この事業につきましては、地域の特性を生かした個性あふれる町づくりを総合的に支援し、全国の都市の再生を推進することを目的としております。

 お尋ねの国費率のかさ上げの要件である施策とは、一つに、都市の魅力や国際競争力の強化を図るための都市再生緊急整備地域、先ほど岡田大臣が説明した、この地域に指定されるということ、それから二番目に、地域の歴史、文化等の特性を生かした町づくりを推進するための歴史的風致維持向上計画に載っていること、それから三番目に、地球環境に優しい町づくりを推進するための低炭素まちづくり計画に載っていること、それから最後、これは、先ほど、三番目とちょっと重なりますが、環境省が認定する脱炭素先行地域、このいずれかの地域に位置づけられている場合、かさ上げが行われます。

高橋(英)委員 ありがとうございます。

 岡田大臣、都市再生緊急整備地域制度が対象になっているということですから、先ほど言いましたけれども、ここの部分、もう少し幅を広げた方がいいと思うんですけれども、お考えをお聞かせください。

岡田国務大臣 都市再生緊急整備地域制度については、関係地方公共団体の御意見を伺いながら、地域指定や特例措置などの制度について適切な運用に努めているところでございます。

 この都市再生緊急整備地域、そして、もう少しかさ上げされる特定都市再生緊急整備地域について、全国五十二地域を指定しているわけでありますけれども、その指定レベルにまだ達していないところでも、近い将来の指定を自治体が希望する場合には候補地域として設定をしておりまして、将来に向けて国から助言を行うなど、自治体に寄り添った対応を行っているところでございます。

 都市再生緊急整備地域の指定に当たっては、都市開発の熟度、また都市全体への波及効果などを指定基準として見てまいりたい、このように思います。

高橋(英)委員 ありがとうございます。

 この整備計画事業、これは、地方自治体から計画を上げてもらって、丸ごとのみ込んで交付金を出すような実情があろうかと思うんですけれども、さすがにもう少しきちんと精査をした方が今後はよいのではないかなというふうに思いますので、是非ともお願いをいたします。

 そして、いろんな交付金、補助金、あろうかと思いますけれども、やはり採算を取るのが非常に厳しいような事業もあるんじゃないかと思うんですね。例えばですけれども、美術館とか。

 美術館、すばらしい施設ですよ。私も先日、上野の森に行ってきましたけれども、あそこにはたくさん、いい美術館等々、施設がございますので、すばらしいなというふうに思っております。しかしながら、やはり運営というのは非常に難しいんだろうなというふうに思っています。

 ちなみに、地方自治体が運営している美術館に関して、現状、そしてまた、平均で構わないんですけれども、年間の維持経費というのはどれほどかかるのか、教えてください。

永岡国務大臣 お答え申し上げます。

 お尋ねの、地方公共団体の美術館の経営状況は、日本博物館協会の調査によりますと、その規模や所蔵資料等の状況によりまして様々でございますが、平均的な美術館の財政規模というのは約一億三千万円でございます。入場料収入を含みます外部資金の収入割合は約四割となっているところでございます。

 なお、本年四月に施行されます改正博物館法においては、美術館が文化の拠点として文化観光など地域の活力向上に寄与することが期待をされておりまして、文部科学省といたしましても、美術館を始め、博物館資料のデジタルアーカイブ化など必要な支援を行ってまいります。

高橋(英)委員 ありがとうございます。

 美術館建設等々、立地適正化計画に合致していないと、国からは交付金、補助金等々、一切出ないというふうに聞いております。そうすると、市単独で行わなければならないということで、極めて厳しいのかなというふうに思いますけれども、最後、総理に、こういった採算性が合わないものに関してはやはり慎重にすべきだというふうに思いますけれども、いかがですか。

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから、大変恐縮ですが、総理、簡潔によろしくお願いします。

岸田内閣総理大臣 御指摘の取組については、事業採算性も考慮しつつ、適切な事業計画に基づき効果的な取組を進めることが重要であると認識をしております。

 このため、引き続き、町づくりに関する国と地方自治体との適切な役割分担の下、都市再生緊急整備地域ごとの地域整備方針や、都市再生整備計画において達成する目標の設定、そして事業終了後の事後評価や公表などのPDCAサイクル、これを、着実な取組を進めることによって、効果的な支援となるよう取組を進めてまいりたいと思っています。

高橋(英)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

根本委員長 これにて金村君、山本君、中司君、高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 先週、基本的質疑の中で賃上げについて質問をさせていただきましたけれども、本日も引き続き賃上げについてお尋ねをさせていただきたいと考えております。

 先週、私の方から申し上げましたのは、これから日本というのは人口が激減する時代に入ってくる、もう既に減少は始まっていますけれども、特に、労働人口が減少すると、経済規模が縮小して税収も減り、社会保障制度も厳しくなる、こういった中でどうしていくのかというところで、私からは、やはり、生産性を上げていく、賃金を上げていく、こういったことにしっかりと取り組んで実現していかない限り日本の存立が危うい、こういった趣旨で質問をさせていただきまして、特に課題となっている、中小企業、またサービス業など、賃金が低くなっている部分での賃上げについて様々お話をさせていただきました。

 引き続いて本日まずお尋ねをさせていただきたいのが、こういった中小企業であったりサービス業においては最低賃金近傍で働く人が大変多くなっていますので、最低賃金を引き上げるということが賃上げにとって極めて重要だと私は考えております。

 これまでも賃上げのスピードは、過去に比べれば加速していますけれども、総理にまず二点お伺いをさせていただきたいのが、まず、最低賃金を引き上げる、賃上げは今とても重要でございますので、最低賃金の引上げに関しては更に加速をさせていく、このことがまず一点目、必要ではないかと思っていますので、そのことをお尋ねしたいのと、加えて、最低賃金を引き上げると、中小企業であったりとか最低賃金で人を雇用している企業ではなかなか対応が難しいということも現実でございます。そういったことに対応するためにも、今後、例えば三年後にこれぐらいまで最低賃金を全国加重平均で引き上げるだとか、できれば一律にするべきだと国民民主党は訴えているんですけれども、具体的な長期的な目標を定めて、それを明示して最低賃金の引上げを行っていくということが重要ではないかなというふうに考えております。

 これは、企業で対応を進めるということもあるんですけれども、同時に、働いている人にとっても将来の展望が描きやすくなる、将来に希望を持てるという意味で重要だと考えているんですけれども、最低賃金の引上げを加速していく、そして、明示的に目標を定めて引上げをしていく、この二点、どのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 最低賃金については、私自身、これまでも、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指し、引上げに取り組むとともに、全国加重平均千円以上となった後も引上げに向けた努力を続けていく、こうしたことを繰り返し申し上げてまいりました。

 その中で、委員の方から、労使の予見可能性が大事だという御指摘でありますが、この予見可能性にも留意をしながら取組の進め方を考えていく、これは大事な考え方であると思っています。

 ただ、今の質問の中で、党としては、全国一律の最低賃金、これを考えているというお話がありました。

 ただ、この全国一律の最低賃金については、特に地方において、そして、まさに御指摘の中小企業を中心に、急激に人件費が増加することにより経営が圧迫される、あるいは雇用が失われるおそれがある、こういった点から慎重に検討が必要だという意見があることは留意しておかなければならないと思います。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 だからこそ、目標を明示して段階的に引き上げていくということが重要になると思いますので、その点、改めてお願いをしていきたいと思っております。

 いずれにしましても、最低賃金が今後も上がっていくことになるでしょうし、賃金、時給が上がっていくということは間違いないと思います。そういった中で、どのレベルまで最低賃金を上げるかに関しては、各党、与野党で考え方が違いがあるかもしれませんけれども、上げていかなければならないというところは一致していると思いますので、そうなってくると、やはり文字どおり乗り越えていかなければならない問題が、年収の壁、収入の壁の問題であるというふうに考えています。

 こちらは、もう今国会でも様々な議論がなされているところでございますけれども、収入の壁によって賃上げが阻まれてしまっているという問題が今あります。これは右下のグラフを見ていただければ分かるんですけれども、時給は上がっています、赤い線ですけれども。時給は上がっているんだけれども、それに反比例して労働時間が減ってしまっていて、結局、所得、青い線ですけれども、こちらはほぼ横ばいになってしまっている。これが現状でございます。

 この背景としてあるのが収入の壁でございます。幾らまで稼ぐと、税金がかかり始めたり、社会保険料がかかってしまったり、あるいは企業での家族手当が出なくなってしまったり、こういった収入の壁があって労働時間を調整する、そういったパートタイムの労働者がたくさんいらっしゃるせいで、時給が上がっても所得が増えない、賃上げは実現できていない、こういった問題があるわけでございます。

 まず総理にお伺いしたいんですけれども、この収入の壁の問題は解決しなければならない問題であるというふうな御答弁を総理の方からも繰り返しされていますけれども、一体どのような形でこの問題を乗り越えていくおつもりなのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 賃上げ、これは最重要課題であると認識をしています。賃上げは、消費を喚起し、経済成長に資するとともに、若い世代の所得向上を通じて少子化対策にもつながると考えます。

 その際に、賃金が上がっても、制度的な壁により就労時間の調整が行われますと、結果として、世帯所得が増えなくなるとともに、人手不足の中であっても労働力が増えない、こうしたことになってしまいます。このため、私も、施政方針演説において、女性の就労の壁となっている、いわゆる百三万円の壁や百三十万円の壁といった制度を見直す、このように申し上げました。

 百三十万円の壁の問題については、これを意識せずに働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大、これを進めてきたところですが、その上でなお、被扶養者については、扶養者から外れて被保険者に転換するところで社会保険料が生じるため、就労調整が行われるとの指摘があります。そこで、被扶養者でない単身世帯の方々との間の公平にも留意しつつ、政府として、どのような対応が適切なのか、今、幅広く対応策について検討を進めています。

 是非、この問題について、長期的には先ほど申し上げた取組を進めることが大事だと思いますが、今目の前の課題に対してどう対応するのか、政府としてもその検討をしたいと考えております。

斎藤(ア)委員 これまで被用者保険の適用拡大を行ってきて、これから先も、去年、百一名以上の事業者に関しては引下げになりまして、また、来年ですかね、五十一名以上の事業者においても適用になるということになりましたけれども、やはり適用拡大で対処していくのにはもう限界があるというふうに考えております。百六万円、毎月八万八千円の月給の水準を引き下げるということになってしまうと、それこそ一号保険者、国民年金保険者の方との格差が、不公平性が大変問題になると思っておりますので、そういった意味でも適用拡大ではもう限界がある。

 抜本的な改革をしっかりと行って不公平の問題、そして壁の問題を乗り越えることが必要だということはもちろん大前提ではあるんですけれども、とにかく、今、雇用調整をしてしまっている、これだけ労働者が足りない中なのに労働時間を減らしてしまっている、それで所得が上がらなくなってしまっているという問題に今まさに取り組んで解決をしていかなければならない、乗り越えていかなければならないというふうに考えておりますので、その点に関して今から一つ提案をさせていただきます。

 これはもう既に昨年来、野村総合研究所が提案をしていることですし、また、自民党、与党の方からも提案がありましたけれども、年収の壁、収入の壁を突破するための給付をしてはどうかということ、是非これを総理にも、また政権にも御検討いただきたいというふうに考えております。

 少しだけ説明をしますと、収入の壁で最も問題になるのが、やはり社会保険料が発生するタイミングでございます。様々な条件によって変わりますけれども、百六万円であったり百三十万円というポイントで社会保険料が発生をして、がくんと手取り収入が減ってしまって、その後、それまでの手取り収入を回復するまでには大分労働時間を増やさないとならなくなってしまいますので、それを諦めて百六万円とか百三十万円の手前で就業調整をするということがあるんですけれども、それを乗り越えるために、その減ってしまう部分、働き損とここには書いていますけれども、実際には損をしているわけではないんですが、手取りでは減ってしまっているので、ためらうということで、働き損と表現していることが多いんですけれども、ここの部分に該当するような給付を行って、スムーズにこの崖、壁を乗り越えてもらう橋渡しのような給付をするということが一つ有効なのではないかなというふうに考えております。

 これに関しては、確かに不公平性がある政策とはなってしまうんですけれども、あくまで経済対策として行う。経済対策というのは、投入した税金よりも、回収できる、あるいは効果がある場合であれば経済対策としてやっていいというふうに思いますので、給付をした分よりも、社会保険料収入であったり税収であったり、また経済活動が活発化していくということを考えれば、しっかりと検討に値する案だというふうに考えているんですけれども、この給付の考え方に関して総理の方はどのようにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 確かに、委員御指摘のように、実際、企業の現場からは、賃金を上げると結果的に働く人が減ったり働く時間が減るという、特に、今、大変人手不足の業種からそういう声が上がっている、これはそのとおりでありますし、それに対して考えていかなきゃいけないとは思っておりますが、ただ、経済対策だから公平性をというのはなかなか難しい。

 例えば、同様に働いている被扶養者じゃない単身世帯の方、また、いろいろなパターンがあるんですけれども、国民健康保険や国民年金の加入者の中には、百三十万や百六万の基準未満の収入であっても保険料を負担している方も実際におられるんですね。

 ですから、そういったところをどうするのか、そういったことも含めて、冒頭申し上げた問題、課題、これにどう対応していくのかということを考えていかなきゃならないというふうに思っております。

岸田内閣総理大臣 委員の方から一つ具体的な御提言をいただきました。同様の御提言が与党からも出ているということを承知をしております。

 こうした様々な提言を踏まえて、先ほども申し上げました公平には留意しつつも、何ができるのか、検討したいと思っております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 私も、公平性は特に社会保障の分野では極めて重要だと考える一方、既に今のこの制度自体が不公平なものになってしまっているということもありますし、ここは、だからといっていいという話ではないんですけれども、やはり今、どうやって足りなくなっている労働力を補うのか、どうやって賃上げを阻んでいるこの壁を乗り越えていくのか、そういったことを考えたときに、何もせずに、そして抜本改革までこのまま放置するということであれば、問題が解決されない、どんどん労働力が減ってしまっていく、そういった賃上げも阻まれるという状態が続いてしまいますので、是非この点を検討していただきたいというふうに考えております。

 この話をいろいろ検討するときに、やはり抜本改革が必要だということになるんですけれども、これは、もし、総理あるいは厚労大臣、分かれば答えていただきたいんですけれども、この百六万円の壁と百三十万円の壁というものは、収入の計算の仕方が異なるわけでございますし、また、それぞれ性質が異なって、それが混同されてしまっていて混乱を招いていると思うんですけれども、この百六万の壁と百三十万の壁の計算の仕方が違うということは御存じでしょうか。

加藤国務大臣 百六万というのは、まさに、雇用契約上年収幾らでという、その前提のときに決めた数字、それが百六万ということになります。それから、百三十万というのは、基本的に、一年間を通じて実績としてどれだけ収入を得ていくのか、簡単に言えばそういう違いがあるということであります。

斎藤(ア)委員 これは、今、通告をしていなかったので、質問を急にしてしまって申し訳ないんですけれども、税金の計算の方法であれば、例えば三か月間で百三万とかを超えてしまうと税金がかかるということになるんですけれども、百三十万の壁の方は、これも、契約をした時点でどれぐらいの収入になるのかということに基づいて計算をされる。百六万円の方では、時間外手当や賞与は除かれてということですので、ちょっと計算の中身が異なるんですね。それに加えて、先ほど言った、税金がかかるときの収入の計算方法は異なるということでございまして、大変分かりづらくなってしまっていて、そういった意味でもやはり抜本改革はしていかなければならないというふうに考えております。

 それともう一つ、同時に、先ほどの二枚目のパネルの方を見ていただきたいんですけれども、企業が出している家族手当に関しても、百三万円とか百三十万円、配偶者がどれぐらい年収を上げているかということに基づいて手当を支給したりしなかったりということがあるので、これも一つの壁となってしまっています。

 これに関しては、企業に呼びかけて、百三万、百三十万といった計算の要件、これを緩和するであったりとか、そういったことを求めていくことが一つ有効なのではないかなと思っております。

 これは、もちろん、企業が自主的に支給している手当でございますので、何か強制力をもってやるということはできないんですけれども、こういった呼びかけをして企業の家族手当の壁を乗り越えていく、変えていく、こういったことについては、総理、お考えはありますでしょうか。

加藤国務大臣 済みません、さっき計算の話を申し上げたんですが、基本的に、百六万を超えた後、企業要件があると社会保険の方に移行するというのが百六万です。それから、百三十万は扶養に入るか入らないかの基準、その違いがまずある。あとは、今委員がおっしゃったように、百六万は契約ベースのときに決めて、百三十万は実績で見ていくということでございます。

 その上で、委員がおっしゃった家族手当等、これはまた、一つ大きなジャンプというか、家族手当をもらうかもらわないかは、結構、随分違いがあります。私も、かつて各企業にお願いをして、中には、家族手当というものを例えば子供手当みたいに変えるとか、そういう取組をしていただいた企業もございますので、引き続き、そういった点も含めて経済界に働きかけていかなきゃいけないと思っています。

岸田内閣総理大臣 今、壁として百三万、百六万、百三十万、それぞれ説明がありましたが、要するに、百三万の壁に関しては、国としての取組は壁を取り除くべく対応が済んでいるわけですが、しかし、国としての対応があった時代に合わせて、民間の企業がそこを壁にして様々な支援を行うという民間側の対応が残っているという現実がある、これについてどうするかということなので、委員おっしゃるように、民間企業にお願いして、働きかけて、こうした民間側に残っている方の壁を何とか解消してもらいたい、こういったお願いをする、そういった政策課題であると認識をしています。

 今厚労大臣からありましたように、民間側でこうした壁について適切に対応してもらうべく、政府としても働きかけていくことは重要であると認識をしています。

斎藤(ア)委員 是非とも総理大臣から、政労使の協議の場などを設けて、その場でこういった問題も企業に協力を要請をしていただきたいと思っております。

 時間がなくなってきたので最後のテーマにしたいんですけれども、こういった給付をしていくことを我々は提案をさせていただきました。是非するべきだとは思うんですけれども、やはり不公平性は確かにあるし、そもそも今の制度にも問題があるので、抜本的な改革をしていかなければならないということは、これは共通認識だと思っております。ただ、問題なのは、本当にその抜本改革の検討、協議を政府の方でされるおつもりがあるのかというところがなかなか見えてこない、そこが大変不安でございます。

 繰り返しになりますけれども、どんどん時給が上がっていきますので、ますます労働時間が減ってしまって、労働力が減る方に拍車がかかって、賃上げも阻まれる、こういった問題もありますので、抜本改革を早急に行っていくべきだと考えているんですけれども、いつまでにこの改革の協議を、検討を行って、いつまでにその改革を実現するのか、是非そういった具体的な目標を設けていただかないと、このままずるずるいく、そういった未来しか見えてこないので、是非総理には、この社会保険制度の抜本改革の決意を述べていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今、子供、子育て政策を最重要課題にするということで取組を進めていますが、こうした子供、子育て政策も含めて、社会保障制度全体の改革、これはかなり重なる部分もありますので、これは並行して進めなければいけない部分もたくさんあるんだと思います。

 そして、その中で、御指摘の点についてどのようなスケジュール感で取り組むかということであります。

 子供、子育て政策に関わる部分については、是非、こども政策担当大臣の中で、今、子供、子育て政策として大切な取組ということで、三月末までにたたき台を作り、六月の骨太の方針に向けて大枠を示す、こうしたことを行っていきたいと存じます。そして、併せて、全世代型社会保障構築会議の場で政府として社会保障全体の議論も進めていく中で、今言った政策以外の部分についても議論を続けていく、こうした形で政府としての議論を進めていきたいと思っております。

斎藤(ア)委員 それではやはり本当に改革がなされるのだろうかということしか、そういう不安しか残らないわけでございます。しっかりと年限を決めて与野党で取り組んでいかないと、これであれば誰もが納得するというか、誰もがハッピーという改革案というのはなかなかないから、ここまでずるずると来てしまっているわけでございますから、与野党がしっかりと腹を割って協議をしていく、そして取り組んでいくということが必要な分野だと思いますので、是非ともしっかりとリーダーシップを発揮してもらって年限を決めてやっていただきたいですし、先ほど一つ触れられていたんですけれども、全世代型社会保障構築会議の中間整理を拝見していますと、少し更に不安が増す記述があって、「被用者保険の適用拡大が図られると、女性の就労の制約となっている、いわゆる「百三十万円の壁」を消失させる効果があるほか、いわゆる「百六万円の壁」についても、最低賃金の引上げによって、解消されていくものと見込まれる。」と。

 時給が上がっていく、最低賃金が上がっていけば、この壁が解消されるというふうな記述があるので、どういった趣旨で書かれているのかちょっと分からないんですけれども、先ほど申し上げましたように、賃金が上がっていって、それで労働時間を調整せざるを得なくなって、賃上げがとどまってしまっている、阻まれてしまっているのが今現実の状態でございます。更に時給が上がっていくと、賃上げをせっかく実現したいのに、それもできないままになってしまう可能性が大変高いと思っていますので、繰り返しになりますけれども、その突破をする給付を是非とも検討していただきたいし、そして、抜本改革、こちらに関しては、しっかりと年限を決めて改革の協議を行っていくよう求めて、我々からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて斎藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今日は、安全保障三文書について質問をいたします。

 まず、防衛大臣に伺いますが、先月十二日、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会、2プラス2が行われました。

 そこで、沖縄県中部にある米軍嘉手納弾薬庫の自衛隊による共同使用を拡大する方針を確認しています。どういう内容を確認したんですか。

浜田国務大臣 施設・区域の共同使用は、より緊密な運用の確保、そしてまた相互運用性の確保などの観点から、充実させるべき日米協力の分野の一つであります。また、安全保障環境が急速に厳しさを増す中、自衛隊の持続性、強靱性を強化するため、火薬庫の確保が重要な課題となっております。

 こうした背景を踏まえ、日米間で検討を進めてきた結果、先般の日米2プラス2において、平成十五年から共同使用を行っている嘉手納弾薬庫地区の追加的な共同使用を確認したところであります。

 具体的には、嘉手納弾薬庫地区における既存の火薬庫三棟を陸上自衛隊が新たに共同する方針であります。

赤嶺委員 資料をお配りしてありますが、2プラス2では、今後増やす自衛隊の弾薬を保管するために、嘉手納弾薬庫の使用拡大に向けて具体的な調整を開始することを確認しています。昨年の三文書は、米軍の火薬庫の共同使用を追求、促進すると明記していました。この具体化にほかなりません。

 総理に伺いますが、総理は、代表質問で、国会や国民への説明もなく三文書を閣議決定しバイデン大統領に報告したことを問われたのに対し、米国には日本の現状を説明したもので、民主主義を無視したことはないと答弁しております。しかし、既に日米間で弾薬庫の使用拡大に向けた具体的な調整を開始しております。

 総理の答弁は事実と違うのではありませんか。

岸田内閣総理大臣 事実と異なるとは思っておりません。

 日米の安全保障における協力、大変重要であると考えておりますし、そのために、我が国の取組について先月の首脳会談において説明をさせていただいた、それに対して歓迎の意が表された、こういったことであります。

 こうした取組は、国会に対して法案や予算という形で提出をさせていただき、国会の議論を経なければ実現することはできない、こうした課題であります。こうした国会の議論、大変重要だと思っておりますが、一方で、日米の協力についての今後について、日米の間で意思疎通を図っておくことは重要であると思います。

 こうした日米協力を実現するためにも、国会において丁寧な説明を行い、そして、予算、法律という形で了承いただき、実現に結びつけるべく努力をしていきたいと思っています。

赤嶺委員 国会を通る前に、具体的な調整を開始したと、今出している資料に書いてあるじゃないですか。防衛大臣は意識的にその部分は答弁を抜かしましたけれども、皆さんの文書に書いてあるんですよ、具体的な調整を開始したと。これは、国会の審議を待たずに、もう既に始まっているということじゃないですか。総理の説明は、これはもう通らないと思いますよ。誰が聞いても通らない。

 嘉手納弾薬庫だけではありません。2プラス2は、空港、港湾の軍事利用の拡大に向けて日米が協力することを決定いたしました。その翌日には、米軍が宮古島市にある下地島空港の使用申請を沖縄県に提出しています。

 下地島空港は、開港以来、政府と沖縄県との間で、民間航空以外の目的に使用しないことを確認している空港です。さらに、敵基地攻撃能力の保有や、あるいは先端軍事技術の共同研究など、次々と三文書の具体化に着手しています。

 総理が米国には説明をしただけだと言うのであれば、こうした作業は一旦停止すべきではありませんか。

岸田内閣総理大臣 政府として、日米同盟の重要性に鑑み、意思疎通を図っていくことは重要であると思います。日本の政府のありようについて丁寧に説明をすることは重要だということで、日米で意思疎通を図っています。

 しかし、これが実現するためには、国会における予算や法律の成立、これを待たなければなりません。是非、こうした意思疎通は大事だと思いますが、国会での議論を重視して、国民の皆さんに対する説明も続けていきたいと思っています。

赤嶺委員 2プラス2のときに民間空港の使用が言われて、これを待っていたかのように、米軍は、国会の審議も待たずに、下地島空港を使わせてくれと言っているんですよ。総理の答弁と全く当たらないじゃないですか。

 結局、この間の総理の対応というのは、辺野古の問題と同じです。どれだけ県民が反対の意見を示しても、とにかく日米合意ありきで工事を強行しております。

 私は、これは単に進め方の問題ではないと思います。南西諸島から南シナ海に至る地域の島々に長射程ミサイルを配備するというのは、元々これはアメリカの戦略から始まったものです。軍事費をGDP二%に引き上げるというのも、アメリカが同盟国に繰り返し要求してきたものであります。大軍拡、大増税の大本には、根深い対米従属の構造があるということを厳しく指摘しておきたい、このように思います。

 三文書の内容について伺います。

 総理は、施政方針演説で、いわゆる反撃能力の保有と南西地域の防衛体制の抜本強化に取り組む考えを示しました。敵基地攻撃可能な長射程ミサイルを沖縄に配備するということですか。

岸田内閣総理大臣 新たに策定した防衛力整備計画に基づいて、島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して脅威圏外から対処する、すなわち相手の射程圏の外から対処することが可能となるため、スタンドオフ防衛能力を強化することが必要であると認識をしております。このため、一二式地対艦誘導弾能力向上型を含む各種スタンドオフミサイルを導入することとしておりますが、具体的な配備先はまだ決定していないということであります。

 いずれにしても、スタンドオフ防衛能力の強化により、我が国の様々な地域から重層的に相手方の艦艇や上陸部隊等を阻止、排除できる能力を保有することが必要です。こうした取組により、自衛隊の抑止力、対処力を向上させることで武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。

赤嶺委員 今、決定していない、このようにお答えになりました。それを誰も本気で受け取る人はいないと思いますよ。

 三文書では、陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊を現在の五つから七つに増やし、その七つ全てに長射程ミサイルを配備する計画になっています。沖縄では、既に南西諸島に部隊が置かれ、今年度中に石垣島、来年度にはうるま市の勝連にも新編する計画になっております。

 こうした部隊のミサイルを長射程のものに置き換えていくということではないのですか。これは、沖縄に配備することになるのは明らかではありませんか。

浜田国務大臣 防衛省としては、平素から安全保障環境に即した部隊配備を行うために、地対艦誘導弾部隊を奄美大島及び宮古島に配備してきたほか、本年度中には石垣島に、令和五年度には沖縄本島の勝連分屯地に配備を予定しておりますが、いずれも、スタンドオフミサイルではない、一二式地対艦誘導弾を配備するものであります。

赤嶺委員 今、一二式ミサイル部隊を配備しているわけですよ。今後、長射程ミサイルはこの部隊に配備するということが出ているじゃないですか。これは、沖縄に配備しないというのではなくて、やはり今、事態を県民に対して真正面から説明していないという具合にしか受け止められません。

 そもそも、沖縄にミサイル部隊を配備するときの政府の説明は、防衛上の空白を埋めるということでありました。防衛大臣はそういう説明をしてきたと思います。ところが、部隊が立ち上がる時期になったら、敵基地攻撃のためのミサイルを配備する、このように言い出しました。相手国から真っ先に攻撃される基地になります。これでは話が違うではないかという声が上がるのは、私は当然だと思います。米軍の訓練についても、当初は計画はないと言っておりましたが、昨年、与那国駐屯地で行いました。

 総理、余りにも国民を、住民を、そして沖縄県民を愚弄するやり方ではありませんか。

浜田国務大臣 今、長射程というお話がありましたが、我々とすれば、まだこれは決定していることではございませんし、我々は、もしもそういうことになれば、丁寧に説明をしていかなければならないというふうに考えております。

 ですから、長射程という御指摘には今は当たっていないということだけは御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 沖縄での今までの自衛隊の配備の仕方を見ると、最初は与那国島はミサイルの計画はありませんでした。しかし、今はミサイルも配備すると言っています。米軍は絶対に来ないと説明していましたが、米軍は来て訓練をしております。

 まともな説明をしたことがないんですよ、防衛省は。やはりこういうやり方が、今度は長距離ミサイルの話が出てきていますよね。出てきて、今防衛大臣は、もしも配備することになれば説明していきたいと思っていると。これが県民を愚弄するやり方ではないか。

 総理、そのように指摘されても仕方がないんじゃないですか。

浜田国務大臣 体制強化という点について地元に御懸念があるというのは、これは我々も十二分に承知しておるところであります。しかし、我が国を取り巻く安全保障環境の厳しい現実を踏まえれば、南西諸島の防衛体制の強化は喫緊の課題であると考えております。

 こうした取組は、力による現状変更を許容しないとの我が国の意思を示し、島嶼部を含む南西地域への攻撃に対する抑止力、対処力を高めることで我が国への攻撃の可能性を低下させるものであり、沖縄県民、ひいては我が国国民の安全、安心につながるものであります。

 防衛省としては、引き続き丁寧な対応に努めてまいりたいというふうに思っております。

赤嶺委員 今、防衛大臣、図らずも、結局、南西諸島に長射程ミサイルを配備するという、結論がありありの答弁だったじゃないですか。まだというのは、今からやるということでしょう。

 石垣市議会で、昨年の十二月に、長射程ミサイルの配備について政府に説明を求める二つの意見書を可決いたしました。元々自衛隊の配備に反対だった議員の提案した意見書だけではありません。賛成だった議員の提案した意見書も可決をしております。彼らからすれば、専守防衛という前提で政府に協力してきたのに、一方的にはしごを外されたようなものであります。

 最近、石垣島で、本土に出ている若い人たちが、自分らは将来石垣に戻れるだろうか、このように話していたということを聞きました。宮古島でも、あるお母さんが、息子にこの島で根を張って暮らしなさいとは言えない、このように話していたそうです。こういう思いをさせていること自体、南西諸島の防衛体制の強化を言い、敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルを配備すると言い、こういうことが住民の間での大きな不安を巻き起こしているのであります。

 私は、これは総理、政治の責任を果たしているとは言えない、このように思います。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、三文書を閣議決定し、自衛隊の部隊の増強等により南西地域の防衛体制を強化する、これは国民保護の観点からも重要な取組であると考えています。そして、日米同盟の抑止力、対処力を向上させることで武力攻撃そのものの可能性を低下させることができる、こうした考えに基づいて取組を進めていきたいと考えています。

 こうした考え方を丁寧に沖縄県に説明していくことが重要だと考えます。

赤嶺委員 防衛力を強化することが、軍隊を強化することが国民保護に役に立つと言って、沖縄県民が信用すると思いますか。沖縄戦の最大の教訓は、軍隊は住民を守らない。総理が一番よく知っているでしょう、沖縄担当大臣、外務大臣もやって。そういうことを知りながら、白々しい答弁をするんですか。

 最後に、政府は一体何のために大軍拡を推し進めようとしているのかという点です。

 二〇二一年十二月、米軍と自衛隊が、台湾有事を想定した新たな日米共同作戦計画の原案を作成したことが報じられました。台湾海峡をめぐって軍事衝突が起こったときに、米軍が南西諸島の約四十か所の島々を拠点に中国艦艇へのミサイル攻撃を繰り返し、自衛隊が安保法制に基づいて後方支援を行うという内容です。まさに南西諸島全域を戦場にする計画です。

 総理、こういう計画を作成したんですか。

岸田内閣総理大臣 二〇一五年に策定された日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインですが、この下で、日米両政府は、我が国の平和と安全に関する緊急事態についての共同計画を策定、更新する、このようにしております。

 その上で、共同計画の策定の状況、具体的な内容の詳細については、これは緊急事態における日米両国の対応に関わるものでありますから、事柄の性質上、差し控えなければならないことであると思っています。

 そして、何のために防衛力を強化するのか。これは、間違いなく、国民の命と暮らしを守るためであります。自衛隊の抑止力、対処力、そして日米同盟の対処力、抑止力、これを向上させることで武力攻撃そのものの可能性を低下させる、こうしたことのために防衛力を強化していくと認識をしております。

赤嶺委員 南西諸島に住んでいる住民は国民じゃないんですか。今にも長距離ミサイル、敵基地攻撃ミサイルが配備されて、住めなくなるんじゃないかとおびえているんですよ。おびえている人たちがいる、それに対して、いや、国民の命を守るためだ、こういうことを言ってごまかそうとする。

 今度の共同作戦計画というのは、作っていることを認めておりますが、今度の2プラス2でも、着実な進展を歓迎すると。そして、その中で、海兵沿岸連隊という部隊に再編することも明記しています。小規模な部隊が島々に分散して展開し、無人の対艦ミサイルで、相手の艦船を攻撃するというものです。まさに報道された共同作戦計画の具体化です。国民の命に関わる問題ですよ。政府間だけで秘密裏に進めることなど許されるはずがありません。

 台湾問題をめぐって政府が一体どういうことをやろうとしているのか、その結果、国民にどれだけの犠牲が生じることを想定しているのか、国民に説明すべきであります。その点、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、複雑な、そして厳しい安全保障環境の中で、国民の命や暮らしを守るために政治は責任を果たさなければいけない。では、どうやってその責任を果たすか、これが今現実的に問われている、こうしたことであると思います。そして、現実の中で、政府としてその責任を果たすために、防衛力の抜本的な強化は必要であると認識をしています。

 そのために、自衛隊の、そして日米同盟の対処力、抑止力を向上することによって武力攻撃そのものを未然に防ぐ、こうした取組を進めることが重要であるという考えに基づいて、昨年一年間をかけて議論を積み重ね、安全保障の三文書、これを取りまとめました。それを公にした上で、国会に対しては、予算、法律という形で、こうした取組を御了承いただけるかどうか、議論をお願いしているということであります。

 こうした丁寧な議論、説明を尽くすことによって、国民に対する説明もしっかり尽くしていきたいと考えています。

赤嶺委員 軍事力を強化して国民の命を守るというのは、沖縄戦を体験した県民にとっては絶対に納得できるものではありません。

 日本政府がやるべきことは、緊張を高めることではなくて、アメリカや中国とも、平和外交、話合いで平和をつくるための……

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、おまとめください。

赤嶺委員 努力をすることだと申し上げて、質問を終わります。

根本委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会の吉良州司です。

 子育て支援についてお伺いします。

 まず最初に、十二分と非常に短いので、本会議のように、私の問題意識、提案、そして質問というのをちょっとまとめて最初に投げかけさせていただいて、総理のまとめた答弁をお願いする。そこから、時間があればキャッチボールをさせていただきたい。これは委員の皆さんにも御了解いただきたいと思います。

 さて、子育て支援については、与野党双方から、フランスに倣ってN分のN乗方式を導入すべきだという議論があります。これは子育て支援の具体策ですから、私自身も、何が何でも反対するという立場は当然取りません。しかし、我が国の国情、実態に即して、果たしてそれが最も効果的な方策なのかということについては疑問を持っています。これについては、我が会派の緒方林太郎議員が既にこの予算委員会においても指摘しています。

 ちょっと、まず、お手元にある資料を御覧いただきたいと思います。これは、所得税の税率区分ごとの納税者がどれぐらいいるのか、課税所得がどれぐらいあるのかというのを示した棒グラフであります。

 見てお分かりいただけるように、こちらの五%のところが圧倒的に多いんですね。その次に一〇%。そして、納税者という意味では、二〇%から格段と減ってくる。これがまず、日本の納税者、それからその税率の実態であります。

 では、次の資料を御覧いただきたいと思いますけれども、これは、それを国際比較したものです。

 このグラフを見ていただければお分かりいただけるように、日本の場合は何と六〇%が税率五%に張りついています。その次に一〇%。一〇%以下が八二%にもなっています。

 見習おうとしているフランスはどうなのか。フランスはそもそも一四%です。その一四%が、フランスの場合、七九%。イギリスの場合も、ここにありますように、〇から一〇は二%、そして一〇から二〇が八四%、これが実態なんです。

 緒方林太郎議員が指摘したように、税率が高いところ、納税額が多い国については、N分のN乗というのは極めて効果があると思っていますけれども、我が国は残念ながらそういう状況にあらず。ですから、何が何でも反対するわけではないけれども、効果が薄いと言わざるを得ない。

 では、なぜこうなっているのか。これは、私自身、これまでの予算委員会でも何回も指摘してきたことでありますけれども、残念ながら、この三十年間、他の先進諸国が緩やかな物価上昇を伴う経済成長、それを最も後押ししているのは賃金上昇でありますけれども、それを続けながら経済成長を続けてきた。にもかかわらず、我が国だけは三十年間横ばい、停滞。この結果が、所得の高い人が残念ながらほとんどいない、この状況をつくり出しているわけであります。

 ということになれば、さっき言いましたN分のN乗というのは、そもそも納税額が多くて税率が高い人たちには効果があるけれども、残念ながら、今の我が国の実態を見た場合には、納税額も少ない、税率も少ない、特に年功序列賃金がまだ残っている我が国においては、若者、子育て世代というのはそれだけ所得が低いわけです。その低い所得の若者たちに有効な支援策をやるとすれば、給付つき税額控除、その中でも給付を中心にやらざるを得ない、これが我が国の実態であります。

 そこで、これは私の個人的な提案、これは実は私の広報誌の一部の抜粋であります。断っておきますけれども、これは国会図書館に納本されていますので、一応、公の資料として使わせてもらっていますが、ここで見ていただけるように、最初に、五%の消費税を新たにお願いしてでも、日本の社会に活力を取り戻す、そして最善の経済成長戦略にもなるということで、大胆な子育て支援ということで、第一子三万円、第二子五万円、第三子十万円、そして第四子以降十五万円、これを毎月、高校卒業まで支給するという具体案であります。

 私は、これを大胆な子育て支援と思って、大胆にやるぞと思っていたら、言葉の上では総理の主張に負けました。大胆の上を行く異次元、異次元の子育て支援ということを出してこられました。

 それで、試算をいたしました。A案と書いてありますのは、私の元々のオリジナルの案。この三万、五万、十万、十五万を、高校卒業まで平均すると十八・五年間、やりますと、十九年間で百九十一兆円必要になります。それを各年度に割りますと十・一兆円、現在の既存児童手当公的負担分を引きますと、一・八兆円になるので、必要予算額は毎年八・三兆円、消費税に換算しますと四・一五になります。

 B案は、今、一人子供、二人子供、三人子供が多い中で、そこに厚くした案にしています。必要額は九・七兆円の、消費税四・八五分になります。

 子供三人で見ますと、A案でも十八万円、B案でも毎月二十万円入ってくる、こういう案なんです。

 これは大胆ですけれども、私は、ここまで支援することによって、今言った支援すると同時に経済成長も、個人消費がGDPの六割を占めていますから、経済成長に資する、このように思っていまして、ただ、ここまでやるのは大胆過ぎるのではないかという議論が恐らく出てくると思います。

 私の最初の投げかけの最後で申し上げますと、この制度は、実は、今この制度の恩恵を受けていない大人たちがどこまで理解をして支援してくれるかに懸かっています。なぜならば、この制度で支援を受けた子供たち、親御さんたちは、こうやって社会から支援を受けたんだから、次は自分たちが恩返しで次の世代をきちっと支えよう、そして、自分たちを支えてくれた大人の世代、高齢者、これを今度は社会保障をきちっと自分たちが支えることで恩返ししよう、こうなってきます。

 ですから、この制度が定着すると、当たり前のように次の世代そして上の世代を支えようというふうになってきます。ですから、今の大人の世代を我々が説得できれば、増税をお願いしてでも、私は国家を支えるものになっていくと思います。

 この大胆な子育て支援策について、総理の見解、そして、異次元と大胆よりも大きく出た、その総理の見解を伺います。

岸田内閣総理大臣 もう時間が限られているようですが、まず、N分のN乗方式については留意点があるということ、これは従来から私も申し上げているところであります。それから、何といっても賃上げが大事だ、これはおっしゃるとおりでありまして、最優先課題として賃上げを掲げております。そして、今年の春の賃上げ、これは大事ではありますが、これを構造的な賃上げという形で持続可能なものにしていかなければならない、こうした課題であると思います。

 それから、次元の異なる、異次元ということについて申し上げるならば、これまでも予算委員会で様々な議論、この十年間を振り返ってとか、さらには、その前から子供政策についてはいろいろな議論が行われてきました。そして、いろいろな政策課題について、金額面について、内容について議論が行われてきました。

 しかし、今振り返って思うことは、それぞれ、具体的な政策の内容や規模面、もちろんこれも大事なことではありますが、それだけにとどまったのでは成果、結果につながってこなかった。やはり、こうした政策の内容や規模面はもちろんですが、関与が薄いと指摘をされてきた男性や企業や地域社会、こういった方々も是非、我が事として参加してもらえるような、こうした社会の雰囲気をつくっていかなければならない、こうした社会を巻き込んだ政策を進めていかなければ、こういったものをパッケージで示さなければならない、そういった意味で、今までとは次元の違う政策ということで政策を進めていきたいと思っております。

 そして、御指摘の、五%の消費税引上げという御指摘がありました。

 御提案は提案として承るといたしますが、やはり財源より中身だということで、今、この政策の中身を具体化している状況です。政府としては、その内容に応じて、社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、工夫をしながら、社会全体でどうやってそれを支えるのか、これを判断していきたいと考えています。

吉良委員 もう時間がありませんが、総理がおっしゃった社会全体で支えるということは、みんなで子育て頑張れと拍手するのもいいんですけれども、でも、現実問題としては、苦しい家計状況のその子育て家計をやはり大きなお金、現金で支えるということが、社会全体で支えるということじゃないんでしょうか。そして、社会全体が負担するのが消費税です、そこに思い切って切り込まなければ、踏み込まなければ、大胆も異次元もないと思っています。

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから、おまとめください。

吉良委員 最後に、一国の宰相に対して大変恐縮ですけれども、政治家の政治家たるゆえんは、優先順位を明確にする、そして、明確にした優先順位があるならば、そこに思い切って必要な国家資源を投入するということです。そういう意味で、今、子育て支援、子供対策、これはもう圧倒的な優先順位ナンバーワンでありますので、そこに思い切って切り込んでいただきたい、消費税をお願いしてでも切り込んでいただきたいということをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて吉良君の質疑は終了いたしました。

 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組、大阪五区、大石あきこです。

 まず、岸田政権による今国会の予算案は異次元の少子化対策であると。でも、その実、異次元の売国棄民予算である、そのことをはっきりさせ、国民の皆さんにこのままでは駄目だと立ち上がっていただきたいと思い、質疑を行います。

 さて、本日は、岸田総理の棄民政策の中でも、学校の先生の予算をまた減らそうとしている問題についてです。

 先日、二月六日、予算委員会で永岡文科大臣に聞いたんですよ。教育現場で異次元の欠員が出ているんだ、それで、体育の先生が英語を教えている、そういう実態を知っていますかと聞いたんですよ。そうしたら、文科大臣は知らなかったんですよ。

 岸田総理は御存じですか。イエスかノーかでお答えください。

岸田内閣総理大臣 具体的な例について、伺っておりません。

大石委員 知らないでしょうね。

 今、教育現場では欠員だらけになっていて、パネル二のように、文科省も認識はしているんです。

 文科省の調査で、二〇二一年四月時点で配置予定だった教員のうち、二千五百五十八人が欠員で確保できなかった。実態は更にひどい数字なんですね。というのも、先ほど言ったように、体育の先生が英語を教えて欠員の穴埋めをしたらその欠員はカウントされないというルールなので、実際はこの二千五百五十八よりも欠員が多いんですけれども、この欠員を場当たり的にしのぐために、免許のない人に臨時免許を与え、そして又は、欠員のまま、生徒が学校内で待機生徒になっています。教員は授業に追われ、過労死レベルの残業、でも残業代は出ない、悪法、給特法の下で働かされている。とにかく、とんでもないことになっているんですね。

 それで、この危機的な状況のときに岸田総理は何をしてくれたかなんですが、パネル三を見てください。政府の予算案、先ほど、二〇二一年四月に二千五百人を超える欠員の話をしていました。その翌年度、二〇二二年四月時点で三千三百二人の教員予算を削減しています。そして、今回の予算案、この四月から更に二千四百七十四人の教員予算を削減しようとしています。おかしくないですか。欠員が出ているのに、過労死レベルの残業実態なのに、教員予算を削減。

 防衛費は、四兆円増額しろとアメリカや資本家に言われたら、承知しましたとすぐ増額をやろうとして、でも、国内の学校現場は放置、切捨てなんですか。こんなの、棄民ですよね。前の国会でも総理に言いました。資本家の犬になったら駄目だと。あなたの飼い主は国民じゃないですかと。

 岸田総理、今回の予算案、我ながらむちゃくちゃな予算案だったな、政府予算案を変えようと思いましたか。イエスかノーかでお答えください。

岸田内閣総理大臣 教師は、学校教育の充実発展に欠かせない存在であり、必要な教育予算と教職員定数の確保など……(大石委員「イエスかノーかでお答えいただけますか。教育予算を増やすかどうかです」と呼ぶ)

根本委員長 お座りください。

岸田内閣総理大臣 教育環境の改善と教師の計画的な育成、採用は重要であると認識をしております。

 教職員定数は、法律に基づき、主に児童生徒数や学級数に応じて算定される仕組みであり、令和五年度は、前年度よりも少子化により児童生徒数が減少しているために、子供の数に連動して教職員定数が減少しております。

 しかし、その上で、この予算案においては……(大石委員「質問時間を潰さないでください」と呼ぶ)

根本委員長 今、答弁中ですから、お座りください。

岸田内閣総理大臣 三十五人学級の計画的な整備、高学年教科担任制の推進等、必要な予算、これは計上しております。教職員の定数も計画的に改善をしております。

 環境整備に国としてもしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

大石委員 必要な予算をつけていたら、なぜ欠員が出るんですか。だから、認識レベル、危機感から違っているんです。駄目なんです。予算を変えて、教員を一・五倍ぐらいにしないといけない。

 パネルの四、教員を一・五倍にするために必要な予算を積算しました。約二兆一千四百億円です。小泉構造改革以来、地方は犠牲になり続けているのですから、これらは本来、国がお金を出すべきです。合計二兆円程度、できるじゃないですか。国には通貨発行権がある。このまま防衛費を四兆円増額して、教員定数は予算削減する。それならもう、岸田総理、一刻も早く辞めてください。

 教員が欠員している最大の原因は、この国が教員を計画的に育成し採用するという発想そして仕組みをなくしたこと。その背景にあるのが、小泉構造改革によってもたらされた教育の市場原理の持込み。それがどれだけ地方を破壊したか。

 例えば大阪。維新の教育行政は教育への市場原理の持込みそのものです。二〇一八年、当時大阪市長だった吉村現知事は、子供の学力テストの結果が低かったら、教員の賃下げそして学校の補助金を減らすことまで企てました。逆だ、逆。何も分かっていないんです。当時、現場や保護者の反対も強く、地方公務員法に抵触するとして吉村氏は制度導入を断念しましたが、似たような制度を入れています。そして、地域の大切な学校をすごい勢いで廃校に追い込んでいます。

 これは最たる例ですが、全国で、多かれ少なかれ、こんなことをやった結果が、取り返しのつかない異次元の欠員、教員の命の危機、地方の衰退。国を守ると言うなら、今すぐ国民にお金を使ってください。

 大体、岸田総理は国民を守るためのお金は使っていない。アメリカと資本家のために使っているんですね。防衛、防衛と言っていますけれども、国民を守る、やっていない。さっきの赤嶺さんの質疑でもそうでした。今回の予算委員会でも明らかにされています。敵基地攻撃能力は、日本に危害を加えていない国を日本が先制攻撃して、それへの反撃がなされる、新たに日本に危害を加えられる仕組みだと。

 国民を守らない政権は要りません。岸田総理、今すぐ辞めていただけますか。

岸田内閣総理大臣 教職員の定数について、市場原理に基づいてというお話がありましたが、先ほど申し上げましたが、教職員の定数、これは計画的に改善を図るという取組を進めております。三十五人学級の計画的な整備、高学年教科担任制の推進、こうした取組において必要な予算、これは計上しております。

 是非、こうした児童数の状況もしっかり踏まえながら、教師をめぐる環境整備、しっかりと充実に取り組んでいきたいと考えています。

大石委員 実際に欠員が出ているのにこの状況ということは分かりました。

 引き続き、真に国民を守るための積極財政を訴えていきます。

 終わります。

根本委員長 これにて大石君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明九日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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