衆議院

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第1号 令和5年2月16日(木曜日)

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令和五年二月十六日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 根本  匠君

   理事 小林 鷹之君 理事 中山 展宏君

   理事 古川 禎久君 理事 堀井  学君

   理事 牧原 秀樹君 理事 逢坂 誠二君

   理事 後藤 祐一君 理事 青柳 仁士君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    大岡 敏孝君

      奥野 信亮君    亀岡 偉民君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      下村 博文君    鈴木 隼人君

      田中 和徳君    武部  新君

      辻  清人君    土屋 品子君

      平沢 勝栄君    古屋 圭司君

      牧島かれん君    三谷 英弘君

      宮下 一郎君    八木 哲也君

      山本 有二君    鷲尾英一郎君

      大西 健介君    源馬謙太郎君

      西村智奈美君    野間  健君

      藤岡 隆雄君    本庄 知史君

      森山 浩行君    吉田はるみ君

      渡辺  創君    阿部  司君

      池畑浩太朗君    掘井 健智君

      河西 宏一君    庄子 賢一君

      中野 洋昌君    鰐淵 洋子君

      斎藤アレックス君    鈴木  敦君

      田村 貴昭君    宮本  徹君

      緒方林太郎君    仁木 博文君

      大石あきこ君

    …………………………………

   公述人

   (拓殖大学教授)     川上 高司君

   公述人

   (日本労働組合総連合会事務局長)         清水 秀行君

   公述人

   (福岡県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長)    井上 善博君

   公述人

   (沖縄国際大学教授)   前泊 博盛君

   公述人

   (株式会社資源・食糧問題研究所代表)       柴田 明夫君

   公述人

   (慶應義塾大学大学院准教授)           小幡  績君

   公述人

   (京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)    柴田  悠君

   公述人

   (東京大学名誉教授)   北岡 伸一君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  鈴木 隼人君     武部  新君

  牧島かれん君     工藤 彰三君

  森山 浩行君     野間  健君

  中野 洋昌君     河西 宏一君

  斎藤アレックス君   鈴木  敦君

  宮本  徹君     田村 貴昭君

  緒方林太郎君     仁木 博文君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     牧島かれん君

  武部  新君     鈴木 隼人君

  野間  健君     森山 浩行君

  河西 宏一君     中野 洋昌君

  鈴木  敦君     斎藤アレックス君

  田村 貴昭君     宮本  徹君

  仁木 博文君     緒方林太郎君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

根本委員長 これより会議を開きます。

 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算、令和五年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順番といたしましては、まず川上高司公述人、次に清水秀行公述人、次に井上善博公述人、次に前泊博盛公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、川上公述人にお願いいたします。

川上公述人 皆さん、おはようございます。拓殖大学の川上でございます。よろしくお願いします。

 今日は、二十分という限られた時間でございますので、十一点につき簡単に御説明いたしたく思います。

 今日なんですけれども、現状認識から、どういう具合に我々は日本としてやったらいいのかというふうな、かなり総論から各論まで論じていきたいと思います。

 一番最初なんですが、現状認識なんですけれども、我々は今どういうふうな現状にいるのかというふうなことでございますが、新しい戦前、戦争前の状況、これをアメリカの軍事作戦部長のリチャードソンは、グレーウォー、つまり本当の戦争になる直前のこととして表していたわけなんですが、我々が述べていますグレーゾーン事態の戦争は、今既に台湾のみならず日本でも開戦されているというふうなところで、この点につきましては、先生方御承知の国家防衛戦略の冒頭で、中国を名指しして、中国に対する抑止力の強化と、いつもにない強い調子で、本当に、戦前、つまり戦争の前にあるというふうなことを論じ、それに応えて防衛戦略三文書が出されたというふうなところで、ありていに言いますと、今、台湾危機を前にして、我々はちょうど戦時の前の体制に多分、軍事状況では入っているのかと。

 これは本当に抑止力強化の面で必要なことでございますが、その状況はいかなる状況かといいますと、ウクライナで戦争がいまだに継続しているわけでございますが、これはウクライナ型戦争と我々は呼んでいるんですが、つまり、米軍は、軍事的に直接は介入しないけれども、違う領域、ドメインで戦い方が行われている、こういう新たな戦争の時代に入っておりますので、恐らく、これから先、少なくともバイデン政権の間は、そういった、オールドメインといいますが、全領域戦の戦いをするのは間違いない。したがって、軍事力行使はしないけれども、ほかの領域で戦いをやるというふうなことでなっていると思うわけでございます。

 そこで、脅威というのは、当然ながら、能力掛けるの意思で示されるわけでございますけれども、二点御提案したいわけです。

 一点目は、脅威を減じる努力を我々はしなくちゃいけない。

 抑止力は日米一体化で本当に今どんどんなされている状況で、ほとんど盤石な体制に入りつつあるというようなことなんですが、一方ではやはり、脅威を減じるということで、中国に対する信頼醸成措置、これが必要じゃないかと思うわけでございます。

 二番目は、これほど戦争が間近に迫っている状況を我々は認識すべきだと思うんですが、戦争回避のシナリオ作り、これは現在まで、CSIS、アメリカの国際戦略研究所、日本では戦略フォーラムのところで、いわゆるウォーゲームということではかなりそういうシミュレーション、我々、ポリティコ・ミリタリー・ゲームということを、私も二百回も三百回もやってきたんですが、そういうところでシナリオを立てられていたんですけれども、これほど危機が迫った段階では、そのいわゆるシミュレーションゲームのほかに、いわゆる戦争回避のためのシミュレーション、こういうふうなところが必要ではないかと今強く思っている次第でございます。それでも、戦争に巻き込まれる可能性は九〇%以上というふうなところで備えなくちゃいけないと私は認識している次第でございます。

 そこで、実は、私が理事長を務めている日本外交政策学会というところでポリミリゲームを行わせていただいて、いかに台湾有事における日本に対する危機管理、これが起こるかということをやらせていただきました。ここでは戦争を抑止するための努力が必要で、幸いにして、いろいろな、アメリカチーム、中国チーム、日本チーム、台湾チームとありまして、そこで米中間における話合いがあり台湾危機は回避された。これは日本にとっては、現状維持でございますので、一番いいシナリオだったわけでございますけれども、そういうのがありました。

 さて、ここから本題といいますか、ウクライナ型戦争と台湾アナロジーということで問題に入らせていただきますが、言うまでもなく、その背景は、中国の脅威の高まり、軍事的、経済的、これでアメリカは単独では対抗できないというところで、特にバイデン政権に入りましてからは、同盟国の力、日本を含む、そういうところを使って、全部の同盟力でもって中国を封じ込めよ、若しくは、最近では、中国とロシア、それから北朝鮮、若しくはイラン、そういうふうな非共産主義圏対民主主義同盟というような戦いになってきていますので、それにはアメリカだけでは戦えないというところで、同盟諸国の力を今やっているわけであります。

 ウクライナ型戦争なんですが、これは統合抑止戦略ということで、しっかりとアメリカの戦略の中に、この間、国防戦略の中にそれが入れ込まれているわけでございますけれども、これは、簡単に申し上げますと、いろいろな読み方があるんですが、アメリカの目的はプーチン政権の弱体化にあり、つまり、そういう体制間の紛争の中でまずロシアの脅威を減じる、それから二番目には多分、中国の力を減じる、そのほか、イラン、北朝鮮のいわゆる体制間の力を減じるというふうな、かなり大きな新冷戦型の備えに対してこの統合抑止戦略を展開しているというふうなところでございますが、もしそうであるならば、ウクライナで戦った戦争は台湾でも同じように戦われるのではないかというふうなところ。

 そこで、問題は、もし台湾で有事になった際、故安倍総理が台湾有事は日本有事であると申し上げられたとおり、我が国にとっては即戦争になるわけでございまして、そう考えるんでしたら、日本が、ウクライナに対する支援をしているポーランドというふうな状況になるのか、若しくは日本自体がウクライナになるのか、そういうふうなことになってくると思われるわけでございます。

 そういうところで、台湾アナロジーとしまして、最初に台湾でもし何かあった場合には、アメリカは恐らく、軍事的なものを優先するよりも統合抑止戦略でほかのドメインで戦う。現在もう既に戦っていると思いますけれども、そういう戦いが行われ、アメリカはもちろん助けに来るんですが、時差を置いて、当然ながら自衛隊が戦い、その後に、一、二週間後にもしかするとアメリカが来ることになるかもしれない、そうじゃいけないんですが。ただ、それは覚悟しておかなくちゃいけないというふうなことになると思います。

 ここで簡単に、アメリカにとってのウクライナ戦争のバランスシートというのを考えてみますと、プラスの面というのは、ロシアが弱体化した、アメリカにとってですね。民主主義同盟の結束というのがここで強固になった。それから、体制間戦争でアメリカは非常に優位にあるというふうなところになりますし、マイナスの面では、忘れてはいけないのは、トランプ政権のときには、中国に対して抑止力を利かせるために、バランシングというものでロシアを使っていたわけですね。ところが、このウクライナ戦争によってロシアと中国がほとんど一体化してきた。そうすると、そのときに対して世界全体が平和から対立へというふうな具合にシフトしてきてございますので、その点は核戦略の一部としても考えなくちゃいけない。

 つまり、もしロシアと中国の核が同じく日本に向けられる、若しくは北朝鮮に向けられるとするならば、核時代の極がMAD体制から三極体制に入ってきた、この時点で日本の拡大抑止はもしかすると破られているのかもしれない、そうすると、この時点では間違いなくニュークリアシェアリングが必要になる。韓国はその論議が始まっていますし、そういう具合に考えられることになってございます。

 それから、その次なんですが、防衛三文書、これはいろいろな論議がありますが、私の方からは二点指摘いたしたく思います。

 まず一番目、指揮系統なんですけれども、これは国家防衛戦略の中に、「いついかなる事態が生起したとしても、日米両国による整合的な共同対処を行うため、同盟調整メカニズム(ACM)を中心とする日米間の調整機能をさらに発展させる」必要がある、これをどう読むかなんですが、福島第一原発のときに、アメリカは太平洋軍を日本に上げて、統合支援部隊、JSFを横田基地に設置したのは皆さん御承知のとおりでございますが、この状況はトモダチ作戦を展開する際ももちろん非常に有効だったわけでございますが、そのときに自衛隊とともに共同調整所をつくり、そこでは、有事の際、これは有事ですね、そのときにアメリカが指揮権を取り、自衛隊はその傘下に入るとまでは言いたくないんですが、やはりそこに従って日本のトモダチ作戦を展開し、しかも中国軍が出るために日本の海上自衛隊等々は展開したわけです。

 そういうふうなことが同じように行われる、つまり、常設部隊を現段階から日本に置くというふうなところで、問題はそのときの指揮権なんですが、日本が独自に展開できればいいんですが、事有事になってしまったらやはり米軍主導になる、そうなれば、本当に日本の防衛は日本が思うように作戦展開ができるかというのが一点。

 それから、二点目なんですが、反撃能力です。

 反撃能力、これは本当に願ってもないことで、抑止力はもちろん、抑止力というものはそういう懲罰的抑止と拒否的抑止でやられているわけなので、拒否的抑止につきましては、ミサイルディフェンスで淡々といまだにやられています。ところが、懲罰的抑止、これがなかったわけです。

 現に、中国の東海岸には千発以上のミサイルが展開していまして、INF条約でアメリカはできなかった、それを廃止して、第一列島線上に、PDIというふうな戦略に基づいて、パシフィック・ディターレンス・イニシアチブに従って、アメリカは、その線上に今、中距離弾道ミサイルを置こうとして、中国を抑止しようとしているというふうなことであります。

 もちろんこれはウェルカムで、当然、今回防衛三文書に入りましたトマホークとかいろいろなもの、これはそれに対する懲罰的抑止としては有効なものでございますが、ポイントは、その発射権が日本にあるかどうか、これが大問題です。

 対敵基地攻撃能力という言葉が外れ、反撃能力ということになったわけなんですけれども、その際に、多分、有事になった際には、ミサイルを撃つという段階になった場合には、日本はアメリカにコンサルテーションをしながら撃たなくちゃいけない。アメリカ側だったら当たり前のことです、巻き込まれますから。それは日米間の一体化した、アメリカの戦略に基づくそういう展開がなされる。これをどう考えるかなんですね。我が国防衛のために本当に反撃能力が使えるかどうか、これを申し上げたい。

 それから、四番目なんですが、これは私の大好きな作家で、三島由紀夫が大好きなんですけれども、三島由紀夫がバルコニーで割腹自殺を遂げたときに、自衛隊は永遠にアメリカの傭兵として終わるだろうと、すごいことを言って亡くなった。割腹したわけですね。これはありていに言いますと、もちろん必要なわけなんですけれども、これは日米同盟のジレンマ、つまり捨てられる恐怖と巻き込まれる恐怖があって、現在、今我々はそういうジレンマに直面し、それで今現在、日本はアメリカの力を使って抑止しようというふうな体制に入っていますので、その逆の巻き込まれる恐怖というのがございまして、これに対する捕捉も十分必要であるわけでございます。

 それから、五番目なんですが、アメリカは、本気で中国と戦争する、できるのか、するのか、やるのか、こういう状況なんですが、もちろんやりますが、言いましたように、統合抑止戦略の下でやるとするならば、アメリカは軍事力は使わずにその他のドメインで入るわけですから、実際に向かい合うのは恐らく自衛隊と中国人民解放軍、この可能性も否定できないというようなところを我々は考えながら戦略を立てなくちゃいけないというのは間違いございません。

 それから、六番目なんですけれども、では、日本はアメリカの軍事的影響力から脱することができるのか。

 我々は、戦後、吉田茂総理のときから、私も中曽根総理のときから十年間一緒に働かせてもらいましたが、特に戦後政治の総決算というところで、目的は、日本が防衛力を持てるかどうか。本当に、自分のことを考えて自分の国益に基づいて自分の戦略を展開し、アメリカの戦略と一緒に重なった部分で日本がそういう防衛戦略を展開できるのか。

 よく、私の友人のマイケル・グリーンと、それからアーミテージと何年も岡崎大使の下で話し合ってきたんですが、いわゆる米英同盟型に我々は同盟体制をグレードアップできるのか、多分これなんですね。日米同盟は不可欠なんですが、ただ、自分独自の防衛戦略ができるかどうか。これは、パワーシェアリングということで私とマイクは言っていましたが、そういうようなことでございます。

 台湾有事のシナリオ、これはもう本当に百も二百もあって、いろいろなシナリオができるんですが、簡単に言うと三つに分けられると思います。中国勝利、米国勝利、それから引き分け。いずれにしましても、中国勝利の場合には、第一列島線を中国が突破して第二列島線まで来るわけですから、ちょうど我々の今いる東京の真下の小笠原ぐらいまでの第二列島線上に中国の艦船、海警、それから漁船が何千隻と現れるような状況になるわけです。これはどうしても阻止しないといけないわけですが、ただ、その状況はいかに、そこまで考えなくちゃいけません。

 ちょうど、アンドリュー・マーシャルがネットアセスメントで、アメリカの国防総省で百年の戦略を立てましたが、そこまで、我々は少なくとも五年、十年先まで考えなくちゃいけないというようなことでございますので、いずれのシナリオでも台湾から米軍は引かざるを得ないことに中長期的にはなるんじゃないかというようなことが考えられるわけでございます。

 あと、残りなんですが、核シェアのところで一点だけ申し上げますと、アメリカで盛んに行われていますのが、ケネス・ウォルツとスコット・セーガンの論理がありまして、核を持った方が戦略的に安定すると論議が行われているんです、アメリカでは。これが全く日本では報じられていない。この学者が何百人という具合にアメリカにおります。NATOにもいます。こういうふうなことを考えながら、我々は戦略的安定のために逆の方向も考えなくちゃいけないというふうなことでございます。

 残り時間が迫ってきましたので。

 それから、バイデン政権後のことも我々は考えなくちゃいけないわけですね。アメリカにいる私の友人たちから電話がありまして、本当に日本は大丈夫か、アメリカの戦略に乗って、いや、バイデン政権の戦略に乗って政策は展開しているが、もしトランプが現れた場合どうなるんだ、真逆になるんじゃないかと。ロシアともう一回手を結び、それから、トランプ大統領のやったことは、同盟ではなく、アメリカ・ファーストをやり、しかも、ロシアとそういう具合にもう一回手を結び直し、中国とはディールするんじゃないか、そうしたときに、我が国ははしごを外された段階でどうするんだというふうな声が、実は民主党政権の研究員から上がっているわけでございます。

 最後なんですけれども、こういう具合なことを述べてみますと、我々は絶体絶命のピンチにあるような状況に立たされているわけでございまして、しかし、これを、考えてみるならば、戦後七十八年間アメリカの影響力からなかなか脱し得ない日本が脱する千載一遇のチャンスだとも考えられるわけで、これはまさに、解答から言いますと、ビスマルク的な外交戦略を展開し、それで日本がバランシング、バランサーとなればいいわけでございます。

 これはイギリスが取ってきた歴史的な知恵でございますけれども、そういうことをやりながら、日本は戦略的地位として台湾とアメリカの間に立つ国でございますので、これほどいい戦略的地位、若しくは地政学的地位を持っている国はありません。したがって、日本が中心となり、アメリカと中国をバランシングする。

 最後に、そういうことで、日本は幕末と同じような状況に今立っているわけでございまして、こういうふうな弱肉強食の時代でありますところで、我々は、特に、日本の独立を守るために、とにかく、強く、それからしなやかに、周到に、時にはマキャベリ的に振る舞う行動をしなければ生き残れないというふうなことだと思っております。

 以上で、時間になりましたので終わります。

 以上でございます。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、清水公述人にお願いいたします。

清水公述人 ただいま御指名をいただきました連合の清水でございます。

 本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝を申し上げます。

 連合は、資料の冒頭にあるとおり、働くことを軸とする安心社会を目指しております。

 本日は、働く者の立場から、必要な政策について申し述べたいというふうに思います。

 初めに、現下の経済社会の課題認識について申し述べます。

 まず、世界に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵攻から一年が経過しようとしています。そのような中、今年五月に広島でG7サミットが開催されます。サミットでは、ルールに基づく国際秩序、国連憲章の原則、人権、平和、国際協力へのコミットメントを今こそ世界に発信すべきであり、日本は議長国としてその中心的な役割を果たす必要があります。加えて、ミャンマーにおける重大な人権問題が風化しつつある今、アジアで唯一のメンバーとして、民主化の進展を着実に進めるための積極的な支援強化を求めたいと思います。

 次に、我が国に目を向けると、昨年来の資源、エネルギー、原材料、食料品を中心とした物価高騰が、とりわけ低所得者層の暮らしや中小企業の経営に大きな打撃を与えています。また、我が国では、三十年余りもの間、平均賃金の水準向上が見られず、二〇二二年の出生数は統計開始後初めて八十万人を割り込むことが見込まれるなど、経済社会の構造的課題は深刻さが増しています。

 今こそ、このような構造的課題の解決に向けた抜本的な対策を示す必要があり、個別の論点について連合の考え方を申し述べたいと思います。

 初めに、賃上げ実現についてです。

 連合は、「くらしをまもり、未来をつくる。」をスローガンに、二〇二三年春季生活闘争を日本の未来をつくり変えるターニングポイントとすべく取り組んでいますが、その成否の鍵を握るのは、雇用労働者の七割が働く中小企業と、四割を占めるパート、有期、契約などの非正規雇用で働く仲間の賃上げ実現であります。

 資料三ページを御覧ください。

 中小企業の賃上げを実現するには、労務費を含む価格転嫁が実現できるかに懸かっておりますが、パートナーシップ構築宣言の状況を見ると、資本金三億円超の大企業の宣言数は一千百十一社で、全体の一割にも満たない状況です。円グラフは昨年九月に中小企業庁が実施した価格交渉の調査結果ですが、価格交渉が全くできていない企業の割合は一三・九%と、前回調査よりも三・九ポイント上昇しています。

 次に、資料四ページを御覧ください。

 同じ調査において価格転嫁率を聞いたものですが、コスト全体を転嫁できた割合が五割弱、四六・九%でございます。また、前回調査から上昇し、ゼロ割あるいはマイナスと答えた企業の割合は低下しましたが、ゼロ割やマイナスの企業は、依然として二割、二〇・二%を超えています。

 政府は、パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージに基づき、価格転嫁対策に全力で取り組むとしていますが、中小企業が安心して賃上げできる環境が整っているとは到底言い難く、政府には、大企業のパートナーシップ構築宣言の拡大と価格転嫁の実効性を高める取組の早急な実施を求めたいと思います。

 雇用形態間の処遇格差の是正も同様に重要です。同一労働同一賃金に関する指導、助言の実施件数は、二〇二一年度で一万件を超えています。労働組合は、組合員であるか否かにかかわらず、同じ職場で働く仲間の労働条件向上を要求、交渉しますが、政府には、同一労働同一賃金が全ての職場で実現されるよう、労使双方への周知と監督指導の徹底に取り組んでいただきたいと存じます。

 二〇二三春季生活闘争は、回答引き出しの山場を三月十三日の週に予定していますが、先行組合が引き出す賃上げの流れを労働組合のない企業も含め多くの中小企業などに波及させることが肝要であり、政労使による社会的メッセージの発信なども検討すべきと考えます。

 そして、賃上げと併せて実現すべきは、物価高騰の影響を特に受けやすい低所得者への対策であり、税による所得の再分配を通じた格差の是正が必要ですが、今回の税制改革関連法案には特段見当たらないため、連合として導入すべきと考える施策を三点申し上げます。

 一点目は、租税原則の公平の原則に基づき、金融所得課税を強化するとともに、将来的な所得税の総合課税化に向けた検討を行うことです。

 二点目は、所得税の人的控除について、できるだけ社会保障給付や各種支援策等に振り替え、残すものは、税負担軽減が高所得者ほど大きい所得控除から、所得水準にかかわらず一定である税額控除に変えることです。

 三点目は、マイナンバー制度を活用した正確な所得把握を通じて、早期に給付つき税額控除の仕組みを構築し、基礎的消費に係る消費税負担分を給付する消費税還付制度や、社会保険料、雇用保険料における労働者負担分の半額相当分を所得税から控除する就労支援給付制度を導入することです。

 次に、子供、子育て政策について申し上げます。

 何よりも重要なのは、子供、子育てを社会全体で支えるという認識を共有することです。連合は、全ての子供を平等に社会全体で支える仕組みの充実を通じ、子育て世帯が応援してもらっていると実感できる社会の実現を求めています。

 妊娠期から寄り添う伴走型相談支援など、子供、子育て支援の仕組みは拡充されつつあるものの、当事者の実感にはまだまだつながっておりません。子供を育てたいと考える全ての方にとって子供の養育や教育に係る費用の負担は大きく、将来の生活設計に不安を感じています。そのため、児童手当は、保護者の所得の多寡にかかわらず、全ての子供へ支給すべきと考えます。

 教育費についても同様です。家庭の所得格差が教育機会の格差となってはなりません。学習指導上必要な教材や部活動など、学びに係る費用は社会で負担すべきと考えます。また、高校の無償化は年収要件を撤廃すべきであり、高等教育においても学費の低額化や奨学金制度の拡充が必要です。

 さらに、仕事と子育ての両立には保育サービスの確保が不可欠ですが、都市部を中心にいまだ待機児童問題が解消されておりません。特に放課後児童クラブは、一万五千人を超える待機児童が存在しています。

 加えて、保育施設における児童虐待や不適切な保育に関する報道が後を絶ちません。その背景には、保育士等の人材不足、重い業務負担、業務に見合わない処遇などの課題があると考えます。配置基準を見直すなど、これらの課題を早急に改善し、安心して長く働き続けられる労働環境を整備することで、保育人材を確保していく必要があります。

 なお、子ども・子育て関連三法の附帯決議で確認された、保育等の質の向上を図る〇・三兆円の財源が確保されないまま現在に至っていますので、早期の確保を求めます。

 その上で、改めて、社会保障・税一体改革の原点に立ち返りつつ、子供、子育てを社会全体で支えていこうという今、政府の子供政策の強化で十分なのかを国会で明らかにするとともに、国の責任において必要な財源が確保されることを求めます。

 次に、曖昧な雇用で働く就業者の法的保護の拡充について申し上げます。

 現在、政府においては、フリーランスに係る取引の適正化等に関する法律案が検討されていると認識しています。報酬支払いの遅延や一方的な業務内容の変更等のトラブルが頻発する中、本法案は就業者保護に資するものと評価をしております。他方で、仲介事業者に対する業規制、実効性ある履行確保措置など、検討すべき課題は多くあると認識しています。

 フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するためには、実態として労働者性が認められる場合は労働関係法令が適用されることを周知徹底し、厳正な指導監督を行うことが必要です。加えて、労働基準法における労働者性の判断基準を社会の実態に合わせて見直し、法的保護の拡充を図ることが喫緊の課題だと考えます。

 次に、労働移動、リスキリングについて申し上げます。

 政府は、成長と分配の好循環の実現に向け、労働移動の円滑化、リスキリング、構造的な賃上げに一体的に取り組むとし、人への投資に五年間で一兆円の予算を確保するとしています。

 人への投資の抜本的強化が必要との認識に相違はありませんが、成長と分配の好循環は労働移動のみで実現するものではなく、むしろ、リスキリングを含む能力開発と処遇改善による雇用の質の向上を軸に実現していくべきと考えます。

 成長分野等への労働移動については、労働者自らが移動を希望したくなるような移動先の処遇や安定した雇用環境の整備が何より重要と考えます。

 なお、労働移動促進という観点から、解雇規制や労働法制の緩和につながるような議論がなされることがあってはならないと申し上げておきたいと思います。

 リスキリングについては、労働者や求職者個人への支援策拡充はもとより、企業を通じた支援策も、企業の成長に資する人材育成支援として、引き続き維持、拡充が必要と考えます。その上で、これら施策を実効性あるものとするには、企業等のニーズを踏まえた対応が重要であり、訓練プログラムの充実や中小企業等に対するノウハウ支援を行い、全体的な底上げを図る必要があります。

 また、全ての労働者にひとしく能力開発等の機会を確保していくことが重要です。とりわけ、非正規雇用で働く者への人への投資は、処遇改善、正社員転換、キャリア形成支援に資するよう、企業の取組に加え、政府による支援の拡充が不可欠と考えます。

 次に、GXの推進について申し上げます。

 国際公約と我が国の競争力強化、経済成長の同時実現を目指すGX推進法案が今国会に提出されました。

 資料の五ページを御覧ください。

 連合は、GXの実現には公正な移行を通じた働くことを軸とする安心社会の実現と連携させることが必要であると考えますが、昨年末に確認されたGX実現に向けた基本方針にある公正な移行が、GX推進法案では明示されていません。

 また、基本方針に示された方向性を具体化するためには課題も残されており、現時点で連合の考える懸念点を三点申し上げます。

 一点目は、失業なき労働移動の実現についてです。

 雇用形態に関わりなく学び直しの機会が担保されるとともに、その間の生活を保障する資金援助や住宅補助など、重層的なセーフティーネットの構築が必要です。また、中小零細企業の雇用への影響に対しては、サプライチェーンだけでなく、国や地域での目配りと強力な支援が必要です。

 さらに、今後の政策立案に当たっては、政労使を含む関係当事者が加わる社会対話の枠組みが国、地域、産業レベルで行われるとともに、地域脱炭素化や産業移転に伴う地域経済の在り方を含めた分野横断的課題の深掘りも重要であり、各省庁が連携した推進体制を求めます。

 二点目は、GX経済移行債の投資の対象についてです。

 基本原則の一つである国内の人的、物的拡大につながるものに、付加価値の高い、グリーンでディーセントな雇用の創出にもつながるものとの要件を加えるべきと考えます。

 また、投資を受ける企業は、いわゆるESGのS、社会的責任や、G、健全な企業統治の側面においても法令遵守や人権に関するデューデリジェンスが確立されていることを前提にすべきであると考えます。

 三点目は、カーボンプライシングについてです。

 既にエネルギー価格が高騰している中、創設される賦課金や排出量取引の下での事業者の負担水準など具体的な制度の検討においては、現行制度の見直しも含め、労使を含む関係当事者の意見を取り入れ、丁寧な議論を進めていただきたいと思います。とりわけ、負担は特定の産業だけに偏ることなく、広く国民でなされるべきであり、事業者が適正に価格を転嫁できる環境整備も必要となります。

 次に、日本社会のありようについて申し上げます。

 社会の根底には、平和、自由と民主主義の普遍的原理、そして人権の尊重が貫かれていなければなりません。政府の目指す多様性のある包摂的社会や、連合が目指す多様性を認め合う社会を考えるとき、先日の元総理秘書官の発言は、時代錯誤かつ人権意識が希薄であり、断じて許されるものではありません。

 資料六ページを御覧ください。

 G7各国の状況を見ると、性的指向、性自認に関する差別を禁止する法律を持たないのも、同性婚を認めていないのも日本だけです。G7議長国であるにもかかわらず、日本は世界の潮流から大きく遅れている状況です。

 一方で、同性カップルを婚姻関係と同等に認めるパートナーシップ条例は、二〇二三年一月十日時点で二百五十五自治体で制定されており、人口カバー率は六五・二%です。これは、政府の政策の遅れを自治体がカバーしている状況と言えます。

 同性パートナーの権利保障のため事実婚に準じた扱いとすることや戸籍変更要件の緩和など、性的指向や性自認に関する課題の解消に向けた民法の整備と、差別を禁止する法律の早期制定が求められます。

 また、G7各国の中で選択的夫婦別氏制度を認めていないのも日本だけです。

 資料七ページを御覧ください。

 連合の調査でも、夫婦の姓について、同姓でも別姓でも構わないと答えた人が六四%に上り、多くの人たちが選択的夫婦別氏について容認していることが分かりました。

 一九九六年に法制審議会が選択的夫婦別氏について法律案要綱を答申してから二十七年、今こそ、多様性を認め合う社会の実現に向けて、選択的夫婦別氏制度を導入すべきときと考えます。

 最後に、あらゆる差別を禁止し、国際社会における差別禁止のスタンダードと言える、ILO第百十一号条約について申し上げます。

 第百十一号条約は、一九五八年に採択されたもので、百七十五か国が既に批准しています。しかし、日本はいまだに未批准であり、世界から見て周回遅れのランナーと言える状況です。

 政府が取りまとめたビジネスと人権に関する国別行動計画に基づき、日本が人権を尊重しているということを国際社会に示す意味でも、ILO第百十一号条約の早期批准を強く求めたいと思います。

 以上を申し上げ、私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、井上公述人にお願いいたします。

井上公述人 私は、ただいま九州の福岡県で旅館、ホテルの組合の理事長として務めております。そして、この度、全国の旅館、ホテルの組合の連合会の次期会長として、ちょうどこの二月に選出をしていただき、この春以降からその職を務めさせていただくという大変若輩な人間でございます。

 さて、私の宿でございますが、九州の福岡県そして大分県の県境の朝倉市というところにございます。目の前には、九州一の大河、筑後川が流れております。その筑後川の川原で、昔のことですから、鶴が湯あみをしたということで、原っぱに鶴ということで原鶴温泉と名づけられております。

 私の宿の創業は明治十八年、一八八五年でございます。明治、大正、昭和、平成、そして令和と、大変細々でありますが、私の先祖から、この宿屋家業、旅館業を営んでおります。

 その間には、さきの大戦を経験をし、ちょうど私の地元、朝倉、甘木には大刀洗という飛行場がございました。私の亡くなった祖母は、昔のことですから、GHQ、当時の占領軍の方々が私の宿にも泊まりに来ていたそうです。昭和の話ですから、田舎の話ですから、そんなアメリカ軍の方々、白人の方、黒人の方を初めて見たということを私によく話をしてくれました。

 そして、敗戦後、昭和二十八年には、その九州の大河、筑後川が大氾濫を起こして、私の宿も全流したそうです。それから何とか歯を食いしばって、大きな水害を経験し、再建し、ちょうど昭和四十年代、五十年代に、今のいわゆる鉄筋コンクリート型の旅館として何とか親から引き継いで、現在に至っておる次第でございます。

 近年を考えますと、特に私ども九州では、熊本地震の大きな災害がございました。そして、私の地元でも、ちょうど衛藤先生、いらっしゃいますけれども、日田も含めた九州の北部豪雨というものがございました。

 そういったような経験をしてきたわけでございますけれども、これまでそういったような大きな経験がございましたが、このコロナの三年間は、私のような、明治とか大正、昭和から続く旅館の仲間にとっては、大変厳しい状況の期間を過ごしてまいりました。

 私は、日本の宿文化というのは、それ自体が、世界中が憧れる、世界の人たちが憧れる、そして日本が世界に誇り得る最大の売りではないかと思っております。先人の方々がつくり上げてきたすばらしい文化を将来に引き継いでいく責務があると考えております。

 このコロナの三年間、コロナの発生時より、緊急事態宣言や蔓延防止法など度重なる発令により、人の流れ、人流が止まりました。当然ながら、私ども旅館業、宿泊業は、お客様を迎える、そして初めて仕事になる、そういったことからすると、大変多くの機会損失がなされました。

 さらに、一番つらかったのは、先ほどから連合の方々もお話ししていますが、お仕事に来ていただいている従業員の方々、パートさん、アルバイトさん、その方々に、お休みを、仕事をしなくていい、コロナがうつるからということで出勤を止める、そういったような大変心苦しい思いもしてまいりました。

 しかしながら、ここにお集まりの国会議員の先生方、そして観光庁の皆様が、このコロナ禍を経験しても、観光が国の成長戦略の柱である、地域活性化の切り札である、そういったことに変わりはないということを御発言をいただいたり、そういったお言葉に本当に勇気づけられて、我々もそのことを信じてやみません。頑張ってまいりたいと思っております。

 旅館は千三百年を超える歴史を有するとともに、我が国が、長い歴史の中で、世界に類を見ない、独自の宿泊形態、宿文化をつくり上げてまいりました。国が観光立国を目指すとともに、世界でも我が国の観光が大変注目をされている昨今、日本の自然や、また、和食を代表とする食事、神社仏閣、様々な文化遺産など、魅力が先生方の御地元の全国津々浦々にあると言えます。世界でオンリーワンの宿文化も、我が国の、ある意味ではキラーコンテンツであると確信をしております。

 現在、ハイアットとか、いわゆる世界で有名な外資系のホテルチェーンも旅館のブランドを立ち上げようとする動きがございます。まさに、そのことは、世界中が旅館に注目し始め、我が国の宿に着目をしているという証左であると考えます。外資系の資本がよいとか悪いとか、そういったのは切り離し、まさに事実として、海外の人々、そしてその企業が我が国の宿の魅力に気づき始めているという事実があります。

 でも、残念ながら、我々日本人、日本の人々、そして何よりも我々旅館の経営者が、この魅力についてまだまだ気づいていないという事実もございます。例えて申すならば、外見だけ旅館のような宿を造ることは技術的、建築的には可能かもしれませんが、長い長い歴史に基づく、そして地域の伝統、文化、価値に基づく、地域に根差した、兼ね備えた旅館が一度なくなると、もう二度と再生することは不可能でございます。

 いろいろな地域の旅館は、我が国の宿文化、地域の歴史、文化に裏づけられた固有のストーリーが集約された、地域のストーリーが集約されたショーケースであると考えております。

 こうした背景を踏まえて、国の成長戦略の柱、地域活性化の切り札と言われる宿泊産業は、宿を中心とした地方創生を実現させ、強い責任感を持って取り組まなければならないと考えております。

 たくさんの課題が山積しているのも事実でございます。今後は、こうした課題を一つ一つ解決していくことが必要でございます。コロナ禍で大きな打撃を受けた宿泊産業でございます。いち早く立て直す、そういうことが大事であります。

 この場をかりて、いろいろなお礼を申し上げたいことがございます。

 コロナ発生時以来、政府の皆様、先生方には、雇用調整助成金の支給やゼロゼロ融資の実施、我々の日々の商売、日々の雇用、キャッシュフローを支えていただきました。GoToキャンペーン、県民割、ブロック割など旅行支援をたくさん講じていただき、インバウンドの需要が消滅した中で、それに代わる国内需要の喚起をしていただきました。持続化給付金や宿泊事業者による感染防止対策など、直接的な支援の形をしていただきました。そして、経産省の事業再構築補助金でございますが、多くの事業者がワーケーションの施設やグランピングなど新しい取組を始めることに、大変前向きに御支援をいただきました。

 そして、この度の高付加価値化事業では、令和二年度に五百五十億円、令和三年度に一千億円、さらに、昨年末に御成立をいただいた補正予算では、一千五百億円という大変破格の御予算を組んでいただきました。我々、宿のリノベーションを通じた地域の面的再生、高付加価値化を大いに御支援をいただいたところであります。

 私の地元である福岡県の原鶴温泉でも、この高付加価値化補助金を利用させていただいております。

 先ほどお話ししましたが、さきの九州北部豪雨等で、私の後輩の宿、泰泉閣という旅館がありますが、そちらもなかなか投資ができなかった、なかなか金融機関がお金を貸さなかったわけであります。それも、今回のこの高付加価値化の事業の採択を受けてからは、何とか金融機関の御理解が進み、融資が実行をされ、そして、ただいま設備投資をしている真っただ中でございます。

 我々の業界もそうですが、人手不足の問題が取り上げられております。今回の高付加価値化補助金に参画した施設は、工事を終了し、新しいお風呂つきの客室だとか、そういったような付加価値のある客室を造ったりして宿の利益が向上したと聞いております。その利益を従業員に還元させて、待遇を従来よりも改善していく、そして、それをもって募集を行う、そういった動きも出てきております。また、よく、スマートフォンでも見られますけれども、多くの我々の宿や施設が写真やホームページを掲載して、若い方々の採用も増えているという話も聞いております。

 これから、人手不足の解消の実現に向け、賃上げの原資を生み出せるよう、高付加価値化やDX支援を通じた収益力向上の下支えをお願いしたい、そのように思っております。

 さて、まだ引き続き、高付加価値化補助金を活用して、賃上げの原資を生み出して人手不足を解消したいと考え、取り組んでいるところでございますが、よくホテル様等で、百室ほど客室があるホテルが、人手不足、ベッドメイキングがいない、そういったようなことで八割しか稼働できない状況もあると聞いております。

 人手不足については、何よりも我々の業界が魅力ある業界に生まれ変わらなきゃいけない、賃金を引き上げるといった自助努力が必要であると思っております。現在宿泊業に従事する人々に、そしてこれから就職を考える若い方々に宿泊産業で働くことの意義や矜持を伝えてほしい、これこそ、国の皆様とともにできる、そういうことを考えております。

 また、宿泊業について、ちょっと懸念する問題について述べたいと思います。

 我々の業界が力を合わせて今頑張っている中、いわゆる民泊でございます、サテライト民泊、つまり、地域の文化を体現していないような宿泊スタイルが推進されております。そういう動きに非常に懸念を持っております。

 先ほど申し上げたように、宿というのは、単に旅行者に泊まる場所を提供することではなく、我々は地域の文化を旅行者に伝達するという目的があります。そういう気概で仕事に当たっておりますので、国の方でも、各地域の自治体の皆様に、これから、こういう違法民泊等を、御理解いただき、取り締まるなど、引き続きの強化をお願いしたいと思っております。

 昨年の十月から水際対策を大幅に緩和していただき、さらには全国旅行支援を開始をしていただき、インバウンドについてはまだまだ回復途上にあるものの、大変大きな目で見ると、国内需要は、対コロナ前で比較をして、同等程度までに回復をしてきております。しかしながら、地域を細かく見ると、大変濃淡、格差があるのも事実でございます。我々の仲間の中には、当面、資金繰りに、やりくりする、大変苦労している旅館もたくさんあるのが事実です。

 政府の皆様には、こうした資金繰りに苦慮している事業者に支援が行き渡るよう、細かい金融措置を講じていただきたい。再度お願いを申し上げたいと思っております。

 人口減少、少子化、高齢化を迎え、消費者の人々の嗜好が大きく変化する中、我々宿泊産業も、こうした時代の波に合わせて変革が必要であると思っております。地域を守るために必要な様々な経営や運営の在り方、つまりは所有と経営の分離、事業継承、事業譲渡、事業再編等も一定は必要になってくると思っております。単に金融的な視点での事業再生は絶対にやってはいけないと思っておりますし、旅館を始めとする我が国の宿泊産業の存在意義を深く理解していただいた上で、地域を持続可能なものにするような事業再生の支援もお願いしたいと思っております。

 こうした問題解決と並行して、我々宿泊産業は、今後、より一層地域の方々と結びつきを強め、中心となって地域の再生、地域創生を実現していかなきゃならないと思っております。

 最後に、国内旅行に求められていくのは、全国どこでも一緒の画一的な地域ではなく、個性あふれる魅力を持った、持続可能な地域にすることだと思っております。地域固有の伝統、文化、価値等に基づく魅力を生かしたまちづくり、そして、そうしてでき上がった地域が持続可能な地域となるような仕組みづくりが求められております。まさに、将来へ引き継ぎ、域内人口の維持、増加につながるものではないだろうかと思っており、今回の高付加価値事業を大いに活用し、地域の再生、地方再生に取組を進めたいと思っております。

 今後とも、観光庁を始めとする政府の皆様方と一体となって、宿泊産業を我が国の基幹産業に、宿を中心とした地方創生を実現させる、我々の先人が残してくれたこのすばらしい宿文化を将来世代に引き継ぐ、そのような強い決意の下に、一歩一歩、取組を進めていきたいと思っております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、前泊公述人にお願いいたします。

前泊公述人 皆さん、おはようございます。

 今日は、石破さん、先日、国会での議員のやり取りも聞かせていただきましたけれども、戦争の経験者が中央にいるうちは戦争は起こらないけれども、その人たちがいなくなったらこういう動きになるのかなという懸念を示されていました。まさにその話を、昨日、沖縄でも議論をしてきたところです。我々、沖縄戦経験者たちがいなくなって、沖縄での戦争がまた始まりそうな雰囲気だということで、今日は、その話を含めて、皆さんに是非、傍観者ではなく当事者として安保三文書についても議論をいただきたいということで出てまいりました。

 今日は、レジュメの方を発言要旨ということで提出をさせていただきましたけれども、安保関連三文書ということで、先ほど川上先生からも、捨てられる恐怖とそれから巻き込まれる恐怖というお話がありました。今まさに、捨てられる恐怖から、巻き込まれる危険な水域に日本が入っていこうというような印象を持っています。

 そうならないためにどうしたらよいかということで、我々も、沖縄でもノーモア沖縄戦という取組、あるいは対話プロジェクトということで、台湾や中国の皆さんをお招きをして沖縄で議論をしていただく、そういう取組を始めています。それから、ハブプロジェクトということで、沖縄における、こういう戦争に巻き込まれないために、沖縄を戦場にしないための施設や、あるいは投資や、あるいは国連の機関の誘致、こういった動きまで含めて、本当に鬼気迫る感じで取組が始まっているところです。それから、国会にだけ任せていたら沖縄は戦場にされかねないということで、自治体外交の取組も含めてこれからは展開せざるを得ないだろう、そういった議論も始まっています。

 是非、この問題についても、皆さん共有する形で、傍観者ではなく当事者として取り組んでいただければというふうに思っています。

 国会審議なしの、事実上の閣議決定で軍拡や敵基地攻撃能力というものが決められている、そんな印象を持っています。

 そういう意味では、異次元の軍拡、これは、防衛省から出ている予算書を見ると愕然とするんですけれども、もう戦争が始まったのかというぐらい、一気に一兆円余りの予算が増額をされています。そして、兵器を買うお金も含めて、一気に二倍、三倍に膨らんだ、そういった予算が今後通ろうとしています。

 そういう意味では、有事即応態勢というどころか、もう戦時体制の予算編成が第一歩を踏み出している、そんな印象を持っています。

 これをどう変えていくかです。

 下の方に、国家防衛戦略の全体像ということで、防衛省の資料をつけさせていただきました。

 この中を見ると、赤字で防衛省はもちろん強調しておりますけれども、我が国自身の防衛体制の強化、ここが強調されています。これがまさに、川上先生がおっしゃったように、我が国自身の防衛体制の強化、捨てられたときに困らないような体制かというふうな印象を受けます。そしてさらに、防衛力の抜本的な強化、国全体の防衛体制の強化ということが強調をされています。

 二番目が日米同盟の抑止力と対処力、そして三番目の、セーフティーネットとして、同志国の連携という言葉が出ています。これまでになかった、同盟関係を更に強める形で次のグループ、これが同志国という表現をされています。この中には、豪州、インド、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア等、そして韓国、カナダ、ニュージーランド、東南アジア。

 我々は、軍拡に対して外交力がもう少し発揮されてしかるべきではないかということを注目をしていたんですが、岸田首相が、せんだって外遊をなさって、外交を展開したというふうなことでしたけれども、中身を見ると、この同志国の訪問を繰り返しているんですね。

 並べてみると、これは明らかに中国包囲網をつくろうとしているかのような印象を受けます。そうすると、まさに中国側からすれば、包囲網をつくられて心穏やかではない、これにどう対処するかというような、戦争を惹起するような外交を展開しているかのような印象を受けます。こういうことにならないように。昨日、石破先生が指摘をされたとおり、何のための防衛三文書なのか、この辺りが国民に説明が十分されていない。そのことについては、まさに同感であります。

 読まれて分かると思いますが、異次元の軍拡というのが、宇宙航空自衛隊という言葉が出てきます。宇宙です。これから宇宙の時代、そして、これから軍事衛星をぼんぼん上げていかなければならないという話にもなっていきます。

 それから、海自と海保の融合も出てきます。これは、尖閣問題を抱えている沖縄からすると、今、海上自衛隊が出てきていない、海保で対話をしているがために戦争に至っていないというふうな視点で見ていましたけれども、ここに海自が出てくるということになれば、一触即発の危機すら招きかねないという懸念です。

 それから、沖縄については、十五旅団というのがあります。これは、熊本、師団の隷下にありますけれども、これを、旅団を師団に上げる。今二千五百人を、五千、六千あるいは七千と。師団規模に上げるということはどういうことかというと、師団というのは単独で戦争が遂行できる規模というふうなことを聞いていますけれども、師団化することによって、沖縄での局地戦を展開する準備を進めるかのような印象を受けますね。ここら辺でも、沖縄が非常に危機感を持っているところです。

 今日は、石破先生ほか、岩屋先生、それから衛藤先生、私も記者時代に、御三方、たくさんの指導を受けましたけれども、そういうところでいうと、この師団化の動きについても、沖縄は心穏やかでない状況にあるということをお伝えをしておきたいと思います。

 それから、国是であったはずの専守防衛は、いつの間に敵基地攻撃能力に転換をされてしまったのか。ここに踏み出してしまうと、軍事力は幾らあっても足りないという状況になってくると思います。

 先ほど、トマホークの購入の話もありましたけれども、大量の燃料を入れるとトマホークは果たしてどれだけ運用可能な状況で維持できるのかという話もありました。五百発が本当にこの国を守るに十分な量なのか。

 今、ロシアのウクライナ侵攻の話を聞いていますと、三千発、五千発、あるいは一万発を撃ったけれども、まだ劣勢にあると。今後、ウクライナを侵攻するために、勝利を得るためには、一万発どころか十万発が必要という話も出てきたりします。そうしますと、中国と本当に日本が立ち向かうときに、どれだけのミサイルを準備していくのかという話があります。

 日曜日に、対話プロジェクトで、中国の国民党、それから民進党のお二人をお招きをしましたけれども、核武装についても議論したことはありますかということをストレートに懇談の場でお聞きしました。それについては、やはり取り組んだことがあるけれども、途中で、完成間際でアメリカによって止められたというお話を聞きました。

 沖縄からすると、復帰前に千三百発の核、ミサイルが配備をされていました、沖縄にです。そのミサイルはどこに行ってしまったのかということを何度も確認をしているんですが、これは曖昧戦略の中で、明らかにされないまま、今進んできています。その核が台湾に行っていないという保証はあるのだろうか、そういうことでお聞きをしたことがあります。

 こういう偶発的な戦争勃発の危険性、そういったものが専守防衛を撤回することによって出てこないかということであります。

 それから、戦時体制の構築というところで、今、予算規模を見ると、世界の第三位の軍事大国化というふうな指摘もあります。日本は本当に軍事大国を目指していくのかどうか、この予算委員会の中でしっかりと議論をいただければというふうに思っています。

 予算書を見ると、四兆七千億円から、七兆円規模ぐらいまで後年度負担も増えています。いわゆるローンで武器を買ってきました、これは五兆円ぐらいだったんですが、もう七兆円ぐらいまで増えていくんですね。表に出ている防衛予算の裏側で後年度負担が激増している部分についても、予算委員会の中で議論をいただかなければならないのではないかというふうに思っています。それから、もちろん、一%枠を撤廃しました。二%の設定の根拠はと。

 これも石破先生が昨日質問していましたけれども、答弁を聞く限り、釈然としない、もう少し突っ込んでほしかったなというふうにテレビを見ながら思っていましたけれども、是非、専門家として、国民目線で引き続き追及をしていただければというふうに思っています。

 それから、二枚目の方に行きますけれども、裏面の方に。

 次の課題として、台湾有事という危機が創出をされているかのような印象を受けます。

 危機をあおることによって有効需要が創出されるというのがありますけれども、軍需産業というのは、危機をあおればあおるほどもうかります。そういう意味では、四十三兆円という、今後、莫大な防衛投資を行っていこうとしているわけですから、これは、一体なぜそれだけのお金が必要なのか、この試算の根拠は何かというのがあります。

 今回、予算書をこの議論に当たってお送りいただいたんですけれども、数千億円規模の、四兆とか五兆とかそういう数字が出てきます。その中で、例えば、新たな航空機の購入、戦闘機の購入だと思いますけれども、その数字についても、四千億円とか五千億という、ばくっとした数字が出てくるんですけれども、やはり、この予算委員会では、お買物リストについてもしっかりと出していただいて、それぞれ、その買物が必要なものなのかどうかというのはしっかり議論をいただきたいと思っています。

 前に、衆議院の、同じように地方公聴会で発言をさせていただきましたけれども、その際には、オスプレイの購入、オスプレイについて予算書を見ると、どこにもオスプレイのオの字もない。中を見ると、ティルトローター機と書いてあるんですね。いわゆるティルトローター機というのはオスプレイのことですけれども、これが、最初の年に五機、次に五機、その次に五機、そして二機というふうな形で散らばって書いてあります。これがまた、トータルで幾らということで、軍用機の料金として書かれているんですね。一機当たり幾らか分からない。

 これも、私もワシントンで聞いたら、九十八億ぐらいだというふうに聞いていたのが、予算の中身を見ると、十七機で三千七百から三千六百億円ぐらい。一機当たり二百億円ぐらいになっているんですね。日本が買うとなぜその値段になるのかという、そういった辺りの予算の突っ込みがもう少しあってよろしいのではないかというふうに思っています。

 それから、沖縄の戦場化の話ですけれども、沖縄を戦場にされるというので、学生たちから、もう沖縄ガチャから抜けたい、なぜ沖縄で生まれたばっかりにこういう戦争の話ばかりされるんだ、あるいは基地問題を聞かれ続けるのか、そういうことを、復帰五十年の中で、NHKの朝の番組でこの学生たちのディベートを紹介されたときにこんな話が飛び出して、ツイッターでかなりバッシングをされたというふうに聞いていますけれども。

 沖縄を戦場にしなければならない理由は何なのかということですね。

 この議論を聞いていると、今、ウクライナで東側のドンバスがまさに攻撃を受けていますけれども、首都のキーウの方では普通の生活が続いている、こういうことが出てくると、沖縄は戦場になって、そして東京では普通の生活が続くという、そんなイメージすら浮かんでくるんですね。東京では、今日ももう出勤の時間よ、お弁当を持ったのという話が出ている、ところで、テレビを見たら、今日、沖縄でミサイルは何発飛んだの、何人が死んだの、こんな話をされかねないような、そういう背筋がぞっとするような議論が続けられていくような気がして、こういう問題に対して、もっと当事者意識を持ってほしいというふうに思っています。

 それから、国民保護計画、これもあります。

 沖縄においてミサイル防衛ということで、今日、資料をつけさせていただきましたけれども、資料の四枚目ぐらいに。陸上自衛隊の南西諸島配備です。馬毛島から始まって、奄美大島、そして沖縄本島、宮古、石垣、与那国と、次々に自衛隊のミサイル基地が建設をされています。このミサイル基地は一体誰から誰を守るためのものなのか、何から何を守るためのミサイル防衛なのかというところが非常に気になるところであります。

 これは、話を聞くと、もうあと五分前になってしまいましたけれども、資料をたくさんつけてありますので読んでいただきたいと思いますけれども、ポイントとして、この新聞記事の中にも入れましたけれども、トゥキュディデスのわなというのがあります。新興国家が覇権国家に挑む、その際には戦争になることが多いということで使われている、これはハーバードの言葉でありますけれども、ハーバードの研究者たちがつくった造語のようですけれども。覇権国がむしろ新興国を潰すための戦争をしかけているのかなという、これも川上先生からの指摘がありましたけれども、こういった動きに対して、国民は、じゃ、どういうふうに対応すればいいのか。

 日本がそういうトゥキュディデスのわなにはまりかねないということを懸念をしているところでありますけれども、アメリカの戦争に日本が巻き込まれないようにということを川上先生も指摘をされておりましたけれども、我々も、まずは、国を守るよりも国民を守る安全保障の議論をしていただきたい、そのことがまず基本ではないかというふうに思っています。

 それから、沖縄から見た安全保障の問題でいうと、平時の安保と有事の安保があります。

 今日、私の同行人として、「ゴルゴ13」の原作も書いている平良さんが同行させていただきましたけれども、彼が、漫画で読む地位協定というものを書いていただきましたけれども、漫画しか読まない国会議員の方もいるというので、漫画を描いて作らせていただきましたけれども、その中で強調したのは、DEFCONという話です。日本においては、有事と平時における区分けがないままに地位協定が運用されている。このために、戦時体制において作られた地位協定が国民の権利を侵害し、そして国民の安全すらも脅かすような状況が続いている。

 これは、例えば、資料につけさせていただきましたけれども、訓練の中で、小学校の上を飛んで、そしてヘリコプターが窓枠を落下させる、こういったことが起きないように、この上を飛ばないでくれとまさに政府が申入れをしたにもかかわらず、その上を飛び続けるんですね。日本政府ができることは、こういうシェルターを造って子供たちを守る、米軍の訓練から日本ができることは、その上を飛ばさないことではなくシェルターを造って守る、こういう状況が沖縄では起こっているということです。

 しかも、この普天間基地、いつ返るのかということのめども立たない。そして、その代替施設は、一体幾らお金がかかるのかも分からないという状況の中で造られ続けている。そして、私の研究室から見えます、その写真をつけましたけれども、今も新しい施設がどんどんこうやって造られているんですね。大きな施設が造られているのに、普天間が返るというようなことを誰が信じるのかということです。こういう、二十五年間にわたる普天間返還というこの動きは、もしかしたらフェイクだったかもしれないというふうにそろそろ気がついてもよいのかなという話すら出ています。

 こういう国民を守る安全保障、そのために何の議論が必要かということを今考えていただきたいということで、今日の公聴会の中の意見を陳述をさせていただきました。

 それから、軍は民を守らないというのが沖縄戦における最大の教訓でありましたけれども、今、ウクライナ戦争を見ていると、新たな脅威が出ています。軍は民を守らないどころか、軍は民を盾にする、そして民間地域が攻撃を受ける、そこを戦場にすることによって犠牲者が出る、その犠牲者の数を外に出すことによってNATO軍から武器の供与を更にいただく、国際世論を味方につける、そういう民を盾にしているような戦争のように映ります。

 そういう犠牲を沖縄が受けないためにどうしたらよいのかということを考えているわけですけれども、私は、沖縄は日本におけるまさにカナリアではないかというふうに思っています。この国の中で沖縄が犠牲になるときは、日本全体が犠牲になるときだというふうに思っています。沖縄という地域は、日本というこの国が抱えている問題が全て凝縮された地域です。沖縄の危機を共有することによって日本の危機に対処することができるというふうに思っています。是非、傍観者ではなく当事者として、この問題について注目をしていただければと思います。

 たくさんの資料をつけてありますけれども、是非その中身についてもお目通しをいただいて、実りある議論をしていただけることを期待したいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。辻清人君。

辻委員 おはようございます。自由民主党の辻清人です。

 本日は、川上公述人、清水公述人、井上公述人、前泊公述人におかれましては、御多忙の中、当公聴会にお越しいただき、貴重な御意見を賜り、ありがとうございました。

 また、理事、委員の皆様、質問の機会をいただき、ありがとうございました。

 時間が限られていますので、早速質問に入りたいと思います。

 まさに四者四様で、様々なお話をいただきました。

 今年は明治維新から数えて百五十六年、明治維新から終戦までで七十八年、終戦から現在までで七十八年、ちょうど半分半分でございまして、中曽根元総理が以前行革の話をしているときに、日本が変われたのは明治維新のときと終戦のときの二回だけだというふうな言葉を残していることを私は記憶に覚えていますが、今年はこの百五十六年目で、四人に共通することは、まさに今、我々は時代の大きな転換点に立っているということだと思うんです。

 令和五年度の予算を見てみますと、過去最大の百十四兆円の規模の中で、それこそ、子供政策やGX、DX、スタートアップ、もちろん防衛費についてもそうですが、我が国が直面する内外の重要課題に対してどうにか道筋をつけようという予算編成だというふうに私は考えていますが、それぞれ御意見を陳述された中で重複する部分もあると思いますが、この令和五年度の予算の中で特に評価をしたい部分と課題を、それぞれ四名の方、お一人ずつ、川上公述人から一言ずつ申し述べていただければと思います。

川上公述人 辻先生、貴重な御質問どうもありがとうございます。

 私が今回の予算編成で一番やはり感激したのは、総理もおっしゃいましたが、まさに歴史の転換点である。いろいろな意味があると思うんですが、やはり日本独自の自衛力をつけるというところで、いろいろな、例えば日本の防衛自主産業とか、それから、防衛も、他の国と一緒に防衛装備品も造る、それから、アメリカに一辺倒ではなく、そういう具合の予算配分もしているというふうなところ、それから、自主防衛に当たって、中身の論議というのはもちろんあるんですけれども、その方向性としては、非常に、日本の抑止力をつける、これは間違いないわけですね、これは評価できます。

 あとは、論議すべきところは論議をこちらの方の委員会できちっとやり、先ほど前泊先生の方からもいろいろなことがございました、本当にこういう装備体系でいいのかが一番目、それからこういう予算が幾らぐらいあるのか、その中でもっと安くできないのか、そういうふうなところが私の一番問題視したところでございます。

 簡単ではございますが、そういうことでございます。

清水公述人 予算については、本来、予算編成というのは、根拠となる政策と裏づけの財源が一体的に措置されるべきであろうというふうに思っております。そういった意味では、社会保障費だけがずっと伸びてきた、そういった予算が、個々の施策についての予算が今回振り分けられているということでいうと、確かに、大きな予算の転換をしたというふうに私も思うところはございます。

 ただ、やはり優先順位と必要な議論を十分していただくこと。

 課題となっていることについて言えば、連合はこの間ずっと言わせていただいておりますが、財政規律の強化、それから歳出を含めた不断の見直しですね。プライマリーバランスについて、決めた当時のことをもう一度振り返っていただき、やはり財政規律をしっかりとしていく。将来世代に負担を残してはいけないというところが、一番私たちとすれば申し上げたいところであります。

 財源を安易に国債に依存し続けるということは将来世代にやはり負担をツケ回すことになりますので、そういったことのないように、百十四兆円という過去最大の予算が果たしてそれでいいのかどうか、再度の御議論をいただければというふうに思います。

井上公述人 先ほどから申し上げているとおり、私どもの業界はこのコロナで大変傷んで、いろいろな意味での設備投資がままならない、そういったことがございました。やはり今般の一千五百億という破格の予算をいただきました高付加価値化事業というのは、本当に私どもとしては大変ありがたい、助かっておるということでございます。

 また、今、国内旅行支援等をしていただいておりますけれども、今後、二〇二五年の関西・大阪万博までには、インバウンドの受入れの整備や国内のいろいろな施設の整備等があります。その中には、先ほどの従業員さんあるいは外国人の労働者の皆さん、そういった方の雇用もありますので、我々宿泊業が地域の基幹産業となるべく、潰れないように、倒産しないように、いろいろな需要喚起策とか手当てをしていただければと思っております。

 以上でございます。

前泊公述人 今日、私の方からは、防衛と沖縄関係予算についての評価をさせていただければと思っていますけれども、国会でのこの数字を見ますと、すさまじい勢いで異次元の軍拡が進められている様子が分かるような気がします。これだけ大きな予算をつけるのであれば、もっと物価高に苦しんでいる生活の保障をしっかりしてほしいというお声を、県民からも出ていますし、国民の多くがそういうふうに感じていると思います。この拡大の中で重視されているのが軍事費なのではないかという指摘です。

 それから、これだけのお金が増えている中で、沖縄は、復帰五十年を迎える節目の年、三千億円台を維持していたものが二千六百億円台に落ちています。通常であれば五十年記念の御祝儀相場かなと期待されたところが、むしろ減らされている。じゃ、その減らされた理由は何かというと、政治的なものということになります。知事選があるから、あるいはそういうことで予算を増減をさせるという議論、非常に残念な国だと思います。

 沖縄が抱えている課題、五十年間、所得水準は全国最低のままです。十三兆五千億円のお金を投入したにもかかわらず、最低水準が維持されている、この理由は何なのか。そういう中で、調べてみると、落ちてくる予算、落とされている予算の四八%が本土ゼネコンに還流をするという、そういった数字もあります。ケインズが言う乗数効果がほとんど期待できないような数字の落とし方です。

 お金をつけるだけでなくて、具体的にどういうふうにそのお金が地域に落ちているのかどうか、政策の中で、その政策に反映されている額は幾らか、そういうところまでしっかりと検証をしていただくことが必要ではないかというふうに思っています。

辻委員 ありがとうございます。

 それでは、川上公述人とちょっと外交、安全保障の話をさせていただきたいと思います。

 限られた時間ですが、まさに戦略三文書の改定と併せて、今日、前泊公述人からも、実際、アメリカと日本の関係、分かりやすく言ったら、太極図じゃないけれども、陰極まれば陽に転ずで、近づき過ぎてもいけないし、離れ過ぎてもと。捨てられる、巻き込まれる。

 私は、これは、もっと言えば、明治に日本がいち早く列強の支配から抜け出したときに、G7でも今唯一のアジアの国ですけれども、我々日本人は、思想的に西洋と近いのか、それとも人種的にアジアなのかという、そのジレンマというのは常に私はあると思うんです。すごく個人的な話ですが、やはり、外から日本を見た方で、そのジレンマを感じていない方はいないと思うんですね。それを、明治の方々は脱亜入欧とかそういう言葉で、また、近代でいうと親米保守とか親中リベラルとか、私は、個人的には決してそういった二律背反ではないと思いますし、そういう考え方から脱しないといけないんですが。

 ただ、我々がどう思おうと、アメリカという国はかなり合理的な国でして、大統領が替わるたびに、ここ最近は特に、よくアメリカや欧米は、内政は政権が替わると変わるけれども、外交は変わらないよというふうなことを論評する方がいるんですけれども、私は、個人的には、九・一一以降のアメリカに関しては決してそうではないと思いまして、ブッシュ政権以降、政権が替わるたびに、思想的にも、戦術的には分かりませんけれども、安全保障の戦略的には大きなやはり変化が生じていると思います。

 それで、今年、戦略三文書を書く中にも、恐らく、捨てられる、巻き込まれるの、背景の苦悩というのはあったと私は思うんです。

 ただ、アメリカで、来年、二〇二四年にはまた大統領選挙がございます。ここで誰がどうという私の個人的なあれは控えますが、仮に今のバイデン政権から新たな候補者、大統領が就任した場合、大きな安全保障の戦略的な転換が仮にあったとしても、私としては、日本が、今回、二〇一三年以来の大改定ですから、これはこれとしてしっかりと堅持をして振り回されないようにする、それが大事だと思っていますが、川上公述人のそこら辺に対してのアドバイスと評価をお願いしたいと思います。

川上公述人 辻先生、どうもありがとうございます。

 大変貴重な御意見と御質問だと思いまして、ほぼ私は辻先生の御意見と同一でございまして、本当に今現在は歴史の転換点、先ほど述べられましたように、戦後それから明治維新に匹敵するぐらいの転換点だと思うわけですね。

 先ほど私が述べさせていただきましたように、日本独自の国益に基づいた日本独自の戦略、これは戦略三文書の中に最初にございまして、非常によくできた、私が申し上げるのもあれですが、文書だと思っていますが、ただ、問題は、それが本当に実行できるのかどうか、日本の戦略に基づいて実行ができるかというのが非常に問題で、逆さまに見ると本当は重要性があるんですね。

 つまり、日本の国民の国民保護であるとか、そういうことをなさなくちゃいけないのに、それが、冒頭の方はアメリカと一緒にというか、戦うんだというふうな抑止力強化、これはいいんですけれども、本当に順番の問題で、やはり我々は最初にやるべきことは国民保護であり、もちろん抑止力も必要であり、そこから信頼醸成であるという具合にやるべきだと思います。

 さて、辻先生が御指摘いただいたように、大統領が替わったら、これまで我々は相当振り回されてきたわけであって、これではやはりどうしても駄目だということは我々国民も先生方も十分お感じのところと思うんですけれども、そのためには、これを契機に、日本は独自の、日本国民とは何なんだ、日本の国とは何なんだというふうな基本的な概念にもう一回立ち戻り、我々の先人たちはやってきたわけです、そのしかばねを乗り越えて我々はそういうところに立ち戻り、国益、国家観を見直し、次に日本独自の戦略を立て、決して今の戦略が悪いとは言わないんですが、ただ、あくまでも、冒頭私が申し上げましたように、アメリカの国防戦略があった次に日本の戦略三文書が出ているわけなので、そうではないと。日本のやはり国防戦略があり、アメリカの国防戦略があり、そこで初めて我々はやるんだ、つまり、米英同盟型にグレードアップするというふうなところが一番必要なことだと思っているわけでございます。

 簡単ではございますが、以上です。

辻委員 ありがとうございます。

 ちょっとここで、本当に、時間がもっとあればいろいろ、私は、個人的には、イギリスと日本をよく例える例があるんですが、私はちょっと違うと思っているんですね。同じ島国ですけれども、やはりアメリカとイギリス、その一体感と、日本とアメリカ、そこはちょっといろいろと考えていかないといけないと思っています。

 時間も限られているので、一つだけちょっと井上公述人に質問。

 人手不足。今、恒常的な人手不足です、我が国。これからもっと深刻になる可能性もありますが、今行っている、特に、私も地元に浅草や銀座を抱えている観光地なので、何かちょっと一つアドバイスをいただけますか。

井上公述人 人手不足、もちろん、少子高齢化等によって人口が減っているということがございます。

 一番は、我々の業界、観光業が、そしてまた宿泊産業がやはり魅力あるものということで、私と業界自身もしっかりそれを認識して、そして、ここにお集まりの国の先生方も、また観光庁さんと一緒になって、魅力ある仕事だということをしっかりと訴えていく、そういう必要があると思います。

 また、外国人の労働者につきましては、昨今の為替の影響等、日本で働いても稼げない、そういったような声も聞いて、なかなか日本にやってくる方が、コロナ禍もありまして、少なくなっているというふうに感じております。これはまた、我々がというよりも、大きな意味での、為替も含めた状況によって変わってくるのではないかと思っております。

 以上です。

辻委員 終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 四名の公述人の皆様方におかれましては、本日は、大変お忙しい中、当委員会に御出席を賜り、また貴重な御高見を拝聴させていただきましたことに、まず心から感謝を申し上げたいと思います。

 ただ、質問時間が何しろ十五分と限られておりますので、四名の方全てに質問できない非礼をまずおわびを申し上げたいと思います。

 まず、清水公述人に質問させていただきたいと思います。

 まさに、働くことができるということは、私は社会の安定につながるものだというふうに思っております。

 歴史を振り返りますと、かつてリーマン・ショックの後に、我が国は、円高、デフレ不況という大変深刻な状況で、長らく就職氷河期が続きました。私の子供がちょうどそのときに当たっていたものですから、大変暗い世相、親としても本当に切ない思いをしたわけでございます。

 その後、国の政権が替わり、政策が変わる中で、結果的には全四十七都道府県の有効求人倍率が一倍以上になるということになって、私は、相当これは社会の底上げというか、非常によかったのではないかというふうに思っておるわけでございます。

 そうした中で今を迎えて、少し話が飛びますが、私は、少子化の原因の中で、なかなか正規雇用に就いてそして家族を養える所得、収入が得られない、だから結婚ができないという方もかなりを占めている、そういった話を部会で聞くことが多いわけでありますが、なかなか難しい面があることを承知の上で、希望される方は正規雇用を原則とする社会を我が国は目指すべきだというふうに考えておるわけでございます。

 そうしたことについて連合の皆様の御意見をお聞かせいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

清水公述人 まず、今の若い方たちあるいは女性の方たちの就業に関して、一つの実態としては、やはり大学等を出て一番最初に勤めるのが既に非正規の形という、そういった形でスタートする方がたくさんいらっしゃる、特に、女性の方で四割の方が、そういったスタートが非正規から始まるというような状況がある。

 これは、自ら望んでそうしたということではなく、やはり社会の中で雇用の在り方、そういったものについて抜本的に、女性などが働きづらい状況になっているということは変わっていないということが一つあろうかというふうに思っております。

 社会全体で、確かに、景気が厳しかったときに、雇用を守るということで、連合もそこのところに重点を置きながら、また企業も収益を設備投資やいわゆる内部留保にためていった、そのことが三十年間賃金が引上げにならなかったというところがあろうかと思います。

 そういったところの状況のデフレの部分を、やはり抜本的にステージを変えていく、そういうことが雇用の充実につながっていく、雇用の質の充実を図っていくべきだというふうに思っております。

 以上です。

赤羽委員 ありがとうございます。かつての働く場がなかったところから、働く場は確保される中で質を高めていくというのは、私も全くそのとおりだと思います。

 また、今、若い方々、子育て世帯を見ますと、おおよそほぼ全てのところで、共働き世帯が当たり前の世の中になっていると思います。

 ですから、私は、社会の在り方そのものを、共働きということをスタンダードにする、異次元の子育て支援というのは私はそういうことを言っているのではないかと。

 特に、育児休暇制度、育休というのは、男性も取れるようになりましたけれども、まだまだ十分じゃないところがありますし、保育所待機児童ゼロ作戦というものを、公明党としても、かつて、過去から歴史をかけてやって、相当なところまで進んでおりますし、また、我が党は、子育て応援プランということで、結婚、妊娠、出産からということを発表したばかりでございますが、私は、育休はもう少し柔軟に取れるような、また、その制度の運用も柔軟にできるようなことが本当に大事なのではないかというふうに思っておりますが、その点についての御所見、簡潔にお答えいただけますか。

清水公述人 育休の取得については、昨年十月から、いわゆる育休制度に入る、取れるんですよということ、職場でそのことをしっかりと呼びかけるということ。連合の中の事務局の話で恐縮ですが、いわゆる出産という状況に至った、妊娠が分かったときに、そういうふうに、取れますよ、いつ取りますかという職場の声かけが、やはり取得率が上がっていくんだというふうに思っております。

 特に、男性のということで、やはり男性も含めた働き方そのものを変えていかないと、私も、一日とか三日とか、やっと取れて三日とかしか取りませんでした。今の若い人たちはやはり、一年一年取れるのであれば、一年取り、そして連れ合いさんも一年取る、最初からそういう取り方をする、そういう会社や世の中のありようがあればいいかというふうに思います。

赤羽委員 先日、実は仕事で長岡の市役所に行きまして、長岡市役所で、当時、男性の育休というのは一割しか取らなかった、ところが、国交省のOGの女性の方がアドバイザーとして来て、今は七割以上取るようになったという。これは本当にやればできることだと思いますので、これは官公庁も含めて進めていかなければいけない、こう思います。

 次に、観光、旅行業について、井上公述人に御質問したいと思います。

 三年間を超えるこのコロナ禍で、私は、最も影響を受けている業界は観光業、そして交通業界だと思っております。この観光、交通業界、雇用も九百万人を抱えている大変大きな産業でございますし、加えて、観光業は、裾野も広くて、第一次産業も含めると大変に大きな産業だということでございます。

 当時、私は国土交通大臣を務めておりましたこともあり、この業界の実情をと思って、全国で六十か所のところで、皆様方と一か所二時間半から三時間のタウンミーティングをやらせていただきました。今、公明党に戻りましても、観光立国推進議員懇話会の会長として、今、十五か所で意見開陳をいただいております。

 様々な意見を聞いている中で、改めて、先ほど言われました地方創生のまさに切り札であろうし、我が国の成長産業であり得るべきだ、そのために重要インフラである業界の皆様を潰してしまっているのは本当にもったいない、また、してはいけない、こういう思いでございます。

 一つ目は、よく皆様方から聞かれるのは、三年間のダメージというのは短期間では回復できないんだ、こういうことを言われます。

 GoToトラベル事業、私も実施をさせていただいて、大変感謝もされておりましたし、あの成功があるから苦しいところは何とか耐えられるというお言葉をいただきましたが、ただ、他方で、ああ、なるほどなと思ったことは、百室の旅館は百室以上の予約は取れないんですと。これは当たり前のことなんですね。ですから、短期のカンフル剤を打っても、ある程度の時間がないと三年間の損失は取り返せないというふうに御指摘いただきました。

 加えて、人手が足りなくて、一〇〇%の予約を入れることができないのが実態だ、七割から八割の予約しか取れていないんだ、残念ながらと。こういう声は各所で、ほぼ全所で聞かされております。

 また、全国旅行支援も今やっているわけでありますが、これは都道府県に今はばらまいていますので、四十七のルールがあって、実は大変使い勝手が悪いというような声も聞こえております。

 いろいろあると思いますが、時間が限られておりますので、まず、この需要喚起策、GoToトラベル事業も実は四千五百億円ぐらい年度内に使い切れなくて不用と今なっておりますので、そうしたことは回復してほしいという声も強く聞くんですが、業界として、新年度以降の継続というのは必要かどうかということについて、率直な御意見を聞かせていただければと思います。

井上公述人 赤羽先生がおっしゃるとおり、本当にこの三年間は大変厳しい状況を、我々宿泊業も本当に厳しい期間を過ごしてまいりました。先ほどの予算、四千六百億の件とか、予算化していただいて大変ありがたいと思っております。

 しかしながら、そういった旅行支援も本当にやっていただきたいのが本音でございますし、また、このコロナの前から、様々な私どもに横たわる、金融の問題とか、いろいろあるのも事実でございます。

 私どもは、これから先生の御地元関西でも万博が開催されたりしますので、それまでに、地方にあまねく、いろいろ旅行者に、またインバウンドにも旅していただきたいということから、この宿文化を守り、将来に引き継ぎたい、そして持続可能な商売ができるような様々な支援をいただきたいということがございます。

 本当に、GoToトラベルキャンペーンや全国旅行支援、大変我々業界としてはありがたく、感謝申し上げます。ありがとうございます。

赤羽委員 継続の必要があるかどうか、希望はどうでしょうか。

井上公述人 継続の必要があるというふうに私どもは思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

赤羽委員 あともう一つ、資金繰りについても大変心配をしておりまして、旅館、ホテルというのは装置産業ですから、大体、融資を受けながら仕事をしているというのが常態だと思います。私の地元の有馬温泉の方々も、ほとんどそうです。加えて、このコロナに対して、ゼロゼロ融資もほとんど借りられているはずです。これが、返済が始まって、返済が大変厳しくなっている、資金繰りが大変苦しいと。

 政府としても、これはリスケをするということ、十分対応しろということは金融機関に指示が出ているはずですが、その現場の状況はそうなっているのかどうか。一律には言えないかもしれませんが、お答えできる範囲でお答えいただければと思います。

井上公述人 おっしゃいますように、コロナ前から、我々は、地方のそれぞれの旅館、ホテルで、金融機関、地方銀行さん、あるいは信用金庫さんからそれなりのやはり借入れを起こしているのも事実です。

 先ほどから申し上げますとおり、このコロナで、人流を、人の動きを止めると、これは航空会社だとか鉄道会社さんとか旅行会社さんを含めてですけれども、それでやはり機会を損失したということで、やはりどうしてもキャッシュフローが回らなくなった。それにおいての先生方のお力添えによりゼロゼロ融資を実行していただき、まさにこれから返済の期間もあってくると思います。それぞれのケースによりますけれども、劣後ローンだとか、そういったものを実施をしたり、いろいろな形で債務の方をリスケジュールしていただいたりというのが現実であります。

 これから、このコロナが明けて経済が開かれていく中で、個々における金融問題をそれぞれの事業者は抱えてくるということであります。これについては、私ども事業者だけでは解決ができない問題も多々ございますので、先生方のお知恵をかりながら、様々な方々から御指導いただきながら、この大きな金融問題、そもそもコロナ前からの債務、そしてコロナで借りさせていただいた債務については、何とかそれを御理解いただきながら、我々が生きられるように、いろいろな施策を講じていただければというふうに思っております。

 ありがとうございます。

赤羽委員 私は、我が国の観光立国政策は進めていかなければいけないし、そのための重要インフラだと思っておりますので、資金繰りについては、是非、各地域の運輸局も相談窓口をつくっていると思いますので、御相談いただければと思います。

 また、今日は時間がもう終わりなので質問できませんが、人手不足も相当深刻ですので、外国人労働の問題というものにやはり前向きに向き合わなければいけないのではないか。連合も、所管外かもしれませんが、そうしたことも含めて、官民、力を合わせていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党の渡辺創でございます。

 まずは、お話しをいただきました四人の先生方、本当に今日はありがとうございました。

 予算委員としてこの議論に臨んでおりますけれども、今この国が様々な分岐点に立っているということは事実だというふうに思うんですが、私は元々新聞記者でありましたけれども、政治家がまなじりを決して転換点だと言うときには大概国民への説明がないがしろにされるもので、きちんと国民に理解を得ていくという議論を積み上げていくことが大事だというふうに思っておりますので、今回の公聴会も国民の皆さんの理解に資する場になればというふうに思っているところであります。

 それでは、もし質問が全ての先生に行き着きませんときは、どうか御容赦をいただきたいと思います。

 まず、川上公述人にお伺いをしたいというふうに思います。

 先生のレポート、最近のものもいろいろ読ませていただきました。今日、御説明にもありましたし、先ほど自民党の皆さんの御質問にもありましたが、アメリカがトランプ政権からバイデン政権に替わったことによって、米中関係が大国間の競争から、ある意味では民主主義対専制主義というような体制間の競争に変容した、この位置づけの変化というのは日本にも当然大きな影響を与える、そのとおりだなというふうに思ったところでありました。

 今日も、捨てられるリスク等々のいろいろ話がありましたけれども、今、例えば先日といいますか年の初めの日米首脳会談等にしても、やはり岸田政権はすごくバイデン政権に引っ張られているなという気がします。

 今回の防衛三文書に関しても、先生のお考えの中では、アメリカの政権が替わったときに果たしてこれは効果を持つというか適用が続くようなものになるのかという不安があるというお話がありました。先ほど自民党さんの御質問の中では、変わらないようなものであるというお話がありましたけれども、そこのリスクみたいなものについて先生はどのように課題をお考えか、お伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

川上公述人 渡辺先生、どうもありがとうございます。

 その点が一番重要なことではないかと私も思っている次第なんですが、防衛三文書、これは本当に、誠に立派な文書であると私申し上げたとおりでございますが、ただ、どう運用するかの問題だと思うんですね。

 例えば、いろいろ中にありますように、反撃能力であるとか指揮系統の問題であるとか、それからそういう武器の購入問題であるとか、いろいろな論点があり、これは本当に今の集大成の問題で、やはり論点は非常に的確だと思うんですが、それを運用する際に、仮に今度バイデン政権から違う政権になり、全く違う、先ほど申し上げましたように、トランプ政権になった場合、これは本当に、ロシアと一緒にもう一回トランプ政権は戻って、ウクライナ戦争は終わり、かつ、中国とも大国間戦争に戻った場合、我が国はどうするか。

 この場合、浮いちゃうんじゃないかというような論議はもちろんあるわけでございますが、ただ、今回の防衛三文書に基づいて、日本はいかようにも、つまり、アメリカと一体化しながら、米国のどちらかというと主導権の下に展開する、そういうふうなことを今、岸田政権はやっていると思うんですが、この後の場合は、逆に、自主的なものを用いて自主的に防衛をやり、自主的な外交をし、両方とも転換できるような、内容はすばらしいものだと私は評価しておりますので、そういう具合にやらなくちゃいけない。

 ということは、時の政権がやはり今までの日米関係をもう一回見直しながら、日本独自の政権に転換していく。特に日本は、言うまでもなく、トランプ政権等々になった場合でも、危機的なもの、脅威を考えるならば、三正面、ロシア、中国、北朝鮮、間近にあるわけでございますので、それに対してどう抑止力を持っていくのかというのは全く変わらない。しかしながら、その一方では、本当に我が国は、信頼醸成を得ながら平和外交を展開し、やらなくてはいけない、やはり日本の平和、それからアジア地域の平和というものを率先してやらなくちゃいけない。

 そういう具合に転換できるんじゃないかと考えている次第でございます。

 以上です。

渡辺(創)委員 続いて、前泊公述人にお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほどお話があった中で、傍観者ではなく当事者としての意識を持って議論をというのは、本当に重く受け止めなければならないというふうに思ったところでありました。

 その中で、国民保護計画の欺瞞性というのが今日の資料のところにもあったわけです。

 私、大変御指摘は理解できるところだなというふうに思ったんですけれども、軍隊が国民を守らないというのは、沖縄戦の経験からいってもそれは明らかなわけでありまして、沖縄戦末期の島田叡知事のドキュメンタリーとかを見ても、いかにまさに地方行政が大変な思いをしたか、軍隊との間でどういうことがあったのかということも明らかになると思います。それをやはり感覚的にというか歴史の中でも感じていらっしゃる沖縄の皆さんは、もしかしたら、本土で暮らす我々よりもそこのところには鋭敏な感覚もお持ちだというふうに思うんです。

 先ほどの御説明の中で、ちょっと時間の関係もあって、そこの欺瞞性のところについて十分に先生はお話しになれなかったんじゃないかという気がしましたので、少し補足がありましたら、その辺りをお伺いしたいと思います。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

前泊公述人 御質問ありがとうございます。

 今日、資料の中で、先島配備の問題について資料をつけさせていただきましたけれども、本来、自衛隊を沖縄に配備するというときにどういう持込み方をしたかというと、離島で災害が起こったときに救助する、あるいは救急医療、飛行機で運ぶ急患輸送、こういったものが自衛隊は非常に優れているということで、監視部隊が置かれると、一緒に来た部隊がそういう日常的な災害救助部隊として活躍をしますよということで、実は沖縄も受け入れた島々も多いと思います。

 ところが、災害救助隊がいつの間にかミサイル部隊に変わっているんですね。受け入れたらそういうことになるよという警鐘を鳴らしていた研究者の方も多かったんですが、結果、そうなってしまっている。

 そして、こういう、資料の中にも入れましたけれども、住民を守るという災害救助部隊、サンダーバードが、いつの間にか軍隊としての化けの皮が剥がれてしまう、そういうことになってしまう。そして、倉庫だと言っていたものが弾薬庫に変わり、弾薬庫がミサイル庫に変わる。こういった形でいうと、日本の防衛政策は、最初から表で議論をさせないような形で入り込んでいくという、それはある意味では、地元からすればだまし討ちのような、これはパールハーバーかと言われるような感じになってしまっています。

 そして、その中で、自衛隊のOBの皆さんが、将官クラスがたくさんの本を出されていますけれども、台湾有事の本の中で、国民保護については自衛隊の仕事ではないというふうに書いているんですね。これは私も、沖縄戦を戦った神直道さんという航空参謀、彼が生き残って、こちらで話を、取材したときに、軍は民を守らないというのは本当ですか、そのとおりだと。軍にとって、命令は敵のせん滅であるということです。そして、それが全く同じような形で、自衛隊の将官クラスOBたちが、国民保護は地方自治体の仕事であると言っているんですね。そして今、与那国も含め、石垣、宮古、万が一の際には百隻余りの船が必要になるが、それは事実上困難であるという話になってくる。

 何日かかるのか、十日かかる、一週間かかるという話で、そんな議論の中で、無理だからシェルターをという話になります。まさにドンバスと同じように、ウクライナと同じようにシェルター生活。じゃ何日続くのかと。どこまでそれは、終わるまでいればいいのかと。今、ウクライナ戦争は一年がたとうとしていますけれども、沖縄はどうなのかという話になります。

 こういう、国民を守るための戦争なのか、それとも、国民を犠牲にして、何から何を守ろうとしているのか。国体護持のために戦わされたあの戦争を思い出させるような、そんな戦争をやりかねないというところで懸念があるというところをお伝えしておきたいと思います。

 御質問ありがとうございました。

渡辺(創)委員 ありがとうございました。

 続いて、連合の清水事務局長にお伺いをしたいと思いますが、今国会の議論の中で、本会議の答弁で、また予算委員会でもいろいろ議論になりましたが、産休中にリスキリングという趣旨の岸田総理の発言もきっかけとなって、いろいろな在り方について議論があり、総理の基本認識、政府の基本認識が改めて問われるというような場面もあったんですが、多くの働く子育て世代も連合の中にはいらっしゃるはずです。そういう皆さんの意見を集約をし、環境改善に取り組んでいる立場から、あの発言、そして議論をどのように感じていらっしゃったか、受け止めをお伺いできませんでしょうか。

清水公述人 連合で、働く現場の女性の皆さんから、あの国会での発言、答弁等を含めて、やはり、産休や育休中に学び直しなどはちょっとできる状況ではありません、そもそも制度の意味を理解されていないのかという、当初は相当、怒りの声が届いたところでございます。

 産後の休暇については、労働基準法の母性保護の規定によって、産後八週間、原則、働くことができないということになっています。育児休業は子を養育するための休業であって、学び直しに使える時間については、そういった余裕は全くないというのが本音のところの多くの声でございました。

 また、先ほどもありましたが、男性の育休の取得期間が短いこと、このことも、子育てをする女性への負担が多くなる要因ともなっているということです。固定的な性別役割分担について払拭していく、そういった職場が必要であろうというふうに思っています。

 加えて、現在、段階的に改正されています育児・介護休業法を職場に定着させること、そのことこそがリスキリングとか様々言われていること以前に行うべきことではないのかというのが、連合としての声の集約での考えでございます。

渡辺(創)委員 清水公述人にもう一問お伺いをしたいと思うんですが、同じく今国会では、性的少数者の見方をめぐる差別発言がきっかけとなり、法制度の在り方等も議論になりました。また、今日、御意見の中でもありましたが、選択的夫婦別姓等についてもいろいろな声が上がっているところです。

 連合の皆さんは、多様性を認め合う寛容な社会をつくっていくということは大事だというふうに思われて取組を進めていらっしゃるというふうに思いますけれども、幅広い労働者、いろいろな環境に置かれている労働者の方々を代表する立場で、この議論についても、どうお感じか、お伺いしたいと思います。

清水公述人 連合は、このことについての、差別発言についてということで国会でも議論になりましたが、かねてから、性的指向あるいは性自認に関する差別については、禁止する法律の制定が必要だということを目指してきました。当事者団体の皆さんともそういった形で連携をして、この間、ずっとやってまいりました。

 今回の差別発言については、特定の人々にのみ配慮が必要だという、そういう課題として捉えるのではなくて、全ての人の対等や平等、人権の尊重に根差した課題と捉えていただきたいというふうに思います。国際的な潮流にのっとった大きな考えの下、まさに国会での議論を進めていただきたい。

 また、選択的夫婦別氏制度の導入については、二〇一五年あるいは二〇二一年の最高裁の判決が既に出ております。そこで国会に対して議論を促している、それが判決でございます。しかしながら、これまで、何ら措置について議論がされていない。

 今回、様々、理解増進も含めて議論されるということですが、国会は真摯に、速やかにやはり立法措置を講ずるべきであろうと三権分立の立場からも促されていることを大事にしていただきたいと思います。

渡辺(創)委員 最後に、井上公述人にお伺いしたいと思います。

 私、九州の宮崎ですので、実は朝倉に行ったことがありまして、秋月城址があったり、行った季節にもよったかもしれませんが、桜も大変きれいな町であったと思います。コロナ禍で、本当にいろいろな御苦労があられたかというふうに思うところです。

 今日、御意見の中でもありましたが、これから宿文化をいかに価値を高めていくか。また、今、インバウンドもどんどん戻ってきています。この宿文化とインバウンドをどう連携させていくか。その辺り、どうお考えかをお伺いしたいというふうに思います。

井上公述人 ありがとうございます。

 インバウンド、これから、まだまだということではございますけれども、地方にはいろいろな歴史や文化を持った温泉地や観光地があります。そういったものを今、とかく、コロナ前は、東京、大阪とか名古屋、大都市圏、九州でも福岡は特に集中していたということでございますので、その辺を、もっと情報発信等を、特に国交省さん、観光庁さんと一緒になって広めていって、そして、いろいろな、多言語対応だとか様々な部分で、日本の独特のおもてなしというものを更に見詰め直して、打ち出していきながら、あまねく日本の地方にも足を運んでいただけるような施策を講じていただきながら、我々業界としても頑張っていきたい、そのように思っております。

 ありがとうございます。

渡辺(創)委員 これで終わろうと思います。

 四人の皆様に改めまして感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

根本委員長 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会の掘井健智でございます。

 公述人の皆様、今日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 早速、質問に移ります。

 まずは、前泊先生にお伺いいたします。

 防衛についてはいろいろなことがありますので、質問していきたいんですけれども、そもそもということで、この後、川上先生にも質問していきたいと思うんですけれども、維新の会は、防衛には強い抑止力が必要、持つということが大事であるということから、この度の政府の防衛力強化については賛成をいたしております。

 しかし、今日は、いろいろな御意見を聞いて勉強していきたいと思うんです。

 安全保障関連三文書の一つ、防衛力整備計画におきまして、島嶼防衛用高速滑空弾の配備でありますとか、また、南西地域における補給拠点の整備、これが明記されたと聞きます。これは、沖縄が戦場として想定されておる、こうお考えでしょうか。

前泊公述人 御質問ありがとうございます。

 まさに、そういうふうに受け止められるような文書になっていると思っています。

 南西諸島において補給基地を強化するという、兵たん基地化という話も入っていますし、それから、離島防衛という名目で、離島におけるミサイルの配備、そして、その滑空弾の配備、それから、長距離弾を置こうということで、これまで射程が五百から六百キロぐらいだったものを、一千五百から二千キロぐらいまで延ばしていこうという話までされています。ということは、敵基地攻撃までできるような拠点に南西諸島を位置づけようとしているかのような文書になっているというふうに思っています。

掘井委員 続いて、川上先生にお伺いをいたします。

 先生から現状認識のお話がありました。

 予算委員会の総理の答弁では、台湾有事は日本の有事である可能性がある、こういうことを政府は思っておるということが明らかになったわけであります。

 川上先生が考えるシナリオ、これは先生が寄稿した文書を読んだんですけれども、アメリカは台湾を国連に加盟申請させる、中国はそれを絶対受け入れない、中国は台湾周辺に排他的地域を設定し、入ってくる者を攻撃するだろう、つまり局地戦になる、そしてアメリカが軍事介入をして中国の弱体化を図っていく、こういうことであります。言い方を変えれば、台湾を使って中国を戦争に引きずり込もうという、こういう戦略ということであります。

 そうであれば、我が国は、まさにアメリカの軍事的影響に直面しているわけであります。安保法制、存立の危機を議論するまでもなく、沖縄の米軍基地が攻撃されるということは、自衛権の発動になります。ここまで想定することが現実なのか、先生の御所見をいま一度聞きたいと思います。

川上公述人 どうも、貴重なこれも御質問ありがとうございます。

 もちろんそうなると私は思っております。

 いろいろなシナリオ、例えば、日本以外に、ランド研究所、私も見たわけなんですが、いろいろなポリミリゲーム、シナリオの一環として、必ず、もちろん日本は有事になるという想定がございまして、危機管理というのは最悪の場合を想定して行わなければいけない、それに対する防衛力の整備であって、そういうシナリオは当然あるわけで、そのうちのどのシナリオになっても、我が国が本土防衛をし、かつ、国民保護をしなくちゃいけないというのは、これは変わらないところでございます。

 先生御指摘の、私の学会でやったシナリオなんですけれども、これは、台湾が国連加盟をするという具合な国連演説を蔡英文がやり、そこから中国側が六地域において軍事的な演習をしながら、いわゆる封鎖を行っていくというところから上がっていくわけなんですが、このシナリオの立て方、何を見たいかというところで、今回のシナリオの場合には、いかに日本政府が戦争を回避することができるのかというところを先生方にやっていただきたく行ったシナリオであり、恐らく、いろいろなシナリオがあって、軍事的なシナリオ、ウォーゲームであれば、これはもう戦争に突入するんだという前提でありますので、突入いたします。

 そうしますと、先生の御質問の、もちろん我が国は有事になりますので戦わざるを得ない。そのときにはアメリカ主導の、今、ヤマサクラとか、いろいろなところでやっていますけれども、そういうふうなシナリオに沿って当然ながら展開するということになりますので、どの段階で政治家の皆さんが戦争を回避できるのか、いや、できなかった場合にはどういう具合に対処しながら国民保護を行わなくちゃいけないか、これは、本当にそういう局面の直前になっていると思います。

 以上でございます。

掘井委員 今、戦争回避の話がありました。

 岸田総理が予算委員会で答弁されております。まず、積極的な外交を展開することによって我が国にとって好ましい国際環境を実現していくことが基本であって、そうした強力な外交には、我が国は自らの国を守れるんだという防衛力というものの裏づけもなければならないということで、防衛力を根本的に強化する、こう述べられております。防衛力の位置づけは、そのとおりだと思っております。

 川上先生、前泊先生、両公述人に質問したいと思います。

 これは、まずは外交が大事だと思っておるんですね。日本は経済の安定を基礎として、やはり日中の信頼関係を構築して紛争の予防に努めなければいけないとは思っております。日本の外交の可能性について、お二人の先生方の御所見を伺いたいと思います。

川上公述人 これも一番肝になる質問だと思います。

 かつて、日本というのは、戦争に入る前、例えば日露、日清戦争、それからアメリカとの戦争もそうなんですが、バックチャネルがあって、やはり戦争をするというか、抑止力を働かせる、裏側では平和外交というのを展開したわけなんですが、今の岸田総理には、そういうふうなバックチャネル、若しくは積極的に対話をする、特に信頼醸成措置、若しくは我々学者との対話、これを積極的になさっている節がどうも少ないような気がいたしております。それはそれでやるべきであり、一方では抑止力を強化する、これが非常に必要だと思っている次第でございます。そういう意味で外交力。

 総理がなさっている外交的な積極的外交、これは立派なんですが、やはり抑止力を強化するという意味での外交力でございますので、その一方で、やはり信頼醸成を発揮する外交力が必要じゃないかと思っている次第でございます。

 以上です。

前泊公述人 外交については、まずマンパワーの問題も指摘をされるのではないかと思います。

 日本の外交官の数、私が押さえているのはちょっと古いデータですが、五千人ほどですね。それに対して、中国は八千人、あるいはフランスだと一万人、そしてアメリカは二万四千人という数字を聞いたことがありますけれども、その中からすると、やはりマンパワーを、外交官をもっと増やした方がよいのではないか。外務省の勉強会でそれを言うと、先生、これは数ではなく質ですよという話をされていましたけれども、その質が伴った上で、もちろん数が必要だと思いますけれども、圧倒的にやはりマンパワーが足りない。

 それから、在外公館の数でも、中国に圧倒的に今もう凌駕されています。数的なものがやはり情報収集力につながってきますし、その現地の情報をしっかり取れるかどうか。これは企業外交も含めて、これまで日本は積極的にそれを展開をしてきたんですけれども、その部分がちょっと弱いような気がします。

 是非、マンパワーも含めて、外交官の数、在外公館の数も増やして、その中で、きちんとした情報収集をした上で外交を展開していただければというふうに思っています。

掘井委員 先生方の御所見を伺って、国会の議論を深めていきたいと思っております。

 次に、清水公述人にお伺いをしたいと思います。

 今日は賃金のお話がありましたけれども、賃金が上がらないのに、企業の内部留保や役員の報酬が増えていると言われております。そして、日本の企業の利益は、本業の売上げを増やすことだけではなくて、人件費の削減、法人税減税などによってこれがまた生み出されておって、そういった利益は、金融投資、海外投資、外に向けてお金が行っている。その一方で、従業員給付の削減であるとか、法人税が減税と抱き合わせになって消費税が上がったということで、消費意欲も減ってきて国内市場が縮小した、だから企業は逆に外に向かって、海外に向かっていく、こういうことが構造化になっているのかなというようなお話があります。こういうことについて、是非御所見を伺いたいと思います。

清水公述人 この間の、いわゆるデフレ、あるいは賃金が上がらないという大きな部分で、先生おっしゃるとおり、人への投資であったりとか賃金にその分が回っていない。特に、一番大きいのは、一定程度、様々な内部留保の中でも、設備投資であるとか、そういったものは次へのチャレンジの上でも必要だという部分は私たちもよく分かるんです。この間、やはり株主への配当、こういったところが非常に多く配当されているということ、こういったところが、やはり賃金に回らない、お金が外へ出ていってしまっているということに、金融課税についても先ほど申し上げましたが、そういったところにしっかりと課税していくのも必要じゃないかと。

 かつて、保育の産業に多くの企業が参画できるようになったときに、国からの補助金は、当初は、何割は人件費に回しなさいということでスタートしたにもかかわらず、あるときからその規制が外れて、そこから企業がどこへ持っていったかというと、配当に持っていってしまった。それで人件費に回らずに、今の厳しい保育の人たちの状況がある。そういったことが構造的に行われてきたのが、この間の、賃金も含めた、日本経済が回らないというか、そこにお金が行っていなかったことの原因であろうというふうに思っております。

 以上です。

掘井委員 ありがとうございます。

 賃金を上げるということは、一つは金融政策、また一つは政治の力、制度改革であるとか補助であるとか、もう一つはやはり現場の力だと思いますので、是非頑張っていただきたいなと思っております。

 同じく清水公述人にお伺いしたいと思うんです。

 我々維新の会は、労働市場全体の生産性と賃金水準の向上を実現していくために、就労意欲の向上と雇用の流動化が必要であると思っております。

 まず一つは、税額控除あるいはベーシックインカムの導入によって、ある程度最低生活を確保することで、これは就労意欲につながるのではないかな、こう考えております。これに対していかがでしょうかということと、もう一点、これまで、新卒一括採用、また終身雇用の中で、若い労働者の意識もだんだん変わってきたように思っております。そういった中で、労働移動時のセーフティーネットをつくって、柔軟性と安全性の高い社会を我々は目指しているわけでありますけれども、そのために労働市場の流動化を考えておるんですけれども、この雇用の流動化について、是非御所見を伺いたいと思います。御意見で結構です。

清水公述人 幾つかございましたが、まず、ベーシックインカムについてでございますけれども、ベーシックインカムについては、全国民に同額の現金給付を行う案や、あるいは、最低限の給付を行いつつ個別の制度による給付も行うなど、様々な考え方があって、共通認識が図られているとはなかなか言い難いところがあろうかと思います。

 他方、障害や傷病、あるいは高齢、シングルペアレント等の課題にそれぞれ対応した支援については、引き続き重要であるということはございますので、ベーシックインカムについて検討するのであれば、現在の各種制度の見直しにつながるということ、あるいは、巨額の財源をいかに確保するのかということを含めて、広く国民的な議論が必要かと思います。

 労働の円滑な移動についてですが、これについては、企業間あるいは産業間での失業なき労働移動、そういった円滑化に向けた指針について、本年六月までに政府が取りまとめるというふうに言っております。能力を開発することとか人材を育成すること、また、雇用の質の向上に軸足を置く、そういった政策が行われる上で労働移動について考えるのであればいいんですが、労働移動だけが目的化するようなことがないようにしていただきたいなというふうに思っています。

 労働者のための政策というのであれば、まず労働者の意見を十分に聞いていただいた上で政策について御議論いただければと思います。維新の皆さんの方から、労働の円滑化、移動について様々なお考えがあることは私も十分承知をしておりますので、是非私たちの声も聞いていただければと思います。

 以上でございます。

掘井委員 終わりますけれども、清水会長にも本当は質問があったんですけれども、是非、五類になったので、これからインバウンドも、内需も期待できると思いますので、頑張っていただきたいな、このように思っております。

 時間が来ました。公述人の皆さん、本日は誠にありがとうございました。

根本委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 公述人の皆様、本日は誠にありがとうございます。ちょっと時間が限られていまして、皆様に質問が行き届かない可能性もございますけれども、どうか御容赦をいただきたいと思います。

 続きになりまして恐縮ですけれども、連合の清水事務局長に何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、春闘の真っただ中で、大変お忙しい中、本日もお越しいただき、ありがとうございます。我々国民民主党、この国会、賃上げ実現国会にしなければならないということで、国会、予算委員会が今主に開かれていますけれども、この場でも様々な賃上げ政策についてお話をさせていただいております。

 やはりそういった意味でも、この春闘での取組というものが日本の労働界全体にとって、経済にとってとても重要だと我々も考えているんですけれども、改めてになりますけれども、この春闘が、これまでの春闘に比べてどういった意味を持っているのか、なぜ重要なのか、あるいは、この春闘でどういったことを実現をされたいのか、その決意のようなものを是非お聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

清水公述人 二〇二三の春季生活闘争、先生おっしゃるように、今まさに真っただ中でございます。二月の末に、それぞれの産別あるいは単組、企業内労働組合が要求書を提出し、三月の中旬頃に山場の回答ということになっています。

 今回、連合としても、五%程度の賃金の引上げをということを求めました。これは単純に物価高に見合う分の賃上げのパーセントを提示したのではなく、二〇一四年から地道に三%を超える要求を出し、二%や二%弱の賃金引上げをかち取ってきた。その継続の上に立って、その上に立って、今期春季生活闘争においては、物価高の分もありますが、まさに三十年伸びなかった賃金を、ステージを変えることによって、今年だけで終わりではなく、来年も再来年も含めて賃金の引上げ、それによって適正な物価高、適正な賃金引上げ、適正に経済が回る、そういったことを私たちは求める、その一番根本的なステージを変えていこうということが、一番の今回の春季生活闘争の目標というか、目的でございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 まさにこの三十年間の賃金低迷、そして経済低迷を打破するための大切な春闘、そして大切な国会だと考えておりますので、是非、政労使連携をしながら賃上げ実現に取り組んでいきたいと思っております。

 その賃上げに関連した質問になるんですけれども、先ほど、中小企業とそしてパート労働者の賃上げが重要だというお話がございました。このパート労働者の賃金をどう上げていくかというところに関して、少し御意見であったりとか方向性、ありましたらお伺いをできればと思うんですけれども、事務局長、いかがでしょうか。

清水公述人 正規雇用の個々の賃金、これが非常に引き上がっていくことが大事だということが一点。

 もう一つ、今お話があったいわゆる非正規、パートタイマーであったり派遣であったり、様々な形での働いている方たち、その方たちの給与が上がっていくことが大事だ。

 この間、最低賃金等についても、毎年確実に積み上げていっています。私たちは、誰でもどこでも千円の最低賃金をということを連合はずっとお話をしてきました。各政党も、選挙のときには、千円どころか、千五百円というような公約も出していただいているところがありますが、是非そういったことに向けて、今現在は東京と神奈川と大阪だけが千円を最低賃金は超えていますが、実は全都道府県を見ると格差が、やはり都市部と地方というか、その格差が縮まっていないところがあるので、そこを一つ一つ縮めていくことが大事だということであります。

 全国の、やはりパートもそうですし、中小企業の、七割が中小企業で働く皆さん方ですので、そのパートの部分、パートタイマーの最低賃金を引き上げることも、中小企業の引上げにもつながっていく。経営者の皆さんはなかなか厳しいというふうにおっしゃいますが、日本商工会議所の方も、この間、最低賃金のことでは若干意見のところでもめるところがありましたが、今回は一つにしてやっていこうということで、二〇一七年以来のトップ同士の懇談もさせていただきました。

 是非、中小企業の皆さん方、そこで働くパートタイマーの皆さん方の賃上げに続くような、そういった形を国会においても環境整備をお願いしたいなというふうに思っております。

 以上でございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるように、非正規の方々が正規になって働いていくということももちろん重要なんですけれども、今やはり必要なこととしては、パートタイマーの方々にも賃上げをしっかりと享受をしていただくということだと思いますので、最低賃金の引上げ、そして一律の引上げということは、我々国民民主党も繰り返しこの国会でも取り上げておりますので、しっかりと実現をさせていただきたいと考えております。

 また、清水事務局長にもう一つお伺いをさせていただきたいんですけれども、少し賃上げから離れないかもしれないんですけれども、子育て支援の所得制限の撤廃の件に関してでございます。

 こちらは、民主党時代に、子ども手当として、所得制限がない子育て支援が一つ実現したことはあったんですけれども、その後、巻き戻ってしまいまして、今、子育て支援施策、様々あるけれども、所得制限がかかっていて、ある所得を超えるとその支援が受けられない、そういった状況がこの日本の現実でございます。

 様々な意見がありまして、高所得者、富裕層には支援が必要ないということをおっしゃる議員の方もいらっしゃいますけれども、そもそもこの所得制限の水準というのは、その所得制限を超えても決して富裕層とは言えない水準になっていますので、その部分はちょっとおかしいのではないかなと思うんですけれども、事務局長にお伺いをしたいのは、所得制限を撤廃することがなぜ必要なのか、所得制限というものはなぜない方がいいのか、そのことについて連合さんのお立場をお聞かせいただければというふうに思います。

清水公述人 この間、働く者の立場から見て、パートタイマー、あるいは、それぞれの家庭で主たる生計を担う者と、それからパートタイマー等で家計を助けるというような形で働く、そのことが、いわゆる一つの家庭のモデルとしてつくられてきました。夫婦であり、一人が働き、一人が未就労で扶養手当を受ける、そして子供が二人。既に、もうその形の家庭制度が第一番ではなくて、家庭の在り方についても、お二人で家庭を築かれている方、お子さんが一人というのが、もうほとんどでございます。

 そういう形であれば、そもそもの、根本の議論が国会でも必要なのではないか。そのことが、今回の所得制限のところ、いわゆる女性の就労を進めるためにもこのことを撤廃した方がいいという意見もありますし、この間、産後、扶養手当も含めて築き上げてきた、大事にしてきた、高度成長の中で大事にしてきたこの制度を単純に外してしまうだけでは、逆に増税になってしまったりとか様々な議論があるので、ここは慎重に議論もしながら、そこについての議論は大きくやっていくべきだということで、連合も、実はこのことについては現在PTを立ち上げて、五月に一定の見解をまとめようと思っています。かなり大胆な議論をしておりますので、是非、国会の中でも、各政党においても御議論いただければというふうに思っております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 夫が正規雇用で働いて奥様はパートで働くという、これまで日本の政治システムが前提としてきたモデル家庭というのは、既に多数派ではなくなってしまっている。その働き方、家庭の在り方の変化に応じて、社会保険であったり社会のシステムを変えていかなければならないということは、これはもう本当におっしゃるとおりでございますので、社会保険改革など、なかなか国会での議論が進んでいないところがございますけれども、また、中身に関してはやはりいろいろな意見があって難しいところはあると思いますが、しっかりと連合さんのPTの御意見も伺いながら検討を政治の方で進めていければというふうに考えております。

 事務局長、ありがとうございました。

 次に、外交安全保障について、一点、二点、御質問をさせていただければと考えております。

 台湾有事の話が本日は何点かありました。川上先生からも、また前泊先生からもありました。

 安全保障の在り方、防衛力の在り方については様々な議論があって、一致できない点も多いと思うんですけれども、日本の安全保障にとって最も重要なのが戦争回避であるということは、これはこの部屋にいらっしゃる方、どなたも一致ができるところだと思います。その戦争を回避するための手段が、それぞれ様々な意見があるということだと思います。

 先ほど、少し外交のお話なども既にあって、かぶることはあると思うんですけれども、川上先生と前泊先生にそれぞれお伺いしたいんですけれども、台湾有事を回避するためのキーとなる、あるいは鍵となる取組、それはそれぞれ何であると考えていらっしゃるのか、川上先生、前泊先生の順にお答えいただければと思います。

川上公述人 防衛省それから我々学会の方でコストインポージングストラテジーという言葉がここ数年間出ておりまして、つまり、もし中国が台湾を侵攻した場合にはそれ以上のコストがかかるというような戦略を打ち立てながら、ここ数年間やってきたというふうなことがございます。

 それの一環として、アメリカの戦略のパシフィック・ディターレンス・イニシアチブに従って中距離弾道ミサイルは展開している、抑止力。それで、核戦略のものも一つある。それから、スタビリティー・インスタビリティー・パラドックス、つまり、核戦略がしっかりしていれば、その下の通常戦力はしっかりするんだけれども、ここが揺らいでしまった場合には侵攻がしやすくなる、そういうふうないろいろな戦略環境上の変化がございまして、その中で台湾海峡の危機というのは目の前に来ているわけで、それをどう回避するか。

 これは二点あると思います。

 一点目は、今申し上げたように、そういうふうな抑止力を強化する、これはやっております。

 二点目の、何回か申し上げましたように、信頼醸成措置、相手の脅威を下げる。

 これは具体的に、例えば、かつて冷戦時代にホットラインを設けるとかいろいろなこともやりましたが、そういうふうな偶発的に戦争が勃発するシナリオ、例えば海南島の事件があって、米軍の偵察機と中国の戦闘機が衝突して、その後に海南島にアメリカの偵察機が着陸して、というふうなことがございます。ここから偶発的に上がるシナリオは十分考え得るわけでございまして、そういうときにどうするかというふうなものであるとか、それから、尖閣をめぐる問題、今日は余り論議になっておりませんが、当然ながら同時並行的に起こります。それから、北朝鮮の韓国に対する侵攻、これも当然ながら起こる可能性はあります。そういうところの危機に対していかに回避するかというふうな、いわゆるありていな言葉で言うと信頼醸成措置であり、そういう対話であり、そういうふうなことをやらなくてはいけない。

 それからもう一つは、グローバリズムが進展しているわけでありますので、一回そのグローバリズムにどう戻して平和というものを構築するのか。

 そういうふうな、やはりもう一つ根底から考え直す我が国の総合的な安全保障政策が必要かと思うわけでございます。

 以上です。

前泊公述人 御指名ありがとうございます。

 今日の資料におつけした、これは朝日新聞の記事なんですけれども、一九五八年、第二次台湾海峡危機の際に、アメリカが中国を核威嚇をしているんですね。核威嚇をすることによって、海峡封鎖の場合には主要都市を核攻撃しますということで脅すんですね。それに対して旧ソ連のフルシチョフ第一書記が、その場合には我々もあらゆる手段で報復をする、そういうことがあって、その際に核攻撃を思いとどまるかと思ったら、何とアメリカは、その場合には我々は台湾と沖縄を失うことになるという、つまり、核攻撃も辞さずという判断をしていたことが明らかになっているわけですね。このエルズバーグ氏の証言を基にすると、アメリカだけに任せておいては、我々は台湾も沖縄も失うことになるということになります。

 日本として独自に外交を展開することによって、アジアにおける有事を起こさせないためには何が必要か。

 私は、非常に大きな話でいうと、アジアは一つのチームをつくるべきだと思っています。EUがあるようにAUをつくってほしい。これは何度も言いますけれども、そういう形で、アジア人の手によってアジア人の血は一滴たりとも流さない、そういうことが必要ではないかと思っています。

 それからもう一つは、フェイクニュースに踊らされないようにアジアで共通のメディアを一つつくっていく、そのことによって常にファクトとエビデンスに基づく判断ができるようにする、これが非常に重要なことではないかというふうに思っています。

 そういうことでいうと、台湾有事は、今、独立の動きがあれば武力攻撃を辞さずという、習近平体制、シー・チンピン体制は言っています。そういうことでいうと、独立ということを議論させないというところが一つの回避策。これはもちろん、七二ですかね、合意があるようですけれども。あと、もう一つは内乱、そしてもう一つが外部からの介入ですね。

 このいわゆる独立と内乱と外部介入、この三つが武力攻撃を惹起する要件というふうになっています。この三つをまずはこの間は起こさないこと。なのに、日本が今、ミサイル防衛という形で外部から介入をしている、そういう状況であれば、むしろ、有事を日本が招きかねないような環境をつくっているような印象も受けます。

 この三つの基本を押さえた上で、日本側として判断をしっかりしてほしいと思っています。

 以上です。

斎藤(ア)委員 皆様、本当にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

根本委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、お忙しい中、四人の公述人の皆様、大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 川上公述人と前泊公述人から、バイデン政権に追従する日本の政府の下で、アメリカの戦争に巻き込まれるリスクが高まっているというお話がございました。これは、与党、野党、双方の推薦の公述人からそういうお話が出ているということを私たちは本当に重く受け止めて、絶対に戦争にしてはならない、こういうことが必要だと思います。

 それで、まず前泊公述人にお伺いしたいと思いますが、岸田政権は敵基地攻撃能力の保有や南西地域の軍事体制の抜本的な強化に踏み切ろうとしておりますが、政府は、その論拠として、軍事力の強化によって武力攻撃の可能性を低下させることができるという考え方をしているわけですね。こうした政府の主張についてはどうお考えでしょうか。

前泊公述人 御質問ありがとうございます。

 軍拡というのは、新たな軍拡を招きます。四十三兆円の軍事費の増額というものが、日本だけが増額をしていくわけではない、仮想敵とされた相手国はそれを上回る軍拡をしてくる可能性があります。そういうチキンレースに、日本がまずそれをしかけているかのような印象を受けますね。

 このままいけばどんどん軍拡がアジアにおいて拡大をしていく危険性があるというところでは、むしろ軍縮に向けた動きを外交として動くべきではないかというふうに思っています。

宮本(徹)委員 加えて前泊公述人にお伺いしたいと思いますが、今、岸田政権が進めている軍拡路線、筆頭に対中国を挙げているわけですけれども、これが日中の経済関係に与える影響というのはどうお考えでしょうか。

前泊公述人 私も大学では経済を教えていますけれども、中国と日本の関係の数字を見ると、取引額を見ると、一九九〇年までは中国の比率は六・四%です。アメリカが二七・四%を占めていました。輸出入額総額に占める割合ですね。一方で、二〇二〇年に入りますと、中国は今、二五%の取引額。アメリカが一四%。二〇二一年です。これだけ依存度が高まっている国と有事を構えるということがどれだけ大変なことか。

 これは福田元首相とお話をした際に、中国の脅威論をかなり強調するけれどもなぜだと言ったら、日本の首相として中国脅威論を言わない人はいないという話をしていました。辞められた後、今もそう思いますかとお聞きしましたら、辞めた後まで中国脅威論を言うばかはいないとおっしゃっていました。

 そういうことでいうと、中国に対する政治的パフォーマンスの中でこういうつき合いをすべきではないと思いますね。これだけ経済的な連携が強まっている中で、軍事的な問題だけを議論することの愚かさというものをしっかりと押さえて、経済的な部分での議論もしっかりとしていただきたいと国民的には思っています。

 以上です。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 更に前泊公述人にお伺いしますけれども、一昨年三月にアメリカのインド太平洋軍の司令官が、六年以内に中国は台湾に侵攻するかもしれないという発言をして、それ以降、日本国内でも、この委員会室でもそうですけれども、台湾有事は日本有事だ、こういう議論が繰り返されているわけですけれども、こうしたアメリカの司令官だとかあるいは日本の政治家の発言について、どうお考えでしょうか。

前泊公述人 重ねての質問、ありがとうございます。

 軍人が発言をするというのは、軍事的な利権に伴う発言であるということですね。

 では、そうでない方たちの発言はどうなのか。

 今、国内においても、コメントをする方たち、防衛研究所の方が多いんですけれども、軍事的な分野からの発言が増えてくれば、当然その危機感は高まることになります。日本は外交官はどこに行ってしまったのかとありますけれども、アメリカに行きますと、国防総省と国務省では見解が違います。そういうところでいうと、違う発言のことについて、アメリカからの発言もしっかりとヒアリングをするべきだというふうに思っています。

 もちろん軍人たちはリタイア後の就職先も考えますから、そういう意味では、軍事的な脅威をあおることによって軍事的な有効需要が創出をされて、そこで仕事が生まれていくことになると思います。七十兆円、八十兆円ものお金を国防費に充てているアメリカからすれば、これはまさにアイゼンハワー大統領が懸念したとおりでありますけれども、軍産複合体の持つ危険性、そこに、最近は軍産官学複合体、そして最近はメディアも加えて軍産官学報複合体がこういう軍事的なものをむしろあおっているような印象すら受けます。ここにどう歯止めをかけるかも、この予算委員会の中で議論をしていただければと思います。

宮本(徹)委員 川上公述人と前泊公述人、お二人にお伺いしたいと思うんですけれども、バイデン政権の戦略にどこまでも追従していくと、日本が米中対立の中で本当に戦争に巻き込まれるリスクというのはどんどん高まるということになっていくと思うんですね。

 そういう点でいえば、アメリカ追従ではなくて、日本が自主的な平和外交を行っていく、そして、米中双方に対して自主的に言うべきことをしっかり言っていく、こういうスタンスでの外交が必要だと考えるんですけれども、お二人の御意見をお伺いしたいと思います。

川上公述人 先生御指摘のとおりだと私も思います。一番目。

 それから、二番目は、しかしながら、脅威というのはどんどん増している。つまり、相対的にアメリカのアセット並びに抑止力が減じている。一番目。

 それから、中国の脅威に増して、中国とロシアが一体化しながら、現在は日本の国の周りをお互いに偵察機を飛ばしている、さらには、ロシアは核魚雷の潜水艦を持ち、脅威は増えているわけでございますので、先ほどの前泊先生のお話なんですが、軍拡、こういうセキュリティージレンマは回避すべきで、軍縮に向かうべきなんですが、そこの過程において、軍備管理という言葉があるんですね。だから、相手の脅威に同じぐらいのこちらはパワーを持って対峙してから、そこから先に軍縮に向かう、この過程が非常に重要でありまして、その過程と、プラス、やはり日本と中国の独自の話合い、これも必要であると思っている次第でございます。

前泊公述人 川上先生の御意見に私も賛成ですけれども、ただ、軍拡に行かないように、日本がまた軍拡をすれば、当然軍拡が進むということですので、そうならないようにしてほしいと思います。

 沖縄から見ていると、日本の政治家でしっかりとアメリカに物言える政治家がどれだけいるんだろうかというのが常に気になるところです。

 例えば、冒頭にもちょっと紹介しました、普天間第二小学校で米軍ヘリが窓枠を落下させるという事故が起きました。その際に、その上を飛ばないようにと当時の安倍首相や菅官房長官がお願いをしましたけれども、アメリカは聞いてくれなかったんですね。聞いてくれなかったので、日本ができたのは、シェルターを造って守ってあげるという、こんな対応です。果たして、日米関係というのは、上下関係がまだ抜けていないのか、あるいは敗戦国のままなのかどうかというのがあります。

 これは地位協定の問題でも、岩屋先生が改定案を作られましたけれども、その際にアメリカにしっかりと伝えておけば、コロナの感染も防げたのではないかというところがあります。アメリカ軍基地から入り込んできたオミクロン株が米軍基地があるところから広がっていった経緯もあります。あのときに、岩屋先生たちが作られた、出入国については国内法を適用するというところができていれば、この悲劇は減らせたかもしれないという思いがあります。

 是非、岩屋先生にも、改めて地位協定の問題についても議論をしていただけるようにお願いをしておきたいと思いますけれども、物言える関係を是非アメリカとの間につくっていただければと思います。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 前泊公述人、今日は沖縄から来ていただいていますので、沖縄に関わってお伺いしたいと思いますが、政府は、自衛隊の抗堪性を高めるとして、司令部の地下化を進めていくということになっているわけですね。来年度予算では、陸上自衛隊の那覇駐屯地などでも司令部の地下化に着手しようとしているわけですけれども、こうした動きについてはどうお考えでしょうか。

前泊公述人 これも、新聞記者時代は見せてもらえなかった施設が記者を辞めると見せていただけるというのがあるんですけれども、いわゆるオフレコの中で出てくる情報というのがいかに確度が高いかというのもありますけれども、那覇基地の中で既にそういうものはあるのではないかという話もあります。

 それから、これは歴代沖縄の総領事にお願いしたことがありますけれども、普天間基地のある一部の施設、穴があって、そこから米兵が湧いてくる穴があるという話を聞かされたことがあります。これは沖縄国際大学の校舎からは見えるんですけれども、その穴は何かということでフェイスブックで出しましたら、核シェルターだという話を聞きました。当然、嘉手納基地や普天間基地にはシェルターがあるという話を聞いていますけれども、これについては、私、歴代沖縄の総領事に、その穴は埋めてほしいということをお願いしました。有事の際になぜアメリカ軍だけが生き残るのか、県民はどういうことになるのかと。

 そういう意味では、同じように、穴のない形で百四十六万人がいるわけですから、それを守れるような安全保障政策は、もう外交で片づけるしかない。有事になったときの犠牲といったものが、どれぐらいの犠牲が出るかという試算まで含めて、むしろ出していただきたいというふうに思っています。

 今日おつけしてある資料の中に、アメリカの資料ですけれども、ジョンズ・ホプキンス大学は、朝鮮有事の際にどれだけ犠牲者が出るかという数字を出しています。なぜこれが防衛政策の中で日本では出てこないのか。台湾有事における国民の犠牲者数をしっかりと出した上で議論をしていただきたいというふうに思っています。

 以上です。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 続きまして、清水公述人にお伺いしたいと思います。

 今、春闘を迎えているわけですけれども、非正規の皆さんの賃金というのは、最低賃金にも大きく左右される面があるわけですね。フランスなんかは、物価が上がれば自動的に最低賃金は上がって、何回も去年は最低賃金が上がっているわけですけれども、日本の最低賃金が上がるのは、慣例的には年に一回ということで、十月に上がった最低賃金では足下の物価上昇率にも追いついていない状況ということになっています。

 こういうことを考えた場合には、国ができる賃上げ支援として、最低賃金の再改定をしていく、もちろん、そのためには、中小企業の皆さん、大変体力の心配がありますから、社会保険料の軽減だとか、そういうことと併せてということを考えなければいけないと思いますけれども、こうした最低賃金、年に一回だけじゃなくて、物価高騰局面では再改定、複数改定、こういうことも必要なんじゃないかと思いますけれども、その点、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

清水公述人 最低賃金については、最低賃金法という法律に定められてできております。定める三要素ということで、地域の労働者の賃金、地域の労働者の生計費、それから通常の事業の支払い能力、これに関わって総合勘案して決定すべきということで、まさに、五月過ぎから丁寧な議論を積み重ねて、七月に向けて、労使そして学者の皆様に入っていただいて決めていくということでございます。

 ですから、地域の最低賃金については、生存権を確保した上で、労働の対価としてふさわしいナショナルミニマムの水準へ引き上げることが直近必要であろうということで、先ほど申し上げましたが、連合が、誰でもが時給千円ということ、今、欧米などではもう既に千五百円、二千円という状況でございますから、そこを一つの通過点に、早く到達することが大事ではないかなというふうに思っています。

 高校の初任給などについても、いわゆる最低賃金に当たる、時給ベースでいえば千円を超えたところに到達するような高校の初任給のレベルにしていくことが必要ではないかというふうに思っています。

 最後に、もう一点。

 地域別最低賃金の地域間格差、先ほど申し上げましたが、A、B、C、D、特にC、Dのランクの幅が広がり過ぎていますので、そこの底上げにつながるような地方への手当て、これについて国でも御議論いただければというふうに思っております。

 以上です。

宮本(徹)委員 時間になってしまいました。井上公述人に質問できずに済みませんでした。

 終わります。

根本委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 今日、十五分、よろしくお願いいたします。

 まず、井上公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。これから全旅連の会長として是非頑張っていただければと思います。我が福岡県からということでありまして、私、原鶴温泉、大好きであります。

 人口減少と相まって、やはりこれからインバウンドの大事さというのが出てくると思います。そういった中、高付加価値の事業を使って、それぞれの地域が本当に付加価値が上がる観光産業をつくっていただきたいと思うわけでありますが、私自身、やはり伝統的な日本というのをアピールするということが重要なのではないかと。全国、金太郎あめではなくて、一律ではない。

 そういったインバウンドの今後の方向性についていかがお考えか、お聞かせいただければと思います。

井上公述人 緒方先生、ありがとうございます。

 やはり、インバウンドと一言で言っても、コロナ前は本当に、例えば中国からのクルーズ船、私ども、特に九州では福岡を中心にたくさんの、もう横浜を抜くぐらいのたくさんの訪日の、中国の、外国人の方が来ておりました。よくそのときに言われた言葉が、爆買いとか、どっちかというと、宿とか日本のそういったお店には落とさずに、量販店で例えば家電製品を買う、あるいはお薬を買う、そういったようなのが散見されるかと思います。

 これから、インバウンドの取組としては、やはり、当然、東京、大阪、名古屋を中心の、大都市圏に人が入ってくる中で、地方に、岩屋先生の別府もそうですけれども、行っていただきたい。

 ただ、よく観光庁さんとも話しているのは、これからのインバウンドの皆様のいわゆる日本に落とすお金、そういったものを、付加価値を上げていきながら、例えば、今まで一万円、二万円の宿泊単価を三万円、五万円に上げていくとか、あるいは、それ以上に、先ほどの外資系のホテルの話、日本の旅館をしていこうとかいう話とか、あるいは、星野リゾートさんとかが新しいブランディングをして五万、十万のお宿を造るとかということで、今動きがあっております。

 そういった意味では、これからは、量より質といいますか、そういった形で、インバウンドの皆さんも余計日本に、若干、為替の影響でまだ中国は本格的回復じゃございませんが、台湾とかあるいはタイ、そういった東南アジアの皆様方も来ていただいて、いろいろな形で日本にお金を落としていただいております。

 稼ぐ力、そして、訪日外国人のインバウンドのお客様からより一層のお金を落としていただくような取組をしていければ、そういうふうに思っております。

 ありがとうございます。

緒方委員 それでは、続きまして、清水公述人にお伺いをさせていただければと思います。

 私、いつも、連合の政策を見る中で、そろそろ改定した方がいいのではないかと思うものがございまして、それがエネルギー政策であります。

 二〇一二年に当時の南雲事務局長がつくられたエネルギー政策、あれは私はすごくよくできていたと思うんですね。ただ、その後、いろいろな事情の変更もありました。十一年たっておりますので、連合として、エネルギー政策の変更を、変更というか改定をすべきではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

清水公述人 連合としては、東日本大震災が起こった次の年にエネルギー政策について一定まとめて、現在もそれに基づいて方針を決めておるところでございます。

 おっしゃるとおり、現在のエネルギーの状況については様々な御意見がございます。特に今、GXの実行会議、うちの芳野会長も出させていただいていますが、エネルギーの安定供給の確保を大前提とした、GXに向けた脱炭素の取組が議論されております。

 その際にも会長の方から申し上げさせていただきましたが、中長期的には、再生可能エネルギーの主力電源化等に向けた投資を拡大するということが基本であろう、短期的には、やはり、現下の厳しいエネルギー逼迫状況から国民生活を守ること、あるいは産業を守るため、そのために国が前面に立ち、安全性を大前提に、Sプラス三E、これを堅持した上で、安定的で安価なエネルギー供給の確保、こういったものが重要だというのが現在の連合としての考え方でございます。

 見直すかどうかについては、今のGXの会議のありようも含めて、各産別の御意見も伺いながら検討していきたいと思います。

緒方委員 ありがとうございました。

 もう一問、清水公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。学校の先生だったということもありまして、私がずっと最近気になっております給特法の件でございます。

 かつて、制度ができたときというのは、多分、学校の先生に報いるという意味合いがあったんじゃないかと思いますが、今、四%払ったら働かせ放題という、何かブラック企業のツールになっているんじゃないかという気がいたします。思いをお聞かせいただければと思います。

清水公述人 私は十九年間学校現場におりましたので、ありがとうございます。

 給特法については、全体の労基法の罰則規定が入ったことを含めて、いわゆる働き方改革の中で、学校の働き方改革ということも議論されました。その中で、先生御指摘の給特法について改正が行われました。改正が行われたことによって、在校等時間という時間の管理、これについてしっかりやっていこうということで、一定程度、それを一月四十五時間で収めよ、そういったことが図られたということは、給特法の改正が行われたことでプラスであったかというふうに思っております。

 ただ、じゃ、教員の時間外労働の改善はどうなっているかというと、中学校の部活動であるとか、あるいは高校もそうですけれども、部活動の問題、それが全くなくなっていませんので、そういったこと、あるいは、今回のパンデミックの対応などを含めて、また、GIGAスクールについても、進んだことはよかったんですが、これに対応するのにもなかなか大変な、新しいことが起こった。

 そういうことを含めたときに、また教員勤務実態調査が行われておりますので、最新、その速報値が春頃にも取りまとめが出ると聞いております。その結果も踏まえて、労働基準法三十七条の適用についての根本的な理由も含めて、いわゆる、労基法の世界に行くのか、給特法を守るのか、その辺りの抜本的な見直しについて御議論いただくことが大事かなと思っています。

緒方委員 ありがとうございました。

 続きまして、川上公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 米軍が中国軍と戦わないということが資料の中に書いてありました。私も実はそういうことではないかと思ったりするんですが、そうすると、抑止力の中で、核の傘の信頼性という問題が出てくるのではないかと思います。

 これはもう釈迦に説法ですけれども、ゲームの理論の世界でありまして、相手がどう思っていると私が思っていると相手が思っているかみたいな世界じゃないですか。そうしたときに、現在のそういった国際的なパワーバランスが中国の目にどう映り、抑止力がどう機能しているんだろうかということについて非常に懸念をするわけでありますが、いかがお考えでしょうか。

川上公述人 御質問ありがとうございます。

 中国の目から見たアメリカ若しくは日本、日米の抑止力の問題でございますが、これは、時間がたてばたつほど中国に有利だ。第一点目。

 それから、二点目というのは、核の問題は、中国は今、二百発、三百発から、明らかに千発に向かって伸びています。そうとするならば、かなり、一番上のそういう抑止力は、時間がたてばたつほど中国がまた有利だ。

 それから、もう一つは、今回のウクライナ戦争で、ロシア側が中国と一緒に行動するのであれば、もちろんロシアは半分ぐらい戦車を失ってかなりの戦闘能力を失っていますが、核に関してはアメリカと並ぶぐらい持っているわけです。したがって、核戦力の面で中国とロシアが一緒になるならば、一番上の抑止力は既に崩壊しておりますので、したがって、その下にある中距離それから戦術核の面では中国は有利である。

 とするならば、先ほど申しました、中国は誤解をして、つまり、本当に何かあった場合に、核の報復はないと思って通常兵力で攻める、若しくは通常弾を積んだINF等々で攻めるということは十分に考えられると思いますので、その機を狙っている。

 それから、二番目、サイバー戦、認知戦、こちらの方のグレーゾーンでの戦いが、いわゆる超限戦と中国は言っていますが、まずそれでやるのは間違いないわけであって、戦わずして勝つ、こういう具合に考えるのでありますから、そういうことに鑑みますと、中国は台湾のみならず日本の本土でも相当有利に戦っているのではないか。

 もちろん、日本でもアメリカでもそういう認知戦、サイバー戦、ハイブリッド戦は、恐らく、今現在日本でも台湾でも行われている、そういうふうな認識に立っていると思いますので、結論は、中国は、台湾、日本の機を伺いながら、なるたけ犠牲の少ない状況で、つまり、本当に軍事力は使わずにこちら側を落として、その目的は、沖縄でありましたら、恐らく中国は米軍基地は攻撃しないと思うんですね。先島諸島はやるかもしれない。恐らく、ターゲットは、沖縄にいる米軍を撤退させる、有事駐留にさせる、そこにあるのではないのか。したがって、我々はレッドゾーンを読まなくちゃいけないということだと思います。

緒方委員 前泊公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 私、FMS、フォーリン・ミリタリー・セールス、あれの問題点、まさにアメリカからの武器の購入の問題について、あれが実は重く乗っているのではないか、今回の防衛力の整備の中で。そもそも、セールスを有償援助と訳すというのは根本的に間違っていると思うんですけれども。

 今回の防衛力整備を見ていると、ちょっとこれはすごくうがった見方ですけれども、安倍さんのときに、防衛力、アメリカから武器をたくさん買うことをコミットしたせいで、それが重くなって、そして国内の防衛産業に、物すごく、お金が行かなくなって、負担が重くなったので防衛力の強化をせざるを得なくなったというところもあるのかなとか思ったりするんですけれども、FMSの問題点についていかがお考えでしょうか。

前泊公述人 防衛産業の存在についてもしっかりと把握をしていく必要があるというふうに思っています。

 四、五年ほど前に神戸で視察をした際に、三菱重工あるいは川崎重工を含めて、本来なら商船を造らなきゃいけないドックに並んでいるのは全部潜水艦だけでした。そういう意味では、日本の財閥も、もう国の予算に頼らざるを得ない、ある意味では生活保護企業になりつつあるという、そんな印象すら受けました。そういう意味では、そこを買い支える、あるいは支えるために防衛費を使うということが果たして意味があるんだろうかというところもありました。

 アメリカについて言えば、今、日本の債務状況というのは、債務残高でいうとギリシャを超えてワーストです。GDPに占める割合、二〇二〇年、二六四%、アメリカが一二二%。そこからすると、アメリカを支えるために軍事費を支出するのかという話になれば、本末転倒のような気がします。

 思いやり予算というのが、アメリカの双子の赤字を埋めるために始まったはずなのに、いつの間にか思いやり過ぎ予算になり、そして今、それをごまかすために同盟強靱化予算という、名前まで変えていますけれども、そういうやり方ではなくて、本当に必要な防衛費は幾らか、そしてそれはアメリカからしか買えないものなのかどうか、ほかの国からも今回ミサイルの購入を決めているようですけれども、今回出てくる四十三兆円のうち、アメリカからの買物は幾らぐらいなのかというところも含めて、予算委員会の中でしっかりチェックをしてほしいと思います。

 以上です。

緒方委員 最後にもう一問、前泊公述人にお伺いしたいと思います。

 中央から来たお金が沖縄にとどまらずに東京に還流しているという話なんですが、私、全く同じ感想を持つんですね。何で沖縄の地方自治体とかいろいろな方はあんなに東京のコンサルに頼るんだろうと、いつもそれを思うんですよね。何でだと思いますか。

前泊公述人 ありがとうございます。

 まさに、ざる経済と言われてきましたけれども、ざるだと何も残らないんですが、今、漏れバケツ理論というのがあります。これはイギリスで出た理論でありますけれども、バケツの穴が空いているんですね。水を幾ら注いでもそこから抜けてしまうというのがありますけれども、この穴が、あるいはコンサルに必要なノウハウ、知恵、それからいわゆる企業の財務能力、あるいはマンパワー、いろいろな条件があります。そういったものが全部そろわない限り駄目ということですけれども、沖縄でいえば特Aランキングの企業じゃないと受注できないというような縛りもあったりしますね。

 それから、ボンド制というのもあります。お金を全部先払いをした上で事業が受けられる、百億の事業には百億準備しなきゃいけないというボンド制というのもあります。こういったものが、過少資本である場合には、本土企業、ゼネコンに頼らざるを得ないという状況もあります。

 そういった中でいうと、辺野古の新基地建設もそうですが、どこにたくさんお金が流れているか、沖縄にお金が落ちているかのような沖縄予算の審議の仕方は違うと思います。流れているのは、半分は本土に流れています。そういう意味では、予算審議の中で、どこに落ちるお金かをしっかりチェックしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

緒方委員 終わります。

根本委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組の大石あきこと申します。本日は、公述人の皆様、どうぞよろしくお願いします。

 岸田政権による今国会の予算案、私は異次元の売国棄民予算であると考えているんです。本当に、今は歴史の転換点、すごく危機感でいっぱいですし、皆様にこの国の政策の在り方について御指導いただきたいなと思っています。

 最初に川上公述人にお伺いしたいんですけれども、この資料やプレゼン、拝見させていただいて、非常に生々しいなと思ったんですね。世間で言われているような、アメリカや欧米の正しい戦争、正義というのとは大分違うなと。

 私が考えるに、一番大きなやくざと二番目に大きいやくざの抗争、その抗争の中で、日本が一番目のやくざの肩を持って、うまいことやりながら独自の軍事力を高めていくというふうに私には聞こえたんですね。

 先生の資料の中でも何個か出てくると思うんですけれども、バイデン政権が、米中対立は民主主義バーサス専制主義という位置づけだと。これは、すごく今、テレビでもメディアでもそういう騒ぎになっていて、多くの国民もそのように、世論に大きく影響していると思うんですけれども、川上公述人は、この民主主義バーサス専制主義というのはフィクションだと思われていますか。簡潔に教えていただきたいです。

川上公述人 簡単なお答えなんですが、第二次世界大戦後、米国は覇権をずっと維持しようとしていますので、フィクションであり、フィクションじゃない。まあ、フィクションではないわけですね、現実的に。ただ、アメリカが自分の覇権体制を逃さないために必死になって、同盟国の力を使いながら、自分の力が落ちたので、そのフィクションを守ろうとしている。違うフィクションがもう一回出るわけですから。今回の場合、中国がアメリカに取って代わってもし覇権体制を取るならば、中国流のルールに従ったフィクションができるわけですね。

 したがって、日本はそのフィクションに、どちらに入るのかという選択肢は本当なんでしょうか。日本は日本独自のフィクションをつくり、日本独自の道を選ばなくちゃいけない、それが私の回答でございます。

大石委員 でも、やはり多くの国民の方がこれがフィクションだと思っていない中で、防衛費増額が正しいのかどうかというのが議論されるというのは、私は、不誠実であり、危険だなというふうに思います。

 私は、まず前提として、防衛費増額というのが、アメリカの軍需産業ですとか、日本でも一部の資本家の方の大きな利益にはなるでしょうけれども、多くの国民にとってはマイナスのことだと思っております。特に沖縄ですよね。沖縄を度々犠牲にして平和を構築するということは、まず不可能ですし、やってはならないというふうに思っていますが、いわゆる内地といいますか、本土の国民、住民の方に、私も大阪ですけれども、もっと、この問題はみんなの問題なんだよ、こういうことをするとみんなにとってよくないんだということを知っていただきたいなと思って、そういう観点から前泊博盛教授にお伺いしたいと思っています。

 棄民政策と私は冒頭言いましたが、やはり防衛費増額というのは非常に大きな問題でして、敵基地攻撃能力の保有などは、米軍需産業からの日本の買物を増やす一方で、その軍備強化をしたとしても、むしろ沖縄を含めた日本全体の安全を損なうのではないかと考えています。軍備強化は必然に、人々への予算配分、民生部門への資源配分を損なってしまうのではないでしょうか。

 れいわ新選組の決意文というのがあって、その一行目は、この国を守るとはあなたを守ることから始まるんだ、そのような決意文なんです。

 このような考えに立ったときに、人々の安全な暮らし、あなたを守るんだという立場からは、国の安全保障の前提となるものをかえって脅かすのではないかと考えるんですけれども、前泊教授のお考えをお伺いしたいです。

前泊公述人 御質問ありがとうございます。

 本当に、安全保障というのは、この国の国体を守るのか、国民を守るのかという問題を提起しているような気さえしますね。沖縄にとっては、これまで、G・H・カーの言葉をこの資料の中へ入れましたけれども、日本という国は沖縄を前線基地としか見ていないんだというアメリカの歴史学者の見解ですね、その上で沖縄を、エクスペンダブル、消耗品という表現までしています。これは沖縄という言葉でありますけれども、日本という言葉に置き換えていいと思います。アメリカにとって日本という国がエクスペンダブルにならないようにどうしたらいいか、そのことを考えなきゃいけないと思っています。

 今、大事なのは、軍事費の議論を一生懸命していますけれども、経済にやはり目を向けなきゃいけないですね。経済がこれだけ衰退をして、この数字を見ると、二〇〇〇年、一四%。世界の経済のGDPに占める割合は一四%あったんです。それが今六%まで落ちて、さらに、二〇三〇年、四%まで落ちていく。

 日本という国がどんどん縮小していく中で、これをどうするかということをもっと議論しなきゃいけないのに、国防の話よりも、むしろ経済が豊かだったからこの国は平和だったんですね。周辺国に対して援助をし、ODAもいっぱい出して、技術も惜しみなく出してくる、この国が宝島のように見えていた、だからこそ大事にされてきた。そういう大事にされる国をもう一度つくっていくこと、それが安全保障の基本ではないかというふうに思っています。

 是非頑張ってほしいと思います。

大石委員 ありがとうございます。

 前泊教授にもう少しお伺いしたいと思うんですね。

 れいわ新選組は、積極財政ということで、国債を発行して介護とか保育の予算を倍増するとか、教員をもっと増やせとか、そういうことを常々言ってきたんです。一方で、国はそのたび、お金はない、お金はないと言っていたんですが、この度、防衛力の増大、四兆円に関して、実は国債もこういうやり方があってねみたいなことを言い出していて、そのときに国の財源というのが問題というか議論になるんですけれども、国の財源というのは国内の供給力のことですね。ですので、国内の供給力が大丈夫なうちは国債を発行しても通貨が下がらないんですけれども、何に使うのかというところが非常に問題なんだと思っています。

 財源を戦争や軍備のために使うと、社会の供給力を戦争に取られてしまい、日本経済のよい循環にならない、そのようなことを御示唆されたと思うんですね。戦争経済は、ごく一部の人にはぬれ手にアワのチャンスだとしても、大多数の国民にとっては、大事な供給力、生活のために必要なもの、例えば、食料の生産ですとか、住宅建設ですとか、先ほど言っていたような介護とか、人が人を見るような大事なお仕事というもの、供給力が毀損され、生活水準が苦しくなるというのは、さきの大戦の教訓でもあったかと思います。

 アメリカの事情にもお詳しい前泊教授にお伺いしたいですけれども、アメリカは軍産複合体が国の経済に浸透してしまい、アメリカは十年に一度戦争しないとやっていけない体質だとも言われるんですけれども、日本は今、抑止力強化の下にこういった戦争経済への道を歩もうとしている。四月に経済安全保障法というのも通ってしまいましたけれども、それを入口にして戦争経済への道を歩もうとしていると私は危惧しております。

 先生はアメリカを見て、IT産業や軍需産業のハイテク化が進む一方で、アメリカのインフラの弱体化などにも何か御意見があればお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

前泊公述人 生活インフラでいうと、よく、橋が落ちたりするとか、あるいは道路が陥没するというのがあります。

 日本でも同じように、公共インフラの劣化というものをどう修繕をしていくかというのは課題になっています。戦後七十八年を迎えて、戦後復興で造ったものがそろそろメンテをしなきゃいけない時期を迎えています。

 そこら辺でいうと、もう財源がないということで、新しいものは造れないし、修復をするためのお金の確保も難しい。これはアメリカが先にその状況に陥っている部分はあると思います。

 日本においては、今、先ほどちょっと債務残高の話をしたんですが、日本はアメリカの倍も高い二六四%、アメリカが一二二%の債務残高を抱えています、対GDPですけれども。

 その中で、日本は実はアメリカの国債を大量に持っていますね。今どれぐらい残っているか、私が直近調べたのは、百兆円ぐらいのアメリカの国債を買っている。中国も同じように買っていますけれども、中国は、自分たちで持って、いつでも売れるけれども、日本は、国債を買っても、アメリカの国庫に入っている、いつも売ろうとするとすぐに邪魔が入るという、そんな状況ですね。

 そういう意味では、日本はなぜ債務残高がこれだけ高いのにアメリカの国債をたくさん持っているのかというところも、財源として、その国債を売って国民のために使うということも議論をいただければというふうに思っています。

大石委員 アメリカの経済状況に加えて、そういった、やはり日本がアメリカに従属させられているというところからも、それを見直すことで新たな財源も生まれるのではないかということを御指摘いただいたと思います。

 私は今、国会議員としてここにいるんですけれども、やはり、その前に一人の人間として、また、子を持つ親として、本当に今、恐怖しています。防衛費増額というのがこんなに簡単に進められて、川上公述人にも今日ありていに語っていただいてよかったと思いますけれども、そういった、私に言わせればフィクションでの正義の戦争というものが行われ、その欧米に日本が追随していく、その犠牲になるのは、まず真っ先に沖縄です。沖縄を日本の捨て石にさせてはならない、それから日本をアメリカの捨て石にさせてはならない、そのような思いを今日改めて強めましたので、本当に皆様にはありがとうございました。

 まだ少しありまして、清水公述人に是非お伺いしたいです。

 棄民政策と言ったもう一つには、労働者を使い捨てにしてまで、国がぼろぼろになっているじゃないか、そのように感じているんです。

 連合の清水事務局長にお伺いしたいんですけれども、教育予算の削減問題についてなんです。

 日教組御出身の清水事務局長は御存じと思うんですけれども、今、教育現場で異次元の教員未配置が起きているということで、学校の教員が過労死レベルの残業を、給特法の下で、不払いのままやらされている。教員不足は、文科省が把握しているだけでも、二〇二一年四月時点で二千五百五十八人、二千五百人を超える欠員がありました。精神疾患で休まざるを得ない先生も高止まりしておりまして、学校現場が回っていない。

 それに対して今政府がどうしているかというと、残念ながら、教員削減を続けている。昨年度、二〇二二年四月では三千三百二人の教員予算の削減、それから、今回の四月からですけれども、更に二千四百七十四人の教員予算を削減しようとしているんですね。

 日教組の要求を拝見しますと、教員の基礎定数、加配定数、いずれも改善を求めておられますし、不払い残業の給特法も廃止を求めておられ、非常に真っ当な要求だと思うんですね。

 学校の先生を計画的に採用、育成をもっともっとしていかないといけないと考えているんです。具体的には、二〇〇五年からなくなった教員定数改善計画を復活させて、また、教員の基礎定数を一・五倍にするくらい必要だと考えているんですね。小中学校で基礎定数を一・五倍にすると、年間約二兆円ぐらいの予算が必要となります。

 私は、学校現場の声を踏まえれば、基礎定数、一・五倍ぐらいは必要なんじゃないかなと思うんですけれども、その辺、現場の実態をよく知っておられる公述人からもお伺いしたいなと思います。

清水公述人 教育現場について御質問いただき、ありがとうございます。

 一応、今は連合の事務局長でございますので、日教組の考えは日教組の考えとしてありますが、定数については、既に国においても、いわゆる四十人学級から三十五人学級という形で進めていこうということで、定数改善が図られているということでございます。

 子供の数が多かったときには、いわゆる教員の、学校が減っていっても、その分の余剰人員を定数改善に回していく、いわゆる第六次であったり第七次であったりという定数改善をやりながら、少しずつ学校現場に人をという形でやってきました。ここに来て、毎年五百校ぐらいの学校が、小中学校、高校を入れると七百校ぐらいが毎年なくなっている状況でございます。なので、そういった意味では、教員定数が抜本的に定数法上は要らなくなっているのではないかという事実もございます。

 要は、この後、子供に対する人数が、何人ぐらいで一クラスをやっていくのがいいのかということでいえば、やはり二十人、二十五人。欧米などの状況を見れば二十人台でやっていますので、日本の三十五人はまだまだ多過ぎるということであります。これは、保育所の一人が見る保育児の数も非常に多過ぎるというのと同じことだと思います。

 なので、抜本的な教育や保育に関わる人の配置ということについてやることは大事だと思いますし、教員の採用が今、二倍を切って、人気のない職業になっているのは非常に残念なことです。是非、学校で子供を育てるということ、将来の人を育てる学校現場、そこに魅力を感じるような、そういった学校の体制になるように、環境整備を定数含めて進められることが必要ではないかと思います。

 以上でございます。

大石委員 まさに、少人数学級、二十人以下学級の実現、それから、学校の先生が、不払いをしないで済むように基礎定数をいじった場合……

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますから、おまとめください。

大石委員 一・五倍必要だというのが学校の先生の現場からの試算だったんですが、それにしても、本当にどのぐらい必要で、計画的に採用していくのかというのを、連合の皆さんとも、国会の中でも外でも真摯に行っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

根本委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時三十分から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 令和五年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず柴田明夫公述人、次に小幡績公述人、次に柴田悠公述人、次に北岡伸一公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、柴田明夫公述人にお願いいたします。

柴田(明)公述人 柴田でございます。

 本日は、意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。

 私は、世界の食料問題と日本の農業問題について申し上げたいと思います。

 一枚資料をめくっていただいて。申し上げたい点でありますけれども、一つは、現在、食料価格の上昇については、これは一時的な現象ではなくて、価格体系全体が上方にシフトしていく、こういうふうな動きであると捉えております。価格を抑えることは、一時的な対処療法ではあっても、根本解決にはならない。背景には供給ショックがあると見ております。そのため、価格上昇対策に対しては、農業生産であれば、生産可能な適正価格の実現に向けた取組も必要である、こんなふうに見ております。

 ウクライナ問題でありますけれども、元々、二〇〇八年以降、世界的な食料危機騒動がありました。過熱する世界の食料市場において、ウクライナは輸出を急速に拡大してきておりまして、世界の食料市場のそういう意味では冷却装置である、こういうふうに見ておりました。それがロシアのウクライナ侵攻によって壊されたということであります。ウクライナ戦争の影響は、食料にとどまらず、エネルギー、化学肥料、それからクリティカルなメタル、ここにも及んでおります。私は、世界的な食料危機から農業危機へのおそれが出てきている、こんなふうに見ております。

 一方、中国においてですけれども、食料安全保障を着実に進めているということであります。元々、一九四九年の建国以来、基本的に、食料についてはおおむね自給する、九五%を自給するというスタンスから、二〇〇八年の食料危機を経て、輸入能力を強める、それから戦略的な備蓄を厚くする、こういうふうな対応を取っております。それが、二〇二一年の末にかけて、再び自給力を強化する方向へかじを切り替えている。そのために、二つの確保ということで、耕地面積一億二千万ヘクタールの確保、それから食料生産六億五千万トンの確保ということをうたっております。

 日本の場合、グローバリゼーションの下で極限まで農業の外部化を進めてきたわけでありますけれども、この転換を図るということが重要であるかなと。食料の生産拡大に向けて、予算、技術、人、法制度、これを集中すべきであると考えております。

 具体的に次のところで申し述べたいと思うんですが、1の1の図は、シカゴの穀物相場の過去半世紀ぐらいの動きであります。

 左半分は循環的な動きをしている。それが、二〇〇八年を境に強い騰勢を示すようになりました。二〇〇八年のときには、アグフレーション、農産物のインフレは長期化する、こういうふうな指摘があります。背景には、途上国の不可逆的な食生活の変化、経済発展に伴う食生活の変化、いわゆる肉の消費量の拡大があって、それに伴う飼料需要の爆発的な拡大があったということであります。したがって、価格は下がっていかないということであります。

 一旦はその上昇は緩んだかに見えましたけれども、二〇二〇年の後半から再び強い騰勢を示すようになった。ここにウクライナ戦争が追い打ちをかけたという形になっています。二〇〇八年が需要ショックによる価格の高騰であるとすれば、今回は供給ショックですね、サプライチェーンで様々なボトルネックが生じているということであります。

 こういう話で、次の、これは食料に限らず、二〇〇八年のときには、コモディティーのスーパーサイクル、原油が百五十ドルに迫ったり、銅の値段もトン一万ドルに上がったり、食料も上昇する。あらゆる資源価格が急騰したわけであります。

 この背景は、私は、途上国と先進国の経済の収れんが起こったなということでありまして、九〇年代に旧ソ連圏が十五の共和国に分解する、九五年からWTOがスタートします。世界はもはや、経済合理性だけを考えればいい、こういう時代に入って、米英企業は中国などに生産設備を移転する、中国は世界の工場になるというところで、工業化になれば、それに必要な原材料、資源、食料などが爆食されるという時代に入りました。農業においても、地球規模で、どこで生産すれば最も合理的かというような時代に入った。適地適作が進んだわけであります。

 二〇〇〇年代に入ると、こういった新興国が猛烈な経済成長をし、GDPも膨れ上がるわけであります。二〇〇〇年から二〇二〇年で見ると、GDPの規模は、先進七か国で六五%が四五%まで下がる。日本は一五パーが六パーまで下がる。一方で、新興国は二割から四割に上がるんですね。中国は三・五パーが一七パーまで上がる。こういう過程で価格が上がっていったということであります。そして最近も、ここにまた供給ショックが加わって、価格が上がるという現象になりました。

 次のページでありますが、ウクライナ戦争でありますけれども、ウクライナの小麦、トウモロコシの輸出というのは、二〇〇〇年代になって急増していたんですね。過熱する食料市場の中で冷却装置として働いていたものが、これが壊されたということで、その影響が出たわけであります。

 そして、次のページ。この戦争の影響というのは、食料の危機にとどまらず、窒素、リン酸、カリ、三大肥料等にも影響が出てきているということであります。ロシアあるいは中東産油国は、天然ガスから安いコストでアンモニアを作り、そして窒素肥料を作る。リン鉱石、カリ鉱石は鉱物でありまして、この表のように、生産国が偏っている。中国、モロッコ、アメリカ、ロシア、リンの場合にはこの四か国で七割以上を生産する。カリの場合には、カナダ、ロシア、ベラルーシ、中国でやはり七割以上を生産するという状況になっています。

 一方で、肥料はどの国も使うわけでありますが、中国とインドとブラジルで半分以上使っているという状況であります。日本は、量は限られますけれども、ヘクタール当たりの投入量は中国に次いで世界第二位でありまして、これがほぼ全て輸入に依存するという構図になっています。

 次のページなんですけれども、食料については、プーチン大統領は昨年の五月、テレビ会議で慎重になるという発言をしていますけれども、これは肥料についても同じようなことなのかなと考えております。肥料は、三大肥料、長期的に見ると、需給は、バランスというか、供給がむしろ過剰なんですが、それぞれに見ると、恒常的な輸出国と恒常的な輸入国に分かれます。中国、それからロシア、中東産油国、肥料の大きな出し手になっています。

 そう見ると、どうも敵対国か友好国かで踏み絵にかけられそうになる国はどこなのか。私は、南米、カリブ海、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、そして南アジア、インド、パキスタン、多くの米どころの東南アジア、東アジアの国々、そしてオーストラリア、こういうところが非常にリスクが高い。

 次のページ。この一連の戦争を経由して今起こっていることは、世界の経済の分断が起こりつつある。分断の中身は、エネルギーとか食料、化学肥料、それから再エネに必要な鉱物資源を持つ中国、ロシアと、それを大量に使うブラジル、インド、南アメリカなどと、西側の金融資産をたくさん持つ国、こういうふうに分けられてきているなということであります。

 次のページ。その中で、中国は食料の増産を図っているわけですけれども、世界の食料の生産量というのは、足りないわけではなくて、記録的な水準まで伸びている。しかし、消費量が上回って、在庫がじわりと下がってきています。消費の拡大、消費の半分は飼料用の餌という格好になっています。小麦の二割、トウモロコシの六割、大豆の二割、これが餌に使われるという形で、在庫も積み上がっているんだけれども、その過半は中国の在庫です。中国を除くと、かなり需給が逼迫してくるという状況にあります。

 それで、中国は、冒頭のように、食料安全保障戦略を、再び国内の生産量拡大というふうにかじを切ったということでありまして、高い輸入を維持したままかじを切っているわけでありまして、次のページの、大豆、トウモロコシ、小麦の輸入量も世界最大規模になっております。

 こういう中で、日本の場合は、今まで安い食料価格で良質のものを幾らでも調達できたというところで、食料の安全保障については恵まれた環境にありましたけれども、もはやそういう状況ではない。二〇〇八年の、前回の食料危機から同じような傾向がずっと続いています。

 そういう中で、国内の食料生産というのが必要になってきているわけですけれども、次のページが、今、日本の農業経営者はかなり追い詰められているなということであります。

 左の上が国際肥料価格なんですけれども、二〇二〇年以降、二倍から三倍に引き上げられている。肥料は全量ほぼ輸入であります。そして、経営者にとって、生産コストに当たる燃料代、電気代、それから建築資材、農機具、それともろもろ、肥料代、飼料代が値上がりしております。

 農水省の生産資材の価格指数で見ると、左側が農産物の価格、ほとんど、二〇二〇年以降は上がっていない。一方で、生産資材は二割ほど上がっていて、そして、肥料、飼料については五割ほど上昇しています。

 象徴的な、今置かれている農業の窮状というのは、右下の図のように、シェーレ現象、はさみ状の価格差が生じているということであります。生産者にとって必要な資材の価格が上がる一方で、自らの製品、商品である農産物の価格が上がっていかないという中での経営の悪化であります。これは持続が非常に難しいということで、いかに生産者の生産費に見合った形での農産物の販売価格が実現できるか、価格転嫁をいかに行うかというのが必要になってきているな、フランスのエガリム法等に見習った日本の対策が必要であると。

 今、昨年の秋から、食料・農業・農村基本法、これの抜本的な見直しに議論が移っているわけでありますけれども、元々、グローバル化の真っただ中で、経済合理性を考えればいいという時代に作られた法律。これは目標が三つあって、それぞれ反りが合わない、こういうふうに考えております。

 食料は、安全保障を考えれば、コストがかかっても国内生産を増やす、農業は、グローバル化の中で、いわゆる攻めの農業、規模を拡大し、付加価値をつけ、輸出に打って出る、こういう企業経営が後押しされたわけでありますけれども、その結果、多くの家族経営、中小零細な経営が減少してきているということで、そのために、農村が持つ多面的な機能が発揮できないでいるという状況にあります。

 この三つ、反りが合わないものを、今回は国内食料生産の拡大というところに向けて、その結果、農業資源のフル活用のために、予算も人も人材も、それから法制度も改正していく必要があると思います。その中で、もうかる農業はいかにもうけていくのかということを追求していただければと思います。価格転嫁の実現というのが待ったなしになっていると考えております。

 以上であります。どうも御清聴ありがとうございます。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、小幡績公述人にお願いいたします。

小幡公述人 慶応大学の小幡です。

 今日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

 しがない経済学者なんですけれども、日々、日本経済はどうしたらよくなるかなと考えていて、その考えたことで予算審議に少しでもお役に立てればと思って、今日はお話しさせていただきます。

 私は経済政策の専門家なんですが、この資料に「経済政策は要らない」と書いてあるんですね。ふざけているのかと言われるかもしれないんですけれども、大真面目でございまして、要は、一枚めくっていただくと、経済よりも社会が重要なんですね。つまり、健全な社会をつくるための手段として経済、そのための経済政策があるわけで、逆じゃないんですよね。これはもう御存じのとおりだと思いますが。

 ただ、ともすると、経済政策というのは数字にすぐ表れたりしますから、そちらに傾きがちなんですけれども、そこはやはり、社会のために経済があって、そのために経済政策があるんだということを再確認しなきゃいけないというのは、むしろ経済学者の方じゃないかとは思うんですけれども、私は最近、特に思うようになりました。

 例えば、景気対策というのは、景気対策も要らないというのが私の主張なんですけれども、なぜ要らないかというと、景気対策というのは、元々、失業をなくすために行うものなんですね。ですから、失業がない状況で景気がいま一つの場合は、そんなに景気対策は要らないわけですよ。

 ところが、景気がよくても、失業が多くて、特にヨーロッパでは、若年失業率が高い。景気はいいけれども、若年失業率が高い。日本は逆に、景気が悪いときも若年はそんなに悪くないという恵まれた国なんですけれども、その場合に、やはり何が必要かというと、若者の失業を何としても防止する。なぜかというと、最初に入るときに、最初に、働くだけが社会じゃないですけれども、勤労する社会に入る入口でシャットアウトを一旦されてしまうと、一生入らないまま、入れないままに終わる確率が非常に高いからなんですね。

 ですから、そういう意味で、景気対策は重要で、百年に一度の危機が例えば就職活動のときに来た人は、何としても助けなきゃいけない。僕らは、今から失業しても、まあ、助けていただきたいんですけれども、その必要はない、自分で頑張ってということなんですね。

 例えばコロナ対策でも、全体に景気が悪くなるんですけれども、やはり困っている人を助ける。ですから、経済を、何とか需要を喚起するためにコロナ対策でお金を配るのではなくて、また、企業が潰れちゃうから支えるんじゃなくて、結局、個人事業主も含めて人間を守るために政策をやっているわけなので、コロナというのはやはり今世紀最大の危機かもしれませんし、まだ分かりませんけれども、その中で人生が大きく変わってしまうということのないように、仕事がなくなってしまった人を支える、生活できなかった人を支えるということが重要だということです。

 少子化対策なんですけれども、これは一番ちょっとあれで、私、昔財務省にいて、財務省の悪い癖で、社会保障、年金を守るためには若い人がいないと支えられない、若年、勤労者世代と高齢者と何対何だとか言いますけれども、そういう問題じゃないんです。そういう問題じゃない。社会の中で子供がどれだけ必要か、子供がどれだけ大事か。それが何らかの理由で減ってしまっているんだったら、ここは何としても増やさないといけないということになりますし、社会保障制度の維持のために重要だったら、それは別の手だてを考えてくださいということなんですね。

 あとは移民とか、移民はここに書かなかったんですけれども、移民も、企業が利益を上げられない、安い労働力がないから移民ということじゃなくて、社会にとって多様性が重要で、いろいろな人が入ってきた方が社会にとっていいよね、活力が生まれるよねということであれば、どんどん受け入れましょうと。働き手として、手段として呼ぶわけじゃないと思うんですよね。

 トリクルダウンというのは一番最悪で、なぜかというと、トリクルダウンというのは実際は起きないんですよ。トリクルダウンで、景気はよくなることがあります。それは、金持ちだけすごい金持ちになれば全体の景気はよくなりますけれども、下まで行くと、大体なくなっちゃうんですよね、下へ行くまでに。なおかつ、もし行ったとしても、こぼれて落ちてくるだけなので、必ず格差が拡大するわけじゃないですか。格差が拡大した方がいいという社会的なコンセンサスがない限り、トリクルダウンで景気をよくするというのは、二重の意味で間違っている政策だと思います。

 めくっていただいて。経済政策が経済成長を損なう。これは、私が言うと、また小幡理論かと言われるんですけれども、教科書にも書いてあるんですよ。景気というのは短期の需要なんですね。経済成長というのは長期の供給力なんです。供給力は、人的投資が今非常に重要だと言われていますけれども、設備投資も含めて、要は、投資から成り立つわけです。

 一応、経済全体で見ると、今年消費しなかったものが余ったから、来期へ向けて投資しよう。稲作を考えれば、種もみを食べちゃわずに取っておけば、次にまけるということなんですね。だから、消費刺激で景気対策をし過ぎると、成長力が落ちていくわけですよ。なおかつ、金利低下とか、とにかく前倒しで消費してくださいというと、来年買う人がいなくなるので、ほっておいても、来年必ず景気は悪くなるわけですよ。それでいて、目先のことだけやって、将来の投資も減るから、二重の意味で成長力が落ちていくし、景気も悪くなっていく、そういうことなんですね。

 多分、日本は、やはり消費が消費を呼ぶみたいなイメージがありますけれども、投資が投資を呼ぶという時代がありました。一九五〇年代から六〇年、高度成長期です。設備投資というのはすばらしくて、需要ですよね。なおかつ、供給力、生産力を上げるわけですから、需要と供給がバランスよく上がっていくわけですよ。これはすばらしい。

 ところが、それで余りに成功体験が強過ぎたせいか、設備投資ばかりやり過ぎる癖が日本はついて、一九八〇年代に、三つの過剰の一つが設備投資の過剰なので、だから、生産力があっても、売れないものを作っても、余っているか、いわゆる、今、ゾンビと言われて、売れないものをいっぱいただ安売りして売られると、ああデフレになっちゃうねという話なんですね。

 なおかつ、現在、設備投資は結構難しい。なぜかというと、変化が激しくなり過ぎて、やはり固定するのは結構危険なんですよ。リスキリングが重要だというのは、固定したのをアップデートしなきゃいけないということですけれども、設備投資はアップデートが必要ですけれども、やり過ぎると、次に動けなくなるわけじゃないですか。ということは、余りしない方がいいんです。

 GAFAと言われるところがもうかって、何でGAFAみたいに日本はできないんだというんですけれども、あの人たちは、余り投資しないで、ほかの人にやらせて、ブランドとかポジションとか、消費者に欲しい欲しいと思わせて、そこで利益を集めるシステムになっていて、投資は台湾の半導体、製造、それでそのポジションは強くなっていったわけですけれども、そういうことがありますので、なかなかそう簡単にはいかないところがあります。

 もう一つめくっていただくと、これはよく、政策、マーケットでは、例えば、テレビのニュース解説だとすぐこういう言葉を使うんですけれども、お金をとにかくぐるぐる回さなきゃと言うんですけれども、ぐるぐる回っても、経済はよくならないです。

 これはなぜかというと、消費すると、所得になってその人がお金を使うから、また消費が出てきて、物を買っているわけだから、その物を売った人の所得になって、何かすごい相乗的にいくという感じがするじゃないですか。でも、よく考えると、いや、物を作っているのは誰なんだということなんですね。三回物を売るということは、三倍物を作らなきゃいけないので、供給力が一定だと、三倍は作れないですよ、三倍ぐるぐる回っても。ということは、ほっておけばインフレになるということです、物が足りないので。

 若しくは、そこですごく売れるものを作れる人がいるわけじゃないですか、飛ぶように売れるものを。そうすると、その人は物すごくもうかります。富が生まれます。余ります。投資します。金融投資します。格差が広がります。でも、景気はよくならないし、経済成長にはなりません。そういうことなんですね。

 もう一枚めくっていただくと、これも、こんなことを言われると皆さん怒られるかもしれないんですけれども、ただ、実際そうなので、仕方ないと思って聞いていただければと思うんですが、賃金と物価の好循環というのはないんですよ、そもそも。そもそも、賃金と物価というのは別のものの値段ですから、別なんです。別々の市場、労働は労働市場で決まって、物は物の市場で決まるから、別なんですよ。

 例えば、新卒の給料というのは物すごい上がっていて、今、うちのビジネススクールを出ると、結構、就職がすごい決まって、給料が物すごいいいんですけれども、十年目ぐらいの人より高い可能性があるんですね、今競争が激しいので。昔は外資系との競争がなかった。今、例えば金融系だと、外資系と競争するから、外資系と同じ給料を出すと、十年前に入った人より高いんですよね。だから、まさに需給関係、力関係なんですね。

 投資では、ボイス・オア・イグジットという言葉があります。つまり、コーポレートガバナンスで、投資家が、経営者が言うことを聞かないときにどうするか。ボイスを上げる。株主総会で意見を言う、投票する。それか、イグジットです。つまり、出ていく。こんな会社駄目だから、見捨てて売ろうかと。

 残念ながら、労働市場も同じことなんです。労働組合で弱い者が集まって、強い経営者に、給料を頼むから上げてください、もっと頑張って働くので上げてくださいとボイスをみんなでまとめて出すか、嫌なら辞めるということです。いやいや、こんな会社でやっていられません、隣はもっと高く雇ってくれますと。

 やはり、日本で給料が上がらない一つの理由は転職が少ないことだと思いますし、アメリカだと、転職すると上がるから転職するんですね。日本の転職は、うちの学生も転職する人が多いんですけれども、大体、転職先は、前幾らもらっていたの、じゃ、前と同じでと言われるんですよ。いやいや、転職、プラスでいかないと困るんですと言うと、やはりなかなかそういうふうになっていないという風習、今までの習慣があるという問題です。ですから、物価とか景気とかと直接は関係ないですね。

 物価が上がって、労働者が例えば組合で文句を言って賃金を上げる。そうすると、賃金が上がるから、コストが上がるから、物の値段を上げないといけない。だから、これはどっちが先かちょっとよく分かりませんけれども、そうなったときというのは、一枚めくっていただくと、悪循環しか起きないんですよ、今申し上げたように力関係なので。

 つまり、生活で困っているから上げてくださいとか、今ですけれども、必需品が相当上がっている。消費者は立場が弱い。エネルギーとか食料は絶対買わなきゃいけない。電気は払わなきゃいけない。そうすると、困っている、じゃ、困っているのはかわいそうだからちょっと上げてあげましょうと、もし上げたとしても、それはフルにカバーは普通しないんですよね、部分的に上がる。

 そうすると、賃金が上がるとコストが上がるから、企業は物の売値を上げなきゃいけない。ところが、消費者が怖くて上げられないというのが日本の企業の問題で、日本が物価が上がらない一つの理由は、企業間競争がよくも悪くも激し過ぎるんです。アメリカは、独占的な強い有名な企業ばかりできて、誰もが欲しいような企業ばかりなので、好きなように上げられるんです。何とかフォンとか、スマートフォンとか、余り変わっていなくても見る見る上げていくんですけれども、日本は、競争が十分に行われているために、なかなか上げにくい。プレッシャーがある。これはいい面が今までは多かったんだけれども、なかなか、企業も、それが余りに消費者が慣れ過ぎて、上げなきゃいけないときも許してもらえない、消費者が強いからということで上げにくいというのが、上がりにくい要因の一つとしてあると思います。

 ですから、これは全部力関係なので、力関係で上がっていくということは、前よりも上げる額は減っていくはずなんですよ、川下に向かっていくと。そうすると、好循環はなくて、悪循環なんですよ。つまり、コストが上がって困っているからという。今、欧米はそれが激しく起きている。日本は、これから起きたらどうしようということです。

 それで、めくっていただくと、そもそも論で言うと、物価を上げる必要はないんですね。物価というのは、安定していることが重要です。私が言うとまたかと言われるんですけれども、これはアメリカでも、グリーンスパンも言った有名な言葉で、物価は意識しないでいる状態が一番いい、物価のことは忘れていた、物価水準の変動というのは気にしないで経済活動できた、これが一番いいわけですよ。物価の変動に邪魔されていないわけです、誰も。これが一番いいんです。だから、安定していて忘れちゃっているのが一番いいんです。

 安定している中で、二パー、一パー、〇パー、マイナス一パーだったら、もしかしたら二パーぐらいの方がちょうどいいかもしれない。確かにそれはあるかもしれない。でも、一でも物すごい悪いわけじゃないので、一で安定しているのをぶっ壊して、二だか四だかどうなるか分からないというのは、これまた不透明で、みんな困るわけですよ。物価が上がるんだったらこうしておこうか、そんなに上がらないんだったらこうしようかという、住宅ローンとかだと皆さん悩まれる方が多いんですけれども、物価でも同じこと。ですから、安定しているのが一番。マイナスで続くのは、これは余り、もちろんよくありません。ただ、一でびたっとしているときに、無理に壊すことはないということです。

 次に行きますと、スライドも全く終わる気配がありませんが、行けるところまでで、もし後ほど御質問があれば、残りのスライドで。

 賃金。政策の役割は、やはり最低賃金を上げることと、同一労働同一賃金の徹底です。完全に非正規雇用という言葉を日本からなくしてほしいと思うんですね、名実共に。おかしいじゃないですか。外国人、学生に説明すると、違法かと思いますよ、非正規、どういうことだと。ということなので、弱い立場にあるから、彼らは政府が支えてやる必要があるので支え、そのほかは自分たちで頑張ってくださいということですね。

 もう全然時間がないので、雇用の中断。今日は、私は一番は、一応、金融の専門なので、十ページで、経済政策を振り返ってみると、経済政策は要らないといって、じゃ、この十年、経済政策はどうでしたかというと、異次元緩和しか覚えていないというか、影響力があり過ぎたということだと思うんですけれども、どうなったかというと、結局、何も起きなかったじゃないかということなんですね。何か右往左往して騒いで株価は上がったけれども、後は何も起きていないんじゃないかということです。

 これはもう皆さんお聞き及びなので、めくっていただくと、株価は上がりました、株価に対するショック療法としては的確でした。その後は、先ほど言った、供給力の問題なんですね。

 私、不思議なのは、今日は最後に必ずこれだけは言って帰ろうと思いますが、黒田総裁はこれを分かっていたんです。始めたときから短期決戦とおっしゃっていましたし、二年後と十一ページには書いてあるんですけれども、見ていただくと、十二ページに、これは一年三か月後ぐらいの講演で、これで明らかに、需要不足の問題は日本経済の問題の本質でないことが分かったと言っているんです。これから、供給サイドの問題なんだと言っているんです。日銀の政策で、これまで需要問題も両方絡んでいたから何が本質か分からなかった人もいたかもしれないけれども、これで需要サイドじゃないと分かったんだ、それで、役目は終わりました、あとは供給側よろしくということなんですよ。

 だから、黒田さんは十年続けるつもりもなかったでしょうし、分かっていらっしゃったと思うんです。じゃ、何で十年もやったのか。めくっていただくと、謎です。分かりません。本当に分からないです。

 最後、言わなきゃいけないのは、大体、それで異次元緩和の方は終わっていますけれども、円安は本当に、賃金が下がったり、海外。あ、移民は来ません、賃金が安過ぎて。上海、シンガポールで働いた方がもうかるので、誰も来ません。それで、YCC、イールドカーブコントロールは大変なので、これだけ何とかして。

 十九ページ。お願いしたいのは、異次元緩和は、失敗というより、最初から間違っていたんですね。それで、みんな言えばいいのに、何か、黙って言わなかった経済学者がほとんどです。おかしい人がMMTとかリフレとか言っていたので、相手にしなくて、学問研究だけしていて、私のようなどうでもいい人が、いや、おかしいのはおかしいと言おうよと言っていたんですけれども。

 ところが、もうやってしまったものはしようがない。今から十年前に戻れるんだったら、やめましょうと言いたいんですけれども、十年たって、やっていますから。今は大分、金融政策はなかなか難しくて、誰がやってもナローパスで、やれる選択肢はほとんどないです。だから、みんなで支えましょうということです。

 一枚めくっていただくと、政争の具にしていただきたくない。ここで言うと帰れないかもしれないんですけれども、これはやはり今一番危険なときなので、是非予算で闘っていただいて、日銀人事は静かに、日本全会一致で決まってほしい。

 アコードもやめていただきたい。要は、日銀を信用していないんだったら、こいつ日本経済のためにやらないじゃないか、自分の都合だけじゃないかと思うんだったら、アコードはもちろん必要です。ところが、手法とか短期的な目標とかは食い違うかもしれませんけれども、長期的に健全な日本経済を発展させるという、その基盤をつくるということは一致しているわけですから、それで専門家集団をわざわざ選んでいるわけなので、アコードで縛るのは、一個制約条件が増えるわけですよ。二%と書こうが書くまいが、一個何か増えているので、彼らが的確に常にベストを尽くせるように、アコードがない方が、少なくとも学問的には、理論的にはいいと思います。

 結局、まとめますと、ほかにもいろいろあったんですけれども、要は、経済政策というのは社会のためにあって、皆さんは、有権者の方から是非お願いしますと言われると、任せておけと言わざるを得ません。皆さんに、経済学者、何かアイデアを出せよと言われたら、任せてください、何かできますと言うので、経済学者は、何かできそうなことをいろいろ言います。でも、経済政策あるいは経済学でできないことばっかりです。仕方なくて、取りあえずお金を配ればちょっとの足しになるかなと。年々、社会が難しくなると、いい政策ができないので、お金を配ることがどうしても増え、それ以外に、これで何とかということになっちゃうんですね。

 それはやはり我々の怠慢というかアイデア不足なんですけれども、やはり政策というのは社会システムを動かすものですから、試行錯誤なので、一発でこれをやればうまくいきますと言いたいんですけれども、言えないので、失敗を許してもらうのも、皆さんも大変でしょうし、我々もマックス首になったりしますのであれなんですけれども、試行錯誤で、社会システムはゆっくり社会としてつくっていくしかないんだということが経済政策を考えるときにも重要だということを強く主張したいと思います。

 済みません。御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、柴田悠公述人にお願いいたします。

柴田(悠)公述人 柴田でございます。

 この度は、このような貴重な御機会をいただきまして、大変感謝申し上げます。

 では、お手元の資料、二十枚の資料がありますけれども、最初の三ページがお話しする内容でして、あとは参考資料となっております。

 では、早速始めさせていただきます。

 「こどもの未来を救う少子化対策」とタイトルに書いてありますけれども、今生きているゼロから六歳の子供たちの半分は、二一〇〇年、まだ生きています。彼らは、彼女らは八十代になっています。私の子供たちもそうです。二一〇〇年、非常に先ですけれども、その日本社会が安定した社会になっていてほしいと、恐らくここにいらっしゃる先生方も考えておられるんじゃないかと思います。そのような子供の視点で少子化対策を考える必要があるかなと思います。

 少子化に関しまして、いろいろ日本ではエビデンスの蓄積がありまして、そのエビデンスをまとめた図がこちらになりますけれども、少子化のメインの要因は結婚難であるということはよく知られていることです。結婚率がだだ下がりしている。それに対して、夫婦から生まれる子供の数は、最近ちょっと下がっていますけれども、そんなに減っていないということです。

 では、結婚難の背景にどんなものがあるかというのも既にエビデンスでかなり分かっていまして、やはり雇用の安定、雇用が不安定になると結婚難になる。あとは賃金の問題ですね。ここにチャート図がありますけれども、ピンクに塗ったところがそうですが、カップル共に正規雇用であれば結婚しやすいということが分かっています。あとは、カップル共に高収入であるとやはり結婚しやすいということが既に分かっていますので、雇用の安定と賃金の上昇が一番の少子化対策であるということは非常に明らかなことであります。

 しかし、問題は、それらの二つの対策は非常に時間がかかるということです。これをやればすぐ非正規雇用は減らすことができるとか、これをやればすぐ若者の賃金が上がるというのはなかなか難しい状況にあります。先ほど小幡先生から、非正規雇用はなくすべきだという提言がありました。政権においても、非正規の正規化という取組をなさってくださっていると思います。しかし、すぐに非正規をゼロにするというのは、なかなか、いろいろな労働市場上の副作用をもたらすかもしれません。例えば、若者の失業率が上がってしまうかもしれません。雇用がされなくなってしまうかもしれません。そういったところから、時間がかかるわけです。

 ですので、こういった雇用の安定、賃金の上昇と同時に、より短期間でできる策、ここで「短期策」と書いてありますけれども、そういったものも同時並行でやっていく必要があると考えております。

 それがどういったものかということになるんですが、まず、タイムスパンを考えてみますと、いつまでにやるべきか。もちろん、雇用の安定、賃金の上昇はフル稼働でやっていく必要があるんですが、それだけでは間に合いませんので、短期策をいつまでに何をやるべきかというところが問題になるかと思います。

 現在、これまでの出生数を見ますと、結論から言いますと、二〇二五年ぐらいまでがラストチャンスじゃないか、つまり数年後ということです。なぜかといいますと、出生数は、九〇年代は安定していたんですが、二〇〇〇年からどんどん減っています。となりますと、二十代の人口というのは、大体二〇二五年ぐらいからはどんどん減っていきます。特に、二〇三〇年以降はどんどんどんどん減っていくということです。二〇三〇年前後から二十代の人口が減っていくということは、当然、出生数がだだ下がりしていく、これ以上下がっていくということです。

 ですので、二〇三〇年がタイムリミットということはよくマスメディアでも報道されているんですが、よくよく考えてみると、新しい短期策として、例えば、児童手当を拡充しますとか大学の学費を軽減しますということをやったとしても、果たしてその制度が今後十五年間、児童手当であれば十五年間、そして学費軽減であれば子供が二十歳ぐらいになるまで二十年間、その制度が続くかどうかという信頼感が若者に広がらないと出生行動あるいは結婚行動は変わらないはずです。

 ですので、タイムラグがどうしても生じてしまう。そのタイムラグが何年ぐらいか分かりませんが、仮に五年ぐらいだと。五年ぐらい制度が続けば、若者たちも、これなら結婚できるかな、出産できるかなと思うかもしれませんが、そういうタイムラグを考えると、非常にラストチャンスというのは目先のものであるということで、二〇二五年頃、数年後ぐらいがラストチャンスではないか。

 つまり、今後数年間に非常に大胆な政策を、制度変更をしなければ、なかなか、結婚が増えたり出産が増えたりというのはかなり難しいんじゃないか。そもそも若者の数が減るわけですから、若者の数が減れば、幾ら結婚率や出産率が上がっても、結婚や出産の数はなかなか増えないわけなんです。

 次の、一ページの一番下の星のところに行きますけれども、先ほど小幡先生からも移民の話、移民は来ないという話がありましたが、ここで、日本政府もかつて長期推計を出しております。先ほど、最初に二一〇〇年の話をしましたが、二一〇〇年以降の日本社会を安定化させるためにはどのような政策あるいは出生率が必要なのかという推計を出していまして、結論から申し上げますと、二〇三〇年に希望出生率一・八を実現するということ、さらに、二〇四〇年に人口置換水準二・〇六まで希望出生率が到達し、それがもし仮に実現されれば、それによって将来の高齢化率が今と同程度で定常化するということが政府の推計で出ています。

 下の図二の右側の図が高齢化率の長期推移なんですが、赤い線で描かれたのが定常化するラインです。もし今のまま進めば、高齢化率は四〇%前後で定常化します、二一〇〇年頃から。それに対して、先ほど申し上げた、二〇三〇年までに希望出生率実現、四〇年までに人口置換水準実現というふうに仮になった場合、実現といいますか到達ですけれども、仮にそうなった場合には、高齢化率は赤い線のところになって、今と同じ程度の二七%前後の高齢化率で二一〇〇年以降も定常化するというふうに推計をされています。

 ですので、一つ、二〇三〇年に希望出生率実現というのが、やはりこういった長期推計から見ても重要なメルクマールになるのではないかと考えられます。更に言えば、二〇四〇年までにもし若者の希望出生率が上がれば、二・〇六ぐらいまで上がれば、二一〇〇年以降の日本社会はかなり安定化するのではないかということが見て取れます。

 では、次のページに参ります。

 短期策と長期策を同時並行で進めていくべきだ、両方ともフルに進めていくべきだというのが私の提案になりますけれども、じゃ、短期策として何をすべきかというところが、恐らく喫緊の問題として、今後数年間の問題として、予算上も非常に重要になるのかなと思います。

 本質的なところを言うと、やはり結婚の支援ですね。様々な面で、結婚したい人がしやすいように支援をするということ。あとは、出産、育児の支援。特に、産みたい、育てたいという人たちの負担を軽減することによって希望出生率の実現に向けていくということが本質かと思います。この負担というのは、もちろん、経済的負担だけでなくて、身体的負担、心理的負担も含めての負担軽減になるかと思います。これを今後数年間で大幅にやっていかないと、若い人口がどんどんこれから加速度的に、倍速の速度で減ってしまいますので、間に合わないだろう、かなり将来の不安定要素になってしまうだろうと。とりわけ人口構造の面とか財政の安定性の面で、あるいは人手不足の面でということになります。

 長期策に関しましては、やはり、基本的に雇用の安定と賃金の上昇、あとは働き方の柔軟化といった面で、様々な、労働市場を改善し、効率性を改善したりだとか全体の労働生産性を上げる、それによってお金と時間のゆとりをつくっていく、あるいは長期的な雇用の安定の見込みが持てる、そういうふうになると、若い人たちも、結婚したい人、出産したい人がしやすくなるのかなと思われます。

 具体的な提言に入ってまいります。あと十分ちょっとです。

 まず、提案一と二に分けております。この提案一の方が、まず大前提として重要なことと考えております。

 といいますのも、少子化対策でもし子供が増えたとしましても、その子供たちが不幸な人生、例えば虐待を受けるような人生になってしまっては元も子もないわけでございます。ですので、生まれてくる子供たちが幸せに育てる、そういう育ちの保障というのが大前提かと思います。

 この大前提にどのぐらいの予算が必要なのかというのを試算しております。ただ、分からない部分もありますので、あくまで仮の試算ではありますが。

 まず、1のところに参りますけれども、子供の育ちのために一番重要なことは妊婦や親を孤立させないということです。それによって虐待を予防する。虐待が予防されれば、そして、家庭環境、生育環境が安定化すれば、よいものになれば、おのずと子供はすくすくと育っていくわけです。ですので、妊婦、親を孤立させない支援、いえば妊娠期からの伴走型支援というものが重要なのかなと思います。

 この伴走型支援、もう少し具体的に言いますと、やはり虐待リスクを減らすことが重要ですので、虐待リスクをしっかり察知できるような専門家、例えば保健師だとか助産師だとかそういった専門家が、しっかり、妊娠期から連続して、面談なり家庭訪問なり、あるいはLINEなどのアプリを通じた連絡も含めて、いろいろな方法で妊婦をサポート、伴走してサポートしていく。それも、出産後もそのような形で、固定された同じ人が、この人には頼れるという人が決まっていて、何かあったらこの人にLINEを送って、そして家庭に来てもらうとか、自分で面談に行くとか、そうすれば何とかなる、そういった方が専属でついていただいて、それで、二、三歳まで、保育所とか幼稚園に入るまでしっかりと、その固定された人が、専門家が支援していただけるというのが伴走型支援として非常に重要なことかなと思います。これは家庭訪問も含めて重要かと思います。

 ちなみに、専門家による家庭訪問は虐待を半減させるというエビデンスがアメリカであります。このエビデンスは、あくまで、不利な妊婦に対する、看護師という専門人材による定期的な家庭訪問を妊娠期から二歳まで続けた場合なんですけれども、虐待が半減する。とりわけ不利な妊婦の場合は虐待が八割減るという結果も出ています。

 そのようにして、家庭訪問も含めた、つまり、アウトリーチも含めたしっかりとした支援が必要かと思います。

 さらには、ここに一時保育のことを書いていますが、保育もまた虐待予防効果があるということが、東京大学の山口慎太郎先生たちの研究で既にエビデンスとして日本で出ています。ですので、とりわけ二歳あたりの非常に幼い時期ですけれども、そこで保育に通っていると親からの虐待や不適切な養育が減るということが既に因果推論によって分かっています。ですので、そういったところからも、保育もこういった伴走型支援の一つとして挙げられると思います。

 その他、子供たちはいろいろな特性がありますから、その特性に応じて、子供たちが生活しやすい、育ちやすい環境を整えるというのも重要かと思います。これが1になります。

 加えて、2ですが、しかし、保育を使うとなりましたら、やはり今、いろいろな壁があります。

 一つは、就労要件という壁があります。

 今、ゼロ―二歳に関しましては、保育、幼児教育は、基本的には働いていないと使えません。三歳以降は主婦の方も幼稚園を使えるので預けやすいんですけれども、利用しやすいんですが、ゼロ―二歳に関しては基本的に就労要件がかかってしまっている。これは、虐待予防の観点からするとおかしなことです。虐待のリスクというのは、働いても働いていなくてもあるわけなんですね。どんな親にも虐待のリスクはあります。

 ですので、就労要件は、ここは徐々に緩和し、行く行くは撤廃し、それによって、どんな家庭であっても、親が働いていても働いていなくても、主婦であろうが働いていようが保育を利用できる、必要なときに、必要と思うときに保育が利用できる、頼れるということが必要かなと思います。これが2のところになります。

 3が、これは、3、4はもう既によく言われていることですが、とはいえ保育士が集まらないわけですから、まずは保育士の、幼稚園教諭の賃金を上げる。これは少なくとも全産業平均までに上げる必要があるでしょう。これは一兆円ぐらいかかるかと思います。もっと十全にするのであれば、恐らく全産業平均に上げても十分集まらない可能性がありますので、看護師レベルまで上げる必要があるかもしれません。

 そして、4ですが、やはり配置基準の問題ですね。ですので、配置基準を先進諸国平均にまで充実していく。これに〇・七兆円ぐらいかかると試算しております。

 以上で、少なくとも一・七兆円の育ち保障が必要であるというのが提案一になります。

 これを前提としまして、少子化対策の短期策が必要であろうと考えられます。そのときにどのような政策が必要か。少子化対策は非常に多岐にわたりますので、下の表の一にまとめておりますけれども、両立支援だとか働き方、結婚支援、住宅の支援、出産の支援、児童手当、保育、学費軽減、いろいろなところがありますが、現在の日本におけるエビデンスとして政策の効果がある程度分かっているのは非常に限られています。

 そこで、エビデンスがある程度、とりわけしっかりしているのが現金給付としての児童手当。児童手当そのもののエビデンスはないわけなんですけれども、出産一時金が出生率をどのぐらい上げるかという研究はありますので、それを応用することで児童手当の効果と予算規模というのを試算することができます。これが児童手当のところの試算になります。

 あとは、保育の定員を拡大する。これは先ほど申し上げましたように、とりわけゼロ歳児は虐待予防として非常に重要なんですが、多くの親御さんたちは育児休業を取ることが多いです。特に、一歳から非常に保育ニーズが高まりますので、一―二歳に関して、保育定員を仮に人口比一〇〇%、全員が入れるとした場合には出生率が伸びるということが、これは、保育定員と出生率のエビデンス、そういった研究がありますので、そこから試算ができます。そうすると、〇・一三出生率が上がるというふうに試算を出していまして、賃金改善や配置基準改善を踏まえた上での予算規模は〇・四兆円というふうに試算しております。

 三つ目が学費軽減なんですけれども、これは、高等教育の全ての学生に一律で年間六十一万円の学費免除をするというのを仮に設定しています。なぜ六十一万円かというと、これが国立大学の学生の年平均の負担額なんですね。ですので、これによって国公立大学生は基本無料になります。そして、私立大学生は大体半額ぐらいになるわけなんですが、これによってどのぐらい出生率が上がるか。これはなかなかしっかりしたエビデンスが日本でありませんでしたので、私自身がOECDのデータを分析しまして、そのOECD諸国の平均的な傾向からいろいろな前提を置いて計算したところ、出生率は〇・〇九ぐらい上がるんじゃないかと。予算規模としては二・四兆円ぐらいかかるという計算になります。

 さて、一つ目の児童手当、軽く飛ばしてしまったのでもう少し詳しく申し上げますと、今一番議論になっているところですが、児童手当を仮にどのぐらい給付すれば出生率が上がるのかということになりますが、まず、先ほど申し上げましたとおり、出産一時金と出生率の因果関係についての因果推論の研究が一つあります。それを用いて計算した結果ではあるんですけれども、先ほどの保育による〇・一三上昇、そして学費軽減による〇・〇九の上昇、これだけだとやはり希望出生率には届かないわけです。なので、不足分を、じゃ、児童手当で補おうというふうになった場合、〇・三一ぐらいの上昇が必要になる。この〇・三一の上昇をもたらすぐらいの給付金額というのはどのぐらいかといいますと、全ての子供たちに月三万円の上乗せをすると仮定しますと、その結果、出生率が〇・三一上がるという計算結果を導き出すことができます。

 もう少し細かく言いますと、実は、このエビデンスにおいては、世帯所得下位五〇%の世帯にしか現金給付の出生率引上げ効果はないということが分かっています。世帯所得上位五〇%の世帯においては現金給付は出生率を引き上げないという研究結果になっています、現金給付のエビデンスにおいては。

 ですので、下位五〇%の世帯に月三万円給付すると、これで出生率が〇・三一上がるということなんですが、かといって、では、上位五〇%の世帯に全く支給しない、上乗せしないというふうになりますと、これはやはりいろいろと問題があるかと思います。そこで、全員一律月三万円上乗せ、今は全く支給されていない六十万人ほどの世帯においても一律月三万円上乗せとした場合には、予算は五・二兆円となります。それに対して、上位五〇%に関しては傾斜をつける、三万円から最低一万円まで傾斜をつけるとなると、これは四・三兆円の予算になります。なので、一番、今支給されていない六十万人の高所得世帯は月一万円上乗せ、もらえるようになるわけなんです。

 完全な、何ももらえないという意味での所得制限はこれでなくなることになりますけれども、これで最低一万円、下位五〇%は三万円上乗せされる。なので、現行一万とか一万五千円もらっていますので、四万とか四万五千円になるわけです。非常に大きくなります。非常に助かるかと思いますけれども、それによってこのような効果になるだろうという試算をしております。

 あと二分程度で終わります。

 以上の短期策で、この計算によると〇・五三上がるということで、出生率一・八三、つまり希望出生率一・八が実現する、そういう試算となります。

 ただ、先ほど申し上げましたように、二〇四〇年までに二・〇六まで希望出生率も上がり、それが実現されるということがもし仮に目指されるのであれば、これでは足りないわけですから、じゃ、そこではやはり長期策として雇用に関する政策が必要だろうと。しかし、どういった雇用政策なり経済政策なりをすれば、とりわけ労働に関する政策をすれば出生率が上がるかというのはエビデンスがありませんので、ここでは私が、やはりOECD諸国のデータを分析しまして、労働時間と出生率の関係を導き出しました。

 それによると、年間の労働時間が二百三十五時間仮に減ると、しかもそれが、生活水準が低下せずに、一人当たりGDPが減らずに労働時間だけ減ると、つまり労働生産性が高まるということですが、それによって出生率が〇・四四上がるという計算を導いております。ただ、今後十七年間で出生率はおのずと〇・二一減るという傾向もその同じ分析から導かれています。ですので、差引き〇・二三上がることになりまして、二・〇六に達するという試算になります。

 そのようにして、様々な、同一労働同一賃金だとか、デジタル化だとか、働き方の柔軟化、労働移動等によって労働生産性、一時間当たりの生産性が上がれば、その結果、お金と時間にゆとりができ、そして労働時間が減る、豊かになりつつ労働時間が減れば、出生率は長期的には上がるのではないかと試算しております。

 以上で私の意見陳述を終えたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

 次に、北岡伸一公述人にお願いいたします。

北岡公述人 北岡でございます。

 こういう機会をお与えいただきまして、誠にありがとうございます。

 最初に、今日は主として防衛予算についてお話をしたいと思うのでありますが、それをお話しするに当たって、私のバックグラウンドについて一言二言触れさせていただきたいと思います。

 私は、学者としていろいろ専門分野はございますが、その専門の一つは軍事史であります。ここに書いてあるような本を、特に一番目と三番目は研究書なんですけれども、こういうことを書いております。

 また、政府の関係でもいろいろな仕事をしてまいりました。例えば、特命全権大使、国連代表部次席代表というのをやっておりましたが、このときは、安保理改革というのに関連して、これは世界の安全保障に非常に関係の深いものでありました。また、この頃は今と違ってPKOが非常に盛んでありまして、スーダンのダルフールのPKOとかその他のPKOをセットアップするということにもいろいろ関係いたしました。また、この年の、私がいるときの二〇〇六年の七月というのは、北朝鮮のミサイル発射に対して初めて非難決議が通ったときでありまして、これもいろいろ関係いたしました。

 さて、日本の国内におきましては、安全保障と防衛力に関する懇談会というのをよくつくりまして、それでもって大綱を議論するということがあるわけなんですけれども、それに幾つか参加いたしました。例えば、二〇〇九年に麻生内閣のときに参加したんですが、政権交代でそれは大綱には反映されませんでした。二〇一〇年、一二年というのは誤植でありまして一三年であります、二〇一八年と、その後三回参加したんですが、この二〇一〇年に括弧がついているのは何かというと、これは正式の閣議決定でつくられた安防懇ではなかった。これは実は、民主党政権のときに、別途、民主党の中枢から要請を受けてタスクフォースに加わったものであります。

 ついでに申し上げますと、私は基本的に自民党の方々と一緒に仕事することが多かったです。しかし、安全保障というのはできれば超党派で進めていきたい、真っ当なことを考えられる方とは是非誰とでも協力したいという考え方から、これにも参加いたしました。一定の成果は上げたと思います。

 例えば、これまで、このとき冷戦が終わって二十年たっているにもかかわらず、まだ、陸自は北海道が中心だったんですね。それはおかしい、南方重視に転換すべきだというのを取り入れられたのはこのときであります。自民党政権ではそれはできなかったんです。それは、自民党の先生方が、それまでよくやってこられたんですけれども、地元を説得するのに大変な苦労をされた、それを変えられないという事態があって、私が陸自中心、北海道中心は転換しようということを書くと、すぐいろいろな自民党の先生方から、ちょっと、北岡さん、ああいうことを言うのはやめてくれませんかというリクエストがよく来たものであります。これは、いわば、客観的に言いますと政権交代のメリットなんですよね。政権交代の結果、それまでのしがらみと違うこともできる。悪いこともあるんですけれども、もちろん。

 一三年、一八年と安倍内閣で安防懇をやっておりまして、一三年は座長、一八年は座長代理でございましたが、今回も、NSSからインフォーマルのヒアリングで、どういう意見がいいかというのをいろいろ申し上げたわけであります。

 もう一個は、これまた民主党時代に、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会というのを岡田外務大臣から委嘱されましてやりまして、一定程度、幾つかのことを明らかにできたつもりであります。

 もう一つは、最後に書きましたのは、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会というのは、御案内でしょうか、結果的に集団的自衛権行使の一部解禁ということにつながった懇談会の我々の報告であります。柳井判事が座長、私が座長代理でやっておりまして、最初、一度、安倍内閣、第一次で失敗しまして、第二次で実現したというものでございます。

 こういうことがあったということを踏まえてお話ししたいと申し上げたいのでありますが、私は今回の防衛予算に全体として賛成でございます。支持したいというふうに思っております。

 特に、私は、この中心は反撃力であるというふうに思っております。反撃力という言葉自体、実は、ほかにもおられるかもしれませんが、私の周辺では私が言い出しっぺでございます。最初に、二〇〇七年にある財団の提言に反撃力を持つべきだということを書きまして、全く反応がありませんでした。一本だけアメリカ大使館から電話がかかってきました。これは具体的に何を考えておられるんですかと。曖昧な返事をしましたけれども、そういうことがありました。

 しかし、政府の中では、二〇一三年にこれをやるべきだと安防懇で主張しまして、二〇一八年、僅か五年前であります、四年数か月前の会議でもこれを主張して、そのとき私は明確にメモにして提出したんですね。そのエッセンスはここに書いてあるとおりです。専守防衛の精神を維持しつつ、万一攻撃された場合には直ちに反撃を加えて第二撃を防ぎ、あわせて他国が日本を攻撃することを思いとどまらせるようにすべきだ、そういう反撃力を持つことが必要だということを提言して、このとき、いろいろな方の反対というか消極的な態度で取り入れられなかったのを私は残念に思っておりますけれども、今回、これが取り入れられてよかったなというふうに思っておる次第であります。

 といいますのも、それまでは、北朝鮮の脅威が一番で、これに対する主たる防衛方法はミサイル防衛だという考え方だったんですね。しかし、常識的に考えて、それは不可能なのであります。世界で最も発達したミサイル防衛はイスラエルのアイアンドームだと思いますけれども、これだって撃ち落としはあるわけであって、それは、パレスチナのガザから飛んでくる非常にちゃちなミサイルを撃ち落とすのでも撃ち漏らしがある。まして北朝鮮は、たくさん発射できる、変化球も投げる、もう無理だと。ですから、それよりは、もし撃ってきたら反撃するぞというのを持つのが安全保障の常道であります。これでいくべきだというふうに思っておりました。

 これに似た考え方に、敵基地攻撃能力という言葉がございます。これは、鳩山一郎内閣のときの国会答弁で、座して死を待つよりは発射直前にこれをたたくことは許されるという答弁なんですけれども、それがずっと引きずっていて、私はいかがなものかと思っているんですね。

 といいますのは、当時と今とでは技術が違うわけであります。今はどこから撃ってくるか分からない。穴に入っているんです、大体。地下に入っている。それを事前に察知してたたくということができるのか。それは、当時の技術水準でアメリカの圧倒的な力があれば、当時は僅かに可能だったかもしれないけれども、今はほとんど無理だと。ですから、私は、もっとはっきり、どこが攻撃の着手とかというよりも、先制攻撃はしないということを明言したらいいんじゃないかと思っております。

 実際、こっちがミサイルを撃ったって届くのに時間がかかるわけですから、相手の発射直前にたたくというのは無理なんですよね。これを、世界で、方々でフェイクニュースが飛び交って、日本が先制攻撃してきたと言いまくる国があるに違いないのであります。それよりも、最初の第一撃はミサイル防衛でなるべく防ぐ、その後、もし撃ってきたら、でも反撃するぞと。その際は敵基地に限る必要はないと私は思います。敵基地をたたいても、ほかにも基地はいっぱいあるわけですね。また、さらに、攻撃の中枢みたいな軍事施設はいろいろあるわけです。それは、国際法の範囲内でたたく権利を留保するというのが私の議論でありまして、こういうことを言うと、日本が先に先制攻撃したらどうするんだという御心配もあるかもしれませんが、核兵器を持っている大国にこっちから攻撃するということは常識的にあり得ないのであります。自殺行為であります。真珠湾よりひどいと思います。

 それから、どうやって、先制攻撃をしないか。これは首相の宣言等でやればいいのではないかと思います。繰り返しますが、発射直前にたたくというのは、法理的には可能ですが、事実上不可能だと。それははっきりと、先制攻撃はしないと言う方がいいのではないかと思います。

 また、これについて、歯止めがないと言う方があるんですけれども、歯止めはあります。国際法です。シビリアン、軍事目標以外はたたかない。今、ロシアがウクライナの燃料基地や発電所をたたく。こういうことはしてはいけないというのは常識であって、歯止めはあるのです。

 また、こういうことをすると周辺国の軍拡を招くという御批判がありますが、これは間違いでありまして、軍拡はもう既に先にあるんです。我々がそれに対応しているだけです。

 二〇一四年だったと思うんですけれども、私は中国のある高官と話したことがあるんですけれども、大使館の方ですが、向こうの方は、当時、二〇一四年だったと思うんですけれども、一四か五ですね、日本政府、安倍内閣が防衛費を増やしたことを批判したんですね。私は驚いて、今回増やしたのは一%かそこらだ、あなたのところは毎年二桁、一〇%増やしているじゃないか、何でそんなことが言えるんだと言ったら、その人は平然として、我々は前から同じ政策だ、日本は新しい政策になったと言うんですけれども。こういう国を相手にしてそんな議論をしていてもしようがないですよ。相手が軍拡をしているわけでありまして、これに対する対応が必要だと。

 確かに軍拡競争は好ましくありません。しかし、戦争はどういうときに起こるか。相手が絶対勝てると思ったときに起こるんですね。ですから、こちらの抑止力を上げておく。はっきり言ってしまえば、中国が簡単に勝てると思ったら、戦争が起こる可能性が高まるわけです。もし、結構手ごわいなというふうに思えば、ためらいます。中国は、伝統的にも軍事力の行使に慎重な国です。短期に絶対勝てると思わない限り、多分やらない。絶対とは言いませんが、やらない確率が高い。

 したがって、私は、平和を守るためには、一見逆説に聞こえるかもしれませんが、こちらが行き過ぎない程度の抑止力を持つことが一番平和への道だというふうに思っております。

 さて、今回の防衛予算でもう一つ評価したいのは、施設の老朽化対策とか弾薬の不足を補う備蓄とか、そういう地味な分野に手をつけられたことであります。これは大変重要だと思います。言い換えれば、今までの政策には大きな欠点があったということであります。つまり、日本はGDP一%という大枠がある、他方で、アメリカとの日米関係のよしみ等々で、アメリカから高い武器を買うんですよ。また、どうしても、軍人には最先端の武器を買いたいという欲求があるんですよね。戦前の大艦巨砲主義で、あるんです。その結果、その真ん中が抜けてしまうわけです。

 どんな小さな国も、自分たちの身の丈に合った軍備を動かせる、バランスの取れた軍備、これがよろしいんですよね。ところが、日本は、先端の武器はある、しかし予算は限られている、その結果、ぼろぼろの兵舎にいて、弾薬を貯蔵する場所がない、今のウクライナでやっているような消耗戦は全くできないということになっているわけで、これに対応したのは私は大変結構だろうというふうに思っております。また、これに併せて、さらに、慢性的な人員不足でありますから、私は人件費、手当をもっと増やすべきだというふうに思っております。

 さて、以上が留保つきながら賛成なんですが、二番に私の懸念を申し上げたいと思います。それは、はっきり申し上げて、増強した軍備を使いこなせるのかという危惧であります。

 ここで申し上げたいのは、シビリアンコントロールということであります。シビリアンコントロールということは、軍事が動きにくくすることではありません。軍事の暴発を防ぐと同時に、必要な場合にはきちっと使いこなす、これがシビリアンコントロールであります。

 シビリアンが暴走することもあるんです。例えば、ヒトラーもスターリンもシビリアンです。スターリンは大元帥だけれども、基本的にはシビリアンだし、ヒトラーは伍長だけれどもシビリアンです。

 近くはイラク戦争のときに、国防長官のラムズフェルドさんは割合少ない兵力でやれると言って、これに対して、プロフェッショナリズムの観点で反対したのがシンセキ陸軍参謀総長でありました。結果的に、これはシンセキさんが正しかったんですね。アメリカが少ない兵力でやった結果、イラクは大混乱に陥ったわけです。ISまでできて、今日のシリアの混乱につながる状態になってしまった。だから、プロフェッショナリズムの論理は非常に重要なんですよね。世界情勢を見渡したプロの軍人と、そして軍事をよく知ったシビリアン、そういう組合せがないとうまくいかないわけであります。

 それを前提に言いますと、政府、内閣の側に不足なところ、不安なところがたくさんございます。使いこなせるかという中で、一つだけ具体的に申し上げます。たくさんあるんですけれども、一つだけ申し上げますと、よく台湾有事のことを話される方があります。私は、可能性はあると思いますが、絶無ではないと思いますが、日本にある米軍が仮に出動するとすると、そのときは事前協議が必要なはずであります。その事前協議というのは今まで一度もやったことがないんですよ。事前協議というのは、誰からリクエストが来て誰がオーケーと言うのか、そういう準備はしているのかというのが私は大変不安であります。それはやはりやっておくべきではなかろうかという気がいたします。

 それから次に、更にお願いしたいのは、ほかにもいろいろ課題があったなと思うんですね。

 私は、NSCができるときもいろいろお手伝いをしたんですけれども、そのときの大前提は、これができたら、更にこれを補強するための情報機関、それは当時は想定ではヒューミントですけれども、情報機関がやはりもっと要るんじゃないか。さらには、今は、もっとAIを使ったオープンソースによる情報機関がないとまずいんじゃないかというふうに思うのであります。そっちもちゃんとやってくださるんでしょうか。

 それから、首相の周りに、やはり、自衛隊員が直に、自衛隊の幹部が、連絡が入れるシステムがあるんでしょうか。

 実は、三・一一のときに、あの大事件が起こって自衛隊が大いに活動しなくちゃいけないときに、菅首相の周りにそういう方がいなかったんですね。私がちょっとおせっかいを焼いて、そこに知人の元自衛隊の人に入ってもらう仕組みをつくったことがあります。それがないと、せっかくの立派な軍備をつくっても役に立たないということであります。

 次に、もう短いんですけれども、財源問題の話です。

 いかにして国民の理解を得るかというのは大変重要であります。私は、今既に公債がこれぐらいありますから、万が一戦争になったらもっとお金が要りますから、できるだけ財政の健全化は一定程度目指したいので、やむを得なければ増税ということもあり得ると思いますが、その間、やはり、無駄の削減といいますか、これまでの財政のやり方に無駄はなかったのかということをよく点検していただきたい。

 特に、最近のコロナで一体どれぐらいお金が出たか。私もJICAを預かって、年間千五百億とかの予算でやっている中で、そんなにお金が出るのかとびっくりするような金額が出て、それが消費を喚起するはずが実は貯蓄に回ったというのがたくさんあるわけで、コロナ対策なんかで出したお金がどれぐらい有効に使われたかということをちゃんと検証してほしい。

 総理はよく、丁寧に説明するとおっしゃいます。丁寧な説明は結構だけれども、それよりも、こういうときにこういうお金は使った、これは効果があった、なかった。初めてのことなので、なくてもしようがないです。間違ったらまたやり直せばいいんです。間違いだったらやり直す、大前提を検証するということです。その努力を是非お願いしたいというふうに思っています。

 また、自衛隊の中あるいは既定の予算の中で見直すものがないのかということも見直してほしい。

 ここがメモになかったのは、あえてやはり言おうかなと思って言うのは、例えば沖縄の基地の移転問題であります。あれは、想定、十年以上先にできるんですよね。一体お金は幾らかかるか。今、事態は緊迫しているんじゃないですか。十年以上先に完成するものにお金をつぎ込む余裕はあるんでしょうか。

 これは、私が親しかった岡本行夫さんがかつて非常に働かれた。岡本さん、あれは今でもベストの案だと思うかと、亡くなるちょっと前に聞いたことがあるんです。いや、あの頃はベストの案だったんだけれどもなというのが彼の答えです。ですから、常に軍事というのは今ベストかどうかということを考えていくべきというふうに思っております。

 最後に、失礼ながら、内閣の責任もあるけれども国会の責任もあると思うんです。

 今年は、かつて大規模な政治改革をやってから約三十年なんですよね。あの頃、大変な政治改革が沸騰して、選挙制度を変えて、大変なことがあったんですけれども、国会審議の効率化も当時よく言われたものなので、是非考えていただきたい。閣僚出席義務の軽減とか、外務大臣がもっと海外に行けるようにするとか、いろいろなことをやってほしい。

 それから、今、国会審議が官僚の大変な重荷になっております。例えば、私が教えておりました東京大学から霞が関に優秀な人材が行っていたのが、どんどん減っています。どんどん辞めています。つい最近も、私の優秀な教え子が一人、外務省を辞めました。この環境では子育てできませんというのがその理由です。それは全体として国力に大変なダメージです。そういうことをやめて、もう少し効率的に、今日の新聞にも載っていましたけれども、締切り時間までに通告が来る比率は二〇%だというんですよね。それをもうちょっと何とかしていただきたい。

 さらに、一言だけ、失礼ながら余分なことを申し上げるかもしれませんが、全体のスリム化を考える中で、政治改革、私は政治学者として申し上げますが、日本のように二院制で、同じような選挙システムを取っている国はありません。ほとんどないと思います。ですから、参議院はなくすというのは憲法改正が必要ですけれども、例えば参議院の定数は九十四にするというようなことは不可能ではありません。というようなスリム化の努力を、これだけ国民に負担をお願いするんだから、内閣でも国会でも是非負担をお願いしたいというふうに申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

根本委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

根本委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武部新君。

武部委員 自由民主党の武部新です。

 まず、四名の公述人の先生方に大変感謝を申し上げたいと思います。食料安全保障、それから金融経済、そして子育て支援、安全保障、防衛等、大変バラエティーに富んで、非常に貴重なお話をいただきました。

 今、私、地元が北海道ということもありますし、自民党で農林部会長をしておりますので、食料安全保障について大変個人的にも関心が高いというのと同時に、新型コロナ感染症で需要が減退し、それから、柴田先生のお話にもありましたけれども、サプライチェーンが寸断されて、さらに、ロシアによるウクライナ侵略がございました。国民の食料の安定供給への関心というんですか、懸念というんですか、これが非常に今高まっているんだろうと思いますので、食料安全保障について少し柴田先生にお聞かせ願えればと思います。

 地元が北海道と申し上げましたけれども、生産現場でも、エネルギー価格に加えまして、肥料や配合飼料、生産資材、これが大変高騰しています。これまで地元を回っていましても、生産者の皆様方から、こんなに経営が厳しいというのは経験したことがないというようなお話をよく伺います。特に、生産コストの大半を占めているのが飼料、餌でございまして、畜産、酪農経営というのが本当に深刻な経営状況にあります。

 今、酪農業の皆様方は、需要が緩和しておりますので、一方で生産抑制に協力していただきながら、しかし一方で、売上げは伸ばせないんですけれどもどんどんどんどん生産コストははらんでいくという、本当に厳しい、非常に厳しい経営状況にあります。

 そこで、政府におきましても、食料安全保障強化政策大綱を策定、昨年末にいたしました。肥料や飼料等の国内資源の活用ですとか、あるいは輸入に過度に頼っている麦、大豆等の本作化。要するに、生産構造の転換をしっかり図って、食料安全保障の強化を進めていくということを打ち出したわけであります。

 柴田明夫公述人にお聞きしたいんですけれども、先生のお話にあったとおり、気候が変動して生産が不安定化、世界中が、国際社会が不安定化しています。食料の世界的な需要は高まっています、拡大しています。それから、新興国の経済も上がっていますので、食料調達をめぐる環境というのが非常に、二〇〇八年のときもあったというお話でありますけれども、更に厳しくなっていきますし、これからも、不透明感が増しているんだろうというふうに思います。そこで、先ほど申し上げたとおり、構造転換をしっかりしなきゃいけないね、輸入に過度に頼っていたものについては、国内でできるものは国内で作りましょう、そういったことを進めなきゃならないと思うんです。

 食料安全保障の在り方について所見をお伺いしたいんですが、特に、先生のお話にもありました、肥料というのはほとんど外国に、輸入に頼っていまして、国産を増強しようというにも、肥料がなければ増産できない状況にありますよね。この確保ですとか、あるいは、穀物市場が、相当中国が買って、備蓄もしておりますけれども、今後の動向についてお話を伺えればと思います。

柴田(明)公述人 ありがとうございます。

 食料安全保障は、まさに先生のおっしゃるとおりの状態になっていて、食料・農業・農村基本法の考え方の下に安全保障政策大綱が昨年作られたのかと思うんですけれども、中身が、やはり肝腎のところの財源が不透明になっていて、今の状況の中で、食料危機というところで、後押しに、補正予算とか、あるいは、まだ未使用というか、使いどころのないところを利用した予算での対応というのは、基本的にはもう困難になっているのかなという気がします。

 中国のところでいくと、中国は二〇〇八年の食料危機を受けて安全保障戦略を大転換したと思っているんですね。そして、輸入能力を高めるということで、大豆であれば、世界の六割、一億トン近い大豆を輸入する。トウモロコシもいつの間にか三千万トンを輸入する、こういうふうな動きになっている。小麦も一千万トンなんですね。米も五百万トンという形で、そして、その上で在庫を積み上げているという形なんです。

 そのレベルで、さらに、今変化が起きているのは、国内の食料自給率を高めるという方向での転換なんですね。ということは、基本的に農業生産に必要な資源、特に肥料については、保護主義的、国内市場優先ということなので、まさに日本はこれから、取りあえず春の肥料は量は確保したけれども値段が倍ぐらいになっているという状況で、ますます厳しくなってくる。

 そこで、安全保障を考えれば、できるだけ国内での資源のフル活用という方向になるかと思うんですけれども、まさに北海道においても、国の今までの政策、攻めの農業の中で、規模拡大をすればするほど国際マーケットにコミットして、必要な飼料は海外に依存する、こういうふうな構図で、日本の農業というのは極力外部化してきたなという思いがあるわけですけれども、これをやはり見直していかなければいけない。

 できるだけ、日本の農業資源、農地も毎年二万ヘクタールぐらいずつ着実に減って、耕す人も減っているという構図にあるので、ここはもう一度、農業に対する思いというか評価、単に食料生産をするだけではなくて、太陽光エネルギーを活用するような農業、そういう側面もあるし、改めて農業の価値を、生産者だけではなくて、流通、そして消費者も含めて、運動として見直していくような方向転換が必要なのかな。一時的な、価格を抑えるとか、補償、補填をするとかということでは問題解決にならないと思っています。

武部委員 ありがとうございます。

 柴田公述人からもお話ありましたけれども、今、総理の指示で食料・農業・農村基本法の見直しの検討を政府の中でも進めておりますし、自民党の中でも議論をスタートしたところなんですけれども、これは二十四年前に作られた法律なんですが、相当時間をかけて、綿密に作った法律だと思います。

 ただ、二十四年前の状況でいいますと、当時とは自然環境も変わって、天候が不順になってきていますし、それから、国際情勢も変化しています。特に日本は、当時は世界で農林水産物の輸入の四割を輸入していました。今は中国が、もちろん総額がその三倍以上にはなっているんですけれども、中国が三割を輸入して、日本は二割を切るようになっているんですね。ですから、あの当時は、いつでも買えるんだ、そういうような経済的な優位性もありました。今、中国にプライスリーダーとしても負けているし、買い負けるということも実際に起きてきていると思います。

 いつまでも海外から調達はできないので、先ほども申し上げたとおり、国内で作れるものはしっかりと作っていくということになるんだと思いますけれども、先生の、今少しお話ありましたけれども、この基本法を改正する上で、予算もしっかりとというのもあると思うんですけれども、やはり食料安定供給に係るコストを、どうやって、誰がしっかり負担していくかということもあると思うんですよ。適正な価格形成をしっかりしていかないと、再生産できるような価格にしていかないと、農家も生産できなくなって潰れていきますし、そうすると、当然、日本の食料安定供給もおぼつかなくなっていくということだと思います。

 エガリム法のお話もありましたけれども、ただ、これはやはり、価格を決めるというのは民間同士の話にもなるので、具体的にこの価格形成、適正に作っていくということとか、もしお考えがあればと思いますし、農地の利用面もお話ありましたけれども、減っていく農地を、担い手も減っていくんですけれども、どうやって確保していくか、適正利用していくかということも、お考えがあればお伺いしたいと思います。

柴田(明)公述人 非常に難しい話でありまして、私は基本的に、適正価格の実現というのは生産者のコスト削減ではもはや済まない話であります。恒常的に価格体系が上がってきちゃっているので、結局、国全体でそれを実現していく。まずは、流通業、小売、食品加工、こういったところの購入価格の、その際にコストに配慮した対応というのが必要になってくるし、その上で、消費者も、安ければ安いほどいい、こういうふうな考え方は徐々に見直していただく。適正価格を見て、しっかりと国内のものを買い支えていただくというような方向というのをいかに醸成させることができるのかというのが課題になってくる。

 フランスも、エガリム法も最初は強制力がなかったんですけれども、それゆえに、今度は強制力をつける形で価格転嫁を進めていく、こういうふうな話でありますから、やはりその辺を見習うことなのかなと思いますね。

 それから、農地は減ってきている。二万ヘクタールずつ減ってきて、耕し手も減ってくる。こういう中で、誰がそれを担うのかということでありますけれども、担い手は、かなり頑張ってはいるんですけれども、増えて、実際、企業的な経営も増えている、しかしやはり限界があるのかなと。

 希望は、地方に行くと必ず、自分で、仲間で、五、六人で農事組合法人をつくって百五十ヘクタールを耕しているとか、そういう人材はいるんですね。そこは希望だと思うんですけれども。ただ、それではもはや済まない。体制的に見直していく必要があるので。

 私は、やはり関係人口。よく言われていますけれども、農村にもっと若者を、春休みなり夏休み、こういう休みを通じて行ってもらって、そして農村経験をしてもらう、それを支援していく。海外の労働力というか技能研修生等も、やはり、技能研修生に限らず、向こうの休みの間に語学の体験も含めて来てもらうような制度をつくっていく、こういうことが必要なのかなと思うんですけれども。

武部委員 ありがとうございます。

 これから検討する基本法の中身も、もちろん、産業として農業をしっかりとさせていくというのもあると思うんですけれども、農業の生産基盤の源である農村コミュニティーをしっかりと維持していくということも本当に大事なことでありますので、農家の担い手だけじゃなくて、いろいろな多様な半農半民の皆さん方にコミュニティーに参加していただけるような、そういったことを進めていくために、我々もしっかりと基本法の議論を進めてまいりたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 今日は、柴田明夫先生、また小幡先生、そして柴田悠先生、そして北岡先生、四名の公述人の皆様に、それぞれ御専門の分野で本当に知見を御披露いただきまして、改めて感謝申し上げます。

 私の方は、党の方で、子供、子育ての対策の方の事務局長もさせていただいておりますので、まずはそちらの方から、柴田悠先生に少し、何問かお伺いをしたいというふうに思っております。

 今国会でも、総理の方から、やはり少子化というのが本当に大きな課題である、そして、まさに次元の異なる少子化対策というのをしっかりやっていかないといけない、こういうお話もございました。そして、私ども公明党も、やはり、少子化対策、今までいろいろな対策を講じてまいりましたけれども、より一段踏み込んだ対策をやらないといけないということで、昨年の十一月に、子育て応援トータルプランということで、まさにこれは、先ほど先生もおっしゃっていただきました若者の雇用、そういうところから子育て、いろいろなライフステージに応じて総合的に支援を強化をしていかないといけないのではないかということも訴えさせていただいたところでございます。

 その中で、今回、まず一つお伺いをしたいのが、今までの対策としても、やはり、幼児教育、保育の分野が非常に大事だということはやってまいりまして、例えば、現物給付的なところでは、まずサービスの拡充ということで、待機児童の解消というところであったり、保育の質の向上という議論であったり、あるいは幼児教育無償化、そういうところに重点的にやってきたということもございます。

 他方で、その保育の分野、特に三歳から五歳のところであれば多くの方が非常に利用できるという状況でありますけれども、先生からもありました、ゼロ歳から二歳でありますとか、こうしたところについては、まだまだ実際には利用されていない方の割合も多いということで、非常に不十分なところがあるのではないか、こういうことで、ここの部分の充実も必要ではないかということも訴えさせていただいております。

 まず冒頭、ここの、先生が、提案一ということでいただいた、特にゼロ歳から二歳のようなところも含めて、幼児教育、保育のこういうところをしっかり支援をしていくという、今までの取組の御評価も含めて、ここの重要性やこれからどういうところをやっていくべきかということを、もう少し詳しく先生の方からお伺いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

柴田(悠)公述人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、公明党トータルプランを出しておられました。非常に、雇用から結婚、そして就職まで、幅広く、トータルで支援すると掲げておられまして、非常に評価できるものだと考えております。

 その中で、とりわけゼロ―二歳に関しまして、これまで、やはり保育、幼児教育は、とりわけ保育の面は、先ほど申し上げた虐待予防の件、あとは、発達にいい面というのが近年の研究では分かってきています。

 もう少し詳しく申し上げますと、まず虐待に関しては、虐待死はゼロ歳が圧倒的に多いです。ですので、虐待リスクを減らす上で、もちろん妊娠期間の伴走型支援に加えて、やはり必要なときに保育がちゃんと使えるというところをゼロ歳から確保していくというのがまず必要かなと思います。

 あとは、一―二歳に関しましてもやはりエビデンスがありまして、例えば、少し御紹介しましたが、東京大学の山口慎太郎先生たちの研究によれば、二歳半のときに保育所に通っていると虐待が減る、あとは、子供の発達もよくなる、親の幸福感も高まる、育児ストレスも減るという様々ないい効果が見られています。とりわけ不利な家庭においてよい効果が見られております。有利な家庭においても言語発達がよくなるという効果も見られています。特に悪い効果は見られなかったということです。

 私自身の研究としましても、とりわけ一―二歳の頃の保育所への通園というのが、子供の、三十代までの長期的な効果として、例えば、将来の孤立が減ったりだとか、自殺リスクが減ったり、自殺願望が減ったりといったところも、今、研究でそういった傾向を見出しております。

 そういったところから総合的に見ましても、とりわけ一―二歳の保育というのは、発達の面でよかったりだとか、長期的に見ても、発達やその後の人生にとってよい面もある、あと、虐待予防にもなる。とりわけゼロ歳に関しましても、虐待リスクが最も高い年齢ということで、やはりニーズのある世帯に対してはしっかりと保育を提供する必要があると考えております。

 問題なのはやはり就労要件でして、ゼロ―二歳の一番の壁は就労要件です。現在は、基本的には働いていないと利用できない。もちろんほかにも、障害があったりとか、いろいろ困難があれば利用できることにはなっているんですが、多くの家庭、とりわけ多くの主婦の方にとっては利用できないわけです。

 しかし、専業主婦家庭においても、やはり困難が生じれば虐待リスクは必ずあり得るわけなんです。それは、どんな世帯でも、どんな親でも、育児が孤立育児になり、ワンオペになり、そしてそれで虐待リスクが上がってしまうということは多くの研究で分かっています。ですので、ここは就労要件を撤廃し、誰でも必要なときに保育を利用できるようになるというふうになっていけば、子供の育ちにとってもよいと考えられます。

 ただ、それにおいて重要なのは保育の質でして、やはり、ここに挙げたように、賃金の改善と配置基準の改善は必須であろうというふうに考えております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 もう少しお伺いをしていきたいと思います。

 先ほど、保育の話で、様々、効果が高いということも言っていただきましたし、また、就労要件のところも含めて、やはり必要な方が全て利用できるような、できるだけ、今かかっているこういう要件なども含めて多くの方が利用できる形で、しっかり質を上げていくことが重要だということ、御指摘いただきました。非常に大事だと思っております。

 もう一つ、経済的な支援の在り方ということで少しお伺いをしたいと思っておりまして、この国会におきましても、特に児童手当でありますとか、いろいろな支援の在り方をどうしていくべきかというところは議論になってきております。

 児童手当に限らず、先生も挙げていただきましたこうした、学費の軽減でありますとか、経済的な支援というのはいろいろな形があるというふうに思うんです。

 そして、やはり議論になりますのが、何がどれだけ効果があるのかというのが非常に難しいというか、経済的なところが非常にネックになっているという御意見はある一方で、学費を軽減をするのがインパクトがあるという方もいらっしゃれば、やはり、今回、柴田先生のデータの分析によると、現金の給付でも効果があるというふうな研究も今拝見させていただきました。

 また、児童手当一つ取りましても、所得制限という議論もやはりありまして、確かに、政策効果としてどういう効果があるかという議論と、他方は、全ての子供の育ちをしっかりと社会で支えていくという政策の考え方の部分もありましたり、なかなか一律には判断は、いろいろな要素があるかとは思っておるんです。

 他方で、先生おっしゃるような、どういう形で上乗せをしていくことが、あるいは多子加算のような形の方が政策的には効果があるのかですとか、こうした経済的な支援の在り方とその効果ということで、今、データというか、そういうある程度エビデンスのあるような形で先生が御研究されている部分がございましたら、ここももう少し詳しく教えていただければと思うんですけれども、よろしくお願いいたします。

柴田(悠)公述人 御質問ありがとうございます。

 非常に難しいところでして、まず、エビデンスが、特に日本では非常に乏しい状況にあります。今回試算に使ったエビデンスのうち、児童手当に関しては、元々、出産一時金のエビデンスであるということ。児童手当そのものに関する因果推論のエビデンスが恐らくないということですね、私が見るところ。日本においてはです、海外ではありますけれども。

 そして、保育に関しては、これはしっかりとした因果推論の研究がちゃんとあります。査読論文があります。

 学費軽減に関しては、私自身の分析でして、しかもOECD諸国の平均的傾向にすぎません。しかも査読論文にもなっていませんので、やはりエビデンスとして非常に乏しいものです。

 ただ、そういった状況の中で試算するとこうなるんですが、まず、児童手当に関しましては、中野先生がおっしゃったように、多子加算のやり方もありますし、あるいは十八歳まで引上げというやり方、いろいろなやり方があるわけです。あるいは、所得制限はどうするのか、一律にするのかとか。そこら辺はやはり、そもそもエビデンスが足りないので何とも言えないところなんですけれども。

 まず、二ページの一番下に欧米でのエビデンスをちょっと紹介しております。詳しくは資料の七のところを後で見ていただければと思うんです。

 給付額を一%上げると、大体、出生率が〇・一から〇・二%上がるというのが欧米の全体的なエビデンスの傾向であるということが、山口慎太郎先生の「子育て支援の経済学」という本で紹介されています。それと比較しますと、私が試算した児童手当の効果は、それよりちょっと少ない、ちょっと小さな効果になっています。ちょっと小さいとはいえ、ほぼ同じような効果なんですね。ですので、欧米のエビデンスと比べても、そんなに極端な、大き過ぎたり小さ過ぎたりする数字ではないということが一つあるかと思います。

 あと、多子加算をした場合。これはやはりエビデンスがないので分からないんですけれども、海外ではエビデンスはありますけれども、日本の場合は全く分からない状況にあります。

 ただ、これも仮に、ちょっと試算してみたんですが、多子加算、例えば自民党案では、二児には最大三万円まで支給する、月三万円、三児以降は月六万円まで最大支給するという案が今、報道されております。もし仮に、それによって、夫婦の希望する子供数、理想の子供数という社人研のデータですが、あれが仮に実現した場合、出生率がどのぐらい上がるかというと、実はこの〇・三一と同じ数字になったんですね、これは私の試算ですけれども。

 ですので、もし、自民党案によって、多子加算によって夫婦の理想の子供数という社人研のデータがそのまま実現されれば、これもまた〇・三ぐらいの出生率引上げ効果になる。実現されればという、仮ですけれども。ですので、多子加算をしても同じような効果が見られる。

 しかも、自民党の試算によれば、多子加算は二、三兆円でできるということです。ここで挙げているのは、やはり、五兆円とか四兆円とか、もっと規模の大きい予算になってしまっていますので、もしかすると多子加算の方が費用対効果は高いかもしれないということも可能性としては考えられます。

 いずれにしましても、エビデンスが足りない中ですので、あとは、世論を見ながら、世論調査などを踏まえながら、国会でしっかり議論を踏まえていただいて。

 大事なのは、国民の間で不満がたまらないことです。不満がたまってしまうと、また、ばらまきだとか、そういった批判が起こって制度が不安定化する。そうすると、若者としてはまた失望してしまいます、せっかく制度がよくなったのに駄目だったと。こんなんじゃやはり子供は産めないよ、どんなに制度がよくなってもどうせ信頼できないとなれば、少子化はますます悪化するわけですので、しっかり議論を踏まえて、世論において不満のない形で決定していただきたいと思っております。

 ありがとうございます。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 なかなか、先ほどお示しいただいたとおり、エビデンスが非常に乏しい中での政策の実現になっていくということで、そういう難しさもあるという中で、やはり、どういうニーズがあるのかとかも含めて、そういう声をしっかり聞いていくというところも大事なのかなというふうにも感じさせていただきました。

 済みません、もうほとんど時間がございませんので、また詳しくは資料も読ませていただこうと思っております。

 やはり、今回こうした、少子化、子育て予算をしっかり倍増させるという本当に大きな議論をしておりますので、先生方からいただいたこういう御意見もしっかりと踏まえながら、そして、本当に若い人たちにとって効果のある、今回がラストチャンスだというふうにもおっしゃっていただいておりますので、まさにそういう期待に応えられるような取組をしっかりと議論してまいりたい、こういうことをちょっと最後に申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

根本委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 本日は、公述人の四名の先生方、ありがとうございました。

 申し遅れました、立憲民主党の吉田はるみです。

 たくさん、メモを取りまして、お伺いしたいことがございますので、各先生方に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、小幡先生、経済政策は要らないということで衝撃的な、スタートからあったんですけれども、私もビジネススクールの出身者の一人でございまして、大変興味深く聞かせていただきました。

 その中で、ちょっと後半の方で先生がお話しになりました、物価上昇、これを示す必要がない。日銀の、今総裁の話題になっているわけなんですけれども、まさに、物価上昇二%、二年間にと言われて、あれ、次は、次はという形で来て十年という形になるわけですけれども、今回、新たな総裁が選ばれる、任命されるというわけなんですが、先生の中では、リーダーシップは要らないというような御指摘もあるようです。先ほどお話しになりましたナローパス、もうやれることは決まっているんだから、その中で日銀が一枚板になれるかどうか、こんな御指摘があったと思いますが、まさに、先生の御経験も踏まえ、これはできますでしょうか。お聞かせください。

小幡公述人 難しいと思いますね。

 日銀の組織内の一枚岩も重要ですけれども、やはり周りの環境が重要で、敵は誰かというと、世界におけるいわゆる投機家ですね。日本攻撃をしようとしている、昨年六月にもありましたけれども。

 よく日銀総裁と市場とコミュニケーションと言われておりますけれども、市場というのは、要は投資家の集まりとメディアなので、つまり、むしろその投機家を孤立させて、それ以外の投資家、市場、メディアを味方につける。そうなると、まず、そもそも日本で、オール・ジャパンで一致団結する、政治もメディアも我々経済学者も日銀も、ということはもちろん政府もですね、一体となることが重要だと思いますので、その環境さえ整えば、日銀の組織の内部はそれに応じてまとまるというふうに思います。だから、外部環境の問題だというふうに考えます。

吉田(は)委員 続けて小幡先生に伺いたいんですが、まさにそのところでいうと、世界の投機家というところなんですけれども、昨日の藤岡委員の質問の中に、日銀がETFを大量に購入して、実質、上場企業の中には大株主が日銀の保有している株ではないかというような御指摘もあって、今の先生の御指摘、何をやっていくかというのは、正直、強いリーダーシップの日銀の総裁なのか、それとも、やれることがある中でどうオール・ジャパンになっていくかというところが問われていると思うんですけれども、これはどうやってこの鎖を外していったらいいんでしょうか。是非御提言をいただければと思います。

小幡公述人 本当に難しい問題で、昨日、パネルを見させていただきまして、ETF、ファーストリテイリング一・六兆を日銀が持っていて。これは一番間違った政策で、一番やるべきでなかった。即座に売るべきだと私は思います。

 ただ、今の優先順位として、国債市場あるいは円という通貨、その二つが非常に国際的な攻撃の、グローバル、攻撃の対象になっていますので、そこが最重要なので、ETFは、もう最悪のことをやってしまったんですけれども、今やめることはないかな、どうせすぐ終わるわけでもないので。目の前の危機を一致団結して乗り切った後でやると。

 その優先順位なんですが、リーダーシップは、大丈夫じゃないかと思うのは、もうまともな、下ではやるべきことは、意見は一致しているんです。手法は若干違うかもしれませんけれども、YCCをどうやめるかという一点に集中されると思うので、そこに対してまず一致団結してやって、それを乗り切ったら、じゃ、次、どうやるべきだ、長期的に物価はどうすべきだ、株どうしようという議論に入るべき、その順番の問題だと思いますので、今は一番の危機だ、まずここをオール・ジャパンで乗り切ろうということだと思いますので、リーダーシップ型であろうが調整型であろうが、結局同じだと思うんですね。

吉田(は)委員 まさにこの危機を、本当に国会議員みんなで乗り切っていかなければいけない局面だというふうに思います。

 その中で、一つ、私、とても気になっていることがございまして、また、済みません、小幡先生にお伺いしたいと思います。

 これも、有価証券報告書、つまり上場企業の話なんですが、今度の二〇二三年三月期から、人的資本の情報開示というのが始まります。ここには、企業がどういうふうに人のスキルアップや研修などでお金を使っているかということを情報開示しなければいけなくなるわけなんですけれども、今回国が出していますリスキリングの補助金、ある人に言わせると、こういった、上場企業が有価証券報告書に書くための補助金を出しているようなものじゃないかと。

 私、ここは、もうずっと内部留保が積み上がってきているわけです、日本の大企業。是非、その内部留保、利益剰余金を人のために使っていただくということで、国のお金ではなくて、そういった企業の体力の中からしていただきたいなという思いなんですが、いかがでしょうか。

小幡公述人 全くそのとおりだと思います。リスキリングは要らないというスライドも今日書いたんですけれども、それはなぜかというと、リスキリングというのは、要は表面上、上に乗せるものなので、必要なときに必要に応じて個人でやればいいわけで、企業が必要だったら企業が雇っている人に対してやればいいわけなんで、国が関与する必要は一切ない。リスキリングをすれば、あるいは自分でやろうという意欲が湧くような、つまり、各労働者の基礎力、初等教育に全て国のエネルギーは集中して、その上のリスキリングは全部自分でやってくださいということです。

 企業がやるものに関しては、やはりそれは企業で、政府は関わらなくていいと思います。

 それで、人的資本の報告書、ああいうのは本当に、アリバイづくりといいますか、書類を整える力がある、大企業が全部スコアが高いんですよ、環境報告書でも。それはなぜかというと、それ専用の人を雇えるお金があるからというだけで、中身と大分離れて、本当に形式なんですね。

 ですから、やはり個人、人を支えるということで政府の方はやっていただきたいですし、基礎力ということで幼児教育、初等教育に集中していただいて、リスキリングは各自で、各企業でということでお願いしたいというのが私の意見です。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 私も全く同じ意見で、その分のお金を、先ほど柴田先生の方からもありましたけれども、非正規雇用をなくすという中で、本当に、例えばワード、エクセル、簡単なメールの送信かもしれない、でも、そういうベーシックなスキルを上げて、少しでも時給のいいところに行きたいという女性の方は多いんです。そういうところに私は支援をしていただきたいな、そこに資源を集中していただきたいなと思っているところです。

 では、続きまして、柴田悠先生にお伺いしたいと思います。

 保育の質というところなんですけれども、自分も娘を保育園に預けていた一人で、認可なのか無認可なのか、もちろんこれも重要なんですが、そこにいる先生方がどれだけ自分の子供を、本当に自分の子供のように育ててくれるかというところが私にはとても大事でした。

 そのために、政府の方でも補助金つけているわけなんですけれども、これは先ほど北岡先生も御指摘されました、お金を出しただけでその先どんな効果があったのか検証が足りないというところなんですけれども、事業者にお金を出して本当に保育者に行っているかどうか、これはとても問題だと思います。

 その中で、東京都の場合はキャリアアップ補助金というのがまたあるんですけれども、これは条件として、必ず補助金が保育士さんに行っているか、これを条件にしているんです。何かこういったことを国でもできないかと思っているんですが、いかがでしょうか。

柴田(悠)公述人 御質問ありがとうございます。

 非常に重要な点でして、ここの提案では賃金を引き上げというふうにシンプルに書いてありますけれども、まさに、ほかの公述人からもありましたように、賃金がしっかりと、補助金が賃金に反映されているかどうかに関して、いろいろ規制緩和が行われて、反映されにくくなっているという現状は非常にゆゆしき状況ですので、そこはやはり同時に制度もしっかりと改善していく必要があるかと思います。東京都の取組は非常に参考になるものだと考えております。

 ありがとうございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 本当に、国民の皆様からお預かりしている大切な税金を使っての国の支出だと思っておりますので、ここは真剣に我々考えなければいけないところだと思います。

 その意味で、先ほど北岡先生の方からも、予算の使い方の検証、この重要性も教えていただきました。ただ、安全保障の話になって、今、ずっと私も予算委員会に籍をいただいて安全保障の話を聞いている中で、いろいろ私たちも知りたいんですけれども、どうしても政府の答弁の中には、外交上の問題がありますから、安全保障上の問題がありますからという前置きがあって、例えば一般的な例でもいいんですけれども教えてくださいという声になかなか十分な説明をしていただいていないように思うんですが、やはりこういうのは難しいものでしょうか。

北岡公述人 御質問ありがとうございます。

 私が答える立場かどうか分からないですけれども。

 多くの国では、やはり秘密会というのをやるんですよね。戦前の日本にもありまして、そのときに、秘密を破ったらちゃんとペナルティーがあるということをやって情報をシェアする。特に重要な問題は、まあ、一部の国ですけれども、やはり政府だけじゃなくて、野党の幹部とも、首脳ともシェアするという仕組みをいろいろな国では開発しておりますので、日本はちょっとそこは不十分ではないかなと。

 いろいろな日本の政党の会合でも何でも、基本的に秘密というのが多いんですけれども、秘密で守られたことはほとんどないんですよね。というのが実態かと思います。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 本当に活発な議論をして、中身を本当にちゃんと議論していきたいという私たちの思いでございます。

 それでは、柴田明夫先生にもお話を是非お伺いしたいんです。

 私は山形県の出身で、農業県なんですけれども、実家、本家の方は、果樹園そして米農家と、農家をやっています。でも、小規模の農業、これをどう守っていくかというところで、ちょっと今、私は東京の在住なんですけれども、不安になるのが災害時の食料です。こういうときに、例えば、契約農家さんが、自分の契約している農家さんが、どこか地方にある、小規模でもいいんです、自分でなかなか耕すことはできないんですけれども、そういう都市のニーズを集めて地方の農家さんがやっていくみたいな、そんな取組とか例とか、ございませんでしょうか。これはちょっと私の夢なんですけれども、是非教えていただければと思います。

柴田(明)公述人 ありがとうございます。

 値段が下がっていく中で、やはり、取組というのは、自分の顧客を持っていればある程度そういうふうな問題も解決できるんですよね。

 私も石川県の農事組合から毎月米を購入して、子供たちにも送っているんですけれども、それは結構高いんですよね。でも、一応そういう形で対応してきている。養豚農家の方なんかも、自分で顧客があれば自分の形で、餌とか育てる環境とか、それから品種も含めて、きちっと自分で値がつけられるという状況に持っていけている農家は非常に生き生きとしていますよね。だから、地方に行くと必ずそういう期待される人材というのがいるんですけれども、これを全体に広げていくとなると難しい。

 私は、農業の経営体というのは二つ性格があって、一つは私的な収益単位としての農業経営。しかし、もう一つは、なりわい的な、自給的な農業であっても、生産、畑を耕している限り社会的な生産単位としての性格があるので。今は専ら、グローバリゼーションの中では、私的収益単位としての農業、攻めの農業というのが焦点を当てられてきているんだけれども、今、こういう状況ですと、グローバリゼーション、開かれた市場も重要ですけれども、なかなかそれが安定供給とかリーズナブルな価格形成につながらなくなってきているので、もう一度、大きな流通から、地産地消的な小さな流通というのを見直していく必要があって、そのために、国内の資源、人材も含めてフル活用するような方向で、社会的な生産単位ですから、国が農村に対する評価をもう一度変えてもらう必要があると思うんですよね。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 先生方、大変参考になる、そして勉強になる御示唆をありがとうございました。

 以上で終わります。

根本委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 本日は、公述人の先生方、四名の皆様から本当に貴重な御意見、お話を伺いまして、本当にどうもありがとうございます。我々予算委員としましても、いただいた御意見をしっかりと拝聴しながら、より国民のためになる予算をつくっていけるよう議論を進めていきたいと思っております。

 それでは、予算委員会ということで、予算に関連する質問を三つほどさせていただきたいと思います。

 まず、北岡先生の方に。

 私ども日本維新の会は、今回の反撃能力を持つという議論、また昨年末の安保三文書の改定において、きちんとした防衛力を日本は持つべきであるということを一貫して申し上げてまいりました。その一方で、予算の増、防衛予算の増ということに関しては賛成をいたしましたけれども、中途半端な反撃力を持つぐらいだったら逆に持たない方がいい、こういうことを申し上げてまいりました。先ほど北岡先生のお話にあったような、北朝鮮からのミサイルというのが物理的に防ぐことが不可能であるという中で、抑止につながるような防衛力強化ができるならばそれは持つべきだし、それができないんだったらやるべきじゃない、こういうことを申し上げてきました。

 そういった中で、この国会が始まってからちょっと感じますのは、何か、一度予算の増は決まったけれども、防衛力の強化あるいは反撃力の保有に関しては中途半端なものにとどまりそうな、そういう雰囲気を感じております。

 そういった中で、今いただきましたお話も踏まえて、北岡先生の方で、今回増えた予算、防衛予算をどのようなことに活用する、使用することが適切であると考えられるか、その点についてお話を伺えればと思います。

北岡公述人 御質問ありがとうございました。

 先ほど申し上げましたとおり、私は、今回の防衛予算に基本的に賛成だと申し上げました。特に二点において賛成だと申し上げました。それは、反撃力を持つことであり、もう一つは、施設の老朽化対策それから弾薬の備蓄対策、こういうものが必要だと申し上げました。

 確かに、どういう反撃力が有効かというのはなかなか難しい問題で、これはタイムフレームとの関係なんですね。いつ頃、どういう危機かと。最初に考えられるのはトマホークなんですね。しかし、その先、これは打撃力それから速度等で欠点もあるんですよね。ですから、それがいつまでもつか。しかし、危機が今すぐだったらそれしかないというのがあるんですよね。それから、もう一つの方の、施設の老朽化とか。これはもう本当にひどくて、ウクライナを見ても、あとは弾薬の備蓄ですね、とにかく一定の消耗があるわけですね。

 ですから、もし今すぐ危機があったらすぐ使えるものを用意して、そして、徐々にそれをよくしていくべきではなかろうかと。

 そのためにも、ただ、反撃力を持つといっても時間が若干かかるものですから、これこれの、私の言ったのを誤解されるといけないんですけれども、幾つか懸念を申し上げました。こういう懸念が払拭されなければ反対だという意味ではないんですね。とにかく、こういう懸念点には是非留意してほしい、しかし、基本的には、反撃力を持つ、そして備蓄等の問題には対応するというところからしっかり始めてほしいという趣旨でございます。

青柳(仁)委員 まさに、いただいたような、専門家の視点から見て、タイムフレームなんかも考えた中で、どういった段階でどういった装備が必要であるか、それによってどの程度の防衛力、反撃力を日本が持つことができるのか、それによって、各国の国際情勢を見たときに、国民と国家をしっかり守れるかどうか、こういう現実的な議論というのは、しっかりこの国会でも行っていく必要があると常々考えております。

 本当に今日は貴重なお話ありがとうございます。

 次に、柴田悠先生の方にちょっとお話をお伺いしたいんですけれども、このいただいた資料、今日これを見まして非常に感銘を受けまして、これは本当に、国家予算を子育ての投資に、予算として使った場合、どの程度のリターンが想定されるかと。リターンというのは、つまり出生率がどれぐらい上がるかということを数値で表すという、極めて政策をつくる上では有効なツールではないかなと思いまして、まさにこういう、もちろん計算の根拠であるだとかフォーミュラというものはいろいろな考え方があろうかとは思いますが、こういった、数字で語る政策というのを是非この国会でも進めていくのが重要だと思っております。

 そういった中で、例えば児童手当に関しては、五・二兆円で〇・三一の上昇等々書いてありますが、私ども、大阪の方で教育の無償化というのを推進しております。全国でやっていることと大きく違うのは、各学校に教育費のキャップをかけまして、そのキャップまでの予算を出すことで実質無償化を実現している。つまり、ただ単に補助を与えるだけでは、学校側が学費を上げたら永遠のイタチごっこが始まってしまってこれは無償化にならないということなので、そこが大阪の全国との違いというところだと思うんですね。あと、もう一つの違いは、高校の教育無償化というところに取り組んでいるところなんです。

 そこで、ピンポイントの御質問なんですけれども、この表の中で高校の無償化というのは特に書いていないんですが、高校の無償化というのを行った場合の例えば出生率への影響、数字で出なかったとしても、どんなように今お考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、中山委員長代理着席〕

柴田(悠)公述人 御質問ありがとうございました。

 私の行った分析の結果が後の資料の方に載っている部分がありますけれども、大学、つまり高等教育への支出は出生率との関連が見出せたんですけれども、中等教育、中等教育はちょっと広い見方ですけれども、そこにおいては残念ながら関連が見出せませんでした。具体的には資料の八ページの表の一というところに、モデル四というところに書いてあるんですけれども、高等教育支出は出生率とのプラスの相関がありまして、ただし、中等教育支出、これは中等教育ですので中高になってしまいますが、ここは特に有意な関連が見えなかったというところでした。

 なぜかといいますと、ほぼこのデータはOECD諸国のデータに基づいていまして、中等教育までは当然無償化されています。大学すら無償化されています。その中での、そのOECD諸国においてすら大学への支出が更に出生率との関連があるということですので、日本においては、高校、特に私立高校においては完全無償化はまだできていない部分がありますので、日本とは大分状況が違うデータに基づくというところは留保が必要かと思いまして、日本においては高校無償化も出生率引上げ効果があるかもしれません。そして、大学無償化の効果もこれよりももっと大きい可能性があるかなと考えております。

 以上です。

青柳(仁)委員 今おっしゃった中にも非常に優れた洞察が含まれていたと思うんですが、無償化といった場合でも中等教育あるいは初等教育の場合は必ずしも出生率との関連性が高く確認はできないというようなことであるとか、そういうエビデンスベースでどこに政策を打つべきかということを考えていくというのは非常に重要なことだろうなというふうにまさに思います。どうもありがとうございます。

 続きまして、小幡先生の方にちょっとお伺いできればと思います。

 このプレゼンテーションの中で、なぜ日銀は異次元緩和を長期に続けたかということがあって、非常に、どんなことをお考えかなと思って、期待していたんですが、スライドを見たら、謎と書いてあって、ちょっとびっくりしたんですけれども。謎なんですが、一つ私が思い当たるのは、やはり国債発行との関連性ではないかなと思うんですね。

 財務省に、国債発行というのはどうやって額が決まるのか、こういう質問を何度かしました。返ってきた答えは、単純な引き算ですということでした。歳出が予算要求によって決まりまして、そして別に歳入が来ます、その差額を、理財局が国債を発行しているんです、こういう話でした。

 ただ一方で、大規模な異次元の金融緩和があって、一度市場に出た国債を日銀が買い取っているという関係性がなければ、今のような大規模な国債を発行することというのはやはり難しいんだろうというふうに思っております。

 今回の令和五年度の予算においても、最大のポイントは、コロナ禍が収束するという中にあっても予算自体は過去最高を更新し続けている、また、国債発行額も多少減りましたけれども、ただ、これは税収増を加味して考えると、その増加率というのは去年よりも高くなっているということなんですね。

 ですので、国債発行、つまりは財政支出を政府がより多く持とうというふうに考える、あるいはそこの歯止めが利かなくなっているということと金融緩和の関係というのは一定程度あると私は思うんですけれども、この点について御所見をいただけますでしょうか。

    〔中山委員長代理退席、委員長着席〕

小幡公述人 いろいろ考えた結果、謎と書いたので、やはり謎は謎なんですね。

 日銀が金融緩和しているから財政の方が緩むというのはよくある議論ですし、実際あると思います。財政が緩んでいるから、膨らんでいるから、それを助けるために金利を低く抑えるというのはメディア的にはありますけれども、ただ、あそこまで極端なことを日銀が全体でやるというのはちょっと考えにくいので、何らかの異次元の力が働いたという、分からないです。真面目に分からないので、本当に幾ら考えても分からないので、謎です。

 失礼します。

青柳(仁)委員 ありがとうございます。

 非常に、ただ、重要な御示唆だと思っておりまして、今皆さんも笑っておられましたけれども、ただ、これは国民にとってはやはり笑える問題ではありませんで、これを、理由が謎なのは多分謎なんだと思います。私の推測はあくまで推測、仮説でしかありません。しかし、何らかの理由でそうなっていると。そして、それは財政という観点から見ると将来の日本にとって大問題であるということですから、これはやはりみんなで、しっかりと理由をはっきりとさせた上で解決策をつくっていくのが国会、政治の役割であり、使命であろうというふうに私は考えております。

 もう一問、済みません、北岡先生に一つ。非常に重要な御示唆がありましたので、一つだけどうしても伺いたいことがありまして、一ページ目のレジュメの中に先制攻撃をしないことを明確化すべきということがありました。これは私も目からうろこだったんですけれども、確かにそのとおりだなと。先制攻撃をしようなんて誰も考えていないわけで、また、反撃能力で敵の発射直前にたたくことは、法理的にはともかく、現実には不可能なわけですから、初めから宣言した方がいいというふうに思います。

 これに関して、まさに国連大使であるとかそういった政府の要職を、自民党政権、民主党政権の間ずっと務めてこられた、現実の外交を御存じで、また、かつ、そういった外交史、軍事史を研究をずっとされてきたお立場から、仮に明確化するのであれば、国際社会に対してどういう形で明確化するのが最も手段として適切あるいは効果的であるとお考えでしょうか。

北岡公述人 さっき申し上げましたとおり、鳩山一郎内閣のときに言ったのは、法理的にはそうなんですけれども、攻撃に対する着手は何であるか。今は、ミサイルが飛んできたときに、今どこを飛んでいるか十分把握できないような技術的な段階なわけですね。そんな段階で、着手したかどうか微妙なところで国際社会は説得できるかと。

 したがって、私は、本当に、飛び始めてから、それからの反撃でいいと思っているんです。ですから、法理的には着手時で攻撃が始まったといってもいいんですけれども、実際にその時点でそれをたたくのはほとんど不可能なので、最初はミサイル防衛で頑張って、明らかに飛んできた、国際社会でこれをアピールして、そして十分勝負できるというのを、もちろん瞬時に判断するんですけれども、それから反撃力、その反撃は基地なんかに限らない、もう少し広い範囲をたたく反撃をすべきだということで。

 どうやってやるかというのは、いろいろあり得ますけれども、私は総理大臣の宣言で十分だと。それ以上に、例えば国会決議なんかで縛るべきじゃないと思います。国会決議というのは、私、基本的に反対なんです。憲法ですら改正の手続があるのに、国会決議というのは変えられないんですよ、一回やったら。満場一致が原則ですからね。

 ですから、やはり、安全保障には機動性というのは重要ですから、日本が、我々は先制攻撃は絶対しないと言えば、一定の信用性はあると思います。だって、周りはもっと強い国ばかりなんだから、それを超えてやるということはまさかないだろうなというので。全員が一〇〇%信じなくたっていいんです、我々はこの立場だと言っていればいいんですから。というのが私の考えでございます。

青柳(仁)委員 ありがとうございました。

 本当に、次の一歩につながるような、極めて重要な御示唆だったと考えております。

 四名の公述人の皆様、それぞれ貴重なお話を伺いまして、本当にどうもありがとうございました。私の質問を終わらせていただきます。

根本委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。鈴木敦でございます。

 まず最初に質問させていただきますのは、衝撃的な発言というか、私が一番言いたかったことを代弁していただきました小幡公述人にお話を伺いたいと思います。

 非正規雇用を名実共にこの世から消す、全く同じ意見でございます。私は、非正規雇用を経験した者でございます。そのときの経験はもうこの予算委員会でもしておりますし、政府も正規雇用化に向けて動き出したということも一つ大きな一歩ではあるとは思いますが、一方で、これは柴田悠公述人もおっしゃっておりましたが、急激にこれを進めますと、反作用ももちろん大きくなりますし、雇用の安定化が損なわれるということもあると思います。

 こちらのスライドにも書いていただいていますが、同一労働同一賃金の徹底というのはまさにそのとおりで、同じ仕事をしていても待遇だけが違うということはもちろん今までも起こっております。非正規雇用の廃止というのは私は大賛成なんですが、このために国として行うのが、雇用の安定化に資するために、同一労働同一賃金は私は大事だと思いますが、それ以上に何か重要な視点というか、試み、何かもしあれば、御示唆いただければと思います。

小幡公述人 いや、ちょっと難しい質問で困っていますけれども。

 実現可能性を度外視してお答えすれば、やはり社会保障負担が増え過ぎているのが問題で、消費税を上げられなかった分、ちょっとあれなんですけれども、消費税で財源を取れなかった分、社会保障なら取りやすいということで、どうしても、社会保障がすごく上がっていくと、やはり企業にとって極端に重くなっているわけで、重いからやはり非正規ということになっているわけで。

 ただ、それを同じにしちゃったら、どっちも重いから誰も雇わないとなったら困るということだと思うので、理論的には実現可能性はかなり厳しいと思いますけれども、社会保障負担を減らして消費税で取り直すというのが本来の理論的な答えだとは思います。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 この非正規雇用をめぐる課題は、私も先日、厚労大臣と議論をしまして、望む非正規の方を正規化する、これは無期転換ではなくて正規化するということですので、方向性としては非正規雇用を減少させていくということになろうかと思います。

 そのためにも、先生おっしゃったように、今の段階から様々な手だてを打っておかないと、非正規というのは、非正規雇用であるがゆえに正規雇用よりも重いノルマを課せられたりとか、あるいは社会情勢が悪くなると真っ先に首を切られるという立場にもありますので、いざ正規雇用化を政府が強靱に進めようとしますと、当然、企業はそれぐらいのことをやってくるということを念頭に置きながら今質問させていただきました。改めて社会保障の負担については、各種議論をさせていただきたいと思います。

 続きまして、柴田明夫公述人に伺いたいと思います。

 資料の中にもありますように、自衛隊の中に削減すべき予算はないのかという御意見をいただいておりますけれども、私は十四年間予備自衛官で、自衛官とともに飯を食ってまいりましたけれども、そのときにも仲間の隊員ですとか在日米軍とかと話をしたんですけれども、一つ思い出したことがあります。それは、我が国には師団が多過ぎるという指摘がありました。

 今、十個師団、あと五個旅団が我が国はありますが、本来、師団というのは二万人クラスなんですが、我が国の師団というのはそれに遠く及ばない人数で運用しております。また旅団もしかりです。アメリカ軍ですら我が国と同数程度しか師団、旅団を有していないに加えて、モジュール化して使いやすいようにスリム化をしたアメリカ陸軍を有しているということもあります。

 また、司令部を含めますと、私が予備自衛官だったときの母体、総称で今の組織名を言いますと、陸上総隊東部方面隊第一師団第三二普通科連隊。こういうようなことになりますと、師団以上の、司令部だけでも六つも存在しているということで、組織のスリム化というのは、一つ削減すべき予算という議論の中にはあるのかなと思うんですが、公述人の御意見をお願いします。

北岡公述人 これは戦前以来長年議論になったことでございまして、私が併せて申し上げたいのは、日本はいかにも見直しが遅いんですよね。さっき申し上げたとおり、北海道に陸自中心で張りつけたのを転換するのに二十年かかったんですよ、ルールを作るのに。冷戦が終わってから二十数年間、最近はちょっと自信がないんですが、そのときはよく調べたので覚えているんですけれども、ほとんど陸海空の予算の比率というのは変わっていないんですよ。一、二%ですよ。

 比べますと、戦前、第一次大戦が終わって二年ぐらいのうちに山梨軍縮というのをやって、二万人から兵を切っているんですよ。それから更にその三年後、一九一八年に戦争、第一次大戦が終わりまして、一九二四年には宇垣軍縮というのが始まって、そのときは二十一個師団を十七個師団にしているんですよ。そういう柔軟な見直しをやっているのに、何でそれが今できないのか。

 ただし、小規模化することによって、小規模化するということは移動性が増すということですから、それは大変結構なことなんですけれども、それが直ちにどれぐらい経費節減につながるかどうか、これは別途計算が必要だと思います。

鈴木(敦)委員 司令部が多過ぎて、そして組織も複雑化していくと、どうしても、災害派遣の場合ですと、いろいろと指揮命令系統にも混乱を来したということで陸上総隊をつくったわけです。

 東日本のとき、私も予備自衛官として朝霞駐屯地におりましたが、あのときも情報が錯綜して、誰が指揮を執るのか、出動命令が出たのか出ていないのかと、メールが飛び交って非常に混乱をしたということがありましたので、この点につきましては、安保委員会等々含めまして、いろいろとこれは前に進めていかなければならない点ではあろうかと思います。

 もう一点、北岡公述人にお伺いしたいんですが、昨今アメリカを騒がしております気球ですけれども、気球に関しても、我が国はもう少し関心を持つべきであったと思います。この点は、国会でも議論させていただいたときに話が出ていたのは、自衛隊はしっかりやっているんですということだったんですが、そもそも防衛省側がこのことを重要視していないということが問題であろうかと思います。

 今回、防衛予算の話も出ておりますし、たくさんのミサイルを買ってくるのも結構です。ただ、これを実際に使うか使わないかの最終判断をするような防衛省がこれに興味がないということ、それが一番問題だと思うんですが、意識決定の必要性についてどの程度のお考えがありますでしょうか。

北岡公述人 お答えします。

 気球については、あれは何のために必要なのかというのは実はまだよく分からないんですよね。ですから、それがどれぐらい必要であるかないかというのはちょっと時期尚早だと思うんですけれども、何事も遅いというのは全くそのとおりですね。

 私は、数年前にルワンダという国に行きまして、かなり貧しい国ですよ、そこで、首都のキガリからへんぴなところまで薬を運ぶのに、ドローンで飛ばしているんですよね。あっという間に行きます、十五分で行きます。日本よりずっと進んでいるなと思ったんですよね。

 また、ちょっと話を広げますと、二〇〇八年には、ケニアで、エムペサといって、スマホでお金のやり取りができるんですよ。私は、日本でできないのと言われて、ちょっと格好悪い思いをしたことがあるんですよね。ケニアでは、マサイ族が長いやりを持って、スマホで話しながら自転車に乗っているんです。

 そういう状況の中で、私は、日本は昔、よいのは、世界中、何がどうなっているか、よくきょろきょろ見渡して、いいものはすぐ取りに行こうという精神があったのに、今はそれがなさ過ぎると。日本の中でドローンを飛ばそうというと、多分いろいろな制約があるんですよ。自衛隊の基地ならできるんじゃないかと私は思ったんですけれども、ようやく最近始まってよかったなと思うんですけれども、何事も、世界情勢に機敏に反応してほしいと思っております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

 済みません、先ほど公述人のお名前を間違えて失礼しました。改めまして、柴田明夫公述人にお願いしたいと思います。

 食料のお話の中で、穀物の期末在庫量のお話がございました。大半は中国にあるということで、いろいろな見方があろうかと思いますが。

 これに関連して、ここの中にありますトウモロコシですとか麦や米についてはバイオエタノールの原料にもなっております。ほかにも、トウキビやてん菜なんかもありますけれども。食料価格にこれらのバイオエタノールの導入による影響もある程度あったんだろうと私は思っておりますし、それが、ウクライナの紛争はあくまでトリガーであって、その前からかなり長いことあったんだろうと思うんですけれども、その点、御見解をお願いします。

柴田(明)公述人 おっしゃるとおりでありまして、二〇〇八年の食料危機というのは、需要ショックと申し上げましたけれども、その需要拡大の一つは、トウモロコシのエタノール向け需要の拡大ですね。

 エタノール工場がどんどんどんどん新設されていって、現在、生産量の四割近くがエタノールを中心に産業用に使われているというところで、二〇〇八年ほどではないんですけれども、アメリカではやはり価格が下がりにくくなっているんですよね。それから、同じことは大豆でも言えまして、大豆を搾ると八対二で大豆かすと大豆オイルが出るんですけれども、大豆オイルの四割はバイオディーゼル向けの需要になっています。ヨーロッパでも同じような傾向があります。

 したがって、最近の食料危機の背景には、二〇〇八年のときはばらばらであった資源価格の上昇が、今、連動しちゃっていますね。エネルギーの上昇と農業生産面への影響ですね。燃料代も上がるし、エネルギーから作られる肥料も値段も上がる、こういうふうな状況になっています。

 農業機械についても、日本の場合、原油を精製すると、六対四の割合でガソリンとディーゼルが大体できるんですけれども、将来的には、脱炭素で電気自動車等が普及していくと、ガソリン車の心配はなくなると思うんですけれども、問題は、ディーゼルが不足する。これが、ではどうやって作るのか、バイオディーゼルなのかというような話になると、もう準備をしていかなければ、自衛隊の戦車も大型トラックも、ヘビーデューティー運ぶものは全部動かなくなるんじゃないかなという気がします。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 ちょっと懸念していたことでもありまして、我が国も含めてこれから電動車普及に向けて動いているという中で、諸外国は既にバイオディーゼル、バイオエタノール等々を添加するという形で車両に使っているという中で、我が国はこれに遅れているんじゃないかという議論が方々であったわけなんですけれども、今のところ、我が国ではバイオエタノールはそこまで普及をしていないという状態でもあります。

 今公述人からいただいた御示唆のとおり、恐らく、これからディーゼルをどうするかという議論の中では、バイオディーゼルの準備をしていかなければならないと思いますけれども、これは政府の指針として、この国はそれがちょっと苦手なんですけれども、政府が長期的な指針を示して、バイオディーゼルもある程度活用していくんだということを言ってもらわないとなかなか産業が動いていかないと思うんですけれども、その点については、何か御意見がありましたらお願いします。

柴田(明)公述人 まさにそのとおりだと思うんですが、ただ、気になるのは、現状の問題をさておいて、将来こういう姿にするんだ、政策的に、バックキャストというか、将来を見て、現状、足下、どうしていいか分からないので、取りあえず、将来の美しい姿を描いて、そこに向けて対応する、こういうふうなやつは、私は、分かるんだけれども、過去の、これまでそれができていなかった反省がなくて、そして、結果、できない場合にまた新しい目標を掲げるみたいなことにもなりかねないので、結構問題を隠蔽するし、それから、将来に向けて責任回避だなという気もします。

 むしろ、フォアキャストというか、これまでの反省を踏まえてどういうふうな対応を取っていくのかという現実的な対応が必要になってくる、こんなふうに見ています。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

 では、最後になりますが、柴田悠公述人にお願いをいたします。

 中でも、いただいていた保育士の年収についてなんですけれども、私、身内に保育士がおりますので。

 二年ほど前ですけれども、保育士の年収の三%を上げるという政策があったんですが、この政策は月九千円ということだったんですが、ここの一番の問題点は、内閣府の資料にもありますけれども、教育、保育の現場で働く方々の収入という書き方をしているので、保育士だけではなくて、そこで働いている看護師さんだとか事務員だとか、そういう方々も含めて押しなべてということになってしまって、結果、効果がほとんど出なかったという実態なんですね。まあ、うちの女房が給料が上がっていないだけなのかもしれませんけれども。

 そういう実態があるので、ここは、結局、保育士そのものの給料を上げるんだという政策を改めて訴えた方がいいんだと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

柴田(悠)公述人 ありがとうございます。

 確かに、制度上、今そういう取組がずっと続いておりまして、非常に難しい点ですね。

 保育所の中で、恩恵を受ける人と受けない人の違いが出てくると、そこでまたいろいろと、保育現場の当事者の方々の中でもぎくしゃくしたりとか、そういうこともあるかもしれません。そういったところも配慮して恐らく一律で引き上げているのかなと考えております。

 ですので、ここはやはり保育現場の人々のニーズをしっかり把握して、例えば、私たちだけが上がってしまったらむしろ働きづらいとかいうニーズが、そういう訴えがあるのであればやはり一律にした方がいいでしょうし、それは現場の声をしっかり聞いて御判断いただくのが重要かなと考えております。

 ありがとうございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

根本委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 四人の公述人の皆さん、今日はありがとうございます。

 最初に、柴田明夫公述人にお伺いします。

 農業の危機、そして農業の外部化からの転換、この御指摘は大変重要だと私も感じております。私は、もう、お金さえ出せば食料が手に入る、そういう時代ではないというふうにも考えております。

 公述人は、日本が食料不足に陥らないためには備蓄の増加が不可欠で、米生産の拡大が急務として、余剰分は備蓄に、子供食堂への供給を増やす、国民を誰一人飢えさせない体制をつくるべきというふうに御主張されておられます。

 しかし、現状は、米価が大きく下がっても政府は備蓄米を増やさない、そして、畑作転換の流れになっています。

 もちろん自前の飼料を作っていくことは大変重要でありますけれども、米政策、水田の在り方について御意見を聞かせていただければと思います。

柴田(明)公述人 大変ありがとうございます。

 今の先生の御指摘というのは、私、随分前から申し上げていた点なんですけれども、何も進められていないんですね。

 私は、日本の優れた生産装置というのは、やはり水田なんだと思うんですね。津々浦々にあって、水利をちゃんと管理している。

 電気の場合のハイブリッドというか、大容量の送電線が四万キロで、細かな配電を入れると三十六万キロメートルある。農業用水の全体の長さというのは同じぐらいあるんですね。これが今どんどんどんどん弱ってきているという問題で、今や、水田を利用するのはいいんですけれども、水田として利用するのではなくて、畑地化というような方向で利用されようとしているので、これも、せっかくの優れた生産装置である水田の力を弱めてしまうし、農業用水、水利の問題もどんどん危うくなってきている、こういう状況なので、これは何とかしなければいけないのかな、こういう気がします。

 水田の場合は、やはり、千五百年、過去を見て、何ら連作障害もないですし、そして、地域の連帯も図れる部分で、まず、食料生産、米の生産を厚くして、そして備蓄も厚くし、今百万トンぐらいの政府備蓄ですけれども、これは二週間ぐらいしかないんですね。中国は半年分ぐらいの備蓄を持っています。こういう見直し。そして、供給が増えれば値段が下がってしまうじゃないか、こういう懸念もありますけれども、何とか輸出に打って出るような、こういう政策で、とにかくフル活用していく。だから、田畑を転換できるような、その装置化というのが必要なんだと思います。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 先ほど、コストはかかっても国内産を増やしていくという御指摘がありました。農水省においては、農業、食料、農村基本計画の見直しの着手にも入っているところでありますけれども、カロリーベースで三八%の食料自給率、輸入依存からの脱却がまさに求められています。

 財務省は、防衛費について次のように述べています。ほかの予算を削減して手厚い増額を確保してきたと言うんですけれども、その削減してきたものの中に、食料安定供給関係費、そしてエネルギー対策費が挙がっています。

 私は、安全保障というのであれば、やはり食料とかエネルギー、真っ先にここを強めなければいけないと思いますけれども、柴田公述人、政府予算についてお聞かせいただければと思います。

柴田(明)公述人 ありがとうございます。

 農業関係予算というのは、いつも、食料安全保障が騒がれている真っただ中において、前年比マイナスから始まって、プラス補正予算がちょっとつく、こういうふうな感じで、非常に、本気度が見られないような感じがしますね。

 今まで、確かに、日本の食料の場合には、私は、過剰と不足が併存してきたので分かりにくかったと思うんですね。過剰というのは、おっしゃられる米の過剰なんですね。一方で輸入は、穀物の、今、二千三、四百万トンを中心に、あらゆるものを大体三千万トン近く、肉も野菜等も含めて輸入している。これって不足なんですね。しかし、不足は、今まで安くて良質なものを幾らでも手に入れることができたので、不足という意識がないままに来てしまっている。しかし、おっしゃるように、今、買う力というのはもうなくなってきていると思うんですね。

 したがって、国内の生産を増やしていかなければならない、備蓄も厚くしなければいけない、こんなふうに考えています。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 もう一つ教えていただきたいと思います。

 三大肥料、尿素、リン酸、塩化カリ、こうした肥料も輸入に大部分依存しています。そして、肥料の高騰が生産者にとって今もう死活問題になっています。

 この肥料の確保と、そして自前の生産工場というのは大変重要な課題になっていると思いますが、一方で、化学肥料とか農薬の使用を低減させるみどりの食料戦略も始まっているところであります。オーガニックとか有機農業についての御所見について教えていただければと思います。

柴田(明)公述人 二〇二一年の頃から、みどりの食料システム戦略というのが打ち出されてきて、おっと思ったんですけれども、その年の十一月、ニューヨークでオンラインの世界食料サミットがある、それに向けてどうも私は準備されたような気もするんですけれども、その前に、いわゆる二〇五〇年カーボンニュートラル宣言もありまして、それに合わせた感じ。当時、八十ページぐらいの資料でありましたけれども、今はもうかなり膨大になって、精緻に組み入れられてきている。

 基本的には、方向性としては、日本の農業を転換していく大きな指針にはなるかと思うんですけれども、やはり、バックキャスト政策というか、二〇五〇年に向けて、化学農薬を五割減らし、化学肥料を三割減らし、有機栽培面積を百万ヘクタールとか増やしていくんだ、こう言っているわけですけれども、それは目標としてはいいんですが、じゃ、二〇五〇年に日本の農業がどういうふうな姿になっているのか、何人ぐらいの耕作者がいて、どのぐらいの面積で、どのぐらいを生産しているのか。当然、農法そのものが変わってくる話になりますから、コストも高くなってくる。その辺の全体観というのがちっとも見えない中で、将来像だけが打ち出されているというのは、逆に、ちょっと、現状の問題を隠蔽するような形にもなるのかなということで、危惧している。

 ただし、いろいろな、国内で捨てられている化学肥料の部分をもう一度土壌改良等で有効利用していく、こういう方向は必要になってくると思うんですね。

 ただし、それもコストのかかる話で、農産物価格というのはどうしても上がっていく、生産量は減っていく、こういう話ですから、そこの部分の真剣な議論というのが必要なのかなと思います。これは消費者をやはり巻き込んでいかなければいけないと思います。

田村(貴)委員 ありがとうございます。私も同じ思いであります。

 次に、柴田悠公述人にお伺いします。

 児童手当の拡充、それから、保育士の待遇、配置基準の改善、高等教育の学費免除等で八兆八千億円の試算は、大変私も驚きましたし、これをやってこそ異次元の子育て支援と言えるのではないかなと思います。

 とりわけ、学費の負担を減らすというところは、若い、先生の世代が、高い学費に苦しみ、そして高い奨学金の返済に苦しんだ世代が親となって子供を産み育てるというときに、将来にわたって、苦しんだものが無償化になるという担保があれば、これは大きな話になるんじゃないかなというふうにお話を伺っておりました。

 この学費の免除、軽減の意義について教えていただけますでしょうか。

柴田(悠)公述人 ありがとうございます。

 非常に、おっしゃるとおり、重要なところでして、特に、若い世代には、身にしみるといいますか、実感のこもる部分だと思います。

 最近、日本財団が、二十歳前後の若者千人あたりにアンケート調査しました。一番求める少子化対策は何か、それは教育費の軽減であるという結果が出ています。

 まさに、やはり若い世代ほど、この学費、特に大学が高い、あるいは専門学校が高いということを身にしみて分かっていますので、彼ら、当事者の声はまさにここであると。ここが改善しない限り私たちは産めないということですね。ですので、特に若い人にとってはインパクトのあるところじゃないかなと思います。

 このデータ上、この推計上は、試算では〇・〇九しか上がらないという、ちょっと小さい残念な結果なんですが、これは、先ほどの答弁でも申し上げましたとおり、OECD諸国、主にヨーロッパ諸国のデータに基づいた分析結果です、八ページにありますように。ヨーロッパ諸国はほぼ大学の学費は無料になっています。そのような国ですら、更に、大学の何か奨学金とかそういったもので給付が、支援が増えれば出生率が上がる、そういう相関があるということですから、いわんや日本では、恐らくもっと大きな効果があるのではないかというふうには理論的には考えられます。

 ただ、データもエビデンスもありませんので、この数字しか、私、出せないのは残念ですけれども、非常にここはしっかりと御検討いただく余地があるところかなと思っております。

 ありがとうございます。

田村(貴)委員 そういった調査、エビデンスとなるものの調査がまさに政府としても今から求められるんじゃないかなというふうに思います。

 こういうときに、やはり、予算はかかります、お金がかかります。私は、異次元の子育て支援の対極に、異常な軍事費の突出があるんじゃないかと思うんですけれども、先ほどのお話の次のページに財源の部分の解説があったと思うんですけれども、政府予算の在り方について先生の御所見を述べていただきたいと思います。

柴田(悠)公述人 ありがとうございます。

 非常に難しいところでして、この予算委員会、軍事に関する議論も非常に進んでおりまして、様々な観点からの議論が必要かと思います。

 私の考えとしましては、どこかを削って子育て支援を増やすというのは非常に難しいんじゃないかなと思っておりまして、やはり、新たな財源を新たにつくっていく、それは、もしかすると最初は国債にならざるを得ないかもしれませんが、行く行くは、やはり税など何かしらの安定財源を確保するのが必要、それによって、どこかを削るというよりは、新たにつくっていくというポジティブな考え方の方がいいのではないかとは考えております。

 そこで、三ページの下に挙げているのは資産課税でして、なぜ資産課税かといいますと、これは、OECDの報告書でこういう研究結果があります。つまり、税収中立の上で、どの税を上げるとGDPへのダメージが最も小さいか、これは資産課税であると。その次にまだましなのが消費税であるということですが、消費税よりもっとましなのが資産課税。つまり、その分析によると、資産課税を上げることが一番GDPへのダメージが小さいということです。

 ただ、資産課税はちょっとずつしか上げられません。急激に上げると資産の海外逃避を招いてしまいますので、ちょっとずつ上げる。そうすると、最初は足りない。そこは国債になるのではないかなと。国債は、将来子供が増えて、労働者が増えることで税収が増えますので、国債を返すめども立つかと思いますので、国債の理念にはかなっているのではないかなと考えております。

 ありがとうございます。

田村(貴)委員 まだまだ質問したいことを用意していたんですけれども、時間がやってまいりました。

 以上で終わります。ありがとうございました。

根本委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。

 今日は、四人の公述人の先生方、お疲れさまでございます。

 先ほど来議論が出ておりますが、私は、実は、少子化の様々な対策、今までもいろいろな政権でもやってきましたが、一つの示唆として、地方創生に象徴されるように、処方箋は地方にあると思っています。つまり、どうしてかといいますと、東京はやはり土地の値段が高い。都会はそうだと思います。そういうところで子供さんを産んで育てる、もうこれは、部屋代、交通費、保育園料あるいは学費、様々な面で地方との格差が如実に表れていまして、それはもう少子化率にも出ている次第でございます。

 そこで、今日、最初に、農業という面で、一次産業が担える地である地方、ここで柴田明夫公述人の方に質問したいと思いますけれども、今、農業の担い手が、地方で、後継者の不足ということで問題になっています。

 新規就農といっても、農地の取得もいろいろな要件があって厳しい現実がございます。その辺に関して、新規就農の様々な支援もありますが、そもそも、農地を持てないというような若い方、あるいは、地方にいても、元々農地を持っている家系のそういう関係者でしたら可能ですけれども、そうでない方も結構いらっしゃると思います。それに対する御示唆というかお考えはあるでしょうか。

柴田(明)公述人 非常に重要な御質問ですけれども、答えるのは難しい。農地は、まさに誰に持ってもらったら一番農業生産が増えるのか、そういう観点がこれからは必要になってくるのかなという気がします。

 今、新しい、農業以外の方から農業をやろうとするとなかなか入れないけれども、一部は、農業法人に入って、そこからある程度、何年か実績を積んで、そして農地を借り受ける、こういうふうな手法というのはあり得るんだと思うんです。ただ、その形で農地が耕されていくよりももっと速いスピードで農地の壊廃が進んできているということなので。

 これは、だから、担い手に来年までに日本の耕地面積、農地の八割を集積する、こういうふうな動きもあるけれども、結局、北海道は進んでいるけれども、都府県においては六割に全然いかないわけですね。条件の不利な土地だけが残っているので、まさに、おっしゃられるように、非常に難しい問題になってしまっているなという気がします。

仁木委員 その上で、私、実は四国、徳島出身なんですけれども、具体的に言いますと、市街化区域に隣接した調整区域内農地が今後どんどん耕作放棄地になってしまいそうなんですね。もうこれだけ安い米価で、先祖代々の土地を年金をつぎ込んでやっている高齢者が諦めるというんです、耕作を。

 そうすると、私も先般、農水委員会において農水大臣に質問しましたが、先ほど公述人の方もおっしゃったように、そういう、北海道のような比較的国内においては耕作面積の大きいところに対する将来的な農業のありようというビジョンは省庁として持っているんですけれども、やはり、中国地方あるいは四国地方のように、耕作面積が異常にちっちゃい、一町もないようなところの農地における対策というか具体的なビジョンがないものですから、本当に恐ろしい地方になるような状態でありますので、そういうことも、シンクタンク的な意味合いを持たれて、先生のお考えを政府の方に、これは要望ですけれども、また提言し続けていただきたいと思います。

 その上で、私は、ダブルワークという形で、昔、サンデーファーマーとかありましたけれども、何かICTとかを活用して、地方に住みながら、かつ農業もやっていく。例えば、こういう若者がいます。徳島の方に、マリンスポーツがしたい、サーフィン、SUPがしたいから住んでいるんですけれども、農業で生活の糧を少しでも得ていくというような、そういうダブルワークの在り方もあるんですけれども、それに関してはどういうふうにお考えでしょうか。

柴田(明)公述人 まさにそれが、これからの一つの農業の方向、農業の担い手というか関係人口を増やしていくという方向にはなると思います。

 六〇年代、七〇年代の、前の農業基本法ができたときには兼業農家雑草論みたいな話も出たんですよね。要するに、専業農家を育成しようとしていくときに兼業農家がやはり邪魔をして規模拡大ができないという問題で、非常に乱暴な議論だったと思うんですけれども。

 今、半農半Xと、私は、兼業農家を大っぴらに認めて、しかも、外部の関係者も農業に関係していく、こういうふうな方策なので、基本的に、そういう枠組み、制度というのを育成していくということは大賛成なんです。

仁木委員 済みません、ちょっと質問を変えたいと思います。

 少子化対策の中で、私、産婦人科医師でして、不妊症の治療もずっとしてきた中で、女性の年齢というのは結構大きいファクターです。ですから、結婚には適齢期はないけれども、妊娠には適齢期があるということを私は地元の選挙区でも訴えています。

 そういう中で、実は、今アメリカでも問題になっている人工妊娠中絶手術ですけれども、私もそれに加担した立場で申し上げると、現場は、例えば恵まれない妊娠、十代の妊娠とか、愛人関係にあって妊娠が表にできない、継続できないような妊娠というのは二割弱でして、八割以上が、私の感覚では、あるいは経験からいいますと、二人、三人お子さんがいらっしゃるのに、三人目、四人目が、お金がないから育てられないという方が結構いらっしゃいます。

 これは、一昨年のデータでも、十四万人、人工妊娠中絶数という形の数字が上がっていますので、その八割、十万人を超えて、もし、例えば経済的な支援がずっとある、特に、柴田悠先生もおっしゃったように、継続して、子供手当のような、お子さんを産んでも社会全体が、自分の子供だけれども、社会全体がサポートしてくれるよ、育みを、そういう制度の継続性というのはすごく重要だと思います。

 そのことを議論するときに、この予算委員会でも、私の同志が消費税の増税的なことを財源にしてということを申し上げましたが、私は、どっちかというと、建設国債的な国債とかを充てるという考え方を持っていますけれども、先生、その辺の財源に関して、あるいは、もう一つ質問ですけれども、あともう一個は、ここの先生のデータに反映されていなかったと思うんですけれども、夫とかの家事、家事の支援をやったデータがどれだけ少子化の方に寄与しているか、そういう他国のデータはあるんでしょうか。その二点を質問したいと思います。

柴田(悠)公述人 ありがとうございます。

 非常に大事な点でして、まず、一点目の財源に関しては、これは私の専門外になってしまいますけれども、三ページ目で先ほど申し上げましたとおり、長期的な安定財源としては、やはり、OECDの分析の結果を踏まえまして、税の中で見れば資産課税がよい、ただ、急激には増やせないというところです。

 あと、社会保険料を上げるという議論が最近ありますけれども、私は、あれはちょっと上げ方によっては懸念がありまして。今、若い人たちは、給料の手取りが減るのはやはり社会保険料の負担が大きい。ですので、そこがもし上がってしまうと、ますます若い人は子供を産めなくなってしまいますので、そこは慎重な議論が必要かなと思います。

 資産課税、ただし、ちょっとずつしか上げられない。となりますと、やはり最初は子供国債という形で、子供財源に目的を絞った国債というのは重要じゃないか。それはやはり、何十年も後に、子供が増えるわけですので、労働人口が増えれば償還しやすいのではないかという点です。

 あと、二点目が、夫の家事、育児参加。非常に重要でして、これは最初の、一ページ目のエビデンスのまとめの図で書いてありますが、夫の家事、育児参加が多いと出生率が高くなるとか、残業が短いと出生率が高くなる、既にエビデンスがあります。それは政策効果として計算するのは難しいんですが、私の二ページの表の一の一番右で、労働時間が減ると出生率が非常に上がる、これが私が実はその思いを込めていまして、生活水準が下がらずに労働時間が上がるということは、生産性も上がり、ゆとりができる。そうすると、カップル形成もしやすいし、家事、育児参加もしやすいというふうに考えております。

仁木委員 最後に、北岡公述人の方に質問したいと思います。この前もありがとうございました。

 これだけ世界の情勢が多様化する中で、冒頭に、情報ということの扱いに関してヒューミントという言葉を使われたと思うんですけれども、アメリカのNSCの下にCIAとかがいて、いろいろ人材育成があると思います。日本において、そういったアメリカのCIAに加入するような人材、諜報活動をするような人材の育成というのは、例えば、防衛大学校に入っている人材なのか、あるいは、一般のいろいろな仕事をしていて、何か特殊な技術、能力があり、あるいは国家に対する忠誠があり、かつ、いろいろな思いを持っているということを見抜いた上でのリクルート、そういうのは、リクルートの方法とか、そういった方の人材はどういう立ち位置でやるべきだというふうにお考えでしょうか。

北岡公述人 これは簡単ではないんですけれども、実は私、JICAでも、途上国でいろいろやっていますと、現地の情報というのは非常に重要なんですよね。ですから、我々は、現地の元軍人さん、元警察官というのを雇用していろいろな情報を得ております。地域によっては、外務省よりいろいろな情報が入ることもあります。

 日本の場合ですと、日本は高齢化社会で、引退した後もお元気な方が多いので、そういう中で、ただ警察や自衛隊を辞めてそのままというのはもったいないので、そういうところを手がかりにいろいろな方をリクルートすることは十分可能だろうというふうに外国の専門家からもアドバイスを受けております。

仁木委員 我が国は、やはり、全般的に、情報のバリューというか価値をもう少し国民が認識して、情報とは自分のためにあって、自分たち、あるいは邦人のために使っていくという考え方を私は広めたいと思っていますので、この場所でも、情報基本法、岸田総理もDXと言われていますので、これはありとあらゆる意味で、防衛財源を確保するためにいろいろなコロナ禍で用いたお金の検証をすべきだということをおっしゃっていましたけれども、やはり、そこにDXがあると、かなり違ってくると思います。

 そういう形で、今、DXを使う。例えば、さっき言った、NSCの下にあるNSAというものにおきましては、これは、かなりコンピューターとかそういうのに精通した、すごく特殊な人材が必要なわけでございまして、サイバーテロとかそういうのを見据えての対策ということでも非常に重要だと思っております。

 北岡さん、そういった人材のことを先ほど言われましたけれども、日本のこれからの、海外の、外交において、日本の防衛省の人たちと外務省とのリンケージというか、つながりはより強固にすべきだと思うんですけれども、それをつなげていくような組織というのは、今、どういうふうな形でつくっていったらいいと思われますか。何か特殊な思いがあって、外務省で優秀だった人がまた北岡先生みたいなお立場になってやっていくという、そういう何か突発的なことに頼るんじゃなくて、制度として私は必要だと考えるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。

北岡公述人 さっきちらっと申し上げたのはヒューミントの方でございまして、それ以外に、今、公開情報を大量に読み込んでやっていく、そちらの方の努力も大変必要であります。その基礎的な能力は日本にあると思うんですよね。

 ヒューミントの方は、実は、NSCをつくろうということを第一次安倍内閣のときに、私、関係していまして、そして、それは頓挫したんですけれども、そのときにも、一番難しいのは、じゃ、これをサポートする情報機関をどうするかということで、これはもう日本の宿痾ですね、組織対立。外務省と警察と、その他幾つかのところで、一緒にやるのは本当に難しいですよね。

 ただ、在外でいきますと、在外の情報担当の人は少ないです。そのための予算も少ないです。そして、もっと派遣してやっていくことは必要だし、日本人が全然駄目だとは思わないんですね。かつては、明石元二郎以来の伝統もありまして、それから、明石元二郎から、さらには、基本的に小野寺信まで、やはり基本的にはロシア情報はポーランド系の人たちからもらっていたんですよね。そういうことをやるためには、現地に長くいて、そして友人をたくさんつくってということが、本当に足が地に着いた努力が必要でありまして、そういうことを全部官僚的に統率しようといっても無理があるんですよね。

 一定程度長くいて、そこにいてというので、それはいわば、JICAがやっているような、遠くに友達をつくろうということの延長線上にもあるので、そこのところはオール・ジャパンで頑張って、何とか組織の壁を崩していってほしいなと。そこでやはり、大事なのは国益だ、省益じゃないということをあらゆるところで強調していきたいというふうに思っております。

仁木委員 防衛、そして安全保障をしっかり確保するために、兵器のみならず、やはり、マンパワーというか、人的な面からのソフト的なパワーでもって我が国の防衛をしていくという考え方も今度の予算にもしっかりと組み入れてやっていけたらなということを最後に要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。

 今日はありがとうございました。

根本委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 よろしくお願いします。れいわ新選組、大石あきこです。

 本日、公述人の方々のお話を聞いていまして、やはり、この三十年以上、この国で人や社会が捨ておかれて、一部の投資家の、投機家の方だとか資本家の方が肥大化していると。その結果としての危機というものを様々語っていただいたのだと思います。

 やはり、人をお世話するお仕事ですとか、又は空の下で農地を守るようなお仕事、こういったものは、世の中で言う生産性となると、どうしても低くなってしまいますよね。人間集約といいますか、人件費が高い分野、そういうものを、生産性の高いものに産業を移行といっても、私たち社会に必要なものですから、だから、穴を埋めるのはやはり政府の力しかないんだ、そのように私は考えております。

 そのように考えたときに、今国会の岸田政権の予算案、少な過ぎるんとちゃうかと。特にその分野に。防衛費には増額しまくっても、その分野に余りにもお金がついていないんじゃないかなと思いまして、皆さんに御質問していきたいと思います。

 今日、予算委員会のこういった質疑があって、午前と午後の間の休憩時間に院内集会というのがありまして、そこでも私学の保護者の方々が集まって教育の無償化を求めるという集会をされていました。本当に切実な声で、年二回ぐらい来られていて、でも、その制度が一向に通らない。本当に、その方々、また子供たちからしたら、人生一回きりの中で全然進んでいないんだと。

 柴田悠先生の資料でも、危機感ですよね、これは。少子化、子供の未来を救う少子化対策にこれだけのお金が要るんだよと。長期的、短期的、合わせて八・八兆円から九・七兆円という。これをやらぬと少子化は止まらないよという、その危機感の表れとしてこれだけの資料を用意していただいていて、そういった国会の外の危機感というのはすさまじいんですけれども、まだまだ、国会の中や政府において対策というのが、まだまだというか、危機的に遅いんじゃないかなというふうに感じております。

 柴田悠先生にこれだけ振っておきながら質問しないんですけれども、資料がまとまっているからです。でも、後で連絡先を教えてください。

 最初の御質問を、柴田明夫先生に是非御質問したいんですけれども、農業のことで是非教えていただきたいんですね。

 柴田明夫先生に資料をいただいている二枚目、「本日、申し上げたい点」というところで、一番下のところで「予算」と。これだけちょっと大きめのフォントで下線を引いておられて、本当に大事なことだと思っています。

 柴田明夫公述人の方で、国の予算で、何兆円単位で足りないぞという、もしそういう試算があれば教えていただきたいんですけれども。もしなければ、私、数年前に、農家の方に教えてもらって、田園風景を守りたいやろうと。守りたい場合、いろいろその人が試算されて、大体年間二兆円ぐらいだったんですよ。今お米の需要が減っているけれども、それを例えば飼料米に回すとか、そうしたときに、どうしてもお給料の補填をしないといけないからとか、棚田の方が大変やからちょっと多めに出さないといけないんだとか、いろいろ試算をしたら大体年間二兆円ぐらいだったんですけれども、そういった水田、里山を守るアイデアとして考えた二兆円がどうか。

 そのどっちでもいいんですけれども、もし、これぐらいのオーダーの予算が要るぞ、あるいは、水田を守る取組としての二兆円の私のアイデア、どう思われるか聞かせていただけますでしょうか。

柴田(明)公述人 ありがとうございます。

 やはり私は、具体的な数字ではなくて、足りないなという。なぜ、こういう時期に農業予算というのが、二兆六千億台からいって、補正予算等がくっついて三兆円をようやく超える、こういうような事態で、余りにも少ないなと。二兆円じゃなくて、何というか、倍あってもいいような気がするんですけれども。

 ただ、そのときには、やはり生産者、国民全体で農業に対する評価というのがもう一度見直されなければいけないので、そこの辺をどう訴えていくのか。

 棚田は、経済界の方から見れば、もうあんなの要らないよみたいな話になるんだけれども、私は、やはり重要であるし、それから、限界集落についても、調査をやめようみたいな動きがあるわけですけれども、やはり、日本の農業の構造とか、誰がどういう資源を守っているのかというのを考えてみると、非常に重要なんですよね。

 だから、そこの評価を金額に換算すれば、まさに三兆円じゃ足りなくて、五兆円とか六兆円とか、そういうレベルになるのかなという気がします。

大石委員 ありがとうございます。是非、予算のパッケージにするぐらいまで取り組んでいきたいと思いますので、また教えていただきたいなと思います。

 何でこうなっちゃっているのかなと、すごく、国というか、この国会も含め、農業の現場とギャップがあると思うんですけれども、このギャップをどうやって埋めたらいいか、何かヒントがあれば教えていただけますか。例えば、やはり農家の方が国会議員にならないといけないとか。もしありましたら教えてください。

柴田(明)公述人 私は、ある程度このギャップは埋まってくるのかなという気もしますけれども。

 先ほど、日本の場合には過剰と不足が併存してきたので余り危機意識が食料問題に関してないと申し上げたんですが、今徐々に、例えば東南アジアで見れば、タイの米の輸出価格が、この一年ぐらいでトン当たり四百ドルから五百ドルを超えてきて、じわりと上がってきているんですね。

 二つ、タイとベトナムの要因があるんですけれども、タイの場合には、小麦の値段が上がったので米に回帰しているんですね。米の需要が増える、したがって、輸出を抑えると価格が上がる。ベトナムの場合には、米の、天候不順で生産が思わしくなくて値段が上がる。こういう形になってきています。

 日本も徐々に米の値段は上がってくるんだと思っています。そういう中で、やはり食料って重要だね、米って重要だね、水田のフル活用は重要だね、こういう方向に、その流れの中でやはり認識を改めていく、こういうことをある程度私は期待はしているんですけれどもね。

大石委員 ありがとうございます。

 ピンチをチャンスにできると。でも、今、チャンスに絶対しなきゃいけないよ、そういう御示唆だったと思いますし、それにはやはり国の力というものが絶対必要ですので、私も頑張っていきたいと思います。

 続きまして、小幡公述人にお聞きしたいです。

 金融緩和は駄目なんだということをおっしゃっていたと思います。やはり資本主義の延命としての金融緩和のメリット、デメリットがある、そういった評価なのかなというふうに思うんですけれども、れいわ新選組は、金融緩和はやめろとは言っていないんですけれども、やはり、この国を今救うのは政府の支出だと思っています。国がお金をいっぱい出さなければ、この国の危機は、人々の危機は救えないというふうに考えているんですけれども、そういった考えに対して小幡公述人の御意見をお聞かせください。

小幡公述人 大変申し訳ないんですけれども、考え方が逆でして、お金だけ配って政策をやったつもりになっているというのが今最大の問題でして。学校の教育費を無償化しても、行った学校が大した学校でなければ役に立たないわけなので、余りここで言うのもあれですけれども、私の属するビジネススクールに無償で来られても、いや、アメリカへ行った方がいいかなと思うんですよ、やはり。だから、無償化するよりは、アメリカのビジネススクールに負けないビジネススクールをつくった方がいいと思うので。

 やはり、お金はいろいろな手段で入手できると思うんです。本当に困っている人に集中的に上げる手段もあると思うんです。

 しかし、例えば、ビジネススクールなんかは好きでみんな行くからいいんですけれども、公立の小学校、中学校、そこしか選択肢がない場合に、東京だと、みんなお受験して、中学受験をほとんどしますね。ということは、だからいいのかどうか分かりませんけれども、選択肢がない人にとっても、公立小学校、中学校へ行っても全く遜色ないよという教育を受けられるようなことを提供するのが政府の役割で、それは無償である必要はないというか、優先順位は後だと思います。

大石委員 ありがとうございます。

 私は、政府支出がどうしても必要になってくると思うんですね。経済政策と名のるかどうかは別として、必要だと考えているんです。それは、小幡公述人が今まさにおっしゃった小中の公教育の質の向上ですとか、それから、非正規をなくす、そういったことに私は政府支出は絶対に必要だと考えているんですね。それは、今回の公述人で、柴田明夫公述人、柴田悠公述人、両方語られていますけれども、こういった、政府が、お金が必要なわけです。

 例えば、柴田悠先生がおっしゃるには、少子化対策、真の異次元の少子化対策に必要なものは、長期、短期合わせて八・八兆から九・七兆。その中には保育士の処遇改善も含まれています。全産業平均にしなきゃ人なんか来ないよという。だから、実質必要なんですよね。私は介護でも同様に考えていまして、そうすると、介護も人手不足解消、全産業平均にするためには、それに加えて二兆必要になります。年間ですよ。

 それから、小中公教育の質の向上という点では、やはり学校の先生を増やさなきゃいけないんですね。今、教員は欠員だらけで、学校の先生はいっぱい精神疾患になって傷ついていますので。現場の先生が言う教員基礎定数というのがあるんですけれども、それを一・五倍ぐらいにしたら、私の試算で二兆円ぐらい要る、これは年間。

 先ほど柴田明夫先生にお伺いしました。空の下で農地のお世話、これは、この国に生きる全ての人々のために必要なこと。これも、私の計算してみた二兆では足らぬ、五、六兆要るんやと。本当に要るんだと思うんですよ。

 こういった必要な政府支出をれいわ新選組としては求めているつもりなんですけれども、これは、お金がない、お金がないと言われるんですけれども、そうじゃなくて、結果として、人々の総需要も増やし、前向きにいくだろうと私は申し上げているんです。

 小幡先生にお伺いしたいんですけれども、それが結果として景気がよくなるとか前向きな循環になるというのはおいておいても、今述べたような、もう十六兆円ぐらいになっています、今述べただけで。でも、これは必要な政府支出だと思っています。それについては、小幡先生は、そうだなと言っていただけますか。

小幡公述人 今挙げられた政策が実現できるのであれば賛成します。

 ただ、防衛費の話でもマンパワーの話がございました。学校の先生、足りません。うちの教員も足りません。ただ、いないんですよね。どんなにお金を払っても、いい教員はいない。必要な教員がどこにもいない。これは時間がかかります。

 だから、戦略的にそのゴールを全部やるんだったら、もうそれはとことん使ったらいいと思います。八兆円必要であれば、八兆円というのは、いい政策を実現できる戦略があれば賛成いたします。

 学校の場合は、やはり二つ必要で、いい教員をまず育ててから、その育てる仕組みをつくってからお金を投入しなきゃいけない。実験が必要だと思います。もう一方で、やはり役割分担ですね。要は、役所書類でいろいろなガバナンスを学校にかけていて、書類業務で生徒、学生と接する時間が極度に減って、ほかの仕事をしているんですよね。だから、そこは事務員をどんどん入れて、大学なんかは役割分担していますけれども、小学校、中学校でも、事務作業と、生徒と接する直接の教師という役割分担をするというふうに、今までのやり方をもっと柔軟に変えて、各学校に自由度を持たせる。

 そういういろいろな制度的な工夫とアイデアがそろった上で八兆円を入れることに関しては、賛成いたします。

大石委員 そうですよね。

 現場の先生ですとか農家の方にですとか聞き取っている限り、ちゃんと計画的に育成、採用すれば賄えるんだと。特に、非正規化されていて、フルに先生を活用できていないということもありますので、十分にこの日本の国の供給力の上限、それは完全雇用ですけれども、そこまでにはまだまだ余地があるということは申し上げたいのと、あと、消費税なんですけれども、やはり消費税というのは非正規雇用を進める税金であります。もうけに対して仕入れを引く、そこに対して付加価値一〇%を取るので、その中に人件費が含まれてしまうんですね。

根本委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、おまとめください。

大石委員 ですので、やはりこの消費税というのは、廃止することで、小幡先生もおっしゃる非正規をなくすということに貢献できるかと思います。

 時間がなくなりましたので、終わります。どうもありがとうございました。

根本委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 次回は、明十七日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十五分散会


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