衆議院

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第3号 平成31年4月24日(水曜日)

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平成三十一年四月二十四日(水曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 末松 義規君

   理事 門  博文君 理事 國場幸之助君

   理事 とかしきなおみ君 理事 西銘恒三郎君

   理事 渡辺 孝一君 理事 篠原  豪君

   理事 山岡 達丸君 理事 佐藤 英道君

      尾身 朝子君    笹川 博義君

      繁本  護君    鈴木 隼人君

      武井 俊輔君    武部  新君

      百武 公親君    細田 健一君

      宮内 秀樹君    宮崎 政久君

      伊藤 俊輔君    石川 香織君

      日吉 雄太君    遠山 清彦君

      赤嶺 政賢君    丸山 穂高君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 宮腰 光寛君

   外務副大臣        あべ 俊子君

   国土交通副大臣      牧野たかお君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   日下 正周君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  北村  信君

   政府参考人

   (内閣府北方対策本部審議官)           松林 博己君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 船越 健裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   三上 正裕君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 鑓水  洋君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           藤原 朋子君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    森   健君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  新川 達也君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         浅輪 宇充君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           高野  滋君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     金井 昭彦君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房政策立案総括審議官)       辰己 昌良君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 宮崎 祥一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 石川  武君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  中村 吉利君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 田中  聡君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     細田 健一君

  山口 泰明君     百武 公親君

  前原 誠司君     日吉 雄太君

  稲津  久君     遠山 清彦君

同日

 辞任         補欠選任

  百武 公親君     山口 泰明君

  細田 健一君     武井 俊輔君

  日吉 雄太君     前原 誠司君

  遠山 清彦君     稲津  久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 沖縄及び北方問題に関する件


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     ――――◇―――――

末松委員長 これより会議を開きます。

 沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官日下正周君、内閣府沖縄振興局長北村信君、内閣府北方対策本部審議官松林博己君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、外務省大臣官房参事官船越健裕君、外務省大臣官房参事官宇山秀樹君、外務省国際法局長三上正裕君、財務省大臣官房審議官鑓水洋君、厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長藤原朋子君、水産庁漁政部長森健君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官新川達也君、国土交通省大臣官房技術参事官浅輪宇充君、国土交通省航空局安全部長高野滋君、観光庁審議官金井昭彦君、防衛省大臣官房政策立案総括審議官辰己昌良君、防衛省大臣官房審議官宮崎祥一君、防衛省防衛政策局次長石川武君、防衛省地方協力局長中村吉利君及び防衛省地方協力局次長田中聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

末松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

末松委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。國場幸之助君。

國場委員 平成を締めくくる沖北委員会での質問の機会をまことにありがとうございます。

 まず、二千円札の普及について質問をしたいと思います。

 来年は、我が国にとりまして二回目のオリンピックの開催です。しかし、沖縄県にとりましては最初の機会でございます。前回の東京五輪は一九六四年、沖縄県はまだ祖国復帰を果たしておりませんでした。

 そこでまず、沖縄振興に熱い思いを持つ宮腰大臣にお尋ねしたいと思います。

 来年のオリパラは沖縄県にとって初めての参加でありますので、沖縄の存在や伝統文化を世界に発信する貴重な機会にもしてほしいと切に願っております。

 例えば、沖縄が発祥の地で、競技種目にもなり、世界じゅうに五千万人いると言われております空手、沖縄の文化の中心でもあり、大臣も一生懸命に推進しております泡盛、そして青い海と緑のウージ畑、その魅力の一つに、守礼の門が描かれている二千円札の普及もぜひとも加えていただきたいと思いますけれども、大臣の御所見をよろしくお願いします。

宮腰国務大臣 沖縄は豊かな自然や文化を有しておりまして、来年のオリンピック・パラリンピックも見据え、日本を訪れる外国人の方々にさまざまな手段を通じてその魅力をしっかりアピールしていくことは大変重要であると考えます。

 御指摘の泡盛につきましては、魅力ある琉球泡盛の海外展開を官民一体となって促進する琉球泡盛海外輸出プロジェクトにおいて、外国人観光客に対するプロモーションを実施し、観光土産としての琉球泡盛の購入につなげていくことを販路拡大に向けた取組の柱の一つとして位置づけ、酒蔵ツーリズム、クルーズ船客に対する情報発信などを関係者が連携して進めているところであります。

 引き続き、政府として、同プロジェクトや、沖縄県産の長粒種米による琉球泡盛の製造を進める琉球泡盛テロワールプロジェクト等を通じ、琉球泡盛の振興に向けた業界の取組を支援してまいります。

 空手につきましては、沖縄が世界に誇る伝統文化の一つでありまして、国としても、空手発祥の地沖縄の発信拠点として、沖縄空手会館の整備を支援してまいりました。二年前にオープンした同会館では、昨年、第一回沖縄空手国際大会が開催され、五十の国・地域から延べ三千二百十五名の空手愛好家が参加したところであります。

 このほか、沖縄空手に関する多言語の解説書を作成をいたしまして約七十カ国へ配布する事業、これは日本語、英語、フランス語、スペイン語でありますが、沖縄空手の指導者を海外へ派遣する事業も支援してまいりました。

 引き続き、沖縄空手の振興のための取組を、ソフト一括交付金等により支援してまいりたいと考えております。

 また、御指摘の泡盛と空手の連携ということでありますけれども、琉球王国時代、空手の範士が泡盛を守る役割を果たしていたとも伝えられておりまして、空手と琉球泡盛は歴史的にも密接なつながりを有しております。

 このため、琉球泡盛海外輸出プロジェクトでは、空手が正式種目となった来年の東京オリンピックに向けて、先生先ほど五千万人と言われましたが、一説では一億三千万人の空手人口が世界じゅうにあるとも言われる世界の空手愛好家に対し、空手と琉球泡盛の歴史的な関係性等について情報発信するなど、空手と連携して琉球泡盛の海外への販路拡大につなげていく取組も進めております。

 例えば、先日、リトアニアのある大臣がおいでになりましたけれども、リトアニアの女性大統領は空手の黒帯だそうでありまして、リトアニアで空手の国際的な大会を開いたこともあるというお話もしておいでになりましたので、私の方からお土産に「空手」という名前の泡盛を、これをリトアニアの大統領にお渡しくださいということでお渡ししました。大変大臣も喜んでおいでになって、世界じゅうにいろいろな空手の愛好家、大統領まで空手愛好家という国もあるということでありますので、この辺はやはり、泡盛と空手の関係をしっかりとPRしていかなければいけないと思っております。

 そして二千円札でありますが、現在発行されているお札の中で、唯一、肖像ではなくて首里城の守礼門が印刷されている二千円札につきましても、観光客の方々等に沖縄の歴史や文化に関心を持っていただくきっかけになるものというふうに考えておりまして、このPRもしていかなければいけないというふうに考えております。

國場委員 ありがとうございます。

 二〇二四年には新紙幣が発行されますが、二千円札は刷新されません。その最大の理由が、日本銀行に備蓄が多く残っているからであると聞いております。しかし、二千円札の普及に財務省、日本銀行は非常に熱心に取り組んでいただいておりまして、この点は感謝申し上げたいと思います。二千円札は日本の小さな文化財というリーフレットを作成し、全国の金融機関に活用のお願いをしている取組には感謝申し上げます。

 その上で、来年のオリパラや二千円札誕生二十周年を目前としましてさらなる取組をお願いしたいと思いますが、今後の取組状況を教えてください。

鑓水政府参考人 お答えいたします。

 最近の二千円札の流通促進策につきましては、御指摘の東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることに伴いまして多くの外国人観光客の訪日が見込まれることも踏まえまして、二千円札のPR等を実施してきたものでございます。

 財務省といたしましては、こうした取組の効果も見きわめつつ、引き続き、国民や外国人観光客の日本銀行券の需要動向を注視しながら、日本銀行とともに二千円札の流通促進に取り組んでいきたいと考えております。

國場委員 鑓水審議官の財布の中にも二千円札はたくさん入っていると思いますので、見せてほしいとは言いませんけれども、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 これからキャッシュレスの時代にも進んでまいります。海外では二十ドル、二十ユーロ、二十元とありますので、ぜひとも二千円札の普及を積極的によろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、クルーズ観光とCIQについてお尋ねをします。

 沖縄県のクルーズ観光は、寄港回数が五百二十八回と、三年連続日本一となっております。関係機関の皆様方にも改めて感謝申し上げたいと思います。

 官民連携国際クルーズ船拠点事業についてお尋ねをします。

 沖縄県北部の本部港は、ゲンティン香港との官民連携で国際クルーズ船拠点港を目指しておりますが、当初予定していた来年の四月の運用スタートはおくれると聞いております。

 これは、CIQの常設をゲンティン香港が求めておりますが、寄港回数条件が満たずに、常設ではなく、クルーズ船の寄港の際に出張対応でCIQを行うということでありますけれども、その対応策にゲンティン香港の方は了解しているんでしょうか。

浅輪政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、本部港においては、国際クルーズ拠点の形成に向けて準備が進んでいるところというふうに理解してございます。

 CIQを含めた実施体制につきましては、沖縄県はターミナルビルへの投資を計画しているクルーズ船社や関係省庁との間で調整を進めているものの、調整が難航していると聞いてございます。当該クルーズ船社は、CIQ実施体制の状況を確認した上で投資に向けた準備を進めていく意向だと聞いてございます。

 私どもといたしましても、沖縄県とクルーズ船社との調整が整えば、国際クルーズ拠点の形成に向けて必要な協力を行ってまいりたいと考えてございます。

國場委員 一義的には沖縄県とゲンティン香港との調整であると思いますけれども、港湾局の事業でもありますので、ぜひとも積極的に調整に立ち会ってほしいと思いますので、よろしくお願いします。

 続きまして、サイバー空間における安全保障についてお尋ねをします。

 先日の2プラス2で、サイバー攻撃も日米安保第五条の適用対象と初めて確認されております。新たな防衛大綱の中でも、サイバーは新領域として重視をされております。全国百三十一ある米軍施設・区域のうち、サイバー作戦を担当する部隊は横須賀と横田にあり、沖縄県には、サイバー作戦関連部隊が海兵隊のキャンプ・バトラー、キャンプ・ハンセン、嘉手納基地に配置されていることが公表されております。

 平和国家を国是とする我が国にとりまして、情報の収集と安全な活用は死活的に重要な意味を持ちます。

 そこで、日米のサイバー部隊同士の知見を高めるために、沖縄の持つ戦略的な拠点としての重要性を鑑み、日米が共同で連携協力できる余地、可能性はあると考えますけれども、防衛省としてはどのように考えていますか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省としましては、安全保障上の極めて重大な課題であるサイバー攻撃に対しまして迅速かつ的確に対応するためには、我が国自身の体制強化のみならず、同盟国である米国と効果的に連携することが必要と考えております。

 このため、平素から日米間では、日米サイバー防衛政策ワーキンググループを始めとするさまざまなレベルにおける定期的な協議や、日米共同方面隊指揮所演習等における、サイバー攻撃が行われた状況を想定した演練等を通じて日米間のサイバー防衛協力を進めております。

 また、先週の2プラス2会合におきましても、議員御指摘もありましたように、領域横断作戦のための協力として、サイバー分野における協力を強化していくことで一致をいたしました。

 このような日米間の方向性の一致は、具体的な協力を進めていく上での両国共通の基礎となると考えております。

 防衛省としましては、今後とも、政策協議や演習を含めさまざまな面におきまして、サイバー分野における日米協力を一層強化していく考えでございます。

國場委員 続きまして、児童虐待についてお尋ねをします。

 野田市の小学校四年生の悲劇は沖縄県にも深いかかわりがありまして、大変に心を痛めております。

 そこで一点お尋ねしたいんですが、児童相談所の役割は支援と介入という二つの役割がありますけれども、命を救うという観点からは、緊急介入できる機能、初期の対応が非常に重要であると考えます。

 そこで、既に全国十県一市で実施されております児相と警察の通報を、沖縄県もお互いに全件共有するということはできないものでしょうか。警察庁と厚労省の方に答弁をお願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の七月二十日に決定をいたしました緊急総合対策では、児童相談所と警察の間での情報共有の徹底ということが決定をされたところでございます。

 この情報共有を行う目的でございますが、情報共有を契機として警察と連携をし、子供の安全確認を確実に行うということ、そして、必要な支援につなげるということが目的として挙げられるものでございます。

 このため、情報提供を行った後の支援におきまして、単なる情報共有にとどまるものではなく、円滑な連携が図られるように、要保護児童対策地域協議会を活用するなどしまして、警察と支援の方針の方向性を一にした対応をとることが重要というふうに考えてございます。

 お尋ねの、児童相談所と警察との間で全件情報共有をするということについてでございますけれども、相談の中には、保護者や家族と時間をかけて信頼関係を醸成しつつ継続指導を行うことが改善につながるケースもあるということですとか、機械的に全件共有をすることで警察に相談内容を知られることになりますので、保護者や関係機関が相談を控えてしまうのではないか、そういったおそれがあるのではないかというふうな御指摘もあるところでございます。

 一方で、委員御指摘のとおり、全件共有している自治体はふえておりまして、直近の調査で申し上げますと、平成三十一年一月現在で、児童相談所を設置する六十九自治体の中で十自治体が全件共有をしているというところでございます。

 こうした自治体においても、情報共有のみならず、警察との人事交流ですとか研修などとあわせて、連携体制を構築しながら取組を進めていただいているものと承知をしております。

 引き続き、こういった先行する自治体での取組も十分踏まえながら、警察との情報共有のあり方についてもしっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所と警察の情報共有につきましては、昨年七月の政府の緊急総合対策で示されました児童の身体に対する危険性が高い三つの類型の情報が迅速、確実に児童相談所から共有され、警察としてこれに迅速、的確に対応することが大変重要であると考えているところでございます。

 なお、警察におきましては、平成二十八年四月以降、取り扱った児童虐待が疑われる事案の情報を全て児童相談所に通告し、又は情報提供を行っているところでございますけれども、警察としては引き続き、児童相談所と連携をして、被害児童の早期発見と安全確保に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

國場委員 もう時間ですから終了しますが、子供の貧困も県民にとって大変意識の高い課題でありますので、北村局長、ひとつまたよろしくお願いします。

 以上です。

末松委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道でございます。

 初めに、日ロ平和条約交渉についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 昨年十二月の当委員会でも、二十五回目となりましたことし一月の首脳会談について、大臣の見解と所見をお伺いをさせていただきました。当時は、いよいよ平和条約の締結へ何らかの具体的な進捗が見られるのではないか、そうしたやはり期待が大きく膨らんでおりました。

 しかし、最近の報道を見る限りでは、ことしに入ってからロシア側からは、かたくなとも言える発言が相次いでいるようにも見えます。こうした状況に元島民の方々も、新聞などの報道に落胆のコメントを寄せていらっしゃるのも事実であります。

 特に二月のラブロフ外相の、平和条約締結の第一歩は、四島を含むクリル諸島の全ての主権はロシアにあるという第二次世界大戦の結果を日本が認めること以外にないとの発言や、プーチン大統領の、平和条約交渉がテンポを失ったとの発言がクローズアップされているわけでありますけれども、そうした報道の影響もあり、国民の中にも、平和条約交渉が暗礁に乗り上げてしまったかのような印象が広がっております。

 そこで、いま一度ここで政府の認識を確認したいのでありますけれども、これまで積極的に協議を進めてきた安倍内閣の歩みを振り返って、現在の日ロ両国の平和条約交渉は今どういう状態にあると認識されていらっしゃるのか。また、一部報道で見られるような手詰まり状態なのか。ことしに入ってからの協議は本当に進展がなかったのか。交渉の場に立たれている外務大臣の率直な意見、評価、見解を伺いたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 安倍総理とプーチン大統領、シンガポールでの首脳会談におきまして、領土問題、次の世代に先送りすることなく、みずからの手で必ずや終止符を打つという強い意思を共有しているところでございます。

 また、平和条約につきましても、河野大臣とラブロフ外相との間で、一月に第一回の交渉、二月には第二回の交渉を実施したところでございます。

 二月の交渉では、双方が受入れ可能な解決に向けて突っ込んだやりとりを行ったところでございまして、お互いに国益を背負って交渉する中にございまして、時には激しいやりとりになったこともあったと聞いておりますが、河野大臣とラブロフ外相が会談するのは今回で通算九回目でございます。胸襟を開いた率直な議論となりましたところでございまして、五月十日におきましては、河野大臣がロシアの方に訪問いたしましてラブロフ外相と会談を行いまして、平和条約の締結問題についても議論する予定でございます。

 領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針のもと、引き続き、粘り強く交渉してまいります。

佐藤(英)委員 一月の首脳会談後、安倍総理は、両国民が相互に受入れ可能な解決のためリーダーシップを発揮する決意を確認したと述べられていました。

 また、プーチン大統領も、会談は非常に建設的だったとして、平和条約についても締結を目指す、領土問題は解決可能だと述べるなど、着実に信頼関係は深まっており、ゴールへの歩みは決して後退はしていないのではないか。むしろ、一歩一歩ではありますが、確実に前に進んでいるというのが私の印象でもあります。

 昨日の朝刊では、両国の法的立場を害さない特別な制度について協議するための課長級のテーブルをセットし、また、人の移動に関する作業部会では、北海道とサハリン州間での短期査証免除などのあり方が議論されると報じられておりました。共同経済活動について、人や物の移動の問題を解決する道筋に明るい光明が差してきたようにも感じられます。

 平和条約交渉の前提となる日ロ両国の一層の信頼醸成を図る上で最も重要である共同経済活動について、現在の状況を具体的にお伺いをさせていただきたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 四島におけるこの共同経済活動につきましては、まず、海産物の共同の増養殖、また、温室野菜の栽培、また、島の特性に応じたツアーの開発、さらには、風力発電、ごみの減容対策の五つのプロジェクト候補それぞれにつきまして、今後の作業の道筋を具体的に確認いたしましたロードマップによりまして具体的な道筋が明確になってまいりました。

 一月の首脳会談で、早期実現のために共同作業を着実かつ迅速に進展させるよう関係者の方に指示があったところでございます。それを踏まえまして、二月の外相会談におきましても、早期実現に向けました具体的な進め方について議論を行ったところでございます。

 四月二十二日に行われた森外務審議官とモルグロフ・ロシアの外務次官との協議におきましても、ロードマップを含むこれまでの積み重ねの上に具体的なやりとりを行いまして、共同経済活動に関する法的側面につきまして課長級の作業部会を立ち上げることで一致させていただいたところでございます。

 これ以上の詳細についてお答えすることは差し控えるところでございますが、共同経済活動のプロジェクトの実施に向けた作業を精力的に進めていく考えでございます。

佐藤(英)委員 ありがとうございました。ぜひ御期待を申し上げたいと思います。

 安倍総理とプーチン大統領による二十六回目となる首脳会談が、本年六月、大阪でのG20に合わせて行われる予定と伺っております。

 前回一月の首脳会談から次回のG20まで約五カ月、その間に、外相会談、次官級協議を始め、具体の交渉と協議が何度も重ねられておりますけれども、そうした両国間による調整がどのような成果となってあらわれるのか、元島民の方々ともに、私も強く期待をしております。

 G20での日ロ首脳会談に向け、外務省として具体の準備状況はどうなっているのか。また、平和条約の交渉責任者である外務大臣の御決意を伺いたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 一月のモスクワでの首脳会談におきまして安倍総理は、平和条約の問題に関しまして、プーチン大統領と二人だけでじっくり時間をかけてかなり深い議論を行ったところでございます。その上で両首脳は、平和条約交渉を更に前進させるよう指示したところでございまして、戦後七十年以上残された課題の解決、容易ではございません。

 しかしながら、私ども、これをやり遂げなければいけないところでございまして、安倍総理におかれましては、六月のG20大阪サミットにプーチン大統領をお招きし、あわせて、首脳会談を行うところでございます。

 五月の河野大臣のロシアの訪問の機会を含め、日本国民とロシア国民が互いの信頼関係、友人としての関係を更に増進し、相互に受入れ可能な解決策を見出すための共同作業を力強く進めまして、平和条約のこの交渉をできる限り前進させてまいりたいというふうに考えているところでございます。

佐藤(英)委員 元島民の方々も非常にやはり高齢化が進んでおります。多くの方々が期待を持って次の日ロ首脳会談を見詰めております。ぜひとも御期待を申し上げたいと思います。

 次に、四島交流事業についてお伺いさせていただきます。

 昨年夏に私も交流事業に参加させていただきました。その際にも要望したことでありますけれども、「えとぴりか」船内の通信環境の改善について、その中でも特にWiFiについて、今年度、整備のための予算をつけていただき、感謝を申し上げたいと思います。

 今夏の交流事業に利用できるような確実な整備を進めていただきたいが、宮腰大臣に見通しをお伺いをさせていただきたいと思います。

 また、昨年の当委員会でも質問させていただきましたけれども、墓参事業と自由訪問のよいところを合わせた、ふるさと交流とも呼ぶべき新しい事業を求める声も元島民の方々からも寄せられております。

 さらに、交流事業の中でも、特に墓参は、御高齢の方にとっては上陸すらも大変に難しく、さらに、墓所までの足場も極めて劣悪であります。墓参事業の始まる前に四島を訪問し、上陸箇所の整備、墓所への道の草刈りや足場板の仮設置なども可能となり、御高齢の元島民の方々の墓参にも大きな改善が期待でき、人道的観点からも推進すべきと考えます。

 ふるさと交流や墓参環境の改善のための訪問について、ぜひとも協議のテーブルにのせ、検討を進めていただきたいと思います。これについては外務大臣の御見解をいただきたいと思います。

宮腰国務大臣 北方領土問題に関して広く国民の関心と理解を得て国民世論を盛り上げるためには、ビザなし交流事業の参加者自身が、SNS等によりビザなし交流の様子等をリアルタイムで発信することが効果的であるものと考えています。

 このため、内閣府においては、今年度予算において、「えとぴりか」の船内に衛星通信を利用したWiFiシステム環境を整備するための経費を計上したところでありまして、今年度五月の事業開始当初から参加者がWiFiシステムを利用することができるよう、現在整備を進めております。

 ビザなし交流事業参加者の皆様においては、ぜひ貴重な体験を船内から積極的に情報発信をしていただき、参加者以外の多くの方々にも、北方領土問題に関する理解と関心を深めていただきたいと考えております。

あべ副大臣 特に墓参環境の改善のための訪問に関してでございますが、政府といたしましては、元島民の方々が高齢になっていることを考慮いたしまして、人道的な観点から現行の枠組みによる訪問手続の改善を行っているところでございまして、具体的には、一昨年及び昨年、航空機における墓参、この訪問が行われまして、船舶による北方墓参の際に臨時の追加的な出入域地点が設置されたところでございます。

 これらの措置によりまして四島の移動に要する時間が大幅に短縮されまして、元島民の身体的負担を軽減することができたところでございます。

 また、一月の日ロの首脳会談におきましては、元島民の方々のための人道的措置について、本年のいわゆる航空機墓参を夏にも実施するところで一致したところでございまして、その後もさまざまなレベルで、ロシア側に元島民の方々のための人道的措置について働きかけを行っているところでもございます。

 墓参ルートの整備、また、元島民や親族の方々による北方四島の訪問のための枠組みの改善につきましては関係団体からも要望をいただいているところでございまして、委員が質問されたように、こうした課題があることは承知しているところでございます。

 御指摘も踏まえまして、内閣府及び関係団体とも協議しながら不断の改善に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。

佐藤(英)委員 ありがとうございます。

 宮腰大臣におかれましては、ことしの夏の交流事業からWiFiも含めたさまざまな取組をしていただけるということで、大変に力強いお話をいただきました。

 また、あべ副大臣におかれましても、さまざまな課題があることは存じ上げますけれども、元島民の方の思いをぜひとも具現化していただければと思います。

 さて最後に、昨年、北特法が改正されまして、共同経済活動の中でも、北方隣接地域の振興につながる事業を特定共同経済活動と位置づけ、これに必要となる施設整備等の財源として北方基金が活用できるようになりました。宮腰大臣が大変なやはり御尽力をしていただいたこと、心から敬意を、また、感謝を申し上げたいと思います。

 共同経済活動や経済ミッションが進捗すれば、関係する人や物の往来も活発化し、北方四島の窓口となる根室の港湾の機能強化が必然的に求められることは明らかであります。宮腰大臣も、そうした先見性から根室港の整備について言及をされていると承知をされております。昨年の質問の際にも前向きな御答弁をいただきました。

 また、交流事業や経済ミッションでの渡航船についても、以前より需要が高まっており、既存船の活用も含めた増船のお願いもさせていただいておりましたけれども、現場からは、船がふえても、現在の港の状況では停泊が難しいとの御意見も伺っておりまして、北方四島との窓口である根室港の整備は最優先の課題と感じております。宮腰大臣も何度も根室に行かれておりますので、現場の状況はよく御存じかなと思います。

 経済的効率性の議論に終始することなく、北方領土隣接地域の置かれている特殊な環境について更により一層御考慮をいただき、根室港の整備についてぜひとも前向きな検討が必要だと考えますが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

宮腰国務大臣 根室港はビザなし交流の拠点であるなど、北方領土への玄関口として重要な役割を果たしているものと認識いたしております。

 北方四島における共同経済活動につきましては、平成二十八年十二月の日ロ首脳会談を契機に日ロ間で協議が進められておりまして、今月二十二日に東京で開催された次官級協議においては、共同経済活動に関する法的枠組みについて課長級の作業部会を立ち上げることが合意されるなど、実現に向けて議論が進められているものと考えております。

 昨年の北特法の改正におきましては、共同経済活動の進捗にあわせて隣接地域の振興が進められるよう、主として北方領土隣接地域の経済の活性化に資する共同経済活動について、その円滑な実施のため、国、北海道、北方領土隣接地域市町が必要な環境整備に努めることとされました。

 根室港につきましては、今後、共同経済活動が進捗することにより、北方領土との人、物の往来拠点として従来以上に重要な役割を果たすことが見込まれるところであります。

 内閣府としては、今般の改正法の趣旨を踏まえ、また、共同経済活動の進捗も見据えながら、根室港の整備について、国交省や北海道、根室市などと連携しつつ、精力的に検討してまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 ありがとうございました。終わります。

末松委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 どうもありがとうございます。

 平成最後の質疑の機会でございます。機会をいただきまして、ありがとうございます。

 北方領土問題と、そして沖縄の問題、いろいろとありましたけれども、通常国会、ようやく所信質疑ができるということで、平成のうちに間に合ってよかったと本当に思っています。

 最後ですので、やはりしっかりとお伺いをしていきたいと思います。

 まず、沖縄の問題についてお伺いをいたします。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の賛否をめぐっては、与野党が対決する構図になった沖縄三区の補欠選挙が二十一日投開票をされ、移設に反対した野党系無所属新人の屋良朝博さんが、自民新顔で、公明党さんが推薦した元沖縄北方相の島尻氏を破って当選をしました。

 これで、玉城デニー氏が大勝した昨年九月の県知事選、ことし二月の県民投票に続いて、安倍政権が進める辺野古移設に反対する県民の意思が下されたことをどのようにまず受けとめられているのか。これは宮腰大臣にお伺いいたします。

宮腰国務大臣 市街地に位置し、住宅や学校で囲まれ、世界で一番危険とも言われております普天間飛行場については、危険性の除去を図ることが極めて重要な課題であるとの認識のもと、日米合意に従い、一日も早い移設に向けて取り組むことが政府の方針です。

 普天間飛行場の移設を始めとする沖縄の基地負担軽減に係る政府の取組につきましては、沖縄の方々に説明を尽くす努力を継続していく必要があると考えております。

 私といたしましては、沖縄振興を担当する立場で、基地の跡地利用の推進を始め、各種沖縄振興策に引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 私は、民意をどう受けとめたのかと聞いているんです、民意を、選挙の結果を。

 今回の補選は、知事選で玉城氏が過去最多投票で当選したにもかかわらず、その住民の意思を無視して、一カ月後、安倍政権は埋立承認撤回の効力を停止をして、昨年の十二月に辺野古沿岸部に土砂を投入し始めたこと、また、埋立ての是非を問う県民投票では反対票が投票者の七割を超え、県知事が話合いによる解決の申入れをしているにもかかわらず、政府は工事を強行しています。

 新たな区域への土砂投入が続いているという、住民自治を一顧だにしない安倍政権への沖縄県民の反発を示しているということについて質問をしているんです。

 安倍政権が既成事実を積み重ねて県民を黙らせようとしても決して諦めないということが今明確になっているわけです。安保政策は国の専権事項とされていますが、国民の支持がなければ成り立つものではありません。民意を尊重して民主主義の原則に立ち返ることが問題の解決に不可欠だと考えますがいかがですかということを、民意尊重の必要性として聞いているんです、この選挙について。

 もう一度お願いします。

宮腰国務大臣 一般論として申し上げれば、選挙はさまざまな施策に関し有権者が総合的に判断するものでありますが、その結果に関して、その評価を含め、大臣の立場で具体的にコメントすることは差し控えたいと思っております。

篠原(豪)委員 沖縄で、住民自治を考えるための、民主主義国家である我が国日本で、認められる形で住民投票が行われました。そして、そのことに対してコメントをするのは、これは大臣の役割だと思いますよ。誰が答えるんですか、そうしたら。

 沖縄三区は、もう一度言いますけれども、反対が圧勝したのに無視して、住民投票も圧勝して、安倍総理は今回の選挙も応援に入りませんでした。政権の対応として今県民を無視し続けていますから。聞く耳も持たないで、力で続けている。

 これを、選挙でやって民意に応えることができないと言うのであれば、じゃ、全国で衆議院の総選挙であるとか、こういったところでしっかり問うてやった場合には、その場合には、きちっとそれが我が国の国民の意思だというふうにお認めになりますか。

宮腰国務大臣 今ほども御答弁させていただきましたけれども、選挙は、さまざまな施策に関して有権者が総合的に判断するものであるというふうに考えております。

 それは、全国の選挙でということになれば、これは政権がかわるということでありますから、それはそれで、やはり、かわった政権が別の考え方で政権運営をされるということであると考えておりますが、何度も申し上げておりますように、選挙はさまざまな施策に関して有権者が総合的に判断をするということでありますので、その結果に関して、評価を含めて、大臣の立場で具体的にコメントすることは差し控えたいと考えております。

篠原(豪)委員 宮腰大臣は誠実な方で、先輩であり、沖縄にずっと寄り添ってきたというふうに、私も勉強させていただきました。こういったことがあるのに、なかなかおつらい立場かもしれませんけれども、やはり民意ですから、住民投票はシングルイシューですよ。辺野古移設イエスかノーかですから、いろいろなイシューではありません。そのことをお伝えしておきます。

 埋立ての工事の先行きについてちょっと進めたいんですけれども、普天間の飛行場を名護市の辺野古に移す計画では、キャンプ・シュワブ沿岸部を百六十ヘクタール埋め立てることになっています。これはいろいろな委員会でもここのところ言われていますけれども、マヨネーズ並みの、水深の深い大浦湾側の埋立地の予定海域があって、軟弱地盤に、工事を続けて地盤改良をすることが本当にできるのかどうか。

 これを、地盤改良工事について、七万七千本のくいを六十五・四ヘクタールに打ち込む必要があるんですけれども、岩屋防衛相は、以前からある一般的な工法で軟弱地盤を克服し、安定的に工事ができる、施工していると確認していますと説明していますけれども、大浦湾は、水深三十メーターの下に深さ約六十メーターにわたって軟弱地盤があるとされています。七十メーターが限度とされる国内の作業船では対応が難しい。

 それでも岩屋防衛相は、七十メーターより深いところはかたい粘土層があると確認されている、あくまでも工事は可能というふうに主張していますけれども、これ、最終的にできなかったでは済まされないんですよ。

 残る二十メーターの深さの地盤改良を、これは誰が調査をして、地盤沈下を防ぐことが本当にできるのか。その保証を業者が負うんですか、これをやってできなかった場合には。このことについてお伺いします。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の地盤改良の深さにつきましては、具体的な設計を踏まえ、構造物等の安定性を確保するために、必要な深度まで施工するものでございます。

 構造物の安定性の検討に当たっては、まず、波や土質、材料などの設計や施工の条件を設定します。この条件をもとに構造物の安定性を検討しまして、構造物の断面ですとか地盤改良の範囲等の結論を導くことになります。

 今般の検討では、こうした条件をもとに土木工学的な安定計算を行った結果、最大施工深度で七十メートルで護岸等の安定性が確保できるという結論が導かれたところでございます。

 お尋ねの地盤沈下につきましては、海上埋立工事におきましては、長い年月を経て沈下が起こることが一般的でありまして、ほかの海上埋立て空港においても、供用開始後の沈下を許容している例というのは珍しくございません。

 辺野古につきましても、護岸の構築後、埋立ての開始から終了までの期間を三年間と仮定しました場合、埋立て終了後からの二十年間において、最も大きいところで四十センチメートルの沈下を予測しております。

 このため、一般的に例えば、沈下量をあらかじめ考慮した造成後の高さの設定ですとか、供用開始後の沈下量を抑えるための工法、それから、維持管理段階でのかさ上げなどの対策が行われているところでございます。

 本事業におきましても、このような対策を講じることによりまして、安全性に問題なく飛行場を供用させることができるものと考えているところでございます。

篠原(豪)委員 私が聞いたのは、それを工事して、誰が保証を、事業を負うのかという話を聞いているんです。それを聞いているので、誰がその工事をして、この保証を事業者が負うのかどうか、国が負うのかどうかというところを聞いています。

 これもお答えいただきたいんです。もうそこだけでいいんですけれども、続けてちょっとお伺いしますけれども、今の話を聞いていますと、そうすると、今三年とおっしゃいましたけれども、この地盤の改良工事が三年八カ月、三年ですか、かかるというふうに想定しているようですけれども、実施設計が一部まだ出ていないというふうなことも報じられています。

 そもそも、実施設計もわかっていない中でそんな日数がわかるのかということも不明だというふうに思いますし、ちょっとお配りした資料を見ていただきたいんですよ。この資料、これは地元負担軽減に関する米軍再編関係経費の推移、これは防衛省からいただいたものですけれども、これを見ますと、普天間飛行場の移設に係る毎年の契約額と歳出額の間に大きな開きがあることがわかります。この二枚目の棒グラフの二〇一四年からのところの青いのが契約額、赤いのが実際の歳出額です。その前はこういうことはないんです。

 米軍再編経費に普天間飛行場の移設を含む沖縄における再編のための事業の占める割合は、これは一枚目に戻っていただくんですけれども、二〇〇六年度から一九年度までの契約額ベースでは四六%なんですけれども、予算額ベースだと二六%に落ちてしまう。沖縄における再編のための事業に関しては、契約額に対する歳出は、二〇〇六年から一九年までの平均四〇%、これにすぎないということであります。

 特に、海底ボーリングが開始された二〇一四年度から護岸工事に着手した二〇一七年度までの開きが著しいんです。この額が決算額と比較すると更に大きくなる。

 実は、普天間飛行場の移設を含む沖縄における再編のための事業以外の必要項目については、契約額と歳出額との間にほとんど差異が認められないんです。

 したがって、データは、普天間の飛行場の移設を含む沖縄における再編のための事業のみ、工事の進捗が思うように進んでいないことを示していると考えますけれども、この原因はどこにあるのかということをちょっと教えていただければと思います。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 一点目の、地盤改良を誰が責任を持って行うのかというようなお尋ねがございました。

 地盤改良の設計、施工を行うのは沖縄防衛局でございます。今後、事業者である沖縄防衛局において、安全性に問題なく飛行場を供用させるべく、具体的な設計、施工等の検討を行うことにしております。

 先ほど申し上げました地盤沈下の対策につきましても、安全性に問題なく飛行場を供用させるべく、これを実施するのは沖縄防衛局でございます。

 それから二点目の、予算の進捗状況についてのお尋ねがございました。

 お配りいただいています資料の三ページ、それから、私どもの方から提出させていただいたデータが四ページでございまして、四ページのデータをもとに三ページのグラフを作成いただいているものと考えております。

 この資料の中で、青地の部分は契約ベースの金額、それからオレンジ色で示されているところが、平成十八年度から各年度ごとの予算額の推移を示していらっしゃるものと考えております。

 ここで言う契約額、契約ベースと申しますのは、当該年度に結ぶ契約額の合計、すなわち、当該年度の契約に基づき当該年度に支払われる経費と翌年度以降に支払われる経費の合計額でございます。

 それから、歳出額、歳出ベースと申しますと、当該年度に支払われる金額、すなわち、当該年度の契約に基づき当該年度に支払われる経費と、過年度におきまして契約したものに基づき当該年度に支払われる経費を足し上げたものでございます。

 したがいまして、両者というのは、そもそも算出の土台が違う計数でございますから、この計数の比較によって事業の進捗状況を把握する性質のものではないと認識しているところでございます。

 その上で申し上げますれば、普天間の代替施設建設事業につきましては、二〇一三年十二月に公有水面埋立ての承認をいただきました後、二〇一五年に陸上ヤードの着工、それから二〇一七年、護岸工事の着工、二〇一八年には辺野古側の埋立ての着工と、一歩一歩前に進んできたところでございます。

 その中で、御指摘のありました、二〇一四年度から現在までの間、工事の進捗はいかがかということにつきましては、当時の翁長県知事によります埋立承認の取消しですとか、裁判所の和解勧告を受けられた上での工事の中止、それから、沖縄県の埋立承認撤回に伴う工事の中止等の事情ですとか、台風等による工事の作業中断等の経緯があったところでございます。

 こうした工事の中断の経緯から、普天間代替施設建設事業につきましては、より詳細な現場の状況に合致させる予算執行を実施するなど、対応しているところでございます。

 工期につきまして現時点で確たることを申し上げることは困難ではございますけれども、しかるべき時期にしっかりと御説明をさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

篠原(豪)委員 いや、申しわけないんですけれども、契約額と歳出額と、工事がどんどんおくれている。これで積み上がっていっている。それで、いいですか、反対運動があることは最初からわかっているんですよ、今るるおっしゃっていましたけれども。毎回歳出額や決算額がこれだけ契約額を大幅に下回るということは、工事そのものに予期せぬ事情があり過ぎて、あり過ぎてですよ、これはもうどう考えても、かなり無理な状態を毎回毎回続けている。それでも進めようとしている。事業そのものに無理があるからこういうことになっている。だってほかのところはないわけですから、ほかの予算執行では。契約と歳出と、こんなに開くことないんだから。今後も同じ状況になると考えると、工期もおくれることがこれは不可避だということになる。

 事業の執行状況もさることながらですけれども、米軍のキャンプ・シュワブ北東側の大浦湾で確認された軟弱地盤については、政府は、年内にも大規模な地盤改良工事に向けた設計変更の申請をしようということをしています。玉城知事は申請を承認しない見通しなので、そもそも、大幅な工期延長、これは不可避じゃないですか。不可避なんです。

 こういう移設工事の迷走ぶりが、今後も工期がおくれることが不可避であるということについては異論がないですか。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 工期につきましては、今先生御指摘いただいたとおり、地盤改良工事が必要なことが確認されました。それに伴い、沖縄県に設計変更の承認申請をする必要もございます。このため、具体的な設計等の検討を十分に行うことにしております。

 このため、現時点で工期について確たることを申し上げるのは困難でございますが、十分な検討を行った上で、しかるべき時期にしっかりと御説明をさせていただきたいと考えているところでございます。

篠原(豪)委員 これは、誰が見たって工期がおくれることは不可避なんですよ。だから、三年八カ月とか、十何年でできるなんと言って、その間固定化していくわけですよ。それが果たしていいのかどうかというのを、本末転倒じゃないですかということの意見があるのは事実じゃないですか。じゃ、そこをちゃんと見ていくのかということ。

 米軍部による沖縄の今までのことについてなんですけれども、国土の〇・六%の沖縄に七〇%の米軍施設があります。何でこれほどまでに沖縄の米軍基地が集中するのかといえば、これはちょっと歴史的なお話をさせていただきますけれども、戦後、米軍部が沖縄の排他的、戦略的支配に一貫してこだわってきた歴史があります。

 まず、地上戦を戦って、占領支配を確立した米軍部は、沖縄の信託統治、これは国連が認めないといけないものなんですけれども、これを要請するという形をとって実施をすることが排他的、戦略的支配を実施する唯一の手段と主張したんです。冷戦によってその可能性がなくなった後も、日米サンフランシスコ講話条約の第三条に基づく暫定措置としてアメリカが信託統治を国連に提案し、承認を受けるまで施政権を行使し続けた。日本政府も、講和条約の締結に先立って沖縄の潜在主権をアメリカが認めたのでそれを黙認してきたという歴史があると理解しています。

 しかし、沖縄の返還後もこの排他的、戦略的支配、つまりこれは、日本の主権を気にせずに米軍が自由に沖縄の米軍基地を使用する状況が続いている。

 この根拠が、講和後の日本本土においても米軍駐留を認めるとした日本政府の申出に基づいて一九五〇年の六月に締結された、日本の戦後の安全保障の概念と称される、マッカーサーさんの覚書です。この中に、日本の本土における基地の自由使用、駐留米軍の行動の自由が定められ、独立後も、日米合同委員会における秘密合意によってそれが実質的に維持されてきている。

 したがって、今必要としているのは、沖縄を、これも本土と全く同様にやはりやっていくということ、もうこれ以上、辺野古のような新しい基地を、滑走路の埋立てをやっていますけれども、これは沖縄でもう行わないということを確約していくということの方が大事だと思うんですけれども。だって日本の主権ですから。

 政府の見解を伺います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄は、戦後長らく我が国の施政権の外に置かれまして、戦後七十年以上を経た今もなお、大きな負担を負っていただいておるという事情がございます。

 この事実を防衛省としても重く受けとめております。沖縄の基地負担の現状は到底是認できるものではないというふうに私どもも考えております。

 その一方、基地負担の軽減のため、できることは全て行う、目に見える形で実現するという強い気持ちで取り組み、一つ一つ着実に結果を出していきます。

 これまでも、例えば、空中給油機十五機全機の岩国飛行場への移駐、北部訓練場の過半、約四千ヘクタールの返還と引渡し、オスプレイの県外への訓練移転など、基地負担軽減を着実に進めているところでございます。

 また、平成二十五年四月に発表いたしました沖縄統合計画によりまして、嘉手納以南の米軍施設区域の約七割、約一千四十八ヘクタールを超える土地の返還を進めておりまして、これまでに、西普天間住宅地区の返還等のほか、普天間飛行場及び牧港補給地区の一部の前倒し返還を実現しているところでございます。

 さらに、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の固定化というものは、これは絶対に避けなければなりませんので、政府としては、早期に辺野古への移設と普天間飛行場の返還を実現したいと考えております。

 防衛省といたしまして、今後とも、一つ一つ着実に結果を出すことによって沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります。

篠原(豪)委員 それはもうずっと聞いているんです。私が聞いている質問はそうじゃないんですよ。

 今は歴史的な話をしたんです。もしもし、在日米軍が占領時代と同様に、現在も同様ですので、だから、今のさまざまな、米軍が占領時代と同じような特権を維持している現状がおかしいんじゃないですかと。変えるのが根本であるから、沖縄ほど、日本の法律を顧みず自由気ままにやっているというところの振る舞いが、これはさすがにさせてはいけないということで、したがって、地位協定をNATO並みに改定することと同時に、沖縄の世論をもっと政治に反映させるように努めることが沖縄の基地の解決する近道であるんじゃないかというふうに思っているんです。

 こういった議論をしていかなきゃいけないし、唯一の解決策としての今の辺野古の話を聞きましたけれども、旧安保条約の第四条には、この条約は、国際連合又はその他における日本の地域における国際の平和と安全維持のための十分な、国際連合の措置又はこれにかわる特別的若しくは集団的の安全措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めたとき、「いつでも効力を失うものとする。」と定めているんです。

 これは、物、基地です。人、軍隊の交換を特徴とする日米安全保障条約は暫定的なものであり、日本が再軍備をし、日本区域における国際の平和と安全の維持に継続的に効果的な効果をなし得るようになれば、人と人の交換を意味する相互防衛条約に変えることを想定した規定であるとされています。

 しかし、新安保条約で、物、これは基地、人、軍隊の交換が解消されることはなく、むしろ、米軍の日本の防衛義務を明確にすることによって定着していったということがあります。

 これがようやく解消されたのは、一九九六年四月の日米安保共同宣言で、日本の安保条約が機能する範囲は、これまでの極東からアジアの太平洋地域に拡大した。新防衛大綱にも、我が国周辺において我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対処するということが明記されました。

 その最中に、米軍事件に対する沖縄県民の怒りを抑えるために普天間の基地返還が発表されて、そのときに言及されたのが、危機が起きたときの米軍による施設の緊急使用で、それがやがて辺野古基地の建設問題に発展したという歴史なんです。

 しかし、この新基地建設は、あくまで日米の新しい安全保障体制を踏まえた戦略に基づいて必要とされるものであって、その戦略的な意味合いからすれば、これは普天間基地返還とは別物であって、唯一の解決策ではないわけです。

 ただ、日本とアメリカの利害というか、そういうのをリンクさせなければ日本側が費用を負担する根拠が曖昧になるというそういうことがあったのだというふうに思います。

 さらに、このことを踏まえた上でやはりちゃんと考えたときに、二〇〇一年九・一一も踏まえた米軍再編、あるいは、オバマ政権時代に始まったリロケーション、中東から南シナ海とか東南アジア、中国ですけれども、こういったところにこれをしているということを考えれば、もっとさまざまな解決策がアメリカからも聞けるんではないかと考えるんですけれども、このことについて、これは大臣、お答えできますか。難しいですか。(宮腰国務大臣「ちょっと」と呼ぶ)難しい。

 では続けますけれども、沖縄には、駐留する米軍海兵隊の中核を担う第三十一海兵隊遠征部隊というのがあって、米軍再編後も地上戦闘部隊として唯一、沖縄に残ることが決まっています。したがって、普天間飛行場の移転先として名護市辺野古に基地が建設されれば、この部隊を構成する航空部隊が使用することになるんです。

 この部隊の行動範囲は東アジアから中東に及んで、沖縄を長期にあけることが多いんです。また、主に中国の海洋進出を想定したエアシーバトルでは、主力となる海軍、空軍の支援に回るものと思われますので、沖縄の海兵隊基地は、まさに施設の緊急使用ができれば十分なんです。

 いつになるかわからない辺野古の基地の完成まで普天間の返還を延ばすのは、沖縄の負担軽減を言いながらも何もやらないに等しいということになります。また、政府が唯一の解決策だと言うのは専ら国内事情であって、特に持っていきようがないと述べたにすぎません。

 しかし、施設の緊急使用であるならば、さまざまなありようを検討する可能性があって、六月には県が有識者から聞く津梁会議というのがありますので、辺野古の移設に頼らない普天間の方策について議論を始めるとされるので、そのところに期待をしたいと思いますので、こういった議論を沖縄の中でもしっかりとしていただきたいということ、あと、済みません、外務大臣にはいろいろと御質問が何問かあったんですが、先ほど出たということと、それと、では、ちょっとせっかく来ていただいたので、日米地位協定、今のお話を聞いていただいて、やはりこれは変えるべきだというふうに思っているんですが、外務大臣、どういうふうに思っていらっしゃるかということ、ここだけいただけますでしょうか。

河野国務大臣 日米地位協定に係るさまざまな問題に関しては、政府として、最も効果的かつ適切な方法で対処していきたいと考えております。

篠原(豪)委員 質疑時間が来ましたので北方領土の問題についてはほかの方にお譲りしますし、先ほど御質問もありましたのでこれで終わらせていただきますけれども、沖縄の問題は、今言った根本的な問題を政府が解決していくというのが根本的な話です。無理筋でやっていくんじゃなくて、しっかりと沖縄の民意を捉えてやっていただきますようお願いを申し上げまして、平成最後の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

末松委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 よろしくお願いいたします。石川香織でございます。

 初めに、通告はしておりませんけれども、きのうの夕刊、けさの朝刊に出ておりましたことについて、初め、河野大臣にお伺いをしたいと思います。

 きのうの閣議の中で二〇一九年度版の外交青書を報告されたと思いますが、その中で、北方四島は日本に帰属という記述が削除されたということでありました。この部分は一八年版では強調されていた部分でありましたけれども、このことについてコメントしていただきたいと思います。

河野国務大臣 政府の法的な立場に何ら変わりはございません。

 外交青書に関しましては、その当該年度の外交について総合的に勘案した記述にしているところでございます。

石川(香)委員 その年の外交について総合的に勘案されているということであります。

 これまでの国会答弁の中でも、この帰属の問題でありましたり、ロシアによる不法占拠といった言葉を国会答弁の中でも避けてきたというような流れがありますけれども、これは日本にとって方針転換ではないかと思いますので、全てつまびらかにする必要はないかとは思いますけれども、やはりここは国民にしっかり説明をする義務があるのではないかと思っております。

 北方領土の対応に関しまして、同様に、問題を解決して平和条約を締結するという言い回しにとどめたということでありましたけれども、軟化したという印象を持つわけでありますが、とりあえず、これまでの流れをおさらいしつつ、引き続きお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、平成三十年十一月にシンガポールで日ロ首脳会談が行われました。この中で、日ソ共同宣言を基礎として平和条約締結交渉を加速させていこうという合意がなされたと思います。

 そして、この年の十二月にはアルゼンチンのブエノスアイレスで日ロ首脳会談が行われまして、シンガポール会談での合意を踏まえて、日ロ双方が、河野外務大臣とラブロフ外務大臣を交渉責任者といたしまして、そのもとで森外務審議官そしてモルグロフ外務次官を交渉担当者とするということで一致をしたということでありました。

 平成三十一年に入ってから、一月に外相会談、首脳会談、そして二月にもう一度外相会談を行われたということで、複数回にわたって次官級協議も開催をされているということであります。

 そして、ことしの六月、G20サミットを予定しておりますけれども、ここで日ロ首脳会談を開催するという見込みであるということはこれまでも報道で多く出ておりますが、当初、東京と大阪で首脳会談を行う方向であったということでありますが、ここに来て、東京での会談を見送るという報道も多くなされております。

 昨年九月には、安倍総理みずから、東京で閉会式を行うことを約束したというふうに明言をしておりましたが、まず、この報道について事実関係をお答えいただきたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 本年六月に行われます大阪G20サミットの際の日ロ首脳会談及び日ロ交流年の閉会式の実施場所等の詳細につきましては、現在、外交ルートを通じて調整中でございます。

石川(香)委員 推測いたしますと、日程上の制約がある中で、大阪と東京の移動というのも厳しいことがあったのかもしれません。ただ、逆に、このプーチン大統領との会談、東京に場所を移して十分な時間を確保して、そこでこの平和条約締結の具体的な進展を打ち出すという狙いも当初はあったのではないかなというふうにも推測します。

 この六月の大筋合意自体もやはり厳しいのではという報道も多く出ておりますけれども、大阪のみで行うことになりそうだということでありましたら、やはり、この平和条約締結交渉で具体的な成果づくりというものが難航しているのではないか、そのことが影響しているのではないかなというふうなことも見られかねないと思っております。

 その中で、この日ロ交渉の軸足を北方四島での共同経済活動の進展に戻して、そういう路線に立ち返るというようなことになろうかと思います。

 昨年の十一月以降、実質的な議論は行われておりませんでしたけれども、二十二日に日ロの次官級協議が開かれました。この五カ月ぶりの協議の中で経済活動の具体化について深まったのかということをお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 二十二日に行われました次官級の協議の中で、共同経済活動に関する法的側面について課長級の作業部会を立ち上げることで一致いたしました。また、人の移動の枠組みについては、双方の法的立場を害さない枠組みに合意するための方法について踏み込んだ議論を行い、できる限り早期の合意に向けて、局長級作業部会の議論を一層精力的に行うことで一致いたしました。

石川(香)委員 課長級の作業部会ということでありましたけれども、この具体的な中身について、海産物の共同増養殖でありましたり温室野菜の栽培、それから、島の特性に応じたツアー、風力発電の導入、ごみの対策などありましたけれども、今の説明でありますと、なかなか、このロードマップの進みぐあいも含めて見えてこないのかなというふうに思いますが、先ほどの話の中にも少しありました、経済関係者らがこの四島を経済活動のために訪れるために必要な新しいビザ、渡航枠組みについても進展があったかということもお伺いをしたいと思います。

 これまで、この新しい渡航の枠組みというのはロシア側が強く要望してきたと思いますが、このことについてはいかがでしょうか。

河野国務大臣 四月二十二日の会合の中で、共同経済活動のための人の移動の枠組みについて、双方の法的立場を害さない枠組みに合意するための方法について踏み込んだ議論を行い、双方が創造的かつ建設的に作業を進めることを確認し、できる限り早期の合意に向けて、局長級作業部会での議論を一層精力的に行うことで一致したところでございます。

石川(香)委員 なかなか具体的なところまで想像できないわけでありますけれども、ただ、踏み込んで交渉されているということでありますが、このビザのことに関しましては、四島とサハリン州を同列に扱うことで、これまでの立場というのも含めてどうなのかということもありますが、こういったこともしっかりクリアにしていかないとこの共同経済活動というものは進んでいかないものだと思っております。

 そして、この中で、事業開始には、やはり双方の法的立場を害さない特別な制度という創設が必要になりますが、この特別な制度についての協議についてもお伺いをしたいと思います。

宇山政府参考人 先ほどの大臣からの答弁とも一部重複いたしますけれども、四月二十二日に森外務審議官とモルグロフ・ロシア外務次官との間で行われました協議では、共同経済活動のプロジェクトを実現するための法的課題についても議論を行いまして、共同経済活動に関する法的側面についての課長級作業部会を立ち上げることで一致したところでございます。

 日ロ双方の法的立場を害さない形でのプロジェクトの実施に向けて、引き続き、鋭意取り組んでまいる所存でございます。

石川(香)委員 この特別な制度ということでありますが、試験的な事業を行う場合であっても、例えば建設資材を島に運ぶという制度でありましたり、収益の分配、それから、納税をどうするかという課題も具体的にはあるかと思いますけれども、このあたりの解決もしっかりしていかなくてはいけないのではないかと思います。決して、この協議が難航することで領土問題が事実上棚上げされるということがないようにしなくてはいけないというふうに思います。

 この日ロ交渉でありますが、先ほど申し上げましたように、本格的な平和条約締結の交渉に先立って、共同経済活動の実現を目指す路線へ回帰しているという印象を持つわけでありますが、一方で、平成三十一年度の外務省の所管予算、北方領土についての概要を見ますと、日ロ共同経済活動推進費というものが、三十年度から三十一年度を比べますと、三二・九%減額をされております。この理由についてお答えをいただきたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十一年度予算のうち、日ロ共同経済活動推進関係経費の額は約六千七百万円でございます。

 この金額は、平成二十九年度の共同経済活動の事業の実績等を踏まえまして、北方四島における現地調査のための船の借り上げ費用とか関係する外務省職員の旅費など、諸経費を精査した上で算出した結果、そうなったものでございます。

石川(香)委員 船の借り上げとか旅費ということがありましたが、減ったからいわばやる気がないというふうに見られたら困ると思いますけれども、十分な額が前年度あったということで、今年度しっかり十分にあるということがあればこれはいいんですけれども、共同経済活動そのものがしっかり具体化して動き出さなくてはいけませんので、この予算の中でしっかりと充実した経済活動をしていくということについて、引き続きお願いをしてまいりたいと思います。

 続いての質問でありますが、北方基金についてお伺いをしたいと思います。

 北特法に基づきまして設置されております北方基金につきまして、近年、低金利等の影響で運用益が大幅に減少しているということもありまして、昨年の七月、北方基金を取り崩すことを可能とする法改正が行われまして、本年の四月一日に施行をされております。

 今年度が初めてこの北方基金を取り崩すということになりますが、どのくらい北方基金を取り崩したのか、また、今年度はどのようなものに使うのかということについてお伺いをしたいと思います。

松林政府参考人 お答え申し上げます。

 今年度の北方領土隣接地域振興等基金につきましては、補助金額四億二千三百六万円のうち、北方領土隣接地域振興等基金を三億五千七百七十万四千円取り崩す予定としておりまして、北海道より事業計画の協議申請がなされ、内閣府におきまして、北海道の自主性に配慮しつつ、事業の必要性や緊急性などを確認の上、承認したところでございます。

 同基金の補助対象といたしまして、振興事業、啓発事業、援護事業がございまして、具体的には、ウニ、ホッキ、ホタテなどの種苗放流、ホッキ、アサリの漁場造成、歴史と自然の資料館整備などの施設整備事業、北方領土問題に関する大会やイベントなどの国民世論啓発事業、返還要求運動推進や後継者育成などの元居住者への援護等事業がございます。

 こういった事業に活用するとの説明を受けてございます。

 以上です。

石川(香)委員 ウニやホッキやアサリなどの漁業資源をふやすためのいろいろな取組でありましたりイベントでありましたり、幅広いものに使うというお話でありました。

 この北特法の中で、共同経済活動の円滑な実施に向けまして、根室管内一市四町の環境整備に努めるという条文も盛り込まれていると思いますので、この地域の活性化のためにしっかり活用できるように使っていただきたいと思っております。

 続きましては、日本政府と旅行業界が企画をしているツアーについてお伺いをしたいと思います。

 官民共同で企画をしておりますロシア・サハリン島へのツアーというものがことしの夏に実施をされるということであります。合わせて旅行者四百人規模になりそうだということでありまして、今、旅行会社数社、大体七社というふうにお伺いをしておりますが、六月から九月の間に実施をして、新千歳や成田から直行便でユジノサハリンスクに向かうということであります。

 日程といたしましては、三泊から四泊の日程で、日本の樺太時代ゆかりの名所でありましたり、あとは、宮沢賢治の著書であります「銀河鉄道の夜」の着想の舞台とされます旧栄浜駅の跡を見学をいたしましたり、あとは、地元の名産のカニやホタテなどを味わうというような内容になっているということであります。

 このツアーの反響、それから申込み状況ということについてお伺いをしたいと思います。

金井政府参考人 お答えいたします。

 観光庁としましては、ロシアとの相互交流の拡大を促進するため、観光庁、日本旅行業協会、日本政府観光局などをメンバーとするワーキンググループを設置し、これまで検討を進めてまいりましたけれども、本ワーキンググループでの検討を踏まえまして、この夏、サハリンへの官民共同企画ツアーを実施することとしたところでございます。

 本ツアーに関しましては、一部の旅行会社において販売が開始されておりますが、既に百名を超える申込みがありまして、好調な販売状況であると聞いております。

 今後、さらに他の旅行会社においてもツアーの造成、販売が検討されておりまして、日本旅行業協会によりますと、四百名程度の取扱い人数を見込んでいるとのことでございます。

石川(香)委員 百名を超える申込みがあったということであります。代金は一人二十万円くらいだというふうに伺っております。シニア層を中心に関心が高くて、非常に反響があるということで、ほっといたしました。

 こういう楽しい企画、取組からもやはりこの北方領土の問題を身近に感じてもらうということも非常に大切だと思いますので、この企画、まず大成功させて、次につなげていただきたいというふうに思います。

 次も旅行絡みのお話であります。修学旅行につきましても大変力を入れていらっしゃると思います。この北方領土に隣接する根室管内、一市四町村へ誘致するという取組を政府はしていると思います。

 この「北方領土を目で見る運動」修学旅行等誘致事業における訪問の生徒数というもののデータがありますけれども、そのデータを見ますと、毎年その数にかなり波がありまして、平成二十四年は二千人を超す生徒が北方領土の隣接市に修学旅行として訪れていると思いますけれども、二十六年からは年々下がる一方であるというデータがあると思います。

 二十八年は六百人ほどに減ってしまっているというデータがありますが、この二十九年度以降のデータについてもお伺いをしながら、どういった傾向があるのか、お伺いをしたいと思います。

松林政府参考人 お答え申し上げます。

 隣接地域への修学旅行等誘致事業の近年における実績でございますけれども、二十九年度が九団体で五百五十七名、三十年度が十団体で八百八十五名となってございます。

石川(香)委員 じゃ、三十年は八百八十人ということで増加傾向に戻ったのかなというふうに感じておりますが、こういった取組は非常にいい取組だと思いますので、まず、こういった取組があるということを周知それから告知していくという努力が必要だと思いますので、引き続き、こういう取組があるということを告知、周知も含めて力を入れていっていただきたいというふうに思います。

 修学旅行に子供たちが行くということは、事前に学校の先生が下見をするということにもなりますが、北方領土隣接市に修学旅行として行く場合、航空運賃や宿泊費の助成も行っていると思いますが、今年度、教員向けの下見ツアーを前年度よりも二度多い六回実施をするということだということであります。

 この下見ツアーの出発地でありますけれども、これまでは羽田、伊丹ということでありましたが、ことしからは中部国際空港、福岡空港も加えたということで、より幅広い地域からこの先生たちに下見に来てもらうという取組があると思います。

 内閣府の三十一年度予算でも、この修学旅行誘致促進対策経費として千四百万円、前年度から四百万円増大をしまして計上をしたということで、平成三十年度から事業を開始をいたしました北方領土隣接地域への修学旅行誘致促進のための下見ツアーを平成三十一年度も実施をしているということでありました。

 この学校の先生の下見ツアーでありますが、各回大体十五人ということでありますけれども、人がしっかり集まっているのかということと、それから、下見をすることで修学旅行先に根室管内を選んでもらっているのか、成果が上がっているのかということも含めてお答えをいただきたいと思います。

宮腰国務大臣 下見ツアーにつきましては、昨年度から始めたわけでありますけれども、昨年度は、今ほど事務方から御答弁申し上げたように、前年度から三百二十八人増加して八百八十五人となっております。

 下見ツアーにつきましては、隣接地域を修学旅行先の候補として具体的に検討してもらうことを目的としておりまして、修学旅行の計画期間を考えると、すぐに結果があらわれることを期待するのは難しいということであると思うんですけれども、昨年度下見ツアーに参加した学校の中には、現在、今年度の隣接地域への修学旅行の実施に向けて詳細を検討している学校もあるものと伺っております。

 本年度は促進策を一層強化いたしまして、修学旅行経費の補助については拡充をする、下見ツアーにつきましても、回数、定員の合計、出発地をふやして実施するということにいたしております。

 今年度の下見ツアーの募集、これから行うこととなりますが、昨年度は各回十五名を定員とし、四回実施したところ、合計で六十三名の応募をいただいたところであります。

 都道府県教育委員会を通じた周知や、内閣府ホームページでの広報、教育関係者向けの修学旅行専門誌への掲載等を通じ、今年度も多くの先生方に応募いただけるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

 具体的な数値目標の設定を行っているものではありませんけれども、引き続き継続的に誘致促進策を実施していくことで、修学旅行者数の増加に結びつけ、可能な限り多くの学校に北方領土隣接地域を訪問していただきたいと考えております。

 魅力のあるところがいっぱいあります。北方領土を間近に見る、私も返還運動を始めさせていただいたのは、納沙布に立って、やはり島を間近に見ることによってそこからスタートをさせていただいたわけでありまして、若い高校生、中学生の皆さん方に島を間近に一度ぜひ見てもらいたいというふうに考えております。

石川(香)委員 大臣、ありがとうございます。熱心な告知もされているということで、力を入れているということがわかりました。

 後でまたお伺いをしたいと思うんですが、なかなか、若い人も北方領土の問題について知っているという人も少なくなってしまっているという現状もありますので、まずは行ってもらう、知ってもらうというのは、非常に大事な取組だと私も感じています。

 ただ、大臣もおっしゃったように、難しいのは、こういった誘致支援策ってすぐに結果が出るわけではなくて、直ちに先生が選んでくれるということではないかもしれませんけれども、とはいえ、着実に実績を積んでいかなくてはならないと思いますし、引き続き力を入れて取り組むべき政策だと思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 これは年々心配をされていることでありますが、元島民の皆様方が高齢化が進んでいるということについてもお伺いをしたいと思います。

 千島歯舞諸島居住者連盟によりますと、北方領土の元島民の人数が、平成三十一年三月末現在、五千九百十三人となりまして、前の年から百二十八人減りました。これは初めて六千人を下回ったということでありました。これは、一九四五年八月の終戦時に北方領土に住んでいた方、一万七千二百九十一人いらっしゃったそうなんですけれども、これの三四%まで減少してしまったという計算になります。元島民の平均年齢も前の年よりも〇・九歳上がりまして、八十四・一歳となりました。

 こうした状況の中、やはり今後は、この四島交流事業も含めて、参加者の身体的負担を軽減するということを一層考えなくてはいけないと思います。

 北方四島のビザなし渡航で使用します「えとぴりか」の改修も必要だと思いますが、さまざまな改修ポイントがあるかと思いますけれども、この改修状況についてもお伺いをしたいと思いますし、あと、三十一年度予算に盛り込まれた具体的な内容というものについてもお伺いしたいと思います。

宮腰国務大臣 高齢化の進む元島民の方々が参加者の中心となる墓参や自由訪問におきましては、悪天候の影響等により上陸を断念せざるを得ないことも少なくなく、これまで、島を目前に上陸を断念することとなった元島民の方々からは、望郷の切なる思いとともに、上陸率向上のための改善の御要望をいただいておりました。

 このため、内閣府におきましては、安定的かつ円滑に事業を実施するため、平成三十一年度予算に、船舶「えとぴりか」の上陸用船舶「えとぴりか2」のつり下げ方式を従来の一点づりから二点づりに変更するための改修経費、四百二十四万四千円を計上いたしております。

 五月の本年度の事業開始に向け、現在、「えとぴりか」の改修を行っているところでありますけれども、本改修により、上陸用船舶を海上におろすことができない事態を減らすことができまして、上陸率の向上、円滑な事業実施が図られるものというふうに考えております。

石川(香)委員 上陸率も半分に達するかどうかという状況が現実としてあるというふうに聞いております。天候でありましたり波が高いということもあると思いますけれども、高齢化してきた元島民の方にとっては、やはり安定をして上陸をできるという環境づくりというのが大事でありますので、この改修も含めて引き続き取り組んでいただきたいと思っております。

 時間もなくなりましたので、順番を変えまして、航空機特別墓参の実施についてお伺いをしたいと思います。

 やはりこれも身体的な負担軽減ということで大変重要なことでありますけれども、この航空機特別墓参は毎年定例化することができないのかという点と、また、船で行く場合でありますが、出入域ポイントの増設というものもぜひ検討するべきだと思いますけれども、このことについてお答えをいただきたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、委員御指摘のとおり、元島民の方々が高齢になられていることを考慮いたしまして、人道的な観点から、現行の枠組みによる訪問手続の改善を図ってきております。

 一昨年及び昨年には航空機を使用して国後島と択捉島への墓参が行われましたし、船舶を使った北方墓参の際に、臨時の追加的な出入域地点の設置も実現できました。

 これらの措置によりまして四島への移動に要する時間が大幅に短縮されまして、元島民の方々の身体的負担を軽減することができたと考えております。

 航空機による墓参につきましては、委員から御質問のありました毎年の定例化ということにはなっておりませんけれども、本年一月の日ロ首脳会談におきましてこうした取組の重要性が確認されまして、本年の航空機墓参を夏にも実施することで合意されております。

 さらに、そのほかの元島民の方々のための人道的措置について、さまざまなレベルでロシア側に働きかけを行ってきているところでございます。

 政府といたしましては、今後とも、元島民の皆様の思いに寄り添いながら、最大限の努力を続けていく考えでございます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 船に関しましては臨時の追加ポイントというものもつくったということでありましたけれども、今、古釜布を経由するということになりますとどうしても遠回りをしてしまうところもあるかと思いますので、ぜひこの出入域ポイントを増設するということに関しては、私も強く要望させていただきたいと思います。

 次の質問でありますけれども、この北方領土問題が長期化をいたしまして、運動の中心を担ってきた島民の皆さんがどんどん高齢化をしていくという問題がありました。一方で、若い人の関心が非常に薄れているというデータもあります。

 内閣府が北方領土問題に関する世論調査というアンケートをとったところ、十八歳から二十九歳までの人たちの四二%が、「北方領土問題について聞いたことはあるが現状まで知らない」と回答いたしました。

 これから北方領土問題をどう若い人たちにつなげていくかということも含めて、具体的にどういう対策をとるかということをお伺いして、質問を終わりたいと思います。

松林政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘いただきました高齢化の問題、そういった事情も踏まえまして、内閣府といたしましては、返還運動関係者が一堂に会して北方領土問題解決を求める大会とかパネル展など、こういった従来型の広報啓発活動に加えまして、三つ考えてございます。

 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、修学旅行の誘致促進、SNSを活用した情報発信の強化、北方領土教育の充実、こういったことを重点的に進めまして、一層の国民世論の喚起に取り組んでまいります。

石川(香)委員 ありがとうございます。終わりたいと思います。

末松委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からもいろいろと質問させていただきたいのですが、外交は結局のところ結果責任の部分だと思います。今、いろいろな国との交渉を、常に最前線で外務大臣として交渉されておりますし、国会でも、以前、外務委員会に所属しておりまして、大臣ともいろいろやりとりさせていただいておりますけれども、言えないことはもちろん言えないという範囲で、言える範囲での質疑をしていくというのは当然なんですけれども、それが一番国益になるというのが、当然我々も、議員としても見据えながらやらなきゃいけません。

 同時に、結果が出たもの、出つつあるものに対しては、しっかりこれは確認していかなきゃいけませんし、そうでなければ、我々立法府にいる者の、外交の委員会等、この沖北もそうですけれども、かかわる者としては意味がなくなってしまいますので、しっかりここは確認していきたいですし、何より国益を見据えて、次につなげていっていただきたいと思います。

 今回、北方領土もいろいろお話を聞きたいですが、交渉中ですし、何より、外交青書の話等々いろいろ聞きたいのはあるんですが、きょうはぐっと抑えて、いろいろな交渉というのは、やはりそこでの反省を踏まえて次につなげないと、今回の北方領土もつながらないと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいんですが、気になっているのは、韓国との関係での、くだんのWTOの、訴えて、裁決が出ております。この観点で少し、結果が出たところもありますので、聞いていきたいんです、大臣。

 まず最初にお伺いしたいんですが、記者会見でも少し述べられていますけれども、今回、ある意味、日本側にとっては敗訴だと言う人もいますが、政府側はこれを否定していますが、しかし、日本側に不利に、有利になったことはないと思いますし、極めて意外に、韓国側ですら、敗訴になったとしてもその期間でしっかりやっていきたいと向こうの水産部の長官が述べているぐらいで、日本政府にとっても大臣にとっても非常に驚きな日本側の不利な状況に陥っていると思うんですが、率直に、今回のこの韓国による日本の水産物等の輸入規制、WTOに訴えて、しかし、上級審、二審の方で退けられておりますけれども、これについて見解を、大臣として今どうお考えなのか、お伺いできますか。

河野国務大臣 まず、今回、パネル第一審が事実認定をした、日本が、適切な基準値の設定、モニタリング及び適切な出荷制限管理により日本産食品の安全性を確保している、日本産食品の放射性セシウムの濃度は、こうした取組により、国際的な基準を踏まえて設定された日本及び韓国の基準値、一キログラム当たり百ベクレルを下回るという事実認定がしっかり残ったということは、日本産の食品の安全性がWTOでもしっかりと確認をされたということは喜ばしいと思っております。

 しかし、このWTOの上級委員会が、韓国側の輸入規制措置がWTO協定に違反するとしたパネルの判断を、その分析が不十分であるとして取り消す判断をし、なおかつ、上級委員会は韓国の措置がWTO協定に整合的かどうかは明示的に判断しなかったという部分については、大変残念に思っているところでございます。

 特に、このWTOの紛争解決制度は、貿易上の紛争を解決するための制度であるにもかかわらず、今回の上級委員会報告書は、主要争点となった措置自体について協定違反かどうかの判断を行わなかった。つまり、全く紛争解決に資することがなかったわけでございまして、そもそもこのWTOが、自由貿易をつかさどるための国際機関であって、WTOの設立協定、マラケシュ協定前文に記載されております、貿易障害を実質的に軽減し及び国際貿易関係における差別待遇を廃止する、自由貿易体制を維持発展させる、こうしたWTOの理念に全くなっていないということは極めて残念と言わざるを得ません。

 WTOのこうした部分の改革について、二十六日にも日本側として主張をしっかりしてまいりたいというふうに思っております。

丸山委員 今回いろいろな報道もされておりますけれども、なかなか内容も難しくて、記事も、これはちょっと観点が違うんじゃないかなと思うような記事もいっぱいあるんですが、しかし、しっかりと整理をして、その中で政府としての次の作戦の立て直しが要ると思うんですけれども、今回は、判決、今おっしゃったように、基本的に日本の水産品の安全性について、私は読んでいると、WTO自体はここは判断をしていなくて、むしろ一審のまま残っているわけですよ。

 ただ、一方で、日本側の作戦としても、基本的には、二条三項の不当な差別、単に差別かどうか、そして五条六項の輸入禁止が過剰規制かどうかというところを争いましたが、この科学的なところは、あえてだと思いますけれども、避けられての、今回、向こうが、韓国側が上告してきたときに対する対応で、結果として、WTO自体はそんなに科学的な判断ができるようなところだと思いませんので、ここは作戦として避けられたんだろうというふうに思うんです。

 一方で、訴訟の作戦というよりは、各省の対応に対して、特にロビーイングですよね、韓国側の報道を見ていますと、韓国側はかなりのロビーイングをやったと彼らも言っている。もちろん、勝ったから言うというのもあるのかもしれませんが。一方で、我々の、日本国内側からしてみれば、本当にこれはきちんとできていたのかをきっちり確認いただきたいですし、それと、よく言われる、各省ばらばらで、今回、この通商関係というのは本当にいろいろな、特に農水関係になると、農水省も出てくるわ、経産省も出てくるわ、何より外務省もいるという、いつも縦割りだと言われて間に落ちてしまうと言われがちな分野ですけれども、これがしっかり対応できていたかどうかは非常に大事なところです。

 韓国なんかは、いろいろ韓国の記事も確認していくと、今回、一審で負けたのに応じて非常に向こうも態勢を整えて、通商分野で国際的に活躍するような研究者、実務者、アメリカのこうした通商関係のロースクールを出たような民間の方をスカウトしてまで課長に据えて、かなり全省態勢で当たったみたいな書きぶりまで記事で見つけましたけれども、果たしてこれが、日本側としてこれにまさるような対応をしていたかというのは、きっちりこれは今後も踏まえて対応いただきたいし、まさかやっていなかったなんて言えないとは思いますけれども、やっていただきたいんです。

 ただ、そうした声があるのは事実で、きっちりロビーイングできていたのかどうか、各省の間に落ちていなかったか、横断的にできていたかどうか、万全な態勢だったかどうか、これについては外務大臣としてどのようにお答えになりますか。

河野国務大臣 まず、ロビーイングについて申し上げますと、このWTOの上級委員会、紛争の当事者、関係者が上級委員に接触することは禁じられておりますので、そもそも、そういう意味でのロビーイングというのをもしやったとすれば審理は無効になるわけでございますので、このロビーイングに関して言えば、それは委員に対してできない。これは、審査を担当していない上級委員に対してもロビーイングをすることは認められていないということでございます。

 政府として、今回、外務省、水産庁、資源エネルギー庁など関係省庁が一体となり、また、世界有数の国際弁護士事務所に支援を依頼をし、充実した態勢をとってきたというふうに思っておりますが、今回こういう結果になったわけでございますので、我々としては、この態勢あるいはこの主張の仕方、そうしたものがどうであったか、きちんとまず外務省内でレビューをしていきたい。

 それによって、その結果を見ながら、今後のさまざまなこうした国際司法の場、どのように対応していくかということを見きわめる意味でも、まず今回の態勢、主張、そうしたことについて、まず外務省の中でしっかりと見きわめていきたいというふうに思っているところでございます。

丸山委員 WTOの上級委員も、もう何年前ですかね、日本の大島さんでしたっけ、いらっしゃったと思うんですけれども、今いなくて、その枠は韓国が持っているわけですよ。そういった中でも、非常にしたたかな外交が透けて見えるなというふうに思うんですけれども、大臣おっしゃったように、もう過去には戻れませんが、まだ先を見据えて国益のためにやっていただかなきゃいけないことはたくさんありますので、しっかり検証していただきたいんです。

 日本の記事を見ていると、いろいろそごがあるというか、間違いがあるような記事もいっぱいあるなと正直思っていまして、特に、きのうかおとついあたりに朝日新聞が出している記事がかなり恣意的だなと思ったんですけれども、日本産食品は科学的に安全だと政府は言ってきましたが、直接書いていないじゃないか、記載がない、同時に、今大臣がおっしゃった一審の方にこの記載がないじゃないかという記事、そして同じ記事ですけれども、政府説明とWTO判断が乖離しているんじゃないか、どういうことだというような記事なわけですよ。

 朝日新聞の記事をそのままうのみにする人は大分いないと思いますけれども、例のサンゴの捏造の話もあり、そして慰安婦の話もありましたので、国民の目も非常にチェックが厳しくなっていると思いますが、しかし、こうした記事が出ていることに関してはしっかり、違うことは違う、政府と見解が違うなら違うと言っていただかなきゃなりませんし、何より、WTOの一審のものを見るとかなり難しくて、確かにいろいろな誤解も生みがちだなというふうに思うんですけれども、このあたりも含めて、こうした記事が出ていること、政府としてどのように捉えていて、政府としてはどういうふうに考えるのか。お伺いできますか。

河野国務大臣 こうしたパネルの報告書というのは英語で書かれていたり、かなり大部であったり、また、科学的な記述であったり独特な記述であったりということで、なかなか、読んですっと頭に入らないということはあるのかもしれません。ですから、政府としては、なるべくわかりやすく国民の皆様に説明をできるように努めてきたつもりでございます。

 例えば、今回の報告書は、先ほど申し上げましたように、日本産の食品の安全性は確保されている。日本産食品中の放射性セシウムの濃度は国際的な基準を踏まえて設定された日本及び韓国の基準値を下回ることを認めている。具体的に申し上げますと、パネルの報告書のパラ7.309においては、「パネルが選任した専門家は、日本が提供したデータが、二〇一五年までに日本産食品中の放射性セシウムの濃度が一般的には一キログラム当たり百ベクレルを下回る水準に戻ったことを合理的に支持することを、確認した。」という記述があるわけでございます。

 上級委員会はこうした事実認定の取消しをしておりませんので、二十六日に、今回の上級委員会の報告書と同時に、取り消されていない部分のパネルの報告書がWTOで正式に採択されるということになるわけでございます。

 ですから、むしろ我々としては、WTOも日本産の食品の安全性をきちんと確認をしているということを輸入規制をしている国々に対して説明をし、主張してまいりたいというふうに思っておりますが、一部のこうしたメディアが、これまでの被災地の方々の努力を無にしかねない、新たな風評被害を呼び起こしかねないこのような不正確な記事を出していることについて、政府としてはしっかりと対応をしてまいりたいというふうに思っております。

丸山委員 今大臣おっしゃった日本のほぼ全ての水産物の放射能汚染は、韓国の設定した、今おっしゃった百ベクレル・パー・キログラムの基準には適合するとは認定をされております。

 ただ、一方で、安全性自体云々というのは上級委では触れられていないというのが事実なところなので、この辺の誤解というか、わかりにくさも含めて誤解が生まれやすいのかなと思いますし、大臣としてしっかり、こうした部分は違うという政府の見解であれば発信をどんどんしていただきたいと思いますし、日本の安全性について否定するものでないことは事実だと思いますので、いかにこの状況を、不利に近づいていると思うんですけれども、覆すかが非常に大事だと思うんです。

 今後、どういう対応を具体的にとられていくか、これは非常に大事な点だと思うんですけれども、このあたりはどうお答えになりますか。

河野国務大臣 今、輸入規制が残っている多くの国々では、むしろ科学的な議論というよりは政治的な議論になってしまっているところが多いような気がしております。

 例えば台湾などは、与野党がところを入れかわったときに、今度は野党側になったところが公民投票を持ちかけてというようなことになってしまったわけでございますので、政府としては、そういうところにさまざまな方面からしっかりと働きかけをしようと思っておりますが、万が一にも科学的な議論になる場合には、きちんと今回のWTOのパネルの報告書も使って、日本産の食品の安全性には疑義がない、そういうことを説明をしていきたいというふうに思っているところでございます。

丸山委員 大臣、どこかのぶら下がりか記者会見かわかりませんが、二国間協議の呼びかけの話をされていましたが、一方で、G20が近づいていますので、そこでの日韓首脳会談は取りやめるかもしれないみたいな記事も出ていて、このあたり、非常に気になるところなんですが、一方で、韓国とはもうほかにもいろいろややこしい案件を、問題を抱えていまして、いわゆる徴用工、戦時中の朝鮮半島出身の労働者の件でも日本企業は差し押さえられていますし、韓国に対する対応措置をどうするかという話も、財金委でも麻生大臣と随分やったんですけれども、そういった意味では、一回冷却化するために、もう交渉をしない方がいいんじゃないかという意見もあるわけです。でも一方で、二国間協議、そしてG20に向けて日韓の首脳会談をどうするかという話題も出ていますが、こうした二国間協議やG20での首脳会談については前向きにやられるんでしょうか。いかがなんですか。

河野国務大臣 G20は、まあG20と言っていますけれども、実際には二十七カ国、それプラスさまざまな国際機関のトップがいらっしゃるわけで、時間的にも非常に制約があり、議長国ということもありますから、総理のバイ会談のスロットというのが幾つとれるかというのはまだ確定をしておりません。そういう意味で、G20でさまざまなバイの会談をどうするかということは何も決まっていないというのが現実でございます。

 日韓関係、委員おっしゃるように、さまざま難しい問題はございますけれども、まずは請求権協定の仕組みにのっとって、我々としてしっかりと韓国に請求権協定の中での協議ということを持ちかけておりますし、当然に誠意を持って韓国側はそれに応ずると思っておりますので、まず、請求権協定の中でしっかりと問題の解決を目指してまいりたいというふうに考えております。

丸山委員 もし、今回のをあえて前向きに捉えるとしたら、上級審の動きが、まあ今回の動きが韓国に対して確定したわけで、これを分析していろいろ日本はまだ水産物をほかの国にも、地域も含めると二十三カ国ですかね、とめられているわけですよ。こうしたところへの提訴も含めて、次の戦略としては具体的には考えていかなきゃいけないと思うんですけれども、こうした他の国に対する対応も前向きに考えていかないと今回のは覆らないわけですから、言われてしまうわけだと思うんですけれども、このあたりについてはどうお考えですか。

河野国務大臣 当然に、WTOの提訴も含め、それぞれの国、地域に対する働きかけの戦略というのを今考えているところでございまして、外務省の中でのレビューが終わり次第、どうするか具体的に動いていきたいというふうに思っております。

丸山委員 ぜひ今回の、まあ私は失敗だと思いますけれども、これを受けてしっかりと他の国についても対応をやっていただきたいというふうに思います。そこで必ずかち取って、それを前に進めるというのが非常に大事なツールだと思いますので。

 もう一つ大事なツールとしては、ちょっと長期化するかもしれませんが、先ほどWTOの不満を大臣もおっしゃいましたけれども、これは日本もお金を出しているわけで、しっかりこれに対しておかしいことはおかしいと言わなきゃいけませんし、特に、二審で終わっちゃって、これを差し戻す制度もありませんし、こうした意味では、これはしっかり訴えていかなきゃいけないと思うんですけれども、こうしたWTO自体の改革について、大臣、どう進められますか。

河野国務大臣 WTOについて、差戻しができないとか、あるいはWTOの中でどうも時代に合っていないよねという部分もございますし、通報義務について余り機能していないのではないかというようなさまざまな論点がありますので、アメリカ、ヨーロッパを始め、このWTO改革について、さまざまな国が今問題意識を持っているところでございます。

 我が国としても、きちんとWTOの改革の必要なところは主張し、問題提起をしていきたいというふうに思っております。

丸山委員 ぜひそうした部分のロビーイングを前に進めていただきたいですし、やはりこの上級審のメンバーにも入れ込んでいくというのは非常に大事な部分だと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 最後にお伺いしたいんですけれども、一方で、やはり今回の件で、東北の皆さん、八県の皆さんは不安を感じていらっしゃると思うんですよ、いつになったらこれはうまくいくんだろうか。こうしたところに対してしっかりとした寄り添った補償とか水産支援というのは非常に大事な点だと思いますし、御要望も多いと思いますけれども、こうした取組についてどう進められるおつもりか。政府にお伺いしたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 水産支援の取組につきまして御質問いただいております。

 韓国への輸出再開を願っておられました八県の水産関係者の思い、あるいはこれまでの御努力を思いますと、今回の結果は大変に残念だというふうに考えております。

 その上で、まずは、今回の結果によりまして、八県産水産物について風評が生じるようなことがないようにしていくというのが必要であるというふうに考えております。

 このため、関係省庁とも連携いたしまして、諸外国に対して、我が国が行っております安全管理の措置により、基準値を超える食品、水産物が流通することはなく、我が国の水産物、食品は安全であるということを改めて伝えるとともに、輸入禁止措置を含めて規制措置を継続しております国、地域に対して、その撤廃、緩和を粘り強く働きかけていきたいというふうに考えております。

 あわせまして、国内外におけます需要の拡大に向けまして、水産関係者によります、例えばEU、アメリカなどへの輸出拡大に向けた取組ですとか、大都市での展示商談会の開催など、その販路、消費拡大に向けた取組などにつきましても後押しをしていきたいというふうに考えているところでございます。

丸山委員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、外交は結果責任です。ぜひ結果を出して国益を追求いただきたいというふうに思います。

 以上です。

末松委員長 次に、山岡達丸君。

山岡委員 質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。山岡達丸と申します。

 両大臣におかれましては、公務が大変御多端の中、こうした議会対応も含めて、敬意を表しながら質疑に入らせていただければと思うんですが、私は、北海道選出でさせていただいている中で、まさに北方領土の問題をめぐって、元島民の方もそうですし、樺太からの引揚げの方も多くいらっしゃる中で、いろいろお話しされている中で、この経過、いろいろさまざま、経過を固唾をのんで見守っているという思いの中で質疑をさせていただくわけでありますが、まず初めに、さきの国会で、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律が成立したということもございました。

 宮腰大臣は、北方の元島民の方に対しての、非常にいろいろ、大臣となられる前からかなり力を入れてくださっておられて、この特別措置に基づいて、基金の取崩しも含めて新たな運用ができる、そうした環境を整えているわけであります。

 大臣に伺いますけれども、所信表明でも、この運用についてしっかりとやっていくんだということでお話しありましたが、この法が成立して施行になり、今、どんな運用と、どういう方針を考えておられ、そして、これが法の趣旨にのっとってきちんと行っておられるのかどうか、そこの部分についてまず大臣にお伺いします。

宮腰国務大臣 今月一日、昨年の通常国会において全会一致で成立をした北特法の改正法が施行を迎えました。

 今回の北特法改正においては、北方領土隣接地域振興等基金の運用益が減少する中、地元の強い要望を受けまして、同基金が北方領土隣接地域の振興等にしっかりと活用されるように、取崩しを可能とするという改正が行われました。

 今年度におきましては、北海道から提出された事業計画に基づきまして約三億五千万円の取崩しが行われ、それにあわせて、剰余金あるいは金利、運用益などを含めて活用ができるということでありまして、漁場造成や後継者育成等の事業に活用される予定となっております。

 引き続き、改正法の趣旨を踏まえ、また、関係機関等とも連携の上、北特法の適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えております。

山岡委員 ある種、新しく本当にこうした運用が始まっている中でぜひ大臣には今後もしっかりと見ていただきたいわけでありますが、少し視点を変えて伺うわけでありますけれども、このいわゆる特別措置法の中には目的が規定されております。第一条、目的、この法律は、北方領土が我が国固有の領土であるのにもかかわらず、北方領土問題が今なお未解決である現在の状況並びにこれに起因して北方地域元居住者及び北方領土近接地域が置かれている特殊な事情に鑑み、これこれのこういう目的を達成するんだと。

 この法文の中の第一条の背景の中に、北方領土は我が国固有の領土であり、今なお未解決、その状況を記載されているわけでありますが、宮腰大臣は北方担当大臣でもあられますし、包括的に領土を、この部分についても担当されておられる。この法文の目的にのっとって、これは全会一致という話もありましたけれども、この認識にのっとって今北方領土問題というのを考えておられるという認識でよろしいでしょうか。確認のために伺います。

宮腰国務大臣 この北特法、北方領土問題等の解決の促進に関する法律は、昭和五十七年に制定をされまして、平成二十一年の法改正において今の目的条項が改正になりまして、この目的規定において、委員から御指摘のありました記載によって、同法に規定する各種措置の背景が示されているものというふうに認識をいたしております。

 私といたしましては、北方対策を担当する大臣として、引き続き、同法の趣旨、目的を踏まえ、国民世論の啓発、墓参やビザなし交流など、交流等事業の推進等にしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

山岡委員 済みません、ちょっと微妙な回答なのでもう一回確認しますが、目的を踏まえてというお話もありましたが、この目的の認識を持って大臣としてお務めをされておられるということでよろしいでしょうか。

宮腰国務大臣 そのとおりであります。

山岡委員 ありがとうございます。

 基本的に私のアプローチの仕方だと思ってぜひ質問にお答えいただければと思うんですが、外務大臣にも同じように伺いたいと思うんです。

 法律として施行されているこの目的の中に、「北方領土が我が国固有の領土であるにもかかわらず、北方領土問題が今なお未解決である」、この目的にのっとって、この目的の認識を持って河野外務大臣も今の御公務に当たっておられるという認識でよろしいでしょうか。伺います。

河野国務大臣 北特法は所管外でございますので、お答えは差し控えます。

山岡委員 そうしたお答えが残念であるんですけれども、政府としては、一員として一体的な認識のもとでやっておられるということで理解したいところなんですが、さきの質問でございましたけれども、いわゆる外交青書、この中で、報道にもございましたが、三十年版、北方四島は日本に帰属するという表現がなくなっているということが報道でなされています。

 この北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとした部分も、領土問題を解決してという報道があって、これは私がどういう趣旨で伺いたいかというと、先ほども申し上げましたけれども、この間、地元の、やはり元島民を含めて、本当に固唾をのんで、期待を持って見ておられる中で、さまざまな報道の中で、この状況はどういうことになってしまったんだろうということに不安も広がり、期待もしていますけれども、不安も広がり、本当にそうした環境の中でおられる中で、報道は一方的に、これはなくなったということを大々的に言っているわけでありますけれども、その捉え方としては、一般論として、外交上の配慮じゃないかというような捉え方をして報道をされているわけであります。

 河野大臣に伺いますが、これは外交上の配慮なんでしょうか、なくなった結果。先ほど、総合的な判断でというお話もありましたが、なぜこれがそういう記載に変わったのかということをお伺いできればと思います。

河野国務大臣 繰り返し申し上げているように、政府の法的な立場に何ら変わりはございません。外交青書の記述に関しては、当該年の外交に関して総合的に考慮して記述をしているものでございます。

山岡委員 政府の法的な立場にお変わりないという御発言がありましたが、今の私の質疑の文脈からいえば、先ほどお話もさせていただきましたが、国内法の、いわゆる北特法の目的の、この法律に対しても政府の法的な立場は変わらないという文脈で捉えるお話とも言えるわけでありまして、国際法上の話もありますでしょうけれども、総合的な話を勘案してという中で政府がお話をされている中で、ロシアから出てくるさまざまな報道は、やはり強気な発言を外に発信し続けているという状況であります。

 今、皆様にお配りしている報道の新聞がございます。これは、ロシアが実施する軍事演習について、いろいろ日本が抗議していく中で、もうこうしたことは受け入れないという、非常に、何というんですか、そうした対応があり得るのかというようなことを発信をされているわけであります。

 私は、この中身については後ほど伺おうかと思うんですが、日本の政府の姿勢というのがいろいろな影響が出るのではないかというのが、私は非常に心配しておるのは、この新聞報道そのものに問題があると思っているからです。

 皆様のところにお配りして赤線を引かせていただいていますけれども、「ロシア外務省は四日、南クリール諸島(北方領土)でロシアが実施する軍事演習」という表現をしています。これは日経新聞の四月五日の記事でありますけれども、共同通信も同じように「南クリール」という表現を使っております。ほかに、読売、NHK、東京等を調べましたけれども、このときは北方領土というふうに表現をしておりました。

 過去、新聞記事の表現を調べておりますけれども、少なくともこの十年、主要紙の中において、ロシアの政府高官等、当人の発言のかぎ括弧内においての南クリルという表現ぶりはあったにせよ、新聞報道として、この北方領土という問題を南クリルというふうに置きかえて報道したという事例は見つかりませんでした。

 まず外務省に伺いますけれども、この報道の姿勢、報道のあり方というのは、今、外務省の考え方と一致しているんですか。

河野国務大臣 我が国は、この北方領土について、南クリルという呼び名を認めておりません。しっかりとそうしたメディアに対して日本の立場というものは説明しなければならぬということで、きちんと説明をするように指示したところでございます。

山岡委員 ぜひそれは外務省こそがそういう立場を、今この非常にセンシティブな、非常に機微に触れる状況の中でこうした報道が飛び出てしまうということ自体も、私は非常に危惧する世の中の状況だと思っております。

 私は、記者出身ではありましたけれども、北海道でも記者活動をさせていただいておりましたが、例えば、日本最東端という表現で根室というのは違うんだよということを、私は北海道で記者をさせていただく中で、先輩からも言われておりました。それは、北方領土問題の、最北端は稚内じゃないよ、最東端は根室じゃないよと。それは、言葉一つでやはり非常に、取り扱うという中で、報道にも緊張感がなくなっていくという中では、政府のさまざま表現ぶりがどんどんどんどん縮こまっていってしまうような印象を受ける中で、そうした懸念を感じるわけであります。

 大臣にお伺いしますけれども、今、報道のことについて伺いました。報道についてはしっかりとそうした対応をしていくということはありましたけれども、ロシアのこうした強気な外交姿勢、態度について、今どのように考えておられるんでしょうか。

河野国務大臣 交渉は交渉の場でやるものでございますから、ロシア側のメディアの一々についてコメントすることは差し控えたいと思います。

山岡委員 ロシア側のメディアを通じてはどんどん強気な発言が出ている。そして、これは国内紙ですからね、日経新聞にしても共同にしても。日本では、政府の発信も非常に、少し遠慮があるのではないか、外交青書も遠慮をしているんじゃないかという印象もあり、かつ、こういう相手側の立場に立つかのような報道まで出てくるような状況をつくってしまっているということは非常に残念であるし、これは私も繰り返しになりますけれども、この間、北海道の島民は本当に、元島民の方々は御高齢ではありますけれども、本当にいろいろ期待と不安と、でも動くのではないかという思いでありました。

 この中で、これまでの政府の発信の仕方の姿勢というのは、私は、そうした方々の思いに応えられているのかといえば、これは逆行しているような気がしてならないんです。

 外交上のことでいっても、日本としてはやはり言うべきことは言ってほしいという思いがある一方で、ただ、これは、前国会もそうでしたし、島民の雰囲気もそうでありましたけれども、仮にこういう姿勢の中で交渉事が進むのであれば、それは許容しようというような空気も広がっておりました。現に、北方領土の返還運動等のさまざまな方々の取組、ことしもありましたけれども、その言葉ぶりの表現も、そうした、頑張っている政府がいる中で、我々も言葉をちょっと考えようかというような方向で、一番最初に河野大臣がおっしゃいましたけれども、立場は変わらないと言いながら、周りの環境は、そうした中で応援する気持ちを持って、今いろんな遠慮を、我慢しているという状況だということも御理解いただきたいと思うんです。

 大臣に伺いますけれども、私は、かつてのように、交渉上においても国会の答弁においても日本の立場をきちんと述べる、そうした外務省であってほしいと思うわけでありますが、しかし一方で、交渉が進んでいるのであれば、ならば、それはまだ我慢できるという思いもあります。

 この中で、五月十日、ラブロフ外相と大臣は会談をされるということでありますが、どういうお考えで、どういう決意の中で、そして強気にある相手に対して、やはりどんな思いを持って大臣は臨まれるのか。このことについて御答弁をお願いいたします。

河野国務大臣 交渉は、別にパブリックディベートをやるわけではありませんから、外に向かって何か申し上げる必要はないと思います。交渉が進むのは、これは交渉の場の中でございますので、その中できちんと政府の立場を述べる、日本の立場を述べる。

 そして、条約というのは、お互いが受け入れられなければまとまらないわけでございますから、自分の立場を一方的に一〇〇%相手に押しつけても、それはまとまらないわけでございます。そういうことで、この条約交渉というのは、静かな環境の中で交渉するのが大事だというふうに申し上げてきたところでございますので、また、ラブロフ外務大臣とは、その交渉の内容については外では発言しないという約束になっております。

 日本側はきちんとそれを守ってきているわけでございますので、国民の皆様にはいましばらく期待をいただいて見守っていただきたい、粘り強く国益のために交渉してまいりたいというふうに思っているところでございます。

 また、先ほど北特法を所管外と申しましたが、外務大臣も実は主務大臣の一人でございまして、済みません。そういう意味で、きょう宮腰さんがいらっしゃったものですからちょっと遠慮したわけでございますが、主務大臣としても、先ほど申し上げましたように、政府の法的立場は以前と変わっていないということを申し上げたいと思います。失礼いたしました。

山岡委員 結論から言えば、交渉がそれできちんと後押しになるのであれば、やはり島民の皆様も含めて、北海道も含めて、それは見守るという気持ちを持ち続けるわけでありますが、先ほど、いろんな報道もあって、確かに、交渉は外に向かってはしないというお話もありますが、しかし、やはり政治課題として、政治というのは、多くの方の思いの結集の中で我々はこうして今議会に送り込んでいただいている中で、そうした思いがあるということは、想像もできると思いますが、この場でも大臣にお伝えをしたいと思います。

 もう残り時間、わずかになってきましたが、最後、大臣に、ちょっとこれは通告しているわけではありませんが、交渉事にずっと携わってこられて、ロシアとの関係の中で、動く動かないという話もずっと報道もいろいろありますけれども、元島民の方々、北海道の方々、高齢の方々、そうした思いをどのように受けとめてこの問題に取り組んでいこうというお考えか。フリーな質問で恐縮でありますが、大臣にちょっと伺いたいと思います。

河野国務大臣 この両国の関係で申し上げれば、一九五六年の日ソ共同宣言は、私の祖父に当たる河野一郎が当時の鳩山一郎総理と一緒にモスクワへ行ってまとめたものでございまして、それから延々とこの領土問題が残っている。それを今回きちんと解決をしようということでございますので、きょうあすにも解決できるようなものなら、先輩方が既に解決をしてきているものだというふうに思います。

 それだけ難しい問題であるということをしっかり認識をしながらも、首脳間が平和条約の交渉を加速化させようということを合意をしたわけでございますので、それを受けて、ラブロフ外務大臣と粘り強く交渉してまいりたいというふうに思っております。

山岡委員 ぜひ、島民の思いは、交渉は白熱するのでありましょうが、忘れずに胸に置いた中で進めていただきたいと思います。

 宮腰大臣も、今お話をずっと伺っておられたと思いますが、こうしたさまざまな、多くをめぐる課題に対して、お立場は、担務はありますけれども、どのような思いでこの課題、政府全体としての一員として臨んでいかれるか。そのことを伺えればと思います。

宮腰国務大臣 この問題に関する最大の当事者はやはり元島民の皆さん方であろうというふうに考えております。一万七千名余りおいでになった方々のうち、今生存しておいでになりますのは六千名を割り込んだ。長く長く待っておいでになりました。

 今回の日ロ領土交渉の中で、何とかしてこの領土問題を解決をしてもらいたいという思い、それから期待というのは大きくあると思います。その中にあっても、北方四島からの引揚者の方々でありますから、複雑な思いを持っておいでになる方々も当然中にはおいでになります。しかし、この機会を逃して本当に島が早く返ってくるのかと。

 だから、今回の交渉は、本当に日ソ共同宣言以来の、中身に入る交渉ということでありますので、これは元島民の皆さん方の期待は極めて大きい。政府全体として、その期待に応えられるように努力をしていかなければいけないというふうに考えております。

山岡委員 両大臣におかれましては、それぞれの役割の中で最大限の力を発揮していただいて、この問題の前進を図っていただくことを切に御期待申し上げさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

末松委員長 次に、日吉雄太君。

日吉委員 国民民主党・無所属クラブの日吉雄太です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 きょうは、沖縄・辺野古の新基地建設をテーマにお話を伺いたいと思います。

 先般、沖縄三区衆院補欠選挙の結果が明らかになりました。これについてお伺いいたします。

 さきの玉城デニー知事の知事選挙、そして、県民の七〇%以上の方々が反対を表明した県民投票、そして、今回の衆議院補欠選挙では無所属の屋良朝博さんの勝利、いずれも争点は辺野古新基地建設の是非です。

 選挙や住民投票で示される民意、改めてお伺いいたします。宮腰大臣、この民意をどのようにお感じになられますでしょうか。

宮腰国務大臣 市街地に位置し、住宅や学校で囲まれ、世界で一番危険とも言われる普天間飛行場については、危険性の除去を図ることは極めて重要な課題であるとの認識のもと、日米合意に従い、一日も早い移設に向けて取り組むことが政府の方針です。

 普天間飛行場の移設を始めとする沖縄の基地負担軽減に係る政府の取組については、沖縄の方々に説明を尽くす努力を継続していく必要があると考えています。

 私としては、沖縄振興を担当する立場で、基地の跡地利用の推進を始め、各種沖縄振興策に引き続き全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

日吉委員 地元の住民の方々が三回にわたって、辺野古新基地建設、これの反対の民意を示しましたが、それを無視してまで、政府の方針としては工事を推し進めていく。

 このような中で、特に県民投票におきましては、辺野古基地建設、これを明確に反対としております。これを民意だというふうに考えますが、辺野古基地建設反対が沖縄県の皆様の民意である、これでよろしいでしょうか。

宮腰国務大臣 今ほども申し上げましたけれども、沖縄には米軍基地の多くが集中をして大きな負担となっている、これを軽減することが重要な課題であるというふうに考えております。

 先ほども篠原先生の御質問に対してお答えをさせていただきましたけれども、例えばこの選挙の関係でいえば、一般論として申し上げれば、選挙はさまざまな政策に関して有権者が総合的に判断するものでありまして、その結果に関して、その評価を含め、大臣の立場で具体的にコメントすることは差し控えたいというふうに考えております。

日吉委員 衆院補選については、さまざまな施策について総合的に判断というのもあるのかもしれないんですけれども、県民投票では、明らかに辺野古の新基地建設に賛成か反対かで問われています。この中で、反対の方が多かった、これは事実ですね。

宮腰国務大臣 県民投票については、いろんな御意見がありまして、問いの設定の仕方というようなこともいろいろ問題があったと思うのでありまして、そういう点でいうと、この示された数字は、もちろんしっかり真摯に受けとめているわけでありますけれども、いろんな県民の方々のお考えがあるというふうにも思っております。

日吉委員 いろいろな考えはありますけれども、今大臣がおっしゃったように真摯に受けとめるという意味では、やはり反対が多かった、これは事実だったということですね。

宮腰国務大臣 数字は、それは受けとめております。

日吉委員 その中で、玉城デニー知事は明確に辺野古の移設を反対している、こういった意向を示しています。

 沖縄を振興する大臣としまして、いま一度、基地負担軽減を含め、今後どのように沖縄の皆さんに向き合っていくか、御説明ください。

宮腰国務大臣 昨日も、玉城知事、宜野湾市の松川市長さん、それから琉大の新しい学長さん、三人がおいでになりまして、西普天間住宅地区の跡地の整備について御要請をいただきました。

 また、あすも、玉城知事、那覇市長、浦添市長、それからモノレール会社の社長さん、おいでになりまして、モノレールの三両化についての御要請をいただくということになっております。

 私としては、沖縄振興、基地負担軽減を含めてしっかり行っていくということで、引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えております。

日吉委員 次に、公有水面埋立法に関連する質問をさせていただきます。

 四条一項で、国土の利用上適正かつ合理的なること、これが公有水面を埋め立てるに当たっての要件の一つとなっています。

 ここで、合理的なという言葉がありますけれども、そこには経済的な合理性、すなわち、この埋立てにかかる費用が合理的な範囲内であるということが含まれているというふうに認識しておりますが、現在、この埋立てにかかる費用は幾らと想定されていますか。

辰己政府参考人 お答えいたします。

 全体の、今、経費につきましては、今回ボーリング調査の結果を踏まえまして、今後、地盤改良工事、これを行うことになっております。したがって、これの具体的な設計等を今後十分詰めていくというか、検討していくというふうに考えておりまして、現時点で全体の金額について確たることを申し上げることは困難ですが、しっかりと検討を行った上で変更承認申請を行っていきたい、このように考えています。

日吉委員 今、総額が算定できない、これからだということなんですけれども、最大で幾らかかるか、これはわかるんでしょうか。

辰己政府参考人 繰り返しになって恐縮なんですが、今後、地盤改良工事、これを行うために必要な設計、具体的な設計等の検討をこれから十分に行っていくというふうに考えておりまして、現時点で、その規模等について申し上げることは困難だというふうに考えております。

日吉委員 この工期について伺いますが、地盤改良工事にかかる工期が三年八カ月でしたでしょうか、かかるというふうに言われておりますが、全て完成するまでの工期というのは今おわかりになりますか。

辰己政府参考人 今委員から御指摘がございましたが、地盤改良工事につきましては、海上において三年八カ月という地盤改良に必要な工期というのを、今回、設計・施工の検討の中で示させていただきました。

 今後、より具体的なやり方等をこの変更承認申請のプロセスの中で詰めていきたいと思っていまして、現段階で、全体の工期ということを申し上げる段階にはないというふうに思っております。

日吉委員 今の御答弁からしますと、全体の工事がどのように行われるかもまだわからない、工期がいつまでかかるかもわからない、総額もわからない、マックスどれだけの費用がかかるかもわからない、こういった状態で、公有水面埋立法の四条一項一号の合理性、国土利用上の合理性、経済的な合理性、こういったものを判断することというのはできるんですか。

辰己政府参考人 公有水面埋立法第四条第一項第一号「国土利用上適正且合理的ナルコト」の要件でございますが、これにつきましては、対象となります公有水面の埋立てや埋立地の用途が国土利用上の観点から適切かつ合理的なものであることを承認等の要件にするものと解されると承知しています。

 本事業につきましては、平成二十八年の最高裁判決において、普天間飛行場の危険性の除去が喫緊の課題であるということを前提に、本件代替施設等の面積や埋立面積が現在の普天間飛行場の施設面積と比較して相当程度縮小されること、沿岸域を埋め立てて滑走路延長線上を海域とすることにより航空機が住宅地の上空を飛行することが回避されること及び本件代替施設等が既に米軍に提供されているキャンプ・シュワブの一部を利用して設置されるものであることなどに照らすと、埋立ての規模及び位置が適正かつ合理的であるなどとして、本件埋立事業が第一号要件に適合するとの沖縄県知事の判断に違法又は不当があると言うことはできないということが判示されていると承知をしています。

 いずれにしても防衛省としては、環境への配慮等に十分に留意しつつ、事業を進めるに当たり経費抑制は重要な課題と考えておりまして、予算要求の段階において所要の額を精査しつつ、適正かつ厳格な予算執行に努め、全体の経費抑制を図るよう最大限努力していきたいと思っております。

日吉委員 その全体の工事の規模、位置について、合理的、適正である。これはもう当然だと思いますけれども、そこにかかるお金もやはり合理的な範囲内でなければならない。これは当然のことであります。

 そういった中で、あれですよね、幾らかかっても構わない、こういう判断はありますか。

辰己政府参考人 公有水面埋立法の第四条の解釈については、これは我々が所管しているわけではございませんので、本件についての解釈について申し上げることは差し控えたいと思いますが、いずれにせよ、事業をする立場としましては、経費の抑制は重要な課題と考えておりまして、適正かつ厳格な予算執行に努め、全体の経費抑制を図るよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

日吉委員 経費抑制に最大限の努力を図る、これは当たり前のことですが、今その経費が幾らかかるのか、工期がいつまでか、全体のこの工事がどの程度やらなければいけないのか、どうなるのかがわからない中で、要は、この合理性があるかどうか不明な段階でこの工事を進めること、公有水面第四条一項一号にこれは反しているというふうに理解しているんですけれども、改めて御答弁お願いします。

辰己政府参考人 繰り返しになって恐縮ですが、まず、この事業については、平成二十八年の最高裁判決で、普天間飛行場の危険性の除去が喫緊の課題であるということを前提にして、この埋立ての規模及び位置が適正かつ……(日吉委員「それはわかりました」と呼ぶ)まあ、こういうことで既に判示されていると承知をしております。

 また、今回、国交省におきましても、この審査請求につきましては、法令にのっとり判断されたものというふうに理解をしておりまして、この第一項一号要件を満たしていないとは考えておりません。

日吉委員 国交省の裁決書の中では、経済的な合理性、費用が無制限にかかってもいいのかどうかといったところについては意見を示していない。それは、沖縄県からそれについての問合せがなかったから、こういうことなんですけれども、そういう意味では、その国交省の裁決書をもってそれは問題ない、こういうふうに言うことはできない状況です。

 そういった中で、宮腰大臣にちょっとお伺いしますけれども、この経済的な合理性がわからない中で、費用が幾らかかるかわからない中でこの工事を進めていくこと、これははっきり言ってむちゃなことだと思うんですけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。

宮腰国務大臣 防衛省の方から平成二十八年の最高裁判決についての答弁があったわけでありますが、私の方は、基地の跡地利用の観点からということでありますので、普天間飛行場の固定化をどう避けていくか。

 一日も早い全面返還の実現、あるいは沖縄の基地負担軽減に全力を尽くして、一つ一つ着実に成果を出していくということでありまして、普天間飛行場負担軽減推進会議などの場において、沖縄県や宜野湾市等と意見交換をしながら進めていくものであるというふうに認識をしておりまして、その方向でしっかり頑張っていきたいと思います。

日吉委員 質問としては、幾らかかってもこれを進めるのかという、かなり巨額、何兆、何十兆、何百兆、もしかかるのであればそれはやめる話だと思うんですけれども、ほかを考えなければいけない。幾らかかってもいいという判断はないわけでありまして、そこで、今幾らかかるかわからない中で合理性があると判断できないんじゃないか、こういうことを私は申し上げているところです。

 そういった中で、アメリカの海兵隊が、十年先の航空計画を発表しております。その中で、普天間基地を十年、二〇二八年まで使い続ける、辺野古の新基地の建設費用、こういったものを会計で計上していない、こういった状況がございます。

 これは、普天間の基地、これを二〇二八年まで使い続けるということなんでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の海兵隊航空計画につきましては、米海兵隊が今後十年程度における航空機装備等の移行を見据え、その内容が随時変更されることを前提に内部報告用資料として作成したものであって、米国防省の公式な立場を反映したものではないと承知しております。

 その上で、普天間飛行場の返還時期につきましては、二〇二二年度又はその後というのが日米両政府の公式な合意でございます。

 いずれにしましても、普天間飛行場の一日も早い返還に向けて、一歩一歩前に進んでいきたいと考えております。

日吉委員 内部的なものという話がありましたけれども、そうは言っても、現時点での最適な見積りをしている話だと思います。

 そういった中で、計上されていないということは、二〇二八年まで普天間を使用し続けるんだ、こういうふうに現時点では考えているというのがアメリカの考え方なのかなといった中で、今現在、二〇二八年まで使い続ける、こういった可能性もあるということでよろしいでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 先週十九日に日米の2プラス2が行われまして、ここにおきましても、普天間飛行場代替施設の建設に係る意義のある進展が歓迎されつつ、普天間飛行場の固定化を避けるためには辺野古への移設が唯一の解決策であること、これを踏まえて早期の返還を図るということが確認されておる次第でございます。

日吉委員 アメリカから工期はどれぐらいかかるんですかという問合せがあったり、日本からアメリカに対して、二〇二八年までは工事は終わらない、こういったことを伝えたりしている、こういった事実はあるんですか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 普天間の問題につきましては、沖縄の負担軽減全体の話も含め、随時、米側と緊密に協議を行っております。

 協議の内容につきましては、事柄の性格上、具体的にはお話し申し上げられませんけれども、普天間飛行場の一日も早い返還に向けてしっかりと協議をしておる次第でございます。

日吉委員 時間が参りましたので終わりますが、最後にもう一度だけ確認させてください。

 二二年度又はその後に返還可能といった場合に、その後というのは二〇二八以降も入るという解釈でいいですか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、一刻も早い返還に向けて努力してまいる所存でございます。

日吉委員 回答がなかったんですが、時間が参りましたので終わります。

 ありがとうございました。

末松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 初めに、衆議院沖縄三区の補欠選挙で、辺野古新基地建設反対を掲げた屋良朝博さんが七万七千百五十六票を獲得して初当選を果たしました。辺野古推進の立場を明確にした相手候補に大差をつけての勝利であります。

 政府に対し、この結果を真剣に受けとめ、辺野古新基地建設を直ちに中止し、普天間基地の閉鎖、撤去を決断することを強く求めたいと思います。

 きょうは、米軍北部訓練場の問題について質問をいたします。

 政府は、住民の反対を押し切って、大量の機動隊員を動員して、東村高江の集落を取り囲むように六つの米軍着陸帯の建設を強行し、二〇一六年十二月、北部訓練場の一部が返還されました。当時、菅官房長官やケネディ駐日大使が出席して、返還式典も大々的に行いました。あれから二年四カ月になりますが、訓練場の上空に設定された訓練空域が返還前のままになっていることがわかりました。

 資料をごらんいただきたいと思いますが、左側は、北部訓練場の一部返還に伴って返還された区域と、基地として残った区域を図示したものであります。右側は、それに呼応しまして、国土交通省が公表しているAIP、航空路誌から北部訓練場周辺の部分を抜き取ったものです。これは三月二十八日時点のものであります。見比べていただければわかりますように、現在の制限空域は返還前の状態のままになっています。

 国土交通副大臣に伺いますが、二年四カ月も前に返還されたのに、返還区域の上空がそのままになっているのはなぜですか。

牧野副大臣 お答えをいたします。

 委員の御指摘のとおり、北部訓練場が一部返還されている一方で、返還された区域の上空にある制限空域は返還の前のままになっていると認識しております。

 当該制限空域につきましては、米軍と調整した後に、防衛省から制限空域の範囲に係る依頼を受け、国土交通省が、航空路誌、これは、航空路誌というのは国が発行する出版物でありまして、航空機の運航のために必要な恒久的な情報を収録するものでありますが、その航空路誌に公示することになっております。

赤嶺委員 今の答弁だと、原田防衛副大臣、何で制限空域が返還前のままになっているんですか。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 先ほど国土交通省牧野副大臣から御説明のあったとおり、北部訓練場及び平成二十八年十二月に返還された跡地の上空は、民間航空機の飛行自粛が必要な制限空域として航空路誌に掲載されていると承知をいたしております。

 その上で、返還跡地の上空につきましては、現在、返還後の地形を踏まえて、制限空域の形状を変更すべく、関係省庁及び米側と調整を行っておるところでございます。

 関係省庁及び米側との調整が整い次第、速やかに防衛省から国土交通省に対し、航空路誌、AIPに掲載された制限空域の変更を依頼する予定でございます。

赤嶺委員 大々的に返還式典をやった事柄ですよ。これで沖縄の基地の負担は軽減されたというような大演説も、菅官房長官、やりましたよ。なのに、返還跡地の上空、返されるべきものがそのままになっている。

 事前の説明を受けたら、米軍が返還後の空域使用のニーズを示していないことが協議が進んでいない理由の一つだということでありました。そういうことですか、副大臣。

原田副大臣 今申し上げましたとおり、米軍は従来、その任務遂行能力を維持して日米安全保障条約の目的を達成するため、必要な訓練を行っておると承知をいたしております。

 他方、御指摘の、北部訓練場上空の制限空域における米軍の個別具体的な使用状況については、米軍の運用に関することでありまして、承知はいたしておりませんが、ヘリの運用を始め、各種訓練が行われておるものと承知をいたしておるところでございます。

赤嶺委員 もともと制限空域は米軍基地の上空に設定されているものです。基地を返還するときには、それらに合わせて空域も縮小されていなければならなかったものです。米軍がいろいろ使っているから、米軍のニーズをおもんばかるような問題ではもともとありません。

 原田副大臣は、いつまでに空域を縮小するんですか。

原田副大臣 お答えいたします。

 制限空域は、航空関係者にとってできるだけわかりやすい形で周知をする必要がある。その一方で、北部訓練場の形状が極めて複雑でありますことから、制限空域の変更に時間を要しておるところでございます。

 制限空域の変更につきましては、関係省庁及び米側と調整中でございまして、具体的な時期をお示しすることは困難でございますけれども、速やかな制限空域の変更が実現するように取り組んでまいります。

赤嶺委員 形状が複雑。だって、返還された形状に沿って空域も返還すればいいことじゃないですか。形状が複雑というそんな説明、わかりません。

 結局、米軍は使っているわけですよね、その空域を。いかがですか。

原田副大臣 委員おっしゃるとおりでございます。

赤嶺委員 いつまでも、返還跡地の上空、返さなきゃいけないところを使い続けることは許されないと思います。

 宮腰大臣に伺いますが、北部訓練場がある沖縄本島北部は、今政府が世界自然遺産登録に向けた取組を進めている地域であります。政府は、二〇一七年、推薦書を提出しましたが、北部訓練場の返還地などが含まれていなかったために出し直すことになりました。こうした経緯があるのに、返還区域の上空が制限空域のままになっているというのは、到底許されるものではないと思います。

 世界自然遺産登録を含む北部地域の振興を進めていくためにも、大臣としても制限空域の縮小に努力すべきだと考えますが、いかがですか。

宮腰国務大臣 北部地域につきましては、県土の均衡ある発展を図る観点から、北部地域の連携促進と自立的発展の条件整備を着実に推進することが重要であり、内閣府におきましては、北部振興事業により、産業の振興や定住条件の整備などに資する振興事業の実施に取り組んでいるところであります。

 特に、二〇二〇年の世界自然遺産登録を見据え、現在、やんばるの森を周遊できる観光拠点の整備を重点的に支援しているところでありまして、世界自然遺産登録を北部地域の振興につなげることができるよう、沖縄振興を担当する大臣として、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 北部訓練場の制限空域については、現在、関係省庁において米側と調整を行っているところと承知しておりまして、私としては、その動向を注視をしてまいりたいというふうに考えております。

赤嶺委員 もう二年以上たっても進まないですからね。注視していては絶対に進まないですよ。沖縄担当大臣の立場から、あそこは世界自然遺産条約に登録されるべき大事な地域だ、何をやっているんだというようなことを関係省庁に、やはりきちんと物を言わなきゃだめだと思います。

 次に、東村高江で、住民が抗議活動のために設置していたテントや掲示物などが米軍に撤去された問題についてであります。

 今月九日の安保委員会で、県道になっている区域であるにもかかわらず、道路管理者である沖縄県の許可もなく米軍が勝手に撤去することは許されない、オスプレイの着陸帯がつくられ、騒音に苦しめられている住民に対して、そのようなことは二度と繰り返すべきではないと強く申し上げました。

 ところが、沖縄防衛局は四月十八日、テントの撤去を求める警告文を現地に設置しました。二十五日午後五時までに撤去するように求めています。

 なぜそのような警告文を設置したんですか。米軍の横暴なやり方に手をかすということですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のテントなどにつきましては、北部訓練場の施設・区域内に昨年の六月から許可を得ずに設置をされていたものでございます。それが、今月の三日、米軍が撤去したということでございます。翌日の四日、テントが再設置をされたということでございますので、今月の十八日、委員御指摘のとおり、沖縄防衛局がテントなどに通知文を張りつけ、撤去を要請しているところでございます。

 米軍の施設・区域内に許可を得ずに設置をされた物品に対しては、道路管理者である沖縄県に対して、実効性のある是正措置をとるよう依頼しているところでございます。米側とも緊密に連携を図りながら、適切に対応を図ってまいりたいと考えているところでございます。

赤嶺委員 ちょっとこの問題について改めて聞いていきたいと思いますが、防衛副大臣に伺いますけれども、北部訓練場の形成過程について、これはどのように認識しておられますか。

原田副大臣 お答え申し上げます。

 防衛省といたしましては、沖縄県が戦後も長らく我が国の施政権の外に置かれ、北部訓練場につきましては米国の施政下において設置をされたものと承知をいたしております。

 このため、北部訓練場の形成過程につきましては防衛省としてその詳細を把握はしておりませんが、平成三十二年に北部海兵隊訓練場として使用開始され、その際、米軍による強制的な接収が行われたとの記録もあると承知をいたしております。

 その後、昭和四十七年、本土復帰に伴い、北部訓練場として提供開始されました。その後、平成八年のSACO合意において、七千五百ヘクタールにある訓練場のうち、その過半、約四千ヘクタールを返還することとされ、平成二十八年十二月、返還予定区域に所在するヘリコプター着陸帯の移設工事を完了いたしまして、返還が実現したところでございます。

 この北部訓練場の過半、約四千ヘクタールの返還は、平成八年のSACO合意以来、二十年越しの課題であります。また、沖縄県内の米軍施設・区域の約二割、本土復帰後、最大の返還となります。この返還が実現に至ったことは、沖縄の負担軽減という観点から、まことに意義深いものと考えております。

赤嶺委員 米軍占領下にあって、強制的に接収されてできたのが北部訓練場です。SACO合意で四千ヘクタールが返還された、最大の返還という割には、さっき、訓練空域、返されていないじゃないかというものもあるわけですから、余りそういうことを言わない方がいいと思いますよ。返してから、どうだということを言ってみてください。

 沖縄が米軍の占領下に置かれていた一九五七年、昭和三十二年に米軍からの一方的な通告によって接収され、基地に変えられたのが北部訓練場です。伊江島や宜野湾市の伊佐浜、那覇市の具志、銘苅などで銃剣とブルドーザーによる強権的な土地の取上げを進めながら、関係する町村長を呼びつけて、大規模な土地接収を一方的に通告したのであります。

 そうしてつくられた北部訓練場周辺で普通に使われている県道が、実は米軍基地のままになっている。沖縄県が共同使用させてもらうという屈辱的な形になっている。そして、気に入らない抗議活動があれば、占領下と同じように米軍が乗り出してくる。こんなことが許されていいのかという怒りでいっぱいであります。

 政府がやるべきことは、米軍の片棒担ぎではなくて、騒音に苦しむ住民の側に立って、抗議活動への弾圧をやめるよう米側に求めることではないですか。そして、県民に県道を返還するために米側と交渉することではありませんか。県道も提供施設ですというぐあいに、こんな、主権国家と称する日本でそんなことが言える話じゃないと思いますよ。恥ずかしいと思わなきゃいけないですよ。

 やはり、強制的に取り上げられた基地の、そういう形成過程の中で県道まで基地になっているということを解決すべく頑張るというのが政府の立場であって、アメリカに言われたから一緒にテントを撤去するというようなものではないと思いますが、いかがですか。

原田副大臣 答弁をさせていただきます前に、先ほど私、昭和三十二年と言うべきところを平成三十二年と申し上げましたので、訂正をさせていただきたいと思います。

 その上で県道の部分につきましてのお尋ねでありますけれども、日米地位協定は、共同使用につきまして、米軍が当該施設・区域を一時的に使用しておらないときには、日本政府が臨時に当該施設・区域をみずから使用し、又は国民に使用させることができることと規定をいたしております。

 その上で、北部訓練場の施設・区域につきましては、米側が運用上、全体として保持する必要がありまして、部分的にせよ、これを返還することは困難でありますことから、御指摘の県道部分を共同使用として日本側に一時的に使用を認めているものでございます。

 御指摘の県道部分については、今後とも県道として使用いただけるよう適切に対応してまいります。

赤嶺委員 これは米軍にお願いする事柄じゃないですよ。県道は返せと言う事柄ですよ。いわんや、そこに米軍の訓練で苦しんでいる住民が抗議のテントを張ったら、米軍が撤去する、それを日本政府が手伝う、こんな恥ずかしいことはあり得ないということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、普天間基地の危険性除去の問題について外務大臣に伺います。

 もう一枚の資料をごらんいただきたいと思います。これは、普天間基地周辺の深夜、早朝の騒音発生状況をまとめたものです。二〇一六年度以降、大きく増加しています。二〇一六年度に二百三十三回、二〇一八年度に三百二十回になっています。

 普天間基地では、一九九六年にいわゆる騒音防止協定が合意され、深夜、早朝の飛行は制限されています。にもかかわらず、深夜、早朝の飛行が繰り返され、むしろ増大しているのはなぜですか。

河野国務大臣 普天間飛行場については、日米安全保障体制を支える基盤として非常に重要な防衛施設である一方、市街地の真ん中に位置し、米軍機による航空機騒音については周辺住民の方々に多大な御負担をおかけしていると認識しております。

 その上で申し上げれば、日米安全保障条約は、我が国の安全並びに極東の平和及び安全の維持に寄与するため米軍の我が国への駐留を認めており、飛行訓練を含めた軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを前提としております。

 飛行訓練について申し上げれば、一般的に、米軍が飛行訓練を通じてパイロットの技能の維持向上を図ることは、即応態勢という軍隊の機能を維持する上で不可欠であり、日米安全保障条約の目的達成のために極めて重要でございます。

 他方、米軍が訓練を行うに当たっては、公共の安全に妥当な考慮を払うのは当然のことであり、政府としても、これまで、米軍機の運用によって地域住民に与える影響が最小限となるよう、適切に対応してきているところであります。

 具体的には、普天間飛行場の周辺においては、平成八年の日米合同委員会合意により、進入及び出発経路を含む飛行場の場周経路は、できる限り学校、病院を含む人口稠密地域上空を避けるよう設定すること、夜間訓練飛行は、在日米軍に与えられた任務を達成し、又は飛行要員の練度を維持するために必要な最小限に制限されることとされており、米側に対し、日米間の合意を遵守し、航空機の運用による影響を最小限にとどめるよう申入れを行ってきております。

 外務省といたしましては、これまでも、防衛省とも連携しつつ、米軍機の飛行訓練による地元住民への影響を最小限にとどめるよう、米側にさまざまな機会を通じて申入れしてきているところであり、今般の日米2プラス2においても、外来機の騒音を含め、米軍の運用が地元に与える影響が最小限となるよう米側に要請したところでございます。

 いずれにせよ、今後も引き続き適切に対応してまいりたいと思います。

赤嶺委員 外務大臣は、今の普天間の飛行実態が騒音防止協定に抵触している、そういう認識はありますか。

河野国務大臣 繰り返しになりますが、飛行訓練について申し上げれば、一般的に、米軍が飛行訓練を通じてパイロットの技能の維持向上を図ることは、即応態勢という軍隊の機能を維持する上で不可欠であり、日米安全保障条約の目的達成のために極めて重要でございます。

 しかしながら、米軍が訓練を行うに当たっては、公共の安全に妥当な考慮を払うのは当然のことであり、政府としても、これまで、米軍機の運用によって地域住民に与える影響が最小限となるよう、適切に対応してきているところでございます。

赤嶺委員 今のような考え方ですから、騒音防止協定は住民の騒音被害の軽減にはつながっていないわけですよ。二十二時から六時までの飛行制限、これをうたってはいますけれども、外務大臣が強調するように、米軍の運用上の必要があればその限りではないという抜け穴があるからであります。結局、深夜、早朝の飛行は野放しです。

 国土交通副大臣に伺いますが、沖縄県は今月十二日、米国と欧州四カ国の地位協定の調査報告書を公表しました。調査したドイツ、イタリア、ベルギー、イギリス、いずれの国も、「自国の法律や規則を米軍にも適用させることで自国の主権を確立させ、米軍の活動をコントロールしている。」このように結論づけております。

 報告書によれば、ベルギーでは、外国軍隊の航空機にも航空法を適用し、領域上空を飛行する場合、ベルギー国防総省の許可を義務づけています。外国軍隊の飛行を禁止できることも明記しています。そして、二十三時から翌五時までの飛行は原則として許可されていません。飛行する場合には、ベルギー軍航空部隊の承認を得る仕組みになっています。イギリスもほぼ同様の仕組みになっています。

 日本も、航空法を米軍に適用して必要な規則などを整備すれば、普天間基地への外来機の飛来、深夜、早朝の飛行を規制することができるのではありませんか。それをやるべきではありませんか。

牧野副大臣 お答えいたします。

 日本の航空法は、民間航空の国際的な枠組みを規定する国際民間航空条約の規定等に準拠し、航空機の飛行の安全などを図るための方法を定めるために制定されております。

 一方で、米軍機については、日米地位協定の実施に伴う航空法の特例法により、民間航空機の円滑な航空交通を確保する場合を除き、航空機の運航に関する規定などについて適用が除外されております。これは、我が国が締結した国際約束である日米地位協定等に基づき、米軍が我が国において活動することが認められていることを踏まえ、その履行を担保するために定められたものと承知しております。

 その性格を鑑みると、米軍機に適用される航空法の規定を見直す際には、米国との調整を要するものと考えております。

赤嶺委員 航空機の国際法の規定では、軍用機にもその規制がかかっていることは既に御存じですよね。国際的には軍用機も規制をしているわけです。

 一方、日本は、米軍の移動や基地への出入りについて定めた日米地位協定五条の合意議事録、この中では、「日本国の法令が適用される。」このように規定しています。

 この「日本国の法令」とは具体的にどの法令を指すんですか。通行秩序の維持にかかわる航空法や道路交通法などの法令は適用になっているのではありませんか。国内法を適用できるんじゃないですか。

船越政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日米地位協定第五条に関する合意議事録の四で規定されております「日本国の法令」とは、日米地位協定第五条の趣旨からいたしまして、同条に言及のある船舶、航空機、車両等の通行主体の通行行為自体を、通行秩序の維持の観点に立って規制する法令を指すものと解しております。

 米軍機の飛行につきましては、御指摘のとおり、航空法特例法等に基づき、通行秩序の維持の観点に立って、航空機等の通行行為自体を規制する航空法第九十六条から第九十八条までの規定が適用されることとなっておると承知しております。

赤嶺委員 ですから、航空特例法というのは国内法によって決められているものであって、国内法で航空特例法を廃止すれば、米軍の勝手な運用は国内法で取り締まることができるわけですよ。その点いかがですか。

船越政府参考人 航空法につきましては、先ほど申し上げましたとおり、航空法第九十六条から第九十八条までの規定が米軍に適用されますが、米軍に適用する国内法の範囲の見直しにつきましては、米側及び国内関係省庁との調整を要するものと考えております。

赤嶺委員 何で国内法を変えるのに、しかも住民に被害を与えているのに、国内法を変えればできることを米軍との調整にして逃げ回るんですか。

 そもそも国際法上も、駐留軍に受入れ国の国内法令が適用されることは原則になっているはずです。外務省は、ことしに入ってホームページの記載を変更しましたが、個別の取決めがない限り、外国軍隊の受入れ国の法令は適用されないという見解は変えていないわけです。

 しかし、沖縄県の報告書は、これが国際的には通用しない議論であることを示しております。沖縄県は、ベルギーで万国国際法学会の事務総長に会って、この点の見解も聞いております。万国国際法学会の総長も、国内法の適用は軍用機に対しても当然だ、このように言っております。

 外務大臣、これらの沖縄県が調査した結果、外国の軍用機でも国内法を適用している実態がある。ベルギーやイギリスや実態がある。そういうものに沿って国内法を見直せば、普天間基地住民の基地の苦しみはなくなるんじゃないですか。いかがですか。

河野国務大臣 受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員等は受入れ国の法令を尊重する義務を負うが、その滞在目的の範囲内で行う公務については、受入れ国の法令の執行や裁判権等から免除されるという基本的な考え方は国際的に広く共有されていると理解しております。

赤嶺委員 終わりますけれども、まさにそれが日本だけの特殊な見解であったというようなことを、同じように米軍を受け入れているイギリスやドイツやイタリアやベルギーの実態を調査して、対応方を調査して、日本のやり方は異常だということを、調査報告書も出ているのであります。

 普天間基地の負担軽減と言うのであれば、直ちに航空特例法を廃止して、航空法に基づく航空機の運用で日本のコントロール下に置くべきだということを強く申し上げて、質問を終わります。

末松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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