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第1号 令和5年2月20日(月曜日)

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本分科会は令和五年二月十五日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      下村 博文君    辻  清人君

      中山 展宏君    古川 禎久君

      大西 健介君    藤岡 隆雄君

      宮本  徹君

二月十七日

 中山展宏君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和五年二月二十日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 中山 展宏君

      石井  拓君    小田原 潔君

      下村 博文君    辻  清人君

      古川 禎久君    小熊 慎司君

      大西 健介君    階   猛君

      中川 正春君    中島 克仁君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      宮本  徹君

   兼務 高村 正大君 兼務 土田  慎君

   兼務 務台 俊介君 兼務 山口  晋君

   兼務 奥下 剛光君 兼務 沢田  良君

   兼務 金城 泰邦君 兼務 日下 正喜君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   財務大臣         鈴木 俊一君

   外務副大臣        山田 賢司君

   財務副大臣        井上 貴博君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  松本 加代君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 鈴木  清君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 伊藤 茂樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 日下部英紀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 原  圭一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 西永 知史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大河内昭博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       齋田 伸一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   中村 英正君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           朝川 知昭君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         南   亮君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            横島 直彦君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 茂木  陽君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 北尾 昌也君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  下村 博文君     神田 潤一君

  大西 健介君     谷田川 元君

  藤岡 隆雄君     堤 かなめ君

  宮本  徹君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     石井  拓君

  堤 かなめ君     野田 佳彦君

  谷田川 元君     小熊 慎司君

  田村 貴昭君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     小田原 潔君

  小熊 慎司君     福田 昭夫君

  野田 佳彦君     中川 正春君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     勝目  康君

  中川 正春君     階   猛君

  福田 昭夫君     中島 克仁君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     下村 博文君

  階   猛君     藤岡 隆雄君

  中島 克仁君     大西 健介君

同日

 第二分科員金城泰邦君、第五分科員務台俊介君、第六分科員高村正大君、奥下剛光君、第七分科員土田慎君、山口晋君、沢田良君及び日下正喜君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算

 (外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

中山主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算及び令和五年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。鈴木財務大臣。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 令和五年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、百十四兆三千八百十二億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は六十九兆四千四百億円、その他収入は九兆三千百八十二億円余、公債金は三十五兆六千二百三十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、三十五兆四千七百六十二億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十五兆二千五百三億円余、防衛力強化のための資金へ繰入れは三兆三千八百六億円余、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費は四兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費は一兆円、予備費は五千億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも二百三十九兆四千七百三十六億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入一千九百三十一億円余、支出一千六十八億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳しい説明に代えさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

中山主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま鈴木財務大臣から申出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中山主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中山主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、これを許します。土田慎君。

土田分科員 おはようございます。自由民主党の土田慎でございます。

 大臣、副大臣におかれましては御退席いただいて構いませんので。

 私からは、本日、大きく二点の質問をさせていただこうと思っております。

 一点目は、いわゆる年収の壁についてでございます。

 予算委員会でも、我が党の萩生田政調会長、そして平将明議員が、百六万円の壁であったりだとか、年収の壁について質問されたところでございます。

 簡単に、どういう質問だったかというと、最低賃金が上がってきている中で、各層による年収の壁があると、働きたくても就業時間を制限してしまって、その影響によって、これだけ人手不足が深刻化している我が国においても更に人手不足が進んでしまうというような内容のお話でございました。まさに私も同様の考えを持っております。

 そこに追加して、私の問題意識として更にあるのが、厚生労働省が出したデータによると、今生きている女性の約五二%、半数ぐらいが九十歳まで生きるであろうと。これはゼロ歳から、まさに九十歳、百歳の人を含めての数字でございます。男性でいうと、約三割弱の人が九十歳まで生きると言われております。また、これは先の話なので何とも確定的な話ができないところではございますけれども、今生まれるであったり今年成人する女性の約半分が百歳ぐらいまで生きるというような話であったりだとか、データがございます。

 という中で、やはり私が思うのが、今、人生百年時代という中で、百年生きることを想定したときに、その百年生きるためのお金を稼ぐのが、約二十歳から六十五歳ぐらいまでの、大体四十五年であったり五十年弱であるというふうに考えると、これは誰が考えてもなかなか厳しいんじゃないかなというふうに思います。いろいろな状況があるにせよ、月の収入の半分を貯蓄であったり投資に回している人というのはなかなかいないんじゃないかなというのが、これは大まかな、感覚的に思うところでございます。

 そんな中で、やはり、働ける、働きたい人の障壁となっているものを一つでも取り除いていかないといけないという問題意識を持っているわけでございますが、その議論を深める前に、各種、いわゆる年収の壁というのがあって、これは調べてみるとなかなか複雑で、年収の壁にもいろいろ種類があって、百万の壁であったりだとか、百三万、百六万、百三十万、そして百五十万、二百一万といろいろな壁がございます。

 これは結構複雑で、いろいろ先ほどの年収の壁の是非を議論していくに当たっても、しっかり理解を深めてから議論をしないと、どこの何の話をしているのかよく分からなくなってしまうので、今日、是非、この予算委員会の分科会という場において、その辺が国民の皆さんによく分かっていただけるように質問をしたいなというふうに思っているわけでございます。

 まず、その説明をするに当たっても、税の用語というんでしょうか、専門用語というのか分からないですが、言葉というのは非常に実は複雑だなというふうに思っています。官僚の皆さんであったり我々議員というのは、日頃からそういう用語を見ながら議論をしているので、ある意味、息を吸うように、何というんでしょう、そのいびつさに気づかず議論をしてしまっているんですけれども、例えば、所得税であったり税の話をするときに、配偶者と被扶養者というような言葉がありますけれども、これは、冷静に考えてみると、ちょっとよく分からないというか、普通の人は日頃使わない言葉だと思うんです。

 まずは、配偶者と被扶養者について、どういう違いがあるのか、役所の方から答弁をよろしくお願いします。

住澤政府参考人 御質問ありがとうございます。

 所得税における配偶者控除の対象となります配偶者と申しますのは、これは民法における配偶者と同じでございまして、旦那さんが納税者である場合はその奥さん、奥さんが納税者である場合はその旦那さんというのが配偶者ということになります。

 税法上、配偶者控除の対象になる控除対象配偶者の要件ということでのお尋ねでございますと、年間の収入が、給与所得者の場合ですと百三万円以下の方で、納税者の方と、一緒に暮らしておられたりとか仕送りを受けられて、生計を一にしておられる方ということになります。ただ、納税者御本人の方の所得金額が一千万以上、あるいは給与収入で申しますと千百九十五万円以上になりますと対象じゃなくなるということになっております。

 それから、扶養控除の適用対象となる扶養親族、これも民法における親族の概念とほぼ似ておりますけれども、六親等以内の親族で納税者と生計を一にしている方が中心になりますが、その方々のうち、十六歳以上の方であって、給与所得者の場合でいいますと年間の収入が百三万円以下の方ということになっております。

日原政府参考人 社会保険制度におきます被扶養者の関係につきまして、私から御答弁を申し上げます。

 まず、健康保険におきましては、被保険者の一定範囲の親族の方であって、被保険者と生計維持関係にあることなどの要件を満たした方を被扶養者というふうに定義をいたしておりまして、生計維持関係の具体的な指標につきましては、年収百三十万円未満であることを基準としてお示しをいたしております。被扶養者の方につきましては、保険料を負担することなく、健康保険の病気やけが、出産に対する給付を受けることができるものでございます。

 これらの方のうち、国民年金の第二号被保険者の二十歳以上六十歳未満の配偶者の方につきましては、国民年金の第三号被保険者としておりまして、御自身で保険料を負担することなく基礎年金の給付を受けることができるものでございます。

土田分科員 ありがとうございます。

 配偶者であったりだとか被扶養者のお話をする、まさに税の入門中の入門の話なんだと思うんですけれども、この説明をするだけでも、財務省であったり厚生労働省の皆さんが別々で答弁に立たないといけないぐらい複雑で入り乱れているんだな、分かりづらい話なんだなというのが、より思った次第でございます。

 その中で、先ほど、冒頭申し上げた百万、百三万、百六万、百三十万、百五十万、二百一万という壁がある中で、百万の壁は総務省の管轄、百三万、百五十万、二百一万の壁は財務省、そして百六万、百三十万の壁は、これは厚労省の管轄であると思っております。

 それで、今日はちょっと総務省はお呼びしていないんですけれども、百万の壁というのは、いわゆる約百万なんですけれども、この百万を超えてくると、自治体によって違いはあるものの、超えてくると住民税がかかってくるというようなもので、東京の場合、私は東京ですけれども、一〇%の住民税がかかってくるというようなものでございます。

 まず、財務省さんにお伺いしたいんですけれども、所得税、また配偶者が関わってくる話でございますけれども、百三万の壁というものはもう解消はされているんだと思いますけれども、その百三万の壁の解消に関する説明と、また、百五十万、二百一万の壁というのはどういうものなのか、御説明よろしくお願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、配偶者の方の給与収入が百三万円を超えますと所得税が発生することになりますけれども、その配偶者の方の所得税について申し上げますと、百三万を超えても、いきなり根っこから所得税がかかるわけではございませんで、百三万円を超えた金額、その部分についてだけ最低税率五%がかかるということになりますので、百三万円を超えたところで手取り収入が逆転するということにはならないような仕組みになってございます。

 一方、配偶者控除の方でございますが、配偶者の方と生計を一にしておられる納税者の方の配偶者控除について申し上げますと、昭和六十二年度の税制改正におきまして、配偶者控除がなくなってからも、配偶者の所得の大きさに応じて徐々に減少していく仕組みの配偶者特別控除という仕組みが設けられてございまして、配偶者の給与収入が百三万円を超えても、世帯の手取り収入がかえって減ってしまうということにならないような手当てがなされてございます。

 さらに、平成二十九年度の税制改正におきまして配偶者特別控除の見直しが行われまして、配偶者特別控除が満額適用できる水準、配偶者の給与収入の水準が百三万円から百五十万円まで引き上げられましたので、現在の仕組みで申し上げますと、配偶者の方の給与収入が百五十万円に達するまでは控除額三十八万円が維持される。百五十万円を超えますと、徐々に配偶者特別控除の金額が段階的に減少していきまして、二百一万円を超えると配偶者特別控除が適用されなくなるということで、徐々に減少していって、なくなるという仕組みになってございます。

 したがいまして、百三万円、百五十万円、二百一万円のいずれにおいても、収入の逆転現象が起こるという意味での壁はもう存在しなくなっているということでございます。

土田分科員 ありがとうございます。

 大事な点は、百三万の壁というものは、我々、国会から外に出て、地元であったりだとか地域の方々と話していると、皆さんの頭の中には百三万という数字は残っているけれども、実際は百三万という壁はなくなっているという点が一つと、また、百五十万円を超えて所得税が発生するようになりますけれども、段階的に所得税の控除は、控除というか、税率、控除はあって、それが二百一万円を超えると、ある意味、優遇というのはなくなるという話でございます。

 今、その三つの数字についてお話ししましたけれども、私、個人的に勉強していてより複雑だなと思うのが百六万円の壁と百三十万円の壁でございます。これは、厚生労働省の管轄で、いわゆる社会保障制度の問題からくる壁でございますけれども、この百六万円の壁と百三十万円の壁について、厚生労働省の方から御説明をよろしくお願いします。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 一定の要件を満たす短時間労働者の方につきましては、健康保険や厚生年金の対象となりますけれども、その要件の一つとして、月額賃金が八・八万円以上であることというものがございます。これは年収換算で約百六万円となりまして、この基準などを満たした場合には、保険料の負担が生じ、手取り収入が減少することとなりますことから、いわゆる百六万円の壁と呼ばれているものでございます。

 ただ、他方、この場合におきましては、年金給付や医療保険の給付が充実することとなるものでございまして、具体的に申し上げますと、将来の年金額は、基礎年金に加え、厚生年金による上乗せがされます。また、医療におきましても、傷病手当金や出産手当金を受給することができるようになるというものでございます。

 この短時間労働者の方への被用者保険の適用につきましては、順次その拡大に取り組んでいるところでございまして、従業員百人超の企業までは既に実施をされております。また、従業員五十人超の企業につきましては、令和六年十月から実施されることとなってございます。

 一方で、短時間労働者の方への被用者保険の適用の対象となっていない企業や、被用者保険の適用の対象となっていない個人事業所におきましては、短時間労働者の年収が百六万円以上となりましても健康保険や厚生年金は適用されないということでございます。

 こうした企業などにお勤めでありまして被扶養者の方につきましては、その被扶養者の方の収入が、生計維持関係の要件の基準であります年収百三十万円の基準を超えました場合、被扶養者から外れ、国民年金、国民健康保険に自ら御加入いただくこととなります。これによりまして保険料も負担いただくこととなりまして、それに伴いまして手取り収入が減少することとなりますことから、いわゆる百三十万円の壁と呼ばれているものでございます。

土田分科員 ありがとうございます。

 今、厚生労働省の方から、百六万円、百三十万円の壁の説明と、その壁を越えて働くことによって得るメリットもあるんだよというような御説明を賜りました。

 財務省、厚生労働省の方から説明があったように、ただただ年収の壁を越えてしまうと負担が増えるだけという話ではなくて、そのメリットも多々あるんだと思うので、是非これから、年収の壁の議論もより活発になってくると思います、それを踏まえて、やはり国民の皆さん向けに分かりやすく説明を心がけていただきたいなというふうに思います。

 多分、本当に、日頃パートで働いていらっしゃる方だとかというのは、皆さん、数字の話は聞いたことがあるけれども、それがどこにひもづいていて、それによって何が変わるのかということは、意外と知らない人が、というか、実はほとんどが御存じないんじゃないかなというふうに思いますし、じゃ、いざ数字によって、年収によってどういう違いがあるのかということを調べ始めたときに、何か用語が、やはり普通に生活していたら見ない用語だらけなので、そこについて知識を深めるという思いすらなくなっちゃう、気力がうせてしまうんじゃないかなというふうに思うので、役所の方には、より平易な言葉で、より丁寧な発信をしていただきたいと思います。

 また、私の選挙区足立区は、非常に中小企業が多い中で、人手不足が本当に深刻化しております。どこの会社に行っても、人が足りない、募集しても新規の応募が来てくれないという話がある中で、これからこの年収の壁についての議論は余計深めていかないといけないなと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 次に、今日、冒頭申し上げた、大きく二点質問させていただきますという話の中で、二点目の、いわゆる新規産業にお金を回すための税制について質問をさせていただきます。

 我が国がこれから経済成長を果たしていくために産業の新陳代謝というのが必要だということは、ここにいる全ての方が認識をされているところだと思っておりますけれども、それが今なかなかうまくいっていないという現状もある中で、昨年末の税制改正大綱の中でいろいろな仕掛けがなされていると思います。その中でエンジェル税制がございますけれども、この目的について御説明をよろしくお願いいたします。

横島政府参考人 エンジェル税制は、投資リスクの高い創業期のスタートアップに対する個人投資家による資金供給を支援する観点から、平成九年度に創設されました。創設後、数回の改正を経て、投資時点の投資額控除、寄附金控除制度の創設や、いわゆるクラウドファンディングにより取得される株式を対象に追加するなどの拡充が行われてきました。

 また、令和五年度税制改正においては、リスクの高い投資を更に促進するため、保有株式の譲渡益を元手に、創業者が創業した場合、エンジェル投資家がプレシード、シード期のスタートアップに再投資を行った場合に、再投資分につき二十億円を上限に株式譲渡益に課税しない制度を創設することとされています。

土田分科員 ありがとうございました。

 ベンチャー企業により資金が回りやすいようにするためにこういう税制改正を行ったということは、本当に国から民間の事業者さんに対する大きなメッセージになると思っております。またこれと同じような内容、同じような目的の税制改正が予定されていると思いますけれども、それは何かというと、暗号資産の税制改正だと思っています。

 これはちょっと聞き慣れないんですけれども、暗号資産に対して今までどういう問題があったかというと、暗号資産発行業者が暗号資産を発行した時点で、例えば、分かりやすく言うと、百億円分の暗号資産を発行して、手元にキャッシュがないにもかかわらず、発行した時点で課税がされてしまう。そうすると、税金をキャッシュで納められないから、資産としての暗号資産は、今百億円を例にしましたけれども、百億あるけれども、税金を納められないから、日本では暗号資産事業を営むことができないという判断をしてしまって、海外に逃げてしまうというような問題が生じていたわけでございますけれども、それに関して、今般の税制改正大綱で、どういう目的を基に、税制、暗号資産に関する課税の変更がなされようとしているのかというのを御説明いただければと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の令和五年度税制改正案におきましては、自らが発行した暗号資産で、発行したときから継続して保有しており、一定の技術的な措置等による譲渡制限がついているものにつきましては、期末時価評価を不要とする改正を行うこととしております。

 これによりまして、ブロックチェーン技術を活用して、自ら暗号資産を発行し、ビジネスを行うスタートアップの方々にとって、キャッシュフローがない状態で課税されるということがなくなり、事業を行うための環境整備が図られるものと考えております。

土田分科員 ありがとうございます。

 先ほど御説明いただいたエンジェル税制と同様に、今の暗号資産関係の税制に関しても、税目は違うものの、目的は同じものだと思っております。それは何かというと、何度も申し上げておりますが、ベンチャー企業であったりだとか新規に創業しようという方に対して、資金がしっかりと回るように、後押しをできるようにという目的があると思っておりますが、その一連の流れがある中で、私が一つだけ懸念を今抱いているのが、いわゆる信託型のストックオプションに関する税制です。

 信託型というと余り聞きなじみがないんですけれども、簡単に申し上げると、普通のストックオプションと違うのは、資金を会社側が信託会社に信託をして、その信託会社が時価で株を買い取って、それで、会社がストックオプションを付与したい人に対して、付与する人が決まった段階で、その付与された人が信託会社にお金を払い込んで新株予約権を得るというような流れでございますけれども、今、基本的にストックオプション税制に関しては、ストックオプションの権利を行使して、そして、その株を買い取って、またそれを市場で売却したときの売却益に対して課税をされるというのが従来のストックオプション税制でございます。

 これは例外もあるので一概に何とも言えない部分はございますけれども、信託型のストックオプション税制に関しては、スキームをつくった事業者が、今の普通のストックオプション税制と一緒で、売却したときの売却益に対して課税をされるというニュアンスで商品を開発したところでございますが、しかし一方で、国税と解釈がちょっと違う部分があるんだろうなというふうに思っています。

 それで、国税庁に改めてお伺いしたいのが、信託型ストックオプションに関する現状の課税状況というのを、どういう段階で課税するのか、説明いただければと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 発行法人が役員等に付与するストックオプションにつきましては、一般的な課税関係を申し上げますと、当該ストックオプションが税制適格ストックオプションに該当する場合、それから役務提供の対価に該当しない場合、これらの場合を除きまして、ストックオプションを行使した日の属する年分の給与所得と取り扱っているところでございます。

 委員御指摘の信託型ストックオプションでございますが、信託にストックオプションを付与していることから、役員等の給与所得として課税されないのではないかとの見解があることは承知しておりますが、その信託型ストックオプションが役員等への付与を目的としたものである場合には、実質的に役員等に付与したと認められると考えられますことから、国税庁といたしましては、ストックオプションを行使した日の属する年分の給与所得に該当するものと考えているところでございます。

 なお、一定の要件を満たす税制適格ストックオプションの場合には、租税特別措置法によりまして、ストックオプションを行使した日における経済的利益につきましては、給与所得としては課税しないという措置が設けられているところでございます。

土田分科員 ありがとうございました。

 課税本位ではなくて、新規産業がどんどんどんどん生まれやすいように制度設計していただければと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

中山主査 これにて土田慎君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中山主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。林外務大臣。

林国務大臣 令和五年度外務省所管予算案について、その概要を説明いたします。

 令和五年度一般会計予算案において、外務省予算は七千四百三十四億四千九百五十四万三千円を計上しております。また、そのうち、四千四百二十八億四千八十七万七千円が外務省所管のODA予算となります。なお、そのほか、外務省関連のシステム予算については、デジタル庁所管分として百二十五億一千三百五十二万六千円が計上されています。

 予算案作成に当たっては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が重大な挑戦にさらされる中、引き続き、普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安定を守り抜く覚悟、そして地球規模の課題に向き合い国際社会を主導する覚悟、これら三つの覚悟を持って、対応力の高い、低重心の姿勢での日本外交を展開すべく、四本の柱を掲げ、めり張りをつけて、必要な予算を計上しました。また、対ウクライナ支援などの喫緊の課題には、令和四年度補正予算も活用し、早急に対処しているところです。

 第一の柱は、「国家間競争時代における、普遍的価値に基づく国際秩序の維持・発展」です。G7広島サミットや日・ASEAN友好協力五十周年も念頭に、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を一層進めます。また、経済安全保障の推進、国際社会における法の支配の維持、徹底の取組なども進めていきます。

 第二の柱は、「情報戦を含む「新しい戦い」への対応の強化」です。偽情報等の拡散を含む情報戦への対応や、日本の政策や取組に対する理解促進のための戦略的対外発信に取り組みます。

 第三の柱は、「人間の安全保障の推進、地球規模課題への取組の強化」です。感染症等の国際保健や気候変動を含む地球規模課題への対応や、SDGsの達成に向けた取組を主導していきます。

 第四の柱は、「外交・領事実施体制の抜本的強化」です。邦人保護体制の強化、在外公館の機能強化、在外職員等の勤務環境及び生活基盤強化を含め、外交・領事体制の抜本的強化に取り組みます。さらに、在外公館等の新設及び外務省定員の百名純増に必要な経費を計上しています。

 以上が、令和五年度外務省所管予算案の概要です。

 中山主査を始め、委員各位の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願いを申し上げます。

中山主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま林外務大臣から申出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中山主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

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中山主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、これを許します。高村正大君。

高村分科員 自由民主党の高村正大です。

 林大臣、ミュンヘン出張、本当にお疲れさまでした。まだまだお疲れが残っていると思いますが、今日はどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、ロシアがウクライナへの侵略を始めてから、とうとう一年が経過しようという時期になりました。言うまでもなく、ロシアによる軍事侵略は現在の国際秩序に対する重大な挑戦です。このようなことは決して許されるべきではありません。

 日本は、第二次世界大戦後、自由と民主主義を基調とした開かれた国際秩序の下で発展をし、また、それを推進してまいりました。単にウクライナの方々に同情するということではなく、国際社会の責任あるリーダーとして、日本自身の問題としてロシアによるウクライナ侵略という事態に対応していく必要があると考えます。

 侵略から一年、岸田総理、林大臣のリーダーシップの下、日本も国際社会の一員として、ロシアの侵略を止めるため、努力を重ねてきたと思います。しかしながら、いまだロシアは行いを改めようとせず、残念ながら成果に結びついていないのが現状であります。

 先週、林大臣はミュンヘン安全保障会議に出席され、G7外相会議を議長として主宰されたと承知しております。今後このウクライナ危機に対応していくため、G7のカウンターパートとどのような議論をされたのでしょうか。

 今年は、日本がG7の議長国を務める重要な年です。一部の国ではウクライナ疲れも聞かれる中ですが、日本はG7の一員としてウクライナ危機の解決に向けてどのような取組を進められていくのか、考えをお伺いしたいと思います。

 よろしくお願いします。

林国務大臣 二月の十八日の十一時、現地時間でございますが、約六十分間、日本議長の下で初めてとなる対面でのG7外相会合を開催をいたしました。

 この会合の後半にはクレーバ・ウクライナ外相も参加をしていただき、G7によるこれまでの支援に対する謝意と更なる支援に対する期待が示されるとともに、ウクライナ情勢の現状の評価、見通しについて率直な意見交換を行うことができました。

 この冒頭で、二月十八日の北朝鮮による弾道ミサイル発射を強く非難するとともに、対応に関する連携を確認したところでございます。

 その上で、会合では、国際秩序の根幹を揺るがすロシアによるウクライナ侵略の開始から、今、高村先生からお話があったように一年を迎えるわけですが、ウクライナ情勢を中心に議論を行い、G7外相として、力による一方的な現状変更に強く反対し、法の支配に基づく国際秩序を堅持する、こういう確固たる決意を示すことができたと考えております。

 また、ウクライナ支援の継続及びロシアに対する制裁、これを維持強化していくことで一致をし、G7としての結束を確認することができました。

 さらに、G7外相は、今回のロシアによる侵略、これは、欧州にとどまらず、インド太平洋の秩序をも揺るがすものであり、自由で開かれたインド太平洋を維持することへのコミットメント及び力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対することを再確認をいたしました。

 また、中国などの地域情勢についても議論を行ったところでございます。

 今年のG7議長として、今回の会合を通じて、法の支配に基づく国際秩序、これを守り抜くという強い意思を示すことができたと考えております。四月の長野県の軽井沢外相会合、そして五月の広島サミットと続いていきますが、これに向けて、引き続き、G7外相間で緊密に連携していきたいと考えております。また、日本主催のG7サミットであり、ウクライナ情勢のみならず、インド太平洋の情勢についても引き続き議論をいたしまして、G7としてのメッセージを発していきたい、こう考えております。

高村分科員 大臣、ありがとうございます。

 もう少しウクライナ情勢について伺いたいと思います。

 国際社会全体の取組として、今のウクライナの窮状に対して支援の手を差し伸べることは待ったなしの課題であります。戦争によりウクライナ市民の生活は破壊され、ロシアは、ウクライナ市民に電力や暖房を供給する民間インフラ施設をもなりふり構わず攻撃しています。もちろん、まだ戦争状態が続いている中で完全な形での復興を目指していくことは困難が伴います。しかし、全てが落ち着いてからというわけにはいかない状況にあるのも事実であります。

 欧米各国が軍事的支援を続ける中、国際協力に豊富な経験を有する日本としては、非軍事的な支援の分野で大きな役割を果たすことができると考えます。政府として、ウクライナの今の窮状に対する支援のニーズ、復興に向けたニーズをどのように認識しているのでしょうか。また、そのニーズに応えるため、日本政府として、これまでどのような措置を講じ、さらに今後どのような対応をしていくかを伺います。よろしくお願いいたします。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナは、ロシアによる国土の侵略、多数の貴い人命の喪失、住居、インフラ等の損傷等の膨大な人的、物的損害、また、多数の避難民の発生を始めとする未曽有の国難に直面をしており、我が国は、国際社会と連携してウクライナの人々に寄り添った支援を行う必要があるというふうに認識しております。

 現在、ウクライナでは、政府の財政資金ギャップの補填、寒い冬を乗り切るための越冬支援、特に、ロシアによる意図的な攻撃によって破壊されたエネルギー、電力施設の維持、復旧、周辺国を含む避難民への人道支援、さらには中長期的な復旧復興に向けた地雷対策等がニーズが高く、ウクライナから我が国を含む国際社会への支援が求められております。

 これに対しまして、日本はこれまで、ウクライナ及びその周辺国等、ロシアによるウクライナ侵略の影響を受けた関係国に対しまして、昨年十二月に措置されました六百億円の補正予算を含め、人道、財政、食料、復旧復興の分野で総額約十五億ドルの支援を順次実施しているところでございます。

 今後、ウクライナが重視する財政支援、エネルギー支援、地雷対策等の分野で、国際機関やJICA、また日本のNGOとも連携をしまして必要な人道支援、復旧復興支援を行っていく考えでございます。例えば、発電機等の供与を含む越冬支援、地雷対策、瓦れき除去、電力、保健、教育等の基礎インフラ整備を含む生活再建等の支援を通じまして、日本がこれまで培ってきました経験、知見等も活用しながら、日本の顔が見えるウクライナ支援を効果的に進めてまいりたいと考えております。

高村分科員 どうもありがとうございます。引き続き、しっかりと、ウクライナの支援、頑張っていただきたいと思います。

 そして、日本とロシア、歴史を振り返っていけば、日本は、ロシア、そしてその前身のソ連と常に向き合ってまいりました。昨年亡くなられたゴルバチョフ大統領がペレストロイカを推進し、ベルリンの壁が崩れ、最終的にはソ連が崩壊して新たなロシアが誕生しました。私自身も含め、日本の多くの人々が、あの頃の国際社会の大きな変化をとても楽観的に受け止めていたことをよく覚えています。ロシアにもようやく我々と同じ価値観を持つ国ができるとの思いを持ち、民主国家ロシアの成長に期待をしておりました。平和条約にも明るい展望を感じておりました。

 しかし、とても残念なことながら、ロシアが冷戦時代への逆戻りを目指すようにウクライナに対する侵略を開始しました。ロシアは自国にとっての理屈をいろいろと並べていますが、一国が隣の国を軍事的に攻撃することを正当化できるものではありません。ロシアによるウクライナ侵略を一刻も早く止めるため、日本として国際社会と連携して毅然と立ち向かうことは極めて重要であります。

 同時に、日ロは隣国であり、漁業やエネルギーなどの分野においては日本の国益を守っていく外交努力も重要だと考えます。特に、日本はロシアとの間で北方領土問題を抱えています。ロシアはもはや交渉は続けないと表明しましたが、この問題は日ロ間の最大の懸案であり、このまま置き去りにすることはあってはなりません。

 また、高齢となられた元島民の方々からは、北方四島に眠る先祖のお墓にもう一度お参りしたいという切なる願いが繰り返し表明されています。

 政府として対ロ外交や北方墓参について今後どのように取り組んでいくのか、お考えをお伺いしたいと思います。お願いいたします。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、我が国は、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、ロシアに対して引き続き強い制裁を行うなどの外交的取組を進めてまいります。

 同時に、今お話がありましたように、日ロは隣国でありまして、例えば漁業などの経済活動や海洋における安全に係る問題のように、日ロが隣国として対処する必要のある事項については、我が国外交全体において何が我が国の国益に資するかという観点もしっかり考えながら適切に対応していきます。

 その上で、今、高村委員から御指摘がありましたように、北方領土問題は日ロ間の最大の懸案であります。ロシアによるウクライナ侵略によって日ロ関係は大変厳しい状況でありますが、政府としては、北方領土問題を解決し、平和条約を締結する、この方針を堅持していく考えでございます。

 また、北方墓参を含む四島交流等事業については、日ロ関係の現状に照らせば、現時点では今後の具体的な展望について申し上げられる状況にないと残念ながら言わざるを得ないわけでございます。

 他方、御高齢となられた元島民の方々の思い、これに何とか応えたいという考えに変わりはございません。北方墓参を始めとした事業の再開、これは今後の日ロ関係の中でも最優先事項の一つでございます。一日も早く事業が再開できるような状況となることを強く期待をしておりまして、引き続き、特に北方墓参に重点を置いて対応してまいりたいと考えております。

高村分科員 大臣、ありがとうございます。やはり、ロシアは引っ越しのできない日本の隣国でもありますし、戦後来ずっと北方四島を不法に占拠されている、こういった現実がありますので、それも踏まえてしっかりと対応いただければと思います。

 続きまして、世界的な食料安全保障の観点から質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど来申し上げておりますが、もうすぐロシアのウクライナ侵略から一年となります。それより以前から、気候変動あるいは気候危機、紛争、新型コロナウイルスの影響、食料価格の上昇などにより飢餓人口が増加しているのが現実であります。そのような中で、このウクライナの戦争が勃発しました。

 世界的に穀物などの食料や、燃料、肥料価格が高騰し、食料が多くの人々にとって手の届かないものとなってきています。また、干ばつや洪水など、気候変動による影響が広がり、既に脆弱な立場にあった人々がますます苦しい状況に追いやられ、飢餓の危機に瀕しています。

 紛争、気候変動、新型コロナ、ロシアのウクライナ侵略に起因する食料、エネルギー価格の高騰の影響等によって飢餓人口が急増しており、世界は飢餓の危機に瀕していると考えます。この現状について、政府の受け止めを教えてください。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二二年十一月十四日付の国連世界食糧計画、WFPの発表によりますと、現在、世界では過去最高の三億四千九百万人が深刻な飢餓に直面しているということでございます。

 これを受けまして、政府としましては、まずは、特に深刻な影響を受けている中東アフリカ等の途上国において、国際社会が協調して緊急的な食糧支援を実施していくことが重要と考えております。このような観点から、我が国としましても、WFPとの協力関係を強化し、緊急的な食糧支援を実施しているところでございます。

 また、中長期的な観点からは、食料生産を強化するための支援を実施していくことも重要だと考えておりまして、我が国は、アジア、アフリカ等の様々な国で、二国間及び国連食糧農業機関、FAOを始めとした国際機関等を通じまして、現地の事情に即した農業生産性向上の支援、また農家の市場へのアクセス改善などの世界の食料安全保障の強化に資する取組も行っているところでございます。

 政府としては、引き続き、世界の食料安全保障の確保のため、支援が必要な国に寄り添った形で、短期、中長期を見据えた必要な支援を実施しまして、世界の食料問題の解決に向けて貢献してまいりたいと考えております。

高村分科員 ありがとうございます。本当に大切な問題だと思っております。

 現在の世界的な食料危機の中、食料安全保障が平和と安全保障に不可欠であるとの認識の下、去年のG7、ドイツのエルマウ・サミットにおいて、G7各国は、世界の食料及び栄養の安全保障を強化することを確認し、そのために四十五億ドルを追加で供給することを決定いたしました。

 それを受けて、米国、ドイツ、カナダ、英国は、二〇二二年実績でそれぞれ、七十二・四億ドル、日本円で九千七百二億円、十八億ドル、日本円で二千四百十一億円、約四・四億ドル、五百九十三億円、約四・二億ドル、約五百六十億円の資金を、飢餓撲滅をその使命とする国際機関である国連WFPへ拠出して、過去最大級の拠出を行いました。

 国連WFPによると、それでも今年は肥料不足の影響なども顕在化し始めており、先ほどおっしゃっていただいたように現在約三億四千九百万人が急性食料不安に陥っており、特に昨年は、ソマリア、エチオピア、南スーダン、アフガニスタン、イエメン、ハイチといった国々では、飢餓の中でも最も深刻な飢饉に近い状態にあります。命を救うための緊急の支援が急務となっており、今後、昨年以上に必要とされる可能性が高いと考えております。

 食料安全保障の確保が世界の平和と安全にとって不可欠であります。深刻な危機に直面する国々において、命を救うための緊急の支援が急務であり、特に、食料支援機関として豊富な実績を有する国連世界食糧計画、WFPとの関係を強化するべきと考えます。これは何も、単に私が議連の会長をやっているからじゃなくて、こういう機関が本当に大切だ、こういう思いの下、質問をさせていただいております。このことについての政府の見解を教えてください。

林国務大臣 今お話がありましたが、委員が国連世界食糧計画議連の会長としてWFPの活動への支援に努めておられることに、まずは敬意を表したいと思います。

 そして、今お話があったように、紛争や気候変動、さらには新型コロナ、そしてウクライナ危機、こういったものに起因する世界的な食料、エネルギー価格の高騰等の影響を受けまして深刻な食料不安に苦しむ人々が過去最大を更新する中で、緊急的な食料支援が必要とされている、こう認識をしております。

 日本は、国連における唯一の食料支援機関であり、人道危機に際しての豊富な活動実績を有するWFP、これを高く評価をしておりまして、直近では、本年度の補正予算から、計三十七か国に対し約百四十三億円の拠出を決定しているところでございます。

 日本の安全と繁栄、これは言うまでもなく世界の平和と安定に依存しておりまして、引き続き、我が国の外交政策上重要な人道支援の推進に当たりまして、WFPを始めとする国際機関の知見を活用して取り組んでいきたいと考えております。

高村分科員 大臣、ありがとうございます。

 ただ、日本の円安が今あって、幾ら去年と同じような額を出しても、受け取る側からしたら、まだまだ、もっと必要だという気持ちもありますので、その辺も是非、財務省さんの方にしっかりとねじ込んで、予算の確保をお願いしたいと思います。

 そして、本年のG7広島サミットは、世界規模の問題の解決に向けた連帯を行動に移すため、重要な機会であると考えております。食料安全保障を重要な議題の一つとして取り上げるべきと考えます。まずは、食料安全保障をG7での重要な議題と掲げ、世界的な支援を表明し、そのための道筋について合意、連帯を呼びかけることを期待しております。既にグローバルサウスが重要なエレメントとして掲げられており、世界各国に目を向けることが重要であると考えますが、この点についての大臣のお考え、できれば前向きな意気込みをお願いしたいと思います。お願いします。

林国務大臣 食料安全保障の状況は、ロシアによるウクライナ侵略の影響を始めとする複合的な要因によって急激に悪化しております。先ほどお答えしたとおりでございます。

 また、食料価格の高騰と食料の供給不安、これは、途上国のみならず、先進国の中でも特に脆弱な立場にある人々の生活を脅かしておりまして、緊急の対応が必要になっていると考えております。

 こうした認識の下で、日本は、全ての人々が廉価で安全な、栄養のある食料にアクセスできることを目指し、人に着目した強靱な食料安全保障の確立を追求していく考えであります。

 今お話のありましたG7広島サミットでは、こうした喫緊の食料問題に対処しつつ、世界の食料システムの脆弱性を克服すべく、食料安全保障に関する議論をリードしていきたいと考えております。

 また、食料安全保障を始めとする地球規模の課題へのG7による積極的な貢献と協力の呼びかけを通じて、今お話のありましたグローバルサウスへの関与も強化していきたいと考えております。

高村分科員 大臣、ありがとうございます。

 確かに、先進国、この日本においてもやはりかなり経済的に大変な思いをされている方もいますが、世界に目を向けると、もう本当に、明日生きるか生きられないか、そういった状況に瀕している方がたくさんいらっしゃいます。

 支援というのは何も、ただただ援助してあげているという上から目線じゃなくて、情けは人のためならずです。必ず将来その支援が日本に返ってくる、非常に大切なものだと考えますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 そして、先日のドイツ南部ミュンヘンで開催されましたミュンヘン安全保障会議のパネル討論の基調演説の中で、報道によりますと、大臣は、今日のウクライナは明日の東アジアかもしれないという強い懸念を表明し、ロシアのウクライナ侵攻が注目される中、軍事的な脅威を高める中国や北朝鮮を念頭に、緊迫化するインド太平洋の情勢にも目を向けるように訴えた。このような報道がありました。

 日本は、今、防衛三文書も含め、防衛力を抜本的に強化する方針を打ち出しております。でも、あくまでも、この防衛力の強化というのは、戦うこと、戦えることが目的ではなくて、攻められない、攻められにくくなる、外交面での交渉力を上げることが目的だと私は考えております。

 この日本の防衛力の増強は日本外交にとってどのようにプラスに働くのか、外務省の見解をお願いいたします。

石月政府参考人 我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化することの重要性がより一層高まっております。

 こうした中で、委員御指摘のとおり、まず優先されるべきは積極的な外交の展開、同時に外交には裏づけとなる防衛力が必要であるとの観点から、国家安全保障戦略においては防衛力の抜本的強化を具体化したところでございます。

 その上で、外交力、防衛力を含む総合的な国力を最大限活用していく必要があり、外務省としましては、日米同盟の強化、自由で開かれたインド太平洋実現に向けた取組の更なる推進を含む同志国等との連携、また中国や北朝鮮を含む周辺国、地域との外交などの戦略的なアプローチを着実に実施することによって、我が国を取り巻く安全保障環境の改善に取り組んでいきたいと考えております。

高村分科員 どうもありがとうございます。

 本当に、国民の生命財産を守るということが国にとって一番大切なことだと思っております。是非、この防衛力の強化を、単に防衛力の強化に終わらずに、外交の道具として、日本の立場を強めるために、外交面でも生かしていただければと思います。

 ぼちぼち時間も近いので、最後に一つだけ伺いたいと思います。アフリカに関してです。

 TICADは、日本が立ち上げたアフリカ開発に関する先駆的な存在のフォーラムであります。もちろん支援の物量では中国にはかないませんが、しっかりと日本独自の路線を進めていくことが大切だと思っております。

 このTICAD、アフリカ支援の重要性についての外務省の見解を最後に伺いたいと思います。

齋田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、一九九三年にTICADを立ち上げて以降、三十年にわたり、まさにアフリカ自らが主導する開発を支援していくという精神で取り組んできておりまして、昨年の第八回会合におきましても、岸田総理それから林大臣より、アフリカとともに成長するパートナーだという機軸を打ち出していただき、また、我が国らしい支援を表明したというところでございます。

 委員御指摘のとおり、このように先駆的かつ主導的な役割を果たしてまいりましたTICAD、これを、ロシアによるウクライナ侵攻等によりもたらされております新たな厳しい国際環境の下、独自性を引き続き発揮しながらしっかり継続し、日・アフリカ関係を一層深化させていくということが重要だというふうに考えております。

高村分科員 どうもありがとうございます。

 私も、当選来、九か国、アフリカを回らせていただきましたが、日本がともすると失っているかもしれない足下から湧き上がるような力をしっかりと秘めた国で、日本にとっても大切なパートナーだと思いますので、どうぞその視点から頑張っていただきたいと思います。

 以上にて終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

中山主査 これにて高村正大君の質疑は終了いたしました。

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中山主査 次に、財務省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。石井拓君。

石井(拓)分科員 おはようございます。自由民主党、石井拓です。

 私の方からは、財務省所管の関係、特に予算編成に関わる税制度、そして税関の体制強化についてもお尋ねしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、自動車税、中でも自動車重量税のエコカー減税についてお伺いしたいと思います。

 排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車に係る自動車重量税の免税などの特例措置、いわゆる自動車重量税のエコカー減税は、平成二十年当時、我が国の厳しい経済状況の中で、自動車の販売台数が減少し、裾野の広い関連産業に影響を及ぼすことが懸念されたことから、自動車の買換え、購入需要を促進し、自動車市場の後退に歯止めをかけるとともに、あわせて今後我が国が目指すべき低炭素社会の実現につながる措置を講ずる観点から、平成二十一年度税制改正において時限的な措置として創設をされております。そして、今でも続いておるわけです。

 その後、累次にわたって改正が行われ、令和三年度税制改正では、目標年度が到来した令和二年度燃費基準を達成していることを条件に、令和十二年度燃費基準の達成度に応じて減免する仕組みに切り替えるなどの見直しを行った上で適用期限を二年間延長した、その措置が講じられました。

 この減免措置は本年四月末に適用期限を迎えます。改正が必要となってきますけれども、まず、今回の改正の内容とその趣旨について財務省にお伺いします。お願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の令和五年度税制改正におきますエコカー減税の改正と延長でございますが、まず、三年間適用期限を延長することといたしております。

 その上で、二〇三五年に乗用車の新車販売に占める電動車の割合を一〇〇%とするという政府の目標と整合的な形に見直す観点から、制度の対象となる自動車の範囲につきまして、現行では、二〇三〇年度、令和十二年度の燃費基準の達成の度合いにつきまして、現在少なくとも六〇%を満たすというのが適用の下限となってございますが、これを今後三年間で段階的に八〇%まで引き上げるという見直しを行うことにいたしております。

 その上で、現下の新型コロナ感染症等を背景とした半導体不足等の影響によりまして納車が大幅に遅れているといったような状況を踏まえて、異例の措置といたしまして、本年の年末までは現行の基準を据え置くということにいたしている状況でございます。

石井(拓)分科員 ありがとうございます。まずは延長ですね、加えて段階的に変えていく、つまりカーボンニュートラルに向けてという一つの方針というのが示されたかなと私は思っているんですけれども。

 しかし、自動車に関する税制については、現在は、取得、自動車税等、保有に関しては自動車重量税や自動車税などがあって、あと、自動車を運行する、走るについても揮発油税などがあって、三段階で徴収されているということがあります。

 近年は、走行時にガソリンを使わない電気自動車や燃料電池自動車の普及が進みつつあるほかにも、これは取得の問題ですけれども、複数人で特定の自動車を共同利用するカーシェアリングや、定額料金を支払うことで自動車を一定期間利用できるサブスクリプションなどのサービスも提供されております。こうした状況の変化が進みつつある中で、自動車の取得やガソリンの消費を想定した現在の自動車税体系では対応できなくなってくるんじゃないか、このようなことが予想されます。

 こうした状況を踏まえて、自動車をめぐる環境変化を踏まえた税体系の見直しの必要性についてどのように考えているのか、また、政府が二〇五〇年までにカーボンニュートラルの実現を目指していく中で今後自動車関係税制の中長期的な見直しをどのように進めていくのか、財務省の方に見解をお尋ねしたいと思います。お願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、自動車産業は、CASEと呼ばれますように、百年に一度とも言われる大変革に直面しているというふうに言われております。税制につきましてもこうした変革に対応した見直しを行っていく必要があるといったような御議論を、与党の税制調査会でも活発にしていただいている状況でございます。

 その上で、自動車関係諸税の在り方につきましては、昨年末の与党の税制改正大綱におきまして、今後の日本の自動車戦略やインフラ整備の長期的な展望、そしてカーボンニュートラル目標の実現への貢献という観点、そしてインフラの維持管理、機能強化の必要性といった視点も踏まえながら、国、地方を通じた財源の安定的な確保を前提に、受益と負担の関係を含め、中長期的な視点に立って検討を行うということにされたところでございます。

 その際、御指摘いただきました電気自動車等の普及の観点や市場の活性化等の観点も踏まえながら、原因者負担、受益者負担の原則を踏まえ、その負担していただいた分でモビリティーの各分野を支えて、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげる、こういった視点も踏まえながら、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて、次のエコカー減税の期限到来時まで、具体的には三年後までに検討を進めるというふうにされたところでございます。

 政府といたしましても、与党での御議論を踏まえながら今後検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

石井(拓)分科員 お答えをありがとうございます。

 私も、地方議員をやっておりまして、この自動車税、ある意味国税もあれば地方税もありまして、自動車に関する税金を安くしてほしいという要望などもいただきながらも、あるいは地方行政としては地方の財政も担っているということで、なかなか議員としては判断しにくい面もあって、どうしたものかなとずっと思っているんですけれども。

 ただ、一つは、先ほど言われたとおり、カーボンニュートラルに向かって変えていくこと、そしてそれを促進するという意味合いも多くありまして、これについては、自動車の性能をよくすることに拍車をかける、燃料になるものもカーボンニュートラルに変更していくということで、非常に国策としては重要な側面があると思いますので、現状に合わせて、たくさん取れという意味ではなくて、しっかりとした税制を進めていただきたい、そう思っておりますので、お願いいたします。

 続きまして、グローバルミニマム課税の導入ということで、国際課税についてお尋ねしたいと思います。

 令和五年度税制改正においてですけれども、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策として国際的に合意されたグローバルミニマム課税について、我が国への導入を進めるとされております。

 いよいよ本格的にグローバル課税ということが整備されて進んでいくという気がしますけれども、この国際的な合意がまとめられた経緯の具体的な内容について財務省にお伺いいたしたいと思います。国際課税ですので、諸外国との合意なども、各国と歩調を合わせての導入ということでもあると思いますが、その点も踏まえて、いかがでしょうか、お願いいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二一年の十月、一昨年の十月でございますが、OECD、G20各国を含むBEPS包摂的枠組みという、世界の百四十か国前後の国々が参加する枠組みにおきまして、二本の柱から成る国際課税ルールの見直しが合意されております。

 このうち、第一の柱は、デジタル企業が国境を越えて活動して、物理的な拠点がなくても市場国において課税できるようにするというものでございますが、第二の柱の方が、今回御指摘いただいておりますグローバルミニマム課税の問題でございます。

 この課税でございますが、年間の総収入金額が約一千百億円以上の多国籍企業を対象といたしまして、各国ごとに最低実効税率一五%以上の課税をするという新たな枠組みをつくるものでございます。

 この枠組みが合意された背景といたしましては、世界各国におきまして低い法人税率や優遇税制によりまして外国企業を誘致する動きが盛んになりまして、法人税の継続的な引下げが続くことによって各国の税収基盤が弱体化するということ、また、税制面において企業間の公平な競争条件が阻害されるといったような諸課題があることへの対応が必要となってきたことが背景としてはございます。

 G7各国におけるこの導入に向けた主な動きといたしましては、まず、EUにおきまして、EU加盟国に第二の柱の法制化を義務づけるEC指令が合意されております。また、イギリスにおきましては、本年春の財政法における法制化が予定されているところでございます。そのほか、韓国におきまして第二の柱を実施するための法案が成立するなど、多くの諸外国において導入に向けた進展が見られているところでございます。

石井(拓)分科員 ありがとうございます。もちろん、諸外国に合わせてということで、日本もいよいよということになってきますけれども。

 最低課税の一五%というのがございますけれども、それは、私の趣旨としては、いろいろな、ここまでグローバル経済が発達していて、まず第一歩だと思いますし、まず、課税をしていって、それぞれの国の政策がいかに経済に反映しているかという、財源の確保という意味でもあって、そういった意味では、幅広く、最低一五%ということで、多いか少ないかは、それを合意してできたということになりますので、進めていただきたいと思っております。

 与党税制改正大綱で、今回のグローバルミニマム課税の導入は、法人税の引下げの競争に歯止めをかけるとともに、我が国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものとされております。

 グローバルミニマム課税では、多国籍企業のグループの実効税率が一五%を下回る場合には上乗せ課税の対象とされるため、多国籍企業グループが軽課税国に進出するインセンティブが失われるということにもなります。これにより、各国の法人税の引下げ競争に歯止めをかけることも期待されます。

 また、将来的な税負担を考えて事業展開するということが、一般的に欧米企業は積極的ですけれども日本企業は消極的と言われております、日本企業についても変化が起きてくるという点でもありますし、そのため、グローバルミニマム課税の導入によって税負担が増加するケースは日本企業と比べて欧米企業の方が多いということも言えます。税引き後利益の獲得能力の面で、欧米企業の競争力が低下して、相対的に日本企業の競争力が高まることが期待されているという指摘もございます。

 こういった日本企業に有利に働くのではないかということを、財務省としてはどのような見解を持たれておられますでしょうか、どのように評価しているのでしょうか、いかがでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国を含めました各国がグローバルミニマム課税の仕組みを導入することになりますと、多国籍企業グループが世界中のいずれの国や地域で活動する場合であっても、最低でも一五%以上の実効税率負担が確保されるということになってまいります。

 こうした措置を行うことによりまして、極端な低い税率や優遇税制による企業誘致の動きが抑制され、法人税の引下げ競争に歯止めがかかるということとともに、多国籍企業間、多国籍企業グループ間の競争ということを考えました際に、アグレッシブなタックスプランニングをやるような多国籍企業グループと、そうではない、ある意味ビジネスに特化した、本業に特化したような企業の間の競争という意味でいくと、企業間の公平な競争条件の確保に資するということも期待されるわけでございます。

 そういった意味で、我が国の企業の場合、さほどタックスプランニングに熱心でないというような御指摘もあるような状況でございますので、グローバルミニマム課税の導入によりまして、我が国や我が国の企業にとってもメリットがあるのではないかというふうに考えているところでございます。

石井(拓)分科員 ありがとうございます。日本の中でも、後ほどまた質問しますけれども、特に多国籍企業、現地で生産した方が効率がいいとかいっていろいろな企業が進出されておりまして、その中で企業経営の方がますます有利になっていくということは一つ重要なことだと思っておりますので、その推進を是非お願いしたいと思っております。

 そして、先ほど申し上げたとおり、グローバルミニマム課税の対象となるのが、年間総収入金額が七億五千万ユーロ相当額以上の多国籍企業グループとなるということで、このように国際最低課税額が定められている、これは国際的に約束事ということになっていると思います。

 新聞報道によれば、OECDの統計で、こういった国際最低課税の七億五千万ユーロの基準を満たす企業は世界で一万社を超えるのではないかという報道もございます。さらに、日本では八百六十社を超える企業が該当してくるということで、日本企業の八百六十社であれば、私の地元、愛知県でございますけれども、その中でも幾つかの企業は該当してくるんじゃないか、対象になってくるのではないかなと思うんです。

 対象となる多国籍企業グループは、各国の実効税率の計算を含めて、税額計算のため、事務負担が発生してくるんじゃないかという心配が一つあります。関連するデータの収集や既存の財務諸表の数値の修正などの煩雑な作業を、進出先国全てについて調査して、いわばそれぞれの申告書をもう一回作り直して、それを合算させて、どうだという形にしなきゃいけないということにもなってきますので、大きな事務負担となる懸念が指摘されております。実際に、該当する地元企業の担当者に聞いてみると、申告事務など、結構手間がかかって大変だという話も総務の方たちからも聞いております。

 そういうことであれば、グローバルミニマム課税の導入について、逆に我が国の企業の心配もしてあげなきゃいけない、我が国の企業の国際競争力の維持向上につながることが期待できる一方、多大な事務負担がかえって企業活動に影響を及ぼすことがないようにする必要があると考えております。

 この点、制度の周知や企業の事務負担の軽減のための方策についてどのように考えられているのか、財務省の見解をお伺いいたしたいと思います。お願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 グローバルミニマム課税に関しましては、OECDにおきまして、制度の対象となる企業の事務負担に配慮しながら議論を進めなければならないということで議論が行われてまいりました。各国が国内法を制定する場合の基礎となるモデルルールにつきましても、こういった事務負担に配慮する観点から幾つかの枠組みが設けられてございます。

 具体的には、簡易な計算をいたしまして、税額が発生しないことが見込まれるような一定の場合には適用対象から除外することができる、いわゆるセーフハーバーの仕組みを導入することが国際的に合意されております。我が国でも、こうした国際的な合意に沿いましてセーフハーバーの措置を導入することとしております。

 また、制度の周知の観点からは、関係省庁や関係の経済団体とも御協力しながら、対象となり得る企業に説明会を実施するなど、制度の理解を深めていただき、事務にも容易に取り組んでいただけるように、引き続きこの制度の周知に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

石井(拓)分科員 ありがとうございます。

 大変だというところの、いろいろな形でフォローしていただきたいと思っておりますし、説明会なども行われますし、実際、相談する窓口なども、一般的な中小企業さんは税理士さんとかそういう話になってきますけれども、割と大手の企業ですので、いろいろな方面があるにしろ、それに明るくなければならないし、そういった意味で、国内の、国全体として広めていく努力をしなきゃいけないなと私は思っておりますので、何とぞストレスのないような国際課税ができるようにしていただきたい、そう思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私の方からは最後の質問とさせていただきますけれども、税関業務の体制強化についてお尋ねしたいと思います。

 税関を取り巻く環境は、これまで、人、物、金の流れの趨勢的な拡大に加えて、デジタル化の急速な進展やサプライチェーンの見直しの動きなど、内外の経済、社会の構造変化を受けて大きく大きく変化しております。

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって入国者数が大幅に落ち込んだものの、昨年十月の水際対策の緩和に伴って入国者数は回復傾向にあり、今後、更なる増加も予測されております。また、本年五月にはG7広島サミット、二〇二五年には大阪・関西万博、二〇二六年には第二十回アジア競技大会愛知・名古屋、加えて第五回アジアパラ競技大会愛知・名古屋が予定されて、国際的なイベントがある、多くの方が入国してくる、人の移動が激しくなってくる、そんな時期も迎えることになると思います。

 引き続きテロ対策を推進していく必要がありますし、また、入国についての手続関係も、迅速でストレスのない通関を確保しつつ、さらに、不正薬物やテロ関連物質などの密輸の阻止の観点から厳格な水際取締りを行うことが求められております。

 この点について、令和四年の全国の税関における不正薬物の密輸などの取締り状況について、報道発表では、不正薬物の押収量が七年連続で一トンを超えているとされております。さらに、ロシアなどに対する経済制裁の実効性の確保や、経済安全保障上の脅威への対処など、つまり、軍事転用のおそれのある製品や、こういった技術が埋め込まれた製品、そういった流出につながる不正輸出の防止ということで、輸出面を中心とした水際取締りについても重点的に今後取り組むことが求められております。税関職員の負担が増している状況と考えております。

 この点については、昨年十二月の財務省の関税・外国為替等審議会答申において、税関を取り巻く環境変化に的確に対応し、税関の使命である安全、安心な社会の実現、適正かつ公平な関税などの賦課徴収、貿易円滑化の推進を着実に果たしていくため、輸出貨物に係る審査、検査、事後調査を含めた税関の体制を整備拡充すること、先端技術を活用した取締り・検査機器を適正に配備すること、税関手続の一層のデジタル化を図ることなど、業務の高度化、効率化を進めていくことが重要であるとされました。

 こうした環境変化に伴った業務の高度化、業務量の増加によって増大する税関職員の負担の軽減や人員体制の強化について政府として取り組む必要があると考えますが、財務省の見解を伺います。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 私も、東京税関それから広島税関支署を視察いたしまして、現場で第一線で働く職員の皆さんを始め、税関の業務の変化等について把握をしてきたところでございます。

 税関業務を取り巻く環境につきましては、石井先生御指摘のとおりでありまして、越境電子商取引の拡大に伴う輸入貨物の急増、それから不正薬物押収量の七年連続一トン超え、国際的なテロの脅威の継続、水際措置の緩和に伴う訪日外国人旅行者数の増加、経済安全保障上の脅威の高まりなど、多くの課題に直面をしているところであります。

 こうした課題に対応するため、税関におきましては、より一層効率的、効果的に業務運営を進めていくこと、そして人員の適正配置を行いつつ更なる人員確保等必要な体制整備を図ること、これが重要であると考えております。

 まず、業務運営の観点といたしましては、税関職員の負担軽減や、税関業務のより一層の高度化、効率化を図るため、AI等先端技術の活用など、税関業務のDXの推進に取り組んでおります。

 そして、人員確保の観点といたしましては、税関の定員につきまして、令和五年度予算におきまして百四人の定員増を計上しているところであります。

 今後も、業務の見直し、効率化等を最大限に進めるとともに、必要な税関の体制整備に努めてまいりたいと考えております。

石井(拓)分科員 大臣、お答えいただきましてありがとうございます。

 AIなど、DX、すばらしい、見つけるための機械とかを今後導入していかなきゃならないと思いますし、さらに操作もそうですし、あるいは見極める、熟練とはいいませんけれども、熟練的な人材を育てていかなきゃならないかもしれませんし、まだまだ税関業務については拡大していく、あるいは予算が必要になってくるんじゃないかと思います。

 スペースについてもいろいろと問題もあると思っておりまして、空港は限られたエリアになっておりますし、これを幅広く取らなければ防止できない、あるいは数が増えていくことについても対応できないという、これは空港だけではなくて港湾、港もそうでしょうけれども、そういった意味では改修なども今後多く出てくる可能性もありますし、いろいろな形でもちろん効率化を図っていかなきゃなりませんけれども、そういった意味では、まず安全をしっかりと確保していただくことをお願いいたしたいと思っております。

 以上で私からの質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

中山主査 これにて石井拓君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中山主査 次に、外務省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮本徹君。

宮本(徹)分科員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、横田基地の訓練被害についてお伺いいたします。

 二〇一八年に米軍のオスプレイが配備されて、それ以降、長時間のホバリング訓練で、そばに住む住民の生活が破壊をされております。

 住民の最近の記録、大臣にも届いていると思いますけれども、少し読み上げさせていただきます。

 一月四日。休暇が終わり、飛行始まる。いつオスプレイが来るかと思うと落ち着かない。今日はヘリの低空飛行又はホバリングがひどかった。

 一月五日。十七時二十分、オスプレイ、自宅前低空飛行中。家の中は物すごい振動。オスプレイが飛行すると生活音が消され、下から突き上げてくる振動とともに轟音。頭痛と吐き気がしてくる。十八時、自宅前にてホバリング始まる。無灯火にて時間十五分ぐらい。十八時三十分、いまだ低空飛行、ホバリング続く。精神的につらい。二十一時三十九分、自宅前にてホバリングが始まる。物すごい轟音、振動。騒音計、九十九、これは多分デシベルだと思いますね。この時間にホバリング、低空飛行。休むことすらできない。

 こういうのがずっと、住民は被害記録をつけ続けております。

 ちょっとこれ、大臣にも事前にお渡ししておりますけれども、この記録を読んでの大臣の心の声を聞かせてください。

林国務大臣 横田飛行場における米軍オスプレイの運用につきまして、今委員から御紹介のあった周辺住民の記録にもあるとおり、これまで周辺地域住民の方々から騒音などについて要請、苦情が寄せられていると承知しておりまして、我々としても大変重要な問題だと認識しております。

 米軍の運用に当たっては、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきこと、言うまでもなく、私自身も、本年一月の日米2プラス2において、在日米軍による地元の影響に最大限配慮した安全な運用について求めたところでございます。

 今後とも米側に対し、部隊運用に当たっては、周辺地域住民の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう米側に対して申し入れていく考えでございます。

宮本(徹)分科員 今日、防衛省に来ていただいておりますけれども、私、この何年間ずっと防衛省とこの問題をやり取りをして、防衛省からも米軍側には何度も働きかけていただいて、ようやく去年、一年ぐらい前ですかね、文書でも米側にも正式に要請するということもやってきたわけですが、被害が続いておるわけですね。取組状況をちょっと説明してもらえますか。

井野副大臣 横田基地におけるオスプレイのホバリング訓練については、数次にわたり、我々としても、配慮要請を米軍に対して行ってまいりました。

 昨年二月に、北関東防衛局から米側に対して、CV22オスプレイホバリング訓練の実施に当たっては、近隣住民に対する影響を最小限に抑えるよう要請をいたしました。

 そして、米側からは、CV22オスプレイの訓練が北側ヘリパッドで行われている理由として、南側ヘリパッド付近で追加工事が行われているということ、また、工事完了後については、南側ヘリパッドが使用可能なときは訓練場所を変更する予定ですが、任務遂行のため、また乗員の即応性を維持する必要があることから、北側ヘリパッドの使用は今後も継続して行われる可能性は排除されないという回答がございました。

 防衛省としては、訓練が飛行場周辺の方々にできる限り影響を及ぼさないようにすることは重要と考えておりまして、引き続き米軍に対して、訓練の実施に当たっては地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう求めていきたいというふうに考えております。

宮本(徹)分科員 当初、追加ヘリパッド工事は秋に終わると言ったのに、終わらずにずっと北側が使われ続けているわけですね。

 防衛省の出したレターの中でも、基地中央に位置するヘリパッドで行い、北側ヘリパッドでは行わないといった抜本的な措置を講じるよう、改めて特別な配慮を要請します、こういう文書まで出しているにもかかわらず、いろいろな理由を並べ立てて、基地中央のヘリパッドがあるのにやらない状態が続いているわけですよ。

 私は、これはもっと高いレベルでやらないといけないと思うんですよ。北関東防衛局の皆さんは一生懸命、住民の声に応えていろいろやってもらっていますけれども、そういう段階ではないと思うんですね。何回もこのやり取りをしてもらっているんですよ。

 これは大臣、是非、2プラス2でそういうやり取りをやられているという話、先ほどありましたけれども、もっと個別具体的にこの問題を解決してほしいというのを高いレベルで対応してほしいんですよね。本当に住民の生活、できない状況です。どうですかね。

林国務大臣 横田飛行場における米軍オスプレイによる訓練について、先ほども御紹介がありましたが、これまでも周辺地域住民の皆様から要請や苦情を寄せられていると承知しておりまして、外務省としても大変重要な問題と認識しております。

 在日米軍の運用に際しては、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきこと、これは言うまでもないことであります。これまでも、政府として、米側とは様々なレベルでやり取りを行ってきております。先ほども申し上げましたが、今年の一月の日米2プラス2においても、在日米軍による地元の影響に最大限配慮した安全な運用を求めたところでございます。

 周辺地域の住民の皆様に与える影響、これを最小限にとどめるように、引き続き外務省としても申入れを行っていく考えでございます。

宮本(徹)分科員 防衛省も、これは政務が乗り出して解決してほしいんですよね。

 このお宅は、本当だったら買い取ってもらって引っ越したいぐらいの状況なんですけれども、その買取りの制度もそのお宅のある場所はないためにそこに住み続けざるを得ないという状況になっているわけですよ。

 そうである以上、日本国民の生活を守るというのは日本政府の責任だと思いますよ。それができないんだったら、オスプレイの配備はもう直ちにやめる。今六機ですけれども、これが十機になったらもっと大変な被害になるわけですよね。

 私たちはオスプレイ配備撤回をずっと求めていますけれども、少なくとも、それを容認している政府の責任として、これはもう政治家の責任で、是非乗り出して解決してほしいと思うんですけれども、副大臣、いかがですか。

井野副大臣 基地周辺に当たっては様々な影響があるものというふうには認識しております。

 防衛省としては、引き続き、米側に対して、地元の御懸念、御要望について伝えるとともに、米軍機の運用に当たっては、安全面など様々な部分に最大の配慮を求め、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめていくように対応してまいるということであります。

宮本(徹)分科員 多分、もう本当に現場レベルの対応ではなかなか事が進まないと思う。何年もやっている話ですから、よろしくお願いいたします。

 続きまして、PFAS、有機フッ素化合物の問題についてお伺いしたいと思います。

 東京の多摩地域の住民の血液検査で、血液中のPFOSの濃度が全国平均の三・七倍だったということが明らかになりました。八五%の方がこのPFAS四種合計でアメリカの指標値を超えたということです。現状、今、多摩地域の浄水施設では高濃度で検出されているので、三十四か所の水源井戸が取水停止ということになっております。

 政府のPFAS専門家会議のメンバーでもある原田浩二准教授は、米国や沖縄などの泡消火剤を使っていた基地周辺でPFAS汚染が起きている、横田基地が汚染源であることに疑いはない、こう述べております。

 一方、多摩には、PFASを使うそれ以外の工場もあります。しかし、汚染源を特定しようにも、横田基地に東京都が立ち入って調査もできない、必要な情報も米軍からは出てこない状況がございます。

 そこで、東京都と周辺自治体からの要請が防衛省や外務省宛てにも出ております。環境補足協定については、環境に影響を及ぼす可能性がある場合には、通報の有無にかかわらず立入調査を行えるよう改善を図ること、さらに、通報の基準については、環境に影響を及ぼす可能性がある事件、事故等が発生した場合及び発生した疑いがある場合にまで拡大することとあります。最低限の地元自治体からの要請だと思います。

 当然、本当に住民の命、健康に関わる問題ですから、こうした問題では自治体が立入調査できるように改善すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 このPFOS等をめぐる問題につきましては、地元住民の皆様が大きな不安を抱えていると承知しておりまして、関係省庁とも連携しながら、政府全体として真剣に取り組んでおります。

 在日米軍は、これまでも、PFOS等の漏出が起こった際には日米間の合意に従って日本側に通報を行ってきておりまして、地元からの要望がある場合には、環境補足協定に基づきまして、地方自治体とともに米軍施設・区域内への立入り等を実施してきております。

 この通報の基準でございますが、公共の安全又は環境に影響を及ぼす可能性がある事案が発生した場合に、米側から日本側へ通報することとなっております。また、米側から通報がない場合であっても、日本側として、米軍施設・区域に源を発する環境汚染が発生し、地域社会の福祉に影響を与えていると信ずる合理的理由のある場合には、別途、日米合同委員会合意、これは一九七三年の環境に関する協力についての日米合同委員会合意でございますが、この合意に従いまして米側に調査要請や立入り許可申請等を行うことが可能でございます。

 今年一月に行われました日米2プラス2においても、私から環境に係る協力強化を要請し、日米間で環境に係る協力を強化するということを確認したところでございます。

 外務省としても、米軍施設・区域内外の環境対策が実効的なものとなるように、環境省を始めとする関係省庁と連携して引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

宮本(徹)分科員 残念ながら、現状は自由に立ち入ることができないという状況なわけですよね。

 私は、本当に、この日米地位協定の下で米軍の特権が守られ過ぎていて、国内法が適用されない事態になっていることがこの問題でも重大な問題になっていると思いますので、私は、地位協定も環境補足協定も抜本的に見直して、本当にこういう問題では国内法が適用できる状況にしなきゃいけないと思います。

 とりわけ、このPFASの問題でいえば、汚染源を特定して浄化していく、こういうことが必要じゃないかということも言われているわけですよね。そのためにはボーリング調査も必要だという意見も出ているわけです。ですから、この問題は本当に、地元自治体がちゃんとどこでも速やかに立入りできるように、しっかり取り組んでいただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 続きまして、次の問題に移ります。

 二月十五日の予算委員会で、岸田総理から、台湾有事で、在日米軍基地からの出撃について、事前協議は当然行うことである、こういう答弁があったわけでございます。これは前原さんの質問でした。

 その際、ノーという選択肢があるのかと前原さんが問うたのに対して、岸田総理は、日米安保条約に基づいて責任を果たしていく、こういう答えで、ノーという選択肢があるのかないのか明確に答えていない答弁だったんですね。

 明確にお答えいただきたいと思うんですけれども、台湾有事で、在日米軍基地からの出撃に際して事前協議があった際に、日本の側はノーという選択肢は当然ありますよね。

林国務大臣 台湾有事という仮定の質問にお答えするということは難しいわけですが、事前協議に際しては、我が国の国益確保の見地から、具体事案に即して我が国が自主的に判断をして諾否の決定をするということになっております。

宮本(徹)分科員 諾否の決定をするということですから、ノーという選択肢はあるということで間違いないですよね。

林国務大臣 事前協議に際しては、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断して諾否の決定をするということに尽きるため、その諾否について予断をすることは差し控えたいと思います。

宮本(徹)分科員 ただ、諾否ということは、否があるというのは今の答弁のとおりだと思うんですけれども。

 問題は、この台湾有事なんですよね。予算委員会でも議論になっておりますけれども、一月にCSISが発表した台湾有事のシミュレーションというのがございました。私もざっと拝見させていただきましたけれども、これは、米中、そして日本、どこも大変な被害が出るというものだったわけです。

 このシミュレーションを見ると、中国は日本への攻撃というのは初めはしないわけですよね。ところが、在日米軍基地から中国への攻撃が行われるという中で、中国は在日米軍基地への攻撃を始めるというものだったんですよね、大体。

 そうすると、これは、ノーという選択肢がこの台湾有事に際してもあるという立場でなければ、アメリカの戦争に日本が自動的に巻き込まれ、甚大な被害が出るということになると思うんですね。

 ですから、この台湾有事についても、当然、ノーという選択肢がなくてはならないと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 事前協議に際しましては、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断して諾否の決定をするということは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 台湾有事という仮定の御質問に関して、諾否について予断することは差し控えたいと思います。

宮本(徹)分科員 諾否が一般論としてあるんだったら、台湾有事についても諾否がなきゃこれはまずいわけですよ。否という選択肢がないと、本当にその選択肢がないということになったら自動的に戦争に巻き込まれるということですから、そんなことは絶対あり得ないということをしっかりと言ってもらわなきゃいけないというふうに思います。

 その上で、もう一点、これに関わってお伺いしたいんですけれども、今年は日中平和友好条約四十五周年ということになりますが、この条約の一条の中では、両国は、相互の関係において、全ての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認するということがあるわけですね。

 そうすると、日本への攻撃がない下で、米軍が中国への攻撃を行う際に在日米軍の出撃を日本が認めるということ、これは日中平和友好条約に反するというふうにお考えですか。

林国務大臣 今委員が御指摘になったような仮定の御質問についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、日中間では、一九七二年の日中共同声明、また一九九八年の日中共同宣言、さらには二〇〇八年の日中共同声明といった基本文書と並んで、今お話のありました、一九七八年、この日中平和友好条約に記されました精神と方針の下で日中関係を発展させてきておりまして、我が国としてこうした立場に何ら変更はないところでございます。

宮本(徹)分科員 私はそんなに難しい仮定の質問を個別具体的に聞いているわけじゃなくて、一般論だと思うんですよね。日本への攻撃がない下で、在日米軍に対して日本は中国への出撃を認めるということは、日中平和友好条約に反するのではないのか。基本的な話だと思うんですけれども、これについて、これは反するというふうに答えることはできないということなんですか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、諾否について、仮定に立ってお答えするということは差し控えさせていただきたいと思います。

宮本(徹)分科員 いや、この日中平和友好条約は、相互の関係において全ての紛争を平和的手段によって解決するんだ、日中の間では相争わないんだ、武力も、行使も武力の威嚇もやらないんだというのが双方の合意なわけですよね。

 そうすると、在日米軍基地から、別に日中で争っていないのにですよ、日中で争うというのはもうこの条約が崩れている状況だと思うんですけれども、日中で争い、戦争状態がない下で、在日米軍は出撃していいですよという合意を日本が与えるというのは、私はどう考えてもこの日中平和友好条約に反すると思うんですよね。それを反すると言えないというのは、中国に対するメッセージという点でも大変まずいんじゃないかと思いますけれども、そうお考えになりませんか。

林国務大臣 台湾有事という仮定の質問にお答えをするということは難しいわけでございますが、事前協議に際しては、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断をして諾否の決定をする、先ほど申し上げたとおりでございます。

 また、日中間では、先ほど申し上げましたように、七二年の共同声明、そして九八年の日中共同宣言、二〇〇八年の日中共同声明、そして日中平和友好条約に記された精神と方針の下で日中関係を発展させてきておりまして、こうした立場に何ら変更はないわけでございます。

宮本(徹)分科員 ですから、この日中平和友好条約の立場に立てば、当然、日中間で争いがなければ、戦争が起きていなければ、在日米軍が日本から中国に向かって出撃するというのは、これはうんと言うことはあり得ないということを申し上げておきたいと思います。

 その上で、もう一点、この問題に関わってお聞きしたいんですけれども、よく自民党の政治家の皆さんは、台湾有事は日本有事だからとか、あるいは、台湾有事が起きたらこれは存立危機事態なんだと、麻生さんなんかもそういうことをおっしゃったりするわけですけれども、この存立危機事態というのは、私も安保法制の議論のときに随分議論させていただきましたけれども、我が国への武力攻撃がないわけですよね。他国に対する武力攻撃が発生して、そのことにより我が国の存立が脅かされて、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態ということになっているわけですね。一体全体、他国への武力攻撃によって自分の国の存立が脅かされるというようなことが起き得るのかというのを私は安保法制のときに議論しました。

 当時の外務大臣であった岸田さんは、二回、この問題、議論したんですけれども、二回目のときにこういうお答えがあったんですね。他国への武力攻撃によって自分の国の存立が脅かされたといって集団的自衛権を行使した例というのは世界にないということだったんですよね。集団的自衛権を行使する際に、そういう、存立危機事態みたいなことだといって集団的自衛権を行使した例というのはないわけですよね。やはり、普通に考えて、他国に対する攻撃が自分の国の存立を脅かすというのはなかなか考えにくいと思うんですね。

 そうすると、なぜこの存立危機事態というのを想定しているのかなということを考えると、それは、在日米軍が日本から出撃していく、これを当然視しているから、当然、在日米軍が日本から出撃したら、在日米軍基地への反撃というのは想定されることになるので、だから存立危機事態というのを想定しているのかなというふうに思うわけです。

 逆に言えば、在日米軍が出撃しなければ、存立危機事態というのはそもそも起き得ないんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

林国務大臣 委員の御質問は、事前協議とそれから事態認定、またがってということでございましたが、事前協議と事態認定、これはいずれが先行することもあり得るわけでございますが、協議に対する諾否の決定、それから事態認定、これは個別具体的な状況に応じてそれぞれ判断されるべき事柄でございまして、前後の関係も含めて、一概に申し上げるということは困難であると考えております。

宮本(徹)分科員 存立危機事態が先に認定されることがあるというのが今の大臣の答弁なわけですけれども、一般的に、日本がどこの国とも交戦状況にありません、米軍が攻撃されました、でも、その米軍が日本と全く縁がないところで活動している米軍だったら、それが存立危機事態になることというのはあり得ないわけですよね。

 しかし、在日米軍が出撃した場合は、これは在日米軍基地が逆に反撃される可能性があるから存立危機事態になるというのが普通の理解だと思うんですけれども、存立危機事態が先に認定されるというのは、一体どういう事態を想定されているんでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、事前協議と事態認定、これはいずれかが先行することはあり得るわけでございますが、それぞれ、個別具体的な状況に応じて判断されるべき事柄でございます。

 したがって、それぞれにおいて、どういった事態にどういう判断をするかということは、あらかじめ申し上げることは差し控えたいというふうに思います。

宮本(徹)分科員 差し控えたいということで、存立危機事態の認定が先行する例というのはお示しにならないわけですけれども、多分示せないと思いますよ、私は。在日米軍が出撃しなければ、そもそも日本と関係がない話なんですから。そこは、私は、しっかりと国民に明らかにして説明すべき話だというふうに思います。

 そして、仮に、本当に台湾有事に米軍が武力介入した際、在日米軍基地への反撃の可能性があるということで存立危機事態として認定して、今回の安保三文書にあるような敵基地攻撃能力を行使する、こういうことになったら、これはもう本当に全面戦争に日本が進んでいくことになるわけですよね。

 ですから、ここは本当に、事前協議の際にノーという選択肢があるということ、そして、ノーという選択肢を取れば存立危機事態にはなり得ないんだ、こういうことをしっかり、その立場に立たなければならないというふうに思います。

 その上で、次の質問、お伺いしたいと思います。

 安保三文書では、中国について、アメリカと歩調を合わせて、中国は競争相手だ、事実上の仮想敵とみなしている扱いをしているわけであります。

 私は、昨年来、総理とも、敵基地攻撃能力を保有して、集団的自衛権として行使できる、こういう道を歩んだら、安全保障のジレンマに陥るだけではないか、より相手の対抗を招いて日本への脅威は増すだけじゃないかと指摘をしてまいりました。それに対して、当時、総理は、透明性を持って説明する、こう繰り返されたわけです。

 日中外相首脳会談が行われましたけれども、この安保三文書について外務大臣はどう説明されて、中国側から理解が得られたのか、お聞かせください。

林国務大臣 二月二日の日中外相電話会談におきまして、私から秦剛外交部長に対しまして、日中両首脳間の重要な共通認識であります建設的かつ安定的な関係の構築という大きな方向性の実現のために連携していきたい旨を述べまして、同部長からも同様の考えが示されたところでございます。また、日中関係には多くの課題や懸念があるからこそ対話が必要であるという旨を述べまして、秦剛部長との間で、各分野の対話を着実に進めていくことで一致をいたしました。

 引き続き、中国とは、首脳、外相レベルを含めたあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行いまして、主張すべきは主張し、責任ある行動、これを強く求めながら、諸懸案を含め、首脳間を始めとする対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、建設的で安定的な日中関係を日中双方の努力で構築をしていきます。

 日中双方の安全保障政策についてのやり取りはございましたけれども、詳細については、外交上のやり取りであり、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

宮本(徹)分科員 肝腎の、私が質問したところはお答えを差し控えるという答弁なわけですけれども。

 中国側の発表文書を見ますと、日本に対して、軍事的な緊張を高めるような行動については慎重であるべきだという発言があったというふうに中国側の文書には書かれております。そして、日中は平和共存こそ唯一の道だ、こういうことが中国側からはあったということが書かれているわけですよね。

 ですから、到底、総理は、透明性を持って説明して安全保障のジレンマに陥らないようにするという話をしたわけですけれども、事実上、安保三文書というのは中国を仮想敵に置いているものですから、これは理解は得られるはずがないわけですよね。

 専守防衛を投げ捨て、敵基地攻撃能力を保有し、アメリカと一緒になって集団的自衛権を行使しますよ、これが本当に進むべき日中関係なのか。私は違うと思いますよ。確かに、中国の覇権主義的な行動は問題ですよ。南シナ海でも東シナ海でも問題ですよ。しかし、だからといって、軍事で、アメリカにつき合って、抑え込んでいくという、アメリカの世界戦略に同調するというのは、私は日本が進むべき道ではないと思います。

 ちょっと時間が来てしまいましたので終わりますけれども、私は、米中双方に、対立を抑えていく、緊張を静めていく、そういう立場に立って働きかけていくことこそ日本政府がやるべき立場だということを申し上げまして、時間になりましたので、あと数十秒あるかな、一言、じゃ、大臣にお答えいただきまして、質問を終わります。

林国務大臣 最後の部分ということだと思いますが、米中両国の関係の安定、これは国際社会にとっても極めて重要であると考えております。

 我が国としては、引き続き、同盟国たる米国との強固な信頼関係の下で様々な協力を進めつつ、中国に対して、大国としての責任を果たしていくように働きかけていきたいと考えております。

宮本(徹)分科員 時間になりましたので、終わります。

中山主査 これにて宮本徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、日下正喜君。

日下分科員 公明党の日下正喜でございます。

 林大臣におかれましては、昨日帰国されたばかりでお疲れのところ大変恐縮でございますけれども、私も岸田総理と同じく広島、中国地方を地元とする一人として、本日は、この五月に開催されるG7広島サミットについて質問させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 国際情勢の不安定化や新型コロナウイルスによるパンデミック、気候変動問題、さらにはトルコ、シリア国境で起こった大地震への対応など、この度議長国として迎えるG7サミットの意義は極めて大きいと思います。

 開催まで百日を切った広島サミットについて、特に重要と思われる主要テーマについてお聞かせいただき、サミットに向けての林大臣の御決意を伺いたいと思います。

林国務大臣 今委員からお話がありましたように、国際社会は今日、コロナ禍にも見舞われ、また、国際秩序を根幹から揺るがすロシアによるウクライナ侵略に直面しておりまして、歴史的な転換期にあると言っていいと思います。

 こうした中で開催されるG7広島サミットでは、こうした力による一方的な現状変更の試み、また、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用、これはあってはならないものとして断固として拒否をし、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の強い意思、これを力強く世界に示してまいりたいと考えております。

 こうした観点から、ウクライナ、核軍縮・不拡散、経済安全保障といった課題について議論したいと考えております。同時に、エネルギー、食料安全保障を含む世界経済、また、気候変動、保健、開発といった地球規模の課題へのG7としての対応、これを主導していきたいと考えております。こうした諸課題へのG7による積極的な貢献と協力の呼びかけを通じまして、いわゆるグローバルサウスへの関与、これも強化していきたいと考えております。

 また、広島サミットはアジアで開催するG7サミットということもありまして、自由で開かれたインド太平洋に関するG7の連携についても確認をする機会としたいと思っております。

 私自身、今年の日本の議長国の下での初めてとなるG7外相会合、十八日にミュンヘンで開催したところでございますが、先ほど述べた問題意識を踏まえまして、G7広島サミットへ向けて、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。

 日本は本当に、平和国家また貿易立国として、国際社会の平和秩序の再構築に向けた存在意義は極めて大きいと思いますので、どうぞこれからも外交の強化また充実に向けて更に頑張っていただきたいというふうに思います。

 トルコ・シリア大地震で犠牲になられた方は、今分かっているだけでも四万六千人を超えると報道されております。まず、心から御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 この度の大災害は、あの東日本大震災の三倍ともなる規模であり、多くの方々が、寒さの中、大切な家族とも生き別れ、つらく大変な思いをされていることは想像に難くありません。東日本大震災の折には、世界中から被災地に対してたくさんの支援があったこと、特に、トルコからの救援隊、救助隊は一番長く日本で活動に当たってくださったと聞いております。

 この度のトルコ・シリア大地震、被災地に向けて、G7議長国日本として、国際社会との協調、呼びかけ等も含め、どのような支援を行ってきたのか、また、今後どのように行っていくのか。阪神・淡路大震災、また東日本大震災での経験も踏まえ、緊急の支援、また、中長期にわたる被災地、被災者支援についてお伺いしたいと思います。

林国務大臣 トルコ南東部を震源とする地震に関しましては、東日本大震災を含めまして大きな自然災害を経験してきた日本として、被害に遭われた方々に対し最大限の支援を行うべく、発生直後から国際緊急援助隊の派遣、また緊急援助物資の供与などを行ってきておりまして、国際緊急援助隊医療チームに必要な資機材を迅速かつ確実に届けるため、自衛隊機での輸送を行うなど、政府として全力で取り組んでおります。

 また、二月十六日でございますが、国連世界食糧計画、WFP、また、国際赤十字・赤新月社連盟、IFRCなどの国際機関及び日本のNGO等を通じまして、トルコ、シリア両国に対して合計約二千七百万ドルの緊急人道支援を実施することを発表いたしました。さらに、十八日ですが、トルコに対する緊急援助物資の追加供与、これも決定をしております。十八日に開催いたしましたG7外務大臣会合におきましても、G7各国との間で、必要とされる支援、これが制約を受けることなく利用できるということの重要性を確認したところでございます。

 今後、両国に対して、緊急支援から復旧復興支援までの取組、これを切れ目なく続けていく必要があると考えております。

 政府としては、引き続き、G7を含む関係国や国際機関とも緊密に連携しつつ、被災されたトルコそしてシリアの方々に寄り添って、現地のニーズを踏まえて、必要な支援、これを引き続き迅速に行っていきたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 次に、昨年のエルマウ・サミットにおいて首脳コミュニケで国際的にも確認されたジェンダー平等についてお尋ねいたします。

 コミュニケでは、「我々は、女性と男性、トランスジェンダー及びノンバイナリーの人々の間の平等を実現することに持続的に焦点を当て、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全なコミットメントを再確認する。」とございます。

 先日、首相秘書官による性的少数者に対する差別発言があり、直ちに更迭されたわけでございますが、この件に関連して、海外メディアでは、日本はG7で唯一同性婚を認めていないなど、性的少数者への理解、対応に遅れがあることが指摘されています。

 G7各国は、自由や民主主義、人権などの基本的価値を共有していることがその基盤となっておりますが、G7の議長国として、今後、LGBTQなどの性的少数者への国内における理解増進、さらに、差別禁止や同性婚などへの対応、法整備についてどのようにお考えか。G7には、性的マイノリティー当事者である要人や関係スタッフも多く来日いたします。各国に対しどのように説明していくお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見、これはあってはならないと考えておりまして、政府といたしましては、多様性が尊重され、全ての方々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会、この実現に向けまして、引き続き、様々な声を受け止めて取り組んでまいります。

 日本政府の取組として、例えば、国連においては、二〇〇八年に第六十三回の国連総会で採択をされました性的指向に関する宣言によりまして、国際社会における性的指向少数者の人権保護等を目的とする、関係国によるグループであるLGBTコアグループ、これはその後、LGBTIコアグループに名称変更されておりますが、これが設立をされました。我が国は、これに創設の際からメンバーとして参加しておりまして、これまで、LGBTIコアグループによる共同ステートメント、また、同コアグループが主催する国連でのイベントにも参加してきたところでございます。

 本年、G7議長国を務める日本政府として、こうしたことを改めて国の内外に対して丁寧に説明する努力、これを続けてまいりたいと思っております。私としては、外務大臣の立場から、その職責をしっかりと果たしていきたいと考えております。

日下分科員 法整備についても、しっかり後押しの方をよろしくお願いしたいと思います。ますますグローバル化する経済、国際経済においても、やはりこういったことがネックにならないように御配慮をよろしくお願いしたいと思います。

 次に、核なき世界ということで質問させていただきます。核兵器のない世界に向けた取組でございます。

 昨年二月、ロシアによるウクライナ侵略が行われ、今後の戦況も不透明な中、ちょうど一年が経過しようとしています。昨年、プーチン大統領は、場合によっては核兵器の使用もいとわない旨の発言をするに至っております。また、北朝鮮はミサイル発射を繰り返し、昨日も今日も報道がございましたけれども、七回目の核実験を行われる懸念さえあります。

 今、こうした混迷を深める国際秩序の中に生きる世界の目は、核兵器の脅威が現実の脅威になったことを認識し、決して使われることがないよう注意深く見詰めております。

 当時十八歳で被爆した私の義父でございますが、台湾人でございましたけれども、生前語ってくれました。爆心地から二・三キロメートル離れた御幸橋を渡るまではいろいろな音が聞こえていたが、爆心地に向けて橋を渡ると、何かしいんとして、印象では無声映画のように音がしない、薄暗い、死の世界に迷い込んだ感じ。小さな火がぱちぱちと燃えて、壊れた家の中から助けて、水をくれという低い声が聞こえた。朝八時半くらいだったと思う。やがて火の手が上がって、人間が焼ける臭いがしてきて吐きそうになり、余りにも不気味で気持ち悪いので引き返したというふうに語っておりました。

 核兵器は、多くの命を根こそぎ奪うばかりではなく、その土地に暮らす人々が営々として築いてきた風土、風俗、芸能、文化、伝承など跡形なく一瞬で消し去ってしまいます。

 核兵器のない世界実現をライフワークだとされる岸田首相が、議長国としてG7サミットを被爆地広島で開催することを決定された意義について、私は歴史的意義を持つものにしなければならないと思います。核兵器使用を思いとどまらせる国際世論を喚起し、核廃絶、軍縮への道を開く最大のチャンスであると考えます。唯一の戦争被爆国である日本は、核兵器が持つ非人道性、そして言語を絶する惨状を伝える責任と使命があると思います。

 岸田総理は、先月の一月十二日、ワシントンDCにおいて、バイデン大統領との日米首脳会談に臨まれました。そこで、G7広島サミットに関して、唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として、バイデン大統領を含むG7首脳と共に、核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを広島から世界に向けて発進したい旨述べられました。その上で、両首脳は、厳しい安全保障環境も踏まえつつ、核兵器のない世界に向けて日米で共に取り組んでいくことで一致したと外務省から報告もいただいております。

 そこでまず、外務大臣に伺いたいのは、核保有三か国を含む七か国の首脳が広島に集い、いかにして核兵器の惨禍を二度と起こさないとの誓いを発信するのか。七か国の首脳が心を一つにしてこのメッセージを発信するには、まず、被爆の実相に直接触れていただくため、原爆資料館などの訪問、また、次代を担う政治リーダー、若手外交官の方々にも是非触れていただきたいと思います。さらに、高齢化が進む被爆者の方々の命の声に直接触れていただきたいと思いますが、林大臣の思い、御決意をお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 ただいまは、委員から義理のお父様のお話を聞かせていただきました。私も隣の山口県でございますので、亡くなった父親からいろいろな話を聞いたことを今思い出しておったわけでございます。

 各国のハイレベルを含めまして、世界に被爆の実相、これをしっかり伝えていくこと、これが核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として大変重要であると考えております。

 原爆による壊滅的な被害、先ほどお話の中にも出てきましたが、これを受けながらも、見事な復興を遂げて世界の平和を希求する広島におきまして、G7首脳が集い、対話するということは極めて大きな意味を持つと考えます。

 サミットの具体的な日程については、今、種々検討を行っているところでございますが、G7首脳が被爆地広島から、核兵器の惨禍を二度と起こさない、武力侵略は断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を堅持する、こうした力強いコミットメントを世界に示すことができればよい、こういうふうに考えておるところでございます。

日下分科員 ありがとうございます。

 この度のG7サミットを通して、唯一の戦争被爆国日本という立場が、同盟国にとっても国際社会に向けても更に鮮明になり、理解が深まるものと思われます。

 我が党の山口代表からも本会議で要請がございましたが、昨年のNPT運用検討会議における取組等とも連動させながら、本年行われる核兵器禁止条約の第二回締約国会議へのオブザーバー参加を強く求めるものでございますが、林外務大臣の所感をお伺いします。

林国務大臣 核兵器禁止条約、これは核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約でございます。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要でございますが、この条約には核兵器国が一か国も参加していないということでございます。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしていかなければなりません。

 そのためにも、核兵器のない世界の実現に向けて、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、G7広島サミットも念頭に、ヒロシマ・アクション・プランを始め、これまでの取組の上に立って、国際賢人会議の英知も得ながら、現実的かつ実践的な取組を進めてまいりたいと考えております。

日下分科員 G7サミットの段階で、そのためにG7サミットが持たれるわけでございますけれども、しっかり、国際社会、また同盟国の理解も、オブザーバー参加に向けての、日本が参加するということの意味合いというか、それについて認識をしていただいて、理解をしていただいて、是非そういう環境を整えていくという努力もお願いしたいと思います。

 次に、今度、サミットの開催についてでございますけれども、期間の前から、広島市内のほか、周辺のホテルが満室状態になるというふうなことも聞いております。

 各国首脳、政府関係者、警護、警備、スタッフ、報道関係者、どれぐらいの人が広島に見えられるのか。その規模感、もし分かれば教えていただければと思います。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 G7広島サミットは、本年の日本にとり、最も重要な外交行事の一つであります。委員御指摘のとおり、各国首脳を始めとして、国内外から多くの政府関係者が広島に集まるほか、各国から報道関係者も多く集まり、サミットの様子が世界に発信されることとなります。

 その規模感についてですが、二〇一六年の伊勢志摩サミットにおいては、サミットの宿泊予約センターを通じた三重県内宿泊施設への宿泊は延べ約三十七万七千人泊であったと承知しております。広島サミットにおきましても、同程度の規模の参加を想定して準備を進めております。

日下分科員 ありがとうございます。

 すごい人数だというふうに思いますけれども、しっかり、日本の文化とか様々なことを発信する機会になるというふうに思います。

 今、広島県、広島市、そして県商工会議所、また県民を挙げて総力を結集し、サミットが安全かつ円滑に進行すること、そして、サミットに参加する各国の首脳や代表団、国内外のメディア関係者などの来訪者を広島ならではの温かいおもてなしで迎え、全ての方に広島の魅力、日本の魅力を伝えたいと取り組んでいるところでございます。

 まず、国内外の未来のリーダーとなっていく若者の参加機会の確保についてでございますが、岸田総理は、昨年八月、日本の総理大臣として初めてNPT運用検討会議に出席され、核兵器のない世界という理想と厳しい安全保障環境という現実を結びつけるための現実的なロードマップの第一歩として、五つの行動を基礎とするヒロシマ・アクション・プランを発表されました。

 その第五に、国連に一千万ドルを拠出し、ユース非核リーダー基金を設け、未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらい、核廃絶に向けた若い世代のグローバルなネットワークを形成することが示されています。

 大人たちがつくったこの厳しい安全保障環境という現実を核なき世界という理想に変えていくためには、やはり、未来を担う若者たちと共にこのサミットを成功させていくという視点が不可欠だと思います。

 国としても、できるだけ多くの若者がサミットや国際問題について関心を持ち、理解を深める機会が得られるよう、様々な場面において、若者や子供たちが参加できる機会を設けていただきたいと思いますが、大臣の所見をお願いいたします。

林国務大臣 G7広島サミットは、若者が世界の直面する課題に関心を持ち、その想像力と行動力をもって課題解決に取り組む重要なきっかけとなり得ると考えております。

 こうした考えに基づきまして、例えば、若者のG7サミットに関する理解を深めるとともに、国際感覚やチャレンジ精神、これを身につけてもらうことを目的として、外務省職員がG7サミットや外務省の仕事、役割等について説明するサミット塾、これを広島サミット県民会議とともに実施をしておるところでございます。

 引き続き、様々な形で若者がサミットに参画、体感できますように、広島サミット県民会議ともよく連携しながら、いろいろな機会、これを提供していきたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 また、ヒロシマ・アクション・プランのユース非核リーダー基金を活用してのプログラムを是非具体的に進めていただくように望むところでございますが、この度のG7サミットでは、より具体化された提案等は考えておられるのでしょうか。

林国務大臣 岸田総理が、先ほど御紹介いただきましたように、昨年八月のNPT運用検討会議で立ち上げを発表しましたユース非核リーダー基金、これは、国際社会の各国から未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらって、我が国を含めて核廃絶に向けた若い世代のグローバルなネットワークをつくることを目的として、日本として拠出することとしたものでございます。

 現在、国連側と鋭意調整を行っているところでありまして、国連側との関係もあり、詳細はまだお答えできない段階であるということは御理解いただきたいと思いますが、この基金を通じた取組の効果を最大限発揮できるように、人選また取組の内容を含めて、引き続き国連側との調整を行っていきたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。

 五年後、十年後、二十年後、大変これは大事な取組だと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 次に、広島県は、瀬戸内海や中国山地の豊かな自然に育まれた、良質な食材の宝庫でございます。生産量日本一のカキ、良質なレモン、比婆牛など、さらに、広島県は吟醸酒の発祥の地でもあります。

 また、広島県には、それぞれの時代の職人によって磨き上げられ、受け継がれてきた工芸品が豊富です。世界的なIT企業で採用されている美しいデザインの椅子、呉海軍工廠ゆかりの技術を伝承するボールペンや万年筆、世界的に有名な化粧筆。さらに、広島にちなんだ品種が豊富なバラや、県木である紅葉などは心に潤いを与えてくれます。

 広島の神楽には、いにしえから現代までの古い形が守り伝えられ、今日では大人も子供も楽しめる芸術性、エンターテインメント性の高い舞台が人気を集めております。芸の力は言葉の壁も越え、日本文化への深い理解につながるものと強く感じております。

 そうした様々な地元の真心のこもる食材や物品、伝統芸能で、首脳会議場や宴席、宿泊のしつらえ、贈答品などに活用し、サミットに彩りを添えていただきたいとお願いしたいのでございますが、林大臣、いかがでございましょうか。

林国務大臣 お昼前においしそうなお話をいただきまして、大変すばらしいなと思いましたが、私なんかはどうしてもお好み焼きや紅葉まんじゅうにこの気持ちが行ってしまうこともございますが、いろいろなものを御紹介いただきました。

 サミットは、広島を始めとして、我が国の魅力を世界にアピールする絶好の機会であります。参加国の皆様にとっても印象深いものになるように、地元の皆様には、首脳を始めとした各国の代表団を温かく迎え入れていただくものと思っております。

 今お話のありました地元広島の産品の活用ですが、既に広島サミット県民会議からも様々な御提案、御要望をいただいております。そうした御提案も踏まえまして、県内各地のすばらしい産品等を積極的に活用いたしまして、各国に対して、我が国と広島のすばらしさ、これを印象づけられるように、前向きに検討、準備を行っているところでございます。

日下分科員 一度は廃墟と化した広島が、先人たちの血のにじむような努力によりましてこのように復興したという姿、これを示すという意味でも、県産品に触れていただいたり美しい自然に触れていただく、こういうことが非常に大事になるというふうに思いますので、重ねましてよろしくお願いしたいと思います。

 次に、サミット後の波及効果というか、このような規模のサミットが開催地域の一時的な盛り上がりで終了してしまうのはいかにも惜しい気がいたします。

 一つは、G7首脳が核なき世界に向けて踏み出したあかしとして記念植樹を行うなどの何かしらのレガシーを残せないか、是非検討をお願いしたいと思います。

 また、長引くコロナ禍によって広島へのインバウンドも激減し、観光業、飲食業界も、少しずつ持ち直しつつあるものの、かつての姿に戻るには、これからもかなりの月日を要すると思われます。広島でいえば、中国五県内にある観光ルート、瀬戸内海で向かい合う四国のルートなどをつなぎ合わせ、世界に向け訪日観光をアピールする絶好の機会でもあると思います。

 こうした国際会議、イベントを起爆剤とした周辺地域も含めた観光施策の展開は、インバウンドを呼び込み、日本に対する理解の醸成にも大変に意義あるものと思いますが、具体的な施策やお考えがございましたら、それも含め御所見を伺います。

林国務大臣 このG7日本議長年、これは海外からの日本に対する関心を高める契機となるものでありまして、サミットの開催地である広島のみならず、各関係閣僚会合の開催地も含めまして、日本の魅力を海外に発信していく考えでございます。具体的には、海外向け広報、また海外メディアへの取材機会の提供を通じまして、幅広く文化芸術、日本食、国酒、そして日本の観光等の広報を行ってまいります。

 また、今お話のありましたレガシーについても、何か残せないか現在検討を行っているところでございます。

 また、サミット期間中は、国際メディアセンターを中心に、日本及び広島に関する情報発信スペース、これを設けまして、広島を含む日本の魅力を伝えて、日本に対する更なる理解の醸成につなげたいと考えております。

日下分科員 もう百日を切ってまいりましたので、これからますます林大臣のリーダーシップの下、大成功に導いていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

中山主査 これにて日下正喜君の質疑は終了いたしました。

 次に、務台俊介君。

務台分科員 長野県の務台俊介です。午前中最後の質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 まず、国連の機能について伺いたいと思います。

 ウクライナ戦争に際して、国連の機能の在り方が問われています。我が国の憲法がその前文で、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意したとの規定の前提には、紛争が起きたときに国連が機能して平和維持にしっかりと対応するとの前提があったものと考えています。国連においては、特に安全保障理事会の常任理事国の役割と責任が重要ですが、事もあろうに、常任理事国の一角を占めるロシアが自ら平和を脅かす側に回り、もう一つの常任理事国の中国が、そのロシアとともに、常任理事国の平和実現に向けての各種決議を拒否権によって葬り去る対応が続いています。

 日本は、本年から安保理非常任理事国に就任していますが、安保理改革を含む国連の機能強化に取り組むべき立場にあろうかと考えていますが、どのように取り組んでいくのか、お考えをお聞かせください。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、安保理は、ロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の核・ミサイル活動に対しては有効に対応できていない現状にあり、試練のときにございます。他方、安保理が各地の紛争の解決などに一定の役割を果たしている面もあり、多くの国が安保理になお期待を寄せていることも事実でございます。

 我が国は、安保理非常任理事国として、各国との緊密な意思疎通と丁寧な対話を通じ、安保理が本来の役割を果たすよう協力していきます。その中で、多国間主義と法の支配に基づく国際秩序の維持強化を目指していきます。

 安保理改革につきましては、先般、林大臣が主催した法の支配に関する安保理閣僚級公開討論におきましても、複数の国からも改革が必要であるとの声が上がったところでございまして、改革実現のためには、議論のための議論ではなく、具体的行動として文言ベースの交渉を開始すべきとの考えであり、大臣も、昨年の国連総会の際のG4、日、独、印、ブラジルの外相会合において、そのための連携を再確認したところでございます。

 引き続き、G4や米、英、仏、アフリカを含む多くの国々と連携しつつ、安保理改革に粘り強く取り組んでいきたいと考えます。

 また、安保理改革のみならず、総会や事務総長の役割の強化も含め、国連の機能強化に取り組んでいきたいと考えております。

務台分科員 日本政府が努力しているのは私も理解しますが、是非、非常任理事国の任期のうちに進めていただきたい、そんなふうに思います。

 ところで、ロシアがあのような残虐な侵略行為を行っているにもかかわらず、そして中国が力による現状変更を企図しているのに、国連加盟国からは、我々が見て当たり前と思われるG7の主張に対して、必ずしも期待される支持が集まりません。正しい主張になぜ支持が集まらないのか、このことをしっかり見据えていく必要があると思います。山内さんなどの識者の意見を聞くと、植民地支配を行った欧米が上から目線で西欧流の価値観を押しつけることに反発があるとの解説もあります。

 そのような中で、さきの大戦の結果としてではありますが、アジア諸国を始めとして多くの国の独立を後押しした日本、そして、戦後の真摯な平和的経済支援を行った日本に対しては、おおむね好意的な評価を示す国が多いと思います。日本の立ち位置は、欧米とは異なるアプローチが可能な立場にあると思います。平和実現の努力に対して、日本独自の外交的手段をどのような形で講じていくのか、基本スタンスを伺いたいと思います。

林国務大臣 私が外相に就任して以来、各国や国際機関等のカウンターパートと会談を重ねる中で、日本外交の真骨頂というのは、今委員からもお触れいただきましたけれども、これまで先達が積み上げてきた信頼であり、先進国であれ途上国であれ、同じ目線に立って共通の課題について議論しまして、そして、必要なときに相手が真に必要としている支援を行う、こうしたきめ細やかさにあると感じておるところでございます。

 こうした日本外交への信頼や期待、これを基礎としながら、今年のG7議長国として、また、お触れになっていただきました国連安保理非常任理事国として、国際社会が力ではなくてルールに基づき動かされていくべきだ、この原則の共有を図って、法の支配に基づく国際秩序を堅持していきたいと考えております。

 同時に、気候変動、エネルギー、食料、保健、開発等のグローバルな諸課題への対応を主導していきたいと考えております。

務台分科員 私は、幾つかの外国との友好議連に入らせていただいております。日本・マルタ友好議連、日本・ソロモン諸島友好議連、日本・ラオス友好議連、日本・スリランカ友好議連、日本・ウクライナ友好議連といった、どちらかというと人口規模がさほど大きくない国との友好関係を推進する一員として、それなりの活動をさせていただいているつもりです。

 昨年の安倍元総理の国葬の際には、それらの国からの来訪者に応接する機会もありました。複数の日本の国会議員がそういった機会に相手をするということが先方にとって非常に重く受け止められるということを改めて認識しました。その折に承ったリクエストには我々としてもできるだけ対応するようにしております。

 例えば、林外務大臣もお会いになったマルタのイアン・ボージュ外務大臣からは、今年から日本とマルタは国連の安保理の非常任理事国となることもあり、マルタにも日本大使館を設置してほしい、こんなリクエストもございました。その声を受けて、力足らずではありますが、私も外務省をプッシュして、財務省にもしっかりとお願いした、そんなことがあってかどうかは分かりませんが、来年度予算に駐在事務所の設置予算が盛り込まれたと認識しております。

 一方で、例えばソロモン諸島は、日本大使館はソロモンにあるんですが、ソロモンの日本大使館が東京にないということがあります。こういうインバランスを解消していくという努力も必要だと思います。

 先ほど大臣もおっしゃられましたが、小国ほど、小まめな外交的対応が有効だと思われます。その積み重ねこそが、細やかな対応として、国際社会における日本の立場の強化、評価につながっていくと思います。

 そこで、マルタにおける日本大使館設置に向けた動きについて御説明ください。そして、ソロモンに対して日本への大使館設置を働きかけるつもりはないのか、併せて伺いたいと思います。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、マルタとの二国間関係の重要性、これについては政府として十分に認識しておりまして、そのための予算措置を現在お願いしているところでございます。

 令和五年度の予算案をお認めいただける場合には、兼勤駐在官事務所を令和五年度中に開設させていただきたい、こういうふうに考えております。この事務所を拠点といたしまして、日・マルタ関係の一層の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

 他方、日本国内への大使館の設置というものにつきましては、相手国からの要請を受けまして日本政府が同意をするという手続になっております。現時点でソロモン諸島側から大使館設置の要望というものは接到しておりませんけれども、我が国への大使館の設置は二国間関係の更なる強化にも資するものと考えております。引き続き、ソロモン諸島としっかり意思疎通をしていく考えでございます。

務台分科員 マルタに対して兼勤駐在事務所をつくるということでございますが、スピテリ大使からは、早く日本大使館に昇格してほしいという要請がありますので、是非それに向けてのスケジュールも作っていただきたいというふうに思います。

 私は、大使館というのは、国の大小にかかわらず、対応の差異をつくってはいけないというふうに思います。米国が最近、ソロモン諸島に大使館をつくったという報道がなされておりますが、こういう情勢になったので慌ててつくる、そんな印象があります。そうではなく、ふだんから敬意を持った対応が必要だと思いますので、是非外務省としても心がけていただきたいというふうに思います。

 そのソロモン駐在の三輪日本大使の話によると、中国政府がソロモン諸島政府に強烈なアプローチをかけているというお話がございます。

 中国のソロモン支援がソロモン国民の支持を受けているかというと、そうでもないようです。例えば、ソロモンの森林を皆伐し、ナマコなどの海産物を根こそぎ買い上げる、自然を破壊する形で進出している対応が目に余るという声があるようでございます。

 一方で、日本の支援は、地域の資源を適切に活用し、地域経済が循環し、自立可能な経済をつくり上げるのに貢献しており、ソロモン国民の間で大きな支持を得ていると伺っています。

 こういう地道な支援を積み上げ、友好関係を深める努力が更に求められているというふうに思います。

 私は、自民党の消防議員連盟の事務局も務めておりますが、草の根支援で、日本の中古消防自動車を整備して、ODAを活用して相手国に供与する、そんな制度の構築にちょっと汗をかいた経緯もあります。しかし、残念ながら、こうした一つ一つのプロジェクトに関して、それが広く知られる機会に恵まれません。

 そこで提案なんですが、そうしたプロジェクトの竣工式、贈呈式の際に、友好議連のメンバーに同席する機会をつくっていただいたらというふうに思います。そういう機会を得た議員の当事国への感情移入が強くなるのはもちろんのこと、訪問先の国も、我が国の貢献を深く認識する機会になると思います。

 外務省は、ロジの面で嫌だなという気持ちもあるかもしれませんが、長い目で見た前向きな対応を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が消防議員連盟の幹部として中古消防車の海外での有効活用に関する草の根支援活動に御尽力いただいていることに、まず感謝申し上げます。

 ODA案件を現地、国内で幅広く知ってもらうことは、外交的意義や国民理解の促進の観点からもちろん重要でございまして、外務省、在外公館として、様々な手段、機会を活用して効果的な発信に取り組んでいるところでございます。

 委員御指摘のとおり、竣工式や供与式、こういった重要なタイミングで、プロジェクトの内容に合わせた形で関係する議連の先生方に現地に行っていただくことも、非常に効果的なアピールになると期待されます。

 議連の先生方に関与いただくことを含め、引き続きODA案件の効果的な広報、発信に取り組んでまいりたいと考えております。

務台分科員 そうはいっても、どうやって予算を確保するとか、いろいろな課題があると思いますので、是非それは柔軟に対応していただきたい、そのように思います。

 私は、今年の二月六日に、長崎県の軍艦島、端島を同僚議員と訪問しました。日本の近代化に大きな役割を果たした軍艦島は、おかげさまで世界遺産にも登録されております。

 その折に、旧島民の皆様のお話を伺う機会がありました。軍艦島では、旧島民の皆様によると、日本人と朝鮮半島からの労働者が運命共同体の炭鉱の中で平等に働き、お風呂も一緒に入り、そして、子供は小中高と同じ学校に通い、お祭りも共に参加し、朝鮮半島の伝統行事も日本人として優しい目で見て、ある意味ですばらしいコミュニティーが形成されていた、最盛期は五千四百人を超える島民の方がそこで暮らしていたということでございます。

 ところが、韓国政府が、この軍艦島が地獄島であったというふうに主張しております。多くの半島出身の強制労働者が弾圧され虐殺された歴史があると主張し、その証拠として、残念ながら、NHKが昭和三十年に制作、放映した「緑なき島」の中の一部の画像が切り取られて、そこで使われているという実態があるようでございます。

 韓国には、釜山に日帝強制動員歴史館の常設展示がありますが、そこでそのNHKが作ったと思われる画像が無断で使われているようでございます。NHKは、当時、KBSにこの番組を提供したと聞いております。NHKとしては、KBSを通じ、そのような画像を撤去してくれというふうに要求しているようでございますが、韓国政府からは返答がないという、そんな状況にあります。

 この歴史館は、韓国の子供たちが学習の一環として繰り返し繰り返し訪れる場所になっています。誤った歴史認識が世代を超えて継承されるとしたら歯止めをかけなければいけない、私はそのように思います。画像制作者のNHKが引き続き撤去要請を行うのは当たり前として、この問題は日本政府としても国家として対応する、そんなことが求められているんじゃないかというふうに思います。

 いわゆる徴用工問題、慰安婦問題と同根の問題がこの歴史館の背景にあるとしても、やはり誤った事実についてはしっかり正していく、そんな必要があると思います。外務省として、そういった誤った対応を改めるように韓国政府に申し入れるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、客観的事実に基づきまして、国際社会において正しい歴史認識が形成されることを重視しており、外務省といたしましても、引き続きしっかりと取り組んでいく考えでございます。

 そのような観点から、我が国の立場に鑑み受け入れられないことにつきましては、韓国政府に対してもしかるべく申入れ等を行っており、今後も適切に対応していく考えでございます。

務台分科員 今後も引き続き適切に対処ということですが、その結果が全く出ていないんですよね。もうちょっと踏み込む対応がないのか。そういうことも、政権の、向こうの考え方にもよるでしょうが、しっかりやっていただきたいと思います。

 私が軍艦島でお話を申し上げた島民の方、もう御高齢でございます。八十代半ばを過ぎております。彼らは何を願っているかというと、自分たちが暮らした軍艦島の生活が全く違う形でゆがめられて伝わること、そして、それが、自分たちの生きてきた日本の近代化の歴史、それを否定される、そのことを子や孫まで、おじいさんは何ということをしたんだみたいな扱われ方はしたくないと言っているんですよ。自分の代でこの問題に決着をつけて、きれいにして引き継いでいきたい、そういうふうに思っております。

 是非、この問題は政府としてももっと腰を入れて、全体から見ると決して大きな問題ではないかもしれませんが、こういう問題をしっかり解決できないということは大きな問題も解決できないということになると思うので、是非、大臣、しっかり聞いていただいて、対応をお願いしたいというふうに思います。

 地球温暖化、生物多様性、循環型社会などへの対応として、地球規模の課題について、環境省や経産省などの所管官庁が対応することは当然ですが、外務省も地球規模の課題に対応する組織があろうかと思います。特に、ODAという強力な手段を持つ外務省の役割は非常に大きいと思います。

 一方で、私は環境副大臣をやらせていただきましたが、外国に国際会議で行くような場合に、サブを持っている役所と外務省の連携が必ずしもよくないような印象を受けました。事務方としてはやっているのかもしれませんが、政務のレベルの連携がほとんどない。これは我々自身の問題かもしれませんが。

 そういう意味で、各省で行う温暖化対策などの地球規模課題に対する対応と外務省の対応の役割分担、これがどんな形で行われているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 気候変動、環境、国際保健、開発といった地球規模課題への対応におきましては、委員御指摘のとおり、関係する政府機関は多岐にわたりますので、政府機関間の緊密な連携が重要となってまいります。

 外務省といたしましては、国際社会において日本の国益を確保するため、関係する政府機関と緊密に連携しつつ、二国間、国際機関との交渉、さらにはODA等を通じた協力、また条約等の締結等を通じて地球規模課題への対応に取り組んでいるところでございます。

 例えば、パンデミックに関する新たな法的文書に係る交渉、プラスチック汚染対策に係る条約交渉、国連気候変動枠組み条約締約国会議の首席交渉官は、それぞれ外務省が務めております。また、エイズ、結核、マラリア対策、保健システム強化等に関わっているグローバルファンド、国際機関でございますが、この理事も外務省が務めているという状況でございます。

 引き続き、関係する政府機関とも緊密に連携をしまして、地球規模課題への対応に取り組んでまいりたいと考えております。

務台分科員 事務的にしっかりなさっているということは理解できたつもりですが、是非、それを外に分かりやすくやってもらって、外務省のプレゼンスをもっと高めていただきたいと思います。私も大昔に外務省に一年半ほど在籍したことがありまして、隠れ外務ファンなので、是非よろしくお願いします。

 ところで、昨年の八月まで環境副大臣を務めさせていただいた折に、JCM、ジョイント・クレジッティング・メカニズムという、途上国への脱炭素支援プロジェクトの脱炭素効果を一定のルールで我が国の二酸化炭素削減分としてカウントするシステムについてレクを受けました。

 その際に、素朴な疑問として、ODA案件が何でJCMにカウントされていないのかと思って聞きました。そうしたら、当初、このJCMをつくるときに、内部ではカウントするようにしたらどうかという議論もあったようですが、途上国が、いろいろな考え方があったと思います、それをカウントするのは自国のものとしてカウントしたいという意見で、諦めたということがあるようでございます。

 以前にも増してCO2を削減しなければいけない状況の中で、JCMにODA案件をカウントできればODA自体を増やす要因になる、インセンティブになるというふうに思います。甘いのかもしれませんが、少なくともそういう議論はできると思います。

 途上国側と、JCM、CO2削減を、ODA案件をカウントすることについて交渉を再度始めてみる気持ちはないのか伺いたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のようなアイデアを改めて御紹介をいただきましたことに感謝申し上げます。

 もうこれは御承知のことかとは思いますけれども、パリ協定では先進国が途上国の気候変動対策を支援することが公約となっておりまして、パリ協定の詳細ルール作成交渉が二〇一八年に妥結する過程で、ODA案件をJCM上に位置づけて、その排出削減効果の一部を我が国を含む先進国の排出削減分として計上するということにつきましては、途上国の主張もあって認められなかった経緯があるということでございます。

 二〇五〇年までに全世界の温室効果ガス排出のネットゼロを達成することを目標としており、現在、途上国を含む全ての国がこのパリ協定の実施を目指しているという状況でございますので、そのような状況にある現時点においては、御指摘の点について直ちに再交渉を求めることは適当ではないかと考えております。

 ただ、アイデアを御紹介いただいたことに改めて感謝申し上げます。

務台分科員 二〇一八年の時点で一旦決着したと。もう既に五年たっています。その間に温暖化はもっともっと厳しい状況になっていると思います。カウントできる分を、ODAを積み上げるんだということを何らかの形で伝えることで再交渉の土台を切り開く、そんなこともあるんじゃないかと思うので、今後、諦めずに交渉していただきたい、そんなふうに思います。

 さて、今年はG7がございます。軽井沢では外相会議も行われます。

 私は、過日、自民党の環境関係議員の一員として、英国の保守党の環境系議員とZoomの対談を行う機会がありました。温暖化防止と地球環境保全という人類共通の課題に取り組むお互いの立場を理解し合えた、そんな機会となりました。こうした政治家同士の対話が大変重要であるということを改めて感じました。

 その会話の中で、英国のある議員から、英国は生物多様性の観点では欧州の中で最悪な状態にあるというお話を伺いまして、意外でした。そこで、何でそういう状況になっているのかと聞きますと、森林を伐採して農地を拡大した、それがイギリスの歴史で、その際に農薬を幅広く使って昆虫を大きく減少させてしまった、そんな反省があるというふうにおっしゃっていました。

 実は、昆虫もそうですが、英国には熊がいないんです、今。実は、ドイツも熊は基本的にいなくなっちゃっています。くまのプーさんとかテディベアというのはありますけれども、ヨーロッパはそういう世界でしか熊がいないんです。これはすごく印象的です。

 それに対して我が国は、九州は熊が絶滅してしまいましたが、九州以外の日本には野生の熊がいます。特に、私の選挙区には、熊は千頭単位でいるというふうに認識しています。実は、熊は生態系の頂点に立っていまして、熊がいるということは、そこの生態系が保たれているんです。熊がいなくなると、がたがたになる。

 今、自然保護団体が、山の峰に風力発電とかメガソーラーを造るなと言っている理由の一つに、熊の生存地域を狭めることになるので生態系が崩れる、そんな理由で反対をされています。

 実は、G7外相会合が開かれる軽井沢には、ベアドッグという、ベア、熊の犬という、里に出てくる熊を山に追い返す訓練をする、その犬の訓練所があります。実は、そこにはイギリスからの留学生も来ているんです。何で熊がいないのに日本に来ているんだと言うと、いや、それを聞かないでください、そういう反応が出てきます。事ほどさように、日本の自然は先進国の中でも最も良好な状態に保たれている国の一つだと思います。その象徴が熊なんです。

 実は、私は日本熊森協会という団体の顧問もしていまして、外務省も、そういうことも意識して、日本の強みとして、熊の存在、これは小さいかもしれませんが、それが日本の強みの一つだということを是非認識してG7に臨んでもらいたいというふうに思います。軽井沢のG7外相会合で、夕食の場面でもいいですが、軽井沢にはそういうベアドッグというような営みがあるんだということを言っていただくと、大変団体の皆様は喜ぶと思います。

 こんなお話、どなたがお答えいただけるか分かりませんが、お願いします。

山田(賢)副大臣 まず、生物多様性保全は、国際社会が連携して取り組むべき重要な課題であります。

 この分野では、昨年十二月に、二〇三〇年までの新たな世界目標となる昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択されました。日本では、里地里山のように、人の手が入ることで自然を持続可能な形で維持し共生を図る取組がこれまでも行われてきており、そうした取組を、SATOYAMAイニシアチブとして、外務省としても国際会議等の場で発信してまいりました。

 G7外相会合で取り上げる議題につきましては現在検討中ではありますが、引き続き外務省としても、昆明・モントリオール生物多様性枠組の実施を含む生物多様性保全に積極的に取り組むとともに、日本の自然環境の豊かさを維持する取組について発信してまいる考えでございます。

務台分科員 生物多様性条約、本当にすばらしい条約だと思います。

 ただ、残念ながら、熊が里に出てくると、みんな怖がって、出てきた熊が射殺されてしまうということがあります。射殺するんじゃなくて追い返す、そういう取組をやるという必要があるものですから、是非G7の場で、熊がいるということの意味をしっかり伝えていただくと、日本の国の雰囲気も改まるかなというふうに思います。

 最後になりますが、ウクライナのゼレンスキー大統領がひょっとしたらG7サミットに参加されるんじゃないかという、そんな可能性も取り沙汰されています。

 一方で、G7で日本だけが、侵略開始後に、首脳あるいは閣僚がウクライナに入っていない唯一の国だというふうに言われています。サミットまでにこの問題に答えを出して、日本の閣僚がウクライナに一度は入ったという実績をつくるべきではないかというふうに思います。

 私も、ウクライナ友好議員連盟の一員としてこのことを望みますが、質問通告していないのでお答えは要りませんが、是非、こういう声があったということも御認識いただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

中山主査 これにて務台俊介君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。金城泰邦君。

金城分科員 こんにちは。私は、公明党の衆議院九州・沖縄比例ブロックから当選をさせていただいております金城泰邦と申します。

 私自身が沖縄の出身ということもございまして、今日は、その沖縄が抱える課題の中から、外務省所管に関する問題について質問させていただきたいと思っております。大臣、今日はよろしくお願いいたします。

 まず初めに、一番目に、米軍基地内及び周辺のPFOS等の不安解消に向けた立入調査を要請することについて伺いたいと思います。

 二〇二〇年四月十日、米軍普天間飛行場から泡消火剤が大量に流出する事故が起こりました。泡消火剤には、以前から水質汚染で問題になっていた有機フッ素化合物、PFOSやPFOAなどが含まれています。

 PFOS、PFOAとは、有機フッ素化合物の一種で、発がん性などが指摘されております。PFOSは、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で国際的に製造、使用が制限され、国内でも原則、使用、製造が禁止されております。PFOAは、世界保健機構、WHOの外部機関が発がん性のおそれがある物質に指定し、主要な化学メーカーが既に自主的に使用を廃止しております。環境中でほとんど分解せず、生物中に蓄積することが懸念されている発がん物質であります。

 その発がん性物質が基地周辺の川に大量に流出し、付近には泡が立ち込めていました。以前から地元の水質汚染で問題視されていた中、この事故は改めて基地と水問題に注目を集めました。

 米軍普天間飛行場からの有機フッ素化合物、PFASを含む大量の泡消火剤流出事故にて、後日、水質調査が行われました。その結果、水汚染の判断基準値の六倍に及ぶフッ素化合物が検出されました。米軍の嘉手納基地や普天間飛行場周辺の河川で高濃度のPFOSとPFOAが検出されていることから、基地が汚染源だと指摘をされております。

 米軍は、二〇一六年七月の説明によりますと、嘉手納基地内で一九九四年以降に四件の火災で泡消火剤を使った可能性があり、二〇〇一年以降に九件の漏出があったとのことであります。調査結果や状況から考えて、ほぼ米軍基地内が汚染源と考えて間違いないのではないかと私の地域では言われております。

 日米地位協定により、米軍の許可がなければ基地内の調査はできません。これまで許可されてこなかった米軍基地内の立入調査について、米軍側の訓練を遮るリスクのないような方法を検討するなど、今後の早い時期の日米合同委員会、2プラス2等で米軍基地内への立入調査を提案することはできないのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 PFOS等をめぐる問題につきましては、沖縄県を始めとして地元住民の皆様が大きな不安を抱えていると承知しておりまして、関係省庁とも連携しながら、政府全体として真剣に取り組んでおります。

 米軍施設・区域の立入りについてでございますが、在日米軍は、日米間の合意に従いまして、PFOS等の漏出が起こった際には日本側に通報を行ってきております。地元からの要望がある場合には、環境補足協定に基づきまして、地元自治体とともに施設・区域内への立入り等を実施してきております。

 沖縄では、二〇二〇年四月、普天間飛行場における泡消火剤の漏出が起こった際や、また、二〇二一年六月、沖縄県の陸軍貯油施設におけるPFOS等を含む水の漏出が発生した際、これらの場合には、地元自治体とともに米軍施設・区域内に立ち入り、サンプリング等を実施してきておるところでございます。

 政府として、PFOSをめぐる問題については、これまでも、米国環境保護庁や米国防省を含めて、様々なレベルで米側とやり取りをしてきているところでございまして、一月の日米2プラス2においては環境に係る協力を強化することを確認したところでございまして、外務省としても、こうした動きを踏まえながら、米国及び関係省庁と引き続き連携していく考えでございます。

金城分科員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 是非、基地内の調査について、今御答弁いただきましたようなことが、私の地元沖縄の方でも、しっかりまた地域の住民の皆様に周知していただくように努力していただきたいと思っています。私も地元に帰りますと水道水を飲むものですから、やはりPFOSに対しての安全性というのは非常に関心を持って見ているところでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、二番目に、トルコ・シリア地震への支援について伺いたいと思います。

 二月六日午前に発生したトルコ南東部を震源とする地震は、トルコ南東部においてマグニチュード七・八の地震を記録しました。

 この地震によってお亡くなりになられた方々及びその御家族に心から哀悼の意を表しますとともに、負傷者の方々にお見舞いを申し上げます。

 我が党公明党の山口代表は、地震発生直後の七日に記者会見を行い、日本の長年の友好国であるトルコに対し、日本としてできる限りの支援を求めたいとコメントし、その翌日の八日には、トルコ大使館でコルクット・ギュンゲン駐日大使とお会いし、トルコ南部を震源とする大規模地震に対する義援金百万円の目録を手渡しました。東日本大震災時、日本はトルコから助けてもらった、感謝の思いを忘れていない、地震国としての経験、教訓を生かして助け合いたいと述べ、大使からは、義援金や救助隊派遣に対して謝意を表明されました。

 地震発生から今日で十五日目となりますが、今も救助される人が出ています。地元メディアによりますと、十七日、トルコ南部のハタイ県で、四十五歳の男性が地震発生からおよそ二百七十八時間ぶりに救出されました。発生から十五日目となりますが、今も救助される人が後を絶ちません。

 懸命な救助活動が続く一方、両国で死者は増え続け、十七日時点で、トルコでは三万九千人を上回り、シリアでは五千八百人以上となっていて、合わせて四万五千人を超えました。

 我が国のトルコ・シリア大地震へのこれまでの支援の取組状況と、今後の政府の支援の対応について伺います。また、今後、民間等での義援金協力の申出の声が広がっていますが、どのような対応を考えているのか、伺います。

林国務大臣 今月六日に発生をいたしましたトルコ南東部を震源とする地震によりまして、これまでにトルコ及びシリアにおいて四万人を超える死者が出ております。多くの死傷者や建物の損壊も発生しておりまして、甚大な被害が生じていると承知しております。

 日本として、今般の地震により被害に遭われた方々に対して最大限の支援を行うべく、全力で取り組んでおるところでございます。

 具体的には、これまで、トルコに対する国際緊急援助隊の救助チーム及び医療チームの派遣、そして、トルコ及びシリアに対する緊急援助物資の供与、これを実施しております。また、両国に対する計二千七百万ドルの緊急人道支援を実施する予定でございます。

 なお、医療チームに必要な資機材を迅速かつ確実に届けるために、自衛隊機による輸送も実施をしてきたところでございます。

 政府としては、今後も、被害を受けた地域に対しまして、現地のニーズを踏まえて、必要な支援を迅速に行っていく考えでございます。

 今委員から御指摘もありましたように、今般被災された方々への日本国民の皆様からの義援金を含む御支援についても、私からも協力を呼びかけているところでございます。

 トルコについては、駐日トルコ大使館が義援金を募集しているほか、国際機関やNGO、国際赤十字・赤新月社連盟等が両国への支援のための寄附を募集しておると承知しております。こうした窓口を通じて御支援をいただくことが可能でございますので、是非御協力をお願いしたいと思っております。

金城分科員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 このような形で、一つ一つの支援が、世界各国に、日本の国際貢献の評価へとつながるものと確信しております。しっかりとした取組をまたよろしくお願いいたします。

 次、三つ目でございますが、ウクライナ避難民への支援についてでございます。

 ロシアによるウクライナ侵攻から一年が経過しようとしています。いまだ先行きが見通せないウクライナへのロシア侵攻の状況から、これからも引き続きウクライナ避難民の方々への支援を行わなければならないと考えます。

 昨年九月、公明党は、ウクライナ支援の課題を探るため、ウクライナ避難民を受け入れているポーランド、モルドバ、ルーマニアの東欧三か国に調査団を派遣しました。UNHCRと連携し、祖国を離れて生活を続ける避難民の生の声を聞くとともに、支援に当たるNGOの活動の視察や、受入れ国の政府高官との意見交換を重ねてまいりました。帰国後、山口代表と調査団が、岸田総理に対し、現地の窮状を訴えるとともに、支援強化や、寒さが厳しさを増す冬場に向けた暖房インフラの復旧支援などを提言いたしました。

 今月十六日、公明党は、山口代表出席の下、ウクライナ避難民支援対策本部を開催し、駐ウクライナ大使や駐ポーランド大使と意見交換を行いました。その中で、昨年公明党の東欧調査団が現地視察をし、現場の声を基に岸田総理に提言したウクライナ避難民への越冬支援によって、ウクライナ避難民の方々にはこの冬凍死した人はいないとのうれしい報告も受けております。これまでの日本の支援についてウクライナから極めて高く評価されていること、ウクライナ大統領から日本の皆様の支援に感謝しているメッセージなどをいただいております。

 そこで、予断を許さないウクライナ情勢に当たり、ウクライナ避難民への支援の現状はどのようになっているのか、ウクライナ避難民への支援延長について、見解を伺います。

 さらに、ウクライナや周辺国への現地での支援も引き続き継続と拡充が必要と考えますが、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。

丸山政府参考人 まず入管庁の方から、日本に避難されている方への支援の状況等について御説明させていただきます。

 政府におきましては、官房長官を議長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議を司令塔として、政府一体となってウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援等を行っており、二月十五日現在、二千三百二名のウクライナ避難民の方を受け入れております。

 これまでに、入管庁におきましては、日本への渡航を切に希望するものの自力で渡航手段を確保することが困難である方々に対する渡航支援、ウクライナ語での相談対応を可能としたウクライナ避難民ヘルプデスクの開設、身元引受先のない避難民の方々に対する一時滞在場所の提供、生活費や医療費の支給、受入先となる自治体、団体等とのマッチングなどの取組を実施してまいりました。

 生活費等の支給期間を含めた今後の支援の在り方につきましては、今後のウクライナ情勢や避難民の本邦での生活状況などを踏まえまして、引き続き、地方自治体や支援者の方々とも連携し、政府全体で避難民の方々にしっかり寄り添いながら、適時適切な対応を検討してまいります。

林国務大臣 日本はこれまで、ウクライナ及びその周辺国等、ロシアによるウクライナ侵略の影響を受けた関係国に対しまして、昨年十二月に措置された六百億円の補正予算を含めて、人道、財政、食料、復旧復興の分野で総額約十五億ドルの支援を順次実施してきております。

 日本は、G7を始めとする国際社会が連携をして、適切にニーズを把握しつつ、国難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援を通じまして、ウクライナの復旧復興に貢献すべく、G7議長国としてリーダーシップを発揮する考えでございます。

 この十八日にミュンヘンで開催いたしました、今年の日本の議長下で初となるG7外相会合には、クレーバ・ウクライナ外相を招待して、議論に参加をしていただきました。そして、G7として引き続きウクライナを支援していくということを確認したところでございます。また、同外相とは個別にも会談を行いまして、日本の支援についてお伝えをし、先方から謝意が述べられるとともに、引き続き緊密に連携していくことを確認いたしました。

 引き続き、日本がこれまで培ってきた経験や知見等も活用しながら、発電機等の供与等の越冬支援に加えまして、地雷、瓦れき除去、生活再建等の様々な分野において、日本の顔が見えるウクライナ支援、これを効果的に進めていきたいと考えております。

金城分科員 御答弁ありがとうございました。

 現地での支援もしっかりとやっていただいて、国際的にも評価がされているという状況でございます。

 また、日本国内への受入れに当たっても、先ほど参考人の方から御答弁もありましたように、三月以降の支援も継続して取り組んでいただけるということでございます。

 私も、地元の沖縄で約二十名ちょっと避難民の方がいるというふうに伺っておりまして、その中の方にも三名ほど、避難されて、一時的にホテルに入っていただいて、ホテルの方の善意もありまして、無償で提供していただいた。その後、那覇市で県営住宅に一時入居として入っていただいたんですが、当初の、三月で終わるというところから、三月で出ないといけないという非常に残念な時期もあったんですが、しっかりと皆様の取組のおかげで、三月以降も、一つのめどとして九月まで延長することができまして、その方々も大変に安心しておりました。このような取組に感謝しておりましたので、これをお伝えしておきたいと思います。今度とも、また御支援のほど、よろしくお願いいたします。

 次に、四番目の、防衛力強化の政策において、今後の日中の外交が重要となりますが、具体的にどのようにして取り組むかということでございます。

 昨年十二月に閣議決定されました安保三文書、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画について、連日の報道などでは、反撃能力や防衛費ばかりがクローズアップされていますが、軍事一辺倒であるかのように報道されているのが現状ではないでしょうか。

 しかし、初の改定を行った今回の国家安全保障戦略、最上位文書の位置づけである文書では、日本を守る国力を外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力と定めており、国際政治史に詳しい慶応大学の細谷雄一教授は、一月二十二日付の読売新聞で、重要なのは、第一の要素として外交力を挙げていることだと指摘されております。さらに、同教授は、かつて戦争へと進んだ日本が、今は積極的に国際秩序を守り、平和回復への外交努力をしている現実こそ大きな価値があると強調されております。

 安保戦略の第一に外交力が掲げられた背景には、閣議決定に至るまでの協議で、外交力の強化を第一の柱にという我が方、公明党の強い主張がありました。外交を第一に、必要な防衛力などを整備する、それが政治の責務であると考えます。

 そのためにも、今後、政府として具体的にどのような形で外交に臨むのか、そのビジョンについて、外務大臣の所見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

林国務大臣 我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中で、まず優先されるべきは、今委員からも御指摘がありましたように、積極的な外交の展開でございます。

 同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要であるわけであります。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるのかという観点から、政府としては、防衛力の抜本的強化を具体化したところでございます。

 外交力、防衛力を含む総合的な国力、これを最大限活用していく必要がありまして、そうした中で、外務省としては、現実的な外交、これを積極的かつ力強く展開をしてまいります。

 中国との間でのことについて御指摘がありましたが、中国との間では、様々な可能性とともに、数多くの課題や懸案が存在をしております。同時に、日中両国は、地域と世界の平和と安定に対して大きな責任を有しているわけでございます。中国とは、昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め、首脳間を始めとする対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築をしてまいります。

 このような観点から、私自身、二月二日に秦剛外交部長との間で電話会談を、また、先週土曜日でございますが、王毅外事工作委員会弁公室主任との間で会談を行いまして、日中関係に多くの課題や懸案があるからこそ対話が必要であるという旨を述べまして、秦剛部長及び王毅主任との間で、各分野の対話、これを着実に進めていくことで一致をしたところでございます。

金城分科員 ありがとうございます。

 今日も北朝鮮がまたミサイルを発射して、本当に対話にならないような状況の国もあります。ロシアのように、ウクライナを侵略、侵攻した、今もなおそれが続いているという国もあります。また、日本の国境を面しては中国もありますが、中国はしっかりと我々は対話ができる余地があると思っております。大臣もこれまでも中国への理解は深いというふうに思いますので、しっかりとした対話を望みたいと思います。

 報道によりますと、アメリカの、米国ブリンケン国務長官と中国の王毅共産党政治局員は、ドイツのミュンヘンで気球問題発覚後初めての対話会談を開いたと報道されております。お互いに、主権の侵害だ、無責任な行動を二度と起こしてはならない等々やっておりますが、最後には、アメリカも中国に対して、バイデン大統領が十六日の演説で習近平国家主席と対話を再開する意向を示しており、ブリンケン、王両氏の会談は米中が緊張緩和に向けて動き出した表れと見られる、このように報道もされている状況でございますので、日本もしっかりとした外交の取組、頑張っていただきたいと思っております。

 最後に、五番目に、防衛力強化政策における外交努力、具体的に何を指し、どのように推進するかであります。

 先ほどの質問と続きますが、安保三文書の改定の必要性の一つの要因であります台湾有事や尖閣問題など、私の地元沖縄では、沖縄の周辺地域をめぐる問題というのは、極めて厳しい不安定な状況下に置かれております。今こそ日本がリードして、日米中で協議機関を設けていただいて、日常的、継続的に協議、交渉を重ねていく必要性があるのではないかと思っております。

 今回の三文書改定で、国は、中国を念頭に、南西地域に自衛隊の防衛力を強化し、米軍との連携を強化する旨が示されておりますが、南西地域には、防衛力強化の取組だけでなく、外交力強化のための取組も同時に行うべきであると考えます。

 今、日本は、東アジア地域においては、経済の面では経済的連携を推進してきております。

 二〇二二年にスタートしたRCEP、地域包括的経済連携協定は、日本にとって、中国、韓国との間で締結される初めての経済連携協定であります。RCEPにおける八つの交渉分野には、一、物品管理、二、サービス貿易、三、投資、四、経済技術協力、五、知的財産権、六、競争、七、紛争解決、八、その他とあります。特に、七の紛争解決などは、まさに日本にとって重要な事項ではないかと思っております。経済の安定と政治の安定は、共に力を入れて取り組んでいくべきではないでしょうか。

 そこで、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の秩序に基づく国際秩序を強化するには、不安定な外交でなく、安定した外交を継続して重ねていく努力が今最も必要なのではないでしょうか。

 そのためにも、南西地域である沖縄に、安定した外交を展開するために、国連機関や国際機関を設置していただくことを模索してほしいと思います。大臣の所見を伺いたいと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、国家間の紛争を予防していく上で、外交面での意思疎通を強化していくということは極めて重要であると考えております。

 日中両国の間でも、昨年十一月の日中首脳会談、また、先ほどもお話ししました、ミュンヘンで行われた私と王毅主任との会談でも、首脳、外相レベルを含めて、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくということを確認しております。

 特に、安全保障の分野におきましては、日中防衛当局間の海空連絡メカニズムの下でのホットラインの早期運用開始で一致しているほか、二十二日には日中安保対話、これが開催される予定になっております。

 今御提案のございました国際機関の設置についてでございますが、様々な角度から検討する必要があると考えられ、まずは、以上の点を含めまして、関係国間での恒常的な意思疎通、また対話等を積み重ねていくべく、一層努力してまいりたいと考えております。

金城分科員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 是非前向きに、国際機関、国連機関等を南西地域である沖縄に誘致していただきたいと思います。

 実は、沖縄に国連機関を誘致しようという話は、私の政治の師匠であります沖縄の元一区の選出の白保台一衆議院議員の政策提案でありました。今日もその白保さんのネクタイを実は私、締めてきたんですけれども、日中国交三十周年のときに、中国の訪中団の議員団の中に白保さんもいまして、林大臣もおりまして、私も随行で、秘書で行かせていただいた思い出があります。

 日中のきずなを深めていく取組を、是非、林大臣が先頭に立って、国連機関、国際機関を沖縄に誘致していただければと思っておりますので、その旨をお伝えして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は、誠にありがとうございました。

中山主査 これにて金城泰邦君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口晋君。

山口(晋)分科員 自由民主党衆議院議員の山口晋です。

 昨年に引き続きまして分科会で貴重な質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 林大臣におかれましては、G7外相会談から戻ってきたばかり、また、質問通告も直前となってしまいまして、省庁の皆様方には大変御迷惑をおかけしたことを冒頭申し添えさせていただきます。

 それでは、質問に移らせていただきたいと思います。

 間もなく一年を迎えるロシアによるウクライナの侵略は、欧州とインド太平洋地域の安全保障は切り離しては議論できないことを示すものとなりました。また、日本近辺でも、北朝鮮がかつてない頻度で弾道ミサイルを引き続き発射しております。そして、東シナ海や南シナ海では中国による力による一方的な現状変更の試みが続いており、台湾周辺での一連の軍事活動も活発化しております。また、最近では、中国のものと強く推定される気球の飛来など、新たな対応を要する事態も生じているところであります。

 このように、今日、日本を取り巻く環境は一段と厳しさを増しているものとの認識を改めて確認しておかなければなりません。そして、こうした中においてこそ、我が国が価値観を同じくする国々と協力、連携を強めていくことが大切です。

 私は、こうした観点から、地理的にも近く、基本的な価値観を共有するASEAN諸国との間で多面的な協力を深めていくことが、この地域の平和と安定、発展と繁栄のために極めて重要だと考えております。

 日本は、ASEAN諸国との関係において、米国や欧州諸国に先んじてパートナーとなり、幅広い分野において深い関係を長年にわたって築いてまいりました。本年は、一九七三年以来目覚ましい発展を遂げてきた日本とASEANの友好協力が五十年を迎えるという節目の年であり、十二月には特別首脳会議を開催し新たな協力ビジョンを発表すべく、準備を進めているものと承知しております。

 ASEANとの関係においては、ASEAN内においてもミャンマーへの対応という難しい問題を抱えておりますし、昨年来の対ロシア制裁についてのASEAN諸国との考え方の違いも出てきているところであります。

 それでも、我が国としては、これまでの長年の経験を踏まえ、ASEAN諸国の多様な文化や伝統を共に守り育てつつも、ASEANを一体として捉え、ASEANとともに、普遍的価値の定着や拡大に向けて共に努力し、共に成長、繁栄していく関係を築いていく努力を続け、米国や欧州各国がASEANとの関係強化に努めるに当たって、ASEAN各国との向き合い方について範を示していくことが重要だと考えております。

 それでは、政府にお伺いをさせていただきます。政府は、今後五十年を見据えたASEAN諸国との関係強化に向けてどのような姿勢で取り組もうとされているのか、そして、米国や欧州諸国がASEANとの関係強化に向けて取り組む中で、日本としてどのような役割を担い、欧米各国を支援していこうとしているのか。政府のお考えを教えてください。

林国務大臣 今、山口委員から御指摘がありましたように、ASEANは日本にとっての伝統的なパートナーでありまして、地理的にも近く、基本的価値を共有するASEANとの友好協力関係、これは地域の平和と安定、発展と繁栄に極めて重要であるわけでございます。

 我が国の掲げる自由で開かれたインド太平洋と、ASEANが掲げるインド太平洋に関するASEANアウトルック、これは開放性、透明性、包摂性、また国際法の尊重といった本質的原則を共有しているわけでございます。これらは、時代の転換点にある今日においてこそ大変重要な考え方であります。

 このような考え方から、先日、ジャカルタで開催されました五十周年を記念するシンポジウムに私からメッセージを送りまして、日本は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化のため、ASEANと全ての域外諸国との協力において、AOIPを主流化していくASEANの努力、これを強く支持するということを表明いたしました。

 友好協力五十周年という歴史的節目に当たりまして、こうした普遍的価値の定着、拡大に向けて共に努力をし、共に成長、繁栄していく関係、これを強化していきたいと考えております。

 米国や欧州諸国もASEANとの関係強化に取り組む中で、G7唯一のアジアの国である日本が今年議長を務めるG7の場を含めて、我が国として、ASEANの重要性を強調し、連携を呼びかけていきたいと考えております。

山口(晋)分科員 大臣、ありがとうございます。引き続き、ASEANとの緊密な関係を図っていただければと思います。

 次に、経済連携協定交渉についてお伺いをさせていただきます。

 我が国は、資源の少ない貿易立国として、自由で開かれた国際秩序が維持されることが重要であるとの考えから、自由貿易の旗振り役として、WTOでの貿易自由化交渉でも重要な役割を果たしてきたほか、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、CPTPPや、日・EU・EPA、日米貿易協定、また日英EPA、RCEP協定など、経済連携協定のネットワークを広げる上でも、世界においてリーダーシップを発揮してまいりました。

 一方で、ここしばらくの間の動きとして、コロナ禍の下で医薬品や医療機器などについて輸出制限を行うような国も出てきたり、ロシアのウクライナ侵略を受けて農産品や肥料の輸出が滞る、そのような事態も発生してまいりました。また、気候変動の観点からグリーン化は大変重要な課題でありますが、グリーンであることを隠れみのとして保護主義的な動きも出てきていることも、自由貿易を推進する観点からは懸念されているところであります。

 同志国、友好国との間でのサプライチェーンを強化することをフレンドショアという言い方があることも承知しておりますが、価値観を同じくする同志国との間で、自由な物の流通を確保するための仕組みを整えていくことがより一層大事になってきているものではないかと考えております。

 それでは、質問をさせていただきます。こうした自由で開かれた経済秩序の維持、構築、また、これに基づく地域や世界の安定と繁栄の確保にも資するという外交的、戦略的意義の観点から、今後の経済連携協定交渉に向けた岸田政権の意気込みを教えてください。

林国務大臣 今御指摘がありましたように、経済連携の推進、これは、貿易・投資の促進という経済的意義にとどまらず、相手国との二国間の関係の強化、またルールに基づく自由で公正な経済秩序の構築、これに基づく地域や世界の安定と繁栄の確保、こうしたものに資する外交的、戦略的意義も有する重要な取組であると考えております。さらに、新型コロナの感染拡大、そしてロシアによるウクライナ侵略を原因として、世界経済全体が混乱する中で、こうした取組はますます重要性を増してきております。

 こうした観点から、我が国は、これまで自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してきております。直近では、昨年、イスラエル及びバングラデシュそれぞれとの間で、両国との貿易・投資関係強化の重要性も踏まえて、あり得べき経済連携協定に関する共同研究の立ち上げ、これを決定したところでございます。

 政府としては、引き続きこうした経済連携を推進しまして、個々の交渉では攻めるべきは攻め、守るべきは守って、国益にかなう協定を実現すべく、関係省庁が緊密に連携して取り組んでいく考えでございます。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。引き続き、様々難しい交渉があると思いますけれども、日本の立場をしっかりと世界に示していっていただきながら、この経済連携協定を進めていただければと思います。

 さて、現在、私は、昨年に引き続きまして自民党の青年局で国際局に所属をさせていただいております。国際局は、林大臣も御存じのとおり、台湾との外交の窓口ということで活動させていただいているわけでありますけれども、台湾側から必ず言われるのが、台湾のCPTPPへの加入、これを是非後押ししてほしいという要望を受けているところでございます。

 台湾と我が国とは、自由、民主主義、市場経済、法の支配といった基本的な価値を共有しております。私は、こうした友好国台湾との関係をより深く、より強くしていくことが日本と台湾の両国にとって重要であると考えており、このCPTPPは重要なテーマの一つだと認識をしております。

 現在、台湾を含め五か国、英国、中国、台湾、エクアドル、ウルグアイの五か国が加盟申請を行っており、イギリスの加入手続が進んでいるものと承知をしております。また、CPTPPに加入するためには、全ての加盟国によるコンセンサスでの同意が必要であることも承知をしております。

 それでは、質問させていただきます。CPTPPへの加盟国拡大に向けた現状はどのようになっているのか、また、英国の加盟交渉の議長国としての経験を踏まえ、日本としてCPTPP新規加盟のために何が重要であると考えるのか、また、現在加盟準備国に対して何かアドバイスがあれば御所見をお伺いしたいと思います。

大河内政府参考人 お答え申し上げます。

 英国のCPTPPへの加入手続につきましては、一昨年九月に加入作業部会会合を開催して以来、英国による協定のルール遵守そして市場アクセスについて精力的に議論を続けている、こういう状況でございます。

 今後のプロセスにつきましては他のCPTPP締約国と協議、調整していくことになりますが、我が国といたしましては、英国の加入作業部会の議長といたしまして、ハイスタンダードなルール、市場アクセスの維持に向けまして引き続き役割を果たしていく、こういう考えでございます。

 その上で、英国以外の加入申請を提出したエコノミーの今後のプロセスの詳細、これについては何ら決まっていない、こういう状況でございます。

 また、御質問のアドバイスにつきましてでございますが、CPTPP加盟国は、昨年十月の閣僚共同声明におきまして、協定のハイスタンダードなルールそして包括的な市場アクセスのコミットメントを満たし、かつ遵守することができ、また貿易のコミットメントを遵守する行動を示してきたエコノミーによるCPTPP拡大を支持する、このように確認しているところでございまして、加入申請エコノミーにおきましては、少なくとも、こうしたCPTPP加盟国が求める内容、これをよく理解していただく必要があるかと考えております。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。ハイスタンダードな基準というのはやはり重要だと思いますので、是非、厳格な、またスムーズな申請承認をしていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 続いて、エネルギーの安定供給に話を移らせていただきます。特に、エネルギーの中においてもLNGについて質問をさせていただきます。

 足下では、欧州や中国が国営企業や政府も関与する形で湾岸諸国とのLNGの長期契約を進め、LNG争奪合戦が激しくなっていることは審議会等でも指摘がされているところであります。

 そこで、お伺いをさせていただきます。このような諸外国の需要が増大する局面において、まだまだ、新規のLNGの井戸への投資、投資はしているもののオペレーションまでは時間がかかるところにおいて、現状を踏まえて、来年の冬に向けて日本が安価で安定的にLNGを確保できるのか、政府の見解を教えてください。また、民間企業による新規案件への継続的な投資、長期契約に向けた環境の整備に向け、外交面からどのような努力をされているのか、お伺いできればと思います。よろしくお願いします。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、足下でいっときよりLNG価格は落ち着いてきておりますが、価格見通しにつきましては、原油市場を含め国際市況に影響を与えるという部分もございまして、これは予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思っております。

 しかしながら、いずれにいたしましても、欧州のLNG需要増加及び中国の需要が回復する可能性がある中、過去の投資不足が重なり、LNGの供給がすぐには増えない、こういった事情にございますので、今、需給のバランスが崩れやすい市場になっている、そのように認識しております。

 我が国におきましては、欧米諸国と比較しますとLNGの長期契約比率が高く、比較的安定してLNGを確保してきたものと承知しております。ただ、他方で、昨今の供給不安等の情勢を踏まえますと、LNG確保への政府の関与をより一層高めながら戦略的に取り組んでいく必要があると思っております。

 これまでも、JOGMECの出資等を通じまして、米国やカナダ、豪州、東南アジア諸国への上流投資等を進め、供給源の多角化に努めてきたところでございます。さらに、今後は、積極的な資源外交を通じまして、米国、豪州、中東等の生産国に対する継続的な増産の働きかけや、日本企業の権益取得の後押しをしてきております。

 昨年には、こうした資源外交の一つの成果として、オマーンと民間事業者の間で年間二百三十五万トンのLNG引取りに関する基本合意書の調印式を取り行うことができたところであります。また、シンガポール等のアジア同志国と、共同での上流投資や危機時の相互協力に向けた覚書を締結しております。既に、マレーシアからの供給不安が発生した際には、覚書に基づき安定供給を要請した実績もあります。足下で同国からも最大限の配慮をしていただいたものと認識しております。

 引き続き、このような積極的な資源外交を行い、LNGの安定供給の確保に向けて最大限取り組んでまいりたいと思います。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。やはり、LNGに関しては、ポイントは私は長期契約と多角化だと思っておりますので、是非、スポットに頼らない形で、このLNGの長期契約が、民間企業が契約できる形で、こういう環境整備に是非政府としても取り組んでいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、日本エネルギー経済研究所の小山研究員は、激動の国際エネルギー情勢と日本の課題というレポートの中で、二〇二三年におけるG7サミット議長国となる日本が、先進国として、また世界全体を視野に入れてエネルギー安全保障と脱炭素化の両方を目指す政策を議論し、その実現に向けてリーダーシップを発揮すべきだ、そして、議長国である日本は、まさに地球益のために市場安定化の重要性を堂々と議論し、そのために必要なLNGなど、化石燃料分野への必要投資の意義を説得していく必要があると述べており、私も全く同感であります。

 それでは、お伺いをさせていただきます。G7の場において二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けた中長期的なプランを示し、脱炭素と経済成長を実現させ、世界の限られた国が利益を享受するような部分最適ではなく、世界全体が利益を享受できるような全体最適に向けた議論をリードすべきだと考えております。世界のエネルギー安全保障を実現するためにもG7サミットは絶好の機会と考えますが、政府としての見解を教えていただければ幸いです。

大河内政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵略によって引き起こされましたエネルギー危機の中で、エネルギー価格の高騰とエネルギーの供給の途絶、これは、途上国のみならず先進国においても、特に脆弱な立場にある人々の生活を脅かしております。

 廉価なエネルギーへのアクセスは人々が尊厳を持って生きるための基盤をなすものとの認識の下で、現下の危機を乗り越えるためにはあらゆる適切なエネルギー源や技術を活用しなければならない、このように考えているところでございます。

 また、このエネルギー危機の中におきましても脱炭素化の旗を降ろしてはならず、そのためには、エネルギー安全保障を確保しながら、世界全体の脱炭素化の実現に向けた取組を加速させなければならない、このように考えております。

 このような考えの下で、エネルギー安全保障、脱炭素化、経済成長、この実現を目指すグリーントランスフォーメーションを進めていく考えであり、各国にも働きかけていきたい、このように考えておりまして、日本といたしましても、今回のG7広島サミットの機会を通じまして、委員御指摘の、脱炭素と経済成長を実現させ、世界全体が利益を享受できる全体最適を実現するためのエネルギー安全保障の確保に向けた議論をリードし、具体的な取組を示していきたい、このように考えております。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。大変厳しい交渉になると思いますけれども、引き続き、日本の立場もそうでありますが、世界全体を俯瞰した形でエネルギー安全保障の議論をリードしていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、インフラ輸出についてお伺いをさせていただきます。新しい資本主義の実現や経済安全保障の要請を踏まえた、成長エンジンとしてのインフラシステム輸出について御質問させていただきます。

 二〇一三年に安倍政権においてインフラシステム輸出戦略を策定して以降、菅政権、岸田政権においても様々な政策を積極的に推進していることと認識しております。

 そこで、政府にお伺いをいたします。政府が二〇二〇年十二月に策定したインフラシステム海外展開戦略二〇二五については、去年、追補がされ、戦略の明確化や手法の多様化が行われたことと認識をしております。この追補の狙いや具体的な内容についてお聞かせいただきたいと思います。あわせて、スタートアップ企業や高い技術力を持っている中小・小規模事業者の方々をどのように取り込んでいくのか、政府のお考えをお聞かせいただければと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 インフラシステム海外展開戦略二〇二五につきましては、昨年六月に追補が決定されています。その主要な狙い及び具体的な内容について申し上げます。

 狙いは、新しい資本主義の実現や経済安全保障の観点を踏まえつつ、インフラ海外展開を日本経済の成長エンジンの一つと位置づけ、まず一つ、ポストコロナを見据えたよりよい回復の着実な実現、二番目に、脱炭素社会に向けたトランジションの加速、三番目に、自由で開かれたインド太平洋、FOIPを踏まえたパートナーシップの促進の三つの戦略を明確化することです。

 また、グリーン・デジタル分野の公的金融の機能強化や、脱炭素技術の海外展開に資する二国間クレジット制度のパートナー国の拡大など、戦略が実効性のあるものとなるよう、新規の施策や取組を追補する内容となっています。

 スタートアップ企業や高い技術力を持っている中小・小規模事業者の取り込みにつきましては、JICA、JBIC、ジェトロといった政府関係機関を通じ、海外展開のための金融面での支援や、案件形成のための調査、海外スタートアップ等との協業、連携の支援などを行うことにより取り組んでいくこととしております。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。私は、まさに日本は、インフラシステム海外輸出というのが本当に日本のマーケットを広げる上でも重要になってくると思っておりますので、引き続き、大変な交渉も含め、進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、我が国も経済安全保障制度を整備しているのと同じくして、各国においても経済安全保障に関する意識が高まっており、それぞれの国の状況に応じた法整備等が進捗するものと承知をしております。インフラ輸出に関わる日本企業にとってみれば、そういった相手国政府の法規制変更は時に大きなリスクとなりかねません。官民一体となってインフラシステム輸出に取り組むに当たって、競争相手との競合条件も重要なのでありますが、何よりも、法規制を含めて、輸出先の政府による対象分野の政策が安定的にサポートされ続けていかなければならないと考えております。

 そこで、お伺いをさせていただきます。インフラ輸出を担う日本企業を取り巻くこうしたリスクに対し、政府においては例えば官民対話の実施等迅速な情報共有が求められていると考えますが、政府としての外交面からの支援の考え方をお聞かせいただければと思います。

松本政府参考人 インフラ海外展開を担う日本企業を取り巻くリスクに対して、政府としても適切に対応することが重要と考えております。

 例えば、相手国政府の法規制変更について申し上げますと、海外においてインフラ事業を行う企業に対し大きな影響を及ぼすことから、政府としては、質の高いインフラ投資推進のための官民政策対話の実施といった対話の枠組みの活用に加えて、規制面も含めた海外のニーズ等の情報収集及び共有を強化するため、現地の大使館や関係省庁、機関の連携を強化することで取り組んでまいります。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。引き続き、民間企業の皆さん、また在外公館の皆さんと緊密な連携を進めて、迅速な対応をしていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 インフラ輸出案件を着実に実行するためには、金融面での後押しも不可欠です。例えば、国際協力銀行、JICAなどの公的金融機関は、官民の適切な役割分担をベースに、時に果敢なリスクテイクによるインフラシステム輸出の促進、後押しに貢献していただけるものと承知をしております。

 それでは、政府にお伺いをさせていただきますが、やはりこういう金融面に関しても主体となるのは事業者の声でありまして、声に傾けることでありますけれども、金融面からもしっかりインフラシステム輸出を後押しすべきと考えますが、政府としての御見解をお聞かせください。

松本政府参考人 インフラシステムの海外展開におきましては、我が国を取り巻く国際環境やリスクの変化に対応し、事業者の御意見もお聞きしながら、実施機関間の適切な連携の下、環境変化により一層柔軟に対応することが必要と考えております。

 例えば、昨年には、サプライチェーン強靱化等の日本企業が抱える課題に対応すべく、国際協力銀行において、新融資制度、グローバルバリューチェーン強靱化ウインドウの創設や、先進国業務範囲の拡充などが行われたところであります。

 政府としては、引き続き、金融面からもインフラシステムの海外展開を促進すべく、関係省庁、機関の連携を取りつつ取り組んでいきます。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。引き続き、産官学金が連携して進めていただければと思います。

 続いて、CO2排出の国際ルールについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 温室効果ガス排出・吸収量の算定については、UNFCCC事務局に対してIPCCが作成したガイドラインに基づいて報告を行うことが求められていると承知しております。

 政府が二〇二三年二月に閣議決定したGXの基本方針においても、Eメタンについて、燃焼時の二酸化炭素排出の取扱いに関する国際、国内ルール整備に向けて調整を行うとの記載がございます。

 御存じのとおり、米国キャメロンでは民間事業者がプロジェクトを立ち上げておりまして、国境を越えてのCO2削減価値のルール整備が必要となっているのではないでしょうか。外務省として、関係省庁と連携をして、二酸化炭素排出の取扱いに関する国際ルールの整備に是非尽力をしていただきたいと思います。

 そこで、御質問をさせていただきますが、実際の交渉において、国際機関や相手国政府とのタフな交渉をする中において、外務省、環境省、経済産業省の三省を始めとする関係省庁全てが協力していかなければならないと考えておりますが、このルール作りに向けた政府の意気込みや、三省の役割分担、今後の進め方についてお聞かせいただければと思います。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 気候変動問題は人類共通の危機でございまして、国際社会全体が連携して取り組むべき重要な課題でございます。こうした認識の下、我が国は、二国間やCOPを含む多国間における様々な外交の機会を捉え、気候変動対策に係る国際ルール形成に関与してまいったところでございます。

 GX実現に向けた基本方針におきましては、メタネーションについては、燃焼時のCO2排出の取扱いに関する国際、国内ルール整備に向けて調整を行うこととなっておりまして、外務省としても、環境省、経済産業省等の関係省庁とよく連携してまいりたいと思っております。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。引き続き、タフな交渉になりますけれども、よろしくお願いいたします。

 最後、時間が限られてしまいましたけれども、アジア・ゼロエミッション構想についてお伺いをさせていただきます。

 まさに、GXを成功させていくためには、アジアのエネルギーの需要をしっかりと取り込んでいくことが重要だと考えております。

 三月にはアジア・ゼロエミッション構想に共鳴していただける大臣が日本に来て会談を行う、四月にはG7のエネルギー・気候大臣会合、そして五月にはG7サミット、また十二月には先ほど申し述べさせていただいた日・ASEAN特別首脳会議が開催される中において、国際ルール、制度の提起や、日本の技術、ノウハウを売り込むには絶好の一年だと私は感じております。逆に言えば、今年を逃してしまうと、日本のエネルギートランジションの技術を進める上では非常に難しい一年だと思います。

 そういう観点におきまして、政府として、今年の一年、どういう意気込みでこのアジア・ゼロエミッション構想に取り組んでいくのか、見解を教えていただければと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、今年は、アジア・ゼロエミッション共同体構想の実現に向けて大変大きな年だと思っております。

 まず、本年三月四日に東京におきまして、エネルギートランジションを所掌するパートナー国の閣僚とともに、閣僚会合を開催させていただきます。また、その前日には、国営企業や民間企業を集めまして、アジア・ゼロエミッション共同体の官民投資フォーラムも開催させていただきます。また、四月の札幌の気候・エネルギー・環境大臣会合におきましても、こういったアジアについての実情に応じた現実的な取組を加速するということで、私ども、関係省庁とも連携して最大限努力してまいりたいと思っております。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので、終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

中山主査 これにて山口晋君の質疑は終了いたしました。

 次に、小熊慎司君。

小熊分科員 立憲民主党の小熊慎司です。

 大臣におかれましては、外遊後の大変厳しい中で御出席を賜り、答弁いただくことにまず感謝を申し上げますとともに、どうぞ、これからも外遊が続きますから、お体に気をつけて、日本外交の要として頑張っていただきたいというふうに思います。

 まず初めに、いわゆる日英部隊間円滑化協定についてお聞きいたします。これは、長年取り組んできた日豪、その次の協定となりますし、今国会に二つかかっているわけでありますけれども。

 御承知のとおり、日豪の交渉は数年間足踏みをしていました。というのも、日本に死刑制度が存置をされているということの部分が大きな要因であったというふうに認識をしているところであります。これが一定程度整理されて日豪が署名をされたので、日英の方は税金の部分以外はほぼ同じということの整理でありますし、英国に関しましては、死刑廃止の外交運動も展開している国でもありますが、この日豪の協定が先鞭となって、日英も円滑的に署名に至ったというふうに私も考えているところであります。

 とりわけ、日豪のときはこの死刑のところが大きなウェートを占めましたけれども、日英の際にはどのような、できる限り交渉の過程を、述べられないところもあると思いますが、この死刑制度についてはどのような交渉過程を経たのか、お聞きをいたします。

    〔主査退席、辻主査代理着席〕

林国務大臣 日英の部隊間協力円滑化協定におきましては、今お話があったように、日本は死刑存置国、英国が死刑廃止国であるというそれぞれの国の法制度の違い、これを前提にいたしまして、被疑者の逮捕、引渡しや捜査に関する相互援助を行うことが規定されておりまして、それぞれの国における法制度の根幹の変更を求めるものではないわけでございます。

 具体的には、英国軍の構成員等である被疑者に死刑が科され得る十分な可能性がある場合には、英側が被疑者の逮捕、引渡しや捜査の実施等についての援助義務を免除されることとしつつ、日本国内においては、日本の警察が被疑者の逮捕等の警察権を行使するに当たり、英側はそれを妨害してはならない旨が附属書等で規定をされております。これらの点については、お話もありましたように、日豪部隊間協力円滑化協定と同じ整理になったということでございます。

小熊分科員 私も、外務委員会の中で何回か、日豪のときに質疑したときに、法務省の方からまた副大臣等が来てお話ししたときには、ケース・バイ・ケースみたいな話もあって、ちょっと混乱したところがあります。

 恐らく、協定を実施していくに当たって不幸な事件が起きないことが望まれるところでありますけれども、多分に、オーストラリア側、イギリス側から見ているこの協定の死刑の部分については、少し視点が、お互い見ているものが違うんじゃないかなというふうにちょっと感じているところであります。

 また、我々、死刑制度、量刑を考える議連の中でも、英国大使をお呼びして、外交上死刑制度があることによって進展しない部分があるという発言がある会合でされたので、その真意を、議連でお呼びして確認をしたところでもあります。

 日本の場合、法の支配と価値観を共有する国との外交を進展をさせていますが、一方で、死刑制度をめぐっては、国際的には、先進国の中では日本だけ、アメリカは州によってになってきますし、また、州においても死刑制度を廃止している州が増えてきているという状況でもあります。お隣韓国は死刑制度がありますけれども、御承知のとおり、二十年以上執行されない、モラトリアムに入っておりまして、事実上の廃止国というふうに国際的には認識をされています。

 せっかく日本がいい外交をやって、価値観をしっかり共有をしていく、法治の下で、理性的に国際社会を安定的にしていくという中で、ここの部分は突出をしているというか、異質に見られている部分があります。この価値観外交を進めていく、推進していく立場である日本の外交として、この死刑制度が存置されていることについての見解を求めたいと思います。

林国務大臣 小熊委員御案内のように、死刑制度そのものについては外務省の所管ではないわけでございますが、これに関して様々な議論があるということは承知をしております。その上で、我が国の国内の制度については丁寧に各国に説明していく必要があると考えております。

 自由、民主主義、基本的人権の尊重といった普遍的価値に立脚した国際的な規範や原則、これは国際社会の平和と安定と経済発展の基礎となるものと認識をしております。

 こうした認識を踏まえつつ、同時に、相手国の社会や文化、歴史、こうしたものの多様性を尊重して、対話を通じた包摂性を重視する、先人たちがつくり上げてきたきめ細やかな日本外交を通じまして、法の支配に基づく国際秩序を強化していきたいと考えております。

小熊分科員 死刑制度が存置されていることについての各国の捉え方というのは、やはり日本社会において思っている以上に重いものだというふうに思っています。私も、いろいろな議連を通じて各国大使からこの点について、死刑制度を見直すことはないのかということを結構強く言われまして、多分、日本社会の中での受け止めと違って、もっと重いものだなというふうに思っているところであります。

 世論調査をすると、そもそもその一番の理由が、重犯罪防止になっているということが挙げられるんですけれども、ここに社会科学的根拠はないというのが、これはもう当たり前でありまして、ただ、一昨年の暮れに、木原副長官も、死刑執行がされたときに副長官会見で、重犯罪防止になっているということを政府の立場で述べているというのは非常に間違いだなというふうに思いました。そうした間違えた根拠の立脚点に立っていれば重犯罪防止につながりませんし、また、日本社会をミスリードしていくことにもなりかねませんので。

 そういう意味では、いろいろな国の法律、日本は日本の在り方がありますけれども、国民意識の中にも誤解が生じているということを是非大臣には御承知をいただきたいなというふうに思っているところであります。逆に、死刑があることによって重犯罪が防止されていると思ってしまうのであれば、犯罪防止のいろいろな努力の思考停止に陥っているということになりかねないというふうに私は思っています。

 そうした観点からも、是非外務大臣もいろいろな立場で、海外との折衝の中でこうしたテーマも多分触れられると思いますので、今後、多角的に捉えていただきたいと思いますし、林大臣が総理になるときは、死刑制度廃止に是非取り組んでいただきたいなと思っています。

 ちょっと違うところに移りますけれども、この円滑化協定、いわゆる準同盟とも言われていますけれども、今、開かれたインド太平洋構想、FOIPの実現というのは非常に時宜にかなったものであると思いますし、ロシアまた東アジア情勢を考えれば、非常に緊迫している、安全保障環境が変わっている中であります。

 また、日米同盟がありますけれども、アメリカもいろいろな国と同盟を結んでいて、かつてはハブ・アンド・スポークという考え方であったわけですけれども、アメリカもハブ・アンド・スポークからネットワーク型に変えていこうという形になっています。

 そうした観点から見れば、やはりこの協定についても、今、オーストラリア、そしてイギリスと来ましたけれども、ほかの国々にも広めていくことによって、こうした安全保障のネットワークができ上がり、また、各国の負担も逆に、お互い助け合い、相互的に助け合うわけですから、負担が軽減をされ、そしてまたアメリカの負担も軽減されますから、そういう意味においては、いろいろな国々が多国間で安全保障を守っていくという形になってくるんじゃないかなというふうに思っています。有効な協定だと思いますので。

 とりわけ、このFOIPの実現のためには、フランス、フランスは太平洋島嶼国に領土がありますので、まさに当事者でもあります、このFOIPの。まず、フランスとどうしていくのか。

 あと、やはり同じくアメリカと同盟を組んでいる韓国とも私はやっていくべきだと。今でもいろいろな協力関係、軍事的に、自衛隊との関係はありますけれども。また、さらにはASEAN各国。ASEANもいろいろな国々がありますので一緒くたには言えないんですけれども、例えばASEANの中のフィリピンとか、そういった国々との円滑化協定に取り組んでいくということに関してはどのようにお考えか、お聞きをいたします。

林国務大臣 豪州と英国以外の国との交渉について、今の時点で何か決まったことはございませんので、同種の協定の交渉を行っている国はないということでございます。

 今お話のありましたフランスでございますが、部隊間の共同運用、演習のための手続を改善するための恒常的な枠組み、これを構築する可能性について、また、フィリピンとの間では、両国の共同訓練等を強化、円滑にするための更なる枠組みを含む方途について、それぞれ検討を進めているところでございます。

 これが同じような種類の協定の締結のための交渉に至るかどうかは、まだ予断するところではございません。

小熊分科員 是非前向きに御検討いただきたいと思うし、今のフィリピンに関しては、コーストガードについては結構濃く連携をしていますので。もちろんコーストガードで終わればいいんですけれども、やはり後ろの部分もやらなきゃいけないというふうに思いますので、是非前向きに取り組んでいただいて、まさにFOIPの哲学の実現のためにも、この協定、ほかの国との検討を更に進めていくことをお願い申し上げまして、次に移りたいというふうに思います。

 冒頭申し上げましたが、本当に、G7、ミュンヘンでの外相会合、お疲れさまでございました。

 報道等によれば、確認されたのはウクライナの支援への継続、また、ロシアへの制裁強化といったものが確認をされたというふうに聞いているところであります。

 ウクライナの支援というのはいろいろな支援があります。避難者への支援もあれば、いろいろな経済的な支援もあるわけで、人道的な支援もあるわけでありますけれども、一方で、やはり軍事的な支援も大きなテーマになっているところであります。

 G7の議長国として、ここは日本はリーダーシップを発揮していかなければならない立場ではあるんですけれども、日本は、防衛装備移転三原則があるために武器の供与はできないということになっています。

 こうした武器の供与ができない中、ドイツも戦車を送るというふうに決めたところでありますけれども、そうした中で、武器の供与ができない中で、こうした軍事的なテーマにおいて、どのようにこのG7の中で議長国としてリーダーシップを発揮していけるのか。

 また、武器供与に関して、成果とかも、話合いの下に、効果とかを考えて、これはよかったからもっとやろうとかということも議論の中で出てくると思います。日本は一切やっていない中で、こうしたテーマについてどうリーダーシップを発揮して各国をリードしていくのか、また、この先どういうような軍事支援をしていくべきだというメッセージを発しなきゃいけないのか、非常にセンシティブな立場にあると思います。

 この点については、まず、どう役割を果たしていくのかお聞きしますとともに、あわせて、一部国内で提言されていますけれども、廃棄される予定の多連装ロケットシステム、MLRSをNATO諸国に引き渡してから、捨てるからどうぞとやって、そして、そこからウクライナに、もう捨てたんだ、捨てるのをNATOのどこかの国に任せたんだ、その国が再利用みたいな形でウクライナに流すことはこの原則からは外れないというような解釈の下にそういうのをやったらという提言もされていますが、こうした方法があり得るのかどうかも併せてお聞きいたします。

林国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略、これは力による一方的な現状変更の試みでありまして、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できないと考えておりまして、ミュンヘンにおけるG7外相会合では、ウクライナ支援の継続とロシアに対する制裁、これを維持強化していくということで一致をし、G7としての結束を確認をするということができたわけでございます。

 この五月のG7広島サミットで、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないものとして断固として拒否をして、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意思、これを力強く世界に示していきたいと思っております。我が国としては、議長国として、G7を始めとする同志国による厳しい対ロ制裁と強力なウクライナ支援の継続、強化について引き続き努力をしてまいります。

 また、後段のお話の、我が国の防衛装備の海外移転についてでございますが、国連憲章を遵守するとの平和国家の基本理念とこれまでの平和国家としての歩みを堅持しつつ、我が国の防衛装備移転管理政策として厳格かつ慎重な対処を行ってきたところでございます。日本として、適切な形でG7を始めとする国際社会と連携して、今後も可能な限りの対ウクライナ支援を行っていくところでございます。

小熊分科員 武器をやったらという話ではなくてですね。日本は日本のウクライナ支援の在り方があると思いますし。

 この場をおかりしておわび申し上げます。昨年、渡航制限がかかっている中でウクライナに入国したことは、国会の関係者を始め、また外務省の皆様方にも多大なる御迷惑をかけたことをこの場をおかりして陳謝をしたいなというふうに思っております。

 義憤に駆られてということでしたけれども、本当に、周辺国に行ったときに、国内に戻る人が多くて、また、いろいろな状況を見たときに、やはり、東日本大震災や熊本地震の際、またこれまでの阪神・淡路や新潟地震の際、中越地震の際のいろいろな知見を持って、日本こそがこうした避難民の支援が一番できる国であるというふうに私は思いました。

 さりながら、渡航制限がかかっているので、NGO等が活動できない。去年、私が行ったときには、大使館もまだポーランドのジェシュフにあったという中で、ほかの国はもう国内での支援活動が入っていた中で、日本が一番やるべき、やれる国であったのにそれができていないということにじくじたる思いを感じたところでもありました。やはり、こうした人道支援、日本は世界に冠たる人材も知見も高まっているところであるので、これにしっかり取り組んでいくことが重要であります。

 行った際に、ウクライナの一般の方々ともお話をしてきましたけれども、松田大使も同じことを言っていました、すばらしい大使だなと思いましたけれども、日常が大事だと言っていました、尊厳だと言っていました。

 これは私も、東日本大震災のときに感じました。いろいろなボランティアの国内外からの支援があった中で、感謝をしなければならなかったんですけれども、大事なことは、やはり、そこにいる人々が自分たちの生活を自分たちの力で守っていきたい、日常を貫くことがプーチンとの戦いだということをウクライナの人々が言っていました。もちろん、激しい戦闘地域はまた別ですけれども。

 その中で大事なことは、単に支援を、物を上げる、お金を上げるということではなくて、彼らの尊厳をどう尊重できて、生活を維持できるかということにあるんだというふうに思います。

 私も、東日本大震災が起きた直後にアメリカの国務省招待で研修してきたときに、オバマ当時の大統領に手紙を書いて、支援だけじゃなく、福島県民が普通の生活が送れるように、同じ自由主義社会の陣営として一緒に戦っていこうと言ったら、そのとおりだという手紙をいただきましたけれども。

 まさに、ウクライナの方々も、物をもらいたいわけじゃなくて、自分たちの生活、そして地域、国を自分たちの力で繁栄をさせていくということが一番願っていることだというふうに思います。それをどう支えられるかどうかだというふうに、一番の支援の哲学が真ん中に来なきゃいけないというふうに思っています。

 そういう意味では、私も帰国後に質問主意書という形で政府にお尋ねしたんですけれども、いろいろな支援の仕方がありますが、経済的な支援も、日本との取引、いろいろな契約の中で、税制とかの優遇を図ればいいんじゃないかというふうに思っています。単に物の売り買いだけじゃなくて、今DXの世界もあるわけですから、例えば、データ処理のものをウクライナの会社に頼んだら、それは無税になるとかですね。こういうことで向こうの中で仕事が回るように、経済が回るようにしていくことも重要な支援になるというふうに思います。

 こうした視点から、ウクライナ国内での生活、ウクライナ国内の経済をいかに回していけるか。日本は直接行けないわけですから、日本人は直接行けないわけですから、その中ででもやれることというのは、貿易上の経済協力の仕組みの中で打ち立てられるというふうに思いますが、こうした支援の在り方についてはどうお考えか、お聞きいたします。

林国務大臣 福島御出身の小熊先生ならではの、日常が大事である、尊厳が大事であると。

 私も、ポーランドへ行きまして、国境まで行ったときに、ずっと松田大使と御一緒で、似たようなことをお聞きしました。何かをくれくれと言っているわけじゃないんだ、自分でやるんだということが大事であるということでございました。そういう意味では、経済をしっかり回していくということが、日常を取り戻し、尊厳ある復興につなげていくという意味で大変大事だと私も考えておるわけでございます。

 税のお話がございましたけれども、税制そのものについては外務省の所管外ではございますが、まずは、ウクライナの国内経済を支える目的で、総額約六億ドルの借款による財政支援の実施を既に決定しております。そして、税の方ですが、我が国の特恵関税制度の下で、ウクライナを原産地とする特定の輸入品に対しましては、一般の関税率より低い特恵税率が適用されておるところでございます。

 G7を始めとする国際社会と連携して、適切にニーズを把握しながら、困難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援、しっかり実施していきたいと考えております。

小熊分科員 本当は、できれば、どこがどのぐらい危険度があるかという、またいろいろ議論があるところなんですけれども、一部渡航制限を解除して、やはり日本のNGOの方々がウクライナ国内の一部ででも活動できるように検討いただきたいなというふうに思いますし、また、こうしたソフト的な、制度的な中でのウクライナの支援ができることも検討していただきたいというふうに思います。

 次に移りますが、ODAについてです。二点あるんですけれども、時間がないので併せてお聞きいたします。

 予算的には少し回復をしているところでありますし、今更ながらに思い出す、GDP比でいろいろ指標をやっていたのをGNI比にしたのは、林大臣が会長になって、不肖私が事務局をやらせていただいて、議連をつくって達成した中で、本当にいい切り口となってきているなというふうに自負するところでもありますけれども。

 民主党政権のときにODAを削ったんですね、東日本大震災のときに。僕はそのとき、ODAの議連で、超党派で、有志で官邸に乗り込んで、減らすなとやって、ぼろかすに言われましたけれども。日本人はチャリティーだと思っているので、チャリティーではないということをもっともっと、まだ啓蒙が足りていないなということが一つあります。と同時に、かといって、国益のためになるとODA大綱にばらっと書こうとしているんですけれども、それも分かるんですが、これはもらう方からすれば、日本の国益のためにやっていますという文章を見たら、俺の国のためじゃないのかよとなっちゃうわけですよ。

 ボランティアとかいって、俺、自分のためにやっているんだって、逆に言うことによって純真さを出す場合もあるけれども、ODA大綱に高々と、これは国民への説明も必要なんですけれども、自国のためにやっていますというようなのはないですよね。結果としてあるんですけれども。

 だから、狭い意味での国益を言っちゃうと単なる外交ツールに陥るし、単なる外交ツールであるということであれば、国民の皆さんも、結局、チャリティーでしょうというような単純化した見方しかしないので、もっと広い意味での公益性があるんだといううたい方にしないと。これは本当に、ほかの国、もらう方の、受ける方の国からしたら、えっ、これは何、自分のためにやっているんでしょうと足下を見られちゃうので、この書きぶりはちょっと。

 それはもちろん、広義的な意味での国益というのは分かるんですけれども、何かピンポイントで、狭義の意味での国益というのはうたわない方がいいというふうに思います。

 是非、そういう意味での意識づけ。あとは、だから、とりわけ、まだまだやはり私も、自分の地元でもそうですけれども、これはチャリティーだと思っている国民の皆さんも多いので、そういう意味でも、本当にこれは我々だけじゃなくて、いろいろな意味で利益があるんだということをもっともっと言っていただきたいというふうに思います。そういう意識づけですね、相手国に対しても、国内に対しても。

 そういう意味での、広い視点での利益、利益というかプラスになる部分というのをもっともっと言わなきゃいけない、どうするかをお聞きしますとともに、あと、回復はしているんですけれども、もちろん質が大事なんですが、この間の超党派の緊急集会の中でも、短期的な評価と二十年、三十年たったときの評価の仕方がやはり変わってくるので、一概的に、質が大事だといっても、どういう視点で、どういうスパンで評価するかによって全然違うんですね。日本が忘れたような三十年前のやつが今頃になって、その国の人が、これ、すごくいいんだとなってきたりするので、質もちゃんとしながらも、やはり量を確保しなきゃいけない。

 量ありきでは駄目なんですけれども、質と量、両方です。質なのか、量なのかではなくて、質と量、両方ですし、やはりお金がないと、資金がないと動かないものもたくさんありますから。質と量を両方確保していくこのODA。私は世界一の海外援助の仕組みを日本が持っているというふうに思っていますので、是非これは質と量を確保していく。

 この視点の部分と、質と量の確保の部分、併せて御答弁いただきたいと思います。

林国務大臣 まずは、GNIの研究会のときに大変に先生にお世話になりました。懐かしく今思い出しておりました。

 開発協力大綱、今のものにも書いてあるんですが、我が国は、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保により一層積極的に貢献することを目的として開発協力を推進しております。まさに委員からお話があったように、そうした協力を通じて、我が国の平和と安全の維持、更なる繁栄の実現といった、大きな国益の確保に貢献するというのが基本的な考え方でございます。

 新たな開発協力大綱の内容について、有識者懇談会報告書等を踏まえて現在作業中でありますが、お話があったように、地球規模課題、様々な開発課題の解決に貢献することを通じて日本の平和と安全、更なる繁栄を確保していくとの長期的で広い視点に立って議論を進めていきたいと考えております。

 また、後段の御質問でございますが、我々が擁護する国際秩序、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序等々でございますが、これがやはり世界の人々の信頼に足るものでなければならないと思っておりまして、気候変動やエネルギー、食料、保健、開発等のグローバルな諸課題への対応を主導していく必要があります。

 そういう意味で、ODAの戦略的、効果的な活用をしていかなければなりませんし、SDGsの達成や自由で開かれたインド太平洋の理念の実現に向けた外交的取組を加速していく考えでございます。

 我が国の厳しい財政状況も踏まえながら、質、量共にしっかりと確保していきたいと考えております。

小熊分科員 私はODA倍増論者でありますので、是非倍増に向けて努力をいただきたい。

 あと、時間がありませんので、最後。

 今年、政府が決定した東電の原発の処理水海洋放出が実施をされます。風評被害が懸念をされています。

 風評被害の話をすると、どの大臣も、どの省庁も、科学的根拠をしっかり伝えていきますと。科学的根拠が分かる人には元々害がないんですよ、分かってもらえているから。そうじゃないアプローチをしなきゃいけない。

 先ほどウクライナの話であったとおり、補償がもらいたいわけじゃないんです。この間、復興の特別委員会の理事で現場も歩きましたけれども、補償じゃないんだ、真っ当に商売していきたいんだ、そういうことなんです。だけれども、心理的なアプローチが必要です。

 私も、ちょっとハラスメントに近い形になっちゃうかもしれない、省庁の人が説明に来たときに、じゃ、あなたたち、家族がいて、夏休みに福島の海に泳ぎに来るかと言ったら、そこで言葉に詰まりますよ。科学的に大丈夫だと言っても、じゃ、来るかと言ったら、言葉に詰まるんですよ。言葉にできなくても、その詰まる何かがこの風評被害。また心理的なところなんです、このアプローチをどうしていくかということなんです。

 ですから、科学的アプローチだけじゃなくて、私、再三いろいろな委員会でも言っています、外務委員会でも言ったと思います。例えば、TOKIOに福島でやってもらっているようないろいろな活動。福島は安全ですとかと言っていないんですよ。福島いいところ、おいしいと言っているだけでアプローチをしてもらっているんです。

 そういうソフト的なアプローチについては、大臣、どう思われますか。一言、もう時間がないので。

林国務大臣 大変大事な観点であるというふうに思っておりまして、科学的根拠に基づいて説明するのはもちろんでありますが、やはり、食べてみたり行ってみたりする、こういうことではないかと思っております。

 昨年の七月ですが、私と福島県知事の共催で「ふくしま復興レセプション 挑戦を続けるFukushima」という題名でレセプションを開催しまして、駐日の外交団に来ていただきまして、福島の復興と食品、日本酒の魅力を発信しまして、私も食べたり飲んだり随分いたしました。

 また、国外の例ですが、昨年の九月に、輸入規制撤廃後の英国で、在英国の日本国大使館が、福島県と同県本宮市との共催で、福島から感謝する、サンキュー・フロム・フクシマと題するレセプションを開催し、やはり復興と食品、日本酒の魅力を英国に発信をいたしました。

 こうした在外公館、海外で築いた人脈という我々が持っているリソースを最大限活用しながら、やはりソフト面での取組を考慮しつつ、ほかの役所と連携しながらやってまいりたいと思っております。

小熊分科員 是非、外務大臣のリーダーシップの下に国際会議を福島で開催していただいて、その際、林大臣のライブでもやってもらったらまたいろいろな情報発信になると思いますので、是非よろしくお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございます。

辻主査代理 これにて小熊慎司君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)分科員 立憲民主党の中川正春です。

 今日は、こうした機会を与えていただいて、感謝しています。

 同時に、ウクライナやあるいは北朝鮮、いろいろ危機的な状況の中で、林大臣、しっかり活躍をしていただいておること、期待をしておりますので、頑張っていただきたいというふうに思います。

 今日は、日本語の教育というところに焦点を当てて、できれば、大臣の目というか、ここが大事なところですよという、その受け止め方というのを喚起したいということで、ひとつ提起をしていきたいというふうに思います。

 私は、元々、入管法といいますか、日本がどういう形で国を開いていくか、人の移動がこれだけ大きなものになってくる中で、日本の国の開き方、そして、特に日本に働きに来たいという外国人労働者の受入れ等々について、二つ、基本的に、議論をしてコンセンサスをつくりながら制度改正をしていかなきゃいけないんじゃないかと思っていました。

 一つは、移民ということに対して、真正面からそれを受け止めて、そして今の入管法を総合的に見直していく、この努力を早く結実していかないと、これは間に合わないという思い、これが一つ。

 それから、もう一つは、それのベースになる言葉ですよね、日本語、これを基本的なインフラとしてしっかり整備をしていくということ、そして、日本に入ってくる人たちに対して、横串を刺して、誰もがそれなりの環境の中で日本語が習得ができるという、そういう形のものをつくっていくべきだろうということ。

 こんなことが私自身の中で課題としてありまして、まずは、自民党の中でもそれに賛同していただいた仲間の皆さんと議連を構成しまして、日本語教育推進法という形で法律を成立をさせることができました。

 その法律に基づいて、今、この国会で上がってくるのが、日本語教育機関というのが、法律の手だてで、なかなか整備、いわゆる質の保証というのがすることができていなかったので、まずそれをやっていこうというので、文化庁の国語課が起案をしてくれまして、その法律をこの国会で議論をしてもらって、質の保証をしていこう、あるいは先生の国家試験というのを確実なものにしていこう、その質の保証をした機関でもって、いわゆる日本語学校、あるいは日本語教育機関で、もっと横串を刺して、国内でひとつしっかりその環境をつくっていこうということ、これを今進めているんです。

 同時に、実は、その推進法の中でもう一つ課題として持ったのは、日本の国内だけじゃなくて、海外の日本語教育、これが基本的にどうなっているんだということです。

 恐らく、日本に来る人たちの入口として、あるいは、これだけ日本のカルチャーというのが世界の中で注目されている、そんな中で、日本にそうした意味で行きたいという人たち、あるいは、日本という国を理解をしてもらう、価値観なり文化なりというのを理解をしてもらうその入口としての日本語ということ、そんなことが様々にあって、ニーズがそれなりにあって、している中で、ここを戦略的に考えていって、どう日本語教育というのを海外で充実をさせていくかということ、これも一つ考えていかなきゃいけないだろうということで、日本語教育推進法の中にしっかり項目を入れていまして、それを担当していくのが外務省ですよということになっているんです。

 そういう前提で、具体的なこれからの企画というか政策を外務省の中で作っているわけでありますが、それをもうちょっと具体的に今日は一つずつ確かめていって、将来の展望に向けて、課題としてありますよということを大臣の頭の中にしっかり整理をしていただいて、外務省の中を督励してもらいたい、そんな思いで今日は質問をしていきたいというふうに思っているんです。

 まず、入口として、日本語の学習者、これが、国際交流基金で、どれぐらい今世界中で日本語を勉強したいという人たちがいるか、あるいは勉強している人たちがいるか、統計的に出ていると思うんですけれども、そこからちょっと説明をしていただきたいと思います。

金井政府参考人 お答え申し上げます。

 一番最近の国際交流基金の調査、これが二〇二二年十一月、昨年の十一月に明らかになったところでございます。

 全世界百四十一の国、地域での日本語教育の実施を確認いたしましたところ、機関数で申し上げますと、一万八千二百七十二機関、これは過去二番目の多さでございました。教師の数は七万四千五百九十二名、これも過去二番目の多さ。そして、委員御指摘の学習者数でございますけれども、三百七十九万四千七百十四名、これは過去三番目の多さでございました。このような結果が出ております。

中川(正)分科員 これがまだこれから増えていくであろう、そういう意味では、日本の存在感といいますか、トータルにして、経済が発展しているということだけじゃなくて、文化ということ、あるいは日本の生きざまというか価値観というものについても、非常に注目をされつつあるということと同時に、インバウンドが恐らく影響しているんだろうと思います。まだあるんですよね。

 そういう中で、国際交流基金に対して、どっちかというと外務省は丸投げ、この分野はしているようなところがあるんだけれども、ちょっと整理するために、その国際交流基金の概要というか、今取り組んでいる日本語の課題というものを、短めでいいから説明してもらえますか。

金井政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、国際交流基金では、まず、海外における日本語教育の推進のため、具体的に、日本語専門家の海外派遣、海外の日本語教師を対象にした研修、オンラインで学習するための教材開発、提供などを行っております。

 そして、委員冒頭に御指摘いただきました、インバウンドの、海外から日本に来ていただく方々のために、まずもって日本語を勉強していただくという観点で申し上げますれば、政府全体で取り組んでおります外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策、これに基づきまして、令和元年度から、外国人材受入れ拡大のための日本語教育事業という事業に取り組んでいるところでございます。

 具体的に申し上げますと、日本で生活、就労する上で必要な日本語コミュニケーション力を、日本に来る前に能力を判定するための試験、この実施をしておりますことと、この試験に最も短期間、最短で合格できる、そういう能力を取得できるための外国人向けの教材開発、こういったものにも取り組んでいるところでございます。

中川(正)分科員 どちらかというと、海外の大学や何かと連携して、海外で日本語を教えることのできる教師の育成というものを中心に基金の活動があるんだというふうに私は理解しているんですけれども、具体的に、今世界で求められている日本語教師のニーズというか、これはどれぐらいのもので、あとどれぐらい頑張らないといけないか、いわゆる目標ですね、これをやはりしっかり認識して作るべきだと思うんだけれども、どれぐらいのものを想定をしていますか。

金井政府参考人 お答え申し上げます。

 教師の水準の御照会でございますけれども、先ほどの国際交流基金の一番最近の調査結果から判明したこと、これは実は、日本語を勉強しようという学生の皆様のニーズが非常に多岐にわたっているということでございます。この多岐にわたったニーズに事細かに、きめ細やかに対応するため、教師の側の水準というのも、ある種、一概に申し上げることは難しいのかもしれません。

 全くの一例で申し上げますと、先般の調査で判明したのは、第二外国語として学校教育で日本語を学習する、そういうことを実施、御希望されている方ももちろんいらっしゃいますし、日本への留学のための日本語学習というニーズもございます。ただ、そればかりではなくて、日本のアニメや文化に誘発された学習ニーズというのもございますし、日本ではなく、現在お住まいの外国での就労、進学のための日本語学習というのも希望している方もおられる。

 こういった多種多様なニーズに柔軟に対応していく、そういった日本語指導方法と申しますか、教師の方の質というのが求められていくということが課題かと認識しております。

中川(正)分科員 ちょっとそれを深掘りしていきたいというふうに思うんですが。

 まず、中学校や高等学校で第二外国語として日本語を取り入れている国々があるんですよね。韓国、あるいは中国も一部そうだし、タイ、インドネシアなんかは物すごく熱心にそうした取組があります。第二外国語あるいは第三外国語として教えている国々の現状をどう把握しているか。そして、先生の派遣要請だとか、日本として派遣することが重要だと考えている人数、こういうのを把握しておかないといけないんだというふうに思うんですが、恐らく、さっきの答弁ではそこまでいっていないんだと思うんです。だから抽象的な答弁で終わっているんだと思うんだけれども、戦略的に考えるとしたら、そういう意味での把握が必要。

 それからもう一つは、タイなんかで要望があったんですが、日本人の先生がタイのこうした学校へ向いて入ろうというふうに思うと、資格を向こうは要求するわけです。これまでは日本語教師の資格というのは民間資格でしかなかったので、今回、文化庁のさっきの話で、これを国家資格にしていこうということで法律を出してもらうことにしてきたんですが、そういうことも解消していかなきゃいけないということ。

 こんなことは、本来は外務省の方からしっかり問題提起をして国内の体制というのを整えていくということが大事なんですが、そこについて、ちゃんとやりますということだけ答えてください。

林国務大臣 大変、委員自身もお取組を進められておられる、日本語についてですね、今大変詳しく御質問いただいたところでございます。

 聞いておりまして、JETが日本に来たときに、やはり、英語を日本の中で普及させるときに、なかなかあれが資格を取るのに大変だったとかいう話を聞いたことがありますので、それの反対から見ればいろいろな問題が見えてくるのかな、こう思ったところでございます。

 まさに、それぞれの国でどういうニーズがあるのか。人数ももちろんですが、今お話があったように、いろいろな資格を取る必要があるのかないのかとか、そういうことを我々が主体的にしっかりと把握することによって、結果としてそれぞれの国でのニーズにしっかりと応えられていくようにする、これがこの法律の趣旨ではないかというふうにも考えておりますので、しっかり対応してまいりたいと思います。

中川(正)分科員 ちょうどさっきJETの話が出ましたけれども、私、文科省を担当していたときに、逆JETをやろうといって、日本の学生をそうした意味で海外へ持っていってということで、今、JICAとそれから国際交流基金がその意図をしっかり受け止めていただいて、やっているんですけれども、ただ、これはこのままだと予算が伸びないんですよね。

 それで、できれば、立地している企業周辺を巻き込んで、滞在費ぐらいはその立地している企業に持っていただいて、更に多くの学生を海外へ向いて出していく。それで、帰ってきたら、やはり、その国のファンになって、その国の懸け橋になって、ちょうどJETが今そうであるように、逆JETもそうやって生きてくるということが分かってきているので、これもひとつしっかり頭に置いていただいて、更に戦略的な広がりを持っていくということを考えていただければというふうに思います。

 さっきは、第二外国語、第三外国語で、中、高の話だったんですが、ほかにニーズとして出てくる領域というのは、日本への留学をやりたい、留学したいという人たちに対する母国での、いわゆる入口の日本語対策。それからもう一つは、日本での就労を求めて準備をしたいという人たちの日本語学習。それから、さっきちょっと話が出てきていますけれども、日本のアニメや文化なんかに誘発されて日本語を勉強したいという人たち。それからもう一つ、最後に、日本にルーツを持つ人々ですね、海外で移住したり、あるいはビジネスで向こうで長期にわたっていて、子供が生まれてきて、その母国語としてやっていきたいんだ、これは以前に提起をさせていただいて、外務省も、それから文化庁も、それに対して今準備を進めていますけれども、そういうこと。こういう類型化というかができるんです。

 そんな中で、まず、日本への留学の準備ということなんですが、これはどういう構造になっているかというと、向こうで募集するのにエージェントがそれぞれ活躍していまして、就労というか働くときにはブローカーと言うんですけれども、留学生の場合はエージェント。これは、日本に関するエージェントだけじゃなくて、韓国だとかヨーロッパだとか、それぞれの国の中でエージェントが活動していまして、これが手数料を取っていくんですけれども、例えば、日本語学校へ来る人に対してあっせんしてくれた人に対して、日本語学校は例えば三十万から四十万ぐらいの相場に今なってきているので手数料として払う。学校が学生を受け入れるのに、エージェントに対してそうした仲介手数料を払っていく構造になっていて、これがアメリカや韓国やヨーロッパと競合し始めていて、どっちかというと韓国の辺りに日本が負け始めてきているというふうな状況になっているんです。

 この場合に、幾つかまたこれも類型があって、大学を卒業した人たちが日本で、日本語学校に来て日本を学ぶケース、あるいは日本語を学んで大学や専門学校に進学して就職するケース、あるいは日本語を学んで特定技能に進んでいくケース、あるいは、何も道筋が分からずに帰国せざるを得ないというようなケース、こういうケースがあるんですが、それぞれを想定して、私は、このエージェントの役割というのを、本当は、日本語学校、日本語教育機関が海外に進出をしていって、日本語学校そのものがそうした窓口というのを海外につくっていくぐらいのビジネスモデルというか、発展的な日本語学校の教育運営というのか、そういうものが一番適しているというか、健全に制度としてつくっていけるものなのではないかというふうに思っています。

 そのことをちょっと考えた上で、外務省として何ができるかというのを取り上げていただければありがたいというふうに思うんです。

 それから、日本での就労を求めて日本語学習をやりたいという人たちは、今のところ、各省庁で、それぞれの制度設計というのは勝手にやっているんですよ。技能実習は技能実習で制度化して、本国でも多少の日本語はやらなきゃいけない。特定技能が今回入りましたけれども。それから、建設分野では、これは国土交通省の設計の中でこの制度はやれと。家事手伝い、あるいはEPAの介護、こういうようなのは経産省とかあるいは厚生労働省とかというような形でやられていて、面白いのは、日系という名でもって日本に定住している人たち、この人たちについては、日本語の制度要求は何にもないんですよ。この人たちは移住していくんです。日本で更新していって、永住許可を得て、それで移民という形で日本に滞在ができる唯一の枠組みなんですが、これに対して日本語に対する教育なり制度なりというのは何にもない。

 そうしたいびつな形で今制度が進んでいるんですが、こんな中で、海外でこれをどう組み立てるか、この人たちに対する日本語教育をということ。

 それから、日本のアニメや文化なんかに誘発された日本語学習だとか、日本にルーツを持つ人々なんかに対しての課題がありますけれども、これは、よく言われるネットだとか独自学習だとかというような部分であるとか、あるいは、日本人学校というのがあるんですよね、ここが今のところ、残念なことなんだけれども、日本に子供が帰ってきたときに受験に耐えられるような教育システムをつくってくれと、これで親が一生懸命になっている。だけれども、私の感覚からいったら、せっかくあそこに文化拠点みたいなものをつくれるんだから、日本語に興味のある在外の人たちもその中に入れ込むようなシステムであるとか、中東では、日本の教育がいいんだというので、王室関係がそこへ向いて子供を入れるというふうなことが始まっていますけれども、そんなような転換であるとか。

 あるいは、さっき申し上げた、日本にルーツを持つ人々、これがしっかり、子供たちのための拠点として日本人学校というのを使えるようなことにしていくとかいうような、そういうことを一つ一つ提起をしていきながら、外務省の皆さんと一緒に、海外に向けての制度展開というか、そういうものを進めていきたいというふうに私は思っているんですけれども、大臣、やりませんか、一緒に。

林国務大臣 大変多岐にわたる分野におきまして、大事な御指摘をいただいたと思っております。私も文科大臣時代に、海外から来られた方が、今おっしゃった中東だったと思いますが、日本人学校に自分たちも入れろという御要望を賜ったことを今思い出しておったわけでございまして。

 文科省で日本語教育機関の認定等に関する法案、これを検討されている中で、一定の教育の質を確保する要件を満たす日本語教育機関の認定制度の創設、これが議論が行われていると承知をしております。やはり、教育の質が保証された教育機関の存在が学習する外国人にとっても大変有益なことである、委員が先ほど御指摘になったとおりだと思います。

 外務省として、これまでも在外公館を通じて日本企業の海外展開を支援してきておりますが、その一環で、法律に基づいて認定された日本語教育機関が海外展開する際、ニーズを踏まえて、同じような支援をしっかりと実施していきたいと考えております。

 外務省として、この日本語教育機関の認定等に関する法案を踏まえて、法律に基づき認定された日本語教育機関に関する情報を海外に広く提供するということも検討しております。これによって、外国人の学生が、日本において認定された日本語教育機関への留学を検討するという一助になれば望ましいと考えております。

 この法律等を踏まえまして、文科省を始めとする関係省庁、連携して、引き続き、海外での日本語教育の推進に努めていきたいと思っております。

中川(正)分科員 積極的な答弁をいただいて、ありがとうございます。

 最後にちょっと申し上げたいのは、法律を今作っているんですけれども、日本語学校そのものがまだ一つになっていないんですよ。協会としてまとまっていない。なので、支援の受皿として、何とか一つになっていって、そこを一つの入口というか、そこがリードして、海外へ向いて、産業として、日本語教育機関として海外を見て出ていく戦略をつくって、それを外務省にしっかり支援をしていただく、あるいは、国際交流基金と連携をしていくような形をつくるということ、これをやっていきたいというふうに思っておりまして、そこのところもひとつ、業界に対して外務省からも、できるんだよというような話をしっかりしていただければありがたい。

 そんな意思表示をしていただいたら、私は業界の方にしっかりそのことを伝えていきたいというふうに思っているんですけれども、どうでしょうか。

林国務大臣 議員連盟が既に立ち上がっておられる、こういうふうに承知をしておりますので、いろいろと御指導、御示唆もいただきながら、我々にできることをしっかりやってまいりたいと思っております。

中川(正)分科員 時間が来たようです。

 ありがとうございました。よろしくお願いします。

辻主査代理 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田昭夫君。

福田(昭)分科員 立憲民主党の福田昭夫です。

 我が国は、明治維新から七十七年後に太平洋戦争で無条件降伏をいたしました。それから七十七年目に入ってから、敗戦後最大の危機にある、こう言われております。

 私は、喫緊に取り組まなければならないことは三つ。一つは、岸田内閣でも取り上げようとしておりますが、少子化対策ですね。中身がはっきりしませんけれども。二つ目は、やはり財政危機ですね。先日、財務大臣とやり取りしましたけれども、財務大臣が挙げたのは財政破綻状態のIMFの定義みたいなものであって、あれではもう財政破綻しているという話であって、その一歩手前の、日本は今、財政危機にあるということだと思います。その対応策も必要だ。三つ目は、デジタル主権危機であります。これはとんでもないことになっていると思っていますので、これについては、ちょっと時間が今日はありませんので、指摘だけしておきたいと思っています。

 政府がそうした危機を踏まえて外交にどう取り組んでいくのかということを是非お聞きしたいと思っています。私も外務省に対する本格的な質問は今回初めてなものですから、林大臣始め答弁者は簡潔にお答えいただきたいと思っています。

 まず、一番、歴史の転換期における日本の外交の指針についてであります。

 一つ目は、歴史の転換期だというのに、引き続き三つの覚悟、普遍的価値を守り抜く覚悟、それから、日本の平和と安全を守り抜く覚悟、地球規模の課題に向き合い国際社会を主導する覚悟、この三つの覚悟で、対応力の高い、低重心の姿勢で取り組んでいくというんですが、これで本当にこの歴史の転換期を乗り越えられると考えているのか、大臣のお考えをお聞かせください。

林国務大臣 二〇二一年十月の岸田内閣の発足に際しまして、厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、先人たちの努力によって世界から得た信頼、これを基礎に、三つの強い覚悟を持って外交を進めるという基本方針を決定をいたしました。

 実は、この三つの覚悟の後に、二〇二一年十月の発足に際して申し上げた後に生じましたロシアによるウクライナ侵略、これが国際秩序の根幹を揺るがし、国際社会が歴史の転換期を迎えるということになるわけですが、その中で、普遍的価値を守り抜く覚悟、我が国の平和と安全を守り抜く覚悟、そして地球規模の課題に向き合い国際社会を主導する覚悟の重要性、これはむしろ増しているというふうに考えております。

 こうした認識の下で、この新たな時代において、あらゆる外交上の課題に瞬時に対応する、対応力の高い、低重心の姿勢で引き続き外交を展開してまいりたいと考えております。

福田(昭)分科員 ありがとうございます。

 私もこの三つの覚悟はすばらしい覚悟だと思いますけれども、しかし、歴史の荒波を乗り越えるのには何か一つ物足りない。それは何だと思いますか。私は、具体的な哲学、理念だと思います。それは、普遍的価値を守りながら、地球規模の課題を解決して、日本の平和と安全を守り抜ける、そういう方法を導いていける思想、考え方だと思います。今日はそれを共に考えていきたいと思っております。

 それでは、二つ目でありますけれども、二つ目は、これはジャーナリストの春名幹男氏の訴えでありますけれども、重要なのはいかに中国との有事を避けるかだという意見にどう応えるかであります。彼は、米国は、経済問題では中国に厳しく対応しているけれども、外交、安保に関しては何とか衝突を避けようと努めているとの指摘があります。

 私は、米国も中国も台湾も日本も、軍事衝突を避けるために、あらゆるチャンネルで平和外交を徹底するべきだと思っておりますけれども、大臣、どうお考えか、お聞かせください。

林国務大臣 台湾海峡の平和と安定、これは我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要でございます。

 我が国の従来からの一貫した立場、これは、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというものでございます。この点、これまでも、一月の日米首脳会談を含めて、米国やG7との間で、台湾海峡の平和と安定の重要性について一致をしております。先般ミュンヘンで行われた会談におきましても、私から王毅外事工作委員会弁公室主任に対しまして、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調いたしました。

 台湾海峡の平和と安定を確保するために、我が国として、こうした立場を中国側に首脳レベルを含めて直接しっかりと伝えるとともに、米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携しながら、各国共通の立場として明確に発信していくということが重要でありまして、今後ともこのような外交努力を続けてまいりたいと考えております。

福田(昭)分科員 ありがとうございます。

 先日おいでいただいたフィリピンのマルコス大統領ですけれども、彼の発言を見ますと、いろいろな環境の中で、米軍に基地を使わせるということについては同意をしたようでありますけれども、しかし、台湾有事に巻き込まれる、そういう心配があるので、有事のときにどうするかについてはまだ決めていない、こういうマルコス大統領の発言があります。まさに、そういう意味ではフィリピンも悩んでいるんだと思いますけれども、そういうことで、やはり台湾の周辺国は同じように、被害を受けないようにということで考えているんだと思います。

 そこで、三つ目でありますが、三つ目は、これは拓殖大学の川上教授の訴えでありますけれども、米中戦争はもう始まっているという意見にどう応えるかであります。

 政府が防衛政策の大転換に踏み切ったのは、米国が戦時体制に移行したからだ、戦争はもう始まっているというのが川上先生の指摘でありますが、現代の戦争は、軍事戦のみならず、経済金融戦、情報戦、サイバー戦、認知戦など、あらゆる領域で戦闘の展開されるハイブリッド戦だ、その戦いはもう始まっていると。その結果、軍事と非軍事、戦時と平時の境目が曖昧になるグレーゾーン事態が常態化している、米中は新しい戦争に、ハイブリッド戦で戦っており、日本も既に巻き込まれているとの指摘がありますけれども、こうしたことに対して、外務省としては、外務大臣としてはどんな認識をされているのか、お聞かせください。

林国務大臣 第三国間、アメリカと中国ですね、第三国の間の関係につきまして予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、米中両国の関係の安定、これは国際社会にとっても極めて重要であると考えております。

 日本としては、引き続き、同盟国たる米国との強固な信頼関係の下で様々な協力を進めつつ、中国に対して、大国としての責任を果たしていくように働きかけを続けていきたいと考えております。

福田(昭)分科員 穏やかな考えでありますけれども、しかし、先日、これも新聞報道ですけれども、アメリカの、米海兵隊のトップのデビッド・バーガー総司令官が、台湾有事で連携を自衛隊としたい、そのとき、自衛隊からは補給してもらうものを拡大していきたい、そういう考えを述べておりますので、そういった意味からは、米軍と自衛隊が一体で台湾有事に対応するんだというのを米国の海兵隊の総司令官がもう言っているような気もするんですけれども、こうしたことに対してはどんなふうに考えていらっしゃいますか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、第三国間の関係については予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、日米2プラス2等におきまして、外務当局と防衛当局が緊密に連携をして日米同盟の抑止力や対処力をしっかりと堅持をするということ自体は、大変大事なことであろうかと思っております。

福田(昭)分科員 それでは、四つ目ですけれども、四つ目は、これは京都精華大学の准教授の白井先生ですけれども、米中和解の仲立ちこそ日本の役割だという意見があります。今日の米中対立は、単なる利害対立ではなく、ヘゲモニーをめぐる争いだ、中国は明らかにアメリカからヘゲモニーを奪おうとしている、利害対立なら落としどころがあるが、覇権争いに落としどころはない、米国は、米中が直接ぶつかると第三次世界大戦になってしまうので、それでは困るので、米国は、中国と直接ぶつからずに、中国を攻撃するための選択肢をそろえようとしている、その一つが日本の反撃能力だ、もう反撃能力を使うことがもし来たら、日本は勝つことも負けることも許されない戦争をやらされることになる、そうならないようにやはり米中の和解の仲立ちをする、それが日本の役割だ、こういう指摘がありますけれども、大臣、どうお考えですか。

林国務大臣 米中対立の現状について、先ほどお答えしたように、第三国間の関係について予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、この両国の関係の安定が国際社会にとっても極めて重要であるというふうに考えておるところでございます。

 まさに、先ほど私が申し上げましたように、日本として、同盟国の米国との強固な信頼関係の下で様々な協力を進めながら、中国に対して、大国としての責任を果たしていくように働きかけていく、それが今委員がお尋ねになったことに当てはまるのかどうかというのは委員の御判断でございますが、我々としてはしっかりとこうした外交努力を続けていきたいと思っております。

福田(昭)分科員 ありがとうございます。

 実は、この春名先生も川上先生も、そして白井先生も、三人とも共通しているのは、台湾有事があれば必ず日本が巻き込まれる、そうならないようにそれぞれ努力しようという考え方なんですね。

 ですから、そういう意味では、本当に台湾有事がもしあったとすれば、被害を受けるのは実は日本人だし、日本なんですね。それを絶対させてはならないというのがこの三人の意見でありまして、私もそうすべきだというふうに考えているんですが、そこはなかなか大臣からは細かい話は、具体的な話は得られませんでしたけれども、是非、歴史の転換期だというのであれば、ここはしかしアメリカとも正々堂々としっかり議論をして、日本の平和と安全を守るべきだというふうに思っております。

 それでは、次に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化についてであります。

 一つ目は、これは時間の関係で、申し訳ないんですが、G7議長国及び安保理非常任理事国として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するために具体的に何をするのかですけれども、説明は一々結構ですので、項目だけお答えいただければありがたいと思います。

林国務大臣 まずは、コロナ禍に見舞われた中で、国際社会がロシアによるウクライナ侵略に直面しております。そうした中で、ロシアが行っているのは核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないということで、断固として拒否をしていかなければならない、こういうふうに思っております。

 国連と安保理が試練を迎える中で、国連の非常任理事国として、まず、各国との緊密な対話を通じて、安保理が本来の責任を果たせるように積極的に貢献をしていくということでございます。

 また、国連憲章の理念と原則に立ち戻って、国連の信頼を回復するために、国連自身の機能強化に取り組んでまいります。

 さらに、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の重要性が一層高まる中で、日本は、外交的取組を強化する新たなプランの策定を進めるとともに、日米豪印の枠組みに加えまして、ASEANや欧州、大洋州、中南米、こうしたパートナーとの間でFOIPの実現に向けた連携を強化していきたいと考えております。

福田(昭)分科員 いろいろお話しいただきましたけれども、例えばですけれども、インド太平洋では新たなFOIPプランを作るんだとか、あるいはASEANとの新しいビジョンをつくるんだとか、それから、安保理改革をやるんだとか、国連改革をやるんだとか、そんな具体的な項目をいただければと思っておりましたが。

 やはり私は、これだけ時代の転換期にあっては、米国とはこれから、それこそ半恒久的に仲よくするためにも、時間をかけて、それこそ太平洋戦争敗戦後百年目を目指してもいいと思うんですが、それぐらいの時間をかけて日米地位協定をしっかり直していくということをやはり取り組むべきだと思うんですね。

 これは、米国の公文書の公開では出てきていますけれども、外務省は認めておりませんけれども、やはり大きな密約が三つあると言われていますね。一つは治外法権、二つ目は基地権、三つ目は指揮権。

 特に、基地権では、北方領土が返ってこなくなっちゃった、これはまさに基地権の問題でもあるし、さらには、いまだに米兵や米兵の家族たちはパスポートなしに日本に出入りできる、そういう治外法権もあるということ。これもやはり、とてもとても国際法に違反するような話ですから、そういうものもやはりしっかり、普通の国同士の外交にすべきだと思います。

 それから、今般まさに反撃能力の話もありましたけれども、やはり、もし米軍と自衛隊が一体で戦うということになっちゃったら、まさにこの指揮権が発動される話にもなりますから、そういう意味ではこういう問題を、それこそ朝鮮戦争のときのような、こうした約束をやはりしっかり正々堂々とアメリカとも議論すべきだというふうに思っております。

 それは、私は前の杉山大使から、アメリカはジャスティスの国だ、正義の国だという話も聞いておりますので、そういう意味では真正面からしっかり議論をしてやる時代に入っちゃっているのかなと思っております。

 それでは次に、二つ目の、デジタル貿易に関する日本国と米国との間の協定の問題点について。

 これは後ほど、今度は特別委員会が、地域活性化と子育てとデジタルの三つが特別委員会になりましたので、そちらの方で改めて質問させてもらいたいと思っていますが、ただ、私がびっくりしておりますのは、デジタル日米貿易協定で、ガバメントクラウドを、政府共通のガバメントクラウドと、それから政府が権限として発注した地方自治体のガバメントクラウド、これがこのデジタル日米貿易協定で除外されているというのが非常に不思議です。ですから、これは、何となく、大きな力が働いてこんなことになっちゃったのかなと思っておりまして、大変大きな疑いを持っておりますが、これはまた後ほど、別な機会に、デジタル庁あるいは総務省にただしてまいりたいと思っています。

 それでは、三番目の、安全保障上の課題への対応についてであります。

 まず一つ目が、日本の安全保障に関わる総合的な国力の要素の第一は外交力だというんですけれども、五年間で約四十三兆円という防衛力の強化策に裏打ちされないと力強い外交は展開できないのかという話であります。

 元海上自衛隊の自衛艦隊司令官ですか、香田洋二さんが、五年間で四十三兆円というのは身のほどを超えている、現場のにおいがない、新聞でそんな指摘をしております。

 また、共同通信の世論調査では、防衛増税が、不支持六四%。年齢層別では、若年層、特に三十代以下が最高の七五%。そして、首相の説明、岸田総理の説明には、八七%が不十分だ、こういうまさに国民の意識であります。

 そんな中で、是非もう一度考え直してほしいと思っていますが、しかも、政府が出してきた防衛力強化予算の内容が余りにも不安定な財源ばかりで、これでは余りにも、それこそ安保三文書もそうでありますが、余りにも拙速な取組でありまして、これはやはりしっかり考え直すべきじゃないかなと思っております。これは外務大臣の範疇じゃないかもしれませんが、そういう指摘をしておきたいと思います。

 そんな中で、実は、これはやはり新聞で、早稲田大学の鎮目教授が、経済力こそ国防の基盤だ、国防費の増加分だけ国内の生産資源が費消すると。つまり、国防費が増えればそれだけ国内の生産能力が下がってしまう、こういう話ですね。二つ目は、石橋湛山の小日本主義の主張が戦後の高度経済成長で実現したと。そして三番目が、経済成長しない日本には防衛費の負担が重くなると。つまり、それこそ政府の政策で、経済は成長しなくてもいいんだというのをしばらくやってきましたから、そうすると、まさに防衛負担が重くなってしまうというのが今の日本の財政危機の状況であります。

 そんなことを考えれば、まさに、経済をしっかりしていく、財政をしっかりしていく、そっちの方が優先であって、装備品をそろえようと思っても実は財源も足りない、こういう話でありますから、まず優先すべきは何かというのをしっかり考えてやはりやっていく必要があると思っていますから、そういう意味で、先人の、特に石橋湛山が考えていたような、先人に学んで外交努力というのをやはりやっていくべきだと思いますけれども、大臣、いかが思われますか。

林国務大臣 先ほど委員がおっしゃったように、必ずしも外務省の所管ということではない部分もございましたけれども、今、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化することの重要性、これはより一層高まっているというふうに思っておりまして、こうした中で、まず優先されるべきは積極的な外交の展開であろうと考えております。

 同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要でありまして、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で国民の命を守り抜けるのかという観点から、防衛力の抜本的強化を具体化をしたところでございます。

福田(昭)分科員 私は、日本は今も、太平洋戦争に突入したときと全く同じだと思うんですよね。要するに、短期決戦なら勝てることもあるかもしれない。しかし、継続戦になったら絶対勝てない。ですから、絶対戦争をやっちゃ駄目だというのが私の考えであります。

 しかも、戦争は、私が申し上げるまでもなく、人権侵害の最大のものですから、こんな反道徳的なものをやることは、絶対やっちゃ駄目だ。また、太平洋戦争に従事した人からも、私もそういう話は受けております。まさに、殺し、殺される、そういう体験をしてきた人たちは、戦争は絶対やるな、私もそんなことを先輩から聞かされております。そんなことを考えると、やはり、いかにして戦争をしないようなことを考えていくかということが大事だというふうに思っています。

 済みません、あと五分になっちゃったので、ちょっとはしょっていきますけれどもね。

 三の括弧四に行きますけれども、日本が戦争ができない大きな二つの理由ということで、財政危機と原子力発電所について述べたいと思いますが、今申し上げたように、私は、絶対戦争はやってはいけない、そう考えている一人です。それこそ、体を張ってでも戦争をやめさせる、そういう考えをしております。

 そんな中で、米国からせっかくいただいた憲法九条、これをどこまでも生かしていったらいいと思っています。これは日本人が作ったんじゃないんだ、米国からもらったんだと言っておりますが、もし本当に米国からもらったのなら、こんなありがたいことはないじゃないですか。

 この憲法九条を使って、それこそ、集団的自衛権も行使をしない、専守防衛に徹するということで、今までのそれこそ自民党政権がやってきた、そのことを逸脱しないというのが私は基本だと思います。

 その上で、どうしても戦争をやらざるを得ないと思われる人がいるとしたら申し上げたいと思っていますが、日本は、そういうもしものことがあって戦争したい、しなくちゃならないと思っても、できないんですよね。

 その理由が二つです。

 その一つは財政危機。先日も、財務金融委員会で鈴木大臣が、まだ日本は財政危機じゃないんだ、こう言いました。その理由が、IMFのケースというか基準だと、実は、財政危機の三つ、三つも挙げたんですけれども、一つが債務の不履行、それから二つ目がIMFなどから多額の、大規模なお金を借りている、三つ目が市場の信頼がないと。でも、これはもう財政破綻状態ですよね。国だから財政破綻はしませんけれども、もう財政破綻状態。太平洋戦争に負けたときの状態がこれですから。

 ですから、これだったら財政危機どころじゃないというのが私の認識でありまして、したがって、もう軍事費といいますか防衛費は捻出することができないというのが日本だ、今のままではですよ。私は、税制の抜本改革をしろ、こう言っていますが、税制の抜本改革をしない限りはとてもとても財政健全化に、まあ、抜本改革しても、すぐには余力は出てきませんけれども。三十年かけて、それこそ一千二百兆円の借金をため込みましたから、ですから、少なくとも三十年の財政健全化計画を立てないと健全な財政にはならないと思っていますが、そんなことを考えれば、ちょっと無理だ。

 それから、原子力発電所ですね。皆さんのお手元に資料を出させてもらいましたが、現在、日本には六十基の原子力発電所があります。もちろん、廃炉を決定したものもありますけれども。しかし、北海道から九州までこんなに造っちゃった、これはまさに自民党政権の大失敗ですよ。負の遺産です、これ。しかも、一か所に何基もあるなんという国は多分ないと思いますよ。特に、新潟は七基ですし、廃炉を決めた福島第一原発は六基で、しかも、ここにはあと二基造る土地が実は確保してあったんです、七号機、八号機とですよ。

 ですから、これはみんな、これに使用済核燃料まであるわけですから、まさに原子爆弾何発分持っているか分からないぐらい我が国は持っているわけです。したがって、これで本当にミサイルを撃ち込まれたら大変な話で、これは絶対やっちゃいけない、できない、私はそう思っております。

 その辺で、次の括弧五に行きたいと思っていますが、括弧五、石橋湛山に学んで、外交政策をやはり遠くを見詰めて改めていくという考えが必要じゃないかと私は思っております。

 資料の二を見ていただきたいんですが、これは昭和二十四年、五年だったかなと思いますが、これを見て、きっと覚えている方はいらっしゃるでしょうけれども、吉田茂首相と石橋湛山、多分このときは大蔵大臣だったのかな、今市にあります、私の地元にあります報徳二宮神社に参拝したときの写真です。石橋湛山翁は、熱心な報徳道の実践者でありましたから、まさに総理を誘って来たんだと思います、これ。

 その次、資料の三を御覧いただきたいと思いますが、これは、戦後の復興は二宮尊徳翁に学べ、なぜなら、尊徳翁は近世日本が生んだ最初の民主主義者なんだ、尊徳の教えは真理だから時代を超えて通用する、こう言っていたのが、GHQの当時の新聞課長、インボーデン少佐です。このインボーデン少佐も、今市の報徳二宮神社を昭和二十五年にお参りをしていた。

 その後たくさん話はあるんですが、時間が来てしまいましたので終わりにしないといけないと思いますが、ですから、その後、中国の劉金才教授の話もありますが、アメリカや中国の、超大国の二つの国の、二宮尊徳思想をちゃんと評価している、高く評価している人たちがいる。この思想は、みんな仲よく暮らそう、こういう話なので、是非、外交の方針にこういうことを入れていただければありがたいというのが今日の私の話でした。

 ちょっと時間超過して済みません。ありがとうございます。

辻主査代理 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、小田原潔君。

小田原分科員 小田原潔でございます。

 今日は、昨年一年間お仕えいたしました林大臣に質問させていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 早速質問に移りたいと思います。

 一年間、実に、こんなところで言うのもあれですけれども、充実し、また、やり切った一年間を過ごすことができたと思います。その記憶は、まだ新しいところがございます。

 よくできたなと思うことの中に、昨年の六月八日、九日、国連におきまして、八日が国連総会、そこで演説をいたしました。九日には国連安保理の非常任理事国の選挙があり、その選挙に参加をし、我が国は、十二度目の非常任理事国ではありますが、安保理のメンバーになったということであります。

 ところが、残念ながら、安保理自体の我が国の任期は今年から二年間でありますから、私は安保理のメンバーとしての仕事はできなかったわけでありますが、まだまだその後の様子が気になるわけであります。

 残念な話ではありますが、グーグル検索などで国連と打つと、上から二番目に、国連機能不全というのが勝手に出てきます。そこをクリックすると山ほど、皆さんが想像のつくような嘆きが記事だったり社説だったりに出てまいります。報道によると、我が国も昨年の十二月十四日、安全保障理事会において山田副大臣が国連の信頼回復について発言されたようにお見受けをしております。

 安保理と国連が機能していないという指摘が世の中であるということに関し、大臣はどのように認識されているか、お聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 小田原委員におかれましては、昨年一年間、大変お支えをいただきまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。八面六臂の御活躍をいただきました。

 今お話があったように、安保理ですが、ロシアのウクライナ侵略、北朝鮮の核・ミサイル活動、こうしたものに対して有効に対応できていないというのは事実であろうというふうに思いまして、国連は試練のときにあると申し上げてきております。

 他方、安保理が各地の紛争の解決に一定の役割を果たしているという面もあって、多くの国がなお安保理に期待を寄せているというのも一方の事実であります。例えば、昨年十月のハイチに制裁を導入する決議案、また、今年一月になりましてシリア越境人道支援決議案、それぞれがコンセンサスで採択をされておりまして、安保理が本来の機能を発揮した場面もあったということでございます。

 そして、安保理での拒否権行使に対して、総会が一定の役割を果たし始めた面も出てきております。

 昨年の五月ですが、安保理において、対北朝鮮措置を強化する安保理決議案が中国とロシアの拒否権行使により否決されました。これを受けて、いわゆるリヒテンシュタイン決議に基づいて、六月に、拒否権を行使した両国にその説明を求める国連総会会合が開催されたところでございまして、まさに当時の小田原副大臣がここに出席していただいて日本の立場を明確に述べられたということであったわけでございます。

 安保理において、非常任理事国として、各国との緊密な意思疎通そして丁寧な対話を通じまして、この安保理が本来の役割を果たすように努力をしていきたいと考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 山田副大臣は、十二月の十四日の発言の後、記者団に対して、国連の改革をどういうふうにしていくのかという質問に対して、なかなか全ての国を満足させる案がないという趣旨のことをお話しになりました。

 その苦悩はよく分かるわけでありますが、さはさりながら、せっかく安保理のメンバーになったわけですから、この二年間を使って理事国としてどのように安保理や国連に貢献していかれるか、その意気込みをお聞かせください。

林国務大臣 安保理はロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の核・ミサイル活動に対して有効に対応できていない、申し上げたとおりであります。

 我が国は、非常任理事国として、緊密な意思疎通と丁寧な対話を通じて、今、小田原委員からあったように、安保理が本来の役割を果たすように努力をしてまいらなければならないと思っております。こうした取組の一環として私が行いましたのが、安保理議長として行った、法の支配に関する安保理の閣僚級公開討論であります。

 ロシアのウクライナ侵略等により加盟国が分断され得る状況を念頭に、各国に団結を呼びかけるために、法の支配のための結集、ユナイティング・フォー・ルール・オブ・ローということで、私から呼びかけをいたしたところでございます。これに対して、参加した計七十七か国等の多くから、時宜を得たテーマとして歓迎されました。

 特に、中小国にとってこそ法の支配が重要であるとの多くの指摘が強く印象に残ったところでありまして、こうした取組を通じて、力による支配ではなく、法の支配の重要性に関する認識が国際社会に一層深く共有されることも期待しております。

 そして、安保理改革については、やはり、議論のための議論ではなくて、行動を開始するべきだという考えでございまして、昨年の国連総会の際のG4、日本、ドイツ、インド、ブラジル、このG4の外相会合において、そのために、文言ベースの交渉開始に向けた連携を再確認したところでございます。

 各国の利害も複雑に絡み合う安保理改革、これは決して簡単ではないわけであります。引き続き、G4や、米、英、仏、アフリカ、こうした国を含む多くの国々と連携しながら、我が国の常任理事国入りを含む安保理改革の実現に向けて粘り強く取り組んでいきたいと考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 確かに、中小国と言っていいのかどうかあれなんですけれども、割と規模の小さめの紛争ですとか問題については、国連はいまだに機能していて、かつ期待をされているというふうに私も副大臣時代に感じました。

 ただ、大きいことと申しますか、大国自身が法の支配を無視するようなことをしたとき、また常任理事国同士の利害が一致しないときに機能不全に陥るということは全く変わっていないのではないかというふうに感じます。

 国連改革が本格的に検討されてもう二十年ぐらいたつわけでありますが、幾つかの検討項目についてお考えを聞かせていただきたいと思います。

 今まで、十分に、いろいろな改革案ですとか、いいところ、悪いところを表や資料にされているのを私も見たことがありますが、確かに、表にするのが仕事なのではなくて、改革を実行するのが仕事なわけであります。

 ただ、よく考えると、我が国は国連加盟後、世界第二位の、今は第三位になりましたけれども、拠出金を出し続けている国であります。我々の感覚からすると常任理事国になって当然だというふうに思いますが、どのように我が国は捉えているのか。もしも常任理事国になるべきだというのであれば、どのような努力をされてきたのでしょうか。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 一九四五年に国連が創設されて以来、七十五年以上が経過し、加盟国の数は約四倍に増えるなど、国際社会の構図は大きく変化いたしました。しかし、安保理の構成はほとんど変化しておらず、現在の国際社会の現実を反映するよう、常任及び非常任の双方の議席を拡大することが重要であると考えております。

 日本は、御指摘の財政面のみならず国連に貢献してきており、これまで、加盟国中最多の十二回目の非常任理事国を務めております。我が国として、常任理事国入りすることにより、国際の平和と安全の維持という安保理の責任を十分果たせるよう貢献できると考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 私自身も、我が国は一貫して平和を守り、また相応分の敬意を受ける大国になってきたわけであります、これだけの国を常任理事国にしないままにするというのが国際社会の良識であり続けるわけがないというふうに信じているわけですけれども、ユナイテッドネーションズを連合国というのからいつの間にか国際連合というふうに訳したのは、きっと大先輩たちが、我々は連合国に加盟しましたというと、あたかも、無条件降伏した後、軍門に下ったというような情けない気持ちに国民をさせたくないという忖度ではないかというふうに思います。

 実は、外務省の方に、一番初めにユナイテッドネーションズを国際連合と訳したのはどこの誰かというのを調べてくれと言っているんですけれども、大変興味があるところであります。

 そういった加入の経緯から我々が常任理事国になれていないという理由があるような気がしてならないわけですが、私たち日本人は暗黙のうちに、我が国が常任理事国になるべきだ、しかも、なったら拒否権を持つべきだというふうに感じている人が多いと思いますが、この点、いかがでしょうか。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 拒否権につきましては、安保理改革の様々な論点の中でも、特に各国の利害が絡み合う複雑な問題であり、新常任理事国が拒否権を持つべきとの立場から、持つべきでないとの立場まで、様々な立場が存在いたします。

 我が国として重要と考えているのは、改革実現に向けた具体的な行動を開始することでございます。拒否権の問題を含め、議論のための議論ではなく、文言ベースの交渉を開始し、その中で解決していくべきと考えております。

 拒否権の問題を含め、各国の利害が複雑に絡み合う安保理改革は決して簡単ではございませんが、引き続き、G4や、米、英、仏、アフリカを含む多くの国々と連携しつつ、粘り強く取り組んでいきたいと考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 昨年、第二版が出たのと同時に、日本語版が出た本があります。アミタフ・アチャリアさんというアメリカン大学の教授、ハーバードとかでも教えていた、インド系のアメリカ人の国際政治学者です。アミタフ・アチャリアさんが書いたアメリカ国際秩序の終えんという本があります。原題はジ・エンド・オブ・アメリカン・ワールド・オーダーというんですけれども。そこで、アミタフさんは、国連が機能しない以上、地域的な枠組みがこれからは機能するというような論陣を張っています。これは後で述べたいと思いますが。

 国連安保理に拒否権があるという元々のスタートが、当初、終戦処理をする際に、特に米国のルーズベルト大統領が第二次世界大戦の原因がブロック経済をつくってしまったことにあると強く信じていたからだという記述があります。したがって、当初はいろいろな地域の枠組みをつくろうとするのをアメリカ合衆国は邪魔した節があるんですけれども、初めの理想は、世界に平和をもたらした戦勝国五か国が、一番大事なことは全会一致で決める、そして、国際秩序を守る国際機関はたった一つ、国連だけだという、その国連中心主義を強く信じていたからだという記述があります。残念ながら、五年ぐらいでそれは別々の方向に発展し始めて、すぐさま機能しなくなっているということだと思いますが。

 この話を海外で、ブラジルに行きましたときにブラジルの要人とお話をしましたら、小田原さん、あなたの意見には賛成できないと、しょっぱなにぴしゃりと言われて。それは、我々は、国連は改革するべきだ、安保理も改革するべきだと思うが、そもそも拒否権に反対している、したがって拒否権をなくすべきだというお話をされました。そうすると、拒否権のない常任理事国というのはどういう意味があるかという問いにも発展しかねないんですが。

 拒否権をなくす、なくさないという観点についてどのようにお考えか、お聞かせください。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、拒否権など常任理事国の権利及び特権の停止は、国連憲章上、常任理事国の同意なしにはできないという側面がございまして、その意味で、拒否権をなくすということは現状ではなかなか一筋縄にはいかないというのが現実の問題としてございます。

 こうした中で、拒否権の問題への対応として、昨年四月には、安保理常任理事国が拒否権を行使する場合にその説明を求める国連総会の会合を開催すること等を主な内容とする国連総会決議がコンセンサスで採択され、我が国も共同提案国入りしました。

 また、政府としては、従来から、常任理事国による拒否権の行使は一般に最大限に自制されるべきと考えております。こうした観点から、我が国は、大規模な残虐行為については常任理事国五か国が自主的に拒否権行使を抑制すべきとのフランスとメキシコによる提案を支持しているところでございます。

 また、米国のバイデン大統領は、昨年九月の国連総会の一般討論演説におきまして拒否権行使を抑制する旨表明しております。ロシアのウクライナ侵略によって国際秩序が未曽有の困難に直面し、国連が試練のときにある中で、国連と安保理の信頼を回復するためにアメリカがこうした立場を表明したことを歓迎しているところでございます。

 いずれにせよ、このように、拒否権の問題を含め、安保理の改革は簡単ではございませんが、引き続き、多くの国々と協力し、安保理改革に向け、積極的に活動していきたいと考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 事ほどさように、国連の枠組みから外れずに国連改革を、特に安保理改革をするというのは、みんなの意見が一致しない限りは前に進めない、その性質上、極めて今まで苦労をしてきているわけでありますし、先行きの見通しもなかなか立たないというのが現実でありましょう。

 よく、そうであれば、いわゆる第二国連、例えば、我が国がアメリカ合衆国や西側の先進国と一緒に主導して新国際連盟みたいなやつをつくって、この指止まれとやったらどうなるか、きっと百八十か国ぐらいは来るだろうと。そうすると、いつも拒否権を使う常連の二か国を置き去りにして新しい世界秩序をつくろうじゃないか、ざまを見ろという。気持ちは分かるんですけれども、仮に二国を排除した新しい国際機関ができたとしても、ではロシアのウクライナ侵略は止まるのか、台湾への挑発や傲慢な態度が変わるのかというと、きっとそうじゃないと思います。したがって、実は国連があろうがなかろうが大国のわがままをどう止めるかというテーマは消えないということなのではないかと思います。

 アミタフさんは、国連が機能しない場合、それぞれの地域の枠組み、今はブロック経済とは全然成り立ちが異なりますし、それぞれの枠組みに、オブザーバー参加するほかの地域の代表が加わっています。我々だって、NATOにオブザーバーとして出席をいたしますし。そうやってオブザーバー国がスポークの役をして、単なる地域の独りよがりの枠組みから新しい段階に、また新しい役割を果たしているという論陣でありまして、私も、確かにそのとおりだと思うところが大きゅうございます。

 ただ、それぞれの地域的な枠組みというのは、それぞれ、歴史的な経緯とか、何でできたかというのが異なります。例えばNATOは、第二次世界大戦にアメリカが参戦したときの名残がいまだに残っている。あのときは、我が国も含めて、もしかしたらヨーロッパ中がナチス・ドイツになっちゃうんじゃないかという思いがあった時期が一瞬ありました。だからこそ、我が国はドイツと三国同盟を組んだし、チャーチルは何としてでもアメリカ合衆国を参戦させたかった。

 ただ、アメリカ合衆国も、選挙で選ばれる政権ですから、自国の若者をはるかかなたのヨーロッパに行かせて銃を持たせるというのは、相当の国民への説得が要ったわけであります。さらに、行って戦ってあげる限りは俺たちはアメリカ合衆国の法律しか守らないよといって、地位協定がNATOでできた。決して我が国が戦争に負けたから地位協定があるというわけではないわけでありますが、その結果、今でも、前の米国大統領が、普通は内政干渉と言われても不思議ではない、防衛費は二%を必ず使うようにというようなことを言っても大きな批判を受けないというのはそういうことでありましょう。

 他方、ASEANは、旧盟主国とは全く関係なく自発的にでき上がった。かつ、それは、経済的にも軍事的にも当初は余りに小さ過ぎて、大国と話をする際、団体交渉をしないと話をしてもらえなかったからという切実な理由があったと解説しています。現在、ここ二十年間で、経済的にも非常に成長して、ASEAN加盟国自身が大きな自信をつけていますし、今のところアジアで最も成功した国際的枠組みと言われています。

 ただし、経済の話は非常にうまくいくし、自信もあるんですけれども、軍事の話になると、やたら腰が引ける。その理由として、二百年間、それぞれの国が植民地であったときの苦い思い出がまだ消えなくて、武力で反抗しようとしてめった打ちにされた記憶が離れない、したがって軍事の話になるとどうしても両方の意見を聞きたがるというような解説までついています。

 実は、これも、去年邦訳が出た、イギリスの歴史家で、ウィリアム・ダルリンプルさんという方が書いた略奪の帝国という本があります。上下巻に分かれて、東インド会社の設立から滅亡までが書かれているんですが、原題はアナーキーというんです。

 僕らは、一六〇〇年に東インド会社ができましたぐらいしか実は知りませんけれども、当時、東インドだけじゃなくて、アフリカ会社とか東欧会社とか、官民が連携してつくった商社が既にあって、一六〇〇年に、徴税官といったかな、いわゆるロンドンの税務署長が今で言う商工会の役員みたいな人たちにそれぞれ二百万円ぐらい出させて会社をつくり、初めはとても丁寧に向こうの王様と、港を造らせてもらえませんかとか、商工会議所の建物を造らせてもらえませんかとやるんですが、フランスも同じことをし出して、一度、フランスの人たちがイギリスの商館を襲ったりし出した。

 その紛争の中で、フランス人がある貴族を殺してしまって、インド人のですね、そこにイギリス人が介入して、跡目争いの応援をし出す。フランスの商社は反対側を応援する。何だか今でもすごく似たような構図、また我が国の幕末にもすごく似たような感じがするんですけれども、そのうち、ロンドンから遠く離れているのをいいことにやりたい放題、最後は王様に、徴税権と行政権を東インド会社に譲るという契約までさせて、結果的に一八〇〇年の後半に破綻して、それを国有化した結果、インドがイギリスの植民地になった。

 要するに、私たち普通の日本人は全然知りませんけれども、商社が軍隊を持って好き勝手やったのが国有化されたので、好き勝手やっていた土地が植民地になったという、まあ何とも、人類史の観点から見ても嘆かわしい。その間、イギリス人も相当戦争で殺されていますが、インドの人たち、しかも、三つあった帝国の人たちがみんな血を流している。

 したがって、これから最後の質問に移るわけですが、アジアの人たちを軍事的な枠組みに本気で入れるというのは、席に着かせるだけでも大変だと思いますし、席に着いたらそれで終わりだと思っては決していけなくて、必ず、いざというとき、一緒に行動を取ってもらうということが大事ではないかと思います。

 今日、実は、昼に、フィリピンの外交委員会の皆さんが、我々衆議院の外務委員会黄川田委員長の下、一時間面談をしました。そのときに黄川田さんは随分、台湾有事があったときにフィリピンは一緒に行動してくれるのかという質問を再三しました。結構のらりくらりとかわしていて、やはり、アジアの人たちは、中国を敵に回すとか、どこかと一緒に武器を取るということに関しては相当抵抗があるように私には感じました。ちなみに、一団は一人を除き全員が女性だったので、非常に感心をいたしました。

 さて、最後の質問です。国連が機能しない場合、個別の課題にどのように対処していくのか、大臣から意気込みを教えてください。

林国務大臣 委員から大変興味深いお話を聞かせていただきました。

 そこでもお話がありましたように、まずは国連の機能強化に取り組まなければなりませんが、やはり、諸課題に対しまして国連の外の枠組みを機動的に組み合わせる、これも重要であるということだと思います。

 今回のウクライナ危機に際して、国連がなかなか機能しない中で、緊密に連携し、最も効果的に対応してきたのがG7であるわけであります。来る広島サミットでは、力による一方的な現状変更の試みや、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはならないということで断固として拒否して、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのG7の強い意思を力強く世界に示したいと思います。

 また、今インドのお話がありましたが、このインドも含まれた日米豪印という枠組み、これは、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた幅広い分野の実践的協力を進めているところでございます。さらに、欧州諸国やEU、そしてNATOとも連携を強化してきております。

 引き続き、こうしたいろいろな枠組みを活用しながら、志を同じくする全ての国々とともに法の支配に基づく国際秩序を守り抜いていきたいと考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 最後に、申し添えたいと思います。

 九月の八日に、CSIS、戦略国際問題研究所のクリストファー・ジョンストン日本担当部長が、赴任のタイミングで自民党本部に来てお話をしてくれました。そのときにクリストファーさんが、私たちはこの一年間の日本外交を大変高く評価しているというふうに言ってくれました。

 具体的には、ウクライナに対する経済制裁を米国とほぼ同時にすぐさまやったこと、そのおかげで韓国とオーストラリアが追随し、ウクライナ侵略がヨーロッパの遠い出来事ではなくなって、世界の秩序に対する許せない挑戦だという物事に変わったということを感謝してくれました。また、我が国が主導して、FOIP、クアッド、そしてIPEFなど新しい、対中というと露骨ですけれども、枠組みを主導してつくってくれていることにも謝意を述べてくれました。

 まさに岸田外交、そして林外交の国際的評価であろうと思い、敬意を表して、質問を終わります。ありがとうございました。

辻主査代理 これにて小田原潔君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

辻主査代理 次に、財務省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。沢田良君。

沢田分科員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、予算委員会第三分科会で初めて質疑をさせていただきます。

 私、先週末の予算委員会で、国家公務員の働き方についてや、鈴木財務大臣へ委員会開会日のスケジュール等を伺わせていただきました。早い日は朝六時から打合せされるというときもあるとおっしゃっていました。

 その準備をする財務省の皆さんは、それこそ夜中まで、若しくは早朝まで御準備をなさっています。分科会は十八時までと通常の予算委員会より更に一時間長い日程となりますことを考えると、やはりいま一度、開催時間など抜本的な部分から考える必要があると改めて申し上げると同時に、本日多くの皆さんの御尽力でこの委員会が開会されることに感謝をして、私も、日本をよくする、前へ進めるために、しっかりとした議論をさせていただきたいと思っております。

 鈴木財務大臣を始め関係省庁の皆様、委員部の皆様、そして主査、本日もよろしくお願いいたします。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 国民の皆様にとってとても身近でありながら非常に分かりにくいものでもある税金は、本来、簡素、公平、中立という原則で考えられます。ただ、そういった税に関する制度の中でも例外として位置づけられている租税特別措置について、本日は取り上げさせていただきます。

 租税特別措置とは、読んで字のごとく、税金の特別な措置となり、多くの一般の方の身近な暮らしにも影響しているものです。具体例を挙げますと、住宅ローン減税、マイカーローン減税なんというものがありますし、最近よく聞くものでいえば、賃上げ税制、ガソリン代に関するトリガー条項、又はNISA、これも金融所得に関連する租税特別措置の一つです。

 まずは、租税特別措置法で定められているこの減税措置の概要について、インターネット中継等で御覧になっている国民の皆様にも分かりやすいよう、財務省より御説明をいただきたいと思います。

 先ほど述べましたように、例外的な措置である租税特別措置の制度がなぜ設けられているのか、いつからどのように行われているものなのか、また、直近の措置による減収額も教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 租税特別措置の目的でございますが、租税特別措置は、基本的に、特定の納税者の負担を軽減することにより特定の政策目的の実現を目指すという性格のものでございます。

 現行の租税特別措置は租税特別措置法において定められており、租税特別措置法は、その前身とされる臨時租税措置法が昭和十三年に創設され、一定の改廃を経て、昭和三十二年に現行法が成立し、施行されてございます。

 それから、租税特別措置による減収額でございますが、現在、法人税関係の租税特別措置による減収額は、令和三年度の実績推計額を申し上げますと、減収額全体で約一・九兆円というふうになっております。

沢田分科員 どうもありがとうございます。

 まずは租税特別措置の概要と意義について御説明をいただきました。

 これらの措置は各省庁の様々な政策実現のために行われており、政策減税と呼ばれることもあります。私も財務省さんから御説明いただいて驚いたのですが、個人的に、全体としては四百項目に及ぶということも説明を受けました。

 これだけ多くの項目でこれだけ大きな金額を減収しているということは、各省庁にとっても政策手段として使い勝手がいいということなんだろうと推察いたしますが、ここで疑問に思いますのは、減収額に見合った政策的な効果が出ているか否かをしっかり検証できるのか。また、こうした減税措置が、簡素、公平、中立といった租税の原則から著しくかけ離れたものになってはいないだろうかということになります。

 また、減収額が、先ほど教えていただいたように、一・九兆円と大変莫大な金額となります。本来様々な企業から国に納めてもらうはずだった税金がこれだけ減税されているということになります。消費税にしたら約一%分であり、昨今の防衛費増額分で足りないと言われる一兆円という金額の約倍でもありますことを考えると、増税の議論をする前に、この措置そのものをやめることも我々国会で議論をしていかなければいけないとは強く感じております。

 租税特別措置には一定の政策的効果が見込めるということで、ある意味では使いやすく有用なスキームであるとも言えますが、一方で、それが透明で公正、公平であるべき税の在り方をゆがめているとすれば、大きな問題となります。

 そこで、財務省に確認をさせていただきます。

 この租税特別措置という税の例外において、どういったメリットがあり、あるいはデメリットになるという部分を認識していたら、教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 租税特別措置のメリットと申しますか役割といたしましては、特定の政策目的があり、それを実現するために有効となり得る手段の一つということで位置づけられております。

 その上で、デメリットといいますか留意すべき点といたしましては、先ほど委員から御指摘がございましたように、租税特別措置は税制の基本原則である公平、中立、簡素の例外として位置づけられるものでございまして、特定の納税者の負担を軽減するということでございますので、そういった意味では、税負担のゆがみを生じさせる面もあるということでございます。このため、御指摘のとおり、必要性や政策効果をよく見極めた上で、設けられた期限等も踏まえて、必要な見直しを行っていくことが重要であるというふうに考えております。

 それから、申し訳ございません、先ほど減収額についてのお尋ねがございまして、法人税関係の租税特別措置について約一・九兆円というふうにお答え申し上げましたが、法人税関係以外の租税特別措置による減収額が、令和四年度ベースで約四・八兆円というふうになっております。

沢田分科員 御丁寧にありがとうございます。

 通常としては税として納められていた額が減ってしまう、さらに、特定の者がメリットを享受するので、見合った効果がきちんと出せているかどうか検証ができにくいということは、私は、ちょっと今の仕組み、少し考えなければいけないなというふうに思っております。

 特に減税額の多い租税特別措置について、上位から、具体的な数字と一緒に教えていただくことはできますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 法人税関係の租税特別措置のうち、減収額が大きいものを上位から順番に申し上げますと、研究開発税制が約六千五百億円、賃上げ税制が約二千四百億円、中小法人等の軽減税率、これが約千七百億円というところになっております。

沢田分科員 ありがとうございます。

 一・九兆円中六千五百億円も研究開発税制があるということで、税収が減るということの重要性は財務省の皆さんが一番理解していると思いますが、企業の成長又は開発の後押しを促すための措置は必要、しかし、税収が減ることで我が国全体への影響も考えなければならない、非常に悩ましいところであるということは私自身考えております。

 先ほど教えていただきました研究開発税制についてなんですけれども、そもそも、この制度の概要、又はどういった経緯で生まれたものなのか、教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 研究開発税制は、法人が研究開発を行った際に、研究開発費の増減率に応じて一定の法人税の税額控除を行うことで、企業における研究開発を促す観点から設けられているものでございます。

 令和五年度の税制改正におきましては、この試験研究費、研究開発費を増加した場合のメリットをより高める等の見直しを行っており、イノベーションの源泉である研究開発投資の更なる増加を促すこととしているところでございます。

沢田分科員 ありがとうございます。

 そもそも、やはり研究開発税制を使うことによって、企業の成長であったり、又は企業が今よりもよりよくなっていくということを目的として使っていると思うんですけれども、目的を考えれば、当然、検証、検討する機会もこれは必要だというふうに考えております。

 そのためには、どういった企業がどれぐらい継続して恩恵を受けているのか、又は詳細把握、そういった部分が必要と考えますが、これまで継続して減税措置を受けている企業についてはどのように個別具体を把握しているのでしょうか、教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、法人関係の租税特別措置につきましては、租税特別措置の透明化に関する法律に基づきまして、毎年度国会に適用状況を御報告申し上げているところでございますが、この租特透明化法に基づく租特の適用状況についての各企業からの報告の状況につきましては、企業が特定されない格好で番号を付して国税庁から私どもに報告があり、それを整理して国会に御報告をしているところでございます。

 したがいまして、個別の企業が毎年どういった適用関係になっているかということを継続してチェックできるような仕組みにはこの法律上はなっていないということでございます。

沢田分科員 どうもありがとうございます。

 ちなみに、産業とかでは分かると思うんですね。産業から検証するという作業は財務省はしているものなんですか。そういう検証とかは、しているかどうかだけ教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 この特別措置の適用状況につきましては、産業分類ごとの表示はございますので、おおよそどういった産業において使われているかということは、それを推測して検討することが可能なような状況になってございまして、実際に、研究開発税制の場合ですと、幾つかの業界に適用状況の偏りが見られるということはございます。

沢田分科員 どうもありがとうございます。

 個別の把握が難しい、今の御答弁だと、法律の中でどうしてもできないという御答弁でもあるような気がするんですけれども、そういうふうになってしまうと、実際にどういった目的でこれを減税しているのかというところを検証できないというのは、すごくやはり国民の皆様にとっては御説明しづらいというところになると思っております。

 減税というある意味恩恵を受けているわけなので、財務省としても私は是非把握をしてほしいなと思いますし、それに近づけることを法整備していかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。

 個人的に海外の方も調べさせていただいたんですけれども、諸外国でも、こういった租税特別措置について公表していない国もあるという状況がありました。ただ、この状況が続くのが当たり前のようになっていくというのも、私はちょっと問題があるなというふうに思えております。

 この租税特別措置、実際にいろいろと調べてみると、本当に分かりづらいというか、何に適用されていて、一体何が減税されていて、どのくらい効果があるのか、不透明なことが多いのが現状だと感じます。

 そこで、租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律というものが、先ほども出ていましたけれども、それについてちょっとお伺いさせていただきます。

 この法律は、租税特別措置に関し、適用の実態を把握するための調査及びその結果の国会への報告等の措置を定めることにより、適用の状況の透明化を図るとともに、適宜、適切な見直しを推進し、もって国民が納得できる公平で透明性の高い税制の確立に寄与することを目的とするとありますが、この透明化法案は、時の民主党政権で提出された法案です。当時の民主党マニフェストでは、効果の不明なもの、役割を終えた租税特別措置は廃止をし、真に必要なものは特別措置から恒久措置へ切り替えるともあります。また、民進党時代にも、二〇一六年三月に同改正法案を提出しています。

 私もこの理念には大いに共感できるものであります。この法律ができる前は、租税特別措置で実際に何が行われているのか分からない部分があったと伺っております。実際に把握できる数字はそれぞれの措置の件数などで、以前から法人の方には一定の書類の事務負担をお願いしたり、アンケート調査や関係省庁によるヒアリングは個々に行われていましたが、透明化法ができてからの対応に比べれば小さいものだったと伺っております。

 そこでお伺いいたしますが、透明化法案はどのような情報をどのように透明化させているのでしょうか、詳しく教えてください。また、この法案では補い切れていない部分などが、財務省の方で把握できるものがございましたら、教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 租特透明化法に基づく報告事項でございますが、財務大臣は、この租特透明化法に基づきまして、毎年度、減収効果のある法人税関係の租税特別措置につきまして、適用件数、適用金額、適用の偏りなどを調査の上、報告書を作成することとされているということでございます。報告書におきましては、適用状況について、件数、金額が記載されておりますし、どういった業態で上位を占めているかといったような情報も提供させていただいているところでございます。

 これによって把握できないところということでございますが、これについては、先ほど申し上げましたように、個社の情報についてはトレースできないような形で情報が提供されておりますので、そういったところでは限界があるということでございます。

沢田分科員 ありがとうございます。

 私は、やはりこういった情報、とにかく財務大臣にはしっかりとした情報をもって御判断していただきたいなと。公開することに対して、一企業さんたちも、やはりどれだけの租税を受けているのか、研究開発の応援を受けているのかというと、グローバルに見たときに、どうしても競争に影響するという声も私自身聞いたことがございます。けれども、やはり財務大臣にだけは徹底的に公開された情報が行き渡るということにならなければ、大臣の御判断、しっかりと動けないというふうに思いますので、そこの部分についても是非お考えいただければと思います。

 次に、租税特別措置と企業献金の関係についてお伺いいたします。

 先ほどお伺いしました研究開発税制などを使った企業の法人税を優遇する恩恵が、自動車や電機など一部製造業に偏っているのではないかと以前から度々報道されております。さらに、減税額が大きい業界からの自民党への献金について、これも以前から報道などで度々指摘が入っております。

 これがいいとか悪いとか言うつもりはありませんが、このような報道が定期的に出るということは、何かしら疑念を持たれている仕組みの穴なのではないでしょうか。また、透明化ということの目的、いろいろあると思いますけれども、やはりこういったところで、透明化、一つの役割になると思いますので、まだ足らない部分があるというふうにも感じます。

 私も、あえて企業名は出しませんが、減税をされていながら一定の寄附を毎年にわたってするということが、行っていることを何件か見たことがございます。こういったことは、健全さがあるとはやはり思えないんですね。私は、研究開発税制などで税の優遇をされた企業からの政党への献金、寄附は規制をされなければならないというふうに考えます。

 そもそも、政治資金規正法には、寄附の質的制限というものがございます。寄附の質的制限とは、特定の者からの寄附に関する規制で、国からの補助金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付の決定を受けた会社その他の法人は、その交付の決定の通知を受けた日から一年を経過する日までの間、政党又は政治資金団体に対して寄附をすることはできないとか、国から資本金、基本金その他これらに準ずるものの全部又は一部の出資又は拠出を受けている会社その他の法人は、政党又は政治資金団体に対して寄附をすることはできないなど、様々な規制がありますことを考えても、なぜ税の優遇措置のみ対象外となっているのか、理由がよく分かりません。

 そして、企業名の把握をしていないのも、うがった見方をするのであれば、政治と企業の癒着構造を外形的にばらされたくないからでは、こういうふうな見方をしてしまう部分も、私、当然出てくると思います。

 租税特別措置自体は、先ほどから申し上げているように、使いやすく有用なスキームというふうに、活躍次第では生きる部分もあると思います。それが、企業の思惑で、制度継続への無言のメッセージとして政党献金につながることもやはり想定して法律を作っていかなきゃいけないと思うんです。こういうところから透明、公平、公正にやろうという姿勢を是非見せていただきたいというふうにも考えております。

 鈴木財務大臣に質問させてください。

 研究開発税制の恩恵を受ける企業からの政党献金の禁止を私はすべきと考えますが、大臣の御見解を教えてください。

鈴木国務大臣 政治資金の規制につきましては総務省の所管でありますが、補助金を受け取った企業からの政治資金の受取は政治資金規正法で禁止されている、そのように承知をしております。

 一般論になりますけれども、補助金は、一般に、予算の範囲内で、特定の事業を行う団体等に対して、その申請を受けて、国等が審査を行った上で交付の決定をするものであります。予算の制約によっては条件を満たしていても交付を受けられない可能性があるなど、行政庁の裁量がそこには存在をいたします。

 一方、租税特別措置は、国会の御審議をいただく法律やこれに基づく政令等に規定された明確かつ形式的な要件に基づいて、これを満たす納税者がひとしく適用を受けることが可能な枠組みを制度化しているものであります。

 そのため、国等が一定の審査を行った上で交付の決定をする補助金と租税特別措置を同列に論じることはできないのではないか、そのように考えております。

沢田分科員 ありがとうございます。

 大臣が今おっしゃられたことは本当に重々分かっているつもりで、それもすごく大切な視点だと思うんですけれども、どうしても、税制でやることにおいては、やはり大きな企業になればなるほど、率で見たときに大きな金額になってしまうということを考えたときに、そこに対する御配慮も一度考えていただきたいんです。

 より多くの方がそういった政治的な判断抜きで申請をできるという形になっていても、結果としてやはり大きな企業に優遇措置をされているという現状としては、いま一度、国民の皆様に今、大変厳しい負担をお願いしている中、我々も自分たちの行財政改革を進めていくんだというところでも、こういったところで一度考えていただければと思います。

 続きまして、一応、今の御提案の中では、法解釈の中でこのままでということなんでしょうけれども、別の提案をさせていただきます。

 研究開発税制は、企業の研究開発費に応じて法人税を安くするために、一九六七年度に制度化され、これまで幾度となく延長を繰り返しています。さらに、法人税関連の租税特別措置では減収効果が最も大きい項目ということも、先ほど説明をいただきました。

 本来の生産性向上や成長のために研究開発を応援して、企業収益が伸び、雇用も増え、税収が上がるということがあれば、これはもう最高ですよね、ウィン・ウィンという形になるんですけれども、減税という方法だと、ある意味もらいっ放しで、当たり前のものになっているという現状があるようにも思ってしまいます。

 また、結果を問われないというお金と考えれば、企業が緊張感を持って運用しようというインセンティブが、私は、働きづらいのではないか。また、ある程度継続していくと、そこに依存してしまい、本来の収益構造とは違った動きになってしまったり、ほかの産業への正当な競争の阻害など、負のインセンティブの方が生まれやすいとも感じます。

 そこで、研究開発税制、この部分だけはやめて、政府系金融機関からの融資や投資に切り替えていただく提案をさせていただきたいと思います。具体的には、融資の与信を広げ、事業者側の一定の責任の下にやっていく、これこそが私は透明化かなというふうに考えております。受けた恩恵について結果を出して返していく、これが分かりやすいし、公平だとも感じます。

 政府系金融機関、日本政策金融公庫などは中小企業、日本政策投資銀行は大企業向けなど、役割もあると思いますが、日本政策投資銀行の特定投資業務は、民間による成長資金の供給の促進を図るため、国からの一部出資を活用し、企業の競争力強化や地域活性化の観点から、成長資金の供給を時限的、集中的に実施することを企図して設けられたものとあり、民間資金の呼び水とし、新たな資金供給の担い手、市場、投資家を育成、民間主導の資金循環創出につなげることが期待されるとされています。

 この民間資金の呼び水となることを意図された特定投資業務では、投融資の半分以上を民間で賄うルールとなっていますので、出資と同額の民間銀行融資が求められます。政府が当該企業に資本を投入することが一種の信用補完となり、民間銀行が融資を増加させやすい環境をつくり出す、このような効果も期待できるのではないかと思っております。

 鈴木財務大臣にお伺いいたします。

 研究開発税制から融資、投資の活用に切り替えていくということについて、御所見はいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 特定の政策目的を実現するに当たりましては、予算や税制のみならず、政策金融や規制の見直しなど、様々な政策手段を適切に組み合わせていくことが重要であると考えております。

 このうち、御指摘の政策金融については、国の信用を背景に、公益性が高いもののリスクの高い分野において、融資や投資、保証などの金融的手法を用いて個々の事業者に対してきめ細やかな支援ができるという長所があり、税制による支援が利きにくい企業への支援が可能になる、そういう特徴があると考えております。

 こうした観点から、御指摘の研究開発の促進についても、政策金融による支援がより適切であると考えられるケースがあると考えます。政策金融による研究開発の支援として、例えば、日本政策投資銀行において、我が国企業の競争力強化に寄与するような研究開発に対して、特定投資業務等を活用した投融資を行っているところであります。

 引き続きまして、予算や税制、そして政府系金融機関による投融資等による支援、これを適切に組み合わせるということが大切だと思うわけでありまして、そうした適切な組合せによって、我が国の企業の研究開発が活発に行われるように取り組んでまいりたいと思っております。

沢田分科員 大臣、御丁寧にありがとうございます。

 もちろん、様々なハードルがあることは承知しておりますが、ただ、現状の研究開発税制は調査、検証が十分に機能しているとは、やはり今日討論していて思いませんでした。そこに莫大な減税が行われ、減税の恩恵を受けた企業が政党への献金も自由に行えてしまうという政治と企業の癒着構造を生んでしまう、いびつな構造ともなっております。

 また、国民負担率は年々上がり続けて四六・五%まで行っており、政府の財政ファイナンスの面でも、総理も鈴木財務大臣も度々問題意識をしっかりと言われております。このような状況でやるべきは、うまくいったらちゃんと返済してもらう、支援するならちゃんと見極め、支援後の結果まで責任を持つ融資というやり方、これに変えていくべきだと改めてお願いを申し上げます。

 こういったことをこつこつ民間は積み上げて収益確保のために動いておりますが、こういったことをしないで防衛費を増税で賄うような議論が始まっているということも、私は本当に不安を感じております。

 融資とはいえ、民間企業に公的資金、つまり国民の税金を投入するわけなので、融資対象となる大手企業に融資を実施することが、支援しない場合と比べて経済、そして国民生活にとっても明らかにプラスになることをしっかりと検証することをこれからもお願いいたします。透明化という観点からも、是非、今後議論をしていただきたいと思っております。

 最後になりますが、先週の金曜日、二月十七日の予算委員会質疑を踏まえて質問させていただきます。

 退職所得に対する課税の在り方について鈴木大臣に質問させていただきましたら、政府税制調査会において、令和元年の中間答申においては、勤続年数が二十年を超えると一年当たり控除額が四十万円から七十万円に増加するという点が、転職の増加など働き方の多様化を想定していないとの指摘があった、給与、退職一時金、年金給付の間の税負担のバランスについて丁寧な検討が必要であるとされ、また、昨年十月の政府税調においても、勤続年数で差を設けずに一律とすべきといった指摘もあったと御答弁いただきました。

 日本の正社員制度が終身雇用、退職金制度を是としている中、これは大変デリケートな部分であるとも思います。ただ、私は、御答弁になかった効果もしっかりと認識していただきたいと考えます。

 それは、給与と退職金は民間の中では一体のものであり、退職金が増税になれば今の給与にその分お金が流れていくということを考えたら、基本的にはゼロサムだ、ただ、長期的に、退職金として運用してきたお金に金利がついたり、そういったところが簡単にイコールであるかは別としてもです。政府としてどういった社会を目指すのかということは、これから、大きなかじ取りの判断の材料になるのではないでしょうか。

 それは、岸田総理は、賃上げのために、本日私が主題として質問させていただいた租税特別措置を使い、賃上げ税制というものをやっておられることからも、本気で目指されているとは感じます。ただ、現役世代が、高い給料を払えなくなってしまっている、こういった仕組みを残しながらそれが実現できるとは私はやはり思えないんですね。

 大臣に質問です。

 退職金の優遇措置を改めた場合に、現役世代の給与にその分の転嫁が起こるという話は、政府税調では出ていないのでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年秋の議論の中では、所得税全般に関する広範な議論をいただきましたので、今御指摘のような観点からの議論はなかったというふうに承知をいたしております。

 他方で、令和元年九月の中期答申におきまして、給与、退職一時金、年金給付の間の税負担のバランスについて丁寧な検討が必要であるという御指摘をいただいておりますが、その中の給与と退職一時金との関係という点については、御指摘のような点も含めて、過去から様々な議論がなされているということでございます。

沢田分科員 どうもありがとうございます。

 これは言いづらいんですけれども、やはり大企業は労働組合を抱えており、政治も労働組合又は企業と大きくつながっている、既存の、今までの政治の在り方、あったと思います。

 そんな中で、やはりここでは言いづらいことではございますが、今、政府・与党としてかじ取りを、賃上げに向かっていく、そして国民全体の、まさに今、若い子たちがもっとお金をもらって、しっかりと夢を見て前へ進めるような社会、これを実現するためにも、いろいろと議論を深めていただければなと思っておりますので、最後の最後、鈴木財務大臣、是非よろしくお願いしますという一言を残して、今日は終わりにしたいと思います。

 本当に、今日はありがとうございました。

辻主査代理 これにて沢田良君の質疑は終了いたしました。

 次に、奥下剛光君。

    〔辻主査代理退席、主査着席〕

奥下分科員 日本維新の会の奥下でございます。

 委員長始め大臣におかれましては、長時間にわたりお疲れさまでございます。

 では、限られた時間ではございますので、早速質問に入らせていただきます。

 今日はインボイス制度についてお尋ねするんですけれども、これは知り合いの税理士事務所幾つかにお話を聞いて、十月に向けて準備している中で、いろいろ現場サイドで不安に思っていることや、こんなことを改善できないかという声を基に、ちょっと御質問させていただきます。

 まず、適格請求書発行事業者の登録番号の検索についてなんですけれども、法人の場合は会社番号の頭にTがつくので検索がスムーズにできるということですが、個人の場合は、会社と違い会社番号がないため、検索が難しくなるんじゃないかというふうに現場の方では懸念の声があるんですが、いかがでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 適格請求書発行事業者公表サイトにつきましては、取引先から受領した請求書等に記載されている番号が登録番号として取引時点において有効なものかを確認するためのサイトでございますので、登録番号を基に検索することとしております。

 氏名を基にした検索を可能とすることといたしますと、同じ氏名の事業者が複数いる場合に登録番号が複数表示され、登録番号を特定できない場合や、住民票上の氏名が漢字表記であっても、請求書に記載された氏名の表記を平仮名にしているために登録されている取引先が表示されない場合などが考えられるところでございまして、事業者に混乱が生じるおそれがあると考えてございます。

 このような問題を避けるために、公表サイトにおける検索方法は登録番号によるものに限定しているというところでございます。

奥下分科員 済みません、もうちょっと細かく教えていただきたいんです。

 では、個人名でずっと検索していくとか、そういったことになるんですかね。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 個人の場合には、基本的には番号から検索をして氏名を求めるということでございます。

奥下分科員 では、先ほどおっしゃったような、同姓同名とかそういったことの御判断というのはどこかでできるんですかね。同姓同名の場合とかというのが、多分、ちょっと細かい、濁点とか云々もあると思うんですけれども、そういったところの違いというのもはっきり検索できるものなんでしょうか。

 できないといけないと思うんですけれども、そういった、重なったときに、その違いとかというのはどこかで見分けることができるんでしょうか。番号だけですかね。

星屋政府参考人 番号で検索しますと氏名が出てくる、その氏名が取引先と同一かどうかというのは、取引先に確認するなり、ほかの情報からそこは確認するということになろうかと思います。

奥下分科員 分かりました。ありがとうございます。

 次に、登録番号に関して、郵送で登録番号の通知書が、記載された書面が国税庁より送付されるということですが、送付以外での通知方法というのは今のところはないのでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス発行事業者として登録された事業者につきましては、登録年月日、登録番号等を通知しているところでございます。この通知は郵送で行っておりますほか、登録申請をe―Taxで行い、その際に電子通知を希望された場合には、電子データで受領できることとなってございます。

 紙面の場合には紛失するリスクもございますので、国税当局といたしましては、e―Taxを利用して電子通知を受領されるようお勧めしているところでございます。

奥下分科員 併せて二つとも申請するということはできるのか、郵送とe―Taxということも可能なんでしょうか。どちらかだけになるのでしょうか。

星屋政府参考人 どちらかでございますので、選択していただくことになります。

奥下分科員 ありがとうございます。

 では次に、下請業者は、免税業者であっても、元請業者などから登録申請するようにとの圧力を受けやすいという懸念の声が出ておりまして、実際、幾つかの税理士事務所では、そういったことを言われているんじゃないかという声が上がってきているようなんですけれども、この辺り、政府としての対応策はお考えなのでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、免税事業者の方々が行っておられます取引の態様別に申し上げますと、まず、免税事業者の取引の約六割は消費者を相手方とするいわゆるBトゥーC取引でございますので、この場合にはインボイスの交付が求められることはないということでございます。

 さらに、事業者間取引、BトゥーB取引を行っている場合であっても、取引の相手方が簡易課税を適用している事業者である場合、この簡易課税は現在、課税事業者の約四割が適用しておりますけれども、こういった場合には、取引の相手方は今までどおりインボイスなしで仕入れ税額控除をすることができますので、この場合、取引をされている免税事業者の方々の方に影響が及ぶということも基本的にはないということになります。

 その上で、免税事業者の方々が、簡易課税を適用していないような本則課税の事業者の方と取引をされる場合、今御指摘がありましたような取引先からの要請等についての問題というのが生じ得るわけですけれども、事業者が、取引先の免税事業者に対しまして、インボイス発行事業者になるように要請するにとどまらず、インボイス発行事業者にならなければ取引価格を一方的に引き下げるでありますとか、それにも応じなければ取引を打ち切るといったようなことを一方的に通告するといったような行為は、独占禁止法又は下請法上問題となるおそれがあるというふうに承知をいたしております。

 また、発注者側の要請に応じて免税事業者の方が課税事業者となる場合に、価格交渉の場において明示的に協議を行うことなしに価格を据え置くといったような対応も同様でございまして、これらの点につきましては、昨年の一月に公表した独占禁止法や下請法等のQアンドAにおいて明らかにした上で、各省庁から事業者団体に向けて法令遵守の要請をしているところでございます。

 また、こういった免税事業者を始めとした事業者の取引環境の整備につきましては、下請かけこみ寺や駆け込みホットラインで相談対応を行うでありますとか、下請Gメンによる調査や書面調査によりまして状況を把握し発注者側への牽制を行うなど、取引環境の整備に取り組んでいるところでございまして、引き続き、関係省庁で連携しながら、新たに課税事業者となった方も含めて、免税事業者が不当な取扱いを受けないよう、事業者の取引環境の整備により一層努めてまいりたいと考えております。

奥下分科員 ありがとうございます。

 本当に、下請が言うことを聞かないと仕事が切られるんじゃないかという心配を現場サイドはすごくされておられまして、そういう相談もあるみたいなので、是非、その辺りは、もっと告知して広めていただけたらなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、独立開業後すぐに適格請求書発行事業者の登録申請をすることにより課税業者となり、独立後すぐに消費税を納めないといけないことにより、開業意欲の妨げになる可能性について教えていただけますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 開業や創業の際には、免税事業者の判定の基準となる二年前の課税売上げが存在をいたしませんので、基本的には免税事業者として活動することが可能であるということでございます。

 その上で、取引先との関係で課税を選択しなければいけないという状況になることも考えられるわけですが、その場合、今回の五年度税制改正で講ずることとしております、免税事業者の方が課税に転換した場合に、納税額を売上税額の二割に軽減する措置の適用を受けることが可能になります。

 また、この措置の適用を受けない場合であっても、簡易課税制度を選択することができますので、仕入れに関する経理を行わずに、売上税額だけの把握をしていただくことによって納税額の計算を簡便にしていただくことも可能であるということでございまして、消費税の申告納税に要する事務負担は相当程度軽減されるような制度が用意されているということでございます。

奥下分科員 ありがとうございます。

 岸田総理がスタートアップを応援するということをおっしゃっておられるので、是非、この辺りをサポートしていっていただけたらというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、これはほとんど、多くの事務所の方がおっしゃっていたんですけれども、税理士事務所の事務負担が著しく増えるということなんです。

 まず、請求書、領収書の登録番号記載のチェック作業、これが増えるということと、こういった登録番号の真偽のチェック作業とか、請求書や領収書をなくしたときの再発行手続とか、相殺や立替え取引が生じた場合の適格請求書の発行事業などが、皆さん問題視、問題というか、こういった手間がいっぱい増えてくると思うんですけれども、こういった辺り、もっと何かスマート化されるような計画とかいうのはございますでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 税理士の方々のお取引先が、仮に、売上げが五千万円以下の小規模な事業者であって、先ほど申し上げた簡易課税制度を適用している場合には、売上げの方の記帳だけでもって、売上税額から仕入れに係る税額をみなし計算によって申告していただく制度がございますので、インボイスに係る事務は発生しないということがまずございます。

 そうでないような、本則課税で対応する場合につきましても、おっしゃいますように、税理士会の方から、インボイスが導入されると、現在は保存が不要とされている三万円未満の請求書等、インボイスにつきましても保存が必要になるということで、事務負担が過重になるという御指摘がございました。

 これを踏まえまして、今回の令和五年度税制改正案におきましては、六年間の経過措置といたしまして、課税売上げが一億円以下の事業者の方については、一万円未満の取引については、インボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入れ税額控除を可能とする経過措置を設けるということにいたしておりますので、これによって御指摘のような事務負担は相当程度軽減されるのではないかというふうに考えております。

 また、先ほど相殺といったようなお話がございましたが、振り込み手数料などを売手側の負担とするというような取引が一般に行われておりますが、その際に返還インボイスというものを発行する必要がございまして、これがまた非常に事務負担が大きいという御指摘もございましたので、これに対応して、一万円未満のこういった返還インボイスに関しては発行を不要とするという手当ても今回の改正案で盛り込んでいるところでございます。

奥下分科員 ありがとうございます。

 次に、新しい会計システムへの移行についてなんですけれども、入力作業をするに際して、現状では、消費税の課税区分については主に一〇パー、八パーで分けますが、令和四年十月一日以降の消費税課税区分については、一〇パー適格請求書あり、一〇パー経過措置対応、八パー軽減適格請求書あり、八パー軽減経過措置対応、〇パーと、確認作業がかなり増えると思うんですけれども、こういった辺りももうちょっとスムーズに何かできるような方法というのは、今のところ、お考えがあるんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のような区分が必要になってまいりますのは、免税事業者の方々が事業者間取引から排除されるのではないか、こういった御懸念が従前からございましたために、今後、インボイスが導入された後三年間は、免税事業者からの仕入れであっても八割は仕入れ税額控除が可能、更にその先三年間は五割の控除が可能という仕組みがございまして、こういった経過措置の適用を受けるためには、更に詳細な区分経理が必要になるということでございます。

 こういった対応については、事務負担の面は当然生ずるわけですけれども、免税事業者に対する影響を緩和するための経過措置ということで、その点は御理解を賜れればと思います。

 他方、こういった経過措置の対応も含めまして様々な事務負担が生ずるという面はございますので、政府におきましては、昨年の経済対策におきまして、IT導入補助金について、インボイス対応のために、より安価な会計ソフトも補助金によって購入できるよう、補助対象の拡大を行うといったような支援策の充実を盛り込んでおりますし、また、先ほど申し上げましたような少額の取引に関する事務負担を軽減するための措置なども併せて行うことによって、できるだけ事業者の方々の負担を軽減するべく取組を行っているところでございます。

奥下分科員 ありがとうございます。

 今、税理士事務所側のあれを申し上げたんですけれども、逆に、中小企業者の負担も増えると思うんですね。

 消費税申告書を自分で作成されないところが多いと思うんですけれども、それで税理士に頼らざるを得ない事業が増えると思うんです。そういった今の作業内容とかを考えたら、依頼する金額とかというのは結構皆さん気にされているところがございまして、こういったところも、余り高くなり過ぎると、やはり、そういったものが払えなくてちょっと難しい中小企業とかが出てくると思うんですけれども、この辺りについては、何かお考えになられているところはあるんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、小規模な事業者の方々が、今回のインボイスの導入に際しまして、新たに税理士さんに御依頼をされるとか、様々な経営相談を受けられるといったようなことが考えられるわけでございます。

 このため、昨年の令和四年度補正予算に基づく経済対策の一環として、いわゆる持続化補助金の補助上限額につきまして、インボイスを発行する事業者に転換される事業者の方々については上限額を一律五十万円上乗せするといったような手当てもいたしておりまして、これによって税理士さんに対する相談などの費用もカバーすることができるという取組をいたしているところでございます。

奥下分科員 ありがとうございます。

 今日のこのやり取りを見ていただいた方は大分安心していただけたんじゃないかなというふうに思っております。ありがとうございます。

 次に、そもそもなんですけれども、鈴木大臣にお尋ねしたいんですけれども、我々日本維新の会は、軽減税率反対でした。新たな既得権益をつくるんじゃないかということもありまして反対していたんですけれども、そもそも、この軽減税率を撤廃するお考えというのはございませんでしょうか。

 といいますのも、やはり、今回の国会のテーマの一つである防衛費のための増税、軽減税率をやめたら今八千五百億以上の税が、戻ってくるという言い方が正しいのかどうか分からないですけれども、捻出されると思うんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 軽減税率を導入する際、いろいろな議論があったということは、私も承知をしているところでございます。そうした議論の中で、消費税の逆進性を緩和する、それから、買物の都度、痛税感の緩和を実感できるという観点を踏まえまして、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として実施されたものでございます。

 様々な議論を踏まえての決定であるわけでありまして、これを見直すということは考えていないところであります。

奥下分科員 ありがとうございます。

 なかなか難しいことを言ったとは思っておるんですけれども、このままいくと増税になるのかもしれませんけれども、そこに行くまでに、総理を始め、改革を尽くすというふうにおっしゃっていただいておりますが、やはりこういった、あの手この手も議論したという過程も国民の皆様に分かっていただく必要があるのかなというふうに思っております。

 そんな中で、先日、私がふるさと納税で防衛費ということができないのかと聞いたら、そんなことはちょっと難しいというお答えだったんですけれども、二日後に新聞で、自民党さんが防衛版ふるさと納税という見出しがばんと出たものですからお尋ねするんですけれども。

 まず、総務省さんにお尋ねするんですけれども、ふるさと納税を取り扱っている会社とかにも話を聞いたんですが、制度上は問題ないはずだ、その自治体が設定してくれたらできると思うんですがというお答えをいただいているんですが、総務省さんの見解を教えてください。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 現行のふるさと納税は、ふるさとやお世話になった地方団体を支援するため、寄附を通じて個人住民税の一部を実質的に地方団体間で移転させる仕組みでございます。

 国の政策課題でございます防衛の財源をめぐって、現在、様々な議論が行われているところと承知しております。

 いわゆる防衛費に係るふるさと納税につきましては、論者により、どのような仕組みとするか様々でございまして、総務省としてつまびらかに承知をしていないことから、そのこと自体について、地方行財政を所管する総務省の立場でコメントすることは差し控えさせていただきます。

 その上で、分科員御指摘の、現行のふるさと納税により地方団体が集めた寄附金の一部を防衛費に充てるため国に寄附することについて申し上げますと、地方団体間の移転の仕組みであるものを地方団体から国へ移転させる仕組みに変えることをどう考えるのか、また、国と地方団体の役割分担の議論になり得ることなど、課題が多いものと認識をしております。

奥下分科員 言葉遊びをするつもりはないんですけれども、ふるさとのためというのは、ふるさとを守るのも、きちんとふるさとのためだと思うので。

 そういったことも含めてそうですけれども、泉佐野市なんかは、以前ウクライナのためにふるさと納税をやられましたし、今回トルコの支援のためにもふるさと納税をやられるということなんですけれども、この辺りは、では、どういうふうにお考えなんでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 ふるさと納税制度を通じて受け入れました寄附金の使途につきましては、制度の趣旨を踏まえ、各自治体において適切に御判断をいただくものでございます。実際に、自治体の間では、クラウドファンディング型のふるさと納税などによりまして、子供食堂の応援などにも活用をされている事例もあるところでございます。

 その上で、先ほど申し上げましたのは、国で支弁すべき防衛費に充てるために国に寄附をするということにつきましては、国と地方団体の役割分担の議論になり得るのではないかというような課題があるのではないかというふうにお答えをしたところでございます。

奥下分科員 分かりました。ありがとうございます。このままいっても多分平行線だと思うので、あれなんですけれども。

 では、防衛省さんの方は、こういった防衛版ふるさと納税については、可能性はどのようにお考えでしょうか。

井野副大臣 防衛力整備を目的とした、国に対する寄附制度の導入を目指すものというふうなことですけれども、国に対するこういった寄附金の扱いをどう考えるか、又は、現行の寄附税制との関係をどう整理するかといった、先ほどちょっと総務省の方からも御答弁がありましたけれども、様々な課題があるというふうに思っております。

 そういった中では、現時点でということではなかなか難しくて、関係省庁とよく連携し、また、国会での議論等も踏まえながら、その是非を判断していくものだろうというふうに考えております。

奥下分科員 ありがとうございます。

 ふるさと納税ができるまでは、この国は、源泉徴収や年末調整ということで、直接に税を納税する機会がなかなかなかったんですけれども、ふるさと納税の画期的なところというのは、やはり、返礼品とか住民税の控除とかじゃなくて、寄附者が使い道を決められるというところだと思うんですね。

 今の予算、納税者が望むような使い方がされていたらいいんですけれども、ほとんどの方がそういったことを望まれておらず、一度予算がつくと、族議員の反対とかでこういったものも全然減らせない、こういう悪循環が続いている中で、納める方の立場からすると、やはり納得感だと思うんですよね。

 これは話を一緒にするなと言われるかもしれませんけれども、大阪府知事の秘書時代に、あの橋下徹さんが、所得制限はありますけれども、教育無償というものを大阪で試みました。そのとき、橋下と町を歩いていたら、女の子が寄ってきて、私の家は母子家庭だったので高校へ行くのは諦めていたんですけれども、おかげで行けるようになりました、こういったことに税金を使っていただけるなら、私も高校へ行って頑張って勉強して、いっぱい納税しますねということを言っていただいたんですね。

 まさに、税の使い方の透明化といいますか、こういったことも当然必要ですけれども、こういって納める側の納得感があれば、今回の防衛費による増税、納得できるまで政府が、改革を含め、ふるさと納税的なものを考えたりとか、こういったことが国民に、納税者側に伝われば必ず、増税することも、皆さん、最終的には納得していただけると思います。総理はあらゆる手段を使って改革を進めていくというふうにおっしゃっていただいておりますので、是非、改革を前向きに進めていただきたいと思います。

 時間がまだあるようなので、通知しておりませんが、先ほどのインボイスのことをもうちょっと、戻って聞かせていただきたいんですけれども。

 インボイスの登録をしていない事業者が税込みで請求しても問題ないというところに矛盾を感じるんですけれども、この辺りはいかがでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘は、売上げが一千万を下回るような方で、免税事業者として活動しておられる方々は消費税の納税義務がないということですので、そういった方々が消費税を上乗せして請求することは適当ではないのではないかという指摘についてどう考えるかという御質問というふうに受け止めましたけれども、免税事業者の方々がどういう値づけをして物を売るかということを考えました際に、免税事業者であっても仕入れの方には消費税がかかっている場合がございますので、仕入れに係る消費税負担については、適切にこれを値段に上乗せして売っていただくというのが適正な転嫁の方法であるというふうに従来から考えられているところでございます。

 一方で、仕入れに係る消費税負担を上回って消費税を上乗せして売るということに関しては、いわゆる益税というような御指摘を受けることもあるわけでございますが、これが実際に益税が発生しているのかどうかという点については、免税事業者の方の値づけ全体の状況を見て判断しなければいけない事柄であるということでございますので、まさに、仕入れに係る消費税負担との兼ね合いで議論されるべき事柄ではないかというふうに考えております。

奥下分科員 ありがとうございます。

 では、インボイスを登録した人、登録していない事業者が税込み請求してくる際の納税の不公平感もあるんじゃないのかという声がありまして、極論、インボイスの登録事業者が、登録していない事業者に税込みで請求されると、そこで消費税を払って、さらに、申告の際に仕入れの税額控除ができないので、消費税を二重に払うことになるんじゃないかという懸念の声があるんですが、この辺りはいかがでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者間においてどういう値づけでもって取引をするかということは、その取引先が免税であるか課税であるかということも含めて、事業者間で、様々な取引条件によって変わってくることでございますので、まさにそういった事業者間の値づけの過程、価格交渉の過程で御交渉いただくべきことではないかというふうに本来は考えられるところでございます。

 その上で、今回、インボイスが入りますことによって、そういった取引について大きな変更があるということでございますので、様々な経過措置も設けつつ政府としては対応しているというのが現状でございます。

奥下分科員 ありがとうございます。

 先ほどもおっしゃられていたように、業者間の話、これは当然だと思うんですけれども、先ほど独禁法にひっかからないというお話も出たかと思うんですけれども、業界によっては九五パー以上を誇る業界というのもございまして、それをどう捉えるかという問題もあると思うんです。

 そういった業界を含め、一々個々の対応をしてくださいとは申し上げませんが、十月に向けて、そういった心配事がいろいろ出ているものですから、更に現場の声を酌み取っていただいて、ブラッシュアップしていただけたらなというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

 時間になりましたので、私の質疑はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

中山主査 これにて奥下剛光君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島克仁君。

中島分科員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 貴重な時間をいただきましたので、私からも質問させていただきたいと思います。

 私からは、大きく二点、医薬品の貿易赤字の拡大と、関連して医療、社会保障財政に与える影響度、また、財政審建議におけるかかりつけ医の制度化と、関連して、二月十日に閣議決定されました、今国会審議予定となっております全世代型社会保障法案の中に含まれておりますかかりつけ医機能の報告制度に関して、大きく二点、御質問させていただきたいと思います。

 まず、医薬品の貿易赤字の拡大について質問いたしますが、資料の一枚目でございます。我が国の医薬品の貿易収支の推移、二〇〇〇年から二〇二二年まで。輸入金額を青、輸出金額を赤い折れ線グラフ、そして、その差額、すなわち赤字額というものになりますが、これを緑の棒グラフで示したものであります。二〇〇〇年の収支赤字額は約二千二百億円、これに対して直近の二〇二二年の赤字額は約四・六兆円となっております。

 この数字の拡大に対する改めての受け止めと、原因についてどのように分析されておられるのか、そもそもこのような状況に問題意識をどのように持っておられるのか、確認をさせていただきたいと思います。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 医薬品の輸出金額及び輸入金額は、近年、共に増加傾向、かつ常に輸入超過の状況であります。先生の御指摘のとおりでございます。直近の二〇二二年は、輸入金額が五兆七千十四億円、輸出が一兆一千四百二十八億円となっております。

 この輸入超過の背景でありますけれども、コスト面などの、立地の環境を踏まえまして企業が製造拠点を海外に移している影響ですとか、特に最近ではコロナのワクチンの輸入や為替の変動が大きく影響しているというふうに考えております。これら複合的な要因がございますけれども、我が国の製薬企業における研究開発力、国際競争力の相対的な低下もその一因と厚生労働省としては考えております。

中島分科員 コロナの影響もある、また、企業のコスト面。明らかに今、原材料も含めて企業の体力そのものがそがれている、こういうベースがあって、コロナの三年間も影響しておるという。複合的な要因というふうにおっしゃられました。まさにそのとおりだと思います。特に、二一年、二二年の急激な輸入額の拡大、これは、コロナワクチン、コロナ治療薬が私は明らかに原因だと。

 資料の二枚目、人用ワクチンの輸入額の推移でありますが、二一年、二二年と、それぞれ急激に輸入額が増加している。毎年四百から五百億円で推移していたものが、二一年、二二年と、それぞれ急激に輸入額が増加。毎年平均値だったものがこのような数字になっておりますから、これは税関での貿易統計で個別の企業とか品目などは分からないわけですが、人用ワクチン、ここ数十年ずっと安定していたものが、この二年ということで。

 これは端的に確認ですが、二一年は六千億円ですね、そして二二年は約一兆円。これは海外の、コロナワクチン、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカも入っているかもしれませんが、治療薬であればメルク、この数字がそのまま、二一年は六千億円、二二年は一兆円、この分が赤字になっているということで間違いないですね。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 この資料は、財務省の貿易統計から作られているものというふうに承知をいたしております。

 厚生労働省といたしましては、コロナ禍において国民の皆様に必要な医薬品、ワクチン、これを滞りなくお届けするということでこれまで尽力してまいっておりますので、この額が直ちにどの額を示しているかということは厚生労働省としては詳細を把握しておりませんのでお答えしかねますけれども、そういった姿勢でこれまでも臨んできたということでございます。

中島分科員 ワクチンのファイザーとの契約内容はつまびらかになっていない、そういう中で、二枚目の資料を見れば、明らかに、コロナワクチン、治療薬、これだけの額が輸入をされます、これはこのまま、確かに、厚生労働省さんの立場からいえば、国民の命、健康を守るために供給を安定化させる、これは分かりますが、今後ワクチン接種体制がどうなるか、こういうことも鑑みながら、数字はこういう状況を示しているわけであります。

 ですから、この後、厚生労働省さんはもういいですけれども、財務省さんにお尋ねしたいんですが、こういう状況がコロナ禍では起きていた。一方、この一枚目のグラフを見ていくと、ここ約二十年の医薬品輸出入額の推移を見ますと、確かにコロナの影響でここ二年間、三年間は急拡大したわけでありますが、二〇〇〇年に約二千二百億円であった赤字が二〇一〇年には一兆円を超え、二〇一五年には二兆円を大きく超え、コロナの影響がなかったとしても三兆円に達しようかというぐらい赤字額が拡大していた。

 財務省として、このまま放置すれば、医薬品の貿易赤字はコロナがなくても更に拡大する可能性が非常に高かった。私は、国民の命、健康を守るという一方で、これは医薬品の輸入超過というのはそのまま我が国の医療財政、社会保障財政に直結する、これは改善する必要があるのではないかと考えますが、この内容を含め、どのような改善策、具体的な対策を考えているのか、お尋ねしたいと思います。

鈴木国務大臣 先生にいただいた資料でございますが、医薬品の貿易収支の推移でございますけれども、これにはやはり、日本国内での医薬品産業の生産体制等にも関わりを深く持っているんだ、そういうふうに思います。

 製薬産業につきましては、国民の健康、医療の向上に寄与するとともに、今後の経済成長の中核となり得る重要な産業の一つであると考えております。このことは、先日、十七日でありましたけれども、総理からも国会で答弁をされたところであります。

 政府といたしましては、我が国の製薬企業が世界に通用する革新的な医薬品を生み出し続けるため、製薬業界とも緊密に連携をしつつ、我が国の創薬力の強化に向けた取組を進めてまいりたいと思っております。そうした努力によって国産の医薬品というものの生産が安定する、そういうものがまた貿易収支の改善につながっていくのではないか、そういうふうに思っております。

中島分科員 これは言うまでもなく重要な産業、私は、その認識以上だと思いますよ。

 このコロナで、多くの国民の皆さんは、我が国は国民皆保険制度の下、医療先進国、そんな中、なぜ国産のワクチン、治療薬が皆さんに供給できなかったのかと。これに対する答えを私はよく聞かれますが、そもそも我が国にはもうそういう体力がない。これは、二〇〇〇年からのいわゆる医薬品海外依存。これは製薬企業だけではなく、先ほど厚生労働省さんからも答弁いただきましたが、他の業界と同じようにコスト面、例えば原材料、中国、インド。我が国は、原材料から医薬品につなげられない。

 そして、企業、資料の三枚目。これは日経新聞の一昨年末の資料でございますが、見出しが「医薬敗戦 バイオ出遅れ」「ワクチンも輸入頼み」。日本勢は研究開発でも効率でも見劣る、日本企業の存在感が薄れているなどなど。私は、この記事を見たときに大変衝撃を受けました。

 このときに、もはや、コロナがなくても三兆円の輸入超過のはずが、さらに、先ほどもいただいたように、コロナワクチン、治療薬で四・六兆円もの、我が国の自動車産業、また電子部品、ここもなかなか厳しい状況だということ。先日も貿易統計を見させていただきましたが、そういった黒字だった部分をこの医薬産業が食い潰している、こういう状況。

 そして、様々、管轄が経済産業省とか内閣府とかと言われますが、エネルギー、食料と同様に、我が国の国民の命と健康を、我々はやはり、重要だという位置づけだけではなく、スリートップぐらいに上げないと、またコロナで、一応五類は五月の連休明けになるということですが、いつまたそういう状況になるか分からない、さらには平時、少子高齢化、人口減少、こういう状況の中で国民の命、健康を守っていく立場、さらには人口構造がこのような状況の中で、医療財政、社会保障財政は本当に喫緊の課題だと思います。

 のんきなことを言っている場合じゃないということで、是非財務大臣には、様々な各省をまたがることだと思いますが、先頭を切ってリーダーシップを発揮して、国策として、この医療産業の産業構造上の位置づけをより明確に中心に据えていくべきだと改めて考えますが、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

鈴木国務大臣 先ほど来もお話ししたところでありますが、製薬業界というのは、世界市場で戦う、そういう潜在力を持った産業の一つであると思います。今までも、私の知る限りでありますが、厚生労働省においては、産業ビジョンとかそういうものをやりながら、こうした製薬業界の振興のためにいろいろな検討もされているということだと思います。

 これは、先生がおっしゃるとおり、やはり政府全体として考えていかなければならないものでもある、こう思いますので、私も同じ認識を持つ者の一人でありますので、先生の今の御指摘もしっかりと受け止めさせていただきたいと思います。

中島分科員 是非お願いしたいと思います。

 続いて、財政審建議、かかりつけ医の制度化についてお尋ねをしたいと思います。

 資料の五枚目でございますが、令和四年度予算の編成に関する建議、令和四年度建議でございますが、三十九ページ、かかりつけ医の制度化という文言が使われております。一方で、令和五年度予算の編成に関する建議、令和五年度建議においては、かかりつけ医の制度化という文言が見当たりません。

 端的にお答えいただきたいと思いますが、令和五年度建議からかかりつけ医の制度化という文言がなくなった理由をお尋ねしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、先生御指摘のとおり、令和四年度の財政審の建議におきましては、かかりつけ医の制度化について文言がございました。

 他方、昨年六月の骨太方針二〇二二におきまして、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うということが閣議決定されました。

 財政審の建議につきましては、毎年出されるものでございますけれども、その時々の議論に基づいて取りまとめられるものと承知しておりまして、建議ごとに、方向性は維持しつつも、内容や表現が異なることもあると考えております。そうした中、昨年後半の財政制度等審議会においてかかりつけ医機能に関する議論が行われ、その結果、建議において、かかりつけ医機能を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要があるということなどが提案されたもの、このように承知しております。

中島分科員 審議、議論の過程の中で政府として整合性を図る必要があるという、一言で言うとそういうことだったと思います。

 何点か確認した上で、令和四年度の建議について私から質問をさせていただきます。

 令和四年度建議、三十九ページの続きですが、五枚目の資料。ここでは、かかりつけ医機能の要件を法制上明確化した上で、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医に対して利用希望者による事前登録、医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを段階を踏んで検討していくべきであると明確に記述がされております。

 今国会に提出されている全世代型社会保障法案での、今もちょっとお答えいただきましたが、かかりつけ医機能の法整備は、かかりつけ医機能の要件を法制上明確化するという部分については盛り込まれていると思います。一方で、今後、かかりつけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医に対して利用希望の方による事前登録、医療情報登録を促す仕組みを導入していくこと、ここは、令和四年度の財政審建議では明確にうたってありますが、今回の全世代型社会保障法案の中には含まれていません。

 改めて確認ですが、財務省として、四年度建議にあったかかりつけ医の認定制、登録制の実現は諦めたということなのか、それともそうではないのか、確認させていただきたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 かかりつけ医機能が発揮される制度整備に関しましては、先生御指摘のように、認定制度や登録制度を含め様々な御意見があるところでございます。

 他方で、複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者が更に増加していく、また生産年齢が更に減っていく、そういう中、かかりつけ医機能が発揮される制度整備は早急な実現が必要であるというふうに考えておりまして、そういう中、厚生労働省や関係者などと議論を行った結果、今般の法案におきましては、必要なかかりつけ医機能を定めた上で、その機能の報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表し、これらを踏まえて地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討、公表することで、各医療機関がかかりつけ医機能の内容を強化して、地域における必要なかかりつけ医機能を確保することとしております。

 こうした制度整備を進めることによりまして、国民や患者の目から見まして一人一人が受ける医療サービスの質の向上につながる、そういうふうに我々は今考えておるところでございます。

中島分科員 いや、私が聞いたのは、機能を法制化するのはいいと。時間がないので、再度今の答弁に対して確認しますが、財務省が考えていた認定制、事前登録制に向けた今回の全世代社会保障法案は第一歩と考えているということでよろしいですか。

中村政府参考人 まずは、申し上げたように、厚労省や関係者と協議をさせていただいた、現在国会に提出させていただいている改正案に基づく制度整備を実現したいと考えております。そうした状況の下で、その先の制度整備の在り方については、現時点で予断を持ってお答えすることは、恐縮ですが、できないというふうに考えております。

 よろしくお願いいたします。

中島分科員 まずはということは第一歩という意味だと私は思いますけれども、整合性ということですから、財務省さん、後ほど話をします、もう一点だけちょっと確認させてもらいたいんですが。

 令和四年度建議には、また資料の五枚目ですが、受診回数や医療行為の数で評価されがちだった量重視のフリーアクセスを、必要なときに必要な医療にアクセスできるという質重視のものに切り替えていく必要がある、このような転換が、国民の上手な医療のかかり方に関する広報、好事例の横展開などといった通り一遍の方策では到底果たし得ないことはコロナ禍の経験から明らかとなったとの記述があります。国民の上手な医療のかかり方に関する広報、好事例の横展開などといった通り一遍の方策では到底果たし得ないとする評価は今でも変わっていないのか。

 そして、厚生労働省さんに一点確認ですが、こうした評価を受けた厚生労働省として今後どのように対応するべきなのか、考えていることをお尋ねしたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正におきましては、報告制度等を通じまして各医療機関がかかりつけ医機能の内容を強化いたしまして、地域において必要なかかりつけ医機能を確保することとしております。また、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下でかかりつけ医機能の発揮を促していくこととしております。

 このように、かかりつけ医機能もそうでございますけれども、また、今般、改正感染症法案にもこうした協定締結医療機関の枠組みなどが確実に機能するように準備を進めているところでございまして、かかりつけ医機能だけでなくて医療制度全般におきまして、必要なときに必要な医療が受けられるというフリーアクセスの考え方は重要な方針とされているというふうに我々も考えております。

 以上です。

大坪政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省といたしましては、医療制度の改革につきまして、先生の御意見もありますし、その他、財政審の建議についても今御紹介をいただきましたように、様々な御意見があるものと承知をしております。

 厚生労働省では、社会保障審議会医療部会の中で議論をしてきた中で今般こういった形でまとめさせていただいておりまして、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセスの考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が、地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携をしつつかかりつけ医機能を発揮することを促すことができるような制度整備、こういったものを進めてまいりたいと考えております。

 これまでにも、病床機能報告ですとか外来機能報告、こういった形で入院や外来医療の機能分化と連携を進めてきたところでありますが、今般、制度整備の法案を提出させていただいておりますので、御審議の上で、こういった制度を更に進めて、日常の地域での医療の提供体制を確立させていきたいと考えております。

中島分科員 いや、財務省さん、私は、令和四年度の財政審建議は大変言いづらいことをすぱっと言ったと。我が国の国民皆保険最大の特徴であるフリーアクセスがこのコロナ禍で発揮されなかった、さらには、今後、少子高齢化、人口減少、疾病構造の変化、フリーアクセス、量重視、出来高払いの診療報酬体制から質重視、そのためにかかりつけ医を制度化して、国民の皆様に確実に、必要な方が必要なときにアクセスできる体制をと。その令和四年。

 残念ながら、令和五年は、政府の統一性ということはあるでしょうが、この認定制、登録制は抜け落ちた。私は端的に、全世代社会保障法案の内容は、かかりつけ医の認定制や登録制は抜け落ち、単なる情報提供にとどまっている、今と一体何が変わるのかと。

 国民の皆様が求めているのは、我が国は一体それぞれの地域にかかりつけ医と呼ばれる人がどこにいて、一体あとどのぐらい必要なのか、この状況を満たすことが令和四年度の財政審建議で言っていたことだと思います。

 改めて、令和四年度の財政審建議、先ほど、かかりつけ医の制度化という言葉が抜けたと。恐らく財務省さんが言っているかかりつけ医の制度化というものは、もちろん、かかりつけ医とはいかなるものかを定義した上で、明確に認定制度をつくり、そして事前登録できる仕組み、これがかかりつけ医の制度化ということで令和四年度で示したんだと。しかしながら、新財政経済改革工程表にも載り、骨太に、そして全世代社会保障構築会議、どんどんどんどん骨抜きにされ、整合性を取らされた。我々の、資料の九枚目に示しておりますが、一年半前のと、まさに、財務省さんが令和四年度で示したのが、ぱくられたんじゃないかと思うぐらい合致した内容なんです。

 改めてですが、令和四年度の財政審の建議に対して、閣議決定された全世代型社会保障法案のかかりつけ医法制化は本当に評価できるものなんですか、確認したいと思います。

中村政府参考人 ありがとうございます。

 令和四年度の財政審の建議におきましては、非常に大きな角度から、審議会の委員の方から非常に大きな問題提起をいただきました。そうした議論も踏まえまして、他方で、先ほど申し上げたように、こういった制度整備を早急に進めなきゃいけないということで、厚労省、関係団体とも協議を進めてまいりました。

 その結果、先生がおっしゃるように、どういう情報が提供されなきゃいけないかという点につきましても、今までの情報提供制度は具体性に乏しいんじゃないかという指摘もございましたが、今般の改正案の中で、かかりつけ医機能を法律上定義した上で、具体的な、情報提供項目を見直すなど、国民や患者にとって分かりやすいように刷新を図るということも盛り込まれております。

 こういった取組によって、今般の法改正で国民、患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるということにつながるものと財務省としても認識しております。

 以上です。

中島分科員 私は、いろいろな部分で財務省さんとはどっちかというと合わない立場だったのかもしれないですが、ここに関しては、例えば、財政上、少子高齢化、人口減少、人生百年時代、今のままの医療制度だと、重複疾病を抱える疾病構造からいったら医療財政はもちませんよ。

 財務省さんの立場からいえば、医療費を効率化したい。そして、私は医者でもありますけれども、国民は住み慣れた地域で最後まで生活していきたい。今回のコロナで浮き彫りとなったのは、かかりつけ医だと思っていたお医者さんに、コロナになったかもしれない、ワクチンを接種したらいいのかどうか聞きに行ったら、私はあなたのかかりつけ医ではありませんと。こういう片思い、ミスマッチが生じたんです。これを明確にマッチングさせていくことこそが国民の皆様のニーズにも合致する。

 一方で、今のような重複疾病、眼科の、内科の、整形外科の、それぞれのかかりつけ医を持っている、そして、いざというときにその方が責任を持ってくれない。こういう水膨れのような診療報酬になってしまっている。結果的に、国民の皆様のニーズに合致させれば医療財政は健全化する。

 こういったことを我々は、九枚目、十枚目、これは、一年半前に出したかかりつけ医の制度化。通称日本版家庭医制度法案、今回の政府案に対して、我々は対案として改めて示してまいりたいと思います。

 大臣、国民の命、健康を守るために我が国は医薬品もワクチンも作れない、そんな状況になってしまった。同時に、医療基盤の再構築、これは、財務省の考え、財政上の問題と現場のニーズの問題。各省庁、これは厚生労働省、先ほどの医薬品の産業であれば経済産業省といいますが、まさに国策として、これからの信頼できる社会保障制度再構築。結果的に医療、社会保障財政は健全化されるはず。この考えに対して、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

鈴木国務大臣 財務省としては、財政審の議論の中でそうした建議をいただいているところであります。そういうものを踏まえつつも、今先生がお話しになられましたとおり、一義的に、厚生労働省を始め関係省庁がございますので、よく関係省庁と協議をしながら、安定した日本の医療体制が構築できるように、これからも関係省庁とともに努めてまいりたいと思います。

中島分科員 もう時間ですので終わりますが、全世代社会保障法案、我々として国民の皆様にちゃんと選択肢となるような内容のものを示してまいります、是非財務大臣にも御賛同いただけますよう、また財務省の皆様にも、当然厚生労働省の皆様にも御賛同いただけますことを改めてお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

中山主査 これにて中島克仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階分科員 立憲民主党の階猛です。

 雨宮副総裁、今日はありがとうございます。私も、黒田総裁始め日銀に対しては度々厳しいことを申し上げてきました。私は、個人的には、金融危機のときに破綻した日本長期信用銀行におりまして、当時は日銀には大変お世話になったという記憶があります。国有化された後も、安斎さんという方が日銀からお越しになって、頭取を務められたりということもありました。

 日銀には感謝も多い反面、ただ、当時の金融危機、あれは避けられたんじゃないかという思いもありまして、同じようなことが、今度は舞台を日銀とか、もっと言うと国家財政に替えて、大きな危機というものがあってはならないという思いでこの間厳しいことを申し上げてきました。雨宮副総裁とは、こうやってじっくり議論するのは今日が最初で最後になるかと思いますが、是非率直な答弁をお願いしたいと思っております。

 早速なんですけれども、雨宮副総裁の経歴を拝見しますと、大体足かけ四十五年にわたって日銀一筋で歩まれてきたというふうに伺っております。

 率直に言って、私は、二年のはずだった異次元金融緩和が十年続いて、今なお出口が見えないという中で、日銀のバランスシートは異常に膨らんで、巨大なリスクを抱え込んでいると思っております。そういう中で後輩に後を託さざるを得なくなっていることについて、雨宮副総裁としても複雑な思いもあるのではないかというふうに察しています。その辺りを含めて、間もなく退任を迎える現在の心境をお聞かせいただければと思っております。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 退任に当たっての所感という御質問でございますが、そういう退任の所感を申し述べるのはまだ時期尚早かなと感じておりまして、と申しますのは、まだ後任の人事、これから国会で御審議の段階であります。

 それから、何といっても、仕事の面では、御案内のとおり、まだ取り組むべき課題が大変多く残っております。金融政策決定会合、まだ三月にございますし、もう先生よく御存じのとおり、日々の金融調節は大変難しい局面が続いております。そのほかにも、例えば、CBDCのパイロット実験は四月から開始するということを先週公表したばかりで、今その準備の大詰めでもありますし、新年度に向けて、考査運営方針等々様々な課題が残っております。やるべき仕事は山ほどございますので、私としては、最後まで日本経済のために貢献できるよう、しっかりと職責を果たしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

階分科員 形式的な答弁は余り聞きたくもなくて、実際どう思っていらっしゃるのかなと思うんですね。

 私も、やはり金融危機のときに、先輩方が残した負の遺産を処理するためにさんざんな思いをしました。何で我々がこんな苦しい目に遭わなくちゃいけないんだと。多分、雨宮副総裁は、失礼ながら、お辞めになってこの問題からは逃げられると思いますけれども、後輩の皆さんはこの問題からは逃れられませんよ。非常に難しい出口戦略、これをやっていかなくちゃいけない。それについてどう思われているのかなということをお聞きしたかったんですよ。建前ではなくて、是非お答えいただけませんか。

雨宮参考人 退任の所感というよりも、今後の出口戦略も含めて政策運営の在り方ということで申し上げますと、二〇一三年から実施している大規模な金融緩和は、経済、物価の押し上げ効果をしっかりと発揮してきているというふうに考えておりまして、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなったというふうに考えております。

 そうはいっても、先生と黒田の間で御議論させていただいていますとおり、二%の物価安定目標の達成は、持続的、安定的な達成はまだ未達なわけでありますので、当面は、この物価安定目標の達成のために適切な政策運営を図っていくということが重要であると考えています。

 その後で、本当に賃金、物価の好循環が始まれば、当然、出口という議論になってまいります。ただし、出口については、世の中でいろいろな議論が行われておりますけれども、私は、金融調節の技術という点では、例えば、国債の残高をどう処理するかとか、あるいは金利をどう順調に上げていくか、必要に応じて上げていくかというそのオペレーションの技術についてはいろいろ対応のしようがあるというふうに思っております。

 例えば、こういう状況の下で日本銀行が国債をアウトライトで売り出すと、マーケットが大変な混乱になるという懸念が議論されておりますけれども、例えば、国債の残高の処理の仕方としては、アウトライトで売るということだけではなくて、これは海外の中央銀行も慎重にやっておりますけれども、ほかに例えば、期限の償還を使っていくとか、あるいは短期化して現先という格好で処理していくとか、いろいろな方法があるわけであります。

 したがって、出口で難しいのは、そうした金融調節の技術というよりも、本当に出口に至ったか、賃金と物価の好循環が始まったかどうかという判断と市場とのコミュニケーション、この二つが難しい重要な課題だというふうに認識しております。

階分科員 どこで金融緩和を見直すかという判断、これはちょっと質問の順番が先に行っちゃうかもしれませんけれども、これは過去にも、日銀が判断に迷い、遅れたときがあったと私は思っております。それは、あのバブルの生成と崩壊のときであります。やはり、あのとき、消費者物価指数は確かに安定していた、低位安定していた。ただ一方で、資産価格は暴騰していた。そこを見誤って金融緩和が長引いてしまった。結果、さっき申し上げたような、不良債権が膨らんで金融危機ということにもつながってしまったわけですね。

 ですから、確かに見極めは難しいけれども、見極めが難しいからといって、今後もリスクをどんどん膨らませていくということがあれば、もし見誤ったときの損害も大きく膨らんでしまうわけですね。

 ですから、いざとなれば何とかなるというようなことだけではなくて、今からもう着々とリスクを減らすようなことをやっておかなくちゃいけないんじゃないかなと思うんですけれども、過去のバブルのときの教訓を踏まえて、どう思われますでしょうか。

雨宮参考人 御指摘のとおり、バブルのときの経験は、金融面の不均衡ということも含めまして、経済、物価、金融が抱える潜在的なリスクに十分目配りをすることが必要であるという、我々にとっても非常に重要な教訓となっているというふうに考えております。

 ですから、私どもも、こうした教訓を踏まえまして、経済、物価の見通しを判断する上では、やはり中心的な見通しに加えまして、どういうリスクがアップサイド、ダウンサイドにあるかということ、あるいは、経済動向や物価動向だけではなくて、金融面の不均衡も含めてどういうリスクがあるかということを非常に綿密に点検しているつもりでございます。

 実際に、年二回公表する金融システムレポートで金融システム面でのリスクについて詳しく分析を行っておりますし、数年前から、金融政策決定会合にこういう金融システムを担当しております部局の者も出席して議論をするということをやっておりまして、今先生御指摘のようなバブルのリスクも含めたリスク評価、判断については慎重に行っていくつもりでございます。

階分科員 私が申し上げたいのは、異次元の金融緩和が、そこから即金融引締めに転じるということはあり得ないと思うんですね。異次元の金融緩和から、まず普通の金融緩和になって、それで徐々にリスクを減らしていって、景気がよくなったときに本格的な金融の引締めになってくるということだと思うんですね。この順番を誤ると大変なことになると思っていて、私は、そういう意味で、まず異次元の金融緩和を普通の金融緩和に戻す、これは、景気がよくなってからやることではなくて、もう今の段階から着手していいことなのではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 今我々が、過去十年間、日本経済からデフレという問題をなくして、正常な経済活動と賃金、物価の上昇の好循環をもたらすために様々な努力を講じてきたわけでございます。

 この間、判明したこと、分かりましたことは、やはり、日本におけるいわゆるデフレマインドと申しましょうか、物価はもう上がらないんだということを前提に企業や家計が行動するという、最近では、東大の渡辺教授の言葉で言うと、よく、社会的モードという、あるいはノルムという言葉を最近使われますけれども、そうしたノルムの強さということが改めて分析的にも示されたことだと思います。

 当初、二年間で二%というときは、この二年間というのは、通常の、世界的に一般的に使われているような金融政策の効果発現のタイムラグを前提に二年ということを考えたわけですけれども、多分、日本経済のデフレとの戦いというのは、そういう通常の経済モデルでは分析し切れない、もっと難しい、困難な課題だということが判明したわけです。そうした課題はどうしても時間をかけて改善していく必要があるということで、当初のいわば短期決戦型の政策運営から、より持続可能な、時間をかけて問題を解決するというフレームワークに移行してきたわけでございます。現段階は、その政策を続けるということが今の物価情勢を踏まえるとまだ適当であるというふうに考えている次第でございます。

階分科員 今、短期決戦型から、長期、持続可能な金融政策に変化してきたというお話がありました。これは恐らく、二〇一六年にマイナス金利やイールドカーブコントロールを導入して、それまでの量的緩和に重きを置いた政策から金利のコントロールに重きを置いた政策に変化したことを指しているんだと私は理解しています。

 ただ、その中で、株式市場だけではなくて債券市場にもゆがみが生じて、また、金融機関の収益低下とリスク資産の増大といったような金融システムへのリスクというのも生じてきているわけですね。また、昨年は、一時急激な円安、ここから物価高が更に進んだといったようなこともありました。

 確かに金融政策は持続可能かもしれませんけれども、その金融政策の効果に見合ったリスクなのか、リスクとリターンが整合していないんじゃないか。私は、リスクが大き過ぎるので、やはりもう少し普通の金融緩和のやり方ということに改めていくべきではないかなと思うんですけれども、それは違いますでしょうか。

雨宮参考人 先生御指摘のとおり、政策には常に効果と同時に副作用があるわけであります。我々は、それらを比較考量しながら、できるだけ最適、適切な政策を実施したいと考えておるわけでございます。

 御指摘のとおり、YCCあるいは金利を低位に維持するという政策の下では、金融機関収益を圧迫して、金融仲介機能に悪影響を与える可能性とか、市場機能の低下といった副作用があることは我々も十分認識しております。

 このため、YCC導入後も、そうした副作用をできるだけ小さくできるような対応はないかということで、例えば、オペレーション面でも、国債の補完供給の要件緩和ですとか、あるいは昨年の十二月のイールドカーブコントロールの長期金利の変動幅の拡大といった格好で市場機能に対する副作用をできるだけ軽減できるような対応をしているわけでございます。

 それから、金融機関の経営に対して悪影響を与えているということも事実でありますけれども、現在のところ、我が国では、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されていると考えております。

 実際に、この間の低金利あるいは金融環境で金融機関の収益が圧迫されていることは事実でありますが、それによって、金融機関の貸出態度あるいは融資態度が厳しくなるとか、あるいは緩和的でなくなるということであれば、これは見過ごせない副作用になりますけれども、今のところそういう現象は起きずに、このコロナ禍も含めて、先生御案内のとおり、金融機関は非常に積極的な対応姿勢を取っておりますので、この点については大きな副作用にはなっていないというふうに考えております。

 ただし、先生先ほど御指摘のとおり、例えば金融機関経営に与える影響というのは、見えないところで潜在的にたまっていくという性格もありますので、その点も含めて、点検は怠りなくしていきたいというふうに考えております。

階分科員 確かに、足下で融資が貸し渋りとか貸し剥がしが起きているということはないかと思いますが、じわじわと金融サービスに影響が出てきているんじゃないか。

 一つには、金融庁さんでも、合併、再編、リストラなどを進めた場合には補助金を出しますとか、日銀さんでも同じようなことをやっていますよね。収益が厳しいので、地域金融機関は本意でないかもしれませんけれども、そういうことをやらざるを得なくなっているわけですよ。

 そうすると、特に地方では金融サービスが得られにくくなってきているといったような問題もありますし、つい最近だったか、報道を見ますと、やはり、資金運用の方、債券の価格が低下して、特に海外での運用の債券が、金利が上がったことによって含み損が出て収益が悪化していると。たしか六割ぐらい、地方の金融機関は減益だといったような報道もありました。ですから、ここは見過ごせないのではないかと思っております。

 やはり日銀さんは物価の安定も見ながら金融システムの安定も見なくちゃいけないということで、金融システムの方に今静かにマグマがたまっている状況だと思っていますけれども、そういう認識はあるということでよろしいですか。

雨宮参考人 まず、今先生御指摘のありました地域金融機関の収益に対する負担が増大してきているということでありますけれども、これはもちろん低金利環境ということも要因として働いておりますけれども、より長い目で見ると、やはり地域経済の問題点と表裏一体という部分があるんだろうと思います。

 具体的には、人口減少の下で人口数あるいは企業数が減少していく、あるいは、地方における資金需要がなかなか大きくなってこない、あるいは縮小しているといった、いわば地域経済のチャレンジと同根の問題に金融機関も経営として直面している、こういう状況なのであろうというふうに思っておりますので、私どもが、例えば地域金融機関の経営改善のためのサポートの政策を打ったのも、決してそういう、今の金融緩和政策の影響というよりも、そうした長い目で見た構造的な課題を踏まえて、金融機関が前向きに対応できるように後押しするという心でやったものでありますので、そうした構造的課題にどう対応するかが大きな問題になっているんだというふうに理解しております。

 その上で、先生おっしゃるような、金融機関あるいは金融仲介機能に対してどのようなリスクが蓄積されているのかという点については、様々な面からつぶさに点検を続けているつもりでございます。

階分科員 むしろ、人口減少とか、地域経済が衰退しているからこそ地域の金融機関に頑張ってもらわなくちゃいけないんですけれども、そのためには体力が必要である。ところが、体力はむしろ低下していて、今、厳しい地域経済を支えるだけの力がなくなってきているんじゃないか。自らの身を守るのに精いっぱいで、取引先を始め地域経済のために貢献するというところがなかなか行き届かないんじゃないかということで、私は、因果関係が少し逆だと思っています。地域経済が駄目だから金融機関が余り伸びないということではなくて、金融機関に余裕がなくなっているから地域経済がなかなかよくならないという話だと私は思っています。これは違いますか。

雨宮参考人 先生御指摘のとおり、金融と実体経済というのは車の両輪ですので、一方的にどちらからどちらへの因果関係があるということではなくて、お互い、因となり果となり、ぐるぐる回っているということだとは思います。

 ただし、例えばこの数年を取ってみますと、私どもの地域金融機関の経営サポートの政策の効果もあるんだろうと思っているんですけれども、この間、金融機関さんは、経営の改善に向けて目立った効果をこの数年間上げておられまして、体力という面でも改善しておられます。

 しかも、この間、これはコロナ禍ということもありましたけれども、やはり地域経済を支える上で非常に積極的な活動をされてきておりますので、今先生が御懸念されたような、地域の金融機関の体力低下が地域経済の問題に直接結びついているということではなかろうというふうに思っております。

 ただし、金融と経済が車の両輪であり、大事だということは御指摘のとおりかと思っております。

階分科員 ちょっと、日銀の金融政策の悪影響を過小評価していると言わざるを得ません。

 私は、ちょっと話題が変わりますけれども、そもそも、二年で二%という目標ですね、なぜ二年という期間を区切ってしまったのか。これは、白川総裁の本を読むと、この二年という期限を入れること、異次元の金融緩和をするときに二年という期限が入ったわけですけれども、その前の共同声明を締結するときに、政府と日銀との間で二年という期限を明示するかどうか、かなり激しい議論があったと。でも、日銀が徹底的に拒否したので入れなかったということがあったわけです。それが一月のことで、さっき言った異次元金融緩和は四月のことです。雨宮副総裁は、この間、大阪の支店長から転任されて本店の理事になって、金融政策にも関わるようになった。

 当然、日銀に、ずっと枢要なところにお勤めになっていたわけで、白川総裁下では二年ということを入れちゃ駄目だということで徹底的に拒否したということは知っていたと思うんですが、そういうことではなかったんですか。

雨宮参考人 先生御指摘のとおり、私は、二〇一三年の三月半ばまで大阪支店長を務めておりましたので、その共同声明の作成過程についてつまびらかに承知しているわけではございません。

 ただし、四月から、大阪から戻りまして金融政策の担当理事になりまして、初めての金融政策決定会合は四月の決定会合だったわけであります。そこでは、やはりこの二年を、二年程度を念頭に置いてですか、この文言を入れるかどうかについて相当の議論が行われたことを覚えております。

 元々、一月にできた共同声明は、先生御指摘のとおり、できるだけ早くということだったわけですけれども、四月の決定会合では、このできるだけ早くをもっと具体化して、より強いメッセージ、大きな、量的・質的金融緩和を始める以上、より強いメッセージを出すにはどうしたらいいかということが議論されて、中にはやはり反対された委員もおられました。たしか、私の記憶では一名、最後、結局、反対投票されたと記憶しておりますけれども、そうした、元々一月にあった、できるだけ早くということを踏まえて、それをより具体化し、より強いメッセージにはどうするか、どうしたらいいかということを議論した結果、こういうことになったというふうに理解しております。

階分科員 そんなに簡単に変わるものなのかなと思って驚いたんですね。僅か数か月で、二年ということを入れないということに徹底してこだわっていたのが、黒田さんに替わったらすぐ入っちゃう。これは、黒田さんは日銀の方ではないので、周りでサポートしている日銀の方々は、どういう思いで、そんな、まさに白から黒にがらっと色が変わるようなことをしたのかなというふうに思うわけです。それはそれとして、いずれ議事録が、あと半年もすれば公開されるでしょう。そこで検証したいと思っておりますけれども。

 ところで、結果から見たときに、二年で二%ということを宣言したことは、今思えば妥当だったと思いますか。

雨宮参考人 先生の御指摘は恐らく、結果として、二年の物価安定目標を二年程度の期間で実現できなかったという御指摘かと思いますし、そのこと自体は、そのことは事実でございます。

 しかし、先ほど来申し上げていますとおり、二〇一三年の量的・質的金融緩和の導入当初は、やはり、日本に根づいてしまった非常に頑強なデフレマインドを打ち砕き新しい循環に持っていくためには相当強いメッセージが必要だという議論の下で導入した考え方でございます。

 実際にそうした明確なメッセージを打ち出したことは、それを裏打ちする大規模な金融緩和の実施と相まって、当初は効果を発揮したというふうに考えておりますので、あの段階では、現時点でも妥当であったというふうに考えてございます。

階分科員 あの段階では、現時点でもと、ちょっと分かりにくいんですけれども、そうすると、二年という期限を区切って二%目標を掲げたということは間違いではなかった、むしろ、白川さんのときに徹底的に拒否した、そっちの方がおかしかったということになるわけですか。

雨宮参考人 私は、当時の白川総裁が、今先生がおっしゃったような対応をされたかどうかについてはつまびらかに存じ上げませんけれども、元々、一月にできた共同声明でも、できるだけ早くという文言になっているわけであります。

 そのできるだけ早くという共同声明を踏まえた上で、更にこれを発展的に強化するためにはどうしたらいいかという議論が四月の決定会合で行われたというふうに理解しております。

階分科員 いや、だから、その議論は、共同声明を結ぶところでさんざんされたと思うんですよね。にもかかわらず、白川さんは徹底的に拒否したというふうに本で書かれているわけですよ。

 でも、やはりその白川さんの判断は、今、結果的に見て間違いだった、二年でというのを入れた方が正しかったというお立場だというふうに伺ってよろしいですか。

雨宮参考人 繰り返しになりますが、大変恐縮ですが、私は、その共同声明を決めた際の白川総裁の判断についてつまびらかに存じ上げているわけではありませんが、共同声明での考え方に基づき、四月に、二年程度という決定をしたものというふうに理解しております。

階分科員 いや、何かかみ合っていないんですけれども、政府は、元々、共同声明の段階で二年というのを入れろと言ってきたのに対して、白川さんは、いや、それは駄目だということで拒否したわけですよ。それで、できるだけ早期にとなっているわけで、できるだけ早期にという中で二年というのも含まれるという立場ではなかったと思うんですよ、日銀はですよ、日銀は。文言からすると、確かに二年というのを含めてもいいかもしれませんけれども、白川総裁下の日銀においてはそういう立場ではなかったわけですよね。ということなんですよ、白川さんの本を見ると。だけれども、結局二年というのを入れてしまった。

 ということは、二年というのは、さっき正しかったと言っていますけれども、白川さんの考えが間違っていた、二年というのを明示しない方が間違っていたということでいいんですか。そこだけ端的にお答えください、時間もあれなので。

雨宮参考人 繰り返しで大変恐縮でございますが、私は共同声明の段階での白川総裁の判断についてコメントする立場ではありませんので、それは控えさせていただきます。

階分科員 ちょっとこの辺りも、二年というのにこだわったからこそ、金融緩和の手段も、やれることは何でもやるとか戦力の逐次投入はしないということで、過激なものになったと思うんですね。仮に二年というのをできるだけ早期ににとどめていれば、もっとマイルドなやり方で、ひょっとすると、今のようないろいろなリスクというのはなかったかもしれない。なので、私は、異次元の金融緩和ということが長く続いてしまった背景には、やはり二年というところにこだわったことはあるのではないかと思っています。

 最後にお尋ねしますけれども、黒田総裁は当初、物価が上がれば賃金も上がって景気もよくなるというふうにおっしゃっていたわけですけれども、これはそうならなかったわけです。いわゆるリフレ派の考え方に沿ったものだと思うんですけれども、私は、こうした考え方はこの十年の結果からすると誤りだったということが判明したと思うんですが、この点についてはどう思われますか。最後、お答えください。

雨宮参考人 先生御指摘のリフレ派の考え方というような特定の主張についてコメントすることは差し控えますけれども、これまで私どもが説明してきたのは、御指摘のような、物価が上がればおのずと賃金が上がり景気もよくなるというようなことではないわけであります。

 これは当初から、例えば、これは黒田総裁が二〇一三年の七月に講演で話したことですけれども、引用させていただきますと、「日本銀行は、単に物価が上がればそれで良いと考えているわけではありません。目指しているのは、わが国経済が生産・所得・支出の好循環のもとでバランスよく成長することで、雇用・賃金の増加を伴いながら、物価上昇率が次第に高まっていくという状態を作り出すことです。」と、こう最初から申し上げているわけであります。

 この考えの背景にあるのは、いわゆるフィリップス曲線という考え方でありますけれども、景気の改善に伴って需給ギャップや労働需給が改善していけば、それに応じて物価や賃金に上昇圧力がかかるという、根っこに実体経済なり需給ギャップがあって、それが物価や賃金に反映していくという考え方を取っているわけでございますので、今先生の御指摘のような、まずとにかく物価が上がればおのずとというような考え方は取っていないということであります。

階分科員 黒田総裁は、物価が上がれば賃金が上がらないということはないということをおっしゃっていたので、私はそういう質問をしました。

 時間ですのでこれで終わりますけれども、雨宮副総裁、今日はありがとうございました。是非、後輩のためにも、残された任期、頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中山主査 これにて階猛君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十一日火曜日午前九時より開会し、法務省及び財務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四分散会


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