衆議院

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第1号 平成30年2月23日(金曜日)

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本分科会は平成三十年二月二十一日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十二日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      石崎  徹君    金田 勝年君

      野田  毅君    星野 剛士君

      井出 庸生君    黒岩 宇洋君

二月二十二日

 星野剛士君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成三十年二月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 星野 剛士君

      安藤 高夫君    井野 俊郎君

      石崎  徹君    大隈 和英君

      金田 勝年君    野田  毅君

      三ッ林裕巳君    渡辺 孝一君

      井出 庸生君    今井 雅人君

      山井 和則君    黒岩 宇洋君

   兼務 逢坂 誠二君 兼務 岡本あき子君

   兼務 高井 崇志君 兼務 初鹿 明博君

   兼務 國重  徹君 兼務 濱村  進君

   兼務 菊田真紀子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   内閣府副大臣       田中 良生君

   厚生労働副大臣      高木美智代君

   厚生労働大臣政務官    大沼みずほ君

   経済産業大臣政務官    大串 正樹君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府参考人

   (個人情報保護委員会事務局長)          其田 真理君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 安居 孝啓君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           下間 康行君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           信濃 正範君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           安藤よし子君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 酒光 一章君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十三日

 辞任         補欠選任

  金田 勝年君     神谷  昇君

  野田  毅君     大隈 和英君

  井出 庸生君     今井 雅人君

  黒岩 宇洋君     岡田 克也君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     井野 俊郎君

  神谷  昇君     渡辺 孝一君

  今井 雅人君     山井 和則君

  岡田 克也君     黒岩 宇洋君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     三ッ林裕巳君

  渡辺 孝一君     安藤 高夫君

  山井 和則君     山岡 達丸君

  黒岩 宇洋君     中川 正春君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     金田 勝年君

  三ッ林裕巳君     野田  毅君

  山岡 達丸君     井出 庸生君

  中川 正春君     黒岩 宇洋君

同日

 第二分科員逢坂誠二君、菊田真紀子君、第四分科員岡本あき子君、初鹿明博君、第七分科員國重徹君、濱村進君及び第八分科員高井崇志君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

星野主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算及び平成三十年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 平成三十年度厚生労働省関係予算案の概要について説明いたします。

 厚生労働省所管一般会計予算案については、昨年度より一・四%増の三十一兆一千二百六十二億円となっており、また、厚生労働省所管特別会計予算案については、労働保険特別会計、年金特別会計及び東日本大震災復興特別会計に所要の予算案を計上しています。

 以下、平成三十年度予算案の重点事項について説明いたします。

 本予算案においては、成長と分配の好循環の拡大に向け、質の高い効率的な保健、医療、介護の提供の推進や総合的な子育て支援など全世代型社会保障の基盤強化を図るとともに、働き方改革、生産性向上などの取組を推進することとしています。

 第一に、働き方改革の着実な実行に向けて、いわゆる同一労働同一賃金を達成するための非正規雇用の処遇改善、長時間労働の是正や、柔軟な働き方を選択しやすい環境整備を進めるとともに、生産性向上や賃金引上げのための支援などに取り組みます。あわせて、高齢者も若者も、女性も男性も、難病や障害を抱える人も、誰もがその能力を十分に発揮できるよう、人材投資の強化や人材確保対策の推進などを進めます。

 第二に、質の高い効率的な保健、医療、介護の提供を一層推進するため、団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年に向けて、質が高く効率的な医療、介護の提供体制の整備を進めるとともに、データヘルス改革などのICT技術の利用、医療におけるイノベーションの推進、医療の国際展開、国際保健への貢献を図ります。また、受動喫煙防止対策、がん、肝炎、難病対策を推進するとともに、医薬品、食品の安全対策の確保、強靱、安全、持続可能な水道の構築などを推進します。

 第三に、全ての人が安心して暮らせる社会に向けた環境づくりとして、待機児童の解消に向けた子育て安心プランに基づく保育の受皿の整備や子供を産み育てやすい環境づくりを進めるとともに、児童虐待防止対策の推進、社会的養育の充実を進めます。あわせて、障害者施策を総合的に推進するとともに、地域共生社会の実現に向けた地域づくり、生活困窮者、生活保護受給者の自立支援、自殺総合対策のさらなる推進などを図ります。

 以上のほか、戦没者遺骨収集等の推進、持続可能で安心できる年金制度の運営、東日本大震災及び熊本地震からの復旧復興の支援などを図ります。

 また、社会保障・税一体改革による社会保障の充実については、消費税増収分に加え、社会保障改革プログラム法等に基づく重点化、効率化による財政効果も活用し、各種施策を推進します。

 今後とも、国民生活の安全、安心の確保と質の向上、雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力していきますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願いいたします。

星野主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

星野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔一般会計予算案の主要経費別内訳及び特別会計予算案の歳入・歳出予定額は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

星野主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

星野主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大隈和英君。

大隈分科員 おはようございます。自由民主党の大隈和英でございます。

 朝一番から質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 さて、早速質問の方に入らせていただきますが、まず、今回の薬価改定の意義について少し議論をしていきたいと思います。

 膨張する社会保障費の中で、限られた財源、とりわけ、医療費を始めとして各分野にどう分配していくかというのが大変大きな課題となっております。今回の診療報酬改定でも、厳しい財政事情の中で、あちらを立てればこちらが立たないというふうな状態が長く続いておりまして、今回は薬価の方にそのしわ寄せが少し来たのかなというふうに言われておるところでございます。

 しかし、税収の伸びを大きくしても、なかなか社会保障財源の大幅な増大に追いつかない、その社会保障財源の大幅な増大を見込めない現状の中で、国民負担を増大させずに、そして社会保障の過度な圧縮や削減をなしに、どうやって財源全体を大きくしていくか、ふやしていくか。やはり先端医療や創薬のイノベーションにかける期待、その役割というものは大きいものというふうに考えております。

 その旗頭として、イノベーションを特に推進していくべき創薬部門、ぜひ引っ張っていってもらいたいと思っておりますが、今回のように薬価の切下げが進んでいきますと、国内メーカーが研究開発の基礎体力を失ってしまう、あるいは、収益性が見込めずに、イノベーションのもととなるシーズ、研究が国内から流出して海外の企業に奪われてしまう、そういう現状が既にございます。

 これは厚労省だけでなく、文科省の基礎研究の予算や、あるいは大学院を始め高等教育の予算づけのあり方にも関連してくるかもしれませんが、この社会保障の予算を限られた中切り分けていく中で、薬価の方にしわ寄せが行き、そして、それがひいてはイノベーションを阻害してしまうのではないか、こういうジレンマといいますかパラドックスにつきまして、厚労省としてどのような見解をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、画期的新薬の創出などのイノベーション、この推進は極めて重要であるというふうに認識をいたしております。

 一方で、近年、革新的ではございますけれども非常に高額な医薬品が登場いたしまして、国民負担それから医療保険財政に与える影響が懸念されております。これは世界各国でも問題になっているところでございます。

 御案内のように、我が国の公的医療保険制度は、国民の税金と保険料、そして患者負担によって賄われております。したがいまして、国民皆保険の持続性、それと今御指摘のございましたイノベーションの推進、これを両立していくことが必要でございます。

 こうした観点から、今般の薬価制度の抜本改革におきましては、具体的に、効能が追加された場合などの市場規模の拡大、これに速やかに対応すること、二点目といたしまして、毎年薬価調査、毎年薬価改定に取り組んでいくということ、そして三点目といたしまして、新薬創出加算などの抜本的な見直しを行うこと。そして、イノベーションの評価、さらには長期収載品の薬価の見直し、こういった総合的な改革を実行するということにいたしたところでございます。

 こうした取組の中で、今御指摘ございました点に関連するものといたしましては、まず、新薬創出等の加算制度でございますけれども、この中では、配合剤、あるいは既に類似の医薬品が多く収載されている新薬、こういったような革新性の低い品目も加算対象になっている、こういった課題の御指摘もございました。したがいまして、これを医薬品そのものの革新性や有用性に着目して判断する、こういう仕組みに改めたいということでございます。

 それから、長期収載品の薬価でございますけれども、これは後発医薬品の薬価を基準に引き下げていく、薬価を下げていく、そういう一方で、後発品に置きかえが進んだものにつきましては、製薬企業みずからが市場から撤退を判断することができる、こういった条件整備をしたところでございます。

 一方で、イノベーションの評価を更に推進していくという観点から、一定の要件に該当いたします原価計算方式の品目の加算を大幅に引き上げる、こういった取組もやっているところでございます。

 また、こうした薬価改革にあわせまして、三十年度の予算案におきましては、日本創薬力強化プラン、緊急政策パッケージでございますけれども、この予算を計上させていただいております。日本発のシーズが生まれる研究開発環境の改善を行う、こういった方に取り組んでいきたいと思っておりまして、こうした各種の取組を通じて、革新的新薬の創出を総合的に推進してまいりたいと考えております。

大隈分科員 ありがとうございます。

 イノベーションが次々に起こっていき、それが最終的には、日本の国民だけではなく、やはり世界全体を、病める人を救うというふうに持っていっていただきたいと思うばかりなんですが、その一方で、新薬というものが非常に高額なものが続出してきている、分子標的薬を始め出てきている中で、そこのところをどうやって支えていくかというのがまた次なる課題ということを考えておりまして、ぜひともオール・ジャパンで、その英知を集めて解決に取り組んでいきたいというふうに考えております。

 さて、創薬のイノベーションのお話が出ましたが、そういいますと、最先端の夢の薬というようなものばかりがクローズアップ、注目されるわけですが、きょうは、ここでは少し漢方薬についての議論をさせていただきたいと思います。

 漢方薬もしくは漢方医学というものは、中国起源の伝統医学をもとにした、我が国の長い歴史で独自に発展してきたジャパン・オリジナル、日本の独自の伝統医学です。

 では、最新の医療現場では通用しないのかといいますと、これは全く逆でございまして、私も、西洋医学では治療が難しかった、例えば、おなかの手術をした後の腸の動きが回復してくるのに非常に効果のある漢方薬、あるいは抗がん剤なんかを使いますと手足の指先がしびれてくるんですが、こういうものが見事に改善したり、あるいは女性の更年期症状ですとか、あるいはホルモン治療なんかをしているときなんかもそうなんですが、そういう更年期症状がぴたりと治ったりというような、鮮やかな効果をさまざま経験してまいりました。

 その効果は、海外のトップジャーナルでも採用されるなど、エビデンスとして徐々に確立しつつありまして、例えば、今申し上げたがんの支持療法や高齢者のフレイルなどの分野においては、なくてはならない分野になってきている治療法であるというふうに考えております。もっと言いますと、よく勉強しているお医者さんほど漢方薬をうまく使いこなせるというようなことも言えるのではないかなというふうに思っております。

 しかし、実際には、医療保険制度の中では、漢方薬は基礎的医薬品に位置づけられておりません。もともと安価ではありますが、これもまた毎回の薬価の下げどまりがないものですから、将来の経営予測すら立てにくいということが、私も企業、工場を見学に参りますとよく聞かれます。

 例えば工場なんかは、漢方薬も、伝統的な小さな製薬会社からスタートしたところが多いわけですが、四、五十年ぐらいの機械がずらっと並んで、なかなか更新ができない、更新したいんだけれども将来の経営予測すら立てられないというようなことで、内部留保どころか設備投資もままならないというような状況が見られております。あるいは、実際にこの約二十年間で見ていきますと、製造販売をする企業も、数でいいますと半減以下、半分以下になってきているというような状況がございます。

 そういうことを考えますと、何とか基礎的医薬品としてもらいたい、薬価も何とか維持してもらえないだろうかという意見がメーカーの切なる願いでございますが、その厳しい現状を踏まえて、厚生労働省の御見解をぜひお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 漢方薬でございますけれども、これは年々需要が増加をいたしておりまして、やはり我が国の医療におきまして重要な役割を担っていただいているというふうに認識をいたしております。

 ただいま御指摘のございました基礎的医薬品でございますけれども、これは採算性の低い医薬品につきまして、不採算になる前に薬価を維持して下支えをする制度、こういうものといたしまして、平成二十八年度に導入をいたしたところでございます。

 今回の薬価制度改革におきましては、この基礎的医薬品の範囲を一定拡大をいたしておりますけれども、これは具体的には、過去三回の薬価調査におきまして市場実勢価格と薬価の乖離が二%未満である、そういうことで採算性の低いものということで、例えば生薬などを対象としたというところでございます。

 一方で、御指摘のございました漢方薬でございますけれども、これは生薬とは多少異なりまして、市場規模は年々拡大をしているということも事実でございます。こういったことも踏まえまして、現段階では基礎的医薬品の対象とはしなかったということでございます。

 一方で、今般の診療報酬改定におきます中医協の答申書、これに附帯意見がついておりまして、「基礎的医薬品への対応の在り方について引き続き検討すること。」ということにされたところでございます。

 したがいまして、引き続き、漢方を含めまして、医薬品の採算性などを踏まえて、基礎的医薬品のあり方について検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

大隈分科員 市場規模が拡大している、これは当然ニーズが拡大してきているのでわかるわけですが、実際の製造販売の側から見ますと、どうしても薄利多売といいますか、マーケットはふえているんだけれども、なかなか、一つ一つの観点から見ていきますと非常に厳しい状態が続いているということをまた見ていただければと思いますし、その内容についても少し触れていきたいと思います。

 漢方薬の原材料、これは今中国から依存しているわけですけれども、日本の大切に育ててきました漢方医学の効果とそれから市場性に注目しているのが、原材料を持っている中国なんですね。

 原料生薬の成分条件を満たすだけの作物の栽培というのは、これはなかなか難しいところがございまして、日本でも農林水産省を中心にして頑張っていただいてはおるんですけれども、約八割をまだ中国から輸入に頼っている状況でございます。その価格もこの八年間で二・五倍に高騰しておりまして、まさにこれは第二のレアアースというような、なりかねないような状況となっております。また、なかなか採算もとりにくいということが出ておりまして、薬価基準の収載の品目も三分の二に減ってきているというところです。

 日本からのせっかくの、古いとはいいながら、伝統的とはいいながら、イノベーションになり得る、あるいは世界市場を占めることができる、そのチャンスを持っている分野ではありますけれども、中国の国を挙げた取り組みに、このままでは大切に育ててきたノウハウも市場も奪われて、原材料が高騰、独占される。つまるところ、日本の漢方医療の壊滅につながりかねない危機的状況だと私は考えております。

 日本企業との合弁というものも出てきているというふうに聞いておりますが、将来予測も含めて、現状認識と、あるいはとり得る対策について少しお聞かせいただければと思います。

武田政府参考人 ただいま御指摘のありました漢方でございますけれども、今日、医療の現場や医学教育の現場で広く取り入れられておりまして、我が国の医療の中で非常に重要な役割を担っていると認識をしております。

 我が国の医療用の漢方製剤、生薬などにつきまして、生産額の推移を見ますと、近年の医療現場での有用性評価の高まりなどを背景といたしまして、国内生産額は直近五年間で約一三%の増加ということになっており、医薬品全体に比べましても、これは高い市場規模の伸びを示しているところでございます。

 ただいま申し上げましたのは医療用医薬品としての漢方製剤でございますけれども、一般用も含めれば、さらに高い伸びとなっている状況でございます。

 したがいまして、私どもとして詳しい将来予測を示しているわけではございませんけれども、今後の高齢化、そして医療ニーズの多様化を背景といたしますと、ますますこの市場規模につきましては伸びていくことが予想されるのではないかと思っております。

 一方、課題といたしましては、ただいま御指摘もございましたとおり、原料生薬について、現状、約八割が中国一国に依存をしているということでございまして、これは医薬品の安定的な供給、さらに原料の安定的な確保という観点からは課題があるということではないかというふうに思っております。

 厚生労働省といたしましては、我が国の医薬品産業につきまして、医薬品産業強化総合戦略というのを昨年十二月に改訂をしたところでございます。この強化総合戦略の中におきましても、原料である生薬の調達先が特定の国に集中して安定供給に支障が生じないよう、生薬の調達先の多様化を図るということが戦略の一つとして盛り込まれているところでございます。

 具体的には、私どもとしての取組でございますが、薬用植物の生産支援を行う農林水産省の事業にあわせまして、厚生労働省から職員を派遣をし、薬用作物の産地化を志向する地域の自治体や生産者などに対しまして、漢方製剤の市場動向や国内生産の意義などに関し説明を行い、また、相談への対応を行うとともに、研究面では、日本での薬用植物の栽培に向けた研究を取り組んでいるところでございます。

 今後とも、市場環境につきまして慎重に注視し続けるとともに、原料生薬の調達先の多様化の取組を更に着実に進めてまいりたいと考えております。

大隈分科員 ありがとうございます。

 やはり、農業の将来性、後継者がいないですとか、あるいは高付加価値のものをつけていく、高収益性を上げていく、そして海外に打って出るということを考えますと、漢方薬の原料となる農作物の栽培というのは大きなチャンスを秘めているなと。

 きょう、石崎先生もおられますけれども、新潟県の新発田市ですかね、中でも結構、市を挙げて頑張っておられて、うちの大阪の地元の島本町ですとか高槻市でも、農家を訪ねては、やったらどうですかなんていろいろ相談をさせていただいてはいるんですが、そういうチャンスというものも、ピンチをチャンスに切りかえて、ぜひとも進めていきたいなというふうに考えております。(発言する者あり)ありがとうございます。

 さて、話題をかえまして、最後ですけれども、高次脳機能障害について触れさせていただきたいと思います。

 疾患の概念としましては、けがや脳血管障害による脳の損傷の後遺症として、記憶や注意や遂行の機能や社会的行動などの認知障害が起きまして、これらによって日常生活や社会生活への適応が困難となる障害のことというふうになっていますが、医学的にはまだ、私が医学生のときではまだ概念としてもありませんでしたし、まだ歴史が浅いものだというふうに考えております。そのため、診断からリハビリや在宅においても、まだまだ専門家が不足しているというような問題がございます。

 例えば、救急に運ばれて治療が終わったところでも、高次脳機能障害の診断となりますと、脳外科の先生は精神科の先生にお任せしますよとか、なかなかスムーズな連携がいかないところというのがございますし、そういう点では、今回、第七次の医療計画に入れていただきまして、脳卒中の臨床経過を踏まえ、急性期から回復期及び慢性期までの一貫した医療体制の構築というふうに盛り込まれるなど、少しずつ社会全体での支援体制が育まれつつあるのかなというふうに考えております。

 この高次脳機能障害の支援はまだまだ道半ばというふうに考えておりますが、今後はさらに、これは都道府県なんかでもそうですけれども、助成や制度の地域間格差、あるいはスタッフの配置の格差もございます、その点の是正や、社会全体での疾患への認識を深めることが重要かと考えております。

 先日、私も、公明党の山本博司参議院議員が非常に熱心に取り組んでおられまして、アメニティーフォーラムといって滋賀県で開催されたんですが、シンポジウムで御一緒させていただきました。山本議員はもう毎年出ておられるということなんですが、今後、発達障害者の支援法のような議員立法なども必要だというふうに考えておりますし、また、我々議員としても、やるべきことはこれからまだまだたくさんあるというふうに考えております。

 本疾患につきまして、社会的支援の必要性や、これからできることを含めまして、副大臣お越しですので、力強い応援をいただきたいと思いまして、御所見を御披露いただければと思います。よろしくお願いいたします。

高木副大臣 議員御指摘のとおり、高次脳機能障害の方に対する支援策を推進していくことは大変重要であると認識しております。また、私も、先ほど来御指摘ありました課題の意識につきましては共有をしている一人でございます。

 これまで、厚労省といたしましては、都道府県や国立障害者リハビリテーションセンターにおきまして、福祉事業者や支援コーディネーターなどを対象とした研修を行うことなどによりまして、専門家の育成に努めてきたところでございます。

 また、平成二十三年から、国立障害者リハビリテーションセンターの中に高次脳機能障害情報・支援センターを設置をいたしまして、高次脳機能障害の支援に関する情報発信を行うことによりまして、当事者やその家族、支援関係者などに適切な知識を提供をするということとともに、支援拠点機関に保健師また作業療法士などから成る相談支援コーディネーターを配置をしまして、専門的な相談支援などを行ってきたところでございます。

 また、先週、全国の支援コーディネーターなどが一堂に会する高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会を開催をいたしました。その席上、支援体制の地域格差の存在や社会的行動障害のある方への支援体制の構築の必要性、こうした課題が指摘されたと聞いております。

 厚労省といたしましては、こうした御指摘も踏まえながら、引き続き、自治体等関係機関と連携を図りながら、高次脳機能障害の方々の支援を充実するよう努めてまいりたいと思っております。

 先ほど来御指摘いただきましたそうした問題意識につきまして、私も議員のお力をいただきながら進めてまいりたいと思っておりますし、また、そうした政治の動きにつきましては、しっかりと協力をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

大隈分科員 ありがとうございます。力強い応援のメッセージをいただいた思いでございます。

 私も、思い返せば、子供のころ、親戚に大好きなお兄ちゃんがおりまして、オートバイ事故の後に、少し人が変わったと言うとあれですけれども、仕事をやめてしまったり、私たちもすごくかわいがっていただいたのに何となく疎遠になってしまったような思いがありまして、今の時代だったらきちっと診断をされてサポートがあったのじゃないかなというふうに考えておりますが、そういう点では、まだまだ私たちのこの社会の中に、そのはざまで苦しんでおられる方がおられるのは間違いないというふうに考えております。

 そういう点では、きちっとした社会的な認識こそがそのはざまで苦しんでおられる方を救うわけでございまして、例えば、事故の後、何となく復帰したんだけれども、会社でなかなか仕事がうまくいかない、トラブルがあるというようなことで、不当に仕事を引かざるを得なくなったというようなケースもあろうかと思います。

 そういう点でのさまざまな社会の状況に私たち自身が光を当てていく、アプローチをしていくということをこれからも進めさせていくことをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 この機会をいただきまして、ありがとうございました。

星野主査 これにて大隈和英君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出分科員 希望の党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 これまでに続きまして、裁量労働制の答弁、それから調査データの件について伺ってまいります。

 その前に、まず大臣に、先日の公聴会、中央公聴会が二十一日にございまして、その中で、お配りしている資料の一枚目の議事録、速記録になりますが、過労死で御家族を失った御遺族の方が、一番右上ですが、過労死をしたことを人ごとと思っている限り、日本の改善はありません、皆さんも御家族がいらっしゃるはずです、そうした御家族の、身近な人が長時間労働で命まで奪われる、そうしたことを我が事のように考えていただかないと、過労死問題はなくならないと。

 私も、身の回りに、過労死でということは私の周りは幸いにしてございませんが、やはり政治家が想像力を、思いをいたすということは非常に大事だと思いますが、その点について一言お願いいたします。

加藤国務大臣 今、どなたの発言か、ちょっとここからではうかがい知れないのでありますけれども、実際、御家族を過労死で亡くされた方、私もシンポジウムに参加させていただいて、それぞれの方々から本当に悲痛な思いと、そしていまだその現実を、中にはもう四年、五年、経過している方もいらっしゃいましたけれども、現実のものとして受け入れることができないということで、本当に苦悩されております。また、実際、過労死ということに対して、いろいろと言われ方もあって、またそういったことも更にその方の本当に心の傷になっている。それをしっかり伺わせていただきました。

 私も、実は子供が社会人になっているのもおります。そういったこともあって、また、こうしたことというのは、別に特別な人に起きるわけではなくて、それぞれの方々において常に起こり得る可能性があり、そして、私どもとしてはそうした過労死ということはしっかりなくしていくべく努力をしていくことが肝要だという思いで取り組ませていただいております。

井出分科員 大変貴重な答弁をいただいたと思います。

 一連のこの問題なんですが、まず、精査が必要なデータのもとに答弁があったということで答弁の撤回とおわびがあり、その後、そのデータを精査した結果、比較をしてはいけない数字を比較したということで改めておわびがあった。昨日の段階では、データそのものについて、立憲民主党さんの方から、百十七、ぱっと見、見ただけでも違うんじゃないか、データは大丈夫というところに、野党からは、データそのものもおかしいんじゃないか、そういう段階に至っていると思います。

 この平成二十五年度の労働時間等総合実態調査結果というもののデータ、数字、この分厚い資料ですね、この全てが冊子におさめられたわけではないですが、これをもとにしてつくった冊子が労政審の今回の法案議論の出発点のデータとして提出をされている。ですから、この数字というものは非常に大事であるということは御認識をいただけるかと思います。

 そこで、改めてになりますが、昨日立憲民主党が指摘をした百十七件について、また、その他、その一件一件の数字の精査というものがどの程度進んでいるのか、現状の範囲で教えてください。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 野党の御指摘も踏まえまして、更にデータの確認をしたところ、一般労働者に係る九千四百四十九事業場のデータのうち、一日四十五時間等の誤記と考えられるものが三件三事業場、一日の労働時間数が二十四時間を超えるものが、先ほど申しました三件を含めまして十五件十五事業場、週と月、日と月、日と週について時間外労働の時間数に逆転が見られるものが百十七件八十三事業場であり、重複を除きますと、少なくとも九十三事業場につきましては精査が必要な数値であるというふうに認識しております。

 このほかにも、野党の議員から御指摘をいただいている件も含めまして、みなし時間がどうなっている、そういった点も含めまして、改めて個々のデータに当たり、精査をしているところでございます。

井出分科員 委員会の場において指摘をさせていただいたことについては御確認をいただいたと。

 それから、局長が今最後におっしゃった、もう少し野党から御意見をいただいているというのは、昨日の夕刻になりますが、野党の集まりの場で厚生労働省の方とのヒアリングがあって、そのとき我が党の山井議員が、これは実数値を聞いている裁量労働制の方の数字かと思いますが、平均的な者の労働時間が余りにも少な過ぎる、一時間とかそういう、労働時間が一時間以下というようなものが存在するのかというような指摘がありまして、精査をさせていただく、そのときは持ち帰るという話だったかと思いますが、それはまだ引き続き精査中ということでよろしいですか。

山越政府参考人 今御指摘をいただきました、野党議員からの御指摘をいただいた点も含めまして、改めて個々のデータに当たって精査をしているということでございます。

井出分科員 局長に私からも一つ伺いたいのですが、資料の六枚目にこの表があるんですが、この表の五十九というのは平成二十五年度のいわゆる調査結果の表でありまして、ここは、年間の実労働、企画業務裁量労働制、最多の者と。上から順に合計とか事業規模とかいろいろ、製造業とかあるんですが、この合計の欄の右端に、年間三百五十日以上働いている方の割合が〇・一%、これは実数が何社、何人なのかわかりませんが、存在はしていると。

 年間三百五十日以上働いていたら、その前に例えば三百四十以上三百五十未満とかありますので、三百五十以上となると、ほぼ限りなく年中無休、そういう認識の方の御回答があるのではないか。ただ、どんなに忙しかったとはいえ、少し極端な数字なのかなと。

 この点についてはどう解釈したらいいのかなというところを少し、わかる範囲で教えてください。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この表を拝見させていただきますと、三百五十日以上というところに〇・一ということで数字が入っていることを御指摘いただいているということではないかと思いますけれども、一応これは論理的には可能な数字かもしれませんけれども、かなりその中で長い数字ということになろうかと思いますので、そういったことも含めまして、データにつきましては精査を続けていきたいというふうに思います。

井出分科員 この数字は、今、精査をしていただくということで、論理的に可能だというようなお話もあったんですが、大変失礼ですが、資料の今度は後ろから三枚目、ちょっと字が小さいのですが、これは労政審の百五回、二〇一三年十一月十八日の議事録で、一番下の二行、秋田委員の疑問についてちょっと見ていただきたいんですけれども。

 この全く同じ資料について触れているんですね。問題意識は私が先ほど申し上げたものと一緒で、内容的にこの〇・一%という数字は極端ではないかと。一枚おめくりいただいて、論理的に可能というところでしょうか、極めて工夫されているのかもしれない、それとも是正の指導があったのか、答えてほしいと。

 当時の課長の答えが、やはり、あくまで一般論になると。それからいろいろお話をされているんですが、最終的には、具体的に特定の数字が、特定の者がどういう姿であるかというところは差し控えたいというような話なんですね。

 この差し控えたいという答弁は、やはり議論がとまってしまっているんじゃないか。この後、この〇・一が労政審の中で、いや、これは実はこうで、是正指導したんです、これは実はこうで、向こうのミスだったんです、そういう話もない。そうすると、この数字についての理解が曖昧になったまま進んでしまっているのじゃないか。

 この点については、私の今の問題提起はいかがですか、局長。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この労働条件分科会におけます担当課長の答弁でございますけれども、やはり一件ということでございますので、これを一定の形で工夫して出したり調査しませんと、その上で出していきませんと、事業場が特定されてしまう可能性がございますので、そういうことを懸念してこういった答弁になっているのではないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、この労働時間等総合実態調査につきまして、データにつきまして必要な精査をしていきたいと思っておりますので、その中で検討していきたいというふうに思います。

井出分科員 大臣に伺いますが、今の議論の一番の問題は、やはり調査の原票が出せない。それは、監督のために入っておりますから、監督指導内容も当然ある。プライバシーもある。

 ただしかし、事アンケートのこの数字はどういうことなんだと聞かれたときに、世論調査もそうですけれども、可能な限りつまびらかに、こういう調査をやりましたということを可能な限り説明した上で調査結果というものを示すわけですね。

 ですから、少なくとも、プライバシーとかそういうところを消して、原票についても、今野党は原票を見せてほしいということをお願いをしておりますが、やはり労政審でも出してしかるべきだったんじゃないか。私、ちょっとこの議事録を見ていて、出せるようにして出すべきだったんじゃないかと思っているんですが、いかがですか。

加藤国務大臣 まず、予算委員会における原票の提出の件については、今、理事会の方で御協議をいただいているというふうに承知をしておりますので、その理事会からの御指示を踏まえて、私どももできる限りの対応はさせていただきたい。これは先日も申し上げたところでございます。

 それから、これ、今ちょっとざっと読んだだけなので、ちょっと私、ミスリードしているかもしれませんが、是正指導の対象であったかどうかという質問をされると、では、どこまで是正指導するんですかという是正指導の基準を示すようなことにもなりかねないので、多分こういう答弁をしているのではないのかなと思って私は一読をさせていただきました。

 そうした数字、今委員の御指摘の数字については、これは私どもとして精査をさせていただきたいと思いますが、ただ、どこまでが是正指導するんですとかしませんとか、なかなかこの基準は申し上げにくいことはぜひ御理解いただきたいと思います。

井出分科員 もともと監督、その中での調査。主目的は監督。ただ、その中で、調査としてとってくる数字がこの労政審のテーマに一番ふさわしいということで出しているんですね。

 ですから、監督の部分を聞かれたら、やはりそれは、プライバシーとか、どこの社がよかった悪かったみたいな話は、そういう個別のところは、労政審の、今後の働き方、制度を考える上ではそういうプライベートな部分は要らないかもしれない。それは、だから、是正指導と聞かれたら答えにくいというのはそのとおりだと思うんですけれども、ただ、この〇・一の割合、本当に三百六十、ほぼ年じゅう働いている人がいるのかいないのか、それが、合法的な、きちっと労使協定を結んでやっているんだったら、ではどういうふうにやっているんだ、いや、それは全然間違った数字なんだと。

 そこは、やはり数字に関心があって、その部分についてはきちっと説明を出せるような、そういう進行をするか、出せないのであるんだったら、説明が尽くせないのであるんだったら、そもそも提出するデータとしてふさわしかったのか、そういう議論にもなってくると思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

加藤国務大臣 もちろん個々の事業所にプライバシーというのかな、わかりませんが、守秘的なところはあるんだろうというふうに思いますけれども、ただ、先ほど申し上げた、例えばこの議論をしていくと、では、三百四十までは是正指導ですか、三百まではですか、二百六十まではですか、当然こういう議論になっていくことも想定されるので、そうすると、何か、どこまでがと。

 私も、三百五十を超えるようなところはやはりいろいろ考えていかなきゃいけないというふうには思いますが、ただ、ここはやります、ここはやります、ここはやりますという議論になってしまうと、どこまでが是正指導を、対象にしているかどうかということをいわば開示をする結果になるんだということを多分懸念して、彼はこういう答弁をしたのではないかな。これは済みません、私の推測ではありますけれども。

 したがって、ここの場において、ポイントは、こういう事業所があるというデータをお示しをさせていただいたということでありますから、それについての議論についてはしっかりやっていただいていたんじゃないかなというふうに思いますが、ただ、是正指導の対象にすべきかどうかという議論になると、今申し上げた監督指導のありようそのものにつながるので、こうした答弁をさせていただいた、こういうふうに思いますが。

井出分科員 一つは、百十七件ですとか含めて、数字全体の精査の必要が今出てきている。それから、きょう、今申し上げているのは、監督指導の中の調査であって、だから、この数字はどうなっているのとなっても、監督指導に踏み込むものについてはなかなか答えにくいと。それはそうですよね。

 局長に伺いたいんですけれども、今見ていただいたところから、後ろから五枚目ですね、大変失礼しました。下の方に少し黒で線が引いてあるんですが、宮本委員という方が、調査結果を前回の十七年のものと比較をして、全体に減少している、ただ、どういう状況か見る必要がある。少し飛ばしますが、今後生産動向で生産量がふえることに伴って、また時間外労働が急激にふえていくのではないか。それからまた少し飛ばして、最後の部分ですね、引き続きここは分析も含めて調査をお願いしたいと。ここは、百四回の、この二十五年調査について詳細な説明があった後の委員からの質疑です。

 やはり私は、この数字に対する委員の皆さんの関心というのは非常に高くて、資料を一枚めくっていただいて、一枚めくっていただいたその最後の二行もそうなんですけれども、これは冨田さんという方が、数字をどういうふうに把握されているのか具体的に知りたいと言われているんですね。

 ですから、数字に対する委員の皆さんの関心は高くて、非常に難しいところですが、監督の一環としてやった調査が、出すにふさわしい数字がとれた。しかし、監督、調査、是正の部分もあるから説明がしにくい。そして、この国会で出てきているその数字自体が大丈夫かという話。

 これは、国会にしっかり、原票の隠すべきところは隠さなきゃいけないかもしれませんが、疑問点については少なくとも解明をしていただきたいですし、それができないようであれば、労政審の今御紹介していた一連の議事録を見ていて、先生方の数字に対する関心の割にはちょっと議論が生煮えじゃないかな、そのまままた次の話題ですとかそういうところに移っていないかな、果たして本当に議論が尽くされたのかな、そういうことを感じるんですが、いかがですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この労働時間等総合実態調査でございますけれども、これは、全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問いたしまして、事業場から聞き取りをするとともに、書類なども確認いたしまして行っているものでございますし、規模といたしましても、全国一万以上の事業場を調査しているものでございます。そしてまた、その事業場の規模も限定していない、非常に小規模の事業場も調査しておりまして、回収率が高くなるものですから、サンプル数も確保できるものでございます。

 そういった長所がある調査であるというふうに考えておりまして、そういった意味で、労働政策審議会でこういった労働時間の問題を議論するときは、こういった調査を行いまして、活用してきたということでございます。

 そういったことで、それとともに、労働政策審議会では、このデータだけでなく、ほかのデータ、多面的なデータも活用しながら議論していただいているところでありまして、こういった資料を活用していくことについては一定の意義があるのではないかというふうに考えているところでございます。

井出分科員 二十五年の調査が労政審のために、まあ、時期は議論がありましたけれども、労政審に資するデータとして使う目的であったというところは、私は一定理解します。

 だけれども、そもそも、十七年とかその以前、この調査、いつされているのかちょっと知りませんけれども、JILのように何か特定の政策効果を上げるためにやる調査なんですか。それとも、定期的に、監督のためにやる調査なんですか。局長、どちらなんですか、この数字は。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、労働政策審議会で議論をするときに必要な情報をとるために調査をしているものでございます。ただ、その手法が労働基準監督官の監督にあわせて行っているというものであるというふうに承知をしております。

井出分科員 では、二十五年や十七年のものというのは、過去にもほかの労政審にも幾らでも活用されている、それはそうですか。

山越政府参考人 それ以前にも実施をされたことがございます。そういう意味で、経年的にも、例えば十七年と二十五年の経年的比較もできるということになっているものでございます。

井出分科員 そうであれば、大臣にお尋ねします。

 やはり、数字の正確な説明というものは必要だと思います。そこで、資料の上から四枚目の二月二十日の速記録になるんですが、これは私も指摘したんですが、これは長妻先生だったと思いますが、一般労働者の一カ月の労働時間が、実は、平均的なじゃなくて最長の者の方を使っていたという説明はなかっただろうと。それに対して大臣は、一つ一つつまびらかには承知をしていない。だけれども、その後、逆に言えば平均的より高いデータが出ているということだろうと。長時間労働をいかに是正していくのかという議論なんだから、逆に言えば高いデータを出してよかったんじゃないかとまでは言っていないですけれども、正確なデータを、数字を出して正確にそれを説明するという意味では、これは極めてひっかかる答弁。この答弁は私はしてほしくなかったんです。

 それについては、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 これは要するに、最初に何でこういうデータをとるようになったのかということなんだと思いますね。平成十七年度もそうですし、ちょっと済みません、それ以外もやっているんですが、ちょっと様式が違いますので、どこまでさかのぼれるかわかりませんけれども。

 したがって、なぜそれをするようになったのかと考えると、やはり長時間労働の是正だということで、むしろそうした形でとったのではないか、そういうことを申し上げたところでございます。

井出分科員 この答弁もそうですし、これと関連するんですが、労政審の委員の方がどう受けとめられたのかはちょっとわからないということを何度か答弁されていると思うんです。この数字、少し数字そのものに疑義が出ていますが、それは、労政審で政策のために使うんだというのであれば、正確な説明と正確な理解を、こういうものでとってきて、こういう数字なんですと。

 私は、一週間のものの平均的な者じゃなくて最長の数字を使ったことを説明しなかったのは、何か意図を持ってやったとも思っていないんですが、ただ、政府がいろいろなところで説明したり公表したりしているさまざまな調査結果を見れば、少なくとも、やはり調査手法というものについては、限りなく万人が共通の理解を持って調査結果を読み込む、数字を読み込む、そういう説明がやはり原則であって、その点からも少しこの答弁は残念だったと言わざるを得ないんですが。

加藤国務大臣 いや、ですから、同じ答弁になってもいけませんから、最初になぜそういう選択をしたのかというところ、これは正直わかりませんけれども、ただ、長時間労働をどうきっちりやっていくかという議論の中で、こういうとり方がいいのではないかというところからスタートしたのではないだろうかということで申し上げたので、長いからいいですよということを言ったつもりはないのでありますけれども、ただ、その上で、今委員御指摘のように、やはり、統計とか何かについて、しっかり説明すべきところはしっかり説明するということは、これは大事なことだというふうに思います。

 それから、認識について承知していないというのは、おまえ無責任なんじゃないかというんですが、ただ、なかなか、個々の方が、要するにそういった明確な説明がありませんから、その上で、どういう認識をされていたかというのはわからないというのは、私の正直な思いを申し上げさせていただいたということで、別に無責任で申し上げたわけではないということを申し添えたいと思います。

星野主査 井出君、質疑時間、持ち時間が終了しておりますので、お願いいたします。

井出分科員 わかりました。もうまとめたいと思います。

 最後になりますが、資料の二枚目ですね。二十一日のこれも公聴会なんですが、労働者側の方がこの今回の件について、法案自体を、私たちの期待を裏切るものだ、原案のままでは悪影響がある。それから、真ん中の段に移っていただいて、実態を誤認されたまま法制度論議が進められたのではないか。その四角のところも読んでいただければ、やはり実態把握が必要であると……

星野主査 済みません、質疑時間が終わっておりますので、おまとめいただけますか。

井出分科員 そうした声が、おおむね合意の中にも反対意見はあったかと思いますが、一連の問題を受けて、さらにこうした声が大きくなっているということは最後にきちっとお伝えして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

 どうも、申しわけありませんでした。

星野主査 これにて井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)分科員 よろしくお願いいたします。初めての分科会質疑なので、ちょっと不手際がありましたらお許しください。よろしくお願いいたします。

 きのうに引き続き、働き方改革で私からは伺わせていただきたいと思います。

 きのう冒頭に、過労死を考える家族の会の方、厚労大臣、お会いにならなかったということをちょっと指摘をさせていただいて、お時間が合えば私は会いますよと言っていただきました。早速きょうお会いできるようだというお話を伺いました。当事者の声、ぜひ聞いていただきたいと思いますし、貴重な時間、つくっていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 私からは、非正規労働に関する質疑を先にさせていただきたいと思います。

 安倍総理、今回の国会、働き方改革の目玉で、無期転換ルールのことも強調されていました。非正規雇用の方々が五年に達すると、希望する方は皆、無期転換にできるんだかのような答弁をされまして、非常に、今、非正規で、有期雇用で働いている方々が、みんな自分たちが望めば保障されるんだ、自分の雇用環境が保障されるんだと、とても期待をしていたと思います。

 ただ、一方で、五年で雇いどめだということで、もうまさに、ことしの三月で五年経過するので雇用を更新しないという宣言をされていらっしゃる方々がいらっしゃいます。実際そういう声が出ているのかどうか、私のところには相談等でいただいているんですが、実際そういう事例が相談等で起きているのか、お答えください。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 雇いどめを始めといたしました民事上の個別労働関係紛争につきましては、総合労働相談コーナー、これは都道府県労働局などに置かれておりますけれども、このコーナーにおきまして相談対応を実施をしております。それからまた、これに加えまして、昨年九月に、都道府県労働局に、無期転換ルール特別相談窓口を設置したところでございます。

 雇いどめに関する相談状況についてでございますけれども、平成二十八年度に総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働関係紛争相談件数二十五万五千四百六十件のうち、雇いどめに関するものは一万二千四百七十二件となっております。

岡本(あ)分科員 一万件を超える相談がもう寄せられている。厚労省、労働基準監督局とか相談窓口が対応していただいて、いい方に向かっている事例もあるのも重々承知です。ただ、一方で、やはり、私、地元は宮城県仙台ですが、地元の独立行政法人、東北大学でも、実際、千を超える方々がまだ不安の危機を抱えている。

 安倍総理は、非正規を一掃しますとおっしゃいました。一掃というのは、リストラに遭って、やめてもらっていなくなるという意味での一掃ということではないんだと思うんです。改めて、安倍総理がおっしゃった、非正規を一掃します、この目的、意味をお答えください。

加藤国務大臣 安倍総理が非正規という言葉を一掃するというその意味は、どのような働き方を選択してもしっかりとした処遇が受けられるように、それぞれの方々が自分のライフスタイルに応じて多様な働き方を、しかも納得する形で自由に選択できるようにするということであります。

 したがって、まさに、処遇差を気にすることなく多様な働き方を選択できる社会を実現していきたいというのがその趣旨でありますので、それに沿って、昨年九月の労働政策審議会から答申された法律案要綱においても、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に待遇差がある場合というようなときについて、それが不合理なものであってはならないという、そうした趣旨の建議をいただき、そして今、法律案要綱をいただいて、その作業を進めさせていただいているわけであって、職務内容が違っていれば、逆に、職務内容が違えば、だから下がってもいいよというものでもなくて、その中をしっかり見ていきましょう、こういうことであります。

 こうした法改正によって、非正規で雇用する労働者の方の処遇改善が図られて、そして、最初に申し上げた、その処遇差というものをある意味では気にすることなく、自分の状況に応じて、あるいは自分の思いに応じて働き方を選べる、こういう社会をつくっていきたい、そういう思いを述べたわけであります。

岡本(あ)分科員 今、厚労大臣にお答えいただきました。そのお答えいただいた中身が現場にもきちんと浸透するように、それから、安倍総理が再三力強くおっしゃっている、非正規を一掃するんですと言い切った言葉、それから、望めば、本人が望めばという意味ですよね、使用者が望めばではないということ、本人が望めばということについて、きちんと現場まで届くように配慮を更に求めたいと思いますし、相談体制もそうですし、特に厚生労働省の立場は、働いている方々に立っているということが厚生労働省の本命であると思いますので、その使命を負って、更に相談者それから今現在不安に思っている方々が不利益にならないように浸透するよう求めます。再度お答えください。

加藤国務大臣 まさに先ほどの御指摘があった無期転換ルールについても、私ども、さまざまな機会をとって周知をさせていただく、あるいは、最近では、今月の十三日から全国統一電話番号の無期転換ルール緊急相談ダイヤルを開設して相談に応じる、あるいは、何か問題があればきちんと助言指導を行っていく、そういったことで対応していきたいと思いますし、そして、トータルとして、全体として申し上げれば、先ほどの繰り返しになりますけれども、それぞれの方々が、それぞれの事情やそれぞれの思いに応じて働くことができる、そういう社会をしっかりつくっていきたいと思っております。

岡本(あ)分科員 今お答えいただいたことがちゃんと実行に移るように、これからも注視をしていきたいと思います。

 きのうの質疑の続きに参りたいと思います。

 不適切なデータ、比較してはならないデータを説明をされて、それの部分、比較してはいけないデータを根拠に説明をしたということで、謝罪、撤回をされました。これは多分、政府の答弁の、お手元に持っていらっしゃったのかなと思います。一番最初は、当時民主党の部会に、初めてこの九時間三十七分という一般労働者の方々の実労働時間、平均的な者の実労働時間と思わせる答弁。ただ、この表を見ると、平均の実労働時間と書いているものが、多分これ、総理あるいは大臣の手元に渡ったものなのかなと思います。

 この九時間三十七分、この数字、多分、野党が裁量労働制の長時間を懸念されているときに、反論としてこの数字が出てきたのだと思います。この八時間プラス一時間三十七分、この一時間三十七分自体、公表されていない数字です。調査をした当事者じゃなければわからない数字なのではないかと思いますが、これは一体、誰の指示で、いつ、誰が、この九時間三十七分という数字を出したんでしょうか。そこの経緯を説明してください。

山越政府参考人 お答えを申し上げます。

 当時の状況、必ずしもつまびらかにわかりませんけれども、当時の担当部局の中で、いろいろ課の中で議論をする中で出てきた、それに対応するということでお出しした資料ではないかというふうに思います。

岡本(あ)分科員 きのうもそうですけれども、何となく担当者の中から自然発生的に出てきたんじゃないかと思わせるような答弁が繰り返されるんですが、担当者の方が、求めもされないのに、調査結果にも入っていない数字をわざわざ、まあ、原データを見たのか、調査会社に依頼したのかわかりませんが、この一時間三十七分という数字を出してきて、しかも、八時間に足し合わせる。これは担当者が、何となく自然発生的に、見てみたら、ああ、こんな数字あったんですよね、そういうふうに本当に思われますか。もう一度御答弁ください。

加藤国務大臣 きのう、委員会でも御説明をさせていただいたんですけれども、当時の民主党の、多分、部門会議なんだと思いますけれども、そこへ御説明に毎週行かせていただく中で御指摘をいただいて、そしてそれに対して、あるいは、そこでの疑問点、指摘点、まあ、いろいろあったと思いますけれども、それに対してどういう形で資料をお出ししようかということは、課長を含めて、課の中で議論をされていた。そして、具体的に、ここ、ここ、ここじゃなくて、例えば、ちょっとここは推測ですけれども、比較できるようなものは出せないんだろうかとか、こういったものはどうだろうかという、多少漠としたもの、しかしある程度イメージができるもの、そういったことで多分議論をされていて、それをそれぞれが、では、これは私がいろいろな資料を見繕ってつくります、つくります、つくりますと言って、その具体的なつくり方、データをどう出してきたか、どう足すかというのは、それはそれぞれの担当者がやられたのではないか。そして、でき上がった結果について、それを課長、多分、当然ですが、課長、そして局長の了解を得た、こういうことなんだろうというふうに思います。

岡本(あ)分科員 私からすると、非常にやはり不自然さが残ります。その部門会議に、部会に出た、二〇一五年三月なんですけれども、それの前に、もう既にJILPTの調査結果が出ていると思います。

 これは、きのうも申し上げました、厚生労働省が頼んで調査をしてもらったものです。厚労省がJILPTに対して、二十五年度下期に労働政策審議会で議論を開始する予定であり、この二十五年度内に調査研究成果をまとめていただきたいとおっしゃっておりました。

 それで、過重労働の問題が指摘される一方で、裁量労働等の自律的な労働時間制度に対する要望も強まっている、長時間労働の削減に対する取組云々かんぬんで、労働時間法制の企画立案を進めるに当たって必要であるということまで言って、厚労省が求めて調査をしてもらって、厚労省に納めてもらったデータが手元にあるんですね。

 手元に、その一般の方々の労働時間、それから比較も出ている中で、こっちを使わずに、あえてわざわざこの九時間三十七分が、担当者が探り当てなきゃいけなかったその理由というのは、当時の担当者の話だということであれば、上司として、今、責任者としては、なぜわざわざこういうのを探してこなきゃいけなかったか。あるのにですよ、あるのに、わざわざ別な数字を探してこなきゃいけなかったと思われますか。

加藤国務大臣 済みません。それは、ちょっとそこに、現場にいなかったので、どういう議論の中、まず、その民主党の部門会議でどういう議論があったのかというところも承知をしておりませんので、なぜそういったことになったのかというのは、ちょっと私にはわかりません。

岡本(あ)分科員 ここで、山越局長、調査をされたとき、当時、JILPTにいらっしゃったと思うんですね。自分のところで調査をして納めたデータ、多分自負を持って、ちゃんと調査したという自負を持っていらっしゃると思うんですが、当時の理事として、このJILPTの調査の内容、何で厚労省で使われなかったんだろう、どう思われますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 二十七年の三月に、民主党の部門会議にこの資料を出しているわけでございますけれども、これにつきまして、どういう理由でこの資料を出したかということは、私は承知をしておりません。

 当時、私、JILPTにおりましたし、その資料については、御指摘のとおり、的確なものをつくっているというふうには思っております。

岡本(あ)分科員 やはり、山越局長、今は厚労省の中の責任者であり、当時、調査した時点ではJILPTの責任者の一人でもありました。自信を持って出したデータを使われずに、足し合わせた、結果からすると、JILPTの調査というのは、当時は野党側に有利と言われる数字だったと思います。こちらを使われたということに対して、そこは、今、中にいる担当者としては、適切なデータとしては、やはりJILPTのデータの方が適切だったんじゃないか、そう思われませんか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 その二十七年に提出したときでございますけれども、そのときの状況に応じて、そのときの御担当の方が判断されたというふうに思っておりまして、それは、その目的に照らしたものが出されていたんだというふうに思います。

岡本(あ)分科員 どちらにも、立場もあると思います。JILPTの調査、非常に客観的にデータをとられたなと私は思っておりますので、当時、調査をした側の責任者としては、ぜひこれを使ってほしかった、これは正しいよと自信を持っていただきたいなと思いますし、当時、そのやりとりがわからなかったというのであれば、政府の今は担当者で、責任者でありますので、当時、どんなやりとりでこの九時間三十七分という数字が出たのか。指示があったのかなかったのか、メールでやりとりはなかったのか、記録はなかったのか、メモがなかったのか。まさか、一年以上たっているので廃棄しました、これはメールでは一切やりとりしていません、そういうものなのか。実態というのを改めて調べてみる気はありませんか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 その二十七年当時でございますけれども、もういずれの資料もでき上がった後でございますので、その中で、どちらの資料を選択するという判断の中で、当時判断されたことだというふうに思います。

岡本(あ)分科員 三年前ですと言われれば、そうなのかもしれないんですが、三年前の、私も自分の仕事で、メールを一々消したりとかしませんので、政府の皆さんは、一年たったら着実に消している、あるいは自動消去するのかもしれませんけれども、もう一度、何でこんな数字が出てきちゃったんだろう、そのことを大臣としては調べる気はありませんか。

加藤国務大臣 メールということでするのかどうか、ちょっとよくわかりませんけれども、いずれにしても、もう少し、何でそういうことになってきたのか。委員からも御疑問が提示されておりますので、どこまでできるかわかりませんけれども、もう少し聞いてみなきゃいけないなというふうに思います。

 それから、さっき、局長の答弁で最適と言ったのは、最適という話をされましたが、それは、私どものデータを使うことが最適ということで、比較をしたデータ、これは不適切だと申し上げていますので、そういったことでないということは御了解いただきたいと思います。

岡本(あ)分科員 今の答弁はわかりました。

 ぜひ、この九時間三十七分という時間が出た経緯については、もう一度、省庁の中でもきちんとはっきりしていただきたいと思います。

 あと、先ほど井出庸生委員からも、データのやりとりがありました。きのうの答弁で、新たに百十七件、もう一回精査が必要なデータが出てきたということです。きのうの夜の段階では、きのうの段階では、百十七件は一般労働の方々のデータなんだ、一般労働の方々で百十七件なんだ。何となく、裁量労働は関係ないんだというようなニュアンスの答弁をされたと私は受けとめたんですが、実は裁量労働でも、やはりもう一回精査が必要なデータが出てきたんじゃないかと思われます。

 四時間以下、私もデータをいただきました。単純にソートするだけで、裁量労働の平均的な者の企画型裁量労働、四時間以下だけで五十二件、もしかしたらもう一件あるのかもという感じなんですが、あります。あるいは専門制でも、やはり一時間とか二時間とか、そういう方もいらっしゃる。本当なんだろうかと思わざるを得ません。

 それで、一万一千五百七十五ですかね、そもそも、調査結果をいただいたんですけれども、一万一千五百七十五の事業所に当たりましたとおっしゃっていますけれども、この有効回答は、事業場としては一万一千五百七十五で間違いないですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 対象としたのは一万一千五百七十五でございますけれども、その中で、例えば一般労働者に係るデータは九千四百四十九などと、物によって、そのとれたデータというのは数が違っているというふうに考えます。

岡本(あ)分科員 一般、それから裁量型、専門、企画、あると思いますけれども、対象になっている事業場の一万一千五百七十五の数自体は、計算上、全部対象にすると。

 私、いただいたデータは、一一五七五の件数、入っているんですけれども、これが有効で、そのうち、一般労働はさっきおっしゃった九千余だ、あるいは、それぞれについては七百幾つとかありましたけれども、そういうことでよろしいですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 調査の対象としましたのは、今申しましたように一万一千五百七十五でございますけれども、その中で、一般労働者とか、あるいは裁量労働制で、とれたデータの事業場の数というのはそれぞれ違っています。例えば、一般労働者について言えば九千四百四十九事業場のデータがとれたということで、項目ごとにとれているデータは違うということで、とれたデータの数は違うということでございます。

岡本(あ)分科員 きのう野党の合同PTでも指摘をさせていただいておりますが、今現在、百十七件のほかに、もう一回精査しなきゃいけない件数というのはどのぐらい、今現在、間違っているじゃなくて結構ですよ、もう一回精査しなきゃいけないのは何件だということで受けとめていらっしゃるんですか、百十七件のほかに。

加藤国務大臣 これまでも御指摘をいただいて、まず、調査票が地下から、これは大変我々の管理が悪いということでありますけれども、見つかったということでありますから、その原データ、調査票と、そして打ち込んだデータ、これがまず合っているかどうかという確認をしなければいけないというふうに思います。

 それから、あとについては、今御指摘をいただいた点以外も含めて、やはりいろいろな視点から、論理的におかしくないか、あるいは論理的におかしくないけれどもどうなのか、幾つか視点を入れながらやはりもう一回見直さなきゃいけないと思っておりまして、私は別に一般労働だけを調べると言っているわけではなくて、裁量も含めて全部そうした精査をしていきたいと思っております。

岡本(あ)分科員 今の段階でも、まだ件数もわからない状態ですね。

 先ほど、一万一千五百七十五にこだわらせていただいたんですが、一万一千五百七十五の、いただいた私の手元にある数字でも、四件の事業場が労働時間が全部ゼロなんですね。働いていない事業所が四件入っています。もしかしたら私の単なるソートミスなのかもしれないですが、これも含めて、そもそも、裁量労働制の四時間以下が五十二件ある。あるいは、これは企画ですね、専門を合わせると百二十件、百二十一件じゃないかと。

 そのほかに、もしかしたら、そもそも働いていない実態があるのか、把握できなかった実態があるのか、そういう件数もまざっております。もう一度、これはゼロから精査するべきだと思います。そもそものデータの信憑性に本当にかかわる問題なんです。

 きのう担当の方に聞いたら、今のところ、要は、国会で大変だというのも重々わかりますが、合間に調べているようなニュアンスで聞こえたんですが、調査チームを立ち上げてやると言いましたが、実際、どのぐらいのスピードでやっていらっしゃいますか。

加藤国務大臣 担当部局、広い意味では労働基準局になりますけれども、そこだけではなくて、厚労省も、特に統計を扱っているセクションがありますから、やはりそうした視点からしっかりチェックしていただく必要があるということで、そちらの部隊も組み込んで今やらせていただいております。

 ちょっと、スピードといっても、なかなか、できるだけ早くやるということで、まず、どういう視点を、先ほど申し上げた、一方でデータの突合、これは力というか人数をかけてやっていかなきゃできませんけれども、あとは、どういう視点でチェックしていくのかということも今精査しながら、並行してそれを視点とし、そして、それに基づく精査がどうなったのかというのを、逐次いろいろ分析をさせていただいているというところでございます。

岡本(あ)分科員 時間がかかるようでしたら、私たちも調査しますから、それで原票を出してくださいというお願いをしています。

 そもそも、調査自体も現場でちゃんと、きちんと均等に行われたのかという疑義があります。皆さんのお手元に配付資料を渡させていただきましたが、調査手法が全くの黒塗りで、どういう聞き方をしたのかもわからない。これで公平性が保てるのかどうかというところも、私からすると疑義があります。これはきのうも指摘をさせていただきました。

 あわせて、調査結果が冊子にまとまっておりますけれども、一万一千五百七十五の事業場を訪ねましたということは先ほど御答弁いただいておりますが、このうち有効がどのぐらいだったのか、あるいは内訳がどうだったのか。普通だったら、JILPTにもいらっしゃった、調査を専門にしている山越さんだったらわかるだろうと思いますけれども、通常であれば、アンケートは何をとったのか、調査票は何を使ったのかぐらいは載せます。有効回答も載せます。全くもって、この調査結果が統計上正しいのかどうかもこの冊子だけではわからない、そういう状況になっている調査結果だということも含めると、果たして検証がちゃんとできるものなのだろうかと疑義を持っています。

 改めて、この調査結果、まとめ方、これは一七年度もそうやって調べていましたとおっしゃいますけれども、そうしたら、一七年度からこういうずさんな調査をやっていたんじゃないかと私は指摘をさせていただきたいと思いますが、改めて、この調査結果、それから、後々こういう状況が出ている、そもそもこの調査の信頼性について、どうお答えになりますか。

加藤国務大臣 有効というのは、アンケート調査とはちょっと違うので、そこの場に実際に入っているわけですから、そこに行って回答を得る。これは当然、監督指導ですから、当然、答えを得ていくというのは、そうなんだろうというふうに思います。

 ただ、その上で、今私どもがそのときに聞き取ったデータ等について、いろいろな御議論、御指摘をいただいておりますので、そこは、さっき申し上げたように、さまざまな視点からしっかりとチェックをし、そしてまた、私どもがチェックしたのは、あくまでも電子的に打ち込んだデータでありますから、原簿との間に違いがないかということも含めてしっかり精査をし、できるだけ早く御報告をしたいと思います。

岡本(あ)分科員 精査に時間がかかる、めども立っていない、精査が時間がかかるかのような答弁を今されていらっしゃいますよね。そもそも、比較データが不適切だったと謝罪と撤回する以前に、あの九時間三十七分も、精査に時間がかかるので一回撤回されていませんか。お答えください。

加藤国務大臣 そのときの御指摘において、まさにそのデータがどういうことであったのか、特にその比較したデータがどういうことだったのかということで、その調査をしたやり方を含めていろいろと精査をさせていただいた。

 ただ、本来ならば、御指摘としては、そういうのはすぐわかるはずじゃないかという御指摘なんだろうと思いますけれども、残念ながらそうしたことに少し時間がかかっておりましたので、これではいけないということで、精査にかかるデータをお示ししたということで撤回をさせていただいて、またおわびを申し上げ、その上で、こうしたことで調査をした、選んだということがわかりましたので、その段階で、それから、それまでに御指摘いただいていた、余りにもこの数が多過ぎるじゃないかといったようなことも含めて御報告をさせていただいたわけでありますが、ただ、その後、こうしたデータについて、さまざま、さらなる御指摘をいただいておりますので、それも含めてしっかり精査をさせていただきたいと思います。

岡本(あ)分科員 比較できないデータについては、精査に時間がかかるので一回撤回をされました。改めて不適切だったので謝罪されて、改めて撤回をされています。今回のこれも精査にかなり時間がかかりそうですよね。そうすると、この調査自体を一回、精査に時間がかかるので撤回します、同じことになりませんか。

加藤国務大臣 そのデータについては、今申し上げたように、労働政策審議会でということでつくらせていただきました。そして、それについて今精査をさせていただいておりますので、その精査の結果について御報告をさせていただきたいと思います。

岡本(あ)分科員 私からすると、比較できないデータのときの答弁との整合性がとれないと思います。精査に時間がかかるのであれば、一回これは撤回をするべきです。そして、この調査をもとに労政審にかけた、それ自体もやはり信頼を失っていると思います。労政審がどのように受けとめられたのかわからないというやりとり、先ほど井出庸生委員とありました。どのように受けとめられたのかもわからないのに、結果、おおむね妥当だったことは揺るがないような答弁をしていること自体もおかしいと思います。

 この調査が信憑性がなかった。時間についても労政審の中で質問が出ている、時間はわからないかと聞いたのに、要望として受けとめて、その後の時間も出していない。そもそも、実労働時間をかけると言っていながら、審議会に報告をしていない。そういう中で、結果が変わらなかったという担保は全くないと思います。改めて、労政審のお一人お一人に、調査結果は実は曖昧なところが非常にあって、時間が不確定だけれども、結果は変わりませんでしたか、そのぐらいの検証は必要なんだと思います。

 そこも含めて、また、臨検で数字をとってきましたと言いましたけれども、裁量労働の方々、みなし八時間三十二分と出しているのに対して、実労働平均でも一時間二十分超えている、あるいは最長だと四時間以上超えている、一日で十二時間超えている方々が半分以上いる。これは、それこそ臨検に行ったら是正しなきゃいけないぐらいの、基準がないとさっき御答弁されましたけれども、どう見ても、ここが是正されていなければ、これが是正されていて、裁量労働制が、非常に適切に長時間労働が是正されています、だから対象拡大しても大丈夫なんですと言うならわかりますけれども……

星野主査 岡本議員、済みません、申合せの時間が過ぎましたので、御協力をお願いいたします。

岡本(あ)分科員 わかりました、済みません。

 これだけ、十七年から二十五年にも改善がなされていない。これから五年たって、その改善の検証もされていない中で対象拡大を決めていくというのは非常にリスクがあると思います。

 このことも踏まえ、また、労政審にもう一回、しっかりと審議を諮るべきだということを求めたいと思います。お答えいただいて、終わりたいと思います。

加藤国務大臣 まずは、しっかり精査をさせていただきたいというふうに思います。

 それから、委員が、ちょっと今御指摘あった、私は、どこで監督指導するかという基準を示すことは難しいということを、先ほどの委員とのやりとりの中では申し上げさせていただいたということでございます。

 それから、裁量労働制においては長時間労働のおそれがあるということ、また、みなし時間と、今委員御指摘のように、実労働時間といいますか、労働時間の状況として把握したものにおいて乖離があるということ、そのことは十分認識をしていることから、結果的に、建議等においても、一方で対象拡大の議論は確かにありますけれども、他方で、しっかり労働時間の把握をしていきましょうとか、あるいは対象者について、法律上において大臣が決めると明示し、省令でしっかり決めていきましょうとか、あるいは、それぞれ指針にどういうことを書くということに対して、しっかり労使委員会がそれを遵守していく、そしてまた、その指針に基づいて、監督官庁、主としては厚生労働省でありますけれども、それが即監督指導できるという根拠規定を置くということで、きちんと規制を強化していくという中身もこの中には入っているということは申し上げておきたいというふうに思います。

星野主査 これにて岡本あき子君の質疑は終了いたしました。

 次に、初鹿明博君。

初鹿分科員 おはようございます。立憲民主党の初鹿です。

 ことし最初の質問になりますので、どうぞよろしくお願いします。予算委員会で質問に立っていないので、きょうが初登板です。

 私も、引き続き裁量労働制の問題について取り上げさせていただきたいと思いますが、その前に、ほかの話題を幾つか質問させていただきます。

 一つは、去年十月に起こった、座間で九人が殺害されていたという事件、これを受けて、SNSを通じて自殺願望を持っている方を呼び出して殺害したということですから、SNSで自殺対策の相談などをきちんとやらなければいけないという議論が起こって、それに向けて検討が進められてきたということであります。

 この議論のときにも指摘がされておりましたが、死にたいということをつぶやいたり、SNSでメッセージをしている、これは、本当に死にたいということではなくて、むしろ生きたいの裏返しで、相談をする相手を探している、誰かに聞いてもらいたい、そういう思いから出てきている、そういう書き込みだということが言われてきたわけであります。そういう面では、やはりSNSでの相談体制をつくっていくということは非常に重要だということで、政府もそれに向けて取り組んでいるということは私も一定の評価をするところです。

 その際に指摘がされたことでありますけれども、今の若い人たちというのは、そもそも、ひとり暮らしの若者で固定電話を持っていない人も多いですよね。これはひとり暮らしの若者だけじゃなくて、私の今、下の娘は中学生になっていますが、この子が小学校の段階で、もう既に家に固定電話がないようなうちが出てきているんですよね。みんな携帯電話なんです。

 そして、若い人たちは、携帯電話でも、携帯電話でかけないで、LINEとかの無料の通話サービスを使っている人が圧倒的に多いんですね。私も子供が三人いますけれども、家族みんな、通話無料のプランにしているんですよ。でも、みんな、子供たちは、普通の電話回線でかけないでLINEでかけてくるんですよ。聞き取りづらいから、こっちじゃなくて普通にかけてこいと言うんですけれども、何かやはり習慣で、LINEでかけてきちゃうんですね。

 今回、この問題が出て発覚したことは、厚生労働省が設けております、こころの健康相談統一ダイヤル、これがLINEなどのIP電話では接続できないということがわかったわけです。ホームページ、今皆さんのところに配らせていただいておりますが、ここにはっきり書いてあるんですよね。「ナビダイヤルによる接続になります。IP電話、プリペイド式携帯電話、列車公衆電話、海外からは接続できません。」と。

 注意書きを見てかける人はほとんどいないと思うので、電話番号を見て、じゃ、かけてみようかなと思ってLINEの通話でかけてみたらつながらなかった、そういう方がこれまでたくさんいたんじゃないかというふうに思います。

 これを受けて、議員連盟もありまして、議員連盟の方からも、IP電話での接続ができるようにするべきだということが求められてきました。

 皆さん方の説明だと、一回統一のダイヤルで受けるけれども、それを各都道府県に振り分けていく、四十七に振り分けていく、IP電話だと、どこの都道府県からかけてきたのかがわからないから振り分けられない、だから接続ができないということになっていた、そういう説明でしたよね。これは、例えば、四十八番目をつくって、どこだか判別できないものはそこで必ず受けるというように、一つ回線をふやせば可能なんじゃないかと思うんですね。ぜひそういう対応をしていただきたいと思います。

 来月、三月は自殺対策強化月間ということで、この一カ月だけIP電話がつながる、そういうダイヤルをつくるというふうにこの前の議員連盟で伺ったんですが、一カ月やって、まあ、これはこれで評価しますよ。でも、三月三十一日に一回相談した人が、次の日に、四月一日にかけようと思ったときにつながらないということになったら、そのときの落胆の大きさというのは、最初につながらなかった以上に大きくなるんじゃないかと思います。そういうことを考えると、やはり四月以降もきちんと継続をしていただきたい、IP電話でもつながる回線を四月以降もきちんとつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔主査退席、石崎主査代理着席〕

大沼大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、こころの健康相談統一ダイヤル等の自殺対策関連の相談窓口については、〇五〇で始まるIP電話や、電話番号を使用しないLINEでありますとかスカイプ等には、技術的にちょっと対応できない仕組みとなっております。

 そこで、昨年十二月、ホームページを見直しまして、〇五〇で始まるIP電話から接続可能な都道府県別の直通電話を明示することにいたしました。また、三月の自殺対策強化月間においては、〇五〇で始まるIP電話に対応した全国共通の電話番号を設置するところでございます。

 さらに、この強化月間におきまして、SNSによる相談事業を実施することになっておりますが、LINE無料通話に対応する事業への支援も行うことにしています。

 こうした事業の結果を検証しつつ、若者のコミュニケーション手段の現状を十分に踏まえながら、若者が相談しやすい体制の整備が図られるようにしてまいりたいと思います。

 私も、SNSで自殺願望があるような少女たちからのメッセージを受け取って相談に乗っているNPOの代表の方とも、お話などを実際伺いました。そういったこともしっかり反映できるようにしてまいりたいと思っております。

初鹿分科員 ぜひちゃんとやっていただきたいんですけれども、結論がよくわからなかったんですよ。四月以降やるのかやらないのか、それをはっきり言ってください。すぐに四月一日からできないのかもしれませんけれども、きちんとIP電話でもつながる回線にしますと言ってください。どっちなんですか。するんですか、しないんですか。

大沼大臣政務官 委員御指摘のように、まずは段階を踏んでということになりますので、しっかりと強化月間で受けた結果というものをもとにやってまいりたいと思っております。

初鹿分科員 今の答弁は、四月の一日から直ちには難しいけれども必ずやるというふうに受けとめました。よろしいですね。大臣、いいですね。

加藤国務大臣 ちょっと、私は技術的なことはよくわからないので恐縮でありますけれども、少なくとも、三月にやれるのであれば。ただ、やるやり方が、何かいろいろな方も介在しているので、そのままいけるかどうかというのもわかりません。ただ、SNSを使っていろいろ相談をしていこうということでありますから、若い方が使っているIP電話、今委員から御指摘ありました、そういったことから接続しやすいようにしていくというのは、これはやはり我々考えていかなきゃいけないというふうに思います。

初鹿分科員 よろしくお願いします。若い人だけじゃないですからね、今や。

 次に、放課後デイサービスの報酬改定について質問します。

 来年度は、報酬の改定が行われる年でありまして、放課後デイ、いろいろな議論がありましたよね。特に、不適切なところが多くなっているんじゃないかという指摘があって、かなり今回の報酬改定では、事業者側からすると厳し目な改定になっております。ただ、きちんとやっているところに対して報酬の加算をふやすなど、ちゃんとやっているところは評価をされる、そういう体制になったということは、これから事業所が淘汰をされていくことにつながっていって、よい面もあるなとは思うんですけれども、果たして皆さんが意図しているように本当になるのかということで、私は非常に疑問を持っているところがあります。

 私も自分で行っていますので、仲間の事業所から、これは一体どうなるんでしょうかというのを聞かれるんですよ。

 その一つが、二枚目の資料でお配りさせていただいていますが、一覧表、スコア表がありますけれども、このスコア表で、十三点以上の障害児が五〇%を超えるかどうかで基本報酬に差をつける、そういうことになるわけですね。五〇%以上あったら高い報酬がもらえて、五〇%を切ると報酬が低くなる。

 今、これがないわけですよね。四月一日から、十三点を上回っているか上回っていないか、利用者一人ずつ判別して、それで五〇%超えているか超えていないかで基本報酬が変わるということになると、もう三月ですからね、これは非常に大混乱になります。

 それと、毎年、受給証の更新のときに点数が変わるんですよね。受給証の更新で、誕生日ごとに変わるので、そのときに、変わった段階でこの十三点を超えているか超えていないかというのが五〇%の中に反映されるということになると、月によって変動もする。この前、担当者にお伺いしたら、登録数じゃなくて実績だと言うんですよ。実績だと、欠席したりする人が多い月だと、それこそ五〇%を超えるのか超えないのか、変動するわけです。そうなると、事業所は、毎月ごと変わるようになると運営が大変になるんですよ。大変というか、もう混乱しますよね。

 だから、これはある程度、一年と決めるなら一年にしてもらいたいし、三カ月ごとで平均をとっていくということであるならば、それはそれなりの事務負担があるということも配慮をしたようなやり方にしてもらわないと、事業所はとてももちません。

 それと、今回新たに、職員の加配加算が、今まで一人しかつかなかったものを、五〇%を超える区分の事業所には二人まで加算がつくということになっているわけですよ、百五十五点ですよね。これが、でも、五〇%切ると、この加算が落ちるわけですよ。

 仮に、月によって変動があるという形になったとしたら、まあ三カ月でも半年でもいいですけれども、一年間人を雇いました。加算をとりました。一日千五百五十円、一人当たりですから、大体、一日に一万五千円ぐらい入ってくるから、一カ月で三十万円ぐらいの収入なんですよね。これで人を雇っているのに、期間がたって五〇%を割ったらこれが入らなくなるということになると、事業所は困りますよね。人をふやしたくてもふやせない、どうすればいいんだろうということになります。こういう事業所が困るような状態になるような決め方にはしないでほしいんですね。

 これから設定がされていくと思うんですが、ぜひ事業所が運営しやすいように、毎月毎月変わるようなことがないようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

高木副大臣 御質問、お答えさせていただきます。

 放課後等デイサービスにつきましては、障害児支援施策の一環として、就学中の障害児に対しまして、授業の終了後又は休校日に、生活能力向上のための必要な訓練、また社会との交流促進などの支援を行うものでございます。

 放課後等デイサービスの現行の報酬区分につきましては、障害の程度を問わず一律の単価であったために、軽度の障害児を主に受け入れたり、また重度障害児の受入れ拒否につながっているとの御指摘を受けてまいりました。

 こういうことから、二月五日に公表しました平成三十年度障害福祉サービス等報酬改定の概要におきましては、放課後等デイサービスの基本報酬について、障害児の状態像を勘案した指標を設定し、報酬区分を適用することをお示ししたところでございます。

 今御指摘のとおり、制度の円滑な導入が必要ということは、全く問題意識は共有をさせていただいております。報酬区分の具体的な判定手順につきましては、今後通知などでお示しをいたしますが、利用者、家族やまた事業所等が混乱を来すことのないように、四月の施行に向けまして丁寧な対応を図ってまいりたいと思っております。その際、当然のことながら、弾力的な運用を図ることを今検討させていただいております。

 また、あわせまして、今御指摘ありました児童指導員等加配加算につきましてですが、これにつきましては、御承知のとおり、最大二名分まで評価できるよう拡充することをお示しいたしました。

 ただ、御指摘のとおり、今回の拡充措置は、より重度のお子さんを支援する事業所への措置ということになっておりますので、こうした観点から、中重度の障害児が五〇%以上を占める事業所、これを指標該当と言わせていただいておりますが、この指標該当事業所を対象としておりまして、五〇%未満の事業所については、現行どおり一名分まで評価するということにしております。

 いずれにいたしましても、先ほど議員御指摘のとおり、報酬区分の具体的な判定手順につきまして今後通知などでお示しをいたしますが、例えば、判定後、一定期間は同じ区分の適用を継続するなど、事業所の経営が不安定にならないよう工夫を講じる方向でしっかりと検討してまいりたいと思っております。

初鹿分科員 ぜひよろしくお願いします。

 今、説明で、これまでのルールだと重度の障害児の受入れ拒否につながっているんじゃないかという指摘がありましたが、これはまかり間違えると、逆に今度は、軽度の障害児の受入れ拒否につながりかねなくなるということも指摘をさせていただきます。

 そして、そもそもの話なんですけれども、今、放課後デイサービスの説明をされるときに、生活能力の向上を図るための施設だ、療育の施設だということをお話しになりましたよね。放課後デイサービスや児童発達支援というところは、学童保育のように預かる場所じゃなくて、療育の場なんですよ。つまり、職員が一年間預かって、一生懸命療育をして、それによって生活能力が向上していく、これが目標なわけですよね。

 でも、このやり方だと、一年たってこのスコアが十三点を下回り、できることがふえて点数が下がると、報酬は下がるんですよ。何かおかしくないですか。これだったら、じゃ、何もしないで、そのままの状態で、重いままの状態でいてくれた方が事業所は経営が安定するじゃないですか。

 私は、しっかりやって、十三点が十二点、十一点になった、そういうところの評価をきちんとしてくれるようにならないと、本当に真面目にやっているところがばかを見るようなことになってしまうと思うんですよ。その点からいうと、そもそもの発想として、やはりここで線を区切るのはどうかなということを感じます。

 そして、年齢がいけば、できることもふえますよね。中学生のときよりも高校生の方ができるようになります。でも、高校生でこのスコアが十三点を切る、いろいろなことができる子が、果たして、日常生活はできても、社会生活が適切に営めるかというと、またそれも違うんですよ。逆に、できることが多くて、障害児だと見えないような子ほど、実は手がかかったりするのが現状なんです。その子たちの方が、我々スタッフが支えないとだめな場合が多いわけですね。

 そういうこともぜひ考えていただいて、単に軽くなったから報酬を下げるということじゃなくて、やはり、事業所が努力して改善をしてスコアがよくなっていく、こういうことのプラスの評価もできるような制度にぜひ変えていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

高木副大臣 サービスの質を踏まえた報酬の設定が必要だという議員の御指摘は極めて重要だと思っております。かねてより、こうしたサービスの質をどのように評価をしていくのか、このことについては課題になっているところでございます。

 来年度の報酬改定におきましては、放課後等デイサービスを利用していた子供が事業所の支援によりまして放課後児童クラブなどの一般施策に移行した場合には評価を行う仕組みとして、保育・教育等移行支援加算を創設するなど、事業所の積極的な取組を評価するということをお示ししているところでございます。

 今回の報酬改定がサービス提供体制に与える影響を把握しながら、今後も、サービスの質に関する調査研究を行うなど、引き続き、サービスの質を報酬体系に反映させる手法など、しっかりと検討してまいりたいと思っております。

初鹿分科員 ぜひ、頑張っている事業所がきちんと評価されるような、そういう仕組みをつくってください。ありがとうございました。

 では、裁量労働制に入らせていただきます。

 きょうは大臣にだけ質問しようと思っていたんですけれども、先ほどの岡本議員の質問を聞いていて、少し細かい点もやはり確認しないといけないなと思ったので、局長に残っていただきました。

 先ほど、一時間三十七分の時間外、法定外労働時間、それを足して九時間三十七分になったという数字がどうして出てきたのかということで、担当者の中で自然発生的に出てきたというような答弁がありましたが、その答弁で納得はできないですよ、やはり。

 誰かが指示を出しているか何かがないと、わざわざ公表されていないデータを持ち出してくる、それはあり得ないんじゃないかと思うんですよね。やはり、誰かが、裁量労働制の方が短いというデータはないのか探してきてくれないか、そういう指示があったとしか思えないんですけれども、局長、違いますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のデータでございますけれども、平成二十七年の三月に、当時の民主党の厚生労働部門会議に出されたものと承知をしております。

 当時でございますけれども、この裁量労働制の見直しにつきましてさまざまな御指摘をいただく中で、当時の労働基準局の労働条件政策課におきまして、課長以下の課員の中で会議に提出する資料を検討して、それぞれの課員が作成した資料を課長が了とし、局長の了解も得てお出しをしていた、そういう経過だというふうに承知をしております。

初鹿分科員 課長も見て、局長も了解をしたということですよね。

 これは法定外労働時間に八時間足しているんですけれども、この足し算の仕方、聞いただけで、これは実労働時間じゃないということがわかると思うんですが、局長、わかりますよね。法定外労働時間に八時間を足したら、これは実労働時間じゃないというのは、この計算式を聞いただけでわかりますよね。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 法定外労働時間、これは法定労働時間を超える労働時間でございますので、そうした法定外労働が、法定労働時間を足して全体の実労働時間になることもあるわけでございますけれども、もちろん、そうでないケースも割とあるというふうに承知をしております。

初鹿分科員 ごまかすようなことを言わないでくださいね。ある場合も、それはありますけれども。

 それと、この法定外労働時間の調査とは別に所定労働時間の調査もしていて、それは七時間二十何分でしたっけ、三十分ぐらい少ないというデータがあるわけですよね。だから、八時間足して、それでそれが実労働時間にならないことの方が圧倒的に多いというのはわかっているわけでしょう。

 その数字をまず持ち出してきて、課長も局長も了解しているというのは、明らかにおかしいですよね。わかってやっていたんじゃないですか、実労働時間よりも長くなるということを。違いますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 法定外時間外労働があるということは、それはそのベースとなる法定時間外労働がされているということになろうかと思いますので、法定時間外労働がある場合においては、そういう計算ということが正しいことになるんじゃないかというふうに思います。

初鹿分科員 法定外労働時間がゼロ時間の場合は、八時間を割る場合が多いわけですよね。それをきちんと配慮しなかったら、絶対に正しい数字にはならないわけですよ。それをわかっていますよね。要は、正しい数字じゃないというのは誰がどう考えたってわかるわけですよ。ね、大臣。それをやはり、ちゃんととめないで提出をした、これは共同責任ですよ。

 そもそも、誰がこの計算式を出したのかとか、特定しているんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 このデータでございますけれども、当時、この裁量労働制の見直しにつきましてさまざまな御指摘をいただく中で、当時の局の労働条件政策課において、課長以下の課員で会議提出資料を検討し、それぞれ課員が作成した資料を課長が了とし、先ほど申しましたように、局長の了解も得てお出しをしたものと考えております。

初鹿分科員 何度も同じ答弁はいいんですけれども。

 つまり、私は、やはり、裁量労働制の方が労働時間が長くなるんじゃないかという指摘に対する反証をどうしてもつくらなければいけないという意図が働いてこの数字をつくったとしか思えないわけですよ。じゃないと不自然過ぎるんですよね。いろいろな指摘と言いましたけれども、いろいろな指摘じゃなくて、裁量労働制の方が労働時間が長くなるんじゃないかという指摘でしょう。その指摘に答えるためにこれをつくったんじゃないんですか。

 このことを考えても、二十五年のデータはやはり明らかに不適切だったわけですよ。百七十七件、おかしなことも出たというのがもうわかっていますよね。

 私も全データを見てみました。完全に全部を見切れているわけじゃないですけれども、例えば、最長の労働者の一日の労働時間と平均的な者の最長の労働時間との、同じ人、同じ事業所で、一日の人の方が長い場合があったりとか、やはり不自然なところはたくさんあるんですよ。だから、やはり調査をもう一回し直すべきだと思うんですよ。

 先ほど大臣は、全調査票が出てきたからそれを再調査する、精査をするということをおっしゃいましたが、きちんと、何でこんなことになったのかということを調べる必要はあると思いますが、それに労力をかけるよりも、私はちゃんともう一回調査をするべきだと思います。実労働時間がわからないと比較の対象にならないわけですから。労政審のときだって、実労働時間ということを書いていたわけでしょう、実際には調べていないのに。だったら、今回きちんと実労働時間の調査をしましょう。

 それと、一般労働から裁量労働に切りかわって労働時間の変化があったかどうか、これもきちんと調査しましょうよ。これをやれば、裁量労働に切りかわったら本当に労働時間が下がるのか、上がるのか、どっちなのかということがわかるじゃないですか。

 やはり、そうやって、今どういう実態になっているのかをきちんと把握した上で、もう一回、裁量労働制を拡大することが妥当なのかどうかの判断をするべきだと思います。再調査しないとこれまで大臣は言ってきましたけれども、ここまでベースとなった調査のずさんさがわかったわけですから、やはり改めて再調査をすることを求めますが、いかがですか。

加藤国務大臣 まず、最初の不適切の話、委員は一時間三十七分に八時間を足したことも御指摘でありますが、その前に、比較をしたことも間違いでありますから、あの資料そのものは不適切なものとして私どもは撤回をさせていただきたいというふうに思います。

 その上で、きのうも申し上げたんですが、切りかえたときに、全く同じ体制で同じ人が切りかえているというケースというのはそれほどないんだろうと思うんですね。多分、そういった裁量労働制を入れれば、課の仕組みとか体制とかいろいろなことを変えていきますから、余りにもいろいろな条件が変化したときに、その使用前と使用後を比較することが本当に可能なのかという意味で、昨日、コーホートで見るのは非常に難しいんじゃないのかということを申し上げたところでございます。

 その上で、いずれにしても、いろいろと御指摘をいただいておりますから、まずしっかりそれを精査させていただいて、そして、できるだけ速やかに御報告をさせていただきたいと思います。

初鹿分科員 精査も必要だと思いますけれども、やはり私は再調査するべきだと思うんですよ。

 大臣は、このデータが不適切だったとしても労政審の決定には関係がなかったようなことを言っておりますけれども、では、労政審の決定というのは何だったのかということですよ。

 皆さんのお手元に議事録、最後の議事録、つけさせていただいておりますが、結論はおおむね妥当だけれども、では、本当に委員のみんなが納得した上でのおおむね妥当かというと、全く違うじゃないですか。

 ここに下線を引かせていただきました。労働側の委員であります村上委員の発言です。上の下線を読みますよ。高度プロフェッショナル制度の創設も企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大も、実施すべきではないという労働側意見の考え方が変わるものではありませんと。次、高度プロフェッショナル制度の創設と企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大の二点が法案要綱から落ちていないことについては、労働側としては非常に残念であり、遺憾であると。

 これで、みんなが納得しておおむね妥当になっていると言えますか。言えないですよ。ですから、私は、きちんと再調査をして、もう一回労政審で議論をし直して、その結果、やはり拡大した方がいいということであれば法案の提出をすればいいし、そうならないんだったらやはり断念すべきだと思うんですよ。だから、今回、この国会で法案を提出するのは長時間労働の上限規制にとどめて、裁量労働制と高プロは提出を見送るべきだと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 昨日、影響がないと申し上げたのは、今委員御指摘のように、長時間労働の是正とか、中小企業における割増し賃金の適用を今猶予しておりますが、その廃止、これについては、いろいろ、その議論の前提の一つにもなっております一般労働者のデータについても幾つか指摘をいただいておりますが、ただ、その結論は変わらないのではないかということをきのう申し上げさせていただいたところでございます。

 それから、労政審においては、今もちろん御指摘もありましたが、しかし、その上で、最終的には、おおむね妥当という、そうした報告書を皆さんが御納得して出していただいているというふうに承知をしているところでございます。

石崎主査代理 初鹿明博君、申合せの時間が既に経過しております。御協力をお願いいたします。

初鹿分科員 承知しているんじゃなくて、押し切ったんですよ、労政審は。ですから、私は、やり直すべきだし、法案の提出は見送るべきだということを指摘させていただいて、質問を終わります。

石崎主査代理 これにて初鹿明博君の質疑は終了いたしました。

 次に、井野俊郎君。

井野分科員 自由民主党、群馬二区選出の井野俊郎でございます。

 きょうは予算委員会分科会ということでございます。主に私の地元の群馬大学病院についてきょうは聞いていきたいというふうに思っております。

 まず、ちょっと確認を幾つかさせていただきます。

 二十七年六月に、群馬大学附属病院が特定機能病院の認定が取り消されました。まず、取り消した理由というものは何でしょうか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 群馬大学附属病院の特定機能病院の承認取消しの審議を行った社会保障審議会医療分科会では、死亡症例検討会などにおける原因分析や管理者への報告を実施できていなかったこと、院内報告制度が機能しておらず、病院長や医療安全管理部長は死亡事案が続いていることを把握できていなかったことなど、医療安全の管理体制の問題が指摘をされたところでございます。

 また、医療安全管理体制の問題に加えまして、インフォームド・コンセントや診療過程について診療録への記載の徹底ができていなかったこと、保険適用されていない手術である腹腔鏡下肝切除術は、倫理審査委員会に付議すべき臨床研究であったにもかかわらず、付議されておらず、倫理審査体制が確保されていなかったことなどの問題が指摘をされたところでございます。

 こうした指摘を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、平成二十七年六月に、群馬大学附属病院の特定機能病院の承認を取り消したものでございます。

井野分科員 いろいろつらつらとお話しされましたけれども、では、もっと端的に聞きますけれども、医療法四条の二に特定機能病院の要件が課されていますけれども、これのどの条文、どれに違反したから機能病院が外されたんでしょうか。

武田政府参考人 ただいま御答弁申し上げましたように、特定機能病院につきましては、高度な医療技術を実施をする病院ということでございますので、一定の安全管理義務が課されております。この安全管理義務に違反するということで承認が取り消されたというふうに承知をしております。

井野分科員 別に私、野党じゃないので、余りこういうことを言うつもりはないんですけれども、医療法、私はどの条文に反しているかと聞いたんですよね、これ以上言いませんけれども。どの条文に反しているかということをちゃんと答えてもらえれば、私もスムーズに次の質問に行けるんですけれどもね。

 では、先ほどちょっとお話しされた、医療倫理審査会に付されていなかったという話がございました。もちろん、こういう問題についてはいろいろな医師の見方があって、一人の医師による判断というのは確かに誤った方向に行ってしまう可能性があるという意味では、そういう体制があった方がいいのは私もそのとおりである、それは否定しません。

 しかしながら、私もいろいろなこの問題について調べさせていただきましたけれども、当時、この事故、事故というんでしょうかこの問題が起きた当時、これを受けて、こういった腹腔鏡下の高度手術、いわゆるそういった手術をするに当たって、肝胆膵外科学会において緊急調査したところ、こういった保険適用外の腹腔鏡下手術に関して倫理委員会の承認を得ているかどうかというアンケートの結果、全く受けていないというのが四三%。ちなみに、一部受けているが一六%、全て受けているというのは一八%なんですよ。

 ということは、はっきり言って、ほとんどのお医者さんは、肝胆膵外科、腹腔鏡手術をされていらっしゃる先生は、ほとんどの先生が倫理審査というのを受けていなかったというのが現状なんじゃないんでしょうかね。それをなぜ群大病院のだけ問題にされるか、その点はどうなんでしょうか。

武田政府参考人 お答え申し上げます。

 研究目的で高難度の新規医療技術を用いた医療を提供する場合におきましては、研究計画の妥当性について当該病院の倫理審査委員会の審査を受ける必要がございます。これは、文部科学省、厚生労働省告示で定めました、人を対象とする医学研究に関する倫理指針で定められているものでございまして、この遵守が求められるということでございます。

 特定機能病院におきましては、この高難度新規医療技術提供に係るプロセスが的確に踏まれること、高難度新規医療技術を含む医療安全に関する年二回程度の職員研修において周知徹底することが求められておりまして、厚生労働省といたしましては、各病院における対応状況について、特にこの高難度新規医療技術が頻繁に行われる特定機能病院について、定期的に報告を求めるとともに、毎年の立入検査において、この指針が守られることをしっかりと確認をしてまいりたいと思っております。

井野分科員 これをきっかけに、ある意味そういったものが改善されたというのは、私はいい方向ではあるとは思いますけれども、ぜひ、その点だけは、現場の医師の感覚というのはそうではなかったということだけは認識をしていてもらいたいなというふうに思っております。

 その上で、今回の一連の問題、私は、事故だとかミスがあったということは言いたくありませんし、そういうふうな認識を持っておりません。

 この問題について、先ほど、安全管理体制の問題はわかりました。管理体制に問題があった。

 では、病院の問題、管理体制の問題ではなく個人に対する問題、医療ミスといいましょうか、技術の低下だったり、そういった個人の問題というものはあったのか、また、医師個人に対する処分というものはあるのかないのか、そういったものを含めてお聞かせください。

武田政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほど御紹介をいたしました社会保障審議会医療分科会における特定機能病院承認取消しの際の審議でございますが、この中では、当該、本事案において手術を行った医師に対しましては、インフォームド・コンセントや診療過程について、診療録や手術説明同意書等の記載を十分に行うよう徹底できていなかったという点は御指摘をされております。ただ、医療行為の中身そのものにつきましては、それ以上の審議では行われていないということになります。

 それから、行政処分は行ったのかという点につきましてでございますが、現時点におきましては、当該医師に関して、行政処分を厚生労働省としては行ってございません。

 これは、医師法に基づく行政処分につきましては、基本的な考え方といたしまして、公平公正に行うべきものであり、処分対象となるに至った行為の事実、経緯、過ちの軽重等を正確に把握、認定する必要があることから、原則として、司法における事実認定をもとに行うことを基本としているところでございまして、本事案につきましては、これまでに判明した事実関係を精査した上で、対応につきましては慎重に検討すべきものというふうに認識をしております。

井野分科員 先ほど、まず前段の部分の、インフォームド・コンセントが不十分であった、そしてカルテにそういった記載がなかったということなんですけれども、こういった事実は、正直言って、患者さんが納得する、しないだとか、もちろん、カルテに記載してあるのは、なかなか全部、どこまで記載するかというのはその人の主観によるものが多いのではないかなと思いますし、また、こういった事実が、インフォームド・コンセントが不十分であった、ないしはカルテに記載がなかったということで医師の処分というものはあり得るんでしょうか。まず、その点、確認させてください。

武田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、厚生労働省としての医師の行政処分に関しましては、基本的には、司法における事実認定をもとに行うことを基本としているものでございまして、例えば、カルテの記載が不十分であるということのみをもって民事あるいは刑事の事実認定が司法で行われるということは、基本的には少ないのではないかというふうに思います。

井野分科員 となると、局長の説明によると、刑事処分がない限りは医師の処分というのはあり得ないということになりますね。そういう認識でいいですか。

武田政府参考人 医師に対する行政処分につきましては、先ほど申し上げましたとおり、司法における事実認定をもとに行うことを基本としておりますけれども、例外的に、厚生労働省みずから事実認定をするケースがないわけではございません。

 ただし、基本的には、司法における事実認定をもとにしているということで取り扱ってきております。

井野分科員 わかりました。例外がもしかしたらあるということですね。

 もう一点確認したいのは、今回の端を発したのが、ちょっと済みません、お手元に配っているわけじゃないけれども、平成二十六年十一月十四日の記事で、腹腔鏡手術後八人亡くなった、こういった読売新聞の記事からスタートしたんだけれども、患者が亡くなるということは、これは医療事故なんですか。若しくは、例えばこのお医者さんの手術を受けたら手術後の死亡率が高いということは、これは医療事故だったり医療安全上の問題があるということなんですか。

武田政府参考人 御指摘の医療事故又は医療安全上の問題に何が該当するかということでございますけれども、まず、医療法におきましては、医療事故調査制度というものが創設をされております。ここにおきましては医療事故等の定義がございまして、当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該医療機関の管理者が予期しなかったもの、こういうことで定義をされております。

 また、別に、医療事故情報収集等事業というのがございまして、こちらは、医療安全上の問題につきまして、医療事故とは、行った医療又は管理に起因して、患者が死亡し、若しくは患者に心身の障害が残った事例又は予期しなかった、若しくは予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事案ということでございます。

 お尋ねのように、患者が仮に相次いで死亡したというケースでございますと、まずは病院において、医療安全を確保する観点から把握、調査を行い、問題があるかどうか、それから改善方策をとるべきであればどういうことをとるべきなのかということを十分に検討されるべき問題であるというふうに認識をしております。

井野分科員 結論として、では、今回の群大病院で、例えば術後八人亡くなったということ、かつ、局長の前の答弁からすると、医療安全の管理上問題があったという群大病院の指摘等を考えると、これは医療事故というふうに厚生省としては認識しているということですか。

武田政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたが、医療事故調査制度におきましては、予期しなかったものというふうな定義になっておりますので、当該治療行為に基づく死亡が予期しなかったものかどうか、それが可能性があるのであれば、インフォームド・コンセントされているかどうかというようなことが問題になってくるものというふうに承知をしております。

 したがいまして、死亡をもって直ちに医療事故かどうかというのは非常に難しい判断があろうかと思います。

井野分科員 何とか合わせわざ一本みたいな、そんなことかなというふうに認識はしましたけれども。

 もちろん、お医者さんというのは、基本的に誰もが、患者さんによくなってもらいたい、一人でも命を助けたいと思って執刀されていらっしゃるわけであって、そんな、死亡を予期してなんという人は私は一人もいないんじゃないのかなというふうには思ってはおりますけれども、その予期するというのは客観的に見てということなんだろうと思うけれども、その点は、済みません、質問を先に進めます。

 この特定機能の取消しというのは、我々群馬県民とか患者からすると、ともすると、どうしても、先ほど、理由は医療安全の管理が不十分だった、体制の問題だということだったけれども、やはり何らかの医療ミスがあったんじゃないのか、群大病院にはいろいろなそういったミス、問題があったんじゃないのかというような受けとめ方があるわけですよ。

 その点は、ちゃんとその取消し理由等を国民だったり患者の皆様にきちんと説明しなきゃならないとは私は思っているんだけれども、これはしっかり公表だったり説明というのはされているんですか。

武田政府参考人 先ほど申し上げました、特定機能病院の承認を取り消した際の社会保障審議会医療分科会での議論、そしてそのときの結論につきましては公表されているところでございまして、地元に対する御説明につきましては、当該群馬大学としても取り組んでいただくべきものではないかというふうにも考えます。

井野分科員 なかなかそれがきちんと、県民の中ではそういう受けとめにはなっていないというものですから、ぜひ今後、こういった病院、何が原因なのか、何が問題で消されるのかということは、私は、国民だったり患者に不安を与えないようにしてもらいたいなというふうに思っています。

 今現在、群大病院は、遺族の皆様に対して説明会を行ったり、賠償交渉等をされているようでありますけれども、私自身、この問題について、現時点で何らかの医療ミスといいましょうか、そもそも、これは個人に対して損害賠償、どうしても、法律家的な観点からすると、損害賠償責任というのは不法行為があって初めて生じる、もしくは債務不履行があって初めて生じるものですけれども、特定の個人に対する過失があったのかどうなのか、そういったものが本当にあるのかどうなのかというのは、まだ疑問に感じているところがあるけれども、一連の管理体制であったり、そういったインフォームド・コンセントが不十分であったというところを見て、過失があり、賠償責任があるというのは、それは私も否定はしません、それはあくまでも話合いでやっていることですから。

 その上で、賠償責任というか、そういう示談交渉を進めているということではあるけれども、では、こういったことの上で、どのような条件、要件が満たされれば、この群大病院の特定機能病院の再認定というのはなされるんですか。

武田政府参考人 基本的な手続の流れで御答弁をさせていただきますと、病院から特定機能病院の承認申請が行われた場合、社会保障審議会医療分科会での審議を行い、答申が出された後に、その答申を踏まえて厚生労働大臣より再承認を行うという流れになってまいります。

 過去において特定機能病院の承認の取消しとなったケースにおきましては、申請の意向が示された後に、社会保障審議会医療分科会の委員による病院の実地調査を行いまして、改善を要する事項を指摘し、一定期間後にその対応状況を再度確認した上で答申を行う、こういうようなプロセスを経たというような前例がございます。

 一方で、東京女子医大病院、群馬大病院における一連の重大事案が発生したことを受けまして、特定機能病院につきまして、医療安全及びガバナンスの確保の観点から制度改正が行われております。

 具体的には、高度な医療の提供等の従来の要件に加えまして、平成二十八年六月には、医療安全管理責任者の配置、全死亡例の報告、高難度医療技術を導入する際のプロセスの整備などの医療安全に係る承認要件の追加が行われているところでございます。

 平成三十年、ことしの六月からは、管理者の選任に当たりまして、安全の確保に必要な資質、能力、組織管理能力を有すること、管理者の権限の明確化、開設者等による病院の業務の監督に係る体制の整備など、ガバナンスに係る承認要件も追加をされているところでございます。

 こういった新たな社会の要請を踏まえた承認要件の追加、こういった要件への対応状況も確認をしなければならないと思いますし、医療安全管理体制が十分に整備をされ、機能しているのか、その実効性や継続性が確保されているのか、こういった点も含めて十分に確認をする必要がある、このように考えているところでございます。

井野分科員 私が群大病院の方から聞いている限りでは、今、そういう患者さん、遺族の皆様との話合いを進めている。それで、ある程度、一定のめどがついた段階で再認定を申請をしたいというような話を聞いています。

 確認なんだけれども、遺族、患者の皆さんとの示談であったり、そういったものが成立しない限り認定はできない、再認定できないということはないですね。

武田政府参考人 特定機能病院の再承認に際しましては、先ほど申し上げましたような点を私ども確認をしなければならないと考えているところではございますけれども、患者の理解を得ることは法令上の要件とはなっていないわけでございます。

 ただし、法令上の要件とはなっておりませんけれども、地域からの信頼を回復する上では、病院として事実上考慮に入れなければならないファクターであるとも考えられるところではないかというふうに考えます。

井野分科員 事実上の考慮というのは、まさにそんたくの世界なんですよね。それは別に、もちろん私も否定はしないけれども、人のさじかげんで認める、認めないがあったら、これは法治国家じゃないですよ。私、弁護士だから、どうしてもそういうふうな見方になっちゃうんです。それが法治国家だから。予見可能性があって、法律にしっかりと明記されて、そして、きちんと予見可能性が保っていける。これが法治国家じゃないんですか。

 だから、この答弁の中で事実上とか言われると、ちょっと、えっと思っちゃうんだよね。内心あってもいいよ、内心あってもいいけれども、答弁の席で、この場で事実上とか言われちゃうと、ちょっと違うんじゃないのかと思うんだけれども。

武田政府参考人 恐れ入ります。

 先ほど答弁を申し上げましたが、患者の理解を得るということは法令上の要件とはなっていない。まず、法令上とは、そういう扱いでございます。その点について再度答弁をさせていただきます。

井野分科員 ありがとうございます。そういう答弁だったら、私も納得をさせていただきます。

 それで、これは私、いろいろなこの群大病院の問題について調べていてすごい思うのは、このお医者さんないしは第二外科の先生方が中心的に手術をされてきたんだけれども、やはりこのお医者さん方は、特定機能病院、すなわち、我々が手術をしなければこの患者は行き場がない、多少リスクをとってでもこの患者を救ってあげたい、だから、多少厳しい患者に対しても果敢に手術に取り組んでいらっしゃったのかなと思う。

 もちろん、それが、その責任感が、かえってやり過ぎてしまったというところはあったと思う、私も。責任感が強過ぎるために周りも見えなくて突っ走ってしまった、その点も私は否定できないと思う。だから、周りの目があった方がよかったと思う。

 だけれども、こういった果敢に、特定機能病院の医師としての矜持を根底から覆してしまえば、誰もこういった特定機能病院のお医者さんが難しい手術に取り組んでくれなくなってしまうんじゃないか。ましてや処分なんか受けたら、そんなリスクをとるぐらいだったら、いいじゃん、抗がん剤治療でも何でもやって、余計なことするなと言われてしまうんじゃないか。その点を懸念しているんだけれども、その点はどう厚労省として考えていますか。

武田政府参考人 医療の場におきましては、高度な新規医療技術を医療現場で、臨床で用いるということは、先生御指摘のとおり、当然あるべきものでありますし、特に、特定機能病院におきましては、そういう高難度の新規医療技術を用いた医療を提供するための特定の機能を持つ病院ということで承認をされているところでございます。

 したがいまして、高度医療又は新規医療に対する取組を阻害するようなことを行政として規制をかけるべきではないと思いますけれども、ただし、そういう難度の高いものを提供する場合につきましては、きちんとしたプロセスを踏むということが大事だというのが医療法の考え方であるわけでございます。

 具体的に申しますと、特定機能病院で高難度の新規医療技術を用いた医療を提供する場合には、診療科がございますが、診療科の長が、あらかじめ高難度新規医療技術と既存の技術を比較して優位性があるといったこと、提供する医師の経験を記載をした書類をつくりまして、これを高難度医療技術の提供の適否を決定する院内担当部門に対して提出すること、それを確認した上で担当部門が適否の意見を述べること、こういったプロセスが定められております。

 また、不幸にして患者様がお亡くなりになった場合につきましては、担当部門が手術記録等を確認し、適正な手続に基づいて提供されたかどうか等を確認をすること、こういうプロセスが定められておりますので、こうしたプロセスをきちんと踏むことが求められているというふうに考えております。

井野分科員 最終的には、そういう形でみんなの目で、手術等が適切に行われたかどうかというのは、私も、本当にそういう方向でぜひ群馬大学も信頼回復してもらいたいし、そういう体制を整備してもらいたいというふうに思っております。

 最後、群馬大、大学病院の問題というのは、テレビドラマ等で白い巨塔なんというふうな話でよく言われていますけれども、やはり大学という側面と、病院という意味では厚生省の管轄という部分がある。となると、やはり厚労省と文科省の連携がないと、本当にこの大学改革といいましょうか病院改革というのは行えないんじゃないかなというふうに思っております。

 この点、まず、ちょっと両省に、文科省にも来てもらっているけれども、まず厚労省から、その点、大学の改革、病院の改革について、連携について、あり方についてお伺いします。

大沼大臣政務官 近年、東京女子医大学病院や、また、先生御指摘の群馬大学附属病院における一連の重大事案が発生したことを踏まえまして、厚労省といたしましても、特定機能病院のガバナンス改革を行うことが必要であるとの認識のもと、昨年の医療法改正におきまして、特定機能病院の開設者に対して、管理者が病院の管理運営業務を適切に遂行できるよう、管理者の選任方法の透明化、管理者権限の明確化、また監査委員会の設置等の措置を図ることを義務づけいたしました。

 まずは、各特定機能病院におきまして、これらの措置を実施することによりまして、自主的に医療安全管理体制や病院運営全体の意思決定のあり方を含むガバナンス体制の強化等を図っていくことが重要であると考えております。

 委員御指摘のとおり、文科省との連携は大変重要なことであると認識しておりまして、特定機能病院の承認要件等を検討する特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会には、文科省からも参画いただいております。

 厚労省といたしましては、文科省としっかりと連携しながら、今回のガバナンス改革が着実に実施されるよう、特定機能病院の開設者に対しまして、定期的に報告を求めるとともに、毎年の立入検査等においてしっかりと確認してまいりたいと思っております。

信濃政府参考人 附属病院を含みます大学におきまして、学長等のリーダーシップのもとで大学改革を推進していく、そして、大学及び附属病院のガバナンス体制の強化に取り組むことが大変重要であると私どもも認識しております。

 文部科学省では、国立大学のガバナンス改革を進めるために、平成二十六年に、国立大学法人法の一部改正によりまして、教育研究上の重要な組織の長、これには病院長も含まれますけれども、この任命について、学長が定める手続により行うといったような制度改正を行ってきたところでございます。

 また、厚生労働省におきましても、今政務官から答弁がありましたとおり、特定機能病院の開設者に対して、管理者が、これは病院長に当たりますが、病院の管理運営業務を適切に遂行できるように、選任方法の透明化等の措置を図ることを義務づけました医療法の改正を昨年行ったところでございます。

 いずれの制度改正につきましても、附属病院を管理監督する大学法人としてのガバナンスの改革につながるもの、こういうふうに承知をしております。

 文部科学省といたしましては、学長等のリーダーシップのもとで大学改革を推進することによりまして、大学及び附属病院のガバナンス体制が強化され、一層適切なものとなるように、引き続き、厚生労働省とも連携を図りながら、指導してまいりたいと考えております。

井野分科員 時間が来たので終わりますけれども、この群大の病院の問題は、私も本当に調べてみて、根が深いなと思っております。

 根本的に、これは果たして客観的にあったかどうかと言われたら、確かに、余りこの場で言うのも適切じゃないけれども、やはり第一外科と第二外科の派閥争い、教授の椅子争いというのが、少なからず、病院内の派閥争い、絶対これはあったと思う、本当に。結果、それがどっちを向いてやっていたのか。患者の方じゃなくて、自分たちの椅子争い、権力争いにある意味使われたという面は、私はそれはゼロじゃないと思っております。

 本来の大学病院、特定機能病院の機能を発揮できるような体制整備、大学改革、ぜひやっていただきたいというふうに思いまして、要望して終わりにします。

 ありがとうございました。

石崎主査代理 これにて井野俊郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺孝一君。

渡辺(孝)分科員 自由民主党の渡辺孝一でございます。

 今回、質問の時間をいただき、大変ありがとうございます。

 まず最初に、このことだけは申しておかなければいけないのかと思いますが、今般の通常国会の予算委員会、地元の方でも多くの方々が、テレビ中継あるいはマスコミ等々を通じて関心が高いようでもございます。

 加藤大臣が大変御苦労なさっているということで、特に女性、婦人部からは、大臣に対して、頑張ってください、負けないでくださいという同情の声が大変聞かれているのが非常に特徴的だったというふうに受け取っております。ぜひ、野党に負けず、この難局を乗り切っていただきたいというふうに思います。

 また、代表的な声といたしましては、確かに野党の言い分もわかることはわかる、ただ、今回の働き方改革の議論をなおざりにして、資料の不備な点を続けて批判しているような国会の議論の中では、ひょっとしたら、今現在、長期の、長時間の残業で苦しんでいる労働者の方もいるかもしれない、さらには、この期間に過労死という大きな問題が出るようなことも、そういう危険性もあるんじゃないか。ですから、早くこの建設的な議論を進めていくべきではないかという声。

 あるいは、中小企業の社長クラスの話を代表しますと、本来、働き方改革というのは、国がしっかりと方針を示し、我々企業側でしっかり従業員と向き合って、そして、どういう働き方をすることが従業員にとっていいか、もちろん、企業経営者としては、企業を存続させるためにどうして従業員の方々の協力をいただけるかという、その話合いをしていくことが本来の働き方改革の本質につながっていくんじゃないか。ですから、早く国会の中で、いわゆる我々中小企業等々にも従業員の方々と話し合えるような働き方改革の骨子をつくっていただきたいという声も聞いております。

 ぜひ、本当に国民の皆さんが安心して働ける、また経営者の方々が安心して雇用に、あるいは人材確保に、前向きに進めていただくことをどうかお願いしたいというふうに思います。

 さて、質問に入りたいと思います。

 私も市長を経験した中で、やはり一丁目一番地というのは安全、安心なまちづくりでございます。その中で、その安全、安心の中に、住民の方々の健康というのは、やはり首長にとっては一番の仕事ではないかと思います。また、安倍総理の提唱する人生百年を実現するためには、単に寿命が延びるということだけではなく、やはり原点として、健康であり、生きがいを生涯持ち続けていることが重要と考えます。

 ゆえに、平均寿命と健康寿命の差、男性においてはほぼ九歳、女性においては十二歳という開きがあるようでございますけれども、やはりこの差を縮めていくことが、健康にもつながり、また町の健康にもつながっていくんではないかと思います。

 また、高齢化率も日本全体で二七・三%。もう四人に一人以上が高齢化を迎えている現状。さらには、千七百十八ある市町村の中で、特に田舎、地方と言われる地域は、高齢化率が四〇%を超える市町村はざらでございます。もう本当に待ったなしの私は状況ではないかと思います。

 そこで、健康でいること、つまり不健康にならない、そのためには、国や地方は一体どういう協力をして行政を行っていかなきゃいけないかということで、特定健診についてちょっと注目したいと思っております。

 つまり、この特定健診、生活習慣病のもとである運動不足とか暴飲暴食、喫煙習慣など、徹底した指導が必要と考えますし、生活習慣を改善することで、いわゆる重病化する前の予防策にもつながり、また、多少悪化したレベル一ぐらいになったときにも、これは後の治療にもつながる大事な私は事業だというふうに考えます。

 そこで、まず一番目の質問ですけれども、これまで保険者において特定健診の取組が進められてきたところでございますけれども、改めて、その意義について教えていただきたいと思います。

大沼大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、運動不足であったり不適切な食事生活、また喫煙などのそういった不適切な生活習慣に起因する糖尿病等の発症や重病化を予防するためには、重症化に至っていく前の段階で、本人みずからが健康状態を理解して生活習慣の改善の取組を実践できるように、保険者が健診結果により、よりリスクが高い者を選定いたしまして、保健指導に取り組む必要があると考えております。

 特定健診、保健指導は、こうした国民の健康増進と医療費適正化の観点から、保険者が共通に実施する法定義務の保健事業であり、健康寿命の延伸の観点からも極めて重要な保険者機能であると考えております。

 先生御指摘のように、この特定健診の受診者は、平成二十七年度時点で二千七百万人が受診しておりまして、毎年百万人増加しているなど、制度が着実に定着しているところでございます。

渡辺(孝)分科員 ありがとうございます。

 それでは、平成二十八年度より実施しております保険者の努力支援制度の前倒し分についてちょっとお聞きしたいんですが、都道府県に配分しているんでしょうか、この何か評価表というのをちょっと資料で見させていただきましたけれども、何か一位が長野県で、四十七位が山口県となっておりました。私としては、総理の出身の県が四十七位かと、ちょっとぎょっとしたんですけれども、この評価方法についてちょっとお知らせしていただきたいということと、この新制度はよい仕組みだというふうに、各自治体が非常にモチベーションが高まるということで評価をしておりますけれども、この制度について、評価指標や評価基準も含めて、しっかり地方自治体に同時に周知すべきだと思いますけれども、どのような評価、配分をしているか、お聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきました、保険者努力支援制度の都道府県別の評価でございますけれども、二十八年度の前倒し実施分につきまして御説明申し上げますと、十一種類の指標を設定をいたしまして評価をしております。

 このうち、例えば、特定健診、特定保健指導、今御指摘ございましたこの受診率、あるいはメタボリックシンドロームの該当者とその予備軍、これの減少率、そういったものの指標を設けまして、この目標値を達成しているのかどうか、それから、直近の数値を見まして改善しているのかどうか、こういった点につきまして、個々の市町村ごとに評価を行っております。これをその県の市町村分全部平均をいたしたものが都道府県の指標ということになります。

 したがいまして、これは、必ずしも都道府県、市町村の健康度合いをそのままあらわしたというよりは、各市町村の取組努力を評価させていただいているものだということでございます。

 いろいろ地域差はございますけれども、これはさまざま要因があると思います。その中で、やはり取組状況の差というものもこの中にあらわれているのではないかというふうに我々は考えているところでございます。

渡辺(孝)分科員 ありがとうございます。

 地方自治体にとりましては、健康というのは、例えば公立病院、さらには国民健康保険の保険料、さらには介護の保険料と、直接自治体にも大きく影響するものにつながっていくものでございますので、ぜひ、この特定健診でさらなる、地方自治体等々がモチベーションが高まり、本当に健康につながっていくという事業にやはり私はしていただきたいなというふうに思います。

 さて、ちょっと別な視点から、三つ子の魂百までということはよく耳にするんですが、やはり子供のころからの健康教育というのも、私は大きな意味があるんではないかと思います。

 そこで、厚労省として、地域で育てる観点から、例えば、地方自治体では社会教育というのがございます。ぜひ、さらなる推進を考えているのかということと、この社会教育という制度をうまく使いながら、また一方では、教育となるとやはり学校教育にも大きく影響が出ますけれども、文科省とかとどのような議論がなされているのか、現状を教えていただきたいと思います。

下間政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、学校における健康に関する指導につきまして御説明申し上げたいと思いますが、学校におきましては、文部科学大臣が定める教育課程の基準である学習指導要領に基づきまして、発達段階に応じて、また家庭や地域社会との連携を図りながら、生涯を通じて、議員御指摘の健康、安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるような資質を培うということになってございます。

 こうした健康教育を実施する上で、議員の御指摘のように、地域の関係機関、団体の協力も得ながら、例えば、学校が医師や歯科医師、保健師など地域の人材をうまく活用した取組を推進することが重要であるというふうに考えてございまして、文部科学省といたしましても、教育委員会、学校と地域の医療関係者、それから自治体の保健部局の関係者といったところが連携体制づくりをできますような事業を実施してございまして、それによりまして、各地域におけるさまざまな健康に関する課題の解決に向けた取組を支援しているところでございます。

 また、文部科学省と厚生労働省の連携ということにつきましては、日ごろより、文部科学省、厚生労働省は、教育、福祉、労働はもとより、保健の分野におきましてもさまざまな連携、協議の場を設けてございますので、子供のころからの健康教育、学校教育、社会教育を通じまして、しっかりと連携して取組に努めてまいりたいと考えてございます。

渡辺(孝)分科員 ちょっとこの健康教育の例というか、参考になるかわかりませんけれども、うちの地元では、農業を主体とした町でございます。そんな中で、地元のスーパーの中でも、地産地消という言葉の中で、地元の農産物等々も他府県の農産物と同じように陳列されているんですが、子供と買い物に行ったときに、お母さん、地元の農家のおじさんたちがつくっている大根を買わなきゃだめだよ、野菜を買わなきゃだめだよと言ったときに、お母さんが、そうだよねと言って、安い方の野菜を置いて、高い方の地元の農産物を買うという光景が実はよく報告されております。

 何を言いたいかというと、子供たちがしっかりといわゆる健康というものに意識を持って、お父さんに、たばこの吸い過ぎだよ、やめなさいよとか、毎日毎日遅くまで飲んで大丈夫ということを子供が小さいときからもし言えるような環境になったときに、私は、ある意味、特定健診の援軍というか、増進にも一役買ってくれるんじゃないかというふうに思います。

 国としてのルールづくりというのはわかりますけれども、やはり、ある意味、日本人の文化、心みたいなものをくすぐりながら、ぜひ、広い運動にしていただき、そして国民全体が健康になっていくような運動というのをもうちょっと大きな視点からも考えていただき、みんなでやれるような特定健診に私はぜひしていただきたいなと思います。

 そのことで、私は、ある意味、総理の言っている、本当に一億総活躍社会につながっていくのではないか、そして、その総活躍社会の礎は健康にあるのではないかと思いますので、ぜひ、厚労省の皆さん、他の省庁とも連携しながら、そして、国民の皆さんに広くこの特定健診の意義というのを伝えていただき、さらなる事業推進に御尽力をいただきたいというふうに思います。

 では、次に、働き方改革について御質問したいと思います。

 当然、今国会での目玉の法案でもございますし、先ほど冒頭で述べたとおり、非常に地方の方でも注目をしております。

 総理が予算委員会で大演説をしておりまして、私も感銘を受けましたけれども、全ての人が活躍してもらう環境づくりが必要で、子育てや介護をしながら働ける、一方、労働界と経済界が手を結び、双方にとっていい改革にしたいという決意を述べておりましたけれども、まさしくそのとおりでございまして、地元から、冒頭で申し上げた声も、まさしく総理と同じ考えで、私は、声を発しているのではないかと思います。

 また、この改革、特に地方では、雇用の七割を占めます中小企業や小規模事業者、我々は零細企業と言っておりますけれども、本当に実現することは大変だとは思いますけれども、ただ、地域の声をまたお伝えしますと、大臣にはちょっと耳の痛い話になりますけれども、決められた残業時間で果たして仕事がしっかりと行えるのかという社長さんもいらっしゃいました。

 また、地域においては、これ以上、人を募集しても集まらない、人手不足の話だと思いますけれども、がゆえに、どうしても今いる従業員の方々に無理をかけてしまうんだ、そんな中で、余りにも上限をすぱっと切られると、本当に会社経営が成り立っていくのか、もし会社が成り立っていかないといったら、雇用も何もないじゃないかという声は、私も身につまされるお声だというふうに聞いております。

 また、ある社長は、国がルールをつくるのは勝手だ、ただ、ルールを守っていたら事業経営は成り立たない、破ってもいいんだよなと、もう決まる前からそういうことを言う社長さんもいらっしゃいます。

 まあまあ、千差万別でいろいろな思いがあろうかと思いますけれども、先ほど申しましたように、やはり人手不足というのは地方においては非常に深刻な問題になっております。そこで、人材確保に向けたマッチング支援や雇用管理改善対策として効果があるのかというのも心配をしております。

 そこで、一点目ですけれども、この働き方改革におきまして、労働基準監督署とハローワークのそれぞれの役目について説明をお願いいたします。

 また、この両者の連携というんでしょうか、役目、立場が違いますから、一概に連携という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、何らかの、ある意味、連携があってもいいのではないかと思います。

 地元の方々は、やはり、労働基準監督署そのものに対して非常にある意味、率直に言うと恐怖感を持っていらっしゃる方が多うございますし、また、ハローワーク等々でフォローアップということをうたっておりますが、どこまで人手不足の解消になるのかというところが、まだ少し疑問に感じている経営者の方々もいらっしゃいます。ぜひ、その辺、ハローワークと労働基準監督署の関係についてお答えいただきたいというふうに思います。

    〔石崎主査代理退席、主査着席〕

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 事業所指導に関する役割分担につきましては、ハローワークは、労働者の募集、採用に当たりまして、申し込まれた求人内容の適法性や正確性を確保する観点から指導を行っており、労働基準監督署は、就職後の労働者の労働条件の確保、改善、安全と健康の確保等の観点から指導を行っております。

 また、両機関は、それぞれが所掌する業務において、行政運営上問題が認められる事案又は問題が発生するおそれがある事案を発見した場合には、相互に情報提供等を行うなど連携を図ることとしております。

 例えば、求人条件と実際の労働条件が異なるといった相談があった場合におきまして、ハローワークにおいては、迅速に事実確認を行った上で、必要に応じて、当該求人の職業紹介の一時保留や取消しといった是正指導を行うこととしております。また、労働基準関係法令違反の疑いがある事業所を把握した場合には、労働基準監督署に情報提供をすることとしております。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、両機関の適切な連携により、労働者の労働条件の確保や雇用の安定等を図ってまいりたいと考えております。

渡辺(孝)分科員 答弁ありがとうございます。

 この働き方改革の質問をする前に、ちょっと地域の声を、経営者の声を率直にお話し申し上げましたけれども、確かに、法治国家のこの日本ですから、ルールを守らなければいけないというのは経営者の方々も十二分にわかっておりますが、先ほど申し上げましたように、人手不足を含めて非常に厳しい状況にあるということは察していただけると思います。

 今後、厚労省等々にお願いしたいのは、確かにルールはルールで、ましてや悪質なものにはやはり裁きを下すというのは当たり前のことだと思いますけれども、そこに至るまでの経過、結果のみならず、その経過にもしっかり配慮していただきながら、何とか、厚労省の仕事ではないんですけれども、地方自治体でいえば、企業を育てるというのが首長さんたちの考えでもありますので、ぜひ、その視点も忘れずに指導等々に当たっていただくことをお願い申し上げたいというふうに思います。

 さて、これも人口減につながる話になりますけれども、地方の学生、生徒等に職業意識形成支援というのを学校関係と連携しながら行っているかと思いますが、どのような形で行って、どのような効果があるか、今の現状でいいですから、教えていただけませんか。

安藤政府参考人 在学段階から職業に対する意識形成を促していくということは、生徒、学生の地域における労働市場や企業に対する理解を深め、その後の円滑な職業生活への移行に結びつけるという観点から、非常に重要であると考えております。

 このため、ハローワークが地域の学校と連携を図りつつ、企業で働く方などを講師として中学や高校に派遣して、働くことの意義や仕事の実態等について生徒に直接伝えるキャリア探索プログラムや、高校生を対象にして、地域の産業や職業の実態の理解を促進したり、就職に向けた準備を行うといった多様なメニューを盛り込んだ就職ガイダンスを実施するなど、地域の企業の人材確保の視点を取り入れつつ、多様な形で職業意識の形成支援に取り組んでいるところでございます。

 平成三十年度予算案におきましても、この就職ガイダンスの対象を中学生や大学生にも拡大するなど事業の拡充を盛り込んでいるところでございまして、今後も引き続き、地域に根差した形で若年者の職業意識形成支援の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

渡辺(孝)分科員 地元の若者、あるいは学生さんたちが地域に根づいてくれるというのは、これはもうどこの地方自治体も望んでいることでもございますし、ぜひ、そんなことも配慮していただきながら推進をしていただきたいと思います。

 あと五分しかないもので、通告の三つ、四つ、四番目の質問をちょっと一緒にやりたいと思いますので、答弁もよろしくお願い申し上げます。

 きのうの予算委員会で、自民党の質問の中で、いわゆる業種別についての質問に対してある程度具体的に説明をいただきましたので、納得もしているところもあるんですけれども、ただ、ちょっと、福祉施設関係の方々は更に過酷な労働条件下のもとで頑張っているところというか施設が多いものでございますので、総理の考えている介護離職ゼロにも大きくつながっていくと思いますので、この福祉施設関係の働き方改革についてどういうお考えを持っているのか。

 さらに、今回、北陸、福井の大雪でも皆さん御承知のとおり、いわゆる季節の繁閑によって、忙しい時期と暇な時期、こういうのが激しい地域がございますけれども、こういうところの労働規制についてはどういうふうに考えているのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

定塚政府参考人 御質問いただきました福祉や介護での働き方改革ということについてでございますけれども、やはり、こうしたところで働き方改革を進めるに当たっては、御指摘もありましたとおり、人材をしっかりと確保していくということと同時に、働きやすい職場をつくっていくということが不可欠かと考えております。

 このため、処遇改善のほか、介護や福祉職場への就業促進、あるいは職場環境の改善による離職の防止などに総合的に取り組むということを進めているところでございます。

 具体的には、介護福祉士などの福祉系の国家資格の取得を目指す学生さんへの返済免除つきの奨学金制度による就業促進や、ICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進による業務負担の軽減や職場環境の改善による離職防止などに取り組んでいるところでございます。

 さらに、平成三十年度からは、介護分野へのアクティブシニア、元気な高齢者の方々など幅広い人材の参入を促すということ、このために、介護未経験者向けの介護入門研修をつくりまして、研修を受けた後の、介護施設などとのマッチングまでの一体的な支援を進めていくということ、あるいは、介護士養成施設における人材確保の取組に対する支援などを始める予定でございます。

 また、福祉施設や介護施設での雇用管理改善、これも大変重要でございまして、こうしたことに取り組む観点から、例えば、介護労働安定センターによる無料での事業主の相談援助などを実施をしているところでございます。

 こうした取組を通じて、福祉施設や介護施設での働き方改革が進んでいくように、人材確保とあわせて取り組んでまいりたいと考えております。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 季節などで業務の繁閑がある場合には、労働基準法の三十二条の四に、一年単位の変形労働時間制という制度がございます。積雪寒冷地などのあらかじめ業務に繁閑が見込まれる事業場におきましては、この制度を御利用いただいて、特に積雪寒冷地については、この制度について特則もございますので、業務の繁閑に応じて労働時間を柔軟に設定していただきたいと思っております。

 労働基準監督署には、特に、来年から、中小企業の相談とか援助を特別に担当する部署を設けたいというふうに思っております。中小企業に対するきめ細やかな支援を労働基準監督署でも行っていきたいと思いますので、ぜひ来署いただいて御相談していただいたらというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

渡辺(孝)分科員 もう質問時間も終了なので、終わらせていただきますけれども、ぜひ大臣には、この働き方改革、ぜひ国民にわかりやすい形をつくっていただきたい。そして、その法律に魂を吹き込むのは、私は、それぞれ各地域で働いている労働者の方や経営者の方ではないかと思いますので、ぜひそんなことに努力していただくことを心からお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 きょうはどうもありがとうございました。

星野主査 これにて渡辺孝一君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

星野主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。國重徹君。

國重分科員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 きょうは、大きく二点、ケアマネジャーなど介護業務に携わる方たちの業務の負担軽減、効率化、これがまず第一点。二点目に、社会的養護に関する課題の対策、これらについて取り上げたいと思います。

 午前に引き続いての質疑となりますけれども、加藤大臣、また高木副大臣、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、一点目の介護に関して、団塊の世代が全て七十五歳以上となる二〇二五年、ここに向けて、高齢者が住みなれた地域で介護や医療、生活支援などを受けられるよう包括的な体制を整備していくためには、そのキーマンであるケアマネジャーがその力を存分に発揮していくことが重要であると感じております。

 まず、政府として、地域包括ケアシステムの構築を推進するに当たり、ケアマネジャーにどのような役割を求めているのか、期待しているのか、答弁を求めます。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 地域包括ケアシステムの構築を推進するに当たりましては、要介護高齢者等が住みなれた地域で自立した生活を営むことができるよう、その心身の状況や置かれている環境等に応じた適切なサービスを受けられることが重要であると考えております。

 ケアマネジャーは、要介護者等からの相談に応じますとともに、利用者の希望や自立した日常生活を営む上で解決すべき課題を把握して、それに対応するためのケアプランを作成し、さらに、介護サービス事業所や医療機関を始めとする他機関との連絡調整を行うなど、利用者の状態に応じたケアマネジメント業務を行っておりまして、地域包括ケアシステムを構築する上で重要な役割を果たしているものと考えております。

國重分科員 ありがとうございました。

 今、答弁、るる述べていただきましたけれども、ケアマネジャーは、地域包括ケアシステムの構築において、関係者を取りまとめる調整役、かなめ中のかなめとして極めて重要な役割を担っております。

 そのケアマネの仕事は多忙をきわめます。利用者宅を訪問し、本人やその御家族のさまざまな要望を聞く、主治医がいる診療所に足を運んで利用者の病状などの情報も聞く、関係者を集めたケア会議を開催する、医師や看護師、事業者や家族との調整をする、利用者一人一人に応じたオーダーメードのケアプランを作成する。あるケアマネの方は、なし崩し的に業務が拡大している、余りの忙しさで、自分たちの問題はどこにあるのか、ぱっと頭に浮かばないこと自体が問題だ、そうおっしゃっておりました。

 この忙しさに拍車をかけているのが、書類作成などの事務負担が大きいことであります。厚生労働省の調査によりますと、介護現場で働くケアマネの仕事の悩みは、記録する書類が多く、手間がかかる、これが最も多く、七割を占めております。利用者のために自分がいるのか、書類のために自分がいるのかわからなかった、こういったケアマネの方の声もお伺いしたことがございます。書類作成業務は、ケアマネの業務遂行にかかわる悩みの中でも圧倒的な負担になっております。

 介護の仕事に携わる方たちというのは、人との触れ合いが好きで、自分の仕事に対して誇りと自信を持っている人が多くいると感じております。しかし、書類作成業務の負担が重過ぎて、本来業務に支障が生じている。この事態を打開するためにも、書類作成の負担を軽減していくことは必要不可欠であります。

 そして、このことは、何もケアマネだけにとどまるものではございません。介護の業務に携わる方たちに共通する悩みであります。ケアマネを始め、介護業務に携わる方たちの書類作成の負担軽減に向けて、実効性ある取組を本気になって進めていっていただきたいと思います。政府として、今後どのように取り組んでいくのか、答弁を求めます。

浜谷政府参考人 先生の御指摘は、極めて重要な御指摘だと考えております。

 御指摘のとおり、ケアマネジャーでございますけれども、例えば、利用者のアセスメント、それからモニタリングに関する文書とかケアプランに関する文書、それから給付管理業務に関する文書など、さまざまな文書を作成しております。

 こうした文書量をできる限り削減することは、ケアマネジャーの業務負担の軽減、ひいては質の高いケアマネジメントを進めるためにも極めて重要であると考えております。

 厚生労働省といたしましては、まずは、国及び自治体が求める帳票等の実態把握をいたしまして、当面の見直しを行いますとともに、その後、事業所が独自に作成する文書も含めたさらなる見直しを進めまして、帳票量、帳票等の文書量の半減に取り組んでいくこととしております。

國重分科員 ありがとうございました。

 このことは、本当に現場が切に求めているものですので、現場の声をよく聞いて、その実態に即した実効性のある取組を進めていただきますよう、ぜひよろしくお願いいたします。

 さて、介護業務の効率化、書面作成の負担の軽減の一環として、政府はICTの導入、活用を推し進めようとしております。

 介護業務のICT化の導入に成功したある企業は、職員の残業がなくなった、記録の漏れや伝達のミスが減り、利用者のクレームも減った、こういった成果について述べております。ICTの導入によって、業務の効率化だけではなくて、良質な介護サービスを提供する環境も整ったわけです。

 その一方で、漠然とした目的でICTを導入しても、手間がふえるだけで終わってしまいます。まずは、解決したい問題を絞り込むことが必要ですし、ICTの導入に難色を示す方もいるので、利用者のためにこれを使うことを明確にして、効果を実感できるものから着手をしていく、こういったことも重要になってまいります。

 厚生労働省の調査によりますと、ケアマネの平均年齢は四十七歳。ケアマネの中には、対人スキルとか調整能力は高くても、パソコンの教育を受ける機会がなくて、パソコンを使うことに苦手意識のある方もいらっしゃいます。私も、現にさまざまな声を聞いてまいりました。

 そういった現場の実情に細やかに配慮をしてICTの導入、活用を進めていっていただきたいと思いますけれども、厚労省の見解をお伺いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、ICTの活用は、業務の効率化、ひいては質の高いサービスのためにも重要であると考えております。

 現時点では、厚労省におきましては、例えば、ケアマネジャーにかかわるさまざまな関係者と円滑に情報ができるようなICTの標準仕様の作成について検討を行うなど、介護事業所のICT化の促進に向けた検討を進めているところでございます。

 一方で、御指摘のとおり、ケアマネジャーの中にはICTの機器の利用を得意としない方もいらっしゃいますので、ICT化がかえって業務負担とならないような工夫、配慮も必要だと考えております。

 したがいまして、ICT化の促進の検討に当たりましては、使いやすい仕様等についても調査研究を行いまして、実際に現場で活用するケアマネジャーさんの意見等も十分踏まえながら検討してまいりたいと考えております。

國重分科員 前向きな答弁、ありがとうございました。

 介護サービスは高齢化で需要が伸び続ける一方で、ケアプランを作成するケアマネや介護福祉士を目指す人が減っております。ケアマネを始めとする介護人材の不足というのは介護の質の低下につながり、ひいては、利用者の方や、またその御家族にしわ寄せが行ってしまいます。

 処遇の改善もそうですけれども、今御指摘をさせていただいた本来業務に向き合うための業務負担の軽減、これが本当に重要だと感じております。加藤厚生労働大臣の今後の決意を含めた思い、これを聞かせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 委員から御指摘のように、高齢化が進む中で介護のニーズが高まっていく、他方で介護人材が不足をしているわけでありまして、こうした中で、質の高いサービスが効率的に、そして必要な方にしっかり提供されていく、このためには、一つは介護職で働く方の処遇改善をしっかりやっていくということと同時に、やはりそうした方々の働く環境をよくしていく、業務負担を軽減していくということがまさに必要だというふうに思います。

 これは、今お話がありましたように、文書をいかに削減するのか、ICTを活用するのか、また、そういう意味でうまく今やられている事例はございましたけれども、そういう事例を横展開していくとか、こういった対応が必要だと思っていますが。

 とりわけ今委員御指摘いただきましたケアマネジャー、このケアマネジャーの方は、介護事業所や医療機関等との関係者の情報連携、利用者のアセスメント、ケアプランの策定、モニタリング、多様な業務をし、いわば介護制度の中核に位置づけられていると言ってもいいんだろうというふうに思います。そういった方々が質の高いケアプランをしていくためにも、業務負担というものの軽減を図ることは極めて大事だと思っております。

 そういう意味で、ケアマネジャーが関係者と円滑な情報連携ができるよう、ICT化の標準仕様の作成に向けた取組、また今、AIの活用がいろいろ言われておりますので、AIを活用したケアプランの策定支援、そういったことについても、一体どこまでそれが適用できるか、それから、使う側の事情もいろいろありますから、その点も含めた調査研究をしっかりやっていきたい、今やっているところでございます。

 そうした成果も踏まえて、IC化に対応した今度は文書のあり方の見直し、また削減、こういったこともしっかり取り組んで業務負担の軽減を図り、そして、ケアマネジャーであり介護職の皆さん方が本当に、本来の仕事にしっかりと取り組んでいただけるように、また、やりがいを持って取り組んでいただけるように、対応していきたいと思っております。

國重分科員 加藤大臣、力強い御答弁ありがとうございました。ぜひ、リーダーシップを発揮して、これを前に推し進めていっていただきたいと思います。

 では、大きな二点目の、社会的養護に関する課題の対策についてお伺いしてまいりたいと思います。

 まず、社会的養護の中でも、より家庭的な環境下で子供たちを育てるファミリーホームの養育者へのレスパイトケアについてお伺いをいたします。

 今、さまざまな事情で親元で暮らせない子供たちが全国に約四万五千人います。そのような子供たち一人一人を十分な愛情とともに大切に育てていくことは、これは社会全体の責任です。

 私が座長を務めさせていただいている党の児童虐待・社会的養護検討プロジェクトチームでは、平成二十七年八月に、この社会的養護の中でも、とりわけ「子どもとの個別的な関わりがより深まる家庭養護、家庭的養護を促進する」よう提言させていただきました。こういったものを受けて、政府として、今、より家庭的養護へという大きな政策の流れができていることは評価をしております。

 その上で、これを実現させるためには、家庭的養護を支える里親、ファミリーホーム、こういった支え手の方々を国が支援していくことが重要でございます。この点、今、里親には休暇の制度、レスパイトケアが整えられております。しかし、家庭的養護を支えるもう一翼、同じく自分の生活拠点で子供を育てているファミリーホームの養育者については、レスパイトケアが認められておりません。

 私も、これまで幾つかのファミリーホームの現場を視察してまいりました。その中で、さまざまな経験豊かな養育者の方々のお話も伺ってまいりました。

 以前、東京都の八王子市のファミリーホームを視察した際には、このようなことを養育者の方がおっしゃっておりました。中には、親が子に虐待されているケースもある、そういうときに、休みたいときに休めない、我慢するしかないことになる、逃げる場所がないというのがファミリーホームの大変さなんだというようなことをおっしゃっておりました。真面目な人もいて、子育てがうまくいかないときに、児童相談所には相談できないまま、もう無理とファミリーホームや里親を続けるのを諦めてしまう場合もあります、そんなとき、一晩預かってもらうだけで気持ちもリセットできます、こういった声を聞いたこともございます。

 これは、経験の浅い里親さんとか養育者の方が言った言葉ではなくて、そういった里子の子供をたくさん育てて、多くの里親を指導してきたベテランの方々の声であります。そういったベテランの方々であっても、たまにはやはり息抜きが必要であることがわかります。

 すぐにということは難しいのかもしれないですけれども、ファミリーホームの養育者に対するレスパイトケアについて、ぜひ今後前向きに検討していっていただきたいと思います。さまざまな工夫をしながら進めていっていただきたいと思いますけれども、厚労省のお考えを伺います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 ファミリーホームにつきましては、現在の仕組みとして、養育者の方々の休息あるいは急な用事等が起こった場合に対応できるように、委託費というか仕組みで運営をしていただいておりますが、その中で、補助者を置くほか、養育者の代替要員を雇っていただくということもできるような経費をその中で計上させているという形になってございます。そのために、今御指摘のとおり、仕組みとしては、ファミリーホームの養育者の方がレスパイトケアを使うということは、正直、仕組みとしては想定してございません。

 一方で、今先生からも御指摘ございましたように、社会的養育あるいは虐待防止対策の流れの中で、平成二十八年に児童福祉法を改正させていただいて、その改正法で家庭養育優先の原則というのを明記をさせていただいております。その実現のためには、里親の皆さんとともに、今御指摘いただいたようにファミリーホームの皆さん方にも重要な役割を担っていただくということになりますので、ファミリーホームの養育者のレスパイトに関しましても、現場の方々のニーズあるいは実態というものをよくお伺いしながら、私どもとして、よりよい仕組みとするように努めてまいりたいと考えてございます。

國重分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 やはり、子供たちのことを思えばこそ、その支え手である里親さんとか養育者さんたち、これをしっかりと支えていくことが重要であると思っておりますので、ぜひ前向きな検討をよろしくお願いいたします。

 社会的養護の中でも、とりわけ子供たちと二十四時間向き合う里親さんにとっては、孤立してしまわないような取組が大切であると思っております。以前、私が、ある里親さんに聞いた話でも、やはり里子を一人預かるというのは、その子供に愛着障害等が、かなりそれが深刻な場合には、一つの家庭を壊すぐらいの力があるとかいうような現場の生々しいお話を伺ったこともございます。そのためにも、孤立してしまわない体制づくりというのが大事だと思っておりますけれども、これに関して、私は、里親さんに対する研修のさらなる充実というのも大切なことだと思っております。

 今月二日、里親委託率全国ナンバーワンの新潟市に、今いらっしゃる高木美智代厚生労働副大臣とともに行かせていただきました。そこで、御夫妻で里親をされている方たちから、こんな話を聞きました。今、五年に一度、里親の更新研修がある、これが実は一日がかりで結構大変なんだ、旦那さんは行くまで、御主人は行くまでは大変だなということで、ぶうぶう、平たく言うと文句を言っているけれども、でも、いざ行って帰ってくると、何か風呂上がりのような感じでいつも満足げにして、勉強になった、よかったということを言っているということをおっしゃっておりました。

 研修は、里親同士の横横の情報交換とか共有ができるよい機会でもある、得られるものも大きいので、もっと、負担を考えながらだけれども、もう少しこういったものをふやしてもいいんじゃないかというようなこともおっしゃっておりました。

 今、研修は各都道府県が行っていることと思いますけれども、過度に負担にならない範囲で今後研修を充実させて、横連携の機会をふやすことも大切だと思っております。各都道府県が里親研修を充実させられるよう、政府としても予算措置を講じていっていただきたいと思います。次年度を含めて検討していっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、養育里親の皆さんへの研修によりましては、里親の方々の養育の質の向上が図られるのはもとよりでございますけれども、養育に関する情報交換でありますとか、あるいは当事者間の悩みの相談など、その相互交流も更に促される効果があるということで、里親委託を推進するために、この研修機会は非常に重要なものと私どもも認識をしてございます。

 現在、この研修につきましては、全ての都道府県、指定都市、そして児童相談所を設置していただいています市において行っているところでございますけれども、具体的には、新規登録時に実施をする基礎研修、あるいは登録前研修、さらには、今御指摘いただきましたように、五年ごとの登録更新時に実施をする更新研修ということで、これに対して国庫補助を行っておりますし、平成三十年度、来年度の予算案におきましては、一研修当たりの補助単価を引き上げさせていただくことを盛り込んでおります。

 また、里親の方々の相互交流の場を提供する、あるいは情報交換や養育技術の向上等を図るということも重要でありまして、この事業に対しても国庫補助を行っております。

 私ども、さらに現在、年度末に向けて、里親支援に関するガイドラインというものの策定に向けた検討を進めておりまして、今後、その結果も踏まえつつ、より多くの研修あるいは交流の機会等を確保できるように里親支援策を考えてまいりたいと思います。

國重分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 先ほどは、研修、それを通じた横連携の充実について申し上げましたけれども、二十四時間子供たちと向き合い続ける里親やファミリーホームにおいては、専門的な助言が必要な場合もあります。そういうときに気軽に問い合わせられるような相談体制の確保も、また重要であります。

 例えば、ある里親さんは、どうしてこの子はこういった行動をするのか、なぜなんだ、私の母性が足りないんじゃないか、生活の中で絶えずさまざまな悩みが出てくる中で、そのたびに児童相談所へ相談することはハードルが高いし、申しわけなく思ってしまうと。また、自分が問題のある里親だと思われてしまって認定が取り消されてしまう、そういったことは困ると思うと、怖くて相談をちゅうちょしてしまう、それで孤立しそうだったというようなこともおっしゃっておりました。

 こうした現場の実情に寄り添って、より気軽に相談できる体制を強化していくべきだと考えますが、今後の取組についてお伺いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 里親さん、あるいはファミリーホームの皆さんへの相談支援につきましても、これは児童相談所の本来業務ということでありまして、平成二十八年の児童福祉法改正において、里親制度の普及啓発、あるいは里親と子供のマッチング、委託後の支援などを児童相談所の業務として法律上明確にさせていただきました。さらに、こうした業務が確実に実施されるように、国として児童相談所強化プランを策定をして、今、児童福祉司等の専門職の配置を充実させております。

 一方で、今御指摘いただきましたように、相談支援を民間機関に委託するということは、気軽に相談しやすいとか、あるいは、同じ担当の方が長期間継続して担当いただけるということで信頼関係が構築しやすいというメリットも承知をしておりまして、この二十八年の法改正においては、こうした業務を民間機関に委託できることもあわせて規定させていただきました。

 こうしたことを踏まえまして、今年度の予算において、民間機関への委託を含めて、里親支援の体制構築に向けた里親支援事業というものを創設させていただいたところであり、その実績を年度終了後に私どもとしては把握をさせていただき、また、三十年度の予算案においては、新規里親委託件数に応じて補助額を増額するなどの改善を図らせていただこうと思っております。

 先ほど申しましたように、さらなるガイドラインの策定検討などなど、一連の取組を通じまして、支援体制の充実に引き続き努めてまいりたいと思います。

國重分科員 ぜひ一層の取組を、どうかよろしくお願いいたします。

 次に、社会的養護のもとにある子供たちの中には、性的マイノリティーの子供たちもいます。そういった子供たちに、より配慮をしていくための取組について何点か伺いたいと思います。

 昨年、一般社団法人レインボーフォスターケアが全国の児童養護施設に調査をしたところ、これまでに性的マイノリティーと思われる子供たちを預かった、もしくは今預かっていると答えた施設は四五%に上りました。これは児童養護施設だけでの調査ですけれども、ここだけが突出しているわけではないはずであります。社会的養護のもとにある子供たちの中には、性的マイノリティーの子も一定数いると考えるのが自然なことだと思います。

 私は今、党で性的マイノリティーの問題、性的指向・性自認に関するプロジェクトチームの事務局長をさせていただいておりまして、また、超党派の議連でも、立法チームの役員をさせていただいております。

 これまで、同じくマイノリティーの問題ということでは、ヘイトスピーチ問題なども立法を含めて携わってきましたが、その中で、性的マイノリティーの問題とこのヘイトスピーチ、これは両者が決定的に違うところがあると思っております。それは、ヘイトスピーチで悩む子供たちは、親もまたマイノリティーなんですね。例えば在日とか言われる子供たちは、親もそうだと。だけれども、性的マイノリティーの場合は、親がマジョリティーな場合が多いということであります。だから、性的マイノリティーは親にも相談できず、誰にも相談できず孤立しやすい、こういった特色もあります。

 性的マイノリティーの問題は相談しづらいため、孤立し、問題を抱え込みやすいという実態がございます。社会的養護のもとにある子供たちは、心身ともに傷ついた子も多い中で、二重の苦しみを抱えることになってしまいます。

 だからこそ、一般家庭でももちろん大切でありますが、社会的養護に携わる方々が、より一層、性的マイノリティーの子供たちの心に寄り添っていくことが必要であって、そのためには、その方々が性的指向や性自認に関する正しい知識を身につけられるようにしなければならないと考えております。国としても、それを後押しするためにしっかりと啓発を行っていくべきだと考えますが、現在の取組状況についてお伺いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童養護施設におきましては、児童相談所などと連携しながら、入所された全てのお子さんに対して個別に自立支援計画を策定し、今御指摘いただきました性的マイノリティーのお子さんを含めて、個々のニーズに応えられるように支援をしております。

 加えて、国としては、性的マイノリティーの子供さんについて、昨年八月に開催された全国会議において、都道府県あるいは児童相談所の方々に対して、これは文部科学省が作成された教職員向けの対応マニュアルというものもお示ししながら、これを参考に、それぞれきめ細かく対応するように周知をさせていただいているところでございます。

國重分科員 ありがとうございました。よくわかりました。

 ただ、私は、まだ現在の取組だけでは不十分だと感じております。学校と里親さんとでは、子供と一緒にいる時間が違いますし、やはり直面する悩みは違うだろうというふうに思います。また、社会的養護に携わっている方というのは教師ではないので、もっとわかりやすい資料を提供するべきだろうとも思います。

 私の地元事務所のある大阪市淀川区では、日本全国に先駆けて、LGBT支援宣言というのを出した区であります。当事者団体と協力をして性的マイノリティーに関する冊子も作成しておりまして、「性はグラデーション」ということで、きのうお渡しをして副大臣のもとにもあるかもしれませんけれども、これが非常にわかりやすいものとなっております。例えば、当事者の声、具体的でわかりやすいQA、推薦図書や相談窓口の紹介など、当事者目線に立った構成でつくられております。デザインも見やすいように工夫を凝らされております。こういった先進的な自治体の取組を参考にするなどして、よりわかりやすい資料を検討していっていただきたいと思います。

 更に言えば、この性的マイノリティーのことだけではなくて、里親のよくある悩みQアンドAのようなものを作成をして、ぱっと手に入れられるように配付してはどうかとも思います。これは、これから里親になろうとする人の不安を取り除く一助になるでしょうし、また、課題に直面した際のヒントになるであろうことは間違いないというふうに思います。

 高木厚生労働副大臣、こういった性的マイノリティーに関する、よりわかりやすい資料の作成、また、それにとどまらず、広く里親一般がよく直面する課題を解決するようなわかりやすい冊子の作成について、今後前向きに検討していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

高木副大臣 里親の方に、社会的養護を必要とする子供の養育に当たりまして留意すべき点を十分に理解してもらい、実践に役立てていただくことは重要だと考えます。御指摘のように、わかりやすい資料を作成することを始め、研修の機会をふやしていただくなど、里親への支援を充実させていくことが必要と考えております。

 現在、里親制度の普及啓発、リクルートから委託後の支援まで、個々のニーズに応じまして、一貫して支援するための体制構築を行うことを進めております。そのために必要な予算の確保、また、ガイドラインの検討作業を、今年度中の作成を目指しまして行っているところでございます。

 議員御指摘の点も踏まえながら、こうした取組を進めまして、家庭養育の推進に努めてまいりたいと思っております。

國重分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

星野主査 これにて國重徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、高井崇志君。

高井分科員 岡山から参りました立憲民主党の高井でございます。

 裁量労働制のことを加藤大臣それから山越局長にお伺いしたいと思いますが、私は、独立行政法人労働政策研究・研修機構、通称JILPTとこれからも言わせていただきますが、このJILPTのデータをなぜ労政審で出さなかったのかということをちょっとお伺いしたいと思うんです。

 それは、まず一つ、これは二〇一三年の十月三十日、第百四回の労政審の労働条件分科会の議事録を見ますと、ちょっと細かい字なんですけれども、宮地委員という、これは使用者代表の委員ですけれども、この宮地さんから、調査に関して、その企業が裁量労働制を取り入れる前と取り入れた後で働き方や労働時間の実態がどのように変化していったのかというのが切り口として必要であると感じております、今後そのような調査も含めたものをお願いしたいと思いますということに対して、村山労働条件政策課長、厚労省の課長が、承りましたと答えています。

 それから、その約一年後、二〇一四年の九月三十日の第百十六回の分科会では、今度は労働者代表の新谷委員がこう言っています。いつまでも使用者側から調査票の設問が悪いとの主張が出されてしまい、労使ともに、このデータは一体どう見ればいいのかという疑問が続いていくことになります、このデータは今後の議論にとっても重要な指標になりますので、事務局にはぜひもう一度、回答内容について詳細な分析を行うようお願いしたいと思いますと。

 それに対して村山労働条件政策課長が、お答えいたしますと。ちょっと省略しますけれども、JILPTに委託して調査した結果が取りまとまり、先ほど新谷委員から御指摘のあった数字についてこの分科会で御報告したところです、その後、この調査結果については、更に詳細なクロス集計等も載った冊子が出ておりますので、改めて精査した上で、今後も裁量労働制について御議論いただく回があると思いますので、その際に改めて経過とともに御報告したいと考えておりますと。

 二回、この分科会で厚労省の課長が、出しますと言っていて、さらに、このJILPTに調査研究を委託した、厚労省が委託したときのペーパーを厚労省からもらいました。この中にも、今回の研究成果の活用ということで、今後の労働時間法制の企画立案の基礎資料として活用する、そして、平成二十五年度下半期に労働政策審議会で議論を開始する予定であり、平成二十五年度内に調査研究成果をまとめていただきたいと。つまり、労政審での議論に使うから早急にまとめてくれ、こういう指示書、調査依頼書が出ている。

 これだけのことがあるのに、結局、このJILPTの調査結果を一回も労政審に出していない。その理由は何でですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働政策審議会では、JILPTの、今御指摘をいただきました労働時間に関する調査結果については取り上げておりません、提出しておりませんけれども、他方で、今御指摘がございましたJILPTのアンケート調査を用いまして、裁量労働制が適用されている方々の満足度でございますとか、労働時間の把握方法に関する実態、健康確保措置の実施状況などについての資料を提出させていただき、さまざまな観点から委員の皆様に御議論をいただいているところでございます。

 一方で、労働時間につきましては、労働時間等総合実態調査に基づきまして、これは十七年の資料もございますので、そうしたものとの比較もお示ししながら御議論していただいたところだというふうに承知をしております。

高井分科員 先ほどの、第百四回の宮地委員はこう言っているんですよ。裁量労働制を取り入れる前と取り入れた後で働き方や労働時間の実態がどのように変化していくか、その切り口が大事だと。それに対して村山労働政策課長が、承りますと答えている。

 つまり、裁量労働制が入る前の一般労働と裁量制が入った後と比べたいということを言って、それに対して、承りますと言っているのに、それを出さないのはおかしくないですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のJILPTの調査でございますけれども、これは必ずしも裁量労働制を適用する前と後ということではなかった調査であるというふうに認識をしておりまして、裁量労働制を適用する前と後で労働時間がどうなるかということを比較した調査については、私どもとして承知をしていないところでございます。

高井分科員 でも、こういうリクエストがあって、承りましたと言っているわけですよね。しかも、さっき、一般労働と裁量労働で別々の調査をそれぞれ出したと。それはもう比較にならないし、それがやはり不適切だったということが今回の発端でありますから、やはりこれは、意図的に出さなかったと、まあ、ほかの委員が何度も言っていますけれども。

 この議事録あるいはさっきのこの調査票の依頼の仕方からしたら、当時、山越局長はJILPTにいらっしゃったと思いますけれども、明らかにこれは途中で、そもそもは、最初は使う予定だったけれども、何らかの力が働いて途中で出さないことになったんじゃないんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働政策審議会にどのような資料を出すかということは、そのときの議論の課題でございますとか、その審議会の委員の先生方の御要望なども承りまして対応しているというふうに考えております。そうした中で、必要な資料、出せる資料を出していたのだというふうに思います。

高井分科員 それでは、このときの宮地委員のときから状況が変わったから、この宮地委員の要望はもう聞かなくてもいいことになったということですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 そうした裁量労働制を適用する前と後での資料、これは時系列を追って調査をしなければいけないデータでもありますので、それにふさわしいデータが恐らくなかったということでお出しできなかったのではないかと推察するところでございます。

高井分科員 二〇一三年の最初の方、十月ですから、議論が始まって最初の方で宮地委員からそういうリクエストがあって、そして、約一年たった九月三十日にまた同じような要望があって。だから、途中でこの間、変わっていないですよね、一貫して。しかも、その間にJILPTの調査はやっているわけですよ。

 ですから、確かに、発注、一番最初はもうちょっと前かもしれないけれども、こういう宮地委員の要望があったから、途中でその発注の仕方を、追加注文すればよかったんじゃないですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれにしましても、裁量労働制を適用する前と後のデータがその中に含まれていないので、委員の御指摘に対応するものとしてはお出しすることが難しかったのではないかと推察いたします。

高井分科員 なぜ、じゃ、委員の、結構単純な話じゃないですか、前と後、裁量労働制を入れる前と後を比較したいというこんな単純なことを、そんなに統計がとれないと判断したわけですか、そのとき。これは調査が大変でとても統計がとれないからやめようというふうに判断されたんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働政策審議会におきましては、審議を行っていく過程の中で、委員からさまざまな資料の御要望がございます。そういうものに対しまして、出せるものは次回以降に出す、それから、出せない場合もございますので、それはその旨を御説明していただくということで対応しているというふうに一般には考えております。

 それで、おっしゃられました裁量労働制を適用する前と後ということでございますと、恐らく、例えば二点間でとるとか、あるいは移動した人を探すとか、そういった難しさが恐らくあるのではないかと思います。そういった観点から、なかなかお出しできなかった。今、その当時の担当者に、なぜできなかったということを聞いておりませんので正確にお答えできませんけれども、恐らくそういう事情があったのではないかと推察するところでございます。

高井分科員 そんな大事なこと、ぜひ聞いてください。担当者って、別に、すぐそばにいるわけですよね。村山課長はいますよね。

 そして、これは極めて、誰が見ても欲しいデータじゃないですか、今回、この二人の委員が言っているだけですけれども。それをとっていないというのは、そもそもその調査の仕方が悪いし、そんないいかげんなデータでこの大事な労政審が議論されてきたということになりますよね。

 本当に、だから、こんな初歩的なものもとらずに、二年間、三年間、ずっと議論をしてきたのか、それとも、やはり、ちゃんととろうとしていたけれども、途中から意図的に出すのをやめたのか、そのどちらかしかないと思うんですけれども、どっちなんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 このJILPTの調査でございますけれども、アンケート調査でございます。それを行う前に、当然、調査票を設計して発送するということがございますので、そういった時系列の中でもなかなか難しい、後から直すということが難しい面があったのではないかと思いますけれども、申しわけございません、その辺の事情を、私、当時の担当者から聞けている状況ではございませんので、あくまでそういうことで推察させていただくということでございます。

高井分科員 それはぜひ調べて、きちんと国会で、大事なことですから、答えていただきたいと思います。

 それから、関連して言うと、先ほど、午前中の岡本委員の質疑をちょっと見ていたんですけれども、例の裁量労働制九時間十六分、一般労働者九時間三十七分という数字が、どういう理由で、どういう経緯で出てきたのかはわかりませんというような答弁だったと、民主党の部会にどういう経緯で。これだって、これだけ話題になっている一番根幹なことですから、何でそれをすぐそばにいる課長に確認していないのかと思います。

 そして、これは二〇一五年の三月、民主党の部会なんですけれども、その四カ月後の七月三十一日の厚労委員会で山井委員の質問に塩崎大臣が答えているわけですよね。委員会で答える、この経緯、これはどういう理由で答えたんですか。

山越政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のデータでございますけれども、初出といたしましては、平成二十七年三月に民主党の厚生労働部門会議に提出した資料でございます。それを、その後において、ほかの国会の場面でも使ったということかと思います。

高井分科員 先ほどから、思いますと。確かに当時の担当局長じゃなかったけれども。しかも、三年間、山越局長はやっているんですよね。やはりそのくらいの引継ぎは受けていて当然だし、しかも、これだけ今問題になって、もうかれこれ一カ月近くなるんですから、それを引き継いでいないというのは、ちょっと、国民の皆さん、到底納得できない。意図的に聞いていないとしか、誰でも思いつくようなことだと思いますけれども、聞いていないとしか思えないです。

 私は、恐らく、最初、そういうJILPTの数字も使う方針だったけれども、まさに、日本再興戦略二〇一四で裁量労働制の新たな枠組みという項目が出てきて、これは、その前の産業競争力会議とか経済財政諮問会議の合同会議をやっていて、二〇一四年の四月二十二日がターニングポイントだったと。これは、この間、我々の野党のヒアリングで村山課長がおっしゃっていましたよ。大きな議論があったんですよ。田村厚生労働大臣が、ある意味、負けたというんですか、産業界に押し切られた、そういうことがあって。

 そして、この産業競争力会議は、田村厚生労働大臣、委員じゃないんですよ、テーマごとに呼ばれる臨時委員で、そして、その後に最終決定するときには参加していないんですよ、田村厚労大臣。田村厚労大臣もいないし、そして労働者の代表が入っていないんですよ。労働者の代表が誰も入っていない会議で決まったことが閣議決定されて、そして、その方針があるから、もう裁量労働制の方が長いなんというデータは出せなくなったんじゃないんですか。そういうことじゃないんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 これを、平成二十七年三月、当時、資料として提出をしているわけでございますけれども、その際には、当時の担当課において、課長以下の課員の中で提出する資料について検討いたしまして、その資料を課長が了とし、局長の了解をとって出したものというふうに承知をしております。

高井分科員 ちょっとよくわからなかったんですけれども。

 大臣、済みません、全く聞きませんで。でも、今大臣、うんうんとうなずいていただいていました。産業競争力会議に田村厚労大臣が臨時委員だった、それから労働者代表がいなかったということ、御承知だと思います。そういう場で決まったことで、それでこの閣議決定があって、今法案がどんどんつくられていますけれども、これは問題だと思いませんか。

加藤国務大臣 産業競争力会議、たしか、私も当時は官房副長官で同席することもございましたので、その記憶を呼び返しますと、多分、臨時という形で出ておられたんだろうと。そして、その会議にはたしか、明示的な意味での労働組合の代表という方は多分いらしていなかったんだろうなというふうに思いますが、ただ、そこはそういう議論の場でありますけれども、最終的には労政審というところにかかって労働政策は決定をするというプロセスでございますから、その後、労働政策審議会で議論をいただいた、こういう経緯になっているわけであります。

高井分科員 私はここがやはりこの問題の本質だと思っていまして、普通なら加藤大臣のおっしゃったプロセスでも間違いじゃないんですけれども、しかし、今のこの安倍政権のもとで、官房副長官をやられていた加藤大臣に言うのも申しわけないですけれども、やはり官邸の力が強くて、こういった幅広い議論をしてでない閣議決定が決められて、閣議決定というのはやはり極めて重いですから、それがあったらやはり。

 もちろん労政審というのは中立的に議論する場でしょうけれども、しかし、その事務局を担っているのは厚生労働省で、そして、こういうデータをどれを出すかとかも厚生労働省が決めるわけですよ。それが恣意的になっていたんではないかということが、私は、この大きな、まさに、だから、そんたくが行われた、そしてそれが結局発覚をした。そんたくしたがゆえに、捏造という言葉はちょっと好きじゃないですけれども、本当に厚労省の役所の皆さんは一生懸命仕事をされていると思いますけれども、しかし、そうせざるを得なかったんじゃないですか、局長。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 JILPTとは別の、私どもがやっている実態調査でございますけれども、これは、労働基準監督官が事業場を訪問し、サンプル数も全国一万以上の事業場に調査するというものでございます。こういった実態調査につきましては、労働政策審議会で制度を議論するときに、通常、その前提として行って提出するものでございますので、それは審議会にお出しをしたということではないかと思います。

 他方で、JILPTの調査には、こういった実態調査では把握できないいろいろなデータがございます。満足度でございますとか、労働時間の把握方法に関する実態とか、そういったデータがございますので、それをあわせて労政審にはお出ししたという経過かというふうに思います。

高井分科員 これだけ重要なテーマを審議している審議会で、委員からこうやってリクエストがあったら、普通は何とかして出そうと思うものじゃないですか。この宮地委員のリクエストに対して何か努力はしたんですか。それも知らないという答弁ですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 宮地委員のその要望に対してどういう対応をしたかということは、大変申しわけございません、今ここでお答えできるような情報を持っていないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、労働政策審議会の運営といたしまして、毎回、委員から、出した資料に対して、更にこういう資料はないかという御要望をいただきます。そうしたものに対しまして、整理をいたしまして、もちろん出せるものは出せるわけでございますけれども、なかなか出せないものも中にはあるわけでございまして、そういったものについては、委員とも相談させていただいて、どうするかということを決めて、次の回出す資料を決めている、そういう運営が一般かというふうに思います。

高井分科員 私も役所で働いていましたからわかりますけれども、出せないものもありますよ。それは全部のリクエストを聞けない。だけれども、出せないときはちゃんと出せない理由を説明しますし、最低でも委員には説明に行きますよ。絶対していないと思いますよ。まあ、今聞いてもわかりませんとしか答えないから。でも、こういうことは調べてくださいよ。これは重要な議論ですよ。ここは本当に、審議会の委員から、しかも労側と使側と両方から同じようなリクエストがあって、なぜこのJILPTの数字を出さないのかということが、今までの局長の答弁だと本当に上っ面だけで、本当のところがやはりわからないし、ここがやはり一番の鍵だと思います。

 それと、これも再び局長で恐縮なんですけれども、二月一日に今回の事案が課長はわかり、そして二月二日には局長にも報告した。しかし、結局、それから、七日に大臣には報告、まあ、そもそも何で七日まで大臣に報告しなかったかということも疑問ですし、それから、なぜこれだけのことを調べるのに、平成十七年の調査って、確かに大分前だけれども、二十五年の調査の一個前じゃないですか。その一個前の調査でどういうことをやったのかなんてことは、こんなの一日あれば調べられると思いますけれども、何でこれは十四日もかかったんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この調査票でございますけれども、一般労働者の記入欄が一日の時間外労働の最長時間となっている一方で、裁量労働については、一日の労働時間をどう選ぶかということについて記載がなかったわけでございます。そこで、裁量労働制について、一日の労働時間の状況を調査する必要がございました。これを調べた結果、今御指摘もございましたけれども、十四日に資料が出てくることで、そういう中でそれが判明していったという経過でございます。

高井分科員 全く理解できません。意図的におくらせたとしか私には思えませんし、多くの方もそう思うと思います。

 では、もう一つ、これは、二十一日の予算委員会の理事会に、労働基準局名で、局長の答えだと思うんですけれども、二月二日の夜の時点で部下からの報告があって、まあ、我々から見たら一目でおかしいと思うわけですよ、平均的な者と最長を比べているという。ところが、この文書によると、局長は、その際は、一般労働者と裁量労働者で異なる仕方で選んだ数値の比較になっているとの認識は必ずしもなかったと。

 これは本当ですか。あの表を見て、誰でも、もう高校生でもわかると言った人がいましたけれども、それを局長、わからなかったんですか。必ずしも認識できなかったんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 大変恐縮でございますけれども、異なる仕方で選んだ数値の比較であるということがその時点では必ずしも認識できていなかったということで、ここは調べなければいけない、先ほど申し上げましたことを調べなければいけないというふうにそのとき思った次第でございます。

高井分科員 これは本当に、いろいろな同僚議員がもうさんざん聞いても、なかなか。

 とりあえずというか、きょう私が聞いて答えられなかったところは、何か、主査、理事会協議していただいて、出してもらうことはお願いできませんか。

星野主査 一回速記とめてくれる。

    〔速記中止〕

星野主査 速記を起こしてください。

 ただいまの件につきましては、委員長に報告をさせていただきます。

高井分科員 まだこれから審議も来週もあるでしょうし、参議院もありますから、これは本当に国民の大きな関心事だということで、ぜひこれは解明をしていただきたいと思います。

 それでは、ちょっともう一つ、どうしても話をしたいことがありますので、またこのテーマは引き続きやらせていただきますが、これは、日本社会事業大学という大学の天下りの問題であります。

 これは、実は去年、私、予算委員会で取り上げたことがございまして、日本社会事業大学というのは、福祉の東大と言われるくらい福祉の業界では非常に名のある大学で、しかし、残念ながらというか、厚生労働省が歴代、代々、何と事務局長は九代連続、それから専務理事は六代連続、いわゆる天下り、OBの方がつかれているという組織で、毎年四億円近い、最近は四億を切ったんですけれども、昔は四億以上の経営の委託費で成り立っていて、そして、もっと言うと、かつては天下りの覚書まであったんですね。厚生省の社会局長と人事については協議することという覚書があって、実は、民主党政権、長妻大臣のときにこれはもう破棄してもらったんですけれども。

 こういう経緯のある大学に実はちょっとある疑惑がありまして、平成二十六年度の厚生労働省児童福祉問題調査研究事業という六百万円の事業で、社会的養護制度の国際比較に関する研究という名のもとに、こういう三つ、ちょっと一冊だけ原本を持ってこられなかったんですけれども、三冊、第一報、第二報、第三報といって、三つ印刷しているんですよ。ところが、中を見ると、ほとんど一緒です。コピペというんでしょうか、ちょっと変えている部分があるということで、こんな立派な冊子を六百万円もかけてつくったということは、これはどういうことなんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきました調査研究、これは平成二十六年の児童福祉問題調査研究事業でございますが、まず研究課題を、社会的養護の国際比較に関する調査研究として設定しました。その上で一般公募を行いまして、その結果、日本社会事業大学において実施をいただくという形に決めたプロセスがございます。

 今御指摘いただきました調査報告書、お手元に三冊ということで、それぞれの印刷物の冒頭のところ、いわゆる発行に当たってという序文に当たるところに明記をされておりますけれども、第一報につきましては、速報として取りまとめたということで、平成二十七年三月付のレポート。そして、第二報につきましては、第一報のうち一部英語により掲載されていた海外研究者によるレポートを日本語訳したという形で、続報として同じく二十七年三月付で。さらに、三冊目、第三報につきましては、一部レポートを追記して、日本社会事業大学、これは年度を越えておりますので、大学の事業として独自に二十八年七月に取りまとめたという経緯と承知をしております。

 いずれにいたしましても、この作業、当初予定いたしました研究費の範囲内で行われたというものでございますし、また、この調査研究を行う機関の選定、先ほど申し上げました公募という話がございますし、結果における実績評価に当たりましては、外部有識者などから構成されております評価委員会における評価を受けて今日に至っているというところでございます。

高井分科員 そのことは知っているんですけれども、それで同じ冊子をわざわざこうして印刷する、それほどのことですかということです。これ以外にも幾つも実はあるんですね、こういう事例が。ぜひ、局長、きのう通告したので初めて知ったと思いますけれども、ちょっと、一度よくこの日本社会事業大学は調べてみていただいた方がいいと思います。

 まだもうちょっと時間があるみたいなので、最後にもう一回、裁量労働制の話に戻りますけれども、加藤大臣は、よく、過労死された御遺族の方とか当事者の話、きょうもこれから聞かれるんですかね。といっても、一回聞いただけだ、シンポジウムで聞いたというその一回だけじゃないかと思うんですけれども、もっと聞いていただきたい、きょう以降聞いていただきたいと思いますけれども、山越局長はもう三年この分野をやっていますけれども、そういった方々の話を聞かれたことはありますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 私といたしましても、過労死シンポジウムに出席させていただくとか、協議会に出席していただくという中で、いろいろなお話をお聞かせいただいておるところでございます。

高井分科員 何回かまでは、もう聞いてもあれですけれども、この裁量労働制の問題は、本当に、当事者の方、御遺族の方の話を聞くと、やはりおかしいと、身につまされるものがありますので、ぜひこれから。

 あとは、こういう経緯ですから、私は、当然、この法案は出し直すべきだし、労政審をもう一回やり直すべきだ。報道によれば、労政審の委員も再調査してくれと言っている方がいると報道されていますので。どうせ聞いても、報道のことはわからないと言われるでしょうから。こんなものは、厚生労働省の方から労政審の委員に出向いていって、どうしましょうかと聞くべきものだと思いますので、ぜひやっていただくことをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

星野主査 これにて高井崇志君の質疑は終了いたしました。

 次に、今井雅人君。

今井分科員 希望の党の今井雅人でございます。

 本題に入ります前に、ちょっと一問お伺いをしたいと思います。

 昨日の予算委員会で、我が党の柚木委員から麻生財務大臣の方に、国税庁長官が最近、ホテルから公用車に乗って出勤しているかどうか、公費を使っているかどうかという質問をさせていただきましたが、書面で質問を受けていないのでお答えできないということでしたので、きのう書面を出させて、通告させていただきましたので、まず、その件について、事実関係を教えていただきたいと思います。

安居政府参考人 お答えいたします。

 各省等におけます公用車の運用につきましては、平成二十四年六月一日、第五回行政改革実行本部におきまして定められました「公用車の運用の見直しについて」という文書がございます。これに基づきまして、佐川国税庁長官につきましても、継続的な送迎を行っているというところでございます。

 なお、この「公用車の運用の見直しについて」におきましては、自宅等からの送迎というふうにされておりまして、自宅以外の場所であっても、送迎対象者の身辺の安全や事務の適正な遂行の確保に支障が生じるおそれがあるか、ないしは、勤務地からの距離などを考慮しました結果、送迎の必要性が合理的でかつ妥当であれば送迎が認められているものというふうに考えております。

 また、ホテルの宿泊でございますけれども、申しわけありませんが、プライベートなことですのでお答えするのは難しいんですが、いずれにいたしましても、都内のホテルの宿泊料につきまして、公費で支出しているということはございません。

今井分科員 わかりました。

 事実関係だけ確認させていただきましたが、私も先日、国税庁の方にお邪魔しましたけれども、お会いしていただけませんし、報道の皆さんもお姿を見ることはないという状況で、これはちょっと本当に異常な状況で、一国の国税庁のトップが一般の方に登庁すら姿を見せないというのは非常に異常な状態だと思いますから、私はずっとこの問題をやってきていますけれども、事実関係をはっきりさせることが大事だ、発言に対する真偽をしっかり明らかにすれば信頼というのは必ず戻るというふうに思っていますので、委員長の方に、ぜひ、佐川長官の証人喚問をお願いしたいということをお伝えください。

星野主査 ただいまの件につきましては、委員長に御報告をいたします。

今井分科員 では、国税庁の皆さんはそれで結構です。ありがとうございました。

 それでは、本題に移らせていただきたいと思います。

 きょうも何度も取り上げられておりますけれども、裁量労働制のことについて少し大臣と議論をさせていただきたいと思うんです。

 まず、基本的な話なんですけれども、裁量労働制の範囲を見直す、あるいは拡大するということに関して、その目的は何かということなんですね。

 総理もよく、多様な働き方というようなことをおっしゃいますし、もちろん、途中で抜けたりとかそういうことができる、自分のライフスタイルに合わせるということも大事だと思いますけれども、同時に、やはり長時間労働の抑制ということもあると思うんですけれども、改めまして、今回、裁量労働制というものの範囲の見直しというのは何のためにやるということですか。今私が申し上げたことでよろしいということですか。

加藤国務大臣 我が国の仕事の仕方もだんだん変わっていくわけであります。そして、もちろん裁量労働制ですから、裁量がなければならないのは当然でありますけれども、そういう中で、自律的にやる、そして創造性を発揮してやることによって、より本人もやりがいが上がっていく、生産性が上がっていく。

 そういった分野について見たときに、既に裁量労働制で、決まっている部分がございます。これは自分の会社をメーンにした部分でありますけれども、他社についても、ほぼ自社で分析したりしているノウハウを他社に対して提供していく、そういった意味においては、ある意味では似ているところもある。もちろん、他社に提案するという意味において、異なるところもあるわけでありますけれども。

 そういったところを含めて、今委員おっしゃるように、健康確保とかそういったところはもちろんしっかりやらなきゃいけないけれども、また、そうした自律性や創造性が発揮できる部分についてはそれが発揮できるような形にして、そして、実際そこで働く人たちが自分の時間をうまくやりくりして効率的に仕事をし、そして、そこから生まれた時間を子育てやあるいは自分のことに使っていく、そういった観点から見直しがなされた、対象の拡大については見直しがなされたというふうに認識しております。

今井分科員 私もずっと裁量労働的な仕事をしてきていますから、この意義はわかっているんです。ですけれども、今一番問題になっていることは、遺族の皆さんが、裁量労働をしていた方が労働時間がすごく長くて、その結果、過労死をしたということなので、もう一度ここで確認したいんですね。

 もちろん、いろいろな論点があると思いますけれども、やはり労働時間がどうなるかということは、この裁量労働の問題を議論するに当たっては一つの論点だと私は思うんですけれども、大臣、そこは問題意識は同じですか。

加藤国務大臣 ある意味では労働時間ということにもあらわれるかもしれませんけれども、委員御認識のように、うまくやっているところは非常にうまくやっているし、逆なところは非常に問題がある状況が起きているということはそのとおりだと思いますし、決してその割合が少なくはないというふうに私も認識をさせていただいております。

 ですから、今回の議論、一方で対象の拡大をしているというところはありますけれども、他方で、やはり問題のあるところを是正していくという意味において、まず、そもそも時間管理が明確じゃないというところがありますから、それをどう把握していくのかとか、あるいは、本来その対象になっていくべき人が本当に対象になっているのかどうかという意味において、更にそこをもう少し絞り込む、絞り込むというか、精査をする必要があるということ。

 あるいは、実際に乖離時間、みなし時間と実際働く時間に乖離がある、こういった指摘もあるわけでありますから、それを是正するための根拠規定を入れるという意味において、これは新しい分野だけでなくて、既存の企画型、あるいは一部は専門型も含めて対象にしている、こういう見直しも入っているというふうに認識をしております。

今井分科員 もっと単純に聞いているんですけれども。

 労働環境が多様になるのはわかりました。そこで、そのことはいいんですけれども、裁量労働を入れたことによって労働時間が長くなってしまうかそうじゃないかというのは、これは一つの論点だと私は思うんですけれども、そこは論点じゃないんですか。

 例えばですよ、途中で抜けたりしても、実は実労働時間が物すごく長くなってしまったケースだってあるわけですよね。何か、子供を迎えに行くといって途中は一時間ぐらい抜けられた、そこは柔軟にできたけれども、結局、労働時間が物すごく長くなってしまうということだってあり得ない話じゃないので。

 ですから、労働時間がどうなるかということも、この議論の中の一つの論点だと私は思うんですよ。それは共有していただけますか。

加藤国務大臣 その抜けたという意味がわからないんですが、仕事をしていて、例えば一時間、これは自分の時間として抜けたという意味ですか。(今井分科員「そうです。つまり、そこは実労働時間じゃないですよね」と呼ぶ)それは当然、時間ではないんだと思います。あるいは、午前中ちょっと行って、お昼の時間はちょっと、例えば子供の関係で出かけていって、夜やる。そうすると、午前中と午後を足したということになるんだろうなというふうにそこは思いますけれども。

 ただ、委員御指摘の点は、要するにこの制度そのものがどうなのかということなんだと思いますが、ただ、この制度は、制度そのものと、やはりやる主体、そして実際そこで働く人、まあ主としては使用者側ですけれども、使用者側がどういう認識を持ってやるかによって随分結果が違っているのではないか、こう思います。

今井分科員 きょうの夜、被害者の皆さんとお会いになりますよね。被害者の皆さんは、裁量労働を認めると、労働時間が長くなって過労死がふえるという主張をされているわけですよ。そのことに対してどうお答えするかということなんです。いやいや、裁量労働は労働時間は別に延びません、そういうことを被害者の皆さんにおっしゃられるんですか。

加藤国務大臣 ですから、今回の措置の中で、時間を把握するとか、そういったことの是正をやる権限を持つとか、そういった規制をしっかり入れようということが今回の議論の一つになっているということであります。

今井分科員 いや、それはちょっとおかしいと思うんです。

 現状、もしそれができていないということであれば、まずそれを是正することが最初であって、現状も、今、裁量労働の人たちがいて、時間が把握できていないということがあると今おっしゃっていましたよね。まずそれを是正して、そこから議論が始まるんじゃないですか。それとセットに対象を広げるというのは、私は順番が違うと思うんです。ですから、そのことはそのことでちゃんと今やらなければいけません。今やらなければいけません。

 しかし、もう一つの問題点は、裁量労働制をしいたら労働時間が長くなってしまったと主張しておられる方がおられるわけです。でも、厚労省の皆さんが、いや、別に時間が長くなるかならないかというのは問題じゃないんだとおっしゃるのか、そこは論点じゃないとおっしゃるか。あるいは、裁量労働をやったって労働時間は延びませんということなのか。私は、そのどちらかなのかがよくわからないんですよ、スタンスが。そうじゃないと議論のスタートができないので、まず、その認識はどちらなんでしょうかということです。

加藤国務大臣 裁量労働制をやるということは、結果的において、これは非常に、さっきの高井議員との議論もあったんですけれども、導入した前と導入した後がどうなるかといっても、条件をどう置くかによって随分変わってくる。なかなかこれは難しい議論ではありますけれども、ただ、裁量労働制を導入することによって、それは例えば、みなし時間の設定の仕方いかんによっては、場合によっては長くなることもあり得ますね。それはそういうふうに、しかも仕事の内容が少し変わってですね。

 ですから、必ずしも、裁量労働制に行くことが直ちに短縮ということになるとは私どもも思っていません。しかし、ある程度自分の裁量によって仕事をすることによって、結果として短くなっていく、そういった運用が期待される、こういうふうにも認識しています。

今井分科員 結果として短くなることが期待されるということは、そこの部分は論点だということなんですよ。それで実際どうなのかということを、やはりこの制度を導入するに当たっては議論しておかないと。

 政府は、これを導入したら時間が短くなると期待していると今おっしゃいました、結果として。でも、結果どおりにならないかもしれませんね。それは、今既に実際に行っている人たちがいらっしゃるんですから、その人たちに実態調査をするということは当然できると思うんですよ。

 実際、JILPTのところでは、実労働時間は調査していませんけれども、中身を見ると、例えば、具体的に適用を受けることの不満の点として一番多いのは、労働時間が長い、四九・二、半分ぐらいの人ですね。それから、制度への満足度というのは、仕事を効率的に進められるので労働時間を短くできると思ったけれども、余り期待どおりになっていないという人が四割ぐらいいらっしゃるということですね。時間が短くなっていないという方が四割いらっしゃるわけです。調査ではこういうのが実際出ているんですね。出ていますよね。

 ですから、そういうところ、実際にそういう調査ができているんですから、感覚として。ではどれぐらい延びたのかとか、そういう調査は当然できると思いますよ。先ほどから、それが何か難しい、難しいと、きのうもそういう答弁をされていましたけれども、それはそんなに難しくないと思いますね。十分調査可能だと私は思いますけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 まず、今委員が御指摘した最初の数字は、満足している、一部満足している人を除いて、一部不満と不満という、多分足してみたら二割かもうちょっとですか、ちょっと今瞬間でやって済みませんけれども、二、三割の方のうちの四十何%、五〇%という御指摘なんだというふうに思います。

 それで、他方、さっきの話に戻りますけれども、実際、やってみる前とやった後といっても、さっき申し上げたように、新たな雇用形態を入れれば当然仕事の割り振りも変わってくるわけだし、いろいろなことが変わってくるんだと思いますね。

 ですから、そこが変わっているにもかかわらず、使用前、使用後を単純にほかの条件が一定として見るというのは、これはなかなか私は難しいんじゃないかと思います。仮にそういう人が一、二いたとしても、幾つか事例をとらなければ、これは統計的なことにもつながらないんだろうというふうにも思います。

 そういった面から見て、なかなか難しいというふうに私は思います。

今井分科員 前半のやつはおっしゃるとおりです。

 ただ、後半のは、全員を対象にして、裁量労働制となった理由を複数答えて、それが期待どおりであったかどうかということを聞いていますね。全員に聞いています。

 それで、仕事を効率的に進められるので労働時間を短くできるかといったときに、これは速報値ですから、確定値じゃないのでちょっと違うかもしれませんけれども、四四・九%の人が余り期待どおりになっていないと言っているんです。たしか確報値は三九でしたかね、四割ぐらいだったと思うんです。(加藤国務大臣「ちょっと同じものを見ないと。済みません、図表の番号か何かありますか」と呼ぶ)「制度適用の満足度2(適用前との比較)」という、四ページですね。ごらんになりますか。いいですよ、これをごらんになっていただいても。

 つまり、四割近い方が労働時間は思ったより短くならなかったというふうにお答えになっているわけです。

 先ほどは、結果としては労働時間が短くなるということが期待できるとおっしゃっていましたよね。実際にこういうのが、今データが出ているわけですから、それは懸念材料じゃないですか。調査としてこういうことが出ているので、厚労省さんが期待していることとは、必ずしも期待どおりのアンケート結果になっていません。

 ですから、この点はもう一度やはり議論するなり調査するなりし直す必要があると思いますけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 それは、何といいますか、縦軸に括弧が入っていますよね。だから、最初から時間が短縮できると期待した人のうちのどうなのかということでありますよね。

 多分、期待する人というのもそれなりにいたんじゃないかなというふうに思いますので、別に私どももその答えをつくろうとしたわけじゃありませんが、それはその一つの実態だというふうに思います。

 ですから、先ほど申し上げたように、実際、今うまくやっているところもありますけれども、いろいろな意味で問題を抱えている事業所、あるいはそういった問題の中で裁量労働制を適用されている働き手の方がいるということは、私もそのとおりだと思います。

今井分科員 先ほどから申し上げているのは、今、いわゆる反対されている皆さんの一番の論点は、つまり、被害に遭われた、被災された皆さんの論点は、裁量労働制は労働時間が長くなるんだ、そこが一番問題なんだということをおっしゃっているわけですよ。ですから、今の議論というのは実はとても大事で、では、実際に裁量労働になったときに、労働時間が本当にふえてしまうのか。

 皆さんのおっしゃっている主張は、私はある程度わかるんですね。ノルマが与えられて、それを完遂するまで帰っちゃいけない、そういう暗黙のプレッシャーになって、物すごい長い時間働かざるを得ない。帰れない、終わらないから、結果が出ないから。そうなったら、なかなかやはり帰れないですよ。

 だから、そういうことに対しての政府の見解なり調査なり、それをやはりまず示してから議論しないと、不安がとれないということじゃないですか。ですから、先日から、このデータがどうなんだという議論に変わっているわけですよね。

 まず入り口の部分でここの不安を取り除かないと、今まで労働実態が把握できなかったからそれを強化するとか、そんなの当たり前です。今、労災に認定をした人が、ほとんど時間が認定されないという状況があって、今の課題を解決するための施策なんですよ、今起きている。今回広げるための施策じゃありません、これは。現状への対策ですよ。

 それは当然やってもらわなきゃいけないですけれども、同時に、皆さんは、裁量労働をやっていた自分たちの家族が、労働時間がすごく長くなってしまって、それで亡くなった、あるいは失明したり、いろいろな方がいらっしゃるんですね。そのことをまず政府がちゃんと解決する、実はこうなんですということをしないと、この議論というのは始まっていかないんですね。だから、このデータのことでこんなにもめるんです。

 政府はそれに対して、データの比較の仕方が間違っていたとかそういう答弁ばかり繰り返しますけれども、やはり本質的には、労働時間が裁量労働をやったときにどうなっていくかということはとても重要なんですよ。みんな不安なんですから。

 だから、まずそこのところをしっかりと、やはり政府として見解を出してもらいたいというふうに思うんですけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 こういう言い方をしたらちょっと僣越でありますけれども、今非常にかみ合った議論をそれなりにさせていただいているというふうに思います。

 ですから、私も、先ほどから申し上げている今の裁量制の実態というのは、決して十分なものじゃない、いや、むしろ問題が多い、こういうふうに認識はしております。したがって、その上で、今回、時間の把握と、それから、やはり最大の問題は、そのプロセスですね。どういう時間をやるかという意味での裁量制と、それから、ボリューム感があって、とてもこんな、こなせないほどのボリュームを持っている、そういうボリューム的な意味。そういった意味からも、本当に適切な状況でこれが適用されているのかということをしっかりとチェックをしていく必要があるというふうに思います。

 したがって、今回の法律要綱においても、適用対象者について、法律によって大臣が省令で決める、そして、その省令を決める中において、本当に、経験等々からいって対象になり得るかどうか、そういったことをしっかり書き込むことによって、今もいろいろ御指摘があるようなことが生まれない、まずそういうことをしっかり片方でしながら、そして同時に、これは別に、当初は営業という言葉でありましたけれども、実際はそんなに広い概念ではありませんから、そういったところについては一部拡大していく。

 そういったことで、今、答申もいただいて、それにのっとって法案の作業を進めている、こういうことであります。

今井分科員 いや、私は、ずっとこの議論を聞いていますと、野党側の我々側は、被害者の皆さんからいろいろ話を伺って、労働時間が長くなってしまうんじゃないか、ですから、この制度は本当に問題があるんじゃないかということを問題提起しているわけですね。

 それに対して、政府側が出してきたデータがあったわけです。必ずしもそうじゃないというデータもありますということをおっしゃったわけですね。そのデータは、二つにおいて問題だと。一つは、比べたものが間違っていた。一番長いものをとっているのと、平均、そうじゃないものをとっているのを比べていたのが間違っていた。もう一つは、異常値があるということです。これは今から検証されるんですね。この二つの問題を抱えたデータが今走っているわけです。

 ですから、ほかに今データはないとおっしゃっていましたよね。JILPTのデータは裁量労働の方が長くなる。でも、それ以外のもので、長くなるか短くなるかのデータはほかにはないというふうにおっしゃっていましたよね。もともと出していたのは、平成二十五年の調査のデータですね。それで二つの問題点が上がってきたわけですから、結局、労働時間が長くなるかならないかという問題が今たなざらしになっているわけです。政府がそれはそういうケースもないんだよと反証したものが、今根拠が崩れようとしているわけですね。崩れたわけですね。崩れてしまったわけです。

 だから、これは、このデータをもう一度精査をしてちゃんと内容を確認するか、あるいは新たなものを何かちゃんと出さないと、それはちょっと議論がスタートしないですね。だから、まずそこを整理してもらいたいということでございますが、いかがですか。

加藤国務大臣 ないという議論は、労働者、それぞれ一般で働く方と裁量労働制のもとで働く方の平均、もちろん抽出した中での平均でありますけれども、それについてはJILPTのデータしか、ある意味ではないんですね、そもそも。私どもが出したのは平均的な者でありましたけれども、抽出の仕方自体が。加えて、今委員御指摘のように、その抽出の仕方が、選び方が違うものを比較してしまった。

 それから、あと御指摘があったのは、一般労働者のところは、法定労働外時間に法定労働時間を足してしまっているとかそういった指摘であり、さらに、さまざまな異常値があるという指摘を受けているのはそのとおりだというふうに思います。

 ただ、JILPTのデータを見ても、常に裁量労働制の人が高くて一般の人が低いわけではなくて、そこは混在をしているわけでありますから、これは先ほどから申し上げているんですけれども、これは誰がどう使うかということが非常に大きいということでありますので、そこはしっかりとした使い方をしてもらうということが私は大事なんだと思います。

今井分科員 ずっとその説明をされているから、またおかしくなるんですよ。

 それは、全員こうやって一人一人見れば、短くなる人も長くなる人もいますよ、当然。いますけれども、大事なことは、平均的にどうなのかということですよね。平均的にどうなのか。統計学ってそういうものじゃないですか。一人一人比べたら、統計になりませんよ。だから、統計学の考え方を無視して今おっしゃっていることになってしまいます。だから平均を、全体をサンプルをとってみたら平均的には長いのか短いのか、それを調査しているわけじゃないですか。その中のサンプルをとって、短い人もいるし長い人もいるという議論は、それはそもそも調査になりませんよ、そんなことを言い出したら。そういう答弁をされるからおかしくなるのであって。

 しかも、もう一つ、これは先ほど高井さんもおっしゃっていましたけれども、私は、この労政審の議事録を見ても、どう考えてもやはりおかしいと思うんです。

 まず最初に、平成二十五年六月十四日に閣議決定をしたときに、企画業務型裁量労働制を始め、労働時間法制について、早急に実態把握調査、分析を実施し、本年度秋から労政審で検討を開始するとありまして、その後の百三回の分科会で、村山課長がこのことを紹介した上で、こうおっしゃっています。その早急に実態把握調査、分析をどのように実践していくかについての資料が平成二十五年度労働時間等総合実態調査についてです、こうおっしゃっていますね。ですから、これが議論のスタートで、根拠になっていきますという議論をされていますから、ここの中身がどうであるかということはまず大事なんですね。

 先ほどの、比較の仕方が違っていたところは僕は今論点にしません。しかし、中のデータが間違っていたり異常値があるとしたら、それは精査しないとおかしいですね、当然。だから、その精査がきちっと出るまでは、やはりこの前提が成り立たないんですよ。この調査がスタートで、この調査に特に大きな瑕疵がないということが確認されなければ、この議論は進んでいかないんです。これが前提の調査だというふうにおっしゃっているんですから。

 今に至って、いろいろな異常な数値が出ているという指摘があったわけですね。今精査しておられて、まあ、こんなにあるんでしょうからすごい時間がかかるんでしょうけれども、少なくとも、でも、その検証が終わらないとこの議論は始まりませんよ、この流れでいったら。論理的にはそういうことになりますよね。そうじゃないですか。

加藤国務大臣 今お読みになられた分科会での発言ではありますけれども、ここでの議論は、もちろんそれに基づく議論もありました。それ以外も、それぞれの委員の思いや、あるいは委員が経験されたこと、委員が御承知のこと、それらも踏まえて議論された結果において建議がなされ、そして要綱に対する答申が行われてきたということなんだろうというふうに思います。

 ですから、そういった流れを踏まえながら、ただ、他方で、やはりデータがどうであったかということは、委員御指摘のように大事な視点でありますから、我々はしっかり精査をさせていただきたい、こう思っています。

今井分科員 もう一度確認しますが、そもそもこの制度の議論をするベースがこの調査であるということを村山当時の課長がおっしゃって、そこから議論がスタートしていますから、この中身がしっかり精査されるまでは、少なくとも法案は出せませんし、この議論はできないということになると思いますけれども、それでよろしいですか。

加藤国務大臣 一つは、しっかり精査をさせていただいて、できるだけ早く提出するように努力をしたいと思います。

 ただ、他方で、もちろん審議の中における大事な資料であったということはそのとおりだと思いますが、ただ、結論において、その資料だけではなくて、さまざまな御議論をされた結果として、先ほど申し上げた建議がなされ、答申が行われたということも私は一つの流れではないか、こういうふうに思います。

今井分科員 いや、流れはそうなんです。流れの起点がこうあるんですよ、起点が。起点が、この実態把握調査、分析を実施して、そこから検討を始めるになっていますから、この起点である分析、調査が正しいものじゃなければ、検討すら、始めたことも、もう一度やり直さなきゃいけないというのは当然ですよね。当然ですよ、それは。途中の流れがどうであろうと、一番の最初のものが間違っていたら、そこに戻って議論しないと、それはおかしくなってしまうので。これは筋でいえばそうだと思いますよ。

 ですから、少なくとも、ここのところの正確性が出るまでは、やはり法案も私は出してはいけないと思うし、それが今回の対応だと思いますよ。そのことをちょっと最後に、もう一度確認します。

加藤国務大臣 ですから、データとしてはそういったものを一つ出させていただいた。しかし、それ以外の要素も含めて検討していただいて、そして答えが出てきたということでありますから、その答えを我々は今受けとめて法案作業をさせていただいている、こういうことであります。

今井分科員 時間が参りましたので終わりますけれども、きょうは与野党の幹事長、書記長会談をさせていただきまして、我々の方からは、佐川長官の証人喚問、森友学園の国有地の問題の解明、それから、このデータの問題の精査、結果をちゃんと出してくれ、そのことがなければ、我々は予算の採決にはなかなか応じられないということを与党側にも申し上げております。

 政府の方にもそういう要請が行くと思いますので、真摯に対応していただくということをお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

星野主査 これにて今井雅人君の質疑は終了いたしました。

 次に、濱村進君。

濱村分科員 公明党の濱村進でございます。

 きょうは、大きく二つのことについてお伺いをしたいと思っておりますが、まず一つには、歯医者さんですね、歯科におけるスクリーニングについて、このことがまず一点目と、もう一つが、データヘルス改革をされている中での医療情報連携についてお伺いできればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、歯科におけるスクリーニングでございます。

 予算委員会でございますので、予算の話から少ししますが、今回の予算の中に、歯科健康診査推進等事業の検査方法等実証事業というものが予算づけされているわけでございます。この事業について、口腔機能低下の予防に資するスクリーニング方法について予算化されているわけでございますが、どのような内容なのか確認したいと思います。

    〔主査退席、石崎主査代理着席〕

武田政府参考人 お答えいたします。

 近年、口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症予防になることなど、口腔の健康が全身の健康と深い関係を有することが広く指摘をされております。したがいまして、質の高い生活を営む上で、口腔機能の維持向上を図ることは大変重要であると考えているところでございます。

 御指摘のとおり、御審議をいただいております平成三十年度予算案の中におきまして、歯科健康診査推進事業の中で、検査方法等実証事業ということを新たに予算案に盛り込んでおりまして、歯科健診の推進に係るモデル事業のほか、御指摘をいただきました口腔機能低下の予防に向け、対象者の口腔内の状態をスクリーニングする方法でございますとか、客観的に評価できる検査手法又は治療技術、こういった新たな技術の開発、検証などの事業を盛り込んでいるところでございまして、これらに係る経費を計上させていただいているところでございます。

濱村分科員 今、大事なキーワードをいただいたと思っておるんですが、歯科における口腔機能自体が体全身に対して大きく影響を与えるというところ、今触れていただいたわけでございますけれども、そのことからしますと、実は、私、この歯科における検査が大きく全身における健康に役立つスクリーニングというものがあるんじゃないかというふうに思っておりますので、少しきょうはその点についてお伺いしますが、具体的に言いますと、骨粗鬆症についてでございます。

 骨粗鬆症は、皆さん御存じのとおり、自覚症状はありません。その上で、骨折をして初めて自分が骨粗だということがわかるということで、骨折をしてしまうと、また新たに骨折を起こしたりして、骨折連鎖ということが起きたりするわけであります。骨折を起こした場合は、当然QOLも下がるし、寝たきりになってしまって死亡率が上がるというような、そういう問題点も指摘されているのが、今、骨粗鬆症を取り巻く状況であります。

 歯科疾患の治療目的のために歯科を受診された方が、エックス線写真を撮ります。撮影枚数、非常に多い枚数が撮影されるというふうに認識しておりますが、近年は、このエックス線写真を撮ることで、歯槽骨骨密度評価ソフトを使って顎骨骨密度を計測することによって、骨粗鬆症の予備判定が可能ということも言われております。

 ですので、これはぜひとも私はどんどんやっていっていただきたいなと思っておるんですが、ただ、ここで大事なところは、歯科医師さんは、当然、歯科医なので、骨粗鬆症患者を確定診断はすることはできません。スクリーニングだけをするということですね。歯科受診の患者をふるい分けて医科の専門医の皆様におつなぎするということ、これについてはできるんじゃないかなと思っておるんですが、歯科から医科に紹介をして、医科の方で最終的な診断をしてもらいましょうという考え方があろうかと思っております。

 こうしたことが、実は、第二十三回の日本歯科医学会総会でも、香川県の歯科医師会の先生方や、私の地元であります兵庫県の姫路市の先生を中心として、報告があったわけでございます。この歯科における骨粗鬆症スクリーニング、香川県歯科医師会の方々は実証事業という形でやっておられたりするわけでございますけれども、この事業について、厚労省の評価についてお伺いしたいと思います。

武田政府参考人 ただいま議員から御指摘のありました事業でございますけれども、平成二十六年度から、香川県におきまして、地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして、医療従事者の確保に関する事業、この事業の一部として実施をされているというふうに承知をしております。

 具体的には、骨粗鬆症スクリーニングを試験的に行うための設備、これを歯科医療機関に貸与をいたしまして、御指摘のありましたように、骨粗鬆症予防に関する医科歯科連携事業として実施をされているというふうに伺っております。

 御指摘ありましたように、歯科受診の際にレントゲンを撮るわけでございますけれども、この機械、貸与されている機械を使いますと予防的なスクリーニングを行うことができる。そういたしますと、医科歯科連携の枠組みのもとで、医科の診療所などに適切につなげることができる。そういう意味では非常に重要な事業であるというふうに私どもも認識しております。

 先ほども申し上げましたが、近年、口腔の健康は全身の健康と深い関係を有するということでございますし、高齢化が進む中で、高齢者は複合疾患を持っているわけでございます。そういう意味で、医科歯科連携を始めとしたチーム医療というのは非常に重要になっているという面もございます。

 私ども厚生労働省といたしましては、こうした取組は医科歯科連携体制の構築に非常に資するものだというふうに受けとめておりまして、引き続き医科歯科連携の推進に努めてまいりたいと考えております。

濱村分科員 最初にお伺いした、予算案で入っているようなスクリーニングの事業については、これは恐らく、どちらかというと歯周病のスクリーニングとか、今歯科の中で非常に問題となっている、そういうものが対象となってくるのであろうというふうに思っておりますが、今局長からもあったとおり、口腔の健康は全身の健康に影響するということでございますので、ぜひ今申し上げたような歯科における骨粗鬆症のスクリーニングを活発化させていっていただきたいというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。

高木副大臣 先ほど局長の方から香川県の事業について御説明申し上げましたが、口腔と全身との関係に着目しまして医科歯科連携を進めていくことは大変重要であると認識しております。

 厚労省では、そこに着目した事業といたしまして、施設に入所する要介護者等を対象とした誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアなどの実施や、また、歯周病が重症化しやすい糖尿病患者に対して歯科受診を勧奨するなどの連携の仕組みの構築など、支援を行っているところでございます。

 今後も、関係者の御意見をよく伺いながら、医科歯科連携を更に進めるなど、総合的な歯科口腔保健施策の一層の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

濱村分科員 これを進めるに当たって、実は、まだまだ歯学界としても、エビデンスの積み上げとか臨床データの積み上げとかそういうことが必要なのであろうと思いますし、あるいは計測部位とかの統一とか、調査対象も、これは調査の仕方自体の話ですが、対象五十歳以上、当然、骨粗鬆症になりやすい傾向の方というのが、五十歳を超えて、女性の方々で閉経をなされたような方が対象になりやすいということもございますので、そうしたところでしっかりと調査をして、精度を上げていくという必要もあろうかと思っておりますので、私も地元の歯科の先生と一緒に連携しながら、また推進をさせていただきたいなと思っておるところでございます。

 歯科のスクリーニングについては以上で質問は終わります。

 次に、データヘルス、医療情報連携について質問をさせていただきたいと思います。

 今、厚労省さんとしては、データヘルス改革推進本部を組織されて、全力で取り組んでおられるということでございます。

 まず最初に、その上で、今地元でもさまざま誤解もあったりするので、この点をちゃんと確認しておかなきゃということで、きょう宿題を地元から持ってまいったので、ちょっときょうは質問をしたいと思っておりますが、その質問のために、きょうは個人情報保護委員会の其田事務局長にも来ていただいて、ありがとうございます。

 改正個人情報保護法がございますが、あれを受けて、医療現場で、ちょっとした誤解なんじゃないかと私は思っておるんですけれども、どういうことかというと、情報漏えいをしてしまいます、そうしたら罰則が適用されますと。まあ、これは罰則が適用されるんですが、単純なミス、過失で起こってしまったような場合、故意ではないような場合について、単純なミスで罰則が適用されるのかというと、そうではないんじゃないかなと思っておるんですが、実際どのように運用されているのかというのがわからないので、その辺を伺いたいなと思っております。

 例えば、病院や診療所、あるいは介護事業者とか、ファクスで患者さんの情報をやりとりするというようなこともあるみたいなんですが、そうした場合に誤送信してしまいました。この間、実は、私、住んでいるのは西宮市なんですけれども、西宮市の医師会の先生方とお話しすることがあったんですけれども、そのときに、ファクスを誤送信して罰則が適用されてしまうのが怖いというようなお話があったんです。

 私は即座に、そんな、罰則適用されるとは思っておりませんよと。まあ、そのときはちょっと、頭の中に条文が完全に入っているわけではなかったので、そもそも、故意でなければ罰則適用とかはされませんよ、悪意を持って反復継続的にやるような、そういうものについては罰則が適用されるんじゃないですかね、でも確認しておきますねということで、きょう確認をさせていただきたいと思いますが、こうした場合、罰則の適用があるのかどうか、確認をしたいと思います。

其田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年の個人情報保護法の改正において新設されました罰則規定におきましては、個人情報データベース等を不正な利益を図る目的で提供又は盗用した場合などに適用されます。したがいまして、委員がただいま御指摘されましたような、故意ではなくて、ファクスで誤って送信したような場合には、直ちに個人情報保護法上の罰則の対象となるものではございません。

 一方、個人情報保護法第二十条におきまして、介護、医療の現場を含めまして、個人情報を取り扱う事業者は、個人情報の漏えい、滅失又は毀損しないように安全管理措置を講ずることとされております。万一、漏えい等が発生した場合には、当委員会の告示に基づきまして、事案の概要や再発防止策等につきまして報告するように努めることとされておりますので、当委員会では、必要に応じて適切な措置が講じられるように指導助言等を行っております。

 委員会といたしましては、引き続き個人情報保護法の正しい理解の促進と適切な指導監督に努めてまいりたいと思います。

濱村分科員 今、不正利益のためであれば罰則適用ということなので、明確に、このような場合は罰則適用されないということでございますが、恐らく伝わっていないということはあろうかと思いますので、ぜひとも、通知するなり通達とか出すなり、あるいはガイドラインでとか、さまざまな方法は考えられると思いますが、皆さんに行き渡るように、そしてまた、建設的に事業が行えるような措置をとっていただきたいということも要望いたします。

 その上で、今、先ほども申し上げたんですが、いろいろな医療にかかわる方々が連携するというのが当たり前の時代になっておるわけでございます。私の地元、病院のというか医療の圏域として見れば、私は阪神南医療圏域におるわけでございますが、阪神の南北の医療圏域では、これは七市一町を提携エリアとしてh―Anshinむこねっとという、連携するための情報システムがございます。

 こうしたシステムは、全国にいろいろな連携ネットワークができているというふうに思っておるんですが、これは全国にどんどんどんどんできていっているということ自体は、推進するべきなんでしょうし、地域の医療を守るためにその地域でしっかりとやっていくということは大事なのでありましょうが、これは収拾がつかないというか、連携にちょっと、圏域を越えると連携ができないとか、そういった問題もあったりするかもしれません。

 こうした状況を今厚労省としてどのようにお考えでいらっしゃるのか、確認をしたいと思います。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 効率的な医療連携を実現するためには、ICTを活用するこういった情報連携は非常に重要だというふうに考えておりまして、御指摘のありましたh―Anshinむこねっとにつきましても、大変多くの医療機関が参加をして情報のやりとりをされているというふうに伺っております。

 こういうICTを活用した診療情報の共有をするとどういうことができるかといいますと、例えば患者の紹介、逆紹介が円滑に行えるようになるとか、ほかの医療機関の検査結果をその場で参照し、適切な診療が可能になるとか、非常に多くのメリットがあるんだろうというふうに思っております。

 厚生労働省といたしましては、この地域医療情報連携ネットワークの構築について、地域医療介護総合確保基金を活用してまいりましたほか、平成二十八年度の診療報酬改定におきましても、ICTを活用した医療機関の情報連携について、新たに評価を始めているところでございます。

 また、この地域医療情報連携ネットワークを全国展開するために、構築支援ということで、好事例などを紹介する専用のウエブサイトを開設をしているところでございます。

 これを更に全国に広げ、また、これをつなげていくということが課題になるわけでございますけれども、未来投資戦略二〇一七に基づきまして、患者の保健医療情報を医療関係者が共有し、患者に最適な診療を提供するための全国的なネットワーク、これを二〇二〇年度から本格稼働させることを目指しまして、実現に向けた具体的な検討を更に進めてまいりたいと思っております。

濱村分科員 今、既存のものがある地域はいいのかなと実は思っておりますが、これは何でか、自分たちでやれるじゃないかということで、例えば今私が申し上げたようなところであれば中核市などもございますので、そうした能力のある地域であれば、これはできるでしょうよというふうに思います。一方で、なかなかそうしたものがない地域、あるいはなかなか体力のある自治体がないような地域、そうした地域は底上げをしていかなければいけないんだろうと思いますので、先ほど、地域医療総合確保基金であるとか、診療報酬でICT化を措置するとか、そういう話もございましたけれども、これはぜひとも更にやっていっていただきたいんです。

 その上で、もう一つ確認をしたいんですが、地域包括ケアを行っていくためにも医療、介護の連携というものはやっていかなければいけないわけですけれども、いろいろな職種の方々が同じ情報を目にするという必要性があるのかなと思っているんですけれども、そうした多職種連携のための情報システムの活用、今どのように現状を認識されておられるのか、確認をしたいと思います。

高木副大臣 委員御指摘のとおり、地域包括ケアシステムの構築に当たりましては、医療と介護の連携が重要でございます。

 このために、医療・介護サービス事業者など関係者間での適時適切な情報共有による多職種連携を進めることが必要です。そこで、ICTの活用は有効な手段でございます。そこで、地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして構築された地域医療情報連携ネットワークの中には、既に介護との連携機能を備えたものもあると承知しております。

 来年度からは、介護事業所におけるICT化を全国的に普及促進するために、介護事業所間の情報連携に関しまして、今後求められる情報の内容やセキュリティーなどのあり方を検討するなど、ICTの標準仕様の作成に向けた取組を実施することとしております。

 こうした取組によりまして、医療・介護事業者の連携を進めてまいりたいと思っております。

 なお、こうした連携のあり方は、このようなシステムもあればアプリやLINEを使ってという、SNSを利用してというものも中にはあるわけでございまして、そうした連携の際の情報の内容、セキュリティー等のあり方、こうしたことにつきましても検討を進めてまいりたいと考えております。

濱村分科員 今、副大臣から御答弁いただきましたが、多職種ということでいうと、当然、医療、介護、福祉、そうした方々が連携しなければいけません。

 実は、西宮市ではこんなファイルがあるんです。これは何なのと、本当は皆さんにお配りしておけばよかったなと思うんですが、介護にかかられるような方が、「みやっこケアノート」というものがありまして、ここで自分の個人の情報についても当然書かれていたりするわけですけれども、生活の目標というか、私、こういうことが好きですとか、こういうことについて話しかけてねというようなことも書いていたりとか、あるいは、ケアマネさんとかが専門的な見地で、この人はこういうことまではできますよとか、そういうものをまとめるような、そういうシートが入っておったりします。

 はっきり言って、非常に細かくてかなり高度なものだなと思っておりまして、これをおつくりになって取組をしようという方は非常に真面目に取り組まれておられるなと思っておりますが、何分、高齢の介護が必要な方にこれを持って動いてくださいというわけにはなかなかいかなくて、これが普及しておりません。

 普及していないということは非常に残念ではあるんですね。一生懸命当事者の皆さんは頑張っておられるんですけれども、こういうものの必要性については、恐らくみんな必要だろうと思っておるんですが、どのようなやり方があるのかというのは、非常に今、いい解がない状況なのかなと思っております。

 これ自体、本当に当事者の皆さんは頑張っておられるにもかかわらず広まっていないというところは、我々も、国としても何かしら手当てをしていかなければいけないんじゃないかというふうに思っておりますけれども、これは例えば、先ほど副大臣からありました、アプリとかもありますよねとかそういうこと、いろいろなデバイスがもう既に世の中、普及をしております。その中で、簡単に使えて、そこで御本人を特定できて情報を呼び出せるというような仕組みなんかが必要なのかな、こう考えているわけでありますが、ちょっとまだまだそこまではいっていないのかなというのもありますので、一つずつ課題解決していきながら進んでいく必要があるであろうと思っております。

 先ほども副大臣に少し触れていただいたんですけれども、今回の新しい経済政策パッケージ、介護のICT化に取り組むということでございますが、ICTの標準仕様の作成に向けた取組ということをおっしゃっておられるわけですけれども、詳細を確認したいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、経済政策パッケージの中で、介護のICTの標準仕様の作成に向けた取組についての記載がございます。

 具体的な内容でございますけれども、これは今後の検討でございますが、まず、介護事業所におきまして既に導入されているソフトの機能、あるいはセキュリティーの分析を行う。それを行った上で、学識経験者、介護事業者、介護システムベンダー等により構成されます検討委員会を設置いたしまして、情報連携する具体的な項目あるいはセキュリティー等のあり方を検討することといたしております。

濱村分科員 ありがとうございます。

 実は、総務省さんの方でも、データ流通に関するルールづくりについて、技術課題の解決は、実証事業を実施するというようなお話も聞いております。しっかりと連携しながら進めていただいていることとは思いますが、取組をなおお願いしたいというふうに思っております。

 時間も残り五分となってまいりましたが、最後に少しだけ。

 今、介護事業者の話を少しさせていただいたわけでございますが、小規模の事業者さんもたくさんいらっしゃいます。そうした事業者さん、自前でシステムを導入するなどもってのほかだ、そんなのできないよというところもたくさんございます。そうしたところに対しての対応をどう検討されておられるのか、確認したいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省におきましては、小規模事業所も含めた介護事業所における業務改善に向けた取組を支援するために、ICT化等に取り組みやすくするためのノウハウをまとめた生産性向上ガイドラインというものを作成しまして、その横展開を図ることといたしております。

 御指摘のとおり、特に小規模事業所におきましては、ICTを導入することに困難が伴うということも考えられますので、今年度、小規模事業所におけるICT導入の課題につきまして調査研究を行っております。

 今後、生産性向上ガイドラインの作成に当たりまして、小規模事業所など事業所の特性も踏まえたものとなるよう検討してまいりたいというふうに考えております。

濱村分科員 生産性向上ガイドライン、これは非常に大事だと思います。

 その上で、実は、事業者さんとかがどういうことをおっしゃることが多いかとか、それで申し上げるならば、実は兵庫でも、兵庫県医師会、県医師会が中心となって、あるメーカーさんのアプリを使っておられたりはします。これは利用料はどないすんねんというような話が出てきておりまして、これまでは県から負担してもらっていましたとか、そういう話がございましたが、こうしたところも、地域がどのように負担しているのか。当然、これは地域医療総合確保基金からもともと出ているものもあろうかと思いますが、こうしたところも含めて、ぜひ更に御検討いただきたいと思います。

 最後の質問にいたしますが、小規模の事業者さんの話は今しました。最後に、自治体さんの規模によってはなかなか情報連携しにくいというところもあろうかと思います。

 さっき申し上げたんですが、中核市、私が住んでいるようなところであればいいんですが、兵庫県も山間部があったりして、なかなかそういうのがない地域もございます。そうした地域については、国が主導してクラウドシステムで提供して、連携できるような状況をつくってもいいんじゃないか、それが底上げにつながるんじゃないかというような考えも持ったりするわけですけれども、国が主導して行うということについて検討してみてはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。

酒光政府参考人 ありがとうございます。

 現在、全国でも二百を超える地域で地域医療連携ネットワークが構築されておりまして、その中には、県域ですとか二次医療圏ですとか、そのぐらいの比較的大きな規模もございますし、もっと小さい区域でやっているものもございます。

 それにつきましては、特に財政面では、先ほどからいろいろとお話が出ておりますように、地域医療介護総合確保基金を使った支援ということをやっておりますが、もう一つは、情報面といいますかノウハウの面では、医療情報連携ネットワーク支援ナビというポータルサイトをつくっておりまして、ここで、こういうふうな取組がいいんじゃないかとか、実際に取り組んでいる事例なんかも情報提供しておりますので、こういった支援を引き続きやっていきたいと思っております。

 それで、特に今委員から御指摘いただきましたクラウドの活用ということについては、安全性とかあるいはコスト、こういったものから考えて、非常に重要な御指摘だというふうに考えておりまして、現在、総務省におきまして、クラウド活用型の地域医療情報連携ネットワークの構築事業というのを進めております。私どもも協力しておりますけれども、今後、こういった成果も十分活用していきまして、全国的な医療情報連携の実現というものに努めていきたいというふうに考えております。

濱村分科員 ありがとうございました。

 もう質問を終わりますが、小さな事業所とかあるいは体力のない自治体に対する支援、こうしたところをしっかりとやっていくことによって国民の医療の質の向上が図られるというふうに思っております。

 ぜひとも力強く推進をしていただきたいということとともに、冒頭申し上げた、歯科における骨粗鬆症のスクリーニング、これは私は前任の赤松正雄前衆議院議員から承った宿題でございます。ぜひとも大臣も力強く応援をいただきたいというふうにお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

石崎主査代理 これにて濱村進君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩分科員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 きょうは、ちょっと冒頭、通告していないんですけれども、先週の予算委員会で通告して質問漏れがあった点でちょっと、せっかくの厚労省所管の第五分科会ですので、大臣、わかる範囲でお答えいただければ結構ですので、お願い申し上げたいと思います。

 それは、安倍総理の新三本の矢のうち二つ、厚労分野といいますか社会保障分野といいますか、介護離職ゼロ、そして希望出生率一・八という、こういう的が、目標が掲げられているんですけれども、今回の裁量労働制の不適切データでも指摘されていますように、政策立案というのは、精緻なデータあってこそ正確な政策誘導ができますし、また政策の進捗ぐあいも確認できるという、これは至極当然のことなんですけれども、こういったことがこの大きな大目標でもしっかりとなされるのかどうか、そういう問題意識で、何点かだけ確認したいと思います。

 介護離職ゼロ、これは大変すばらしい私は看板だと思っております。

 そこで、ちょっと一点確認したいんですけれども、この介護離職といった介護には、看護を理由に離職する方は、看護、介護ではなくて看護ですね、看護を理由とする離職者というのは含まれますか。

加藤国務大臣 介護等を含めた離職者の中に、二つぐらい、たしか統計があったと思うんですけれども、私どもが使っている、あの十万人と申し上げている中には、介護と看護を含めて考えている、こういうことでございます。

黒岩分科員 そうですね。これは重要なんですよ。

 私が手にしているだけでも三つのデータがあります、調査が。今大臣のおっしゃった、平成二十四年の、これは総務省の就業構造基本調査、これは介護と看護を理由とする離職者ということで、十万人を超える。これは閣議決定にも使っている数字ですけれども、これが十・一万人と出ているんですよね。

 それで、そのほかにも、大臣もおっしゃったように、これは逆に御省の、厚労省がとっているデータは、これは直近で平成二十七年、二〇一五年のものですと、これは厚生労働省の雇用動向調査によると、介護、看護の理由で離職した人が九万人と出ているんです。このデータが、実は平成二十四年、これは総務省の同じ平成二十四年までは、これは介護だけだったんですよね、介護だけだったんですよ。介護だけでとると六万六千人で、翌年、介護と看護を合わせると九万三千人と、二万七千人ぐらいふえる。これは臆測ですけれども、やはり看護を理由にすると二万七千人ぐらいふえるわけですね。

 そうしますと、私が申し上げたいのは、介護離職ゼロといっても、ではこれから、これは二〇二〇年代初頭までにゼロにするというときに、この統計では、介護だけでゼロかどうかわからないわけですよ。例えばゼロにならなかった、総務省の調査で何万人か残ったというときに、このときに、ゼロにはならなかったけれども看護は入っていなかったんだよ、もともと介護離職には看護は入っていなかったと言われちゃうと、いやいや、この残っている三万人は看護かもしれない、数字はゼロになっていないけれども、介護はゼロになったとかならないとか、こんな議論になっちゃいますので、あくまでも介護、看護を含めてゼロにしていこうという目標ですよね。

 そこで、もう一つ、これは大臣、わかる範囲でいいんですけれども、確かに、介護離職、介護看護離職ゼロ、なるべく減らしていきたいというのはよくわかるんですけれども、中には、やむを得ず離職するわけではなく、みずから自発的に、例えば親御さんと長い時間を一緒に過ごしたいとか、そういう理由で離職される方、こういう方もいると思います。こういう方も、この介護離職ゼロには含まれているのか。すなわち、自発的に離職する人もゼロにするという政策方針なのか、この点についてお聞かせいただけますか。

加藤国務大臣 これは、私も担当大臣としてかかわったときの記憶を今思い出しながらやらせていただいているんですけれども、たしか、このときには、今十万とかいう数字がベースにありながら、その十万の人全てが、何といいますか、仕事を継続したいんだけれども、いろんな状況が整わないからやめた方と、そういう状況は例えばあるけれども、もう私は自分の父や母のために介護したいんだという、自発的なというんでしょうかね、そういうのがあるとすると、前者をベースにたしか計算をしていた、こういうふうに記憶をしております。

黒岩分科員 私もそうお聞きしています。

 ただ、ここで問題となりますのが、この総務省の調査の調査票というものを私は確認しました。そうしますと、離職した方の前職をやめた理由という欄は、これは介護、看護のためにやめるというチェックマークがあるだけで、自発的かやむを得ないかはわからぬわけですよ。わからぬのですよ。

 ですから、細かなデータの話ですけれども、でも、データというのはやはり重要ですからね。今申し上げたとおり、この総務省の調査統計では、先ほどの御省の平成二十四年までの調査でしたら、どっちにしろ、自発的かやむを得ないかはわからないんですけれども、介護、看護を理由としてというだけがチェックマークなんで、結果的には、仮にゼロにならなくても、これが自発的な方なのかやむを得ない方なのかということが吟味できないという、このことを指摘しておきますので。

 私が聞く限りでは、今、平成二十九年、今年度、昨年調査していると聞いていますけれども、これも平成二十四年と同じ調査票だと伺っていますので、そうしますと、今大臣がおっしゃった、政策目標とすれば自発的にやめた方は含まれないんだとおっしゃっても、実際のデータではこれが表にあらわれない、こういうこともあるということを、ちょっと省内でももんでいただきたいと思います。

加藤国務大臣 もうこれは本当に、ちょっとかすかな記憶で恐縮なんですけれども、何か、今言った自発的か非自発的か、あるいは、たしかもう少し幾つか理由があったような気がしますけれども、何かそのデータがどこかにあって、その今言われた、この調査のデータかどうかはちょっと定かではないんですけれども、それでたしかやっていたような記憶がしますが、ちょっと委員の指摘を踏まえて、その点も含めて確認をさせていただきたいと思います。

黒岩分科員 いや、私、この調査票のコピーを持っていますけれども……(加藤国務大臣「その表、それ以外の、何か、たしか調査があったような記憶がする。ごめんなさい」と呼ぶ)そうですか、わかりました。これは厚労省の事務方に聞いて、前回と同じものですか、この調査票ですかと確認して、そういうことで、私、質問しているんですけれども、またさらなる調査の仕方等あったら、またそれは私の方にも教えていただければ、進捗状況をしっかりと確認できる。

 私が申し上げたいのは、やはり、データ、統計というものと政策立案というのは本当に表裏一体で進んでいくということの一つを申し上げました。

 本当は希望出生率一・八もいきたいんですけれども、これは時間がかかるので、それでは、きょうも朝から議論されています裁量労働制に関する実態調査、この点について、いろいろと不明な点がありますので、きょうは分科会ということで、細かなところもお聞きするかもしれませんけれども、労基局長も含めて、お答えをいただきたいと思います。

 それでは、これは改めて確認しますけれども、きょうも議論になったかどうかはちょっとわからないんですけれども、きのう、山井議員の指摘で、裁量労働者の、最長のものでも平均的なものでもいいんですけれども、異常に一日の労働時間が短いというデータが出ています。報道されているのは四時間以下ということですけれども、実際に一時間以下を見ても、専門業務型と企画業務型を合わせて、ぱっと目算して二十七件あるわけですよ。これは不適切なデータとお考えなのか、この点についてお聞かせいただけますか。

加藤国務大臣 もし仮に八時間が前提だとすると、随分変だなというのはそのとおりだと思いますが、ただ、その前提がどういうふうになっているのか。例えば、八時間労働以外でもいろいろな形の裁量労働制、割と短いことでやる場合も多分あるんだろうというふうに思います。ただ、これはちょっと確認していないからわかりませんけれども。

 ですから、その辺を含めて、このデータ、それから、この上の最長と平均がどういうふうにそれぞれなっているのかとか、それを見て精査する必要があるということで、私もきのうの夜、そういう指摘が山井委員からあってという話を聞かせていただいて、具体的な数字はけさ見たんですけれども、それを踏まえて、今申し上げた点等々を、しっかりチェックできるところはチェックするようにということで、今作業を命じているところでございます。

黒岩分科員 ではきのう、担当課長さんは一時間と聞いて、にわかにイメージできないと。労働政策の、行政の専門家の方は、やはり今までの経験に倣って考えると到底想像すらできないと。それに対して、大臣は所管大臣であり、やはり政治家として、肌合いですよ。一時間以下というのは、これはちょっとおかしいぐらいの話じゃなくて、やはり不適切と。これはやはり、早いうちに大臣の見解として述べた方がいいと思いますよ。

加藤国務大臣 いや、ですから、八時間を前提としていれば、これは先ほど申し上げたように、考えられないなというふうに私も感じたわけでありますが、ただ、ケース、ケースということもございますから、そこはやはり調べた上で申し上げないと、私の感覚だけで申し上げるのは必ずしも適当ではないんだろうと思います。

黒岩分科員 感覚というのは、私もちょっと言葉が適切じゃなかったかもしれません。

 これで、少なくとも、一般労働者の法定外時間等の、一日四十五時間オーバーとか、こういった不適切データがあったということは、これは認めたわけです、お認めになられたわけですから、これは裁量労働者についてもデータが不適切となると、もう二本とも崩れて、私は、この調査結果自体が根底から土台が覆される。そうなりますと、私は、この調査結果そのもの自体も撤回しなければいけないということになると思うんですね、もう一般労働者も裁量労働者も、どちらも不適切データが発見されたとなれば。これは大臣、どういう御見解を、御認識をお持ちですか。

加藤国務大臣 一般の労働者についても、今、精査をさせていただいております。今、裁量の方も御指摘をいただいてやっておりますし、また、それ以外の観点からも今データを洗わせていただいておりますので、その精査を見ながら、そして、その結果がお示ししたデータにどういう形で影響を及ぼしているのか、その辺もしっかり見きわめていかなきゃいけないと思いますが、まずは精査をさせていただくということだというふうに思います。

 一般についても、きのう、どなたかはちょっと忘れましたけれども、これだけかという御指摘があったので、いや、これ以外にもある可能性があるということで、今、精査させていただいているということは申し上げたところでございます。

黒岩分科員 そうしますと、大臣、答弁の中で、調査結果の撤回はともかく、この調査結果については、これは何も変わることはないと。不適切なデータが出て、データ自体は誤っていた、そして不適切なデータの部分については撤回すると。ただ、労政審からの答申結果については、これは揺るがない、こうおっしゃっていましたよね。その根拠は何ですか。

加藤国務大臣 労政審においては、ここへ出させていただいたデータももちろん参考にしていただいていると思いますけれども、それ以外の、委員のさまざまな御認識とか、あるいは委員それぞれお持ちだったお考えとか、そういったことが議論をされた結果として建議がなされ、そしてそれを踏まえた要綱を出させていただいたところ、おおむね妥当ということをいただいたわけでありますので、その流れというものはしっかり受けとめて、今、法案の作業をさせていただいている、こういうことでございます。

黒岩分科員 そうなんですよ。大臣、何度となく、労政審からの答申がおおむね妥当だから、結論は、方向性は揺るがないんだ、こういう趣旨の答弁をされていますけれども、これで、一くくりで労政審の答申といいますけれども、各分科会、全部で、今問題となっている裁量労働制を扱っている労働条件分科会、そのほか五つあるんですね。安全衛生分科会、職業安定分科会、雇用環境・均等分科会、あとは読みませんけれども、同一労働同一賃金部会と、五つから答申、報告が上がっています。この中で、委員からの反対意見が付されている答申は幾つあって、どれですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の中で、労働側の委員が付した形でおおむね妥当とされたものは、労働条件分科会の報告でございます。

黒岩分科員 大臣、これは五つの分科会の答申とも、おおむね妥当なんですよ。五つともおおむね妥当。ただし、労働条件分科会においては、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度について、反対意見が付されているんですね。反対意見が付されていようがいまいが、同じくおおむね妥当なんですよ。そして、今言ったように、おおむね妥当の中では、かなりグレーに近い妥当性だということが五つの答申からも見てわかると思います。

 山越局長に聞きますけれども、反対意見が付されようが付されまいが、同じくおおむね妥当ということだったら、何をやってもおおむね妥当じゃないですか。おおむね妥当に何か違いがあるんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような労働側の意見が付された上で、会全体としては、おおむね妥当ということで意見がまとめられたということだというふうに考えます。

黒岩分科員 局長、もう一回確認しますよ。

 では、反対意見が付されようが付されまいが、どっちにしろ、おおむね妥当なんですね。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働政策審議会の分科会の報告としておおむね妥当ということについては、それは同じ性格のものだというふうに思います。

黒岩分科員 大臣、これだけ強い反対意見があろうがなかろうが、結論は変わらないわけですから。

 では、局長、もう一つお聞きしますよ。

 労政審に諮問して、結果としての答申で、妥当、おおむね妥当、一部を除き妥当、つまり妥当ですね、全部。この三つ以外の答申が返ってきたことはありますか。

山越政府参考人 ちょっと今にわかには全てのものが思い出せませんけれども、妥当、おおむね妥当とされているものが多いと思います。

黒岩分科員 山越局長の長い労働行政のキャリアの中で、今言った妥当ではない答申の記憶はないということでよろしいですね、今現時点の記憶で。

山越政府参考人 おおむね妥当とされることは、それはあると思います。

黒岩分科員 聞いたことに答えてください。局長の今現時点での認識で結構ですから、妥当、おおむね妥当、一部を除き妥当、つまり妥当以外の答申があったというその記憶、認識はあるかないかを聞いているんです。ありますか。

山越政府参考人 ちょっと今にわかには思い出せません。

黒岩分科員 さかのぼって調べてみてください。

 ただ、言えることは、山越局長のキャリアというのは、もう三十年とかですよ。この間、妥当以外の答申がないんですよ、大臣。

 その中で、さっき申し上げた、データにこれほど不適切な内容が出てきて、そしてこれを出発点として、この調査を出発点としてこの労政審議会の分科会の議論が始まって、得た結論というのは、やはり今申し上げたとおり、結論がおおむね妥当だから結論に変わりはないんだと言いますけれども、その結論自体もかなりありきのものであるし、今言ったように、反対意見が付されようがどういう議論であろうが妥当以外出てこないという、こんなことでは、やはり私は、この結論自体を何か正当性にして、調査結果も、これも揺るがないみたいな議論は、まるきりパラドックスな、矛盾を生じるものだ、こういう思いで聞いておったという、まあ、認識にとどめておきますけれども、それほど胸を張っておおむね妥当と正々堂々と正面切るような、そんな結果ではなさそうだなという、では大臣。

加藤国務大臣 一言だけ言わせてください。

 もちろん、諮問、答申の前に、建議をいただいていますね。建議において、こういうことが適当である、もちろん労働側の意見も付されています。建議の段階で、中には議論が合わなくて結論が出なかったというのも、これまであるというふうに私も承知しておりますから。

 今回は、建議の段階で、もちろん労働側からは反対はあるけれども、こうした裁量労働制について申し上げれば、こういったことを適用することは適当だ、こういう建議をいただいて、そしてそれにのっとって要綱を出させていただいているわけでありますから、その建議にのっとっている範囲においては、おおむね妥当ということは一つの流れになるのではないかなというふうに思います。

黒岩分科員 答申のその文言で、おおむね妥当ということだけで、今、分科会の委員の先生の中にも、もともとの基礎となるデータが違うなら審議をやり直したいという話が出ている。

 ですから、やはりこの出発点となるデータが不適切であれば、当然審議も結論も変わり得るということを改めてこれは強調し、今後この議論はずっと続くと思いますので、私はその一つの、今回の五つの分科会、一つだけ反対意見が付されても、結局おおむね妥当だとなっているという、この点について指摘をさせていただきました。

 もう時間がないので。

 それで、私、先週の予算委員会でも繰り返しお聞きしましたけれども、この不適切データが、ないしはあの調査票、付表と言われる調査票、最長の一日をとっていたという、あの付表が、厚労省の担当課長が認識したのは二月一日で、局長が認識したのは報告が上がった二月二日だと。そして、大臣に報告が上がったのは二月七日ということで、五日間もこの間、時間を費やしているということですね。

 ちょっと局長にお聞きします。

 これは、二月の二十日火曜日に予算委員会の理事会で私どもがいただいた文書です。これには、いきさつ、経緯と書いてある中で、手元にありますか、二月二十日の労働基準局の発出した文書です。二月一日に厚労省の担当者が、調査票の一般労働者の記入欄が一日の時間外労働の最長時間となっている一方で、裁量労働制については一日の時間をどのように選ぶか記載がないことを把握、こう書いてありますね、あえて読ませてもらいましたけれども。

 そこで、次、二月七日ですよ。では、大臣に何が報告されているかというと、ここに書いてありますね、データの整合性について野党から指摘を受けていること、これは正直言ってどうでもいいことです。これは大臣だって、委員会に出ていますから、指摘を受けていることぐらいはよく御存じです。この後です。では何が報告されたかというと、調査票の一般労働者の記入欄が一日の時間外云々云々、記載がないことを報告と。

 これは一字一句、二月の一日に担当課長が把握したことと、二月七日に大臣に報告したことが一字一句一緒なんですよ。ということは、局長、二月一日に担当課長が認識した事実と大臣に報告した事実、これは全く一緒という理解でいいんですか。それとも、違うんだったら何が違うのか、その点をはっきりさせてください。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この調査票でございますけれども、一般労働者の記入欄が一日の時間外労働の最長時間となっている一方で、裁量労働は一日の労働時間をどう選ぶか記載がなかったところでございます。そこで、裁量労働制につきまして、一日の労働時間の状況について調査、どうしているかということを調べ始めたわけでございまして、そうしたことを二月七日の時点では、これは野党の方のお話もございましたので、そのこととあわせて御報告をさせていただいたということでございます。

黒岩分科員 そうしたことって何ですか。

山越政府参考人 裁量労働について、一日の労働時間をどう選ぶか記載がなかったわけでございます。そこで、裁量労働制で一日の労働時間の状況の調査方法などを調べ始めたわけでございます。そのこととともに、データの不整合についても指摘がされ始めておりましたので、そういったことについても報告していたかと思います。

黒岩分科員 これは理事会に提出された文書ですよ。局長、二月一日に把握した事実と、二月七日に大臣に上げた報告、この事実と、これは全く一言一句同じことを、私たちに報告しているんですよ。何度もやりとりしていますよ。ずっと大臣も、何で総理に上げなかったかといえば、裁量労働者の平均な者の状況、これについてがわからないから、わからないから総理に上げなかったと言っていますけれども、では、この二月の一日から七日の間に、基準局の報告では一字一句変わらないことが指摘されているわけですけれども、何か、今申し上げた、新たな事実がこの間に判明したんですか。大臣への報告で、何か付加されたものがあるんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 一日の労働時間の状況の調査方法について調べ始めていたわけでございますけれども、そのことについて、この間に新たにわかったことはなかったわけでございますけれども、他方で、野党から、そのデータの不整合などもございましたので、指摘もございましたので、そういったことについては御報告していたかと思います。

黒岩分科員 そうじゃないですか。ずっと言っていた、裁量労働者の平均的な者の状況などは何も変わっていない、何も変わっていないですよ。そうでしょう。把握した事実としては何も変わっていないですよね、二月一日と二月七日の時点で。逆に、何も変わっていないのに、五日間も、局長が知ってから、何も上げない。でも、何も変わっていないのに、二月の七日になったら上げた。これはどういう理由なんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この間に野党からの指摘も受けておる状況になってきておりましたので、そういうことも踏まえまして報告をしたということでございます。

黒岩分科員 野党からの指摘なんというのは、一月二十九日の予算委員会で、もう指摘もされて、総理からも答弁があって、その後もやりとりしているわけですから、その状況なんて、大臣自体も百も承知ですよ、予算委員会に出ているんですから。二月二日に局長が把握した事実と二月七日の時点で報告した事実は何も変わらないでしょう。何も変わらないのに、作業だ確認だとか言いつつ、結局はそのまま報告を上げない。こういったことを我々は隠蔽体質だと言っているわけですよ。

 しかも、その後、大臣が総理に上げるまで十一日間もかかる。そのきっかけも、二月の十四日の午後にようやく兵庫労働局との疑義照会があったと。これは、この後また、きちっと詰めていきますけれども、こんなまやかしごと、時間がかかったことについての釈明ばかりが先に語られますけれども、今申し上げた予算委員会理事会での報告についても、一字一句変わらない状況だったということは、これは明白なわけですから、事実が何も変わらない中、何も報告も上げない。

 事実は変わらないけれども、あるとき、もうここまでいろいろなことがわかってきたのに、大臣に上げずに、大臣もその間、全く今までと同じトーンで答弁してきたわけですよ。こんなことは、到底あってはならないし、考えられないということを、もう時間ですので、指摘して、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

石崎主査代理 これにて黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、三ッ林裕巳君。

三ッ林分科員 自由民主党の三ッ林裕巳でございます。

 本日は、第五分科会での質問の機会をいただきまして、大変光栄に存じております。

 私、医師でありまして、これまで、地域医療、また大学病院を中心に医療に携わってまいりました。医師の視点、またその経験を通して、これから質問をさせていただきたいと思います。

 まず、児童虐待につきまして質問させていただきたいと思います。

 児童虐待への対応については、児童相談所や市町村だけでなく、医療機関における対応も大変重要であると考えております。

 日本小児科学会では、虐待で死亡した可能性のある十五歳未満の子供が全国で年間三百五十人に上るとの推計をまとめております。虐待を受けた子供については、速やかに医療機関での診断を受けることが必要であり、性的虐待を始め虐待を受けた子供が二十四時間医学的な診断を受けることができるセンターの設置を検討している私立大学もあると伺っております。

 受診した子供が児童虐待を受けた疑いがある場合には、医療機関は児童相談所に通告を行うこととなりますが、こうした虐待を受けたかどうかについての医学的診断に加え、引き続き医療行為が必要な場合には、児童相談所から一時保護を委託されるケースもあるなど、通告した後の支援においても重要な役割を果たしております。

 このため、児童虐待の対応に当たっては、医療機関と児童相談所等が情報を共有して、連携して子供に対する支援を行うことが重要と考えておりますが、厚生労働省におきましてどのような取組を行っているか、お答えいただきたいと思います。子ども家庭局長にお伺いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待防止の取組を進めるためには、先生今御指摘いただきましたように、医療機関と児童相談所あるいは市町村との情報連携を進めるということが大変重要であるというふうに私どもも認識をしてございます。

 平成二十八年の児童福祉法改正におきまして、児童虐待の兆しあるいは疑いを発見しやすい立場におられる医療機関など関係機関の方々が、児童相談所などから情報の提供を求められた場合、児童相談所から求められた場合に、原則として、個人情報保護法や守秘義務に違反することなく、児童虐待に係る情報を提供できるということを法律上明確にさせていただきました。

 また、実際に、市町村におきましては、要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協と言われる協議体におきまして、子供や児童虐待にかかわる関係機関として、児童相談所に並んで、医療機関、そして警察、保育所、学校などが、地域のお子さんの保護あるいは支援にかかわる役割分担や情報共有を行うということになってございます。この要対協、九九%ですので、ほぼ全ての市区町村に設けていただいております。

 国としても、この間、今先生御指摘いただきましたような問題意識から、日本医師会を始め関係者の方々の理解を深めていただけるように、この連携の重要性を働きかけるとともに、いろいろな機会を設けて周知をしてまいりました。

 今後とも、この虐待防止に向けた取組を進めさせていただきたいと考えてございます。

三ッ林分科員 ありがとうございます。

 次に、医療機関に受診した際に、児童虐待の疑いがある事例があった場合、診察した医師は児童相談所に通告いたしますけれども、通告しても児童相談所の職員がすぐには病院に来られない場合があります。児童相談所の職員が病院に来るまでに時間がかかると、保護者と医師との間でもめごとになる場合もあり、医療機関で対応に苦慮することがあるという声も聞いております。

 このような問題を解決して、迅速に児童の安全を確保するためにも、児童虐待に携わる医師等に一時保護の権限を与えるなど、医療機関側の裁量が必要ではないかと思っております。

 これまで、四十八時間以内で対応するということが決めてありますけれども、米国を始め、二十四時間での児童相談所の対応、そういった早急な対応が決められておりますけれども、やはり、医師にそういった一時保護の権限、これはあくまでも、その医師が児童虐待に精通している、そういった医師に限って認定を行って一時保護を行う、そういった取組についてはいかがでしょうか。お伺いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、一時保護の場合は、児童相談所が行政機関として子供の安全確保等を図るために処分として行っております。そういう意味では、適切な執行あるいは迅速という意味でいえば、虐待通告があって安全確保が必要な場面であれば、速やかに児童相談所が対応して一時保護を行う。今お触れいただきましたように、私どもも従来、手引のような形で、その運用について徹底をしてございます。

 また、さきの御質問にもありましたように、児童相談所が判断をするに当たって、特に身体虐待の場合などについては医学的評価が非常に重要でありますので、その医師の判断を十分に踏まえて、連携をとって迅速にするということも御指摘のとおりかと思っております。

 こういう意味から、私ども、医療機関からの通告に対して児童相談所が迅速に対応することがまず必要だろうというふうに思っておりますので、その上で、一時保護を行う、医師との十分な連携をするということで、このあたりの考え方につきましては、緊密な連携として、昨年八月の全国児童福祉主管課長会議、あるいはことし一月の都道府県の関係部局長会議において周知をしております。

 その実態なども、私ども注視をさせていきながら、このような取組について、今後もあらゆる機会を通じて働きかけてまいりたいと考えております。

三ッ林分科員 ありがとうございます。

 ある私立大学の病院では、児童虐待センターをつくろうじゃないか、そういった熱い気持ちのある小児科の教授がおりまして、それを中心に、大学も、ではそういったセンターをつくろうと。そういったときに、やはり行政として児童相談所、これが入るのは本当に必要だと思いますけれども、一時保護、迅速性、大学がそういったセンターを自分でつくろう、そういった思いに対して、専門の、児童虐待に精通した小児科医師が子供の児童虐待に対応していくときに、やはり円滑に進めていくためにちょっと今後検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、医科歯科連携のことについてちょっとお話を、質問させていただきたいと思います。

 健康な歯を持ち続けることは、全身の健康保持のためにも大変重要であります。さまざまな角度から歯科の取組を推進していく必要があると思います。

 保険者が実施する特定健診、保健指導、いわゆるメタボ健診ですけれども、来年度、平成三十年度から歯科の位置づけが明確化されまして、法定義務の特定健診、保健指導が位置づけられることとなりました。

 この点につきまして、昨年二月に、同じこの予算委員会の分科会におきまして質問させていただきました。厚生労働省から、平成三十年度からの特定健診、保健指導の見直しにおいて、特定健診の問診時の質問票に新たに歯科に関する項目を加えることで歯科の適切な受診勧奨につながっていくこと、また、歯科医師が食生活の改善指導を行う場合、研修の受講の要件を不要とすること、こういったことで歯科医師が保健指導に取り組みやすくなることについて御答弁をいただきました。本当にありがたいことだと思います。

 また、特定健診は、平成二十七年度時点で二千七百万人が受診しております。今回の見直しは、平成二十年度の制度の創設以来初めて歯科に着目した画期的な見直しが行われるものと思います。引き続き、来年度からしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 そこで、全身の健康と歯科との関係につきまして、特定健診による予防的な取組だけではなくて、病院における、医科と歯科の連携による入院患者への口腔管理も重要であると考えます。

 信州大学や千葉大学、東京警察病院等の研究、そういったことも報告されておりますけれども、がんなどの全身麻酔による手術を行う患者に、歯科医師や歯科衛生士による手術の前後の口腔管理、いわゆる周術期の口腔機能管理を行うと、手術後の合併症の予防などにより、在院日数の短縮等の効果があると言われております。これを更に推進するべきであると考えております。

 そこで、周術期の口腔機能管理について、今回診療報酬改定があったわけですけれども、平成三十年度診療報酬改定において、この取組についてどういった対応がなされているのか、お伺いいたしたいと思います。よろしくお願いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 周術期の口腔機能管理につきましては、従来より先生からその重要性を御指摘いただいているところでございまして、私どもも、手術後の合併症の予防などの観点から、この周術期の口腔機能管理はまことに重要であるというふうに認識をいたしております。

 このため、前回の平成二十八年度の診療報酬改定におきましては、周術期の口腔機能管理を推進する、こういう観点から、歯科医師がいらっしゃる病院であっても、地域の歯科診療所の歯科医師の先生がその病院を訪問して口腔機能管理を行った場合、この場合にも、周術期の口腔機能管理料や歯科訪問診療料を算定できることとしたところでございます。この場合に、あわせて、周術期の専門的口腔衛生処置などの関連する点数の引上げも実施させていただいたところでございます。

 その上で、御質問ございました今般の平成三十年度診療報酬改定でございますけれども、まず第一に、周術期の口腔機能管理の対象の患者さんに脳卒中の手術後の患者さんなどを追加いたしました。また、手術前に口腔機能管理を実施できない、こういう場合もございます。そういった脳卒中の患者さんに対しましても、手術後早期に口腔機能管理を開始した場合に、関連する点数を算定できる、こういったことも明確化をさせていただいたところでございます。

 引き続き、この周術期の口腔機能管理などにおきます医科歯科連携を含めまして、適切な歯科医療が提供されるように、関係者の御意見も踏まえまして、しっかり取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。

三ッ林分科員 ありがとうございます。

 先ほど私、質問で、信州大学、千葉大学、東京警察病院と言ったと思うんですけれども、これは間違いで、大阪警察病院でした。この三つの施設の共同研究で、やはり本当にしっかりとしたエビデンス、周術期にしっかりと術前術後に口腔機能管理をやると病院日数が減る、そしてまた予後がよいということで、これは患者さんのためにも、また医療費削減のためにも大変資すると思います。

 そして、健康寿命を延伸するために、こういった歯科の口腔保健の取組が必要だと思います。厚生労働省内においても、省令室に歯科口腔保健推進室が上がりましたけれども、本当にこれは今後の歯科医療のために大変ありがたく、また、私は、これまで歯科医療にも医師としてかかわってきた、病院でかかわってきたこともあって、本当にこれは今後も進めていただきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 次の質問に入りたいと思います。最後の質問なんですけれども、周産期医療についてちょっと質問させていただきたいと思います。

 国民が安心してお産ができる医療環境を整えることについてお話しさせていただきます。

 安心して子供を産み育てる環境づくりの推進については、これまでに、健やか親子21や、子ども・子育てビジョンを始め、平成二十八年のニッポン一億総活躍プランなどでも取り上げられてきたと承知しております。

 政府は、希望出生率一・八を目指して取り組むとしており、女性活躍のための支援や、保育サービスの確保を含めた子育て環境の整備、教育環境の整備、不妊治療の支援などとともに、周産期医療は少子化対策に強くかかわるため、その体制整備が重要なことは申し上げるまでもありません。

 過去には東京都で母体死亡事例があり、周産期医療と救急医療との連携が求められたことを記憶しておりますけれども、そのほかにも、リスクの高い妊娠、分娩に対する医療体制の整備、新生児集中治療室、NICUや、その後方病床である回復期治療室、GCUの整備、周産期医療を担う産婦人科医や小児科医師の確保、周産期医療に関する事業の見直しなどに取組がなされたと承知しております。これらはいずれも重要な課題と思われます。

 これらの取組にもかかわらず、全国を見渡しますと、地域によっては、お産を扱う施設がなく、産婦人科医もいない二次医療圏があると聞いております。周産期医療分野における医療提供体制については、現在においてもなお全国的な課題となっているところであります。

 そこで、私の地元である埼玉県の現状について御紹介申し上げます。

 資料をお配りさせていただきましたけれども、この一枚の資料でありますけれども、上の段がハイリスク分娩の増加、これは昭和六十二年に比べても一・五倍に上がっております。また、出生数は低下している、そういった状況にあります。要するに、低出生体重児が一・五倍ふえている。そして、分娩取扱施設、これを見てみますと、出生数も低下しているんですが、更にそれを上回って病院や診療所の低下が激しいということであります。

 私はこれに大変危惧をしておりまして、これは埼玉県の産婦人科医会の先生方からお話を伺ったんですけれども、埼玉県内のお産を扱う施設に、十年後もお産を扱っているか否かアンケートを行ったところ、八十四施設のうち診療所を中心として約二十施設が、十年後はお産を扱っていないと回答いたしました。実に四分の一の施設です。

 また、人口の多いさいたま市を中心に周産期母子医療センターが多く配置されておりまして、これは埼玉県、七百三十万人県民ですけれども、地域偏在が顕著であります。産婦人科医の総数が少ないとよく聞きますけれども、都道府県の中にも医師の偏り、地域偏在があります。

 これは、恐らく埼玉県だけの話ではないと思います。日本全国で同様のことが起こっていると考えます。このような状況において、地域で安心してお産ができるでしょうか。高度な医療が必要な妊婦や新生児に対応できるでしょうか。

 日本は、妊産婦死亡率や周産期死亡率、新生児死亡率が低く、世界的に見ても有数の成績であります。周産期医療のレベルがここまで上がってきたことは、周産期医療を担う現場の医療スタッフの尽力とともに、体制整備を進めてきた成果と考えますが、お示ししたように、ハイリスク分娩が増加している中で、お産を扱う施設は減少し、産科を担う医師の地域偏在が進んでいます。世界有数の成績を維持するとともに、国民が安心して子供を産み育てられる環境を維持していくためにも、また、最初に申し上げましたが、少子化対策としても周産期医療の体制整備が重要であり、喫緊の課題と考えます。

 このような状況の中において、周産期医療に対する現在の取組状況、こういった地域偏在や周産期医療に対する厚生労働省の取組、今後の対策をお聞かせ願いたいと思います。よろしくお願いします。

    〔石崎主査代理退席、主査着席〕

武田政府参考人 お答えをいたします。

 ただいま議員の方から埼玉の状況について御紹介があったわけでございますけれども、全国的に見ましても、やはり、出生の数の減少に伴いまして、産科、分娩を取り扱う施設の減少傾向が見られるところでございますし、また、これも御指摘をいただきましたように、二次医療圏で見た場合に、二次医療圏の中には産科の取扱施設がないところもあるというような報告もございまして、地域で安心して子供を産み育てることができるよう、周産期医療提供体制を確保することはやはり非常に重要な課題となっているものと承知をしております。

 このため、厚生労働省におきましては、まず、高度な医療を提供する周産期母子医療センターの新生児集中治療室、いわゆるNICUでございますとか、その後方支援病床などの整備を行うとともに、NICU長期入院児などが在宅に移行した際に、保護者の要請に応じて一時的に受け入れる病院の整備などを行っているところでございます。

 また、身近な地域でお産が行えるよう、分娩施設が少ない地域におきまして、新規に分娩施設を開設する場合でございますとか、病院に産科等を増設し新規に分娩を取り扱う場合の施設設備整備、それから、産科医の不足する地域の医療機関に都市部から産科医を派遣する場合の派遣手当、こういったところにつきましても助成を行っているところでございます。

 さらに、産科医、小児科医の処遇を改善し、その確保を図るため、地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして、分娩件数に応じた医師への手当や、NICUへ入室する新生児を担当する医師への手当などの費用について、財政支援を行っているところでございます。

 加えまして、ただいま、地域での医師の偏在、診療科での医師の偏在という点についても御指摘がございましたけれども、地域や診療科の医師偏在の是正のため、昨年末でございますが、平成二十九年十二月に、医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会で取りまとめが行われましたので、私ども、この取りまとめを踏まえまして、地域の医師の偏在を可視化し、地域で必要な医師確保が可能となるような総合的な医師偏在対策を盛り込んだ医療法、医師法の改正法案の提出に向けまして、現在、検討、調整を行っているところでございます。

 引き続き、これらの取組を通じて、地域においても安心して子供を産み育てることができるような周産期医療提供体制の整備に、今後とも力を入れて取り組んでまいりたいと思っております。

三ッ林分科員 ありがとうございます。

 第七次の医療法、医師法の改正、今、党内でも議論されておりますけれども、一つの視点、この産婦人科、周産期医療をとってみますと、やはりチームで動かないと。例えば、私が示した資料のように個人開業医の方は減ってくる。やはり拠点病院をしっかりと、この周産期、整えなくちゃいけない。そういった周産期の拠点病院を整えるためには、やはりチームで、当直体制、日勤体制、分娩、こういった対応をするために七、八人がどうしても一つの施設に、医師が必要です、産婦人科医が。それをこの医療法、医師法の改正の中で今検討されております。

 こういった人を、医師を送る、そのためにはやはり大学病院を拠点として医師派遣機能を持っていただく、そうしないとそういった拠点病院の整備もできないと思うので、医師個人の、地域に行かれる方、そういった方にいろいろな手当てを行うこと、これもとても大事だと思いますが、ぜひ、こういった周産期はチームでやっているという視点をお考えいただきまして、御検討していただきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

星野主査 これにて三ッ林裕巳君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井分科員 それでは、三十分間、質問をさせていただきます。

 きょうも、多くの過労死の家族会の方々がお越しをいただいております。過労死の家族の会の方々は、非常に残念ながら、お亡くなりになられた御家族の方々は生きては戻ってこないわけではありますけれども、同じような無念の死を経験する人が絶対出ないように、また、同じように地獄の苦しみを味わう家族が出ないように、そういう思いで連日国会にもお越しをくださっております。

 そういう方々の思いも含めて、加藤大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほど、一時半ぐらいから、野党の有志の議員数人で厚生労働省に行かせていただきました。事前に厚生労働省にアポをとって、受け入れていただきました。

 地下の倉庫で、段ボール箱三十二箱、今回の原本、調査票がある倉庫に行かせていただきました。そして、その後、労働基準局がある階で三十二箱段ボールを見せていただき、その中の一箱をちらっとあけていただきまして、中に、黒塗りされていない今回のこの記録票の原本ですね、これがあることを私たち議員の目で確認をさせていただきました。

 最初に申し上げますが、私たちは別に、スキャンダルの追及とか揚げ足をとる気は全くないんです。私たちが非常に今回怒りを感じ、疑問に感じているのは、この三十二箱の段ボール、今回の厚生労働省の調査結果から、裁量労働制は一般の労働者よりも労働時間が短いという虚偽のデータが導き出され、それを安倍総理、加藤大臣が国会でも答弁をし、裁量労働制拡大を推進する一つのもととなっているんですね。私たちの立場からいうと、この三十二箱の調査票、約一万社のこの調査票というのは、人の命を奪いかねない、労働者の命を奪いかねない記録票なんですよ。

 私たちは断じてこういう状況を許すわけにはまいりませんし、おまけに、その三十二箱から虚偽の結果が導き出され、さまざまな間違いもこのデータに見つかっているというところなんですね。

 それで、私たちが行って一番疑問に感じたことは、私も、民主党政権、二〇〇九年のころ、長妻厚生労働大臣のもと、厚生労働大臣政務官をしておりまして、労働分野も担当しておりました。ですから、このような厚生労働省の調査結果の記録票原本は地下の倉庫にあるということぐらいは大体推測はつきます。ですから、この虚偽データ問題が明らかになった一月下旬、そして二月の上旬、普通に考えたらすぐにわかったんじゃないかと思うんです。

 そこでお伺いしたいんですけれども、先ほど地下も見て、段ボール三十二箱があった地下の倉庫も見ましたけれども、加藤大臣、このデータがおかしいとわかった瞬間に、この原本を見せてくれと。原本を見たらすぐわかるわけですよ。このデータが明らかに虚偽であるということ、捏造であるということはもう一目瞭然でわかるんです。

 これを見たら、もうここに書いてあるんですよ。一般の労働者は一日の時間外労働の最長時間数とここに書いてあるんです。私もさっき段ボールをあけて見ましたけれども、もう段ボールをあけたらこれが入っているわけで、そこを、それこそ、何ページですか、四ページめくったら、そこに答えは書いてあるんですよ。二週間も三週間もかかる話じゃないんですね。

 加藤大臣、すぐに調査票を見たい、原本を見たいというふうには、加藤大臣、おっしゃらなかったんですか。

加藤国務大臣 その原本というもののちょっと趣旨があれなんですが……(山井分科員「この調査票の原本。黒塗り以前のものです」と呼ぶ)いやいや、ちょっと待って。

 だから、実際書かれたものを、きょう、あったんですが、その前に、どういう調査票で調査をしたかということに対して、私のところに上がってきたわけであります。それは二十日だったか十九日だったか、ちょっと正確ではありませんが、お出しをさせていただいていると思うんです、予算委員会の理事会に。

 ですから、私は、それを見た段階で、もちろん一般の者については、これは月ベースでの平均をとって、そしてそこから一番長い一日と一週間をとったということ、それはそこからわかるわけでありますが、裁量労働制の一般の者についてはそこからにわかにわからないので、これはどういうことなのかと聞いたわけでありますけれども、確認できなかったので、至急、それぞれ、実際に調査をやった人とか、あるいは当時の何かはあるだろうということで調べていただいた、そういうことであります。

山井分科員 いや、何で二月十八日までかかるんですか。これはたしか、安倍総理が答弁を長妻さんに、このデータをもとに裁量労働制の方が労働時間が短いと答弁されたのは一月の三十一日ぐらいだったと思いますよ。そこでこの答弁はおかしいんじゃないかという問題になって、大臣、何で瞬時に、記録票を見たらわかるじゃないですか、どういう項目を調査したかというのがここに書いてあるんだから。記録票の原本を確認してください、確認しなさいと言ったら、二月一日でも二月二日でもわかるんじゃないんですか。

 加藤大臣は、そういう記録票の原本を見たらわかるんじゃないかとか、記録票の原本を確認したらいいんじゃないかということは、課長さんや局長さんから上に上がってくる二月何日かまで……(加藤国務大臣「七日」と呼ぶ)七日までは思い浮かばなかったということですか。

加藤国務大臣 委員も御承知のとおり、私ども国会で答弁する等々のときには手元にある資料を使わせていただいているわけでありますから、その資料に残念ながらそういう資料があり、そしてそれを申し上げさせていただいた。結果として、ちょっと正確ではありませんからあれですけれども、それを二月のたしか五日においても、それは手元にそういう資料がありましたから、それを使わせていただいた。

 その後、二月の七日の段階で、私のところに、今委員が御指摘のように、調査票にはこう書いてあるということであったので、それは早急に調べてくれと。そして、私は、国会に対しては、精査させていただきますということを申し上げたわけであります。

山井分科員 私としては、申しわけないけれども、これは組織ぐるみの隠蔽と言わざるを得ません。

 加藤大臣も、素人じゃないんですから、調査票を見たら結果が出ることぐらいわかると思います。さらに、二月七日にこの調査票を見たというのであれば、もう書いてあるじゃないですか、裁量労働制の方は平均の一日と書いてあるじゃないですか。ところが一般の労働者は一日の時間外労働の最長時間数と、これを読めばわかるんですよ。誰が見たってそのとおりですよ。

 裁量労働制の方は平均の一日の労働時間にして、一般の労働者は一カ月で一番長い日にして、この両方を比べたらいいかどうかなんて、誰が考えたってわかるじゃないですか。比べていいはずないじゃないですか。裁量労働制の方は一カ月の平均だし、一般の労働者は一カ月で一番長いといって、こんなものを比べたらだめなんて、この調査票を見たら三分でわかりますよ。

 さらに、二月七日にこの調査票を加藤大臣が見てから国会で認めるまで、また十二日間もかかる。残念ながら、これは組織的な隠蔽、余りにも悪質。

 私は、ただのデータだったら言いませんよ。このデータをもとに、人の命を奪う裁量労働制の拡大をすると安倍総理まで言いながら、国会で指摘されたら、今言ったように、十分や二十分でわかることを、二週間も三週間もかけて。厚生労働省というのは、国民の健康と命、労働者の健康と命を守る日本の責任者でしょう。大臣室から地下二階まで、本当、誰かに見てきてくれと言っても、これは十分もかかりませんよ。

 そういうこと自体が、私は本当にこれは納得できません。そういういいかげんな仕事ぶりで、人の命を奪う裁量労働制の拡大とか、そういうことはやめていただきたいんです。

 具体的な話になりますけれども、きのうの夕方、御指摘をさせていただきました。

 安倍総理も加藤大臣も繰り返し、つまり、一般の人のデータは間違いがあるかもしれないけれども、裁量労働制の方は間違いがないんですということを強調されておられますが、私の事務所の吉沢秘書が確認をしたところ、ここにありますように、裁量労働制で平均の一日の労働時間が一時間以下という方が、専門型と企画業務型を合わせて、合計二十五人おられます。

 具体的な表はここにありますけれども、加藤大臣、これをごらんになったことありますか。別に、これはいただいたデータの中からぱらぱらとめくったら出てくるわけですから。専門業務型、平均労働時間、一日一時間半、一時間、一時間、一時間半、一時間、一時間、一時間、一時間、一時間。

 加藤大臣、ちょっとおかしいと思われませんか。一日の平均労働時間が一時間なんですよ。幾ら裁量労働型で、好きなときに行って好きに帰れるとかそんなこと言っても、このデータはやはりちょっとおかしいんじゃないかと思うんです。

 きのうの夕方からこの実態を調査してくれということを言いましたけれども、結論、いかがでしたか。

加藤国務大臣 きのうの段階でそうした議論、そうした御指摘をいただいているということで、正式にはけさ確認をいたしました。

 私の方から、確かに、例えば八時間であれば、それにもかかわらず、一定の長い期間でありますから、一時間というのはこれはちょっと違和感があるよねということで、では、これはどういうことなのかと。ただ、みなし労働時間が八時間あるいは八時間以上であればそうでありますけれども、中には非常に短時間というケースも決してないわけではない。これは確認しなければなりませんけれども、したがって、そこを含めて、今、きちんともう一回確認をするようにということで調査をさせております。

 それから、それぞれのデータについて、基本的には、理事会でも御説明いたしましたけれども、ちょっと正式な名称は忘れましたが、半年ごとに裁量労働制を適用している企業からも出てきているそうした届出をベースに転記をする、事業所において転記をするということでありましたから、そういったデータもあるのかどうか、あれば、そことどういう突合があるのか、そういったことも含めて今精査をさせていただいている、こういうことであります。

山井分科員 いや、今精査しているんじゃないんですよ。このデータをもとに労政審で議論して、裁量労働制の拡大ということを決めているんですよ、厚生労働省は。既に決めているんですよ。今から精査するということじゃないんですよ。

 ということは、私たち野党から指摘されるまで、裁量労働制の方々の労働時間、一時間とか二時間の人がたくさんいるということは、厚生労働省は知らなかったということですか、このデータの中身を。

加藤国務大臣 少なくとも、私のところに上がってきたデータはここまで細かくなくて、八時間でしたか七時間でしたか、そこから下ということでくくっておりましたので、そこまでのデータには触れておりませんでした。

山井分科員 なぜこれが重要かというと、もしこれが、パートの方とか、打ち間違いとかあるいは書き間違いとか、そういうことであったら、この一時間という数字は当然削除しないとだめじゃないですか、裁量労働制の平均労働時間から。そうすれば、裁量労働制の平均労働時間はもっと長くなるんですよ。もしこのデータもまぜて計算しているということになれば、労政審に提供した裁量労働制の平均の労働時間は、間違って短く労政審に出されたということですよ。大問題じゃないですか。

 これは精査されるということですが、次、私、来週月曜日九時半からもう一回質問しますので。先ほど一万社のあの段ボール三十二箱、見ましたので、ちょっと大変かとは思いますけれども、かなりの数ありますから全てとは言いませんよ、この一時間以下の二十五件、できれば全てやってほしいですけれども。どこの会社かわかるはずですよ。どんな業種のどこの会社か、なぜこれは一時間なのか、そのデータが正しいのか正しくないのか。

 この二十五件、一時間以下だけでいいですよ。来週月曜日九時半から私、しますから、九時までに。黒塗りでいいですよ、会社のところは黒塗りでいいですから。それで、もう職員の方が疲れ果てて、二十五件はどうしても足りなかった、十五件しか無理だったでもいいですよ、私も余り過重労働を強いたくないから。でも、目標二十五件で、黒塗りでいいですから、その個票を来週月曜日九時までに私のところに出してください。

加藤国務大臣 個票というのは何を指しておられるんですか。(山井分科員「いやいや、この表があるわけですから」と呼ぶ)

 それについては、今、理事会の方でお話があるということでありますから、それに従って対応させていただきたいと思います。

山井分科員 理事会に出すということですので、特に国民の関心が高い一時間というのがどういうデータかは重要ですから、ぜひ、来週月曜日九時には出してください。

加藤国務大臣 一万の中から拾ってまいりますので、それが今ある順番になっていれば割と簡単に見つかるだろうと思います。ただ……(発言する者あり)順番ですか。

 だったら、そこをピックアップして、当該議論にとりあえず必要な部分ということでよろしいですか。

山井分科員 ぜひ、月曜日の朝九時には。この個票、名前は消してもらっていいですから。(加藤国務大臣「必要なところだけでいいですか」と呼ぶ)はい。

 それで、当然、本当にそのデータで正しいのかというのも確認していただきたいんですよ。もっと言えば、会わせてもらいたいぐらいですよ、平均一日一時間しか働いていない人というのは。もしその方が単なるパートだったら、こんな表に入れてはだめですからね、当たり前の話。比較にならないわけですから、一般の労働者は八時間以上労働の人しかとっていないわけですから。

 加藤大臣、この裁量労働制のデータも、これもそういう不備があったということになれば、当然、労政審での審議はやり直しということでいいですか。

加藤国務大臣 まず、仮にですけれども、パート等が入ったらだめだとおっしゃいましたが、これは我々が、我々のミスでありますけれども、一般と比べるわけじゃありませんから、これはもともと裁量の状況を調べるということでとっておりますから、それはそういったものも含まれることもあり得るんだろうというふうに思います。

 その上で、今のデータも含めて、労働政策審議会で、さまざまな観点に立っていただいて、そして議論していただきました。そして、そこでの議論は、一般労働、一般で働く人と裁量労働制がどっちが長いとか短いとかという議論はなかったというふうに承知をしております。

 その上で、裁量労働制においては長時間労働の問題があるんだ、こういう指摘の中で御議論をいただき、そして、その結果において、対象業務の拡大ももちろんありましたけれども、同時に、今の裁量労働制も含めて時間を把握をしていく、あるいは対象者についてもう少しきちんとすべきではないか、あるいは実態とみなしが違う場合に対する監督指導の権限を法律に書き込むべきではないかというまさに規制の強化、これも含めて御議論をいただいて、おおむね妥当という答申をいただいたわけでありますから、私どもはそれに沿って今法案の作業を進めさせていただいている、こういうことであります。

山井分科員 二点反論したいと思います。

 一般の人と比べていないからって、加藤大臣、言う資格ないですよ。三年前に比較したデータを出したのは厚生労働省なんですから、一般の人と比較したデータをこれをもとに出してきたのは。安倍総理が、一月三十一日もその答弁をしているじゃないですか。自分たちがその比較をして、安倍総理の答弁までしておいて、今さら一般の人と比較するデータじゃありませんからって、こっちが言いたいですよ、それは。比較したのはそちらですから。

 さらに、少なくとも、労政審で裁量労働制の方の平均労働時間は九時間十六分だというのを出しているわけですから、その中に平均一時間労働の、パートの平均一日一時間労働の人が含まれているなんて、そんなことは許されませんよ。それは正規雇用の人で比べるのは当たり前じゃないですか。それはそうでしょう。比較できないじゃないですか。そんなもの、平均の労働時間は何時間ですかというのに、いや、実はその中には一時間や二時間労働とパートの人がたくさん入っていますよって、そんなデータはないでしょう。それだけは撤回してくださいよ。当たり前じゃないですか、そんなもの。

加藤国務大臣 最初に申し上げたのは、確かに比較をしたのは私ども不適切でありますし、おわびを申し上げたところでありますが、ただ、最初のこうした調査をし、データを取りまとめたにおいては、裁量労働制の実態を調べるということで調査をしているということでありますし、実際、裁量労働制の現場に行って聞いている中には、それぞれ裁量労働制でやっている人の状況がどうなっているか、したがって、中にはみなし時間が短い人も当然入っていますから、それもこの統計の中には対象になり、そしてその実態の数字もそこに出てきている、こういうことであります。

山井分科員 だから、その裁量労働制の実態把握が間違っているというんですよ。国民が聞いてどう思いますか、平均一日一時間労働の裁量労働制の人もデータにまぜていますと。会わせてくださいよ、そこまでおっしゃるんだったら。一時間労働の裁量労働制の人というのは、どんな業種の、どんな人ですか。会ったことがありますか、加藤大臣。そんなデータをまぜたら、裁量労働制というのは少なくとも長時間労働になって過労死がふえるといって、私たち、必死になっているんですよ。その議論のときに、裁量労働制の一時間の人はどんな人かわからないけれどもデータにはまざっていますなんて。それも今まで言わずに、今ごろ言うなんて許せません。

 例えば、企画業務型でいうと、四時間以下の人を除いたら、九時間十六分と労政審で報告された平均労働時間は九時間四十八分になるんですよ。つまり、三十二分も延びるんです、四時間以下のパートかもしれない人を除いたら。これによって、裁量労働制の方の平均労働時間が九時間十六分なのか九時間四十八分なのか、かなり違いますよ、印象が。

 おまけに、もう一個労政審に出した一般の労働時間の方は、一カ月で一番長い週だけ出している。一般の方は長く出るようにして、裁量労働制の方は短く出るように結果的にはなっていた。そういうことも大問題だと思います。

 繰り返し言いますけれども、数字のミスを揚げ足とっているんじゃないんですよ。このデータをもとに、長時間労働や過労死が続出している裁量労働制を拡大するというから私たちは怒っているんですよ。

 二日前も、家族の会の寺西代表が予算委員会で発言をしてくださいました。きょうの配付資料に入れさせていただいております。

 過労死、過労自殺をふやす企画業務型裁量労働制の拡大に反対をします。現状でさえ、同制度の適用労働者の過労死、過労自殺が後を絶たないことから、改めて反対意思を表明するものです。営業職などに裁量労働制を広げることは、ますます過労死、過労自殺を増加させる危険性が極めて高い。今でさえ十分にできていない労働時間の適正な把握がますます困難になり、賃金不払い残業を一層深刻化させます。

 あえて申し上げますけれども、この過労死家族の会の方々が裁量労働制の拡大反対声明を出した二〇一五年の三月二十六日、この同じ日に、民主党の厚生労働部門会議に、この虚偽のデータをもとにした、裁量労働制は一般の労働者より労働時間が短いという虚偽のデータを厚生労働省は出してきました。これは何を物語っているんですか。つまり、民主党に出したというより、御遺族の方々が、裁量労働制を拡大したら人の命が奪われる、その口封じ、反論のために虚偽のデータを結果的に出したということですよ。あり得ない話です。

 加藤大臣、裁量労働制の拡大をしたら、必ず人は死にます。過労死します。既に今、多くの方が死なれています。体を壊されて退職された方にも私もお目にかかりました。

 あえてストレートなことを言いますけれども、これは野党も大反対しています。もちろん御遺族の方々も大反対しています。もし、何が何でも目玉法案だから通すんだというなら、強行採決でもして通されるんでしょうか。でも、働き方改革の法案というのは強行採決で通す法案ですか。そして、そこまでした法案で人が死ぬんですよ。

 ストレートにお聞きします。そこまでして、国民、御遺族の大反対を押し切って成立させて、この裁量労働制の拡大された部分で人は死にます、必ず死にます。加藤大臣、そのときはどういう形で責任をおとりになるつもりですか。

加藤国務大臣 今、国会の採決のお話がありましたが、これはちょっと政府がとやかく言う話じゃないので、コメントは控えさせていただきたいと思います。

 それから、先ほどから申し上げているんですけれども、今回私どもが議論しているのは、規制の強化があるということであります。そこはしっかり認識をしていただきたいと思います。

 これは、例えば……(山井分科員「もういいです。そんなことは聞いていない、知っていますので」と呼ぶ)いやいや、これは大事なところですから。

 これは業務の対象者をちゃんと選んでいるかどうか、山井委員からも、最低賃金ぎりぎりの人がいるんじゃないか、こういう御指摘もいただいております。したがって、今回の法案では、ちゃんと厚生労働大臣が省令で定めなさいということを法律の根拠とし、そして、その省令において的確な人を選ぶ、絞り込むことができる、こういう仕組みになっているんですから、今の既存の企画型の裁量労働制に対してもより縛りがかかっていく、こういう中身もあるということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

山井分科員 まず強化して、その後、拡大してください。現状で人が死んでいるのに、拡大はやめてください。

 質問に答えてください。裁量労働制を拡大したら、必ず死者は出ます。ごり押しして、国民の大反対を押し切ってまでした法律によって、人が死にます。確実に死にます。既に死者が出ていますから、もう明らかです。そのときに、責任大臣である加藤大臣としてはどういう責任をおとりになるんですか。

加藤国務大臣 今委員御指摘の過労死については、残念ながら、裁量労働制だけではなくて、さまざまな雇用形態の中で生まれているわけでありますし、これをぜひとも撲滅をしたいということで、私ども、これまで手がつけられなかった長時間労働の是正についても罰則つきの上限規制を入れるということで、経済界も総理みずから説得をして、それは必ずしも十分じゃないかもしれないけれども、これまでは青空天井であったものに上限をつける、こういう施策も入れさせていただいています。

 それから、先ほど申し上げた、今の裁量労働制においてもいろいろ問題があることは十分承知をしておりますし、それは労働政策審議会でも指摘をいただきました。したがって、それに立った対応策もこの中に入れさせていただいております。したがって、これを入れることによって、今既存の裁量労働制で働いている方に対してはしっかりとした対応がとれる、こういうことにもなるわけであります。

 そういった意味で、委員御指摘のように、我々は過労死をつくるということを全く考えているわけではなく、むしろそれをいかに減らしていくのか、これに取り組んでいきたい、そういう思いで今作業を進めさせていただいております。

山井分科員 過労死をふやすことは全く考えていないって、過労死をふやす法律を出そうとしているじゃないですか。長時間労働になる、過労死がふえると御遺族の皆さんもおっしゃっているじゃないですか。私の質問に全然答えないけれども。

 では、これで過労死されます、裁量労働制の拡大で。労働時間が把握できないから労災申請もおりないですよ、そう簡単には。労働時間を把握できないから。労働時間を把握できない裁量労働制の方が過労死したとき、ちゃんと、労働時間の証拠がなくても労災認定してくれるんですね。そして、残された御遺族、御家族、お子さん、その責任、責任の大臣としてどうやってとられるんですか。

加藤国務大臣 だから、今申し上げていますけれども、この法案には、今の裁量労働制に対する規制が入っているんですよ。そこは少なくとも改善されていくんですよ。そこをしっかり評価をしていただきたいということを申し上げているのであって、それは、もちろん、現行において問題がある事例がいろいろあることは我々も承知をしております。それから、我々の監督指導体制も十分でないので、これをできるだけ強化をしていく、こういう取組を一生懸命やらせていただいている。

 我々も、過労死を撲滅したい、こういう思いで総理以下取り組んでいるということであります。

山井分科員 全く質問に答えないですね。規制強化の話を聞いているんじゃないんです。なぜ拡大するんですかということを言っているんですよ。これを営業マンとかに広げたら本当に壮絶なことになりますよ。なぜ拡大するのかと聞いているのに、幾ら言っても答えない、関係ないことを答える。

 時間が来ましたが、国会というのは、法律というのは、人の命を守るためにあるんです。人の命を奪うことが明らかな法律なんて通せるはずがないんですよ。まさに国民と労働者の命と健康を守る責任者が厚生労働省なんじゃないんですか。厚生労働大臣は、労働者と国民の命を守るために存在するんじゃないんですか。

 もし厚生労働省と厚生労働大臣が国民の命を奪う法律を強行するのであれば、私たちは体を張って阻止しますよ。当たり前じゃないですか。人が死ぬのがみすみすわかっているような法律、通せるはずがないじゃないですか。

 ぜひとも、一刻も早く、裁量労働制の拡大は撤回する、そして、まず実態調査をきっちりとする、労政審の議論をする、そうすることを切に望みますし、繰り返し言いますけれども、人の命を奪う法律は絶対に私たちは成立させません。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

星野主査 これにて山井和則君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂分科員 逢坂誠二でございます。

 私も引き続き裁量労働制についてやらせていただきますが、まず冒頭に、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度、これはやはり今回の法案から切り離して、相当やはり問題が多い、それと反対も非常に多い、労政審の議論、建議、答申ともに、この裁量労働制、高度プロフェッショナル制度については、労働側からはこれは導入すべきではない、そういう意見が繰り返し述べられているわけですので、これは切り離すべきだ、私はそう思うんですが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 労政審における建議においても、また答申においても、労働側からのそういう意見が付されていたということは十分承知をしておりますが、その上で、労政審全体として、あるいは分科会と言うべきかもしれませんが、ついては、こうした対応が適当である、また、おおむね妥当である、こういう御判断をされたもの、こういうふうに承知をしております。

逢坂分科員 おおむね妥当であるというのは、労働時間の時間外、これに、時間外を超えたら罰則を付加するとか、同一労働同一賃金とか、そういうものも含まれているから、まあ、おおむね妥当とするけれども、だがしかし、裁量労働制と高度プロフェッショナルは導入すべきではない、こういうふうに書いてあると思うんです。そういうことからいうと、これを一緒に扱えない、そういう結論なんじゃないですか。

加藤国務大臣 二回、建議というか答申がありますので、最初のときには長時間労働等はたしか入っていなかったと思いますけれども、二回目はそれも含めて総合的にそれを最終的には御判断されて、おおむね妥当ということに対して、分科会の会長というんですか、の方が本審の審議会にそうしたものを上げるということに対してそれぞれが了解をされたということだと思います。

逢坂分科員 労政審の答申、建議、その段階でそういうふうに理解を仮にされているとしたとしても、昨今のこの議論を聞いて、あるいはこのデータの不備、こういうものを聞いて、私は、改めてお考え直してもらうということが妥当だと思っております。

 実は、今、この議論を殊のほか注目している人たちがいるんです。それは、過労死で家族を亡くされた皆さんだけではなくて、マスコミの皆さんが物すごい注目しています。実は、マスコミの記者の皆さん、あるいは実際の放送の現場で働く皆さん、裁量労働なんですね、事実上。しかも、その裁量労働が、きのうある番組の方と話したら、裁量労働なんだけれども、よくよく考えてみたら、夜の十二時過ぎまで、放送が終わるまで帰れない変わった裁量労働なんだということを言っていました。業界の皆さん、物すごく心配されております。

 そういう意味で、これは非常に注目度の高いものだということをまず御認識をいただいた上で、この分野のことについては、多くの方は実は知らなかったんですよ、多くの国民の皆さんは。今回、こういう議論になってみて初めて、ああ、そうか、俺ももしかしたらその類いの労働者なのかとか、もしかしたら私もそうなるんじゃないかとか、多くの人がこの議論によって気づき始めたんですね。やっと国民の皆さんにこの実態が伝わり始めているこの時期ですので。

 多分、これまでの裁量労働の導入というのは、経営側の皆さんの意向が非常に大きくて導入の方向へと来ている、私はそう思うんですよ。働く皆さんの側からこれを入れてくれ、入れてくれという声は、経営の皆さんに比べればそれほどなかったと思う。

 JILPTの調査によれば、実際に裁量型で働いている人の満足度合いはいかがかという調査では、満足度合いは高いという調査結果もありますよ。だけれども、本当にその労働者の皆さんの側から裁量労働を入れてくれという声があるかどうかについては、私はもう少し丁寧に議論してみるべきだと思っています。

 さて、そこで、私、加藤大臣の答弁の中で非常に違和感を持っているものがあるんです。労政審では、裁量労働制は一般で働く人よりも短くなるんだ、長くなるんだとか、そういう議論はなかった、こういう答弁を繰り返しされております。それで、どう抑制をしていくべきなのか、そういった議論があった。いわゆる規制強化する議論があったんだということでありますけれども、この議論からしてみると、まず最初に、なぜ、労働時間が長くなる、短くなるという議論はなかったんでしょうか。

加藤国務大臣 済みません、それは私が労政審の議論を解釈するということになるので、私はそういったやりとりがなかったということを申し上げただけであります。

逢坂分科員 そして、その上で、いわゆるどう抑制すべきかということが議論されたというのは、多分労政審の議論の残っている記録から読み取れることなんだと思うんですが、それは、あらかじめ、裁量型労働というのは長時間労働になるんだというある種の前提があったのではないかと思うんですが、それについてはいかがですか。

加藤国務大臣 制度の前提なのか、あるいは実態の認識なのかといえば、多分、私は後者なんだと思います。

 もともと制度を入れてみなければわからない部分がありますから、実際、制度を入れて十年以上たっていますから、それを見て、それぞれ実感と、実際、いろんな有識者の方がおられます、組合の方もおられます、そういった実態を見て、長時間労働を引き起こしかねない、あるいはみなしと比べて実際の働いている時間が長い、逆に言えば、その分だけ残業代が支払われていない、そういった認識はあったんだろうと思います。

逢坂分科員 そういうことからすれば、労政審の議論を見る限り、裁量型労働というのは長時間労働の側に傾きがちである、そういう傾向が読み取れるというふうに大臣はお感じになりませんか。

加藤国務大臣 傾向としてという点はなかなか難しいと思いますが、そういった事案がある、少なからずある、それはそのとおりだと思います。

逢坂分科員 私もそうだと思うんですね。実態としてそうなる傾向が私は強いような気がします。

 変なことを言うようですが、私自身、自治体の首長をやっていました。自治体の首長は、勤務時間はありません。実は労災もありません。出勤時間も何もないんです。自分の判断によってやるんです。でも、そうなるとどうなるか。これは、勢い、やはり勤務時間が長くなりがちです。それは、自治体の首長は随分性格が違いますから、一般の企画型といったような裁量労働とは違うことはわかりますけれども、勤務時間のない仕事というのは、仕事量がふえるということがあれば勤務時間がふえがちになるというのは、私は身をもってそう思います。

 さて、そこで、今回、データについて、特に平成二十五年労働時間等総合調査のこのデータ、相当疑問なデータが出てきているということであります。これに基づいて労政審では議論をしている。だけれども、このデータは撤回しないということを繰り返し述べられているように私には思われるんですが、答弁は撤回したけれどもデータを撤回しない理由って何でしょうか。

加藤国務大臣 今、それについてはいろいろ御指摘をいただいておりますので、今精査をさせていただいているということでございます。

逢坂分科員 本当に精査はしているんでしょうか。

 先ほど山井委員の発言を聞いて、私は、あら、本当に精査しているのかなと思ったんですが、先ほど厚生労働省の地下二階に行かれたと。それで、段ボール箱を見た、段ボール箱を見たということは、個票、原票はまだ地下にあるわけですよね。原票が地下にあって精査をしているというのは、私は意味がわからないんですけれども。原票に当たらないと本当の意味の精査にはならないと思うんですが、まだ原票に当たらない前の精査をしているという意味なんでしょうか。

加藤国務大臣 それは並行してやらせていただいているわけでありまして、そうでないと、かなり、原票に当たりながらやると分析そのものが時間がかかりますので。

 今、電子データになっているものは、さまざまな視点で既に野党からも、例えば一日と一週間と、大きい少ないの関係がこうなっているとおかしいんじゃないか、こういう指摘もいただいていますから、そういったいろんな状況というものを想定しながら、じゃ、実際、今ある電子データはどうなっているかという作業を一方でしながら、そして、それがしっかり原データから移されたデータであるかということもこれは当然やっていかなきゃいけないと思いますが、ただ、後者については相当時間が、一個一個拾いながらやらなきゃいけませんから、これはかかりますので、同時並行で今やらせていただいている、こういうことでございます。

逢坂分科員 電子データをまず形式的に当たる、それから原票にも当たる、同時並行で作業をやっている、ほどほど時間がかかるだろうということでありますけれども。

 その結果、やはりデータに相当に瑕疵がある、これは物事を判断するに足るデータではないというような状況になったら、これはデータは撤回されますか。

加藤国務大臣 それは、精査結果を踏まえてそういう判断はすべきものだろうというふうに思います。

逢坂分科員 ぜひ早急に精査をしていただいて、法案を出したいとおっしゃっているわけですから。そのデータの精査なしに法案を出すということは、特にこの裁量労働のところについては私は控えるべきだと思いますが、そのことは申し伝えておきたいと思います。

 さて、そこで、私、裁量労働制というのは誰のために導入するのかといつも考えるんです。これは誰のために導入するんですか。

加藤国務大臣 基本的に、そういう形で働きたい、要するに自律的に創造的に働きたい、もちろんそういう業務でなければなりません。先ほどお話があったように、これをやりなさいということでは、裁量なんかないわけでありますから。

 そうじゃなくて、そこは自分の裁量の中でそれが仕切れるような業務であり、そして、それだけの能力、知識がある、そういった方にとっては、一定の時間はあるにしても、一定の時間、みなし時間はあるにしても、うまく作業すれば早く終わることができるとか、あるいは一日によってやりくりをするとか、そういったことになれば、自分の時間をつくり出すことも可能になってくるし、その中で子育てやいろんなことに使っていくことにもつながっていく。

 実際、私が行かせていただいたある企業においても、何人かからそういったお話を聞かせていただいたところであります。

逢坂分科員 私は、裁量労働制というのは悪いところばかりではないということも現実だと思います。今、大臣がおっしゃったような事例もきっとあるというふうに思います。

 だけれども、これを制度としてしっかり、現実的にももう既に入っているわけですが、拡大をして、更に日本の社会の中でこの裁量労働制というものを広げていくということについてはよくよく慎重であらねばならない、そう思うんです。

 なぜか。望んでいる人もいる、いい人もいる、それは事実。だけれども、そのことによって、望まない、本当はそんなことしたくない、それで苦労する人が例えば十人でも二十人でも出るような制度は、私は控えるべきだと思うんです。

 これは、望んでいる人がいるからやる、そういう制度も世の中にはあります。望んでいる人が多いからやるという制度もあります。しかし、望んでいる人がどんなに多くても、そのことによって、とても起こってはいけないような事態が起こる可能性があらかじめ相当程度指摘されている、そういうものは、私は導入すべきではないというふうに思うんです。いかがですか。

加藤国務大臣 先ほど山井委員ともそこは御議論もさせていただきました。

 今回の我々の考えている、あるいは、労政審からいただいた建議あるいは要綱によれば、かなり規制強化をするという中身が入っているわけでありまして、現状における裁量労働制のありようについて、やはり問題点がある、それを是正していく中身にする、そういうことによって、今の、既存の裁量労働制に対してしっかりコントロールしていく。そして、その上で、必要な、まさに対象として可能な部分については裁量労働制の幅を広げていこう、こういうことでありまして、今の、こういった状況の中で単に広げるというようなことではなくて、今の状況をきちんと整理をした上で、並行して対象を、しかも本来の裁量労働制たり得る業務について拡大をしていく、こういう考え方で進めさせていただいているところであります。

逢坂分科員 労働法制というのは、これは誰のためにあるのか。もちろん、それは使用者のためにもあるでしょうし、労働者のためにもあるでしょうし、多くの人のために労働法制はあるんですが、労働法制の力点はどこに置かなきゃならないか。働く人の立場に私は力点を置かなければならない、そう思うんです。大臣もこれは御理解いただけますでしょうか。いかがですか。

加藤国務大臣 私どもも、働き方改革で常に申し上げている、働く人の立場、視点に立って進めていきたいということでやらせていただいています。

逢坂分科員 労働法制は経営者のためにやるものでもない、生産性が結果として上がることは悪いことではないけれども、生産性が上がることだけを目的にしてやると、労働法制は私は間違う、そう思っています。

 使用者と働く者の力関係、これは歴然としているというのは大臣も御承知のとおりだと思います。したがって、働く者をいかにきちんと働ける状態にするかというのは、労働法制の大きな私は目的だと思います。

 そういう観点からすれば、現行の今行われている裁量労働、これでも相当問題があるということは大臣もお認めになっている。であるならば、まず現行の対象職種の範囲で規制を強化する、それが第一歩じゃないですか。

加藤国務大臣 ですから、それももちろんやらせていただきます。

 しかし同時に、裁量労働制として対象になり得るような業務については、そこで自律的な創造的な仕事をしていただく、そういう機会を提供していくことも大事なのではないかな、こう思います。

逢坂分科員 私は先ほど言いました。この労働の問題について、裁量労働をやりたいという人もいるのも多分事実だと思います。だけれども、そのことによって、対象範囲を広げて、更に困る人が出るような状況はつくってはいけない。

 人間は、働いている人は、サンプルや試験のためにやるわけではないですから。だから、現行の裁量労働の範囲内でまず規制を強化する、そして、その規制がちゃんとうまくいくんだ、うまく機能するんだ、そのことをきちんと確認してから対象業種を拡大したっていいんじゃないですか。なぜそれができないんですか。

加藤国務大臣 ですから、今回の、今考えている法案の中において、裁量労働制の対象になるべき人たち、これは一応法律には経験とかあれを有すると書いてあるわけでありますけれども、そこをしっかりと明示をすることによって、本当に知識と経験がある、その人たちだけしか対象にならない、そういう形にしていく。そして、その上で、そういう人たちが対応している業務については拡大しても対応していけるのではないか。

 大事なことは、今いろいろ出てきているのは、裁量労働制の対象に本来ならしてはいけない人たちを私は入れている、こういうふうに思いますので、そこはしっかり除外をしていく形をとっていくということが大事なんだと思います。

逢坂分科員 労政審の答申、建議、この中に、ほぼ同じ文言だと理解しておりますけれども、こう書いてあるんですよね。裁量労働制は、対象業務範囲の明確化、健康確保措置の強化といった修正がなされたが、長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらず、実施すべきではない。

 すなわち、今大臣がおっしゃったような、対象業務は明確化するんだ、それになじまないものは除外するんだ、そういうことがとられるような修正がされた。あるいは、健康確保措置の強化、こういうこともされる。そういう修正もされたけれども、だけれども、それでもなお長時間労働を助長するおそれがある、こういう指摘が労政審でもされているわけですよ。しかも、このことは、明確に、労政審のこの答申、諮問のあったことに対する分科会の答えの中に書いてあるわけですよ。

 じゃ、労政審のこの答申というのは一体何なんですか。こう書いてある。幾ら大臣が規制するといっても、労働者側は、それでは長時間労働を助長するおそれが払拭されないんだと言っているんですよ。これはどう生かされるんですか。

加藤国務大臣 確かに労働側からはそういう御意見もありますけれども、御承知のとおり、労政審というのは使用者側と労働側と、そして中立的な意見、学識者が中核だと思いますけれども、そういった皆さん方が入った中で、そうしたおおむね妥当という結論をいただいている、こういうふうに認識をしております。

逢坂分科員 山井委員が繰り返ししゃべるのは、おおむね妥当であろうが何であろうが、長時間労働になる懸念が払拭されないんだと。だから、どんなに規制を入れても困る人が出てくるのではないか。山井委員は、死ぬ人が必ず出るという言い方をしております。私はなかなかそういう過激な言葉は使いづらい性格なので、ここではそういう言葉はちょっと避けますけれども、この制度を導入してしまったら、やはり、長時間労働、そうなるおそれが払拭されていないんだという指摘がされている。だから、それはまず見合わせるべきだと。規制の強化、それをやった上で、本当に大丈夫だ、そうなってからでも遅くないんじゃないですか。人の命がかかっている、そういうことについてどう思われますか。

加藤国務大臣 ですから、もちろん、それぞれ、さまざまな意見があることはそのとおりだと思いますし、それにはしっかり耳を傾けていかなきゃいけない、それはそうだと思います。

 しかし、この議論の中で大事なことは、今ある裁量労働制も含めて、適用がうまくいっていない、こういったものをしっかり抑制をしていく、規制をしていく、そして、本来対象になるべき人たちが本当に自律的に創造的に仕事ができる状況をつくっていく、これが大事なことなんだと思いますし、そういう状況の中で、今申し上げた現在の仕事以外にも、自律的にそして創造的に仕事ができる分野があれば、それはそういう形で広げていくことで、そうした人たちがより自分の時間をそれぞれつくって対応していく、そういった意味での働き方が選択できるようになる、こういうふうに考えております。

逢坂分科員 労働現場の実態は、私は、法律や規則や、そういうものの文言からは推しはかれない実態があると思っています。労働時間を把握することですら簡単なことではないと私は思います。例えば、労基署が臨検監督で行って労働時間はどうですかと聞く。本当にそれで実態がつかめるか。簡単ではないと思うんです。

 だから、確かに、ここで対象職種を限定するとか、健康管理も入れるとか、あるいは、この労政審の議論の中でも、裁量型労働を入れる際には、労働時間の管理といいましょうか、しっかり、どの程度働いているか、それを把握することが大事だということも議論されていたようです。

 机上ならその議論はできますよ、机の上では。だけれども、労働現場の実態を言ったら、この人は何時から何時まで働いていたのかなんということは、紙にそれを書こうと思ったら、グレーなところがあってなかなかうまくいかないのが実態なんですよ。

 だから、拡大はまずやめる、そして規制を強化する、それが先決なんじゃないですか。そして、本当の意味で労働現場の実態が把握できるような、そういう行政の体制をつくる。それがないままに、拡大だけを、拡大だけではないと大臣はおっしゃいますけれども、どうも拡大が目的に思えてならない。

 今困っている人をまず救う。この間、これまでの裁量労働の中で残念な結果になって、家族ともさようならしなければならなかった方々の経験も踏まえて、今まず困っている人を救う、そういう法制にするのがまず第一歩なんじゃないですか。なぜそれができないんですか。

加藤国務大臣 同じことの繰り返しになりますけれども、まさに、そういった意味での対応をしていくということであります。そして、その中で、それができる人たちの中において新たな部分が対応できるのであれば、創造的な、自律的に仕事ができる分野、これらに対してはそうした仕事を拡大をしていくということでありまして、別に、現状をそのまま放置したまま拡大していこうということを考えているわけでは全くありません。

 むしろ、あるべき姿をしっかりと、もちろん、今の監督指導体制が、委員もおっしゃるように十分かと御指摘をいただけば、しっかり強化しなきゃいけない部分はあります。我々のこの政権の中でも体制を強化してまいりました。それから、私も赴任して実態を聞くと、とても今の状況というのは、しっかり強化をしていかなきゃいけないということで、今体制の整備にも取り組んでいるところでありますけれども、そういったこともしっかりやりながら、多様な選択ができる、一方で、今の裁量労働制における問題点、これをしっかり是正をしていく、また、是正できる規定を盛り込んだ、そうした法案の作成をさせていただいている、こういうことであります。

逢坂分科員 私には全く理解できません。

 問題点があることがわかっている、だから規制強化をしなければならない。普通の考え方でいけば、人の命を守るのであれば、問題点がある、規制強化をする、その規制強化がうまく機能する、そのことを確認して対象業種を拡大していくのなら、まだ私は、人の命を大切にする、そういう行政だと思います。だけれども、規制の強化がうまくいくかいかないかもわからないのに、規制を強化することを前提にして、それが実際に適用されてもいないのに対象範囲を拡大するというのは、少し無責任なんじゃないですか、大臣。いかがですか。

加藤国務大臣 無責任という御指摘をいただきましたけれども、私は、やはり今の状況は、同じことの繰り返しになって恐縮ですけれども、やはりしっかりとした是正をしていく。そして、その中で、対象になり得る人たちに関して、なり得ない人に対して業務を拡大しようと言っているわけじゃないんです。対象になり得る人について、今の分野以外にも対象になり得るものがあれば、それはやっていただければいいんじゃないか、こういうことを申し上げているわけであります。

逢坂分科員 私、無責任だというのは、労政審の議論の経過を見ていて無責任だなと思うんですよ。

 それは、平成二十五年の労働時間等総合実態調査、この数値を出した。そして、一般労働と裁量型労働、この両者は比較はしていない。でも、その数値は出したわけです。通常、この数値が出されれば、一般的には、労働時間の長い、短いがこの裁量労働の一つの焦点であります。そして、長い方向になるんだということも多くの人が何となく感じている、実態として。そうなれば、それは比較する可能性は高いんですよ、人の心の中では、それぞれの個々人の方が。でも、それは、その実態は承知しないなんという答弁を大臣はするわけですよ。そういう答弁をしましたよね。労政審の中でそれぞれの皆さんがどういう受けとめ方をしているのか、どういう認識をしているのか承知していないと。

 例えば、私が、労政審の中で、いろんな労働時間について、一般の人と裁量型の人とどういう調査をしたのか、その定義についてきちんと述べた上でこの労政審の議論をしたのかというふうに言いました。そうしたら、一々それは定義は述べてはいないと。そして、その前段の答弁の中で、そういう状況の中でそれぞれの委員がどう感じているかは、それは承知していない、こういう答弁をされたと思います。私は極めて無責任だと思いますよ。

 だって、提示した資料がどういうものであるかが多くの方にきちんと理解をされた上で議論をしてもらうというのは、これは議論の出発点として当たり前のことですよ。そういうこともやらない。そこを確認していないのは、それはそれぞれの委員の問題なんだというのは、私は無責任だと思います。(加藤国務大臣「そんなこと言っていないじゃない」と呼ぶ)じゃ、この点は後で釈明していただければと思います。

 それから、私、これもすごく無責任だと思っていることがあるんです。

 平成二十五年の労働時間等総合実態調査、これとJILPTに依頼した調査、なぜJILPTのこのデータ、特に労働時間のデータを使わなかったのか。それについて、大臣、何とお答えしていますか、今まで。

加藤国務大臣 ちょっと今手元にありませんが、私は経緯を承知していない、多分そういう言い方をしているんだと思います。(逢坂分科員「何と言いましたか」と呼ぶ)経緯を承知をしておりませんと言っております。

逢坂分科員 局長、何と答弁していますか。これも局長も答弁していますよね、この問題。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働政策審議会でございますけれども、労働政策審議会には、私どもの労働時間等実態調査をお出ししているわけでございます。これは、監督官が全国の事業場を訪問し調査をしたもので、サンプル数も多いものでございますので、お出しをしているわけでございます。

 他方で、JILPTの調査につきましては、例えば、その満足度とかそういった内容について鋭意提出をさせていただいているところでございます。

逢坂分科員 局長、時間がありませんのでもう聞きませんが、労働時間についてはJILPTの調査を出していないわけですよね。なぜ出さなかったんですか、そういう問いかけに対して、局長も、その当時のことはよくわからない、そういう答弁ではなかったですか。いかがですか。局長はそのことをわかっているんですか。

山越政府参考人 今御答弁申し上げましたように、労働時間数については、まず……(逢坂分科員「同じ答弁はいいです。もう時間ないですから」と呼ぶ)はい。

 それで、必要なデータを出す必要があるわけでございますので、それは、あるものはJILPTのデータを出したと思いますし、ほかの資料で補うところは補うということでやっていたと思います。

 出さなかった理由については、私、つまびらかにはしておりません。

逢坂分科員 だから私は無責任だと言うんですよ。それでいいんですか。

 例えば、佐川理財局長の問題に関して言うと、繰り返し国会で答弁を求めていて、何て言っているか、政府は。後任の同じ職にある者が答弁をするんだ、それが行政の継続性だと言っているんだ。いや、違う、その現場を知っているのは佐川さんなんだから佐川さんを呼べと私たちは言っている。

 一方でそういう答弁をしていながら、ここではどういう答弁をしているか。そのときのことは承知はしていない。そんなの責任逃れじゃないですか。その場しのぎじゃないですか。なぜ、佐川局長のような答弁は、それではここではできないんですか。後任のお二人が、いや、当時のことは調べる、じゃ、当時の人に聞いてみる、そういうことがなぜできないんですか。だから私は無責任だと言っているんですよ。

 私は、この問題は本当に大きな問題だと思います。いろいろな意味で大きな問題だと思います。政策決定のプロセスも非常に曖昧です。これは裁量労働だけの問題にとどまらない、厚生労働省の行政全体に悪影響を及ぼす大変大きな問題だと思います。

星野主査 逢坂委員にお伝えします。

 質問時間が経過をしておりますので。

逢坂分科員 最後に一言。

 裁量労働、高度プロフェッショナル、この法案は切り離して国会に提出をする、あるいは、政策決定過程が不透明であるならばその法案は国会に出さない、そのことを申し上げて、終わります。

 ありがとうございます。

星野主査 これにて逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、安藤高夫君。

安藤(高)分科員 よろしくお願いいたします。

 本日、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 昨年十月の衆議院選挙におきまして、比例東京ブロックで初当選をさせていただきました。これまでも、医師として、また病院の経営者として、また医師会、病院団体、あるいは介護の団体の仕事を通じて、地域の皆様にとってよりよい医療と介護のサービスが行えるようどうすればいいのかということを、医療と介護の現場を少しでもよくしていくためにさまざまな職種の方々と議論を重ねてまいりました。

 本日は、社会保障制度に関してですけれども、診療報酬と介護報酬、そしてまた医療提供体制によって支えられている地域に関して、この点について御質問をさせていただきたい、そう思っております。

 まず、診療報酬、介護報酬の質問をさせていただきます。

 今回の同時改定では、診療報酬の本体部分を〇・五五%、介護報酬のプラス部分を〇・五四%となりました。これは、加藤大臣ほか厚生労働委員会の先生方、また、厚生労働省を含め関係省庁、そしてまた医師会や病院団体や介護事業者の団体等、医療、介護の関係者の方々の尽力に心から感謝を申し上げます。

 最初の質問ですけれども、多職種を含めた人員配置について質問をさせていただきます。

 従来の診療報酬の入院基本料においては、主に医師と看護師の配置を基準に定めておりますが、しかし、地域によっては、医師や看護師が足りずに病床を閉鎖せざるを得ない場合もございます。

 一方、現在、高齢者の増加に伴って、治療だけではなく、例えば摂食嚥下、そして口腔ケア、排せつケア等が非常に必要になってまいります。診療報酬上も、ADLの充実体制加算などの評価もいただいており、大変ありがたく思っております。

 今回の改定でも、医療従事者の負担軽減や働き方改革の観点から、多職種の連携が評価されました。これは大変にいい方向ではないかと思っています。今後は、加算での評価だけではなくて、一歩進んで、もっと安定感のある入院基本料の中で多職種連携の評価をするというふうに進めていっていただければありがたいと思いますが、そこの部分ですけれども、いかがでしょうか。

    〔主査退席、石崎主査代理着席〕

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 入院基本料についての御質問でございました。

 入院医療につきましては、先生御案内のように、患者さんの診療及び療養上の世話が基本でございます。したがいまして、診療報酬の入院料につきましては、医師や看護職員などの配置を要件としているところでございます。

 その中で、医師や看護職員以外の医療従事者の方々の配置につきましては、提供されます入院医療の性質に応じて要件を設定をいたしております。

 具体的には、例えば、回復期リハビリテーション病棟入院料あるいは地域包括ケア病棟入院料におきましては、リハビリテーション専門職あるいは社会福祉士等の配置を要件としております。また、精神病床の地域移行機能強化病棟入院料、ここにおきましては、精神保健福祉士の配置を要件としている。こういったように、入院医療の性質に応じて要件設定をさせていただいてございます。

 また、今般の平成三十年度診療報酬改定におきましては、将来の入院医療のニーズの変化に柔軟に対応できるような報酬体系といたしたい、こういう観点から、御案内のように、一般病棟入院基本料等におきまして、人員配置等の入院医療の基本的な評価に加えまして、診療実績に応じた段階的な評価を組み合わせる、そういったような体系に再編統合を行うこととしているところでございます。

 いずれにいたしましても、先生御指摘のとおり、多職種の連携によりまして質の高い入院医療を提供していく、これはまことに重要でございますので、引き続き、関係者の方々の御意見をよく伺いながら取組を進めてまいりたい、かように考えてございます。

安藤(高)分科員 どうもありがとうございました。

 これからますますチーム医療、チーム介護、そして多職種シフティングの時代でございますので、どうかよろしくお願いいたします。

 次に、介護医療院について質問させていただきます。

 今回の改定で、介護療養病床の移行先として介護医療院の創設がされました。そのとき、病室の面積は八平米が基準でございますけれども、大規模改修までは六・四平米でも可能ということに聞いております。今回、介護医療院は、医療と介護の二つのニーズをうまく組み合わせた、とてもいい制度ができたのではないかと思っております。

 そこで、転換の施策として、特に大都市部なんかでは、土地が高い、土地がない、コストも高いというような状況が続いておりますので、例えば、地域医療介護確保基金を充実させて、更に一歩進めた形を御検討いただければ、そう思っております。その点、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、介護療養型医療施設等から介護医療院への転換につきましては、円滑かつ早期に行うことが可能となるよう、しっかり支援を行うことが重要と考えております。

 平成三十年度の介護報酬改定におきましては、先生御指摘のとおり、療養室の床面積あるいは廊下幅の基準の緩和を行っております。また、介護医療院への転換後、サービスの変更内容を利用者あるいは地域住民等に説明する際の取組等につきまして、一年間に限り算定可能な加算の創設も行っております。さらに、転換の際に工事等が必要となった場合には、地域医療介護総合確保基金等による費用の助成もいたすこととしております。

 介護医療院等の転換に向けましては、六年間の経過措置期間中に移行状況等を適切に把握しつつ、必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

安藤(高)分科員 どうもありがとうございました。

 少しでも多くの病床が転換できるように、これからまた一般病床とか精神科の病床の問題もありますけれども、それを含めて、どうかよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、介護職における処遇改善についての質問をさせていただきます。

 昨年十二月に閣議決定された新しい経済政策パッケージの中でも、二〇一九年十月の消費税率引上げに伴って、介護サービスの事業所における勤続年数十年以上の介護福祉士については月額平均八万円相当の処遇改善を行うということになりました。これも大変ありがたく思っております。

 しかし、介護福祉士等の介護職員は、介護施設だけではなくて、医療施設あるいは病院でも勤務しております。それで、医療施設で働く介護職員に関しては処遇改善加算がついていないということで、例えば医療施設と介護施設を両方経営をしている事業所なんかにおいては、一方はついているけれども一方はついていないということで自腹を切ったりして、非常に調整が困難をしています。

 また、地域によっては、医療施設のみのところの法人さんなんかでは、地域の介護施設の方に大量に介護職が行ってしまうというような事態も起きています。

 今、非常に介護職員の確保が困難な時代でございます。ぜひ、二〇二五年の地域包括ケアシステムの構築に向けて、今回の診療報酬、介護報酬の改定でも医療と介護の連携というのが強く言われているわけですので、介護職員の仕事場が介護施設か医療施設かによってこの処遇に差が生まれないように、解決すべき課題はあると思います。例えば、診療報酬においてそれを評価するとか、そういうところに関してはいかがでしょうか。ちょっとその点をよろしくお願い申し上げます。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 看護補助者の方々の処遇についてのお尋ねだと承知をいたしております。

 保険医療機関におきましては、御案内のように、介護職員を含めてさまざまな方が看護補助者として勤務をしておられます。診療報酬におきましては、この看護補助者を配置した場合に、その人数に応じた加算を設けるという形で評価をさせていただいております。

 今般の三十年度改定におきましても、看護職員の負担軽減、それから看護補助者との業務分担、共同を推進する、それによってより質の高い療養環境の提供を目指す、これが非常に重要だと思っております。こうした観点から、看護補助者の配置に係る加算の評価を引き上げるというやり方をさせていただいておりまして、また、加算を算定できる病棟の範囲も拡大する、こういった取組を今般の改定でさせていただいたところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、医療機関の看護補助者の配置に関する評価の充実、これにつきまして、関係者の方々の御意見も伺いながら、引き続き取り組ませていただきたい、かように考えてございます。

安藤(高)分科員 どうもありがとうございます。その方向をお聞きして安心しました。

 まだ、でも、加算と処遇改善の加算の間には開きがあるので、そこら辺もぜひともまた埋めていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、医療と介護の提供体制について質問をさせていただきます。

 医療、介護の提供体制に関しましては、現在、地域医療構想と地域包括ケアという大きな二つの施策が進んでいます。地域によっては、医師や看護師等の人材不足が課題になったりしておりまして、また、病床の統廃合が必要だったりもいたします、そういうような理由で。いかに地域の医療、介護の資源を有効活用するかということが非常に重要になってきます。それで、その人材の観点から幾つか質問をさせていただきたいと思っております。

 一つは、国では、地域包括ケアシステムを上げて、地域を一つの単位として、安心して生活できる環境を進めています。一方で、医療や介護においては人材の地域偏在も課題でありまして、特に僻地や山間部においてはマンパワーの確保が非常に困難な状況になっております。

 例えば、例えばですよ、地域全体を一つの医療と介護の施設と捉えて、地域単位で人材のやりとりができるタスクシェアリングが行えるような柔軟な仕組みができたらとてもいいのではないかと思います。その点について、いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。

武田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘がありましたように、山間地等におきましても、患者の状態に応じて、必要な医療、介護を適切な場所で受けられるよう、医療従事者や介護従事者を確保することは非常に重要になっております。

 このため、医師につきましては、地域ごとの医師の偏在を可視化し、地域で必要な医師確保が可能となるような総合的な医師偏在対策を盛り込んだ法案を現在検討しているところでございますけれども、医療、介護を通じた人材確保という意味では、地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして、地域医療支援センターを通じた医師不足地域への医師の派遣、看護師等養成所の施設整備費、運営費の補助等を通じた看護職員の確保、介護人材の参入促進、資質の向上、労働環境、処遇の改善に資する取組への支援、こういった支援を講じているところでございます。

 ただいま御指摘がありました、地域を面として捉えて、その協力関係を築いていくということで申し上げますと、地域医療連携推進法人制度が導入されておりますけれども、この地域医療連携推進法人制度におきましては、地域において医療、介護を提供する非営利法人が複数参加をして設立をする仕組みでございますので、例えば、この法人間で人事交流を行い、医療従事者、介護従事者が不足する施設に人材を配置することも、この仕組みを使っても可能であるというふうに思います。

 いずれにいたしましても、医療・介護従事者の確保というのは大変重要な課題でございまして、さまざまな施策の組合せによりまして、必要な人材が確保できるように努めてまいりたいというふうに思っています。

安藤(高)分科員 どうもありがとうございます。

 地域医療連携推進法人、とても有効な手段だと思いますけれども、まだまだハードルが高いと思っていらっしゃる現場の方もいらっしゃるので、そこら辺もまた調整しながら、有効に活用できるようにお願いしたいと思っています。

 次に、医師の偏在問題ですけれども、これも今、部会等で非常に活発に審議されておりますが、医師の偏在と医師の養成について、ちょっと事例を挙げながら御質問をさせていただきたいと思っています。

 医師偏在の対策を進める上で、医師の養成の観点から考えることが一つ重要だと思っています。一人前の医師になることと偏在対策を両立させるということで、例えばアメリカのACGMEが進めている取組なんかも今後参考になるとは思うんですけれども、例えば、若手の医師が医師不足地域に派遣される際に、定年間近、定年を過ぎた高齢の医師でも、働きたいベテラン医師というのはいると思います。その二人の、若い人と年配の人をセットで派遣するのはどうかと思うんです。

 特に、医師、私も医師ですけれども、五、六年目の医師というのは、外科の手術をどんどんやりたいんだけれども、大学病院の中ではなかなかその順番が回ってこない。また、地方に行けば手術の症例も多いということで、しかし、不安な部分があればベテランの医師がそこにいるということで、これはベストマッチングではないかと思います。その人たちを、多少期間をずらしながらも連続して派遣していくというような、そういうことができればすばらしいのではないかと思っています。

 それを含めて、医師の偏在対策を更に進めていくということに関して見解をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

大沼大臣政務官 お答えいたします。

 厚生労働省といたしましては、専門医認定支援事業などを通じまして、これまでも、若手医師が希望する病院で専門研修を受けられるよう、各都道府県による調整のもとで、医師不足地域への医療機関に指導医の派遣等を行う場合に、必要な旅費等経費を補助しております。

 また、今般提出を目指しております医療法・医師法改正法案におきまして、都道府県が、医師確保対策の実施を行う大学、医師会、主要医療機関等を構成員とする地域医療対策協議会での協議に基づき、地方勤務を希望する若手医師やベテラン医師も含めた派遣調整、さらに、本人の希望に応じた多様なキャリア形成に配慮したキャリア形成プログラムの作成を進めることができる仕組みを整備することとしております。

 こうした取組を通じて、医師のニーズにも配慮しながら、医師の偏在是正を図ってまいりたいと思います。

安藤(高)分科員 どうも、政務官、ありがとうございました。

 ぜひとも柔軟な制度で、さまざまな、現場でいいアイデアがあると思いますので、そういうものを取り入れていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、高齢者の救急と病院救急車の活用について御質問をさせていただきたいと思っています。

 現在、在宅医療を推進するために、在宅の方が急性増悪したときには、一般的には総務省の救急車を利用するわけですけれども、そこまで重症じゃなくて、ちょっとぐあいの悪い方を、なかなか今使っていない病院救急車を利用してかかりつけ医の病院さんに搬送する、あるいは、最近の例では、急性期の病院さんから慢性期の病院の方あるいは介護施設の方に患者さんを搬送する例がございます。こういうことを行うことによって、本当に総務省の救急車は本来業務に集中することができるということで、さまざまなものが効率化されるのではないかな、そういうふうに思っております。現在、在宅と介護施設等のさまざまなネットワーク、病院も含めたものができつつある中で、ぜひそれを有効活用していただければな、そう思っております。

 現場のデータを見ますと、病院救急車を使って、高齢者救急の約半分が慢性期病院に搬送されているという例もあります。これを医療経済的に考えても、急性期病院の治療単価と慢性期病院の治療単価では大分違います。医療費削減の意味からも、一つの施策になるのではないかと思っております。

 現在、基金を利用させていただきながら、幾つかの地域でもってこの補助が出ておりますけれども、まだまだ補助が足りずに、病院さんの持ち出しになっている部分が非常に多いわけです。ぜひ、そこら辺をきちっとカバーできて、地域包括ケアの中で更に役立てるような仕組みをつくっていただきたいと思いますけれども、厚労省の方の御見解はどうでしょうか。よろしくお願いします。

武田政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、高齢化に伴い救急搬送が増加しております。救急搬送件数は年を追うごとにふえておりますけれども、特にやはり高齢者の救急が増加をしており、重症でない方もかなり搬送を要請しているという現状にあると認識をしております。

 そういう中で、なかなか消防機関に属する救急車だけでは対応が難しくなっているといったこと、また、そもそも高齢者救急におきまして、かかりつけ医、また御指摘のありました慢性期の医療機関が関与をする必要があるのではないかといったこと、そういったことが指摘をされているところでございます。

 こういう中にありまして、消防機関に属する救急車だけではなく、医療機関が有する救急車、いわゆる病院救急車についても一定のルールのもとで活用し、高齢者搬送を行うことは極めて有効な政策ではないかというふうに考えているところでございます。

 東京の先進地域、例えば八王子市、町田市、葛飾区などにおきましては、増加する高齢者の救急搬送に対応するため、事前のかかりつけ医との取決めのもとで、病院救急車で在宅療養患者の搬送を行う患者搬送システムを確立しているところでございまして、自治体との協議のもと、地域医療介護総合確保基金を活用して実施している事例があると承知をしております。また、これが非常に効果を上げているというふうにも承知をしているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、このような先進的な取組を紹介することなどを通じ、都道府県において地域の実情に応じて迅速かつ適切に患者搬送が行われるよう、地域医療介護総合確保基金等を活用した病院救急車の運用も含め、都道府県にしっかり働きかけてまいりたいというふうに思っております。

安藤(高)分科員 慢性期の患者さんでも、多少重症な場合は、医師が同乗する、あるいは看護師さんとか救急救命士さんが同乗します。ぜひその部分の評価もお願いしたいと思っております。

 次に、医療機関から特定施設への転換の話です。

 介護療養型医療施設から介護医療院への転換は主に行われることになっておりますけれども、例えば、六年間の経過措置が講じられている二十五対一の医療療養病床の移行先としては、もちろん二十対一の療養病床もありますけれども、もう一つ、有床診療所に転換したりとか、あるいは、残りの病床を有料老人ホームなどの特定施設にすることも外づけ医療ということで考えられると思います。

 その際、地域の既存病床を限りなく有効に使って、新しい施設をつくるのではなくて、それをうまく活用するために、スムーズな移行をする必要があると思います。そのためには、地域の実情において、人員配置とか施設基準を柔軟に運用をすることができれば、より実行しやすいと思います。その点、いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 介護療養型医療施設等の転換を円滑に進めるためには、施設の実態に応じた転換が可能となるよう、きめ細かく支援することが必要であると考えております。

 このため、先生御指摘のとおり、介護療養型医療施設等から医療機関を併設した有料老人ホーム等の居住スペースに転換するということも極めて有効な方策だというふうに考えております。この場合の特例といたしまして、サービスに支障がない場合に限りでございますけれども、生活相談員、機能訓練指導員、計画作成担当者の兼任を認める、あるいは、浴室、便所、食堂、機能訓練室の兼用を認めるといった特例を講ずることとしております。

 さらに、有料老人ホームの居室の床面積につきましては、標準指導指針におきまして入居者一人当たり十三平米以上としておりますけれども、既存建築物を転用して有料老人ホームに転換する場合につきましては、適切な運営体制が確保されていると都道府県知事が認めた場合には、この床面積の基準を緩和しているところでございます。

 今後とも、介護療養型医療施設等の転換に向けまして、地域の実情に応じました柔軟な運用を行いまして、必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

安藤(高)分科員 ぜひとも、特に大都市部なんかで、土地がない、土地が高いところがございます。そういうところにも十分に適用できるような柔軟な制度を、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、介護人材についての質問をさせていただきたいと思います。

 二〇二五年には三十七万人の介護職員の不足が予想されております。その場合、外国人の労働者の活用も、これは非常に期待できると思います。

 外国人の人材については、今、EPAによる受入れもありますけれども、看護師や介護福祉士の合格率がさまざまな問題によって低いということがあるので、それについても何かいい手だてがないか、そう思っております。また、資格を取得しても、配偶者の労働時間等に制限があって、それが原因で母国に帰ってしまうパターンが非常にふえております。それについても何か救済策がないかということをお伺いしたいと思っております。よろしくお願いします。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 外国人の介護人材につきましては、ただいま御指摘ありましたように、EPA、あるいは昨年度追加されました技能実習制度に基づく受入れ、及び在留資格「介護」ということで受入れを進めているところでございます。

 EPAにつきましては、以前から受入れを行っておりますけれども、それぞれの受入れ施設での日本語学習、また、そのほかの学習の支援等及び全体としての日本語学習の支援等を国としても進めておりまして、引き続きしっかりと支援をしていきたいと考えております。

 また、新しく始まりました技能実習制度、あるいは在留資格「介護」の受入れで来られた外国人の方につきましても、いろいろな日本で暮らされる場合の諸問題等を感じられているところもあろうかと思いますので、平成三十年度予算案におきましては、こうした方々、特に留学生などの日常生活に関する相談支援などの体制を予算に盛り込みまして、しっかりと整備をしていきたいというふうにも考えております。

 今後とも、介護現場で専門人材として活躍することが期待される外国人の方の支援に積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。

安藤(高)分科員 どうもありがとうございました。外国から来た人が本当に日本を好きになって愛するような制度をつくっていただきたいと思っています。

 最後の質問ですけれども、社会保障と教育という観点からの質問です。

 社会保障制度は、国民、とりわけて現役世代の理解の上に成り立っている制度ですけれども、社会保障と税の一体改革を含めて、社会保障に関する教育を若いときから推進することが非常に重要だと思います。そのことによって、ヘルスリテラシーの向上にもつながりますし、また、予防という視点からもよい影響があるのではないかと思います。

 このように、社会保障に関する教育について、厚生労働省としてはどのように取り組んでいらっしゃいますか。よろしくお願いいたします。

藤澤政府参考人 お答えを申し上げます。

 社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくことは、重要な政策課題であると認識をしております。将来の社会を担う若い世代に、税と社会保障の一体改革も含めて、社会保障の意義を正しく理解をしていただいて、当事者意識を持って考えてもらうことは大変重要だというふうに考えております。

 このため、厚生労働省としましては、これまで、高校生向けに作成をしました参加型の授業に資するワークシートであったり映像教材を全国五千の全ての高等学校に配付をするとともに、各地の教育委員会等の場において、それらの教材の活用方法についての研修を、これまで累計千四百人以上の方に対して実施をしてきたところであります。引き続き、作成した教材の活用方法についての研修を実施してまいりたいと考えております。

 また、文部科学省と連携をして取組を進めているところでございまして、昨年三月の中学校学習指導要領の改訂では、社会科の公民的分野において、少子高齢社会における社会保障の意義に関する指導の改善充実を図るために、少子高齢社会における社会保障の充実、安定化について、それらの意義を理解することを明記するなど、その充実が図られたところでございます。

 引き続き、文部科学省とも連携を進めながら、さまざまな機会を捉えて、教育現場において社会保障教育が正しく行われる環境づくりに取り組んでまいりたいと考えております。

安藤(高)分科員 これは時間がかかりますけれども、日本の国をより豊かにするために、どうかよろしくお願いいたします。

 私の質問はこれで以上ですけれども、最後に、受動喫煙対策ですけれども、これは非常に命にかかわる問題でございますので、昨日も厚生労働省からの基本方針が出ましたけれども、ぜひとも、努力義務や罰則規定の議論はこれからですけれども、実効性のある、より厳しいものにしていただけたらと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

石崎主査代理 これにて安藤高夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、菊田真紀子君。

菊田分科員 大臣、一日お疲れさまでございます。きょう最後のバッターでありますが、無所属の会の菊田真紀子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私の選挙区、地元は新潟四区でありまして、燕三条というところは、非常に、物づくりの町ということで、歴史と伝統を積み重ね、そしてまた新たな挑戦をしているところであります。非常に、中小企業、小さな町工場もたくさんございます。そういう地元の中小企業の経営者の方から御指摘がありました特定自主検査ということに関しまして、これから質問をさせていただきます。

 フォークリフトなどの運搬機械や、ブルドーザー、ショベルカーなどの建設機械には、一年に一回の特定自主検査が労働安全法によって義務づけられています。自主となっているんですけれども、法律で義務づけられた検査ということでありますが、この特定自主検査制度について、制度をつくった趣旨と制度の概要について、まずは厚生労働省にお答えをいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今委員の御質問がございました特定自主検査、これは、例えばブルドーザーなどの建設機械や高所作業車など、危険を伴う機械等の安全性を確保する、これが趣旨だということでありますが、労働安全衛生法に基づき、事業者に対し、定期的にこれらの機械を検査することを義務づける制度であります。検査には二通りありまして、自社の有資格者が行うものと厚生労働省の登録を受けた検査業者が行うもの、いずれかの検査の実施が求められているわけであります。

 また、事業者が特定自主検査を行った場合は、その結果を記録するとともに、検査を行った機械に検査標章を張りつけることも義務づけられているところでございます。

菊田分科員 制度が導入された昭和五十四年当時、高度経済成長に伴いまして、建設荷役車両の稼働が急速に増大をし、建設荷役車両による労働災害が増加していました。よって、この特定自主検査制度が導入されることになったというふうに聞いております。

 制度の導入から四十年近くたちました。労働災害を防ぎ、従業員の安全を図ることは、もちろん重要です。しかし、事業者に検査の負担を強いるのであれば、できる限り負担やコストを少なくするべきです。労働安全法によって事業者に義務を課している厚生労働省には、当然、コストが過大なものにならないよう監督する責務があると考えますが、厚生労働省、そのような考えをお持ちか、大臣、お答えください。

加藤国務大臣 特定自主検査に係る費用、これは届出という形でお出しをいただいているようでありますけれども、その水準は、危険を伴う機械等による労働災害を防止するという趣旨から、事業者やあるいは各検査業者において適切な価格を設定しているものと考えております。

菊田分科員 ちょっと、大臣の答弁、事業者の負担を最小化するということに関して踏み込んでいただけなかったので残念なんですけれども、現在どのような状況が生じているか、ちょっとこれから述べたいと思います。

 特定自主検査を行う検査業者の団体で、公益社団法人建設荷役車両安全技術協会、通称建荷協という協会があります。この建荷協の法律上の位置づけや厚労省との関係、特に退職後も含めた人事的なつながりについてお答えください。

加藤国務大臣 公益社団法人建設荷役車両安全技術協会、建荷協と称するようでありますが、は、厚生労働省が定める登録の基準、有資格検査員数、検査機器等を満たして登録を受けた検査業者などを会員とする公益法人であります。また、この協会は、厚生労働省の登録を受けた、検査員の研修機関でもあります。

 現在、建設荷役車両安全技術協会には、厚生労働省からの現役出向者はおりません。したがって、人事面でのつながりはございませんが、国家公務員法に基づく再就職情報の届出の提出を受け、厚生労働省として把握している再就職者は七名、また、離職後二年を超える場合は国家公務員法に基づく届出義務の対象外でありますため、把握をしておりません。

菊田分科員 元厚労省の方が常務理事になっているはずです。常勤役員の月額で、これは、厚生労働省からではありませんけれども、役所の方から事前に資料もいただいておりますけれども、常勤役員の月額で六十九万七千六百円支給されていることが公表されています。

 この点、もう一回確認したいと思います。いかがですか。

加藤国務大臣 ちょっと事務方が、金額は、ちょっと済みません、把握しておりませんで、今、届出の対象になっていないので、金額そのものは把握はしておりません。

菊田分科員 建荷協が特定自主検査制度において果たしている役割を伺いますけれども、例えば、動力プレス以外の登録検査業者の検査員研修機関は、この建荷協一つしかありません。特定自主検査という仕組みは、この厚生労働省のいわば天下りを受け入れている建荷協がなくては決して機能しない仕組みになっているのではないでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、検査員の研修機関、これは厚生労働省が登録をするという仕組みになっておりますけれども、それについて、特段、独占、一に限るという規定はないわけでありますから、ここからそうした申請があって、現在、厚生労働省が登録をしている、こういうことなんだと思います。

菊田分科員 先ほども申し上げましたけれども、検査員の研修機関というのは、この建荷協一つでやっているというのが実態であります。それから、厚生労働省のOBがこの建荷協の本部常務理事についておられますけれども、私が把握している限りでは、千葉県の労働局長を務めた方であるとか茨城県の労働局長を務めたような方がこの本部の常務理事、常勤の理事につかれているということでございます。建荷協が特定自主検査制度に欠かせない存在であるということは明確でありまして、この特定自主検査の、今度は料金について伺いたいと思います。

 先ほど大臣が答弁の中で述べられましたけれども、特定自主検査の検査料というのは届出制になっています。事業者が相見積り等で価格交渉を行おうとしても、届出制になっているので価格交渉に応じてもらえないという声を聞きます。なぜ届出制にしているのか、その理由と、価格競争が阻害されているのではないかという指摘について見解をお答えください。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、特定自主検査の料金は、厚生労働省の登録を受けた検査業者が自主的に定め、その検査料の額を届ける、こういう仕組みになっております。これは、届けられた料金から不透明な値引き等が生じないよう、当該料金どおりに検査が実施されることを担保されているというふうに承知をしております。

 ただ、検査料の水準については、検査業者が自主的に設定できるということで、調べた中では、かなり幅があるような感じがいたしましたけれども、それぞれが価格を自分で決めておられる、したがって、価格競争が阻害されている状況にはないのではないかというふうに考えております。

 ただ、厚生労働省として、検査料金が、この水準にしなさい、特定の水準になる、こういうような指導は行っておりません。

菊田分科員 確認ですけれども、私の地元の事業者からは、建荷協の主導によって高い料金設定が協会内で行われているのではないかというような話も聞こえてきます。確認ですが、まさか、元厚労省の方が常勤役員にある協会がそのようなことを行っているということはないということで、よろしいでしょうか。

加藤国務大臣 少なくとも、その協会の役目では全くないんだろうというふうに思います。

菊田分科員 一般論として、業界団体が会員会社内の価格を調整し、公正な価格競争が行われていないとしたら、独占禁止法上どのような取扱いになるのか、公正取引委員会に伺います。

杉本政府特別補佐人 一般論として独禁法上の考え方を申し上げますと、事業者団体が、構成事業者の供給する商品若しくは役務の価格を決定し、又はその価格の維持、引上げを決定することにより市場における競争を実質的に制限することは、独占禁止法上禁止されておりまして、独占禁止法違反の行為となります。また、市場における競争を実質的に制限するまでに至らない場合であっても、このような行為は、原則として独占禁止法規定の違反になると考えております。

 公正取引委員会としては、このような行為が行われている場合には、同法に基づきまして厳正に対処してまいる方針でございます。

菊田分科員 特定自主検査制度に関して、公正取引委員会にはそういう声が届いていませんか。

杉本政府特別補佐人 私の把握するところでは、いまだに、聞いたところでは、ございません。

菊田分科員 ぜひしっかりと適正な監督、監視をお願いしたいというふうに思います。実際に、これはおかしいのではないかという率直な声は公正取引委員会の方に伝えているという事業者も、聞いておりますので、そういう声をしっかりと受けとめて、監視をしていただきたいと思います。

 特定自主検査の料金なんですが、種類や大きさにもよるんですけれども、一台十万円を超えるケースもあります。仮に十台所有していたら、年間、毎年毎年、百万円かかることになりますので、小規模事業者にとっては大変な負担です。繰り返しになりますが、適正な価格競争が行われるように、厚労省と、もう一度、公正取引委員会に適切な監督及び監視をお願いしたいと思いますが、大臣、答弁いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まさに厚生労働省として、検査料について指導しているわけではございませんので、どういう価格でなきゃいけないとか、そのことについて何か申し上げるような立場ではないんだろうというふうに思います。

 ただ、いずれにしても、もともと特定自主検査の趣旨がございますから、その趣旨に沿って適正に検査等が行われるようにしていく、これは当然私どもの役割だというふうに思います。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会といたしましては、独占禁止法違反の行為が行われている場合には、同法に基づき厳正に対処していく方針でございます。

菊田分科員 特定自主検査が済んだ車両には、建荷協が発行する検査済み標章のシールが張られることになっています。厚労省は、建荷協のシールでなくても、指定された内容がわかるシールであれば問題はないというふうに事前に回答いただきましたが、ほぼ全て建荷協のシールが使われているというのが実態ではないでしょうか。

 事実関係として、年間何件の特定自主検査が行われ、そのうち何件が建荷協のシールが使われていると把握していますか。お答えください。

加藤国務大臣 特定自主検査は、先ほど申し上げた、事業者が自社の有資格者に行わせる場合と、厚生労働省の登録を受けた検査業者に行わせる場合があるわけでありますが、事業者が自社の有資格者に行わせた検査数、これは把握をしておりませんが、登録検査業者が行った検査数は、平成二十八年度で百三十九万五千三百七十三件ということでございます。

 また、事業者が特定自主検査を行った機械等に張りつける検査標章のうち、建荷協のシールが何件使われているかについては、当省としてそうした数字を把握しているところではありません。

    〔石崎主査代理退席、主査着席〕

菊田分科員 これはどこに聞いたら把握しているんでしょうか。厚生労働省の制度のもとでこれはやっているんですけれどもね。

加藤国務大臣 先ほど委員がお話しになりましたように、この検査標章というのは、たしか、検査実施の年月等々が書いてあればいいということで、別に特段の書式が決まっているわけではございませんから、それぞれが自主的に、あるいは自分でつくって、そういったものをつくることも自由ということでございますので。

 最終的にどこが知っているかといえば、多分、建荷協がシールを販売されておられるので、そこにデータがあるのではないのかなというふうに思います。

菊田分科員 ほぼ全て建荷協のシールが使われているというのが実態です。このシール、建荷協新潟支部のホームページによりますと、建荷協の会員には三百円、会員外には九百円で販売されています。また、特定自主検査の結果を記録する記録表、これは何種類かあるのですが、例えば普通紙だと、会員には四百五十円、会員外には七百円で販売しています。また、先ほど申し上げた検査業者の検査者の研修は建荷協しか行えません。

 公益社団法人を所管する内閣府に伺います。

 この三つの事業、標章の販売、記録表等の販売、検査者研修による建荷協の収入、支出、収益をそれぞれお答えください。

田中副大臣 今お話がありました建荷協でありますが、委員がおっしゃるように、特定自主検査に関する研修ですとか、検査済み標章、また検査記録表の発行等による特定自主検査制度の普及あるいは推進等、公益目的事業として今実施しているところであります。

 平成二十八年、この事業年度におけます当該事業については、まず、経常収益が約十二・三億、経常費用が約十二・七億、経常増減額が約〇・四億円のマイナスとなっているところであります。

 経常収益の内訳ということでありますが、標章の販売による収益が約七・七億円、記録表などを含む出版物の販売による収益が約一・七億、検査者の研修収益が約二・六億円となっているところであります。

菊田分科員 内閣府は、公益法人が行う公益目的事業について、収入が適正な費用を超えてはならないという収支相償の原則がありますけれども、例えば、職員の給与は四億三千万円計上されています。こうした直接の費用でないものを除いて、個別の収入と費用を照らし合わせてみますと、検査研修では一億円の費用を使い、二億四千万円の収入があります、一個一個を見ていくと。記録表等の販売では、五千万円の費用で、一億五千万円の収入があります。標章の販売では、二千五百万円の費用で、七億八千万円の収入が上がっているんです。

 協会には人件費等の費用をできるだけ減らすインセンティブが働かなくて、野方図に費用がかかった分だけシールの料金等を上げればよい仕組みになっている、私はそんなふうに思うんですが、内閣府、いかがでしょうか。

田中副大臣 公益法人制度におきましては、今委員がおっしゃるとおり、公益目的事業を行うに当たっては、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならないと、収支相償ということが定められているものであります。

 この原則を前提といたしまして、委員御指摘いただきましたシールの料金等、人件費等の費用の適正性については、まずは、当該法人において判断して、説明責任、これを果たすべきものと考えているところであります。

 内閣府といたしましては、公益法人行政を担当する立場から、法人の適正な事業運営が行われるように、引き続き、適切な指導監督に努めていきたい、そのように考えております。

菊田分科員 シールの代金や研修料は検査業者が建荷協に払うことになっていますが、そのもとは、フォークリフトなどを所有する町工場の業者、そういう業者が支払う検査料金です。厚生労働省が義務づけている特定自主検査によって事業者に過大な負担を強いていると言えないでしょうか。大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 個別の団体がそれぞれでおやりになっていることでありますのでコメントは差し控えたいと思いますけれども、ただ、特定自主検査そのものに関して事業所が行わなければならないとされている検査結果の記録や検査標章の張りつけ、検査員への研修は、危険を伴う機械等による労働災害を防止するというそもそもの目的、趣旨から必要なものでありますので、そのこと自体が事業者に過度な負担を課しているというふうには考えておりません。

 また、御指摘の記録表や検査標章については、検査年月日等、法令上定めている事項の記載があれば足りるわけでありますので、建荷協が販売しているものを利用しなければならないといったものでは全くないということでございます。

菊田分科員 経営状況に余力のない中小企業が多い中、政府の仕組みによって過大な負担が生じているかどうかは、経産省としても注視すべきではないかと考えます。特定自主検査という制度によって生じている現状について、経産省としての考えを伺います。

 加えて、以前の役員名簿を見ますと、経済産業省OBの方が常務理事だったこともあるようですが、事実関係をお答えください。

大串大臣政務官 経済産業省といたしましては、同制度が中小企業に与える影響について注視し、必要に応じて、制度を所管する厚生労働省や建設業等を所管する国土交通省とも連携しつつ対応してまいりたいというふうに思います。

 また、国家公務員法に基づきまして、再就職の約束をした職員や、管理職職員の経歴がある職員OBの再就職情報については、任命権者である経済産業省が届出を受けているところでございますが、この提出を受けた届出を確認したところ、当該協会への再就職者はおりませんでした。

 ただ、今般、御質問をいただきまして、当該協会に確認をしたところ、過去五名の当省OBが在籍した記録があるとのことでございました。

菊田分科員 そうなんです。経産省のOBの方が常務理事だったということがあるんですね。

 特定自主検査というのは、先ほど加藤大臣がおっしゃったように、検査業者が行う検査以外にも、事業者が資格を持つ検査者に実施をさせる事業内検査というやり方がありますが、この事業内検査は年間何件行われているのか、教えていただきたいと思います。

加藤国務大臣 先ほどちょっと御答弁させていただいたつもりではあったんですが、事業者が自社の有資格者に行わせた検査数は、厚生労働省においては把握をしておりません。

菊田分科員 事業内検査の件数を把握していないという状況は、適切な監督を行っていると言えるんでしょうか。

加藤国務大臣 安全衛生面から、事業所への立入検査というのかな、立入り指導というのでしょうか、を行っておりますので、そういった際には、そうした車に標章がついているのか、あるいは、それがきちんと特定自主検査を受けているのか、そういった確認をしているということであります。

菊田分科員 ちなみに、その立入検査というのは年間どれぐらいやっているんですか。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと具体的な数字を今把握をしておりません。

菊田分科員 これはやはりおかしいと思うんですね。きちっと適切な監督を行っているということであれば、現状を改善する必要はあると思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 現状を改善するという御趣旨がちょっと受け取れなかったんですが、どういう問題点を改善すべきかという点で。

菊田分科員 事業内検査の件数だけは把握していないというのはおかしいと言っているんです。

加藤国務大臣 これは結果的に、それぞれの会社の中で行われていますから、これを把握しようとすると、それぞれの企業から申告をしていただかなきゃいけません。そうすると、それはまた、ある意味では企業にとっての負担にもなるわけですから、やはりそうしたものは、そうならないようにということで、多分、検査、一々とっていない。しかし、そのかわり、そうしたそれぞれの工場等に安全衛生面から監督指導に入ったときには、そういったこともしっかりチェックをしていくということであります。

 ちょっと検査数については、今手元にありませんので、もし必要であれば、後ほど事務局の方から説明させていただきたいと思います。

菊田分科員 いろいろ細かい質問をさせていただきましたけれども、労働災害を防いで従業員の安全を図るということはもちろん重要ですし、私も同じ思いであります。しかし、事業者に検査の負担を強いるのであれば、できる限りその負担は最小にすべきであるし、仮に、そこに役所のOBが天下りをして、またそこでお給料をもらうというようなことがあるのだとすれば、それは事業者からすれば、一体何なんだ、こういう不信と不満につながるんだろうというふうに思います。

 こういう事業者の思いに対して、厚生労働省だけでなく、きょうは経産省と公正取引委員会にも来ていただきましたので、ぜひ政府全体で取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。最後に一言ずつ御答弁お願いします。

加藤国務大臣 厚生労働省としては、引き続き、特定自主検査、この趣旨、目的がしっかり達成されるように、そして、それに沿って実施されるよう、事業者や検査業者に対して必要な指導等を行っていきたいと思います。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会としては、独占禁止法に違反するような事態があるときには、これに対して厳正に対処してまいりたいと考えております。

大串大臣政務官 先ほどもお答えいたしましたとおり、中小企業に与える影響というのをしっかり注視しながら、制度を所管する厚生労働省や国交省とともに連携しつつ、対応してまいりたいというふうに考えております。

菊田分科員 内閣府もお願いします。

田中副大臣 内閣府は公益法人行政を担当する立場であります。適正な法人の事業運営が行われるように、しっかりと適切な指導監督に努めてまいります。

菊田分科員 質問を終わります。ありがとうございました。

星野主査 これにて菊田真紀子君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十六日月曜日午前九時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時一分散会


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