衆議院

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第12号 令和4年3月3日(木曜日)

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令和四年三月三日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 盛山 正仁君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 伊東 良孝君 理事 佐々木 紀君

   理事 井野 俊郎君 理事 青柳陽一郎君

   理事 井坂 信彦君 理事 遠藤  敬君

   理事 浜地 雅一君

      石原 正敬君    西田 昭二君

      山田 賢司君    逢坂 誠二君

      森田 俊和君    吉田はるみ君

      奥下 剛光君    山本 剛正君

      浅野  哲君    笠井  亮君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   議長           細田 博之君

   副議長          海江田万里君

   事務総長         岡田 憲治君

   参考人

   (人事官候補者(日本マイクロソフト株式会社執行役員プロフェッショナルスキル開発本部長))     伊藤かつら君

   参考人

   (原子力規制委員会委員長候補者(原子力規制委員会委員))         山中 伸介君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     三ッ林裕巳君

  伊藤 俊輔君     森田 俊和君

  中谷 一馬君     逢坂 誠二君

  中司  宏君     奥下 剛光君

  塩川 鉄也君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  逢坂 誠二君     中谷 一馬君

  森田 俊和君     伊藤 俊輔君

  奥下 剛光君     山本 剛正君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 剛正君     中司  宏君

同日

 理事佐々木紀君同日委員辞任につき、その補欠として三ッ林裕巳君が委員長の指名で理事に選任された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 本会議における議案の趣旨説明聴取の件

 参考人出頭要求に関する件

 人事官及び原子力規制委員会委員長任命につき同意を求めるの件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 まず、趣旨説明を聴取する議案の件についてでありますが、内閣提出の雇用保険法等の一部を改正する法律案は、本日の本会議において趣旨の説明を聴取し、これに対する質疑を行うことに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、本法律案の趣旨説明は、後藤厚生労働大臣が行います。

 本法律案の趣旨説明に対し、立憲民主党・無所属の井坂信彦君、日本維新の会の池下卓君、公明党の角田秀穂君、国民民主党・無所属クラブの田中健君から、それぞれ質疑の通告があります。

 質疑時間は、井坂信彦君、池下卓君は各々十五分以内、角田秀穂君は十分以内、田中健君は五分以内とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、質疑者の要求大臣は、お手元の印刷物のとおりであります。

    ―――――――――――――

 一、趣旨説明を聴取する議案の件

  雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

   趣旨説明 厚生労働大臣 後藤 茂之君

   質疑通告     時間   要求大臣

 井坂 信彦君(立民) 15分以内 厚労、外務、法務

 池下  卓君(維新) 15分以内 厚労

 角田 秀穂君(公明) 10分以内 厚労

 田中  健君(国民) 5分以内 厚労

    ―――――――――――――

山口委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

岡田事務総長 まず最初に、日程第一につき、上野内閣委員長の報告がございまして、共産党及びれいわ新選組が反対でございます。

 次に、雇用保険法等改正案につきまして、後藤厚生労働大臣から趣旨の説明がございます。これに対しまして、四人の方々からそれぞれ質疑が行われます。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 議事日程 第五号

  令和四年三月三日

    午後一時開議

 第一 警察法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

山口委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。

    ―――――――――――――

山口委員長 次に、人事官及び原子力規制委員会委員長任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る一日の理事会において、木原内閣官房副長官から、内閣として、人事官に日本マイクロソフト株式会社執行役員プロフェッショナルスキル開発本部長伊藤かつら君、原子力規制委員会委員長に原子力規制委員会委員山中伸介君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会の申合せに基づき、人事官の候補者及び原子力規制委員会委員長の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として人事官候補者伊藤かつら君、原子力規制委員会委員長候補者山中伸介君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、伊藤参考人、山中参考人の順で所信をお述べいただき、その後、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、伊藤参考人、お願いいたします。

伊藤参考人 伊藤かつらでございます。

 本日は、このような機会をいただき、大変ありがとうございます。

 国家公務員制度は、我が国の行政の円滑な運営を確保するための重要な基盤であります。また、国家公務員法は、国民に対し、公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを基本理念としております。

 人事院は、この基本理念の下、国民全体の奉仕者である国家公務員の人事行政の公正を確保するため、また、労働基本権制約の代償機能を果たすため、中立第三者機関として設置されており、その構成員の人事官には、強い責任感と高い倫理観が求められます。

 私は、IT企業でインストラクターとしてキャリアを開始した後、システムエンジニア、マーケティング、管理職、経営など、複数社で幅広い業務に携わり、管理職になってからは、常に人事改革を経営課題の中核として取り組んでまいりました。変化の速いデジタルの業界で、自身の学びと成長を通じて、組織改革や意識改革を第一線で指揮していく中で、常に世界の中における日本ということを強く意識する必要がありました。

 安全で豊かな日本が将来にわたり信用され信頼される国であり続けるためには、日本の行政を支える国家公務員制度は大きな役割を持つと考えており、私が人事官に就任した際には、強い志を持ってお役に立ちたいと考えております。

 昨今、少子高齢化、グローバル化やデジタル化の推進等、内外の情勢変化は激しく、さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした様々な課題の出現により、行政を取り巻く環境もますます複雑、高度化しております。こうした状況において、公務や公務員が国民から求められる期待や国民に対して果たすべき役割の重要性は一層増しております。国家公務員は、公務の遂行に当たり、規律を厳正に保ち、自らの役割と使命を深く自覚しつつ、高い専門性を発揮することで、国民全体の奉仕者として、信頼を得ていくことが重要と考えます。

 人事官を命ぜられました場合に私が取り組みたい課題について申し上げたく存じます。

 まずは、行政組織の働き方改革です。

 長引くコロナ対応の中で、多くの方が働く意義、仕事と人生の関係性について考え直していると言われています。これは、行政組織も例外ではございません。長時間労働の是正だけではなく、公正な評価と処遇など、公務員が意欲を持って生き生きと公務に取り組める環境が質の高い行政サービスにつながり、ひいては国民の信頼を得ることにつながります。

 行政組織全体のデジタルスキル向上も取り組むべき課題です。

 デジタル技術の革新により、デジタルは、一部の高度なスキルを持った人材に閉じられたものではなくなりました。複雑なデータを可視化して分かりやすくしたり、コミュニケーションの質と量を向上させたり、生産性の向上を図ったりということが、従来に比べて格段に安易に実現できるようになっています。デジタルへの食わず嫌いを払拭することで様々な現場発の改革が生まれ、公務員が自らスピード感のある変革への関与を実感できることが重要です。

 また、様々な現場の声を聞くということに優先度を置いて取り組みたいと思います。

 働き方改革、人材改革にはデータに基づいた分析が欠かせませんが、それと同時に、現場で起きていることへの深い理解が重要であり、それらの洞察を通して、なすべき組織改革への道筋をつける必要があります。

 最後に、こういった取組を通して、学びと成長の循環を生み出すことを目指したいと考えます。

 人は、いつでも、学び、成長することができる。現代においては、時代や情勢に応じて新たな知識を獲得し、成長し続けることが期待されます。国家公務員は、日本国民に世界最高の行政サービスを届けるために、率先して学び、成長し、その成果を公務で発揮することが期待されます。また、年齢や役職に関係なく真摯に自己研さんする姿は、将来にわたる国家公務員の確保につながり、長期にわたる行政の質の一層の向上が期待できます。

 仮に人事官に任命されたときには、人事院会議の構成員としての自覚と責任を持ち、これまでの私の知見や経験を生かし、全力を尽くす所存です。そして、国民の代表である国会での御議論を始め、様々な御意見に真摯に耳を傾け、先任のお二人の人事官と協力しながら、重責を果たしてまいりたいと思います。

 以上、簡単ですが、私の所信を述べさせていただきました。

 このような場をいただき、大変ありがとうございます。

山口委員長 ありがとうございました。

 次に、山中参考人、お願いいたします。

山中参考人 山中伸介でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 二〇一七年九月に原子力規制委員会委員を拝命する前は、大阪大学におきまして、三十年余り、核燃料の安全性についての教育研究に携わってまいりました。十一年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故は、長年原子力に携わってきた者として、痛恨の極みでございます。なぜあのような事故を防ぐことができなかったのか、現在も大いなる後悔と反省の気持ちを持ち続けております。

 委員に就任後は、原子力災害を二度と起こさないという決意の下、原子力発電所の新規制基準適合性審査や、令和二年四月に施行されました新しい検査制度の運用などに当たってまいりました。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓に基づき、独立した規制機関として設立され、独立性、透明性に十分配慮し、規制活動を行ってきました。初代の田中委員長も、現在の更田委員長も、事故への深い反省と福島への強い思いを片時も忘れることなく、委員会運営を遂行してこられました。私も、このような原子力規制委員会としての基本姿勢を堅持し、継承してまいりたいと思っております。

 続いて、原子力規制委員会の目下の重要課題についてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、東京電力福島第一原子力発電所では、現在も厳しい廃炉作業が続いております。汚染水の処理や使用済み燃料の取り出しなど、現場の努力もありまして、作業は徐々に進んではおりますが、ALPS処理水の海洋放出を含む液状の放射性物質の処理、廃炉の進捗に伴い発生量が増加しております固形状の放射性物質の管理など、リスクの低減に向けた課題が山積しております。原子力規制委員会として、様々な廃炉作業が安全に進められるよう監視を行うとともに、廃炉プロセスの現状とリスクについて、できるだけ正確に分かりやすく国内外へ情報発信する努力を続けます。

 また、原子力発電所や核燃料施設の新規制基準適合性審査については、そのプロセスの透明性を保ちつつ、科学的、技術的な根拠に基づき、厳正に進めてまいります。原子力施設の継続的な安全性向上は、規制当局はもとより、事業者においても主体的に追求すべきことです。新たな知見をいかに速やかに原子力施設の安全性向上につなげることができるのか、原子力規制委員会は、透明性を保ちつつ、公開の場で事業者との対話を進めてまいります。

 そして、これらの事業全体を通じ、現場重視の姿勢を貫いてまいります。新型コロナウイルス感染症流行以前には、私も、ほぼ一か月に一度、関係する原子力施設の現地に赴き、発電所の現場の視察、検査官との対話を行ってきました。また、その際には地元の皆様との対話にも努め、原子力施設の現場を見ること、地元の皆様とお話をすること、私にとってこれらは貴重な機会であり、引き続き大切にしてまいります。

 原子力規制委員会が発足して十年を迎えようとしております。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を風化させてはいけません。原子力規制委員会、規制庁職員の士気を高く維持し、皆が使命感、責任感を持って規制業務を遂行できるよう、組織運営にも十分留意してまいります。そのための人的基盤として、原子力規制に携わる職員の能力向上や日本全体の規制人材育成にも注力いたします。

 私が原子力規制委員会委員長を拝命した場合には、他の委員、原子力規制庁職員と協力し、原子力規制委員会設置法にのっとり、独立性と透明性の確保を基本とし、原子力に対する確かな規制を通じて人と環境を守るという規制委員会の使命を果たすために全力を尽くしてまいる所存でございます。また、原子力規制委員会が国内外から信頼される規制機関となれるよう、委員長としてリーダーシップを発揮してまいります。

 どうもありがとうございました。

山口委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 山中参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより伊藤参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 伊東良孝君。

伊東(良)委員 おはようございます。自由民主党の伊東良孝でございます。

 今日は、人事官候補者であります伊藤かつら参考人に御質問をさせていただきたいと思います。

 二年余になるコロナ禍の中で、国も地方も問わず、特に公務員は大変な御苦労をされてまいりました。ほとんどの公務員は、国民のため、また地域のためということで、日夜を分かたず、一生懸命働いているところでございます。

 しかしながら、一方で、国家公務員倫理規程違反や、あるいは汚職と称される事件、情報漏えい、悪質交通事犯、犯罪等々の多発が見られるところでもございまして、公務員としてあるまじき犯罪が多数起きていることも事実であり、真面目に働く多くの公務員の失望と士気の低下、さらには国民の皆さんからの信用失墜をもたらしているところであります。

 人口減少、少子化の進展の中で、近年の公務員試験の応募者も減少が報告されているところでありますが、その背景につきまして伊藤参考人はどのように捉え、分析されておられるのか、また、優秀な人材の確保の観点からどのような対策を講じられようとするのか、お聞きいたします。

伊藤参考人 二点、ポイントがあったかと思います。

 まず、倫理教育の方をお答えいたします。

 公務員一人一人が国民全体の奉仕者として高い倫理観や使命感を持ち、日々の職務に取り組むということが不可欠だというふうに考えます。

 非違行為に対しては厳正に対処することが重要でございまして、人事院は、公務員の不祥事に対して厳正な対応が行われるよう、各府省に対して必要な指導を行うことが重要です。常にルールの周知徹底を行う、これがまず一番でございます。

 ただ、これだけではなく、倫理やコンプライアンス、こういったものの基準というのは時代情勢とともに複雑に変化しているということを意識する必要がございます。例えば、ハラスメントですけれども、これはどんどん基準が変わっております。

 ですので、世界の基準を意識して取り入れる、随時アップデートしていくという必要があります。研修内容などの適宜更新ということも必要でしょうし、このような中で、迷ったときにまずは相談する窓口、通報窓口は今もありますけれども、相談する窓口、それから、相談することは悪いことではないという認識をつくり上げていくというのは一つ有効な方法かなと考えます。

 二番目、人材確保でございます。

 国家公務員は、国民全体の奉仕者としての使命感や気概を持って公務に当たる人物、それからさらに、行政官として所管行政に関する高い専門性と倫理感覚、国民感覚が求められます。

 国家公務員採用試験の申込者数は若年層の人口減少を上回る減少を見せておりまして、離職者も増加しているように存じております。デジタル人材など専門的な知識を持った職員の不足など、人材確保は喫緊の課題であると承知しております。

 人事院においては、インターネットを通じた情報発信の強化など様々な取組が行われています。同時に、民間人材の活用、官民の人材交流、任期付の採用、経験者採用などの様々な取組を広げていくと同時に、公務員自らが自分の仕事の意味、費やしている時間に対しての成果、成長を実感できる仕組みや組織風土を醸成していく、これによって、この組織に入りたい、その組織の中で長く活躍できる、こういう組織をつくっていくことが重要かと考えております。

伊東(良)委員 ただいまのお答えにも若干触れるところでありますけれども、採用後の国家公務員の倫理教育やあるいは人間教育、社会人としての教育はどのように行っておられるのか。

 また、昨今、若手職員の退職者が多く見られると聞いているところでありますが、その実態と原因についてお伺いするものであります。

伊藤参考人 まず、若手職員の教育でございますが、様々な仕事、時には、少し背伸びをしたようなアサインメント、よくストレッチアサインメントというんですが、そういう経験をしていただくことで、いろいろなスキルが身についていくのではないかというふうに考えております。

 一方、若手の退職者増加ということでございますけれども、これは大変深刻な事態だというふうに考えております。辞める方に伺ってみますと、専門性や実務能力が身につかないとおっしゃっている方が多いそうでございます。国家公務員は、高い視座を持ったり、政策に近いところでお仕事ができる、文章に落とし込むですとか説明能力といった能力はついていますが、明示的に指導されることが少ないようですので、御本人に成長の実感が湧かないのではないかなと感じております。

 非常に重要なのは、上司の方との信頼関係の中で、成長に向けて建設的なフィードバックをいただくということ、それから、キャリアプランを基に、他部署、他府省、民間での様々な経験を積むといった人材育成の仕組み、ここは注力してやっていくことが必要だろうというふうに考えます。

 公務でも民間でも、組織の基本は人でございますので、共通の部分があるとも思いまして言わせていただきますと、一般には、組織を離れる最大の原因は直属の上司と言われております。ですので、幹部、管理職は、若手のやる気や満足度、成長を促すことに重要な役割を持っていることを認識し、適切な人事評価とフィードバックの能力など、まず、管理職の皆様が新しいスキルも得ていく必要が、若手の育成、それから離職防止に役立つと考えております。

伊東(良)委員 今回、人事官三人のうち二人が女性ということで、すばらしい例であろうと思います。女性活躍は我が国の重要課題の一つでありまして、今後は更に女性の採用、登用について取り組むべきだと考えますが、どのような取組をお考えでしょうか。

伊藤参考人 女性活躍ですが、まず採用の方から申し上げますと、採用における女性比率は、令和二年度で、総合職三五・八%、一般職、大卒程度で四〇・七%と、年々増加しているそうでございます。ただし、一方、役職段階で見ますと、平成三十年度の本省課室長相当職で、目標七%に対して実績五・三%と、まだ差がございます。

 女性活躍には、女性の採用だけではなくて、育成、登用が重要でございます。そのためには、女性職員の育成という、今まで多くの男性管理職が経験してこなかった新しいスキルを取得していただく必要がございます。現在の職場には、長年の男性主体の組織でつくり上げられてきた様々なルールや暗黙知があり、これが女性の登用や上を目指す意欲を阻害しているというふうに言われております。

 男性、女性問わず、新しい働き方の価値観、違いを受け入れる文化、公正な評価と処遇といった多方面の施策が必要であろうと考えております。

伊東(良)委員 今お話しのように、女性の労働環境、職場環境だけでなくて、育児あるいは勤務時間等々も考慮する必要があるというふうに考えます。

 御経験を踏まえて、どうあるべきと思われるか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

伊藤参考人 女性の労働環境ということかと思いますが、何といっても、まずはテレワークかなと思います。

 首都圏で平均二時間と言われる通勤による時間的、肉体的負担の軽減、時間の効率的な利用、仕事と家庭生活の両立の支援などの観点から、女性の労働環境として、女性だけではございません、女性、男性共に、労働環境として大変に効果的というふうに認識しております。私自身の経験でも、育児中の方が、男性、女性問わず、テレワークですとかフレックス勤務、こういったものを活用して仕事との両立を図っておられることを実際に拝見しております。

 また、ある企業では、働き方改革ということを推し進めることで、女性の離職率が四〇%下がったそうでございます。

 こういったことも参考にしながら、働きやすい労働環境というのは女性の活躍に直結するという考えの下、きちっとした施策を打っていきたいと思います。

伊東(良)委員 それに関係ありますけれども、男女共同参画社会の実現のために、男性による育児を推進することが重要だと近年言われております。

 男性の育児休業取得率はまだまだ低い状況にありますけれども、男性が育児休業を取りやすくするために今後どのような取組をなされていくのか、必要だと思うのか、お聞かせをいただきたいと思います。

伊藤参考人 男性による育児を推進することは、男性の人生を豊かにする観点のみならず、女性の活躍促進のためにも重要であると考えます。

 現在、政府においては、国家公務員を含め、男性の育児休業取得や育児参画を促進するための取組が推進されており、近年、男性職員の育児休業取得率は民間と比べても着実に増加しているように聞いております。

 しかしながら、女性職員はほぼ全員が育休を取得しておりますが、そこと比較しますとまだまだ低い水準にあり、何よりも休業期間が短いということから、女性の育児の負担が重いままであるという実態があるというふうに認識しております。

 今後、男性職員が育児休業を取りやすくするためには、男性職員が育児休業を取得することに関する職場の意識改革が重要であります。特に、組織の管理者は、部下の男性職員が育児休業を気兼ねなく申し出られる雰囲気を醸成するとともに、休業中の業務のバックアップ体制を整備する必要があるというふうに考えております。

伊東(良)委員 伊藤人事官の活躍を心から御期待申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

山口委員長 次に、森田俊和君。

森田委員 立憲民主党の森田でございます。

 伊藤様、よろしくお願いいたします。

 先ほど、所信の中で、人事の御経験もあるというようなお話が出ておりました。具体的にどのような業務に携わっておられたか、その辺りを御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

伊藤参考人 実は、人事というと、人事という組織と役割があって、そこが全てをやっているというふうに皆さんお考えがちなんですが、実は、民間においては、人事というのは本当に小さくて、実際のビジネスの組織そのもの、その組織長が人事的なことをやっているというケースが多うございます。

 そういう意味では、私、三十代半ばぐらいでしょうかに初めて管理職になったときから、その人材管理、人事の仕事をやっておりました。特に、四十を過ぎてからは、組織のパフォーマンス、よい仕事をするためには、組織の風土であったり、評価、コミュニケーションであったり、カルチャーであったり、こういうことが非常に重要だということを考えるようになり、より時間を使うようになりました。そして、直近の五年では、日本のいろいろなお客様に対して、デジタルをどう使いこなすのか、デジタル人材をどう教育して育てていくのか、それから人材開発、カルチャー改革、こんなようなお話を日本のいろいろなお客様と検討させていただいてまいりました。

森田委員 民間ですと、例えば超過勤務をしていたような場合には、労働基準監督署があったり、あるいは労働裁判に発展するようなケースもあると思いますが、人事院が、労働環境を、適切に行われるようにするということについての果たすべき役割というものをどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

伊藤参考人 組織の基本は人でありまして、人が意欲を持って生き生きと働けるように、組織は常に配慮が必要だと思っております。

 特に、人事評価が重要でございまして、人材育成、組織改革のための重要な施策であり、職員の士気を高め、組織能力を維持向上していくため、職員の能力、実績を的確に把握し、その結果の任用、給与等への反映が重要だと考えております。

 また、テレワーク等の推進により多彩な働き方を可能にすること、効率を高めるための業務プロセス変革、PCとかネットワークとか様々なデジタルツールなどによる業務効率化の支援といったような様々な施策を通じて適切な勤務環境を実現し、人が意欲を持って生き生きと働き続けられる環境をつくりたいと考えております。

森田委員 ありがとうございます。

 内閣委員会で、この後、給与法だとか育休法なんかもやるんですけれども、その法案の審議もやるんですが、超過勤務が大分大きな問題となっております。

 先ほど、所信の中で、データと現場というようなお話がございました。

 おっしゃるように、公務員の現場のことを見てみると、例えば、タイムカードとか、あとはログインの記録であったりだとか、そういういわゆる民間で普通に労務の管理として行われているものがまずそもそもないというような現場があるということと、それから、たとえそれが機能していたとしても、ログアウトしてしまって、そこからまた更にサービス残業をする、こういうような、要するに、データだけではなくて、現場で何が行われているのかというのを見ないと本当に適切に公務員の皆さんの現場というものを把握することができないという意味では、先ほどの所信の中のお言葉というのは非常に大事なキーワードじゃないかなというふうに思っております。

 その辺りについて、もう少しお考えを御披露いただければと思います。

伊藤参考人 最終的には、時間や場所にとらわれずに仕事ができ、その成果を適正に評価される、これが理想でございます。もちろん、職員の健康保持ですとか人材確保の観点から、長時間労働を是正すべき必要があるというのは公務も同様というふうに考えます。

 超過時間の上限時間の設定ですとか健康確保措置、それから残業手当支払いのための予算化など、確実なステップが少しずつですが進んでいるのかなという印象を持っております。

 同時に、デジタルを使用していかに業務を効率化するか、また、長時間労働の原因の一つである国会対応の業務の適正化に向けて国会への御協力のお願い、生産性向上への意識改革などを引き続き実施してまいりたいと思います。

森田委員 国会対応は気をつけたいと思います。

 先ほど、学びと成長というようなお話がございました。その後に、世界最高の行政サービスを目指すと。これは、私、とても大事なことじゃないかなと思っています。

 要するに、例えば、コピーを取るにしても簡単な文章を打つにしても、これが結局は世界最高の日本の国としての行政サービスをつくっている一つのプロセスなんだ、こういう認識があれば、単なるコピー取りだとか単なる文章作りだとかということにならない、意義、役割というものをそこに見出すことができるというふうに思っておりまして、そういった意味では、先ほどの世界最高のサービスをイメージしたような学びと成長というのはとても大事なことだと思うんです。

 是非、ちょっとその辺りの具体的な取組についてのお考えをお聞かせいただければと思います。

伊藤参考人 まずは、若い世代が生き生きと働けるということが重要だと思っております。

 先ほどお話ししたようなフィードバックですとかキャリアプランですとかということ以外に、若い世代に期待して任せるようなプロジェクトがどんどんあっていいのではないかと考えます。

 それから、職員の採用年次などにとらわれず、能力、実績に基づく人事管理が行われ、場合によってはファストパス、ファストトラックのような昇進というのがあってもいいのではないかなと思っています。

 そして、キャリアというのは一方通行ではなく、ライフステージは人それぞれでございますので、そのときそれぞれに自分が一番国に貢献できる仕事をできる、そういう場であることが重要だというふうに考えます。

森田委員 最後に、先ほどもありましたけれども、離職率、特に、若い方の離職率が高いというようなお話がございます。具体的に、離職率を抑えるような取組、こういうものがアイデアとしてあるんじゃないかというものがあれば御披露いただいて、私の質問を終わりたいと思います。

伊藤参考人 若い方の価値観は私どもの世代の価値観とは違うということをきちっと理解することが重要だと思います。

 その上で、何のためにこの仕事をしているのか、この仕事が国の大きな方向とどういう関わりがあるのか、仕事をする意義、そこをきちっと理解していただくことが重要ですし、もちろん、適正な評価、報酬といったものが伴う必要がございます。

 そのためには、やはり、私ども世代が生まれ育ったときの、一生懸命働いていたあの働き方を是とするのではなく、これからはどういう働き方がいいんだろう、どういう組織がいいんだろう、もっと言えば、どういう国がいいんだろう、こういう夢を持って働く姿というのが若手に対しても非常に意味があるというふうに考えます。

森田委員 大変有意義な、具体的なお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

 質問を終わります。

山口委員長 次に、奥下剛光君。

奥下委員 日本維新の会の奥下剛光です。

 伊藤さんにおかれましては、長年お務めのマイクロソフトでの執行役員始め、社外取締役をお務めで、今回の任命に当たって全てを辞職されるということで、多くの立場をなげうって国のために御尽力されることに心から敬意を表しますとともに、御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 では、早速質問に移らせていただきます。

 公務員組織の特殊性についてお尋ねします。

 昨年発覚した国土交通省の建設統計調査の不適切処理は、大変残念な事案でありました。検証委員会は、背景として慢性的な業務過多を挙げていますが、特に、所属人員の数の問題ではなく、必ずしも十分に業務を遂行できない職員も配置されていた結果、一部の職員に業務が集中していたとの指摘は見逃せない問題だと感じております。意欲や能力の低い職員をそのままにしておくことは、周辺職員のモチベーションの低下にもつながります。

 候補者は、民間の企業経営の経験をお持ちです。公務員組織の特殊性を踏まえつつ、しっかりと働ける人員をいかに確保、育成していくのか、候補者のお考えをお聞かせください。お願いいたします。

伊藤参考人 私自身、民間での仕事であったり経済同友会の活動などを通じて多くの国家公務員の方とお会いしてまいりましたが、どなたも高い専門性と倫理観を持って公務に当たられているという印象を持っております。ただ一方、人間の常として、やすきに流れるということがございますので、これを避けるために、まずは公正な評価、処遇、そして常に評価をフィードバックする。このフィードバックという仕組みが、今存在していないように思います。

 これは別に公務だけではございません。日本そのものが、今まではずっと成長で来ましたので、みんなで頑張って働ければよかったんですが、今は、いろいろ改善しながら、成長しながら、工夫しながらやらなければいけない時代であります。ですから、きちっとフィードバックをして自覚をしていただく、そして本人の自覚ややる気を引き出して成長を促すということが重要だと思います。

 また、管理職、マネジメントにおいては、部門全体の業務量を正しく把握し、適切な業務配分と効率化、それから優秀な方への処遇の適正化といったことをするべきであり、そういう意味では、管理職の役割というのも非常に大きいというふうに考えます。

奥下委員 審査事項の一つに、一般職の国家公務員の給与に関する勧告、報告の策定がありますが、しっかりした人材確保のために大企業の給与基準を参考にされているようでして、倒産のリスクがないことや、国の仕事ですから大きなやりがいもある、今回のまさに伊藤候補者のような志を持って皆さん臨まれているはずなんですけれども、そういった観点から、基準はもう少し下げていいのではないかと考えていますが、候補者のお考えをお聞かせください。

 また、どんな組織でもそうですけれども、責任というものが必ず付随してきます。公務員の責任感についてどのようにお考えか、併せてお聞かせください。

伊藤参考人 国家公務員の給与の在り方については、時代の変化に対応しているかどうか、絶えず検証していくことが重要でございます。

 人事院の職種別民間給与実態調査では、職種のほか、役職段階、年齢などの主な給与決定要素を同じくする者同士の給与と密接に比較を行うことで適正な給与基準を勧告しているというふうに理解しております。

 そして、特に、給与基準だけではなく、職務、職責、そして公正な人事評価による処遇というのが重要だと思います。先ほどの責任感ということもここに入るのであろうと思います。責任感を持って正しくいい仕事をしていただいている方がきちっと評価される、ここが重要だと考えます。

奥下委員 ありがとうございます。

 まさに、責任感、これがどんな組織の活性化にも必要なことだと思っております。議会の議決であるとか、総理とか内閣の判断の以前に、そういった一人一人の責任感、これを持って職員の方に臨んでいただきたいところだと思うんです。

 今お答えいただいたように、適切な基準であるということなんですけれども、ここは、シンガポールの公務員のように、もっときちんと評価されるべき人が評価されて、数千万プレーヤーという公務員の方が出てきてもいいんじゃないかなというふうに考えておりますので、どうぞ、今後、組織に流されることなく、今おっしゃっていただいたような経験を踏まえてきちんとお仕事をしていただきますようお願いして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一と申します。

 今日は、伊藤人事官候補者におかれましては、様々な今回の国会での質問ということに丁寧にお答えいただいているなというふうに思っております。経歴を拝見しても、また、私は四番目の質疑者なんですが、もう既にかなりの御経験と自信と、あとは意欲といいますか、今後の方向性についても、他の委員の質問を聞きながら、私自身、大変適任の方だなと思いながらやっておりましたので、質問は二問だけにしたいというふうに思っております。

 一つは、今、人事院の方でテレワークとかフレックスの推進案を考えられておりまして、これは非常に重要なことだと思っております。

 例えば、大学生はテレワークが何日あるかで就職先を決めたりということでございまして、本当に時代は変わったなということでございます。ただ、日本の制度は、上司からの職務命令を受けて初めて在宅勤務ができるという制度で、非常に遅れているということでございます。また、フレックス制もなかなか導入されていないということでございますので、これを是非早速実現していただきたいと思っております。

 特に、外資系出身の人事官候補でございますので、その辺りは十分お分かりと思っておりますので、柔軟な働き方、特にこの推進案を是非進めていただきたいと思いますが、その辺りの御所見をまずお聞きさせてください。

伊藤参考人 国家公務員が意欲を持って生き生きと公務に取り組めるという環境が質の高い行政サービスにつながる、それがひいては国民の信頼を得るというふうに考えております。

 おっしゃっておりますように、テレワークの推進は非常に重要なポイントでございます。ただ、これを広げていくためには、様々な規則の変更が必要であるというふうにも伺っておりますので、今やっております有識者研究会での御検討状況を伺いながら、着実に案を練っていきたいというふうに思っております。

 そして、もう一つは、デジタルスキルの教育でございます。

 先ほど、若い方が、実効感がない、言われたことをやっているだけで自分が何をやっているか分からないということがありましたが、デジタルの世界は若い方が有利でございますので、このデジタルスキル教育を通じて、皆さんが、特に若い方が中心となって、業務改革、業務の効率化、こういうことを進めていただく機会を御提供できればいいかな、皆さんのモチベーションのアップにつながるのではないかと考えております。

 それから、特に管理職の意識改革、これが非常に重要と考えております。リーダー自らが、学び、成長し、変化する、この姿勢を示していくことが重要だと思います。

浜地委員 ありがとうございます。

 しっかり働き方改革を推進いただきたいと思っています。

 最後に、技術系職員の確保についてお聞きをしたいと思っております。

 技術系の皆様方は、非常にやはり、重要ポストが少なかったり、また、持っていらっしゃる能力に比べてどうしても公務員のお給料というのがそんなに高くないという現状があります。特に、伊藤さんは、外資の中において、こういった技術系の職員の重要さは十分お分かりだと思っているんですね。

 例えば、防衛省だったら、サイバー人材を今回採りました。しかし、これは、国会法の規定で、いわゆる一般の公務員の皆さんは、国会議員の給料を超えられないから、二千万程度が限度なんですね。果たして二千万円で、これまで伊藤さんがおつき合いされてきた、特にDXの高度人材が来るのかなと。それを是非御提案いただきたいと思うんですね、人事官になられたら。それは、当然、国会法を我々は変えなきゃいけません。一部の優秀な人材については我々の給与を超えていいんだという改正をしなきゃいけないんですが、その必要性をやはり思い切って伝えていただくことも必要だと思っております。

 ちょっと一つの例でございましたけれども、こういった、本当にこれから必要となる高度な技術職員の確保について、最後に御見解をお聞きしたいと思います。

伊藤参考人 おっしゃるとおり、例えば、シリコンバレーでは、AI人材の初任給がまさにウナギ登りというふうに、恐ろしい金額になっております。

 高度人材を確保するに当たっては、もちろん、今の現行制度においても、任期付職員法に基づいて採用する場合に、その専門性や業務の重要度等に応じて重要な決定を行うことが可能になっているものとは承知いたしますが、世界情勢を見ながら、この厳しい人材確保競争の中で、国として重要な人材を採用していくことは大変重要だと思っております。

 ただ一方、技術者の話を聞いておりますと、給与だけが全てではないんですね。やりがいとか成長性とか自分ができること、こういうことに意義を感じる技術者というのもたくさんいらっしゃいます。

 やはり、人事院としては、こういうことをきちっとメッセージしながら、全体観を持って、バランスを取りながら施策を打っていきたいと考えております。

浜地委員 是非、人事官に就任されましたら、お力を発揮していただきますようお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野でございます。

 これより質問をさせていただきたいと思います。

 伊藤候補者は、これまで、民間企業の中で非常に多くの御経験をされてきていると伺いました。これまでの質疑の中でも、本当にいろいろなことを経験されて、それに裏打ちされた御自身なりの価値観をお持ちだというふうに感じたところでございます。

 そこで、まず最初に、大きな視点から聞きたいんですけれども、やはり、今回、人事官ということで、見るべき対象は公務員ということになります。これまで、民間企業、特に外国資本の企業の中で業務に当たられてきた御経験があると思うんですけれども、民間企業と公務員、その人事ですとか人材開発という視点で違いがどういうところにあるのかというのを候補者御自身の視点で少し御開陳いただければと思います。

伊藤参考人 民間のビジネスと申しますのは、貴重な資本を元にリターンを求めるということで成立しております。資本市場ですとか金融市場、税、法律など、様々な規律がございます。結果を厳格に問われて、失敗すれば存続することはできない、これが民間でございます。

 官は、民主主義に基づいた運営でございます。税金を元に、国民全体の奉仕者として運営されます。国家公務員は、その中で、厳正な服務規律、それから職務の公正性に対する高い倫理観が求められるほか、労働基本権が制約され、給与などの勤務条件の決定方法が異なるなどの特殊性がございますので、そのような特殊性を踏まえた人事制度が構築されているものというふうに考えます。

 特に、人事評価において、評価を公正に行い、的確にフィードバックをするということが非常に重要であるという点では民間と共通する部分ではございますけれども、民間に比べて業績目標の達成度合いを測りづらいという性質がある、それから、長い年にわたる業務が多いということから、なかなか誰が責任者なのかという、無責任体質になりやすいというリスクもありますので、この辺もきちっと踏まえた評価、それから処遇ということが大事だというふうに考えております。

浅野委員 ありがとうございました。

 今お答えいただいた内容から、先ほどまでも議論もございました、例えば、職場における上司と部下の関係ですとか、特に管理職の意識改革というところに触れられていたんだろうというふうに思うんですけれども、私も以前民間企業で勤めておりまして、同様に、やはりマネジャー、管理職の意識というものが大きく職場内では影響するということを身をもって経験してまいりました。

 幸い、私の場合は、よい上司に恵まれて、非常にやりがいを持って働くことができたわけですけれども、上司、管理職の意識改革というのは、やはりそれほど簡単ではないと思います。

 そういった点で、候補者がそういったところに御意識を持たれていることは非常に期待を持っておるわけですが、どのようにやっていくのか、これまでの御経験も踏まえて、何らかの考えを御開陳いただければと思います。

伊藤参考人 管理職の業務成績といいますか業務評価の中に、組織をつくれているかどうか、部下を成長させているかどうか、それから、その組織のやる気、こういったことを管理職の中の業務評価に取り入れていくというのがまず非常に重要だというふうに考えます。

 その方たちは、もちろん一人の個人として、職員として優秀であったから管理職に皆様なられたんだと思うんですが、管理職であるということと一個人の公務員として優秀であること、これは別のスキルでございます。

 管理職になったときに、業務全体を把握してリソースを配分するですとか、部下に正しいフィードバックをするですとか、やる気を引き出すという、今まで、現場の担当者では知らなかったようなスキルを身につけていただく必要があるんですね。それをきちっと規定して、その評価指標の中に入れる。上司からのコーチングとよくいうんですけれども、コーチングのようなものも通じながら、きちっとした指標を入れてやっていくことが重要だと思います。

 特に、正しいフィードバックをしていくためには、このコーチングのスキルというのが世界的にも大変重要視されておりまして、今までのように、これをやれと言うだけでは人が動かない時代になってきましたので、管理監督職にある方たちには是非こういったコーチングということも学んでいただきたいと思っております。

浅野委員 是非そういった職場環境になることを私も望んでおります。

 次は、少し視点を変えまして、これまで若い方々に対する御見解は伺いましたけれども、一方で、今、公務員の皆様も六十五歳に定年を段階的に引き上げております。

 これからは、少子高齢化社会の中で、やはりベテランの公務員の方々の能力発揮の環境整備についても重要になってくるのではないかと思うんですが、この視点について、お考えを伺いたいと思います。

伊藤参考人 平成三十年に、国会及び内閣に対して、定年を段階的に六十五歳まで引き上げるための国家公務員法の改正について意見の申出が行われたと承知しております。これを受け、令和三年に同法の一部改正法が成立したと承知します。これにより、役職定年制、給与水準の再設定などもなされると聞いておりまして、これはよく民間でやられている方法と一緒なんですが、こういうことにより、公務の組織活力を維持しつつ、定年の引上げが可能になったと認識しております。

 ポイントは、幾つになっても人は学べるし変われる、ここだと思います。ですので、中高齢職員の皆様が常に学び続ける、今までの豊かな経験を基に常に学び続けるということが、皆様の豊かな御経験をそのまま生かしていただく方法になると考えます。

浅野委員 最後の質問になります。

 今度は、ちょっと地方自治体のDXについて伺いたいと思います。

 候補者は、これまで金沢市のDX推進に関わる外部委員もされてきたという御経験がありますが、やはり、ウクライナ情勢も踏まえれば、デジタル庁もできて、これからDXを進める中でも、サイバーセキュリティー対策というのは非常に重要な課題になっていくと思います。そのためには、やはり公務員自身の意識改革が必要なわけですけれども、これまでの御経験を踏まえて、地方自治体のDXに向けた課題認識、お考えがあれば、最後に伺いたいと思います。

伊藤参考人 約一年間、DX会議の外部委員として、地方自治体の首長さん、職員の皆さん、有識者の皆様と大変有意義な活動が、討議ができたと思います。

 その中の提言では、例えば、職員の働き方を改革するスマートワークの実践ですとかスマートシティーのデータ連携基盤などデジタル化を実現するための環境整備、もちろんセキュリティーなんかもここに入ってまいります、それから、デジタル化の進捗を図るための評価指標の設定、こういうことをやってきました。

 その結果、市役所の皆さんが非常に頑張って活動なさいまして、行政手続のオンライン化率一〇〇%、コピー用紙の五〇%削減、それから、最新技術の活用による労働時間の削減九千七百時間、デジタル推進リーダー四十名の育成、こういった成果があったというふうに聞いております。

 何よりも、自治体の皆さんが、自分たちの力でDXができるという自信を持っていただいた。そのことにより、より市民目線の質の高い行政サービスが提供できるということに気がつき、自信をお持ちになった。これは本当に、拝見していても楽しい経験でございました。

 サイバーセキュリティー、とても怖いものでございますが、やはりここも基礎的なスキルが基になります。例えば、入ってきたスパムメール、ちょっとでも怪しいと思ったら開けない、こういうのは基本的なITの知識でございます。こういうIT知識をきちっと教育していくことが重要だなというふうにも考えます。

浅野委員 ありがとうございました。

 終わります。

山口委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 伊藤かつら参考人、今日はありがとうございます。

 最初に、人事官の仕事に求められるものということでお尋ねします。

 公務員は、憲法で全体の奉仕者と定められ、職務の遂行に当たっては中立公正性が強く求められます。このため、国家公務員法に基づき、人事行政に関する公正の確保及び国家公務員の利益の保護等に関する事務をつかさどる中立第三者機関として設けられたのが人事院であります。最も重要なのは、公務員の労働基本権制約の代償機能としての役割です。

 人事官は、こうした人事院の役割を自覚して、政府から独立して、中立の立場で職務を遂行することが求められているのではないでしょうか。

伊藤参考人 公務の民主的、能率的な運営を保障することを目的とした国家公務員法において、おっしゃるように、人事院は、中央人事機関として、国民全体の奉仕者として、公務員の人事制度運用の公平性の確保、労働基本権が制約されている職員の利益保護という、憲法に由来する重要な役割を持っているというふうに認識しております。

 公務員の人事行政の中立公正性の確保として、内閣の所轄の下に独立性の高い中立的第三者機関としての人事院が設置されており、任免の基準の設定、採用試験、研修などを実施しながら、公務員が不偏不党、中立公正の立場で能率的に公務を遂行していくことを可能にしていくものというふうに承知しております。

 私も人事官としてこの責任を負うものということを理解しております。

塩川委員 先ほどの質疑で、公務と民間の仕事の違いのお話がありました。民間は、リターンを求める、利益、利を求める、公務は、民主主義に基づき、全体の奉仕者として中立公正が求められると述べられました。

 そこで、お尋ねします。

 二〇〇〇年以降、官邸機能強化の下で、政権中枢の内閣官房や内閣府において、民間企業から出向してきた人が非常勤の国家公務員として勤務し、重点政策の企画立案を行っている事例が増加をしています。民間企業出身者の方が、非常勤ということで、その身分のまま公務で仕事をする。

 人事院が所管する官民人事交流法では、出身元企業の業務に従事することや給与補填を禁止するなど、公務の公正性を確保するための規制を定めています。一方、非常勤職員は、兼業が可能だということを理由に、出身企業からの給与補填を容認しています。

 公務で得た給与よりも、出向元企業から得る給与の方が多い場合もあり得ます。これでは、誰のために仕事をしているのか、公務の公正性に疑念が生じることになりはしないのか、この点についてのお考えをお聞かせください。

伊藤参考人 非常勤職員に民間企業出身者を採用する場合には、公務の公正性を確保し、官民癒着等の疑念を抱かれることのないようにする必要がございます。非常勤職員についても、国家公務員としての各種服務規律が課されております。各府省において、服務規律を遵守させるとともに、職員の配置や従事する業務等に十分配慮するなど、適切な運用を図るよう、人事院としても引き続き制度を周知徹底していくことが必要であると考えます。

 また、非常勤職員についても公務の公正性を確保する必要がございますけれども、兼業として民間企業の業務に従事した場合、その勤務の対価として給与を受け取ることがあり得るのではないかということを考えます。非常勤職員については、勤務時間等において常勤職員との性格に違いがあることから、兼業等の取扱いについても違いが生じているのではないかなというふうに思いますが、いずれにしても、公平性それから透明性ということが重要であるということを承知しております。

塩川委員 官民人事交流法でいろいろ規制があるのに、非常勤というだけでそれが適用されない、そこは問題はありはしないのか。

伊藤参考人 そこは様々な御意見があろうかというふうに理解しております。また、同時に、例えばデジタル人材のように、ある特別な技能を持った方たちの力が公務として必要だ、これも事実でございます。ですので、様々な意見を伺いながら、先任の二人の人事官とも御相談しながら検討してまいりたいと思います。

塩川委員 その点で、新たに六百人で発足したデジタル庁は、民間企業在籍者がその身分のまま非常勤職員として二百人勤務をしております。デジタル関連の委託事業でも、一者応札、随意契約ばかりとなっているなど、不透明な契約が問題となっているときに、デジタル事業の企画立案、総合調整を担うこういったデジタル庁、民間企業在籍者が多数勤務しているのでは、官民癒着が問われることになりはしないでしょうか。

伊藤参考人 官民癒着はあってはならないことですので、そのような非常勤の国家公務員の採用に当たっては、それぞれの担当の府省がきちっとしたルールを設定しているというふうに理解しておりますし、人事院としても、そのルールが徹底されているのかどうか、常に気にしていく必要があるというふうに考えます。

塩川委員 最後に、岸田総理は、経団連始め経済団体に、三%を超える賃上げを要請しています。その一方で、公務員については、マイナス人勧を踏まえた賃下げを行おうとしております。

 民間に賃上げを求めながら、参考人もおっしゃったように、コロナ禍で果たすべき役割は一層増していると述べている公務の賃金を引き下げるというのは大きな矛盾ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

伊藤参考人 公務員の給与基準というのは、その年々の情勢に合わせてきちっと調整されるべきであると考えます。

 今回の賃下げというのは昨年の人事院勧告に基づいたもので、六月のボーナスで、承認されれば適用されるというふうに伺っておりますが、また次の人事院勧告には、当然、その時々の情勢というのを反映することが重要であろうと考えます。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

山口委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

盛山委員 自由民主党の盛山正仁でございます。

 ほかの委員からも御発言がありましたが、民間の地位を投げ捨てて、きっと処遇がダウンされる公務に就任していただけるということに、心からまず感謝、御礼を申し上げたいと思います。

 今日の所信の中で御発言のありました、世界最高水準の公務員制度というんですかね、こういったものを求めていきたいという発言、本当にすばらしい、ありがたい発言だなと思います。

 私は、民間のことは余りよく分かりませんが、公務員の世界に三十年近くおりました。そんな中で、公務というのも、本当に私が見ているのはごく一部ということでありまして、霞が関だけではなく、日本全国、大変幅が広く、たくさんの方がいらっしゃるわけでございます。

 そういうようなところに、多くの方々に、今、公務員が劣化している、人気がなくなっているというところをどのように質を上げていくことができるのか。イギリスやアメリカやフランスや、各国との比較も含めて、どうすれば魅力のある職場、公務員制度にしていくことができるとお考えなのか、御意見を述べていただければありがたいと思います。

伊藤参考人 まずは、何といっても、働いていらっしゃる公務員の方たちが、自分の仕事に意味を感じ、生き生きとやりがいを持ってお働きになっているか、ここが重要だと思います。

 そのためには、長時間労働というのは避けなければいけませんし、正しいフィードバック、それから成長の機会というのも重要だというふうに考えております。

 今御提案のありました、各国がどういうことをやっているかということも、仮に人事官に任命いただきましたならば、よく精査して、是非参考にしたいというふうに考えます。

盛山委員 ありがとうございました。御活躍を心から期待しております。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 今後、公務の主流となる官民共創ということについて一点お伺いします。

 役所からいわゆる民間への発注という形ではなくて、官民共に、問題意識を持ち寄って、全く異なるバックグラウンドの人々で、理解し合いながら新しいものをつくる力が今後求められてまいります。一方で、公務員は、どうしても、似たような学びを重ね、同じようなバックグラウンドの方が現状は大半となっております。

 特に、新卒採用で、少しでも幅広いバックグラウンドの公務員を採用することの必要性、そしてその手法について、お考えがあればいただきたいと思います。

伊藤参考人 まさに、採用はキーでございまして、新卒ももちろんですけれども、中途採用、それから民間からの人材交流、こういうこともやっていくことで、より幅広い、いわゆるダイバーシティーにあふれた組織になるのではないかなと思っています。

 また、いろいろな施策が、民と一緒にやっているものがたくさんございます。是非、人事院でもそういうことが何かできるのではないか。特に、例えば、今はHRテック、人事テクノロジーがかなり盛んでございますので、そういうところも少し勉強してみることで、今の現代的な人事の在り方ということを私どもが理解し、公務員全体にとっての何らかのよい施策ができればいいなと今御意見をいただいて思いました。

井坂委員 ありがとうございました。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 岸田総理は、公的価格の抜本的見直しとして、診療報酬、介護報酬、子ども・子育て支援新制度の公定価格など、賃金の原資が公的に決められるケア労働者の賃上げを掲げております。

 そのうち保育士や幼稚園教諭などの処遇は、公定価格に基づいて算定をされます。その公定価格の人件費は、国家公務員の給与に準じて算定をします。全産業平均の労働者の月額賃金は四十・六万円に対して、保育士は三十一・二万円、九万円の格差があります。マイナス人勧の影響で、国家公務員給与が下がり、公定価格も下げられると、賃金格差が拡大することになります。

 こういった矛盾は解消される必要があるのではないか。お考えをお聞かせください。

伊藤参考人 国家公務員給与の水準というのは、人事院の毎年の勧告の中で御提案しております。そして、それはその時々の情勢をきちっと反映することが必要でございますし、その中で、今御意見がございましたように、経済全体への影響ということも考慮の一つとして入れる必要があるというふうに考えております。そして、ネットニュースなんかで拝見しますと、公務員給料は高過ぎるという御意見もあれば安過ぎるという御意見もあるようでございますので、それは真摯に勉強しながら、いい勧告ができるように努めてまいります。

山口委員長 よろしゅうございますね。

 それでは、これにて伊藤参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 伊藤参考人、大変ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより山中参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 丹羽秀樹君。

丹羽委員 自由民主党の丹羽秀樹でございます。

 山中原子力規制委員会委員長候補におかれましては、お忙しい中お越しいただきまして、本当にありがとうございます。我が国の原子力行政を担う上で非常に大事な役割だというふうに思っておりますので、是非、真摯にお答えいただければ大変ありがたく思っております。

 まず、原子力規制委員会というのは、東日本大震災後、発足して十年がいよいよたとうというふうに考えておりますが、そういった中で、国民の信頼を得るということは非常に大事だというふうに思っております。

 他方、今、ウクライナの情勢とか見ますと、我が日本の国のエネルギー問題というのも、これは見過ごせないというような状況でございます。我が日本の国は、資源がない中でエネルギーをいかに安定的に供給していくかということも、これは産業界において多くの方々が懸念していることというふうに思っております。

 そういった中、いかに原子力の安全性を、目標を掲げながら、委員長として、国民の皆さん方に納得していただけるような方法を取っていくのか、その辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山中参考人 原子力規制への国民からの信頼というのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機にしまして地に落ちたというふうに思っております。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓として設立されました、独立性、透明性を厳格に守っていく規制機関でございます。

 これまで、私も、透明性、独立性に十分留意しながら、原子力発電所の新規制基準適合性審査あるいは新しい検査制度の運用に当たってきたつもりでございます。

 今後も、一〇〇%の安全はないということを肝に銘じながら、残ったリスクをできる限り低下する努力を続けてまいりたいというふうに思っておりますし、世界中の新しい知見をできる限り日本の原子力施設の安全性向上につなげられるように、継続的な努力を続けてまいりたいと考えております。

丹羽委員 ありがとうございます。

 山中委員長候補におかれましては、今までも、この規制委員会の中で、更田委員長の下、様々な御議論や、また意見形成を行われたというふうに認識いたしております。また、更田委員長のお考えも、そういった面では、山中委員のお考えも一緒になって形成されたというふうに私は認識いたしておりまして、更田委員長とほぼ同じ、イコールフッティングできるようなお考えかなというふうに思っておりますが、山中委員長候補の経歴を見ますと、阪大の、大阪大学の原子力の研究者でもあられます。

 今、我が日本の国の国立大学の中で原子力の研究者が激減しているというのは、これは実情でございます。なぜかというと、原子力がこのまま日本では動かないんじゃないかな、先行きが見えないから激減しているということも一つの実情だというふうに思っております。

 その辺は、委員長になられるお立場、また大学で教える立場としていろいろとあろうかと思いますが、お聞かせいただきたいと思います。

山中参考人 先生の御質問にございました、あるいはコメントにもございましたように、私自身も、原子力の分野の人材育成というのは非常に重要であるというふうに考えております。教育者あるいは研究者の育成ということも極めて重要な課題であるというふうに考えております。

 原子力規制庁といたしましては、規制に関わる原子力規制庁の職員の人材育成、特にその辺りを工夫して、資格制度等を導入して、規制人材の育成ということを中心に尽力をこれまでもしてきたつもりでございます。今後も、日本全国の規制人材育成ということに特に注力して人材育成には携わってまいりたいというふうに考えております。

丹羽委員 私も、かつて、文部科学大臣政務官を務めた中で、「もんじゅ」のところに、福井の方に、敦賀の方に行ったんですが、当時、職員の意識が、モチベーションが非常に下がっていました。どうなるか分からない、先行きが見えないというのは、働いている現場、また研究者の皆さん方も非常にモチベーションが上がらないということもございます。

 是非、山中新委員長候補の下で、そういった働いている人たち、研究者たちのモチベーションが上がるような希望を、また合意形成していただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 これで質疑を終わります。

山口委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 立憲民主党の逢坂誠二でございます。

 山中先生、今日はお世話になります。よろしくお願いします。

 まず、私から一点目ですけれども、政府は、国会の答弁などで、原発の避難計画について、十分に機能する避難計画がない中では原発は実態として再稼働はできない、それから、新しい原発には燃料は入れない、こういうことを繰り返し答弁しておりますけれども、これについて、山中先生はどのように思われますでしょうか。

山中参考人 御質問ございました政府のエネルギー政策に関しては、私の立場でお答えすることは、その立場にないというふうに思っておりますが、十分機能する避難計画を策定することは極めて重要であるというふうに考えております。

 原子力規制委員会は、原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策指針を策定いたすことにしております。関係自治体が参画する地域原子力防災協議会、原子力防災会議において、避難計画が原子力災害対策指針に照らして具体的かつ合理的であるということを確認されております。

 私の方からは以上でございます。

逢坂委員 今お話ありましたとおり、原子力規制委員会は原子力災害対策指針を策定することになっておりますけれども、原発に関する避難計画がしっかり機能するかしないか、これを判断するのは避難計画を作る市町村であるという考えでよろしいでしょうか。

山中参考人 御認識のとおりでございます。

逢坂委員 次に、使用済核燃料の処理を山中先生はどのようにすべきとお考えか、さらに、核燃料サイクルについてのお考えをお聞かせください。

山中参考人 使用済燃料の処理あるいは核燃料サイクルについては、政府のエネルギー政策に関係することでございますので、原子力規制委員会委員としてお答えする立場にはございません。

逢坂委員 それでは、核燃料サイクルの結果生ずる使用済MOX燃料についても同様の見解でしょうか。

山中参考人 同様のお答えになりますけれども、エネルギー政策等についてはお答えする立場にないということでございます。

逢坂委員 使用済MOX燃料をどうするか、使用済核燃料をどうするかは、エネルギー政策の問題ではなくて、原子力そのものに関わる根本問題だと思うので、それについての見解を述べられないというのは極めて残念であります。

 さて、次の質問であります。

 政府は、エネルギー基本計画において、原子力発電所に関して、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させるというふうに言っております。一方、同じくエネルギー基本計画において、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進めるとしているわけです。

 そこで、質問ですけれども、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すれば、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させたことになるのか、この辺りについての見解をお伺いします。

山中参考人 原子力規制委員会というのは、先ほどもお話をさせていただきましたように、東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓に設立された規制機関でございます。独立性、透明性を厳格に担保しながら原子力発電所の規制を行っております。

 したがいまして、原子炉等規制法など所管する法律に基づいて、科学的、技術的な見地から原子力施設の規制を現在行っているところでございます。ただし、一〇〇%の安全はないということを肝に銘じながら、継続的な安全向上をする努力については、途切れのないよう続けていくつもりでございます。

逢坂委員 質問の意図が理解されていなかったようなんですが、政府は、原子力発電所に関しては、いかなる事情よりも安全性を最優先させると言っているんです。一方で、原子力規制委員会の規制基準に適合すれば原発を再稼働すると言っているんです。

 だから、政府の立場は、いかなるものよりも安全性を最優先にするんだ、でも、適合したら再稼働させると言っているわけですから、適合するということは何よりも安全性を最優先にしていることなのかという質問をしているわけです。

山中参考人 政府のエネルギーの基本的な考え方について私の方からコメントする立場にはございませんけれども、原子力規制委員会としては、継続的な安全向上を目指して、最新の科学的、技術的知見に基づいて、国際基準の動向あるいは審査経験等を踏まえて、原子炉等規制法の見直し等を継続的に行いながら、厳格に規制を行っているつもりでございます。

逢坂委員 原子力規制委員会の規制基準に適合しても、それでは、山中委員の考え方でいけば、いかなる事情よりも安全性を全てに最優先させたことにはならない、そういうお考えでしょうか。

山中参考人 一〇〇%の安全はないということは私ども肝に銘じながら、常にそのリスクの低減を目指して、原子力発電所、原子力施設の規制を行っているつもりでございます。

逢坂委員 ちょっと厳しい質問になって恐縮ではありましたけれども、規制委員会の規制基準と政府の安全性の間に私は隙間があると思っていまして、その意味で、厳しい質問をさせていただきました。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、山本剛正君。

山本(剛)委員 日本維新の会の山本剛正でございます。

 今日は、ありがとうございます。

 原子力規制委員会設置の合同審査会で、私は唯一、原発再稼働で質問に立って、その当時は大変な、嵐のような思いをしたんですけれども、思い入れを持って今日ここに立たせていただきました。ありがとうございます。

 まず最初に、安全基準をクリアしたものについて、立地地域の合意の下、速やかに私は再稼働すべきと考えています。その再稼働の在り方についてと、あと、二〇五〇年カーボンニュートラル達成目標における原子力発電の在り方についてちょっとお尋ねをいたします。

山中参考人 お尋ねの政府の原子力政策に関する事柄につきましては、原子力規制委員会の私がコメントする立場にはないので、回答は差し控えさせていただきたいと思います。

山本(剛)委員 個人的な部分でもお答えいただけませんか。

山中参考人 現在、私、原子力規制委員会委員でございますので、私見は差し控えさせていただきたいと思います。

山本(剛)委員 委員長に就任されるにふさわしいかどうかということでございますので、長きにわたって委員をお務めになられて、委員長の重責を担われるということでございますので、是非、コントロールをしっかりしていただきたいなというふうに思います。

 風評被害についてちょっとお尋ねを申し上げます。

 東京電力福島第一原発事故において多くの子供たちが甲状腺がんに苦しんでいるというふうにされる方もいらっしゃるんですけれども、これについて、因果関係や、科学的知見に基づいた山中委員長候補の考えをちょっとお教えいただけますでしょうか。

山中参考人 科学的知見から申しまして、福島県が実施した調査、あるいは国際的機関によって報告された結果について申しますと、甲状腺がん、福島第一原子力発電所の事故による放射線被曝の影響とは考えにくいとの趣旨等の評価がされております。そういうふうに私は承知しております。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 風評被害については、海外に結構根強く残っているわけでございますけれども、これは根気よく、本当に、あらゆる角度から説明を、多様な言語でやはり私はやっていく必要があるのではないかなというふうに思っています。また、表現についても、繰り返し発信をしていく必要があるというふうに思っております。

 また、ALPS処理水の放出についても同じでございます。これらに対して丁寧な説明がなければ、農林水産物を始め、多方面での風評被害の拡大はやはり私は避けられないというふうに考えております。

 これらの風評被害拡大防止に原子力規制委員会としてどのような役割を担えるのか、候補者の決意をお願いしたいと思います。

山中参考人 特に、ALPS処理水の海洋放出について、国内外の理解を醸成するための取組を積み重ねていくというのは政府全体の方針であると承知しております。

 原子力規制委員会の役割、これは、東京電力から申請されたALPS処理水の海洋放出に関する実施計画をしっかりと審査し、その結果あるいはプロセスについて、国際機関、IAEAのレビュー等を受け、国際的な理解を進めたいというふうに考えております。透明性を確保した上での議論を真摯に進めたいというふうに考えてもおります。

 また、環境省が設置しております委員会の助言に基づきまして、規制委員会としても、環境モニタリング、これを放出前から行いまして、海域のモニタリング等を強化充実してまいりたいというふうに思っております。

 そのようなプロセスあるいは結果を国民の皆様方に見ていただくことで、国民の信頼を得た、ALPS処理水への規制機関としての取組としたいというふうに考えております。

山本(剛)委員 この部分に関しては、規制委員会さんの役割というのが私は非常に大きいというふうに思っておりますし、是非真摯に取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 最後に、人材についても、先ほどの丹羽先生の部分とちょっとかぶるんですけれども、私も、人材育成、すごい懸念をしております。原子力の未来が明るくなければやはり有為な人材というのは求めにくい、これはもう当然のことであります。

 今後、本当に原子力の活用をやめるという方針を打ち立ててしまえば、廃炉だけをしていく分野に誰が行くのかということはもう誰が見ても明らかな話なわけであります。もちろん、人材を海外から招くこともできるんですけれども、原子力の重要性を考えれば、やはり国内でしっかりと育成をしていくということが私は大事だというふうに考えておりますし、その中で廃炉の技術も確立をさせていくということも私は大事なことだろうというふうに考えております。

 廃炉のための技術者ではなくて、やはり原子力の活用のための新しい人材、この必要性についてどのようにお考えか、お尋ねを申し上げます。

山中参考人 先ほども御質問の中でお答えをさせていただきましたけれども、原子力分野全般にわたっての人材育成については重要であると私自身認識しております。産官学がそれぞれの分野で協力して人材育成に取り組んでいくということが極めて重要であるというふうに考えております。

 また、原子力規制委員会においては、原子力規制に関わる人材の育成を中心に、規制庁内部あるいは日本全体での規制人材育成に積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。

山本(剛)委員 時間が参りましたので、ありがとうございました。

山口委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 山中原子力規制委員会委員長候補におかれましては、今日はお疲れさまでございます。

 私からは二つの観点について質問をしたいと思っています。

 まずは、委員長に就任されますと、ALPS処理水の海洋放出と、いよいよデブリの取り出しも含めます廃炉に向かって判断をされる、そういった時期に委員長に就任されることになろうかと思っております。

 特に、福島第一原発の廃炉について、海外での知見や技術、そういったものをもう少し取り入れてしっかりと審査をしていただきたいというのが私の願いでございます。

 もう御案内のとおり、一九五七年、イギリスでは、セラフィールド、ウィンズケールで原発の事故がございました。一九七九年には、アメリカでスリーマイル島の事故がございました。

 事故を経験しての廃炉というのは日本は当然経験がないわけでございまして、ただ、私、聞いておりますと、日本では海外の知見を、日本で経験がないからなかなか取り入れないんだみたいな話を現場から聞くわけでございます。

 経験がこれまでなかった日本でございますので、逆に、事故から様々な失敗も学びながら行ってきたこの廃炉の取組について、承認されるところにおいてもそういった海外の知見を生かしていただきたいと思いますが、どういうお考えで取り組まれるか、御答弁をいただきたいと思います。

山中参考人 先生の御質問の中にもございましたけれども、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業というのは、現在でも極めて困難な状況にございます。我々は、そのプロセスあるいはいろいろな実施計画を監視、審査することで、廃炉作業の安全性向上につなげてまいりたいというふうに考えております。

 当然、先生の御指摘にございましたように、新しい国際的な知見が得られましたら、それを監視活動あるいは審査、規制活動の中に設けて、廃炉作業の安全性向上につなげていきたいというふうに考えてございます。

浜地委員 そうですね、国際的な廃炉の基準という、国際的な基準も大事だと思っています。ただ、廃炉を経験したことのある事業者のそういった実際のオペレーションのお話ということも是非取り入れていただきたいという思いでございます。

 その上において、これまでの原子力規制委員会に対する指摘の一つとして、様々な原子力関係の事業者とのコミュニケーション不足があるということがよく指摘をされます。その原因についてはちょっとここではるる申し上げませんが、山中委員は、もう平成二十九年からこの原子力規制委員会の委員としてお務めでございますので、なぜこういった指摘、原子力関係事業者とのコミュニケーション不足が規制委員会として起きているのかということは恐らく経験の中でお気づきになっていると思います。

 御自身が委員長になられたら、そういった指摘はなぜあるのかという分析と、これをどのように改善していこうかということについてどういうお考えをお持ちかを、最後にお話を聞きたいと思っております。

山中参考人 先生御指摘の事業者とのコミュニケーション不足ということについては、そういうような指摘があるというのは承知しております。

 これまでも、様々な形で、事業者とのコミュニケーションについては、透明性、公開性を担保しつつ、対話を行ってきたつもりでございます。特に、事業者の社長あるいは原子力担当重役との対話については、少なくとも年に一回程度、意見交換をさせていただいております。

 今後は、対話の頻度を増やして、安全性向上につながるような機会を更に設けたいということを考えておるところでございまして、直接の対面ではなくてウェブ等を利用した対話をできる限り増やして、安全性向上に努めてまいりたいというふうに考えております。

浜地委員 冒頭申しましたとおり、ALPS処理水のこれからの処理、また廃炉に向けての本格的な活動が始まる大事な、委員長になられると思いますので、活躍を期待しまして、質問を終わりたいと思います。

 以上でございます。

山口委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 山中候補におかれましては、本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

 私からは三点御質問させていただきたいと思います。

 まず、一点目なんですけれども、これまで、候補者は、原子力規制委員会委員として、新しい検査制度の実現というものを牽引されてきました。その検討の段階、そして実現の必要性を考えるに当たって、その背景にある問題意識というものが何だったのか、そして、現在新しい制度になりましたけれども、現制度の内容や運用上の課題について、お感じになるところがあれば御開陳いただきたいと思います。

山中参考人 先生から御指摘をいただきました新検査制度でございますけれども、令和二年の四月から新しい制度が施行されております。

 既存の制度といいますのは、チェックリスト方式、事前にリスト化された事項について、年に一回程度それをチェックしていくという方式でございましたけれども、新しい検査制度では、少しの性能の劣化も見逃さない、リスク情報に基づいた検査制度を採用しております。

 また、検査官がいつでもどこでも何にでもアクセスできるようなフリーアクセス制度を導入しておりまして、これまで気づかなかったような小さなトラブルあるいは性能の弱点等を速やかに見つけることができるというのが新しい検査制度の特徴でございます。

 まだまだ改善の余地というのはあろうかと思いますので、事業者あるいは有識者との意見交換を基に、改革をこれからも続けてまいる予定にしております。

浅野委員 ありがとうございました。

 二点目の質問になります。

 エネルギー安全保障あるいは原子力安全に対する世界的な意識が高まる中で、新しい原子力規制の在り方についての議論が国際的にも今盛んに行われております。

 例えば、IAEAが主催している様々な、高速炉、あるいは次世代軽水炉、そして小型炉、それぞれの規制の在り方に対する議論が行われているんですけれども、ちょっと私、気がかりなところがありまして、SMR、小型モジュール炉の規制に対する議論には、日本は参加していないんですね。それ以外は日本は参加しているんですけれども、ここはなぜなのかという疑問を持っておりました。

 やはり、原子力規制委員会設置法の第三条では、規制委員会は原子力利用における安全の確保を図ることを任務とするというふうに規定がされておりまして、使っている、使っていないにかかわらず、これから普及する可能性のある新たな技術についても、その知見の蓄積というのは非常に重要な任務であろうかと思っております。

 この国際的な規制に関する議論に対して候補者がどのように向き合っているのか、その考え方を是非教えていただきたいと思います。

山中参考人 先生御指摘になられましたように、新しい原子炉、特に、先生御指摘のSMR、これの安全規制についての国際的な動向について、重要であるというのは私も認識しております。特に、IAEA等でSMR等についての規制の議論が進められているところでございまして、既にオブザーバーとしては参加をしておりますけれども、現在、正式なメンバーとして参加するよう、鋭意手続を進めているところでございます。

 国際的な安全規制に対する情報収集というのは、御指摘のとおり、極めて重要であるというふうに考えておりますので、努力をしてまいりたいというふうに思っております。

浅野委員 例えば、今の小型モジュール炉については、国際的な議論の中でも、複数のモジュールが組み合わさったときに生じる脆弱性のようなところの議論もありまして、そこの議論の中では福島の事故が一つの教訓として引用されているという話も聞きます。是非、我が国の知見の蓄積のみならず、国際的な教訓のシェアリングという意味でも、そういったところは有意かと思いますので、期待を申し上げます。

 最後の質問なんですが、原子力規制委員会が国内外から信頼されたいということを冒頭の所信でおっしゃっておりました。そのために必要なことは何かということなんです。

 私の地元茨城県で、東海村が含まれておりますが、この東海村では、事業者そして自治体による情報発信は盛んに行われているんですけれども、原子力規制委員会による情報発信というのが積極的に行われているという実感を余り持てていないんですね。是非、やはりそういった情報提供、透明性の確保というのは重要だと思いますので、規制委員会として、広報を強化するべきじゃないか、透明性を向上させるべきではないかと思うんですが、その点について最後にお伺いをしたいと思います。

山中参考人 御指摘ありがとうございます。

 私自身も、原子力規制委員会が行っている厳正な規制、審査、検査について、国内外に正確で分かりやすい情報発信をしていくということは非常に大切であろうと思います。広報についても、先生御指摘のように、力を入れてまいりたいというふうに思います。

浅野委員 終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 山中伸介参考人に伺います。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原発事故後に、国会事故調の提言を踏まえて、安全神話に陥らない、そして規制のとりこにならないという反省に立って設置されたものです。

 福島事故から十一年、今も原子力緊急事態宣言発令中であり、改めて初心に立ち返って役割を果たす必要があると考えますが、規制委員会の意義と目的、今この時点に立って、どうお考えでしょうか。

山中参考人 先生御指摘のとおり、原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓として、独立性の高い規制機関として設立された機関でございます。

 これまでも、独立性、透明性に十分注意を払いながら、原子力発電所の規制基準適合性でありますとか、あるいは検査活動に規制委員会が当たってきたわけでございます。

 先生の御発言にございましたけれども、いまだ職員の士気は高い状態に保てているとは思いますけれども、今後も、初心を忘れることなく、一〇〇%の安全はないということを肝に銘じながら職務に当たっていきたい、あるいは職員の意識を高めていきたいというふうに考えております。

笠井委員 原発の運転期間を原則四十年とするルールは、福島事故の教訓から、原子炉等規制法に新設されたものですよね。ところが、この間、二十年運転延長の認可を申請してきた東海第二、それから高浜原発の一号、二号機、それから美浜の三号機、全てが認可をされてまいりました。

 炉規法を運用している規制委員会としては、この原則四十年ルールをやはり厳格に守るべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

山中参考人 運転期間四十年、あるいは二十年延長というのは、これは政策的にお決めいただいた年限でございます。

 原子力規制委員会としては、その年限で原子炉が安全上問題がないか、新規制基準に適合しているかどうかを厳格に審査して、検査の結果とともに審査をしているつもりでございます。

 私も、東海第二の新規制基準適合性あるいは四十年運転延長については審査に携わりましたので、厳格な審査については自信を持ってお答えすることができるかと思います。

笠井委員 福島事故のもう一つの教訓が、バックフィット、新たな知見が見つかれば既存原発にも適用するというルールが炉規法で定められました。

 山中参考人は、昨年二月、原子力発電事業者やプラントメーカーなど関係機関十九者が参画する原子力エネルギー協議会、ATENAのフォーラム二〇二一ですかね、そこで来賓挨拶をされています。その中で、原子力安全の第一義の責任は事業者にあるというふうに述べられていますが、バックフィットにこだわらない、事業者の自主的な安全性向上の取組に期待するというようなこととなれば、これは規制委員会の責任と役割はどこにあるというふうにお考えでしょうか。

山中参考人 安全性向上の責任は、規制当局のみならず、原子力事業者にも主体的に取り組んでもらいたいところでございます。

 安全性向上の手法には、バックフィットという手法がございます。もちろん、その手法を取るということも安全性向上につながるわけでございますけれども、いかに新しい知見、科学的知見あるいは技術的な知見を原子力施設の安全性向上につなげていくかということを十分考慮して、リスクが極めて高い、あるいは非常に未知な現象であるというような場合には、速やかにバックフィットをかける。ただ、リスクがそれほど高くない、自主的に安全性向上につなげていただくという、事業者に対してそういう命令をするということもやり方としては可能かなというふうに思っております。

 いずれにしても、原子力施設の安全性向上、透明性第一でこれについては取り組んでまいりたいというふうに思います。

 バックフィットのみならず、安全性向上につながることであれば、対話も必要であるかというふうに考えております。

笠井委員 第一義の責任が事業者にある、それからバックフィットにこだわらないでというふうなことで、とどまらずとなると、そこのところは問題が出てくるんじゃないかと私は思います。

 更に伺います。

 ATENAのフォーラムで、山中参考人は、検査制度について、検査ガイドにない部分は原子力事業者との対話を進めることが重要だというふうに述べておられますが、この発言は、結局、規制のとりこになっているというふうに見られるのではないかということが出てくると思うんですが、これで規制委員会にふさわしい役割を果たせるというふうにお思いでしょうか。

山中参考人 新しい検査制度になりまして、これは先ほどもお話をさせていただきましたけれども、フリーアクセスが検査官は可能になりました。いつでもどこでも原子力施設の検査が可能になる、そういう状態に現在はあります。

 ただ、やはり、検査制度の改善というのは必要でございますし、有識者の御意見をいただく、あるいは事業者との意見交換をするということをあくまでも透明性を担保した上で行ってまいりたいというふうに思っております。これも安全性向上の一つの手法であるというふうに考えております。

笠井委員 最後に伺いますが、昨今、気候変動対策に原発は有効だという考えも一部に出されておりますが、福島事故で最悪の環境破壊を引き起こした日本でそういう立場を取るべきではない、まして、使用済み核燃料が増え続けて数万年先まで環境を脅かし続ける、核のごみ問題も何ら解決していない原発に頼るべきでないというふうに思いますけれども、参考人はどのようにお考えでしょうか。

山中参考人 エネルギー政策に原子力規制委員会委員として直接お答えすることはできませんけれども、原子力規制委員会として、日本の原子力施設の継続的な安全性向上、一〇〇%の安全はないということを肝に銘じながら活動を続けていきたいというふうに考えております。

笠井委員 終わります。

山口委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

逢坂委員 立憲民主党の逢坂誠二でございます。

 山中さん、済みません、もう一問お願いします。

 私、日本の原発には致命的な欠陥があると思っているんです。それは、日本の原発の全ては過酷事故が起きないことを前提にして立地を決めております。そのために、今の日本の原発は、万が一過酷事故が起きたときに避難できるかどうかということを全く検討しないままに立地されているんですね。

 だから、そういう意味でいいますと、規制委員会が、原子力災害対策指針を定めて、それぞれの自治体に避難計画をお作りくださいということを言っているわけですが、過酷事故の際に避難ができないような、そういう場所もあるのではないか、過酷事故の際にきちんと機能する避難計画が作れないのではないか、そういうサイトもあるというふうに私は認識しているんです。

 例えて言うならば、東海第二、UPZ、半径三十キロ内に九十四万人が住んでいます。あるいは、伊方原発、地形の説明はしませんけれども、ここも相当に避難が困難だと思われます。

 その意味で、避難計画がきちっと作れない、そういうサイトもある、そういう認識をお持ちかどうか、確認をしたいと思います。

山中参考人 原子力規制委員会では、新規制基準適合性については、重大事故の影響をできるだけ低減する、そういう厳格な規制を行ってまいりました。

 防災については、一〇〇%の安全はないということで、防災計画は規制要求はしておりませんけれども、防災計画の重要性というものは十分認識していると思ってございます。

佐々木委員 自由民主党の佐々木紀です。

 規制委員会の運営に当たって、独立性、透明性を重んじるということ、これは大変大事なことだと思います。

 しかし、一方で、行政機関である以上、標準処理期間というものがございまして、新規制基準の適合性審査に当たっては、おおむね二年とされております。しかし、大幅に遅延をしているというふうに思います。申請者が民間事業者ということでございますから、審査が遅れればそれだけ損害を与えているという認識も私は必要なのではないかと思います。

 そこで、いつまでに判断すると期限を定めるなど、予見可能性を高めていく努力というのがすごく大事だと思いますし、また、速やかに審査結果を出していくべきだと思いますけれども、その辺についてのお考えをお聞かせください。

山中参考人 新規制基準の適合性審査につきましては、これは安全の判断をする重要な会合でございますので、事業者と規制側、十分な議論を尽くした上で、相互の理解を得た上で審査を進めていくというのがこれまでのやり方でございます。

 ただ、先生御指摘のように、審査の予見性を高めるということは必要な取組であろうというふうに考えております。これまでも、審査会合は公開をしておりますし、その際の資料も全て公開をしております。また、事業者の社長あるいは原子力担当役員との意見交換等も行っておりますので、これまでの審査実績を踏まえますと、かなり予見性が高まっているのではないかというふうに思います。

 ただ、全ての原子力発電所で、プラント側の審査についてはかなり多くの経験が積んでこられてまいります。したがいまして、予見性も高まっておるんですけれども、サイトごとの特有の事象、地震でありますとか津波でありますとか、これについては、なかなか審査については時間を要するのはやむを得ないところであるというのは御理解いただければと思います。

山口委員長 よろしゅうございますね。

 これにて山中参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 山中参考人、ありがとうございました。

 以上をもちまして人事官の候補者及び原子力規制委員会委員長の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、来る八日火曜日午後一時から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 なお、明四日金曜日午後五時理事会、午後五時三十分から委員会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十八分散会


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