衆議院

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第3号 令和5年1月26日(木曜日)

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令和五年一月二十六日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 盛山 正仁君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 武藤 容治君 理事 伊東 良孝君

   理事 新谷 正義君 理事 笠  浩史君

   理事 吉川  元君 理事 遠藤  敬君

   理事 岡本 三成君

      佐々木 紀君    鈴木 隼人君

      若林 健太君    落合 貴之君

      谷田川 元君    池畑浩太朗君

      奥下 剛光君    中司  宏君

      浅野  哲君    鈴木 義弘君

      笠井  亮君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   議長           細田 博之君

   副議長          海江田万里君

   事務総長         岡田 憲治君

   参考人

   (検査官候補者(検査官))            田中 弥生君

   参考人

   (公正取引委員会委員長候補者(公正取引委員会委員長))          古谷 一之君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十六日

 辞任         補欠選任

  山岸 一生君     谷田川 元君

  中司  宏君     奥下 剛光君

  浅野  哲君     鈴木 義弘君

  塩川 鉄也君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  谷田川 元君     落合 貴之君

  奥下 剛光君     池畑浩太朗君

  鈴木 義弘君     浅野  哲君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  落合 貴之君     山岸 一生君

  池畑浩太朗君     中司  宏君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 検査官及び公正取引委員会委員長任命につき同意を求めるの件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 まず、本日の本会議における国務大臣の演説に対する質疑は、まず日本維新の会の馬場伸幸君、次に公明党の石井啓一君、次に国民民主党・無所属クラブの玉木雄一郎君、次いで日本共産党の志位和夫君の順序で行い、本日をもって国務大臣の演説に対する質疑を終了することになっております。

 なお、質疑者の要求大臣は、お手元の印刷物のとおりであります。

    ―――――――――――――

 一、国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

   質疑者      時間   要求大臣

 馬場 伸幸君(維新) 35分以内 総理

 石井 啓一君(公明) 35分以内 総理、国交

 玉木雄一郎君(国民) 20分以内 総理

 志位 和夫君(共産) 20分以内 総理

    ―――――――――――――

山口委員長 それでは、本日の本会議は、午後一時五十分予鈴、午後二時から開会いたします。

    ―――――――――――――

山口委員長 次に、検査官及び公正取引委員会委員長任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る二十三日の理事会において、木原内閣官房副長官から、内閣として、検査官に田中弥生君、公正取引委員会委員長に古谷一之君を再任いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会の申合せに基づき、検査官の候補者及び公正取引委員会委員長の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として検査官候補者田中弥生君、公正取引委員会委員長候補者古谷一之君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、田中参考人、古谷参考人の順で所信をお述べいただき、その後、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、田中参考人、お願いいたします。

田中参考人 田中弥生でございます。

 本日は、このような機会を与えていただき、厚く御礼を申し上げます。

 近年、我が国の社会経済は、今後本格化する人口減少、少子高齢化に伴う社会保障費の増大、潜在成長力の伸び悩み、大規模自然災害の頻発などの難しい課題に直面しております。そのような中にあって、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、我が国の社会経済に甚大な影響をもたらすとともに、行政のデジタル化の遅れなどの問題を顕在化させており、これらへの対応が喫緊の課題となっております。

 会計検査院は、このような社会経済の動向を踏まえつつ、内閣から独立した憲法上の機関として、国の会計検査を実施し、検査の結果に基づき、検査報告を作成して、内閣を通じて国会に御報告するという重要な使命を課されております。

 会計検査院の組織は、意思決定を行う検査官会議と検査を実施する事務総局で構成されており、三人の検査官から成る検査官会議は、合議によって会計検査院としての意思決定を行うほか、事務総局を指揮監督しております。

 私は、昭和五十七年に大学を卒業後、民間企業、財団法人研究員、国際協力銀行参事役、東京大学大学院工学系研究科客員助教授を経て、独立行政法人大学評価・学位授与機構、現独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の教授として研究を行い、東京大学公共政策大学院では十年以上にわたって非営利組織論を教え、また、芝浦工業大学の特任教授として研究を行ってまいりました。

 私は、検査官として、前回の所信で申し上げましたように、これまでの研究活動や行政との関わりにおいて、一貫して、民間が担う公共領域とその運営及び評価という課題に取り組んできた中で、政府には政策の有効性の検証という点や公正で効果的な資源配分という点に重要な課題があることを常に意識しながら、現在の社会経済の動向、また、国民の関心や国会での御審議の状況などにも注意を払って、検査官の職務に専念してまいりました。

 この間、「新型コロナウイルス感染症患者受入れのための病床確保事業等の実施状況等について」など七件の国会及び内閣への随時報告、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果について」など十件の国会からの要請に係る検査結果の報告などを行い、また、昨年十一月七日には、令和三年度決算検査報告を取りまとめて内閣に提出したところです。これらに当たって、私は、学識経験者出身の検査官としての視点も取り入れながら、その意思決定に携わってまいりました。

 そして、令和五年次の会計検査について、国会における審議の状況に常に注意するなど、引き続き国会との連携に努めることとするなどの基本方針を定め、これに基づく検査の実施について事務総局の指揮監督に当たっております。

 仮に検査官に再び任ぜられるならば、私は、非営利組織論や政策評価に関する研究及びこれまでの任期中に検査官として職責を果たしてきた中で培った知識経験を生かし、国民の皆様の関心の所在や国会における御審議の状況に常に注意を払うなど、いろいろな御意見に耳を傾けながら、検査官会議における公平かつ均衡の取れた意思決定に貢献することによって、検査官としての職責を担ってまいりたいと考えております。

 以上、簡単ではございますが、私の所信を述べさせていただきました。

 本日は、このような機会をいただきまして、改めて厚く御礼を申し上げます。

山口委員長 ありがとうございました。

 次に、古谷参考人、お願いいたします。

古谷参考人 古谷一之でございます。

 本日は、所信を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。

 まず、公正取引委員会委員長の任務についての認識を述べさせていただきます。

 公正取引委員会が所管しております独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用及び国民実所得の水準を高め、もって一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を促進することを目的としております。

 公正取引委員会の任務はこの目的を達成することであり、そのトップである委員長には、他にも増して、国民全体の奉仕者たる国家公務員としての強い自覚を持ち、国民の皆様や関係各方面の御意見を伺いつつ、公正中立に職務を遂行していくことが求められていると考えております。

 次に、取り組むべき施策の基本的な方向の考え方について申し述べさせていただきます。

 グローバル化やデジタル化など、我が国を取り巻く経済社会環境が急速に変化する中で、我が国は、人口減少、少子高齢化という大きな課題を抱えています。また、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化、エネルギーコストや原材料価格の上昇などにより、日本経済は厳しさを増しております。こうした中、公正かつ自由な競争を促進し、活発なイノベーションを引き出す環境をつくることで、我が国経済の活性化を図り、消費者の利益を確保していくことが極めて重要であると考えます。また、公正な競争が担保された市場の機能を通じて適正な分配が行われ、成長と分配の好循環を実現するためにも、競争政策の果たす役割は小さくないと考えております。

 このように、公正かつ自由な競争を確保する公正取引委員会の役割は、我が国経済の成長、発展と社会の活力を維持する上で極めて重要な基盤を確保するものであると認識いたしております。

 私は、令和二年四月に両院の御同意をいただき、同年九月に着任して以来、公正取引委員会の委員長として、ただいま申し上げた基本的な考え方の下で、他の委員とともに競争政策の推進に努めてまいりましたが、今後も、これまでの経験を生かしつつ、経済社会の変化に的確に対応し、国民経済の発展に資する競争政策を引き続き積極的に推進していきたいと考えております。

 具体的な施策といたしまして、五点申し上げたいと思います。

 第一に、厳正かつ的確な独占禁止法の執行を行っていくことが重要です。

 独占禁止法が禁じる競争制限的な行為に厳正に対処していくことは、経済の活性化、消費者の利益に資するものであります。したがいまして、国民生活に影響の大きい価格カルテル事件や入札談合事件などに厳正に対処していくとともに、合併等の企業結合事案につきましては、迅速かつ的確な審査を進めてまいります。

 第二に、公正な取引環境を確保する観点から、中小企業に不当に不利益を与える行為の取締りをしっかり行うことが必要であると考えております。

 中小企業にとって事業環境が厳しい中、優越的地位の濫用、不当廉売などの不公正な取引方法や下請法違反行為などに厳正かつ積極的に対処するとともに、違反行為を未然に防止していくための施策を実施していくことが重要であると考えております。

 特に、公正取引委員会は、政府の価格転嫁円滑化施策パッケージに基づき、一昨年来、中小企業が労務費、原材料費、エネルギーコストなどの上昇分を適正に価格に転嫁できる取引環境の整備に向けて、緊急調査、自主点検の要請など、従来にない規模の取組を進めてきております。これらの成果を踏まえ、引き続き、中小企業に不当に不利益を与える行為に厳正に対処するとともに、関係省庁とも連携しながら、サプライチェーンの垂直的な競争環境の整備に取り組んでまいります。

 第三として、デジタル経済の進展、グリーン社会の実現など、経済社会の変化に的確に対応して競争環境を整備し、イノベーションを引き出していくことが必要であると考えております。

 デジタル分野については、実態把握を引き続き行い、独占禁止法上の問題点や競争政策上の考え方の整理を行っていくほか、デジタルプラットフォーム事業者による反競争的な行為には厳正に対処してまいります。また、デジタル分野におけるルール整備については、デジタル市場競争本部を中心に政府全体での取組が行われておりますので、公正取引委員会も引き続きこの取組に積極的に参画してまいります。

 さらに、デジタル分野以外の分野における競争環境整備のための取組も行っていく必要があります。公正取引委員会は、現在、グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方の策定に取り組んでおりますが、引き続き、様々な経済社会の動きやビジネスの実態を捉え、実態調査や提言、ガイドラインの策定などを通じて競争環境の整備に取り組んでまいります。

 加えまして、第四には、国際的な連携の推進も重要であると考えております。

 経済が急速にグローバル化し、企業活動が国境を越えて行われている中、大規模なデジタルプラットフォーム事業者による反競争的な行為や国際的な企業結合事案への対応等で、海外競争当局との連携協力の必要性がますます増大しております。このため、二国間、多国間の様々な枠組みを積極的に活用して、競争当局間の国際的な協力関係の強化を図っていくことが重要になっております。引き続き、日本の競争当局としてふさわしい貢献を行ってまいります。

 最後に、これまでに述べました具体的な施策を着実に実施し、公正取引委員会に期待される役割を的確に果たしていくために、公正取引委員会の体制の強化、能力の向上にも努めてまいりたいと考えております。

 終わりに、両院の御同意をいただくことができまして、公正取引委員会委員長に任ぜられました暁には、その職責をしっかりと認識し、国権の最高機関である国会における御議論を始め様々な御意見に耳を傾けながら、公正取引委員会の使命を達成すべく、他の委員とともに力を尽くしてまいる所存でございます。よろしく御指導を賜りますようお願い申し上げます。

 以上、私の所信を述べさせていただきました。

 本日は、このような機会を与えていただき、誠にありがとうございました。

山口委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 古谷参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより田中参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 新谷正義君。

新谷委員 自由民主党の新谷正義でございます。

 本日は、田中参考人におかれましては、お忙しい中お越しをいただきまして、誠にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと存じます。

 田中参考人にお尋ねをいたします。

 少子化対策あるいは防衛力強化、災害対策など、今、中長期で取り組むべき課題が非常に多くございます。こういった中長期で取り組むべき政策、短期では非常に見えづらいということもありますし、国民目線では費用対効果が実感し難いという面がございます。

 会計検査の適切かつ積極的な情報発信について御見解をお伺いしたいと存じます。

田中参考人 御質問ありがとうございます。

 会計検査院の情報発信に係る御質問と承りました。

 会計検査院では、国会に御提出する決算検査報告のほか、冊子の作成、あるいはホームページでの報告書や要約の公開、SNSの活用などに努めております。

 しかしながら、国民の元に検査報告をどこまでお届けできているかという点については、まだ改善の余地があると認識しておりまして、現在、情報発信、広報改革のためのプロジェクトチームを立ち上げて、活動しているところでございます。

 今後も、こういった活動を通じまして、より効果的な情報発信に努めたいと存じます。

新谷委員 ありがとうございます。是非、積極的な情報発信をお願いしたいと存じます。

 今、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う物価高、あるいはアフターコロナを見据えた経済状況、こういった中で、非常に行財政が国民に与える影響というのは大きくなってきていると思っております。

 行財政の適正な執行に関する納税者の関心も高まってきておりますが、果たすべき職責に関して御見解をお伺いしたいと思います。

田中参考人 職責に係る御質問と承りました。

 おっしゃるとおり、アフターコロナあるいは国際情勢などの社会経済動向は非常に大きく変化していると認識しております。

 こうした動向、そして国民の関心事、さらに国会での御議論などを踏まえて、検査の分野を定め、適正に検査を進めていくこと、また、その内容を分かりやすく国民の皆様に御説明できることが大事だと思います。重責ではございますが、精いっぱい尽力したいと存じます。

新谷委員 ありがとうございます。是非よろしくお願い申し上げます。

 今、国家公務員志望者が減少している、あるいは若年職員の離職者増加が顕在化している、そういった状況がございますが、同時に、検査領域あるいは社会経済の複雑化に対応する専門知識あるいは検査技術もますます必要とされているところでもございます。

 検査担当者の人材育成、人材確保、こういったものが非常に重要だと思っておりますけれども、こういったことへの課題について御見解をお伺いしたいと存じます。

田中参考人 人材育成、確保に係る御質問と承りました。

 私は、会計検査院の職員の育成については大きく二つの軸があるというふうに考えております。

 一つは、今おっしゃられたように、デジタル化や統計あるいは会計などの専門的な知識を時代の流れに沿って獲得していくという分野であります。この点については、内外の研修プログラムを充実させて、オンデマンドで受講できるように今工夫をしているところでございます。また、内外への留学あるいは外部の研修も行っているところであります。

 これが一つ目の軸なのですが、もう一つの軸があると思っています。

 それは、調査官としての基礎的な知識や技術の獲得に係るところであります。対象となる制度や政策あるいは組織を理解すること、またそこから問題を発見すること、そして情報を集めて分析をする、原因を究明する、そしてそれを報告書に取りまとめる、さらに検査対象とコミュニケーションを重ねていく、こういった高度なスキルが求められていると思います。こういったものについてはオン・ザ・ジョブが通常なのですけれども、できれば組織の知識として共有できるように進めていきたいと考えております。

新谷委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。

 以上で質問を終わりたいと存じます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、谷田川元君。

谷田川委員 立憲民主党の谷田川元でございます。どうぞよろしくお願いします。

 質問に入る前に、委員長に要望したいんです。

 実は、今日、私は朝初めて知ったんですが、このやり取りの模様は、院内のテレビでは見られるらしいんですね。ところが、一般国民へのインターネット中継はなしだそうなんですよ。その理由を聞きましたら、これは会社でいえば面接みたいなものだから、面接を一般国民に見せるのはおかしいじゃないかという理由でインターネット中継をやらないというんですよ。ちょっとおかしいと思うので、それは改善をお願いしたいと思います。

 あともう一点、先ほど田中検査官がゆっくり所信表明を読んでいただいたので分かったんだけれども、あらかじめ紙が用意されているのであれば、是非配付していただきたいなと思います。よろしくお願いします。

山口委員長 理事会で協議させていただきます。

谷田川委員 どうぞよろしくお願いします。

 田中検査官は四年前に所信表明されて、議事録も拝見いたしました。

 それで、約四年弱の経験を経て再任ということで今日の同意人事案件なんですけれども、四年前と比べて違ったことは、やはり予備費なんですよね。コロナ禍前は大体年間五千億円だったんですが、何と令和二年度では十兆円弱ですよ、結果的に。財政民主主義の観点から非常に問題があると私は思っているんです。その点について、まず認識をお尋ねしたいと思います。

田中参考人 予備費に係る御質問と承りました。

 おっしゃるとおり、予備費につきましては、特にコロナ禍を契機にその額は急激に増えたというふうに認識しております。会計検査院としても、予備費の動向については、常に注意を払ってまいりました。

 例えばですが、令和二年度の決算検査報告におきましては、コロナ関連経費全体の動向というものを調べて掲記をしております。この中に、予備費の動向についても検査して掲記をしております。

 また、昨年六月に国会より要請をいただきまして、コロナ関連経費の予備費についての検査を今鋭意進めているところであります。したがいまして、しかるべく内容がまとまりましたら、国会の方に御報告をさせていただけたらと存じます。

谷田川委員 予備費というのは、国会の審議を経ずに、内閣が独断で使えるお金なんですね。

 それで、ちょっと気になる記事を私は目にしたんですが、去年の四月二十三日の日経新聞なんですけれども、予備費の最終的な使い道が把握できないのは、予備費を割り振られた省庁が当初予算や補正予算など既にあるお金と予備費を混ぜて管理するケースが多いからだという指摘をしているんですね。会計検査院でさえ、コロナ関連をうたう巨額の予算がどう使われているか全体図をつかめていない、そういう記事なんです。これは事実ですか。

田中参考人 予備費の使途に関してであります。

 おっしゃるとおり、予備費については、一度各府省に配賦されますと、それは当初予算と一体管理をされるという仕組みになっております。

 ただ、会計検査院としては、検査のプロセスで、いろいろな工夫をいたしましたけれども、その執行状況についても明らかにして検査をしております。

谷田川委員 実は、会計検査院に、予備費が本当に適正かどうかというのがしっかり分かりますかという質問をしたら、すぐに分からなかったんですよ。だから、省庁に対して、通常予算と予備費は分けてちゃんと管理してください、そういう指導というか助言をすべきじゃないですか。いかがでしょうか。

田中参考人 予備費を区分して管理をするということだと思うんですけれども、現在、検査を進めております。検査の結果に基づかず意見を申し上げるのはちょっと早いかなと思いますので、検査結果が出ましたら、また御報告をさせていただければと存じます。

谷田川委員 余り慎重な言い方をせずに、民間出身の検査官には、やはり国民の立場に立って、政府の悪いところは、駄目だよ、駄目なものは駄目よと、そういうふうに期待されると思うので、是非、田中検査官のリーダーシップを私は期待したいと思います。

 予備費の問題、これは非常に重要ですので、会計検査院は財政民主主義にとってのインフラだ、そう新聞でも発言されていますので、是非、その言葉に基づいて指導力を発揮していただきたいと思います。

 時間が来ましたので、終わります。

山口委員長 次に、奥下剛光君。

奥下委員 日本維新の会の奥下でございます。

 限られた時間でございますので、早速、質疑に入りたいと思います。

 会計検査院は毎年多くの指摘をされていらっしゃいますが、これは、見方を変えれば、会計検査院の指摘を各省庁がしっかりと受け止めず反映しないがゆえに、同じような指摘が毎年繰り返されているんじゃないのかなというふうに僕は捉えているんです。

 そういった状況の中で、今後、無駄遣いや不正をなくしていくためにどういうふうに取り組んでいく方がいいとお考えでしょうか。お聞かせください。

田中参考人 御質問ありがとうございます。

 繰り返される無駄遣いだとか指摘に係る御質問かと存じます。

 まず、これについては、各府省の内部統制と、また、職員一人一人の認識、意識を高めていくということが鍵になると思います。

 その上で、会計検査院としては、指摘させていただいたことについては、必ずフォローアップを行い、それを掲記しています。また、会計検査院法三十四条、三十六条に基づく意見表示あるいは処置要求につきましては、改善がなされるまでフォローアップを続けて、これを検査報告に掲記し、また、対象機関についても意見を申し上げているというところでございます。

 また、同じような問題をほかの組織が起こしてしまうということもあるかと思いますので、未然防止の観点から、こういった指摘事項を事例として、研修などを通して共有させていただいているところであります。

 今後も、こうした繰り返しができるだけ減るように検査に努めてまいりたいと存じます。

奥下委員 ありがとうございます。

 会計検査院さんが悪いわけじゃないので、きちんと、各省庁さん、しっかり意識していただきたいなというふうに思っております。

 その中で、増大する社会保障費の検査について、今後すごく重要になってくると思うんですけれども、この辺りはどういうふうに取り組んでいかれるお考えでしょうか。

田中参考人 社会保障費の検査に係る御質問というふうに承りました。

 社会保障費については、おっしゃるとおり、多額の国費が投入されておりまして、しかも、国民の生活に密着していて、関心が高いところだと思います。

 会計検査院では、大きく二つのアプローチで検査をしております。

 一つは、正確性や合規性など、いわゆる経常的な検査の中で社会保障費に関する検査を行うというものであります。

 そして、もう一つのアプローチなんですが、これは、いわゆるテーマを決めまして、やや幅広に対象を設定して検査をするというものであります。例えば、財政健全化と社会保障の動向に関するものとか、あるいは、直近で申し上げますとコロナ病床確保事業のようなもの、こういったものについては、少し幅広にテーマを設定して問題提起をさせていただいているというところでございます。

奥下委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 先ほどの質疑とちょっとかぶる部分があるんですけれども、会計検査に対する国民の期待が今後ますます高まっていくと思います。その中で、会計検査院さんも、広報活動を更に強化して、情報公開に積極的に取り組んでいくべきだと考えますが、御認識をお伺いしたいと思います。

田中参考人 広報活動に係る御質問と承りました。

 情報発信や広報活動の強化が必要だということについては、全く認識を共にしております。

 そこで、私の経験を少し申し上げますと、私的な勉強会を開催いたしまして、専門家から率直な意見を聞くという機会を設けました。そこで課題が整理をされたんですが、現在は、それを受けて、職員のボトムアップという形で、広報、情報発信の改革プロジェクトチームが走っております。まだ始まったばかりですけれども、成果が出るように努めてまいりたいと存じます。

奥下委員 ありがとうございます。

 ほかの政党さんがどういうふうに思われているか分かりませんけれども、我々日本維新の会は、そういったお金の使い方にすごくこだわってきた政党であります。そして、大阪で、わあわあわあわあ、おかしいやないかと騒ぐことによって、国民の注目を集めて、支持していただいた結果、ここまで改革を大阪で進めてこられたと思いますので、是非、国の方でもどんどんどんどん発信していただいて、改革を進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 これにて私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 田中さん、今日は、本当にありがとうございます。

 質問させていただきます。

 今回、再任でいらっしゃいます。田中さん御自身、特に非営利の組織論、また政策評価に高い見識を有していらっしゃるというふうに認識しておりますが、既に一期目を務めていらっしゃいますので、これまでの総括、御自分で感じていらっしゃる成果、そして再任されましたら今後何に取り組んでいくかということを教えていただければと思います。

田中参考人 一期目を務め上げた総括、成果、そして今後の抱負に関わる御質問と承りました。

 今、私の専門について言及していただきまして、ありがとうございます。これに基づいて、少し成果について説明させていただけたらと存じます。

 まず、政策評価論でございますけれども、会計検査院には有効性の観点というものがございまして、これはまさに、政策や施策、事業の目的に照らして、どれだけ成果や効果が上がったのかということを確認するものであります。これにつきましては、特にアウトカムの観点が大事だということで指導をさせていただきました。

 また、非常に大型の政策を対象に検査をするという場面が増えてまいりました。例えば、農林水産業のTPPに関する検査を国会から御要請いただいていますが、非常に大きな政策でありまして、これに、政策体系図や、あるいは体系図に基づくKPIをどのように設定されているのかという確認をするというような手法を導入いたしました。

 また、昨今、ビッグデータ、数百万のデータを扱ったり、あるいはちょっと特殊なデータを扱うという場面が非常に増えております。それを分析するためには、統計解析の手法を導入することは必須になっておりますので、これも現在進め、また、幾つかの報告書の中にその成果が反映されているところでございます。

 そして、非営利組織論でございますが、これはマネジメント論と申し上げた方がいいかもしれません。これにつきましては、検査の計画の中に、より広い中長期の視点を入れて計画を議論するということを導入いたしました。これによって検査全体の、計画全体の見晴らしがよくなったり、あるいは予測がつきやすくなったというふうに思います。

 また、情報発信については、幾つか御質問いただいていますけれども、これは大事なテーマであると認識しておりまして、先ほども申し上げましたが、プロジェクトチームを立ち上げて改革に努めているところでございます。

 そして、今後の抱負でありますけれども、まずは、憲法九十条に根拠を置き、内閣から独立した会計検査院として、厳正、公正に検査を進められるように、その職責を果たしたいと思います。

 その上で、まず、質の高い報告書を作成すること、それから、それを分かりやすく国民の皆様にお届けをすること、さらには、私どもには非常にモチベーションの高い職員がおりますが、職員がフルにその能力を発揮できるように業務改革に努めてまいりたいと存じます。

岡本(三)委員 今のお話を伺いまして、会計を検査するわけですから、当然、エビデンスベースでなきゃいけないわけですけれども、最新の手法も用いながら、すごく客観的に分かりやすい成果を出してくださったというふうに認識をいたしました。

 田中さんは、経営学の父、ピーター・ドラッカーを師だと御自分でおっしゃっているように伺いましたけれども、田中さんの書籍を拝読いたしました。「ドラッカー 二〇二〇年の日本人への「預言」」、大変感銘を受けました。私もドラッカーの経営哲学に影響を受けた一人なんですけれども、一期目の就任のときに、田中さんはこうおっしゃっています。常に、有限の資源を使って最大限の効果を上げるという点では営利も非営利も変わらない、この非営利の中には政府も含まれる。

 実際にドラッカーのマネジメントの思考をどのように田中さんのお仕事の中で生かされているか、教えてください。

田中参考人 ドラッカーの思考がどう検査官の業務に反映されているのかという御質問と承りました。

 まず、ドラッカー先生が常におっしゃっていたのは、役に立たないものは知識ではない、それは単なる情報だということを常々おっしゃっていました。そういう意味で、私は、研究者出身の検査官でありますけれども、議論や手法をうのみにして検査の現場に押しつけるのではなく、もし現場と理論が合わないのであれば、むしろ理論を少しつくり直して適用するという発想をもって議論に臨んできたと思います。

 それから、ドラッカーは成果を重視する人でした。その成果は何かといえば、事業を実施した結果、社会やあるいは対象者にどういう影響を及ぼすのか、つまり、アウトカムの考え方であります。これは、会計検査でいいますと、有効性の観点の検査になりますので、ここでアウトカムの視点を重視するようにということは、職員とともに議論してまいった次第です。

 そして、最後になりますけれども、役人全般に、何か、できていないことに対しては非常に後ろめたく感じてしまうことがあると思うんですけれども、ドラッカーというのは、未着手の部分だとか新しく生まれた部分というのはチャンスであるという考え方を常に持っておりました。そういう意味では、検査計画を策定する上でも、ポジティブに、それを機会と捉えて臨むようにということは常に職員と話してきたところでございます。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 先ほど、所信の中で、コロナ禍で政府が行った医療機関に対する支援について若干言及をされていらっしゃいました。二〇二〇年から二一年まで、三千四百八十三医療機関に合計三兆三千八百四十八億円交付をされました。

 コロナ禍で医療機関の皆様を支えるのは政府の最大の使命の一つだったと思います。一方で、税金を使っているわけですから、本当に貢献をされている医療機関とそうでもない機関をしっかりと峻別することも重要かと思っております。もっと言うと、余り貢献もないのに税金を投入してしまったような医療機関がもしあるのであれば、それがゆえに、支援されて当然の医療機関までも非難を受けるようなことがあっては絶対いけないというふうに思っています。

 検査院では、病床使用率が感染拡大時でも平均して六割程度であったことも問題視されているように伺っておりますけれども、この医療機関に対する支援も含めまして、税金がより適切に活用されるという観点におきまして、今後どのように取り組んでいきたいかということの戦略というかビューを教えていただければと思います。

田中参考人 医療機関病床確保事業についておっしゃられているんだと思います。そして、今後の検査の在り方について御質問いただいたと存じます。

 まず、病床確保事業につきましては、おっしゃるとおり、病床利用率というのは一定の率にはとどまっておりますけれども、実際に、データで見て、それを今度は現場で確認したときには、それぞれ病院には様々な、やむを得ない理由があったということも分かってきました。ただ、制度の運営については課題があると考えておりまして、こういった制度の運営、さらには補助金の単価の設定の在り方、交付金の算定の在り方について所見を申し上げた次第です。

 今後も医療分野あるいは社会保障分野についてのコロナ関連の経費は投入されると思いますので、鋭意検査を続けていきたいと存じます。

岡本(三)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

山口委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速質問に入りたいと思うんですけれども、冒頭の参考人の発言を聞いておりまして、公平かつ均衡の取れた意思決定ができるように尽力したいというような発言が印象的だったんですけれども、この公平かつ均衡の取れたという言葉が、いい意味なんだろうとは思うんですが、会計検査院の業務上、公平かつ均衡の取れた意思決定というのがどういう具体的なものを目指しているのかというところが少し意味をつかみかねましたので、まず冒頭、そこについて教えていただきたいというふうに思います。

田中参考人 公平かつ均衡の取れた意思決定ということに関する御質問と承りました。

 私どもの検査の観点から御説明申し上げますと、観点には、正確性、合規性、また経済性、効率性、有効性の観点があるのですが、それに加えまして、その他、そのときに応じて必要な観点というものも設けております。その中に、公平性という観点を設けております。

 具体的な例を申し上げた方がいいと思うんですけれども、例えば、職業安定訓練を受けた後に補助金を支払う制度があるんですけれども、これが都道府県によってばらばらの算定をされていたとか、あるいは課税の状況が不均衡ではないかというような観点から検査をして、意見を申し上げている次第です。

浅野委員 具体例も交えながら御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 今、検査の観点というもの、先ほども話題に上りましたけれども、六つあるというふうに、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性、その他の必要な観点ということで、会計検査院のホームページにも記載があったんですけれども、先ほども質問の中に出ましたが、私自身、会計検査院の結果報告や、あるいはその後の政府の対応等を少し見ていても、いわゆる正確性や合規性については、しっかりと精緻に検査がされていて多くの指摘が毎年されているわけでありますけれども、経済性や効率性や有効性、いわゆる政策がちゃんと機能、ワークしているのかどうかという部分については、しっかりとそれが指摘されているのか、そして行政の中に反映されているのかという部分で、実感を持つことが難しい観点だと思っています。なぜなら、なかなか定量評価というのができないからですね。

 ですので、参考人は政策評価を専門分野とされているんですが、経済性、効率性、有効性の観点での検査の現状、あるいは、それが今どのように生かされているのかについて少しお考えを伺いたいと思いますし、加えて、先ほどアウトカムの観点を重視して指導したというような発言もされていましたけれども、その点についても、ちょっとアウトカムが何なのかよく分かりませんでしたので、含めて御回答いただければと思います。

田中参考人 アウトカムに係る御質問と、それから、経済性、効率性、有効性の観点からの検査をどのように行うのかという点の御質問と承りました。

 まず、アウトカムから簡単に御説明させていただければと存じます。

 例えばですが、セミナーを行いました、三百人のお客さんを予定していて、三百人入りました。これは、三百人入ったというのはアウトプットと呼ばれるものになります。ただ、セミナーを開く目的というのは、三百人集まるというところが最終目的ではなく、集まった方々がそのセミナーを聞いて、自分たちの知識が高まったり、あるいは行動が変わるというところを目標にしていると思います。その意味で、アウトカムというのはまさにそこに参加をされた方たちがどれだけ知識を得たり考え方に影響をもたらされたのか、この点をアウトカムというふうに呼んでおります。

 それから、この三つの、経済性、効率性、有効性の観点の検査でありますが、これはおっしゃるとおり、定量的に説明するというか測りにくいところがあるとは思いますけれども、これは全て、目標の達成状況はどうか、あるいは、より安くできないか、より効率的にできなかったかという比較が常に伴うものであります。そのためには、やはりデータを入手するということがとても重要になってきます。

 そのためにも、会計検査院では、現在、検査支援室というものを設けて、データをどうやって集めて、あるいは分析をするのかというところの試みというか、方法を開発しているところでございます。

 ただ、あわせて、会計検査院の仕事をやってみて思うのですけれども、原因究明というのをとても大事にしているんですね。それは、先ほどのコロナ病床確保事業でもお示ししましたけれども、データではこれしかやっていないじゃないかと見えるんですけれども、実際に病院の現場に行ってみると、例えば、重症の病床を確保していたんだけれども要請が来たときには軽症だったとか、あるいは、認知症を患っていらっしゃる方でケアが及ばないとか、様々な理由があります。

 ここにつきましては、定量分析あるいはデータの分析では及ばないところでありまして、やはり実地検査などを通じて現状をよく認識する、あるいは理解するということ、そして、原因の究明をしてより適切な改善策を導くということが大事ではないかというふうに思います。

浅野委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

山口委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 「公的統計の整備に関する会計検査の結果について」に関連して、国土交通省による統計の書換え問題について、まずお尋ねします。

 我が党の宮本岳志議員が総務委員会において、国土交通省の側から二重計上とは明確に言っていないが、会計検査院としてはそれでごまかされてよいのかという問題は残る、合算処理に限らず、まさに欠測値の補完措置を行っていたことは既に国土交通省から回答されているわけであり、会計検査院は分からなかったということで済むのかと指摘をしました。

 この指摘にどうお答えになりますか。

田中参考人 統計に関する御質問と承りました。御質問ありがとうございます。

 本検査は、五十の基幹統計を含む二百九十八の統計を対象に検査を行いました。計画に基づいて集計が行われているのかということに主に注目をして、この二百九十八について横断的に検査を行った次第です。

 したがいまして、特定の統計調査の集計方法が統計そのものにどういう影響があったのかというような統計処理に関する分析については行っておりません。したがいまして、二重計上になっていたことについては把握しておりません。

 しかしながら、過去の調査周期、つまり、一月ごとに集計をしなければいけなかったものを、三月分、三月目のところにまとめて集計するなどの状況につきましては、検査報告の中で掲記をしている次第です。

塩川委員 統計そのものの役割から出発して考えたときに、統計法は、公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報と規定をしております。統計のゆがみは放置されてはなりません。

 統計法に基づく行政目的が達成したかどうかまで踏み込むことが会計検査院の本来の役割だとの指摘もありますが、どう受け止めますか。

田中参考人 国土交通省が、私どもの指摘を受け、また一連の事件を受けまして、現在、集計方法の見直しをしている最中でございます。見直しの処置を講じておりますので、それを見守っていきたいと存じます。

塩川委員 東京オリパラ大会検査報告書についてお尋ねします。

 オリパラ大会経費の中で国が負担した経費が三千六百四十一億円であり、組織委員会が公表した経費よりも約二千八百億円も多かったことを明らかにしました。オリパラ組織委員会の報告では国費がどのように使われたのかが分からないというずさんさもあらわになったわけです。

 そのため、会計検査院は、国が政府保証を行うような大規模イベントについては、国の負担経費やイベント全体の経費の総額をあらかじめ明らかにする仕組みの整備を求めましたが、国はどのような対応をされたでしょうか。

田中参考人 東京オリンピック・パラリンピックに係る検査報告を昨年十二月に国会に提出させていただきました。

 この報告の中で、国の決算情報を確認できなかったため、それを開示すること、また、国が政府保証を行うような大規模イベントについては、経費の総額をあらかじめ明らかにするように所見を述べております。また、その仕組みについても、今御指摘ありましたけれども、所見に述べております。

 会計検査院としては、同じようなイベントが行われた場合に、我々の所見が反映されるのかどうかについて、フォローアップをしていきたいと存じます。

塩川委員 オリパラ組織委員会をめぐっては、高橋元理事の贈収賄事件ですとか、また、五輪テスト大会独禁法違反の疑いなど、問題が山積をしております。民間団体に国費を入れた以上、国はその部分をしっかりと把握する必要がある、国にはその部分について取りまとめる枠組みをつくる責任があるのではないか、このことを改めて求めることが必要だと思いますが、その点はいかがでしょうか。

田中参考人 まず一つは、大会組織委員会に渡された国費につきましては、共同事業とパラリンピックの事業については一部国の補助金が入っておりまして、これは検査をしておりますが、掲記に値するような内容については見当たりませんでした。

 また、おっしゃるように、所見においては、今後は、国がオリパライベントに投じた資金を明確にして、決算の状況を明確にして、これを開示することということを申し上げております。

塩川委員 会計検査院は、憲法に基づき、会計検査院法において、内閣に対し独立の地位を有するとされています。国会の検査要請に的確に応えるためにも、専門人材の増員は欠かせません。

 しかし、近年では、調査官等の定員が増えるどころか削減をされております。これでは、実地検査などを始めとした取組、国会や国民の要請に応えることが困難となるのではないか。行政機関と同様の定員合理化計画を会計検査院も実施していることは独立性を損なうものではないでしょうか。

田中参考人 会計検査院の独立性と、また人員確保に関する御質問と承りました。

 まず、独立性について申し上げますと、私どもは、憲法に根拠を置き、また会計検査院法第一条において内閣から独立とありますけれども、具体的には、事務総局の人事権の独立、また規則制定権を持っておりまして、さらに二重予算制度というものを設けて、これで我々の独立性というものを担保しております。

 また、人員につきましては、優秀な人材を確保するということは私どもにとっても大事な課題ではあります。ただ、昨今の行政機関の動向を見ますと、やはり協力をしていく必要があるというふうに認識しております。ですから、まずは、私どもの検査の体制、計画の作り方、あるいはより効率的な業務運営、ここを工夫することによって生産性を高めていきたいと存じます。

塩川委員 この数年間ずっと二桁の増員要求をされているわけですけれども、プラスになるどころか、マイナスになっているわけですね。それがやはり業務に大きな差し障りがあるんじゃないか、この点についてはいかがでしょうか。

田中参考人 欲を申し上げれば、人員はあった方がいいのですけれども、ただ、今申し上げたように、様々な業務の仕方、あるいは、検査につきましても、例えば、実地検査に行かずに在庁でデータを扱う、あるいはオンラインを使ったリモート検査を行うなどして、時間を少し圧縮、節減いたしまして、以前より、より効率的な検査ができるようになっております。

 そういう意味で、何とか今の人員でもよい検査をしてまいりたいと存じます。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

山口委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

佐々木委員 自由民主党の佐々木紀です。

 検査官への質問として不適切だったら事前におわびをしておきますけれども、公共調達、入札についてお伺いしたいと思います。

 入札は、主に二種類あります。公共工事と物品、役務の入札と主に二つあるんですけれども、この後者の方を私はちょっと問題視しております。この物品、役務の入札というのは、例えば清掃業のような毎年行われる業務のことを指しています。これは、清掃業のような毎年行われる業務であっても物品と同じ扱いになるものですから、もう安ければいいという考え方なんですね。したがって、同じ仕様のものを毎年入札にかけますから、どんどんどんどんどんどん値段が下がっていくということです。

 今、国を挙げて賃上げを求めている状況の中で、この物品、役務の入札改革、特に人件費比率の高い業務の入札改革というのは急務だと思っております。最低制限価格を設けるなど、ちょっと見直したらいいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

田中参考人 入札価格の改革に関する御質問と承りました。

 この制度をどうするか、改革をするか、あるいはどう制定するかということにつきましては、誠に僭越でございまして、これは政府あるいは国会で御議論いただくことかと存じますので、私の方からは意見は差し控えさせていただきたいと存じます。

谷田川委員 改めて、立憲民主党の谷田川元でございます。

 コロナワクチンに関して伺います。

 令和二年、三年の決算検査報告に関して、コロナ関連の事業についていろいろ会計検査院が指摘しているんですが、コロナワクチンに関しては全くないんですよね。

 去年の四月に明らかになったんですが、何と日本政府は、二兆四千億円の予備費で八億八千二百万回分のワクチンを確保したんですよ。どう見ても、四回打ったって四億回分で、あと残り四億回分以上余る可能性、大量廃棄の可能性を昨年十二月の予算委員会で加藤厚労大臣が認めました。

 結果的に、これは予備費だったというのもあると思うんですが、半分以上無駄になると、一兆二千億円ぐらい税金が無駄になるという事実があるんですよね。

 ですから、ちょっとこの辺、会計検査院として何かできることがないのか、どうお考えか、お聞きしたいと思います。

田中参考人 恐れ入ります。ワクチンに関する御質問と承りました。

 検査の結果に基づかず今意見を言うことについては、大変難しく存じます。

 ワクチンにつきましては、国民の関心も高く、また、おっしゃられたように多額の国費が投入されていることについては十分認識をしておりまして、鋭意、この検査を進めていきたいと存じます。また、それがまとまりましたら、掲記することがありましたら、御報告をさせていただけたらと存じます。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 会計検査院は、PFI事業に関する報告書を取りまとめております。国や自治体の業務の民営化の一手法であるPFI事業について、公共で行うよりもPFIで行った方が経済的優位性が高く評価されるというバイアスがかかりやすい、こういった問題や、PFIを採用しないやり方よりもPFI事業の方が維持管理費がかえって高額だったということなどを指摘しております。

 PFI手法の発祥の地であるイギリスの会計検査院による自国のPFI事業の検査に学んだとお聞きしましたが、どのような点を学んだのでしょうか。

 また、イギリスでは、会計検査院の検査がきっかけの一つとなって、その後、イギリス内のPFI事業は廃止をされたということですけれども、日本でも廃止をすべきだというお考えはありませんか。

田中参考人 PFI事業に関する御質問と承りました。

 PFI事業につきましては、PFI法が制定されて二十年になるということで、七十六のPFI事業について、検査をして、国会に報告をさせていただきました。この中で、いわゆる比較の算定の基礎となる割引率が金利情勢を反映していないということを指摘を申し上げました。また、これを受けて今国の方で改正をしておりますので、その状況を見ていきたいと存じます。

盛山委員 自由民主党の盛山正仁でございます。

 今日はお疲れさまでございます。

 フランスでは、大蔵省以上に会計検査院の方が大変人気が高く、地位が高いというふうに伺っております。国民の皆さんも税金の使途に対して関心が今大分高くなりつつあると思います。

 参考人におかれましては、もう一期検査官としてお務めでございまして、今後、我が国の会計検査院の地位の向上というんでしょうか、国民の皆さんからの信頼をより一層高めていくために、二期目におかれましてはどういうふうな形でお取組をなされようとしているのか、お答えいただきたいと思います。

田中参考人 会計検査院の存在をどのように知らしめていくのか、あるいは御理解いただくのかという御質問と承りました。

 おっしゃるように、会計検査院につきましては、非常に重要な役割を果たしていると存じます。実際にこの任務に着手して分かったのは、検査の内容は非常に幅広く、しかも、その検査の結果というのは国民にとって重要な内容が含まれているということであります。これらにつきましては、やはり、もっと国民の皆様に分かりやすくお伝えするという努力が必要であるというふうに認識しております。

 そのために、先ほども言及いたしましたが、現在、情報発信、広報改革のプロジェクトチームを立ち上げておりまして、プレゼンテーションの方法、あるいはメディアとの対話の方法など、検討を進めているところです。すぐに大きな成果というか効果が出ていく種類のものではありませんけれども、着実に成果が出るように、指導、指揮監督してまいりたいと存じます。

山口委員長 よろしゅうございますか。

 それでは、これにて田中参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 田中参考人、大変ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより古谷参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 伊東良孝君。

伊東(良)委員 古谷参考人には、本当に、この二年五か月、公取の委員長として御活躍いただいてまいりました。また五年間の任期ということになるわけでありますので、問題点を把握されていると思いますけれども、いま一度お聞かせいただきたいと思います。

 近年、原材料や燃料の価格が高騰する現状にありまして、取引において製品やサービスの価格が適正に価格転嫁されているかなど、独禁法の運用と市場監視に国民の関心は高いところであります。これについての公取としての職責について御見解を伺うところであります。

 また、もう一つ、巨大IT企業による寡占、独占への対応など、グローバル化並びにデジタル化が急速に進む中で、競争政策を構築し、環境を整備するために、公正取引委員会としてどのような取組が必要か、その見解もお伺いいたします。

古谷参考人 ありがとうございます。先ほど所信で申し述べさせていただいたことを何か総括していただくような御質問をいただきました。

 二年半ほど前に委員長に就任いたしましたとき、ちょうどコロナ禍の最中でございました。コロナ禍で、中小企業の皆さんや下請の皆さんがより打撃を受けている状況の中で委員長に就任いたしましたけれども、その後、最低賃金を上げるとかということで、やはりきちっとした転嫁を中小企業の皆さんができるような環境をつくらなければいけないということが政府の大きな課題になりました。一昨年の冬から、それに原材料価格やエネルギー価格が上がってきたということもありまして、価格転嫁の円滑化ということが公正取引委員会の取組としても大きな課題になっておりまして、ずっとそれをやってきたような気がいたします。

 具体的なことは省略をいたしますけれども、これまでにないような緊急調査や立入調査、あるいは、関係省庁と一緒に業界団体に自主点検をお願いしたりいたしまして、相当な監視や実態把握を行ってきたところであります。昨年の末に、その緊急調査の結果を取りまとめまして、四千六十社の企業に対して、転嫁の受入れが必ずしも思わしくないということで、具体的な注意を書面でさせていただきましたし、多数の受注者との間で協議をせずに価格を据え置いていたということで、大変異例ではありましたけれども、十三社の企業を公表させていただきました。

 そこで分かりましたことは、発注者側と受注者側で相当認識の差がありまして、その結果、サプライチェーンで転嫁の連鎖が断ち切れているということが改めて分かった点がありますので、そういうことも含めて今年も調査を継続するとともに、やはり優越的地位の濫用とか下請法違反について、具体的な執行にこれから力を入れていきたいと思っております。

 もう一つお話がありましたデジタル化への対応というのも、これは公正取引委員会として今かなり重点を置いて取り組んでおります新しい課題でございます。

 GAFA、今、メタになりましたのでGAMAかもしれませんけれども、そういう大きなビッグテックのデジタルプラットフォームがまさに市場支配的な地位を築いて、寡占、独占の問題がございます。

 私ども、独占禁止法の執行という面でも、アップルやグーグルと今綿密に対話をしながら、改善をしてもらうような努力もしておりますし、世界的にもデジタルプラットフォームに対する競争上の課題について新しいルール整備の議論も進んでおりまして、海外の動向もにらみながら、政府全体で議論する場がございますので、実態把握をいろいろやりながら、そこに参画をして、しっかり貢献をしていきたいということで、お話がございましたように、価格転嫁の問題とデジタル化への対応、これは今、公正取引委員会が取り組むべき大きな二つの課題であるというふうに認識をいたしております。

伊東(良)委員 日本も大きな流れが今できつつあります。

 一つには環境問題でありますけれども、特に、脱炭素に向けた取組につきましては、新技術の研究開発あるいはまた原材料の調達などで企業間の連携が増えると予想されております。

 また一方、企業間の連携が独禁法上のカルテルに当たる可能性があるとの指摘もあるわけでございまして、企業が萎縮することなく取り組むことができるような環境整備について、公取としての御見解をお伺いしたいと思います。

古谷参考人 御指摘がありましたように、GX、グリーントランスフォーメーションというのは、これからのイノベーションの中心にもなっていく大きな課題だと思います。恐らく、企業の皆さんの脱炭素への取組というのはこれから本格化してくると思います。

 公正取引委員会は、これまでもリサイクルですとか共同研究などこういう環境問題に関連するガイドラインというのを個別にお示ししてきたこともありますし、いろいろな相談事例も積み重なってきております。そういうことに照らしますと、脱炭素に向けた技術開発等を企業が共同で行われるというときには、独占禁止法上、基本的に問題にはならないんだろうというふうに認識をしておりますけれども、それが生産量だとか価格の調整、共謀ということになりますと、御指摘のようにカルテルという問題も出てまいります。

 今後、御指摘がありましたように、企業の皆さんが大胆に脱炭素に取り組んでいただけるようにということで、その予見可能性を高める意味でも、新たに、環境、脱炭素に向けた、やや網羅的なガイドラインを公正取引委員会としてまとめようということで、昨年の十月から検討会を開催しまして、今月十三日から実はそのガイドラインの案というのをパブリックコメントに付したところであります。

 これを取りあえずはまずまとめて、経済界にもお示ししていくことにしたいと思いますが、これから、恐らくこれまでに考えられなかったような脱炭素の取組というのが具体的に出てくることもあると思いますので、そういうこともにらみながら、柔軟な対応を公取としてもしていかなきゃいけないと思っておりまして、なるべく企業の皆さんからの前広な御相談にも応じようと思いますし、新しいガイドラインを取りあえず作りますけれども、それも状況に応じて見直していくということも含めて、今後の環境政策の推進を公取としても支援していくという考え方で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

伊東(良)委員 大変に意欲的かつ御丁寧な御答弁をありがとうございます。

 我が国の経済をめぐる環境が大きく変化をする中で、公正取引委員会が対応すべき領域は広がってきている、このように思います。体制の整備、専門的知見を有する人材育成がこれには必要ではないか、こう考えておりますが、これに対しどのようにお考えか、お伺いします。

古谷参考人 申し上げましたように、デジタル化が進む中で、公正取引委員会が取り組むべき課題もかなり技術的にも複雑になっていますし、変化の速いデジタル化に対応していかなければいけないということで、専門的な人材が求められているというふうに思います。

 一方で、中小企業が不当な不利益を受けないように、価格転嫁等でかなりマンパワーを必要とする業務も増えておりますので、体制の強化とそれから能力の向上ということが課題であるというふうに認識をして、関係方面にもお願いをしてまいりました。

 おかげさまで、価格転嫁を中心とした中小企業の対策のためということもあると思いますけれども、この秋に五十人の緊急増員を認めていただきました。また、令和五年度予算としても更に体制強化のための増員をいただいて、八百五十人ほどの定員だったものを九百二十人を超える定員ということで、今年度と来年度の予算で措置をしていただけるということで、大変ありがたいと思っております。

 それだけ私どもへの期待なり責任が大きいんだろうと思いますので、体制もしっかり強化しながら取り組んでいかなければいけないというふうに思っているところでございます。

伊東(良)委員 御丁寧な御答弁をありがとうございました。

 以上で終わります。

山口委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 今日は、ネットでの中継もありませんので、いつもの委員会より率直にお答えをいただければなというふうに思います。

 国会でも分配の議論というのがよくされていますが、分配というのは、何も、政府が税を取って政府が配るということだけではなくて、市場においても分配が行われているわけです。そちらの分配の方が政府が配るより大きいわけですので、市場を公平公正に保っていくということは、経済の面でも、それから健全な成長を生む面でも重要なことだと思います。

 そういった点から、我が党も、市場の番人、公正取引委員会の機能は重要だということで、機能強化というのを公約にもここ数年掲げてまいりました。実際に公取の機能は弱過ぎるということも、世界の先進国と比べて言われてきたわけでございます。

 これは、具体的に機能強化するには何をするべきだというふうにお考えでしょうか。

古谷参考人 率直に申し上げて、定員を増やして体制を強化するということが基本的な前提ですけれども、やはり、その中で、職員の能力の向上、一言で言えばそういうことかもしれませんが、デジタル化が進む中で、私どもが見なければならない経済の動きというものは大変複雑で難しくなっております。どこに競争を阻害する行為があって何が問題なのかというのを、私どもは、独禁法に基づいて、事業者に指摘をして、それを是正していかなければいけないという立場にあります。それをする能力のためには、やはり、デジタル人材も必要でありますし、分析能力の高い、例えば経済学の博士号を取った人、そういった人も必要かもしれません。

 御指摘がありましたように、海外の競争当局に比べると、まだそういう専門能力のある人材が不足しているという点は否めないと思います。一朝一夕にできることではありませんけれども、そこは事務総局の諸君ともよく議論をして、優秀な人材に来てもらえるような努力を続けていかなければいけないというふうに思っております。

落合委員 先ほどからも言及が何度かございましたが、デジタル化の中でのデジタルプラットフォーマーの存在、これはかなり大きいと思います。どんどんどんどん巨大化して、ある意味、国の経済規模よりも大きくなってしまっている。それから、もう一つ、取引をする事業者という性格だけではなくて、マーケット自体をもその事業者が握っているわけです。

 伝統的な経済学においては、マーケットというのは神の見えざる手が働いて自然に分配が行われますということが言われてきて、それを前提に政策が打たれてきていたにもかかわらず、今は、この神の見えざる手をデジタルプラットフォーマー、一事業者が持っているということです。国よりか規模の大きいデジタルプラットフォーマーと、ある意味、戦っていくということは大変なことです。これも、世界と比べても、弱腰で来たんじゃないかなというふうに思います。特に所管官庁の経産省が弱腰過ぎると私は思います。

 これからの世の中を考えていく上でも、国民の経済的利益、国益を考える上でも、ここは異次元の対応をするべきである、マーケットの性格が変わってきましたのでその必要があると思いますが、御認識はいかがでしょうか。

古谷参考人 我が国の公正取引委員会は、私の前任の杉本委員長の時代から、デジタル化の問題については、かなり、外国と比べましても先んじて、問題意識を持って取組を始めていたと思います。

 具体的には、オンラインモールですとかアプリストアの問題、あるいはデジタル広告、クラウドということで、立て続けに実態調査を進めてきまして、それを踏まえて、政府全体でデジタル市場に係るルール整備をする体制というのができまして、もう先生御承知のように、デジタルプラットフォーム取引透明化法というのが経済産業大臣の下でできて、その運用も始まっております。

 今、そういう体制の下で、私ども、独禁法でどこまでやれるかということを日々考えながら取り組んでいるつもりでありますけれども、御指摘のように、諸外国では、EUでデジタルマーケット法ができるというような動きもございます。今、GAFA、GAMAと言われるようなところがいわばルールメーカーになって、そのルールに従わないと取引当事者がビジネスもできない、そういう状況になっていると思います。そういう、国家と並ぶようなマーケットのルールメーカーになっているデジタルプラットフォーマーとの間でどういう関係をつくっていくかということについては、御指摘と同じような問題意識を私も持っております。

 そういう問題意識の中で議論を進めておりますので、また議論の進展に応じて御議論なり御批判をいただければと思いますけれども、一方で、日本の場合には周回遅れのデジタル化といったような現状もございますので、日本のデジタル化の現状も踏まえた上で、競争上の課題にどう取り組んでいくかという議論はしていかなければいけないということも考えながらやっているということは御理解をいただければと思います。

落合委員 最後の一問です。

 インボイスが導入されます。財務省の元主税局長でもいらっしゃいますが、インボイスの導入によって新たな小規模事業者いじめが生まれるという意見、それから、もう具体的な事例も出てきています。

 ここは出身のところに遠慮せずにやっていただきたいんですが、問題意識をお聞かせください。

古谷参考人 インボイス制度自体は、私は税を長くやってきた人間としては、消費税制度としてはあるべき仕組みの一つではありますけれども、御指摘ありましたように、これまでの大きな消費税制度の仕組みが変わるわけでありまして、特に、免税事業者の方がインボイスが発行できないというので値引きを強要されるみたいなことがあってはいけないということで、国税当局とも連携をして、昨年の早い段階からQアンドAを出して、周知徹底を図ってきているところではございます。

 具体的な事例も私のところにもいろいろ来ておりますので、そういうことも踏まえながら、関係省庁ともよく連携をして、このインボイス制度の導入に際して、免税事業者、あるいは課税選択で立場が変わったときに、取引上、不当な不利益や、いわばしわ寄せが起きないようなことで、公正取引委員会としても、きちんと広報や相談に応じながら対応していきたいというふうに思っております。

落合委員 ありがとうございました。

山口委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。

 本日は、公正取引委員会委員長候補の所信に対する質疑をさせていただきます。短い時間でございますので、早速ですが質問をさせていただきたいと思います。

 まず、令和三年度は独禁法の法的措置の件数が五件と少なかったんですけれども、いかなる要因と認識しておられるかということと、また、排除措置命令や課徴金納付命令等、違反行為に対する法執行についての方針を、今後の方針を含めて聞かせていただきたいと思います。

古谷参考人 御指摘のように、令和三年度は、法執行の、特に課徴金納付命令や排除措置命令の件数が少のうございました。

 コロナ禍の最中ということもありまして、私どもの審査業務も、立入検査ですとか、事業者の方を呼びつけて対面でヒアリングをするとか、そういうことが、なかなか制約が多かったこともありまして、進捗しなかったというところはやむを得ない面もあったかと思いますけれども、一方で、先ほどからお話がありましたが、海外のデジタルプラットフォーマーに対して、いろいろとこちらから話をして、競争阻害行為を自主的に少し改善をしてもらったといったような例もあったので、制約の多い中でやれてきたのではないかなと思います。

 ウィズコロナで私どもの審査事務も大分平常に戻ってきておりますので、今後は、余りいいかげんなことは言えませんが、令和三年度よりは、いろいろなそういう法執行の件数も多く処理できるのではないかなと思っております。引き続き、国民生活に直結する分野ですとか、あるいは規制緩和で自由化の動きが進んでいる分野、あるいはデジタル分野、そういうところに重点を置いて、私どもの独禁法の執行にも努めていかなければいけないというふうに思っております。

池畑委員 ありがとうございます。改めまして、そういった方面も含めながら注視をさせていただきたいというふうに思っております。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 私は農業にずっとこだわってまいりましたので、この質問の機会をいただきましたときに、どうにか農業関係の質問をさせていただきたいと思って、今回取り上げさせていただきます。

 日本維新の会は、JAの地域独占体制を改善するために、JAに対する独占禁止法の一部適用除外規定を廃止すべきと政策提言に挙げております。

 公正取引委員会における過去のJAに対する法的措置や警告の状況はホームページ上でも確認はできるんですけれども、古谷候補がJAに対して法的措置や警告を行ったときの事例の中で特に問題だと思われた事例があるのであれば、どのような事例を挙げられますでしょうか。個別案件でなくとも、例としてでも構いませんので、よろしくお願いいたします。

古谷参考人 御指摘のように、農業協同組合は、中小企業の事業協同組合なんかと同じように、相互扶助の観点から、組合員の共同事業など組合の行為については独禁法は適用除外ということになっております。

 これは、小さな組合ですと、いろいろな交渉をするときにやはり交渉力が弱いので、いろいろな取引上の交渉をされるときには組合としてまとまって動いた方が取引上も独禁法の観点からも合理的であろうということで、独禁法ができたときから適用除外になっているわけですね。ただ、組合のそういう行為であっても、不公正な取引方法を用いている場合とか、あるいは競争を実質的に制限する場合は適用除外になりませんよというただし書になっております。

 私ども、そういう観点から農協に対しても独禁法の取締りをやらせていただいているわけですけれども、例えば、いわゆる系統出荷のような共同の行為を組合員に強制してやらせるとか、あるいは組合員がほかの人と取引するのをやめろといって妨害をするとか、あるいは農協がカルテルを結ぶとか、そういう場合にはただし書に当たりますので、独禁法上問題があるということで、これまでも、平成元年以降ですと十八件の排除措置命令ですとか警告を行ってきております。こういうことを踏まえて、平成十九年には農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針というのを私どもとして作った上で、農協向けに研修会や講習会をやらせていただいているという状況でございます。

池畑委員 そのように認識されていることを確認させていただきました。

 根本的な話として、今、候補もお話しいただきましたけれども、「農協と独占禁止法(別冊) 過去の事件の紹介」ということで、ホームページ上からも取れるものを見させていただきました。令和四年一月版でございましたけれども、所信表明でも述べられましたように、優越的地位の濫用ということの中で、販売場所に対する、する、させない、今お話もありましたけれども、組合員とか非組合員に対しての出荷させる、させないの問題が多く発生しているように見受けられました。

 JA自体が連合会、単位農協と、これも先ほどお話しいただきましたけれども、バランスの問題であったり、現場で法律の中身をしっかりと余り把握していないということから起こったりすることだというふうに思っております。

 JA自体がどのようにこの問題を考えておられるか、我々日本維新の会としても、政策提言をしているわけですから、JAの方々ともしっかり意見交換をさせていただく必要はあるというふうに考えておりますけれども、公正取引委員会委員長に就任されました後も、大きな問題として意識をしていただきたいというふうに思います。

 そこで、公正取引委員会において、先ほどもちょっと含めてお話しいただきましたけれども、JAに対する独占禁止法の適用除外制度を廃止する方針又はそのお考えがあるかどうか、古谷候補のお考えを最後にお聞かせいただきたいと思います。

古谷参考人 農協組合の行為に対する適用除外制度自体については、私はまだその存在意義はあるんだというふうに思っておりますので、現時点でそれを廃止したりするということは私どもとして今考えておりませんけれども、ただし書で、競争阻害的な行為をやる場合には適用除外は適用されないというふうに申し上げましたとおりでありますので、そこのところをよく農協の皆さんにも理解をしていただく必要があると思います。

 したがいまして、今後とも、農林省ともよく連携をしながら、先ほどの指針について、私どもとしてもきちんとした普及啓発に努めてまいりたいというふうに思っております。

池畑委員 以上です。ありがとうございました。

山口委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。よろしくお願いいたします。

 事前通告させていただいた質問の全てを前の委員の方々が言及されましたので、若干派生した質問をさせていただきます。ただ、事前に通告しておりませんので、もし御準備できていないようでしたらお答えいただかなくても結構です。よろしくお願いいたします。

 まず、デジタル化が進む中で公取の役割が大きくなっているというのは様々今御答弁がありましたけれども、GAFAを始めとしたデジタルプラットフォーマー、これは日本だけでなく、例えば、公取のカウンターパート、アメリカFTC等も、二大看板、一つはエンフォースメント、法の執行、アドボカシー、競争を支持するということで、かなりいろいろな取組を始めています。対峙する相手が同じわけですから、もちろん日本の国内の適正な競争を促進していかれるわけですけれども、他国のカウンターパートとの様々な協力等に関してどのようにお取り組みかということを教えてください。

古谷参考人 デジタル市場の競争上の課題に関しては、私ども公正取引委員会、我が国の公正取引委員会だけでなく、諸外国の競争当局も基本的に同じ問題意識を持って取り組んでおりまして、私ども、特にアメリカやEUの競争当局とは、日々、日常的に情報交換やいろいろな意見交換をしながら進めているところでございます。

 御指摘がありましたように、独禁法、競争法の法執行を具体的にしっかりやるという点と、やはり競争政策の推進ということで規制や制度の見直しをどういうふうにデジタルプラットフォーマーに対してやっていくか、その両面で議論が進んでおります。特に、一昨年のイギリスのサミットのときから、G7の競争当局のトップが集まってデジタル市場における競争政策の課題を議論して、なるべく連携し調和を図っていこうということで、昨年十月にドイツのベルリンでもございました、私も出席をさせていただきましたけれども、改めて、同じような問題意識をみんな持っているんだなということを確認できました。

 今年は、日本がG7の議長国になりますので、いろいろな担当大臣会合というのがありますけれども、G7のいわば公取委員長のカウンターパートの皆さんがやってきて議論することになりますので、更に国際的な連携が深められるように努力をしていかなければいけないなというふうに思っているところでございます。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 価格転嫁がスムーズに行われることが重要だというふうな発言を先ほど伺いました。実際に四千件以上注意をされて、協議なしで据置き十三社の名前も公表していらっしゃる。もっとやっていただきたいんですけれども。

 例えば、パートナーシップ宣言を出しているような大企業が、そういう宣言をしているにもかかわらず、下請に対してほとんど対応していないという話もよく伺います。賃金を上げていくために、春闘で大企業は上がりますけれども、しっかりとした価格で発注をしなければ、その中小企業の賃金を上げる原資がありません。

 大企業にももうちょっと切り込んでもいいんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

古谷参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 先ほど、昨年暮れに緊急調査の結果を公表いたしまして、四千社強に注意をし、十三社公表をしたと申しました。これは、多数の受注先との間で協議もせずに価格を据え置いていたという十三社はほとんどが大企業でございます。

 そういうこともありまして、御承知のように、今年に入って経済三団体がパートナーシップ宣言の実効性を高めるための文書というのを会員企業に出していただいておりまして、発注者側から積極的な価格転嫁の受入れの協議をすべきことと、協議をしたら価格にそれを反映させることということで文書を出していただいております。

 公表を含む昨年の私どもの措置はかなり異例なことであったかもしれませんけれども、そうしたことや中小企業庁の調査結果も踏まえて、経済界としてもパートナーシップ宣言をもう一度実効的なものにしようというふうに動いていただいておりますので、それに期待したいと思いますし、そういうことも含めて、私どもは、やはり価格転嫁を円滑に進めるためには発注者側からの働きかけが重要なんだということを改めて周知させていただきながら、この調査を継続していきたいというふうに思っております。

岡本(三)委員 中小企業いじめにならないようにということと同様に、先ほども話題になりましたインボイス、私たちはインボイスは必要な制度だと思っていますが、その結果、例えば、免税事業者の方々が不当な差別を受けるようなことがあってはいけないと思っているんです。

 そこで、もっと宣伝してほしいんですね。

 要は、いやいや、そういうルールがあるのは分かるけれども、そんなことをもし公取に言ったりしたら、それこそ、その企業だけではなくてほかの企業からも、あそこは何でもチクるところだということでどことも商売できなくなるんだと。

 ですから、しっかり秘密を守り、その結果しっかりと守ってというようなロールモデルも示しながら、いろいろな方に、公取にちゃんと御相談できるような営業活動、宣伝活動をもっとやっていただいて、しっかりとした競争状況を保っていただきたいと期待しておりますが、いかがでしょうか。

古谷参考人 御指摘がありましたように、公正取引委員会は敷居が高いので、困っていてもなかなか相談ができない、情報提供しづらいという声も聞きます。下請の皆さんにとってみると、親事業者との関係で、ここからこういう目に遭っているというお話を私どもに持ってこられるのは大変ちゅうちょされる面もあるんだと思います。

 価格転嫁の関係で、去年、匿名で情報をいただくフォームというのも我々は開発をして、四、五百件は来ているんですけれども、御指摘のとおりだと思いますので、私どもの方になるべく気兼ねなく御相談をしていただけるように、私どもとしても、広報あるいは説明を尽くさなければいけないと思っております。

 その辺、足りない部分があるというお叱りかもしれませんけれども、努力をしたいと思います。

岡本(三)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

山口委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。本日はお疲れさまです。

 簡単な御質問を申し上げます。

 一つは、お立場があるので失礼なことになるかもしれませんけれども、昨年の後半から今年の正月、挨拶回りをしていて、町工場さんを見ていると、やはり価格の転嫁が、例えば、金属加工をやっているようなところは、材料はメーカーさんから支給なんだそうです。それが二割、三割、五割、もっと上がっている材料もあるというんですけれども、結局、それが上がったがために工賃を上げてくれないんだという話なんです。

 だから、お忙しいと思うんですけれども、やはり委員長も、本当に末端で、製造業でも農業でも何のサービスでもいいんですけれども、一回、現場を見る、それで直接その事業者さんの話を聞いてもらえたらなと思うんですね。

 いろいろな調査をして積み上がってきた中で、こうなっている、ああなっているというような実態を把握されると思うんですけれども、やはり一回、自分の目で、耳で聞いてもらうというのはいかがかなと思って、お尋ねしたいと思います。

古谷参考人 いろいろな実態調査や立入調査を通じて、公正取引委員会の職員の皆さんが実態を聞かせていただく努力はしていると思いますけれども、そういうものを踏まえて、私ども、いろいろな措置なり対応をしてきたつもりでありますけれども、御指摘を踏まえて検討させていただきたいと思います。

鈴木(義)委員 あと、この間、挨拶に伺ったところでお聞きした話なんですけれども、大手のメーカーさんの下請の仕事をしていて、昨年、一生懸命交渉して、自分のところは五%ぐらい上げてもらいたかったんだけれども、実質三パーを切るぐらいの値上げになった。そのメーカーさんが作った材料を加工している事業者さんがあって、材料費が三割上がったと。自分のところは三%しか上げてくれなくて、なぜ材料を三〇%上げるのか。こういうのは、なかなか、民民の取引なものですから、公取が入っていって、はい、そうですかとはならないと思います。

 それともう一つ、例えば、お弁当屋さんから聞いた話です。お弁当の原価を二百五十円で作って、間に二社マージンを取るところがあるんだそうです。五百円になって、実際に高齢者のところにお届けするときは七百五十円なんだと。これはちょっと取り過ぎじゃないかと思うんですね。でも、それを断ったら、もうお取引させてもらえない。それも世の中にはあります。今の話を厚生労働省の方で一回調査してくれと言ったら、いや、そういうのはできません、こういう話なんですね。

 やはり、マージンの取り方もちょっと公取の方で、世の中のいろいろな取引がありますから難しいとは思うんですけれども、指針を出してもらわないとなかなか改善されないんじゃないかと思うんです。その点についてお尋ねしたいと思います。

古谷参考人 御指摘のようなことは、いろいろな業界のサプライチェーンの中で、特に多重下請構造というふうな形で下請が子請、孫請、ひ孫請とつながっている中で、価格転嫁に目詰まりが起きているということは、私どもの先ほど御説明いたしました緊急調査でもその様子は把握できているんですけれども、私どもが主として価格転嫁について注目している私どもの視点は、取引環境が公正になっているかどうかという点でございます。要するに、発注者側がちゃんと協議をして受注者との間で価格を決めているかどうか、あるいは、受注者の方から、こういうことでコストが上がっているので値上げをしてもらえないかと言われたときに、ちゃんと協議をした上で返事を文書でしているかという取引のプロセスの公正性というのを私どもは主として見ております。

 コストがどのくらい転嫁されたかというマージンの部分というのは、主として中小企業庁が今調査をしておられまして、今、一生懸命、これまで余りやっていなかったんですけれども中小企業庁と私どもで連携をして、情報交換も全部、我々が持っている情報は中小企業庁にも出しますし、中小企業庁が調べたことは私どももいただきますし、全面的に連携をしてやっていこうということで始めておりますので、今のような御指摘も踏まえながら、より取組を強化していきたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 古谷一之参考人に伺います。

 公正取引委員会は、中小事業者の適正な価格転嫁に向けて、昨年十二月二十七日に、下請企業と適切な価格交渉を行わず、独禁法の優越的地位の濫用に当たるおそれがある企業名を公表した。一九八九年に、自治体へのコンピューター納入をめぐる安値入札、いわゆる一円入札問題で企業名を公表して以来でありますけれども、その狙いはどこにあったのか、改めて伺います。

古谷参考人 ただいま、委員の方から、優越的地位の濫用のおそれがある企業を公表したという御質問がございましたけれども、今回私どもが公表させていただいたのは、政府全体で円滑な価格転嫁を推進するという強い方針があります中で、先ほど申し上げましたように、多くの企業との間で協議をしないで価格を据え置いた企業という形で確認をさせていただいて公表したということでございます。

 独禁法の優越的地位の濫用につながるおそれはあるかもしれませんけれども、独禁法の違反を認定したとか、その違反のおそれを認定して公表したということではございませんで、そういう事実関係を公表させていただいたということでは大変異例の措置ではあったと思いますけれども、そういうことで、少しでも、価格転嫁円滑化に向けた発注者側の機運を醸成したり、法令違反の未然防止につながる、そういうことを期待してやらせていただいた措置でございます。

笠井委員 この企業名の公表というのは物すごいインパクトと受け止められている一方で、受注者から、取引価格が据え置かれており事業活動への影響が大きい発注者四千五百七十三社、そのうち上位五十社への詳細な個別調査の結果だと承知しております。

 そこで、十三社にとどまらず、第二弾、第三弾の対応を期待する声があるという点では、ずばり、今後どのような対応が必要だとお考えでしょうか。

古谷参考人 今回の緊急調査結果も踏まえまして、今年も引き続きこの価格転嫁の状況についての調査を継続してまいりますし、多くの調査結果を踏まえて、今後は、独禁法や下請法に違反する事案というものを私どもとしては拾い上げて、措置や命令や警告あるいは指導といったものを具体的にやっていかなければいけないと思います。

 そういうものを継続する中で、公表の必要性が更にあるのかどうかについては判断させていただければと思っております。

笠井委員 調査継続、強化と公表というのはもちろんだと思うんですけれども、例えば、今回社名が公表された十三社のうち、デンソーと豊田自動織機はトヨタ自動車の一次下請であって、優越的地位の濫用の大本には、疑いということも含めてですけれども、やはりトヨタの原価低減というかけ声がある。

 古谷委員長は、昨年五月二十日の第七回新しい資本主義実現会議でも、サプライチェーン全体の連鎖に注目し、垂直的な取引の適正化を図ることを重視して、業種ごとの自主点検要請や重点的な立入検査を行い、中小事業者への不当なしわ寄せを防止し、適正な取引環境の整備に取り組んでいく、こう述べられました。

 ならば、ピラミッド形の重層的な下請構造の頂点にいる、今の例でいいますとトヨタ自動車などの姿勢を正すことなしに、サプライチェーン全体の取引適正化というのは果たせないんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

古谷参考人 今年になって、経済三団体が、パートナーシップ宣言の実効性向上ということで会員企業に出された文書の中にも、サプライチェーンの一番上にいる、上というんでしょうか元請のところの企業が、その下請、その取引相手だけではなくて、サプライチェーンの連鎖の中のティア1からティアNプラス1まで、サプライチェーン全体についての転嫁円滑化について責任を持つべきだといったようなことも言っていただきました。私どもがいろいろな調査をし、結果を発表したこともきっかけになって、そういう動きを経済三団体もし始めていただいているんだというふうに認識をしております。

 昨年五月に会議で私が申しましたことは今も変わっておりませんので、引き続き、価格転嫁円滑化のための努力を、公取としてできることはやっていきたいと思います。

笠井委員 原価低減のかけ声ということがあるなら、そこをきちっとやはり正さなかったら、これは本当に適正化ができないということになると思います。

 最後に、電力自由化に関わって伺いますが、公正取引委員会は、昨年末に、大手電力会社が大規模な工場やオフィスビルなどの企業向け電力販売について相手の営業区域内で顧客を奪い合わないようにカルテルを結んでいたという問題で、中部電力、中国電力、九州電力に過去最高となる一千億円超の課徴金納付を命じる処分案を通知いたしました。

 カルテルを持ちかけたとされる関西電力は自主申告をしたことで処分を免れる見通しとされておりますが、その関西電力が昨年末には関西電力送配電の保有する顧客情報を不正閲覧したことが明らかになって、他の電力会社でも同様の問題が次々と発覚をしております。

 電力自由化をしても、旧大手電力による市場支配が続いて、規制なき独占となっている。これについて、どう是正させるべきとお考えでしょうか。

古谷参考人 御指摘がありましたカルテルについては、現在、私どもの処分案を提示して、意見聴取手続を進めているところでございますので、個別の案件について具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、別途、昨年の暮れ、私どもは、電力市場の競争環境の在り方という点で、改めて市場調査をするということを発表させていただきました。旧一般送配電事業者と新電力事業者との競争関係が公正に行われているか等、改めて私どもとしても調査をしたい、必要な改善措置については提言もしていきたいと思っております。

笠井委員 規制なき独占というのは大問題ですので、しっかりとその点はやっていただきたいと思います。

 終わります。

山口委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

盛山委員 今日はお疲れさまです。自由民主党の盛山でございます。

 冒頭の所信でもお述べになりましたし、そしてまた多くの委員からお話の出ましたサプライチェーンに関してでございます。

 GAFAのようなことに対しましては、国際的な御協力も含めて、今後しっかり取り組んでいかれるということで、この新しい巨大な分野について是非頑張っていただきたいと思うわけでございます。

 一つお聞きしたいのは、国内におけるサプライチェーンの問題でありまして、巨大な、例えば大規模小売店のようなところと一次生産者、農業、漁業あるいは卸売といったようなところ、あるいは、荷主と自動車運送業者のような川上、川下の問題、こういうようなところの不公正な取引というんでしょうか優越的地位の濫用について、かねてよりいろいろ言われているところでありまして、公正取引委員会にもこれまで関与をしていただいているところでありますが、先ほど来の御発言にもありましたように、なかなかその実態を、つまり川上側あるいは相手さんの関係があって、御相談しづらいというような声があるところでございます。

 委員長におかれましては、今、一期を務められて、今度、二期になるわけでございますけれども、今度の二期におかれまして、多くの方々が公取に対して、公正な取引ということに対しての期待が高いわけでございます。その辺りの取組についての意欲についてお願いしたいと思います。

古谷参考人 ありがとうございます。

 この二年ちょっとの間、コロナということもありまして、私も、地方に出かけて、経済団体の方と意見交換をするというような場面もなかなか設けられなかった面はあります。

 御指摘の点も踏まえまして、私自身として、日本の経済実態等についてもう少し関心を持って、把握をしながら努力をしていかなければいけないということを改めて感じさせていただきました。

佐々木委員 自由民主党の佐々木です。

 古谷委員長におかれては、石川県庁の総務部長を御経験されたということでございまして、地方における目線もお持ちだということで私は大変期待をしております。

 今、地方は、人口減少、少子化ということで、担い手不足で大変苦しんでいるわけです。地域によっては、競争どころではない、競争なんかしておったら事業が成り立っていかないみたいなところもこれから出てくるのではないかなと思います。

 そこで、地方の実情に照らして考えていく、まさに、地方と都市部をちょっと分けて考えていくということについて御所見をお伺いしたいと思います。

古谷参考人 数年前に、地方の基幹産業について、地域の基盤となるような交通機関ですとか地方銀行の合併の問題で似たような議論があったことを記憶いたしております。

 公正取引委員会としては、競争当局として、人口減少や少子化という課題を抱える日本が経済成長をして社会の活力を維持していくためには、これまで以上にイノベーションを起こしていかなければいけない、そのためにはやはり競争というのは大事な要素だと思っております。もちろん、地域の実情を踏まえながら一定の調整や選択をしなければいけないという政策論が出てくることはあると思いますけれども、私どもの立場は、あくまで愚直に、競争がなければ経済成長や社会の活力もないんだということで、そういう立場で議論を続けさせていただければと思っております。

山口委員長 よろしゅうございますか。

 それでは、これにて古谷参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 古谷参考人、ありがとうございました。

 以上をもちまして検査官の候補者及び公正取引委員会委員長の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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