衆議院

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第2号 令和4年2月17日(木曜日)

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令和四年二月十七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 島尻安伊子君

      尾崎 正直君    後藤田正純君

      西野 太亮君    平沢 勝栄君

      松本  尚君    重徳 和彦君

      青柳 仁士君    池下  卓君

      市村浩一郎君

   兼務 末松 義規君 兼務 太  栄志君

   兼務 吉田久美子君

    …………………………………

   防衛大臣         岸  信夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 二之湯 智君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)

   (こども政策担当)    野田 聖子君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            若宮 健嗣君

   内閣官房副長官      木原 誠二君

   内閣府副大臣       大野敬太郎君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   衆議院事務総長      岡田 憲治君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高村 泰夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  柳樂 晃洋君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   彦谷 直克君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   榊  真一君

   政府参考人

   (内閣府公益認定等委員会事務局長)        北原  久君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部統括官)        藤原 朋子君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        平岡 成哲君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           近藤 知尚君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    楠  芳伸君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    櫻澤 健一君

   政府参考人

   (消費者庁政策立案総括審議官)          村井 正親君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   楠  正憲君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           森  源二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金井 正彰君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           出倉 功一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  武井 貞治君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           江崎 典宏君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    渡邊  毅君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  藤田 仁司君

   政府参考人

   (水産庁増殖推進部長)  黒萩 真悟君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         渡邉 浩司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         遠藤 仁彦君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 佐々木正士郎君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局次長)            野津 真生君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 白石 隆夫君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 鈴木 健彦君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  土本 英樹君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

   予算委員会専門員     小池 章子君

   衆議院調査局第一特別調査室長           菅野  亨君

   衆議院調査局第三特別調査室長           吉田はるみ君

   衆議院調査局地方創生に関する特別調査室長     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月十七日

 辞任         補欠選任

  北村 誠吾君     尾崎 正直君

  平沢 勝栄君     松本  尚君

  市村浩一郎君     池下  卓君

同日

 辞任         補欠選任

  尾崎 正直君     北村 誠吾君

  松本  尚君     西野 太亮君

  池下  卓君     青柳 仁士君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     平沢 勝栄君

  青柳 仁士君     掘井 健智君

同日

 辞任         補欠選任

  掘井 健智君     市村浩一郎君

同日

 第二分科員末松義規君、第四分科員太栄志君及び第七分科員吉田久美子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和四年度一般会計予算

 令和四年度特別会計予算

 令和四年度政府関係機関予算

 (国会、内閣、内閣府(内閣府本府、警察庁、消費者庁)及び防衛省所管)


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     ――――◇―――――

島尻主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 令和四年度一般会計予算、令和四年度特別会計予算及び令和四年度政府関係機関予算中内閣府所管について審査を進めます。

 警察庁について質疑の申出がありますので、これを許します。市村浩一郎さん。

市村分科員 皆さん、おはようございます。今日は、二日目、第一分科会トップバッターで質疑をさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 二之湯大臣、国家公安委員長、どうも、今日はお出ましいただきまして、感謝を申し上げます。

 まずは、警察関係のところからお話をさせていただきたいと存じます。

 私も、地元の警察の方々とも時々に意見交換をする場を設けさせていただいておりまして、いろいろ現場の御苦労の話もお聞きをしているところであります。昨今、特に、昔は警察は民事不介入というのが原則だったわけでありますけれども、やはりストーカー事件等々起きまして、そうも言っていられない、やはり民事のこと、家庭のことにもある程度入っていかなくちゃいけない、こういう流れができているということでございます。それはまあ、必要なことだとは思います。

 ただ一方で、少なくとも警察が本来業務ではないようなところまで一一〇番がされる。例えば、子供が勉強しないから何とか子供に勉強するように言ってやってくれないかとか、あとは家の前にちょっと犬の死骸が転がっているからこれを片づけてくれないかとか、あとは木が何か生い茂っているからあれを切ってくれないかとか等々、いわゆる生活相談みたいなこと、苦情みたいなことまでが一一〇番をされるという現状があるということです。

 警察からいただいている資料によりますと、警察安全相談取扱件数というのが、令和二年度で、全国で二百十七万九千五百六十七件と二百万件を超えるような生活相談がある。もちろん、これが全てそういう、今私が申し上げたような話ではないということなんですね。やはり中には大変深刻なものがあって、それがまさに大きな事件につながる可能性もあるので、それをないがしろにしていいということではありません。

 しかし、先ほど申し上げたような、ちょっと軽い気持ちなのか、警察に言えば何でもやってくれると思っていらっしゃるのか、そういった意味では安易に警察に電話をされる方もいるというふうに私は認識をさせていただいております。

 そうなると、警察の皆さんも、本来業務から、そこで電話をいただくと、それは特に大きな事件につながる可能性もあると思われると、やはり対処せざるを得ないわけですよね。

 さっきの例はまだあれなんですけれども、例えば、夫婦げんかをしていました、勢い余って、警察に電話してやると言って、いや、電話してみろと言ったら本当に電話したとか、こういうケースがあった場合、本当にこれは深刻な場合もあるでしょうけれども、ちょっと売り言葉に買い言葉、昔から、夫婦げんかは犬も食わぬと言いますから、ほっておけばまた仲直りできたものも、そうやってちょっと言って電話してしまう。

 こういった場合、どう対応するのがいいのか。まあ、ほっておけばいいということではないですよね。特にDVとかいろいろあるとなってくるとほっておけない、やはり対処せざるを得ない。そうすると、出かけていかざるを得ない。一一〇番があった以上は行かれる。そうなると、やはり、行ってみると、これはちょっと夫婦げんかの延長線上かなと思っても、警察はそれは多分絶対言えない。やはりいろいろお話をお聞きしてということになってきます。そうすると、とてもそれに時間を取られていくということにもなりかねない。

 だから、そういうときにやはり警察のOB、OGの方とか、ある程度ベテランの方だったら、電話の相談の内容とか声の調子で、ああ、これはそこまで深刻にならなくてもいいケースであるとか、いや、これはちょっとちゃんとしっかり対応しなきゃいけないということを、やはりベテランの方だったら電話の調子で大体分かるというふうに私は思うんですね。もちろん、それが一〇〇%ということはないんですけれども。

 だから、そういうときに、今でももちろんOB、OGのお力をかりているという部分もあるとは思うんですが、もっとそういう生活相談的な電話に対してOB、OGにお力をかりるということも一つの考え方ではないかな、こういうふうに思っておりまして、今日はその御提案をさせていただきたいと思いますが、国家公安委員長の御見解をいただければと思います。

二之湯国務大臣 今委員御指摘の、警察に寄せられる相談件数が二百万件以上、全国にわたっている、こういうことは、一面、いかに警察が全国民の信頼が厚いか、警察にちょっと相談すれば立ち所に解決してくれるんじゃないか、そういう表れではないかと思います。

 しかし反面、また、そういうことに対応するために、本来業務がおろそかになってはいけない、本来業務の足を引っ張られてはいけない、そういうこともあるわけでございます。

 そういうことでございますけれども、警察では、国民から寄せられるいろいろな相談に対して迅速、確実に組織的な対応を行うことができるよう、全国の警察本部及び警察署に相談できる体制はできているわけでございまして、その相談内容によって各部署が緊密に連携して、そして、警察に寄せられる相談の対応をしているわけでございます。

 今おっしゃりましたように、相談業務には、現職の職員のほか、退職の警察官が非常に経験豊富な知見を有しておりますので、こういう方たちにも御協力いただいて、その対応に従事しているわけでございまして、現在、平成三年四月現在でございますけれども、約九百人の退職警察職員がこれに活動をしているわけでございます。

 警察においては、非常に厳しい治安情勢に的確に対応するべく、警察力強化のための様々な取組を行っておりますけれども、中でも、退職警察職員の積極的な活用は重要であると認識をしておりますので、今後とも一層、退職警察官の積極的な活用に取り組むよう、警察としても頑張ってまいりたい、このように思っております。

市村分科員 是非とも、OB、OGの皆様のまたお力もかりるという方向で、まだ九百人、千人いかない状況ですけれども、もっとお力をかりられるようにして、現職の、現職といいますか現役の、まあ、OB、OGの活用も現役といえば現役なんですね、警察で雇っていただくということですから。ただ、もっと若い世代が本来業務にもっといそしめるような、そうした体制になれば、やはり警察の皆さんには地域の安心、安全を守っていただいている、大切なお仕事をしていただいていますので、本当に感謝いたしておりますので、またそういうことがもっとちゃんとできるような体制になればいいなというふうに思っております。

 それと、もう一点、警察の関係で、またこれも、地元に帰ったら私が親しくさせていただいているタクシーの運転手さんがおられまして、昨今、LEDライトが特に高級車で目立つようになってきて、あれが大変まぶしいと。

 確かに、LEDライトは、昔はハロゲンライトで、その後がHIDライトだったのが、今、LEDライトも出てきているということをお聞きしておりますが、このLEDライトというのが非常に、光が広がるんじゃなくて刺すような光なものですから、暗闇でちょっと対向車が来ると、確かに私も運転しながらちょっと目に刺すような光だなというふうにも感じていたんですが、私なんかは月に一回、夜に運転するかしないかという状況ですので、それほど意識はしていなかったんですが、やはり毎日のように夜に業務で運転されているタクシーの運転手さん始め、そういったお仕事で運転されている方にとってみれば、もうあのLEDライトは大変目に刺して厳しい、こういうような話であります。

 そこをしっかりと考えておいた方がいいかなと。今の段階では、そのために事故が起きたというケースはそれほどないようでありますけれども、恐らく、これからLEDライトの車が増えてくるようになってきますと、そういった、まぶしい、照らされて目が見えない、目が一瞬潰された状況になってしまって、もし歩行者が渡っているときに、ちょっと目くらましのときにばあんとひいてしまうとか、障害物を認識できずにそこに当たってしまう、若しくは、そこにもし人が寝ていたらどうなるかということもありますから、そこをしっかりまた考えておくべきかなと思っていますが、まずは、国土交通省さんにその辺のところをちょっとまず一点お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

野津政府参考人 お答え申し上げます。

 自動車のヘッドライトの明るさ等につきましては、道路運送車両の保安基準におきまして基準を定めてございます。具体的には、ドライバーが必要な視界を得られるように一定以上の明るさを確保するための要件に加えまして、御指摘のように、対向車のドライバーにまぶしさを与えないよう、いわゆるロービームにつきまして、対向車方向の明るさを一定以下とする要件を規定してございます。これらのヘッドライトの基準は、LEDを光源としたものも対象として、国際的に調和された内容となっております。

 また、近年では、センサー技術を活用した先進的なヘッドライトの開発普及も進んでおり、例えば、対向車の位置を車が検知して自動的にハイビームとロービームの切替えや明るさの切替えを行う機能を搭載した自動車や、坂道による車体の前後の傾きなどを車が検知して自動的にロービームの光線の上限の高さを調節する機能を備えた自動車もございます。

 国土交通省といたしましては、このような新技術の動向や研究開発の状況も踏まえながら、引き続き、国際基準を含め、適切な基準策定等の取組を通じまして、安全なヘッドライトの普及を促進してまいります。

市村分科員 ありがとうございます。

 今、いろいろなセンサー技術を使って対処をされているということをお話しいただいたわけであります。もちろんそれは続けていただくということでありますが、しかし、まだまだ普及まで時間はかかるでありましょうし、これからますますLEDライトの車が多分増えてくるだろう。今は、高級車とか、一部、軽にも取り付けられているということで、もう十五年ぐらいの歴史があるんですけれどもね、LEDライトそのものは。ただ、最近、特に高級車で増えてきているかなというのがちょっと私の認識です。

 ですから、これから増えていくに当たって、今はいろいろな先進技術を使っていますが、そうしたものを搭載している車というのはこれから出てくるわけでありまして、今までのやつ、十五年ぐらいのやつにはそういうセンサーはないわけでありますから、今は、しばらくの間、しっかりと気をつけておくということで、やはり警察には一層の啓発、今でも、ハイビーム、ロービームとか、そうしたことでの啓発は警察がされているということでありますけれども、なお一層の啓発を警察の方でもしていただけたらということでございまして、国家公安委員長から御見解をいただきたいと思います。

二之湯国務大臣 今の先生の御質問に答弁する前に、先ほどの中で、私、警察相談員の、平成三年四月と申しましたけれども、現在、令和三年四月の間違いでございます。訂正しておわびをいたします。

 今御質問ございました、対向車の前照灯のまぶしさのために一時的に眩惑症状になって、それが交通事故を引き起こす、こういうことでございますが、確かに、私も最近は車を運転しておりませんのでよく分かりませんけれども、よくそういうことに出会ったことがございまして、ライトを下げるとか、そういう交通マナーを守らなきゃならぬということはよく分かっているんですが、最近はLEDが非常に発達してまいりましたから、このハイビームとロービームの適切な使い分けということを、これからも折に触れて、警察は安全教育を徹底したり、広報啓発活動を進めていく、こういうことに努めているわけでございます。

 先生がおっしゃったように、これについての交通事故の報告はないわけでございますけれども、交通事故がないように、徹底してそういうことに引き続き努力をしていきたい、このように思っております。

市村分科員 ありがとうございます。

 では、済みません、警察の関係はここで終わらせていただきます。

 次に、私としては、日本がやはりエネルギーを自給できなくちゃいけない、こういうふうな思いを持っております。そのために、本当は原子力発電というのが一つ大きな流れだったんですが、三・一一でそれが難しいという状況になっている中で、やはり再生可能エネルギーに対しても大変注目があるということでございます。

 圧倒的に効率的には原子力発電にはかなわないんですけれども、ただ、再生可能エネルギーの可能性もあるということで、私は、浪人時代、七年ほど九州大学の研究員をさせていただいて、再生可能エネルギー、とりわけ風力発電のいろいろ研究とかにも携わらせていただきました。その中で、私がお仕えした先生が九州大学の応用力学研究所の大屋先生、今日、お手元の資料にもその資料はありますけれども、大屋先生に大変御指導いただきました。

 大屋先生の志は何かといいますと、単位面積当たりに最大のエネルギーを、電気を生み出すにはどうすればいいか、こういう課題なんですね。ですから、風力だけじゃなくて、太陽光でも、いろいろな再生可能エネルギーの可能性をその場で追求できるような場所というか、アイデアはないのかということを考えたときに、洋上だと。しかも、洋上風車というのは最近言われていますけれども、洋上エネルギーファームというものの提唱をもう既に十数年前からされておられまして、私もそこに学ばせていただいているわけであります。

 この洋上エネルギーファームを普及させたいという思いで、実は私、一か月だけ海洋本部の政務官をさせていただきまして、そのときに、洋上のそういうエネルギーファームを造ろうということで私は提案させていただいたんですが、それがなぜか洋上風力発電、巨大な洋上風力発電のアイデアになってしまいまして、それはうまくいかないと私は最初から思っていたんですが、やはり、案の定うまくいっていないということです。

 そこで、私があのときに政務官として提案したのは、今日お手元にあるような、これは今、十年たつと物すごくいいのができているんですけれども、これはまたこの四月ぐらいに発表させていただく予定になっているようでありますけれども、こういった洋上のエネルギーファーム、風力だけではなくて、太陽光パネルも張れますし、洋上であれば、いわゆる潮力も使える、波力、潮力、あと海洋温度差とか、いろいろな可能性を持っているのがこの洋上エネルギーファームであります。いま一度、やはり海洋本部の皆さんにはこれをまた採用していただきたいと思います。

 その前に、本当は今日お聞きしたかったんですが、せっかく今日質問通告しているので、本当に温暖化しているのかということだけ、ちょっと簡単にお答えいただけますか。よろしくお願いします。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 様々な観測や科学的な検証によりますれば、十九世紀中頃と比較した世界の平均気温は一度近く上昇している、それから、大気中のCO2濃度も一貫して上昇している、この両者の因果関係につきましては、気候変動に関する政府間パネルが最新の知見を集約して報告書を定期的に公表しているわけでございますが、昨年の夏に公表されました第六次評価報告書によりますれば、人間の影響が大気、海洋、陸域を温暖化させてきたということに関しては疑う余地がないということで、因果関係について言及されているというところでございます。

市村分科員 今日はこの議論はこれ以上はしません。また改めて、温暖化については議論させてください。これはなかなか、いろいろ議論があるべきだと私は思っています。

 いずれにしても、私は、温暖化というよりも、特に日本が、いわゆる食とエネルギーの自立は絶対しなくちゃいけないというふうに思っています。とりわけ、やはりエネルギーについては特に自給率が低いということでありまして、これをどうやって自給していくか。

 理論上、風力発電だけでも、日本が一年間に使っている電力量の二十八倍の電力を生み出す可能性がある。それはやはり、海上を使うということなんですね。日本の場合は、陸上はとてもそれは難しい。風力の場合は、風況といって、風の状況をちゃんと測らないといけないんですね。日本にはそういう砂漠みたいなところが、ゴビ砂漠とかサハラ砂漠みたいなのがないですから、風の向きが余り一定していない。本当に電柱一本あっただけでも風の向きが変わる。風の向きが変わると風力発電は何も意味がないというところであります。

 だから、しっかりと、洋上だとある程度安定した風を得られるということになりますから、洋上に持っていく。洋上に、とにかく太陽光も張れば、先ほど申し上げたように、いろいろなアイデアを持ったものを造っていくということを私は提案をさせていただきたいと思っています。

 これはもう、今日はこれ以上進めませんが、また改めてこれはどんどんやっていきたいと思いますが、内閣府さんからまた見解をいただきたいと思います。

平岡政府参考人 お答えをいたします。

 四方を海で囲まれた海洋国家である我が国では、海洋において、風力、潮流、海流など様々なポテンシャルがあり、様々なポテンシャルを生かして、再生可能エネルギーの導入、利用を進めることが重要であるというふうに考えております。

 海洋における再生可能エネルギーに関する大規模な導入、利用の促進に向けましては、利害関係者との調整枠組みを定め、海域の長期占用を認める制度として再エネ海域利用法を成立していただき、平成三十一年四月から施行させていただいているところでございます。

 現在は、世界的にコストの低減と導入拡大が急速に進んでおり、裾野が広く、関連産業への経済波及効果が期待される洋上風力発電につきまして、再エネ海域利用法に基づき、経済産業省及び国土交通省において、促進区域の指定、事業者の選任など、導入拡大に向けた手続が着実に進められているところでございます。

 また、洋上風力発電の導入拡大など、官民が一体となる形で進め、相互の好循環を実現していくため、洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会を設立し、高い導入目標を掲げ、取組を強化しているところでございます。

 先ほど先生の方から、海洋につきましては、風力、潮流など様々な再生可能エネルギーのポテンシャルがあるという重要な御指摘をいただいておりますので、内閣府といたしましては、関係省庁と連携し、そのポテンシャルを最大限生かせるように、その導入、利用の促進に取り組んでまいりたいと考えております。

市村分科員 是非ともよろしくお願いします。

 洋上、風力だけではなくて、まさにいろいろな可能性があるのが海でありますので、どうぞ、海洋本部の方ではお取り組みいただければ幸いでございます。よろしくお願い申し上げます。

 引き続き、私がもう人生のライフワークとして取り組んでいるNPOについて、ちょっとまたお話をさせていただければと思います。

 今回、岸田内閣は新しい資本主義ということでお話をされています。そのときに、私も新たな資本主義という言葉を使ったこともあるんですが、これは新たでも新しくも実はないんですね。

 NPOというのは、共助セクターでありますけれども、そもそもNPOがファーストセクターだということで、元々、共同体で我々はこれまで社会を形成してきたわけでありますから、共助の社会でやってきたわけでありまして、元々NPO的な社会だったわけですね。そこにいろいろ国家が生まれてくると、やはり行政という、ガバメントというのが出てくるということになります。

 その前に、市場、マーケットというのがあって、株式会社形態というのがイギリスで生まれた、バイキングから生まれたなんということも言われていますけれども、ある意味でいえば、行政という在り方自体が、いわゆる今は公と言っていますけれども、公助の世界と言っていますが、公が一番歴史が浅いわけであります。だから、そもそもNPO的な社会だったんですよね。だから、そういうものをいま一度思い出そうというのでありまして、決して新しくもないということだと思っています。

 だから、さきの菅内閣では、自助、共助、公助といって、何か一部から批判されていましたけれども、何で批判されるのかな、当たり前だろうと私は思っているんですが。

 その自助、公助、共助でいうと、共助の部分を担うのがこのNPO経済セクターと。皆さん、NPOというとボランティア団体に何かちょっと毛が生えたようなことを思い出すのかもしれませんけれども、全然違います。

 NPOというものは私の言葉なんですけれども、私がNPOという言葉をどういう意味で使っているかというと、今日お手元に資料も渡していますが、社会の三権分立、こういう思いで私はNPOという言葉を使わせていただいているんですね。民の公のセクターであるということであります。

 日本は、特に戦後ですけれども、市場セクターと行政セクターの二本柱で財・サービスの提供を行ってきています。しかし、それがいいときはよかったんですけれども、高度経済成長期とか、税収が伸びていれば、どんどん税金を使っていろいろな対策が打てました。

 しかし、成熟社会になってきて、今日、そんなに税金をどんどん費やすわけにもいかないとなってくると、じゃ、いわゆる、そこで生まれ出すような財・サービスについて誰が担って提供していくのかというときに、やはり共助セクターというのをしっかりとまた再構築していく必要がある。その担い手としてあるのがNPOですね。ノンプロフィットオーガナイゼーションです。オーガニゼーション、組織です、組織体。インスティテューションということになりますけれども、そういう組織体としての担い手がNPOということであります。

 ですから、単にボランティア団体のちょっと発展したものじゃないんですね。ここに書いてありますように、市場セクター、行政セクターと並ぶセクターがNPO経済セクターであります。重層的な、多層的な。だから、そういう市場、行政、NPOですね。もっと言えば、NPOが最初ですね。NPOが最初で、市場があって、最後にどうしてもセーフティーネットを張らなくちゃいけない、そこに公助がある。

 こういう世界を、社会構造をつくっていくのが、これは日本だけじゃありません。多分、これから、修正資本主義と呼ばれて、いわゆる市場の失敗があり、政府の失敗があり、福祉の失敗があって、ちょうど三十年前、学生時代にそういう議論をしていました。まさに今みたいな議論をしていたんですね、三十年前ぐらいに。もっと、三十七年ぐらい前なんですけれども。

 今、また改めてそういう議論になっていますが、やはりこういう概念をしっかりと考えた上で、社会の仕組みの根本、この基本を、ベースとしてはこういうことを考えた上で、じゃ、どういう政策を打っていくのか、誰がこの財・サービスを担うのか。市場に任せた方がいいのか、それともやはり行政が税金とか公債でやった方がいいのか、それともNPOみたいに寄附とか、あとボランティア。それこそがボランティアですよね。時間を提供する、お金を提供できない人は時間を提供する、知恵を提供する、知見を提供するとか。そういうことで、いろいろな社会のいろいろな財・サービスを担っていく、提供していくというものをつくらなくちゃいけないというのがこれからの時代の大切な観点ではないかと思っております。

 そこで、そういう提案をして、新しい公益法人制度を私はつくらせていただきました、民法三十四条を削除させていただいて。それでできたのが公益認定等委員会なんですが、今日、事務局長、お越しでいらっしゃいます。

 私は、この公益認定等委員会は頑張っていただきたいんです。もう本当に、会計検査院みたいな独立になってもいいぐらいだと僕は思っているぐらいの大切な役割を担っているのが公益認定等委員会だと私は思っていますが、細かいことを聞こうと思いましたけれども、時間がないので聞けませんので、公益認定等委員会の今の事務局長としての御決意というかをちょっと聞かせていただければと思います。

 よろしくお願いいたします。

北原政府参考人 お答え申し上げます。

 先生には現行の公益法人制度、設計、それから発足のときからいろいろお話をいただいてございまして、誠にありがとうございます。

 現在の公益法人制度、先生からお話がありましたように、新制度の下で十余年たってございますが、引き続き、この法律にのっとって、公益法人行政、それから公益認定等委員会の事務局として支えてまいりたいと考えてございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

市村分科員 今お聞きしているところ、新しい公益法人は、まだ一万ですかね、に至っていないというところで、こうした団体がアメリカなんかはもう百万団体を超えております。

 さっきから私はNPO経済セクターと強調していますように、NPOセクターで新しい雇用とかを生み出せるんですね。しかも、アメリカなんかの状況を見ていると、やはりNPOセクターの雇用というのは非常に高い給料を払えるところなんですね。日本は、何か、ボランティアだからNPOからお金を取っちゃいけないとか、そういうのと全然違います。なぜならば、みんなが経営者なんです。ほとんど経営者で成り立っているのがNPOですから。だから、博士課程とかを持っている方がいます。

 そうした方たちが担う、新しい市場もつくり、新しい雇用をつくるというセクターにしなきゃいけないと思いますので、また改めて、引き続きこれはやってまいりたいと思いますが、よろしくお願いします。

 終わります。感謝申し上げます。

島尻主査 これにて市村浩一郎さんの質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

島尻主査 次に、内閣府本府について質疑の申出がありますので、これを許します。尾崎正直さん。

尾崎分科員 高知第二区選出の尾崎正直でございます。

 国会初質問となります。またどうぞよろしくお願いいたします。

 私、これまで高知県で十二年間、県知事として仕事をさせていただいておりました。高知県というのは、山、川、海の自然が美しくて、また、本当に、竜馬さんに代表されるような、ああいう魅力にあふれた人の多い、すばらしい県なのでありますが、ただ、残念ながら、南海トラフ地震の巨大な脅威に立ち向かっていかなければならない、そういう宿命を持った県ということであります。

 この南海トラフ巨大地震でありますが、二〇一二年の三月三十一日でありますけれども、忘れもいたしません、中央防災会議から、黒潮町三十四メーター、高知県沿岸域ほぼ全てにわたって十メートル以上というとてつもない津波の想定高が、あくまで最悪のケースということでありますけれども、発表されたところでありました。天を仰ぐような思いでありましたけれども、それから、本当に県民の皆様とともに歯を食いしばって、津波対策を繰り返してきたわけであります。

 南海トラフ地震が一たび発生をいたしますと、想定死者数が三十二万人を超えると想定をされておりますし、また、経済的被害につきましても、二百二十兆円。想定死者数が三十二・三万人、経済被害額が約二百二十兆円、それほどの大災害になると想定をされているところです。これにいかに立ち向かっていくかということは本当に国家的、歴史的な課題だ、そのように考えるところであります。

 また、先日は、日本海・千島海溝の巨大地震についても、最悪の場合、死者数約十九・九万人との大変厳しい想定も発表されたところであります。

 巨大災害にいかに立ち向かっていくか、今そのためにどうすべきか、この観点から、限られた時間ではありますけれども、これまでの問題意識も含めまして御質問をさせていただきたい、そのように思います。

 まず、発災直後の対策についてお話をさせていただきたいと思います。

 第一は、津波避難施設についてということであります。

 津波対策の第一は、まずもって、何といっても、住民の皆様方の早期避難意識を高めていくということ、これが一番重要であることは論をまちません。

 ただ、併せまして、具体的に逃げることのできる場所、いわゆる津波避難空間をつくっていくことも大事だろう、そのように考えるところでありまして、避難路、避難場所、さらには避難タワーの建設、これを本当に全速力で進めていかなければならないところであります。

 この点については、南海トラフ地震対策特別措置法の制定でありますとか、さらには防災・減災事業債でありますとか、様々な仕組みを国としても講じていただいておりまして、本当にありがたいことだと思っております。

 高知におきましても、これらの仕組みを使わせていただきまして、避難路、避難場所を千四百四十五か所、津波避難タワーも百十五基建設をさせていただいてきました。本当に、国の皆さんの御尽力、御助力に心から感謝を申し上げたい、そのように思うところです。

 ただ、問題は、一旦造った津波避難施設についても不断の改良、改善ということが必要だということであります。

 実際に避難訓練などをいたしますと、例えば、夜間だと津波避難タワーの階段が見にくいとか、更に言えば、この階段はもしかしたら津波で吹っ飛んでしまうのではないかとか、津波火災に非常に脆弱なところに建っているのではないかとか、更に言えば、そもそも避難タワーに逃げるまでの道が液状化してしまうのではないかとか、訓練などを通じて、また新しい科学的知見を通じて様々な課題というものが明らかになってくるところです。訓練を通じて課題を把握し、これを改善していく、いわば一種のPDCAサイクルのようなものをこの津波避難施設についても徹底して回していくことが大事ということかと思います。

 これはまず一義的に自治体がしっかりと取り組んでいかなければなりません。しかしながら、非常に重要な課題であるだけに、国といたしましても、このような自治体の取組を技術支援という形で後押ししたり、さらには、施設そのものの改修ということについて財政的に後押しをしたりという形で、しっかりと取り組んでいく必要があるのではないかと考えるところであります。

 是非とも、国として、既存の津波避難施設の点検、改良に向けた自治体の取組をしっかりと後押ししていただきたいと考えるところでありますが、政府としての見解をお伺いいたします。

榊政府参考人 お答えを申し上げます。

 津波は、一度発生いたしますと甚大な被害が生じるおそれがございますことから、委員御指摘のとおり、住民等の避難意識を高めていただくことに加えまして、安全に避難するために必要な避難路や避難場所等を確保していくことが大変重要であると考えております。

 津波対策として整備されました避難路や避難場所等につきましては、その後の調査や周辺状況の変化等に応じて適宜改修等を行っていくPDCAの取組が必要でございます。こうした取組を後押しするために、関係省庁と連携しながら、職員の派遣等による技術的支援や交付金等による財政的な支援、これにしっかり努めてまいりたいと存じます。

尾崎分科員 ありがとうございます。本当にこれは重要な取組だと思います。一旦造って終わり、若しくは造ってしまって安心するということになってはいけないと思うんですね。そもそも、不断の見直しということを自治体に働きかけていくことがどれだけ安全度を高めるか。是非、国としてもお取組を賜りたい、そのように思うところです。

 次に、二問目でありますけれども、今度は、少し個別の施設についてお話をさせていただきたいと思います。

 大規模なハード施設によって津波の効果そのものを減災していくということも非常に重要だろう、そのように考えるところであります。

 その点、高知県の場合は、県都高知市、大体三十二万人ぐらい人口がおいでになる、県全体でもかなり、四割近くの集中度ということであります。この県都高知市を守っていくために、浦戸湾の三重防護事業という事業を企画をいただいて、具体的に進めていただいているところであります。

 この浦戸湾の三重防護事業は、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策により様々に加速もして、工事をしていただいているところでありますけれども、何といっても、このことは、次に津波が実際にやってくるまでに完成をしていかなければならないという、いわば明確な期限を持った事業だというふうに考えるところです。

 津波が実際に来てしまってから完成してもむなしいのでありまして、できるだけ加速化が求められる事業だ、そういうふうに考えるところでありますが、今後の見通しにつきまして、政府の御見解をお伺いしたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 切迫する南海トラフ地震、津波に対しまして、高知県の人口や産業が集中している高知市の被害を最小化するということは極めて重要であると認識をしてございます。

 このため、浦戸湾におきまして、国土交通省と高知県が連携をして、三つのラインで重層的に津波から防護する三重防護方式による対策を講じることとしてございます。具体的には、第一ラインとして、高知港の第一線防波堤により津波のエネルギーを減衰させ、第二ラインとして、浦戸湾外縁部、湾口部の防潮堤等により津波の浸入を抑制し、さらに、第三ラインとして、浦戸湾の内部護岸で背後の浸水を防止する護岸方式でございます。この対策につきましては、港湾整備事業、海岸事業等において、国による直轄事業や県による補助事業及び交付金事業を活用して進めることとしてございます。

 国土交通省といたしましては、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策も活用し、早期に効果を発現できるよう、引き続き、しっかり津波対策に取り組んでまいります。

尾崎分科員 これは本当に、県民の皆さんの大変期待の大きな事業ということであります。

 学者の先生方の分析などによりますと、二〇三〇年代になると切迫度がいや増すというふうにも言われている南海トラフ巨大地震であります。是非とも、段取りよく、早期に効果を発揮していく、もたらしていくということを意識していただきながら、着実にこの浦戸湾の三重防護事業の整備を進めていただきたいと心からお願いを申し上げます。

 それでは、三問目に移らせていただきたいと思います。

 実は、発災直後の最難問がこの問題ではないかと私としては考えておるものであります。すなわち、要配慮者の皆様方の避難支援の在り方ということについてでございます。

 寝たきりの方、さらには重度の障害を負っておられる方など、自力での避難が困難な方々の命を迫りくる津波からいかに守るか、これは本当に重たい課題であります。国からも、いざというときに避難行動を後押しするために、避難行動要支援者ごとの個別避難計画の策定が求められているところでありまして、これ自体、本当に重要なことだと考えております。

 高知県でも、このことは非常に大事だという問題意識の下におきまして、市町村の災害担当者の皆さん、福祉専門職の皆さん、さらには県の関係者が一堂に会しまして、個別個別に計画の策定に努めているところです。さらには、例えば、その中で蓄積してきたノウハウをほかの市町村にもしっかり広めていこう、そういう取組などにも努力をしてきたところであります。ただ、高知におきましても、まだ全体の二五%程度の策定率にとどまっているという状況であります。多分、それでも全国では進んでいる方じゃないかと思うんですが、まだその程度ということでございます。

 このことについて、そもそも計画策定自体が大変難しいということがあります。さらには、多くの専門家お一人お一人がこの計画を作るために集ってくるということでありまして、時間コストでありますとか、さらには経費的な負担も非常に大きいということもあります。そしてまた、計画策定によって、やはり課題が明らかになってまいります。その課題を解決していくための一つ一つの対処、そのためにも経費負担がかかるということでありまして、様々な人的コスト、時間的コスト、経済的コスト、これが一つ非常に大きなおもしとなってきているということかと思います。

 先ほども申し上げましたように、本件は発災直後の最難問だと思っております。発災後三分で何十メーターもの津波がやってくる、そういう中において、寝たきりの高齢者の命をいかに守っていくか、そして、高齢者の皆様をサポートする人の命もいかに守るか、そういう問題であります。是非とも、国として、自治体に対しまして技術支援をしっかり行っていただいたり、経費補助の更なる充実を図るなど、対策を加速するための対策を行っていただきたいと思いますけれども、御見解をお伺いをいたします。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 近年の災害における犠牲者を見てみますと、令和元年東日本台風では約六五%が、令和二年七月豪雨では約七九%が六十五歳以上の高齢者によって占められており、高齢者や障害者など要配慮者の避難の実効性確保は重要な課題となっております。

 このため、昨年の五月、災害対策基本法を改正し、御指摘をいただきました避難行動要支援者に係る個別避難計画の作成を市町村の努力義務化といたしました。

 内閣府におきましては、ハザードマップ上で危険な地域にお住まいの、介護を要する方など優先度の高いと考えられる方々は全国に約二百五十万人いらっしゃると推計しておりまして、これらの方々の個別避難計画について、おおむね五年程度で作成に取り組んでいただきたい、このように考えております。

 作成に要する費用につきましては、今年度、令和三年度から新たに地方交付税措置が講じられたところです。さらに、市町村における取組を支援するため、作成手順を明示した具体的な取組指針の提示や、優良事例を全国展開するためのモデル事業の実施などに取り組みますとともに、防災・安全交付金など活用の可能性がある各省の補助制度の紹介、周知にも努めているところであります。

 引き続き、関係省庁や自治体などとも連携をしながら、要配慮者の避難の実効性を高める取組を進めてまいります。

尾崎分科員 本当にこれは重要な対策であります。是非、早期に一〇〇%となるようにお取組を進めていただきたい、そのように考えるところでございます。

 続きまして、応急期の対策について御質問をさせていただきたい、そのように思います。

 私、つくづく思うんですけれども、この応急期の対策については、本当に定量的な分析をしっかり行っていくということが大事だ、そのように考えるところであります。

 多くの計画において、発災した後に応急救助機関が現地に向かいます、水を運びます、食料を運びます、医療を供給します、そういうふうになっておるわけですけれども、実際のところ、そのように確かに書いてはいますけれども、果たしてどれだけの被災者の方が、どれだけの量の水を必要としておられるのか、医療を必要としておられるのか、その需要側の必要量というのを定量的に分析して、それに対して供給側の供給力はどれだけかということを定量的に分析して、その過不足をしっかり補い調整をする、そういう形での分析が本当になされてきたのかということについては、残念ながら、まだこれからという段階ではなかろうかと私は思わせていただいているところです。

 これは確かに難しい問題でありまして、そんなにすぐに解決するようなことではないだろうと思いますけれども、しかしながら、だからこそ、しっかりと準備をこれから加速していかなければならない課題ではないか、そのように思うところです。定量的に考えていけばいくほど、いわゆる事の困難さというのが明らかになるわけでありまして、今後、本当に大きな課題として取り組むべきことだと思っています。

 今日、これに関わる問題は数々あると思っていますけれども、特に、最も厳しい問題であるところの水と食料の確保、そして後は、災害時医療救護の問題について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、水、食料、支援物資を確実に被災者に届けるために必要な事前準備についてということで御質問をさせていただきたいと思います。

 応急期、火災から、津波から、揺れから生き延びた被災者の皆様、この方々が避難所に避難をされる。この方々に対して、道もずたずたになっている中で、どうやって水や食料、支援物資をそれぞれの現地に届けていくか。このことは大変困難なミッションだろう、そのように考えるところです。

 例えば、本県でも、想定される避難者数は最大で約三十万人となります。必要な飲み水だけでも、一日で約九十万リットルということになります。飲み水だけです、九十万リットルということになります。これは大型トラック六十五台分。津波でほぼ沿岸部の道がずたずたになっている中で、どうやってこれを各避難所に届けていくのか。本当に難しい課題ではなかろうかと思うところです。しかも、これを毎日やっていかなければならぬということなのだろうということです。

 これは全国的にも様々に困難な課題があろうかと思います。実際、東日本大震災でも、支援物資が県庁に山積みになっていたけれども現地に届かなかったとか、津波で被災された現地において多くの方が餓死寸前になられていたとか、本当にいろいろなケースがあったわけです。

 国としては、まず応急救助機関をしっかり現地に展開をしていく、さらに、支援物資をプッシュ型で送り込む、そういう体制を整えていくということが大事だと思いますが、あわせて、自治体においても、それぞれの自治体で避難者が何人出て、必要な水や食料はいかほどかを定量的に把握するとともに、道路とか港湾とかの啓開のために何日かかるのか、必要な、例えば燃料はどれほどで、どこに保管しておくべきなのか、さらには、そもそも、支援物資の集積場所、配送拠点をどこにどのように設けていくのかなどなど、本当に、詰めた定量的分析に基づく具体計画を持っておくべきなのだろう、そのように考えるところです。

 そして、その上で、国と県、都道府県との間でしっかりと両者のプランのすり合わせをしておくということ、このことが大事なのだろう、そのように考えるところであります。国と県とがしっかり共同作業でもって、具体的に、定量的にも対処可能な計画を作り上げていくことが大事です。自治体が頑張らなければなりませんが、極めて重要な課題だけに、国としても自治体の取組をしっかり後押ししていただくことが大事だと考えるところでありますけれども、御見解をお伺いいたします。

榊政府参考人 お答えを申し上げます。

 南海トラフ地震が発生した場合には、迅速かつ確実に水や食料などの支援物資を被災者に届けることが必要となってまいります。

 このため、政府といたしましては、あらかじめタイムラインを明示した緊急輸送ルートや広域物資輸送拠点、それを示した具体的な計画を定めております。広域物資輸送拠点に届けられた物資が確実に被災者の手元に届くためには、自治体の取組がまた重要となってまいります。

 国といたしましても、自治体の取組を支援するために、発災時に物資の集積などを行うことができる防災拠点の整備について、防災・安全交付金による支援を行いますほか、緊急防災・減災事業債による地方財政措置を講じております。

 さらに、国土交通省におきましては、物資拠点から避難所までのラストマイル輸送、これを円滑化するためのガイドラインを策定し、自治体向けに周知しているところであります。

 引き続き、関係省庁と連携して、被災者一人一人に必要な物資が行き渡るよう自治体を支援してまいりたいと存じます。

尾崎分科員 本当に様々に対策を講じていただいていて、特に、ハード面とかそういうのは大分進んできていると思うんですけれども、例えば、具体的に水が何リットル必要で、供給側は幾らなのかとか、そういう需要と供給を定量的に分析するという視点でもって実効性ある対策を講じていくことができるように是非お願いをしたい、そのように考えるところです。

 そして、次にお伺いしたいのが、いわゆる災害時の医療救護体制についてということでございます。このことは、今度、応急期における最難問ということではないかと私は思わせていただいているところです。

 いわゆるL2ケースの場合、高知県の想定死者数というのは約四万二千人であります。ただ、津波避難タワーとか避難場所とかを造っていくことによって、この想定死者数は、試算をして、だんだんだんだん減らしていくことができておりまして、現在は約一万一千人程度まで減らすことができています。ゼロに近づけるためにみんなで全力を挙げているということかと思います。

 ただ、想定死者数そのものは減らすことができても、忘れてはいけないのは、想定負傷者数も莫大で、こちらを減らすことは容易ではないということであります。

 L2ケースの場合、高知では、最悪の場合、約四万七千人の負傷者が発生するであろうというふうに想定をされています。そして、そのうち、東日本大震災などでの経験を踏まえますと、重症、中等症者の数が大体一万四千人ぐらいとなるのではないかと推定をされておりまして、更に言えば、重症者数だけで四千七百人に至る、そのように想定をされています。ちなみに、これは年間の三次救急患者数に相当する規模ということになるわけであります。

 他方で、これに対する医療の供給を定量的に分析をすると、災害拠点病院、幾つかは津波などで被災をすると想定をされるわけでありますけれども、発災後三日間で災害拠点病院が対処できる処置可能者数は大体四千人。DMATは、人口プロラタで、高知に来るチームの数が大体四十六チームぐらいと推定をされるところでありますので、三日間における処置可能数は大体二千人ということになります。

 一万四千人の重症、中等症者に対して、この病院で四千、DMATで二千、合わせて六千の対処ができますが、残念ながら、八千人の方々の対処はできないままになってしまうということが推定をされているところであります。これは高知でそうです。ちなみに、隣の愛媛県でも負傷者の数は四万八千人、徳島でも三万四千人、高知同様に多数の負傷者が発生をするということであって、恐らく同じような状況になっていくでしょう。

 多くの負傷者の方々がケアされることなく亡くなっていくという事態は、何としても避けていかなければなりません。私は、災害時の医療資源の絶対的な不足問題、これは地震対策の最難問だと考えておるところです。高知でも、医療関係者や医療ユニットを各地に展開することによって対応できないかということで、前方展開型の医療救護体制の確立と称して様々な対策を講じているところです。総動員でいこうということで皆様にも御協力をいただいているところでありますけれども、国としても、定量的な分析を行った上で、対策を抜本強化する必要があると考えるところであります。

 事は命に関わる問題です。国として今後どのように取り組んでいくのか、御見解をお伺いしたいと思います。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、災害時の医療提供体制の整備は非常に重要な課題であります。例えば、南海トラフ地震におきましては、約六十二万三千人の負傷者が発生し、被災地内の医療資源のみでは対応できない状態となることが想定されております。

 政府といたしましては、南海トラフ地震が発生した場合に備えまして、人命救助のために重要な七十二時間を意識したタイムラインを明示した、具体的な応急対策活動に関する計画を定めております。この計画の中で、医療につきましては、全国で千七百四十七チーム、一万五千六百四十五人が登録されております災害派遣医療チーム、DMAT等による応援や、重症患者の被災地外への搬送などの手順を明確にしているところであります。

 引き続き、厚生労働省を始め関係省庁と連携して、一人でも多くの命を救うことができるよう、災害時の医療提供体制の強化に努めてまいりたいと存じます。

尾崎分科員 この問題は本当に難しい問題だと思うところであります。

 忘れてはいけないのは熊本地震です。発災直後で亡くなられた方の数よりも、その後亡くなられた方の数の方が多かった、そういうことがございました。

 やはり、地震発災直後に助かった命、その命をいかに守り続けていくかという視点から、この災害時の医療救護の問題について、しっかりとみんなの英知を集めて、本当に真摯な気持ちで対応していくことが引き続き大事だ、そういうふうに思うところでございまして、是非、内閣府の皆様方にも御検討を進めていただきたい、そのように考えるところです。是非、各省庁連携をしてお願いを申し上げたい、そのように考えます。

 最後に、事前防災の徹底についてお話を伺います。なかんずく、事前の高台移転の推進についてということでお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど来申し上げてまいりましたように、発災によります想定死者数、負傷者数、経済的被害額を考えましても、さらには、具体的に、応急期における支援物資の搬送でありますとか医療救護の困難性ということを考えましても、本当にこれは大変な問題です。ですからこそ、この地震による発災直後の被害額、被災者数をいかに減らしていくかということがやはり大事なのだろう、そのように考えるところでございます。

 その点、住宅の耐震化の推進、これは様々な地震対策の入口でありまして、重要なことは論をまちませんし、これまでも様々に対策が強化をされてまいりました。

 しかしながら、町全体がそもそも津波浸水地域に含まれる、そういう町が日本にはたくさんあります。終戦一年後に発災しました昭和南海地震の後、そもそも、当時はまだ、プレート型地震は繰り返すという知見が明らかになっておりませんでした。戦災復興の流れの中で、多くの町は海に向かって延びていった。そういう町がたくさん日本にはあるわけでございます。根源的な地震、津波対策として、町そのものを徐々に徐々にでも高台に移転させて、そもそも津波を恐れなくてよいまちづくり、国土づくりを行うことが極めて重要だと考えるところです。

 ちなみに、東日本大震災の復興事業の中で、各地で住宅地などの高台での造成事業が行われてきたところでありまして、その総事業費は、例えば防災集団移転促進事業と都市再生区画整理事業の二事業で約一兆円に及びます。

 南海トラフ地震が発生してしまった後、同地震で被災した地域でも、東日本大震災の場合と同様に、高台での住宅地の造成などが行われることになるのでありましょう。

 しかしながら、これからは、東日本大震災の貴重な教訓にも是非学ばせていただきながら、何よりも命を守るために、被災後ではなくて被災の前に高台に移転をする、このことを促す対策をしっかりと講じていく必要があるのではないか、そのように考えるところでございます。

 南海トラフ地震に備えまして、是非とも、発災後ではなく発災前の高台移転を促す対策をしっかりと講じていく必要があると思います。まずは、極めて危険度の高い地域に限定してでもこの事前の高台移転策を講じていく必要があると思いますけれども、御見解をお伺いいたします。

渡邉(浩)政府参考人 お答え申し上げます。

 南海トラフ地震等による津波から国民の命と暮らしを守るためには事前防災が非常に重要であり、その対策の一つとして、事前の高台移転は重要な対策と考えております。そのため、津波による被災が想定されるエリアから高台への移転が少しでも進むよう、支援策の拡充に取り組んでいるところです。

 具体的には、住宅については、防災集団移転促進事業において、住宅団地の規模要件の緩和や計画策定経費の補助対象化を行い、医療、福祉、教育施設等については、都市構造再編集中支援事業において、移転を支援する仕組みを拡充しているところです。

 国土交通省といたしましては、地方自治体がこうした制度を有効に活用していただけるよう、地域の声を伺いながら、しっかりと取り組んでまいります。

尾崎分科員 どうもありがとうございました。

 残念ながら、防災集団移転促進事業、事前の対策としてはまだ活用実績がないんだろうと思います。一生懸命、要件緩和、活用できるように御努力いただいているところです。引き続き、是非お願いしたいと思います。抜本的な対策の強化を是非お願いしたい。そのことを心からお願い申し上げまして、質疑を終えさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

島尻主査 これにて尾崎正直さんの質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

島尻主査 次に、国会所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。池下卓さん。

池下分科員 おはようございます。日本維新の会の池下卓です。

 まず最初に、文書通信交通滞在費、いわゆる文通費についてお伺いをしていきたいという具合に思います。

 文通費は、衆議院、四百六十五人掛ける月百万円で、月額で四億六千五百万。それが十二か月だと五十五億八千万円の予算が毎年衆議院だけでも計上されているという形になります。

 私、昨年の十月に初当選させていただきまして、一番最初に疑問に思ったのがこの文通費の件でありました。たった一日で、世間では考えられない百万円というのが現金で当事務所の方にやってきた。最初は何のお金かなと思ったんですけれども、実は文通費であったと。私が出演させていただいたテレビ番組の方でもこれはお伝えをしたんですけれども、まさに、国民の理解をしっかりと得るために、改めてこの分科会の方で質問をさせていただきたいと思っております。

 議員立法の部分がありますので、当然、今現在、与野党間で議論がされているところでありますけれども、是非、一石を投じていくためにも、まずはこの仕組みからしっかりと議論をさせていただきたいなという形で思っております。

 まず、文通費の議論をする前提としまして、個人の政治資金管理についてお伺いをしていきたいと思います。

 個人の政治資金管理につきましては、過去に、政治と金の問題から、公私の峻別と透明化を図るために、昭和五十五年に政治資金規正法が改正されました。それ以前は、政治家個人への寄附に関して、私人としてのプライベートな資金と公職の候補者への寄附を分けて報告するすべがなかったことから、公職の候補者へ寄附された資金に関しては、かつて、指定団体というものを設置して、そこで管理、報告する仕組みと、そして、指定団体を持たない公職の候補者につきましては、保有金という形で、政治家個人が、あくまで個人が管理、報告する仕組みというものが取られておりました。

 しかし、これらの仕組みでは、指定団体に資金が一回寄附されまして、その資金が団体を通じて政治家個人へ寄附されたとしても、その先、政治家個人がその寄附された資金をどのような形で使っていったのかというところまでは報告する義務がなかったということもありまして、それらの不具合を改善するために、平成六年に現在の資金管理団体の制度へ移行した経緯があると存じております。

 そこで、そもそも現在の制度へ移行した目的は何なのか、そして、資金管理団体で管理すべき資金というのは何か、資金管理団体でどのような形で資金管理が行われているのかにつきましてお伺いをしたいと思います。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 政治資金規正法上、資金管理団体とは、公職の候補者が自らその代表者である政治団体のうちから、その者のために政治資金の拠出を受けるべき政治団体として指定した団体をいうと政治資金規正法十九条一項に規定されているところでございます。

 指定管理団体制度につきましては、公職の候補者の公私の峻別のより一層の徹底を制度的に担保するために、平成六年の法改正において、公職の候補者の政治活動に関する寄附で金銭等によるものについては、選挙運動に関するもの及び政党がするものを除き、これを禁止するとともに、新たに資金管理団体制度が創設をされ、公職の候補者の政治資金について資金管理団体で取り扱うとされたものと承知をしております。

池下分科員 ありがとうございます。

 過去の経験から、この資金管理団体による寄附なんですけれども、御答弁ありましたように、個人の政治活動を報告して、公私をしっかりと峻別して分けておくことが国民の理解になるのだ、これを制度として担保したんだよということだと理解をいたしました。

 そして、確認なんですけれども、政治団体のうち、私も後援会というものを持っておりますけれども、後援会はどのような活動に関する資金を収支報告するのか。例えば、政治家個人の活動に関する支出、これにまで範疇が及ぶのかどうかについてお伺いをしたいと思います。

森政府参考人 御質問の趣旨は、後援会という政治団体ということでお聞きになっておられるかと思いますけれども、候補者個人といわば別の人格として後援会という政治団体が設立される、そういう当該政治団体の全ての収入、支出について収支報告をするということが規定されているというものと承知をしております。

池下分科員 ありがとうございます。

 済みません、後援会というか政治団体ですね、そちらの形になるかと思います。

 ということは、先ほど後援会という言い方をしましたけれども、この後援会の活動というのは当然その目的がありますので、それの目的に準じたものに対して収支報告すべきものだと思っておりますし、例えば、私が、政治家個人が出張に行きましたよ、そういうときの費用などを後援会の団体から支払うということは、政治家個人の経費を代わって弁償しているということになりますので、せっかく収支報告で明らかにする政治と金の関係を国民の目から見てもちょっと分かりにくくするというものですから、しっかりと峻別というものを私もしていかなければならないという形で思っております。

 つまり、政治家個人としての議員の活動経費は、後援会という政治団体で間接的に報告するのではなくて、先ほど冒頭御説明いただきました、資金管理団体でのみダイレクトに収支報告をして、その収支を明らかにすることが、公私を峻別するという法律の趣旨にしっかりと合致しているのかなという形で思います。

 そこで、改めて文通費について御質問をしていきたい、確認をしていきたいと思います。

 文通費は、国会法第三十八条の規定によりまして、国会議員の歳費法第九条にも規定されております。一般的に分かりやすく言いますと、国会議員のお給料に対して定められているということなんですが、私は、この文通費というものがそもそも歳費法の中で規定されていることが国民の理解がしにくいのかなと考えておりまして、また、その内容についても誤解を与えているのかと感じています。

 まず、この文通費の制度について、どのような制度なのか、概要についてお伺いをしたいと思います。

岡田事務総長 文書通信交通滞在費でございますけれども、先生今御紹介いただきました国会法の第三十八条に、「議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける。」と定められまして、続いて、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の第九条に、「各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として月額百万円を受ける。」「前項の文書通信交通滞在費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。」というふうに定められているところでございます。

池下分科員 概要を理解させていただきました。また、条文の方を読んでいただきまして、ありがとうございました。

 そこで、ちょっとこの文通費について掘り下げてお伺いをしていきたいと思うんですけれども、平成十三年に衆議院改革に関する調査会や、国会逐次解説、また、昭和四十一年の三月十九日に行われました予算委員会において福田赳夫国務大臣の答弁、特に、なぜ、現在の定額の金額を渡し切りで、返金不要で、税金は非課税とされているのかについてお伺いをしたいと思います。

岡田事務総長 先生今御紹介をいただきました昭和四十一年三月十九日の参議院予算委員会におきまして、当時の福田赳夫大蔵大臣から、「議員に支給される交通通信費は、議員がその職務を行なう上において必要欠くべからざる経費であります。したがいまして、これは課税の対象にいたさない。」との答弁や、また、同じく福田大蔵大臣から、「一般の会社なんかに適用される場合に、渡し切りにいたしますと、それが給与に流れるおそれがあるというのでこれを課税の対象にいたしますが、しかし、国会が、これは国会議員の職務執行上必要な通信費だと認定いたしまして支給するものでありまするもんですから、これは実態に即して措置すべきものである、」という答弁がございます。

池下分科員 過去に、福田大臣の発言によりますと、今回、当然、この歳費法に入っているわけでありますが、渡し切りだと通常は課税となりますけれども、国会議員の職務上必要だから非課税という具合に言われておりますけれども、これは歳費法の中に入っているわけですから、やはりちょっとそこはまた実費精算の性格ということもあるという具合に聞いて、国会の逐次解説では実費精算という形でも書いてありますので、そこで言うと、渡し切りというのとはちょっと違うのじゃないかな。

 国会議員が、民間とは違って、国会議員の職務だからということで、性善説がまさに取られているんじゃないかなという具合に考えるわけです。そうすると、やはり国民からすると、ちょっとそれは国会議員さん、納得いかないんじゃないのという具合に思うわけなんです。

 まさに、今の御答弁といいますのは、歳費法に含まれる文通費がなぜ非課税なのか、また、渡し切りで国庫に返却不要なのかという理由を言っていただいたのかなと思います。法に規定されているため、歳費という個人の給与まで報告させるべきではないということもあって、使途報告、自分の給料まで報告はさせないというのがその根底にあるんじゃないかなという具合に考えているわけなんです。

 今は、なぜ非課税なのか、渡し切りなのかということについてお伺いをしたんですが、ちょっと観点を変えまして、次に、この文通費の使い道、使用用途とその額、なぜ今百万円になっているのかということについても併せてお話をしていきたいと思います。

 ちょっとこちらの方は私の方から御紹介をさせていただきたいと思うんですけれども、平成五年の一月二十一日、衆議院議院運営委員会庶務小委員会において、当時の与謝野馨小委員長の御発言、これを御紹介させていただきたいと思います。

 一部、こちらの方を読ませていただきたいなと思うんですが、文書通信交通滞在費の件でありますが、予算折衝の過程の中で、最近の議員の政治活動の実態を勘案し、また、抜本的な政治改革に資するため、従来の文書、通信、交通に要する経費のほかに、東京滞在に係る経費、議員活動事務所の経費、国会活動報告等の経費を加えることに合意を見たものでありまして、これらの一部を実費弁償するため、名称を文書通信交通滞在費と改め、現行月額七十五万円を百万円に増額する措置を講じたものであります、こういう発言がなされているわけなんですね。

 そこで、伺うんですけれども、まさにイエスかノーかでお伺いをしたいんですが、この与謝野委員長の発言というのは事実でしょうか、どうでしょうか。

岡田事務総長 先生からただいま御紹介をいただきました、そのとおりでございます。

池下分科員 事実ということでありました。

 実は、こうお話をさせていただいているんですけれども、非常に重たいものだと私は感じております。

 国会法第三十八条、先ほど言うていただいたんですが、「議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、」と使用用途が定められているんですけれども、その使用用途についての詳細というものは法律の中では記載されていません。ただ、この与謝野委員長の御発言によると、東京滞在に係る経費、議員活動事務所の経費、国会活動報告等の経費も含むとされています。そのために百万円に増額されたという経緯がありました。

 このように、文通費は、個人に支給されて、国会議員活動を行う上での幅広い経費に対して使用できると理解されるわけなんですけれども、そう考えれば、まさに、現在のこの歳費法、お給料の中で規定していくということは、制度上、ちょっと限界が来ているんじゃないかなと私は感じるわけなんです。

 まさに、文通費に関しては、今国会、与野党間で議論をされておりますし、議員立法の部分になりますから、ここでお答えくださいねと言っても、それは無理ですわということになるんですけれども、そこで、私見なんですが、冒頭に質問させていただいた資金管理団体と含めまして、ちょっと私見を述べさせていただきたいなという具合に思います。

 まず、政治資金規正法では、先ほども申し上げました、昭和五十五年以降の政治家個人の寄附の流れを保有金という形で個人が報告する仕組みと個人に対する寄附金を指定団体を通じて報告する仕組みが基になって、平成六年の現在の資金管理団体の制度となっている、これは今までお答えいただいたものかと思います。資金管理団体でのみ政治家個人の活動に対して資金の収支が報告されることになりますよということも冒頭お話しいただきました。

 文通費は政治家個人に対する寄附ではないんですが、歳費法の枠内では制度上限界が来ているというのはお話ししましたけれども、資金管理団体の中で区分経理をすることで、また、残余の金額については国庫に返金できる仕組みというのをつくるとともに、この収支報告については、当然、総務省さんに一回報告する、管轄なので報告する形になりますけれども、併せて、総務省に報告後、直ちに文通費の部分だけちょっと抜き出していただいて衆議院の方にも別途報告するという形式に改正することができれば、一連の流れというものが分かりやすくなって、文通費だけ、どのような使い道になっているんですかということも分かりやすくなって、国民の理解も得られるんじゃないかな、私はこういうふうに考えるわけなんです。

 先ほど申し上げましたように、文通費に関しては議員立法ですのでここでは御議論していただくことはできませんけれども、今国会で成立すればいいんですけれども、与野党間の議論に是非一石というものを投じたいなという具合に考えております。

 以上をもちまして、一旦ちょっと文通費の件、また政治資金の件については質問を終わらせていただきたいと思います。

 次に、国会における、今度は請願の取扱いについてお伺いをしていきたいと思います。

 国民が国政に対する要望を直接国会に述べることができる請願は、憲法第十六条、国民の権利として保障されております。

 私は、この制度についてもしっかりと機能させることで国民の負託に応えていかなければならないと考えておりますが、一義的には送付を受けた行政、政府の判断を待つとしても、国会自ら、請願を立法措置するための重要な判断材料として積極的に活用すべきだと思っています。そのためには、請願や意見書の実効性を高めるためにも、やはりこれも予算も必要ですし、それに対する議論をする時間もしっかりと確保していかなければならないと考えております。

 昭和四十四年の議院運営委員会の理事会におきまして、請願の取扱いについては、現在、会期末に一括して審査をしているようであるが、会期が長期にわたる場合には、各委員会における実情に応じ、会期半ばの適当な時期にもその審査を行い、また、請願小委員会を設置する等の方法を考慮し、請願審査の慎重を期する必要があるものとしております。また、昭和四十五年、同じ議運の理事会におきましても、同様に、各委員会において可能な限り十分な審議の時間を取ると述べられております。

 そこで、現在の請願に関しての各委員会の審議状況についてお伺いしたいと思います。

 請願文書がどのように審査が行われているのか、令和三年度通常国会で請願数がどれくらいあるのか、これまでの議運の理事会で言われてきました請願小委員会が開催されている状況はどうなのかについてお伺いをいたします。

岡田事務総長 令和三年の常会、第二百四回国会における、請願を受理し委員会に付託をしました件数は三千三十五件、採択件数は五百九十五件でございます。

 また、先生から御紹介をいただきました請願の小委員会でございますが、過去、委員会における請願の取扱いに関しまして、先例に基づき、請願を小委員会の審査に付したことはございます。

 ただ、委員会において請願審査小委員会を設置した直近の例は、第三十一回国会の昭和三十四年三月十八日の地方行政委員会、また、同年三月二十七日の商工委員会において設置をされているものと承知しております。

 したがいまして、第六十一回国会、先ほど先生から御紹介のありました議院運営委員会理事会の決定以降において、請願小委員会が設置された例は見当たらなかったというところでございます。

池下分科員 僕は重たいものだと思うんですよね、やはりこの議運の理事会で言われたことに関しまして。

 そして、三千三十五件ですか、前常会の方で言われたものに対して、五百九十五件ですか、それが採択されたということでありますけれども、お答えのように、小委員会についてもほとんどというか全くされていないということでありますし、やはり会期末でほとんどやられているということで、ほとんど審議する時間がそもそもないわけですよね。

 冒頭申し上げましたように、請願は憲法で保障された権利でありますし、いろいろな方が思いを持って署名活動をしたりとかして手続を取ってやっと国会に上げてきているわけですので、やはりこれは真摯に受け止めてやっていくのが私は国会の役目だと思うんです。

 私、今、国会議員になって本当に数か月でありますけれども、逆に、だからこそ一般国民の皆さんに近い感覚で、何やっとんねん、国会と。法案審議はもちろん大事ですよ。もちろん大事ですけれども、やはり国民の負託というのは、法案を審議、通すだけじゃありませんし、いろいろな形で国民の負託というものをやっていくべきだと思っております。当然、皆さんに言うてもあれなんですけれども、議員サイドの話ですから、おまえらがちゃんとやらんかいという話だと思いますけれども、自戒を込めて今回ちょっと質問をさせていただいているところです。

 また、地方議会からの意見書についても、地方自治法第九十九条に基づきまして、地方公共団体の議会は国会に意見書を提出することができます。私は大阪府議会に所属していましたので、府議会に問い合わせたところ、国会に提出した意見書は、令和元年度で十五件、令和二年度は十六件ありました。それが、全国の地方議会から上がってきた意見書になりますと、相当な数になってくるものだと考えております。

 また、これに対して、意見書について質問はしませんけれども、やはり私も地方議会で一生懸命作ってきて国会に提出して、何とかしてくださいよと意見を言うてきた立場で言わせていただきますと、出したら出しっ放し、参考送付ということで、参考にされているのかどうか、御回答も当然ないわけですから、どうなっているんやろうなということで、本当に不思議に思っていました。

 地元の議会でしたら、当然、直接話を聞きまして、それを参考にしてやらせていただくわけなんですけれども、地元じゃない議会なんかというと、声というのがなかなか我々国会議員にも届きにくいかなと思っておりますので、改めてこういうところも国会改革としてやっていかなければならないなという形で思っているところです。

 ちょっと観点を変えまして、次のお話をさせていただきたいなと思っております。

 次に、ちょっと順番を変えまして、デジタル庁さんについてお伺いを、デジタル化についてお伺いをしていきたいなと思います。

 今、コロナ禍で在宅勤務が増えまして、リモート会議の技術や手法というのも進んできております。リモート会議をするにしても、複数のアプリや媒体がありまして、相手方によって媒体を合わせていかなければならないという状況もあります。

 しかし、永田町の省庁間では、これを統一化していくことはされてきたのか、どうでしょうか。デジタル庁の前身であるIT室時代からの経緯と、この取組状況につきましてお伺いしたいと思います。

楠(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 令和二年度において、新型コロナ感染症対策の一環といたしまして、府省間で共通して利用可能なウェブ会議ツールを整備しておりまして、現在、デジタル庁において、当該ツールの管理、運用等を実施しているところでございます。

 一方で、政府以外の外部の方々とのやり取りにおきまして様々なウェブ会議ツールの利用ニーズがあるというところを認識しておりまして、デジタル庁といたしましては、費用対効果等を踏まえつつ、更に効率的かつ利便性の高いツールの整備、運用の実現に向けて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

池下分科員 ありがとうございます。

 まさに、この様々なツールに関しましては、私、最初、大阪府議会からこの衆議院に来たとき、ちょっと不思議だったんです。省庁間でなぜいろいろなアプリというかツールを使いながらウェブ会議をやっているのかな、統一できないのかなという疑問を最初持っておりました。

 ただ、いろいろ聞いておるところによりますと、コストがどうしてもかかってくるという部分もあります。アカウントですかね、その料金も非常に高いので、これを全部広げていくにはどうしても費用がかかるんですということと、あとはやはり、民間企業とやり取りする場合には、当然、相手方さんがいますので、それにも合わせていかなければならない。様々な御苦労があるのかなと私は推察をしております。

 ただ、やはり、もう時代はどんどんどんどん進んでいきますし、今せっかく入れたものにつきましても、時代が進んでいけば、それがまた陳腐化していって、また新しいものを入れていかなければならない。本当に、時代に即した形で予算というものもしっかりと組んでいかなければならないという具合に感じます。

 そこで、お伺いをしていきたいんですが、実際、今のデジタル庁の予算なんですけれども、これからもっと必要になってくるのかどうか。私は必要になってくるかと思うんですけれども、そちらについてちょっと御意見をいただきたいと思います。

楠(正)政府参考人 なかなか即答できる話ではないところでもございますけれども、技術革新によって、これまでよりもコストが下がってくる部分というのがある一方で、これまでよりも幅広くデジタル化を行っていった場合に、そのための経費がかかるという部分もございます。ここの効果をしっかりとお示ししていきながら、しっかりと財務省とも議論をしていきながら、理解を得られるような予算要求を行っていく必要があるかというふうに思います。

 これは、デジタル化していくから予算が増えるという話ではなくて、しっかりと、事業経費ですとか、行政に係る費用全体を見て、それを最適化していけるようなデジタル化を御提案してまいる必要があるのかなというふうに考えております。

池下分科員 ありがとうございます。

 ちょっとそこはお答えにくいところかな、私も突然質問しましたので、お答えにくいかなと思います。

 当然、費用対効果というのをしっかりと検証しながらやっていただきたいと思いますけれども、財務省さんにも当然上げていかなきゃいけない部分でありますけれども、私は、やはりこれは必要なお金だ、将来に対する投資だという具合に思っているわけです。

 これからの時代に即した形で、これからも、議会サイドとしても、デジタル庁さんの方には、個人的にも応援していきたいなという形で思っておりますので、しっかりと取組の方を進めていただきたいという具合に思っております。

 時間が足りなくなりましたので、ちょっと一部、ペーパーレス化については割愛させていただきたいと思いますけれども、引き続き、しっかりと取り組んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

島尻主査 これにて池下卓さんの質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

島尻主査 次に、防衛省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。末松義規さん。

末松分科員 立憲民主党の末松義規でございます。

 今日は三十分間でございますので、できるだけ答弁を短くしていただければ大変ありがたいと思います。

 私は、前置きとして二点だけ申し上げます。

 一点は、今日は敵基地攻撃に関する議論ではございますけれども、私の記憶として、外務省時代にイラクのバグダッドで赴任していたときに、一九八五年に、イランからスカッドBというのが数百発撃たれて、私自身が戦争体験をした。私の家のすぐ近くにも落ちてきて、そして激震が走って、窓ガラスが割れたのと同時に、見たら、現場に行ったら、もう本当に、煙の渦、火柱そして悲鳴の叫びというのがすさまじかったのを覚えております。私も救護活動に行って、ある意味では、これが戦場かという、ど汚いまでの、何かすさまじい地獄を見た。

 そのときに感じたのは、二点ございまして、一点は、背中に電流が走ったんですけれども、日本民族をこんなとんでもない状況に巻き込んではいけないということ。二点目が、憲法九条、私、実は改正論者だったんですね、前は。そのときに、憲法九条は守らなきゃいけないということで水平移動した、こういう経験がございます。

 もう一点は、今、ウクライナの関係で、ロシアとNATO、一触即発の関係になっていますけれども、私は、中国の立場から見たら、米国が二正面作戦をできないということを踏まえて、今こそ台湾とか尖閣とかそういったことに対して触手を伸ばせる機会かなというふうにちょっと感じているので、防衛省も是非、引き続き、抜かりなく、そこは意識を持ってやっていただければと思っています。

 質問に入ります。別に所感は結構ですから。

 まず、資料を開けていただきたいんですけれども、ここで「「打撃力」に係る日米の役割分担」というのがございまして、これで言いたいのが、当時の安倍総理の立場が示されているんですけれども、敵基地攻撃については、盾と矛の関係で、米軍がメインにやる、メインというか米軍がやる、そして盾の関係では自衛隊がやるということで、この役割分担を変更することは考えていない、こういうふうに書いてあるわけですよ。

 それが、これは確かにそうなんだと思うんですけれども、問題は、要するに、自衛隊が今度は敵基地攻撃を、それをやることを検討すると岸田政権になって言い始めた。これは危ない橋を渡るよねと。

 だから、これが、何かそういう事態を、日本側の自衛隊がそういう形で、自分たちで考え始めたのか、それとも米側からの要請があったのか、そこをちょっとクリアにしていただきたいと思います。

岸国務大臣 近年、我が国を取り巻く安全保障環境は非常に厳しいものがございます。極超音速滑空兵器あるいは変則軌道で飛翔するミサイルなど、ミサイルに関して、急速なスピードで変化、進化をしております。

 こうした中で、ミサイル防衛体制を始め、国民の命、平和な暮らしを守っていく、守り抜いていくために十分な備えが備わっているかどうかという問題意識の下で、いわゆる敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず検討しているところでございます。

 日米間で平素から様々なやり取りを行っているところでございますが、個別具体的なやり取りはお答えを差し控えさせていただきますが、今回の検討は、米国からの要請を受けて行うものではなく、我が国として主体的に行っているものであります。

末松分科員 我が国が主体的に行っているということは、それは米側からは要請がなかったという形だと思うんですけれども、本当に危ない橋を渡るなあという気はするわけですよ。

 さっき大臣が言われたように、極超音速のミサイル、これは北朝鮮が開発されてきてほぼ最終段階だと言われている。そこで、もし北朝鮮が、仮にですよ、こっちが予防的な自衛権行使というような形で敵基地を攻撃するなんという話になった場合は、要するに、それの百倍返しぐらいのカウンターアタックがあると考えてもいいんですね。

 これは大臣に要請なんですけれども、今防衛省内で検討が進んでいると言われている敵基地攻撃を含めた検討会。これに、そういった、実際に、それが北朝鮮なのかあるいは台湾危機の中国なのか、そこは分かりませんけれども、要は、そこに敵基地攻撃をやる、ちょっとやったって意味がない、それの数百倍のリターン、つまりカウンターアタックが来る、そのときに、どういう形でしっかり日本を守れるのか、あるいはそれに対してどういう今度は日本が反撃をするのか、そういうことも詳細にそれは検討していただきたいと思います。それは要請です。

 では、次に進みます。

 それから三番目に、敵基地攻撃と防衛出動、それから日米安保条約の発動の関係というのが私の質問になりますけれども、これはどういうことかというと、もし、敵基地攻撃をしました、カウンターアタックがありました、これを想定しない方がおかしいですよね、当然それは想定内に入っていなきゃいけない。そのときに、米軍とも、米軍はまた議会なんかの手続を取って加わっていく、安保条約によって。そういうことになると思いますけれども、そういった場合、米軍は、別に自衛隊の指揮下に入っているわけでもなくて、独立した行動でございますので、そこは我々として何か米軍に対して、そういった日本側の都合を聞いてもらえるような、そういう状況にあるんでしょうか。

岸国務大臣 先ほども申しましたけれども、ミサイル等々、我が国の周辺の安保環境が非常に厳しい中で、国民の命、平和な暮らしをしっかり守っていかなければならない。その中で、ミサイル迎撃能力の向上ということだけではなくて、いわゆる敵基地攻撃能力も含めたあらゆる選択肢を排除せず、今検討している。

 その上で、日米間では、平素から、いかなる状況においても、切れ目のない形で、日本の平和と安全を確保するための措置を取っていくこととしております。自衛隊として、米軍との間でも緊密に連携をして、しっかり万全の体制を取ってまいりたいと考えております。

末松分科員 一点確認ですけれども、米軍が行動するときは、米軍の、日本を助けるという目的の中で、米軍が自分で考えて、そして米軍が攻撃なら攻撃をやる、そういうことですよね。

 確認だけで、イエスかノーで結構です。

岸国務大臣 日米の共同行動における具体的な米軍の御対応について、国際法に認められた自衛権の範囲内で米軍が武力の行使を行うと理解しております。

末松分科員 基本的に、日本が米軍の指揮権に対して何か介入をしていくということは実際はできないと思いますけれども。

 法制局長官にも聞くんですけれども、別に米軍は日本国憲法の制約を受けませんよね。イエスかノーでお願いします。

近藤政府特別補佐人 日本国憲法は、あくまでも我が国の行為を規律するものでありまして、日米安全保障条約に基づいて行われる米国の行為を制約するものではございません。

末松分科員 これはちょっと具体的な事例での見解なんですけれども、そうなると、米軍が我が国の平和と安全を守るために、今度は、例えば、これは仮定の話ですけれども、北朝鮮なら北朝鮮とか、敵国に出向いていって占領する。そういった米軍の、空軍、陸軍そして海軍、それに海兵隊が占領していくということに至ったとしても、我が国としてはそれに対して反対を唱えるという立場ではございませんよね。

近藤政府特別補佐人 ちょっと今の御質問は、むしろ政策なり現場の運営における日本の政府の対応の問題でございますので、法制局として何かお答えをするところではございませんけれども、先ほど申しましたように、米国の行動というのは日本の憲法の制約の外であって、それは関知しないところになるということでございます。

末松分科員 私の懸念は、敵基地攻撃をした、カウンターアタックが来た、それに対してこっちも対応する、これは当然の筋道なんですけれども、そういった場合は、どちらかというと、世間から見て、世界から見て、これは戦争状態だという形になると思うんですよね。

 戦争状態になって、これは、自衛隊は自衛隊の、自衛権行使の三要件を守りながら、それは別に敵基地の方に、何か占領するとかそういうことではないけれども、こういう交戦状態、基本的には憲法が、憲法九条を顧みるとこれはあり得ない存在ですが、国の主権の危機だという話になればこれは話は違うよといって、それは、憲法上、憲法九条もあれば、また、憲法九十八条、条約遵守義務ということで日米安全保障条約を認めているという観点からいくと、そういう交戦状態もあり得ると憲法では想定しているということでしょうか。法制局長官、お聞きします。

近藤政府特別補佐人 今、憲法が想定している、想定していないというところ、なかなかそこまで想定しているかどうか分かりませんが、例えば砂川判決などにおきましては、今の憲法において、他国に対して、我が国の平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めるというようなことは別に禁止はしていないという言い方で、そういうことが起こっても、あり得る。それに基づいて他国が何らかの行動をするということも、それは許容をしているということだと思います。

末松分科員 何か非常に抽象的な言い方に変えられちゃっていますけれどもね。だから、それは日米安保条約でそういう形をもう取っているわけですよ、憲法上。

 ということは、本当にそこに憲法の大きな矛盾を実は私も感じていて、表では、憲法九条で平和な国、一切戦力を持ちませんとか、交戦権はこれを認めないとか言っているんですけれども、結局、アメリカが出てきて、そこの中で他国に対して打撃力を発揮するということ自体が、これは古くからの、憲法の抱えている矛盾ということではあるんでしょうけれども。

 ただ、その場合、やはりどういうふうに法的に整理するかということで、今法制局長官の方でふわっとした形の回答が出ましたけれども。

 ここで、日米安全保障条約を認めている憲法としてどういう整理をするのか。私もその辺の整理が自分の頭の中でできないんですよ。ちょっともう一回言ってくれませんか、その整理を。

近藤政府特別補佐人 御質問の趣旨、必ずしもきちっと把握しておるかどうか分かりませんけれども、先ほど申しましたとおりに、日本国憲法は、自衛隊、今は自衛隊ということですけれども、日本国についての規律をしております。

 それから、条約については、憲法の下で許される条約を結んでいるということであって、そこまでが憲法の範囲であって、それ以外のところは憲法との関係では無関係な世界であり、アメリカ軍の行動というのは、先ほど防衛大臣からも御答弁がありましたように、国際法の下あるいはアメリカの憲法の下で規制がされていて、それは別の国の行動ですから、私どもの憲法の射程の外ですから、逆に言うと、そこは無関係な世界になっているということだと思います。

末松分科員 無関係なんて言われると、日本を相対として見て、何かおかしいんじゃないかと。

 要は、自衛隊は、自衛権行使の三要件でしっかり縛られて、それに基づいて行動しています、それはいいわけですよ。ただ、そういった中で、別に私、アメリカの存在を否定しているわけではないんですよ。だけれども、アメリカの存在が保護となって、他国に対してもそういった、占領までもできるというような、それは憲法は無関係ですというふうに切られちゃうと、何なんだ、この国はと。そうすると、在日米軍基地の存在が憲法とは無関係ですと言われちゃうと、これはおかしな話だろうと。これをきちんと真正面から向き合って、しっかりやっていかないといけない。

 だから、そこはいいんですよ。そういう、日本という国はアメリカに守られていて、打撃も来るんだぜ、これが抑止の一番大きな力になっているというのは現実で、分かるんですけれども、ただ、それを無関係なんて言われると、想定はしているというぐらいはしておかないとおかしいんじゃないですかね。

 もう一度、ちょっと今、無関係ということに対して、これは失言じゃないかと思うんですけれどもね。

近藤政府特別補佐人 ただいまの御議論、安保条約が結ばれた当時もやはり国会でも議論がありまして、当時の林修三法制局長官が、在日米軍の軍備であるとか行動であるとか、それは憲法とどういう関係にあるんだという議論を、そのときにやはり同じようなお答えをしておりまして、米軍がいかなる装備を持ち、いかなる行動をしても、これは日本の憲法違反とか違反でないとかいう問題は起こらないということで、基本的には日本の憲法の範囲の外の問題であるというお答えを当時もされております。

末松分科員 だから、その当時からおかしな答弁がまかり通ったということですよ、結局は。

 きちんと現実を見ながら、真正面から通っていかないと、答えにくいから逃げたという話でしかないなと思います。この話をしていても時間がなくなりますから。

 私の方で申し上げたいのは、そういったカウンターアタックを含めた敵基地攻撃の議論というのは、要は、アタックの、双方の攻撃で戦争状態ということになりやすい。私は、イラクで見て、それは本当にすごく感じたんですね。

 だから、そういった場合です。例えば、台湾有事とか、あるいは北朝鮮の有事とか。北朝鮮なんて本当に、核弾頭を東京に一旦でも落とせば、この地域も全部灰になるわけですから。あるいは台湾有事でもそうなんですね。

 私、感じるんですよ。米側と本当に軍事的に一緒にやって、友好的に、協力関係に持っていけばいくほど、米側が軍事シナリオの中でやってきた場合は、日本としても大きなやけどを負う危険性がどんどん高まるということです。それの場合は中国を相手にするという話になりますから。中国といったって、核兵器国の、大きな国ですから、極超音速のミサイルだって当然持っているでしょうから、そういうふうなことを、軍事シナリオでいくと危険がどんどん日本に迫ってくる。

 だから、私が申し上げたいのは、これを外交的に、例えばヨーロッパとかASEANとか、こういった何かの組織を、きちんと仕組みをつくって、そして今、米中の覇権対立みたいな形になっていますけれども、そういったことを、エスカレートしないような、そういった外交的仕組みをつくるべきだと思うんですね。

 幸いにして、岸大臣は、まさしく外務副大臣もやっておられて、防衛大臣もやっておられますから、そこについて何か一言でもコメントいただければと思います、外交的な解決の重要性について。

岸国務大臣 外交力の重要性については、今、末松先生の御指摘のとおり、私も外務副大臣をやっておりましたけれども、考えを全く一にしているものでございます。

 北朝鮮について、日米や日米韓で緊密な連携を取ること、それとともに、国際社会とも協力していくということですね。関連する安保理決議の完全な履行を求め、北朝鮮の非核化を目指しています。

 また、台湾をめぐる情勢については、日本の安全保障はもとより、国際社会に対しても大変大きな不安定要素として重要でございます。台湾をめぐる問題が対話を通じて平和的に解決されることを期待するというのが我が国の一貫した立場であります。

 同時に、我が国の防衛の任に当たる防衛大臣としては、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中で、現実から目を背けることなく、領土、領海、領空をしっかり守り抜いていくという、そして国民の生命と財産を守るという、この目的をしっかり見据えていかなければいけないと考えております。

 このため、国家安保戦略を策定する中で、敵基地攻撃能力を含めたあらゆる選択肢をこれから議論していこうというふうに考えております。

末松分科員 本当にそういった、その点では大臣とも一致をしているという状況ですので、私、本当にうれしく感じますので、是非、そこの検討を外務大臣とともにやっていただければと思っています。

 時間がちょっとなくなるので、その前にちょっと一点だけ。

 台湾については、台湾の国民党が中国と親密な関係を持っていて、香港があの厳しい状況が出てきたのでそれはないでしょうけれども、もし国民党の方で大陸と併合したいとかいう話になってくるとまた話がややこしくなりますので、そこは是非、日本の今の政権、独立というか、要するに、台湾と中国が存在するという現状を維持するように是非お願いしたいと思います。これは外務大臣に言うことかもしれませんけれども。

 それから、次の質問で、もし、北朝鮮なんか、核ミサイル攻撃あるいは大量破壊兵器で東京が、首都が攻撃されたという場合、敵基地攻撃の関係からそういったことが起こり得るということも現実の問題として出てきますので、この場合、今の日本の危機管理体制、これはどういうふうになっていますか。

木原内閣官房副長官 我が国に対する武力攻撃が発生し、そして武力攻撃事態に至ったときには、事態対処法第九条等に基づきまして、政府は、対処基本方針案を作成し、そして国家安全保障会議の審議を経て閣議決定し、これらについて国会に直ちに承認を求める、こういうことになってございます。

末松分科員 質問を取る方にも言ったんですけれども、要するに、核攻撃なんかが東京で起こって、どうしようもなくなったね、誰もいなくなったよ、そういうときの危機管理体制はどうなっているんだというのが私の質問なんですよ。

木原内閣官房副長官 誰もいなくなったという事態をどういう事態と想定するかということになるというふうに思いますが、そのことを申し上げた上で、当該閣議決定に際して、万が一、総理あるいは国務大臣が欠けているというような場合には、内閣法第九条及び第十条に基づきまして、臨時代理を指定した上で閣議決定を行わせていただく、こういうことになるということでございます。

末松分科員 総理大臣と閣僚の一部はいいんだけれども、ほかの人たちも全部代理でやるということですね。イエスかノーで言ってください。

木原内閣官房副長官 まず、総理につきましては、万が一、総理に事故等があった場合には、五人で定めている臨時代理の中から選んでいくということでございます。

 また、閣僚等に事故等があった場合には、内閣法十条に基づきまして、総理又は総理が指定する他の国務大臣が臨時代理になる、こういうことでございます。

 そして、さらに、あらかじめ総理の臨時代理に指定された者、この方々が全員欠けたという場合には、残された国務大臣の協議によって、その他の国務大臣の中から臨時代理を決めて対応する、こういうことでございます。

 さらに、恐らく委員はそういうことをおっしゃっているのかなというふうに思いますが、閣僚全員がいなくなる、そして内閣が消滅する、こういったような事態、なかなか現行憲法上想定されていないのではないか、このように思いますが、御指摘のような場合におきましては、国会において速やかに新たな総理大臣を指名し、指名された新総理の下で速やかに組閣を行う、こういうことになるものと想定をしております。

末松分科員 最後の質問になりますけれども、イージス・アショアですね、この政策が私は失敗と思っているんです。それを、今度は艦船によるイージスという話に変えられたということなんですけれども。元々私自身が、イージス・アショアというのは基地が固定されているがゆえに攻撃の対象になりやすいということで、従来から私は批判をしていたわけです。

 そういった中で、イージス・アショアから、イージスの、船による、今、建造なんかもやっているわけですけれども、ちょっと資料の二枚目を開けていただきたいんですけれども、そういうことを、政策の失敗という形で、変えたと。これで私がちょっとコメントをしていますけれども、イージス・アショア政策変更に伴う無駄となったコスト負担というのは、防衛省から聞いたら三十六億円というわけですね。三十六億円、イージス・アショアから変えた、三十六億円、それはもう無駄になったということを防衛省の方から聞いているんですけれども。

 これを、これは失敗でした、じゃ、三十六億円、また別途ここで補填をしますよという話になったら、自分たちの失敗を国民の税金でそのまままた負担させているだけであって、何ら、これは責任を取った、あるいは行政官としてきちんと責任を取ったことにはならない。そこは、変更したということは、変更したという責任者、及びそれに対する、きちんと責任の取り方というのをやらないと、単に税金にすげ替えたというだけじゃおかしいじゃないかと思うんですね。

 そこを、大臣、どう責任を感じておられるのか、言ってください。

岸国務大臣 イージス・アショアにつきましては、配備を急ぐ余り、非常に、米国との協議やそれを踏まえた安全措置の検討、地元の説明を並行して行うことになってしまいまして、結果的に、地元に対して説明したことが、約束が実行できなくなってしまったということがありました。慎重さ、誠実さを欠いた対応となったと思います。

 こういった背景としては、防衛省内の体制や地元への説明、技術面での制約、この三点が挙げられます。

 今後は、省内の意思疎通や情報共有の在り方、仕事の進め方に係る課題を改善するため、風通しのいい業務環境を整備していく必要があります。

 また、今委員御指摘のありました三十六億円の件でありますけれども、令和元年度までにイージス・アショアのために契約した約千七百八十四億の事業のうち、イージスシステム搭載艦、イージス・アショアの後ですね、搭載艦に係る事業として契約を履行することとなった事業を除いたものについて、これまでに支払った金額が三十六億円ということになります。

 これらの既に支払った三十六億円の契約によって得られた成果物については、イージスシステム搭載艦や今後の防衛省における事業の参考として活用できる可能性があると考えておるところでございます。

 この三十六億円について、議員の配付資料には無駄という記載がございました。防衛省としては、無駄にしないように、これらの契約によって得られた情報を活用できるように、引き続き検討していく考えであります。無駄との御指摘が必ずしも当たるものではない、こういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、イージス・アショアの配備候補地であった地元において、配備に向けて御尽力をいただいた方々に対して特に御迷惑をおかけすることになったことは大変申し訳なかったなというふうに考えております。

末松分科員 最後にしますけれども、そういう理屈でおわびも全くなかったら、私も外務省時代にやっていましたけれども、結局何も誤っていないと。誤っていないというのは、政策は全部完璧に遂行されていて役所に全く誤りはないという話になる、無謬性になっていくんですよ。

 そうしたら、やはり、政治家として、それなりのことはきちんと、国民に対して申し訳ないと言うぐらいの姿勢がないと、何をやったって、結局、それを生かしていきますと言ったら、全然けじめがつかないんですよ。そこのところは、決めた人も含めてきちんとそこはけじめをつけていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

島尻主査 これにて末松義規さんの質疑は終了いたしました。

 次に、青柳仁士さん。

青柳(仁)分科員 日本維新の会の青柳仁士です。

 今日は、国際社会が非常に緊迫した空気になってくる中での我が国の戦争抑止力について、防衛大臣の御認識をお伺いしたいと思っております。

 まず、ウクライナ情勢に関するニュースを連日のように聞き及んでいるところであるかと思います。非常に緊迫した状況になっておりまして、外交、経済、そして情報、サイバーも含めた、軍事だけではない、様々な領域においてのやり取りというのが今各国の中でなされているところだと思います。

 我が国においても、経済産業省あるいは財務省を中心として金融、経済制裁に関しての検討をされているということは伺っておりますが、まず、こうした中で、防衛省それから外務省にお伺いしたいんですが、防衛省、外務省としてどういった措置を検討されているかということについてお伺いできればと思います。

岸国務大臣 今、ウクライナ情勢は非常に緊迫感を増している状況だと思いますが、そうした中で、二〇一四年二月のクリミアの件につきましては、ロシア軍と見られる武装勢力が中央政府等の建物やウクライナ軍の施設等を占拠、制圧した後に住民投票が行われ、同年三月にロシアによってクリミアが編入されたわけでございます。

 このようなロシアの行為は、ウクライナの統一性や主権、領土の一体性を侵害するものであります。政府としては、これを非難し、防衛省としても、防衛当局間の協議等において、かかるロシアによる力を背景とした現状変更は国際社会全体に影響を及ぼすグローバルな問題であるとの認識を示し、ロシアの行為に強く反対をいたしました。

 今般のウクライナ情勢についても、ウクライナ国境付近においてロシア軍の増強等により緊張が高まっており、こうした動きを日本として重大な懸念を持って注視しており、防衛省としても適切に対応してまいりたいと考えております。

徳田政府参考人 外務省からもお答え申し上げます。

 二〇一四年のロシアによるクリミア併合、その後のウクライナ情勢、これらを受けまして、関係省庁間で緊密に連携の上、政府といたしまして、G7の連帯を重視しつつ、こうした事態に関与した個人への査証の発給の停止措置及び資産凍結措置を始めとする、ロシアに対する一連の措置を講じたところでございます。

 同時に、G7を含む各国と連携しながら、事態の平和的解決に取り組み、首脳を含む様々なレベルでロシアへの働きかけを行ったところでございます。

青柳(仁)分科員 今の御答弁は、二〇一四年のクリミア危機のときの日本政府の対応ということだと思います。

 私の質問は今回何をするつもりかということだったんですが、今回に関しては、特定の事例を挙げた形での質問ですのでお答えできないということだとは思うんですけれども、今も伺ったとおり、例えば、防衛省は、適切な対処を行っていくということであったり、あるいは事態を注視してだとか、それから、外務省に関しても、今、査証の発給と資産の凍結ということだけが具体的な措置として示されましたけれども、基本的には、国民の皆さんが感じているのは、いつもいつも特に何もしないで、最終的に遺憾であるという言葉を一言言って終わるというのがいつもの日本政府の対応ではないかというのが多くの国民の方が感じていることではないかと思っております。私もそのように感じております。

 こうした非常に国際社会が緊迫化する中で、我が国は憲法で戦争を放棄しているわけですから、戦争ができないのであればどう抑止をしていくかということが重要なわけであります。そういった中で、日本を怒らせても査証の停止ぐらいしかやらないんだと思われたら、これは何の抑止力にもならないわけです。

 当然のことながら、日本における、我が国における安全保障上の最大の抑止力というのは日米同盟なわけです。では、その日米同盟、この抑止力というのは、実際に抑止の会話が成立しなかった際に一体我々は相手に対して何をするのかということが相手に明確に理解されていなければ、抑止力にはならないと思っております。

 そういった観点で、日本とアメリカの間で、日米の間の会話として、何か有事の際、そして抑止がうまくいかなかったときに、日本とアメリカはその国に対して何をするのか、こういった会話というのはなされているんでしょうか。また、なされているとすれば、どのような内容なんでしょうか。

増田政府参考人 お答えいたします。

 日米間では、平時から緊急事態までのいかなる状況においても切れ目のない形で日本の平和及び安全を確保するための措置を取ることとしておりまして、自衛隊と米軍の間でも緊密に日頃から連携いたしまして、万全の対応を取ってきております。

 各種事態における自衛隊と米軍の具体的な連携は、個々の状況に応じて決定されるため、一概にお答えすることは困難ですが、日米安保条約の下で、自衛隊及び米軍による対処の基本的な考え方については、日米防衛協力のための指針においてお示ししております。

 例えば、日本に対する武力攻撃が発生した場合、日米は、当該武力攻撃を排除し、更なる攻撃を抑止するために協力するということとしております。

 より具体的に申し上げますと、自衛隊が防勢作戦を主体的に実施するとともに、米軍は日本を防衛するために自衛隊を支援し及び補完することとなり、防空作戦、弾道ミサイル防衛作戦、領域横断作戦といった関連する作戦を共同で実施することとしております。

 こうした日米による対処の実効性を高めるためにも、防衛省としては、我が国自身による防衛力を抜本的に強化するとともに、宇宙、サイバーを含む様々な分野での日米防衛協力の強化や、各種共同訓練の着実な実施など様々な取組を通じまして、引き続き、日米同盟の抑止力、対処力を不断に強化してまいりたいと思っております。

青柳(仁)分科員 日米の対話ということですから、防衛大臣の方からお答えいただきたいと思っております。

岸国務大臣 今お答えがあったとおりなんですけれども、平素から様々なやり取りを米国との間では行っております。

 いかなる状況においても切れ目のない形で日本の平和、安全をしっかり確保していく、このための措置を取ることとしており、日米間で緊密に連携し、万全の体制を取っております。

青柳(仁)分科員 今の御答弁は、メディアの方、国民の皆さん、これを聞かれている方は、もし日本に対して構える国の気持ちで聞いたときに本当に怖いかどうかということなんです。

 適時適切に対処する、そして何か有事の際には協力して行動する、抑止力というのは、実際に何をするのかという迫力が相手に伝わってこそ初めて抑止力になるんだと思いますので、こういったことは防衛上の問題なのでお答えできませんとか、適切なという柔らかな表現でしか表現できませんというところに逃げないで、やはりこれは他国に対してもきちっと知らしめることが大事なわけです。私たちの、国民の生命と財産を守るという意味において重要なわけですから、この辺りを明確に、これからも、国会の中でも、また政府としても示していく必要があるだろうというふうに思っております。

 また、クリミア危機、先ほどお話がありました二〇一四年のクリミア半島の併合の問題、これはロシアの一方的な武力行使ということで、国際社会で、様々な見方があるものの、言われております。そういった中で、ハイブリッド戦という言葉がクリミア危機を通して非常に一般に広く知られるようになりました。これは何かといいますと、戦争行為というのはもはや軍事攻撃だけではないということであります。

 例えば、今、中国は、超限戦という考え方がございます。この中では、戦争行為というのは、軍事だけではなく、外交、サイバー、情報といった超軍事、軍事を超えた軍事というもの、そして金融、貿易、資源、経済援助といった非軍事ということで、軍事、超軍事、非軍事という三つの領域において相手を無力化するということをもって戦争行為と定義する考え方があります。

 この考え方でいきますと、日本が専守防衛あるいは先制攻撃をしないといったような話の文脈で出てきているのはあくまで軍事の話でありまして、この非軍事、超軍事というものも含めて、もはや平時と有事の違い、境目が曖昧になっている中において、今の日本の認識というのは率直に古いのではないかというふうに思うんです。

 こうした国際社会での戦争の定義に関する変化、拡大というものについて、今、防衛省、日本政府としてどのように考えておられるか、また、今でもまだ日本政府としての武力の行使、すなわち自衛権の発動というものは軍事として捉えているのかどうか、この辺りの要件について防衛大臣にお伺いできればと思います。

岸国務大臣 伝統的な国際法上の意味においての戦争ということは、国家の間で武力を行使し合うという国家の行為をいうものであると解釈されております。

 また、武力の行使の新三要件については、繰り返すまでもないかもしれませんけれども、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力を行使することとされておるところでございます。

 その上で、近年、国際社会において、自らに有利な国際地域の秩序の形成を目指した国家間の競争が顕在化するとともに、偽情報の流布を含む様々な宣伝工作等が行われ、伝統的な安全保障領域にとどまらない動きが指摘をされております。

 例えば、ロシアは、クリミア併合に際して、偽情報やプロパガンダの流布、サイバー、電子戦による攻撃等を行ったという指摘もなされているところでございます。中国軍人による書籍において、委員御指摘の超限戦といった概念も指摘されております。二十一世紀の新しい戦争においては、全ての境界と限界を超えたものとなり、軍事、非軍事を問わず、あらゆる領域が戦場となる旨述べられていると承知をしております。

 このような状況に適切に対処するためには、防衛省・自衛隊のみならず、政府一体となった取組が必要であると考えています。政府としては、政府一体となった取組や、地方公共団体、民間団体等との協力を通じて、このような複雑な状況への対応に万全を期してまいりたいと考えています。

青柳(仁)分科員 今のお答えは、防衛省としても、そういった戦争行為あるいは軍事行為というものの定義の拡大については理解をしている、一方で、軍事の定義というものに関しては、武力を行使し合う状態というような伝統的な定義に基づいているというふうに今理解をしたんですけれども、私がお伺いしたいのは、結局、日本が最終的に自衛権を発動するためには、すなわち自衛隊を動かすためには、これは、それが戦争である、あるいは軍事であるということが認められるかどうか、ここの線引きがはっきりしていなければいけないはずなんですね。

 ですから、様々な定義があって、官民を挙げて協力してやっていかなければならない、それはそのとおりです。ただ、防衛省として、どの段階で、どこの線引きで動くことができるのか、自衛隊を動かすことができるのかというところは、ここはやはりしっかりとした線引きがあるはずですし、なければならないですし、また、今の御認識ですと、これから変えていかなければいけないのではないかと考えております。

 そういった中で、今、いろいろな、大臣の方から御施策についてもお話がありました。

 例えば、最近の報道では、グローバル戦略情報官を新設するということで、これは報道ではないですね、予算要求の中にも入ってきておりますけれども、こういった情報戦への備えということは防衛省としても予算を要求してやっていくという中であるんです。

 では、この情報戦、あるいはサイバー、それから外交、いわゆる中国でいうところの超軍事や非軍事と言われているようなもの、非軍事はあれですけれども、超軍事と言われているような領域、サイバー攻撃あるいは電磁波による人体への影響、ちょっと効果が不確かな研究も中国等ではなされているそうですけれども、そういったものは、伝統的な意味においての軍事あるいは武力行使というふうに捉えるのかどうか。すなわち、自衛隊を動かすことのできる行為、先制攻撃と受け取れる、あるいは我が国がやらないと言っている先制攻撃に当たるのか当たらないのか。

 これは、攻められた場合と、それからこちらが相手に対してやる場合、この両方においての定義、線引きというものについてお伺いをしたいと思います。

岸国務大臣 近年、国際社会においては、例えばロシアがクリミア併合に際して偽情報の流布やサイバー、電子戦による攻撃等を行ったとされ、今般のウクライナ情勢に際しましても同様の手法を用いていると指摘されるなど、伝統的な安全保障領域にとどまらない動きが指摘されているところです。

 その上で、憲法九条の武力の行使は、基本的には、国家の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうとされているところでございます。また、戦闘行為とは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいうものであります。

 したがって、サイバー攻撃や電磁波による攻撃などが武力の行使に当たるか否かについては、当該行為がこのような人を殺傷し又は物を破壊する行為に当たるか否かといった観点などから、いわば個別具体的に判断されるものであり、一概にお答えすることは困難でございます。

青柳(仁)分科員 自衛隊を動かすかどうかという極めて国家にとって重要な決断において、個別具体的な状況に応じて判断するので具体的に申し上げられないというこの非常に曖昧な線引きの中で、私たちは国民の生命と財産を本当に守れるのかというのは、極めて私は不安に思っております。同様に考える国民の方は多いんじゃないかと思います。

 そういった中で、今回、予算要求の際にも、各省、特に防衛省、外務省等から、宇宙、サイバー、電磁波といった、これは特に防衛省ですね、自衛隊の装備が非常に不十分なので、これから予算をつけてほしい、そういった依頼といいますか要求がこの国会に対してあったわけです。つまりは、今、装備の方もまだまだ全然ない、そして認識も古い、定義も変えられていない、今の時代の変化に今の政府・与党のやり方というのは全く追いついていないということは、これは明らかにしたいと思っております。

 また、そういった超軍事の取組というのは、今申し上げた経済だけではなく、政治にも入ってきているというふうに考えています。

 例えば、イギリスで、今年初めに、情報局保安部が非常に大きな暴露をしまして、これによって世界中が驚いたわけです。これは何かといいますと、ロンドンの女性弁護士が中国共産党の中央統一戦線工作部と連携をしまして、イギリスの有力議員たちへの献金を通じて政治介入を行っていたという証拠を挙げたんです。

 中国によるこういう類似の工作というのは、当然、日本でも行われていると考えるべきだと私は思うわけですけれども、そういった中で、日本政府としては、公式に、これは警察庁が対応していると思いますけれども、こういったことに関してどのような情報を今持っておりまして、またどういった認識でおられるのでしょうか。

櫻澤政府参考人 お答えいたします。

 英国における事案については、その詳細を承知していないためコメントは差し控えますが、中国は、各国の政治、経済、行政、学術といった様々な分野の関係者に対して、通常の外交活動とは異なる手法を用いて働きかけを行うなどの諸工作を積極的に行っており、我が国においてもそのような活動があるものと見られます。

 警察では、我が国の国益が損なわれることのないよう、平素からこうした動向に関する情報収集、分析に努めるとともに、違法行為に対しては厳正な取締りを行ってまいる所存であります。

青柳(仁)分科員 警察としても当然これは認識をしている、これは非常にいいことだと思いますし、そしてまた、ロンドンと同様のことが東京で起きるということは、これは起きるかもしれないではなくて、起きて当然だというふうに考えるべきだと思うわけです。

 そういった中で、厳正な対処を行っていると今警察庁の方からお答えがありましたけれども、具体的に、中国による対日有害活動、こうした工作を検挙した事例というのは実際にあるんでしょうか。また、あるとすれば、それはどのようなものなんでしょうか。

櫻澤政府参考人 お答えいたします。

 中国による対日有害活動の検挙事例といたしましては、例えば、中国企業が関係する事件として、令和二年十月、大阪府警察が、勤務先の企業秘密である、営業秘密である技術情報を不正に得た上で、SNSを通じて接触を受けた中国企業の社員にこれを提供したとして、大手化学メーカー元社員を不正競争防止法違反で検挙しております。

 警察では、今後とも、このような国益を損なうような違法行為に対して厳正な取締りを行ってまいる所存であります。

青柳(仁)分科員 是非、警察庁には、これからも厳正な取締りというのをお願いしたいと思っております。

 そういった中、例えば、中国は、国家情報法というものの中で、企業へ国の情報収集活動を義務づけております。これは、分野を問わず義務づけているということですから、こういった活動はかなり自由に日本の中でやられておりまして、中国に関係するものであれば、これは国家の方に情報が流れる、そういう前提で考えるべきだろうと思います。

 また、政治のサイドに関しては、例えば、国会議員も、ロンドンの諸工作、これは国会議員に対する工作だったわけです。国会議員の身辺調査というのはなかなか警察庁はやりにくいと思うんですけれども、ただ、これは私は非常に疑問だと思いますね。警察庁や、あるいは大臣の所属されている自民党等に影響を持っている方々がもしもそういったところでつながっていた場合には、当然、様々な情報あるいは意思決定が左右されてしまうわけですから、この辺り、警察庁で入れる部分とそうでない部分とあるかもしれませんが、これは、我々、国家全体として危機感を持って対応していかなければならない、このように考えております。

 今申し上げたとおりなんですが、経済に関しては、中国は極めて厳しい経済安全保障というものをしいております。申し上げたとおり、中国国家情報法の中で、中国の企業というのは国の情報収集活動に協力をすることが義務づけられているんです。

 こういった中で、経済安全保障法制というのが今国会で議論されます。先日のニュースの報道を見ますと、公明党が一部の罰則規定の削除を求めた。一部とは何かといいますと、企業のサプライチェーンの強化に対して、国が求める調達先などの情報提供を拒めば三十万円以下の罰金を科すという規定なんですけれども、これをなくしてくれということを自民党に言って、そしてそれを自民党が受け入れたという報道がなされています。

 まず、これは事実でしょうか。

大野副大臣 ただいま御指摘いただきました件につきましては、報道にあったことは承知をしておるところであります。

 サプライチェーンの調査という意味では、委員御存じのとおり、先般、政府の有識者会議から提言が出されておりまして、その中で、実効的な調査を実施するための政府の調査権限と事業者の応答を確保できる法的枠組みを整備することが必要だというふうに御提言をいただいているところでありますので、これを踏まえて、与党ともしっかりと相談しながら検討を進めているところでございます。

 なお、その上ででありますけれども、政府といたしましては、様々な意見があることは承知をしておりますけれども、それぞれについてお答えをするということは差し控えたいと思います。

 その上で、一番重要なのが、サプライチェーンの強靱化を始めとして、我が国が直面する経済安全保障上の課題、これに着実に応えるような実効的な制度の構築に向けて、しっかりと法案の準備を加速していきたいと思います。

青柳(仁)分科員 日本維新の会、我が党から、政府の方に、大臣に提言書を経済安全保障に関しては出させていただきました。

 その中で我々が申し上げたのは、経済界の不安はもっともであるということ、日本の経済を潰すものであってはならないということをまず一つ非常に大きく強調させていただきました。

 自由な市場競争、あるいは、これは安全保障上重要な技術であるから、あるいはサプライチェーンであるから、常に何でもかんでも政府に報告しろというようなことを言っていたら、これは民間のイノベーションや自由な発想、活動というものを阻害することになりますから、経済安全保障というのはやはり一定は市場経済にとっての政府の介入を意味しますから、ここは、その対象の選定においては、対象というのは産業、技術、サプライチェーン、そういうものに関しては戦略的に限定的に極めて高いインテリジェンスをもってやるべきだ、そういう体制を政府の中に組むべきだ、こういうことをまず言いました。

 しかしながら、そのようにきちんとした形で限定的、戦略的に選定された対象に対しては罰則をもってきちんと対処していかなければ、この法案はただの骨抜き法案になりますというふうに申し上げました。その大臣提言の際には、そのことに関しては非常に深く理解をいただいたわけですけれども、その後の公明党の提言によって、なぜかまた非常に骨抜きの方向に行っている。

 我々が思うのは、罰則もなしでどうやって強制力を働かせることができるのか、これがよく分かりません。また、サプライチェーン、限定的、戦略的に選ばれた対象については、これは誰がどう見ても我が国の安全保障上重要な技術あるいは商品、製品又はそういった企業であるということが限定されているにもかかわらず、そして、その情報、国はやみくもに情報をよこせと言うわけじゃないんです、国は、必要な最小限の情報を下さい、そして守秘義務は完全に守りますから、あなたの会社の市場競争上の不利益はありませんということ、そこの担保はしてくださいと我が党は言っているわけです。

 それをやった上で、なおかつ、いや、私の調達先、どこから何を買っているかは国には申し上げたくありませんという企業のその裏にあるインセンティブというのは一体何なんでしょうか。

 これについてどう考えておられるか、また、罰則なしでどう強制力を働かすつもりなのか、これをまたお伺いできればと思います。

大野副大臣 ありがとうございます。

 先ほど政府の有識者の提言に触れさせていただきましたけれども、もう一つ、重要な御提言をいただいております。

 それは、まさに委員御指摘のとおり、調査の実効性をどのように担保するのか、これは非常に重要な観点であると思っておりまして、その中で、どのような提言かというと、政府は、民間事業者に対して、調査の趣旨及び目的を丁寧に説明するとともに、調査の趣旨と目的に合わせて適切な調査対象に絞り込んだ調査を行うことで実効性を担保すべきということと、もう一つが、調査を通じて政府が把握する情報については、企業の競争力の源泉と深く関わりのある内容が多く含まれ得るため、徹底した情報管理が必要であり、政府の情報管理者が漏えいした場合の罰則規定等を措置するべきであるというような御提言をいただいておるところであります。

 委員、先ほど、限定された対象というものについてお触れになられましたけれども、我々政府といたしましては、どのような場合にどのような措置を講じれば制度全体の実効性を高めることができるのか、こういう観点も含めて、有識者の会議、提言も含めまして検討を進めているところでございます。

青柳(仁)分科員 提言の中にも我々の申し上げていることと非常に重なる部分もたくさんあるわけですけれども、まずはきちんと実効性のある法制度であるということ、これは最低限重要です。なぜなら、先ほど来から防衛大臣に申し上げているとおり、経済安全保障というのは安全保障ですから、私たちの、国民の生命と財産を守るための措置ですから、ここがいいかげんであってはいけないですし、ここが骨抜きであっていいはずがないんです。

 先ほど来から、御答弁の中に、有識者会議ではこう言われていました、有識者会議と政府との意見交換ではこうでしたと。あるいは、防衛省もそうです、今まではこうでした、あるいは防衛省の中の検討はこういうものですと。そんなことは余り重要じゃないんです。大事なのは、この日本の、我が国の国民の生命と財産を守るに値する安全保障の体制が取れているのかどうかが大事なんです。そこが取れていないんだったら、どんな話合いを政府でしているかどうか、そんなことはどうでもいいと思います。

 そうではなくて、きちんとした体制をまず取るべき、これはもう国会全体の責任でもありますけれども、まずそういうことを政府・与党としてできないのであれば、それはもう政権自体を我々日本維新の会にお任せいただきたい、このように考えております。

 時間がなくなりましたので、以上で質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。

島尻主査 これにて青柳仁士さんの質疑は終了いたしました。

 次に、松本尚さん。

松本(尚)分科員 自由民主党の松本尚でございます。

 私は、昨年まで、救急医、外傷外科医として働いておりました。とりわけ重傷のけがを負った患者さんの外科的な治療を専門としております。本日は、主にその経験と観点から、防衛有事における自衛隊衛生科の重症外傷診療レベルの問題と、及び第一線救護衛生員の活動範囲の問題、また自衛隊員の感染予防について質問をしたいというふうに思います。

 まず、私が最初に自衛隊衛生科に関心を持ちましたのは、二十年前の二〇〇一年の十月に開催されました第三十三回の日本救急医学会総会・学術集会のときであります。特別講演として陸上自衛隊の医官が、当時実施されておりました自衛隊のイラク派遣での経験を報告されたわけであります。

 その後、質疑応答の中で、もし現地で自衛隊員が攻撃に遭い命に関わる負傷をした場合に、自衛隊自身はそれに対処できるかという質問を誰かが行ったわけです。講演された医官はそのときこう答えております。誠に残念ではあるが、今、当時ですね、当時の自衛隊の医師の知識、技術、経験ではそれは無理だと思うというふうに、医官の目、医師の目としてお答えをされておりました。

 非常に率直な回答だったと思いますが、私は、このやり取りを聞いて即座に何を思ったかと申しますと、じゃ、我が国が他国から侵攻を受けた際に防衛のために戦うことになる自衛隊員は、仮に重傷を負ったとしても、自衛隊自らはその隊員の命を救うだけの医療、この場合は重症の外傷の診療、その医療のレベルを有しないのか、それを承知で幹部は隊員に対して防衛のための戦闘行動を命令できるのかということを非常に深く感じたわけであります。

 以来、このことが、自衛隊衛生科の外傷診療能力を高めなければいけないというふうに思った私の大きな仕事の一つになったわけであります。

 そこで、最初の質問なんですけれども、現在の自衛隊内の医官の総数、そして、そのうちの外傷学会専門医の数、救急医学会の専門医の数、それから、アキュート・ケア・サージャリーという外傷をたくさん診療する医者たちの集まりがありますが、その学会の認定外科医の数、また、看護官の総数と、そのうちの救急看護認定看護師数、集中ケア認定看護師数について教えていただきたいと思います。

 また、全国の自衛隊が有する医療機関で、インジャリー・シビリティー・スコア、ISSという重症の外傷の程度を表す評価値でありますが、それが十五以上の重症外傷の診療例が年間何例ぐらい自衛隊内で持っているかということを教えていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 まず、医師の資格を持つ自衛官につきましては、令和三年三月三十一日時点で、陸海空合わせて約九百九十名おります。そのうち、外科専門医が約五十名、救急科専門医が約二十名、アキュート・ケア・サージャリー学会認定外科医はゼロ名となっております。

 また、看護師の資格を有する自衛官は約千七十名おります。そのうち、救急看護認定看護師数はゼロ名、集中ケア認定看護師数は若干名いるということになっております。

 また、年間のISS十五以上の重症外傷例につきまして、自衛隊中央病院においてでございますが、正確な統計は取っておりませんが、年間数件程度と承知しているところでございます。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 今お答えのありましたように、医官だけで九百九十名中、少なくとも、外傷、ごめんなさい、外科学会の専門医数が五十名ということで、非常に少ない、外科医がたったそれだけしかいないということがお分かりいただけると思いますし、重症の外傷は、自衛隊中央病院ですら正確な統計すら取っていないというような状況で、それを今批判するわけでは決してありませんが、いかに少ないかということをお分かりいただけるかと思います。

 自衛隊内における外傷診療に関わることのできる医官、看護官の数が非常に少ない、また、彼らが、重症外傷診療経験も非常に寡少であるというふうに言わなければいけないと思います。

 防衛省は、救命ドクトリンというものを定めておりまして、第一線救護衛生員の資格を設けて、その育成を進めているところであります。私もその教育に関与しておりましたが、これらの人材をもってしてでも、現状での自衛隊衛生科、特に、最終的に重症外傷診療に当たる医官、看護官の人的あるいは技術的能力のみで有事において負傷した自衛隊員の命を救うことが十分に可能であるとは、恐らくこの数字だけから見ても言えないのではないかなというふうに思います。

 この場で重症外傷診療がどれだけ大変なことかということをお示しするのは非常に難しいものですから、そこはあえて省略いたしますが、そこで、防衛省にお聞きしたいんですけれども、医官及び看護官の重症外傷診療レベル向上のための現在の自衛隊の取組について教えていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 防衛省・自衛隊において、重症外傷診療レベル向上のため、民間病院、先生が御在籍しておりました日本医科大学千葉北総病院ですとか、また、あと、米軍で研修をさせるなど、そういった対応を行っているところでございます。

 今後も、同様の取組等を通じ、重症外傷診療レベルの向上に努めてまいりたいと考えております。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 今、お話をいただきました私が部長を務めておりました救命センターでは、重症外傷診療を専門とする全国屈指の外傷センターとしての地位を築いておりました。治療成績は、海外にも引けを取らないというものだと思います。

 今お話のありましたように、米軍の研修とか、私のおりましたところとか、まだまだその人数、期間、始まったばかりだとは思いますけれども、十分でないというふうにも認識をしておりますので、是非それは引き続き続けていただきたいと思います。

 これまで、私は、自衛隊の中で防衛医学セミナー、あるいは東部方面総監部の勉強会や、自衛隊中央病院の勉強会、それから航空自衛隊の集合訓練など、様々な自衛隊内での講演機会を通しまして、その都度都度、外傷診療の詳細と、それから、自衛隊衛生科に対しての外傷診療教育の必要性というものをずっと説いてきたわけであります。

 そういった実績もあってか、二〇一六年五月のG7伊勢志摩サミットでは、参加国の要人が狙撃、爆弾テロ等によって万が一にでも致死的な外傷を負った場合に、現場で迅速な止血、救命処置を行えるように、陸上自衛隊衛生科とともに会場近くに待機する作戦に参加しておりました。私のおりました救命センターから、私を含む外傷外科医が二名、救急看護師二名、薬剤師一名が選抜されまして、陸上自衛隊の外科医官、麻酔科の医官、それから、手術室の看護官、そして陸上自衛隊の野外手術システムを運営管理する後方支援隊と協働したわけであります。

 この際、サミット前の数か月間で、日常行っている我々の外傷診療のノウハウというものを陸上自衛隊の医官、看護官に余すところなく教授し、サミット期間中の待機中もシミュレーション訓練を行っておりました。これは、自衛隊衛生と民間の診療チームが共同で作戦行動を行った最初の事例であったというふうに聞いております。同様の共同作戦というのは、二〇一九年六月のG20大阪サミットにおいても行われたわけであります。

 ようやく、このように、自衛隊の衛生科とそれから民間の医療チーム、共同行動を行えるようにまで前には進んできたというふうには思いますが、こういった共同行動について防衛省はどういうふうな評価をされているか、現状の評価について伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊は、厚生労働省からの依頼に基づきまして、平成二十八年度に開催されましたG7伊勢志摩サミットにおきましては約二十名の要員を、平成三十一年に開催されましたG20大阪サミットにおきましても約二十名の要員を派遣し、民間の医療チームと共同して医療支援を実施したところでございます。これらの経験は、民間の医療チームのノウハウや連携要領を学ぶのに非常に貴重な機会であったというふうに認識をしているところでございます。

 今後も、同様の要請等があった場合につきましては、適切に対応してまいりたいと考えております。

松本(尚)分科員 まだ今後もG7等々あると思いますし、恐らく、何もないというのが通常でございますが、何かあったときにきちんと、海外の要人も含めて、こういったときに対応できるような準備をしなければいけないと思いますし、是非そこでも民間の力というものを活用していただきたいと思います。

 それを踏まえまして、重症外傷診療の人的資源それから経験値の少ない自衛隊にとって、こういったG7、G20での自衛隊衛生科と民間医療チームとの共同行動の経験というのは、今後起こるであろう有事においても生かされるべきであろうというふうに考えております。

 有事の際に、事態対応の範囲と規模が大きくなればなるほど、前方で対処しなければいけない制服の医療従事者、すなわち、ここでは医官、看護官を指すと思いますけれども、そういった方々の所要というのは前方の方で増大するということになります。規模が大きくなればなるほど、いろいろなところの前方でそういった人の配置をしなければいけない。本来であれば、彼らが根本治療を行うべき後方の病院において、衛生科の人的資源というのは、結局、だんだんだんだんとそれが不足するということが予想されるわけであります。

 こういうときに、安全な後方病院にもし民間の医療チームが派遣されるのであれば、制服組の医療従事者たちはその負担を軽減でき、軽減できた負担の分だけ前方の、より事態対処しなければいけないような状況のところに制服組の医療従事者というのを逆に派遣しやすくなるというふうにも考えられるわけです。

 また、民間の医療チームは、後方の病院から、例えば自衛隊中央病院とか沖縄本島の病院とか、後方輸送というものをしなければいけませんが、民間の医療チームであれば負傷した隊員に付き添って患者さんを診ながら後送の搬送というものも、民間の医療チームであればそれは可能になるだろうというふうに思います。

 こういった有事の際の事態対処に民間の医療チームというものをもう少し活用すべき、そういう制度設計をしておくべきだろうと思っておりますし、具体的な制度としては、予備自衛官制度というものを活用する、技能を持っている、技能持ちの予備自衛官制度というものを活用するというような方法で制度設計することも可能ではないかなというふうに考えるところであります。

 そこで、防衛大臣に質問したいと思いますが、こういった有事における負傷自衛隊員の救命のためには民間医療チームを活用するということが私は現実的だろうと。自衛隊の中で重症外傷診療ができる医官、看護官をこれから育てていくには十分な時間というのがやはりかかります。いつ、どういう形で有事が起こるか分かりませんから、そのためには民間のチームを活用するという仕組みをつくっておくということが、自衛隊員の命を守る体制をつくるという意味では、上位組織の責務であろうというふうに私は思量するのでありますが、この点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

岸国務大臣 松本委員におかれましては、これまでも救急救命医療の専門家として、防衛省・自衛隊の委員会等に参画していただきました。自衛隊衛生の向上に多大なる御協力をいただいておりまして、感謝申し上げたいと思います。

 自衛隊の衛生部隊において、その任務の内容に応じ、これまでも民間の医療チームと連携して対応を行ってきたところでございます。

 御指摘の有事等における対応については、自衛隊法第百三条第二項によりまして、医療関係者に対し、医療に関する業務従事を命ずる制度もあるところであります。

 今後、民間の医療関係者との連携や、民間病院への研修等による自衛隊の医官、看護官の能力向上を図るとともに、有事において、これらの法律の枠組みも活用し、円滑に任務を遂行する体制について検討してまいりたいと考えております。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 二十四万七千人の自衛隊員が安心して領土、領空、領海を守るということを担保するために、是非、こういった有事の際の医療体制について、しっかりと目を向けていただきたいというふうに思っています。

 今、大臣お話のありました自衛隊法百三条ですか、そこのところを一つの根拠にして、民間の医療チームが有事の際にどれだけバックアップできるか、そういったことを、決して前線に出ろと言っておるわけではないので、バックアップできるかということは、国全体で持てるリソースを有事のときにどれだけ使えるかということはやはり考えていかなければいけない。

 全てを自衛隊の中で完結させようとするというのは、現状、非常に厳しいものであろう、少なくとも、外傷診療を考える上では厳しいというふうには思っておりますので、是非前向きに検討を行っていただきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 旧日本軍の死因というのは、実は戦傷者よりもマラリア等の感染症が多かったというふうに言われております。現代であっても、海外の軍隊ではインフルエンザや麻疹等のワクチン接種を行いまして、感染症予防を徹底しており、それゆえに即応性というものを確保しておるところです。

 しかしながら、外征軍ではない、あくまでも国土の、領土、領空、領海の防衛を主務としております自衛隊は、海外等に派遣される隊員に必要なワクチン接種を除けば、一般隊員全員分にまではそういったワクチンの接種を確保されていないというふうに伺っております。

 自衛隊の事態対応の即応性というのを常に担保しておかなければならないという安全保障上の観点からすれば、集団生活を送る自衛隊員には、外征をしないといえども、インフルエンザ、麻疹、風疹、髄膜炎といったような各種のワクチンを定期接種しておくという必要があるというふうに思うのでありますが、このことについて防衛省のお考えを伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 防衛省・自衛隊におきましては、職員の伝染性疾患の発生及び蔓延防止のため、関係法令等に基づき、職員の任務や置かれている環境等の特性に応じ、必要な予防接種や投薬を実施することとしております。

 例えば、ソマリア沖・アデン湾におきます海賊対処の任務に参加する隊員につきましては、その任務や地域の特性を踏まえ、A型肝炎、B型肝炎、ポリオ、腸チフス、髄膜炎菌、狂犬病、黄熱等について予防接種を行い、これらの疾患の感染リスクの低減を図ったところでございます。

 防衛省・自衛隊といたしましては、今後とも感染の発生及び蔓延防止に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 今は取りあえず海外派遣についてのお答えがメインだったというふうに認識しますけれども、やはり国内で仕事をする自衛隊員の皆さんにも、きっちり、こういった麻疹、風疹、特に麻疹なんかは非常に感染性が強うございますから、しっかりと毎年予算を取って、まあまあ、毎年やる必要はないんですが、予算を取って、隊員の皆さんに定期接種をきっちり行っておく、万が一、事態対処しなければいけないような状態のときに、病気にかかって出動できませんというようなことのないようにしていただきたいと思います。

 今回のコロナワクチンについても、後回しになって、極めて優秀な感染防御、自衛隊の防疫能力に頼ってこれまでの活動をしてきたというのは少し順番が違うんじゃないかなというふうに思いますので、大臣、是非、その辺りのところも目くばせをお願いしたいなというふうに思います。

 次に移ります。

 私は、昨年六月まで、平成二十八年十月七日付の防衛省訓令第六十号に基づきまして、防衛省メディカルコントロール協議会の外部有識者委員を務めておりました。この訓令は、自衛隊の任務遂行中の隊員が、銃器、爆発物その他の武器により負傷し、その症状が著しく悪化するおそれがあり、また生命が危険な状態にある場合に、緊急救命行為を実施することのできる第一線救護衛生員について定めたものであります。

 そこで、その対象となる場所について、まず伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの緊急救命行為に関する訓令におきまして業務が行える場所につきましては、自衛隊の任務遂行中に負傷した隊員の生命を最大限守るため、この訓令において行う行為は、負傷した現場付近で診療の補助として行う行為とされているところでございます。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 今御回答ありましたとおり、現行の訓令では「負傷した現場付近において」というふうになっています。恐らくこれは、ケア・アンダー・ザ・ファイアといって、弾が飛び交っているような、すぐの場所というのを恐らく前提にしているんだろうというふうに思うんですけれども、例えば後送時、後ろの方に負傷した隊員を運ぶとき、あるいは、その後の救護所のところで負傷隊員の症状が悪化した場合に、この第一線救護衛生員がそばにいた場合、この訓令をそのまま読み取りますと、緊急救命行為をその場所では実施できないというようなことに読み取れるわけです。いわゆる場の規定というのがこの訓令の中にはあるわけです。

 第一線救護衛生員の活動範囲を、負傷した現場だけではなく、更に後方、少なくとも当該負傷隊員が医師の手に渡るまでの間に拡大するということが私は妥当じゃないかなというふうに思うんですけれども、これについて防衛省の考えを伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 今回の緊急救命行為に関する訓令では、自衛隊の任務遂行中に負傷した隊員の生命を最大限に守るため、第一線救護衛生員となる准看護師等の資格を有する隊員に対しまして、特定の緊急救命行為が適切に行えるよう体制の整備を行っているところでございます。

 御指摘の後送搬送の場というところでございますが、今回の第一線救護衛生員につきましては、第一線救護衛生員であると同時に准看護師の資格を必ず持っているということになっているところでございます。

 したがいまして、一般論で言えば、いわゆる救命救急処置につきまして、負傷した現場付近以外で救命処置が必要となる状況が発生した際に、医師の指示を受けることができないなどの状況が生じた場合には、いわゆる保助看法の第三十七条に規定する臨時応急の手当てとして適用できるというふうに考えておりまして、医療行為自体はその場でもできるということで対応しているところでございます。

 いずれにいたしましても、第一線救護能力の向上に係る検討につきましては、自衛隊員の生命を最大限に守るため、引き続き、体制整備、能力の向上に努めてまいりたいと考えております。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 そうすると、確認をしておきたいんですけれども、保助看法の範囲の、まあ、第一線救護衛生員そのものが保助看法のところに基づいてつくられているというふうに思いますけれども、場が変わったとしても、今度は保助看法の適用として、第一線救護衛生員が行える医学的処置は全てできるというふうな理解でよろしいですか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 先生のおっしゃるとおりでございます。保助看法におきまして、処置は実際には行えるということになります。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 当該、私のおりましたMC協議会でも、こういった話題がかつて少し出ておりましたので、今の答弁で確認をできたというふうに理解をします。

 最後の質問になります。

 この第一線救護衛生員をつくりましょうといった報告がございます。平成二十八年の九月であります。アセトアミノフェン等経口の鎮痛薬、それから口腔粘液吸収のフェンタニル製剤やモルヒネ、ケタミンということが使用できるようになっております。

 ここで提起したいのは、このフェンタニル製剤であります。フェンタニルというのは即効性がありまして、持続時間はモルヒネに比べて短いんですが、非常にコントロールしやすいという特性があります。日本では麻酔時の鎮痛や、あるいは各種のがんのがん性疼痛のときに使用が認められておるのですけれども、けがをした外傷の隊員たちにこれを使おうとなると適用外使用となってしまいます。

 厚生労働省との調整が必要だとは思いますが、けがをした自衛隊員に対して強い鎮痛で安楽を与えるためにも、第一線救護衛生員に対してフェンタニルの注射薬というものの使用を認めるべきだろうと医師としての立場からも思うわけでありますが、これについて防衛省の見解を尋ねます。

 もう一つ、こういった鎮痛目的で第一線救護衛生員が麻薬を使えるということは決まっておるわけですけれども、具体的に麻薬の管理要領とか使用要領というのは決まっておりません。これも、私のおりましたメディカルコントロール協議会の中では話題にはなっておりましたが、この管理をどうやってやるか。

 例えば、麻薬管理ですから非常に厳しい管理になりますけれども、誰か一名が管理していても、遠いところで傷んだ隊員がいれば、わざわざそこへ届けなきゃいけないというようなことがありますから、じゃ、一名一名麻薬を持たせていいのかという議論も当然出てくると思いますので、これについては早急に解決すべき問題というふうに思いますが、先ほどの質問と併せて防衛省の考えをお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 第一線救護衛生員が緊急救命行為を実施する際には、負傷した隊員の鎮痛をするため、麻薬である医薬品を使用する必要がある場合が想定されております。

 一方、麻薬につきましては、乱用された場合に深刻な健康被害を生じる可能性があり、麻薬及び向精神薬取締法により、その流通や管理、取扱いが厳格に規制されているということもございます。

 したがいまして、先生のおっしゃる第一線救護員の使用も含め、また、現在、自衛隊と外国の軍隊との間で麻薬に該当する医薬品の提供を円滑にするために、いわゆる麻向法の規制を一部適用外とするといった防衛省設置法等の一部を改正する法律案も国会に提出しているところでございます。

 今後、そういった、全体的にこの麻薬の取扱いにつきまして、今回の同法に基づく改正内容等も踏まえつつ、第一線救護衛生員が麻薬である医薬品を取り扱う際に適切に管理を行って隊員に使用できるよう、運営要領の策定を考えていきたいというふうに考えております。

松本(尚)分科員 ありがとうございます。

 麻薬の乱用というふうな話がありましたけれども、こういったバトルフィールドの場所でそうそう何遍も乱用することはないと思いますので、是非、使い勝手のいいような法整備というものをお願いしたいというふうに思います。

 最後に、自衛隊の衛生科の側面で、医療の側面で自衛隊のこういった活動を眺めるということは、今まで多分誰もやってこなかったというふうに思います。手前みそながら、恐らくこういった発想ができるのは私だけではないかなというふうにも、別に自慢ではなくて、思っております。衛生科の強化というものをしっかりやって、そういった形で私自身は国の安全保障に対して貢献をしていきたいというふうに思っておりますので、今日の質問の内容は、また引き続き、経過を見ながら続けて、少しでもよくなるように進めていきたいというふうに思っております。

 今日はどうもありがとうございました。以上です。

島尻主査 これにて松本尚さんの質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

島尻主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣府所管について審査を進めます。

 消費者庁について質疑の申出がありますので、順次これを許します。西野太亮さん。

西野分科員 皆様、こんにちは。熊本二区選出、自由民主党の西野太亮でございます。

 今日は、昨日の農林水産分科会での質問に続きまして、御質問の機会をいただきました。関係者の皆様方に改めて感謝申し上げます。

 さて、本日は、アサリの産地偽装問題について取り上げたいと思います。昨日の農林水産分科会でも冒頭少し取り上げさせていただきましたけれども、本日は、少し掘り下げてお話を伺えればというふうに思います。

 まず初めに、今回のアサリ産地偽装問題ですけれども、報道等で御存じの方、たくさんいらっしゃるかと思いますが、農林水産省が昨年調査を実施しておりますので、その調査の概要について、まずは御報告をいただければと思います。よろしくお願いします。

江崎政府参考人 お答えいたします。

 昨今のアサリの産地表示をめぐる疑義情報を踏まえ、その実態を把握するため、令和三年十月から十二月末までの間、全国の広域小売店において調査を行い、その結果を本年二月一日に公表いたしました。

 内容について申し上げますと、年間の漁獲量を大幅に上回る量の熊本県産表示のアサリが販売されていると推測される結果となっております。また、科学的分析の結果、調査で買い上げた熊本県産アサリのほとんどに外国産アサリが混入している可能性が高いと判定されております。

 これらにより、全国の広域小売店で熊本県産として販売されているアサリに外国産アサリが混入している疑いがある結果となっております。

西野分科員 ありがとうございます。

 熊本県産と表示されたアサリのうち約九七%が、外国産のアサリが混入している可能性が高いということで私も報告を受けておりますけれども、私の立場で少し補足をさせていただきますと、これが必ずしも全て熊本県の事業者が関与しているわけではないということは申し添えたいというふうに思います。

 といいますのも、アサリの輸入量が毎年四万トン以上で推移しておりますけれども、そのうちの約八割が下関税関支署を通過して輸入されております。下関の位置、そして熊本県の位置、さらには国内の巨大市場であります大阪、東京、こういった場所の位置関係を考えますと、下関で一回輸入して、それをわざわざ熊本まで運んで、それから大阪、東京に運ぶというのは、ちょっと考えにくいのではないか。そういった観点から、八割に関しては熊本の事業者は関与していないのではないかというふうに熊本県も考えておりますし、私もその見方は正しいのではないかということを、少し私の立場で申し添えさせていただきたいと思います。

 しかし、いずれにせよ、一部かもしれませんけれども熊本県の事業者がこの産地偽装問題に関与している疑いがあるということは事実でございますので、熊本県としても、この産地偽装問題、何としてでも根絶したい、そのために全力を尽くすというふうに申しておりますので、農林水産省、そして消費者庁、政府を挙げてこうした問題に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 少し話を変えますが、今回の案件を少し大きな視点で捉えていきたいというふうに私は思います。私は、常々申し上げておりますけれども、日本の食、我が国の農林水産業というのは、もちろん従来から言われてきましたとおり、食料安全保障の観点、さらには国土保全の観点、こうした観点からも非常に重要であるということは間違いありませんが、それを超えて、我が国の経済を支え得る成長産業の一つとして十分やっていけるのではないか、そういった意味でも重要だと思いますし、その潜在能力を秘めたのが我が国の農林水産業だというふうに思っております。

 そんな中、飛び込んできたのが今回のニュースです。このニュースを聞いたとき、私は、日本の食の信頼に関わるだけではなくて、日本の農林水産業そのものをひっくり返すような、覆すような事態になり得るのではないかというふうに思いました。といいますのも、外国産のものを国産として売っているわけですから、国内で天然アサリを一生懸命作っておられる皆様方が、価格競争という意味において不利な状況に追い込まれて、もしかすると、場合によっては廃業というところまで追い込まれる方も出てくるかもしれません。

 これが、アサリという品目にとどまらず、いろいろな品目に行き渡ることによって、日本の農業が成り立たなくなっていく可能性もあるわけでございますから、私は、中長期的に見て、日本の農林水産業の危機につながり得る、そういう事態だというふうに考えました。

 そういう意味では、食品表示を所管する消費者庁、さらには、今回のような事案について調査をする権限のある農林水産省の役割というのは非常に大きい、重要だというふうに考えております。

 そこで、改めて、消費者庁の役割、消費者庁が設置された目的について伺わせていただければと思います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 食品表示に関する消費者庁の役割ということでございますけれども、まず、食品表示法でございますが、食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品表示に関する規定を統合して、包括的かつ一元的な食品表示制度とするため、平成二十五年に制定をされたという経緯がございます。

 消費者行政全般についての司令塔である消費者庁の役割といたしまして、食品表示法では、具体的な食品表示のルールである食品表示を定めるとともに、不適切な表示について指示、命令等の是正措置を行うとされておるところでございます。

 しかしながら、消費者庁は地方支分部局を有しておりません。監視、指導につきましては、効率的かつ効果的に実施をするという観点から、農林水産省、都道府県等の行政機関と連携をして食品表示法における立入検査や指示、公表等に取り組むこととしておるところでございます。

 他方、正当な理由なく指示に係る措置を取らない者に対する措置命令につきましては、罰則を伴う強制措置であり、指示に比べ違反業者への重いペナルティーを科すものであることから、食品等の表示制度を一元的に所管する消費者庁が統一的に判断をすることとされております。

 なお、県域事業者、一の都道府県内に事業所を構える事業者ということになりますけれども、県域事業者への措置命令については、政令により都道府県等に権限を委任しているところでございます。

西野分科員 ありがとうございます。

 今、消費者庁の役割、そしてそれをどうやって担保しているのかという消費者庁の権限についてもお答えをいただきました。

 おっしゃるとおり、消費者庁というのは、第一義的には、消費者の皆様方の選択権をしっかり守っていく、正確な食品表示を事業者の皆様方にしていただくことによって食の信頼、安全を守っていくということだと思いますが、先ほど申し上げたとおり、その役割をしっかり果たしていくことによって、ひいては、中長期的に見れば、日本の食、そして成長産業としての日本の農林水産業を更に発展させるということにつながるというふうに思いますので、その役割は非常に重要だと思いますし、これからもしっかり果たしていただきたいというふうに思います。

 それから、今お答えをいただきましたけれども、その重要な役割を担保するためにどういう権限が与えられているのかという話でございます。

 おっしゃるとおり、調査を徹底するということ、これも非常に重要だというふうに思いますが、私は、それに加えて、状況の変化、さらにはその産品、産品の特性に応じてルールを適時適切に見直していくということも、産地偽装を防止する上で非常に重要なのではないかというふうに思います。

 なので、一つ目の柱が、やはり調査、取締りを徹底するということ、さらにはルールの適正化を適時適切に進めていくということ、この二本立てで我が国の食の信頼を守っていただきたいというふうに思っております。

 そのそれぞれについて今日はちょっと質問をさせていただきたいというふうに思うわけですが、まず一つ目、調査、取締りについてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、調査、取締りというのは、その性質上、なかなか手のうちをさらすというのは難しいのかもしれませんけれども、どのようなきっかけで、どのようなタイミングで、どのような調査を行っているのか、一般論で構いませんので、お答えできる範囲で教えていただければと思います。

江崎政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、国民から寄せられる情報、食品表示一一〇番というようなものがございます。こういったものを通じまして不適正な表示がなされている事実を把握した際には、その解明のために立入検査を行い、仕入れ先や販売先などの流通ルートを遡って確認を行っております。

西野分科員 ありがとうございます。

 いろいろなケースがあるんだと思いますけれども、いろいろな情報を基に調査を始める場合もあれば、あるいは、疑わしいところ、過去にこういったことがあったというようなケースを踏まえながら自発的に調査をしていく場合、いろいろなケースがあるんだと思いますが、私がちょっと調べましたところ、平成二十七年以降、この七、八年の間でもアサリの産地偽装が八件あるというふうに聞いています。それ以前に遡っても、結構、十件、二十件、ざらにアサリの産地偽装が見つかってまいりますので、それに加えて、今回の調査でも、大量、さらには大規模なアサリの産地偽装事件が起こったということは、こういう言い方をしたら失礼かもしれませんけれども、しっかり適切にちゃんと調査しているのか、取締りしているのかというような批判を招いてもおかしくない状況かと思います。

 しっかり、今回の案件を含め、以前の調査も含め、適切に調査を行っていらっしゃるという認識なんでしょうか。御認識をお伺いできればと思います。

江崎政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、アサリの産地偽装事案に対しましては、これまで、食品表示法に基づき、消費者庁や都道府県等の関係機関と連携し、立入検査や違反事業者への是正の指示、公表を行うなど、厳正に対応をしてきております。

 今回の調査を通じまして把握した疑義につきましても、熊本県を始め都道府県と連携しながら、仕入れ先や販売先等の流通ルートを遡って立入検査等を行っているところでございます。法に違反する事実を確認した場合、表示の是正などの指示、公表を行うとともに、消費者庁や警察にも情報共有を行ってまいります。

西野分科員 ありがとうございます。

 もちろん、農林水産省そして消費者庁の皆様方は一生懸命されていると思うんですけれども、こういうことは申し上げたくはありませんけれども、ずっとアサリの産地偽装が続いているという状況をやはり打開していかなくちゃいけない、しっかり根絶していかなくちゃいけない。これは、私もそう思いますし、国民の皆様方、そして熊本県、政府の皆様方もそういうふうにお考えだというふうに思いますので、やはり徹底して取調べをしていただきたいというふうに思うんです。

 その中で、やはり一つ、ちょっと疑問に思うのが、今回の案件でも、ちゃんと原因の解明とか、誰が主犯格だったのかとか、誰が責任を一番負っているのかということがしっかり解明できるのかというような、ちょっとした疑問が湧いてきます。

 といいますのも、ちょっと考えれば分かることですけれども、例えば、輸入業者の皆さんにお話を聞きました。そうすると、私たちはちゃんと外国産として輸入して、それを卸売の人たちに渡しましたというような話をします。そして、卸売の人たちも、私たちはちゃんと外国産として受け入れて、外国産として渡しました、また、別の卸売業者の人は、私がそのアサリを購入したときには既に熊本県産になっていました、そして、最終的な小売業者の人も、私たちは完全に熊本県産と信じて疑わずに店頭に出しましたというような話をされるかもしれません。

 こうなると、どの段階で外国産が熊本県産に変わったのか、これを解明するというのは非常に難しいのではないか、業者同士の言い合い、水かけ論になるんじゃないかというふうに思うんですけれども、こういった場合も想定して、実態を解明するためにどのような方法でこれから捜査に臨んでいかれるおつもりなのか、そういったことも少しお話をいただければと思います。

江崎政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたけれども、現在、農林水産省におきまして、今回の調査を通じまして把握した疑義について、仕入れ先や販売先等の流通ルートを遡って立入検査等を行っているところでございます。

 しかしながら、事業者が食品の表示に関する情報が記載された書類を保存していない場合には、それ以上の追及ができないなど、食品表示の監視を行う上で限界があるということは考えております。

西野分科員 ありがとうございます。

 調査に限界があるということで、私も、昨日、おととい、農林水産省そして消費者庁の皆さんと議論させていただく中で、そういったお話も伺いました。少し話を聞いたところによりますと、調査の典型的な手法としては、伝票をしっかり突き合わせて、どこの段階で中国産が熊本産に変わったのか、外国産が国内産に変わったのかということを突き止めていくんです、しかし、残念ながら、現在の法制度では、その伝票の作成、保存というのが努力義務にとどまっている、それがゆえに調査にも限界があるというようなお話を伺いました。

 私としては、今回の産地偽装問題をきっかけに、徹底して産地偽装を根絶する、それが将来の農林水産業のためになるんだということであれば、ここは思い切って制度を見直して、伝票の作成そして保存を義務化するということも検討すべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、食品表示基準におきましては、表示の根拠となる書類の整備、保存につきまして、事業者の負担や実行可能性などを勘案し、努力義務としておりますけれども、表示の適正化の確保のためには、事業者におかれて適切に書類の整備、保存に努めていただくことが必要であるというふうに我々も考えております。

 今回のアサリの産地表示の疑義案件に関しましては、二月一日付で、消費者庁、農林水産省の連名で、関係事業者団体等に対して、アサリの取扱い時には産地伝達の確認の徹底などを求める通知を発出したところでございます。

 まずは事業者間で産地伝達の確認をしっかりとしていただきたいということで、我々としても、引き続きその徹底を図ってまいりたいと考えております。

西野分科員 ありがとうございます。

 今ある制度でできる限りの調査をするということがもちろん必要なんだと思いますけれども、私は、やはり一考の余地があるのではないか、検討する余地があるんじゃないかなというふうに思います。

 おっしゃるとおり、アサリの産地偽装に関わっていない人たちが、何で悪いことをした人たちのせいでこんな大変な作業、伝票を作るとかそれを保存するというのは大変な仕事量になると思いますので、何で俺たちが巻き添えを食らわなくちゃいけないのかというような御批判というか指摘もあるのかもしれませんので、そんな簡単なことではないというのは私も重々承知しております。

 では、例えばの提案ですけれども、産地偽装に関わった事業者、今回判明するところが幾つか出てくるんじゃないかと思いますけれども、そしてその事業者と取引があった事業者に関しては、しばらくは業務停止期間が与えられると思いますけれども、その業務停止期間が解除された後、五年間とか十年間とかに関して、その業者がもう一回アサリを取り扱うということになるのであれば、その業者に限っては、伝票を作成する、そしてそれを農林水産省や消費者庁に提出する、その義務を課すということは可能ではないかというふうに思います。

 周りの人たちを巻き込まない形で、悪いことをした人にだけはその作成義務を課すということは十分考えられるんじゃないかというふうに思いますけれども、是非御検討をお願いしたいというふうに思います。

 それから、二つ目の柱と私が申し上げましたけれども、ルールの適正化についてお伺いをしたいというふうに思います。

 時代の流れに応じて、そして品目に応じて、原産地表示のルールについても適時適切に見直していくこと、これもまた産地偽装を防ぐ上で必要だということは先ほど申し上げました。

 例えば、今回の件でいえば、原産地表示のルールの一つに、いわゆる長いところルールというのがあるそうでございます。これが不正の温床になったというような指摘も多方面から出てきておりますけれども、このいわゆる長いところルール、これは一体どのようなルールなのでしょうか、教えてください。

村井政府参考人 お答えいたします。

 生鮮食品の原産地でございますけれども、食品表示法及び同法に基づく食品表示基準におきまして、義務表示の対象となっております。原則として、農畜水産物が生産された場所を表示するということとなっております。

 ただし、畜産物や水産物につきましては、その育成過程の中で、複数の産地で育成されることがございます。その場合には、最も育成期間の長い場所を原産地として表示することとしております。

西野分科員 ありがとうございます。

 では、この長いところルールが規定された理由、目的、背景についても教えていただきたいと思います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 生鮮食品の原産地は、先ほど申しましたように、原則として農畜水産物が生産された場所ということになりますけれども、その生産の実態の違いを考慮して、農産物、畜産物及び水産物に分けて具体的な表示方法が規定をされているという形になっております。

 これは、例えば農産物の場合には、特定の土地、農地で一貫して生産されて育成して収穫をされるというのが通例であるのに対し、畜産物では、子牛が生まれた場所と飼養された場所が異なる場合があること、いわゆる繁殖地と肥育地が分かれるというケースがあるということでございます。水産物につきましても、二か所以上の養殖場で養殖される場合があることなど、生きたまま産地を移動して複数の産地で飼養なり育成されることがあるということを考慮して、このようなルールが規定されているものと承知しております。

西野分科員 ありがとうございます。

 長いところルールの意味、そしてその意義についてはよく理解できましたが、今、消費者庁の方がおっしゃったとおり、例えば牛肉みたいに、繁殖地と肥育地の場所が違う、それでもいいんだということで国民の皆様方の信頼といいますか蓄積されたものがある品目であれば、そういったものもふさわしいんだというふうに思います。一方で、どの品目をこのルールの対象にするのかどうかというのは、やはり品目に応じて一つ一つ見直していく、十分に検討する必要があるのではないかというふうに思います。

 先ほど申し上げた牛肉の場合は、そのルールの対象にするということが私はふさわしいんだというふうに思いますが、例えば、アサリみたいに成長によって大きさとか見た目が変わらない、そういった品目については、どこで蓄養した期間が長いのかということを判断するのが極めて難しいと思います。ですので、このルールを逆手に取って、たった一日、二日、短期間だけ浜に戻して、こっちの方が長いんだ、熊本の方が長いんだというような主張がまかり通ってきたということなのではないかというふうに思います。

 これを機に、不正の温床と指摘されておりますこの長いところルールの対象からアサリについては除外する、さらには、いろいろな品目について、いま一度この長いところルールの対象にするのが適切なのかどうか見直していく、これが必要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 生鮮食品などの原産地の表示ルールにつきましては先ほど御説明したとおりでございますけれども、このルールに従っても、輸入後、出荷調整や砂抜きのために国内で蓄養した貝類の原産地は、その輸出国が原産地になるということになります。輸入したアサリが国内で短期間蓄養されたことによって、その原産地が国産になるということはございません。

 一方、稚貝を輸入し、あるいは国内のほかの産地から移殖し、育成させることも想定されますが、この場合には複数の産地で育成されることとなるため、同じ考え方に即して産地を表示することが適切であると考えております。

 ただ、今委員御指摘ございました、いずれにしても、アサリの生産現場の実態につきましては、引き続き、水産庁とも連携をしながら、その把握に努めてまいりたいと考えております。

西野分科員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりだと思います。まずは、実態、どうなっているのかということをしっかり把握していただくことが、ルールの適正化に向けては必要なんじゃないかというふうに思います。

 アサリの生育、蓄養がどうなっているのか。アサリを輸入した場合、流通経路がどうなっているのか。さらに、本当に長いところルールがふさわしいと考えられるケース、例えば、今おっしゃったように、数週間の稚魚を輸入してきて、それから国内で一定期間育てるという場合には、長いところルールというのもある意味適切なケースだというふうに思いますので、そういうケースがあるのかないのか。そういった実態をしっかり把握していただくことが、ルールの適正化に向けて、まず第一歩だというふうに思います。

 といいますのも、やはり聞く人聞く人によって言うことが多少違うのかなというふうに思っています。例えば、熊本県の担当者なんかは、アサリなんかは長いところルールに当てはまるケースは全くないんだ、非常に分かりにくいからアサリを適用除外にしてくれというふうにおっしゃっています。そして、私の選挙区内で以前天然アサリを養殖されていた方と私はお話をさせていただきました。その方は、確かに昔は天然アサリがたくさんあったけれども、最近は外国産が多い、もう適用除外にした方が分かりやすいというようなことをおっしゃっている方もいました。一方で、先日、水産庁の方とお話をさせていただきましたときには、長いところルールがふさわしいと言われるケースも、たくさんはないんだけれども、一部にはあるんだというような人がいて、その人たちを守るためにこのルールは必要なんだというような話をされている方もいました。

 まずは、実態を把握して、実態に即した制度、不正の温床にならないような制度の見直しを是非ともお願いしたいというふうに思います。

 その中で、私が一つ提案したいのが、アサリを長いところルールの適用除外にできないのであれば、こういう方法があるんじゃないかなというふうに思っています。例えば、馬肉なんかで用いられております表示方法です。馬肉に関しても、一時期は産地偽装の問題などがかなり話題になっておりましたが、最近では、そういう事件、そういう騒動が少なくなってきている、ほとんどなくなってきているというふうに私は認識しています。

 どういう表示方法かと申しますと、原産地をしっかりと表示、明記した上で、熊本育ち、熊本で私たちが育てましたというふうに宣伝広告文句を併記するという方法です。アサリでいえば、例えば、長いところルールに全くひっかからないような、一日、二日、熊本の海に寝かせたというようなものはもちろん論外ですけれども、例えば、外国産のものでも、有明海の肥沃な浜辺で一定期間ちゃんと蓄養して、非常においしくなる、栄養価も高いものになるんだというふうにおっしゃっておられるアサリの業者の方もいらっしゃいます。有明海にプライドを持ってアサリの生産をされていらっしゃる方もおりますので、そうした方々に合うような方法。

 原産地は中国、原産地は韓国ということを明記した上で、さらに肥沃な熊本の有明海で育てましたというような宣伝広告文句を併記するというような方法はできるのではないかというふうに考えておりますけれども、消費者庁、農林水産省の皆様方のお考えはいかがでしょうか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 今委員から馬肉を例示にお話がございましたので、その関係でお答えをさせていただきます。

 生鮮食品の原産地表示などのルールにつきましては先ほど御説明したとおりでございますけれども、馬肉は畜産物ということになりますので、畜産物の表示ルールに従っていただくことになります。

 産地、いろいろ実態はあると思いますけれども、聞いておるところによりますと、海外から食用の馬を輸入している、国内の産地で一定期間飼養しているというふうに聞いておりますけれども、海外から食用の馬を輸入した場合、海外における飼養期間が国内での飼養期間より長い場合は、屠畜した馬肉の原産地は輸出国と表示をしていただくということになりますが、ただ、食品表示法上の原産地が、今委員の方からもお話がございましたが、消費者の目から見て原産地が明確に認識をされて、全体として消費者に誤認を与えない範囲であれば、国内の飼養地等を任意で表示をすることについては差し支えないと考えております。

西野分科員 ありがとうございます。

 しかし、この場合、一つ問題になるのが、やはり誇大広告にならないようにしなければいけないということです。原産国は海外としつつも、国内ではほとんど何もしていないのに、あたかも国内で十分育てたかのように表示するのはやはりこれもまた問題だと思いますので、どこまでが許されるのかというのが実は漁師の方々には分からないという部分もあろうかと思います。是非とも、どこまで許されるのかというガイドラインを作っていただくということも検討していただければと思います。

 それ以外には、風評被害対策、国内の生産者の人たちをしっかり守っていくということが私は一番大事だと思っておりますので、風評被害対策。それから、熊本県も要望しておりますけれども、トレーサビリティーをしっかりつくっていくということ。さらには、そもそもこの産地偽装問題の背景にあったのは、アサリ漁獲量の激減というのも背景にあるのではないかというふうに思います。有明海の再生を通じてアサリをしっかり増やしていくということも重要だと思います。

 こういった様々な観点から産地偽装を撲滅していかなければいけないというふうに思いますけれども、若宮大臣、最後に、御感想も含めて、ちょっと決意なども含めて、一言言っていただければと思います。

島尻主査 若宮国務大臣、時間が過ぎておりますので、簡潔に。済みません。

若宮国務大臣 まずもって、食品の表示に関してですけれども、これはやはり、消費者の皆様方の商品を選択するに当たっての重要な判断材料だというふうに思っております。産地を偽った商品が販売されること自体、これはまさに、消費者の信頼を揺るがす極めて深刻な問題だというふうに捉えてございます。

 今回の、先ほど来の先生からのお話、一連の事案を受けまして、二月の八日に熊本県の知事も来庁いただきまして、原産地表示ルールの運用の見直しなど様々御要望をいただいたところでもございます。

 ただ、委員も御指摘のように、違反を見つけるのは非常に難しいということが背景にあるのかなというふうにも理解をいたしているところでございますので、しっかりと受け止めてまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、現在、農林水産省におきまして、今回の産地偽装に関わる疑義の解明の調査が行われているところでもございますので、こういった調査がしっかりと、また、我々としても、消費者庁としても連携いたしまして、解明してまいりたいなというふうにも思ってございます。

 いずれにいたしましても、何よりも、パッケージを見た消費者の皆様方が、信頼を回復して、それで御家庭でアサリを食していただけるかどうかという観点、これが非常に一番大きなポイントだと思っておりますので、消費者庁といたしましては、このルールの適用の在り方、今先生からもいろいろな御提案もいただきましたけれども、必要な見直しも含めて、いろいろ検討してまいりたいというふうに思っております。

西野分科員 ありがとうございました。終わります。

島尻主査 これにて西野太亮さんの質疑は終了いたしました。

 次に、重徳和彦さん。

重徳分科員 立憲民主党の重徳和彦です。

 今の、熊本・有明海の自民党の西野さんに続いて、同じテーマの質問です。

 私は愛知県で、三河湾という湾がありまして、かつて、日本一のアサリの産地だ、そういう誇りを持った地域でありますが、近年、漁獲高がただでさえ激減して、本当に捕れなくなっちゃった、こういう地域であります。原因も、かつてはカイヤドリウミグモという寄生虫が原因じゃないかと言われたときもありましたが、最近は、海の栄養が足りない、栄養塩が足りないというような指摘がありまして、湾に流す水の処理を、リンと言われる栄養分、要するに、窒素、リン酸、カリのリンですね、それを少し増量するように下水処理の在り方を調整するとかいうようなことを漁協の皆さん方と一緒になって取り組んできて、今年は少しいいぞとか、なかなかよくならないねとか、こういう思いを地元の漁師の皆さん方とともにさせていただいている、そういう立場であります。

 先ほどの質問の中でもございましたけれども、テーマは、大規模なアサリ産地偽装によって外国産のアサリが熊本県産と表示されたという問題についてなんですが、二月一日、農水省の実態調査が行われまして、先ほど政府の方から御説明があったように、去年の十月から十二月までの調査において、年間の熊本県アサリの実際の漁獲量は二十一トンと言われておりますが、それを大幅に上回る二千数百トンが三か月の間だけで確認をされた。これはやはり外国産のアサリが相当量混入している可能性が高いというふうに判定がされたというわけですね。

 この調査結果に基づいて、この結果のみでは原産国を特定することはできないので、流通ルートを遡って立入検査を実施し、事実を認定していくことになるということで、現在調査が行われているはずなんですが、今、農水省はどんな調査をされていますか。

江崎政府参考人 お答えいたします。

 今回の調査を通じて把握した疑義につきまして、仕入れ先や販売先等の流通ルートを遡って立入検査等を行っているところでございます。法に違反する事実を確認した場合、表示の是正等の指示、公表を行い、消費者庁や警察にも情報共有を行ってまいります。

重徳分科員 少し、後ほど詰めてまいりますが、まずその前に、この産地偽装というのはかなり大規模に行われていたというふうに言われますが、政府は、昨年十月に先ほど申し上げました調査を行ったわけですが、それまでの間、何らかの調査をしてこられましたか。過去のアサリの産地偽装の事案、今、権限としては指示とか公表といったことができるという話でしたが、そういった過去の実績を教えてください。

江崎政府参考人 お答えいたします。

 アサリの産地偽装事案につきましては、農林水産省として、これまで、食品表示法に基づき、消費者庁や都道府県等の関係機関と連携し、疑義情報を踏まえた立入検査を行い、法に違反する事実を確認した際は表示の是正等の指示を行うなど、厳正な対応を行っております。また、こうした情報は警察にも提供しております。

 広域事業者に対しては国が、それから、広域事業者以外の事業者に対しては都道府県等が、指示、公表を行っております。平成二十四年度から現時点までの十年間で、指示、公表を行った件数は十六件でございます。このうち、農林水産省として、広域事業者に対して二件、指示、公表を行っております。

重徳分科員 実際に指示、公表を行ったのは二件。過去五年ですか。(江崎政府参考人「十年間」と呼ぶ)過去十年で二件ということでございます。

 この食品表示法のほかにも、不正競争防止法、これは経産省所管と聞いておりますが、ここにおける不当表示が適用されれば、そういった厳正な措置がなされるというふうに聞いておりますが、それは過去五年、十年、実績はどうでしょうか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の不正競争防止法でございますが、不正の目的をもって商品、役務などの原産地ですとか品質等について誤認させるような表示をした場合、あるいはこうした誤認をさせるような虚偽の表示をした場合につきまして、刑事罰の対象となるところでございます。

 個別事案についての罰則適用判断は司法でされますので、お答えする立場ではございませんけれども、過去五年ということでございますが、アサリの原産地偽装の事案につきまして、不正競争防止法違反として一件の摘発事例があると承知をしております。

重徳分科員 食品表示法で十年で二件、不正競争防止法で一件、実績としてはそういうことだということであります。

 さて、少し切り口を変えますが、この熊本県の問題につきまして、熊本県知事さん、熊本の関係者が大変大きな問題意識を持って臨まれているということが見て取れる、これは今年の二月十一日の読売新聞の全面広告なんですね、「産地偽装は、許さない。」熊本県知事さんが写真入りで、「許さない。」そして、熊本県では二月四日に熊本県産アサリ緊急出荷停止宣言を発令し、そして、二月十一日以降、店頭から、そのアサリを全部出荷停止ということですから、姿を消すということになった。二か月の間に信頼回復をし、二か月後には再びアサリの出荷を再開する。こうしたある種の強い覚悟を持って、地域、利害関係が様々ある中と想像されますが、そういう中で、非常に強い思いでこうした宣言、対応をされています。

 比べてと言ったら申し訳ないんですが、これは大臣にお聞きしたいんですが、国の方は、各業界団体に対しまして二月一日に通知を出しておりまして、要すれば、アサリの取扱い時には産地伝達の確認を徹底してください、業界団体の会員に対する特段の御指導をお願いします、こうしたお願い文書を出しているというところにとどまっているわけなんです。

 このことは、熊本県のこの悲痛なまでの覚悟を持った、絶対産地偽装を許さないということに対しまして、国は随分穏当な感じに少なくとも一見見えるわけなんですけれども、その辺りについて、やはり地元の苦しみというものを国としても共有してといいましょうか、少し覚悟を持ってこうした対策を講じるべきじゃないかと思いますが、まず大臣にお伺いすると同時に、問いの十五番というふうに通告していますが、水産庁の方にも、この熊本県の対応をどう評価されているか、こういったことをお答えいただきたいと思います。

若宮国務大臣 今委員からお話しいただきました件でございますが、今回、農林水産省の最初の公表を受けまして、御指摘の通知を発出させていただいたところでもございます。都道府県の監視担当部局に対しましても、監視指導を徹底するように求めたところでもございます。

 先般、熊本県の方からは、取締り体制の整備、原産地表示のルールの運用の見直し、そしてまたトレーサビリティー制度の構築について、制度面での御提言もいただきました。いずれも、現在のルールの下では表示違反を見つけるのが非常に難しいということが背景にあろうかと思いますが、まずは、御要望と現場の意見をしっかりと受け止めたいと思っております。

 また、先ほども答弁申し上げましたけれども、今、農林水産省におきましては、今回の件に関わります疑義の解明の調査が行われているところでもございます。もしも不適正な行為が確認をされた場合には、農林水産省とも連携し、厳正な法執行に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

 これと併せまして、また、ルールの適用の在り方につきましても、消費者庁といたしましても、農林水産省と連携をいたしまして、国内のアサリの流通の実態、これも把握していかなければいけないと思っております。また、どうしたら表示の偽装を防ぐことができるのか、あるいは、先ほどもちょっと触れましたけれども、消費者の信頼を回復して、何よりも、御家庭でおいしい、安心してアサリを食していただけるかということが一番重要だと思っておりますので、こういった観点から、必要な見直しについては取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

渡邊(毅)政府参考人 熊本県の二か月間の出荷停止についての水産庁の評価というような御質問をいただきました。お答えをいたしたいと思います。

 熊本県におかれましては、熊本県ブランドを守るための対策に取り組むということで二か月間の出荷停止を行ったと伺っておりますけれども、県内の漁業者の方々と一体となって、熊本県産ブランドを守るために県として大きな決断をされたというふうに我々としても受け止めているところでございます。

 水産庁といたしましては、今後、熊本県において実施される取組内容を踏まえた上で、消費者庁や熊本県と連携し、共に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

重徳分科員 大きな決断という水産庁からの評価、そして大臣は、調査をしっかり行って、何か見つけたときには厳正な法執行を行っていくという話がございました。

 先ほどの質問の中にもありましたけれども、この偽装は地理的には恐らくかなり広範囲にわたる、それから、流通過程でいいますと、川下、川上のたくさんの段階で、その中のどこで偽装、どこで外国産が熊本産というふうに表示がすり替わった、そういうこともなかなか見つけにくいぐらい大変なことだと思うんですけれども、そもそも、食品表示法上の権限として、国の権限として、こうした全ての段階の業者に対して立入調査を行う、そういった権限はあるんですか。権限がなきゃ、それは調べようがないと思うんですけれども。そこを確認してみたいと思います。

江崎政府参考人 お答え申し上げます。

 食品表示法上、表示の適正を確保するため必要があると認めるときは、食品関連事業者や関係のある全ての段階の事業者に対して立入検査を行うことが可能となっております。

 なお、農林水産省は広域事業者を対象に立入検査を行うこととなっておりまして、事業者が県域事業者の場合は、当省は事業所の所在する都道府県に情報を回付し、都道府県が検査を実施することになります。

重徳分科員 分かりました。全ての段階で可能だということであります。

 そうしましたら、ちょっと別の角度ですが、今回、外国産ですから、当然、輸入をしたアサリに関わる問題です。これは多くは下関の税関で国内に入ってくるというふうに聞いておりますが、その量がどのぐらいだったのかということを教えていただけますか。それから、そこから熊本県で期間は短いながらも蓄養されてから熊本産として出荷されたものと、そうじゃなくて、下関に入ったらすぐ、熊本と全く無関係のまま全国の小売店で熊本産として売られた、その両方があるだろう、むしろ直接行った方が多いんじゃないかという話もあるぐらいですが、この辺りは把握されていますか。

渡邊(毅)政府参考人 お答えをいたします。

 アサリの輸入量でございます。

 我が国のアサリの輸入量は、財務省の貿易統計によりますと、令和二年は、生きているもの、生鮮のもの及び冷蔵したものですけれども、全体で三万五千三百七十トンでございます。このうち、下関税関支署を含みます門司税関で輸入されたものは、二万三千八百二十四トンということになっております。

 また、熊本の保税地域とか蓄養を経ずに直接熊本産として出荷される量については、我々としては把握をしていないというところでございます。

重徳分科員 把握されていないということであります。これはこういったところから調査をしていかなくちゃいけないんだろうと思います。

 その一方で、アサリというのは、そもそも、日本の大切な食文化であります。みそ汁、酒蒸しはもちろん、深川飯というのもありますし、しぐれ煮もありますよね。和食に限らないですね。深川飯、柿沢さんの御地元の。それから、ボンゴレスパゲッティ、洋食もありますよね。そういったこともございます。アサリが日本の食卓から消えてしまっては困るんです。

 ですから、確かに表示は大事だし、国産アサリが一番大事だと私は思いますが、しかし、外国産だからといって、これはおかしなものなんだとか、安全性が確保されていないんだとか、そういう少し行き過ぎた認識が広まってしまうと、これまた問題が出ると思うんですが、中国産、外国産の輸入アサリというものの安全性について御説明いただけますか。

武井政府参考人 お答えいたします。

 輸入される食品については、食品衛生法に基づき、輸入者に対し、輸入の都度届け出ることが義務づけられており、違反リスクに応じた検査が行われているところです。

 御指摘の中国産アサリについては、輸入の都度、貝毒や残留農薬の検査を命じており、その検査の結果、食品衛生法に適合したものだけが輸入されております。

重徳分科員 国産アサリが大事、産地偽装は許さないのはもちろんですが、必要以上の、過度な外国産に対する危険視はこれまた避けなきゃいけないということですから、そういった検査はしっかりと行っていっていただきたいと思います。

 次に、蓄養について少しお話ししたいと思います。

 蓄養については、蓄養の意義というものがまずあると思います。その意義とは何かというのを教えていただけますか。

 それから、あわせて、蓄養によって味わいがよくなる、コクが出る、こういうことも言われておりますし、先般、私も地元の業者の方に、一週間蓄養したアサリ、二週間蓄養したアサリというものを食べさせていただきまして、私は理屈は分かりませんが、確かに、何かうまみが増しているなという感じもいたしました。こうした蓄養によるアサリの品質向上、あるいは、こういったものをブランド化して地域のアサリとして出荷していくことについて、こういった企業努力への評価をお答えください。

渡邊(毅)政府参考人 お答えをいたします。

 まず、蓄養でございます。

 蓄養につきましては、漁業法の中にその行為が定められていないために、明確な定義はないところでございますけれども、一般に、出荷調整などを目的として水産動植物を短期間一定の場所に保存する行為というふうに言われております。

 このため、いわゆる蓄養では砂抜きとか鮮度保持といったような行為が行われていると承知しておりますけれども、それを超えて、例えば身を大きくするなどの品質向上に取り組むということは想定をしていないということでございまして、このような品質向上のために生育を一定期間管理するというようなことであると、これは漁業法上の区画漁業の免許を要する養殖に該当するのではないかと思っております。

 先生のおっしゃった風味がよくなるというのは、恐らく鮮度維持の範囲でとどまっているということなのではないかというふうに考えております。

重徳分科員 ありがとうございます。政府の見解をいただきましたので、またいろいろと勉強していきたいと思います。

 さて、産地表示についてですが、今回の偽装は、当然、売買の伝票に産地がどう書かれていたかといったようなことが一つ、これから調査をするに当たっても、そしてもちろん、今後の適切な取引においても重要になってくるわけであります。

 今の現状を知りたいんですけれども、産地を証明する書類、伝票にどう書かれていても、特段、様式というものがないのか。そして、それは法令上、特段、やり方を指定されていないのか。その書類を保管する義務とか保管する期間とか、それから記載する責任といいましょうか、裏を返せば罰則のようなものがないのか。こういった、産地を証明するための、流通上の、取引上の書類の現状というものについて教えていただけますか。

村井政府参考人 お答えをいたします。

 食品表示基準におきましては、食品関連事業者等は、同基準に基づく表示を適正に行うために必要な限度において、その販売する食品及び当該食品関連事業者等に対して販売された食品の表示に関する情報が記載された書類を整備し、これを保存するように努めなければならないということにしております。その根拠書類の様式あるいは保管期間につきましては具体的な規定はございませんが、表示の適正化の確保のため、事業者においては適切に書類の整備や保存に努めていただきたいと考えております。

 ただ、具体的にどういった書類が考えられるかということでございますけれども、仕入れた食品なり販売した食品につきましては、その名称、原材料名、原産地等が表示された送り状、納品書、規格書等が考えられるのではないかということ、小分け、製造した食品につきましては、製造仕様書なり製造指示書、原材料の使用記録、製造記録等が考えられるのではないかなというふうに考えております。

 保管期間につきましては、食品が製造されてから消費されるまでの間、表示に関する書類を保存していただく必要があるのではないかということで考えております。

 なお、罰則の関係でございますけれども、立入検査時に虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出を行った場合には、食品表示法に基づきまして罰則が科せられるということになっております。

重徳分科員 今回は熊本を舞台として起こったことでありますので、三河湾の業界においては、これを機に余計な負担が増えるというのは、今までも真面目にやっているのに、そういったバランスもありますので、なかなか、規制の在り方というのは大きな議論が必要だと思います。

 また、熊本県知事が、先ほどの全面広告ですけれども、長いところルールの運用の見直しも求めておられますけれども、これはどのように検討されていくんですか。

若宮国務大臣 食品表示におきましては、これはやはり消費者の商品選択に当たって非常に重要な判断材料だというふうに思っております。産地を偽った商品が販売されるということは、消費者の信頼を揺るがす極めて深刻な問題として捉えてございます。

 生鮮食品の原産地、これは食品表示法及び同法に基づきます食品表示基準におきまして義務表示の対象となっており、原則として、農畜水産物が生産された場所を表示することとなってございます。

 ただし、畜産物や水産物については、その育成過程の中で複数の産地で育成されることがあり、その場合は、最も生育期間の長い場所を原産地として表示することとされてございます。

 現在、農水省におきましては、産地偽装に係る疑義解明の調査が、このアサリでございますけれども行われておりますので、このアサリに関しましては、しっかりとした形の実態調査、実態を把握するということが重要だと思っております。

 いずれにいたしましても、消費者の信頼を回復して、まず、アサリをきちっとした形で御家庭の食卓に届けられるように尽力してまいりたい、このように思っているところでございます。

重徳分科員 要すれば、まず調査ということですね。それは分かりました。

 消費者の選択の前提として正確な表示というのは不可欠だし、偽装というのは絶対悪いことであるというのは間違いないことです。

 ただ、大臣にお聞きしたいんですけれども、結局、消費者の皆さんが国産がいいと思いますよね、我々も思います。だけれども、だから、無理して、偽装してまで国産だという表示をしてしまう、こういう誘因が生まれる。この悪循環をどう認識され、どう対応するのか。これが結構本質じゃないかと思うんですけれども、大臣の御見解をお願いします。

若宮国務大臣 確かに、今、重徳先生がおっしゃるような傾向というのは現実であろうかというふうに、私自身も個人としては思っております。

 ただ、消費者全体として見てみますと、例えば、外国製のもの、お肉でも何でもあろうかと思いますけれども、食品の価格ですとかあるいは品質ですとか、お肉の好みであれば、サシが入っている方が好きだという方もいらっしゃれば、赤身の方が好きだという方もいらっしゃるかと思います。あるいは産地、これについてもこだわりがある方もいらっしゃると思います。また、昨今、環境への配慮や特定の地域の応援など、様々な要素で選ばれる方もいますので、最終的に何を重視をしているかというのは、これはお一人お一人の消費者の方々の御判断に委ねられるべきではないかなというふうにも考えているところでもございます。

 いずれにいたしましても、食品の表示というのは、消費者の皆様方お一人お一人が選択をするに当たっての、まず最初に、パッケージが見えたときの入口の重要な判断材料でございますので、まさに、産地を偽った、あるいは中身と違うものが販売されるということがあってはならないというふうに思ってございます。

 こういった形のものにつきましては、しっかりとした形の法執行、またルールの在り方まで含めて、食品表示の司令塔として、私どもの方でもしっかりとした対応を考えていきたい、このように思っております。

重徳分科員 ありがとうございます。

 私は、消費者が国産を求めるというのはいわば健全なことであり、また、地産地消とか、大きく言えば食料安全保障という意味でも、食料自給率という意味でも、やはり消費者の期待に応えるとともに、国益を守るという政策にもつながっていきますから、消費者が安易に外国産がいいやとかというよりは、当然、国産を求めるマインドがあるというのは極めて重要なことだと思います。それで偽装が生まれちゃいけないということは、やはりきちっとしたルール、そして取締りをしなきゃいけないということなんだと思っております。

 要するに、何が言いたいかというと、この問題の本質は、やはり国で国産のアサリが本当に捕れなくなってきているということ。そして、その原因は一体何なのか。

 そして、それは複合的ないろいろな要因があると思うんですよ。省庁で言えば、各省庁ですよ。干潟がなくなってきている、ダムを建設したりいろいろなところを埋め立てたりという意味では国交省。それから、農業、同じ第一次産業ですけれども、農業が使っている農薬の問題があるかもしれない、そういう意味では農水省。さらに、愛知県もそうですけれども、非常に製造業が盛んなところですから、産業界との、基本的に産業界というのは環境を汚す側でありますので、製造業とか、そういった第二次産業の世界との折り合いという意味では経産省。そして、もちろん環境省。こういったいろいろな要因があると思うんですけれども、最後に、水産庁として、アサリが減った原因を他省庁に全く遠慮せずに言ってください。

 他省庁に関わる課題がいろいろあるということを言っていただくとともに、もう一つ、冒頭申し上げました、三河湾ではここ数年間、下水処理場の水を浄化する薬のさじ加減をして、窒素、リン酸、カリ、特にリンを増量した上で水を、下水を放流するといった取組をしてきているんですが、この成果というものが、地元では悲喜こもごもなんですよ。成果が見えたね、見えないね、諸説あります。場所によって、あの島の近くではたくさんアサリが捕れるようになった、いろいろな話があるんです。

 これを全体としてどのように水産庁として評価されているか、水産庁じゃなくてもいいですよ、環境省でもいいけれども、お答えできる方にお答えいただきたいと思います。

黒萩政府参考人 それではお答えいたします。

 アサリの減少原因は海域によって異なっております。以前は、埋立て等により漁場が喪失しました。近年では、乱獲であるとか、海底形質の変化であるとか、貧酸素であるとか、食害、病害などが指摘されております。それに加えまして、先ほど委員の方からもございました栄養塩不足による影響、これが指摘されております。

 伊勢湾、三河湾におきましては、愛知県の調査研究によりまして、栄養塩不足が、アサリ、それからノリの色落ちもそうなんですが、そういった漁獲量の減少の要因の一つであるということが指摘されております。

 実は、昨年十一月、水産庁は環境省と共催で、伊勢、三河湾をきれいで豊かな海にするための第一回勉強会を開催しまして、愛知県の漁業関係者にも御参加いただき、さらには、先月、水産庁の担当官が現地に赴き、漁業関係者との意見交換を行わせていただきました。

 水産庁としましては、愛知県との連携を密にしまして、現地の漁業関係者の御意見を踏まえて、海域の特性に応じた栄養塩管理の調査研究や管理の取組を推進、協力していきたいというふうに考えております。

重徳分科員 国の協力を是非いただいて、いい海を守り、おいしい御飯を食べられるように、おいしいアサリを食べられるように、皆さんで力を合わせてまいりましょう。

 以上です。ありがとうございました。

島尻主査 これにて重徳和彦さんの質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

島尻主査 次に、内閣府本府について質疑の申出がありますので、これを許します。吉田久美子さん。

吉田(久)分科員 公明党の吉田久美子でございます。

 本日は、現場の皆様の切実な声を基に質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 コロナ対応について質問させていただきます。

 まずは、コロナでお亡くなりになられた方々には謹んで御冥福をお祈り申し上げ、今現在闘病中の皆様には心よりお見舞いを申し上げます。

 今朝、第六波のピークを越したとの新聞報道もありましたけれども、今年に入ってすさまじい感染力を持ったオミクロン株によって感染の急拡大となり、短期間で第六波の大波に襲われてしまいました。現在、三十六都道府県で蔓延防止措置が取られております。

 先日、二月八日には、公明党として再度、ワクチンの三回目接種の加速化と国産ワクチン及び経口治療薬確保の早期実現を求める緊急要望を出し、岸田総理も、一日百万回のワクチン接種の実施を政府目標とすること、また、国産ワクチンと飲み薬の確保に迅速に対応していただくことを表明していただきました。

 ただ一方で、オミクロンの特性もあるとはいえ、感染者のほとんどが軽症や無症状で済んでおり、昨年、超スピードで進めた二回のワクチンの接種が、発症予防また重症予防というワクチン本来の効果を発揮しているとも言えると思いますし、また、治療薬も徐々に使えるものが増えており、つまり一昨年の状況とはかなり変わってきている。もちろん油断はできませんが、武器を持ってコロナに向かい合うことができるようになってきた。ともかく、今は、重症化率の高い高齢者や基礎疾患のある方、エッセンシャルワーカーの皆様に対して、ワクチンの種類よりも早く打つことが何よりも重要だとの情報発信を強め、追加接種を受けていただき、政府として、この第六波の被害を最小限にして乗り越えていくことに全力を挙げるべきだと思います。

 その上で、コロナの出口について質問させていただきます。

 先日、十代以下のお子さんを持つ親御さんと懇談をさせていただきましたが、この二年間、友達とおしゃべりをしながらの給食もなし、学校の行事や部活の中止や休止、また、自身の将来を懸けた大事な大会や発表の場を奪われ、やっとワクチン接種も進んで、第五波の収束でコロナ禍が明けるかと思っていたら、またこのオミクロン株の流行で学級閉鎖や学年閉鎖が始まり、延ばしに延ばした修学旅行も結局中止になってしまい、もうどうでもいいと、今、全てにやる気や気力を失ってしまっている。希望を持って未来を描けない、お子さんのメンタル面を大変に心配されておられました。

 子供にとって、二年はとてつもなく長いです。それも、先の見えない状況が続くと、これが永遠に続くような絶望的な思いになってしまう。将来を決める岐路のときに当たってしまったお子さんたちはなおさらです。

 もちろん、オミクロンが最後の変異ではないでしょうし、また、ウイルスが世界からなくなることもないでしょう。しかし、人類は、何度もウイルス感染症を乗り越え、新たなステージに進化してきた、そして共存に成功してきたという歴史を持っております。

 デンマークでは、日本の十倍の感染を出しながらも、先日、追加接種が六割を超えた時点で、全てのコロナ対応の規制を解除いたしました。また、イタリアも屋外でのマスク解除を発表する。また、イギリスも徐々に規制を解除してきており、諸外国でコロナの出口を示し始めました。

 科学的な知見を踏まえて、その時点における最善の対応策を柔軟に国として示していくことは最も重要な役割であることは承知をしておりますが、必ずコロナ禍は越えられるというメッセージを、国のリーダーが、子供たちや若者が未来に希望を描けるように発信していっていただくことも重要だと考えております。

 その上で、具体的に、政府として、このコロナの出口をどう考えていらっしゃるのか。例えば、高齢者のワクチン接種の三回目が終わり、経口薬が準備できた段階であるとか、経口薬プラス三回目のワクチン接種が国民の何%に達したときであるとか、このコロナの出口を示していくことを考えていらっしゃれば、是非その希望となる指標を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

柳樂政府参考人 お答えいたします。

 現在の感染拡大におきましては、三十六都道府県に蔓延防止等重点措置を適用いたしまして、その結果、そのうち三十二都道府県で新規感染者数の今週先週比が一以下となり、つまり、新規感染者数は減少傾向となっております。また、それ以外の県におきましても増加速度の鈍化が継続しているというふうに認識をいたしております。

 政府といたしましては、これまでも、感染対策をしっかり進めながら、社会経済活動をできる限り継続するために、めり張りのある対策を講じてまいりました。引き続き、医療提供体制の逼迫を回避しながら、今回のオミクロン株による感染拡大を一日も早く収束させることにまずは全力を注いでまいりたいと考えております。

 その上で、お尋ねの中長期的なコロナ対策の出口につきましては、政府といたしましては、感染者数を低い水準に抑えつつ、医療の逼迫を回避しながら、日常生活や社会経済活動を継続して行える状態を実現することを目指してまいりたいと考えております。それに向けた具体的な道筋などにつきましては、これは引き続き、オミクロン株を含め、変異を繰り返すという今回の新型コロナウイルスの特質をしっかり考えました上で、今後の感染状況や最新の科学的知見等も踏まえまして、専門家の御意見を伺いながら議論を進めていきたいと考えております。

吉田(久)分科員 しっかりと、科学的、医学的知見に基づいて議論を進めていっていただきたいと思います。

 ちまたでは、学校が学年閉鎖になって困っている、オミクロンについては、症状が軽く重症化しないならインフルエンザと同じ五類に早くすべきではないかとか、反対に、医療現場の方からは、政府は五類に変えたがっているんだけれども断固反対だとか、様々な声が巻き起こっております。情報不足による不安の裏返しだと思います。

 また、御高齢の方に、追加接種を早く打つことが大事ですよとお話しすると、看護師さんからファイザーを待った方がいいというアドバイスを受けたなど、現場の情報混乱がオミクロンの対応については巻き起こっていることを実感しております。

 是非、政府として、くどいくらいに正確な情報発信に努めていただき、その信頼を基に、まずは第六波を一丸となって抑え込めるようなかじを取っていただきたい。その上で、コロナ禍という有事をどう収束させていくのか、総理の下で省庁一体となって、国民に希望となる指標を示していっていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 次の質問に移らせていただきます。

 過去三年間の、全国における飲酒運転による交通事故件数及び死亡事故件数をお伺いします。

楠(芳)政府参考人 お答えいたします。

 飲酒運転による交通事故件数は、平成三十年が三千三百五十五件、令和元年が三千四十七件、令和二年が二千五百二十二件でございます。このうち、飲酒運転による死亡事故件数は、平成三十年が百九十八件、令和元年が百七十六件、令和二年が百五十九件となっております。

吉田(久)分科員 道交法に規定されている、飲酒運転をした場合の罰則についても教えてください。

楠(芳)政府参考人 お答えいたします。

 道路交通法では、道路において酒気を帯びて車両等を運転した者のうち、一定の基準以上にアルコールを保有する状態であったものについては、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処することとされております。また、道路において酒気を帯びて車両等を運転した者のうち、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態、いわゆる酒に酔った状態であったものについては、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処することとされております。

吉田(久)分科員 不名誉なことですが、福岡県は、全国でも交通違反また飲酒運転による事故件数が高く、過去に、飲酒運転による追突事故により海の中に車両ごと落下して、車内に閉じ込められて三人のお子さんが亡くなるという大変痛ましい事故がありました。これまでも、県を挙げて飲酒運転撲滅キャンペーンを展開しながら、また、県警なども取締り強化を行っていただいていると承知をしております。

 道交法は、道路上での交通ルールを定めたもの。また一方で、近年は、飲酒運転に加えあおり運転など、危険運転による事故が増加してきておりますことから、自動車運転処罰法にて危険運転致死傷罪なども適用しながら、悪質なドライバーへの対応を実行してきたわけであります。

 本日は法務所管の分科会ではございませんので、自動車運転処罰法、危険運転致死傷罪への言及は差し控えますが、毎年発生する飲酒運転による事故、事件は、ほとんどの場合、この自動車運転処罰法と道路交通法違反のセットで処罰されておりますが、それぞれの法律は、その成立の背景と目的がやや異なっており、処分の点について分かりにくい部分がございます。

 その一つが先ほどお示ししていただいた道交法で、飲酒運転をしてしまえば免許取消しという処分も受けます。免許取消しというのは大変に重たい処分でございます。

 一方で、自動車運転処罰法では、運転免許証そのものへの所管官庁ではないために、法律のたてつけも、免許証というよりは運転行為へ重点を置いており、免許証に関しての処分は一切明記をされておりません。道交法以外の法律では、免許証に対しての処分はできないことになっているわけでございます。

 そこで、具体的なお話に移りたいと思いますが、二〇一九年一月、福岡県のある埠頭に停泊中の貨物船内で荷役作業中に、トレーラーとコンテナの間に二十歳の作業員が挟まれてお亡くなりになるという事故がございました。当時、報道などでも大きく取り上げられたわけでございますが、少し概要を説明すると、トレーラーの運転手は、実は作業時に飲酒運転をしており、道交法の基準の二倍近いアルコール分が検出をされております。

 お亡くなりになられた方の御遺族は、民事訴訟にて今も係争中ということでありますが、事故後に行われた公判では、自動車運転処罰法違反罪で、運転手に禁錮二年六か月、執行猶予五年が言い渡されました。そして、いわゆる免停と呼ばれる免許停止期間は三か月。免許取消しではございません。

 様々な事情を考慮しての判断であることは理解し、決して一律に全ての事象で自動的に原理原則の適用をと言っているわけではございませんが、飲酒運転に対する罰則が時代を経て大変厳しく制定されてきたにもかかわらず、この免停という処分。

 遺族の心情を察しながら、どうして免停で終わったのか調べてみましたら、そこは結局、事故が起こった場所が停泊中の貨物船内だったということでございます。道路交通法の定める道路ではなかったということがその理由であるということでございました。

 この規定に当てはまらないということで、飲酒運転により発生した事故が、その行為ではなくて、発生した場所によって処分が変わるということについて、政府の見解をお伺いしたいと思います。

楠(芳)政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました酒気帯び運転や酒酔い運転の罰則に関する規定は、道路において酒気を帯びて車両等を運転した場合に適用されるものであり、道路以外の場所で同様の行為をした場合には適用されないということになっております。罰則の関係についてはこうなっております。

 それから、行政処分の関係でございますが、運転免許の取消し、停止等の行政処分は、違反行為を行った運転者の危険性に着目して、一定の期間、その者を道路交通の場から排除することにより、交通の安全を確保することを目的としております。

 処分を行う際の基準につきましては、原則として、道路上での違反行為について、罰則の法定刑に応じた違反点数を付し、その累積点数によって運転者としての危険性を評価して処分を行っているところですが、それ以外にも運転者としての危険性が表れていると見られる事由があった場合には、当該事由を理由として処分を行っております。

 先ほど御指摘ございました、道路外で自動車等を用いて人を死傷させる行為をした者については、道路交通法上の違反行為には当たりませんが、本来払うべき注意を払わずに自動車等を用いて人を死傷させたという点において運転者としての危険性が認められることから、運転免許の取消し又は停止の処分の対象とされております。

 この道路外で自動車等を用いて人を死傷させた者に対する運転免許の取消し、停止等の処分の基準につきましては、基本的には、道路において交通事故を起こした者に対する処分の基準に準じて定めるという考え方に基づきまして、行為者の不注意の程度や被害の程度に応じて定められているところでございます。

 他方、道路外で自動車等を用いて人を死傷させた者が酒気を帯びていた場合につきましては、道路外で酒気を帯びて自動車等を用いる行為自体が道路交通法上の違反行為とはされていないことに鑑み、処分事由としては加味されていないところでございます。

吉田(久)分科員 是非、道路外におきましても、死亡事故の場合は、飲酒運転に対する罰則規定に運転免許の取扱いについても明確に定めていただき、この事件のように、三か月たてば運転ができて職場復帰が許されるような、たとえ遺族ではなくても納得いかないような判決が今後も続くことがないように、制度改正、法改正も是非必要ではないかと思いますので、しっかり対応をお願いしたいと思います。

 続きまして、医療的ケア児をめぐる認定こども園の対応についてお伺いしたいと思います。

 まずは、明年、二三年四月に目指されているこども家庭庁の創設でございますが、まず、名称に家庭と入ったことで、家制度の存続を図るものになったかのような誤解が生じている節がありますので、子供の幸福を第一に、総理の言われたこどもまんなか社会を築くという確固たる理念を持って家庭を支えていく。また、子どもの権利条約の国内法ともいうべき子供基本法の制定を進め、こども家庭庁の創設に挑んでいただきたい。どんな子供たちも置き去りにしない、そのためのこども家庭庁の創設であるべきだと強く思います。公明党としても、しっかり議論を重ねているところでございます。

 しかしながら、先日、縦割りの弊害を色濃く残す、認定こども園内の複雑な制度の実態を知る機会がありました。

 認定こども園は、幼保それぞれの機能を併せ持つ施設でございますが、医療的ケア児の対応について園長先生から御相談を受けました。疾患のあるお子さんが、保育認定の二号、三号で入園されて、ケアを受けることができていたんですが、お母様が次のお子さんの育児休暇を取られることになり、幼稚園標準時間認定の一号扱いとなって、そのケアの制度が利用できない対象となったというのです。

 その後、調べて分かったのは、こども園には四つの形態があり、一号認定でケアが利用できるのは公立幼稚園と幼稚園型のこども園のみであることが分かりました。つまり、それぞれ対応が異なるという現状も知りました。声を寄せてくださったそのこども園の園長さんは、親の働き方で子供への措置を変えざるを得ない制度に本当に困っておられました。

 通園する医療的ケア児が、親の働き方によって受けられるサービスが変更されてしまうという問題について、野田大臣の見解をお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 御指摘のとおり、認定こども園において医療的ケアを行うための看護師配置等に対する国の補助事業、これについては、現在、認定こども園に在籍する保育認定を受けている子供については厚生労働省の補助事業の対象となる一方、公立の幼稚園型認定こども園に在籍する子供に対しては文部科学省の補助事業の対象となるなど、認定こども園の類型や子供の保育の必要性の有無により、支援の対象が異なっております。

 医療的ケア児及びその家族への支援は極めて重要、私も当事者なので認識しています。

 また、認定こども園は、保護者の就労の有無にかかわらず子供を受け入れ、教育及び保育を一体的に提供することを特徴とする施設であります。

 このため、昨年成立した医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律、この法律は、委員の先輩の公明党の高木美智代先生が、本当にライフワークとして熱意を持って取り組んでいただいて成立した法律だと思います。ありがとうございます。この場をおかりしてお礼を申し上げたいと思います。

 この法律の趣旨を踏まえるとともに、こども政策の新たな推進体制に関する基本方針において、認定こども園を対象とする各種補助金等について、調査、整理を行い、対応方針を決定するとされていることも踏まえ、関係府省間で必要な対応について検討しているところです。

 引き続き、医療的ケア児及びこの家族への支援に努めてまいります。

 検討というのは、いわゆる検討ではなく、しっかりそういうものを解決していくということで、実際、こども家庭庁の創設要望というのは地方からたくさん来ていました。それは、今御指摘のような、同じ子供であっても親のコンディションで様々不利益を生じたり、また、通知があり、いろいろなところから同じようなものが来たりということで、こどもまんなかになっていないことを是非変えていきたいという地方の皆さんの声を受けてでの取組であったことも御承知ください。

 ありがとうございます。

吉田(久)分科員 ありがとうございます。当事者でいらっしゃる分、しっかりと進めていただきたいと思っております。期待をしております。

 どうか、こども家庭庁ができた暁には、子供中心の制度に、このような差がないよう、少なくとも利用者が複雑性に困るような制度のままにしないよう改革を進めていただきたいと思います。

 ケアも教育も、どちらも子供には必要です。文科省の担う教育だけがこども家庭庁に入らないことで、就学年齢になると、そのどちらも必要なお子さんや親御さんにとってますます複雑な制度になるのではないかと、危惧の声も上がっております。

 特に、医療的ケア児の制度は、幼稚園や、ケアか教育かどちらかを選ばせるのではなく、子供を中心とした制度の司令塔として、こども家庭庁創設に進んでいただきたい。ケアも教育も掛け算で子供たちが享受できる、強力なリーダーシップで野田大臣に進めていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

 続きまして、女性デジタル人材についてお伺いします。

 公明党は、コロナを乗り越えて日本再生を進めていくためには女性の活躍を進めることが我が国においては必要であり、特に、少子化が待ったなしの危機的な状況にあることを鑑みても、女性が働きながら子育てしやすい環境整備も早急に進めていくべきだと考えております。

 その点からも、公明党は、在宅で、オンラインでも仕事ができる能力を身につけた新たな女性デジタル人材十万人の育成を進めるべきだと訴え、その目標を是非とも岸田内閣の下で実現していただきたいと考えております。

 また、子育て世代だけではなく、子育て卒業世代の女性も、学び直し、いわゆるリカレント教育を受けて、今の時代のニーズに合った仕事をして社会に貢献したい、そして家計を少しでも潤したい、このようなやる気も能力も高いお元気な女性の方もたくさんいらっしゃることを、各地を回って実感してまいりました。

 ましてや、地域に根差した女性が、高齢の方々に寄り添い、デジタル社会に置き去りにされないよう力をかしていただけると、総理の描かれるデジタル田園都市構想の実現も一気に加速すると思います。我が国の人手不足、そしてデジタル化を進めていく上で、このような女性の能力とやる気はこの国の大きな埋蔵資源だと考えます。

 政府として、この女性デジタル人材の育成の必要性をどうお考え、また進めていかれるおつもりかを聞かせていただきたい。

 また、あわせて、せっかくその能力を身につけた人材も、ニーズに沿わずに生かされなければもったいないことになってしまいます。デジタルですから、テレワークにしてもどこでも仕事ができるわけですが、地方創生の観点からいえば、地方や地域企業などとのマッチングをコーディネートして就職まで進めていくことも必要だと思います。

 都市部と地方部におけるデジタル人材の偏在もよく分かっておりますが、デジタル人材の還流促進も進めていく方向であることは、今後大いに力を入れていっていただきたいと思いますし、私もしっかり応援してまいりたいと思っております。

 そこで、今後、デジタル人材還流をしていく上で、分野や業種といった、具体的に人材不足がどこに生じているか、どう把握するのか、どう進めていくのか含めて、これについても政府としてのお考えをお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 まさに人生百年時代を迎えました。離婚件数は結婚件数の約三分の一、女性の約半数、私たちは九十歳以上まで生きるなど、女性の人生や家族の姿が多様化する中で、女性が長い人生を通じて経済的困窮に陥らないように、女性の経済的な自立というのが大変重要です。

 また、コロナの影響やデジタル化の進展に伴う経済産業構造の変化を見据えて、御指摘の女性人材の成長産業への円滑な移動支援を図る必要があります。

 こうした状況の中で、女性デジタル人材の育成は極めて重要であると考えています。女性デジタル人材の育成のため、本年春を目途に、新たに、女性デジタル人材育成プランを関係大臣としっかり連携し取りまとめ、取組を強力に推進してまいります。

 御指摘のとおり、女性デジタル人材の育成に当たっては、地域の視点から取り組むことが極めて重要。先般も、有識者会議において、地域の現場でデジタル人材の育成や就労支援に取り組む優良事例のヒアリングを行ったところです。

 また、自治体においては、地域女性活躍推進交付金を活用し、地元企業と提携した研修の実施や、他の自治体と連携したテレワークオフィスの運営など、それぞれの地域の実情に応じて創意工夫しながら取り組んでおられる例もあります。

 そうした地域における様々なニーズもしっかりと踏まえて、実効性のあるプランを取りまとめてまいります。

 今日、私は、女性活躍担当、男女共同参画の方でお答えしているんですけれども、私は地方創生の担当大臣でもあり、そこは全く共通なんですね。やはり女性が地方で活躍できなければ地方創生も生まれてこないということで、しっかり両面で取り組んでいきたいと存じます。

吉田(久)分科員 ありがとうございます。

 まだまだ地方においては女性のデジタル人材のニーズを地方自治体が認識していない、なかなか進んでいっていないということもあるようでございます。良質な事業者が入って一気にニーズに沿った講習が行われ、就職につながり、地域産業の活性化につながっているという好事例も生まれております。地方創生を進める上でも、是非とも女性デジタル人材の育成に本気で取組を進めていただきたいと思っております。

 今日、済みません、もう一つありましたけれども、ちょっと時間がございませんので、またの機会にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

島尻主査 あと五分残っています。

吉田(久)分科員 済みません。

 少子化対策についてお伺いしたいと思います。

 安倍政権時に新生児の出生数が戦後初めて百万人を割り、少子化の波が想像以上に早く進んでいる実感と、将来に向けた不安と心配が入り交じった気持ちで受け止めました。

 政府は、国難という表現でこの少子化問題を表して、国として待ったなしの課題であることを、危機感を持って対応に乗り出し、今も継続してあらゆる力を総動員しながら立ち向かっているところだと承知しております。

 少子化の最大の原因はどこにあるのか。これは、一つには、やはり結婚がなかなかできないという点にあることは否定できないだろうと思います。

 国立社会保障・人口問題研究所による第十五回出生動向基本調査によれば、二〇一五年度ですけれども、結婚観というのは、概念は時代とともに変化はあるものの、二十代の若い方々、男女共に、戦後から変わらずずっと高い結婚願望を示している。結婚の利点として子供や家庭が持てるということを掲げ、かつての、結婚をしていないと社会的信用が男性の場合は持てないとか、そういうような風潮は減少していっているようではありますが、何で結婚できないか。経済的理由、良縁がない、仕事と家庭の両立が難しい等、いろいろあります。

 そんな中で、政府として、平成二十六年から、地域少子化対策強化交付金を創設し、新たな取組として、自治体による婚活支援や、晴れて御夫婦となられた方への結婚新生活支援事業は、年収要件などの条件はあるものの、支援ができるような体制が整備されてきております。政府からの支援は毎年三十億から四十五億程度で予算額は推移してきておりますが、自治体による取組もユニークなものが生まれ、効果も見え始めております。

 先駆けとなったのは茨城県と聞いておりますが、AIなどの技術を駆使して、既に登録している男女の情報からマッチング機能を使って成婚に向けた取組をしていたり、私の地元である福岡県でも、ある民間会社が十年前から、本業とは別に、ボランティアに近い形でNPOを立ち上げていただいて、協賛企業、また地元の結婚式場、様々なところからの寄附金によって、自治体との協力関係を結んで、縁結びを手伝っている。登録型の支援事業が結構、一番いい結果が出ているということでございました。

 一つ課題があるとすれば、こうしたサービスが周知をされておらず、生かされていないということでございました。広報宣伝に向けた取組及び費用対効果という観点から、全国的にこの支援による成果がどの程度積み上がってきているのかをお答えいただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 少子化対策を効果的に推進するということについては、住民に身近な自治体が地域の実情や課題に応じた取組を進めるということが重要でございます。

 内閣府におきましては、委員から御紹介いただきましたように、自治体におきまして、結婚の希望をかなえるための結婚支援の取組ですとか、それから子育てに温かい社会づくりのための取組事業、こういったことを行っていただく場合に、地域少子化対策重点推進交付金によりまして支援を行っているところでございます。

 この本交付金を活用している市町村数は年々増加をしておりまして、今年度四十四都道府県六百十三市町村となっており、かなり多くの自治体で御活用いただけるようになっているところでございます。

 この交付金によりまして、様々な地域によって特徴のある取組が行われているわけですが、例えば、まさに御紹介いただきましたけれども、AIなどを活用したマッチングシステムの高度化、こういったものを進めてきておりまして、現在、二十二の県で、AIの導入ということで効果的な実施を進めていただいているところでございます。

 また、新婚世帯に引っ越し費用など住居関連費用を補助する結婚新生活支援事業も実施しておるわけですが、これにつきましては、補助を受けた世帯を対象としたアンケートを通じまして、結婚に伴う経済的不安の軽減に役立ったですとか、結婚に至るまでの後押しになったといった回答もいただいているところでございまして、内閣府としても一定の効果があるというふうに理解をしております。

 特に、令和四年度予算案では、前年度から比べまして本交付金の予算額を大幅に拡充させていただくということにしておりますし、結婚新生活支援事業におきましては、都道府県が主導しまして、実施市町村の面的拡大を図って、結婚支援と子育て支援を併せて行っていただく、そういった場合には補助率のかさ上げを行うというふうな工夫をさせていただきたいと思っております。

 本交付金も活用しながら、結婚、妊娠、出産、子育ての切れ目のない支援をしっかりと進めていきたいというふうに考えております。

吉田(久)分科員 特になかなか相手が見つけにくい地方において、結婚を考えている若い人たちが、安心できる、良質な結婚支援につながっていけるよう、広報活動を始めとして更なる工夫をお願いしたい。国の支援も今後とも拡充していっていただきたいことをお願いして、質問を終わります。

 大変にありがとうございました。

島尻主査 これにて吉田久美子さんの質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

島尻主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。太栄志さん。

太分科員 神奈川十三区の太栄志でございます。

 昨年の十月に衆議院議員になりました。本日は、初めての国会での質疑となります。

 私の選挙区は、神奈川県の大和市、海老名市、座間市、綾瀬市。本日は、地域の声、そして国民の声の代弁者として、野田大臣、これまで子供の問題、そしてこども家庭庁創設に向けて御尽力をいただいている大臣、そして関係省庁の皆さんに、子供の命に直結をするまさに通学路の安全性確保、そして通学路行政の縦割り行政の弊害打破に向けての議論を前向きに進めさせていただきたいと思いますので、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、私は、元々、国家の安全保障、国防や外交、そのことに取り組みたい、その志で国会へと参りました。しかし、この六年間、地域を徹底して歩き、そして地域の声を聞いている中で、もちろん、今、我が国の安全保障環境は大変厳しい、しかし同時に、地域の足下で、まさに子供たちを取り巻く安全保障、子供の安全確保ができていない、この現実に改めて直面することとなりました。

 今、我が国では、子供の命に直結をする危険な通学路が放置され、あるいは、残念ながら、子供の命が犠牲になる、失われないことには政治も行政も本気で対策をしていかない、こんな現状になっていると思っております。

 まさに、そのことを象徴するのが、昨年の六月、八街市での事件でありました。十年以上前から、PTAあるいは地域の方たちから、ガードレールをしっかりと設置してほしい、あるいは、事件の五年前に子供たち四人が巻き込まれる事故が発生していたにもかかわらず、財政的な理由などで残念ながら全く対処がされていない、こんな現状でありました。

 私は、先日、私の地元の綾瀬市において、小学生のお父様から、子供のまさに通学路の陳情を受けました。その現場に行きまして、まさに八街と同じ状況。直線の道路の見通しがいいところ、スピードを出しやすいところ、そこに信号機もなく、またガードレールもない。そういった状況の中で、改めて私はその場所に立ちながら、実際そこでも過去三回、子供が巻き込まれる事故がありましたが、一向に対策がなされていない、こんな現状。まさに、あの日、八街ではなく、ここが事故現場だったかもしれない。

 何物にも代えられない子供の命を守ることは、まさに、私たち国会議員として、そして大人としての責務であり、危険通学路の改善については、私は、政治家の最重要課題の一つだと考えております。事故が起きてからでは遅いのです。未然に防ぐことが重要であり、今回は、そのことと関連事項について質問したいと思います。

 まず、通学路の安全性の現状につきまして、大臣に、なぜこのような痛ましい事件が後を絶たないのか、そのことも踏まえまして御見解をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

野田国務大臣 お答えします。

 全ての子供に健やかで安全、安心に成長できる環境を提供することは重要であり、通学路における重大な事故はあってはならない、そういうものと考えています。

 今お話がございました通学路の交通安全について、令和三年六月の千葉県八街市で発生した痛ましい死傷事故を受け、文部科学省、国土交通省、警察庁からの通知によりまして、全国の小学校の通学路を対象として、教育委員会、学校、PTA、道路管理者、警察等において通学路における合同点検が実施され、その結果、令和三年十月末時点で、全国で七万二千か所の対策必要箇所が抽出されたものと承知しています。

 子供政策を担当する立場としても、子供の安全をしっかり守っていく観点から、地域の実情に応じつつも、効果的な対策が可能なものから速やかに実施されることを期待しています。

太分科員 大臣、ありがとうございます。

 私は、この問題、まさに通学路の問題の一番の原因は、何も行政とかあるいは警察、現場の方たちが問題があるとかサボっているとか、そういったことでは全くないと思っております。まさに国の構造的な問題、縦割り行政の中で残念ながら様々な弊害があること、このことが一番の問題だと思っております。

 その視点から、この後、じっくりと大臣に、また、こども家庭庁の中での縦割り行政の見直しや政治のリーダーシップに関して御意見をいただきたいと思いますが、まず、警察の方から御見解をいただきたいと思います。

 登下校中の事故で死亡若しくは重傷を負った小学生の数は、この五年間で九百八名、毎年平均百八十名以上。まさに、貴い命がこれだけ失われている現実があります。

 昨年の八街市での事故を受けて全国で通学路を対象として実施された合同点検で危険だと判断されたのは、今大臣からありました、小学校だけで七万二千か所に上った、こんな状況です。

 それに対して、岸田総理は、昨年末、令和五年度末までにほぼこの対策を完了することを目指すと発言されました。期限を区切って取り組むことは大事だと思っております。私もそのことはしっかりと評価したいと思っています。ただ、あと二年間、その間に、危険だとされた箇所で子供の命が奪われるようなことがあれば、誰が責任を取るんでしょうか。

 なぜ迅速な対応ができないのか。対策完了の前倒しはできないのか。人が死ななければ、亡くならなければ動くことはできないんでしょうか。現状認識について、警察庁に伺いたいと思います。

楠(芳)政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先生からも御指摘ございましたように、令和三年六月に千葉県八街市で発生した死傷事故を受けて実施した合同点検では、令和三年十月末現在、全国で約七万二千か所の対策必要箇所が抽出され、このうち警察による対策箇所は約一万六千か所となっております。

 最終的な対策必要箇所数については、現在、関係省庁で精査を行っているところでございますが、都道府県警察では、対策を早期に実施すべく取組を進めているところでございます。

 また、警察庁といたしましても、引き続き、地域の実情に応じた効果的な対策を可能なものから速やかに実施し、通学路における交通安全の確保を図るよう、都道府県警察をしっかりと指導してまいりたいと考えております。

太分科員 ありがとうございます。

 もう一つ、既存の薄くなった横断歩道、停止線の迅速な修繕対応に関して、また警察庁にお伺いいたします。

 横断歩道や停止線に関しては、迅速な修繕対応が必要だと考えます。現在、薄くなった横断歩道や停止線の修繕対応は、自治体間で経費の負担区分を乱してはならないと定める地方財政法、道路交通法などによって、都道府県の公安委員会、警察の管轄です。

 しかし、事故の抑止効果を上げるためにも、何よりも、一刻も早く危険箇所に対処するためにも、私は、現場で迅速に対応できる市町村単位でこの修繕対応ができるようにすべきだと考えております。自治体間の財政バランスを保つという立法理念も理解はできますが、財政的に力のある、余裕のある市町村は単独予算で迅速な対応をどんどん行って、余裕のない市町村には都道府県公安委員会がプッシュ支援を行うといった柔軟な形に転換されるべきではないでしょうか。

 立法理念にかたくなにこだわり負担区分を守るのと、子供の命を守るのと、どちらが大切なのでしょうか。警察庁の方からコメントをお願いいたします。

楠(芳)政府参考人 お答えいたします。

 横断歩道が消えかかっている場合には歩行者を危険にさらすことになるため、都道府県警察におきましては、各種警察活動や合同点検等を通じて補修すべき箇所の把握に努め、市町村や地域住民の方々の御要望も踏まえて、計画的に更新を行っているところでございます。

 この横断歩道の維持管理につきましては、道路交通法に基づき交通規制を実施する都道府県公安委員会において一元的に実施することが適切であろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、横断歩道の補修に必要な予算の確保に努めるとともに、摩耗状況に応じて優先順位をつけ、効率的に更新を行うよう、引き続き、都道府県警察を指導してまいりたいというふうに思っております。

太分科員 ありがとうございます。

 一方で、本当に今、八街の事件を受けて、その以降でもなかなか道路の修繕が進まないという現実があると思います。

 昨年末に、まさに中学校の目の前の横断歩道がほとんど消えてなくなっている、こういった状況。そして、これを何とかしてほしいということで、私もそこは地域の方から指摘を受けて初めて気づきましたが、それで行政の方に確認しましたが、残念ながら、おっしゃったように、なかなか、財政的な状況もあったと思います、半年後になってしまう、こういったような状況。学校の目の前です、こんな状況。

 やはりそういったことを変えるためにも、今御指摘いただいたように、優先順位をつけてやっているとは思うんですが、もっともっと加速してやっていくためにも、是非ともこれはまた更に力を入れて進めていただきたいというふうに思っております。

 次に、文科省に確認させていただきたいと思います。

 今、文部科学省さんのプログラムの中に、登下校防犯プランということがあると思います。これは、ボトムアップで意見の集約機能を果たしていくという中で、平成三十年度に、登下校中の防犯対策等を目的に策定されたと承知をしております。このプランの中で、警察や教育委員会、学校、放課後児童クラブ、放課後子供教室、自治体、また保護者、PTA、地域のボランティア、自治会などの関係者が集まって、登下校時における防犯対策について意見集約、調整を行う、そういった地域の連帯の場だと聞いておりますが、ここを更に、防犯対策だけでなく、協議対象を拡大して、子供の交通安全についての地域の連携の場として、是非とも文科省が率先して促進すべきではないかと思うんですが、可能なのかどうなのか、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 児童生徒の登下校時の安全を確保することは、子供たちが安心して学校生活を送る上で不可欠の前提であると考えております。

 通学路の交通安全を確保するためには、学校における安全教育、道路管理者による道路環境整備、警察による交通規制など、総合的な交通安全対策を行う必要があります。

 このため、文部科学省としましては、各自治体に対しまして、教育委員会、学校、保護者、警察、道路管理者を含めた市町村単位の推進体制を構築し、先ほど委員からも御指摘がございましたが、地域が連携して通学路の安全対策に取り組むよう依頼をしているところでございます。その結果、この推進体制につきましては、ほぼ全ての自治体におきまして構築をされております。

 引き続き、関係省庁とも連携をしつつ、各自治体における関係機関が連携した取組を促進するなど、通学路の安全確保に努めてまいります。

太分科員 ありがとうございます。

 そこで、今、文科省の方でも、子供の交通安全に関してもしっかりとボトムアップでそういった仕組みがあるということなんです。ですけれども、残念ながら、今の我が国の子供に関する縦割り行政、これを今ちょっと図にしてみましたが、まさに、通学路に関するだけでも、文科省さんが今中心になってやっている、国交省、警察庁、こういった形で、しかも各地域も含めて、様々、ごちゃごちゃな、皆さん、見て分かると思います、なかなか複雑な形になっていて、責任の所在も分からない、またどこに問い合わせていいものかも分からない、こういった情勢にあると思います。

 そこで、何とかここを一元化していこうと。私が先ほども言いました、様々、八街での痛ましい事件がありました。それでも、なかなか地域での修繕だったりとか通学の安全確保はままならない。こういった状況を改善するためにも、ここをやはり、新しくできるまさにこども家庭庁で一元的に企画立案又は総合調整をしていく、そういった権限と財源を一元化していただきたいと思っております。

 今言いました交通安全も含めて、そこは可能なのかどうか、リーダーシップを発揮していただけるのかどうか、野田大臣にお伺いしたいと思います。お願いいたします。

野田国務大臣 これまでの国会の議論の中で、子供という言葉がほとんど出ない中で様々な政策がつくられてきた。これからは、こどもまんなかで、先ほど安全保障のお話がありましたけれども、将来の国防を担うのは今の子供たちなんです。その子供たちをしっかりと育んでいくことが、私たちの国の安全保障の一丁目一番地だと思います。

 そういう中で、こども家庭庁は、やはり今まで意識の中になかった子供という主体をしっかりと様々な政策に反映させることが第一義だと思っています。

 通学路の安全確保については、これまでも文部科学省、国土交通省、警察庁など様々な省庁が関わっており、交通安全の観点については内閣府、犯罪から子供を守る観点については内閣官房を中心に取りまとめの下で、的確に進められてきています。

 このうち、通学路を含めた交通安全については、引き続き、交通安全対策基本法、これに基づく交通安全基本計画に従い、内閣府において交通安全政策全体の中でその向上を図ることが効果的であると考えます。その際、こども家庭庁としても、子供を対象とする施策に関して、忘れられてきますから、当然、しっかりと関与していくというふうに考えています。

 一方、通学路における犯罪から子供を守るための対策の総合調整権限については、内閣官房からこども家庭庁に移管し、強い司令塔機能を発揮する方が、各省庁における連携した取組が推進される。

 それぞれによってありようが違うということですね。

 いずれにしましても、各行政分野において各々の政策目的を追求する中で、必要な場面でしっかりと調整し密接に連携することが政府全体としての施策の充実、質の向上につながると考えています。単に所管を一元化するというだけではなくて、こどもまんなかの視点から見て、通学路の安全確保を含めた子供施策が、冒頭申し上げたように、推進される観点から、しっかり取り組んでまいりたいと考えています。

太分科員 大臣、ありがとうございます。

 ただ、まさに、これまでこの子供の通学路の問題、責任の所在も分からない、その中で、確かに、岸田総理がああいった形で、期限を区切ってしっかりと修繕していくと言いましたけれども、残念ながら、それだけでなく、それからでも、今でもずっとまだまだ危険箇所が増えていっている状況。

 そういった中、改善していくためにも、そして、私の神奈川県市長会から、これは相模原の本村市長が会長をされていますが、三か月前です、八街の事件が起こって、去年の六月、それ以降もまだ、それぞれの市に対しては住民から危険な箇所の指摘や補修の要望が数多く寄せられていると。県に対して、一定の期間ごとに集中して必要な補修を施すことが是非とも必要だということと、早急に道路標識の補修を実施してもらうように予算措置を講じるよう申し入れますという形で、これはやはり、しっかりと明確にこども家庭庁で一元的に財源も権限もやっていくということをやっていかないことには、これまでどおりですね。

 私、今一番、地域で様々な声を聞いていても言われるのが、子供にとって危険な箇所がある、だけれども、それをどこに言っていいか分からない、役所に連絡してもたらい回しに遭うだけ、近くの議員に言っても、いや、自分の管轄じゃないからとずっと放置されるだけ。こんなことを放置していたら、私は、どんどん政治不信、行政不信が深まると思っています。そういった意味でも、責任の所在を明確にするためにも、こども家庭庁にしっかりと一元化していく。そのことを何とか。

 昨年十二月に出された基本方針も読ませていただきました。様々、いろいろと詳しく書かれている中で、まさにこの通学路に関してはたった一行、一行になっていないですね、これは数文字しかないです。「登下校の安全や犯罪からこどもを守る取組を進める。」と。そこまでなんですよ。

 是非とも、先ほど大臣おっしゃったように、内閣官房から移譲していくという話ですが、そこをもっと踏み込んで、しっかりと一元的に、司令塔としてこども家庭庁でやっていくということを明言していただきたいと再度お願いいたします。

野田国務大臣 御提言ありがとうございます。

 大切なことは、やはり、その地域地域の子供の安全をどう守るかということになると思います。一元化、国に情報を寄せることで、その地域、例えば綾瀬市に住む子供たちが、私は岐阜市ですけれども、今よりもよくなるという議論はやはり必要だと思います。

 現在は、通学路等における危険については、それぞれ地域において状況は様々です。それぞれの実情に即して、それぞれに対して効果的な対策を実施することというのが一番子供にとっては大事であると私たちは理解しています。

 今の、情報提供窓口をこども庁にというお話なんですけれども、大切なことは、情報提供者にとって一番効果的な提供相手がいずれかという観点も考えるべきことではないかと。

 地方創生担当大臣の立場からすれば、それぞれの地方自治体において、既に、住民に近く、危険箇所の実態を熟知する地元の自治体があり、教育委員会、学校、PTA、道路管理者、警察等において通学路の合同点検というのがなされているということを承知しています。

 このような点からも、地域から離れた国に窓口を置くことについては、やはり慎重な検討が必要だと考えています。そういう理解をしているところです。

太分科員 これは相当いろいろな壁があると思いますが、是非とも大臣には、責任の所在がはっきりしていないです、これが今の現状。だからこそ、もうずっと、まさに地方のが上がってこないんですよ。

 例えば、八街市のあの事件。先ほど言いました、PTAを始め、何度もガードレールを造ってほしいと要請を出していました。しかも、今から六年前です、同じような事故が起こっていた。それにもかかわらず、二〇一二年に行った全国一斉合同点検では、国の方でリストアップされていなかったわけですね、その場所というのは。

 私の地元でも、地域の方が様々言われている場所、そこも実際いろいろな事故があったり、死傷事故はなかったですけれども、子供がぶつかったとかそういうのがあっても、そこすらちゃんとリストアップされていない。だから、全然これは地方と国とが連携できていないんですよ、こういった状況。これを変えるには、やはり、私は、もう一元化しかないと思います。

 そういった意味で、そこは、まさにいろいろな抵抗はあるかもしれないです。結局、幼保一元化はならなかった、そういったのもありますが、これは子供の命に関わることです、是非ともここは妥協せずにやっていただきたい。

 そして、もう一つ私がお伝えしたいのが、先ほどの危険通学路をどう通報していくか、情報を集めていくか。

 そこで、一つ提案です。危険通学路一一〇番ホットラインを新設しよう。これにも書きました。

 これは、まさにもう先ほどから言っていること、地域のことが全然、全然とは言わないです、皆さんいろいろと取組をされている中で上がっていますが、本当に危険なところが届かないから、どんどん、役所に言ってもたらい回し、こんなのをずっと続けている。これはやはり私はもう解消しなきゃいけないと思っていますし、そういった意味でも、危険通学路一一〇番ホットラインを、包括的な情報収集の課題を克服していく、そのためにもつくらなきゃいけない。

 これはいつまでも待っていられないので、まさに今、準備室が立ち上がっていますよね。そこで、まずホームページ等を活用して、とにかく様々な危険な情報、いまだにないです、どこにそれを言っていったらいいんですか、そういった状況。それを何とか解決するためにも、そういったホームページを活用しながら、ホットラインを新設して、また、こども家庭庁準備室なりからでも、各地域に、地方にどんどん指令を出していってほしい。

 そういったことを、フィードバックを地方にしながら、一元的な情報管理、またデータベース化、これは今なされていないんですよ、全然分からないんです、こんな状況の中で、今までのやり方では。そういった意味でも、そこを進めていただきたい。

 大臣、申し訳ありませんが、もう一度。やはり、今のままでは、結局、責任の所在が分からないんですよ。同じことが続くだけです。危険な箇所も把握できない。やはり、子供の命が犠牲になって初めて大がかりな全国的な合同点検をするかもしれないけれども、繰り返しになっている。これを何とかここで食い止めるために、大臣の決断をいただきたいと思いますので、もう一度、申し訳ないんですが、一元管理、こども家庭庁でできるかどうか、そこをお願いします。

野田国務大臣 大変、子供に対して熱い思いをいただき、感謝しています。

 しかしながら、データベースとか、又は一元管理については、やはり慎重な検討をする必要があります。むしろ、地方自治体、地域、様々な、住民の方々が関心を持って取り組んでいただいているので、先ほど申し上げて、繰り返しになりますけれども、そういう方たちの引き続きの活動を期待するところであります。

 いずれにしましても、こども家庭庁の役割というのは、子供にとってその地域がどうであるかということが大事なので、一元管理をするからとかデータベースということだけではなくて、関わっていくということは明らかなので、御承知いただきたいと思っています。しっかり取り組んでいきます。

太分科員 いずれにしましても、有識者会議の中でも、学芸大の先生でしたか、子供の問題、通学路の問題もしっかりとこども家庭庁に入れていきたい、そういった発言もあったかと思います。それを是非とも生かしていただきたいと思っております。

 そして、菅政権の中で通学路の安全確保に五百六億円、岸田政権でも五百十億円ということでつけられました。このこと自体は私も大きな進歩だと思っておりますが、一方で、このことがやはりそれぞれの政権ごとで、しかもああいった事件があった後だからではなく、しっかりと引き続き予算立て、計上されていく、そのために御尽力いただきたい、シームレスな予算投入を行っていただきたいと思っております。こちらは、大臣、あるいはこれは国交省になるんでしょうか。ちょっと御見解をお願いいたします。しっかりできるかどうか、お願いいたします。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省では、通学路の合同点検に基づき、地方公共団体が行う交通安全対策に対し、計画的かつ集中的に支援を行うために、通学路の交通安全確保に向けた補助制度を創設し、国費五百億円を令和四年度予算案に計上しております。交通安全対策の具体的なメニューにつきましては、道路管理者である県や市町村が実施する歩道整備やガードレールの設置などを対象としております。

 国土交通省といたしましては、創設した補助制度の活用状況を踏まえながら、地方公共団体が計画的に事業を実施できるように、関係省庁と連携して、継続的に通学路の安全対策に取り組んでまいります。

太分科員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、この予算も含めて、是非とも、財源、権限、こども家庭庁でということで、まず、まさに分かりやすい、しかも、一番喫緊の課題だと私は思っています。あした、まさに、ほかの場所で同じような事故が起こるかもしれない。そういったときに、これは誰が責任を取るんですか。岸田総理は令和五年末までにと言っていますけれども、私はこれでは本当に遅いと思っています。

 いずれにしろ、昨年、基本政策の中でも、前倒しでもやるということを書いてありましたので、そこを是非とも進めていただきたいと思っております。また、まさに、子供の問題というのは、オール・ジャパンで取り組むことだと思っております。与党、野党関係ないです。

 そういった意味でも、是非とも大臣にはリーダーシップを発揮していただいて、これまで本当に多くの子供たちの命が犠牲になった、そのことを繰り返さないためにも、やはり一元化、権限、財源、そのことにこだわって御尽力いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 これで終わります。

島尻主査 これにて太栄志さんの質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力を得まして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後三時四分散会


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