衆議院

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第7号 令和5年2月22日(水曜日)

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令和五年二月二十二日(水曜日)

    午後三時一分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 盛山 正仁君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 武藤 容治君 理事 伊東 良孝君

   理事 新谷 正義君 理事 笠  浩史君

   理事 吉川  元君 理事 中司  宏君

   理事 岡本 三成君

      高村 正大君    佐々木 紀君

      若林 健太君    道下 大樹君

      赤木 正幸君    浅野  哲君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   議長           細田 博之君

   副議長          海江田万里君

   事務総長         岡田 憲治君

   参考人

   (検査官候補者(一橋大学大学院経営管理研究科教授))           挽  文子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  伊藤 俊輔君     道下 大樹君

  遠藤  敬君     赤木 正幸君

同日

 辞任         補欠選任

  道下 大樹君     伊藤 俊輔君

  赤木 正幸君     遠藤  敬君

同日

 理事遠藤敬君同日理事辞任につき、その補欠として中司宏君が委員長の指名で理事に選任された。

同日

 理事中司宏君同日理事辞任につき、その補欠として遠藤敬君が委員長の指名で理事に選任された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 検査官任命につき同意を求めるの件

 次回の本会議等に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 検査官任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る十四日の理事会において、木原内閣官房副長官から、内閣として、検査官に一橋大学大学院経営管理研究科教授挽文子君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会の申合せに基づき、検査官の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として検査官候補者挽文子君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、挽参考人に所信をお述べいただき、その後、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、挽参考人、お願いいたします。

挽参考人 挽文子でございます。

 本日は、このような機会を与えていただき、厚く御礼を申し上げます。

 まず、会計検査院については、内閣から独立した憲法上の機関として、国の会計検査を実施し、検査の結果に基づき、検査報告を作成して、内閣を通じて国会に御報告するという重要な使命を課されていると認識しております。

 また、検査官は、三人で構成される検査官会議のメンバーとして会計検査院の意思決定に関わり、事務総局を指揮監督するという大変重要な職責を負っていると承知しております。

 近年、我が国の社会経済は、今後本格化する人口減少、少子高齢化に伴う社会保障費の増大、潜在成長力の伸び悩み、大規模自然災害の頻発等の難しい課題に直面しております。そのような中にあって、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大は、我が国の社会経済に甚大な影響をもたらすとともに、行政のデジタル化の遅れ等の問題を顕在化させており、これらへの対応が喫緊の課題となっております。

 会計検査院は、このような社会経済の動向を踏まえながら、不正不当な事案に対して、正確性、合規性の観点から厳正な検査を行うこと、また、厳しい国の財政状況にも鑑みて、経済性、効率性及び有効性の観点からの検査も重視すること、さらに、行財政の透明性、説明責任の向上並びに事業運営の改善に資するための分析や評価を行っていくことが重要と考えております。

 私は、昭和六十二年に大学を卒業後、これまで、一橋大学大学院の教授等として、会計学、特に管理会計、原価計算について研究、教育を行ってきました。また、この間、公認会計士試験試験委員や企業会計審議会委員等、政府の審議会等の委員を務めさせていただくなど、政府の施策等についても知見を深める機会を得ました。

 そして、研究、教育に従事するとともに、様々な審議会等に関与する中で、事務事業などのライフサイクルコストや品質コストを考える際に、私は、安全性と有効性を重視し、中長期的な視野から経済性と効率性を追求するという点が重要であると考えており、その点から見て、政府の諸施策の中には課題があるものがあると考えております。

 仮に検査官に任ぜられるとするならば、私は、これまでの会計学、管理会計に関する研究、政府の審議会等の委員として培った知識経験を生かし、国民の皆様の関心の所在や国会における御審議の状況に常に注意を払うなど、いろいろな御意見に耳を傾けながら、検査官会議における公平かつ均衡の取れた意思決定に貢献することによって、検査官としての職責を担ってまいりたいと考えています。

 以上、簡単ではございますが、私の所信を述べさせていただきました。

 本日は、このような機会を与えていただき、厚く御礼を申し上げます。

山口委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより挽参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 佐々木紀君。

佐々木委員 自由民主党の佐々木紀でございます。

 挽参考人には、本日、国会にお越しいただき、今ほどは所信をお述べいただきまして、誠にありがとうございます。

 大変立派な志を持って検査官に臨む意気込みが伝わってまいりましたので、特段御質問するようなこともないわけでありますけれども、二点ほどお聞きさせていただきたいと思います。

 まず、検査官を引き受けるに当たっての抱負についてお聞きしたいと思います。

 選任に当たって、検査官会議を構成する三人の検査官については、法律、行財政、企業会計、会計検査等に関し豊富な知識と経験に基づく公正な判断力が備わっていることが強く要求されるところでございます。

 そこで、これまでのキャリアをどのように生かして貢献されていくのか、検査官を引き受けるに当たっての抱負をお聞かせいただきたいと思います。

挽参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 今後の抱負について述べさせていただきます。

 会計検査院は、国の収入支出の決算などの検査を行い、決算を確認するという職責を担っており、検査官会議を構成する三人の検査官については、公平で幅広い視野に立った意思決定を行うために、法律、行財政、企業会計、会計検査等に関し豊富な知識と経験に基づく公正な判断力が備わっていることが強く要望されると伺っております。

 既に任命されている二人の検査官は、会計検査実務全般を熟知した会計検査院事務総局出身の検査官、非営利組織論、評価論の分野に精通した民間の学識経験者出身の検査官であることから、私としては、研究者として培ってきた企業会計、特に管理会計論に関する知見を生かしてお役に立てるように全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 私が自身の経験を生かして会計検査院にどう貢献していくかという抱負でございますが、二つの方向性を考えております。

 一つは、研究者としての知識と経験を踏まえて、民間企業等における管理会計、原価計算の考え方を応用して国の事務事業について検査をすることを通じての貢献であります。

 正確性と合規性の観点から会計検査院から同じような組織を、何度も受けている組織が存在するということを承知しております。そのような組織における問題を発生させている真の原因を探り、その是正や改善を促すための役立ち、個人の責任のみに帰すことなく、ダブルチェック体制、内部統制組織の検討、仕事の意味の理解、無理をさせていないかといった仕事の配分やそのプロセスの問題、帳票類の分かりやすさ、もう少し広げて、組織風土、文化の問題などを取り上げていけたらと思っております。

 経済性、効率性と有効性という三Eの観点からの会計検査は、まさに管理会計や原価計算を専門とする学識経験者の知見が役立つ領域であると考えております。業務内容の見える化による無理、むら、無駄の排除、中長期的な観点、ライフサイクルや品質コストの観点からの考察、多角的な視野から検査対象組織の様々なシステムを活用した効率的、効果的な会計検査への役立ち、是正や改善を含めて、考えております。

 もう一つでございますが、これは、長年の大学における教育、人材育成を行った経験を踏まえての貢献であります。

 会計検査院における人材育成、働きやすい、一人一人が生き生きとやりがいを持って働けるような職場環境、風土の醸成に少しでも役立つように貢献していく所存でございます。

佐々木委員 ありがとうございます。

 先ほどの所信の中で、お聞かせいただいた中で、人口減少、少子高齢化、社会保障費の増大、潜在成長力の伸び悩み、大規模自然災害の頻発化、コロナ禍や行政のデジタル化の遅れなど、今の日本には喫緊の課題が多いというような御認識があるということを伺いましたし、一方で、会計検査院は、このような社会経済の動向を踏まえ、正確性、合規性の観点から厳正な検査を行いながらも、厳しい国の財政状況に鑑みて、経済性、効率性、有効性の観点からの検査も重要だということでございます。

 今の日本は、毎年のように新たな課題が発生して、次々に新たな対策を迅速かつ的確に実行、実現していかなければいけない状況にありまして、つまり、社会経済の動向を踏まえながらも、一方で厳しい財政状況をどう見ていくかという大変難しい判断が求められているんだろうと思います。

 そして、岸田内閣においては、異次元の少子化対策にも取り組んでいく決意でいるわけでありますけれども、会計検査院としてどのような役割が求められているとお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。

挽参考人 異次元の少子化対策に対して会計検査院がどのような役割を果たしていくかについて御回答させていただきます。

 会計検査院は、合規性の検査のみならず、政策目的の達成状況や政策目的を達成するプロセスについて、経済性、効率性及び有効性の観点から問題を指摘していくことが会計検査院に課された重要な使命であると考えております。

 そして、この使命を果たしていくため、政策や事業が有効に機能していない、効率的に行われていないなどの事象が発見された場合は、これらの原因を徹底的に究明し、その結果、予算や制度上の問題が認められれば、積極的に改善の処置を要求したり意見を表示したりすべきであると考えております。このように、会計検査院には、不適切な事象を指摘するだけではなく、その原因を究明して改善策を提示していくなどの積極的な姿勢が求められていると考えております。

 御質問の少子化対策については、令和元年に、国会からの検査要請を受けまして、「待機児童解消、子どもの貧困対策等の子ども・子育て支援施策に関する会計検査の結果について」が報告されており、同報告書では、子ども・子育て支援施策の予算の執行状況、実施状況や、施策による効果の発現状況について検査を行った結果が掲載されていると承知しております。

 今後とも、会計検査院がその職責を十全に果たすことにより、政府の政策の効果が十分に発揮されるよう寄与していくことが重要であると考えており、仮に今回任命について同意をいただけた場合は、このような検査結果も参考にしつつ、職務に当たりたいと考えております。

佐々木委員 どうもありがとうございます。

 是非、これまで培った知識や経験を基に公平かつ均衡の取れた意思決定に取り組んでいただいて、政策目的達成のために御貢献をいただきますよう心から期待をしておりますので、頑張っていただければと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党・無所属の道下大樹と申します。

 挽文子さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 参考人は、稲盛和夫氏が創業した京セラのアメーバ経営も研究されたことがあるというふうに伺っております。

 京セラのアメーバ経営、京セラのフィロソフィー、また京セラ会計学など結構有名ですけれども、稲盛氏が貫いた、例えば、ダブルチェックの原則というのは、政府の予算執行状況を国会と会計検査院がダブルチェックするということ、また、ガラス張り経営の原則というのは、政府が国会や国民に、公文書や公的資料を改ざん、隠蔽、破棄することなく、きちんと情報公開して信頼性を高めるということと私は同様のことというふうに考えます。

 これまで研究活動をされてきた管理会計の御見識を踏まえ、現在の日本の政治はどのような状況か、率直な御意見を伺いたいと思います。

挽参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 私はアメーバ経営を長年経営しておりまして、その中で一番重要なガラス張り経営の原則とダブルチェックの原則についての研究を踏まえて、それを会計検査院でどのように生かすかという御質問、非常に感動しながら考えました。

 会計検査院の検査報告によれば、正確性と合規性の観点からの会計検査で同様の問題を指摘され続けている府省等がある。ということは、その府省内におけるダブルチェックの原則が実行されていない、あるいはうまく機能していないことが考えられます。なぜダブルチェックが利いていないのか。言い換えると、内部統制が十分に機能していないのか。

 各府省における組織の役割と権限などに問題があり、具体的に言いますと、一つは、事務処理や取引に対して、必ず異なる部門の目、チェックが入るようになっているのか。特にお金が絡む場合には、会計部門が必ずそのチェックの中に入っているのかどうかというのが問題になります。これに加えて、チェックの意味とか意義を正しく理解せずに形式的にチェックマークをつける、そういう考えだとこれは大きな問題がありますが、残念ながら、そういう事例も民間の企業で散見されております。

 ダブルチェックの原則は、正しい決算を行うために不可欠な原則であると同時に、個人のミスや不正というのを未然に防ぐ、罪を犯すことを防ぐという重要な役割を果たすものであります。一人一人がこれを自覚することが大切であります。各府省におかれましては、それを自覚させるような取組を行っているのかどうかということが私にとっては気になるところでございます。

 会計検査院における会計検査に当たっては、検査対象の組織における内部統制の状況も踏まえた会計検査を行っていると承知しております。国会及び裁判所に属さず、内閣からも独立した機関として会計を検査する会計検査院は、検査結果として内部統制のプロセスが適切ではないと指摘するにとどまらず、なぜ内部統制のプロセス、ダブルチェックの原則が守られないのか、守るにはどうすればよいのかというところにまで踏み込んで改善を求めていく必要があり、その意味で、正確性と合規性の観点から、問題が生じるのは一義的には会計を行う各府省の責任ではあるものの、会計検査院においても、検査結果に基づく、不適切な事態についてその改善に向けて意味のある提案を出すことができているのか、そして、検査結果のフォローアップが適切に行われているのか、指摘の実効性が確保されているのか、こういった点に十分に留意する必要があると考えております。

 次に、ガラス張り経営の原則についてでございます。

 このキーワードの一つは信頼です。

 トップが従業員から信頼を得るためには、ガラス張りにすること、はっきり見せる、見えるようにすることが大切であり、また、トップが従業員を信頼できなければガラス張りにすることはできません。また、信頼しているとしても、トップが不正を働いている場合にもガラス張りにはできません。

 各府省と会計検査院は共に国民に向けて情報開示、情報発信を積極的に行っておりますが、発信されている情報が国民にとって分かりやすいかと言われると、そこに問題があるかもしれないと考えております。関係者に対して、情報の受け手に対して分かりやすく情報を伝えることができているかという点は、企業における管理会計の課題でもあり、絶えざる改善が必要な重要な論点であると考えております。

道下委員 非常に御丁寧で、検査官になって、やるぞという意欲を感じられる本当にすばらしい御答弁でございます。

 ちょっと具体的に伺いたいと思います。

 岸田政権が進めようとしている防衛費倍増について、我々国民は具体的な説明を受けておりませんし、防衛増税には反対をする国民が多くおります。

 また、近年増加している新規後年度負担、対外有償軍事援助、FMS調達については、国会の議決や会計検査院の決算検査報告などにおいて、そもそも、その装備品の調達が必要なのか、既に米国では使用されない型落ち装備品や米国会計検査院が欠陥ありと指摘する装備品を爆買いする必要があるのか、装備品等の未納入や過大な前払い金の未精算といった様々な課題が指摘されています。

 こうした点についてどのようにお考えか、また、検査官になられたらどのような検査を行っていこうとお考えなのか、伺いたいと思います。

挽参考人 政府においては、防衛費のGDP比二%以上への増額の議論がなされていると承知しております。

 防衛費は会計検査院が毎年重点的に検査を行ってきている分野の一つでありまして、これまでも多角的な観点から検査が実施され、装備の調達については、例えば、平成三十年に、国会からの検査要請を受けまして、有償援助による防衛装備品等の調達の状況についてが報告されていると承知しております。

 そして、この報告書においては、防衛装備品の調達の後年度負担額の状況について、支払い期間が相対的に長期化している傾向が見受けられたことや、FMS調達について、出荷予定時期を経過しても防衛装備品が納入されないケースや長期にわたり精算が未完了となっているケース等が課題となっていることが報告されていると承知しており、こうした課題については、今後検査するに当たって、引き続き留意していく必要があると考えております。

道下委員 ありがとうございます。

 もう一点、最近増えている予備費についてです。

 これまで年五千億円程度だった予備費がコロナ禍で約三年で約二十兆円となり、そのほとんどが最終的な使途が不明であると指摘されています。コロナ予備費に原油価格、物価高騰対策を追加したり、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費を新設したり、また、補正予算で基金や資金を創設するなど、本来の予備費や補正予算の趣旨に反している動きが見られます。

 予備費は政府判断だけで使い道を決められるもので、多額の予備費計上は、国会審議を前提とする財政民主主義を揺るがし、無駄遣いの温床となります。こうした点について見解を伺うとともに、使われなかった予備費は本来であれば国庫に返納すべきと考えます。これらの点についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

挽参考人 予備費についての御質問にお答えしたいと思います。

 予備費については、その額が多額に上っていることから、国会においても様々な議論がなされており、国会ひいては国民の関心の高い事項であると承知しております。そのようなことから、会計検査院の検査報告には、国会の承諾を受ける手続を取っていない予備費の支出についても掲記が義務づけられております。

 令和二年度決算検査報告において、新型コロナウイルス感染症対策のために使用決定した予備費について、どのような経費のために使用決定されているか、これにより予算が配賦された予算科目における執行状況はどのようになっているかなどについて検査を行った結果が掲記されており、また、令和四年に、国会から、予備費の使用等の状況について検査を行い、その結果を報告するように要請を受けておりまして、現在検査を進めているところと承知しております。

 会計検査院は、具体の執行、支出を前提に検査を行うことが基本であり、予備費については、仮に今回任命について同意をいただけた場合、まずは検査の状況を確認して、他の二人の検査官とともに事務総局を指揮監督していきたいと考えております。

道下委員 御丁寧な、そして明確な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、赤木正幸君。

赤木委員 日本維新の会、赤木正幸です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。挽参考人にはわざわざ御足労いただきまして、ありがとうございます。

 今日は、挽参考人に対して私は四つの質問を準備させていただいておりますので、順番に質問させていただきます。

 一つ目が、国民の皆様の関心事というようなくくりの質問になるんですけれども、当然、政策立案とか予算、立法において、その時々の国民の皆様の関心事とか注目度というのはかなり強弱があるとは認識しております。

 我々もそれに対してどういった形でお答えするかと日々悩ましいながらも対応しているんですが、会計検査院においても、国民の関心度の高い事項について例えば積極的に取り上げるとか優先的に考えるようなことを考えられるか否かについて、御見解をいただけますでしょうか。

挽参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 国民の関心の高い事項についての私の考えということでございます。

 会計検査院が公表している会計検査の基本方針というのがあるんですが、それを見ますと、「国民の関心の所在に十分留意して、厳正かつ公正な職務の執行に努める」などとされておりまして、国民の関心の高い事項について留意していると理解しておりますが、私もその方針に賛同しております。

 そして、こうした検査の結果を取りまとめた検査報告において、例えば、多額の予算が投じられた新型コロナウイルス感染症対策事業や、少子高齢化及び情報化の進展、気候変動問題等を背景とした社会保障、情報通信、環境及びエネルギーに関するものなど、国民の関心の高い事項に対して多数の検査結果が掲記されてきたと承知しております。

 選択的検査というのがございますので、そういったことに、検査官として、他の二人と協力し合いながら積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございます。

 まさに今お答えいただいたような関心の強いところと関連した次の質問になるんですが、世の中の複雑化に関連した質問となります。

 まさに今おっしゃられたような災害とか少子高齢化とか環境問題なんかも、一府省庁だけではなかなか解決できない問題も多くなっていると思います。これは、我々も、支援者の方も含めて国民の皆様に説明するときに非常に難しくて、見えづらく、分かりづらくなっているなというのが日々実感するところではあるんですが、会計検査院においても、例えば府省庁横断的な検査のようなものを必要と考えられるか否かについて、御見解をいただけますでしょうか。

挽参考人 一府省庁だけでは解決できない問題についての会計検査院の検査の考え方でございますが、会計検査院の組織も基本的には検査対象機関別の編成となっており、これは、検査の効率的実施、検査の空白域を生じさせないなどの上で意味のあることと考えております。

 その一方で、今御指摘いただきましたように、横断検査という考え方もございまして、機動的、弾力的に対応できるように、第一局や第五局に特命事項や府省横断的なテーマに関わる検査を担当する課又は室を複数設置するなどして検査を行ってきており、縦割りによる弊害が生じないよう留意して検査を行っているというふうに伺っております。

 会計検査院の検査対象は高度化、複雑化し、議員の御指摘のとおり、省庁横断で行われている事業が多数あるところ、今後も引き続き横断検査の充実を図っていく必要があると考えております。

 また、民間企業の例を挙げて申し上げますと、こういう形で省庁横断的な組織をつくるということに加えて、各局の方が一堂に集まる研修を、大きくなくてもいいんですけれども、頻繁に行うということで、どういう局がどういうことをやっているかということを情報共有、一緒に集まって話し合うというような機会を設けることも重要なのではないかと考えております。

赤木委員 ありがとうございます。

 次は、世の中のデジタル化に関した質問となります。

 言うまでもないことですけれども、もう世の中の全ての分野においてデジタル化だけではなくてICT化とかDXとかどんどん進んでいるんですけれども、これは、まさに情報の出し手も受け手もメリットがある一方、やはりコストもかかりますし、あとは、受け手に関しては、出し手もそうかもしれないんですけれども、デジタル弱者のような問題とか情報を入力しなきゃいけない準備とかも当然あるとは思うんです。

 これは、会計検査院においても、デジタル化、ICT化の導入によって効率化を促進することも期待できるかと考えているんですが、会計検査のデジタル化とかICT化を今後どのようにされたいと考えているか、御見解をいただけますでしょうか。

挽参考人 会計検査院におけるデジタル化について回答させていただきます。

 会計検査院は、これまでも、会計検査情報システムを整備して、決算の確認や検査に関する各種の情報や資料の管理を行ってきたと伺っております。

 また、コロナ禍において、必要な検査資料のデータの提出を受けるなどした上で在庁検査においてその内容を分析したり、ウェブ会議システムを利用して関係者から説明を聴取したり、質問、回答のやり取りを行ったりなどのリモートによる検査を充実させ、実地検査を補完できるような工夫を積み重ね、そして、このような方法と実地検査を適切に組み合わせるなどした検査を行い、実地検査の実施に制約を受ける状況が続いている中でも検査の効率化等を図ってきたと伺っております。

 今後においても、行政等の高度化、複雑化、検査対象機関のシステム化、デジタル化等の時代の変化に対応するため、業務の合理化を含めた検査のデジタルトランスフォーメーションの推進に向けて、デジタル化、ICT化等に対応した専門性の高い新たな検査手法の開発等に引き続き取り組んでいく必要があるのではないかと考えております。

 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、これらの取組をしっかりと進めて、会計検査院の職責を的確に果たせるように努めてまいります。

赤木委員 ありがとうございます。

 私は元々会社を経営したこともあって、まさに会計の世界はすごくデジタル化が進んでいるんですけれども、検査の部分というのは相変わらずアナログな部分がありますので、是非進めていただければと思います。

 最後の質問になりますが、挽参考人の御専門の分野の強みをどうやって会計検査に生かすかという点なんですけれども、先ほどもお答えいただいたみたいに、管理会計とか、あと、試験委員をされていたりとかする部分で、国民の視点に立った行政運営も非常に強みとして持たれていると思いますが、どのような取組をされたいか、御見解をいただけますでしょうか。

挽参考人 専門知識を会計検査にどのように生かしていくかということに関してですが、民間企業等における管理会計、原価計算の考え方を応用して国の事務事業について検査をすることを通じて貢献できるかというふうに考えております。

 先ほどから申し上げていて重複しているんですけれども、正確性と合規性の観点から会計検査院から同じような指摘を何度も受けているような組織については、これは、ダブルチェック体制、内部統制組織の設計、仕事の意味の理解等をしっかりと把握する。

 それから、効率性、経済性の観点からは、活動基準原価計算というものがございまして、これは有効性の観点からの検査とも関係してくるんですけれども、活動を行うのは政策の目的を達成するためであります。では、その行われている活動の中で、本当に政策の目的に役立っているのか、付加価値を生まないような活動はないかどうかということで、非付加価値活動についてはもうやめていこうと。では、価値活動、付加価値を高める活動は普通にやっていけばいいのかというと、これについては効率を図るという考え方があります。活動別に、活動が起こるのは、先ほどの繰り返しになりますけれども、政策の目的を達成するために活動を行うから活動にコストがかかるわけです。そこを把握していくことで、効率性、それから有効性の一部になりますけれども、そういうことに役立てることができるのではないかというふうに考えております。

赤木委員 非常に丁寧な御回答をいただきまして、ありがとうございました。

 これまでの御知見を最大限に発揮して日本の会計検査に御貢献いただきたいと期待しております。ありがとうございました。

山口委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。

 挽さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 事前に四つ質問通告させていただいておりますが、一つ目は、同僚委員の方から御質問がありましたので、納得いたしましたのでスキップさせてください。

 二つ目についても質問があったんですが、ちょっと更問いのようなことで、もしお答えいただけるんだったらいただきたいと思いますが、予備費についてです。

 検査官の方の職責が決算の検査ということに重きを置いていらっしゃいますが、その決算のプロセスの中では、当然、収入と支出両方とも検査をされます。こういうコロナ禍で何が起こるか分からないときに、比較的大きめの予備費を確保して、その上で使って、その使い道の適正をチェックいただいて、残ったものは使い切るとかではなくてちゃんと返納していただくということをベースに考えたときに、こういう非常事態のときに大きめの予備費を確保しておくということは必要性のあるものだという御認識でよろしいでしょうか。

挽参考人 非常に難しい御質問をいただきました。

 一企業であれば、そういうことはまず考えられないと思います。資金調達の問題というのが、企業では、株式を発行するといっても株価がどうなんだ、社債を発行するとしても社債の格付機関からどういう評価を受けているのか、銀行はすぐにお金を貸してくれるかといった問題がございます。

 ただ、行政に関しましては、これは私の今の立場からは答えることがちょっと難しい質問でございます。国の、国民の安全、安心を行政が担っているという観点から、ちょっと答えを申し上げることはできません。

岡本(三)委員 急な質問でした。失礼いたしました。

 続きまして、地方創生臨時交付金について伺います。

 私は公明党に所属しておりますけれども、地域に密着した政党でございまして、地域の方々、生活者の方々から様々御相談いただくことを国会、地方議会、共に協力をして取り組んできましたけれども、この交付金については、特にコロナ禍で、その地域ごとに様々な課題がありました。なので、結果的にそれが、その地域の課題を解決するために、その地域の首長の方や議会と相談をしながら、給食費に使われたようなところもあります。水道料金の支援、困窮者支援、いろいろな形で、形を変えて使われましたけれども、その使途が幅広いので、批判される面もあります。

 この地方創生臨時交付金の仕組み自体をどのように捉えていらっしゃるかということを、御意見を伺えればと思います。

挽参考人 地方創生臨時交付金についての御質問に回答させていただきます。

 これについては、令和三年度決算検査報告におきまして、会計検査院法第三十六条の規定により内閣総理大臣及び総務大臣宛てに改善の処置を要求するなどした、新型ウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による商品券等の配布事業等の実施及び効果検証の実施等についてが掲記されていると承知しております。

 そして、その報告では、地方公共団体において適切に効果検証が実施され、速やかに検証効果が公表されるように、本来の事業目的とは異なる使途で交付金が充当されている事態についてその取扱いを改めるように意見が表示され、地方公共団体に周知することなどの処置が要求されていると承知しております。

 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、まず、検査の状況を確認し、他の二人の検査官とともに事務総局を指揮監督していきたいと思います。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 これまで、挽さんは、研究者として、教員として大学で人材育成をしていらっしゃったわけです。

 挽先生のゼミの方のホームページを拝見しました。ゼミ生が後輩の方に、挽先生は講義中に話しかけると怖いかもしれないけれども、飲み会の席等では場を盛り上げて非常にユニークな方なので、臆せずどんどん話しかけましょうと。愛されているなと正直思いました。

 今回、会計検査院の中で、もちろん、憲法の定めにより検査をやっていただくわけですけれども、是非、会計検査院の職員の方々の人材育成も挽先生の大きな役割として期待させていただきたいというふうに思っているんですが、御決意を聞かせていただければと思います。

挽参考人 これまで一貫して大学において教育に従事してまいりました。そのときに私が特に注意をしてきたのは、特にゼミの場では、管理会計と原価計算の技術、計算というよりも、むしろ、その背景にある考え方でありますとか理論、倫理の重要性、実務における管理会計などの実践について、また、その実践に影響を及ぼす様々な要素について学んだ上で、ゼミ生自らが問題意識を持って学び、学びを実際に課題解決に結びつける、そういう能力を持つ人材というのが重要なので、そういった観点からの人材育成を重視してきました。

 私、大学のみならず、兼業も非常に多くて、特に十二月から一月にかけては、学部の卒論十六人分一人当たり八十ページとか、博士論文、課程博士論文三百ページとか、修士論文は一人当たり百ページとか読まなきゃいけないし、指導しなきゃいけない大変な時期なんですけれども、その時期に、他大学の管理会計のゼミ、今年は京都大学に行きました、名古屋大学からは来ていただきまして、そういう場で、学生たちが自分の問題意識にのっとって、管理会計や様々なもの、統計学もそうですけれども、武器を使いながら問題解決をした報告をしてもらっております。

 そういう、内にこもるだけじゃなくて外にも出る形で自分たちの研究を報告し質疑し合う場を設けたり、あるいは、今年は三年ぶりに冬合宿として草津に行ってまいりました。勉強の後は学生は遊んでいるんですけれども、私は仕事をして、飲むことも今回はできませんでしたけれども、そういうことを行っています。

 また、挽ゼミは、組織化を図って、各人が何らかの係、例えば合宿係とかインゼミ係として責任を持って主体的にゼミの活動に取り組むような仕組みをつくって運用してまいりました。

 こうした経験を踏まえまして、職員が持っている能力、特に若者も含めて潜在的に持っている能力というのは非常に高いと考えておりますので、その能力を発揮しやすいような職場環境をつくることに留意してまいりたいと考えております。

岡本(三)委員 承認された暁に大活躍されることを期待しております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、よろしくお願いいたします。

 事前に考えてまいりました質問の多くが前の委員の皆様の質問の中で大体把握することができましたので、私の方からは、少し、今日の冒頭の候補の発言の中にあった内容について質問させていただきたいと思います。

 挽候補は、ライフサイクルコストや品質コストを考える際に、安全性と有効性を重視する、中長期的な視野から経済性、効率性を追求するという点が重要だ、その点から見て、政府の諸施策の中には課題があるものがあると考えている、このような発言をされましたけれども、そこをもう少し具体的に、どういった視点で捉えていらっしゃるのか、お伺いできればと思います。

挽参考人 まず、製造業を例に品質コストについて御説明したいんですけれども、自動車メーカーがここ数年グローバルにリコールというのを発生させております。これは、品質コストの考え方からいいますと、発売後にリコールになるということで、品質不適合コストという考え方を取ります。失敗コストとも言います。

 これは、失敗コストというのは発生させてしまうと、人の命にも関わることでありますし、企業にとってはリコールでコストが物すごくかかるわけです。それを防ぐには、やはり、造る前の段階で従業員の教育といった予防もしなければいけませんし、工程ごとに検査をかける、評価コストというのを事前にかけていく必要がある。そうすることで、トータルに安全性というものも担保されますし、トータルではコストが削減できるというような考え方を品質コスト、品質原価計算と製造業では呼んでおります。それを行政の方にも利用できるのではないか、その考え方を利用できるのではないかと考えております。

 話を戻しますけれども、先ほどの所信の中で、私は、政府の諸施策の中に課題があるものがあると述べたところでございます。

 その趣旨としては、政府の諸施策においては、中長期的に取り組むべき課題も多い中で、どうしても、会計というと誤解されがちで、短期的な経済性、効率性を追い求める道具じゃないかというふうに考えられるんですけれども、そうではない、使い方の問題であって、例えば、維持管理を行う上でのライフサイクルコストが増大してしまったり安全性が損なわれてしまうことがあってはならないと考えているところでございます。

 事業の詳細な内容については把握していないものの、民間の立場から具体的に課題として感じたものについて、例えば、国が行う公共事業は、整備した設備が中長期にわたって安全に利用できるように維持管理をする必要があり、そのためには中長期的な視点から維持管理に適切な費用をかけるということが重要であると考えています。適切な費用までも削減して維持管理をおろそかにすることによって、整備した施設の機能や安全性が損なわれ、その復旧に多額の費用が生じるような事態を生じさせないように、施設のライフサイクルを通じてコストを最小にすることを念頭に置いて施設の整備や維持管理を行う必要があるというふうに考えております。

浅野委員 大変分かりやすい御答弁、ありがとうございました。

 続いて、今日の最初の佐々木委員の質問の中で、業務内容の見える化による無理、むら、無駄の排除、見える化を通じたそういったリスクテイクといいますか、そういったことについて役に立ちたいというような趣旨の発言をされていたかというふうに記憶をしているんですが、今、業務内容の見える化というのは、一方で進んでいるDXに関しても非常に重要な取組だと思っております。

 挽候補が業務の見える化というものについてどのようなイメージを現在お持ちなのかについても、是非、御意見を伺えればと思います。

挽参考人 管理会計、原価計算といいますと、どうしても、部屋に閉じこもって電卓をたたいているイメージがあるかと思うんですけれども、本当の管理会計、原価計算というのは、まず現場を知ることから、製造業であれば製品を知ること、造る工程をしっかり理解することから始まります。そこで現場の方々と協力し合って、その作業、活動を具体的に見える化していく、写真を使ってもいいんですけれども、そういうふうな形で活動をまず捉えていく。

 その活動にコストがかかっているのかどうか、それから、活動が生じるのは、例えば特定の製品を造るためという目的があって、活動があってコストがかかるわけで、その活動は本当に必要なのかどうか。そこを、特定の製品を造るという目的があるのは製品を買ってもらうためですから、その顧客の視点から見て分析していく。

 目に見える、言葉というよりも、むしろ、写真であったり図であったりということを、協力し合いながら、誰が見ても分かるような形で無理、むら、無駄というのを考えていく必要があるということでございます。これは、考え方として非常に重要な考え方で、いろいろなところに応用が利くのではないかと思います。

 単に無駄といっても、余りにも忙しく一人の人に負担をかける、無理をさせてしまうと、普通であれば無駄なんか生じないんですけれども、人ですから、人為的なミスがあり得るわけです。そこで無駄が発生してしまうということになります。

 また、これはあらゆる業務にということはできないかもしれませんけれども、ある程度、活動の標準化できるところは標準化していく、それによって、うまくいったりいかなかったりということ、むらをなくすんだという考え方も取れるかと思います。

 そういったことを具体的にみんなが分かるような形で、あるいは、みんなが考えて英知の結集をして、そういうことに取り組んでいくということが重要なのではないかというふうに考えております。

浅野委員 では、時間が参りましたので、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

山口委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 挽文子参考人にお尋ねいたします。

 まず、憲法第九十条の意義について。

 憲法第九十条は、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、」と規定をしています。

 戦前、機密費は調査対象から除外をされ、軍事関係費は旧会計検査院法の適用が除外をされ、増える軍関係経費等を検査できなかった反省から、日本国憲法は全てを対象とするとして、このような例外を認めないことを明らかにしたのではないでしょうか。

挽参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 憲法九十条についての解釈でございますが、憲法九十条の「すべて」とは、国の収入支出に関して会計検査院の検査の対象から除外されるものはないという意味で規定されたものと承知しております。

塩川委員 次に、大軍拡予算に関連して、国債発行についてです。

 憲法は、前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と明記をしております。このことは財政民主主義の観点でも重要です。過去の戦争で戦費調達のために大量の国債を発行し、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の体験を踏まえたものであります。

 財政法の第四条は、公共事業費、出資金、貸付金の財源を除いて、国債の発行を禁じています。財政法制定時の逐条解説には、「第四条は健全財政を堅持して行くと同時に、財政を通じて戦争危険の防止を狙いとしてゐる規定である。」「公債のないところに戦争はないと断言し得るのである、従つて、本条は又憲法の戦争放棄の規定を裏書保証せんとするものであるともいい得る。」と述べています。

 今回、軍事費に建設国債を充てることは、憲法及び財政法の立法趣旨から見て到底許されるものではないと考えますが、お考えをお聞かせください。

挽参考人 会計検査院の検査は、予算や政策の執行過程あるいは執行結果を対象としており、政策の裏づけとなる予算の執行に問題がある場合には、その原因の究明を徹底して行うこととし、そして、その結果、予算や政策上の問題が認められれば、これを積極的に取り上げていくものと承知しています。

 防衛費に建設国債を充てる予算案は現在審議中であり、この予算案が成立して予算が実際に執行されたならば、その段階で検査の対象となるものであると承知しております。

 また、会計検査院の検査の状況については、まだ承知しておりませんので、見解を述べるのは差し控えたいと思います。

 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、防衛費について、これまでの検査の状況をしっかりと確認して、他の二人の検査官の御意見も聞きながら、適切に検査を実施してまいりたいと考えております。

塩川委員 次に、対外有償軍事援助、FMSについてであります。

 来年度のFMS調達額は一兆四千七百六十八億円で、今年度の四倍、十年前の十三倍と、過去最大の突出した伸びとなっています。

 FMSについては、余りにアメリカに都合のよい契約方法が問題となってきました。元防衛装備庁長官官房の会計官が書いた論文には、FMSでは米政府の手数料や管理費等も加算される、通常三・五から五%、この手数料、管理費は、FMSを担当する国防安全保障協力庁における人件費等の諸経費や輸出推進の経費などに充てられるとあります。

 米国政府の職員の人件費や米国兵器の輸出推進の経費をなぜ日本国民の税金で払わなければならないのか。こういった点についてメスを入れる必要があるのではないでしょうか。

挽参考人 FMSについては、会計検査院がこれまでも重点を置いて検査をしており、装備品等の納入が大幅に遅延している事態や未精算額が多額に上っている事態等、先ほど申し上げたとおりでございますが、意見表示事項や処置要求事項などとして複数回検査報告に掲記をしております。

 また、平成三十年の国会からの検査要請により、有償援助による防衛装備品等の調達に関する会計検査の結果についてを報告していると承知しておりますが、その報告書では、FMS調達に係る契約額の増加に伴って、手数料の負担額も増加することに鑑み、契約管理費の減免を受けることにより契約額を低減する余地がないか検討することなどを所見として記載していると承知しております。

 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、FMSを含む防衛費の検査に当たって、防衛費が今後大幅に増加することが見込まれる状況下において防衛装備品等の調達は適切なものとなっているか、これは、私、原価計算の専門家でございますので、そこを見ていきたい、プロジェクト管理は適切か、より少ないコストで実施できないかなどについて検査していくことが考えられます。

 これまでの検査で明らかとなった状況や国会での御議論、国民の関心などを踏まえつつ、適切に厳正に検査を実施してまいりたいと考えております。

塩川委員 このFMS関連では、グローバルホーク導入に当たって、四十人のノースロップ・グラマン社の社員に対し、技術支援の役務だけで九十億円、一人当たりの経費が年間二億円を上回る、余りにも高過ぎる、こういった点についても検査対象としてお考えになるのはいかがでしょうか。

挽参考人 先ほども申し上げたとおり、会計検査院は、FMS調達についてこれまでも重点を置いて検査を実施しており、その結果を検査報告に掲記していると承知しております。私としては、防衛省において、より一層適切なFMS調達の実施に取り組むことが重要であると考えております。現時点では、個別具体的なFMS調達事案に対する検査の詳細については承知しておりません。

 仮に今回任命について同意をいただけた場合は、検査の詳細についてしっかり確認してみたいと思います。その上で、他の二人の検査官の御意見も聞きながら、適切に厳正な検査を行っていきたいと考えております。

塩川委員 ありがとうございました。

山口委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

若林委員 自由民主党、長野一区の若林健太でございます。

 私は、公認会計士でありまして、会計の専門家の挽先生に是非一度お聞きしたい、こう思ったもので、立たせていただきました。

 現在、国においては、貸借対照表を年一回作成しております。しかし、これは複式簿記化に向けた取組の一環としてやっているわけですが、完全な形での複式簿記化というのはまだまだ道半ば、こういう状況になっているところで、結果として、決算が遅かったりいろいろな問題がある、私はそう思っております。

 先生に、会計の専門家として、公会計、国の会計の複式簿記化という問題についてどうお考えになっておられるか、お聞きさせていただきたいと思います。

挽参考人 一研究者としてのお答えということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。回答させていただきます。

 私のゼミでは毎年公認会計士を六名ほど、一橋大学としては三十数名ほど輩出して、数が少ないながらも公認会計士業界にも貢献しているんですけれども、その中で、東京都が複式簿記を採用するときに、石原都知事の下で採用するときにプロジェクトに当たった学生、OBがおります。東京都のレベルでも非常に大変でございました。その一方で、デジタル化が進んでおりますので、そういう意味ではこれはグッドニュースではないかというふうには思っております。そのときよりは恐らくやりやすいのではないかというふうに考えております。

 私、特に医療機関、地方独立行政法人等の医療機関に行きますと、設備があるとかないとか、固定資産台帳を作ったはずですよねというようなこともありますので、デジタル化が進んできたとしたらそれはグッドニュースなので、そういう方向への展開もあり得るとは思います。しかしながら、慣れ親しんできた、また、意味のある形で決算を行ってきているという面もありますので、全面的な複式簿記移行は多分難しいであろうけれども、コストとベネフィットの観点から検討すべきではないかというふうに考えております。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 過去、その不透明な支出が問題となってきた内閣官房報償費、いわゆる官房機密費についてお聞きいたします。

 三類型ある官房機密費のうち、調査情報対策費と活動関係費は領収書等支出先が確認できるものを保存することになっておりますが、官房長官が直接扱う政策推進費については、いつ、誰に、どのような目的で幾ら支払ったのか、適切に記録する仕組みがありません。まさに官房長官しか知り得ないことがあります。

 官房長官が直接扱う官房機密費について会計検査院が適切な検査を行っているのか、この点についてのお考えをお聞かせください。

挽参考人 御質問にお答えいたします。

 現行の憲法の規定では、国の収入支出は全て会計検査院が検査することとなっており、内閣官房報償費についても会計検査院の検査の対象になるということは承知しております。

 そのため、報償費についても検査が行われているものと考えますが、現時点では、内閣官房報償費に対する検査の詳細については承知しておりませんので、仮に今回任命について同意をいただけた場合は、検査の詳細について、よく確認してみたいと思います。その上で、他の二人の検査官の御意見も聞きながら、適切な検査を行っていきたいと考えております。

山口委員長 よろしゅうございますか。

 それでは、これにて挽参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 挽参考人、ありがとうございました。

 以上をもちまして検査官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 次に、次回の本会議は、追って公報をもってお知らせいたします。

 なお、来る二十四日金曜日午前九時十五分理事会、午前九時三十分から委員会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会


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