衆議院

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第2号 令和6年2月28日(水曜日)

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令和六年二月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 橋本  岳君

      上杉謙太郎君    越智 隆雄君

      加藤 勝信君    後藤 茂之君

      岡本あき子君    早稲田ゆき君

      緒方林太郎君

   兼務 保岡 宏武君 兼務 山下 貴司君

   兼務 近藤 昭一君 兼務 阿部  司君

   兼務 池下  卓君 兼務 國重  徹君

    …………………………………

   厚生労働大臣       武見 敬三君

   総務副大臣        馬場 成志君

   厚生労働副大臣      浜地 雅一君

   厚生労働副大臣      宮崎 政久君

   厚生労働大臣政務官    塩崎 彰久君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 上村  昇君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 濱田 厚史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           泉  潤一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局長)         大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長)   佐々木昌弘君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            山田 雅彦君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  間 隆一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  橋本 泰宏君

   厚生労働委員会専門員   森  恭子君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     上杉謙太郎君

  早稲田ゆき君     岡本あき子君

  緒方林太郎君     吉良 州司君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     越智 隆雄君

  岡本あき子君     早稲田ゆき君

  吉良 州司君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  北神 圭朗君     福島 伸享君

同日

 辞任         補欠選任

  福島 伸享君     吉良 州司君

同日

 辞任         補欠選任

  吉良 州司君     緒方林太郎君

同日

 第一分科員阿部司君、第二分科員山下貴司君、池下卓君、第三分科員保岡宏武君、第四分科員國重徹君及び第八分科員近藤昭一君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和六年度一般会計予算

 令和六年度特別会計予算

 令和六年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

橋本主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 令和六年度一般会計予算、令和六年度特別会計予算及び令和六年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上杉謙太郎君。

上杉分科員 皆さん、おはようございます。自民党の上杉謙太郎でございます。

 武見大臣におかれましては、連日の予算委員会、そして分科会二日目ということで、あともう少しでありますけれども、是非おつき合いを賜れたらありがたいというふうに思います。

 この分科会、厚労分野ということで、御質問させていただきます。今日は、戦没者遺骨収集事業についてであります。これにつきまして、大問六問、御質問させていただけたらというふうに思います。

 まず、この遺骨収集事業でありますが、大臣始め厚労省の職員の皆様、また、現地で遺骨収集に携わっている遺骨収集団の皆様ですとか、鑑定員の皆様、あらゆる関係の皆様に今までたくさん本当に御尽力を賜りましたこと、心から敬意と感謝を表したいというふうに思っております。

 そして、昨年、この遺骨収集の改正法が衆参共に全会一致で可決、成立をいたしました。そして、遺骨収集も五年延長となったわけであります。コロナがありましたから、三年間なかなか遺骨収集ができなかったという状況があって、五年の延長ということになったわけであります。

 そして今、日本の周辺を見渡せば、安全保障環境というのは、本当に、戦後七十八年を過ぎて戦後最大の危機を迎えているところであります。国会また自民党の方でも、外交部会も国防部会も、またそういう安全保障政策に関する議論が活発に行われているところでありますが、やはり、我々政治家、そして行政に携わる者、外交、防衛、安全保障、もちろん今の安全保障は本当に大事なことであります。でも、それと同時に同じぐらい大事なものが、まさにこの戦没者遺骨収集事業であるというふうに思っております。

 さきの大戦において海外で亡くなられた二百四十万の英霊の皆様のうち、いまだ、七十八年たっても、百十二万柱の御英霊の皆様が海外の土また海に眠っているわけであります。この百十二万の英霊の皆様のお骨をできれば全て本土にお帰りをいただいて、せめて日本の土でお眠りをいただきたい、これが、今この平和を享受させていただいている我々の責務で、また国家の責務であるというふうに考えております。

 そういった思いからまず大臣にお伺いをしたいというふうに思いますが、今回、去年この五年の延長がありましたけれども、物理的にあと五年で百十二万全部収集するというのは、これはもう物理的に不可能であります。七十八年で百二十二万だったわけでありますから。

 そう考えますと、それ以上も、五年の延長のみならず、その後の延長も含めて、これはずっと続けていかなければならないわけでありますし、ただ、ずっと続けていいというわけでもないというふうに思います。

 私の世代でさえ孫の世代であります。そう考えますと、百年というのが一つの、もう百年たてば当時の御遺族の皆さんも皆様お亡くなりになる時期でありますから、そう考えますと、百年、二〇四五年を目途に、そこまでには、せめて全ての御遺骨を見つけ出して、そして、収集をし、鑑定をし、できれば御遺族の元にお返しする、これが私たちの使命であるというふうに考えております。

 そこで、五年以降の延長はあるのかどうか、また、今申し上げたとおり、百年を目途に事業を加速させていく、そういったお考えがあるのか、大臣にお伺いしたいというふうに思います。

武見国務大臣 戦没者の遺骨収集事業については、その推進を図るために、平成二十八年、遺骨収集推進法が成立をして、遺骨収集は国の責務となりました。

 当初、令和六年までの遺骨収集の集中実施期間とされたわけでありますけれども、新型コロナの影響によりまして、先生御指摘のとおり事業が滞ったということがありました。昨年の通常国会で法改正がなされて、集中期間が五年延長されたということは十分承知をしているところでございます。

 厚生労働省としては、遺骨収集事業に必要な予算や体制を確保しつつ、集中実施期間の終期でございます令和十一年、二〇二九年度までに、現在厚生労働省で保有する約三千三百か所の埋葬等に関する情報等について遺骨の有無の確認に関する現地調査を実施していき、そして、引き続き一柱でも多くの御遺骨の収集、そして送還に向けて全力を尽くしていきたいと考えております。

上杉分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 我々立法府にいる人間が厚労省さんのこの取組にお手伝いできることがありましたら、もう何なりと御用命をいただけたらというふうに思います。

 今、若手の議員の中でも、安全保障を議論する若手の中で、やはり車の両輪として戦没者遺骨収集事業というのはやっていかないと、そういう意識でおりまして、勉強会も立ち上げるところであります。是非私たちも一緒に仲間に加えていただきまして、共に遺骨収集、推進をさせていただけたらありがたいというふうに思っております。

 そして、昨年の法改正によって基本的な計画が閣議決定をされました。去年の七月であります。その中にもありますけれども、アメリカとの連携について、それを推進していくというふうにあります。

 アメリカの方は、DPAAという組織が、これは米国国防総省捕虜・行方不明者調査局ということでありますけれども、ここがその鑑定をしているというところであります。一つ結論的に申し上げますと、日本の鑑定のレベルというものを、収集から鑑定、分析、そして返還に至るまでのそのレベルというものをアメリカの基準に引き上げていく必要があるのではないかということであります。そしてまた、このDPAAとしっかりと連携を図っていくべきではないかということであります。

 実際に、平成三十一年に、DPAA側と厚労省さんの方で協力の覚書というものを交わして、一緒になって収集、そして鑑定、分析をしていこうということになったわけであります。そして、その一環としてタラワ・プロジェクトというものもあって、プロジェクトが進んでいるというところであります。

 そして、DPAAでは、簡単に言うと、法廷で正確な身元特定であったということを法医学的、また科学的に立証できる、そういった鑑定を行っているわけであります。そしてまた、おととし、令和四年には、DPAAにおいて第一回科学サミットということで鑑定に関するサミットが行われて、日本からも参加していると承知をしております。

 これは、遺骨鑑定の科学的分析向上を目指したものであると同時に、遺骨の鑑定を科学的にしっかり行って、この骨はどこの骨であるということを立証できるものとすることで、参加した国は太平洋戦争に関係した十一か国であって、各々の国の例えば外交問題、政治問題、そういうことにならないように前向きにやっていく、そういう意識もあったというふうに私の方は考えているところであります。

 どうしてそういうふうになってきたかというと、時代も変わって、科学技術というのが進展してきているわけであります。DNA鑑定もそうでありますし、次世代シークエンサー、また安定同位体比分析、そういったものもあります。

 一方、やはりどうしても遺骨収集というのは、遺留品によって、目視によって判断をしていたりですとかそういったものがあって、過去、日本においても他国から、また報道機関からそのやり方等々において重大な疑義が指摘された、そういう過去もあったわけであります。

 確かに、米兵ですとか欧州の方とかであれば骨格で分かるものであるのかもしれませんけれども、さすがに、日本人ですとか、韓国人、台湾人、アジア系の人となるとこれは見分けが難しいわけでありますから、実際にやはりそういったものには科学的鑑定が必要であるということであります。

 また、別の話でありますけれども、平成二十八年にはDPAAに安倍総理が訪問をされております。ここには外務大臣も、そして防衛大臣も同行されております。その後に、厚労大臣、加藤先生も行かれているというふうに聞いております。やはり、アメリカ、そしてDPAAとその基準に合わせるべく協力をしていって、我が国の鑑定力を上げていく必要があるということであろうというふうに考えております。

 そして、日米でやっているタラワ・プロジェクトでありますが、タラワ島において協力して収集をして、そして安定同位体比分析によってアジア系と分かったものについて日本と韓国それぞれにその検体を送還をして、それで日本は日本で分析をして、結果的に、このプロジェクトによって、御遺骨が、御家族が分かって実際に御家族の元にお帰りいただいたという非常にすばらしい好事例もあるわけであります。報道もされていたわけであります。

 そこで、このタラワ・プロジェクトにおいてですが、実際実績として、二〇一九年には百六十二の検体が日本に送られてきて、そして分析を完了しております。そして、二〇二三年度には二百二十八検体を受領しているというふうに聞いております。二〇二三年度ということではまだその最中でありますから、これはまだ分析結果、詳細にお答えは難しいのかもしれませんけれども、現状こういったことも含めて教えてもらえたらありがたいというふうに思います。

 そして、このタラワ・プロジェクトの今までの成果、そして現在どのような状況になっているか、また、今後どのような成果が見通せるか等、御教示いただけたらと思います。

泉政府参考人 お答えいたします。

 御案内のタラワ・プロジェクトでございますけれども、厚生労働省は、DPAAからの呼びかけに応えます形で、令和元年及び令和五年に職員を派遣をいたしました。DNA鑑定用として検体の採取を行ったところでございます。令和元年度に百六十二検体、令和五年度につきましては四百六検体の採取を行わせていただきました。

 令和元年度に持ち帰った検体につきましては、御案内のとおり、遺骨のDNA分析を終了しております。鑑定機関におきまして身元特定のための御遺族との検体の照合を行い、これまでに二柱の御遺骨につきまして日本人遺族との間に血縁関係があるとの結果が得られたところでございまして、その結果、DPAAから遺骨を受領し、御遺族に返還、お渡しをしたところでございます。また、今年度に持ち帰りました検体につきましても、順次、遺骨のDNA分析を実施しておるところでございます。

 引き続き、一柱でも多くの御遺骨に御帰還をいただけますよう、取組を進めてまいります。

上杉分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 タラワ・プロジェクトはタラワ島における日米の協力でありますけれども、タラワのみならず、いろいろな戦地があったわけでありますから、いろいろな地域で協力を是非進めていっていただきたいというふうにも思いますし、身元が特定されて、まあ身元が特定される場合は御遺族側の方もDNA鑑定が必要でありますから、そういったことで非常に大変なところではありますけれども、本当に一人でも多くの方に御遺族の方にせめてお骨だけでもお帰りいただけるというのが大変重要であるというふうに思いますので、ひとつ是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 今申し上げている安定同位体比分析でありますが、私たち日本の鑑定レベルをアメリカのレベルに、アメリカのレベルはグローバルスタンダードであるわけでありますので、押し上げるためには、この安定同位体比分析というのを全面導入するべきであるというのが私の考えであります。

 もちろん日本も、安定同位体比分析、研究をしておりますし、例えば防衛研究所で研究もしておりますし、東京大学に委託して研究等も進んでいるというふうに聞いております。そういった意味では、別に日本のレベルが低いわけではありません、技術力というのは。また、次世代シークエンサーというまた新しいものもありますし、DNA鑑定もあるわけであります。そういった意味では技術は日本にあるわけでありまして、全体的なやり方だったり、どこまで適用するか、そういったところにおいてもレベルを上げて、アメリカ基準にしていかないといけないということであるというふうに思います。

 また、現地の遺骨鑑定人の方々の御努力もありますし、目検でいろいろ区別するというと、現地の収集のレベルも上げていくということもまた一方であるというふうに思います。

 そこで、まずその安定同位体比分析でありますが、簡単に言うと、どこで育ったかが判別できるというものであります。ただ、どこで育ったかが判別できるというのは、それはもうデータをしっかり蓄積して、幾つもの検体をたくさんそろえて、そして、このデータが出たということは、これは日本列島のこの辺りで育った人であろうとか、朝鮮半島のこの辺りで育った人であろう、こういうふうに分かるわけであります。実際、韓国の方ではもうデータの蓄積も結構進んでいるというふうに聞いております。

 そこで、日本においてもデータの蓄積というのがどんどん進んでいるというふうに聞いておりますが、日本人確率分布のデータが現在、作成状況はどのような具合か教えていただきたいのと、さらに、この基本計画だったと思いますが、令和六年度以降は、そういった他国の同位体比分析データ、これも用いて日本のものと比較検証を図ると精度が上がるわけでありますから、そういったことをしていくという前向きな取組もあると聞いております。これは予定どおり実施することとしているのか。そして、そもそも根本的に、こういったデータ活用というのは所属集団を判別するためのものとして有用なのか、そういったところも教えていただきたいというふうに思います。

 そして、済みません、一つの質問でたくさん質問してしまって申し訳ございませんが、この同位体比分析を今、日本はやっていないわけではなくて、今御説明いたしました例えばタラワでは今やっているわけでありますし、国内であれば沖縄でもやっているというふうに聞いております。しかし、これによっていわゆる日本人の骨かどうかが分かるということでありますから、もう今、日本に送られてきている検体全てやるべきであるというふうに思いますし、これから収集されてくるところは全部やるべきだというふうに思うんですね。

 全部の地域にこの安定同位体比分析を導入をして判別していくというのがもう必要なんだ、必須なんだと私は考えております。この点についてもどのようにお考えなのか教えていただきたいと思います。

泉政府参考人 お答えいたします。

 安定同位体分析につきましては、令和四年度の委託研究事業におきまして、骨・歯コラーゲンの分析法を作成いたしましたところでございます。今年度は、歯のアパタイトの分析法の作成及び炭素、窒素安定同位体分析データから、日本人の確率分布の作成を進めているところでございます。

 また、日本人の確率分布の作成という点につきましては、今述べましたとおり、令和五年度中に炭素及び窒素について作成をいたしました。令和六年度以降には、硫黄、酸素及びストロンチウムについて作成予定としておるところでございます。

 こうしたデータにつきまして、他国の同位体比データとの比較検証をするということが課題になるわけでございますが、これまでに収集いたしました複数の安定同位体の日本人の分析データに加えまして、予定どおり、令和六年度以降に、外国人の同位体分析データを収集いたしまして、日本人の確率分布から外国人を区別する方法について研究を進めていくこととしております。

 こうした安定同位体比分析のデータを鑑定プロセスにどう活用するかというのは、御指摘のとおり重要な課題でございます。これにつきましては、今後の研究成果を踏まえ、DNA鑑定や形質人類学の専門家等と検討をしてまいりたいと思います。

上杉分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 これは研究と実地とが同時並行で進んでいるというものでありますから、結構難しいというのは重々承知をしております。その上で、しっかりと、そうはいっても、トライ・アンド・エラーではないですけれども、是非進めていっていただきたいなというふうに思います。

 そして、日本人である、又は朝鮮半島出身である、台湾出身である、もしかすると収集した現地の方かもしれないということであるということを判別することが、科学技術が上がった二十一世紀にあっては、これは日本のみならず、どこも、そういった意味では、しっかりと科学的な立証をした上での遺骨の収集、そして鑑定をしてお返しをするという、これが基本であるというふうに思いますので、是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 また、今、ずっと収集してきた検体数も結構な数があるというふうに思います。収集地域も、もう本当に、アジア太平洋、多くの地域がありまして、検体数もいただいた資料では一万以上あるというふうにも聞いておりますので、そういった意味では、データは蓄積していけるのかなと。あとは、物理的な時間とか施設、そういった問題もあると思います。鋭意しっかりと努力をしていただけたらありがたいというふうに思います。

 そして、科学的鑑定の重要、今申し上げましたけれども、今申し上げた朝鮮半島出身ですとか台湾出身ですとかいろいろな方がいるわけであります。当時大日本帝国の軍人軍属であったという方もいれば、現地の方もいるということであります。

 そういう意味では、もちろん、日本の方々の御遺骨を収集して、それは日本に持ち帰ってきて鑑定を行い、御家族にできればお返しする、これは当たり前のことでありますけれども、海外の方と判明したら、それもしっかりとその国にお返しをして、できれば、その方の現在の国において身元が分かって、その御遺族の元にお帰りいただく、これをやるのがやはり日本国としての責務だというふうにも考えております。

 そういった意味で、日本の御遺骨のみならず、海外の御遺骨を含めてそういうふうに対応していくべきだというふうに考えますけれども、いかがお考えか、教えていただければと思います。

泉政府参考人 お答えいたします。

 海外出身者の方々の御遺骨につきましては、DNA鑑定による身元特定にとどまらず、その後の遺骨の返還の在り方まで含めて考える必要がございます。

 今後、我が国の鑑定体制の状況を踏まえつつ、人道的見地から政府部内で適切な対応を検討してまいりたいと存じます。

上杉分科員 よろしくお願いいたします。

 戦場は敵味方たくさんいて、いろいろな多民族の御遺骨が見つかるわけであります。そういった意味では、日本の骨、今見つかっている三千三百の地域、ここに遺骨があるだろうというふうに選定している地域は、日本の遺骨がたくさんある地域であるかも分かりませんが、そういったところには、そもそも、日本のいわゆる旧大日本帝国臣民、軍人軍属というのは、朝鮮半島出身者の方ですとか台湾出身者の方、その他海外の方がいらっしゃったわけでありますし、そこにはもしかしたらアメリカ兵の方、イギリス兵の方、オーストラリア兵の方もいらっしゃったかもしれない。また、現地の住んでいらっしゃる方の骨もあるかもしれない。

 そういった意味では、しっかりと現場での収集、現地での鑑定人の鑑定、そしてその検体を持ち帰ってきて、だからこそ、安定同位体比分析によって、何系の人なのか、どこで育った人なのか、どこの地域で育った人であろうということが分かるということ、これを通じて、そしてその上でDNA鑑定を行って、そういうことがしっかりとやれるような体制、これが必要であるというふうに考えております。是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 そして、今申し上げた遺骨収集の鑑定を行う上で日本の国内の体制ということでありますけれども、今までは日本の十二の大学に鑑定を委託をしていたわけであります。そこを、厚労省さんも努力されて、遺骨鑑定センターを設置をしてくださいました。もちろん、その十二の大学でも委託してこれからも続けてもらいますけれども、この遺骨鑑定センターにおいても独自に鑑定を進めていくということにしているわけであります。

 確かに、相当数の鑑定しないといけない検体はあるわけでありますし、十二の大学に委託するといっても、その大学も本業の研究が別であるわけでありますから、やれたとしても、委託を受けたとしても恐らく合間でやらないといけなかったりとかそういうふうになる、そうするとなかなかその鑑定も進まないという現状があったというふうに思うんですね。

 そういう意味では、この厚労省さんの独自の施設というのは大変重要でありまして、であれば、冒頭も申し上げましたが、五年の延長の五年間でやろうといっても、物理的な鑑定のできる量というのがあるわけであります。そういう意味では、せっかくこの施設をつくってくださったわけでありますから、やはりこの施設をもっともっと大きくしていくということが大事であるというふうに思うんですね。

 アメリカの話ばかりしてしまいますけれども、DPAAのハワイのところは結構大規模な施設であるわけであります。人員もたくさんいるわけであります。予算の兼ね合いもあるとは思いますが、是非、人員を増加する、また設備ももっともっと大幅なものにする、またDPAAとの連携も強化していく、こういったことが大事であるというふうに思うんですね。

 人員も、ただアルバイトの人では駄目なわけでありますから、しっかりと専門的な方を雇うということも必要でありますし、今は例えばまさにDPAAで勤務した経験のある方ですとか、DPAAで研修をされて中身を見てきた方、そういう方もいるわけでありますから、しっかり、適材適所といいますか、そういう方を活用してやっていく、これが事業そのものの中身を深化させていくということになるというふうに思います。

 そういった意味で、是非、この戦没者遺骨鑑定センター、ちょっと細かい部分を述べましたけれども、活用していっていただきたいというふうに思いますが、全体として御意見をお伺いできればと思います。

泉政府参考人 お答えいたします。

 御案内の戦没者遺骨鑑定センターでございますが、令和二年度に厚生労働省に設置したものでございます。お尋ねいただきましたセンターの体制につきましては、非常勤の法医学や形質鑑定等の専門家十名、また他部署の併任者を含め、事務方なども含めまして四十名程度の体制となっております。そうした体制の中で、今後、技術的協力などを進めながら進めていきたいと存じます。

 お尋ねのDPAAとの協力関係につきましては、平成三十一年四月に協力覚書を結びまして、両国間の連携を深めているところでございます。

上杉分科員 ありがとうございます。是非進めていってもらいたいというふうに思います。

 今の人数の体制ですと例えば年間何検体の鑑定が可能なのかとか、そうすると大体一年間でどのぐらいできるか分かると思いますので、恐らく、そうすると百年後を目途にも終わらないんですよ、絶対に。ということは、結構、大学への委託の数も増やさないといけないでしょうし、この施設自体をもっと大きくしていかないといけないというふうに思いますので、令和六年度の予算の分科会でありますから、是非予算を増やしていただいて、今年は無理でも来年以降しっかりと検討して、施設の増設また人員の増加、そういったことをやっていただきたいというふうに思います。

 やはり、百年以上たってだともう遅いと思うんですね。私も二〇四五年になったらもうおじいちゃんになってしまいます。まだならないか。是非、百年を目途にしっかりと、残りの百十二万柱の英霊がしっかりお戻りいただいて、鑑定もできる、そういう状況をつくっていかなければならないというふうに思っております。

 時間も迫ってきてしまいましたので、最後は、提案ということで一つ申し上げたいと思います。

 この遺骨収集の事業、厚労省さん、ずっと戦後やってくださって、本当に感謝をいたします。何が言いたいかといいますと、これは政府を挙げてやるべきだというふうに思います。外務省、防衛省、厚労省が連携をしてですね。

 特に、アメリカとの連携もそうでありますし、韓国との連携ということもそうであります。海外のいろいろなところで遺骨収集をするわけでありますから、そこは在外公館、外務省の力を今でもかりて連携してやっているところでありますけれども、例えば、逆に、文化の違いやいろいろなことで、墓荒らしと言われても困るわけでありますから、いろいろな問題が出てくるというふうに思います。

 そういった意味では、これは厚労省さん単独でやられて、今、一部の関わる部分だけ外務省さんに関わってもらう、防衛省さんに関わってもらうということではなくて、厚労省、防衛省、外務省とで連携をして、一つのチームをつくってしっかりと進めていくのが必要なんだというふうに思います。

 特に、外交問題に発展しないためにも、政治問題にならないためにも、今を生きる我々は誠意を持ってこの遺骨収集事業をやっているわけでありますから、それは他国の方々も理解をしてくださっているわけであります。そういった意味では、他国が絡むところは外交のプロである外務省にフロントに立ってもらってやってもらうということも必要でありますし、遺骨収集を更に進めるために防衛省の力をかりるということも必要であるというふうに思います。

 そこは、厚労省さんがイニシアティブを取ってやるのが難しいということであれば取りあえず大臣同士でもいいんですけれども、そういうふうにお伝えするのは僭越でありますが、いずれにしても、是非、政府を挙げて、この事業を更に、今も本腰を入れてやってくださっておりますが、更に重い本腰を入れて進めていただいたらありがたいというふうに思います。

 それを切にお願いをさせていただいて、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

橋本主査 これにて上杉謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、池下卓君。

池下分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の池下卓でございます。

 本日、大臣ほか皆様、理事の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 私、前回の通常国会まで、厚生労働委員会の維新代表の理事を務めさせていただいておりました。その令和四年、五年の中で四回ほど、臓器移植の問題につきまして質疑をさせていただきました。今、後ろにいらっしゃる前加藤大臣にも様々お答えいただいたということにつきましても、感謝申し上げているところであります。

 その理由といたしまして、これまで、アメリカやスペインといった臓器移植先進国に比べて日本国内でのドナーの提供数が少ないということ、また、それに併せての移植術がそもそも少ないということが挙げられています。

 その中で、やはり臓器移植でないと、移植術をしないと命が長らえないという本当に多くの患者さんのお声をたくさん聞きまして、何とかこれを推進したいなという思いでいっぱいなところなんですけれども、ただ、わらをもすがる思いの患者さんの心の隙をついて、国内法で認められていない無許可での移植仲介、臓器あっせんをしていたNPO法人の理事長が、昨年の十一月に東京地裁の方で有罪判決が言い渡されました。

 その判決の内容なんですけれども、判決は、国外手術のあっせんは、一つ、移植を受ける機会の公平性が損なわれること、二つ、医療上の安全が脅かされること、三つ、移植後の継続的な医療に支障を来すことなどが指摘されまして、臓器移植法、無許可あっせんの罪が成立するということが認められました。

 海外での臓器移植といいますのは、いつも言っている話なんですけれども、臓器売買、人身売買の温床になるということから、人道的にも許されるものではありません。とはいえ、国内ドナー数を増やして移植術を行わなければ救えない命というのは本当にたくさんあります。

 この点につきましても、これまでの委員会等々で指摘してきたところなんですが、ただ、近年は、心停止のドナーの数が減りまして、脳死患者からのドナー数が増えているという具合に聞いております。

 そこで、令和五年のドナー数、これは過去最高になったと聞き及んでいるわけなんですけれども、どういう理由で、また、どのような認識が政府にあるのか、大臣の方にお伺いをしたいと思います。

武見国務大臣 令和五年度の脳死下の臓器提供者数は、今年二月二十六日時点で百七名となっております。過去最高であった令和四年度の百六名を既に上回っております。これは、臓器を提供してくださった方々はもちろんのこと、その御家族の理解と重い決断があってのことであり、心から敬意を表したいと思います。また、様々な立場から移植医療の普及に取り組んでこられた関係者の皆様にも心から感謝を申し上げたいと思います。

 そして、厚生労働省としては、引き続き、臓器移植に関して国民の皆様の周知啓発を行うとともに、臓器提供が実施可能な施設の連携体制構築のための支援などを行いまして、国内の移植医療の推進に積極的に取り組んでまいります。

池下分科員 御回答いただきまして、私も手元に資料、ちょっと前の資料ですので、今、百七名というお答えをいただきましたけれども、見ると、全体の数もちょっとずつ増えてはいるんですけれども、まだまだ、心停止のドナーの数は減り、脳死ドナーの数が増える、この中の、パイの中での割合というのが変化しているというのが表の方を見るとよく分かります。ただ、やはり、ドナーの全体の数というものをもっともっと増やしていかないと、まだ、待機患者さん、望まれる患者さんよりもドナーの数が少ないというのは明らかなわけであります。

 そこで、今言っていただきましたけれども、国民の理解を増やしていくことが肝要であると私も思っておりますし、命を救うためには、私は、個人的にもそうですし、臓器移植法の改正、これをやっていかなければならないと訴え続けてまいりました。

 我が日本維新の会の方でも、厚労部会の方で、法改正の提案というのをしたいなということでるる検討をずっと続けているところですけれども、例えば脳死を含めた臓器移植患者さんの家族へ臓器移植という選択肢がしっかりあるんだよということを知っていただくために、医療機関に対して、家族に報告した上で、臓器移植ネットワーク、いわゆるJOTに対して報告義務を課すということ、そして、JOTのコーディネーターは家族の心情も考慮した上で丁寧な説明をした中で、臓器移植に対しての理解を深めていただく、そういう中でドナーを、提供していただくような仕組みをつくっていくべきだと考えているところです。

 現在、脳死とされ得る家族、患者への臓器移植の情報提供はまだまだ不足していると認識しております。先ほどもちょっとお答えいただいた部分も重なるかと思いますけれども、今後の取組につきまして厚生労働副大臣の方にお伺いしたいと思います。

浜地副大臣 お答えいたします。

 今先生から御指摘がありましたとおり、脳死が強く疑われる患者の御家族への臓器提供に関する情報提供ということは非常に重要な課題であるというふうに認識をしております。

 厚生労働省では、例えば令和四年三月の厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会におきましても、医療現場で、ふさわしい場面において適切に臓器提供に関する情報の提示が実施されるよう、取組を進める必要があるというふうに提言を受けたところでございます。

 これを踏まえまして、現在、厚生労働省としましては、脳死が強く疑われる患者が入院した医療機関が、臓器提供の経験豊富な医療機関から適切な情報提供について支援を受けることができるような取組も進めております。これによりまして、御家族に臓器提供に関する情報提供が適切に行われるよう取り組んでいるところでございます。

 引き続き、このような取組を通じまして、国内における臓器移植の更なる推進に努めてまいりたいというふうに考えております。

池下分科員 思いは一緒でありますし、まさにドナー提供もそうですし、やはり医療提供施設、拠点施設ですね、そこの強化というのも非常に大事だと思っておりますので、よろしくお願いします。

 ただ、ドナーの提供数を増やしていくというところには、やはり一定、目標であったりとか、何年後にどれくらいの数までドナー数を増やしていくのかという目標設定というのが私は非常に大事だと考えております。

 また、国民の普及啓発というお言葉も、大臣からもありました。私もちょっと手元に資料を持っておりますけれども、パンフレットも製作していただいておりますし、毎年十月に臓器移植推進国民大会の開催も行われているということを承知しております。

 令和五年度は広島県で開催されましたし、令和六年度は鳥取県の方で開催が決定しているということで聞いております。折しも、令和七年、二〇二五年といいますのが、大阪・関西万博が開催されまして、テーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」ということにもなっております。これは、是非、私の地元の方で開催していただきたいと思います。

 そこで、臓器移植のドナーとなる意思表示の低迷について、現在の対策と問題意識、さらには計画的な目標設定と、先ほど申し上げました令和七年度の臓器移植推進国民大会について、厚生労働副大臣の方にお伺いしたいと思います。

浜地副大臣 お答えいたします。

 先ほど御指摘がありました、臓器提供の意思表示率が低迷しているという問題意識でございます。

 令和三年度、内閣府で移植医療に関する世論調査を行いました。ここでは回答数が千七百五名あったわけでありますが、そのうち、臓器提供するか否かに関する意思を持っている方は六三・八%いらっしゃいましたが、そのうち、実際に御自身が臓器提供の意思表示をしている方は一〇・二%にとどまるというデータがございます。

 そこで、令和四年度から、厚生労働科学研究におきましては、ここはまだ中間報告でございますけれども、臓器提供の意思表示をしていない要因には、例えば不安や抵抗感があるという結果が示されております。したがいまして、臓器提供に対する世論の評価の醸成など、意思表示を後押しする普及啓発に関する研究を現在進めているところでございます。この研究成果を待って、さらに意識の醸成等に取り組むことによりまして、意思表示率の向上に努めてまいりたいとまずは思うところでございます。

 続きまして、先生御指摘の臓器移植推進国民大会、これはやはり臓器移植をしっかりと国民の皆様方にPRする大事な機会であるというふうに思っております。

 令和七年度の開催地につきましては当然まだ未定でございまして、先生から是非、万博のある大阪という御提案がございましたが、これにつきましては、都道府県からの手挙げ方式でありまして、手を挙げていただいた都道府県の提案内容を検討して決定をさせていただきます。

 ただ、令和七年度の公募はまだ行われておりませんので、公募が行われて、仮にそういった提案がございましたら、しっかりと提案内容を精査して決定をしていきたいというふうに思っております。

 以上です。

池下分科員 提案内容ということもありました。

 関連して、通告していない、大臣にもちょっと感想をお伺いしたいと思うんです。

 実は、臓器移植推進国民大会についてなんですけれども、おとつい、うちの大阪府の健康医療部の方に話をさせていただきました。そうすると、内部の方で検討していただきまして、前向きにやっていくよというお答えをいただきました。そして、昨日、私、ちょっと情報を入れまして、大阪府議会で代表質問があったんですけれども、そこでうちの維新の会の府議会議員団の代表質問の中に取り入れていただきまして、行政の方からもその問いに対していい答えが返ってきたということで聞いております。

 大阪府がちょっとやる気を出してくれているということでありますので、手挙げ方式ということでありますから、スムーズに手を挙げられるように調整を是非していただきたいと思いますので、大臣の方は、感想でも結構ですので、御見解をお伺いしたいと思います。

武見国務大臣 先ほども申し上げたとおり、臓器移植について、我が国の国民の理解を深めていくということの必要性は極めて大きいというふうに思っております。そしてまた、議員御指摘の臓器移植推進国民大会というのは、そういう意味でも大変重要な、意義のある大会になるだろうというふうに思います。

 その開催の地等に関わる決定というのは、先ほど副大臣の方からも答弁をさせていただきましたけれども、公募方式で、それぞれ手を挙げていただいて、それをきちんと精査した上で決定するというプロセスになっております。

 大阪府の方でもそうした準備を進められているということであれば、是非この公募に申請を出していただいて、そしてしっかりと協議をさせていただければというふうに思います。

池下分科員 ありがとうございます。

 まさに国と都道府県が協力して周知啓発していかなければならないと思います。是非、府も協力していくというお答えがありましたので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、臓器移植についてちょっと最後に質問していきたいと思うんですけれども、端的に質問させていただきたいと思うんですが、昨年、私、十一月にアジア・太平洋議員フォーラムに、APPF、衆議院を代表して行かせていただきました。その中で、国際犯罪に関する提言という中で私も提言をさせていただいたんですけれども、やはり海外での臓器移植ですので、捜査についての情報提供であったりとか国際間の協力が今までなかなか難しいということでありました。そこで、これを何とか決議の中に盛り込んでいただけないかというところで、盛り込んでいただくことができました。

 冒頭、違法な臓器あっせんを行っていたNPO法人の代表が東京地裁で有罪になったということでありましたけれども、政府はこの判決を受けてどのようにこれから取り組み、また、国際的な協力を行っていくべきだと考えておりますけれども、見解をお伺いしたいと思います。

武見国務大臣 NPO法人難病患者支援の会が臓器のあっせん業を無許可で行ったとして、法人の理事長が一審で有罪判決を受けて、現在も係争中であることは承知をしております。臓器のあっせん業を無許可で行ったことが事実とすれば、これは大変遺憾な問題だというふうに思います。

 厚生労働省としては、国際的な原則に基づきまして、本人の意思表示を基本とした上で、脳死下での臓器提供やその移植が原則国内において実施される必要があるというふうに考えております。

 このため、関係学会などと引き続き連携しながら、臓器提供の意思表示をしていただけるような周知啓発や、臓器提供が実施可能な施設の連携体制構築のための支援などを行い、国内で必要とされる臓器移植を原則国内で完結できるような体制構築に取り組んでまいりたいというふうに思います。

 そして、国際的な調査等に関する連携については、関係機関から協力を求められたときには、厚生労働省としてはこれに全面的に協力をしていく所存であります。

池下分科員 よろしくお願いします。

 それでは次に、質問を変えさせていただきたいと思うんですけれども、ちょっと順番を変えまして、狂犬病予防法の方から先に、まとめて一問でさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 狂犬病につきましては、非常に恐ろしい感染症でありまして、致死率も非常に高いということで、世界中で五万五千人の方々が亡くなっております。

 我が国におきましても、狂犬病予防法について、国内の予防接種や強固な水際対策を行っていただいているということは承知をしておるんですけれども、ただ、この狂犬病予防法の法律につきましては昭和二十五年に制定された法律でありまして、当時の日本社会における犬を取り巻く環境と現在とでは大きく異なり、野犬が保健所によって回収された数も、法律制定当時の昭和二十七年は四十五万五千二百三十二頭、現在は一万五千二百二十八頭と激減、約三十分の一になっているということであります。

 したがって、現在の社会情勢や科学技術の進歩を考慮して、法律の改正や追加の措置というものが必要ではないかなと考えております。

 そこで、今回は、狂犬病予防法施行規則第十一条にあります、接種時期が毎年四月から六月となっているという、この接種時期についてお伺いをしていきたいと思うんですけれども、まず、予防接種の、四月から六月でなければならなかった理由、その目的と、いまだそうあり続ける理由については、集団接種によって接種率が向上すると政府から事前にお話を聞いているんですけれども、この根拠についてはまだまだ調査研究が必要であると感じております。

 また、現在の犬の予防接種は、狂犬病ワクチンだけではなく、ほかの混合ワクチンですか、これと一緒に、飼い主さんは愛犬を連れてかかりつけの獣医師さんの方に行かれて、お任せしているという御家庭が非常に多くなっていると聞いています。

 犬の生まれ月によっては、毎年冬に注射するのがその犬のスケジュールになっているケースも多いと聞きます。犬の健康を考えると、狂犬病予防ワクチンは、ほかのワクチンと併せてかかりつけ獣医師にお任せするのが一番よい選択肢ではないかなと考えます。

 ただ、地域によっては、かかりつけで行くような動物病院がないであるとか、集団接種による接種が習慣となっている地域なんかというものもあるでしょうから、狂犬病予防接種については、それぞれの自治体の判断に任せて、四月から六月に限定するというこの規則を早急に改正していただきたいと考えます。

 これまでも、平成二十六年には総務省の行政評価局から、厚生労働省自身も令和三年、四年と科研費を使っての研究が行われています。それぞれの結果について、厚生労働省としてはどのように受け止められて、どのように評価されたのか。また、昨年の十二月に閣議決定されました内閣府の地方分権改革に関する調査におきまして、今後どのような取組を進めていかれるのか。平成三十年には国際獣疫事務局から発表された獣医組織能力評価、平成二十九年に発表された国内疫学研究報告の中で、我が国の狂犬病対策について言及されているわけですけれども、今後の狂犬病予防ワクチン接種の在り方について、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

武見国務大臣 狂犬病予防法では、国内での狂犬病の発生予防や蔓延を防止するために、犬の所有者に対して、毎年四月一日から六月三十日までの期間に、所有する犬に狂犬病の予防注射を受けさせることを義務づけをさせていただいているところであります。

 この狂犬病の予防接種については、総務省からの二〇一四年の勧告や内閣府の二〇二三年の地方分権改革に関する提案等において、国内の狂犬病予防注射の在り方を見直すこと、それから狂犬病の予防注射の時期について、四月一日から六月三十日までの間に一回受けさせなければならないとする現行の規定について、通年接種できるよう見直しを行うことという御指摘をいただいております。

 したがいまして、狂犬病の予防注射の時期を一定期間に区切ることについては、予防注射に関する周知の効果の増進や行政の事務コストの軽減が期待されるものの、総務省などからの御指摘を踏まえまして、今後、狂犬病予防法の事務を担う全国の市区町村を対象に、注射時期の見直し等に関する調査を実施する予定でございます。

 この結果や、獣医師等の現場の方からの御意見もいただきながら、狂犬病の予防注射の時期について検討していきたいと考えております。

池下分科員 ありがとうございます。

 各自治体の方に調査していただくということで、地域からもいろいろ要望が出ておるかと思いますので、是非これを反映していただきたいと思いますし、柔軟な形でやっていくことによりまして、当然、予防接種率を上げていくということも大事なんですけれども、犬の方の健康も是非考慮しながらやっていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきますので、次のやつ、元に戻させていただきたいと思っておるんですけれども、公的年金の第三号被保険者についてお伺いをしていきたいと思います。

 公的年金加入者、第三号被保険者は、一九九五年の千二百二十万人、これをピークにしまして、近年では、二〇二一年では七百六十三万人まで減少いたしております。女性の割合が非常に多いということでありますけれども、これは、やはりこれまでいろいろ国で取り組んでまいりました共働き、男女共に働く、そして機会均等というところもあるかと思いますけれども、ただ一方、共働き世帯の増加に伴って、年金保険料を納めない第三号被保険者に対して不公平感があるという批判の声も一方では聞いております。

 非常に難しい問題だと思うんですが、ただ、近年、短時間労働者への、被保険適用者への拡大が進められている、国の方で進められているということも承知しているんですけれども、今後どのような仕組みにしていくのか、お伺いをしたいと思います。

武見国務大臣 一定の要件を満たす短時間労働者には、被用者にふさわしい保障の実現、それから社会保障の機能強化の観点から、二〇一六年十月以降、被用者保険の適用拡大に順次取り組んでおります。具体的には、適用拡大が、従業員百人超の企業までは令和四年十月に既に実施されております。それから、従業員五十人超の企業は令和六年十月から実施されることになっております。

 この適用拡大に関しましては、全世代型社会保障構築会議におきましても、企業規模要件の撤廃などについて早急に実現を図るべきとされておりまして、既に、社会保障審議会年金部会等で更なる適用拡大について議論を開始しております。

 次期改正に向けて、関係者の御意見を伺いながら丁寧に検討を進めていきたいというふうに思います。

池下分科員 今、その適用拡大に向けて様々、企業での要件というのもお話をいただきましたし、承知しているところであるんですけれども、やはり国民の皆様、御心配されているところもたくさんあるかと思います。この第三号被保険者の制度というものを縮小し、被保険者の適用拡大をすることによりまして、やはり、これは一定、メリットももちろんあるんですけれども、デメリットももちろんあるかと思います。

 そこで、適用拡大するということでのメリット、デメリット、まずその点、どういうものがあるのかお伺いしたいと思いますし、また、適用拡大することによって、被保険者にとって、基礎年金に加えて厚生年金、これは増えるというメリットになるかと思うんですけれども、一方で、目先の、年金が増えることで、可処分所得が減るというところもあります。この部分についても国民の皆様にしっかりと理解していただく必要があるかと思いますけれども、御見解をお伺いをしたいと思います。

橋本政府参考人 第三号被保険者が被用者保険の適用基準を満たした場合に、将来、基礎年金に加えて厚生年金による報酬比例年金の部分というのが上乗せされたり、あるいは、医療保険から傷病手当金が支給される、こういった点がメリットになるというふうに思います。

 一方で、被用者保険に加入することで、労使折半に社会保険料の負担が生じてまいります。年金と医療保険、合わせますと賃金の約三〇%、介護保険の分も含めまして、労使折半というふうなことでしていただくということに、これが新たに発生するということで、言ってみればデメリットというふうなことかもしれません。

 被用者保険の適用拡大を今後進めていくためには、対象となる被用者に対しまして、被用者保険の適用に関する正確な情報やそのメリット等につきまして分かりやすく説明し、理解を得ながら進めるということが極めて重要であるというふうに考えております。

 これまで、厚生労働省におきましては、年金や医療給付が充実することなどを紹介する特設サイトを厚生労働省ホームページに設けるですとか、あるいは、公的年金制度の意義や持続可能性等について著名なインフルエンサーとのコラボ動画を制作するですとか、あるいは、公的年金の財政検証結果について漫画を用いて解説するですとか、様々な普及啓発の取組を行ってまいりました。

 さらに、本年度におきましては、適用拡大の対象になりました企業における好事例を基にして、被用者がメリットをより実感しやすいチラシですとか動画等の制作に新たに取り組んでいるところでございますので、引き続き、分かりやすく正確な周知広報ということに積極的に取り組みたいと思っております。

池下分科員 周知啓発、これをしっかりともちろんやっていただきたいんですけれども、やはり世間の中では、増税になるんじゃないか、また社会保険料の負担が大きくなるんじゃないか、今日も新聞に出ていましたけれども、将来結婚できないんじゃないか、子供を産む環境じゃないんじゃないかということで、出生数また婚姻数が減っているということも聞いております。やはり働く環境というのもしていかなければなりませんし、しっかり理解していただくということも同時に大事だと思います。

 私、このメリット、デメリット、このデメリットについていろいろ、関係者の方、知り合いの方からお伺いしているんですけれども、パートやアルバイトを含めた短時間労働者が多い状況の中で、収入の壁の問題で就業調整をされている方、また、収入の壁がなくなって仕事を増やしたとしても、配偶者の企業による扶養手当がなくなることで家計全体の所得が減っちゃうんですよという世帯のお声を聞いたりとか、育児や介護、また体調不良等で就労できない方、さらには、パート等で業務を回している中小企業の社長さんからも聞くんですけれども、このままでは企業負担が大きくて業態が維持できないんだよ、そういう声も聞きます。

 こういうケースも含めて、この第三号被保険者の制度、これを縮小することについての影響、これについての対策方法についてお伺いいたしますし、また、激変緩和も必要だと思いますけれども、御見解をお伺いいたします。

武見国務大臣 第三号被保険者制度につきましては、単に専業主婦を優遇するための制度との捉え方ではなく、第三号被保険者は、パートやアルバイトとして働いている方々や、出産や育児のために離職した方々など、多様な属性を持つ方々で構成されており、これらの労働者の多様な状況にも配慮しながら、その在り方について検討する必要があると考えております。

 第三号被保険者の縮小に向けたステップとしては、これまで被用者保険の適用拡大に取り組んできたところでありますが、報酬比例の年金の上乗せなどのメリットと同時に、労使双方に社会保険料負担が生じることになります。こうした観点も踏まえて、二〇二〇年の年金制度改正法による被用者保険の適用拡大の実施に当たりましては、段階的に企業規模要件を引き下げて、徐々に被保険者の範囲を拡大することとし、また、中小企業の経営にも配慮いたしまして、中小企業等への制度の周知や、企業への専門家の派遣などの支援、それから事業主への助成などを行ってきているところです。

 現在、被用者保険の適用拡大の検討と併せて、第三号被保険者制度についても、社会保障審議会年金部会において議論を開始したところでもございます。現時点で方向性はまだ定まっておりませんが、今後とも、関係者の御意見をしっかりと伺いながら、丁寧にこの議論も進めていきたいと考えております。

池下分科員 ありがとうございます。

 時間になりました。これで質問の方を終わります。ありがとうございました。

橋本主査 これにて池下卓君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部司君。

阿部(司)分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部司でございます。

 本日は、医療的ケア児、このテーマで質問をさせていただきたいと思います。

 私、選挙区が東京都の北区と板橋区になるんですけれども、北区には都立の特別支援学校がございます。そちらの特別支援学校に通っているお子さんですとか保護者の皆さんと交流をさせていただく機会も頂戴をしております。そんな中で、たくさん切実なお声をいただいているんですね。今日は、この関係各所の皆様にその声を是非しっかりと受け止めていただきたいと考えております。

 まず最初に、確認の意味で、日本全国における医療的ケア児の把握状況についてお伺いをさせていただきたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 診療報酬請求書、レセプトに基づく推計でございますけれども、全国の在宅の医療的ケア児の数は、令和四年時点において約二万人というふうに推計をしております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 在宅で二万人おられて、その御家族も含めると倍以上、お困りの方々がおられる、非常にたくさんの方がおられるというふうに認識をしております。

 先日、能登半島地震が起きましたけれども、医療的ケア児を抱えておられる御家族が心配していらっしゃるのは、特に大きな災害が起きたときの対応でございます。その意味で、能登半島地震における医療的ケア児の避難に関する実態ですとか課題認識を御共有いただくことは大変意義が大きいと考えておりますけれども、現地における実態、課題について御認識をお伺いしたいと思います。

上村政府参考人 お答えいたします。

 医療的ケア児につきましては、災害時に停電などにより、人工呼吸器ですとか酸素濃縮器などの在宅医療機器が使用できなくなるということ、また、薬や医療用具、経管栄養剤が足りなくなるなどの事態が起こることが懸念されます。

 内閣府のガイドラインでは、医療的ケア児者を含む要配慮者につきまして、市町村の区域内だけで避難できる避難所を確保することが困難な場合には、必要に応じて都道府県が調整し、他の市町村と連携して福祉避難所を広域的に確保するよう促しております。

 今般の能登半島地震におきましては、能登地域で暮らす医療的ケア児につきまして、発災直後、いしかわ医療的ケア児支援センターというところが、県内の小児科の医師らと連携しながら速やかに無事を確認するとともに、医療の継続が難しい方につきましては、防災ヘリで病院へ緊急搬送したり、他の自治体へ避難したりするなどの対応が行われたと承知しております。

 今後とも、災害時の医療的ケア児者を含みます要配慮者の避難が円滑に進むよう取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 まず、能登半島の地震に遭われた医療的ケア児の皆様が御無事だったことを心から安堵いたしますし、御関係の皆様には心からこの御努力に感謝を申し上げたいと思います。

 今お話がありましたとおり、この御家族の方々が大変心配していらっしゃるのが、災害時の停電による在宅医療の機器の電源の確保。すぐに電源が用意されている避難所にスムーズに避難をすることができれば、それが一番ではあります。

 災害が起こった際、医療的ケア児の避難場所、今も、近くにない場合は隣県のそういった避難所の方に行くというような、きちっと設備を備えたところに行くというようなお話がありましたけれども、自治体が事前にそういった場所を指定していると承知をしておりますけれども、どのような場所が想定されているのか、お伺いをいたします。

上村政府参考人 災害対策基本法におきまして、市町村長は、被災者を避難させるため、公共施設などの施設を指定避難所として指定しなければならないこととされてございます。

 また、受入れを想定していない被災者の避難によりまして福祉避難所としての対応に支障が生じることのないよう、令和三年の五月に、福祉避難所を指定する際に受入れの対象者を特定して公示する制度を創設したところでございます。

 医療的ケア児を受入れ対象者としている指定福祉避難所としましては、令和四年十二月一日時点で見ますと、病院や介護老人保健施設などが指定されていると承知しております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 その指定の福祉避難所をちょっと調べてみましたところ、発災した後、開設まで三日とか、ある程度時間がかかってくると言われておるんですけれども、それは事実でしょうか。お伺いいたします。

上村政府参考人 御指摘のように、過去の災害におきまして、また今回の能登半島地震におきまして、福祉避難所の開設までに一定の期間を要した事例があることは承知しておりますけれども、要支援者を円滑に指定避難所で受け入れるためには、開設の準備をより早く進めるためにも、事前に指定しておくことが有効だと考えております。

 内閣府としましては、支援を必要としている要配慮者の方々が支援を受けられるよう、引き続き福祉避難所の指定促進に努めてまいりたいと考えております。

阿部(司)分科員 やはり、災害が大きい場合、指定福祉避難所にふだんお勤めの方々が、そこにすぐに来れるかどうかというのは全く分からない状況になってくるかと思います。

 私、先日、ある首長さん、知事の方に、危機管理のお話をいろいろお伺いする機会があったんですけれども、政府においても自治体においても、災害が発生をして、その職員の皆さんがそこに、例えば発災後二十四時間以内にどれぐらいの人数が、何%が集まれるか、これは大体二割ぐらいだろうと言われているという話をお伺いしたんですね。そうなってくると、やはり、どうしてもすぐに開設することができない、時間がどうしてもかかってしまう、このことを想定して、もろもろの準備、対応をしていくことが重要になってくるかと思います。

 そこで、この医療的ケア児に関する支援、諸施策について、司令塔機能を担っておられるというこども家庭庁さんにお伺いをしたいと思います。

 発災後、指定福祉避難所が開設するまでに、やはりどうしても一定の時間がかかってきてしまいます。その間の医療的ケア児の支援に関する課題認識、改めてお伺いをしたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたように、災害発生からそして福祉避難所へというふうになりますと、福祉避難所を極力早急に立ち上げるように事前の指定を含め準備をというのは先ほど内閣府の方からも御説明あったところでございますけれども、一方で、福祉避難所というところにどのように移動するのかといった、もろもろ時間の進行に伴ったような計画というか対応体制というか、そういったものを取っていくことが大事ではないのかなというふうに考えております。

 そうした中で、医療的ケア児につきましても、やはり人工呼吸器なり医療器材があって、なかなか自力避難が困難であるという状態の中で、御指摘のような電源確保とかの問題も、課題も抱えながら災害の初期を過ごすということになろうかと思います。

 そういう意味では、やはり災害対策の基本ではあるかと思いますけれども、まずは状況を把握した上で、避難行動要支援者名簿をあらかじめ作る。この名簿の中に、しっかり位置づけをしておいて、個別避難計画の作成をちゃんとしておくことというのがまず大事かと思います。

 さらには、先ほど内閣府の方から御説明ありましたような福祉避難所、こちらの方を早急に立ち上げられるような体制を平素から取っておくことと併せて、この福祉避難所においても、ちゃんと電源が確保できるようにすること、関連資材の備えができていること、こういったことをやっておくのも大事だと思います。

 さらに、そこまでのタイムラグがあるということもあるのではないかとの御指摘だと思いますけれども、在宅避難の段階、まだ福祉避難所に行く前の段階、こういったことも含めた在宅避難における電源の確保でございますとか資材の状況の確認、そういった場合の連絡方法などについても、個別避難計画の策定プロセスなどにおいて、家族の方々とか、関係者の方々の間で事前に調整をしておくといった対応をあらかじめしておくこと、こういったことが大事かなというふうに思います。

 こども家庭庁といたしましても、令和三年度に行った調査研究がございまして、その結果を踏まえて、先ほど申し上げた計画を作る、福祉避難所の早急な立ち上げを見据えた準備をしておくこと、さらには在宅避難の際の機器、備品の関係についてのあらかじめの確認、こういったものなどを盛り込みましたところについて、地方自治体に対して事務連絡を発出をしております。

 障害児支援部局と危機管理部局とが連携をした上で、個別避難計画の策定、あるいは電源の確保、こういったものを行うように働きかけをしているところでございますので、引き続き、内閣府防災などの関係省庁とも連絡しながら、こういった体制づくりに努めてまいりたいと考えております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 事前に計画をしっかりと関係者間で作っておく、そして早急に福祉避難所の立ち上げをする努力をしていく、また開設までのタイムラグ、こちらの様々な生命維持等々に必要な環境整備をしていくことが非常に重要である、そういった趣旨の御答弁だったかと思いますけれども、やはり保護者の方は本当に心配されているんですよね。機器が動かなくなってしまったら生命の維持ができない、人工呼吸器、あとは吸引器、あと、後ほども触れますけれども、関連のいろんな機器がありますけれども、この電源の問題。しっかりと問題について課題認識されていて、事務連絡も発出されている旨承知をいたしました。

 令和四年に、今おっしゃった医療的ケア児に係る災害対応等の調査研究結果及び自治体の取組事例集についてという事務連絡を出されております。こちらでは、先ほどおっしゃっていただいたとおり、在宅避難における電源確保についても触れられております。この調査において、実際の自治体の電源確保の取組状況、こちらの実態についてお伺いをしてまいりたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございました令和三年度の障害者総合福祉推進事業における調査でございます。これは、今し方、先ほどお答え申し上げた事務連絡に先立つものとして行ったものでございまして、事務連絡発出の前の状態ではございますけれども、令和三年の九月から十月にかけて、四十七都道府県を対象にアンケート形式で調査を行ったところでございます。

 その際の調査、つまり令和三年の秋時点での回答でございますけれども、回答のあった四十三都道府県の中で、在宅で電源の必要な医療機器を使用する子供に対しまして、停電などの際の電源確保対策について何がしか取組をしているかということで、回答状況でございますけれども、お答えいただいた四十三都道府県のうち、何がしかやっているというところが五一・二%、行っていないが四六・五%、二%ほどは回答がなかった自治体というようなことになっております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 やっていないというところが四六・五%、こちらの数字、どのように認識されていらっしゃいますか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 回答いただいた都道府県の中で四六・五%ということですが、これは、こういった調査も踏まえまして、これを受けて令和四年の五月に事務連絡、先ほど御紹介申し上げたものを発出をしたというような流れになってまいります。

 さはさりながら、そういった取組の必要性について、この時点、調査時点ではまだ認知がされていなかったというところも一定の事実ではございましょうから、何がしかこういった計画への盛り込みについて強力に県内で進めていただくとか、やはり課題意識を持っていただくこと、それが大事かなというふうに考えております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 厚生労働省は、医療的ケア児も対象に含めた在宅人工呼吸器助成事業に取り組んでおられると承知をしております。しかし、人工呼吸器のみならず、吸引器、そして、電動ベッド、エアマットレスなどを作動させるための電源を確保するためには、今の助成だけでは不十分という声が上がっております。

 今の事業スキームでは、医療機器については助成できるけれども、福祉器具用の非常電源に関する助成が困難というふうにも聞いております。ただ、結局、人工呼吸器が動いていてもたんが詰まってしまったら命に関わってくるわけですし、あとは、やはりベッドもしっかり電動で動くような環境になっていないと、体が固まってきてしまうといいますか、御家族の介護も非常に大変なものになってきてしまうという中で、今の事業でできない場合、新しい事業を立ち上げて、しっかりと、医ケア児の皆さん、保護者の皆さん、御家族の皆さんの支援の拡充をしていくべきだと思いますけれども、御見解いかがでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 災害発生時におきまして、医療的ケア児が利用する人工呼吸器のほか、吸引器や電動ベッド、またエアマットなどの福祉機器、福祉用具につきましても、電源確保を希望する声があることは承知をしております。

 このうち、在宅の人工呼吸器につきましては常時通電されている必要があり、使用している患者にとっては電力供給の停止がそのまま生命の危機に直結するおそれがあるため、医療機関が人工呼吸器使用患者に貸し出せる簡易自家発電装置等の整備事業を行っているところでございます。

 一方、御指摘いただきました吸引器、電動ベッドなどの機器につきましては、障害者がより円滑な日常生活を送るために必要なものとして、厚生労働省として購入費等の支援を行っているところでございますが、災害による停電後の代替電源の緊急度合いなどに照らし、また、災害発生時における発電機は障害の有無にかかわらず多くの方にニーズがあることなどを踏まえますと、発災前の段階から広く障害者の日常生活用具として購入等を支援することは難しいと認識しているところでございます。

 一方で、こども家庭庁の事業において、保育所等に外部バッテリーや手動式吸引器などの災害備品等を整備するための費用の一部助成を行っているほか、地方単独事業として、災害の非常用電源の購入費の一部を助成している自治体があるなど、様々な取組がなされているところでございまして、こうした取組の動向を踏まえるとともに、災害時の非常用電源の確保についてどのようなニーズが生じているかなど、丁寧に状況を把握してまいりたいと考えております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 やはり、医療器具は厚生労働省の医政局、福祉用具は障害局ですとか、縦割りで所管が分かれていて対応が困難ですとかそういうことではなくて、それこそ、医療的ケア児を含めた子供政策の司令塔、総合調整機能を果たすために創設されたのが私はこども家庭庁だと思っておりますので、是非そこもリーダーシップを取って、厚生労働省さんとも一緒に一体的になって対応を行っていただきたいと思います。是非よろしくお願いします。

 災害時における医療的ケア児の生命維持に必要な電源確保について、先ほど、事務連絡の発出前の数字で四六・五%ということでしたけれども、まだまだ少ないという中で、能登半島地震、こちらを機に改めて防災意識が高まっている中、自治体への周知の強化をすべきだと考えますけれども、御見解いかがでしょうか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の能登地震も含めましての災害時における医療的ケア児への対応ということで、医療的ケア児の特性に考慮した支援ないしは避難の支援、こういったことが大事だと思われます。

 こうした支援が円滑に行われますように、各自治体において平時から、これは先ほど申し上げたこととも重複をいたしますけれども、やはり支援を要する医療的ケア児の方々を把握をする、そして、個別避難計画をその保護者の方ともやり取りをしながら作成をしていくこと、さらには、停電時の医療機器のための電源の確保の対策を視野に入れてそういった避難計画とかを考えていく、さらにその支援策を考えていく、こういったことなどの準備をしておくことが肝要ではないかなというふうに考えております。

 こども家庭庁といたしましても、関係主管課長会議などの会議や自治体向けの会議がございますので、そうした会議の場などにおきまして各自治体において引き続き災害時に備えた対応ということで、個別避難計画の策定であるとか、あるいはその中で適切な電源の確保、あるいは資材の備えを含めた準備、こういったものをよくよく目を配って進めていただくように周知や働きかけを進めていきたいというふうに考えております。

 このようなことを通じまして、自治体において災害時における医療的ケア児の支援、こういったものに向けた準備が進むようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 繰り返しになりますけれども、やはりまだまだ、この問題の認識というのが自治体ごとで意識の差というのはかなりあると思います。ですので、今も関係者会議でしっかりと周知していくというお言葉がありましたけれども、是非、全国でこの対応がしっかりとなされるように周知の方を徹底をしていただきたいと思います。本当に、保護者の皆さん、心配をされておられます。是非よろしくお願いを申し上げます。

 次に、医療的ケア児の皆さんが学校を卒業した後の支援に関して質問をしてまいりたいと思います。

 学校卒、特に高校を卒業した後、預け先がなく困難な状況に陥ってしまう、いわゆる十八歳の壁があると言われております。これは本当に御家族の方からも切実なお声をいただいておりまして、それまで、高校までは預け先があったのに、卒業した途端にそれまでと同じようなケアが受けられないということで、もう心身共に参ってしまうという方も多いと言われております。

 この十八歳の壁の課題認識についてお伺いをしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 医療的ケア児支援法の基本理念におきましては、医療的ケア児及びその家族に対しての支援は、医療的ケア児が十八歳に達した後も引き続き適切な福祉サービス等を受けながら日常生活を営むことができるよう配慮して行わなければならないとされているところでございます。

 この理念に基づき、個々の医療的ケア児の状況に応じ、成人期への移行も見据えて切れ目なく行われる支援体制の構築、十八歳以上で医療的ケアが必要な方への支援体制の整備が重要と認識しているところでございます。

 このため、政府といたしましては、各都道府県への医療的ケア児支援センターの設置を推進し、十八歳以上の、成人への移行期も含めて切れ目のない支援を実施するための体制を整えてきたところでございますが、令和六年度障害福祉サービス等報酬改定におきましても、成年期の医療的ケアに関する加算の拡充などを行ったところでございます。

 引き続き、こども家庭庁とも連携し、医療的ケア児が成人期に移行した後についても地域生活を継続できるよう、必要な支援の充実に努めてまいります。

阿部(司)分科員 必要な支援の充実に努めてまいるというお言葉を頂戴いたしましたけれども、是非ともよろしくお願いを申し上げます。

 保護者の皆さん、昔と比べたら随分環境もよくなってきた、そういったお声もいただいております。しかし、やはり、これまで通えていた通所施設に通えなくなると、先ほどもちょっと触れましたけれども、かなり心身の消耗も激しくなりますし、お仕事を辞めなければいけなくなって、つきっきりで世話をしなければならない、こんな状況に陥ってしまう。

 私がお伺いして、これは本当に大変なんだなと思ったのはお風呂ですね。お風呂に入れるのが本当に一苦労で、子供の頃であればある程度一人でもできたけれども、大人になってくると体が大きいので、体が不自由なお子さんを入れるのが本当にきついという中で、また、人工呼吸器をつけたり、たんを取ったりしなくちゃいけないということで、もう寝ていられない。三時間睡眠がずっと続くというような状況があって、本当にきついというお声をいただいておりますので、この需要と供給のバランスが合っていない状況、これをしっかりと解決していかなければならないと思いますので、是非、ここの体制の充実に努力をしていただきたいと思います。

 そして、今の質問に関連して、医療的ケア児が成長して十八歳以上となって医療的ケア者となった後も、支援のための体制整備について障害者総合支援法に規定して、児童と成人を包括した国における制度、しっかりと法に規定をしていく、こういう制度を創設する必要があると思うんですけれども、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

武見国務大臣 医療的ケア児支援法の基本理念において、医療的ケア児が十八歳に達した後も、引き続き適切な福祉サービス等を受けながら日常生活を営むことができるよう配慮して行わなければならないという規定がこの法律にもございます。こうした理念も踏まえまして、医療的ケア児が成長して十八歳以上となった後の支援体制の整備については、既に障害者総合支援法に基づき様々な支援を行っております。

 令和六年度障害福祉サービス等報酬改定では、医療的ケア児の成人期への移行にも対応した支援体制の整備を更に進めるために、日中に支援を行う生活介護において、介護職員を手厚く配置し支援を行った際の加算の拡充などを行ったところでございます。

 引き続き、医療的ケア児支援法に基づく対応と、それから障害者総合支援法に基づく対応というのをしっかりと連携をさせて、そして、先生おっしゃるような壁がなくなるように、きちんと連携をさせていかなければならないだろうと思っております。

 医療的ケアが必要な方への支援体制の充実、確実に進めていきたいというふうに思います。

阿部(司)分科員 ありがとうございました。

 加算についても御意見をいただいておりまして、例えば、医療連携体制加算、こちらは障害者施設と医療関係者の連携強化による受入先の拡大というものを意図して行っているものと理解をしておりますけれども、制度そのものがまだまだ知られていない。認知不足。ここが一つの問題。

 あと、令和四年度障害者総合福祉推進事業での、厚生労働省さんから出ているものですけれども、医療的ケア児の支援に関する調査報告書では、障害児通所支援事業所においては、医療的ケア児の体調不良等を理由とした突発的なキャンセルのために安定的に算定ができない場合があって、訪問看護事業所側から見ると、医療保険なんかと比べて報酬単価が低くて経営上のメリットがないなど、報酬面での課題も指摘をされております。

 また、現場からは、やはり抜本的な点数のアップが必要だという声をいただいております。十八歳の壁を抜本的に解決するために、根本的な本体部分の点数アップ、もちろん報酬改定があったことは承知をしておりますけれども、是非行っていただきたいという現場の声をこちらでお届けさせていただきまして、私の質疑を終了とさせていただきます。

 ありがとうございました。

橋本主査 これにて阿部司君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)分科員 よろしくお願いいたします。

 私からは、地域医療構想、特に、私の地元ですけれども、仙台医療圏構想と重点支援区域の指定について伺いたいと思います。武見大臣はまさにその分野のプロですので、期待を込めさせていただきます。

 この構想は、地域住民のため、そして患者さんのため、いざというときに国民の命を守るためという発想に立った意味での地域構想、だから地域の自主性を尊重するということなんだと思います。この点は大臣とも共有させていただきたいと思います。

 それでは、先に資料四を御覧いただきたいと思います。

 今、宮城県では、いわゆる四病院統合再編問題というのが起きています。仙台市内にある仙台赤十字病院、この資料でいきますと右上の仙台赤十字病院、そして右下にあります県立がんセンター、これを統合して、赤十字病院は仙台市の南西部にあったんですが、これを仙台市の外、南部、名取市へ、それから、左側にあります、仙台市内にあります東北労災病院、それから左下にあります県立精神医療センター、これを合築して、これはまた仙台市の外、北部へ移転をするというものです。

 そもそも、これは県知事が突然公表をしているんですね。最初は三病院を統合しますと突然言って、いやいやいやという話をしたら、四病院を二つに分けてという、ちょっと構想も、それから手続も乱暴なやり方をされています。

 今まさに宮城県議会が開催をされておりまして、毎日このテーマで議論が行われております。県民から見ると、二つの救急病院が仙台市内からなくなってしまう、そして県知事のやり方も強引かつ拙速に進めようとしている、この県の姿勢に不信感が高まっているところです。

 そして、この県の構想の背景に、これは私の所感ですけれども、病院の赤字削減ありき、それから国からの補助の期待、これがありきで進められているんじゃないか、この懸念がありますので、この点を今回質問させていただきたいと思います。

 そもそも、大臣に伺いますが、資料一ですけれども、公立病院の経営強化ガイドライン、二二年三月に発表されております。これは、かつては、経営改革、それから統合や再編、ネットワーク化を進めろよと言わんばかりのガイドラインだったんですが、統合や再編、ネットワークという言葉が消えました。

 厚労大臣、地域医療構想も当然連動しています。赤線で見ますと、地域医療構想という言葉が入っております。厚労省、厚労大臣としては、このガイドライン、どう変化したといいますか、統合や再編、ネットワーク化の言葉が消えたという意味を厚労大臣はどう踏まえていらっしゃるのか、伺います。

武見国務大臣 総務省が令和四年三月に策定をいたしました公立病院経営強化ガイドラインにおきまして、再編、ネットワーク化に代えまして、病院間の役割分担と医師派遣等による連携強化に主眼を置いた機能分化、連携強化を推進することということになりました。ただし、公立病院の統廃合を前提とするものではないという考えについては、従来からの変更はないというふうに承知しております。

 地域医療構想は、中長期的な人口構造の変化や地域の医療ニーズに応じて、病床機能の分化、連携により、質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指すものでございまして、公立病院を含めて、病床の削減や統廃合ありきということではございません。各都道府県における地域の実情を十分に踏まえた議論を通じて取組を進めることが重要であるというふうに考えております。

 厚生労働省としても、これまでこうした考え方に基づいて必要な支援を行ってきたところであります。引き続き、都道府県と連携をしながら、医療提供体制の確保に向けて取り組んでいきたいと思います。

岡本(あ)分科員 今大臣がお答えいただいたこと、本当に大事だと思います。統合再編ありきではない、医療ニーズにちゃんと基づいてしっかり医療を提供する、それを確保するべきだと思っています。

 公立病院について次に伺います。

 総務省に伺いますけれども、今日、総務省にお越しいただいておりますけれども、公立病院の経営強化ガイドライン、公立病院というのは、政策医療、最後のとりでになる機能を担っているということは、やはりコロナで重々、多くの国民が認識したと思います。

 公立病院については、特に、ちょっと過去のガイドラインを見ますと、やはり赤字病院がこれだけあって、これをどれだけ二〇二五年までに減らすべきだのような言葉もかつての資料にはありました。

 ただ、赤字があることがけしからぬということでは私はないと思うんです。無駄遣いとかはもちろん見直す必要があります。あるいは、ニーズが減ってきたということに対応する、こういうことはあると思います。ただ、政策医療、それから救急、そして、いざというときの最後のとりでを担っている公立病院は、どんどんもうけて黒字になれよというものでは根本的にないと思います。

 赤字を出してはならないという考え方がそもそもあるのではないでしょうか。お答えください。

馬場副大臣 お答えします。

 公立病院は、地域における基幹的な公的医療機関として、僻地医療や、救急、小児、周産期等の不採算、特殊部門に関わる医療の提供等の重要な役割を担っております。

 公立病院については、公営企業でありますので、独立採算が原則であります。その一方で、不採算医療等のように、能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費等については一般会計が負担するものとして、病院事業会計に対する繰り出し金に対して地方財政措置を講じております。

 公立病院が安定した経営の下で僻地医療、不採算医療等を提供する重要な役割を継続的に担い、地域医療提供体制の中で適切に役割、機能を果たし、良質な医療を提供していくことが重要であります。

 そのため、令和四年に策定した公立病院経営強化ガイドラインにおいては、一般会計等から所定の繰り出しが行われれば経常黒字となる水準を早期に達成し、これを維持することによって、持続可能な経営を実現する必要があるとの考え方を示しているところであります。

 その上で、各地方自治体において、令和五年度までに経営強化プランを策定するよう要請しており、公立病院の経営強化に主体的、積極的に取り組んでいただくことで、持続可能な地域医療提供体制の確保につながるよう支援してまいります。

岡本(あ)分科員 ありがとうございます。

 資料二にございますけれども、どんどん公立病院の数は減少しております。令和四年になってちょっと微増というか、これはやはりコロナの経験が大きいのかなと思っています。

 かつては、やはり民営化ですとか独法化ですとか、いろいろな手段を使って経営の改革をしろという過去があったというのは事実だと思います。改めてやはり公立病院の役割というところはしっかり認識をするべきですし、そのために、必要があれば一般会計の繰入れがあるんだ、今御説明いただいたとおりですので、この点は踏まえていく、そして、これを各地域にも浸透させていただきたいと思います。

 続きまして、医療圏構想のエリアの設定について伺わせていただきます。

 宮城県では、医療圏が四つ設定されております。仙台医療圏、それから仙南医療圏、西北部の大崎・栗原医療圏、そして東部の石巻・登米・気仙沼医療圏、四つでございます。

 先ほどの資料四を御覧ください。そのうちの仙台医療圏というのがこの黄色のエリアのところになります。今回移転する予定ですと、統合ということで、岩沼市の上、名取市というところに中心部から、青ですね、青は仙台市内から名取市というところに持っていきます。それから、赤の方は、二つ併せて、仙台市の外、北部、富谷というところに移転をします。

 元々でいきますと、この黄色の下のところ、仙南医療圏、非常にここは、医師不足ですとか診療科が足りないとか、そういうことで、かつて重点支援で国からも御支援をいただいて、今、医療圏、やっておりますけれども、名取に移転をすると、結果として、副次的にこの下の、南の白いエリア、ここの患者さんも吸収できる、その期待があるのではないかという感じを持っております。

 私自身、岩沼市というところが元々出身で、岩沼の南側は隣の医療圏で、医師不足、病院不足というところは私自身も重々認識をしているところなんですが、ここの近くに移転をするということで、結局、隣の仙南医療圏もカバーをするという期待が大きくなるのではないかと思います。

 それから、赤で書いています、合築と書いています、富谷市というところ、仙台の中心部から北に行きます。仙台医療圏の中では中心部からちょっと北ぐらいのイメージですけれども、今、どんどん北部に、徳洲会病院、JCHOさんも北部に移転をしております。結果として、黄色よりも北部のエリア、隣の医療圏の患者さんもカバーすることが期待されるのではないかと見えてしまいます。

 本来は、医療圏ごとに需要と供給を構築するのが地域医療圏構想の基本ではないかと思います。この考え方、大臣、お答えいただけますでしょうか。

武見国務大臣 地域医療構想の構想区域の設定については、地域医療構想策定ガイドラインにおいて、将来における人口の規模であるとか、患者の受療動向であるとか、それから疾病構造の変化、それから基幹病院までのアクセス時間の変化、こういったことを勘案して検討しようということになっております。

 その上で、ガイドラインでは、急性期、それから回復期、慢性期の医療についてはできるだけ構想区域内で対応することが望ましいとしている一方で、高度急性期については、診療密度が特に高い医療を提供することが必要になりますので、必ずしも一つの構想区域で完結することを求めているわけではございません。

 各都道府県においては、ガイドラインに基づいて、隣接する構想区域も含めた地域の実情に応じて、都道府県医療審議会などの意見も踏まえて、柔軟かつ適切に構想区域を設定しているのだというふうにこちらは受け止めております。

岡本(あ)分科員 今ほど、高度急性期については医療圏にこだわらないというところ、ただ、基本はやはり地域医療圏ごとで、急性期、回復期含めて、医療圏の中でやることが望ましいという趣旨と受け止めました。

 ちょっと具体的に、仙台の医療圏構想の中身に触れさせていただきます。ちょっと質問を時間の関係で飛ばさせていただきますけれども、四病院のうち二つ、仙台赤十字病院と県立がんセンターの統合について、基本合意、これも住民説明会のときには何も触れていなくて、説明会をやった直後に、意見を反映することなく基本合意がされました。国の重点支援区域指定への申請がその直後に、年末になされました。

 一月十六日、資料五ですけれども、重点支援区域選定決定が厚労省でなされております。ただ、資料五にありますように、赤でくくったところでございます、異例の条件が付されました。過去に条件をつけたということはあったのでしょうか、この点一つ、それから、この条件二項目をつけた意図というのはどういうことなのか、厚労省に伺います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 そもそも、こういう条件を付したことがかつてあったのかという質問に対しましては、今まではございませんでした。

 今回の宮城県仙台構想区域の重点支援区域の選定に当たりましては、宮城県の地域医療構想調整会議における議論や検証に必要な情報が示されないままプロセスが進められているとの構成員の発言、また、仙台市から再編の方向性の根拠となるデータの開示等が求められているということ、そして、住民説明会におきまして参加者から説明が不十分等の意見が出されたこと、こうしたことを踏まえまして、条件を付したものでございます。

岡本(あ)分科員 過去にはないということ、それだけ条件をつけなきゃいけない構想の申請なんだということは重く受け止めていただきたいですし、是非、大臣、ここは踏まえていただきたいと思います。

 今ほど御説明がありましたけれども、地域医療構想調整会議、これは年末に開かれております。御答弁いただいたとおり、構成員の中から、議論や検証に必要な情報が示されていない、データが示されていない、それから理解も得られていない。

 それから、この議事録を拝見したんですけれども、基本合意も決まって、突然この医療調整会議が招集されているんですね。国への申請なんかは、調整会議を開きますよというのが四日前、そして、重点支援区域に申請をするのを決めますよという議題ですというのは、何と前日知らされているんです。委員の方々は、審査も、自分たちで調べるいとまもなく会議が開かれております。

 そして、じゃ、二つ、仙台赤十字病院と県立がんセンター、併せて一体急性期はどのぐらいになるんですか、回復期はどのぐらいになるんですかというのが、その日のその会議のその場で初めて示されております。なので、調整会議にかける姿勢も余りにもちょっとずさんですし、軽んじられていると私は思います。

 そして、結果、基本合意の中身については、座長が、懸念の声、心配の声があるので、これはおいておいてというか、切り分けて、重点支援地区への申請だけは了解をしていただきたいということで、申請だけは決めているんです。

 ただ、ちょっと厚労省に伺いたいんですが、基本合意、それから構想の中身もはっきりしないまま、これは相手方があるのでという言い方でずっと拒んでおりますけれども、調整会議の中身、構想自体の具体的な中身が示されないのに、国に補助金は出してもらえる可能性がある、あるいは、申請さえすれば指定されるんじゃないか、そういう期待での申請がなされる、こういう手続に対しては、厚労省としてはいかがでしょうか。先ほど、懸念があるという、だからこそ条件をつけられたんだと思うので、その点、もう一度お答えください。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 重点支援区域の選定に当たりましては、宮城県さんからの申請によりまして、我々としてもまず形式的には受け止め、選定をしないといけないという前提がございます。

 ただ、しかしながら、先ほど申し上げたとおり、様々な理由、必要な情報が示されないままプロセスが進められている、あるいは、住民説明会においての説明が不十分等の御意見があったとか、データの開示が求められているにもかかわらず出てこない、そういったような、ある意味、異例なような話もございましたので、私どもといたしましては条件を付したものでございます。

岡本(あ)分科員 条件を付した以上、しっかり中身をチェックしていただきたいですし、ちゃんと条件がクリアできるのかどうか、この点も注視をしていただきたいと思います。

 大臣に伺います。

 国に申請をする、重点支援区域に申請をした期待として、統合する際に国から補助金が優先的に出る。それから、今回、四百と四百、約四百、四百の二つの病院をくっつけて四百にするということで、約四百床減る中身になっております。病床を削減したら国から全額補助が出るんですという言い方も、県はもう既にされていらっしゃいます。病床が減少したら国庫から補助が出るというのは、病床を削減することを奨励するためにこの国庫の補助があるんじゃないかという誤解が生じています。

 医療需要があっても、病床を削減したら国からお金が出る仕組み、これ自体、そろそろ見直しをするべきじゃないんでしょうか。間違っても、病床削減を誘導するためにこの補助金があると思われること自体は払拭をしていただきたいと思います。大臣、お答えいただけますか。

武見国務大臣 厚生労働省としては、地域医療構想の取組を進めるに当たりましては、病床の削減や統廃合ありきではなく、各地域においてその実情を踏まえて十分に議論していただき、不足する医療機能の確保、医療機関間の役割分担や連携等の取組を進めるということが重要だという考え方です。

 病床機能再編支援事業につきましては、単なる病床削減を推進するものではございませんで、地域の合意を得て自主的に行われる再編統合を対象として支援をするものでございます。

 また、この事業は、病床数の減少を伴う病床機能再編の取組を進める際に、職員の雇用や債務の取扱いなど、特に様々な課題が生じ得ることを受けて措置した支援策でございまして、全国知事会、全国市長会などからも、病床のダウンサイジングを含む再編統合を国が強力に支援することについて、継続して御要望はいただいております。

 厚生労働省としては、引き続き、都道府県の御意見を伺いながら、地域の実情に応じて、こうした地域医療構想の取組を国の立場から支援をしていきたい、こういうふうに考えております。

岡本(あ)分科員 間違っても、病床削減を国が誘導していると誤解されるのだけは絶対にないようにお願いをしたいと思います。

 先ほどの調整会議の議事録も見ているところで、実は、先ほど申し上げました県立のがんセンターと仙台赤十字病院、これを二つをくっつけて、基本合意の中では、経営主体は仙台赤十字病院が担うというものになるという中身です。

 議事録の中では、じゃ、がんの、政策的ながんの研究ですとか、治療は当然、日赤さんでもがんの患者さんは今でも受けていらっしゃいますので、がんの治療は一定あると思いますが、がんの研究、それから政策に基づくがんの治療とか、そういう分野はどうなるんですかというやり取りがあるんですが、まだ決まっていないという中身のようです。

 これは本当にがんセンターと仙台赤十字病院の統合なのかというところもちょっと疑問が湧くんですね。四百床の総合病院、救急病院と、がんの専門の研究機能を持っている、先進的な治療、あるいはターミナルケアを行っているがんセンター、二つをくっつけて、四百、四百をくっつけて四百にします、仙台赤十字病院が経営主体です、そして、がんの研究の機能は東北大学に期待をするような流れになっております。仙台赤十字病院ががんの政策、研究を担うというような流れは、今のところは確認できておりません。

 そうしますと、県立がんセンターを一個廃止して、仙台赤十字病院を名取に、同じ四百床ですから、移転をさせるだけという結果にもなる可能性が否定できないんですね。これは、県立がんセンターを廃止するだけ、仙台赤十字病院を同じ規模で移転するだけだと、国からはほとんど補助というのはないんですね。全部自前でやらなきゃいけない。

 統合という言葉で地域医療構想に入っているから、重点支援区域の申請もできますし、そして国からもお金が出る仕組みを使える。なので、本当に患者さんのため、がんの研究が進むのか、急性期がちゃんと賄われるのか、回復期がちゃんと需要に応じられるのか、この点が全く見えていない状態だというのが今現在なんだということは指摘をさせていただきます。

 だからこそ、この重点支援区域の条件、仙台市の理解を得るということ、これは患者さん、移転をするところのデメリットが感じられるところですので、ここの理解を得るということは非常に重要です。そして、実際の統合という言葉の下に何をやろうとしているのか、この点も含めて、是非、条件をクリアするのかどうか、これを厚労省として責任を持って注視をし、必要があれば助言ですとか技術的支援とかをしていただきたいと思います。厚労大臣にお答えいただきたいと思います。

武見国務大臣 地域医療構想の重点支援区域は、都道府県が地域医療構想調整会議の合意を得た上で申請したものに対して、厚生労働省が選定を行うというものです。

 宮城県の仙台構想区域の中で、仙台赤十字病院と宮城県立がんセンターの統合については、宮城県から申請があり、一月十六日に厚生労働省において選定を行ったところです。

 その際に、宮城県の地域医療構想調整会議において構成員から、議論や検証に必要な情報が示されていないままプロセスが進められているとの発言があったことなどを踏まえて、選定に当たっては、理解を得ることの条件を付したところであります。

 条件の達成状況の確認については、宮城県における仙台市の理解を得るための取組状況等について、機会を捉え、宮城県、仙台市の双方に対して電話や面談等によって確認を行いながら、総合的に判断をしてまいります。

 医療機関の再編については、地域の実情や再編後の状況などを十分に考慮して進められるべきものでございますから、協議が平行線であったとしても、宮城県と仙台市において丁寧に協議をしながら進めていくことが重要であると考えております。したがって、この点を踏まえて、引き続き状況を注視してまいりたいと思います。

 そして、宮城県には、今回の条件の趣旨を踏まえて、仙台市などの理解が得られるよう努めていただきたいと考えておりまして、条件の達成状況については、宮城県、仙台市、双方への確認結果などを踏まえて、その上で、総合的に私どもの立場というものを考えていきたいと思います。

岡本(あ)分科員 やはり、条件をつけたという重さを、是非厚労省を挙げて、そして大臣を先頭に取り組んでいただきたいと思います。

 最後に一点だけ、細かいところですが、お伺いします。

 重点支援区域に選定されたことをもって国の補助金を優先的に得られるものなのか。それから、病床を削減したら一〇〇%国から補助が出るという言葉も地元では飛び交っております。この点だけ、この仙台医療圏構想の重点支援区域、自動的に当てはまるのかどうか、この点を最後に確認させてください。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の地域医療介護総合確保基金のうちの病床機能再編支援事業、統合支援給付金支給事業のことだというふうに解釈しておりますが、その要件の一つといたしまして、令和八年三月三十一日までに統合が完了する計画ということとされているものがございます。

 今回、この宮城県の事例につきましては、令和十年度中に統合が完了する計画と伺っておりまして、現時点では、対象とすることは困難ではないかなというふうに考えているところでございます。

岡本(あ)分科員 最後に確認をさせていただきました。

 地元では延長してほしいという要望があるということは大臣も御認識はあると思いますけれども、今時点で、この重点支援地域に申請します、申請して選定をされたら自動的に予算が優先的につくんですとか、あるいは病床を削減したら一〇〇%国が出してくれるんですという言葉が地元で飛び交っているということ自体は非常に懸念があるということを是非共有させていただければと思います。

 ありがとうございました。

橋本主査 これにて岡本あき子君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、後藤(茂)主査代理着席〕

後藤(茂)主査代理 次に、國重徹君。

國重分科員 公明党の國重徹です。

 武見厚労大臣、また厚生労働省、関係省庁の皆様、昨日に引き続いての長時間の分科会、大変にお疲れさまでございます。

 今日は、まず、私、難聴、とりわけ障害に至らない難聴についてお伺いをしていきたいと思います。

 大臣もいろいろレクも事前に受けられて、答弁ももう用意されているかと思います。いろいろなテーマがあって大臣も非常に大変だと思いますけれども、私もこのやり取りの中で少しでもまた伝わるような形で話をさせていただきたいと思いますので、またよろしくお願いいたします。

 これまで私、この予算委員会の分科会で繰り返しこのテーマについてお伺いをさせていただきました。加齢性の難聴を含めた難聴の予防、対応に力を入れていくこと、これはこれからの人生百年時代において非常に重要なことだと思っています。一方で、現状の対応だけではこぼれ落ちてしまっている、エアポケットになってしまっているところがある、ここにしっかりと対応していく必要がある、この意識で私、この課題を取り上げ続けてまいりました。

 まず、武見厚労大臣、大臣は、人生百年時代における難聴の予防また対応の重要性について、重要と考えているのかどうか、どのようにお考えなのか、また重要と考えている場合についてはその理由等も併せて是非お伺いしたいと思います。

武見国務大臣 難聴というのは様々な原因で起こるものでございまして、近年では高齢化の進展に加えて若年層のヘッドホン難聴も増加するなど、ライフサイクルを通じて影響が出てくる可能性がございます。

 そのために、職域における定期健診を通じた、成人期から高齢期の労働者を対象とした早期の発見、それから突発性難聴の早期受診、ヘッドホン難聴の予防に関する普及啓発など、各年齢層それから場面に応じた支援を包括的に、厚生労働省全体として進めていくことが重要であるというふうに認識をしております。

國重分科員 そうですね。大臣に言っていただいたとおりなんですけれども。

 その上で、なぜ難聴の予防また対応が重要かといいますと、聴力の低下というのは、大臣もいろいろな人を見られて感じていらっしゃると思うんですけれども、社会生活とかコミュニケーションとかこういったところに支障を来していく、また、社会的孤立、これに関する法律もできましたけれども、社会的孤立とかうつを招く要因にもなるというふうに言われております。

 また、日本においては今研究途上でありますけれども、認知症における最大の予防可能なリスク要因が難聴である、こういうことも、イギリスの医学誌ランセットの国際委員会が、二〇一七年、二〇二〇年の二度にわたって指摘をしております。

 また、私は、障害に至る難聴もそうなんですけれども、障害に至らない難聴を取り上げ続けてきた。これはなぜなのかといいますと、我が国における聴覚障害の認定基準というのが世界的に見てハードルが高いからなんですね。

 我が国では、聴力レベル七十デシベル以上から身体障害者手帳の交付を受けることができることになっています。ただ、例えばWHOが補聴器を使うことを推奨しているのは聴覚レベル四十一デシベル。これは耳元で大きな声で話さないと聞こえないレベルなんです。つまり、我が国では、障害者手帳を持っていない、障害者に当たらない人であったとしても、聴力の低下によって日常生活の様々な不便を抱えていらっしゃる方が多数いらっしゃるということです。ある調査では、医学的介入が必要な難聴者は約九百万人いるとも言われております。

 こういった観点で、人生百年時代、やはり耳というのはコミュニケーションの土台ですので、それぞれが生き生きと人生を謳歌していただく上でも、この難聴の対応というのは非常に重要だと思っております。

 さらに、WHOの公表資料によりますと、聴覚ケアに医療費を投入すれば十年間で十六倍に還元される旨の報告もされております。そういう面でも幅広い難聴対策が重要だと思っています。

 これまで私がこの難聴予防を取り上げる中で、平成二十九年九月に、難聴への対応に関する省内連絡会議を立ち上げていただきました。これについては私も感謝をしておりますし、評価をしております。

 この会議、年に一度開催をしていただいております。昨年は三月十三日に開催がされました。その際の資料の一部が本日お配りさせていただいているペーパーになります。このペーパーですね。

 この二枚目のところ、資料四、空白となっている部分についてとあります。この中に両括弧で、意見交換事項案と書かれてあります。案とありますので、私も、これはどういう意味なんだろうな、どういう位置づけなのかということで、ちょっとよく分からなくて問合せを事前にさせていただきました。そうしますと、これは会議前に作成をされて、会議内でも実際に取り上げられた内容であって、これは関係部署で課題として認識、共有されているものだと御説明をいただきました。

 念のため確認ですけれども、この意見交換事項案、これについては関係部署で課題として認識、共有されている、これで間違いないかどうか、お伺いします。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの資料自体は、御指摘をいただきました省内の連絡会議の配付資料といたしまして、障害に至らない難聴に関する取組をライフステージに応じて、事務局担当として会議の前にあらかじめ整理をしたものでございます。

 連絡会議の場におきましては、具体的には、現在取組を実施している分野と具体的取組のない分野、いわゆる空白となっている部分を整理したものとして御説明をさせていただいた上で、会議の場で関係部局間で意見交換を行ったものであります。

 これにより、関係部局において、今後の取組の検討材料として認識、共有をしているところでございます。

國重分科員 ありがとうございます。

 私、ちょっと、きちきちやっていきたいと思いますので。

 私が質問したのは、課題として認識、共有されているのかと伺いました。今答弁いただいた、検討材料として認識、共有と言われましたけれども、課題として認識、共有したということでよろしいでしょうか。

辺見政府参考人 検討が必要な課題として認識されていると認識をしております。

國重分科員 ありがとうございます。

 課題として認識、共有されたからには、当然、その後どのように対応していくのかということが話し合われたかというふうに思います。

 ただ、この省内連絡会議でどのような協議が実際になされたのか、このことについて取りまとめられた資料というのはないんですね。会議前にはあって、会議で配られた資料もあるんですけれども、会議後どうなったのかというのは分からないわけです。私もその会議に出席していませんので、正確には分かりません。

 この会議で共有された課題について、会議後どのように対応することになったのか、答弁を求めます。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの障害に至らない難聴に関する取組等につきましては、関係する部局においてそれぞれ課題への対応策を検討している、進めているところでございます。次回の連絡会議において、各部局の取組の進捗状況を確認をすることとしているところでございます。

國重分科員 それぞれの課題への対応をしっかり進めていくということでありましたので、私も注視をしてまいりたいと思います。

 今日、具体的に一つ一つ聞きたいところなんですけれども、時間の関係もありますので、このうちの一点だけ、特に重要だと思う課題についてお伺いをさせていただきます。

 この意見交換事項案の中で、予防、普及啓発が行われていないという点があります。ここは私、予防の観点等から非常に重要だと思っております。

 他方で、なかなか進んでこなかった、一部では普及啓発はされているんだけれども、全体的にこぼれ落ちないような広報というのが決して十分にはなされてこなかったというふうに私は認識をしております。

 これに関して、今後、とりわけ新たにどのように取り組んでいくのか、またその責任を負う担当部署はどこなのかということも併せて答弁を求めます。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 難聴の予防、普及啓発につきましては、例えば健康・生活衛生局において、国民の健康の保持増進等の観点から、突発性難聴の早期受診、ヘッドホン難聴の予防に関する普及啓発、労働基準局において、労働安全衛生の観点から、職域における定期健診を通じた成人期から高齢期の労働者を対象とした早期発見に加え、騒音作業に従事する労働者を対象としたガイドラインの周知、老健局で、難聴リスクがある高齢者の早期発見等の観点から、高齢難聴者に関する調査研究を行うとともに、その結果を踏まえ、高齢者への働きかけや周知啓発等の方策を検討していくこととしているなど、各年齢層や場面に応じた要望等の取組を工夫をしながら進めているところでございます。

 難聴の予防、普及啓発の取組を包括的に実施するため、関係部局で連携を取りながら取り組んでいきたいと考えております。

國重分科員 今の答弁を踏まえて、少し更問いになるんですけれども、更問いですのでもし今この場で正確に答えられなかったら後ほどというようなことでも結構なんですが、確認をさせていただきたいと思います。

 今、老健局の方で、高齢難聴者に関する調査研究を行う、その結果を踏まえて周知啓発等の方策を検討していくというようなことをおっしゃいましたけれども、この高齢難聴者に関する調査研究を今している、行うというのは、これは具体的にどのようなことをされているのか、お伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 事業の概要で取りあえず御説明をさせていただきますが、令和五年度の老人保健健康増進等事業において、難聴の専門家の参画を得ながら、通いの場など高齢者が集まる場や外出機会が少ない高齢者が受診する医療機関等において難聴のリスクがある高齢者を抽出し、適切な介入につながるモデル事業等を行っているところでございます。

國重分科員 これは更問いでしたので、また、ちょっと、この質疑が終わった後も含めて様々協議、議論させていただきたいと思います。

 次は、大臣への質問をさせていただきたいと思いますが、加齢性の難聴というのは、仕方がないと諦めてしまったり、また、対応を放置して余計に悪化してしまうことも多くあります。その結果、様々な悪影響が生じてしまうという現状があります。だからこそ、事前の予防、早期の対応、そのための正しい知識の普及啓発が特に重要になると思っています。

 例えば、音の聞こえ方に異変を感じたときに早めに検査、治療を受けることで深刻な聴力低下を防ぐことができる場合もあります。逆に、難聴を放置した期間が長くなり過ぎますと、補聴器を着けたとしても、脳が補聴器の作る音をうまく捉えられなくなって、聞き取れなくなるおそれがある。また、私もこれは学んで驚いたんですけれども、失われた有毛細胞の機能というのは基本的に回復しないわけです。

 こういったことを始め、耳、難聴、聴力に関する知識、情報について、私も様々な文献や資料を読んだり、また専門医の先生方にもお伺いする中で学んできました。こういった情報は予防や早期対応において非常に重要なことで、基本的な知識として分かりやすい形で国民の皆様に広く共有されるべきことだと思っています。

 しかし、私、この質問をするに当たって、今ずっと週末地域を回っているんです、一軒一軒回りながらいろいろな話を、今、政治と金の問題もありますし、いろいろなことを聞きながら回っているんですけれども、耳のことについて聞きますと、正しい知識を持っている方というのはもうほとんどいらっしゃらないですね。今言ったような知識というのは何となくは分かっていても、そういう方が多いんです。

 私、昨年の予算の分科会で質疑をした際、当時の加藤厚労大臣も、難聴に対する認識の問題があるというのも私は議員になってからずっと感じてきたという旨の答弁をされております。

 難聴の予防、対応、非常に重要であります。もちろん、今事務方が用意した答弁もあると思うんですけれども、これがやはり重要であれば、人生百年時代、これまでの延長だったら足りないと思うんです。引き続きというよりも、もう一段ギアを上げて、例えばこの分野の普及啓発に取り組むべきじゃないかと思っています。

 例えば、三月三日、耳の日があります。そういうときに合わせて、ほかの分野でもそういうのをやっているのはありますけれども、耳の日などこういうのに合わせた何らかの国民向けのキャンペーンを行うとか、そこから徐々に広げていくとかいうような取組も重要かと思っています。今、e―ヘルスネットというところで書いているんですが、恐らくほとんどこれは見ていません、国民の皆さん。

 二〇二〇年から始まった厚労省改革、その柱の一つが広報改革です。これまでにも厚労省には広報に関する専門家がいらっしゃったわけです。さらに、今年新たにデザイン専門官を設置する予定と聞き及んでおります。そういった方々から構成される民間出身の専門チームの知見もかりながら、是非、国民に広く届く広報に力を入れていただきたいと思っております。

 また、武見厚労大臣御自身、かつてテレビ番組でメインキャスターを務められるなど、国民の皆さんにどうやれば分かりやすい情報をお届けすることができるのか、こういったことについては豊かな経験、また優れたセンスをお持ちの大臣だと私は思っております。

 是非、加齢性難聴を含めた難聴の予防、また適切な対応に関する正しい知識の普及啓発、そのための、これは引き続きというより、もう一段踏み込んだ取組を、是非大臣のお力でしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 難聴につきましては、高齢化の進展に加えて若年層のヘッドホン難聴など、ライフサイクルを通じて様々な影響が出る可能性があるために、厚生労働省全体として難聴の予防、普及啓発に適切に取り組む必要性があるという認識を持っております。

 特に、加齢性難聴については、難聴のリスクがある高齢者の早期の発見、早期介入等に向けて、今年度、関係者の連携に関する調査研究事業を実施しているところであります。今後、この結果などを踏まえつつ、高齢者への働きかけや周知啓発等の方策を検討していくこととしております。

 御存じのように、ランセット・コミッションの中での調査研究では、実際に、こうした高齢者の加齢ということを通じて、それが社会に対する参加を妨げて高齢者を孤立化させて、またそれによって認知症というものの原因にもなるということが実は分析されておりまして、こうした高齢化の認知症を実際に防ぐという意味からも、こうした難聴というものに対する対応というのは非常に重要な課題だというふうに私も認識をしております。

 そこで、今後とも、この結果を踏まえて高齢者への働きかけや周知啓発の方策というのはしっかりと検討していかなければならないと思っておりますし、また、生活習慣に起因するヘッドホン難聴についても、関係学会、団体などと連携した一層の普及啓発を図るほか、騒音作業に従事する労働者を対象としたガイドライン、これも昨年四月の改訂版の周知徹底を図るなど、難聴の予防に関わる取組を含めて、引き続き、こうした難聴対策についてはしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

國重分科員 言葉の中でも、一層のというようなところがありましたので、是非ここについては、是非是非、また大臣も、この質疑の後も含めて、ちょっと省内でもやり取りをしていただいて進めていただきたいと思います。

 正しい知識がなくて、聴力が失われてコミュニケーションが不十分になるという人ができるだけ出ないようにするということは、私は一定程度できると思うんです。ただ、やはり今こぼれ落ちている部分があります。なかなか担当部署のところも決め切れないところもあるかもしれませんけれども、私も今回は力を入れて注視していきたいと思いますので、是非よろしくお願いします。

 先ほどの省内連絡会議、ここでどういうような話がされて、その結果どういうような方向性で取り組んでいくことになったのか、どういう検討をどこがすることになっているかなど、よく分からない点もあります。

 ですので、仮に、これは今議事録とかは作っていませんけれども、議事録を作るとなると自由闊達なやり取りができないというのであれば、せめて議事要旨とか、その後の方向性がどうなったのかとか、そういう取りまとめについては何らかの形で残していく、そして外部にも示していく、それが責任を持ってこの分野の課題解決に向けて進めていく上で重要になるんじゃないかと思っております。

 そういう意味でも、次回の会議の後に先ほどの取りまとめのペーパーのようなものを示していただくとともに、どのような協議がなされたのかということについて、私、是非聞かせていただきたいと要望しますので、是非聞かせていただきたいというふうに思います。

 次回の省内連絡会議がいつ頃行われるのか、その時期のめども併せて、これについてお伺いします。

辺見政府参考人 省内連絡会議、これまで六回開催してきたところでございます。次回、第七回の会議でございますけれども、翌三月中の開催を予定をしているところでございます。こうした会議を通じて、難聴の方への対応としてどのようなことを実施していくこととしたのかなど、必要な方に必要な情報がきちんと伝わるように分かりやすく発信をしていきたいと考えております。

 会議開催後ですが、ホームページに配付資料を掲載するということ、先生御指摘のとおりでございますが、あわせて、お求めがございましたので、その状況について御説明をさせていただく機会を設けさせていただければと考えております。

國重分科員 是非よろしくお願いします。

 ちょっと、次、がらりとテーマを変えまして、若い患者の方に対する妊孕性温存療法についてお伺いをいたします。

 抗がん剤や放射線治療などのがん治療には、卵巣や精巣などの生殖機能に影響を及ぼして不妊になるおそれがあるものがあります。そこで、あらかじめ卵子や精子を凍結保存するなどして将来の妊娠への可能性を残すというのが、妊孕性温存療法になります。突然のがんの宣告、将来への大きな不安、その中で、いつか子供を持ちたいと思っていたがん患者の方、その家族やパートナーの方々にとっては、この温存療法は未来への希望をつなぐ大切な選択肢になります。

 この温存療法、自費診療ではありますけれども、二〇二一年度から治療費の助成制度がスタートをしております。これは大きな一歩だと思っています。一方で、温存療法を受けたい人がその機会をきちんと得られているかといいますと、まだ課題があります。温存療法に関する情報提供が徹底されていない、不十分だという点です。

 厚労省の委託事業として行われました患者体験調査報告書、平成三十年度調査、これによりますと、がん治療による不妊の影響について説明を受けた人は全体の五二%、また、説明を必要としていたのに受けなかった人は四十歳未満で二五・六%。医師からの説明が十分とは言えない実態が明らかとなっております。

 もちろん、全ての若いがん患者の方々が温存療法を必要としているとは限りません。ただ、必要としている人たちがその選択肢を与えられないようなことがあってはならないと思います。がん治療が妊孕性に影響する可能性がある場合には、生殖可能年齢にあるがん患者を診察する全ての医師から、そのことについて適切な説明がされること、そして、それぞれの状況やニーズに沿った適切な処置が取られるようにすることが本来あるべき姿だと思います。

 先ほど私が挙げました医師からの説明に関する調査結果は、最新値ではあるものの、二〇一八年と、古いものになります。

 そこで、武見厚労大臣、まずは改めて実態を把握して、医療従事者への周知を強化するなど、適切な対策を講じていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 医療機関においてがん患者の状況等に応じて妊孕性に与える影響に関する説明を行うことは、妊孕性温存療法を患者が選択できるようにするための最も重要な課題であると認識をしております。

 平成三十年度の調査によりますと、治療が開始される前に医師から治療による不妊の影響について説明を受けたがん患者の割合は四十歳未満で五二%となっておりまして、この割合は確実に高めていく必要性があると思います。

 厚生労働省としては、令和五年三月に閣議決定したがん対策推進基本計画に基づきまして、がん治療が妊孕性に与える影響に関する説明が適切に行われるように、患者等に対する治療開始前の情報提供やそのための体制整備をがん診療連携拠点病院などの指定要件とするなど、その取組を強化してきております。

 引き続き、令和五年にも調査を実施して妊孕性の説明に関わる実態を把握するとともに、がん診療連携拠点病院等における体制整備の状況についても毎年実績報告を実は求めておりまして、これらの結果を把握した上で、委員御指摘の点を含めて対策に反映させていきたい、こう考えております。

國重分科員 大臣、ありがとうございます。

 状況もこれは様々で、今は子供のことまで考えられないという患者の方もいらっしゃいます。一方で、将来を悲観してしんどい中でも治療の励みになった、そう言われる当事者の方もいらっしゃいます。少しでも将来への不安を緩和できるように、更なる取組を是非よろしくお願いします。

 妊孕性温存療法では、患者ごとに推奨される治療やその緊急性、また個々の心理状況も異なります。さらに、温存療法を受けた後も、凍結保存した検体をどうするのか、生殖補助医療を受けるかどうか、様々な不安や悩みが生じます。

 温存療法を受けたい人が治療を受けられるような体制整備はもちろんのこと、少しでも精神的な不安を和らげられるような支援体制も整えていく、そのためには、温存療法を行う人材とともに、がん側と生殖側の双方に、心理的ケアなどを担う心理士などの人材が必要になります。更なる人材育成を進めていただきたいと考えますが、どうでしょうか。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、妊孕性温存療法、これについて患者やその御家族の方が安心して治療を受けられるようにするためには、必要な体制、人材育成、こういったことを進めていくことが重要だというふうに考えております。

 私どもでは、先ほど大臣が申し上げましたとおりですけれども、令和五年三月二十八日に閣議決定されておりますがん対策推進基本計画の中で、国は、適切ながん、生殖医療の提供を推進するため、がん医療と生殖医療の連携の下、妊孕性に与える影響に関する説明、また生殖補助医療に関する情報提供、意思決定の支援、こういったことが適切に行われるよう、人材育成などの体制整備を推進すること、こういったことを盛り込んでおります。

 また、加えまして、がん診療連携拠点病院等、これは現在四百五十六か所ありますけれども、この指定要件の中にも、妊孕性温存療法に関する情報提供及び意思決定支援を行う体制、意思決定を行うことができる診療従事者の配置、育成、こういったことを指定要件に盛り込んでおります。これは毎年要件の充足を確認をしておりまして、その中では、人材育成の実施について、具体的に研修会を実施しているか、また学会等の研修会への参加を励行しているか、こういったことも毎年確認をさせていただいているところであります。

 こうした取組を通じて人材育成を図ってまいりたいと思います。

國重分科員 今日は難聴また妊孕性温存療法についてお伺いしましたけれども、どれも肝になるのは、国民の皆さんへの的確な情報提供になります。是非、国民の皆さんに届く、実効性ある取組をよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

後藤(茂)主査代理 これにて國重徹君の質疑は終了いたしました。

    〔後藤(茂)主査代理退席、主査着席〕

橋本主査 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)分科員 立憲民主党の近藤昭一でございます。

 今日は、この第五分科会で質問する機会をいただきまして、感謝申し上げたいと思います。

 さて、早速質問に入らさせていただきたいと思います。国内の空襲被害者の救済についてということでございます。

 一九四五年にさきの大戦が終わって、来年で八十年ということになります。私も戦後の生まれでありますけれども、おじがサイパン島で戦死をしました。二度と戦争を起こしてはならない、そのためにもしっかりと過去に向き合っていかなくてはならない、こう思っているところであります。

 米軍による空襲は全国二百以上の都市で行われ、二〇二〇年の新聞報道では、全国百七自治体が把握している空襲の死者数は約三十八万七千人であり、そのうち自治体の記録で氏名が分かるのは六割にしか満たない、十六万人以上の亡くなられた方は氏名が分からないといい、死者の数を把握していない自治体もあるということであります。

 三月は十万人近い方が亡くなられた東京大空襲がよく知られていますけれども、私は名古屋の選出でありますが、一九四五年の三月は私の地元でも大きな空襲があったところであります。空襲の被害は甚大であり、生き残った方も、親を失い孤児になったり、あるいは障害を負うなど、筆舌に尽くし難い苦労を重ねてこられたわけであります。

 政府はこれまで、国民皆がひどい目に遭ったんだから我慢するべきという戦争受忍論、また、一般国民は雇用関係になかったから補償はできないという雇用者責任論を理由にずっと救済の手を差し伸べてこなかったわけでありますが、二年前の予算委員会では、岸田総理は、政府として更に何ができるのか、議員立法での議論を見守りながら政府として考えていきたいと答弁しておられます。

 また、昨年三月の厚生労働委員会では、加藤厚労大臣が、現在、超党派の議員連盟において、空襲被害者に対する特別給付金の支給、実態調査等を内容とする議員立法に関して議論がなされているというふうに承知をしておりますので、引き続きそうした議論の動きを注視していきたいと答弁されておるわけであります。

 実は、私も、この議員連盟、副会長を務めさせていただいておりまして、空襲被害者等の補償問題について立法措置による解決を考える議員連盟という名前でございます。この議員連盟で、特定戦災障害者等に対する特別給付金の支給等に関する法律案が救済の対象としている五十万円の特別給付金を支給する方は四千六百人と推計されているわけでありますが、亡くなられる方が多いので、残念ながら、もっと少なくなっているのが現状であります。時間がないわけであります。

 来年の戦後八十年を待たずに救済する、来年は戦後八十年でありますし、一刻も早く救済する決断をすべきと考えますが、いかがでありましょうか。

武見国務大臣 さきの大戦におきまして、全ての国民が何らかの戦争の犠牲を被って、一般市民の中にも筆舌に尽くし難い労苦を体験された方々が多数おられるということは承知しております。

 一般戦災者に対する補償などは厚生労働省の所管を超えておりますけれども、政府としては、これまでも、一般戦災者に対して、一般の社会保障施策の充実などを図る中で、その福祉の向上に努めてきたところでございます。厚生労働省としては、年金、医療、社会福祉などの社会保障施策の実施に取り組むほか、全国戦没者追悼式を開催をし、一般戦災死没者の遺族代表を招待するなどの取組も行っております。

 引き続き、議員連盟における御議論の動きも私ども注視をさせていただき、厚生労働省として何ができるか考えていきたいと思います。

近藤(昭)分科員 大臣、ありがとうございます。

 注視をしていただいているわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、来年は戦後八十年ということであります。そして私も、この課題については、かなり、初当選させていただいてから早い時期から取り組まさせていただいておりまして、もう二十年以上になります。

 そして、二〇一三年でしたでしょうか、名古屋でこの問題に大変に取り組んでおられた杉山千佐子さんという方がいらっしゃいます。全傷連という、全国戦争被害者の救済を図る連絡会というのがございまして、この方が百一歳で亡くなられました。最後まで、私も本当に亡くなられる一週間ぐらい前にお目にかかったところであります。

 彼女が、なかなかきついというか、私もきついと最初は感じましたが、一方で、本当にそれだけ深刻なんだという思いを持ったわけでありますが、国に対して、お見捨てになるのですか、国は私たちを見捨てるのですか、こういう言葉を発せられたこと、また、そうした題名の本を書いていらっしゃいます。

 そしてまた、彼女は、やはり亡くなる前、どれぐらいでしたでしょうか、ちょっと前に新聞のインタビューにも答えている、あるいは様々な場所でおっしゃっているわけでありますが、日本人として死にたい、こういう言い方をされているわけであります。

 つまり、軍人軍属に対してはある種手厚い補償がある、しかし、民間人に対してはそうしたものがきちっとされていない。軍人だけではなくて、民間、我々も、自分も国のために尽くしたんだ、なぜそのことに対してきちっと国は向き合ってくれないのか、私たちを見捨てるのか、あるいは、自分は日本の国民ではないのか、日本人ではないのか、こういう気持ちを持っておられた。そして残念ながら、百一歳、しかも百一歳になられたその日に亡くなられたんですね。ということであります。

 そういう意味で、是非、注視ではなく、大臣、そして今、厚労省の所管を超えているという言い方をおっしゃいましたが、私は、厚労省でこのことをきちっと担当していただく、このことにきちっと法律について向き合っていただく、これしかないと思うわけでありますが、いかがでありましょうか。

武見国務大臣 北村誠吾先生、お亡くなりになりましたけれども、議連の活動を非常に熱心にされてこられました。先生も副会長として熱心に関わってこられたことに心から敬意を表したいと思います。

 その上で、軍人軍属に対する補償と比べて一般の被災者に関わる補償がないじゃないかという御議論は一貫して承っているところでございます。

 ただ、実際に、それに関わる対応というものをどうするかということを考えるのは、実はかなり難しい問題もたくさん含まれております。限られた財源の中で、実際に全てのそうした戦災者たちを対象として補償をするということには限りがございます。

 したがって、そういう中で何ができるかということを考えるときに、是非、議連の中での御議論というものを進めていただいて、そこにまた厚生労働省も呼んでいただいてその議論というものにも参加させていただいて、そして御議論を進めていただきたい、そういう思いで、先ほど注視という言葉を使わせていただいたわけであります。

近藤(昭)分科員 大臣、ありがとうございます。

 是非、今お言葉をいただきましたように、北村先生が亡くなられて、今、会長不在ということであります。ただ、この通常国会中には新しい会長も何とか決めさせていただいて、改めて総会、あるいは、今大臣もおっしゃっていただいたような、厚生労働省の方にもお越しいただいて意見交換をしたいと思います。

 ただ、もう一言だけ申し上げさせていただくと、我々も、議連も、そうした国の姿勢がずっとある中で、いろいろと意見交換、議論をしてきたところであります。そういう意味でも、そして、こういう言い方、こういうのがどうかというのは、議連の中でも、あるいは関係する方の中にも意見があるんです。

 つまり、なかなか補償は難しい、しかしながら、戦争でそうした被害に遭って、本当に人生を翻弄されたんだ、苦しい目に遭ったんだ、そうした皆さんに対して、ですから、五十万円という金額で特別給付金、こういう形で報いるべきではないか、こういうことで議論してきているということと、もう一つは、やはり諸外国というか、杉山千佐子さんもドイツへ訪問されたことがあって、ドイツへ行くと民間人に対してもきちっと補償している、そうしたことを目の当たりにして、本当にそういう意味では、ある種、悔しいというか、自分の祖国である日本にちゃんとやってほしい、こういう思いをすごく強く持っておられたんですね。

 そういう意味で、もう一度、どうでしょうか、大臣、議連の中ではそういうことについても議論をしてきた、ですから給付金という形で考えているのですが、いかがでありましょう。

武見国務大臣 議連の中でそうした御議論が行われてきたということは今承知したところでございます。

 改めて、やはりこの問題は、私どもとしても、限られた財源の中で、どこまで、何を対象として、実際に何ができるかということは、我々もしっかり考えなきゃいけないだろうと思います。しかし、その一つの場所として議連で御議論されてきたことについては、これを尊重をして、そして、私どもとしても、そこにお招きいただければ、そこで御議論をさせていただくということになるかと思います。

 そういう点で、実際に私ども厚生労働省の立場としてできることというものには限界がありますけれども、実際に、いろいろとその御議論の中で、何ができるかの検討はさせていただければと思います。

近藤(昭)分科員 ありがとうございます。

 名古屋市では、市の独自の給付金という制度もあるんです。金額は大きくありませんが、やはりそうしたことによって戦争に向き合っていく、被害者に向き合っていくということは非常に重要でありますので、是非しっかりと御対応いただければと思います。

 さて、その次の質問に移らさせていただきます。

 沖縄県辺野古新基地建設に伴い、沖縄戦の戦没者の遺骨が混じる南部の土砂が埋立てに使われるのではないかという沖縄戦遺族の御心配の声をお伝えをしたいと思います。

 沖縄県南部の遺骨は、DNA鑑定できるものと、風化してしまって粉々になって、もはや土と見分けがつかない状態になった遺骨があるわけであります。県民や全国の御遺族は、回収できない遺骨は現場安置し、南部の公園内を慰霊の場としてほしいという気持ちであります。そこの土を取らないでほしいということですね。そこをブルドーザーで掘り起こし、米軍基地建設のために海に埋め立てるなど、やめてほしいということであります。

 DNA鑑定できず、風化し粉々になった遺骨について現場で安置し、沖縄戦跡国定公園内一帯を慰霊の場とすることについて、武見厚生労働大臣の見解をお聞きしたいと思います。

武見国務大臣 沖縄県では、さきの大戦末期に県民を巻き込んだ凄惨な地上戦が行われて、軍民合わせて多くの貴い命が失われました。特に、本島南部では多くの住民の方々が犠牲になったということを承知しております。

 厚生労働省としては、沖縄県民の気持ちに寄り添い、そして、引き続き沖縄県と連携をして、一柱でも多くの御遺骨を御遺族にお返しできるように取り組んでまいりたいと思います。

 なお、戦跡国定公園内の整備計画につきましては、県において策定をされ、環境大臣がこれを承認する権限を有しているというふうに私の方では理解をしております。

近藤(昭)分科員 大臣、ありがとうございます。まさしく、遺骨を遺族の元にお返しをしたい、こう大臣もおっしゃっていただいたわけであります。私もそのとおりだと思うんです。

 冒頭、私のおじはサイパン島で戦死をしたというお話をさせていただきましたが、残念ながらその遺骨は返ってきていない。私もいろいろと資料を厚生労働省からもらったりしたことがあって、本当に具体的にどのサイパン島の戦いで亡くなったかというのは、必ずしもはっきりしないようなところがあるわけであります。そういうことでありますから、残念ながら遺骨も戻ってきていない。

 私も、最近でいう断捨離でしょうか、祖父と祖母の残したものを片づけていたりしましたら、写真集が出てきて、当時の葬儀、あるいは、もっと遡って出征のときの、愛知県の知多半島の内海という小さな町なんですけれども、そこで、地元の神社だったと思いますけれども、出征の式があり、そして、その後、帰ってきたときに、よく言われるように、白い箱に入ってきて、それがいわゆる壇に載せられて、葬儀の様子も写真にありました。

 祖父と祖母にとって、特に祖母にとって、本当にどれだけつらい思いだったのかと思うわけです。ただ、それもやはり、そのときの写真はありませんけれども、箱の中にあったのは、何も入っていないか、あるいは石だけが入ってきた、こういうことだと思うんです。

 そして、沖縄戦で多くの方が犠牲になられましたし、なられて風化する中で、なかなか特定をするのは難しいとかということはあると思うんです。でも、だからこそ、そこから土を取ってしまって埋めてしまうということ、これはまた管轄が違う、防衛省だと思うんですけれども、あるいは公園自体は環境省であるということでありますが、やはり遺骨ということでいうと厚労省の担当であるので、慰霊の場については環境省の所管である、あるいは土のことについては防衛省であるということでありますが、やはり遺骨を返すということであると厚労省だと思うんですね。

 どうでしょう、もう一度、遺骨の混じった土を使うべきでないということを是非大臣には示していただきたいと思うんですが、いかがでありましょう。

武見国務大臣 まずは、私の所轄に基づいた発言というものをさせていただくのが基本だということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、こうした激戦地であり、多くの方が亡くなられた、そういう沖縄本島南部の地域においても、やはり一柱でも多くの御遺骨をしっかりと御遺族にお戻しするという努力は私どもとしてはしていきたい、こう考えております。

近藤(昭)分科員 是非、それぞれ所管があるわけでありますので、大臣のおっしゃるとおりだと思いますが、やはり厚労省、大臣の立場から、本当に遺骨を返す、遺族に寄り添っていくということでお願いをしたいと思います。

 さて、南太平洋のタラワ島、現在、キリバス共和国でありますが、の戦没者の遺骨返還などについて質問させていただきたいと思います。

 タラワ島で戦死した六千四百六十九人のうち、日本の戦死者は四千七百十三人、このうち四人に一人の千百十七人が、植民地支配下の朝鮮半島から動員された若者たちであったわけであります。

 今年二月二十一日の東京新聞に、日韓関係改善の象徴になれたのに、日本側は式典参加せず、動員された南太平洋で戦死した朝鮮人の遺骨返還という記事が出ておったわけであります。

 こうした遺骨の返還をめぐって、この関係でですが、この遺骨の返還のために、DNA鑑定に日本も参加しているかどうかをお聞きしたいと思いますが、よろしくお願いします。

泉政府参考人 お答えいたします。

 キリバス共和国タラワ環礁におきまして、米国DPAAが収容いたしましたアジア系の遺骨につきましては、日米二国間及び韓米二国間の枠組みの中で御遺骨の鑑定を行っております。

 鑑定の結果につきましては、日本と韓国がそれぞれDPAAに通知をいたしまして、双方の鑑定結果についてDPAAが確認を行った上で、身元が判明した御遺骨はDPAAから出身国に返還されることになっております。

近藤(昭)分科員 これは、返還の枠組みには参加しているということなんだろうが、鑑定に日本も参加しているということでいいですか。

泉政府参考人 DPAAから、DPAAが保管しておりますアジア系遺骨につきまして、その検体が日本政府にも提供されており、それの分析を私どももしておるということでございます。

近藤(昭)分科員 ありがとうございます。日本側も分析をしているということであります。

 さて、そうした遺骨に関連して、昨年十二月四日、全羅南道霊光で韓国政府主催の追悼式が開催され、日本政府関係者の参列が打診されたが実現しなかった、こういう報道もあります。

 追悼会は御存じであったのかどうか、韓国政府から参列を打診されていたのかどうか、そしてまた参列しなかったのは事実だったのかどうか、これを確認したいと思います。

 また、日本が戦争に動員したわけでありまして、日本には遺骨返還の責任があると思うわけでありますが、どうしてこの追悼式には参列をされなかったのか。報道にありますように、日韓関係の改善の象徴になれたのにということも書かれているわけであります。

 鑑定まで日米韓で協力してやっていた、こういう御報告もありました。式典への参加は、動員した日本の責任を果たす最低限のことだと思うわけですが、いかがでありましょうか。

泉政府参考人 御指摘の韓国政府主催の追悼式につきましては、御案内のとおり、十二月四日に韓国において開催されたと承知しております。

 日本政府からその追悼式への参加はございませんけれども、韓国政府からの参加の打診の有無など、外交上のやり取りの詳細につきましては、相手国との関係もありますので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

近藤(昭)分科員 しばしば、外交上のことで答えられないというお答えもよくあるわけでありますけれども、ただ、冒頭申し上げましたように、当時、植民地支配をしていて、そこから若い人たちも動員をしたということであります。そういう中で、亡くなった人たち。

 大臣、ここは、今審議官からそういうお答えはありましたけれども、先ほど大臣もおっしゃったように、私もおじが戦死をしたという話をさせていただきましたが、遺族からすると、やはり、遺骨が戻ってくる、ですから、それに日本政府も協力はしているということでありますが、やはりそこは、そうした式典には参列をして弔意を示すということが大事ではないかと思うんですが、大臣のお考えはいかがでありましょうか。

武見国務大臣 追悼式には参加をしておりませんが、韓国政府からの参加の打診の有無など、外交上のやり取りの詳細については、相手国との関係もあり、お答えを差し控えたいと審議官からもお答えをさせていただきました。

 これは、その他の関連する様々な微妙な問題が実はあるものでありますから、実際に双方、これにしっかりと、慎重にかつ丁寧に、外交的な協議を進めながら、両国がしっかりと将来に向けてお互いの信頼を深めるように解決していかなければなりません。

 それをまさに私どもも注視をして、そして、私どもの所轄の御遺骨に関わる分野については、その範囲の中で私どもとしても協力をしていきたい、こういうふうに考えております。

近藤(昭)分科員 大臣、ありがとうございます。

 是非、かつては、私は名古屋、愛知県でありますけれども、愛知県の現知事が、大村知事でありますが、厚労副大臣であったときに出席をされた、こういう経緯もあります、事実もあります。是非しっかりと御対応いただければと思います。

 さて、余り時間もありませんので、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 さて、こうした遺骨に関連してでありますが、日本人二人、韓国人一人の三人の遺骨について、DNA鑑定で確認された遺骨返還ができたというわけでありますが、残る収容された遺骨は何件あるのか。

 DNA鑑定で個人に返す方法で三人が確定したわけでありますが、それ以外の遺骨は、DNA鑑定での返還がこれ以上進まない場合、どこで育ったかが分かる、食べ物とかによると思うんですが、食べ物の影響によるものでありますが、安定同位体の分析というのがあるわけでありますが、その安定同位体分析によって日本、韓国に返還する、こういう認識でよいかどうかを確認したいと思います。

泉政府参考人 お答えいたします。

 日米韓の専門機関のそれぞれが、身元特定のためのDNA分析を行いました。これまで、日本人戦没者の御遺骨二柱の身元特定に至っております。これ以外に、DPAAから受領いたしまして厚生労働省が保管する検体、五百七十一件ございますけれども、現在、これらの検体のDNA鑑定を行っているという状況でございます。

 御指摘の安定同位体分析につきましては、所属集団の判定に応用できる可能性がありますので、令和四年度よりその実用化に向けた研究事業を開始しております。令和四年度には、骨・歯コラーゲンの標準分析法を作成いたしました。令和五年度には、歯アパタイトの標準分析法及び炭素、窒素に係る日本人の確率分布の作成を進めているところでございます。令和六年度以降には、アパタイト、硫黄、酸素、ストロンチウムに係る日本人の確率分布などを作成することとしております。

 また、沖縄の収容遺骨を対象に、放射性炭素同位体分析を用いました年代分析により戦没者遺骨かどうかを判定しておりますけれども、安定同位体分析による炭素、窒素に係る日本人の確率を用いまして、日本人かどうかの所属判定への実用化に向けた研究を行っているという状況にございます。

 いずれにいたしましても、キリバス共和国タラワ環礁においてDPAAが収容したアジア系遺骨につきましては、先ほど申し上げましたとおり、日米二国間及び韓米二国間の枠組みの中で御遺骨の鑑定を進めているところでございます。

 厚生労働省としては、一柱でも多くの御遺骨に御帰還いただけるよう、御遺骨のDNA鑑定を行っていくとともに、返還に向けた進め方については関係国と適切に協議を行ってまいりたいと存じます。

近藤(昭)分科員 ありがとうございます。

 是非しっかりと返還、そして、できるだけ早く返還を実現していただきたいと思います。

 さて、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 沖縄や太平洋地域のDNA鑑定へ多くの韓国の方が参加を希望しているということでありますが、日本人が終わっていないことを考慮してほしいということで、厚労省はガマフヤーとの意見交換会や厚労委員会でも回答をしておるわけであります、まず日本人が終わってからと。これはどうなっているのか。

 東京新聞でありますけれども、尹錫悦政権は日本との遺骨返還の交渉を再開したと報道されています。政権間のあつれきが少ない今、韓国の遺族のDNA鑑定を認める決断をすべきだと私は思います。一〇〇%日本人の鑑定が終わるまで韓国が始められないとすれば、遺族が同じように高齢化している韓国政府に対して、私は余りにも誠意、配慮を欠いた対応ではないかと思います。

 厚労大臣の決断を求めたいと思いますが、いかがでありましょうか、大臣。

武見国務大臣 実際に日本人に関わるこうしたDNA鑑定というものを確実に進めていく。実際に、二〇二三年十二月末時点でまだ審議できていない事案が千九百件残っておる。鑑定体制の強化が必要であって、令和四年には厚生労働省自らDNA鑑定を実施するための分析施設を設置するなど、科学的鑑定体制の強化、鑑定の迅速化に取り組んでいるところでございます。

 したがって、これだけの多くの申請事案に対して、一柱でも多くの御遺骨を御遺族の元にお返しするというのがまず私どもの基本的な立場であります。

 その上で、朝鮮半島出身者の御遺族からのDNA鑑定の申請については、御遺骨の返還の在り方など、外交交渉に関わる問題でもございますけれども、御遺族の気持ちに十分配慮をして、韓国政府から具体的な提案があれば真摯にそれを受け止めて、我が国の鑑定体制の状況を踏まえつつ、人道的見地から政府部内で適切に対応していきたい、こう考えているところであります。

近藤(昭)分科員 大臣、ありがとうございます。

 まさしく遺族の気持ちはどこも一緒だと思うんです。そういう意味では、今大臣がお答えいただきましたように、韓国側から提案があればしっかりと受け止めるということでありますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それと、私は、杉山千佐子さん、先ほどお話しさせていただいて、自分を見捨てるのかという話がありました。ですから、この遺骨の調査の問題も、何も、どちらかを先にやってほしいとかそういうことではなくて、調査であります。先ほど、返還は外交的なことがあると思うんですが、調査でありますから、調査をするときに同時にやれないものかと。つまり、どの遺骨がどこの出身か、米国なのか、韓国なのか、日本なのか、朝鮮半島なのかと分からないということです。ですから、同時にやれないのかと思うわけであります。

 是非、もう時間がなくなっております、最後に大臣、よろしくお願いしたいと思います。

武見国務大臣 この御遺骨の問題というのは、そういう意味で、多くの関係国が関わってくる国際的な課題だ、外交的な課題だというふうに思います。そして、これらをしっかりとそれぞれの国のお互いの信頼を深めていくためにも解決をしていくことは極めて重要な外交的な課題であろうし、それは外務省の方で外交交渉をするというのが主たる立場だろうと思います。

 私どもは、厚生労働省の所轄の中で、実際に、誠意を持ってこうした遺骨などの課題については取り組むということで、実際にこの問題を外交的にも解決しやすいように協力をするという立場を取りたいというふうに思います。

近藤(昭)分科員 どうもありがとうございました。

 終わります。

橋本主査 これにて近藤昭一君の質疑は終了いたしました。

 次に、保岡宏武君。

保岡分科員 御質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、武見大臣、本日は答弁をお願いをすることがございませんので、恐縮ですけれども、御退席いただいて結構でございます。お願いいたします。

 それでは、質疑に入らせていただきたいというふうに思います。

 自民党の保岡宏武と申します。本日、厚生労働関係では初めての質疑の機会をいただきました。ありがとうございます。

 率直に申し上げて、私、厚生労働は全然専門でもありませんし全くの素人でございますが、地元から今回、様々な要望というか声が上がっているもので、この分科会を選択して質疑をお願いをさせていただきました。どうぞよろしくお願いをいたします。

 今回、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービスのトリプル改定が行われました。改定前には、コロナ禍で命懸けで頑張った業界に対してあんまりではないかという声も上がっておりましたが、地元でも、改定後は三分野ともプラス改定となって、これで物価高に対応した賃上げもできると安堵の声が業界に広がっているように感じておりました。私もその声を後押しをしてきた者でありますので、達成感のようなものも感じておりました。

 しかしながら、今回、訪問介護の基礎報酬の引下げという問題で地元がざわついてきております。厚労省の見解は、訪問介護は利益率が高いということだというふうに伺っております。実際、介護事業経営実態調査の基礎データによると、訪問介護が、二二年度決算で七・八%の利益率。全サービスの平均二・四%を大きく上回っていて、特別養護老人ホームのマイナス一・一%など赤字もある中で、かなりよかったという評価だというふうにも伺っております。また、出せるお金に限りがあるということも理解をできます。

 ただし、先ほども申し上げましたが、このことによって、地方の訪問介護事業者からは大きな悲鳴が上がっております。処遇改善加算を見直したり簡素化したりした点や、手続も簡素化して取得をしやすくするという工夫がなされているというのは評価がされますが、本当にそれで地方の事業者が成り立っていくのか、不安の声が現場からは上がっております。

 今回声が上がっているのは、地方、とりわけ小規模といった事業者でございます。実際に、経営実態調査でも、延べ訪問回数が月に二千一回以上の事業所の利益率が一三%台、月に二百から四百回の事業者の利益率は一%台というふうになっているというふうに聞いております。

 これは、サービスつき高齢者住宅など都会型の訪問介護と、小規模な訪問介護事業者では、状況が全く違うというようなデータの表れではないかというふうに思います。特に、地方に行けば、一件訪問をして、次のところまで片道二、三十分なんということはざらでございます。加えて、小規模事業者にとっては、事務作業というのは大きな負担にもなっている現状もございます。

 今回の介護報酬改定について、基礎報酬の引下げで地方の訪問介護事業者からこのような悲鳴が上がっている。この現状、指摘を、どのように厚労省として捉えているのか、また、今後どのように改善をしていこうというふうに思っているのか、お考えをお示しください。

間政府参考人 お答えいたします。

 今般の介護報酬改定におきましては、介護現場で働く方々の処遇改善を着実に進める観点から、訪問介護については基本方針の見直しを行いつつ、今委員からも御指摘ありました処遇改善加算につきましては、見直し後の体系で一四・五%から二四・五%と他のサービスと比べて高い水準の加算率を設定してございます。

 今回の報酬改定全体で申し上げますと、訪問介護については特定事業所加算や認知症に関連する加算を充実することなどにより、全体としてはプラスにしているということでございます。問題は、これを各事業所に届くようにしていかなきゃいけないということだと思っています。

 この処遇改善につきましては、訪問介護を始めとした現場において、まだ加算未取得の事業所が全国で八千四百、そのうち訪問介護事業所が三千ぐらいございます。こうした事業所がちゃんと確実に取得できるように、取得したいところが取得できるようにすること、また、既に取得しているところも、新しい体系でより高い加算率のところに早期に移行できるようにすること、こういうことが重要だというふうに考えております。

 今後、委員からも先ほど御紹介ありましたけれども、申請様式の簡素化もそうですけれども、使い勝手の改善など必要な対応を講じることとしておりまして、小規模な事業所も含めまして更なる取得促進に向けた環境整備を進めたいというふうに思っています。これが一点でございます。

 また、そうした中で、これまた委員御指摘のありましたように、移動がかかるというのは全くそのとおりでございまして、今回の改定の中でも、中山間地域などにおいて介護サービスの確保もしっかりと支援していくために、そういう中山間地域等で、その中で継続的にサービス提供してくださっている訪問介護への加算、特定事業所加算というものの充実も行ったところでございます。

 さらに、事務負担が大きいんだというお話もございました。実は、令和五年度補正予算におきまして、ICTなどを活用した生産性向上推進による現場の負担軽減や職場環境の改善を行う場合や、それだけじゃなくて、小規模事業所を含む事業所グループが協働して一緒になって、例えば職員募集や事務処理の集約を行う場合に補助、これが国、県で四分の三の補助でございますけれども、こういったものも創設しているところでございます。

 こうした取組などを通じて、人手不足に直面している小規模な事業所の人材確保を応援させていただきまして、誰もが住み慣れた地域で必要な介護サービスが安心して受けられる体制の整備に取り組んでいきたい、このように考えてございます。

保岡分科員 御答弁ありがとうございました。

 是非このような小規模、特に地方における事業所に対して寄り添うようなサポートというのもお願いできればというふうに思います。

 実際に、ITCを導入したくてもなかなかその知識がなかったり、また、そのようなことにたけていないというような経営者もいらっしゃると思いますし、また実際に、今おっしゃった様々な制度を全て利用しているのかどうかも私には正直よく分かりません。ただ、現場では加算が取れても一件当たり十円のマイナスという試算を出したというようなことも聞いております。多分それは試算が間違えているのかもしれませんが、そういうようなのが地方の現状だということだというふうに思います。

 事業所が採算が悪くなり、事業縮小、廃業、残った事業所も小規模でいっぱいいっぱい、地域の在宅介護に対応し切れない状況にどんどん追いやられる、在宅介護難民が地方で増えていくというような状況だけは避けなければならないというふうに思っております。

 今回の介護報酬の改定が、地方において、介護職員の賃金が上げられても、介護事業者の経営が成り立たなくなって廃業をしていくというような事態にはならないとは思いますけれども、そのようなことにならないように、是非サポートもお願いできたらありがたく存じます。

 続きまして、ケアマネジャーにつきまして質問させていただきます。

 ケアマネジャーは、御存じのように、五年以上の実務経験を積んだ介護職員や医療職種に従事する人が筆記試験に合格をして研修を受けて取る、極めて管理的な仕事で、責任も重く重要な業務を担う仕事でございます。ということで、給与水準も高いというのがございます。しかしながら、その他の介護職員の処遇改善が進むことによって、元々水準の高かったケアマネジャーの処遇改善が遅れたというようなことも指摘をされています。その差が縮まって、ケアマネを取得するインセンティブが薄れてしまったということだというふうに思います。

 地域包括ケアシステムにおいても重要な役割を担い需要も増しているこのケアマネジャーの処遇改善、今後どのようにお考えになっていらっしゃるか御見解をお示しください、お願いいたします。

間政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、介護職員の処遇改善が累次の処遇改善で進む中で、相対的にケアマネジャーのインセンティブが薄れているんじゃないかという御指摘があることは私どもも十分承知してございます。そのために、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの処遇改善を着実に行うことは重要だという認識でございます。

 介護職員が基準上配置されていない居宅介護支援事業所、つまりケアマネの事業所におきましては、介護職員の処遇改善加算の対象にはならないという構造ではございますけれども、しかし、それを前提とした上で、今般の介護報酬改定におきましては、居宅介護支援、つまりケアマネの基本報酬を引き上げるといったこと、また、特定事業所加算という更に加算が取れるものがあるんですが、その中では、ヤングケアラーなど多様な課題への対応を促進する観点などから、要件の見直し、そして単位数の引上げを行ってございます。

 また、取り巻く環境の変化とか人材の有効活用の観点から、ケアマネジャー一人当たりの担当件数を引き上げる、見直します。それから、一定の要件を設けた上でオンラインによるモニタリングも可能にするといった合理的なやり方も導入するなどの見直しを行うこととしてございます。

 こういったことを通じまして、ケアマネジャーが十分に力を発揮できるような環境整備に努めたい、このように考えております。

保岡分科員 ありがとうございました。是非充実をお願いいたしたいというふうに思います。

 続きまして、地方においてこのような介護人材の確保というのは深刻で、将来において介護事業の存続に大きな危機感を私は持っております。

 例えば、私ぐらいの、私は今年五十歳になるんですけれども、私の年代が自分の親を私の地元で介護をお願いしたいというふうに言ったら、分かりましたとはおっしゃっていただけます。そのときに、軽く冗談のようなつもりで、じゃあ、私までお願いしますね、自分のときになったらというふうにお願いをすると、あなたのときには分かりませんというように答える事業者も相当数いるのが今の現状です。それだけ人手不足であったり、事業が成り立たない状況が今地方にはあるということだというふうに感じております。

 そこで、本日は、政務官、副大臣、お越しでいらっしゃいますので、是非政務官の方に、一問目は、このことについて、地方の介護の現場の声を聞いて、地方の介護を守る意思というのが政府にあるのかどうか、また、政務官御自身の意思や見解もお示しいただけたらというふうに思います。

塩崎大臣政務官 保岡委員の御質問にお答えいたします。

 まさに委員が御指摘されましたように、高齢者人口がピークを迎える二〇四〇年頃に向けて、八十五歳以上の人口割合の増加、そして生産年齢人口の急減といった更なる人口構造の変化、それに伴う社会環境の変化が見込まれる中で、今後も地域包括ケアシステムの深化、推進に向けて取組を進めていくことが必要だというふうに思っております。

 そして、私の地元にも中山間地域がございますけれども、そういう中山間地域等特有の課題についてもしっかり目を向けて、介護サービスの確保、こうしたことを適切に進めていくことが大事じゃないかと思っております。

 今後も、誰もが住み慣れた地域で暮らしながら必要な介護サービスを安心して受けられるように、委員の問題意識も踏まえて、介護サービスの提供体制の整備にしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

保岡分科員 ありがとうございます。是非、住み慣れた地域、住み慣れた我が家で最後はみとれるような、そういうような状況を今後とも地方においてもつくっていただきますように、是非よろしくお願いをいたします。

 続きまして、少し質問を変えたいというふうに思います。二つ同時に質問させていただきたいというふうに思います。

 例えば風邪薬、湿布などの軽度の疾患の処方について、何か厚労省の方で、政府の方で、年間のコストなどデータがあればお示しをいただければと思います。

 もう一つは、例えば八十歳以上の医療について、延命治療と言われるようなものの定義や、その年間コストなどのデータがあれば、お示しいただければというふうに思います。お願いいたします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 今、先生の方からの御質問は、風邪薬とか湿布薬といった軽微な疾患にということでございますが、ちょっと手元にその資料を持ち合わせていないので、具体的な数字はございません。

 ただ、軽微かどうかは別として、例えば、湿布薬なら市場規模がどのくらいとか保険給付がどうかということは資料がございますので、またそれは整理して御説明に上がりたいと思いますが、今、ちょっと手元には用意してございません。申し訳ございません。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 延命治療につきまして御質問がございました。いわゆる延命治療につきまして、国においての定義は定めておりません。

保岡分科員 年間コストなどは、じゃ、定義がないということなのでお示しできないということで理解していいですかね。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 御認識のとおりということで私どもも考えております。

保岡分科員 ありがとうございました。

 ちょっとネットで調べる限りだと、延命治療というのは人工栄養、例えば胃瘻のようなもの、人工呼吸、人工透析などが挙げられているというふうに書いてはありました。ただ、これが厚労省としての見解ではないということは理解をいたしました。

 なぜこのような質問をさせていただいたかと申しますと、このデータがあれば、例えば、軽微なものとか、八十歳以上というのは、仮に平均年齢、男女が八十歳、八十三歳ぐらいなのでこれぐらいということにさせていただいたんですけれども、その辺りの延命治療に大体どれくらい年間のコストがかけられているのかなということを知りたかったからでございます。

 何を申し上げたいかと申しますと、公的な保険で賄う最低限度とか最高限度とかというのを議論をしてもいいのかなというふうに考えているからでございます。

 最低限度というのは、先ほどの、例えば、お医者さんに行って風邪だよというふうに診断をされた場合には、風邪薬ぐらいは市販のドラッグストアで、ルルとかパブロンとか分かりませんけれども、そういったものを買えばいいんじゃないのとか、あとは、湿布なんかは、よりこれからDXが進んでいけば、もちろんどれくらいの枚数ということは管理ができるのかもしれませんが、それすらも、そんなに大したことがなければ市販の湿布薬でもいいんじゃないのとかいうのが最低限度。

 最高限度は、ちょっと、これは済みません、委員会で言葉をすごく選ばなければいけないんですが、ある程度の年齢に達して、それからの延命治療、これを公的保険で賄うのかどうか。私的な、例えば何々生命みたいなところで賄うということにすれば、どれくらいの費用が抑制されるのかというのがちょっと知りたかったということがございます。

 実際に、地方の中小企業などは今賃上げをするのに非常に原資を捻出するのが大変なんです。いろいろな党から提言もありますけれども、この社会保険料の中で医療が占めるところで、今後、先ほど申し上げました私が今年五十歳です、あと三十年は今の水準をずっと維持していこうと思えば、少なくとも下がることはない、上がる一方だというのは容易に推測ができます。この部分を少しでも抑えることができて、社会保険料とかが、企業にとってもそうですし、個人の負担分も半分はありますし、そこが抑えることができるのであれば、その分を賃上げにというようなモチベーションが企業にとっては出てくるのではないかという提案というか提言というか意見を述べさせていただいたところでございます。

 この委員会でこの質問をするのが適切かどうかは分かりませんけれども、機会をいただきましたので、かなり高めのボールかもしれませんし、もしかしたらボークかもしれませんけれども、是非、このような観点から、企業の賃上げ、そして国民皆保険の維持、両面からのバランスということで、副大臣に、御見解というか思いというか、何かございましたらお示しいただけたらありがたく存じます。

宮崎副大臣 保岡委員から大変貴重な御指摘をいただいたものだというふうに思っております。

 国民負担の視点から、持続可能性を確保するという観点から医療保険制度について必要な見直しを行っていくことは当然やるべきことでございます。

 また一方、委員からも御指摘ありましたけれども、我が国では、国民皆保険制度の下で、安全性、有効性などが確認をされて、必要かつ適切な医療については保険診療とするということを原則としているところでございます。

 仮に事業主の社会保険料負担の軽減につながるといたしましても、前の質問でも御指摘になった延命治療など、また、湿布などにも触れていただきましたが、軽微な疾患への処方について、単純に保険適用の対象外とすることについては慎重な検討が必要であるというふうに考えているところでございます。

 その上で、医療保険制度における給付の見直しとしては、令和六年の十月から、患者の方の御希望によりまして長期収載品が処方された場合には選定療養とするという見直しをすることとしているところでございます。

 今後、医療保険財政は厳しくなることが見込まれています。今この委員会で質問するのがどうなのかという、様々、御準備に当たってのいろいろな検討をしていただいた上での御質問をいただいたものと思っております。重要な問題提起を頂戴したものと受け止めさせていただきまして、医療保険制度の持続可能性の確保に向けて、適切な保険給付の在り方を引き続き検討させていただきたいと考えております。

保岡分科員 ありがとうございます。

 これは、確かに、混合医療というのかな、保険適用外のものもあるということで、非常に難しい問題だというふうには思っています。

 ただ、これは医療機関の経営者にとっても決してマイナスばかりではないということでもあるかというふうにも思っております。それは、それだけ労使折半の社会保険料が抑えられるという意味もあるので、タブーを設けないで様々な議論をお願いできればありがたいなというふうに思っております。

 最後に、国民皆歯科健診について質問させていただきたいというふうに思います。

 この国民皆歯科健診、歯科健診自体が医療費抑制効果も期待をされるというふうに伺っています。

 現在は、一歳半から三歳までの幼児と、小学校から高校までしか歯科健診は義務化をされていません。二十歳以上は、過去一年以内に歯科健診を受けた割合が五二・九%、ほぼ二人に一人というようなデータもあるというふうに聞いています。また、このようなことから、虫歯や歯周病などの歯のトラブルの増加が社会問題化もしております。

 ちなみに、十八歳の一人当たりの虫歯経験本数というのがありまして、日本が八・五本、アメリカが四・五本、スウェーデンが三・五本というようなデータもあるというふうに聞いています。アメリカは定期健診で予防することが一般的であり、スウェーデンは予防歯科の文化が根づいています。

 罹患率の高さは将来的な歯の本数にも直結をいたします。日本人は八十歳になるまでに平均して十二本の歯を失っているというようなデータもあります。

 このように、虫歯や歯周病を早期発見、重症化を予防することは、おいしく食事をいただくということだけではなくて、例えば国民医療費の上位を占める循環器系の疾患にも影響するということも伺っていますので、是非、国民皆歯科健診というのを僕は進めていただきたいなというふうに思っております。

 実際に、二〇二二年、生涯を通じた歯科健診について具体的に検討することというのを閣議決定で明記をしていただいていますし、二〇二三年には、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の全部改正について、厚労省が基本方針の修正を行い、国民全体が口腔ケアを日常的に取り組むための環境整備をすることが新たに打ち出されているということも伺っております。

 実施主体や、誰が費用を持つかなど課題はあるかとは思いますが、我々の生涯の健康維持にとって、予防の観点からも非常に大事な、また、将来の医療費抑制につながると言われている国民皆歯科健診の早期導入が必要だというふうに思いますが、現在の検討状況を含め、見解をお示しください。お願いいたします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 歯と口腔の健康を保つことは全身の健康にもつながるため、生涯を通じて定期的に歯科健診を受けていただくことは重要であると考えております。

 骨太方針二〇二三におきまして、生涯を通じた歯科健診、いわゆる国民皆歯科健診でございますが、これに向けた取組の推進が盛り込まれたことも踏まえまして、生涯を通じた歯科健診の機会を確保するために、市町村等が実施する歯周疾患検診につきまして、現在対象となっていなかった二十歳、三十歳の検診を令和六年度から対象に加えることとしております。

 また、こうした受診機会の確保に加えまして、受診率の向上等に資するよう、就労世代の歯科健診の受診率を向上させるための健診の実施方法の検証や、より簡便で精度の高い歯周病等のチェックが可能な簡易スクリーニング検査に関する研究開発支援等も行っているところでございます。

 引き続き、生涯を通じた歯科健診の実現に向け、関係者の御意見を丁寧にお伺いしながら、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

保岡分科員 ありがとうございます。

 是非、生涯を通じた歯科健診の実現に向けてお取り組みいただければというふうに思います。

 少々質問時間を残しておりますが、質問を以上で終わらせていただければというふうに思います。ありがとうございました。

橋本主査 これにて保岡宏武君の質疑は終了いたしました。

 次に、山下貴司君。

山下分科員 本日は、御質問の機会をありがとうございます。あと、大臣、大変お疲れさまでございます。

 まず、本日は、医療従事者の職業の紹介、仲介等について伺いたいんですが、もし大臣、あれであれば、お忙しいでしょうから。

 まず、今、医療従事者のマンパワー不足が問題になっております。これは二〇一八年の統計なんですが、そのときには医療・福祉従事者が八百二十六万人ということでありますけれども、これが来年である二〇二五年には九百四十万人程度要るのではないか、さらには、二〇四〇年には一千七十万人程度。ですから、二〇一八年と比べると、あと十六年後には二百五十万人ぐらいの増員が必要だということであります。

 そして、さらに、人手不足、医師等の働き方改革でますます拍車がかかっているということで、そういった人材をどうやって得るかということが大変な問題になっているんですが、ただ、一方で、そのための職業の仲介手数料に大きなお金が必要ということも、例えば私の地元の医療関係者からもよく聞くところであります。

 この仲介料の原資というのは、当然、診療報酬や介護報酬、あるいは保育料などの公定価格でございます。いわば国民の税金であり保険料、それが原資だということでありまして、これが適正なのかということは、今後、人手不足が深刻化する中で大きな問題になろうかと思います。

 そこで、若干調べてみた部分があるのですが、まず、お手元の資料の職業紹介事業の常用就職に係る手数料徴収等の状況というのを見ていただきたいんですけれども、これを見ると、ここに人数が書いてあって、お医者様が令和三年度で一万八千人、看護師が五万七千人、そして保育士が二万三千人、介護サービスが五万六千人、仲介を受けて、そして一件当たりの平均が、お医者様が九十九万円、看護師が五十七万円、保育士が五十四万円、そして介護サービスが四十二万円ということになっています。この算定で、この四業種合わせて一年間で八百七十二億円、これは仲介手数料として支払われているということであります。

 先ほど申し上げましたけれども、この原資は診療報酬であり、公定価格であり、介護報酬であります。国民の税金、保険料であります。そして、この中には実は薬剤師は含まれておりません。そして、医政局から提供を受けた別の資料がございまして、これを見ると、これは裏側の資料なんですけれども、医師は、先ほど言った九十九万円ではなくて三百五十一万円、看護師は、さっきより高い七十六万円、そして、薬剤師は、先ほど統計に載っていなかったんですが、百十五万円ということで、相当多額のお金になっています。

 これについて、先ほど申し上げた薬剤師が入っていないということで、仮に、先ほどの合計額八百七十二億円の中、これがちょっと低くて、医師が三百五十一万円ということだとすると、これは薬剤師も込みで、そして、この医政局から提供いただいた資料を基にすれば、全部で一千を超えるわけですね、年間ですよ。その原資は、繰り返し言いますが、診療報酬あるいは介護報酬、あるいは公定価格ということであります。

 今後、二〇四〇年までに必要な人員として百五十万人以上必要だろうと思われます。二百万人増が必要だと。さっき言った数字は、年間十五、六万人ぐらいの人数で八百七十二億円必要だということになっていますね。だから、その十倍の人数をもし仲介で全部やろうとしたら、この十年間で一兆円要るということになりかねないということで、これは高過ぎないかということで、ここについて、全体像をまず把握する必要があるのではないのか。なぜなら、原資は税金であり、国民の保険料だということであります。

 これについてちょっと把握できないのかという点と、例えば、医師の転籍の手数料が三百五十一万ということについて、ちょっと高過ぎないかというのが普通の、一般の感覚であろうと思いますが、この点について、当局の方に見識を伺いたいと思います。

山田政府参考人 失礼いたします。

 まず、前半部分の御質問の関係ですけれども、厚生労働省の職業安定局の方の資料については、稼働日がフルタイムより少ない方も含めて、全ての常用就職を対象に計算して九十九万というふうになっております。一方で、二ページ目の福祉医療機構が実施した調査については、フルタイムの労働者を対象としたもので、結果、平均手数料が三百五十一万円ということになっております。数字の違いについては、調査対象が違うということで、それぞれの調査の調査目的に対応して把握したものでございます。

 その上で、後段の先生からの御質問ですけれども、医師の紹介手数料は平均額三百五十二万円となっておりますが、先ほども御紹介いただいた安定局の職業紹介事業者の事業報告の集計結果ですと、全職種平均と比べて必ずしも、今、医療従事者の紹介にかかる手数料額は高い状況にはないというふうに思っております。

 それでは、別のスポットの調査ですけれども、医療従事者の紹介を受ける場合にかかる紹介手数料率につきましては、賃金の二〇%から三〇%というのが最も多い結果でありますが、これも特に他職種と比べて高いという状況ではございません。

 紹介手数料については、紹介する求職者の就職後一年間に支払われる賃金に一定割合の手数料率を乗じて計算するケースが一般的であることから、手数料額については、年収の高い職種のフルタイム労働者についてはどうしても高くなる傾向があろうと思いますというのが、安定局の調査を踏まえた回答になると思います。

 こういった手数料額の評価について御質問がありましたけれども、民間サービスの価格に係る評価ということで、基本的には、契約内容に見合った質、内容のサービスが受けられるかという個々の利用者側の満足度による部分も大きいということで、行政として妥当かどうかと判断することはなかなか難しいとは思いますが、先生言われたように、医療、介護分野の事業者が職業紹介事業者を利用して人材を採用する場合に負担感が相当あるといった御指摘、そういったものは十分認識しておりまして、我々としては、例えば優良な適正事業者認定制度ですとか、職業事業者に対する集中的な指導監督とか、そういったようなことで業界に対して対応しておるところでございます。

山下分科員 今の話だと、フルタイムだと三百五十一万だということであり、かつ、職業安定局としては、それはほかの職業と比べると決して高過ぎないよということではあるんですが、ほかの職業は民間事業者で、そして自らの、例えば売上げでやっているわけですね。診療報酬で手数料を払っているわけですよ。ほかに原資はないんですよ。

 そうしたことで、例えばこういった医療や介護とかそういったもので、年間恐らく、ざっくり言って一千億円以上が税金あるいは保険料由来のものから出ることにどう思われるのかというのは、ちょっと医政局のお話も伺いたいんですけれども。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員の問題意識は大変よく分かります。医療従事者の給与というのは診療報酬を原資にしているということでございまして、そのリクルートに当たりましても診療報酬を原資にして行われているという観点から見ると、事例で挙げましたような、大体三割ぐらいの年収が手数料に回っている。その手数料が、診療報酬が原資になっているのではないかという御危惧に対しては、私どもとしても、大変遺憾とまでは申し上げられませんが、問題は認識はしているところでございます。

 そもそも、そういうことになってしまったのは、やはり医療従事者等のリクルートが民間のそうした職業あっせん業の対象となっていることであって、それを変えていくこと、例えば、従前でありますと医師の就労バンクみたいなものもございますし、看護師ですと看護協会のナースバンクなどもございまして、そういったところの御活用をしていただきたいなというのが私たちの気持ちでもございます。

山下分科員 ちょっとまず職安局にお願いしたいのが、職安局では九十九万円だと把握しているということなんだけれども、でも、年収の三割ぐらいは当たり前だという話で、だとすると、三百五十一万が正しい数字になるわけですよ。同じ職安局でどちらが正しいのかということは、これはしっかりと調べなきゃいけないので、契約形態にもよろうかと思いますけれども、医療従事者のお金というのは税金あるいは保険料で出されているということを前提にして、ちょっともう少し詳しく調査をして、そして報告してもらえませんか。

 九十九万円だというのは、実は三百五十一万円じゃないよと言っているようなもので、医政局とも見解が違うし、局長自らがおっしゃった言葉とも違うんですよ。フルタイムは三百五十一万円だということであるなら。だから、そこはしっかり調べていただきたいんですが、今後調査をお願いできますかね。

山田政府参考人 お答えいたします。

 先生からこの問題は前々から御指摘いただいておりまして、一つには、先ほど申し上げたフルタイムか否か、全職種かということもありますし、あと、実は調査対象自体がかなり違っているということもありますので、我々の方としても、医政局の方で調べているものと安定局の方で調べているものと、どういう違いがあってこういうことが出てきているかということを御説明するのがまず必要かと思います。

 ちょっと今回、そこまで調べが至らず、申し訳ないんですけれども、そこのところはきちんと先生の方に御説明できるように、医政局とも協力して確認したいと思っております。

山下分科員 局が違うから数字が違うんだなんということは、一つの省である限りは国民は納得できませんよ。私だって納得できません。だから、そこはしっかりとすり合わせて、明細をしっかりと教えていただいて、国民に伝えるべきだと思いますよ。これは、原資は診療報酬、税金、あるいは保険料なんですから。

 先ほど医政局長からお話がありました。確かに、医政局等においても、都道府県ナースセンターによる看護師の就業支援であるとか、あるいは女性医師の支援であるとかは、やっていただいていることは分かるんです。

 ただ、例えば、ナースセンターでの無料職業紹介というのが結局一万数千人、あるいは女性医師も非常に微々たるものですよね。そうだとすると、先ほど申し上げたように、今後、二〇一八年と二〇四〇年を比べると、二百五十万人、幅があるのだ、これには当然、医療職だけじゃなくて介護職も含んでいるんですけれども、そういったところのマッチングを国を挙げてもっとやらないと、民間業者に委ねて三か月分取るのが正しいんですということになると、今、年間一千億円以上かかっていると思われるものがもっともっとかかるわけですよね。

 その点について、もう少し医政局あるいは厚生労働省としてこういったマッチング、例えば、医師会を通じてであるとか、あるいは看護協会、看護連盟を通じてであるとか、そういった公的な機関を通して、ハローワークに行くんじゃなくて、例えばハローワークの機能を医師会に一部委ねるとか、そういった様々な工夫でもっともっと仲介する件数が増えるように御尽力いただけないですかね。

塩崎大臣政務官 山下委員の大変重要な御指摘をいただいたと思っております。

 やはり医療機関で必要な医療従事者が確保されること、そして医療従事者が自らの希望にかなう職場や条件で働けるということは、いずれも重要な問題だと認識しております。

 今、委員の方から、やはり公的な職業紹介をもっと頑張れというお話をいただきました。今、全国の主要なハローワークで医療、介護、保育関係の人材不足分野については専門的なきめ細やかな支援を行うコーナー、こちらを設置しておりまして、こういった結果を含めて、今、令和四年度ですけれども、十七・五万人の方をハローワークを通じて職業あっせんをさせていただいておりまして、総数としては民間よりも多い数をあっせんをさせていただいているところでございます。

 ただ、御指摘もありました日本医師会の取組、そしてナースセンターの取組など、こういった様々な取組を加えまして、この取組を着実に実施していくことによって、公的な職業紹介、この役割を更に強化していくことを通じて、委員の問題意識等にも通じる医療の持続可能性と国民負担、この観点についてもしっかりと応えられるように取組を強化してまいりたいと思っております。

山下分科員 こういったマッチングには、例えばIT技術、あるいはアプリとか、そういったものの活用も必要だと思っております。そうした中では、本当に自民党の中でIT政策の先頭を走っておられる、率いておられる塩崎政務官がこうやって厚労省におられるということで、是非、医政局、あるいは職業安定局とも協力しながらやっていただきたいと思います。

 これは、民間が自らの営業、才覚によってもうけたお金で人材をヘッドハンティングする話じゃないんですよ。これは診療報酬から出ているんです、保険料から出ているんですよ。確実に足りないお金なんですね。それが巨額になっているということに関して、年間一千億というと相当ですよ、それを確保するために診療報酬でも相当な御苦労をされているはずです。それが医療ではなくて人材仲介に向かうということの現実を見据えて、是非しっかりと取り組んでいただきたい、このことを申し上げておきます。

 人材不足については、これは看護師だけではなくて保育士も同じであります。潜在看護師は七十万人と言われています。そして、潜在保育士が、保育士資格を持つ者から、現在稼働している保育士の方が六十六万人ということですから、それを差っ引くと、潜在保育士が百万人おられるということなんですね。

 今、配置基準が大変だということですが、こうした潜在保育士さんをうまくこうやって保育に御協力いただくことによって、例えばワンショットでもいいと思うんですよ、二時間だけお願いするとか、そういったことも、例えばマッチングとかいろいろな施策によってできるのではないかというふうに思うのですが、その点に関して、そういった方々に戻っていただく施策について、こども家庭庁に伺いたいと思います。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 潜在保育士について、就労を促す取組は非常に重要であるというふうに考えております。そのために、先ほども公的なマッチングの仕組みというのがありましたが、私どもの保育士につきましても、保育士・保育所支援センターといったものが全国各地にございますけれども、こういったものですとか、再就職に必要な準備金の貸付け、これも二年間勤務すると返済免除とか、様々な仕組みがございます。

 これについて更に拡充をすべく、例えば、保育士・保育所支援センターの方にキャリアアドバイザーのようなものを置くといったことを新年度予算で組んでおります。こういったことできめ細かく対応していきたいというふうに考えておりますし、また、保育補助者という形で、保育士を持った方にある意味段階的に復帰をしていただくといったこともできるように、新たに国庫補助事業の拡充等も行ってございます。

 ただ、保育士・保育所支援センターを例えば一つ取りましても課題も非常に多いというふうに思っておりまして、何といいましても、マッチングの実績がそんなに高くないということがございますけれども、例えば、保育士が転居してしまうと、その住所が追えないとか、様々なこともございます。

 こういった様々な課題について、法的な措置も含めて課題について一個一個解決することで、こういった公的なマッチングの仕組みも含めてしっかりとやっていくことで、潜在保育士の掘り起こしにもつなげていきたいというふうに考えてございます。

山下分科員 保育士・保育所支援センター、全国都道府県、政令指定市、七十二か所で頑張っていただいているのは分かるんです。ただ、平成二十七年から令和四年までで大体五千人なんですね。他方で、民間業者が仲介をしたものの方については年間二万三千人ということで、何とその紹介手数料は、先ほどの資料では年間百二十四億円なんですよ。これを、仲介も大事なんだけれども、子育てのための支援のためにやればどれだけ違うだろうというふうに思うんですね。

 なので、こちらについても、厚生労働省から離れましたけれども、厚生労働省と歩調を合わせて、マッチングの仕組みを是非IT技術も駆使しながらつくっていただいて、そして子供たちに行き渡るようにお願いしたいというふうに思っております。

 こども家庭庁については結構です。

 次に、介護、リハビリの重要性なんですけれども、リハビリによって、生活であるとかADLが上がっているということはこれまで実証されておりまして、研究結果においても、例えば、利用開始から六か月後で、全体で四分の一に当たる二六%、要介護三から五に限りますと大体四割の方がADLが向上しているということで、効果はあるということになっています。

 そういったことで、例えば、第八期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数については、去年でありますと、二〇二三年は二百三十三万人、そして二〇四〇年には五十万人近い増の二百八十万人要るんじゃないかと言われていますが、ここもまた人手不足、処遇改善が必要だということで、今回、介護報酬の引上げがなされた、こういったところは一定程度評価したいというふうに考えております。

 ただ、他方で、ちょっと自宅で頑張りたい、病院に入院するんじゃ、施設でやるんじゃなくて、自宅で頑張りながら療養やリハビリをしたいという方が、訪問看護ステーションから来られる理学療法士の訪問を受ける場合について、新たに減算が新設されたわけですね。これを見ると、理学療法士等のリハビリ職による訪問回数が看護職員による訪問回数を超えている場合、理学療法士の基本報酬から一回当たり八単位を減算するという減算ができております。

 これについて、ちょっとこれはいろいろな懸念がありまして、リハビリというのは、例えば病院なんかでやると一回が二十分ということになっておりますけれども、訪問の場合はわざわざ車で行って訪問するわけで、二十分やってすぐ帰るということではなくて、せっかく来たんだから一時間ぐらいやってあげよう、そうなると三回分になりますよね。

 三回分だったら、例えば、先ほど言った一回当たり八単位掛ける三の二十四単位減算されるということになると、これはとてもできないねと。じゃ、二十分のために車でかけていくのかということになると、それも現実的じゃないねということになると、結局、訪問してリハビリをやろう、そういった動議づけがなくなってしまう。それは、せっかく自宅で頑張りたい、あるいは自宅でリハビリをやってあげたい、そういった方向性に逆行するんじゃないかというふうに思うんですが。

 この詳細については今検討いただいていて、訪問回数の詳細については通知等によって今後お示しする予定でございますということが書かれてあるということですけれども、私の方からは、一日一回訪問だったら、例えば施設でいえば、二十分掛ける三の一時間ということであっても一回ということで、減算は一回八単位というふうに考えていただくということもお願いしたいなということなんですが、その点について、ちょっと今の、まだ開けないのは分かりますから、現時点のお考えというのを伺いたいと思います。

間政府参考人 お答えいたします。

 今回の訪問看護の関係でございますけれども、そもそも訪問看護は、医療ニーズの高い利用者への対応とか、それから、あと緊急時の訪問等の役割が求められていて、その一環として、理学療法士さんや作業療法士さん、言語聴覚士さんによる訪問看護も可能になっている、こういう枠組みでございます。

 六年度の介護報酬改定においては、こうした訪問看護に求められる役割に着目した上で、看護職員の割合が高いような訪問看護事業所では、緊急時訪問看護加算やターミナルケア加算、特別管理加算の届出割合が高いといったことや、介護予防訪問看護におきまして、理学療法士等の訪問が約半数を占めているなどの実態を踏まえまして、理学療法士等による訪問看護に係る評価の見直しを行うこととしております。

 今お尋ねの点数の減算の方法につきましては、基本的には、理学療法士さんのものについては単位設定が二十分を一単位としているものですから、その意味では、一時間行かれるというふうになると、三回分ということになります。

 そうすると、例えば、訪問看護で理学療法士さんが行った場合には二百九十四単位が、二十分一単位ですので、一時間分ですと、一定の要件に該当するような訪問看護ステーションの場合には、そこから二十四単位減算というようなことになるというふうに考えて、こういうような枠組みで審議会への諮問、答申を行っているということでございます。この辺の考え方が分かりにくいということであれば、そこは分かりやすい周知に努める必要があると思います。

 ただ、一方で、委員御指摘のように、訪問リハビリ、訪問してのリハビリテーション、これは非常に重要だと思っておりまして、今の、理学療法士さんが訪問看護ステーションから行かれるというのは、訪問リハビリテーションが少ない地域のニーズに対応しているという側面もあると思います。

 その意味でいくと、必要な方に本来の訪問リハビリテーションが提供されるようなことも重要だと思っておりまして、今回の報酬改定では、一般にリハビリテーションの職員が多く働いておられる介護老人保健施設や介護医療院については、訪問リハビリテーション事業所の指定を受けますというような、そういうような届出をしなくても指定があったものとみなして、そういうような事務手続がなくてもサービス提供を可能とする見直しを行っておりまして、こうした形でリハビリテーションの関係職種の方々に御活躍いただけるような場をもっと増やして、実際に利用者の方に、そういう訪問してのリハビリテーションが増えるような形にしていきたい、このように考えているところでございます。

山下分科員 今のは結局、その一回というのが、私の、ちょっと柔軟に考えていただきたいというのが、一日一回行って、それでやってあげる、わざわざ行くわけですからね、車でかけて。それで、二十分で帰るんじゃなくて、例えば一時間やった。そういった場合には、要するに、それは一回行ってやっているわけですから、そこを一回とカウントしてもらいたいということなんですが、そのことについて、今後、検討課題なのかどうかということはどうですか。

間政府参考人 お答えいたします。

 端的に申し上げると、今、点数表で申し上げますと、訪問看護の場合については、細かく、何分の場合、何分の場合というのがありますが、理学療法士さん、PT、OT、STの方々が訪問される場合には、これは二百九十四単位が基本になっておりますので、その意味では、一時間の場合には三倍報酬が、先ほど申し上げたように、二百九十四の三倍取れる一方で、減算も、そこの一単位当たり、八単位掛ける三の減算になるというような考え方であるというふうに、私どもはそういうような考え方で審議会に御提案をし、その上で答申をいただいているということでございます。

 ただ、この点については分かりにくいのじゃないかということであれば、そこはお示しをしたいですし、いずれにしても、繰り返しになりますけれども、訪問してのリハビリはやはり大事だと私どもは思っておりますので、訪問看護あるいは訪問リハビリテーション全体としてそういうようなサービスが増えるように、そういう提供ができるような地域が増えるように努力はしていきたい、このように考えております。

山下分科員 ちょっと今の考え方だと、やはりちょっと何かインセンティブが、要するにディスインセンティブになるような気がします。そういったところも含めて慎重に考えていただきたいというふうに思います。

 次に、公認心理師について伺いたいんですけれども、公認心理師法につきましては、こちらにおられる元厚生労働大臣の加藤先生を始め、皆様と議員立法をさせていただいたものでございまして、今回、心理支援加算や、あるいは児童思春期支援指導加算などが診療報酬上新設されたということであります。

 ここについて若干懸念があるのが、これが、例えば心理支援加算について、心的外傷に起因する症状を有する患者に関してということなんですが、この心的外傷に起因するという、この起因の心的外傷というのを余りにも限定的に解してしまうと、結局、必要な患者さん、例えばいじめによって、あるいは今問題になっている宗教二世というふうな経験によって、様々なことによって心理的なトラウマを負われる方もおられるわけですね。

 そういった方でも利用できるように、心的外傷に起因という部分については、現実に即して柔軟にお考えいただきたいというふうに要望を持っているんですが、その点についてはいかがでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の、今度新設いたします報酬評価につきましては、支援の対象者を心的外傷に起因する症状を有する患者としておりまして、その具体的な中身については今後お示しすることとしております。

 この議論の中で、実際、先生から御指摘いただいたように、中医協の議論でも、PTSDの診断に至らない場合にもトラウマ症状等に対する介入が行われている、こういう実態が議論となっておりますので、そうしたことも踏まえて、適切に必要な方に支援が届くような形でまとめていきたいと考えてございます。

山下分科員 時間になりましたので、以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

橋本主査 これにて山下貴司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後一時三分散会


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