衆議院

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第3号 令和3年6月14日(月曜日)

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令和三年六月十四日(月曜日)

    午後三時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 井野 俊郎君 理事 鈴木 貴子君

   理事 西銘恒三郎君 理事 武藤 容治君

   理事 渡辺 孝一君 理事 石川 香織君

   理事 佐々木隆博君 理事 佐藤 英道君

      伊東 良孝君    尾身 朝子君

      鬼木  誠君    門  博文君

      繁本  護君    薗浦健太郎君

      武部  新君    平口  洋君

      宮腰 光寛君    宮崎 政久君

      菊田真紀子君    篠原  豪君

      屋良 朝博君    稲津  久君

      赤嶺 政賢君    杉本 和巳君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 河野 太郎君

   防衛副大臣        中山 泰秀君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   宮地  毅君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  原  宏彰君

   政府参考人

   (内閣府北方対策本部審議官)           松林 博己君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           金井 昭彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           木村 典央君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           天河 宏文君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            瀬口 良夫君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 青木 健至君

   衆議院調査局第一特別調査室長           藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十四日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     鬼木  誠君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     武井 俊輔君

同日

 理事武井俊輔君同日理事辞任につき、その補欠として井野俊郎君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 沖縄及び北方問題に関する件


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事武井俊輔さんから、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に井野俊郎さんを指名いたします。

     ――――◇―――――

西村委員長 沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官宮地毅さん、内閣府沖縄振興局長原宏彰さん、内閣府北方対策本部審議官松林博己さん、外務省大臣官房参事官有馬裕さん、外務省大臣官房参事官徳田修一さん、国土交通省大臣官房審議官金井昭彦さん、国土交通省大臣官房審議官木村典央さん、国土交通省大臣官房審議官天河宏文さん、海上保安庁警備救難部長瀬口良夫さん、防衛省地方協力局次長青木健至さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。佐藤英道さん。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道です。

 初めに、病院船について伺います。

 今国会で、災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律案が成立しました。東日本大震災から十年の節目の年に、国会として病院船の整備について明確な意思を示すことができたことは大変に喜ばしいことであります。

 さて、沖縄北方担当の河野大臣として、病院船については、医療提供体制の脆弱な沖縄県の離島や、全国で最も無医地区の多い北海道での病院船による巡回診療への活用も考えられるのではないでしょうか。また、例えば、新型コロナウイルスのような感染症により離島の医療提供体制が逼迫するような場合に、通常の医療を提供するために病院船を派遣することも有益であると考えます。

 今般の法案成立についての河野大臣の受け止め及び病院船の平時の活用方法についてお考えを伺いたいと思います。

河野国務大臣 今回の法の成立、関係者の長きにわたる御努力の結果と改めて敬意を表したいと思います。これから関係機関で様々な検討が行われると承知をしておりますので、法の所期の目的が達成されることを大いに期待をしていきたいと思います。

 今回のワクチン接種でも、例えば、小笠原の接種については東海大の望星丸に大変お世話になりました。また、鹿児島の十島村も、フェリーにワクチン用の冷凍庫を積んで、お医者さん、看護師さんと一緒に十島村の島々を回る、これを二回やっていただく。そういうことを考えると、この病院船が様々な機会に果たす役割は決して少なくないというふうに思っております。

 そういう意味で、今後の関係機関、しっかり検討していきたいと思います。

佐藤(英)委員 日ロ平和条約交渉について伺います。

 日ロ間では、二〇一八年十一月、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎に日ロ平和条約交渉の加速をさせることに合意し、その後、二〇一九年秋に観光分野でのパイロットツアーが実現するなど、北方四島における共同経済活動において一定の進展が見られておりました。

 しかし、昨年以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、日ロ間の外交交渉や共同経済活動が停滞する中、ロシア側では、昨年七月のロシア憲法改正を始め、北方四島への実効支配を強める要人の発言や行動が相次いでおります。

 コロナ禍により一時的に交渉が凍結されているような状態になっていますが、我が国は、コロナ禍が収束した後には直ちに平和条約交渉に取り組んでいただきたいと思います。外務大臣の見解を伺います。

茂木国務大臣 平和条約交渉につきましては、佐藤委員御指摘のとおり、二〇一八年のシンガポールでの首脳間のやり取りをしっかりと引き継いで、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、粘り強く交渉に取り組んでおるところであります。

 正直言いまして、平和条約締結という戦後七十年以上残された課題の解決、これは容易でないわけでありますが、しかし、一昨年十二月のモスクワで、私はラブロフ外相と八時間にわたって協議、交渉を行いまして、これまでの交渉を通じて進展は見られると思っております。どういう部分で両国で一致できるのか、また、どこが異なる部分なのか等も明確になってきたわけであります。

 今後に向けた展望、展開というのが見えてきた中で、新型コロナの感染の拡大、昨年から、それ以降の対面での協議というのがなかなか進められてこなかった。こういった機微にわたります問題はなかなか電話会談で全て済ませるというわけにいきませんから、どうしてもそういう対面での会談をしたかったわけでありますが、それでも昨年五月、十月、電話会談を重ねまして、様々な分野で意見交換をして、平和条約交渉を含めて、引き続き議論を重ねていくことで一致をいたしました。新型コロナの感染状況、この収束状況というのを見つつ、できるだけ早期に対面協議を行っていきたいと思っております。

 ロシアを取り巻きます情勢といいますか、例えば米ロの関係、これは、冷戦以来の対立構図というのを引きずっているのは確かですが、一方で、ここに来て、予見可能な関係、こういうのを模索する、こういう動きも出てきております。

 一方、米中の対立によりまして、民主主義国、バイデン政権始め、同盟国、同志国の結束を図っていこうという中で、権威主義的な動きを強める国々の連携、中ロの連携というのも見られるわけであります。ただし、そうはいっても、ロシアからすると、余り中国に対して依存関係が強まってしまう、こういったことについても避けたいんだろう、こういう考えも見て取れるところであります。

 こういった国際的な動き、これも注視をしながら、交渉責任者として、領土問題を解決して平和条約を締結するという目標に向かって、引き続き全力で取り組んでいきたいと思っております。

佐藤(英)委員 三問目と四問目、通告しておりましたけれども、併せてお伺いします。

 最初に「えとぴりか」です。

 政府は、一昨年から、北方領土へのビザなし交流や元島民の墓参に使用する交流船「えとぴりか」の改修に取りかかり、この四月に完了したと聞いております。これまで、私も、新型コロナウイルスなどの感染症対策を施し、また、悪天候時でも上陸できるようにするなど、様々な要望を行ってまいりましたが、今後、北方四島の往来に大いに活躍する新「えとぴりか」の改修内容について具体的な御説明を伺いたいと思います。

 また、元島民の墓参についてもお伺いします。

 新型コロナウイルスの感染症の影響で、昨年来、今年もビザなし渡航のめどが立たない状況が続いています。七月までは行わないことが決まっていますが、八月以降も開催への見通しがない状況です。昨年、航空機による空からの墓参という形を行いましたが、やはり、元島民の方々は、船で少しでも近くへ行って墓参を行いたいと考えています。

 北海道が新事業として検討している船上で慰霊祭を行う洋上慰霊について、元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟の方々も実施を求めており、去る五月二十六日は、北海道とともに外務省と内閣府に要望されました。

 政府におかれましても、元島民の方々の心をしっかりと受け止めていただき、是非とも実現をしていっていただきたいと思います。見解を伺います。

松林政府参考人 お答えを申し上げます。

 「えとぴりか」の感染症対策に係る改修でございますが、先生から御紹介いただきましたとおり、昨年度中に実施をいたしました。

 具体的には、船内の換気機能の強化、これは、窓の開閉とか換気ファンの設置等でございますけれども、それと、空気清浄機の設置、医務室の拡張や隔離室の整備、食堂区画へのアクリル板の設置などを実施いたしました。また、装備品として、消毒液、防護服、医療用の酸素ボンベなどを調達してございます。

 こうしたものを活用いたしまして、事業実施に当たっては、参加者の安全、安心が確保されますよう、感染防止策への万全を期してまいりたいと存じます。

 それから、二つ目にお尋ねをいただきました洋上慰霊でございますけれども、千島歯舞諸島居住者連盟から、代替措置としての洋上慰霊の実施について御要望を承ってございます。

 政府といたしましては、こうした御要望を踏まえ、かつ感染症の状況もよく見極めながら、元島民の方々のお気持ちに沿いますよう、政府としての支援の在り方をしっかり検討してまいりたいと存じております。

佐藤(英)委員 終わります。

西村委員長 次に、佐々木隆博さん。

佐々木(隆)委員 立憲民主党の佐々木でございます。

 限られた時間でありますので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、河野担当大臣にお伺いをいたします。

 河野大臣が就任をされて、大臣の発信力、大いに期待をされているところでありますが、担当大臣就任以降、ツイッターに投稿した千六百件以上のツイートのうち、北方領土関係は残念ながら十件程度でございます。存在感が薄い、これは私が言ったのではなくて、との報道もあるわけでありますが、元島民からは、日ロ関係が動いていない今こそ世論を盛り上げてほしいという声もあります。いろいろ所管が多岐にわたってお忙しいとは思いますけれども、北方領土についても、SNSを含めて、適切な情報発信をまずはお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、ビザなし渡航などについてお伺いをいたします。

 本年五月、六月のビザなし渡航は残念ながら見送り、そして七月も見送りになったという報告でございます。そもそも協議に入ることができているのかということの懸念もありますが、今後の見通しをお伺いいたしたいと思います。

 また、洋上慰霊も一つの方法ではございますけれども、やはり、元島民のお気持ちを考えれば、上陸した上での墓参やふるさと訪問は大変重要だと思います。何もできないというのではなくて、できることを具体的に模索していただきたいということで、大臣の決意も含めてお伺いをいたします。

河野国務大臣 新型コロナ、ロシアでもまだまだ感染者が多い、若干増えている、そういう現実もございます。そういう中で、なかなか先方からは、現在の緊迫した、新型コロナの感染症で緊迫した状況で、なかなか協議が難しい、今後の感染状況を見極めなければいかぬというような話もございます。

 今年の七月までの事業実施は見合わせるということにしておりますが、例年ベースでは、この四島の交流等の事業は九月末まで予定をされております。そういう中で、可能な限り早期に事業が実施できるように、コロナの状況を見極めながら、しっかりと先方と協議をしてまいりたいと思っております。

佐々木(隆)委員 次に、北方領土問題について茂木外務大臣にお伺いをいたします。

 まず、北方領土返還に関する政府の基本姿勢についてお伺いをいたします。

 菅首相は、昨年の臨時国会の答弁で、日ソ共同宣言を今後の交渉の基本とするとの方針を示されました。一方、今年の通常国会、施政方針演説では、これまでの両国間の諸合意を踏まえて交渉を進めると演説をされました。我が党の枝野代表の諸合意とはとの質問に、シンガポール合意のほか、東京宣言などが含まれると答弁をされてございます。

 日ソ共同宣言は、両国間で正常な外交が回復された後、平和条約を、締結に同意し、ソ連は歯舞群島及び色丹島を平和条約締結後に日本に引き渡すとの宣言でございます。二〇一八年のシンガポール合意は、日ソ共同宣言を基礎として共同経済活動を進めるということを確認をしてございます。先ほど大臣からも答弁のあったとおりでございます。つまり、東京宣言は四島の帰属の解決ということであり、日ソ共同宣言は二島返還の同意という点で大きく違ってございます。

 これについてまずお答えいただきたいのと、茂木外務大臣は、五月十九日の本委員会における所信において、領土問題を解決して平和条約を締結すべく、粘り強く交渉に取り組むと述べられております。四月に公表された二〇二一年版外交青書でも、「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」と記述されてございます。

 そこで、これらを整理する意味でも、我が国の基本的な方針をまず伺いたいと思います。そして、この政府の基本方針の前提が北方四島は全て日本に帰属するということであるかということについても併せて確認させてください。

茂木国務大臣 今の佐々木委員の御質問、全てお答えすると相当長くなってしまいますので、一言で申し上げますと、北方領土、これは日本が主権を有する島々でありまして、平和条約交渉の対象、これは北方四島の帰属の問題である、これが日本の一貫した立場であります。

佐々木(隆)委員 帰属は四島だけれども交渉はそうでもないというふうにも取れるんですが、先ほどの、八時間に及ぶ交渉で進展も明確になったというふうに答えられているんですが、その辺をもう少し、そんなに詳しくなくてもいいですから、もう少し答弁をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、北方領土、これは日本が主権を有する島々であって、この立場に変わりはないわけでありますから、平和条約交渉を行うに当たっては、その対象というのはこの四島の帰属の問題になっていく。そして、現在進めている交渉、これは、二〇一八年のシンガポールでの首脳間のやり取りをしっかりと引き継いで、領土問題を解決して平和条約を締結する、この基本方針の下で行っているということであります。

 当然、八時間に及ぶ議論ということになりますと、様々な問題、過去に議論したことであったりとか、そういった問題も含んでまいります。そういった中で、一つ一つ、これまでの両国で合意してきた内容であったりとか、そういったものを確認しながら、また、ここについては基本的な認識は一致していますねとか、より広い、今、極東を取り巻く安全保障環境がどうなっている、また一方で、日ロ間で様々な経済協力を進めていくということは、この地域全体の発展であったり、また安定にとっても重要だ、こういった幅広い話を行いながら、じゃ、今後、議論を更に詰めていかなくちゃならない分野としてはこういう分野がある、そういう整理をしたということであります。

佐々木(隆)委員 四島が日本に帰属をしている、そこの点はそれは同じでございますけれども、交渉のプロセスの中で二島返還とも受け取れるようなことが何度か出てきておりますので、これは島民だけの問題ではなくて、日本国民として、一体政府はどっちなんだろうという、そうした疑念がかえって湧いてくる、あるいはまた、外交交渉上、日本の姿勢というものも問われるというふうに思いますので、ちょっと今ので必ずしも完全に理解できるような内容ではなかったのでありますけれども、あくまでも四島が帰属をするということは四島返還を求めていくんだということだというふうに理解をさせていただきます。

 その中で、大変気になるのが改正ロシア憲法でございます。二〇二〇年七月のロシア憲法改正によって、ロシア側の日ロ交渉に挑む前提が変わったのではないか。

 政府は、憲法改正後に行われた二〇二〇年九月の電話会談で、菅総理とプーチン大統領が交渉を継続、加速することで合意したと確認をしているわけでありますが、その後、本年二月に、そのプーチン大統領が、日本との平和条約交渉に関連して憲法に矛盾することはしないと。つい先日、六月四日でも、憲法を考慮しないといけないと重ねて発言をしているわけであります。

 この発言は、プーチン大統領がロシア憲法と北方領土問題の関連性について初めて見解を示したものであり、昨年九月の日ロ首脳電話会談における合意を打ち消したのではないか、打ち消してしまう可能性すらある、これまでの外交交渉の積み重ねをないがしろにしようとするものと受け取られるわけであります。

 日本政府としてこの発言を打ち消しておくべきと考えるわけでありますが、この発言のあった本年二月以降、日ロ首脳間あるいは外相間で、意見交換等を行い、日本の立場や主張を伝える機会をつくってくるべきだったのではないかというふうに思うわけでありますが、お伺いをいたします。

茂木国務大臣 一国の憲法の改正によって領土の帰属が決まるというのなら、簡単な問題なんですよ。そういう問題ではないから交渉というのをやっているわけであります。

 実際、昨年の七月のロシア憲法の改正後も、御指摘いただいたように、昨年九月に行われた菅総理とプーチン大統領の電話会談、そして今月上旬に行われましたプーチン大統領の会見でも、プーチン大統領は、平和条約交渉を継続していく、こういった意向を示しているわけであります。

 先ほど申し上げましたように、北方四島は我が国が主権を有する島々でありまして、ロシア憲法の改正によってその法的地位が変わるものではありません。そういった立場から交渉を進めていきたいと思っております。

佐々木(隆)委員 それは、今、茂木外務大臣がおっしゃったとおりで、憲法を超えて交渉しなければならないところは幾つもあるということは、それはそのとおりだというふうに思いますが、ロシアの態度が、そういった意味で、かつてよりも非常に交渉しづらい状況に今なっているのではないかという懸念は、これらの主張の中から多くの国民が感じているのではないかというふうに思うものですから、今お伺いをした次第であります。交渉を継続していただくのは当然のことだというふうに思っておりますが、そこを超えて、是非、国民が安心できるような交渉をお願いを申し上げておきたいと思います。

 もう一点は、北方領土での経済協力についてお伺いをしておきたいと思います。

 八項目の協力プランによる日ロ両国の貿易経済分野の協力によって、目に見える成果が出ているのか。今、コロナのこともあり頓挫しているのかというふうにも思うんですが、その成果が出ていたとして、それが領土問題の解決に貢献しているのかという疑念がございます。

 具体的には、北方四島における共同経済活動について、協議の開催状況及び日ロ両国の法的立場を害さない特別な制度の検討状況、それから、加えて、各プロジェクトの具体的な進捗状況、見通しをお伺いをいたします。

 あわせて、ごみ処理や観光の分野でロシア側が独自に事業を展開しているとの報道もあるわけでありますが、これらについての事実関係も確認をさせてください。

茂木国務大臣 北方四島におけます共同経済活動については、この共同経済活動を含めた様々な協力の取組といったものを通じて、北方領土問題の解決、平和条約の締結につなげていく、こういう考え方の下で、各プロジェクトについて、コロナ禍にあっても、昨年来、オンラインなどを活用して様々なレベルでロシアとの協議を重ねてきているところであります。

 この共同経済活動、五つの分野があるわけでありまして、観光、ごみ処理、海産物の増養殖、温室栽培、そして風力発電、こういった協議を行っておりますが、なお、このうち、観光及びごみ処理の分野については、日本人観光客が参加するツアーであったりとかごみ処理分野の専門家の往来、こういったものが進んでおります。

 同時に、御指摘のように、ごみ処理のプロジェクトにつきましては、サハリンでの入札の問題とか、プロジェクトの内容や関連する法的課題について様々なレベルでロシア側と今協議を重ねてきているところであります。

 今後とも、日ロ双方の法的立場を害さない形での各プロジェクトの実施に向けてしっかりと取り組んでいきたいと思います。

佐々木(隆)委員 時間がなくなってまいりましたが、今大臣からもお話がございましたサハリンの交渉、その前、もう二十年近く前になりますサハリン・プロジェクトというのがあって、これは、私も当時北海道議会議員でしたので関わってきたんですけれども、結果として全部何かソ連の国営にどんどん変わっていってしまって、交渉が結果として日ロ共同という形にはならなかったというような事実もありますので、是非、要するに、ロシアのこの経済協力というのが、結果として、今大臣もおっしゃっていただきましたが、北方領土の返還につながるんだ、日ロの経済協力こそが北方領土返還への道を開くんだということにつながっていかなければ、これは意味が、意味がないというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、そこにやはり我々は期待をしているわけでありますので、その点の決意をお伺いして終わりにしたいと思います。

茂木国務大臣 もちろん、こういった八項目のプロジェクトを進めるにしても、また共同経済活動を進めるにしても、基本的には、我々としては領土問題そして平和条約交渉を加速する、これを基本的な目標としてやっているわけでありまして、単に経済協力が進めばいいということではなくて、基本の目標はそこにある、そこに向けてそういった信頼関係を築いていくということも重要だ、こういう認識の下で進めさせていただいております。

佐々木(隆)委員 終わります。

西村委員長 次に、石川香織さん。

石川(香)委員 石川香織です。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、五月に立て続けに発生しました漁船の事故についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 五月二十六日午前六時頃、紋別市の北東約二十三キロの海上で、紋別漁協所属のケガニ船第八北幸丸、九・七トン、五人乗りと、ロシア・サハリン州沖の海産物運搬船アムール、六百六十二トン、二十三人乗りが衝突しました。漁船は転覆しまして、乗組員五人はロシア船に救助されましたが、三人がお亡くなりになっています。これは日本の海域だったということで、ロシア側もこれを全面的に認めているんですけれども、三人もの貴い命が失われてしまったという事件は、近年ではかなり重大な結果ということになっています。

 日本漁船は九・七トンで五人乗り、ロシア船は六百六十二トンで二十三人乗りということですので、いわばダンプトラックと軽トラぐらいの差があるということであります。当時、日本漁船は、ロープにつないだカニ籠を海底に下ろして操業していました。操業中だったんですけれども、ロシア船が接近したのに気づいたとしても、なかなかすぐに移動するということが不可能な状況だったということでした。そこに横から大型の船が突っ込んできたということでした。

 私も、地元の漁業をされている方、漁師の方にも少しお話を聞いてみましたけれども、これはかなり悪質だという怒りの声も当然多く寄せられる中で、なぜ双方とも高性能のレーダーをつけているにもかかわらず衝突が回避できなかったんだろうか、疑問だと語る方もいらっしゃいました。

 六月七日、海上保安庁は、業務上過失往来危険及び業務上過失致死の容疑でこのロシア籍運搬船アムールに乗っていた三等航海士を通常逮捕しまして、同時に、第八北幸丸の船長も書類送検をされています。

 まず、経緯、それから現在の状況も含めて、改めてまず海上保安庁から御答弁いただきたいと思います。

瀬口政府参考人 お答えをいたします。

 北海道紋別港沖で発生した日本漁船とロシア籍船の衝突につきまして、海上保安庁では、ロシア籍船の三等航海士を業務上過失致死及び業務上過失往来危険の容疑で逮捕するなど、所要の捜査を実施した上、六月八日、同人及び日本漁船の船長を旭川地方検察庁に送致しております。

 一般的に、海上衝突予防法、いわゆる船舶交通のルールでは、航行している船舶は、漁労に従事している漁船の進路を避けなければならないこととなっております。

 一方で、ロシア籍船と日本漁船双方には、他の船舶との衝突のおそれについて十分に判断することができるよう、あらゆる手段により適時適切な見張りをしなければならない義務が課されておりました。

 詳細につきましては、捜査に関することですのでお答えを差し控えさせていただきますが、海上保安庁といたしましては、法と証拠に基づき捜査した結果、今回の送致に至ったものでございます。

石川(香)委員 今詳しくお話しいただきましたけれども、結果的に三人の方が亡くなったという重大な結果を受けましたけれども、ロシア船の乗組員を送致したというのはある意味でかなり異例なことかもしれませんけれども、やはり衝突をなぜ回避できなかったのかということは非常に残念でありまして、今後、調査の中で明らかになってくるものだと思います。

 ただ、日本の領海で、それも操業中の漁船に横から突っ込んで三人の方が亡くなったというこの内容を見ますと、やはり地元の感情としては、日本船長も書類送検されているわけですけれども、日本の船長も被害者であるのにという強い思いがあるのもまた事実であります。こうした地元の声を、茂木大臣、どう受け止めていらっしゃるか、御答弁いただければと思います。

茂木国務大臣 まず、今回の衝突事故でお亡くなりになった三名の方々に対して心から哀悼の意を表するとともに、御家族の皆様に対して謹んでお悔やみを申し上げたいと思っております。

 本件事案につきましては、今海上保安庁の方からもありましたように、既に検察に送致されている事案でありますが、御家族の皆さんであったりとか御地元の皆さんの気持ちというのは当然そうなんだろうと思っております。

 そういう、送致されている事案でありますから、なぜ事故が起こってしまったのか、また、誰に責任があるのか等々につきまして、現時点で私の方からコメントすることは控えさせていただきたいと思います。

石川(香)委員 今、誰に責任があるのかというお話も触れていただきましたけれども、もちろん原因究明というのは今後進んでいくと思うんですが、その中で、焦点の一つというのは補償の内容になってくるのかなと思います。北幸丸側はロシア船を差し押さえてはいますけれども、十分な補償が得られるかというのは今の時点では不透明だと思います。

 更に北海道の漁業者が非常に驚き、悲しんだのは、この二日後にまた事件が起きてしまった、事故が起きてしまったということなんですが、この事件の二日後、また北海道で漁船の事故が発生しました。今度は、五月二十八日、稚内市の宗谷岬東方沖で操業中の稚内機船漁協所属の底引き網漁船第百七十二栄宝丸、これは百六十トン、十四人乗りですので大きな船ですけれども、これがロシア船によって拿捕されました。

 この日の午後、ロシアのサハリン州のコルサコフ港に連行され、乗組員は二週間ほど漁船にとどまる状況が続きましたけれども、十一日の朝に無事に帰港したということが報道でもなされています。

 まず、乗組員の皆さんの御体調をお伺いしたいと思います。お元気なのでしょうか。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御質問のございました第百七十二栄宝丸の乗組員の健康状態でございますけれども、帰港した時点で乗組員全員の健康状態に問題ないことを確認してございます。

石川(香)委員 本当に御家族の方もほっとされたことと思います。

 この事故の内容なんですけれども、ロシア側によりますと、日本漁船が停止命令に従わなかったために、その際、威嚇のために射撃を二発したということなんですが、これが催涙弾なのか、若しくは、もう既に乗組員の方の証言として記事に配信されているものもありますが、実弾二発を船体の後部に撃ち込んだという証言をしているという記事も既に出ていますけれども、この事実関係についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 連行されました当時、当該第百七十二栄宝丸からの通報によりますと、ロシア国境警備局警備艇から信号弾や催涙弾のようなものを撃たれたという情報に接してございますけれども、本件事案に関する事実関係の詳細につきましては、現在、我が国関係当局の方で調査中でございます。

石川(香)委員 この事案の一番の問題なんですけれども、やはりEEZについて双方の主張が異なっているというところだと思います。

 サハリン州の国境警備局は、栄宝丸がロシアのEEZ内で違法操業していたということを主張しておりまして、これによって今回のこの拿捕ということになったというふうな主張をしています。しかし、日本は、日本のEEZで操業していたという正当性を主張しておりまして、外交ルートを通じて既に抗議もされていると思いますけれども、改めて、現在の日本の御認識をお聞かせいただきたいと思います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 日本側といたしましては、当時、この第百七十二栄宝丸は、日本の排他的経済水域、EEZの中で操業していたと判断しておりまして、外交ルートを通じてロシア側関係当局に対し、威嚇射撃を含め、ロシア側による追跡、臨検、連行、留置は受け入れられないと抗議をしているところでございます。

 その上で、本件事案に関する事実関係の詳細につきましては、我が国関係当局が調査しているところでございます。

石川(香)委員 調査内容、今後また明らかになってくる部分があるかもしれませんけれども、これまでも、道内の漁船が日本のEEZ内で操業していたにもかかわらずロシア側に拿捕されるということは度々起きています。これは、地理的中間ラインが日本とロシアで合意した境界ではないことが要因ではないかと考えられますけれども、この状況を放置をしていれば、またいずれこういったことが再び起こってしまうんだと思います。

 北海道の漁師さんだけではありませんけれども、近年、不漁で非常に苦しんでおりまして、必死の思いで海に出ている。こうした危険に漁業者を再びさらすことがあってはならないというのは皆さんの思いだと思うんです。

 漁業者を守るために再発防止策というものが必要とされますけれども、茂木大臣にこのことについてお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 まず、先ほども徳田参事官の方からお答えをさせていただいたように、今回の第百七十二栄宝丸につきましては、日本の排他的経済水域内で操業していた、このように日本として判断しております。

 地理的中間ライン、これは、日本とロシアの関係だけじゃなくて、いろいろな国の間で、中間ラインというのは合意というよりも暗黙の了解のようなところででき上がっている部分というのはかなりあるわけであります。お互いの考えというのがそれぞれあったりする場合もあるわけでありまして、そういったことがやはり事故につながったりとか、事案につながる、問題につながるというのは決していいことではありませんから、再発防止のためにどういうことができるか、よく検討していきたいと思います。

石川(香)委員 もちろんロシアだけではなくて、そのほかの中国、韓国、台湾なども含めて、二国間だけではなくて三国間での協議にあることもあると思うんですけれども、また、それが非常に困難な大変な作業であるということも理解はするんですけれども、特に北海道とサハリンというのは非常に近い、最短で四十キロということで、常にこうしたことが起こり得る環境の中で漁業者の方は操業していることになるということですので、改めて、地元の漁業者の方の身の安全をしっかり守れる環境づくりというものについて、今後もしっかり対応していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 では、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 私は、令和元年の第三回北方四島交流訪問事業に行ってまいりました。なかなか委員会で御報告ができませんでしたので、今日はそのとき撮った写真の一部を資料としてお配りをしていますので、初めに、少しこの写真について触れながら質問をさせていただきたいと思います。

 八月二十三日から二十六日までの日程でありましたけれども、まず一番最初の、一番の写真は日本人の墓地ということでして、御覧のように草が非常に生い茂った状態でして、手入れが全く行き届いていない状況です。この日は非常に激しい雨だったんですけれども、自力でここに行くというのも非常に大変でありました。

 二番の写真は幼稚園です。二〇一八年に完成したそうなんですけれども、非常に教育の分野にも本国は力を入れておりまして、保育料に関しては国の補助がありまして、三人目からは無料になるということで、ルールで、身長に合わせて机を設置するということが義務づけられていて、皆それぞれ違う机に座っていたり、早生まれの子は、幼稚園に残りたい子はもう一年残っていいとか、きめ細やかな対応をしているというのが非常に印象的でした。

 三番目はスポーツ施設です。島には二十の施設があるそうなんですけれども、本国、積極的な長生きをスローガンにしているということで、非常にスポーツ施設の建設ラッシュということでありました。

 四番はスーパーマーケットで、生鮮食品は非常に貴重だということで、魚はほとんど冷凍、それから塩漬けやオイル漬け、お肉は一〇〇%冷凍でありまして、ケーキなんかも冷凍が多かったですね。

 それから、五番目はある日の夕食ということで、やはり魚が非常に多かったです。サラダも出る日もありますけれども、やはり生鮮食品、貴重ということで、毎日ではありませんでした。

 非常に予定も充実をしておりまして、墓参、それから視察、ホームビジット、視察、住民交流会、市街地散策など充実して、私は非常に勉強になったんですが、その一方で、ちょっとスケジュールが過密過ぎるのではないかということについて御質問したいんです。

 基本的にみんな一緒に行動しなければなりませんので、途中でもし誰かが体調が悪くなってしまうと一同が足止めになってしまうということでした。とてもその状況の中で、私はちょっとここで休憩させてほしいとなかなか言い出せない雰囲気であるのかなと。このことは、同行していたお医者さんも、ちょっと不安に感じているということでこのことを言っておりました。

 元島民の方々の年齢も高くなってきている、もっと多くの人に北方領土に関心を持ってもらって、来る機会も触れる機会も増やしてほしいということであれば、行程についても、誰でも参加できるような内容に、少し柔軟に対応していくということも必要ではないかと参加してみて思ったんですが、このことについてお伺いさせてください。

松林政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、実態でございますけれども、四島交流事業、ビザなし交流の島内でのスケジュールにつきましては、参加者の御要望を踏まえつつ、我が方実施団体と四島側実施団体の間で協議して決めております。

 その実施に当たりましては、行程の途中で適宜休憩を取っていただいたり、目的地まで行くことが難しいという場合には同行せず待機してもらうなど、高齢者の方々にも一定の配慮をしてきているところでございますが、いずれにいたしましても、本日御指摘をいただきましたので、御懸念のようなことにならないよう、参加者の声を一層丁寧に聞きつつ、特に、高齢化している元島民の方々にもきめ細かく配慮をした行程とするべく、適切に考えてまいりたいと存じます。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 私自身は非常に充実していたと感じたんですが、私が行ったときは、十代の学生さんから、やはり六十代、七十代の方も一緒のグループだったので、その中で意見がいろいろあったんだろうなということがありましたので、御質問させていただきました。ありがとうございました。

 続いては、先ほどから委員の御指摘が続いておりますけれども、五月、六月は残念ながらビザなし渡航が見送られた、七月以降についても難しいという判断になったということでした。非常に残念だという思いもある中で、ただ、このコロナの状況を含めて考えなければいけない、そういう難しい中で、それぞれ、北方領土のいろいろな行事も行われてきました。今年の二月七日、北方領土の日に行われました北方領土返還要求全国大会、これも無観客で、オンラインで開催をされたということでした。

 コロナの状況も含めていろいろ対応している中で、慰霊の形も変化をしていく必要があるのではないか、検討されるべきではないかと思うんですけれども、洋上慰霊について少し最後にお伺いさせていただきたいと思います。

 コロナの状況だけではなく、元島民の皆様方の高齢化が進んでいるということがあります。もちろん、島に上陸するということが一番大切なんですけれども、こういった状況の中で、洋上慰霊の必要性とか実現性ということについて、改めて河野大臣にお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 先ほどから申し上げているように、七月までについてはコロナの状況でなかなか事業が難しいということでございます。千島連盟や北海道からは、その代替としての洋上慰霊という御要望もいただいておりますので、今後のコロナ感染症の状況などを見極めながら、政府として様々検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

石川(香)委員 要望も上がっているということですので、しっかりその要望についても御検討いただきたいと思います。

 時間が来ましたけれども、六番は、島の方が島を出るときに、いずれすぐ帰ってくると思って日用品を土に埋めたものを掘り返したものだそうです。お茶わんとか日用品がたくさん埋められているのを見て、私も思うところがたくさんありました。

 また機会があれば質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。

西村委員長 次に、篠原豪さん。

篠原(豪)委員 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。篠原豪でございます。

 今日は、我が国の固有の領土である北方四島の話がありましたけれども、私からは沖縄について聞かせていただきます。

 まず、普天間の返還問題についてお伺いをさせていただきます。

 米クリントン政権で駐日大使をお務めになられて元副大統領のモンデール氏が四月に死去されました。駐日大使在任中の一九九六年の四月に、当時の橋本龍太郎首相と、最大の懸案だった普天間飛行場を五年ないしは七年以内に日本に全面返還をするということで合意したことは、これはモンデール氏の歴史に残る業績だったと私は思います。

 しかし、あれから四半世紀ですね、もう二十五年になります。この二十五年たった今も、代替施設とした名護市辺野古への移設は、なお実現の見通しは立ちません。

 なぜ二十五年間、事態が動かなかったのかということでございます。その根本的な原因はどこにあるとお考えでしょうか。まず、このことについて、河野大臣と茂木大臣にそれぞれのお考えをお聞かせいただければと思います。

河野国務大臣 所管外でございます。

茂木国務大臣 まず、モンデール駐日大使がお亡くなりになられた。アメリカで上院議員、さらには副大統領もお務めになり、特に駐日大使としては、様々な形で日米関係の強化、さらには沖縄の基地負担の軽減にも大きくお取り組みになった。改めてその大きな業績に心から敬意を表し、また、改めて哀悼の誠をささげたい、このように思っております。

 市街地に位置をして、住宅、学校で囲まれている普天間飛行場の固定化、かつてラムズフェルド国防長官も現地を初めて訪れたときに、こんな危険な飛行場があるのかと本当に驚かれたぐらいでありまして、この固定化というのは絶対避けなくてはいけない、こういったことで政府と地元の皆さんの認識というのは共通をしているんだと思います。

 そのために、普天間飛行場の一日も早い移設を図りたいということで、普天間飛行場につきましては、その危険性の除去に向けて、例えば、空中給油機の岩国飛行場への移駐であったりとか、オスプレイの沖縄県外への訓練移転等の成果も積み重ねておりますが、この普天間飛行場の辺野古への移設ということについては、日米間で合意をし、当時の沖縄県知事とも様々な了解を積み重ねてきたわけでありますが、沖縄での様々な、政権の交代等々もありまして、現在それには至っていない、このように考えております。

篠原(豪)委員 私は、この九六年四月の日米合意は、前年九月に大変痛ましい事件が起きたことがきっかけになったということは間違いないと思っているんですが、また、同年二月に出された東アジア・太平洋安全保障戦略、いわゆるナイ・レポートですね、これが重要だったんだろうというふうに思っています。

 対ロ同盟を主眼とした日米同盟が、冷戦終結によって、当時の言葉で言うと漂流していたということでございます。そして、同じ年の四月、日米首脳会談で日米安全保障共同宣言が出され、アジア太平洋における米軍の十万人の体制維持が確約されたことで、当面の政治危機、この漂流状態というのが回避されたということだったと思っています。

 このときから普天間の代替基地建設の問題は米側の戦略上の問題とは切り離されて、なぜかというと、日米安全保障宣言では、有事駐留はしない、平時駐留をするといって、戦略上の問題がなくなって、あとは普天間の代替施設をどうするのかということになったわけで、その後出てきたのがたしか海上ヘリポート案だったと思います。これは後で時間があればやらせていただきますが。

 これは大手しか工事ができないということで、何を具体的にどこに造るのかということは日本側の国内問題になってしまったことが、ここまでの長い時間を要している根本原因であると考えますし、国内政治上の分断の深刻さを懸念しているところでございます。そして、この問題をやはりしっかりと受け止めて、解決策を考えていかなければならないときが来ているのではないかと私は考えております。

 この間、この難題に向き合った首相は十一人になります。十一名の方がやられています。合意をまとめた橋本龍太郎さん、そして沖縄のサミット開催を決めた故小渕恵三氏ら、沖縄の苦難の歴史に対して思いをはせ、対話に心を砕かれていた首相もいらっしゃったんだと思っています。

 しかし、これはなかなか申し上げにくいんですけれども、第二次安倍政権以降の八年にわたっては、知事選や県民投票で繰り返し示された辺野古はノーだという民意を顧みることもなくて、問答無用のごり押しが続いているんだと思います。

 沖縄の分断を広げようということ、殊更広げるということは、こういう姿勢はやはりあってはいけない。そして、その姿勢そのものが先の見えない状況をつくり出したのではないかと思っている。その意味で、第二次安倍政権の官房長官であって、そして首相として一貫して意思決定の中枢にいた菅首相の責任は、これは重たいものがあるんだと思っています。

 バイデン政権になって初めて開きました三月の2プラス2でも、岸防衛大臣が辺野古の航空写真を米側にお見せして、そして工事が着実に進んでいるんだといって説明をして、両政府が終了後に発表した共同声明でも、辺野古移設が唯一の解決策だとして、これも問答無用の姿勢を押し通しているというふうに言われることもあるわけでございます。

 無論、台湾から北東へおよそ六百五十キロに位置している沖縄の尖閣、沖縄県尖閣諸島にも近い沖縄本島は戦略的な要衝であるということには、これは違いはありません。そして、米海兵隊が中東に展開する拠点でもありますし、横須賀の基地を母港とする米第七艦隊、これは私の選挙区のすぐ先のところなんですけれども、横須賀市のですね、もうほとんど私の選挙区から数キロのところにあるんですけれども、そういったところでございますけれども、この第七艦隊も寄港いたします。そして、米政府が普天間の返還を決意したのも、沖縄を今後も安定的に使用するために重い政治決断をしなければいけないという発想があったんだろうというふうに思います。

 しかし、その交換条件とされた辺野古基地建設は、埋立予定地に軟弱地盤が見つかったことで先の見えない状況に陥っているというのも、これも累次この国会でも言われていますが、政府は、軟弱地盤が発覚をして計画の見直しが必要になったことで、一九年の末、それまで二二年度以降としていた普天間基地の返還の時期を三〇年代半ば以降に延期しました。さらに、総工費も従来想定の二・七倍となる九千三百億円に膨らんでいる。しかし、その後も契約変更が繰り返されていて、その都度、工費が増加していると報じられています。

 さらに、政府が申請している地盤改良工事の承認の問題も、県との訴訟に発展すれば、これは政府が目指す三〇年代の移設の完了も遅れることは必至なんだろうと思います。アメリカのシンクタンクのCSIS、これは戦略国際問題研究所ですけれども、二〇二〇年の十一月の報告書で、完成する可能性は低いと公表したということは周知のことです。

 こういった現状を踏まえて、そろそろ埋立計画を見直すこともアメリカ側と再交渉をする、あるいは話合いの土台に上げるべきときが来ているんじゃないかと思いますけれども、このことにつきまして大臣の見解を伺います。河野大臣と茂木大臣とそして防衛副大臣にも聞かせていただきたいというふうにお願いを伝えているんですけれども、よろしいでしょうか。

河野国務大臣 所管外でございます。

茂木国務大臣 この沖縄の基地負担の軽減の問題、篠原委員の方から御指摘がありましたように、橋本総理、当時は梶山官房長官でした。そしてまた、小渕総理、当時は野中幹事長でありましたが、沖縄の心を心としてしっかりとこの問題に取り組むという姿勢を示されていた。私も、当時若手議員でありましたが、そういった言葉をよく覚えております。

 どこから混乱が起こってきたか。人によっては、大体二〇〇九年ぐらいから起こってきたのではないかなと言う方もいるんですけれども。まあ、どなたがと言うつもりはないんですが。

 なかなかそういった負担軽減につながっていないという部分と、一方で、先ほど申し上げた三つの機能の中で二つについては、辺野古に移すのではなくて、岩国であったりとか代替の施設を見つけるということで成果が上がっているのも確かではないかな、このように考えておりまして、三月の十六日の2プラス2でも、単に辺野古に移すんだということではなくて、これは危険性を除去するために必要な手段としてやっていくんだということでありまして、篠原委員も御案内のとおり、我が国を取り巻きます安全保障環境、これがより一層厳しさを増す中で、抑止力の維持と負担の軽減、どう両立させていくか、こういう観点からしっかり取り組んでいきたいと思っております。

    〔委員長退席、佐々木(隆)委員長代理着席〕

中山副大臣 ありがとうございます。

 普天間飛行場代替施設建設事業につきましては、沖縄防衛局においてしっかりと検討を行ってきておりまして、地盤改良につきましても、十分に安定性を確保し、護岸等の施工が可能であることを、有識者で構成される技術検討会において御確認をいただいており、飛行場として問題なく建設可能であります。

 また、こうした検討内容につきましては、米側にも説明を行い、確認をしてきております。

 そして、先般、四月の十六日の日米首脳会談を始め、米国政府との間で累次にわたり確認をしてきているとおり、日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策であり、この方針に基づいて着実に工事を進めていくことこそが、まさに普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現をさせ、その危険性を除去することにつながると考えます。

 防衛省といたしましては、引き続き地元の皆様方の御理解を得る努力を続けながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するべく、辺野古移設に向けた工事を着実に進めてまいりたい、かように考えてございます。

篠原(豪)委員 従来の政府説明でございますので、なかなか議論がかみ合わないのかなとは思うんですけれども。

 私は、米側は、辺野古基地建設は日本国内の問題であるとも考えて、介入する考えは余りないんじゃないかと思っています。日米同盟さえ盤石であれば、代替案たり得る枠内で柔軟に対応してくださるんじゃないかというふうにも考えていまして、問題は、沖縄においてここまで深刻化している政治分断をやはり早く解きほぐすことも考えていかなければいけない。それなくして完成するとはとても思えないんですよね。

 埋立計画の見直しを例えばするとしたときに、今そういうことを考えていないというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、やはり、二〇一九年の二月の埋立ての賛否を問う県民投票では、実に七割が反対しているわけです。

 その埋立計画のベースになっているのは、沿岸部を埋め立てて、千八百メートルの滑走路二本を配置をするという新基地の建設ですけれども、元々は、撤去可能な海上ヘリポートを造りましょうよという、撤去可能な海上ヘリポートですよ、造りましょうという至ってシンプルな計画だったはずなんですよ。それがなかなかこういうふうにできなくなってきているので、アメリカでは、米海兵隊の戦闘機の配備や戦略をまとめた一九年度の航空計画で、一八年度までは普天間の代替施設の計画が掲載されていたんですけれども、これが削除されてしまって、代わりに、二八年の米会計年度まで普天間の飛行場を継続使用する計画が記されてしまっているわけです。

 米側も、現在の計画が現実性があると考えていれば、全くないと考えて、そのときまで無理だろうという話で計画を変えているわけなので、こういったこととすれば、現在の大規模な埋立計画に変貌してきたのは様々な政治的な思惑があってのことだと思います。

 固定翼機の運航を排除して、事実上、例えばオスプレイのみに特化した小規模の基地に変更して実現する可能性とか、考えてみたらいいと思うんですよね。やはりそれを、玉城デニー知事も、沖縄に約七〇%が集中する在日米軍基地の施設を五〇%以下にすることを目指すと議会で表明しているわけですから、妥協の余地もあるんじゃないかというふうに、大きいんだと思います。

 ですので、日米同盟と米軍の日本への前方展開を認めることは、米側との交渉の大前提だというのは私もそう思っているんです。だけれども、この国内の不毛な対立を解消して日米同盟をより安定的に維持することは、やはりこうやって早くきちっとやっていくことも米側の戦略上の利益にも沿うことじゃないかと考えますので、今言ったようなことについてどう思われるか、お伺いさせていただきたいと思います。

中山副大臣 私ども防衛省といたしましては、今御指摘の点も踏まえまして、様々な機会を捉えて沖縄県の考えを伺うとともに、普天間飛行場の危険性除去と辺野古移設に関する考え方、それから沖縄の基地負担軽減を目に見える形で実現するという政府の取組について引き続き丁寧に御説明を申し上げ、地元の皆様方の御理解、御協力を得られるよう粘り強く取り組んでまいりたい、かように考えてございます。

茂木国務大臣 そんなに篠原委員と私、これまで申し上げてきたこと、違っていないと思うんですけれども。

 普天間が持っている機能を全部持っていくということじゃなくて、先ほどから、抑止力の維持と危険性の除去、この二つを考え合わせた上で、普天間が持っている三つの機能のうち、空中給油と緊急時における航空機の受入れ機能、この二つは県外に移って、残っている一つのオスプレイとその他の回転翼の機能を辺野古に移す、こういった形で、できるだけ速やかにということで進めていると理解をいたしております。

篠原(豪)委員 本当に米側が、戦略上、やはり日米同盟をより安定的に維持していくというのは大事なことだと思いますので、そのために、具体的にどういうプランだったら実現していくのか。今言ったような、なかなかできないんじゃありませんかということを米側の中のところで発表されていたりもするので。そして、沖縄には分断というものがある。

 これはやはり、茂木大臣には本当にありがたいと思っていますけれども、寄り添われたそういう先輩方が、私からすれば大先輩ですけれども、いらっしゃって、それを見られたということで、それを教えていただいて私もありがたかったです。そういった思いも踏まえて、やはりこれは現実的に解決していくということをお願いをしたいと思っています。今日、この場では難しいんでしょうけれども、そういった意見があるということも受け止めていただければと思います。

 最後に、沖縄の振興予算の問題について河野大臣にお伺いします。

 今日お話ししていますけれども、沖縄の心に寄り添い、できることは全てやると菅首相は言われていますけれども、安倍内閣の官房長官時代からの実際の振る舞いは真逆じゃないかと言われることが多いんです。

 なぜならば、施設の受入れと振興策を関連づける姿勢を推進してきたのは菅首相本人です。二〇一三年に仲井真知事、当時の方が、辺野古埋立承認を前に、安倍晋三首相が二一年度まで毎年三千億円台の予算を確保することを約束しましたが、一四年度末に辺野古反対の翁長知事が就任して以降、これは減額傾向で、一八年度からは三年連続、過去最少の三千十億円になりました。中でも、使途の自由度が高くて、県が市町村の使い道を取りまとめる一括交付金、これを毎年減額してきました。一方で、一九年度には県の頭越しに市町村に直接、交付金を交付する沖縄振興特定事業推進費というのを新設して、二一年度概算要求でも八十五億円計上しました。

 これはよく沖縄の分断をいとわないあめとむちの手法だったと言われていますけれども、こういったことは、やはり河野大臣には、こうやって言われるあめとむちの手法というのをどういうふうに評価されているのか、そして、新しい姿勢を示されるお気持ちがあるのかどうかだけ最後にお伺いして、私の質問とさせていただきたいと思います。

河野国務大臣 現行計画では、それ以前と比べて一段高い水準の予算を確保してきておりますから、あめとむちの手法というのは当たらないと思います。

篠原(豪)委員 私がお伺いしたかったのは、あめとむちの手法についてどう考えるのかということもですけれども、今日はお伺いすることができなかったので。時間ですからやめますけれども、また教えていただきたいと思いますので、その機会にはよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

    〔佐々木(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

西村委員長 次に、屋良朝博さん。

屋良委員 立憲民主党の屋良朝博です。よろしくお願いいたします。

 今日は、振興策についてお伺いしたいと思っております。

 まず、沖縄、離島県でありまして、様々な面でコスト高と言われておりますけれども、その中でも物流コストですね、沖縄の物流コストが本州に比べて高いとよく言われておりまして、そこでお伺いしたいんですけれども、全産業、全業種の売上高に占める物流コストの割合を全国平均と沖縄の比較ができるような数字がありましたらお教えいただきたいんですけれども、国交省さん、お願いします。

金井政府参考人 お答えいたします。

 売上高に占める物流コストの割合は、日本ロジスティクスシステム協会の調査によりますと、二〇二〇年度における全業種平均で五・三八%になっております。しかし、この数字は、都道府県別の数字は公表されておりません。

 しかしながら、委員御指摘のように、お尋ねがありました沖縄の物流コストに関して言いますと、例えば東京―沖縄間の輸送コストについて、航空便を例に取りますと、十キログラム超二十キログラム以下の貨物につきまして、航空会社の公示運賃は、羽田空港と那覇空港との間でおよそ九千円から九千五百円程度となっております。一方、東京と沖縄以外の地方との間の輸送として、北海道を例に取りますと、羽田空港と新千歳空港との間の同様の運賃はおよそ六千五百円から七千円程度となっているところでございます。

屋良委員 ありがとうございます。

 一・五倍ですね。北海道と東京、東京と沖縄の、同じものを空輸した場合の値段というのが一・五倍違うということはかなり大きい。そうすると、これは産業とか生活コストにそのままもろに跳ね返ってくるんじゃないかなということなんですけれども。

 今、沖縄の、都道府県別の割合がよく分からないということなので、私もさんざん調べてみたんですけれども、セブンイレブンの沖縄進出に伴うときの記事で非常に興味深いものを見つけまして、二〇一九年五月の流通ニュースですけれども、皆様にお配りした資料一でございます。

 こういったコンビニエンスストアは、加盟店から、本社はロイヤリティーという形で売上げの何%か決まったパーセンテージを払ってもらうというふうな仕組みで成り立っておりますけれども、沖縄は、二〇一九年に進出したときに、沖縄地域特別条件というのを設定しまして、ほかの地域と比べたら五%ディスカウントしてスタートしている。

 その理由について、この記事では、沖縄では配送コストがほかのエリアよりも高い。それから、セブンイレブン、総菜が非常に人気のコンビニなんですけれども、そうすると、そこで生鮮野菜が必要になってくる。沖縄の場合、生鮮野菜がほかの地域に比べて高い。これは輸送コストが上乗せされているということが容易に想像されるんですね。

 そうすると、このまま加盟店から同じ割合でロイヤリティーを取ると、粗利益が少なくなって商売ができなくなってくるという判断で、ほかの地域、ほかの都道府県の地域のビジネスチャンスと公平性を保つために、沖縄に対しては沖縄地域特別条件を設けたというふうな記事がとても参考になるなというふうな気がしております。

 資料二、続けて説明させていただきたいんですけれども、これは、私、去年の四月に、コロナの緊急事態の中で、沖縄に帰れない、地元に帰れない時期が長く続きまして、土日の手持ち無沙汰というか、時間を潰すためにどうしようかと思っていたときに、ちょっとサイクリングでもしてみようかと思って自転車を買ったんですね。

 自転車を買ったときのその輸送コスト、送料なんですよ。横の方にちょっと、見えにくいかもしれませんけれども、二万一千七百九十一円の自転車を買った。東京で買ったので送料はゼロ円でした。ちなみにと思って沖縄と北海道を調べてみたら、青森県から鹿児島まで送料ゼロ円、北海道で買うと五千五百円かかるんですよ。これを沖縄で買うと、何と一万五千円。二万七千円のものを買って一万五千円の送料。これはすごい生活負担、コストの負担だなというふうな気がしております。

 事ほどさように、物流の価格格差、これは振興の阻害要因になっていると様々な場面で指摘をされております。割高な輸送コストが不安定な物とか人の輸送につながっているというふうなことで、振興の、沖縄の経済発展の一つの大きなおもしになっているのではないかというふうな気がしておりますけれども、そのような観点で、内閣府沖縄振興局では、振興策の一環として、こういった物流コストの軽減策、このコスト高に着眼した上での対策は、これまでどのようなものがあったのか、お知らせください。

宮地政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の沖縄振興の取組の中で、物流コスト軽減のための施策の例を挙げますと、沖縄から本土向けに出荷する農林水産物の輸送費を軽減する県の取組に対しまして一括交付金による支援を行っています。この取組による出荷量は、平成二十五年度の五万二百九十八トンから、令和元年度には六万一千三百四十トンに増加しています。

 また、民間事業者が県産品を海外に輸出する際に、県が航空コンテナスペースを借り上げて民間事業者に提供するための費用に対しても一括交付金による支援を行っています。この取組による輸出量も、平成二十五年度の二百六十九トンから、令和元年度には四百七十八トンに増加しておりまして、それぞれ活用されているものと認識しています。

 このほか、税制の方では、航空貨物便の運賃低廉化も目的といたしまして、沖縄路線に係る航空機燃料税の軽減措置を講じているところでございます。

屋良委員 一括交付金を活用した物流コストの軽減策、これは合わせて大体三十億円くらいになるかというふうにこの間レクを受けたんですけれども、どれも一括交付金からということで。

 どうですかね、バランス的にいって。産業をこれから育てたい、所得を上げていく、それが恐らく振興の最大の目標だというふうに思うんですけれども、沖縄が復帰してから来年五十年を迎えますけれども、これまでの振興策は、やはり、戦争があって、社会インフラが全て破壊されて、アメリカ軍の統治があって、社会インフラ整備が遅れたのをキャッチアップするために、復帰からこの間、キャッチアップするために、一括計上と、それから高率補助という、公共工事が物すごくやりやすいような仕組みがあって、それで沖縄の自動車道とか空港とか港とか、非常に整備されました。おかげさまで観光客が増えて、実質経済成長率は国内でも結構高い位置で推移しているというふうなことなんですけれども、ただ、残念ながら、公共工事と観光業に偏った産業構造になってしまって、富の分配がなかなかうまくいかなくなってしまったというのが現状だと思っております。やはり、製造業が育っていないということが所得を上げ切れない大きなネックになっているというふうに考えられます。

 いろいろな面でそういった指摘が専門家から出ているんですけれども、そういう産業振興を促進するためにも、民間活力を生かす方法、例えば物流コストに着目した場合、中小企業に対する支援メニューとして、間接的に物流コストの圧迫感を解消できるような方向も考えるべきではないかと思うんですけれども。

 そういった意味で、これまでの振興策、社会インフラ整備を中心とした振興策から、こういった産業に重きを置いたような、産業振興に重きを置いたような振興策にかじを切っていくいいきっかけが来年の五十年、半世紀じゃないかなというふうに思ったりもするんですけれども、河野大臣、その辺の御所見を賜りたく、お願いします。

河野国務大臣 物流コストが足かせになっているというのは御指摘のとおりというところが多大にあると思います。東京から沖縄への物流、それから沖縄の本島と離島の間の物流、多分、二つ考えなければいけないことがあるんだろうと思います。

 そういう意味で、物流コストを何らかの形で軽減をしていくということが、産業の振興も、あるいは日常生活のコスト高の解消という、両面からやはり必要になってくる。次はそうしたところにかなり重きを置く必要があるのかなと思いながら、今、様々な数字を見ているところでございます。

 また、最近、沖縄では半導体関係の産業の集積が少しずつ出てきておりまして、ああした、そんなに大きかったり重くなかったりするけれども単価が高いというものは、物流コストを今の状況でも吸収してきております。

 そういう意味で、物流コストが大きくない産業というところにもしっかり着目をする必要があろうかと思いますし、全体的な物流コストが下がっていけば、そういう産業の競争力というのは更に強くなるわけでございますから、御指摘のとおり、そこは非常に重要な視点というふうに我々も考えているところでございます。

屋良委員 どうも御答弁ありがとうございます。

 確かに、物の物価の違いを物すごくひしひしと感じるんですね。東京で、宿舎で自炊をして、もやしを買うと、ここだとワンパック大体三十円ぐらいなんですね、三十円とか四十円。沖縄で買うと八十円とか九十円なんですよ。そんなするんですわ。それをかみさんに話したら、何で東京が安いのというふうにちょっと腹を立てていたので、そこのところは、やはり、政治と行政のしっかり方向性を見据えた上での手法、やり方、方向性をちゃんと定めた上でやるというふうなことで、今の大臣の御答弁、大変勇気づけられる御答弁だったと思います。

 それともう一つ、コストですね。

 沖縄では、唯一、鉄軌道がないんですよ、鉄道が。今般の第五次沖縄振興計画でも鉄軌道の導入に向けた調査が続いてきており、年間の予算で大体一億円ぐらいかけてその調査が続いてきたというふうに聞いておりますけれども、十年間調査をした結果、導入に向けてどのような結論が得られたのかというのを内閣府の方から御説明ください。

宮地政府参考人 内閣府におきましては、沖縄振興特別措置法第九十一条の規定に基づきまして、沖縄における新たな鉄道等の整備の在り方について調査を実施してきております。

 これまでの調査におきましては、部分単線化ですとか、あるいは小型車両の導入といったコストの縮減方策、そして、最新の開発プロジェクトを反映するといった需要予測の精緻化などを順次検討してきておりまして、結果といたしまして、事業効率性を評価するBバイC、費用便益比につきましては、平成二十三年度の調査で〇・三九でありましたものが、小型車両といったことも加味をした上で、令和元年度の調査では〇・七一になっています。

 また、事業採算性を示す開業後の四十年間の累積損益は、平成二十三年度の調査で約六千五百億円の赤字でありましたものが、令和元年度の調査では約二千八十億円の赤字となるといった形で、徐々に改善はしてきているという状況でございます。

 しかしながら、依然としてBバイCは一を下回っておりますし、また、開業後の四十年間の累積損益も赤字であるといった課題は引き続き残されているかと考えておりまして、これらの課題が解決される必要があるのではないかと考えているところでございます。

屋良委員 それでは国交省にお伺いしますけれども、鉄道事業認可に当たって、安全性や持続可能性などの評価をする一方で、このBバイCという評価指標、これはどのように見ればいいのか。余り対象にならないよというふうなことも伺ったりするんですけれども、国交省さん、お願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 鉄道事業の許可申請があった場合には、申請内容が鉄道事業法第五条に基づく基準に適合するかどうかについて審査の上で許可を行うことになります。

 鉄道事業法第五条に基づく許可基準といたしましては、事業の計画が経営上適切なものであること、事業の計画が輸送の安全上適切なものであることなど四つの基準がございますが、委員御指摘の費用対効果につきましてはこの許可基準には含まれておりません。

屋良委員 だから、内閣府がこれまでずっとこだわってきたBバイCというのは国交省の評価基準にはないということですよ。それをずっと、十年かけて〇・三九から〇・七一に引き上げた。これで十年間沖縄の鉄道導入がずっと先送りされてきて、それで、これからいつできるのか分からない。

 資料の三を見ていただきたいんですけれども、これは沖縄のバス運賃と東京都営地下鉄の料金の比較です。都営地下鉄は延長四十七キロあるというふうにネットで分かったんですけれども、その間の料金が百八十円から最長四百三十円。沖縄で同じ距離をバスで移動した場合、千四百二十円ですよ。

 この差は何なんでしょう。ずっとBバイC、BバイCと言っていて、大量輸送交通機関が弱い沖縄でバスを利用する人というのはやはりお年寄りとか学生さんですよ、この人たちにこんなに移動コストを課していて、行政の方ではBバイC、BバイC、国交省に聞いてみたら、いや、それは評価基準の対象ではありませんという、これはどういうことでしょうか。

 これほど沖縄の移動コストが高い。今、バスを利用するのはちょっと、定時性とか交通渋滞とかいろいろあるので、大体車で移動します。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、もしかしたら、持っていたら、大体家で二、三台とか、三、四台持っている家もあって、その車両の購入費、メンテナンス費、ガソリン代、そして行った先での駐車料金、これを考えたときに、物価は高いわ、移動コストは高いわ、これはちょっと、この差というのが、格差。振興策というのは、やはり格差を是正し、生きている人たちの生活を向上させるための振興策ではないかというふうなことを思うんですけれどもね。こういうことがずっと続いていると、振興策って本当に何なのかなと。

 確かに、公共事業がやられて住みやすくなりました。しかし、生活コストはとても高いし、産業の振興を考える上でも、この二つのコストというのが大きな阻害要因になっているということなんですね。これは是非クリアしていただきたい。いつまでもBバイCとかと言っているよりも、だって国鉄がそうじゃないですか。国鉄は、国の責任でちゃんと全国で鉄道を敷設して、赤字が出たら、清算しましたけれども、たばこ税でその赤字を補填している。沖縄の喫煙者もそれを払っていますよ、税金。不公平だと僕は思うんですけれども、そこのところをちゃんと、これはやはり政治のリーダーシップだと思います、大臣。もし御所見があれば一言いただきたいんですけれども。

河野国務大臣 そもそもの移動コストがそれだけ高かったら、なぜ鉄軌道のBバイCがそんなに低いのかなというのを、率直な私の感想でございます。本来、移動コストが高いならば、BバイCの数字がもっとよくなければいけないんじゃないかな。

 それから、四十年の累積が、やはり赤字が解消されないというんですけれども、一年前の数字と一年後の数字を見ると一千億円ぐらい変わるんですね。三千億円の赤字だったのが、一年後の計画を見ると二千億円の赤字ですと。いやいや、その調子でいったら、二年後には黒字になるじゃないかという。

 ですから、これ、いろいろな計算の仕方、あるいは、技術が変われば、多分BバイCも累積赤字も変わるんだろうと思いますので、もう少し現実的に、どういうことをやったら移動コストが安く、しかも定時性が担保されてというような乗り物が導入できるのか。これはやはり真剣に考えないといかぬと思います。

 みんなが車を運転して、結果、渋滞がひどいというのでは、ほかのデメリットも出るわけでございますから、こういうものを導入した結果、気候変動対策にもなり、定時性も担保され、コストも下がるというようなことになるのであるならば、これは積極的にやるべきなんだろうと思います。

屋良委員 どうもありがとうございます。

 物づくりでも、作ったところから那覇空港とか那覇の港とかに運ぶ、その陸送でも、やはり輸送コストがかかって割高になっているというんですね。

 この件、是非、大臣、検討していただき、ほかの県といっても、沖縄って百四十万県民おりますので、ほかの県、もっと小さな人口はあるので、そこで本当にBバイCを厳格に求めてきたかということですよ。それはないと思います。そういったことも含めて、不公平感のないように是非やっていただきたいというふうにお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、赤嶺政賢さん。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 次期沖縄振興計画に関し質問をいたします。

 沖縄の本土復帰から来年で五十年になります。これまで五次にわたる振興計画に基づいて社会資本整備や産業振興が取り組まれてきました。県民自身の努力と相まって、観光業を始め、一定の成果を上げてきた一方で、依然として大きな課題となっているのが、全国最低水準にある県民所得をどう引き上げていくかということであります。

 この点に関わって、今日取り上げたいのは、建設業で働く労働者の賃金の問題です。この間、建設業の担い手確保の観点から、公共工事の予定価格の積算に用いる公共工事設計労務単価が全国的に引き上げられてきました。沖縄も、二〇一二年度は一万五千九百八十円でしたが、今年三月の時点で二万五千六百二十五円となっています。全体で六〇%の引上げになっております。

 ところが、労働組合の方々に伺いますと、実際に職場の現場の労働者が受け取っているのは設計労務単価の五割から六割程度で、引上げ額も微々たるものとのことでありました。

 まず、国土交通省に伺いますが、こうした現場の声や支給実態について、どのように把握し、国土交通省としてどのような取組を進めているか、答えてください。

天河政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省におきましては、公共工事設計労務単価につきまして、平成二十四年度に法定福利費を反映させる形で引上げを行って以降、本年三月の直近の改定まで九年連続で引上げを行ってまいりました。また、公共工事の品質確保の促進に関する法律の趣旨を踏まえ、国、地方公共団体を通じまして、予定価格の適切な設定、ダンピング受注対策などに取り組むとともに、安定的、持続的な公共投資の確保にも努めてきております。

 こうした取組もあり、厚生労働省が行っております賃金構造基本統計調査におきましては、建設労働者の賃金は、平成二十四年以降、上昇傾向が続いております。

 一方、今御指摘ありましたけれども、九年連続で労務単価を引き上げた効果が現場の技能労働者まで十分に行き渡っていないのではないかとの声があることも承知をしております。

 国土交通省としましては、建設業の担い手確保、育成のためにも、公共工事設計労務単価の引上げが現場の技能労働者の賃金水準の上昇という好循環につながることが重要と認識しており、法定福利費の確保、社会保険の加入の徹底を図るとともに、適切な賃金水準の確保につきまして、様々な機会を捉え、建設業関係団体に対して繰り返し要請してきております。

 直近では、本年三月三十日に行われました国土交通大臣と建設業関係団体との意見交換会におきまして、今後の担い手確保のため、本年はおおむね二%以上の賃金上昇の実現を目指すという旗印の下、全ての関係者が可能な取組を進めるとしたところでございます。

 二%の賃金上昇の実現を目指すためにも、ダンピング受注の排除、適正な請負代金での下請契約の推進、建設キャリアアップシステムの普及促進などに一層取り組んで、建設技能労働者の賃金水準が更に改善されるよう官民挙げて取組を進めていきたい、このように考えております。

 以上でございます。

赤嶺委員 設計労務単価の引上げが続いているけれども、それが実際の賃金の引上げにつながるように建設業団体に要請している、そういうお答えでありましたが、これまでも単価引上げのたびにそういう要請は行ってきておるようであります。しかし、実態としては十分な引上げにはつながっておりません。

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査で同じ期間の建設労働者の賃金を見てみますと、一五%の引上げにとどまっています。六〇%の単価引上げに対し、実際の賃金引上げは一五%であります。業界団体への要請だけでは十分な効果を上げていないと思いますが、いかがですか。

天河政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、十分じゃないんじゃないかということでございますが、そうしたこともありまして、先ほど申し上げましたけれども、本年三月三十日に、国交大臣と建設業関係団体、これは日本建設業連合会、全国建設業協会、それから全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会、この四団体としっかり話合いをいたしまして、おおむね二%以上の賃金上昇を目指して、しっかりみんなで取り組んでいこうという合意をいたしまして、今、それに向けて頑張っておるところでございます。

 以上でございます。

赤嶺委員 河野大臣に伺いますが、沖縄の建設関連労働者は、県内の全就労者数の一割を占めます。全就労者数七十万に対して、建設労働者は七万人であります。ここでの賃上げは県民所得全体の引上げに必ずつながっていきます。

 地方自治体では、公契約条例を制定して、労務単価の一定水準の支払いを義務づける取組が広がっております。例えば世田谷区、ここは、熟練労働者に労務単価の八五%を支払うよう義務づけております。自治体にできて国にできないはずはないと思います。

 沖縄振興の長年の懸案である県民所得の向上に向けて、労務単価の引上げが実際の賃金の引上げにつながるような仕組みの導入、これを検討する必要があると思いますが、大臣はどのようにお考えになりますか。

河野国務大臣 沖縄担当大臣としても、先ほど国土交通省から答弁のあった取組は重要と考えており、沖縄担当部局における事業執行においても引き続き適切に対応してまいります。

赤嶺委員 設計労務単価というのは、あくまで賃金として支払われることを予定して積算するものであります。何か特に、先ほどの屋良議員が提起していたような問題とはちょっと違って、全国マターで、しかし、それが沖縄の所得の向上という点から見れば抜き差しならない重要な課題であるものだと思います。

 下請企業の適正な利益には目を配りながら、単価に沿った賃金が支払われるようにすることは当然のことであります。しかも、これは民間の事業ではなく、国が発注する公共工事のことを申し上げております。沖縄振興の枠組みからこの問題の突破口を切り開くような取組が求められているということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、沖縄県北谷町の町立博物館の建設問題について質問をいたします。

 キャンプ桑江北側地区の返還跡地で、伊礼原遺跡という縄文時代の遺跡が発見されました。ウーチヌカーという湧き水があり、全国的にも珍しい土器やくしなどの出土品が発掘されております。二〇一〇年には国史跡として指定もされております。

 北谷町は、こうした出土品や町内に点在する歴史的資料、文化財を展示し、学校教育、生涯学習の場としても活用できる施設として遺跡の隣接地に博物館を建設する計画を進めてきました。当初は一括交付金での整備を計画していましたが、年々予算規模が削減される下で実現の見通しが立たなくなりました。現在は防衛省の民生安定助成事業として整備しようとしております。

 沖縄防衛局は、二〇一九年度から定期的に情報交換を行い、補助要件に該当することも確認しながら計画を進めてきたにもかかわらず、最近になって突然、予定していた八月の概算要求に盛り込むのは難しいと手のひらを返すような対応をされたと伺っております。なぜ、突然、はしごを外すような対応をしたんですか。

中山副大臣 ありがとうございます。

 御指摘の北谷町が計画している博物館につきましては、令和五年、二〇二三年度の開設に向けまして、北谷町から防衛省に対して、環境整備法第八条に基づく令和四年度の工事費の助成を要望されているものと承知をいたしております。

 この御要望を受けまして、防衛省として、北谷町から伺った事業規模等について様々な検討を行った結果、我が国の厳しい財政事情に鑑み、令和四年度の補助事業としての採択は厳しい旨、北谷町に対して御連絡を申し上げました。

 その上で、北谷町におかれては、本件を含め様々な事業の御要望があるというふうに承知をいたしております。今後、令和五年度以降の予算を見据えながら、北谷町の御要望全般の計画や嘉手納飛行場の運用に伴う障害の実態を伺うなど、引き続き丁寧に調整をしてまいりたい、かように考えております。

赤嶺委員 中山副大臣、ここで国の財政が逼迫しているという、北谷町の博物館は皆さんの事業に要件も満たしているんですが、それがどんなふうに国の予算の逼迫につながるのか、今の説明では全く分かりません。しかも、三年間、北谷町は皆さんと一緒に協議をしてきて、要件にも合致し、こういう話が進んでいけば大概はそういう予算というのはつけられて事業化をしてきておりました。

 北谷町というのは、今副大臣も触れられましたけれども、米軍基地をめぐって防衛省がさんざん迷惑をかけてきた自治体ですよ。返還跡地から大量の有害物質を含むドラム缶が発見されたこともありました。そして、返還跡地の利活用に防衛省が最優先で取り組まなければならない自治体でもあります。

 ここに事業費をつけないで、国の予算が逼迫するからといってほかの自治体につけるなんという、そんなまさか矛盾した行為なんか、やれるはずないと思いますよ。

 予算が逼迫していると言いますが、この事業で来年度に新規採択を予定している事業はほかにないんですか。それらは今どうなっているんですか。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 令和四年度予算につきましては、現在、八月末の概算要求に向けて調整しているところでございまして、何ら決まったものはございません。

 このため、沖縄県内で令和四年度に新規採択を予定する民生安定事業の件数であるとか、あるいは予算見込額等も含めまして、この時点で、現段階で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

赤嶺委員 国の予算が逼迫していると言いながら、新規採択事業はないのかと聞いたら、今明らかにできないと言う。これは中山副大臣、幾ら何でも説明になっていませんでしょう。

 北谷町には採択は難しいと説明したわけですから、その一方で採択できると判断している事業があるはずです。それは何件あり、どのくらいの予算を見込んでいるのか、それらはなぜ採択できると判断したのか、これを明らかにしていただきたいんですが、いかがですか。

中山副大臣 沖縄県内で二〇二二年度に継続を見込む民生安定助成事業の件数、それから予算見込額でありますが、現在、八月末の概算要求に向けて調整をしているところであり、先ほども御答弁申し上げたように、何ら決まったものはないということでございます。

 また、沖縄県内で、令和四年、二〇二二年度に継続を見込む民生安定助成事業の件数と予算見込額についても、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

 部内における検討の詳細についても、この補助事業の適正な採択に影響を及ぼすという観点から、お答えを差し控えなければならないと考えています。

 いずれにしましても、防衛省として、北谷町から伺った事業規模等について様々な検討を行った結果、我が国の厳しい財政事情に鑑みまして、令和四年度の補助事業としての採択は厳しいとの結論に至ったものと認識をいたしております。

赤嶺委員 とても納得できる説明ではありません。不公平な予算の配分の仕方をしているとしか指摘せざるを得ません。

 今日は外務大臣には津堅島への海兵隊のヘリ不時着事件についても伺いたかったところですが、時間が来ましたので終わりますが、ただ、防衛副大臣、こういう説明で、一番嘉手納基地のそばで苦しめられている北谷町が、返還跡地でさんざん迷惑をかけた北谷町が返還跡地に博物館を造ろうとしたら、国の予算が逼迫しています。じゃ、新規事業はないのかといえば、それは説明できません。こんなのはとても納得できる説明ではないということを申し上げて、事業化すべきであるということを強く申し上げて、質問を終わります。

西村委員長 次に、杉本和巳さん。

杉本委員 維新の杉本です。

 最後の質問者ですが、両大臣は何でも御存じなので釈迦に説法かもしれませんが、念のため、冒頭、ちょっと情報を一つだけ提供させていただければと思います。

 茂木大臣は、最近私はネットフリックスを見るよとおっしゃっておられた記憶がありますけれども、昨日、私はテレビっ子なので、BS世界のドキュメンタリーというのを見ました。そうしたところ、シリアの内戦が十年続いて、傭兵という形でシリアの国民の方が、リビアだとか、あるいはアゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノ・カラバフをめぐっての衝突といったところに、ちょっと北方問題ということもあるので、直接国が関与している証拠はないようでありますけれども、ロシアとトルコがそれぞれ関係する人材派遣のようなところを経由して、シリアの方々がそれぞれ、リビア、あるいはアゼルバイジャン、アルメニア、ナゴルノ・カラバフに行って、両陣営で同じ国民同士が殺りくをしなければいけないというような報道がございました。

 ザータリ・キャンプなども、私もヨルダンへ行かせていただいたときに拝見をしたりしていまして、そういった意味で、両大臣は将来あられるお二人だということもあって、この内戦が及ぼす、シリアのケースに見られる難民であったり傭兵であったり、そういった問題が、やはり、SDGsとか我々は言っておりますけれども、そういった一方で、現実として、家族とも暮らせずに、生きるために何か米ドルで千二百ドルで雇われて行ったという方が話の中に出てきたりしていましたけれども、そういった事案があるということを十分御存じだと思いますが、改めて、この場をおかりして御報告しておきたいと思います。

 次に、日本の漁船の拿捕の問題を外務大臣にお伺いしようと思っておったのですけれども、石川議員が既に質問されて、そして大臣の御答弁がございまして、最後のところで、再発防止策、よく検討したいという御答弁があられました。

 私が質問を出したときは、いわゆる官僚の皆さんに残業していただかないように、国会対策で残業しなくていいように、前々日の昼ということを目標に、この委員会が設定されたのはその午後だったかと思うんですが、決まり次第、通告をさせていただいた関係で、私が質問した時点では、まだ、解放されたり、罰金を払ったり、あるいは稚内に帰ってきたりということがない状況の中でありましたけれども、一応、先ほどの質疑で現状確認を石川さんがしてくださったので。

 私としては、これは御答弁いただけるかどうか分からないんですけれども、提案として、外務大臣だけの問題ではなくて、やはりこれ、農水省の問題であったり海上保安庁さんの問題であったり、省庁横断の問題として、関係省庁、あるいは大臣がそれぞれ出てくるというまでいくのかどうか分からないですが、局長クラスでそれぞれタスクフォースなり会議を持ってちょっと注意喚起をしておいていただく必要があるのではないかというふうに、ちょっと先ほどの質疑を伺いながら思った次第であります。

 ちなみに、大分昔ですけれども、二〇〇六年の八月の事案で、第三十一吉進丸の事件があって、これは稚内沖ではなくて歯舞群島の水晶島付近の海域での事案で、銃撃、拿捕ということで乗組員一人が死亡ということがあったのは皆さん御記憶にあると思うんです。ロシアという国がやはり国境については大変厳しい見方をして、大韓航空機の撃墜事件は一九八三年にありましたけれども、日本国民が銃撃されてしまうということをできるだけ避けなきゃいけないということで、今回、稚内沖は特になかったわけでありますけれども、関係局長会議とかそういうのを開いていただいて、人の命が失われることがないように。

 今申し上げた水晶島の事案では、結局、最終的には日本側にも非があったという事案だったようで、最終的には釧路地検に書類送検をされ、密漁というようなことが事実として判明したということがあって、事実確認を非常によくしなきゃロシアに対しても失礼かとも思いますが。いずれにしろ、先ほど大臣が暗黙の了解の中でとおっしゃってくださいましたけれども、非常に難しいところで、やはり生きるために漁をしなきゃいけない方々がいるということの中なんですが。

 ちょっとこれは御答弁いただければありがたいですけれども、局長クラスとかで、農水省だとか海保とか等も、外務省も連携して、できるだけこういう事案が起きないようにしていくというような方向づけをしていただけるかどうか、御答弁いただければありがたいんですけれども。お願いします。

茂木国務大臣 まず、昨日、恐らくネットフリックスの時間は、私、宮里藍サントリーオープンを見ておりましたので、それを拝見できなかったんじゃないかなと思いますが。

 いずれにしても、シリアのダマスカスという町は、町が八層になっております。どんどん積み重なるという形で、様々な戦乱を繰り返してきた、そのあかしだと思っておりまして。今、中東情勢って大きく変化をしております。中東情勢といったときに、これまでは、イスラエル、パレスチナ、これを中心にした中東和平問題をどうするかという観点でありましたけれども、様々な大国、イランであったり、サウジ、エジプトを含みまして、それにまたトルコであったりとかいろいろな国が介入するという状況であって、それによって紛争が発生し、難民が発生する。こういう状況についてはよく見ていかなきゃならないと思いますし、どうしても、いろいろな、イギリスであってもそうでありますし、ロシアであっても、過去の、いろいろ、植民地であったりとか、いろいろな、そういった紛争に直接介入してきた。これがない日本の、中立的なというか、中東諸国から信頼をされている、こういう立場も生かしながら、独自の信頼醸成に向けた努力というのを重ねてまいりたいと思っております。

 そして、いわゆる中間線をどう引いていくかというか、つくっていくか。単にこれは極東とかアジアだけではなくて、世界中でいろいろな問題がこれについてはある問題であります。一つの事件といいますか事案で、例えば局長級の会議体を日本で立ち上げ、また相手側も立ち上げ、そういったことをするのがいいかどうかはともかくといたしまして、これは外務省だけではなくてたくさんの関係省庁があるわけでありまして、そういったところと連携をしながらしっかり対応していきたいと思っております。

 ちなみに、最後に、先ほど、東京でもやしが安い、沖縄は高いという話だったんですが、首都圏のもやしが安いのは、栃木県の農家の皆さんがコスト削減努力に一生懸命取り組んでいらっしゃる、この成果ということをつけ加えさせていただきたいと思います。

杉本委員 ありがとうございます。私ももやしが好物で、いただいておりますが、栃木産だと思いますので、引き続きもっとたくさん食べたいと思います。

 済みません、ネットフリックスと申し上げちゃったんですが、私が見た番組はNHKBSの一番の、世界のドキュメンタリーの、夜十時から放送されていましたので、もしタイミングがありましたら是非見ていただければいいかと思います。失礼しました。

 次に、所管外と答えないでいただきたいということで、北方領土の現状認識とかそういうことは伺いませんが、担当大臣として河野大臣に伺いたいのは、山本一太さんが沖北大臣でいらっしゃったときに、そのときは岸田外務大臣でいらっしゃったんですけれども、担当大臣が北方四島を訪問するというのは難しいというのを分かっております。外務大臣経験者が北方四島を訪問することがいいかどうかという議論があるかもしれないなというふうにも感じておりますが、一方で、山本一太さんは外務大臣を経験されておられませんでしたけれども、今、群馬の知事として大活躍されておられると思います。

 機会があれば、まあ、もうじき解散になってしまって、また再任していただけるかどうか、なっていただけるか分かりませんけれども、四島を、やはり現場を見ていただくというのが、これは河野大臣にしろ茂木大臣にしろ、外務大臣という職を離れて、トップになる前に現場を見ておいていただいた方が私はいいと思っているんですね。

 鈴木宗男先生だとか宮腰先生がたくさん北方四島に行っていただいているのは私も十分存じ上げていて、お二方からお話を聞いていただいたりするのもいいと思うんですが、やはり現場を見ていただいて、日ロ友好の家とかですね、ああ、こういうものなんだというようなことを確認していただくことが非常に意義があると思っているんですが、率直なところ、機会があれば私は北方四島を訪問してもいいよという思いをお持ちかどうか、河野大臣から伺えればと思っております。いかがでしょうか。

河野国務大臣 北方四島を訪問したいと常々思っております。今の立場で行くのがいいのかどうか、そこは総合的にいろいろ勘案をして決めなければいかぬというふうに思っております。

杉本委員 ありがとうございました。前向きな御答弁、ありがとうございます。

 茂木大臣にはその御答弁は特にいただかずに、一つだけ、またちょっと歴史的な話を一つしておきたいんですけれども、第六十五代、当時は第七十一代の外務大臣でいらっしゃった東郷茂徳外務大臣の発言をちょっとこの機会に言わせていただきたいんです。

 昭和二十年の五月の十一、十二、十四と、鈴木貫太郎内閣で戦争指導会議というのを持ちました。これは、最高指導者六人だけが部下を入れずに話し合うという機会のようで、首相、外相、陸相、海相、参謀総長、軍令部総長、この六名で構成され、会議のきっかけは、陸軍参謀本部が東郷外相に、当時、ソ連の太平洋戦争への参戦防止のため外交工作を要請する目的で開催されたという中で、この東郷外相の発言がちょっと意味深くあるかなと思ったので、御参考までに披露させていただきたいんです。括弧書きですが、ソ連に甘い幻想を抱いてはいけない、ソ連という国は徹頭徹尾現実的な国なのだ云々、こうございました。参考としてお伝えしておきたいと思います。

 北方領土交渉、平和条約締結、やはりタイミングがいろいろあると思います。エリツィン大統領、その前のゴルバチョフ大統領、ゴルバチョフさんのときはペレストロイカだったりグラスノスチだったりというような国の中の変化があって、チャンスはまたいつか巡ってくるというふうに思っております。今、コロナ禍でもあり、交渉がちょっと止まりぎみかなというふうには思っていますが、相手のある話であり、環境という問題があると思いますし、今申し上げたロシアの現実的な対応、徹頭徹尾現実的というような表現を東郷茂徳さんはされておられます。こんな点で、是非この御発言も御記憶しておいていただければうれしいと思います。

 最後、沖縄の基地問題に関わって、各地、返還地の予定があります。二〇一三年の四月に日米間で作成された在日米軍再編のうち、沖縄県内における土地の返還につき、返還年度を含む返還スケジュールを明記した統合計画、こういうのがあるようでございます。牧港補給地区も併せてですが、これはちょっと先になりますが、二〇二八年度あるいはそれ以降の返還の予定ですが、那覇港湾施設、こちらの返還見通しと今後の活用展望等をお持ちかどうか。これはお役所の方から御答弁いただければと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 那覇港湾施設につきましては、平成二十五年の沖縄統合計画におきまして、その機能を浦添埠頭地区に建設される代替施設へ移設後返還されることとされており、同地区の民港の港湾計画と並行して、国として代替施設の配置に係る技術的な検討を実施してまいりました。

 また、今年三月に地元において民港の形状案が合意、公表されたことを受けまして、五月十九日には移設協議会を開催し、防衛省において、国交省の協力を得ながら、代替施設を北側に位置づける形で技術的な検討を加速させ、米側との間で代替施設の形状案の具体化を図ること、これを確認をいたしました。

 現時点で今後の具体的なスケジュールについて予断することは差し控えますが、防衛省といたしましては、代替施設の配置が民港の形状案と整合するよう引き続き検討を進め、那覇港湾施設の返還に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。

宮地政府参考人 跡地の活用についてお答えを申し上げます。

 那覇港湾施設や牧港補給地区などの大規模な基地の跡地利用は、沖縄全体の振興から見ても重要なものと認識しております。

 中南部都市圏の跡地利用に関しましては、平成二十五年の一月に沖縄県と関係市町村が策定いたしました中南部都市圏駐留軍用地跡地利用広域構想では、中核的な都市拠点や交通ネットワークの結節点、都市圏の緑とゆとりを創出する役割が期待されています。

 牧港補給地区そして那覇港湾施設の具体的な跡地利用計画につきましては、現在、地元の浦添市あるいは那覇市と地権者等が主体となって検討を行っているところと承知しております。

 内閣府といたしましても、地元における跡地利用等の検討について引き続き支援をしてまいりたいと考えております。

杉本委員 終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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