衆議院

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第10号 平成30年3月5日(月曜日)

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平成三十年三月五日(月曜日)

    午後二時十七分開議

 出席委員

   委員長 古屋 圭司君

   理事 石田 真敏君 理事 岸  信夫君

   理事 御法川信英君 理事 大塚 高司君

   理事 松本 洋平君 理事 熊田 裕通君

   理事 手塚 仁雄君 理事 牧  義夫君

   理事 伊藤  渉君

      大隈 和英君    古賀  篤君

      田野瀬太道君    根本 幸典君

      百武 公親君    藤丸  敏君

      本田 太郎君    牧島かれん君

      八木 哲也君    海江田万里君

      中谷 一馬君    山内 康一君

      伊藤 俊輔君    津村 啓介君

      福田 昭夫君    宮本  徹君

      遠藤  敬君

    …………………………………

   議長           大島 理森君

   副議長          赤松 広隆君

   事務総長         向大野新治君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(早稲田大学政治経済学術院教授))         若田部昌澄君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(日本銀行理事))     雨宮 正佳君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月五日

 辞任         補欠選任

  根本 幸典君     八木 哲也君

  山内 康一君     海江田万里君

  もとむら賢太郎君   津村 啓介君

  塩川 鉄也君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     根本 幸典君

  海江田万里君     山内 康一君

  津村 啓介君     もとむら賢太郎君

  宮本  徹君     塩川 鉄也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本銀行副総裁任命につき同意を求めるの件

 次回の本会議等に関する件


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     ――――◇―――――

古屋委員長 これより会議を開きます。

 まず、日本銀行副総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る二月十六日の理事会において、西村内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行副総裁に早稲田大学政治経済学術院教授若田部昌澄君、日本銀行理事雨宮正佳君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会の申合せに基づき、日本銀行副総裁の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として日本銀行副総裁候補者若田部昌澄君、日本銀行副総裁候補者雨宮正佳君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、若田部参考人、雨宮参考人の順で所信をお述べいただき、その後、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、若田部参考人、お願いいたします。

若田部参考人 早稲田大学の若田部昌澄でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、所信を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、早稲田大学とカナダ・トロント大学の両大学院で経済学を学んだ後、一九九八年から現在まで、早稲田大学政治経済学部及び大学院経済学研究科で教鞭をとり、研究と学生の指導に当たってまいりました。

 私の専攻は経済学史ですが、主としてマクロ経済学の歴史、特に、一九三〇年代の大恐慌、一九七〇年代の大インフレ、一九九〇年代からの日本の大停滞、二〇〇七、八年からの世界的金融経済危機など、過去と現在の経済危機とそれに対するマクロ経済政策対応について研究を進めてまいりました。二〇〇三年ごろからは、現日銀副総裁岩田規久男先生やほかの研究仲間とともに、歴史的研究をもとに、日本経済、殊にデフレと金融政策についても研究を積み重ねてまいりました。

 このたび日本銀行の副総裁候補に挙がりましたが、国会の同意が得られましたならば、これまでの研究を金融政策に生かし、もうお一方の副総裁とともに総裁をお支えし、全力で職務を全うしたいと考えております。

 この所信表明では、現状についての理解と今後の課題について述べさせていただきます。

 二〇一三年から、日銀は、デフレ脱却を明確化すべく、物価安定の目標二%を掲げ、積極的な金融緩和政策を推進してまいりました。その後五年間で、失業率は下がり、有効求人倍率は上がり、就業者数はふえております。近年は男女ともに正規雇用の増加につながっております。こうした良好な雇用状況の結果、自殺率が下がり、貧困率も減少に転じてきました。また、実質賃金につきましては上下動を繰り返しておりますが、総雇用者報酬は、名目でも実質でも増加しております。今後、積極的な金融緩和政策を持続することで、実質賃金も上昇していくことが期待されます。

 物価につきましては、二〇一四年三月には消費者物価指数が前年同月比で一・六%近くまで上昇したものの、その後、二〇一六年九月にはマイナス〇・五%まで下落しました。ただ、近年、物価については持ち直しが続いており、二〇一八年一月には一%程度にまで回復しております。継続的に物価が下がるのをデフレとする意味では、現在は、デフレではない状況に達したと言えるかと思います。しかしながら、物価安定の目標である二%には到達しておらず、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数では〇・四%の上昇にとどまるなど、デフレからの完全脱却が依然として課題として残っております。

 次に、今後の課題について三点述べさせていただきます。

 第一に、何よりも大事なのは、デフレからの完全脱却を目指すというこれまでの五年間の金融政策の基本的なスタンス、レジームを継続することです。これまで得られた成果を改善し、日本経済を再びデフレに戻さないためにも、デフレからの完全脱却が必要であると考えます。

 第二に、二%の物価安定目標は依然として有効であり、有用であると考えます。

 金融政策の目的は、物価上昇率を中期的な目標としながら、最終的には国民経済の健全な発展に資することにあります。そこで重要なのが、雇用であります。経済学では、インフレを加速しない失業率という考えがございます。この失業率は、働きたい人がほぼ職を得られる状態に対応しておりますが、日本経済のそれは恐らく二%台半ばから前半であり、物価目標二%を達成することで、そこまでは失業率を下げることができると考えられます。

 第三に、リスクへの適切な目配りです。

 経済危機の歴史は、さまざまなリスクへの警戒が必要であることを教えてくれます。例えば、大恐慌時代の一九三七年、米国の政府と連邦準備制度理事会は、デフレから脱却したと思い、マクロ経済政策を引き締めましたが、その後、米国経済はデフレに逆戻りしてしまい、再び政策の再緩和に転じました。

 現在、世界経済の好調に支えられて、日本経済には追い風が吹いていると言われます。しかしながら、最近の状況を踏まえますと、この好機はどこまで続くか、慎重に検討する必要があると考えます。特に、時期尚早に政策を変更してデフレに逆戻りするリスクは避けなくてはなりません。デフレからの完全脱却の前にいわゆる出口政策を行うことは避けなければなりません。

 デフレからの完全脱却を達成するために、日銀はあらゆる手段を駆使すべきではありますが、政府と日銀が協力することも欠かせません。デフレ脱却と日本経済再生という原点に立ち戻り、金融政策、財政政策、成長政策、そして所得再分配政策のバランスのとれた連携が必要であると考えます。

 今は、日本経済のデフレからの完全脱却がかかっている極めて重要な時期です。この時期に日本経済再生のためのお手伝いをできる機会をお与えいただけましたならば、全力で職務に努めたいと考えております。

 ありがとうございました。

古屋委員長 ありがとうございました。

 次に、雨宮参考人、お願いいたします。

雨宮参考人 雨宮でございます。本日は、所信を述べる機会を賜り、光栄に存じます。

 私は、一九七九年に日本銀行に入行して以来、四十年近くにわたり、中央銀行の実務に携わってまいりました。近年では、考査局参事役、政策委員会室組織運営担当審議役、企画局長などを務め、金融政策運営、金融システム問題対応のほか、日本銀行の業務・組織運営など、多岐にわたる分野で経験を積み重ねてまいりました。黒田総裁就任以降は、理事として、当初の量的・質的金融緩和の導入から現在の長短金利操作つき量的・質的金融緩和に至るまで、金融政策の企画立案やその実践を担当してきております。

 今般、副総裁としてお認めいただきましたならば、これまで日本銀行で得られた経験と知見を生かして、職員の力を束ねつつ、もうお一方の副総裁と力を合わせ、全力で総裁を支えてまいる所存です。また、政策委員会の一員として、しっかりと議論に貢献してまいりたいと考えております。

 今後の課題として、まず第一に、金融政策運営から申し上げます。

 日本経済は、一九九〇年代後半以降、約二十年近くデフレに苦しんできました。日本銀行は、この間、ゼロ金利政策、量的緩和、包括緩和と、世界でも最先端の新しい政策を開拓しつつ、デフレ脱却のために努力してまいりました。そして、五年前に量的・質的金融緩和を導入した後、経済・物価情勢は大きく改善しました。企業収益が過去最高水準まで増加しているほか、家計の雇用・賃金情勢も好転しております。物価面でも、もはや物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっております。物価安定の目標である二%は達成できておりませんが、日本経済は、その実現に向けて着実に歩みを進めております。

 私は、日本銀行におけるキャリアの約半分、二十年近くにわたってデフレとの戦いの最前線に身を置いてまいりました。そうした者として、積年の課題である物価の安定という使命の達成のために、その総仕上げのため、全力を尽くす覚悟であります。

 もちろん、歴史的にも、また世界的にも類例を見ない大規模な政策を講じておりますので、その効果や副作用の評価、あるいは将来の出口戦略のあり方など、検討課題は多岐にわたります。これまで築き上げた中央銀行員としての実務知識もフルに生かしつつ、適切な政策運営に努めていく所存でございます。

 第二に、金融システム面での課題について申し述べます。

 我が国の金融システムは安定性を維持していますが、金融機関を取り巻く経営環境は、人口や企業数の減少、産業構造の変化、長引く低金利環境など、厳しさを増しています。これに対して、金融機関では、多面的なビジネス展開やITを活用した業務見直しなど、幅広い経営改革を進める動きが広がっています。日本銀行としても、こうした金融機関の前向きな動きを的確に把握し、サポートしてまいります。

 また、日本銀行は、金融システムの安定を図るため、最後の貸し手機能を有しており、近年、金融取引の市場化やグローバル化が進展する中で、金融市場への流動性供給や外貨の流動性供給などの新たな機能を含め、その役割は一層重要性を増しております。このほか、金融分野におけるIT技術の応用、いわゆるフィンテックの急速な発展に対応していくことも重要な課題であります。

 このように、金融を取り巻く環境が大きく変革していく中においても、日本銀行が持っている機能や能力を十分に発揮することで、金融システムの安定を図り、金融仲介機能のさらなる向上に貢献してまいる所存です。

 第三に、業務・組織運営について申し述べます。

 物価の安定と金融システムの安定という日本銀行の使命達成の基盤は、銀行券の発行と流通、決済システムの運営、預金、貸出し、債券取引など、中央銀行としての日々の業務遂行にあります。日本銀行の本支店、事務所約五千人の職員は、高い士気を持ってそうした業務を日々遂行するとともに、災害等の緊急時にも我が国の金融インフラをしっかり守るという強い決意を持って臨んでおります。こうした職員一人一人の持てる力を引き出し、日本銀行の組織力をフルに発揮させていくことが、長年にわたり日本銀行に奉職してきた私に課せられた重要な責務というふうに考えております。

 以上、所信を申し述べました。

 副総裁として日本経済のために貢献する機会をいただくことになれば、全身全霊をかけて職務に取り組んでいく所存でございます。よろしくお願い申し上げます。

古屋委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 雨宮参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。

 理事会の申合せに基づき、報道関係の方々は御退席をお願いいたします。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより若田部参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 古賀篤君。

古賀委員 自由民主党の古賀篤でございます。

 早速質疑に入らせていただきます。

 若田部先生、今、日本銀行の副総裁候補者ということでお越しいただいておりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今、参考人の方から三点、所信の方のお話を伺いましたけれども、その中で、岩田規久男副総裁のお名前も出てまいりました。

 参考人は、いわゆるリフレ派と呼ばれておられまして、量的緩和には積極的というふうに言われているところであります。そして、今の三つのポイントと重なる部分もありますけれども、昨年末の新聞ですとか雑誌のインタビューにおきまして、若田部参考人から、二〇一四年の消費増税について、黒田総裁は増税支持で前のめりになった、状況判断のミスではないか、こういったことや、二〇一九年十月に消費増税が実施される公算が大きく、世界経済の好調が続き、よほどの好条件に恵まれない限り二%の物価目標の達成は難しい、もう一押し、二押しの追加緩和が必要ですとか、そして、先ほどのお話にも出てまいりましたように、財政政策と金融政策の融合ですとか連携、こういうものも必要だ、こういった趣旨の御発言をされたと承知をしております。

 今後、二〇一九年の二%の達成に向けてどういった金融政策が必要かということは、先ほどの三つのポイントでも出てまいりましたけれども、改めまして、これまでの日銀の金融政策の手法にも触れていただければと思いますが、これまでの継続でいいのか、そういったことについて少し詳しくお話をいただければと思います。

若田部参考人 まずは、デフレから完全脱却するというコミットメント、これの再確認が必要ではないかと思います。

 これは、政府と日銀の共同声明というのがまず出発点になっていたわけでございますが、これを堅持する、あるいは、場合によっては改善するということが必要であると思います。

 現状の金融政策につきましては、日銀は非常に多彩な政策を繰り出しているとは思います。量的な緩和、質的な緩和、そして、長短金利、両方の金利に影響を与えるような政策ということで、果敢に金融政策をやっていると思います。

 ただ、これが二%を達成するのにどれくらい必要なのかということに関しましては、別途議論が必要だと思います。現状では、私は、その是非、あるいは、どれぐらい達成できるのかどうかということについてのコメントは差し控えさせていただきます。これは金融政策決定会合できちんと議論すべきかと思います。

 しかしながら、必要であるならば、つまり、現在の政策によってやはり二%の達成は難しいということであるならば、これは黒田総裁もたびたび申し上げているように、やはり追加の緩和策ということを考えざるを得ないのではないかというふうに考えております。

古賀委員 次の点についてお聞きします。

 先週の金曜日、この議院運営委員会の場におきまして、黒田総裁に質疑が行われたわけであります。その際に、いわゆる出口戦略について、現時点では二〇一九年度ごろには二%程度に達すると見ているので、出口をそのころに検討し、議論していることは間違いない、こういった御答弁をされました。

 一方、先ほどの、完全なデフレ脱却あるいはリスクへの目配りというお話もあって、完全脱却前の出口戦略はというお話もあったわけですが、また、昨年の、新聞で恐縮ですが、インタビューにおきましても、物価上昇率が二%を超える時期が二年くらい続かないと出口の話にはならない、こういった考えも示されているところでございます。

 参考人が現在、出口戦略についてどうお考えになっているのか、時期的なことも申し上げましたが、もう少し詳しくお聞かせいただければありがたく思います。

若田部参考人 黒田総裁の発言につきましては、展望リポートが、その前提が満たされればという前提句がついていたというふうに理解しております。その場合にはということでの条件節つきの御発言であったというふうに理解しております。

 私自身の考えでございますけれども、いわゆる出口について、やはり適切なイメージを共有する必要があるというふうに考えております。日銀が目指しているのは、二%の物価安定の目標でございます。そうしますと、二%のインフレ率を安定的に達成しているという状況がないといけないと思いますので、そのために、日銀の場合ですと、オーバーシュート型コミットメントと申しまして、二%を超えても多少の許容をするというところまで申し上げているわけです。

 ですので、二%達成以前に出口戦略を発動することはあり得ないというふうに思いますし、また、二%に達したからといって、瞬間風速で、例えば一月だけ達したからといってすぐに出口をやるということもあり得ないというふうに思います。

 この二%のインフレ率が安定的にというのはどれぐらいの期間なのかということはいろいろと議論があるところであると思いますが、私としては、ある程度の期間が継続しないと、これはやはり安定的に推移しているというふうには言えないのではないかというふうに考えております。

古賀委員 最後にもう一点です。

 今後、副総裁になられた際には、黒田総裁を二人の副総裁で支えるということになりますが、今後期待される役割、果たすべき仕事についての御認識、決意についてお聞かせいただきたいと思います。

若田部参考人 私の場合は、学会において、学会活動を通じて経済理論、経済学史についての知見を深めてまいりました。それと、政策提言活動などによって、現状の経済政策、金融政策について発言を申してまいりました。そのような活動が、総裁を補佐するという形で役に立つのではないかというふうに考えております。

古賀委員 ありがとうございました。終わらせていただきます。

古屋委員長 次に、海江田万里君。

海江田委員 立憲民主党の海江田万里と申します。どうぞよろしくお願いします。

 今、若田部先生のお話を聞いておりまして、若田部先生、五年前にも、ひょっとしたらというようなお話があったやに聞いているんですが、五年前のお話でしたら、元気がよくて、これはなかなか頼もしいといいますか、なるほどということでございましたけれども、あれからと申しますか、現在の黒田総裁になりまして五年たって、そして今お話があった所信、ちょっと私は、おいおい、平気かなという気がするわけであります。

 リスクへの警戒、三番目の、お話ありました。私は、普通、リスクといえば、副作用による、国債を大量に買い込んでいることに始まるリスク、あるいは、マイナス金利はもう三年目ですから、中小の金融機関がかなり体力を失っているとか、そういうことに対する備えだろうと考えるのが一般的でありますが、先生は、景気が、確かにデフレではなくなってきているけれども、ここで早急に、デフレ脱却で、金融緩和あるいは財政を緩めてしまうということがあると、これがリスクだというふうにおっしゃいましたけれども、一般の方が考えておるのは、あるいは私が考えておりますのは、前者の方のリスク、副作用に対するリスクでありますので、それをどのようにお考えか、お教えいただきたいと思います。

若田部参考人 一般的に申し上げまして、世上言われている金融政策、緩和政策のリスクというものが顕在化する可能性がないとは言い切れないと思います。ただ、現状で行っている政策というものの副作用と言われているものというのは、まだそれが顕在化するには至っていないし、私自身は、それよりもメリットの方がはるかに上回っているというふうに考えております。

 国債の買入れというものによって何か、長期金利の高騰であるとかそういうことが起きたのかというと、そういうことはございませんし、ハイパーインフレの懸念なども、これは全く見られない状況でございます。

 マイナス金利につきましては、実は、マイナス金利が適用されている当座預金の部分というのは、金融機関におきましては非常に少額でございまして、例えば、地域の銀行、地方銀行、第二地方銀行というあたりでマイナス金利が適用されている部分は、いわゆる付利が適用されている部分よりも非常に小さくなっております。ですので、日銀が現状で付利を適用していて、当座預金に対して〇・一%の利子をつけている。それに対して、ごく一部分だけ、マイナス金利なので〇・一%マイナスでとっているということは、差引きで見ると実は非常にプラスになっているのが現状でして、いわゆるマイナス金利のリスクというものも余り顕在化していないのではないかというふうに私は考えております。

海江田委員 日銀の機能の中で金融システム、先ほどお話がありましたけれども、これは大切にしなければいけないと思うわけでありまして、それが今、金融庁もいろいろな形で健全化と申しますか施策は講じているところでありますが、やはり日銀もそれに対して協力をしなければいけないと私は思うわけであります。

 今、若田部さんは当座預金のところのお話をしましたけれども、やはり実際にどれだけ体力を奪っているかということ、特に長期国債なんかを買い入れる場合のコストの問題も含めまして、これは少し現場の声を聞いていただければいいかと思います。今おっしゃったお話と現場の声、これはかなり違っている、乖離があるということですから、副総裁になられたら、まず現場の声をよく聞いてみる、市場との対話ということは大事な要素でありますので。

 もちろん、その意味では、先生は学者としての経験もおありですし、学説もあろうかと思いますが、ただ、余り学説に拘泥しまして現実を見なくなると、これは日本の金融システム、あるいは日本銀行というものを間違った方向に持っていってしまうのではないだろうかというふうに思いますので、どうぞ好漢自重をお願い申し上げます。

 以上です。

古屋委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 津村啓介と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 幾つか伺いたいと思いますけれども、先ほど古賀さんから、副総裁お二人ということでどういう役割をという御質問があったと思いますけれども、立ち位置の部分で、学者としての知見をということを触れていらっしゃいましたが、政策の中身のことで伺いたいんです。

 黒田さん、そしてもう一人の副総裁候補でいらっしゃる雨宮さんは、お二人とも、今も日銀でお勤めですから、そういう意味では継続的なことをされると思うんですけれども、若田部さんが今回新しく入ることで、金融政策決定会合の議論というのはどういうところで新しい議論が喚起されていくんでしょうか。

若田部参考人 これは私、金融政策決定会合の一員として議論に参加するわけでございますので、具体的にどのようなことというのは、この場では差し控えさせていただきます。

 ただ、一般論として申し上げられるのは、やはり学者としての知見というのがございますので、その知見を生かして、議論をできるだけ活発に行いたいというふうに思います。

 基本的には、二%の物価安定の目標というのを達成するためには何が必要なのかということについて、政策委員の人々とよく議論をしたいというふうに考えております。

津村委員 若田部さん、ちょっと待ってください。これから金融政策決定会合の新しいメンバーとして若田部さんがふさわしいかどうかを今議論するのに、金融政策決定会合で何を話すかは言えないというのはおかしいじゃないですか。どういうことを議論を喚起されていくのか、教えてください。

若田部参考人 所信表明でも申し上げましたし、あと、質疑の中でも多少触れましたけれども、やはり現状において、二%の物価安定の目標というのをきちんと実行するんだということの再確認、そして、現状の政策がその二%に対して十分なのかどうかということの適切な評価、そして、必要であるならば追加緩和を提案する、こういうことになろうかと思います。

津村委員 二つ伺いたいと思います。

 場合によっては共同声明の改善も必要かもしれないということを言及されました。そしてもう一つは、必要なら追加緩和を提案することもあるかもしれないとおっしゃいました。

 それぞれ、どういう内容の、例えば、追加緩和といっても、今までもいろいろなことをやっているわけで、簡単なことじゃありませんが、若田部さんは一時期、永久国債のこととかも触れられていますけれども、共同声明を改善する必要があるとすればどういう点か。追加緩和策としてはどういうものが考えられるか。その時々によって変わるんでしょうけれども、オプションとしてどういうものを引き出しに持っておられるかということを伺いたいと思います。

若田部参考人 まず、共同声明につきましては、これは政府と日銀の間で結ばれたものですので、日銀サイドだけで決まるものではないと思います。その意味では、日銀の中でできることを私としてはやってまいりたいというふうに考えております。

 二番目の具体的な政策ということに関して言うならば、現状において、日銀はかなりいろいろなメニューをもう行使しているのは事実でございます。ですので、そのメニューのさまざまな改善あるいは強化ということは可能なのかというのが、まずは一番大事な出発点になろうかと存じます。

 それから、あと、それで足りないのであるならば、さまざまなことが考えられますが、しかし、財政政策にかかわるようなことは政府、国会でお決めになることですので、日銀副総裁候補者としては発言を控えさせていただきたいと思います。

津村委員 次に、物価目標についてですけれども、一時期、若田部さんは、二%じゃなくて三%、場合によっては四%ということまで言及されたことがあると思います。そこについて今どうお考えかということが一つ。

 そしてもう一つは、ちょうど五年前のこの席で岩田当時副総裁候補が、二年で二%ということを、時間を区切って言及をされた。黒田さんも、二年ということはおっしゃっていました。時間を区切ることにも非常に大きな意味があると思いますので、先ほどの御質問には、二%を超えてもしばらくはというような少しぼわっとしたお答えだったんですけれども、これから何年程度で二%目標を達成するというそういう時間軸をお持ちですか。

若田部参考人 確かに、私が経済学者としての立場で目標値の引上げ論というのを唱えていたというのは、これは事実でございます。ただ、日銀の副総裁候補者としましては、やはり政府と日銀の共同声明の中で掲げられている物価安定の目標二%をいかに達成するかということが大事になってくるかと思います。

 ただ、一般論として申し上げるならば、物価目標の引上げあるいは物価目標の変更につきましては、諸外国の中央銀行で活発な議論がなされておりますので、そういうことはやはり参考にさせていただきたいというふうに思います。

 それと、期限につきましては、これはコミットメントを強化する手段として何が適切なのかという観点から検討はすべきかとは存じますが、しかし、例えば二%を二年以内ということであるならば、さまざまな、二%を達成するときに金融政策以外でやってくるいろいろな要因、世界経済の動向であるとか、あるいは原油価格の動向であるとか、さまざまな要因というのはございますので、そういったものを加味した上で二%というのをいかに達成するかというときに、期限を設定するのが適切かどうかというのは、コメントを差し控えさせていただきたいと思います。

津村委員 最後に二つ聞いて終わります。

 一つは、来年の消費税増税について、一部のいわゆるリフレ派の方々は、これはもう逆向きだ、今は増税するべきじゃないというお考えの方もいらっしゃると思いますが、若田部さんのお立場を確認したいと思います。

 そしてもう一つ、経済学史が御専門でございますけれども、インフレファイターとしての中央銀行が中央銀行の独立性というものを世界的に確立してきた歴史がありますが、今、デフレとの戦いという中で、中央銀行の独立性の意味合いというものは変わってきているのかどうか、お考えを聞かせてください。

若田部参考人 まず、消費税増税につきまして、二〇一四年四月に実施された消費税増税が、日銀のインフレ目標、物価安定の目標二%の達成を妨げてきたのではないかということは、私はメディアなどで発言いたしました。これは事実でございまして、経済学者としての立場でそのようなことを発言させていただきました。

 これは、ただ、二〇一六年九月に日銀が総括的検証で行ったことの一つに、消費税増税による消費需要の落ち込みというのは挙げられておりますので、その意味におきましては、日銀と認識は共通しているというふうに考えます。

 ただ、これは繰り返しになりますが、財政政策はあくまで政府、国会において決めるものでございますので、日銀副総裁の立場からは、財政政策についてのコメントはいたしません。

 それと、もう一つ、いわゆる中央銀行の独立性の問題、これはまさにデフレあるいはデフレになるかという危険性の中で、諸外国でかなり議論されてくるところであります。

 ただ、そこでも、インフレ目標がある世界におきましては、目標については政府が決める、あるいは政府と中央銀行が共同で決める、手段に関しましては、これは中央銀行が自主性を持つべきだというような議論が、まだ合意としてはあると思います。これは、やはり一九七〇年代の大インフレとか、そういった経験を生かしての教訓が生かされているというふうに考えます。

 さまざまな議論はございますが、中央銀行の独立性ということの意味としては、手段の独立性があるというのが、まずは諸外国での知見かと思います。

津村委員 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 きょうは、若田部日銀副総裁候補、所信をお聞かせいただきまして、先週、現黒田総裁、次期黒田総裁候補にも私は同じ質問をさせていただいたんですけれども、政府、日銀が協力して、我が国の経済をもう一度、賃金の上昇を伴う好循環にどう引き上げていくのか、これは極めて困難な取組であり、歴史的にも経験したことのない、そういうことだと思っております。

 その中で、先生がこれまで研究をされてきたさまざまな歴史的な動きも含めて、ぜひともお力を発揮していただきたいという思いで、まず同じ質問をさせていただきます。

 金融緩和、二%の物価安定目標を達成するためにはさらなる緩和が必要という判断もあろうと思います。こうした取組が最終的に賃金の上昇につながって好循環をしなければ持続的なものにはなりませんので、これは日銀の副総裁候補という立場ももちろん、政府もさまざまな財政政策を打っていくことになりますので、そういうものも含めて、学術界の代表として御見識があれば、ぜひお聞きをしたいと思います。

若田部参考人 御指摘のように、やはり物価と賃金の関係というのは極めて重要でございます。そして、今なぜ物価がなかなか上がりにくいのかというその疑問の背景には、なぜ賃金がなかなか上がりにくいのかということがございます。ですので、いかに賃金を上げていくのかということが重要になるかと思います。

 ここに関しましては、現状でいろいろと研究がなされておりますが、やはりデフレ不況のときに賃金をなかなか下げられないという、まあ名目賃金の硬直性という言い方をしますが、賃金をなかなか下げられなかった経営者、企業というのが、いざインフレの環境になっても、今度は賃金を上げるという方向には行かない。それは、またひどいときが起きたときに、また雇用を守るために苦労しなければいけないのかというようなことを考えているというような説などなどが有力にございます。

 ただ、私が考えるところでは、これはやはりマクロ経済政策、日銀の場合は金融政策でございますが、日銀が、物価安定の目標二%を達するということで、粘り強く果敢に金融緩和をする中で全体の環境が温まってくる、そうすると、企業も賃上げをするような環境が整ってくるのではないかというふうに思います。

 それ以上何をすべきかということは、これは政府、国会においていろいろと議論していただきたいと私も考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 私がまさに政治家として日ごろ現場において感じていることは、先ほど若田部候補がおっしゃったとおり、このデフレの期間というのは大変長い。もうかれこれ二十年になります。そうすると、生まれてこの方デフレじゃないというのはどういう状態かということを全く知らない子供たちが既に社会に出始めています。

 私の子供もその一人で、話していると、我々はまだバブル経済のときとかを知っているものですから、景気がよくなるというのはどういうことか肌でわかるんですが、そういうのを知らない子供たちが既に社会に出てきているということを考えますと、これを賃上げを伴う好循環に持っていくのは相当粘り強い取組が必要だなというふうに直観をしております。

 そうすると、次に気になるのは、この金融緩和の政策の持続性がどの程度あるものなのかというのが気になってくるわけです。粘り強く私は取り組まなきゃいけないと思っておりますので、その持続性について、何か御見解があればお聞きをしたいと思います。

若田部参考人 おっしゃるように、デフレマインドがまだ非常に根強く残っているということについては、私も同感でございます。

 私も学生といろいろと話す機会がございますが、やはり景気がいいという状況はよくわからないという学生の声を聞くと、非常にこの失われた二十年と呼ばれるものの爪跡が深いのだということを実感させられます。

 金融政策の持続性ということでございますけれども、これは、例えば長期国債だけをとってみましても、現状で日銀は約四割程度を保有しているわけですけれども、考え方によっては、六割まだ残っているという考え方もできますし、いわゆる資産というものは、これはまた実に非常に多様なものがございます。そして、最近イールドカーブコントロールなどでやっている長期金利のある種のターゲットみたいなものというのは、そのことによって持続的に行っていくという利点もあるかと思います。

 いずれにせよ、これは経済学者の立場から申し上げますと、金融政策を行うことには限界がないわけでございます。昔の金本位制にあったような時代とは違いまして、基本的に金融政策には限界がないわけでして、だから、むしろ、例えばインフレになるとかということを懸念して物価目標を置いているような状況でございますので、私としましては、金融政策に持続性、何が一番持続的なのかということはよくよく考えないといけないと思いますが、持続性ということには問題はないというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 これで質問を終わりますけれども、いずれにしても、本当にこれまでの先生の御研究がぜひ実際の金融政策に生かされて、非常に苦労している状況を乗り越えていただけるように、またお力を発揮していただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

古屋委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民進党所属、無所属の会の福田昭夫でございます。

 きょうは、若田部先生に、時間の関係で二点ぐらいお伺いしたいと思います。

 まず一つ目は、イールドカーブコントロールで政府は財政規律を失い、銀行は経営を圧迫され、株式市場や債券市場も日銀の買い支えでゆがむなど、金融の不均衡は著しく増している、そんなことが指摘をされております。

 先生の話ですと、デフレから完全に脱却する前に出口戦略はない、こんなことを言われておりますけれども、しかし、もう既に、この金融緩和については、引くのも進むのも地獄だ、出口論はないんじゃないか、こんなことが言われている中で、先生の理論からいうと、しっかり出口戦略までたどり着ける、こういうふうに思われているのか、お伺いしたいと思います。

若田部参考人 このことに関しましては、やはり諸外国が既に量的・質的金融緩和に近いことをやっておりますので、その経験というのが参考になろうかと思います。

 イングランド銀行あるいはヨーロッパの欧州中央銀行、そしてアメリカの連邦準備制度理事会というところが同じような政策を日銀に先駆けてやって、そして今、出口ということをやっております。ですので、まずはそういったところの実証的知見から学ぶということが日銀でもできるというふうに思っております。

福田(昭)委員 先日の黒田総裁候補の発言が、マスコミで大変意見が分かれておりました。ある新聞は、一八年度に出口やらないというふうに大きな見出しでありましたし、ほかのところは、一九年度検討だ、こういうことで、非常にマスコミの評価は大きく分かれておりまして、黒田総裁の発言はどうも自信がなさそうだというのが一般的かなというふうに思っております。

 そこで、二つ目の質問ですけれども、アベノミクスの理論的基礎を提供したのは、それこそリフレ派の代表であります、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのポール・クルーグマンだ、こう言われておりますが、彼が二〇一五年十月二十日付のニューヨーク・タイムズ電子版で、「日本再考」と題して、私の理論は日本では通用しなかった、その最大の理由は、日本の人口減少という構造的要因による需要減を計算に入れていなかったことだという趣旨の告白をしておりますけれども、若田部先生は、こうしたことをどう受けとめておるのか。リフレ派の代表の先生が言われているわけですが、お考えをお聞かせください。

若田部参考人 ポール・クルーグマン教授は、御承知のように、一九九八年に「イッツ・バーック」という論文を書きました。これがいわゆるリフレ派、私はリフレ派という言葉は余り好きではないのですけれども、そのいわゆるリフレ派の理論的基礎であるというふうに言われています。

 二〇一八年の二月、その二十周年ということについて論文を書いております。その中で彼が言っているのは何かというと、アベノミクスはうまくいっているというふうに書いております。その中で、アベノミクスを見なさい、自分のモデルどおりに現実の経済は動いているではないかというふうに言っておりますので、ポール・クルーグマン教授の最新の見解はそういうことではないかというふうに思います。

福田(昭)委員 それじゃ、二〇一五年は間違っていたというわけですね。

 いずれにしても、時間がありませんので、来年の十月の消費税引上げ、安倍総理が決断をいたしておりますけれども、それに対して若田部先生はどんなふうに対応されるおつもりですか。

若田部参考人 消費税増税の是非につきましては、経済学者としての立場でメディアなどでは発言いたしました。それは経済学者としての立場でございまして、日本銀行副総裁候補者といたしましては、財政政策は国会そして政府がお決めになることだというふうに考えております。

福田(昭)委員 もう時間がなくなりましたが、それでは岩田副総裁と全く同じですよ。

 これで質問を終わります。

古屋委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず一点目ですけれども、きょうも、追加の金融緩和策はあり得るんだというお話がありました。過去も、若田部先生のインタビューなどを見ると、長期国債の購入量を九十兆円に上げるのも手だということなども主張されております。ただ、これに果たして効果があるのか、副作用を更に広げるだけじゃないかという懸念を私たちは持っております。

 きょうは、マイナス金利の副作用は顕在化していないんだというお話もありましたけれども、この間、金融政策の副作用として、超低金利で銀行の収益は悪化している。そういう中で、大手銀行もカードローンに走って多重債務者を新たに生むということになっております。とりわけ地域の金融機関の収益は大きく低下して、将来的には経営破綻も懸念される事態になっております。地域の金融機関ももうけ口をどうしようかということで、需要を無視してアパートローンをどんどんどんどん拡大しています。その結果、レオパレスだとか、シェアハウスが今問題になっておりますが、詐欺まがいのサブリース問題も社会問題化するということになっております。

 一方で、貸出しは、金融緩和に比してそう大きく伸びているというわけではありません。ですから、私たちは、これ以上の追加緩和をしても、副作用を更に広げるだけで効果はないんじゃないかと考えておりますが、その点どうでしょう。

若田部参考人 先ほど述べられましたその副作用なるものについての認識があるということは私も承知をしております。

 ただ、低金利というのは、これは、コストと呼ばれるものと同時に、やはりベネフィット、便益もございまして、つまり、ローンの金利が安くなるというふうなことで、債務を抱えている人にとっては、金利の負担が低くなるというようなこともございます。

 銀行収益の悪化というのは、確かに一部地域金融機関においてそのような兆しがないとは言えませんけれども、しかし、日銀の金融システムレポートなど、あるいは金融庁の金融レポートなどを参照いたしますと、基本的には、人口が減少していて、なおかつ、同じようなビジネスモデルでもって多数の地域の金融機関というのがひしめいて貸出し競争をしているというふうなところにかなりの問題があるというふうなことが指摘されております。そこに日銀の金融政策が影響を与えていないとは申し上げませんけれども、しかし、それが地域の金融機関の収益を大幅に悪化させているという状況ではないと思います。

 ちなみに、メガバンクと言われるところは過去最高収益を上げているところもございます。

 それで、追加緩和につきましては、私は、この場では、必要であるならば追加緩和を検討するということを申し上げましたので、追加緩和ありきで議論をしているわけではないということを申し添えさせていただきたいと思います。

宮本(徹)委員 もう一点、出口にかかわってもお伺いしたいと思います。

 黒田総裁は、先日の聴聞の場で、二〇一九年ごろに物価上昇率二%に達するから、出口をそのころに検討をし議論していることは間違いないと発言されて、これは市場が大きく反応しました。一気に円高も進み、長期金利も一時はね上がるということになります。

 出口ということを考えた場合、先ほどのお話では、諸外国の先行例を参考にするんだというお話がありました。諸外国という点でいえば、アメリカは昨年来金融緩和策の縮小で、アメリカの国債の金利は上昇しております。日本でも、日銀が国債購入額を段階的に縮小し保有額自体を減らしていくということになれば、当然国債の金利は上昇していくというふうに思います。そうすると、今の国の予算の中で、今でも大変な状況ですけれども、国債費は金利上昇を受けてさらに増加していかざるを得なくなるということが見込まれるわけですね。

 そういう中で、こういう指摘もあるわけですね。財政悪化が続く中で、長期の金利を低位で安定して維持していくためには日銀は国債購入をむしろふやしていかざるを得ないんじゃないか、こういう指摘もあるんですが、この指摘についてはどうお考えでしょうか。

若田部参考人 私が理解するところでは、日銀はあくまで物価安定の目標二%を達成するための手段として長期国債を購入しているというふうに考えますので、政府の財政の悪化を防ぐために行っているというふうには考えてはおりません。

 ただ、一般論として、これは経済学者としての立場で申し上げさせていただくならば、仮に金利が上昇するようなところというのはまさに名目成長率が上がっているところですので、経済全体としては豊かになっております。そこから得られるさまざまな税収というのはございますので、財政に対する影響というのは、よいことはあっても悪いことはないというふうに考えられます。

 ただ、これはあくまで、日銀副総裁候補者としてではなくて経済学者としての意見として述べさせていただきました。

宮本(徹)委員 時間になりましたので、終わります。

古屋委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 若田部候補にお尋ねをいたします。

 我が国では、景気回復が続く一方、なお物価は弱目の動きとなっております。景気の改善に比べ物価の上昇ペースが鈍い理由について御見解をお聞かせください。

若田部参考人 これは所信表明でも申し上げさせていただきましたが、インフレを加速しない失業率というところにはまだ至っていないというのが一番簡単な答えではないかというふうに思います。

 ただ、直近の失業率は、二〇一八年一月で既に二・四%になりました。しかし、この数字は、ちょっと統計の専門家も、今、本当にこれが持続するのか、本当に正しいのかというのを少し検討中でございますので、もう少し状況を見る必要があると思います。

 その意味でいうと、私は、まだ労働者で働きたいという人が残っている、そういう人たちが次から次へと労働市場に参入しているので、完全失業者数が下がっていても、労働者の労働力人口がふえていて、それで失業率というのがなかなか下がらない状況にあるのではないかと。

 ただ、これがどんどん、さっき申し上げたインフレを加速しない失業率に近くなりますと、賃金が上がる、物価が上がるというメカニズムが働いてまいります。その意味では、金融政策がそういった経済の好循環というのを支えていくことになろうかと考えております。

遠藤(敬)委員 二%の物価安定を目標とすることの是非及びその理由についてお聞かせください。

若田部参考人 所信表明で申し上げたのは、インフレを加速しない失業率ということでございまして、二%で物価の安定の目標を達成すると、そうすると、ぎりぎり、物価をそれ以上上げないで失業率を一番小さくする失業率に落ちつくのではないかというのが一つです。

 ほかにも、例えば、日銀の黒田総裁が申し上げる理由が、統計の上振れであるとか政策の余地であるとか、あるいは諸外国が二%を目標としていることによるグローバルスタンダードなどなど議論がございますが、私としましては、先ほどの失業率の話と、それと、安達誠司さんという、これは丸三証券の経済調査部長の方がおられるんですが、安達誠司さんがなさった研究では、マイルドなインフレのもとにおいて、均衡のインフレ率は大体一・九四%、これはコアコアではかっていますが、生鮮食品とエネルギーを除いた物価上昇率が一・九四%というような数字も出ておりますので、二%を目指して、それでいくというのは、数字的な根拠はそれなりにあるのではないかというふうに考えております。

遠藤(敬)委員 終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

津村委員 一分ということですので、手短に申し上げますが、私、きょう二つ、大変気になる御発言があったなと思っていまして、一つは、異次元緩和の副作用は顕在化していないというふうにおっしゃったんですけれども、先ほどほかの委員からも御指摘があったように、黒田総裁御自身もですけれども、家計の負担がこの十五年で大きく拡大したということはさきの質疑でお認めになっておりますし、また、昨年の十一月には、リバーサルレート論を引かれて、地域金融機関、地域経済、預金者の負担というようなことも触れていらっしゃいます。

 ちょっとそこで黒田総裁の見方とそごがあるんじゃないかなということと、もう一つ、金融政策に限界がないという趣旨のことを先ほどほかの方とのやりとりで触れられていましたが、今の日銀は二年で二%といった約束を五年間守れていないわけで、もし金融政策に限界がないとおっしゃるのであれば、今の日銀の金融政策は不十分だというふうにも受け取れるわけです。

 この二つ、私は大変気になる御発言だったので、真意を伺いたいんですが、質問としては、済みません、AIのことを、若田部さん、中央銀行総裁は、一定の経済変数を、相関関係というものがわかるようになればAIでも務まるというようなことをおっしゃったことがあると思うんですけれども、私は、マーケットを非常に軽視された御発言かなというふうに思います。

古屋委員長 津村君、質疑時間が過ぎております。

津村委員 そのマーケットとの対話についての若田部さんのこれからの決意を聞かせてください。

若田部参考人 黒田総裁の発言と私の発言とでそごがあったとは思っておりません。

 リバーサルレート論につきましては、黒田総裁も、チューリヒ大学における講演会で、あくまで理論的な可能性として述べておりまして、それが実際に日銀の金融政策に支障が出るような弊害をもたらしているということは申し上げていないというふうに考えます。

 それと、限界がないというのは、これは私は理論的にはということを申し上げたと思います。それを踏まえた上で言いますと、日銀の金融政策でなぜ二%が現状で達成できていないのかということに関しましては、日本銀行自体が二〇一六年九月に総括的検証をしておりまして、そこでは三点の理由が挙がっております。そういったことを考えますと、それに対比すれば不足であったという言い方はできるかと思いますが、しかし、日銀としてやっているところで、三つの要因があったので二%は達成していない、しかし、二%を達成するように経済を動かしているというようなことだと思います。

 AIを引かれたところでございますが、これも私は、将来的にはという意味でございまして、現状において、市場との対話は非常に重要かつ難しいことだと思っております。そういったことまでがAIでできるような時代に至るまでには、まだまだ時間はかかるというふうに考えております。

古屋委員長 ほかにございますか。

 ないようでございますので、これにて若田部参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 若田部参考人、ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより雨宮参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 根本幸典君。

根本(幸)委員 自民党の根本幸典でございます。

 先ほどは雨宮候補に所信をお伺いをさせていただいたところでありますけれども、その中でも、七九年、大学卒業後、日銀に入っていろいろな要職を務めてこられたということであります。金融政策はもとより、組織運営にも精通しているということであります。

 その上で、これまでの四十年間の日銀内の経験、実績を今後副総裁として仕事にどう生かしていかれるのか。それからまた、組織運営に関しては、先ほど、五千人の職員の力を発揮させることが肝要であるというふうにおっしゃっていましたけれども、具体的にどのような役割を果たしていかれようというふうにお考えなのか、教えていただきたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、私、一九七九年に入行しました。これまで、金融政策運営、金融システム問題、あるいは内部組織運営等に実務経験を重ねてまいりましたので、私としては、この実務経験といったこと、それから得られた知見等をフルに活用して総裁をお支えするということがまず第一の役目であろうというふうに思っております。

 それから、御指摘いただいた組織運営でございますけれども、日本銀行といいますと、やはりどうしても金融政策や最後の貸し手といった議論がされるわけでありますけれども、日々、銀行券の発行、流通ですとか決済システムの運営といった、いわば地味な金融インフラを提供しているわけでございますし、BCP、災害等においても金融インフラを守るというのは大事な責務でございます。

 しかも、金融政策や金融システムの安定対策も、こうした作業を通じて、業務を通じて実施されるというのが中央銀行の特徴でございますので、こうした業務を行っている職員一人一人のやる気、士気を高めながら、職員を束ねていくということも私の重要な責務であるというふうに考えてございます。

根本(幸)委員 その後、二十五年三月以降は、理事という形で御活躍いただいているというふうに先ほどもありましたけれども、その中では、まさに黒田総裁をお支えして、デフレからの脱却、それから量的・質的な金融緩和等々に取り組んでこられたということであります。

 その意味におきまして、この五年間のアベノミクスをどういうふうに評価されているのかということ、さらには、物価安定目標、これの重要性をどうお考えなのか、それから、今後の扱いに関してどのようにお考えなのかということについてお伺いをしたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 アベノミクスにおける三本の矢、すなわち、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、これは、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく上で必要かつ適切な政策の組合せだと考えております。

 実際に、この五年間で我が国の経済・物価情勢は大きく改善いたしました。企業収益は過去最高、労働市場はほぼ完全雇用ということでございます。賃金も、緩やかではございますけれども着実に上昇しております。先行き、日本経済が持続的な成長を達成していくためにも、こうした取組をしっかり続けていくことが重要かというふうに考えております。

 その上で、物価安定目標二%の位置づけについて私の考えを申し上げますと、まず御理解いただきたいのは、二%の物価安定を目指すというのは、人為的にインフレを起こして、インフレでもって何か問題を解決しようという、いわゆるかつての調整インフレ論とは別であるということでございます。むしろ、物価の安定ということを実践的に定義するとこのぐらいのプラスが望ましいというのが、各国、先進国の共通の理解でございます。

 一つは、物価統計にはちょっと強目に出るバイアスがあるということと、それから、デフレに戻らないのり代を持っておった方がいいということを考えると、物価の安定ということを実践的に考えたときは、ぴったりゼロではなくて、ちょっとプラスがいいというのが共通の理解であります。その上で、そのちょっとプラスが一か二か三かについて、簡単な結論はないわけですけれども、今は先進国は共通して二%という目標を持っております。

 こういう同じような目標を持ち、同じような物価情勢を実現するということは、長い目で見ると、為替市場の安定、ひいては金融資本市場や企業経営の安定につながるわけでございますので、やはりこの二%の物価安定目標というのは非常に重要であるというふうに認識してございます。

根本(幸)委員 私の地元は、愛知県の豊橋市、田原市というところなんですが、三河港というのがありまして、自動車の輸入港としては日本一でありまして、また、自動車の輸出は北米向けの輸出が盛んなんですね。

 そういう意味では、これから、先ほど言いましたアベノミクスを、やはり全国津々浦々、地方まで届けていくには、貿易というか、それぞれの地方における貿易というのが非常に私は重要だというふうに思っています。その意味では、これからいろいろな環境変化があるかというふうに思います。

 ただ、やはり我々の地域は、車の輸出がふえれば、景気がよくなってみんな元気になっていく、輸入もふえれば、それによって仕事がふえてみんな元気になっていく。そういう意味では、これからアベノミクスを我々広げていくには、この貿易、特に輸出というのは非常に私は重要な意味合いがあるんだというふうに考えているんですね。

 そこで、これからの日本経済、日本経済における輸出について、どういうふうに今お考えなのかというのを少しお聞かせいただければというふうに思います。

雨宮参考人 御指摘のとおり、この五年間で輸出は増加基調にありまして、価格変動の影響を除いた実質ベースで、この五年間で二割増加しているわけでございまして、昨年の十―十二月には、リーマン・ショック前のピークを超えてございます。

 この背景としては、一つは、やはり海外経済の成長に伴って世界全体の貿易量がふえているということに加えまして、やはり日本企業のたゆまぬ製品開発努力あるいは営業努力が実を結んでいるということもあるかと思いますので、こうした我が国の輸出は先行きも緩やかな増加基調を続けると思いますし、そうした企業が輸出のための努力を続けられるような安定的な市場環境や金融緩和環境を用意していくというのが私どもの仕事であるというふうに考えてございます。

根本(幸)委員 ありがとうございました。終わります。

古屋委員長 次に、海江田万里君。

海江田委員 立憲民主党の海江田万里です。

 雨宮さん、ようこそお見えいただきました。

 今、雨宮候補者からの所信表明、バランスのとれたお話があったかなと思います。先ほど、若田部先生のお話も聞きましたけれども、やはりこれからの日銀の執行部にはバランサーが必要だなとつくづく思いました。その意味では、もし雨宮さんが副総裁に選ばれるとすると、やはりその役割というのは大変大切かなと思います。

 先ほど、五千人の日銀の職員が、今、士気が高いけれども、これからもっと高くしなければならないという意味のお話がありました。

 雨宮さんは、これまで四十年間、そのうち二十年間は企画、政策畑にいらっしゃった、二十年はデフレとの戦いであったというお話でありますが、今度は副総裁でありますので、副総裁というのは、日銀法の二十二条ですか、「総裁に事故があるときはその職務を代理し、総裁が欠員のときはその職務を行う。」とありますから、これはやはり理事とは違う新しいお立場になるわけですから、改めて決意のほど、覚悟のほどを御披瀝願いたいと思います。

雨宮参考人 御指摘の日本銀行法では副総裁の役割というのが二つ明定されておりまして、一つは政策の執行において総裁を補佐するということと、同時に、委員会においては独立して職務を執行するということも明定されてございます。

 私としては、この規定にのっとりまして、総裁を補佐しつつ、政策委員会においては、自分の意見を持って、委員会における議論の活発化に尽くしていきたいというふうに思っております。

 総裁を補佐申し上げるというのは、総裁ときちんと議論もして、昔の中国に諫議大夫という役割があったというふうに聞きますけれども、天子にきちんと物申す役割というのがあったというふうに聞いておりますけれども、そうした議論も含めて、総裁を補佐すると同時に、政策委員会における議論の活性化に努めてまいりたいというふうに思っております。

海江田委員 確かに、諫言を呈すと。あと、せっかんなんという言葉がありますね、柱が折れるほど諫言を呈したわけでありますから。ぜひその意味では、諌言を呈する役割を果たしていただきたいと思います。

 そして、改めて、黒田総裁になってからの四年間は企画と政策担当の理事でありましたから、今、アベノミクスの五年間を総括してくださいという質問もございましたけれども、わけても金融政策。ややもすれば、三本の矢のうち金融政策だけに頼った五年間ではないだろうかという意見もあるわけでありますから、金融政策とアベノミクスの関係について、この五年間の御経験をお話しいただきたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 私は、金融政策と機動的な財政政策と構造政策の組合せというのは機能し、この間の日本経済、物価情勢の改善に大きく貢献してきたというふうに考えております。

 金融政策における金融緩和と財政政策の機動的な政策の組合せというのは、これはオーソドックスなポリシーミックスとも言えるわけでありますので、マクロ経済運営としては、こうした経済がデフレから脱却する上でオーソドックスかつ有効な組合せであるわけであります。

 それに加えまして、単なる需要政策だけではなくて、供給面での構造政策も伴って初めて成長力の強化が実現できるわけでありますけれども、実際にこの間の構造政策は、例えば、女性、高齢者の労働参加率の上昇ですとか、インバウンド、観光客の増加ですとか、あるいは企業の合理化、効率化投資、イノベーションの増加といった形で実を結んでいるというふうに思いますので、それぞれの役割はそれぞれの効果を発揮しているというふうに理解しております。

海江田委員 もう最後の質問になりますが、やはりこの間の金融緩和の副作用、これをどういうふうに認識されているのかということについてもお考えをお聞かせいただきたいと思います。

雨宮参考人 金融緩和は、やはり、常に金融政策、政策運営を考える場合には、効果と副作用の両方の比較考量ということが必要なわけでございます。

 副作用として、例えば、資産価格の行き過ぎのリスクですとか、あるいは金融機関経営に与えるマイナスの影響ですとか、あるいは個人の利子所得の減少といったことが考えられるわけでございます。

 今のところ、そうした副作用はございますけれども、全体として政策の効果を評価すれば、やはり、経済の改善、雇用・賃金情勢の改善という格好で全体として効果が上回っているというふうに判断してございますけれども、こうした効果と副作用の検討、評価ということについては、引き続き注意深く検討してまいりたいというふうに思っております。

海江田委員 先ほど来の、日銀の自主性、独立性、はっきり意見を物申すこともその大切な役割だというお話を承りましたけれども、あともう一つ、やはり透明性ですね。特に国会での説明というものもしっかり努めていただきたいと思いますから、まだ候補者でありますが、候補者が外れて副総裁になりましたら、総裁ともども、やはり国会での説明責任、これをしっかり果たしていただきたいと思います。

 以上です。

古屋委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 津村啓介でございます。よろしくお願いします。

 先週の金曜日に黒田総裁とやりとりをした際に、デフレが長期化している責任といいますか、理由は何かという議論の中で、黒田総裁から、私自身は、デフレが実際問題として一九九八年から二〇一三年まで十五年間続いてしまったということの一つの責任は日本銀行にあったのではないかというふうに思っておりますという、かなりストレートな反省の弁といいますか、責任論があったんですけれども、その間、政策立案の中枢にいらっしゃった雨宮さんから見て、日本銀行の金融政策の反省あるいは責任ということについて、黒田さんと同じお考えなのか、そして、具体的に、もし反省する点があるとすれば、あのときこうしておけばよかったという話があれば聞かせてください。

雨宮参考人 先ほど申し上げましたとおり、所信でも申し上げましたとおり、私は、一九九九年のゼロ金利政策から量的緩和、その後の株式買取り、包括緩和に至るまで担当させていただきました。その間、デフレ脱却のために全力を尽くし、何とか新しい分野での新しい取組はできないかということで、今や世界で非伝統的金融政策と言われる手法はほとんど日本銀行が世界に先駆けて開発してきたものであり、そうした取組をしてきたつもりでございます。

 にもかかわらずデフレを脱却できなかったことについては、これは学界でもいろいろな議論があり、まだこれだという結論が出ているわけではないとは思うんですけれども、少なくとも、日本銀行が法律上物価の安定に責務を持っているということを踏まえますと、やはり日本銀行にも責任はあったというふうに申し上げるべきであるというふうに認識しております。

 その際、ポイントとなるのは、やはりこの十数年にわたって根づいてしまった、人々の、もう物価は上がりっこないよ、賃金は上がりっこないよといういわゆるデフレマインドを払拭するためには、相当大きな勢い、初速をつけて政策を講ずる必要があったということは考えておりますし、五年前に量的・質的金融緩和を設計しましたときには、そうした人々のデフレマインドを転換させるにはどうしたらいいかということを中心に設計をしたつもりでございます。

津村委員 それから、もう一つは、今回、順当な人事と評される方も大勢いらっしゃるんですが、その人事をつぶさに見ていろいろなことを論評される方がやはりマーケットにはいらっしゃって、これまで、いわゆるリフレ派と言われていた岩田さんと、金融システムを非常に御専門にされてきた中曽さんがリバーサルレート論なんかもおっしゃって、お二人のある種バランスの上に黒田さんがいらっしゃったという見方もできると思うんです。

 今回、その中曽さん、マイナス金利の弊害を指摘されていた中曽さんが退任をされて、どちらかといえばマイナス金利を立案されてきた側の雨宮さんが就任されて、デメリットの方をきちんと目配りしていますよというメッセージが必要なんじゃないかと思うんですけれども、それは新しい組織のようなものなのか、調査のようなものなのか、あるいは副総裁としての雨宮さんのお言葉なのか、これからもデメリットの方もしっかり見ていくよというメッセージを何か発していただきたいと思うんですが。

雨宮参考人 先ほど海江田先生の御質問にもお答え申し上げましたけれども、政策は全て常にその効果と副作用の比較考量、比較評価ということが非常に重要なわけでございます。マイナス金利を導入いたしましたときも、これは、金融機関、金融システムに対してかなり大きな負荷をかけるということは認識しておりましたけれども、それと同時に、やはりまずは、あの当時の非常に、世界経済もややマイナスの、弱い動きがあり、マーケットがリスクオフの状況で、かなり強い措置を講じる必要があるという考えで導入したものでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、引き続き、副作用あるいはデメリットといったことも十分検討した上で、総合評価、総括評価に努めてまいりたいというふうに考えております。

津村委員 これも、若田部さん、黒田さんにも伺ったことなんですが、中央銀行の独立性について、インフレと戦っていた時期と今の状況は大きく変わっているんじゃないかと主張する向きがあるんですけれども、雨宮さんのお考えを聞かせてください。中央銀行の独立性の意義が変遷しているかどうかということです。

雨宮参考人 私は、法律で与えられた中央銀行の独立性というものは、インフレ時であれデフレ時であれ、同様であるというふうに考えております。

津村委員 法律上の意味はそうだと思うんですけれども、もともと中央銀行の独立性がどういう経過で与えられてきたのかという歴史的な背景を考えると、おのずと意味が変わってくることもあると思うんですが、私自身が疑義を呈しているわけではないんですけれども、インフレのときとデフレのときで、運用面というか、どういう違いがあるかという御質問です。

雨宮参考人 通貨価値の安定という概念は短期間で達成するものではないわけでありまして、ある長期間、例えば景気循環がいいときも悪いときもあれば、それを通じて長期間に物価の安定というのを達成すべきものでありますので、それは、デフレのときにこういうやり方がある、インフレのときにこういうやり方がある、もちろん、政策手段の使い方は異なりますけれども、政府から独立した立場で責任を持って通貨価値の安定を実現するよう努めるという責務や方法については、私は変わりはないものというふうに考えております。

津村委員 最後の質問にいたしますが、組織運営の話が先ほどから何度か出ております。心構え的なお話は何度かお答えがあったんですけれども、現在、日本銀行が組織として直面している課題として、どういう重要な案件があるのかを紹介してください。

雨宮参考人 今現在、日本銀行が抱えている組織としての問題という御質問でございますけれども、世界の潮流ということで申し上げますと、先ほども所信で申し上げましたが、金融取引が市場化、グローバル化する中で、市場の取引、金融取引というのはどんどん複雑化しているわけです。そうした複雑化する金融、特に金融市場動向をつぶさにフォローしながら、日本銀行の業務をブラッシュアップしていくということが大きな課題だと思っていますし、その最も典型的な課題が、フィンテックと言われる技術にどう対応するかということでございます。

 フィンテックは、いろいろなところの分野があるわけですけれども、例えば通貨ということにかかわってきますので、これは中央銀行の本業でありますから、それは、発券業務とかあるいは決済システム、全部に絡んでくることでございますので、そうした新しい金融技術の革新にどうやって対応し、体制を整えていくかということは非常に大きな課題であると認識してございます。

津村委員 終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 雨宮副総裁候補に早速御質問させていただきます。

 まさに、これまでもございましたとおり、黒田現総裁のもとでの金融政策の理論的支柱とでも申し上げればよろしいでしょうか、これまでの雨宮理事の取組にまず敬意を表したいと思います。

 その上で、やはり想像したよりも日本の国を覆っているデフレマインドは非常に強いものがあり、なかなか賃金の上昇を伴う好循環による物価安定に至らない、これを更に次の五年間でどこまで持っていけるかというのが大きなポイントになりますけれども、現時点の、現状の評価とこれからの取組についての副総裁候補のお話をお伺いしたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 確かに、この五年間の金融政策運営の結果、今先生御指摘のとおり、我が国におけるデフレマインドの払拭というのが、率直に申し上げて、当初考えていたよりも難しい仕事であるというふうには感じております。

 これには、もちろんいろいろな理由がございます。例えば、日本においては、正規雇用と非正規雇用の賃金の慣習が違うので、なかなか正規が上がりにくいとか、あるいは、企業が今生産性上昇に、これはいいことですけれども、取り組んでいて、なかなか価格転嫁まで一致しないということもありますけれども、基本は、この二十年にわたって定着してしまったデフレマインドを転換するには、やはり相当、それなりの時間がかかるということだろうというふうに思っております。

 ただし、これは明らかに事態は改善しておりまして、やはり物価を決める大きな要素、短期的には、為替レートですとか原油価格ですとか、いろいろな要因が物価に影響を与えますけれども、基本的には、経済全体の需給バランスがどうなるかということと、人々の物価の受けとめ方、いわゆる物価観がどうなるかという二つでございます。

 需給ギャップについては、先生方御案内のとおり、プラスに転化して、これからもプラス幅を拡大するだろうというふうに見られておりますし、こうして実際に物価が少し上がり出しますと、人々の物価観も変わる。実際に、最近、二十数年ぶりの価格改定といったことがよく話題になってございますので、この後、やはりその物価二%の安定目標達成のモメンタムはしっかり生きておりますので、これを持続させるということが重要だと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 これまで、今ありましたとおり、黒田次期総裁候補、また若田部副総裁候補にも聞いてきたんですが、賃金が上がるという、この好循環を生むということに大変苦労を、これは政府もしているわけです。

 それは、日本独特の労使の関係もありますし、よく言われることですが、一旦賃金を上げるとなかなか下げづらいという下方硬直性のこともよく聞きます。また、バブル崩壊後、デフレの状態に入って、戻りつつあったときにリーマン・ショックなどもあり、非常に経済が持続的に安定してよくなっていくという見通しを経営者が持ちにくい。

 さまざまな要因があるわけですが、やはり賃金が上がっていかなければ物価は安定しないし、物価が安定しなければ企業の景気の状況も改善しないわけですから、私は、これは黒田次期総裁候補にも申し上げたことですが、物価を安定させるということは賃金が安定して上昇するということであり、広く、難しい金融政策の理屈はわからない普通の市井の方にも、日銀が取り組もうとしていることは賃金を上げて皆さんの暮らしがよりよくなることだということをもっとわかりやすく、庶民にわかりやすくお伝えいただく努力を今後お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

雨宮参考人 御指摘のとおりでございまして、よく私どもお叱りを受けるのは、日本銀行は物価だけ上がればいいと思っているのかとお叱りを受けることがあるんですけれども、私どもは決してそんなことは考えてございませんで、基本的には、経済活動が活発化し、収益もふえ、賃金もふえ、その中で物価が二%程度上がるという、その収益、賃金、支出活動、物価の好循環を目指しているわけでございますので、私どものこの二%の物価安定目標というのが、単に物価だけ上げるということではなくて、そうした好循環を目指しているんだという御説明は、今後とも、これまで以上に丁寧に御説明申し上げたいというふうに思います。

伊藤(渉)委員 これで終わりますけれども、まさに、皆さんの期待がそこに向かうことによって達成ができる物価安定目標ですので、一般の方も物価が安定して賃金が上がることを期待するような、わかりやすい、さまざまなところでの発信を、副総裁になられました暁にはお願いをして、私の質問を終わります。

古屋委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民進党所属、無所属の会の福田昭夫でございます。

 雨宮候補に対しまして、私の方から何点か質問をさせていただきますが、雨宮候補は、前白川総裁時代にはサラリーマンとして、黒田総裁になってからは理事として、日銀の方でお仕事をされてこられたというので、両方の考え方をよく理解しているのかなということで、そんな観点も含めて質問をさせていただきます。

 まず最初に、先ほど気になった話があったので質問をさせていただきますが、若田部候補は金融政策には限界がないと言ったんですよね。えっと思ったんですが、私は、限界がないのは、不老不死の薬を求めるなど人間の欲望は限界がないですけれども、金融政策にはちゃんと限界があるんじゃないかなと思っているんですが、いかがですか。

雨宮参考人 御指摘のとおり、不老不死の薬がない限り、世の中の現象、政策、やることは全て限界はあるわけでございますが、ただ、限界があるかないかという議論よりも、先ほど申し上げたとおり、我々、この五年間の政策運営の結果、あるいは過去二十年の政策運営の結果でもいいんですけれども、経済や物価という現象の、ある種複雑さといいますか、今さらこう申し上げると、かえってお叱りを受けるかもしれませんけれども、やはり、単純に、ある政策だけで全てのことが実現できるわけではないということは改めて認識しているところでございます。

福田(昭)委員 きっともと一緒に仕事をされた方だと思いますけれども、日銀の金融研究所の所長でありました翁邦雄さんですか、こんな指摘をしております。

 二%目標を最優先課題に掲げることは金融政策の硬直化、経済の不安定化を招くと指摘をして、白川前総裁時代の一三年一月の日銀と政府の共同声明を再確認するべきだと。この声明では、もう御存じなんでしょうけれども、日銀は二%の物価目標を掲げる一方、政府は日銀と連携強化し、持続可能な財政構造を確立するため取組を着実に推進するとしておりまして、金融政策の強化が今やっているような財政ファイナンスにつながる懸念に配慮した内容となっていたと思うんですが、これをどんなふうに評価されていますか。

雨宮参考人 まず、二〇一三年の共同声明については、あくまで、金融政策、財政政策、成長政策、それぞれの責務、やるべきことを明らかにした文書でございますので、私どもはその合意のもとで物価安定目標二%を達成するよう努力をしているところでございます。

 そのプロセスで国債の大量購入ということをやってございますけれども、これはあくまで、マーケットに大量の資金を供給し、それによって金利を下げて、緩和的な金融環境をつくって企業活動や家計活動を応援するためにやっているものでございますので、私どもとしては、財政ファイナンスということを目的にやっている意図はございません。

福田(昭)委員 しかし、アベノミクス、異次元の金融緩和を五年やってきて、やはり、日銀によるイールドカーブ、このコントロールで政府は財政規律を失っちゃっています。それから、金融機関は、銀行は経営を圧迫されています。マイナス金利をやめてくれと言っています。これはマイナス金利だけでの弊害だけじゃないですね。マイナス金利の導入によって、それぞれ預金も貸出しも金利を下げざるを得なくなって、これで実は銀行の利益が減っているということですから、こっちの方が大きいんですね、マイナス金利そのものよりも。

 それから、株式市場や債券市場も、日銀による買い支え、日銀がETFなどによって株まで買っています。また、厚生年金基金や国家公務員や地方公務員の年金基金でも株を買っています。こういうことによっての株高維持ですから、これはとんでもない話なんですね。ですから、やはり、そういったことで、まさに日銀による買い支えで、それこそ市場もゆがんでいる。そうした金融の不均衡は大変厳しい状況になっている。

 ですから、中央銀行の責務は経済の中長期的な安定を守ること。共同声明の原点に立ち返って、白川前総裁のときの共同声明に立ち返って、リスクに、副作用にもっと目を向けるべきだ、早く出口戦略に入らないととんでもないことになるよという指摘をしているわけですが、いかがですか。

雨宮参考人 私どもも、政策運営を考える上では、その政策がもたらす副作用と効果の総合的な評価に努めてございます。

 御指摘のように、金融機関に負担をおかけしていることは十分認識してございますが、今のところ、幸い日本の金融機関は厚い自己資本を持っておりまして、収益も、減少傾向とはいえ、まだ高い水準にございます。また、貸出態度も、大変企業から見ても緩和的ですので、全体として、金融仲介機能が損なわれているという状況には至っていないというふうに認識してございます。

 ただし、こうした効果は、いわば時間の経過とともに累積的に積み上がっていくものでございますので、今後とも、御指摘のような市場に対する影響も含め、副作用と効果の検討については、十分注意深く点検してまいりたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 時間が来ましたから、終わります。

古屋委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 先ほどマイナス金利政策について効果の方が大きいんだというお話をされておりましたが、地域金融機関の収益は悪化をしているわけですよね。二〇一七年四月から十二月期で見ても、本業のもうけを示す単体の実質業務純利益は、上場地銀グループの七割が減益、二行が赤字ということで出ております。

 そして、金融庁のレポートを見ましても、経営者ははっきり、現在のマイナス金利政策のもとでの経営環境は最悪で、近い将来、金利の正常化等が進めば事態の改善が図られるとの期待がある、こういう声まで金融庁ではレポートの中に紹介されているということです。

 導入するときは、いろいろな議論があって、そのときの世界経済の事情もあって導入を判断したんだと、マイナス金利についてそういう話も先ほどありましたけれども、日銀の金融政策、とりわけマイナス金利政策は、影響を指摘する声は、負の影響を指摘する声は本当に大きいわけですよ。

 マイナス金利政策については早急に見直すべきじゃないですか。いかがですか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありました、金融機関に対するマイナスの影響でございますけれども、低金利の持続が金融機関経営に影響を、多大の負担を与えていることは認識してございます。

 ただし、先ほど申し上げましたけれども、これまでのところ、金融機関は充実した資本基盤を持っておりまして、こうした金融緩和の結果、経済状況がよくなったために、信用コストという面も大きく低下しているといったメリットも生じているわけであります。

 したがって、我々が最も心配すべきは、全体として、この政策の結果、金融仲介機能が損なわれてしまって、例えば金融機関が中小企業に貸出しをできなくなるとか、あるいはかえって金利を上げてしまうといったようなことになると、これは問題なわけでありますけれども、まだそうした形で金融仲介機能に問題が生じているとは見ておりません。

 ただし、何度も繰り返しになりますけれども、こうした影響は累積的に出てくるものでありますし、また、実は、地域金融機関の皆さんは、こうした低金利だけではなく、地域経済の状況、人口減少ですとか企業数の減少といった非常に難しい環境変化にも直面しておりますので、こうした経営動向については、引き続き十分点検してまいりたいというふうに考えております。

宮本(徹)委員 人口減少だとか難しい状況があるときに、更に日銀のこのマイナス金利政策が地域の金融機関を追い込んでいる面があるという点は、よく見て、今後の政策判断を検討していっていただきたいというふうに思います。

 それからもう一点、先ほど若田部先生にもお伺いしたんですけれども、先日、黒田総裁の出口の発言がございました。二〇一九年ごろに物価上昇率二%に達するから、出口をそのころに検討し、議論していることは間違いないと。これを聞いて市場は反応したわけですよね。円高に振れ、金利も上がる、長期金利が上がるということもありました。

 そして、では、出口をどうしていくのかという問題があるわけですけれども、日本の場合は、まあ、どこでも、アメリカも出口戦略を始めたら金利が上がっているわけですけれども、大量に国債を日本は発行していて、予算の中でも国債費の占める割合というのは非常に高いわけですね。これで金利が日銀の出口戦略で上がるということになったら、予算の中に占める国債費の割合はぐんとふえていく危険もあるわけです。

 そうすると、これは本当に出口なんてとれるんだろうかと。金利を長期にわたって低く安定させていくためには、逆に国債購入はもうふやすしか道がないんじゃないか、こういう指摘もあるわけですけれども、実際の出口というのは、こういう状況のもとで可能なものかどうなのかというのをどうごらんになっているのか、お伺いしたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 私どもいつも、出口については、時期尚早といって全く何か口をつぐんで話していないのではないかとよくお叱りを頂戴するんですが、実はそれなりに御説明申し上げておりまして、出口においては課題は二つある、一つは拡大したバランスシートをどうやって正常化していくか、もう一つは政策金利をどうやって上げていくかということであると。

 そのための手段は実は私ども持っているということも御説明申し上げておりまして、例えば、バランスシートを正常化するのであれば、無理やりマーケットに国債をばんばん売って金利を上げるなんということはする必要はなくて、例えば期限償還を使っていくとか、短期の資金吸収オペを使うですとか、あるいは、金利を上げる上でも、日本銀行の当座預金に金利をつけております、それを上げていくといった手段があるわけでございますので、その状況になれば、経済・物価状況に応じて、市場の安定を確保しながら、金利を徐々に徐々に、安定的に調整していくということは技術的には十分可能であるというふうに考えております。

 ただし、そうした政策手段をどういう順番でどういうふうに使うかということについては、そのときの経済・物価情勢次第であるというふうに考えている、それが時期尚早と申し上げている意味でございます。

宮本(徹)委員 時間になりましたので、終わります。

古屋委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 日本維新の会の遠藤敬でございます。

 雨宮候補、大変お疲れさまでございます。

 それでは、最後の質問でありますが、強力な金融緩和は日本銀行の財務に及ぼす影響も大きいと思いますが、この点に関して御説明をお願いいたします。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 こういう、日本銀行、中央銀行のバランスシートを拡大する、いわゆる量的緩和という政策をとっておりますと、バランスシートが拡大する途中は収益が押し上げられるわけですけれども、一方、出口の局面では、日銀当座預金に対する金利を引き上げますので、利払いがふえて収益が下押しされる、こういう関係にございます。

 もっとも、将来、本当に出口を迎えて、日本銀行が当座預金に対する金利を引き上げる場合には、恐らく、経済・物価情勢に応じまして、長期金利の方も上がっているはずでございますので、日本銀行の運用利回りも上昇しているはずであります。日本銀行の保有国債は、より高い利回りの国債に順次入れかわっていくことになりますので、受取利息が増加するということでございます。

 このように、出口において日本銀行の収益がどうなるかという議論は大変ございますが、基本的には、そのときの短期金利と長期金利の組合せ、金利情勢いかんということでありまして、いずれにせよ、支払い利息だけではなくて受取利息も含めた全体について考える必要があるというふうに思います。

 その上で、日本銀行は、二〇一五年度より、債券取引損失引当金という制度を拡充いたしまして、収益が上振れる局面では一部を積み立て、下振れる局面では使う、それを取り崩すということで、収益の平準化に努めているところでございます。

遠藤(敬)委員 済みません、もう一問ございました。恐れ入ります。

 日本銀行による大規模な国債買入れは、国債市場の流動性や機能度に悪影響を及ぼしておるとの批判も聞かれますが、この点についてお伺いをいたします。

雨宮参考人 御指摘のとおり、これだけ大量の国債オペレーションをやっておりますので、やはりマーケットに一定の影響は与えてございます。

 ただし、いろいろな、市場の流動性とか、市場の性能をあらわす、市場がうまく機能しているかどうかをあらわす指標をいろいろ細かに点検しますと、悪くなっているものもあれば、少し足元よくなっているものもあるという状況でございますが、私どもとしても、市場参加者と密接な意見交換を行いながら、オペ面での工夫ですとか、あるいは情報発信の工夫ということを図りながら、市場機能の維持に極力努めていきたいというふうに考えてございます。

遠藤(敬)委員 雨宮候補、お疲れさまでございました。

 終わります。

古屋委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

福田(昭)委員 黒田総裁候補も若田部副総裁候補も、出口戦略についてはほとんどしゃべりませんでした。しかし、雨宮候補は、今、より具体的にしゃべってくれてよかったかなと思っていますが、日銀の中ではそういう議論をされているということですね。

雨宮参考人 具体的な、出口における、例えば金利操作をどのように運んでいくのか、そのためにどういう手段を使うかというのは、やはりそのときの経済・物価情勢を踏まえないと、これは具体的には議論できません。

 しかし、例えば、我々がどういう手段を持っているかとか、それをどうやって使うかということですとか、あるいは、その金利状況によってどういう収益への影響を与えるかといった検討はしてございます。

 それに加えまして、一言余計なことを申し上げさせていただきますと、この十五年間、世界の中央銀行は、日本銀行が行ってきた非伝統的金融政策の経験からいろいろ学んで、アメリカもヨーロッパもいろいろな政策をやってきたわけでございます。今度は、我々が彼らの出口戦略から大いに学ばせてもらおうというふうに思っております。

古屋委員長 ほかにございますか。

 それでは、これにて雨宮参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 雨宮参考人、ありがとうございました。

 以上をもちまして日本銀行副総裁の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 なお、明六日火曜日午前十一時から理事会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時散会


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