衆議院

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第2号 令和5年2月21日(火曜日)

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令和五年二月二十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 中山 展宏君

      石橋林太郎君    塩崎 彰久君

      下村 博文君    辻  清人君

      古川 禎久君    大西 健介君

      小山 展弘君    藤岡 隆雄君

      宮本  徹君

   兼務 高橋 英明君 兼務 浅野  哲君

   兼務 緒方林太郎君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   財務大臣         鈴木 俊一君

   財務副大臣        井上 貴博君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 滝澤 幹滋君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            岡田 恵子君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        北波  孝君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            野崎 英司君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    真渕  博君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房儀典長) 島田 丈裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   中村 英正君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           里見 朋香君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西條 正明君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山本  史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           斎須 朋之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森光 敬子君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       柏原 恭子君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           久保田 誉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           住友 一仁君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局次長) 平嶋 隆司君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  下村 博文君     石橋林太郎君

  大西 健介君     寺田  学君

  藤岡 隆雄君     小山 展弘君

  宮本  徹君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     塩崎 彰久君

  小山 展弘君     石川 香織君

  寺田  学君     大西 健介君

  笠井  亮君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     下村 博文君

  石川 香織君     藤岡 隆雄君

  高橋千鶴子君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  穀田 恵二君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  宮本 岳志君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  本村 伸子君     宮本  徹君

同日

 第二分科員浅野哲君、第四分科員緒方林太郎君及び第六分科員高橋英明君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算

 (法務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

中山主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算及び令和五年度政府関係機関予算中財務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。浅野哲君。

浅野分科員 おはようございます。国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、予算分科会、第三分科会ということで、今日は、予備費、そして子供、子育てに係る所得制限の撤廃等について質疑の中で取り上げさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、予備費について大臣に質問させていただきたいと思います。

 今回、今審議がされております令和五年度予算案の中で、コロナ、物価高対策予備費については四兆円計上がされております。この積算根拠について、これから質問させていただこうと思うんです。

 二月十日の委員会質疑の中で、まずは同様な質問をさせていただいた際、金子大臣政務官の方からはこのような答弁をいただきました。まず、予備費を計上する際に考慮した項目として、新型コロナの感染拡大や物価の高騰、そして世界的な景気後退が我が国の景気を下押しするリスクなど、こういったことを念頭にして、昨年度までの予備費計五兆円規模を維持するためにこの四兆円というものを計上したという答弁がございました。

 私が本日伺いたいのは、これまで、想定できるリスクについては、やはり一般会計に予算計上して、予備費ではなく、ちゃんと費目を設けて計上すべきではないかという考えに立っていろいろな質疑をさせていただいているんですが、とりわけコロナ対策ですとかエネルギー価格の高騰というのは、コロナももう四年目に入りましたし、あとはエネルギー価格、特に電気代の値上がりについては、一定程度、民間企業からも値上げ申請があり、どの程度値上がりをするかというのがある程度見込めているものであります。ですから、一定程度予測できるものについては事業費として計上するべきではないかと思っております。

 また、金子大臣政務官の方からは、令和三年度には予備費四・六兆円、そして令和四年度には予備費四・九兆円を使用したから、今回の予備費規模も決して過大ではない、そのような答弁もいただきました。

 ただ、過去にこれぐらい使ったから今回もこのぐらい用意しておいていいんだという理由は、やや国民からすると説得力に欠けるのかなということも感じておりますので、是非、その点、この予備費の積算根拠、また今予算案に対する妥当性について答弁を求めたいと思います。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 新型コロナの感染拡大でありますとか物価の高騰、これは国民生活や事業活動に大きな影響を与え得るものでありますけれども、今後の推移や影響の範囲等について確たる見通しを申し上げることは困難ではないかと思っております。

 また、世界的な景気後退など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスク、これにも十分注意する必要があると考えます。

 こうした点を踏まえまして、令和四年度当初予算と同規模の不確実性への対応余力を確保すべく、昨年度の第二次補正予算で計上したウクライナ情勢経済緊急対応予備費一兆円を引き続き計上するとともに、コロナ、物価予備費につきましては四兆円を計上することといたしました。

 お尋ねのございましたコロナ、物価予備費の計上金額四兆円の考え方でありますが、これはただいま申し上げたものでありまして、令和三年度や令和四年度の使用実績を直接積算根拠としたものではございません。

 他方、今般のコロナ、物価予備費四兆円という金額につきましては、令和三年度や令和四年度の使用実績との関係では必ずしも過大ということにはならないのではないかと考えているところでございます。

 そして、浅野先生から、予測できる事業は予算計上すべきではないかというお話がございましたが、この御指摘について申し上げますと、予備費は予見し難い予算の不足に充てるための万全の備えとして計上しているものでありますけれども、憲法第八十七条や財政法第二十四条におけます予見し難いとは、支出を要する事柄自体が予見し難い場合だけではなく、事柄は予見し得るが、その金額が予見し難い場合も含まれると解されているところでございます。

 新型コロナの感染拡大や物価の高騰は国民生活や事業活動に大きな影響を与え得るものでありますが、現時点において今後の推移や影響の範囲等について確たる見通しを立てることは困難であるため、具体的な予算を見込み、予算を計上することも難しいのではないか、そのように考えております。

浅野分科員 御答弁ありがとうございました。

 今のような質問をさせていただいた背景について申し上げますと、今国会においては防衛費財源確保法の審議もこれから予定をされておりまして、使わずに、執行されずにある決算剰余金、この一部が防衛費の財源に充てられることを今議論されております。ですので、予備費が余りに過大になって、その余り分が大きくなってしまうと、それが結果的に防衛費の財源に回ってしまうのではないか、そのよしあしは別にしても、そのような可能性を残しておくことが国民の間で不安や疑念を生じさせるのではないか、こういったことを懸念しての質問になります。

 次の質問に移りたいと思うんですが、今私が少し申し上げました予備費を使わずに余った分、この余った分はその後、決算剰余金として一般会計に繰り入れられるということは、今の制度上論理的にあり得るのかどうか、この辺りを御答弁いただきたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘の、予備費を含めた歳出予算につきましては、結果として不用が生じること、これはあり得ますけれども、歳出に不用が生じることが見込まれる場合には、税収等の動向も見極めながら、特例公債法の規定に基づいて、特例公債の発行額の抑制に努めることとしております。そのため、御指摘の予備費を含めた歳出に不用が発生した場合、その金額が決算剰余金に対応するわけではございませんということでございます。

浅野分科員 少し分かりにくい議論かもしれませんけれども。

 要するに、予備費の使わなかった分、これを、特例公債を発行するはずだった分を発行しないようにして相殺させて、いわゆる国の債権というものをできるだけ最小化しよう、それに努めるというのが特例公債法に定められているというふうに私も事前に伺いまして、今の答弁を伺いましたけれども。

 改めて、今回、私が今日指摘をまずさせていただきたいのは、防衛費が、これから財源確保が議論されていく中で、同時にコロナですとかエネルギー価格の高騰という問題が起き、ここ数年間五兆円規模の予備費が計上されている。一義的には、予備費というのは、この使い道というものは比較的柔軟に決められるものですから、国民にとってみれば、この予備費をあらかじめ過大に準備しておいて、余ったものがそのような防衛費の財源に回されることが非常に心配だ、計画外使用されないものか、これをやはり懸念する声というのが今非常に大きくなっているように私は感じております。

 次の質問ですけれども、予備費というのは、コロナあるいはエネルギー資源価格の高騰、国民生活を守るためにやむを得ず支出する場合は、当然、これは我々も積極的にちゅうちょなく執行されるべきと思いますけれども、防衛費というものに回るリスクを、やはり防衛費というのは計画的に進めなければいけないものですから、それを防ぐためにも、特例公債の相殺に充てるよう努めるのではなくて、予備費の余剰金については特例公債の発行額を減らすようにしなければいけないような、そういう決まりにするのはどうか、それを明確にすることによって、この予備費に対する国民の信頼感を高めていく努力をすべきではないかというふうに思うんですが、これに対して御答弁をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、歳出の不用が生じることが見込まれる場合には、税収等の動向を見極めながら特例公債の発行額の抑制に努めるということにしているわけであります。

 特に、先生から御指摘のございますコロナ、物価予備費やウクライナ情勢経済緊急対応予備費につきましては、不使用額が決定しながら特例公債の発行をいたずらに行うということは適当ではないと考えております。

 その上で、防衛力強化の財源措置、この決算剰余金の活用について申し上げますと、特例公債の発行額の抑制に努めた後の決算剰余金の直近十年間、平成二十四年度から令和三年度でありますが、この十年間の平均が一・四兆円程度でございます。そして、財政法上、公債又は借入金の償還財源に充てるべき二分の一、これは基金の方に、そちらの方に入れなくちゃなりませんので、その二分の一を除く残りの二分の一の〇・七兆円、平均一・四兆円の半分、この〇・七兆円程度を活用見込額として見込んだものでございます。

 特例公債の発行額の抑制に努めないということを前提に防衛力強化の財源として考えているわけではございませんので、是非御理解を賜れればと思います。

浅野分科員 繰り返し申し上げますけれども、今の、特例公債の発行抑制に努めた上で、それでも生じた決算剰余金の半分は公債返還に充て、残りを防衛財源に回すということですけれども、そこの回す部分にやはり予備費からのお金の流れがあり得るとなると、国民の信頼というものが、国民の不安がそこに存在するということを今日は指摘させていただきたいと思っていましたので、特例公債の発行抑制に努めるというのはもちろん大事ですけれども、是非、この透明性、そして国民に不安を与えないような予備費運用というものを引き続き御検討していただきたいということを申し上げて、今日は次の質問、テーマに移らせていただきたいと思います。

 次の質問ですけれども、まず、児童手当の所得制限撤廃が今国会では話題になっておりますので、それについて伺いたいと思います。

 まずは事実確認を、事実確認といいましょうか、客観的な部分の確認をさせていただきたいと思います。

 現在、令和五年度の児童手当に係る予算要求額は一兆二千四百六十三億円となっております。現行制度では、この予算というのは、所得制限を設けた上で、中学生までの支給というものを前提として予算歳出がされておりますが、仮に、中学生まで所得制限を設けないこととした場合に、必要な予算というのはどれほど増えるのかというのが一点。加えて、第一子から年齢を問わず中学生まで一律一万五千円支給とした場合には、更に追加で幾ら必要となるのか。最後に、現在中学生までという対象年齢を十八歳まで拡大する場合、追加で幾ら必要となるのか。

 できましたら、それぞれの要素に分けて、追加分の予算見通し額を御答弁いただきたいと思います。

北波政府参考人 御質問いただきました児童手当に関してでございます。

 令和五年度予算というところで、額といたしましては一兆二千百九十九億円という形になっております。

 現在、政府といたしましては、子供、子育て政策の強化に向けて、まず、規模ありきではなくて、必要な子供政策は何かということを幅広く議論した上で中身を具体化することが重要であるというふうに考えております。

 先生の方から三点にわたっての御質問もございましたが、現在、何を具体化するのかに向けまして、小倉大臣の下に設けられました関係府省会議において議論を行っている最中でございますので、議論を予断を持ったものとならないようにするために、現段階におきましては、特定の政策の試算をお示しするということは考えていないところでございます。

 児童手当につきましては、所得制限の撤廃を含めて様々な意見があると承知しておりますが、まずは三月末を目途として、子供、子育て政策として充実する内容を具体化すべく、議論を進めていきたいというふうに考えております。

浅野分科員 事前に私、しっかり、先週ですね、直前通告ではなく、先週の半ばにこの質問を通告させていただき、約一時間、答弁された方の部下に対して説明をさせていただきました、この質問の趣旨を。

 改めて伺いますが、これは規模ありきの議論ではございません。今、日本に住んでいる、日本で暮らしている子供の人数というのは政府は把握することが可能だと思いますし、また、それぞれの年齢やどんな学校の何年生なのかというのも把握ができていると思います。

 この客観的な数字があれば、今の私の質問には答えることは理論上できると思いますし、それが政府の中の議論に何らかの影響を与えるものではなく、これはあくまでも国会の中での政策議論ですから、政府の検討は政府の中でやっていただきまして、是非、政府として、国会からの質問に対しては真摯に答弁をいただきたいと思いますので、もう一度答弁をお願いいたします。

北波政府参考人 ありがとうございます。お言葉をいただきまして、真摯に対応させていただきたいとは思っておりますが、何らかの試算を行うということになりますれば、試算の前提というものを整理する必要があるというふうに思います。

 まず、その整理よりも、何を充実するのか、その内容の具体化に注力していきたいというのが私どもの立場でございますので、御理解をよろしくお願いいたします。

浅野分科員 済みません、この議論、こういう質問に答えていただけないと、国会の中での所得制限撤廃についての客観的なデータが集めることができず、議論をすることができません。

 三月末、小倉大臣の下で検討された結果が明るみに出て、六月頃をめどに予算も含めた政策の内容が具体化した際に、そこから我々国会議員に審議をしろと言われても、もう国会は恐らく会期末。じゃ、いつ国会議員は、皆さんが今考えている内容について、我々も考えなければいけない。これが三権分立。行政は行政の中で考え、国会は国会の中でしっかりと考え、それに基づいて必要な、考えるために必要な情報はお互いに真摯に提供し合うというのは、これは当然のことだと思うんです。

 また、試算をすることは予断を持ってできませんということなんですが、これは試算ではなく、単純な計算です。既に判明している数値に基づいて、一定の金額を掛ければ出せるはずですし、その統計的な数字を把握しているのが政府だから皆さんに聞いているのであって、これを出す、計算をすることが、皆さんの今後の政府内での議論に何らか影響を与えるというわけではないと思いますので、是非御協力をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

北波政府参考人 繰り返しになりますけれども、政府の基本的な考え方については今申し上げましたとおりでございます。

 現在、子供、子育て政策として、充実する内容の具体化へ向けて議論を進めている最中でございますので、なかなか予断を持ってお答えすることというのは困難ではございますが、三月末を目途に具体化をした後は、必要な検討を行っていくということになろうかと思っております。

浅野分科員 多分、このまま続けていてもらちが明かないと思いますので、そうですね、この分科会の中での質問は、これ以上は続けても意味がないと思いますが、今おっしゃった政府の基本的姿勢というのは間違いだと思います。

 数字を出すことで国の政策議論が、政府の中での議論が何らかの影響を受けるのであれば、それは恐らく政府の中のガバナンスの問題であって、我々国会議員は、国会で議論をするために、皆さんからの情報提供も受けながら、議論を、熟議を重ねていくためのこのやり取りですから、是非そこは今後是正をしていただきたいということを申し上げて、次の質問に入りたいと思います。

 児童手当については、もう少し基本的なところを伺いたいんですが、児童手当の先ほど申し上げた一兆二千億円余りの予算、これに加えて事項要求というのを行っているのかどうか、事実確認をさせていただきたいと思います。

 また、財務省の方には、総理が異次元の子育て政策実現ということを今盛んにおっしゃられておりますが、財務省の、児童手当の所得制限撤廃も含めて、異次元の子育て政策実現に向けてどのように今構えているのか、総理の発言を受けてどのような今見解を持っているのか、基本的認識を伺いたいと思います。

北波政府参考人 お答えいたします。

 令和五年度予算で、児童手当につきましては、予算額が一兆二千百九十九億円ということで、概算要求でお示しいただいた数字とは若干異なっております。これは、支給状況それから人数等を踏まえまして要求をさせていただいて予算に計上しているものでございますので、事項要求ではございません。

中村政府参考人 異次元の子育て政策実現に向けた取組についてもお答え申し上げます。

 御案内のとおり、少子化が非常に進展しておりまして、昨年の出生数は恐らく八十万人を割ると見込まれております。これは先送りが許されない課題であると我々も考えております。

 総理から御指示がありまして、小倉大臣の下で子供政策の強化に関する関係省庁会議が設置されました。昨日も総理が御出席されまして、私もメンバーの一人に名を連ねておりますけれども、こういった下で具体的に検討を進め、三月末に具体的なたたき台を取りまとめ、六月の骨太方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠が示されていくものと承知しております。

 我々財務省といたしましても、こうした共通認識に立っておりまして、こども家庭庁や厚労省などとよく連携を取って議論を進めていきたいというふうに考えております。

 以上です。

浅野分科員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が残り僅かとなってまいりましたので、少し質問の順番を変えさせていただきまして、次は、貸与型奨学金について、二、三質問させていただきたいと思います。

 貸与型奨学金、いわゆる第二種奨学金と呼ばれているものですけれども、令和五年度予算額とその根拠について、まずは御答弁をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

西條政府参考人 お答えいたします。

 貸与型奨学金事業の令和五年度予算額につきましては、貸与人員約百二十万人に支援ができるよう、事業費約八千九百億円を計上しております。先生の今御質問がありました有利子の部分につきましては、五千九百四十九億円となってございます。

 奨学金の貸与に当たりましては、学力基準と家計基準を設けていますが、この基準を満たす希望者全員への貸与を実施できる事業費を確保しているというところでございます。

浅野分科員 ありがとうございます。

 貸与型奨学金なんですけれども、有利子と無利子というのがございます。私はこれまで、有利子の貸与型奨学金については、やはり所得制限をなくして、家庭の経済状況によらず、全ての希望する子供たちが有利子の貸与型奨学金くらいはせめて利用できるようにすべきではないかというふうに主張してまいりました。今、答弁の中では、要件を満たし、なおかつ希望する学生全てには提供する準備があるという御答弁でしたけれども、私は、要件を満たしという部分を取り除くべきではないかというふうに主張しております。

 貸与型奨学金の場合は、貸与型ですから、必ずいずれ返済がされてまいります。現に、年間の予算の拠出した分の八割程度は、卒業した元学生の皆さんから返済がされていて、ほぼ戻ってくるお金ですね。戻ってこない分については、まだ返済時期に入っていない分ということで、国の財政を傷めるようなものではない。だからこそ、この貸与型奨学金の財源には、財政融資資金ですか、特別会計から財政融資資金という形で予算を拠出しているわけですけれども。

 やはり、所得制限を撤廃するためには予算の枠を広げなければいけないと思うんですが、予算の枠を今何で律束しているのか、もっと増やすことはできないのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。

西條政府参考人 お答えいたします。

 貸与型奨学金事業の財源につきましては、議員の御指摘のとおり返還金が主な原資となっておりますが、全員からお貸しした額を全額回収できるというものではなく、例えば貸倒れの補填などについても一般会計予算での負担が生じるなど、返還金で事業費全てをカバーできているものではございません。

 先ほど御答弁申し上げたとおり、令和五年度予算案につきましては、学力基準と家計基準を満たす希望者全員への貸与を実施する事業費というのは既に確保しているところでございます。

 いずれにいたしましても、経済的な理由により学生等が学びを諦めることがないように対応することが重要だと考えておりまして、文部科学省といたしましても、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

浅野分科員 もう時間が参りましたので、これで終わりにしたいと思いますが、経済的事情によって学びを諦めないように、まさにおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、家庭の収入が多い世帯でも、何度も多分国会では聞いていると思いますが、多子世帯、兄弟がたくさんいるようなお子さんたちについては、例えば、一番上に生まれた子が公立の学校しか行けない、もし自分が私立に行ってしまったら下の弟や妹が行けなくなるかもしれないから、あなたは公立しか行っちゃ駄目よ、そんなことを言われている子供たちはたくさんいますし、結果として、進学先を諦めたりだとか、選択肢が狭まったり、そういう子供たちが現にいるのも事実でございますので、是非そういった部分も含めて、学びを諦めないような環境整備に御尽力いただくことをお願いして、終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

中山主査 これにて浅野哲君の質疑は終了いたしました。

 次に、小山展弘君。

小山分科員 衆議院議員の小山展弘です。

 今日は、日銀の黒田総裁にもお越しいただきまして、先日の予算委員会の一般質疑のときに引き続いて今日はお見えをいただいて、大変御多忙の中、黒田総裁にお越しいただくのも大変申し訳ないとも思いながらも、今日はお見えいただいてありがとうございます。

 それでは、質問に入らさせていただきたいと思います。

 まず、実質実効為替レートに関する認識について、黒田総裁と鈴木財務大臣にお尋ねをしたいと思います。

 実質実効為替レートで見ますと、資料一のとおりで、皆様方には釈迦に説法かとは思いますけれども、今のレートは昭和五十年ぐらい。二〇二〇年を一〇〇とした指数で見ますと、岸田内閣の現在、二〇二二年十二月は指数が七五・四七、これは、一九七三年一月の田中角栄内閣の八八・四三よりも低い水準となっております。

 ちなみに、野田内閣のときに名目レートでは最高値だと言われまして、しかし、実質実効為替レートで見ますと、村山内閣の七十九円の方が、二〇二〇年を一〇〇とした指数でも一九三、野田内閣は一三五、中曽根内閣も一三五ということで、ほぼ中曽根内閣の頃の、円高不況と言われた頃と同じぐらいの水準である。

 ですから、本来は、中曽根内閣のときの円高不況に対する対策をどう行ったかということをもっと当時の経済界も認識すべきだったと思うんですが、これは日銀の政策とは直接関係ないと言われてはおりますけれども、大変経済界も円安ということを強く求めていたことを記憶しております。

 当時の日銀の国会連絡室の担当の方がよく来られて、この実質実効為替レートの表を見せて、野田内閣のときは決して村山内閣のときほど、名目レートほど円が価値が強くなっているわけではないんだ、ですから、余り金融緩和とか円安の話をしないでほしいということを言われたことを、これはもちろん連絡室の職員さんの話ですけれども、覚えております。

 また、エコノミストの出しているビッグマック指数というものがあります。これは資料二の一と二の二でございますけれども、特に二の二の数字の方を御覧いただければと思います。

 またこれも釈迦に説法もいいところでございますけれども、民主党政権の二〇一二年七月までは、ほぼほぼ日本とアメリカのビッグマック指数は同じぐらいだった。二〇一三年一月以降マイナスになりまして、今やマイナス四一・二。日本のビッグマック指数でいうと、約四割、ドルよりも弱くなっている、こういうような指数も出ているわけなんですけれども。

 数字だけ見ますと、異次元の金融緩和を行っている間に、米国との差がどんどん広がっていったのではないか。こういったビッグマック指数で、他の中国とか韓国よりも、日本の円は先進国の通貨の中で最も安くなっているというようなことも言われております。

 また、こういうようなことが続きますと、これから労働力不足ということも心配されますが、海外からの労働者がなかなか日本に魅力を感じなくなってくるというようなこともこれから懸念されるところなんですけれども、このことについて、黒田総裁と鈴木財務大臣の御認識を伺いたいと思います。

黒田参考人 為替相場の水準あるいはその評価について具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが。

 御指摘の実質実効為替レート、これは、二国間の名目為替レートについて、物価上昇率の格差を調整して実質化した上で、貿易額ウェートで加重平均したものであります。また、御指摘のビッグマック指数も、いわば同様な考え方に基づいて、ビッグマックという特定の品目の価格を用いることで、いわば実質為替レートを簡便に計測したものであります。

 その意味で、実質実効為替レートは、名目為替レートの動きだけではなく、内外の物価上昇率の違いも反映した指標となっております。

 この点、やや長い目で見た我が国の物価上昇率は、一九九〇年代半ば以降、長期にわたって諸外国よりも低めに推移しております。この点が、実質実効為替レートの趨勢的な低下に影響しているというふうに見ております。それに加えて、この一年くらい、特に昨年の夏までですけれども、対ドルの名目為替レートが低下したことも影響しているというふうに考えられます。

 いずれにいたしましても、為替レートは様々な要因によって変動し得るものでありまして、日本銀行としては、引き続き、政府とも緊密に連携しつつ、金融為替市場の動向、あるいはその我が国経済、物価への影響を十分注視してまいりたいというふうに考えております。

鈴木国務大臣 小山先生御指摘のとおりに、実質実効為替レートやビッグマック指数で見てみますと、近年、円安が進展していること、そのことは承知をしているところでございます。

 この背景といたしましては、黒田総裁からもお話がございましたが、海外と比較して国内の物価上昇率が低く推移してきたこと、それに加えまして、名目為替レートが総じて円安方向に推移してきたこと、そういうことが背景としてあるものと承知をしております。

 こうした実質実効為替レートやビッグマック指数等による通貨の評価、これは通貨に対する様々のあり得る捉え方の一つであると認識をしておりまして、この十年間の日本の円について、これらの手法による評価を取り上げて何か申し上げることは必ずしも適当ではないのではないかと考えております。

 その上で、為替相場につきましては、経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移すること、これが重要だということに尽きるわけでありますけれども、政府としては、経済、市場動向をしっかりと注視しながら、経済財政運営に万全を期してまいりたい、そのように考えております。

小山分科員 今、鈴木財務大臣のお話にもありましたとおりで、大変、今日は分科会の場で、落ち着いてお話を申し上げたいと思いますが、これだけの金融緩和をして、ある意味、物価上昇も、それまでのデフレと言われた、あるいは低インフレと言うべきか、これに対応してきたにもかかわらず、これだけ実質実効為替レートが下がっているということは、それだけ、財務大臣のお話にもあったとおり、日本のファンダメンタル、実体経済のところが、相対的にも、絶対的にもひょっとしたらですけれども、弱くなっているということを示しているんじゃないだろうかと。この部分にもっともっと力を入れていかなければいけないのではないかということを感じております。

 その上で、また黒田総裁にお尋ねしたいのですが、この十年間の間に、日銀は、金融機関から国債を買い取って、日銀当座預金を通じて大量の資金供給を行ってきたと思います。マネタリーベースは、百三十二兆円から六百三十四兆円に約五百兆円増加いたしました。国債保有額は、言うまでもないかもしれませんが、八十九兆円から五百四十五兆円まで増えました。

 当初の想定では、大変な低金利の下に実質金利も低下して、民間金融機関が貸出しを伸ばし、設備投資を刺激する、あるいは住宅ローンなど個人の需要というものを刺激をするということで予想されておりました。確かに、貸出しといったものも、民間金融機関の貸出しは約百五十三兆円増加しました。しかし、日銀の当座預金は約四百兆円増加して、マネタリーベースを増やした分の多くは日銀当座預金に滞留しているとも解釈することができようかと思います。

 これは、見方によっては、貸出しが伸び悩んだというような評価もあろうかと思いますけれども、民間金融機関の貸出しについて、あるいは伸び悩んだというような解釈もあることについて、どのようにお考えになられていますでしょうか。

黒田参考人 二〇一三年以降の大規模な金融緩和は、日本銀行が大量の資金供給を行うことで、資金調達コストの低下や金融資本市場の改善といった緩和的な金融環境を実現し、その結果、デフレではない経済が実現したわけであります。

 その下で、マクロ的に見た銀行の貸出残高は、一九九八年から二〇一二年のいわゆる十五年間のデフレ期にはマイナス一・八%程度だったわけです、毎年。それが、二〇一三年以降、平均して、前年比プラス二%台のペースで緩やかな増加を続けてきております。直近の一月の前年比は、プラス三・五%となっております。

 金融機関は、感染症拡大局面も含め、民間資金需要の高まりに応える形で貸出しを増やしているというふうに認識をしております。

小山分科員 確かに、実質金利のマイナスといった要因もあったかと思いますけれども、この過程の中で、例えば金融検査マニュアル、これも改定をされて、私も、確かにデフレ期の、バブルが崩壊した後の金融検査マニュアルは余りにも企業さんに対して懐疑的な見方に強過ぎたのではないか、いかに貸さないようにするかというようなことが感じられかねないようなものだったと、当時、私も銀行員で、ここまで、悪い取引先さんでもなかなかいい見通しを持った経営計画とかがあっても、なかなか貸せないというようなところもあったと思っております。

 そういったような金利以外の要因もあったのではないかなと思いますけれども、しかし、一定の残高が伸びたというのはおっしゃられるとおりだと思います。

 黒田総裁に最後にお尋ねしたいのは、国会答弁などでも、足下の物価上昇が収まれば、再び、デフレマインドが払拭されていないということもありまして、また長期低迷経済というかデフレ的なものが出てきかねない、ですので金融緩和をお続けになられる、しかし、賃金が上昇してくれば物価上昇の二%の目標を達成できるのではないか、足下の物価上昇が収まった際に、賃金の上昇やディマンドプル型の物価上昇となるのではないか、こういう御答弁をされていらっしゃるんですが、この見通しの根拠について教えていただきたいと思います。

黒田参考人 現状、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は四%台になっておりますけれども、二〇二三年度半ばにかけて、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していく。既に輸入物価上昇率は低下してきているわけですね。それに加えまして、政府の経済対策によるエネルギー価格の下押し、押し下げ効果もありまして、消費者物価の前年比はプラス幅を縮小していくというふうに考えております。

 その後は、再びプラス幅を緩やかに拡大していくと見ておりますけれども、その要因としては、第一に、景気の改善に伴って、マクロ的な需給ギャップが改善していくこと、第二に、その下で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくことにより、基調的な物価上昇圧力が高まっていくということが挙げられると思います。

 御指摘の賃金動向について、やや詳しく申し上げますと、先行き、我が国経済が改善していく中で、労働需給が引き締まり、サービス業に多い非正規労働者の賃金の上昇が見込まれるほか、その影響が中小企業などの正規労働者の賃金にも徐々に波及していくことが予想されます。さらに、春闘などの労使交渉において、労働需給の引き締まりに加えて、これまでの物価上昇も相応に賃金に反映されるのではないかというふうに考えております。

 過去、物価や賃金の上昇率が高まりにくかった背景としては、確かに、長きにわたるデフレの経験から、賃金や物価が上がらないことを前提とした考え方や慣行が根強く残っていたということが影響していたと思いますが、また、この間、女性や高齢者を中心に労働参加が大幅に増加した、四百万人以上増加したということでありまして、これが、雇用者報酬は増加しているわけですけれども、こうした弾力的な労働供給が、結果として、一人当たり賃金の伸びを弱める方向に作用していたという面もあったと思います。

 ただ、今や、我が国の女性の就業率はアメリカなどの諸外国並みの水準となっておりますし、いわゆる団塊の世代が就業率の低下する七十五歳以上に達しているということなどから、女性や高齢者の労働参加の増加ペースは鈍化していく可能性が高い。したがって、今後、経済が改善していくに伴って、労働需給の引き締まりが進みやすくなって、賃金を押し上げる方向に働くというふうに考えております。

 そういうこともありまして、賃金上昇率は、先行き、伸びを高めていくというふうに見ております。

小山分科員 確かに、今までは、非正規も含めた雇用も増えたり、女性や高齢者の方々の雇用といったものもあったわけですけれども、これからは、イギリスやアメリカで見られたような団塊の世代の方々の引退に伴って賃金が上がっていくというような予想は、確かに、十分に見通しとしてはそういう側面があろうかと思っております。

 ただ一方で、企業が、今までも円安で大変利益があった企業さんが、例えば、下請企業さんの買取り価格を上げるとか、賃金を上げるとかということがなかったり、あるいは、また新たな雇用に関する労働法規制の改変が行われますと、この辺りが心配されるところでもありまして、私は、プラス、企業の生産性の向上や、あるいは付加価値の高い産業とか付加価値の高い製品の開発が行われていくようなことが今後ますます必要になってくるのではないかなということも感じております。

 今日は、黒田総裁、これで質問は終わりですので、大変お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございました。

 また、今年の三月で御退任ということで伺っておりますけれども、あっ、四月ですね、失礼いたしました。本当に今までお疲れさまでした。ありがとうございます。

 それでは、質問を続けさせていただきたいと思います。

 次は、国交省にお尋ねをしたいと思います。

 私、大学の大先輩でもあるということもありまして、静岡県知事の川勝平太知事を大変尊敬をいたしております。

 川勝平太県知事から岸田総理に、リニア開業以後の東海道新幹線の乗客移動や停車駅シミュレーションに関する書簡が出されております。どのような方法でシミュレーションをするのでしょうか。また、学術的な裏づけはどのようになっているんでしょうか。

平嶋政府参考人 リニア中央新幹線開業後におきましては、この中央リニア新幹線への輸送需要の転移が生じまして、結果として東海道新幹線の輸送力に余裕ができるということが想定されるところであります。

 こうしたことを踏まえまして、東海道新幹線における需要動向に基づく静岡県内駅等の停車頻度の増加の程度、また、時間短縮効果の可能性等に関する調査を行うこととしております。

 この調査におきましては、いわゆる四段階推定法と呼ばれる手法を用いた予測モデルによりまして、リニア中央新幹線開業後の需要予測を行うことを考えております。この四段階推定法につきましては、将来の人口や国内総生産を基にした全体の交通量を算出いたしまして、各地域間の交通量、また、交通機関や経路別に推計を行っていくという考え方になっておるところでございます。

 この手法につきましては、我が国における交通需要予測においても一般的に利用されているものでありまして、こうした手法を用いて調査を進めてまいりたいと考えているところでございます。

小山分科員 川勝平太県知事からのお手紙の中にもあった、オンライン普及による移動人流の減少や人口減少といったものについても、このシミュレーションの中でどのように織り込んでいらっしゃるのでしょうか。あるいは、この中の、シミュレーションでなかったとしても、どのようにそれは見込んでいらっしゃるのでしょうか。

平嶋政府参考人 まず、御指摘いただきました人口減少についてでございますが、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口の最新値を用いて交通量の予測を行うなど、社会情勢に関する情報をできる限り取り入れて調査を進めてまいりたいと考えております。

 他方、御指摘いただきましたけれども、二〇二〇年度の東海道新幹線の利用者数につきましては、コロナ前の二〇一八年度と比較しまして約三割程度にとどまっているところでございます。これは、オンライン会議の普及による移動の減少、また、出張、ビジネス需要の減少等による可能性も想定される面があるところでございます。

 一方、今年一月の東海道新幹線の利用者数につきましては、コロナ前の約八割まで回復しているところでございます。特に、年末年始の利用者数については、約九割に達しているところでございます。

 また、今後について、リモートワーク、ワーケーション、二地点間居住など、新しい働き方、住まい方等の変化が期待されているところであります。例えば、地方都市に住んで、ふだんはリモートワーク、必要があれば新幹線を使って移動する、こういった新しい生活スタイルの選択肢も生まれる可能性もあるのではないかと思っております。

 今後の感染状況、また社会情勢の変化について予断を持って見込むというところは難しい面もございますけれども、できる限りそうしたことも念頭に置きながら、調査を進めてまいりたいと考えております。

小山分科員 二〇一三年に、JR東海の社長さんが、人口減少によって投資を回収できないかもしれないというようなコメントを出されたということがよく聞かれておりますし、また、そこに、オンラインの会議とか、ビジネスの人流が減っている。確かに、二拠点生活、ワーケーションなども増えてくる、そういう需要も取り込みたいというようなことも伺いますけれども、どちらが大きいかというと、ビジネスによる減少の方が大きいというようなことも関係者から伺ったこともありまして、大変、その意味では、大きな社会変化というものを踏まえたシミュレーションというのが必要になってこようかと思います。

 もう一つ、最後に、名古屋までの開業の場合と大阪まで開業した場合でやはり変わってくるんじゃないかと。特に、私なんかもよく東京と地元を行ったり来たりしておりますけれども、荷物を持っていたりすると、移動があったり、それも深い地下から新幹線のホームまで名古屋でも品川でも乗り換えるということになると、とてもこれはなかなか大変で、新幹線に乗り続けるというようなことも考えられて、非常にシミュレーションにも大きな影響を与えるんじゃないかと思いますが、この点についてはどのように見込んでいらっしゃいますでしょうか。

平嶋政府参考人 今回の調査におきましては、先ほど申し上げましたように、四段階推定法を用いることとしておるところでございます。

 リニア中央新幹線開業後の東海道新幹線の需要予測等についてもこれで予測をしていきたいと考えておるところでございますが、この需要予測におきましては、交通機関、それから経路の分担を推計していく際に、乗換時間でありますとか、それから駅までのアクセス、こういったもの、こういったアクセス時間等についても考慮することを予定しているところであります。リニアを使う、新幹線を使う、それぞれについてかかってくる時間というのをそれぞれ設定していくことになるところでございます。こうしたことも含めまして、今御指摘ありましたような差というところも、この分析の中で反映されていくところはあるのかなというふうに考えているところであります。

 こうしたことも含めまして、できる限り実態を含めた前提を置きつつ、調査を進めていければと考えております。

小山分科員 国交省さんにもう一問、国道一号線掛川バイパスの四車線化についてお尋ねしたいと思います。

 民主党政権下では、国道一号線の天竜川橋の八車線化、磐田バイパスの四車線化、袋井バイパスの四車線化、袋井―掛川間の六車線化と進んできまして、次は掛川バイパスの四車線化ということで予定されていたと思います。当時は、浜松バイパスについては、国道百五十号線と交差する石原町交差点のみ立体交差の要望が提出されていたことと記憶しております。

 現在、浜松バイパスの高架事業の方が開始となっておりますけれども、掛川バイパスの四車線化の要望の方が先になされていたわけなんですが、浜松バイパスの高架事業が掛川バイパスよりも先んじて行われるようになった要因、理由についてお尋ねしたいと思います。

久保田政府参考人 先生の御質問に御答弁申し上げます。

 まず、浜松バイパスでございますが、これは、市街地内の交差点が連続いたします平面四車線の道路でございまして、このうち、長鶴から中田島までの区間につきましては、慢性的に旅行速度が遅いですとか、あと、死傷事故件数が多い、こういった課題がございますことから、令和四年度から、立体化、また平面六車線化事業として事業化をしたところでございます。

 一方で、掛川バイパスについてでございますけれども、こちらは、朝夕ピーク時におきまして、西郷インターチェンジ及び大池インターチェンジ、こちらの付近で渋滞等の課題がございますことから、令和元年度から順次インターチェンジランプ部の車線を延伸する改良事業を事業化いたしまして、現在、工事及び調査設計を推進しているところでございます。

 御指摘の掛川バイパスの四車線化整備についてでございますが、今御説明申し上げました、現在実施中のインターチェンジランプ部の改良後の交通状況を踏まえまして、必要性等について検討してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

小山分科員 是非、掛川バイパスも大変慢性的に渋滞をしておりますので、早期に四車線化が完成するようにお願いしたいと思います。

 ちょっと順番を少し入れ替えさせていただきまして、次に、厚労省さんになろうかと思いますけれども、近隣住民とのトラブルの際に、真夜中に騒音を出したり、あるいは、ストーカーまがいのことを行ったり、器物を損壊したり、精神的な苦痛を与える行為を行って、実際に受けた近隣住民の側がうつ病と診断されているケースがございます。

 掛川市で発生しているケースでは、加害者と言われる人が精神障害と診断をされておりまして、器物損壊などの際、もちろん被害住民の方は警察にも通報など、社会福祉協議会にも相談しておりますけれども、なかなか、器物損壊の際なども三か月の保護入院措置ということが行われることが限界で、退院して戻ってきた際に再び仕返しをされるんじゃないかということを大変恐れるような状況でございます。過去にも三か月の保護入院を経て、再び元のとおりのトラブルが発生し、大変、近隣住民の方のストレスや怒りも限界に達しつつあって、事件がいつ起きてもおかしくないと話す方もいらっしゃいます。

 何の瑕疵もないにもかかわらず、隣に迷惑行為を行う住民の方が移ってこられたがために平穏な生活が破壊されてしまった方の気持ちは察するに余りあるものがあると思います。

 このような、治療が完結しているにもかかわらず、その後も地域でトラブルが起きているケースについて、近隣住民の方への救済策、救済方法というものはないのでしょうか。

斎須政府参考人 お答え申し上げます。

 大変難しい事案について御質問いただきました。

 こうした事案につきましては、やはり一つ一つの事例がそれぞれ違ったものであろうと思います。したがいまして、個別の事情に応じた対応が求められるものでございまして、自治体あるいは地域レベルのきめ細やかな対応が重要だと考えております。

 こうした観点から、精神障害を有する方が退院された後も地域の中で安心して暮らすことができるように、市町村や都道府県が、患者の方、家族の方、その他の関係者の方を含めまして、御相談に応じて、対応が難しい事例についても、より専門性が高い精神保健福祉センター等からバックアップをいたしまして、重層的に連携してサポートする体制を構築しております。

 また、精神障害者の地域生活を支援するために、多職種による訪問支援を行い、支援対象者それから家族の方々等の状況に応じまして必要な支援が提供される体制の整備に努めております。

 引き続き、大変難しい問題、多々あるとは存じますが、精神障害を有する方、それから地域住民の方々、誰もが安心して暮らしていけるようなことになりますよう、自治体とも緊密に連携して取り組んでまいりたいと考えております。

小山分科員 おっしゃられるとおり、ケース・バイ・ケースでありまして、精神障害を有する方を一緒くたにして人権を侵害することはあってはならないと思いますけれども、近隣住民の方の大変なトラブルあるいはストレスといったものも、是非、御考慮いただければと思います。

 最後にもう一問、不妊治療についてお尋ねしたいと思います。

 着床前診断としてPGT―Aが開始されておりますが、このPGT―Aによって、通常の生殖補助医療の妊娠率が一移植当たり三割程度であるけれども、PGT―Aをやれば、七〇%から八〇%の妊娠率、あるいは一〇%の流産率、五〇から七〇%の生児獲得率という極めて良好な成績が得られております。

 ところが、保険での生殖補助医療が開始されてから、このPGT―Aについては、厚労省は先進医療としての混合診療を認めておりません。このため、今までPGT―Aを行ってきた人でも、経済的な理由から、PGT―Aを一旦やめて、保険でのPGT―Aを行わない通常の生殖補助医療を行うようになり、精神的、肉体的に負担の多い流産を繰り返す一因ともなっていると考えられます。

 また、女性の場合、不妊や流産の原因のほとんどが卵子の染色体異常であり、年齢とともに卵子の染色体異常の確率が増加をして、受精卵では、四十歳前後で九〇%、四十五歳前後では九五%の染色体異常との調査もあります。

 ですから、一年でも若いときに採卵をして正常染色体の受精卵を移植することが重要であると考えますが、早期のPGT―Aの先進医療としての混合診療、さらには保険適用を開始すべきと考えますが、いかがでしょうか。

森光政府参考人 今、不妊治療の着床前胚異数性検査、PGT―Aについて御質問いただきました。

 不妊治療につきましては、関係学会が作成をいたしました診療ガイドラインにおいて、治療ごとの有効性そして安全性が示されたものについて、中央社会保険医療協議会での議論を経て、昨年四月から保険適用したところでございます。

 議員が御指摘されました着床前胚異数性検査、PGT―Aにつきましては、これまで学会が中心となって研究を進めてきたものの、有効性、安全性が確立をしていないという御指摘をいただいております。

 具体的には、細胞を採取したときに、その受精卵から出た胚、この胚への影響がまだ不明であるというようなこと、それから、誤診断の可能性があるといったようなこと、これらが指摘を受けております。

 まずは、先進医療の仕組みの中で、この有効性、安全性をしっかり確かめるということが適切ではないかということで、この実施に向けて、医療機関からの申請に基づきまして、先進医療会議等において専門家による議論が進められてきたところでございます。

 こうした中、今月の九日、先進医療技術審査部会、これは先進医療部会の下にございます技術を審査するところでございますが、この審査部会において、先進医療として実施することが適当であるとされたところでございまして、来月には、先進医療会議において審議をするということを予定しております。

 以上でございます。

小山分科員 終わります。

中山主査 これにて小山展弘君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中山主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。齋藤法務大臣。

齋藤(健)国務大臣 令和五年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務の遂行を通じて、国民の皆様の安全、安心な生活を守るとともに、国民生活を取り巻く状況の変化に応じた新たな政策課題に取り組むため、現下の厳しい財政事情の下ではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省の一般会計予算額の総額は七千九百十七億一千万円であり、所管別に区分いたしますと、法務省所管分は七千二百五十億四百万円、デジタル庁所管として計上されている法務省関係の政府情報システム経費の予算額は六百三十億五千八百万円、国土交通省所管として計上されている法務省関係の国際観光旅客税財源充当事業の予算額は三十六億四千八百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計の予算額は、七千六百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元にお配りしております印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

中山主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま齋藤法務大臣から申出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中山主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中山主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。石橋林太郎君。

石橋分科員 おはようございます。自由民主党の石橋林太郎です。

 昨日に続きまして分科会で質問の機会をいただきまして、ありがたいというふうに思っているところでございます。先輩、同僚議員各位に感謝申し上げ、また日頃より私の活動を支えていただいております地元広島の後援会の皆様、支援者の皆様に心から感謝申し上げながら質問に入っていきたいというふうに思います。

 私は、一昨年の衆議院の総選挙で衆議院議員に初当選をさせていただきました。その以前は広島で県議会議員として活動させていただいておりましたけれども、その県議会議員の時代より、中国共産党による強制臓器収奪の問題に強く関心を寄せてきたところであります。

 強制臓器収奪ということですけれども、こう申し上げてもなかなか、初めて耳にされる方は一体何のことか分からないと思いますので、少し説明をさせていただきたいというふうに思います。

 強制臓器収奪でありますけれども、これは、中国共産党によって一方的に、反乱分子、また国家にとって好ましくない人物などと断定をされた無実の人たちが、主には法輪功という気功を実践する方たちや、また近年ではウイグルの方たちもターゲットにされているというふうに言われておりますが、こうした罪のない方たちが強制的に連行され、収容所、中国当局はこの収容所のことを再教育センターというふうに呼んでいると承知しておりますけれども、この強制収容所に連れていかれてしまいます。

 そして、そこで、私からすると本当に恐ろしいですし、にわかに信じ難いことではあるんですけれども、その収容された方々の臓器を移植手術のために強制的に摘出しているという話でございます。

 平たく申し上げますと、臓器目的の殺人が国家ぐるみで行われているというのが強制臓器収奪でございます。

 この強制臓器収奪ですけれども、もちろん他国で起きていることとはいいながらも、とても看過することのできない、非常に、人権上においても、また人道上も看過することのできない重大な問題であるというふうに思い、私もこの問題を、人ごとにしてはならない、自分事として捉え、この状況が少しでも改善に向かうように、何かできることはないか、何か努力をしていくべきではないか、そういう思いを持っていたものですから、県議会議員の時代からこの問題に取り組んでまいりました。

 具体的には、一人でも多くの方にこの問題を知っていただくために、この問題を長年調査している調査者の方においでいただいて講演会を開催させてもらったり、また、ドキュメンタリーがございますので、そうしたものを、規模は小さいですけれども上映会を積み重ねて、一人でも多くの方にこうした問題を知っていただく、認識していただく、そうしたことを積み重ねてきたところでございます。

 そうした中、先般、四日前ですかね、二月十七日に国会内におきまして人権外交を超党派で考える議員連盟が開催しました、IPAC、対中政策に関する列国議員連盟ですけれども、このIPACによる人権外交フォーラムにおいても、この臓器収奪の問題提起がなされたところであります。

 この問題に長年取り組んできました私としては、こうした問題が国際会議の場で取り上げられたということは非常に心強いと思いますし、ありがたいとも思っております。今後、国会においてもこの強制臓器収奪の問題がしっかりと前に進んでいくことを非常に強く望んでいるところであります。

 折しも、主催されました人権外交を超党派で考える議員連盟の設立時の共同代表には、今、岸田政権で国際人権問題を担当されている中谷元首相補佐官が設立時の共同代表でありました。今日ここにはお声をかけていないんですけれども、是非こういった議論をしっかりと力強く引っ張っていただきたいなということも期待申し上げているところでございます。

 ただいま御説明しました臓器収奪の問題を通じまして、実は私はウイグルの問題にも強く関心を持ち、関わってくるようになりました。

 ここ数年、国際社会において、ウイグルの問題というのは広く知られるようになり、また大きく取り上げられるようになってきたというふうに承知をしておりますし、この傾向というのは、国内においても同様の傾向があるというふうに感じているところであります。

 そうした機運の高まりもあってだと思いますし、また、これまでに関心を持って活動してこられた多くの先輩方の御活躍もあって、昨年、衆議院、参議院、両議院におきまして中国における人権侵害を非難する決議が可決されたところであります。

 この決議におきましては、ウイグル、チベット、南モンゴル、また香港などにおける信教の自由への侵害や強制収監などを深刻な人権状況と認識し、当該国政府に対し説明責任を求めるとともに、我が国の政府に対して、この深刻な人権状況の全容を把握するための情報収集を求めるとともに、国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し救済するための包括的な施策の実施を求めているところであります。

 そこで、質問の第一でありますけれども、まず、この決議が出たこと、その決議の受け止めをお聞かせいただきたいというふうに思うところであります。また、あわせまして、決議にある情報収集や人権状況の監視と救済のための施策の実施状況、現状についてお伺いをしたいと思います。

    〔主査退席、辻主査代理着席〕

林政府参考人 お答えいたします。

 昨年、衆議院及び参議院本会議におきまして、御指摘の新疆ウイグル等における深刻な人権状況に関する決議が採択されております。

 政府といたしましては、人権を始めとした普遍的価値を守り抜くことを重視しておりまして、こうした普遍的価値が各国においても保障されることが重要と考えております。そのような考えから、これまで、新疆ウイグル自治区の人権状況に関しましても、日米首脳会談やG7、さらには国連等の場を含め、我が国として深刻な懸念を表明するなど、価値観を共有する国々とともに連携して取り組んできております。

 御指摘の決議の趣旨も踏まえまして、政府といたしまして、国際社会と緊密に連携しつつ、着実に取り組んでいきたいと考えております。

石橋分科員 御答弁をありがとうございます。

 政府としても、様々な場面を通じて懸念を表明していただいたり、国際社会と緊密に連携しながら取り組んでいくということを御答弁いただきましたけれども、この問題を深刻な人権侵害状況があると懸念していらっしゃるということかと思います。

 もしあればですけれども、具体的な事例、何か、こうした事例が具体的にあるので、そのことも含めて政府としては深刻な懸念を持っていると。総花的な話ではなく、何か個別具体な事例があれば是非お示しをいただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 新疆ウイグル自治区の人権状況に関しましては、一例で申し上げれば、国連人権高等弁務官事務所が昨年八月に公表した報告書などにおきまして、深刻な人権侵害が行われているとの報告が出されております。

 我が国としても、新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻に懸念しているところでございます。国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要であると考えておりまして、こうした立場を含め、国際社会からの関心が高まっている新疆ウイグル自治区の人権状況につきまして、中国政府に対して直接働きかけてきておるところでございます。

 また、我が国はこれまで、人権理事会等における新疆ウイグル自治区の人権状況に関する共同ステートメントにアジアで唯一参加してきております。

 引き続き、国際社会が緊密に連携して、中国側に強く働きかけていくことが重要であると考えております。

石橋分科員 ありがとうございます。私が求めていたのはもう少し個別具体な事案でありましたけれども、しかしながら、そうして様々な場面でもしっかりと活動してくださっていることには感謝を申し上げたいと思います。

 僭越ながら、一例だけ私の方から、今、日本に住んでいらっしゃるウイグルの方が実際に体験された事例を簡単にお伝えしたいなというふうに思っています。もし御承知であれば済みませんけれども。

 日本ウイグル協会というNPO団体があります。ウイグル人の方が主に組織していらっしゃって、国内に住んでいるウイグル人の方の人権状況の解決への御努力や、また、その問題自体を国内に、多くの方に知っていただくような活動をしていらっしゃるわけでありますが、この団体に所属をしていらっしゃる方の中、お一人が、もう二十年ほど日本に住んでいらっしゃる方でありますが、あるとき、本国のお兄さんから携帯電話がかかってきた、余りかかってこない携帯電話が鳴った。出ましたところ、その携帯電話の向こう側に中国の公安当局の人も一緒にいた。音声だけではなく、動画で通話をしていたということであります。

 そのときに、その中国公安当局の方が日本に住んでいるウイグルの方におっしゃったことというのは、ウイグルの協会で活動しているそうだけれども、そういった活動はやめるべきであるということでありますとか、また、日本にあるウイグル人コミュニティーの情報を当局に出してほしいというようなことを言われたということであります。

 もちろん、そこにお兄さんが一緒にいらっしゃるわけでありまして、日本に住んでいらっしゃるウイグルの方からするとお兄さんはいわば人質なわけでありますが、そうした状況の中でそうした要求が突きつけられた。また、その中で、私、こんなことは決してないと思うんですけれども、中国当局が言ったのは、パスポートの延長申請等に関して日本政府に対して中国側が圧力をかけることもできるんだというような脅しもあったというふうに聞いております。

 これは実は、ただの私の伝聞ではなくて、そのとき、やり取りの様子を、取材を申し込まれていらっしゃったので、それ全て、動画が丸々残っているような状態であります。これは一例でありますけれども、我が国に住んでいらっしゃるウイグルの方に対してある種公然とそういったことが行われているのかなというふうなことを感じているわけであります。

 こうした状況があるということも念頭に置きながら質問を続けていきたいと思いますけれども、私は幸い、日本に生まれ、日本で育ち、日本人として自分の国に住むことができている、大変幸せなことだなというふうにこうしたウイグルの方の話を聞くと思うわけでありますけれども、ウイグルの方は逆に、自分の生まれ育った土地に家族を残しながらも、家族たちが非常にしんどい状況に置かれてしまっているケースが多い、そのことで心を痛めていらっしゃる、大変しんどい状況にいらっしゃる方が多くいるということであります。

 こうした全くいわれのない差別によって苦しんでいらっしゃる方がたくさんあるわけでありますが、そうした日本に滞在していらっしゃるウイグルの方を支援しようということで、国会にも日本ウイグル国会議員連盟がございます。実は、地方議員で構成するそうした同様の会がありまして、ウイグルを応援する全国地方議員の会という組織でありますけれども、そうした会もございます。私も設立メンバーの一人なんですけれども、今日は、このウイグルを応援する全国地方議員の会の仲間たちが現場で直面した問題も踏まえながら少し質問を進めていきたいと思います。

 まず最初に、在留カードの記載事項についてお伺いをしたいと思います。

 日本に合法的に中長期的に滞在する外国籍の方は在留カードが必要になるんだと思いますが、この在留カード、どのような内容が記載をされているものなのか、お伺いをします。

西山政府参考人 在留カードの記載事項は、入管法第十九条の四の規定によりまして、氏名、生年月日、性別、国籍、地域、住居地、在留資格、在留期間及び就労制限の有無などが記載されることとなっております。

石橋分科員 ありがとうございます。

 では、次に、入管庁から地方自治体に対しまして、地方自治体が住民票に記載する情報としてどのような情報を提供しているのかをお伺いします。

西山政府参考人 入管庁長官は、住民基本台帳法第三十条の五十の規定に基づきまして、外国人住民に係る住民票記載事項に変更等があったことを知ったときは、遅滞なく、その旨を市区町村に通知しなければならないと規定されております。

 具体的には、外国人本人から氏名、生年月日、性別、国籍、地域について変更届出があった場合や、在留資格の変更、在留期間の更新の許可等によって新たな在留資格や在留期間が決定された場合に、これらの情報を市区町村に通知することとしております。

石橋分科員 ありがとうございます。

 先ほど来、国籍、地域も記載があるということでありますけれども、この地域というのは台湾及びパレスチナのヨルダン川西岸及びガザ地区だというふうに理解をしているところであります。

 そのことを踏まえますと、一点、確認なんですけれども、在留カードの記載項目、入管から地方自治体へ提供されている情報からしますと、地方自治体においては、当該自治体の中に住んでいるウイグル出身の方がいらっしゃったとしても、そのウイグル出身の方というのは基本的には全て中国人として認識をされているということで間違いないでしょうか。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 住民基本台帳法第三十条の四十五の規定に基づきまして外国人住民の住民票に記載される事項や、住民基本台帳法第三十条の五十の規定に基づき在留資格等の変更が行われた場合に出入国在留管理庁から市町村に通知される事項には、国籍の属する国又は地域は含まれておりますが、出身地や民族については含まれておりません。

 したがいまして、分科員御質問の出入国在留管理庁からの情報連携におきましては、出身地や民族の情報は連携されておりませんことから、市町村におきましては国籍の属する国又は地域以外の出身地や民族については把握していないところでございます。

石橋分科員 ありがとうございます。今、地方自治体においては国籍のみが分かるということを御答弁いただきました。

 実は、地方議員の会ではこの点を少し気にしています。といいますのは、自分たちの住んでいる自治体にウイグルの方がいるかどうかが分からないのが現状だということであります。

 ある地方自治体では、議員の会のメンバーが議会でその問題について質問しましたところ、当局から、在留カードの記載の問題が解決し、これは国籍だけでなく民族も分かるようになればという意味ですけれども、民族も分かるようになればウイグルの方の居住が分かるようになる、そうなれば、地方自治体としてもウイグルの人権問題に対してどのような施策に取り組めるか検討して取り組んでいきたいというような答弁がなされているとも承知をしております。

 現状では先ほど来ありますとおり国籍のみが書かれているわけでありまして、これは政令で定められているということでありますけれども、事前にお伺いしましたら、この政令の改正はなかなか難しいのだというお話をいただいております。

 しかしながら、本国で過酷な人権状況に置かれている方たちをしっかりと可視化して、その方たちに何か手だてすることはできないか、そういうことを検討するためにもこの政令の改正をしていただきたいというふうに思っているところであります。これは要望としてお伝え申し上げたいと思いますけれども、是非御検討いただきたいということを強くお願い申し上げる次第であります。

 続きまして、在留の申請についてお伺いをしていきたいと思います。

 ウイグルの方々は、本日いろいろ申し上げましたけれども、非常につらい人権状況に置かれていらっしゃると思いますけれども、こうした状況を鑑みて在留諸申請において何かしら特別な配慮などがなされているのかどうか、お伺いをします。

西山政府参考人 入管庁におきましては、在留諸申請等におきまして、特定の国籍や民族であることのみをもって一律に何かしら特別な配慮をしているということはございません。

石橋分科員 特定の国籍、民族で何かしらの配慮はないということであります。

 そうなりますと、中国において人権侵害が懸念されているのはウイグルの方、チベットの方、南モンゴルの方などがありますけれども、こうした方々は一律に、皆さんは中国人、中国籍ということで扱われているということでよろしいでしょうか。

西山政府参考人 そのとおりでございます。

石橋分科員 もう一点、確認であります。

 今、特定の国、特定の民族に対しての特段の配慮はないということでありました。また、皆さんは中国籍として扱われているということも確認をしましたけれども、例えば、申請に来られた方が中国籍ではあるけれどもウイグル出身の方、ウイグル人であるということがきちんと窓口等で認識をされた際には、その方、申請者個別に対してきちんとした配慮をしていただいて、本国における人権状況等も勘案したような対応をしていただいているということでよろしいでしょうか。

西山政府参考人 一般論として申し上げれば、在留諸申請について、御指摘のウイグル出身者も含め、個々の外国人が有する個別の事情等も踏まえた上で在留資格を決定しております。

 例えば、国籍国で生じた事情により帰国が困難であるなどの申出があり、人道上の配慮を行うべき必要性が認められる場合は、個別の事情に応じて、特定活動の在留資格を付与するなどの配慮を行っております。

 また、難民認定申請につきましても、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべきものかを個別に判断することとなります。

 難民と認められない方であっても、国籍国で生じた事情等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる方については我が国への在留を認めるなど、適切に対応しているところでございます。

 以上のとおり、入管庁としては、個々の外国人の置かれた状況等に配慮して、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。

石橋分科員 個々の申請者の方の置かれた状況をしっかりと勘案して、それに対して適切に対応していただけるものというふうに承知をいたしたいというふうに思います。

 今、在留資格また難民認定について御答弁いただきましたけれども、帰化につきましても同様に質問させていただきたいと思います。帰化の方ではそういった配慮というのはどうなっているか、教えていただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 一般論としましては、帰化の許否の判断におきまして、特定の国籍を有することや特定の民族に属することをもって一律に何らかの配慮や特別の扱いはされることはないということになります。

 国籍法第五条第一項各号に帰化の最低条件が規定されておりますが、これを踏まえて帰化の許否の判断がされることになりますところ、個別の帰化申請におきましては、申請者の在留歴や、日本人との身分関係の有無、収入状況など、本人から提出を受けた様々な書類等に基づいて、個別の状況を十分に踏まえて許否の判断をしているところでございます。

石橋分科員 ごめんなさい、ちょっと聞き漏らしたかもしれませんけれども、もう一回お願いします。帰化におきましても、国籍国ですかね、本国における人権状況等、申請者の個別の事情というのはしっかり勘案をしていただいているということでよろしいでしょうか。

金子政府参考人 帰化の判断におきまして要件とされているのが、在留歴、あるいは日本人との身分関係の有無、収入状況などになります。一般的には特定の国籍を有することや特定の民族に属することをもって一律に何らかの配慮や特別の扱いをされることはないのでございますけれども、本国の状況によりましては、申請のために提出をしていただく書類が、本国の種々の状況によっては提出が困難というような場合があるなど、やむを得ない事情が認められれば、書類の提出の場面においてそのような事情を考慮し、別の形での書類を、提出可能な書類をいただくなどの方法で個別に判断しているということになります。

石橋分科員 ありがとうございました。帰化については、先ほどの在留歴や身分関係、収入等々が基本的には判断基準になっていくということでありました。

 判断材料をお伺いしましても、実は、地方議員の会の方に寄せられた申請事例の情報の中には、そうはいっても、少し、もしかするとですけれども、地方の管理局、現場によって少し対応にばらつきがあるのではないかなというふうに思うような事例を何点か聞いておりますので、またそういった点については個別にも御報告をさせていただければと思いますし、もちろん適切に対応していただけるものと思いますけれども、またお伝えをさせていただければなというふうに思うところであります。

 済みません、ちょっと順番を変えまして、人権デューデリジェンス法ということについてお伺いをしたいと思います。

 人権侵害に対して様々、国として制裁を科すなり、何かしら規制をするということで、世界各国で様々法整備がされていますけれども、その中の一つにいわゆる人権デューデリジェンス法というものがあると承知をしています。

 先般、NPO法人日本ウイグル協会の発表によりますと、中国の国内でウイグル人等の大規模監視に使用されている中国メーカー製の監視カメラがあるそうなんですけれども、この監視カメラを分析調査した結果、日系企業の部品が使われていたという報告がございました。これは、間接的ではあるとはいいながら、ウイグルにおける人権弾圧に日系企業が加担をしている、そのように受け取られかねないものであるというふうに懸念をしているところであります。

 政府におかれましては、人権尊重のためのガイドラインを策定され、その普及啓発に取り組んでいらっしゃることは承知をしておりますけれども、企業の自主性に任せるだけではなく、国が率先してそうした責務を果たしていく、その姿勢を示すことが必要ではないかというふうに思います。

 そこで、お伺いしますけれども、今時点で結構であります、いわゆる人権デューデリジェンス法の制定に対しての政府の見解を教えていただければと思います。

柏原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘ございましたように、昨年策定いたしました責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン、いわゆる人権デューデリジェンスガイドライン、こちらは、国際社会において人権問題への関心が高まる中、国際スタンダードに沿った形で企業による人権尊重の取組を促すとともに、活用する企業のリスクの低減及び企業価値向上を通じて我が国の国際競争力強化につながるものでございます。

 経済産業省では、関係省庁とも連携しながら、各企業がこのガイドラインにのっとり、しっかり自社のサプライチェーン上のリスクを把握し総点検してもらえるよう、ガイドラインの普及を進めているところでございます。

 また、欧米を中心に人権尊重を理由とする法規制の強化が進む中、企業の予見可能性確保のため、各国との情報共有など、国際協調の取組も進めてまいります。日米間では、先月、サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関する日米タスクフォースに係る協力覚書に署名したところでございます。

 その上で、今後、国際協調に関する議論など、国内外の動向を踏まえながら、人権デューデリジェンスに関する将来的な法律の策定可能性も含めまして、関係省庁とともに更なる政策対応についても検討してまいります。

石橋分科員 ありがとうございました。私も期待をしておるところであります。

 もう一点、同趣旨の質問でありますけれども、人権侵害に係る法整備ということでは、マグニツキー法というものも他国によって制定されていると承知をしております。人権侵害を行った個人また団体に対して何かしら制裁を科していこうという趣旨の法律でありますけれども、マグニツキー法につきまして現時点での見解をお伺いしたいと思います。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、人権は普遍的な価値であり、人権擁護は全ての国の基本的な責務だと考えております。そのような考えから、我が国といたしましてはこれまで、人権侵害に対してはしっかり声を上げる一方、対話と協力を基本とし、民主化、人権擁護に向けた努力を行っている国との間では、二国間対話や協力を積み重ねて自主的な取組を促してきております。

 御指摘のような、人権侵害を認定して制裁を科すような制度を日本も導入すべきか否かについては、これまでの日本の人権外交を踏まえ、全体を見ながら引き続き検討してまいりたいと思います。

石橋分科員 御答弁をありがとうございました。

 本年、G7サミットもございます。その場において、先ほどの人権外交、また司法外交、そういった側面からも、我が国が国際社会に対して、しっかりと人権を擁護する国なんだ、特に、いわれのない差別等で困っていらっしゃる方々に対してしっかりと手を差し伸べていくんだと。そういう国でありたいと私は願っておりますし、そうした発信も強くしていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

辻主査代理 これにて石橋林太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋英明君。

高橋(英)分科員 日本維新の会の高橋英明でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、入管法の改正案について質問をしたいと思います。しかしながら、これはこれから仕上げるものだというふうに思っておりますので、具体的な答弁はなかなか難しいのかなというふうに思いますけれども。

 けれども、やはりできる前にしっかりと確認をしなければいけないこと、そしてまた指摘をしなければいけないこと、そういったものも多々あろうかと思いますので、質問をさせていただきたいと思います。

 また、私、齋藤大臣には初めて質問させていただきますので、いろいろとちょっとお話をさせていただきたいと思いますが。

 実は、我が町は非常に外国人が多いんですね。まあ、今日はいいのかな、言っても。川口市ですけれども、外国人が多いところで、日本一外国人が多いんじゃないかというふうに言われているところです。そしてまた、ある特定の、例えば、企業があってブラジルの方々が多いとか、そういう町ではなくて、いろいろな方々、いろいろな国の方々がたくさんいるんですね。ちなみに、中国の方々はもう二万人以上おります。そのほかにも、最近ではトルコ系の方々が非常にやはり増えてきております。そうしますと、これ、全員ではないですよ、ほとんどの方々はきちんと生活をしていますけれども、やはりある一定の方々、悪さもするんですね。

 具体的に言いますと、齋藤大臣とは初めてですので具体的に挙げますと、夜、夜中、違法改造車でしょうかね、車が爆音を鳴らして市街地を猛スピードで走るんですね。これはもう御年配の方々なんかは、接触しなくても、驚いてこけて、平気でけがをするような状況じゃないかなと思いますけれども、そういったものもございますし、はたまた、実際、私が見ましたので、酔っ払って自転車を持ち上げて川に放り投げるという、とんでもない外国の方々もいるわけですね。

 やはりきちんとルールを守っていただけない方々には御退場してもらうしかないというふうに思いますし、また、きちんと生活をしている方々にとっても、これは非常にやはり問題ですよね。どうしても色眼鏡で見られてしまいますから、そういった方々がおりますと。

 余り言いたくないですけれども、先日も我が町で、刃物を持って郵便局に真っ昼間強盗に入ったという、今どき余り聞かないなというような事件がありました。まだ犯人は捕まっていないようでございますけれども、それも外国人じゃないかといううわさがやはり立っているわけですよ。そういった色眼鏡でどうしても見られてしまうというものがございます。これは事実。

 そういうことも考えて、やはりきちんとしたルール作り、これは必要だなというふうに思っていますので、今度の入管法の改正案、本当にお互いにとってよりよくなるように、そしてまた、これはもう身近な問題ですから、我々にとりましては。何としてもこの改正案はこの国会で通していただきたいなというふうに思っております。

 そして、今回のこの入管法の改正案、齋藤大臣にお尋ねしたいんですけれども、これは、目的、主眼は共存なのか、それとも整理なのか。これは大事なところなのでお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 私も埼玉県の副知事をしておりましたので、川口の事情についてはその後もいろいろ伺っているところであります。

 お尋ねの件ですが、私は、我が国におきまして、日本人と外国人が互いを尊重して安全、安心に暮らせる共生社会、こういったものを実現していくということは極めて重要であると考えておりまして、このためには、外国人の人権に配慮しながらも、ルールにのっとって外国人は受け入れるということと同時に、受け入れられる側の外国人もまた、我が国のルールを理解し、守っていただくことが必要であって、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくということで、こういうことで、みんなが互いに尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会、こういったものを実現していきたいと考えています。

高橋(英)分科員 では、今回の改正案は、共存、そして整理、両面だということでよろしいですか。

齋藤(健)国務大臣 基本的にそういうことであります。

高橋(英)分科員 確かに私も、正しく共存するというのは、まずは、日本に来るのですから、日本のルールをきちんと守っていただいて、やはりお互いの歴史、文化を尊重し合うことだというふうに思っていますので、是非、その観点で今度の改正案もしっかりと作っていただきたいというふうに思います。

 あと、入管の職員の方々なんですけれども、実は、きちんと在留資格を持っている方ともお話をしたときがあるんですけれども、その方が、やはり入管というのは、言い方はちょっと、まあ、そのまま言いますけれども、我々を人として扱ってくれないと言うんですね。非常に、警察の尋問なんかとは比べ物にならないほどひどいということを言っていました。

 そしてまた、これはやはりかわいそうだなと思うのは、仮放免の子供たちですね、子供たちに対して、どうせ帰らなきゃいけないんだから勉強してもしようがないし、進学なんか考えたってしようがないよと、そんなことを入管の職員が言うそうです。これは非常に問題だなというふうに思いますよね。

 ですので、入管の職員の教育というのはどうなっているのか、ちょっとお聞かせください。

西山政府参考人 入管庁におきましては、新規採用者向け研修、中堅職員向け研修などの各種研修を行っております。職員への研修、教育は、適切な業務を行っていく上で大変重要なことであると考えております。さらに、職員の意識改革の一環として策定された使命と心得につきましても、各種研修における講義やグループ討議を通じて職員に浸透させているところでございます。

 御指摘の来庁者に対する丁寧な応対も含めまして、引き続き、職員研修の一層の充実に努め、職員の質の向上を図ってまいりたいと考えております。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。

 まあ、そういった答弁になるんだろうなというふうに思いますけれども、是非、事務方の方々には、やはり実際に入管に、例えば半年なら半年、研修に行くとか、そういった具体的なことをしていただきたいなというふうに思いますし、また、さっき私の地元の話をしましたけれども、是非そういった現場に足を運んでいただきたい。本当にいろいろな問題がありますので、学校もしかりですけれども、町中でもいろいろな問題がありますので、是非現場に足を運んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、次に行きますけれども、やはりこれは入口というのが非常に問題だなというふうに思っています。やはりある程度、入口、ハードルを設定をしないと、どんどんどんどん入ってきて、どんどんどんどん不法滞在者が増えるような、ある意味、今状況ではないのかなというふうに思いますので、この入口に関して今後どのように考えているのか、お聞かせください。

西山政府参考人 委員御指摘のとおり、問題のある外国人の入国を未然に防ぐことは重要な課題であると認識しております。

 入管庁におきましては、個人識別情報、これは指紋と顔写真ですけれども、この個人識別情報やICPO紛失・盗難旅券情報などを活用した厳格な入国審査を実施し、あるいは、乗客予約記録等の情報の分析により、不法残留を企図するおそれのある者を絞り込み、慎重な入国審査を実施するなど、不法残留の発生を未然に防止するための取組に努めているところでございます。

 さらに、海外の空港での航空機搭乗前に、本邦に渡航予定の外国人の情報を航空会社と入管庁の間で交換することで、航空機搭乗前の事前スクリーニングを可能とする相互事前旅客情報システムの導入に向け、今準備を進めているところでございます。

 入管庁としましても、アメリカなどに代表される電子渡航認証制度を含む事前スクリーニングの強化のための施策について不断に検討してまいりたいと考えております。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。

 その電子認証システムですか、これは大体いつ頃から導入になるのか、お聞かせください。

西山政府参考人 今検討中でございまして、目途としては、令和六年度中には試行の導入をすることを考えております。

高橋(英)分科員 令和六年。是非、一日でも早くこれはやっていただいて、やはり入口が一番の、ある意味課題かなというふうに思っていますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、仮放免の子供たちについてちょっとお聞かせ願いたいんですけれども、仮放免の方々は、イコール住民票がない方々ですけれども、その子供たちですね。全ての子供たちに教育を与える、機会を与えるという、これは非常にすばらしいことだなというふうに思っていますけれども、しかしながら、住所がないと就学の通知が届かないといって嘆いている方々もいるんですけれども、その点はどのようになっているんでしょうか。

里見政府参考人 お答えいたします。

 教育を受ける権利を保障するために、仮放免の子供であっても、学齢の児童生徒の義務教育諸学校への就学機会を確保することは重要であると考えております。

 仮放免のお子さん方につきましては、その保護者等が同意した場合には、地方出入国在留管理局から居住する市町村に対し、氏名や生年月日、住居等の情報が通知されることになっておりまして、これらの情報を基に市町村教育委員会が就学案内を行うことが可能となっているところでございます。文部科学省といたしましても、このような場合には就学案内等を行うよう通知をしているところでございます。

 また、就学案内が届いていない場合でありましても、仮放免のお子様方の保護者が就学を希望するということを市町村教育委員会に申し出るということによりまして、就学は可能でございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き、仮放免のお子様方を含めまして、外国人の子供たちの就学機会の確保に努めてまいります。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。

 要は、これは、じゃ、市町村に問題があるということなんでしょうかね。

里見政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども文部科学省といたしましては、仮放免のお子様方に対する就学案内、どのような実態で行われているかという調査は、残念ながら行っておりませんので、詳細は把握はしておりませんけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、出入国在留管理局から通知があれば市町村から就学案内を行うようにという通知もしておりますし、保護者から申出がございましたら就学案内がなくても就学可能でございますので、是非お申出をいただけるようにしていただきたいというふうに思っています。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。

 やはり、子供というのが一番の打開策だと実は思っていまして、子供の頃から学校に通うと日本語ができるようになりますから、そうなると、やはり日本の方々とのコミュニケーションも、大きくなっていけばどんどんどんどん取れるわけですので、一人でも多くの外国の方々がきちんと学校に通えるように、これは是非お願いをしたいと思います。

 あと、これは答えられる範囲で結構なんですけれども、今度の修正案ですね、罰則規定というのはやはり設けるように考えているのかどうか。

西山政府参考人 今の御質問にお答えする前に、先ほど私、令和六年度中に試行導入と申し上げたのは、相互事前旅客情報システムのことでございまして、お尋ねは電子渡航認証制度ということでございました。私、勘違いして御説明をいたしました。

 お尋ねの電子渡航認証制度については、今検討中でございまして、いつ実施するかも含めてまだ未定でございます。済みません、おわびして訂正をさせていただきます。

 それから、今お尋ねの、新法についての罰則というお尋ねがございました。どのようなものの罰則なのか、お尋ねの趣旨、ちょっと理解できていないところがありますけれども、いずれにしましても、今検討中でございますので、委員も先ほど御指摘もいただいた、厳しく、きちんとルールを守るべきものは守らせるという趣旨も含めて、そういった点も含めて現在検討しているところでございます。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。

 是非、身元引受人、今見ていると、この身元引受人が非常にちょっと問題なのかなというのが表れておりますので、身元引受人に対する罰則、これもしっかりと是非やっていただきたいと思いますので、その点、いかがですか。

西山政府参考人 今お尋ねの身元引受人、恐らく仮放免者の身元保証人のことをおっしゃっていると思います。

 ちなみに、令和三年の通常国会で提出しました法案の中では、収容に代わる監理措置というものを設けておりまして、その場合、監理人という形になります。そのような監理人についてしっかり、その制度の趣旨にのっとってきちんと支援、監理をいただくという面を含めて、今回の法案につきましてもしっかりと検討させていただきたいと考えております。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。是非お願いをしたいと思います。

 あと、先ほど令和六年と言っていたのは未定だという話ですけれども、できるだけ早めにお願いをしたいと思います。

 じゃ、続きまして、在留特別許可の判断基準についてちょっとお聞かせを願いたいと思うんですけれども、こちらに在留特別許可に係るガイドラインというのがあるんですけれども、まず、これは不法滞在者に在留許可を与えるためのガイドラインなのかどうか、お聞かせください。

西山政府参考人 まず、前提として、一般論でございますけれども、退去強制事由に該当する外国人は、法令に従って本国に退去することが原則でございます。もっとも、退去強制手続の中で法務大臣が例外的、恩恵的に在留特別許可を与える場合がございます。

 この在留特別許可の許否判断については、諸般の事情を総合的に勘案して行っておりますので、その判断について一義的な基準を設けることが困難ではございます。

 今委員が御指摘になりましたガイドラインにつきましては、在留特別許可をする方向で検討すべき事項を積極要素とし、許可しない方向で検討すべき事項を消極要素として、類型的に分類して例示を示しているものでございます。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。

 このガイドラインを見ると、「その他の積極要素」というところをちょっと読みますけれども、「当該外国人が、不法滞在者であることを申告するため、自ら地方入国管理官署に出頭したこと」。そしてまた、五番目ですけれども、「当該外国人が、本邦での滞在期間が長期間に及び、本邦への定着性が認められること」というのが積極要素に書いてあるんです。

 そして、例があるんですね。これまで、この例というのは、在留特別許可方向で検討する例というのが載っているんですけれども、その中に、「当該外国人が、本邦に長期間在住していて、退去強制事由に該当する旨を地方入国管理官署に自ら申告し、かつ、他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること」、そして、もう一つちょっと気になったのが、「当該外国人が、本邦で出生し十年以上にわたって本邦に在住している小中学校に在学している実子を同居した上で監護及び養育していて、不法残留である旨を地方入国管理官署に自ら申告し、かつ当該外国人親子が他の法令違反がないなどの在留の状況に特段の問題がないと認められること」と書いてあるんですけれども、これは非常に興味深かったんですけれどもね。

 今、難民申請をしていられる方、ほとんど受けられると思っていない、許可が下りると思っていないと思うんですね。要は、何が重要かというと、在留許可が得られるかどうかというのが彼らにとっては一番の重要事項だと思うんですね。

 そう考えると、今言ったこの積極事項というのは、より具体的になっていれば、彼らもそれに向かって必死で努力すると思うんです。要は、常日頃からきちんとした生活を送るようになると思うんですね。より具体的なガイドラインというのはもうちょっとないんでしょうか。

西山政府参考人 今委員が御紹介いただいたガイドライン以外に、更に具体的なものはございません。

高橋(英)分科員 是非これは具体的にしていただきたい、今度の改正案では。なかなか難しいのかもしれませんけれども。

 これはやはり、実際にこういった例があるということは、認めた事例があるということだと思うんですよ。イコール、その事例を明確にすればいいだけのことだと思うんですけれども、いかがですか。

西山政府参考人 先ほど御答弁しましたのは、ガイドラインを更に具体化したガイドラインみたいなものはないということではございますが、一方で、在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例というものは公表をいたしております。

高橋(英)分科員 ごめんなさい、どこに公表しているんでしょうか、具体的な事例というのは。

西山政府参考人 ホームページに掲載してございます。

高橋(英)分科員 分かりました。後ほどちょっとじっくりと拝見をさせていただきたいというふうに思います。

 いずれにしても、やはり具体性が全然ないと、お互いにとって非常にデメリットだなというふうに思います。基本的には退去していただくというのが、不法滞在者は退去していただくというのが筋なのかもしれませんけれども、でも、実際にこういった事例がありますし、今後を考えれば、やはり労働力不足等々もありますし、本来であれば正規できちんと入ってきて労働に当たってくれればいいんでしょうけれども、でも、もう既にしっかり働いている人、結構いるんですね。やはりそういった人たちにはしっかりと我が国のために納税をしてもらった方が絶対いいので、できる限り、真面目な方々、そしてしっかり働いて納税をしてくれるようになる方々、そういった方々のためにも、これは日本のためにもなると思いますので、しっかりとした、より具体的なガイドラインを作っていただきたいというふうに思います。

 そして、仮に親御さんが強制退去の指定を受けていたとしても、日本で生まれ育っている子供たちって非常に多いんですね。高校生ぐらいになっている子もいるだろうし、もしかしたら成人している子もいるかもしれないような状況です。そういった子供たち、親と一緒に強制退去しなきゃいけないんでしょうか。

西山政府参考人 先ほども御答弁したように、在留特別許可の判断は、あくまで個別の事案ごとに、諸般の事情を総合的に勘案して判断しているところでございますが、今委員の御指摘の観点でいきますと、具体的に申し上げると、子供の利益の観点や親による監護、養育の事情を含めて、在留を希望する理由、家族関係、人道上の配慮の必要性なども考慮しているところでございます。

高橋(英)分科員 今、人道性をきちんと考慮すると言いましたよね。それは間違いないですよね。

西山政府参考人 間違いございません。

高橋(英)分科員 では、是非、人道性を考慮していただいて、次の改革法案を作っていただきたいというふうに思います。

 これは、生まれたばかりの子供だとか二歳、三歳の子供とかだったら、まあこれはしようがないのかなというふうに思いますけれども、やはり、下手すると日本語しかしゃべれないような子もいますから、それがもう高校生ぐらいになればきちんと判断もできるわけですから、親と子供の意見をしっかり聞いて、日本にいたいというのであれば、やはり道を広げてやるのも非常に大切だというふうに思いますので、是非とも、何度も言いますけれども、人道的に見て、しっかりとこの辺は組み立てていただきたいというように思います。是非お願いを申し上げます。

 そして、いずれにしても、今度の改正案、これは、よりブラッシュアップをして、必ず通していただきたいというふうに思っています。両方がウィン・ウィンになれば、よりよいことでございますので。

 今の川口市の現状を見ると、はっきり言って本当にひどい状況です。夜中の三時半ぐらいに、さっき言った暴走車が走るわけですから、実際、事故も起きていますし、夜な夜な公園で乱闘騒ぎもやるわけですよ。不思議なものなんですけれども、同じ民族で仲がいいのかなと思ったら、家族間で極めて仲が悪いというパターンが非常に多いんですね。

 ですので、そういったことも踏まえて、今度の改正案をしっかりと作っていただきたいというふうに思っていますけれども、最後に、大臣に、今度の改正案、しっかりとしたものを作るのか、作っていただけると信じていますけれども、通す自信もおありかどうか、お尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 委員の御支援をいただいたと思っていますけれども、法案については今作成中でありますので、まずはしっかりとした法案を作って国会に提出をする、提出した以上は成立に向けて皆さんに何とかお願いをしたいというのが私の立場でございます。

高橋(英)分科員 ありがとうございます。

 この法案、我々日本維新の会ももちろん前向きに捉えていると思いますので、個人的にも、先ほども言いましたけれども、何が何でもよりよいものを作っていただきたいというふうに思っていますので、心からお願いを申し上げまして、本日の質問に代えさせていただきます。

 ありがとうございました。

辻主査代理 これにて高橋英明君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩崎彰久君。

    〔辻主査代理退席、主査着席〕

塩崎分科員 おはようございます。

 まずは、再審手続についてお伺いしていきたいと思います。

 一九六六年に静岡で一家四人を殺害した嫌疑で争われております袴田事件、こちらの第二次再審請求の差戻し審の東京高裁決定が来月十三日に迫りまして、今、世間的に注目が集まっております。

 そこで、まずは、現在の日本の再審手続における証拠開示制度及び検察官抗告、この妥当性についてお伺いしたいと思います。

 まず、証拠開示でございますが、今の再審手続では、通常審とは異なって、明確な証拠開示の手続はございません。証拠開示を認めるかどうかは裁判官の裁量に委ねられております。

 法務省としてはこれまで、こうした運用については問題ないとしてきておりますが、捜査機関の手のうちに隠されていた無罪方向の証拠が再審段階で初めて出てきて、その証拠が決め手となって再審開始又は再審無罪、こういったものに結びついた事件が少なくないことは我々も知っているとおりでございます。

 そこで、まず法務省に、再審手続における証拠開示手続制度、これを定めるべきではないかと思いますが、お考えをお聞かせください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 再審請求審におきまして証拠開示制度を設けることにつきましては、かつて法制審議会の部会において議論がなされたことがございます。

 その際、再審請求審における証拠開示について一般的なルールを設けること自体が困難である、あるいは、再審請求審は通常審と手続構造が異なるので、通常審の証拠開示制度を転用することは整合しないといった問題点が指摘されたところでございまして、これらを踏まえて慎重に検討する必要があると考えております。

塩崎分科員 ありがとうございます。

 今のがこれまでの政府の公式な立場だと思います。ただ、せっかく質問の機会をいただきましたので、もう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。

 通常審におきましては、二〇〇五年に類型証拠開示、この制度を改正して導入しました。そして二〇一六年には証拠一覧表の交付、こうした制度をつくりまして、順次、証拠開示手続の充実を図ってまいりました。一方で、再審手続については、刑事訴訟法ができてから七十年間、一度も証拠開示の手続が改正をされていません。アンバランスが生じております。

 そして、実際においても、今、再審請求で争われている案件のほとんどは、通常審段階では今の充実した証拠開示手続がなかった時代に審理が行われたもの、今の水準に比べれば不十分な証拠開示の仕組みの下で行われたものでございます。例えば、解剖医の先生が、被害者は実は自然死だったんじゃないか、そういった回答をした捜査報告書が後で出てきたりとか、被告人のアリバイについて友人が重大な証言をしていた、こういったことが再審段階で出てくる、こういったことがあるわけでございます。

 今、お話によりますと、やはり裁判手続は、再審については職権手続、職権主義を取っているということが根底にあることで、通常審とは違うんだ、こういうお考えだとは思いますが、再審手続が取っている職権主義だとしても、一部証拠開示制度を認めていくとしても、これは職権主義と全く相入れないものではないというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。再審手続における証拠開示の仕組み、全く変える余地がないものというお考えでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 再審請求審における証拠開示につきましては、平成二十八年に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第九条第三項におきまして、検討を行うことが求められております。

 そこで、平成二十九年三月から、この検討に資するよう、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、警察庁の担当者で構成する刑事手続に関する協議会を開催し、協議が行われてまいりました。

 そして、令和四年七月からは、同法律附則第九条によって求められている検討に資するものとするため、刑事法の研究者等の有識者、法曹三者、警察庁及び法務省の担当者によって構成される改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会というものを開催しておりまして、同協議会におきましては、取調べの録音、録画制度や合意制度など、法改正によって導入された各制度に加えまして、再審請求審における証拠開示についても協議が行われる予定となっております。

 法務省といたしましては、附則の趣旨を踏まえて、これらの協議会が充実したものとなるように、適切に対応してまいりたいと考えております。

塩崎分科員 ただいまの回答の中で、在り方協議会の中で再審手続における証拠開示の在り方についてもしっかり検討を進めていくという御答弁をいただきました。大きな前進だと思います。ありがとうございます。

 あわせて、再審においては、検察官の抗告、これが問題になっております。人権侵害ではないかと言われているのが、再審開始が決定された際に、検察官が必ずと言っていいほど抗告を繰り返すこと、これによって裁判がいたずらに長期化して、袴田事件も、今、事件発生から五十六年がたとうとしております。

 抗告をしなくても、検察官としては、再審開始決定の中で抗告をした場合と実質的には変わらず、有罪を争うことができるわけでございます。こうしたこともありますので、手続保障の観点からは問題ない。

 しかも、海外、例えばドイツ、フランス、大陸法の世界、そしてイギリス、アメリカ、判例法の世界におきましても、こういう理由から、再審開始に対する検察官の上告というものは原則として認められていないわけでございます。

 したがいまして、日本においても、やはり、再審手続の長期化による人権侵害、これを避けるためには、再審開始決定に対する検察官抗告、この在り方を見直すべきではないかと思いますが、法務省の見解、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 検察官が再審開始決定に対して抗告し得るということにつきましては、検察官が公益の代表者として関わっている以上、当然のことであると考えておりまして、これによって再審請求審における審理や決定が適正かつ公正に行われることが担保されているものと考えております。

 仮に、検察官の抗告権を排除するといたしますと、仮に違法、不当な再審開始決定があった場合にこれを是正する余地をなくしてしまうという問題がありまして、また、司法制度全体の在り方とも関連するものであって、慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

塩崎分科員 今、是正する余地がなくなるというお話がありましたが、それがまさに再審開始決定の中で十分争い得るのではないか、こういう議論があるわけでございます。

 そうした意味で、先ほど法務省の方からも説明がありましたが、昨年七月に立ち上がった改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会、大変大事な機関だと思います、ここでは、平成二十八年の改正附則九条に基づき課題を整理するということになっているわけでございます。

 そこで、齋藤大臣にお伺いしたいと思います。

 この在り方協議会、私、ホームページを見てみました。昨年の七月から四回開かれております。この四回、テーマは全て、取調べ段階における録音、録画、このテーマばかりでございまして、再審の問題については、九条附則に書いてあるにもかかわらず、いまだ取り上げられておりません。

 是非、ここは齋藤大臣のリーダーシップで、一日も早く、再審手続における証拠開示等の在り方についてもテーマとして取り上げていただきまして、見直しに向けて議論していただきますようお願い申し上げますが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 先ほど刑事局長からも御答弁させましたとおり、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会は、そもそも、平成二十八年成立の刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第九条により法務省が行う検討に資するために、同法による改正後の規定の施行状況を始めとする実務の運用状況を共有しながら、意見交換を行い、制度、運用における検討すべき課題を整理するもの、こういったことを目的として開催しているものでありますので、録音、録画制度など同法律により導入された各制度に加えて、御指摘の再審請求審における証拠開示についても協議が行われる予定となっております。

 同協議会では多くの項目を取り上げる予定となっていますので、今後の進め方などについては構成員の方々の御意見を踏まえつつ決めていかなくてはならないということでありますので、御質問の点について現時点でお答えすることは困難でありますけれども、繰り返しますが、再審請求審における証拠開示についても協議が行われるという予定になっているということは強く申し上げておきたいと思います。

塩崎分科員 ありがとうございます。なるべく早く、このテーマについてもしっかり協議会の中で取り上げていただきますよう、よろしくお願いいたします。

 続きまして、相続登記の問題についてお伺いしたいと思います。

 毎年二月は、日本司法書士連合会が定める、相続登記はお済みですか月間とされております。これは、今増加する所有者不明土地問題、この解決に向けて、来年四月から相続登記申請が義務化されることになっておりますが、そういった観点でも非常に意義深い取組であると考えております。

 しかし、この関連で今懸念がされているのが、資格を持たない事業者がオンラインで相続登記申請作成等のサービスを提供している、こういった問題があります。その中には、司法書士法への抵触が疑われるようなサービス、こういったものも散見されるため、本日は、法務省の見解を確認させていただきたいと思います。

 別紙一を御覧ください。これが、一般的なこうしたオンライン事業者のサービスの流れでございます。

 この一、二を見ていただきますと、事業者が、まず、利用者からの委任に基づいて、相続登記申請に必要な戸籍謄本などの公文書、これを収集することになります。そして、三から五の手続でございますが、利用者にフォームを提供して、オンラインのフォームに回答を入力してもらう、その他の項目は事業者がこれを埋めて申請書や添付書類を完成させる、こういう流れになっております。

 そこで、まずお伺いしたいと思います。

 司法書士又は弁護士、こういった資格を有しない事業者において、こうした登記申請書の作成に際して、例えば相続人の住所であるとか課税価格であるとか、本人がフォームへの入力操作をしていない複数の項目を事業者が独自に入力して完成させていく、こういったことは司法書士法第三条第一項第二号に抵触するものではないかと考えますが、御見解をお願いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 サービス事業者の提供するサービス内容の法令適合性を予断を持って答弁することは差し控えるのが相当と思いますが、一般論として申し上げますと、司法書士ではない民間事業者が、登記申請書類の作成に必要な情報を依頼者にインターネット上で入力させて登記申請書類の作成を可能とするサービスを提供するような場合におきまして、依頼者が入力しない、していないような情報を入力したり、あるいは依頼者が入力した情報を加工、修正するなどして、その対応が、民間事業者において依頼者に代わって登記申請書類を作成したと評価されるようなものであれば、司法書士法第三条第一項第二号に違反するおそれがあるものと考えられます。

塩崎分科員 明確な答弁、ありがとうございます。

 次に、オンラインの登記書類作成においては、法定相続人が誰かということを確定するというのが非常に大事になります。例えば、戸籍謄本を代行取得した結果、当初想定していた法定相続人とは違うかもしれない、こういったことが起き得るわけでございます。

 こうしたオンライン事業者においては、戸籍謄本を確認した上で、法定相続人が当初の想定と異なるかどうか、これを確認して、その結果次第で対応フローを変えるというふうになっております。

 しかし、ここで考えてみますと、相続登記申請において、被相続人との関係で法定相続人が誰か、これはまさに法的な評価ではないかということでございます。戸籍謄本の正確な読み取りと同時に、民法の各規定の解釈、そして個別具体的な事案への正確な当てはめ、こういったことがなければ正しい判断をすることはできないわけでございます。

 そこで、法務省にお伺いします。

 戸籍の記載から親族関係を読み取って民法に当てはめ、具体的に法定相続人を確定していく、こうした作業は法律事務に当たって、司法書士法に抵触しないのか、お答えください。

金子政府参考人 これも一般論としてお答えいたします。

 民間事業者が、サービス内容の一部として、登記申請を行おうとする依頼者に関係する戸籍の記載から法律上の親族関係を読み取った上で、民間事業者の判断で法定相続人を特定し、その判断を前提として登記申請書類を作成したような場合に、その対応が、民間事業者において依頼者に代わって申請書類を作成したと評価されるようなものであれば、司法書士法第三条第一項第二号に違反するおそれがあるものと考えられます。

塩崎分科員 ありがとうございました。

 もう一つお伺いしたいと思います。

 こうしたオンラインサービス事業者においては、往々にして、フォームに入力をしてもらうことに加えて、個別のフォローアップサービス、電話やメールでのフォローを行っているということでございます。

 資料二、こちらを御覧ください。

 こちらは、ある事業者のホームページからの抜粋でございますが、サービスを使ってみたユーザーからの声ということで、ユーザーレビュー、これが載っております。こちらを少し紹介をさせていただきます。

 五十代、埼玉県の方でございます。電話するたび、分かりやすく簡潔に解決できて本当に助かりました。こういうふうに書いてあります。

 六十代、東京都の方。法務局からの追加書類の相談で連絡した際にも、すぐに対応していただきました。ありがとうございました。こういう記載があります。

 六十代、栃木県の方。書類の書き方の説明や附箋紙で印があったので、スムーズに書き方ができてよかったです。こういった話があります。

 静岡県の方。この度は、何も分からない私に丁寧に説明のメールをいただき、メールで分からない点を電話した際には丁寧に教えていただき、ありがとうございました。

 このような次第で、こちらのユーザーレビューの結果からしますと、まさに個別事案に基づく細かなフォローアップ、指導、アドバイスを行っていることが強く推認されるわけでございます。

 そこで、法務省にお伺いしたいと思います。

 こちらのユーザーレビュー欄の記載にありますように、仮にこのサービス事業者が、個別の登記申請書類の作成に関して、具体的な事案に関する利用者からの照会に応じたりサポートをしたりしているとすれば、これはまさに、司法書士法三条五号に定める登記申請書類作成の相談に応じていること、この業務に当たることは明確ではないかと思いますが、こうしたサービスの提供は司法書士法に抵触しないかどうか、お伺いしたいと思います。

金子政府参考人 これも一般論としてお答えいたしますが、民間事業者側が、個別具体的な事案を前提に、登記申請書類の作成に関する相談を受けて回答したり助言したりして、その対応が、民間事業者において登記申請書類の作成に当たって依頼者からの相談に応じたと評価されるようなものであれば、司法書士法第三条第一項第五号に違反するおそれがあるものと考えられます。

塩崎分科員 こちらも明確な御答弁、ありがとうございました。

 相談に応じたと言われる実態につきまして、これはかなり大胆に、ホームページにこうしたユーザーレビューの結果が表示されているわけでございます。

 言うまでもなく、司法書士法というのは、司法書士という専門資格、これを持ちまして、登記に係る国民の権利を擁護し、もって自由かつ公平な社会の形成に寄与する、これが司法書士法第一条に定められているわけでございます。

 法務省におきましては、こうした司法書士法に抵触するような行為、こうしたものにつきましてしっかりと指導力を発揮していただきまして、また、国民の権利擁護が図られる社会の形成に指導力を発揮していただきますよう、お願いを申し上げたいと思います。

 最後に、一人親に関するサポートについてお伺いしたいと思います。

 私は、自民党の一人親議連、この中の養育費プロジェクトチームの事務局長を務めております。問題意識としては、やはり日本では、一人親家庭、非常に多くの世帯が貧困に苦しんでおります。全世帯の中の四八%もの一人親世帯が貧困層にいる。これは他国と比べても、OECDの中でも下から二番目というぐらいひどい数字でございます。

 こうした問題の解消に当たっては、やはり養育費の受給率の低さ、これがかねがね指摘されてきたところでございまして、議連としても、これまで、養育費の受給率を何とかして上げていこうという活動をしてまいりました。

 昨年には、政府の方から、養育費の受領率の数値目標を定める、こうしたことが発表されまして、一定の前進を見たわけでございますが、その前提となる数値、統計が昨年十一月に出てまいりました。

 昨年十一月一日に発表された令和三年度全国ひとり親世帯等調査結果報告、この中では、一人親世帯の養育費の受領率がこの五年間で約四%上昇しました。四%上昇して、でもまだ二八%、三割に満たない基準でございます。まだまだやるべきことは多いなというふうに考えております。

 そうした中で、今、法務省の方で進めていただいております家族法制の見直しに関する中間試案、こちらについても、パブコメにかけていただきまして、養育費の受領を促進するような様々な法改正、民法改正の施策も含まれているというふうに考えております。

 こちらのパブコメも、ちょうど二月の十八日、先週の土曜日に終了したところでございまして、仄聞しているところでございますと、大変多くの意見が当事者、関係団体から集まったと聞いております。是非、こうした当事者の声を、これからも、一人親世帯、困窮に苦しむ方々、子供がしっかりと育っていく環境をつくっていくために役立てていただきたいと思っております。

 そうした中で、一人親世帯に対して非常に勇気を与えてくれる、うれしいニュースが先般発表されました。

 資料の三を御覧いただければと思います。

 民事法律扶助の在り方に関する検討状況という資料でございますが、これは今年の二月に法務省から発表された資料でございます。

 これまで、養育費を払ってくれない元夫婦の相手方に対して、払ってもらうためには、やはりどうしても裁判を起こさなくちゃいけない。でも、裁判を起こすとなると、弁護士費用が高額でなかなか払えない。法テラスに行ってその扶助を受けたとしても、この弁護士費用をいつか返さなければいけない。なかなか大変だな、そういう心理的ハードルの高さが指摘されてきたところでございます。

 こうした一人親の窮状について、今回、法務省の発表によれば、一人親が民事法律扶助を受けやすくなる新たな支援策が発表されたということでございます。具体的には、生計困難な一人親が法テラスを使って養育費の回収を行っていった場合に、この一人親に対して弁護士費用の償還を免除するということでございます。

 法務省におきましては、まず、この新しい制度について、その背景、そして、この制度を使ってどういったことが可能になるのか、御説明をいただければと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、令和四年六月から、日本弁護士連合会、法テラスとともに、法テラスの民事法律扶助をより利用しやすいものとするための協議、検討を行ってきたところであります。今般、特に要望の声が高かった一人親支援の拡充策につきまして、その大枠の合意に至ったところでございます。

 今般の拡充策でございますが、民事法律扶助の現行の運用が一人親世帯にとって子を養育する上で負担となっているという指摘を踏まえまして、その運用を改善し、一定の養育費を確保すること等を通じて一人親世帯における子の養育に十分な環境を整えることで、子の一層の利益を図ろうとするものでございます。

 その具体的方策の中身でございますが、一人親が養育費の請求のため民事法律扶助を利用した場合におきまして、まず一点目としましては、利用者が養育費を得た場合の弁護士報酬につきまして、一定額まで法テラスが立て替えること、二点目といたしまして、利用者が得た未払い等の養育費を一括で法テラスへの償還に充てるという一括即時償還を不要とすること、三点目でございますが、義務教育対象年齢までのお子さんを養育する一人親の方につきまして、償還免除の要件の一つである資力回復要件を一律に満たすというふうにすること、この三点を内容としているものでございます。

 今般の拡充策が実現すれば、養育費の確保にお困りの一人親の方々が法テラスをより利用しやすくなるものと考えております。法務省といたしましては、この拡充策の実現に向けて、制度の詳細な設計や所要の手続を速やかに進めてまいりたいと考えております。

塩崎分科員 ありがとうございました。

 本当に日々の暮らしに苦労している一人親家庭、その親御さんにとっても、子供にとっても、非常に勇気が出る、温かみのある施策ではないかと思っております。まさに、法務省、齋藤大臣以下の皆様のリーダーシップに心から敬意と感謝を申し上げたいと思っております。

 今日は、再審制度、登記の問題、そして一人親支援、様々取り上げてまいりました。やはり、司法制度というのは、往々にして、困っている方、こうした方に政府としての救済の力を提供していく非常に大切な制度でございます。こうした制度が本当に困っている方にとってより使いやすくなるような、そうした施策をしっかりと、法務省の皆様、大臣のリーダーシップの下で進めていっていただきたい、また、進めていっていただけるのではないか、そんな期待を感じる本日の質疑でございました。

 これからも皆様の取組に期待申し上げますとともに、これからしっかりと、私も議員として、様々な方のお力になれるように頑張ってまいりたいと思います。そうした決意を持って、本日の質問を終えさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

竹内政府参考人 失礼いたしました。先ほどの答弁の中で、私、償還免除の要件の一つとして、資力回復要件というふうに申し上げたかもしれません。正しくは資力回復困難要件でしたので、訂正させていただきます。

 失礼いたしました。

塩崎分科員 その点も含めて、ありがとうございました。

 ありがとうございます。

中山主査 これにて塩崎彰久君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西健介君。

大西(健)分科員 立憲民主党の大西健介です。

 今日は、まず、公証制度についてお聞きをしたいというふうに思うんです。

 公証人は、民間への開放を促すために二〇〇二年度から公募が始まっております。ところが、二〇一六年の法務委員会での質疑の会議録を読みますと、当時、四百九十七名の公証人のうち、法務省、裁判所OB以外は三人しかいない、こういう答弁になっていました。現状はどうなっているのか、まず事務方から簡潔にお答えいただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本日時点の公証人の現在員は五百五名であり、そのうち、法務省の退職者あるいは裁判所の退職者以外の者は七名でございます。

大西(健)分科員 二〇一六年のときが三名ですから、七名と少し増えてはいるんですけれども。

 同じ質疑の中で、公証人の手数料、公証人は手数料の公務員なんて言われているそうですけれども、手数料については平均大体二百五十万円というふうに答弁されております。また、東京都内等で公証人になると年収が三千万というふうに聞いております。

 また、どのOBをどこの公証役場に配置するかという原案は、法務省の人事課で原案を作っているというふうに伺っています。

 さらに、二〇一九年、読売新聞がこういう報道をしているんですけれども、後進に再就職先のポストを回すために最長十年で退職することを誓約する念書を法務省が提出させていた、こういう報道もあります。

 今、大臣に聞いていただいて、少しだけ増えていますけれども、二〇〇二年度からすると公募が始まって二十年たっているわけですけれども、五百五名のうちの七名、これでは私は法務省と裁判所の天下り先と言われても仕方がないんじゃないかと。この現状を是非大臣のリーダーシップで改善していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、基本的考え方として、法務省としても、公証人について、多様で有為な人材を確保するという観点から、弁護士や司法書士等の民間法律実務家からの応募を推進していくということは重要だというふうに考えてはいるんですね。

 その上で、法務省においては、公証人の任用のための公募に当たり、他の法務省関係の採用や試験と同様に、法務省ホームページの試験・資格・採用情報に公証人関係の公募情報をまとめて公開してアクセスできるようにするなど、公募の周知に努めてまいりましたほか、平成三十年以降は願書の受付期間を延長するなどして、何とか応募を広めようという取組を進めてきているところではあります。

 そして、令和元年三月から令和四年七月までの間に、法務省退職者、裁判所退職者以外の方から延べ十九名の応募がありましたが、結果として、先ほど事務的に答弁したように、七名を公証人に採用したということであります。

 法務省としては、引き続き、公証人については多様で有為な人材を確保していきたいと思っているので、民間からの応募についての環境整備には努めていきたいと考えているところなんです。

大西(健)分科員 言っても、でも二十年で五百五人のうち七人ですから、これが結果なわけですから、私はやはり何か変えないといけないんじゃないかと。後ほど質問しますけれども、例えば支局の中に公証人がいない場合は法務事務官に公証事務をやらせているんですから、法務事務官でできることですから。ですから、これはやはり何か問題があるということを考えて、是非大臣のリーダーシップで改善していただきたいと思います。

 次に、公証役場、全国に三百か所あると聞いていますけれども、この設置基準がどうなっているか、簡潔に事務方からお答えください。

金子政府参考人 公証人法におきましては、公証人は法務大臣の指定した地に公証役場を設置することとされております。

 法務大臣が特定の本局、支局管内におきまして公証役場を設置する地を指定するに当たりましては、当該区域における公証役場の利用の見込み、既存の公証役場へのアクセスの困難性、公証業務の効率等の観点から総合的な考慮を行っているところでございます。

大西(健)分科員 総合的な考慮ということなんですけれども、公証人定員規則というのがあって、その別表を見ますと、名古屋法務局の刈谷支局の定員というのが一となっているんですけれども、刈谷には公証役場は今ありません。刈谷支局の管轄区域である碧海五市というのが、これは私の選挙区と同じなんですけれども、県内有数の製造業の集積地であって、経済活動も非常に活発です。刈谷支局管内の人口が約五十三万人に対して隣接している西尾支局の管内の人口は約十六万八千人と、かなりの差があるわけです。ただ、西尾には公証役場があります。

 そこで、是非、多くの地元の皆さんから、刈谷支局管内、碧海五市に公証役場を設けてほしい、こういう声が私のところに届いておりますので、是非お願いしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

金子政府参考人 刈谷支局管内には公証役場は設置されておらず、地元の要望を受け、委員からも設置の要望をいただいているものということは承知しております。

 刈谷支局に関しましては、その管轄区域内の人口が約五十万人と多いものと承知しておりますが、その一方で、近隣の公証役場との距離が近く、交通の便もよいといった事情もございます。

 刈谷支局の管轄区域内に公証役場を新設するか否かにつきましては、先ほど私からも申し上げたような観点を踏まえまして、状況を見守りつつ検討してまいりたいと考えております。

大西(健)分科員 例えば西尾と刈谷支局管内の碧南という一番南のところというのは完全に隣接しているんですよ、安城とも。

 先ほど言ったように、西尾は十六万八千人です。うちの刈谷支局管内は五十三万人ですから。トヨタ系の企業も集積していて、様々な公証事務の需要があるところですから、是非これは、総合的にと言うんだったら、しっかり勘案していただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。

 一方で、人口が多いところに公証役場というのは集中する傾向があるので、人口が少ないところにはないんですね。そこで、公証人法は、法務局支局の管轄区域内に公証人がいない場合には、先ほども言いましたけれども、支局の法務事務官に公証人の事務を取り扱わせることができると規定しています。

 全国で十四か所、法務局の支局において公証事務が取り扱われているところがあったんですけれども、そのうち、令和二年の七月一日から、旭川の留萌支局、それから秋田の本荘支局、大曲支局、福井の小浜支局という四つのところで公証事務の取扱いが廃止になりました。一方で、最近では、任意後見や尊厳死宣言などで公正証書を使う、高齢者のそういう機会も増えている、他方で、地方では、鉄道やバスの路線が廃止をされるなど、公証事務へのアクセスが困難になっています。

 大臣、この四つの支局での公証事務の取扱い廃止について、これを元に戻してほしい、こういう声もたくさん上がっているんですけれども、この点について御検討いただけないか、また、残る十の支局も今後公証事務の取扱いが廃止される可能性があるのかどうなのか、この点についてお聞きをしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 法務局又は地方法務局の支局における公証事務の取扱いの廃止について、令和二年当時、地元から再考を求める御意見が出されているということは承知しております。

 支局における公証事務の取扱いは、公証役場へのアクセスが困難な地域においても公証サービスを提供するために例外的に行われているというものであります。

 しかしながら、近年では、各種交通網の整備等により移動が容易になったことに加えて、電子メール等の情報通信技術の普及により遠隔地にあっても公証人との間で連絡等が容易になっている、そういった事情も踏まえて、支局における公証事務の取扱件数ですとか交通の便等も総合考慮して、四つの支局について公証事務の取扱いを廃止したということであります。

 取扱いを廃止した四支局につきまして、公証事務の取扱いを廃止した当時から特段の状況の変化はないというふうに理解していますので、現時点で公証事務の取扱いを再開する予定はございません。

 他方、現在公証事務を取り扱っている残りの十支局につきましては、現時点では取扱いを廃止することを具体的に検討しているということはありません。

大西(健)分科員 ありがとうございます。

 齋藤大臣、ここまでで結構ですので、もしお忙しければ、どうぞ御退席ください。

 後半は外務省に質問したいと思いますが、まず、秋本政務官にお越しをいただいております、先日の我が党の梅谷委員からの質問の続きをお伺いしたいんですけれども。

 政策秘書がサポート業務を委託している、Cさんとここでは呼びますけれども、Cさんは、平日は毎日議員会館に通勤をしているのか、そしてまた議員会館でどんな仕事をしているのか、また秘書としての院からの通行証の付与をされているのか、このことについて、事前に通告してありますので、お答えいただきたいと思います。

秋本大臣政務官 政策秘書の指示の下で、おおむね週に三日から四日ほど来ていたという記憶でございます。一日いる日もあれば、半日いる日もあるなど、フレックスな形態であったというふうに思います。

 C氏は、主に議員会館において政策秘書の指示で仕事をしておりましたけれども、手がすいているときには、政策秘書の了解の下、事務所のお手伝いをしていただくこともございました。

 また、通行証の方のお尋ねでございますけれども、出していたのかということでございますけれども、出しておりました。

大西(健)分科員 逆に、じゃ、政策秘書さんはどれぐらいの頻度で議員会館に詰められているんですか。

 今見なくても分かるでしょう。

秋本大臣政務官 通告がなかったので、済みません、申し訳ありません、ちょっと時間がかかってしまいましたけれども。

 お尋ねの政策秘書でございますけれども、コロナ禍であったこともありまして、フレックスで、リモートワークも多用してございました。

大西(健)分科員 それでは、秋本政務官は、その政策秘書とCさんの間で業務委託契約、自分の代わりに自分の業務をサポートするという契約が結ばれていたということは、これは御存じだったんですか。

秋本大臣政務官 詳細については、当事者ではないので、承知はしておりません。

大西(健)分科員 ということは、それは政策秘書さんが勝手にやっていたということですか。勝手に、自分の業務を補佐する自分の秘書の秘書みたいな人を雇うという契約を政務官には全く知らせずに勝手にやっていた、そういうことですか。

秋本大臣政務官 政策秘書は、C氏が自分の政策秘書としての業務を補完するために契約した方だというふうには認識しております。

大西(健)分科員 それはそうですよね。だって、Cさんみたいな人が週に三日か四日か知らないけれども議員会館にいるのに、何でこの人が来ているのだろうということは、当然、秋本政務官もそう思われると思いますけれども。それは、じゃ、今おっしゃったように、仕事を手伝うためにそういう人を、Cさんを雇っているということを知っていたということですよね。

 ただ、私はやはり非常に脱法的な問題があるんじゃないかというふうに思っています。

 先日、梅谷委員も示したように、C氏は衆議院議員秋本真利秘書という名刺を持っていて、名刺は私はここにコピーを持っていますけれども、実態も、先ほど言ったように議員会館で仕事をしているわけです。さらに、メールアドレスも割り振られている。実態は、これは世の中では秘書というんです。本来、秋本さんがCさんに支払うべき給与を政策秘書に肩代わりさせている。つまり、給与相当額を政策秘書が事務所に寄附しているのと同じじゃないか。

 例えばですよ、企業が、会社がよく、政治家の事務所に秘書というか労務者を派遣するということが行われています。ただ、そういう場合は給与相当額を寄附したということにして収支報告書に記載しなければならない、こういうことになっているはずなんですけれども、これがなされていませんけれども、これはどういうことなんでしょうか。

秋本大臣政務官 先ほど来申し上げているとおり、C氏は政策秘書が自らの業務を補完するために契約した方だということでございまして、前回、梅谷議員にもお答えしたとおりでございますけれども、とにかく、政策秘書が自らの業務を補完するためにC氏と契約したということでございます。

大西(健)分科員 そうすると、政策秘書というのは公設秘書ですよ、税金から給料をもらっているわけです、その給料で要は二人雇っている、つまり仕事をシェアしているということになりませんか。

 別の観点からお聞きします。

 政策秘書の方は弁護士をやられているということで、毎日議員会館には来られない、だから代わりに自分の業務を補佐するためにCさんという人を雇って議員会館に来させているということですけれども、であれば、こんな業務委託契約なんて面倒くさいことをせずに、Cさんを直接、ちゃんと毎日議員会館に来て仕事をできる人を秋本さんが雇えばいいんですよ。何でこんな面倒くさいことをしているのか。それは、そうできない事情があるからなんです。

 私も、政策秘書の平成五年の第一回試験の合格者です、政策秘書の資格を持っています。政策秘書というのは資格がないとなれないんです。

 弁護士さんは認定で資格が取れますから、認定で資格を取れる弁護士の名義を借りてCさんを雇っている。弁護士は弁護士で、例えば、期末・勤勉手当を受けられたりとか、公設秘書としての、特別職の国家公務員としての福利厚生を受けられる、そういうメリットがある。つまり名義貸しと同じことじゃないですか、いかがですか。

秋本大臣政務官 政策秘書は、御指摘のとおり弁護士資格を有しまして、平成二十一年六月頃から政策秘書として、メディア対応ほか政策対応及び省庁の対応並びに支援者からの陳情対応等、多様な業務を担当しております。先ほどもお答えしましたけれども、また、コロナ禍でもありまして、フレックスで、リモートワークを多用していたということもあるということでございます。

大西(健)分科員 さっき言ったように、政策秘書の給料というのは政策秘書しか受けられないわけですよ。ところが、その政策秘書は自分の給料から二十五万円をCさんに渡しているということなんですね。

 もう一つ、政務官のたちが悪いのは、秘書からの寄附を常習的にやっているんですよ。平成二十五年分の自由民主党千葉県第九選挙区支部の収支報告書には、十二月十六日付で佐々木明生さんという名前で十三万円の寄附が行われています。平成二十六年分の収支報告書にも計十七万四千円の寄附があります。

 収支報告書の職業欄には議員秘書と書いてあるんですけれども、この佐々木氏は秋本さんの公設秘書だったことはありますか、その場合はいつからいつまで公設秘書だったか。これも通告してありますので、端的にお答えください。

秋本大臣政務官 御指摘の人物が事務所で勤務していたのは十年ほど前になりますので、記憶は定かではありませんけれども、可能な範囲でお答えをしたいというふうに思います。

 御指摘のとおり、かの人物は私の公設秘書でございました。その期間につきましては、二〇一三年十一月から二〇一四年の四月ということでございます。

大西(健)分科員 つまり、恐らく、公設秘書の期間中に寄附を受けているわけです。

 さらに、平成二十八年分の自由民主党千葉県第九選挙区支部の収支報告書には、三回に分けて計十一万円、翌年、平成二十九年分の収支報告書には十二月二十日付で五十万円、いずれも浅井充男の名前で寄附が行われています。職業欄にはやはり秘書とあります。この浅井氏の名前は会計責任者の欄にも載っているんです。

 浅井氏は秋本さんの公設秘書だったことはありますか、その場合はいつからいつまで公設秘書でしたか。これも通告してあります。

秋本大臣政務官 御指摘の人物につきましては、お尋ねのとおり公設秘書でございました。間違いございません。

 公設秘書に登録したのは二〇一六年の十二月ということでございます。

大西(健)分科員 つまり、さっき言ったように、業務委託契約を結んで今やらせているようなことをずっとやってきているんですよ。公設秘書から給与を事務所に入れさせているんです。これを繰り返しやっているんですよ。

 秘書給与法は確かに、寄附を強制したりとか勧誘しちゃいけないと書いてありますけれども、ただ、自己の給与の一部を喜んで寄附する秘書なんか、いるわけがないじゃないですか。いるかもしれません、そんな奇特な人が一人ぐらいは。でも、これを繰り返しやっているんですよ、全部ですよ、何人も。五十万ですよ、五十万は寄附しないですよ、進んで、喜んで。私はそう思います。

 さっき言ったように、たまたま一回だけというならば、任意でやった、非常に秋本さんのことが大好きで、昔からの友人で、私の給料を一部寄附したい、五十万を寄附したいという奇特な人が一人ぐらいいるかもしれない。でも、ずっとですよ、これ。ずっとやっているということは、任意じゃなくて意図的にやっているんじゃないですか、あなたが事務所に入れるように指示しているんじゃないですか、いかがですか。

秋本大臣政務官 そのような事実はございません。

大西(健)分科員 過去には、この秘書給与の問題をめぐって議員辞職した人がいるんです。だから、秘書給与法の改正が行われている。にもかかわらず、政務官は、今は業務委託契約なんという複雑なものを使っていますけれども、その前はストレートに公設秘書にやっているわけですよ。ここにいる皆さん、ほかの皆さんがそんなことをやらせていますか。今どき、こんなことをやらせている人はいないですよ。

 政務官の辞職は当然のことですけれども、私は議員辞職に値するようなことだと思いますけれども、繰り返し繰り返し秘書に寄附を事務所にさせていることについて、これは、政務官、正しいことだと思いますか、いかがですか。

秋本大臣政務官 任意の寄附を受けたのは、委員が指摘をした二名でございます。また、御指摘の、後段の方のお尋ねがあった秘書につきましては、二〇一八年に寄附を頂戴したというのが最後でございます。

大西(健)分科員 後段の方というのは、確認ですけれども、浅井充男さんですか。この人は、二〇一七年分の収支報告、十二月二十日付で五十万円を寄附されていますけれども、これは任意の寄附ではないんですか。

秋本大臣政務官 二〇一八年一月十日に十三万円を頂戴した、それが最後の任意の寄附だったということでございます。

大西(健)分科員 最後にしても、さっきから言っているように、繰り返しやっているわけですよ。繰り返しやっているというのは、これは任意ではなくて、要は、事務所にお金を入れてくれる人を公設秘書に雇うということをあなたが意図的にやっているという可能性が私は非常に高いと。そして、公設秘書の給与というのは税金、公金ですから。だから、それを事務所に還流させるというのは、私は、これは極めて問題がある、政務官として本当に資質が問われる問題だということを指摘して、今日のところはここまでといたしますので、秋本政務官、御退席していただいて結構です。

 続けて、外務省にお伺いをしたいというふうに思います。

 二〇一五年の六月、当時のダムスゴー駐日デンマーク大使が天皇陛下に離任の御挨拶に行かれた際に、大使の同性のパートナーは配偶者ではないとして同席を認められなかったということがありました。

 平成二十九年の十一月に私は質問主意書を出しているんですけれども、それに対する答弁書では、大使がパートナーを配偶者として扱うように求めてきたことを政府は認めてはいないんですけれども、デンマークでは同性婚が認められており、他国で正式に婚姻関係が認められているのに配偶者として取り扱われなかったとすれば、相手の文化を尊重していないことになって、外交上の非礼にもなるんじゃないかというふうに思います。

 こうしたプロトコールにおける同性パートナーの取扱いに関しては、社会の意識の変化、まさに今同性婚を法制化すべきじゃないかという議論が国会でも盛り上がっていますけれども、あるいは外国文化の尊重、相手の国では法律上同性婚が認められている、そういうことからすると、原則、配偶者として同性パートナーも取り扱うということでよいのか、外務省に改めて確認をしたいと思います。

島田政府参考人 お答えいたします。

 我が国では、同性パートナーを伴って赴任してこられる各国の外交官等の接受に当たっては、当該パートナーについても、派遣国の法制度を尊重するという外交儀礼の観点から、異性の配偶者と同様の扱いをしてきているところでございます。

 具体的には、派遣国において同性間の婚姻やそれに準じた関係が公的に認められていることを示す根拠の資料、これは婚姻証明書等でございますけれども、こうしたものの提出を受けた上で外交旅券や公用旅券を保持していること等を確認し、外交官等の配偶者等として接受しているところでございます。

大西(健)分科員 それでは、改めて確認しますけれども、二〇一五年当時のダムスゴー駐日大使、この方は長年にわたって同性のパートナーの方がいらっしゃるということですけれども、同じような扱いをしていたということですか。

 時間がないので、時間を止めてください。

島田政府参考人 恐れ入ります、外務省では、平成二十八年の十一月、つまり二〇一六年の十一月から、接受した同性パートナーに対して異性の配偶者と同様に免税カードや外交団のナンバープレートを発給したというような状況でございます。

大西(健)分科員 だから、私の質問主意書の答弁書ははっきり答えていないけれども、やはりこのダムスゴー駐日大使の件が一つのきっかけになって一六年から変えたんじゃないかというふうに思います。変えたことはいいことですから、是非これはしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 最後に、時間がありませんので、旧統一教会が五月七日に韓国で合同結婚式を開催するとの情報があります。昨年の秋に、我が党のヒアリングで、合同結婚式を挙げて韓国にいる日本人の妻の人数の把握について、外務省は把握できるかどうかを踏まえて検討中と答えていましたが、その後どうなったのか、また、この間、大使館や領事館に日本人妻からの、帰国したいとか、そういう相談等がどれぐらい寄せられているのかについて教えてください。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 在留邦人が旧統一教会の信者であるかどうか、また合同結婚式を挙げたかどうかは、プライバシーに関わる情報であり、外務省としては、御指摘の人数に関する統計は取っておらず、把握してございません。

 また、外務省が把握する限り、昨年秋以降現在に至るまでに旧統一教会に関連して韓国に在留する邦人に係るごく少数の相談が寄せられており、こうした相談に丁寧に対応してきております。

 外務省としては、今後とも、プライバシーとの関係に留意しつつ、旧統一教会の信者を含む在留邦人の方々からの相談に丁寧に応じることにより、相談者の個別の事情やニーズの把握に努め、より一層きめ細やかな支援を行ってまいります。

大西(健)分科員 ヒアリングのときに来ていただいていた元日本人妻というか、離婚をして戻ってきている人の話でも、パスポートを取り上げられているとか、非常に奴隷的に使われているような人というのがたくさんいるというようなお話もありました。もちろん、進んで結婚をされて幸せにされている方もいらっしゃるのかもしれませんけれども。仮にそういう、帰国をしたいという日本人妻の方々がいらっしゃれば、これは是非大使館や領事館で相談に乗るなり手厚い御支援をしていただきたいなというふうに思うんですけれども、今お話を聞くと、ほとんど相談は来ていないということです。

 やはり、ネット広告を出すとか、例えばラジオCMを流すとか、分かりませんけれども、助けを必要としている合同結婚式で結婚した日本人妻に対して、大使館や領事館で相談に乗りますよ、御支援できますよということを知らせる努力をしなきゃいけないんじゃないか。これだけ今、国内ではもう、法テラスに大変な電話がかかってきているわけですから。ですから、結婚しているともう日本人ではないのかもしれませんけれども、やはり私はそれは是非やっていただきたいというふうに思いますが、この辺の、今少ない現状に対して何か改善をされる、こういうおつもりはありませんか。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国におきましては、昨年十二月、在韓国日本大使館及び総領事館から在留邦人の方々に対して領事メールを発出し、法テラスに設置され海外からも連絡可能な相談窓口として霊感商法等対応ダイヤルを紹介するとともに、緊急に日本に帰国する必要があるものの、旅券をお持ちでない方や、帰国のための資金で悩まれている方は大使館又は領事館に相談するよう呼びかけたところでございます。

大西(健)分科員 是非、日韓は非常に重要な間柄でありますし、今、日韓関係の改善に向けた御努力をされているところに変なことが、水を差すようなことがあってはならないと思いますので、大使館、領事館においてもしっかりと対応していただきたいということをお願いして、時間が参りましたので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中山主査 これにて大西健介君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。緒方林太郎君。

緒方分科員 最後ですね。よろしくお願いいたします。

 中山主査、よろしくお願いします。そして、齋藤大臣、よろしくお願い申し上げます。

 まず、危険運転致死傷罪についてお伺いをしたいと思います。

 いろいろ危険運転致死傷罪の適用については裁判判例も出てきているわけですが、一般論として言うと、判例を見ていると、普通に法律を読んでもちょっと出てこないような解釈で適用されているものがかなりあると思うんですね。構成要件にしても、責任についても、とてつもなく厳しく読み込まれていて、普通に法律を読めばこれは当たるんじゃないかなというものですら、どんどん外れていっているというのがあります。

 酒を飲んでいてもきちんと運転できると思っていたら適用がなかったとか、一般道で恐ろしいスピードを出していてもそれが制御可能だと認識していれば適用がなかったとか、そういうふうになっているわけですが、本当にそういうふうに読めるんですかね、法務省。

松下政府参考人 お答えいたします。

 危険運転致死傷罪につきましては、自動車運転死傷処罰法の二条等に、該当する行為が列挙されておりまして、お尋ねの類型に関するものとして、二条一号で、アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為が、同条二号では、その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為がそれぞれ規定をされております。

 これらの行為に対する故意が認められるためには、正常な運転の困難性や進行制御の困難性といった評価の認識が必要とされるわけではなく、例えば、同条一号につきましては、ハンドルを思うように操作できないといった、正常な運転が困難な状態であることを基礎づける事実を認識していることをもって足りると解されておりまして、同条二号につきましては、例えばハンドルのぶれや車体の揺れなどの事実など、進行を制御することが困難な高速度であることを基礎づける事実を認識していることをもって足りると解されております。

 したがいまして、御指摘のように、その運転者が、酒を飲んでもきちんと運転できると思っていたとか、一般道で恐ろしいスピードを出してもそれが制御可能と思っていたとしても、そのことのみをもっておよそ危険運転致死傷罪が成立しないというものではないと考えております。

緒方分科員 けれども、そうなってしまうと、例えばドイツ車のようにすごい頑丈にできていて、リミッターが外れているものだと、もうその時点で危険運転致死傷罪が取られないという方向に働くわけですよね。車の性能が上がれば上がるほど危険運転致死傷罪から遠ざかっていくというのはおかしいと思いませんか、局長。

松下政府参考人 お答えいたします。

 車の性能ももちろん考慮の要素とはなっておりますけれども、上がったからならないということでもなく、全ての事情を総合考慮して、証拠として、それぞれの事実関係を総合考慮して事実認定がなされるものと承知しております。

緒方分科員 結局、これは私、刑事法というのは罪刑法定主義でありまして、明確性の原則に反するんじゃないかと思うんですよね。何がこの犯罪で罰せられるのかということについて、私は、明確性の原則が欠けているんじゃないかと思います。

 実際に、被害者の方と私、たくさん話しましたけれども、なぜこれが入って、なぜこれが入らないのかと外形的に分からない。少なくとも、国民が、常識的な理解能力を持っている国民が読んでもよく分からないというのは問題ではないですかね、局長。

松下政府参考人 お答えいたします。

 一般に、御指摘のとおり、刑罰法規は、通常の判断力を有する一般人の理解を基準といたしまして、どんな行為をしたら処罰の対象になるかという基準が読み取れるものであるということが求められております。

 そして、危険運転致死傷罪につきましては、その対象となる危険運転行為は、悪質、危険な運転行為のうち重大な死傷事故を生じさせる危険が類型的に極めて高い運転行為であって、傷害罪等に準じた重い法定刑で処罰するべきものと認められる類型に限定して列挙をされているところでございます。

 もとより、その構成要件は、刑法上ほかの罪と同様ですが、処罰すべき行為を過不足なく捉えるためにある程度抽象的な表現で規定されざるを得ませんけれども、どのような行為をした場合に処罰の対象となるかについては現行の文言上十分に示されていて、いずれの構成要件も現行の規定で明確性に欠けるところはないのではないかと考えております。

緒方分科員 ある程度抽象的に書いていて、明確であるというのは、言葉として少し、矛盾とまでは言いませんけれども、逆の方向を向いているんじゃないかというふうに思います。

 大臣、これはどう考えても法律の中に不明確なところがあります。そして、今局長から答弁があったとおり、危険なものの中で悪質なものだけが犯罪化されるというのは、実は私、その事情はよく分かるんです。決して危険なもの全てが犯罪なんだというわけではないというのは、それは法律の、法制審議会の議事録とかも読ませていただきましたけれども、そうなっていることはよく分かります。

 けれども、それを、危険運転致死傷罪と言った瞬間に、危険なものが全て罰せられるんじゃないかとか、そういうふうに思うことは、それは別にそう思った方が悪いわけでも何でもなくて、法律の名前がそうなっているわけですから、そう考えることに一定の合理性があるんだと思います。

 これまでのこの法律の歩みや判例を一回検証した上で、改正すべき点があるのであれば改正すべきと、少なくとも検討だけはしていただけないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 先ほど刑事局長が申し上げたとおりなんですが、危険運転致死傷罪に規定されている危険運転行為、これは、悪質、危険な運転行為のうち重大な死傷事犯となる危険が類型的に極めて高い運転行為であって、ほかの、暴行の結果的加重犯である傷害罪や傷害致死罪に準じた重い法定刑により処罰すべきもの、そういったこととして認められる類型、これに限定して列挙をされているということでありますので。また、構成要件については、刑事法に求められる明確性に欠けるというところ、これはないんじゃないかと考えています。

 ただ、危険運転致死傷罪における危険運転行為の構成要件を変更したり追加したりすることについては、今申し上げたように、危険運転致死傷罪を重く処罰するという趣旨や危険な運転行為による死傷事犯の実情等を踏まえ、十分な検討が必要だろうと考えています。

緒方分科員 以前、昨年ですけれども、私、内閣委員会でこの件を取り上げた、大分の事案を取り上げたんですけれども、車の限界にチャレンジしてやろうと思って一般道を百九十四キロ出して人を死傷させた事案でも、結局、最後、訴因変更しましたけれども、最初は実は、大分の地検はこれで危険運転致死傷罪を取らなかったんですね。もう一度言います。車の、何キロ出るか試してみたかった、その思いがあるわけですよね。そして、一般道です。高速道路じゃないです。その人が、百九十四キロですよ、これを出して運転して、曲がろうとした方を死亡させてしまったという事例などが、これでも最初は取っていただけなかった、最後は訴因変更しましたけれども。

 こういうことを考えたときに、じゃ、どうやったら取ってもらえるのかなというのがよく分からないという事案が結構あると思います。この件は、今、十分な検討が必要ではないかと思うという話がありましたが、その検討の中に、法改正の可能性も含めていろいろな可能性を検討していただきたいと思うわけでありますが、もう一回だけ、思いをお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 個々の件についてはお答えを差し控えたいと思いますが、個別案件を離れて、あくまでも一般論として申し上げれば、自動車運転致死傷処罰法二条二号の、その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為は、速度が速過ぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状態で自車を走行させるということをいうと解されております。

 これに該当する場合には、当然、この危険運転致死傷罪の要件を満たすということになる、これは一般論でありますが、先ほど申し上げたように、危険運転致死傷罪を重く処罰する趣旨、あるいはその危険な運転行為による死傷事犯の実情等を踏まえて、十分な検討が必要な案件だと思っています。

緒方分科員 これはしっかりとお願いをさせていただきたいと思います。

 続きまして、民事の話に移っていきたいと思います。

 民事でいろいろ、逸失利益を計算するときの話なんですけれども、算定方法の基準は、労災保険の等級表が使われているというふうに承知をいたしております。この中で、例えば、判決とかで、男女の格差とか障害等の有無によって当然のように補償の内容が異なるということが起こっているわけですね。

 これは、まず、一般論として、これはどこなのかな、国土交通省かな、一般論としてですけれども、これは人権侵害になっているんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

住友政府参考人 御答弁申し上げます。

 まず、今委員から御指摘ありましたとおり、我々の方の自賠責の算定基準というのは、労災保険の基準、すなわち、専門的な知見を有する厚生労働省において定められているものですが、これを用いているというのは、事故の原因のいかんを問わずして、その後遺障害の症状の態様に応じたものになっているということでこういったものを用いられているものでございます。交通事故の結果についても労働災害の場合と同様の障害が生じるということから、自賠責保険の後遺障害認定も労災保険に準じて定めた基準を用いているということであります。

 また、労災保険の基準についてなんですが、これについては、例えば平成二十三年に、後遺障害のうち顔などの容貌に関する傷痕について、以前は男女で差があったんですが、この差をなくすなど、時代に合わせて解消されていまして、自賠責保険の後遺障害の認定基準も、それに合わせて必要な見直しを行っているというところでございます。

 あと、もう一点あった、逸失利益についてでございますけれども、この逸失利益ですが、これは、被害者が事故に遭わなければ得られるはずであった将来の経済的利益、これを算出しているものでございます。

 この算出に当たっては、事故前の賃金のほか、年齢別の平均の給与額などを算定の基礎として用いることということになっていますので、そういった意味で、結果として、その被害者の男女の別ですとか、平均給与額が違ったりしますので、そういったことや年齢などによって逸失利益に差が生じるということはございますけれども、何らかの差別的な取扱いを行っているというものではございません。

緒方分科員 それでは、今日、内閣府から男女共同参画担当と障害者政策担当の方に来ていただいております。

 こういった形で男女格差があること、そして障害の有無によって逸失利益が異なるということについて、それぞれお考えを聞かせていただければと思います。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 民事事件に係ります判決につきまして政府としての見解を述べることは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、その上で、委員御指摘の点につきましては、過去の裁判例におきまして、交通事故の被害者の逸失利益の算定に当たって、男女で異なる平均賃金が用いられたケースがあるものと承知してございます。

 社会の実態におきまして、我が国には男女間で賃金格差が存在しておりまして、諸外国と比較してもその格差は大きいものでございます。男女間賃金格差は喫緊の課題でございまして、政府におきましては、その是正に向けて、今後も様々な取組や検討を進めてまいります。

滝澤政府参考人 お答え申し上げます。

 民事事件に係る裁判所の判決について政府としての見解を述べることは差し控えさせていただきます。

 その上で、逸失利益については、債務不履行や不法行為がなければ本来得られたであろう利益をいうものと理解しておりますが、裁判所においては、事案に応じて、社会情勢の変化など諸般の事情を勘案した上で判断されているものと承知しております。

 いずれにしましても、内閣府としては、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現が重要であると考えておりまして、共生社会の実現に向けまして、関係省庁と連携して取り組んでまいります。

緒方分科員 お二方のうち、代表して男女共同参画室長にもう一回お伺いしたいと思います。やむを得ないという認識ですか。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、過去の裁判例におきまして、交通事故の被害者の逸失利益の算定に当たって、男女で異なる平均賃金を用いられたケースがあるということは承知しております。

 一方で、先ほど申し上げましたけれども、社会の実態において、我が国には男女間で賃金格差が存在しております。(緒方分科員「全部読むならやめて」と呼ぶ)はい。男女間賃金格差は喫緊の課題でございまして、政府といたしましても、その男女間賃金格差の是正を始めとして取り組んでございます。

 以上です。

緒方分科員 続きまして、この逸失利益を計算する際、自賠責法等の支払い基準ではライプニッツ係数を掛けてやっているということですが、基本的に法定金利をベースにやっているということでお伺いをいたしております。

 法定金利、大体、おおむね現在の水準は三%というふうに伺っておりますが、例えば、二十歳の方が四十五歳になるときの逸失利益ということになると、四十五年後なんですけれども、一・〇三の四十五乗を掛けると三・二六になるんですね。三・三分の一の補償をもらって、これは、四十五年たったらこれが三・三倍になるんですということの説明を受けて補償料をもらうわけですが、現行の金利水準とかを考えたときに、余りに現実味がない想定ではないかなと思いますが、いかがですか。

金子政府参考人 中間利息控除の算定の場面では、御指摘のとおり、法定利率を用いるというのが民法の規定にございます。今は三%を使っているわけで、法定利率が市中金利を大きく上回りますと、将来の逸失利益に係る損害賠償額が低く抑えられる、こういう関係になるわけでございます。

 ただ、この法定利率の適用場面が様々でございまして、例えば、借り手が一般消費者である場合の水準なども考慮する必要がありますし、逆に、遅延損害金の額が低くなり過ぎますと、債務の不履行を助長する結果ともなりかねないというようなこともあり、このようないろいろな事情を考慮しまして、また、平成二十九年の改正まで約百二十年にわたって年五%という法定利率が定まっていて、これで実務運用がされてきたことなども考慮しまして、平成二十九年の民法改正におきまして、簡明な数値とする必要性なども併せ考慮して、三%としたという事情がございます。

 これが平成二年四月から施行されたところでございまして、現時点においては直ちに見直すという状況にはないと考えております。

緒方分科員 それでは、いろいろもっと聞きたいんですけれども、質問を移していきます。(金子政府参考人「済みません、ちょっと訂正させていただきます」と呼ぶ)

金子政府参考人 最後のところ、施行期日ですが、平成二年と申し上げたようですが、令和二年と訂正させていただきます。済みません。

緒方分科員 続きまして、保険会社の示談代行についてお伺いしたいと思います。

 昭和四十八年、保険会社の示談代行に関して、日弁連と損保協会で交渉を重ねて合意を得ているんですけれども、これは非弁行為を防止するという意図もあったやに聞いております。

 ただ、例えば、裁判基準に準じる任意保険支払い基準を定め、賠償金支払いの適正化を図るというようなことが書いてあるわけですが、任意保険支払い基準は本当に賠償金を必要としている方に適正なものになっているんだろうか、裁判による解決とそうでないときの解決の公平化が図られていないのではないかとか、あと、示談介入する際にその基準がきちんと説明されるように指導すべきだというふうに思いますが、いかがですか。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 任意保険支払い基準は、各保険会社が提供する対人賠償保険における保険金算定の目安として定められたものでございまして、個々の交通事故の損害状況や被害者の個別具体的な事情等を十分考慮できるように一定の幅を持った基準としているほか、当該基準の内容については、裁判における賠償水準等の動向を勘案して随時見直し等が行われているものと承知しており、各保険会社においてその適正性が確保されるよう努めているものと考えております。

 いずれにしましても、任意保険支払い基準に基づきまして各損保会社が個別の事案に即して適切に対応を行っていくことが重要であり、金融庁としては、各社の対応状況についてしっかりモニタリングしてまいりたいと思っております。

緒方分科員 そういう基準をしっかりと示談介入する際に説明していないと、後で、そんなのがあると知らなかったという人が結構多いわけですよね。きちんと指導していただければと思います。

 そして、同じ内容なんですけれども、示談介入する際に、保険会社に直接請求権があることとか、あと、例えば修理工場が間に入るときの同意を取り付けるとか、そういった幾つかの非弁行為を防ぐための説明をきちっとすべきではないかというふうに思いますが、金融庁、いかがですか。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の損保協会と日弁連の合意につきましては、御指摘のとおり、昭和四十八年九月一日付の覚書でありまして、それは、被害者救済及び弁護士法七十二条の解釈をめぐる将来の紛争を回避するためのものと承知しております。

 損保会社においては、業務の公共性を十分に認識し、法令や業務の諸規則を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めていくことが重要でありまして、議員御指摘の説明責任みたいなものをきっちりと果たしていくことが重要だというふうに考えております。

緒方分科員 この合意の中では、中立の紛争処理機関として交通事故紛争処理センターが設立されていますが、被害者の方から、とても中立ではない対応を受けたという話もあります。本当に中立でしょうか。

滝澤政府参考人 お答え申し上げます。

 交通事故紛争処理センターは、交通事故の損害賠償をめぐる紛争について和解のあっせんを目的とする中立の機関としまして、昭和四十九年に日本弁護士連合会の理解を得て発足した交通事故裁定委員会を前身としております。その後、昭和五十三年に組織を拡充し、財団法人へと発展しました。

 現在は、自動車事故に関する紛争解決業務を公益目的事業として位置づけまして、平成二十四年に公益財団法人に移行し、自動車事故による損害賠償に関する法律相談、和解あっせん及び審査業務等を行っているものと承知をしております。

緒方分科員 続きまして、保険会社間の協議に全てを任せてしまうと、全体として見たときに、やはり保険会社はビジネスでやっているので、保険金の支払いを、これが悪いと言っているんじゃないです、これはビジネスとして、どうしても保険支払いを抑えたいという思いは一般論としてあると思うんですよね。そうすると、それらの保険会社の間で示談をやってしまうと、何か全体として補償の額が低めに出るベクトルが働くのではないかと思うんですね。

 示談代行権というのは、そういう保険会社の利益とまでは言いませんけれども、何となく、しっかりと補償が払われる本来想定している額よりも低めに出るという傾向があるのではないかというふうに思いますが、ここについていかがお考えですか。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 適時適切な保険金の支払いを行うことは、保険会社として保険業を行っていく上で、必要不可欠かつ基本的で最も重要な役割であるというふうに考えております。

 金融庁といたしましては、こうした観点から、損保会社に対しまして、適切な保険金支払い管理体制の構築に加えて、示談サービスを行う場合には、被害者保護に留意しつつ、丁寧かつ分かりやすい説明を行う等、十分配慮して交渉を行うことを求めてきたところでありまして、損保会社においても適切な対応が取られているものと承知しておりますが、今後とも、金融庁といたしましては、各社の対応が適切になされるかについてしっかりモニタリングしていきたいと考えております。

緒方分科員 保険会社が、示談代行が入ることを、決してこれを私は悪いと言っているわけじゃないんですけれども、被害者の方と話していると、結果として一切被害者が加害者と接点を持てないようになって、一部では、加害者側の傍若無人な立ち振る舞いで被害者が二次被害に遭っているというケースもあるやに聞いております。しっかりとこの辺りは念頭に置いていただければと思います。

 そして、今いろいろ問題点を指摘しましたが、結果として、事故後かなりの時間がたっても保険金支払いがなされないケースもあります。これは問題じゃないかと思うんですね。

 被害者は、事故直後から金銭的な困難に直面をいたします。示談代行に関する合意で定めのある損害賠償金の内払い制度はきちんと確立しているのでしょうか。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 保険金の支払いにつきましては、迅速な支払いが求められるとともに、その金額が適切なものでなければならないところでございます。

 このため、事故によっては損害額の確定に時間を要する事案もありますことから、そのような場合には、遅れている理由や経過等を分かりやすく説明するなど、金融庁としては、被害者への丁寧な対応を損保会社に対して求めているところでございます。

 その中で、保険金の内払いにつきましても、各損保会社において、社内規程等に内払いに係る手続を定めて、内払いを行う場合を例示するなど、被害者保護に欠けることのないよう適切に対応するよう求めているところでございます。

 損保会社においては被害者の事情に十分配慮した適切な支払いが行われているものと承知をしておりますが、仮に、保険会社において内払いを含む保険金支払い管理体制に問題があると認められる場合には、法令に基づいて厳正に対処してまいりたいと考えております。

緒方分科員 交通事故の民事裁判で勝訴をしたとしても、結構多いのが、加害者が逃げて、支払いを逃れる、いわゆる逃げ得がまかり通っているケースがあります。時効が十年のため、被害者は多額の費用をかけて時効の中断をしなくちゃいけないということがあります。そうでないのであれば、時効を成立させて加害者を支払い義務から解き放つ、そのいずれかの選択をしなきゃいけない、そういうつらい局面にある被害者もたくさんおられます。

 何か考えられないですかね。

金子政府参考人 民法上の消滅時効には、長い期間の経過に伴って証拠が散逸するなどにより弁済等の事実を立証することが困難となった債務者に、一つの防御権といいますかを与えるという公益的な機能があるという側面もございます。

 この消滅時効の趣旨は、判決によって権利が確定したときについても当てはまりますことから、民法においては、判決によって権利が確定したときは、その権利の性質のいかんにかかわらず、時効の更新がされ、改めて消滅時効が進行することとされております。

 また、消滅時効期間につきましても、判決で確定した権利の性質いかんにかかわらず、一律に十年とされているところであり、例えば、交通事故によって生じた損害賠償請求権のみについて特別の扱いをするということはなかなか難しい状況にございます。

 また他方、令和元年の改正民事執行法によって見直された、債務者による財産開示手続、あるいは第三者からの情報取得手続を利用した場合でも、時効の更新が生ずることができるとされておりまして、この手続は比較的簡便な方法で時効の更新を生じさせることができるものというふうに理解しております。

緒方分科員 続きまして、あと五分ですので短く、支払い基準。

 支払い基準における認められる医療というのはどこまでなのかということがございます。認可されている医療なのか、保険の適用がある医療なのか、いろいろな考え方があると思います。具体的な範囲を是非明示していただきたいと思うんですね。例えば、昨今、技術の発展が著しい再生医療についてどうなのかとか、そういうことについて、いかがお考えでしょうか。

住友政府参考人 お答え申し上げます。

 どのような医療が必要となるかというのは、個々のケースに応じて様々、交通事故の被害ですので様々異なりますので、自賠責保険の支払い基準においては、御存じかと思いますけれども、必要かつ妥当な実費の範囲でということで治療関係費を支払うとされておりまして、認められる医療の範囲については、それ以上具体的な定めを置いているものではございません。

 他方で、先ほど御指摘ありました再生医療ですが、これももちろん排除するものではございませんで、再生医療に限らず、まさに必要かつ妥当な実費の範囲の医療行為であれば、これは支払いの対象となり得るものということでございます。

 いずれにいたしましても、国土交通省としては、関係省庁と連携して、適切な、適正な支払いがなされるように今後とも努めてまいります。

緒方分科員 そのまさに必要かつ妥当なということなんですが、いや、それの解釈でみんな困っているわけですよね。もう少し明確化していただかないと、結局、この治療だったら治るのにと期待感を持っていったら、全部はじかれましたというケースもあるわけでして、是非これは考えていただきたいと思います。

 最後に一問、損害保険における無制限という表現についてお伺いをいたしたいと思います。

 よく、自動車保険でも何でも、補償が無制限と書いてあるケースがあるんですが、あれは実際には有限責任であって、そして、かつ、その有限責任の中でも相当因果関係の範囲での補償ということになるわけですね。無制限という言葉から受ける印象と実際の実務の間にはかなりの乖離があります。消費者に誤認を与えているのではないかと思いますが、消費者庁、いかがですか。

真渕政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の事案に関するお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、事業者が自己の供給する商品、サービスの内容について、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると誤認されるような表示を行う場合には、景品表示法上、問題となってまいります。

 また、注意書きですとか適用条件、例外などが小さく記載されていたとしても、表示全体から見て一般消費者が著しく優良であると認識するのであれば、景品表示法上、問題となることがあり得るところでございます。

 お尋ねの損害保険に関する表示につきましても、消費者庁といたしましては、景品表示法上、問題となる具体的事案に接した場合には、同法に基づいて厳正に対処してまいりたいと考えております。

緒方分科員 三十分、しっかりとやらせていただきました。この問題は非常にいろいろなところに絡むことが多いので、また、今回の答弁、議事録をしっかり精査させていただいて、それぞれの委員会でやっていきたいと思います。大臣、お疲れさまでありました。

 ありがとうございました。

中山主査 これにて緒方林太郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後一時三十分散会


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