衆議院

メインへスキップ



第2号 令和6年2月28日(水曜日)

会議録本文へ
令和六年二月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 牧島かれん君

      泉田 裕彦君    衛藤征士郎君

      小野寺五典君    平  将明君

      中曽根康隆君    菊田真紀子君

      長妻  昭君    松原  仁君

      山岸 一生君    渡辺  周君

      奥下 剛光君

   兼務 近藤 和也君 兼務 馬淵 澄夫君

   兼務 本村 伸子君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (拉致問題担当)     林  芳正君

   国務大臣

   (防災担当)       松村 祥史君

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)          加藤 鮎子君

   国務大臣

   (新しい資本主義担当)

   (経済財政政策担当)   新藤 義孝君

   内閣府副大臣       井林 辰憲君

   総務大臣政務官      船橋 利実君

   文部科学大臣政務官    本田 顕子君

   経済産業大臣政務官    吉田 宣弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  木村 陽一君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幸宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  伴子君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   高橋 謙司君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)    松多 秀一君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            川崎  暁君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房長)            小宮 義之君

   政府参考人

   (こども家庭庁成育局長) 藤原 朋子君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   榊原  毅君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 濱田 厚史君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 山碕 良志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   前田  努君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     小林万里子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 田中佐智子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           斎須 朋之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松浦 哲哉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         菊池 雅彦君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局次長)       小笠原憲一君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  三貝  哲君

   参考人

   (日本銀行理事)     清水 誠一君

   参考人

   (日本放送協会理事)   根本 拓也君

   内閣委員会専門員     尾本 高広君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

   衆議院調査局第三特別調査室長           南  圭次君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          菅野  亨君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     中曽根康隆君

  山岸 一生君     松原  仁君

  奥下 剛光君     阿部  司君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     泉田 裕彦君

  松原  仁君     長妻  昭君

  阿部  司君     奥下 剛光君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     衛藤征士郎君

  長妻  昭君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  菊田真紀子君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺  周君     山岸 一生君

同日

 第二分科員近藤和也君、馬淵澄夫君及び第六分科員本村伸子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和六年度一般会計予算

 令和六年度特別会計予算

 令和六年度政府関係機関予算

 (内閣及び内閣府(内閣府本府、こども家庭庁)所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

牧島主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 令和六年度一般会計予算、令和六年度特別会計予算及び令和六年度政府関係機関予算中内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申出がありますので、これを許します。中曽根康隆君。

中曽根分科員 自由民主党の中曽根康隆でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 井林副大臣、お忙しい中、ありがとうございます。また、参考人の皆さんもありがとうございます。

 本日は、今朝の新聞の一面にも大きく出ておりましたけれども、日本が抱える、直面する最大の課題と言ってもいい人口減少、これについて、いろいろな観点から質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 日本の人口は、江戸時代の中期から大体三千万人ぐらいで安定をしてきまして、そして、明治維新を機に爆発的に伸びた。百三十年で九千万人、一気にがあっと増えていって、二〇〇八年をピークに、ここからまた百三十年で八千万人、九千万人減るというような予測も出ております。この歴史を見てみると、今のこの一億人を超えている状態というのが何だか異常な状態なのかなとすら思えてまいります。

 戦後、我が国は、人口を拡大して、経済的にも成長して、成熟国家と言われる国になりました。ここからは、これまでのように成長とか拡大とかそういったことを探求していくステージではなくて、どうやって今後の人口減少に合わせた社会をつくっていくかということが現実的に重要になってくるというふうに思います。

 ちなみに、この急激な人口減少の理由というのは幾つかあるんですけれども、最たる理由として、やはり出生率の低さ、出生数の低さがあります。昨日の速報値によりますと、昨年、二〇二三年、出生数は前年比五・一%減で七十五万八千六百三十一人、過去最少というふうになりました。

 また、これに加えてもう一つ、人口減少の大きな理由と言われるのが、多死社会が到来するということであります。今後五十年間、年間百五十万人の方が亡くなっていく。一日四千人の方が亡くなっていく。こちらも昨日の速報値ですけれども、昨年、二〇二三年の死亡者数、百五十九万五百三人。これは、出生数の二倍以上、毎年人が亡くなるということであります。今日はこの多死社会については取り上げませんけれども、これは間違いなく日本にとって重要な課題になってまいりますので、是非とも、政府としても強い問題意識を持っていただきたいというふうに思います。

 いずれにしましても、出生率を引き上げていく、そして少子化対策に力を入れていく一方で、確実に到来する人口減少社会において、いわゆるワイズシュリンク、賢く縮んでいくということが大切になってくるというふうに思います。

 ここで質問をさせていただきたいというふうに思います。

 この人口減少社会において、今後起こるべきことというのは大分見えてきています。いろいろな分析もある。いろいろなデータがもう出ています。結局、では、どのような対策を取って、どういうことを実行していくかというのが問われるステージになってきているというふうに思います。個人的には、この人口減少というのは、ピンチではなくてむしろチャンスに大きく変えていけるものだと思いますし、しっかりとした対策を打っていけば決して悲観するものでもないというふうに考えております。

 井林副大臣にお伺いいたします。

 いわゆる、先ほど申し上げた、賢く縮んでいく、ワイズシュリンクに向けて、政府としてどのような具体的な策を打っていくのか。政府としての人口減少に対するビジョンであったり取組をお伺いをしたいと思います。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 少子高齢化、人口減少は、我が国が克服すべき最大の課題だと認識をしております。足下におきましても既に人手不足の要因となっているほか、中長期的にも、我が国の経済社会の持続可能性に影響を及ぼすものと認識をしております。

 このため、徹底したDXによる省力化や、新技術の社会実装等による生産性向上、国民一人一人がライフプランに応じて生涯活躍できる社会の構築、構造的に対応していくことで、経済社会の持続性を確保しながら豊かさと幸せを実感できる経済社会を実現をしていきたいというふうに考えております。

 委員御指摘のことでございますが、経済財政諮問会議におきまして、人口減少社会での中長期の重点政策の課題の検討を昨年から開始をさせていただきまして、昨年既に二度開催をさせていただいております。次の骨太方針にその成果を反映させるために議論を続けておりますので、委員からもまた御指導いただければと思います。よろしくお願いします。

中曽根分科員 副大臣、ありがとうございました。

 まさに、今おっしゃったキーワードとして、一人一人が活躍とか豊かさとか幸せ、こういったことがこのワイズシュリンクの中では一つ大きなポイントになってくるというふうに個人的にも考えております。

 この歴史上例を見ない人口の急増と、そして今後の急降下の状況というのをちょっと考えてみますと、この人口急増の時期というのは、皆で同じ道を、同じ方向を向いて、がむしゃらに駆け上がってきた。結果的に、山の頂上までみんなで上がってきました。具体的に言えば、戦後、日本が、産業と人口をとにかく大都市圏に集中させて、日本の工業生産力で復興、成長して、通商国家として輸出で稼いできて、結果的に世界第二位、第三位の経済大国にもなってきた。

 ただ、ここから今度、山を下りてくるときというのは、これまでとは全く違う局面に入ってくる。いわゆる大都市一極集中、これとは逆で、ある意味、地方に分散をして、一人一人がそれぞれのペースで、またそれぞれの道で山を下りていけばいい。そして、その過程で、さっきお話に出た人生の豊かさとか、又は幸せを追求していく、そういった形に変えていけるかもしれない。元々日本は地方分権的で地域の多様性に富む社会だったわけで、そういう方に戻っていく、ある意味そういうステージ、チャンスなのかもしれないというふうに思います。

 経済成長を追うGDPとか成長ではなくて、よく言われるGNH、国民総幸福といった、そういった指標も今後ますます重要視してくる必要があるのかなとも思っております。

 いずれにしましても、このワイズシュリンク、賢く縮む過程で、さっき言ったような、それぞれの豊かさとか幸せを実現できるような日本版の新しいモデル、これをしっかりとつくっていくことによって、今後、いろいろな国が人口減少に直面して日本の後を追ってくる、そういったところに対して日本モデルをしっかりと出していけるような、そういった形になると、人口減少もピンチがチャンスに変わってくると思いますので、是非とも、副大臣、引き続きの御尽力、よろしくお願いいたします。

 お忙しいと思いますので、こちらでもう結構でございます。ありがとうございます。

牧島主査 井林副大臣、御退席いただいて結構です。

中曽根分科員 この人口減少で大きな問題になると言われているのが、労働力不足であります。この議論になると、よく、女性活躍とか外国人労働者とか、又はAI、デジタルの活用という話になります。これももちろん大変重要であります。ただ、ここで忘れてはいけない重要な事実が一つありまして、この人口減少というのは、同時に、高齢化がどんどん進むステージに入ってくるということになります。

 二〇五〇年には高齢化率が大体四割に達すると言われていて、人口の半分弱がシニア層になるわけですね。このシニア層が圧倒的に増える状況において、ジェロントロジー、これは日本語にするといろいろな言い方がありますけれども、高齢化社会工学なんというふうにも言われますけれども、こういったことが非常に注目をされている。

 これは何かといいますと、今後、健康寿命が延びて、元気なシニア世代がどんどん増えてくる、圧倒的なボリュームになっていく。そういったときに、現状の、高齢者というのは社会において支えられる側という概念から、支える側に入ってもらおう、元気な、アクティブなシニアの皆さんに社会に参画してもらって活躍をしてもらおうじゃないか、そういったことがいわゆるこのジェロントロジーの概念であるというふうに認識をしております。

 ここで政府にお伺いしたいんですが、今後確実に到来する人口減少社会、これを真っすぐ謙虚に、真摯に受け止めた上で、これをチャンスに変えていく、政府として、爆発的に増えていく、ボリュームゾーンであるシニア層の皆さんの社会参画を促していく、そういった取組、今後の展望をお伺いをしたいというふうに思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 生産年齢人口が減少する中で労働力の確保を行うために、高年齢者の就業を一層促進していくことが重要な課題と認識をしております。また、あわせまして、高齢者が就業を通じて社会参加をしていただくということは、高齢者自身の生きがいの充実ですとか健康増進にも寄与する重要なものだというふうに考えております。

 このために、厚生労働省におきましては、働く意欲のある高齢者がその能力を十分発揮し、また、希望に応じた様々な形で活躍をしていただくというようなことを進めていきたいというふうに考えております。

 このために、高年齢者雇用安定法におきましては、七十歳までの就業確保を事業主の努力義務として、企業における高年齢者の就業の促進をする、また、ハローワークにおきまして高年齢者専門の窓口を設置をして再就職支援を行う、生きがいとして働くことを希望する高年齢者に対してはシルバー人材センターによって臨時的かつ短期的な就業機会等を提供する、こういうようなことに取り組んでおるところでございます。

 今後とも、高年齢者のニーズを踏まえた多様な就業の機会を確保するなどの高年齢者の就業の促進に努めてまいりたいと考えております。

中曽根分科員 田中審議官、ありがとうございました。

 シニア層がより一層社会に参画して活躍してもらえれば、いわゆる社会保障費の軽減にもつながるかもしれませんし、若者の負担を減らすことにもつながるというふうに思います。

 生産年齢人口という言葉がありますけれども、これはいわゆる、十五歳から六十四歳の、社会の中核を担う世代というふうに定義をされておりますが、この概念もちょっと、そろそろ合わないんじゃないかというふうにも思っております。

 十五歳からといっても、ほとんどの人はまだ学生ですし、大体、大学卒業と考えれば、二十二ぐらいまでは学生ですし。六十四歳までといっても、先ほど申し上げたとおり、六十五歳以上でも社会で活躍している人はたくさんいるわけでありまして、我々国会議員を見ても、六十五歳を超えて活躍している人は幾らでもいるわけであります。実際、我が国の労働市場において最もボリュームゾーンと言われるのは実は六十五歳以上で、何と八百五十八万人もいるわけですね。

 そういったことを考えても、やはりこの生産年齢人口という概念はちょっとずれていると思いますし、さっき答弁にあったように、企業も定年を延ばしている、又は定年を撤廃するというところも増えていますので、これからますますシニア世代に社会に参画してもらいたいというふうに思います。

 こういうときに、シニアの皆さんのセカンドキャリア、ここを考えたときに、やはりリスキリングという概念が一つ大事になってくるんだというふうに思います。若い世代がいつでも学び直して、新しいスキルを取得する、これはもちろんリスキリングとして重要なんですけれども、シニア層においてもこれが重要な概念だというふうに思います。

 先日の日経新聞の調査で、社会人の男女に何歳まで働くかというのをアンケートしたところ、三九%が七十歳以上も働くという希望をしていると結果が出ています。一方で、学び直しの意欲は非常に低いという結果が出ているんですね。

 何で学び直しの意欲が低いのかなとちょっと個人的に考えてみると、リスキリングした上で本当に就職先が見つかるのか、リスキリングしたら本当に所得が上がるのか、お金を稼げるところにつながるのか、やはりそういう、お金とか時間をかけて新しいスキルを得たその先がちゃんと保障されているのかという不安があるからこそ、なかなかリスキリングするモチベーションにつながらないのかなというふうにも考えております。

 ここでお伺いしますけれども、政府が進めているこのリスキリングというもの、今後、若者のみならずシニア層にも大いに活用されるべきだというふうに考えておりますけれども、そこの取組についてお伺いをしたいというふうに思います。

原口政府参考人 お答えいたします。

 労働者の職業人生が長期化する中で、労働者が自ら生涯のキャリアプランを描き、それを実現していけるよう、継続的なキャリア形成の支援が非常に重要だと考えてございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、各都道府県に設置いたしましたキャリア形成・学び直し支援センターを通じました、従業員のキャリア形成支援を導入する企業への支援、労働者に対する無料のキャリアコンサルティングの機会の提供など、セカンドキャリア支援にも対応できる環境整備に努めているほか、シニア層の労働者などが企業内で求められる役割の変化に対応する能力であるとか技術、ノウハウを継承する能力を身につけることができますよう、ミドルシニアに特化した企業向けの訓練コースの実施、労働者がセカンドキャリアを見据えた資格取得などを目的として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講しまして、修了した場合にその費用の一部を支給する制度などの支援を行っているところでございます。

 引き続き、こうした施策を通じまして必要な支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。

中曽根分科員 原口審議官、ありがとうございました。

 まさに今のようにいろいろな取組をしていただいているので、その取組がしっかりと高齢者の、シニアの世代のリスキリングにつながって、そして、その先の雇用であり、所得の向上、又は活躍しているという生きがいにつながるように、そこまでしっかりとモニタリングをしていただきたいというふうに思います。

 企業の受入れの意識とか待遇を変えていくのもそうですし、先ほど田中審議官からもハローワークという話がありましたけれども、やはりそういう、シニア世代と仕事をマッチングさせる、そういったところの仕組みというのも、より、もっと入念に、またきめ細かいものにしていく必要もあるのかなというふうに思っております。

 それでは、次の質問に移ります。

 ちょっと違う切り口から人口減少について考えたいと思います。防衛の観点から質問させていただきます。

 この人口減少の影響というのは、社会活動、又は国民生活の大前提となる平和にもかなり影響を及ぼすことになります。すなわち自衛官不足であります。

 昨今、我が国を取り巻く安全保障状況、皆様御案内のとおりで、三正面と言われる大変厳しい状況になっている。ロシアは戦争をしているし、中国、台湾、非常に緊張関係が高まっているし、北朝鮮は弾道ミサイルをどんどん撃つし。

 こういった状況において、当然、日本としても、防衛力を強化する、すなわち抑止力を強化していく、それに伴ってしっかりと装備を充実強化させていく、こういったことが大事になるわけでありまして、岸田政権において、GDP比二%、五年で四十三兆円の防衛予算というのをこれからいかに活用していくかということがポイントになってくる。

 こういったときに、どんなにやはり装備を充実させても、それを運用する人がいないといけない。結局は、自衛官こそが防衛力そのものであります。この自衛官が今不足をしているわけであります。

 さらに、これから、新領域と言われる、従来とは違う、宇宙、サイバー、電磁波という領域でより人が必要になる、自衛官の増員が必要になると言われている状況において、どうやって担い手を確保していくのか。民間の方は、働き方が大きく変わって、またこれから賃金も上がっていく、こういったふうな状況になっている中で、自衛官の働き方、また処遇、こういったものが人を採るに足るような魅力的な職場になっているか。

 こういったことも踏まえて、政府がこの危機をどのように捉えているか、また、具体的にどういった政策を持って自衛官を確保しようとしているのか、お伺いをしたいと思います。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございまして、少子化や労働人口の減少、こういったことによりまして我が国の深刻な人手不足社会を迎える中で、高校新卒者の有効求人倍率がバブル期を超える過去最高の三・五二倍に達したこともございまして、民間も含めた人材獲得競争はより熾烈なものとなっていると認識しております。防衛省といたしましても、このような状況が人材確保に与える影響について、強い危機感を持って対応しなければならないと認識をしております。

 また、先ほど御指摘をいただきましたとおり、防衛力の中核は自衛隊員でございまして、防衛力を発揮するに当たっては、必要な人材を確保することが不可欠だと考えております。

 国家安全保障戦略などに定められました人的基盤の強化につきまして、募集能力の強化、人材の有効活用や生活、勤務環境の改善、ハラスメント防止対策、それから給与面の処遇の向上といった各種施策を含めまして、あらゆる選択肢を排除せず、有効な対策を講じてまいりたいと考えております。

 特に、給与面の処遇に関しましては、令和六年度予算におきまして、自衛官の厳しい任務や勤務環境の特殊性を踏まえた手当を新設、拡充する経費を計上させていただいておりますほか、自衛官の勤務実態調査、これを昨年から開始をしております。また、諸外国の軍人の給与制度、こういったものの調査も進めておるところでございます。

 また、昨年度は、これまで陸海空で別々に行っておりました募集活動、これを、陸海空が一体となった活動ということで、自衛隊サマー・フレンドシップキャンペーンというものを実施いたしまして、募集活動の一層の強化を進めておるところでございます。

 防衛省といたしましては、人材確保のために、人的基盤の強化に引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

中曽根分科員 三貝局長、ありがとうございます。

 私も政務官時代に、潜水艦の乗組員と話したり、硫黄島で頑張っている自衛官たちと話したり、灼熱のジブチで頑張っている皆さんと話したり、いろいろしていると、やはりこういった状況に身を投じてくれることのありがたさというのは物すごく感じましたし、どうやって人を確保するかというのは、今、あらゆることを排除せずにやるとおっしゃいましたけれども、本当にそれを結果につなげていただきたいなというふうに思います。

 私も、全国各地、みんな、地本の皆さんは頑張っているというふうに思います。私の地元の群馬県の地本も、いろいろな県内でのイベントがあるたびに必ずと言っていいほど自衛官の皆さんがそのイベントに出てくださって、格好いい装備を展示してくれて、そして、陸海空のキッズ用の制服を用意してくれて、それを子供たちが着て、格好いい装備の前で写真を撮って笑顔になっているとか、また、定期的に音楽隊が来て演奏してくれて、市民がみんな喜んでその音楽を聞くとか。また、群馬地本はSNSも積極的に活用して、面白いコンテンツを日々市民に向かって、国民に向かって発信している。

 とにかく自衛官というものを身近に感じてもらおう、魅力的なものとして見てもらおうという努力を必死にやっていますので、そういう現場の努力に報いるためにも、是非とも、今おっしゃったことを実現をして、結果につなげていただきたいというふうに思います。

 数ももちろん大変大事なんですけれども、質も伴っていなくてはいけないというふうに思います。

 今後、やはり、有能な人材の取り合いは過激になってくる。アジアを見ても、台湾、韓国、オーストラリア、そういったところは、軍人の確保のために様々な手段を、新たな手段を講じ出しております。高度なスキルを持つ人材を確保するためには、中途採用とか、又は、リボルビングドア方式と言われるような、採用に柔軟性を持たせて、本当にいい人をちゃんと採れるような体制を防衛省としてもつくっていく必要があるというふうに考えております。

 また同時に、全ての自衛官が若くて体力がある必要もないわけでありまして、適材適所の専門性を生かした働き方、こういったことも考えなきゃいけないというふうに思います。

 ここでお伺いいたしますけれども、政府として、自衛官の中途採用、又は、従来の採用方法にとらわれない、有能な即戦力を確保していく仕組み、これをどうお考えか、教えてください。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 先生もよく御承知のとおり、自衛隊は、従来は、これまで、新卒者を中心とした採用を行ってきたところでございますが、民間で経験を積んだ方の採用を促進するという観点から、来年度から、陸海空でキャリア採用幹部という形で募集、採用するという形で、転職市場の活用も重視してまいりたいと考えております。

 さらに、サイバー等、あと宇宙とか、そういった分野などの高度な専門的な知識を持つ外部人材を確保すべく、高度人材にふさわしい処遇を確保した上で最大五年の任期で自衛官として採用する新たな自衛官の人事制度の導入に向け、今国会に関連の法案を提出させていただく予定でございます。また、こうした高度な人材の採用の障害とならないように、身体検査の基準ですとか体力測定の基準、こういったものの緩和も実施してまいりたいと考えております。

 防衛省といたしましては、委員の御指摘も踏まえまして、あらゆる選択肢を排除せず、有効な対策を講じていくことで、厳しい募集環境の中でも優秀な人材をしっかり確保してまいりたいと考えております。

中曽根分科員 局長、ありがとうございます。

 民間との熾烈な人材獲得、始まっているわけでありまして、今おっしゃったような処遇の改善とかも、中途半端なものでは意味がなくて、やはり、本当に必要な人は取りに行くんだ、そういう姿勢を働き方とか処遇にもしっかり反映をしていただきたいと思いますし、これは採用のルールどうこうの前に、国家を、国民の命を守れる体制を整えられるかということが一番大事なので、そこを達成するために、あらゆる手段を排除せずに、しっかりとした人材獲得、頑張っていただきたいというふうに思っております。

 それでは、次の質問に移ります。

 ちょっとまた切り口を変えます。少子化の最大の原因とも言われる未婚について、政府にお伺いをしたいと思います。

 これまでの調査でも明らかになっているのは、やはり未婚率の高さであります。政府として、現在、多数の少子化対策を打ち出していて、特に話題になってくるのは結婚後の話、既婚者の皆さんがお子さんを持ちたいときにどういう支援があるかとか、又は、二人目、三人目を持ちたいときに、希望をする人数を持ちたいときにどういうサポートがあるかという話は、結構メニューとしては豊富にあるように感じます。

 しかし、先ほど申し上げたとおりで、少子化の主たる原因というのはその手前の未婚にあるわけでありまして、やはり、ここにタックルしない限りは、なかなかこれは解決には至らないというふうに思います。

 昨日発表の速報値では、婚姻数四十八万九千二百八十一組、戦後で初めて五十万組を割って、前年からも三万組以上減少したということであります。

 様々な理由で結婚をしない人、又はしたくてもできない人、いらっしゃると思いますし、結婚というのは個人の価値観の問題ですから、そこは個人の自由なところであるのは当然であります。しかし、希望してもできない、やはりそういう人たちはいらっしゃるわけで、ここは政府として徹底的に責任を持ってサポートをしていくべきだというふうに思いますし、希望する人が全員できるような環境をやはり整備をしていく必要があるというふうに思います。

 主な原因として、経済的に苦しい、結婚するに当たって適当な人に出会わない、やはりこの二つが常にアンケートの上位に来ますけれども、政府として、この未婚対策、どのように解決しようとしているか、お伺いしたいと思います。

小宮政府参考人 お答えいたします。

 若い世代の結婚をめぐる状況を見ますと、男女共に八割以上の未婚者が、いずれ結婚することを希望はしております。しかしながら、適当な相手に巡り合わない、結婚資金が足らない、まだ必要性を感じないなどを理由として、結婚に至っていない、若しくは遅くなる状況にあると承知をしております。

 このため、若い世代の結婚の希望と現実の乖離をできる限り小さくするような環境の整備が必要となっているところでございまして、まずは、政府全体で、所得向上や雇用の安定など、若い世代の経済的基盤の安定を図るための取組を進めるとともに、こども家庭庁におきましても、出会いの機会、場の提供、結婚資金や住居に関する支援など、地方自治体が行う取組を地域少子化対策重点推進交付金により支援をしております。

 ここ一、二年におきましては、この交付金の金額も大幅に増額をしているほか、子育て家庭や子供との直接の触れ合い体験の推進、さらには伴走型の結婚支援の推進等も新たに交付金の重点メニューに追加をしておりまして、さらに、補助率も引き上げて支援をしているところでございます。

 こども家庭庁といたしまして、若い世代が希望どおり結婚し、安心して子供を産み育てることができる社会を目指し、スピード感を持って取り組んでまいります。

中曽根分科員 ありがとうございます。

 最後に一つだけ、違う切り口から。人口減少社会におけるデジタルの活用についてです。

 私の地元、群馬県の前橋市も、デジタルをフル活用して、今、町をまさに大きく変えようとしております。デジ田の交付金も、タイプ3をたくさんいただきまして、それを活用した上でマイナンバーカードをいかに使えるものにしていくか。これは、Suicaと連携して、マイナンバーカードをタッチするだけで電車に乗れるようになったりとか、今いろいろな取組が進んでいる。しかも、それを進化させた独自のめぶくIDというのを作って、スマートフォンにマイナンバーカードをくっつけて独自のIDを作り、これを今、全国展開しているところであります。

 こういった、デジタルによる行政の効率化とか、又は市民生活の利便性の向上、非常に取り組んでいる自治体が多くありますけれども、最後に、政府として、こういう自治体をどう評価し、またサポートしていくか、お伺いしたいと思います。手短にお願いします。

牧島主査 デジタル庁榊原審議官、簡潔にお願いします。

榊原政府参考人 お答え申し上げます。

 デジタル田園都市国家構想の実現による地方の社会課題解決、魅力向上の取組を深化、加速する観点から、デジタル田園都市国家構想交付金により、地方公共団体の取組を強力に支援しているところでございます。

 御指摘にもありました人口減少の対応のためにもデジタル技術の活用は大切でございまして、群馬県前橋市における、先ほどお話にありましたマイタクなど、マイナンバーカードを活用した交通サービスに前橋市は取り組まれておりまして、群馬県とも連携して、こうしたものを更に県内全体に展開されようというふうにしております。

 こうした前橋市における取組も含めまして、デジタルの実装の優良事例を支えるためのサービスやシステムについて横展開を加速させるため、カタログにまとめますとともに、こうしたサービス、システムの調達に資するモデル仕様書を策定するなど、デジタル庁としても取組の強化に努めているところでございます。

中曽根分科員 終わります。ありがとうございました。

牧島主査 これにて中曽根康隆君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松原仁君。

松原分科員 今日は、拉致問題、大分最近ホットになってきておりますので、これに関しての質疑をいたしたいと思います。

 冒頭、ちょっと質問の順番を変えて質問しますが、日本は制裁は世界で最高水準にやっているというふうな議論もありますが、まだまだ制裁の余地があるということをこの場で明らかにしていきたいと思っております。

 そこで、政府参考人の方々にお伺いをするわけでありますが、私も質問主意書で随分とこれは提起をしてまいりましたが、朝鮮総連に対する破産宣告というのはできるのかどうか。できるかどうかに関して、できないならば、その理由を御説明いただきたい。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問は、朝鮮総連がいわゆる権利能力なき社団に当たるということを前提とされたものと理解をしております。

 お尋ねについては、個別具体的な事案に応じて裁判所において判断されるものですので、政府としてお答えすることは困難ではありますが、一般論として申し上げますと、破産法十八条一項によれば、債権者は破産手続開始の申立てをすることができるとされており、このことは、債務者が同法十三条において準用する民事訴訟法二十九条の要件を満たす、法人でない社団である場合も同様でございます。

松原分科員 つまりは、できるということになるわけであります。朝鮮総連に対して破産宣告をしかるべき者が行うことは可能であるということが今明らかになったわけでありまして、これが一つの制裁のポイントになってくると思っております。

 次に、日本政府は、二〇二二年三月ですか、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に対して資産凍結等を発動したことは皆様も認識をしていると思います。

 また、アメリカ合衆国は、金正恩国務委員長等々に同じように資産凍結をしているわけでありますが、このアメリカの資産凍結は、いわゆるアメリカの法律であります、スペシャリー・ディジグネーティッド・ナショナルズ・アンド・ブロックド・パーソンズ・リスト、ここに入っているとアメリカの銀行は一切取引できない、ドル送金等もできない。

 ここに書いてある文章を見ますと、同時に、保有する資産が凍結される、こう書いてありますから、そこに金正恩総書記も入っていますので、完全に資産凍結ができるわけであります。

 日本はこれをしていませんが、なぜしていないかというのを問うのではなくて、プーチンに対して行ったわけですから、当然できる。物理的にできない理由があれば、お示しいただきたい。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの点につきましては、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたいと思います。

松原分科員 聞いている内容は、今後の対応じゃないんだよ。できるかどうかということを聞いているんです。できるんだから、できると言ったらいいんですよ、ウラジミール・プーチンにやっているんだから。そういうことをすると時間がもったいないから、もう一回答えて、できるかできないか。できるんだよ。できない理由を言って。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりまして申し訳ありませんけれども、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたいと思います。

松原分科員 通告で、できない理由を示してくれと言っているんだよ。今後の支障を来すなんて聞いていないんだよ。できない理由を説明してくれと言っているんだよ。

 プーチンに対してやっているんだよ、日本は。金正恩に対してできない理由は何か、もう一回聞くよ。答えて。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の対応につきましては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて、何が最も効果的かという観点から、不断に検討していきたいと考えております。

松原分科員 そんなこと聞いていないよ。そんなこと聞いていないだろう。失礼な答弁をするな。こちらは質問通告で言っているんだよ、できない理由を言ってくれと。こういうことを言っているから、外務省は駄目だと言われるんだよ。プーチンに対してやっているんだよ、あんた方は。おかしいじゃないか、そんなの。

 今言っているのは、支障を来すと。しかし、それはできない理由はありません、こう言うんじゃないの、答えは。外務省は日本の外交をできないよ、こんなことをしていたら。はったりも何もないじゃないか。

 次は、いわゆる高麗航空への経済制裁。

 これはアメリカがやっています、既に。高麗航空は、御案内のとおり、スカッドミサイル等を、北朝鮮に部品を運んだということで、国連のパネルで既に批判を浴びています。この高麗航空に対してアメリカは制裁をしていますが、日本はしていない。

 できますか、できませんか。将来やるつもりがあるとか支障を来すとかは聞いていないんだから、一言で答えて。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、米国が二〇一六年十二月に、高麗航空を含む十六団体、七個人に対して新たに制裁対象に指定したということを承知しております。

 政府として、現時点で高麗航空を資産凍結等の措置の対象として指定はしておりませんけれども、今後、何が最も効果的かという観点から、不断に検討してまいります。

松原分科員 さっきよりは少しまともになったけれども、要するに、できるということだよ。できると言えばいいんだよ、できない理由はありませんと。もうこんなので時間を使いたくないんだよね。

 次。朝鮮総連中央委員、三百五十人ぐらいに減っています、今三百五十人ぐらい。全専従職員の再入国禁止、これは、アメリカは初めからこんなのなしですよ。あり得ないですよ。これはどうですか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、様々な形での経済制裁、再入国禁止措置を取るか取らないか含めて、今後の対応については、不断に検討していく考えでございます。

 委員御案内のとおりでございますが、我が国は在日の北朝鮮当局職員等の再入国禁止措置を取ってきておりますけれども、その対象となる者の氏名、肩書、人数等の詳細については、事柄の性質上、お答えを差し控えてきております。

松原分科員 つまり、今既にやっているのを幅を広げるということだから、これはできないとは言えないよ。当たり前ですよ。全部やればいいんだよ。

 それから最後に、いわゆる安保理公開会合における金正恩委員長個人の人道に対する罪の提起であります。これについても、私は質問主意書で質問しております。なかなかいい答弁だったんだよ、質問主意書は。これについて答えてください。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮の人権状況について、国連安保理で議論が行われることは有意義であると認識しておりますけれども、御指摘の安保理における今後の対応の在り方については、米国、韓国等のほかの理事国とも緊密に連携しつつ、検討してまいる所存でございます。

松原分科員 私の去年の二月の質問に対する答弁はこう書いてあるんだよね、今言った案件に関して。北朝鮮の人権状況について、国連安保理事会で議論されることは有意義であると認識しているが、今後の対応について、現時点で予断を持って答えられないと。有意義だと言っているんだよ。これは恐らく、去年のこの時期だから、二月だから、林さんは、今日は拉致問題担当大臣として来ているけれども、大臣で、これは閣議決定ですからね、署名しているんじゃないかと思いますが、これは有意義であると認めているんだよ。後退するような答弁はしない方がいいよ。

 もう一回、答弁。できるということを言ってください、やる意思があればできる、国連で提起できると。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、北朝鮮の人権状況について、国際連合安全保障理事会で議論が行われることは有意義であると認識しております。今後の対応については、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

松原分科員 質問に答えてもらいたいんだよ。つまり、有意義であるというところまででもいいけれども、要するに、それは日本は提起できるということを明確に言えばいいんだよ。

 制裁については、様々な制裁がもう全部出し尽くしているというふうに思っている人がいらっしゃるかもしれないが、まだまだできるということを明確にしておきたい。

 後で万景峰92についても質問いたしますが、順番に戻りまして、二〇〇二年小泉訪朝、政府はなぜ未解決としたのか、その理由を、大臣、お答えください。

林国務大臣 平成十四年に五人の拉致被害者の方が帰国をされましたが、北朝鮮が死亡を主張した八名の死因には、不自然死が極端に多いことに加えて、これを裏づける客観的な証拠が全く提示をされなかったということ、そして、北朝鮮側の説明には不自然かつ曖昧な点が多く、また、捜査により判明している事実や帰国被害者の証言との矛盾も多く、説明全体の信憑性が疑われたこと等の問題点がありまして、拉致被害者の死亡を裏づけるものが一切存在しなかったということであります。このため、被害者が生存しているという前提に立って、被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うよう求めているところであります。

 拉致被害者一人一人の具体的な情報については、今後の対応に支障を来すことから、明らかにすることは差し控えますが、いずれにいたしましても、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。

松原分科員 これは極めて重要なことを大臣はおっしゃった。担当大臣ですから、これは担当大臣の判断というのは極めて重いわけであります。

 簡単に言えば、次の交渉が近いかもしれないと言われている、金与正の発言も含めて。能登半島に対する北側のお見舞いという話もあった。

 私は、その上で、次の交渉において何をどう判断するのかということですよ。前回、五人戻ってきた。戻ってきたといっても、当初は一時帰国という話ですよね。一時帰国と聞いていますよ。それが結果的に日本から戻さなかったということであります。八人死亡というふうに言ってきた。後で、その死亡の刻印の日よりも横田めぐみさんはまだ生きていましたよというのが証言として戻ってきた拉致被害者から出てきて、北朝鮮が言っていることはうそ八百じゃないか、こうなったわけであります。

 だから、この質問を続けていって、最後にお答えをどこかでいただきますが、今回、交渉がホットになって、じゃ、これとこの人を帰しますよと、ゴールポストをどこに置くんだという話ですよ。ゴールポストを置いておかないと、じゃ、二人でも三人でも戻ってきたら、二十年ぶりだからよかったね、あとの認定被害者は戻ってこなくても了解ですよという話にはならない。ならないという認識でありますが、二〇〇二年がそうだったんだから、これは質問の順番があれですが、大臣、率直にこの辺はお答えいただきたい。

林国務大臣 二〇〇二年、平成十四年のお尋ねでございますが、この十四年に五名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していない、これはもう痛恨の極みであります。拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題、これはひとときもゆるがせにできない人道問題であります。

 今、松原委員もおっしゃったように、今のこの状況に至っている背景、様々な要因がありまして、原因として一概に特定のことだけ挙げる、これは困難でありますが、政府として、北朝鮮側の分析についてお答えする立場にはないというふうに考えております。

 全力でしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

松原分科員 交渉前夜であるかどうかは別にして、ホットになってきているわけであります。

 ここで重要なのは、二〇〇二年の経験を踏まえて行動してほしい。

 二〇〇二年は、ちょっと、実は、外務省、そこまで皆さんに問う時間がなくなってきているので言いませんが、当初は一時帰国。八人の死亡も外務省はもう既に恐らく了解していたんじゃないかということで、家族会も、調査会も、救う会も烈火のごとき怒りを持ったわけであります。率直に言えば、あの段階では、日朝の行政関係においては握っていたんじゃないか。しかし、今、林大臣が言ったとおり、でたらめが多かった、未解決だと。

 北側にとっては、北側の政治的対応は日本側が評価することではないと言いますが、私は北側のエージェントといろいろと話をする機会がありますが、いわゆるこの問題は、繰り返したくない事例。五人、彼らにしては、日本に戻すことになった。こういった状況で、日本は、北朝鮮、何やっているんだと。外務省も日本人の怒りに一役買っているんだよ、これは。八人死亡を当然のこととして受け、そういうふうな変な握り方をしちゃ困るわけですよ。だから、日本国民は、北朝鮮に対する怒りと同じように、外務省に対する落胆があったと私は思う。

 私は、その意味において、今回、そういう状況で、もしそういう日が来るならば、くれぐれも林拉致問題担当大臣にはくぎを刺しておきたいことは、安直に分かりましたという話ではないと。二〇〇二年に五人戻ってきて八人死亡を我々は未解決としている、このことを深く肝に銘じてもらいたいと思っております。

 次の質問に移ります。

 いわゆる拉致問題のゴールポストをどこに置くかという話であります。

 拉致問題のゴールポストは、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全と即時帰国となっているわけでありますが、これは将来的なゴールポストなのか、次の、北朝鮮に訪朝を、岸田総理大臣かもしれませんが、行ったときの、そのゴールポストなんですか。

 前段であるとすれば、北朝鮮側は、拉致問題を蒸し返すなと言うでしょう。しかしそれは、蒸し返すなと言ったって、日本は全体主義国家じゃありませんから、それぞれのステークホルダーが考えるわけであります。そのための具体的策を、私は、十二年前に拉致問題大臣として三つの原則を明らかにしているわけでありますが。

 じゃ、ちょっと、私が提言した三つの原則を政府参考人に聞きたいと思います、認識しているのかどうか。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの原則につきましては、松原議員が拉致問題担当大臣時代に記者会見などで述べられた原則であると承知をしているところでございます。

 その内容につきまして、平成二十四年十月一日の記者会見の内容を抜粋して御紹介させていただきますと、拉致問題は決して風化をしない。拉致被害者の方々や御家族がいなくなってしまったならば、日朝間に永遠に解決しない問題として残る。北朝鮮が既に死亡したとされている方々が実は生存したということになっても、従来の主張を変えたとしても、批判することなく、前向きに受け止めていきたい。拉致問題について、関係者の間で一定の進捗であると合意できるような進展が得られた場合は、人道支援など関係改善のための措置を取ることができ、また、北朝鮮との間で様々な建設的な対話の可能性も出てくるということであると承知しているところでございます。

松原分科員 第一原則は、もうちょっと厳格に言いますと、情緒的表現を私は取りました。横田めぐみさんが横田早紀江さんや滋さんと抱き合う姿が解決であって、全く違う時間に戻ってきても解決ではないと。これは時間的な切迫感を北側に与えるための私の表現でした。

 二つ目は、死んだ人間が生き返っても文句は言わないよと。つまり、生き返らせて戻せよと。

 三つ目が一番重要でありまして、私は、北朝鮮側のトラウマは何か。同じことを繰り返したくない。帰したのに、これは我々にとってみればとんでもない話です、誘拐しておいて。しかし、彼らにしてみれば、帰して、日本世論があれだけ、北朝鮮、駄目、駄目、駄目、駄目、駄目だなとなった。このことは繰り返したくない。

 そこで、出口論の話になってくる。私は、出口論をする場合に、一つは、具体的には、与党、野党の共同の国会議員から成るグループ、そして、家族会、救う会、調査会、さらには、個別に言いますと、当時非常に熱心に拉致をやっていた櫻井よしこさん、この有識者、こういった方から成る、五つのカテゴリーから成るボードをつくる。ボードをつくって、そのボードが、最後は、一定の解決という概念に対してジャッジをする。

 一定の解決という概念はどのようなものかといえば、私は担当大臣でしたから、当時、認定被害者全員、そして、特定失踪調査会の最高裁に対する人権侵害申立ての人間、当時三十五人ぐらい、この三十五人は間違いなく生存している前提で、もしそうでないならば合理的な証拠を出せということをストライクゾーンとして出口論で提示をするということを私は言いました。

 そのストライクゾーンのゴールポストも、やはり五つのカテゴリーが合意をする、その中心的な議長は、最終意思決定者は日本国の拉致対策本部の本部長、総理大臣ですが、そのいわゆる仕切りをするのは林大臣のポジション、当時は私でした。こういったことで、ここの場では具体的に言いませんが、当時の野党の極めて重要な人物にもボードに入っていただくことに合意をいただいております。やっていました。私も大臣を辞めたので、それはそこで終わってしまったわけでありますが。

 結局、北朝鮮側が、そのとき私のこの構想を聞いて、エージェントは、それはすばらしいという話だったんですよ。やはり、そうしないと出口論がなかなか出てこない。

 このことを考えたときに、出口論として、そういった一定の解決を関係者で合意する必要があるのではないか。そして、関係者がジャッジをして、そのジャッジによって一定の解決ができたというふうに考えるならば、例えば、私は、万景峰92であるとか人道支援は行うべきではないかということを、今の、私が大臣時代に強く主張した三原則、様々な場所でこれは言っています、で言ったわけであります。

 そこで、大臣にお伺いしますが、こういった一定の解決という概念を考えるとか、そういったボードメンバーをつくって合意するとか、これをしなければ、何か、言われた人間だけ仮に出てきて、ああ、これでいいですよ、そんな曖昧模糊とした議論ではないと思うんですが、御答弁いただきたい。

林国務大臣 冒頭に松原委員がおっしゃったように、政府として、拉致問題の全面解決、これは、拉致被害者としての認定の有無に関わらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、それから拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しが実現することが必要だと考えております。おっしゃったとおりであります。

 そして、御家族、家族会、救う会、特定失踪者問題調査会等々の皆様のお話がありました。また、有識者の皆様のお話もありました。この御意見、御要望、既に私もいろいろな会合等で承っておる機会を設けておりますが、そうしたものを真摯に受け止めつつ、まさにおっしゃっていただいたように、本部長である総理の指示を受けながら、連携して、政府一丸となってやっていかなければならないと思っております。

 その上で、先ほど松原仁三原則について御披露をいただきました。長年、大臣として、そして議員として拉致問題に取り組んでこられた委員のお考えとして、しっかり受け止めたいと考えております。

松原分科員 ここでちょっとお伺いしたいのは、政府参考人でもいいんですが、ゴールポスト。最終的なゴールポストはそういった形でありますが、今回、仮にホットになって岸田訪朝ということがあった場合に、そのゴールポストをゴールポストにするのか、一定の解決を考えるのか、それを誰が判断するのか、その判断する人間が判断したときにステークホルダーが全員同意をするのか、こういったことに関して、担当政府参考人、また大臣もお答えいただきたい。お願いします。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、拉致被害者として認定された十七名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するとの認識の下、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くしてきております。

 その結果を出すことが全てでございまして、それに至る道筋、プロセスについて言及することは、恐縮でございますが、差し控えさせていただきます。

松原分科員 そうすると、概念として、未認定というのはどこまで入るのかというのは、これは後で未認定と認定の差も聞きたいぐらいなんだけれども、非常に複雑になってくるわけですよ。

 私は、その意味において、やはりボードで、最大限ボードをつくって、汗をかいて、そこで合意形成をする、一定の解決についても。この必要はあると思うんだけれども、大臣、時間もないので、簡単に答えてください。

林国務大臣 最終的なゴールに至る道筋については今答弁があったとおりでありますが、先ほどからお話があるように、どういったやり方を取るのがいいのかというのはいろいろ御意見があると思いますが、先ほど申し上げたように、御家族や家族会、救う会、特定失踪者問題調査会を始めとする関係団体、有識者の皆様の御意見、御要望、これをやはり受け止めながらやる、これが非常に大事なことだと思っております。

松原分科員 訪朝をする場合に、私は、家族会の信頼のある西岡さんや、拉致の可能性を否定できない人たちの信頼のある荒木さんを北朝鮮に同行させるべきだ、このように思っておりますが、御答弁いただきたいと思います、大臣に。

林国務大臣 松原先生の御意見、しっかり受け止めさせていただきたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、どういうふうなやり方でやっていくかについては、ここで手のうちを明らかにするというわけにはなかなかいかないというふうに思っておることは、先ほど申し上げたとおりであります。

 いずれにいたしましても、ここでいろいろな御意見を賜ったことはしっかり受け止めてやってまいりたいと思っております。

松原分科員 つまり、このときに、北朝鮮側は、これは死にましたと、認定被害者で。この一時的なゴールポストは認定被害者だけでいくのか、私が三十六人と言ったように、特定失踪調査会の人権侵害申立てまで入れるのか、これは非常に議論してもらいたいと思います。

 その上で、出てきたとき、合理的な、北朝鮮が説明して、これは日本に戻れませんよ、こういった理由でということをジャッジするのも大事だと思うので、今、含みのある答弁だったと思っております。この答弁は北朝鮮も聞いていて、この問題の解決にもっと真剣になるのではないかと私は期待しておりますが、そういった発信もお願いしたいと思います。

 最後になりますが、いわゆる、私は、むちのことは先ほど言いました、まだまだむちはあるぞと。だから、横田早紀江さんとめぐみさんの出会い、若しくは田口八重子さんと息子さんの出会い、こういったものがなかったら、もっともっとアメリカ並みにやるぞと。日本はアメリカよりやっていないんだよね、これは。大問題だけれども、やっていない。こういったことを一方に入れながら、あめも必要だ、交渉でありますから。あめという部分に関しては、私が担当大臣のときに人道支援に言及しました。米支援の話も、当時は総理大臣といたしておりました。

 その上で、万景峰92というのは一つのシンボルであります。これが国連制裁によって制裁を受けているものかどうかをまず答弁いただきたい。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の船舶の扱いを含め、我が国の対応について予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、その上で、御指摘の……(松原分科員「国連制裁かどうかと言っているんだよ」と呼ぶ)はい。御指摘の船舶は、国連安保理決議に基づく制裁措置の対象とはなっていないと承知しております。

松原分科員 だからそれを、そうなんだよ、別に、予断を持ってああだこうだは聞いていないんだから。国連制裁に属するかどうかを聞いているんだから。国連制裁に属していない。ということは、いわゆる北朝鮮に対するあめになる、ある種の、彼らに対する、むちとあめということをあえて言うならば。

 圧力は、先ほど言った、たくさんありますよ。あれ以外にもありますよ、この場で今日は時間がないので言わなかったけれども。しかし、一方において、このことで北がきちっと誠実に対応してくる、その誠実に対応してくることが可能であるとするならば、それをジャッジするために、一定の解決をやはり提示するべきだ。そして、それをジャッジするボードメンバーをつくるべきだ。具体的には、西岡さんや荒木さんを同行させる。別に、金正恩さんとの会談に同席しろとは言っていませんから。同行させる。これが、北側から見たって、いわゆる日本の一部が解決ではないと言って大きな波紋を呼ぶことを抑制できることになるので、お互いが一応了解できる事項だろうと私は思っております。それで、彼らが判断したときには万景峰92や人道支援も行うということを私は明確に主張しておきたいと思います。

 最後に、担当大臣としての今後の意気込みと、今ずっとつらつら三十分申し上げてきたことに対しての大臣の御所見をお伺いしたい。

林国務大臣 先ほど、拉致被害者として認定された十七名以外についても御言及がありました。申し上げるまでもないことですが、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない十七名以外の行方不明者が存在するという認識の下で、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くしてきているとまず申し上げておきたいと思います。

 その上で、今日は松原仁三原則をお唱えになっている松原委員と大変有意義なやり取りができたというふうに感じております。具体的なところはなかなか言えないところは御理解いただいていると思いますけれども、今日の議論もしっかり受け止めながら、真摯に取り組んでまいりたいと思っております。

松原分科員 よろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

牧島主査 これにて松原仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬淵澄夫君。

馬淵分科員 立憲民主党の馬淵でございます。

 今日は、安定的な皇位継承問題、これにつきまして林官房長官に御質問させていただきたいと思います。あらゆる分野で御見識をお持ちですから、林長官には、是非、これは政治家同士の闊達な議論をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、この安定的な皇位継承問題でありますが、退位特例法での附帯決議、ここで、政府に対して、これは立法府の総意として、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、これが一つ、女性宮家の創設等、これが二つ目、これについて、これの法施行後速やかに検討を行い、その結果を速やかに国会に報告、このように附帯決議が要請をしております。

 そして、これに対して岸田内閣では、いわゆる有識者会議報告書が提出をされました。以下、報告書と呼びますが、この中で、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、これにつきましては、この報告書では、皇位の継承ということで、様々な課題があるという中で十分に慎重でなければならないとして、報告書の六ページに記載されておりますが、「悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について具体的に議論するには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させるとも考えられます。」と記載されています。つまり、この報告書では、今は論じない、このように結論づけたものと読めます。

 一方、附帯決議の女性宮家の創設等でございますが、これに関しましては、この報告書では、女性皇族が婚姻後も皇族としての地位を保持し、配偶者と子は皇族としない案が示されています。

 そこで、ここの問題といいますかポイントでありますが、この女性宮家の創設等というところについては、これは、直接女性宮家の創設ということを論じることはなく、皇族数が減少している、したがって皇族数の確保が必要であるというふうに読み込んで、そして、今申し上げた、婚姻後も女性皇族が皇族としての地位を保持し、配偶者と子は皇族としない案を結論として示しているということになります。

 さきに安定的な皇位継承問題を議論した内閣では野田内閣がございますが、野田内閣の論点整理では、これも同様に、女性宮家の創設とは記されておらず、皇室の御活動の維持として整理をしている。つまり、皇室の御活動を維持するためには皇族数の確保が必要だという意味で、これは同じ論で、この岸田内閣の報告書も私は踏襲しているのだというふうに理解をしております。

 こういう前提の下で、今回のこの報告書、女性宮家の創設等ということに、女性皇族が婚姻後も皇族として地位を保持し、配偶者と子は皇族としない案が該当するのか、これが明らかにされておりません。

 そこで、長官にお尋ねいたします。

 退位特例法の附帯決議、検討を要請した女性宮家の創設等について、本報告書は結論を示したという認識でよろしいでしょうか。

林国務大臣 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に今お触れになられまして御質問がありましたが、これに関する有識者会議の報告書において、附帯決議で示された課題については、皇位継承の問題と、そして皇族数の減少の問題、こういうふうに整理をした上で、今御説明していただいたとおりなんですが、皇位継承については、有識者会議で様々な分野の方々から幅広く意見を伺って慎重かつ真剣に議論した結果として、今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、次世代の皇位継承資格者としての悠仁親王殿下がいらっしゃることを前提に、この皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない、こういう結論に至ったものと承知をしております。

 その上で、まずは、皇位継承の問題と切り離して、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題である、こういうふうにいたしまして、具体的な方策として、内親王、女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること、皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること、さらに、皇統に属する男系の男子を法律によって直接皇族とすること、この三つの方策が提示されたものでございます。

 政府としては、こうした有識者会議の報告書を尊重するということにいたしまして、国会に対して報告を行ったということでございます。

馬淵分科員 皇位の継承の方は私はもう触れておりません。宮家の創設等についてのお尋ねですので、端的にお答えください。

 確認いたします。附帯決議の要請は女性宮家の創設等です。これに応えたということでよろしいですか。お答えください。

林国務大臣 少し長く答弁してしまいましたが、これをもって、創設等について、そういう議論をした有識者会議の報告書が出た、こういうことでございます。

馬淵分科員 有識者会議の報告書、ここではこの要請に応えたということだと今答弁をいただきました。

 そして、この要請に応えたということでありますが、これは本当に応えているかどうかを検討する上で、女性宮家という言葉がやはりここではちょっといろいろ課題があるというふうに政府の方も認識しているというふうに私は説明を受けています。

 つまり、宮家というのは、これも報告書に記されておりますが、「独立して一家をなす皇族に対する呼称であり、法律に基づく制度ではありません。」このように記されているんですね。つまり、明確な法的定義はない、したがって、定義がないものについて応えようがないという言い方で、これは最終的には、皇族数の減少という問題に捉えて、皇族数の確保に置き換えて、先ほどの案が出てきた、こういう理解です。

 しかし一方で、この宮家、法的定義がないとしても、一般に広く浸透した概念ですよね。これはもう度々、報道でもどこでも使われます。

 その上で、この女性宮家、附帯決議にはそのように書かれていますから、これについての共通認識がなければ、何をもって要請に応えたかというのが明らかにはならない、そのように私は考えます。

 そこで、長官、お尋ねいたしますが、これは先ほども申し上げたように、法律に基づく制度ではないと書かれているんですが、皇室典範に宮家の定義等々ありませんが、他の法令にも宮家がどのような制度であるか推認させる規定はございますでしょうか。これもイエスかノーで答えていただければありがたいです。

林国務大臣 この宮家という言葉でございますが、独立して一家を成す皇族に対する一般的な呼称と、今、馬淵委員から御説明があったとおりでありまして、法的な制度として位置づけられていないということでございますので、宮家という言葉を類推させるような制度をお示しすることは難しいと考えております。

馬淵分科員 そうなんですね。これは調べても、ないんですね。ただ、一般的呼称として使われております。

 そこで、宮内庁のホームページの組織・所掌事務というのが出ております。これを見ますと、宮内庁長官官房宮務課の所掌事務として、これは「常陸宮、三笠宮、高円宮の各宮家に関する事務を担当しています。」と記載されています。

 一方で、この状況の中で、宮内庁は組織令というのが出ております。宮内庁組織令第十三条では、この宮務課、先ほど申し上げたホームページに宮家の事務を担当と書かれていますが、「宮務課においては、皇族(内廷にある皇族を除く。)に関する事務をつかさどる。」と規定されています。

 つまり、このホームページの記載と、そしてこの法令からは、常陸宮、三笠宮、高円宮の各宮家が典型的な宮家としての在り方を示していることになる、このように類推できるというふうに思います。

 今お配りをしました資料に「皇室の構成」とありますが、そこには、今いらっしゃる皇族の方々、薨去された方々のお名前もありますが、赤い四角で囲ったところがこの宮務課の所掌範囲ということになります。まずは上皇陛下の弟君である常陸宮家、そして三笠宮家、そして薨去されました宜仁親王の桂宮家、また高円宮家、このようにあります。現状では、常陸宮、三笠宮、高円宮、この三宮家を宮務課は所掌されているということになります。

 そして、この宮家、女性宮家というのは附帯決議の中に示されている言葉でありますが、宮家の一形態ということを考えれば、女性皇族が当主となって、独立して一家を成す皇族という一般的な呼称となるのが論理的には想定されるはずです。そして、女性宮家は、これら宮家に倣った制度が想定されると考えられます。

 繰り返しますが、法律に基づいた言葉でないことは承知をした上です。

 さて、この宮家、これは、天皇陛下のおぼしめしによる宮号の下賜によって定められます。女性皇族が婚姻後も皇族としてとどまる場合、この宮号が下賜されれば、政府案のように配偶者と子に皇族の地位を付与しなくても、形式上、女性宮家と呼ぶことは論理的には可能なはずです。

 つまり、附帯決議が政府に検討を要請した女性宮家の創設等については、これは、政府案は皇族数の確保についてと読み替えて応えていますが、こうした状況で、今申し上げたように、宮家は法律的に規定はありませんが、一般呼称としたとしても、この宮務課の所掌事務にあるように、女性宮家ということも論理的には成立し得るし、また、宮号の下賜ということがなされれば同様の体制を取るということになるかと思われますが、林長官、私が申し上げたことについて、林長官の見解をお答えいただけますでしょうか。

林国務大臣 今の宮家という言葉でございますが、独立して一家を成す皇族に対する一般的な呼称である、申し上げたとおりでございます。

 冒頭申し上げたように、女性宮家の創設という、附帯決議で示された創設等ということですが、示されていることに関しまして、女性皇族の婚姻等による皇族数の減少等として申し上げてきたわけでございます。そうした議論がなされた上で、今、先ほど御紹介したような案が提案されたものと承知をしておりまして、報告書はその三つの選択肢を示すというところで、我々は尊重するということで国会に御報告をいたしておりますので、その先のこと、その先どうなるのかということはその報告書では触れられておらない、こういうことだと思います。

馬淵分科員 報告書では三案ありますが、一番推しておられるのが、女性皇族が婚姻後も皇族として残り、その配偶者と子は、これは皇族ではない、一般国民を保持するということだという部分で、私はそれを、あえて三案のうちの一つ目を取り上げておりますが、確かに報告書ではそれ以上のことは踏み込んでいません。そして、それが提出され、松野長官も同様の答弁をされています、尊重するということで、そしてこれを、あくまでも国会、立法府における議論に資するもの、こういう位置づけだと思いますが、私はこれは、先ほど来、政治家としての議論として、論理的に先ほど申し上げたことが成立するのではないかということを申し上げているんですが。

 長官、改めてお尋ねします。宮家というのは法的に定められたものではありませんが、しかしながら、内廷に属する皇族ではない皇族という位置づけに置いたとしても、それを、その女性が宮号を下賜されれば、その上で宮家、いわゆる内廷皇族でない皇族としての位置づけがなされるということになりはしませんかと論理的な組立てを私は申し上げているんですが、長官、いかがですか。

林国務大臣 個人としてはいろいろな意見を私も持っておるわけでございますが、あくまで、この報告書を出していただきまして、それを尊重すると政府としてした上で、選択肢ということで国会で是非御議論いただきたい、こういう立場でございますので、是非御議論をしていただきたいと言いながら、この場合はこうなるということを申し上げるのは、差し控えなければならないのではないかと思っております。

馬淵分科員 私の申し上げた論理に対しての適合性はお答えいただけていませんが、少なくとも、先ほど申し上げたように、組立てを考えればこれは成立すると思います。

 その上で、更に論理的可能性の検証をちょっと続けたいと思いますが、親王殿下始め皇族が婚姻される場合、それと前後して、独立して生計を営む認定、独立生計認定と通常呼びますが、これを皇室経済法で定めております。お手元には皇室経済法をお配りをしました。この皇室経済法の六条に、いわゆる皇族費の規定が示されているわけであります。

 そこで、例えば、これは常陸宮様の例に倣って見てみますと、第六条の三項二号、ここには、「親王の妃に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。但し、その夫を失つて独立の生計を営む親王妃に対しては、定額相当額の金額とする。」と規定があります。これはつまり、その夫を失って独立の生計を営む親王妃に対して金額を倍増するというのは、亡き夫、この夫亡き後にきさきが宮家の当主を受け継ぐ、宮務課所掌の言葉に言い換えれば、内廷皇族を除く皇族としての当主を受け継いだ結果、つまり、宮家という家に対して支給しているとこの法理からは理解できると私は考えます。つまり、この法律は、皇室経済法は、夫婦が一体となって宮家を構成することを前提としているとも解することができるのではないか、そのように考えるわけです。

 そこで、この議論を踏まえますと、女性宮家の在り方について、女性宮家の在り方とは報告書には書いてありませんが、政府が示した案のみならず、夫婦が一体となって宮家を構成する制度も含めた議論、すなわち、配偶者と子に皇族の地位を付与する制度の議論が必要ではないかと考えますが、長官、いかがでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、報告書を我々は政府として尊重し、国会に御報告をさせていただいているという、今そういう状況でございますので、それぞれの選択肢について更に報告書を超えて何か申し上げるというのは差し控えなければならないのではないか、こういうふうに思っております。

馬淵分科員 国会で議論いただくというのは、これは松野長官も同様の答弁でしたから致し方ないのかもしれませんが、これは、きちっと御覧いただければ、私の説明を聞いていただいている方々、多数いらっしゃると思いますが、つまりは、この皇室経済法も含めまして、宮家、あえてここではもう宮家と言いますが、宮家の想定というのは、やはり皇族が夫婦として一家を成すということが前提になっている。

 したがって、その場合には、女性皇族が皇族の身分を残すときに、配偶者と子を、皇族の身分を付与しないという案のみならず、付与する案も含めて、これはしっかりとした検討が必要ではないか、私はそのように考えるわけであります。

 そして、その場合は、配偶者と子に皇族の地位を付与する制度を取れば、少なくともその女性一代限りではなくなります。そして、女性皇族よりも、ここで子も皇族とすれば、長期間かつ多くの皇族数確保が可能になるという点で、報告書の趣旨の皇族数の確保には沿う制度だと言えるのではないかというふうに思います。

 さて、では、なぜこの報告書がそのような案をきちっと整理をしてこれなかったのかというところであります。

 この報告書では、内親王、女王が婚姻後も身分を保持することとするという案が示されています。これは一番目ですね。二番目、三番目は割愛します。今日は、この一番目だけの議論です。そして、それに反対する主張として、皇位継承資格を女系に拡大することにつながるという説を挙げておりました。そして、それに対する回答として、「その子は皇位継承資格を持たないとすることが考えられます。」と書いています。そのすぐ後に、「また、配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続けるものとすることが考えられます。」と記載しています。

 そこで、長官、この文意が非常に分かりにくいんですが、「子は皇位継承資格を持たない」、これを1としますと、「また、」でつながっている「配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続ける」となっています。これを2とします。1と2が「また、」で結ばれている。これは、並列的な関係で、どちらかの案が考えられるという意味なのか、それとも、1に加えて2も同時に考えられるという意味なのか、これはいずれでしょうか。

林国務大臣 この有識者会議報告書は、女性皇族の子を皇族とした上で皇位継承資格を持たないとする方策を示しているものではないと認識をしております。

 この報告書において、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することについては、皇位継承資格を女系に拡大することにつながることへの懸念、今おっしゃっていただいたとおりでございますが、懸念等様々な考え方があることから、そうした考え方に対して、女性皇族の子は皇位継承資格を持たないという考えを示した上で、配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利義務を保持し続けることが考えられる、こういうふうに述べられているというふうに理解しております。

馬淵分科員 この「また、」は、つまりオアではないということだという説明をいただいたと理解しましたが、しかし、これが女系につながるということに対しての反論であれば、さっき私は1と便宜的につけましたが、子に皇位継承資格を与えないと記載することで十分じゃないですか。

 要は、子に皇位継承資格を与えなければ、女系につながるというこの反対論に対して、先ほど申し上げた結論が導かれているんです。2と私があえてつけた、配偶者と子に皇族の地位を付与しないとする必要はないんですよね。だから、この2、余分な、これは過記載なんですよ。なぜこのようなことを書いたのか。

 私は、これは実は深読みだったかもしれませんが、1で、子を皇族とした上で皇位継承資格を与えないということも一方で含意するのかとも考えましたが、そのような説明は、有識者会議報告書を所管する事務局からありませんでした。

 長官、私は便宜的に1、2とつけましたが、皇位継承資格を与えないという記載だけで、これは実は女系につながるという反対論に対しては十分なんですが、これはどうですか、どのように考えられますか。

林国務大臣 いろいろな議論が有識者会議でなされたというふうには承知をしておりますが、今、皇族としての地位を与えることを否定しているということの御指摘というふうに捉えましたが、そうした考えを直接的に否定する記載はないというふうに承知をしております。

 他方で、今も御議論ありましたように、この報告書で、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することについて、皇位継承資格を女系に拡大することにつながることへの懸念等様々な考え方があるということで、そうした考え方に対して、女性皇族が一般国民たる男子と婚姻した場合、配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利義務を保持し続けるものとするという考え方が示されたというふうに考えております。

馬淵分科員 いや、だから、それが無駄な記載だと私は申し上げているんですよ。なぜこういう、最初に、子に皇位継承資格を与えないとすることで済むのに、あえて二つ目、配偶者と子に皇族の地位は付与しないと記載したかということなんです。

 ここは、再度聞きますけれども、つまり、子に皇位継承資格を与えないという記載だけで十分だったはずなんです、女系への心配を反対説としてここに明記していますから。それをしないというのは、逆に言えば、子は皇族となるということも、可能性を許容しているということではないのでしょうか。大臣、いかがですか。

林国務大臣 会議においていろいろな比較検討がなされたということですが、ヒアリングの後、第七回、八回会議で、いろいろなヒアリングで出された意見を聴取項目ごとにまとめた上で、会議のメンバーに示しております。十一回の会議で、配偶者、子を皇族としない場合、その政治活動の自由、職業選択の自由等についてどのように考えるか等についても事務局から説明をしております。

 会議では、皇族とする考え方も含めて比較検討を行って、大変慎重に、かつ丁寧に議論が行われておりまして、第九回会議では、配偶者や子を皇族とするかどうかについては様々な意見が考えられ、皇族とすることについては、国民感情の点でハードルが高いのではないか。

 また、同じ第九回ですが、イギリス王室で、アン王女は王族であるが御家族は王族ではなく、それによって問題が生じているわけではない、このような海外の例を見ても、御本人は皇族であるが御家族はそうではないという形も、それほど無理なく成立するのではないかという御意見。

 また、第十二回ですが、配偶者と子が皇族とならないということは、女性皇族の御結婚のハードルを下げるということにもつながり、お相手の方の職業選択の自由が守られるなどプライベートの部分を守ることにもつながるのではないか。こうした御議論があったというふうに承知をしております。

 そうした御議論の上で、この報告書において、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することについて、皇位継承資格を女系に拡大することにつながることへの懸念等様々な考え方がある、先ほど申し上げたとおりでございますが、そうした考え方に対して、皇族の身分を保持した内親王、女王の配偶者、子は皇族という特別の身分を有しないこととするという考え方が示された、そういうふうな経緯だと承知をしております。

馬淵分科員 これは、いわゆる識者のヒアリングは二十一名にも及びまして、それらの意見に対して、大臣がおっしゃったのは六名のメンバーの御意見なんですね。これを整理したものを見ましても、結局、様々意見がある中で、その配偶者と子に皇族の身分を付与することについてのある意味賛成の意見、これは八名。そして、これに対して、皇族としないという意見、二名。こういう偏った議論の中で、メンバーの皆さん方が最終に、付与しないという案を提示をした。これは結論ありきと言わざるを得ないような私は議論の結果ではなかったかと思われます。

 野田内閣の論点整理では、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とする案として、その上で、配偶者及び子に皇族としての身分を付与する案と付与しない案、これが並列されていました。そしてその上で、この論点を今後詰めていくとされてきたわけですが、岸田内閣の報告書では、全くもって、付与する案ということに対する検討プロセスが見えてこない状況です。これはやはり私は、立法府として明確な議論をする必要があるということを改めて申し上げておきたいというふうに思います。

 こうした状況の中で、これからまさに国会で立法府の総意としてまとめ上げていきますので、広くこの論点整理を、野田内閣論点整理、そして岸田内閣報告書における問題点も踏まえた新たな議論というのが今後急がれるというふうに思っています。

 もう時間はありませんが、法制局に一点だけ、済みません。

 法制局の方でのこれも答弁をいただきたいんですが、婚姻後の女性は皇族、配偶者は一般国民とすることに関して、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本とするという憲法二十四条第一項、これに、付与しないという状況であれば、整合性は取れないのではないか、このように考えるわけでありますが、これについての法制局の答弁をお願いいたします。

木村政府参考人 現時点では具体的な制度を前提にすることができませんが、最高裁判所の判決におきまして、憲法二十四条につきましては、両性の本質的平等の原則を婚姻及び家族の関係について定めたものであり、夫たり妻たるの故をもって権利の享有に不平等な扱いをすることを禁じたものとされているところでございます。

 一般論として申し上げますと、内親王、女王が婚姻後も皇族の身分を保持し、配偶者に皇族の身分を与えないとする案において、婚姻及び家族と関係しない権利につきまして、内親王、女王のみが皇族の身分を保持していることにより、その配偶者との間で差異が生ずる状態になったといたしましても、基本的に憲法二十四条第一項の適用が問題となるものではないと考えております。

馬淵分科員 これは新しい解釈を明確にして教えていただいたんですが、つまり、夫婦同等の権利を有することについては二十四条に抵触しない、夫と妻の違いで帰属する権利が異なるということにはならないということで、二十四条が想定しているものとは異なって、許容され得るという今御回答をいただきました。

 こういう状況ではありますが、一方で、先ほど来申し上げるように、宮家、これは規定はありませんが、しかし、皇室経済法にも示されているように、一体と成すという考えの下で制度が構築されている部分もあるわけですから、このようなことを考えると、皇族としての身分を配偶者や子に付与することも、これも並行して、並列して議論を行うべきだということを申し上げておきたいと思います。

 長官、最後に何か、今申し上げた点についてお答えいただけるものがあればお願いいたします。

林国務大臣 馬淵委員の御意見は御意見としてしっかり受け止めたいというふうに思っておりますが、先ほどのヒアリングについて、配偶者や生まれてくる子を皇族としない意見が二点ということですが、それ以外に、実は、現状を維持するべきという意見がございます。すなわち、女性皇族は婚姻により皇族の身分を離れる、それが六点ございまして、そうした中にも、皇族とするべきではないという意見が複数あったということでございます。

 いずれにいたしましても、先ほど御説明したような経緯で有識者会議の報告書はまとまっておりますので、政府としては、これを尊重しているということでございます。

 しっかり議論を続けていきたいと思います。

馬淵分科員 現状維持ではこの結論とは違う意見ですから、そこは入れるべきじゃないということは申し上げておきたいと思います。

 時間となりましたので、終わります。ありがとうございました。

牧島主査 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申出がありますので、順次これを許します。長妻昭君。

長妻分科員 長妻昭でございます。

 新藤大臣、いろいろ質問しますので、短く端的に御答弁いただければというふうに思います。

 本日は、我が国にとっても大切な賃上げについて質問をいたします。

 まず、資料一でございますけれども、この資料一といいますのは政府が作成した資料で、昨年、年金部会、厚労省の年金部会に配られたものでございます。

 これはもう皆さん見慣れている資料だと思いますが、過去二十五年の平均伸び率、賃金ですね、実質賃金、日本は〇・〇%。ほかの国は先進国全て軒並み上がっておりますが、日本だけが、言われているのは、三十年上がらないということでございますし、いまだ足下でも実質賃金が上がっていない。深刻な状況でございます。

 日本だけが何でなんだろうということで、政府の分析ですね、日本だけなぜ上がらないのか、その理由をお聞かせいただければと思います。

新藤国務大臣 まさに私も深刻だと思っています。

 このお示しいただいた資料のように、各国がGDPを伸ばし、そして賃金を伸ばしていく。また、労働生産性の改善も行われています。そういう中で、私たちは、問題を把握していながら、残念ながら結果を出すことができない、こういうこと、これはじくじたる思いがございます。

 我々は、何としてもここで、これを次のステージ、それは、今の与えられた労働条件なども含めて……(長妻分科員「理由ね、理由」と呼ぶ)はい。

 ですから、それはやはり、何といってもデフレが続いてしまった、そして、縮小、縮み傾向の中で、投資も手控え、業績も上がらない、賃金はカット、こういうものが連関してしまったということでございます。

長妻分科員 デフレが進んだということは、じゃ、なぜそれが進んだのか、そして、投資が進まない、賃金が上がらない、その根本理由なんですよね。

 やはり、当然、賃金というのは労働生産性とか物価とか労働分配率によって大きく影響されるわけでございますけれども、よく言われるのが、労働生産性が上がっていないからだ、こういうふうに政府は説明をするんですけれども、確かに、ほかの国に比べては上がっていないんですが、ただ、この二ページ目、大臣、見ていただきますと、これも同じように政府が作成して、昨年、厚労省の年金部会に出された資料でございますが、労働生産性、過去二十五年の平均伸び率、日本は一・三%。伸びてはいるんですね、少し。

 見ていただきますと、イギリスより伸びているんですね。イギリスは一・二%。フランスより伸びているんですね、労働生産性、過去二十五年。フランス、一・〇%。ドイツは一・一%。ドイツより伸びているんですよ、労働生産性。イタリアよりも伸びている、デンマークより伸びている、オランダより伸びている、ニュージーランド、ノルウェーより伸びているんですね。でも、賃金は日本だけが上がらない。

 これはいろいろな、政府の説明は、労働生産性を上げろ上げろ上げろ。これはもちろん重要ですよ、デジタル化とか人への投資、労働生産性を上げなきゃいけない。これはこれでまた大きな問題ですが、ただ、一定程度上がっているのに、それが賃金に回っていないんですよ、日本は。

 もう一つ、この表を見ると、これはJILPTの樋口元理事長に作っていただいた表なんですが、十三ページですね、これも非常に驚くのでございますが、黄色が労働生産性、稼ぐ力ですね。各国、日本とアメリカとユーロ圏、EUです。赤が一人当たりの雇用者報酬、実質ですね。そうすると、アメリカ、ユーロ圏は、見ていただきますと、労働生産性と比例して、追いついて、ほぼ同じように上がるんですね、賃金が。上がるんですね、ユーロ圏も。日本も労働生産性は上がっているんだけれども、微動だにしないんですよ、賃金が。

 では、この差はどこに持っていかれちゃっているんだ、賃金じゃないところに行っちゃっているんじゃないのか、日本特有のおかしな問題があるんじゃないかと思うんですが、これは原因は何だと思われますか。

新藤国務大臣 これは様々な原因が考えられますけれども、今委員のお話を伺っていて、結局、労働生産性がそれなりの伸びを示しても賃金が上がらないとするならば、それは売上げが上がっていない、業績が上がっていない、だから賃金に回すものが、なかなかそこに配分が行かない、それから価格が上昇しない。そういう経済的に動きがなかなか見えないところ、そこに原因の一因があるのではないかなと、今委員のお話を伺いながら、私はそのように思いました。

長妻分科員 労働生産性というのは、これは付加価値なんですね。ですから、付加価値は上がっているわけですよ。付加価値は上がっている。そこに富が生まれているわけですね。それを配分するパイはあるわけで、しかし賃金に回っていないんだ、こういうことなんですね。

 それで、例えば、十四ページを見ていただきますと、これは、賃金が伸びていないんですけれども、ぐっと伸びていますのは配当金とか内部留保、相当これは伸び上がっているわけですね。これも、付加価値をどこに分配するか、されたかという一つの証左になるんですけれども。

 そして、もう一つ気になりますのは、自社株買い。つまり、企業が得た富をどこに配分するのか。自分の株を市場で買う自社株買い、株主還元という趣旨もあるんでしょう。これが、二〇二三年の上場企業の自社株買い、どんどん拡大して、取得枠が約九兆六千億円。二年連続で過去最高になっているんですね。どんどんどんどん自社の株を買うということで。

 もう一つ、当然、価格転嫁が進まない日本、日本は中小企業などの価格転嫁が統計によると半分以下だと。欧米は九割以上なんですね。あるいは最賃、最低賃金が非常に低いというような、いろいろなもろもろもあるんですけれども、ただ、大きな企業を見ると、非常に、配当、内部留保、あるいは自社株買いに相当回っている。これは、アメリカは御存じのようにバイデン大統領が自社株買いに税をかけて、今度はそれを四倍に拡大しようと、税を。規制しようと。ヨーロッパ諸国は御存じのように自社株買いは原則禁止ですね。ところが、日本はフリーなんですよ。税はない。

 こういうような状況の中で、新藤大臣、自社株買いについて例えば規制するという、非常に株主至上主義に流れ過ぎているということがあるので、自社株買いへの規制など、対策というのは何かお考えはありますか。

新藤国務大臣 御指摘の自社株買いについては、私もちょっとチェックしますと、日本は対GDP比で一%になっています。アメリカはこれを三%まで使っていますから、格段の差があるということでございます。しかし一方で、イギリスにおいては一・二%で、やや同水準。

 今委員の問題認識は、要するに、利益の中から、また会社の業績の中から、賃金でないところにお金を使い過ぎているんじゃないか、こういうことだと思いますので、これはやはり是非改善はすべきだ。

 賃金をまず上げていく。賃金を上げるためには、前提となって製品価格、物価も上がっていかなければならない。それを上回る賃金の上昇、これを実現させようというのが今私たちの最も注力しているところでございまして、企業の運営内容について、これをどのように進めていくか。これは、おのずと、賃金を上げなければ会社の存続が難しくなっていく、また業績がなかなか上がっていかない、こういうものとの連携の中で考えていくべきじゃないかな、このように考えます。

長妻分科員 今、公益資本主義とも言われて、新藤大臣は新しい資本主義の担当大臣でもあられるので、もうちょっと深掘りをして、もちろん、自社株買いのみならず、余りにも株主還元というところが重視され過ぎて、いわゆる従業員、給与、処遇、これが置き去りになっている、ほかの国に比べてもということもありますので、お願いしたいと思います。

 そしてもう一つ。労働生産性が上がっているといえども、なかなかほかの国よりは、もっと上がっている国があるわけでございますが、非正規雇用の拡大要因というのはどう考えておられますか。

新藤国務大臣 非正規雇用、ここも結局、デフレが長く続いた中で、結局コストを抑えなきゃならない。その中で、正規をなかなか入れられない中で、生産を維持するための非正規というものが発生したというふうに思っています。ですから、非正規雇用の正規化というのはどんどん進めたいと思いますし、同一労働同一賃金、こういったものも進めなければいけないと思います。

 一方で、非正規といえども就業者自体が増えている、ここはやはり委員も共有していただけるんじゃないかなと思います。元々から比べれば、非正規も正規も含めて就業者は増えている、こういうところです。

長妻分科員 ちょっと、そうなのかという。原因なんですね、労働生産性が上がらない。

 資料五、これはかつて内閣府からいただいた資料なんですが、これをちょっと説明していただけますか。

新藤国務大臣 非正規雇用比率が高まると一般論として労働生産性は下がるのか、こういうことですか。これにつきましては、一般論でございますけれども、非正規雇用者は正規雇用者に比べて企業内での教育訓練による人材育成の機会が少ない。結果として、非正規雇用比率が高まると、必要な技能や労働者の熟練の蓄積がなされず、結果として労働生産性を押し下げる可能性がある、これは一般的な論として認識をしております。

長妻分科員 この点がほとんど政府の中で強く強調して言われていないんですね。私も同感なんですね。厚労省に資料七ページ、八ページの説明をいただけますか。

原口政府参考人 お答えいたします。

 令和四年度の能力開発基本調査によりますと、計画的なOJTを実施した事業所の割合でございますけれども、正社員については六〇・二%であるのに対しまして、正社員以外につきましては二三・九%。通常の仕事を一時的に離れまして行う研修であるオフJTを実施した事業所の割合でございますが、正社員については七〇・四%であるのに対しまして、正社員以外につきましては二九・六%となってございますので、正社員以外の実施割合はいずれも正社員の約四割という状況にございます。

長妻分科員 ですから、半分以下になっているんですね、研修も。そしてすぐに解雇されるということで労働の蓄積もない、さっき大臣が一般論としておっしゃったとおりでございまして、これについて政府・与党は非常に後ろ向きなんですね、非正規雇用を正社員化するということに対して。

 これは結婚率の低下も要因となっているんですね。少子化対策、昨日発表になりましたね、非常に深刻です。九十年ぶりに婚姻が年間五十万組を下回るということ、あるいは、出生数が想定より十年以上早く七十六万人を切ったということでございまして、十八ページの資料を見ていただきますと、非正規雇用と正社員との結婚率は倍違うという資料でございます。やはり、人口がどんどん減少する国に投資は来ません。そういう意味では、少子化対策というのも大変経済にとっても重要なことでございます。

 ちょっと政府の対策が的外れだというふうに強く思いますのは、例えば二十一ページを見ていただきますと、日本は結婚されておられる方からお生まれになるお子さんの数というのは激減していないんですね、実は。例えば一九七七年には二・一九人、それが最新の数字では二〇二一年一・九〇人ということで、少し減っているんですけれども激減じゃないんです。

 何が大きな理由かというと、やはり結婚がなかなか、されない方が非常に増えているということで、二十ページを見ていただきますと、五十年前に比べて男性の生涯未婚率というのが十六倍も増えているんですね。これは、男性でいうと、今は三人に一人の方は結婚しません。そういう世の中が来てしまったわけでございます。やはり、結婚を望んでいる人が結婚する、できるということであります。

 資料十九ページを見ていただきますと、これは国勢調査の数字なんですが、これも非常に考えさせられるものなんですね。これを見ていただきますと、では、独身の方を、どういう状態なのかというのを調べますと、日本は、三十代、四十代の独身者は、男女共に六割以上が親と同居しているということなんですね。そうすると、親と同居していれば、家事も親が手伝ってくれるでしょうし、あるいは家賃も余り要らないかもしれない。そういう独身者同士が結婚すると、家も買わなきゃいけない、借りなきゃいけない、家事も共働きですから分担しなきゃいけない。つまり、結婚すると生活レベルが圧倒的に下がるという方が多いわけですね。

 こういう状況になっているのは、分析、あるいはアンケート調査をしますと、雇用が不安定化して非正規雇用、そして家賃、住居費が先進国の中でもばか高い、そういうような要因があって、その中で、我々は家賃補助政策を出しておりますし、そして、非正規雇用を正社員化する。

 ドイツは、基本的には非正規雇用はいません。非正規雇用はいない。つまり、短時間労働の正社員ということで、これはボーナスもちゃんと払って、ただし、もちろん時間が半分であれば半分の給料と半分のボーナス、比例して、待遇は全く正社員と一緒にする、転勤もないということで、一部の管理職が、希望する方だけが転勤があるとか、こういうようなことは法律でできるんですね。

 我々は法律を何度も出していますけれども、与党はなかなか受け入れないということで、こういう根本対策をすれば、経済も、少子化対策にも資することになるというふうに思うわけでございまして、是非そこについて、大臣、一言お願いします。

新藤国務大臣 根本の問題があるという御指摘、これは共有しなきゃならないと思います。

 でも、それに加えて更なる根本の問題は、結局、会社側が人件費にきちんとコストをかけられない。人件費を上げられない、ですから正規も絞るし、さらには非正規はそういった働きづらい状況がある。

 一方で、非正規で働きたいという方もいらっしゃるわけじゃないですか。ですから、様々な多様な働き方があって、それから、正規雇用の在り方も、今委員がおっしゃったように、見直すときに来ているのではないか。私も、ドイツの例をこの間見ましたら、一つの仕事を二人で分けて、時間的にも違う時間でやっている、でも労働生産性は上がる、こういう仕組みもある。

 ですから、様々なこと、非正規雇用をできるだけ正規化できるように、また、非正規の皆さんの待遇というものをきちんとよくしていく、これは心がけたいと思います。

長妻分科員 今おっしゃったのはドイツのタンデム方式と言われるようなものだと思いますけれども、複数の管理職とか複数の社員で一つの仕事をするということで、それで労働生産性も相当上がっている。

 大臣いろいろおっしゃいましたけれども、不本意非正規という言葉もあって、本人は望んでいないのに非正規にせざるを得ない方もたくさんおられますし、人件費というのは、これはコストではありませんので。ドイツは、そういう非正規雇用がないという対応をしていて経済は伸びているわけですよね、日本よりも。GDPも抜かれましたよね、人口が少ないドイツに。ですから、そういうようなことも、ちょっと今の話というのは、従来型の発想ではないかというふうに思います。

 その中で、一つ、少子化対策の支援金というのがあって、総理大臣がおっしゃるのは、実質的に国民の負担を増やさないとおっしゃっているんですが、総理に更問いをした議員がいて、そうすると、総理がおっしゃったのは、国民負担率を上げない、それが実質負担ゼロという趣旨だ、こういうような趣旨の御答弁があるんですが、これは財務省に聞きますけれども、国民負担率の中には、例えば医療の窓口負担というのは入っているんですか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 国民負担率とは、租税負担と社会保障負担の合計額が国民所得に占める比率となってございますけれども、この社会保障負担とは、家計や企業などに義務的に御負担をいただいている社会保険料のことでございまして、今先生御指摘のございました、医療費の自己負担、いわゆる窓口負担などは含まれてございません。

長妻分科員 これは非常にトリッキーな総理の言い方だと思うんですね。実質自己負担ゼロ、つまり国民負担率は上げません、ああ、よかったな、国民負担は上がらないんだと。ただ、国民負担率は、今答弁があったように、医療の窓口負担は入っていないんですね。国民負担率を下げるというのは簡単にできるんですよ。例えば、あした、医療の窓口負担、全国民五割ですと言ったら、ぐっと国民負担率は下がる。国民負担率だけ見ると国民は喜ぶけれども、喜ばないですよね、自己負担は上がるわけですから。

 厚労省にお伺いしますけれども、資料十一、見ていただきますと、それを示した、我々が作ったポンチ絵なんですけれども、つまり、国民負担率を下げると喜ぶと思いきや、左の自己負担とか家族の負担とか社会の負担が増える。国民負担率を下げるには、例えば介護保険をあしたからやめますと言ったら国民負担率は劇的に下がるけれども、家族が全部面倒を見なきゃいけなくなって、大変なことになるわけですね。

 そういう意味では、厚労省にお伺いしますが、支援金、実質負担ゼロというのは、窓口負担を上げるということにもつながるのではないかと思うんですが、十二ページの資料にも、厚労省が、ちょうど二〇二八年までに検討する取組ということで、二〇二八年に支援金が満額になるわけですね、負担が。

 そのときに、窓口の三割負担を拡大するという趣旨が書いてあるので、そういうような狙いがあるということですか。つまり、病気の方、介護を受けなきゃいけない方に少子化財源を負担させる、こういうことにつながると思うんですが、そういうことですか。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年末に閣議決定された改革工程におきましては、将来世代を含む全ての世代にとって安心できる社会保障とするために、社会保障制度の改革や、これを通じた歳出の見直しに取り組むこととしておりまして、御指摘のございました医療や介護の窓口負担の見直しにつきましても、この改革工程の中で、「能力に応じた全世代の支え合い」という小見出しの下に、一定以上の所得の方の判断基準の見直しについてを検討項目として記載をしているところでございます。

 その上で、歳出改革として実施する取組につき……(長妻分科員「いや、歳出改革じゃなくて、一兆円の純増のところ」と呼ぶ)

 今申し上げましたのは、歳出改革をすることを通じまして、社会保険負担を抑制する効果を出すという意味での、その部分の、歳出改革の方のお話としてこの項目内容を入れているわけでございますけれども、この項目について実際に実施する取組につきましては、二〇二八年度までの各年度の予算編成過程において検討、決定するということになっておりまして、その際には、公平に支え合う仕組みを構築する中で、それぞれの取組が与える影響にも十分配慮しながら進めていくこととなると考えております。

長妻分科員 金に色がないので、窓口負担を増やすというのは、歳出改革だ、そっちの勘定だというんですけれども、金に色はありませんから、私は今の答弁というのは、支援金を増やす、国民の実質負担ゼロ、国民負担率を上げない、上げないために窓口負担を上げていくという、非常に結果として御病気の方とか介護が必要な方に少子化対策の財源を担わせる、こういうことで、これはどう考えてもおかしいと思うんですね。

 保険料を上げるということは、これは現役世代を直撃しますので、少子化対策や経済、可処分所得の減少につながって、非常にこれはいろいろな意味でマイナスになると思いますので、大臣も是非、ここの分野も関心を持っていただければというふうに思います。

 そして、日銀に最後お伺いしますけれども、いよいよ消費者物価指数が二十二か月連続で二パーを超えています。二十二か月連続。これでもまだ大規模金融緩和は続けるんでしょうか。

 日銀は、持続的、安定的に物価が二%を上回る状況が確認できれば大規模金融緩和を終えるとおっしゃっておられます。昨日発表になって、いよいよ消費者物価指数でもサービスが、今年一月、二・二%増えました。プラス。そして、財は一・九%ということで、日銀がよく言っている、財ばかりが上がっていてサービスが増えない、つまり、内的な力はまだまだ弱いとおっしゃっていたサービス、つまり人件費に直結しますね、そのサービスが財を上回ったんですね、初めて。いよいよ日銀は、大規模金融緩和、もう終わると、昨日の発表でですね、マイナス金利解除というふうに是非おっしゃっていただきたいんですが、いかがですか。

清水参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、昨日公表された物価等を拝見いたしますと、現在は、全体としては既往の輸入物価上昇を受けた値上げの動きというのは鈍化している一方で、サービス価格が緩やかに上昇しているという姿はあるという状況にございます。

 私どもとしましては、二%の物価安定目標の安定的、持続的な達成が見通せるような状況に至りますと現在の大規模金融緩和の見直しということ、修正するという段階に至るというふうに考えておりますが、現時点ではまだそうした見通しが実現するような十分な確度は持っていないというふうに考えてございます。十分な確度が持てるようになれば、見直しを検討していくということでございます。

 その際には、私どもとしましては、物価の状況、とりわけ現在におきましては賃金の動向ということもきちっと確認してまいりたいというふうに考えてございます。

長妻分科員 賃金がきちっと上がらないと、日銀は異次元の金融緩和をずっと続けるということで、輸入物価はもっと上がりますよ、こんなことをやっていたら。企業の本当の収益力もついていかないわけですので、そういう意味では、賃金のせいにしていると言ったら語弊があるかもしれませんが、お互い見合っているような状況だ。

 最後に、日銀は、ETF、株を買いまくって、今や簿価三十七兆円、時価六十兆円を超える状況になっています。先進国で中央銀行が株を買っている国というのはありますか。

清水参考人 お答え申し上げます。

 中央銀行が株を買い入れるということを金融政策として行っているのは、先進国ではほかにないというふうに理解してございます。(長妻分科員「金融政策以外は」と呼ぶ)金融政策以外という意味では、各国でいろいろ見ていきますと、例えば、外貨準備の中でそうした株を保有しているところもあるというふうに理解をしてございますが、金融政策としては行っていないというふうに考えてございます。

長妻分科員 私は本当に理解不能なんですけれども、相当前から買っていて、そして、結局、市場の不安心理を和らげるため買う、つまり株を買い支えする、株価を、それを公言されておられるわけですけれども、これは、今後ともこれを続けるということがあっては私はならないというふうに思います、企業のコーポレートガバナンスの観点から見ても。

 ほかの国は弊害が大きいのでそれをやめているわけでありますので、そういうようなことも御留意をしていただいて、政府におかれましては、日銀とも協力して、何とか賃金を上げるような努力をしていただきたい。従来の発想を捨てて、やはりドイツなどに学ぶ点は相当あると思いますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

牧島主査 これにて長妻昭君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、平主査代理着席〕

平主査代理 次に、泉田裕彦君。

泉田分科員 自由民主党の泉田裕彦でございます。

 内閣委員会に引き続きまして、新藤大臣に質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私、旧通産省から経済企画庁に出向して二年間、経済白書それから月例経済報告に携わりました。その際、各省の皆さんからもいろいろなお話を聞かせていただいて、思うところは様々あるんですけれども、本日は、税収が上振れが続いている、過去最高の税収が上がった、そして株価もようやくバブル期を超えて過去最高をつけたということで、経済の明るい兆しも見えてきているということだと思っています。

 今大変重要な局面で、これを新しい資本主義、経済財政政策にどう生かして国民の皆さんに経済の温かさを感じていただくか、これが重要だと思いますので、本日は、この基本的な政策の考え方をお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、新しい資本主義の大きな中心的な柱の一つは、やはり賃金ということになるかと思います。

 骨太二〇二三では、賃金と物価の好循環、これを目指す、そしてまた、構造的賃上げの実現、これが新しい資本主義のやはり骨ということになるんだろうということだと思います。企業が賃上げの原資を確保するためには、やはり価格転嫁ができなければその財源を確保することができない、名目で売上げが伸びていくということが必要なんだろうということだと思います。実質ではなくて名目で伸びるというところが大変重要な要素だと思っています。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、賃上げについては、さきの内閣委員会で、新藤大臣からも、地域の格差、業種や企業規模、こういったことにも目配りをして政策の企画立案をしていただけるという趣旨の答弁をいただきました。

 そこで、賃金と物価の好循環を達成するために、企業が賃金引上げのための原資を捻出できるように、業種や企業規模、マクロの数字だけではなくて、業種とかそれから企業規模にも目配りした価格転嫁が自律的に行えるような環境整備をしていくということが大事じゃないかと思っています。

 こういった環境整備、これは政策の企画立案のときに目配りをしていただけるかどうか、確認をさせていただければと思います。

新藤国務大臣 まさに、マクロの数字に加えて、各地域や、様々な業種、業態、そして、いわゆる日本の独特である下請構造、こういったところにまできちんと賃上げの流れができる、そしてそれは、適切な物価上昇とともに製品の価格も上がる、それから発注価格も上がる、その中できちんと賃金が上がっていく、この好循環をつくらなければいけないし、物価の変動に合わせて、賃金はそれを上回る形で常に上がっていく、こういう社会通念をきちんと定着させなければいけないというふうに考えております。

泉田分科員 ありがとうございました。

 目配りをして政策立案していただけるということで、是非、与党の一員としても頑張ってまいりたいと思います。

 そこでなんですけれども、国の政策によって賃上げの原資が捻出できないという業種が存在しているというのも、これも事実であると思っています。

 具体的には、世界主要国の中で、日本の製薬市場、これだけがなぜか横ばいで、全く増えていません。売上げを増やそうにも、薬価を国が決めちゃうということで、市場が拡大しない。結果として何が起きているかということになるんですけれども、ドラッグラグ、日本だけ薬が使える期間が遅れるということに加えて、ドラッグロス、日本だけ新しい薬が使えないということも起きています。

 ドラッグラグというのは、厚労省が薬事承認を遅らせているんじゃないか、けしからぬじゃないか、こういう話が一部あったんですけれども、今はそうじゃないんですよね。ドラッグラグ、ドラッグロスが生じるのは、日本市場に世界の新しい薬を投入してももうからない、よって日本には薬事承認しないという、これはもう危機的な状況になっている。日本人だけちゃんとした薬が使えない。

 製薬会社にしてみれば、何が起きているかというと、世界の中でマーケットが拡大するのに日本だけ拡大しなければ、何とリストラが起きている、早期退職を募集するということが起きています。賃金原資を獲得するのに首切りをしていたら、日本の製薬産業の競争力は落ちるばかり、かつて世界第二位の競争力を持っていたのに、今や新しい薬が使えない国になってしまっている。こういうことになっているわけです。

 一方、税収は過去最高と上がってきているわけですので、これは頭を押さえる必要があるのかなと。上がってきているところはちゃんと入れて、成長して原資を確保していかなければ、競争力がなくなる、賃上げの原資というのが確保できないという状況になっているということじゃないかなと思っています。

 そこで、政府参考人にお伺いをしたいんですけれども、薬価が毎年引き下げられているという状況の中で、製薬会社はどこから賃上げの原資を捻出すればいいとお考えなのか、お伺いしたいと思います。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 毎年の薬価改定につきましては、平成二十八年の四大臣合意でございます薬価制度の抜本改革に向けた基本方針に基づいて、令和三年度から実施してございます。

 薬価改定につきましては、市場実勢価格を踏まえて行うものでありますけれども、不採算となっている医薬品につきましては薬価を引き上げる制度がございまして、令和五年度及び令和六年度の薬価改定では、原材料費の高騰や安定供給問題に対応するために、特例的な薬価の引上げも行ったところでございます。

 御指摘の製薬企業における賃上げについてでございますけれども、様々な要因を踏まえて行われるものでありますことから、一概にその原資についてお答えすることは難しいというふうに考えてございます。

 その上で、ほかの産業と同様に、必要な人材を確保する観点から、賃上げを行うことは必要であり、事業者による生産性の向上などを通じた収益性の向上などが重要であると考えてございます。

泉田分科員 日本の製薬市場が伸びていないということは、プラスアルファで入ってこない状況というのが四大臣会合で方針として示されているということだと思っています。経済の好循環のためには、やはり売上げを増やさなければ、単にコストカット型経済になっていくわけですよね。効率化を進めるということは、コストカットしなさいということです。現に早期退職なんというものが起きているという中で、とても経済の好循環をするとは思えないということだと思います。

 それから、医薬品市場が伸びていないということが何を意味しているかというと、要は、上げる部分、例えば新薬創出加算というのがあったとすると、ほかの部分を切っているということなんですよね。それでバランスを取っているということですから、結果として起きるのはリストラ、縮み志向の経済ということになるんじゃないかと思います。

 こういう現象を改めて、せっかく伸びている税収、こういったものは一部を充てて、経済の規模が拡大すると同時に企業も投資をできるようにする、こういうことが必要なんじゃないかなと私は思うんですけれども、四大臣会合のお一人として経済財政担当大臣が入っているわけでございます、今後、日本の、賃上げできないところの環境整備ということの一環として、四大臣会合の在り方をどうするのかというのは是非考えてみていただきたいと思うんです。

 二〇一六年、これは薬価引下げを目標とした大臣合意ということになっています。賃上げ原資を確保するためにどうしたらいいか一度考えてみていただきたいんですが、大臣の感想を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 今の御指摘は、とても重要な要素をはらんでいると思っているんですね。私も、製薬の方だとか、それからスタートアップの皆さんと話をすると、薬に関しては、日本には余り入る気持ちにはならないということを最初に言われてしまう。ですから、私たちとして、やはりできるだけの環境改善をしなきゃいけないという思いはあります。

 そして、元々の四大臣合意というのは、二〇一六年、これは、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進、そして国民負担の軽減と医療の質の向上、ここは大事なことなんですが、要するに、当時、歳入が伸びない中で、経済が伸びない中で、歳出だけは高齢化の進展に伴ってどんどん伸びていってしまう、こういうときの考え方と、今私たちは、GDPも伸ばす、それから賃金も上げる、イコールそれは売上げが上がるということですから、その中で、やはりイノベーション、それから努力が、参入のしやすい、そういう経済というのをつくっていくという意味において、この薬価の問題をどのように取り上げていくか、是非検討したいと思っています。

 私たち、そうはいいながらも、かなり今回踏み込んでやっております。ドラッグラグやドラッグロス、この問題についても、革新的新薬の特許期間中の薬価維持、これはイノベーションの適切な評価とか、随分踏み込んだことはやり始めていますので、更にどういったことができるか検討を続けていきたい、このように思います。

泉田分科員 ありがとうございました。

 新藤大臣から認識を披露していただきまして、期待を持てる人は多くいらっしゃると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、経済財政政策なんですけれども、先日の内閣委員会の中で政府委員から、G7各国の中で、政府の純利払い費のGDPに対する比率の高い国、つまりリスクの高い国はどこかとお伺いしたところ、イタリアとイギリスであるというお話がありました。逆にリスクの低いところはということでいいますと、日本とカナダ。つまり、日本の財政のリスクというのは、世界的に見ればそんなに高くない、むしろG7の中ではいいということになっているわけです。

 それから、国債がデフォルトするかどうかの基準ということなんですけれども、日本の国債がデフォルトしたときの保険料に相当するソブリンCDS価格、これもドイツに次いで低いということで、マーケットは日本を高く評価をしているというのが現実だと思っています。

 そこで、政府参考人にお伺いしたいんですけれども、基礎的財政収支の均衡、これが仮にないとしても、利子率と経済成長率を比較をして利子率が経済成長率よりも低ければ財政は安定化する、ドーマー条件なんですけれども、こういう経済理論があるわけですが、この理論は認識されているかどうか、お伺いしたいと思います。

林(幸)政府参考人 お答えいたします。

 債務残高GDP比の動向は、過去の債務残高GDP比が成長率と金利によって変化する要因と当期のプライマリーバランスによる要因の組合せによって決まります。

 その下で、ドーマー条件とは、財政の持続可能性を考える上で一つの目安として考えられており、当期のプライマリーバランスが均衡しているのであれば、成長率と金利が同じとなる場合に債務残高GDP比が一定となる数学的条件を示したものであると考えております。

 成長率が金利よりも高い場合には、プライマリーバランスが赤字でも債務残高対GDP比が低下することはあり得ますけれども、成長率も金利も民間の経済活動の結果いかんに大きく左右されるものでありますので、成長率が金利を上回ることもあれば下回ることもあると承知しております。

泉田分科員 民間の経済活動によって変わるという認識ですけれども、それはマクロ経済政策によって影響を受けるわけで、マクロ経済政策をどうするかということを抜きに民間企業のせいにするというのは、それはちょっと違うんじゃないかなというふうに思います。

 やはり、ちゃんと、GDPギャップがプラス四%程度にならなければ安定的な賃金と成長の好循環は起きない、これは歴史的にそうなっているわけで、よく多くの人が心配している、金利が上がると国債費の償還額が増えて財政が破綻するのではないかと言われますけれども、大体、金利が上がるときというのは経済がいいときです。直近でいえばバブルのときということになるので、このときはむしろ財政は好転しているというのが歴史的事実なわけですから、民間企業が自由に活動するのでどうなるか分かりませんというのは、財政政策を考える上で、もう少し過去を見られた方がいいんじゃないかなということを指摘をしたいと思います。これは指摘にとどめておきます。

 そういった中で、これは大臣に聞くのは大変恐縮だと思っているんですが、あえてお伺いしたいんですが、建物を建てるということは投資だとお考えでしょうか、消費だとお考えでしょうか。

新藤国務大臣 建物を建てること、これは、住宅建設は投資ということでGDPの定義上位置づけられているということでございます。

泉田分科員 ありがとうございました。

 GDPの定義もそうだし、あと財政上も、建設国債と特例国債の違いは何なのかというと、将来世代にわたって負担をするものは建設国債で出しても負担の均衡だからいいじゃないか、特例国債はちょっと限定的にやろうねということになるんですが、経済という観点で見たときに、建物を建てるということは投資であり、消費であり、ケースによって違うということだと思います。

 どういう場合に投資になるかというと、アパートそれからマンション等を建てて貸出しをするということになれば投資です、将来お金が入ってきますから。一方、別荘を建てたら、コストだけかかって、何ら収入は入ってこないわけです。これは、建物を建てても、消費ということになるわけです。

 だから、国家財政を運営する際に、何が投資で何が消費なのかという区分がないんですよね。あくまでも、建設国債、将来世代との負担の均衡だけであって、この施策をやると将来税収が上がるのか、この施策をやると将来負担が増えるのかということで本来なら分けるべきだと思います。それが分かれていないから、基礎的財政収支で投資の部分も含めて頭を押さえちゃうということになっているんじゃないか。

 私は、旧通産省にいた時代、自由主義、それからガット・IMF体制という中で、政府が介入してはいかぬ、とにかく民間の活力を自由に引き出せということ、それから、日本の黒字を減らすためにトヨタの工場を外に出せ、さらには、そこに附帯する一次下請も含めてどうやって出すかという仕事をいっぱいやらされたんですけれども、こんなことをしていていいのかという疑問を感じながらやっていたというのが正直なところです。

 そういった中で、政府の支出というものを頭を押さえて投資を避けるとどうなるかというと、結局は縮み志向のデフレ経済になるということですよね。投資の部分については、回収できる見込みのところはそれこそ財務省に査定してもらっていいと思うんですけれども、積極的にやらないといかぬ。

 アメリカにしても中国にしても、国家資本主義という形で国家が介入して将来のリターンをどう増やすかとやっている中で、日本だけが全部頭を押さえて、投資も駄目よとプライマリーバランスの中に押し込めて、予算は一円でも増やしちゃいかぬというようなことをやっていれば、次の世代、日本人は飯を食えなくなるんじゃないかと大きな危機感を感じているわけでございます。

 そこで、これは政府参考人、先ほどの答えについては、もう一度、是非、日本の国家戦略はどうあるべきかということを考えていただきたいということをお願いをいたしまして、次の質問に行かせていただきたいと思います。

 個人金融資産の話なんですけれども、個人です、企業じゃありません、二千兆円、日本にはあるということになります。これは国家戦略で考えたときに、私はアラブの国を思い出します。これも石油部にいたとき、アラ石の利権を確保するためにアラブと交渉する施策に携わったんですが、彼らは、油が枯渇したらどうやって次の世代に飯を食わせるのかと真剣に考えていました。

 二つ戦略があって、一つは、日本のような国から科学技術を導入して技術立国を目指す。これは結構言われました。例えば、砂漠の国なので、逆浸透膜を作って海水から真水を作り出す技術、こういった会社に、出ないかと、向こう側の要求に応じて説得してみましたけれども、周りに関係企業がないから駄目ですといって断られたり、それから、石油化学なんかは石油が出る国だからいいじゃないかと言っても、関連企業がないからちょっと無理ですといって断られて、日本から企業進出というのはやはりアラブの国というのは相当難しいなというのを実感しています。

 もう一つの彼らの戦略というのは、石油が出る間にお金をためて金融国家になって、その利子で国民を食わそう、これが金融国家論でアラブの国は持っているということでございます。

 日本は世界最大の債権国です。そして、対外純資産も中国の倍ぐらいある資産国なわけで、実は、アラブの状況はもう日本で実現をしている。

 それが個人金融資産二千兆円ということに表れているわけで、これをちょっと計算してみると、一人当たりでいうと、今の人口で約千六百万円ということになります。四人家族の標準家庭であれば六千四百万、平均してあることになります。六千四百万円、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人ですけれども、これは二十年間、年平均四%で運用できていますから、国家が預かって四%で運用すると一世帯当たり二百五十万円配ってもいいよという国が日本ということになるわけです。

 これは人口が半減したらどうなるかというと、金融資産が変わらなきゃ、相続税で納めるのかどうするのか。人口が減っていく過程でこの個人金融資産はどうなるのと聞いたら、考えたことがないということで、事務方には今回聞きませんけれども、この個人金融資産二千兆円をもって所得の再配分ができるように国で運用すれば、人口が半減したところで、五百万円配っても構わないという国であるわけです、既に。

 そうすると、日本の国家戦略として、この持っている金融資産をどういうふうに使って将来の世代が食っていけるようにするのかというのも今考える重要な時期に来ているのではないかなというふうに私は考えております。

 そこで、政府参考人にお伺いをしたいんですけれども、高齢化社会が進展をしている場合に、相続が発生すると金融資産がどうなっていくのか、聞かないと言いましたので、ここは聞きません。それで、その後、仮に相続税として徴収して国債償還に充てちゃうと、個人金融資産も縮小していくということになるのか。マクロで見ると、この個人金融資産というのは高齢化が進んで相続が発生していくとどうなるのか、今の認識をお伺いしたいと思います。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 相続が発生した場合も含めてちょっとお答えしておきたいと思いますが、相続税が発生した場合には、税法に基づきまして適切に相続税を納めていただくことになるわけでございますけれども、高齢化に従いまして、相続税を始め、これをもって家計金融資産にどの程度の、いかほどの影響を与えるかどうかについては、なかなか一概には申し上げられないのではないかというふうに考えてございます。

 それで、金融庁といたしましては、新しいNISAを始めさせていただきましたし、それからコーポレートガバナンスの推進、あるいは金融経済教育などなど多様な取組をさせていただくことによりまして、家計が安定的に資産形成に向けてより多くの資金を貯蓄から投資に向ける、さらに、その資金が企業の成長の投資資金に回って企業価値が向上する、更に言えば、そしてその恩恵が資産所得という形で家計に還元されていくということで、成長と分配の好循環を実現してまいりたいと思ってございます。

泉田分科員 ありがとうございました。

 相続税収でいうと数兆円しかないんですよ、年間。二千兆円に対して数兆円だから、ほぼ影響がないということになって、これから高齢化社会が更に進展して大量に入ってくるのかというと、どうもそういうことでもないらしい。

 一方、個人金融資産というのは国債発行残高に比例して増えていっているという現実があるわけです。政府が支出すれば、それは誰かの所得になるわけです。だから、所得になって金融資産がたまっていく。前に、政府、財務省だったかなと思うんですけれども、コロナのときに、予算を支出したらお金を使わずにためちゃったみたいな答弁がありましたけれども、それは違うので、民間部門にお金が入ってきたら、誰かの所得になって、それがまた回っていくということで経済の規模が拡大しているのであって、入ってきたやつを全部貯金で持っているという認識は私は違うんじゃないかなというふうに思っています。

 いずれにせよ、この二千兆円という個人金融資産、僅か数か月でまた百兆円ぐらい増えたりするんですよね、今のような状況であれば。したがって、この金融資産を次の世代に向かって効果的に使うような金融国家戦略などというものも是非考えてみてほしいなと思っているんですが、大臣にお伺いしたいと思います。

 日本のこの二千兆円を超える個人金融資産、国全体で運用して所得の再配分をしていけば、それこそ新しい資本主義のような気もするし、世界で見れば、アラブ諸国はそもそもそういう政策で国家運営を将来やっていこうと考えている国もあるわけであります。

 さらに、これをGPIFにもし運用してもらえば、年金保険料を上げなくていいかもしれないんですよ、だって、年率四%で運用が実績として出ているわけですから。最初の頃は二千億赤字になりました。最初の数年ですよね。配当とそれから評価益というのを合わせると、今百二十三兆円ぐらいあるんですか、という状況になっていますから、数千億ぐらい下がっても、誤差の範囲内ということにもう既になっているわけです。

 この百二十兆円というのは消費税の五年分の収入に、歳入に当たっているわけで、こういう日本が持てる力というものを、是非、金融国家戦略というような形で検討してみてほしいと思うんですが、大臣の感想を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 私たちは、まず、ここで岸田総理が自ら資産運用立国というものを立ち上げました、これを是非推進していきたいと思っているわけです。

 今委員がいろいろと主張していただいたこと、要するに、家計の現預金が投資に向かって国民の資産所得が増えていく、こういう方向性はとても重要だという意味では、これは認識を共有できるというふうに思います。

 私もかねてよりずっと思っていることなんですけれども、家計金融資産二千兆円ある中で、我が国の場合は、現預金が五三%で突出している、株式が一四%。アメリカは現預金が一三%に対して株式が四〇%と、運用の中身が全く違っていますよね。

 ですから、こういったところを、やはり我々とすれば、資産運用という観点から、それぞれの方々がより豊かさを実感していただけるような、またそれが、経済が全体として回っていく、こういう仕組みの中でうまく活用していただければな、このように思っているわけです。

泉田分科員 ありがとうございました。

 日本は、先ほども申し上げましたけれども、世界最大の債権国です。世界最大の債権国の国民が、何か、財政が悪くてきゅうきゅうとして、負担ばかり増えていると言われる。一方で、世界最大の債務国はアメリカです。世界最大の債務国のアメリカが、国家資本主義で、中国と競争して、我々は一位を譲らないぞという形でどんどん所得を増やすということをやっている。何で、一番お金を持っている国の国民がきゅうきゅうとして、お金を最も借金して、ない国が隆々として国家運営しているのか。これは経済財政政策の考え方に国の差があることによって生じているとしか思えないというのが正直なところです。

 逆に言うと、日本は、世界の中でも数か国しかない、自力で国民に富を配分できる国であるという認識で、この二千兆円を是非未来への光にしていただくということをリーダーシップを取ってやっていただきたいということをお願いをいたしまして、時間ですので、質問を終わらせていただきたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。

平主査代理 これにて泉田裕彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、菊田真紀子君。

菊田分科員 立憲民主党の菊田真紀子でございます。

 本日は、能登半島地震に関する対応について御質問させていただきたいと思います。

 まず、お亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。

 私の地元新潟県でも大変大きな被害が生じまして、私は、発災翌朝から、被害の大きかった新潟市の西区に入らせていただきました。家や車庫が傾いたり、断水のために給水所に並んだり、避難所に身を寄せる人たちが大変多くおられまして、本当に皆様、お正月にもかかわらず大変な思いをされているということで、心が痛みました。

 翌週には、地元の県議や市議たちと一緒に、泥上げのボランティアにも参加をいたしました。液状化で道路が裂けておりまして、泥水が地下から湧き出している状態、まるで水害の後のような被害状況でございまして、あっという間に、数時間で数百の土のうが積み上がるほど、大量の泥でございました。これでは高齢者や独り暮らしの世帯で泥上げするというのは本当に大変なことだということで、痛感したところでございます。

 今日はいろいろ質問させていただきたいのですが、まず、地震により被災した文化財への修繕、復旧について取り上げたいと思います。

 今回の能登半島地震では、多数の文化財も被災をし、損傷することとなりました。

 言うまでもなく、文化財は、長い歴史の中で先人たちの努力によって生み出され、今日に伝えられてきた、人類の貴重な財産であります。文化財の保護を図ることは、文化的な基盤を維持し、発展させる上で重要な意味があるわけでございます。

 まず、今回の能登半島地震によって文化財にどのような被害が生じたのか、文化庁にお尋ねします。

小林政府参考人 お答えいたします。

 今般の能登半島地震では、各地の木造の文化財建造物、特に、輪島市の黒島地区の被害や、輪島塗の工房や工具の被害、金沢城跡の石垣の崩落を始めとしまして、相当の被害が生じております。先ほど先生の方からお話がございました新潟県でも、旧笹川家住宅など、被害がございました。

 具体的には、昨日時点、二月二十七日時点でございますけれども、各自治体を通じ文化庁として把握している情報では、新潟県、富山県、石川県などの被災地域において、国指定等文化財が百十二件、国登録有形文化財百五十件など、合計、昨日時点で三百四十一件の文化財の被害があると承知しております。

菊田分科員 ありがとうございました。

 国指定と地方指定、合わせて三百四十一件もの文化財が被災したということでございます。

 震災の発生を受けまして、何より優先すべきは人命救助であることは当然のことでありますけれども、その上で、先ほど申し上げました文化財の重要性に鑑みまして、文化財の保護、震災被害からの修繕等をどう図っていくのかを考えていくことが必要であります。

 被災した文化財の修繕に向けてどのような国庫補助の仕組みがあるのか、復旧のスケジュールはどのようになっていくのか、文化庁に重ねて伺います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 先生が御指摘されたように、文化財は、国民共有の財産であるとともに、地域の誇りであり、災害からの復興段階では被災地の心の支えとなるものとして、復旧支援に全力で取り組んでいくことが必要と私どもも考えております。

 現在、各自治体や国立文化財機構等の関係機関と連携しまして、文化庁の専門職員等の現地派遣を実施しておりまして、被害状況の早急な把握と緊急的な保全に速やかに取り組んでいるところでございます。

 あわせまして、文化財の復旧に関しましては、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージに位置づけられたところでございまして、被災地からの声に真摯に耳を傾けながら、被災した文化財の所有者や担い手などの状況に応じまして、必要な財政支援を行ってまいります。したがいまして、今の時点で、いつ何がと明確にお答えすることは難しい部分もございますが、現地の状況に応じて必要な財政支援を行ってまいりたいと思います。

 なお、災害復旧につきましては、国指定等文化財への災害復旧に対する国庫補助について、補助率を二〇%かさ上げするとともに、地方自治体の負担部分につきましては、特別交付税措置により地方負担の八割を措置することになります。

菊田分科員 ありがとうございます。

 続きまして、私の地元の新潟市南区にある国の重要文化財、旧笹川家住宅の修繕について取り上げたいと思います。

 この住宅の所有者だった笹川家は、安土桃山時代にこの地に移住したと言われておりまして、昭和四十五年、一九七〇年にこの地を離れるまで、十四代三百年以上にわたって続いた名家であります。表座敷や土蔵などは江戸後期に建設されたものですが、表門は安土桃山時代からのものでありまして、越後時代の屋敷構えとして非常に貴重な文化財であります。昭和二十九年、一九五四年に国の重要文化財に指定されています。

 子供たちの郷土学習の、ふるさとのいろいろな歴史を学ぶ学習の場として活用されたり、また、季節ごとのイベントに、住民参加で活発にいろいろなイベントが開催されるなど、地域の発展、交流にとっても非常に重要な役割を果たしてきました。

 この旧笹川家住宅も今回の能登半島地震によって被災をし、大きな被害が発生しています。室外の状況では、土蔵のしっくいの壁に亀裂が生じ、剥落も発生、室内も、しっくいの壁が亀裂、剥落、壁紙の破損や建具のゆがみ、脱落が生じました。私も現地を視察してまいりましたが、文化庁の方もいち早く現地を訪問していただいたということで、大変感謝しております。

 旧笹川家の修繕を進めるに当たって、なかなか一筋縄ではいかない経緯がございます。それは、平成二十九年に旧笹川家住宅の保存活用計画が作成されたのですが、計画に基づく耐震基礎判断を実施したところ、建物十一棟のうち六棟が耐震性能の不足というふうに診断されてしまいまして、創建以来初めての根本修理が必要となりました。そこで、整備基本計画を策定しようとしていたところに、今回の能登半島地震で被災をしてしまったのであります。

 今回の被害の修繕だけでなくて、耐震化まで含めた大規模な修繕が必要となっています。これをどうやって進めていくのか、新潟市も大変頭を悩ませているところであります。

 文化庁として旧笹川邸の被災状況をどう認識されているのか御答弁いただくとともに、是非、新潟市とよく連携し、できる限りバックアップしていただいて、旧笹川家住宅の応急的な修繕と大規模な修繕を組み合わせて進めていただきたいというふうに思うのですけれども、文化庁として今後のスケジュールをどのように見据えておられるのか、お考えをお答えください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 国の重要文化財である旧笹川家住宅につきましては、今先生の方からかなり詳しく御報告いただきましたように、土壁の崩落を始めとします、門が外れてしまった箇所ですとか、多数の被害の報告を受けているところでございます。

 被害状況の詳細を確認するため、先ほど御紹介ございましたように、新潟市と調整の上、一月三十日に文化庁の専門職員である調査官が被害状況を調査し、復旧に向けた技術的指導を行っているところでございます。

 今後の復旧に当たりましては、今御紹介いただきましたような根本修理、解体修理と、おっしゃったように当面の復旧、この組合せ、それから、新潟市さんの方からは公開もしていきたいというようなお話も伺っておりまして、こうしたいろいろな事情を踏まえながら、文化庁にできます技術的指導とともに、先ほど御紹介させていただきました国庫補助による支援を行ってまいりたいと思います。

 明確な、具体的なスケジュールは今検討、調整中だというふうに伺っております。

菊田分科員 ありがとうございます。

 非常に、応急的な修繕と長期的に見た大規模な建て直し、これを組み合わせてやっていくという難しさはありますけれども、是非、新潟市の意向を踏まえながら、文化庁として最大限のバックアップをお願いしたいと思います。

 私、この旧笹川家住宅を視察してみて改めて思ったことは、現代の技術とか材料、工法ではなくて、当時の技法を使用するということが望ましいという観点に立ちますと、修繕というのはそう簡単なことではないなというふうに改めて思ったわけでございます。つまり、特殊な技術を持つ職人をきちんと確保できるのかという点も心配でありますし、先ほども御報告がありましたが、三百四十一件もの文化財の被害が出ていることからしますと、今後、文化財を修繕する技術者が足りないのではないかというような懸念もあります。

 こうした職人、技術者の人手不足に関する問題意識、それから、文化財を今後維持していくために、貴重な人材の確保策にどう取り組んでいるのか、文化庁に再度お尋ねします。

本田大臣政務官 菊田委員にお答え申し上げます。

 まず、文科省がこれまで進めてきている人材養成について御説明をさせていただきます。

 我が国の文化財を後世に確実に継承していくためには、委員もおっしゃったように、伝統的な文化財の修理技術、技能を用い、適切な修理を行うことが重要です。

 このため、文部科学省では、文化財保護法に基づき、文化財の保存に欠くことのできない修理技術、技能を選定保存技術として選定し、その保持者、保存団体が実施する後継者養成を支援しております。そして、文部科学大臣決定により、令和四年度からの五か年計画である文化財の匠プロジェクトを決定し、文化財修理等に係る人材養成の支援の充実等を計画的に進めてきているところでございます。

 そして、被災文化財の復旧についてでございますけれども、多くの修理技術者や技能者に参画していただく必要があることに加え、長期間にわたる修理も想定されることから、選定保存技術保持者、保存団体や文化財所有者等とも調整をしながら、計画的に実施していく必要があると考えております。

 文部科学省としては、引き続き、被災文化財の復旧に当たっても不可欠となる文化財修理に係る人材の育成について、全力で取り組んでまいります。

菊田分科員 貴重な文化財を維持していく上で必要な、重要な職人さんが、例えば石川でも多く被災をされているわけでありますので、かなり大変だというふうに思います。こうした職人さんたちをしっかりと今後も確保できるように力を尽くしていただきたいというふうに思います。

 続きまして、松村大臣に質問させていただきますが、大臣には、先日、我が党の能登半島地震に関する第三次御要望を大臣室でお受けいただきまして、大変ありがとうございました。お忙しい中、時間を長時間割いていただいて丁寧に御対応いただいたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 被災者の声の中で私が一番多く聞くのが、罹災証明書がなかなか交付されない、交付が非常に遅いという不満でありました。罹災証明書が交付されないと、被災者生活再建支援金も支給されません。住宅の応急修理の支援も受けられません。なりわい再建支援事業も受けられません。

 そもそも、罹災証明書が交付されて、自宅の被害が全壊に当たるのか、大規模半壊になるのか、中規模半壊になるのか、これがはっきりしないと、自分が一体どのような支援メニューをどれだけ受けられるのかが分からず、生活再建に向けた見通しが全く立たないという状況でございます。

 そこで、罹災証明書の交付状況を確認させていただきましたが、二月二十六日の取りまとめで、申請数の六六%に罹災証明書が交付されたということでございました。ただ、一月末の段階では二四%しか交付されておらず、遅れに遅れていました。

 もちろん、自治体職員の皆さんが本当に一生懸命作業していることは承知しておりますし、感謝しかございませんけれども、調査済みの件数に対してなかなか交付が進まなかったという理由はどういうものなのか、どういう理由なのか、大臣に伺いたいと思います。

松村国務大臣 まず、菊田委員におかれましては、先般もおいでをいただきましてありがとうございました。また、復旧復興に関しましては、御党におかれましても大変な御尽力、御協力をいただいていることに感謝を申し上げたいと思います。

 その上で、罹災証明の発行ということでございますけれども、今委員がお話しになったように、二月の二十六日時点においては、三県で、まず、申請数は十万一千件ございまして、調査済数がこれを上回る十二万五千棟ございます。交付の発行済み数が六万七千件でございまして、六六%ということになっております。

 一月は、なかなか、初動からの延長でございまして、申請数も少なかったというのもございますが、やはりもう二か月たちまして、スピードアップ、また、この時期にスピードアップをせねばならないということで、被害件数の審査の簡素化でありますとか、また、申請数よりも被害の調査件数が上回っておりますのは、市町におきまして、申請を待たずに先にもうやりましょうという御尽力をいただいた結果だと思っております。

 これに対して、罹災証明につきましては、調査後、判定結果に誤りがないかなどの確認作業も必要でございますし、実際に罹災証明が交付されるまでには一定の時間を要しております。また、一旦罹災証明を受けたものの、やはり納得するまで再調査をしてほしいというのは、丁寧な対応も必要でございまして、こういった様々な理由で若干御不安を与えているところもあるかと思いますが、これからさらに、しっかりとした審査を行いまして、何よりもやはり安心を与えることだろうと思っておりますので、地元の市町村のバックアップにしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

菊田分科員 ありがとうございます。

 罹災証明書の発行が遅いということは、過去の震災時にも度々指摘されてきました。

 昨年の令和五年八月八日に衆議院の災害対策特別委員会の閉会中審査が行われまして、我が党の寺田学議員が、罹災証明について当時の谷防災担当大臣と質疑を行いました。

 この閉会中審査は、令和五年七月に秋田を中心に発生した大雨による被害に関連して行われたものですが、地元の寺田議員は、災害から二十四日たって初めて罹災証明書の発行が始まったということを指摘されまして、少しでも罹災証明を早く交付してほしい、手続を簡素化してほしいということを何度も訴えておられました。

 この質疑の中で谷大臣は、御自身の経験を語られまして、地元で万を超える浸水被害に遭ったときに罹災証明の問題はほとんど聞かなかったと、罹災証明に対する不満を聞いたことがないと、私たち委員からすると驚きの発言をなさったんですね。その後、寺田議員の指摘を受けまして、谷大臣は、質疑の最後になりまして、「いずれにしても、できる限り早くするために、いろいろ我々としても検討を進めてまいりたい」、このように答弁されました。

 松村防災担当大臣は、もう実際に被災地に入られて、罹災証明書の発行の遅れに対する不満というのもお耳にしたことがあったというふうに思いますけれども、この昨年八月の谷大臣の国会答弁から現在まで、政府において、罹災証明についてどのように検討されて、どう簡素化されたのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えをいたします。

 罹災証明書は、被災者支援の判断材料として幅広く活用されており、被災者に対し、できるだけ速やかに交付されることが大変重要であると考えております。

 ただいま委員から御指摘いただきましたとおり、昨年八月に開催されました災害対策特別委員会におきまして、当時の谷大臣から、罹災証明書の迅速な交付について検討を進めていく旨発言をされたところでございます。

 今般の災害に際しまして、被害認定調査の迅速化に向けた留意事項等を自治体に周知をしたところでございまして、その周知の中で、例えば、航空写真の活用とか、地域一括での全壊の判定とか、デジタル技術を活用したリモート判定等、そうしたことをお示しして、今回の被害認定調査において積極的に取り入れられて迅速化が図られているものと承知しております。

菊田分科員 一月末の時点で、申請数約六万八千件に対しまして、約四万七千棟が調査済みになっています。約六九%が調査まで終わっているのに対して、そこから先、交付されたのは二四%にすぎません。つまり、調査が終わっても交付までに時間がかかっているというのが実態であります。

 なぜこれだけ時間がかかっているのかということをしっかり検証して、このネックを解消するために、本当に真剣に、早急に検討する必要があると思いますけれども、防災担当大臣、いかがお考えでしょうか。

松村国務大臣 御指摘の罹災証明の迅速な発行というのは、おっしゃるとおりだと思っております。

 ただ、災害によっては、やはりいろいろなパターンがあると思っております。私も地震と水害を経験いたしましたが、水害の罹災証明の方がやや時間がかかったかなと。と申しますのは、やはり、再度の調査をしてほしいという声が多かったと思っております。地震だと一見して、傾いている、もう壊れているというのが分かりますが、水害の場合は、基礎が鉄骨であったり木造であったり、そうしたことで、隣は全壊なのに何でうちが半壊なんだ、こんなお話を現場でいただきながら、丁寧な対応をやってきた記憶がございます。その結果、谷大臣からの御発言も基にしまして、やはり被害認定についての調査、これは、今政府参考人から答弁がありましたような形での簡素化を図りながら、迅速化を図ってきたところでございます。

 また、二月に、やはりマンパワーが不足するだろうということで、近隣の市町の職員の皆さんや、また、内閣府から派遣しておりますリエゾンの皆さん方にいろいろ伴走支援をやっていただきながら、そこの充実を図り、現在六六%まで引き上げることができたと思っております。

 この後は、やはりある一定の検査、あるいは送付、こういったものの簡素化がどういうものができるのか。今回の能登半島地震をしっかりと検証した上で、次の手だてということを検討してまいりたいと考えております。

菊田分科員 新たな支援金について質問させていただきたいんですけれども、これは対象が石川県の能登地域六市町に限られていて、我が新潟県、それから富山県、石川県のほかの地域は外されてしまったんですね。

 新潟県では、既に一万九千棟近くの住宅被害が確認されています。特に液状化の影響が深刻でございまして、しかも、液状化は長期にわたって繰り返すと専門家の指摘があるわけでございまして、このままここに住み続けていいのか、それとも引っ越した方がいいのか、迷っておられる方も大変大勢いらっしゃいます。

 石川県の六市町は新たな支援策の対象になったのに、なぜ新潟県は入らないのか。県民の不満をしっかり受け止めていただきたい。地域や年齢で線引きすることは不公平感が出ます。新潟県の花角知事も、直接政府に対して、同一の災害で被災された方々への支援は同じであってほしいというふうに述べています。政府の方針、見直すべきではないでしょうか。

 そもそも、私たち野党が提出しました被災者生活再建支援法の拡充では駄目なんでしょうか。

 それと、この新たな支援金制度は、震災対策なのに厚生労働省が所管することになることも、私は違和感を禁じ得ません。

 こうした新たな支援金の問題について、所管する厚生労働省に見解を確認したいと思います。そして、もう一つ、先ほど申し上げましたように、本来、震災対策として内閣府が所管するべきではないんでしょうか。防災担当大臣に伺います。

斎須政府参考人 お答え申し上げます。

 新たな交付金制度につきましては、地域福祉の向上に資することを目的に創設するものでございまして、対象地域につきましては、高齢化率が著しく高いことのみならず、家屋を建設できる土地が極めて少ないなど、半島という地理的な制約があって、住み慣れた地域を離れて避難を余儀なくされている方も多いことなど、地域コミュニティーの再生に向けて乗り越えるべき大きくかつ複合的な課題があるという実情や特徴、それから、他の地域と比べまして特に深刻な被災状況があったということに鑑みまして、石川県とも調整した上で、能登地域六市町としているところでございます。

 また、新たな交付金制度の対象とならない場合に、石川県の事業として、自宅再建利子助成事業を県内全域を対象として実施されるというふうに承知しております。

 これらの施策の対象とならない地域の被災者の方々に対する支援も重要であると考えておりまして、これまでの大規模な災害時の対応も考慮しながら、関係省庁の支援策を組み合わせて、必要な支援が行き届くように取り組んでまいりたいと考えております。

松村国務大臣 まず、御提出いただいている法案につきましては、国会で御議論いただくものだと承知をいたしております。

 その上で、被災者生活再建支援金につきましては、これは、御存じのとおり、財産の損失を補填するものとしてではなくて、いわゆる見舞金的な性格のものとして、被災者を側面的に支援するものと位置づけられていることに留意が必要であると考えております。

 制度の見直しについては、熊本地震、東日本大震災といった過去の震災や、秋田県や福岡県など、令和五年に発生をいたしました梅雨前線等による大雨被害の被災地におきまして現在も支給が継続されているところでございます。こうした公平性の確保という課題もあることから、慎重に議論すべきものと考えております。

菊田分科員 非常に不公平感が残るというふうに思います。是非見直していただきたい。同じ災害で被災されたのに、この地域は助けられる、この地域は外されるというのは、私は、あってはならないというふうに厳しく申し上げたいと思います。

 時間がもう余りないので、いろいろ質問したかったんですけれども、復興基金について。

 復興基金というのは、柔軟性とか機動性とか補完性があるということで、過去も、東日本大震災、熊本地震でも基金が創設されまして、非常に使い勝手がいいということで、評価が高かったというふうに記憶しておりますけれども、岸田総理大臣は、復興基金の創設について、何か余りやる気がないというか、後ろ向きのような答弁をされているというふうに私は印象を持っているんですけれども、昨日、松本総務大臣が記者会見の中で、復興基金の創設に前向きな姿勢を示されたということで報道もございました。

 やはり、この復興基金、今すぐじゃないにしても、創設しますよというふうに国が方針を示していただければ、被災自治体や被災者が今抱いている不安というのは幾らかでも解消できますし、今後の見通しが明るくなるというふうに思うんですけれども、是非、松村担当大臣には、復興基金を創設しましょうということを岸田総理に進言していただいて、説得していただけないでしょうか。

松村国務大臣 まず、総理は決して後ろ向きであるとは考えておりません。

 熊本地震の際には、四月の発災後、基金ができましたのは十月でございました。この基金というのは、個別の国庫補助を補い、国の制度のいわゆる隙間の事業について対応するものであると考えております。

 現実、熊本地震の際も、支援パッケージが出まして、二か月であれば、それをいかにお伝えをして、どういう復旧復興ができるか、どういう支援ができるか、こういうことをやっていた時期だと思っております。

 その上で、どうしても隙間が出るものが数か月後にはっきりとしてまいりますし、どれくらいそれを、どんな形で対応できるのかという検討時期が来ると思っております。そのときに初めていろいろな議論があるべきものではないかなと思っております。

 まずはやはり支援策をスピード感を持って実施させることが今重要なことであると考えておりますし、必要性につきましては、関係省庁において適切に判断をいただけるものだと思っております。

菊田分科員 時間が来ましたのでもう終わりますけれども、液状化の被害というのは非常に難しいですね。難しいし、今、目に見えなくても、一年後とか二年後に何らかの影響が出てくる可能性もありますので、是非中長期的な視点で、復興基金創設に向けて大臣からも御尽力いただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 中小企業庁とか来ていただいたのに、済みません。また改めて、委員会等で質問させていただきたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

平主査代理 これにて菊田真紀子君の質疑は終了いたしました。

    〔平主査代理退席、主査着席〕

牧島主査 次に、近藤和也君。

近藤(和)分科員 石川県能登半島の近藤和也でございます。よろしくお願いいたします。

 松村大臣には、発災以降、石川県にも何度も入っていただいたり、また、私ども立憲民主党としての申入れも何度も受けていただいたり、また、個人的に携帯でのやり取りも含めて様々な要望に対して答えを出していただきまして、心から感謝を申し上げます。

 先ほど菊田委員とのやり取りの中でもございましたけれども、熊本の地震そして大雨の知見、そして人脈を今回能登でも生かしていただいているということそのものも、各自治体それぞれ現場からもありがたいということを伺っておりますので、改めて御礼を申し上げたいと思います。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 罹災証明についてでございますが、今、被害認定調査がどんどん進んできています。その中で、実際には、一次の判定について、やはりそもそも不満がかなりございます。何で外しか見ないのかということも含めて、最初はスピード化のために外しか見ないんですよということも、やはり皆様、なかなか初めての経験の方が多いですから、それは致し方ない部分があると思いますが、一次の判定では不満だから、二次がありますよということを私も避難所では申し上げています。

 そして、その中で、二次の判定に進むことが、申込みができますよというときに、書類に、下がる可能性があります、評価がですね、そこの書きぶりがやはりきついと。そしてまた、説明をするときにも、例えば半壊の人が二次に進んで見直してみたら準半壊に落ちてしまう、そういう可能性が口頭でもかなりきつめに言われるというところもあるようです。まるで二次審査を拒んでいるかのような、そういう印象を受ける被災者の方もいらっしゃいます。

 そこで、本当でいえば、一次判定が出て、二次もお願いして判定が出て、軽くなってしまったら元々の一次判定で重くしてほしい、これが正直なところではあるんですが、現実的にはそこまでの運用は正直厳しいのかなと思います。

 ただ、一次判定が出て、二次判定を申し込んで、そして調査が終わるまではかなり時間がかかりますよね、一軒一軒丁寧に見ますから。その間に、被災者の方々が、様々な知見、調べて、ああ、自分のはもしかしたら軽くなってしまうかもしれないなと。そこでキャンセルということは、私は柔軟にできるようにしていただきたいなというふうに思うんです。

 二次判定が出てから一次にしてくれということは難しいかもしれないんですが、二次を申し込んで、まだ調査が終わっていない段階で、いや、これは下手をすれば下がってしまう、評価がですね、そこは柔軟にできるようなことをしていただきたいなというふうに思いますし、あとは、二次判定で終わりというわけではないですよね。二次判定が不満であれば更に申し込むこともできるわけですよね。そういったことが分かれば、一次で不満であって、二次になって下がってしまうかもしれないけれども、それでも更にその次もあるかもしれないと思えば申し込みやすくなると思います。

 正直、二次審査の方を申し込み過ぎると手が回らないという各自治体の気持ちも分からないでもないですが、被災者の今の気持ちに寄り添うということであれば、御不満であれば次へ進んでください、そして、評価が重くなれば、その分生活再建の様々な支援が多くなるわけですから、被災者の方の気持ちが前にむしろ進んでいけるようになると思うので、ここを柔軟にしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

松村国務大臣 近藤委員におかれましては、御地元ということで、復旧復興に御尽力をいただいていることに感謝を申し上げたいと思いますし、日々現場でのいろいろな情報をお伝えいただいて、大変助かっております。心から感謝を申し上げたいと思います。

 その上で、罹災証明の発行、今お話を聞いておりまして、地震と水害のときを思い出しまして、現場に張りついていたときに、サンドバッグ状態になりながら丁寧な対応を一つ一つやり、やはり皆さん不安でいらっしゃいますので、いかなる結果になったとしても、やはり次に進む結果は必要なんだろうなと改めて思いますし、安心を与える意味では、罹災証明の早期の発行というのは必要だろうと思っております。それで、前段の菊田委員からも御指摘があったように、スピード感を持って、被害の調査についてはスピードアップをできたところであります。

 先生の御指摘の、一次審査、これでとどめるのか、あるいは二次審査に進むのか、これはやはり御本人が納得いただけるのが一番重要であろうと思っております。

 一次審査では外観による簡易な判定を行うことになっておりますが、やはり納得がいかなければ二次審査をお願いして、いわゆる家屋内に入っていただいて、もっと違う視点での小さな、もっときめ細やかな審査になっていくわけでございます。正確な判定をそういった形で行うこととしているところでございます。ですから、やはり納得していただくことが一番重要であろうと思っております。

 また、その審査の結果につきましても、決して隠すわけではございません。ちゃんと、お尋ねいただければ、こういう規定になっておりまして、こういう形になりますというようなことになっておりますので、そういったことをまた被災者の皆様方にお伝えいただければ大変ありがたいと思っておりますし、私どももそのことは伝えておりますけれども、やはり現場の被災者の方々は全てを知っていらっしゃるわけではございませんので、更に現場にも徹底をしてまいりたいと思います。

 ただ、一つ、罹災証明を発行する市町村の職員の皆さん方も、私が冒頭申し上げたような、いろいろな御苦情をいただきながら、丁寧な対応を、頭の下がる思いで見ておりますけれども、感謝の思いでいっぱいでございますけれども、やっていただいているものと思います。何より、被災者の皆さん方が安心して、また納得いただくことが重要であると思っておりますので、そういった対応、今後も努めてまいりたいと考えております。

近藤(和)分科員 ありがとうございます。納得感ということが本当に重要だというふうにも思いますので、もちろん現場で動かれている各自治体の方々に配慮をしながら、安心につながっていくような審査を進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、被害認定のところで、今よく言われるのが、私ども、田舎なので、おうちが本当に大きいんですよね。例えば、私の家であれば、元々の家があって、そして、渡り廊下をつけて、車庫の上で私も住んでいるんですけれども、渡り廊下のあるようなところであれば、世帯が分離しているか生計を別にしているということであれば一戸一戸で判定してもらえる縁切りという方法があるということも聞いています。

 一方で、これも私のすぐ近くの親戚の家なんですけれども、旧家で、もう百年以上建っている家があって、実際にはもうそこでは住んでいません。そこに増築して、小さなところで住んでいます。昔のところは、いろりがあって、仏壇があって、そこで葬式ができるような、そういう家は能登中にたくさんございます。

 その私の親戚の家は、そこは大丈夫だったんですけれども、知り合いの方のおうち、実際に見させていただきました。別の方の家も見ましたが、ここはもうぼろぼろなんです。もう全壊だろうと、誰がどう見ても。一方で、新しく増築したところは、きれい、若しくは一部損壊になるんだろうなという状況です。

 その中で、全壊という判断が全体として出たとしても、公費解体をお願いする際には、新しいところまで壊してしまったら、住むところがなくなって、また建て直すのにお金がそれこそ一千万、二千万かかってしまうわけですね。細かく見てくれないか、昔ながらの古いところ、壊れてぼろぼろになってしまったところ、そこだけを壊してこちらを残してくれないかということ、柔軟に判断をしてほしいなというふうに思います。

 更に申し上げれば、大きな家で、半分が新しい部分、半分が壊れてしまった部分。そして、判定でいけば、例えば準半壊だ、こちらだけで見ればどう見ても全壊なんですけれども、そうするとほとんど支援してもらえないわけですよね。外観上だけで、縁切りということだけではなくて、実際の生活を今後再建していくということを考えても、例えば準半壊であれば、壊すところも自費で、田舎の家ですから、それだけでも五、六百万、最低かかるわけですよね。大変な費用になってしまいます。ここだけを壊してもらえれば、次のところ、このつなぎ目のところの修繕は、ある程度は自分でやらなくてはいけないとは思いますけれども。

 こういったことで、都会とは違って田舎の家は大きいという前提でここは柔軟に動いていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

松村国務大臣 古い家と増築した家に二世帯がお住みだったパターンというのは私も実は経験をいたしまして、柔軟な対応が結果取れたときもございました。

 元々、罹災証明というのは、原則として世帯主に対して証明するものでもございます。ただし、住民登録上は同一世帯であっても、公共料金の契約が別に行われている場合など、生計がいわゆる別であることを確認できる場合においては別の世帯として取り扱い、それぞれの世帯に対して罹災証明書を交付するなどの柔軟な対応が可能でございます。

 ですから、いろいろなパターンがあると思います。私の一般論だけではございませんで、やはり現場に行きませんと分からないことがたくさんあるかと思いますが、判定いただく自治体において適切な判断をなさいますので、いろいろな形での御相談をいただける。私どもは、そのことをきちっと、判断いただく自治体にお伝えもしておりますし、再度また確認をしてまいりたいと思っております。

近藤(和)分科員 ありがとうございます。

 世帯がある程度別ではないかという場合には相当柔軟にしていただけるのかなということで、ありがとうございます。

 そして、その上で、御高齢の方二人だけ、若しくはお一人だけのパターンもあるわけですよね。相当、自治体の方も板挟みに遭うと思います。何とかこれは、この部分だけ分けて、全壊だ、ここは大丈夫だということの、でも国では今微妙なんだよなと、恐らく各自治体からも相談がある可能性があると思いますので、ここは是非とも可能性を広げていただければなというふうに思います。

 世帯が別に近いような形であれば柔軟にしていただけるということは答弁いただいて、本当に感謝いたします。ありがとうございます。

 それでは、液状化について伺います。

 液状化そのものの被害も、これもかなり軽いんじゃないか、軽過ぎるんじゃないかという御不満はやはりかなり出ています。

 そもそもが、地震ですとか火災ですとか水害と比べてまだ新しい評価基準だと聞いています、東日本大震災のときからと聞いているんですが、もう少し重めに出るような評価、今回の能登半島地震にもし間に合わないにしても、間に合うようにしていただきたいんですが、検討課題に挙げていただきたい、できれば変えていただきたいということをお願いしたいのですが、いかがでしょうか。

松村国務大臣 液状化対策についてでございますが、まず、液状化におきましては、被害を受けた住宅については、基礎の破壊状況であったり外壁又は柱の傾きや潜り込みの状況から、外観のみでまず判断できるように簡素化を図っておるところでございます。その上で、再度調査をしてほしいという御依頼があった際には内観の調査を行います。これは、いわゆる畳を剥がして床を剥いで床下に砂がどれくらい出ているかとか、細かな調査が幾つかございまして、その上で適切に算定できる基準としているところでございます。

 被害認定調査がしっかりと適切に行われるよう、国としても積極的に助言を行いまして、支援をしてまいりたいと考えております。

近藤(和)分科員 全壊であれば、たしか二十分の一の角度だったと思います。そして、そこから順番に緩くなっていくんですが、私もおうちに入らせていただきました。どの程度の被害認定になるか分からないんですけれども、やはり相当気持ち悪いんですよね。ふらふらしてくるというか、車に酔っているかのような状況でもありますので、ここは改善点として、実際にそこの方じゃないと分からないと思いますので、何とか評価を変えていくというところを努力してほしいなと思います。

 そして、続いてですけれども、液状化、エリア認定ですね。エリア認定は、火災ですとか津波ですとかであればエリア認定、今回、輪島でも火災のところはエリア認定されておりますが、液状化に関してはエリア認定は実際は難しいと何度か仲間の議員との質疑の中でありましたが、例えば、ここはもう全壊だ、この家も全壊だ、この家も全壊だ、そして私のこのおうちは一部損壊だということで、ただ、周りがぐちゃぐちゃになっていて、液状化ですからエリアごと直さないとどうしようもできないですよね、正直なところ。車も入れようがないわけですから、例えば家が本当に無事であったとしても。

 そういったときに、暮らすのが困難だというときに、一部損壊ではこれは少し厳しいのではないか、まあ、準半壊でもですね、こういう状況が必ずあると思うんですが、ここはいかがでしょうか。

松村国務大臣 まず、原則として、支援金の支給対象は中規模半壊以上の被害を受けた世帯となっていることはもう御存じのとおりであります。ただ、例外もございまして、例えば、敷地内に被害を受けて、やむを得ない事由により住宅を解体せざるを得ない、こうした場合には、全壊と同様、最大三百万円の支給金が支給されることとなっております。これについても個々の現場での判断が必要かと思いますが、こういった柔軟な対応もさせていただいております。

近藤(和)分科員 ありがとうございます。

 もうそこで、一部損壊であっても、ここでは正直住めない、違うところで家を建て直すという方には、全壊扱いのような形で、公費で解体していただいて、そしてちゃんと満額分の支援をしていただけるということですよね。ありがとうございます。こういった御家庭も相当数あるのではないかなというふうに思います。感謝いたします。

 それでは、災害救助法について伺います。

 こちらでの、避難所の費用の基準額が少ないという声をいただいています。そのせいで、各自治体が、例えば段ボールベッド等を十二分に用意しづらいという声がございます。基準額をそもそも引き上げるということ、若しくは、そういったことがあったとしても、後でしっかりカバーしていきますよという安心感があれば自治体が動きやすいと思うのですが、いかがでしょうか。

松村国務大臣 まず、段ボールベッドにつきましては、先生からヒアリングを受けた七尾市については、既に六百四十個ほどプッシュ型支援で送っております。その後はプル型ということで、自治体から申請があればその都度お出しするという対応を取ってきたところでございますけれども、御指摘の点は、災害救助法における一般基準という判断であったかと思うんですが、決してそこだけではございませんで、必要なものはこういう判断基準の下にいろいろな支援をしてまいりますし、ただ、実施が困難な場合には、内閣府と協議の上で、特別基準の設定が可能でもございます。

 ですから、現場に合わせて、自治体から県あるいは私どもにいろいろな御相談をいただければ、できるもの、できないものございますけれども、いろいろな対応をやっているところでもございます。

 また、そうしたことも、県に派遣をいたしました内閣府の職員の皆さんからもその旨は助言をしたりお伝えをしているところでございまして、やはり、災害になりますと、こういった小さなお話が残念ながら最前線の現場まで伝わらなかったり、理解が、ちょっと違った解釈になったりということが間々ございます。そういったことも理解した上で、丁寧な対応を取ってまいりたいと考えております。

近藤(和)分科員 ありがとうございます。

 それでは、なりわい支援金について伺います。

 私も何件も聞いているんですけれども、事業者が土地を借りる、建物も借りる、そして今回、被災で壊れた。そして、貸していただいている大家さんがかなりの御高齢で、なりわい支援金、四分の三も出していただきますから本当はありがたいんですけれども、もう私はいい、面倒だ、例えば四分の一自己負担を立て替えるというようなことをやってくれるにしても、もう何も考えたくない、そっとしておいてくれということを言われて事業者の方が困っているという事案が相当数ございます。

 そういった場合に、例えば、建物の所有権、壊れて、ないにしても所有権を移すですとか、若しくは土地を事業者の方に売却するとか、そういった形でなりわい支援金が使えるようにしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

吉田大臣政務官 御答弁申し上げます。

 御指摘のなりわい補助金は、大規模な災害により被災した中小・小規模事業者が、事業に不可欠であり、原則として、自ら用いる施設設備の復旧を行う際に、その費用を補助するものでございます。このため、賃貸目的の施設は、原則、補助の対象としていないところでございます。

 ただし、事業用として貸し付けていた施設であって、借主である中小・小規模事業者が継続をして事業を行う上で不可欠な場合には、当該事業者支援の観点から、例外的に補助対象としているところでもございます。

 その上で、個別具体的な事案につきましては一概に判断をお示しすることが難しいことでございまして、事業者の方から、各県において設置をしておりますところの相談窓口にお問い合わせいただくことになろうかと存じます。

 いずれにいたしましても、能登半島地震で被災した事業者のなりわい再建に向けまして、引き続き、被災事業者に寄り添いながら、被災地の復旧復興に向けて全力で取り組んでまいりたいと存じます。

近藤(和)分科員 寄り添うということを原則に、県においての判断ということでよろしいんでしょうか。

 実際には、元々はグループ補助金が元祖ですよね、事業者が地域で再生してくれることが地域再生につながるんだという考え方だと思います。是非とも事業者が、借りていた場所で、貸主の方がもういいとなったとしても、もうやらないんだとなったとしても、柔軟に現場対応を、県が、その方が自分で建て直す、なりわい支援金が使えさえすれば事業再生できる、地域再生につながるんだという判断を、是非とも背中を押していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 そして、次ですが、この事業ということですが、アパート、マンションは対象にならないんですよね。今時間がございませんので、どうしてかということをあえてやり取りは、後ほどにしたいと思いますが、大臣、ならないんですね、アパート、マンションは。

 本当は、事業再生、地域の事業ということでいけば、アパート、マンションも私は大事な、地域の再生には必要だと思うんですが、被災者生活再建支援金の方でも、入っている方は支援金の対象になりますが、貸している方は対象外ですよね。直す分には自分で、オーナーが直さなきゃいけないということで、この支援の枠外に入ってしまっています。

 その中で、災害救助法の中で、住まいを提供する、これは最前線の県が用意するということですけれども、住まいを提供するという観点で、今、みなし仮設であったり二次避難所であったり、そして何よりも仮設住宅、動いていただいていますが、アパートやマンションを、例えば被害が軽くても安いお金で直せるのであれば、多少のお金がかかったとしても、それを支援していくことが被災者の、住民の方々の住まいを確保するということに私はつながっていくんじゃないかなというふうに思います。

 このアパート、マンションというのは間違いなく隙間に当たると思うので、でき得れば、仮設住宅、今一生懸命造っていただいていますが、能登でアパート、マンションで被害を受けているところを直せばそこに入ることができる。もちろん、地元ですから近いところに入れるわけですね、希望者が。こういったところも動いていただきたいんですが、大臣、いかがでしょうか。

松村国務大臣 私がお答えするべき話ではございませんが、グループ補助金からなりわい再建補助金という形になりましたけれども、熊本地震でも残念ながらアパートはこの対象外でございました。それは委員先ほどお述べになったとおりでございます。

 被災した賃貸アパートの修繕というのは、その所有者でございます大家さんが実施することが、これは基本、大前提でございます。ただ、一方で、大家さん自身に資力がなく、必要な修繕を実施できない場合におきましては、入居者の方が大家に代わって必要な修繕を実施できることといたしております。これを応急修理制度の対象にしているところでもございます。ただ、注意すべきところは、大家さんに資力があるかないかという判断でございますけれども、この点は個々の現場での判断になることだと思っております。

 いずれにいたしましても、既存の賃貸住宅の活用が有益であることは近藤委員御指摘のとおりでございますので、引き続き、柔軟に住まいを提供していけるよう取り組んでまいりたいと考えております。

近藤(和)分科員 入居者がそこに住もうという意思があって応急修理制度を使えるということですよね。入居者の方ももう違うところに出ていった、ただ、この建物は直せば本当は住めるのにという場合はあるんですよね、実際には。

 ですから、アパート、マンションが、それこそオーナーが、大家さんが、もう直す資力もなくて、気力もなくて、あと、実際には、今の大変な状況を考えれば、人口減少もまだまだ更に進んでいくかもしれないとなれば、もう事業を放棄してしまう可能性はあると思います。本当はちょっと直せばアパート、マンションに入れるのに。これは本当にもったいないことだというふうに思います。

 ですから、入居者が望まなくて空っぽになってしまったとしても、これは行政から見てここは使えるのになと。ただ、大家さんはその気がなかなか、自力ではなかなか直しにくいというパターンもあると思いますし、極端なことを申し上げれば、東京や大阪のオーナーの方が建物を持っているとして、ここはこの先投資しても回収できないわとなったら、ほったらかしになってしまうと思うんですね。

 これは地域としてももったいないですし、避難をされている方にとってみても、あそこを直してくれれば入れるのにと。仮設もいつ当たるか分からないというような状況なので、ここは是非とも、現在進行形の話でありますので、どんどんそういった声が上がってくると思います。何とか、いい、前向きな答えを今後考えていただきたいなと思います。うなずいていただいただけでも、ありがとうございます。

 それで、もう一つちょっと吉田政務官に伺いますが、あるアパート、マンションがあって、ただそれは、会社の寮などであれば、これはなりわい支援金の支援対象ですよね、ということも伺いました。それは大事なことだと思います。

 そして、更に申し上げれば、能登には大きな会社は少ないんですけれども幾つかの会社があって、そこの従業員の方々が、あるアパート、マンションを、実質的に全てそこで働いている方が入っているアパート、マンションがあって、契約はそこの方しかやっていませんよという場合には、大家さんが、じゃ、建て直そうかという場合には、これは支援対象に今はならないと聞いたんですが、なるように、私は、社宅や寮であればできると聞いたので、実質的に社宅や寮のような形であればできると思うんですが、いかがでしょうか。

吉田大臣政務官 なりわい補助金ということでお答えを申し上げさせていただきますけれども、大規模な災害により被災した中小・小規模事業者が、事業に不可欠であり、原則として、自ら用いる施設設備の復旧を行う際に、その費用を補助する制度でございます。

 したがいまして、賃貸目的の施設は原則補助対象としておりませんことから、御指摘のような事案について補助対象とすることは難しいというところでございます。

 いずれにいたしましても、本件について、対応が難しいものの、引き続き、被災した事業者の方々に寄り添った支援というものは、これは進めてまいりたいと存じます。

近藤(和)分科員 なりわい支援金の歴史もそれほど古いわけではないですから、被災地の現状も、いろいろな災害でも違うということもございますので、是非とも、ちょっと今はいい答えではなかったと思いますけれども、何とか動かしていけるように、一緒に、それこそ私どもに寄り添っていただきますことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

牧島主査 これにて近藤和也君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。渡辺周君。

渡辺(周)分科員 立憲民主党の渡辺でございます。

 早速質問させていただきます。

 今日は拉致問題を中心に質問する予定でございますけれども、まず冒頭、急遽追加をいたしました。

 官房長官として伺いたいんですが、本日、岸田総理が政倫審に出席を、フルオープンの場で出るということを表明をされましたけれども、この点につきまして、政府はこのような、これは官邸でたしか今朝方発言をされたわけですが、官房長官、政府として、総理の政倫審出席については、これは何らかの相談を受けるなり、何らかの話をしていたということでよろしいでしょうか。

林国務大臣 総理と私の逐一のやり取りについてはお答えは差し控えますが、先ほどぶら下がりを総理がされまして、これは自民党総裁として、政倫審について開催の見通しが立っていない状況にあること、この状況のままではますます国民の政治に対する不信が深刻になってしまうという危機感を感じていること、これらを踏まえて、総裁として、政倫審に自ら出席し、マスコミオープンの下で説明責任を果たしたい旨述べられたものと承知をしております。

 もとより、この開催の在り方については国会でお決めいただくものと認識しておりますが、総理は総裁として、国対委員長に対して手続を進めるよう指示を出したものと承知をしておりまして、今後、この調整が行われるものと考えております。

渡辺(周)分科員 政府のスポークスマンとして今回のことはどう受け止めていらっしゃいますか、官房長官。

林国務大臣 先ほど、午前中の会見でも、今の旨を私から申し上げさせていただきました。総裁としてそういうふうに総理がおっしゃっているということも含めて、そういうふうに申し上げさせていただいたところでございます。

渡辺(周)分科員 総理が総裁として出席をされるというその御意思は、今、政治不信をこれ以上募らせるわけにはいかないと、御自身から、自ら先頭に立って、今正直、与野党での、出席、あるいは、公開か非公開という政倫審の持ち方についてなかなか結論が出ていない中で、総裁自身が範を示すという意図だとは思いますけれども、この後、総裁が出た後、では、総裁までが出てきて、我々野党が求めた五十一名の、あの政倫審出席を求めた中には岸田文雄議員は入っておりませんで、しかし、総理自らが総裁としてフルオープンで出ると表明を急転直下されたわけなんですけれども、そうしますと、総裁がそこまで出るならばということで、この後、今出席をためらっている方、どういう理由か分かりませんけれども、出てもいいんだけれどもやはり出ないみたいなことで、ちょっとぶれている感が否めませんけれども、その点については、これはやはり何かしらの効果を期待をしたいとは思うんです。

 そこで、今度は、岸田派に所属をする林官房長官に、総理・総裁、総裁は政倫審で何をお話しされるというふうに思われますか。岸田派の政治と金の問題なのでしょうか、それとも自民党全体の話なんでしょうか。岸田派にいらっしゃる中で、一部マスコミでは岸田派の政治と金の問題について話すのではないかというふうにも言われていますけれども、岸田派に所属をしている林官房長官の御所見はいかがでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、あくまで総理は総裁として、先ほど私から御紹介させていただいたことを述べられた上で、自ら出席すべく、マスコミオープンの下で説明責任を果たしたい旨述べられたということでございますので、どういうお話をされるのか、また、どういう開催の在り方になるのかというのはまさに国会でお決めになるもの、それに従って、総理は総裁として、自らお考えになっておられることを述べられるものと承知をしております。

渡辺(周)分科員 是非、総裁自らが、総理が総裁として出ますと申し出られたわけですから、この政倫審の開催については、これは今みたいに、政府あるいは党という立場を分けるのではなくて、議院内閣制の最大与党が占めている内閣でありますから、それは当然ですが、内閣の要の官房長官としても、やはりそれは、総理・総裁が出る以上は、この問題を打開するという形で是非リーダーシップを発揮していただきたいと思うんです。

 官房長官、あるいは個人としてでも結構ですが、いかがですか、今回のことで政倫審の今の現状の膠着の打開になる、そして疑念を持たれている議員の出席になるということをどう見通していらっしゃいますでしょうか。

林国務大臣 急なお尋ねでございましたので、ちょっと手持ちの、総理の発言の全部をちょっと持っておりませんが、先ほど申し上げたことに加えて、志ある議員がそれぞれ説明責任を果たすというような趣旨のことも同時に総理は総裁として述べておられたということでございます。

 まさに総理がおっしゃったように、この状況のままではますます国民の政治に対する不信が深刻になってしまうという危機感、これを感じている、こういうふうにおっしゃっておられます。その思いを体して政倫審に臨まれるものと考えております。

渡辺(周)分科員 今後の政倫審の幹事会等の、いろいろまた議論を見守りたいと思います。

 それでは次に、本題に入ります。

 これは何回も昨年から質問をされてきておりますが、今年に入って、能登半島地震での、閣下と宛てた金正恩からのメッセージと、あるいは、個人的見解としながら、金与正の、いわゆる岸田総理訪朝を受け入れる準備があるかのようなメッセージ、これは何かしら北に変化が表れているのかなというふうな見方もありますけれども、ただ、拉致問題をテーマにしない、拉致問題は解決済みというこの部分については、我々は納得できないわけであります。

 ただし、ただし書で金与正は個人的見解と言っている以上は、この拉致問題は解決済みという部分だけが、ひょっとしたらこれは金与正の個人的な見解なのであって、最終的な決断は金正恩であるということを考えると、やはり訪朝に対して何らかの進展があるのかと。

 ただしかし、よく言われる、条件をつけずに会う準備があるというのは、条件をつけないということは、全くノーガードで、全く何もこちらも成算もなく行くわけではないわけでありまして、何よりも、先日、家族会、救う会が、今後の運動方針、二月二十五日ですけれども、そこで、方針転換というよりも、様々な我が国独自の制裁に対しても、これは解除に反対しないと。それまでは、前回は、人道支援については反対しないと。ただし、それはもう、親の世代の家族が存命なうちにという私たちの前提条件をめぐる状況は一段と厳しくなっているということをこの運動方針に書かれているんですね。

 御存じのとおり、有本明弘さんが九十五歳、今車椅子で出席をされるしか移動ができない状態、それから横田早紀江さん、もう滋さんも亡くなられて、早紀江さんは八十八歳でございます。もう自分たちには時間が残っていない、苦渋の選択だけれども、今まで米の人道支援や万景峰号のいわゆる往来に対して反対のシュプレヒコールを上げて座込みもやってきた、その自分たちが、とにかく親の世代の家族が存命なうちにということで、条件をつけて、そこで何とかこちらから、その点については取り下げるので、ただし即時一括帰国を実現せよ、こういう運動方針で、やはり時間がないということでございます。

 ですので、これは時間との闘いの中で、今投げられてきているメッセージに対して、日本政府としてメッセージを返すのか返さないのか。交渉の詳細なやり取りはお答えできませんというありきたりの答弁はもう要りませんので、この今投げられているメッセージに対して我が国として何らかのメッセージを返す準備はあるかどうか。いかがですか。

林国務大臣 今御指摘のあった金正恩委員長からのお見舞いのメッセージに対しましては、他の多くの国・地域からのお見舞いや支援のメッセージと同様に、感謝の意を表明したところでございます。また、金与正副部長が談話を発出したということには留意をしております。

 その上で、政府として、北朝鮮側の意図や狙いについて述べる立場にはないということでございまして、コメントは差し控えたいと思います。

 いずれにいたしましても、岸田総理はこれまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向けて、金正恩委員長との間の首脳会談、これを実現すべく、総理直轄のハイレベルでの協議を進めていきたいと述べてきておりまして、そのために、様々なルートを通じて働きかけを絶えず行ってきておるところでございます。

 なお、先ほど委員から拉致問題のところについてもコメントがあったわけでございますが、私も、会見で質問に答える形で、拉致問題が既に解決されたとの主張は全く受け入れられないと考えておりますというのは会見で申し上げたところでございます。

渡辺(周)分科員 当然、個人的見解などというのが、あの国の中で、たとえ実の妹といえども、勝手に発出できるわけではありません。当然、金正恩最高権力者の承認なり同意がなければあんなことは勝手に発出できないんですけれども、ただ、そこにあえて個人的見解とつけていることについて一縷の望みを持つとすれば、拉致問題は解決済みという部分は個人的見解なのであって、ただし、金正恩が最終的にどう判断するか分からないとも読み取れる。

 極めて微妙に、もしかしたらという何か希望と、従来の、また非常にこうかつな戦略を上手に組み合わせた、よくできたメッセージなんだなというふうに思うんですが、とにかく、日本政府として、表なのか、あるいは表に出ない形でも、何らかの形で今回のことに対してはメッセージは返さなきゃいけない。しかし、そのときに、これまでのように、条件なしで会うなどという話はやはりあってはいけない。

 とにかく、親の世代の家族が存命なうちに全員一括帰国、とにかく、拉致問題をテーマにする話合いがなければ訪朝する意味は全くないわけでございまして、結果的には、いつものように、もう一回調べます、調査をしますとまた時間を稼がれて、結果、時間切れになると、該当者は見当たらなかった、死亡していたなどといういつもの時間稼ぎに使われてしまうので、是非、日本政府としては、この拉致問題をテーマにしない訪朝はないと、たとえ訪朝を決断するにしても、その点についてはここでお約束いただけませんでしょうか。

林国務大臣 先ほど、会見ではそういうふうに、受け入れられないという立場を明確に申し上げたということは御答弁差し上げたとおりでありますが、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指す、この政府の方針には変わりはないわけでございます。

 その上で、岸田総理は、大胆に現状を変えていくためには、我が国自身が主体的に動き、トップ同士の関係を構築していくことが重要である、こうした考えから、条件をつけずにいつでも金正恩委員長と向き合う決意であるという旨を述べてきているというふうに承知しております。

渡辺(周)分科員 韓国に対しては北朝鮮は、金日成、金正日と、じいさん、父親と三代続いてきたこの金体制の中で、今までは、いわゆる同胞国としていずれ統一するんだという方針があった。しかし今は、もう韓国は別の国とみなして、統一という言葉を捨てて、とにかく敵対国として、非常に、延坪島という島に、まさにぎりぎりのところで今ミサイルの発射演習を行うなど、緊張をわざと高めている。反面で、日本に対しては、閣下という言葉を使ってお見舞い申し上げるなどという、なぜか非常に、何というか、紳士的なメッセージを送ってきた。

 今回のことで、日本、韓国を分断しようという一つのやはり策略ではないか。若しくは、アメリカの大統領選挙が十一月にはありますけれども、万が一というか、分かりませんが、トランプ大統領が返り咲いた場合に、また今度は、トランプ大統領と、ロケットマン、ロケットボーイなどといって二回もシンガポールとベトナムで会っていますけれども、また何かしらの動きが出てくるのではないか。

 つまり、日米韓をそれぞれで分断をするための、これは、韓国には厳しく、しかし、韓国と今仲よくなりつつある日本に対しては非常に、北朝鮮はひょっとしたらいいやつじゃないか、ひょっとしたら心変わりしてきたんじゃないか、ひょっとしたら何か我々に対してほほ笑みかけているのではないかという、何か、反面でまだ油断できない、警戒心を解いてはいけないわけなんですが。

 日米韓の今後の、やはりスクラムを組んでいく中、特に韓国と今後組んでいく中で、今の北朝鮮の、さっき謝意を述べられたと言いました。外交儀礼的には、お見舞い申し上げるというものに謝礼、謝辞を言うのはいいけれども、そこで、先ほど申し上げたように、いや、北朝鮮は心変わりしたのか、金正恩はいいやつじゃないかなんということは、ゆめゆめやはり思ってはならない。

 そこのところは、外交儀礼上の謝辞を述べたけれども、現実問題としてはやはりこの国に対する姿勢は変わっていない、そういうことでよろしいでしょうか、大臣。

林国務大臣 先ほど私の会見で申し上げたのは、今般の能登半島地震における被害に対しましては各国・地域からお見舞いのメッセージを受け取っておりまして、日本政府として感謝をしておりますということを申し上げた上で、今御指摘のあった金正恩委員長からのお見舞いのメッセージについても感謝の意を表したいと考えております、こういうふうに申し上げております。

 北の意図についてお答えする立場にはございませんが、いずれにしても、先ほど委員もお触れになったように、拉致被害者御家族は大変御高齢になっておられます。時間的制約のあるこの拉致問題、ひとときもゆるがせにできない人道問題であります。今御指摘のあったように、米国や韓国ともしっかりと連携をして、一日も早い全ての拉致被害者の皆様の御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいりたいと考えております。

渡辺(周)分科員 それでは、「しおかぜ」について伺いたい。

 これはもういろいろな委員会で取り上げてきておりますが、北朝鮮向けの「しおかぜ」の放送は大臣は聞かれたことはありますか、そしてまた、この「しおかぜ」に対して北朝鮮から妨害電波が出ているという実情は御存じですか。

林国務大臣 拉致問題担当大臣として、特定失踪者問題調査会が運営する北朝鮮向け短波ラジオ放送「しおかぜ」については当然承知しておりまして、外務大臣のときも含めて、聞いたことがございます。

 政府としては、特定失踪者問題調査会との間の業務委託契約を通じまして、この「しおかぜ」の番組の中で政府メッセージの送信を行ったり、また、政府が運営する北朝鮮向けラジオ放送「ふるさとの風」、これは委託放送を行うなど、調査会と連携してきております。引き続き、「しおかぜ」との連携強化に積極的に取り組んでおります。

 妨害という話が今ございましたが、北朝鮮向けラジオ放送の受信状況等に関する調査、これを実施しておりまして、その中で、「しおかぜ」に対する妨害電波の状況についても把握をしておるところでございます。

渡辺(周)分科員 昨年十二月四日の参議院の拉致の特別委員会で、当時の松野博一担当大臣は、一時的に一波となるが、二波体制を維持するための必要な作業ですと言って、古河市八俣通信所、私どもも二年前に拉致の特別委員会で現地を見てまいりました。ここで、令和六年度中に百キロワット送信機二機を廃棄する、廃棄して、新たな工事をしている間は一波になってしまう、だけれども、この一波になるというのは、松野担当大臣によれば、二波体制を維持するために必要な作業というふうに言っておるんですが、ちょっとNHKに確認したいのは、この廃棄するということは間違いないんですね。

根本参考人 お答えいたします。

 特定失踪者問題調査会が送信する「しおかぜ」に対しまして、NHKは、人道的な見地から、業務に支障がないことなどを条件にしまして、可能な範囲で協力しております。

 NHKが短波による国際放送の発信に使っているKDDI八俣送信所の送信機の一部を、調査会、KDDI、NHKの三者による覚書に基づきまして、調査会がKDDIに費用を支払い、KDDIが「しおかぜ」を送信していると承知してございます。

 今御指摘のとおり、二〇二四年度後半から、最大十か月の想定で、老朽化が進んでおります百キロワット機二機からの送信設備の移行作業が行われる予定でございます。この作業時は、一定期間、「しおかぜ」は一波での送信となる見通しでございますけれども、今後も「しおかぜ」を安定的に継続していくためにも必要だと考えてございます。

 作業終了後は、業務に支障がないことなどを条件に、二波同時放送の確保について、調査会の御懸念も踏まえて、安定的な継続を検討してまいります。

渡辺(周)分科員 昨年のこの松野担当大臣の答弁は、政府としては、関係の三者間、NHK、KDDI、そして調査会、この三者間で協議を尽くしていただき、情報発信に支障が生じないよう適切に対応してまいりますと答弁されている。今もNHKから答弁がありましたが、移行工事中は一波やむなしというトーンであります。

 その後、昨年十二月二十六日に、参議院の川田龍平議員の質問主意書に対して、十二月二十六日の答弁書は、三者間での協議の結果決定されるものと承知しており、当該三者間での協議の状況を注視しつつ、情報発信に支障が生じないよう適切に対応してまいりますというふうに答弁されています。

 今国会、立憲民主党の泉代表の代表質問で、二波体制を維持するために、NHKに対し、特定失踪者問題調査会との双方が納得できる協議を要請すべきだけれどもいかがかと総理に尋ねたところ、総理は、「しおかぜ」の運用について、政府からは、これまでも、NHKに対し、二波体制による安定的な運用に向けた検討を促してきており、今後とも、KDDI、調査会、NHKの三者間の協議の状況を注視しつつ、拉致被害者等に向けた情報発信に支障がないよう適切に対応してまいりますと答弁をしているんですね。

 昨年の傍観者的な、協議を尽くしていただきとか、協議の結果決定されるものと承知しておりとしてきたところから、やや主体性をにじませた、協議の状況を注視しつつ、しかも、二波体制の維持という言葉が入っているんですけれども、この二波体制を安定的な運用に向けてやる、それは恒常的な二波体制ということを意味するものだと思いますけれども、そこは大臣、いかがお考えですか。工事期間中は一波になるのはやむを得ないとお考えなのか、それとも、二波体制というものは恒常的に行われるべきだとお考えになっているのか、いかがでしょうか。

林国務大臣 今御紹介いただきましたように、現在、KDDI、特定失踪者問題調査会、それとNHKの三者間の会合、これは来月、三月に予定されていると聞いております。

 政府としては、NHK等から適時に状況を確認しながら、「しおかぜ」の担う重要な役割等を踏まえて、機会を捉えて、二波体制による安定的な運用に向けた検討、これを促しているところでございます。

 今後とも、「しおかぜ」が安定的に運用されるように、引き続き、関係者による協議、この状況を注視してまいりたいと思っております。

渡辺(周)分科員 いや、大臣、注視とかではなくて、やはり主体的に取り組んでいただきたい。

 もう何度も、拉致問題は政権の最重要課題、最優先課題です、そして、先ほどの家族会、救う会が言っているように、もう時間が残っていませんと。そういうことも岸田総理は同じようにおっしゃっているわけで、共鳴しているわけですね。

 この問題については、私は、NHKとKDDIと三者の協議を見守っているという、何度も言った、傍観者的な立場ではなくて、やはり政府として、最重要課題であるならば、日本の政府が新しい送信機を購入して設置すればいいじゃないか。

 そして、二波体制を安定的につくることは、北朝鮮にいる拉致被害者や日本人妻、あるいはその他在留邦人に対して貴重な情報を提供する唯一のツールになる、このことはいろいろな方から指摘されています。

 妨害電波が絶えたときは過去に何度かありました。それは後に調べたら、金正日が亡くなったとき、張成沢が処刑されたとき。そういうときは、後になって、北朝鮮国内の異変を探知するきっかけとなったんですね。

 先ほど来ありますように、北朝鮮が韓国に対して敵意をむき出しにして、以前よりも朝鮮半島の緊張が高まるという懸念の中で、北朝鮮にいる拉致被害者その他邦人に対して必要な情報を届ける、それはもう、直接届けられるインフラは短波しかないわけであります。SNSは普及しておりません。衛星放送は妨害されれば終わり。これは朝鮮半島だけじゃなくて、中国においても、他国においてもそうでありますけれども、この点について、日本政府として主体的に取り組むべきことじゃないでしょうか。

 これは国内の問題です。外交だったらば、相手国のあることだからなかなか交渉というのは成果が得られない、それは分かります。だけれども、これは国内の問題なので、是非、政府としてリーダーシップを発揮して予算をつけていただければできる話なんですけれども、どうかそこは、拉致問題担当大臣、そういう指示を出していただけませんでしょうか。いかがですか。

林国務大臣 委員おっしゃるように、北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題でありまして、国の責任において解決すべき喫緊の重要課題である、こういう認識でございます。

 この「しおかぜ」の安定的な放送体制整備につきましては、先ほど来御議論がありますように、二波体制による安定的な運用に向けて、KDDI、それから特定失踪者問題調査会、そしてNHKの三者間の協議の状況を注視しつつ、拉致被害者等に向けた情報発信に支障がないように適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

 被害者の御家族が御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題、これはひとときもゆるがせにできない人道問題であります。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けて、全力で果断に取り組んでまいりたいと思っております。

渡辺(周)分科員 NHKさんにせっかく来ていただいているのでもう一回伺いたいんですが、特定失踪者問題調査会は何度かNHKの会長に面会を申し入れている、しかし、なかなか返事がなくて会えないというんですけれども、それは事実ですか。会えないというなら、その理由は何なんでしょうか。

 そしてもう一つは、最後、大臣にもう一回確認したいんですけれども、拉致問題は歴代内閣が最重要、最優先課題だと言い続けてきました。相手のある外交交渉ならば時間がかかるのは、これは分かります。ただ、新しい送信機を国が支援するぐらいのことは、我が国の単独の予算措置でできるんですね。最重要かつ最優先課題ならば、是非、大臣、リーダーシップを本当に発揮していただいて、二波体制を、安定した運用を何とか維持していただきたい。最後に、決意を伺いたいと思います。

 まず最初、NHKから。

根本参考人 お答えいたします。

 昨年十月に、調査会、KDDI、NHKの三者による協議の場におきまして、調査会より、破棄が予定されている二機の百キロワット送信機について、廃棄ではなく、新たに同出力の送信機へと設備更新されることを要請しますという内容の文書を会長に直接会って手渡したいと、面会の御要望をいただきました。

 要請のように設備の更新をNHKの負担で行うことは制度上困難な内容であったため、検討に時間がかかり、回答できていなかったことについて、おわび申し上げます。

 「しおかぜ」に関する調査会からの要望に対しましては、今後とも、調査会、KDDI、NHKの三者による協議の場において適切に対応してまいりたいと考えてございます。

林国務大臣 「しおかぜ」の送信機ですが、関係三者間の取決めによりまして、特定失踪者問題調査会とNHKの両者に賃借権が設定されて、NHKの短波国際放送の業務に支障がない範囲で調査会が使用できることになっておるところでございます。

 これは一般論になりますが、政府がNHKに対して指示をすること、また補助金等により特定の方針を示すことは、放送法に定める放送番組編集の自由との関係で、慎重に扱うべきものと考えております。

 今後とも、「しおかぜ」が安定的に運用されることができるように、引き続き、関係者間による協議の状況、これを注視してまいりたいと思っております。

渡辺(周)分科員 いや、私は、放送の中身について、コンテンツについて介入すると言っているんじゃないんです。二波体制、今のことをできるようにしてくれということを言っているんですね。

 それはもう政治のリーダーシップでしかないと思います。是非そこを、言葉だけの最優先課題、最重要課題というのはもう聞き飽きました。是非、岸田内閣、林拉致問題担当大臣、本当にリーダーシップを発揮していただいて、予備費から拠出したらいいじゃないですか。国民の、在外国民の保護をする、あるいは何かのときには救出をするという一助としてこれは絶対必要なインフラなんだということを、是非、本当に、胸に秘めてというか、しっかりと発揮していただいて、まずはこの問題に取り組んでいただきたい。

 いろいろ申し上げたいことはありますが、そのことを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

牧島主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 こども家庭庁について質疑の申出がありますので、これを許します。本村伸子君。

本村分科員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 更なる保育士の配置基準の改善、そして処遇改善を求める立場で質問をさせていただきたいと思います。

 七十六年目にして、これまで動かなかった四歳児、五歳児の保育士の配置基準がとうとう改善をする。そして、三歳児の保育士配置基準も、五十五年目にして、とうとう改善をいたします。

 もう一人、子供たちに保育士を。愛知の保育士の皆さんや保護者の皆さん、そして全国の保育士の皆さんや保護者の皆さんが本当に大きな声を上げ、アンケートも合計をいたしますと一万五千人以上の方々の声を取り、そして保育現場を可視化をしていくという御努力をしてくださいました。そういう声で政治が動いたということは、本当にうれしいことです。しかし、まだまだ政府や国会はそういう声に十分応えていないと私は痛感をしております。

 今回、四歳児、五歳児、三十人に一人という保育士の配置基準を、子供二十五人を一人の保育士さんで見るというふうに改善をいたしました。そして、三歳児は、二十人に一人の保育士の基準が、子供十五人に一人の保育士というふうに改善をするという方向になっております。

 一つ前進をいたしますけれども、しかし、国際的に見てこれはどうなのかということも再確認をさせていただきたいと思います。

 資料一、パネルを御覧いただきたいんですけれども、一番上に日本がございます。これはOECDの国際比較になるんですけれども、元々日本はワーストワンでございました。じゃ、今回改善をされて、このワーストワンがどうなるかというと、二十五人のところで見ていただきたいんですけれども、先進国で見てみましても、やはりまだワーストクラスということになっております。やはり、先進国の中でも、子供たちを大切にしていないという状況だと私は思っております。今、改善をするといっても、ここでとどまってはならないというふうに思います。

 まず、確認をさせていただきたいんですけれども、今回、三歳児、四歳児、五歳児の保育士配置基準の改善ですけれども、保育園、地方自治体に財源をしっかりと保障するべきだというふうに当然ながら考えております。公立保育園、民間の保育園、両方、全保育園分、ちゃんと財源は保障されますねという点、確認をさせていただきたいと思います。

 そして、財源措置されているということをちゃんと広報、徹底をしていただきたいというふうに考えますけれども、加藤こども政策担当大臣、そして総務大臣政務官、是非お答えをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 保育士の配置基準につきましては、四、五歳児について、令和六年度から、こども未来戦略に基づき、三十対一から二十五対一へ、委員御指摘のとおり、改善を図るための公定価格上の加算措置を設けることとしております。あわせて、当分の間は従前の基準により運営することも妨げないとする経過措置を設けた上で最低基準の改正を行うこととしました。

 また、平成二十七年度より公定価格上の加算措置を実施している三歳児につきましても、令和六年度から経過措置を設けた上で最低基準の改正を行うこととしております。

 配置基準の改善に係る費用につきまして、私立保育所につきましては、国負担分の財政支援を行うとともに、地方負担分について普通交付税措置を行うこととしております。また、公立保育所につきましても普通交付税措置を行うこととしているところであり、私立、公立問わず全ての施設において配置基準の改善に必要な財政支援を講じることとしております。

船橋大臣政務官 お答えいたします。

 今ほど加藤大臣の方からもお答えをいただいているところでございますけれども、三歳、四歳、五歳児の保育士配置基準の改善に係る費用を含めた保育所の運営費については、施設型給付費により公費負担をすることとしてございまして、その地方負担分に対して地方交付税措置を講じることとしております。

 なお、四歳、五歳児の配置基準改善は、こども未来戦略に基づいて令和六年度から実施されるものでございまして、その地方負担に対して新たに地方交付税措置を講じることについて、本年一月に各地方団体に対して事務連絡を発出をして周知をしているところでございます。

本村分科員 総務省分、地方交付税措置ということで、三歳児の分は従来からやっているので今回新たに通知をしなかったようですけれども、三歳、四歳、五歳と、保育士の配置基準の改善について財源は保障されているということを確認をさせていただきました。

 先ほど加藤大臣のお話にありましたように、今度は、当分の間は従前の基準により運営も可能とする経過措置を設けるという問題について質問をさせていただきたいんですけれども、そもそもなぜ保育士の配置基準の改善が必要だったかということが問われると思います。子供の命と安全を守るためであり、一人一人の子供の発達を保障するために、保育士の配置基準の改善をしてほしいという声が大きく上げられたわけです。先送りしていいはずがないと私は考えております。

 資料十六を御覧いただきたいんですけれども、一番最後、めくっていただいて十六の資料を見ていただきたいんですけれども、これは、子どもたちにもう一人保育士を!全国保護者実行委員会、全国実行委員会の皆様がまとめられた資料です。保育事故を防ぐために配置基準の改善は不可欠なのだというふうに訴えられております。

 子供さんが亡くなったり重体になったり、悲しい事故が相次いでおります。ここにも書かれておりますように、件数は、二〇一五年三百九十九件だったものが、二〇二二年でいいますと千八百九十六件と、約四・八倍にもなっております。

 こうした悲しい事故をなくすためにも、当分の間、今の配置基準でいいというのでは駄目なのだというふうに私は考えております。やはり、国を挙げて、こども家庭庁を挙げて命、安全を守る、その真剣な取組こそ必要だというふうに考えております。

 各自治体が、不適切保育ですとか重大事故ですとか、そうした事故が起こったときに検証を行っております。

 その検証結果、再発防止に向けた提言が資料十六、十七のところに書かれておりますけれども、例えば三重県桑名市の不適切保育の事案でいいますと、第三者委員会の報告書では、保育の実践現場では、保育士一人が担当する子供の数が多く、全国的に見ても、このことが保育士等の余裕のなさにつながり、子供の権利を保障する丁寧な保育を難しくさせていることが従来から指摘をされている、この基準では、不適切保育を防止するという観点はもとより、災害時や防犯の観点から子供の安心、安全を守ることに困難が予想されるというふうに記され、保育士の増員が提言をされております。

 愛知県の一宮市、五歳の子、意識不明の重体となりました。この検証、提言を見てみますと、やはり、このままの国の配置基準では足りないのだというふうに結局読み取れる提言が出されております。

 次に、パネル二、三、資料の二、三を見ていただきますと、前後して申し訳ないんですけれども、ゼロ歳児から五歳児までの保育の状況を可視化するイラストが描かれております。

 今回改善をする三歳児、四歳児、五歳児、当分の間で本当にいいのかということを問いたいというふうに思います。

 三歳児のところの絵を見ていただきたいんですけれども、二十人に保育士さんは一人というところで、奥に、テープカッターを戸棚から取ろうとして落としてしまった。そこまでは描いていないんですけれども、実は、現場では、テープカッターを取ろうとして落としてしまった、そして隣にいた子供の頭を三針縫うけがをさせてしまった。やはり、こういうときにもう一人保育士がいれば、けがをさせずに済んだかもしれない。

 そして、この絵の中にはたくさんの子供たちの声が書いてあります。おしっこしちゃったよ、うんこ出たよ、あるいは、先生見て見て、先生エプロン着けて、こういう子供たちの声がたくさん載っていますけれども、もう一人保育士がいれば、こういう子供たちの声ももっともっと聞くことができるかもしれない。

 そして、右の方には保護者の方も写っております。保護者の方が、相談したいけれども、先生忙しそうというふうにおっしゃっておりますけれども、もう一人保育士がいれば、保護者の方の声ももっと聞くことができるかもしれない。

 先生のところを見ていただきたいんですけれども、先生も保育士さんもトイレに行きたいけれども行けないということが書かれております。保育士さんがトイレに行く時間も取れずに膀胱炎になっているということはよく聞くお話だというふうに思います。

 そして、四歳児、五歳児、三十人に一人、園庭遊びの絵なんですけれども、この三十人に一人という状況が二十五人に一人になったとしても、命と安全を守ることが非常に難しい実態があるというふうに思います。

 子供の命、安全を守るためにも、発達を保障するためにも、当分の間というのはごくごく、本当に短い期間でなければならないというふうに考えますけれども、加藤大臣の見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 最低基準を引き上げた場合には、全ての施設において、新しい基準に見合うだけの保育士等を確保することが必要になります。よって、保育士等の確保ができない施設においては、子供の受入れができなくなるなど、子供たちへの保育の提供に支障が生じる可能性がございます。こうしたことを踏まえ、経過措置を設けることとしております。

 現時点で経過措置の見直し時期を明示することは困難ですが、全ての子供が良質な保育を受けられる体制を早期に確保することが重要であり、職員配置の改善状況を把握するとともに、保育士の確保の取組を進めてまいります。

本村分科員 やはり完全実施、この配置基準の改善の完全実施の取組を行う上でも、従来から行われてきた三歳児の配置改善の加算、これを取得した保育園、これは保育士さんが確保できた保育園ということになりますから、この加算を取得した保育園と取得していない保育園、これの調査、比較、分析が必要だというふうに考えております。

 三歳児加算を取得している割合ですけれども、民間の保育園は内閣府の調査でも八九・三%ができている、ただ、一割程度ができていない。公立は三歳児加算と同程度の配置をしているというのは二八・三%ということで、公立がかなり遅れているということも見て取れます。

 公立、民間共に分析、比較、調査をやっていくべきだというふうに考えますけれども、まず見解を伺いたいと思います。

 そして、特に遅れている公立保育園の調査分析が必要だというふうに考えます。是非、三歳児加算、やっている園とやっていない園との違いを分析していただき、どうやったら基準の方向へ行けるのか、急いで明らかにするべきだというふうに考えますけれども、大臣と政務官、是非お答えをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 お答えを申し上げます。

 三歳児配置改善加算につきましては、平成二十七年度より、私立保育所において三歳児の職員配置を二十対一から十五対一に改善した場合に公定価格上の加算措置として実施をしてきたものであります。

 その配置改善の実施状況について、私立保育所では実施の状況を把握するなど一定の調査分析を行っている一方で、公立の保育所につきましては、加算の対象外であったことから、これまで調査を実施しておりませんでした。

 私立保育所におきましては、三歳児配置改善加算について、九割の施設で実施をされております。御指摘のとおりです。また、加算を取得していない理由について一部の自治体に聞き取り調査を行ったところ、必要な保育士を確保できないことが主な理由として挙げられており、引き続き保育士等の確保の取組を進めてまいります。

 また、公立保育所につきまして、今般の最低基準の改正を踏まえた実施状況を把握することは重要と考えておりまして、今後、地方自治体を通じて把握をしてまいります。

濱田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の調査分析等につきましては、公立保育所も含め、保育行政を所管するこども家庭庁において実施いただくものと承知しておるところでございます。

 以上でございます。

本村分科員 加藤大臣にお願いしたいんですけれども、三歳児加算、できている保育園とできていない保育園を比較して、できている保育園はなぜ保育士が確保できたのかということもしっかりと分析をしていただきたいんですけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今後、地方自治体を通じて把握をしてまいりたいと思います。

本村分科員 ありがとうございます。

 是非、三歳児加算というのは既にやっていることですから、来年度を待たずに、すぐに調査をしていただきたいというふうに思っております。

 保育士の配置基準の改善について、今回パブリックコメントを行っていると思いますけれども、どのような御意見が多かったのか、お示しをいただきたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のパブリックコメントにつきましては、昨年末から本年一月にかけて御意見を募集いたしました。提出いただいた御意見につきましては現在集計中ではありますけれども、主な御意見といたしましては、経過措置をつけないでほしい、つけるとしても期限を明記してほしいですとか、それぞれ十五対一あるいは二十五対一への改善では不十分で、更なる改善が必要であるですとか、一、二歳児についても配置基準を改善してほしいといった御意見を頂戴しております。

 パブリックコメントの結果につきましては、配置基準を改正する内閣府令等と併せまして、今後公表を予定しております。

本村分科員 その中で、一歳児、二歳児の配置基準の改善も求める声があったというお話ですけれども、資料の十を見ていただきたいんですが、これは、七千三百十六人の保護者の方から実行委員会の皆さんが取られたアンケートの結果です。保育士一人が見る子供の人数はどのくらいが安心できますかとの質問なんですけれども、今回見送られた、一歳児六人の子供さんを一人の保育士で見るというのでいいというふうにお答えになっている保護者の方はゼロでございます。そして、二〇二五年以降国がやるんだというふうにお示しをしているんですけれども、一歳児五人を一人の保育士でいいんだというふうにお答えになっておられる保護者の方は二%でございます。

 本当は納得できない、五人に一人という保育士の配置基準の改善でも納得できない改善なんですけれども、このくらいはすぐにやっていただきたい。一歳児、二歳児の部分、すぐにやっていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 一歳児につきましては、こども未来戦略において、令和七年度以降、保育人材の確保等の関連する施策との関係も踏まえつつ、加速化プラン期間中の早期に六対一から五対一への改善を進めるとされており、今後の予算編成過程において、引き続き検討してまいります。

本村分科員 早急にやっていただきたいんですね。

 それで、保育士の確保のことがやはり必要になってまいります。

 そこでお伺いしますけれども、潜在保育士というのは何人だと把握をされておられますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる潜在保育士でございますけれども、直接的な正式な定義は必ずしもないのではありますが、保育士資格を持ちながら保育所等に勤務していない方の数につきまして、保育士登録者数から保育士として保育所などに勤務している方の数を単純に差し引いて計算いたしますと、粗い数字でございますけれども、令和三年十月一日時点で約百七万人おられます。

 ただ、この中には、保育士資格あるいは幼稚園教諭免許状の両方を持っておられて幼稚園で勤務している方ですとか、保育士資格を取得した方がほかの職種に従事をしている方など、それぞれの事情で保育士として就業していない方が含まれているので、この方たちが全て直ちに保育士として就業できる方のみではないとは考えております。

本村分科員 百七万人いると。その中で、すぐに保育士として働けるという方が全員ではないというふうに思いますけれども、こういうふうにたくさんの方がいらっしゃる、保育士資格を持っているということでございます。

 それで、資料の五を見ていただきたいんですけれども、実行委員会の皆さんの政策提言なんですね。今の、現行の基準に比べると約二倍の配置基準が必要なんだという提言なんですけれども、資料の五を見ていただきますと、その中に、保育士不足ではなく、現状の保育施設で働きたい保育士が不足しているのだと言えます、余裕のない現場と、仕事の責任に見合わない処遇では、保育士が集まらないのは当然だというふうに指摘をされております。

 やはり、抜本的な配置基準の改善と更なる処遇改善が必要だというふうに思います。今の保育士配置基準や処遇を改善することは、潜在保育士の方々が職場復帰をするということにプラスになると考えますけれども、大臣、お答えをいただければと思います。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 令和元年五月に公表された東京都保育士実態調査によれば、過去に保育士として就業した方が退職した理由として、職場の人間関係や、給料が安いに次いで、仕事量が多い、労働時間が長いことが上位に挙げられております。

 今般の配置基準の改善や処遇改善は、職場の状況の改善に資するものであり、潜在保育士の職場復帰にもつながるものだと考えております。

本村分科員 今回の保育士の配置基準が改善したとしても、じゃ、どうなのかということで、今度は資料の十四を見ていただきたいんですけれども、これは四千十八人の保育士の皆さんのアンケートの結果になっております。この対策では不十分というのが五〇%、ほとんど変わらないというのが四〇%、合わせて九割の方がそういう回答をされておられます。そして、いろいろ制度を御存じの園長さんだけを取り出してみますと、九八%がよくならないというふうに回答をしております。

 やはり、子供の命や安全を守ることのために、こういう対策だけではリスクがまだまだ減らないという問題や、一人一人の子供たちへの丁寧な関わりの時間が十分取れないですとか、保育士の方々が忙しそうで保護者の方が相談しづらいですとか、これは資料の八にもあるんですけれども。保育士の方が有給休暇、休憩時間が取れないですとか、基幹的業務を所定時間内に終えることが難しい、所定労働時間内に仕事を終えることが基幹的な業務でも難しい、産休、育休を取ることを後ろめたく感じてしまうようなぎりぎりの体制なんだと泣きながらおっしゃられた保育士のお話もお伺いをいたしました。

 そうしたことから考えても、更なる保育士の配置基準の改善、処遇改善、人員体制の強化、これが必要だというふうに思っております。

 それで、私は、保育士の方々の仕事というのはこの十年来増えているじゃないかというふうに質問をさせていただきました。そうしましたら、当時の加藤厚生労働大臣は、「具体的に保育士の方の仕事量を定量的に調査した結果はない」というふうに答弁をされ、私は非常にショックを受けました。この仕事量の調査というのは行うべきだというふうに考えますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 保育士の業務は、例えば、一人一人の子供と関わりつつ集団全体の様子に目を配ったり、個々の特性に応じて援助をしたりするものであり、その複雑さや専門性を測ることが難しいこと、心理的な負担感を定量的に評価することは難しいこと、調査に係る保育士の負担も考慮しなければならないことなど、慎重に検討すべき論点が多数あり、保育士の仕事量を定量的に調査することは容易ではないと考えております。

 過去に保育士として就業した方が退職した理由として、仕事量が多いや、労働時間が長いが上位に挙げられております。こうした状況を踏まえ、保育士の業務負担を軽減するため、勤務環境の改善のための保育補助者の配置や、スポット的な支援を行う保育支援者の配置のほか、登降園管理システムの導入等のICT化の推進などに取り組んできたところであります。

 まずは、こうした努力を続けることで、現場の保育士の方々が生き生きと働ける環境をつくることが重要だと考えております。

本村分科員 そのときの予算委員会の、保育士配置基準の根拠について加藤厚生労働大臣が答弁されているんですけれども、それは一九六二年、六八年の調査であるということになってまいります。やはり、当時より、保育時間というのは十一時間保育ということで、大分長くなっております。

 是非、今日的な保育実態の調査をお願いしたいと思います。その際には、基幹的業務が所定労働時間内に終わるかどうか、有給休暇や休憩時間、産休、育休、育児時間、生理休暇などが取得できているかどうか、どういう体制ならヒヤリ・ハットが重大な事故にならないかという分析ができる実態調査を是非お願いしたいと思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 こども未来戦略に基づく保育士の配置基準の改善が実行されれば、御指摘の意見具申で必要とされた配置基準より手厚い配置を実現できることとなります。まずは、安心して子供を預けられる体制を早急に実現することが重要であり、全力で取り組んでまいります。

 その上で、先日開催をしました子ども・子育て支援等分科会においては、真に必要な配置基準はどうあるべきか科学的検証をしていただきたいとの御意見や、子供、子育てを取り巻く状況が変わっている中で、今般の配置改善で十分なのか、エビデンスに基づいて確認いただきたいといった御意見をいただいております。

 現時点では、職員配置基準に関する科学的検証の手法や必要となるエビデンスに関する知見が明確でないことから、まずはその点について情報の整理が必要だと考えております。そうした整理の中で、御指摘のあった、保育士が無理のない働き方ができているかに関する実態把握等につきましても、科学的検証の対象やエビデンスとなり得るかも含め検討しつつ、何ができるかを検討していきたいというふうに思っております。

本村分科員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、こども誰でも通園制度に関して申し上げたいと思います。

 全国保育団体連絡会の実方伸子さんは、こども誰でも通園制度について、次のようにおっしゃっております。

 制度の内容が明らかになるにつれ、この仕組みで大丈夫なのという不安の声が大きくなっています。人見知りが始まる六か月児、後追いが激しくなる一歳児が、突然、知らない場所で知らない人に預けられたらどうなるでしょうか。慣らし保育もなく、その子の特性などを理解する時間も情報も限られる預かりがどんなに危険か、保育関係者なら容易に想像できます。何より、保育中の事故は、ゼロ歳児、一歳児が八割を占め、特に預け始めの時期に集中しているのです。さらに、慢性的な保育士不足で日々の保育にも余裕がない保育現場に、この制度は、その日ごと、時間ごとに異なる子供の受入れを求めます。保育士に更なる負担を強いることになりかねません。たとえ短時間であろうと、保育は子供の安心、安全が最優先です。社会で支える子育てを保育所等が担うためにも、自治体等公的責任の所在、十分な条件整備はどうしても必要です。

 長年、一人一人の子供さんを大切にしようと奮闘されてこられた、こういう方の御指摘は本当に重く重く受け止めなければいけないというふうに考えております。

 こども誰でも通園制度の保育士の体制は、子供の命と安全を守り、子供一人一人の特性、発達段階などをしっかりと把握し、対応できる体制にするべきだというふうに考えますが、見解を伺います。

 また、こども誰でも通園制度を、二〇二五年度からの本格実施を見据えているということですけれども、実施するに当たって、せめて一歳児始め更なる処遇改善をしてから、そして、来年度から保育士の配置基準の完全実施をするということが前提であるべきだというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 こども誰でも通園制度におきましては、試行的事業において、一時預かり事業と同様の人員配置基準で行うこととしております。その上で、制度の本格実施に向けては、保育士以外の人材の活用も含め、試行的事業の運用状況などを踏まえつつ、更なる検討を行うこととしております。

 いずれにしましても、子供の安全が確保されることが大前提であり、制度の本格実施に際しましても、この考えを徹底してまいります。

 こども誰でも通園制度は、保護者の方を始め、多くの方々に御期待のお声をいただいております。スピード感を持って実現していくことが重要であり、配置基準の改善と並行して取組を進めてまいります。

本村分科員 命と安全を守り、子供の権利を保障する丁寧な保育ができる、そうした環境整備に是非尽力をしていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧島主査 これにて本村伸子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力を得まして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後一時四十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.