第2号 令和7年2月28日(金曜日)
令和七年二月二十八日(金曜日)午前八時開議
出席分科員
主査 深澤 陽一君
上田 英俊君 国光あやの君
後藤 茂之君 阿部 知子君
鎌田さゆり君 黒岩 宇洋君
山井 和則君 浅野 哲君
兼務 阿部 圭史君 兼務 石井 智恵君
兼務 本村 伸子君 兼務 福島 伸享君
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厚生労働大臣 福岡 資麿君
外務大臣政務官 松本 尚君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房総括審議官) 秋山 伸一君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官) 佐々木昌弘君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官) 内山 博之君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 岡本 利久君
政府参考人
(厚生労働省医政局長) 森光 敬子君
政府参考人
(厚生労働省健康・生活衛生局長) 大坪 寛子君
政府参考人
(厚生労働省労働基準局安全衛生部長) 井内 努君
政府参考人
(厚生労働省雇用環境・均等局長) 田中佐智子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局長) 日原 知己君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 野村 知司君
政府参考人
(厚生労働省老健局長) 黒田 秀郎君
政府参考人
(厚生労働省保険局長) 鹿沼 均君
政府参考人
(厚生労働省年金局長) 間 隆一郎君
政府参考人
(厚生労働省政策統括官) 森川 善樹君
政府参考人
(経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官) 江澤 正名君
厚生労働委員会専門員 森 恭子君
予算委員会専門員 中村 実君
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分科員の異動
二月二十八日
辞任 補欠選任
国光あやの君 上田 英俊君
黒岩 宇洋君 鎌田さゆり君
同日
辞任 補欠選任
上田 英俊君 国光あやの君
鎌田さゆり君 阿部 知子君
同日
辞任 補欠選任
阿部 知子君 黒岩 宇洋君
同日
第三分科員石井智恵君、第四分科員本村伸子君、福島伸享君及び第六分科員阿部圭史君が本分科兼務となった。
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本日の会議に付した案件
令和七年度一般会計予算
令和七年度特別会計予算
令和七年度政府関係機関予算
(厚生労働省所管)
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○深澤主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。
令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算及び令和七年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。上田英俊君。
○上田分科員 おはようございます。自由民主党、上田英俊でございます。
午前八時でございます。今日は、年金をテーマに質問させていただきます。
納めたはずの年金保険料の記録がない消えた年金、誰の年金か分からない宙に浮いた年金、そして、実際の賃金よりも低い標準報酬月額で処理された改ざんされた年金等、当時の社会保険庁のずさんな処理によって年金に対する信頼は地に落ちて、いまだに年金に対する不信、不安、不満というものは払拭されていないというふうに考えております。
その後、社会保険庁は解体され、日本年金機構となりましたが、政府、厚生労働省、日本年金機構は、年金に対して信頼を取り戻すため、どのような取組を行ってきたのか、まず確認したいと思います。
○間政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のように、年金記録問題、これは、一つ一つ丁寧に対応して信頼を回復していくしかないというふうに考えております。
具体的に申し上げますと、年金記録問題につきましては、全ての年金受給者と被保険者の方々にねんきん特別便を送付しまして、御自身の記録に漏れや誤りがないかを御確認いただくなどにより、令和六年九月時点でございますけれども、基礎年金番号に統合されていない約五千万件の記録のうち、約三千四百万件以上が解明されているところでございます。
そして、引き続き、今も未統合記録、まだ統合されていない記録の解明に向けまして、名寄せ特別便未回答者への再送付、年金請求などの年金相談を行っていただいたときに年金記録確認を徹底させていただくということ、あるいは、ねんきんネットの持ち主不明記録検索機能の周知など、様々な取組を続けております。その結果、毎年二十万件程度の統合がまたその後も順次進んでいるところでございます。
引き続き、こうした取組によりまして、国民の皆様にも御協力いただきながら、一人でも多くの方の記録の回復につなげていくとともに、正確な年金記録の管理に努めていきたい、このように考えております。
○上田分科員 大変大きな不祥事であったというふうに思います。しっかりと、失われた信頼を取り戻すために、一つ一つの課題に取り組んでいただくよう要望したいというふうに思います。
さて、年金は、当たり前の話でありますけれども、貯金ではなくて、保険事故に備える保険であります。年金は、高齢世代、障害を有する方、あるいは一家の稼ぎ手を失った家族にとって、収入の大きな柱となるものであります。
よく、偶数月の十五日前後になりますと、テレビ等で、年金だけでは生活できない、老齢年金だけでは生活できないという報道に接します。年金の受給額といったものは一人一人異なります。自営業であったのか、あるいは会社に勤めていたのか。また、どのくらいの賃金、報酬を受けていたのか。また、何年間働いてきたのか、保険料を何年間納めてきたのか。また、支給開始年齢を繰り上げたのか、繰り下げたのか。
一人一人の人生が異なるように、年金の受給額は異なりますが、老齢年金を受給している国民年金、厚生年金の平均額は幾らぐらいなのか。
また、最大のボリュームゾーンは幾らぐらいで、どれくらいの人数で、どのような働き方をしていたと推測されるのか、まず確認いたします。
○間政府参考人 お答えいたします。
令和五年度の厚生年金保険・国民年金事業の概況というものの調査結果でお答えいたしますと、国民年金について、老齢基礎年金の受給権者のうち、受給資格期間を二十五年以上有する者でお答えしますと、令和五年度末時点で基礎年金の平均年金月額は約五万八千円となってございます。また、一万円ごとの年金月額階級で申し上げますと、月額六万円から七万円の者が約千六百万人と、全体の約五割を占めているという状況でございます。
また、厚生年金について、老齢厚生年金の受給権者のうち、厚生年金の加入期間が二十年以上を有する者でお答えをしますと、令和五年度末時点では、老齢厚生年金の平均年金月額は基礎年金部分を含めまして約十四万六千円となっております。また、五万円ごとの年金月額階級で申し上げますと、月額十万円から十五万円までの間と、それから月額十五万円から二十万円までの間にそれぞれ約五百万人の方がいらっしゃいまして、合わせて約一千万人と、全体の約六割を占めてございます。
また、どんな働き方をされていたのかということでございますけれども、令和四年、老齢年金受給者実態調査によりますと、老齢年金の受給者の現役時代のお仕事を伺いますと、正社員中心でしたと、中心と申しますと二十年以上そういうような働き方をされていた方という回答が最も多くて、約四五%となっております。続きまして、自営業中心、つまり自営業などでいらした期間が二十年以上といった方が約一四%、そして、常勤パート中心、常勤パートでいらした期間が二十年以上という方が約一二%、このようになっております。
○上田分科員 一人一人の働き方が異なるように、例えば一号の方もいれば、二号の方もいれば、三号の方もおられるということであります。
以前、予算委員会分科会等で、あるいはまた厚生労働委員会等で同じ質問をさせていただいて、数字をいただきました。もちろんそれは、個人の資産の保有状況によって当然異なってくると思いますし、また御夫婦であるとか、あるいは家族であるとか、世帯であるとか、そういった構成によって年金額というのは異なってくるんだろうというのが当然、前提でありますけれども、あくまで基礎年金であるとか厚生年金、特別な方は別でありますけれども、年金だけで収入にしていくには大変厳しい数字だなというふうにかねてより認識をしておりました。
以前、二〇一九年であったと思いますけれども、金融庁の報告書をめぐって、老後二千万円問題というのが社会をにぎわせたことがありました。ある議員は、国会の場で、百年安心じゃなかったのかよ、国民に謝れという発言をされた方もおられましたけれども、私も若干年金について勉強してきたつもりでありますけれども、国民年金であるとか厚生年金について多少知識のある人であるならば、そのような発言は当然出てこないのではなかろうかというふうに認識をしております。
定額の保険料を、今ほどの答弁では二十五年間ということでくくられましたけれども、国民年金であるならば満期は四十年間でありますし、報酬比例の二階建ての年金を受け取る厚生年金というものも当然あります。そもそも、国民年金にしても、厚生年金にしても、年金収入だけで生活できるという制度設計になっているのかという原点に返る必要があるんだろうというふうに思います。その点について確認したいと思います。
国民年金、厚生年金というのは、老後の収入の大黒柱にはなるけれども、それ以前に蓄えた資産であるとか、家族であるとか、そういったものの扶養によって生活していくんだ、収入の大黒柱ではあるけれども、それだけで生活していくというのはなかなかちょっと難しいよねというような、正確な年金に対する認識といったものを、年金を受給する前の方から全ての世代に対して教育していくべきだというふうに考えますけれども、所見を伺いたいと思います。
○間政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおりだというふうに思います。公的年金制度は、老後の生活を支える重要な柱だというふうに考えています。その上で、それだけで老後生活の全てを賄うものではなくて、現役世代に構築した生活基盤や貯蓄等を合わせて生活を送っていただくという考え方に立ってございます。
加えて、国民の皆様にお伝えしなきゃいけないのは、公的年金制度は、終身年金であって、長生きすることにしっかり対応するということでありますとか、障害を負われたり亡くなられるといった予測することのできない将来のリスクに対して、社会全体で備える社会保険でございます。積立貯蓄ではなくて、損得で論ずるべきものでは基本的にはないことについても丁寧に説明していくことが重要だというふうに考えています。
こうした観点から、厚生労働省におきましては、例えば、若い世代向けの参加型広報としての学生との年金対話集会といったもの、これは令和六年度の実績としてはこれまでのところ三十七回開催してございます。また、年金制度の意義等を解説する若年者向けユーチューブ動画や、これを活用した中高生向け年金教育教材、それから、将来受給可能な年金額をスマホなどで簡単に試算いただける公的年金シミュレーターなど、普及啓発の取組を進めてございます。
さらに、公的年金、私的年金や資産形成に関する知識を一体的に学べるように、昨年発足いたしました金融経済教育推進機構などとの連携を行いまして、引き続き、幅広い機会を捉えまして、分かりやすく正確な年金教育、広報に積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。
○上田分科員 今ほどの答弁の中で、年金は積立貯金ではないという答弁がありました。年金については、御案内のとおり、積立方式ではなくて賦課方式を採用している。つまり、現役世代の納めた保険料が原資となって高齢世代が年金を受給するという、いわゆる世代間の仕送り方式になっている。もちろん、今日における少子高齢化により、現役世代の納める保険料だけで年金の給付額総額を賄い切れるものではないというふうに考えています。基礎年金の二分の一は国庫から支出をしております。
そこで、質問いたしますが、年金の総支給額は幾らで、その財源はどこから幾ら調達されているのかという内訳を確認したいと思います。
○間政府参考人 お答えいたします。
公的年金全体の直近データであります令和四年度決算ベースでお答えいたしますと、公的年金の給付費総額は約五十三・四兆円でございます。そして、その財源といたしましては、積立金の一部取崩しを含む保険料財源が、全体の四分の三を示す約四十兆円でございます。そして、国庫負担等が約四分の一の十三・四兆円、このようになってございます。
○上田分科員 年金財政というのは、高齢化社会が進むことによって厳しくなっていくということは想像されるわけであります。そうした中で、今答弁にもありましたけれども、やはり保険料収入だけではなくて、積立金というのが大変大きな意味を持ってくるんだろうというふうに思います。
厳しい年金財政の中で、積立金は長年にわたって蓄えてきた貴重な財産ですが、現在、国民年金勘定、厚生年金勘定、それぞれの積立金は幾らあるのか、確認いたします。
○間政府参考人 お答えいたします。
先ほど委員御指摘になられましたように、現在、年金制度は世代間の支え合いの仕組みでございまして、二〇〇四年の制度改正におきまして、将来世代の負担が過重にならないように、年金給付の原資となる保険料の上限を固定しまして、そして国庫負担や積立金と合わせて財源の範囲で給付を行うという仕組みにさせていただいております。
そして、今御指摘のありましたその積立金でございますけれども、二〇二三年度決算後の年金積立金額は時価ベースで約二百五十五・六兆円でございまして、その内訳につきましては、厚生年金勘定の積立金は約二百四十三兆円、国民年金勘定の積立金は約十二・五兆円となってございます。今申し上げましたのは、GPIFで管理する積立金に関してお答えを申し上げました。
○上田分科員 週末、地元に戻りまして、老人クラブであるとか福寿会であるとか、いわゆる年金受給世代の方々と意見交換をすることがあります。年金をもらっている人、手を挙げてくださいというような形でいろいろ意見交換をする中で、やはり正確な情報というものを認識しておられないなというふうに非常に強く感じています。基礎年金の半分は国庫から出ているということを知っている人と言うと、手を挙げる方はほとんどおられません。そうしたことで、先ほどもありましたけれども、正確な情報を年金の被保険者あるいはまた年金の受給世代にしっかり伝えていくということが大切だろうというふうに思います。
今ほど、積立金の具体的な数字を確認いたしました。年金積立金の管理運用の役割を担っているのが年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFであります。安倍内閣のアベノミクスの第三の矢である成長戦略の一環として、GPIFの資産運用の見直しが行われました。基本ポートフォリオの見直し以降の資産運用の結果、累積収益額はどうであったのか。
また、直近の単年度の実績を伺いたいと思います。
○間政府参考人 お答えいたします。
GPIFにおきます年金積立金の運用状況につきましては、ただいま委員御指摘の累積でございますが、二〇〇一年度の自主運用開始から二〇二四年度第三・四半期が直近でございますが、これまでの累積収益額は約百六十四・三兆円となってございます。このうち、基本ポートフォリオを変更しまして、株式での運用比率を五〇%に引き上げた二〇一四年十月以降の累積収益額は約百二十三・一兆円となってございます。
また、単年度という御指摘でございますが、昨年度、二〇二三年度の運用状況は、国内外の株価の大幅な上昇及び円安の進行等によりまして、収益額は約四十五・四兆円、収益率は二二・六七%となってございます。
そうしまして、GPIFにおきましては、こうした基本ポートフォリオの見直しなども行いながら、長期的に運用収益を確実に積み重ねているところでございますので、引き続き、専ら被保険者の利益になるように、長期的な観点から安全かつ効率的な運用を行ってまいりたい、このように考えております。
○上田分科員 老齢年金等年金受給者の数が減らない中で、やはり財源をどうやって調達していくのかということが、年金の信頼の回復の一番のスタートラインだというふうに思います。そうした中で、保険料収入というものもなかなか伸びない中で、積立金を生かした運用というものは大変大切だろうというふうに思っております。
運用についてはどうしても、利益が幾ら出たとか、損失が幾ら出たのかということも当然気になるわけでございますけれども、しっかりとポートフォリオの見直し以降、収益を上げていただいているということに非常に敬意を表したいというふうに思います。
さて、企業会計原則の分野では、かつては、収益と費用の現金の受渡しの時点で認識をする現金主義会計であったというふうに認識をしております。それが今日では、費用は発生主義、収益は実現主義に基づいて計上されていると認識しております。GPIFの資産運用においては、当然、様々な運用でありますので、運用益を狙って運用しているということは当然でありますけれども、金融資産でありますから、運用損といったものが出てくることも当然あり得る、そして、その数字が注目されるということは当然であろうかというふうに思います。
私は株取引といったものの経験はありませんけれども、株価が大幅に下落した場合に、売却することで、当然、運用損というものが出てくる。しかしながら、俗に言う、そのまま持ち続ける、塩漬けすることにすれば、会計帳簿上は評価損というものは計上されるけれども、現実に運用損というものは発生していないというふうに認識をしておりますが、GPIFの運用評価というものはどのような考え方に基づき行っているのか、伺いたいと思います。
○間政府参考人 お答えいたします。
年金積立金の運用につきましては長期的な観点から行うものでございまして、その運用状況の評価につきましても、市場の一時的な変動に過度にとらわれることなく、長期的な観点から行うことが重要だと考えております。特に、やはり長期保有できるということが、年金積立運用の強みというふうに言える面があるかと思います。短期の売買でもって常に何か利益を確定させなきゃいけない、そういうものでもないというふうに考えておりますし、世界中に分散投資をしておりますので、世界中の経済成長を取り込んで、国民の皆様に還元していくというのがこの積立金の役割でもあろうかと思います。
また、加えまして、GPIFによる年金積立金の運用状況につきましては、国民に対して適時適切に情報発信を行う観点から、四半期ごとに運用状況を公表しておりまして、その際には、各期末時点での時価評価額に基づいて公表を行ってございます。
この時価評価額に基づく収益につきましては、御指摘のとおり、評価期間中の利子配当収入や売買による実現損益だけじゃなくて、評価損益を含んでございます。これは、市場の動向によって変動するものであることに留意する必要はもちろんございますけれども、運用資産の市場における実質的な価値を正確に把握、公表するとともに、短期的な売買による実現損益にとらわれることなく、長期的な観点から年金積立金の管理運用を行う、そういった視点に立って時価評価額に基づく運用状況を公表、評価させていただいている、こういうことでございます。
○上田分科員 時価評価という考え方を大切にして、実現損益だけではなくて、当然、評価損というものも損の中に含まれるということであって、限られた四半期の期末においては、評価損も損をしたとみなす、実際に損失は出てこないけれども、損をしたとみなすという考え方でよろしいですか。
○間政府参考人 お答えいたします。
確定したものでは当然ないわけですが、その時点での実質的な評価、価値を示すという意味で、委員御指摘のとおりと考えております。
○上田分科員 その時点での実質的な価値ということでございました。
現在も、通常国会において、壁という言葉が一つのキーワードになっております。税金、社会保険料の分野において、百三万円であるとか、百六万、百三十万等の壁という話であります。
厚生年金の分野において、いわゆる適用範囲を拡大して二号被保険者を増やしていく、百六万の話にしてもしかりでありますし、百三十万の壁においてもしかりであります。労働者の年金を、いわゆる人生百年時代において、基礎年金プラス報酬比例の老齢年金の二階建てにしていく方向性は、全く私は正しいというふうに思います。
一方で、将来の年金も大切だけれども、物価上昇が著しいよね、米の値段も倍になっているよね、実質賃金もマイナストレンドだよねという中で、あしたの手取りの増加、可処分所得の増加といったものが生活を守るという視点も重要だろうというふうに思います。長期的に見て、六十五歳以降の年金も大切であるけれども、働いている現役世代、家族を養う手取りの増収といったものも大切だというふうに思います。
働いている、いわゆる賃金労働者とみなされる方々の将来にわたる年金を二階建てにしていくという考え方は、非常に正しいと思います。しかしながら、そうした中で、やはり、被用者年金を拡大されていく、世代によっても受け止め方が違うと思うんですよね。
例えば、百六万、毎月八万八千円をもらっている方々が二号被保険者になる。この方が二十歳であるならば、百六万のままずっと働き続けるということは考えにくいわけでありますけれども、あくまで仮定の話として、百六万のまま二十歳の方が六十五歳まで働くということになると、被保険者の期間が長くなりますから、当然二階建ての部分も厚くなっていく。一方で、五十代、六十代でパートという形態で働いている方にしてみたら、将来の年金の二階建ての部分は増えるかもしれないけれども、それ以上に、手取りが増えてほしいよね、あしたのお米を買うお金が欲しいよねという考え方も正しいんだろうというふうに思います。
この質問においては様々な場面で話をしておりますけれども、百三十万の壁があることで、最低賃金が上がっても、社会保険料の発生を避けるために、年金保険料、医療保険料の直接負担のない三号被保険者にとどまり続けたい、その結果、就業調整をしてしまう、その結果が、より労働力不足に拍車をかけていると考えます。
厚生労働省においては年収の壁・支援強化パッケージに取り組んでいますが、手取り額を増やす、今日使える、あした使える可処分所得を増やす、物価上昇に対抗するには、私はかねてより、百三十万の壁をシンプルに上げればいいのではないか、壁を上げる、それが今日の経済情勢に対する緊急避難として、引上げこそ即効性のある政策と考えますが、厚生労働大臣の所見を伺いたいと思います。
○福岡国務大臣 委員の御指摘については貴重な御意見として承らせていただいた上で、厚生労働省といたしましては、短時間労働者について、年金等の保障を厚くする観点から、被用者保険の適用拡大に取り組むことが重要であると考え、これまで順次、適用拡大を進めてきたところでございます。
その上で、被扶養者認定の百三十万円の基準を単に引き上げることにつきましては、これまで進めてきた被用者保険の適用拡大の方向に逆行するものでございますし、また、三号被保険者制度を廃止すべきという御意見も多い中で、国民年金、国民健康保険に加入し、自ら保険料を納めておられる方々の御理解が得られるかという観点からの課題も生じるため、慎重な検討が必要であると考えています。
いわゆる百三十万円の壁につきましては、当面の対応策として年収の壁・支援強化パッケージを策定してございまして、引き続き、多くの事業者に活用いただけるよう、様々な機会を捉えて周知広報に取り組んでいきたいと考えています。
また、制度的な対応といたしましては、被用者保険の適用拡大など、引き続き、関係者の御意見を伺いながら、年金改正法案の取りまとめに向けて丁寧に検討していきたいと考えています。
○上田分科員 この質問をするのは多分四回目だと思います。私は自分自身の考え方に自信がないものですから、私の考えは正しいのかどうかということをいろいろな方に聞いてきました。シンプルに百三十万の壁を引き上げることはどうだろうかということを、税理士さんにも聞きましたし、パートの方を多数雇っておられる事業経営者の方にも聞いてきました。最低賃金が上がるよね、だけれども、壁がそのままだと労働時間はより短くなっていくよね、結果として労働力がますます不足してくる、これはどうなのかなということを言うと、私の意見に対して、百三十万の壁をシンプルに上げればいいではないかという考え方に対して、それは違うよと言われた方はおりませんでした。なかなか国会議員に対して、あんた、それは違うよねというのは言いづらいのかもしれませんけれども。
そこで、単純に、まず聞きますけれども、この引上げといったものを、当然、三号のままでおられる形になるわけでありますから、仮に引き上げた場合に、実際にメリットとして、手取りは増える、労働力不足についても、調整する人が少なくなってくることでメリットはあるというふうに思いますけれども、百三十万の壁を引き上げることによって、現実的に、損をするという表現は適切ではないかもしれませんけれども、損害を被るであろうといった方々が現実に想定されるのかどうかということを、あれば教えてください。
○間政府参考人 お答えいたします。
損得という意味でいくと、短期的なものと長期的なものがあるんだろうというふうに思います。その意味で、短期の話は委員御指摘のとおりなのかもしれませんが、あわせて、近年、例えば、老後の年金の金額を充実するという意味では、厚生年金の加入期間を増やしていただくというのがやはり必要だというふうに考えておりまして、そういった機会を、いわば三号被保険者のままでいるということは、それを逃す形になるというのはあると思います。
その上で、委員御指摘の百三十万の壁の関係でちょっと補足をさせていただきますと、今回の年金制度改正の中で、これは法律改正とは直接関係ございませんけれども、よく私どもが伺いますのは、例えば年末近くになりますと、例えばスーパーで働いている方が、店長が、もうちょっと年末商戦で残業してくれないか、手伝ってくれないかというふうにお願いしたときに、パートで働く方が、いや、私はもうそろそろ百二十万円近くになっているので残業できないんですよ、こういったようなお話もございます。
そのために、今検討しておりますのは、年収の支援強化パッケージの中でも、年収の壁の対策の中でも、一時的に百三十万を超えたら、そこは扶養から外さないという運用もしておりますが、それを超えて、例えば年間契約で百三十万円を超えないような契約をしているといった場合には、年末に例えば残業で超えたとしても、そこは扶養の範囲を超えないという扱いをしてはどうか、こういったことも含めて与党とも御相談をしているところでございます。
○上田分科員 ありがとうございます。
私も、この三号被保険者の問題について、二号被保険者を拡大していくことで、結果として三号におられる方がどんどん減少していくということは理解できます。
一号、二号、三号という被保険者の形態がある中で、同じ働き方、同じ賃金を得ていたとしても、一号の方は定額保険料を払っている、二号の方は報酬比例の保険料を払っている、三号の方は直接保険料の負担がない、これを引き上げるということで不公平感が拡大してくるということを多分一番心配しているのではないかというふうに思います。
最後に、厚生労働大臣に伺いますけれども、年金について、年金は安心できる社会保障制度だ、セーフティーネットであるということを、決して破綻しないということを厚生労働大臣から訴えていただくことが年金の信頼回復に向けたスタートラインと考えますが、厚生労働大臣の所見を伺いたいと思います。
○福岡国務大臣 まず、委員におかれては、社労士の資格もお持ちということで、この制度を知悉しておられる立場から、国会審議であったり、また御地元等で制度の理解を深める活動をしておられることに心から敬意を表したいと思います。
御承知のとおり、二〇〇四年の制度改正におきまして、将来世代の過重な負担を回避するという観点から、保険料の上限を固定した上で、その収入の範囲内で給付を行うこととし、長期的な給付と負担のバランスを確保するマクロ経済スライドの仕組みを導入したところでございます。これによりまして、年金制度は将来にわたって持続可能な制度となってございます。
また、昨年七月に公表いたしました二〇二四年財政検証の結果では、前回の二〇一九年と比較して年金財政が改善したことが確認されたところです。年金財政が改善した要因としては、近年の女性や高齢者の労働参加の進展、好調な積立金の運用等があると考えています。
加えて、今回は、新たに個人単位で年金額を推計する年金額分布推計を行ってございまして、若い世代ほど、労働参加が進展することにより厚生年金の被保険者期間が延び、年金が充実する傾向にあることも確認されたところでございます。
今後とも、五年に一度の財政検証において、年金財政の健全性や将来的な給付水準を確認し、必要な取組を進めるとともに、制度の安定性や将来的な見通しについて国民の皆様に分かりやすく伝えることで年金制度が信頼されるように、全力で取り組んでまいりたいと思います。
○上田分科員 ありがとうございました。終わります。
○深澤主査 これにて上田英俊君の質疑は終了いたしました。
次に、鎌田さゆり君。
○鎌田分科員 おはようございます。よろしくお願いいたします。
保険医療機関等の指導監査等の実施状況について伺っていきたいと思っております。
令和五年度、保険医療機関等から返還を求めた額は約四十六億二千万円との資料をあらかじめ厚労省さんからいただきました。そこで、診療録とは一体何なのか、その定義と言ってもいいと思うんですけれども、それについて伺っていきたいと思います。
地方厚生局から診療録への記載がないと指導されていても、保険医療機関の医師は、電子診療録内には医師の指示により行われた内容が医師記載欄以外に記載されていれば、これは診療録への記載とみなされてしかるべきではないかということなんですね。
全部とは言いませんけれども、個別面談時のケースによっては、保険医療機関の医師が地方厚生局の医師に対して、電子カルテ内にデータがある、電子カルテ内の別文書に記載があると伝えているにもかかわらず、地方厚生局の医師からは、医師記載欄に採血データとか別文書にある文言を転記するように指導されているんです。
これは、この転記という、いわゆるコピペなんですけれども、リスクも伴います。こういうことを厚労省は認めているんでしょうか。リスクを伴う、行き過ぎた不当な指導ではないかと私は思うんですけれども、認識を伺いたいと思います。
○森光政府参考人 お答えさせていただきます。
まず、診療録の関係でございますけれども、診療録の作成、保存につきましては、厚労省としましては、これまで、情報の真正性それから保存性が確保されている等一定の基準を満たしている場合にあっては、電子媒体による作成、保存が可能であるという旨を通知によりお示しをしてきたところでございます。
また、電子カルテに含まれる看護記録等の情報を医師記載欄に転記するということに関してでございますが、これは、診療録というのは医師法に基づき医師が作成しなければならないものというふうになっております。ただ、仮に看護記録を参考にしていたとしても、それは医師の責任の下で記載をされなければならないというふうに考えております。
○鎌田分科員 今の御答弁でいくと、医師の責任においてであれば、電子診療録内にある記載も、これは診療録としてみなされるという解釈でよろしいかと思うんです。
それでは、地方厚生局から診療録への記載がないと指導されていても、これは、はい、分かりましたと、点検をして、そして地方厚生局に文書として回答するという、はい、分かりました、点検します、はい、回答しますというふうにしなくてもいいものではないでしょうか、ちゃんと電子録にあるわけですから。転記を求めているんですよ、地方厚生局によっては。転記しなくても、電子録にあるわけですから、それでよろしいんじゃないでしょうか。
○森光政府参考人 まず、医師記載欄に転記するということに関してですが、これは、医師記載欄に転記するということは基本的には可能です。というのはどういうことかというと、看護記録に書いてあったものであったとしても、それは医師が自分の責任において転記をするということについては可能でございます。
○鎌田分科員 地方厚生局では、転記しないようにという指導をしているんですよ。だけれども、個別面談に来た医師は、転記しろと言うんですよ。矛盾が起きているんです。これは現場の医師、従事者にとって余計な負荷もかかるし、負担もかかるし、混乱も招きます。
ですから、基本、紙カルテじゃないわけですから、電子診療録になっているんです。それで、現場に来た、個別指導に来た面談の医師に、ちゃんと電子カルテ内にデータがありますと。じゃ、それを見てくれればいいじゃないですか。でも、その電子を見ないで、診療録と言われているものを見て、転記されていないから駄目というのは、それは私は理不尽だと思うんですよ。
ですので、電子診療録内に医師の責任においてちゃんと記載がある、それを診療録として認めていく、そういう考え方でよろしいですね。再度伺います。
○鹿沼政府参考人 一般論で申し上げますと、電子カルテであっても診療録であっても、要するに、電子カルテの中に記載があれば、診療録でなくてもそれは差し支えないというふうに思っております。
ただ、個別の事案の中で、いろいろなケースといいますか、例えば、算定のときの要件にどういうような書き方をしているものが、本当に個別の事案でどういうのが出てくるかというのがございますので、それによるところはあろうかと思いますが、一般論としては今お答えしたようなことだと思っております。
○鎌田分科員 ありがとうございました。
今、中継を多分地方で見ている保険医療機関の関係者の方々は、今の御答弁で少し安堵されたと思います。電子診療録内に医師の責任できちんと記載されているものは、それは診療録としてみなすという今の御答弁だと私は解釈をいたしました。転記というのは非常にリスクがありますし、いわゆるコピペになるわけですから、それは厚生労働省としては推奨するべきではないというふうに思っています。
次になんですけれども、医師の働き方改革と医師の偏在解消との相反についてなんですが、管理料、指導料、薬剤情報提供についても医師が診療録に記載することを求めていますけれども、この事項については医事課ですとか薬剤部にタスクシフトされています。厚労省さんもそれについては既に通知を出していらっしゃることは存じ上げております。
医師が診療のたびにチェックを行って診療録に記載するということは、医師の働き方改革に逆行する指導であって、タスクシフトの周知を更に徹底する必要性があるのではないかと私は考えております。
例えばなんですけれども、地方で重症心身障害児者を医療療育園として、県内、一気にその地域の重症心身障害児者の方々の医療を担っている医院などですと、百二十名の入院患者と外来患者を四名の医者でこなして、一名は院長、診療戦力はフルではない。しかも、移行期医療、これは前に私、この分科会で質問しましたが、なかなか進んでいません。移行期医療が進まないがゆえに、重症心身障害児者だということで一般病院が治療を拒否することが多いんですね、地方では。そうすると、その保険医療機関が急性期治療まで院内で行うことが多くなっているケースが現実に存在しています。
このままですと、医学はどんどん進歩する、でも、現場の医療は衰退し続けてしまうんじゃないかという危機感を私は感じております。ですので、タスクシフトということをきちんと周知徹底を図っていきながら、厚労省さんは地方厚生局から報告を受けて、こうやって毎年マスコミリリースされている。今年はこのように返還金がありましたということをただリリースするんじゃなくて、地方の医療の現場でどのような個別面談、個別指導が行われているのかきちんと把握をし、ケース・バイ・ケースでチェックをする、先ほどの局長の答弁にもありました、そういうことをきちんと行っていく必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 おっしゃられたように、今、医療人材に限りがある中で、タスクシフト、タスクシェアを推進し、医療従事者の専門性を最大限生かしながら、質の高い医療を提供することは大変重要だと考えています。
厚生労働省としましては、令和三年に発出した通知におきまして、医師からの他の医療機関職種へのタスクシフト・シェアが可能な業務の具体例を整理してございまして、診療録の代行入力につきましては、看護師その他の医療関係職種のほか、医師事務作業補助者等の事務職員が行うことが可能である旨をお示しをしてございます。
保険医療機関の指導を行う地方厚生局に対しましても、厚生労働省や地方厚生局が定期的に開催している会議や研修といった機会を通じて周知徹底を図ってきているところですが、委員の御指摘も踏まえて、更に周知徹底を図っていきたいと思います。
○鎌田分科員 大臣、ありがとうございました。
本当に地方は、医学はどんどん進歩するけれども、実際、現場の医療は衰退してしまうという危機感を持っています。そして、交通事故に遭って脳挫傷を起こして、人工呼吸器を二十四時間装着しなければ生き続けられない、そういう境遇になるということは誰でも当てはまります。そういう重症の心身障害を患った方々を一気に診ている医療機関にとっては、どうしても検査を、様々な診療報酬の請求額が増加をする、してしまうということのケースが起きていますので、ただ単に、診療報酬請求が高いから、だから個別指導に入るという観点ではなくて、やはり個別に、どういう診療を行っているのかということを是非見ていただけるように、大臣始め厚生労働省の皆様には強く要望したいと思います。
次に、個別指導の法的根拠について伺っていきたいと思います。
地方厚生局が保険医療機関に対して自主返還を求めることは、法的に分類すると、これは行政指導に当たるということで間違いございませんね。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
行政手続法において行政指導というのは、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものとされているところでございます。
他方で、地方厚生局が行う個別指導につきましては、健康保険法第七十三条におきまして、保険医療機関等は療養の給付に関し厚生労働大臣の指導を受けなければならないと規定されておりまして、これに基づいて実施をしているところであります。
委員御指摘の、保険医療機関等に対して自主返還を求めることについては、この規定に基づく指導のプロセスの一環として実施しているものでありますので、先ほど言いました、相手方の任意の協力によってのみ実現されるという一般的な行政指導とは異なるものだというふうに認識をしております。
○鎌田分科員 今、厚生労働省さんから認識を伺いましたけれども、私は、この法的根拠について薄弱性を感じております。
個別指導後の診療報酬の自主返還について、健康保険法など、今も御紹介がありましたけれども、療養担当規則などの省令、診療報酬改定などの告示にその定めがあると思います。
厚生労働省の保険局医療課長通知、厚労省事務連絡指導大綱関係実施要領など、いわゆる省令、告示よりも下位レベルの規範で定めてあるということは間違いないと思いますが、いかがでしょうか。
○鹿沼政府参考人 お答えします。
先ほども申しましたが、地方厚生局が実施する保険医療機関等に対する個別指導につきましては、健康保険法第七十三条に基づいて行っているところでございます。また、指導の実施方法など指導の基本的なルール、こちらにつきましては、中央社会保険医療協議会での議論を経て作成された保険局長通知の指導大綱に定めております。
委員御指摘の診療報酬の自主返還についても、健康保険法第七十三条に基づく指導の一環として行われるものではございますが、指導の具体的な取扱いにつきましては保険局医療課長通知などにおいて定めている、こういったものでございます。
○鎌田分科員 下位レベルかどうかを伺ったんですけれども、その認識はお持ちかどうかは今御答弁にはなかったんです。
診療報酬の支払い義務者は健康保険組合などの保険者であって、国でも厚生労働大臣でも地方厚生局でもないんじゃないでしょうか。保険医療機関の開設者による診療報酬請求に対して審査や支払いをするのは保険者であって、保険者は、健康保険法第七十六条第五項などの明文規定で、審査及び支払いに関する事務を社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に委託していることはあっても、国、厚生労働大臣、地方厚生局に委託することはないんじゃないでしょうか。伺います。これが一点。
つまり、国も厚生労働大臣も、診療報酬請求に関する審査も支払いも、その権限はないというのが法的な解釈であり、位置づけではないでしょうか。伺います。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
保険診療自体につきましては、健康保険法等の各法に基づく保険者と保険医療機関との間の公法上の契約に基づいて行われております。
御指摘のとおり、患者が診療を受けたとき、保険医療機関の窓口で一部負担金を支払い、残りの費用については、保険者から審査支払い機関を通じて保険医療機関に支払われているということになっております。この診療報酬の支払いに関して、保険者は、健康保険法等の規定に基づき、審査や支払いに関する事務を社会保険診療報酬支払基金等に委託することができるというふうにされております。
こうしたことからいえば、診療報酬の審査や支払いの権限自体は、一義的には保険者が有しているというふうに考えております。
○鎌田分科員 一義的に、今おっしゃった委託はしていることはあっても、国や厚生労働大臣が、診療報酬請求に関する審査も支払いも、その権限は私はないのではないかというふうに伺ったんです。法的に、法的な位置づけとして、これはその権限はないんじゃないかということを伺ったんです。法律上です。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
先ほどは審査、支払いの権限のお話をさせていただきましたが、指導につきましては、先ほどもちょっとお話をさせていただきましたが、健康保険法七十三条の指導は、不適切な請求を行った場合に、それを適正にするようにするものだというふうに考えております。その適正にすることで生じる不当利得を保険者へ自主的に返還するよう求める指導については、健康保険法七十三条の指導の一環だというふうに考えております。
○鎌田分科員 指導の一環として診療報酬請求に関する返還を求めるということ、これをこの議事録に残してよろしいんですね。多分、何度も同じ御答弁になると思うので、結構ですけれども。
じゃ、更に伺いますけれども、自主返還は、保険医療機関にとっては経済上の措置として非常に重要な事柄です。その認識は共通して持っていただけると思います。にもかかわらず、これは大臣に御答弁いただきたいんですけれども、上位の法令に明文の根拠を有していないというのは、行政権の法治国家的な施行としては法的な根拠が薄弱だと私は評せざるを得ないと思うんですね。本来なら、省令、告示、保険局長通知のレベルで明文での規定が必要ではないでしょうか。いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 地方厚生局が保険医療機関等に対して行っている指導につきましては、健康保険法第七十三条に基づく指導として位置づけられている上で、その指導の種類や仕組みといった枠組みに関する事項は局長通知であります指導大綱で定め、さらに、具体的な指導の手続等については課長通知で定めているところでございます。
御指摘の、地方厚生局が保険医療機関に対して自主的に保険者へ返還するように求めていることは、こうした指導に係る体系の中で、具体的な手続として課長通知において定めているものでございまして、法に基づく指導の一環として現状でも適正かつ適切に行われているものと考えており、ですから、上位であろうとなかろうと、しっかりそこは明文上示しているということでございます。
○鎌田分科員 そこは見解の相違かもしれませんけれども、私は、課長通知レベルではなくて、きちんと法的に、省令あるいは告示、そして局長通知ということで、ちゃんと下位レベルではなくて法的に定めが必要ではないかという指摘をさせていただきたいと思います。
あわせて、法的な問題に併せてなんですけれども、組織的な問題として、元々、国、厚生労働大臣、地方厚生局は、一般的法規範、療養担当規則ですとか診療報酬改定告示、これを定めて、それを普及、遵守させるよう研修、教育し、不正行為を調査して指定取消しを、登録を取消しすることしか、健康保険法など法律上の権限はなかったのではないかと思うんですね。
つまり、個別的、具体的な事例での自主返還の求めは、そもそも、国、厚生労働大臣、地方厚生局の任務や所掌事務の範囲の外だったのではないでしょうか。これは組織的な課題としてです。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
恐らく、最初の根っこのところで先生となかなか、その見解のところで違いがあるのかもしれませんが、健康保険法第七十三条に、保険医療機関等は療養に関し厚生労働大臣の指導を受けなければならないという規定が置かれておりまして、この厚生労働大臣の権限は健康保険法第二百五条の規定に基づき地方厚生局長に委任をされており、こうした規定に基づき、地方厚生局は個別指導を実施しているというふうに考えております。
御指摘の自主返還の求めにつきましても、これらの規定に基づく指導のプロセスの一環として、中医協での議論を経て策定された指導大綱も踏まえて実施しているものであり、地方厚生局の所掌事務の範囲において実施しているものというふうに考えております。
○鎌田分科員 局長がおっしゃったとおり、そもそも根っこのところからの見解の相違があるかもしれませんけれども、二〇一七年のときに様々な法律家がこの法的な問題を指摘をしている文献がありますので、これは引き続き議論に値するものだと私は考えておりますので、これからも追及していきたいと思っています。
法的根拠、組織規範、組織的な問題としても、個別指導後の自主返還は、その合理性がやはり薄弱です。適切に法的根拠、組織規範を改正して、補強しながら現行の運用を維持するか、少なくとも個別指導後の自主返還だけはなくしていくという方向で見直すことを再検討するべきではないかと私は考えております。
これは大臣に御答弁いただきたいんですけれども、全国の医療機関はコロナ禍によって疲弊しています。それは大臣もよく御存じだと思います。医師、看護師の確保の困難、物価上昇で経営が傾いていることは重々御承知だと思います。このような個別指導が続けば、医師も看護師も意欲の低下が更に進んでしまいます。医療が使命ではなくて、金を得るための業務に成り下がってしまいます。今の個別指導は、業務を指導して使命はくじいているというふうな個別面談での現場もあります。再三申し上げますが、全てだとは言いません。ですが、例えば個別指導の面談のときにおいて、そういうことがあります。
大臣、個別指導後の自主返還というこの仕組みについて、法的なもの、組織的なものを再検討していくというお考えを持っていただきたいんですが、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 まず、委員御指摘のとおり、今、全国の病院の置かれた厳しさについては十分認識をしております。
その上で、委員が御指摘いただいた合理的根拠が乏しいという部分については、私たちは立場を異にしているということは再三申し上げてきたとおりでございます。
ちょっと繰り返しになりますが、診療報酬の返還請求権は一義的に保険者が有しているところでございますが、健康保険法第七十三条を根拠に、個別指導の一環として、保険医療機関に対しては自主的に保険者へ返還するよう求めていることについては、診療報酬請求に関する事項等について周知徹底を図るために行うものであるという個別指導の趣旨を踏まえれば、現行の法体系、指導体系の下で適正かつ適切に行われているものと私どもは考えています。
引き続き、厚生労働省や地方厚生局による研修の実施などを通じて、今のこの体制の中で地方厚生局による指導業務が適切に行われるように努めていきたいと考えています。
○鎌田分科員 大臣、ありがとうございました。
今の大臣の御答弁に期待をしたいと思います。是非、全国の地方の厚生局、ここに対して、適正に、ケース・バイ・ケース、個別にきちんと指導、しゃくし定規の規定もあると思います、それは分かりますが、それぞれの保険医療機関によっての特徴もありますので、是非そこを見ていただきたいということですので、大臣、よろしくお願いいたします。
残りの時間は、予定をしていました最初の項目の方に移りたいと思います。
個別指導を実施するに当たって、厚生局から保険医療機関に出向く、いわゆる指導のメンバーについての適格性なんですけれども、これは規定というものはあるんでしょうか。伺います。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
地方厚生局で保険医療機関の指導を実施する担当者につきましては、中央社会保険医療協議会の議論を経て定められた指導大綱、こちらにおきまして、地方厚生局の指導医療官と呼ばれる技官及び事務官、さらに、非常勤の医師、歯科医師、薬剤師及び看護師が担当すると定められております。
なお、先ほど言いました指導医療官と呼ばれる方の技官でございますが、こちらにつきましては、医師又は歯科医師の資格を有する厚生労働技官で、病院又は診療所において原則として五年以上の臨床経験があるということを採用の要件としているというところでございます。
○鎌田分科員 私がここで指摘したいのは指導メンバーの適格性ということですので、指導対象である保険医療機関の特性とその専門分野の見識、経験を持ち合わせている医師に是非、個別指導の現場に赴く際、行っていただきたいんですね。
例えばなんですけれども、先ほども触れましたが、重症心身障害児者の場合、ゼロ歳から例えば三十歳、五十歳までの入所者さんがいらっしゃいます、患者さんがいらっしゃいます。小児から診ているんですね。そこに例えば耳鼻咽喉科の医師が行ったとして、果たして、重症心身障害児者に対してどのような検査が必要で、どのような薬剤投与が必要かということまで、それは、見識、専門性はなかなか持ち合わせていないというところで、現場の保険医療機関の医師がきちんと説明をしても、いや、それは指導対象になりますからということで、容赦なく個別指導が入るわけですよ。
ですので、これは厚生労働省として地方厚生局に対して、可能な限りきちんと、その専門分野の見識、経験を持ち合わせている医師による指導体制を整えていっていただきたい。これは要望も含めてです。大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 保険医療機関への指導につきましては、診療上必要な検査のみを実施することなど、全ての保険医療機関に求められる保険診療に当たってのルールであったり、また、診療報酬請求の根拠となる診療録等の記載方法などを周知徹底させることを主眼としてございます。
こうした指導が適切かつ効果的に実施できるように、指導医療官は、医師又は歯科医師の資格を有する厚生労働技官とした上で、先ほどもありました、臨床経験等も要件としているところです。
また、厚生労働省や地方厚生局においては定期的に研修等を実施しているところでございまして、そういったことを通じまして、指導の質的な向上に努めてまいりたいと考えています。
○鎌田分科員 大臣、厚労省さんがお作りくださったのをお読みいただいたと思うんですけれども、先ほども申し上げたとおり、ゼロ歳あるいは二歳、三歳で交通事故に遭って、そこから超重症心身障害、小児から診ているわけですよね。医学は進歩していますから、助けた命なんですよ。
その助けた命を、例えば四十歳になって、ずっと診てきている、その超重症心身障害児者の医療を担っている医師、看護師さんたち、その方たちからすれば、そこに、小児を診ていない、成人の耳鼻咽喉科や眼科やそういうところの、歯科医師の方々が来て、そして指導にされると、じゃ、何で、医学が進歩したからといって子供のときに助けたんだ、四十までよく生きたね、じゃ、もうしようがないねと言われているようなものなんですよ、そういう重症心身障害児者の医療機関では。私は、そういうことは日本では決してあってはならないと思うんですね。
ですので、やはり専門分野の見識、そういう所見を持っている方が個別指導に行けるような体制を是非整えていただきたいということは要望として申し上げたいと思います。
次に、傷病名について伺いますけれども、厚労省が進めているデータ提出加算では、ICD、国際疾病分類、これに準拠することが求められているということは間違いないか、確認させてください。
○鹿沼政府参考人 お答えします。
御指摘のとおり、データ提出加算やDPC制度でも記入が求められます、医療資源を最も投入した傷病名につきましては、ICD10により定義された傷病名から選択すること、このようにされております。
○鎌田分科員 ありがとうございました。
例えばなんですが、これも地方を見渡しますと、患者の特性に通じた、先ほどからずっと言っています、ずっと患者を診てきた、その患者の特性に通じている専門医、主治医がICDに準拠した傷病名に対して、地方厚生局によっては、医学的に妥当とは考えられない傷病名だとして訂正を求めることが起きているんです。この訂正というものは、私はおかしいと思います、ICDに準拠している傷病名なんですから。
ですので、訂正に応じなくて、意見のやり取りが、保険医療機関の医師と地方厚生局と意見のやり取りがあってしかるべきであり、そして、この訂正に応じないということも私はあってしかるべきだと思いますが、御見解を伺います。
○鹿沼政府参考人 お答えします。
診療報酬の明細書に記載されております傷病名については、医療機関の診療報酬請求が妥当であるかどうかを確認する上で重要な情報の一つだというふうには考えております。このため、医療機関に対する指導においては、傷病名の記載に関して、新たな病気の診断の都度、医学的に妥当、適切な傷病名を医師が診療録に記載するよう指導を行っているところでございます。
指導に関する個別事例についてお答えすることは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げれば、傷病名の記載内容について、患者を診察した医師が症状や検査所見を踏まえ、その診断の根拠を適切に説明できるということであれば、必ずしも訂正に応じる必要はないというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、診療報酬請求の妥当性を確保するためにも適切に傷病名を記載いただきたい、このように考えております。
○鎌田分科員 局長、今の御答弁で、ありがとうございますと最後に御礼を申し上げます。
大臣、ありがとうございました。
以上です。
○深澤主査 これにて鎌田さゆり君の質疑は終了いたしました。
次に、本村伸子君。
○本村分科員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
医療、介護、障害福祉のケア労働者の方々の賃上げについて質問させていただきたいというふうに思います。
まず最初に、二〇二四年の賃上げの実態を、産業ごとに金額と賃上げ率をお示しをいただきたいと思います。金融・保険業、建設業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業、電気・ガス・熱供給・水道業と医療、福祉の分野、また、二〇二四年の民間主要企業の春季賃上げの妥結の賃上げの額と率をお示しをいただきたいと思います。
○森川政府参考人 お答えいたします。
令和六年賃金引上げ等の実態に関する調査の結果によりますと、一人平均賃金の改定額及び改定率は、金融業、保険業は一万五千四百六十五円で四・六%、建設業は一万五千二百八十三円で四・三%、情報通信業は一万四千九百八十九円で四・三%、学術研究、専門・技術サービス業は一万四千七百七十二円で四・四%、電気・ガス・熱供給・水道業は一万四千六百十九円で四・三%、医療、福祉は六千八百七十六円で二・五%となってございます。
また、令和六年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況では、平均妥結額は一万七千四百十五円、賃上げ率は五・三三%となってございます。
○本村分科員 パネルにもさせていただいて、大臣もよく認識をしていただいているというふうに思うんですけれども、民間の主要企業でいいますと、賃上げ額は一万七千四百十五円、賃上げ率は五・三三。しかし、一方で、医療や福祉の分野は二・五%にとどまっている。
医療、介護、障害福祉の賃上げは、全産業と比べても低く、置き去りになっているというふうに認識をしております。見劣りをする賃上げ額、賃上げ率になっております。この現状について、大臣はどのように認識をされておられますでしょうか。
○福岡国務大臣 医療、介護、障害福祉分野におきましては、今、他産業との厳しい人材獲得競争にさらされておりまして、賃上げの実現というのは喫緊の課題だというふうに認識をしています。
こうした中、令和六年度報酬改定において必要な措置を講じるとともに、令和六年度補正予算においても更なる賃上げ等の支援を盛り込んだところでございまして、引き続き、政府全体として賃上げに向けた取組を進めていくことが大変重要だと考えております。
○本村分科員 補正予算も組んだというお話ですけれども、医療、介護、障害福祉、全ての労働者が賃上げできるかどうか、また、全産業並みに上がるかどうか、このことが問われているというふうに思います。
医療、福祉の分野は、女性が大変多く働いている現場です。ケア労働者の賃上げというのは、男女の賃金格差の是正にも必要なことで、そして有効だというふうに思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。
○福岡国務大臣 男女間の賃金の差異につきましては、長期的には縮小傾向にございますが、まだ依然として差異は大きくございまして、その是正については大変重要な課題だと認識をしております。
このため、これまでも女性活躍推進法等に基づく取組を進めてきたところでございますが、今般、男女間賃金差異の情報公表の強化等を盛り込んだ女性活躍推進法の改正法案をこの国会に提出すべく、今準備を進めているところでございます。
委員御指摘がございましたように、女性が多く働く医療、福祉分野におきまして賃上げが行われることは、男女間の賃金格差の縮小にもつながり得るものであると考えています。
○本村分科員 その医療、福祉の分野で、やはり賃上げ率、額が見劣りする現状であっては、格差は縮まらないということになってしまいます。
介護や障害福祉の分野、ほかの産業と比べても年収格差があるということで、全産業と比べて年収格差をなくしていくということが求められていると思いますけれども、その点についても大臣の御認識を伺いたいと思います。
○福岡国務大臣 介護職員、障害福祉関係職員の平均給与につきましては、全産業平均との差が、二〇〇八年時点では、介護職員が月額十・六万円、障害福祉関係職員が十・二万円でございましたが、これまでの累次の処遇改善の取組によりまして、二〇二三年時点では、介護職員が六・九万円、障害福祉職員が六・五万円に縮小してきております。ただ、縮小したとはいっても、依然として差がある状況だというふうに認識をしております。
介護、障害福祉分野における人手不足、大変厳しい状況であるということは認識してございまして、また、今年度の実績等を見ますと、賃上げに向けた取組は他産業が先行していると認識してございます。そのため、政府としては、これらの分野での処遇改善は喫緊の課題であると考えています。
○本村分科員 介護の分野でいいますと、格差がまた開いてしまっているという数値も出ておりますので、そのこともよく認識をしていただいて、全産業並みに、それ以上に賃金を上げていただきたいというふうに思っております。
介護、障害福祉の分野は元々、全産業と比べても、賃上げ額、賃上げ率が最低となっております。そうしますと、ますます格差が拡大するということになってしまいます。医療も介護も障害福祉の分野も、本当に人手不足で深刻になっています。大幅な賃上げがどうしても必要だというふうに思います。
昨年十二月の補正予算で一定措置をしておりますが、医療、介護、障害福祉で働く皆さんの賃金の引上げが、二・五%の賃上げということが目標になっておりまして、二〇二五年は二%の賃上げが目標となっておりますけれども、補正予算でどのくらいまで引き上げるのか。そして、なぜ単年度だけなのだという問題があると思いますけれども、なぜ単年度なのか、その点もお答えをいただきたいと思います。大臣に通告していると思います。
○森光政府参考人 医療、介護、障害福祉分野は他産業との厳しい人材獲得競争にさらされており、人材確保の課題に緊急的に対応する必要があるということで、今般の補正予算で臨時的な措置を図るというものでございます。
医療分野においては、現場の更なる賃上げや業務効率化につながるよう、病院では一床当たり四万円、診療所、訪問看護ステーションでは一施設当たり十八万円を支給するものでございます。
介護、障害分野においても、更なる賃上げにつなげるものとして、介護職の配置があるサービスを対象に、積算上は常勤換算の介護職員一人当たり五・四万円の支援を行うこととしております。
まずは、こうした措置を着実に実行し、医療、介護、障害福祉分野で働く方に必要な支援が行き届くよう取り組むとともに、今後、補正予算等の効果を丁寧に把握をした上で、適切に対応していきたいと考えております。
○本村分科員 その効果なんですけれども、例えば、医療従事者の方々の賃上げにも使えるということで、一床当たり四万円ということで示されておりますけれども、これは賃上げに優先的に使えるんでしょうか。
○森光政府参考人 議員御指摘の生産性向上・職場環境整備等支援事業というものでございますが、これは生産性向上や賃上げを図るものでございまして、ICT機器等の導入による業務の効率化、タスクシフト・シェアによる業務効率化、既に雇用している職員の賃金改善のいずれかの取組に医療機関の判断で活用が可能な支援となっております。
いずれにしましても、本事業を通じまして、現場の更なる賃上げや生産性向上につながることが重要であると考えておりまして、こうした措置を着実に実行し、必要な支援が医療機関に行き届くよう取り組んでまいりたいと考えております。
○本村分科員 ですから、これは必ずしも賃上げに使うと確実になっているわけではないわけです。
そういう中で、二・五%の賃上げ目標、二%の賃上げ目標、これは補正予算でどのくらい、医療、介護、障害福祉、賃上げになるというふうにお考えになっているのか、お示しをいただきたいと思います。
○森光政府参考人 先ほど答弁させていただきましたけれども、繰り返しになる部分がありますが、お許しいただきたいと思います。
この補正予算に関しては、臨時的な措置を図るというものでございますが、医療分野においては、現場の更なる賃上げ、業務効率化につながるよう、病院では一床当たり四万円、診療所、訪問看護ステーションでは一施設当たり十八万円を支給するものとなっております。医療機関においては様々な職種がございますので、どのような形になるかについては医療機関の判断となると思います。
また、介護、障害分野においても、更なる賃上げにつながるものとして、介護職の配置があるサービスを対象に、積算上、常勤換算の介護職員一人当たり五・四万円の支援を行うということにしております。
まずは、こうした措置を着実に実行してまいりたいというふうに考えております。
○本村分科員 それでも、やはり全産業と比べて見劣りがする状況だというふうに思います。
例えば、全国老人福祉施設協議会の皆様始め介護関係の十二団体が、他産業への職員の流出を更に加速させる、基本報酬の引下げがあって、更にそうした流出を加速させてしまうという懸念の声も出ている中で、確実に賃上げが他産業と同じように、あるいはそれ以上に、エッセンシャルワーカーですから、それ以上にできるようにしていただきたいというふうに思うんです。医療、介護、障害福祉の現場では本当に悲鳴が上がっております。
今日は、労災病院について具体的にお話をさせていただきたいと思うんですけれども、労災病院では、労働者健康安全機構が病院勘定から百七十三億円、交付金十億円を国に返納をした、二〇二四年度の収支計画についても百二十六億円の赤字となり、数年で資金が枯渇するというふうに機構が述べております。
資料の二と三を見ていただきたいんですけれども、そこに機構の方が示した資料があるわけですけれども、そこに、二の資料を見ていただきますと、二〇二六年、資金が枯渇というふうに書かれております。そして、資料の三、一番下のところ、赤いところですけれども、本部管理資金を本年七月、これは二〇二四年七月のことですけれども、百七十三億円、国庫納付したこともあり、資金枯渇を見込む時期が早まっているというふうに書かれております。
今、一時金、ボーナスについて、大幅な減額の提案となっています。労災病院では離職が元々相次いでおりましたけれども、更に加速をしてしまうんじゃないか。また、老朽化しているのに建て替えもできない病院もあるというふうに聞いております。
こうした労災病院の危機的な事態について、大臣はどのように把握をされておられますでしょうか。
○福岡国務大臣 私も先日、労災病院の関係の方とお会いして、直接お話を聞く機会がございました。
労災病院の収支は令和五年度から悪化し、今年度は、更にその状況が深刻化することが見込まれているというふうに承知をしております。そのような中で、御指摘がございました、労災病院職員の賞与の見直しを行ったこと等についても報告を受けてございます。
労災病院の経営悪化を受けまして、病院を運営する独立行政法人労働者健康安全機構に対しまして、病床利用率の改善等による収入の増加や経費の節減など、収支改善に取り組むようお願いをしているところでございます。
なお、御指摘の国庫返納につきましては、令和五年度末の中期目標期間満了時の積立金の一部から、独立行政法人通則法等の規定に沿って行ったものでございます。また、病院システムの更新等、必要不可欠な経費につきましては、令和六年度補正予算においても、その必要不可欠な経費に限定して特例的に補助するといった対応を講じているところでございます。
労災病院につきましては、もう御承知のとおり、あくまでも診療報酬を基礎とした運営を行っていただくことが原則でありますため、引き続き収支改善に取り組んでいただけるよう、厚生労働省としても、その状況を注視するとともに、必要な助言等を行ってまいりたいと考えています。
○本村分科員 厚生労働省から収支改善などの助言をしたということですけれども、現場では、九十七億円、収支を改善する方針というふうに伺っております。そのうち三十億円は入院患者などを増やすということで改善するというようなお話、そして、六十七億円は一時金の引下げということになっております。厚生労働省の助言の下で、一時金の引下げ、これで収支を改善するということを言われているようです。
一時金が減って、人が辞めたり、募集しても更に集まらなくなる、そうしたら、看護職員の方々がいなくて、ベッドの稼働率を上げることはできないということになってしまいます。これは経営状態も悪循環になってしまいます。こういうことは絶対に避けていただきたいというふうに思います。
この一時金の問題は、昨年の秋に四回、ストライキを労働組合の皆さんがされております。そして、一時金に関しまして中央労働委員会へあっせんを求め、そして、一月下旬にあっせん案があったそうですけれども、今の段階では、一・六月というふうに前年よりも悪くなっているわけです。この月数というのは、国立病院機構ですとかJCHOさんですとか日赤さんよりも低い状況になっています。そして、二〇二五年夏の一時金は一・五か月ということで、夏と年末、四か月ないとほかの病院に移るというのが医療従事者の方々の動向だというふうに言われております。
命と健康を守るエッセンシャルワーカーでありながら、働く意欲を失い、離職に追い込まれるということが労災病院の中であってはならないというふうに思っております。
私の地元の愛知県ですけれども、中部労災病院さんは、名古屋市内で、例えばコロナのときに、感染症病床というのは大変少ない状況がありまして、ほかの自治体にある病院にも様々お願いをしてきた状況があるわけですけれども、ベッドが少ない中で亡くなった方々もおられるわけですけれども、そういう状況の中でも中部労災病院の皆さんは対応してくださいましたし、中部労災病院だけではなくて旭ろうさい病院さんもそうですけれども、今後も対応してくださる、そして何かあったときに医療従事者を派遣してくださるということで、愛知県とも協定を結んでくださっております。
地域にとっては本当になくてはならない病院で、そこの医療従事者の皆さんがいなくなってしまったら、本当に地域医療にとっても大損失になるわけです。そうやって頑張ってくださっている方々が、一時金が大幅に減らされてしまう、そして経営危機にある、これを放置をすることは絶対にあってはならないというふうに思っております。
労災病院でも全産業並みに賃金が引き上がることができるよう、働く人たちの悲鳴を聞き、そして状況把握をして支援をするべきだ、助言だけじゃなくて、財政的な支援をもっと抜本的に強化をするべきだというふうに思います。国庫返納のときの計算が、本当に見積りが正しかったのかという問題もあるというふうに思うんです。
是非、その点も踏まえて支援を強めていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 まず、繰り返しになりますが、医療従事者の方々の処遇改善というのは大変重要な課題であると認識をしております。
御指摘のとおり、労災病院職員の賞与の見直しを行ったということは事実でございますが、一方で、令和六年度診療報酬改定上の賃上げの仕組みを活用して、令和七年一月時点におきまして、前年同期比で約三・三%の平均月例賃金の引上げを行っているなど、厳しい経営状況にあっても、可能な限りの処遇改善に取り組んでおられるものと承知をしております。
また、繰り返しになりますが、病院システムの更新等、必要不可欠な経費については、令和六年度補正予算において、その必要不可欠な経費に限定して特例的に補助するといった対応も講じております。
労災病院については、あくまで診療報酬を基礎とした運営を行っていただくことが原則でありまして、厚生労働省としては、引き続きその収支改善に取り組んでいただくようお願いするということでございますが、お話ありましたように、ほかの民間病院も診療報酬を基礎とした運営をしていただいています。
病院経営は、あまねく全般的に今厳しい状況でありますから、先ほどおっしゃられましたように、地域医療を支えておられる病院がその地域で引き続き運営していただけるためにどういうことができるのかということについては、しっかり検討してまいりたいと思います。
○本村分科員 国庫に返納をして悪化をしている、もう資金が枯渇するという危機なんです。二〇二六年には枯渇するという危機なんです。
ですから、国庫に返納をしたというところが悪化を早めてしまったということがあるわけですから、そういう点も踏まえて更に支援を強めていただきたいということで、大臣、もう一度お願いしたいと思います。
○福岡国務大臣 まず、先ほど申し上げましたように、この国庫返納につきましては、独立行政法人通則法等の規定に沿って行ったものでございます。その上で、あくまでも病院経営については診療報酬を基礎とした運営を行っていただくことが原則でございますが、しっかりそこは収支改善に取り組んでいただけるよう、厚生労働省としても、その状況を注視するとともに、必要な助言を行ってまいりたいと考えています。
○本村分科員 必要な助言はもうして、それが一時金の削減になっているわけですから、そうじゃなくて、全産業並みに引き上げることができるように支援をお願いしたいと思います。
○福岡国務大臣 ですから、そこは先ほども申しました。労災病院ではなく、ほかのいろいろな医療機関も、診療報酬を基礎とした運営を今行っていただいているということでございます。そして、その中で、今病院経営は全般的に厳しい状況の中で、病院経営の、どうやったら地域医療を維持していただけるか、そういった体系の中で考えていく必要があると思います。
○本村分科員 是非、支援を強めていただきたいというふうに思います。
ほかの病院でも、例えば国立病院機構や地域医療機能推進機構の病院でも、防衛財源として国庫返納で賃金、労働条件が悪化するという危機がございます。国立病院機構でも二〇三一年度には法人資金が枯渇するおそれがあるというふうにニュースに出ておりました。今日もストライキが行われるというふうに言われております。
医療現場をこうした状況に追いやっているのは政府の責任です。国の所管する機構等の病院でも全産業並みに賃上げができるようにするべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 独立行政法人の運営につきましては、法人の自主性を基本として行われるものでございまして、その賃金につきましては、法人の労使で真摯に協議いただいて適切に決定されることが重要だと考えております。
その上で、政府といたしましては、国立病院機構等を含む医療機関の更なる賃上げにつながるよう、昨年末に成立した補正予算におきまして、現場の更なる賃上げやICT機器等の導入による業務効率化を支援することとしてございまして、そうした必要な支援が行き届くように着実に取り組んでまいりたいと思います。
○本村分科員 是非、支援を強めていただきたいと思います。
大変な人手不足になっております。病院では人手が足りない。基本的な指針の処遇の改善の項には、夜勤の負担の軽減ということで、月八日以内夜勤の体制を構築するというふうに書かれているのに、夜勤が九回、十回、十一回という現場もあります。そして、育児をしながら勤務をされている方が、育児短時間勤務というふうになっているのに短時間勤務ではない現場もあります。また、準夜勤も、育児短時間勤務の方もやらないといけないというような現状があります。
医療や介護、障害福祉、魅力ある職場にしていく、賃金も上がるし、そして人も増えていくというような、見通しが立つような、希望が見えるような、そうした、もう少し我慢すればよくなっていくんだというビジョンを是非示していただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 私も、この政治の世界へ入って二十年近くになります。その間ずっと、様々な医療機関であったり、介護、障害福祉の現場を拝見させていただいてまいりました。それぞれの場所において、日々のサービスの提供を支えていただいている従事者の方々の献身的な御努力について、これまでも拝見したところでございまして、心から敬意と感謝を申し上げさせていただきたいと思います。
その一方で、委員御指摘ありましたように、今、限られた人材の中で、それぞれ、かなり業務負荷も重くなって、厳しい環境に置かれているということは十分承知をしております。
より魅力あるものとなるように、例えば、各都道府県に設置されました医療勤務環境改善支援センターによる助言等の支援であったり、また、ICTを活用した勤務環境の改善を推進するとともに、医療・介護従事者の賃上げを行うために、令和六年度報酬改定や令和六年度補正予算において、更なる賃上げに向けた支援に着実に取り組むこととしております。
あわせて、人材確保の課題に対応しつつ、限られた人員で質の高いサービスを提供していく工夫も必要でありますことから、業務の効率化等により業務負担の軽減を図りながら、生産性向上の取組を推進していくことも重要だというふうに考えています。
このような視点を重視しながら、医療、介護等が将来にわたって適切に提供できる環境を整えてまいりたいと考えています。
○本村分科員 二〇二五年の医療、介護、障害福祉の賃上げの目標は二%となっております。二〇二四年よりも低い目標となっています。これ自体が私はおかしいのではないかというふうに思っております。全産業並みに、二〇二四年の遅れを挽回するためにも、全産業以上に賃上げを図る必要があるというふうに思っております。
そして、二月二十五日に石破総理が、医療、介護、障害福祉分野の生産性の向上を図るためのプランの策定を指示したというふうな報道がございました。現場で働く皆様の声を反映し、全産業並みに、あるいはそれ以上の賃上げで人手を確保するプランにするべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 御指摘の医療、介護、障害福祉分野における生産性向上につきましては、車座で関係者の方々から御意見を聞くその場におきまして、総理から、将来に向けた生産性向上のための省力化投資促進プランを策定するように直接御指示をいただいたところでございまして、今、その方策の具体化に向けて検討を進めさせていただいているところでございます。
足下の賃上げに向けた対応としましては、令和六年度報酬改定において講じた賃上げに係る措置と、補正予算において盛り込んだ更なる賃上げや生産性向上の支援が現場に確実に届くよう、引き続き、現場の状況を適切に把握しながら、賃上げや生産性向上が進むように取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○本村分科員 是非、人も増える、そして賃金も全産業並みに少なくとも上がっていくということで、現場に光が見えるようにしていただきたい、そういうプランにしていただきたいということを強く求めておきたいというふうに思います。
介護の分野に移りますけれども、今、訪問介護が受けられない方々が出ております。高齢者の在宅介護を支える訪問介護事業所が各地で次々と休止や廃止に追い込まれております。昨年四月に政府が訪問介護の基本報酬を二から三%削減したことで、事業所が運営が難しくなってしまっている。
訪問介護事業所がない自治体は、昨年十二月末の時点で全国百七町村となり、僅か半年で十町村増えました。長野県の高山村というところでは、昨年夏まで二つあった事業所が、ドミノ倒しのようにゼロになってしまった。村の社会福祉協議会が昨年九月末に休止をし、昨年十月に、民間の訪問介護事業所も突然その日に休止と村の方に県から連絡があったそうです。
昨年四月の基本報酬の引下げで、減収を補おうということで訪問回数を増やしたそうですけれども、それで職員の方々は疲弊をしてしまった、それで休止になってしまったということになっております。
私の地元でも、訪問介護事業所が休止になって、その利用されていた方を別の事業所に頼んだそうですけれども、ヘルパーさんがいなくて受け入れることができないというお声を、名古屋の事例ですけれども、お伺いをいたしました。また、私の地元の豊田市でも、訪問介護が受けられない方々がいらっしゃるということを病院からお伺いをしております。
石破総理は、近隣市町村でカバーしているというような御答弁もあったのですけれども、カバーできていない介護が必要な方々がいらっしゃるという御認識は、大臣はありますでしょうか。
○福岡国務大臣 まず、この訪問介護につきましては、御承知のとおり、これまでも国会で様々な御議論をいただいてきたところでございます。長引く人手不足、物価高騰で厳しい状況にございまして、これは訪問介護も同様であるというふうに認識をしています。
地域における訪問介護の提供状況につきましては、厚生労働省の介護サービス情報公表システムのオープンデータによりますと、訪問介護事業所のない自治体は全国に約百町村程度存在いたしますが、訪問介護は広域利用のサービスでございまして、こうした自治体の大半では、近隣市町村の事業所等によるサービスを御利用いただいております。
また、個々の訪問介護事業所の運営状況につきましては、事業者の休廃止は対前年同月比でおおむね一割弱の増加となっている一方で、新規開業や再開も同程度ございまして、事業所の総数としてはやや増加している状況にございますが、廃止の主たる要因は人手不足となっておりまして、人材確保に大きな課題を抱えているものというふうに認識をしています。
こうした実態を踏まえまして、今回の補正予算等を活用し、地域の特性等を踏まえたきめ細かい対策を講じてございます。要介護者の在宅での生活を支える柱の一つであります訪問介護につきまして、その運営が安定的に行われることは非常に重要であるというふうに考えておりまして、サービス提供や運用状況について、引き続き丁寧に把握してまいりたいと思います。
○本村分科員 まずは、訪問介護の基本報酬の引下げを撤回していただき、介護報酬全体の大幅な引上げを図る再改定を至急行っていただきたいというふうに思います。
また、その際には、サービスの利用に支障が生じないよう、利用者の方々の負担、これは軽減を図る、そういう対策を是非講じていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。
○福岡国務大臣 先ほどおっしゃいました、大変今厳しい状況にある、そして、当然、令和六年の報酬改定で見込んでいた引上げ額では十分ではないという御指摘については、そういったことも踏まえまして、令和六年の補正予算において、また更なる処遇改善のための予算を措置させていただいたところでございます。
あわせて、そういった補正予算の額がこれから支給されていきますから、そういったものを踏まえた経営実態をしっかり把握した上で適切な対応を取ってまいりたいと考えています。
○本村分科員 現場に光が見えるように、医療や介護や障害福祉を支えてくださっている皆さんに希望が見えるように、是非、大幅な賃上げ、そのための財源の担保、確保を求めて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○深澤主査 これにて本村伸子君の質疑は終了いたしました。
次に、石井智恵君。
○石井分科員 ありがとうございます。国民民主党の無所属クラブの石井智恵です。
今回の分科会では、私からも訪問介護について取り上げさせていただきます。特に、これからの高齢化社会に向けて、地域の介護をどう支えていくのかという観点で質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私自身、介護の現場で看護師としてパートで働いておりました。私の場合は、一か所のパートだけでは生活ができないので、三か所かけ持ちで仕事をしておりました。小規模多機能施設、そして特別養護老人ホームで夜勤専門スタッフ、そして訪問入浴の仕事であります。
この訪問入浴という仕事ですが、大臣、訪問入浴の現場、御覧になったことはありますか。恐らく、国会議員の方の中でも、訪問入浴の仕事を経験していたという方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。
この訪問入浴の仕事ですが、在宅で寝たきりの方をお風呂に入れてさしあげるというサービスです。御自宅の部屋まで浴槽を運んで、水道にホースをつなげて、入浴車の、車の中にあるボイラーでお湯を沸かして、そしてそのホースを使って浴槽にお湯を入れて、寝たままお風呂に入るということができるという仕組みです。
利用する方は、寝たきりの高齢者の方を始め、重度の身体障害をお持ちの方、そして気管切開をしている方、また人工呼吸器をつけている方、全身の筋力が低下したALSなど、身体を動かすことができなくなった難病の方も利用されていました。また、末期のがんの方も、終末期に自宅に帰って、そしてお風呂に入りたいという方が利用されていた場合もありました。
死の直前、最後にゆっくりお風呂につかることができたということで、御本人も、そして御家族も大変喜んでいただきました。御家族から、父は温泉が大好きだったので、生きている間に最後にお風呂に入れてあげられて本当によかったと涙を流してお礼を言っていただいたことは、私も忘れることができません。
私が働いていた訪問入浴の事業所は、残念ながら、昨年十一月に撤退をいたしました。人手不足も深刻で、経営が立ち行かなくなったことがあったからであります。
この訪問入浴を行うスタッフはかなり高度な技術が求められるため、人材確保も困難です。気管切開をしている方や人工呼吸器を装着されている方の場合は、入浴を介助する際にお湯が入らないようにしていかなければならないため、熟練したスタッフが細心の注意を払って入浴の介助を行います。一歩間違えれば命の危険さえある、そして、危険と隣り合わせで、非常に神経を使います。技術をマスターするにも時間を要します。
また、夏は汗だくの仕事となります。利用者の方を抱えてお風呂に入れるので、腰が悪くなる方も大勢います。賃金が安く、結婚ができない。また、私のように、パートでかけ持ちしなければ生活ができないという方も多くいます。そして、三人のチームで訪問入浴を行うため、スタッフが一人休めば、サービスは提供できません。多くのスタッフは、過酷な労働の中で仕事をしています。
それでも仕事を続けてきたのは、利用者の方や家族から喜んでもらえているという実感があるからでありました。たとえ腰が悪くなっても、全身汗だくでも、利用者の方の笑顔に支えられて、やりがいを持って仕事をしておりました。このような状況の中で、訪問介護は地域の介護を支えてきておりました。
しかしながら、この訪問入浴を含めて、訪問介護事業所が今経営の危機に瀕しております。利用者の方にとっては、唯一楽しみだった入浴すら受けられなくなってしまっております。懸命に働いていた介護従事者は仕事をなくしてしまっています。私は、これまで関わった利用者の方や、また一緒に働いていたスタッフの顔を思い浮かべながら、今後の訪問介護がどうなっていくのか、非常に危機感を感じております。
先日も、愛媛県の松山市内の訪問入浴事業者が行っている事業所にヒアリングを行ってきました。事業所が減って、需要はあるけれども追いつかない、人手不足が深刻で人材が確保できないということでありました。また、一日中、車を運転して、ボイラーでお湯を沸かすので、ガソリン、灯油が高騰して、コストが今まで以上にかかっているということであります。次々と訪問介護事業者が撤退をしている中で、残っている事業者の負担も大きくなっています。また、地域でカバーすることが困難となってきております。
二〇二五年一月の東京商工リサーチの調査によれば、二〇二四年の介護事業で休廃業している件数は、通所、短所入所は七十件、有料老人ホームは二十五件、そして訪問介護は四百四十八件と、圧倒的に訪問介護の休廃業が多いという結果に今なっております。
特に、地方は高齢化が進んで、団塊世代が七十五歳以上となり、介護が必要としている割合が急激に増えていますが、その一方で、介護人材の不足によって十分サービスが受けられない、自宅で介護を受けたいと思っていても受けられず、仕方なく遠くの施設に行かなければならないというのが現状です。今後、市町村で訪問介護事業所がなくなってしまうのではないかと心配している地域からの声が上がっています。
そこで、再度確認のためにお伺いをいたしますが、全国の自治体の市町村で訪問介護事業所がない自治体、いわゆる訪問介護の空白地域、今現在何件あるか、もう一度確認のために教えていただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 お答え申し上げます。
訪問介護事業所のない自治体についてのお尋ねを頂戴しました。
厚生労働省が年二回公表しております介護サービス情報公表システムのオープンデータによりますと、約百町村、そうした自治体があるものと承知をしております。
○石井分科員 ありがとうございます。
今後、ますます訪問介護事業所の空白地域が増えていくのではないかと非常に心配をしております。今まで地域内でカバーしていたところが、カバーできなくなってしまうということが予想されます。
そして、晩年、人生の最期を住み慣れた土地で迎えたい、特に自宅で最期を迎えたいという方は、令和五年の内閣府の調査では、自宅と答えた方が四五・八%、病院、介護施設は三六・三%という結果であります。自宅で最期を迎えたいとする方が約半数いる中で、訪問介護の事業は地域になくてはならない存在であります。
そこで、福岡大臣にお伺いいたします。
高齢化が進み、人口が少ない市町村で訪問介護事業を行っている事業者を守るために、地域に根差した今後の訪問介護サービスについてどのように考えられていらっしゃいますでしょうか。また、将来ビジョンも含めて、その方向性をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○福岡国務大臣 まず、委員におかれては、長年、介護の現場で献身的に御尽力いただいてきたことに心から敬意を表させていただきたいと思います。
私自身も、身内で訪問介護を受けている人間がございます。先ほどおっしゃいました訪問入浴等についても、入浴した後、本当にリラックスしてくつろいだ顔をしているということを考えると、やはり人間の生活において入浴の果たす役割というものの大きさというのを、その表情を見ていても十分感じ取れる部分でございまして、そういう部分では、本当に委員がこれまで多くの方々を支えてこられたものだということを実感しております。
その上で、今おっしゃられましたように、どの地域に住まわれる方でも、必要な介護サービスを受けられるようにするということは極めて重要なことだというふうに考えています。
訪問介護を始めとする訪問系サービスにつきましては、要介護者の在宅での生活を支える柱の一つでございまして、高齢者人口がピークを迎えます二〇四〇年頃に向けて、介護人材を確保しながらサービス基盤を確保することは大変重要な課題だと考えています。
令和九年度から開始します第十期介護保険事業計画期間に向けまして、昨年末から制度面での議論を社会保障審議会介護保険部会で開始をさせていただいたところでございます。各自治体においては、足下の介護サービスの需要であったりサービスの提供の実態などを適切に把握した上で、第十期の介護保険事業計画に反映されていくものというふうに承知をしています。
また、二〇四〇年に向けましては、サービス需要が地域によって全く異なりますから、訪問介護も含めた介護サービス提供体制や人材確保の在り方などについて、本年一月から有識者等で構成されます検討会を設け、今議論を行っているところでございまして、こうした議論も生かしながら、制度改正の議論をしっかりと進めていきたいと考えています。
○石井分科員 ありがとうございます。
是非、その目指すべき姿に近づけていきたいと私も思っているところでありますが、令和六年度に訪問介護の基本報酬が引下げとなって、訪問介護事業所は成り立たない、また、限界だという悲鳴も上がっております。
現在、厚生労働省では、訪問介護報酬の引下げの影響について調査を実施されていると思います。まさにその大詰めを迎えていると思いますが、その実態調査を踏まえて分析をし、そして、人材不足はどうしたら解消できるのか、経営難の事業所をどのように救っていくのか、対策を取っていかなければならないと思います。調査をしただけで終わりでは、解決はいたしません。
PDCAサイクルに沿って問題を解決していくために、今回の訪問介護事業の実態調査をどのように生かしていかれるのか、大臣、お答えいただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 お尋ねいただきまして、ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、今回の改定の影響について、自治体の皆様、それから現場の皆様の御協力をいただいて調査をしているところでございます。様々、とかく国会の中でも、こういう形の調査をしてほしいというようなお話もいただいておりますので、そんな議論も含めた形で、まずはそれをしっかり御用意をして、先生方に御覧いただきたいと思っています。
その上で、訪問介護を始め訪問系のサービスの抱える諸課題がございます。人手不足の問題、それから物価高騰の問題。それから、サービスを提供していただく際の形態が、地域によっても各事業所によってもかなり異なっているというふうに私どもも承知をしております。そういった多様な事業の形態ということも踏まえながら、先生がおっしゃっていただいたような、それぞれの形態に応じた、事業を継続していただくためのサポートの仕方等々も併せて検討していく必要があると思っております。
まずは現状、次いで、それを経営に生かしていくための方策、それからそれを、中小の事業者の方々が多くいらっしゃるので、その方々にどんなふうにすればお届けできるのか、そういうお届けの仕方も含めて多角的に検討してまいります。
○石井分科員 ありがとうございます。
地域の介護を支えるという点で、是非調査を進めていただきたいと思います。
次に、介護事業所の経営支援についてお伺いをいたします。
私が仕事をしていた介護施設の経営者の方は、介護事業をする前に建設業を営んでいたということでありました。このように、これまでとは全く違う業種だった方が介護分野に新入した事業者の方も多くいると思います。特に、介護事業は国から報酬を得ているということで、ある意味保護されている点において、安定して経営ができると思って新規参入していた事業者の方もおられたと推察しています。
しかし、コロナ禍において介護事業は急激に人が減り、更に追い打ちをかけるように、物価高騰、ガソリン価格の高騰によって経営に行き詰まっております。また、介護事業は人が相手でありますので、その人間関係が複雑に絡んでいるところもあります。認知症の方の対応も非常に難しくしております。
このように、私、介護現場で働いていたときに感じたことは、この厳しい経営環境の中で、介護業界の経営者、管理者の人材マネジメントスキルをやはり身につけていくことも必要であると思います。また、倒産する前に、まずは財務管理をしっかり行っていけるような経営手腕を身につけていくことも必要だと感じております。
そこでお伺いしますが、経営悪化を防ぐためにも、介護分野における専門的なマネジメント支援、そしてまた財務管理などの支援について、対策や方針について教えていただけますでしょうか。また、今後の新規参入を促進するための方法としてどのようにお考えになっているのか、教えていただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 御質問いただいて、ありがとうございます。
まさにこれから長引く人手不足がある、それから、物価が上がっていく、利用者の方々はたくさんいらっしゃる、この様々な制約条件の中でどのようにしてニーズに対応しながら事業として継続していただくかというのは非常に重要でして、そういう意味では、右肩上がりで利用者の方が増えてきて、人材もこの分野にたくさん来ていただいた時代とは違った形の経営の在り方という視点は非常に重要だと思っております。
訪問介護につきましては、昨年末に成立をいたしました補正予算の中で、都道府県が契約をしたコンサルタントの事業者の方々が地域の中小の事業者の方々を巡回をしてサポートをするというようなメニューを盛り込んでおりまして、そういったことも考えられるかと存じますが、先生御指摘の点は、訪問介護に限らず、介護分野全体に共通する話でもあろうかと思います。
先ほど大臣から申し上げた第十期に向けた審議会それから検討会の検討の中のテーマの一つに、まさに先生おっしゃってくださった経営に対する支援、あるいは経営に関する知識といいますか、そういうものをどうやって広げていくのかということが論点の一つとしてあるというふうに私ども承知をしております。
一方で、皆様、大変お忙しい中で事業を営んでいただいているということもございますので、端的に伝わるようにという要請と、それから必要な知識が伝わるように、この両面で、事業者の方々の御意見も伺いながら、効果的で、過度な負担にならないような方法を検討してまいります。
○石井分科員 ありがとうございます。
非常に経営が厳しい中、経営者の方も苦しんでおられると思いますので、その点、サポートをしっかりとよろしくお願いいたします。
次に、人材確保についてお伺いいたします。
今現在、人材不足、非常にどこの分野も深刻化しておりますし、また、給料を上げることも重要な課題であって、私たち国民民主党もそのことは公約の第一に掲げております。しかし、給料が上がっても、その仕事に魅力がなければ、やはり人はそもそもその職業を選びません。魅力ある仕事として、介護職を選べるような環境づくりも今後必要だと思っております。特に、将来性のある仕事として選択してもらえる、キャリアアップ支援を力を入れていく必要があると思っております。
例えば、介護現場で働きながら、更にリハビリや理学療法士、また作業療法士などの資格を同時に取得することができるような支援を行う、また介護の大学や介護福祉士の養成学校で教員になれるようにサポートをしていく、また介護の専門技術を海外で教える人材を育成をしたり、そして介護業界のマネジメントを行う人材を育てたり、また将来的には自分で介護事業を立ち上げていくための起業支援をするなど、介護現場で働いていた方がそのスキルを生かして更なるキャリアを積み、そしてやりがいのある職業として活躍する人たちを増やしていく。このようなキャリアデザインを国が示し、そして介護職が選ばれるような取組も今後必要なのではないかと考えますが、今後の取組の中にこのような視点を入れていただけないでしょうか。
○黒田政府参考人 御質問ありがとうございます。
まさに、介護分野の職場、訪問介護を含めて選んでいただくためには、若い世代の方々も含めて、ここの分野で成長していける、将来のキャリアのイメージが築けるということが大変重要だと思います。
一方で、この分野は、例えば非常勤の方が非常に多くて、こういった方々がもし常勤になりたいというふうに願ったときに、それを応援できる仕組みがあるのかという課題もございます。
昨年末に成立しました補正予算の中では、まず常勤化を支援するというようなメニューも入れておりまして、まず先生のお話の取っかかりとしてそういうこともあろうかと存じますが、同時に、その先のキャリアのイメージ、これは一つではない、いろいろなものがあるというふうに承知をしておりますが、例えば、地域の様々なシニアの方々とつながって地域づくりをするというようなキャリアもあるでしょうし、その専門性を生かしてほかの分野と連携をしていくということもあると思います。そうした多様なキャリアの在り方については、私どもが現場の方々とお話を伺って、肉づけをしてまいりたいと思います。
なお、先生御案内のことと思いますけれども、介護現場発で介護職の魅力を発信をする取組が幾つか行われております。例えば、介護プライドという取組がございますが、これは、クリエーターの方々と介護職の方々が共同して、この分野のすばらしさというものを異分野連携で発信をしていくというような取組が進められておりまして、そういう取組と自治体の取組がタイアップをして、この分野を志す方を増やしていきたいというような取組もございまして、一定の成果を上げていると承知をしております。
私どもも知恵を絞ってまいりますし、現場発の発信にも期待をしながら、取組を進めてまいります。ありがとうございます。
○石井分科員 ありがとうございます。
若い方がこれから介護職を選ぼうと思ったときに、その先のキャリア、十年後、二十年後、三十年後、自分はどうなっているのか。その先に自分の夢がかなえられるような、そういったイメージを持てるようなキャリアデザインを是非国の方でも示していただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
そして、今度は介護分野のデジタル化についてお伺いしたいと思います。
現在、人材不足や介護従事者の負担を軽減をしていくために、介護テクノロジーへの支援として、経済産業省では介護ロボットの開発などにも力を入れていると思います。この介護ロボットの市場は年々成長をしておりまして、二〇二五年には市場規模が一千億円を超えるとも言われております。
介護ロボットは、移乗支援、そしてまた移動支援、また排せつ、見守り、入浴支援など、身体的な負担を軽減するものから、高齢者の方との会話ができたり、コミュニケーションを図るロボットも今開発をされていると存じております。
しかし、この介護ロボット、コストがかかったり、また使いこなすまでに技術サポートが非常に必要だったりということで、課題もあるかと思います。介護ロボットの開発に関しては、より多くの方が利用できるよう、取扱いがしやすく、コスト面でも導入しやすいロボットも開発していく必要があると私は考えております。
今現在の介護テクノロジーの開発支援状況や、またその進捗状況、そしてまた今後の将来ビジョンについて、こちらは経済産業省の方にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○江澤政府参考人 お答え申し上げます。
介護機器の開発支援と、それからソリューションの提供ということで御質問をいただきました。高齢化の進展と社会保障費の増大、介護人材の不足といった社会的課題を解決するためには、介護する側の生産性向上、また負担の軽減、介護される側の自立や社会参画の促進に資する介護テクノロジーの開発が求められていると考えております。
経済産業省では、これまで百二十五件の介護テクノロジーの開発及び改良の支援を行いまして、うち三十五件が実用化につながっております。
ソリューションについては、更に現場の改善を加速化するために、その必要性に鑑みて、介護テクノロジーの開発及び普及をモデル的に推進する事業を今年度の、令和六年度の補正予算として十九億円で立ち上げたところでございます。
経済産業省としては、この予算もしっかり活用しつつ、厚生労働省と連携して、デジタル技術の進展動向や介護現場のニーズ等を踏まえて、介護テクノロジーの開発、普及を促進してまいりたいと考えております。
○石井分科員 ありがとうございます。
この介護ロボット、私たち、これまで介護業界で働いていた者の一人としては非常に期待をしておりますし、やはり同時に、非常に高いんじゃないかとか、なかなか導入しにくいんじゃないか、取扱いは難しいんじゃないかというふうに不安を持っております。より多くの人たちが利用できるようにしていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
また、この介護ロボット、先ほども申し上げましたように、より多くの事業所で活用ができるようにしていくために、例えば介護保険給付の制度の見直し、また制度改革、また補助金、介護テクノロジーを普及していくための課題や方向性について、また今後、厚生労働省でも取り組んでいかなければならないと思いますが、そういった面について教えていただけますでしょうか。
○黒田政府参考人 お答えいたします。
先ほど経産省から技術開発に関する取組、御紹介がございましたが、そうした技術自身が現場の方々から見たときに使いやすくて導入しやすいという形になっていくことも必要です。同時に、この分野に多くの例えばベンチャー企業ですとかの方々も含めて関心を持っていただき、それが介護の現場と共同して開発につながっていくということが非常に重要です。
私どもは、各都道府県にワンストップ型の介護テクノロジー導入の相談窓口の設置を目指しまして、今順次拡大をしてございますが、そちらの相談窓口は、既存のものに触れていただいて導入支援するという機能と、あわせて、新しいテクノロジーの開発に向けて現場の方々それから開発をやってみたいという方々が共同するという場所、その二つを併せ持つ形としてワンストップ窓口の機能拡充を図っていきたいというふうに考えております。
導入に当たっては、様々、現場の仕事の組立てを変えなきゃいけないという面もございまして、入れる前の準備、それから入れた後に一時的に業務負荷が増える、これへの対応等々、きめ細かいサポートが必要だというふうに思っています。ワンストップの窓口自身が、一方では新しい技術の開発を応援をする拠点であり、それから既存のテクノロジーを導入する前、後、その後ということについてサポートができる拠点になるように、現場の方々の御意見もいただきながら機能を充実してまいりたいと存じます。
ありがとうございます。
○石井分科員 是非期待したいと思います。
今、介護ロボットも、やはり施設、大規模施設が導入のことを考えていると思いますけれども、これからの在宅介護、いろいろな御家庭がやはり少し負担を減らせるように、介護ロボットなども活用ができるような開発を是非進めていただきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
そこで、これまで訪問介護などについて、私、質問させていただきました。先日、二月二十五日に総理官邸で、医療、介護、障害福祉の分野で課題となっている人材不足やまた賃上げについて、介護施設の経営者の方と車座の対談を行っていたと思いますが、福岡大臣も同席されていたということですが、やはりこの経営者の皆様からどのようなお悩みやどのような課題をお話をされているのか、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
○福岡国務大臣 今、どこのところも大変人材不足に悩んでおられます。ただ、その中で、先生と同じように、やはりサービスを受けていらっしゃる方のことを考えたときに、しっかりそのサービスを質を保ちながら維持していく必要があるという認識は皆さんお持ちのところでございまして、そういった中で、例えば今、事務負荷とかがかなり大きくなっている、そういったものをICT化することによって、そういった事務負担の軽減を図ること、そういったことがひいては処遇の改善につながるんじゃないかみたいな御提案等をいただいてきたところでございます。
様々、それぞれ工夫して先進的な取組をしておられます。ですから、そういった方々のそういった事例をまた皆様方に共有していただいて、当然、施設とかによってそれぞれ状況は違うと思いますが、こういうこともあるんだということを皆さんで共有していただいて、そういった取組が進んでいくような、そういう環境整備に努めてまいりたいと思います。
○石井分科員 ありがとうございます。
今回の議論を踏まえて、私自身も介護の経験をしておりますし、また介護事業者の方や介護職員の方、そしてこれから介護を目指す若い方に向けて、是非、大臣から何か力強いメッセージをいただけたらと思いますので、何か一言お願いいたします。
○福岡国務大臣 委員御指摘がありましたように、やはり、これから若い方が将来のキャリアアップも含めて、夢を持ってこの世界に入っていただける、そういう環境をつくっていくということは極めて重要だというふうに思っています。
私もいろいろな方と御意見を聞く中で、それは、当然処遇とかについてはいろいろな思いはあられますが、やはり現場でそうやって働く中で、多くの方がそういう喜びを感じて、安らいだ顔だったり、そして、ありがとうという言葉、そのやりがいを皆さん感じていらっしゃる。それが、ただ、なかなか、若くてこれからそういったところに入っていこうという人に十分伝わっているかというようなところについては、まだ課題があるというふうに思っています。
そういった意味で、委員が御指摘いただいたように、なるべく多くの方に夢を持ってこの分野に働こうと思ってもらえる環境整備、それは大変重要なことだと思っていますので、そういった発信にも努めてまいりたいと思います。
○石井分科員 ありがとうございました。前向きな答弁を本当に心強く思っております。
私、これまで訪問介護の仕事を行っておりまして、実際に、介護施設やまた訪問介護を通して、高齢者の方といろいろお話をさせていただいたり、その御家族とお話をさせていただいたことがありました。特に私が非常に思い出深いのは、高齢者の方が昔話をしてくださったり、そしてまた戦争で本当に大変だった思いをお話しいただいたりとかいうことで、これまで生きてこられた先人の方の思いというものを、やはり介護を通して教えていただきました。そういった経験というのは非常に貴重だなというふうに思っています。
これから、やはり、若い方が高齢者の方と交流をする、また、お話をしたり人生の経験を学んだり、そういったときに介護という仕事を通して世代間交流をより促進をさせていく、そういった場になればなというふうに思っています。
特に、これから子供たちも、やはり介護の仕事の魅力についても是非伝えたいなというふうに思うんですね。なかなか今、核家族で、そしておじいちゃん、おばあちゃんと暮らさない子供たちも増えてまいりました。そして、おじいちゃん、おばあちゃんの介護をしている姿を見る機会も少なくなってまいりました。そういった子供たちにも、みとりであったり、そして介護の様子というものも伝えていきたいと思います。
若い方と高齢者がいかに交流をし、そして、人生の最期を迎えるときにどんなふうに自分が最期を迎えたいのか、これは介護を通して学んでいくことだと思います。是非、若い方にとって、介護の魅力、そしてまた、人生を考えていく上で、介護そしてまた最期のみとりが非常に大事で、そして、人が亡くなる瞬間というものを是非とも多くの皆さんに知っていただいて、自分がどうやって生きていこうか、そして、その死を通して生きていくことを考えていく機会になる、そういった介護の魅力というものを私も是非伝えたいですし、また、厚生労働省の方でも介護の魅力を伝えていただきたいと思います。
そして、介護現場は一生懸命みんな働いております。是非、その人たちのためにも、今後の支援を何とぞよろしくお願いいたします。
以上、私からの質問をさせていただきました。誠にありがとうございました。
○深澤主査 これにて石井智恵君の質疑は終了いたしました。
次に、阿部圭史君。
○阿部(圭)分科員 日本維新の会、衆議院議員の阿部圭史でございます。
大臣、連日の委員会出席、大変お疲れさまでございます。
大臣のお疲れに比べたら全く大したことはないんですけれども、私も、本日、早朝、朝までパソコンに向かいながら質疑をずっと書いていたということもございまして、肩と背中が結構ぱんぱんということもあって、今日はサロンパスを貼ってまいりました。私はいつも、結構、ストレートネックじゃないですけれども、パソコン作業をしていますので、大変お世話になっているんですね。こういった湿布というのは非常に私は大事だと思っております。
大臣、通告にはないですけれども、サロンパスを使ったことはございますでしょうか。もし、効果とか、御感想がございましたら、言っていただければと思います。
○福岡国務大臣 当然使ったことはございますし、貼付剤というのは世界の中でも日本がかなり先進的な取組をしている、そういう分野で、私も、あちこち痛むときには貼付をさせていただいているところでございます。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。
まさに、このサロンパス、大臣の御地元の佐賀県に本拠地がございます久光製薬の看板商品でございますけれども、サロンパスはOTC医薬品ですね。薬店、ドラッグストアなんかでお求めいただけますということでございます。
OTC医薬品ということで、早速質問に入らせていただきたいと思っております。
三日前の二月二十五日の火曜日に、自民党、公明党、日本維新の会の三党で合意書が締結されました。この合意書では、現役世代に過度に偏った社会保険料負担を軽減するために、社会保障改革のための協議体をつくり、次の四つを含む項目を実行するということになっております。一つ目として、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し、二つ目、現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底、三つ目、医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現、四つ目、医療・介護産業の成長産業化。
そういったことで、先ほど私が申し上げた優秀なサロンパスは処方箋不要のOTC医薬品でございまして、医療機関からもらう処方箋の要るOTC類似薬の湿布とは何が違うんだということだと思っております。私も医者としての視点から申し上げますと、そんなに違いはないということだと思っているんですね。なので、同じであるのであれば、なぜ保険給付で行う必要があるんだというのが、非常に単純化した構造でございますけれども、OTC類似薬とOTC医薬品の在り方の違いということだと思います。
政府はこれまで、OTC類似薬については、湿布の処方限度枚数を、私も厚生労働省の職員をしていた際に中医協の事務局として携わりました平成二十八年度診療報酬改定、これで七十枚まで限定するという施策が行われました。追加して、令和四年度の改定では一処方につき六十三枚まで、こういった形で減少させてきております。また、平成九年から平成十五年の間には、薬剤一部負担制度、薬に対して一定程度の額を、定額を払うということが行われてまいりました。
こういった、これまで厚生労働省が行ってきた施策は、今般のOTC類似薬の保険給付範囲見直しといわば同様の趣旨と考えられる施策ではないかと思っております。これらの施策を実施してきた趣旨、そして経緯について教えていただければと思います。
○鹿沼政府参考人 事実関係について御説明いたします。
これまでも厚生労働省におきましては、医療保険制度の持続可能性の確保を図る、こういった趣旨から、随時、薬剤給付の見直しを行っているところでございます。そういう意味で申しますれば、今合意されたところの内容と共通するところがございまして、いかに医療保険制度の持続可能性を保つために医療給付の適正化を図っていくか、こういった観点から実施しているものだと思っております。
湿布薬につきましては、先生がおっしゃられましたように、平成二十八年度の診療報酬で一処方につき原則七十枚、令和四年度では処方制限を原則六十三枚、また、平成九年九月から平成十五年三月まで、薬剤の種類に応じて一定の負担額を求める薬剤一部負担制度を実施してきた、こういったものでございます。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。まさに医療保険の持続可能性を担保する、そのための適正化ということだと思っております。
自民党、公明党、日本維新の会の三党合意では、三党の協議体においてOTC類似薬の保険給付の範囲の見直しなどについて行うこととしております。
その上で、政府がこれまで行ってきた、先ほど御説明いただいた湿布の処方限度枚数削減や薬剤一部負担制度については、今回の三党合意では三党の協議体でしっかり議論するということになっておりますけれども、これまではどのような政策決定手続で行ってきたか、御説明をお願いいたします。
○鹿沼政府参考人 これまでの見直しの議論の経緯につきましては、私ども、いろいろ議論をいたしまして、そういった中で、結果的には、中央社会保険医療協議会、こちらの方にお諮りをしながら議論をさせていただいたり、また、物によっては医療保険部会にお願いするということもあったか、そういうふうに思っております。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。
今、中医協、医療保険部会というお話が出ましたが、やはり、診療報酬の改定、こういったものをめぐる議論については中医協でこれまでされてきたという経緯があると思います。
そこで、療養の給付に関する厚生労働大臣の決定と中医協の諮問と答申の関係について御質問いたします。
今般、三党の協議体において予算編成や診療報酬改定を含む様々な医療改革の議論を行う、こういった形で書いております。そこで、改めて私の方で、健康保険法と社会保険医療協議会法を確認いたしました。
健康保険法の七十六条二項、ここには、療養の給付に要する費用の額は厚生労働大臣が定めるところにより算定するとなっております。同法の八十二条一項では、厚生労働大臣は、先ほど定めると言ったものについて、これをやるときには中央社会保険医療協議会に諮問をするということになっております。
翻って、社会保険医療協議会法の二条一項では、中央協議会、すなわち中医協ですね、これは、厚生労働大臣の諮問に応じて審議し、及び文書をもって答申するという形になっております。
このように、厚労大臣は通常は、療養の給付について中医協に諮問し、その答申を受けて定めるという形になっているわけです。一方、これはあくまで諮問をして答申を受けるだけですので、必ずしも全てにおいてそれに基づいて定めねばならないというわけではないとも解釈できるというふうに思います。
この解釈について、厚生労働大臣の見解をお伺いいたします。
○福岡国務大臣 今、様々な条文について御紹介いただきました。
診療報酬改定につきましては、予算編成過程を通じて内閣が改定率を決定し、審議会が策定した基本方針に基づき、中医協で具体的な点数の審議を行うといったプロセスを経て検討することとしています。
その具体的な診療報酬の点数や算定要件につきましては、厚生労働大臣が定める場合は、健康保険法等において、あらかじめ中医協に諮問し、中医協は厚生労働大臣に答申することとされております。
このように、健康保険法等において中医協に諮問すべきものとされている事項については、これまでも中医協の答申を踏まえて実行をしているということでございまして、そういった必要があるというふうに認識しています。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。必ずしも全てについてということについては直接的にはお答えいただけませんでしたけれども、解釈上はそういったことも可能なのではないかというふうに私は思っております。
保険給付範囲の見直しということでお話をいたしましたので、その文脈で、昨年十月に厚労省が実施しました先発品と後発品の差額に関する選定療養についてお伺いいたします。
後発品がある薬剤については原則として後発品を使うべきだということで、患者の希望、これが今大きいわけですけれども、これで先発品を使いたい場合、その価格差の四分の一は自己負担してくださいねという制度ですね。
この施策に関連して、三点お伺いいたします。
一つ目は、これを実施した趣旨。二つ目が、差額四分の一の根拠。三つ目が、この施策の今後の方向性についてです。特に三つ目の点については、この施策を検討した医療保険部会の資料で、価格差の少なくとも二分の一という案も提示されていますので、価格差のうち自己負担分については、現在の四分の一から今後拡大を進めるという方向だと理解をいたしました。
この三点について、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 まず、趣旨といたしましては、医療保険制度の持続可能性を確保するとともに、医薬品のイノベーションを推進する観点から、長期収載品に、選定療養の対象とし、昨年十月から施行させていただいたところでございます。
具体的には、患者さんの希望によりまして長期収載品を使用した場合には、長期収載品と後発医薬品の価格差の四分の一相当を患者さんから徴収することとしてございますが、これは、関係審議会における割合についての御意見を踏まえつつ、更なる後発医薬品への置き換えや創薬イノベーションの推進を図る観点から、患者さんの負担水準、また、メーカーによる薬剤工夫など先発医薬品の付加価値等への評価、また、後発医薬品の供給状況といったことを考慮して設定したものでございます。
今後につきましては、予断を持ってお答えすることはできませんが、今回の見直しに伴います患者さんの動向であったり、後発医薬品への置き換え状況、医療現場への影響も含め、その実態を把握し、必要な検証を行った上で、創薬イノベーションの推進や後発医薬品の使用の促進という長期収載品の選定療養化の趣旨を踏まえた更なる活用を検討してまいりたいと考えています。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。
資料には少なくとも二分の一ということで、厚生労働省の資料としてはスコープに入っているということだと理解をしておりますので、今後また議論をさせていただきたいなというふうに思っております。
次に、高額療養費制度についてお伺いいたします。
私は、この高額療養費制度というのは、国民皆保険制度の中での中核中の中核だと思っております。私も患者だったときもございますので、やはりその必要性ということについては深く理解をしているつもりです。
日本維新の会は、患者目線であることを重視しております。したがって、医療改革の文脈では最後に手をつけるべき制度であると考えています。
高額療養費制度の自己負担限度額引上げの前に多くのやるべき改革があるのではないかというふうに考えておりまして、例えば、大臣もお会いになられました全国がん患者団体連合会もこのように述べています。高額療養費制度は重要なセーフティーネットであることから、医療費削減に資するほかの代替手段、例えばOTC類似薬の保険給付見直しや、いわゆる無価値医療、風邪に対する抗菌薬治療など健康上の利益に関するエビデンスが乏しい医療の保険収載からの除外などを検討した上で、最後の手段として高額療養費の負担上限額引上げを検討すべきである、このように述べていらっしゃいます。まさにそのとおりだと思いますね。だからこそ、我々は、三党合意に基づきまして、堂々と医療改革を進めていかねばならないというふうに思っております。
昨日、我が党の前原誠司共同代表は、高額療養費制度の自己負担限度額引上げについては、日本維新の会は原則反対であるということを述べました。国民生活の維持発展という観点や、我が党の政策が三党合意として組み込まれた点に鑑みて、大局的な視点に立って予算案に賛成するとしても、予算案の個別項目全てに賛成しているわけではないという点を留保したいと思います。
今般の政府修正案は、全がん連及び難病協議会の要望書を反映するとともに、十二月に厚労省に提出された当初の患者団体案を受けて立案をされたものだと理解をしております。この政府修正案は依然不十分ではないかというふうには考えておりますが、患者団体自らが一案として示した当初の患者団体案と比較した場合には、更に踏み込んでいるということもありまして、患者目線を重視するべく、政府は当初の姿勢を改めたとも言えると思います。
その点について、二月二十一日の難病協議会の緊急声明は、政府の姿勢の変更を高く評価するというふうに記載をされていらっしゃいます。政府が患者目線の姿勢に改めたこと、すなわち多数回該当部分の負担額は据え置くこととしたことは、一定程度多とするものです。しかし、多数回該当部分の、ここ以外のところについては、政府修正案は依然不十分であると言えるんだと思います。
昨日来、報道において、政府は、今般の高額療養費制度の自己負担上限引上げについて全般的に見直すというふうに出ております。その点について、大臣の御見解をお聞かせください。
また、あわせて、これは私が思うところですけれども、今後は、医療保険部会において高額療養費制度の議論を行う際には部会の審議に当事者の方に入っていただくなど、何らかの措置が必要なのではないかと思いますけれども、大臣の見解を併せてお聞かせください。
○福岡国務大臣 まず、委員がおっしゃるように、国民皆保険を支える大事なセーフティーネットの中で、高額療養費が果たしている役割というのは極めて大きいものがあるというふうに思っています。この後の次の世代に向けても、このすばらしい制度を維持していかなければいけないという思いは一緒でございます。
その中で、御承知のとおり、今、高額薬剤等の普及もございまして、かなり高額医療費の伸びが普通の医療費の伸びを大きく上回っているという状況の中で、保険料を負担している方々の、そういった保険料負担のことも、保険料負担の削減については御党も御提唱されている話でありますから、そういったことも勘案して、私どもとしては当初の案を示させていただいたということです。
ただ、国会の御議論もありまして、当事者の声を聞くべきだというようなお声をいただきました。そういった総理の指示も踏まえまして、私も患者団体さんとお会いさせていただいた中で、多数回該当についての見直しを表明させていただいたというところでございます。
今後の在り方、私どもとしては、審議会の議論をしっかり踏まえて結論を出したというふうに思っていますが、今後の意思決定においては、今おっしゃられたように、当事者の声をもっと聞くべきじゃないかというようなお声をいただいていることも確かでございます。今後の審議において、どういった形で聞くかということは今後また検証してまいりますが、しっかりそういったお声を受け止めるような仕組みということは大事だというふうに私も認識をしているところでございます。
そして、昨日からの報道については、報道があることは承知していますが、一つ一つの報道について、それがどうだということのコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、高額療養費、今医療を受けていらっしゃる方の負担感と、この制度を将来にわたってどうやって持続させていくか、そのバランスの中でしっかりと答えを見出してまいりたいと考えています。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございました。しっかり当事者の声を聞いていただきたいというふうに思っております。
次に、製薬産業の振興についてお伺いをいたします。
資料を御覧ください。これは厚生労働省が出していらっしゃる資料ですけれども、ドラッグラグ、ドラッグロスの実態ということで書いておりまして、一ページ目、欧米では承認されているが日本では承認されていない医薬品、いわゆる未承認薬は百四十三品目あるとされていて、このうち、国内でまだ開発がされていない未着手の医薬品は八十六品目となっています。半分以上ですね、六〇%以上。ということで、ドラッグラグ、ロスが発生しているとされておりますが、ここの五六という数字を御覧いただきたいなと思っておりまして、やはり今、産業形態が変わっておりまして、バイオテックですね、バイオベンチャーが開発したものを大手が買って、より大きく育てるというようなビジネスモデルにだんだん変わってきております。
そこで、私も、海外のバイオテックの方々なんかからお話をお伺いしまして、日本に参入するという観点についてはどういうふうに考えているのかということをお伺いをしました。そうしたところ、彼らが大体言うのがこの三つです、この三つの観点から非常に参入しにくいと。アンプレディクタビリティー、要するに予見可能性がない。二つ目、プロフィタビリティー、利益を確保できない。三つ目、フリークエンシー、頻繁過ぎる。
要するに、毎年薬価改定ですとか市場拡大再算定ですとか、そういったことで、この三点の観点から非常に市場への参入障壁が高いというふうにおっしゃっておりまして、これを放置しておくと、なかなか日本市場としても厳しい状況が続くんじゃないかなというふうに思っております。
おめくりいただきまして、次の資料でも、やはり、この青いグラフ、売上高のシェア、医療用医薬品の日本起源の品目の世界シェアは、一二・一%から九%に二十年間で下がっているということでございます。
その次の資料、医療用医薬品世界売上げ上位百品目の国別起源比較ということで、日本のところを見ていただきますと、これはほかの国と比べてありますが、その次に、私の方で精緻化して作った資料がございまして、毎年二%、日本起源のものが上位百品目から減っていっているというようなグラフになっております。
これはまさに日本市場の魅力が低下しているということだと思いますが、厚労省の産業振興、これについての方針と意気込みをお聞かせください。
○内山政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、海外で使用されている有用な医薬品が日本で使用されていない、いわゆるドラッグロスの解消、これは国民の健康を守る観点からも重要な課題であるというふうに認識してございます。このため、研究開発から薬事承認までのプロセスや薬価の評価まで、これを各段階で見直しを行っていく必要があるというふうに考えてございます。
これまでも、海外で臨床開発が先行する中で、国際共同治験を実施しようとする場合、国際共同治験の開始前に実施を求めていた日本人の第一相試験を原則として不要とする見直しなどを行ったほか、令和六年度の薬価制度改定においても、革新的医薬品のイノベーションの適切な評価等を行ってきたところでございます。
加えて、より活発な創薬が行われる環境整備のため、まさにアカデミアや、先生御指摘のスタートアップ、ベンチャー、製薬企業等が相互に連携して創薬に取り組むようなエコシステムの構築を官民挙げて進めていく必要があるというふうに考えてございまして、今国会においても必要な法律案を提出しているところでございます。
このような取組を通じまして、日本の医薬品市場の魅力を向上させ、海外企業が日本市場に参入していただけるように、そうしたことにつなげていきたいというふうに考えてございます。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。
今、様々施策を述べていただきましたけれども、総体として、しっかりと産業振興策を頑張るんだということなんだと理解をいたしました。
ですけれども、やはりビジネスをしていく上で値決めというのは非常に重要でして、自分で価格が設定できるかというのは企業経営において非常に重要な点です。
ただ、医薬品市場においては公定価格でございます。近年の診療報酬改定では、ここで薬価が決まるわけですけれども、大体の慣行として、全体の改定率はマイナスにする、それで、本体部分、技術料ですとか人件費に当たる部分についてはやはりプラス改定になり、薬価等の部分でぐっと下げる、こういった慣行が続いています。
やはり本体部分、人件費の部分も非常に厳しいので、これは重要なことなんですが、薬価等で帳尻を合わせるというのは限界があるんじゃないかと私は思っております。これは創薬ですとか産業振興の観点から非常に逆行するものだと思っているんですね。
その点について、この矛盾について大臣の見解をお伺いできればと思います。
○福岡国務大臣 これまでの診療報酬改定においても、薬価を引き下げる代わりに診療報酬を引き上げるという考え方で、本体を引き上げるという考え方で改定を行っているわけではございませんで、診療報酬改定と薬価改定は、それぞれに必要な観点から改定率を決定しているものでございます。
診療報酬改定については、先ほど要因をおっしゃいましたように、物価高騰だったり賃金上昇、そして経営の状況、人材確保の必要性、患者負担、保険料負担への影響も踏まえて、患者さんが必要なサービスを受けられるようにする観点から改定率を決定したところです。
令和六年度薬価改定については、市場実勢価格を踏まえた上で薬価を改定することを基本としながら、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進の観点から改定率を決定したものです。
委員と問題意識を共有する部分もありますが、実際に、やはり薬価、患者さんが負担していただいている部分と、実勢価、取引されている価格との差があるということは事実でございまして、そこをどう考えるかというのは一つ大きな課題だと考えています。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。
やはり、単純な自由市場ではないんですね。非常に差配が難しい領域だとは思っておりますので、また継続的に議論させていただきたいと思っております。
私は、製薬産業というのは防衛産業と非常に似ているというふうに思っております。公定価格の統制経済で、基本的には政府が利幅を設定する。その上で、企業が企業努力でコスト削減を行った場合にも、例えば防衛産業の場合は、利益が拡大しているのではないかということで、ぐっとまた利幅を抑えるわけですね。これはまさに薬価の乖離率と同様の議論だと思っております。
そのような慣行を続けていた結果、防衛産業は全くもうからない、事業として成り立たない、お国のためと言われても、かすみを食って生きているわけじゃないということで、様々な企業が防衛産業の事業から撤退をされていらっしゃいます。
こういう状況では、我が国の国防、まずいじゃないかということで、初めて、こういう状況になってから、防衛装備庁をつくったり、武器輸出三原則を改めて防衛装備移転三原則としたり、国家防衛戦略で適正な利益を確保するための新たな利益率の算定方式を導入すると述べて、利幅のパーセンテージを八%から最大一五%ぐらいに引き上げたという経緯があります。企業の事業体力をつける施策をやったということですね。
国家の安全を守るのが安全保障、国民の安全を守るのが社会保障、そういった観点で考えますと、私は、製薬産業は第二の防衛産業になってはならないというふうに思っています。製薬産業と防衛産業は相似形を成している、こういった思いの中で、福岡大臣の防衛産業に対する見解がもしございましたら、是非お聞かせください。
○福岡国務大臣 済みません、防衛産業の現状について詳細を把握してございませんため、なかなかコメントはしづらいですが、今、医薬品産業については、日本の市場の魅力を向上させることは大変重要だと考えています。先ほどおっしゃいましたように、やはりドラッグロスみたいな形で、海外では使える薬が日本で使えない状況がある、また、日本の製薬企業の創薬力が長年、長期的に見たときに低下傾向にある、こういったことについてはしっかり対応していく必要があるというふうに考えています。
そういう意味では、産業界ともよく意見交換しながら、官民で協力して、より活発に創薬が行われる環境整備に取り組んでいきたいと考えています。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。
やはり、厚生労働省の所掌範囲ということで、医薬品の部分について所管をされているわけですけれども、そこだけ、一産業だけ見ていては、どうにもこうにも解決策がないというふうに私は思っております。やはり、大臣、国家の経営陣として取締役会にいらっしゃるわけですね、内閣は。そういうことで、医療産業を超えて是非見ていただいて、ほかの産業で行われていることも取り入れていただきたいなというふうに思っております。
次に、アメリカのWHO脱退をめぐる国際政治についてお伺いいたします。
私、WHOに勤務していたこともございまして、当時、トランプの第一次政権ということで、まさに脱退するという中で私は働いておりました。その際に、アメリカ人の同僚も、本当に大わらわということで、私はいつ出国したらいいんだということをいつも話をされていらっしゃいました。そういった中で、やはり話に上りますのが、今回もだと思いますけれども、アメリカのWHO脱退に際して、我が国の分担金や拠出金を上げてくれということでWHOが言ってきたりですとか、原則、そういったことには乗らないことが大事かなというふうに思っております。
むしろ、こういった混乱の状況をチャンスとして、WHOの不要な部署の削減を迫るなど、組織改革を徹底することが重要だと思います。これは国際機関の常なんですけれども、いわゆるミッションクリープといいまして、そもそも、当初の設立目的に沿わない事業ですとか部署をどんどん増やしていく傾向があります。これは、WHOに限らず、国連全体もそうですし、国連以外の国際組織、国際機関もそうですね。ですので、こういった習性を頭に置いた上で、どういうふうにやっていくかということだと思いますが、WHOは平時系の部署と危機系の部署というのに分かれます。平時系の部署では、我が国の国益という観点では不要と言えるのではないかという部署もあると思いますので、是非精査をお願いしたいと思っております。
今日は松本政務官にもお越しいただいていますけれども、先般、外務省が、国連の女性差別撤廃委員会が男系男子の皇位継承を定めた皇室典範の改正を勧告したことへの抗議として、拠出金を出さないというふうに判断をされましたが、外務省の対応はすばらしかったと思います。
やはり、私、元国連職員として申し上げますけれども、国連はあくまで主権国家に奉仕する存在なのであって、国益に資さないのであれば、積極的につき合いをやめるとか、廃止の方向に持っていく、そういったことは重要だと思っております。
一方で、WHOの場合は、パンデミック等の危機時には我が国の国益のために機動的に拠出する必要が生じる場合があるというふうに思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。
○福岡国務大臣 今御指摘がありましたように、国際的な保健課題には国際社会が協力して対応していく必要がございまして、厚生労働省としては、WHOが保健をつかさどる国連の専門機関として、その専門性を生かし、科学的知見に基づいて国際保健分野の諸課題の解決に向けて活動していくことは大変重要だと考えています。
その上で、WHOに対する任意拠出の在り方につきましては、WHOの意義、役割や、我が国の財政状況を踏まえ検討する必要があるというふうに思っておりまして、厚生労働省としては、国際保健の中核機関であるWHOの重要性は認識しつつも、今おっしゃられたみたいに、例えば、肥大化した事業の重点化だったり効率化などの改革を求めていく必要があるんじゃないかといった観点であったり、また、日本が優先する感染症健康危機対策やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進など、そういった着実な施策というのをしっかり要求しながら適切に対応していくことが必要だというふうに考えています。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。是非やっていただきたいなというふうに思っております。
ただ、今回のアメリカのWHO脱退をめぐる話の中で私自身が最も大事だというふうに考えておりますのが、台湾のことでございます。WHO予算の中で、これは人件費も含まれると思いますね。WHOへのオブザーバー参加というのがございますが、これは台湾にとって国際社会へのゲートウェーになっているわけです。私もWHOにいた際に国際法の部門にいたこともございまして、これは見てまいりました。
WHOへのオブザーバー参加はWHO憲章に基づいて議論されるんですけれども、WHOの法務部は、台湾のオブザーバー参加に関するWHO憲章等の国際法に係る解釈権を有しています。現在、WHOの法務部はアメリカ人の方々が主導されていらっしゃいます。そうしますと、アメリカが脱退することによって空席となります。そうすると、その穴を中国が埋めていくということも考えられます。
したがって、我が国の国益確保の観点から、外務省からWHOの法務部に、国際法局の条約畑の職員の方々、いらっしゃいますから、そういった方々を継続して派遣してやっていくということが重要だと思っておりますけれども、是非とも外務省の前向きな御答弁をお願いしたいと思っております。
○松本大臣政務官 ありがとうございます。
まず、一般的なお話として、日本人の職員が国際機関で活躍するということは、非常に我が国の国益にも資する。日本のプレゼンスを強化して、また、国際社会におけるルールを形成する上で、それを主導するという点で、非常に国益に資するんだろうと思います。
御質問の件ですけれども、そもそも、我が国としては、台湾のWHO総会へのオブザーバー参加は一貫して支持をしているところ、そして、先般の日米首脳共同声明においても、両首脳は国際機関への台湾の意味ある参加への支持を表明したというところでございます。
御質問の趣旨については十分に理解できるところでございますが、一方で、国際機関の職員というのは、あくまでも中立的な存在であるべきだというふうに思います。したがいまして、そういった観点からも含めて、日本人の職員の増強というのは非常に重要なことであるというふうには認識をしておりますけれども、中立的な存在ということであるべきだという観点からも、この件については、特に厚労省になりますけれども、関係省庁と連携しつつ、戦略的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○阿部(圭)分科員 ありがとうございます。
もう終わります。
厚労行政は内政にも外政にも拡張しているということですので、是非とも両方にわたって頑張っていただきたいと思っております。
ありがとうございました。
○深澤主査 これにて阿部圭史君の質疑は終了いたしました。
次に、福島伸享君。
○福島分科員 よろしくお願いします。有志の会の福島伸享でございます。
長いこの分科会、あと僅かですので、大臣、よろしくお願い申し上げます。
まず一点目は、ペリリュー島の集団埋葬地の遺骨収容についてお伺いしたいと思います。
資料、お手元、一というのがあります。私、六年前の二〇一九年に、政府の遺骨収集団としてペリリュー島に、落選中だったんですけれども、遺骨収集に行ってまいりました。
このペリリュー島、ここにも書いてありますけれども、私たちの地元の水戸の歩兵二連隊がその守備に当たって、昭和十九年の九月十五日から十一月二十七日に対して戦史上残る激戦を繰り広げて、日本軍と米軍の差は四倍、そこで玉砕しないでずっと食い止めて、一万一千名の日本兵のうち生存できたのは僅か三十四名、二か月間にわたって一人ずつ殺されていって守り抜いたという、そうした島であります。
私は、そのペリリューの慰霊会の顧問もさせていただいております。ずっと何度も、この間も厚生労働委員会で質問いたしまして、昨年五月二十九日の厚労委員会では、五月の政府の遺骨収集団が千八十七柱埋まっていると記録されている集団埋葬地を発見したことを受けて、集中的な措置というのを求めました。
そして、昨年九月六日には、水戸二連隊ペリリュー島慰霊会として、武見厚生労働大臣に直接、今後三年ぐらいをめどにして集団埋葬地の集中的な発掘を行って、今年、戦後八十年でありますから、今年度、予算において十分な予算措置を取って、体制も整備してくれということを申し上げました。武見大臣は、非常に前向きな答弁をいただきまして、集中的な収容のための方策を検討し、前例のないやり方で御遺骨の早期収容を進めると即断即決していただきました。
来年度の予算案では、ペリリュー島関連予算は四千七百万円から九千三百万円まで倍増して、本当に心から感謝いたします。これによって、派遣回数が三回から五回に確かに増えたんですけれども、今のやり方だと、一回の派遣で収容できる御遺骨は十柱から十五柱、五回派遣しても年間で五十柱から七十五柱ぐらい。今埋まっているのは千柱以上でありますから、このままいくと、収容するのは二十年かかってしまう。
中心的な御遺族の方はまだいらっしゃいます。何人もいらっしゃいます。ただ、皆さん高齢で、なかなかペリリュー島にも行けない。ただ、今DNA鑑定もできますから、一日も早い御帰還を待ちわびておりますし、場合によったら御遺族が特定できるかもしれないということで、地元は沸き立っております。
そこで、例えば、監督官もずっと現地に常駐させて、常時作業を進める、現地の人も使いながら。あるいは、やってきた人から、自衛隊のOBなどから、自衛隊の輸送機とか不発処理団なんかも動員しながら、集中的に人員を動員したりして、これまでにない、まさに武見大臣のおっしゃった前例のないやり方でやらなければ、三年を目途というのは、皆さん、元気でいられるのは三年ぐらいだと御遺族の方が思っているからなんですね、できないと思うんですね。
これにはいろいろ、関係省の協力、防衛省、外務省の協力も必要でしょうし、パラオ政府自体の協力も必要だと思っていまして、先日も、岩屋外務大臣がパラオの大統領の就任式に行かれたときに、私は、岩屋外務大臣に直接、いろいろなことを話してくれということをお願いして、そのとおり、外務大臣は話していただきました。
今年、終戦八十年。昨年ペリリュー島で発見された集団埋葬地における御遺骨の収容を集中的に進めるために、今何をやろうとしているのか、どういうふうに取り組もうとしているのか、大臣の御所見をお伺いいたします。
○福岡国務大臣 私も、大臣に就任する前、党の遺骨収集推進の特命委員会の責任者を務めさせていただいておりました。そういう意味では、委員がこの分野に本当に熱心にこれまで取り組んでこられたことに対して、心から敬意を表させていただきたいと思います。
そして、御紹介ありましたように、資料調査等で得られた情報に基づく現地調査によりまして、昨年九月に集団埋葬地が確認され、そこから現在までに十九柱相当の御遺骨が見つかったということでございます。
御指摘ありましたように、本年、戦後八十年を迎えます中で、ペリリュー島の集団埋葬地における遺骨収集を加速させるために、令和七年度予算案において関係予算を約九千三百万円と倍増させ、集中的に遺骨収集に取り組んでいく予定です。
具体的には、現地調査、遺骨収集の派遣回数を、これまでの年四回程度から年八回程度に倍増して、派遣団員の増員も行った上で、集団埋葬地での大規模作業に対応するための重機オペレーターの派遣であったり、また、現地で雇用する作業員の増員などによりまして、体制を大幅に強化して取り組む予定でございます。
今、常駐させたらいいじゃないかみたいなお話もありました。円滑に進めるためには、現地で立ち会うパラオ側の方の専門家の確保ということも重要でございまして、そういった意味では、パラオ政府から必要な協力を得ていく、そういった努力も必要だというふうに考えております。
厚生労働省としては、今御指摘ありましたように、御遺族も御高齢化している現状を重く受け止め、一日でも早く、一柱でも多くの御遺骨を収集できるように、最大限努力してまいります。
○福島分科員 大臣の思いは非常によく分かりました。
ただ、これは予算倍増だけじゃ駄目で、やり方そのものを私は変えなきゃならないと思っておりまして、そのためには、当然パラオ政府の協力も必要ですけれども、日本とパラオの関係は、御存じのように、極めて友好的、密接なものがあると思っております。何度も、大統領もこの間も来日されていらっしゃいますので、是非、外務省とも連携をして、常時作業を進めるという、そうしたやり方を工夫していただければというふうに思っております。是非、頭に入れていただけたらと思います。
次に、ちょっと趣を変えて、歯科技工士の問題を質問したいと思います。
最近、私、差し歯を替えまして、院内の歯科技工士がいるクリニックで受けました。それまでは、何か差し歯って、ずっと二十年ぐらい、物が挟まったような違和感があったんですけれども、そこのクリニックは、歯科医師と歯科技工士が並んで、私の横で、色はこうしよう、こういうふうに削ろうといろいろな対話をしながら治療を進めてくれまして、今回、完全にフィットして、全然差し歯をしているという違和感がない差し歯で、ああ、こんなにも丁寧に作っていただくと違うんだということを実感をいたしました。
そこで、まず大臣にお聞きしますけれども、歯科医療における歯科技工士の役割、それをどのようなものと認識しているか、まずお答えいただければと思います。
○福岡国務大臣 私も、党内の歯科技工士さんの議連のメンバーでもあります。そういう意味では、虫歯治療を始めとする歯科医療に必要な、かぶせ物であったり入れ歯等を製作していただいておりますが、健康寿命の延伸に寄与する口腔機能の維持、回復のために大変重要な役割を果たしておられると認識しています。
委員御紹介いただきましたように、院内にそういう方がいらっしゃる場合と外部に委託していらっしゃる場合、様々なケースがありますが、歯科医療技術が多様化する中で、歯科技工士と連携し、歯科医療の提供を行う重要性は年々増しているというふうに思っていまして、質の高い人材確保に努めてまいりたいと考えています。
○福島分科員 ありがとうございます。
そこで、歯科技工士の現状を見ると、資料二でありますけれども、歯科技工士、これは年々、平成十六年から令和四年まで、そんな長い期間じゃないと思うんですけれども、一番下の二十九歳以下は六千六百十八人から三千四百七十二人、三十歳から三十九歳は八千四百三十八から四千六百六十三人と、若い人は、全然増えていないことはおろか、半減しているんですね。その代わり、六十歳以上は二千八百九十九人から一万百三十人と、大臣もお詳しいでしょうけれども、どんどんと高齢化しております。
茨城県歯科医師会が運営している茨城歯科専門学校の歯科技工士は、ここ数年、三人しか入学者がありません。院内で歯科技工士を採用しようにも、いないから、ここ数年、うちの周辺の歯科医師さんから聞くと、ゼロだ、周りでそんなの聞いたことないと。歯科技工士がいなければ、歯科医療の、先ほど大臣おっしゃったように、私は崩壊の危機にもあると思うんですね。
そこで、政府参考人にお伺いしますけれども、今、歯科技工士資格を持ちながら歯科技工士として就業していない方はどれぐらいいるか、端的にお答えください。
○森光政府参考人 お答えさせていただきます。
令和四年の歯科技工士の免許登録者数は、歯科医療振興財団による調査によれば十二万三千八百七十人であるのに対しまして、同じく令和四年の歯科技工士の就業者数は、厚生労働省の衛生行政報告例において三万二千九百四十二人となっております。違う統計ですので単純な引き算はできませんけれども、おおよそ七割の方が就業していないということになる。
○福島分科員 これは衝撃的な数字ですよ。資格を持っていても、七割がその仕事に就かないという資格は一体何なのかということを考えなければならないと思っております。
令和二年、歯科技工士の養成・確保に関する検討会報告書というのがありまして、そこで、歯科養成施設への入学者数が減少している要因として、若年性の齲蝕の罹患率が減少し、治療経験が少ない者が増加したことにより、歯科医療に関わる職業としての歯科技工士の認知度が低下していると考えられる、そこはメインの理由にして、それだけではなく、歯科技工士という職業に対して、長時間労働や低賃金というイメージがあり、歯科技工士養成施設は進路選択肢の中で敬遠されるという意見も挙げられたと。随分、私は、これは遠慮した書きぶりじゃないかなと思うんですね。
資料三というのを御覧いただきますと、上のものを見ると、五百万未満の収入というのが六割ですね。下のやつを見ると、上から二番目に収入金額についてとありますけれども、満足しているというのは二割もいないんですよ。そして、不満だというのは五割を優に超えている。こういう職業というのは、私は余り見たことありませんね。結局、いろいろこの検討会では書かれているけれども、低収入であることが歯科技工士のなり手がいない最大の要因だと思うんです。
そこで、大臣にちょっとお聞きしますけれども、やはりこれは正面から、歯科技工士の年収が低いことが歯科技工士になり手がいない最大の要因であるということを今まで直視していないと思うんです、厚労省は。大臣、歯科医療の議員連盟もやっていらっしゃるわけだから、私は、そこをまず直視しなきゃならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 まず、今おっしゃったように、大きな要因として、処遇というか所得がなかなか上がらないという現状というのが大きな要因にあるというのは議員御指摘のとおりだというふうに思います。
あわせて、やはり、かなり過重な労働といいますか、今、歯科クリニックも夜間営業とかされたりして結構競争が激しい中で、そのニーズに応じて、この日まで合わせて補綴物を製作してほしいというようなニーズがかなり高まる中で、皆さん、夜を徹して作業されていたりという部分でいうと、そういう過重な労働環境というのも要因にあるんじゃないかと考えています。
○福島分科員 そうであっても、やはり最大は、ちゃんと収入があるかどうかだと思います、職業としての魅力というのは。確かに大変でも、やりがいがあって、それに見合った収入があればいいけれども、結局、報酬として評価されていないということが私は最大の要因であると思います。
令和二年、歯科技工士の養成・確保に関する検討会報告で、歯科技工士に関する具体的な制度に関する検討に際し、歯科技工士の業務の内容の在り方を含む歯科技工士の将来像について検討するような研究に取り組むことが必要と。検討するような研究というのが何を指しているのか分からないですけれども、随分悠長で回りくどいやり方なんですね。
この令和二年の歯科技工士の養成・確保に関する検討会報告書を受けて、どのような対応を取られたのか、政府参考人の答弁を求めます。
○森光政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の報告書につきましては、超高齢化社会を迎え、患者に対して入れ歯等の歯科技工物が適切に提供される体制を構築するため、厚生労働省が設置いたしました歯科技工士の養成・確保に関する検討会において、令和二年三月にまとめられました。
この報告を踏まえました具体的な対応といたしましては、歯科技工士の多様な働き方が可能となるように、歯科技工におけるリモートワークを可能とするということ、また、高度な機器を使用して業務効率化を図るため、歯科技工所間の機器の共同利用、これを可能としたほか、若手の歯科技工士を対象に、実際の臨床に即した知識、技術を習得することができる研修を開催すること、それから、業務の重要性や魅力を伝え、養成施設への入学者を確保するための普及啓発事業といった、人材確保に関する取組を実施したことが挙げられると考えております。
また……(福島分科員「いいです」と呼ぶ)いいですか。
○福島分科員 もう、いっぱい並べても、どれも、一言で言えばシャビーなんですね。
新たに、昨年十二月からも歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会を開始しまして、恐らく、それが今の次の答弁だったんじゃないかと思いますけれども、ここでも歯科技工士の報酬に関することは中心的なアジェンダに上がっていないんですね。結局は、歯科技工士の確保の問題は、生活できるだけのお金を安定して稼げるという、私は、そこに尽きるんだと思います。だから、若い人は入ってこられないんですよね。
歯科技工士の報酬は、保険診療の場合、診療報酬の中での歯科医院の収入の中で賄われて、歯科医師と歯科技工士の間の、ある意味自由交渉のもので決まる。これは経済学的に言うと、さっきの薬価もそうなんです、私は経産省でバイオというのをやっていて、そのときもさんざん問題にしたんですけれども、経済学的に言うと買手独占なんです。買手が強いんです。普通は売手の方が強いんですけれども、買手独占だから、どうしても価格は上方硬直的、伸びるんじゃなくて下がる一方なんですよ。下げれば下がるほど歯科医院には利益が上がるから、どんどん下げるインセンティブで、薬価差益と同じように差が広がるという構造にあるんですね。
そうすると、安上がりのもの、今、いっぱい歯医者さんに営業に来るわけですよ、こういう歯科技工士というか、物を加工する、安く提供しますよと。場合によったら、無資格者が外国で作ったものをちょこっと歯科技工士さんがチェックだけして流しているような脱法的なものもあるというふうに私は聞いております。でも、そうやると、歯科技工士のなり手がいなくなって、中長期的には、結局、歯科医療の首を絞めることになる。
現行の診療報酬制度や診療点数表で、いわゆる七対三ルールというのを作っておりますけれども、これには拘束力がありません。
資料の四の一というのを御覧になってみたら分かるように、このグリーンの縦の線が七対三ルールで言っている線です。大体、実際の取引価格は、この左側、青い山ですけれども、七、三ルールより左側が多いわけですね。そうすると、やはり、まさに私が今言ったように買手独占の市場の下では、七対三ルールにならないんですね。地元の歯医者さんは、この七対三ルールがちゃんと守られていれば、歯科技工士の報酬はかなり改善するという、そうした声もあります。
そういうことで考えると、じゃ、これを義務化するというのは、またこれは法的にいろいろあるかもしれないけれども、やはり診療報酬制度の中で何らかの工夫をするというのをやらなきゃならないし、そこを、まさに今後、歯科技工士の永続的な発展のためにはアジェンダとして取り上げて検討しなければならないと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 御紹介いただいた七、三告示につきましては、かぶせ物や入れ歯等の歯科技工に係る技術料のうち、おおむね七割を歯科技工物の製作に要する費用、そして、おおむね三割が歯科医師が行う設計や調整等に要する費用、そういった旨を診療報酬に関する告示の中で示しているものでございます。
実際の歯科技工料は、御紹介ありましたように、この告示の趣旨も踏まえつつ、歯科医療機関と歯科技工所の自由取引に基づいて設定されているものと認識していますが、実態とかなり離れたものがあるというのは御指摘のとおりでございます。
厚生労働省としては、当該告示の趣旨等について、研修会等で関係団体に対して周知を行っているところでございますし、あわせて、令和六年度診療報酬改定におきまして、関係団体の御意見を伺いながら、歯科技工士の業務に係る評価の見直し等を行ってございまして、令和八年度診療報酬改定に向けまして、歯科技工士の業務に係る評価に関して中医協でしっかり議論してまいりたいと思います。
○福島分科員 多分、それじゃ、まだ全然足りないんだと思うんですね。
結局、だから、歯科にとっては、ここでどれだけ、まあ言葉は悪いですけれども、買いたたけば利益が上がるから、そこでなるべく利益、そもそも歯科医療自体が今非常に大変な状況にあるわけですから、何とか利益を出すためには、こういうところで利益を確保しようとするのが現状だと思います。
診療報酬を、今確かに診療報酬も若干上がっていることは私も知っております、でも、その程度上げたぐらいでは何にも変わらないと思いますので、根本的な制度的な問題に是非焦点を当てて、私は、じゃ、どうしろというのは、まだちゃんとした対案、アイデアはないんですけれども、そこをちゃんとアジェンダとして検討していただければというふうに思っております。
次に、出産費用の保険適用についてお伺いをいたします。
岸田内閣のときの令和五年三月のこども・子育て政策の強化について、試案というので初めて、出産費用、正常分娩の保険適用の導入を含め出産に関する支援等の在り方について検討を行うとされました。その年の十二月、こども未来戦略におきまして、二〇二六年を目途に、出産費用、正常分娩の保険適用の導入を含め、出産に関する支援策等の更なる強化についての検討を進めるとされました。
そもそも、出産費用の保険適用は何を目的として行うのか。経済的負担の軽減、出産に関する支援の手段として行うのか。まず、この出産費用の保険適用の目的は何なのか、大臣、お答えください。
○福岡国務大臣 まず、これまでも、安心して出産できる環境を整備するために、令和五年四月から出産育児一時金を四十二万円から五十万円に大幅に増額するとともに、厚生労働省の運営するウェブサイト、出産なびを通じて、医療機関等ごとのサービス内容や出産費用の状況などを公表し、妊婦御自身で出産施設を選択しやすいようにする仕組みを整えてございます。
その上で、この次の段階としまして、令和五年十二月に閣議決定されましたこども未来戦略におきまして、今御紹介いただいた、二〇二六年を目途に、保険適用の導入を含め、出産に関する支援等の更なる強化について検討を進めるとされたことです。
この趣旨ということでございますが、それは、妊婦の方々が安心して安全に出産できる環境を整備する、これを目的としておりまして、出産費用の保険適用を含めた支援の在り方については、今まさに検討を行っている最中でございます。
○福島分科員 保険適用自体は、何を目的としているんですか。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
こども未来戦略の中では、先ほどもお話がありましたように、出産に関する支援等の更なる強化、ここがポイントだと思っておりまして、その例として、出産の費用の保険適用の導入を含めということでございますので、出産費用のあれをいかに軽減していくのか、費用を軽減して出産に関する支援等の更なる強化を図っていくかということでございますので、出産の保険適用が必ずしもというわけではなくて、いろんなことを検討する中の、やはり一つの重要なテーマとして議論をする、そういうものだと思っております。
○福島分科員 費用軽減が大方の目的だということは、今確認しました。
今、厚生労働省で妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会というのが開かれていて、昨年の十二月十一日の回で、令和七年春頃の取りまとめとされております。
令和七年春というのは、今ももう令和七年春なので、春頃といっても五月ぐらいまであるんでしょうか、幾つか幅があるんでしょうけれども、この出産費用の保険適用に関して、やる、やらない、それも含めて、今、検討状況はどのような状況に来ているんでしょうか。
○鹿沼政府参考人 お答えいたします。
昨年六月から、厚生労働省、こども家庭庁が共同で、今先生おっしゃった検討会を設置し、議論をしているところでございます。
これまで、医療関係者、医療保険者、妊産婦の当事者、御参画いただきまして、七回議論を行い、具体的には、特に、産科、医療関係者、妊産婦の当事者、医療保険者、自治体関係者からヒアリングという形で行ったり、また、検討会では、周産期医療提供体制の確保ですとか、出産に係る妊婦の経済的負担の軽減、希望に応じた出産を行うための環境整備、妊娠期から産前産後に関する支援策ということで、かなり幅広い形で議論をさせていただいているというところでございます。
今後の議論につきましては、本年春頃をめどにということで一定の整理をした上で、社会保障審議会医療保険部会等の場で更に検討を進める、このように考えております。
○福島分科員 ありがとうございます。
私も、ずっと医師会とかいろいろな方から御支援をいただき、また、石渡日本産婦人科会長は私の地元の先輩でもありますので、よくお話をさせていただくんですけれども、石渡先生だけじゃなくて、この年末年始、地元の産婦人科の先生方から、本当にこれは心配の声をいただきまして、出産費用の保険適用がなされたらもうクリニックを続けていくことはできないと、本当に、これは単なる利益とかというんじゃなくて、そういう悲痛な叫びを私は多数いただいております。
一方、この間、政府は出産育児支援金を段階的に引き上げて、それをすると病院側もこれを引き上げるから、だからイタチごっこになっちゃっていて、ある意味、標準的な分娩サービスをやって保険適用した方がいいという、そうした意見も、政府が本当にそう思っているか分かりませんけれども、そういう意見もあって、料金を抑えるためにも保険適用なんだという意見、まあ、そういうためにやっているとは思いませんよ、思いませんけれども、そういう方もいらっしゃいます。
最新の、二月五日に行われた検討会の資料とか、その前の議事録を見る限り、具体的なデータや事実に基づいて議論が行われているようには思えないんですね。
資料五の二、ちょっと飛んで一番裏なんですけれども、これを見ると、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻科とかいろいろ並んでいますけれども、この産婦人科、赤で囲っていますが、その他の診療収益、これが最大の収益の構造になっているんですね。当然、自由診療が中心ですから、そうなるわけですね。
その前の資料五の一、これを見ていただきますと、日医総研のワーキングペーパーでありますけれども、産婦人科の利益率は二%とかなんですよ。本当に、もうぎりぎりでやっているわけですね。
その次のグラフを見ても、真ん中、補助金を入れても、赤字経営が四割になっていますね。これは日医総研だから、医師会寄りといえば医師会寄りかもしれないけれども、シミュレーションとあって、一番下のグラフですけれども、仮に分娩費を五万円減らしたらどうなるかといったら、四割赤字なのが六割に増えちゃうでしょうという、そうしたデータも出ていて、かつかつの状況なんですね。
産婦人科は、医療的な行為とそうじゃない行為とがいろいろ混ざっておりますから、しかも、なおかつ人件費も、お産はいつ始まるか分からないから、ずっと人を押さえておかなければならない。慢性的な人手不足、原材料などの仕入価格の増も影響しているというようなことであって、ただでさえ、産科が減って、地方の少子高齢化の一つの大きな要因になっているのに、地元の産婦人科の先生の声を聞くと、保険適用すると本当に産科医療というのは崩壊しかねないと思うんですよ。
私は、そのお医者さんの言うことも一理あると思っているけれども、やはり政策というのは、しっかりとしたデータで見なきゃ駄目だと思うんですね。私、医療経営実態調査のその他の診療収益というのも、どういう構造でそうなっているかというのは、恐らく皆さんも、いろいろな資料は見つけたんですけれども、なかったんですね。
だから、私は、しっかりと、こうした自由診療による出産を行う産婦人科の経営状況というのは、マクロ的に見てもミクロ的に見てもどうなっているのかと分析しないと、やはりそうした様々な懸念をする声に応えられないと思うんですけれども、そうしたことはおやりになっているんでしょうか。
○鹿沼政府参考人 大切な指摘、ありがとうございます。
私どもは、まず、元々といたしまして、まさに産みやすい、そういう環境をつくるという中にあっては、地域の産科医療体制がなくなっていいとか、また、特に周産期医療体制が壊れていい、そういうつもりは毛頭ございません。まさにそこはしっかり守りながら、一方で、妊婦の方々の出産の費用をいかに産みやすいような形にしていくのか、そして、それ以外の様々な支援をやっていくのか、そういうことが基本的な考え方だと思っております。
その上で、まさに産科医療機関の経営状況等を把握すること、このことは非常に重要だと思っておりまして、現在、厚労省では、経営状況の把握としては、手段としては医療経済実態調査というのがございますし、また、全ての医療法人の経営状況を把握できる医療法人の経営情報のデータベース、こういったものも補完的に活用しているところでございます。
また、令和六年度の厚生労働行政の補助金におきまして、分娩取扱施設における出産に係る費用構造の把握のための調査研究、こういったことを現在行っておりまして、全国の分娩取扱施設を対象として、診療状況や費用について調査が行われており、こういった点についても、まとまり次第、検討会にて報告をいただくこととしております。
○福島分科員 ありがとうございます。
まさに、今は研究をしているという段階なんだと思うんですね。
そもそも、出産費用の保険適用というのは、日本維新の会とか一部の与党議員の声によって始まったものじゃないかと思うんですよ。ちゃんと詰まった政策と全然思えないんですね。単に人気取りじゃなくて、具体的な事実に照らして政策をつくることが必要だと私は思うんです。
正常分娩でも、生まれ方というのは多様なわけじゃないですか。限りない、いろいろなパターンがあるわけですね。医療的に必要となる措置というのは、それぞれによって異なります。標準的な分娩として診療報酬の点数を定めようとしたって、私は、これは非常に直感的に難しいんじゃないかなと思っているんですよ。
あるいは、最近、無痛分娩というのが増えていて、東京都などはそれに対する補助なども行っているようでありますけれども、そうしたものも含めて取り扱って診療報酬体系の中に入れるというのは、厚労省はプロでありますけれども、それであっても、私は神がかり的な難しい作業になるんじゃないかなというふうに思うんですね。
私は、令和七年春頃までに何らかの方向性を出すというのは無理だと思いますし、そう乱暴に結論を出すべきじゃないと思うんですね。一方、出産に関する負担を減らすということは、私は、これは必ず必要なことだとは思っております。
だから、私は、出産費用を極小化するという議論と保険適用というのは、一回切り離した方がいいと思うんですよ。まず、出産費用を低減させるためにどういう制度があるかという議論をした上で、保険適用はまだ様々な課題があるから、まあ一言で言えば棚上げですよね、そうしたことをやって、だからといって結論を出すなとは言いませんよ、ちゃんとした事実に基づいたリサーチを行って、それをやったとしても地域の産科医療は崩壊しないという確証をデータで示せたときに初めて、私は結論を出せる問題だと思っておりますので、この今年の春頃までというのと切り離して結論を出すべきだと思いますけれども、大臣、いかがお考えでありますでしょうか。
○福岡国務大臣 私自身も、石渡先生始め、両論から様々なお声をいただいているところでございます。
この議論は、妊婦の方々が安心して安全に出産できる環境を整備することを目的としまして、平均的な標準費用について、妊婦に自己負担が生じないようにするという基本的な考え方を踏まえ、妊婦の出産時の経済的負担の軽減策を検討しているものです。
保険適用の導入につきましては、その一連の検討の中で、負担軽減の具体的方策の案として議論しているものでございまして、委員御指摘のように切り分けて議論すべきものとは当方としては考えてございません。
また同時に、妊娠期から産後までの切れ目のない支援を充実するという観点からは、出産という一局面だけではなく、各自治体で行われている妊婦健診であったり産後ケア事業なども含めた一連の課題を一体的に議論し、全体として妊産婦の負担軽減を達成していくことが極めて重要であると考えておりまして、地域の周産期医療提供体制の確保という観点にも十分留意しながら、引き続き、関係者の方々の意見や有識者の方々の専門的な知見を踏まえつつ、丁寧に議論を進めてまいりたいと思います。
○福島分科員 この話は全部、政府の人は、出産費用の保険適用の導入を含めという、役人的に微妙なこの言葉があるから問題なんですよ。これは本当にみんな心配している問題だから、私は、今回の春頃に結論を出すべきではないと思いますけれども、もう一度、大臣、御答弁いただけますでしょうか。
○深澤主査 じゃ、時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。
○福岡国務大臣 関係各位の御意見も踏まえながら、慎重に検討を進めてまいりたいと思います。
○福島分科員 是非、慎重な検討を求めまして、質問とさせていただきます。
ありがとうございます。
○深澤主査 これにて福島伸享君の質疑は終了いたしました。
次に、阿部知子君。
○阿部(知)分科員 立憲民主党の衆議院議員の阿部知子です。
そして、福岡大臣には、御就任おめでとうございますと今頃言って申し訳ありませんが、私は今、厚生労働委員会に所属しておりませんので、今日が初めての福岡大臣への質問の機会を得ましたことを感謝をいたします。
今日、私が取り上げたいと思っておりますのは、公共性の高い医療分野のカルテ等を始めとする資料のアーカイブス化ということでございます。
大臣のお手元にも示させていただきましたが、去る二月十四日の新聞報道記事によりますと、地下鉄のサリン事件、ちょうど三十年前のことになりますが、そのときの被害者のカルテや周辺の関係者の証言もアーカイブス化していこうという、私は、これは大変よい試みだ、画期的な試みだと思っております。
実は、これらのいわゆるアーカイブス化に先んじて、ずっと厚生労働省は、科学特別研究事業として、アーカイブス化に伴ってどんな課題があるかということを検討してこられたかと思います。そのときにどのような御指摘がなされて、また課題は何であるかについて、大臣の御認識を伺います。
○福岡国務大臣 委員におかれては、私が二〇〇五年初当選したとき、厚生労働委員でいらっしゃって、様々な鋭い御質問で私も多くのことを学ばせていただきました。心から感謝を申し上げさせていただきます。
御指摘の研究につきましては、松本、東京地下鉄、両サリン事件から三十年近く経過いたします中で、両事件の救護、医療に関する記録、資料の散逸などを防止し、人類共通の知的教訓遺産として後世に保存、伝承することを目的といたしまして、令和元年度から令和三年度にかけて行われた研究でございます。
具体的には、この研究には、サリン事件に関する救護、医療記録等のアーカイブ化に向けて検討を行ったものでございまして、カルテ記録などの医療記録の保存、デジタル化であったり、また、医療関係者等に対してオーラルヒストリーを聴取することによる記録の収集など、アーカイブ化の方法などを検討したものでございます。
同研究におきまして、診療録、搬送記録、その他は貴重な歴史的知的財産であり、これを保全し、整理、活用につなげることは極めて重要であると指摘されており、本研究も踏まえた上で、今般、令和六年度補正予算を用いて、サリン事件に関する医療記録の保存などに関する今事業を行っていく予定でございます。
○阿部(知)分科員 今の大臣の御答弁は、この研究班、研究事業の結果報告のところにも指摘されておりますように、歴史的知的財産の保全ということと、それを永久保存という形にしていく。
医療は常に社会の一部でありまして、その貴重な医療における資料と、それが社会的にどのような事象であったかということを複眼的に見ていく作業というのは、日本では正直言ってなかなかなかったことかと思います。原爆症にしても水俣にいたしましても、原爆症は、カルテをABCC、アメリカが持っていってしまっておりますし、直後何があったかということは、ずっと伏せられておりました。
本来、医療というものをしっかりと後世に伝えるためにも、今大臣がお取り組みいただいた今回のサリン事件を端緒とする取組は私は大変高く評価しておりますが、もう一つ確認です。
私は医者なので、こうした医療分野のカルテの保存というのは、正直言って、電子カルテにもなりましたし、五年間の保存じゃなくて、より永久化されやすいと思いますが、今回のサリン事件のもう一つの肝と申しますが、これはオーラルヒストリーで関係者の証言を求めて、それを記録化していくということにあるかと思いますが、その辺りについては大臣はいかがお考えでしょう。
○福岡国務大臣 地下鉄サリン事件は、不特定多数の者を狙って都市部で大規模に行われた化学テロとして、世界でも類を見ない、悪質で、かつ重大な無差別大量殺人事件でございまして、今もなお被害に苦しむ方もいらっしゃるなど、事件は過去のものではないと認識をしております。
このような事件を再び繰り返さないためにも、紙カルテの情報など、経時的に散逸が進む可能性の高い医療記録の保存に加え、議員が御指摘がございました、当時、診療などの対応を行った医療従事者等のオーラルヒストリーの保存を行う事業を実施し、我が国の化学テロ等に対する危機管理能力の強化につなげていきたいと考えております。
オーラルヒストリーの保存に関しましては、事件に対応した者の経験から得られる教訓は、世界でも類を見ない化学テロに対応した記録でございまして、我が国の危機管理能力の強化のために大変貴重であると考えています。我が国の化学テロ等の対応能力の向上に向け、地下鉄サリン事件に関わられた関係者の御協力もいただきながら、適切に事業を実施していきたいと考えています。
○阿部(知)分科員 大臣も今御答弁のように、このサリン事件の場合は危機管理、それから恐らく同様なものは、コロナ禍においてダイヤモンド・プリンセス号が横浜に寄港したときの対応とかも、あるいは医療カルテも、私は大事な保存すべきものになっていくと思っております。
そうした急に襲ってくるものと同時に、もう一つ、長いこの厚生労働行政の中で厚生労働行政が起こしてしまった負の遺産ということについても私は検証が進むべきと考えまして、次に、ハンセン病の資料館に残された様々な資料並びに診療録についてお尋ねをいたします。
開けて四ページ目になりますか、大臣に見ていただきたいのですが、この度、一月の十七日に、旧優生保護法による優生手術と人工妊娠中絶などを受けた方に対して、国賠訴訟についての政府側の判断が示されました。長年いろいろな裁判があった中で、私もこれはいい決断と思っております。
同時に、この優生保護法下において優生手術を受けられた方については、従来は一時金の三百二十万円が補償をされておりましたが、これは、今回の国賠訴訟となる以前は、御存命な方、生きておられる方に三百二十万円。今度の国賠訴訟に当たっては、御遺族も含めて一千五百万円となってまいっております。
これをしっかりとその当事者、権利を持った方にお届けするに当たって、ハンセン病資料館の中にある資料を最大限活用していただきたい。もちろん、今これはこども家庭庁の所管となっておりますが、資料をお持ちなのはハンセン病資料館であります。
大臣のお手元に、右側に、一体そうした一時金支給の方の数はどのくらいであったか、特にハンセン病に関してリストアップをしていただきましたところ、百三十八名おられる。このときは生きていらしても、お亡くなりになった方に今この千五百万円の問題が生じてくるのだと思いますが、この点についてはどのようなお考えで臨まれるでしょうか。
○福岡国務大臣 私も一議員だったときに、先生と一緒に、超党派の議連でこの議員立法の成立等も一緒に勉強させていただきました。
この旧優生保護法に係る業務につきましては、御指摘がありましたように、こども家庭庁が所管であるために私からお答えは差し控えさせていただきますが、更なる周知につきましては、具体的実施方法をこども家庭庁で今検討されているというふうに承っておりまして、厚生労働省としても、こども家庭庁と引き続き緊密に連携して、必要な支援を検討してまいりたいと考えています。
○阿部(知)分科員 残念ながらそのような御答弁になろうとは思っておりましたが、例えば優生保護法において、国がそうした法律を作ったことに都道府県もいわば協力をさせられる形で実際には手術が行われました。国がやったことに対して都道府県もそれを協力して、実際に補償をしていこうという動きは既に幾つかの県でもあるわけです。
ハンセン病療養所の特殊性は、その中に患者さんを閉じ込めてしまった、それは大きなマイナスですけれども、同時に、カルテもあるし、御存じでしょうか、身分帳というものが、例えば熊本の恵楓園などでは、ここは一九〇九年から入所者を受け入れておると思うのですが、残されているわけです。私も行ってみて初めて驚きましたし、身分帳には、どこに生まれて、どこに逃亡してとか、そういうことも書いてございまして、本当に貴重な資料であります。
しかし、それは厚生労働省の協力なくしては、こども家庭庁も容易に入手もできませんし、検証もというか、お伝えすることもできないわけです。
私のお願いしたいのは、ちょうど自治体が、様々にある施設に入所しておられた方あるいは台帳から探れた方を、プッシュ型にして、あなたにはこういう権利がありますよとお知らせをしているわけです。せめて厚生労働省は、これは自らが起こした厚生労働行政の影だと私は思っていますから、それをきちんとお伝えする義務があるんだと私は思います。
法の枠組みがこども家庭庁にその給付を命じているということは、存じております。しかし、協力すべき責任も私は厚生労働省にあると思います。特に、一時金をもらわれた方はもう分かっていて、亡くなられたかどうかも分かっていて、その御家族に、センシティブだと思います、御家族の訴訟もあったくらいですから、人生被害を訴えているのは御家族も同じです。その方たちにきちんと補償がされるよう、大臣は、もしかしてこの場ではそこまでしか、所管があるので御答弁できないかもしれませんが、私の申し上げたことをしっかり認識していただいて、実際にその方たちが補償に結びつくように是非お願いしたいですが、いかがでしょう。
○福岡国務大臣 それは、御指摘がありましたように、こども家庭庁と引き続き緊密に連携しながら、厚生労働省としては必要な協力というのは当然行ってまいりたいと考えています。
○阿部(知)分科員 協力と言うと主体的に思えませんが、結局、このハンセン病の問題は、国、地方自治体、そして厚生労働行政、もう全て、医療の名において、患者さんたちを隔離し人生を奪い、時には子供を持つ権利を奪ってきた。もう大きな負の歴史ですので、是非、主体的責任も自覚していただきたいと思います。
同様に、今回のこの旧優生保護法による補償の中に、これまでなかった人工妊娠中絶を受けられた方に、これは御存命でないと駄目なのですが、一時金として二百万円の支給が個々に決められました。これも同様に、現存、現在御存命な方のカルテ等々をたどれば、実は、ハンセン病施設においては、クローズであるゆえにそのデータが残っているということがございます。
これについても同じ答弁かもしれませんが、それは厚労省しか持っていないんですよね。是非この権利がきちんと担保されるように御尽力いただきたいが、いかがでしょう。
○福岡国務大臣 旧優生保護法に関する業務についてはこども家庭庁が所管でございますが、国立ハンセン病療養所の入所者であったり退所者の方々については、厚生労働省が療養所を所管していることから、入所者の方々に対しては人工妊娠中絶一時金に係る手続の御案内であったりサポートを行うとともに、退所者の方についてもリーフレットの送付を行っているところでございます。
更なる周知については、議連の中でも、やはり御家族の方で御存じじゃない方もいらっしゃったりする中で、そこをどう扱うという様々な御議論があったというふうに承知しています。
今後、この具体的な実施方法につきましては、今こども家庭庁でまさに検討されているというふうに承っておりまして、厚生労働省としては、こども家庭庁としっかり連携しながら支援を行っていきたいと考えています。
○阿部(知)分科員 私が御指摘したいのは、ここにカルテがあるということなんですね、残されて。本当に大臣も一度、もしかして行かれたかもしれませんが、残されたままなんです。今、それの整理を、アーカイブス化をどうしていくかという問題が関わっておりまして、私は、一般的なことと違って、そこに確かに残されたものがあるというところから出発をしていただきたいんですね。そこで権利に結びつくようにということであります。
引き続いて、同様に、この間問題にされておりますのは、幾つかの療養所で、いわゆる虹波、これが、お薬なんですけれども、ハンセン病の患者さんに効くのではないかというので、四二年、戦前から、四七年まで、いわゆる治療実験をされた。その該当する方の数は八百四十二名、分かっただけで。また、ここで新たにカルテのある方を調べていくと、もっと多くの方が被験者となっていたのではないかという事実が判明をしております。
これは、ハンセン病資料館の中で、医師や学芸員の皆さんが一生懸命、カルテや関連する日誌、日記ですね、これをたどりながら明らかにした事実であって、加えて、当時、戦時中ですね、満州において、七三一部隊と言われるところでもこの虹波の実験がちょうど同時並行で行われていた。ハルピンの方の記録は、これはみんな戦後焼かれて、ないわけです。そういうことがかいま見える記録が恵楓園の方には残っているわけです。
これは、先ほど申しました医療でもあり、社会的事象でもあり、検証すべき厚生労働行政でもあるので、厚労省が主体的に、私は、カルテの保存、検証、アーカイブス化を行っていただきたいと思います。
引き続いて、次のページに新聞記事で幾つかを出してございます。今私が簡単に申し上げて、大臣も虹波投与の検証支援を行うというふうに言ってくださっている記事が昨年の十一月三十日にございまして、その後、幾つかの事象が明らかになりましたのでつけ加えさせていただき、また、調査の着手も始まっておると聞きますが、大臣としてはどんな支援をお考えでありましょう。
○福岡国務大臣 戦中戦後、菊池恵楓園において入所者たちに対して行われていた虹波の臨床試験につきましては、入所者自治会の御要請も踏まえまして、令和四年より同園において調査が開始され、令和六年六月に中間報告書が取りまとめられたところでございます。
現在、この菊池恵楓園におかれて、更に虹波投与の実態を明らかにするため、当時の入所者のカルテ等の資料の確認も含め、引き続き調査が行われているというふうに承知しています。
検証につきましては、この菊池恵楓園の調査の結果も踏まえながら検討を進める必要があると考えておりまして、自治会などの関係者の方々の御意向を確認しながら丁寧に進めてまいりたいと存じます。
○阿部(知)分科員 もちろん自治会の皆さんも、いわゆる人体実験ではないかという指摘がある中で調査を求められていると思うんです。同時に、そこに勤務されている医師たちは、今日の新聞記事にもつけましたが、境先生を始めとして、やはり人権の観点からこれを明らかにしたいということを望んでおられます。学芸員のお力もかりたいと。
さて、言うはやすく、行うにはお金と人手が要るわけです。それについて、例えば厚生労働省はどのような御準備があるのか。今までの仕事もやりながら、負荷も加わるわけです。その辺りを大臣としてはどうお考えであるかを私は伺いたいです。
○森光政府参考人 お答えさせていただきます。
議員御指摘の支援の内容というところになりますが、厚生労働省本省におきまして、菊池恵楓園に対しまして、今般の調査で必要な職員によるカルテの抽出ですとか、調査による損傷の防止、それから今後の保存を念頭に対象文書の電子化、これに必要な予算を計上しております。
以上です。
○阿部(知)分科員 それはお幾らですか。そして、本省においてという意味は、例えば資料館は医政局の管轄でありますが、どこがお金を出されるという意味でしょう。
○森光政府参考人 医政局の方で支出をしております。また、予算としては百四十万でございます。ただ、これは、人件費等はまた別でございますので、必要な費用としての百四十万ということでございます。
○阿部(知)分科員 人件費がなければできませんで、別はどこから出るのでしょう。
正直申しまして、カルテのスキャナーというものでも四百万円ほどいたします。大臣もサリンのところでおっしゃっていますが、とにかく当初四百四十万ほどを地下鉄のサリンでは、全額それがカルテのスキャナーではないですけれども、かかるということを想定してなっております。
では、果たして恵楓園の場合は、百四十万円というのはちょっとびっくりで、通常の予算は幾らで、ここに幾らを補填されるのでしょう。
○森光政府参考人 済みません、運営費全体のところについては手持ちがありませんが、調査に係る人件費に関しては、菊池恵楓園の療養費の中に私ども支出させていただいております。
先ほど申しました百四十万というのは、電子化するための、そのための費用ということで考えていただければというふうに思います。
○阿部(知)分科員 申し訳ありませんが、電子化するにもスキャナーが不可欠なんですよ。では、どこからそのお金は出るんですか。もう実際に出したんじゃないですか。もうちょっとちゃんと答えてほしいですけれども。私は、これがうまくいくことを願っての質問ですから。
もちろん、例えば資料を取るために東京と往復する費用とか、これは広がりが大変あるので、他の費用百四十万円はそれはそれでよしといたしますが、カルテの保存ということの膨大な事業でありますから、そこに皆さんどう考えて備えをつくっておられるのでしょう。
もしこれ以上の答弁が出ないのであれば、大臣にお願いしたいです。私は、本当に本気で取り組むための、例えば恵楓園に聞かれてもいいと思うんですね、現場から、これこれこれにはこれくらい必要だと、皆さんそれは思っておられると思うんです。そこをもう一度きちんとお聞きいただきまして準備していただきたいが、どちらからの御答弁でもいいです。
○森光政府参考人 現在、調査に係る職員の費用等に関しては、療養費の中から、菊池恵楓園の方に出している費用の方から、全体の費用から出ております。
個別の電子化については、百四十万というのは委託費用ということで、スキャナーを購入というものではなくて、それらをできる業者の方に委託をして行っている費用ということで考えていただき、それ以外の費用については療養費の中から出ております。
○阿部(知)分科員 もう大変心もとない、やる気が感じられない。
学芸員は、ほかにも仕事があるわけです。そして、申し上げましたが、これから既に分かった八百四十二件プラス千件のカルテを探っていけば、もっと同じような問題が出てくるわけです。従来の体制でやれると思わないでいただきたい。本当にそれはもうびっくりです。
本当はもう少し何かなさっているんじゃないかと前向きに期待をしたいですが、今、今日の公式御答弁はそこまでですので、大臣にはよくこれは現地からのお声も聞いていただいて。
私は、境園長も非常に前向きにやっていただいていますし、それを担保するものを厚生労働省としても保障していくべきだと思うんです。と申しますのも、実は、園に残された様々なカルテを含めた資料の保存というものは、二〇〇一年に国賠訴訟が患者さん側の勝利に終わりますけれども、それが問題になっていた一九九〇年代の後半頃から、各療養所の医師や学芸員の皆さん、当時学芸員と言わないですけれども、問題意識を持って特に園の医師たちは集まって、ここにある特別な公共性を持ったカルテ、関連資料をどう保存していくかということを何回も回を重ねて御論議であります。しかし、私は、それに一貫して厚生労働省が応えていないのではないかという懸念を持つわけです。二〇一〇年に学芸員の配置がありまして、その後も、実はそれに見合う対応がないと私は思っております。
是非ここを今般のサリン事件を端緒にやっていただきたいし、部署も、最後につけました、組織図。サリン事件は大臣官房、それから医政局が入所者の手当て、健康局が多磨の全生園の資料館などなどですが、多磨に見合うような、きちんと私は体制を整えていただきたい。多磨は大変よい資料館になっていると思います、健康局の管理でありますが。
今、医政局が預かっている療養所、ここでの資料をどうしていくかが問われていて、その体制をしっかりと根本的に見直していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
○福岡国務大臣 入所者の方々のカルテや患者さんの台帳等を含めまして、各療養所で作成されました文書の保存の在り方につきましては、各療養所における文書の保存状況も踏まえた上、ハンセン病訴訟の統一交渉団の方々と意見交換を行いつつ、検討を進めることとしてございます。
その上で、今般、各療養所で作成されました文書のうちに、歴史的な資料として各療養所の社会交流会館で保存すべきと結論づけられました資料につきましては、電子化も含め、適切に保存等の対応をしていくことになると考えられますため、保存等の対応に必要となる社会交流会館の予算についても、引き続き、適切に確保できるように努めてまいりたいと考えています。
○阿部(知)分科員 今大臣の御答弁にありましたように、二〇一七年四月の二十五日、厚労省の医政局医療経営支援課でハンセン病療養所管理室長から、現状のまま各療養所に保存する方針であるという旨を発表をされております。私は、もちろん多磨に移せとか言っているのではないのです。生活の場であったところで資料が保存されることは大事、だけれども、それに見合う予算が充実をしておらない。人員もまたしかりであります。
私は、皆さんとても一生懸命やっていただいていると思います。大臣、カルテ保存と一言で言いますが、行ってみたらよく分かる、どのような状態で置かれているのか。それを一つ一つ丹念に繰り出して保存していく作業は、これから膨大になります。
是非、厚労省のもし医政局がなさるのであれば、それに見合うお金と人手の見積りと、また、入所者の意見も聞かなければなりません。複眼視です。医療だけではないのです、生活があって、人権があって、隔離した歴史があって、これら全てがきちんと日本の厚生労働行政の一こまとして残るようにお取組をいただきたいが、最後の御答弁をお願いいたします。
○福岡国務大臣 厚生労働省も限られた予算の中でやっておりますが、委員御指摘がございましたように、必要な調査であったり、必要な保存がしっかり行われていくようにしていきたいと思います。
○阿部(知)分科員 是非よろしくお願い申し上げます。
終わらせていただきます。
○深澤主査 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。
以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。
この際、一言御挨拶申し上げます。
分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。
これにて散会いたします。
午前十一時三十三分散会