衆議院

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第1号 令和3年2月24日(水曜日)

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令和三年二月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金田 勝年君

   理事 後藤 茂之君 理事 齋藤  健君

   理事 橋本  岳君 理事 藤原  崇君

   理事 細田 健一君 理事 山際大志郎君

   理事 奥野総一郎君 理事 辻元 清美君

   理事 浜地 雅一君

      秋葉 賢也君    秋本 真利君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      神山 佐市君    河村 建夫君

      北村 誠吾君    高村 正大君

      佐々木 紀君    菅原 一秀君

      田中 和徳君    武井 俊輔君

      根本  匠君    野田  毅君

      原田 義昭君    福山  守君

      古屋 圭司君    村井 英樹君

      山本 幸三君    山本 有二君

      渡辺 博道君    大西 健介君

      逢坂 誠二君    岡田 克也君

      岡本あき子君    岡本 充功君

      川内 博史君    武内 則男君

      本多 平直君    道下 大樹君

      宮川  伸君    村上 史好君

      森山 浩行君    矢上 雅義君

      伊佐 進一君    吉田 宣弘君

      藤野 保史君    宮本  徹君

      藤田 文武君    西岡 秀子君

    …………………………………

   公述人

   (第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト) 熊野 英生君

   公述人

   (世田谷区長)      保坂 展人君

   公述人

   (国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター長/東京大学名誉教授)     小池 俊雄君

   公述人

   (全国労働組合総連合議長)            小畑 雅子君

   公述人

   (大正大学地域構想研究所教授)          小峰 隆夫君

   公述人

   (名古屋商科大学ビジネススクール教授)      原田  泰君

   公述人

   (東京大学名誉教授(元日本感染症学会理事長))  岩本 愛吉君

   公述人

   (日本労働組合総連合会会長代行)         逢見 直人君

   予算委員会専門員     小池 章子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     福山  守君

  岩屋  毅君     小田原 潔君

  うえの賢一郎君    武井 俊輔君

  今井 雅人君     村上 史好君

  大西 健介君     岡本あき子君

  逢坂 誠二君     道下 大樹君

  玄葉光一郎君     武内 則男君

  後藤 祐一君     矢上 雅義君

  本多 平直君     宮川  伸君

  太田 昌孝君     伊佐 進一君

  濱村  進君     吉田 宣弘君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     岩屋  毅君

  武井 俊輔君     高村 正大君

  福山  守君     石破  茂君

  岡本あき子君     大西 健介君

  武内 則男君     玄葉光一郎君

  道下 大樹君     逢坂 誠二君

  宮川  伸君     本多 平直君

  村上 史好君     今井 雅人君

  矢上 雅義君     後藤 祐一君

  伊佐 進一君     太田 昌孝君

  吉田 宣弘君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     うえの賢一郎君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 令和三年度一般会計予算

 令和三年度特別会計予算

 令和三年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 令和三年度一般会計予算、令和三年度特別会計予算、令和三年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず熊野英生公述人、次に保坂展人公述人、次に小池俊雄公述人、次に小畑雅子公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、熊野公述人にお願いいたします。

熊野公述人 第一生命経済研究所の熊野でございます。

 私の方から、日本経済の現状と課題についてお話をしたいと思います。

 今日御説明する資料は原稿をそのままお持ちしておりますので、後ほど詳しく御覧いただければと思いますが、大体、おおむね同じものをお話をしたいと思います。

 我が国の経済、景気は、緊急事態宣言の下で現在は非常に厳しい状況です。民間エコノミストが予測している平均的なもの、これはグラフ一に全体を掲示させていただきましたが、この一―三月はマイナス成長、マイナス五%の成長になるという見通しでございます。このマイナス自体は緊急事態宣言によるものなんですけれども、昨年の一回目の緊急事態宣言とは幾つか大きな違いがございます。

 まず、違いは、活動制限を飲食店に限定したこともありまして、経済への打撃が非常に小さくなっているという特徴があります。海外の需要、外需を除いて民間の内需だけでマイナスインパクトの大きさを比べますと、大体今回は三分の一に絞られているというのが現状です。また、海外、外需においては、前回、去年の四、五月は中国の経済が非常に悪かったので、アジア全体が貿易の足を引っ張っていたんですが、今回は中国がプラス成長に変わりまして、むしろ牽引役に変わっているという大きな違いがあります。

 ただ、全体で見まして、楽観してはいけないのは、前回も今回もそうなんですけれども、非常に深刻なダメージがサービス業に集中している。特に外食、宿泊、交通、この三つの業種については非常に厳しい、非常にひどい有様でございます。

 この後、緊急事態宣言が三月八日に明けると、恐らく経済は回復すると見ています。これは消費者が我慢していた消費活動を積極化させるということが主因なんですが、そこでは恐らく、今見えていないリスク、感染リスクが再燃するという可能性が非常に高いのではないかと思います。

 これは、去年の四、五月、緊急事態宣言が明けた五月二十六日から二か月後の八月の頭には第二波の山が到来した。今回も同じように、二か月後、三月八日から解除すると計算しますと、大体ゴールデンウィーク明けくらいには、もう一度感染の拡大のリスクが高まるのではないかと懸念しています。

 グラフ一に挙げています四―六月、マイナス成長の後の四―六月の見通しは大体五%で、落ち込んだ部分がそのままリバウンドするような形になっていますが、ここは、感染リスクの拡大、リバウンドリスクをまだ十分には織り込んではいないのではないかというふうに私は見ています。

 基本的には、経済の活発化と感染の防止というのはジレンマ、両立し得ないものだというふうに私は思っています。現時点で、感染リスクというのは、経済にブレーキを踏んでいるからこそ感染者がまだ減っているにすぎないのではないか。この図式というのは、図表の二番目に掲示させていただきましたけれども、経済を動かすとリスクが高まり、緊急事態宣言で経済を止めると感染者が減る、この循環がなかなか断ち切ることができないというのがまだ現状で、その悪い循環の中から、現状はまだ抜け出しているというふうには私は見ていません。

 今後の課題としては、やはり東京オリンピックを成功させるということが課題ではないかと思います。七月二十三日から東京オリンピックがありますが、これを成功させるためには徹底した感染制御、アンダーコントロールの下に置くということが非常に重要なのではないかというふうに私は見ています。

 数日前、大坂なおみさんが全豪オープンテニスで優勝しました。この全豪オープンテニスというのは、徹底した感染防止策の中で行われました。昨年は、六月にウィンブルドンが中止され、八月には全米テニス、そして今回の全豪オープンテニスとありましたが、全米と全豪については、感染拡大をコントロールしたということで、その行事の成功が世界中で称賛されています。

 具体的に言うと、観客数を絞り込み、ゾーニングをして、出場する選手に対しては何度もPCR検査を受けさせた。この成功は世界的に称賛されている。テニスの何倍もの選手が参加する東京オリンピックは、もっと大きな成功事例になるのではないかというふうに私は期待しております。

 次に、現在の景気情勢について詳しく見てみたいと思います。

 現状では、非常に中小企業の経営が厳しいんですが、財政政策、政府の政策によって経営破綻が水面下に封印されている状況だと思います。失業率を見ましても、最近の十二月の失業率は二・九%と非常に低いです。しかし、今後、三月八日に緊急事態宣言が明けた後、このまま強い制限を続けると、もたなくなる中小企業も夏場にかけて非常に多く出てくるのではないかというふうに懸念しています。地域によって、声を具体的に聞いてみますと、二割の飲食店やホテルが消滅するのではないかという声も聞きます。

 私自身も、年初からいろいろな全国各地の地域を回ってみましたが、飲食店やホテルでは本当に気の毒になるくらい消毒、換気を行っていました。しかし、風評にさらされているカラオケボックスや夜の飲食店は、幾ら努力をしてみてもお客が来ないという嘆きを聞きます。これは大いなる矛盾ではないかというふうに思います。

 問題の本質を考えてみますと、これは店側に問題があるのではなくて、お客さんの側にあるのではないか。つまり、危険なのは、お客さんの中に無症状の感染者が紛れ込んでいるから、彼らをあぶり出さないことにはアウト・オブ・コントロールの状態はなかなか脱せられない、これが本質ではないのかなというふうに思います。

 本来どうすればいいかということを私なりに考えますと、お客さんの中身がブラックボックスであることを変えていく。例えばカラオケに行くにしても、PCR検査を受けた人が陰性の証明を持って行くような形になると、それが解消されるのではないか。解決法としては、PCR検査を国民が自主的にもっともっと受けて、水面下に隠れている無症状の感染者を見える化するということが大切ではないかと思います。

 こうしたPCR検査をたくさんやるという事例は、ドイツや台湾、シンガポールで既に実施されておりまして、その有効性が確認されています。これらの国々では、検査で隠れた感染者を洗い出し、陽性者をスマホのアプリなどで追跡するという形で感染制御をしています。

 そして、今後の焦点としては、やはりワクチンがあると思います。ワクチンがあるからもうPCR検査は要らないかというと、そういうわけではないと私は思っています。

 ワクチンの接種がこれから進むのは、夏までに高齢者など五千七百七十万人、これは大体国民の四六%、半数近くなんですが、これが終わってから、勤労者を主体とする十六歳から五十九歳、この人たちがワクチンを接種できるタイミングになるんですが、それで考えていくと、やはり年末までワクチンの接種がかかるのではないかというふうに思います。

 集団免疫まで仮に時間がかかるということであるならば、PCR検査の実施は必須だと思います。ワクチンの接種一本足打法ではなくて、攻めのPCR検査、市中の無症状の感染者をあぶり出す作戦をしなければ、なかなか感染の封じ込めは今後もできないのではないかというふうに考えています。

 今後のワクチン接種で非常に懸念されるのは、ワクチンについての不安感からワクチンの接種をちゅうちょする人が意外に多いのではないかということが懸念されます。そこへの対応をどうするかということも政策課題です。ここにつきましても、接種を促すような見える化の戦略が私は必要なのではないかと思います。

 具体的に、例えば事例を挙げると、私たちがしているこのマスクの前に、私は既にワクチンの接種をしました、そういうふうな表示をすることをやれば、これは無理に強要することがなくても、皆がそういう活動をすれば、多くの国民が自主的に接種を受けるように行動変容が起こるのではないかと思います。

 仕掛けをつくって民間の活動を誘導することを、これは行動経済学ではナッジ、強制しない社会介入といいますけれども、そういうことを一工夫してみるのも一つの手なのではないのかなというふうに私は思っています。

 こうしたワクチンの接種については、活動を企業単位、地区単位、学校単位に行う。また、定期的なPCR検査も行って、陰性のパスポート、ワクチン接種の場合はワクチン接種済パスポートを普及させるのがよいと思います。

 今回のコロナ感染対策に関しては、政府の中央集権的なルールで規制するだけではなくて、地区ごと、地域ごとに自治体と地場企業が協力しながら地域内の感染対策のルールを徹底させる、遵守させる、そういう分権的な活動も私は必要なのではないかと思います。

 さらに、次に経済政策について見てみたいと思います。図表の方は図表の三番目です。

 今回、財政を通じた経営支援の施策はとても大きな効果を私は及ぼしていると思いますが、これがいつまでも続くわけではないと思います。

 例えば、持続化給付金と家賃支援については、その受付が二月十五日に既に終了しています。緊急事態宣言が終われば、現時点で一日六万円の協力金の給付や六十万円の一時支援金も終了します。そうなると、資金に頼り切った事業者の中には、需要が完全には戻らないので、破綻に追い込まれるような事例も多数出てくるのではないかというふうに予想します。

 緊急事態宣言の終了後は、恐らく飲食店の営業を緩やかに規制しながらやっていくようになるのではないかと思いますが、そのときには、業績が特に厳しいところに対しては追加的な支援を行うようなそういう枠組み、仕組みもあった方がいいのではないかと思います。

 また、既に、業績が厳しい外食、宿泊、交通などに対してはGoTo事業、GoToキャンペーンがあります。私は、このGoToキャンペーンは非常に去年も効果を上げたと思いますが、その反面、そのやり方についてはいろいろな問題点がありますので、適切なリフォームを行って業界支援をすることが望ましいというふうに思います。

 そのほかに、財政支援としては雇用調整助成金があります。しかし、それらもいずれなくなるので、最後に支援されるツールは何かというと、私は金融ではないか。最後には、実質無利子無担保、これはゼロゼロ融資とよく言われるんですが、ゼロゼロ融資などの公的金融支援が立て直しのための最後のツールになる、最後のとりでは金融になるのではないかというふうに思います。

 私は、遅かれ早かれ、補助金で支える政策というのはその効果を弱めていくので、景気全体を浮揚させるために内容のシフトが必要なのではないか。グラフの三番目で少し書きましたけれども、景気のダウンサイドリスクを今までは支えるような感染防止策や雇用調整助成金が主でしたけれども、今後はそれをGoTo事業や事業再構築補助金でどんどん上向きにしていく。さらには、成長戦略を加えて、人口対策も加える形で、守りの政策から攻めの方に政策を切り替えていくようなことが必要なのではないか。これまでの支える、守るという方針から、攻める、つくる、伸ばすという形への転換が必要ではないかと思います。

 中長期的な成長戦略としては、やはりデジタル化というのが有望なテーマではないかというふうに私は思っています。

 図表の四番目を御覧ください。

 デジタル化。民間企業の活動については、このコロナの下でもかなりしたたかにやっているのではないかということがいろいろ見て取れます。

 例えば電子商取引、これはECといいますが、このEC市場においては、ネットショッピングの伸びが非常に急拡大しています。図表四の左の上に、消費におけるネット取引、ネットショッピングの売上げの動向を書いていますが、去年の四月から十二月までで見ますと、大体前年比一・四、ですから、一・四倍に伸びが増えているということが見て取れます。

 このネットショッピング、EC市場につきましては、これは左の下のグラフですけれども、過去十年においてだんだんだんだん消費のデジタル化が進んできたのが、去年においてはぐっとそれが拡大したという形です。

 消費のデジタル化というと、物の消費だというふうに多くの人は見ますが、実はサービスの分野でもこうしたネット消費というのは非常に威力を出しています。

 図表四番目の右の上の図を御覧ください。

 成長市場としての公営ギャンブル。競輪、競馬、競艇、オートレース、こういう公営ギャンブルは、観客を入れてはいけない、無観客になったために、一気にネット投票、まあ電話もありなんですけれども、非接触型のネット取引にシフトしました。その結果どうだったかというと、去年の十二月段階では、競輪、競馬、競艇、いずれも前年比二割から三割の増加を見ているという形です。逆に、こういうネット化ができなかったパチンコというのはずっと低迷をしている。ですから、サービスのデジタル化というのも、非常に大きな効果を私は工夫次第では生むのではないかと思います。

 この消費のデジタル化という分野では、中国のデジタル化が非常に進んでいます。ネット経由の消費という意味では、中国では大体三五%、日本では大体消費の七%がネット経由の消費なんですが、中国は全体でいうと三五%を占めている。中国が何でコロナ禍でこれほど早く経済が立ち上がったかというと、一つの要因としては、消費がネットシフトしていたということがあると思います。

 この中国のEC市場というのは非常に大きくて、これは図表四のグラフの右の下にございますけれども、各国のEC市場の、これは消費者向けの市場の規模でいうと二百一兆円、大体、世界の三分の二のEC市場を中国が占めています。

 実は、この中国のEC市場において一番人気のある海外製品、ですから、中国から見て海外の製品をネットで買う、そのときに一番人気はどこの国だというと、これは日本なんですね。具体的に言うと何か。首位は化粧品です。次が食品、そして日用品。つまり、インバウンドで日本に来た人が、中国人が日本に来て、これはいいと思ったものを中国に帰ってからもネットで買い続けているということがあるんだと思います。

 中国でEC市場、日本から輸入する、輸入というか持ってくる日本製品の販売額は、大体、経産省の計算でいくと一・七兆円あります。これは実はすごい数字で、中国人のインバウンド、コロナ前の二〇一九年は中国人のインバウンドは一・八兆円でしたから、中国の越境ECというのはインバウンドと匹敵するぐらいの規模になっている。

 また、インバウンド消費全体で見ても、コロナ前の二〇一九年は四・八兆でしたから、越境ECというのは、ばかでかいインバウンド消費の三分の一ぐらいを占めているということです。去年、二〇二〇年のインバウンド消費というのは非常に低迷したと思いますが、恐らく、統計データが出てくると、中国との越境ECはそれを肩代わりするぐらいの規模の拡大が見込まれるのではないかというふうに予想します。

 つまり、日本の消費産業にとって、海外向けのECビジネスというのは消費の未来を開くようなデジタルの成長分野になるのではないのかなというふうに私は見ています。

 最後に、成長戦略、デジタル化よりももっと足の長い分野の成長戦略として見逃してはいけないのは、少子化対策だと思います。

 このコロナ禍では、若い夫婦が感染を不安視して妊娠や出産を控えているというデータがいろいろもう既に出ています。私の推計では、来年、二〇二一年の出生数は七十六・九万人まで減るのではないか。出生数が百万人を割ったのが二〇一六年なんですけれども、僅か五年で、七十六・九万人、七十七万人近くまで激減する。これは非常に恐ろしいことだと思います。

 更に怖いのは、若い人たちがコロナによって出会いの場を、フェース・トゥー・フェースの出会いができなくなっていることによって婚姻数が更に減ってしまうということが懸念されます。地方の疲弊は人口減少によって更に加速する。そういう意味では、非常に、結婚が少なくなって少子化が進むというようなことが懸念されます。

 この出生数が減るというインパクトというのは、日本だけではなくて海外全般でも恐れられています。例えば、アメリカでは、民間のシンクタンクが、二〇二一年の出生数は三十万人から五十万人減るのではないかというふうに見ています。台湾については、二〇二〇年の出生数は十六・七万人、韓国については二十七・六万人と、非常に少なくなっています。

 この韓国と台湾の出生数に八十年、人生八十年を掛けて計算すると、現状の人口が、韓国では五七%減る、台湾では四四%減る。日本も、七十六・九万人という二〇二一年の出生数に八十を掛けて今の人口で割ると、五〇%人口が減るという恐ろしい数字になります。そういう意味では、結婚を促進するという形で少子化に歯止めをかけるという政策にも、より力を入れるべきではないかと思います。

 最後にまとめますと、今後の経済政策については、四段ロケット、感染対策、企業の経営支援、成長戦略、人口対策、そうした四段構えの政策推進をすることが、今後布石を打つ上では肝要ではないかというふうに思います。

 私の御説明はこの辺で終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 次に、保坂公述人にお願いいたします。

保坂公述人 世田谷区長の保坂展人です。

 本日は、このような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 私からは、新型コロナウイルス対策と、直面するワクチン接種の自治体の課題についてお話しします。こちらの資料の方を使いながらお話を進めていきたいと思います。

 世田谷区内の感染状況を示したグラフなんですが、これは、全国で皆さんが御覧になっている、また、東京都において発表されている傾向とほぼ同じであります。東京の縮図と言っていいと思います。

 人口が九十二万人ということで、大変多いということもありまして、現在のところ、一度感染をされた方、八千四百五十六人と大変多くなってございます。残念ながら六十五人の人が亡くなっていらっしゃる。今、第三波は少し、おかげさまで下り坂になってきているんですが、まだ予断を許さない状況であります。これは連日ホームページで世田谷区では公表をしています。

 この波を見ていったときに、第一波が来て、これが引いていった五月の末から六月にかけて、私どもは、これは第二波、第三波に長期的に備えることが必要だろうというふうに考えました。とりわけPCR検査、今、さっきのお話にもありましたように、大変、当初は、症状があっても四日間は様子を見てということで、その間に悪化をしてしまう、こういうケースが残念ながらございました。何としても、検査、これは疑いがあれば即受けられるようにしようということに取り組んだわけです。

 現在は、四月の半ば過ぎから、医師会、地元世田谷医師会、玉川医師会の協力を得て、午前中クリニックで診察して疑いがあるなとなれば、午後に検査センターに予約が入るというような状態を維持してございます。すぐに検査ができて、そして、治療の必要があればその場でCTも撮りまして治療を開始する、こういった体制をつくってきてございます。

 一方で、大変リスクがあるというのは、高齢者の施設、医療機関、ここでクラスターが第一波のときにもう既に起きていました。ここを何とかできないかということで、後ほど御紹介します社会的検査、こちらの方の準備に入ったわけです。これが、五月、六月、どうやって未然に、とりわけ高齢者施設での防止をしていくのかということを私ども検討してまいりました。

 次のページを見ていただきたいと思います。

 これは、世田谷区内でクラスター、右側に書いてございますが、やはり、医療機関が二百十九人、社会福祉施設が二百五十三人、一番多いのは社会福祉施設で、五人以上のクラスターが起きています。

 左側、直近の一月末、社会福祉施設で職員や利用者に感染者が発生した事例が二百八十四件、六百一人。第三波は非常に激しい波でございまして、一か月前、十二月の時点では百五十一件だったのが約二倍近くに膨れ上がっているということで、社会福祉施設、とりわけ高齢者施設の中で一旦広がると、これが大変広がりが早いということ、高齢者の方ですから重症化しやすいということ、重症化すると、やはり残念ながら亡くなるというリスクがかなりある。

 私、昨年の春、ヨーロッパのニュースで、ヨーロッパ、幾つかの国で、新型コロナの死者の半分が介護施設である、こういうニュースを見ました。まさに医療機関はパンクしていたわけでございます。介護施設で具合が悪くなって、感染をしていても当然入院できないわけでございますので、そこで、医師が往診に来る、こんな体制もないということで、施設の中で、ベッドの上で次々と高齢者、入居者の方が亡くなっていく、こういう悲惨な実態が伝えられました。

 日本でこういうことが起きてはならない、起こしてはならない、そのためにどうすべきかということを考えていったのが、社会的検査でございます。

 これは、先ほどお話があったとおり、症状がある人、疑いがある人だけを検査するのではなくて、症状のあるなしにかかわらず、ないというふうにされている高齢者施設を順番に回っていこう、こういう検査を考えました。

 ただ、その一方で、世田谷区で介護施設、また介護事業所って千五百か所もあるんですね。したがって、この千五百か所を何チームかで回ろうにも、一日何か所も行ってもなかなか進まない。一周するのに相当時間がかかる。その回っている間にまた感染がどんどん出てくるということがございました。

 そこで、検討しまして、介護施設とか保育園とかいうところで感染が出たときには、その感染が出た方の周りの職員の方、入居者の方全員を、翌日からこの社会的検査チームが入って随時検査をしよう。つまり、火の手が上がったところからすぐに全員を検査する。こういう二つの仕組みをつくってきました。

 もう一つは、次のページ、こちらの図の方を見ていただきたいんですが、保健所が疲弊している、フル回転しているという話は皆さん御存じだと思います。

 世田谷区でも、大変、毎回、大きな波が来たときには、保健所職員、増員しても増員しても仕事が膨れ上がる、こういう状況でした。したがって、この社会的検査、高齢施設を守るために回っていくということを保健所にやるようにということは、やはり行政の長として指示できない。更に負荷が重くなってしまいます。そこで考えたのが、こちらの図で左側に、保健所の下に保健福祉政策部というのが世田谷区にありまして、こちらに社会的検査は所管をしてもらおうと。

 そして右側には、これは、民間のメディカル事業者に全面的に委託をしまして、高齢者施設に電話をかけてもらう。いつ行きますか、どこでやりますかという打合せから、そして検査の実行、医師、看護師が行って検査をする。そして結果をお知らせする。もし陽性が出たら、コンタクトトレース、その方自身の動向についてはこの事業者にインタビューをしていただいて、それを保健福祉政策部と保健所で共に協議して、陽性の方ですから、それ以降は一般の陽性の方と同じような扱いにするというスタイルで取り組みました。

 次のページが実績です。社会的検査の実績なんですけれども、随時検査の方、百九十二か所、四千三百九十人実施をしました。七十一人の方が陽性。これは陽性者が出たところに行くわけですから、比較的陽性率が高いですね。

 定期検査の方は、四百九十三か所やって約八千人。二十三人の方が陽性なんですが、実は、この二十三人の中には、十五人の無症状の方がまとめて発見された施設もあるんです。

 十五人、全く無症状で、高齢の方も無症状。相当感染対策をしていたのでショックだったということだったんですが、十五人、この段階で見つかったので、うちの施設、これは特別養護老人ホームですが、運営を止めなくて済んだということですね。十五人が更に放置されていた場合には、何十人というクラスターになっていたおそれがあるということで、こういうこともあるんだということがこの数字に含まれています。

 したがって、十五がこの二十三に含まれていますので、大変、定期検査は陽性率が低いんですね。

 こういうことが分かりました。これはやり始めて分かったんですが、定期検査に入るよということを通知して予定を組むことによって、高齢施設の方が本当に一生懸命、感染対策をやっていただくんですね。今までやっていたことも全部見直してバージョンアップするということで、その効果というのもかなりこれはあったなというふうに思います。

 次に、大量の検査をどうやってやっていくかということで、プール方式についてもちょっと触れたいと思います。

 実は、世田谷区で問題提起を夏にさせていただいて、厚生労働省の方にも何度かお願いをして、この社会的検査の有用性については早い段階で認めていただきました。これは国費で算定しましょう、行政検査で、いわゆる症状がない方も含めて定期的に検査することも含めて必要でしょうと。ただし、プール方式だけは除外だというのが九月の中頃だったんですね。

 そこで、東大先端研の児玉先生のプロジェクトが、炎天下、三百人を超える方たちの検体を取りまして、実際に三百人の中に陽性者はいなかったので、陽性者の検体を取り混ぜて、一本で検査した場合と四人まとめてプール方式で検査した場合と、一致率がどのぐらいかと。これは、問題なく全部一致したんですね。

 なので、精度、大丈夫ですよという研究レポートを出していただいたので、厚労省の方に十一月に、これを是非、田村大臣に検討してほしいということで申し上げ、この世田谷区でやっている検査は、実は東京都の方も検査支援をやっていまして、国の経費を使わない検査について補助するという要件だったので、これは、プール検査については、始めながら、国としても早く認めてほしいということを十二月の末に田村大臣にも申し上げて、一月二十二日にようやくこれが認められました。大量に、素早く、コストを減じて検査を実施するということは大変大事なことだというふうに思っております。

 次に、ワクチンについて触れていきたいと思います。

 こちらのチャートを御覧いただきたいというふうに思います。

 このワクチンについて、最大は、ワクチンの供給がいつからなのか見えないということは全国の自治体共通だと思います。

 四月から高齢者ということで、国の提示に従って我々は場所を確保したり職員を確保したり、そして、ワクチンを打っていただく看護師の方、それから医師の方、手配をしていきます。医師会の先生方だけでは間に合わない部分があるので、派遣をしていただくという契約も今締結をしようとしています。

 では、一体いつから契約をしたらいいんだというのが定かでない。四月、例えば百歳以上の方からとか、少ない人数でというような、これは今週示されると聞いていますが、実は、ワクチンのクーポンを送らなければいけないんですね。世田谷区の場合、二十万人です。その送るクーポンに、何月何日から始まりますよということが書けないんですね、現在。書けない状態がこれ以上続くと、実際上、四月から大きくその検査を回していくということはできないでしょうし。

 ここまで国際的な争奪戦で大変厳しいという事情は分かります。そうなると、ワクチンが、我々の想定は、要するに、世田谷区民が接種を希望すれば打てるような供給があるという前提で計画を組んだわけですけれども、そういうわけにいかないかもしれない。もしかすると不定期型、あるときは三万、そしてその次の週は二万とか、次の週、ちょっと途絶えたとか、そういうことを考えなきゃいけないかなと。

 そうすると、予約を何人までいけるのかということを、しっかりシステム的に、要するに、ワクチンがないのに予約ができちゃうということができないような仕組みを急遽今つくろうとしています。

 そして、次のページに進みたいんですが、七ページです。

 これは、ワクチン自体が、これは小原先生という東京都医学総合研究所の、自らワクチン開発をされている先生をアドバイザーに、昨年から何度か世田谷区で勉強会をやってきました。ファイザーのワクチン、mRNAワクチンは大変壊れやすいんだ、この扱いはデリケートだということを何度も聞いておりました。

 ですから、昨年来、政府は、厚生労働省は、基本、運べないんだ、運ぶにしても三か所くらいということで、我々は、集団接種会場を押さえながら、アストラゼネカのワクチンは扱いやすいので、これは個別接種でやっていこうというふうに考えてきたわけなんですね。

 一月になってもこの見解はずっと継続していました。小分けはできないですよ、一か所から三か所ぐらいには行きます、その先の何十か所というのは駄目なんですよというふうに答えているんですね、厚生労働省は。ところが、その数日後に、いわゆる練馬区モデルということで、二百か所、二百五十か所、これは先進事例じゃないかということで出されました。

 であれば、ワクチンの、凍結したワクチンを一旦解かして、二度から八度というこういった温度で運ぶという実例が世界中にあるのかということでございます。これはなかなかそういう実例はないということなので、非常にこれは困っているということであります。

 今、マイナス二十度で運べるということになったので、この点はまた条件が変わってきますが、とにかく、基本的なところが変わるんですね。変わるのはやむを得ない面があると思いますが、変わるなら変わったということを、しっかり根拠を示して、こういう科学的根拠で運べるんだと言っていただかないと、我々は困る。

 厚労省に問い合わせると、例として示したんだ、あとは、接種主体は自治体なので自治体の責任で判断してくれ、こういうお話で、これはとても怖いことであります。

 たくさんの情報が、一日三つ、四つ、五つと来るんですね、通知行政ですから。厚労省の場合は余りにも通知が多過ぎて、要するに、前に通知している内容が変わっていくんですね。変わっているということがホームページ上などで点検できないんですね。これを改めてほしいというふうに考えております。

 データベースの問題も、年末にこのVシステムの図を見て驚愕しました。誰がどのワクチンをいつ打ったのかという肝腎の記録の仕組みがないじゃないかと。これはあり得ないことですよね。これは田村大臣にも十二月に言いました。こんなことじゃ適切な管理ができませんよ、二か月後になったら情報が来るということじゃ、あり得ないでしょうと。ただ、残念ながら、いろいろやっていただいたようなんですが、年末に、国としては開発は無理だという返事を厚労省からいただいたんです。

 仕方がないので、これは自治体として独自開発をするということで、一月四日から事業者と交渉して、もうシステムはほぼ立ち上がっていますが、その後に、今度は、このシステムがないじゃないかということで、新たに河野大臣がワクチン担当になられて、こういうことが出てくる。

 だから、これまでどういう経過だったのかということを、やはり国としては全部統一して、経過を全部押さえて、全国の自治体に発信をしてほしいというふうに思うわけであります。

 その他、大変情報が錯綜する中で、自治体は総力を挙げてこのワクチン接種をしっかりやろうと考えています。そのためには、これまでの現場の声をまず聞いて、自治体に赴いて、何があるのかを知って、その上でシステムを構築する、これが一番だというふうに思います。

 最後に、私は久しぶりにここの予算委員会の部屋にやってまいりました。思い出すんですが、一九九八年、当時、大蔵省の接待問題が課題になったとき、橋本龍太郎さんが総理大臣、このときに、やはり公務員倫理法を作ろうということで、当時、与党内、当時、与党、自社さ政権ですから、議論がありまして、私もそのメンバーになって、相当突っ込んだ議論をして、そして、御覧のように倫理法ができ上がっています。この間、いろいろ不祥事が連発をして、その都度対応ではなくて、そろそろ抜本的な、具体的な措置がやはり立法府にあってほしいなということを期待申し上げるということを一言付言をして、私の意見としたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 次に、小池公述人にお願いいたします。

小池公述人 土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター、これは、英語で、頭文字を取ってICHARMと言いますが、センター長を務めております小池でございます。

 私は、私の専門の観点から、近年打ち続いております水災害、それに対する対応と、これに対して科学技術がどういう対応ができるのかということを御紹介し、また、こういう防災、減災と科学技術の力をもって我が国はどういうふうな国際協力を展開できるかということについてお話しさせていただきたいと思います。

 お手元に資料があると思いますので、ページをめくっていただきながらお聞きいただければと思います。

 二ページを御覧ください。これは、ここ八年間の我が国における水災害でございます。

 伊豆大島、広島で大きな土砂災害がございました。その翌年、関東の鬼怒川が決壊いたしました。このとき、昼間の決壊でありましたが、逃げ遅れで千三百人を超す方がヘリコプターで救助されました。翌年には、東北の高齢者のグループホームでそこにおられる方が亡くなるとか、北海道の経済に大きな打撃を与えた台風災害が頻発いたしました。そして、平成二十九年には、谷の様相が一変する土砂洪水氾濫で、九州北部、筑後川の支流の赤谷川が大きな被災を受けました。

 そして、まだ記憶に新しい平成三十年、令和元年に、西日本と東日本で、日本全国のアメダス、約千三百ありますが、この一割の箇所でそれぞれの年に過去最大の豪雨を記録するという事態がございました。日本全国どこにでも大きな、今までにない雨が降るようになっております。これらの災害の結果、無数の土砂災害、百四十を超える河川が破堤をする。それから、昭和五十七年の長崎豪雨以来の二百名を超す犠牲者が出ました。

 そして、昨年であります。熊本県の球磨川、ここに人吉市の雨量と水位の図を載せておりますが、いずれも過去を大幅に上回る大きな雨と洪水になっております。

 三ページ目を御覧ください。

 こういう豪雨の変化によって、洪水のパターンに変化が出てきております。

 1に書いておりますのは、バックウォーター現象ということで、本川の水位が高い状態のときに、支川の水位が高い場合に支川で破堤するということです。この図には、岡山県倉敷市真備町の大きな浸水被害がございましたが、そのときのバックウォーターによる連鎖破堤の内容が記されております。

 二番目は、土砂洪水氾濫でございます。上流で豪雨によって土石流や土砂崩壊がございますと、それが洪水流によって流されます。勾配が緩いところで土砂が堆積いたしまして、川をまず埋めます。そうすると、水は流れ場所を失いますので、周りの土地いっぱいに土砂を含んで流れるわけです。これが土砂洪水氾濫で、写真にありますように、川と道路、周りの土地の区別がつかないほどに土砂が堆積するわけでございます。

 三番目は、長時間継続して豪雨が続きますと、ダムの治水容量を超える流入量があります。そうしますと、水位がダムを超えますと、コントロールを失って非常に危険な状態になりますので、水位の上昇と競争で放流をしなければならなくなります。これが異常洪水時防災操作と言われるものでございまして、こういう事例が増えてきております。

 一方、社会にも非常に大きな変化がございます。

 4のところを御覧ください。これは日本の人口構成でございますが、高齢者一人当たりの生産年齢者数、すなわち支援が必要な人に対して支援できる人が何人いるかということでございますが、二〇〇〇年から二〇六五年にかけて激減いたします。すなわち、支援できる人が減って、支援が必要な人が増える。これは、先ほど来も申しましたが、要配慮者施設の立地の見直し等を考えていく必要があることを示しております。

 5は、この図の中に赤い線と黄色い線が段階的にございますが、これは各業種ごとの業務の停止とかあるいは停滞の日数でございます。浸水深に応じて何日業務が停止するかというマニュアルの線でございます。この事例は先ほどの鬼怒川の決壊のときの事例でございますが、それを、マニュアルを超える、三倍から四倍超える日数が復旧にかかっております。経済が安定成長から低成長に入って、私どもは、元に戻れない状態というのが続き、持続的な経済発展に大きな影響を及ぼし始めていることに気がつかなくてはなりません。これを受けて、実は、今年度でございますが、この線を倍の値に変えるというマニュアルの改定が行われるに至ったほどでございます。

 人々の意識も変わってきておりまして、六番は、コロナの感染リスクと災害リスク、どちらが怖いかということを聞いたものでございますが、コロナの方が怖い、リスクが高いと答えた人が四割で、災害リスクの倍になっております。これは、災害を経験して、しかも避難を経験した人に聞いた調査結果でございます。

 一方、7では、感染症の影響下、東京、大阪、名古屋の特に若い方々が、首都、都市から地方移住したいという関心が高まっております。とりわけ、東京二十三区の二十代の人々からは、三五%を超える方々が地方移住に関心があると答えております。

 こういうことを基に、社会資本整備審議会では、新たな河川の、治水の在り方を考えまして、昨年七月に国土交通大臣に答申されました。

 四ページを御覧ください。

 基本的な観点としては、こういう災害に対して強靱な国土をつくること、それから、右側になりますけれども、将来にわたり継続的に経済、社会を発展させることができること、これは持続可能性でございます、そして、こういうことをやるためにはあらゆる主体が協力して対策に取り組むという、包摂性ということを基本的な観点に置きまして、気候変動を踏まえた治水計画の見直しと、河川流域のあらゆる主体の関係者が協働して流域全体で行う持続的な治水対策、これを流域治水と呼びますが、これへの転換を答申いたしました。

 この流域治水、英語では、リバー・ベースン・ディザスター・レジリエンス・アンド・サステーナビリティー・バイ・オールといいまして、オールは全ての関係者が協力するという意味でございます。

 計画の見直しでは、左側の破線の中に書いておりますが、これまでは観測値を用いて計画を立てておりました。これを百分の一とか二百分の一という確率評価をして計画を立てていたところに、気候変動予測モデルの結果から、現在と将来、どれぐらい変化するか、その変化倍率を掛けるという方式を入れまして、これは昭和三十三年以来の河川計画の基本的な見直しになっております。

 令和元年の十月に提言を答申した暫定値がここに記載されておりますが、黄色で、計画降雨、二度以上のところが一・一倍。ああ、そんなものかというふうにお考えの節があるかもしれませんが、計画降雨で一・一倍というのは、洪水のピーク流量で一・二倍。百年に一回の洪水は百年に二回起こる、要するに被害は二倍になるということでございます。こういう非常に大きなインパクトがございまして、現在、この改定作業を社会資本整備審議会では進めておりまして、年度末にはこの改定を終えるところでございます。

 一方、流域治水は大きな三つの柱がございます。赤い色で1、2、3と書いておりますが、氾濫をできるだけ防ぐ、あるいは減らす方策。2に、被害対象を減少させる、要するに住まい方の工夫とか、リスクの低いところに移住するということでございます。3は、確かな避難を行って被害を軽減し、早期復旧復興を実現するということ。

 こういうことを実現するためには、一番下に書いておりますが、各省庁、国、地方、それから官、民、コミュニティーの連携を強めて、統合的で先見的な政策の立案と実行が必要になってきます。

 それから、これまでは災害というのは直接の被害を対象としておりました。しかし、被害を軽減するということは持続可能な開発につながり、それは税収の増加にもなります。こういうことに視点を移して、災害を減らすということが質の高い成長につながるという視点を持っていくことが必要であると思います。

 それから、こういう地域ぐるみ、国ぐるみの対策には、それぞれの魅力とか誇りある、こういうのはシビックプライドと言われておりますが、こういうシビックプライドを持てる社会づくりというものも併せて取り組む必要があると思っております。

 災害関連で、最後に、国難級の巨大災害への対応を触れさせていただきます。

 五ページを御覧ください。

 平成三十年九月、台風二十一号災害のときには、この写真にありますように関西空港が冠水いたしまして、非常に大きなショックを受けました。このとき、大阪湾の潮位は、過去最大である室戸第二台風のときの水位を三十センチ以上も実は高回っておりました。しかし、その図にありますように、この高潮による浸水被害、戸数はゼロでありました。このとき、防潮堤であるとか防潮水門等の投資効果によって守られた資産は十七兆円と推計されております。

 中の段にありますのは平成二十九年の土木学会会長特別委員会から出された報告でございまして、ここでは、八つの巨大災害、一番大きいのが南海トラフ地震でございますが、首都直下地震と続きます。こういうものの経済被害や資産被害、財政的被害、これは税収の落ち込みです。こういうものを試算して、事業費として社会資本投資をしますと、どれぐらいの減災率があり、税収の縮小幅を回避できるか。税収の縮小幅を回避できるというのは、逆に言うと税収が増えるということになるわけですが、そういうことを試算しており、こういう社会資本投資というものが必要なことがうたわれています。

 一番下に三つの図を描いておりますが、黒い線、左から右に時間が流れておりまして、災害が発災しますと社会の機能が低下して、それが戻ってきます。オレンジ色の三角が被害のリスクということになります。

 私どもはこの面積をできるだけ減らすことが必要なわけで、避難とか応急、復旧復興で紫のように減らすためには、市民、コミュニティー、企業、地方自治体、国、こういう全ての関係当事者が行動を変えていく必要があります。

 また、防災、減災の投資、これを開発投資とも捉えていきますと、右側の青い線で描かれていますように、社会の機能が上がって、よりリスクを減らすことができます。こういう質の高い成長に結びつけるような施策の展開が必要であると思います。

 こういうことを進めるには科学技術はどのようなことができるかということについて、次に述べたいと思います。

 六ページを御覧ください。

 平成二十八年から令和二年、今年度までの第五期科学技術基本計画におきましては、ソサエティー五・〇という考え方が出されました。これは、データや情報を仮想空間で統合、解析して、現実空間に適用することによって社会のありようを変えるというものでございまして、左側の下段に丸と大きな皿が三段ありますが、この中ほどに、データベースとしまして、医療とか地球環境、エネルギーとか、こういういろいろな情報を統合化して、上段のいろいろなシステム、サービスにつなげていくということでございます。

 このページの右側には、文部科学省の施策で、地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業というものが来年度予算に計上されております。これは、地球環境に関わるビッグデータを蓄積して統合、解析するシステム、これは頭文字を取ってDIASと呼ばれておりますが、これを更に開発して、こういう大規模なデータによる社会の価値創出につなげていこうというものでございまして、注目すべきことは令和三年から十年間の施策ということになっております。

 実は、このDIASというものは、下の方に、青い色がつけてあるところに記載しておりますが、一九八〇年から二〇〇五年、四半世紀にわたって、小規模な科研費だとかいろいろな経費を組み合わせて大学の研究グループで進めてきたものが、二〇〇六年から二〇一〇年の第三期科学技術基本計画で国家基幹技術の一つとして認定され、その後、五年、三期にわたって開発が続けられてきたものでございます。

 この緑色のお皿の図はそのときに作ったものでありまして、ソサエティー五・〇と同じような構造をしておりますが、データを統合、解析しまして、いろいろな科学技術の分野間連携や科学と社会の連携をつくっていくものでございます。

 実は、先ほど御紹介した国土交通省の新しい治水計画、その中に一・一倍とか一・二倍という数字を出しましたが、これは、文部科学省、気象庁、環境省がスーパーコンピューターで作成いたしました地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース、d4PDFといいますが、この膨大なデータをこのDIAS上で蓄積して、更に高分解能化して、解析して出てきた数値でございます。

 こういうように、このシステムはソサエティー五・〇をもう具現化していっているものと考えられます。これは、世界でトップであることは間違いないんですが、また、世界で唯一の、こういう社会的価値を生み出している科学技術基盤でございまして、こういうものの発展というものが我が国にとっては必要だと思います。

 七ページはその応用的な例を記載しておりますが、このDIASのプログラムと、官民研究開発投資拡大プログラム、PRISMというものが内閣府によって進められております。

 その中で、全国市町村、千七百四十二の市町村に対しましてリアルタイムで災害の統合的な情報提供を行うシステムができ上がっておりまして、全ての、我々、日本で使える観測データ、これはいろいろな、カメラの情報も入っておりますが、公共で利用できるカメラの情報も踏まえて、実時間で皆さんが見られる形にしており、ハザードマップや避難所の情報も加えております。

 さらに、この枠組みの中では、中小河川の洪水予測というのは非常に難しく、また重要であるわけでありますが、それを二時間から四時間のリードタイムで予測するシステムを開発しておりまして、来年度二百か所完成を目指して進められております。

 さらに、4に書いておりますのは大分県の日田市の事例でございますが、市と地区と協力して、住民の方々が避難する、その実感をつかんでいただくためのバーチャルリアリティー、VRといいますが、こういうものを、実はこれはゴーグルでこうやるんですけれども、今、コロナの中ではそういう訓練ができませんので、こういうホームページで両方を比較して見ていただきながら進めるということもやっております。

 その上の5というのは東京の事例でございまして、二百五十メートル、一分ごとの、膨大な雨のレーダーデータがございます。これに、これも、膨大な、東京の下水道の情報を組み合わせて、リアルタイムで、下水道が満管になり、それがあふれてくるというのを算定するシステムが動いております。

 6は、昨今、電力あるいは利水ダムの事前放流というのが必要になっておりますが、それをしつつ、かつ発電量を増やすという、夢のような操作もこのシステムで研究的に開発されております。

 7は、これは南アフリカとの協力でございますが、マラリアの予測のために、現地の医療機関のデータと気象の季節予測、それとAIを用いてマラリアを予測して、消毒であるとか、あるいはその体制を事前に整える情報に使われております。

 こういうようなことが進められておりまして、防災、減災に関わる我が国のいろいろな知見それから科学技術を国際協力に利用していくことが重要と思われます。

 八ページを御覧ください。

 我が国は、平成二十七年二月に開発協力大綱を新たにいたしまして、質の高い成長というものを目指す大綱にしております。ちょうど、これは二十七年の二月でございますが、その年の三月に仙台防災枠組がまとまり、九月に持続可能な開発のための目標が定まり、十二月にパリ協定が結ばれました。

 こういうことに関連いたしまして、こういう防災と、持続可能な開発と、それを包摂的に加えながら質の高い成長を目指すということが必要なわけですが、外務省とユネスコのプロジェクトで、西アフリカ洪水予警報プロジェクトというのが平成三十年の補正予算で採択されました。ユネスコから私どもICHARMがこれを受けて実施し始めたのが令和元年の六月からでございます。現地から人を私どもの研究所に招聘いたしまして研修等を始めた、そのさなかにコロナが起きました。

 補正予算でございますので、短い期間で……

金田委員長 恐縮ですけれども、申合せの時間が来ておりますので、発言をおまとめいただければありがたいと思います。

小池公述人 はい、分かりました。どうも失礼いたしました。

 同じようなことを、下に書いておりますが、アジアでも展開しておりまして、ここにこのシステムを用いまして、今、遠隔で開発し、遠隔で能力開発を行い、そして、それぞれの地域での災害に対する強靱性と、それから持続可能な開発の力をつけていくという活動を進めております。

 以上でございます。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 次に、小畑公述人にお願いいたします。

小畑公述人 全国労働組合総連合、全労連の小畑です。

 本日は、二〇二一年度政府予算に関わって、労働者の立場、労働組合の立場からの発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 さて、二〇二一年度の予算編成に当たっては、何よりもコロナ禍から命を守る政策に予算を重点配分すること、そして、国民経済の基盤である労働者の雇用と暮らしを支える予算を増やし、制度、政策を改善することが求められていると思います。

 この間、森前東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の女性差別発言に端を発して、ジェンダーの視点から社会の在り方を見直す機運が高まっております。労働の分野を見たときにも、コロナ禍によって女性労働者、非正規労働者に最もその矛盾が集中しております。女性労働者、非正規労働者の実態を踏まえて改善に向けた実効ある施策を進めるなど、ジェンダーの視点から予算の在り方を見直すことが必要だというふうに考えております。そうした立場から幾つかの点について意見を述べさせていただきます。

 第一に、コロナ禍にあって、私たち国民の命と暮らしを守り、支える、いわゆるエッセンシャルワーカーと言われる労働者が劣悪な労働条件の下に置かれている問題です。その多くが女性労働者です。

 本日は、看護師、介護士、保育士など、医療、介護、保育、福祉の分野で働く女性労働者の賃金を資料としてお示ししておりますので、資料の二ページを御覧ください。

 看護師は、国家資格による専門職であるにもかかわらず、経験を積んでも賃金が上昇せず、現場では寝たきり賃金と言われる低い賃金水準となっています。介護に従事する労働者や保育士の賃金水準は更に低く、ホームヘルパーや施設の介護士、保育士はピーク時であっても三百万円台にとどまっています。

 それぞれ、資格を持ち、専門職として働いているにもかかわらず、非常に低い賃金水準に押し込められています。背景には、子育てや看護、介護、福祉などのケア労働に対して、家事労働的な仕事であるから賃金が低くてもよいというジェンダーバイアスのかかった考え方があるのではないかと考えております。そのことが今回のコロナ禍で明らかになりました。

 医療、介護、保育、福祉の分野で働く労働者は、新型コロナウイルス感染拡大の下で、感染の危険と隣り合わせとなる緊張感、感染拡大の収束が見通せない不安感の中で、必死で、患者や入所者、子供たちのために、長時間過重労働を強いられながら働いておりますが、それなのにこうした非常に低い賃金水準に置かれているということです。

 私どものところに寄せられた春闘アンケートから、職場の声を幾つか紹介いたします。

 奨学金や年金負担、税金、最低限の生活費で、手元に残るお金はほとんどありません。専門性の高い仕事で、病院の利益にも貢献しているはずなのに、賃金が少な過ぎると思います。若手のモチベーションは下がってしまい、この職業に悲観して、去っていく人も多数います。

 新型コロナを経験し、日本の医療の脆弱さが浮き彫りになったような気がします。もっと健康で生き続けられる社会をつくるためには、診療報酬を改善し、かかりやすい医療体制にしていく必要があると思います。命が何より大切です。

 介護職の仕事はきつい。仕事と賃金が見合わない。

 コロナウイルスにより緊急事態宣言が出ている中でも休園になることもなく、医療機関で働く保護者さんたちを必死で、ある意味命懸けで支えてきた。しかし、国からそれに対する支援金も慰労金も出ず、つくづく、保育の仕事は情熱や自分自身のやりがいのみでしかモチベーションを保てないのだと悲しくなった。コロナ禍の中、今後、働く親を支える保育は、今のまま、保障や年収が上がらないままだと、どんどん減っていくだろう。

 こうした切実な声を是非受け止めていただきたいと思っております。

 国民の命と暮らしを支えるエッセンシャルワーカーの賃金、労働条件を改善するための施策、予算を要望いたします。具体的には、医師や看護師、医療技術者、介護職、保育士などを大幅に増やすこと、そして、診療報酬や介護報酬の改善、非正規を含めた処遇改善手当、加算の改善などのための予算の確保が必要だと考えております。

 更に言えば、国民の命を守るためにも、コロナ禍で減収を余儀なくされている医療機関への減収補填は欠かせない課題です。

 この間、三次にわたる補正予算によって支援策が実施されてきたことは承知しておりますが、二〇二一年一月末時点でまだ交付は一兆二千億円止まりとなっており、支援が十分行き届いていない実態があります。早急な交付実施が求められていると思います。

 同時に、コロナ非対応の医療機関では、厳しい状況が続いております。ここに対する支援は、三次補正まで見ても、大変不十分なものでしかありません。地域医療はパッケージです。コロナ対応病院からリハビリのための患者さん、また、一般の患者さんを受け入れる体制の強化が非コロナ対応病院にも求められています。発熱外来、感染防止等支援金の増額、継続も含めて、二〇二一年度予算においても、地域住民の命を守るために、医療従事者の待遇の確保、改善につながる減収補填を強く求めたいと思います。

 第二に、コロナ禍によってますます広がる格差と貧困を根本的に解決するための国としての責任が問われていると思います。

 全労連を始めとする実行委員会は、昨年の十二月の十九日に、日比谷公園で、コロナ災害を乗り越える何でも相談会を開催いたしました。そして、十二月の二十九、三十日、一月の二日には、労働弁護団の皆さんのお呼びかけで、幅広い労働組合が協力をして、年越し支援・コロナ被害相談村を開催いたしました。相談に来られた方は、どちらの取組でも、二十代から五十代までの働き盛りの方がほぼ七割、女性が二割となりました。相談村に相談に来られた方のうち、約三割は所持金が千円未満の方でした。日比谷公園の相談会には、コロナ禍で仕事を失い、生活に困窮する切実な相談が寄せられました。幾つか紹介いたします。

 月二十万円の収入があったが、臨時で働いていたから揚げ屋を解雇された。仕事が見つからない。

 コロナで再び短期バイトがなくなり、今年の収入は、今月じゃなくて、今年の収入は三十万円。生活保護を勧められたが、仕事がしたい。

 日雇の建設業で二十年以上働いてきたが、今はコロナでほとんど求人がない。アパート代も支払えなくなった。

 こうした相談が寄せられたところです。

 また、NPO法人のしんぐるまざあず・ふぉーらむ、ここで実施したアンケートが公開されておりますけれども、それによりますと、半数近くが、勤務時間が減少したというふうに回答し、収入が減少した、収入がゼロになったと答えた人を合わせると、これは七割を超えております。

 記述欄には、自分は一日一食、子供はお休みの日は二食、自分は朝御飯はやめて、職場のウォーターサーバーのお湯を朝御飯にしている、四月から少ない貯金と国からの一時金の二十万円で生活しており、来月のお給料日まで残り八千円しかない、こうした訴えが書かれておりました。

 そもそも賃金が低く、蓄えなどないところに、勤務時間短縮、休業、学校休校措置後の復職の難しさなどが相まって、収入減や収入ゼロへと追い込まれていることが分かります。

 ふだんは貧困に暮らしているとは必ずしも思わない人たちまで含めて、アルバイトやパートがちょっと切れる、仕事が休業になることが一か月、二か月続くと、たちまち食べるものもなくなる、こういうレベルの貧困に陥るという、今までの日本の貧困や困窮のスケールと違う状況があることがコロナ禍で浮き彫りになっています。

 私は、この背景には二つの問題があると思っています。

 一つは、労働者の賃金がそもそも低過ぎるという問題です。

 コロナ禍の前から、賃金が上がらない、上がらないどころか実質賃金は下がり続けるという状態が長く続いておりました。さらに、非正規化が急速に進められてきた。正社員と同様な基幹的業務でも、低賃金、非正規雇用に行わせることができる状態が蔓延している、そのことが日本の労働市場を異常な事態に追い込んでいます。

 七ページの資料を御覧ください。

 物価動向を考慮した実質賃金の変動を指数によって見ていくと、日本の平均賃金は、一九九七年をピークにいたしまして一〇ポイントも低下をしております。二十年の長期で見ますと、どの国の実質賃金も二〇%から六〇%ほど上昇しているのがお分かりいただけると思いますが、マイナスになっているのは日本だけと言っても過言ではないような状況です。

 もう一つ、貯蓄の資料もお出ししていますが、この低賃金の下で、貯蓄ゼロの世帯は、単身世帯では四割に迫り、二人以上世帯でも二割強になっています。ふだんから余裕のないところで、仕事があればぎりぎり生活できていたが、実は一か月の収入の一部が減るだけで生活が成り立たなくなってしまう層が大きな固まりとしてできていた、そのことがお分かりいただけると思います。

 この低賃金構造の根底には、女性労働者が多くを占める非正規労働者を家計補助的で安価な労働力、雇用の調整弁としてきたことがあります。それがコロナ危機の下での矛盾と困難を広げています。普通に生活し、子育てできる賃金の保障という考え方が欠如しています。

 少し飛びますが、十二ページの資料を見てください。

 女性労働者全体の二二・五%、女性パート労働者を取り出すと四一%が最低賃金近傍で働く低賃金労働者であり、しかも、エッセンシャルワーカーに最賃近傍で働く労働者が多いことがお分かりいただけると思います。これが先ほど触れたような貧困の状況をつくり出しております。

 戻りますけれども、十ページの資料を見ていただきますと、女性労働者は、一九九七年と二〇一七年、比べてみても、どの年代であっても二百五十万円未満の層に五割から七割、赤いところですね、集中していることが分かります。女性労働者はずっと、一人の賃金では普通に暮らしていかれない賃金水準に置かれてきました。

 一方、男性労働者は、ほぼどの年代でも、一九九七年と二〇一七年を比べると二百五十万円未満の層が倍増しています。しかも、五百万円以上の割合が激減しています。つまり、女性非正規労働者の低賃金がそのまま男性非正規労働者にも適用されて全体の低賃金構造をつくり出しているということを示しているものです。

 十一ページの資料では、家計を支える層で非正規労働者が大幅に増大していることもお分かりいただけると思います。

 世帯単位で考えれば女性の働き方は家計補助的なものなのだから低賃金に置かれたままでいい、この考え方を放置してきたことが全体の低賃金構造をつくり出してきました。女性も男性も、一人一人の労働者が一人の賃金で八時間働けば普通に暮らせる構造をつくり出していかなければならないと思っております。

 全労連は、最低賃金千五百円、全国一律最低賃金制度の確立を求めています。この間、全国二十六の都道府県で最低生計費試算調査を進めてまいりましたが、全国どこでも若者一人が人間らしく暮らしていくために必要な最低の生計費は、月百五十時間労働で換算をすると、時間額千五百円から千六百円だ、全国どこでもです、ということが明らかになっています。

 二〇二〇年度の最低賃金は、全国加重平均で時間額九百二円となり、一円の引上げにとどまりました。コロナ禍だからといって労働者にしわ寄せするのはもうやめて、二〇二一年度は最低賃金の大幅引上げ、地域間格差の解消に踏み出すべきです。低賃金状態をこのまま続ければ、リーマン・ショック後の失われた二十年を繰り返すことになってしまいます。

 そして、この最低賃金の引上げを実現させるためには中小企業支援も欠かせません。コロナ禍で苦しむ中小企業への支援を強めることが、労働者の雇用の確保、賃金の底上げを可能にし、地域経済を豊かにすることにつながります。中小企業対策費を大きく増額し、使えるものに施策を充実すること、中小企業が経営を継続できるための施策を強めること、社会保険料率を応能負担による累進方式として大企業に相応の負担を求めるものとすること、消費税を五%に減税し免税点の引上げを行うこと、インボイス制度を導入しないこと、一度目の持続化給付金が必要な全ての人に行き渡るように申請、給付を続けるとともに、持続化給付金の事業規模に合わせた二度目の支給、家賃給付の二度目の支給を行うことなどが必要だと考えています。

 二つは、雇用確保の問題です。はっきり見える形での解雇、雇い止めの問題とともに、雇用を維持されているのに事実上失業状態に追い込まれている労働者が大量におり、そこへの対応が求められています。

 総務省の労働力調査によれば、二〇二〇年非正規労働者は前年比で七十五万人減少しました。その内訳は、男性二十五万人に対して女性五十万人です。野村総合研究所は、女性のパート、アルバイト労働者など、勤務シフトが大幅に減り、受け取れるはずの休業手当を受け取ることができずに実質的な失業状態にある人、これは九十万人いるというふうに試算しています。

 この間、飲食店や宿泊、観光、流通小売業などを中心に、使用者が一方的に勤務シフトを入れず、それを休業ではないとして非正規労働者に休業手当を支払っていない、こういう問題が明らかになっています。時短営業、シフト減が非正規労働者、女性労働者を直撃しています。

 企業が、休業させた労働者に休業手当を正当に支払い、雇用を維持すること、そのためにも雇用調整助成金の特例措置の継続が求められています。

 また、緊急的な措置として行われている休業支援金については、中小企業で働く非正規労働者だけではなく、大企業で働く非正規労働者にも同じように支払う制度を確立するべきです。現在示されている内容は部分的、限定的であり、中小企業の非正規労働者に適用した制度を全面的に適用することを強く求めます。

 加えて、本来企業が支払うべき休業手当をきちんと企業に支払わせる、使用者責任を果たさせるために、このシフト制契約の在り方や休業手当制度についての規制の強化、制度改善が必要だと考えます。

 コロナ禍で明らかになった格差の広がりを是正し、公正な社会に転換していくことが求められております。そのために国の果たす役割は大きいと思います。

 私たちは、以上述べてきた施策を進めていくためには、税の集め方、税の使い方を変えれば十分に可能であると考えております。

 二〇一九年には、最後のページのグラフですけれども、資本金十億円以上の大企業は、内部留保を新たに十兆円も積み増しし、その額は四百五十九兆円に膨れ上がっています。

 コロナ禍にあっても株価は三万円台になっており、二〇二〇年十月から十二月期のGDPは年率一二・七%増と、二期連続で大幅な伸びとなりました。内部留保が非常事態への備えというのであれば、今こそそのときであり、ためた内部留保を、下請中小零細企業への支援や生活できないほど下げられてしまった労働者の賃上げにこそ使うべきだと考えます。

 同時に、内部留保への課税や累進課税によって税収を増やすことは可能です。

 さらに、世界的なコロナパンデミックの中で、何よりも一人一人の命を守ることが最優先のときに、軍事費を増やす必要はありません。軍事費を削って、コロナ対策、医療、公衆衛生への抜本支援、生活困窮者への支援に回すことを求めます。

 ジェンダーの視点に立って、最低賃金の引上げも含め、今の低賃金構造を見直し、雇用の安定……

金田委員長 恐縮ですが、申合せの時間が参りましたので、よろしくお願いします。

小畑公述人 済みません、あとちょっとで終わります。

 同一労働同一賃金を実現することを強く求めるものです。

 最後になりましたが、私、小学校の教員の出身ですので、一つだけ。

 今国会において、小学校の全学年を三十五人学級とすることを内容とする義務標準法の改正法案が提出されています。これに関わって、先日、菅首相から、予算委員会において、中学校も検討する、このように明言していただきました。

 是非、一日も早く中学校も高校も少人数学級実現に踏み出すことをお願いいたしまして、発言といたします。

 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武井俊輔君。

武井委員 ありがとうございます。自民党の武井俊輔でございます。公述人の先生方には、大変お忙しい中お運びをいただきまして、ありがとうございます。

 時間も十五分と限られておりますので、早速質疑をさせていただきますが、主に熊野参考人の方に、様々な経済対策につきまして、それについて我々政治がどのように受け止め、そしてまた臨んでいけばいいかということについて質疑させていただきたいと思います。

 冒頭でも、現状認識の中で、一―三月のマイナス五%の経済成長、大変厳しいものがあるというお話がございまして、なかんずく、その中で特に外食、宿泊、交通の三業種についてお話をいただいたところでございます。

 今週の週末も大変衝撃的なニュースがございまして、旅行業界最大手のJTBが、二十三億余りの資本金を一億円にして中小企業になるといったような報道がございました。業界第二位のKNTホールディングス、これは近畿日本ツーリストといいますと皆様にもなじみがあるかと思いますが、ここも、七千人いる従業員を三分の一減らして店舗を半分にするといったような発表をしたわけでありまして、私も元々こういったような業界におりましたので、見ていますと、このままだと本当に消えてなくなってしまうんじゃないかといったような危機感を非常に持つわけであります。

 旅館業もそうであります。また、交通、なかんずく観光バスなどもそうであります。非常に厳しい状況が続いているわけであります。

 雇用調整助成金も累次に延長、拡充もいたしまして、今のところ、全国で緊急事態宣言が明けた翌月末までといったような形で対応もしているわけですが、しかし、先生もまさにおっしゃったとおり、どこかでは対応というのは見直していかなければいけないわけでありますが。

 しかし、そういったようなものの中で、今お話ししたような、とてももうこのままだと潰れて消えてなくなってしまうような業界というのもあるわけで、こうした、見直していくに当たって、業種、業界、こういったようなものをどのように見極めて、そしてまたそれをどう理解を得られるように対応していくか、非常に政治的には苦しいところでありますけれども、先生のそのような対応についての御所見をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、山際委員長代理着席〕

熊野公述人 御質問ありがとうございます。

 まさに観光業種というのは今回とりわけ厳しい状況でして、それをどうしていくかということが非常に重要なんですが、まずはやはりGoToキャンペーンによって支えていくということが第一なんですが、ただ、このGoToキャンペーンもいろいろ問題がございまして、果たして、GoToトラベル、一万四千円の枠が本当にいいか、それが中小の事業者には恩恵があるかどうかということで、そういう仕組みも検討しないといけない。

 先生、業種のことをおっしゃいましたが、まずは、業種の中での大企業は自力でやっていけるかもしれないけれども、中小はどうしようもないというところもあるかもしれないので、まずは、GoToキャンペーンを、例えば東京都がやっているような、五千円の定額制にしながらやっていく。今は半額と、率でやっているので、利用者としてはどうしても高いところに集中してしまうので、そういうのをならすということが今必要だと思います。

 あと、御質問の中では、やはり、消えてなくなる業種をどうすればいいのかという話なんですが、政府の政策で特定の業種を救済するというのはなかなか難しいところもあるので、私は金融の仕組みでやるべきだと思います。

 現状の無利子無担保の制度がいいかどうかはよく分からないんですけれども、これ以上のやはり、金融枠をつくりながら、これはどちらかというと企業を再生するような形になるのではないかと思いますが、まずは、リスクマネーを公的金融機関経由で設けておいて、期限を決めて、その期限内にどうにか離陸していくことを計画する、そういう時間軸づくりが必要なのかなと思います。

 あともう一つ非常に重要なのは、やはり、産業として観光をどういうふうに位置づけるかということなんですが、私は、今の観光政策というのは二〇〇〇年以降の日本の経済成長戦略の中で一番成功したものであり、コロナの一過的なダメージで観光政策をやめてしまうというのは非常にもったいないと思います。むしろ、アフターコロナを見込んで政府は観光を軸にもう一回成長を描く、そういう成長展望をきちっと描くということが、政府にとっては事業者が消えてなくならずに済む。

 ですから、資金を投入することも必要なんですが、業界に希望を与えるような方針を示すということも、政府の役割としては非常に重要なのではないかというふうに思います。

 ありがとうございます。

武井委員 ありがとうございます。

 まさに今、GoToキャンペーンのお話がございました。もちろん、制度の設計、そしてまた今後の在り方についてはいろいろと課題もあるわけなんですけれども、どうしても、メディア等も含めても、政局的な取り扱われ方というものを非常にしてしまいまして、それによって感染が上がるとまたすぐたたかれるみたいな繰り返しの中で冷静な議論ができなかったことというのは非常に残念だったというふうに思っておりますが、まさに今先生からお話があったようなことを十分踏まえて我々もまた臨んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

 続きまして、オリンピックのお話を、言及をいただきました。

 これは、私たち、政府として何とかやり遂げたいということで様々な取組をしているわけでありますけれども、やはり、いろいろとアンケート、世論調査等でも、なかなか、国民の皆さんの理解というものにおいて、非常に我々も正直苦しんでいるところがあります。

 もちろん、これは、コロナの感染者数の数と非常にパラレルといいますか、やはり、それが高ければ厳しくなって、下がれば多少は理解も進むという部分ももちろんあるんですが、まさに先生、先ほど大坂なおみさんのお話もいただきまして、やはり非常にスポーツが、非常に心もみんな厳しい中で大きな希望を与えているということはまさにそのとおりでございまして、そういった意味で、オリンピックを我々がしっかりと実施をしていくということが国民に、大きく希望につながっていくんだといったようなことについて、どのような発信、施策をしていくことが国民の理解増進にプラスになるか、先生の御所見をお伺いしたいと思います。

熊野公述人 オリンピックに対しての御質問で、一つの御趣旨としては、アンケート調査などを取るとオリンピックに対する反対意見が国民において非常に多いということだと思います。

 実は、私、エコノミストをやる前、五年間ぐらいアンケート調査をやっていて、まさにアンケート調査の専門家なんですけれども、その見方からすると、アンケートというのは非常にくせ者で、これを読み解くリテラシーが非常に難しいというか、高くないとなかなか読みにくいということがあるんですが、事前と事後では大きく変わるということですね。

 例えば、オリンピックに関しては、今、どのぐらいオリンピックで日本の選手が活躍するかというのはみんな分からないわけです。そうすると、事前に分かっていることというのは、感染がもしかして拡大するんじゃないかという不安、不確実性の方が大きく見えるので、オリンピックはどうですかというふうに事前に聞いたら、恐らくは、慎重にした方がいいと、不確実性におびえる世論が表れると思うんですが、実際やってみたら、恐らくがらりと変わるんじゃないかと思います。

 一つの思考実験は、二〇一九年十一月のラグビーワールドカップです。ラグビーワールドカップ、私はラグビーに興味はないんですが、事前に何と言われていたかというと、日本のチームには外国出身の人もいて、あれは日本チームかどうか怪しいみたいなことを言う人がいたんですが、実際やってみると、ワンチームで、日本はすばらしい、日本というプラットフォームは何というパワーを出すんだというふうに見方が変わったんですね。

 オリンピックもきっと同じだと思います。事後的には、オリンピックは、日本人選手が活躍するのを見て日本人が奮起すると思います。

 私は多分、オリンピックが終わった後は、コロナの苦しい状況下でオリンピックがあったことは非常によかったんじゃないかと。政策というのはやはり我慢強さとか信念というのが非常に重要だと思いますが、情報発信としては、日本人の力を信じて、オリンピックはもうやるんだ、そういう不確実性に負けない、不確実性の恐怖に対して理性が打ちかつというような形で、オリンピックをやるんだという軸をぶらさない方針を事前に設定し、成功に導くということが情報発信としては非常に重要なのではないかと思います。

    〔山際委員長代理退席、委員長着席〕

武井委員 不確実性に理性がしっかりと打ちかっていく、やはりこれは本当に私たち、一つのこれからのキーワードにしていかなければいけないぐらいの大変大事な言葉だったなと大変ありがたく思っております。

 済みません、時間もちょっと限られておりますので進めさせていただきますが、続きまして、先ほど、ワクチン接種またPCRの関係で、パスポートを表示するといったようなお話、先生からもアイデアをいただきました。

 先日も河野大臣がテレビ番組で、そういったようなことに対してコメンテーターの方といろいろと議論もあったところなんですけれども、確かに、例えばこれからビジネス、なかんずく海外とのやり取り等ではそういったような接種の証明みたいなものを求められるということは多分出てくるんだろうなと思います。私たちも、例えばアフリカなどのビザを取ろうとすると、イエローフィーバーの証明書、黄熱病の証明書なんかは義務で持たされたりということはよくあるわけでありますけれども。

 しかし、一方で、やはりこういったようなものというのは、例えば、国民の皆さんでもアレルギーで打てないとかいろいろな理由もあったりとかでなかなか、あと、人権の問題というものも一方であるということがあります。

 ただ、やはり実際に、多分そういった声というのは、先生がおっしゃったような声というのは非常に起こっていくというふうに思うんですね。

 ですから、こういったようなことは、どうその辺りを、整合性といいますか、一方で行き過ぎないようにしながら、一方でそういった証明というものが経済を円滑化させるために必要だという声も非常によく分かるというところがあるんですが、この辺りのバランスというものを先生はどのようにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。

熊野公述人 ありがとうございます。

 ワクチン接種においては、少し御説明の中でも申し上げたんですけれども、ワクチンを打てるようなそういう枠組みができていたとしても、一〇〇%国民がそのワクチンを能動的に接種するかどうかのところについてはまだ不確実性があるので、そこをどうするかというときに、マスクのところに、私は接種しましたという表示を出せばいいんじゃないかと思います。

 ポイントは、恐らく、これを政府がルールで決めてしまうと強制になってしまい、そういう強制がいいかどうかというところで多分議論がスタックしてしまう。ワクチンの接種もスピーディーにやらないといけないので、どうやってワクチンをみんなが打つような枠組みをつくるかというところもスピーディーにやらないといけないと思うので、これはもう企業単位あるいは組織単位で、能動的に、私はワクチンを接種しましたという見える化を進めていく。これは、官というよりは、民の自主的な行動を政府が後押しする、促すというような形で、ルールとして強制しないで見える化をしていくというところが重要だと思います。

 恐らくこういう方法というのは海外でも導入されて進められると思うので、海外と比較しながら、日本でもそういう活動を能動的にやっていますよという情報発信をしながら、ナッジというふうに言いましたが、強制しない誘導へ導くということで、ワクチン接種に併せて、ワクチンを国民が打つような形で啓蒙活動とか、そういうナッジを、どんどんどんどん環境を整備していくということは極めて重要だ。

 まだこれは議論は余り進んでいないですけれども、多分今後はそういう議論も出てくるのではないかという点でお話をいたしました。

 ありがとうございます。

武井委員 ありがとうございます。

 この辺りが、実際に様々な動きが出てくるというふうに思います。そういったようなものをどういうふうに、安心とそしてまた皆さんの強制みたいなものを両立させながら進めていけるかというのは非常に難しいところでありますが、大変重要な御示唆をいただいたというふうに思います。

 ちょっと時間もありません。もう最後の質問になるかなというふうに思うんですが、先ほど、経営の支援、金融支援のお話をいただきました。

 実は、倒産件数という意味においては決して今高くない状態があるわけでして、それは、まさに先生がおっしゃったとおり、実質的には今これだけ国がお金を回しているので潰れないといったような状況というものもあるわけですが、こういったようなもの、いずれまた状況が変わっていく、変わっていかざるを得ないというところがあるわけですけれども。

 実際に事業者の方と話をいろいろとしてもそうなんですけれども、やはり実際に、このままではやはり、何といいますか、もう与信の枠でありますとか、また事業継続の、一番大事なのはやはり意欲なんですね。

 やはり、ぱんと潰れて、例えば倒産して夜逃げをするとかそういったような状況にはないけれども、このまま続けていっていいんだろうか、社会保険もこうだし、税金もこうだしといろいろなことを思い悩む中で、そういったような思いが非常に強くなっているという中で、それでも、先ほど観光のお話もさせていただきましたが、必要とする事業というのはこの世の中にたくさんあるわけですし、今ある事業というのは必要だから世の中にあるわけでありまして、そういう意味で、国民の皆さん、事業者の皆さんが頑張ろうという思いをどういうふうにすればしっかりと持てるのか、どういうふうにすれば国がそういった思いをより支えていくことができるか、最後にそういった先生の思いをお伺いしたいと思います。

金田委員長 熊野公述人、時間が参りましたので、まとめてお願いいたします。

熊野公述人 ごく簡単に言いますと、御質問は非常に的確で、法的整理は実は減っているんですが、廃業、解散というのは前年比五%ぐらい増えて、二〇〇〇年以降で最高です。つまり、倒産、破綻するよりは、廃業する事業者をどうするか。どうすればいいかというのは、もう一言、これは、展望を持たせるということとビジネスサポートをしっかりする。

 日本は、不良債権問題が二十年前に起こって、ビジネスサポートが発生したんですけれども、なかなかまだ組織化されていない。ただ、中小企業診断士や弁護士、あるいはフィナンシャルプランナーもいろいろな公的制度に通じておりますので、そういう大きなネットワークを使いながらビジネスサポートの体制を政府がつくっていく。そのこと自体に中小企業を支えていくという政府の姿勢は大きく表れるので、望ましいのではないかというふうに思います。

武井委員 終わります。

 ありがとうございました。公述人の先生方、どうもありがとうございました。

金田委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一と申します。

 今日は、四人の公述人の先生方、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 十五分でございますので、早速御質問をしてまいりたいと思います。

 まず、熊野公述人にお聞きをしたいと思っております。二〇二一年、二二年の今後の経済予測でございます。

 今回のコロナ感染症の景気後退を受けまして、特徴的なのは、昨年はマイナス四・八%、通常であると全産業が影響を受けるところでございますが、今回のコロナというのは、中には景気のいい業界もあれば、非常に深くこのコロナの影響を受けているところもあるということでございます。ですので、なかなか、マクロの視点で見るというところと、あと、さらに業界ごと、又は、属性でいいますと女性や非正規のような弱者と言われる方々への影響というのをやはりつぶさに見ていかなきゃいけないんじゃないかと思っております。

 特に、リーマン・ショックのときと比べますと、金融がまだ非常に、やられていないと言ったらおかしいんですけれども、非常にまだ安定している状況にある。例えば、建設業者の皆様方、仕事は減っていないということもお聞きをします。製造業の皆様方も、一部は減っておりますが、そうでもないということで、世の中で言われている以上には、私はマクロの、全体の景気というのは悪くないんじゃないかと思っておりますが、ただ、その方々も、コロナが続くと自分たちにも大きく影響が全体として来るのではないかという不安も現場でお聞きするところでございます。

 そこで、今日は、エコノミストでございますので、二〇二一年また二二年に向かってのマクロ的な経済予測と、先ほど私が言いました、どういったところが大きく傷み、それに対してどういった、我々政治も含め、経済対策等を打っていかなきゃいけないのか、その大きな方向性についてまず熊野公述人にお聞きをしたいと思います。

熊野公述人 ありがとうございます。

 経済予測は私の本業なので、一番いつも日常的にお話をしている話なんですが、今回は、いろいろな国際機関の予測で見ても、五%ぐらい大きく落ちた後、大体二%ぐらいのリバウンドが起こり、恐らく二〇二二年、二一年の次の二二年も同じぐらいのペースではないかというふうに見られているというのが現状です。

 ただ、問題は、成長率だけではなくて、今回のコロナ前の水準まで、どこまで、いつ戻るのか。

 これはどういうことを意味しているかというと、過去の操業度というのが供給のキャパシティーだとするならば、そのキャパシティーに達しないということなので、それだけ余剰生産能力があり、これがデフレ作用をもたらす。そういう意味では、恐らく二〇二三年ぐらいまでは今回のコロナ前に戻れないので、やはり、二%成長、二%というか二%弱ぐらいの成長で二〇二二、二三ぐらい行ってようやく戻すので、そういう意味では、デフレ圧力が非常に強まる。

 ここで非常に重要なのは、内閣府が四半期ごとに大体出している潜在成長率というのがありますが、内閣府の直近の潜在成長率は〇・七%で、つまり、実際の日本の素の成長率が非常に低下しているので、これを引き上げていかないといけない。

 そこで、御質問で、どういった政策が必要なのかということなんですが、私は、痛み止めをするような財政出動というのもある意味必要だと思うんですけれども、やはり、成長していくようなデジタル化とか、企業が地元にいろいろ設備投資をするような、国内回帰を促すような、そういう政策誘導。つまり、短期ではなくて長期の政策を促すような政策。具体的に言うと、金融のところでの支援をもう少し手厚くするということが民の力においては非常にいいのではないのかなと思います。

 どういったところがよくて、どういったところが悪いかという意味では、いいところは、製造業が今世界的な物の動きを反映して大分リカバリーを果たしているので、製造業に対してのアシストはほとんど要らないんじゃないかと思います。しかし、小売は、まずまず回復しているんですが、衣料品などは非常に悪いので、そういうところについては金融的な支援は手厚くしないといけないでしょうし、最大のネックは、やはり観光産業をどうしたらいいか。外食、観光のところについては、これはやはり、国がインバウンド、観光政策を長期にやっていくということで、ここは、金融だけでなくて補助金とか規制緩和とかそういうものをいろいろ誘導しながら長期の政策を講じていくことが、潜在成長率〇・七%を一%に、一%に上げていくには必要なんではないのかなというふうに思います。

 ですから、潜在成長率を押し上げていくような金融、財政、規制緩和、そういうのを組み合わすということが政策対応としては望ましいのではないのかなというふうに考えております。

浜地委員 熊野公述人、ありがとうございました。

 しっかり我々も、コロナの影響が逐一変わってまいりますので、機動的にやはり、財政運営もできるように努力をしてまいりたいと思います。また御指導、また御指摘いただければと思っています。

 では、小池公述人にお聞きをしたいと思っています。

 今日はありがとうございます。先ほど様々な観点から、防災・減災、国土強靱化、特に強靱化というところで御指摘をいただいたところでございます。

 まさに雨の降り方が大きく変わっておりまして、私も地元は九州、比例区でございますが、先ほど御指摘のあった球磨川沿い、人吉、かなり深い被害があったところでございます。また、筑後川というのがございまして、毎年毎年災害があるところでございます。

 そこで、与党としましても、また国交省としても、今回、十五兆円規模で、骨太の方針ということで、国土強靱化の予算、加速化五か年計画というのを作らせていただきました。過去三年におきましては、緊急点検ということで、とにかくインフラが弱いところを点検し、これは約、三年間で七兆円の事業規模であったわけでございますが、それを今後は五年間で十五兆にするということでございます。

 前回、補正予算の審議をしたときに、実は、補正予算の中にこの国土強靱化の五か年加速化計画の初年度分の予算が入っていることに対して、メディア等からも批判があったところでございますが、私自身は、やはり切れ目のない、また、五月、六月、出水期に向けて、切れ目のない様々な防災をする必要があったんではないかと思っております。

 そこで、先生の御専門的な観点から、この十五兆規模の国土強靱化加速化プランということの評価についてお伺い、いただければと思います。

小池公述人 どうも、御質問ありがとうございました。

 振り返ってみますと、戦後、日本は非常に激甚な水害を受けました。それで、いろいろな技術策を講じて、昭和三十五年に治山治水緊急措置法というのができて、五か年の財政を伴う重点的な整備が行われてきました。それは九次行われてまいりましたが、この資産の上に今成り立っておりますが、その九次以降、財政的な投入が非常に落ちております。

 今回、緊急三か年に加えて、五か年の加速化の予算を提案していただいたことは大変ありがたいと思います。非常に、河川の維持、それから堤防の修復等も含めて、喫緊に取り組まなければいけない問題がございます。加えて、先ほど私が申し上げましたように、防災、減災に取り組む姿勢、これが防災、減災にとどまらず地域を開発していく予算でもあるという意味合いで、流域治水という考え方を打ち出されているわけでございますので、先ほども申しましたように、都市であるとか住宅であるとか農業であるとか、地域のいろいろな産業と、あるいは枠組みと連携した施策の推進が必要であると思います。

 議員お話しになりましたように、切れ目のない、しかも、その場その場に非常に適時に合う予算の組み方をいろいろお考えいただき、大変ありがたいと思っております。

 以上です。

浜地委員 済みません、じゃ、続けて小池公述人にもう一つお聞きしたいんですが、先ほどキーワードで出ました流域治水という考え方ですね。

 これは、確かに、強靱化をし、包括的にあらゆる主体が協力して取り組んで、持続可能な、将来にわたる対策をするということなんですが、非常に概念としてはすばらしいんですけれども、なかなか、行うには大変なんじゃないかな、時間もかかるんじゃないかなと思っております。

 そこで、公述人が出されました資料の四ページ目にございますが、改めて、流域治水というプロジェクトの意義と、それとやはり課題ですね、これから政府に申し上げたい課題。特にこれは省庁の連携もございますし、国と市町村の連携、それと住民の皆様方との連携も必要になってまいります。ですので、そういった課題があれば、率直にお話をお聞きできればと思います。

小池公述人 どうもありがとうございます。

 まさに議員お話しになりましたように、英語でバイ・オールといいますが、全ての水に関連した、あるいはその地域に関連した関係当事者の皆さんに協力していただく必要があります。そのためには、財政的な措置もございますし、それから、現在、関連九法案を国会審議に今後かけていただく準備が進んでいるとも伺っております。そういう制度改革を通して、省庁、それから国と地方、この関係の考え方も整理する必要があると思いますし、官と民とコミュニティーの連携促進が何よりも大事だと思っています。

 もう一つ。先ほども私申し上げましたけれども、被害というのを軽減するということは非常に重要なことで、直接の被害を軽減することは大事なんですが、そこに投資することによって、まあ、日本が打ち出しましたビルド・バック・ベターという考え方があります。直近では、阪神・淡路以降の神戸市の復興がございますし、東京も、もう百年になりますが、関東大震災以降の復興をビルド・バック・ベターで成し遂げてきたわけですが、それをあらかじめ始めておく。東京の百年前の復興も、後藤新平が東京市長であったときに八億円プランというのを考えておったから、すぐ東京復興ができたわけで、そういう開発の計画、防災、減災に踏み込んだ開発の計画をこれからの将来のために展開していくことが大事であると思います。

 ですから、そういうような大きなスコープを持った政策を是非期待したいと思います。そのためには、科学技術的ないろいろなバックグラウンドの情報が必要となりますので、そこの強化も含めて政策を進めていただければと思います。

 以上です。

浜地委員 それでは、保坂公述人にお聞きをしたいと思っています。

 詳しい世田谷の取組の御説明、ありがとうございました。

 先ほど熊野公述人からもあったんですが、いわゆるPCR検査をしっかり拡充した方がいいんじゃないかと。先ほど、世田谷区の取組では、やはり、非常にクラスターが起きたら困るところ、高齢者施設について定期的な検査をされているということでございます。

 ただ、これを一般に、社会に広げる、私も検査を本当は広げた方がいいと思うんですが、やはり医療体制との兼ね合いで、無症状感染者が多く出ると、その分やはり自宅療養又はホテルの療養、しかし、今は、急に状態が悪化しますので、高齢者になっては、やはり医療体制を構築しなきゃいけないというふうに思っております。そこで、世田谷区ではクラスターが出そうな高齢者施設に絞っているというのは、やはりそういった考えなのか。それとも、やはり、広く、本来は一般的に、例えばカラオケに入る人であったり、そういったところが行った方がいいのかというのが一点。

 それともう一つ。これは、本来は都道府県の役割と思うんですが、なかなか民間病院の皆様方が協力をいただかない。当然、協力はしていただいているんですが、当然、民間病院の立場になれば、コロナ患者等が増えた場合の経営への影響がある。そこで、病院に対する減収補填ということもあるんですが、私は、そうではなくて、やはり、大病院と民間病院しかり、患者のネットワークといいますか、重症者が軽症者になればそちらに移転する、若しくは、専門家の医師をそこに持ってくるなりの、そういった医療体制の構築の方が大事だと思いますが、その二点について区長の御意見をいただければと思います。

保坂公述人 お答えをいたします。

 まず、検査についてですが、介護関係、働いている方一万八千人以上、それから入居されている高齢者の方一万二千人、大変、三万人というのは多いんですね。それ以外にも、保育園で働いている保育士さんだとか、あるいは学校なども本来であればということなんですが、大変対象が数多いので、一番リスクの高い高齢者施設から始めているということでございます。

 エッセンシャルワーカーという言い方もありますけれども、社会継続のために欠かすことのできない仕事をしている方に関しては、やはり定期的にチェックを入れていく体制を目指したいというところでございます。

 次に、病院ですけれども、世田谷区内にも、やはり、コロナ治療に当たる、本当に必死に取り組んでいらっしゃる病院がたくさんあります。しかしながら、この間御努力いただいたと思うんですが、やればやるほど赤字だ、こういった声も渦巻いていました。

 地域の医療ネットワークを、これは本来、都道府県ではありますが、これだけ感染が拡大した年末年始などは、私たち基礎自治体もしっかりその調整機能を担っていかないといけない課題だというふうに考えております。

金田委員長 時間が参りました。

浜地委員 時間になりましたので質問を終わりたいと思います。

 小畑公述人に関しましては、御質問する機会がなく、大変申し訳ございません。

 皆様、どうもありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

金田委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 立憲民主党、大西健介です。

 公述人の皆様におかれましては、大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 私も、時間が限られておりますので、保坂公述人中心に質問をさせていただきたいと思っておりますので、ちょっと、ほかの皆さんにお聞きできない場合には大変申し訳ないというふうに思います。

 先ほど熊野公述人の方からも、攻めのPCR検査で市中感染者をあぶり出せという話がありましたけれども、まさにそれをやってこられたのが世田谷区だというふうに思います。

 いろいろなものを読ませていただくと、保坂区長は、政府が市中感染のルートを追えなくなった時点でPCR検査を拡大する方向に方向転換すべきだったんじゃないかということを言われております。また、国がやろうとしないから、世田谷区は一種の政治判断でこのことをやったんだということも言われております。また、この間の新自由主義的な政策の中で保健所やあるいは保健所の人員が減らされてきたことも、今回このような事態になって、非常に響いているというようなお話もされていますけれども。

 今回、この新型コロナというのは前例のないことなので誰がやったってしようがないんだみたいなことを言う人もいますけれども、やはり、この間の政府の政策判断のミスというか、そういうものが現在の事態を招いてしまったという、私は責任というのもあると思うんですけれども、その辺は、まさに政治家として今、自治体の長としてやられている保坂公述人の御感想というのをお聞きしたいと思います。

保坂公述人 まさに、新型コロナウイルス自体は、これまでの感染症と違って、症状がない場合でもウイルスを拡散する、そういう非常に扱いにくい、いわば予防がしにくい特性があるということに我々は春には気づいていたわけですから、当然、国としても、無症状の感染者も含めたPCR検査体制ということに積極的にもっと取り組むべきだというふうに思っておりました。

 とりわけ、先ほど高齢者施設の話を中心にしましたけれども、明らかに、そこにしっかり検査資源を投入すればするほどリスクは軽減されていきます。何より、亡くなる方、重症化される方自体を抑えるという戦略が必要だったのではないか。

 一方で、保健所というのは、この間ずっと縮小というか、九〇年代に再編されまして、そういう意味では、世田谷区でも四月段階で百六十人程度だったのが、現在、ちょうど二倍、三百三十三人という体制で、フル回転でやっています。

 余りにも保健所に集中し過ぎた。これを従来の感染症の概念で考えるのではなくて、やはり、コロナウイルスに特化した制度設計をすべきだ。そういう意味では、大きな波の下ってきたときにこそそういう戦略的な対応が可能ですので、今からでも遅くない。是非お願いしたいと思います。

大西(健)委員 もう一つ。先ほどこれも熊野公述人からお話があったんですけれども、経済活動が活発になればまた感染が拡大してしまう、なかなかそこは両立し得ないんだというお話がありましたけれども、私たちは、そもそも、感染症対策と経済活動を同時に進めるというゴールセッティングそのものが若干間違っていたんじゃないかと思っています。

 まずは徹底して感染を抑え込んで、新たな感染があっても短期間でそれを封じ込められるような状況をつくっていく、そこまでレベルを下げていく、そこまでは暮らしと事業を力いっぱい支援をしていくというゼロコロナ戦略というのを主張させていただいています。一時的には厳しいけれども、何度も感染拡大を繰り返すよりも、国民が安心して経済活動を再開できる環境を取り戻すには、その方がむしろ近道じゃないかというふうに考えております。

 そして、そのゼロコロナ戦略の重要な柱が、大規模な検査で感染者を早期に見つけ出して、感染拡大の火種を握り潰していくということなんですけれども、このウィズコロナじゃなくてゼロコロナなんだという考え方について、保坂区長から、これに対してどう思われるかということをお聞きしたいと思います。

保坂公述人 私は、最大の経済対策は、この感染防止に資源を徹底的に投入することだというふうに思っています。

 ですから、七月の段階でいわば緩和策が打ち出されて、秋以降、ずっと緩和をしてみたんですけれども、やはり年末年始のひどい感染の高まりがあって多くの方が入院もできなくなってしまったということで、また経済活動がそこで止まるということを繰り返していますので、私たちは、やはり、世界各国、特にアジアの中でも、この感染症に様々な工夫をして、各国、向き合っています。そういったことにもきちっと学んで、まずは感染を制御するということに全力を挙げて、落ち着かせて、経済活動の更なる再開、それまでは公的な支援をしっかりするということでやっていただきたいと思います。

大西(健)委員 次に、ワクチンについてもお聞きをしていきたいと思うんですが、先ほど、お話の中で、朝令暮改の国の方針に大分現場は振り回されているというお話であったりとか、あるいは、いつ、どれぐらいワクチンが入ってくるか分からない状態ではクーポン券の発出さえできないというようなお話がありました。

 ある部分ではそれも仕方がない部分もあるのかもしれませんけれども、このままでは、仮に予定が決まっても、今後、それが途中で変更になったりとか、ワクチンの入荷が中断をしたりするというようなことも十分予想されるんじゃないかというふうに思います。

 例えば、何らかの事情でワクチンの入荷が途中で中断してしまったような場合に、先ほど少しお話もありましたけれども、既に予約が入っている、区民の皆さんからすれば、仕事を休んで接種しに来たのに、何だ、打てないのかということで、そのクレームは恐らく区の方に行くというふうに思うんですけれども、どうしてくれるんだというようなことになると思うんですけれども、こういうような事態が私は想定されるんじゃないかと思いますけれども、こういったことについて、区長、どうお考えになるか、お話しいただきたいと思います。

保坂公述人 お答えいたします。

 まず、徹底的な情報開示だと思います。どのぐらいのワクチンが出荷されて、いつ到着して、例えば世田谷区なら世田谷区に何月何日にどのぐらい来るのかということが分かれば、ここで予約を受け付けて、その入った数において予約をすればあふれ出るということはないんですが。

 ただ、ここでも一つ問題がありまして。

 ワクチン二回接種ということで進んできました。ただ、世界各国のいろいろなレポートとか意見の中で、いや、一回でも効果がかなりあるのではないかということが言われています。国会の中でも、その一回ということも議論をされようとしているとも聞いています。そうすると、例えば世田谷区に五万入ってくるというときに、じゃ、二万五千掛ける二で予約を受け付けたらいいのか、それとも、五万、フルに受け付けたらいいのかと。

 これは骨格になる基本方針ですので、これだけの大オペレーションであればもうそろそろ、これはもう、こうするということをしっかり決めてほしいというふうに思いますし、いろいろな情報発信があるのはいいんですけれども、国の中でやはり統一をしてほしいということですね。自治体は皆、その総力を挙げてやろうとしていますけれども、肝腎要の情報が統一をされていないということがあります。

 また、自治体でどのぐらい接種がされたのかというのを日々公開していくというような御発言もありましたが、私、自治体間競争というのはやめてほしいと思うんですね。どれだけ早いの、どれだけ打ったのということを競争するべきでしょうか。安全に、確実に、そして健康のためにやっていくものなので、むしろ、その情報開示は、どのぐらいの供給量があるのかということをしっかりまず国の方で示していただきたい。これがなければ準備は開始できないということでございます。

大西(健)委員 今のお話の中で、自治体間競争をあおるような発信はやめてほしいというお話がありましたけれども、もう一つ、今朝のニュースとかを見ていると、皆さん一斉に今準備をしているので、いろいろな物資が取り合いになっているというようなことも報道されています。例えば保冷バッグ、あれがないということで取り合いになっているというようなお話がありました。そういうような、物資の取り合いだとかそういうことについてどうなっているのかということ。

 あわせて、これはちょっと別の話ですけれども、一部自治体からは、今例えば解散・総選挙があると、ワクチン接種と選挙の実務を両立させることができるのか、これは至難の業じゃないか、解散になればワクチン接種はストップせざるを得ないというような声も上がっています。東京では、七月に、いずれにしろ都議会議員選挙もあります。それから、先ほどオリンピックの話がありましたけれども、この委員会でも、オリンピックには一万人を超える医療スタッフが必要だということが言われていますけれども、オリンピックが行われるということになると、またワクチン接種にも影響があるんじゃないかと思いますけれども、オリンピックあるいは選挙とこのワクチン接種は両立できるのかということも併せてお聞きをしたいと思います。

保坂公述人 当世田谷区でも、馬術競技大会、オリンピック・パラリンピック、そして、アメリカ合衆国の選手団のキャンプということで受入れを決めております。そして、都議会議員選挙、そして国政選挙もあるだろうという中で、この接種を同時並行でやっていく、至難の業でございます。

 職員の配置、何名どこにつけるんだ、場所はどこまで確保するんだということですので、見通しがなかなか厳しいのは分かるんですが、やはり、情報を小出しにしないで、こうなんだと、実際には。実際には、四月十五日、五月一日、五月十五日なのか、今全く分からない状態です。これでは、今言われたところの大きな取組との両立、なかなか困難を極めているというのが実情です。

大西(健)委員 保坂区長にもう一つ。

 意見陳述の最後で、衆議院議員時代に、大蔵省の接待疑惑を受けて制定をされた国家公務員倫理法の制定に関わられたというお話がありました。

 それから二十年以上たつんですかね、総務省では、今回、十三人、計三十九回、大規模な接待が行われたことが報告をされています。いまだにこんなことがまだ続いていたのかということだと思うんですけれども、その辺の感想と、それから、今回、接待を受けた官僚の責任、これは当然ではありますけれども、監督する立場の大臣の責任、あるいは接待の誘いを断れなかった事情や、音声記録が公表されるまでの間は国会で事実と異なるような説明をせざるを得なかった、こういう官僚の皆さんの立場、そこにはやはり私は政治の責任というのもあると思うんですけれども、この辺について、実際にその法律の制定に関わられたお立場から御意見をいただければと思います。

保坂公述人 当時、もう二十数年前ですけれども、やはり、大蔵接待で公務員倫理法を作ろうというときに、当時の自民党、与党の中でもかなり慎重論、消極論もあったと聞いています。しかしながら、世論の高まりと国家公務員に対する信頼性の喪失ということで、これは橋本龍太郎さんの政権で、やはり政治判断でこれはやるべきだということで、相当異なる立場、見解を乗り越えて、公務員倫理法。

 これは、私は骨格の部分を考えたんですが、国家公務員法に十七条というのがございまして、ここに実は、証人喚問がやれる、それから調査要求がやれるということが書かれているんですね。それは人事院ができることになっているんですが。ですから、本来は、人事院に置かれている国家公務員倫理審査会が、接待ルールだけではなくて、今回のような事案が出てきたときに積極的に調査をするということも必要でしょうし、二十数年たって、やはり大分風化をしてきた。実効性を検証して、さらにその法改正、あるいは新しい制度設計という議論が、これは与野党を超えてしっかり巻き起こしていただきたいなという思いでございます。公務員の中立性の問題もそこには入ってくると思います。

 ですから、少なくても、国家公務員が安心して、そして、このような、今回のようなことにならずに働けるような環境づくり、これを是非お願いしたいと思います。

大西(健)委員 ちょうど時間になりましたのでこれで終わりますけれども、他の公述人の皆さんには、ちょっと御質問できなかったことをおわび申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 公述人の皆さん、今日は、本当に御多忙のところ、貴重な御意見をありがとうございます。

 早速質疑に入ります。

 小畑公述人にお伺いします。

 今国会、当委員会では、いわゆるシフト制の問題が大問題になっております。総理もシフト制の労働者にお会いになる、そういう動きもある中で、先ほどこの点にも触れていただきました。企業側は、シフト減は休業じゃないんだ、あるいはシフト労働者はそもそも労働時間が変動するんだからシフトゼロになることはあり得るんだなどと言って、支払いを拒否している事案があると。

 小畑公述人にお聞きしたいのは、このシフト制労働の実態といいますか、シフトを入れずに、解雇手続すら取らずに、事実上退職に追い込んでいくとかそういうのも聞いているんですが、そういう実態について教えていただきたいのと、あと、先ほどお触れいただいたシフト制契約の在り方やあるいは規制強化、これなどについてはどのようなお考えをお持ちか、教えていただければと思います。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 そもそも、勤務シフトをカットしても休業とみなさないという、こういうやり方を合法としている現状が問題だというふうに考えております。

 通常は常用的に働かせながらゼロ時間勤務もありというふうな労働契約を結ぶことによって、休業が必要になったときにはまるで日々雇用であるかのように労働者を扱っている、そういう、これを悪用するケースが今蔓延しつつある実態だというふうに考えております。

 それで、中には、解雇しない、だけれどもシフトゼロで待機するか自己都合退職を選べと、こういうふうに労働者に迫るような使用者もいるというふうにも私どもも聞いているところです。事実上の解雇ですら雇用を維持しているように偽装するということで、これがコロナ禍で失業率が上昇しないことの要因の一部ではないかというふうに考えているところです。

 私どもが今いろいろと研究をしたり、諸外国の状況なども調べながら考えているところは、シフト制契約の悪用は労基法上違法とする必要があるというふうに思っております。労基法第十五条にある労働条件明示義務において所定労働日数を明記し、それをさせないという場合には労基法の第二十六条の休業手当の支払い義務を課すものとすべきだというふうに考えています。

 例えばニュージーランドでは、既に二〇一六年の四月から、こうしたゼロ時間契約を禁止をし、労使双方に対して労働契約に週当たりの最低労働時間を明記することを義務づける法律が施行されていますし、二〇一九年、EUでは、透明で予見可能な労働条件指令、これが成立をしているところです。

 是非、様々な研究もしていただきながら、厚生労働省にはしかるべき対策を至急検討して措置をとっていただきたいというふうに思っております。

 ちょっと長くなって恐縮ですけれども、あわせて、休業支援金よりも水準が低くなっている休業手当、この六割の規定も改善する必要があるというふうに考えておりまして、現状では、労基法の十二条の平均賃金の計算方法とも相まって、実際に労働者に渡される賃金は、フルタイムの場合は通常の賃金の四割になってしまうんですね。だから、そこのところの問題も是非知っていただいて、改正を検討していただきたいというふうに思っています。

 以上です。

藤野委員 ありがとうございます。

 おっしゃるように、やはり、休業支援金制度、政府がつくったんですけれども、そもそも苦労して労働者がそれを申請しないといけないということがおかしいわけで、企業側がちゃんと休業手当を払っていく、つまり、最低基準である労基法が適用されないような労働者がたくさん今いるわけで、そこをちゃんと適用されるような仕組みというのが本当に私も大事だなと思っております。

 次に、また小畑公述人にお聞きしたいんですが、先ほど、格差と貧困について、今までの日本の貧困、困窮のスケールと違う状況があるという御指摘をいただきました。

 これについて私もいろいろな方の声を聞いているんですけれども、昨年十一月、東京の渋谷区で、バス停で六十代の女性が男性に殴られて亡くなる事件が起きました。この女性、去年の二月までスーパーで試食販売の仕事をされていたんですけれども、コロナで仕事を失って、そしてバス停で夜過ごしていたらそういう事件に遭ってしまった。

 事件から一か月後の十二月にこの女性を追悼する集会が行われて、私、大変印象的だったのは、参加者、この追悼する集会に参加された方が掲げたプラカードに、彼女は私だというふうに書かれていたんですね。SNS上も、ハッシュタグ彼女は私だというのが非常に急速に広がりました。

 やはり、そういう、少しでも仕事がなくなったりアルバイトが減ったりすると、もうまさに食べるものがなくなる、あるいは住居もなくなる、そういう貧困のもう今までとは違うスケール、おっしゃられたような状況があると思うんですね。

 お聞きしたいのは、なぜそういう低賃金が今まで増えてきたのかというところで、先ほど公述人は、子育てとか介護、看護などのケア労働に対して、家事労働的な仕事だから賃金が安くてもいいんだというジェンダーバイアスのかかった考え方があると御指摘いただきました。

 こういうジェンダーバイアスのかかった考え方を放置してきたことがこのコロナ禍で噴出しているという御指摘だと思うんですが、この点についてもう少し教えていただければと思います。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 最初に少し、日本のジェンダー平等指数が非常に低いということが今話題になっていまして、皆さん、日本がジェンダーバイアスの指数が百二十一位だということがもう一般にこんなに広く知れ渡った時代はないんじゃないかなというふうに思うくらいになっているんです。

 この指数が低くなっている原因というのが、一つは、もちろん、意思決定の場への女性の参加がすごく遅れているという問題が、それが物すごくあるんですけれども、もう一つ、やはり経済の問題がありまして、この経済のスコアというのが日本は、ゼロが一番不平等で一が平等ということなんですけれども、〇・五九八なんですね。これの中でも、とりわけ所得の平等、〇・五四一と、管理職における平等が、これが〇・一七四というふうになっているということがこの経済の状況を低くしている状態があります。

 それで、先ほど御質問があったように、そのことの一番の大本は、女性労働者、とりわけ非正規労働者の賃金がとても低いということが背景にあるというふうに思うんですけれども、その一番の大本のところには、今おっしゃったように、ケア労働に対する低い評価ということと同時に、女性労働者は、働きに出てもそれはあくまでも家計補助的な、そういう仕事であるから低くてもいいんだ、そういう考え方を容認したまま低い賃金で、時給で働かせてきた。そのことが結局、最低賃金そのものを、本当は最低賃金というのは一人一人の労働者の生活を保障するものでなければならなかったのに、そういうものになっていなかった。

 先ほどグラフでもお示ししましたけれども、今の段階であっても時間九百二円ですから、私たちの調査で千五百円から千六百円必要なのに九百二円だとしたら、普通の生活が八時間働いてもすることができないという状況が放置されているわけですよね。そのことが一番大本にあるというふうに考えております。

藤野委員 ありがとうございます。

 もう一問、小畑公述人に聞きたいんですが、先ほど、ジェンダーの視点から予算の在り方を見直す必要があると御指摘いただきました。本当にそのとおりだと思うんです。

 今、政府のコロナ禍に対する基本的対処方針というのが出ておりまして、改正されてきているんですが、このコロナに対する基本的対処方針、これについてもやはりジェンダーの視点が足りないんじゃないかなと思うんですね。

 というのは、最初の三月二十八日のものには、この基本的対処方針に、その他という項目の中に人権等への配慮というのがあって、その中に、女性や障害者などに与える影響を十分配慮して実施するものとするという決まり切った文言があっただけなんですね。これが第一回目の緊急事態宣言の四月七日に改正されまして、この基本的対処方針が、妊産婦の方に対する配慮を求める項目が加わりましたけれども、それだけなんです。

 その後、五月四日にもこの方針は改正されて、DVとか虐待、自殺、一人親家庭への配慮を求める項目が加わったんですけれども、やはり、そういう、本当に基本的対処方針の中にジェンダーの視点がなかなか入ってこないというふうなのを私はちょっと感じております。

 WHOは、去年の五月の段階で、ジェンダー・アンドCOVID―19という文書を出して、六項目にわたって、包括的なジェンダーの視点に立った対策を求めております。今後、コロナとの戦いは続きますが、やはりコロナ後の社会も展望しないといけないと思うんです。

 公述人にお聞きしたいのは、やはりジェンダーの視点に立って労働の在り方あるいは社会全体の在り方を見直していく上で、どのようなことが必要だとお考えでしょうか。

小畑公述人 先ほどの資料で御説明しなかった資料の中に、九ページのところに、コロナ禍の女性への影響という資料を入れてあります。今御指摘があったように、DV、家庭内暴力、それから性犯罪、性暴力被害、それから自殺者が増えている問題などが非常に女性に強く表れているという資料をお示ししているところです。

 一つは、今日出させていただきましたように、低賃金がもたらしている貧困、困窮の状況があるというふうに思いますし、もう一つは、やはり、ジェンダーの視点で全てのことを見ていく、そういう視点がとても弱い。それは、例えば、いろいろな物事を決めていくところに女性の参画が遅れていて、こういう状況を本当に見える化していく、明らかにしていくというところが非常に弱いという点もあるというふうに感じているところです。

 御指摘がありましたように、WHOや、それからUNウィメンなどもこのことに強く触れていますけれども、包括的なジェンダー視点でこのコロナパンデミックに対してどのような方針を立てていくのかというのは、その他のところではなくて、基本的な、だから、ジェンダーを主流化するというふうに私たちはよく言いますが、そういう視点が必要なのではないかというふうに考えているところです。

 以上です。

藤野委員 ありがとうございます。

 保坂公述人にお聞きします。

 二月十七日放送のNHKクローズアップ現代、私も大変参考になりまして、熊野公述人がおっしゃったような、攻めの検査はどうあるべきかというテーマでやられていまして、保坂公述人が出られていたんですけれども、やはり効果的な攻めの検査というのが今求められていると思うんですね。

 ところが、今、PCR検査の件数は減っておりまして、全国的に見ますと、一月十四日の九万七百六十六件をピークにして、二月九日には四万四千五十三件、半分以下に減ってきております。

 私たちは、やはり、新規感染者が減少して、検査のキャパシティーに余裕ができている今こそ、検査によってそれこそ戦略的に感染を抑え込んでいくというのが必要じゃないかと思うんですが、その点について、あと、その際の課題について教えていただければと思います。

保坂公述人 現在のように少し感染状況が落ち着いてきたというときにこそ、例えば高齢施設、これは医療機関とともに、重症化、亡くなる方も多いわけで、徹底的にカバーしようと。これは既に厚労省も、国の国費、行政検査で算定すると言っていますし、制度的にはできるんですが、なぜか広がっていないんですね。幾つかの自治体、政令市、県などでは始めようとされていますけれども、やはり意識転換が必要なんじゃないでしょうかね。

 私たちのこのコロナ禍の中で、高齢者施設は一番危ないわけなので、そこを徹底的に守るんだ、そのためには全資源を投入しようということで、これは予算もかかります。しかし、予算だけではなくて、手法の改革、プール方式も申し上げました。そして、あとは機構ですね。保健所は非常に忙しいので、保健所に何もかもという体制ではなかなかやっていけない。そこを大いに工夫して、この時期だからこそ、少し長期戦に耐える検査体制、構築していただきたいと思います。

藤野委員 時間が参りました。熊野公述人、そして小池公述人にはお聞きできなかったことをおわび申し上げまして、終わります。

金田委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 今日は、四名の皆様、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、十五分ですので、早速、まず、保坂公述人にお聞きしたいと思います。

 世田谷区モデルと呼ばれる世田谷区での取組について、一つのコロナへの対峙の仕方として、私は非常に興味深いなというふうにも思いながら拝見させていただいているんですが、これは結構考え方は分かれるところだと思うんです。先ほど、熊野公述人の方からも、とにかく検査をして、無症状の感染者もあぶり出して、それに対して対応していくべきだということと、それから、検査を本当にある程度絞って、資源を集中すべきところをそこじゃないところに絞るべきだという、それはいろいろ考え方があると思うんです。

 その中で、当初、保坂区長が、誰でも、いつでも、何度でもという言葉を言われまして、検査を拡充していこうと。検査自体、希望する方がすぐに受けられる体制をつくるということは何の異論もないことだと思いますが、社会的検査、また定期検査というのを行われたというふうにお聞きしていますが、これは、そもそもの政策目的、一番大きな政策目的は何だったのかというのをお教えいただけますでしょうか。

保坂公述人 二つあります。

 一つは、先ほどから申し上げているように、高齢者施設で一旦感染が広がると、短期間で多くの方が感染する、そして、重症化して亡くなる方も出てくる、ここを徹底的にガードしていこうと。そのためには、定期的な検査、これだけでは足らないので、一旦感染が起きたときには、その施設全体、他の職員や入居者も全部一斉に検査するという体制をつくりました。

 もう一つは、ニューヨークの例も当初事例に挙げたんですが、やはり、日本の場合、余りにもPCR検査の検査数も少なかったですし、また、そのハードルも高かった。逆に、今、駅前PCRみたいな民間の事業者がたくさん出てきて、この精度はどうなのかというような問題が言われていますよね。それだけ検査のハードルが高いというところを、やはり、大きく検査数を増やす実績、それから方法、プール方式の採用など、これを、世田谷区だけで感染防止できませんので、全国でできるように、制度設計を厚生労働省の方にも何度もお願いをして、今、全国で一応やれるようになってきていると思います。

 ただ、意識として、これは本当に大事なんだということで、もっともっと国として力を入れてほしいというふうに考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 エッセンシャルワーカーを対象とした定期検査、いわゆる高齢者が集まるような施設、そういうところに、手挙げ方式ですよね、希望者に対してという形でされたというふうにお聞きしています。

 大体手を挙げた方が三割いかないぐらいだったというふうな実績をお聞きしているんですけれども、これは結構悩ましいところがあるなと私も思っていて、要するに、店舗商売をやっていたり、高齢者の施設もそう、医療機関もそう、例えば、濃厚接触者が一人出ると業務が止まり戦力がダウンするということもあって、びくびくしながらやはり皆さんされている。その中で、無症状でとか、偽陽性とかもありますから、そういうのをあぶり出すというのに、やはりちょっと手を挙げるのに戸惑ってしまうというか、控えたいというような気持ちというのはやはり現場にはあるんじゃないかなと思うんです。

 これは三〇%ぐらいが手を挙げたというのは、どのように見ておられますか。これは妥当だろうというところなのか、いや、本来だったら強制してでも全部やるべきだというふうにお考えか、この辺、どう思われますか。

保坂公述人 現在、特別養護老人ホームについては、もう大分、半数を超えて実施をされています。

 ただ、おっしゃったように、十五人一斉に無症状の方が見つかった施設がございました。これは二通りの受け止め方がありまして、やはり検査をするとこういうことがあるから、ちょっと一歩引こうという反応もやはりあったと思います。

 我々は、特養ホームの施設長の皆さんと相談して、いざ感染があって何人もの職員が出たときに、お互い職員同士を助っ人に回し合って、それで体制を維持できるようにしようという覚書を交わしてもらいまして、そこは、ですから、早めにチェックをかけた方がもっと広がって火の手が大きくなるよりも結果として施設の存続ができるんだという意識に大分傾いていただいていて、今、一万二千人をちょっと超えたところになっております。

 二回目、三回目とやっていきたいということで、継続をしております。

藤田委員 ありがとうございます。

 さっき保坂公述人がおっしゃられていたように、全国的に広がっていけばいいなと多分思われている。でも、なかなか二の足を踏んでいるのは、資源との兼ね合いとか、又は、無症状感染者をあぶり出すことというのが果たしてコロナ対策としていいのかどうかということは、私自身は、先行事例でもありますから、是非いろいろな検証をしていただきたいなというふうにお願いをしたいと思います。

 特に政策目的のところ、例えば、現場の施設さんが安心してそういう手段を選択できるというミクロに手をかける政策なのか、又は、全体の感染者数又はクラスターなり感染拡大自体をマクロで抑えていくためにやっていくべきなのか、これはちょっと見え方が違うと思うんです。私はどちらもちょっと懐疑的だなと現時点では思っていまして、ただ、勇気を持ってされていることですので、是非検証をしていただいて、いろいろなデータを出していただけたらなというふうにお願いを申し上げます。

 それから、経済のところへ行きたいと思います。熊野公述人にお聞きしたいと思います。

 熊野さんの記事を事前資料でいろいろ拝読させていただきました。その中で、株価の話、三万円台を超えまして、これが実体経済からの乖離がいろいろな分析の中であるんじゃないかというふうにおっしゃられています。実際に実体経済との乖離があると見受けられるのかという確認と、それから、乖離がこのまま続くこと、又はこれが広がっていくということ、つまり、実体経済がそこまで上向かないのに株価がそれと乖離してどんどん上がっていくということはどんなリスクを伴うのか、これを教えていただけますか。

熊野公述人 御質問ありがとうございます。

 株価につきましては、三万円を超えるというのはまさに三十年ぶりなんですが、株価をどういう評価をするかというのは一義的な方法はないんですけれども、ウォーレン・バフェットというアメリカの有名な投資家が使っている、GDPの大きさと株価の時価を比べるというのはバフェット指数と言われているんですが、株の総時価が七百四十兆円ぐらいあって、GDPは五百五十兆円ぐらいなので、もう一・三六倍ぐらいに大きくなっているんです。

 株価の細かい議論をしてもちょっとしようがないと思うんですけれども、一つ言うと、テクニカルな話から申し上げると、株のウェートでは五五%が製造業なんですが、実際、GDPベースでは製造業のウェートは二割なので、今まさに世界的に回復している製造業の好調さが少し株価を過大評価させている。でも、これは合理的な株価の話です。

 仮にGDPと同じぐらいまで株価が下がらないといけないとするならば、恐らく、それで適正株価を算定すると、いろいろ見方はあるんですけれども、三万円が、大体、現状のGDPでいうと二万三千円ぐらいなので、ざっくり七千円ぐらい過大評価になっている。

 この過大評価の要因は何かというと、ちょっと、分子、分母はいろいろあるんですけれども、一つは、将来の成長を非常に強く見ているというのが一。

 二つ目は、リスクに関して将来が織り込まれていない、リスクプレミアムが非常に低くなっている。ただ、これは過信によって、傲慢によってリスクプレミアムが小さくなっているだけではなくて、もう一つは政策で封印している。これは日本以外もそうなんですけれども、企業を破綻させないような政策がリスクプレミアムを人為的に小さくしているので、それが株価を七千円ほど大きく押し上げている部分があると思います。

 この話は、今のようにリスクプレミアムをずっと永続的に封印できれば株価は三万円維持できるんですが、そういう政策が息切れしてくると困るので、私としては、財政政策から成長戦略へと切り替えていくと、三万円は、持続的かどうかよく分からないですけれども、過大評価の部分を小さくしていけるのではないかと思います。

 御質問の中に、このまま株価が上がっていくとどうなんですかというお話なんですが、今は大丈夫かもしれませんけれども、これが三万五千円とか四万円になっていくと実体との乖離が大きくなるので、乖離が大きくなるということは、上を目指すよりは下に落ちる確率が高くなって、バブル崩壊的なことがあるので、現時点で、リスクプレミアムをより成長戦略によってシフトさせていくような経済政策、バブルをはじけさせないような経済政策というのは私は可能だと思うので、政府がそこへ資金を投入するということが今後は必要なのではないのかなと思います。

 ありがとうございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 コロナ対策で各国が財政出動をやっていますよね、かなりの量を。それでやはりマネーの供給量が増えているというのがあって、そこは株価にどれほどの影響があると見ておられるか。また、コロナが少し収まってきた後に、インフレという危険というか、インフレの方に振れるという予測もありますけれども、この辺り、どう見ておられますか。

熊野公述人 御質問はまさに的確で、今マネーストック、昔マネーサプライと言いましたけれども、日本ではたしかM2という定義が九・四%なんですね、一〇%近い。我が国でこのマネーサプライ、マネーストックが二桁になったのは、一九九〇年代からずっとなかったんです。つまり、前に起きた八〇年代バブルと今だけがマネーサプライ、マネーストックが一〇%ぐらいになっているので、これは金融緩和がかなり行き過ぎているのではないのかなと思います。

 インフレの話なんですけれども、日本は当分インフレにはなりません。これは賃金が下がっていますから。しかし、海外からインフレがやってきて、輸出入でやると輸入物価が上がるみたいなインフレは、日本にとっては非常にリアリティーがある話だと思います。

 今、アメリカのマーケットで見ますと、物価連動債と長期金利の差で見るインフレ予想、これがどんどんどんどん上がっているので、アメリカ経済では年内にもインフレ懸念が少しリアリティーを持ってくるんじゃないかという話で、直接的に日本に与える影響はダイレクトではないんですが、もしかすると、年末ぐらいには輸入物価が高くなって、生活者が、食料品など、原油とか食料品が高くなるみたいな形で悪影響を受けるのではないか。

 ですから、マネーの金余りの問題はちょっとどうかよく分からないですけれども、その部分は少し緩和し過ぎているんじゃないかという部分もあるんですが、量的には緩和しているんですが、中小企業などに対するリスクマネーというところでは量が質をなかなか代替できないという課題がある。インフレ懸念よりは、過剰流動性が株価などに回っていて、健全な方向の成長になかなか行かない。

 日本銀行も三月に点検をやると言っていますから、日本銀行の政策も量ではなくて質的に改善するような形で再検討していくということは、今後の対応としては望まれるのではないかと思います。

 ありがとうございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 非常に難しいかじ取りだなというふうに思いました。

 ちょっと実体経済の方の賃金の話を熊野公述人と小畑さんに最後少しお聞きしたいんですが、最賃の話がありますね。この賃金水準がずっと上がってこなかった、可処分所得が落ちているという話、私も全く同じ問題意識を持って、この当委員会でもいろいろ質問もさせていただいています。

 その中の手法として、賃金水準を上げていく手法として、私は最低賃金を大幅に引き上げるというのは果たしてどうなんだろうというのはちょっと疑問に思っているところがあって、というのも、賃金、最低賃金を上げていくと、やはり企業側からすると、不確実性の多い雇用を長期に永続していくということを強いられるというか課せられるわけですから、なかなかいきなり賃金を上げるというインセンティブは働きにくい。つまり、どういうことが起こるかというと、低賃金水準の最賃張りつきみたいなことが起こるわけです。そうすると、全体の賃金水準を上げるインセンティブに果たしてなっているのかなというふうに私は思うんです。

 また、経済指標でいうと賃金水準というのは遅行指数ですから、賃金水準を上げることによって経済を活性化するという、最近イギリスとかを含めてそういうことも言われ始めていますが、私はちょっと懐疑的だなというふうに思っています。

 そういう意味で、賃金水準と最低賃金の関係について、お二人から御見解があれば教えてください。

熊野公述人 ありがとうございます。

 一つ前提として言えることは、最低賃金を徐々に上げていくという政策は既に安倍政権下からずっと行われているので、我が国の政策は、最低賃金を上げるというふうにもうなっているんじゃないかと。

 ただ、それを劇的に上げるかどうかというところで問題があり、私は、最低賃金を劇的に上げると、困るのは大企業じゃなくて中小企業だと思います。製造業とかサービス業においては、日本はイギリスと違って価格転嫁がなかなかできないという国なので、最低賃金を上げると、むしろ中小企業がばたばた破綻するようなことになるので、ここは段階的にやらないといけない。

 あと、極めて重要な概念があと二つあって、一つは、賃金が上げられるのは生産性が上がることなんですね。やはり、生産性を大きく上げることを通じて最低賃金や賃金全体を上げていくということは非常に重要だと思っています。生産性の上昇の前提なくして賃金を上げるというのは、企業に無理強いをすることではないかと思います。

 あと、最低賃金が今議論になっているんですけれども、私はこの最低賃金じゃなくて平均賃金を上げるべきだと思うんですね。平均賃金というのは、上だけ上げればいいというわけではなくて、全体が循環しながら、つまり、お風呂のお湯全体が温かくなる。最低賃金を上げて下の方だけ熱くなるということではなかなか経済は回っていかないので、平均賃金全体を上げるような発想で政策を組んでいくということが非常に重要なのではないのかなと思います。

 ありがとうございます。

小畑公述人 御質問ありがとうございました。

 先ほども説明させていただきましたように、今のこの最低賃金というのは生活できないような賃金なんですね。だから、このまま放っておいたら、こういうコロナパンデミックのような危機が起きたときだけではなくて、日本の中にちょっと何かあったときに、この貧困のところに、食べるものがなくなる、住むところもなくなるという貧困の層に転げ落ちるような、そういう層を大きくつくり出してきてしまっている。

 だから、そこのところをやはり変えて、賃金というのは一人一人の労働者の生活を保障するものでなければならないわけですし、労働者なくして企業の発展もないわけですよね。だから、そこのところの考え方を根本的に変えて、一人一人の労働者が生活ができるような、少なくとも最低水準の生活が、憲法で言っているような、保障できるような、そういう賃金に底上げをしていくということそのものが経済を回していくということにつながるというふうに私どもとしては考えているということです。

 それと、先ほど御指摘がありましたように、そのことを実現していくためには、先ほども申し上げましたけれども、中小企業への支援は欠かせませんし、中小企業そのものが元気に活動できるということが地域経済そのものの活性化につながっていきますので、そのことは非常に重要なことだというふうに考えております。

 以上です。

藤田委員 ありがとうございます。

 これで終わらせていただきます。小池公述人におきましては、質問できずに申し訳ありませんでした。

 ありがとうございます。

金田委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、公述人の皆様にはお忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございます。限られた時間でございますので、全ての公述人の皆様に質問できないかもしれませんけれども、どうぞお許しいただきまして、早速質問を始めさせていただきます。

 まず、保坂公述人にお尋ねをいたします。

 保坂公述人においては、コロナ対策において、政府が施策を打つ前に、率先して、先駆者として、専門家の助言を基に積極的な新規の施策を進めてこられました。それが、特出して、この検査体制を拡充して、積極的なPCR検査を行ってこられたことだと思っております。

 先ほどから公述人に対して検査につきましての質問が多くございましたので、私からは、その検査体制を先駆者として進めてこられた経験を基に、また、区長として、国と都道府県の役割分担については様々議論があっているところです。先般行われた都道府県知事へのアンケートにおきましても、この役割分担については、それぞれの知事、いろいろな御意見をお持ちであるということを私も読ませていただきました。区長として、この役割分担、このコロナ禍を経てお考えになっていることがあれば、是非御示唆いただければと思います。

保坂公述人 お答えいたします。

 やはり、この新型コロナウイルス、もう本当に立場を超えて、あらゆる国で全力で、試行錯誤、失敗もありながら、立ち向かっていると思います。私たちは、もっともっと、他の国のうまくいった例、失敗した例も虚心坦懐に学んでつくり出していくべきだと思います。

 早期に必要な検査を実施すること。世田谷区では、自動検査機を検査場に入れて、その日の夕方の検査は翌日朝に結果が出るということで、必要な場合はすぐ治療につなげられるように、また、検査場にCTの画像を撮る機械を入れて画像診断ができる、こういう工夫もしてきました。

 社会的検査も含めて、国として、当初、昨年来は、検査を余り広げると医療に負担がかかるんじゃないかという議論は確かにございました。ただ、このウイルスは無症状の方がかなり多くの方に感染をさせているということも歴然たる事実として分かってきているので、やはり本来であれば、もっと戦略的に、広域に、世田谷区だけで感染防止できませんので、首都圏なら首都圏、東京なら東京というところで、最も感染が繰り返し起きているところについて、更に大きな網をかけるというようなことも必要かと思います。ローラー的に、ある地域を決めて検査していくような、諸外国でやっているような手法も検討すべきだというふうに思っています。

 医療については都道府県なんですが、先ほども申し上げたように、火事場になってくると、人口九十二万人ですから、やはり区が率先して、病院や医師会とも連携をしながら構築をしていかなければならない。

 今、ワクチンの体制についても、医療機関それぞれ訪ねながらやっております。こういった中で、やはり接種主体が、責任者が今回基礎自治体なんですね、ワクチンの場合は。なので、その自主性と、その見通しをしっかり持てる基盤ですね。

 実は、ワクチンの接種順位で、私、どうしても納得いかないのは、介護の関係者が優先順位が低いということなんですね。私は、介護の現場こそ医療と同一くらいの順位で構わない。社会的検査で巡回していますから、世田谷区では巡回型でワクチン接種をやっていこうと思います。

 ただ、この中で、今度、訪問介護の方はクラスター化がないんじゃないかみたいな話もありますが、これは間違いです。実は、訪問介護で働いている方自体は、ヘルパーさんあるいは介護で働く人たちは、大体複数の事業所に籍を置いている方が多いんです。区内で発生した感染例でも、一つのデイケア、もう一つの事業所、また訪問に行ったところとクモの巣のように広がった感染というのがありますし、また、病院に入院できない時期がございましたよね。その時期には、自宅で、感染をもう知りながら、その方の介護に行くということも訪問系の方はされているんですね。そういう意味では、この接種順位はきちっと見直してほしいというふうに思います。

 そういったことを一番現場で知っているのは基礎自治体なので、都道府県だけではなくて、基礎自治体の声を制度設計に当たってもしっかり聞くということを是非やってほしいなというふうに心から願っています。

西岡委員 ありがとうございます。

 保坂公述人から大変重要な御指摘をいただいたと思っておりますので、私どももしっかり御趣旨を踏まえて取り組んでいきたいというふうに思います。

 引き続き、保坂公述人にお尋ねをいたします。

 三府県が二月末日の宣言の解除というものを政府に要請をいたしました。一方、東京始め一都三県については、解除の前倒しについてはまだ考えないという方針です。

 今後、緊急事態宣言の解除の判断というのが大変難しい局面だと感じております。第四波を起こさせないために、感染者をできるだけ低下をさせてワクチン接種につなげていくというのが大変重要だと考えております。

 世界的には感染者が比較的少ないにもかかわらず、医療体制が逼迫、病床が逼迫していることが原因で、なかなか宣言が解除されない今の現状であると認識をいたしておりますけれども、区長として、その根本的な原因は何なのか、また、解除するに当たっての区長としてのお考えがあれば御示唆いただければと思います。

保坂公述人 緊急事態宣言二回目、非常にある意味で限定された、一回目と比べれば、そういった形でスタートしましたが、効果は上がってきていると思います。

 ただ、その効果ですが、七月の第二波の下ってきたところも、東京でも百人、二百人ぐらいの方たちの感染はずっと出続けていたんですね。あのときの教訓を、是非繰り返し同じ轍を踏まないように、このぐらいだからということで、実は、GoToも含めて、相当規制緩和策にアクセルを踏みました。活性化しました。人も動きました。いろいろな意味で、もう大丈夫だという意識がかなり広がっちゃったんですね。その結果、もう大変なことになりました。よく医療機関も、我々や保健所も、本当に不眠不休で、この波にさらわれました。

 ですから、今度の第三波のこの緊急事態宣言の解除に当たっては、やはりその点、しっかり、焦ってアクセルを踏むようなことだけは絶対しない。やはり低く低く抑えながら、多少やはり、それは経済的に制限がかかるという部分についてはしっかり補償して、その方が経済全体にとってもいいんだというふうに考えております。

 以上です。

西岡委員 保坂公述人、今のことに関して、大体、新規感染者が百名ぐらいまで落とすというか抑え込んでから解除すべきではないかという議論もございますけれども、公述人として、そういう基準的な、ここまで達成できればというようなもしお考えがあれば教えていただきたいと思います。新規感染者の数に限らなくても結構ですけれども、その基準的なお考えがあれば御示唆いただければと思います。

保坂公述人 第二波の轍を踏まないようにと申し上げましたけれども、そういう意味では少し早まっていたわけですね。ちょっと甘く見ていた。

 だから、やはりかなり手ごわいので、もっとしっかり感染がコントロールされる、抑えるのと、それと、やはり医療機関自体の体制が、約一年たっても抜本的にまだ変わっていないんですね。病床はある、しかし入院はなかなかできない。ここをこの時期に総力で、ちゃんと入院治療ができるという体制をつくっていくことも肝要だと思います。

 そういう点で、同じ轍を踏まないで、しっかり判断していただきたいというふうに思います。

西岡委員 保坂公述人、ありがとうございました。

 引き続いて、小池公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 私、地元が長崎でございまして、大変風水害、被害が多いところでございますし、特に九州全域においては、大変この風水害が近年激甚化、頻発化しております。

 そういう中で、公述人の方から、流域治水への転換、河川計画の見直しという御提言をいただいて、強靱性、包摂性、持続可能性という基本の観点という御指摘をいただきました。ソフト、ハード一体となった対策というのが大変必要だと思いますし、今は、ビルド・バック・ベター、よりよい復興という視点も大変重要でございます。

 こういう中では、これまでの事例で、ハザードマップというものが大変被害と合致した結果であったということで、このハザードマップの共有化というものも大変重要でございますし、災害が起こってから今までは集団移転というのがあったんですけれども、危険な地域については事前に集団移転をしていくということも国の方向性として示されてきておりますけれども、今コロナ禍にあって、梅雨の時期を迎え、どういう災害、風水害が起こってくるか分からないという中で、今本当に早急にここを取り組むべきというような観点がございましたら、御示唆をいただければと思います。

小池公述人 どうもありがとうございました。大変重要な御指摘です。

 昨年の三月から四月にかけて、昨年の梅雨を迎える、あるいは台風時期を迎えるに当たって私どもがやりましたのは、実は、ここ十年ほどの各都道府県が出しております災害記録というのがございます。特に西日本関係の都道府県が出される災害記録には、失敗しそうになった事例とかいうのがよく記載されておりまして、それを私ども、ヒヤリ・ハット集として、水災害全般に関するヒヤリ・ハット集としてちょうどまとめておりました。

 そこにコロナが出てきたわけなので、今申し上げたのは過去の事例でございますが、このコロナ禍で、先ほども言いましたように、コロナの感染のリスクと水害のリスク、コロナの方が怖いと思う人が多いわけで、避難が遅れるという大きな実態があるし、それから、市町村ではそれを安全に避難させる体制づくりも重要でありました。

 そこで、ヒヤリ・ハット集のコロナ版という想定集を作りまして、これを早速配布いたしまして、これはあくまでも想定であるけれども、我々研究者が地元のいろいろなことを聞きながら考えて作ったものでございますが、こういう対応措置を取りました。

 さらに、そのヒヤリ・ハット集と通常の水害対応の手続というものがございますが、どういうときにコロナの場合はヒヤリ・ハットするかというような調査あるいは訓練システムをつくりまして、具体的に川崎とか竹原とか七市町村でこれを使っていただいて、そういうような対応をしてまいりました。

 申し上げたいのは、要するに、コロナに感染するリスクがより危ないと思っている人がやはり多いという中で、いかに安全に避難をさせるか。要するに、その避難の方法、受入れ体制、いろいろなことを日本中あるいは世界中の知恵を集めながらバージョンアップしていく必要があると思っています。

 以上です。

西岡委員 小池公述人、ありがとうございます。貴重な研究成果、是非活用をさせていただくように取り組んでまいりたいと思います。

 それでは最後に、小畑公述人にお尋ねをいたします。ちょっと時間の関係で、大変端的に短くお尋ねをいたします。

 このコロナ禍、大変女性に大きな深刻な影響が及んでおります。そういう中で、一人親世帯、二人親であっても大変、困窮者世帯、当然、子供たちにも大変な影響が及んでおります。従来からあった格差の上に、子供たちに大変格差が広がっている、このことは大変深刻だと考えております。

 公述人におかれましては、教員御出身ということもあって、子供たちについてのコロナ禍の格差、そしてこの格差を是正するための取組について、御教授いただけることがあれば最後にお伺いをしたいと思います。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 今、格差と貧困が広がる中で、子供たちへの影響というのは本当に大きくなっています。先ほども申し上げましたけれども、給食だけで一日の食事を済ませているというような子供たちが本当におりまして、保健室の方たちからもたくさん報告がされているところです。

 そういう子供たちに対して、もちろん社会保障の面からきちんとした手当てをしていくということと同時に、教育の分野でできることとしては、やはり教育の無償化。教育費というのは物すごい保護者の皆さんにとって負担になっていますので、先ほど最賃のことを重要だと申し上げましたけれども、最賃を上げるということと同時に、社会保障や教育の分野で無償化、子供たちに関することはやはり無償化していこう、そういう流れをつくっていくということが全体を支えることになるというふうに感じております。

 短くということでしたので、以上です。

西岡委員 今、大変重要な御指摘をいただいたと思います。

 あと一分ほどございますので、引き続いて小畑公述人に……

金田委員長 時間が参りました。

西岡委員 申し訳ございません。質問できなかった公述人の方、大変申し訳ございませんでした。

 これで質疑を終わらせていただきます。ありがとうございます。

金田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

金田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 令和三年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず小峰隆夫公述人、次に原田泰公述人、次に岩本愛吉公述人、次に逢見直人公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、小峰公述人にお願いいたします。

小峰公述人 大正大学の小峰と申します。

 本日は、こういう場で意見を申し述べる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。

 私のメモをお配りしてあると思いますので、これに基づいてお話をさせていただきます。

 私は、マクロ経済が専門でございますので、日本経済全体がどうなっているか、その中で経済政策がどういう課題に直面しているかということについてお話ししたいと思います。

 まず一番目、コロナ危機下での日本経済についての基本認識ということですけれども、これは皆さん御承知のとおり、GDP成長率は、ほとんど毎期、非常に上がったり下がったり、非常に激しい変動を繰り返しております。

 この非常に大きな変動というのは大きな特徴で、このグラフにありますように、年率で二九%も下がったかと思うと、二二%もプラスになるといったような動きがありますし、最新の十―十二月期も、この資料は予測の資料ですのでちょっと古いんですけれども、非常に高い成長率になった後、現在は恐らくマイナス成長、一―三月期はマイナス成長だろうというふうに言われています。

 したがって、今どういう政策があるべきかというときに、分かっている資料はちょっと違う資料が出てきているということで、もう少し長い視野で、中長期的な視野で考えていくということが必要だというふうに思います。

 それから、生産面の動きですけれども、ここにグラフがありまして、図二の左側が鉱工業生産、右側が第三次産業ということで、サービス業中心の第三次産業なんですけれども、リーマン・ショックのときと比べますと、リーマン・ショックが青、今回のコロナショックが赤という区別になっておりますけれども、製造業の方は、鉱工業の方は、リーマン・ショックも今回も大きく落ち込んでいるんですけれども、第三次産業の方は、リーマン・ショックのときにはほとんど落ち込みがない、横ばいぎみなんですけれども、今回はこれが大きく落ち込んだ。

 この第三次産業の落ち込み、これは言うまでもなく、旅行業とか外食業のような対面型サービスが非常に落ちたということが大変大きな特徴で、ということは、こういった第三次産業は、これまでこれほど大きな落ち込みを経験したことがなかったということで、更にショックが大きかったのではないかというふうに推察されます。

 次に、二ページ目に行っていただきまして、所得面の動きについて申し上げたいと思います。

 これは、GDPの所得面の動きというのが二年ぐらい前から新たに公表されるようになりまして、四半期の動きが分かるようになってきております。

 これを見ますと、特にコロナショックの影響が大きかった昨年の四―六月の動きを見ますと、ここで赤い丸で囲んでありますけれども、一番左の雇用者報酬、これは賃金ですね、賃金は大きく減っております。十一・一兆円。これは年率ですので、実際はこの四分の一になるんですけれども、年率で十一・一兆円減っている。これは言うまでもなく、雇用機会が失われたり、ボーナスが減ったり、残業時間が減ったりということで大きく落ちたわけです。

 ところが、その他の経常移転というのが三十九・五兆円も増えている。これは、十万円の給付、これがありましたので、大きく増えた。その結果、可処分所得、使えるお金は三十・五兆円も増えているということです。

 一方で、家計の最終消費、これはさっき、GDPが大きく落ちたときに消費は大きく落ちました。つまり、所得は大きく増えて、消費は大きく減った。そのため何が起きたかというと、貯蓄が大幅に増えているという結果になっております。

 四―六月期の貯蓄率が一番右にありますが、これが何と二一・八%というほとんど見たことがないような高い貯蓄率という結果になっております。七―九月期は、これは若干その程度は弱まっておりますが、貯蓄率は依然として一一・三%と高いという結果になっております。

 それから、雇用面の動きですけれども、これも皆さん御承知だと思いますが、雇用機会は大幅に減ったんですけれども、企業内の休業者、これは雇用調整助成金等の効果だと思いますが、企業内の休業者と、それから、特に非正規を中心に、非正規の女性が中心だと思いますが、雇用機会が失われた結果、求職活動を諦めて家庭に戻ったという方が非常に多かったために、結果的に失業者としては余り大きく増えなかったという形で、雇用面のパニックは防げたという結果になっていると思われます。

 それから、5に景気の認識というのがありますが、景気というのは通常は方向で判断する、つまり、上を向いているか、下を向いているかということで判断します。そうしますと、現在は上を向いておりますので、景気回復期という認識になります。これは、専門家の意見を聞くアンケートがあるんですけれども、第一線のエコノミストは、これはもうほとんど全員、昨年の五月が景気の底だったという認識を持っている。私もそう思っています。

 しかし、6にありますように、これはGDPの水準を見たもので、まだ途中段階ですので、将来予測を専門家の予測で入れてあるんですけれども、これを見ますと、来年の四―六月期まではコロナショックの前のレベルを下回るという状況が続くというふうに予想されています。

 したがって、景気認識の方向としてはプラス方向で、成長率は高いということなんですけれども、水準としてはコロナ前をなかなか上回れないという水面下の状況がまだしばらく続くということになると思います。

 そうしますと、多くの経済主体は、例えば、今よりももっとボーナスがよかったときがある、今よりももっと売上げが大きかったときがあるという認識でずっとこれからしばらくの間続きますので、景気は回復局面だというふうにいってもなかなか実感を得られないというところになるのではないかというふうに考えられます。

 次に、三ページ目以降で、コロナ危機への政府の政策対応をどう考えるかということについて、私の考えを申し上げます。

 これについては、私の基本認識は、コロナ危機というのは三つのフェーズがありますので、そのフェーズに基づいた政策が必要だという考え方をしております。

 フェーズ1というのは、これは今詳しく説明した昨年の四―六月期、緊急事態のときですけれども、これは、感染防止のために経済活動を抑制しなければいけない時期だったというふうに考えられます。

 フェーズ2というのは、感染症の広がりを抑えつつ、経済活動もある程度拡大させていくという、両者のバランスを取っていくべき時期ということで、これが昨年の七―九月期以降、現在まで続いているという認識になります。

 フェーズ3は、感染症がワクチン等で抑えられて、新たな歩みを始めるときということで、残念ながら、これがいつになるかというのはまだ分かりません。

 こういう認識ですと、当面はフェーズ1、フェーズ2、今はフェーズ2だと思いますけれども、フェーズ2のときには何が必要かというと、一時的なショック、これは所得面のショック、売上げの低下、いろいろあると思いますが、一時的なショックが永続的な傷として残らないような政策というのが中心になるというふうに思います。

 当面、さっき申し上げましたように、水面下の経済が続いて、多くの人が満足できない経済ということになると思いますけれども、だからといって、通常の景気後退期のように、財政金融面で需要を刺激して景気をよくしようという方向はなかなか取りにくい、経済が活動すると今度は感染症が拡大してしまうという矛盾がありますので、通常の景気政策というのはなかなか取りにくい局面にあるというふうに私は考えております。

 本格的な景気刺激策は、成長政策はフェーズ3以降の課題になると思いますけれども、そのときには恐らく、今まで旅行に行きたくても行けなかったとか、買いたくても買えなかった、外食に行きたくても行けなかったという需要、これが、抑圧されていた需要ということで、ペントアップディマンドという考え方があります。このペントアップディマンドが何もしないでも恐らく相当出てくるということですので、それを見極めながら景気対策を考えていくということが必要だと思います。

 それから、(2)の財政面での対応ということですけれども、先ほど申し上げましたように、フェーズ2の段階におきましては、一時的な雇用調整が長期的な失業につながらないようにする、それから、一時的な経営危機が長期的な廃業とか倒産につながらないようにするということが重要だということで、困窮分野に一時的な所得補填をしたりつなぎ融資をしたりというようなことが基本になるというふうに思いまして、この点は今のところ、比較的うまくいっているのではないかというふうに判断をしております。

 ただ、こういう危機にあっては、各方面から、こういうことにもお金を使ってくれ、ああいうことにもお金を使ってくれという財政への歳出面での拡大要求が相次ぐということで、これをなかなか拒否するのが難しいというような局面になると思うんですけれども、そういったときであるからこそ、しばしば言われます、賢明な支出、ワイズスペンディングとか、それから証拠に基づく政策立案、EBPM、こういった考え方をなるべく重視していくという姿勢が必要だろうというふうに考えております。

 それから、このコロナへの対応が将来世代への負担として長く残らないようにするという視点も重要だと思いますので、例えば、コロナ関係の歳出を別建てにしておいて、将来、コロナ危機が終息した後、これは誰でも嫌がるんですけれども、増税等によってこれを回収していくということで、将来世代に負担を残さないという視点も必要であろうというふうに思います。

 それから、やや個別の問題になりますけれども、これまでの政策的対応の中で幾つかの課題が出てきているというふうに思います。

 一つは、景気対策がこれまでも既に打たれておりますが、そういった中で、非常に大規模な財政支出が行われていることをどう考えるかということです。

 これは、先ほど申し上げましたように、通常の景気後退期のように、景気が悪いから財政面から需要を増やすという考え方は、単純にはなかなかいかないのではないかということで、四ページ目にありますように、特に、こういった議論をするときに、マクロの需給ギャップ、潜在的なGDPと実際のGDPの差がどれぐらいあるかという需給ギャップに基づいて財政の規模感を考えていくという発想が出てくるんですけれども、これは余り適切な議論ではないんじゃないかというふうに私は考えております。

 それから、全国民への十万円給付というのが行われたわけですが、これはなかなか、お金に色がついているわけではないので、この十万円がどういうふうに使われたかというのを追跡するのはほとんど不可能だというふうに思うんです。しかし、先ほど国民所得の貯蓄と支出のバランスを見ていただきましたとおり、少なくとも給付の大部分は貯蓄に回ったのではないかという可能性が高いと私は思いますので、今後同じような措置を取るのであれば、これはなかなか、どうやるんだと言われても私も名案はないんですけれども、何らかの手段で困窮世帯に的を絞るというような発想の方が適当ではないかというふうに考えております。

 それから、GoToキャンペーンについてですけれども、これは私はかなり批判的な意見を持っておりまして、皆様の中にはこれを推進している方も多いと思いますので大変恐縮なんですが、一人の学者の意見として申し上げさせていただきますけれども、経済学的には、現在の段階での外食をするとか旅行に行くというのは、外部不経済、つまり、他人に迷惑をかける行為だというふうに分類されるわけですね。これは、ただ、いつまでもそうではなくて、コロナが終息すれば普通のことで、外部不経済じゃないんですけれども、現在は外部不経済だというふうに認識されます。

 そうすると、非常に教科書的に考えると、外部不経済に対してはどうしたらいいかというと、外部不経済を出している人に罰金なり課税をしてそれを抑えるか、出さないで我慢している人に補助金を出すかという政策が考えられるということですが、GoToキャンペーンは、残念ながら、外部不経済を出している人に補助金を出すという政策になってしまっているというのが大変難しいところだなというふうに思います。

 それで、これは私も机上の空論であるということは十分承知しておりまして、恐らくこの中でも賛成してくれる方はいないと思いますけれども、私の理想の政策は、旅行とか外食に課税をして、その得られた収入で業者を直接救うというのが理論的には一番いいんじゃないかというのが私の考えです。これをやりますと、感染の防止、それから被害の救済、それから財政赤字の防止という三つが同時達成できるということですので、一応申し上げておきます。

 それから、三番目は、ここから先は余り今日のテーマと関係ありませんので簡単に触れますけれども、ポストコロナの日本経済というのを考えたときに、コロナショックによって、これまでの課題がもっと厳しくなるという面と、これまでやろうと思ってできなかったことができるようになってくるという両方があると思います。前者については、これからもっと力を入れて取り組まなければいけませんし、後者については、その流れを積極的に生かしていくということが必要だというふうに思います。

 前者の従来から直面していた課題がもっと難しくなるという点については、一つは財政再建ということで、これは、これだけの財政支出がありましたので、これをどうするかという議論がいずれ必要だ、その際には、コロナ危機後の経済展望というのを踏まえて財政再建への道を描き直すということが必要だろうというふうに思います。

 それから、持続的な社会保障を維持していくということも、これまでも重要だったんですけれども、これからもそれは変わりません。このためには、給付を削ったり、拠出を求めたりとか、増税をしたりとか、何らかの国民負担を求めざるを得ないということですが、これがコロナ危機の中ではなかなかそういう議論は出にくいということだろうと思います。

 それから、金融政策に関係しますけれども、コロナ危機でまた物価が下がりましたので、デフレからの脱却というのが更に難しくなったということがあります。

 それから、望ましい方向に転ずるきっかけになったという面もありまして、これは最後のページになりますけれども、ここでは二つ指摘しております。

 一つは、雇用の、働き方改革の面で、従来の日本の働き方はメンバーシップ型だというふうに言われていて、これが、少子化とか生産性だとか労働移動だとか男女共同参画だとか、そういった政策目標と余り相性がよくないというふうに言われてきておりました。

 多くの経済の専門家は、これをなるべくジョブ型にしていくということが必要だというふうに言っていたんですが、これは要するに、いわゆる終身雇用的な慣行をなるべくなくしていこうという方向ですので、なかなか多くの人の合意を得るのは難しいということでしたが、現在進んでおりますコロナ危機でテレワークが普及してきて、このテレワークがジョブ型と非常に相性がよいということが分かってきて、多くの企業がジョブ型への移行というのを真剣に考え始めているということだろうと思います。

 それから、これは言うまでもなく、デジタル化がこれまでいかに遅れてきたかということが今回のコロナ危機で非常に鮮明になったということで、これは、問題点が分かってきたわけですから、是非その問題点を解消してデジタル化を推進すべきだというふうに思います。

 以上で私の意見の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 次に、原田公述人にお願いいたします。

原田公述人 名古屋商科大学ビジネススクールの原田でございます。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。

 私がこれからお話ししますのは、現状の予算とか現状の財政支出とは全く異なる新しいアイデアを提供するということで、ベーシックインカムについてお話しさせていただきます。

 ベーシックインカムといいますのは、全ての人に最低限の健康で文化的な生活をするための所得を給付して、貧困をなくすというものであります。一時、議論が盛り上がったこともございますが、最近停滞していたと思うんですけれども、十万円の給付というのがありまして、これが概念的にベーシックインカムと似ているのではないかという議論がありまして、再び注目されるようになったのではないかというように思います。

 ここでお話しするのは、私の、スライドの二に書いてあります私の著書と、それから、その後の状況の進展によって新たに考えたことをお話ししたいと思います。

 スライドの三で、一ページにスライドが二つありますので、二ページ目がスライドの三になりますけれども、ベーシックインカムに対する反論というのはあるわけで、なぜ給付しないといけないのかということですけれども、それは、憲法二十五条は生存権を保障すると言っておりますので、憲法二十五条を実現するためには必要なものだということであります。憲法二十五条に反対している政党、国会議員の方というのはいらっしゃらないと思います。

 ただでさえ財政赤字がひどいのに、更にとんでもないことになるという批判がありますけれども、私の考えでは、既にしていることを別の形で効率的にするだけですので、ひどくはならないというように考えております。

 それから、三番目の批判として、貧困は、単に所得がないことから生まれるのではなくて、仕事がない、社会から排除されるなどの社会的な根深い問題である、だから、この人々に寄り添って手当てをすることが必要で、単にお金を配って解決することはできないという批判があります。ただし、じゃ、この人々に寄り添って実際に個別に手当てをすることが可能なのか、そういうことができているのかということを問う必要があると思います。

 スライドの四ですけれども、その一番下に書いておりますが、生活保護水準以下の所得で暮らしている方は人口の一三%おります。実際に保護を受けている人は全人口の一・六%しかありません。ですので、私は、この一三%の人を助けるということが大事だ、つまり給付の普遍化こそが大事だというように考えております。

 次の、スライドの五にありますが、ベーシックインカムの思想というのは昔からあるわけなんですけれども、基本的に、財政的に考えますと問題があります。つまり、ベーシックインカム、BIの水準を高くすると、当然、税金を払ってくれる人がどんどん減ってしまって財政支出ばかり増えてしまうということになります。財政赤字を減らそうとすれば、ベーシックインカムの基準はある程度低く抑えなければいけないということになります。

 その下の六ページのグラフを見ていただきたいんですけれども、これは、給与所得者の所得階級別の分布と総所得を描いたものです。青が人数で、それで総所得が赤で描いてあります。つまり、例えば、所得が四百万円ぐらいの人は八百万人弱いるという意味です。

 そうしますと、ここで、所得が五百万円ぐらいのところで給料をもらっている人が一番多くて、その後減っていくということになります。この赤は、人数と所得を掛けたものです。そうしますと、五百万円から六百万円ぐらいのところでいっぱい所得があって、その後どんどん減っていって、一千万円から二千万円のところでちょっと膨らんでおりますけれども、その後、余り増えていかない。

 つまり、お金持ちから税金を取ればいいといっても、お金持ちは少ないので、税金をいっぱい取るためには、真ん中ぐらいの人から取らないと税金は足りないということになります。一千万から二千万ぐらいの人たち、そこにもかなりの山がありますので、最近のいろいろな税改正では、この辺りの人を狙ったような、いろいろな手練手管で多少税金を取ろうとされているようですけれども、やはり、本格的に税収を上げようとすれば、この中間の人たちから税金を取るしかない。そうしないと財政的にはうまくいかないということがあります。

 これが、ベーシックインカムのレベルを少しでも高くすると、一挙に税収が減って、税収がというか、財政赤字が増えてしまって、低くしておけば財政赤字は増えない、あるいは減らすこともできる、そういうことになります。

 では、ベーシックインカムが実現できない理由を考えてみますと、それは、所得再分配の程度と、生活保護とかそういうもののパターナリズムをどう理解するかということから対立点が生まれるのではないかというように思っております。金額についての合意が得られないというのがまず第一ですね。

 このベーシックインカムを負の所得税という形で提案したミルトン・フリードマンによると、平均所得の十分の一をベーシックインカムにすれば、それで貧困をなくせると言っております。ただし、そう考えると、日本の場合、年に四十万円配ればいいということになります。年に四十万円であれば財政的に全く問題ありませんが、これでは当然、足りないという多くの批判があると思います。

 一方、トービンという、フリードマンとは違って、もうちょっと左側の人で、貧しい人の生活をもっとよくしないといけないというように考える学者ですけれども、彼によれば、その倍ぐらいの水準でベーシックインカムを考えておりました。

 そうしますと、金額によって、足りる足りない、どのぐらいの税金が必要かというのが非常に大きく変わってきますので、これをどうするんだということで、なかなか合意が得られない。

 もう一つは、福祉政策について、現行の福祉政策は、家父長的な発想が根強いのではないかという気がいたします。貧しい人は、勤労意欲や態度、生活習慣に問題があるから貧しいのであって、それゆえ、彼らを教育し、正しい生活態度を身につけさせなければいけない、こういう考え方があると思うんですね。

 ただ、では、これをどうやってやるのか、その行政コストはどうなるのかという問題がありまして、実際には一千万以上の人々に何らかの形の生活保護をすることが必要だと思うんですけれども、現実には百数十万人の人にしかできていないということがあります。それは、行政能力の限界を超えているからだと思います。

 次に、スライドをめくっていただきまして、スライドの十になりますけれども、ベーシックインカムは実現できるかということになります。

 月七万円程度であればこれは可能ということになりまして、これは私が本に書いて、細かい計算はその本に書いてあるんですけれども、一部は次のスライドで説明できます。月七万円で、余り水準が高くないベーシックインカムの制度であれば実現可能だというように思います。

 ただし、現行の生活保護水準と比べてこれが極端に低いかというと、そうではないわけでありまして、月七万円というのは都市部では非常に低いものになってしまいますけれども、町村部ではそんなことはない。町村部の生活保護水準というのは、大人二人と子供二人で二十・九万円ぐらいです。私の提案しているBI、ベーシックインカムでは、大人七万円で子供三万円ですので、月二十万円ですので、町村部のレベル、生活保護のレベルと余り変わらないということです。

 何でこの金額が正当化できるかといいますと、私は四つ理由があります。一つは、日本の生活保護水準はイギリス、フランス、ドイツよりも二、三割高いということがあります。まあ、これは余り皆様は信じてくださらないんですけれども、事実であります。それから、日本の生活保護水準は高いけれども、実際に保護を受けている人は少ない、これは前にも言ったことであります。それから、生活保護水準を都市部で高くして、町村部で低くする理由はないということがあります。つまり、自分の生活しやすいところに行って生活すればいいからです。それから、生活保護を受給させ、その一部を取り上げて利益を得るという貧困ビジネスが成立しているということですので、この水準が低過ぎるということはないと思います。

 給付の実現性については、スライドの十一にあって、それから十二にもありますが、これは、まず、二十歳以上の人口に月七万円、二十歳未満の人口に月三万円支払いますと、九十六・三兆円の予算が必要になります。そうすると、現在の予算が百兆円ぐらいですから、じゃ、倍にするのかという話になるわけですけれども、現在の所得に三〇%の税率で課税すると七十七・三兆円入ってまいります。ですので、不足額は九十六・三兆円から七十七・三兆円を引いて現行の所得税収を足したもの、つまり三十三兆円が不足額ということになります。

 この不足額を、例えば、老齢基礎年金とか児童手当とか雇用保険とか、そういうようなものを削って出す。あとは、一般会計のうち雇用維持、生活維持のために現実には使われているのではないのかと思ったところから引いていくと、三十三兆円の代替財源はあるという結論になっておりますが、これは、例えば公共事業を削るとかいう話ですので、なかなか賛同は得られないと思いますが、実際問題として、仕事あるいは所得をつくるためのいろいろな予算がありますので、それはある程度削減できるのではないかということであります。

 それから、私の数字は二〇一二年度の数字なんですけれども、その後経済が成長しておりますので、三十三兆円足りないと申し上げましたけれども、現在足りないのは二十七兆円というようになっておりますので、成長すればベーシックインカムの財政的な制約は楽になるということが言えると思います。

 十二ページは、ベーシックインカムの代替予算候補という表を描いてありますが、これについては省略いたします。

 もう一つ、生活保護制度はうまくいっていないということをお話ししたいと思います。

 生活保護がベーシックインカムより優れているという人々の主張は、必要な人に必要なだけの保護をピンポイントでできるから優れている、そういう考えだと思うんですけれども、現実を見れば、必要な人には届いていないし、それから貧困のわながあるわけです。つまり、労働すると生活保護を減らされてしまうわけですから、非常にやる気をそぐ制度である。反成長政策と言ってもいいんじゃないかというように思います。それから、働くと給付を削られると同時に、大学進学すると給付を削られるということになります。これも反成長政策ではないかと思います。

 それから、近年、失業率は低下、というのはコロナ以前の話をしているんですけれども、失業率は低下しているにもかかわらず、生活保護世帯が高止まりしております。それは、その下のスライドを見ていただきたいんですけれども、この赤が失業率です。赤は、二〇一〇年ぐらいから一貫して失業率は下がってきたわけですね。一貫して下がっているのに、失業率ではなくて、これは失業者数です。ですのに、生活保護世帯はずっと高止まりしております。

 これはなぜかといいますと、次のスライドを見ていただきますと、ちょっと分かりにくいんですけれども、薄い青でどんどん伸びているのが高齢者世帯です。つまり、高齢者世帯の生活保護受給者がどんどん増えているということです。これはつまり、年金が足りないのでこうなってしまう。高齢者は働けない。普通であれば国民年金をもらって何とか暮らせるわけですけれども、国民年金を十分に払えなかった、そういう方がいらっしゃいますので、そうすると、その人たちを助けるために、高齢者世帯の生活保護受給というのが増えてしまっているということがございます。

 それからもう一つは、その他の世帯というのがあります。その他の世帯は、下の方の紫で高止まっているやつです。つまり、これは、生活保護をもらって、その後、貧困のわなから抜けられなくなった方ではないかというように思います。母子世帯とかそういう方々は、失業率が下がると、ちゃんと少しずつ減るということになっております。

 というわけで、もう時間も来ておりますので、最後に簡単にまとめさせていただきますと、リーズナブルな金額のベーシックインカムであれば実現できるということと、それから、現在の生活保護で貧しい人を救うという政策は必ずしもうまくいっていないんだということをお話しして、私の陳述を終えたいと思います。

 どうも大変ありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 次に、岩本公述人にお願いいたします。

岩本公述人 岩本愛吉と申します。

 私は、一九九四年から約二十年間、東京大学医科学研究所で、HIV、エイズを中心に感染症の診療と研究を担当してまいりました。二〇〇〇年にウガンダでエボラ出血熱の集団感染が発生した際、厚労省の要請によりスーダン国境に近い現地に出かけ、現在、世界の新型コロナ対策を取りまとめているWHOのマイク・ライアン博士の下で、エボラ病棟の経験をしました。これまでの感染症に関する経験を踏まえて、本日は新型コロナウイルス感染症と日本の対応について意見を述べさせていただきます。

 まず第一に、感染症情報とその共有の重要性についてお話しさせていただきます。

 一昨年十二月三十一日に中国武漢の当局者がWHOに肺炎の集団発生を報告し、昨年一月十五日に武漢への一時訪問者が国内の第一例の報告となりました。武漢滞在歴のない国内第一例は、一月二十八日に奈良県から報告されました。

 お手元の資料一を御覧ください。

 資料一では、日本の症例数を青い棒グラフで示しております。二月、三月と首都圏や和歌山県等から小さなクラスターが報告され、三月下旬から、通常第一波と呼ばれる急拡大が始まりました。この頃の国内報道はほとんどクルーズ船や国内流行に関わることであり、ヨーロッパ、特にイタリアの情報が取り上げられるようになったのは三月下旬頃だったと思います。折れ線グラフで示しますように、緑のイタリアが最も早く、次いで、フランスやドイツなど、ヨーロッパ各国で感染者が急増いたしました。グラフ右側の目盛りに示しますように、ヨーロッパの報告数は日本の十倍のスケールです。

 四月に発表された国立感染症研究所、感染研のデータによりますと、二月、三月の小クラスターは武漢由来で、三月下旬以降、国内で急拡大したのはヨーロッパ由来のウイルスでした。

 つまり、第一波以降の国内流行は、いわゆる卒業旅行に代表される春の旅行シーズンに日本人がヨーロッパから持ち帰ったウイルスによるものでした。WHO一辺倒の感染症情報ではなく、各国との情報共有が重要だという大きな教訓だと思います。

 第二は、遺伝子検査の重要性です。

 資料二を御覧ください。

 このグラフは片対数グラフで、昨年一月から今年二月までの国内週当たりの新規感染者報告数の推移を示しております。1から4までの四つのピークがありますけれども、感染研によれば、1が武漢由来のウイルス、2、3、4はヨーロッパ由来のウイルスが国内で流行したものです。2、3、4が通常言われる第一波から第三波の流行に当たります。ウイルスの由来は、ウイルスのゲノム、つまり遺伝子を解析し、他国の情報と比較することで可能となります。

 資料三を御覧ください。

 中学校の生物の授業のようで申し訳ありませんが、我々の体はたくさんの細胞で成り立っています。左上に示すように、細胞は、たんぱく質、核酸など多数の物質で作られています。一九四〇年代から五〇年代の研究で、核酸、中でも核にあるDNAが世代から世代へと遺伝形質を伝える物質で、DNAはA、G、C、Tという四つの暗号から成る情報分子だと分かりました。細胞の重要な機能を受け持つのはたんぱく質ですが、DNAの情報が直接翻訳されるのではなく、一旦RNAに受け継がれ、RNAを鋳型にして細胞質でたんぱく質が作られます。RNAも、A、G、C、Uというやはり四文字の暗号がつながった情報分子です。

 我々の体の細胞にはDNAとRNAという二種類の核酸が存在しますが、どちらか一方しか持っていないのがウイルスです。新型コロナウイルスはRNAだけを持つウイルスの仲間ですが、細胞に感染すると、細胞の持つたんぱく質翻訳機構を拝借して次世代のウイルスを作ります。DNAからDNAを複製するメカニズムは非常に正確ですが、DNAからRNA、あるいはコロナウイルスのようにRNAからRNAを読み取るステップは、読み違え、つまり、変異体ができやすいことが知られています。次々と世界のあちこちから新しい変異体が報告される現在、皆さんも肌で感じておられることと思います。

 図の右側に各種のワクチンの模式図を示しています。一番上が生ワクチン、次がウイルスを失活させた不活化ワクチン、三番目が一部分を使ったサブユニットワクチン、最後がRNAワクチンのイメージです。

 この一年の大きな進歩の一つは、RNAを使ったワクチンが開発されたことです。承認され、日本でも接種が始まりました。つまり、遺伝子情報さえあれば、ウイルスを増やさなくてもワクチンが作れる産業が生まれたことになります。

 第三は、科学技術を駆使する必要性です。

 資料四を御覧ください。

 感染症を予防するワクチンの開発は、一七九六年にジェンナーが作った種痘に始まるとされています。しかし、感染症の本体をつかまえるためには十九世紀末までかかりました。ウイルスという病原体が発見されたのは一八九二年で、インフルエンザウイルスが見つかったのは一九三三年です。

 歴史上、また世界中にはたくさんの感染症が存在しますが、出現するや否やあっという間に拡散し、経済や社会生活を破壊する可能性を持つのは、やはり呼吸器を感染経路とする感染症だと思います。

 インフルエンザウイルスの場合、二十世紀中に新型が三回出現し、二〇〇九年にもパンデミックを起こしました。コロナウイルスの場合、今回の新型コロナを含め、二十一世紀に入ってから既に三回新型が出現しております。パンデミックレベルの感染症はほかにもありますが、国の危機管理のためには、やはり呼吸器感染症に対応できることが最も重要だと思います。このような急性ウイルス性呼吸器感染症に対応するには、やはり科学技術の粋を結集する必要があります。

 冒頭に、情報共有が重要だというお話をしました。インターネットは多数の技術によって支えられていますが、その一つであるパケット通信技術は一九六〇年代に開発されました。昨年、米国はワープスピード作戦と名づけてワクチン開発を行いましたが、二十世紀半ば以降、それこそワープスピードで開発された技術として、コンピューターと遺伝子解析技術を挙げたいと思います。

 資料五を御覧ください。

 一九五〇年頃、計算機は手動で、世界一速い計算機はそろばんでした。一九八四年にマッキントッシュ、一九九五年にウィンドウズ95が販売されました。コンピューター技術が広く実用化され、我々一人一人が使えるようになったのです。現在、日本には、世界一の計算速度を誇る「富岳」があります。

 DNAが遺伝物質だと分かったのは一九五〇年代ですが、一九七七年にフレデリック・サンガーたちが遺伝子解析技術、いわゆるシークエンス技術を開発しました。DNAが暗号なら人のゲノムを解読しようと、一九五三年にDNAの構造を解いたジェームズ・ワトソンが提唱したヒトゲノム計画が一九九〇年に始まり、日本の研究者も大きな貢献をしました。一九八〇年代には、一日三百個程度の遺伝暗号を読むのがやっとでした。私はこの頃、実験室で実験しておりました。

 サンガー法が自動化され、さらには次世代シークエンス法と呼ばれる技術が開発され、遺伝子解読は超高速、まさにワープスピードでの開発となりました。その結果、価格もどんどん下がり、自分自身の遺伝子を私費で解読してもらうことも夢ではなくなりました。

 もう一度、前半に話を戻します。

 資料六を御覧ください。

 昨年一月二十九日、日本政府は、武漢在住邦人の帰国を支援するため、チャーター機の第一便を派遣しました。五回のミッションが敢行され、感染者が十五人いたものの、死亡者はなく、国内での流行にもつながりませんでした。民間航空会社、民間ホテルの協力を得た官民協力プロジェクトは成功でした。

 二月三日に感染者を乗せた大型クルーズ船が横浜港に帰港し、五日から厚労省が検疫を開始しました。検疫の性格上、国の仕事ということかもしれませんが、官、つまり役所だけの対応となりました。この辺りから様々な問題が噴出し、日本の問題点がいろいろ見えてきました。

 今日、特に申し上げたいのは、PCR検査、より広く言えば、核酸の情報を用いた検査の重要性です。自分も研究者の端くれでしたので、連日報道される日本のPCR検査能力のなさには唖然としました。国内の検査機関の状況を自分で確認するため、三月には大阪健康安全基盤研究所や民間検査会社の見学に参りました。市町村の保健所から持ち込まれる検体は手書きで、判読困難なものもあり、容器はばらばらで、検体受付に多大な時間を要していました。検体は生の鼻汁のままであって、採取した保健所の方が運搬しておりました。検体輸送にも大問題がありました。

 資料七を御覧ください。

 機関別に一日のPCR検査数を棒グラフで示したものです。件数は左側に示されています。陽性者報告数は青い折れ線グラフで示し、右側に件数を示しています。昨年二月十八日から本年二月十四日までの経過を示しています。

 昨年三月中旬までは公的な検査機関が中心で、検査数が伸びませんでした。保険適用が決定され、三月二十五日に検査価格が決まったことにより、ピンクで示します民間検査機関が参入し、次第に半分以上をカバーするようになりました。昨年夏頃から、オレンジ色で示した医療機関も検査件数を伸ばしています。検疫所は次第に検査数を増加させ、七月頃には一日千件から千五百件程度のPCR検査をこなしておりましたが、七月二十九日から抗原定量検査を行うようになり、PCR検査はほとんど実施されなくなりました。地方衛生研究所、地衛研や保健所は、本年一月のピーク時には一万件を超えるPCR検査を実施しています。大手の民間検査機関は大都市に集中していることから、地方において必要性が高いのだろうと推定されます。一方、感染研は、四月のピーク時に四百件を超えたのが精いっぱいで、夏以降はほとんど貢献できていません。

 以上から、官民協力によって日本のPCR検査は一日最大十万件程度の能力を発揮していますが、公的な機関の検査力は昨年一年間にさほど強化されなかったと言えると思います。民間検査機関や医療機関のパフォーマンスはすばらしいものの、いまだに検査数と陽性者数が連動して動いています。保健所をネットワークでつなぐHER―SYSというシステムが運用を開始しましたが、各PCR検査機関から保健所への検査報告を取りまとめる機能を持つかどうかも不明です。

 厚労省のホームページによれば、本年二月十八日現在、新型コロナ用の体外診断用医薬品、いわゆる検査キットとして承認されている品目は、核酸増幅法二十四件、抗原検査法十四件となっています。たくさんそろったといえばそれまでですが、規格が決められているわけでもなく、デファクトスタンダードと言えるような突出した検査法もありません。

 緊急事態ゆえに、海外の大型汎用の自動検査装置も多数輸入されたはずですが、パンデミックが進行し、主要な国々で流行が拡大した今回、試薬や消耗品が逼迫し、輸入できず、機器が使えないという状況が発生したことを耳にします。

 機器も消耗品も国産化を進めるべきですが、規格化が進まない限り、ロボット機器、他領域で業績を上げている優れた国内企業の参入は望めないと思います。少子高齢化の進む日本の危機対応インフラとしては、ロボットや通信技術の粋を集め、保健所や検査機関、医療機関の優れた、しかも細やかなヒューマンパワーと連動させるべきではないでしょうか。

 第四で、地域ブロックで流行を把握する重要性について述べたいと思います。

 資料八を御覧ください。

 昨年八月頃までは、東京と大阪など、大都市の流行状況がクローズアップされましたが、十二月以降は、特に首都圏や関西圏での地域的な流行状況の連動がより明らかとなってきました。日本は南北に長く、北海道や九州地域には、東京や大阪を経由しない海外からの観光客も多数存在します。東京一極ではなく、地域ブロックで保健所機能や地衛研機能を集約するセンターが必要ではないかと思います。少なくとも首都圏や関西圏には、今回明らかとなったように、大型クルーズ船に対応できる機動的かつ大量検査に堪えられる備えが必要ではないでしょうか。

 英国では、二〇一三年に、当時の保健省の下にゲノミクス・イングランド社を設立し、全国十か所以上のヒトゲノム解析センターを展開し、ヒトゲノム情報を保健医療に活用する事業を展開しています。新型コロナにおいてもこのゲノミクス・イングランド社が大活躍し、大量のウイルスゲノムを解析し、変異ウイルスの流行状況などを世界に発信しています。

 ウイルスゲノムの解析が感染研に一極集中し、有力なゲノム解析能力をほとんど使えていないのが日本の状況です。ヒトゲノムは三十億個の巨大暗号ですが、新型コロナはたかだか三万個の暗号から成っています。ウイルスは、小さいですけれども、変異を繰り返します。しかも、今後のパンデミック対策も考えるとなると、病原体ゲノムは、飛来する無数の飛行機と対抗するようなものだと思います。情報戦だと言っていいと思います。強力な遺伝子解析能力が必要ですが、日本は持てる力を発揮していません。ヒトゲノムの研究とウイルスゲノムの研究、それぞれがお互いのタコつぼに入って、ほとんど交流のなかったのがこれまでの日本です。

 第五番目として、感染研について申し上げます。

 資料九を御覧ください。手短に感染研の歴史を説明します。

 感染研のルーツは、北里柴三郎博士がドイツから帰国した際、福沢諭吉翁の支援で創立された伝染病研究所です。伝研と略します。当初、私立衛生会附属でしたが、内務省、文部省、東京大学と移管され、第二次世界大戦前は日本最大の感染症研究所でした。最盛期には、感染症の基礎や治療法の研究を行うとともに、治療血清やワクチンの製造、検定、認可、販売まで事業範囲は広がったようです。そのため、一九四七年に分割され、一方が東京大学に残り、もう一方が国立予防衛生研究所、略称予研となりました。

 予研の当初の設置目的は、感染症に関わる基礎、応用研究と、抗生物質やワクチン等の開発及び国家検定でした。米国のFDAをイメージしていたのかもしれませんが、英語名はナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルス、NIHになりました。白金台から上大崎に移転した後、一九九二年に戸山キャンパスに移転しました。この頃には、グローバルに新興感染症が問題となって、米国CDCのような研究所へ進化する目的で、一九九七年に感染研へと改名されました。

 現在、感染研のホームページを見ると、感染研のミッションは、研究、レファレンス、サーベイランス、国家検定、国際協力、研修、アウトリーチと極めて多彩です。脇田所長の個人的な奮闘に敬意を払いつつも、研究所としての焦点が拡散し過ぎたのかもしれません。

 資料十を御覧ください。

 その他になりますが、法整備、公衆衛生と医療、行政、国民皆保険制度と研究開発を挙げました。いずれも私の能力を超えるトピックです。一つ一つゆっくり説明する時間はありませんが、申し上げたいことは、最大多数の最大幸福を求める公衆衛生と、患者さん一人の命に責任を持つ医療とは異質のものだということです。公衆衛生のために、水際対策は極めて重要です。しかし、急性呼吸器感染症の場合、一度国内で発症者が出れば、公衆衛生と医療の橋渡しや連携がとても大切になってきます。

 二〇〇九年のパンデミックインフルエンザでも同様のことが起こったわけですが、国内の拡散が非常に速かった。インフルエンザウイルスの場合、診断キットも治療薬もあったわけです。しかし、新型コロナは違います。次のパンデミックを想定すると、しっかりした議論の上で、可能な限り法律に書いておくことが必要だろうと思います。

 今後、お話しできなかったこともきっと出てくるだろうと思います。国民の皆さんが一丸となって立ち向かい続けることを念じます。

 ありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 次に、逢見公述人にお願いいたします。

逢見公述人 ただいま御指名いただきました連合の逢見でございます。

 本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝申し上げます。

 私ごとですが、私自身はこれまで予算委員会公聴会には衆議院で六回、参議院で一回お招きをいただきました。今回は八回目の発言となりますが、公述人としての発言は最後の機会となりますので、万感の思いを込めて意見陳述をさせていただきます。

 私からは、コロナ禍で求められる各種施策や、ウィズ、アフターコロナの時代で目指すべき社会像を中心に、働く者の立場から見た我が国の経済社会における課題と取るべき政策について申し述べます。

 私たち連合は、全ての働く仲間が将来に希望を持って働き、安心して暮らしていけるように、私たちの未来を、次の世代に続く持続可能な社会、互いに認め、支え合い、誰一人取り残されることのない包摂的な社会に変えていくことを目指しております。

 お手元のスライドの二枚目を御覧ください。

 これらの考え方をまとめた連合ビジョンについては昨年の公聴会でも御説明させていただきましたが、今回のコロナ禍は、連合ビジョンでも指摘してきた不安定雇用や格差、人口減少に伴う社会保障、財政、地域の持続可能性などの課題を顕在化させました。

 まずは、全ての人の雇用と生活を守るための対策が急務であり、また、中小規模事業者への事業継続支援などが必要です。さらには、デジタルトランスフォーメーションを前提とした社会の構造変革を促すための対策を講じていく必要があります。

 社会に蔓延する様々な不安を解消し、経済の自律的かつ持続的な成長を取り戻すためには、今まさに連合が目指す、セーフティーネットが組み込まれている活力あふれる参加型社会、誰一人取り残されることのない社会を実現することが不可欠であり、それはSDGsの理念そのものであります。

 そのような社会の根底には、自由と民主主義の普遍的原理、そして人権の尊重が貫かれていなければなりません。しかし、国内外で憂慮すべき事態も起きています。

 先日、ミャンマーで起きた軍事クーデターの暴挙に対しては、各国政府、労働組合からも多くの非難と抗議の声が寄せられています。政府には、ミャンマーにおける民主主義、人権、労働組合権を保護する対応を取っていただきたいと思います。

 また、国内では、コロナ禍における様々な差別が問題となっています。

 そうした中、オリンピック・パラリンピック組織委員会の森前会長による女性差別発言が世界に発信されました。この問題は森氏の辞任によって終わるものではなく、性差別を含むあらゆる差別をなくして多様性のある社会をつくる行動をオール・ジャパンとして起こしてこそ、信頼を回復する唯一の道であると思います。

 スライド三枚目を御覧ください。

 この左側がオリンピック憲章、そして右側にILO百十一号条約を記載してあります。一見して明らかなように、ほぼ同じ文章と言ってよく、これが国際社会における差別禁止のスタンダードと言えると思います。

 ILO百十一号条約は一九五八年に採択されたもので、百七十五か国が既に批准しているにもかかわらず、いまだ日本は未批准であり、周回遅れのランナーと言える状況です。

 加えて、スライド四枚目に記載のとおり、昨年十月に政府が取りまとめたビジネスと人権に関する国別行動計画を踏まえ、国際社会に日本が人権を重視しているということを示す観点から、ILO百五号条約についても早期の批准を求めたいと思います。

 次に、コロナ禍における雇用対策について述べたいと思います。

 スライド五枚目から七枚目を御覧ください。

 雇用維持に向けた休業や在籍出向を担っている雇用調整助成金は雇用保険二事業から支出されていますが、その二事業の財源が底をつき、本来は失業保険の給付などのために労使折半で拠出した積立金から融通してしのいでいる状態です。

 同様に、新たな在籍出向の枠組みである産業雇用安定助成金も雇用保険二事業を財源としており、この財源が確保できなければ、休業に代わって在籍出向させることも困難となる可能性があります。

 既に、借入先である雇用安定資金及び積立金の残高は急激に減少しており、今後、仮に失業者が増加した場合に備えられるかどうかが問題になります。借入額は二〇二〇年末時点の試算で一兆七千億に達する見込みと聞いており、労使の積立金も二〇二一年に底をつく可能性も指摘されています。

 この雇用保険財政については、政府として支出すべきである国庫負担率は本則二五%となっているところ、時限措置とはいえ、現在は二・五%にとどまっています。六ページの下の数字です。早期にこれを本則どおりに戻すとともに、非常事態であることから、雇用保険会計に対して一般会計の予備費を投入すべきと考えます。

 今後、現下の新型コロナウイルス対策をどこまで継続することになるかは不透明でありますが、雇用の維持と、失業者を増やさないことについては、政府としても十分な予算措置をした上で取り組んでいただきたいと思います。

 コロナ禍の中で、これ以上の保険料の負担増は労使共に対応できないことも申し添えておきます。

 また、地域ごとの雇用者数を維持、拡充する観点から、地域における新たな雇用創出も不可欠です。仮に失業などになった場合、この地域で雇用が見つからなければ、転居を伴う移動を強いられる労働者も出ることになり、特定地域の過疎化が進みかねません。

 もちろん、地域において新たな産業を興し労働者を雇用するまでにはそれなりの時間を要するため、例えばグリーン化や防災など、既に政府として取り組んでいる地域に必要な施策を一時的に強化する方向で雇用創出の検討を進めていく必要があります。

 次に、コロナ禍における生活対策です。

 新型コロナウイルス感染症の第三波は収束に向かいつつあるというふうに認識をしておりますが、ここで国として力点を置くべきことは、第一に、ワクチン接種体制の確保と国民に対する正確な情報提供、第二に、機動的な生活支援の提供、第三に、疲弊する医療、福祉、介護従事者に対する支援の実施と考えます。

 まず、ワクチン接種ですが、更なる感染拡大を引き起こさず、人々が安心して暮らし、経済活動にも力を入れていくためには、感染拡大が落ち着いている状況で、できる限り広くワクチンが接種されることが重要と考えます。政府も尽力されていると理解していますが、引き続き、可能な限り早く、十分な量の確保に努めていただきたいと思います。

 また、接種体制の整備について、接種会場までの移動が困難な住民を含めて、希望者が確実に接種を受けられるよう、国が責任を持って支援していただくことをお願いします。在宅サービスを含め、介護従事者に対する接種もできるだけ早く行われるよう求めます。

 あわせて、副反応情報等が迅速かつ確実に収集され、国民に提供される体制を講じられるようお願いします。また、ワクチン非接種者等に対する差別や偏見を防止する対策を講じていただくことや、接種を希望しない労働者に対する不利益取扱いがないようにすることなど、丁寧な対応をお願いします。

 二つ目に、生活支援ですが、生活に困窮する労働者は増加しており、雇用の確保とともに、生活支援の強化は不可欠です。生活困窮者自立支援制度における住宅確保給付金の再申請や、生活保護申請における親族照会の弾力的扱いなど、政府に対応いただいていることは極めて重要です。

 こうした取扱いが各自治体に徹底され、確実に実施されるよう、十分な財源の確保を求めます。

 三つ目の医療、福祉、介護従事者支援ですが、こうした従事者は、長期にわたる感染対策の強化、患者、利用者への対応、収入の低下、いわれなき誹謗中傷などにより積み重なる肉体的、精神的負担で疲弊しています。

 連合が昨年八月に介護事業所の労働組合に行った調査結果では、人材確保への悪影響が出ています。診療報酬などの特例や、介護報酬、介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱い、医療従事者、介護・障害福祉従事者への慰労金の給付などを行っていることは、必要な政策と認識しています。

 介護・障害報酬は二〇二一年度もプラス改定とされますが、人材確保に支障を来さぬよう、現場の従事者に報いるよう、確実に処遇改善を進めていくようお願いをいたします。

 次に、財政の基盤となる税制について触れたいと思います。

 今回の税制改革関連法案は、法人税の繰越欠損金控除上限の引上げなどコロナ禍への対応として必要となる措置や、次世代産業の育成支援に向けた新たな税制が盛り込まれる一方、喫緊の課題である、格差是正に向けた所得再分配機能の強化や、持続可能で包摂的な社会保障制度の構築に必要な安定財源の確保に向けた改革の全体像は示されていません。

 国民の暮らしと将来の希望を確かなものにし、社会の安定と持続的成長を確保するため、税制の抜本改革に向けた議論を一刻も早く行うことを求めます。

 具体的に三点申し上げます。スライドの八枚目を御覧ください。

 一点目は、所得再分配機能の強化についてです。

 コロナ禍により貧困の固定化と格差の拡大が一層進み、所得構造が二極化しています。その解消に向け、他の先進国との比較において決して高いとは言えない税の所得再分配機能を強化すべきであります。特に、金融所得課税の強化については、近年の税制改正大綱で毎年検討課題とされながらも、改革は見送られています。所得再分配機能の強化に向けた重要課題であり、早期に結論を出すべきです。

 二点目は、将来に向けた安定財源確保についてです。

 現行制度を前提とした場合、社会保障給付費は二〇四〇年時点で約百九十兆円必要になると言われています。安心社会の実現に向け、各種制度を維持、充実させていくためには、この推計を上回る費用がより早い時点で必要になります。社会保障の安定財源と位置づけられている消費税の在り方を含め、財源調達機能の強化を念頭に置いた税制全体の抜本解決は不可避であり、与党、野党にかかわらず、国会全体での徹底した論議を望みます。

 三点目は、中長期的な財政運営についてです。

 コロナ対策として各分野において積極的な財政措置が取られていますが、これらの影響や検証も含め、今後、政府の計画の監視、評価、税財政のバランスを含めた中長期的な財政運営の客観的評価と分析を行う内閣から独立した機関、独立財政機関の設置は、これを機に検討すべきであり、将来世代に対する責任でもあると考えます。

 次に、目下社会的要請であるデジタル変革への対応とグリーンリカバリーの推進について述べたいと思います。

 今回のコロナ危機では、オンラインによる行政、診療、学校授業など、我が国のデジタル活用の遅れが明白になり、事業再建、生活再建に多大な影響を及ぼしました。経済社会のデジタル化のための環境整備を積極的に支援することで、生産性や利用者の利便性を高めることはもとより、非常時にも対応可能なインフラを構築し、経済産業構造の変革と持続可能な社会へとつなげていく必要があります。

 同時に、デジタル化の加速は、年齢、性別、障害の有無、雇用形態、所得の大小などにかかわらず、あらゆる層が暮らしの質の向上などの恩恵を受けられるよう、デジタルデバイドをなくすことが重要です。

 コロナ禍は、テレワークの増加を始め、新たな日常に対応するための事業環境、就業環境の変化を私たちに迫りました。分散型オフィスやワーケーションなど東京一極集中の解消や地方創生の視点も併せ持ち、適切な労働時間管理の下、多様な人が働きやすい環境づくりを継続的に支援していくことが求められています。

 また、コロナ禍で困窮した世帯へ迅速に支援金を届けることができなかった反省を踏まえ、感染症拡大などの緊急事態においてマイナンバーを利用できるよう利用範囲の拡大を法制化するなど、国民生活を守るセーフティーネットの仕組みを構築していくことが喫緊の課題です。

 また、欧米諸国において給付つき税額控除のインフラがコロナ禍対策として迅速な給付、所得に応じた給付に有用であったことを踏まえ、日本でも、マイナンバー制度を活用した税情報と社会保障給付を連携させ一体的に運営するプッシュ型の支援制度として、給付つき税額控除の制度設計を加速させることが必要です。

 その実現の前提として、マイナンバーと全ての預貯金口座のひもつけが求められ、それにより、正確な所得捕捉と、真に必要とする者に的を絞った支援につなげる必要があります。

 さらに、デジタル行政の実現に向けては、公的個人認証に必要であるマイナンバーカードの一層の普及促進に向けた取組が重要です。カードを活用した納税手続の簡素化等とともに、災害時において被災者の避難状況を正確に把握できることから、自治体に避難所の入退所管理での利用を促すなど、活用の取組を進めていただきたいと思います。

 世界に目を転じると、コロナ禍を契機に脱炭素社会に向けた動きが加速しています。政府が掲げる二〇五〇年を目標としたカーボンニュートラルの実現に向けては、SDGsの理念に基づいたグリーンリカバリーを官民一体で推進することが重要となります。同時に、エネルギー移行による産業構造の転換に伴う経済社会、雇用への負のインパクトを最小化するため、労働者を含む関係当事者との積極的な社会対話を行い、公正な移行を確保することを忘れてはなりません。

 次に、国民生活の基盤である社会保障について述べたいと思います。

 今回のコロナ禍で、医療、福祉、介護などの社会保障が私たちの暮らしにとって安心の基盤であることが改めて確認されました。生活困窮者支援や生活保護といった社会的セーフティーネットの重要性も広く理解されるに至ったと思います。

 しかし、今後、コロナの収束が実現すれば、社会保障に対する財政的な締めつけが厳しくなっていくことを心配します。社会保障は、家族や地域、職域のセーフティーネットが弱体化する中で、今後一層重要な役割を果たすことになります。しかし、人口減少、少子高齢化の流れは感染拡大以前と変わらず続いており、社会保障制度を将来にわたって持続させていく努力も必要です。

 政府は全世代型社会保障制度を進めていますが、連合も、年齢から負担能力に応じた負担への転換が進められるべきと考えています。年齢にかかわらず必要な支援が行われるべきですし、雇用機会に恵まれず生活不安にさいなまれる人々への支援は急務です。また、こうした人が多い世代が高齢期を迎える前に、社会保険の適用拡大を強力に進めておくことも極めて重要です。

 また、出生者数の減少が各国で見られ、これらがコロナの影響との見方もされています。社会保障制度の持続可能性の確保という観点からは、次世代育成支援対策の強化が重要です。

 そのような中、児童手当の特例給付の一部廃止を含む子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案が国会に提出されています。施行は令和四年十月支給分からということで、来年度予算には関係ないところではありますが、この間、希望出生率一・八を目標に政策を進めてきたところであり、特例給付の廃止はこうした政策にも逆行しかねず、再考を求めたいと思います。

 他方で、今回の予算案において、公立小学校の学級定員を三十五人以下に段階的に引き下げる措置が盛り込まれたことは評価したいと思います。その上で、教員が一人一人の子供と向き合う時間を確保し、きめ細かな教育を行うためには、部活動の学校から地域への移行、ICT支援員の配置、専科教員を始めとする学級担任外教員やスクールスタッフなどの拡充の推進を求めたいと思います。

 次に、雇用の安定と公正労働条件の確保について述べます。

 昨年来のコロナ禍においては、業務委託や請負といった、雇用契約ではない契約形態で働く人々のセーフティーネットの脆弱性が明らかになりました。特に近年は、IT化等の推進により、雇用労働に近い働き方をしているにもかかわらず、いわゆる雇用契約ではないということから、労働関係法令の保護を受けられない事態が深刻化しています。

 政府においては、フリーランスとして働く人々への相談窓口を弁護士会の協力を得て設置しておりますが、相談体制を一層充実していただくとともに、労働者概念の見直しについても喫緊の課題として早急に取り組んでいただきたいと思います。

 外国人労働者の就労支援に関しては、新型コロナウイルス感染症により解雇等された外国人労働者に対する在留資格、特定活動の付与など、政府において積極的に御対応いただいているものと認識しております。

 一方、日本語及び労働関係法令の理解が十分でないために、突然の解雇や技能実習の中止等の場合において、本来守られるべき権利が十分に守られていない実態があります。連合でも、先般、外国人労働者を対象とした集中労働相談を実施したところですが、コロナ禍における雇用不安や、事業主の不適切対応、ハラスメントや差別などに関する相談が寄せられており、更なる対策の強化が求められます。総合支援のための窓口の周知、地方における相談体制の充実、そして労働法令違反に対しての厳正な対処をお願いします。

 最後になりますが、今回のコロナ禍を通じて、個人の力ではヘッジし切れない生活上のリスクが多く存在することが明らかになりました。これは自助努力ではいかんともし難いものであり、この問題を放置すると、社会の不安を増大させ、分断を招くことになりかねません。社会の安定か分断か、私たちはその岐路にあると言えます。

 我が国が正しい道を選択されることを切に願って、私の発言とします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高村正大君。

高村委員 自由民主党の高村正大です。

 公述人の先生方、本当に、今日はお忙しい中、またコロナ禍の中でなかなか外に出づらいこういった中、国会まで来ていただきまして、貴重な意見をお伺いすることができました。本当に参考になりました。勉強になりました。ありがとうございます。

 十五分という短い持ち時間の中なので、早速質問の方に入らせていただきたいと思います。

 まず最初に、岩本先生にお伺いしたいんですが、先生の最後のおまとめの中で、公衆衛生から医療への移行の悪さということをおっしゃっておりました。なかなか日本では、公衆衛生を前面に出して、強制力を持った対応というのは難しいんだ、こういうふうに思っております。一方で、我々人類というのは、過去いろいろな疫病が起こっていますが、これらを基本的には克服してきたんだと思っております。

 ゼロコロナというようなことはあり得ないんだと思いますが、ウィズコロナという面で、先生は、このコロナの終息について、医学的な見地から、どれぐらい期間がかかるんだとお考えでしょうか。あるいは、強制力、公衆衛生を前面に出した場合、それがかなり早まる、そういったことがあるんでしょうか。その辺について教えていただければと思います。

岩本公述人 どうも御質問ありがとうございました。

 一点申し上げたいのは、日本は、今日、北里柴三郎博士のことを申し上げましたけれども、最初に微生物学というのが日本に入ってきたために、その前に実は衛生学ということで、病原体は分からないけれども、例えばコレラであって、それを上下水道をきちんとしていくとコレラが防御できるというのは、イギリスでも行われましたし、ドイツなんかでも行われたわけです。それを飛び越えて微生物に、日本は輸入して学問が進みましたので、こういう問題があるとすぐに微生物に行こうとして、そちらに行く基礎の研究者。

 それから、ちょうど日本がその後、一九五〇年代にすごく感染症自体は国の中で減りましたので、そういうことになると、なかなかその時代に公衆衛生が、いろいろ大事になってきたんですけれども、主に公害問題であるとかほかの問題であったので、やはりコロナとかこういう海外から来るような感染症に対する公衆衛生対策というのは何なんだというのが、余り経験がないのが現実であります。

 だから、そのことは新しく構築していかないといけないと思います。

 今度のコロナウイルスと、もう一つは、自然界にはいろいろな、今度のはコウモリから来たというふうにありますので、コロナというのは恐らくいつ新しいコロナが、恐らくコウモリはいろいろな種類を持っていると思いますのでそういうものはあり得るわけですけれども、ウイルスは変異を繰り返しますが、時々は病原性も強くなるかもしれませんが、基本的には、人間の社会に適応して、うつりやすい、その代わり人間を痛めにくいようなウイルスに変わっていくのが本来の性質ですので、やはりその間できるだけ、それがいつになるかというのは難しい点があります。やはり数年とかそういうオーダー以上にはかかるかもしれませんけれども、そういうことを新しい日本の中でつくっていかないと、今までの参考になるものはなかなかないというのが現状だと思います。長くなって済みません。

    〔委員長退席、山際委員長代理着席〕

高村委員 岩本先生、ありがとうございました。

 続きまして、小峰先生に伺いたいと思います。日本の財政の健全化、こういった観点からになります。

 コロナ対策の名目で、野党だけでなく、自民党、与党の中の一部からも、消費税の減税、あるいは消費税なんかなくしてしまえ、こういったような議論が出ていることもあります。また、MMT理論、これのいいとこ取りをして、平時から際限なく財政支出をすればいいんだ、こういった議論をされている方もいらっしゃいます。

 今、新型コロナウイルスの危機に対して十分な財政出動をできるのは、少なくとも、今まで日本の政府が財政健全化に向けたこういった努力をしてきたからこういうことができるんだと私は思っております。そして、現在の新型コロナウイルスの状況を考えると、今年度の予算あるいは補正予算で行っている、又は来年度の予算で今審議いただいている行おうとしている相応の財政出動というのは、不可欠なものだと考えております。

 一方で、際限なく過度の財政支出を続けることはできませんし、過去の経験からいっても、我々は必ずこの新型コロナを克服して、そして、過去の例を見て、感染症を克服した後というのは経済がV字回復する、こういうことが歴史的にも多いように思っております。民間がしっかりと動き出したら政府は財政出動を少しずつ減らしていく、それが将来の世代への負担を減らせることにつながっていくんだと思っております。

 現在の新型コロナウイルス克服後の財政再建について先生がどのように考えていらっしゃるか、これについての御所見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

小峰公述人 どうも御質問をありがとうございます。

 大変難しい問題ですが、私も含めて多くの経済学者というのは、現在のような状況の中で相応の財政支出に頼らざるを得ないということは、これは当然だというふうに考えておりますが、一方で、中長期的に見て、いつまでも非常に大きな財政赤字を続けるというのは、それこそサステーナブルでないというふうに考えて、いずれ財政再建がどうしても必要になるというのが多くの経済学者の意見で、私もそのように考えております。

 こういった中で、負担は、これもかなり多くの経済学者は、負担を求めるとすれば、やはり消費税が中心にならざるを得ないというふうに考えるのが多くの意見でありまして、これはよく考えますと、消費税というのはお金をたくさん使った人から取るわけですから、ある意味で、負担能力に見合った負担を、所得税と似たようなところがあるわけですね。

 そうしますと、今、消費税を下げるとか廃止するという提案が出ていますけれども、これは逆に言うと、今たくさんお金を使って消費税をたくさん払っている人ほど得をするということになりますので、ちょっと余り適当な政策ではないんじゃないか。国民の負担を軽減するという意味で、むしろ、逆進性があるといいますか、所得の高い人を優遇してしまうということで、私は支持できません。

 いずれ財政再建が必要だというのに対して、それはオオカミ少年の議論であって、いつまでたってもその危機なんて来ないじゃないかという意見がありまして、財政再建が必要だと言う人が、じゃ、いつになったら危機があって、その危機はどういう形態を取るんだというのを言えと言われても、それはなかなか難しい。しかし、言うのが難しいからといって、そういう危機が来ないというわけではない。それは多分来ないだろうと思うのは相当リスクがあるというふうに私は考えておりますので、これは、ある段階で、長期的な観点から、少しずつプライマリーバランスの均衡とか累積政府債務のGDP比率を下げていくという方向にかじを切っていくことが必要だと。

 MMT等で、日本の国内貯蓄がこれだけあるんだから、又は経常収支が黒字であるから大丈夫だという人もいるんですけれども、これは恐らく金融政策がゼロ金利をずっと続けているということに助けられている面がありますので、こういった好都合な状況がいつまでも続くわけではないということも考えておく必要があると思います。

高村委員 ありがとうございます。

 続きまして、もう一問、小峰先生に伺いたいと思います。

 GoToトラベル事業に関して、かなり先生の御意見に批判的な人間がここに多いんじゃないか、こういったことをおっしゃっておりましたが、コロナ禍であってもやはり我々は生きていくために経済活動をしていかなければならない、このように考えます。感染症は抑えられたが多くの国民が餓死をした、あるいは経済的な困窮で自殺せざるを得ない、こういったことでは意味がないんだと思います。

 小峰先生、コロナ禍の中で国民が生きていくための経済活動を政府はどのように応援していくべきだと考えられますか。ターゲット、あるいは行う時期、こういうのも含めて御所見をいただければと思います。

小峰公述人 これもなかなか具体的に申し上げるのは難しい問題だと思いますけれども、GoToトラベルに関しては、私が申し上げたいのは、旅行業者が非常に困窮している、非常に厳しい状況に陥っているということは間違いのない事実で、それを放置しておくと、それが長期的な傷として残ってしまうということもあるかもしれないということですから。ただ、救済するとすれば、旅行業者の需要を増やすことによって救済するというやり方がコロナ危機においては難しい。したがって、直接所得を補償するという方がまだいいんじゃないかというのが私の考えです。

 そういったように、なるべくターゲットを絞り込んで、本当に所得水準が従来の所得水準より大きく落ちたり、また、事業実績が大きく損なわれるというところを絞り込んで、それをどうやって絞り込むんだ、言えと言われると、私もそんな詳しく制度設計はできないんですけれども、それが基本になるのではないかというふうに思います。

高村委員 ありがとうございます。

 私も、いろいろ批判があるかと思いますが、このGoToトラベル事業もやはり多くの、裾野の広い産業でありますから、これをしっかりと応援していくことは絶対必要だと思っております。

 もう一問、先生にお伺いしたいと思います。

 先生の資料の中に、今回のコロナ危機をきっかけに、なかなか進まなかった改革が一気に進む可能性がある、こういうのがございました。

 現在、菅内閣におきましても、河野行革担当大臣が先頭に立って、無駄の排除、あるいは平井デジタル担当大臣の下、行政のデジタル化等が進められています。

 歴史を振り返りますと、明治維新、戦後の復興、いずれも外圧によって日本が大きく成長するきっかけになった、こういう側面があることも否定できないんだと思っております。そして、今回のこの新型コロナによる危機も、ある意味で海外からもたらされたものです。この危機を克服した後の日本経済について、できれば明るい見通しについて御所見をいただければと思います。お願いいたします。

小峰公述人 これも結構難しい注文のような気がするんですが。

 これまでも多くの経済学者が、例えば働き方を変えて、もっと労働移動を弾力化して生産性の高い分野に人が流れていくことが必要だということに対して、なかなか終身雇用的な慣行があってそれを崩すのは難しいんじゃないかという考え方があった。

 それが今回の働き方改革で図らずもその実現に向かっているんじゃないかというようなこととか、さっきのデジタル化も、コロナ危機の中で感染者情報を保健所からファクスで送っているというようなちょっと信じ難いような話が出てきて、いかにデジタル化が遅れているかというのが改めてよく分かったということですので、これを機会に各方面でデジタル化が進んでおりますし、民間でも、テレワークをやってみたら、結構やはりインフラのところが十分整備されていなかったとか、そういったところがあって、これも大分整備が進んでおりますので、そういったデジタル化を中心にした生産性の上昇というのが更に進んでいけば、これは日本の成長力という点で大きなプラスになると思いますので、是非そういった点をこれから前向きに推し進めていっていただきたいと思います。

高村委員 多分ぼちぼち時間だと思いますので、本当は原田先生にベーシックインカムについてのお話をもう少し伺いたいという思いもあったんですけれども。僕自身、ベーシックインカムというのはすごく難しい問題だと思っていたんですけれども、今日先生のお話を聞いて、早速先生の本を買って是非読んでみたいな、こういうふうに思いました。

 また、済みません、逢見先生、質問ができなくて大変申し訳ございませんでした。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

    〔山際委員長代理退席、委員長着席〕

金田委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 四人の公述の先生方、貴重な御意見をいただきまして、私からも感謝を申し上げます。

 十五分でございます。早速に質問に入らせていただきますが、小峰公述人に、冒頭、一問お伺いいたします。

 先ほど先生の方で、いわゆるGDPギャップに着目したような、そういった規模の経済対策というのは余りよくないんじゃないかというお話がございました。実は、政府が十二月十八日にまとめた新たな経済対策は、GDPギャップが六パーか七パーあるということで、それに沿ったものでございました。規模は規模として、中身が大事になってくるわけでございます。

 そこで、ただ、一つ、海外との規模感で比べたときに、アメリカは二百兆円規模の中小企業を中心とした対策を打つという報道がございます。アメリカのGDPは約二千兆円、十分の一の割合です。

 リーマン・ショックのときを思い出しますと、これは通貨供給量の話になるんですが、日本はやはり、あのときなかなか市中に通貨が出ずに、欧米諸国は約二倍の通貨供給量を誇った中、日本はなかなか、一・二倍しか供給量を出せずに、円高になったという要因も指摘されております。

 ですので、当然、日本独自のGDPギャップに着目するというよりも、海外でこれだけの規模の経済対策をやる中において、やはり日本経済も世界と連動している部分があると思います。そういった観点から、経済対策の規模というものを考えるべきではないかと私は思うわけでございますが、その辺りについて先生の御見解をいただければと思います。

小峰公述人 御質問ありがとうございます。

 今のGDPギャップのような指標に着目して財政の歳出を決めるのはどうかなという議論と、それからGDPの規模、GDPとの対比において国際比較をするという議論は、ちょっと似ているところがありまして、GDPギャップは、若干初歩的なミスがあったんじゃないかと思うんですが、GDPギャップは年率ですので、四倍した数字なんですよね。それから、GDPギャップは実質ですから、名目じゃないとか、いろいろな、ちょっと基礎的なところでそもそも対応しない。どういう政策が必要か、景気対策と対応しないというところがあってというのを、細かいところでいえばそういう問題があるんです。

 私は陳述のときにも申し上げましたが、GDPが大きく落ち込んだ、又はギャップが大きいというのは、それはそれで経済の大きな問題だというのは間違いないと思うんですけれども、これを財政の景気対策でどれだけ回復していったらいいのかという考え方をするときに、コロナ危機におけるGDPの落ち込みというのと、通常の、例えば輸出が落ちてGDPが落ちたとか、そういう落ち込みというのは、ちょっと性質が違うんじゃないかというふうに考えております。したがって、従来の景気対策ですと、やはりこれぐらいの規模をやってGDPにこれぐらいの効果があるんだという需要刺激型のものになるんですけれども、そういう発想はやや難しい局面なのではないかということです。

 したがって、私自身は、国際比較をするときに、ほかの国はGDPに比べて財政出動が何%だ、日本は何%だということで、お互いに規模感を何となく見て、これは非常に分かりやすいのでそうしたい気持ちは分かるんですけれども、こういう状況においては、やはり必要な救済措置を積み上げていったらこれだけの規模になりましたというのが本来のあるべき考え方であって、最初にこれぐらいの規模があった方がいいんじゃないかということから中身を決めていくというのは、ちょっと逆転しているんじゃないかというのが私の考え方です。

浜地委員 御所見ありがとうございます。

 続きまして、岩本公述人にお聞きをしたいと思います。

 先生、大変な権威でございますので、今からの質問がかなり幼稚でございます。御容赦いただければと思います。

 基本的なところから、先ほど先生のお話の中で、変異株は、基本的には、感染力は高いけれども、弱毒化、余り強い、そういった症状が出ないのではないかというような御所見もあったところでございます。日本はこういった、いわゆるウイルス性の呼吸器系の感染症、なかなか経験をしておりません。ただ、SARS、MERSは、日本には大きく蔓延はしなかったわけでございます。一つの、今後のコロナウイルスの終えんに向けての参考になる部分が、まず、そもそもあるのかどうか。ただ、蔓延の規模が違いますので、コロナウイルス特有のものがあると思いますけれども、実際には、SARS、MERSはしっかりと終えんをしてきたわけでございます。

 こういった他のこれまで人類が克服してきた感染症の対策において、このコロナウイルス、参考になる点、ひいて言えば、終息に向かっての道筋ですね、そういったものがございましたら、まず、先生に御所見をいただきたいと思います。

岩本公述人 御質問ありがとうございました。

 コロナウイルスの中には、今度の新型を入れて三つ、非常に病原性の高いのがあったわけですけれども、それ以外に、二十世紀から今までに四つ、風邪のウイルスとしてまとめられて余り今まで人の病気の研究者もいないような、風邪のウイルスに分類されるコロナウイルスが四つあります。

 SARS、MERSは、一つはかなり病原性が強くて、病院に入院した人たちの中でばっと、いわゆるクラスターが医療従事者とかお見舞いの人に起こっていたのが問題だったわけですけれども、今度のコロナはそれが社会の中で起こるわけですね。

 だから、基本的に、MERS、SARSとは今度のは違って考えた方がいいんじゃないかというふうに思っていまして、だんだん、恐らくどちらかといえば、予測すると外れるかもしれませんけれども、風邪型に行くんだろうと思うんです。

 ただ、コロナの場合、厄介なのは、子供たちに病気を起こさないわけですよね。ところが、高齢者に非常に病原性が高いので、こういうウイルスはいっぱいあるんですけれども、コロナの場合、それが非常に典型的ですので、うつりやすい、病原性が低くなりますというのは、医療としては、高齢者は気をつけなきゃいけない。

 これが子供たちの間に広がるようなウイルスになってくる可能性はあるわけです。そうすると、ウイルスの病原そのものは低く測れるけれども、高齢者への病原性はほとんど落ちないというような状態は必ずあると思いますので、このウイルスはむしろ、やはり今までの分類というよりは、我々の人間の、例えばゲノムの情報では、一人一人の違いであるとか、やはり免疫学であるとか、そういうものを駆使してこのウイルスは研究していく必要があると思います。

 ワクチンがそれをどれだけ加速するかという問題がありますけれども、結局は、恐らく社会にアダプテーションしていくようなウイルスだと。それで、恐らくなくすのは難しいんじゃないかというふうに僕は思います。

浜地委員 ありがとうございます。

 さらに、岩本公述人にお聞きしたいと思います。

 これも、昨年の夏頃、話題となっていました、新型コロナウイルス感染症で二類に指定をされている。そうなると、入院期間も長い、待機期間も長い云々がありまして、当時は、これはもう二類を外した方がいいんじゃないか、無類にすべきじゃないかという議論がございました。

 ただ、その後、感染が拡大しまして、こういった議論はないわけでございますが、実際、ワクチンができて、ある程度免疫ができてくると、感染症の指定というものは、今後、先生の方では、どのように位置づけるべきだというふうにお考えでしょうか。

岩本公述人 恐らく感染症の分類は変えざるを得なくなるのではないかというふうに思います。

 最初、二類が適当だったかどうかというのはいろいろな判断があるかと思いますけれども、やはり情報不足、新しいウイルスというので、これは公衆衛生的には、強めの、要するに重い方の分類に入れておく。だけれども、これが社会の中での流行の度合い、すなわち、私が申し上げている、医療面で対応すべきことが簡単になってきたら、病気の分類を少しずつ弱めながら、逆に、医療の中、病院の中をどういうふうに守るんだというふうなことを重点化していくような対策になってくるんだと思います。

浜地委員 では、もう一問、済みません、岩本先生にお聞きしたいと思っております。まとめて聞けばよかったんですが、済みません。

 PCR検査、しっかり全国的にということで、これは賛否両論あります。ただ、昨日もテレビを見ていましたら、ヨーロッパあたりは、街角で抗原検査を無料で受けられるということでございます。私の中では、PCR検査を無限に拡大すると、無症状だけの方が出て、その方のケアも必要なんじゃないかという個人的な意見を持っているところでございますけれども、抗原検査も併せたPCR検査の拡大については、どういう形が今の医療体制も含めてよろしいとお考えか、御所見をいただければと思います。

岩本公述人 御質問ありがとうございます。

 PCR検査を要するに今全員にやるとかそういうふうなことは、私は余り、どうかなというふうにはもちろん思いますけれども、一方で、やはり一番感度が低くて、今日、主な主張で申し上げた、次に何か病気があったときに一番対応しやすいのが遺伝子を使ったPCR検査のような核酸の検査なんですね。だから、抗原の検査を作るには半年以上かかったわけですね、日本は八月頃からですので。その間のところをまずやるためには、基本的には、国のシステムとして、きちんとしたPCRのネットワーク、こういうのは機材を何台持つかということではなくて、それをつないで、いかにやっていくか。

 それで、恐らく、大学とか、今の保健所とか衛生研究所だけが持つのではなくて、もっと日本全体で、それを結果を合わせながらやれるかというところをまずは整備することを考えておくべきで、結局、抗原検査ができたら、これは少し感度あるいは精度は悪いけれども、それをうまく使いながら利用していくというのは当然のことだというふうに思います。

 ただ、次のインフラとして、今のままだとPCRが忘れられつつあるけれども、やはり大事な検査ですよということが今日申し上げたかったのであります。

浜地委員 岩本先生、ありがとうございます。大変参考になる意見でございました。ありがとうございます。

 原田公述人にもお聞きしたいと思っています。

 先ほどからベーシックインカムのお話がございまして、我々公明党は、実は昨年の九月二十七日の党大会で、ベーシックサービスについて、まだこれを推進するとは言っておりませんが、ちょっと検討すべきではないかというような見解を幹事長が発表いたしました。

 今も、日本は、基本的には所得の低い方にはベーシックサービスが行われているんじゃないかなというふうに思うところでございますが、ベーシックサービスでなくてベーシックインカム。私は、ベーシックサービスの方が今の制度に合うんじゃないかなと思っていますが、先生の御見解から、このベーシックサービスについて、欠点も含めて、そういったものがございましたら御所見をいただければと思います。

原田公述人 御質問ありがとうございます。

 済みません、私、ベーシックサービスについて十分な知識を持っておりませんので、ちょっと的外れなことを申し上げるかもしれませんが、インカムというのは、基本的にお金でもらうわけですから、何にでも使えるということです。もちろん、世の中には駄目な人もいて、せっかくもらったお金を無駄に使ってしまう。だから、生活保護の方がいいんだという方もいらっしゃるわけですけれども、基本的に多くの人は、一生懸命考えて生きておられて、にもかかわらず、十分な所得が得られない。そういう方に所得を補助すれば有益に使えるはずだ、そういう前提でベーシックインカムというのは考えております。

 では、どっちがいいのかというと、それは実際に比較しないと分からないわけですね。実際に比較するというのは、ベーシックインカムはやっていないので分からないわけですけれども、生活保護のことを考えてみると、そもそも必要な人に行き届いていないのではないか、それから、働くと所得を奪われてしまうとか、あるいは大学に進学しようと思うとむしろ減らされてしまう。

 そういうことを考えると、非常に十分に工夫されたベーシックサービスがあって、それはベーシックインカムよりいいものである、そういう可能性はもちろん、それ以上は私はコメントできませんけれども、現在行っていることに比べればベーシックインカムの方が優れている、そのように思っております。

浜地委員 済みません、ちょっと時間がございません。

 最後、逢見参考人にお聞きします。

 今、このコロナの中で、在籍出向が話題になったり、あとは地方移転、これを推進しようというふうな話題が、ただ、なかなか問題が多いと思いますね。地方移住といっても、それはもうウェブでできるといっても、実際、情報が手元になければ地方に移住できないと思うんです。

 連合さんのお立場で、この在籍出向又は地方移住について何か、又は、政府に対してこういった点を改善すべき、また、連合さんの中でどういった話題があるのか、最後にお聞かせいただければと思います。

金田委員長 逢見公述人、時間が参りましたので。

逢見公述人 御質問ありがとうございます。

 在籍出向については、第三次補正予算の中でこれが通りまして、いよいよ実現するということになります。コロナが長期化している中で、在籍によって、人を送り出す企業と受け入れる企業がうまくマッチングできれば、失業を出さずに、機能できるというふうに思っています。

 地方移住は、今回の働き方改革の推進、コロナによって動いた部分もありまして、みんなが一斉に同じ時間に出勤して、ラッシュの中でもまれて仕事に行くということから解放されたというのは、コロナが終わっても残していくべきだし、地方にも雇用が生まれるという意味で、全部が全部できるわけじゃありませんが、これを進めていきたいと思っております。

浜地委員 時間になりましたので終わります。

 ありがとうございます。

金田委員長 次に、宮川伸君。

宮川委員 立憲民主党の宮川伸でございます。

 本日は、四人の公述人の先生方から非常に貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。大変参考になりました。

 時間の関係で、すぐに質問に入りますが、まず最初に、逢見公述人にちょっと御質問したいと思います。

 御意見の中で、格差の問題、そして所得再分配機能の強化ということをおっしゃられていました。これは、所得税の問題で、一億円ぐらいの収入の方以上の高所得者の方の所得税率が下がっていく、これは株の部分だということで、金融所得課税の強化が必要だというお話をされていました。これと同じように、よく法人税の話もされます。これは、大企業においていろいろな税の優遇措置がありまして、そのために大企業の法人税率が下がっているということも指摘を受けております。

 そういった中で、もう一つ、お話の中で、デジタルの部分やグリーンリカバリーの部分、これからの日本をどうつくっていくかということで、新しい分野を力強く進めていかなきゃいけない、こういったお話もあったと思います。

 この新しい分野をつくっていく上で、じゃ、政府としてどういうふうに、国としてどういうふうにサポートしていくか。

 こういった中でよく出てくるのが、今までも出てきておりますが、政策減税の問題です。やはり、税金を下げるから、グリーンリカバリー、カーボンニュートラルに事業を移してくださいよ、デジタルを進めてくださいよ、こういった税の部分で優遇策を出して事業を進めていくということが考えられます。今回もいろいろな案が出てきています。一方で、例えばカーボンニュートラルでいうと、炭素税だとか、炭素をたくさん出すと出費が増えますよ、だから抑えてくださいというような形もあると思います。

 この税の平等性を含めた上で、こういうこれからのデジタルやグリーンリカバリー、どういうふうに企業に対して国が後押ししていけばいいか、ちょっと御意見をいただければと思います。

逢見公述人 政策減税については、あるべき方向に向けて政策的に誘導する手段の一つとしてこれまでも使われてきましたし、今後も使われる必要があると思います。ただ、租税特別措置というのは時限的なものがあって、常にその効果を検証しながら、それを続けるべきか、あるいは更に拡充すべきかということは議論して、最も効果のあるやり方でやっていく必要があると思います。

 デジタル化、それからグリーン化というのは、長期的には世界の中でも日本が後れを取らないように、特に環境の問題については、先進国としてむしろそれをリードしていくぐらいの気構えが必要だと思います。

 ただ、炭素税のような、炭素に価格をつけるということについては、これは一気にやりますと、そこで失われる雇用もあります。私たち連合は、あるいは国際的な労働組合は、公正な移行、ジャストトランジションと言っていますが、そうした転換に伴って失われる雇用と新たに生まれる雇用をうまくマッチングしながら、そのことによって失業者が大量に発生することを防いでいくということが必要なので、炭素税の議論についても、そうしたソフトランディングを考えながら全体のあるべき方向に向けて動いていくということが必要になってくると思います。それは、税だけの問題だけではなくて、雇用の問題にも十分な配慮が必要だということであります。

宮川委員 ありがとうございます。

 次に、岩本公述人にお伺いしたいと思います。

 我が党は、コロナの政策ですけれども、今ゼロコロナ政策というのを提案しています。これは、中途半端に緩めることで感染がまた増えてきてしまう、感染が繰り返すようなことがないように、しっかりまずは命を守る。その間の事業者に対する要請に対してはしっかり支援をするということでありますが、今ちょうどこの緊急事態宣言が、解除するかどうかというような議論が出てきています。

 今、関西の方は特に出てきておりますが、今の、どのぐらいの状況で緊急事態宣言を解除しても増えないか。その中で、私が一つ気になっているのは、変異体、イギリス等の変異体の問題です。その変異体が今どのぐらい市中感染しているかが不明確ですが、ある程度ありそうだと。

 ここで、それがだんだんばっと増えてくる可能性があるんじゃないかという懸念も含めて、緊急事態宣言の解除に関してコメントいただければと思います。

岩本公述人 当初の、第一波、第二波というか、その頃は、要するに、どこを緩めてどこを引き締めればいいのかというのが、なかなかはっきりしていなかったというふうに思います。

 ただ、だんだん今度のようになってくると、やはり高齢者が非常に悪くなりやすいというのは、ますますよりはっきりしてきていますので、そこの部分を守れる状況であれば、これはやはり、今度の場合、経済がなかなか、飲食とか、非常にそこを、別の産業を見つけられるとかそういうところではないですので、その間どうしても、要するにそちらを動かさないと、病気の対策だけでやっていけないので。

 二律背反というのを緩められるところというのは出てきて、やはりそれでも、多いところというのは、緩めちゃうと、まさにどんどん対策をきつくしないと感染者が増えて死亡者も増えるということがあると思います。今だんだん地域的な重点化というのは起こりつつあるというふうに思っていて、今、大体、自治体の方の、地域の連携の方でそういう動き方になってくるのは自然な在り方ではないかなというふうに僕は思っています。

 もちろん、これは揺れ戻しはあり得るとは思いますけれども、その辺りを注意しながら、やはり今の経済を動かさなきゃいけない部分というのは出てくるだろうと思います。

宮川委員 ありがとうございます。

 もう一度、逢見公述人に御質問したいと思います。雇用の問題です。

 先ほど、個人の力ではどうにもならないという事例も出てきているということですが、今回のコロナによって、やはり社会のゆがみといいますか、社会構造の弱いところが本当に顕在化をしていると思います。失業してしまった、そして、今、ハローワークにも多くの方々が来ているということを聞いています。

 そういった中で、特に非正規の雇用の方々の問題についてちょっとお伺いをしたいんですけれども、具体的な例があった方が分かりやすいのでお話しすると、例えばハローワークで働いている方、たくさん今雇用の相談で来ているんだけれども、その窓口で働いている方々自体が非正規雇用で、一年間で更新になっている。それで、お子さんもいて、収入がなくなると困るんだけれども、四月以降の職に関して、もう二月の終わりですけれども、継続できるかどうか、いまだに発表してもらえないというようなことがあるようです。

 そういった方々が、雇用の波で、埋まっているならいいんですけれども、ずっと何万人も同じ数が雇われているということで、十年ぐらいそれが繰り返されている。そういった雇用が本当に正しい雇用の在り方なのか、こういった非正規雇用の問題について、どのようにこのコロナの経験も踏まえて思われるかということをお話しいただけますでしょうか。

逢見公述人 非正規雇用については、働き方改革の中でも、短期に雇用を反復継続するということではなくて、一定期間を過ぎたら期限のない、期間の定めのない雇用に転換するというルールができてきて、徐々にではありますけれども、そうした人たちの雇用不安を取り除くような法律、制度はできてきています。

 ただ、御質問の公務に関わる人たちは、これはちょっと民間とは違う問題があって、公務員には定数があるものですから、しかし、その定数の中では仕事が賄い切れない、そこで臨時的に雇う人がいるんですが、これは財政年度の限界があって、必ず一財政年度の期間で契約を終えなきゃいけない。

 その次の年にまた継続して、反復して雇われる人もいますけれども、これが、民間というか、労働契約法とか有期・パート法といった法律がそのまま適用されていないのではないかという問題があって、いわばはざまにいる人たちなんですね。こういう公務の中で非正規でいる人たちがこうした法律のはざまにいて苦しんでいるということは実態としてありますので、こうした問題に取り組んでいかないといけないと思います。

 非常に大事な仕事、今、ハローワークの件を言いましたけれども、窓口で大変献身的に頑張っている人たちがいるんですが、そういう人たちの雇用の不安、処遇の低さということが問題になっているということは私どもも理解しております。

宮川委員 もう一度、岩本公述人、お願いします。ワクチンです。

 ワクチンで、絵も示してくださいましたが、今回のワクチンはメッセンジャーRNAワクチン、新しいタイプのワクチンだということでありますが、まず一つは、今、ワクチンがなかなか入ってこないんじゃないかという懸念があるわけですけれども、日本で発明して日本で作ればいいわけで、なぜこのメッセンジャーRNAワクチンの開発に日本はこんなに遅れてしまったのか。

 それとともに、私はせめて製造施設は日本で造っていくべきじゃないかという気がしているんですが、ただ、いろいろな規制があるので、今回のコロナワクチン、COVID―19では間に合わないかもしれない。でも、今後のことを考えた場合、このメッセンジャーRNAワクチンが主流になるなら、今からこの製造施設に関しては投資をして造って、次に違うタイプが来てもすぐ作れるようにすべきじゃないかと思うんですが、御意見をお願いします。

岩本公述人 おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、恐らく、RNAという言葉しか私は説明しませんでしたけれども、基本的には、細胞の中に入って、細胞の機能を使ってワクチンの形になるわけですね。だから、まずは、細胞膜というのは脂肪分で、細胞の中は水の部分なんですけれども、そこを通らなければ例えばいけない。RNAというのも、実は今日時間がないので余り説明しませんでしたけれども、メッセンジャーRNAとか、トランスファーRNAとか、幾つかありますので。

 たんぱくに読み替えるメッセンジャーRNAには印がついているんですね。そういうものをどういうふうにつけているんだとか、どういうふうに処理しているんだというのは、恐らく、それぞれの研究者のノウハウがあって、その辺りは特許になっている可能性もかなりあると思いますので、基本的には今日申し上げたかったのは、やはりこういうものは、大学なり、そういうアカデミアなりの研究と産業がもっと日本は結びつかないと、大学でやることと産業がやることが乖離がし過ぎていて、早くいい成果を応用していくというようなことの橋渡しが余りうまくできていない。

 だから、今後は恐らく、私は、RNAワクチンというのは一つの大きな流れになる、まだもちろん安全性確認は要りますけれども、じゃないかというふうには思っております。

宮川委員 ありがとうございます。

 次に、小峰公述人にお願いします。

 御意見の中で、GoToキャンペーンだとか、十万円の特別定額給付金の話がありましたが、もう一つ大きな柱で持続化給付金がありますけれども、その持続化給付金に関してどういう御評価をされているか。二度目のものを出す必要があるかどうか。

 今、私のところには、今度、一時支援金が出ますが、やはり五〇%以上の収入減というのは、もうこれだけ長く続いていると三〇%減が続いていても苦しいという声もあるわけですけれども、持続化給付金に関してちょっと御意見をいただければと思います。

金田委員長 小峰公述人、予定の時間が参りましたので、まとめて短めにお願いします。

小峰公述人 はい。

 持続化給付金のような考え方は、私が適当だと思っている一時的な傷を長期的な傷にしない政策だということで、基本的にはそういうタイプの政策が望ましいというふうには思っておりますので、GoToトラベルのような予算から、そちらにむしろシフトした方がいいんじゃないかというふうに私は思います。

 ただ、具体的にどんな条件でやっていったらいいのかというところまでは、私、十分承知しておりませんので、詳しいコメントは差し控えたいと思います。

宮川委員 時間が来ましたので、原田公述人、申し訳ありませんでした。

 以上で終わります。ありがとうございました。

金田委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、お忙しい中、四人の公述人の皆様、お越しいただいて、ありがとうございます。本当に大変参考になりました。

 まず、岩本公述人にお伺いいたしたいと思います。

 岩本先生は、二〇一〇年の新型インフル対策総括会議の提言をまとめたときに副座長をやられていたというふうに思います。あの総括会議の提言を私も拝見させていただきましたけれども、感染研の体制を強化しなきゃいけない、保健所の体制を強化しなきゃいけない、地衛研もしっかりしなきゃいけない、PCRの検査能力もしっかりつくっていかなきゃいけないという、本当にあのときのあの提言を生かしておればなというようなことがたくさん書かれていたなというふうに思っておりますが、あの提言が結果としてなぜ生かされなかったのかということについて、どういう御意見をお持ちなのか、お聞かせいただけるでしょうか。

岩本公述人 その提言の中にいたのを失念しておりましたけれども、私、その後から、実は感染症部会というもののメンバーを十年やって、二〇一二年ぐらいに外れていますので、特措法とかそういうところは余り関与していないんですけれども、その前のまとめたところはいたのかもしれません。

 そういう中で、やはり喉元過ぎればというところがあるのは否めない一方で、感染症というのはいろいろな種類があるのはあるわけだけれども、それ全部をきちんと整備していこうというのは、恐らくもたないと思います。

 だから、機能別にいろいろ分けるであるとか、それから、今日、呼吸器の感染症が非常に国の危機管理としては大事だということを申し上げましたけれども、どの辺を国のインフラとして持っているべきで、例えばワクチンを作る体制はどういうふうにすれば、今回のようなRNAワクチンというのを日本がもうちょっと早く作れるようになったんじゃないかとか、そういう新しい産業も生み出すような形に変えていかないと、旧来のものをそのまま強化しようというのは違うんじゃないかなというふうには思っております。

宮本委員 ありがとうございます。

 あと、今日、お話の中で、武漢由来のウイルスの後、ヨーロッパ、欧米由来のウイルス、これが今の感染拡大につながっているんだというお話がありましたけれども、その際、国際的な情報共有がどうだったのかというお話がありましたけれども、本当に、今の事態を考えると、三月の上旬、中旬のときの判断というのが決定的だったのかなというふうに私も思っております。

 私自身も本当に、イタリアだとかでどんどん増えているときに、何で今頃中国をやっと全部止めるという遅さなのかなというのを感じたのを、先生のお話を聞きながら思い出したんですけれども、今回の入国制限の遅れ、水際対策の失敗、更に深く原因を考えるならばどういうところにあるのか、お聞かせいただけるでしょうか。

岩本公述人 三月のヨーロッパの増え方というのは物すごく急速でしたので、それでちょうど日本人の春の旅行が増える時期と重なっていたという、非常にちょっとアンラッキーな面もあったと思いますけれども。

 今後非常に大事なのは、各国との情報共有はもちろん今日申し上げたように大事ですけれども、もう一点、やはり、ヨーロッパで増え始めたものを我々自身でもひょっとすると研究するというか、どういうものが増えているんだというようなことはもっと早く調べられるというか、そういうふうな準備というのをしなきゃいけないし、その体制が遅れて、あとは、そういう水際を守るところと、例えば省庁間の連絡とか、そういうところももう少し密にする必要があるかもしれないというふうには思います。

宮本委員 ありがとうございます。

 あと、岩本公述人、もう一点お伺いします。

 この水際対策との関係で、今大きな問題になっているのが、オリンピックをどうするのかという問題があります。

 今、東京オリパラの防疫体制でいうと、選手は七十二時間前に向こうで検査をして、また入国時に検査をしてという話になっているんですけれども、PCR検査は当然偽陰性のすり抜けがありますし、それですり抜けたら、飛行機の中というのは長時間ですから、そこで感染が広がるリスクも当然あるというふうに考えているんですけれども、この東京オリパラと防疫体制の在り方といいますか、可能なのかどうなのかということも含めて、もし御見解があればお聞かせいただけたらと思います。

岩本公述人 そんな難しい話は、ここで私が答えられる立場にも、情報もないというところですけれども。

 ある意味では、特に選手たちの気持ちを考えると、何とかオリンピックは成功させたい、やりたいというふうに思う一方で、どのぐらい日本の状況を抑えられるのか、それから、世界の国々にそれをどれだけ納得してもらえるのかというようなバランスも非常に大事ではないかと思いますけれども、これ以上いろいろ申し上げると、ほかにも迷惑をかけるといけませんので、この辺りで。

宮本委員 ありがとうございました。

 続きまして、逢見公述人にお伺いしたいというふうに思います。

 今回、コロナ禍の中で、先ほどもお話ありましたけれども、非正規の皆さんも本当に大変深刻な事態に見舞われるということになりました。

 コロナの経験を経て、非正規の皆さん、先ほどのお話では、この間、出口側の規制ですよね、契約更新を繰り返している場合は直接雇用の申込みという出口の方の規制はあるわけですけれども、実際はその前で切られる方々もおりますし、今回の事態とかいろいろ考えると、入口の規制も含めて法律で考える必要があるのではないかという気がするんですけれども、その点についてのお考えはいかがでしょうか。

逢見公述人 パートや有期雇用をどうすべきかということは、労働法制の議論の中で繰り返しやってきたことなんですが、そのときに、入口規制、出口規制、あるいは中間における規制というのがあって、入口規制というのは、有期で雇う人については職務を限定するか、あるいは、一切やってはならない、無期しか雇っちゃいけないという考え方もあるんですが、これはやはりちょっと、この入口規制を持っていくことは非常に今の労働市場の情勢からいうと難しいなということで、出口規制に力を置いた法改正の議論をやってまいりました。今後、この法律の効果がどうなっていくかというのはありますけれども、少しずつ改善はされてきていると思います。

 コロナ禍ということで、非常に多くの人が不安にさいなまれたわけですけれども、そういった問題をよく検証しながら、有期雇用、パート雇用等についての在り方を更に検証していきたいと思っています。

宮本委員 ありがとうございます。

 臨時的、一時的な仕事に限るべきではないかという入口規制も、私自身としては是非考えていきたいと思っております。

 あと、逢見公述人にもう一点お伺いしますけれども、とりわけ今回、非正規雇用の中でもシフト制と言われる働き方をされている方々が、そのままシフトカットがされて、しかし休業ではないんだという扱いで、休業手当がもらえないという事態が大きく広がりました。それに代わって、今回、国の様々な制度というのも、休業支援金などをつくってきたわけでありますけれども、そもそも、そのシフト制の今の労働契約の在り方が今のままでいいのかという問題もあるのではないかと思うんですよね。

 働き方で、労働時間や労働日数についてはシフトによる、実はゼロになっても構わないんだということについては、やはり何らかの一定の法律上の規制やルールというものを設ける必要があるのではないかと思いますが、今のシフト制の契約の在り方について、御所見があればお伺いしたいと思います。

逢見公述人 今回のコロナ禍で特に影響を受けた業種というのは、飲食だったりあるいは宿泊業だったり、サービス業が多いわけですけれども、こういうところは、今回初めてこういった状況に、影響を受けたということだと思います。

 こうしたサービス業というのは、パート、アルバイトも多く使っている業種なんですけれども、曜日によって来客数が変わってくる、あるいは時間帯によっても変わってくる、そのたびにシフトを組んで、お客さんが多く来る時間帯にはそれに対応できる従業員を用意するし、比較的来客数が少ないときはシフトの数も減らしていくという、波に合わせた、レーバースケジューリングと言っていますけれども、こういう形で運営しているわけです。

 今回は、その通常の波以上にどおんと下がっちゃったので、休業はしていないけれども、シフトの人数を減らして、来客数が少なくても対応できる形にした。その影響が出てきたということで、今回は、シフト制で働いている人たちに対しても休業支援を行うということは行われましたけれども、ただ、シフトそのものを見直すという、サービス業という形態においてどういう働き方がいいのかというのは、非常に難しいところがありまして、今回のケースを学びながら、どういうルールのつくり方がいいか考えていきたいと思います。

宮本委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 最後に、小峰公述人と原田公述人、お二人にお伺いしたいと思います。

 今、株価も大変上がっている状況があるわけですけれども、こうなってくる背景の一つとして、日銀がいつも、株が下がった局面ではETFを購入して、株を買い支えてきたということもありました。中央銀行が大量のETF、株を購入し続けるというのは、世界で見ても極めて異例な事態だというふうに考えております。

 こういうのをいつまででも続けているのがいいのかと。私はすぐにやめるべきだと考えておりますが、この問題、そして出口の問題も含めて、御意見をいただければと思います。

小峰公述人 私も、御指摘のように、日銀が株を大量に購入したり、それから国債を大量に購入するというようなことは、かなり非常時型の対応だというふうに思います。それが効果がないということはないんですけれども、非常時に限られるべきであって、徐々にそういった金融政策依存のやり方からは脱却すべきだと思います。

 なかなか難しいのは、じゃ、今どういう弊害があるのか、それを更に買い増したらどこがまずいのかと言われると、少しずつやっていく分には特に大きな弊害がそのたびに出てくるというわけではないんですけれども、どこかでやはり長期的にはいろいろな問題点が出てくる可能性はありますので、そこは、なかなか急にというわけにはいきませんけれども、出口を目指して徐々に進んでいくべきではないかなと思います。

原田公述人 御質問ありがとうございます。

 日銀のETFの買入れが異例ではないかということですけれども、現在の状況が異例であり、その以前も、非常に長くデフレが続く、そういう異例な状況の中で、異例な状況に対処するためにETFを買い入れる、そういう手段を取ったものだというように理解しております。

 そう考えてみますと、現在のデフレあるいはこのコロナ禍の不況からなかなか順調に脱却できませんので、ある程度続けざるを得ないのかなというように思っております。

 ただし、私は、資本主義の自由な市場経済の中で、日銀が無限に買い入れる、無限に民間企業の株を買い入れるということはよくないというように思っておりますが、買い入れることによって、リーマン・ショックのときと比べますと、円も安定して、株は上がっているということを見ますと、効果はあったのではないかというように思っております。

宮本委員 時間になりましたので終わります。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武です。

 本日は、四名の公述人の皆様、ありがとうございます。

 まず、小峰公述人に一問お聞きしたいと思います。

 特別定額給付金、一律十万円給付についてのお話がありました。私も、これを取り上げて、政策目的は何だったのかというふうな問いを政府にしました。考えられる選択肢でいうと、マクロ経済政策として需要拡大、消費喚起というものか、若しくは生活困窮者への支援というものなのか、もう一つは、国民の連帯を強めるという、言い方は悪いですが、ある種のお小遣いというか、頑張ってくださいというお金。どうですかというふうに問うと、政府はいろいろ言いましたが、結論でいうと、三番目の連帯を強めるという色合いが強かったんだろうということを政策目的の一番に挙げたわけであります。

 実際に結果論として、どの効果が一番あったのかなと。検証した方が、今後やるかやらないかも含めていいかなと思うんですが、政策目的、こういう設定の仕方だったことがどうだったのかと、それから、結果論としてどこに効果があったのかなということを、御見解があればお聞かせください。

小峰公述人 これは、今御指摘になったいろいろな政策目的が考えられると思うんですが、需要振興という点については、私は余り効果はなかったのではないかというふうに思います。

 というのは、確かに消費は大きく落ちたんですけれども、これは、皆さん、お金がなくなったので買物を控えましたということではなくて、やはり、コロナ対策で外出を控えたということが消費が落ちた非常に大きな原因ですので、それが十万円給付によって解消するとは考えられないということですので、需要喚起効果というのは余りなかったのではないかというふうに思います。

 それから、困窮者向けの支援というのは、当然、十万円の給付の中には本当に困窮している人も含まれているわけですから、これは一部効果があったと思いますけれども、当然、困窮していない人にも配ってしまいましたので、相当効果が薄れているというか、そこまで幅広く給付する必要があったのかという疑問が残ります。

 それから、国民の不安感を除くという点も、これは検証が非常に難しいので、恐らく、何となく安心感があるとか、それから、これは結局私は大部分が貯蓄に回ったと思っているんですけれども、貯蓄だって少し増えた方が多少は安心するという面はありますから、全く効果がないとは言えないので、多少は効果があったかなとは思いますけれども、これだけのお金をかけた割には、全体として得られた効果は少なかったのではないかなというふうに思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 この十万円給付、私も全否定するつもりもなく、あのとき困窮者にも届いたのは事実だし、よかったんじゃないかなとも思う反面、検証して、今後生かすべきだというふうに思っているんです。

 その上で、明らかになったのは、国家が、どの人がどの程度困っていて、その人にピンポイントに支援するというすべを持たないということが明らかになったということなのかなと受け止めています。

 それで、今日お越しいただきました原田先生にお聞きしたいんですが、これはいろいろ、セーフティーネット論を考えているんです、私どもも。ベーシックインカムを軸に、新しいセーフティーネット、チャレンジのためのセーフティーネットをしいて、元気な社会を、経済をつくっていかないといけないなという課題意識がございます。

 その中で、今日は生活保護のお話がありました。生活保護が非常にセーフティーネット機能として狭く深いという表現、先生も著書でされていましたが、使い勝手が有事には特に悪いというのもあります。それから、生活保護の高齢者が増えているという問題。これは恐らく低年金、無年金問題ともつながっていて、老後、生活保護に吸収されていくという問題。それから、働いているけれどもなかなか所得が低い、いわゆるワーキングプアに近い状態がある。

 つまり、生活困窮というのは、もうマイノリティーの話ではなくて、かなり多数の人が抱えている、直面している、又は有事には自分事になってしまう問題である。そういうような社会なんだなということが全体像として浮き彫りになっているんじゃないかというふうに思います。

 それで、ベーシックインカムは大きな話ですけれども、いわゆる給付つき税額控除なりベーシックインカムといったような新たな制度をつくるということと、それから、今、恐らく政府は、現状の制度を、制度自体は維持しながら微修正していく、改善していくと。こういういわゆる政策手法の違いがあると思うんですが、現状維持、微修正で、今後この社会のセーフティーネットというのは持続可能かどうかというのをお聞きしたいのと、ベーシックインカムの優位性についてお聞きしたいと思います。

原田公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、新たな制度をつくるのと、微修正でいくのかという話ですけれども、政府としてみれば、それは新たな制度をつくるよりも当然微修正でいくというのが、それが役人の習性でもありますし、政治家としても、何か混乱とか、何かまずいことが急に起きたら困るというのは当然あると思いますので、政府は微修正でいくということはあるのだと思います。

 ただし、では、現状、それでいいのかということですね。

 一番大きいのは年金の問題だと思うんですけれども、実際、藤田先生もおっしゃったように、低年金、無年金の方がいっぱいいらっしゃる。そうすると、これは生活保護に行くということになってしまうわけですね。そうしますと、では、年金を払っている人たちの立場からすると、一体これはいかがなものかということになってしまう。しかも、国民年金よりも生活保護の方がレベルが高いわけですので。そうすると、これは非常に大きな問題になって、人々の社会福祉制度、社会保障制度に対する不信感がどんどん高まってしまうのではないかというように思います。

 ですので、微修正が利かなくなれば、あるところで、これはおかしいのではないかという大きな声が高まって、大きな変化を皆が求める、そういうことはあり得ると思いますので、できればそうならないようにうまく移行した方がいいのではないかというように思っております。

 それからもう一つは、ワーキングプアの問題とか、それから給付つき税額控除制度の問題ですけれども、日本は働いているのに貧しいという人が多い国だというように思います。つまり、日本人はやはり勤勉なんだと思うんですね。それで、生活保護をもらえる権利があっても、もらわないという人がいっぱいいる。私に言わせれば、あえてそういう人に甘えることによって、生活保護制度が何とか成り立っていると思うんですね。つまり、本当は一三%の人がもらえる権利があるにもかかわらず、一・六%の人しかもらっていないから、財政的にも何とかなっておりますし、それから行政的にも何とかなっているわけです。

 ですから、勤勉な国民に甘えて、ゆがんだ制度が存続しているということは、非常にまずいことなのではないか。つまり、ある時点で、これはおかしいというように人々が思い出しますと、一挙に崩壊してしまう。つまり、十倍の人たちが生活保護をよこせと言えば、お金もないし人もいないということになってしまいますので、そうなる前にやはり何らかの対応を取った方がいいのではないかというように思っております。

藤田委員 ありがとうございます。非常に示唆に富んだ指摘だなというふうに受け止めました。

 これは賃金水準の話につながってくると思うんです。可処分所得や賃金水準がなかなか上がらないということは我が党もすごく問題にしていて、それをどうしたらいいのかなというのをいろいろ考えるんですけれども、そもそも日本の社会保障は企業に負わせ過ぎなんじゃないか、そういう問題があります。

 二つ考え方があって、社会保障をちゃんと賄える、負担できるようなよい雇用を生み出していく、それを増やしていくという考え方と、それから、もうちょっと企業からその負担を引き取ってあげて、国家がユニバーサルに引き取ってあげて、企業の負担を軽くする。そうすることで、逆に私は賃金水準というのを上げやすくなるんじゃないかなというふうに思うわけです。

 企業の負担というと、例えば、社会保険料は年々上がっていく。雇用の規制を強めれば強めるほど不確実性が上がって、長期雇用の、これは長期的に見ると、コストも上がる。だから、非正規とかで調整するというのは、何か人道的にはどうかなと思う方がいらっしゃるかもしれないけれども、企業側からすると、合理的なことをやっているだけである。つまり、インセンティブ設計をやはりもうちょっと考えないといけないんじゃないかなというふうに思います。

 そこで、今の件について、原田さん、小峰さん、逢見さんにお伺いしたいんです。

 このまま企業に、何とか、非正規の方の待遇も上げて、半ば正社員を全部にしたらいい、待遇をどんどん上げよう、最低賃金も上げていこう、社会保険料も年々上がっていく、そうやって、GDPが自然増しない時代に、企業に社会保障を、多くの部分を担わせ続けるのがいいのか。又は、一部それをユニバーサルに国家が引き取って、それが私はベーシックインカムなのかなとは思うんですが、手法は別にして、そうやって引き取ってあげて、ある種の社会保障、セーフティーネット機能をしき直すという方が経済全体が元気になるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、ちょっと三名の方に、是非違うお立場から見解を聞きたいと思います。原田先生、小峰先生、逢見先生でお願いします。

金田委員長 お三方にお願いをいたします。

 時間の制約がございますから、上手にまとめていただければありがたいと思っております。

原田公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、企業がやっている限り、やはりユニバーサルにならないと思うんですね。つまり、企業の立場からすれば、どうしても雇用の調整弁みたいなものが必要なわけですし、正社員にしてみると、そういう人がいるから自分の雇用が守られるということも現実としてあるわけです。

 そもそも、企業にやらせるというのは、鉄血宰相と言われたビスマルクがやり始めたわけで、その当時、ドイツは労働運動が非常に盛んで、皇帝ウィリアム陛下に反抗的な労働者がいっぱいおりましたので、その人たちを籠絡する、懐柔するためにそういうことをやり始めたわけです。ビスマルクは、要するに、非常に組織化されて強い労働者は、やはり、なだめないといけないけれども、それ以外の人はどうでもいいと思っていたわけですね。ですから、そもそも、ユニバーサルにやろうなんということはビスマルクは考えていなかったわけです。

 ビスマルクの時代なら、それはそれで済んだのでしょうけれども、今、我々は、憲法二十五条を持っていて、ユニバーサルにやらなきゃいけないという使命を持っているわけですから、それは企業に負わせないで、国家がそれを受け取るということが私は必要なのではないかというように思います。

 私一人で余りお話しするわけにもいきませんので、基本的な考え方は全くそのとおりだということをお話しいたしました。

小峰公述人 私の基本的な認識は、社会保障の必要な経費はこれからどんどん増えていきますので、こういったものは高齢者も含めて国民全体で負担していくという観点から、消費税が望ましいというふうに私は考えております。

 その点がなかなか合意が得られにくくて、なかなか消費税を上げないし、上げてもほかの分野でどんどん使ってしまうということがありましたので、その結果、社会保険料をどんどん上げる。こちらは余り選挙の争点にもならなくて上げやすいということから、社会保険料は上がっていったというふうに理解をしております。その半分が企業の負担になるということで、これはなるべく国民全体の負担に変えていくべきだというのが、私の考え方です。

 これを変えていって、もし社会保険料の負担が下がっていけば企業の負担も減るんですけれども、それは一体誰の負担なのかというと、これは経済学的にかなり難しくて、つまり、企業の負担が減ったときに、それは企業の利益が増えるのか、それともその分賃金を上げてくれるのか、どっちなんだという話があって、これは学問的には、どうも賃金が上がるはずのものが上がっていないんだと、負担の分だけですね。ということを考えると、これは企業の負担ではなくて、やはり働く人が負担しているというふうに考えるのが適当ではないかなと思います。

逢見公述人 この三十年ぐらいの社会保障制度改革の流れを見ていくと、社会保険で労使が負担した社会保険料財源と、それから税財源とをミックスして使っている。流れとして言うと、税投入の比率が増えてきていると思います。それは、高齢化が進んで高齢者比率が高くなると、現役世代で全部それを賄うというのは大変大きな負担になるということで、これからの社会保障も、税と社会保険料をうまく組み合わせて、安心できる社会保障の仕組みをつくっていくべきだというふうに思っております。

藤田委員 ありがとうございました。

 時間なので終わります。

 岩本先生、済みませんでした。ありがとうございます。

金田委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、公述人の皆様にはお忙しいところお越しをいただき、ありがとうございました。

 限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきますけれども、時間の関係上、質問できないこともあろうかと思います。事前に、もしそういう場合はおわびを申し上げたいと思います。

 まず、逢見公述人にお尋ねをさせていただきます。

 先ほど御説明の資料の三ページ、四ページでもございました。

 中国政府による香港あるいはウイグル自治区での人権弾圧や、ミャンマー国軍によるクーデターなど、現在、アジアにおいて、看過できない人権侵害が複数発生しており、人権の尊重、法の支配といった普遍的な価値が危機に瀕しております。

 諸外国においては、法的な制裁の枠組みが存在をいたしております。一方、国内においても様々な差別も顕在化する中で、ILO第百十一号条約、ILO百五号条約といった中核的労働基準に位置づけられている条約を我が国が批准をしていないということが問題であるという御指摘をいただきました。

 オリンピック憲章との比較も御説明をいただきましたけれども、この条約の重要性について、具体的に御示唆をいただければと思います。

逢見公述人 御質問ありがとうございます。

 国際的な人権じゅうりんの問題については、やはりしっかりとした発信を日本としても、もちろん政府もそうですけれども、我々民間の人間もきちんとした声を上げていかないと、現状を追認するようなことになってしまってはいけないと思っております。

 ILO条約ですが、百五号と百十一号、四ページにありますように、中核労働基準の二つが未批准だというのは、先進国で非常に恥ずかしいことだと思います。

 一九五〇年代にILOの日本政府代表であった飼手真吾さんという方が亡くなられた後、その人の追悼録が出て、そこに本人が書かれた文章があるんですが、そこで、百五号条約採択のときに、日本政府は最初は反対であったと。これはささいな問題なんです、国内法でどうしてもひっかかる部分があって、だから反対するということだったんですが、総会の会議場に入ったにもかかわらず、反対はしなかったんですけれども、投票には参加しなかった。それが飼手さんにとって非常に悔しい思い出として残っていると。

 それから止まっちゃっているんです、判断が。それ以来、もう六十年以上たったにもかかわらず、その問題が依然として放置されたままになっている。

 今日的に言えば、基本原則です。百七十五か国、百七十六か国が批准している。これを、人権条約を守っていこうという構えがないんじゃないかと日本が国際社会から見られる。あるいは、守っていくことがいかに大事なことかということについて、日本はしっかりと認識していないんじゃないか。こういうことが、国際社会で日本に対する不信感を生むことになってしまっているんじゃないか。まさに、森発言はそういうことの一つの証左だったわけです。

 これはまた、貿易上の公正公平の競争条件を損なうことになります。日・EUの自由貿易協定の中に、こうした未批准条約の批准を進めるということも書かれています。そして、国内行動計画も既にできています。その国内行動計画をしっかりと実施すること。そして、ILO条約の批准については、二〇一九年に国会でILO百周年について衆参両院で決議がされておりまして、そこにも未批准条約の批准のことが書かれております。

 まさに、行動して、日本が人権問題について国際社会でもきちんとした対応をしているということを示すことになると思いますので、是非、政府、国会においてこういう行動を起こしていただきたいと思っております。

西岡委員 ありがとうございます。

 現在においては、企業が事業活動を行う場合に、やはり人権に配慮しているかどうかによって企業が評価をされるという国際的な状況もございますので、今後、この両条約については、私どももしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 引き続き、逢見公述人に質問をさせていただきます。

 コロナ禍において、デジタル化の遅れ、行政機能の弱体化というこの二つの側面が大変顕在化をしたと考えております。

 例えば、デジタル化のあるべき方向性、また、マイナンバー制度活用による公述人から言及をいただきました給付つき税額控除について、また、行政組織の行き過ぎた合理化により現在の危機に対応できなくなっているのではないか、このような側面を含めた今後の在り方、また最優先に取り組むべき課題というものがございましたら、御示唆いただきますようお願いいたします。

逢見公述人 今回のコロナ禍で国民生活に大きな影響を与えて、その中で人々が大変不安な状況に陥れられた。そのときに、やはり政府は、こういうときこそ国民に安心のメッセージを送らなきゃいけない、これが役割だと思うんですけれども、残念ながら、デジタル化の遅れ、あるいは、例えば保健所に代表されるように、公衆衛生を担う機関がどんどん機能が縮小してしまって、そこにコロナ禍が起きて、もう保健所がパンク状態になってしまったというようなことで、やはり、こういう行政の仕組み、そしてデジタル化の遅れ、これを何とか挽回しないと、また次のパンデミックが来ないとは限りません。そういうときに、今回の教訓がきちんと生かされた形にしていかなきゃいけないと思います。

 マイナンバーは、私たち連合は、結成以来ずっと、最初は納税者番号制度と言っておりましたけれども、それを、税だけじゃなくて、社会保障とかいろいろな部分で個人の識別に使えるようにしようということで、取組を進めてきました。

 今回も、十万円の一律給付については政策効果がいろいろ議論されておりますけれども、本当に必要な人にタイムリーに給付をするということであれば、やはり口座とマイナンバーとのひもづけということが行われ、そして所得がきちんと把握できる、そうすると必要なところに迅速に給付が行くということになるはずなので、そういうことを進めていく。

 それから、消費税の議論は今後やはり避けられないと思います。そのときに、逆進的な消費税をどうするかというのは当然議論になるわけですけれども、給付つき税額控除を入れるべきだというのが私どもの主張ですが、これもやはりマイナンバー制度を活用することによって可能になるというふうに思っております。

西岡委員 ありがとうございます。

 逢見公述人に引き続き質問をさせていただきます。

 今回の令和三年度本予算についてお尋ねをいたします。

 今、先ほどからも議論があっておりますけれども、コロナ禍において様々な課題が山積をいたしております。また、ポストコロナを見据えたことについてもしっかり予算を振り分けていかなければいけないという課題もございます。

 特に、コロナ対策について、医療従事者への支援や、雇用や生活のセーフティーネットの再構築、また、不安定な雇用形態における格差の是正、持続可能な働き方、そのような視点から今回の予算をどのように評価をされておられるか。また、特に不十分であるとか、ここは是正を求めたいというようなところがございましたら、御示唆をいただければと思います。

逢見公述人 これまでの令和二年度の本予算、あるいは幾たびかの補正によって、いろいろな対策が取られてきたというふうに思います。

 特に雇用について言えば、陳述の際にも申し上げましたけれども、雇用調整助成金はリーマン・ショックのときよりもかなり使われておりまして、それが低失業率にもつながっていると思います。今ここでこれを緩めてしまったら、今度は高失業社会に転換することになってしまうので、ここはもう少し歯を食いしばって今の制度を続けて、失業を引き起こさない社会にしていくべきだと思います。

 また、リーマン・ショックの際に、生活困窮者支援制度など第二のセーフティーネットがつくられまして、これも今回でも使われてきたと思いますが、ただ、やはり脆弱な層、あるいはフリーランスとかそういったところに、あるいはアルバイトでしか生活できない学生さんもいて、そういうところへの支援が弱いところがあったのかなというふうに思いまして、そこは少し手当てはされておりますけれども、今後、まだ課題として残さなきゃいけないと思います。

 そういった幾つか課題がありますけれども、これをきちんとやることと併せて、将来に向けての財源の確保ということをやっていかないと、雇用保険会計はもうパンク寸前のところに来ているということがありますので、こうした議論も国会でも検討していただきたいというふうに思っております。

西岡委員 逢見公述人、ありがとうございました。

 引き続いて、岩本公述人にお尋ねをさせていただきます。

 先ほど、私も、議論がございました国産ワクチンや治療薬の開発が大変遅れているということについて、様々な要因があろうかと思っておりますけれども、国民からも、今なかなか海外からのワクチン確保がめどが立たない、はっきりした先の見通しがないという中で、今後の感染症拡大も含めて、国内におけるワクチン開発、治療薬の開発のために、今、何が我が国に足りないのか、ここをやはり改善しなければいけないという岩本公述人からの御示唆があれば、教えていただきたいと思います。

岩本公述人 御質問ありがとうございます。

 最近の製薬で、非常に新規性の高いものを出すのはやはりアメリカなんですね。

 それを見ると、やはり、製薬企業は非常に大きな企業になってきて、例えばそこから一つの製品が、五百億円ぐらいの例えば売上げのものでも、会社の規模から見ると非常に、例えば一%であるとかそういうような形であると、なかなかそれを十年、二十年かけて開発するのも難しくなってきていますので、基本的には大学なりのアカデミアで競争をさせて、それも、五百億円じゃなくて、例えば五億円でも五十億円でも、そういう投資でいかにいいものが出てくるかというところを、どういうふうにそれを見つけるか。それをどういうふうに企業がうまく、例えば場合によったらライセンスでやるとか、あるいはそのものを買い取るとか、研究者を雇ってしまうとか。

 そういう動きがやはりうまく動いているのがアメリカですけれども、日本の場合、どちらかというと、僕もそうやって育ったんですけれども、金もうけは考えないで勉強しろとか、医学はお金とは関係ない世界だとか。そうではなくて、やはり、医療もちゃんといろいろな点を、COIだとかいろいろなことを考えながら、開発と、それを企業化していく、産業化していくということは、薬だけじゃなくて、ワクチン、機器も全部そうだと思います。そして、それを、要するにブレーキ係は別途いるんだというふうには思いますので、国の仕組みをやはり政府の中でよく考えてつくり変えていっていただく必要があるのではないかと思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 引き続き、岩本公述人にお尋ねをいたします。

 今、大学、アカデミアの役割の重要性というものに言及がございました。公述人から配られました資料八の中に、地域CDCの必要性についてということの御説明がございました。ここも大学等アカデミアが連携するというところが大変私も重要な部分ではないかと思っておりますけれども、この地域CDCの具体的なセンターのイメージについて、公述人から御説明いただくことがあればよろしくお願いいたします。

岩本公述人 御質問ありがとうございます。

 今、恐らく私が拝見しているのでは、保健所が情報を集める、地方自治体は例えば地方衛生研究所というのを持っていて、国には感染研というのがあって、これが全然分離した状態ではないかというふうに思います。

 一つ一つの都道府県でそれぞれを確保するのは難しいかもしれませんけれども、日本を幾つかのブロックに分けて、ブロックの中で保健所の機能と地方衛生研究所の研究、要するに機能、だけれども、それだけでやっていると、要するに大学とかのイノベーションの部分が少ないので、そこはどういう協力関係を持てばいいのかというのは、取組自体が新しいので考えなければなりませんけれども。

 そういう地方衛生研究所と保健所の機能が一緒になったようなものをつくりながら、そこにいかに地域の大学と連携をつくっていって、例えば、人のゲノムがあったら、ゲノムセンターというのが大学とかを重点的につくられていきましたので、そういうものの力を少しでも、地方衛生研究所の、病原体遺伝子を調べたり、重症化する人の遺伝子を調べたり、そういうものとの協力を、まさに動かしているのが、今、イギリスだというふうに思います。日本もそういうふうになっていけるといいというふうに思います。

西岡委員 ありがとうございました。

 今日は、公述人の皆様には大変有意義なお話をお伺いすることができました。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

金田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 次回は、明二十五日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十七分散会


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