衆議院

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第1号 令和6年2月29日(木曜日)

会議録本文へ
令和六年二月二十九日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小野寺五典君

   理事 上野賢一郎君 理事 加藤 勝信君

   理事 島尻安伊子君 理事 橋本  岳君

   理事 牧島かれん君 理事 奥野総一郎君

   理事 山井 和則君 理事 漆間 譲司君

   理事 佐藤 英道君

      井出 庸生君    伊東 良孝君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    越智 隆雄君

      奥野 信亮君    金田 勝年君

      亀岡 偉民君    後藤 茂之君

      杉田 水脈君    田中 和徳君

      平  将明君    塚田 一郎君

      中山 展宏君    平沢 勝栄君

      古屋 圭司君    牧原 秀樹君

      宮路 拓馬君    山本 有二君

      若林 健太君    渡辺 博道君

      井坂 信彦君    石川 香織君

      大西 健介君    小山 展弘君

      階   猛君    藤岡 隆雄君

      太  栄志君    山岸 一生君

      米山 隆一君    早稲田ゆき君

      奥下 剛光君    林  佑美君

      守島  正君    赤羽 一嘉君

      金城 泰邦君    角田 秀穂君

      高橋千鶴子君    宮本  徹君

      本村 伸子君    鈴木 義弘君

      田中  健君    緒方林太郎君

      福島 伸享君

    …………………………………

   公述人

   (株式会社大和総研副理事長)           熊谷 亮丸君

   公述人

   (日本労働組合総連合会事務局長)         清水 秀行君

   公述人

   (日本大学文理学部教授) 末冨  芳君

   公述人

   (全国労働組合総連合議長)            小畑 雅子君

   公述人

   (一橋大学経済学研究科准教授)          高久 玲音君

   公述人

   (学習院大学経済学部教授)            鈴木  亘君

   公述人

   (一橋大学経済学研究科教授・研究科長)      佐藤 主光君

   公述人

   (株式会社日本総合研究所理事)          西沢 和彦君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     高木  啓君

  今村 雅弘君     西野 太亮君

  越智 隆雄君     畦元 将吾君

  亀岡 偉民君     田中 英之君

  田中 和徳君     金子 容三君

  塚田 一郎君     斎藤 洋明君

  平沢 勝栄君     加藤 竜祥君

  古屋 圭司君     岸 信千世君

  早稲田ゆき君     柚木 道義君

  奥下 剛光君     和田有一朗君

  守島  正君     住吉 寛紀君

  赤羽 一嘉君     庄子 賢一君

  衛藤征士郎君     小森 卓郎君

  奥野 信亮君     小林 史明君

  田中 英之君     鈴木 英敬君

  石川 香織君     堤 かなめ君

  小山 展弘君     馬場 雄基君

  階   猛君     神谷  裕君

  米山 隆一君     野間  健君

  和田有一朗君     阿部 弘樹君

  畦元 将吾君     仁木 博文君

  若林 健太君     東  国幹君

  大西 健介君     櫻井  周君

  住吉 寛紀君     守島  正君

  林  佑美君     堀場 幸子君

  角田 秀穂君     中野 洋昌君

  宮本  徹君     塩川 鉄也君

  堤 かなめ君     田嶋  要君

  藤岡 隆雄君     森山 浩行君

  柚木 道義君     西村智奈美君

  阿部 弘樹君     奥下 剛光君

  堀場 幸子君     前原 誠司君

  金城 泰邦君     日下 正喜君

  庄子 賢一君     河西 宏一君

  加藤 竜祥君     英利アルフィヤ君

  金子 容三君     古川  康君

  小林 史明君     藤井比早之君

  小森 卓郎君     和田 義明君

  馬場 雄基君     青山 大人君

  守島  正君     一谷勇一郎君

  緒方林太郎君     福島 伸享君

  東  国幹君     本田 太郎君

  仁木 博文君     山口  晋君

  古川  康君     勝目  康君

  森山 浩行君     福田 昭夫君

  河西 宏一君     稲津  久君

  田中  健君     長友 慎治君

  高木  啓君     五十嵐 清君

  山口  晋君     山本 左近君

  櫻井  周君     山岡 達丸君

  西村智奈美君     鎌田さゆり君

  山岸 一生君     逢坂 誠二君

  一谷勇一郎君     小野 泰輔君

  長友 慎治君     鈴木 義弘君

  神谷  裕君     階   猛君

  野間  健君     山田 勝彦君

  福田 昭夫君     吉川  元君

  奥下 剛光君     岬  麻紀君

  前原 誠司君     早坂  敦君

  鈴木 義弘君     西岡 秀子君

  福島 伸享君     緒方林太郎君

  斎藤 洋明君     中川 貴元君

  山本 左近君     上田 英俊君

  田嶋  要君     緑川 貴士君

  山岡 達丸君     道下 大樹君

  小野 泰輔君     中嶋 秀樹君

  早坂  敦君     市村浩一郎君

  塩川 鉄也君     穀田 恵二君

  山田 勝彦君     大島  敦君

  吉川  元君     原口 一博君

  中嶋 秀樹君     遠藤 良太君

  岬  麻紀君     沢田  良君

  稲津  久君     吉田久美子君

  日下 正喜君     平林  晃君

  西岡 秀子君     長友 慎治君

  鈴木 英敬君     田畑 裕明君

  和田 義明君     山田 賢司君

  青山 大人君     おおつき紅葉君

  逢坂 誠二君     阿部 知子君

  市村浩一郎君     赤木 正幸君

  沢田  良君     足立 康史君

  吉田久美子君     伊佐 進一君

  緒方林太郎君     北神 圭朗君

  英利アルフィヤ君   吉田 真次君

  藤井比早之君     木村 次郎君

  鎌田さゆり君     神津たけし君

  道下 大樹君     篠原  豪君

  穀田 恵二君     高橋千鶴子君

  北神 圭朗君     緒方林太郎君

  本田 太郎君     大岡 敏孝君

  阿部 知子君     荒井  優君

  大島  敦君     米山 隆一君

  原口 一博君     谷田川 元君

  中野 洋昌君     角田 秀穂君

  五十嵐 清君     国光あやの君

  緑川 貴士君     伊藤 俊輔君

  伊佐 進一君     中川 宏昌君

  角田 秀穂君     山崎 正恭君

  田畑 裕明君     石原 正敬君

  中川 貴元君     上杉謙太郎君

  平林  晃君     鰐淵 洋子君

  石原 正敬君     亀岡 偉民君

  上杉謙太郎君     塚田 一郎君

  上田 英俊君     越智 隆雄君

  大岡 敏孝君     若林 健太君

  勝目  康君     田中 和徳君

  木村 次郎君     奥野 信亮君

  岸 信千世君     古屋 圭司君

  国光あやの君     石破  茂君

  西野 太亮君     今村 雅弘君

  山田 賢司君     衛藤征士郎君

  吉田 真次君     平沢 勝栄君

  荒井  優君     山岸 一生君

  伊藤 俊輔君     石川 香織君

  おおつき紅葉君    小山 展弘君

  神津たけし君     早稲田ゆき君

  篠原  豪君     大西 健介君

  谷田川 元君     藤岡 隆雄君

  足立 康史君     奥下 剛光君

  赤木 正幸君     林  佑美君

  遠藤 良太君     守島  正君

  中川 宏昌君     赤羽 一嘉君

  山崎 正恭君     角田 秀穂君

  鰐淵 洋子君     金城 泰邦君

  高橋千鶴子君     宮本  徹君

  長友 慎治君     田中  健君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     柳本  顕君

  衛藤征士郎君     中曽根康隆君

  越智 隆雄君     上杉謙太郎君

  古屋 圭司君     川崎ひでと君

  藤岡 隆雄君     青柳陽一郎君

  緒方林太郎君     吉良 州司君

  田中 和徳君     仁木 博文君

  大西 健介君     吉田 統彦君

  山岸 一生君     松原  仁君

  米山 隆一君     篠原  孝君

  守島  正君     池下  卓君

  金城 泰邦君     中川 康洋君

  吉良 州司君     北神 圭朗君

  若林 健太君     加藤 竜祥君

  青柳陽一郎君     白石 洋一君

  井坂 信彦君     馬淵 澄夫君

  池下  卓君     高橋 英明君

  奥下 剛光君     阿部  司君

  林  佑美君     中司  宏君

  赤羽 一嘉君     中川 宏昌君

  北神 圭朗君     福島 伸享君

  亀岡 偉民君     国光あやの君

  仁木 博文君     三反園 訓君

  松原  仁君     長妻  昭君

  早稲田ゆき君     岡本あき子君

  中川 康洋君     輿水 恵一君

  宮本  徹君     宮本 岳志君

  田中  健君     浅野  哲君

  福島 伸享君     吉良 州司君

  石破  茂君     古川 直季君

  中曽根康隆君     泉田 裕彦君

  平沢 勝栄君     保岡 宏武君

  階   猛君     金子 恵美君

  角田 秀穂君     國重  徹君

  宮本 岳志君     田村 貴昭君

  奥野 信亮君     山下 貴司君

  石川 香織君     近藤 昭一君

  小山 展弘君     山崎  誠君

  白石 洋一君     吉田はるみ君

  長妻  昭君     菊田真紀子君

  中司  宏君     山本 剛正君

  田村 貴昭君     赤嶺 政賢君

  浅野  哲君     田中  健君

  古川 直季君     山口  晋君

  篠原  孝君     重徳 和彦君

  馬淵 澄夫君     近藤 和也君

  吉田 統彦君     大西 健介君

  田中  健君     浅野  哲君

  国光あやの君     山本 左近君

  塚田 一郎君     小森 卓郎君

  菊田真紀子君     渡辺  周君

  山崎  誠君     末松 義規君

  赤嶺 政賢君     本村 伸子君

  泉田 裕彦君     衛藤征士郎君

  上杉謙太郎君     越智 隆雄君

  加藤 竜祥君     若林 健太君

  川崎ひでと君     古屋 圭司君

  小森 卓郎君     塚田 一郎君

  三反園 訓君     田中 和徳君

  保岡 宏武君     平沢 勝栄君

  柳本  顕君     今村 雅弘君

  山口  晋君     石破  茂君

  山下 貴司君     奥野 信亮君

  山本 左近君     亀岡 偉民君

  岡本あき子君     早稲田ゆき君

  金子 恵美君     階   猛君

  近藤 和也君     井坂 信彦君

  近藤 昭一君     石川 香織君

  重徳 和彦君     米山 隆一君

  末松 義規君     小山 展弘君

  吉田はるみ君     藤岡 隆雄君

  渡辺  周君     山岸 一生君

  阿部  司君     奥下 剛光君

  高橋 英明君     守島  正君

  山本 剛正君     林  佑美君

  國重  徹君     角田 秀穂君

  輿水 恵一君     金城 泰邦君

  中川 宏昌君     赤羽 一嘉君

  本村 伸子君     宮本  徹君

  浅野  哲君     田中  健君

  吉良 州司君     緒方林太郎君

同月二十九日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     杉田 水脈君

  田中 和徳君     中山 展宏君

  藤岡 隆雄君     太  栄志君

  宮本  徹君     本村 伸子君

  田中  健君     鈴木 義弘君

  緒方林太郎君     福島 伸享君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     奥野 信亮君

  中山 展宏君     田中 和徳君

  太  栄志君     藤岡 隆雄君

  本村 伸子君     高橋千鶴子君

  鈴木 義弘君     田中  健君

  福島 伸享君     緒方林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋千鶴子君     宮本  徹君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 令和六年度一般会計予算

 令和六年度特別会計予算

 令和六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

小野寺委員長 これより会議を開きます。

 令和六年度一般会計予算、令和六年度特別会計予算、令和六年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず熊谷亮丸公述人、次に清水秀行公述人、次に末冨芳公述人、次に小畑雅子公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、熊谷公述人にお願いいたします。

熊谷公述人 おはようございます。大和総研副理事長の熊谷亮丸と申します。本日は、お招きいただきまして、心より光栄に存じます。

 御審議の参考にさせていただきたく、令和六年度の予算案につきまして、賛成の立場から意見を申し述べたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、お手元の資料で、まず一ページ目を御覧いただきたいと思いますが、本日は、ここにございます三つのお話をさせていただきます。

 まず一点目は日本経済の現状と展望ということでございますけれども、四ページ目を御覧ください。ページの一番上のところにございますが、今後の日本経済は、二四年度が〇・八%成長、二五年度が一・三%成長ということで、緩やかな景気拡大が続くという見方をしております。

 四ページ目でございますが、二三年に景気が回復をした背景ということで申し上げますと、コロナ等の、こういった特殊要因が解消したということがあります。左端がインバウンド消費、そして乗用車の生産、実質サービス消費でございますけれども、コロナの解消ですとか、乗用車については半導体不足の解消等によって、かなり高めの経済成長となりました。

 五ページ目を御覧ください。この五ページ、六ページで主なポイントをお示ししておりますので、詳細は後ほど御覧いただきたいと思いますが、まず、一番上のところで、賃上げについては四%台に乗せてくる可能性というのが生じている、そして、物価は二%程度で安定をする、また、後ほど申し上げるように、慢性的な人手不足ということで、余剰労働力というものが足下で非常に低水準であるということがあります。

 経済の下支え、押し上げ要因ということでいえば、自動車の挽回生産、これが現時点で三十三万台程度、〇・九兆円程度、今年の夏ぐらいまで挽回生産が続くことが見込まれます。インバウンドについても、二行目のところにございますが、これから消費額がかなり増えてまいります。また、サービス消費も、かなりコロナで抑えられてきたものが、これから二兆円程度の回復余地がございます。さらには、家計の金融資産は二百三十六兆円程度増加をしている。グローバルに見れば、シリコンサイクルも回復の方向であるということです。

 六ページ目でございますが、政府の経済対策、これは、所得減税が実質所得を一%近く押し上げる。また、日銀は四月にはマイナス金利を解除いたしますけれども、その後も極めて緩和的な金融環境が続きます。他方で、リスクとしては、そこにございますように、専ら海外経済のリスク。後で中国について言及いたしますが、これについては一定の留意が必要であるというところです。

 七ページ目を御覧いただくと、私どもが推計をしている今年度の春闘の賃上げ率は三・八%。これは保守的な数字で、恐らくここから上振れする可能性というものがある。

 八ページは、中国のリスクでございます。

 左のグラフが資本係数と申しまして、注の一のところにある資本ストック割るGDPということで、これが相当上振れをしているということは、今、中国の設備は二千八百四十兆円程度過剰になっている可能性があります。

 右のグラフはかなり専門的なグラフでございますけれども、縦軸が労働係数、労働投入割るGDP、横軸が資本係数、資本ストック割るGDPで、いずれも、値が小さくなって原点に近づくほど労働とか資本の効率がよくなって、遠ざかるほど効率が悪くなる。

 グラフの中で、左上から右下に何本も細い線が引いてありますけれども、この一本の線上だとマクロ的な中国の技術レベルが一定で、これが左下に行くほど技術が進歩するということでございますが、赤い線の中国を見ていただくと、ここ十年余り、一本の線の上で動いていますので、要は、自転車操業的に、外国資本を呼び込んで設備を増やすことによって経済成長をしてきたんだけれども、技術は進歩をしていないということ、その中で設備が二千八百四十兆円の過剰を生んでいるという状態であります。

 九ページ以降で、インフレの動向と日銀の金融政策でございますけれども、まず、十ページに世界経済の長期サイクルをお示しをいたしましたが、この長期のサイクルは二〇二〇年で底入れをして、グローバルに見ればインフレ的な方向へと入ってきております。

 十一ページ、こちらは我が国の物価について定性的なことをお示ししておりますけれども、輸入インフレ、労働需給の逼迫、経済の正常化、過剰貯蓄、そして価格転嫁等々によって、かなりデフレから脱する要因というものが増えている。

 十二ページでお示しをしているのは、我が国の物価を二種類に分けて、価格改定頻度の高いものと低いもの。御注目いただきたいのはブルーの線の価格改定頻度の低い粘着価格でございますけれども、これは九〇年代の頭からがんとして上がらなかったわけですが、この粘着的な価格が今、三%程度のところまで上がってきているという状態です。

 十三ページの左のグラフでございますが、IMFが作成をしているデフレリスク指数というものを私どもが応用して日本のデフレリスクを見たものでございますが、これが下がるほどデフレリスクが小さい。直近は〇・二三ということでございまして、アメリカと同じぐらいの水準で、かなり日本のデフレリスクは後退しているという認識です。

 十四ページは、非常に大きな問題となっております実質賃金の低迷でございますけれども、オレンジ色の線が、実質賃金に対して二四半期程度先行する先行指数を私どもが作成したわけでございますが、先行きの実質賃金は、私どもの見立てでは、早ければ今年の七―九月期にもプラスの方向に転換する可能性があるのではないか。

 そうした中で、十五ページでございますが、日本銀行の金融政策は、上半分のところにございますように、イールドカーブコントロールによって十三兆円程度GDPを押し上げました。ただ、下半分のところにあるような債券市場の機能低下、生産性の低迷、財政規律の弛緩という、これらの問題があるわけでございますので、恐らくは、四月にはマイナス金利をゼロ金利に戻していく可能性が高い。

 他方で、十六ページは、金利が、短期金利、長期金利が一%上昇したときの影響ということですが、一番上のところにあるように、短期金利上昇の悪影響は長期金利よりも大きいということがあります。こういったことを受けて、日本銀行は、ゼロ金利に復帰した後も極めて緩和的な金融政策を続けるという見方です。

 御参考までに、十七ページで、一番上のところに書いてございますが、歴史を振り返ると、利上げの順番はアメリカ、欧州、日本の順で、そして、日本が最後に利上げをすると、日本は景気後退に陥るということでございますので、恐らく日銀は利上げについてはかなり慎重なスタンスを続けるのではないか。

 その中で、十八ページでございますが、今までは左側のゆでガエル構造であったものが、これから右側に移行する。左端のところを見ていただくと、お金が余って、経常黒字になって、円高になりデフレになり金利が低いという、こういった状況でございましたけれども、これからは、高齢化で貯蓄が取り崩され、経常黒字が減少をして、円安、そしてインフレ若しくはスタグフレーションのリスクが出るわけでございますから、こうした状況の中で、一番上に書いてございますが、財政規律を維持するということが極めて肝要であるという考え方です。

 十九ページ以降で、今後の政策対応でございますが、二十ページ、二十一ページは日本政府の方針。後ほど御覧いただきたいと思いますが。二十二ページが、私なりの解釈でございますけれども、まず給付金でホップ、そして減税でステップ、中長期でジャンプということで、日本経済の体質を改善をして、縮小均衡型、コストダウン型の経済から、成長志向型の経済へと移行する。

 二十三ページで、左の一番が所得の低い方、右の十番が所得の高い方ですけれども、そして、緑で書いてある線が、その負担がどれぐらい増えているか、オレンジ色の線が、どれぐらい支援をしているかということで、御覧いただくと、一番左端の所得が低い方について言えば、相当支援が超過をしている。右端の所得が高い方に関して言えば負担の方が大きくて、その間の方々はおおむね均衡しているということですので、低所得者世帯を中心に幅広い世帯の負担を軽減しているということだと思います。

 より長い課題として申し上げると、しっかりと設備投資を出すこと、そして賃金を上げること、さらには社会保障の改革を行うことが課題であると考えておるところでございまして、二十四ページが、まず設備の話でございます。

 上のところに三つ書いてございますが、日本の設備は三つの問題を抱えていて、まず、量が足りない。これは二百兆円以上恐らく不足をしていて、これを挽回すればGDPは一割ぐらい上がってくる。二点目として、質が低い。これによってGDPが一割失われている。そして、生産性が低い分野に偏在していること。これによって二割ぐらいが失われている。やはり設備を出していく余地が大きい。

 具体的には、真ん中の左側のところでございますが、非製造業の無形固定資本だとか、それから製造業の情報通信機器などの、資本の限界生産性の高いところでしっかりと設備投資を増やす必要がある。また、このページの一番下のところにございますけれども、今五兆円ぐらい年間行っている省人化投資をもし年間十六兆円行ったとすれば、十年後の就業者の減少分を相殺することが可能である。

 設備について今申し上げた数字をざっと確認をさせていただくと、二十五ページでございますが、あるべき量と比べれば二百兆円以上不足している可能性がある。右側の囲みのところに式が書いてありますが、最終的には、これによって一二・五%程度GDPが失われている可能性がございます。

 二十六ページは、二つ目の問題点の質の低下と低生産性分野に偏在していることでございますが、左のグラフの各国の資本の生産性を見ると、日本は黄色い線で極めて低い。右のグラフの右端から二番目のところを見ていただくと、まず、二の資本の質の低下、これはビンテージが延びて老朽化をしているということですが、これによる下押しが一〇%程度。それから三の、生産性が低いところに設備が張りついていることによって一八%程度という、これぐらいの下押しが想定されるということです。

 二十七ページ、省人化投資でございますけれども、赤いところに書いてあるように、現在五兆円行っておりますが、これをこれからもし十六兆円に増やしたとすれば、人手不足を賄うことが可能になる。また、ケースの三は、産業構造が変わって介護の人などが増えたときですけれども、これも三十四兆円程度によってある程度賄うことが可能だと。

 二十八ページは、その上で、賃上げを起点にして、賃金と設備の好循環を回すことがポイントであるということ。

 まず、右端のステップの一のところで、今、人手不足、二十年前には余剰労働力が二百八十万人ございましたけれども、現状は三十万人程度であるということですから、まずしっかりと賃上げを行う。次に、上のステップ二でございますが、これによって資本と労働の相対価格が変化することによって設備投資が増える。そして、左半分の資本というところで、ステップ三でございますけれども、例えば資本ストックが、資本装備率が一%上がると生産性は〇・四%上がります。また、労働の質が上がる。例えば、パートタイム比率が五%低下することによって潜在成長率は一・六%上がりますので、結果、労働生産性が上昇をして、ステップ四のところの実質賃金の上昇へとつなげていく。

 こういう形で、賃上げを起点として設備を増やして、生産性を上げて実質賃金を上げるということ、これをしっかりとやっていくことが肝要であるということであります。

 二十九ページは余剰労働力のデータですので、ここは後ほど御覧いただくとして、三十ページの左のグラフでございますけれども、資本と労働の相対価格を見ていて、九〇年代までは、設備投資をした方が有利なので、皆、設備投資をしたわけですけれども、二〇〇〇年代に入って、バブル崩壊で賃金が上がらなくなって、結果、設備はある程度増えたけれども人への分配はなくなった。足下で今賃金が上がっているので、この賃上げをてこにして、そこから設備投資、生産性上昇、実質賃金の増加の好循環というものをしっかりと回していかなくてはいけないのではないか。

 三十一ページ、私もメンバーを務めさせていただいております全世代型社会保障構築会議でございますけれども、この論点を、これを工程表を作って、今粛々と実行していくという方向であります。

 今回の予算でも支援金が盛り込まれておりますが、私は、この支援金を含む、広く薄く国民が子育てを支える仕組みについては、基本的には支持をしているという立場であります。

 そして、三十二ページでございますが、今申し上げたような全世代型社会保障改革等によって将来不安が解消すれば、そこから消費の押し上げが期待される。左のグラフを見ていただきますと、二十代、三十代が将来不安からどんどんお金を使わなくなって、これが日本の経済を下押しをしている。右のグラフで、これからもし将来不安がなくなって消費性向が戻るようであれば、七兆円から十兆円程度の消費の押し上げ効果というものが期待されます。

 今日は、三つの点について申し上げました。

 一点目として、日本経済は幾つかの要因があって巡航速度での緩やかな景気拡大が続きますが、ただ、海外経済の下振れリスクには細心の注意が必要である。

 二点目として、日本は、やはりグローバルな流れの中で、徐々にデフレを脱する方向に来ていますので、その中で日本銀行は、恐らく四月に向けて、マイナス金利をゼロ金利に戻して、ただ、その後の利上げについてはかなり慎重な、緩和的なスタンスを続けるのではないか。

 三点目として、今回の政策対応は短期のものと中長期のものがある程度バランスよく盛り込まれているということでございまして、他方で、これからの課題としては、やはり設備が足りないので、そこをしっかりと出していくこと、それから、賃上げを起点にして、そこから生産性を上げて、さらに実質賃金を上げるような、賃上げを起点にした好循環というものを起こすということ、さらには、全世代型社会保障改革という、やはり国民の将来不安をしっかりとなくしていくような対応が必要ではないかということでございます。

 私の方からは、御説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

 次に、清水公述人にお願いいたします。

清水公述人 ただいま御指名をいただきました連合の清水でございます。

 本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝を申し上げます。

 連合は、働くことを軸とする安心社会を目指しており、本日は、働く者、生活者の立場から意見を申し述べます。

 冒頭、一月一日に発災をしました能登半島地震の被災地の一日も早い復旧復興に向けて、与野党が建設的な議論を行っていただいていることに感謝を申し上げるとともに、一層の充実した政策論議をお願いを申し上げたいというふうに存じておるところでございます。

 それでは初めに、連合の現下の経済、社会の課題認識について申し述べます。

 歯止めのかからない少子化と生産年齢人口の減少は、国力に直結する重大な課題であります。加えて、この間の長期にわたるデフレは、格差の拡大と貧困の固定化を助長させ、これに追い打ちをかけるような物価上昇が低所得者の暮らしと中小企業の経営基盤に大きな打撃を与え続けております。

 言うまでもなく、予算とは、国の在り方や進路を示すものでございます。日本の構造課題を解決し、安心、安全に暮らせる社会を将来世代に引き継ぐには、財政規律の徹底による歳出構造の抜本見直しと、税と社会保障の一体改革による重層的なセーフティーネットの構築が必須であり、もはや残された時間は僅かであるというのが私たちの考えでございます。

 今国会で政治資金問題の真相を明らかにすることも重要ですが、立法府の責任として、政治の停滞を招くことなく、待ったなしの日本の構造課題の解決に向けた審議が尽くされることをまず強く期待をしたいと存じます。

 さて、連合は、二〇二四春季生活闘争、現在闘っております。経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換を図る正念場と位置づけて取り組んでおるところでございます。その成果の鍵を握るのは、雇用労働者の七割が働く中小企業と、四割を占める、パート、有期、契約などで働く仲間の賃上げでございます。

 資料の三ページを御覧ください。

 二〇二三闘争では三十年ぶりとなる高水準の賃上げを実現しましたが、賃上げを上回る物価上昇が続いているため、実質賃金を上昇させるまでには至っておりません。また、中小組合の賃上げは、業績回復の遅れなどから全体よりも低位にとどまっております。

 本年、昨年を上回る高い水準での中小企業の賃上げを実現するには、価格転嫁、価格交渉、取引環境の整備が必要でございます。三ページ下の表を御覧ください。価格転嫁状況に対する連合加盟組合の調査でございます。価格転嫁できた組合の賃上げが価格転嫁できなかった組合を上回っており、価格転嫁と賃上げには相関関係が見られます。

 次に、資料の四ページを御覧ください。

 取引環境の整備に向けて、公正取引委員会から労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針が示されたことは大きな前進でございます。あとは実効性の担保が課題でございますが、昨年九月の中小企業庁の調査では、全体として価格転嫁は改善傾向にあるものの、価格交渉が行われたのは全体の六割弱にとどまっています。コスト要素別に転嫁率を見ますと、労務費は原材料費を十ポイント下回っているということでございます。

 政府には、中小企業がちゅうちょすることなく取引先へ価格交渉の申入れができるよう、大企業のパートナーシップ構築宣言を促すとともに、指針の実効性を高める一層の取組強化と不利益取扱いの禁止などを求めたいと思います。

 次に、雇用形態間の賃金格差の是正も重要であります。

 連合加盟組合では、組合員であるか否かにかかわらず、同じ職場で働く仲間の賃金が働きの価値に見合った賃金となるよう要求、交渉しておるところでございます。政府には、労働組合のない職場においても同一労働同一賃金が実現されるよう企業への指導を強化するとともに、法定最低賃金の大幅な引上げが実現できる環境整備を期待をするところでございます。

 二〇二四春季生活闘争は、三月十一日の週に回答引き出しの山場を予定をしております。先行組合が引き出す賃上げの流れを、労働組合のない企業も含め、多くの中小企業などに波及させることが肝要であり、政労使による社会的メッセージの発信なども検討を求めたいと思います。

 次に、政府内で検討が進められているライドシェアについて、一言申し述べておきたいと思います。

 本年四月から、タクシーが不足する地域や時間帯に限って、タクシー事業者の運行管理下で自家用自動車を活用した新たな仕組みが導入される予定となっておりますが、新たな仕組みにおいても、既存のタクシー事業と同様に、公共交通で保障されている、利用者、歩行者等の交通参加者、そしてドライバーの安全、安心、車両の管理責任などを十分に確保する必要があると考えます。

 特に、ドライバーについては、雇用された労働者でなければ労働関係法令が適用されず、過重労働による健康障害や事故につながる懸念があり、タクシー事業者との雇用契約に厳に限る、そのように述べたいと思います。

 なお、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことは、先行する諸外国において様々な問題が指摘されていることに加え、タクシー産業の健全な発展を阻害する懸念があり、極めて慎重であるべきと考えます。

 次に、税制改正関連法案ですが、昨年六月に政府が閣議決定をしました骨太方針二〇二三では「税体系全般の見直しを推進する。」と示されていましたが、今回の法案では税体系全般の見直しには全く踏み込んでいないということで、修正案を二点申し上げたいと思います。

 一点目は、低所得者への給付と併せて行う所得税、個人住民税の定額減税です。政策目的が、税収増の還元から、物価高に負けない賃上げを実現するための環境整備に変更されたことで、連合の組合員からも、何のための減税なのか分かりづらいとの声が寄せられています。さらに、企業や地方自治体からも、事務費用の増加や申請に関わる人的負担増に対しての懸念の声が寄せられています。

 資料の五ページを御覧ください。

 連合は、今回のように給付と減税を同時に行うのであれば、マイナンバー制度を活用した正確な所得捕捉に基づく給付つき税額控除の仕組みを早期に構築すべきと考えます。特に、所得税非課税世帯などには食料品など生活の基礎的消費に係る消費税負担分を給付する消費税還付制度を導入し、低所得者の負担軽減につなげるべきと考えます。

 二点目は、ガソリン価格高騰対策です。連合は、そもそもガソリン価格の約三割が税金であることも踏まえ、五十年にわたって課税している当分の間税率は二〇〇九年に課税根拠を失っているので廃止をし、ガソリンの価格を引き下げる恒久的な措置を講ずるべきと考えます。なお、その際は、税制全体の見直しの中で、地方財政の根拠にもなっておりますので、地方財政に影響を及ぼさない代替財源の確保も必要であると考えております。

 連合はこの間、地方連合会とともに、全国の首長や地方議会から、給付つき税額控除の仕組みの構築と当分の間税率の廃止を求める意見書の国への提出を働きかける取組を行っています。現時点で全国約三十の県や市町村と協議をしており、更に進めていきたいと考えております。

 次に、子供、子育て政策について四点申し上げます。

 一点目は、新設する支援金制度を盛り込んだ子ども・子育て支援法等改正法案でございます。

 岸田首相は、支援金制度については、医療保険料と併せて徴収する額は月額平均五百円弱だが、賃上げと歳出改革により実質的な負担は生じないと述べていらっしゃいます。連合は、子供、子育ては社会全体で支えることが大前提であり、そのために必要な負担について反対するものではありません。しかし、結果として可処分所得が減少してしまうことや医療保険の保険料と併せて徴収されることなどについて、国民の理解や納得は全く得られていないということを申し上げたいと思います。

 加えて、支援金制度は、給付と負担の関係が不明確、子供、子育て支援以外にも使途が広がりかねない、労働者の、拠出する側の意見反映の仕組みがないなど、多くの課題があります。これらの点について、国会での徹底した審議を求めたいと思います。

 二点目は、検討中の日本版DBS法案についてでございます。

 こども基本法の理念の下、子供の最善の利益を実現するため、性犯罪を防止することは極めて重要であります。しかし、検討中の日本版DBSでは初犯を防ぐことはできません。そのため、学校や保育所などで子供が大人と密室で一対一とならないようにすること、あるいは、性加害者への更生プログラム受講の義務化、被害者も加害者も出さないための教育、研修の充実など、十分な予算措置を伴う実効性ある包括的な対応が必要であると思います。

 さらに、事業者が労働者の性犯罪歴を照会し、事業者が回答を得る仕組みでは、個人情報の漏えいする懸念が払拭できません。職業選択の自由や個人情報を保護する観点からも、労働者本人の申請に基づき、労働者本人が性犯罪歴がないことの証明を受ける、そういった仕組みとすべきではないかと考えております。

 また、性犯罪歴がある者への安全措置が取れない場合は解雇可能とする方向での検討は、解雇権の濫用を促しかねず、断じて容認できない部分がございます。

 三点目は、育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案についてです。

 男女が共に育児、介護などの家族的責任と仕事やキャリア形成を両立するためには、法改正により柔軟な働き方の選択肢を増やすことに加え、長時間労働を前提としない働き方を実現することが重要であります。また、一人親家庭、障害のある子や医療的ケアが必要な子を育てる親など、労働者の個別の事情に配慮した対応も必要と考えます。

 四点目は、民法等の一部を改正する法律案です。

 法定養育費の制度化や先取特権の付与により養育費確保の実効性を高めること、これは一人親家庭の貧困解消に向けて一歩前進するものと考えます。

 父母離婚後の共同親権に関しては、父母間に対立がある場合などに家庭裁判所が関与する仕組みが設けられました。これまで以上に重要な役割を果たすことになる家庭裁判所の体制強化とそのための財源確保を始め、子の福祉確保の観点から慎重な審議を求めたいと思います。

 次に、雇用保険関連でございます。

 今国会に雇用保険法等の一部を改正する法律案が提出されています。法案には、労働者の主体的な能力開発を支援し、労働者個人への給付を拡充するための教育訓練給付の給付率の引上げや、こども家庭庁が少子化対策と位置づける育児休業給付の給付率引上げなどが含まれております。

 能力開発や子育て支援の充実は重要ですが、雇用保険の本来の目的は労働者の生活及び雇用の安定であり、その目的の範囲を超えるような政策は雇用保険財源以外の一般財源などで実施することが引き続き求められると考えます。

 また、育児休業給付の保険料率の引上げを含めた雇用保険料率の引上げは、労使の多大な負担増となります。今回のように、雇用保険勘定の育児休業給付部分をこども金庫に移管したとしても、保険料やその使途の在り方については、保険料納付者である労使が参加する労働政策審議会において議論することが重要ではないでしょうか。

 次に、今国会に提出予定の技能実習制度等の見直しに関する法案について申し述べます。

 法案検討のために入管庁に設置された有識者会議には、連合も委員として参画してまいりました。政府が二月九日に決定した法改正に向けた方針では、監理団体の厳格化、監理、支援体制の強化、検討プロセスの透明性確保策など、外国人労働者の保護に資するものと受け止めております。

 しかし、方針には、有識者会議の最終報告書と異なる記載も散見されます。育成就労制度の職種につきましては特定技能制度の分野に合わせるとする一方、技能実習でしか受け入れていない職種については、当該職種が果たしてきた人材確保の機能の実態を確認した上で、特定産業分野への追加を検討とされております。最終報告書の、就労を通じた人材育成になじまない分野は対象外とした記載から大きく変更されており、未熟練外国人労働者の安易な受入れ拡大につながりかねないと危惧しておるところでございます。

 加えて、改正法の施行前に特定技能制度への分野追加が検討される旨の報道もございましたが、法改正の趣旨である制度の適正化を実現するためには、こうした駆け込み追加が行われることはあってはならないと考えます。両制度の受入れ分野の追加、設定は、改正法の施行後に検討すべきだと考えております。

 なお、政府方針には、制度の運用状況について不断の検討と必要な見直しを行うとあります。その際は、公開された公的な場において、労使を含めた関係者等によって検討することが重要であると考えます。また、当該制度だけでなく、他の在留資格を含めた外国人労働者の受入れと共生の在り方全般について検討する場が必要であると考えます。

 次に、カーボンニュートラルの実現に向けた対応について申し上げます。

 政府が宣言しました二〇五〇年カーボンニュートラルは、気候変動対策としての観点はもとより、我が国の産業競争力の維持強化、グリーンで良質な雇用の創出、地域経済の維持向上の観点からも、あらゆる手段を総動員した取組を進めなければなりません。

 今国会に提出されましたCCS事業法案と水素社会推進法案は、我が国の産業競争力の維持強化に資するものであり、早期の成立を求めたいと思います。

 一方、昨年成立したGX推進法の理念に盛り込まれた公正な移行を実現するには、国、地域、産業の各レベルで政労使が加わる社会対話の場が必要であります。政府には、省庁横断的な体制の下での社会対話の場の早期設置と、その場での課題の深掘りや複数のシナリオによる政策立案のプロセスをロードマップに織り込み、十分な予算措置を行うことを求めたいと思います。

 次に、持続可能で包摂的な社会の実現について三点申し述べます。

 一点目は、あらゆるハラスメントの防止です。

 連合は、安心して働ける職場環境構築のため、あらゆるハラスメント禁止に係るILO第百九十号条約の批准を求めています。特に、カスタマーハラスメントは、事業主の望ましい取組として指針に定められているにすぎず、法的には何ら措置されておりません。ハラスメントを根絶するためには、ハラスメント自体を禁止する法整備が必要と考えます。

 二点目は、選択的夫婦別氏制度です。

 住民票やマイナンバーカード、運転免許証など、旧姓併記を認める対象は徐々に増えていますが、公文書などは原則戸籍名しか認められていないケースが多いのが実態でございます。また、G7の中で認めていないのは日本だけであり、国際社会では旧姓使用の通称使用は通用しません。一九九六年に法制審議会が法案要綱を答申してから二十八年がたちました。個人の尊厳や人権の保護のため、今こそ選択的夫婦別氏制度を導入すべきと考えます。

 最後に三点目でございますが、差別禁止のスタンダードであるILO第百十一号条約です。

 ILO百十一号条約は、ILO加盟百八十七か国中百七十五国が既に批准しており、日本がいまだに未批准であることは大きな問題であると思います。日本が差別を許さない国であることを国内外に示す意味でも、条約の早期批准を求めたいと思います。

 以上申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

 次に、末冨公述人にお願いいたします。

末冨公述人 皆様、日本大学の末冨でございます。お手元の黄色い資料を基に今日はお話をさせていただきます。

 本日、私は、令和六年度予算案、そして、今国会で予定されております子ども・子育て支援法の改正につきまして、大変意義があることであるという立場から意見を申し述べさせていただきます。

 安心で幸せな子育てを支えるこども金庫創設の意義と展望ということでお話をいたします。

 私は、実は、教育無償化を含む教育行財政の専門家でございます。ただし、内閣府時代から十年にわたって子供の貧困対策に関わっており、子供政策についても長年蓄積を積んでまいりました。例えばですけれども、一ページ目の左側、こども基本法に関する著作もございますし、右側に「子育て罰」という本も記してございます。

 二ページ目に進みますが、この子育て罰というのは何かと申しますと、OECDでチャイルドペナルティーと呼ばれているものが元の言葉になります。先進国最悪の我が国の一人親の貧困というものは、特に子育てをしながら働く母親の賃金水準が著しくよくないことによります。

 ただし、それ以外にも、率直に申し上げて、この国では長年、子育てを自己責任とみなし、親子に冷たく厳しい政治や社会であったのではないか、そのように子育て当事者が受け止めざるを得ない状況があるということです。特に、二〇二一年の七月に、児童手当の所得制限が導入されるということで、私も怒って本を出版してしまいました。

 次のページに参りますけれども、ただ、以前の明治日本というのは、子供天国というふうに呼ばれていた時代がございます。ところが、令和の日本というのは、正直に言うと、女性として、母として生きていると、とてもつらいです。

 例えばですけれども、三ページ目の絵にございますが、ぶつかり男、ぶつかり女と呼ばれる、妊婦さんやママや赤ちゃんを狙ってくる人たちがいるんですね。こうした方たちは、迷惑行為防止条例の対象となっていないんです。本当は誰よりも守られなければいけない人たちが守られていないということで、このような大人たちが平気で赤ちゃんやママをターゲットにしないようにしてほしい、それも子育て罰をなくすことだろうというふうに考えています。

 そして、四ページ目ですけれども、この場に私が立っておりますのは、ここまでの国会参考人としての経緯があるからだろうとも思います。まず、二〇二一年、児童手当の所得制限は子育て罰だとすごく怒っていました。そして、二〇二二年、こども基本法成立、大変うれしかったですけれども、大事なのは財源、財源、財源だということで、このときもまだまだ怒っていました。

 次のページに行ってください。五ページ目、笑顔です。なぜかと申しますと、子供のための財源がしっかり確保される、特に全ての子供を応援するという姿勢がまさに異次元であるということで、私自身は、あっ、日本も本気で子育て罰をなくすために変わろうとしているんだということを大変高く評価しております。

 ここからが本論ですけれども、六ページ目、本日は御覧の三つの柱でお話をさせていただきます。

 七ページ目、まず一番、こども金庫創設の意義ということですけれども、五ページに要点をまとめてございます。

 こども金庫創設の意義ですけれども、まず、子供を産み育てることはリスクであるということで、公助のための特別会計ができるということは非常に意義があることです。また、全世代、事業主が連帯して子供、子育てを支えるということで、支援金だけではない、一般会計からの繰入れや、あと歳出削減も含めて、子供、若者を支えていくんだという多様な財源。それが子供政策への使途限定、リングフェンスト財源として使われるということ。それとともに、消費増税のときは、正直、子供たちに幾ら使われたのか見えづらかったんですね。そうではなくて、特別会計にすることで、幾ら使って、幾ら子供、若者のために応援しているんだということが分かりやすくする見える化。あわせまして、全ての子供を応援するということについて大変高い意義が認められます。これらはまさに普遍主義の子供政策であるということで、これまでの日本政府とは次元が異なる、私たちは、レベルが上がっているというふうに捉えています。

 また、支援金制度については、この予算委員会でも大変真剣な御議論が交わされておりますけれども、私自身は、子育てのリスクを支えるための多様な財源の一つとしては極めて重要で意義があるものであるというふうに考えております。

 九ページ目に参ります。

 こちら、こども未来戦略マップです。確かに、専門家が見れば、ここはもうちょっとこうした方がいいんじゃないかということはございます。ただし、子供を産み育てることはリスクということから、子供を産み育てることは幸せで楽しい日本になっていくんだというふうな、子育ての安心をつくる公助システムの基礎設計としては重要です。これは大変重要なスタートラインだと思います。

 そして、十ページ目ですね。

 実は、私自身も子供の貧困対策団体の理事をしておりますが、子供、子育ての四団体として、この間、子供財源、そして子供、若者政策の拡充を是非してくださいということで、明るい圧力団体をやってまいりました。それらの団体の採点表がこちらになります。妊娠、出産手当の無償化、児童手当のユニバーサル化を始め、大変評価できる部分もあるけれども、例えばですけれども、子育てのケアマネジャー制度、ここからしっかりつくってほしいというふうに、まだまだここから二歩目、三歩目、四歩目、更にその先へ駆け出していってほしいという願いも込めて採点表を作っております。

 そして、十一ページ目ですね。

 令和六年度予算案ですが、特に、多子世帯に手厚い支援が行われております。こちらについても大変いろいろな視点から御議論があることは承知しておりますが、私自身の科研費の調査結果によれば、多子世帯ほど、所得制限なく全ての子供を応援してほしいんだということ、たとえ上の子が成人しても支援は続くということを支持されているということでございます。

 そして、次のセクション、十二ページ目。

 それでは、この三・六兆財源、そしてここまで積み上げてこられた財源含め、ここからの財源も含めて、子供財源が少子化対策として効果を上げるための条件についてお話をさせていただきます。

 十三ページ目に参ります。

 御存じのとおり、少子化というのは、非婚化と無子化、一人っ子化によって起きています。非婚化は、若者の非正規化、低所得化、長時間労働による時間貧困、そして女性の就労上の不利、特に、子育てする女性の不利や、ケアの負担も女性に偏りがちである、更に言うと、教育、子育てにお金がかかる社会によって促進をされてきました。

 これらにアプローチするために、三・六兆円財源、大変重要なわけですが、ただし、次のページに進んでください、更に三・六兆円財源の向こうを見据えて私たちが何を意識しなければならないかというと、日本の若者は今、大変思慮深いプレーヤーだということです。今、日本の若者たちは、結婚して出産したいなと思ったときに、子供を大学に行かせられるか、幸せな子育てができるかということを最初によく考えます。そうすると、この世の中では無理だと思って諦めてしまう。その諦めを生まないことというのが、実は日本の少子化対策のポイントとなるということでございます。

 次のページに参ります、十五ページ目。

 すなわち、子供を産み育てることが若い世代にとって今は明確にリスクです。そうではなく、国を挙げて応援する、そして事業主さんも応援するということによって、これはメリットだ、子供を持つことはメリットなんだというための、信頼される制度設計が不可欠でございます。

 この間、特に、次元の異なる少子化対策については、私のところにも様々な御意見が寄せられました。その様々な御意見の中から、子供財源が効果を上げるためには三つの問題の改善が必要だという整理をいたしました。まず一つ目、政治不信問題、これは今話題の件ではございません。もう一つが、こどもまんなか三点セット問題。そして最後が、受益感なし問題ということです。

 十六ページ目に参ります。

 まず、政治不信問題というのは何かというと、無償化や児童手当の所得制限撤廃、どうせ続かないのではないですかと、総理が替わる、政権が替わるたびに目まぐるしく変化を繰り返してきてしまった日本の子供、子育て支援政策に対して、実は多くの子育て当事者は不信感を持っているということでございます。これは改善されなければなりません。あわせて、稼いでもほとんど税金に持っていかれて所得制限も重いということも指摘されております。

 さらに、次のページですけれども、私も自分の講義で、異次元の少子化対策はこんなふうになるんだよというふうにうれしく話したところ、大学生から、自分たちは応援されている気がしませんという厳しい指摘をいただきました。あわせまして、地方の助産師さんからは、こども誰でも通園制度は生後六か月からだ、実は、産後うつにとって一番大事な生後六か月までの支援が足りていないんです、地方にはリソースも少ないですという御相談もいただいております。

 これらにどう対応していけばいいのかということで、十八ページですね。

 まず、政治不信問題につきましては、やはり、政権、政党を超えて、子供たちの財源をつくるんだ、そしてもう後戻りはしない、全ての子供、若者を応援するんだということで、この点だけは必ず与野党で合意いただきたく存じます。

 あわせまして、右側、こどもまんなか三点セット問題ですが、実は、ほかの参考人も御指摘されていますけれども、この国では、扶養控除、減税の仕組み、そして現金給付がまずばらばらです。ここをまず一体化させていただきたい。すなわち、給付つき税額控除の仕組みとして、あらゆる世代に優しい仕組みをつくっていただきたいということです。

 それと併せて、後ほど申し上げますが、実は、若い世代が一番望んでいるのは、保育、教育の無償化、そして質の向上となっております。現在与党で御検討されている高校生の扶養控除の縮小、子供増税は、今のタイミングではやめた方がいいというのが私の明確な意見です。特に、物価高の中で、せっかく支援が増えたのに増税しますということは、やはり今までの悪夢を繰り返しているじゃないかという失望に子育て当事者や若い世代をいざないます。今じゃない。次のステップで考えてください。

 十九ページは、私自身も、高校生扶養控除の廃止は今やめてください、縮小もやめてくださいということで与野党の皆様方にお願いしていますけれども、それは、別に与党が憎いとかそういうわけではないんです。今ではない。少子化対策というのは今増税をしては意味がなくなるからということで、一生懸命訴えているということです。

 二十一ページに参ります。

 現在の子供、若者支援政策というものの充実を考えたときに、実は、十五歳から十九歳、二十から二十四歳の若者期の貧困が深刻である、この点について今後更なるアプローチが必要であるということを訴えたいと思います。

 次に、二十二ページですけれども、先ほど無償化の話を申し上げました。こちらも私自身の科研費の調査ですけれども、二十代から三十代の若い世代、特に若い女性の五割弱が、所得制限のない〇―二歳保育無償化、高校無償化、そして児童手当等を含む経済的支援について支持すると。つまり、若い世代は所得制限がない方がいいと思っているわけです。これは四十代以上の意識とは明確に異なるということになっております。

 さらに、次のページに行くと、では、今回は経済的支援、保育無償化、高校無償化の三つで聞いたけれども、所得制限がないものということで一番支持されるのは高校無償化です。ただし、もしもこの調査に大学無償化、減税、働き方改革、支援金等を入れたらどうなるのかということについては、まだ調査はできていません。逆に言うと、ここからの少子化対策をより効果的にするために、こちらの方は政府で迅速に行われるべきだというふうに考えております。

 二十四ページの方ですけれども、こちらも、インターネットを利用して行われた異次元の子育て政策の王座決定戦ということですけれども、小中高大全員無償化というのが優勝しました。ただし、非常な激戦でして、準優勝が所得制限撤廃や専門職員の待遇改善といったものになっております。

 こうした子育て当事者の声に応えるためにも、二十五ページですね、子供、子育て四団体からのお願いとしては、こども金庫、子供財源の基盤を確立して加速化プランを実施するのは頑張ってほしい、応援している、ただし、深刻化する少子化の中で、直ちに第二歩、第三歩も加速していただきたいと。一歩一歩着実に歩んでいただいているのは分かります。ただし、この国の少子化のスピードは、厚労省の予想をはるかに上回る速度で進んでしまっています。

 私たちは、共に手を携えて、少子化の改善、若い人たちが幸せで安心な子育てをするということのために全力で駆け出さなくてはならないということをお願いしたいと思います。

 二十六ページのこども未来戦略にも、「決して、「加速化プラン」で終わるものではない。」とございますが、もうどんどん先に進んでいきましょうということをお願いいたします。

 そして、最後に、二十七ページですけれども、こども基本法第十一条にのっとった子供、若者真ん中政策マネジメントの提案ということをいたします。

 二十八ページ、こども基本法の第十一条には、大変重要な条文があります。何が書かれているかというと、子供、若者に関する政策を決めるときには、子供や若者、そして子育て当事者の意見を反映させていくようにしましょう。これはなぜ重要かというと、政策効率を高めるために重要です。あわせて、こども家庭庁設置法には、こども家庭審議会もそのための機関としてしっかりと活動するんだということも書かれております。

 ただし、この際に、二十九ページ、こども家庭庁の体制、なお一層の進歩が必要です。特に、EBPM体制の強化は重要でございます。

 こども家庭庁には大臣直属のEBPM研究会という組織がございますけれども、省庁横断型でEBPMをしていただきたい。特に、迅速に子供、若者、子育て当事者のニーズを調査し、効果ある政策を精査できる状態にしていただきたいということです。

 あわせまして、若者支援に関する部会は、こども家庭審議会にはございません。それを支える体制がないからです。だからこそ、子供たち、若者たちのために日夜を問わず頑張ってくださっている、こども家庭庁の定員、体制の拡充をお願いいたしたく存じます。

 次のページ、三十ページですけれども、子供、若者真ん中政策マネジメントの提案ということをお願いいたします。

 特に、KPIとして重要なのは、赤いセルですね、若い世代の人たちが妊娠、出産、子育てを希望できるようになって、希望できる人たちが実際に子育てに至ったかどうかということの検証こそが極めて重要です。

 そこに至るプロセスを書いてございますが、特に、私自身は、今若者や子育て当事者に、本当に自分たちに受益があるのか、応援されている気がしないというその感覚を解消する、そのギャップを埋めることこそが大事で、そのためには、EBPMを活用し、子供、若者真ん中の政策マネジメントを実施する必要があるということでございます。

 そして、三十一ページですね。

 あわせまして、なぜ政府を挙げた子供、若者真ん中の政策マネジメントが重要かといいますと、国民や事業主に支援金負担をお願いするのであれば、政府による説明責任や結果責任をきちんと国民や事業主さんにお返しすることが必要でございます。だからこそ、政策マネジメントを重視してくださいということです。

 あわせまして、令和八年度以降に予定されます支援金負担につきましては、政府が今示しておられる諸条件がございます。賃金上昇等、一生懸命頑張っていただいているなというのも分かりますけれども、特に若者や子育て当事者の手取り減になるということは、率直に申し上げて、今までの日本国のエビデンスは、手取りが減れば少子化が進むという鉄則がございます。そこに抵触するようであれば、若い世代への支援金の負荷を高めるということについては慎重な御判断をお願いいたしたくございます。

 最後のページになりますけれども、いろいろ厳しいことも申し上げましたが、とはいえ、このこども金庫、そして令和六年度の予算というものは、安心で幸せな子育てが実現できる日本国への大切な第一歩です。どうぞ、与野党挙げて、令和日本を再び子供天国、子育て天国として進化させていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

 次に、小畑公述人にお願いいたします。

小畑公述人 全労連の小畑です。

 本日は、二〇二四年度政府予算に関わって、労働者の立場、労働組合の立場からの発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 長く続いたコロナ禍、相次ぐ自然災害などにより地域経済は疲弊し、そこに物価高騰が追い打ちをかけています。この間の労働組合などの奮闘により、二三春闘では一定の賃上げをかち取ることができましたが、長く続く日本の低賃金構造を抜本的に転換するには至っておらず、実質賃金は下がり続けており、労働者、国民の要求はますます切実なものがあります。

 現在、全労連は、二四国民春闘の取組を進めているところですが、現場の声も踏まえ、働く仲間の要求を実現する観点から、幾つかの点について意見を述べさせていただきます。

 一点目です。

 元旦の能登半島地震により甚大な被害が発生し、現在も、被災地では、断水が続くなどライフラインの復旧がままならない中で、避難所生活を強いられている皆さんが多数おられます。被災地の皆様に心からの哀悼とお見舞いを申し上げます。

 私も、一月二十六日、全国の働く仲間から寄せられた義援金を持って、直接石川県庁を訪問し、また、七尾市の医療機関や労働組合にも義援金や支援物資を届けながら、懇談をさせていただきました。

 その中で、御自身も被災されながら地域医療のために必死に頑張る医療従事者の皆さんから、今は使命感で気持ちが張り詰めているが、これが切れてしまったら離職者も出るのではないかとの切実な声を伺いました。

 実際、資料に入れてありますが、二月九日には読売新聞、十四日にはテレビ朝日が奥能登地域の四つの病院でおよそ七十人の看護師が退職意向と報じ、被災地に不安が広がっています。

 医療体制の確立なくして、地域の復興はあり得ません。地域のために頑張る病院や医療従事者の自助努力のみに任せることなく、医療従事者の皆さんが働き続けられる職場環境づくりのために、最大限の努力を国にお願いします。

 その上で、政府がこの間進めてきた公立・公的病院などの削減、縮小ありきの地域医療構想を撤回し、医師、看護師、医療技術職員、介護職員等を大幅に増員し、夜勤改善等、勤務環境と処遇を改善すること、また、公立・公的病院の再編統合や病床削減方針を見直すことなど、安全、安心の医療、公衆衛生、介護、福祉提供体制を確保することを求めます。

 医療体制のみならず、能登半島地震の被害がこれほど甚大で長期にわたっている背景には、この間進められてきた自治体の広域合併や公務員削減などにより、地域の実態に応じたきめ細かな施策が取れなくなってきてしまったことがあります。また、広域集約化で地方のインフラを切り捨て、インフラ整備のために欠かせない国の予算を切り詰めてきたこともあると思っております。資料を以下三ページ、四ページ、五ページなどに入れてありますので、御覧ください。

 二〇二四年度予算に当たっては、能登半島地震からの復旧復興予算の確保を最優先にするとともに、今後も予想される自然災害への対応と備えとしても、国家公務員の定員合理化計画の廃止を始め、公務員の定数削減をやめ、地域住民が安心して暮らせるきめ細かい公務、公共サービスを提供できる体制を確立できる予算とすることを求めます。

 二点目は、大幅賃上げ、底上げについてです。

 いよいよ二四春闘が山場を迎えます。全労連は、今春闘に当たって、賃金が下がり続ける国から上がる国への転換を求めて、産別と地方が一体となった取組を強めています。

 政府、財界も年明けから構造的な賃上げと言っておられるわけですが、そこで掲げられている三位一体の構造改革、これは、成果型賃金の促進と更なる雇用の流動化政策であり、全ての労働者の賃上げを実現するものではありません。

 私たちは、構造的な賃上げというのであれば、政府にできる賃上げのための政策が幾つもあると考えています。

 例えば、公務員労働者のみならず、公務、公共関連で働く労働者なども含めて、資料七ページに入れてありますが、全労連公務部会の試算では九百万人以上に影響を及ぼす国家公務員賃金を抜本的に引き上げること、また、診療報酬や障害福祉サービス等報酬、介護報酬など、政府が設定する公定価格に大きく左右されるケア労働者の処遇改善を行うこと、そして、全国一律最低賃金制度を確立し、少なくとも千五百円以上に引き上げることなどです。

 本日は、時間の関係で、最低賃金について絞ってお話をさせていただきます。

 長期にわたる日本経済の停滞と衰退から経済の好循環に転換させるためには、GDPの六割を占める国民の消費購買力を高める必要があります。そのためにも、最低賃金の改善による賃上げの、底上げが必要だと思っています。

 日本の最低賃金は、九ページにありますが、地域別であることが海外と比べても上がらない原因になっています。現行法では、最低賃金決定の三要素、その地域の労働者の生計費と賃金、事業の支払い能力を考慮し、最低賃金額を決めています。地域別である限り、最低賃金が低い地域では、その現状の支払い能力や経済状況を基に最低賃金額が決められ、低いままとなってしまいます。また、最低賃金額の高い地域は、低い地域を考慮し決められています。

 このように、地域別制度は、最低賃金額が低い地域は常に低いままにとどまり、引上げを妨げる構造的な欠陥があります。人口の一極集中や若者の都市部への流出を止めることもできません。最低賃金が低い地域は労働者の賃金が低くなり、年金、生活保護費、公務員賃金など、あらゆる生活と経済格差につながっています。最低賃金額が低い地域の経済の疲弊を生み、日本経済をゆがめ、冷え込ませている決定的な原因になっています。

 労働者の賃金は、経済の最も基本的なベースです。このベースを一律にしなければ、どんな経済対策を講じても日本経済を再生することはできないと思います。

 日本の最低賃金は、十ページにありますが、最も高い東京は時給千百十三円、最低は八百九十三円となっており、その差は二百二十円。この格差は十六年で二倍強まで広がっています。月十二万円から十六万円では、とても自立して生活することができません。

 私たちの最低生計費試算調査、十一ページに資料を入れてありますが、健康で文化的な生活をする上で必要な最低生計費に地域による大きな格差がないということがこの調査で分かっています。また、若者が自立した生活をする上で必要な最低生計費は月に二十五万円程度、月百五十時間の労働時間で換算すると時給千五百円以上がどこに住んでいても必要だという結果が出されています。

 全労連は、こうしたことから、最低賃金法を改正し、早期に全国一律化と千五百円以上にすることを求めています。

 資料十二ページを御覧ください。改定のポイントは四つです。

 一、地域別を全国最低賃金にすること。五年の経過措置を設け、公務にも適用すること。二、健康で文化的な最低限度の生活が確保できる水準を科学的な生計調査を基に決めること。最低賃金決定の三要素のうち、企業の支払い能力は削除すること。三、中央最低賃金審議会で全国最低賃金を決め、地方最低賃金審議会では地域別特定最賃のみの審議とすること。そして四、中小企業支援を国に義務づけることです。中小企業支援策として、国の責任で、中小企業、小規模事業所への特別補助を行うことや、原材料費と人件費が価格に適正に反映される仕組みを総合的に整備することなどが求められると考えています。

 以上のように、最賃法を改定することで、誰でも、全国どこに住んでいても、普通に暮らせる賃金が保障されることになり、地域間格差を解消し、地域経済を活性化することにつながります。

 同時に、全国一律最低賃金千五百円以上の実現は、男女賃金格差を解消し、ジェンダー平等を実現する上で欠かせない課題であるということも申し上げておきたいと思います。

 二〇二二年の国税庁民間給与実態調査によれば、男女の賃金格差は歴然としています。グラフを入れてありますが、平均給与は、男性五百六十三万円に対して、女性は三百十四万円。正規雇用の場合は、男性五百八十四万円、女性四百七万円。非正規雇用では、男性二百七十万円に対して、女性百六十六万円です。正規でも男女の格差は一〇〇対七〇ですが、平均では一〇〇対五五と、更にその差が開きます。これは、平均給与の低い非正規雇用に女性が多いことが大きな原因の一つです。男性正規雇用を一〇〇とすれば、女性非正規雇用の平均給与は何と二八にしかなりません。これでは、自立して普通に暮らしていくことは到底無理です。

 この間、政府、財界は、男性稼ぎ主モデルの日本型雇用によって、男性に長時間労働、女性には不安定雇用を押しつけてきました。雇用機会の均等や女性活躍を唱えつつ、女性差別を温存して、世帯単位で見れば女性の働き方は家計補助的なものだから低賃金に置かれたままでいい、こうした考え方で、パート、アルバイトなどの非正規雇用労働者、とりわけ女性労働者を低賃金に置いてきたことが根底にあります。

 女性労働者の五割を超える非正規雇用労働者の賃金を底上げすることなしに、男女の賃金格差を解消することはできません。そのためにも、全国一律最低賃金千五百円以上の実現は喫緊の課題であると言えます。

 女性活躍推進法の改正によって、二〇二二年七月から男女賃金格差公表制度が開始されました。全体としてしかつかめなかった男女の賃金格差の実態が企業ごと、国の省庁ごと、地方自治体ごとにつかめるようになったのは大きな前進だと思っております。その実態をつかんだ上で、企業ごと、省庁ごと、自治体ごとになぜそうなっているのかの分析を進め、改善に取り組んでいただきたいと思います。同時に、根本の原因を取り除いていくことは政府の責任であると考えます。

 二月九日には、ILOの条約勧告適用専門家委員会が、同一価値の労働についての男女労働者の同一報酬に関する百号条約、ILO百号条約ですね、この日本での適用に関して、全労連を含む政労使の報告を踏まえて所見を発表しています。その結論部分で、日本政府に対して、日本において顕著なジェンダー賃金格差が引き続き存在していることを指摘した上で、水平的、垂直的な職業的ジェンダー格差、長時間労働と仕事と家庭の調和を含む根底にある要因に対処するために、労働者と使用者組織と協力して積極的措置を継続させること及び男女間の同一価値労働同一賃金の実現を視野に現行法の改正を進め、適切な監視と手続及び是正措置に必要な措置を講じることを要請しているということも申し添えておきます。

 三点目に、労働時間、労働法制についてです。

 最低賃金のところで申し上げたとおり、日本型雇用の男性稼ぎ主モデルによって、男性には長時間労働、そして女性にはケア労働と低賃金の不安定雇用が押しつけられてきました。ここを変えていくためには、男女共に、労働者が生活時間を取り戻し、家族的責任、ケア労働を担えるように、労働時間そのものの短縮が求められています。資料十四には、家庭内のケア労働時間についての資料を示してあります。

 全労連は、そうした観点から、労働時間の短縮はジェンダー平等実現を推進するものと位置づけて、二三春闘から、所定労働時間を一日七時間、週三十五時間とすることを重要な要求の一つとして職場討議を積み重ねてまいりました。

 女性部でこのことを議論したときにも、もし一日の労働時間が七時間だったら、正規で働くことを諦めずに働き続けることができた、最初から正規雇用を選択することができたとの意見が多数寄せられました。

 男性も女性も家族的責任を果たしながら働き続けることができる条件を確立していく要求として、賃上げと一体に、法定労働時間一日七時間、週三十五時間を目指す運動として更に発展させていきたいと考えています。それは、先ほど御紹介いたしましたILO条約勧告適用専門家委員会が日本政府に要請する内容とも合致するものだと考えます。

 ところが、今、政府、財界は、労働時間短縮を求める労働者の声に背を向けて、労働者保護法制としての労働基準法自体を変質させる具体化を急速に進めようとしています。

 昨年十月二十日に発表された、厚生労働省新しい働き方研究会報告では、多様な働き方が広がる中で、労働基準法の基本的な概念の社会の変化に応じた検討が必要としました。

 さらに、それを受けて、具体化する形で、今年の一月十六日には、経団連が労使自治を軸とした労働法制に関する提言を発表しています。経団連の提言では、柔軟な働き方を労働者が求めているとして、労働基準法による労働者保護のための労働時間規制ではなく、個別企業の労使が話し合い、働き方を選択できる労使協創協議会の創設を法制化する検討をすべきとまで述べています。

 それは、これまで労働者の闘いが築いてきた権利としての一日八時間の労働時間規制など、労働者保護のための労働基準法の概念を企業利益優先に変質させようとするものであり、断じて容認できるものではありません。

 労働者保護、家族的責任を男女共に果たすことができる労働時間の上限を法律で規定した上で、さらに、働きやすい職場、働きやすい労働条件をつくるために労使対等に進められるのが労使交渉です。柔軟な働き方を実現するためとして個別企業の労使関係の在り方にまで踏み込む議論はやめ、労働者の要求に基づいて、労働者保護、労働時間規制を確固として確立していくことを求めます。

 最後に、以上申し上げてまいりました施策を進めるための財源について申し上げたいと思います。

 貧困と格差の広がりを是正し、公正な社会に転換していくために、国の果たす役割は大きいと言わなければなりません。私たちは、以上述べてきたような施策は、税の集め方や税の使い方を変えれば可能であるというふうに考えています。

 二〇二三年、これほどの物価高騰、資材高騰の下でも、資本金十億円以上の大企業は内部留保を十六兆円余りも積み増しして、その額は五百二十七・七兆円にも膨れ上がっています。この内部留保を、下請中小零細企業への支援や取引価格の適正化、生活できないほどに下げられてしまった労働者の賃上げに使うべきだと考えます。同時に、内部留保への課税や累進課税への転換によって税収を増やすことは可能です。

 そして、何よりも、岸田政権は、一昨年の暮れに閣議決定のみで改定した安保三文書に基づいて、五年で四十三兆円ともなる軍事費を使うという大軍拡方針を急速に強引に今進めています。しかも、防衛省が先頃立ち上げた有識者会議では、物価高騰や円安などを理由に、四十三兆円を更に増額する議論までされていることが報道されています。

 しかし、物価高騰で苦しんでいるのは労働者、国民の側です。五年で四十三兆円もの予算を軍事費に回すのではなくて、一日も早い被災地の復旧復興、抜本的な賃上げ策、そして、今最も重要な課題の一つである少子化対策にこそつぎ込んでほしいというのが国民の率直な願いです。異次元の少子化対策といいながら、その財源として公的医療保険の保険料に千円も上乗せしていたのでは、いつまでたっても少子化問題は解決しないと思います。

 岸田総理大臣は、通常国会の施政方針演説において、憲法改定に関わって、あえて自民党総裁として申し上げれば、任期中に実現したいというふうにおっしゃいましたが、自民党総裁としてやるべきことは、憲法改定ではなく、自民党の裏金問題の真相の徹底解明ではないでしょうか。

 改憲ではなく、憲法を生かして、労働者、国民の命、暮らしを守る二〇二四年度予算案の策定をお願いいたしまして、私からの発言を終わらせていただきます。

 本日は大変ありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

小野寺委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。越智隆雄君。

越智委員 自由民主党の越智隆雄でございます。

 熊谷公述人、清水公述人、そして末冨公述人、小畑公述人、今日は、お忙しい中、お時間を使っていただいてここに来ていただいて、お話しいただいて、これから意見交換させていただける、本当にありがたいというふうに思っております。

 戦後八十年がたとうとしておりますけれども、前半戦はよくやったなと思うんですけれども、この三十年、なかなか苦しい時期が続いています。失われた三十年とも言われますけれども、私は、十年ごとに挑戦しては挫折してという思いでやっておりまして、最初の九〇年代は統治システム改革をやったわけでありますけれども、二〇〇〇年代に入って小泉構造改革、そして、二〇一〇年代に入ってアベノミクス。アベノミクスでは、一億総活躍ですとか働き方改革ですとか、今いろいろ議論されていますけれども、生活変革まで踏み込んだというふうに思っております。そして今、四回目の挑戦でありまして、新しい資本主義を掲げておりますけれども、これはどうにかして実現をしていかなきゃいけないということだというふうに思っております。

 公述人の皆様には、そういう中で、現時点での重要ないろいろな課題あるいは取組を御紹介いただいて、御意見いただいたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず最初の質問なんですけれども、私、最初の質問者ですので、四人の皆様それぞれに、この令和六年度予算についての評価と課題についてお伺いしたいんです。

 政府の方は、この予算のテーマといいますか課題として、当然、賃上げですとか、あるいは内需主導の持続的な成長、子供、子育て、安全保障環境への対応、また財政の信認確保と、いろいろと課題を挙げていますけれども、それぞれのお立場から見たときに、特にこの点は評価したいとか、あるいは特にこの点は課題だということがあれば、お一人ずつ、端的にお話をいただけたらありがたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、令和六年度予算について評価ができる点というところでございますけれども、一つは、骨太の方針で、歳出構造を平時に戻していくということでございまして、基本的にはこれに沿った予算なのではないか、具体的には、コロナの予備費を五兆円から一兆円に減額をして、また補正の規模の縮小、さらには基金の資金投入の縮小等々によって、新規の国債発行額は〇・二兆円減額したと承知しております。

 それから、二点目としては、やはり賃金が物価になかなか追いついていかないというところが、ここが課題でございましたが、例えば、診療報酬改定における賃上げ枠の設定ですとか、若しくは公共事業の単価の引上げ等によって、物価上昇に負けない賃上げを目指すという点も、ここも評価できるのではないか。

 三点目としては、めり張りでございますけれども、やはり子供、子育て予算だとか防衛力の強化、さらには科学技術の振興といったものは、ここは、いろいろな御意見はあるのだと思いますが、過去最高を記録していて、これは、私なりに解釈をすると、一つは、社会的課題をしっかりと解決をするということ、もう一つは、成長基盤を強化する、また、現下の国際情勢の中で、やはりこのままでは、防衛についてもやはり強化しなくてはいけないということだと思いますから、そういった意味で、めり張りが非常についた予算だったのではないかと考えます。

 他方で、課題について申し上げれば、一つは、これから金利のある世界に入っていくわけでございますから、やはりPBの黒字化の目標をしっかりと堅持をすることが肝要ではないか。

 二点目として、防衛や子供の財源は、大枠はできているわけでございますけれども、まだ最終の詰めの部分で安定財源を完全に確保したというところまではなかなか言えない。

 三点目として、物価対策、エネルギーの補助等でございますけれども、これは、足下で見れば、エネルギー価格は今落ち着いてきているわけであって、むしろ食品が比較的高めであるということでございますから、やはり補助をいつまでも続けることはできないわけですので、そこの出口のことをしかるべきタイミングでやはり議論をしていかないといけない。

 最後に、四点目としては、産業支援、半導体でございますが、これは、政策としては、方向性は評価できるにしても、やはり国際的に見ればかなり政府の依存が突出をしているという状況でございますので、例えば二ナノの半導体が作れればいいわけですけれども、本当にうまくいくかどうかはこれからの話ですので、やはり、そこでうまくいったとき、この政策を続けるのではなくて、しっかりと縮減していく仕組みというようなものもビルトインしていかないといけない。

 全体としては、今後の課題、やはり、しっかりと費用対効果を見た上で、必要なところにめり張りをつけた予算づけをしてPDCAサイクルを回す、ここが大きな課題ではないかと考えます。

 ありがとうございました。

清水公述人 来年度予算案につきまして今御質問ございましたが、まず、やはり歯止めのかからない少子化、あるいは生産年齢の人口が減少しているということ、これは国力に関わる重大な課題というふうに私も最初に申し上げましたが、それに向けてということでいえば、やはり十分な予算の体制は取れていないというところ、若干そういったところを感じるところでございます。

 私たちとすれば、経済も賃金も物価も安定的に上昇する、そういった社会に向けて、様々な政策、それに伴う予算の配分をしていただいているというようには感じます。しかしながら、それが好循環につながるかどうかということについては、まだまだ十分な検証が必要ではないかということがあります。

 それから、七十兆を超える税収がある中で、やはり財政規律の徹底ということを、今こそやはり歳出構造の抜本的な見直しを図るべきではないのかということであります。

 若干減ったとはいえ、百兆を超える予算が組まれている中で、やはり将来世代にツケを回さない、そういった予算づくりに向けていくことが必要ではないか。私たちも、所得が上がりましたから、その分税金も払いました、その分税収も増えたのでありますが、それをやはり好循環に回していくにはまだまだ、展開する予算としては、私たちとすれば不十分なところがあるというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、令和六年度予算案で最も高く評価しておりますのは、やはり児童手当の所得制限撤廃、そして十八歳までの延長です。これは全ての子供たちを応援するという日本国としての姿勢の表れであると同時に、長年、子供の貧困対策団体が求めておりました高校生世代が苦しいということに対してもある程度の対応が可能になっているからです。

 ただし、同時に、課題といたしましては、児童扶養手当の増額が第三子に限定されており、予算としても七億円の増にしかすぎないことです。児童扶養手当、すなわち、一人親支援の方策として最も必要なのは、母一人、子供が一人か二人という母子世帯貧困です。第一子からの児童手当の増額を私たちはお願いをしてまいりました。この点も、こども未来戦略の後の第二歩、第三歩で直ちに実現をいただければと思います。

 以上です。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 二〇二四年度予算の評価について御質問をいただきました。私どもの考えは、先ほども述べたとおりで繰り返しになってしまうかもしれませんが、三点申し上げます。

 まず一点目は、構造的な賃上げということで予算全体を組み立てようとしていることについては非常に重要なことだというふうに思っておりますが、構造的な賃上げというからには、今まで実質賃金が下がり続けていたこの構造を、上がり続けていく、そういう構造に転換をしていくということが最も重要なことだというふうに考えております。それに当たっては、全ての労働者の賃上げにつながるような政策を是非取り入れてほしいというふうに思っているということが一点目です。

 二点目は、全世代型社会保障を掲げておられますが、全世代型というのであれば、世代間分断などではなくて、全ての世代が安心して暮らせるような、そういう社会保障の制度が必要だというふうに思っています。

 今、子育て世代の皆さんや若者が本当に不安に思っていることは、自分が生涯ずっとこの国で安心して暮らしていくことができるだろうか、安心して子育てすることができるだろうかということですから、先の世代までを見通したところで安心して暮らせるような、年金制度も含めてきちんとした社会保障制度が確立できる、そういう制度を見通した予算の組立てというのが必要ではないかというふうに考えているということが二点目です。

 三点目に、そうした政策を実現していくための予算の使い方として、最後に先ほど申し上げさせていただいたとおり、防衛費に突出した予算の使い方を見直すということが大事なのではないかというふうに考えております。

 以上です。

越智委員 ありがとうございました。

 あと四分でございますので、熊谷さんに一問一答でお願いしたいと思います。

 先ほどお話を伺って、政策対応についてということで、賃上げから設備投資、生産性向上、そして実質賃金の流れがとても大事だというお話がございまして、私もそのとおりだと思います。

 その関係が深いものとして、株価と政策の枠組みについてお話を聞きたいんですけれども、株が高いです、その要因を教えてほしいと思っていて、何を言いたいかというと、脱中国という話もありますけれども、昨日、実は金融関係者の意見を聞く機会があったんですけれども、外国人が日本にかつてないほど今注目しているというわけですね。

 そういう意味では、お金の流れも投資の流れも来ておりますし、今人の流れもあるわけですけれども、その裏側に、先ほどちょっといろいろと御意見あるようでしたけれども、新しい資本主義という枠組みが、最初何だか分からなくて新しい社会主義とか言われましたけれども、二〇二二年になって、ダボス会議でモダン・サプライサイド・エコノミクスという概念が出てきて、アメリカとかヨーロッパでも同じ歩調で政策を進めているということで、企業誘致とか、今、実際に動きが出てきているというふうに思います。

 ですので、株高の要因とこの新しい資本主義についての意見、評価あるいは課題を教えていただきたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 株高の要因については複数ございますが、まず、日本がデフレから脱却する、潮目が変わる、こういう期待が特に外国人の投資家の間で強まっている。

 二点目としては、世界が分断していますので、中国から逃げる資金が日本に向かっている。

 三点目として、日本銀行の緩和が続いておりますので、これによって円安になって、外国人投資家から見れば投資をしやすい環境がある。

 四点目として、東証の改革、これは私もメンバーでございますけれども、日本の企業が今度こそ変わるのではないか、そういう強い期待感があるということ。

 そして、五点目として、これは、政権が推進をしたNISAの拡充等、この辺りの資産所得倍増プランのようなものが非常に高く評価をされているというところがあろうかと思います。

 お尋ねのあった新しい資本主義でございますが、私自身は、これは方向性として非常に評価をしておるところでございまして、どこが新しいかということで申し上げれば、一点目として、人を中心とした無形資産のところが日本は弱かったわけでございますから、そこにしっかりと投資を行っていく。そういう文脈の下で、今回の子供、子育てプランも作られている。

 二点目として、今まで社会課題というのはどちらかといえば政府が全部丸抱えのようなところもありましたが、こういった外部不経済、社会課題を成長のエンジンに変えていくということが、これが二つ目の新しい部分。

 三点目として、新しい官民連携ということで、これは、象徴的には経済安全保障等でございますが、官と民がしっかりと役割分担をして、例えばグリーンなどの分野で、予見可能性を持つ形で投資を行う。

 そして、四点目として、これはKPIにはなっておりませんが、国民のウェルビーイング、幸福のようなものを従来と比べればより視野に入れるような形で政策運営をしていくということでございますので、今申し上げた中、特に、やはり人への投資のところを中核に置くというところが、これがやはり新しい部分で、その辺りを含めて、海外の投資家が今度こそ日本が変わるのではないかという、それがやはり今の株高を招いているところがあるのではないかと考えます。

 ありがとうございます。

越智委員 ありがとうございました。

 時間が来てしまいましたので、経済のかじ取りもこれからいろいろと御指導いただきながらしていきたいと思いますし、また、末冨さんの先ほどのお話を伺って、やはり安心感、将来の制度に対する安心感というのはとても大切で、少子化対策は本当に実効があるものにしていかなきゃいけないと思いますので、先ほどお話を伺って大変参考になりました。

 以上にします。ありがとうございました。

小野寺委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道でございます。

 公述人の先生方、今日は貴重な御提言、また御意見、本当にありがとうございます。

 私の方からは、少子化対策として政府が決定をいたしました子供、子育て加速化プランを中心にお聞きをさせていただきたいと思います。

 初めに、末冨公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 一昨日、二月二十七日、厚生労働省は、昨年の出生数は約七十五万人と、過去最低を更新したと発表をいたしました。まさに、少子化対策は待ったなしの喫緊の課題であります。若い世代が、結婚すること、子供を持つことについて希望しない、諦めるといった方も急速に増えてきており、こうした状況を変えていかなければならないと思います。

 公明党は、妊娠、出産から、子供が育ち巣立つまでをトータルで応援することが必要と、一昨年、子育て応援トータルプランを提案をし、政府の子供、子育て加速化プランにもこうした声を反映していただいたと評価をしているところであります。

 少子化対策として政府が決定した三・六兆円の子供、子育て加速化プランについて、どのように評価しているのか、末冨公述人からお話をお聞きしたいと思います。

末冨公述人 御質問、大変ありがとうございます。

 大変大きな質問でございますけれども、三・六兆円の加速化プランというものは、私のスライドで申し上げますと九ページに、こども未来戦略のマップとして、その概要が示されていると存じます。

 どのような評価をということですけれども、実は、こども金庫制度の創設と関わりまして、特に支援金については、やはり子育てのリスクに関わる部分に使うというのは大変評価されるところでございます。

 あわせまして、子育てを、実際、産んでみて一番心配なのは教育費でございます。その教育費についても、まず多子世帯からだけれども、こちらの方は、一般歳入や、将来的には恐らく歳出削減も含めて財源を確保していかれるという基本設計を示されているところも併せて重要かと思います。

 それとともに、まず産むか産まないかを迷うといったときに、育児休業給付ですとか働き方の柔軟さ、時短勤務等に対しても促進策を積極的に打っておられるところも大変評価されます。

 ただし、若者期の貧困については、なお一層の支援が必要です。特に先進諸外国では、働いていてもなお低所得の若者には若者手当等の給付がございます。若者自身に手取りをちゃんと確保していく、若者だって生存権がある、社会に参画していくんだということについては、まだ、今から私たちは検討していかなければならないだろうと思います。

 あわせまして、非正規雇用や個人事業主、自営業の方たちにとっては、正規社員ほどのまだメリットは感じられないのかなという仕組みにもなっておりますので、どのような働き方を選んでも、子育てはメリットだ、国が応援してくれる、安心で楽しいんだと思える、より確かな仕組みへの進歩もお願いいたしたく存じます。

 以上でございます。

佐藤(英)委員 今お話にあった支援金制度について、もう少し掘り下げてお伺いをしたいと思います。

 熊谷公述人、末冨公述人にお話を伺ってまいりたいと思いますが、少子化対策は、場当たり的ではなく、将来にわたって施策が継続することが大事であり、安定財源の確保が極めて重要であると考えております。

 そんな中、三・六兆円の加速化プランの財源として、二・六兆円の歳出改革など、一兆円の支援金という仕組みが今議論されているところであります。

 歳出改革などにより社会保険料の負担も軽減させるわけでありますけれども、この支援金の制度の設計に当たっては、現役世帯の負担増という意見もありますが、子育て世帯にとっては確実に給付を充実させるものであります。先日も、政府から、子供一人当たり平均百四十六万円の支援の改善という説明があったところであります。

 支援金制度は、全ての世代、全ての経済主体が子育て世帯を支えるという新しい分かち合いの仕組みだと考えております。

 そこで、伺います。少子化対策として、支援金制度を含む財源確保の在り方についてどのように評価されていらっしゃるのか、熊谷公述人、末冨公述人にお伺いしたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、加速化プラン全体の枠組みということで申し上げれば、既定の保険料の財源ですとか公費の財源を最大限活用しながら徹底した歳出改革に取り組むということでございまして、その意味では、赤字国債に頼って将来世代に安易に負担を先送りすることなく、歳出改革を基本とした姿勢で取り組んでいる、これをまず全体的には評価をさせていただいております。

 その上で、子供、子育て支援金でございますけれども、少子化対策は社会の参加者全員が受益を受ける取組であって、高齢者を含めた全ての世代、そして企業を含めた全ての経済主体を対象として、幅広く支え合うための支援金制度を導入するということは合理的である、こういう考え方でございます。

 その中で、一部で御議論のある、歳出改革によって分子の伸びを抑えて、そして賃上げによって分母を高めることで支援金の導入による社会保障負担率の上昇を抑えていく、こういう方向性でございますけれども、私自身は、これは合理的な考え方だと思っておりまして、実質的な負担が生じないということについてはマクロの社会保障負担率に関して検討していくべきであり、この方針は基本的に私は正しいと捉えています。

 もちろん、ミクロで見れば、施策の充実と支援金拠出の両面で様々な影響がありますので、それについては政府からも丁寧な説明が期待されるというところかと思います。

 加えて、今、私も入っております全世代型社会保障構築会議で、改革の工程表というものを作りました。これは極めてやはり重要で、社会保障分野についての歳出改革を不断に進めていくということが肝要であると思います。

 いずれにしても、全体としては、歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせて、その範囲の中で子供、子育てに対する支出の財源をいただくということは、私は総合的に見れば極めて正しい政策ではないかと考えております。

 ありがとうございました。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、支援金制度自体は、御指摘のように、全世代、そして事業者を含めて、受益を受ける人たちが幅広く子供、若者を支えていくんだという基本設計は大変すばらしいものかと思います。

 あわせまして、やはり、例えばですけれども、私もこの間、財源、いろいろな方とお話ししてまいりましたが、消費増税だと今言えば、世の中全体が大変意気消沈いたします。それぐらい国民の生活が厳しくなっている中で、ではどのように負担してもらうかというときに、子供を育てることはやはり大変なんだ、今までは家族で頑張りなさいということだったけれどもそうじゃない、この国のために、安心して楽しい子育てができるように、幸せな子育てができるように社会全体で応援するための財源をつくる、すなわち目的的な財源であるということが極めて重要かと思います。

 ただし、様々な御批判が私のところにも寄せられておりますし、ここから更に、御納得がいただける、ちゃんと結果を出していけるような、よりきめ細やかな制度設計も要ると思っています。

 特に、現役世代の方がより多く負担してしまうという御批判に対しては、その部分をどうやって全世代で支えるのか、なお精緻な議論が必要な状況にあるとは思っております。

 あわせまして、先ほど申し上げたとおり、令和八年度で大丈夫ですかということについても、しっかりと政府を挙げて精査の仕組みをおつくりいただき、この働き方の方たちは大丈夫だ、あるいは非正規の方たちも大丈夫だ、若しくは、なお賃上げしなければ実質手取り減になってしまうといったような、どの働き方、どのような暮らし方の若い世代に対しても中立公平であるという前提を何とか実現していただきたいなと思います。

 ともあれ、全ての受益者が子供、若者、子育てを支えていく、そのための財源ができるということについては、財政制度としても、大変意義深い歴史的な制度をつくられるというふうに考えております。

 以上です。

佐藤(英)委員 今回の支援の拡充の中で、共働き、共育ての推進についても大きなテーマとなっておりますので、清水公述人、末冨公述人にお話を伺います。

 未婚女性の希望子供数が大きく減少しています。子育てと仕事が両立しづらい職場環境を変えて、女性の不安を払拭していかなければならないと思います。

 加速化プランでは、育休手当の拡充や育児時短給付の創設など、大きく支援が充実する内容となっており、柔軟な働き方も推進していくとされております。

 共働き、共育ての推進について、政府の取組をどのように評価しているのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 子育てに関わって、働き方の改革というのは、この間、相当議論をされてきております。そして、今回は、予算にもありますように、休業した者に対して、そこについての補助をしていく、そういったことについても議論されている。そういったいわゆる現物の支給の部分、こういったところについては十分な議論がされていますけれども、その検証をするシステム、これを大事にすることが必要ではないかなと思っています。

 やはり、現役世代の人、そして子育てをする世代の人、それから、これから子育てを考えている若い大学生、私も大学で授業をさせていただくことがありますが、その中で、社会保障のお金がどのように使われて、どのように今後それが私たちの負担になるのか、そういったことをしっかりと見せていただきたい、将来の、先の見える子育ての全体化を見たいというふうなことがございます。

 今回の予算、様々な措置がされておりますが、是非それが展開できる、そして、本人だけではなくて、子育てを支える社会の担い手である、例えば保育所であるとか幼稚園であるとか、そういったところで働く、子供を預かって育てる、そこのところの人たちへの手当の改善など、そういったことも全般的に行っていただきたいということが、私は子育てにとって大事になっていくのではないかと思っております。

 以上でございます。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 共働き、共育ても進めましょうというのは大変いいことなんですけれども、実は女性の産後というのは大変厳しいものがございまして、大体全治六か月ぐらいの交通事故に相当するというような状態でございます。無理に働かない、体を休めるということが、実は、産後うつの防止であったり、あるいは、その後の第二子、第三子を望まれる場合の女性自身の健康にとっても大変大事なんですね。

 だからこそ、男性の育休をいかに支えるかということも大事ですし、そのためには、先ほど保育士さん等の専門職の待遇改善のお話もありましたが、特に中小企業さんは、人が一人休むというのは大変なダメージを負われます。だからこそ、支える人たちも支える仕組みというものも連帯の中でつくっていただくことが重要かと思っております。

 以上になります。

佐藤(英)委員 じゃ、最後にもう一点、末冨教授に伺います。

 二〇三〇年に向け、教育の無償化を始め、更に少子化対策を充実していくべきと考えますけれども、最後に御意見を伺いたいと思います。

末冨公述人 二〇三〇年が少子化反転のラストチャンスだということをしっかりと強調いただいているということは、本当に総理を始め岸田政権の閣僚の皆様に感謝を申し上げたいと思います。

 そのためには、先ほど来申し上げておりますが、まず子供たちの人生のことにしっかりと向き合っていただきたいと思います。特に、法制上働けないゼロから十五歳の子供たちは、年少扶養控除がないまま、ここに来ています。ほかのどの世代にも扶養控除があるにもかかわらずです。

 あわせまして、先ほど申し上げましたが、高校生の扶養控除も今は絶対に縮小しては駄目だということにもしっかり向き合っていただきたいです。

 その上で、現金給付、児童手当等との整理はしっかりいただきたいというのは先ほどお願い申し上げましたが、少子化を反転するためには、やはり子育てに安心を生む、特に保育、教育の現物給付の質の問題については、ここまで国会論戦でも中核的な議論にはなっておりません。質のための投資、とりわけ保育や教育を支える人や体制への投資というものについても是非お願いいたしたく存じます。それが安心で幸せな子育てを支える非常に大きな柱となってくると存じます。

 以上です。

佐藤(英)委員 貴重な御意見、ありがとうございました。

 終わります。

小野寺委員長 次に、早稲田ゆきさん。

早稲田委員 おはようございます。立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 本日は、四人の公述人の皆様、大変御示唆に富んだ御提言もいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、賃上げの重要性について清水公述人に伺いたいと思います。

 今るるお話をされましたとおり、連合の頑張り等々の成果で、昨年の春闘では今までにない三十年ぶりの高水準の賃上げができた、実現をされたということでありますけれども、この物価の高騰、そしてまたエネルギー高、これの影響を吸収するには至らなかったということで、実質賃金がずっと下がり続けている状況がございます。

 その中で、今回、清水公述人からは、目前に控えた二〇二四の春闘に対する意気込み、それも聞かせていただきましたし、特に、中小企業の賃上げが不可欠である、実質賃金を上昇トレンドにするためには中小企業を支える取組が何より重要だということで、価格転嫁についてなどの三ポイントのお話もいただきました。

 改めてでございますが、中小企業の賃上げのために、緊急的に、かつ不可欠だと思われる政府の取組、これは何だとお考えになりますでしょうか、お願いいたします。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 二〇二四春季生活闘争に現在取り組んでおります。今先生おっしゃったとおりでございますが、企業が今、史上最高益を更新しているという大企業も当然ございます。一方、中小企業の業績が思うように伸びていないということ、ここへの展開がやはり今回の最大のポイントだろうと思っています。

 その意味では、やはり大企業と中小企業が共存共栄をしていく、そして、日本の産業基盤を強化できるかどうかということが極めて重要だと考えています。

 具体的には、適正な価格転嫁、今先生がおっしゃったとおりでございます。政府の方も指針を出していただきましたので、それをしっかりと実績あるものにしていくということでございますが、特にやはり、問題のある取引慣行、そういったものを見直すということで、大企業、中小企業が付加価値の分配を、是正をお互いが図っていく。それぞれが発注側であり受注側である、その部分、公正取引委員会も、そういった問題のある取引慣行を見直す、そこの監視をしっかりしていただきたい。

 また、政府においては、公正取引を実現できるルール作りとして、やはり、そういった声を常に発信をする、そういった機運の醸成を引き続きお願いしたいというふうに思っております。

 以上でございます。

早稲田委員 大企業と中小企業が共存共栄だということで、また、公正取引に関しても、政府としても実効的な取組をもっともっと前に進めていかなければならないと思っております。

 それでは、次の質問でございますが、今回、目玉法案であります、子育て支援金も含みます子ども・子育て支援法、これが提出をされました。そして、その中でございますけれども、私たちはこの子育て支援金について、かなり問題点、懸念点があると思っております。

 先般、私が総理に質問した際の参考にさせていただきました、日本総研の西沢和彦理事の試算を基に質問したわけですけれども、とてもとても政府のおっしゃっているように五百円弱ではないし、またこれも、質問によってどんどん、五百円超、それから千円超というところまで平均でなるのではないかという答弁もございました。

 しかしながら、この西沢理事の、この後、午後も公述人としていらっしゃいますけれども、こちらを見ると、やはり年額で一万円以上、さらには二万円、もっと、世帯でいえば三万、四万となるような、こうしたところもあるのに、なかなかそこを政府が説明をされないものですから、国民の中に理解が深まらない。そして、私は、思いますのは、やはり、国民に負担増をお願いするのなら、それをしっかりと御説明をするというのが筋だろうと思っているわけです。

 一方で、ゼロ歳から十八歳まで百四十六万円の、支援金によって給付の拡充がなされるという予算委員会での御答弁もございましたが、これは、ゼロ歳から十八歳まで、全て平均で、ずっとやって百四十六万円ですから。

 このことに関してはネットでも大変反発も多く、例えば、子育て世帯だったら一か月に一万円のおむつ代ですよ、何を考えているの、百四十六万円ってと。これは十八歳までですから。ずっとの話ですから。

 そういうことも含めて、いかにも拠出額は少ないけれども支援はたくさんになるんだというようなイメージだけを先行させて説明するのは非常にまやかしではないかと。私、この百四十六万円の根拠も求めましたけれども、今日現在まで出ておりません。そうしたことも含めて、もっと、国民の方に負担増をお願いするのであれば、しっかりとした説明が必要です。

 その点について、清水公述人、そしてまた、先ほども末冨先生からは、手取り額が減ると少子化が進むというお話もございました。そうした観点から、この子育て支援金について、懸念点についてお二方から御教示いただきたいと思います。お願いします。

清水公述人 ありがとうございます。

 私の方からは、やはり幾つか懸念点はございますけれども、そもそも、給付を受ける対象とならない人からも、全体も、徴収しなきゃいけないという給付と負担の在り方について、極めて不明確だということで、誰がどれぐらい何に使われるお金を負担するのかということが、おっしゃったところ、よく分からないということがございます。

 また、医療保険料と併せて徴収するということで、そもそも、徴収できない、対象外になっている方が生ずる。国民全体という話でいうと、本当にどれだけの人が負担になっているのかということも明確でないということがございます。

 また、現役世代の負担というのは、先ほどからずっと出ていることでございます。

 あわせて、賃上げの部分にも大きく影響があるかと思います。例えば、JR北海道の昨年のベアは千円でございました。一昨年は五百円でございました。さらに、二年前、コロナのときにはゼロでした。五百円ずつ積み上げて、やっとベアが千円になっている、その五百円、千円を取るのかというのが、私たち労働者の立場からいうと、この制度について、子育ては大事ですが、やはり全体を通じて、税金も含めて、税収としてどこから取るべきなのかというのは十分御議論いただきたいということでございます。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、先ほどの受益が百四十六万は、我が家はもっと少ないかなと思って私も聞いてしまいましたが、やはり、恐らく、世代別、世帯構成別、お子さんの年齢別に、こういう受益がありますよというのを見える化していただくということが、納得のいくこども金庫制度の確立にとっては大事かと思います。

 その際に、重要な財源と見込まれる支援金でございますけれども、課題はやはり、政府がおっしゃった条件が全ての若い世代に対して実現するかどうかというところが一番のポイントかと思います。

 個人的には、今、勤務先が私学助成停止中ということでございまして、令和八年度、賃上げが達成されているといいなと思いながら今日登壇しておりますけれども、やはり、そのように、働く人の条件によって、本当に手取りが増える方式になるかどうかというところが皆さんが御心配のところだと思いますので、その点についてしっかりと、大丈夫だ、安心だという設計にしていただきたいなというふうに願っております。

 御質問、大変ありがとうございます。

早稲田委員 ありがとうございます。

 今、JRのベースアップのお話、やっと千円なんだということも伺いました。その中で、まあワンコインだからいいでしょうみたいな、そういう説明であっては本当に理解が得られないと思っております。

 そして、清水公述人、今お話の中で、賃上げに水を差すことになりはしないかと。それからまた、保険料ということで増やすと、事業主負担もあって、そうなりますと、適用逃れのために非正規雇用労働者を増やすことにつながるのではないかと私も思っております。結果として、今回、結婚や出産を選択できない層がより一層増えてしまうのではないか、逆に言えば、少子化対策としては逆にブレーキになってしまってはいけないと、非常にこの制度を見ていて思うわけです。

 今回も、出生数は七十五万人、それから婚姻数は何と九十年ぶりに五十万組を割ったということでありまして、これの一番の大きな要因が経済的理由でありますから、そこを見ましても、大変これは少子化対策のブレーキになってしまうのではないかと懸念をするところですが、清水公述人に伺いたいと思います。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 先生のおっしゃるとおり、賃上げにやはり水を差すということ、そういう可能性については御指摘のとおりかというふうに思います。様々企業が今交渉の最中でございますが、もちろん、ベースアップ、それから定期昇給以外にも、社会保険料の部分を企業が肩代わりするであるとか、様々な今案を出している。そういったところに水を差すということになりかねないということは一点ございます。

 また、短時間の勤務の方は、勤め先によって社会保険料の適用、非適用があったりとか、そういったことがございます。いまだ適用対象外となっている労働者からすれば、やはり不合理なところもありますし、社会的公正を欠くということもあるかと思います。

 いわゆる企業規模間、あるいは、そういった適用業種の見直しとか、全般的なことを全てやった上でないと、ここを財源にすることは非常に厳しいのではないのかということで、賃上げもそうですけれども、社会保険料の、全体のことからも懸念がたくさんございますということでございます。

早稲田委員 ただいまも社会保険料からということの懸念点を示していただきましたが、さらに、特に、現役世代、そして子育て世帯を支援するためのものなのに、逆に事実上の負担増になる、子育て増税になるのではないかと非常に私たち立憲民主党は懸念をしておりますが、その点について、最後、もう一度お聞かせください。

清水公述人 ありがとうございます。

 今御指摘があったとおりで、現役世代にとっては負担になるということは先ほど末冨さんからもございましたが、このことが私たちの将来にプラスになっていくんだということが見えれば負担増についても応じていくことはできると思うんですが、そこが見えない中で負担増になっていくことが非常に不安になっているということでございます。

 賃金が上がるかどうかというのも、先ほど申し上げたように、平均値とすれば上がっておりますけれども、現役が今会社を選ぶときに、やはり初任給が高いところとかそういったところを一生懸命探しながらこれから就職していく。そういった若い人たちがやはり先が見えるような形でのということが、たくさん声としては組合の方にも上がっております。

 是非、そういった意味では、若い世代の負担にならない形、政府の方からの説明も含めて、十分に分かるようにお願いしたいというふうに思っております。

早稲田委員 ありがとうございます。子育て支援金についても、また、社会保険料の制度についても御示唆をいただきました。

 それでは、最後でございますが、清水公述人に。

 男女共同参画の推進でございますが、女性議員の割合が、何と参政権から七十八年たっても衆議院では一〇%を切ってしまうという大変残念な結果の現状にあります。

 その中で、連合さんの方では、初の女性会長である芳野会長を筆頭にこの男女共同参画に取り組んでおられると思いますが、上場企業の女性役員比率を三〇年までに三割以上とする政府の目標がありますけれども、これに対して最も必要な取組というのを、政府それから経済界、労働界でどのようにお考えでしょうか、お願いいたします。

清水公述人 ありがとうございます。

 まず、女性参画で一言、二〇三〇・五〇という言葉を是非この場で皆さん方にもお伝えをしたいと思います。二〇三〇年にはいわゆる意思決定機関に五〇%の女性をというのが、もう世界の潮流だということでございます。

 今、三〇%というお話がございましたが、労働界も含めてですけれども、いわゆる上場企業の女性役員の比率については、少しずつ向上はしてきていますが、残念ながら、やはり外部役員を置くことによって、そこに頼っていることが多うございます。ですから、まずはやはり、内部から登用できる、そういった形を推進すべきというふうに考えています。各企業がそういった形での役員の登用をお願いしたいと思っています。

 そして、いわゆるプライム上場企業だけじゃなくて、地方や中小企業を含めた女性役員の育成、登用に積極的な対策を取っている、そういったところに経済的なインセンティブを与えるであるとか、あるいは女性役員の比率の公表義務を課すであるとか、そういった形、そういった思い切ったことを是非お願いしたいというふうに思っております。

早稲田委員 これで終わりますが、連合の芳野会長のお取組、大変評価をさせていただくところでございます。

 これで質問を終わりますが、全員の方に御質問できなかったことをおわび申し上げまして、四人の公述人の皆様の御指摘、御示唆に感謝を申し上げます。ありがとうございました。

小野寺委員長 次に、守島正君。

守島委員 日本維新の会の守島です。公述人の皆さん、本日はありがとうございます。

 それでは、早速お尋ねさせていただきます。

 まず、熊谷公述人にお尋ねいたします。

 昨今の株価などを見ると、本当に経済好調に映っているんですけれども、実質GDPに関しては、直近二四半期は連続のマイナスというふうに結果が出ていまして、今まさにインフレ下にあるんじゃないかと言っても過言じゃないというふうに思っております。

 もちろん、これまでの世界的なエネルギー高騰はしかりなんですけれども、昨年の消費者物価指数を見ると、コアコアCPIが四%程度で最も高かったということを考えたら、これはある種、政府の政策が、目標以上にインフレの後押しをしてきたんじゃないかなというふうにも見えるんですけれども、実際、今の政府の予算が、インフレを超える賃金上昇を実現させて実質賃金を上げていくことを十分可能という認識でよろしいのでしょうか。もし、その認識じゃないとすれば、足らずがあるとすれば、加えるべき政策というのを御教授いただけましたら幸いです。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 実質賃金に関しては、私の資料の後ろの方にちょっと図表がありますので、四十八ページ、恐縮でございます、お開きいただきたいと思います。

 四十八ページの部分で、まず左のグラフでございますけれども、今般の子育て支援型の所得税減税が、可処分所得ベースで見ると大体一%分ぐらい底上げをする、計算根拠は右のところにございますが、そういう意味でいえば、かなりそこののり代の部分が出てくるということがあります。

 もう一つ、四十九ページでございますけれども、ちょっと細かい図表でございますが、左上の図表で、緑色が名目賃金、オレンジ色がCPI、そして下の緑色がこの二つを差引きした実質賃金ということでございますけれども、右側のところに書いてあるように、過去の事例を見ますと、物価が伸びているときに賃金がそれを追い抜いて実質賃金が上がるということはないわけであって、物価がピークアウトしてからしばらくすると賃金が追いついて、実質賃金が上がってくると。

 具体的に申し上げると、右上のところにございますが、恐らく物価が二二年末がピークということだと思いますので、そこから経験則で見れば五四半期から十四半期ぐらいすると実質賃金がプラスになるということですので、その意味では、平均的な姿ということでいえば、七―九月期ぐらいにもプラスになるということがあり得るのではないか。

 他方で、日本経済の構造的なところで申し上げれば、五十ページの部分でございます、これは、過去十年余りで、日本の実質賃金がやはり諸外国と比べて低迷をしていると。

 なぜ低迷しているかというのが、右の赤で囲んでございますけれども、一つは、化石燃料等に輸入等があって、それで交易条件が悪化をして、海外に富が流出したりだとか、若しくは売値に転嫁できないという問題がありました。

 もう一つ大きいのが、やはり日本は労働生産性が低迷しているということであって、労働生産性の低迷は複合的な要因がございますけれども、例えば、一つやはり大きいのは、人材投資、無形資産投資が、日本はもうとにかく諸外国と比べて圧倒的に足りなかった。今それを岸田政権は強化をしようとしている。二点目として、成長分野がなかなか特定できずに、売上げだとか、そこの部分が伸びなかったわけでございますけれども、今、例えばクリーンエネルギーの推進、グリーン化だとか、デジタル化等々によって、ある程度予見可能性を持たせる形で成長分野を特定をしている。

 その他、ダイバーシティーの問題、そしてデジタル化の遅れの問題、それからコーポレートガバナンスの問題等々、いろいろございますが、今回の予算の課題については、冒頭越智先生からの御質問のところでお答えをしましたので、基本枠は評価をしながらも、まだ幾つかの課題が残されている、こういう認識でございます。

 ありがとうございました。

守島委員 ありがとうございます。

 物価はピークアウトをするという予測の下で、あと生産性を上げていくという必要性があるということで。

 公述人は、政府の予算に賛成の立場ということで、GX投資とか、見通しが立つ経済対策があるという認識だと思うんですが、加えて、先ほど財政規律に関しても公述人は話をしていて、プライマリーバランスにも言及されていたんですが、政府支出を見ると、予備費の積立てというのを除けば、現在、支出は結構高止まりしているかなというふうに思っています。昨年も、二〇二五年度のプライマリーバランスの数字を引き下げた、赤字の予想額を、赤字額を上げたというふうに認識しているんですけれども、今の政府方針でいくと、ずるずる、財政規律というか、健全化の方向性から遠のいていくんじゃないかなというふうには想像しています。

 実際に、財務省も今回の予算で国債の利払い費の想定金利を十七年ぶりに引き上げたというふうに言っているんですが、やはり財政健全化と両立していかないと、結局、予算繰りが苦しくなって、財源がない、国民に負担を転嫁するという話になって、経済指標が今言うように政府投資で上がっていったとしても、結局、国民の可処分所得というのは上がらなくて、負担感というのは大きいままかなというふうに思っています。

 実際、公述人の、今、日本の債務残高であったり財政状況というところに対する認識を教えていただきたいのと、かつ、財政健全化に関しては、先ほど来必要だとおっしゃっていましたが、歳出改革を賛同すると言っていたものの、更なる財政規律を担保していくための策というものがあれば教えていただきたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございました。

 私自身は、今政府の予算は何とかサステーナブルな形でという努力を続けておりますが、やはり巨額の債務残高がある中で、より一層財政規律を強化することが必要なのではないかと考えます。

 そもそも、経済政策だとか予算というのには二つの要素があって、一つは、今生きている国民の暮らしだとか生活を守る、これは大事なことでございますが、他方で、やはり将来世代に向けて持続可能な日本をつくるということで、ここはある種のやはり変革ですとか一部の痛みを伴うわけでございますので、今、どちらかといえば、前者の現状維持バイアスが少し強いところがあって、後者の部分の改革に向けたモメンタムと、前者と後者をやはりバランスよくやっていくということが必要なのではないか、このように考えるところであります。

 私の資料で、七十三ページ、七十四ページのところで、ちょっと財政のシミュレーションのようなものが。結論だけ簡単に申し上げると、今までは日本銀行がかなり、金利のない世界で潤沢に国債を買っていたわけでございますけれども、これからグローバルに、やはり日本銀行の政策もグローバルな観点からある程度正常化に向かうということを考えれば、財政政策もしっかりと規律を守っていかないと破産をしてしまう、そういうところがあろうかと思います。

 その意味では、経済対策についても、量、規模ありきではなくて、質だとか中身の部分を重視をする。経済対策だけで経済を支えるのではなく、やはり企業ですとか個人の活力を引き出して、民需主導の自律的な経済成長、これを達成しなくてはいけない。その意味では、やはり財政だけではなくて、財政と規制・制度改革などを車の両輪として、なるべくであればやはり赤字を抑える形で経済政策を打っていかないといけないのではないか。

 その他、例えば、財政の規律を回復するための方策ということでいえば、独立財政機関をつくる、そういうような議論も私の所属している経済同友会などでも出ておりますし、やはり基本はEBPMをしっかり回して、ファクトに基づいてちゃんと検証した上で、やはりめり張りづけをして、大事なところは手厚くつけて、他方でやはり無駄のあるところは徹底して削っていくということ、これが肝要になるのではないかと思います。

 ありがとうございました。

守島委員 ありがとうございました。

 続いて、清水公述人にお伺いしたいと思います。

 今、国を挙げて賃上げを目指していて、実際に、先ほど来あるように、春闘ではインフレ率より高い賃上げを実現できる団体もあるというふうに聞いていますが、とはいえ、どちらかというと組合を有しないような企業、団体の従業員というところの賃上げにつながるかどうかというのが今論点になっていると思っています。

 そういう点では、最賃の引上げということも重要であって同意はするんですけれども、私も中小企業の経営に今でも関与していることもありまして、やはり身近な経営者と話すと最賃自体が雇用のネックになっているという声も聞くんですね。今は、ある種、人手不足なので、労働市場に関しては需要の方が多いので、採用に関して賃金を上げないと人が来ないということもあって、市場における賃金アップも一定見られていて、これは一定健全な賃上げじゃないかなというふうに思っていて、やはり、市場と最賃のバランスというのが大事だというふうに思っています。

 では最低をどこにするのかというと、今日の公述人でも全国一律にするのかという見解に関しては多分分かれていると思いますし、例えば、シルバー人材センターなんかは請負契約とか委託契約でやっているので最賃以下で実際契約されているというような状況もあって、どの分岐点で、労務単価で人を雇用するかというのは本当に経営者次第で全然考え方が変わるかなというふうに思っています。

 そうした実態も踏まえて、最賃を上げること自体に関しては同意するんですが、そこにフレキシブルというか柔軟性を持たせることに関する見解を連合としてお持ちでしたら教えてください。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 最賃については、全国加重平均で都道府県は今千円を超えたところでございますけれども、やはり政府の方も、二〇三〇年代半ばまでに千五百円という目標を総理もおっしゃっておりますけれども、若干それは低いかな、もう少しペースを上げていくことが必要なのではないかと思います。

 日本の最低賃金は、やはり国際的に見ても低いという状況です。EUなどの状況を踏まえると、やはり一般労働者の賃金の中央値の六割ぐらいが相当ではないかというふうに連合としては考えております。

 現在は地域別最低賃金の最高額と最低額の二百二十円の差がありますから、これが働き手の流出、地域からの流出の一因にもなっていますので、全体として、まずは、どこでも千円を確認した後、その後、日本は現在、中央値からいうと、最低賃金は四七・八%の辺りにあります。先ほど言いましたように、六〇%に上げるためには、経済、物価、雇用等の情勢を見ながら、毎年一ポイントずつ上げていって、二〇三五年あたりには千六百円から千九百円、このぐらいに上げていくのが、今言った中小企業の方も含めて、日本の全体を上げていくのにはいいペースかな、連合としてはそんなふうに考えております。

守島委員 ありがとうございます。

 もうすぐ時間が来ますので、もう質問はほぼできないと思うんですが、末冨先生、今日は、子供政策であったり投資に対する熱い思いを聞かせていただいてありがたいというか感銘を受けているんですけれども。私、三か月前に第二子が生まれまして……(拍手)ありがとうございます、予算委員としてここまでずっと平日は拘束されているので、先ほど先生が、女性に負担が偏っているという話を受けて、もう今ぐさっと胸に刺さっている次第で、本当に……(発言する者あり)はい、ありがとうございます。うちの会社も、まだ育休がしっかり取れていないかもしれないですけれども、子育て政策に尽力したいと思います。

 最後に、維新の会としては教育無償化を掲げていて、特に、先生のアンケートでも大学無償化に関しては賛否があるし、大学も多過ぎるというふうに思っていますので、それを実現するために見解があれば、もう時間なので簡単にでいいので、お答えください。

小野寺委員長 もう既に時間が過ぎております。

守島委員 では、質問は終わりますので。子育て政策、頑張っていきますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。また個別でお願いします。

小野寺委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 今日は、四人の公述人の皆様、貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 まず最初に、四人の公述人の皆様に御意見をお伺いしたいというふうに思います。

 この国会では、パーティー券の裏金収入の事件が大問題となっております。物価の高騰で国民、住民の皆さんの暮らしが大変になっている中で、自民党の議員が裏金をつくって許せないという声が広がっております。

 パーティー券収入裏金問題についてどうお考えかという点、そしてまた、金権腐敗の政治を終わらせるためにはパーティー券を含んだ企業・団体献金の禁止が必要だと考えますけれども、こういう点について四人の公述人の皆様に御意見を伺いたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 一般論として言えば、やはり国民の方々から理解をいただくために透明性を高めていくということは極めて重要なことだと考えるところでございますけれども、ただ、私自身は、必ずしも政治が専門ではなくて、そういった資金の問題等について明確な知見を持ち合わせておりませんので、一般論として透明性を高めることは重要だということだけを申し上げて、具体的なお話についてはお話をちょっと控えさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

清水公述人 いわゆる政治と金の問題について、国民が納税に行って多く不満の声があるという報道等もございますので、これについて国会でしっかりと議論される、また政倫審という場も含めてやっていただくことが大事だろうというふうに思っております。

 連合としては、いわゆる昭和の時代に政治資金の問題があったときに、政策、制度というところで一定程度、政治資金については記述をしているところでございます。やはり、透明性をしっかりとすることであったり、収支報告書については議員の方が署名することだとか、会計責任者だけじゃなくて議員の方が署名するべきだとか、そういったことについてまとめたところはございます。

 企業献金、パーティー券等については、その段階では、特段禁止するというような状況に今なっておりません。今、国民の皆さん方の議論の様子を見ながら、連合としても考えてまいりたいと思います。

 以上でございます。

末冨公述人 まず、やはり国民の信頼に応える政治であってほしいというのは、私も多くの方々と同じ思いをしております。その上で、特に献金問題等につきましても透明性を高めていくということが重要かと思います。

 パーティー券も、今五万円以上で情報開示ということですが、私も実は、子供たち、若者たちに御尽力くださっている議員の方々は、個人的にパーティー等に参りまして、しっかりと応援しております。だけれども、子育て中でやはり税、教育費負担が重いときには、一万円分ぐらいしか買えません。是非、どのパーティー券も、五万円などと線を区切らずに、どの人がしっかり応援しているということも含めて公表していただきたいなと思います。

 今どきの言い方で言うと、推し活だと思っています。そのときに、五万円払わないと自分が応援していることが分からないのかというのは、少し残念な気がいたします。どの人も……(発言する者あり)あっ、二十万円ですか、相当それは払わなきゃいけませんね。ではなくて、どの国民も安心して応援できるように、きちんと全額、どの人が買ったのかということを公開していただきたい。私が買える値段でいうと一万円からでございますけれども、そのように、少し情報開示の範囲というものも考え直していただけると、多くの国民が、じゃ応援しようかという政治になる可能性もございます。

 以上でございます。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたけれども、今国民の中でこれだけ不信が広がっているこの裏金問題については、真相の徹底解明が必要だというふうに思っているところです。

 政治資金パーティーって何だろうというふうに思っていた、パーティーというから、何かおいしいものをたくさん食べて、すてきな音楽を聞くのかなとか、いろいろと普通の国民の皆さんは思っていらっしゃったと思うんですけれども、それは何か形を変えた企業・団体献金だったんだということが今回のこの事件の中で誰の目にも明らかになったというふうに思うんですね。

 ですから、企業・団体献金の禁止というところまで、しっかりと真相の徹底解明の中から持っていっていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

本村委員 貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 続きまして、また小畑公述人にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、二〇二四年度の予算案は、先ほども小畑公述人がおっしゃったように、大軍拡の予算になっているということを指摘しなければいけないと思っております。

 敵基地攻撃能力の保有を始め、五年間で四十三兆円という大軍拡の計画の下で、過去最大の八兆円に迫る軍事費を計上しております。軍拡最優先の予算になっております。そういう中で、医療や年金に充てられる資金ですとか雇用保険の資金、これが軍拡財源にされ、教育予算というのも抑制をされ、暮らしが脅かされるということになってくるというふうに思います。

 このことに関して、小畑公述人に是非御意見を伺いたいと思います。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 先ほども少し申し上げましたが、今私たちが本当に不安に思っていることは、賃金がこれだけ低い中で、社会保障が充実していないということから、先の人生まで考えたときに安心して暮らしていけないという、その二つの面での不安を私たちの働く仲間は抱えているというふうに思っています。

 そういうところから、今日は賃上げの問題を強調してお話をさせていただいてきたところなんですけれども、今議員からお話があったように、この大軍拡予算の中で、医療や年金、それから教育に関わる予算、私は教員の出身ですので、文部科学行政に関わる予算よりも防衛予算の方が大きくなっているという中で、先ほどもお話がありましたが、本当にやってほしい教育の無償化ですとか少人数学級の実現とか、そういうことが後回しになっているということに対しては、多くの私たちの組合員からも意見をいただいているところですので、先ほども申し上げましたけれども、税金の使い方を変えていくということを是非この二〇二四年度予算の中でもやっていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 先ほども少し御議論がありましたけれども、全国一律最低賃金制度を今すぐ千五百円に引き上げるべきだと私どもは考えております。しかし、岸田総理は、千五百円は二〇三〇年代半ばなんだという目標を言っていますけれども、このことに関し、小畑公述人、末冨公述人、清水公述人に是非お願いしたいと思います。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 それも先ほど申し上げたとおりですけれども、私どもの最低生計費試算調査によっても、全国どこに住んでいても、時間額に割り返すと千五百円から千六百円が必要だということが既に調査で分かっているんですね。

 しかし、この調査は物価高騰が訪れる前の調査がほとんどですので、今、物価高騰になってからの調査と、それから、前に行った調査にこの物価高騰の分を補正をかけてみたらどれくらい必要かというのを計算をしておりまして、それは研究者の皆さんにも御協力いただいて出しているものなんですけれども、その結果では、千七百円以上が必要だ、そういう結果まで出ています。

 そうしたことを踏まえれば、岸田首相が千五百円ということを口にしたことはすごく大きな意味があるというふうに思うんですけれども、二〇三〇年代に千五百円というのでは、とても今、今生活が大変になっている労働者の生活を支えるということにはなりませんので、私どもとしては、今すぐ千五百円、そして目指せ千七百円ということで私たちも取り組んでおりますし、是非そういう政策を国としても進めていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

末冨公述人 まず、賃金水準ですとかあるいは生計費保障の在り方については、私も今まさに研究上の大変重要な課題だと思って取り組んでおります。

 とりわけ子供の問題について言うと、とにかく子供を育てることにお金がかかるということ、あわせまして、小畑参考人が引用されております静岡県立大の中沢先生の研究は私も参照しているんですが、中央、地方の格差、都市、地方の生計費格差というのは実は余りないということが分かっています。

 そうした際に、地域によって最低賃金が違っていいのかと言われれば、特に、お金がかかる子育て世帯あるいは奨学金返済をしながら働いている若者たちのことを考えると、それは改善された方がいいのではないかというふうにも思っております。

 ただ、働くことだけで生計を賄うのではなく、ケアの時間、特に、子育てしている母親が、ダブルワーク、トリプルワーク、それはシングルファーザーの場合も同じです、しながら、子供と関わる時間もない、実質上のネグレクトを生じさせてしまうような働き方や賃金というのは改めていただきたい。ディーセントワーク、子供のケアの時間は確保しながら働いて社会に貢献することもできる、この両立の道を是非とも実現いただきたく存じます。

 御質問ありがとうございます。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 先ほど少し申し上げたとおりでございますが、千円を平均値が超えたとはいえ、全国で超えたのはまだ八つぐらいでございますので、全ての都道府県でまずは千円、ここがスタートだろうというふうに思っています。

 現在二百二十円の差がありますから、その地域差を縮めていくことは非常に大事なことであります。経済や物価の状況に応じて同じように上げていくことが大事でありますが、雇用に関しては、先ほどの質問もありましたように、雇用の状況は地域によっても違いますので、それを加味した上で、現在の中央最賃と地域別最賃、それぞれが政労使、三者構成でこれもやっておりますので、そこでの議論を充実させながら、地域がしっかり上がっていくような中央での議論をしていきたいというふうに連合としては考えております。

本村委員 ありがとうございます。

 人手不足と賃上げのお話もございました。人手不足が顕著なのが医療、介護、保育、障害福祉、学童保育なわけですけれども、政府のケア労働者の賃上げは物価高騰に追いついておりません。訪問介護の基本報酬の引下げさえやろうとしております。

 こうした問題について御意見を是非お伺いをしたいというふうに思います。小畑公述人、末冨公述人、清水公述人、お願いしたいと思います。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 資料にも出させていただいたとおり、現在でも、こうした看護師、保育士、それから介護の職員の皆さん、福祉関係で働いている皆さんの賃金は、全労働者の平均賃金よりも更に低い賃金に抑えられています。その上に今長時間労働や夜勤があるということで、非常に人手不足が大きな問題になっております。その中で、この賃金の改善それから処遇の改善というのは喫緊の課題であるというふうに考えておりまして、今日の公述の中でもそのことについては強調させていただいたところです。

 診療報酬の改定に当たっては、賃上げ分を明示したということについては、私たちも、今回の春闘の中で、その分はまず賃上げとして必ず認めさせていこうということを取り上げていますので、そういう出し方をしたこと自体は悪いことではなかったというふうに思うんですけれども、しかし、それが全然追いついていない、また、今議員からお話があったように、訪問介護されている部分についてはかえって下がってしまうというような、そこについては正面からきちんとまた議論もしていただいて、本当に賃上げにつながるような改定をしていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 私からは、イギリスの教育財政の経験を共有させていただきたいと思います。

 こども金庫がリングフェンスト、使途限定の予算であるということを私は大変高く評価しておりますけれども、イギリスでは、教育特定予算をつくりまして、その中で、設置主体を問わず、今学校に教育投資をしているんですね。

 その際に、イギリスでは元々教員の給与が大変低く、今も慢性的な教員不足です、ただし、賃上げをしていくんだということで、やはり労使の協定の中で、この経験年数の方にはこの賃金を標準的に保障しなければならないというルールを作り上げてこられました。とりわけ、この経験というのは、今の保育業界にとって示唆的でありましょうし、介護労働の世界においても示唆的であろうというふうに存じます。

 以上です。

小野寺委員長 清水公述人、恐縮ですが、予定の時間が過ぎております。端的にお答えをお願いいたします。

清水公述人 訪問介護は、要介護者の尊厳を守る、在宅生活を支えるために重要ということでございます。働く世代にとって、介護離職のない社会にするためには欠かせないサービスだと思っています。基本報酬が引き下げられることで人材不足に拍車がかかることがないように注視をしていくことが必要だというふうに考えております。

 以上でございます。

本村委員 本当に貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 これで終わります。

小野寺委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。本日はお疲れさまです。

 少しアバウトなお尋ねをいたしますので、お許しをいただきたいと思います。

 昨年十二月に日銀が発表した二〇二三年の七―八月期の資金循環統計によれば、二三年の九月末の個人金融資産が二千百二十一兆円、このうち現預金が前年同月比で一・二%増の千百十三兆円、株式等が前年同月比三〇・四%増の二百七十三兆円、投資信託が前年同月比一七・四%増の百一兆円というふうになっているんですね。個人金融資産全体に占める現預金の構成比率が五二・五%。やはり日本人というのは、どちらかというとお金で持ちたいんですかね。

 今年の一月から新NISAがスタートして、二月二十八日現在の、昨日の株価ですけれども、三万九千百円を超えて、先ほども議題になったんですけれども、これも公述人から御説明いただいたように、知り合いの金融関係の人に、こんなに何で株価が上がっちゃったのと聞いたら、外国人と個人投資家で新NISAに移行する人が増えて、その人たちが買っているんじゃないかと。

 これは何を示しているのかといったときに、持つ者と持たざる者がどんどん格差が開いていく時代になっちゃっているんじゃないかということなんですね。

 今日の議論をお聞きしていても、やはり、持つ者はどんどん持っていけばいいんですけれども、持ちようがない、元々の原資を持っていない人たちをどうサポートしていくのかということなんだと思います。

 これも熊谷公述人は、いや、そんなことないよというふうにおっしゃると思うんですけれども、六十五歳以上の高齢者の人が、将来不安で、子供に迷惑をかけたくないから、ためたお金は使わないというんですね。それを見ている若者も、将来年金がもらえないかもしれない、要するに、もらえる額では生活水準を落とさざるを得ないので、だから使わない、だから、車も持たないし、旅行も行かないし、せっせと預金をする、こういうこと。裏返して言えば、まだまだやはり将来不安が払拭されていないんじゃないかというふうに読み取れると思うんです。

 不安を払拭するために今何をすればいいのか、今回の予算の中にそれが組み込まれているというふうにお感じになるか、お尋ねしたいと思います。四人の公述人の方で。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 今回、目玉として少子化対策が打たれたわけでございますけれども、私どもは、どれぐらい出生率を上げる効果があるかというのを、これを試算をしてみると、おおむね〇・三六ぐらい今回の対策によって出生率が上がるのではないか、こういう計算をしております。

 若干細かいことを申し上げると、かなりきめ細かく対応が打たれているということがございまして、今どういった方の出生率が下がっているかというと、実は、被保険者の方、すなわち、御自分で働いているような女性の出生率は上がってきていて、これは両立支援がある等でうまくいっているわけですが、被扶養者の方の、ここの出生率が下がっております。ですから、これに対して、例えばこども誰でも通園制度を、ピンポイントでそこを整備するような形で、私自身はかなりきめ細かい対応が打たれているのではないかと考えます。

 今後については、やはり全世代型の社会保障改革のところを、これをしっかりとやって将来不安をなくすということも重要だと思いますし、加えて、株が上がってもなかなか国民にはメリットがない、こういう議論がございますけれども、ただ、実際、GPIFが年金を運用しておるわけでございまして、これは例えば、二〇一四年から運用改革を行って、これは私もメンバーでございましたが、そこからの累積収益でいえば九十一兆円プラスになっている、そのうち日本株は三十三兆円プラスになっているということでございますので、そういった年金からくるプラスもあるということです。

 また、一億総株主という言葉が、松下幸之助翁がおっしゃったことですが、国民が広く薄く株を持って、やはりその成長の果実を資産所得のところから得ることができるような、そういう仕組みも含めて、これからまだ様々な対応が必要ではないかと考えるところでございます。

 ありがとうございました。

清水公述人 先ほど、新NISAのお話がございました。大変、そこにかけるお金があるというのは非常に羨ましいなというふうに私は思っております。私自身は、三人の子供を育てて今六十四でございますが、九十三のおやじと、施設に入っている九十のおふくろ、そこと過ごしていくのに、そういったのに回せるお金はないということで、労働金庫に、おつき合いで、最初のNISAにちょっと入っているというぐらいでございます。

 国民自らが安定的な資産形成に取り組むことは否定をいたしません。ただ、貯蓄に回す十分なお金がないというのが現実だと思います。

 また、少し前に、老後二千万必要だという話があって、皆さん、あれから貯蓄に走るようになってしまったのかなというふうに思っています。

 若年層や非正規雇用で働く方々のお声を聞くと、資産形成のやはり入口は貯蓄だということになっています。なかなか、貯蓄でも、それをリスクのあるものには回せないということで、どんどんどんどんお財布にたまっていってしまっているという状況なんだろうと思います。

 やはり今必要なのは、そういったことに回せるような、賃上げを含めて、可処分所得が増えることが、私たちは、そういった資産形成や老後の不安にも、あるいは日々の生活にもお金を回していけるということにつながるのではないかと思うので、是非、可処分所得が上がるような政策を引き続き実行していただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

末冨公述人 私からは、格差対策について申し上げたいと思います。

 特に、安心、どうなったら不安を取り除けるかといったときに、やはり一番不安なのは貯蓄がない方たちです。更に言うと、子供を育てておられる方たちの貯蓄率というのは、貯蓄がない世帯に注目しますと、この間ずっと横ばいで来ているんですね。すなわち、常に子育て世帯の一定数は貯蓄がない中でぎりぎりの生活をしています。その状態を政府の支援によって改善できることというのが最も重要な政策かと思っております。

 またイギリスの話を持ち出して恐縮ですけれども、イギリスでは、ブレア政権のときに、いっとき、シュアスタートという、特に貧困や移民層の困難な子供たちのために、あなたたちは十八歳までにこれだけのお金を使っていいよ、それは自分の学びのために使ってくださいというふうに子供たち一人一人を応援する、特に低所得層に手厚い投資の仕組みをつくられました。

 イギリスでは保護者の教育熱の格差もすごかったために余りうまくいかなかったわけですけれども、日本では保護者が子供たちによりよく育ってほしいという願いが大変強くございます。

 そうした意味でも、何らかの形で、低所得世帯、困難な世帯に対しての支援を増やす、手取りを増やすことも大事ですし、子供たちの教育のために使えるそうしたバウチャー制度のようなものを国家として導入していただいて、これなら我が子もなりたいものになれるんだという夢を与えて、親子で一緒に成長していける、それが安心の基盤となるというふうに考えております。

 以上です。

小畑公述人 御質問ありがとうございます。

 私どもの青年部がアンケートを取りまして、幾らぐらい賃上げが必要かというのを聞いたところ、六万円以上のところに大きな山ができていたんですね。それで、それくらい賃金が今低過ぎるということだと思うんですけれども、じゃ、もし賃上げが実現したら、そのお金は何に使いたいですかという質問に対しては、半数以上の青年が、貯蓄をしたいと答えているんですよ。

 だから、つまり、賃金が低過ぎて貯蓄ができない、でも、貯蓄がないと本当に今の生活も不安だし先の生活もずっと不安という、そういう不安を若者が抱えているということをそれは示していると思うんですね。先ほどの議員の質問のとおり、この不安を払拭していくのが政治の責任だというふうに考えております。

 そのためには、一つは、今日申し上げたような政府としてできる賃上げ策というのを是非緊急にやっていただきたいということが一つありますし、それからもう一つは、先のことと考えたときには、自分がこれから歩んでいく道を考えて、子育てのとき、結婚したとき、そして老後になったときというときの社会保障や教育を支える制度などを充実させていくということが非常に必要なんじゃないかなということを思っております。

 以上です。

鈴木(義)委員 じゃ、もう時間がないので、併せてお尋ねしたいと思います。

 まず一点目は、今回、子供保険なるものが組み込まれたんですけれども……

小野寺委員長 どなたに質問ですか。

鈴木(義)委員 四人の方で。

小野寺委員長 済みません、多分時間が余りないと思います。

鈴木(義)委員 じゃ、熊谷参考人と、あと末冨公述人にお願いできればと思うんです。

 過去に質問に立たせてもらったときに、子育て支援だとか子供支援をずっといろいろな形でやってきたんですけれども、子供の意見は聞いたことはあるんですかというのを尋ねたことがありました。

 今私たちは、親であったり、まあ私はもうおじいちゃんになるんですけれども、大人の立場でいろいろなことをやろうとしているんだと思うんですね。じゃ、それが本当に子供のためになったのかどうか、ほとんど検証したという話を聞かないんですけれども、それについてどうお考えになるかが一点目。

 それと、もう一つ。よく、憲法で保障されているからというんですけれども、最低限度の生活を送るために必要な水準をどう考えるか。ここが一番キーになってくるし、その時代時代でそこをきちっと議論しないと、幾らにしたらいいのか、幾らサポートしたらいいかということが見えてこないんじゃないかと思うんです。

 そこをお二人のお立場の方で陳述いただければありがたいんですが。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、前者の部分については、ちょっと私の記憶がもしかしたら違っているかもしれませんが、小倉当時の少子化担当大臣等は恐らくお子さんなどともそれなりの意見交換をされていたんじゃないか、そういう認識をしておりますので、恐らくそういったところからの御意見なども反映している部分があるのではないか。

 それから、ナショナルミニマムについては、これはいろいろな議論があろうかとは思いますが、一つの方向性としては、やはりそういうものを一つの軸としながらいろいろな政策を考えていくということも、これも一つの選択肢にはなるのではないかと考えます。

 ありがとうございます。

末冨公述人 まず、子供の声を聞くということについては、こども大綱の策定の過程で、こども家庭庁、こども審議会を挙げてお取り組みいただいております。ただし、評価の部分については今からなんですよね。

 という意味では、まさに本当に私たちが今しようとしている政策が子供、若者、子育て当事者に刺さったかどうかということ自体は、ここから始めなければならないと思っております。

 最低生活につきましては、今の子供たちが人間らしく生きていく、そして社会に参画していくためには高いレベルの教育がある程度必要であるという前提に立って、最低生活保障の在り方を考え直していただく必要があろうかというふうに個人的には考えております。

 以上です。

鈴木(義)委員 どうも今日はありがとうございました。

 終わります。

小野寺委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 最後、よろしくお願いいたします。

 四人の公述人の皆様方、本日も貴重なお話ありがとうございました。

 まず、熊谷参考人にお伺いをいたしたいと思います。アベノミクスでよかったところというのは、どこだというふうに思われますか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 全体的には、日本がある意味でデフレのふちにあった状況だと思いますが、そこで、金融政策を活発化をして、また財政なども一定程度出すことによって、日本はデフレのふちからはもう脱して、先ほど申し上げたように、もうデフレの可能性というのはかなり低下しているような状況ではないかと考えておるわけでございますが、ただ、他方で、三本目の矢の、例えば成長戦略その他のところで言えば、まだ少し課題が残っているということで、そこはこれから更に取り組んでいかなくてはいけないのではないかと考えます。

 ありがとうございます。

緒方委員 金融政策で期待インフレに働きかけるというのは正しいというふうに思われますでしょうか。

 デフレはひとえに貨幣現象という考え方は本当に正しいのかなと思うわけでありまして、アベノミクスというのはプチバブルを起こそうとしたけれども起きなかったというふうに思うんですね。デフレが問題だという診断は正しいと思うんですけれども、処方箋が間違っていたのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 金融政策の効果については、これは多分、程度問題であって、一部の方々は、もう金融政策が全てで、それをやればデフレから脱却できるという議論があり、他方で、極端な方々は、あくまでリアルな問題が直さなきゃいけない問題であって、金融政策は全く効果がないという、恐らく両極端の議論があろうかと思いますが、私は中間的な立場で、金融政策が全く効果がなかったかといえば、先ほど数字をお示ししましたが、ある程度、やはりインフレ率を上げる効果、GDPを上げる効果、また、一時期七十円台の円高であったものを、そこを方向としては円安に転換させる効果等々はあったわけでございます。

 ただ、金融政策が万能かと言われれば、賃金が上がらない理由というのも単なる金融緩和が足りなかっただけではなくて、やはり幾つかのリアルな構造問題があるので、その辺りを含めて言えば、あの時点でああいった金融政策が取られたこと自体は正しかったということだと思いますが、今世界が潮流としてインフレの方向に来て日本のデフレリスクが少なくなる中でいえば、徐々に正常化を緩やかなペースで図るべき局面である、こういう認識でございます。

緒方委員 インフレについてなんですが、政府はデフレ対策と言ってみたりインフレ対策と言ってみたりするんですね。日本銀行総裁は現状をインフレだと言っていました。

 ここからなんですが、何となく、そうはっきり言ったわけじゃないんですけれども、私が聞いていると、要するに、円安によるインフレと需給の逼迫によるインフレを分けて考えているんじゃないかなという気がするんですね、政府が。そうやって、現象としては一つのインフレに対して、それを成分分解して、そして、こちらにはデフレ対策、こちらにはインフレ対策というふうに政策を打っているように見えるんですが、その分析が正しいかどうかはともかくとして、この点、いかがお考えでしょうか、熊谷参考人。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 確かに、おっしゃるように、インフレは供給サイドからくるものと、それから需要サイドからくるものが両方あるわけでございますけれども、私どもを含めて幾つかの分析でいえば、当初は単なる海外の資源高や円安などからくる、供給サイドからくる専ら物価高だったわけでございますが、ここに来て少しずつやはり需要サイドからくるものも出てきて、ですから、結論として言えば、今までは供給サイド一本やりだったものが、これから、やはり少しインフレ圧力が需要の面からも強まることが想定される。

 政府がそれを都合のいいように使い分けているかと言われますと、私自身、事情を細かく承知しているわけではありませんが、決して必ずしもそういうことではなく、政府としてはやるべきことを着実に推進している、こういうことではないかと理解しております。

 ありがとうございます。

緒方委員 昨今、残念なことに、日本のGDPが四位。ドイツに抜かれて、人口が日本の三分の二ぐらいしかない、三分の二ぐらいと言うと失礼ですけれども、三分の二のドイツに抜かれたということは、要するに、一人当たりのGDPが一・五倍彼らがあるということなんですが、アベノミクスというのは、日本国内での円で換算した成長率が限定的に成長することを維持するために、国際的な日本の立ち位置を下げるという効果を持ったのではないかと思いますが、熊谷参考人、いかがお考えでしょうか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 まず、円安が日本にとってプラスかどうかということでいえば、通常のマクロモデルなどで計算をすれば、その度合いは落ちているけれども、円安は日本経済にとってプラスの面がどちらかといえばあるということでございます。ただ、それも程度問題であって、例えば、今、購買力平価と言われるような、日本とアメリカで同じものが買えるとしたらどうだというようなことでいえば、正当化できるのは恐らくはせいぜい百二十円台、三十円台ぐらいのところでございますから、今の円安は、私は、やはり悪い円安になっている可能性というのがあって、そこは円安は止めていく必要というのがあるのではないかと。

 これはなぜかといえば、今物価が上がっている中で、大体一%分ぐらいが、これがその円安によって上がっている部分であって、円安で物価が上がると、そうするとやはり物価高対策をやらなくてはいけなくなって、そこで物価高対策を打って、その出てきた国債を日銀が買って、また円安になっていくというような、そういったある種の悪循環があるということだと思いますので、私は、今の円安はもうやはりそろそろ止めるべき局面に来ているんじゃないか、こういう認識でございます。

 ありがとうございました。

緒方委員 先ほど熊谷公述人の方から、日本の課題として、低生産性分野に投資が偏在をしているということについて言及がございました。それはまさに低金利政策の結果ではないかと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 低金利政策自体が一部でそういったことに寄与しているということは私は否定できないと思うわけでございますが、他方で、低金利による景気の押し上げ効果であったり倒産を防ぐ効果等々があるわけでございますので、結論としては、当初、打たれた段階では黒田総裁の政策は私は正しい政策だったと思いますが、今、ここに来て、徐々にインフレ圧力が強まってくる中でいえば、少しずつやはり金融政策を、三つの弊害ということを申し上げましたが、徐々に正常化を緩やかなペースで図っていくべき局面なんじゃないか、そう考えます。

緒方委員 よく最近、企業収益が上がっているという話をされる方がいるんですが、それは、先般この委員会で当会派の吉良州司議員も指摘したんですが、海外で稼ぎ出した企業収益が円安で連結決算上膨らんでいるだけであって、国民生活への波及が極めて限定的なのではないかという指摘がございました。

 これは、国民生活を犠牲にしながら企業収益が上がるという、少しトレードオフの関係にあるのではないかと思いますが、熊谷参考人、いかがでしょうか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 先ほど申し上げたように、私は今の円安はちょっと行き過ぎで止めるべきだと思っていますが、ただ、円安がプラスかマイナスかということでいえば、辛うじてまだプラスの部分の方があるんじゃないかと思っていて。

 それについて申し上げると、私の資料、ちょっと恐縮ですが、五十九ページ、六十ページの辺りで、五十九ページで、従来の円安は例えばコロナでインバウンドなどが止まって日本経済に明確にマイナスでございましたけれども、今は、昔と比べれば小さくなっているけれども、少しやはりプラスの面というのはあるということ。

 ただ、従来と比べれば、御指摘があったように、例えば輸出が円安で伸びるかと言われると、海外に生産が移転してしまっているわけでございますから、余り、輸出数量の増加だとか、それを受けた生産の増加を、量の増加を伴わない形での動きだということでございますので、そういう意味では、円安の、プラスかマイナスかと言われれば若干プラスだけれども、そこの効果は従来よりも小さくなっている。そして、先ほど申し上げた悪循環の面を含めて言えば、私は、今の円安は止めるべき局面に入っている、こういう認識でございます。

緒方委員 現在、株価が上昇してきています。これも当会派の吉良議員が指摘したんですが、円安になって買いやすくなったので海外投資家が入ってきただけではないかというふうに当会派の吉良議員が指摘をしておりました。

 その分析についてどう思われるかというのと、現下の株価の上昇が国民生活に恩恵として行き渡っていないような気がするんですけれども、これについて、熊谷公述人、いかがお考えでしょうか。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 冒頭の越智委員の御質問のところである程度お答えをしましたが、円安になって外国人が買いやすくなったというのは、これはごく一部であって、根っこでいえば、日本がデフレから今度こそ脱却するという期待感があり、また、中国を避けた資金が日本に入っているということがあり、また、大きいのがNISAの恒久化だとか拡充。これもまだ資金はどちらかというと海外に出ていますが、日本人が徐々に前向きな投資というものを行うということで、こういったマインドセットの変化があるというような期待感が生じている。

 加えて、東証が昨年、もっと資本効率を意識をした経営をやってくれという、これは本当に世界でも例を見ないことでございますが、異例の形でそういう要請を出して、日本はまさに恥の文化でございますから、他社がやると慌てて追随するという、その中で、今雪崩を打ったように各社の経営のスタンスというものが変わってきている。

 国民にメリットがないということに関して言えば、先ほどの御質問の中でGPIFのことを申し上げましたが、その辺りを含めて、これから例えば株価が上がったときに、日本国民が一億総株主のような形でメリットを享受できるような、そういう健全な経済ですとか金融の仕組みをつくることが肝要ではないかと考えます。

 ありがとうございました。

緒方委員 円安が進んでいる理由の一つに内外の金利差があると思うんですね、アメリカの金利と日本の金利。だから、日本が実は金利を上げられない状況にあるのではないかという危惧を持つわけでありまして、結局、累積債務が日本の抱える大きな課題となっていて、そのせいで金利が上げられなくて、諸外国の動向とシンクロすることができないことが今の日本の課題ではないかというふうに思うんですが、熊谷参考人、いかがお考えでしょうか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 日本銀行はまさに独立性があるわけでございますので、財政というのは、これは必ずしも大きなミッションではなくて、やはり物価の安定であり、また金融システムの安定等々が日本銀行のミッションでございますから、その意味では、日本銀行が財政に配慮をして利上げをしないということは、これは私はないと考えます。

 ただ、実際問題として、日本の財政状況はこれだけ悪いわけでございますので、これから金利が出てくる、金利のある世界に入ってくるということを念頭に置けば、やはり財政当局についても、歳出にめり張りをつけて、またPDCAサイクルを回して、本当に必要なところに必要な予算をしっかりつけるような、そういった財政規律の維持が肝要ではないかと考えます。

 ありがとうございます。

緒方委員 終わります。

小野寺委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小野寺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 令和六年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人各位に一言御挨拶申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和六年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算の審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず高久玲音公述人、次に鈴木亘公述人、次に佐藤主光公述人、次に西沢和彦公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、高久公述人にお願いいたします。

高久公述人 御紹介いただきまして、ありがとうございました。一橋大学の高久と申します。

 このような場で意見を述べさせていただき、誠に光栄でございます。

 資料に基づいて説明させていただきます。令和六年度予算についてという資料を御覧ください。

 今般の予算、やはり目玉として注目されておりますのが、子育ての支援金の制度だろうと思います。この後、鈴木先生、西沢先生等から様々な御批判もあることかと思いますけれども、私なりの考えを説明させていただいて、その後、歳出改革や応能負担の徹底といった点について簡潔に話させていただければなと思っております。

 三枚目のスライドを御覧ください。

 支援金制度について多く御批判があることは存じ上げているところでございます。昨日の日経新聞の記事ではございますが、負担と給付のリンクが全くない、健康保険料を取って児童手当を配るの意味分からないよねというような御批判とか、企業の健保の自治を阻害するんじゃないかといったような御批判があるところ、正当な御批判という面もあるところではございます。

 おおむね、支援金制度自体は社会保険制度と相入れない代物だというふうにメディア等で報道されているわけではございますが、これは私なりの理解を申しますと、そもそも、社会保障を拡充していきますとだんだんと子供を持つ必要性というのが薄くなってまいりまして、それ自体が社会保障制度の危機を生んでしまうというパラドックスがよく知られております。なので、社会保険制度自体をまず持続可能にするためにこうした制度に、各社会保険に協力をいただいているというそもそもの制度の趣旨というのをよく国民に理解していただく、周知徹底するということがまず必要なことであろうと思います。

 それから、二番目に関しまして、そういう理念の問題を抜きにしましても、子育て支援の財源はそもそもどうあるべきかといいますと、消費税というのが第一感ではございます。消費税は高齢者の方も現役世代も平等に負担しますので、全世代で子育てを支えるという趣旨からいいますと、消費税というのはまず第一感として上がってくるところではあろうということなんです。

 ただ、それで全ていいのかといいますと、もし財源が今よりも柔軟に考えられる状況であったとしても、子育て支援の受益者としてやはり企業というのは見逃せないところかと思います。小さいお子さんがいて、それで働かれている女性の方、そうした方々の献身的な働きによって企業も活動を支えられている。企業も受益者でございますので、その観点から、今回支援金を通じて企業への負担というのがある種明確になっているというのは、仮にもう少し財源が柔軟に考えられるんだとしても、これは大きなメリットなんだろう。なので、そういうメリットをしっかりと国民の方に周知して判断していただくような広報が必要なんじゃないかなと考えているところです。

 社会保険制度の自治を侵害しているんじゃないかという御懸念もございますけれども、今現在、健保組合等は、この保険料の徴収の義務に関して、社会全体で子育てを支えるという点から貢献していこうというような文書も発表されているところかと思います。

 また、そもそも論ではございますが、日本の社会保険制度、皆保険、医療は皆保険と言われますけれども、これは、税と保険のチャンポンだという理解が正しい理解かと思います。ですので、社会保険制度の保険らしさというのをどこまで重く見るかということについては多くの識者の間でも随分差があるところということは認識していただきたいかなと思っているところです。

 その上で、五ページ目に行っていただきまして、ただ、新しい負担が増えるということではございますので、その財源をどうするのかというところで非常に不透明感が高い状況だ、それが国民の方々の御懸念を招いているんじゃないかなというところは、私も否定しないところです。

 今現在、全世代型社会保障構築会議等で改革プラン、改革工程というのが策定されておりまして、そこにお示ししているのが主な改革工程表の記載内容です。

 医療提供体制改革の推進、地域医療構想を二五年以降どうするのといった話であるとか、それから効率的で質の高いサービス提供体制の構築等々も話されているところです。しかしながら、加速化プランを二八年度に実施するまでに何か目立った歳出改革があるのかといいますと、やはりこれから話させていただく自己負担の問題というのを考えざるを得ないんじゃないかなというふうに個人的には考えております。

 ですので、そうした点について次に説明させてください。資料の六ページ目になります。

 日本の自己負担の割合、これは医療関係のデータ解析をしている者としては多く研究論文を書いたりする一番ポピュラーなテーマになりますけれども、日本の自己負担の水準、これを実効自己負担ベース、つまり国民医療費に占める患者負担の割合で見ますと、今現在一一%程度にまで下がっている。

 自己負担制度、高齢者の方が非常に自己負担が低い状況ですので、高齢化を踏まえますと、何も改革をしないと自然と国民全体の自己負担率は下がっていくというような、自動的にいわゆる減税が行われるような制度になっているんじゃないかと思います。なので、自己負担の引上げは政治的に難しいというような意見もよく聞かれますけれども、引き上げないと自動的な引下げになるんだ、国全体としてみれば。そういう点はよく御理解いただく必要があると考えております。

 七ページ目に行ってください。

 実際に、自己負担率、後期高齢者と現役世代、若者で比べますと、後期高齢者は八%、それから七十五歳未満は一九%でございますので、大きな差がある。一部には、高額療養費制度があるので自己負担が低いんじゃないか、つまり、ストップロスにかかる医療行為が多いので相対的に負担が少なくなっているんじゃないかということもございますけれども、高額療養費の総額というのは年間二・八兆円で、医療費全体の規模とはかなり差があるということですから、これは自己負担率設定そのものの問題というか、特徴として高齢者の方の自己負担は低くなっているということに留意していただきたいと思います。

 八ページ目に行きまして、人口構成を踏まえますと、既に御案内のとおりですけれども、だんだんと七十五歳以上の人口も増えていくということですので、何もしないと国全体としての自己負担というのはどんどんどんどん下がっていくような構造にあるんだという認識でいていただきたいかなと思います。

 九ページ目。じゃ、今現在、自己負担、国際的に見て日本の制度をどういうふうに評価できるかというと、非常に良好な防貧機能があると考えてよろしいんじゃないのかなと個人的には考えております。家計から見た自己負担額というのはOECD平均よりも低い水準で今現在推移しておりますし、それから、支払い困難な医療費に直面する家計の数、割合というのも低い水準なんだということで、非常に高い防貧機能を今現在のところは発揮しているところなんだということです。

 それで、十一ページ目に行ってください。今現在非常に良好な防貧機能を発揮している自己負担の在り方というのを学術的にはどう評価できるのかということを少しお話しさせてください。

 まず、制度論といたしまして、年齢という基準で自己負担を分けるという制度というのは、先進国では全く一般的ではないということです。かつ、年齢によらず負担して、年齢によらず必要な方に必要な支援をしていくといういわゆる全世代型社会保障の理念に照らし合わせましても、こうした在り方というのは再考の余地が非常に多いと考えられます。

 今は理念の話ですけれども、実際、じゃ、これがどう機能しているのかということについては多くの学術論文があるところです。私自身も研究したり、これから話していただく鈴木亘先生もこうした御研究があるところです。

 コンセンサスとして得られているのは、七十歳前後で自己負担の変化というのは日本ではあるわけなんだけれども、これは確かに、自己負担が減ると外来の医療費は増えますということです。外来の医療費は増えるけれども、医療保険の目的は第一義に国民の健康ですので、実際にこれで健康を担っているのかどうかというと疑義がついているような結果、つまり、様々な健康指標を見ましても、自己負担を高齢者の方に三割から一割に下げたからといってそれで健康になるのというと、そういう結果というのは得られていないというのがコンセンサスではないのかなと。

 今現在、こうした自己負担の在り方について三十八文献ほど学術論文がございますけれども、そうした文献をレビューしても、自己負担を減らしたこと、それで高齢者の方が健康になって、みんなハッピーになっているというような結果というのは今現在得られていないと考えてよろしいところです。

 もっとも、高齢者の方は複数の併存症を抱えられている方もいますので、自己負担を引き上げると、健康が悪化して入院がかさんで、医療費の観点からも問題が大きいんじゃないのというような報告もございますので、自己負担のことを考えるのであれば、年齢によらず統一する、その中で条件をつけて自己負担を軽減していくような包括的な仕組みというのを考えることで、歳出の改革等より納得感の高い負担の仕組みになるんじゃないのかなと考えております。

 今現在、子育て支援財源として高齢者の自己負担、ちょっと少し期待されるところもあるわけなんですけれども、必ずしも子育て支援の財源ということではなく、全世代に必要な医療を届けるという観点から負担の見直しというのを是非積極的に御検討していただきたいというのが趣旨です。

 十三ページ目のスライドがまとめになりますが、財源としてこれを考えるのであれば、後期高齢者の自己負担は一・四兆円ぐらい年間あるわけなんです。一割から二割負担に上げると二倍になりますので、それで一兆円ということなんです。

 ただ、そうなりますと、例えば、九千億円財源調達をするために来年の実効自己負担率は二三・四%ねとか、一六・四六%ねというような話になりますので、これは財源として位置づけるのではなくて、あくまで全年齢の方に必要な医療を届けるという観点から包括的な自己負担制度にするという議論になってほしいかなと思っているところです。これが一つ目のトピックでございます。

 二番目、予算に関しまして、今般の予算で特筆すべきところと私が考えているところは、財務局の機動的調査というのが非常にタイムリーな形で行われたことは御存じかと思いますが、それにより診療所の経営状況等が非常に明確に、明らかになった、それによって診療所の算定する報酬のある種の歳出の改革につながったということです。データに基づいた透明性の高い予算策定という観点からもこうした取組というのは非常に評価されるべきところで、今後とも継続していただきたいところです。

 ただ、医療全体の問題を考えますと、診療所に対する報酬の傾斜は非常に高いまま続いておりますので、今般の予算の策定に限らず、継続的にこうした方向性について歳出改革の観点から検討する必要はあるんじゃないかと考えております。歳出をカットしろと言っているのではなく、必要性の低い予算から必要性の高い予算に振り向けないと予算の質全体が向上しないということです。

 実際のところ、診療所の開業が非常に増えているところでして、この二十年でも一万三千ほど診療所が開業されていて、多くが東京や都市部に集中している。地方の医療アクセスというのは非常に懸念されるような状況にもあるんじゃないのかなと。その一方で、勤務医の方の非常に過酷な勤務というのが続いているような状況でございます。そうなっている背景というのは、やはり報酬の問題を抜きにして語れないんじゃないのかなと。

 十六ページ目になりますが、今般、診療所の報酬というのが非常にメディア等でも注目されておりました。実際のところ、報道等でも、平均年収の五・五倍ぐらいは診療所の報酬、医師の報酬は高いというような報道もなされているところです。

 OECD諸国では平均年収対比での医師の報酬というのを各国公表しておりますので、日本の水準というのがどれぐらいなのかというのはしっかりと分かる話なんです。これを見ますと、主に外来診療に当たる医師になりますけれども、日本の場合は自営で開業しますので、それは開業医ということですけれども、五・四倍ぐらいになっている、平均年収の五・四倍というのは、それほどの報酬を払っている国というのはほとんどない話なんだと。医療従事者の方は一生懸命やられていて、非常に国民の健康に対して貢献をしていただいているところではございますけれども、やはり、余りにも高い報酬ではないかということは、引き続き注視して見る必要があると考えています。

 その一方で、非常に、小規模な経営でも高利益率というのが診療所の経営の実態ではございます。

 十七ページ、ちょっと時間も少ないので説明をちょっと割愛させていただきますけれども、一人とか二人で開業するような形態というのが非常に長く続いておりまして、それでも会計処理に事務職員の方は必要なんです。現在のところ、診療所の雇用の四人に一人は事務の職員ということではございますので、こうした開業の形態自体もやはり見直していただいて、歳出改革の俎上にのせるということは必要になるんじゃないかなと考えております。

 おめくりいただいて、二十ページ目。これまで話した内容というのは、子育て支援財源の評価と必要な歳出改革、これは改革することによってより必要な予算に我々の資金を振り向けることができるための改革ということですけれども、それと同時に、現在の国民負担で今後日本の社会保障を賄うことができると考えている識者は多くないんじゃないかなと思います。なので、負担を一定程度お願いするというような方向性というのはやはり心がけていく必要があるところです。

 その観点で、社会保険料の負担の話、非常にメディア等でも盛り上がりましたけれども、現役世代の負担が上がるという報道が非常になされる中で、現役世代内の負担の格差というのは物すごく見逃されているんじゃないのかなと考えております。

 二十ページ目のスライドで、実際に、組合健保と協会けんぽという形で、大企業と中小企業で保険が日本は分かれておりますが、協会けんぽは一〇%の保険料率なんですけれども、組合健保の保険料率の分布、これは公表もされておりませんで、民間の情報公開請求で明らかになって公表できるようになったものです。それを見ますと、六・五%未満というのが十五組合、平均でも九・二%程度になって、一%程度の保険料率の格差があるところです。

 豊かな人たちが入っている組合健保ほど保険料率が安いというのは、日本の保険制度の中で厳然と続いている逆進的な構造だと言って差し支えないところです。一%程度の保険料の格差は余り大したことじゃないじゃないかと思うかもしれませんが、これは課税ベースが非常に広い話で、各保険者の標準報酬月額百兆円ぐらいございますので、百兆円の一%は一兆円になる。それぐらい、若年の負担が注目される一方で、世代内の負担の格差というのは、なかなか世論に届かなかったり、気づいていなかったりすることが多い。

 そうしたことを見直していくことによって、子育て支援、また新しい財源ということで御負担をお願いするということになるんでしょうけれども、低所得者の方々の負担が余り高くならないように制度設計したりすることは十分に可能なはずなんじゃないのかなと。そうした形での方向性というのを是非前向きに御検討いただければなと思います。

 以上、私からの話としては、歳出改革について、自己負担を引き上げたらどうか、診療所の報酬はどうか、それから、負担の在り方についても見直しの余地が多いんじゃないか、以上三点についてお話しさせていただきました。

 御清聴いただきまして、誠にありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木公述人にお願いいたします。

鈴木公述人 学習院大学の鈴木でございます。

 今日は、お招きいただきまして、大変ありがとうございます。

 今日は、令和六年度の予算案に関しまして、私の専門である社会保障、特に異次元の少子化対策の辺りについて、思うところを述べさせていただきたいと思います。

 私の資料は一枚でございますので、もうそれだけを言うという感じでございますが、まず最初に、一番言いたいことはこれなんですけれども、今更という感じもするんですが、今回の異次元の少子化対策というものについて、少なくとも、子供が生まれる、出生率が上がるという効果は学術的に見てほぼないということでございまして、これに三・六兆もかけるんですかというのが一番言いたいことでございます。

 どうしてそういうことになるかということなんですが、まず、我が国の少子化の原因というのは主にどこにあるかというと、結婚したカップルが子供を産まなくなったというよりは、むしろ結婚しなくなったということなんですね。未婚率が上がったということに最大の原因があります。

 少し数字を申し上げますと、二人の結婚したカップルが今産む子供の数というのは、完結子供数というんですけれども、出生数は一・九でございます。少子化に歯止めがかかる合計特殊出生率というのは大体二・〇六ぐらいだと言われていまして、要するに、二人のカップルで二人以上の子供が生まれれば日本は少子化が止まるわけでございますけれども、結婚したカップルについてはもう一・九産んでいますので、ほぼ少子化に歯止めがかかるぐらいの子供は産むわけですね。

 それは当たり前で、結婚するとやはり一人っ子はちょっとかわいそうだなと思って二人ぐらい産むというのが常識でございますので、そこは余り手をつける必要はむしろないわけでございまして、問題は、今、一・二六という非常に低い出生率、これがもう、去年は一・二〇ぐらいになると言われていますけれども、そこと一・九の差はどこにあるかというと、結婚しないということなんですね。

 ですから、少子化対策、とにかく日本人に子供を産んでもらおうと思ったら結婚してもらうということを考えなきゃいけないので、今回の異次元の少子化対策というのはそこにほとんど何も手がついておりませんので、それはもう効果は余りないというのが当然の帰結でございます。

 それから、いろいろ、育児給付の増額とか対象拡大とか、金銭給付の拡大ということも今回目玉ではあるんですが、いろいろな経済学の実証研究がございますけれども、金銭給付で子供が生まれるという結果はほとんどないですね。それは当たり前で、まず、金額がすごく少ないですね。それもこの程度の金額でもう一人子供を産んでくださいというのは、なかなかそういう意思決定はしません。

 そして、もう一つは、やはり、金額が給付されると、もう一人子供を産むという決断をするよりは、今いる子供にもっと教育費をかけようとか、お稽古事を増やそうというように、一人当たりの金銭を増やすというのが大体どこもそういう行動を取りますので、そういう意味では、ここも子供が生まれるというエビデンスはほとんどないです。

 ただ、多子世帯だとか低所得世帯ではちょっと増えるかもしれませんので、的を絞った給付ということであればまだ理解ができますけれども、ここも割合も非常に少ないですね。なので、問題だと思います。

 それから、大学の無償化とか、三人子供がいるといろいろ、大学の費用軽減とか修士課程の授業料の後払いとかいろいろございますけれども、これは余りにも遠い先のことでございまして、経済学では行動経済学という分野があって、余り先のことを言われても意思決定は変わらないということがよく知られていますけれども、これも余り期待できない。

 あとは、保育士の待遇改善とか誰でも通園制度とか、いいことではあるんですけれども、これは、待機児童はもう激減していますので、少子化対策という意味では余り効果がないということでございます。

 しかも、この財源については、大体、現役世代、子育て世帯を含む現役世代が九二%ぐらいの負担をするということでございますので、子育て世帯にとっては、給付は受けるかもしれないですけれども、出ていくものも出ていくということで、差引き、相殺がありますので、そういう意味でも余り効果はないということで、少なくとも、異次元の少子化対策は出生率を高めるという効果はほとんどないということは申し上げたいと思います。

 ただ、要するに、異次元の少子化対策ではないけれども、子育て支援に対する拡充策、充実策という意味では少しは評価できるポイントもございますので、むしろ、そういうよい策もあるということは、もう一方申し上げたいと思います。

 ということであれば、これは少子化対策というよりは子育て支援だというふうに堂々と言って、こそくな説明をするべきじゃないというのがもう一つの意見でございまして、支援金制度の国民負担が月五百円ですというのはちょっと余りにも不誠実な説明ではありませんかということでございますね。

 もう既に、加藤こども相は、千円以上の負担の人たちもいるとか言って、もう説明が破綻していますのでこれ以上は申し上げませんけれども、やはり、誠実に、どういう計算になって、一人当たりどれぐらいの負担になるんですかということをきちんと説明しないとなかなか納得が得られないだろうということですね。

 それと、せっかくワンコインと言ったのであれば、本当にワンコインの制度をつくるというのも一つありだったと思いますね。広く国民一般でワンコインでお願いしますという制度を新たにつくるというのもあり得たかと思います。

 誠実さが足りないということなんですが、更に誠実さが足りないのが、支援金制度を導入しても国民負担率は上がらないというのは何事ですかということで、これは詭弁としか言いようがないですね。

 私は別に、負担が上がることはいいと思うんですね。ちゃんとした制度をつくるのであれば、負担をお願いしますというのはありだと思うんですが、上がらないという説明をされると、これは何か非常に不誠実極まりないというか。

 まず、首相がそういうことを言った理由としては、賃金が上がります、それから歳出削減しますということなんですが、賃金上昇というのは支援金と関係ないですね。賃金上昇は賃金上昇でそれは結構なので、支援金と合わせる必要はないわけでございまして、賃金上昇で支援金の負担がないと言うんだったら、国防費増もウクライナの支援も何でもありになってしまいますので、これは関係ないということを言わなきゃいけません。

 それともう一つは、賃金増というのは、これは別に政府が努力したわけじゃなくて、民間の努力でありまして、関係ないだろうということでございます。それから、実際に賃金増も物価増に足りるだけの増加になるかどうかというのはまだ分からないわけでございまして、捕らぬタヌキの皮算用としか言いようがございません。

 それからもう一つ、歳出改革でと言うんですけれども、これも捕らぬタヌキの皮算用でもありますし、本当かというところでございまして、最初、医療費の縮減で子育ての予算をつくるというふうに政府は言っていたわけでございますけれども、診療報酬を下げられなかったわけですね。なのに負担がないというのは、ちょっと論理的に矛盾しているんじゃないかということでございます。

 そして、最後に、国民負担率という指標についてなんですが、これは非常に操作可能な数字なので、これで国民負担を測るというのは望ましくないと思います。

 どういうことかというと、端的に言うと、借金を増やせば国民負担率は増えないですね。つまり、歳出増をして、保険料を上げたりしないで借金増で賄えば国民負担率は増えませんけれども、それは最終的には誰かが払うものなので、結局は国民負担増なんですね。なので、非常に国民負担率という指標は不完全な指標であるということですね。あるいは、医療の自己負担増をしても国民負担率というのは増えませんので、こういうもので測ってはいけないということでございます。

 ということで、いろいろ問題でございますけれども、この支援金制度ということについては、私は、財源としては非常にいろいろな問題がありますので、撤回すべきだというふうに考えております。

 これもどういうことかというと、ちょっと説明させていただきますと、まず、先ほど言ったとおり現役の負担が多いんですね、この制度は。医療保険という枠組みを使っている以上は、負担の受益が多いであろう高齢者は余り負担しないで、子育て世帯を含む現役世代がたくさん負担するという制度ですので、給付を増やしてもその分だけ負担が増えますので、これはフェアな制度ではないですし、効果も小さいということですね。

 それから、医療保険に上乗せという制度なんですが、これは我が国が社会保障を営々と築いてきたこの社会保険制度という仕組みをぶち壊そうというようなそういう制度で、本当にこれでいいのか考え直した方がいいというのが私の意見でございます。

 言わずもがなですけれども、社会保険というのは目的を定めてあるわけですね。医療なら医療、介護なら介護と定めていて、そこで必要な受益に対する負担があるから取りますと、受益と負担がリンクしているというのが原則でございます。余分なことをやろうと思うと負担が上がるから、それはちょっと待ってくれとか、緊張感が働く。財政を健全化するためには、目的があって、そのために費用を取るんだというのがリンクしているのが、非常にそこがキーである制度なんですが、そこに全く違う子育て支援みたいなものを入れるということは、社会保険の受益と負担のリンクを外すということだけじゃなくて、そこにいろいろなし崩しになる、経営の健全化という観点から、何か根本の制度をぶち壊しかねない制度であるということですね。

 何でそんなことになるかというと、子育て負担の税を考えますということになるとハードルが高くなって、国会の審議も必要だということになるということだと思うんですけれども、なので、お手軽に、保険料は引上げが容易でございますので、取りやすいところから取って、上げたいときに上げられる制度を考えるということなのかもしれませんけれども、これは税という仕組みの抜け穴ですよね。本来、どういうものに使いたいから、国会で審議していただいて決めるというのが原則なんですが、保険料だとそれが非常に、全く議論がないとは言いませんけれども、非常に手薄になりますので、こういう何か使いやすい仕組みで税の抜け穴を使うというのは、何というか、中身の審議という意味でも問題である。

 そして、見える化するために今回特別会計をつくるというんですけれども、それは何もないよりはいいとは思いますが、やはり一般会計に比べて特別会計というのは審議の時間も少ないですし、ブラックボックス化しやすいということで、見える化するからいいというものではないと思います。緊張感が働かずに、モラルハザードが働きやすい仕組みになってしまうということですね。

 その意味では、やはり、もう一回支援金制度を考え直して、現行の税制度で考え直すとか、新しい子育て負担の税制度を考えるとか、あるいは、子供保険みたいな全く目的化しちゃう保険をつくるというのも一つの手だと思いますけれども、いずれにせよ、ちょっとじっくりそれは考えてやらなければならない制度で、今回みたいに泥縄的にやる話ではないだろうということです。

 先ほど来申しましたとおり、子育て支援、出生率を上げるための少子化対策というのは、今まで余り、これが成功例ですというのは諸外国にもないんですよね。日本はとにかく少子化のトップランナーですので、なので、いろいろトライ・アンド・エラーをしなきゃいけなくて、失敗する制度もあろうし、やり直さなきゃいけない、いろいろなことを考え直さなきゃいけない制度なので、こういうものは、今内閣官房が一生懸命やっていますけれども、アジャイルな政策というもので、トライ・アンド・エラーしながら、失敗したものはやめて、いいものを大きくしていきましょうというような、そういう試行錯誤が必要な制度なので、そういう意味では、いきなり何か、恒久財源として財源をいきなり考えちゃうというんじゃなくて、今幸いにも税収に大分余裕がございます、税収が増えて余裕があるので、まずはいろいろやってみて、効果がありそうなものをピックアップして、この制度で固めますといって恒久財源の制度を考えるような、そんなやり方をすればいいのではないかというふうに思いますので、今すぐ支援金制度をつくるというのはちょっといかがなものかというふうに思います。

 最後に申し上げたいことは、今、異次元の少子化対策というところでもう国民の耳目が集中していて、社会保障制度の改革というのはほとんどなされていないんですけれども、社会保障の課題は言うまでもなくいろいろございますけれども、少子化対策をやるからこっちは考えなくていいという問題ではないということでありまして、社会保障は社会保障で考えなきゃいけなくて、少子化対策はやった方がいいけれども、少子化対策がそれの答えにはならないので、社会保障改革はサボってはいけない、一生懸命やってくださいということでございます。

 財政の問題もそうなんですけれども、最近は、この少子化とも関連しますけれども、人手不足というのが大変重要な問題で、お金があっても人がいないので介護はできないとかいうようなそういう世界に入っておりますので、社会保障改革というのはもう待ったなしなので、少子化対策云々とは関係なしにこれは頑張っていただきたいというふうに思います。

 そういう意味では、人手不足を解消する一つの大きな政策の可能性があるのは、女性の労働力の活用というところでありまして、日本は女性の就業率は高まっていますけれども、問題はその中身ですね。中身がパートとか短時間の労働が多くて、なかなか女性の労働力がしっかり生かせていないというのが問題なのですが、それに対して非常に特効薬になり得るのは、年収の壁、支援強化策、年収の壁対策というものですね。今やっております年収の壁・支援強化パッケージというその補助金で何とかするというのは、税金の無駄遣い、大体、現状余り使われておりませんし、税金の無駄遣いとしか言いようがないです。

 私はもうここに至ってはかなり大胆な改革をやっていただきたいと思っていまして、年金の第三被保険者制度自体を廃止するというのも考えていただきたいというふうに思います。

 七百万人以上、第三号被保険者おりますけれども、ここに短時間労働とか無職にとどめられた女性たちがたくさんいるということでございまして、ですけれども、昨今物価も上がっていて、パートは賃金も上がっています。すぐ年収の壁を越しちゃうんですね。何にも補助金がなくても、もう壁を越して働こうという女性は結構いるんですね。そして、人手不足なので、中小企業の方も、もう壁を越してきてくれという人たちもたくさんいるわけなので、営々とやってきた第三号被保険者問題を解決するのはもう千載一遇のチャンスというか、今をおいてないということで、今なら反対は非常に少ないので、ここで思い切った改革をやるべき。

 もちろん、専業主婦がお金が少なくなるとかそういう問題は生じます。でも、そこは、子育て対策の支援をきちんとやって、働き出せば補助金を出しますとか、子供を産んでいただければ給付金がいろいろ出ますというようなことで相殺することによってこの第三号被保険者問題を解決しやすい時期に来ておりますので、そこをしっかりやってほしい。

 残り時間もう少ないんですけれども、そういう意味では、社会保障改革をいろいろやっていただきたいんですが、次期の財政検証については、特にもう待ったなしの時期が近づいておりますが、ここは、不作為に要注意ということでございまして、今のままでいくと国民年金の期間延長みたいなところで終わってしまう可能性が非常に大きいですね。でも、これは本当に年金の改革なのかという問題がありますよね。今までほかの私的な企業年金とかほかの個人年金とかやっていたものを国民年金に振り替えることによって、見かけ上、公的年金が少し増えるという制度にしようということなので、反対は少ないかもしれないけれども、これが本当に改革なのかというところですね。

 そして、人口も、少子化で非常に進んでいるのに、国立社会保障・人口問題研究所がこの間出した人口予測だと、今までと余り変わらないという結果です。でも、中身は外国人が増えるから変わらないということであって、年金財政にとっては余り関係ないんですね。年金財政は、外国人が増えても保険料を余り払いませんので、少子化はやはり年金の危機なんですけれども、それを、外国人が増えるから人口が変わらないので年金改革やりませんというようなロジックをもし厚労省が立ててきたとしたらそこは要注意なので、先生方がしっかりそこはウォッチしていただきたいというふうに思います。

 大体以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

 次に、佐藤公述人にお願いいたします。

佐藤公述人 よろしくお願いいたします。一橋の佐藤です。

 ほかの三人の公述人の先生方とは違いまして、私はどちらかといいますと財政全般の話をさせていただければというふうに思います。もちろん、皆さんの御関心は少子化対策だと思いますので、そこにも絡めながらお話をさせていただければと思います。

 二〇二五年に国と地方合わせてプライマリーバランスの黒字化ということを今目指しているわけでありまして、成長が実現すれば、かつ、これまでの歳出改革を続ければ、一応何とかなるんじゃないかというめどが立っているというのが最近の内閣府の試算でありますが、もちろん楽観は許さないということであります。そして、何よりも、二〇二五年度以降はどうするんだということになりまして、二〇二五年度に黒字化したからもういいだろうというわけにはいかないということになります。

 ということを財政学者が言うと、だから、おまえ、増税したいんだろう、歳出カットしたいんだろうと言われるんですが、今日はその話はしないとします。

 今重要なのは、財政再建の環境整備です。具体的に申し上げますと、経済、社会の基盤を強化するということであります。具体的にそれをどう進めていくかということにつきまして、今日は三点申し上げたいと思います。

 その第一点、私の資料でいきますと二ページ目ですかね、本日申し上げたいこと、その一は、これは既に、昨年行われました経済財政諮問会議の特別セッションの中でも取り上げられたことでありますけれども、財政政策の軸をこれまでの需要の拡大から供給力の強化に転換するということであります。アメリカ風に言えば、モダン・サプライサイド・エコノミクスの考え方ということになるかと思います。

 これは少子化対策にとっても重要でありまして、つまり、若い人たちの賃金を上げるためには生産性を上げるしかない、生産性を上げるためには供給力を強化するしかないということになります。

 そしてまた、先ほど鈴木先生からも女性の労働参加というお話がありましたけれども、まさに、百三十万、百六万の壁を含めまして、そういった就労の障害を除くということが労働力の強化、拡充につながっていくということになるかと思います。

 二つ目は、日本のセーフティーネットを再考しなければならないということです。

 日本の社会保障制度というのは、これまでは世代間での助け合いが前提でした。つまり、若い人が働いて、彼らから取った保険料が主に高齢者の方々に回る、そういう世代間移転というのが大きな特徴だったわけであります。しかし、これからのセーフティーネットは、むしろ支え手、社会の支え手を支える仕組みが必要なのかと思います。

 例えば、コロナにおいて最も経済的なダメージを受けたのは、平時においては社会の支え手であった例えば自営業の方、非正規雇用の方、フリーランスの方々ということになるわけであります。申し訳ありませんが、高齢者の方々は年金によって守られていました。

 つまり、この国には守られていない人たちがいる。その多くは実は勤労者なんです。その勤労者の方々が、これから家族をつくっていく、これから子供を産んでいく世代です。つまり、彼らに光を当てないと、もちろんこの少子化問題というか人口減少の問題に取り組んでいくことはできないということになるかと思います。

 と、簡単に言うんですが、これは実はかなり難しい。実は、日本のセーフティーネットを構築するためには、単に低所得者に対する給付を増やせばいいとか、そういう話にはならない。なぜならば、そもそも低所得者が誰かを捕捉できる仕組みがこの国にはないからということになるわけです。なので、これまでずっと非課税世帯というのを基準に使っていたわけなんですよね。

 この辺を含めますと、実は私、日本のセーフティーネットを拡充するというのは、単に給付を増やすか減らすかとか、そういう話ではなくて、給付を行うための仕組みをつくっていくということが求められるのかと思います。

 最後の三点目になりますけれども、こちらは、そうはいっても、人口減少というのはこれから進んでいくことになるわけであります。既に、社会保障・人口問題研究所の試算によっても、二〇七〇年の人口は今から見ても三割減ということは見込まれているわけであります。となると、人手不足がこれから深刻になってくる、これも先ほど鈴木先生から御指摘のあったとおりでありますが。じゃ、人手不足の中でどうするか。これは人を活用していくということであります。つまり、これが規制改革において求められている人の流動化であります。

 この三点についてお話をした上で、じゃ、これからの財政再建はどうしたらいいかということについて、結論としてまとめさせていただければと思います。

 では、早速ですけれども、三ページ目で、大きく景気対策と成長戦略と書いている、そこの項目を見ていただければいいんですけれども、これまで、もちろん、政府は様々な経済対策を行ってきたというのは事実でありますが、その経済対策の中身は、どちらかといいますと景気対策だったということであります。

 もちろん、アベノミクスにおいても、第三の矢として成長戦略というのを掲げていました。ただ、ややもすると、経済政策は、入口は成長をうたいますけれども、出口は当面の景気対策ということがあった。その典型例が、やはり規模ありきの、例えば補正予算であったりするわけであります。

 もちろん、デフレ社会において、そういう需要の底上げというのは必要です。しかし、中長期の成長を促そうというのであれば、やはりサプライサイドに対する働きかけが必要なんですね。これは、むしろ、成長促進と要するに景気対策は違うんだということです。

 アメリカの経済対策なんかを見ていても、彼らがやはり念頭に置いているのは成長なんですね。雇用を増やすといっても、今だけじゃない、未来の雇用を増やすということも考えていく、やはりそういう中長期的な視点というのがあってしかるべきだろうということだと思います。

 したがいまして、これからの財政政策においては、むしろ足下の景気対策から中長期の成長力の強化、こちらに転換していく必要があるのではないかということを申し上げたい。

 じゃ、それを具体的にどうしたらいいかということで、六ページ目に飛んでいただきますと、やはり財政政策の量から質への転換というのが求められている。今まではやはり、申し訳ない、規模ありきということは、つまりお金を使えばよかった。でも、これから求められるのは、そこからどんな成果が上がってくるかということになるわけです。

 もちろん昨今では、半導体の工場の誘致であるとか、様々な形で生産力の強化ということはうたわれてはいます。あるいは研究開発税制の拡充であるとか、オープンイノベーション税制とか、こういった形で日本の生産性の向上というのに対して政府は取り組んではきているんですが、大事なのは、そこに幾ら使ったかではなく、結果として何が生まれたのか。

 実際、本当に労働生産性は増えたのか、経済学者の言葉を使うと、TFP、全要素生産性が高まったのかとか、そういったことが問われる。もちろん、GDP的に見れば、それが本当に日本の潜在成長率を上げるかどうか、実際の成長率じゃないですよ、中長期的な意味での潜在成長率を上げるかどうか、ここで評価していくということ、アウトカム評価というのを徹底していく。これを別の言葉を使うと、予算のワイズスペンディングということになるのかと思います。

 さて、次の話題に行かせてください、時間も限られておりますので。支え手を支えるセーフティーネットであります。

 九ページ目を見ていただきますと、格差の是正の方法というのは大きく三つあります。

 一つは、いわゆるトリクルダウンです。つまり、経済が成長すれば、おのずと豊かになる企業や人がいる、彼らがお金を使えば、その恩恵は下々にまで及ぶという考え方であります。人によってはこれを新自由主義的と言う人もいるかもしれませんけれども、これが一つ目です。

 ただ、これがなかなか、実際は二〇一〇年代を通して機能してこなかったのか、それは長らく続いた賃金の低迷として表れてくる。今ここに来てトレンドは変わり始めているので、全くトリクルダウンがないと言うつもりはないんですけれども、当初期待したほどでは、二〇一〇年代に関して言うと、なかなかなかったということだと思います。

 もう一つ目は、よく言われますが、富裕層に課税をして、所得の低い方々に配ればいいじゃないかということになります。これはこれで、一つありきだとは思うんです。もちろん、アメリカなんかでも富裕層に対する課税というのはうたわれているわけでありますけれども、一部のリベラルな経済学者たちによって言われているわけですが、ただ、これをやるとどうしても成長に対してマイナスになる。経済学の言葉を使うと、どうしても、公平、つまり格差の是正と、効率、つまり成長促進との間にトレードオフが生じてしまうということになる、これは難しい政治判断が問われるということになってしまうわけであります。

 ただ、もう一つここで考えたいのは、頑張る個人、つまり働いている人間を応援する仕組みです。つまり、これは、働いている人を応援しているわけですから、労働供給は阻害しません。もちろん、生産性を損なうということもない。そういう仕組みということ、支え手を支える、そういう考え方があっていいのではないかということです。

 これは決して学者の机上の空論ではありませんで、世界的にはこれは普通にやっています。次のページを見ていただきますと、十ページですけれども、例えばアメリカで、これは有名です、あのアメリカでやっているわけですけれども、自由主義を標榜するアメリカでやっているわけですが、例えばアメリカの稼得所得税額控除という仕組みがあります。

 これは、低所得の働いている人たちに対する給付です。おい、税額控除と書いているじゃないかと思うかもしれませんが、これは要するに、税制の枠の中で確定申告をやったときに所得の低い人たちに還付が行われる。そういう意味で、税額控除という構図になっていますが、制度的に見れば、これは一つの給付の仕組みだと思っていただいて結構です。ただ、その大きな特徴は、働いている人に対する支援だということです。似たような仕組みは、イギリスの例えばユニバーサルクレジットなんかもそうであります。こちらも、就労している、あるいは仕事を探していることを要件として給付を行う、所得の低い方々に対して給付を行うということになります。

 日本にはこの仕組みがない。例えば公的年金は六十五歳以上になりますし、もちろん生活保護という仕組みはありますが、どちらかというと、生活保護というのは、高齢者の方、障害を持っている方、母子世帯の方、就労が元々困難な方々に対する困窮対策ということになるわけですね、防貧対策ということになるわけであります。ですので、やはりこれから求められるのは、支え手をどう支えていくのかということです。

 そういう意味においては、昨今、先ほども議論になった社会保険料とか、こういったところはある種ちょっと注意しないと、支え手にとってみると重い負担になりかねないということは、これは留意すべきことだと思います。

 じゃ、やればいいじゃんと思うかもしれませんが、今の日本ではこれはできません。できない理由は簡単で、所得が捕捉できていないんです。

 でも、所得は、所得証明とかを自治体が出していますよねと思われるかもしれませんが、あれは前の年の所得なんですね。あれは、要するに、給与支払い報告書とか、そういったものを事業者が自治体に提出をして、自治体は、そういった情報に基づいて、誰が非課税世帯か、誰がどういう所得を持っているかを決めて、実際、あれで住民税なんかを取ったりしているわけなんですけれども、しかし、実際のところ問題なのは、所得がリアルに捕捉されていないというところであります。

 なぜリアルに捕捉する、なぜ去年の所得が駄目で、なぜ今日の所得が必要かというと、まさに所得の低い方々、具体的にはフリーランスであるとか非正規雇用、あるいはギグワーカーと言われる方々は所得が不安定なんですね。なので、去年はそれなりの所得が、稼いでいても、例えばコロナがあったり、何か大きな経済的な災害があったりすると、急に所得が少なくなるわけであります。まさにこの所得が下がったところでの支援が必要なわけですので、まさにリアルタイムに所得を捕捉するという仕組みが必要。

 日本の源泉徴収、所得の源泉徴収はこのために役に立たないんですね。あれは、それぞれに対して幾ら支払っているかという情報は出てこない。あれが出てくるのは最後の源泉徴収票のところなので、年末にならなきゃ出てこないわけです。

 ですので、リアルタイムベースに所得を捕捉するという仕組みをつくっておくということは、ある種、こういう給付つき税額控除のようなセーフティーネットの構築には不可欠。それは机上の空論ではなく、これもイギリスでやっていることでありまして、イギリスではリアルタイム情報システムという形でやっております。それは十一ページで紹介しているとおりです。

 時間も限られておりますので、最後、三つ目の話題に行かせてください。つまり、人手不足と規制改革というところであります。

 そうはいっても、やはり人口はこれから減少していきます。特に、地方圏においては人口減少が著しいということになっております。そういう中において求められるのは、限られた人材の利活用ということになるわけです。

 もちろん、少子化対策がうまくいって人口減少に歯止めがかかればそれにこしたことはない、もちろん、外国人労働者の方が日本に来て働いていただければそれにこしたことはないですけれども、それにこしたことがないに頼るのはやはり危険ということになります。

 であれば、今いる人間たち、人たち、方々をどう最大限、活用すると言うと言葉は悪いですけれども、しかし、人間をいかに生かすかということが問われているんだと思います。

 実際問題、これは十四ページにありますけれども、規制改革の枠の中で、まさに人手不足に対する対応というのがこれまでずっと議論されているわけでありまして、ライドシェアなんというのは、実はそれが元々の狙いだったはずなんですね。

 つまり、タクシーの運転手の方々が少ない、特に地方圏において少ない。都市部においても、最近、私も経験しますが、なかなかタクシーがつかまらない、特に夜間とかになるとつかまらない。つまり、なかなか人が足りない、人手が足りない時間帯が都市圏にも存在しているということになるわけであります。

 こういった問題について、タクシーのドライバーを増やせばいいじゃないかと言うかもしれませんけれども、元々労働人口が減っているわけですから、そこだけに人を充てるわけにはいかない。

 先ほどお話があった、これも鈴木先生からお話がありましたけれども、人手不足は介護や医療の現場においても深刻であります。じゃ、お医者さんを増やせばいいじゃないか、看護職員、介護職員を増やせばいいじゃないかと言われますけれども、元々労働人口は少ないわけであります。

 となってくると、やはりこの少ない人間たちをどう生かしていくかというときに、例えば、ふだんはドライバーでない方、ふだんはドライバーをやっていない方々に、そういう繁忙期であるとか、あるいは地方圏なんかにおいて運転をしてもらう、これが要するにライドシェアという考え方になるわけであります。

 ライドシェアに限らず、次に掲げていますが、十五ページになりますが、医療や介護の現場における、例えばタスクシェアというのもその一つであります。

 お医者さんは本当に忙しいんですね。その忙しいお医者さんを補助するのが、本来であれば看護師の方々であったり、場合によっては薬剤師の方々だったりするわけでありますが、しかし、今の職域は厳密に区分されています。お医者さんの指示なしに看護師さんが勝手なことはできないのが原則でありますし、例えば、薬剤師の方は、注射一本打つこともできません、薬を交換することもできません、在宅医療なんかの場合はですね。

 お互いに今限られた領分、限られた自分たちの専門領域の中で連携を進めていますけれども、これでは限られた人材を十分に生かしたということにはならないわけであります。したがって、ある意味お互いの仕事を補う、こういう仕組みがタスクシェアという考え方になるわけですね。

 具体的には、訪問看護ステーションにおける置き薬、つまり、本来は薬剤師の仕事を看護師がやる、あるいは逆に、在宅医療で薬の交換を本来やるのは看護師ですけれども、それを薬剤師の方がする。あるいは、あと、お医者さんの包括指示の下において死亡診断書を看護師が書くとか、こういった仕組みが本当はあっていい、こういうタスクシェアが本来あっていいんですけれども、これがなかなか難しいのが規制によるものということになります。

 規制改革推進会議の方で、タスクシェア、タスクシフトに関する提案というのは、十六ページ目にまとめてあるとおりであります。

 これは、何が最後に言いたいかというと、十七ページなんですけれども、要するに、やはり人をどう生かすかというときに、ある人間を特定の領域にとどめていてはいけないわけです。

 看護師さんができることはたくさんあります。であれば、そういったところをやってもらえばいい。あるいは、ふだん別の仕事をしている人たちにも、例えば、空いている時間があったら、ライドシェア、ドライバーをやってもらえばいいということなんですよね。つまり、兼業です。それを人によっては副業と言うかもしれない。そういったものもあっていいし、もっと自分の職域を超えて仕事をしてもらう。例えば、介護施設なんかにおいても、介護施設の職員の方々に、もちろん安全性を担保した上でですけれども、医療的なことをやってもらう。これは、忙しいお医者さんにとってみても助けになります。あと、学校の先生もそうですよね。

 なので、やはり人間が限られているわけでありますので、この辺り、人を生かすということは、その専門領域の壁を越えて、お互いに仕事をシェアし合うという、ある意味での新陳代謝的な、流動化といいますか新陳代謝といいますか、こういったことが今求められているんだろうということだとは思います。

 さて、それを踏まえて、残り五分ですが、本当は今日一番言いたかったのは、財政健全化への道筋ということであります。

 じゃ、どうするんだということですが、財政健全化には大きく三つの原則があると思います。十九ページ目に書いてありますが、まず一は、財政規律とは何かです。

 財政規律というと、おまえ、緊縮財政だというふうに言われる方がいますが、別にそういうわけではありません。もちろん、コロナがあったり有事があるときには、財政は拡大させなければなりません。しかし、重要なことは、平時に戻ったら財政は平常化させるということであります。

 つまり、これがコントロールです。つまり、財政というのは、その状況に応じて拡大させたり、場合によっては縮小させたりという、そのコントロールができるかどうかということになります。ややもすると、日本の財政は、アクセルはあるけれどもブレーキのない車のような、そういう状況になりかねないということであります。

 また、先ほどから、今回話題の少子化対策でありますけれども、少子化対策というものが重要になってくるのであれば、それが優先順位が高い。言い方を変えると、優先順位の下がる支出項目もあるはずなんですね。つまり、予算に対して優先順位をつけて、それに応じて予算を配分する、これがワイズスペンディングということになります。もちろん、効果をちゃんと見極めた上でやるということは、それは先ほどから申し上げているとおりということになります。

 なので、ある意味、マクロの規律づけが財政の規模のコントロール、ミクロの規律づけというのが要するにめり張りのある予算配分、ワイズスペンディングということになるかと思います。

 二つ目ですけれども、やはり検証が必要です。無謬性を捨てた政策の効果検証です。

 支援金も含めてになるかもしれませんけれども、あるいは、今回の少子化対策もそうなんですけれども、事前に分からないことはたくさんあります。なので、政策は失敗することがあります。それは別に、失敗するのがいけないんじゃなくて、失敗を直さないのがいけないんです。なので、ちゃんと検証する、PDCAサイクルを回すという仕組み、これは、本来、元々政策評価法もありますし、行政事業レビューという仕組みもあるわけですから、別に新しいことではない。ただ、それを徹底するかどうかということなんだというふうに考えます。

 最後に、その三ですけれども、結局は、財源論は選択肢の問題だということであります。

 支援金がいいか悪いかというのは、支援金がいいか悪いかじゃないんです。じゃ、何で財源確保をするかです。じゃ、支援金ですか、税ですか、ほかの保険料ですか、あるいは給付をやめますかです。つまり選択です、これは。なので、もちろん、先ほど高久先生からお話のあった、自己負担を引き上げて、そこから財源を捻出するのも一つの考え方かもしれません。

 ですので、要は、財源論というのは、一つ一つ、支援金はどうですか、消費税はどうですかというふうに一個一個取り上げるのではなく、パッケージとして考える、じゃ、どれにしますかという。そういうパッケージとして選択肢を見せていくということが問われるのかなというふうに思います。

 大体、私の報告の時間は以上となりましたので、ここまでぐらいにした方がいいかな。あと三分ありますか、二分。大丈夫ですか。私、早口なので、もうちょっと言えますね。

 最後に一つだけ、これはただの情報提供なんですけれども、実は、私、東京財団政策研究所でアンケート調査をいろいろ幾つかやっていて、後ろに紹介しているんですけれども、国民の間でどうして財政再建について伝わらないんだろうということを調べてみたんですね。それは経済学者の方を対象にしたのと、一般国民の方々、ネット調査ですけれども、対象にしたものがあります。

 結果の細かいことは申し上げませんけれども、実は、分かったことが二つあるんですね。

 一つは何かというと、国民も経済学者も、経済学者は当たり前なんですが、国民の方々も財政赤字は問題視しています。例えばMMTのように、財政赤字は問題じゃないという論者は実はほとんどいないんです、国民の中でも。つまり、国民自身は財政赤字に危機感を持っているというのはアンケート調査から分かります。

 ただし、その財政赤字の原因は何かです。経済学者に聞くと、それは社会保障ですと教科書的に答えますし、多分これは正しいです。しかし、国民の多くの方々は、申し訳ありませんが、政治の無駄遣いというのと、なぜか、これはうそです、これは正しくないんだけれども、公務員の人件費が高いと答えちゃうんですね。

 これは何を言っているかというと、自分たちの払っている税金、消費税も含めて、あるいは保険料も含めて、自分たちの払っている税金と自分たちが受け取っている受益が、多くの国民の方々の間で結びついていないんですね。払っている税金は年貢みたい、だから五公五民と言われちゃうわけです。他方、自分たちが受けている受益というのは、大体は自治体から提供されるので、国からもらっているわけじゃないということもあるんですけれども、何かただ飯みたいな感じになってしまっていて、自分たちの税金、社会保障というのがある種自分たちの負担とリンクしているというその感覚がない。だから、財政赤字が、社会保障という自分たちの受益ではなく、政治の無駄遣いになってしまうということです。

 もちろん、政治に無駄遣いはあります。済みません。だけれども、金額的に考えて、それが日本の財政を揺るがすほどの規模ではないということは言えます。もちろん、無駄は駄目です。なので、行政事業レビューとかで無駄を切るのはいいことです。

 ですけれども、やはり社会保障が財政赤字の原因になっている、つまり、財政赤字というのは国民から見れば自分事であるということがなかなか伝わっていないんだなということが今回のアンケート調査でもよく分かったということです。実は、これはこの間もう一回やったんですけれども、やはり結果は変わらなかったので、なかなかこの認識は根強いのかなということであります。この辺りも解きほぐしていくということが必要かとは思いました。

 私の話は以上です。ありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

 次に、西沢公述人にお願いいたします。

西沢公述人 日本総合研究所の西沢です。

 本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。

 これまで少子化対策、子供、子育て支援について推進されてきた皆様には大変敬意を表したいと思います。

 その上で、本日の私の話は、例になっています支援金について反対の立場、理論的には正当化できず、鈴木さんが言われたように撤回すべきだという立場からお話を進めていきたいと思います。

 まず、理由の一つは、保険者自治の侵害ですね。これは、お手元、参考資料の二ページ目にあります。

 公的医療保険の原理原則を、先達の研究も踏まえながら私なりに整理してみますと、公的医療保険とは、一つは、保険、インシュアランスとして職域あるいは地域において保険集団を組成する、これは自発的なものです、保険集団を組成して、国や地方自治体の行政から一線を画して、民主主義的に、自治的に運営していく、これが医療保険というふうに整理できると思います。ですから、例えば我が国が財政破綻したとしても、健康保険組合は残るんですね、自治的に運営できているので。

 そのように一線を画すところに子供の、子育て支援の財源を乗せるというのは、私は自治の侵害だと思う。それは、五百円だからいいという話ではありません。例えば、我が国の領土が他国から侵略されて、それは一平米ならいいのか、そんなことはないはずです。ここを私は強調したい。

 先ほど、健康保険組合の雑誌、高久先生から提出されました、四ページ目にあります赤囲みの中に、健保連と健康保険組合は実務上協力すると書いてある。実務上というのは、国税庁のように徴収して国に納めるだけというニュアンスですよね。でも、実際、法案はどうでしょうか。納税義務者になっていませんか。例えば、保険者が滞納すれば、差し押さえられるのは保険者の資産じゃないですか。ですので、この実務上と書いてあるところに健康保険組合や保険者の苦渋が私は出ていると思うんですね。どうでしょうか。

 教室でいじめられている子がいて、いじめられていますかと聞いて、いじめられていませんと答えますよね。いじめられている子は、いじめられていると言えないですよね。そういうことですよ。本当に保険者、健保連が望んでやっているのかということですよ。そこを更に調べるのが皆さんの役割だと私は思います。

 この健康保険の主たる財源である健康保険料というのは、負担と受益がリンクするからこそ、負担に納得感が伴い、そして給付に対して厳しいチェックの目が向けられます。これが緊張関係です。自分で払っているから、それは、私、大病をしました、保険があってよかったな、だから保険料を払いましょうということですよね。保険負担料が重いから給付はちょっと我慢しようよというのが健康保険です。この緊張関係をやはり崩していってはいけないんですね。崩れてきてしまっているんですけれども、これが健康保険料。

 自ら保険料率の決定に主体的に参加しているからこそ、安定した財源が得られる。安定財源というのはそういうことですよね、安定しているというのは。負担する人が決定に主体的に参加しているからこそ財源が安定するという、これが保険料ですよ。

 ただし、この健康保険料というのは修正が加えられています。それは、社会保険であるためなんですね。より多くの人を包摂するには、若干所得再分配を組み込まないと、多くの人を包摂できません。そのためにサラリーマンは比例料率になっています。国民健康保険も所得割部分があります。そうすることによって、多くの人を包摂しようという。

 ですので、社会保険料にとって所得再分配は第一目的ではなくて、皆保険、社会保険を成立するための役割なんですね。ですから、社会保険料の所得再分配というのは非常に限定的です。例えばサラリーマンですと、年収二千万ちょっとで上限に達するわけですよね。また、一事業所の賃金にしかかからない。副業をしていても、その副業は勘案されないんですよね。また、不動産収入や金融資産所得があっても、それは勘案されない。限定的な所得再分配です。

 こうした限定的な所得再分配機能しかない社会保険料を子供、子育て対策、これは所得再分配政策ですよね、に用いると、社会保険料のこの特徴が欠点として現れることになるんですよね。ですから、本来は租税でやった方が公平だし、経済活動に対しても中立的であるということです。この点は後でまた後半お話ししたいと思います。これが一番目です。青臭い議論と言われるかもしれませんけれども、それを語るのが研究者なので。

 二番目に、医療保険制度にマイナスの影響を与えるということです。

 三ページ目に、私が作った、医療保険制度全体のキャッシュフローが書いてあります。御案内のとおり、非常に複雑です。一番上の協会けんぽのところを見ますと、給付が六・七兆円に対して、支援金等、これは後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、介護納付金を合計して四・七兆円ある。その一段下の組合健保については、むしろ支援金等の方が給付より多くなっている。これは、今後、高齢化率が一段と進行するに伴ってこのウェートが、支援金等の方が大きくなっていくことは確実です。

 子供、子育て支援金をここに更に乗っけるということは、やはり医療保険財政を圧迫することになる。医療保険財政には、一番右にその他として保健事業が入っています。これは特定健診とか予防接種の費用、大体〇・四兆円とか〇・六兆円。これに匹敵するものが子供、子育て支援金として出ていくことになります。

 また、組合健保に関しては、よく大企業健保と言われるんですけれども、実際には、中小企業の集まりである総合健保というのは結構あるんですね。ですので、決して大企業健保ではなくて、料率は今はもう一〇%を超えているところもあるわけです。こうした医療保険財政の圧迫につながってきます。

 次のページですけれども、昔はシンプルだったんですね、老人保健制度が導入されるまでは。老人保健制度が一九八三年に導入されて以降、退職者医療制度が翌年入り、また二〇〇〇年には介護保険が入って介護納付金が導入され、二〇〇八年には老人保健が後期高齢者医療制度に姿を変え、またそのときに前期高齢者納付金が入るということが繰り返されてきたわけであり、さらに、五ページにありますように、子ども・子育て拠出金というのも厚生年金保険料に上乗せされています。このように、保険料というところの仕組みを使ってどんどんどんどん所得再分配の原資が調達されてきたわけです。

 敷衍しますと、今度導入されようとしているのが支援金で、既に入っているのが拠出金。支援金の導入理由の一つは、既存の社会保険は対象者が狭いから。でも、子ども・子育て拠出金は年金なので狭いんですよね。であれば、本来、子ども・子育て拠出金は廃止して支援金に統合されなければ理屈に合わないです。取れるものは取っておこうということなんでしょうけれども、事ほどさように、このように乗せてこられている。

 その根源は、六ページ目に、これは私の言葉ではなくて、私が尊敬する研究者の方の言葉ですけれども、現在の複雑な制度構築と入り組んだ財政の姿になってしまったのは、ひとえに、国の一般会計の予算制約の下、本来の各保険集団の枠を超えた保険料財源の拠出を通じた安易な財政調整が行われた結果であると。田中先生が言われているのは二〇二一年五月の雑誌で、子供、子育て支援金が入る前ですけれども、田中先生からしてみれば、何ということだと。済みません、田中先生、何ということだと。もう少しきちんと税に向き合うべきでないかということが言えると思います、私は。

 七ページ目には、もうこれまでの先生方、公述人の方々のお話にもありましたけれども、やはり社会保険料というのは現役賃金課税なんですよね、専ら。どうしてもそうなってしまう。再分配が少ないです。比例税率ですから、サラリーマンは。所得税であれば、累進課税になるし、課税最低限があるけれども、結構、社会保険料というのは、低い収入の人からかかってくる割に、年収、例えば年金だと一千万、健康保険だと二千万ちょっとで頭打ちになってしまって、やはり逆進的ですよ。年収の低い現役世代にとってみれば、やはり所得税、住民税よりも社会保険料の方が重いです。そこに更にかけていいのかという話です。

 これは研究者の中ではほぼコンセンサスと言っていいと思いますけれども、こうして社会保険料に逃げてきた結果、社会保険料という名の現役賃金課税が上昇し、それが非正規雇用を増やしているのではないかというのがおおむねコンセンサスと考えていいのではないかと思います。

 今日は、今から後半、国民健康保険のお話をしたいと思います。

 これまでの国会の中で、衆議院予算委員会で私の名前がよく出てきてどきどきしていたんですけれども、それはあくまでサラリーマンの話が多かったんですよね。大体サラリーマンは、恐らく支援金というのは、私の計算だと〇・三一%ぐらいですよ、料率。そんな感じです。年収一千万だと三万一千円、それを労使折半するという、そんな印象で、多分そんなに大きく違わないと思う。

 問題は国民健康保険です。仮に年収一千万円で、年間三万一千円払っても、払える人はいいんですよ。払って、会社も半分負担してくれる人はいい。会社も賃下げしない会社に勤めてくれる人はいいけれども、では、そうではない人はどうするかというのが国民健康保険の問題。これは、医療保険制度が抱える重要な問題の一つでもあります。

 国民健康保険というのは、ちょっとページが入り繰りして恐縮ですけれども、また前に後で戻っていただきますけれども、十ページに書いてありますが、被用者という方が約五百万世帯います。八百万世帯弱が非就業ですので、年金受給者の方々ですよね。ですので、国民健康保険というのは、被用者、多分イメージすると正規雇用になっていないですよね、就業者の方々や年金受給者の方々が入っている、伝統的自営の方はもう少ない、こういう制度です。

 この人たちは、今回、子供、子育て支援金が入るとどういう負担になるのかということですよ。それを考えるために、今の国民健康保険料の構造を見ていきたいと思います。

 また八ページに戻っていただきますと、収入が百万から三百万まで取ってあります。この人の国民健康保険料を私の住んでいる自治体で計算してみました。青いところが定額部分、あるいは応益とも言われますが、部分ですね。黄色いところが所得比例部分。大体年収百五十万円ぐらいまでは減免が受けられますが、それを超えると減免が受けられない、私の住んでいる自治体では。年収三百万ぐらいの人は、二十数万円の国民健康保険料です。こうなっているわけですね。

 九ページ目に、今御覧いただいた国民健康保険料を収入で割ってみました。料率換算してみました。それが九ページ目の黒い折れ線です。大体七%を超えるところで横ばいになっています。七%、これは、協会けんぽの本人負担は五%ですから、それを二%ちょっと上回っているわけです。

 ですので、医療保険制度に、結局、子供、子育て支援金は健康保険料の言ってみれば写し絵になると思うんですよね。写し絵になったときに、こうした制度間格差を引き継ぐ可能性があるわけです。

 十ページ目はさっき御覧いただいて、十一ページ目を御覧いただくと、今度は国民健康保険に入っているもう一つのマジョリティーである年金受給者、六十五歳以上を想定していますけれども、の保険料は、同じ自治体であればどうなるかというのを計算してみたものがこちらです。

 一見してお分かりになるように、ブルーの定額部分はかなり広く減免を受けています。これは、現役世代に比べて減免基準が寛容になっているからなんですね。そして、所得比例部分についても小さくなっている。なぜならば、旧ただし書所得、これはまだ現役で用いられているんですけれども、の計算をするときに、年金収入から公的年金等控除を引く、そして四十三万円を引くという計算方式であるために、公的年金等控除が手厚いことをもって所得割分が小さく済むわけです。

 そして、改めて次の十二ページにまたそれを、黒い線は、先ほど御覧いただいた、私の住んでいる区にいる現役世代の、先ほどの折れ線の再掲です。七%を少し上回っている。年金受給者に関してはブルーの線で、年金収入で保険料を割っている。どうでしょうか。子供、子育て支援金というのは、広い世代から公平にお金を集めると言っていますけれども、これが公平かということですよ。私は、とてもそうは思えませんね。

 その原因というのは、例えば十四ページ。今、社会保険というのは名寄せがされていないんですよね。ですから、例えば、月収八万七千円で二か所の事業所で働いていると、この人は厚生年金や協会けんぽに入れないんですよ。こういう社会保険制度のネックがあるわけです。ですから、本来はこういうものを正していかなければいけないわけですよね、完璧に。

 であれば、私は、所得税、復興税のような所得税でもいいし、消費税でもいいし、相続税を掛け合わせたタックスミックスでもいいし、そうしたことにする方がこうした世代にとって公平であり、彼らが安定雇用を得るために重要だと思うわけです。

 あと三分ありますので、市町村格差について、お手元、資料はないんですけれども、お話ししておきたいと思います。資料は、そうですね、十三ページ目を御覧ください。

 今の国民健康保険料の体系というのは、医療分、後期高齢者支援金分、介護分の三つで構成されています。介護分は四十歳を超えたら払うんですけれども、さっきの計算は医療分と後期高齢者支援金分の二つです。

 そして、例えば医療分は、旧ただし書所得掛けるa%プラスb掛ける人数、bは定額負担ですね、人数は世帯人数、そして、cというのは、ある市町村、ない市町村がありますけれども、一世帯当たりの定額負担、こういった構成になっています。これを、医療、後期高齢者支援金分、介護分、全部計算して出す。そして今回、子供、子育て支援金がここに加わってくる。四階建てになるわけです。

 それで、a、b、c、d、e、f、g、h、iは、全部市町村ごとに違いますよ。後期高齢者も都道府県ごとに違う。子供、子育て支援金は、市町村に割り振る金額は、多分、一人当たり七百円ちょっとです。そこに国庫負担を入れたり都道府県負担を入れたりして、多分もっと減るわけです。そして、減免するので、また一人当たりが減ってくるわけです。それは多分、同じ収入、年収二百万の人でも、私の住んでいる自治体、あるいはほかに住んでいる自治体で金額が変わってきますよ、これは。

 二〇〇八年四月に後期高齢者医療制度が導入されたとき、皆さん、大変だったことを思い出していただきたい。それは、市町村ごとにばらばらだった保険料が都道府県で統一されて、上がった人、下がった人が出てきて、高齢者いじめだということになったわけです。

 ですから、本来、今後、国会審議を進めるのであれば、市町村ごと、収入ごと、世帯ごとの料率を出さないと、二〇二六年に導入したときに、同じことになりますよね。それは別に、皆さんが混乱するのはいいんですけれども、我々の生活が困ってしまうし、国民健康保険に入っている若い人たちにとって、もしかしたら重い負担になるかもしれない。

 ですから、サラリーマンで払える人は、私はいいと思うんですよ、金額が話題になっていましたけれども。そうではなくて、サラリーマンになれなくて国民健康保険にやむなく入っている人たちの負担がどうなるか。その人たちが、多分これから結婚して子供を産もうというふうに思っているわけですよね。そこまでして、なぜ健康保険料に上乗せするのかという話ですよ。

 それは、取りも直さず、田中先生が言われたように、一般会計の制約の下ということですけれども、私流に翻訳すれば、それは、政治家の先生方が国民向けに負担を説かないからだと思う。手間暇を惜しんでいるからこういうことになる。だから、私は、きちんと国民向けに説明すべきだと思います。

 ちょっと言い過ぎたところもありましたけれども、以上です。ありがとうございました。(拍手)

小野寺委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

小野寺委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 自民党の牧原でございます。

 公述人の四人の先生方には、本当に貴重なお話、ありがとうございました。

 今、西沢先生の話もありましたが、私も厚生労働関係の政務を結構、政策の柱の一つとしてやっているんですけれども、今明らかになったことというか、自分も思っていたし、今先生の話を聞いて改めて思ったのは、制度が複雑過ぎるということなんですよね。

 先ほど高久先生もおっしゃっていましたけれども、昭和三十年代にできてきて、そのときにはまだ行政の仕組みとかがいろいろ立っていなかったところもあったりして、まず組合をつくっていって、そして協会けんぽがあったり、いろいろ制度ができていったという経緯もあると思います。現在、協会けんぽ、組合健保、船員保険、共済組合、国民健康保険、国保組合、後期高齢者医療制度、さっきの西沢先生の表にありましたけれども。

 この中で、例えば、本来、国民が医療保険料だと思って払っている中から、例えば組合だと組合の人件費なんかも払われたりしているわけですね。これは多分、介護保険とかそういうところにはない仕組みだというふうに思います。なぜなら、市町村の職員の方が担当課をつくって、その皆さんにはそこから給料が払われているわけですから。そういう仕組みになっている一方で、医療保険はそうではない。そういうところも私は問題じゃないかと思っているんです。

 極論になりますけれども、ちょっと、高久先生とそれから西沢先生に、ちょっと支援金とかいうことはおいておいて、そもそも、日本の医療保険制度、昭和三十年代からつくってきたけれども、当時とは想定が違った少子化、高齢化とが、六十五歳以上の方の人口というのが三千六百二十二万人、これは本当に三分の一に近づいてきておりますよね。それから、七十五歳以上でも去年初めて二千万人を超えました。一方で、十五歳未満の子供たちというのは千四百万人強しかいません。つまり、八十以上ぐらいの人よりも下手したら十四歳未満が少なくなりそうなぐらい、ほぼ同じぐらいの人数になってきている。

 こういうことを考えると、保険制度のやはり見直しというのはやらざるを得ないんじゃないか、これは将来の我々世代がやらなきゃいけないことじゃないかと思っていますけれども、ちょっと、お二人の先生には、極論すれば、医療保険制度というのは今ばらばらだけれども、もう一本化をして、マイナンバーカードなんかをつくったりして非常に見える化をしてやっていくということが必要なのではないか、そういう考えについてちょっとお考えをお聞かせ願いたいと思います。

高久公述人 非常に大きな話題について御質問いただき、ありがとうございました。

 現状の保険制度というのは、応益負担の原則というのが非常に重視されておりますので、各保険者が細かく分かれて、そこの医療費に見合った保険料を払う、その結果、組合健保の保険料率は非常に低いということが続いているわけなんです。

 社会保険創設当初においては、応益原則、連帯を持って各保険者で自分たちで助け合うんだということは、ある種の規律として利いていたところがあるんだと認識しております。ただ、昨今はどうかというと、やはり財政調整が、先ほども西沢先生がおっしゃっておりましたけれども、繰り返されたことによって、我々、保険者として連帯しているのかというと、私は、自分の加入している保険者と手をつないで連帯しているという意識はまるでないと言っていいんじゃないのかなということです。

 そういうふうに、応益負担をどこまで社会の負担の公平性の観点から重く見るのかということを、根本に戻って考えなくちゃいけないと個人的には考えています。社会保険の原則は応益負担をどこまで重く見るかということだと思いますので、その観点から申しますと、応益負担、受益があるから負担しましょうのような考え方は、これは、将来世代は受益はないんですよね、そういう中で、我々、応益負担というのをどこまで重く見なくちゃいけないのかというのは、これは多くの人の公平感に関わることではありますが、一度考えた方がいいところかなと思います。

 保険制度をどうすべきかということですが、私は、かねてからではございますが、都道府県に一本化するという主張をいろいろなところでしているところです。組合健保の保険料率も協会けんぽも一本化する、そうすると、負担の公平性というのは国民の目に見える形になるということです。

 今現在、保険が分立していることによって非常に負担が見えづらくなっているということなんです。負担が見えづらいので取りやすいという側面も財政当局的にはあるのかもしれませんけれども、むしろ負担を透明にして、公明正大に、幾ら払ったので幾ら我々はもらっているということが明確になるような制度にしていかなくちゃいけないのかな、そのために、ある種、保険の統合というのは避けられない論点になるかなと考えている次第です。

 以上です。

西沢公述人 ありがとうございます。

 大きな質問ですので、日頃考えていることを一つ二つ申し上げたいと思います。

 一つは、近年の高額薬の登場ですね、オプジーボとかがありましたけれども。では、これをどこで線引きするのかと考えたときに、我が国の医療保険制度が例えば国営で一本化されて、国で一つの解が示せるのかと、私は今よく考えます。多分言えないと思うんですよね、ここで線引きするということが。そうしたときに、複数の保険者がいて、民主的な議論がそこに存在して、我が健保は例えばここで線引きする、我が健保はそうしないといって議論が並立していることが私は健全かなと思うんですね。国の審議会でここで線引きしますと結論すると、人殺しかということになりかねないですよね。

 もう一つだけ申し上げると、医療保険というファイナンスの仕組みと、もう一つ、医療の世界では、デリバリーというか、医療供給の、医療そのものの話があります。ここ十年、二十年、確かに医療保険の議論というのは結構盛んでしたけれども、後期高齢者医療制度まで私はもっとデリバリーの話にシフトしていった方がいいかなと思うんですね、プライマリーケアの話ですとか。医療保険はやはり限られたパイの奪い合いになってしまうので、もっとデリバリーの話をしていくというのが私は建設的かなと、ちょっと拙いですけれども、考えております。

牧原委員 ありがとうございます。

 やはり両先生とも一本化していくという方向性も大まかありますので、あるいは選択制ですね、こういうことを、やはりこれは大きな議論ですけれども、やっていかなきゃいけないというふうに思います。

 それと、佐藤先生にお聞きをしますけれども、いわゆる制度は制度として、その持続可能性というのは一方で考えていかなければいけません。ちょうど、少子化で、去年の生まれた子供の数が七十五万八千六百三十一人と発表をされました。出生数が減ってきているというのはそのとおりなんですけれども、これは当然ながら、親の世代が減ってきているから減ってきているという面が非常に大きいわけです。

 一月一日の人口推計が出ているんですけれども、日本で一番多いのは五十代です、これは一千八百五万人。次に七十代、千六百二十二万人。四十代が千六百七十五万人で、次、六十代が千四百八十三万。通常、親の世代と言われているような三十代はそれよりも大分減って、三十代が千三百三十三万人で、二十代が千二百六十八万人、十代が一千七十四万人ということで。例えば二十代と五十代を比べると、六百万人ぐらい、もうそもそも世代で人口が減ってきているわけですね。十代になると更に百万人減って、今、ゼロ歳から十歳の世代はもう一千万人いません。八百八十六万人しかいないので、これから二十年後ぐらいを考えると、いわゆる二十代から四十代の世代で考えますと、一千万人以上減ります。そうすると、どんなに出生率を回復していっても、出生数の回復というのはほとんど不可能じゃないかというふうに思えます。

 そうすると、先ほど先生が、財政の改革をやっていかなきゃいけない中で社会保障制度がやはりキーになるという話をされておりましたけれども、今申し上げたような将来の人口推計、あるいは更に進む少子化、高齢化をにらみながら、どういう社会保障制度改革をやっていくべきなのか、財政の観点からも御示唆をいただければというふうに思います。

佐藤公述人 御質問ありがとうございます。

 今まさに一番人数の多い五十代ですけれども、やはり、社会保障制度というものが、これまでは世代間の助け合い、年齢別とよく言いますけれども、若い人が負担をして高齢者に移転をする、これがやはり高度成長期以来の仕組みだったんですね。これをやはり変えていくしかない。

 例えば、申し訳ないけれども、支え合うのであれば、高齢者の中でも支え合いがあっていい。ここは社会保障の中で応益なのか応能なのかというところで議論が分かれますけれども、やはり高齢者の中にも豊かな方はいらっしゃる。特に、所得じゃなくて、金融資産で豊かな方々もいらっしゃる。こういった方々にやはり応分の負担をしてもらっていいと思います。私は、必ずしもそれは自己負担ではなくても、保険料でもいいと思います。なので、そういう形で、ある意味、世代間だけではなく、世代の中で支え合う仕組みというのが、医療や、あるいは場合によっては年金なんかにもやはり求められてくるのかなというふうには思います。

 やはり、これはずっと言われていることなんですけれども、社会保障、今回の少子化対策、本当に少子化、人口減少に歯止めがかからないだろうというのは、まさに御指摘のとおり、そもそも親の世代の人口が減っているからです。ただ、やはり子育て世代、これはまさに全世代型社会保障ではありますけれども、セーフティーネット、社会保障をもっと若い人たちに光を当てる、こういう形もあっていいのかなとは思いますので、まさに社会保障の再分配の方向を変えていく、誰が負担をして誰が受益をするのか、この方向を今から変えていくということが、やはり人口動態が大きく変わる中においては求められているのかなというふうには思います。

 以上です。

牧原委員 私も五十代でございますので、大変御示唆に富む話だというふうに思います。

 最後に、鈴木先生、お戻りになったんですけれども、今申し上げたように出生数が減っていく中で、出生率を我々鑑みてやっていました。私も、ここにいる橋本さんとかも二〇〇五年初当選組で、二〇〇五年が実は出生率が一・二六と最低になって、一・二六ショックと言われて、それで少子化担当大臣ができて、それなりに、これは大変だということになって、実は少子化対策をやってきました。

 実は出生率自体を見ますと、もちろん一九四七年の四・五四から、一九七四年に人口置換基準を下回って二・〇五になって、二〇〇五年に一・二六になるまでぐっと下がり続けて、その後、実は二〇一六年には一・四五まで回復をしました。ところが、二〇一七年は同じぐらいだったんですけれども、一九年ぐらいから一・三六、一・三三、一・三〇、一・二六。それで、先ほど先生がおっしゃったように、去年はもうちょっと低いかもしれない。こういうふうにまた急に下がり始めたんですけれども、二〇〇五年から上がって、そしてまた二〇一九年から急に下がってきている。この出生率の変化をどう分析をされて、何がやはり必要なのかということを御示唆いただきたいと思います。

鈴木公述人 どうもありがとうございます。

 諸説あって、なかなか、一遍上がったものがなぜ下がってきたのかと言うのは難しいところがあるんですが、一つ言えるのは、団塊ジュニア世代がいよいよ子供が産めなくなって、要するに、合計特殊出生率というのは、本来は一人のお母さんが、女性が子供を産む数というのが定義ですけれども、現状の統計はどうなっているかというと、輪切りしているわけですね。ある年で輪切りして、各世代の出生率を合計しているということになっているので、どこかの世代の固まりがあると、そこが晩婚か何かすると数が大分狂ってくる、それが表れているというのが公的な解釈なんじゃないかと思いますが、その後のいろいろ所得状況なんかも結構影響しているというようなことが言われていて、特に昨今の話でいいますと、コロナというところですよね。コロナ禍で婚姻率がすごく下がっていますので、この後もかなり厳しい出生数低下というのが続くだろうということで。

 私は、一般論として、婚姻率を上げるとか出生数を上げるとかというのは難しいんですけれども、少なくともコロナ禍で下がった分は回復の可能性があると思います。だから、そこに集中的にいろいろな対策を打つということが大事だと考えております。

牧原委員 今日は本当に、我々、時代の大きな変わり目、転換期にいて、我々の責任は非常に重いということを先生方に教えていただきました。これからも御指導いただきたいと思います。

 本日はありがとうございます。

小野寺委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 公述人の先生方には、お忙しい中、公聴会に御出席をいただき、また、貴重な御意見をいただきましたこと、改めて感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、私の方から、その説明も踏まえた上で、幾つか御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず最初に、各四名の公述人の皆様にお伺いしたいと思うんですけれども、給付の財源をどこに求めるかについて、それぞれ御意見をいただければというふうに思います。

 今回の補正予算でも、これはもう御案内のとおり、今、日本の社会が直面している大きな課題、少子化、人口減少、毎年百万、都市単位で人口が減っていく、そして、二〇三〇年には急速な若年人口の減少ということが予測される中で、今まさにこれを食い止めるために踏ん張らなければいけないということで、加速化プランで具体的なメニューを定めて、それを実施をしていこうと。この加速化プランを、内容を全て実施をすると、子供、子育てに使う予算、これはOECDのトップクラスであるスウェーデンとも肩を並べるというような規模となると言われていますけれども、その財源については歳出の改革それから支援金で賄うということになっているわけでございまして、これについても様々議論があるわけでございます。

 将来的に持続可能、さらには制度の安定を確保する上では、やはりそのための財源も安定をしていることが求められる。それともう一つは、やはり負担の公平ということも問われてくるかと思います。

 そうした中で、その財源としては、税に求めるのか、それとも社会保険料に求めるのか。今のお話の中では、既存の制度の負担と給付を見直すというような選択肢もあるというようなお話でしたけれども、それぞれ公述人の皆様としては、多くの学識者の方は、やはり安定性また公平性の観点から望ましいのは消費税だとおっしゃる方が多いんですけれども、ただ、消費税については、過去の税率引上げの際の駆け込み需要、その反動としての消費の減少、そしてそれが長く続いてしまったということが、かなり多くの方々の記憶の中に残っている。

 これは、ただ消費税だけの話ではなくて、国内外の様々な要因が結びついた結果でもあるともいうんですけれども、そうした経験もあることから、消費税ということをいうと、それに対する理解というものが得るのが難しいという面も一つあります。

 こうした面も踏まえて、給付のための財源をどこに求めるのが一番よろしいと考えていらっしゃるのか。高久先生、先ほど様々御意見をいただきましたけれども、時間内で言及できなかった点等もあれば加えてお聞かせいただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

高久公述人 私は、先ほど申し上げたとおりですけれども、やはり消費税と企業負担のミックスというのが非常に整合性が高い財源であろうかと思います。

 消費税は非常に難しい状況ですけれども、デフレが続いておりましたので、値上げが目立つという社会がずっと三十年ほど続いていた、これから物価高、インフレの時代になってくると思いますので、そうなってくると、やや国民の方の引上げの余地、受入れというのもこの後緩むんじゃないのかなと個人的には思っているところです。

 以上です。

鈴木公述人 大変重要な御指摘をありがとうございます。

 私も、先ほど申し上げたとおりなんですけれども、やはり、少子化対策という意味では、いろいろ試行錯誤しないとなかなか何が効果があるということが分からないので、初めから恒久財源を考えるというのはちょっと難しいと思うので、アジャイルな政策といいますけれども、いろいろ試行錯誤するうちは一般財源で私はいいと思います。今の時期は、税収が増収に次ぐ増収になっておりますので、その余裕がありますので。いろいろトライ・アンド・エラーして、これで固めようということになったときに初めて財源をどうするかということを考えればいいというふうに思っております。

 それが税になるか、子供保険みたいなものになるか、消費税になるかは、それはいろいろな議論があり得ると思うんですが、一つ、全然挙がっていない財源として私が指摘しておきたいのは、年金の積立金を活用したらどうかというのは思っております。

 というのはどういうことかというと、子供が生まれる対策をやるということが前提ですけれども、子供がたくさん生まれるということになると、今予定されている保険料とかが増えるわけですよね、今予定されている以上に増えるわけですね。それは元が取れるわけです。今は元は取れませんけれども、将来その子が大人になって保険料とか税金を払うようになれば、予定以上の社会保険の保険料とかが上がってくるわけなので。遠く行けば元が取れるわけなので、そういうときには国債を発行するというのが一つの手なんですが、もう一つは、なかなか国債発行は難しいと思いますので、年金の積立金を借用して対策をやっておいて、後で、それが、保険料が増えて年金の積立金が増えるので元が取れるというようなことも考えられますので、いろいろな選択肢を捨てずに考えるのが重要かと思います。

佐藤公述人 よろしくお願いします。

 どの財源かというよりは、それぞれの財源を挙げるときに、何をどう、何か補足的な改革をしなきゃいけない、見直しをするなら何が必要かだと思います。

 例えば、消費税であれば、まずやらなきゃいけないことは、やはり一つは逆進性対策であります。低所得者の方々に対する配慮をどうするか、今の軽減税率だけでよいのかということ、これはやはり抱き合わせで考えなければならない。それから、もちろん、駆け込み需要とかで経済に対する反動があるということであれば、景気対策も併せてやらなきゃいけないかもしれないし、何よりも、増税に対して足腰の強い経済基盤というのをつくっていくということも求められるところだと思います。

 つまり、消費税一個だけ取り上げて、さあ、上げるか上げないかと言われたら、それはみんな嫌だと言うに決まっているので、むしろ消費税を上げるための環境整備を併せて行っていくということが一つ。

 社会保険料についてはこれも選択肢だと思います、支援金を含めて。ただし、先ほど西沢先生がおっしゃっているように、実は社会保険料は極めて逆進的です、かなり不公平です。しかも雇用に対して悪影響です。これをどうするかですよ。

 なので、先ほどお話があった例えば保険制度の一本化、全国一本化であれば、全国で保険料は一律になります。あるいは、できるだけパートタイムの方々も多く被用者保険に入れていけばある種の逆進性的なところは緩和されるかもしれないということも考えていきますと、やはり併せて今社会保険料の改革をするということをやって、財源を見直していくということが問われるかとは思います。

 ちょっと付言しますが、保険料を見直す抜本的な委員会というのは実はないんですよ。みんなばらばらになっている、年金は年金、介護は介護なので。社会保険料自体を扱う委員会がない、これも考えた方がいいのかなと思います。

 最後、済みません、余り長くならないように。

 歳出改革はあっていいと思います。ただ、捕らぬタヌキの皮算用はやめた方がいいと思います。やはり、これが浮くからきっと財源は確保できるだろうであるとか、こういったことはやらない方がいい。もちろんつなぎ国債を私は否定しませんけれども、何につなぐのかは明確にしておいた方がいいというふうには思います。

 私からは以上です。

西沢公述人 ありがとうございます。

 今、高久先生から佐藤先生まで、多分、研究者の結論は、消費税を中心としたタックスミックスというのが多分オーソドックスな答えだと思います。

 では、それをどう実行するかについて一言コメントさせていただくと、我が国は、GDPがドイツに抜かれたように、全体として地盤沈下して、与党の皆さんも野党の皆さんも負担増だ、負担増だと言って、それは我が国全体の地盤沈下を招くだけだと思うんですね。

 人口減少して経済成長が低迷している中においては、私は、ある程度負担を求めるのは与野党で合意しないと、一定の予算制約を定めてその中で配分を競い合うという形にしないと、我が国全体にとって非常に不幸だと思っています。その結果が保険料への依存で、保険料に依存すると、弱い人に行ってしまっている可能性が非常に高いわけであって、どこかで合意するという新しい政治をつくらないと、ちょっと、全体として不幸かなと思っています。

角田委員 ありがとうございました。

 もう一点、これは少子化、人口減少とも密接な関係もあるかと思うんですけれども、今、日本が直面する課題の一つとして、単身世帯の増加というものがあります。二〇二〇年の国勢調査では、単身の世帯の割合が、二〇〇五年比で八・六%増加、二〇四〇年には四〇%に達するというように予測をされております。

 こうした独り暮らしの増加という社会構造の変化に対して、社会制度の今後の在り方についてどうあるべきか。特に、鈴木先生もおっしゃっていました、少子化の原因の一つが、結婚しない人が増えている。特に、働く人の単身割合が正規に比べて非正規が著しく高い状況にありますけれども、こうした点も踏まえた今後の支援施策の在り方について、これは鈴木先生、佐藤先生にお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

佐藤公述人 よろしくお願いいたします。

 まず、二つ方法があると思います。

 一つは、単身世帯の方々には、やはり結婚しやすい環境をどうつくっていくかということだと思います。一つは、結婚したら何か補助金を上げるとかというのは余りにも下世話なので、やはり、彼らの生活をどう安定化させるか。結婚は一にも二にも、やはりそれは賃金、所得の安定化と向上だと思うんですね。

 なので、実は、これは財政でやるべきことなのか、経済対策として、つまり成長力を強化することによってやることなのかということは考えた方がいいのかなというふうには思います。特に若い人たちの賃金を底上げするというためには、労働生産性を上げなければならないということはやはり考えなきゃいけないかと思います。

 二つ目は、だから、単身世帯が今、日本ではセーフティーネットから取り残されているわけです。子育てしていれば確かに児童手当がもらえます。でも単身世帯は何も手元に残りません。やはり、彼らを支える、先ほど私は給付つき税額控除の話をしましたけれども、こういう単身世帯を支えるセーフティーネットというのは新たに考えていく必要があるかと思います。それはやはり、自分の生活がちゃんとしていなければなかなか次のステップには進めない、結婚であれ、キャリア形成であれ次に進めないので、単身世帯向けのセーフティーネットをやはり新たに構築する必要はあるかと思います。

 以上です。

鈴木公述人 ありがとうございます。

 まず、佐藤公述人もおっしゃったとおりでございますけれども、生活の安定ということですよね。生活の安定というのは、給付金を増やすとか、補助金をちょっと増やすとか、一時的なものを増やすということではなくて、やはり結婚をして子供を産もうというためには、遠い将来まで安定するというか、自分の生活が安定することを見越せることが重要なことなので、やはり雇用問題が一番重要なのかなというふうに考えます。

 非正規が増えているのでしようがないんですけれども、非正規であっても、成長産業に人が移って、明るい将来が見通せるというような、雇用を流動化させるとか、生産性の高い部門に人を移していくような流動化政策も含めた雇用政策というのが非常に重要だと思います。

 もう一つは、特に女性の場合なんですけれども、やはり結婚したり子供を産むとキャリアを断念しなきゃいけない、長時間労働とかいろいろな問題があって、転勤するとか問題があって。だから、その働き方改革みたいなものも併せて重要であって、共働きで結婚してもキャリアを諦めなくて済むような働き方改革ということなので、何か厚生政策というよりは、労働政策なんじゃないかなというふうに私は考えております。

 以上です。

角田委員 ありがとうございました。

 最後に、では、佐藤先生に一問お伺いをしたいと思います。

 財源をできるだけ効率的、効果的に活用する、本当に必要とする人に必要な支援を届けるために、デジタル化というものもこれからその方向で進めていかなければいけないと思います。

 そして、このデジタル化の基盤となるものにマイナンバーカードがあるわけですけれども、これまでこの活用分野というのが税、社会保障それから災害対策に限定をされてきましたけれども、コロナ禍を機に給付金の支給にも拡大されました。

 今後、更なる公平な支援、また迅速な支援を行っていくためにこの活用をどのようにしていくべきかということについて、お考えがあればお願いいたします。

佐藤公述人 ありがとうございます。

 マイナンバーカード、できるだけふだん使いできるといいなと思います。例えば何かの会員証に使えますとか、住宅ローンを組むときの身分証明書に使えますとか、銀行口座を使うときそのまま使えます、身分証明書として使えます。今なら、運転免許証を持ってこい、住民票を持ってこいとかと言われるじゃないですか。こういったものについて、やはりふだん使いだと思うんですね。

 もちろん、税も給付も生活の一部ででしかありません。なかなか、税金を払う機会というのは年に一回とか二回ですし、給付だって確かに何かあったときにしかもらわないわけじゃないですか。であれば、マイナンバーカードをふだんの生活の中にいかに使っていくかということ、ここが問われる工夫かなというふうに私は思っています。

 そういう具体的なアイデアはむしろ産業界の方々から、企業の方々から出してもらって、もちろん安全な利用というのが大事、大前提になりますけれども、やはり、従来の枠を超えて、ふだん使いをしていくという、そういう方向に知恵を働かせていく必要があるかと思います。

 以上です。

角田委員 時間となりました。

 貴重な御意見、大変にありがとうございました。

小野寺委員長 次に、石川香織さん。

石川(香)委員 立憲民主党の石川香織でございます。

 四人の公述人の皆様、本日は、お忙しい中、御出席いただいてありがとうございます。先ほどのそれぞれの御専門のお話も含めて大変勉強になりました。

 私は、今日、四人いらっしゃっておりますけれども、今国会の大きな焦点の一つになっています子供、子育て支援金を中心にお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、西沢公述人にお伺いをさせていただきます。

 今回の子供、子育て支援金は実質負担なしということを、岸田総理、強調されております。二月二十六日の予算委員会でも改めてこのことを強調されておりましたが、率直に、実質負担なしの実現は可能かどうか、お伺いします。

西沢公述人 ありがとうございます。

 前提としまして、負担なしというのが私は間違っていると思うんですよね。政策に自信があれば、皆さん、一兆円出してください、でも、これは二兆円、三兆円のリターンがありますよというふうに言うべきです。ですので、負担なしを是としているところが私はそもそも間違っていると思うし、あと、政治家が国民に負担をお願いするというロジックも間違っていると思うんですよ。皆さんは、十万人、二十万人の投票を受けて代議士として国会に出ているわけであって、国民の民意を再現する必要があるわけであって、一方的に国民から税をむしり取るわけではないので、そこは正々堂々と政策の価値を金額として示すべきであり、実質というのは、普通、物価上昇を除いた実質とか、経済学で使いますよね。だから、そこはよく分からないです。

 最後に一つ。働いている人はいいんですよ、賃金を上げればいいので。年金受給者は、既裁定年金については、物価スライドにとどまり、かつ、マクロ経済スライドが入っていますので、確実に負担増になります、個々人にとってみれば。ですから、それもあって政府の答弁では、全体として、マクロで見ればというふうに入れられると思うんですけれども、ここはもっときめ細かに議論していくべきだと思います。

石川(香)委員 今ほかの委員からも、そのとおりだという声が聞こえておりましたけれども、今回、賃上げと歳出改善をするから国民の負担は実質なしにするんだ、この説明は詭弁じゃないかということで再三予算委員会で取り上げてきたわけなんですけれども、本当のところは、収入だとか加入する医療保険制度によって、自分はどれぐらいの負担なのかということをみんな知りたいわけですよね。そうした議論の大きな根拠になったのが西沢公述人の医療保険制度ごとの試算であります。私もそれを基に質問させていただきましたけれども、労使合わせて、協会けんぽで幾ら、幾ら、幾らというやつですけれども、労使を合わせて、五百円どころか千円になるのではないかという質疑に対して、加藤大臣も、可能性があるということを答弁しました。

 このニュースについては、SNSでも、ハッシュタグ月五百円ですとか月千円というのが一時トレンド入りすることもありまして、マスコミも、増税隠しではないかとか、子育て増税だというようなことも大きく報道されました。

 続いて、また西沢公述人にお伺いをさせていただきたいんですけれども、この西沢先生の試算にあるような医療保険制度ごとの大まかなイメージ、これに対しては、政府は否定はしてきませんでしたけれども、直接の言及も避けてきたということで、改めて、この試算額のイメージをお作りになった上での、予算委員会の議論の流れ、そして、ハッシュタグがついて一時トレンドになるような世の中の動きを含めて、どのように受け止めになっているかということをお伺いできればと思います。

西沢公述人 私のこの試算といいますか計算は、月刊自治研という自治労の月刊誌に掲載されている、ほんの小論です。ですから、そこに目が留まったわけですけれども。

 私は、国会を見ていて思ったのは、金額に焦点が当たり過ぎているというふうに一つ思ったんですね。というのも、私の理屈としては、原理原則として支援金は外れていると思っているので、一円でも駄目なんですよ。

 その上で、金額については、政府の答弁をどう見ていたかというと、多分、政府はスーパーコンピューターで計算しているから時間がかかっているかと思いますけれども、被用者は、計算は簡単ですよ。多分、〇・三%前後だと思うんですよ、これは。五百円を超える可能性があるというのは、今、協会けんぽの賦課上限というのは、月収でいうと百三十数万、ボーナスが五百万なら年収で二千数百万なので、二千万だと、〇・三を掛けて六万、こういう計算なんですよね。ですから、非常に簡単な計算なので、そこを、答弁の中では、超える可能性があるとおっしゃっていたと思います。

石川(香)委員 金額に焦点が当たり過ぎるという指摘もありました。

 その上で、鈴木公述人、それから再び西沢公述人にもお伺いをさせていただきたいんですけれども、今回の支援金という形の仕組みですけれども、経団連もコメントをしておりまして、社会保険料の負担を増やすことは賛成できないということであったり、現役世代の可処分所得の減少に直結をし、せっかくの賃上げに水を差すといったような話をしております。

 午前中も、このような話、別の公述人の中にもありまして、せっかく一年かけて五百円ベースアップをしたのに、これがなしになってしまうのではないか、ワンコインだからいいということではないというような指摘もありましたけれども、社会保険料の負担が大きくなることによって安定雇用に影響が出るのではないかという点について、お二人に改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

鈴木公述人 大変重要な課題だと思います。

 直接のお答えとしては、もちろん、保険料率が上がりますので、これは賃上げの効果をふいにするという声もありますけれども、負担増にほかなりませんので、これによって雇用が減るということはあり得ると思いますし、実際にそういうことは起きると思います。

 ただ、問題は、これから保険料はどんどん上がるんですよね。だから、子育てのものが上がるから、保険料が上がるから駄目というんじゃなくて、どれに優先順位をつけるかですけれども、私は、子育て分ぐらい上がったところで、それは仕方がないんだと思います。

 それよりも、どんどんどんどん保険料がこれから上がっていって、国民負担率も間違いなく、短期的にはどうか分かりませんけれども、長期的には上がっていくので、そこの対策をしっかりやる必要があって、子育ての三・六兆ぐらいの小さな金の話じゃなくて、これから何十兆、何百兆という分の負担が上がってきますので、そこをどうするかという根本的な議論をすべきだというふうに考えます。

西沢公述人 ありがとうございます。

 幾つか追加的な情報で、例えば国民健康保険の保険料の滞納率というのは小さな市町村ほど高く、全体としても九〇%の半ばぐらいだと思います。滞納しているんです。やはり重いんですよ。そういう人たちが多分、先ほど申し上げた五百万人の人たちが多く含まれていると思います。

 もう一つ。大企業に負担させろ、これは一見正義に聞こえるんですけれども、ちょっと検証が必要ですよね。大企業はどうやってそれを捻出するか。それは、正規雇用を非正規雇用にしているかもしれないし、中小企業に負担を求めているかもしれない。社会保険料の事業主負担というのは、転嫁と帰着が非常に不透明なんですよね。どうやってそこで賄っているのか。目に見えないところにしわ寄せが来ている、それが今先生がおっしゃった雇用の不安定につながっている可能性が非常に大きい。

 であれば、消費税や、消費税であれば、転嫁と帰着のルールが定まっています、最終消費者に帰着することになっているし、所得税であれば、課税最低限もあるし、累進税率も導入されているので、こうしたものの方が個々人、家計に着目して設計できるのではないかというのが、私だけでなく、多分大方の考えかなと思っております。

石川(香)委員 事業主の負担が増えることをどこで捻出しているかという視点は非常に重要だ、そのとおりだと思います。

 非常にこれは難しい問題であるんですけれども、現役世代の負担が大きいということもクローズアップされているわけですけれども、今回の子供、子育て支援金を含むいわゆる異次元の少子化対策というものは少子化につながっていないのではないか。先ほどの鈴木公述人も、結婚しないことが問題であって、そういうことにつながっていないのではないかということをおっしゃっておりましたけれども、いろいろな対策で、いろいろな方向性で手を打っていかなきゃいけないという意味で非常に難しい問題であるんですが、最後、四人の公述人にお伺いしたいと思います。

 子育て支援金を含む今回の法案については、現役世代に負担がかかるわけですけれども、ただ、子供がいる家庭に集中した対策が多い。その一方で、若い世代というのは、子供を持っていない世帯もいますし、これから出産、育児をする世帯がいるということを含めますと、若い世代を全体的に支援する何か政策が必要ではないか。佐藤公述人は先ほどの話で、単身世帯のセーフティーネットも考えなきゃいけないと。そのとおりだと思いますけれども、少し大きな話になってしまいますけれども、若い世代を全体的に支援する枠組みとしてどんな工夫が必要か、どういうポイントに注力するべきかということがありましたら、それぞれの御視点で御答弁いただければと思います。

小野寺委員長 恐縮ですが、時間が迫っておりますので、端的にお答え願いたいと思います。

高久公述人 若い世代を全体的に支援するというのは非常に必要なことかと思います。そのための賃上げということを積極的に進めていく、政策的に支援していく、経済の足腰を強くしていく、それしかないんじゃないかなと思います。

 以上です。

鈴木公述人 まさにそのとおりなんですけれども、それに加えて申し上げたいのは、今の日本的雇用慣行というものが若者に非常に重圧をかけている。つまり、若者が生産性以下の賃金で、後でそれを取り返すという仕組みになっているわけですけれども、それをやはり変えていく。日本的雇用慣行、若者に非常に重圧をかけているものを変えていくというような観点が必要だと思います。

佐藤公述人 若い人の場合、その支援は今の支援なのか、これから将来の支援なのかは分けて考えた方がいいと思います。ややもすると、今現金を配ればいいという話ではなく、むしろ、持続可能な社会保障制度をちゃんとつくれば自分たちの老後は大丈夫なんだという、その安心感を若い人たちに与えなければならない。

 実は、不幸にして、社会保障は若い人にとってみれば今最大のリスクなんですね。今後、持続するかどうか分からないからです。だからこそ、けちに聞こえるかもしれませんが、社会保障の持続性を担保するということは、ある意味、若い人たちに対する支援になるかと思います。

西沢公述人 私は、ジェンダー平等だと思います。

 この会場を見ても男性が多いですけれども、意思決定に関してもっと女性の声が反映される、また、キャリアの形成において、出産、育児がキャリアの中断にならないような社会をつくっていくことだと思います。

石川(香)委員 ありがとうございます。

 これからの経済を上向けることが必要ではないか、それから、今なのか、これからなのかという観点で安心してもらえるような政策が必要ではないかという観点、それから、ジェンダーの観点、キャリアの観点が必要ではないかという話がありました。

 今日は、子供、子育て支援金について中心にお伺いさせていただきましたけれども、この負担の割合も世代間で大きな差があるということで、公平な制度としては言えないのではないかということが大きな問題点だということを改めて再認識をしました。

 その上で、やはり負担を、どうしても発生するわけですから、負担を強いるわけですけれども、こういうことに使うのでこういうふうによくなりますという説明を正々堂々とするべきではないかということを含めまして、非常に今日は四人の公述人のお話、参考になりました。

 引き続き、この支援金、これから法案の中身も審議されるということですので、どんな議論が行われて、よりよい制度になっていくかということを、これから我々もしっかり議論していきたいと思っております。

 今日は、お忙しい中、お集まりをいただきまして、ありがとうございました。

 以上になります。

小野寺委員長 次に、奥下剛光君。

奥下委員 日本維新の会の奥下剛光でございます。

 まずは、本日、お忙しい中、四人の先生方、お時間を取っていただき、ありがとうございました。また、貴重なお話、ありがとうございました。

 限られた時間でございますので早速質疑に入りたいと思うんですけれども、先ほど答弁にもありましたように、佐藤先生がおっしゃっていただいたと思うんですけれども、年金とかそういった個別の話をする場はあるけれども全体的なビジョンが欠けているということだったと思うんです。その言葉を聞いて、私が当時お仕えしていた宮沢が、本当に、それぞれのポジションで言うことはいいけれども全体のビジョンが欠けているというのは常々おっしゃっていて、そういった意味で、ちょっとばくっとした聞き方になるかもしれないんですけれども、我が国の社会保障制度を維持可能なものに今後していくにはどういったものが欠けているというふうにお考えでしょうか。これは、四人の先生それぞれにお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

高久公述人 我が国の社会保障を持続可能にするために今欠けていることというのは、年齢による区分というのをやはり撤廃していく、まさに全世代型の社会保障に基づいた給付と負担の在り方というのを徹底していく。それによって、能力のある人であれば支えるようになりますし、若い人であっても必要であれば給付を得て将来のビジョンが描けるという社会になるはずですので、日本はやはり年齢でいろいろ物事が決まっていることが非常に多くて、ここに四十代の方もほとんどいないんだと思うんですけれども、そういう社会ではございますので、年齢の壁というのを取っ払えるような社会ビジョンというのを描くというのが一番重要なんじゃないのかなと思います。

 以上です。

鈴木公述人 ありがとうございます。

 大きな話なんですけれども、現状で、社会保険というのは社会保険料で賄うというのが基本ではありますけれども、実際には、保険料だけでは、保険料が伸びない中でどんどん給付は伸びていますので、非常に大きな穴が空いているわけですね。大体、年間五十兆ぐらい穴が空いていて、それを税とか借金で埋めているわけですけれども、このぱかっと、第二のワニの口という言い方もありますけれども、第二のワニの口を閉じようとする努力をするしかないと思うんですね。

 二つぐらい本当は理論的には方法があって、一つは、若者が高齢者の負担をするといういわゆる賦課方式というものを、高齢者が若いうちから積み立てていて、自分が高齢者になるのは分かっているわけですから、そのための準備をしていくというやり方が一つ。でも、これは非常に難しいですね。政治的にハードルが高いので、もう一つのやり方としては、給付をスリム化していくという方法があろうかと思って、もうそれしかないのかなと。まあ、負担を高めるという方法があるんですけれども、負担を高める方も非常に批判が多いので、給付をスリム化するという方法しか多分ないんじゃないかと私は思っています。

 それは具体的に何なんですかということなんですが、自己負担率を高めるとか、介護の軽要介護のところを外していくとか、要するに、保険給付を外していくということで、給付率の範囲を狭めていくということですね。

 ただ、これは非常に批判が多いんですけれども、ただ、その外していって残り自分でやらなきゃいけない部分についても、例えば民間の保険を入れる、これは諸外国ではもうやっていることなんですけれども、民間の保険を買ってそれで補う、それに対する優遇税制を入れるとか、自助努力にすること、例えば年金の場合だと、個人年金とか企業年金とか、自分で年金をつくるという手があるわけですけれども、それに対する優遇税制を入れていくとかそういう形で、保険給付をスリム化するんだけれども、だけれども、野放しじゃなくて、そっちの方も自助努力とか共助の努力を支援する政策を打ちますよというようなことをするのが多分現実的なんじゃないかなというふうに考えます。

佐藤公述人 まずは、直接のお答えになっているかどうか分かりませんけれども、私は、所得税と住民税と社会保険料の三位一体改革が必要だと思っています。何を言っているかというと、課税ベースの統一です。

 日本は三つの所得があるんですね。一つは所得税の所得、住民税の所得。違います。控除が違うからです。三つ目が、社会保険料、特に勤労世帯に関して言うと、社会保険料でいう所得ということになってきます。これらの課税ベースを本来、統一する場、そういったことを決める、どこか委員会があればいい。実は、私、政府税制調査会の特別委員ではありますけれども、政府税制調査会では所得税と住民税の議論はしますが保険料の議論はしないので、別に税制調査会でやれとは言いませんけれども、どこかで三つを合わせて議論をする場があっていいかと。

 その上で、そこの同じ課税所得に対してどういう税率を掛けるかはもちろん自治体の判断だし、それぞれの保険者の判断でもいいということは一つあってしかるべき。これは、簡素化にもつながるし、公平性の確保にも寄与するかと思います。

 それからもう一つ、最後に重要なのは、蛇口が日本は多過ぎるんです。つまり、社会保障の給付は増えていく、じゃ、これは何で賄うのか、保険料ですか、税金ですか、はたまた何かほかのものですか、資産の運用ですか、自己負担ですかというときに、余りにも蛇口が多過ぎるので、皆さんが勝手な想像をするわけなんですね。保険料に反対だという人はいずれ税金を上げればいいやになるかもしれないし、税金も嫌です、保険料も嫌だという人はいずれ自己負担を上げるんでしょうという形になるかもしれない。みんなが勝手な想像をするから合意形成ができない。であれば、最後にどこで帳尻合わせするのかということを決めてしまうということ。

 例えば、いろいろな歳出改革をやります、それでも足らず前は、保険料を上げますでもいい。あるいは、足らず前は消費税を上げますでもいい。とにかく、最後の帳尻合わせは何なのかということについてはむしろ明確にしておくということがある種必要なのかと思います。

 以上です。

西沢公述人 年金については、政府の規模を縮小していくことだと思いますね。公的年金も縮小せざるを得ない。その代替として、私的年金、就労を促進していくということです。ですから、より長く働き、自分で貯蓄する。

 医療に関しては、次にコロナのような事態が起きたときに、私たち国民は、保健所ではなくて、かかりつけ医、あるいは総合診療医、家庭医ともいいますけれども、にコンタクトできるように登録しておける仕組みをつくり、それによって医療のありがたみを健康なうちから実感できるようにしておく。それが保険料を喜んで払えるような仕組みになっていると思います。

 先ほどサービスの話がありましたけれども、ファイナンスだけではなくて、そういった医療提供体制をつくっていくことが社会保障の持続可能性を高めるのかなと思います。

奥下委員 ありがとうございました。

 次の質問に移るんですけれども、先ほど鈴木先生もちらっとおっしゃられましたけれども、税負担、これは選挙とかを考えたらなかなか言いづらいところはあると思うんですけれども、我が党は、大阪においては、お願いするべきはお願いするということで、負担をお願いしてやってきた経緯があります。そうした中で、今、党内において、医療制度の抜本改革に向けて党内議論をしているんですけれども、これは生活保護の方にも一定お願いしていくべきじゃないかという議論をしているんです。

 仮にそうであるとするならば、どれぐらいの金額であり、そういったもの、やはりエビデンスがないとなかなか言いづらいところもあるので、そういったエビデンス等があれば教えていただきたいんですけれども、これは鈴木先生と高久先生、もしお考えがおありでしたらお聞かせいただきたいんです。

鈴木公述人 ありがとうございます。

 まず、前提として申し上げなきゃいけないのは、我が国の生活保護制度というのは、半分医療扶助というような、世界的に見て非常に特殊な制度を取っているということですね。なので、医療だけ何か特別にするというのはおかしい、基本はやはり生活扶助であるべきなので、私は保険料と自己負担は生活保護から出していいと思うんですが、基本的に国民健康保険の中に入れるということになれば、何も別にそんな特別な話じゃなくて、きちんと自助努力も必要だし、でも、生活保護なので自己負担は払えないからそこだけは補ってもらうというような制度になるので、まず、ユニバーサルな制度として、生活保護だけ特別で医療扶助でやるというところを改革するだけでも随分違うんじゃないかなと思います。

 ですので、何か生活保護の医療扶助だけターゲットにするというんじゃなくて、全体の中に位置づけて、みんなが努力していることをちゃんとやってもらうというのが基本なんじゃないかと思います。

高久公述人 今現在、生活保護の医療扶助は非常にかさんでいるわけなんですけれども、やはり鈴木さんが言われたように、国保に再編していくというのは一つの方向性なんだと思います。

 それで、無料の医療についてどう考えるかというと、いろいろな考え方がありますけれども、やはり無料というのは非常にモラルハザードを起こすのではないかという研究も多いところです。

 これは小児で試されているところですけれども、無料の自治体と二百円取る自治体で相当医療費が違うというような研究もあったりしますので、もし医療扶助が問題だという考えなのであれば、そうした低額の、少額のお金を取るだけでも相当な行動変容があるということが知られているというのをお伝えしておきます。

 以上です。

奥下委員 ありがとうございます。

 ちょっとまだ党内議論の途中なので、またいろいろお尋ねすることはあるかもしれませんけれども、その際はよろしくお願いいたします。

 それで、佐藤先生にお尋ねしたいんですけれども、済みません、先ほど一瞬トイレに行ったので、お話しされたかもしれないんですけれども、震災の支援金制度についてちょっとお聞きしたいんです。

 昨年、福岡の水害のあったところに私が行ったときに、被災地の方がおっしゃっていたのは、我々は今復興税を払っている中で、我々は払っているけれども、我々のところに充てられず不公平だという意見が多くの方から寄せられていたんですけれども、今後、絶対南海トラフもあり、全体の見直しが必要じゃないかなというふうに考えるんですけれども、先生のお考えをお聞かせください。

佐藤公述人 御質問ありがとうございます。

 私は震災関係の仕事もしていたことがありますので、今回の能登の震災もそうですけれども、もちろん、災害というのは、地震に限りませんが、やはり日本でどこでも起こり得るということだと思います。なので、今回、東日本大震災を契機に復興庁をつくったわけであります。ある意味、復興庁の守備範囲を、いわゆる防災省か何かへ格上げして、やはり全国の風水害、地震を管轄するようなやり方というのはあると思います。

 その上で、また税金の話かと思われるかもしれませんけれども、ある種、その財源をファイナンスするための目的税というのはあってしかるべき。例えば、所得税に対する付加税のような形であらかじめ財源を確保しておくということであれば、いざというときに被災者の方々への支援につながるかというふうに考えております。

奥下委員 ありがとうございます。

 ここは僕も委員会でお尋ねしたこともあって、ちょっとここはやはり見直しが必要かなというふうに思っておりますので、また御相談させていただきたいと思います。

 先ほど来、午前中もそうですけれども、支援金制度の導入に関して皆さんいろいろお尋ねしているので、この後も続くかと思うのであれなんですけれども、皆さんのお話を聞いていても、やめるべきだという意見が多いと思うんです。総理が今回の話を聞いていただいて思いとどまってくれたら一番いいんですけれども、今、政倫審に出られているので見ていることはないと思うんですけれども、多分、このままいくと、進んでいくんじゃないかなと。そうした中でも、何か少しでも負担が減るようなことがあれば、ここに注意した方がいいとか、ちょっとアドバイス的なものがあれば、なかなか難しい話だとは思うんですけれども、先生それぞれにちょっとお聞きしたいなと思いまして、よろしくお願いいたします。

小野寺委員長 時間が迫っておりますので、端的にお願いします。

高久公述人 子育て支援の社会保険料負担だとしても、医療の社会保障負担だとしても、これは色が分けられているわけではありませんので、消費者にとっては一緒です。ですので、保険料支出を抑えたいのであれば、私が先ほど言ったように、自己負担の問題を考えるであるとか、より踏み込んだ歳出改革を行うということしかないんじゃないかなと考えています。

鈴木公述人 政策評価をきちんとやるということだと思いますね。

 つまり、何が効果があって効果がないのかはっきりするように、初めから評価するとしていろいろ調査を仕込まなきゃいけませんけれども、その結果によってはこの政策を外す、その結果、保険料が低くなるというように、やはり、不断の見直しをすべく、きちんと行政評価を仕込むということが重要だと思います。

佐藤公述人 もし仮に支援金を入れるとすると、これを契機に、皆さんの払っている社会保険料の見える化をするべきです。

 自分たちの払っている保険料が、どれだけが自分たちの所属する組合に返ってきているのか、どれくらいが高齢者に対する支援金になっているか、どれくらいが子育て支援に回っているのかということを給与明細書にはっきり書くべきであって、そういう形で保険料の使途というのを明らかにしておくというのが一つ説明責任の果たし方かと思います。

 以上です。

西沢公述人 私は、支援金は取り下げて、加速化プラン、一番から四番までありますけれども、四、三、二、一の順で重要だと思うんです。ですから、一番の現金給付の拡充はやめておくという合意をするのが一番いいと思います。

奥下委員 ありがとうございます。

 我が党の青柳議員も総理にはっきり申し上げたんです、これだけ必要だからこれだけお願いしますとはっきり国民の皆さんにお願いした方がいいんじゃないかと。本当にそのとおりだと思うんですね。

 先生方がおっしゃるように、税の使い方、この可視化、やはり納税者の皆さんが納得感を得られれば問題ないというふうに我々は思っておりますので、今後も、これはここで言うのがいいか分からないですけれども、そういった、マイナンバーを利用したものもそうですし、僕個人としては、今、政治家のこういった資金もマイナンバーで可視化して管理していく方が、普及も早いし、国民の納得を得られやすいんじゃないかなというふうに個人的には思っておりますので、また今後とも御指導いただければと思います。

 本日はありがとうございました。

小野寺委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、四人の公述人の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。

 先ほど来、子育て支援金の財源をどうするかが話題になっております。政府は、一兆円の財源に対して被保険者で割ると大体五百円という大ざっぱな試算を出しちゃって、それが独り歩きしてしまったんだと思うんですね。西沢公述人が、保険の種類によって倍以上の人もいるといった試算を示し、これもまた大論戦となっておりました。やはり、複雑な医療保険の世界で額を試算するという技術的な問題は今日は脇に置きまして、考え方について質問したいと思います。

 西沢公述人は、昨年五月二十三日の日本総研のリポートの中で、少子化対策への社会保険料利用八つの問題点について論じておられます。制度がその後詳しくなったとしても今でも使えるというか、重要な指摘ではないかと私は思っております。

 特に、そもそも、社会保険料の使い道と料率は健康保険組合など保険集団内において自律的に決定されるものであって、保険者自治の侵害という指摘、本日もされておりましたが、ということはとても大事だと思います。

 私は、財源は消費税という声がずっとあった中で、やはり、それを言うと今世論が反発するからという政治的な思惑で出されてきているのかなというふうに思ったんです。そっちが先に来ちゃって、制度設計が後回しになり、そして、肝腎の子育て世代にも不人気で、かつ、世代間の分断にもなっている、こういうふうに思っておるんですけれども、この点で西沢公述人に御意見を伺います。

西沢公述人 お見立てのとおりだと私も思います。

 五百円という金額は、去年の半ばからメディアを通じて出ていました。何にも情報がないところから新聞が報じることはありません。ですから、国民向けには、ワンコインならよかろうという雰囲気をそこで醸成していた。他方で、政府は各ステークホルダーと多分交渉していたんでしょうね。でも、こういう政治の仕方が、方法が私は間違っていると思う。訴えるのは、ステークホルダーではなくて、国民一人一人なわけです。ですから、本来であれば、そういう金額については、少なくとも審議会などで報告しながら議論していくべきである。

 消費税について私が大変懸念しているのは、この二十年近く、消費税が悪者になり過ぎているわけです。でも、今日お話ししたとおり、社会保険料を所得再分配目的に使うよりも、消費税を中心としたタックスミックスの方がよほど公平で、雇用への影響も和らげることができる。ですので、そうした理論的な議論を、増税ではないかというふうに与野党でたたき合うのではなくて、やらないと、先ほど申し上げたとおり、我が国全体として不幸になる。

 ですので、子供、子育て支援金を企画した人も、当然、消費税の方がいいと思っているはずなんですよね。でも、政治がそれを許さないから、でも少子化を止めなければいけないという使命感の下で苦肉の策として出した。でも、それがこうした不幸な結果になってしまっているということは、よくよく我々として省みる必要があると思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。大変貴重な指摘だと思います。

 もちろん、御存じだと思いますが、我が党は、消費税でやれと言っているわけではございません。ただ、やはり、ヨーロッパの方ですと、高い消費税でもそこにリターンがある、年金にしろ、医療にしろ、教育費にしろ。やはりそういう納得感が得られての税率なわけですよ。ところが、日本の政府は、どちらかというと、税率だけそこにまねしようとしていて、実際、制度設計は追いついていないというそもそもの問題がありますので、この議論はまた別な機会にしたいと思います。

 子供支援金については、先ほど鈴木公述人もきっぱりおっしゃっていただいて、全く痛快な御指摘だったと思うし、全く同意するものであります。今日は、せっかくなので、年金のことを質問したいと思います。

 二〇二五年の年金改正の課題ということで、先生、学習院大学での論文を拝読しました。二〇〇四年の年金改正のときに、百年安心と言われたあのときに、マクロ経済スライドの導入によって十九年かけて年金水準を二割カットするんだ、そういう制度設計だったんだけれども、デフレが長く続いたためにマクロ経済スライドがずっと発動しないで、終了時期が長引いた、それは結果として現役や将来世代への負担押しつけになるという御指摘だったのかなと思っています。

 私は、この二〇〇四年のときはいないんですが、二〇〇六年以降、厚労委員会でずっと年金の議論に参加をしておりますので、先生が指摘している、厚労省の五年に一回の年金の財政検証、これに対しても、まず、経済成長率が余りにも、余りというか、夢みたいな率を出しているということと、それから、モデル世帯が現実的じゃない、そのことをずっと指摘してきたんですが、やはりそれを認めちゃうと年金で暮らせないという結論が出ちゃうので、そこをずっと先送りしてきたということが非常に問題にあるのではないか、このように思っております。

 その上で、やはり、基礎年金を増やすということが議論の中であったということがあって、私はそうするべきだと思うんです。基礎年金というのは、国民年金であり、被用者年金にとっても基礎となるものでありますので、ここはマクロ経済スライドをかけるべきではないとずっと議論してきたし、社保審の中でも議論されてきたはずだと思います。

 デフレの中で実質賃金が上がらないために、物価スライドではなく賃金スライドにしてきた。並びに、キャリーオーバーという形で、マクロ経済スライドをいずれ必ずするというふうになっちゃって、少しぐらい賃金が上回ってもそのときばっさりとスライドされてしまうという、私たちは年金カット法案と呼んだわけですが、これからインフレに向かう中でこれがどうなっていくのかという大変不安も感じております。このままこの制度はどうなのか、御意見を含めて伺います。

鈴木公述人 大変重要な点を質問いただきまして、どうもありがとうございます。

 二つの問題に分けて考えるのが私はいいと思っていまして、年金財政の維持可能性という話と、それから、年金を物すごい最低のものしかもらえないという人たちの、何というか、再分配の問題、これを分けて考えるべきだと思います。

 まず一つは、今のままで年金制度がもつんですかという話なんですが、私は非常に厳しいと思います。

 というのは、今々、年金の運用がいいとかそういう問題じゃなくて、この先の百年とかいうような計画でございますので、そういう意味では、マクロ経済スライドをずっとサボっていて過大給付がずっと続いておりますので、これはやはり、計画どおりマクロ経済スライドを実行する、しかも、デフレであってもちゃんと実行するような、全体の話ですよ、国民年金だけというんじゃなくて全体の話としては、マクロ経済スライドがきちんと動かせるようにするだとか、それから支給開始年齢の引上げの議論をスタートするというように、遠い将来も年金という制度がもつための手は打つべきで、今、社保審の年金部会が議論しているような、そういうところには触らずにいようというような態度ではこれはまずいというふうに思います。

 ただ、それをやってしまうと何が起きるかというと、国民年金の受給者については、現状、平均額でいいますと四万円台ですけれども、ここから三割カットしなきゃいけないという話になるので、三万円台に踏み込んでしまうということですから、どうやって生きていくんですかという話になるわけなので、国民年金、基礎年金というよりは国民年金ですけれども、この救済というのは別途考えなきゃいけないということで、一つの方法としてはマクロ経済スライドをかけないという方法もあると思いますが、もっと別の形で考えるということもあり得ると思いますので、そこは別途議論すべきだというふうに思います。

 いずれにせよ、このまま三万円台の国民年金になってきますと、生活保護にということに、可能性としては非常に高まるわけですけれども、生活保護は全額公費で全額税金の制度ですので、だから、そういう意味では、どうせ生活保護になるんだったら国民年金をもっと、最低限の人がもっと手厚く、それで生きていけるようにするというような、これは、何といいますか、所得分配の話ですけれども、再分配の話ですが、それは別途議論しなきゃいけなくて、今みたいな、何か国民年金の保険料の納付を延長するから大丈夫だとかいうのは、全く無責任な話だというふうに考えております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 厚労省も結構、省の中で縦割りで、先生御指摘したように、年金はこれ以上出せないけれども生保ならいいでしょうと。それは、同じ省庁の中の税金の話なのに結局そういう矛盾を起こしているという点では、やはりきちんとした制度設計をしなければならないし、やはり、基礎年金を拡充するということをまず、二つに分けてとおっしゃったけれども、大事じゃないかなというふうに思っております。ありがとうございました。

 それで、もう一度西沢公述人に戻りたいと思うんですけれども、先ほど国保のお話をされて、大変興味深く聞きました。それで、今、国保の中の被用者が大体三分の一以上いるんだという資料も出されたと思うんですが、やはり、この間ずっと、事業者が経営をやっていくのが大変で事業主負担を払いたくないので、雇っているんだけれども国保になるということがすごく進んできたということがあると思うんですよね。その反映があるというのと、だけれども、逆に言うと、その被用者が、今、政府としては、国保ではなく被用者保険に入るべきだということで一生懸命やっているんだが、それをやってしまうと国保の財政自体がもたなくなるということもございますよね。

 そういう意味で、国保の制度自体がかなり限界に来ているのではないかということを思うんですが、率直に御意見、もしあれば伺いたいと思います。

西沢公述人 我が国の健康保険は、原則、国民健康保険に入る、ただし、被用者保険に入っている方や後期高齢者医療制度の方はそこから抜けるという法律はたてつけですけれども、でも、そのたてつけとは裏腹に、結局、被用者保険や後期高齢者医療制度に入れない人が入る仕組みになってしまっている。そこに継ぎはぎ的に公費投入したりしていますが、今日も御覧いただいたとおり、現役世代の負担は重いですし、とても厳しいとは思います。

 今、政府がされている方針というのは、極力、国民年金や国民健康保険ではなくて被用者保険に入れようという、それは全く正しい方向性なんですけれども、ただ、年金の世界で議論になるのは、やはり国民年金保険料と被用者保険の保険料負担格差なんですね。国民年金保険料は一万七千円弱ですけれども、被用者保険は八万八千円に一〇%を掛けるとそれより安くなってしまうので、ここがネックになっています。

 その根源にあるのは、今の基礎年金制度というのが、基礎年金という独立した制度ではなくて、基礎年金拠出金を出して基礎年金をつくるという、いわばフィクションな制度になっていることに多分起因していると思うんです。ですから、ここを根本的に見直していかないと、本当に、国保に入っている被用者、国民年金でしかない被用者を被用者保険に入れていくというのは難しいと思うんです。

 私が理想としているのはカナダみたいな仕組みなんですが、それを、ルーティンとして開かれている審議会ではなくて、もう少し大きな枠組みで議論していくことが必要かなと思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 社会保険の制度の今、矛盾が、逆に、今の支援金をそのルートでやると言ったがために本当によく見えてきたのかなと。これは、それこそびほう策で終わらずに議論する必要があるかなというふうに思って聞いておりました。ありがとうございます。

 次に、佐藤公述人に伺いたいと思います。

 予算に関わる様々な場面でコメントを求められていらっしゃると思います。伺いたいのは二つ。

 予備費の問題で、コロナ禍以降、大分予備費が増えてきているんですけれども、例えば十兆円規模の予備費であっても、その都度、コロナ対策だ、能登半島地震だとか言うからいいんだという話では本来はないんだろうということを確認をしたいということが一つ。

 同じ理屈で、今回、能登半島地震の被災者に、住宅再建のためだと言いながら、最大三百万円を議論している。これは対象もおかしい、地域もおかしいという批判が出て、しかも、二〇〇七年改正からずっと議論してきた内閣府をすっ飛ばして、全く無視して、これを厚労省の枠でやっている、これは絶対おかしいと思う。だから、我々は支援金を増やせとは言ってきたけれども、でもこういう決め方はおかしいと思うんですが、一言。

佐藤公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、御指摘のとおり、予備費というのは本来、例外であるべきであります。

 御案内のとおり、予算は財政民主主義に従うわけですから、予算の中身というのは国会で審議するものです。なので、予備費はその使途があらかじめ定かではないということになりますから、本来であれば、年度当初には予想できなかったようなことに対して、補正予算を組む前に迅速に対応するというための機動的な目的を持っているわけです。

 それに、その機動的な目的に対して年間数兆円が必要かというと、必ずしもそうではないというふうには思います。今回の予算案では、前、四兆円だった予備費が二兆円に一応下がったということで、若干の平常化が見られると思いますけれども、やはり巨額の予備費というのは本来であれば予算の中では例外であるべき。

 では、どうするかということですが、もし予備費について行政側に大きな裁量を認めるということであれば、その結果に対する説明責任を本来、国会で果たすべきということになります。予算ではなく、こっちは決算委員会になると思いますけれども、ちゃんと、予算の予備費がどんなふうに使われたのか、果たしてそれはどんな効果があったのかということについて見極めるべきだと思います。

 あと、御指摘のとおり、今回の三百万につきましては、被災者の方を考えるともちろん必要な措置かもしれませんが、その決め方についてこれでいいのかということはもうちょっと全体像を見て考えるべきだし、これからの能登の在り方も含めて、やはり全体のビジョンを持った上で、かつ、東日本大震災はそうだったわけですよ、創造的復興というビジョンの中でいろいろなことをやったわけでもありますので、やはり、そういう全体を見ないままでつまみ食い的に支援の拡充というのは、後々に禍根を残すかとは思います。

 以上です。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

小野寺委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 今日は、公述人の皆さん、ありがとうございます。

 政府は、今回のこども未来戦略におきまして、財政においては自己負担がないと。また、財源にはいまだ不明な点が多いということです。様々な論点をいただきました。その中で、政府は、歳出削減の範囲内で子育て支援金を導入するということを言っています。しかしながら、医療や介護の現場は大変厳しく、なかなか無駄があるのかということを思ってしまいます。

 医療経済の専門家として今日、高久公述人が来られておりますので、是非、先ほど自己負担、高齢者の件、一部お話がありましたけれども、どのような歳出抑制内容が考えられるのか、また、その規模、なかなか高齢者だけで一兆円というのは現実的ではないと、先ほどの説明を聞いて思ったんですけれども、一体どのくらい積み上げることができると考えられるか、お聞きします。

高久公述人 具体的な数字を今ここですぐに挙げろと言われましても非常に難しいところではございますけれども、自己負担というのは、学術的に見ても、高齢者のああいう施策をしていることに対して正当性が少ないと考える人が多くなっていますので、そこで一兆円ほどは最大限で認めるんじゃないのかなということです。

 それから、やはり、提供体制に関しましても、医療費には非常に大きな地域差がございます。非常に大きな地域差があるわけなんですけれども、健康状態がそれによって各県でそれほど違うのかというとそうではないだろう、むしろ、サプライサイドの資質の問題である可能性というのが非常に大きいんじゃないのかというような議論もなされているところです。そうした地域差を、地域医療構想という枠組みが今現在ありますけれども、都道府県を主体として、地域で需要に合った、適正なニーズに合った供給体制を構築していくこと、そういうことによってやはり追加的な支出の削減というか、そういうことが見込めるんじゃないのか。

 幾らになると申し上げることはなかなか難しいことではありますけれども、自己負担の改革であったりとか、それから、地域医療構想の一層の推進とよく言われましたけれども、実効性のある形で、都道府県の責務を明確化する形で、医療費の地域差というものがだんだんと均てん化するような形で進んでいくのであれば、それ相応の財源というのは今現在の形でも出てくるんじゃないのかなと考えております。幾らと申し上げるのは非常に難しいけれどもということで、御承知おきください。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 財源、政府の方はまだ歳出削減について何も具体的な例は出していませんで、空手形と私たちは言っておるんですけれども、その仮定された財源ではとてもこの制度をまだ進められないということでありましたが、幾つか高久公述人からは御提案をいただきましたので、参考にさせていただきたいと思います。

 その中で、そもそも、子育て支援を医療保険に上乗せしていくという制度自体が、今いろいろな議論を公述人の人から聞いたんですが、経済学的に何かほかと比べて優位性があるのかということで、何か根拠を、もしもアドバイスとしてお示しいただけるようなことがあればお聞かせいただければと思うんですけれども。

 高久公述人になんですけれども、今回の子育て支援金をそもそも医療保険上に乗せるということに私たちは疑問を持っておるんですけれども、これに対して参考として何か、経済学的、医療経済学として根拠があるようなことがあればお示しいただければと思うんですが。

高久公述人 医療経済学的に、経済学的に根拠があるのかと言われれば、これは学問上の話というよりも財源論ですので、どういう負担を誰にお願いするのがいいのかという理念の話です。その観点からいいますと、社会保障の持続可能性のために必要な拠出を各保険者でしていただくということは、一定の説得力がある話じゃないかなと思っています。

 ただ、これは経済学的にとか医療経済学的にという話を超えた納得感の問題ですので、国民の皆さんがそういう説明に対してどういう納得が得られるのか、また得られないのかということを判断するのは政治の役割なのかなというふうに考えております。

田中(健)委員 ありがとうございました。

 引き続きまして、西沢公述人に伺いたいと思うんですけれども、本日聞いた国保について、五百万世帯においては各市町村ごと子供支援金の料率にばらつきが生じるとのことであります。医療であれば、給付に関して地域差があるのは、自治体によって支援も違いますから理解はできるんですけれども、今回のこれにおいては、やはり地域でばらつきがあるというのは大きな問題があるんじゃないかと思っておりますし、さらには、料率自体も、医療であればばらつきがあってもいいんですが、これにおいては、一本化する、ないしは国がもう少し関与してできるようなシステムは考えられないかという問題意識があるんですけれども、それについてはいかがでしょうか。

西沢公述人 ありがとうございます。

 今、国民健康保険は、先ほどお示ししたように、料率に市町村ごとにばらつきがあります。それを正当化する理由は、地域ごとに医療提供体制に差がある、大病院があるところもあればないところもあるし、地域ごとに健康改善に向けた努力の差がある、それを負担に反映させようという正当性がある。

 他方で、今回の子供、子育て支援金については、市町村からこども家庭庁に納められる加入者一人当たりの額は多分全国均一だけれども、お金を調達するための料率は多分市町村ごとに異なってくるわけです。

 ですから、年収三百万の人がある地域からある地域に引っ越すと料率が変わる可能性がある。これは私は正当化する理由がないと思うんですね。住民税ですら全国一律なのであって、公平というのであれば、どこに住んでいても、これは受益が家計に直接帰属するものではないですから、同じであるべきだと思いますし、これは、公平性のみならず、事務処理の観点からもとても重要だと思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 二点目で、それに対して国がどういうふうに関与できるか。つまり、国がその料率を、例えば子供、子育ての支援金においては一律にするとか、何かそういったことができる可能性があるのか、ないしは、それは必要ないのか、もしもお考えがあればお願いします。

西沢公述人 今回の料率について、これは国の政策ですので、国が一律に、責任を持って計算して示すべきだと思います。

 先ほど申し上げたとおり、曖昧になっているのは、国は保険者に対して、未来戦略会議の報告書を見ますと、事務的にと書いてあったんでしょうか、あくまで今回の法案は、保険者が決定主体であるけれども、被保険者に関しては、国が便宜上示してあげるよと書いてあります。これは私は本来違うと思うんですね。国が決定するべきである。

 そして、保険者が納税義務者になるのではなくて、最終的には家計と企業が納税義務者になるべきであって、滞納が発生すれば家計と企業に取り立てるべきなのが、法律としてあるべき姿。

 ただ、市町村については、先ほど申し上げたとおり、市町村からこども家庭庁に納められるお金は加入者一人当たり均一になりますけれども、中での料率はばらばらになるわけで、多分これは国は示せないと思います、全国一律で。あくまで示せるのは一人当たりの額でしかない。ここは是非議論をちょっと深めていただきたいところだと思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。これから法案審議がまた始まっていくと思うので、是非その観点で国との審議を深めていきたいと思っています。

 鈴木公述人に伺いたいと思います。がらっと変わりますが、年収の壁、先ほど三号被保険者自体廃止すべきだというのがありました。現在やっているパッケージは税金の無駄遣いとまで断言していただきましたが、突然廃止というのも大きな社会的な影響もあるかなと思うんですが、その中で、段階的にですとか、ないしは額を少しその間に上げて緩和策を取るようなといった様々な議論があるんですけれども、ざくっと廃止することについての影響をお聞きしたい。

 そして、同じ質問で、佐藤公述人も、税制調査会にいるということで、税の観点から第三号被保険者の問題をどのようにお考えかということをお聞きできればと思います。

鈴木公述人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 私は、方法論として段階的にやるというのを否定するものではないです。ですので、そこは、私どもは研究者なので、廃止すべきですとはっきり言いますけれども、そのやり方はいろいろあろうかと思います。

 私、ちょっと先ほど申し上げたのは、結局、第三号被保険者制度を廃止すると、それで恩恵を受けていた人は大反対なわけですね。なぜなら、負担増になりますので。なので、別の緩和策として、例えば、今回、少子化対策として子育て給付を増やすとかそういうことをやるわけですね。あるいは、女性が働くことに対してもうちょっと支援するような制度を整えるという形で、第三号はやめるんだけれども、代わりのパッケージとして、働き出したり子供を産んで育ててくれたらそれはそれなりの費用を出しますよということをやって前に進んでもらうというような制度をつくるということは、全然政治的にあり得ると思いますので。

 要は、廃止は反対なんです、一つだけだったら。でも、廃止の代わりにこういう前向きな、子供を産んだり働くことに対して支援を、まあ時限つきがいいと思いますけれども、一定時期やりますよというようなことをすれば、今のように強烈な人手不足で、しかも働きたいという女性が増えている中では、政治的な妥協はあり得るんじゃないかなというふうに考えます。

佐藤公述人 御質問ありがとうございました。

 税と社会保険料、大きな違いは、実は課税の単位なんですね。所得税は個人単位です。配偶者控除のような若干の例外はありますけれども、基本的には、奥さんだろうと旦那さんであろうと、要するに、ばらばらに所得を評価して課税されます。それに対して、社会保険料、三号被保険者に関して言いますと、共働きは全く違いますけれども、三号被保険者に関して見ると、あれは世帯単位で考えているわけですよね。市町村国保、先ほどから出ている国保の保険料も、あれは原則、世帯単位なわけであります。

 なので、ある意味、どう見直すと言われたとき、一つは、社会保険料の個人単位化だと思うんです。これはオランダなんかにも事例がありますけれども、子供もばらばらなんです。子供は所得がないじゃないかということになれば、政府が代わりに保険料を立て替えてくれる、そういう仕組みになります。

 もちろん、三号被保険者の方、いきなり被保険者になって、所得もないのに保険料を払えというのは酷だということであれば、ある意味、社会保険料の中に所得税と同じような控除を設けることだと思うので、基礎控除や給与所得控除のような所得計算上の控除というのはありますので。したがって、ある程度社会保険料の中に控除の仕組みを入れると、ある種、激変緩和にはつながるかなと思います。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございました。

 今、世帯というお話が出たんですけれども、やはり今の日本は全て世帯によって様々なものは基準になっているんですけれども、鈴木公述人に言ってもらった先ほどの少子化対策と子育て対策もまさにそうで、子育て対策は、私は福祉政策であって、そしてやはり少子化対策は社会政策でありますので、社会政策を前に進めるためには今言った世帯をどう考えるか。個人所得にしていく、また、税制についても今の家族を中心に、世帯を中心にしたものを変えていくといった議論が必要ではないかと思っておりますが、これについてもしも御見解があれば、社会政策と福祉政策、また、少子化対策、子育て政策を分けて考えるということの意味のまた御提案があればと思ったんですが。

鈴木公述人 おっしゃるとおりだと思います。それはきちんと性質を分けないとざるになってしまいますので、何が何の政策の枠組みでやるということはきちんと考えるべきだと思います。

 先ほど佐藤公述人がおっしゃったように、世帯ベースで考えているものを個人にしていくということも、その道筋の中では非常に重要なことだと思うんですけれども、何しろ我が国はとにかく世帯で全て、年金から何から全て世帯で考えておりますので、なかなか一朝一夕には難しい。粘り強くやっていくしかないんじゃないかと思います。我々は簡単に言いますけれども、ハードルは非常に高くて、その間のいろいろな調整は非常に精密にやらないといけないということは申し上げておきたいと思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 そうしましたら、今の話題を佐藤公述人にも、まさに社会政策として少子高齢化対策を考える、そしてそれを、世帯がどうあるべきか、また税がどうあるべきかということで考える必要性というものを、ございましたら、もう一度お話しいただければと思います。

佐藤公述人 子育て支援に関して言うと、二つ考え方があります。

 今回、児童手当については所得制限をやめるということになりました。ある意味、普遍給付と我々は呼んでいますけれども、所得とは関係なく給付をする。つまり、社会全体で、その人の所得の多寡とは関係なく子育てを支援するという、ある意味、社会全体で子育てをサポートするんだというのが一つの考え方。

 もう一つは、もう少しターゲットを絞って、やはり、本当に子育てに困窮しているというか、大変な世帯に対して支援をする。本来、社会政策はむしろこっちの性格が強いはずなんですね。なぜかというと、再分配というのを意図することが多いからです。

 なので、実は、少子化対策というときに誰をターゲットにするのか、それはみんななのか、本当に困っている人なのか、多子世帯なのか、何かその辺りのビジョンがもう少し明確にならないかなというふうに今のところ私は思っています。

 以上です。

田中(健)委員 時間となりました。本日は、ありがとうございました。

小野寺委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 無所属四人で組んでいる会派でございます。最後の十五分でございますので、よろしくお願いします。

 本日は、四人の先生方、本当に有益な話をありがとうございました。

 四人の先生方に共通していることは、政治家というのは、きちんとまず政策を練り上げて、その負担を国民に対して正直に説明して国民の皆様方の合意を得て、しかも、その政策については常に不断の検証を行って、見直すべきことを見直していけということなのかなというふうに私は受け止めさせていただきました。

 今日は、裏番組で政治倫理審査会が開かれて政治と金の話が話されておりますけれども、こっちが表番組でありますので。そのことと多少関連するんですけれども、高久先生、まずお聞きしたいんですけれども、様々な財源の手段があって、そのうち、診療所や個人の開業のお医者さんに手厚い診療報酬の問題を御指摘されておりますけれども、なぜこれがこういうことになるのか。恐らく、医療経済学的な観点じゃないので先生の御専門ではないと思いますけれども、しかし、医療経済学の観点から政治の現場や行政の現場を見ていて、なぜこのような診療報酬体系になっているのか。一般的には、医師会の力が強いからじゃないかとか、自民党に巨額の献金があるんじゃないかとか、そう言われておりますけれども、その辺り、どうお考えか、お聞かせください。

高久公述人 全くもってこれは政治の話でございますので、私が答えるような話じゃないというお答えもできるかと思いますけれども、やはり日本は、今勤務医の働き方改革というのが進められているように、いろいろな政治的な過程の中で、時間がないとできないということは多々あるんじゃないのかなと考えております。

 よく救急医の方とも話しますけれども、やはり診療所にこれだけ払って、どんどん開業して逃げてしまう、そうではなくて、もうちょっと勤務医としてとどまっていただければ、我々はもっと楽になるんじゃないかというような先生がたくさんいるわけなんですけれども、なかなかそういう声が届かないような構造と働き方になっているんじゃないのかなと思います。

 今般、働き方改革が進められますけれども、少し勤務医の方々にも余裕を持っていただいて、国の予算の配分等に影響力のあるような意見を言っていただくというようなことで改善していくんじゃないのかなと考えております。

 お答えになりますでしょうか。

福島委員 はっきりお答えになりませんでしたけれども、やはり政治力の問題なんじゃないかなと思うんですね。勤務医の方と開業医の方の政治力の問題じゃないか。

 同じことを佐藤先生にもお伺いするんですけれども、佐藤先生は規制改革が大事だということを挙げていらっしゃって、医療現場におけるタスクシェアがなかなか進まないと。これも、先生の、財政学の専門の分野ではないと思いますけれども、なぜそれが進まないと見ていらっしゃるか、逆に学際的な観点からお聞かせいただければと思います。

佐藤公述人 御質問ありがとうございます。

 二点あると思います。

 一つは、歴史的な経緯だと思います。

 診療報酬はなぜ出来高なのか、なぜ開業医が手厚く優遇されているか。かつて医師不足だったからです。とにかくお医者さんの数を増やさなければならない、とにかく彼らの経営をサポートしなければ地域医療がもたない、そういう時代がありました。なので、ある意味、そういう医師不足の時代の産物だったというふうに思います。

 ただ、それは今、状況は違います。もちろん、お医者さんの足りない地域はあります。しかし、東京に来れば医者が余っているという状況になっていますので、医師不足が地域によって解消されている中において、今の出来高払いでいいのかということが一つ問われてくるのかなと思います。

 それから、タスクシェアがなぜなかなか進まないか。

 これも、実はもう一つあって、責任です。結果的に、タスクシェアをするときにお医者さんが何を懸念するかといいますと、何か事故があったとき、自分の責任になるんじゃないかというところなんですね。看護師の方々に対する包括委任という考え方があるんですけれども、委任するのはいいんだけれども、何かあったときは結局自分の責任だよねというところがあります。

 結局、最後に出てくるのは、誰が責任を取るかというところに来るんですね。ここはむしろ、お医者さんの立場に立つと、やはり責任の範囲というのは、ある程度遮断できるような仕組みをつくっておくということはあってしかるべきだというふうに私は思っております。

福島委員 クリアな説明、ありがとうございます。

 それでは、次の点に行きますけれども、二月二十二日の予算委員会で、我が会派の緒方林太郎議員が加藤鮎子大臣に対して、子育て支援と少子化対策というのは全く別なんじゃないか、別物なので、それを区別して議論しなければならないんじゃないかという議論を行いました。私もそう思いますし、今日も、先生方の中の多くがそうした考えをおっしゃったんじゃないかなというふうに思っております。

 そのときに、加藤大臣はこう答弁しているんですね。アンケートを取ってみると、理想の子供の数を持てない理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎる、だから子育て支援が少子化対策として重要だという論法を使っているんですけれども、このことに対して、まず鈴木先生と西沢先生のコメントをいただければと思います。

鈴木公述人 ありがとうございます。大変いい御質問だと思います。

 まず、エビデンスとして、実は、これまで結構、子育て支援として給付は増えているんですよね。しかも、待機児童対策みたいなものでかなりのお金は増やしてきていて、でも子供は増えていないというエビデンスがありますので、それは、アンケートで聞けば、お金がないからだと言うと思いますけれども、それを一〇〇%信じるというのは、エビデンスからいってもちょっと違うのではないかというふうに思います。

 以上です。

西沢公述人 私も、子供、子育て支援と少子化対策は関係が薄いと思います。確かに、子供、子育て支援が充実すれば、将来産み育てようという方もいるかもしれない。ただ、一つ加えて申し上げさせていただくと、支出規模を大きくすることが子供、子育て支援ではないということです。

 今、教育、保育の無償化がなされていますけれども、保育は十一時間まで無償化です。でも、それを是認してしまうと、長時間保育、長時間労働を是正する機運がそがれてしまいかねない。むしろ、一日五時間ぐらいにしておいて、あとはお父さん、お母さん、どっちかで迎えに行ってよという方が、お父さん、お母さんにも、子供にもハッピー。ですから、支出規模を積み上げることが必ずしも子供、子育て支援ではない。

 これは、子供医療費の無償化にも言えます。むしろ、そうではなくて、医療提供体制を、家庭医、かかりつけ医などを整備することによって、いつでも相談できるようにしておくことの方が、多分、お父さん、お母さんにとって好ましいといったことをちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。

福島委員 ありがとうございます。

 確かに、エビデンスを見ると、結婚している家庭の子供の数というのは、多少減っているとはいえ二に近いわけですから、まさにエビデンスで見たときに、じゃ、それで、その家庭にお金を与えればどれぐらい伸びるかというのは、これはよく分からないし、そう大きな効果は期待できないというのが実際のところなんじゃないかなというふうに思います。

 その次に、講じる政策なんですけれども、じゃ、少子化対策というのは何ぞやといっても、これはなかなか思いつかないんですよね。結婚相談所を増やせば結婚する数が増えて子供が増えるかといったら、なかなかそういうわけでもないから、まさに鈴木先生がおっしゃったように、トライ・アンド・エラーでやらなければならないということだと思うんです。

 そのときに、やはり財源がどうなるかと常に議論になると思っておりまして、先ほど来ありますように、私は、これは保険でやるべきものじゃないというふうに思います。それは、保険というのは受益と負担の理論でもありますし、その受益と負担が明確じゃなく、受益と負担の関係がない上にガバナンスの利かないことというのはやるべきではないけれども、じゃ、何かスクラップ・アンド・ビルドでやって、今の危機的な少子化対策に立ち向かえるかといえば、そこも私はそうじゃないと思っておりまして、そこで、小泉進次郎さんは子供保険とかおっしゃっていましたけれども、あるいは、玉木雄一郎国民民主党代表は子供国債、私は、それは一つあるんじゃないか。保険ではないけれども、世代間のある意味の負担の行き来で、確かに将来に向けた負担増ではあるけれども、子供が増えて納税してくれれば返してくれるわけですね。

 今、来年度の予算で二十八兆円特例国債があって、その一割、一割でも大きいですよ、二・八兆円は国債の内訳として目的の国債と。国債発行の目的が明確であれば、政策の効果と、どれぐらい子供が増えてどれぐらい税収が上がったかと将来検証ができるわけですから、まさに政策の効果とも検証できるわけでありまして、そうした手段は私はある意味有効ではないかなと思っているんですけれども、この点も鈴木先生と西沢先生にお伺いしたいと思います。

鈴木公述人 ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思います。

 私は、今回、つなぎ国債という議論もありましたけれども、国債は全然自然なんじゃないかというふうに考えます。ただ、国債を発行するまでもなく、税収がすごい今上がっておりますので、そんなわざわざ、つなぎ国債なんか発行する必要はなくて、税収増で十分こなせて、その中でいろいろなトライ・アンド・エラーをして、非常に効果があるというふうに分かってきたものをパッケージ化して、この財源をどうするかという議論をするのが自然なんじゃないかと思います。

 先ほどちょっと申し上げましたけれども、もう一つは、財務省がどうしても国債が嫌だというのであれば、年金積立金の借入金というのは制度としてもうやっていますので、それはありだと思います。つまり、子供が増えたら年金の保険料は増えるわけですので、長期的に借り入れて、それが増えたら返しますはあり得ると思いますが、ただ、前提として、ちゃんと少子化対策として効果のあるものをやるということが前提だと思います。

西沢公述人 ありがとうございます。

 選択肢として今三つおっしゃって、子供、子育て支援金、子供保険、教育国債、三つありました。

 私は、子供、子育て支援金よりも子供保険の方がまだいいと思う。それは、リスクへの備えとは言い切れませんけれども、子供に対する支出について保険者を組成する、その保険者が責任を持って保険料を集め、給付にチェックの目を光らせることができるのであれば、どうやって保険者を組成するかという問題はありますけれども、まだいい。

 教育国債というのは、私はよくないと思う。これはやはり、負担と給付を両方、価格と、値段とサービスを両方提示して、そのよしあしを見比べるべきであって、教育国債というと、やはり天からお金が降ってくるような形になってしまうので、私は余りお勧めできないかなと思います。

福島委員 ありがとうございます。

 次に、佐藤先生にお伺いしたい。

 多分、今のを答弁したかったんじゃないかと思いますけれども、別の点で、モダン・サプライサイド・エコノミクスという聞き慣れない横文字が出てきました。成長戦略をやっていくという話だったんですけれども、私は経済産業省にいたんですけれども、最近出してくるGXとか、いろいろ衣はついているんですけれども、極めてオールドファッションな、昭和時代の産業政策そのものだと思っているんですね。

 この国会にも法案が一つ、産業競争力強化法の改正法案が出ていて、電気自動車とか鉄鋼とか特定産業を指定して、政府が戦略を作って、企業が計画を作って、それを認定すれば、そこに対して様々な支援措置が講じられるなんというのは、そもそも政府の計画を聞くような企業が世界で働けるわけないんですね。

 しかも、例えば、今回も、NEDOが、ディープテックスタートアップ企業とよく分からない名前ですけれども、要するに、スタートアップの企業の研究開発にNEDOが補助金を出しますと。政府が補助金を出すような研究が将来ビジネスとして成り立つとは私は思わないんですね。

 TSMCへの巨額の補助金、これもいろいろな議論があります。私は、渡し切りではいけないと思っているし、成長戦略につながるような補助金の出し方ではないと思っておりますし、GX債、これも、GX債と言えば格好いいけれども、要するに特例国債ですから、赤字国債を特別会計に入れて、その中からGXの投資に対して国が出していくというやり方なんですけれども、それとか、様々な基金で各省が投資事業を行っているんです。出資をするんですけれども、そんな素人の、商売もやっていなかったような官僚が、そんなこと、できるわけないわけですよ。

 私は、ここ数年の競争力強化を名目としたやつは、逆に財政規律も緩めているし、効果もないと思うんですけれども、そんなのをここでプレーアップして税をあげるというのは、ちょっと経済産業省の毒が回り過ぎているんじゃないかとは思いませんけれども、もうちょっとそこは慎重に見た方がいいと思うんですけれども、今行われているそうした政府の成長戦略に対する評価をお聞かせください。

佐藤公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、幾つか分けて考えた方がいいと思います。

 一つは、喫緊の課題は、やはり経済安全保障という観点、特に半導体を含めてになりますけれども、これは国策ですので、ある程度国も何らかの関与をするということはあってしかるべきだと思っています。

 ただ、やはり一般論として、経済成長の担い手は本来民間であります。その民間で何が成長するかということを国があらかじめ定められるわけがないということになりますと、私は規制改革の仕事をしているのでこういう言い方になりますけれども、全てのビジネスに対して均等なチャンスを与える、機会を与えること、それは参入障壁を除くということも含めてです。なので、やはりできるだけ機会を均等にして、様々な企業、それはスタートアップでもいいし、外資でもいいし、もちろん国内の老舗の企業でも構わないんですけれども、様々な企業が活動できる場をつくっていくということが一つあっていいと思います。

 それから、補助金。確かに、ちょっと大盤振る舞いが過ぎるかなと個人的には思っていて、何かもうちょっとうまいやり方はないかなと思って考えているのが、コンディショナルローンみたいな形で、つまり、補助金を上げます、だけれども、売上げが増えたら幾ばくかは返してくれという、税金とは別にですね。こういう形で、ある種、成功に対して何らかの報酬を政府が求める、こういう仕組みがあれば、出しっ放しの補助金にならないで済むかなとは考えております。

 以上です。

福島委員 ありがとうございます。

 余り財政政策の中で成長戦略のことはおっしゃらない方がいいと思うんですね。やはり政府は、民間の競争力をいかに高めるかで、それに関与が少なければ少ないほど本来は競争力が生まれるものですから、最近の政策はやり過ぎだと思いますので、是非そこら辺を先生も指摘いただければと思います。

 今日は、四人の先生方から有益なお話をいただき、また議論をさせていただきまして、ありがとうございました。

 以上でございます。

小野寺委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 公聴会は、これにて散会いたします。

    午後四時五分散会


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