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第1号 令和3年2月25日(木曜日)

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本分科会は令和三年二月二十二日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十五日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      うえの賢一郎君    衛藤征士郎君

      野田  毅君    細田 健一君

      岡田 克也君    藤野 保史君

二月二十五日

 細田健一君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和三年二月二十五日(木曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 細田 健一君

      井林 辰憲君   うえの賢一郎君

      衛藤征士郎君    小田原 潔君

      神田 憲次君    野田  毅君

      泉  健太君    岡田 克也君

      中川 正春君    藤野 保史君

   兼務 尾辻かな子君 兼務 伊佐 進一君

   兼務 美延 映夫君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         上川 陽子君

   財務副大臣        伊藤  渉君

   厚生労働副大臣      山本 博司君

   内閣府大臣政務官     和田 義明君

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

   衆議院法制局第二部長   齋藤 育子君

   国立国会図書館調査及び立法考査局憲法調査室専門調査員           寺倉 憲一君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  時澤  忠君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  冨安泰一郎君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  木村 陽一君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  中島 淳一君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            中村  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          金子  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 松本  裕君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁審議官)            佐藤  淳君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      鑓水  洋君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           小林 洋子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           富田  望君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           岸本 武史君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           木村 典央君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

   予算委員会専門員     小池 章子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  うえの賢一郎君    神田 憲次君

  野田  毅君     小田原 潔君

  岡田 克也君     泉  健太君

  藤野 保史君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     井林 辰憲君

  神田 憲次君     うえの賢一郎君

  泉  健太君     中川 正春君

  塩川 鉄也君     藤野 保史君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     野田  毅君

  中川 正春君     岡田 克也君

同日

 第一分科員尾辻かな子君、美延映夫君及び第二分科員伊佐進一君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和三年度一般会計予算

 令和三年度特別会計予算

 令和三年度政府関係機関予算

 (法務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

細田主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和三年度一般会計予算、令和三年度特別会計予算及び令和三年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 令和三年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関の収入支出予算について御説明申し上げさせていただきます。

 まず、一般会計歳入予算額は、百六兆六千九十七億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は五十七兆四千四百八十億円、その他収入、五兆五千六百四十七億円余、公債金は四十三兆五千九百七十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、三十兆五千二百四十七億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げます。国債費は七十三兆七千五百八十七億円余、新型コロナウイルス感染症対策予備費は五兆円、予備費は五千億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも二百四十六兆七千八百九十二億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入三千八百三十七億円余、支出一千九百八十五億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。

 なお、時間の要因もありますので、お手先に配付をいたしております印刷物をもちまして詳しい説明に代えさせていただきますので、記録にとどめてくださいますようよろしくお願い申し上げます。

 以上、御審議のほど、よろしくお願いを申し上げます。

 読み間違えをしております。

 国債費は二十三兆七千五百八十七億円余であります。

細田主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生財務大臣から申出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

細田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

細田主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

細田主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

神田(憲)分科員 皆様、大変お疲れさまでございます。

 本日は、第三分科会の発言の時間を賜り、ありがとうございます。また、麻生財務大臣、それから伊藤副大臣におかれましては、御多忙中のところ、本当にありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速、質問の方に入らせていただきたいと存じます。

 まず最初に、税務行政のデジタル化という観点についてお尋ねをいたします。

 昨年七月十七日に閣議決定をされました骨太の方針二〇二〇では、グローバル化やデジタル化を背景に、新たな経済活動が拡大する中で、適正かつ公平な課税を実現し、税に対する信頼を確保するため、制度及び執行体制の両面から取組を強化する旨が記載されております。

 現状での政府の具体的な取組について、お尋ね申し上げます。

鑓水政府参考人 お答えいたします。

 経済活動のグローバル化、デジタル化に伴う調査、徴収事務の複雑化などにより、税務行政を取り巻く環境は厳しさを増しております。

 このような中で、適正、公平な課税、徴収を引き続き実現していくためには、税務執行体制の強化を図っていくことが重要と考えております。

 こうした中で、令和三年度予算案においては、租税回避等への対応や税務手続のデジタル化等の新たな日常の実現に向けた対応などを図っていくための所要の体制整備を盛り込み、国税庁の定員について、四十四人の純増となっております。

 また、国際課税に係る調査等を専門的に担当する国際税務専門官、電子商取引に係る調査等を専門的に担当する情報技術専門官の設置を積極的に進めております。

 今後とも、適正、公平な課税、徴収を実現すべく、必要な機構・定員を確保し、税務執行体制の強化を図ってまいりたいと考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 次に、マイナンバー制度が導入されましてから五年が経過いたしました。

 マイナンバーカードの普及率ですが、新型コロナウイルス対策で実施した十万円の特別定額給付金の申請目的、あるいは政府のマイナポイント事業で増えたとは申しますものの、いまだ、まだ二五%です。

 国税の執行におかれまして、制度導入前に比べてどのような点が変わったのでしょうか。また、現行マイナンバー制度の問題点、さらには、今後どのような点を抜本的に改善するのかをお聞かせください。

鑓水政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバー制度は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平公正な社会を実現する社会基盤として導入されたものと承知しております。

 国税の執行においても、マイナンバーを活用することにより、納税者の利便性向上と行政事務の効率化に取り組んできたところです。

 納税者の利便性の向上としては、例えば、マイナンバーカードを利用すれば、簡易にe―Taxにログインでき、より簡便に電子申告が行える仕組みとなっております。さらに、昨今では、スマートフォンによりマイナンバーカードを読み取ることもできるため、より便利に電子申告を行えるようになったと考えております。

 また、行政事務の効率化といった点については、マイナンバーを用いることにより、法定調書の名寄せや申告書との突合がより効率的かつ正確に行えるようになり、所得把握の効率化、適正化につながっていると考えております。

 国税庁といたしましては、引き続き関係省庁等と連携、協調を図りつつ、マイナンバー制度を活用した更なる納税者利便の向上、行政事務の効率化とマイナンバー制度の更なる普及、定着のための周知、広報に取り組んでまいりたいと考えてございます。

 続きまして、これまでの評価とか改善点についても、あればということで御質問いただきました。

 国税の関係で申し上げますと、例えばマイナンバーカードを利用すれば、より簡便に電子申告を行えることができるようになっているということは先ほど申し上げたとおりです。

 他方で、マイナンバーカードの交付枚数については、直近で約三千二百万枚と承知しております。

 より多くの皆様にマイナンバー制度のメリットを感じていただけるよう、国税当局としても、機会あるごとにマイナンバーカードの普及促進に努めており、また、マイナンバー制度を利用した税務手続の更なる利便性の向上策についても引き続き検討してまいりたいと考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 現状、三千二百万枚のマイナンバーカードの交付というお話でありましたのですが、行政のデジタル化、確かに事務の効率化とか納税者の利便性ということをお伺いしたわけですが、デジタル化がなぜうまくいっていないかということなんですが、私が考えますに、国民が、送る方、つまり送り手側の方だけが電子になっているからでないかと考えます。

 電子情報を受け取る側は、受け取った情報をそのままの形で生かせるようなソフトウェアの体制が整っていない。さらには、現在においても、受け取った電子情報を紙媒体に印刷し直して、更に人間がチェックするというようなことを行っているやに聞いております。

 本年九月にはデジタル庁が創設されるということですので、この時期に抜本的にそのやり方を変える必要があるというふうに考えます。双方、つまり、行政それから納税者両方にとって、全体的な利便性の高いシステムを構築するべきであると考えますし、このデジタル庁の創設のチャンスを捉えて、抜本的、包括的に改善をお願いを申し上げたいと存じます。

 次に、今後の税制改正の方向性についてお尋ねを申し上げます。

 資産課税においては、今後、政府税制調査会で議論されました、資産の移転の時期の選択に中立な税制の構築に向けて本格的な検討を進めるとされております。

 これは大変抽象的な表現なんですが、具体的にはどの規定をどのように改正するのか、具体的な方向性や、これまでどのような議論が行われたのかについて、お尋ねをいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 資産課税をめぐりましては、社会の高齢化の進展に伴いまして、高齢世代に金融資産等が偏在していると同時に、老老相続と呼ばれる現象が進みまして、若年世代への資産移転が進みにくい状況になっているといったような指摘がございます。

 こうした中で、我が国の贈与税につきましては、相続税の負担の回避を防止する観点からかなり高い税率構造が設定されておりますので、生前贈与に対して抑制的な効果があるのではないかという面がございます。

 一方で、こうした贈与税の税率構造をもってしても、相当程度の富裕層につきましては、財産を生前に分割贈与を行うことによる相続税の負担回避を防止するには限界がある、こういったところが現実でございます。

 その一方で、諸外国の相続税制におきましては、一定期間内の生前贈与と相続財産を一体的に一つの税目で課税をするという仕組みがあったりいたしますが、これに相当する我が国の制度としては、相続時精算課税制度という委員も御存じの制度があるわけでございます。しかしながら、これは選択制の制度であるということもございまして、なかなか利用が進んでいないという状況にございます。

 こうした中で、これまでの政府税制調査会の議論でありますとか与党の税制改正大綱におきましては、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の在り方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しながら、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて検討を進めるという方向性が示されておりまして、具体的な制度設計につきましては、今後、政府の税制調査会などの場で幅広く議論していくべき課題だというふうに考えております。

神田(憲)分科員 次に、個人所得課税におきましては、政府の税制調査会等で、経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し、これを行うとされております。

 既に令和二年度の所得税の申告から大きな改正が行われておるわけですが、今後、どのような方向性で改正をされるのでしょうか。また、これまでどのような議論が行われたのかについてもお尋ねいたします。

麻生国務大臣 御指摘のありました経済社会におけますいわゆる構造変化というものを踏まえた税制の見直しについては、これまでも、経済社会の構造変化を踏まえまして、平成二十九年度の改正において、就業調整を意識しなくても済む仕組み、例の百三万円、百五十万円のあの話ですけれども、仕組みを構築のため、配偶者の控除などの見直しというのを行わさせていただきました。

 平成三十年度改正におきましては、働き方が多様化するということに対応する観点から、給与所得の控除等々につきましては、所得計算上適用される控除から、どのような所得にも適用できる、そういった基礎控除への振替というのをやらせていただいております。また、所得配分機能回復の観点から、給与所得の控除とか基礎控除の見直し等々も行わさせております。

 いずれにいたしましても、今後の個人所得課税につきましては、令和三年度の税制改正大綱におきましても、令和二年分所得から適用となった改正の影響等々も踏まえまして、働き方の多様化を含みますいわゆる経済社会の構造変化に対応できるという意味で、所得再配分機能というものの回復の観点から各種の控除の在り方を検討するということにされておりますので、こうした方針、方向等を踏まえて引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 昨年、我が国は、コロナ禍ということで、本当に未曽有の危機、経済もいまだに、持ち直しつつはあるんですが、なかなかこれから先の回復、国としては来年度にはということではあるんですが、その兆候がまだまだはっきり見通せないような状況にあるわけで、そんな中、リモートによる仕事、それからさらにはワーケーション等々多様な働き方、兼業、副業というようなものも今やあちこちで見られるような状況になっております。是非、働き手にとって本当の意味の公平な税制、お願いを申し上げたいと存じます。

 続きまして、私的年金等なんですが、これに関する公平な税制の在り方については、今後どのような方向性で改正をなさるのか、また、これまでどのような議論が行われたのかについてお尋ねをいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 私的年金に関する税制についてでございますが、これまで、企業年金でありますとか個人型の確定拠出年金といった私的年金そのものが段階的に整備拡充されてきたということもございまして、働き方でありますとか、あるいはどういう企業で働いているか、これに応じまして税制上の適用関係が異なるということになってございます。

 フリーランスの方ですとか自営業者の方ですと企業年金に加入はされておりませんし、サラリーマンの方の中でも、企業年金に加入されている方は全体の四割ということでございますので、かなり、その働き方、あるいはどういう企業で働いているかによって違いがあるということでございます。

 こうした中で、諸外国を見ますと、例えばイギリスやカナダの例に見られますように、どのような私的年金に加入しているか、あるいはその組合せによらず同様の非課税拠出が行えるように、一人当たり一定の非課税拠出限度額が設けられている、そういった制度も諸外国においてはあるわけでございます。我が国においては、どういう私的年金に加入しているかによって、非課税拠出の限度額がかなり異なるという制度になっているということでございます。

 これまで、政府税調ですとか与党税調の御議論では、働き方の違いによって税制上の取扱いに大きな違いが生じないようにということで御議論いただいておりまして、令和二年度の税制改正あるいは今回の令和三年度の税制改正においても段階的に見直しを進めてきておりますが、今後ともそういった公平な税制の在り方を目指して、拠出、運用、給付の各段階を通じた公平な税負担の在り方についても併せて検討していきたいというふうに考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 次に、消費税のインボイス制度についてお尋ねいたします。

 令和五年の十月一日から、いよいよ適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が導入されるわけです。また、本年十月一日からは適格請求書発行事業者となるための登録が始まります。

 政府の方はこれらの制度についてどのような広報を実施しているのかをお尋ねいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度の円滑な導入に向けまして、これまで、制度に関する詳細なQアンドA、あるいは分かりやすいパンフレットを公表する、また、各省庁を通じて事業者団体へ呼びかけを行い、オンライン形式を含めまして、説明会等へ財務省及び国税庁から講師を派遣して制度の周知を行うといったような取組を行っております。

 また、インボイスを交付する事業者につきまして、本年十月に登録手続が開始されるということで、御指摘のとおりのような状況でございますので、業界紙に広告を掲載したり、あるいは国税庁のホームページに制度に関する動画を掲載するといったような施策についても実施してきておりまして、引き続きこのような周知、広報を徹底的に進めてまいりたいというふうに考えております。

神田(憲)分科員 次にお尋ねする点が中小事業者にとって一番の肝、関心事になるかと思いますが、基準期間の課税売上高、これが一千万円以下の免税事業者にとっては、適格請求書発行事業者の登録を選択すべきか否か悩むところかと思います。登録をしないということになりますと、取引から排除される又は値引きを強要される等のことが考えられるわけです。この点についての政府の見解はどのようになっておりますでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のような免税事業者の方々をめぐる懸念があるということで、このインボイスの導入に当たりましては、まずその軽減税率の導入からインボイスの導入までの間に四年間の準備期間を設けるということに加えまして、インボイスの導入後につきましても、免税事業者からの仕入れについて一定の仕入れ税額控除を認める仕組みを、六年間経過措置として設けることにいたしております。合計で十年間の経過措置があるということでございます。

 これに加えまして、免税事業者である方が課税選択をするという場合の扱いにつきまして、本来は課税期間の開始前までに課税事業者の選択の届出をする必要がございますが、インボイス制度が導入される最初の一年間につきましては、課税期間の開始後においても課税選択ができるという特例を措置いたしております。こうした特例を様々措置しておりますほか、課税選択をされた場合も簡易課税の適用が可能であるということでございます。

 こういったあたりの周知、広報に努めますとともに、中小事業者の方が、インボイス制度の導入に伴って、例えばその優越的な地位の濫用でありますとか、下請法に反する様々な被害に遭わないようにということで、この辺は関係省庁と連携して取り組んでまいりたいというふうに考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 電子インボイス制度ですが、その取組状況がどのようになっているのかをお伺いしたいと思います。

 昨年の九月だったんですかね、こういったソフトの開発業者で団体をつくって、今後このインボイスに関わる帳票類において、簡素で、それから安価で、ユーザー側が利用しやすいものを今後開発していくというような実務面の設計になっておるかと存じます。

 そういった意味で、現状の取組状況について最後にお聞かせ願えたらと存じます。

冨安政府参考人 答弁いたします。

 政府といたしましては、事業者の業務効率化、生産性向上を促進する観点から、今話題となっています二〇二三年十月からのインボイス制度への対応を契機に、社会全体のデジタル化を推進し、事業者の受発注から請求、会計、税務処理に至るバックオフィス業務でのシームレスなデータ連携を実現することが重要と考えております。

 このため、具体的には、今先生の御指摘にもございました、まさに民間の方で団体をつくっていらっしゃる電子インボイス推進協議会、また、日本税理士連合会などの関係者と連携いたしまして、Peppolと呼ばれております国際的な標準規格をベースに、電子インボイスに係るデータ形式や通信方式の仕様の標準化に向けた作業を進めております。

 また、政府におきましても、電子調達する仕組みを各府省において持っておりますので、そういった各府省にもインボイス対応について検討するようこちらからも働きかけをいたしまして、対応を開始しているところでございます。

 またさらに、電子インボイスの円滑な導入に当たりましては、特に中小零細事業者の利用環境の整備や周知、広報が重要であると考えておりますので、関係府省と連携して必要な対応をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

神田(憲)分科員 ありがとうございます。

 この電子インボイスなんですが、どうしても電子ツール、ソフトによらざるを得ない。ここでどうしても問題となるのが、やはり小さな自営業者なり規模の小さな法人が一定程度の費用負担ということになるのかと思います。この負担について、ソフトは当然簡素な仕組みになっているものが望まれるわけですが、費用負担を生じるならもういいやということになりかねないとも限らないというふうに考えるわけです。

 そういった意味では、この電子インボイス制度の我が国への定着ということを考えますと、今後、推進協議会でどのような形で、また、国がどのような働きかけによって事業者の方々に定着を図っていくかというのは、やはり税の観点から申しましても大変今後の注目でありますし、重要な観点かと思っておりますので、是非是非お力をいただいて、スムーズなインボイス制度が定着するようにお願いを申し上げ、私からの質問を終わらせていただきます。

 本日は、お時間を賜りまして、誠にありがとうございました。

細田主査 これにて神田憲次君の質疑は終了いたしました。

 次に、美延映夫君。

美延分科員 日本維新の会、美延映夫でございます。

 第三分科会で御発言の場をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、国際金融都市について麻生大臣に伺いたいと思います。

 国際金融都市とは、世界的に事業を展開する銀行や証券会社が拠点を構え、まさに文字どおり国際金融取引の中心となる都市であります。イギリスのEU離脱や香港の政情不安、ユーロ圏経済の減速と様々なリスクが高まる中、国際金融をめぐる情勢は変化の兆しがあると思われます。

 麻生大臣は、この国際金融をめぐる世界の情勢についてどのようにお考えか、御教授願えますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、先生御存じのように、時差の関係もありまして、グリニッジスタンダードタイムで動いておりますロンドンのマーケット、次にニューヨークのイーストスタンダードタイム、そしてアジアと、大体八時間ずつぐらいずれております関係で、二十四時間全部開けるような形で、マーケットというのは三つのタイムゾーンでそれぞれ動いているということなんですが。

 足下で、今御存じのような地政学的なリスクというものが高まってくる中で、日本が、地理的にアジアの中にありますので、そういった意味では、国際金融センターの地位というものを獲得することによって、こういった国際的なリスクの分散ということに貢献できるのではないかと考えております。

 日本には、御存じのように、何といっても、アジアの中で確固たる民主主義というものができ上がっていますし、法治主義もはっきりしていますし、いろいろな意味で政権も安定しておる、政策も安定しておるというような、良好な治安とか、治安は大きいですから、治安、生活環境等々というのがあるんだとは思っておるんですが。

 こういった、なかなかつくれないとか、もう付与の条件が一つありますのに加えて、日本の場合は、何といっても、GDPでいえば五百五十兆になんなんとする実体経済と株式市場というものが控えております。加えて、家計の、個人金融資産とでもいうべきものが一千九百兆を楽に超えておりますので、そういった家計金融資産。しかも、その中で、金融資産の中に占めるもので、債券とかを除いたいわゆる現預金というものが半分以上、約一千三十兆ぐらい。ちょっと日々変わりますけれども、一千兆を超えるほどの金融資産、現預金で持っておりますので、こういったものが、資産を運用するビジネスをやっておられる方々、いわゆる金融の世界におられる方にとりましては、これはすごく大きな可能性がそこにあるということを意味しております。

 こういった日本の持っております強み、またそれを生かす、それによって、日本の経済にも、そして世界の金融というものに関しても安定を提供するといったような国際金融センターというものの地位というものは、日本には、それをやろうという意欲なり、それに対する対応なり法律なりというものをきちんとすれば、十分にそれをやれる数々の条件を満たしておる数少ない国でありまして、そういった意味では、こういったものにつきましては、私どもとしては、今後いろいろな意味で積極的にやって、国として取り組んでしかるべき課題ではないかと思っております。

美延分科員 大臣、ありがとうございます。

 今大臣がおっしゃったことに私も同感で、日本というのはそういうきちっとしたところがあって、その条件を満たしているというのは、私ももう全く同意見でありますけれども。

 ところで、外国企業や人材の誘致に、御承知のとおり、法人税や所得税の優遇措置や在留資格の見直しが鍵を握ると思われます。政府におかれましては、昨年十二月八日付の総合経済対策及び十二月二十一日付の税制改正の大綱で、税制対応、規制対応、在留資格等について見直しを行われたと承知しております。

 まず、税制面での見直しにおいては、法人税、相続税、所得税の見直しとなっております。特に、法人税においては、現行制度上では、上場会社の税負担の軽減が認められてはおりますが、非上場会社では税負担の軽減は認められておりませんでしたが、見直し後の案では、投資運用を主とする非上場会社に限っては、一定条件の下、損金算入による税負担の軽減が認められることになっております。

 ここで言う一定要件とはどのような要件か、教えていただけますでしょうか。

住澤政府参考人 御指摘の今回の見直しは、業績連動型給与の損金算入に関するものでございます。

 投資運用業を主たる業とする会社を対象といたしまして、そのうち、同族会社でない会社等につきまして措置するものでございますが、具体的な要件といたしましては、この業績連動給与の算定方法などが記載された事業報告書が金融庁のウェブサイトに掲載されていること、また、投資家との契約書におきましてあらかじめ業績連動給与が支払われる旨の記載がなされていることを要件として求めることとしております。

 これによって恣意性を排除し、透明性を確保するという考え方でございます。

美延分科員 ありがとうございます。

 次に、在留資格の緩和に関してですが、現状では、外国人が起業準備で短期滞在で入国した場合は、ビジネス開始前には一旦帰国することとなっております。一方、見直し案では、一旦帰国することがなく就労ビザが取得可能となっております。

 現在、日本においては二十種類以上の就労ビザがあるようですが、この場合で取得可能な就労ビザはどのようなビザになるのでしょうか。そして、就労期間についてもお聞かせください。また、これらの施策については、海外から企業や人を引っ張ってくることに対してどの程度の有効性や効果が見込まれているのか、併せて教えていただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御案内のとおり、在留資格として高度専門職という在留資格がございます。

 これは学位とか職歴、年収などを基にポイントを設けまして、例えば、七十点を超えると在留期間が長くなるとか在留資格をまたがった活動ができるといったものでございます。

 御指摘の総合経済対策におきまして、世界に開かれた国際金融センターの実現のための取組の一つといたしまして、この高度外国人材に対するボーナスポイントの新設、それから、家事使用人の雇用要件の緩和であるとか、先生御指摘の在留資格、短期滞在で入国後、帰国することなくビジネスを開始するための在留資格付与の特例、そのほかに配偶者就労に係る利便性の向上などの特例を設けることが考えられております。

 これについて、今現在、詳細につきましては金融庁等の関係府省庁と検討を行っているところでございまして、可能なものから順次特例を速やかに実現できるように努めてまいりたいということでございます。

 これでどのぐらい増えるかというのは、ちょっと今の段階で、いろいろな施策の結果だと思いますので、なかなか答えづらいことを御理解いただきたいと思います。

美延分科員 ありがとうございます。

 受入れ体制として早速法整備が整ってきているという認識はありますが、今おっしゃったように、今から走り出すところですから、例えば不具合や追加で措置が必要になった場合は、ちゅうちょせずに法整備を引き続き行っていただけるよう、これは要望しておきます。

 現在、国際金融機能の誘致に関しては、菅総理の十月五日の内閣記者会見での御発言を受けて、東京に加えて福岡と大阪が手を挙げているわけでありますが、アジアとの地理的、歴史的近接性や産学連携で強みの福岡、関西圏として経済のみならず文化、観光に強みがある大阪、既に国際センター機能として世界の都市と比較しても株式・金融市場としてトップランクに位置する東京、手を挙げている都市のどれもがポテンシャルの高い地域だという私は認識を持っております。

 アジアにおいて、開かれた自由と民主主義の経済大国として、安全保障の側面からも、日本が今こそその役割を積極的に担うのは私は必然と考えております。世界的な都市間競争の中、日本も国全体の成長力を高める意味でも、一都市だけではなく国際競争力を持つ複数の金融都市が必要と思われます。

 また、近年の国際金融面での日本の世界におけるプレゼンスの低下、及び今後の日本の世界における政治的リーダーシップの発揮を考えた場合、日本における国際金融都市構想が必要と考えています。

 そこで、世界的な競争力を高める意味においてお尋ねいたします。

 政府としては、国際金融都市は一か所に限って検討されているのか、それとも複数を検討されているのか、教えていただけますでしょうか。また、東京、大阪、福岡とそれぞれの都市が競う意義についてはどうお考えでしょうか、併せて教えていただけますでしょうか。

中島政府参考人 お答えいたします。

 国際金融都市の確立に当たっては、国が特定の自治体を定めるということではなく、国全体の施策として、税制、行政サービスの英語対応、在留資格の緩和といった諸課題に取り組んでいるところであります。

 一方で、海外企業、人材の受入れに当たっては、受け入れる地方自治体の取組も不可欠であり、議員御指摘の、それぞれの都市がそれぞれの強みを生かして実際に国際金融センターに向けた取組をされるということであれば、国としても積極的に連携してまいりたいというふうに考えております。

美延分科員 ありがとうございます。一か所じゃないということで。

 我が国では、株式取引を始め、金融機能が東京に集積しております。新型コロナの影響により、リスクヘッジという観点から、そして、改めて災害時の、緊急事態の発生時における東京一極集中のリスクの顕在化を見逃してはならないと思います。他方、海外では異なる機能を持つ複数の金融都市が存在しております。

 政府としては、現状の東京一極集中のリスクの顕在化についてどのようにお考えか、教えていただけますでしょうか。

中島政府参考人 お答えいたします。

 現在、議員御指摘のとおり、日本の金融機能の多くは東京に集中しておりますけれども、人材、サービス等の面において集積のメリットがある一方で、災害等への対処という観点から、地域を分散することにおいて、国内においてもリスクをヘッジすることは有効であるというふうに考えております。

 こうした中、日本に参入する業者がどの都市を選択するかは、参入業者がこうしたメリットあるいはリスクへの対応を勘案しながら判断していただければというふうに考えております。

美延分科員 ありがとうございます。

 さて、先ほど申し上げたとおり、総理の昨年の十月五日の会見を受けまして、私の地元の大阪の吉村知事が十一月の会見で国際金融都市を目指すと宣言されました。もちろん、大阪に国際金融都市を誘致するに当たって、東京や福岡にない大阪の利点を最大限にアピールせねばならないと思っております。

 大阪の強みとしてまず最初に挙げられるのは、歴史的背景です。約三百年前、享保十五年、一七三〇年に、当時の徳川江戸幕府から公認を受けた堂島、中之島地域は、米の先物取引が始まった地域であり、世界の先物取引の発祥の地と呼ばれる歴史を持っております。後のシカゴのデリバティブ取引所のモデルになったとも言われております。

 そして、次に挙げられるのが充実した都市インフラ等の存在です。関西空港と関西圏を、関西圏といいますか新大阪、京都なんですが、つなぐ特急「はるか」というJRの路線があります。ただ、特急でありながら、現在は、在来線の往来が多い大阪環状線を経由し、また車の交通量の多いなにわ筋という道路の踏切を通過して空港へアクセスしなければならないこともあり、地域住民から安全面も含めてこのインフラ整備を強く求められてまいりました。

 このなにわ筋線の整備においては、地元自治体である大阪府、大阪市で予算按分の面から長らく暗礁に乗り上げ、計画があっても一向に前に進まず、まさしく二重行政の弊害として大阪の発展を阻害してまいりました。

 手前みそで恐縮ですが、知事、市長が我々維新の知事、市長となり、大阪の発展のために進めるべき整備としてようやく動き始め、大阪府、大阪市、そして国土交通省さんにも御尽力を賜り、現在着工が計画され、最終的には全線二〇三一年の開業を目指しております。

 この国土交通省さんにも御尽力いただいているなにわ筋線の建設に対して、国土交通省さんはどのような御意見をお持ちか、教えていただけますでしょうか。

木村(典)政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、なにわ筋線は、大阪都心部と関西国際空港のアクセス改善などにより関西経済の活性化に資するものであり、大変重要な事業であると考えております。

 国土交通省におきましては、令和元年七月に鉄道事業許可を行うとともに、令和元年度予算から整備費に対する補助を行っているところでございます。

 また、昨年の通常国会におきまして、地下鉄などの整備に対して財投資金を活用できるよう法整備を行ったところでございまして、令和二年度財投計画におきましても、なにわ筋線に係る所要の資金を計上しているところでございます。

 国土交通省といたしましては、先ほど委員から御指摘ありました、令和十三年春を予定しておりますなにわ筋線の開業に向けまして、引き続き、地元自治体と連携して必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

美延分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 そのなにわ筋線なんですけれども、新大阪から、北梅田駅を起点として、中之島駅、西本町駅、南海新難波駅やJR難波駅を結び、関西国際空港にもつながる約七・二キロの区間です。これによって、交通アクセスの改善とともに、京都、奈良、神戸、和歌山、各関西の地域とのネットワークの強化にも資するものであります。

 北梅田駅は、JR大阪駅や阪急、阪神の梅田駅に隣接し、京都や神戸を始め各方面に、中之島駅からは京阪電鉄にアクセスし京都方面に、南海新難波駅とかJR難波からは、近鉄難波駅とも隣接しておることから、奈良方面や京都にもつながってまいります。

 この中之島周辺は、現在、地元経済界が主体となって未来医療国際拠点整備・開発事業や、官民協力して、中之島みらい協議会で地域活性化に資するタウンマネジメントを行い、医療、文化、芸術分野に力を入れて都市計画を行っているところでもあります。

 また、御存じのように、緒方洪庵が開いた適塾はこの地にあり、福沢諭吉を始め多くの人材を輩出、そして、先ほども申し上げましたように、先物市場の先駆けと言われている米取引が始まったのもこの地域です。こういった歴史的背景もあって、国際金融都市構想の中心である中之島、堂島という地域は非常にポテンシャルの高い地域であると大いに発展が期待されております。

 以上のように、歴史的背景や都市インフラの充実に加え、二〇二五年には大阪・関西万博、そして、現在、大阪駅北貨物ヤードの再開発、うめきた二期工事など、大きなプロジェクトが予定され、国内外の投資を呼び込むには充実した候補地であると思われます。

 大阪金融都市構想において、大阪を中心とし、京都、奈良、神戸といった関西広域圏に視野を広げた場合、その経済的、産業的、文化的蓄積の厚さから、関西広域にわたって経済的波及効果が望めると思われます。

 そこで、広域的な経済の波及効果の意義についてどのようにお考えか、教えていただけますでしょうか。

中島政府参考人 お答えいたします。

 金融庁としては、日本が世界における国際金融センターとしての地位を確立させることにより、厚みを増した金融人材による高度な金融サービスが提供されるとともに、それにより、金融にとどまらない産業に適切に資金が供給されることで雇用創出や経済の活性化につながることを期待しており、こうした効果は、国際金融センターに向けた取組をされる自治体、さらには、御指摘の地域にとどまらず、日本全体にも及ぶものというふうに考えております。

美延分科員 ありがとうございます。

 他方、資本の流入という点から国際金融都市構想について述べさせていただきます。

 昨年の十月、河野行政改革担当大臣は、関税を留保したまま輸入した貨物を留め置ける保税地域で美術品や宝石などのオークションを開催しやすくして、外国人バイヤーなどの需要を取り込む活用策を提唱したという報道がございました。これに呼応するように、十二月には、財務省により、海外オークション会社に対する輸入消費税、関税の撤廃という報道がございました。

 このような規制改革は、外国からの美術品という文化資産の流入を促しているという理解でよろしいでしょうか。

伊藤副大臣 御質問ありがとうございます。

 この保税地域は、今先生おっしゃったとおり、関税等を支払うことなく外国貨物を置くことができる場所でございまして、一般的に倉庫で使われている制度であります。

 この美術品の国際的なオークションの開催等は、国際物流の活性化や新たなビジネスチャンス等につながることから、先生御指摘のとおり、昨年十二月に制度を改正をし、保税地域でオークション等を開催する手続を明確にしたところでございます。

美延分科員 ありがとうございます。

 この保税措置を単発的に期間限定でホテルなどを利用してオークションやアートフェアの開催のみに施した場合、美術品の流入による経済的波及効果は永続的なものにはならないと思います。一過性の効果しか上がらないと思いますが、政府の見解をお伺いいたします。

伊藤副大臣 お答えいたします。

 保税地域は、許可申請に基づき許可が必要でありますが、許可は更新することができますので、オークションを常設で開催することについて、相談があれば適切に対応してまいりたいと考えております。

美延分科員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 今申しましたこの中之島という地域は、国立美術館を始め、三つの美術館が連なっております。また、中之島地域に隣接する西天満という地域があるんですが、ここの老松町というところは、数多くの古美術や骨董品屋さんが軒を連ねており、美術フェアが開催される際には国内外から毎年たくさんの方が訪れます。

 この中之島地域にはたくさんの優れた美術品が保管されておりますが、例えば、この中之島地域を保税特区にすることにより、美術品保税倉庫、オークション会社、アートフェアなどを呼び込みますと、アジア全体から美術品という資産がもたらされることにより、そこに国内外から人々がやってきて、併せて資本が流入することが考えられます。

 これは、日本に貴重な文化財をもたらすのみならず、香港等アジア地域の安全保障が不安の中、民主主義と財産の自由が保障された地域を代表するリーディング国家として、つまり、それに伴う国際的資金の新たな受皿として期待されるものになると思われます。

 輸入消費税の撤廃は、オークション会社、保税倉庫の利益のみならず、地域の発展に寄与するものでなくてはならないと思います。その意味で、大阪中之島地域での保税特区構想は、地域としての経済的、文化的蓄積が大きく、関西広域圏として経済的効果が高いとも予測されます。

 以上、資本の流入という観点からも、大阪を国際金融都市構想の候補地として走らせていきたいと思っています。

 また、この件に関しては、様々な機会に今後質疑をさせていただきます。

 次に、アフターコロナをちょっと見据えてお伺いしたいんですけれども。

 緊急事態の副作用は経済を止めているということだと思うんですけれども、行政からの時短営業、人の流れを抑えるためのテレワークの推進により、感染は確かに抑制されている一方、直接的に影響を受けている外食産業、公共交通機関、観光業、エンターテインメント業はもちろんのこと、間接的にそれに関わる業種、そこで働く人たちにも大きな影響を与え、政府は、GoTo事業や雇用調整助成金、営業一時金の対応で、この全世界を巻き込んだ、未曽有とも言われている感染症に対応をしてきております。

 そこで、お尋ねしたいんですが、ワクチンや治療薬が行き渡った後のアフターコロナを見据えて、経済の再生に関して先んじて手を打つべきではないかと考えておりますが、政府のアフターコロナを見据えた一手は、検討中というものがあるのであれば教えていただけますでしょうか。

伊藤副大臣 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、まず足下では感染拡大の防止が重要であります。そのことももちろんといたしまして、ポストコロナを見据えて、巷間言われておりますとおり、生産年齢人口の減少、持続的な経済成長をその中で実現をするために、デジタル化、グリーン化による成長、そして持続的な所得の増加や労働生産性の向上にも取り組む必要があると考えております。

 そうした観点から、昨年十二月の経済対策に盛り込まれた施策をまずは効果的に実施をすることで、民間投資を大胆に呼び込みながら経済構造の転換を図り、生産性を向上させるとともに、生産性の向上を持続的な賃金上昇につなげる経済の好循環を実現してまいりたいと考えております。

美延分科員 ありがとうございます。

 今副大臣がおっしゃったこともそのとおりだと思うんですけれども、私は経済の再生において一番重要と思うのは消費を喚起することだと思うんですけれども、物が動いてお金が動く、そしてお金が動けば経済が活性化する、このように考えています。

 我が日本維新の会では、今年の一月二十九日に消費税減税特別プログラム法案、これですけれども、プログラム法案として、消費税を二年間、時限的に五%に引き下げることを提言いたしました。全国民がひとしく恩恵を受け、アフターコロナの一番の経済再生の、そして景気を回復させる施策として、今こそ検討していくべきではないでしょうか。

 消費税に関しては、私自身が財務委員を務めていたときより財務大臣にも申し上げさせていただいて、また私の同僚の浦野議員も二月十五日の予算委員会でも言及しており、何度もお尋ねですので、もう誠に恐縮ではございますが、プライマリーバランスや社会保障制度を安定的に維持していくということを考えればそう簡単でないことは承知もしておりますが、緊急事態であるということを念頭に、内需拡大のために是非とも検討をしていただきたいと思いますが、麻生大臣の御所見を伺えますでしょうか。

麻生国務大臣 この消費税につきましては、もうこれを導入させていただくときから、かれこれ二十数年がたっておりますけれども、過日の八%から一〇%に上げるときにも非常に大きな議論となっております。

 ただ、この日本において、御存じのように、労働人口の急速な縮小、そして負担を負う人が減って給与を受ける人たちが増えてくる高齢化というのは、これは日本にとって多分最大の、中長期的には最大の国難ともいうべき一番大きな問題だと思っているんですが。

 必然的に、負担を負う人が少なくなるということはその人たちが負う税金が増えるということを意味しますので、いわゆる税金を払う人に偏ります所得税等々は、払わなくなった高齢者の方々がどんどんどんどん増えていくというような状況の中にあって、引き続き払い続けたその人たちが、いざ受け取るときになったら払う人がいなくなって、自分たちは払うだけ払ってもらうときにはということになりかねぬという極めて厳しい現実がそこにありますので、国民が広く受益をいたすという立場からいきますと、社会保障の費用というものは、あらゆる世代が広く薄くみんなで負担し合うという観点から、社会保障の財源としてこれを上げさせていただく、負担していただくという位置づけをこの間明確にやらせていただいたところです。

 したがいまして、全ての世代というのは今の若い方たちもですけれども、安心して暮らせるということを考えていきませんと、今私は八十歳ですから、私はもらえる立場の方なんですけれども、これをもらうだけもらっておいて借金はせがれたちというのはちょいとなかなか理解が得にくいところだと思いますし、頂戴する我々の方もなかなかいま一つというところがありますので、いろいろな意識を変換していただかなきゃいかぬことだと思います。

 この消費税というのは、直接税とは違って間接税でありますので、広く薄くということを考えますと、私どもとしては、今この段階で消費税を引き下げたとしても、それに代わり得る財源というものをなかなか見出しにくいというようなのが現実だと思っております。

 したがいまして、先生おっしゃるように、ただいまの消費を喚起ということだけ見れば、その点は決して間違っていないと思いますけれども、全体を見回しますとなかなかさようなわけにはまいらぬというのは今申し上げたとおりなので、したがいまして、今の段階で消費税を引き下げるということを考えているわけではありません。

細田主査 美延君、申合せの時間が既に経過しておりますので、御協力を。

美延分科員 はい。

 時間が参りました。終わらせていただきます。ありがとうございました。

細田主査 これにて美延映夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、小田原潔君。

小田原分科員 自由民主党の小田原潔であります。

 本日は、質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。また、麻生大臣始め、本当に貴重なお時間をいただきましたこと、御礼を申し上げます。

 本来は、分科会、地元の国立の多摩川の堤防だとか浅川の堤防だとか、計画の高さに達成していないところをお金をつけてくれと言いたいところなんですけれども、今議事録に残しておかなければ政治家として禍根を残すと思う事項について聞かせていただきたいと思います。

 早速、本題に入ります。

 この一年間、我が国のみならず世界中で、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、経済活動や私たちの暮らしぶりが激変をいたしました。国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済政策、事業規模七十三・六兆円、また、遡ること四月の事業規模九十五・二兆円、五月のコロナ対策百十六・九兆円、計二百八十五・七兆円の対策を打っていただいているわけでありますが、いわゆる真水、地方と国の直接支出は、昨年十二月の閣議決定の対策で三十二・三兆円、四月は二十八兆円、五月は三十三・一兆円。予備費五兆円が重複されていると言われていますので、差っ引くと八十八・四兆円ということであろうと思います。

 実は、私にも、また少なからぬ仲間の議員たちにも、この一年間、メールで、プライマリーバランスの黒字化など気にせず、真水百兆円の財政支出で経済を支えるべきだという要望が複数人から、また全国から届くようになっています。どうも共通のお考え、国はどんなに負債を抱えても破綻しないというような御認識をお持ちの方々から来ているメッセージにも思えまして、またこれが増えている気がいたしまして、国論を二分しかねない危惧を覚えるものであります。この点は後で触れます。

 まず、いわゆる真水、日本経済研究センターが書いた経済予測入門の定義では、真水とは経済対策のうちGDPを直接増やす金額としています。この真水がGDPを増やしていればいいんですが、気になるのは、この一年間、統計の見方にもよりましょうが、法人預金、個人預金合わせて、一月末で全銀協のデータですと七十四兆円、預金が積み上がった。そうすると、預金にしてしまいますとフローになりませんから、GDPの増加に寄与しません。予定されている真水のうちの九割近くが使われていないということにも見えます。

 まずは、この経済対策、コロナ対策の財政支出の効果をどのように評価しているか、見識を頂戴いたしたいと思います。

麻生国務大臣 これはなかなか面白い議論のところなんですけれども。

 いわゆる、これまでは、国民の雇用とか、また、企業の維持というような、事業の継続というのを重点に置いた大胆な経済対策ということもこれあり、失業率は三%前後で推移しました。正確には二・九%。リーマン・ショックのときにも担当しましたけれども、このときは五・五%ぐらい行ったと思いますので、間違いなく失業率は半分ぐらいに抑えられたということだと思っています。また、倒産件数というものも、足下では結構緩やかに減少してきておりますので、それもあのときとは随分大きく違っている。

 こういった意味で、日本というのは、生産能力というものは、ほかの国みたいにロックダウンもしておりませんので、そこそこ維持されていた上で、日本の経済全体は、いわゆる、我々が今強いられているように、外出の自粛、自宅軟禁とかいろいろな表現をしている人がいますけれども、外出の自粛等々の影響で、そういった直接影響を受けた外食産業等々は弱含んではおりますけれども、輸出は増加しておりますし、また、企業の設備投資も持ち直してきておりますし、機械投資も増えてきている等々、生産は持ち直しの動きが続いていると感じておるんですけれども。

 今おっしゃいましたように、新型コロナによって経済とか金融への影響というものに対応するために支援を必要とするということで、家計支援とか企業の継続のための資金とか、いろいろな必要な資金を提供してきた中で、先生おっしゃるように、家計を見れば、今、家計で約一千三十兆ぐらいですかね、そういったようなものが、トータルの個人金融資産約一千九百兆のうち一千三十兆円、正確には一千三十四兆円の現預金がそこにあるわけです。これは明らかに増えておりますから。そして、企業予算、企業の内部留保を見ましても、現預金、現金ですよ、現預金だけで三百兆、三百八兆円というものがあるというのは、これはもう大幅に増加しているとはっきりしております。

 出たものがそのまま、フローで回って消費に回らず、設備投資に回らず、そういったものが銀行、金融機関の中に内部留保で止まっておるという事態でありまして、今後、緊急事態解除後にこれがどういった形で動き出していくのかということは、私どもはこれが投資に回っていくということを最も期待しているところなんですが、果たして回るかというところは、これは小田原先生、消費がどう回るか、これは景気という言葉をかりれば気の部分ですから、そういった意味で、数字で上げるだけではなくて、本当にそういった、何とか一杯行こうか小田原というような感じになるかという、そこの気分の問題もあるんだとは思います。

 いずれにしても、こういったようなものが動いていくような方向に動いていかない限りは、金を幾ら出しても景気の気の部分はよくならぬ。すなわち、消費が伸びない、GDPが伸びない、GDPの約六十何%はいわゆる消費ですから、個人消費になりますので、そこの部分が全く動かないという状況は極めて厳しいと思っていまして、そこをどうやって変えていくかというのが最大の悩みと思っております。

小田原分科員 大臣、ありがとうございます。

 それでは、先ほどのメールに関して、心配事をまず私から申し上げたいと思います。

 ランダル・レイによる現代貨幣理論と呼ばれる入門書以来、六年前の本でありますが、次々と我が国で出版されている日本人著者によるいわばMMT本の主張は、政府が自国通貨建ての債務を幾ら増やしても破綻しないというものですが、それに加えて、だから、デフレ時には、政府が負債を負ってでも供給力に対する需要不足を埋めろ、その使い道はインフラ整備、さらには消費税を下げろ、先ほどの先生の主張と反対で申し訳ないんですけれども、若しくはゼロにしろ、心配はない、なぜなら国の借金は国民の資産になるからだというものです。

 何だか借金し放題のパラダイスみたいに聞こえます。何ならけちけちせずにいっそ一垓二千京円の国債を発行すれば、インフレもなく国民に一人ずつ一兆円を配ることができる夢の国になるということなのでしょうか。本当にランダル・レイ、ビル・ミッチェル、ステファニー・ケルトンはそう書いているか。

 自粛期間が長かったので、ランダル・レイとビル・ミッチェルが書いた教科書の原本、国会図書館で借りてきました。それから、一冊目の入門書の日本語訳、訳している途中で、借金してインフラをつくれと誤訳をしているんじゃないかという思いで、それぞれ三回、箇所によっては四回、今回の質問の前にもう一回読み返しましたので、随分暗記するぐらい読み込みました。

 何が書いてあるかというと、確かに、政府が自国通貨建ての負債、非兌換貨幣を、しかも先進国、日、米、カナダ、オーストラリアなどは、多少発行しても破綻しないと確かに書いてあります。ただし、インフレと為替レートの下落には気をつけろと何度も書いてあります。これは恐らく、これらが市場で決まるということを意識しているからだと思います。

 また、生産力がなかった、例えばジンバブエとか一次大戦後のドイツは、確かに生産力を上回って貨幣を刷り過ぎるとハイパーインフレになったけれども、我が国のように需要が不足しているようなところではそんなに心配がないとも書いてあり、刷り放題の効用を訴えているのは事実であります。

 しかし、MMTで原書が主張している本当の本質というのは、通貨に限らず、全ての取引に内在する本質、すなわち供給量を自分でコントロールできないもので負債をつくる、一部でも外から買ってこなきゃいけないものを将来引き渡すという約束をすると、価格のショックの危険からは逃れられないということであります。

 非兌換の自国通貨はいつでも刷れますから、信用されている限りは価格の下落を起こさないかもしれませんが、例えば、外貨で借入れをしちゃうと、為替と金利の両方のショックにさらされる危険からは逃れられません。

 これは外国通貨だけでなく、チューリップの球根でも起こるし、金でも起こったし、土地でも起こったし、数に限りがあるといった仮想通貨でも起こりました。

 したがって、自国通貨の刷り放題というのと、いい気になって幾らでも刷れということとは全く関係がないということが書いてあります。

 事実、先月、日経ビジネスイノベーションフォーラムというのが開催されて、動画でランダル・レイ教授本人が参加しました。

 そこの冒頭で、これは、通貨とはこういうものだという説明であって、借金しろとは言っていないと言っています。ディス イズ ディスクリプション、ノット レコメンデーションというのを一番初めに言っている。ただ、異端であることは自覚をしていて、MMTはヘテロドックスと何度も記述しています。

 例えば、租税の三要素、強制性、対価を求めない無償性、収入性のうち、収入性は否定していて、税の効果というのは歳入の手段じゃなくて、課税と罰金と手数料を自国通貨建てで払わせるから、国民は、ああ、この国で生きていくには日本円を持っていなきゃいけないんだなと思わせることだと書いてあります。

 また、租税に関する非充当の原則からすると、目的税というのはそもそも好ましくないというのが教科書でありますが、MMTは、悪に課税し、善に課税するなと書いてあり、例えば、格差の象徴である固定資産税は居住空間の容積に課税しろとか、二酸化炭素に課税しろとか、たばこ税を重くしろとか、そういう主張が書いてあります。

 これは、今までの我々の常識、特に財政法四条は借金しちゃいけないと書いてありますから、この哲学とはかなり別世界を想定するように思えます。

 さて、こういうことを踏まえた上でお聞きいたします。

 この経済対策によって、二〇二五年にプライマリーバランス黒字化方針、以前は総合目標一の一というやつがありました、これとの今後の整合性についての御見解、また今後補正予算で増えた国の負債は増税か税収で返済していくことになるのか、あわせて、家計や企業の負う負債と国の負債の違いというのはあるという認識なのか、また国債は将来世代がいつか借換えをやめて返済しなければならないものという認識なのか、教えていただきたいと思います。

伊藤副大臣 まず私の方から、この補正予算と二〇二五年のプライマリーバランス黒字化の方針との整合性についてお答えをさせていただきます。

 お答えする前に、大変示唆に富む御質問、ありがとうございます。

 まず、この令和二年度に編成をした累次の補正予算について、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標と切り分けて決して考えているわけではなく、少なくとも令和二年度について、新型コロナ対策のために必要となった歳出を大量の国債発行で賄ったことにより財政状況が大幅に悪化したことは事実だと認識をしております。

 一方で、新型コロナの影響を何とか乗り越え、経済が成長軌道に戻っていけば、コロナ対応の政策的経費の支出がなくなるとともに、税収等もコロナ以前の状況に戻っていくと見込まれております。

 これらを踏まえますと、今必要なことは、次の世代に未来をつないでいくために、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向け、社会保障の持続可能性を高める改革など、歳出歳入両面の改革の取組を続けていくことであると考えております。

 よって、令和三年度予算においても毎年薬価改定の実現など歳出改革に取り組んでいるところであり、引き続きこの改革を続けてまいりたいと考えております。

麻生国務大臣 このコロナのおかげで暇とはいえ、あのMMT、モダン・マネタリー・セオリーという本ですけれども、あれを三回も四回も読むという、よほど暇だったんだなと思いながらちょっと感心したんですけれども。そんなに感心して読むような本だとも思いませんけれどもね、MMT、さらっとしかあれですけれども。

 少なくとも、財政状況というのが今悪化しているというのは、これは日本に限りませんけれども、悪化しておるんですが、こうした中で、やはり国債という国の借金、国の借金は正確じゃありませんね、政府の借金というものが確実にかつ安定的に消化されていくというのは、これは財政というものの信頼がマーケットに存在するかしないかというのが一番のところなんで、そこが一番いけばいいという話で、じゃ、ちゃんとその国債は消化できるんですか、安定的に買ってもらえるんですか、通貨はそのときどうなっていますか、金利はという話が余り書かれていないところが、その本の何となくちょっと、財政を担当いたしておる者としては、ちょっと私どもとしてはいかがなものかというような感じがして見ているところなんですけれども。

 いずれにいたしましても、家計とか企業というのは負債なんで、国の負債という場合は返済の義務がないかのような感じで、またすりゃいいじゃないかというような感じなんですけれども、約束どおり、政府として借りたものは政府として返さないかぬというのはきちんとしてやらないかぬというのが一番肝腎なことだと思っておりまして、日本の場合は間違いなく最も確実に返しております。

 日露戦争のときに戦時公債として一千万ポンドをイギリス政府から借りておりますけれども、その金は四十年債だったんですけれども、大東亜戦争、太平洋戦争等々もあって、返済ができなくなったのが、結論、敗戦後再契約をして、日本はそれを八十年債に変えて、一九八八年六月、たしか宮沢内閣だったと思いますけれども、それまで払い続けて返したというので、国の借金とはいえ、確実に返済をさせていただいたというので、そういった意味では最もきちんと対応している国だと思っておりますので。

 家計、企業とかいうのと違うかのごとき話も、今MMTやら、最近それを信奉しておられる方もおられますので、いろいろ言っておられる方もいないわけではありませんし、国会でその種の発言をしておられる方もいらっしゃいますけれども、私どもとしては、中央銀行というものが国債というものを引き受けて、いわゆる財源調達というものを行う前提で財政とか金融政策というものの運営が行われるようになりますと、これは政権に対する信頼というものが失われますと何が起きるかというと、まず金利が徐々に上がり始めて、早い話がお金がどんどん出ていく、それに、当然需要が足りなければインフレになりますので、そういった意味で急激なインフレとかいうような状況になるというのは、これはいつの世でも当たり前の話なんだと思いますので、きちんとそこらのことを考えた上でやらないと大きな問題が出てくることははっきりいたしております。

 加えて、それで利払いが増えてきますので、そういったものが増えてくるようになりますと、政策の自由度が失われて、今日本でも三十兆くらいのものが、債券、いわゆる金利に取られている予算ですので、そういった意味では、自由度が著しく減少されることになりますね。

 いずれにしても、いざというときの機動的な財政対応能力が、コロナであろうと、戦争であろうと、災害であろうと、何かが起きたときに、そういったときに対応ができなくなるという意味で、市場の信頼がなくなると国債の借換えということもできなくなりますので、そういった意味では、急激な歳出を削減してみたり、増税してみたりして対応しなきゃならぬということになりますので、そのときに生きている世代の人たちがその責任を取らされるということになるというのは、これはどう考えても公平さを欠きますので、我々の方がいい思いをして、借金だけ後に回して、はいさいならという話は、個人の社会では時々、親の借金をからって苦労しているという人が世の中にいるのは知らないわけではありませんけれども、国で責任を持って税金を預かっているような立場の者としては、その対応は避けるべき、当然のことだと思います。

小田原分科員 大臣、ありがとうございます。

 確かに、実は、我が国でMMTっぽいもの、と言うとちょっと失礼なんですけれども、を主張される方は、どちらかというと愛国心の強い方というか、保守色の強い方が多いようにお見受けするんですが、提唱者の一人、ステファニー・ケルトンは、アメリカ大統領候補のサンダース氏の顧問を二〇一六年と二〇二〇年の二度にわたって務めている、元々は強烈な左派の理論であります。

 それはなぜかというと、原書に書いてあるのは、政府は幾らでも借りられるけれども、借りろとは言っていない、もしもそういうことをするのであれば、政府が直接失業者を雇用して完全雇用を達成しろ、世の中で最もいけないことは失業である、なぜなら、働ける人数が減って、生産は落ち、失業者が生活苦や治安の悪化を招き、しかもそれを直すのに社会的コストがかかる、だから直接雇うべきだ。これは、公共事業を発注しろとは全然書いていなくて、むしろ公共事業は、富める人にどちらかというと有利に働き、現場で働く人たちには余り有利に働かないという記述が日米両方にあります。

 これは、確かに、我が国に振り返ってみてもちょっと心当たりがありまして、例えば一人六万円の事業を国がつくり上げたとしても、どうしても、入札業者を決める別の組織をつくり、その組織が誰も文句を言わないような全国的な会社を指名し、それが都道府県の立派な会社を指名し、それぞれの都道府県が市町村の立派な会社を指名し、現場で働く地元の従業員は日給一万円、これでは、トリクルダウンの前にそれぞれ、中抜きと言うと失礼ですけれども、格差が広がり、それが法人貯蓄になり、実際に働いている人は消費に回すお金がなくなるということになりかねません。

 むしろ、政府が直接、本当に雇えるのであれば、最低賃金をがんと上げるような、規範になるような賃金水準を達成し、好景気が来たときには、そこから景気のいい、賃金の高いところに移れる従業員のプールをつくるべきだと書いてあります。

 この主張がなぜか我が国ではすり替わって、土木工事をしろということに替わっているから、割と右派っぽい人たちがMMTを唱えるようになっているのではないかという気がいたします。

 そこで、質問をさせていただきます。

 昨今の公共事業、いわゆる国土強靱化関連の事業ですとか、コロナもそうでしょう、命を守る事業というのは、産業を刺激するものでは必ずしもありません。したがって、命を守るのは当然政府の仕事でありますが、乗数効果には表れにくい事業であろうと思います。

 必ずGDPを増やすために財政支出をしろということではなかろうと思いますが、現状、公共事業の乗数効果というのはどれぐらいというふうに考えているか、教えてください。

伊藤副大臣 お答えいたします。

 公共投資の乗数効果につきましては、例えば内閣府の経済財政モデルにおいては一・一二としております。しかし、公共投資の乗数効果は、マクロ的な需給の状況、各支出が生産性に与える影響などによっても異なることから、一概に定量的に定例的な行いをするのは困難であるというふうに考えております。

 その上で申し上げれば、公共事業については、厳しい財政事情等を踏まえ、人口減少も踏まえて、一つは国民の命と暮らしを守る防災・減災、国土強靱化、もう一つは物流、交通ネットワークといった生産性向上、成長力強化につながるインフラ整備、こうしたところへの重点化を図っていくことにより政策効果を高めていくことが必要であると考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 いわゆる我が国のMMT論者の皆さんは、国の負債は民間の資産だ、心配はないとおっしゃいます。ただ、これは理論というよりは、複式簿記の原則を知っているぐらいの意味はありますが、企業の負債は銀行の資産だというのと同じようなものであります。しかも、複式簿記の正しい記述をするならば、違った単体の資産と負債が同じだというのはほとんど意味がなくて、同一の単体の資産と負債を比べて債務超過なのか純資産があるのかというのを論じるべきであります。

 さて、公表されている平成三十年度の我が国のバランスシートを見ますと、国の負債千二百五十八兆円に対して、国の資産があるかといえば、六百七十四・七兆円。すなわち五百六十八兆円の債務超過となっています。この債務超過については、これを解消するべきなのか減少するべきなのか。また、そういう指標は特に公表されていないと思いますが、基本的な考え方、もし解消するべきというのであれば、本当に税収で埋めるのか、いわゆるプラチナコインを国に発行して、通貨発行権を使って自らの資産として穴埋めをするという考え方もあるのか、それとも、まだアイデアがないからしばらくこのままほっておくということなのか、御見解をお願いいたします。

麻生国務大臣 御存じのように、国の場合は、いわゆる民間であります貸方、借方の、左と右のあの区別がなかなかつきにくいところでありまして、そういった意味では、貸借対照表と言われても何を比較するのかよく分からぬとか言われる方もいっぱいいらっしゃいますけれども、資産と負債の差額というのは、いわゆる見合いになるようなものがありませんので、富士山は国有財産ですが、あれは幾らと言われても、なかなか富士山の価格を出すなんというわけにはいきませんし、そういった意味では、見合いの資産というものが存在していない特例公債というようなものが、小田原先生の言っておられる債務超過と言われるような部分なんだという具合に理解をしているんですけれども。

 財政の持続可能性というのを確保していかないかぬわけなので、債務残高の対GDP、国民総生産というものを、将来に向けて破産することがないようにしておくためには、債務残高GDP比というものは政府としても安定的に引き下げていくという、これは、財政健全化と言われるものに、私どもとしては、基本はそこが一番なんだと思っております。

 そのためには、まずはということで、いわゆるプライマリーバランスというもので、基本的にその前の話として黒字化目標を掲げさせていただいて、歳入は、御存じのように、例えば、消費税を上げさせていただいたり、また、高齢化医療費負担というものを、一割負担のところを二割払っていただきますとかいうお願いをさせていただいたり、いろいろな形をさせていただく、歳入、傍ら歳出の方もいろいろな形で切らせていただいて、薬価等々、いろいろなことをやらせていただいているんですけれども、そういったものを両方、歳入に限らず歳出も両方継続していく必要、これは国としてきちんとしてやっていかなきゃいかぬところなんだと思っております。

 ただ、通貨を発行して埋めちゃうという話は、さっきのMMTと似たような話もあるんですが、日銀が買い増すというか、日銀が買い取ってというような、歳出に充てるべきだという主張であれば、それはまさに、いわゆる、よく言われる財政ファイナンスということに、そのものになりますので、中央銀行によってそれを引き取るというようなのを前提として余り野方図に国債を発行するというような気持ちもありませんし、国としてきちんと対応すべきものだと思います。国としてというのは、政府としてきちんと対応すべきものだと思っております。

小田原分科員 ありがとうございました。

 そもそも、MMTは一つの物事の見方でありましょうが、大前提として、中央銀行の独立性というのはないというのが大前提になっているように私には思えます。見識は見識、これが悪用されてと言うと失礼ですが、令和のええじゃないかにならないように、我々としても、我が国の将来を見据えた仕事をしてまいりたいと思います。

 今日はありがとうございました。

細田主査 これにて小田原潔君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

泉分科員 立憲民主党・無所属の泉健太でございます。

 大臣、大変お疲れさまでございます。

 この分科会の議論は様々なことを扱われるということで、大臣もいろいろな問題を聞かれていると思いますけれども、今日、私は、三つの問題を取り上げさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初は、これは予算委員会の委員会の中でも取り上げましたが、児童手当の特例給付ですね。政権も、それはいろいろ苦しい思いをされているというふうには理解をいたします。今日、伊藤副大臣もおられますけれども、公明党さんもこれまでは、私はどちらかというと、少子化対策、子育て支援に一生懸命前向きに取り組んできた政党だと理解しておりますし、基本的には、児童手当や子ども手当は拡充をする方向で取り組んでこられた政党だというふうに理解をしております。

 そういう中で、やはり今回の特例給付廃止というのはどういうメッセージを届けたいがゆえのものなのか、政府として何をしたいがための施策なのかがいまだ私は理解できないんですね。見えないわけです。大臣、これ、三百七十億円なんですよね、ここから生み出される財源というか、お金が。

 そもそも、少子化社会対策大綱において児童手当のところがどう書いてあるかということを読みますと、多子世帯、子供の多い世帯ですね、多子世帯ですとか子供の年齢に応じて拡充すると書いてあるわけですね。拡充すると書いてある。恐らく全国民、誰が読んだってそうとしか読めない書きぶりが少子化社会対策大綱には書いてあります。という中で、なぜ、児童手当の特例給付、ここを廃止をされるのかということにやはりなるわけであります。

 改めて、これは私は少子化対策にはプラスにはならないというふうに考えるわけですが、大臣、なぜこの特例給付廃止ということに至ったか、御説明いただけますか。

麻生国務大臣 このいわゆる児童手当ですけれども、今回の少子化対策ということで、少子化社会対策大綱に基づいて、いわゆる主たる生計維持者の所得というものが今一千二百万と一定の額以上の人を特例給付の対象外とすることにさせていただいたんですが、所得制限というのが非常に大きなところなんです。

 そういった意味では、今回の見直しの財政効果は三百六十億何ぼ、三百七十億ぐらいということを見込んでいるんですが、これは今まで、御存じのように、経済界にもこの種の支出いただいているのは千億円ぐらいあるんだと思います。ありますけれども、今後四年間で十四万人分の保育の受皿というものの整備に伴い増加をする保育費の、いわゆる運営費に充てるためには安定的な財源というものがないと、こういったものをやりますやりますと言っても、十四万人増えた、さらに、少子化対策がうまくいって、十五万人、十六万人と増えていくということになっても対策費というものがないのでは話になりませんので、今後とも少子化社会対策大綱に基づいて、安定的な財源というものを確保しながら、いわゆる何というか、ライフステージと言うのかな、そういったものに応じた総合的な少子化対策というのを続けていかないかぬということで。

 少子化というのは、金があれば産むかといえばそんな簡単でもありませんし、少ないから産まないかというとそうでもないし。そうですね、難しいなと思いますのは、暇があったら一回来られるといいと思いますけれども、今一コンマ三五、特殊出生率、そんなものでしょう。国の目的は一コンマ八ぐらいになっているんでしょう。福岡県一コンマ五だもんね、飯塚市一コンマ七だからね。生活保護世帯率高いよ、筑豊だから。それでも一コンマ七、何でって、答えがないんですよ、みんな。みんな市長にどうしてと聞くと、いや、偉そうなこと言うよ、だけどほかのところは、やっているところはいっぱいあっても増えないじゃないか。

 だから、これは本当に難しい、難しいけれども、世界中こういった傾向にあることは確かなので、なかなかこの話はちょいと、これをやったから増えたとか、これをやったから減ったとなかなか言えないなというのが正直な実感です。

泉分科員 何で、そもそも三百七十億、財務大臣であれば国家全体の予算も見られている中で、子育て支援の予算そのものは、日本はよく少ない少ないと言われ続けてきているわけですよね。家庭関連支出が少ない、OECDの中でも少ないと言われる中で、なぜ子育て予算の中で無理やりやりくりをされようとするのか。

 三百七十億を待機児童対策に充てることは悪くないでしょう、しかしそれをなぜ児童手当からひっぺがさなきゃいけないんですか。そんなにもう予算がなくて、これからの子育て支援対策は全部その中で行って来いを続けるということですか。

麻生国務大臣 今の御質問ですけれども、これは予算編成というのは全ての項目というか科目の中で、我々としては聖域なくいろいろな形で見直していく、それで、必要な分野に適切に予算を手当てする、常にそういうことになるんですが。

 今回は四年間で十四万人分の保育の受皿を進めるということに当たって、増加する保育に関する運営費に充てる安定的な財源と最初に申し上げたとおりなので、経済界にも事業主拠出金をお願いしている、千億を上限としているという御負担をいただいているので、御指摘の児童手当の見直しにより財源を確保させていただいたんですが、そういった意味では、これはどうしてその中からかと言われれば、ほかのところにもいろいろやらせていただいて、千二百万円以上というのであれば、少なくとも我々としては、いろいろな形で、どのような形で捻出をしていくかというと、いろいろ考えた中で、千二百万円というのであれば、この程度のものだったらよろしいのではないかという厳しい判断をせざるを得なかったということだと思っております。

泉分科員 余り答えになっているのかどうか分からないですが、少なくとも、こういった児童手当の給付の仕組みを変えるというのは、もう御承知のとおり、システム改修をしなきゃいかぬわけですね。

 これは全部の自治体、もう政務三役の皆様であれば御承知かもしれませんが、二百八十九億円、このシステム改修で、今回の児童手当のいわゆる特例給付をなくすことに伴うシステム改修で、三百七十億円を生み出すために二百八十九億円かかってしまう、そういうことですよね。

麻生国務大臣 二百八十九億円は毎年じゃありませんよ。

泉分科員 それはもちろんです。しかし、こういうお金がかかる中でこの三百七十億円を生み出すということでありまして、私は、それぞれの所得層の方々がそれぞれ頑張っていて、そしてそれぞれで子供を産むわけですね。さっき大臣おっしゃったように、所得層に関係なく子供が産まれるというところもあるでしょうということでいえば、その子供を産む世帯全体を応援することが今私は大事じゃないかと思います。ですけれども、多分今回のこのメッセージは、それに逆に働いているというふうに私は言わざるを得ないというふうに思います。

 続いて、勤労学生控除というのがございます。

 今日は資料はそちらには届いていますかね、配られていますかね。この十年間ぐらいの東京都の最低賃金の推移というこの一枚紙を、ちょっと薄くて済みません、これはまさに政治の努力と言ってよいと思います。この間、二〇〇八年が七百六十六円だったのが今二〇二〇年で千十三円ですから、これまでに比べれば随分上がったなという感想を誰しもが抱くであろうと思います。

 一方、皆さん、なかなか余り聞かない言葉で、勤労学生控除というものがございます。これは百三万円まで、学生で例えばアルバイトをしていく場合、百三万円までであれば扶養の中に入っていくわけですが、百三万円以上稼いでいくと扶養から外れていく、そして、扶養から外れても学生扶養控除が二十七万円分あるということで、百三十万円までは所得税がかからない、こういうことになっているわけであります。

 一方で、この学生扶養控除なるもの、今二十七万円なんですが、これはいつから二十七万円という水準になっているかというと、昭和五十九年に二十五万円になって、ずっと一貫して、最初六千円の頃からあるんですね、七万円か。昭和四十年代は一桁台だったんですが、それが昭和五十九年に二十五万円まで上がっていって、そして平成元年に二十七万円になっている。それからずっと約三十年を超えるぐらいまでずっと二十七万円が続いているということであります。

 ここでお考えいただければ分かることなんですが、これは時給がどんどん上がっていきますと早く到達をする、当然そうなりますね、百三万円に。今これだけ時給が上がると、例えば時給千円と換算をしますと、週四回五時間働けば、もうその額を上回るぐらいになってしまいます。週四日間五時間、それぐらい働くと、もう百三万円を上回ってしまうということになります。

 これだけ時給が上がっていることを考えると、今はまだこのコロナで学生さんのアルバイトも大変厳しい状況でありますが、家計も厳しいということで一生懸命働きたいという学生たちもいる。しかし、働いていくと、百三万を超えると親の扶養控除がなくなるかもしれないし、そしてもっと働くとまた所得税がかかってくるかもしれないということを踏まえると、ここまである意味政治の力で最賃も上がってきたのであれば、私は、この勤労学生控除、この枠を拡大をする、引上げをしていくというのは一つ妥当な考え方ではないかというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 この勤労学生への控除の話というのは、今おっしゃるとおり、昭和五十九年、それともう一回、六十三年と、二回にわたって引き上げられております、最近では。それ以後止められている、止まっているというのは事実なんですが、減収額が約十億円、このぐらいを見込んでおるんですけれども、令和二年度の予算ベースで。

 そもそもこの制度というのは、最初にできた昭和二十六年の頃、当時は学生の多くが働いておられたということを余儀なくされた、そういった敗戦直後の特殊事情というのもあったんだと思って、それで創設されたんだと思いますが、他方、制度を創設した敗戦直後の話と違って、現在の学生の状況というのは随分変わっていると思いますね、間違いなく。私はその頃生まれていますので、知らないわけではありませんけれども。過去の税制調査会の答申も読まれたと思いますけれども、存在意義は乏しくなってきている、こうはっきり書かれているというのは御存じのとおりなんです。

 したがいまして、私どもとしては、実情も変わってきていると言われますけれどもということで、これまでずっとやってきたんですけれども、いずれにしても、勤労学生控除の拡充というのであれば、例えば、同世代で、進学しないで働いている者の勤労学生控除というのは、これは受けられないということになります。

 また、税負担の公平性という観点からいいますと、これは問題があるんじゃないかなと考えていますので、これは一概におっしゃっている意味が、最低賃金とか時間当たりのあれが、最初にこれは麻生内閣というふうに書いてありますが、あの頃に比べて四、五百円上がったんじゃないかという話は確かですけれども、それというのと、今の学生でも、学生として、学校に行っていないという、勤労している人たちとの差というのをどうやってやるかという等々の問題点がありますから、これは一概に、簡単にそういう、こっちが上がったらこれも一緒に上げるべきじゃないかというような話にそう簡単にいかないかなという感じはします。

泉分科員 そう簡単にはいかないんじゃないかと言いながら、昭和五十年代なんかは結構とんとん上がっているわけですよ。ですから、別に上げることが悪でもないし、上げることをそうちゅうちょする話でもないし、かたくなになる必要はない。先ほど大臣、最近とおっしゃいましたけれども、これは三十年間以上変わっていませんからね。大臣にとっては最近かもしれませんけれども、もう平成の間、ずっとこの額のままで来ているということ。

 私は、大臣、一時期、日本がバブルまでは成長を続けて、よき時代があって、学生も戦後直後から比べれば全く違う環境だったというのはあったと思いますが、それ以降は、私も氷河期世代でしたし、今もやはり貧困学生ということがよく言われるし、そして、もっと言えば、一生懸命働きながら大学に通う、これも奨学金ですとかいろいろな制度が充実してきた。決して、昔が大変で今が楽とか、今が大変で昔が楽とか、そんな単純な話では確かにないと思う。私もそう思います。

 しかしながら、要は、それぞれの環境に置かれている方々をそれぞれの形で支援をするということがあってよいのではないかと考えたときに、勤労しなくてもよい学生さんは、それはそれで、それなりの数、ほとんどそうかもしれない。しかし、むしろ、一生懸命働く学生さんがおられる中で、文武両道じゃないですね、要は、仕事と大学の学業を両方頑張ろうという学生たちを応援する趣旨があるとすれば、それはそういう方々向けの控除ですので、そこは是非前向きに考えていただいてよいのではないかなというふうに思いますが、改めていかがですか。

麻生国務大臣 今の話は、確かにおっしゃっている意味は分からぬわけじゃないですけれども、減収額の多寡という話だけじゃなくて、やはりまずは先ほど申し上げたとおりに、繰り返しになるようですけれども、あの出来上がった敗戦直後の時代から、現在の学生の状況は相当変わってきているというのはおっしゃるとおりで、私も変わってきている。今働いている人も大変で、昔働いている人も大変なので、両方大変ではないか、それはおっしゃるとおりですよ。

 だったら、昔のことだって今だって、変わらないんじゃないかというお話なんだけれども、税負担の公平性という点に関しては、これは間違いなく今も変わらぬところだと思っていますので、今おっしゃる意味は分からぬわけではありませんけれども、これはちょっとそんなに簡単にいかない、税の公平性という点は忘れてはいかぬところだと思いますね。

泉分科員 時間が短時間ですので、是非この勤労学生控除、勤労学生ということ自体が世間では余り言われなくなっている時代ではありますけれども、しかし、こういう中で頑張っている学生がいるし、こういう中で頑張っている学生はもっと働きたい、じゃないと生活できない、だけれども、いわゆる壁に引っかかってしまうという状態がありますので、そんなに税収へのインパクトも大きいわけじゃないということもございますから、是非そこは柔軟に考えていただき、続けていただきたいというふうに思います。

 さて、三つ目ですね。大臣に是非知っていただきたいということで、今日、もう一枚、裏側の紙を持ってこさせていただきました。

 これは主な銀行の硬貨入金手数料というものでして、今や、特に二〇二〇年、一九年ぐらいから、どんどん金融機関も、これはやはり、大臣、アベノミクスの影響という言い方もできるわけですね、低金利が続いて、銀行のやはりビジネスモデルを変えざるを得なくなってきているということもあって、手数料収入を稼ぐ時代になってきてしまっている。

 もちろん、それは銀行の側の事情としては私も理解できるところはありますが、これによって、駄菓子屋、分かりやすく言えばちっちゃな商店、そういうところなんかは小銭をどうしても使うお仕事ですよね。毎日毎日、小銭を出し入れするお仕事です。キャッシュレスをやればいいじゃないかといっても、それはシステム導入費だ何だという話になるということを考えると、今まではこれを、銀行に行っては新しい、棒金というものですよね、五十枚セットになったものをもらってきては、そしてそれでじゃらじゃらとお会計をやって、また今日のお仕事が終わったらそれを銀行に入金しに行くとか、当たり前の風景だった。実はそこに手数料が、ぼんぼこぼんぼこ今かかってくるようになっているということなんですね。

 大臣、これを見ていただくと、大手行なんかは、百一枚以上で五百五十円という手数料、高いか安いかという見方はいろいろあるのかもしれませんが、分かりやすいのは、一円玉を仮に百一枚入金したら五百五十円取られちゃうということなんですね。(発言する者あり)そうなんですよ。これは同じように、出金するときも、硬貨を出金しようと思うと、これまたやはりお金がかかってくるわけなんですね。なかなかつらい時代だなというふうに思うわけです。

 私、これは通貨当局に対してやはりお伺いしたいのは、こういう状況をどう考えるかと。先ほど話をしましたように、キャッシュレスを導入すればいいというものではこれはなかなか、中小、特に小規模の方々は大変だ。

 しかも、通貨法という法律の第七条では、同じ種類のでしたかね、通貨を二十枚以上使ってはならない、一度にですね、民民の取引の中で。それは相手が同意すればいいということになっているんですが、一応ルールとしては、やはりそれは手間がかかるので、市中でやり取りするときに、何十枚同士、どさっ、どさっとやり取りしちゃ駄目ですよというのは法律で一応定められているわけです。そうすると、両替するには金がかかる、手持ちの金を一気に使うことはなかなかできないみたいな、こういうなかなか大変な状態になっております。

 大臣、貨幣の流通に責任を持つ財務省として、あるいは金融の大臣でも構いませんが、この状態、どう思われますか。

麻生国務大臣 金融機関においてこの種の話が起きているというようなことを知らないわけではありませんけれども、これは各種の手数料、硬貨以外にも、送金する話につきましても、海外送金とか、小口の海外送金とか、おまえ、ふざけるなよというぐらい高いというのがありますのでね。そういったものを取ってみますと、これは、各種銀行を見ましてもいろいろ手数料に差がありますので、送金手数料も同じぐらい差がある。ほかにもいろいろあるんですけれども、これをやっておられる各個別の金融機関の経営判断によるということになるので。ゆうちょは、これはただでうまくやっているはずですけれども、私の知っている範囲では。

 そういった意味では、通貨制度を所管する立場の財務省としてこれをどう思うかと言われて、それによって、今、選択するあれが全然ないならともかくも、ゆうちょに行けばありますよとかいろいろある段階で、やはり今の段階では、ちょっとこれに対してどうこうしようというような話をする立場にありませんし、コメントする気もありませんけれども。

 いろいろな、キャッシュレス等々が増えてきていますので、硬貨の発行量がどれだけ減っているんだよという話をよくされている訳の分かっていない国会議員がいっぱいいますけれども、一円玉なんか全然減っていないんですよ、ほとんど。どうしてああいうセンスが出てくるのか、よくあれで国会議員になれるなと思って、おまえ、本当に国会議員をやって、商売をしたことはあるのかと聞いちゃったんですけれども、この間。ついこの間の話だったので、覚えておりますけれども。

 本当に一円玉なんか、全くと言っていいぐらい、ほとんど発行総数量は変わっていませんから。そういった意味では、十円が少し減ったかなというような感じ、ちょっと減ったぐらい、そんなものなんですよ、これだけキャッシュレスだキャッシュレスだと言ったって。

 だから、そういったのが現実にありますので、私どもとしては、そういうものが実際に動いている、駄菓子屋さんに限りませんよ、いろいろなもの、お釣りやら何やらというのを見ますと、一円玉だったら結構な量になりますので、そういった意味では、おっしゃる意味はよく分からぬわけではありませんけれども、今これを言われて、ちょっと今の状況、もうちょっと状況を見ていった上でないと、これ以上この場で上げろとか下げろとかいう段階にはないと思っております。

泉分科員 確かに、銀行もこれは大変なんですよね。銀行からすれば、同じ貨幣といっても通貨といっても、いろいろな、汚れたものも来るし、そういうものを整理して、重たいし、中で、行内で運ばなきゃいけませんから、これはやはり業務として相当負担があるというのもあります。

 私の地元なんかは、伏見稲荷大社がありまして、京都ですね。ですから、おさい銭なんかは、これは物すごい集まるわけです。しかし、これも、硬貨が多ければ、当然それは全部、この枠に従ってじゃないですが、いろいろと手数料をかけて銀行に預けなきゃいけないという話になって、いろいろなところが今、何とも切ないなという思いを持っているという状況であります。

 私も、じゃ、銀行に手数料を下げさせればいいのか、そんなことを、別に圧力をかけてどうこうということは余り頭のいい話じゃないなと思うわけですね。

 一方で、大臣、これは余り今まで政府はちゃんと考えたことはないのかもしれませんし、私は一円玉が落ちていても五円玉が落ちていても拾う人間です。大事です。お金は大事、絶対無駄にはできぬという思いで大切に、まあ、高額であれば、ちゃんともちろん警察に持っていくということですが。

 これは、一円とか五円というものを、そろそろ流通を止めるということも場合によっては考えられるんじゃないか。これは、北欧の方ではよくやられているらしいですね。北欧の方ではスウェディッシュ・ラウンディングという考え方で、要は、二円以下はゼロに合わせて、三円以上は五に合わせて、五刻みでお金を計算して、計算というか五刻みで整理していくとか、あるいは十円を最小単位にしてしまうとか、そういうやり方で、余りに少額の計算というか取引を通貨としてはなくしてしまうという考え方ですね。

 考えてみれば、一円玉は造るのに三円かかっていて、五円玉も多分五円以上かかっているわけですね。そういうことをも含めて、あるいは、私も、うちの子供たちが駄菓子屋に行っても、確かに十円以下のお菓子がないわけじゃない。しかし、駄菓子屋においてもほとんどが十円以上であって、市中にも十円以下の品物はほとんどないというふうに考えると、まあまあ、これは、コインとしての、硬貨としての一円、五円というのはある意味役割を終えてきているんじゃないか。

 そういう意味で、思い切って、私は、この一円、五円というものを取りやめにして十円単位でお金を使えるようにしていくということも、かつて、昭和二十八年ですかね、銭をなくして円にしてきたということがありますが、そういうことをすると様々に、銀行の負担も減る、そして取引の負担も減る、お財布の中もある意味整理される、いろいろなメリットがあるんじゃないか、ここを真剣に考えていただきたいと思います。

 今日、せっかく和田政務官もお越しいただいていますので、和田政務官には、今回、民間のこうした銀行が様々に手数料を取っている中で、ゆうちょ銀行はぎりぎりまだ何枚でも無料ということでありますが、これを上げることが今想定されているかどうか、要は、手数料を取ることが想定されているかどうか、ここをお答えいただいた後に、大臣に、今の一円、五円のことについて、是非検討いただけないかということの御答弁をいただきたいと思います。

和田大臣政務官 泉議員にお答え申し上げます。

 ゆうちょ銀行は、店舗の窓口やATMで硬貨の入金を受け付けているということでございますけれども、議員御指摘のとおり、その際には手数料を今は徴収していないというふうに承知をしてございます。

 ゆうちょ銀行が顧客本位のサービスを提供するとともに、その対価として顧客からどのような手数料を徴収するかについては、同行の事業の戦略、経営判断によるものでございますので、そのように今、金融庁としては考えております。

 いずれにしても、金融庁としましては、ゆうちょ銀行が顧客本位のサービスを提供することが重要というふうに考えておりまして、そうした観点からもしっかりとモニターをしていきたいと思っております。

麻生国務大臣 今の話は、昔の話で恐縮ですけれども、あなたのところも京都だったらお稲荷さんとかいうのはいろいろあると思うんですけれども、あれは、ずっとお稲荷さんの前でお金を置いていくんですよね、上に上っていくときに。私のところに、昔から知っている、もうちょっと亡くなりましたけれども、知っているのが来て、一円玉とか五円玉とか廃止してくれぬかなと言われたことがあります。もう今から二十年、政調会長をしていたからもうちょっと前かな、二十年ぐらい前ですかね、していたときだったんですが、何でと言ったら、一挙に俺のところの売上げが十倍とか五倍になると言うので、あなたの場合もそういうのから陳情を受けて言っているとなればちょっと問題になるなと思いながら、そうやってひっかけてくるのが野党というものですから、危ないなと思って聞いていたんですけれども。

 今は、少なくとも、こういった需要というのが、先ほど申し上げたように、明らかにそういった需要がありますので、これに基づいていろいろ毎年、製造計画等々を作ってやっておりますので、先ほど申し上げたように、絶対量、数量はほとんど減っていないという状況でもありますので、少額の取引を中心にこれは需要が引き続きあるということははっきりしておりますので、そういった意味で、今直ちに一円玉、五円玉、十円玉等々を廃止するというようなことを考えてはおりません。

泉分科員 これで終わりますが、大臣、もしかしたら勘違いされているかもしれません。今は、一円玉については、新規発行はもう記念流通用のみでして、新たに大量に市中に出回るためには発行していない状況が数年間続いております。

 そういった意味でも、まだまだ市中にはいっぱいありますけれども、私は、先ほどのように、でも、十円単位で物事を考えていけるようになれば、確かに景気は今より上がるということもあるんじゃないでしょうか。是非そんなことも含めて、今後考えていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

細田主査 これにて泉健太君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

細田主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。上川法務大臣。

上川国務大臣 令和三年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務の遂行を通じて、国民の皆様の安全、安心な生活を守るとともに、国民生活を取り巻く状況の変化に応じた新たな政策課題に取り組むため、現下の厳しい財政事情の下ではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省の一般会計予算額の総額は七千八百九十三億一千八百万円で、所管別に区分いたしますと、法務省所管分は七千四百三十一億四千万円、内閣等所管として計上されている法務省関係の政府情報システム関係経費の予算額は四百二十億九千三百万円、国土交通省所管として計上されている法務省関係の国際観光旅客税財源充当事業の予算額は四十億八千四百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計の予算額は、二億五千三百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元にお配りしております印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

細田主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま上川法務大臣から申出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

細田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

細田主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

細田主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊佐進一君。

伊佐分科員 公明党の伊佐進一です。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今、上川法務大臣に来ていただいておりますが、先に、少し金融庁関連を質問させていただきたいというふうに思っております。給与のデジタル払いについてということです。

 今、給料というのは、基本的に、多くの皆さん、銀行口座で給料が振り込まれているという時代でありますが、骨太の方針で、スマートフォンの決済アプリに給料払いができるようにしましょうということが挙げられております。本年度中に労政審で結論を出すということで、今日は厚労省にも来ていただいておりますが、私が伺っているところでは、労政審の議論は労使双方から様々な疑問あるいは懸念が示されているという状況じゃないかというふうに思っております。

 というのは、給与というのは生活資金ですので、ある意味経済的な土台になる。いかにこの安全性をしっかりと確保するかとか、あるいは預け先が破綻した場合の影響であるとか、様々な課題がありまして、決して拙速に決めていくべきではないんじゃないかという問題意識で質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず、今現状、お金を預かれるのは、預けることができるのは銀行だけでありますが、これは、出資法上どういう規定があって、なぜ今銀行だけなのかという点について伺いたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律、いわゆる出資法ですけれども、その二条におきまして、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」というふうに規定されております。

 銀行につきましては、特別の規定としまして、銀行法におきまして、預金の受入れを営むことができると規定されておりますので、出資法の規制によらず預金を受け入れることが可能というふうになっております。

伊佐分科員 ということで、出資法二条で基本的には禁じているわけです、お金を預けることは。ただ、例外的に、ほかの法律に特別の規定がある者には預けることができるということになって、ほかの法律が必要です。

 だから、今回も、例えばスマートフォンの決済業者でやろうと思えば、法改正が必要になるということになります。だから、資金移動業者ということになると思いますので、資金決済法の改正が必要ということになります。だから、そう簡単じゃないという、まず前提の上で。

 ただ、この資金移動業というのは、資金を移動させるために、お金を受けてから移動させるまで、一定のタイムラグがあります。一定のタイムラグはあるんですが、しかし、それでも、利用者の資金というのを滞留させることは認められていません。原則、滞留不可。条件なく滞留が認められる場合というのは、あくまで小口、五万円以下だけとなっております。この滞留というもの自体も制限されている、この理由を伺いたいと思います。

中村政府参考人 お答えします。

 資金移動業者は、資金決済法の下、現行法では、百万円以内の為替取引を行うことが認められているという業者でございます。為替取引を行うことが認められているということから、出資法上の預り金に該当するような保管目的の資金の受入れというものはできませんが、送金目的の資金を利用者から受け入れるということは、これは法令上認められているものというふうに考えております。

 他方で、これまでも、一部の資金移動業者におきまして資金決済法制定当時の想定の範囲を超えて利用者の資金を滞留させているのではないのかといった指摘ですとか、資金移動業者の破綻があったときに利用者が資金の還付を受けるまでに相応の時間を要するなど利用者保護上の課題があるのではないのかという指摘、こういったものもなされてきておりました。

 このため、昨年六月に成立しました改正資金決済法におきまして、利用者保護などの観点から、資金移動業者に対しまして、新たに送金と無関係と認められる資金を保有しないための措置を講ずることを求めることとしております。

 加えまして、新たに新設いたしました百万円を超える送金を行える高額類型の資金移動業者につきましては、具体的な送金指図、これを伴わないような資金の受入れを禁ずるというなど、厳格な滞留規制を課すこととしておりまして、この法制度の適切な運用に我々としては努めていきたいというふうに思っております。

伊佐分科員 ということで、利用者保護の観点で、今厳格な滞留規制を行っているという状況であります。

 じゃ、今のこの議論、労政審の議論はどうなっているかというところをちょっと厚労省に伺いたいと思いますが、資金移動業者が賃金支払い業務を行う場合に、これは厚労大臣が指定するというような案に今なっておりますが、さっき申し上げた利用者保護の観点で、安全基準を満たすのかとか、あるいは個人情報保護とか資金保全が大丈夫かとか、こういう観点、具体的にどういう基準で選んでいくことを今想定しているか、伺いたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法では、賃金は通貨払いが原則でございまして、例外として、労働基準法の施行規則におきまして、労働者の同意を前提に、銀行口座の振り込みと証券総合口座への振り込みのみが現行は認められているところでございます。

 資金移動業者の口座への賃金支払いにつきましては、成長戦略フォローアップで、制度化に向けて労使団体と協議することとされておりますので、現在、労働政策審議会において議論をしているところでございます。仮に資金移動業者の口座への賃金支払いを認める場合には、資金決済法に基づく規制に加えまして、労働基準法施行規則におきまして、賃金の確実な支払い、これを担保するための要件を満たす一部の資金移動業者のみに賃金支払いを認めることを想定しております。

 具体的な要件でございますけれども、現在審議会で議論しているところではございますけれども、例えば、資金移動業者の破綻時に十分な額が早期に労働者に返還されること、不正引き出しの際の補償がなされること、資金移動業者の口座から適時に換金ができることなどを想定しております。

 いずれにいたしましても、労働者保護が確実に図られますよう、引き続き、労使の御意見を伺いながら、丁寧に議論をしてまいりたいと考えております。

伊佐分科員 施行規則で幾つかの要件を定めるということでした。さっき申し上げたように、これは相当やはり厳しい規制が必要だというふうに思っております。

 ちなみに、銀行法上の縛りはどうなっているかというと、相当厳しい。当然ながら、財務の健全性のところから、最低自己資本二十億円とか、自己資本比率が四パーとか、流動性規制があったりとか、業務範囲の規制があったりとか、早期警戒制度、いろいろあります。もちろん、ここまでとは言いませんが、ただ、相当の厳格な縛りがないとなかなかこれは認められないんじゃないかというふうに思います。

 もちろん、労働者の同意というのも必要だと思いますが、ただ、これは単に個人が同意したからオーケーという話ではなくて、やはり制度上きちんと安定性というものが担保されないといけないのではないかというふうに思っております。

 もう一点加えて伺うと、破綻したときの資金の返還がどうなるかという点です。

 銀行の場合は、ここは非常にやはり厳格で、預金保険制度というのがある。元本一千万円まで、利息も含めて、しっかりとここは保証されるという状況になっております。しかも、払戻しについては、金月処理というふうに言われますが、迅速な払戻しというものも担保されている。

 じゃ、もし破綻した場合、この債務履行の保証について、資金移動業が預かるということが可能となった場合には、どうそこを考えているのかも伺いたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 資金移動業者が破綻した場合でございますけれども、資金決済法に基づきまして、利用者は供託等で保全されております資産から弁済を受けることができますが、この供託金の還付には半年程度が必要となっておるところでございます。

 このため、労働省といたしましては、更にその上乗せといたしまして、労働者保護の観点から、資金移動業者が破綻した場合に、資金移動業者の口座にある賃金について、十分な額が早期に労働者に支払われることが必要であると考えております。現在、労働政策審議会において、民間保険会社などを活用した保証スキームについて御議論をいただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、労働者保護が確実に図られますよう、引き続き、労使の意見を丁寧に伺いながら議論をしてまいりたいというふうに考えております。

伊佐分科員 十分な額が早期に返還されるということはもうそのとおりだと思いますが、要は、誰がそれを担うのかというところが私は大事なポイントだと思っております。

 今の話だと、民間の保険会社を想定しているということですが、私が伺っているところでは、民間を通じてやると早くても一週間弱かかるということもありますし、そもそも、もっと大きな問題というのは、銀行の場合は預金保険制度、これは財務省がしっかりと関与する公的な制度です。でも、今回、これは、あくまで民間、体力によって実は左右される、保証の能力が左右されるようなこともあるんじゃないかというふうに思っております。

 そういう意味では、今日はこれで終わりますが、様々課題もまだあります。三月末までというので一応骨太には書いているかもしれませんが、ここは慎重な議論が必要で、やはり、関与する多くの方々、これは影響が大きいですので、拙速に決めていくことには懸念を申し上げて、この質問は終わりたいと思います。

 次に、日本の家族法制について、大臣にも質問させていただきたいというふうに思います。とりわけ、離婚に伴っての養育の在り方についてであります。

 累次、日本は、国際社会にも家族法制についていろいろな指摘がなされております。欧州議会の決議もありました。あるいは、首脳レベルで会談したときにも指摘があった、日本の家族制度に対しての指摘。つまり、日本人の親が一方的に子供を連れ去って会わせない。国際的にはハーグ条約というのがあって、そこはしっかりと法の保護がかかっているという状況でありますが、国内では当然適用されないというものであります。

 こうした、国際社会からこの状況を今累次にわたって指摘をされておりまして、もちろん誤解に基づくものもあるかもしれませんが、やはりこれは国内制度の問題だ、課題だという点もあると思います。こうしたEU議会の決議を始め、様々、子の連れ去りに対する国際社会の指摘に対して、国内の法制度について抜本的に議論を進めていくべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今委員御指摘いただきましたとおり、昨年の七月の欧州議会におきましても日本における子の連れ去りに関する決議が採択されるなど、我が国の家族法制等について、国内のみならず海外からも様々な御意見が寄せられていると承知をしております。

 父母の離婚に伴う子の養育の在り方等につきましては、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響でありますとか、また子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑みまして、子の利益を確保するという観点から、幅広く検討を行う必要があるというふうに考えております。

 そこで、今月の十日でありますが、私から法制審議会に対しまして、離婚及びこれに関連する法制度の見直しについて諮問を行ったところでございます。

 今後の検討は法制審議会での議論の展開に委ねられるわけでありますが、離婚後の親と子の交流の在り方を含めまして、離婚に伴う子の養育の在り方について、チルドレンファーストの観点から充実した調査審議がなされることを期待しているところでございます。

伊佐分科員 大臣の今発言でありましたチルドレンファーストと今回の諮問の内容というのは、子の利益の確保の観点から様々幅広く議論していただくということになっております。とりわけ私が関心ありますのは、その中でも、養育費の確保であるとか、あるいは面会交流であります。

 では、ちょっと事実関係ですが、この諮問、諮問第百十三号と言われていますが、この答申はいつぐらい、つまり、結論がいつぐらいになるかというところをまず御答弁いただきたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 今回法制審議会に諮問された離婚及びこれに関連する制度の見直しでございますが、これは国民の家族生活に与える影響の大きい、大変重要な課題であると考えております。この課題に関しましては、平成二十三年の民法改正の際に、国会において、親権制度や養育費、面会交流の課題について検討を求める附帯決議がされておりまして、以後、法務省として必要な調査検討を行ってきたところでございます。

 父母の離婚後の子の養育に関する我が国の法制度につきましては、近時、国内外に様々な意見があるところでございまして、法制審議会では、今後、これらの意見を踏まえた上で幅広い検討が行われることになると承知しております。

 そのため、現時点で、お尋ねの答申の予定時期を申し上げることは困難でございますが、事務当局を務める法務省民事局といたしましても、法制審議会においてスピード感を持って充実した調査審議がされ、できる限り早期に答申をいただけるよう努めてまいりたいと考えております。

伊佐分科員 スピード感を持ってと。これは大臣が恐らく記者会見の場でも、スピード感を持ってというふうに言っていただいたと思いますが、是非これ、どういう形になるか注目している方々も多いです、スピード感を持って議論していただきたいというふうに思います。

 その中で、一つちょっと報道にも出ていました、共同親権の話です。

 これも議論に上がっていると聞いておりまして、今、現状は日本は単独親権しかない、単独親権しかないのは主要国では日本のみという状況でありますが、この共同親権については、では、どういう議論がなされるかについて伺いたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚後の親権制度につきましては、父母の離婚に伴う子の養育の在り方に関わる重要な課題の一つであると考えております。

 御指摘の共同親権の問題につきましては、離婚後も父母の双方が子供の養育の責任を負うべきであるとして共同親権制度を導入すべきという意見がある一方で、これを導入すれば離婚後に子供の養育に関する事項に必要な判断が適時に得られなくなるなどの慎重な意見もございます。この問題につきましては、国民の家族生活にも大きな影響があるものでありまして、引き続き、幅広い観点から十分に議論されるべき課題であると考えております。

 今後の検討は法制審議会における議論の展開に委ねられるわけでございますが、離婚後の子の養育への父母の関与の在り方につきましては、法制審議会において幅広く、また実態に即して、充実した調査審議が進められるものと認識しているところでございます。

伊佐分科員 今答弁いただいたのは、オープンで、いろいろなメリット、デメリットを含めて議論しましょうということで、少し、私は報道を見ていると、誤解に基づくような報道もあって、早速、共同親権を日本は導入するというような中で、反対運動のようなものも起こっておりました、日本がこのまま共同親権になるんじゃないかと。今の御答弁ですと、今まで、そもそも法務省でこの共同親権についてその是非も含めて議論したことがなかったので、今回それをオープンな場でやりましょうということだというふうに理解をしております。

 次に、さっき申し上げた、養育費あるいは面会交流の取決めについて伺いたいと思います。

 面会交流の頻度あるいは養育費をどれぐらいにするかということを決めるに当たって、民間のADR、紛争解決するような機関もあります。ただ、今現状は、ほとんどの事案は家庭裁判所の調停に持ち込まれているという現状であります。ただ、今調停にかかる期間というのが長くなってきているという指摘があります。また同時に、事案自体もより複雑化しているという指摘もございます。

 こういう状況の中で、家裁での審理というのをより丁寧に適切に進めてほしいという声があります。この家裁の審理の在り方、ここを見直して、強化してほしいという声に対しての見解を伺いたいと思います。

手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、丁寧かつ適切な審理を含めまして、家庭裁判所の手続が社会の様々な変化や利用者のニーズに常に的確に対応していくことができるよう、不断に在り方を見直し、取組を進めていくことは大変重要な課題であると認識しております。

 とりわけ、家事調停手続につきましては、今般の感染症への対応を契機として、従来の運用にとらわれず、改めて調停の本質、利点に立ち返り、面会交流や養育費など様々な事件の特徴や当事者のニーズも踏まえまして、一層合理的かつ充実した在り方を検討、実践するという取組が現在、各家庭裁判所で進められていると承知をしております。

 今後も、家庭裁判所が調停委員や家庭裁判所調査官等多様な職種の持つそれぞれの強みを生かし、利用者のニーズに応える形で、十分に紛争解決機能を発揮できるように引き続き支援してまいりたいと考えております。

伊佐分科員 今現在、検討を進めているということでありました。この検討を受けて、しっかりと現場が変わっていくことを期待したいというふうに思います。

 さっき申し上げたように、今現状は、司法が調停を担っているという状況であります。民間によるADRというのもあるのはあるんですが、非常に少ないです。弁護士会でやられているところもあったりとか、あとは民間の公益法人が一部担っているようなところもございます。

 ただ、私、これを見ていると、やはり全てもう司法に何でもかんでも委ねていくというのは限界もあるんじゃないかなというふうに思っておりまして、この民間のADR、ここを中立な立場で、民間のADRというのが関わっていくということも重要じゃないかというふうに思っております。

 こうした養育費あるいは面会交流の取決めの中で、この民間ADRの充実を図るべきだと思いますが、政府の支援、是非お願いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 父母が離婚する場合に、養育費や面会交流など子供の養育に関する事項について必要な取決めを行うこと、これは子供の利益の観点から重要でございます。その取決めを行うには、父母間の協議あるいは裁判手続のほか、ADRの手続を活用することが考えられます。

 法務省では、これまでも、法務大臣の認証を取得した民間ADR機関を紹介するパンフレットを配布したり、法務省のホームページで家事事件を取り扱う認証ADR機関の一覧を掲載したりするなど、ADR手続の活用に向けた周知、広報に取り組んできたところでございます。

 また、法務省の担当者も参加しております家族法研究会におきまして、子供の養育に関する取決めを支援する観点から、民間ADR機関の利用を促進するための方策が取り上げられまして、検討されているものと承知しております。

 今後とも、離婚問題を取り扱う民間ADR機関の更なる周知、活用を含めまして、父母の離婚に伴う子供の養育の在り方に関する様々な課題について、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

伊佐分科員 ありがとうございます。

 これは恐らく時間的に最後の一問になるかもしれませんが。

 私、ある方の体験を伺っておりまして、この方は今離婚されて、一人親として子供を育てていらっしゃる女性の方なんですが、やはり最初はいろいろな葛藤もあって、別れた子の父親には子供を会わせたくない、会わせられないという思いがあって、ところが、あるきっかけで会わせるようになった。

 そうすると、非常に自分の心が楽になったというか、夫婦関係はもちろん無理だということなんですが、ただ、父親として、自分が今まで、子供を全部一人で、一人親として、全て親の役割を担わなきゃいけないと思っていたところから、父親に会わせることで、父親としての役割を分担できるようになったというような話です。自分が本当に厳しいときは、例えば父親に連絡をして、別れた御主人でありますが、その方に手伝ってもらう、あるいは参画してもらうというようなことで、非常に気が楽になった。

 その体験を是非共有しようと思って、その女性の方は、NPO法人を立ち上げて、自費で活動されていらっしゃいます。例えば、自治体であるとか、そういういろいろな経験、同じような経験を持っていらっしゃる方々にお話をして、そのお話を聞いた自治体では非常に大きな反響があったというふうに伺っておりますが、こういうのを自費で今されております。

 厚労省は、令和元年から、親支援講座というものを行う事業を実施しております。予算も、令和三年度予算では十倍に拡大したと、非常に大きく予算獲得しておりますが、先ほどのようなこういう取組を是非全国の自治体でできるように、国として、こういう予算もあるわけですから、しっかりと後押しをしていただきたいというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 面会交流の重要性について今御指摘ございました。おっしゃいますとおり、面会交流は子供の健やかな成長のために非常に大切なことでありまして、子供の立場から実施する必要があるものと考えております。

 このため、厚労省としましては、一つ、面会交流に関する意義や課題等を双方の親を含む関係者が認識した上で取決めや実施が適切に行われるように、面会交流支援事業によって、面会交流の取決めがある方を対象とした支援を行っているところでございます。

 また、令和元年度から、御指摘ございました、離婚前後の父母等を対象といたしまして、離婚が子供に与える影響ですとか養育費や面会交流の取決めをすることの重要性、こういったことに関する親支援講座の開催に要する経費について、離婚前後親支援モデル事業によって支援を実施しているところでございます。

 これらの事業については、民間団体への委託の形で実施することも可能という形としております。また、令和三年度予算案におきましては、離婚前後親支援モデル事業について、一自治体当たりの補助単価を現在の百七十万円から一千五百万円に大幅に拡充をしたいというふうに考えているところでございます。

 こういった事業を活用しまして、厚労省としましても、引き続き、自治体の取組を推進してまいりたいと考えております。

伊佐分科員 さっき申し上げたこの親支援講座、正式には離婚前後親支援モデル事業といいますが、令和元年からやっていただいていますが、これを受けてやっている自治体というのは三つだけなんですよ、日本全国で。十倍にこうやって増やしているんですから、是非、本当にこれは国の方が自治体に働きかけをして、しっかりと使っていただく。また、同じように、さっき恐らく触れられた面会交流支援事業というのもあります。これも今、十自治体しかやっていないという状況で、決して、だからやっています、予算を取っていますというエクスキューズにならないように、本当にこの取った予算を効果的に使っていただきたい。

 また、面会交流支援事業についても、恐らくさっき委託ということをおっしゃっていただきましたが、委託されている団体の質も今課題になっています。受けるのはいいんですが、例えば能力、あるいは財政面であったりとか、あるいは公平性であるとか、そういうところもしっかりとフォローしていただきたいというふうに思います。

 あともう一点言わせていただければ、養育費相談支援センターというのがあります。この支援センターについても、長らく事業をやっていただいておりますが、解決率が一三%というようなことも国会でも議論になりました。もちろんサンプル数が少ないということもあるかもしれませんが、ここは国のナショナルセンターですので、ここがしっかりと自治体を支援して、実際にこれを担っていただかなきゃいけないのは自治体ですから、この支援センター、しっかりと自治体に支援をお願いしたいということを最後お願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

細田主査 これにて伊佐進一君の質疑は終了いたしました。

 次に、井林辰憲君。

井林分科員 ありがとうございます。自由民主党の井林でございます。

 今日は予算委員会第三分科会で、法務相、上川大臣、また法務省、最高裁判所の皆さんにお伺いをしたいと思っております。特に上川大臣は私の隣の選挙区ということでございまして、大変御指導もいただいておりますし、また、私の地元の事情についても大変精通をしていただいていると信じて、質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 分科会ということで地域のことをやらせていただきたいと思いますが、まず、公証人役場、公証人のことでございます。

 公証人役場、公証人は、遺言や任意後見人契約などの公正証書の作成、私文書や会社等の定款の認証、確定日付の付与等、公証業務を行う公的機関でございまして、中立公正な公証人が作成する有効確実な書面を残すことにより、争いを未然に防ぐことができます。特に争族、争続ともやゆされる相続については、遺言書の作成というものは極めて大事でございまして、遺言公正証書を作成する方が増加をしているというふうにも聞いています。

 こうした公証人役場、公証人についてお伺いをしたいと思いますが、公証人は、公証人法第十条によりますと、前略させていただきますが、公証人の員数は法務局若しくは地方法務局又はその支局の管轄区域ごとに法務大臣がこれを定むというふうに書かれております。

 これを受けまして、公証人の定員規則におきましては、静岡県内の定員が定められております。この中でも、私も今、手元にその規則を持っていますが、藤枝支局というものについては定員が一というふうに定められておりますが、現実には公証人が存在をしていない、指定されていないというのが今の実情でございます。

 この藤枝支局というのは大変新しい支局でもございまして、静岡地方法務局の藤枝支局が設置をされた経緯、これは出張所を統合されたということでございますが、設置された経緯をまずは御説明いただきたいと思います。

    〔主査退席、衛藤主査代理着席〕

小出政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の静岡地方法務局藤枝支局を設置した経緯についてでございますが、旧静岡地方法務局の藤枝出張所に平成二十六年十一月二十五日に同局焼津出張所を、さらに、平成二十七年一月十三日に同局の島田出張所をそれぞれ統合したところでございますが、この島田出張所を統合した際に、藤枝出張所を支局化して、藤枝支局を設置したものでございます。

 藤枝支局を設置するに当たりましては、管轄区域における事件数の動向、行政サービスの効率、住民の利便性等を総合考慮して判断したものでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 今お答えがあったとおり、平成二十六年、平成二十七年と、三出張所を統合する形で藤枝支局が設置をされました。

 ここで今、サービスの向上ということでお話をいただきましたが、そうすると、支局と対になって存在をする公証人役場そして公証人の指定というのが、これはやはり利便性の向上では必須だというふうに思います。

 実は、この質問も四年目になっておりまして、なかなか難しい問題であるということも分かっておりますが、公証人役場を新規に設置するということ、これまでの実績があればお答えをいただきたいというふうに思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 まず、それまで法務局又は地方法務局の支局の管轄区域内に公証役場がなかった区域に新たに公証役場が設置された直近の事例といたしましては、平成十六年一月一日に大阪法務局北大阪支局の管轄区域内に高槻公証役場が新設された事例が挙げられるところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 平成十六年に一事例ということで、大体こういう質問をすると二、三挙がってくるんですけれども、一事例ということで、やはりなかなか珍しい事例で、それだけ難しい問題だということは承知をしておりますが、なかなか、やはり地元の支局に公証人役場を置いていただきたいという地元の強い要望もございまして、昨年になりますけれども、令和二年十月九日、上川大臣に、この藤枝支局管内の地元の焼津市長が設置の要望にも伺ったところでございます。

 藤枝支局に対応する公証人役場を設置すべきだというふうに思いますけれども、大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。

上川国務大臣 委員からは、平成三十一年二月におきましても、静岡地方法務局藤枝支局管内における公証役場の設置に向けまして、この場でも質問を私はお受けしたところでございます。

 法務省といたしましても、利用者にとっての利便性、また公証業務の効率等の観点からも、継続して検討してまいりました。

 藤枝支局が管轄する志太榛原地区につきましては、令和二年十月、焼津市から公証役場の設置に関する要望書が提出されるとともに、具体的な候補地につきましても御提言をいただいているところでございます。

 これを踏まえまして、同地区における公証役場の設置につきまして検討を加えておりまして、その旨につきましては同地区の関係自治体に説明をし、対応していること、これについては事実でございます。

 引き続き、同地区におきまして、公証役場の設置に向けて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 地元の市長の要望も受けて、焼津市で場所も御相談いただきながら、地元の首長さんにも、当然、これは地元の市にも御理解いただかなければいけないので、地元にも御説明をいただいているということでございますので、これは、こうした流れを一刻も早く現実のものとして、藤枝支局に対応する公証人役場、焼津市から要望が出ているということでございますので、焼津市内、どこになるか分かりませんけれども、設置をしていただいて、地域の法務サービスの向上に努めていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、家庭裁判所の話をさせていただきたいと思います。

 家庭裁判所は、裁判所法三十一条三第一項に規定されている下級裁判所でございますけれども、家庭裁判所と、簡易裁判所や地方裁判所等と、扱う事件の違いというものをまずは事務方から御答弁お願いします。

    〔衛藤主査代理退席、主査着席〕

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 地方裁判所や簡易裁判所では民事訴訟あるいは刑事訴訟といったものを主に取り扱っている一方で、家庭裁判所は夫婦関係や親子関係の紛争などの家事事件についての調停や審判、さらには非行のある少年の事件についての審判を行っているという違いがございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 夫婦や親子関係の紛争などの家事事件や、あるいは非行のある少年の事件ということで、極めて重要なものを扱っているというものでございまして、裁判所法を読むと、家庭の平和を維持し、少年の健全な育成を図るということで、極めて重要な役割を家庭裁判所が担っているんだろうというふうに思っております。

 この家庭裁判所、私の地元にも出張所という形でございまして、正式には静岡家庭裁判所島田出張所という名称で設置をしていただいておりますが、この家庭裁判所の島田の出張所の扱う調停、審判事件、それぞれの新受件数の推移、また填補回数の推移をお聞かせいただきたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、島田出張所で扱う調停事件でございますが、平成三十年は四百六十四件、令和元年が四百五十二件、令和二年は四百七十六件でございまして、審判事件につきましては、平成三十年は三千五百四十八件、令和元年は三千五百六十七件、令和二年は三千八百九十一件と推移をしております。

 それから、裁判官の填補回数につきましては、平成二十七年から平日週五日のうちの四日、同じ裁判官が静岡家裁本庁から出張して事件処理を行っておりまして、これは平成二十七年に、それまで週三日だったものを週四日に増やしたという経緯でございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 新受件数の推移ですが、率直に言って、調停件数と審判件数合わせて四千件を、平成三十年、令和元年と超えてきているというのは、一年が三百六十五日で、一年間に四千件を超えているので、個人的には、率直に言って、非常に多いなというふうに思っております。

 ところで、家庭裁判所の出張所というのは、事前のやり取りで、七十七で多分変わっていないと思うんですが、七十七あると思いますが、島田の出張所の家事事件の総数というのは、全国の出張所で何番目になるんでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、家庭裁判所出張所は全国で七十七ございまして、令和二年に島田出張所に申し立てられました調停事件、審判事件の総数は、全国の家庭裁判所出張所の中で、市川出張所に次いで二番目に多いということになっております。

井林分科員 ありがとうございます。

 私も多い多いと思っていて、これは四年目、四年間ずっと全国二位ということで、やはり非常に多いなというふうに思っております。

 先ほど、填補回数を平成二十七年七月に三回から四回にしていただいたということで、これはたまたまではありますけれども、たまたまという言い方はよくないのかもしれませんけれども、上川法務大臣が前に御就任のときにこれは増えていたということが事実でございましたが、ただ、そうはいっても、これだけ多い数があるということなので、やはり週五日開けていただきたいというのが地元の声でございます。

 家庭裁判所が扱う事件に従事する様々な職員の皆さん、私もこれは地元の皆さんにいろいろ聞いたんですけれども、やはり家庭裁判所まで行く案件というのは非常に特殊な案件で、手間も暇も正直言ってかかると。そういう中で、週五日のうち選択肢が四日しかないというのは、ほかの事案にも対応しなければいけない職員さんからすると、やはり週五日開けていただいた方がそうしたこともスムーズにいくという声をいただいておりますし、隣の静岡では週五日受け入れて、島田では、こっちだと、市町境一つたがえると週五日のうち四日しか受け入れないという、これもどうなのかなと正直思っております。

 静岡家庭裁判所島田出張所の、一番いいのは出張所ではなくて支部化ということで、しっかりとした機能にしていただきたいというふうに思いますが、最低でも、填補回数、全国二番目といいますが、一番目に多い市川出張所は五日間、しかも二人の裁判官がいらっしゃいますので、早急に週五日にして、常に審判を行える状況にすべきだと思いますけれども、まずは事務方の答弁をお願いします。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、支部化につきましては、支部の配置を含めました裁判所の配置は、裁判所へのアクセス、提供する司法サービスの質等を総合した国民の利便性を確保する観点から、考慮している要素といたしましては、人口動態、交通事情、事件数の動向等を考慮いたしまして、またIT技術の進展等も考慮に入れながら、総合的な利便性の向上の見地から検討する必要があると認識しておりまして、島田出張所におきましては、委員御指摘のとおり、確かに相応の事件数があるということは認識をしておるんですけれども、今申し上げましたもろもろの観点からしますと、直ちに新たに支部を設置しなければならない状況にあるというふうには考えておりません。

 他方、填補回数につきまして、この島田出張所の填補回数については、委員からここ数年ずっと続けて、填補体制を更に強化するために裁判所の体制整備を進めるようにと、ある意味、我々の受け止めといたしましては、力強い応援をずっといただいているというふうに受け止めておりまして、最高裁といたしましても、島田出張所の事件動向は、そういう意味では特に注視をしているというところでございます。

 ただ、静岡管内でも、静岡家庭裁判所の本庁等との事件数とのバランスを踏まえて、静岡管内全体として事件処理を行っていく必要もございますので、最近、この島田について言いますと、事件数等は若干落ち着いているというところからして、島田出張所への裁判官の填補回数を更に増加させるという形での体制強化はなかなか難しい面があるところでございます。

 他方、家事審判、家事調停事件は、裁判官だけで事件処理をしているものではございませんで、裁判官が週五日のうち四日しか来ていないといっても、残りの一日を開けていないとか何もしていないということではございません。家庭裁判所の中では、家庭裁判所調査官という専門性を有する職種がございまして、これが、裁判官のいない一日についても適切に、必要な調査、面接等の調査を実施するということも必要に応じてやっておりまして、島田出張所では、裁判官が填補しない日に家裁調査官が家事審判及び家事調停の当事者等への調査を実施するなど、週五日を通じて家事事件の処理が行える体制を取っているというところでございます。

 なお、家裁調査官は、近年、全国での、オール裁判所の全体での定員の増減というのはないんですけれども、その中でも、静岡管内に関しましては、令和二年度当初、四月期でございますけれども、一人増加をしているというところでございます。

 引き続き、事件動向を注視することはもとより、裁判官が填補しない状況でも一定の事件進行を図ることで、週五日の填補をしている場合と同等の司法サービスが提供できるように、これは最高裁といたしましても支援をしてまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 去年は、こういうやり取りをしたら、裁判官が二人も定削になっていたという衝撃の事実で、この後の質問に戸惑ってしまったのを鮮明に覚えていますが。

 関係各位の皆さんの御努力で、裁判官が週五日というのはなかなか難しい中で調査官の増員を図っていただいて、しっかりとした手当てをしていただけるということで、私は一歩前進かなというふうに思っていますし、最後は支部化、少なくともやはり週五日しっかり対応していただきたい。市境を一歩越えて、海峡があるわけじゃありませんので、市境を一歩越えて週四日と五日というのは、やはりなかなかつらいものがあるというのが正直地元の声でございますので、是非御理解をいただきたいというふうに思っております。

 この週五日への填補回数又は支所化については、二〇一八年、少し前になりますが、上川法務大臣や最高裁判所さんにも、地元の島田市長さんと同様の要望を行いまして、大臣の場合は、これは個別の具体な事例ということではないですけれども、裁判所職員定員法を所管をしているということでございまして、しっかり検討していきたいというお言葉をいただいているところでございますけれども、これまでのやり取りを聞いていただきまして、上川大臣の御感想をいただければというふうに思います。

上川国務大臣 あくまで一般論ということで申し上げるところでございますが、司法権を担う裁判所の人的体制が充実し、それによりまして、事件の適正迅速な処理が促進され、また国民の皆様の司法アクセスが一層向上していくということ、大変重要なことであるというふうに認識をしております。

 他方で、御指摘いただきました家庭裁判所支部の設置や、また家庭裁判所出張所への裁判官の填補回数の増加等につきましては、最高裁判所規則等に基づきまして、裁判所において適切に判断されるべきものであると承知をしているところであります。

 法務省といたしましては、御指摘のとおり、裁判所職員定員法を預かっておりますので、そうした制度を含めまして、法律を所管する立場から、国民に身近で、また頼りがいのある司法、これを実現するために適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 もちろん定員法の所管ということでございますので、これ以上踏み込んでということだと思いますが、最高裁には、地元の市長さんがこういう要望に来るというのはなかなかないと思います、それぐらい地元からも思いが強い事案だというふうに思って、これからも真摯に向き合っていただきたいというふうに思います。

 最後に、ちょっと入国審査官の話をさせていただきたいと思いますが、私の地元、富士山静岡空港がございますが、外国人入出国者数とかも、今は閉じてしまっていますけれども、非常に多い、富士山静岡空港の入出国管理。また、静岡県自体も、外国人在留者も非常に多い。これは大臣も御認識いただけていることだと思いますけれども、についてまず伺いたいと思います。

 ちょっと時間もありますので、富士山静岡空港に関する外国人入出国者数の推移ですとか、静岡県の在留外国人の推移や在留資格者の申請の推移、そして、それを受けて、これは名古屋入国管理局の静岡出張所というところが担当していただいていますが、その職員数というか審査官の推移を答えていただけますか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 富士山静岡空港におきます外国人入国者数につきましては、平成二十七年は十六万九千九百二人でございましたが、令和二年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により大幅に減少いたしまして、速報値で一万二千五百三十九人となっているところでございます。

 そして、富士山静岡空港を所管する名古屋出入国在留管理局静岡出張所における入国審査官数は、平成二十七年度から平成三十年度まではいずれも二十二人、令和元年度は二十四人、令和二年度は二十七人となっているところでございます。

 なお、令和三年度予算案におきまして、静岡出張所に更に二人の入国審査官の増員を計上しております。

 続きまして、静岡県におきます在留外国人数の推移でございますが、平成二十七年末は七万六千八十一人でございましたが、令和二年六月末は十万二百三十七人でございまして、増加傾向でございます。

 そして、在留資格の関係でいろいろな業務がございまして、その中の、在留資格関係諸申請につきまして、在留資格の取得、在留期間更新、在留資格変更等に関する申請がございます。この点につきましても、外国人数の増加に伴いまして、静岡出張所、浜松出張所におけます在留諸申請の件数は近年増加傾向にございます。静岡出張所におきますこれらの申請の新規受理件数は、平成二十七年は一万一千三百十六件、平成三十一年、令和元年は一万六千六百五十四件でございました。また、浜松出張所における新規受理件数は、平成二十七年は九千四百三十三件、平成三十一年、令和元年は一万三千三百十件でございました。

 以上でございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 富士山静岡空港にかかわらず、外国人の入出国、今閉じていますので、なかなか数というものは伸びてこないというのは、これは当然のことなんですが、そうはいっても、私、これ、事前にデータもいただいていたんですけれども、外国人在留者数が増えているというのはちょっと驚きな数字でございましたし、今いる外国人の皆様というのは、恐らく何らかの事情で帰れないとか、又は職の関係で困っている方もいらっしゃると思います。

 非常に多くの方が困っている、又は相談に伺わなければいけないというふうに思っておりますし、アフターコロナを見据えれば、外国人観光客というのは私たちのこの日本の成長戦略の一環を担うものでございまして、入国審査官をしっかりと整備していくということは極めて重要なことだというふうに思っております。

 その出張所の審査官の人数も、平成三十年の二十二人から、年を追うごとに二人、三人と増やしていただいて、もはや二十七人ですか、ところまで来ているということでございます。

 最後に、上川大臣にお願いをしたいんですが、今後の、富士山静岡空港を所管して、また、静岡県内全体の外国人在留者に対する入出国審査、又は様々その後の生活の手当てをしていただく静岡出張所及び浜松出張所の審査官の人員増加について、決意というか、対応すべきだというふうに思いますが、御答弁をお願いしたいと思います。

上川国務大臣 先ほど出入国在留管理局の方から次長が御報告いたしましたけれども、名古屋の出入国在留管理局静岡出張所の職員数につきましては、令和三年度の予算案におきまして、入国審査官二人の増員が計上されているところであります。その結果として、出張所につきましては合計二十九名となるところであります。

 また、同局の浜松出張所の職員数につきましては、令和三年度予算案におきましては入国審査官一名の増員が計上されておりまして、同出張所の入国審査官数は合計六名となるところであります。

 静岡県におきましても例外ではございませんで、コロナ禍ではありますけれども、在留していらっしゃる外国人の方々の様々な住民サービスも含めまして、御相談もありますので、しっかりと対応していくということ、また、入国ということで、このコロナ禍が終わった後のアフターコロナというような時代におきましては、その点につきましてしっかりと対応できるようにしていくということが極めて重要だというふうに認識していることでございますので、様々な動きを見ながら、適切な対応ができるようにしてまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 来年に向けて、静岡出張所で二名、そして浜松の出張所で一名ということで増員をしていただくということで、非常に多くの審査官をまた配置をしていただいて、外国人の対応、また入出国の管理に当たっていただくということでございます。

 これからもまだまだニーズが伸びていく分野だというふうに思っておりますので、公務員全体の削減ということとは別に、こういう必要なところにはしっかりとした手当てをしていただいて、特に静岡県は外国人労働者の方も非常に多く働いていただいているというのが実態でございますので、必要なサービスを提供していただきますことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

細田主査 これにて井林辰憲君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川分科員 立憲民主党の中川正春です。

 今日は、こうして質問の機会を与えていただきまして、まず感謝を申し上げたいというふうに思います。

 今日は主に二つ、一つは、このコロナ禍での外国人、総合的に今、支援をしていくという体制を法務省の中で、入国管理庁の中でつくっていただいているわけですが、その問題と、それからもう一つは、日本語教育振興法という、私たち、議員立法で成立をしていった法律があるんですが、それに基づいて様々な政策というのを進めていこうと、その準備をしているんですけれども、何せ法務省の方がしっかりとそのリードをしていただかないとここも進まないということでありますので、その関連の質問をしていきたいというふうに思います。

 現状、コロナというのは、社会の一番弱いところに、経済的あるいは社会的、精神的なしわ寄せがかかっているという現状があると思うんですね。中でも、外国人というのは、不安定な就労の中にある、また、本国にも帰国をすることもできない、日本にそのままとどまっておらざるを得ない、そういう状況の中で、支援措置をやろうと思っても、言葉の障害があってなかなかそこにアクセスできないというような様々な障壁がある。その中で、悲惨な状況というのが度々マスコミによっても報道をされています。

 私も、地元の社会福祉協議会の窓口であるとか、あるいは外国人の集まる宗教施設なんかに出向いて、彼らに直接、状況というのを聞き取りをしたりしているんですが、やはり厳しい、実態として厳しいものがあるということだと思います。

 そこで、外国人を、先ほど申し上げたように、総合的に管理ということだけじゃなくて、支援をしていくという体制になったわけですから、入管として、この現状をいかに把握をしているかということ、まずこれを確かめていきたいということ。それから、その結果に基づいてということでもあるんですけれども、私なりに一つ二つ、ここをしっかり総合的にやっていけば、また違うところもあるという、その具体的な提案をしていきたいというふうに思います。

 まず、現状、具体的には、例えば社会福祉協議会の窓口での緊急貸付けの外国人比率であるとか、あるいはハローワークでの求職割合であるとか、あるいは留学生というのが今どういう状況になっているかとか、あるいは、技能実習生で就労延長できずに困窮している外国人というのがどれぐらいあって、それに対してどのように把握をしているか、そんな具体的な数字も含めて、今、皆さんの認識をまず尋ねていきたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点につきまして、まず留学生の現状でございますが、本国への帰国が困難な元留学生につきまして、帰国できる環境が整うまでの間、就労可能な特定活動等の在留資格により、本邦での在留を認めているところでございます。

 今月一日時点におきます、これらの許可を受けて在留する元留学生の人数については、速報値で、特定活動就労可の者が約一万一千人、特定活動就労不可の者が約百人という状況になっております。

 さらに、技能実習生について申し上げますと、技能実習生につきましても、本国への帰国が困難な元技能実習生が存在します。このような者につきましても、帰国できる環境が整うまでの間、就労可能な特定活動等の在留資格により、同様に本邦での在留を認めているところでございます。

 今月十二日時点におきます、これらの許可を受けて在留しております元技能実習生の人数につきましては、速報値で、特定活動就労可の者が約三万六千七百人、特定活動就労不可の者が約一千四百人となっているところでございます。

 また、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりまして解雇された技能実習生等に対して、一定の条件の下で最大一年間の就労が可能な特定活動への在留資格の変更を認めるなどの特例措置を講じているところでございます。

 今月十五日時点におきます、これらの人数についてお答えいたしますと、速報値で三千九百五十四人、このうち変更直前の在留資格が技能実習であった者が千九百六十二人となっております。

 さらに、御指摘がございました社会福祉協議会窓口での緊急貸付申請の外国人比率につきましては、例えば、令和二年九月時点の東京都におきます貸付支給状況について、約十四万件の貸付決定のうち外国人が約二・七万件と、貸付全体の約二割が外国人となっているという状況だと承知しております。

 さらに、ハローワークでの外国人の求職状況等も含めまして、出入国在留管理庁といたしましては、適宜、厚労省等と連携をして、その情報の共有を図っているところでございます。

 さらに、政府の取組といたしましては、令和二年十二月四日、コロナ禍における困窮在留外国人対策タスクフォースを設置いたしまして、令和三年、今年の一月二十九日、同タスクフォースから、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議に対し、在留希望者への就職支援、生活困窮者に対する支援、情報発信の強化、徹底等を内容とする、困窮する在留外国人への緊急対応方針を報告したところでございます。

 出入国在留管理庁といたしましては、先生御指摘の、外国人受入れ環境整備に係る総合調整機能の役割を今後も引き続き十分発揮し、関係省庁と適切に連携して、困窮する在留外国人に関する情報を共有し、政府全体の取組として必要な支援を行っていきたいと思っているところでございます。

中川分科員 こうした数字の把握だけでは総合調整機能にはなっていないということなんですが、具体的に問題点を指摘しておきたいというふうに思うんですよ。

 技能実習生に対しては、その管理機構があって、監理組合があって、その監理組合の下に彼らが活動していくということだと思うんですけれども、こうして一旦仕事が終わって、さあ、次の職場を見つけなさいよということに法律はなっているけれども、実際にそのことが監理組合によってなされているかどうかという、そのチェックは誰がするのかということになると、これは管理機構だと思うんですが、そこのところが十分になされていないということから、恐らく、先般マスコミがその悲惨な報道というのを様々にしていましたけれども、結局、放り出されたらもうそのままで仕事に就くこともできない、言葉も十分なものでないということもあって、できないというのが放置されている。これは人数から見ても、そういう人たちが三万六千七百人いて、再就職しているというのが千九百六十二人でしかないという数字が出ているとすれば、これは非常に深刻な状況が今あるということ、その想定の下に何をするんだということだと思うんですよ。

 これは、もう一つ言えば、地方自治体がこれにかんでいないんです、技能実習生に対しては。だから、そこの情報が身近なコミュニティーに伝わっていない。コミュニティーに伝わっていないということは、仕事もそこで見つけることができない。あるいは、それをケアする人たちというのも、よほど特殊な、いわばNGO、NPOの人たちの下でしかない。駆け込みの寺、救い寺というんですか、そういう感じのところでしかない。これは実は、報道の筋書の中で、そういう問題がありますよと、この間、指摘されていましたけれども、そういうことが恐らくこの人数の中で起こっているんだろうというふうに思うんです。

 そういう見方を入管の中でしていって、具体的に手足をつくるということ、入管の直接の手足をつくるということが大事だということ、これをまず指摘をしておきたいと思います。

 それから次に、緊急貸付窓口、こういうところで、今の現状、これは東京で二割ということですが、うちの地元で、この間行ったら、七割から八割が外国人なんですよ。

 そんな中で、例えば、一つやり方があるとすればということで、一つ二つ提案をしておきたいというふうに思うんですが、再就職ということの中で、一般的に、日本人であれば、職業訓練という枠組みの中で、私たちの政権時代につくった求職者支援訓練制度、これで職業訓練をしながら一人月十万の手当をもらうという、そういう枠がありますよね。

 ところが、これが、社会福祉協議会の窓口で、それがあるという情報が彼らに伝わらないということ。これはハローワークなんですが、ハローワークに持っていく人たちというのは、よほど日本語もできて、様々に自分で自主的に活動ができる人たちなんですけれども、ハローワークも実はこの職業訓練に向いて持っていくことができない。なぜならば、言葉ができないという中で、今職業訓練のメニューをこの人たちが直接こなせるかというとそうではないということの中で、持っていくことができない、これが現実なんです。

 だとすれば、例えば、職業訓練の中に、日本語の訓練をするということがあってもいいんじゃないか、そのプログラムがあってもいいんじゃないかということを、実は地元の訓練センターで見て、提案もしてみたんですが、今の法律の建前の枠組みからいくと、日本人に対してですから、日本語は職業訓練にならないんですよ、日本人に対しては。

 というような制度的なものを一つ一つ点検をしていきながら、これを外国人の総合的な政策としてつくり上げていくとすればどうなんだというのは、あなたの方からやはり提案をしながら一つ一つ仕組みを考えていくということをしなきゃいけないんじゃないかということですね。そこのところを改めて提案として持っていきたいというふうに思います。

 同時に、さっきシェルターの話をしましたけれども、シェルターみたいなものも地方自治体と相談しながら入れ込んでいくというようなことも、入管の中であっていいと思うんです。管理のマインドだけでは、これはできないですよね。支援というのは管理とは違った切り口で政策立案しないと、総合調整といったって、そんなものは何にも役に立たない、彼らにとっては。

 ということを指摘しておきたいと思うんですが、コメントがあれば。

松本政府参考人 ありがとうございます。お答えいたします。

 法務省の入管局から出入国在留管理庁になるに当たりまして、その庁の中に在留支援課という新しい課ができました。そこはまさに御指摘のように、在留管理という視点だけではなくて、在留を支援するという形で出入国在留管理庁も動いていこうという、そこを業務としております。

 例えば、四谷にFRESCという組織をつくりまして、入管庁だけではない他機関、あるいは我々の出先であります東京入管の職員が共に机を並べてそこで仕事をして、外国人の相談を受け付けて一元的に対応する、このような取組をしているところでございます。

 さらに、地方自治体の窓口の設置をお願いしているところでございますが、ここも、情報交換を入管庁としてもしっかりと今後やっていき、何が必要とされているのかという把握をしっかりとし、適切な対応につなげていきたいと思っているところでございます。

中川分科員 そうした新しい切り口でもって入管行政をやっていくということ、これを今、いわゆる直面をしているというか、それに対してどうしようかというところにあると思うんですけれども、やればやるほど何が分かってくるかといったら、今の入管法のシステムそのものが、日本に在留している人たちにとっていかに矛盾したものかということが分かってくるはずです。

 それだけに、私が期待するのは、その中から、総合的な移民基本法みたいな、パッチワークじゃなくて総合的な形で彼らの人権も保障していく、彼らがここで働くということが日本の社会にとってプラスになっていくんだという、その流れをつくれるような法律の体系、そこへ向いて是非マインドを持っていっていただきたい、そこを期待をしたいというふうに思うので、是非頑張っていただきたいと思います。

 次に、日本語の問題について、もう少し掘り下げていきたいというふうに思います。

 やはり、さっき言ったように移民の基本法を作れればいいんだけれども、なかなか、移民という言葉を出すだけで抵抗が出てくるという社会背景もあり、また、国会の中のコンセンサスというのもまだこれから努力してつくっていかなきゃならない状況にあるので、その前に、私はやはり基本的に、日本の入口として、日本に入ってくる人たちの入口として整備していかなきゃいけないのは、言葉だというふうに思うんですね。日本語を習得する機会をつくるということと、それから、海外から入ってきた人たちが日本語を学ばなければならない、あるいは学びたいというインセンティブをつくって、その両輪で日本語というのを考えていくということが大事だと思うんです。

 そうした意味で、実は、日本語教育推進法が議員立法で成立をさせていただくことができたということなので、その趣旨に沿ってひとつ考えていきたいというふうに思うんです。

 外国人が、日本語の習得について、自分の目的、目的というのは、留学あるいは就学ということもあれば、働くというような、就労ということもあれば、あるいは、日本で生活をする、その中での日本語という、その目的に合った教育機関というのが選択ができて、それと同時に、それぞれの分野で質の保証をしていくというか、その環境をつくっていくのに、しっかりとした質というものを保証しながら日本語教育の体系をつくっていくという、ここが大事だということなんですね。

 その中で、そのことを前提に、二点、問題を提起をしていきたいと思うんです。

 一つは、インセンティブですね。教育のための環境整備を国として整えるということができても、これは、実は、法律の中で新しく教育機関というのを充実させていこうという今努力を、その法律を作るということでやっているんですけれども、その中で、しかし、当事者が学びたい、あるいは学ばなければならないんだというインセンティブをつくらないと、幾ら環境を整えてもそういう形になっていかない。

 それは、実は、入管行政の中で、ビザ申請や、あるいはまたその更新をしていくときに、日本語習得を条件化をしていくという、ここも一つのファクターなんです。ドイツあたりがまさにそれを体系的にやっていますけれども、何時間以上ドイツ語を勉強するということを前提にして、ドイツでの滞在を認めていきますよという、そういうことまでやっているんですが、それを工夫できるとすれば、ここが一番ポイントになるんですよね、ビザが。

 それを日本でも、言葉の習得の義務化というか、そういうものを前提にして、入管による体系的な条件の導入ができないかということ。いろいろ条件はついているんですよ、技能実習だとか何かも。しかし、日本の中でこれだけ勉強しなさいと言っても、どういう質のどれぐらいのレベルの日本語を習得すればいいのかという、そこの規定がないんです。

 だから、例えば、技能実習で来ている人たちが、地域の日本語教室へ向いて派遣されている。それで、日本語を学習しているんだというような大義を持って、いわゆる監理組合自体が、いわば、ただで、これだったら日本語ができるねという話で、いわゆる地域のそういう日本語教室へ向いて押しかけてきている。中川さん、この人たちを私たちが受け入れていったら、私たちの元々の目的とは違うところで使われているような形なんだけれども、これでいいでしょうかとか、そんな現象が起きているんです。だから、一つ一つが中途半端なんですよ、今、条件をつけても。

 もっと課題になるのは、日系と言われる人たち。この人たちに対しては何もないんです。ビザの更新を、三年を五年にしますよ、その代わり、日本語をちゃんと勉強しなさい、これしかないんです。全くフリーで入ってきて、その中で、やはり日本語習得というのは遅れているから、コミュニティーの中に孤立をしていっているような地域もあるということがあるんですね。それが、恐らく、そのままずっと続けていけば、社会の分断につながってくるだろうということをコミュニティーの人たちも非常に心配をしているということなんですね。

 というような問題があるので、ここについて条件化をしていくということですね。言葉の条件化をしていく。ビザの中に組み込んでいく。無理やりということじゃなくて、うまく、うまく組み込んでいくという工夫が必要なんだと思うんですけれども、そこはどうですか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 現行におきましても、外国人の在留資格に係る審査におきまして、一定の在留資格につきましては、日本語の能力というものを要件としているところでございます。例えば、特定技能、あるいは介護職種に係る技能実習、あるいは留学等の一部の在留資格について、日本語能力の試験に関する証明書の提出を求めるなど、日本語能力の確認をしているところでございます。

 ただ、御指摘のような、在留資格の更新に当たって、その時点における日本語力を確認し、在留資格の更新をするのかどうなのかというところに影響を及ぼすという一般的な枠組みは取っていないところでございます。

 そこは、御指摘の、我が国に在留する外国人についてのまさに日本語教育の在り方と密接に連動する問題ではないかと認識しているところでございまして、その点も含めて、文科省あるいは文化庁とも適切に連携して検討していきたいと思います。

 以上でございます。

中川分科員 実は、さっき申し上げた議員立法の中に、連携してやっていきなさいよという一条が入っています。それを確実に具体的なものにしていってください。改めてお願いをしておきたいというふうに思います。

 それから、もう一つなんですが、今、日本語教育機関、特に日本語学校については、主管庁は入管なんですよね。告示基準という、その基準の中で日本語学校を管理しているということなんです。ところが、今、海外では留学生の獲得競争というのが始まってきていますし、一番入口のところで、日本は、それなりの学校の質というのが保証されていて、それで自分が行ったところ、自分の目標に応じてこういう形に教育がなっていくということが見えないままに、それぞれそこで、海外に活動する様々な中間あっせん業者に基づいて、それぞれが留学生を採っているという、そういう状況であります。あと、基準というのは告示事項しかない。

 それをもう一回原点に戻したら、やはり教育機関として文科省が管轄をして、その中でこの業態そのものも発展をさせていく、あるいは海外に対しての戦略もつくっていくということを基本的に考えていかなきゃいけないんじゃないかという思いですね。それを法律の形にして、質の保証が外から見える、いわゆるマル適マークみたいなもので見せていこう、それで選択していこうと。あるいは、海外に対する戦略も、日本語学校が海外に進出できるような、そういう形態というのを国として戦略的につくるとすれば、どういうことができるのかというのを、文科省中心に、それぞれの省庁、協力しながら考えていこうという体制をつくっていきたいと思うんです。

 その前提に立って、今、告示基準というのは、それはそれで必要ではあると思うんですけれども、これの管理とか、それ以上の質に関する、いわゆる管理するだけじゃなくて、それを発展させていくような形の基準作りみたいなものを文科省に任せる。あと、入管の方は、それぞれの人のビザに関連する、教育というよりも、個々に関連するようなところだけのチェックをしていくというふうな形に私は切り替えるべきだというふうに思うんです。

 そんな話合いもしていただいているんだと思うんですが、改めて入管庁の、あるいは法務省の、そうした流れでいいのかどうかということを確認をしておきたいというふうに思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の、日本語教育の推進に関する法律の中で、第二条でございますが、「国は、次に掲げる事項その他日本語教育を行う機関であって日本語教育の水準の維持向上を図るために必要な適格性を有するもの(以下この条において「日本語教育機関」という。)に関する制度の整備について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」という前提の上で、日本語教育を行う機関のうち当該制度の対象となる機関の類型及びその範囲について検討するようにという、法律で指摘をいただいているところでございます。

 この点につきましては、文化庁あるいは文科省が中心となって、入管庁、出入国在留管理庁もその相談を受けているところでございますが、御指摘のとおり、現時点におきます出入国在留管理庁のこの点の関わり合いといたしましては、主に留学生に、留学生という在留資格を与えるに当たって、それにふさわしい教育機関かどうなのかという視点で告示基準というものを設けて、その観点において関与しているというのが実情でございます。

 ただ、日本で、日本語教育機関で日本語を学ぶというのは、先ほどのお話にもございました、新たな在留資格にチャレンジする、そういうようなところにとっても非常に重要でございますが、さらに、外国人と日本人の共生という意味合いにおきましても、我が国で暮らす外国の方が日本語を習得していく、これは非常に重要なことだというふうに出入国在留管理庁としても認識しております。さらには、これは日本で生活する外国人の子供の日本語教育という問題にもつながっていくところでございます。その点はやはり総合的な検討が必要だというふうに我々も認識しております。

 ちょうど昨日、外国人との共生社会実現に関する有識者会議というものが発足しました。その中では、有識者の方々に自由に、共生社会実現に向けての意見交換をしていただくというたてつけでございますが、一つのテーマは、共生社会実現を図る上での日本語、特に子供等に対する日本語教育、そこも一つの柱となっているところでございます。そういう中の議論も踏まえまして、また、関係機関とも適切に連携をして対応していきたいと思っているところでございます。

中川分科員 ごめんなさい。時間が来たんだけれども、ちゃんと答えてください。

 文科省が主管官庁として皆さんの権限も持っていっていいということでいいんですね。

細田主査 じゃ、松本次長、申合せの時間が来ておりますので、簡潔に答弁をお願いします。

松本政府参考人 はい。

 その点は、適切な役割分担については今後しっかりと検討していきたいと思います。

中川分科員 以上、終わります。

細田主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 次に、尾辻かな子君。

尾辻分科員 立憲民主党の尾辻かな子です。

 時間が短いですので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 まず、生活保護裁判についてお聞きをしたいと思います。

 今月二十二日、大阪地方裁判所は、国が生活保護の支給額を二〇一三年から段階的に引き下げたことは、最低限度の生活の具体化に関する国の判断や手続に誤りがあり、裁量権を逸脱、濫用し、違法だとして、支給額の引下げを取り消す判決を言い渡しました。私も厚生労働委員会でこのときの引下げの計算のおかしさをずっと追及をしてまいりました。裁判所は生きていたと原告が評価したように、極めて真っ当な判決であったと思います。

 この判決を受けて、国として控訴を断念し、判決を確定させることが重要であると考えますが、いかがでしょうか。

山本副大臣 今回の判決に関しましては、生活扶助基準の改定は適法であったという国の主張が認められなかったということで承知をしている次第でございます。現在、判決内容の詳細を精査しているところでございまして、関係省庁、さらには被告自治体と協議した上で、今後の対応を決定いたしたいと考えている次第でございます。

 なお、厚生労働省としては、今後とも自治体との連携を図りながら、この生活保護行政の適正な実施に努めてまいります。

尾辻分科員 これは二週間で結論を出さなきゃいけないものですから、控訴断念を求めておきたいと思います。

 副大臣、これで質問は終わりですので、御退席いただいて結構でございます。

 次に、オリンピック・パラリンピックアプリについてお聞きをしてまいりたいと思います。七十三億円という入札価格の妥当性、無観客も視野に入っているときに開発をするということの妥当性、アプリの実効性への疑問など、論点が多々ございます。

 まず、このアプリですけれども、入札と締切りの期日がいつだったのか、入札方式について、また、応札に応じたのは一者のみなのかということについてお答えください。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのありました入札でございます。公示日が令和二年の十二月二十八日、技術等提案書等の提出期限が令和三年の一月八日、入札及び開札が一月十四日というふうになっております。

 入札制度につきましては、総合評価落札方式の一般競争入札でございます。応札いたしましたのは一者ということでございます。

尾辻分科員 これ、応募を考えるときに、十二月二十八日に公示をされて、技術提案書の提示が一月八日、まさに冬休みのときにこれをやっているわけなんですね。これが本当に公平な入札時期であったのか。このとき、西村経済再生担当大臣も、休みを長くしてほしいと経済団体にもお願いしているようなときでしたから、この入札時期については疑問が残ります。

 次に、アプリの汎用性についてお聞きをしたいと思いますが、日本に来られる全ての国の方がこのアプリが使えるのかという視点からお聞きしたいと思います。

 平井IT担当大臣は、今後、インバウンド向けにアプリを使うと昨日の記者会見でもおっしゃっております。インバウンド、訪日の外国人の中で一番割合が高いのは中国の方々なんですね。ただ、中国の方々、アンドロイドスマホを持っている方々はそもそもグーグルプレイが入っていない、つまり、グーグルが入っていないため、アプリをインストールできない、こういう疑問があるわけです。アプリをどうやってこういう方々には取得していただくんでしょうか。

時澤政府参考人 各種端末への対応でございます。

 これは現在、検証、検討を行っております。

 御指摘のとおり、グーグルプレイ以外の入手方法もございます。これについても検討を行っております。例えば、中国におきましては、グーグルプレイ以外に、端末メーカーあるいはサードパーティー製のアプリの入手のためのプラットフォームがございます。こういうことを承知しております。また、APKといいまして、アンドロイド用のアプリケーションを配布するためのファイルをウェブページで提供することも可能だと承知をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、各国におけます各種情勢も踏まえまして、各種端末への対応について検討しているところでございます。

尾辻分科員 ちょっと技術的な話になるんですけれども、先ほどAPKでアプリがダウンロードできるんだという話があったんですけれども、これは、たとえそこからアプリを取ってきたとしても、コア機能がグーグルモバイルサービスのソフトウェア・ディベロップメント・キット、SDKを使用していると、結局、正常に作動しないのではないかと指摘をされています。

 このような指摘、どのように対応されるおつもりでしょうか。

時澤政府参考人 今回のアプリの開発につきましては、開発の効率性を果たすために、御指摘のありましたGMS、グーグルモバイルサービスにおいて提供されますSDKを活用する予定でございます。

 一方で、他のGMSに対応していないアンドロイド端末への対応についても想定をしておりまして、GMSのSDKのみに依存した開発とはならないように検討しているところでございます。

尾辻分科員 実は、同じことがCOCOAにも言えるんですね。COCOAも、例えば、今後、ビジネストラック等で中国の方とかが入国されるようになった場合、アンドロイドのスマホには、中国の方はグーグルが入っていませんので、COCOAがインストールできないわけです。ほかの委員も指摘されていますけれども、日本で販売されているファーウェイの一部の機種もCOCOAが使えないということで、こうなると、感染接触アプリが使えない状態で入国されるということになります。

 この対応はどうされるおつもりでしょうか。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 接触確認アプリCOCOAにつきましては、委員御指摘のように、中国から来日した方のアンドロイドのスマートフォンは、そのメーカーの仕様によりまして、現在はインストールできない状況となっております。

 御指摘の点を含めまして、開発の必要性やその方向性、あるいは運用上の事務フローなどについて、現在、総合的に精査を行っているところでありますが、先ほど御紹介があった点もございますし、クリアすべき技術的な課題も多いところがございます。

 今後、海外からの入国者が増加することも予想される中で、厚生労働省といたしましては、継続的に情報収集をして、その技術面を精査し、関係省庁とも連携しながら対応を検討してまいりたいと考えている段階でございます。

尾辻分科員 対応を検討というのは、対応するつもりがあるのかないのか、それはどちらでしょうか。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、技術的な課題もございますので、内閣官房IT室など関係省庁ともよく連携した上で、対応の可否も含めて、これから検討という段階でございます。

尾辻分科員 これは非常に私は問題だと思います。入国される方々が接触確認アプリが使えない状態で入国されるということは、どのようにして感染拡大を抑えていくのか、これは基本中の基本だと思いますので、ちゃんと、どういうふうに対応するのか、結論を早く出していただきたいと思います。

 あと、済みません、一問だけ。

 オリパラアプリに戻りますけれども、これはちょっと開発が遅れているのではないかというウェブ記事が出ておりました。プレイベント、三月四日から三月七日にする予定、これが事実上困難であるというふうにそのウェブ記事では指摘をされていましたけれども、これは事実でしょうか。事実であるならば、その理由は何でしょう。

時澤政府参考人 テストにつきましては、現在、関係機関とも協議をしているところでございまして、その検討を踏まえて進めることといたしております。

 いずれにしましても、オリパラのアプリにつきましては、しっかり実証を行う機会を確保して、開発を進めていきたいというふうに考えております。

尾辻分科員 済みません、プレイベント、三月四日と仕様書には書かれている、これはやるのかやらないのか、イエスかノーでお答えください。

時澤政府参考人 プレイベントについて、私どもとしてお答えする立場にはございませんけれども、そういった、どういうふうにして実証を行うかについてはしっかりと対応していきたいというふうに考えております。

尾辻分科員 まだまだオリパラアプリについては疑問があります。ちょっと時間がありませんので、また最後に時間があったらもう一度聞きたいと思います。ただ、ワクチンに頼らないオリンピック・パラリンピック大会、例えば、十四日間待機なしでやる大会のアプリがこの状態で本当に機能するのかというのは、本当に心配であるということを申し上げておきたいと思います。

 それでは、予算委員会でちょっとできなかった同性婚についてお聞きをしてまいりたいと思います。

 同性婚については、私たち野党は、既に同性婚を可能とする民法改正案、婚姻平等法を提出しております。法務委員会では継続審議となっております。この法案は、現行法において婚姻が異性の当事者間によるものに限定されていると解されることに鑑みて、個人の尊重の観点から、性的指向又は性自認にかかわらず平等に婚姻が認められるようにするため、同性の当事者間による婚姻を認め、これを法制化することを内容としております。

 そこで、この法案の前提となっている憲法解釈とそれをめぐる内外の状況についてお聞きしてまいりたいと思います。

 衆議院法制局にまずお聞きをいたします。

 この民法改正案の立案に当たって、憲法は同性婚を禁止していないとの解釈を採用したものと理解しております。それでよろしいでしょうか。

齋藤法制局参事 お答えいたします。

 私ども衆議院法制局は、私ども自身が憲法その他の法令について独自の解釈を有権的に申し上げる立場にはございません。他方、議員立法の御依頼がありました際には、議員や党のお考えを踏まえつつ、その立案の前提となる憲法解釈等が論理的に可能なものかどうか、慎重に検討し、先生方に助言をする組織でもございます。

 その上で、御質問の同性婚と憲法との関係でございますが、憲法二十四条一項と同性婚の関係については、論理的に幾つかの解釈が成り立ち得ると考えますが、結論から申しますと、少なくとも、日本国憲法は、同性婚を法制化することを禁止はしていない、すなわち、認めているとの許容説は十分に成り立ち得ると考えております。

 例えば、最近刊行された教科書の中で、東京大学の宍戸常寿先生は、憲法二十四条が近代的家族観を採用したとの理解を前提に、憲法上の婚姻を現行民法上の婚姻に限定する一方で、それ以外の結合は、家族の形成、維持に関する自己決定権、十三条によって保障され得ると解するのが多数説であるとしつつ、他方で、憲法二十四条の規範内容は近代的家族観を超えるものであり、同性婚も憲法上認められるとの見解もあると述べられています。

 御指摘の法案をお手伝いするに当たっては、このような学説の状況を踏まえて、同性婚を認めるかどうかは立法政策に委ねられているとする考えや、さらには、憲法十三条や十四条等の他の憲法条項を根拠として、同性婚の法制度化は憲法上の要請であるとするような考えなどは、いずれも十分に成り立ち得るものと考えたところです。それを提出者の先生方に確認した上で、立案、審査をしたところでございます。

尾辻分科員 今、衆議院法制局から非常に重要な答弁をいただいたと思います。憲法十三条や十四条等の憲法条項を根拠として、同性婚の法制度化は憲法上の要請であるとするような考えは、いずれも十分に成り立ち得るということであります。

 そして、この解釈、そして憲法学説を紹介いただきましたけれども、やはり、最近の社会情勢や国民の意識の変化等を背景にして、こうして変わってきているんだということだと思います。

 そこで、国立図書館に質問をいたします。

 代表的な憲法の教科書の一つである高橋和之東大名誉教授の「立憲主義と日本国憲法」は、現在、五版までを数えますが、その中で同性婚に関する記述がどのように変化してきたのか、簡単に紹介してください。

寺倉国立国会図書館専門調査員 お答え申し上げます。

 お尋ねのありました高橋和之先生の「立憲主義と日本国憲法」中の同性婚についての記述でございます。

 まず、二〇〇五年刊行の初版及び二〇一〇年刊行の第二版の該当箇所を読み上げますと、「結婚の自由については憲法二十四条が保障しているが、近年議論され始めた同性間の結婚まではカバーしていないというのが通説である。」となっています。

 この御著書の基になった二〇〇一年刊行の放送大学の教材がございますが、その記述も同じでございます。

 二〇一三年の第三版では、ただいま読み上げました文章に続けて、「しかし、ヨーロッパ諸国やアメリカの州では同性婚を認める例も増加してきている。」という一文がつけ加わり、さらに、二〇一七年の第四版になりますと、第三版でつけ加わった文章の末尾に、括弧書きで、「アメリカ合衆国最高裁は、二〇一五年六月二十六日判決で同性婚を禁止した州法を違憲と判断した」という補足説明がつけ加えられました。

 最新の二〇二〇年の第五版では、最初の文章に変更がありまして、「同性間の結婚まではカバーしていないというのが通説である。」の末尾が、「通説であった。」になっています。

 以上でございます。

尾辻分科員 こうしたスタンダードな憲法の教科書も、ついには、結婚の自由については憲法二十四条が保障しているが、近年議論され始めた同性間の結婚まではカバーしていないというのが通説であったと、もう過去形に変わったわけです。通説が交代したとまでは言っていませんけれども、同性間の婚姻も憲法上の権利として保障されているという議論が強まっており、その結果、かつての通説、恐らく、これは許容説、裁量説が通説とは言えなくなったということを示していると思います。

 先生の教科書でも、諸外国の同性婚をめぐる状況の変化、それが丁寧に言及されているんですけれども、これが日本の憲法解釈にも影響を与えている、ここをもう少し深掘りしていきたいと思います。

 衆議院の憲法審査会事務局にお聞きをいたします。

 憲法に同性婚の保障を規定している国がどれだけあるのか、また、憲法の一般的な規定を受けて、法律で異性婚と同性婚を同じように保障している国はどの程度あるのか、特にG7、主要七か国ではどうかということについてお聞きをいたします。

神崎参事 御質問ありがとうございます。

 日本語文献を可能な限り参照した上で、把握している範囲内でお答えさせていただきます。

 まず一点目、憲法上の同性婚の保障を規定している国としては、アイルランドが挙げられます。元々、アイルランドでは、同性に婚姻類似の法的保護を与える制度が法制化されておりましたが、二〇一五年には憲法が改正されて、同年、関係法律も改正された結果、異性間の婚姻に関する規定が完全に同性にも適用されることとなっております。

 また、法律上、同性婚を制度化している国は、二〇〇〇年以降、先ほど御紹介がありました高橋和之先生の教科書の記述にありますように、増えてきているように見受けられます。

 例えば、二〇〇〇年代は、オランダ、ベルギー、南アフリカなど、二〇一〇年代、ポルトガル、アルゼンチン、ニュージーランド、オーストラリアなど、近年は、台湾が二〇一七年の司法院解釈に基づいて法整備を行うなど、この傾向は欧米諸国に限られないようです。

 最後に、G7諸国でありますけれども、まず、英、独、仏、カナダの四か国は、いずれも、二〇〇〇年代から二〇一〇年代にかけて法律で同性婚を制度化しております。

 また、アメリカでは、二〇一五年の連邦最高裁判決で同性婚を認めない州法を違憲と判断し、同性婚が認められているのは、高橋和之先生の教科書の記述にあるとおりであります。

 なお、残り一か国、イタリアにおいても、二〇一六年に婚姻類似の民事的結合を法的に位置づけております。

 以上、日本以外のG7諸国においては、いずれも何らかの形で法的保護が図られているようであります。

 以上であります。

尾辻分科員 今お答えにあったように、日本以外のG7諸国においては何らかの形で法的保護が図られていますし、台湾でも同性婚が認められまして、この傾向はもう欧米に限らないという大きな流れがあるわけです。これがとにかく世界的な趨勢であるということが、今までの答弁でよく理解ができました。

 以上を踏まえて、今度は内閣法制局にお聞きをしたいと思います。

 政府は従来、現行憲法は同性婚を想定していないとの答弁を繰り返してきていますが、想定していないということの意味は一体何なのか。つまり、憲法は想定していないから同性婚の法制度化は禁止されているという禁止説を取っているのか、それとも、想定していないから立法府の政策判断に任されている、いわゆる立法委任説、どちらなのか。前者なのか後者なのか、明確にお答えをいただきたいと思います。

木村(陽)政府参考人 従来より、憲法二十四条第一項におきましては、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」と規定をしております。同性婚の成立を認めることは想定されていないとお答えしてきたものでございます。

 内閣法制局は、いずれにいたしましても、その設置法に規定いたしますいわゆる審査事務、あるいはいわゆる意見事務の一環といたしまして、必要に応じて憲法の解釈を行うものでございます。

 お尋ねにつきましては、想定されていない旨、先ほど述べたこと以上に我々として検討したことはございません。したがいまして、お答えすることができないところでございます。

尾辻分科員 想定していないという意味が分からないんですね。

 つまり、禁止説に立っているのか、立っていないのか。イエスかノー、これはイエスかノーか、どちらかしかありませんから、イエスかノーでお答えください。

木村(陽)政府参考人 繰り返しになるところで恐縮でございますけれども、私どもとしては、想定されていないということでお答えをしてきておりまして、それ以上のことにつきましては検討したことはございません。

尾辻分科員 そうしたら聞き方を変えますけれども、じゃ、二十四条一項は、ただ、同性婚について何か言っていますか。同性婚について何か言っているかどうか。お答えください。

木村(陽)政府参考人 二十四条一項は、同性という言葉を使っているわけではもちろんございません。両性という言葉を使っているということでございます。

尾辻分科員 だから、同性婚について何か言っていますか、いませんか。二十四条一項です。

木村(陽)政府参考人 お答えしたとおりでございます。両性の合意に基づいてという言葉があるということでございます。

尾辻分科員 堂々巡りになっております。

 例えば、去年の一月三十日の参議院の予算委員会では、憲法制定時は男女で婚姻がされているという意味での両性を前提として作った、それ以外のことを特段述べているというわけではないとか、両性による合意ということを前提として、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立というものは想定しなかったという、それ以上でも以下でもない、こういう答弁があります。この答弁は維持されているかどうか、お答えください。

木村(陽)政府参考人 その答弁自身は維持をしておるものと考えております。

 他方、御指摘の長官の答弁、近藤長官の答弁でございますけれども、もとより、憲法二十四条第一項と同性婚の関係につきまして、同性婚の成立を認めることは想定されていないという従来からの政府としての理解を前提とした上での御答弁ということでございます。

 全体として、憲法二十四条一項は、婚姻は、両性の合意という個人の合意に基づくことが大事であるということをまさしく憲法として示したという趣旨を答弁する中で述べたものでございまして、同性婚の成立を認めることは想定されていないというこれまでの答弁を超えまして、憲法二十四条一項と同性婚の関係について解釈を示したものとは考えておりません。

尾辻分科員 この答弁が維持されているということですから、当然、政府もさすがに憲法禁止説を取っているわけではないということだと思います。

 そして、このことについて、今度は大臣にお聞きをしてまいりたいと思います。

 結局、憲法は禁止説を取っているわけではない。つまり、さっきの内閣法制局の答弁でも、このことについては特段述べていないということなんですね。ということは、実は、私たちもそうですけれども、民法を改正すれば同性婚は可能になるということであると思いますので、大臣がリーダーシップでもって、多様性のあるそういう社会をつくるというのであれば、やはり政府として同性婚の法制化に向けて、これは議論を始めたり法制審に対して諮問するとか、こういうことが必要であると思います。上川大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいま委員から御質問が幾つかの切り口でなされたところでございます。

 憲法上の、二十四条一項に係る件でありますが、同性婚を事実上、憲法上想定されていないということについて、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立を認めることについては憲法上想定されていない、その上で、憲法二十四条第一項が同性婚を禁じているか否かという御質問がございましたけれども、その点につきましては、政府としては、現時点において同性婚の導入を検討していないということから、具体的な制度導入を前提としてそれが憲法に適合するか否かの検討もしていない、こういう状況でございます。

 なかなか憲法が同性婚を禁止しているか否かにつきましてお答えすることができない、こういう状況でございまして、今御質問のことでございますが、なかなか慎重な検討が必要であるというふうに思っております。

尾辻分科員 導入を検討していないということが余りに不作為の状態であると言わざるを得ないと思います。

 今、裁判も行われておりますけれども、実は先日、東京の原告であります佐藤郁夫さんが亡くなられました。彼は、死ぬまでに法律的に夫夫になりたい、夫と夫、夫夫となりたいと。でも、その意思はかないませんでした。十五年以上一緒にいたのに、結局、病院が連絡をしたのは彼の妹さんです。こういうことが起こるからこそ、今、日本政府は本来、同性婚を認める議論を始めなければいけない。なのに、検討していない。そういうことで本当に、これはこのまま放置していいんでしょうか。この間にも多くの当事者の方々が結婚ができないために不利益を被っております。

 大臣、今まさにこういった、夫婦になれないがゆえにいろいろな不利益が起こっていることについてはどう思われますか。

上川国務大臣 今委員の方から御紹介をいただきました方々についてのそうした思いについては、本当にそうした思いにしっかりと寄せていくということが非常に大事だというふうに改めて思う次第でございます。

 同性婚を認めるか否かということについて、このことについては我が国の家族の在り方の根幹に関わるという問題でございまして、極めて慎重な検討を要するものではないかというふうに考えております。

尾辻分科員 非常に残念であります。

 本当に今、二十一世紀、各国、同性婚をどんどんどんどん可能にしていっています。この趨勢は変わりません。なので、早く日本もこの趨勢に追いつくべきですし、オリンピック・パラリンピックは多様性と調和だと言っているわけですから、これは予算委員会でもやらせていただきました。その多様性とはやはり同性婚を認めることだと私は思います。

 ちょっとまだ時間があるので、最後にもう一問やりたいと思います。

 法務省で検討をすると言いながら、全然進んでいない話があります。それは外務省から要請をされている、他国で同性婚をしている日本人とその国のカップルの方が日本にいらっしゃったときに配偶者ビザが取れない、これは外務省から早く検討するようにと言われています。この検討状況、今どうなっているでしょうか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 同性婚の当事者がいずれも外国人である場合につきましては、双方の本国で有効に婚姻が成立しているときは、特定活動の在留資格をもって入国、在留を認めているところでございます。

 他方で、委員御指摘のとおり、当事者の一方が日本人の場合、我が国におきましては同性婚が認められていないことから、我が国において公的な手続を何ら取ることなく関係を解消できるという事情がございまして、身分関係の明確性、確実性が十分とは言い難く、在留資格を認めていないというのが現状でございます。

 同性パートナーに係る在留資格の今後の在り方につきましては、今も述べましたような課題への対応を含め、現在も慎重に検討しておるところでございます。

尾辻分科員 検討した事実はありますか。検討会を開いたり、有識者から話を聞いたりした事実はありますか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 出入国在留管理庁として内部で検討しているという状況でございます。

尾辻分科員 大臣、これは、検討していると言いながら、検討会も有識者からのヒアリングも何もされていない。ただたなざらしになっているんです。

 是非検討してください。いかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいまの御質問でございますが、しっかり検討してまいりたいというふうに思っております。

尾辻分科員 検討というのは、ちゃんと話を聞いたり、場を持つことですから、よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

細田主査 これにて尾辻かな子君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十六日金曜日午前九時より開会し、法務省及び外務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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