衆議院

メインへスキップ



第1号 平成29年2月22日(水曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成二十九年二月二十日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十一日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      江藤  拓君    小倉 將信君

      鈴木 俊一君    野中  厚君

      福島 伸享君    高橋千鶴子君

二月二十一日

 野中厚君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十九年二月二十二日(水曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 野中  厚君

      岩田 和親君    江藤  拓君

      小倉 將信君    勝沼 栄明君

      斎藤 洋明君    鈴木 俊一君

      福山  守君    前田 一男君

      小熊 慎司君    福島 伸享君

      村岡 敏英君    高橋千鶴子君

      真島 省三君

   兼務 長坂 康正君 兼務 井出 庸生君

   兼務 本村賢太郎君 兼務 鷲尾英一郎君

   兼務 輿水 恵一君 兼務 中野 洋昌君

   兼務 足立 康史君

    …………………………………

   農林水産大臣       山本 有二君

   環境大臣         山本 公一君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   環境副大臣        関  芳弘君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   農林水産大臣政務官    細田 健一君

   環境大臣政務官      比嘉奈津美君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局次長)      北本 政行君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 緒方 俊則君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小野田 壮君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    吉井  巧君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中井川 誠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           谷内  繁君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           西郷 正道君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   政府参考人

   (林野庁林政部長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  織田  央君

   政府参考人

   (林野庁国有林野部長)  本郷 浩二君

   政府参考人

   (水産庁長官)      佐藤 一雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           星野 岳穂君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 青木 由行君

   政府参考人

   (国土交通省航空局航空ネットワーク部長)     和田 浩一君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       梅田 珠実君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            高橋 康夫君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  亀澤 玲治君

   農林水産委員会専門員   石上  智君

   環境委員会専門員     関  武志君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     福山  守君

  鈴木 俊一君     岩田 和親君

  福島 伸享君     村岡 敏英君

  高橋千鶴子君     畠山 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     前田 一男君

  福山  守君     勝沼 栄明君

  村岡 敏英君     小熊 慎司君

  畠山 和也君     清水 忠史君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     斎藤 洋明君

  前田 一男君     鈴木 俊一君

  小熊 慎司君     福島 伸享君

  清水 忠史君     池内さおり君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     江藤  拓君

  池内さおり君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋千鶴子君     真島 省三君

同日

 辞任         補欠選任

  真島 省三君     斉藤 和子君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤 和子君     高橋千鶴子君

同日

 第一分科員本村賢太郎君、第二分科員長坂康正君、第五分科員鷲尾英一郎君、輿水恵一君、中野洋昌君、第七分科員井出庸生君及び第八分科員足立康史君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十九年度一般会計予算

 平成二十九年度特別会計予算

 平成二十九年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

野中主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算及び平成二十九年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。山本農林水産大臣。

山本(有)国務大臣 初めに、予算の基礎となっております農林水産施策の基本方針について御説明を申し上げます。

 農業の競争力強化につきましては、昨年十一月、農業競争力強化プログラムを取りまとめました。このプログラムは、農業者の所得の向上を図るため、農業者が自由に経営展開できる環境を整備するとともに、農業者の努力では解決できない構造的な問題を解決しようとするものでございます。

 本年は、この農業競争力強化プログラムの実行元年であり、プログラムに示された施策を着実に実行に移してまいります。

 森林・林業政策の改革につきましては、林業成長産業化の動きを、点から線、線から面へと広げてまいります。地域の森林資源を循環利用する中で、地元に利益が還元され、地域の活性化に結びつく取り組みなどを重点的に支援いたします。

 水産施策の改革につきましては、本年、新たな水産基本計画及び漁港漁場整備長期計画を策定し、意欲ある担い手に対する政策支援を今まで以上に強化するなど、水産業の構造改革を図ってまいります。

 次に、平成二十九年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 平成二十九年度農林水産予算の総額は、関係府省計上分を含めまして二兆三千七十一億円、その内訳は、公共事業費が六千八百三十三億円、非公共事業費が一兆六千二百三十八億円となっております。

 農林水産予算の編成に当たりましては、農林水産業・地域の活力創造プランに基づきまして、農林水産業の成長産業化に向けて、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村を実現していくための施策の展開に必要な予算を重点的に措置したところでございます。

 以下、農林水産予算の重点事項につきましては、委員各位のお許しをいただきまして、御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願いを申し上げます。

 以上でございます。

野中主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま山本農林水産大臣から申し出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

野中主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩田和親君。

岩田分科員 おはようございます。自由民主党の岩田和親でございます。

 本日は、この第六分科会で質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げたいというように思います。

 本日、一番目の質問者ということで、すがすがしい気持ちでここに立たせていただいておりますが、実は昨年も農水関係の質問をしまして、一番目の質問だったんですね。どういうめぐり合わせかよくわかりませんが、やはり心身ともに清らかな形で質問できるということを重ねて感謝を申し上げたいというように思います。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、生産調整の廃止についてお伺いをしていきたいと思います。

 私は、農家の皆さんの声に耳を傾け、その不安な気持ちに寄り添って、大事な農業を次の世代に引き継ぐために一緒に頑張っていきたいという気持ちを伝えていくために、継続して農業の現場を回っているところであります。

 最近ではTPPに関する話題は聞かなくはなりましたが、特に不安の声が上がっているのが米政策の転換、生産調整の廃止についてであります。

 私の地元である佐賀平野は、整備された豊かな農地が広がる地域で、米を中心に麦、大豆などを効率的に作付しており、水田フル活用の先進地域と言えます。それでも、主食用米の直接支払い交付金、十アール当たり七千五百円がなくなることについて、不安の声が大きいというのがまさに実情であると感じております。

 平成三十年産からの生産調整の廃止により、米を中心とした営農による収益が悪化して、結果的に農業を続けられなくなり、耕作放棄地が拡大してしまうという心配の声があります。この一番率直な、素直な意見に対してどのように考えるのか、お聞かせください。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 二十七年産、二十八年産の状況を見てみますと、各産地におきまして、主食用米から飼料米を初めとする作物への転換が進みました。このことで、二年連続で全国の過剰作付が解消されるといったようなことで、需要に応じた生産が進められてきております。米の需給及び価格も安定してきているというふうに認識しております。

 こうした取り組みが自主的に行われることは、三十年産以降の姿そのもの、いわば予行演習だというふうに認識しておりまして、三十年産以降におきましても、引き続き、このような取り組みを進めることとしておるところでございます。

 したがいまして、三十年産以降、今委員から御指摘がございましたような状況になるとは考えておらないところでございます。国としましては、三十年産以降も、きめ細かな情報提供や水田フル活用のための支援などを行っていくとともに、各産地におきましても、このようなことを丁寧に御説明するということで、生産現場の不安を払拭してまいる所存でございます。

岩田分科員 今、幾つか答弁をいただいた部分もあるかもしれませんけれども、その取り組みを少し具体的に聞いていきたい、そのように思っております。

 今ちょっとお話にもありましたが、平成二十六年産で下落をしました米価格が、二十七年産、二十八年産と着実に持ち直してきておりまして、ほっとしているところでございます。

 近年の米価格の上昇について、どのように国が取り組んできた結果としてこのような上昇につながったと分析をされておられるのか、この点をお示しください。

柄澤政府参考人 国といたしましては、需要に応じた生産に向けた環境整備といたしまして、二十七年産から、生産数量目標に加えまして、いわゆる自主的取り組み参考値というものを付記しております。また、麦、大豆、飼料米等の戦略作物の生産に対して支援するための水田活用の直接支払い交付金の予算をしっかり確保する。さらには、都道府県、市町村、JAなどを対象として、需要に応じた生産推進キャラバンということで、各地に出向いて御説明をしているところでございます。

 このような中で、各産地におきまして、需要に応じた生産に向けた機運が醸成されまして、二十七年産、二十八年産において、各産地における主食用米から飼料米を初めとする作物への転換が行われた結果、二年連続で全国の過剰作付が解消される、こういう需給環境の改善が図られたことが、御指摘のような米価、価格に反映されてきているというふうに認識しております。

岩田分科員 過剰作付が解消されて、実際、グラフ等を見ても、その結果として在庫が減っていく、いわゆる需給が締まっていくというふうなことは目に見えて明らかだったわけでありまして、やはりこれをしっかりしていくということがまずは大事な取り組みであろう、そのように私も認識をしておるところであります。

 平成三十年産へと農業者が不安なくスムーズに移行していくためには、平成二十九年産、まさにこの取り組みというのが重要であるというように考えております。特に、交付金がなくなるということを考えますと、こうすれば米の価格が維持できるというような方策を説得力を持って示していかなければならないわけでありますが、現行制度の最後の生産となります平成二十九年産において国はどのような取り組みをしていくのか、お聞かせください。

細田大臣政務官 御質問いただきまして、ありがとうございました。

 御指摘のように、平成三十年産からいわゆる戸別所得補償が廃止をされて、それに伴いまして、各産地産地でそれぞれ必要な生産量を自分の頭で考えて決めていただくというような形になるわけでございますが、国といたしましては、ことしはそのための環境整備を行う非常に大切な年であるというふうに考えております。

 一つは、私どもとして非常にきめの細かい情報提供を行うということ、それから、今、柄澤統括官から御説明を差し上げましたとおり、餌米を初めとする戦略作物への転換をしっかりと進めていくということかと思っております。

 特に、私も、米どころの選挙区でございまして、農林水産省の若手の諸君と議論をいろいろしているんですけれども、農水省の諸君は、必要があれば、各産地に直接出向いて、各産地ごとの取り組みの議論の中にきっちり入って直接説明をしたり、あるいは産地の方と一緒に知恵を出してまいります、こういうことを言ってくれているので、ぜひ、先生の御地元でも、必要に応じて農水省の役人を呼んでもらって、一緒にいろいろな取り組みを考えていっていただきたいというふうに思っております。

岩田分科員 細田政務官、ありがとうございます。

 まさに、不安な気持ちにしっかりと向き合う、そのことが今回の質問の大事なテーマとして私も質問させていただいておりますが、やはりこの取り組みを、本当に省を挙げてしっかり頑張っていただきたい、そのように強く思うところでございます。

 それでは、直接支払い交付金、主食用米の直接支払い交付金の廃止に伴いまして、これが一つの財源というふうな考え方をしていきたいと私は思っております。

 この交付金は、平成二十九年度予算で七百十四億円あるということでございますが、やはりこれは、水田農業へのさらなる対策にしっかりと活用すべきではないか、私はそのように考えております。いかがでしょうか。

細田大臣政務官 ありがとうございました。

 まず、先生御指摘のとおり、主食用米の直接支払い交付金、これがことしを最後に廃止されるということで、七百億円超の財源が出てくるわけでございますが、これをどのように活用するかというのはまだ決まっておりません。今、省内外でさまざまな御意見があるところでございます。

 先生まさにおっしゃるように、さらなる水田農業の発展に使うべきであるとか、あるいは、御存じのとおり、前政権がいわゆる土地改良事業の予算を大幅に削減しましたから、それに回すべきであるとか、あるいは、三十一年からいわゆる収入保険が始まりますので、その収入保険の支援に回すべきであるとか、さまざまな御意見がございます。また、財政当局との折衝というものもございます。

 したがって、私どもは、さまざまな御意見、先生からいただいた御意見もまた踏まえまして、その時々の状況に応じて農林水産政策が最も効率的に行われるように、その財源の活用については十分に考えてまいりたい、こういうふうに考えております。

岩田分科員 さまざまな議論があるということは、当然私も承知をしておるわけでありまして、しっかりといい形でまとめていただきたいというように思います。

 ただ、現場の声を聞いている私の立場といたしましては、この交付金というのは直接農業者の懐に入っていた、そういうふうなお金なわけでございますので、それがどういうふうに使われていくのかというのはやはりきちんと説明ができなければならない、私はそのように強く思っているわけでありまして、ぜひ、いい形での財源の活用を重ねてお願い申し上げておきたいというように思います。

 それでは、続きまして、米の販売に関して質問をしてまいりたいというように思います。

 三十年産からの政策転換といいますのは、自由に、主体的に生産をするだけではなくて、主体的に売ることも求められている、このように考えております。

 この点に関する地元で聞きます不安の声として、次のような意見があります。

 北海道、東北、関東と西南暖地とは生産条件が違うことがそのまま格差となりまして、特に市場に出回るのが遅い地域にとって不利になるのではないかという意見。また、国が適時提供すると言っている需給状況などのマーケット情報が有効に使えるのかという意見。また、今まで米の流通の各段階がそれぞれ機能別役割を担っていたわけですが、それらの垣根が希薄になって互いに競争相手となることで、価格競争が激化するのではないか、そして、その影響として、安定供給を望むところに適正な商品調達を担保することが難しくなるのではないかという不安。

 こういった意見もある中で、各地で長期計画販売などの取り組みが本格的になってきているとも聞いております。

 この米の販売に関する取り組みに対する支援、これはどのようになっていますでしょうか。

柄澤政府参考人 生産者みずからが、その経営判断によりまして、需要に応じた生産、販売が行われるように、国としましては、全国の需要見通しに加えまして、各産地ごとの販売、在庫をめぐる状況等についてのきめ細かな情報提供を行っております。

 生産現場におきましては、このような国からの情報発信に加えまして、みずからが実需者のニーズを把握して、今御指摘ございましたが、事前契約ですとか、あるいは複数年契約などを含めまして、安定的に販売していくということが極めて重要だと認識しております。

 国としましては、こうした生産現場の取り組みを後押しする目的のために、いわゆる米穀周年供給・需要拡大支援事業という事業がございます、この事業におきまして、今後とも堅調な需要が期待される業務用などのニーズに応じた安定取引の推進ですとか、産地が自主的に行う年間を通じた安定販売、需要拡大などの取り組みの支援などを行っているところでございます。

 今後とも、需要に応じた生産、販売が行われるよう、国として努めてまいる所存でございます。

岩田分科員 価格をしっかりと維持していくというふうな大きな方針の中で、できるだけ産地や銘柄ごとに需給の情報がきちんと提供をされて、そしてまた、それに合わせて生産をしていくことが大きな方針だというふうに認識をしているわけでありますが、ブランドが確立している産地や銘柄、こういったものは計画的に生産、販売をして価格を維持していくということは努力次第で可能なんだろう、そのように私も感じております。しかし一方で、そこまで訴求力がないような産地では、ほかの産地との厳しい販売競争となって、購入側から足元を見られてしまうんではないか、そのような不安があるということは、私はやはり理解ができるわけであります。

 答弁のようにうまくいくことをもちろん期待するわけでありますけれども、ぜひ、このような心配の声があることをしっかり注意して、取り組みを進めていただきたいということを要望しておきます。

 次に、米生産に関するコスト削減について申し上げておきます。

 私も地元で農業者と話をするときに、価格を上げていくことも頑張りますが、コスト削減も必要ですね、そういう話をすると、これ以上にまだ何か経費削減せぬといかぬのですか、そういうふうなことを言われるわけであります。まさに空雑巾を絞るかのような、そういう努力を農業者に強いるというふうな話ではありませんで、やはり私は、構造的なコスト削減というふうなものが米の生産にも必要なんだということを感じております。

 価格の維持はもちろんのこと、構造的なコスト削減に関しまして、どのように取り組んでいるのか、お示しください。

柄澤政府参考人 今御指摘ございましたように、担い手の米の生産コストを削減するということは極めて重要な政策課題と認識しているところでございます。

 このため、日本再興戦略におきましては、担い手の米の生産コストを平成三十五年までに、平成二十三年の全国平均、これは六十キロ当たり一万六千一円でございますけれども、これを四割削減するという目標を掲げております。

 直近の平成二十七年の担い手の米の生産コストを見てみますと、個別経営で六十キロ当たり一万一千三百九十七円、組織法人経営で六十キロ当たり一万一千九百九十六円となっておるところでございます。平成二十三年の全国平均である六十キロ当たり一万六千一円から、おおむね三割程度低くなっている状況でございます。

 さらなるコスト削減に向けまして、担い手への農地集積、省力栽培技術の導入、農業競争力強化プログラムに基づく生産資材価格の引き下げなどの取り組みを進めているところでございます。

岩田分科員 それでは、最後に大臣に伺いたいというふうに思います。

 今回の生産調整廃止というのは、安倍政権が進めてまいりました農林水産業・地域の活力創造プランの推進においても大事な節目である、そのように考えております。

 生産調整という四十年以上続いてきた米政策の転換をスムーズに進めていくことは、今後、農業が持続可能な産業として次の世代に引き継がれていくために極めて重要であります。

 さまざま述べた現場の声に加えて、根本的な不安として、今の水田フル活用を中心とした政策がずっと続いていくのか、また、ころころと変わるのではないかというような不安の声があります。

 国として、農業者の不安の声に正面から向き合い、現在の米政策を今後ともしっかりと推進していくということを力強く訴えていただき、具体的には、目の前に来ました生産調整廃止を円滑に行っていただきたい、そのような思いでございます。

 大臣の総括的な決意をお聞きします。

山本(有)国務大臣 二十七年、二十八年産、これを振り返りますと、各産地で行政による生産数量目標の配分に頼らない自主的な取り組みが進んでおることは御承知のとおりでございまして、特に、二年連続で全国の過剰作付が解消されました。これによって需要に応じた生産が進む、そういう結果がもたらされることになりまして、米の需給及び価格が安定してきております。このことにおいて、逆に生産現場の皆様には、この方針がよかったのではないかという実感をいただいているように把握しております。

 こうした中で、二十七年、二十八年の取り組みは三十年産以降の姿そのものを映しておりまして、三十年産以降におきましてもこうした取り組みを継続するということで、米の需給及び価格の安定というものが図られるというように考えております。

 こうした取り組みの中で、国としては、三十年産以降、きめ細かな情報提供、そして、委員御指摘のとおり、水田フル活用支援を行ってまいりたいと思っております。特に、水田フル活用支援がまた脆弱なものになっていくんじゃないかというようなお気持ち、不安があることは承知しておりますが、そういうことがないように、今後もしっかりと米生産に対して取り組んでいきまして、米農家が不安を一切持たないというような米政策に着地したいと考えております。

岩田分科員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 やはり米は、日本の農業の一番基本、基盤でございます。これが、将来が不安であるというふうなことがあっては農業は立ち行かないということを私は強く思っておりますので、今後とも、私もしっかりとまた農業者の理解のために努力をしていきたいということを思っております。

 次に、中山間地農業についてお伺いをいたします。

 この年末年始に、私は地元の中山間地の農業者へ伺いました。この農家は、七草がゆの七草を生産しているところでありまして、東京へも十万パック以上出荷をしていた。年始の出荷最盛期には、百五十人以上ですか、そのくらいの人手で対応されていたということでありまして、一月六日には、上京されまして、首相官邸にも七草を届けられたということでございます。

 こういった元気な事例を視察し、伺うということは大変うれしく、元気づけられる話でありますが、やはり、中山間地の農業は平野部よりさらに厳しい状況に置かれていることは論をまちません。中山間地農業の衰退は、そのまま地域集落の衰退を招きます。さらには、多面的機能が失われて、平野部にまでさまざまな悪い影響を及ぼすおそれがあります。

 さらにこの取り組みを強化していくというような決意のもとでのルネッサンス事業に、強く期待をしておるところでございます。この新たな中山間地農業ルネッサンス事業でどのように振興を強化していかれるのか。特に、この説明の中であります、規模の大小にかかわらず、また、女性や高齢者を含め、多様な経営などというキーワード、これに大変期待をしているところでありますが、この点を踏まえて伺いたいと思います。

佐藤(速)政府参考人 農林水産省におきましては、生産条件が不利な中山間地域におきましても、創意工夫を発揮いたしまして、付加価値の高い農産物の生産ですとか六次産業化に取り組む意欲と能力のある農業者の方であれば、経営規模の大小ですとか法人経営、家族経営の別にかかわらず、幅広く支援をしております。

 平成二十九年度の当初予算におきましては、委員御指摘の中山間地農業ルネッサンス事業を創設いたします。その中で、地域の特色を生かした収益性の高い農産物の生産、販売ですとか六次産業化や都市農村交流等の取り組みなどにつきまして、さまざまな経営規模の農業者、若者、女性、さらには豊富な知識と経験をお持ちの高齢者、そういった地域の方々が一丸となった取り組みを優先的に支援することとしております。

 この中山間地農業ルネッサンス事業に位置づけられます支援事業の中には、取り組みやすさといった見地から、面積要件の緩和、運用改善、さらに補助率の見直しといったことを行うものもございます。また、専門知識を有する方によるきめ細やかな営農指導ですとか地域を牽引していくリーダーの確保の取り組み、こういったものにつきまして支援するものもございます。

 そういったことによりまして、中山間地農業の振興を強化していきたいと考えてございます。

岩田分科員 中山間地に関して、もう一点、鳥獣被害対策について伺いたいと思います。

 中山間地の農業を取り巻く環境の厳しさは、イノシシ、鹿等の鳥獣被害に象徴される、そのように私は考えております。佐賀県の場合はなぜか鹿がまだ入ってきておりませんで、もちろん地理的な問題なんでしょうが、やはりイノシシの被害というのが一番注目をされておるわけでありますけれども、いずれにしても、まずは予算をしっかり確保していただくということ、特に、ワイヤメッシュ等による防護もいいですが、捕獲、頭数管理によって頭数を減らしていくということをより強化すべきだ、そのように考えております。

 そして、私が聞いてきた現場の声というふうなものに、やはりさまざまな、まだまだ工夫というものができるのではないか、そういう思いをしておるところであります。

 例えば、狩猟免許の取得を促進する施策等がありますが、やはりこれは生業としてされるわけではありませんので、その更新などの費用というものが負担になっているというふうに聞いております。鳥獣被害に関しては規制緩和や費用負担ができないかというふうな声がまずあります。

 また、捕獲した後の処分についても課題がございます。いわゆるジビエ料理としてのさらなる利活用を進めるべきでありますが、現状では埋設処分が多く、苦労しているというふうな話でありました。焼却施設などをさらに設置していくなど、捕獲のみならず、利活用や処分まで含めた範囲でさらに支援をしていくべきだと感じております。

 また、狩猟は、原則年間の中で期間が決まっております。鳥獣被害対策に限り緩和している例もありますが、もっと広げてもらった方が実効性があるというような意見がございます。日没後のまだ明るい数十分がイノシシ等も発生しやすいので、こういった点を緩和してほしいというような意見がありました。

 これら意見に一つ一つ、それぞれ御回答いただかなくても結構でありますけれども、こういう点を踏まえまして質問をしてまいります。

 このようなイノシシ、鹿を初めとする鳥獣被害対策について、そもそもの予算確保はもとより、狩猟免許に係る規制緩和、ジビエ振興、また、その処理等への支援、期間、時間の柔軟な対応などを含めて、取り組みをさらに拡充強化していくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

佐藤(速)政府参考人 農林水産省におきましては、鳥獣被害の防止のために、侵入防止柵の整備ですとか追い払い、捕獲活動などのさまざまな取り組みを支援する鳥獣被害防止総合対策交付金につきまして、平成二十九年度予算案として九十五億円を計上いたしております。

 この交付金におきましては、さらにジビエの利活用を推進するために、処理加工施設の整備ですとか移動式の解体処理車の現場導入に向けた実証などを支援しております。

 また、今年度、初めてジビエ料理コンテストを開催いたしました。上位入賞をしました五十レシピを民間団体のウエブサイトに掲載することにしておりまして、家庭におけるジビエ料理の普及にも取り組んでいるところでございます。

 委員御指摘の鳥獣の処理につきましても、焼却施設の整備ですとか埋設処理に要する経費への支援も講じているところでございます。

 鳥獣被害は生産意欲にかかわる深刻な問題でございます。被害防止、捕獲といった守りの観点に加えて、ジビエの利活用といった攻めの発想も加えまして、捕獲とジビエ利用、一体的な取り組みを加速化してまいりたいというふうに考えてございます。

亀澤政府参考人 環境省では、農林水産省と共同で策定した、全国の鹿やイノシシの数を平成三十五年度までに半減させるという目標を踏まえまして、都道府県が鹿やイノシシの捕獲を行う指定管理鳥獣捕獲等事業に対しまして交付金により支援を行っております。

 狩猟免許の関係では、平成二十七年度から、有害鳥獣捕獲にかかわる狩猟者につきまして狩猟税の減免措置を講じているほか、都道府県によっては、免許試験の講習につきまして、受講料の助成やテキスト代の助成等について支援を行っている例がございます。

 狩猟期間につきましては、都道府県の判断により延長が可能でありまして、多くの都道府県で期間の延長が行われております。

 また、夜間の銃猟につきましては、平成二十七年に施行された鳥獣保護管理法により、指定管理鳥獣捕獲等事業において例外的に実施できるよう、規制緩和を行いました。

 なお、日の出前や日没後三十分間の銃猟につきましては、日中と同程度の安全性の確保が重要であることから、現在詳細なデータ収集を行っているところでありまして、その結果も踏まえまして、今後の規制のあり方を検討していく考えでございます。

 以上のような取り組みによりまして、鳥獣捕獲の強化を図ることとしておりますが、環境省といたしましては、今後とも、捕獲の現場の方々の意見等も十分聞きながら、また都道府県や農林水産省等関係省庁とも連携を図りながら、鳥獣被害対策の一層の充実強化に努めてまいりたいと思います。

岩田分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、この中山間地、いよいよこの予算でも力強い支援が期待をされるところでありますので、取り組みを期待したいと思います。

 最後に、有明海再生について質問をしてまいります。

 本年のノリ漁期も終盤となってきておりますが、御案内のように厳しい状況が続いており、特に佐賀県では、本年も西部地区の色落ちがひどい状況であります。全国的な品薄による入札価格の上昇がせめてもの救いでありますが、総じて漁業者の顔は暗いというふうな形であります。

 有明海再生に関する施策は、有明海・八代海特別措置法のもとで進められており、特に平成二十七年度から沿岸四県協調事業が追加され、よい成果も見えつつありますが、平成二十九年度で一旦終了することとなっており、漁業者を初め地元では不安に感じておられます。

 加えて、この予算が、いわゆる諫早湾訴訟における和解案とリンクするかのように言われている点も漁業者の不安を増大させております。

 これまでの取り組みの成果として、平成二十七年度以降は、一部海域においてアサリ稚貝が発生し、放流したアゲマキ稚貝の定着が見られるなど地元での期待も大きくなっており、私自身も取り組みを評価したいと思います。

 現地実証事業は、漁業者の漁獲など実感のある成果につながるものであることが重要でありまして、現在の成果はまさにその実感につながる可能性があります。今後とも、漁業者の希望をさらに反映していただき、取り組みを強化していただきたいと強く思います。

 また、覆砂、海底耕うん、作澪などの取り組みも、基礎的な事業という位置づけで継続した取り組みが不可欠であります。

 そしてまた、もう一点、和解に対してここで触れるのは差し控えたいと思いますが、これら再生の取り組みは、諫早湾訴訟において提示されている和解案よりも早くから実施をされているわけでありまして、私は、やはり切り分けて考えるべきものである、そのように思っております。

 訴訟のいかんにかかわらず、平成三十年度以降もこれまでと同じ方向性で予算を確保し、漁業者が実感できる成果を目指してさらに取り組みを強化していただきたい、そのように望みますが、いかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 まず、岩田委員が日ごろ地元関係者と一緒になりまして有明海の再生事業に御努力をいただいておること、心から感謝を申し上げます。

 また、御指摘の再生事業は重要な政策課題でございまして、水産資源の回復、海域環境の改善、これを待ったなしで取り組まなければなりません。

 具体的には、御指摘のように、貧酸素水塊や赤潮の発生機構の解明、また二枚貝類等の増養殖技術の開発、さらに漁業者みずからが行う漁場環境改善の現地実証、そして、覆砂、海底耕うん等による漁場環境の改善、こうしたことに着実な成果が得られているというように考えております。

 また、御指摘のように、アサリ稚貝の発生、佐賀県におけるアゲマキ稚貝の定着、漁業者が実感のある成果につなげることが重要だというように思っております。

 今後、先生の御意見も踏まえまして、現在進めている取り組みの成果などを検討し、さらなる強化ができるかどうかを考えてまいりたいというように思っております。

岩田分科員 今後さらなる取り組みをというふうなことで、前向きな御答弁をいただいたというように受けとめ、感謝をさせていただきます。

 やはり、訴訟というふうな形で非常に厳しい状況にあることは理解をしておりますけれども、いずれの立場の方も有明海の再生を望んでおるということは間違いないわけであります。ぜひ、この取り組みを国としてもしっかり進めていただくことをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

野中主査 これにて岩田和親君の質疑は終了いたしました。

 次に、福山守君。

福山分科員 おはようございます。

 きょうは、お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は農林水産委員会でしゃべるのを楽しみにしております。また、大臣、政務官、よろしくお願いいたします。

 きょうは、まず、水産関係から入っていきたいと思っております。

 今、日本の国土は三十八万平方キロ、御存じのように、世界では第六十位です。領海と排他的経済水域を合わせると約四百四十七万平方キロで、これは世界第六位ということになります。日本は、国土そのものよりも海洋において広範な権利を有する国、そういうことで、一九八五年には、水産業は世界トップでございました。今現在は七位でございます。そのときに三位だった中国は、今約八倍ほどふえております。日本は逆に四割ぐらいまで減っています。

 各国のそういうふうな漁獲高をいろいろ見てみますと、後でちょっと述べますけれども、それが乱獲につながって、そうやって資源が減っていくのかなというふうにも思っております。そういう観点の中で、何点か質問させていただきたいと思います。

 今後、新たな水産基本計画において資源評価の精度向上などに取り組んでいくこととしておりますが、資源管理の対策については、どういう位置づけ、また取り組んでいくのか、お聞きしたいと思います。

 特に、海洋の環境変化、これは今、岩田先生の方からもノリの問題が出ましたけれども、議員立法でもそういう形で瀬戸内法をつくりまして、いろいろな形で、ノリの色落ちとか、それだけでなしに、カキの問題、養殖のそういう問題までいろいろ影響がございます。

 環境の変化といいますものは、私も環境省の方で務めた経験がありますので気になるんですけれども、地球温暖化という形が言われて、もう久しいものがございます。それによって、今まで、例えば氷見のブリということが非常に有名でしたけれども、今現在では氷見のブリもなかなか漁獲量が減って、北海道の方まで北上しておるというふうなことも言っております。また、そういう中で、サワラもしかり、また、イカも近年非常に漁獲量が減ってきておるというふうな、いろいろなことが言われております。

 地球環境のそういういろいろな変化によって、これから各漁連といいますか、各地域の漁業者の皆様は変わっていくと思うんですね。やはりそういうふうな問題点についてしっかりと農林水産省の方で調査をすべきだ、これは継続して調査をしていかないと、単年度では絶対できないものであると私は思っております。

 この温暖化の傾向によって、例えば沖縄県のサンゴ、あれは三〇・五度が来たら死ぬそうでございます。非常に白化が進んでおるというふうなことも聞いております。

 いずれにいたしましても、そういうふうな気候、水温の変化というものによってどんどん日本の漁業の方向も変わっていくように思われますので、こういうふうな展開について、国としてどういうふうに今後考えていくのかということをまずお伺いしたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 福山先生の御質問にお答えいたします。

 先生、今いみじくもおっしゃられましたように、この水産資源につきましては、これは限りあるものというふうに認識しておりまして、現在進めております水産基本計画の中におきましても、やはり持続可能な漁業の実現といったことが極めて大事かというふうに思っておるところでございます。

 やはり、そういう中で、持続可能な漁業を実現していくために一番必要となりますのは、何といっても、我が国周辺の水産資源の状況あるいは評価、こういったものが非常に重要かというふうに考えておるところでございます。こうした点につきましては、この二十九年度の予算概算の決定額では、前年度が十五億八千万であったものを、十六億三千百万ということで増額しているところでございます。

 また、先生の方からお話ございましたように、確かに、近年の海洋環境の変化によりましてブリあるいはサンマといった魚種の回遊に変化が生じているということは、私どもも承知しているところでございます。

 私どもといたしましては、海洋環境の調査をやはり継続しまして、海洋環境の変化等による水産資源への影響の把握に努めるということが最も大事かと思っておりまして、また、その際、漁業者がより効率的に操業できるよう、漁場予測について、短期的な予報の提供や高精度化に取り組み、この結果を漁業者に公表しているところでございます。

 引き続きましてこれらの取り組みを進めまして、その成果を随時、漁業者、養殖業者に伝えまして、海洋環境の変化へ対応していくよう指導を進めていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

福山分科員 御答弁ありがとうございます。また後ほど、時間の都合上、ちょっとまとめさせていただきたいと思っております。

 次に、外国漁船による乱獲、不法操業の問題。

 これは先ほど言いましたように、中国というのは、この四十数年間の間に漁獲量が八倍近く、それ以上上がっております。中国という言葉を聞きますと、特に日本近海の、例えばサンマ、近海で非常にたくさん小さなものまでとって、日本がことしは非常に小さくなったとか、あるいはスルメイカ、これは日本海の大和堆というんですか、あそこのところ、ちょうど政務官のすぐ沖のところですけれども、こういうところでもいろいろそういうふうな乱獲あるいは不法操業が問題になっておる。

 この問題については今常態化しているのが普通だと思うんですね。これは漁民の方にとっては、自分たちでどうすることもできないんですね。だから、どうしてもやはり国の力をおかりしないとできない。そういうことを切なる願いとして、漁民の方は、国同士あるいは国際的な契約の中でしっかりとしたものを構築してほしいということがあると思います。

 先日、クロマグロの規制なんかも水産庁は発表されました。また、そういう中ではなしに、漁獲量のそういう取り組み、いろいろな形で、我が国内では、資源維持のため、回復のために努力はしております。

 先ほど言いましたように、国だけのレベルでできるわけないんです。これはやはりそういう国家が異常なとり方をするからこういう問題が起こる。もう一度言いますけれども、国家としてこれにどう対応していくかということをしっかりとした形で私はやっていただきたい。そういう形で御答弁をお願いいたします。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、水産資源、特に国際的な違法操業、こうしたものに対して我々は強い関心を持っております。責任ある我が国漁業国としての立場、そうしたものを踏まえますと、国内の取り組みも含めて、さらに国際的にも適切に対処しなきゃなりません。

 特に、周辺地域での漁業協定などの枠組みを活用して、資源管理の徹底、違法操業の根絶を果たしていかなきゃなりませんが、断固たる措置も含めて我々は対処しておるつもりでございまして、平成二十五年には、水産庁による拿捕件数は十九件、平成二十六年には、海上保安庁による拿捕件数は二十四件というような数字もございます。さらに、サンマについて申し上げれば、我が国が主導して設立いたしましたNPFC、北太平洋漁業委員会、ここで、北太平洋公海で漁獲を行う許可漁船の隻数の急激な増加を抑制することを平成二十七年には決定しております。

 こうした排他的経済水域における外国人による違法操業、こうしたものにつきまして、関係法令に基づいてしっかりと取り組んでいく所存でございます。

 今後とも、委員御指摘のように、周辺各国と協調する必要がございますので、そうした面を強く我々も位置づけまして、頑張ってまいりたいというように思っております。

福山分科員 どうか大臣、よろしくお願いいたしたいと思います。この問題は、全国の漁民の方にとっては本当に生活の糧、命の綱でございますので、しっかりとお願いいたしたいと思います。

 ただいまの形は、外国の漁船のそういう乱獲あるいは不法操業について中心に聞かせていただきましたけれども、もう一つ、やはり問題があるのは、国内の密漁問題ですね。

 けさも、たしか部会でナマコの密売か何かをやっておるということをちょっと見たんですけれども、私はこちらの方で質問するので行けませんでしたけれども、ナマコとかアワビやサザエ、ハマグリとか、こういう定着性の資源というものに対して密漁が非常に横行しておる。それも、組織的な形で動いているんですね。非常に悪質、巧妙化してきておるのが現状だそうでございます。

 やはりこういうものをしっかりと監視、そして取り締まりをする、こういうことが、まあ今までもやっていただいておるのはわかります、わかりますけれども、しかし、逆に言えば、私も数字を見たんですけれども、ふえておるんですね。やはりそういうことを考えたら、沿岸部の密漁ということに対して毅然たる方向をまた考えてほしいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御指摘ございましたように、沿岸地域での密漁対策につきましては、やはり都道府県、海上保安庁、警察、そして水産庁等の関係機関が関係漁業者等と連携して実施していくことが非常に効果的だというふうに認識しておるところでございます。

 私ども水産庁といたしましては、都道府県や系統組織も参加する密漁防止対策全国連絡会議といったものを毎年開催しておりまして、悪質、巧妙化する密漁に対しまして、効果的な対策に関する情報提供等を行っているところでございます。

 先生の方からお話ございましたように、密漁というのがふえておるといったような状況を踏まえまして、これまで密漁対策への支援といたしましては、従来から、都道府県等に対する交付金によりまして密漁監視施設の整備、こういったものを支援してきたところでございますが、やはりこれに加えましてソフト的なものが大事だろうということで、今回の二十九年度予算案におきましては、関係機関や関係漁業者等の連携強化を図るための広域的な関係者による協議会の開催、また密漁監視のための指導講習会、あるいはメディアの活用や看板の設置等による普及啓発といったような支援について新たに盛り込んだところでございます。

 今後とも、関係機関と連携をとりながら、しっかり密漁の防止に努めていきたい、このように考えているところでございます。

福山分科員 ちょっと欲張っていますので、ペースを上げさせていただかないとなかなか追いつかないようでございます。

 次に、次期水産基本計画における新規漁業就業者、後継者の確保と育成対策についてお伺いしたいと思います。

 これについては、非常にいい事業であると私は思っておりますし、生産者の担い手になっていく前の段階として、若手の新規漁業就業者や後継者を確保、育成していくことは本当に最重要であります。現在、対策として、新規漁業就業者総合支援事業が措置されておりますが、これは非常に需要が多くて、十分に予算が行き渡っていないというふうなことを聞いております。

 各県とも、漁業塾とかいろいろやりまして、私の本県でも、徳島県漁業アカデミー、これは予算が四千二百万で、半分は国の方、半分は地元ということで、満杯で、五人のところが六人来た。それはそのまま一人ふやして、県の金を使ってでもやりたいというふうなことを言っていただいたんですけれども。

 漁業を本当に継続、あるいはこれから復活していくためには、やはりこういうふうな試み、非常に私、いいことだと思います。

 この次期基本計画、こういう形でやりました、しかし、こういう就業者、後継者の確保、育成に対してもっと頑張っていただけるようなことを、ちょっとどうですか、長官、長官としてしっかりと残していただければありがたいですけれども、お願いいたします。

佐藤(一)政府参考人 今先生から御指摘いただきました新規就業者に対します事業として、新規漁業就業者総合支援事業というのがございまして、この事業では、就業準備から就業、定着の各段階に応じた支援を実施しているところでございます。先生御指摘のように、非常に各都道府県からの要望が大きいことは事実でございます。

 それで、今回の二十九年度の概算決定におきましては、本事業のさらなる活用の促進が図られるために、二十八年度が当初五・八億円でございましたが、三・五億円増の九・三億円というふうに予算措置したところでございます。

 また、この内容も少し、いろいろな要望が出てきておりますので、特に、これからはやはり就業した後もしっかりいろいろと研修が受けられるようにする必要があるんじゃないかといったようなことで、そうした研修への費用の補助といったことも増額しているところでございまして、こうした事業の充実をしっかり図りつつ、その状況も踏まえまして、今後とも必要な予算の確保に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

福山分科員 ありがとうございます。

 次に、畜産関係をお願いしたいと思います。

 先般、TPPのときに、私、チェックオフ制度について御質問いたしました。まず隗より始めよということで、各団体が非常に力を込めてやりたいというのであればやっていただければいいんだ、それがTPPに対する対抗策であると。

 これは今のところどうなるかはまだわかりませんけれども、ひょっとしたらFTAとかいろいろなことになってくる。そうなってくると、もっと厳しい交渉になってくるであろう。そういうふうな形の中で、このチェックオフ制度の現在の進捗状況と、ただ、これは前向きに言っていただけておるとは思うんですけれども、今後、農林水産省としてどのように取り組んで、形で応えていただけるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

山本(有)国務大臣 昨年十一月に決定されました農業競争力強化プログラム、ここにおきまして、チェックオフにつきましては、法制化を要望する業界において推進母体を立ち上げ、チェックオフのスキームを決めて、一定程度の同意、七五%以上でございますが、これを得られた場合に法制化に着手するという道筋が示されております。特に、拠出金の強制徴収ということになりますと、どうしても、先ほど申し上げましたように、生産者の大宗が合意するということが必要でございます。

 これを受けまして、推進母体の設立に向けた準備会合が開催されておりまして、日本養豚協会が中心でございますが、年度内に推進母体を設立すべく、関係者で調整が現在行われております。推進母体の設立後は、その中で主体的にチェックオフスキーム等を検討していただくことになるわけでありますが、農林水産省といたしましては、検討が円滑に進むように、情報提供、助言、こうしたことを行うこととしておりまして、養豚業界の皆様との連絡調整を後押ししてまいりたいというように思っております。

福山分科員 どうかよろしくお願いいたしたいと思います。

 続きまして、繁殖雌牛の増頭についてお伺いいたします。

 ちょうど、きのうの日本農業新聞にも、和牛の取引、三十二万頭割れ、最少更新、五年で一三%減、価格は倍、実際、二・二倍までいっていて、百万円近くするという現状でございます。

 これについて、やはりいろいろ問題もあろうかと思いますけれども、現在、こういう繁殖雌牛の増頭に向けた対策、農林水産省としてどのように考えておるのか、お願いいたします。

山本(有)国務大臣 繁殖雌牛の増頭でございますが、御指摘のとおり、和子牛生産頭数の減少を背景といたしまして、肉用子牛価格が高騰しております。繁殖雌牛の増頭が必要でございますし、肉用牛の生産基盤強化、これは喫緊の課題でございます。

 二十八年に雌牛は五十八万九千頭でありましたが、六年ぶりに実は増加に転じました。対前年度比九千頭の増でございます。また、雌牛を肉用ではなくて繁殖用に仕向ける割合も上昇傾向にございます。肉用牛の生産基盤は回復の兆しが見え始めている大事なところでございます。

 農林水産省といたしましては、畜産クラスター事業を活用して、子牛の育成部門を外部化して増頭を可能とするためのキャトルステーション等の整備を行いたいと思っておりますし、また、優良な繁殖雌牛の増頭や導入に対する奨励金の交付もさせていただき、さらに、繁殖雌牛の増頭に必要な畜舎等の整備、あるいは情報通信技術、ICT等を活用した発情発見装置や分娩監視装置等の導入を支援させていただいております。

 こうした中、生産回復に向けた動きが確固たるものとなっていきますように、御指摘のとおり、引き続き努力をしてまいりたいと存じております。

福山分科員 よろしくお願いいたします。

 次に、簡易牛舎の整備推進ということでお伺いいたします。

 繁殖雌牛の増頭に向けては、農家の経営規模の拡大が重要と考えます。また、施設用地の確保が容易なところでの大規模な増頭だけでなしに、例えば、普通、中山間地が多いんですね、こういう子牛の、家族経営の場合は。そういう中山間地域で、例えば木造の五百平米程度の牛舎を整備して二、三十頭程度の増頭を図る方法もあると思います。本当に繁殖基盤強化にとって有効であるとも考えます。そのような増頭であれば、家族経営の農家も取り組みやすいし、中山間地の振興にも役立つと考えております。

 このような繁殖雌牛の増頭を推進するため、簡易な牛舎整備への支援も重要であると考えますが、いかがでしょうか。

細田大臣政務官 まず、福山先生におかれましては、日ごろから農林水産行政に対して温かい御指導をいただいていることに改めて心から御礼を申します。

 今先生から御指摘があったとおり、肉用牛の繁殖経営のうち七割近くを、その頭数の規模が十頭未満である小規模層が占めております。したがって、繁殖雌牛の増頭を進めていくためには、このような小規模な経営体への支援というのは非常に大切であるというふうに考えております。

 農林水産省では、この中小規模の経営体が規模拡大に取り組みやすい、木造を含む簡易な牛舎の整備を支援する事業、これは肉用牛経営安定対策補完事業という名称がついておりますが、これを措置しているところでございまして、このような事業を使って、中小規模の家族経営の事業体が取り組みやすい、いわゆる小規模な牛舎の構築を支援してまいりたいというふうに考えております。

 なお、この事業の使い勝手等々については、いろいろな御意見もあるかと思いますので、またこういう点についても先生から御意見をいただいて事業を推進してまいりたい、こういうふうに考えます。

福山分科員 どうかよろしくお願いいたします。

 続きまして、時間の関係上、もう簡単に言います。ジビエ肉のいわゆる利用方法ですね。こういうものについて、やはり、リーダーがあれば、しっかりした、そういういろいろな、流通から販売からいろいろな形をとっていける、そのリーダーの養成をどう考えるか。

 それと、もう一点、環境省の方で。私どもの田舎の方は猿が多いんです、猿ということで、モデル地区に二年ちょっと前に指定されまして、その猿のモデル事業としての成果ももう出てきていると思いますので、その二点、ちょっとお願いいたします。

細田大臣政務官 先生御指摘のとおり、ジビエの利活用に当たっては、地域の旗振り役といいますか、リーダーの育成が非常に大切であるというふうに認識をしております。

 私どもとしては、いわゆるジビエ利用に取り組むための人材の育成研修というような事業を実施しておりまして、これはことしも実施をされる予定でございますので、ぜひ、先生の御地元からも、こういう育成事業の研修会に御参加いただくようにお話をいただければ、こういうふうに思います。

比嘉大臣政務官 お答えいたします。

 ニホンザルについては、群れ単位で行動するという習性や学習能力が高いといった特徴から、群れに着目して対策を講ずるということが非常に重要であります。

 そのために、環境省では、加害レベルの高い群れの特定や効果的な捕獲の方法を確立することを目的に、平成二十六年度より徳島県及び広島県でモデル事業に取り組んできたところでございます。

 委員御地元の徳島県では、ニホンザルの群れの分布と、群れの頭数や構成、群れの加害レベルを把握するために、スマートフォンのGPS機能を利用した住民参加型の調査や、電波発信機を装着しての追跡調査等を実施しております。

 当該調査の結果、市街地に頻繁に出没する加害レベルの高い群れを把握することが可能となり、その群れに対して加害個体の選択的な確保を進めたところ、人里を避けるなどの成果が得られたようであります。

 今回実施したモデル事業の成果を両県のモニタリング体制の強化に役立てるとともに、こうした対策手法をまとめた冊子の作成や配布、研修の開催を通じて、全国の都道府県、市町村にニホンザルの群れを単位とした対策を広く推奨してまいります。

福山分科員 それぞれ、御答弁ありがとうございました。

 今、比嘉先生の方からお話がありましたように、モデル地区としてそういうふうな成果が出た、また、そういう文書が出るということは非常にうれしく思っております。今後ともしっかりと、問題提起された部分は対応をとっていただきたいと思います。

 細田政務官の方からは、牛舎の問題で、本当に前向きな御答弁、ありがとうございます。

 やはり中山間地というのが一番これから難しい部分であるかなと。鳥獣害被害についてもそうですけれども、やはり中山間地に人がきっちりおるということが非常に大事なのであって、そして、そういう安易な形でできるような牛舎を整備することによって雌牛をふやすことができる、母牛をふやすことができる。やはり、これから海外展開を目指すといっても、もとがいないと全然だめですから。私も、朝の部会でそういう酪農牛から腹を借りて云々ということも全部対応をとることは聞いておりますけれども、やはり、和牛という売り物でいくのであれば、しっかりした体制をつくってお願いいたしたいと思います。

 そして、水産業というのが、従来、やはり日本で非常に大きな位置を占めていたと思うんですね、歴史的に言えば。

 ただ、先ほど言いましたように、一九八五年に世界一になってから徐々に下り坂で、今は七位ですけれども、数字的に言えば四割ぐらいしかとれていないというのが現状です。その年に三位だった中国が今八倍を超すような数字。そういうふうなことの中で、この日本、特に日本近海というのは非常に難しい位置にあるのかなというふうに思っております。

 先ほど大臣が、しっかりとした国際的な問題もお話しいただきました。またしっかり大臣として対応をお願いいたします。そしてまた、佐藤長官の方からはいろいろ御答弁いただきましたけれども、漁民の皆さんは本当に水産庁の佐藤長官のその方向にしっかりとついていきますので、しっかりとした施策を打っていただくことをよろしくお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

野中主査 これにて福山守君の質疑は終了いたしました。

 次に、長坂康正君。

長坂分科員 自民党の長坂康正でございます。

 けさは質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 大臣、早朝から御苦労さまでございます。日ごろから敬愛しております山本大臣の前で、地域の課題も含めまして、質問させていただきますことを大変ありがたく思います。

 きょうは、海抜ゼロメーター地帯における防災対策という視点で、地元のいろいろな例を挙げながら質問をさせていただきたいと思っております。

 私の地元は、名古屋市の西に当たります、愛知県の尾張地域の西南部というところでございまして、木曽川を境に西隣は岐阜県また三重県でありまして、また、南は名古屋港そして伊勢湾という状況でございます。

 昭和三十四年に伊勢湾台風がございまして、大変厳しい被害を受けた地域でもございますけれども、大変歴史がありますし、戦後、昭和、今の伊勢湾台風以降は、私の先輩に当たります海部元総理だとか江崎真澄副総理とか、そういった尊敬する先輩たちがしっかり地域のために頑張った。

 それから、さかのぼりますと、戦国時代は、織田信長、また秀吉、そして加藤清正、福島正則、前田利家、蜂須賀小六とか山内一豊なんかが少年時代を過ごしたような地域でございます。

 もともと濃尾平野の真っただ中でありまして、木曽川、長良川、揖斐川の木曽三川が運びます土砂の堆積でだんだん海岸線が南の方へ進んできたという肥沃な濃尾平野でありますけれども、なかなか川の流れが定まらなくて、私たち地元の教科書なんかですと、鎌倉時代から、集落の周りを堤防で囲って輪中というような、そんなことで水との闘いをそんな時代から進めてきた。そして、江戸時代になりますと、だんだん今度は干拓の歴史でございまして、新田開発をどんどん進めてきた地域であります。

 今、国道一号線が私どもの一番南の方の弥富市というところを通っております。当然、木曽川、長良川、揖斐川には橋がかかっているわけでありますけれども、江戸時代の東海道五十三次、四十一番目の宿が名古屋の熱田宿といいまして、熱田神宮のあるところですが、そこからお隣の桑名宿までは、要するに川が氾濫ばかりしているものですから、海上七里の渡しといいまして、本当に海が唯一のそういった海上路ということになっていたわけであります。江戸時代末から明治にかけての、木曽川、長良川、揖斐川をしっかりと分ける、そういった堤防の事業を待たないと、この氾濫との闘いというのはなかなか終わらなかったわけでございます。

 さっき言いました、江戸時代からどんどんどんどん、一六〇〇年の後半から一七〇〇年、一八〇〇年と尾張藩だとか豪商の努力によって干拓が続いてきたわけでありますけれども、戦後には、食料増産や失業者救済という目的として、鍋田干拓という一大事業が十年にわたって、これは農水省の当時の事業でありますけれども、着手をされました。

 十年にわたる工事が終わりまして、初めての収穫を目前とした昭和三十四年の九月に、伊勢湾台風の大変な被害に見舞われたという厳しい歴史がございます。そのときは、満潮時と重なりまして、干拓事業のために整備をしました七キロに及ぶ海岸堤を強風と高潮が一挙に襲いまして、津波ではありませんけれども、高潮の濁流で、海岸線から二十キロ上流まで一面の海になったわけであります。それが、水が引くまでに四カ月を要したという厳しい歴史がございます。

 御承知のように、伊勢湾台風は五千人を超える死者・行方不明者ということで、阪神・淡路や東日本の震災以前には日本で戦後最大の自然災害ということも忘れることができません。そこから、しっかりと堤防を築き、そして、ありがたいことに、きょうもいろいろ御報告させていただきますが、農水省のいろいろな農業農村整備事業、こういった防災事業の予算、そしてまた、国土交通省、県のいろいろなそういった対策によって地域を守ってきたという歴史がございます。

 それで、ゼロメーター地帯日本一なんです。二万五、六千ヘクタールあるんですけれども、私の地元、選挙区だけで二万ヘクタールございます。二万ヘクタールといいますと、東京の方は余りぴんとこないんですが、山手線の内側の三倍以上の広さがございます。

 そういう中で、いい農業もやっていただいておりますし、今は、一番南の飛島村、弥富市なんかは、三菱重工、川崎重工、航空宇宙産業、ロケットだとかMRJとかボーイングの機体とか、そういったものもしっかりできている、そういうことでありまして、もともとは繊維産業でございます。繊維産業から自動車産業になり、今は航空宇宙産業まで。愛知県は物づくりでは日本一でございますから、四十三兆八千億円というのが愛知県の製造品出荷額でありますけれども、その一翼を担っている地域だということであります。

 ただ、先ほど言いました、四カ月水が引かなかったというのは、そこで海抜ゼロメーター以下というのがわかったんですね。海抜というのは、私たち、子供のころ、富士山が三千七百七十六メーターというのはすぐ覚えたんです。ゼロメーターなんてことは基本的にははからない。何で水が引かないんだといって調べたら、ゼロメーター以下だったわけなんですね。それは、当時の繊維産業だとかいろいろなことで、木曽川の伏流水がありますから、井戸でどんどん水を活用したということじゃないかということで、今は工業用水に切りかえておりますけれども、そんなような歴史があるわけであります。

 そして、農水省のおかげといいますのは、本来、土地改良事業で、いい農業をやろうと言っていただくための農業用の排水機場なんかが、先輩たちの努力によって、地域内、私の地元だけで百二十五カ所整備されております。

 ですから、例えば、さっき言いました木曽三川の木曽川というのは、河口から五十キロ以上上流の犬山市というところぐらいまで行きませんと、自然に木曽川に流れる川、排水する川がないんです。天井川になっております。本来、木曽川は飲み水の川ですから大事にしているんですが、日光川が、雨水や生活排水が全部流れるので、そこもやはり天井川になっていますから、そういった農業用の排水機なんかも活用させていただいて、ふだんからポンプで強制的に排水をするという地域で、その二万ヘクタールを守っているという現実がございます。

 そういう中で、農業でいいますと、県全体の一五%を占める有数のお米の産地にもなっておりますし、最近でいいますと、南の方にあります鍋八農産という農業企業体が、自動車産業のトヨタと共同開発したICT管理ツール「豊作計画」というのを導入しまして、作業の見える化、効率化で高収益を上げまして、二十八年度の農林水産祭において、全国の農業者にとっては最高の栄誉である天皇杯を受賞するというような、非常に当地域の農業のポテンシャルは高いと言えると思います。

 いろいろな産業、農業もそうですし、先端産業まである地域だということを御理解いただき、また、そこの地域に七十五万人が暮らしているのが現実であります。

 さっき申しました、鍋田干拓を守る農地海岸や、そして百二十五カ所を数える排水機場で地域を守っていることも事実でありまして、我々自民党はこういった農業農村整備事業の必要性、重要性をずっと訴え続けてきたわけでありますけれども、御承知のように、平成二十二年に民主党政権で、コンクリートから人へ、そういうことで予算が半減されてしまった。そういう厳しいことで、本当に地域は深い悲しみを持ってきたわけであります。

 正直言いまして、昨年だけでも、日本は、熊本の震災から年末の糸魚川の大火まで、自然災害というのが大変厳しい国でございます。おかげさまで、自公政権になって、しっかりそういったことも対応していただいているということは本当に心強い限りであります。

 やはり防災、減災というのは大事だと思います。国土強靱化、そういったことも大事でございます。私どもは、伊勢湾台風という大変な厳しさを乗り越えて今日までやってきた、その中には農業農村整備事業による防災対策が非常にありがたかったというのは、地域みんなで感謝をしているわけでございますけれども、これをやはり着実に進めていただきたい、それが本当に地域の総意でございます。

 農業農村整備事業における防災対策に対する重要性について、大臣のお考え、また、防災予算の状況についてお尋ねをまずしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

山本(有)国務大臣 長坂委員には、海部内閣の総理秘書官としての御活躍以来、お世話になってきておるわけでございますが、先ほどは、歴史的に、木曽三川の尾張藩地域、ここにおけるさまざまな出来事、あるいは災害についてのお話を承り、改めてこの地域の重要性と困難性を教えていただいた次第でございます。

 農業農村整備事業関係予算につきまして、担い手への農地の集積、集約化や、高収益作物への転換等に向けた大区画化、汎用化等を通じた農業の競争力強化、さらには、農業水利施設の長寿命化や耐震化等による農村地域の防災・減災対策を通じた国土強靱化、これらを図るため基盤を整備するものでございまして、二十九年度当初予算案におきまして、対前年度比一〇五・二%、四千二十億円を確保しておるところでございます。

 その中で、特に、頻発する集中豪雨、大規模地震等の自然災害を踏まえ、ゼロメートル地帯等における農村地域の防災・減災対策は極めて重要な課題であるという認識のもと、農地等の湛水被害を防止する排水機場の整備を含む補助事業でございます農村地域防災減災事業につきまして、平成二十八年度当初予算におきまして、平成二十七年度からほぼ倍額に増額いたしまして、二十九年度当初予算では、二十八年度と同額の五百八億円を確保いたしております。排水施設等をきめ細かに改修して、地域排水機能を総合的に強化する事業メニューを新たに創設することといたしました。

 ちなみに、委員の御努力もありまして、愛知県における二十八年度当初予算、これは全国一の配分になっております。

 今後とも、これらの予算や制度を有効活用して、地方公共団体と密接に連携を図りながら、農村地域の防災・減災対策の一層の推進に努めてまいりたいというように思っております。

長坂分科員 ありがとうございます。大変ありがたい大臣の御認識でありますし、また、農業農村整備事業につきまして、他事業に比べて高い伸びの予算を確保していただいておりますことに、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 ただ、そうはいいましても、補正と本予算で随分取り戻していただいたというのは現実でございまして、感謝しておりますけれども、平成二十一年の当時の農業農村整備事業全体の予算は五千七百七十二億円でございまして、当初で比べますとその七割に戻ったということでございまして、さらなる御尽力をいただきたいな、そんな思いで、地域でも声が上がっておりますので、お願いをしたいと思います。

 次に、先ほどお話もさせていただきました農地海岸の整備についてお尋ねをいたします。

 伊勢湾台風の後、しっかりそういった堤防も整備し、排水機もやってきょうまで来て、非常にフラットな平野でございますので、産業もいろいろと推進させていただいているというのは御報告したとおりでありますけれども、今、南海トラフ地震の防災対策推進地域に指定されているということが非常に厳しい状況でございます。

 今後三十年の間に七〇%の確率で南海トラフ地震が発生するとされております、これは大臣のお地元の四国まで含めての話でございますけれども。農地海岸の耐震対策というのが非常に喫緊の課題となっております。

 先ほどお話しした鍋田干拓の農地海岸は、今は大丈夫だと思っておりますが、想定外をなくすいろいろな想定を学者の方にしていただきますと、やはり地盤が弱いものですから、もし南海トラフの地震が発災した場合は、堤防がどんと沈下をして、そしてやはり津波が、二十キロ内陸まで浸水するという、そんな厳しい予測がされております。そうしましたら、先ほど申し上げたようなインフラはことごとく水没して、愛知県経済だけではなく、日本の経済にも大きな打撃を与えることになるわけであります。

 先般、予算委員会の地方公聴会を名古屋でもしていただきましたけれども、そこでも、中経連の豊田会長からは、防災・減災対策を、インフラ整備をしっかりやってほしいという声がアンケートでも出ているという御披瀝もございました。ぜひ、こういった特殊事情から、当地域の海岸整備、重点的に進めたいというのが我々の願いでございます。

 農地海岸を整備する事業は、農山漁村地域整備交付金により今日まで実施されておりますけれども、この交付金は対前年度比九五%でございます。

 愛知県は、高知とは違いまして、志摩半島とか渥美半島で守られておりまして、南海トラフの地震による発災予測の津波高は二・六メーター、それほど高くはございません。ですから、先ほどの海岸も、満潮時にそういった津波が来ても、今の高さは五・八メーターございますので、海岸堤防が壊れなければ、ゼロメーター地帯を津波から守ることができるわけであります。

 現在、堤防を粘り強い構造とするために、二重の鋼矢板、シートパイルを堤防に打ち込む工事を進めていただいておりますけれども、全く工事費が足りません。国土の保全に必要な海岸整備を実施する県に対しては、整備に必要な事業費を十分加味した上で、農山漁村地域交付金を配分すべきだと考えておりますけれども、御所見をお伺いしたいと思います。

佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。

 農地海岸の整備につきましては、委員御指摘のとおり、農山漁村地域整備交付金により実施しております。この交付金は、農地海岸整備のほかにも、農林水産業の生産基盤整備ですとか農山漁村の防災・減災対策といったような多様な事業を実施できる、そういう交付金でございます。

 配分の仕方でございますが、この交付金の配分につきましては、地域の実情において実施している各事業の要望額と、耕地面積、農地海岸線の延長、農業水利施設の延長などをもとに国が一括して配分した予算を、各都道府県がみずからの裁量で地区別配分する、こういう仕組みになってございます。

 そういったことになっておりますので、私ども農林水産省といたしましては、都道府県に対しまして、この交付金とは別に補助事業がございます、この補助事業を最大限に活用していただく。この農山漁村地域整備交付金につきましては、その補助事業で実施できない施設の整備、農地海岸の整備もこれに該当いたします、そういった整備を中心に、事業の緊急性などを踏まえて地区別配分をしていただきたい、こういうことを全国の地方説明会で御説明申し上げて、理解を得るように努めているところでございます。

 なお、この交付金につきましては、防災、減災にも資する事業でもございますので、今後とも必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

長坂分科員 全体額もあると思いますけれども、私どもの地元では、なかなかこの進捗状況では厳しいな、心配だなということがございますので、さらに御努力をお願いしたいと思います。

 続いて、農業用水管に使用されております石綿セメント管、アスベスト管の除去対策についてもお尋ねをさせていただきたいと思います。

 先ほど来申し上げておりますゼロメーター地帯に位置する私どもの海部地域で、農業用水は、昔から木曽川とか地域の河川から取水をしておりました。ただ、だんだん、地盤沈下やいろいろな、木曽川の河床の低下なんかから取水が困難になってまいりましたし、家庭の雑排水なんかもまじっておりましたので非常に水質が悪いということで、そんな中で、昭和四十三年に木曽川総合用水事業によって、取水口を、木曽川大堰、そこからあわせて引く、そして、用水と排水を分離する用排水分離の、これも農水省のいい、非常にありがたい事業でありましたけれども、今は、取水の安定、管理の合理化が図られております。

 ただ、当時、その用水管には安価で施工性にすぐれていたと言われる石綿管、石綿セメント管が多用されておりまして、施工から三十年以上経過して、アスベスト管のいろいろな問題、そして今は、老朽化による水漏れだとかそういったことが頻発するようになりまして、農業用水の安定化に支障を来しております。今後、老朽化が進むことと、万一大規模地震が起こりますと、石綿セメント管が破損して粉じんが飛び散った場合、健康への被害が非常に危惧されております。

 これがなかなか進んでおりませんので、地域では、未事業化や未改修の石綿管が延べ四百三十キロございます。非常に不安を抱かれておるわけでありまして、健康への被害が懸念される石綿セメント管を短期間で集中的に除去することが地域の安心、安全な暮らしにつながるということで、除去対策事業を一層推進する必要があると考えておりますけれども、農水省の御見解を伺いたいと存じます。

佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省といたしましては、石綿管が使用されております農業用管水路の除去、交換につきまして、農業者の健康被害を未然に防止するといった観点から、極めて重要であるというふうに考えてございます。

 平成十八年に関係法令等の改正が行われました。それに合わせまして、石綿管の除去、交換を行う事業への補助制度を創設いたしました。現在は、農村地域防災減災事業の一メニューとして、地方公共団体の取り組みを積極的に支援申し上げているところでございます。

 愛知県におきましては、県と市町村が独自に負担割合を上乗せして農家負担の軽減を図っているなど、この事業の推進に尽力されていると承知をいたしております。

 農林水産省といたしましては、今後とも、この農村地域防災減災事業の予算を有効に活用いたしまして、地方公共団体と連携を図りながら、石綿管の除去、交換を行う事業を推進してまいりたい、農村地域の安全、安心な暮らしの実現に向けて積極的に支援してまいりたいというふうに考えてございます。

長坂分科員 積極的に支援していただけるということでございますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最後に、ゼロメーター地帯におけます農業農村整備事業のあり方についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 水田や土地改良施設は、食料の安全供給のみならず、防災、減災や国土環境保全、保健休養といった、さまざまな公益的機能を持っております。この効用は、農村にとどまらず、広く国民が享受しているわけであります。食料・農業・農村政策審議会の農業農村振興整備部会の中でも、こうした多面的機能については、国民に気づかれにくい見えざる国富であり、次世代に引き継いでいくことが活力ある我が国社会を維持していくために必要とされていると指摘もあります。

 私どもの地元、ゼロメーター地帯では、土地改良施設の更新に当たり、地盤が脆弱なことによりまして、長大な基礎くいや、地下水位が高いことによる水がえなど仮設工事が必要となりまして、工事費が高くなるんですね、いろいろな工事をしようといたしますと。また、水路も、高低差が少ないために排水路の勾配がとれないので、結果として、断面を大きくしないと水が流れていかない。一般的な地域に比べて工事費が割高になっているという現実がございます。

 加えて、地盤沈下によりまして、急ピッチで整備してきた土地改良施設の多くが、四十年、五十年と時が経過しておりますから、今、老朽化しており、施設の維持管理費も大変増加しているというのが現実であります。

 一方、農家の高齢化や土地持ち非農家が増加するなど、農業を取り巻く社会情勢は大きく変化をしております。

 こうした土地改良施設の更新や管理に係る負担が、財政事情が劣る市町村や所得低迷に苦しむ農家に重くのしかかっておりまして、このままでは、近い将来にこうした地域排水のシステムが破綻をするおそれがある、ひいては社会経済にも影響を及ぼすんじゃないかということが、地域で今心配をされているわけであります。

 先ほど来申し上げております尾張西南部地域は、東日本と西日本の結節点に位置する日本最大のゼロメーター地帯であるのに加え、南海トラフの地震防災対策推進地域にも指定をされております。こういった地域の国土強靱化を最優先で進めることは、国策としても私は必要であると思っております。

 ぜひまたそのことに対する御見解を伺いたいのと、国民の財産や地域の生活を守る施設の維持管理に係る農家負担、これを軽減する必要があると思うんですけれども、これについてはいかがお考えでありましょうか。

佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御地元の尾張西南部地域におきましては、これまで、農業農村整備事業によりまして、排水機場の整備を進めてきたところでございます。

 一方、御指摘のとおり、施設の老朽化が進む中、南海トラフ地震に備えながら、施設の耐震化など、適切な更新整備を図っていくといったことが非常に大切だと思っております。

 そうした観点から、現在、国営耐震対策一体型かんがい排水事業として、尾張西部地区、ここで農業水利施設の耐震対策を実施しているところでございます。

 昨年八月に策定いたしました新たな土地改良長期計画におきましても、国土強靱化の観点から、老朽化や災害リスクに対応した水利施設の戦略的な保全管理、機能強化を進めるということにしております。

 今後とも、地域における国土強靱化に向けまして、地域の実情に応じた対策を推進してまいりたいと考えてございます。

 また、施設の維持管理費の問題でございます。

 基幹的な農業水利施設につきましては、農村の防災、減災といった公共的な役割を果たしております。農家の維持管理費負担の軽減のために、一つは基幹的施設に対する管理費の助成、二つ目に省エネ施設や小水力発電施設の導入に対する支援、三つ目に水利施設の機能保持のための整備、補修に対する支援、これらの施策を行っているところでございます。

 こういった施策の実施を通じまして、土地改良施設の維持管理に係る課題に適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

長坂分科員 ぜひ、いろいろな場面での取り組みをこれからも強力にお願いをしたいと思います。

 もう時間もありませんけれども、おかげさまで、こうして農水大臣の前で、地域の抱える課題について御報告し、また、いろいろな御所見を伺うことができました。何しろ二万ヘクタール以上という全国一のゼロメーター地帯でありますけれども、おかげさまで、農水省の予算も活用させていただいていい農業も推進させていただく、それが地域に暮らす住民の暮らしを守ることもできてきた、これはみんなで感謝していることでございます。

 ぜひ、農業農村整備事業、土地改良事業、この予算をしっかりと、必要な事業なんだ、国土強靱化のためにも本当に大切だという、そしてまた、いろいろな意味で地域に小回りのきく予算でございますので、本当に感謝をしておりますけれども、せっかく今まで守ってきたのをこれからもさらに推進していただくように、ぜひ農水大臣の御感想なり決意をいただければありがたいと存じます。

野中主査 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

山本(有)国務大臣 長坂委員の御所見を承って、なお一層頑張っていきたいと思っております。

 以上です。

長坂分科員 ありがとうございました。

野中主査 これにて長坂康正君の質疑は終了いたしました。

 次に、勝沼栄明君。

勝沼分科員 おはようございます。自由民主党の勝沼栄明でございます。

 本日は、質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。

 私の地元選挙区は、宮城県の第五選挙区でございまして、東日本大震災で最も被害を受けました石巻、女川、東松島市を含む、沿岸部から内陸部までの大変広い面積の選挙区でございます。

 来月で丸六年を迎えるわけでございますが、物すごい深い爪跡が地域に残る中、道半ばとはいえ、やはり復興、そしてその先を見詰めて、地域の方そして我々も一丸となって進んでいる状況でございます。

 そしてまた、私の地域は、震災前より非常に産業のバランスがとれておるところでございまして、一次産業も大変盛んな地域でございます。沿岸部は当然、水産業、水産加工業、そして、内陸に行けば米作を中心とした農業、最近は施設園芸等も盛んになってきておりますが、また、酪農、畜産、これも非常に盛んな地域でございます。

 特に畜産は、いよいよ本年九月に、第十一回の全国和牛能力共進会の宮城大会が行われます。五年に一遍の和牛のオリンピックと言われる大々的な大会ですから、地元からチャンピオン牛を出したいと非常に意気が上がっているところでございます。

 いい傾向なんですけれども、ただ、ちょっと一つ心配事というか、しっかり対策をしなければいけないなということを地元の畜産農家の方からお聞きしまして、きょうはそれが本題なんですが、これから御質問させていただきます。

 牛白血病ウイルスの感染が肉牛、乳牛ともにふえている、そして、それに対して大変心配をしているということをお聞きしました。我々、特に農家の皆さんは、やはり昨今、BSE問題に始まって、鳥インフルエンザもそうですし、口蹄疫もありました。また、昨年は、豚の流行性下痢ですとか、非常に家畜伝染病に悩まされている現状がございます。その中で、また牛白血病ウイルスという余り聞きなれない言葉が出てきています。

 実際、この牛白血病ウイルスに感染するとはどういうことなのか、そして、それに感染すると白血病になるということでいいのか、また、牛白血病というのはどういうものなのかを詳しく教えていただければと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの牛白血病、聞きなれない名前かもしれませんけれども、私どもはあえてEBLというふうに呼ばせていただきますけれども、このEBL、これは、このウイルスが牛の体内のリンパ球に感染するということ、これでいわゆるキャリアという状態になるわけでございますけれども、この原因ウイルスの感染により、最終的に、下痢あるいは体重の減少、体表リンパ節の肥大等の症状、これが出てくるということでございます。家畜伝染病予防法における届け出伝染病というふうに位置づけられております。

 また、このウイルスに感染した牛が必ず発症するかというとそうではございませんで、そのうち数%のみが、感染して数カ月から数年後、先ほどの症状が発症して、その他の大部分の感染した牛は、発症することなく、いわゆる経済動物としての寿命を全うするというような病気でございます。

 このため、ウイルスに感染したということのみをもってEBLというふうに診断するということはしておらず、発症して初めてEBLというふうに診断するというようなものでございます。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 この牛白血病ウイルス、私も以下、BLVと言わせていただきますけれども、BLVに感染して、無症候性キャリア、いわゆる臨床症状のないキャリアとなって、その後、数%が発症、この機序は非常に大事だと思いますし、発症をもって牛白血病と診断される、この観点は非常に大事でございます。やはり慢性的な持続性ウイルス感染症の牛の多くは臨床的には健康でありますので、これらの牛は発症牛と区別して考えなきゃいけない。

 ただ、やはり、いかに無症候性であっても感染の危険性はあるわけですので、感染の広がりをいかに抑えるか、そして感染したものに対しては発症をいかに抑えるかという観点が大事だと思います。

 少し話はそれますけれども、人間でいえば、そういった感染して無症候性キャリアになって、一部の人が発症するというような代表的なウイルスは、HIVですとか、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またHTLV1というのもございます。

 このHTLV1というのは、発症すると成人T細胞白血病もしくはリンパ腫という病気になります。これも、牛白血病のように、いわゆる白血病の一種とされているわけでございますけれども、特に、このHTLV1の感染者は日本においては百万人近くいると言われますが、発症は五%以下でございます。ただし、やはり母子感染対策ですとか、そういったことが非常に行われていますので、広がりは見せていないという現状がある。

 また、顕微鏡上で見ると、HTLV1というウイルスとBLV、いわゆる牛白血病ウイルスというのは非常に似ているところがあります。両方ともレトロウイルス。

 ただ、牛白血病ウイルスは、あくまで牛の細胞内に入るIDのようなものしか持っていませんので、常識的に考えて人間に感染することはあり得ないと思いますし、突然変異したとしても、そういった感染する能力を得ることというのは普通ないと思いますが、実際、今まで、牛から人への牛白血病ウイルスの感染ですとか、そういった事例があったかどうか、また、現在の科学でどういった位置づけになっているのかを教えていただきたいと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から非常に専門的御知見のお話をお伺いしまして、私ども、EBLについて把握しておる事実ということでございますけれども、我が国では、ウイルスに感染していても発症していない牛は屠畜場で屠畜されて出荷されるということになりますけれども、これまでにウイルスに感染した牛の肉を食べるということ、屠畜場で発症している牛については、これはもう全頭廃棄になりますけれども、感染しただけの牛というのは屠畜されるわけでございますが、これを食べることによって人の健康被害が生じたということの事例は確認されておりません。

 また、欧州連合の専門機関、欧州食品安全機関が二〇一五年の七月に公表した本病に関する科学的意見書におきましても、現在までに本病のウイルスそのものが人の健康にリスクをもたらすという明らかな科学的証拠はないというような意見書が出ていると承知しております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 現時点では、牛から人への感染が、現在の科学的知見によると、ないということでいいと思うんですけれども、私もちょっと論文で、人の血清中にBLV、牛白血病ウイルスのカプシドたんぱくに反応する抗体が検出されたという報告も実際あるんですけれども、ただ、それは、過去にあくまでウイルスのかけらを異物として人間が判断した、そして抗体をつくったというだけでございますので、その事実だけをもって、感染能力のあるウイルスが、もしくは細胞が、人間の体内に入って悪さをしたということにはなりませんので、やはりここは、しっかりとした科学的知見に基づいたアナウンスですとか発表というのをぜひしていただきたいと思います。

 リスクがゼロですとか、こういった事態がない、何々がないという証明というのはなかなか難しいところはあると思いますけれども、それを手をこまねいておることなく、どうしても、ウイルスというのは目に見えない、放射線とかもそうでしたけれども、目に見えないものはやはり恐怖というものがございますから、そういったところをしっかりやっていただきたいなと思います。

 今、牛白血病ウイルスの感染がふえていると現場の声を聞いたんですが、では、実際、感染して発症した発症数、並びに、今までさまざまな検査等をやっていると思うんですが、いわゆる無症候性キャリアの数、現状、国内はどうなっているのか。そして、それに対する対策はどういったことをやっているのかを教えていただければと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 先ほど少し申し上げました牛白血病、EBLは届け出伝染病でございますので、届け出の件数というものが把握されておりまして、平成十年にこれは届け出伝染病になりまして、その当初は九十九頭だったんですけれども、平成二十七年、この一年間で二千八百六十九頭ということになっておりまして、これはふえているというのが現実でございます。

 また、委員おっしゃられた、いわゆるキャリアについてはちょっと最近の数字はないんですけれども、平成二十一年度から二十三年度にかけて、農林水産省が全国調査を実施しております。これで、ウイルスに感染したことを示す、いわゆる抗体陽性率につきましては、乳用牛で四〇・九%、それから肉用繁殖牛で二八・七%ということで、キャリアは予想していたよりは結構多いのかなという数字になっております。

 こういうような状況が把握されましたので、私ども、その対応策ということでございますけれども、現在、治療法やワクチンが確立されていないということでございますので、感染の拡大を防止するということが大切でございまして、やはり人為的な伝播を引き起こす行為の排除ですとか、吸血昆虫対策、アブとかサシバエでございますとか、こういうものを防ぐということが重要でございます。

 具体的には、さらなる感染の拡大を防止し、清浄化に向けてこれを進めていくという観点から、平成二十七年四月に、この病気に有効な衛生対策を定めたガイドラインを策定しておりまして、まず最初に、人為的なと申し上げましたが、例えば注射針、こういうものの確実な交換。要するに、治療するときに注射針等を打ちますけれども、これをしっかり交換することを確実にして、人為的な伝播を防止する。あるいは、発生農場ですとか、それから共同牧場等における吸血昆虫、アブやサシバエを駆除するということ、あるいは忌避剤を塗って近づけないということ。それから、共同牧場等あるいは普通の畜舎でもそうなんですけれども、放牧前に検査をするですとか、牛舎内でも分離をするというようなこと。

 こういうことの対策で、牛の飼養者、それから獣医師、家畜人工授精師等、地域が一体となってこういう蔓延防止に取り組んでいるということでございます。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 平成十年から平成二十七年にかけて、発症数も二十八倍以上で、キャリアに至っては、乳用牛四割以上、肉用繁殖も三割。これはかなりの数字ではあると思います。

 今、二十七年にガイドラインをつくってというお話がありましたけれども、海外でも牛白血病の発生ですとかそういう対策とかやっていると思うんですけれども、清浄化できた国もあると聞いていますので、ぜひ具体的な事例を含めて教えていただければと思います。

今城政府参考人 海外の状況等についてお尋ねでございます。

 まず、EUについては、多くの加盟国でEUによる本病のいわゆる清浄国ステータス、こういうものを獲得しております。また、ブルガリア、ハンガリーなど清浄国ステータスをまだ獲得していない国におきましても、先ほどのキャリア、抗体陽性率は一〇%以下と極めて低いレベルにあるということでございます。

 一方、米国、カナダといった北米、あるいはアルゼンチン、チリといった南米におきましては、感染率が高い傾向にございます。例えば、米国で二〇〇七年に実施された米国全体のサーベイランスにおきましては、米国の乳用牛群の、頭数じゃなくて群の抗体陽性率ですが、これは八四%であったというように承知しています。

 委員御指摘のとおり、EUにおいては非常に清浄化がうまくいっているということでございますが、やはりこちらでは検査をとにかくやって、その検査でキャリアなりウイルスが高濃度である高リスク牛などを見つけて、それを分離して飼育するというようなことを国全体で進めていることでうまくいっているというようにお伺いしておりますので、ぜひ我が国もそういう方向で清浄化に向けて頑張っていければというふうに考えております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 今ちょっと具体的な名前は出てきませんでしたけれども、例えばイギリス、デンマーク、スウェーデンは清浄化されているということも伺っています。

 ただ、牛白血病の原因、いわゆる牛白血病ウイルスがあるという、牛白血病ウイルスはどういうものかというのもわかっていますし、また、ウイルス感染細胞が体内に侵入して初めて感染が成立するので、極めて限定的な感染経路でございます。また、感染リスクも血液、乳汁と限定されていますので、それに対する有効な感染対策も何をやればいいかというのは非常にわかっている。なので、対策はとりやすいと思うんですね。

 ただ、現状を見ますと、キャリアが乳用牛で四〇%を超えている、繁殖牛でも三割というところで、淘汰更新というのは難しいですから、やはり、いかに現状を認識して有効な感染対策をとっていくか、これに尽きると思います。それをやっていないと、どうしても国の不作為と言われてもしようがないところはあると思うんですね。

 実際、現場のお話を聞きますと、やはり非常に心配はされている。実際、発症したものは廃棄になります。廃棄した場合、共済に加入していれば、それに対して補償が出ますけれども、あくまでそれというのは、やはり健康な家畜に由来するものを食肉として消費者に提供するという意味ですので、感染対策ではないと思うんです。

 やはり、先ほどおっしゃいましたように、しっかり検査をして、現状を把握して、感染牛、感染のリスクの高いものは隔離して、垂直感染なり水平感染の予防に努めていく、これに尽きると思います。ただ、実際、現場の方は、やはり検査もしたいけれども、どうしてもコストがかかる、感染対策もコストがかかる。

 さらに、今、繁殖農家さんが減ってきていますし、子牛の値段が相当高くなっています。ことしも、私、宮城の初競りに行ってきましたけれども、平均で八十七万円。四、五年前は五十万程度でしたから、二倍近くになっている。その高くなった分を肥育さんがそのまま値段に転嫁できればいいですけれども、なかなかそうもいかない。やはり、コストというのは非常に厳しいところがある。そんな中で、検査のコストとかがかかってくると、非常に苦しい思いをされている。それに対して何とかしてくれないかという声が上がるのは当然だと思うんです。

 なので、全頭検査とまでは言いませんけれども、しっかり検査をしてくれる農家に対しては補助を出すですとか、あと、また感染対策、指導だけでなくて、実際に有効的なことを指導、かつ、やるときにある程度補助が出る、そういった制度をもうそろそろつくって、国としてしっかり取り組むべきだと私は思うんですけれども、どうでしょうか。

今城政府参考人 この検査等に対する支援制度というお尋ねでございます。

 委員おっしゃるとおり、感染の蔓延を防ぐということを効果的に行うためには、まずは、やはり検査によって感染実態というものが把握されないと難しい、御指摘のとおりでございます。

 そのため、このEBLの検査に対しましては、平成二十六年度から、事業名はちょっと長いんですけれども、家畜生産農場清浄化支援対策事業というものによりまして、共同牧場や発生農場などにおきまして本病の検査を実施する場合、国がその費用の二分の一を支援するということをやっておるところでございます。ただ、県によっては、さらに上乗せの支援をしていただいているところもあるやに聞いております。

 したがいまして、この予算につきまして、平成二十九年度予算については支援対象を拡充しまして、やはり高リスク牛を特定するための検査に要する費用も計上しておりまして、これは、ほかのものと込み込みになっているので全部使えるわけじゃないんですけれども、その五億八千万円の内数という形で措置させていただいております。

 したがいまして、本事業の周知を図り、県、畜産関係団体と連携してこの検査をしっかりやっていただく、そしてきちんと分離の飼育に努めていただくということに取り組んで、何とかこの数字を清浄化に向けてしっかり進めていきたいというふうに考えております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 まだまだ周知も進んでいませんので、おっしゃったように、県、団体、また獣医師会等、どうしても、これは血液が感染源ですので、やはり医原性感染というのもしっかり抑えなきゃいけない。そういった意味におきましても、しっかり協力を仰ぎながら周知に努めて、なるべく現場の御負担がふえないようにぜひ努めていただきたいと思います。

 また、どうしても、これに伴ってやはり風評被害というのも気をつけなきゃいけないと思うんですね。特に、私の、宮城県を含む被災地は、やはり今でも風評被害に大変苦しめられています。一度、風評というのがついてしまうと、これを払拭するのは難しい。

 特に、牛白血病というのは、白血病という名前が余りイメージがよくない。やはり人間でいうと不治の病というイメージがまだつきまとっていますから、型によって全然予後が違いますし、しっかりとした治療もあるものなんですが、どうしてもイメージがよくないですし、発病したものは全廃棄されているんだ、だから心配ないよ、でも、その前にウイルス感染している牛があるということは非常に誤解を生むと思うんですね。この無症候性キャリアと発病した牛、この違いというのは一般の人はなかなかわからない。

 先ほど、僕、ちょっとお話ししましたけれども、やはりネットとかを見ていると、牛から人へ感染するんだとか、例えば、乳汁も感染源になるので、牛乳を飲むとなっちゃうとか、あと乳がんの原因になるとか、結構散見されるんですね。やはりそれに対するいち早い対策が必要だと思いますし、しっかりとした、科学的にそれを否定しなきゃいけない。これはしっかりやっていっていただかなきゃいけないなと思います。

 どうしても、ウイルスの不活化とかも、五十六度C以上で十五分煮沸すれば問題ないということもありますから、今、日本で出回っている牛乳は絶対問題がないとか、そういったことをしっかり言わないといけないし、ただ、農家さんとかにしたら、やはり冷や冷やしながら見ているところがありますので、風評被害対策また消費者対策、具体的にどうやって行っていくか、ぜひ御教示いただければと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、非常にこの病気は、ちょっと名前の問題もありますので、風評というものが心配されるということでございます。

 したがいまして、私どもも、この風評被害の発生を防止するためには、消費者等に対して、委員おっしゃったような正確な科学的情報というものを提供していくことが非常に重要であろうというふうに考えております。

 それで、先ほども少し申し上げましたが、ウイルスに感染した牛の肉を食べることによって健康被害が生じたという事例はまずないという事実ですとか、それから、ただいまの牛乳のことにつきましても、日本で飲まれている牛乳は消毒されているものでございますので、ウイルスは不活化されているという事実でございますとか、それから、先ほど少し言及させていただいた、欧州の専門機関の、本病のウイルスと人間の健康被害、健康リスクというものの科学的な証拠はないというような事実ですとか、こういう正しい知見を消費者に提供するよう努めまして、本病に対する風評被害対策を進めていきたいと思っております。

 なお、済みません、先ほど来、やはり白血病という言葉自体がというお話がございますので、私どもも、人間の白血病を連想させ、無用の不安を招くということもありますので、なるべく英語名の略称でありますEBLというような名称を使う、これはちょっと科学的知見とは関係ありませんけれども、そういうことに努めているということも御紹介させていただければと思います。よろしくお願いします。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 ぜひEBLで今後お願いしたいと思いますし、しっかり現状を把握して感染対策を行うと同時に、やはり、それだけ食べている人はいっぱいいらっしゃるわけなので、風評被害対策もしっかりやっていく、これは国の責務だと思いますので、ぜひお願いいたしたいと思います。

 これで最後の質問になりますけれども、我々人類というのは、やはりウイルスに対して非常に弱いというか、まだ絶対的な強さを持っていないところがあります。毎冬にはインフルエンザウイルスに悩まされていますし、幾らワクチンを打ってもかかるものはかかるというところがございます。また、ウイルスに対しては、もう細胞内に入り込んでしまいますので、その活動を下げるとなると人間自体の活動も下がってしまいますから、難しいところがある。そこはもう免疫系の産物である抗体に期待して、再感染しないようにするしかない。それが、やはり予防接種なりワクチンだと思うんです。

 ただ、まだ人類が勝てたのは、今までこの長い歴史において天然痘ウイルスだけですから、やはりそこは最近の知見を生かして、科学者、獣医学者の皆様にしっかりとした研究を行っていただかなきゃいけないと思います。そして、無症候性キャリアになって感染したとしたら、発症しないようにそれを抑えていく薬の開発というのもやはりしっかりしていかないといけないと思うんですが、現状のそういった治療ですとか薬の開発、そういったことに対して何かございましたら教えてください。

今城政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、EBL対策というものに対して、感染リスクの低減なり発症予防等に関する研究開発というものを進めておるところでございます。

 先ほど申し上げましたが、現時点では、本病に有効なワクチン、治療法が確立されているわけではございませんが、感染リンパ球を攻撃する免疫応答、これを活性化する医薬品の開発というのも進められているというふうに承知しております。現時点ではまだ実用化には課題が多いというふうに聞いておりますが、いずれにしましても、平成二十六年度以降、発症を抑えるための医薬品の開発、それから、本年度の補正予算においては、まさに本病に対するワクチン、発症前診断技術の開発、実証、そういうことについても研究開発を行っているところでございます。

 早く有効なものが打てるように、この研究開発についても進めてまいりたいというふうに考えております。

勝沼分科員 ありがとうございました。

 牛は、これからの日本にとって、やはり戦略物資として非常に大切でございますし、農家の皆さんも守らなきゃいけない。そのためには、やはりしっかりとした検査を行い、感染対策そしてさらに風評被害対策を行い、さらに言えば、研究開発を行って感染したとしても発症を抑える、そしていつか、いつかというか早く清浄化していただいて、本当に安心して消費者も食べられるし、なおかつ生産者も安心して暮らしていける、そのために、これから私も現場をしっかり回っていろいろなことをお伝えしていきますので、ぜひ国としてもやっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。大臣に質問しなくて申しわけございませんでした。

野中主査 これにて勝沼栄明君の質疑は終了いたしました。

 次に、輿水恵一君。

輿水分科員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 時間も限られてございますので、早速でございますが、質問に入らせていただきます。

 初めに、麻づくりについて質問をさせていただきます。

 古来より、麻は日本人の生活や文化を支える天然素材として全国で栽培され、利用をされてまいりました。その後、化学繊維との競合等により減少の一途をたどり、かつて約一万ヘクタール以上栽培されていた麻は、現在はわずか五ヘクタール程度、麻の栽培者は全国で約三十名前後、このように伺っております。

 現在、国産の麻は、栃木県が最大の栽培地で、精麻用の麻に限って言えば、その七〇%以上が栃木県産となっております。その栃木でさえ、夏場の収穫作業の大変さ、あるいは精麻加工の手間や、高い技術がそれに必要だということで、担い手の確保が難しく、深刻な高齢化が進んでいる。現在、その麻づくりはわずか十三名ほどと聞いているわけでございます。

 そこでお伺いをいたします。栃木県における麻づくり、まさに日本の伝統産業として大変重要と考えるわけでございますが、農林水産省としてのお考えをお聞かせ願えますでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国におけます麻づくり、すなわち大麻の栽培でございますけれども、主に栃木県におきまして、しめ縄等の伝統工芸用品として生産をされておりまして、今先生から御指摘があったとおり、同県での栽培面積は、全国の栽培面積七・六ヘクタールの約七割を占めているところでございます。

 大麻につきましては、大麻取締法によりまして、その所持、栽培等に都道府県知事の免許が必要でございまして、終戦直後は荷づくりの縄ですとかロープ等に使用されておりましたが、現在は、主にしめ縄ですとか神事用等の伝統文化の継承を目的とした栽培に免許が交付されているというふうに承知をしてございます。

 昨今、他県におきまして大麻をめぐる社会的な問題もさまざま報道されてございますけれども、大麻、特に栃木県におきます大麻は、伝統文化継承の観点、また中山間地域における複合経営の一部門としても非常に重要な役割を果たしているというふうに認識しているところでございます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 そういった、栃木にとっては大事な産業でございますが、この麻づくり、麻栽培につきましては、後継者の育成のための研修や栽培支援の補助者についてさまざまな制限がある。また、生産者は、それだけではなく管理等も含めてさまざまな制限があるわけでございますが、現場において、いろいろなやりとりの中で、難しい問題があります。

 そういった中で、生産者に対して丁寧な対応、しっかりこの麻づくりを支えていくことも必要かと思いますけれども、その点についての見解をお伺い申し上げます。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 大麻につきましては、その性格上、免許を受けた者以外の栽培、所持、譲り受け、譲り渡し等が禁止をされてございまして、このため、今御指摘ございましたとおり、盗難防止等の管理が必要でございます。都道府県の指導監督のもとに適正な栽培管理を徹底することが重要でございますので、生産者に対しましても、一般の作物以上に慎重な対応が求められているということは承知をしているところでございます。

 農林省といたしましても、こうした大麻栽培におけますリスク、また留意点も踏まえながら、今後とも、伝統文化の継承を目的とした栽培が継続されるように、都道府県とも連携をし、現場の声もよく聞いて丁寧に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 本当に、栃木県の麻づくり、ぜひしっかり守っていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、続きまして、グローバルGAPの認証についてお伺いいたします。

 今、グローバルGAP、いわゆる農産物の農業生産工程管理ということなんですけれども、これはまだまだ、なかなか現場に浸透していなくて、聞くところによると、四百程度の営農者がそれを取得しているということなんですけれども、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて、食材の調達基準が示されつつあるわけでございますね。そして、オリンピックに来た方たちが安心してその食材を食べることができる。そういった意味では、このグローバルGAP等の基準に適合した国産農作物がしっかりと供給できる体制を整備しておく、このことが必要だと思っております。

 こういった農業生産工程管理の整備の必要性、また今後の取り組みにつきましてお伺いを申し上げます。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 オリパラの東京大会に向けまして、今御指摘ございましたとおり、品目ごとに、大会に必要な調達基準を満たす国産の農産物を十分に供給できる体制を整備することが非常に重要だというふうに考えてございます。

 今後、組織委員会の方で、調達基準に基づきました国産食材の活用などを含む飲食提供基本戦略を策定するというふうに聞いてございますけれども、農林省といたしましては、生産者によりますグローバルGAPですとかJGAPアドバンス等国際水準GAPの認証取得の支援、また、都道府県、JAグループ、日本農業法人協会等の関係団体に対するGAPの取り組み拡大の要請、GAPにまとまって取り組む産地への、例えば強い農業づくり交付金等の優先採択など、さまざまな取り組みを今始めているところでございます。

 これらの取り組みを通じまして、十分な量の国産農産物を供給できる体制を整備いたしまして、オリパラ東京大会において、日本食、国産食材の魅力をアピールできるようにしてまいりたいと考えてございます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 まさに、オリンピック・パラリンピック、これを一つ目指しながら、先ほどの国際水準規格であるグローバルGAPあるいはJGAPアドバンス、そういったものをしっかりと各農家さんが取り入れながら進めて、それをまた支援していくということで伺いました。

 そこで、今回、オリンピック・パラリンピック大会、これのレガシーとして、せっかくこういった工程管理をしていく日本の農作物、安全、安心な体制で生産がされている、そういった内容も踏まえて輸出拡大につなげていくこと、攻めの農業をしっかりと進めていくことが大変重要であると私は考えるわけでございます。

 そのために、グローバルGAPやJGAPアドバンス等をそれぞれどのように推進していくのかにつきましてお伺いを申し上げます。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、オリパラは一つの契機であり、またそのレガシーという意味で、国際水準のGAPを進めていくというのは非常に重要だと思っております。

 農産物の輸出拡大、また農業人材の育成など、我が国の農業競争力の強化を図る観点からも、国際的に通用するGAP認証の取得の推進を進めていきたいというふうに考えてございます。

 このため、まず、JGAPアドバンスにつきましては、これは日本発のGAPということで、GFSIの承認に向けた取り組みを支援しているところでございます。また、グローバルGAPにつきましては、その取得を求める取引相手への輸出を目指す農業者が認証を取得しやすくなるように、技術マニュアルの作成等を今支援しているところでございます。

 両者とも、生産者に対してグローバルGAP、またJGAPの技術的な指導を行う専門家の育成、また認証を取得する場合の費用の支援など、施策を総合的に講じることとしているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、平成三十一年、農林水産物、食品の輸出額一兆円という政府全体の目標の確実な達成を目指すとともに、農業人材の育成を通じました我が国農業の競争力の強化につなげてまいりたいというふうに考えてございます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 グローバルGAPあるいはJGAPアドバンス、その中身によっては、輸出する国とか地域によってどっちの方がいいか、そういったこともございまして、丁寧な対応をお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さて、このグローバルGAPあるいはJGAPアドバンス、これを取得するということは大変労力というか、大変な思いの中で工程管理がなされるわけでございますけれども、生産者が苦労してこういったGAPの認証を取得したものについて、やはりせっかくそういった苦労が報われるという形をとる意味でも、販売の拡大などにつなげる必要もある。また、それが、こういった取得に向けてのインセンティブにもなるというふうに思うわけでございますが、そのためには流通や小売にも働きかけていくことが重要と考えますけれども、農水省のお考えを伺います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的に通用するGAPの認証取得を拡大し、またさらに、認証を取得した生産者の販売の拡大につなげていくためには、御指摘もございましたとおり、流通や小売、また消費者の方々に、生産歴がわかることから信頼性の向上につながるんだというこのGAP認証の意義またメリットを御理解いただきまして、GAP認証を得ている農産物が高く評価されるようにしていくということが重要だというふうに考えてございます。

 このためには、まず、GAPの知名度を上げていくことが重要だというふうに考えてございまして、今後、消費者と直接接しております小売関係者、また産地と小売をつないでいる流通関係者等に対しまして、GAP認証の意義またメリット等々を丁寧に説明してまいりたいというふうに考えているところでございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 さて、その攻めの農業、さらにさらに日本の農業を国際的なそういった優位な立場に立たせるためにも、高品質な日本の農作物や加工品の輸出拡大に向けては、ただいまの生産工程管理のみならず、JAS規格により品質も保証し、高付加価値な農産物等の生産を進めることも大変重要であると考えるわけでございますけれども、この点についての考えもお聞かせ願えますでしょうか。

井上政府参考人 委員御指摘のとおり、日本の農産物やこれらの加工品の輸出拡大に向けましては、その品質の高さなどの特色を効果的にアピールしていくことが重要と考えておりまして、この点で、JAS規格は、品質の高さを保証して、海外の取引先や消費者の方々にも説明や訴求を容易にするものと考えてございます。

 こうした点から、昨年十一月に策定をされました農業競争力強化プログラムに従いまして、現在JAS規格はその対象が物についての規格だけが定められるような仕組みになっているわけでございますけれども、これを拡大いたしまして、産品の生産の方法でありますとか、あるいは鮮度管理等の保管の方法であるとか、輸送の方法でありますとか、こうした取り扱い方法についての規格も定められるように、その対象を拡大してまいりたいと考えてございます。

 こうしたJAS規格の戦略的な活用を通じまして、日本の農産物あるいはこれらの加工品の輸出拡大にもつなげてまいりたいと考えております。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 まさに、生産工程の管理、グローバルGAPあるいはJGAPアドバンスと同時に、JAS規格ということで、日本の農産品、さらに輸出拡大、そして大きな日本の経済の底上げにつながるように、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、次に移らせていただきます。

 薬用作物の栽培づくりについてお伺い申し上げます。

 最近、どちらかというと中山間地の農業というのが鳥獣被害に遭って本当に大変だ。現場に行ってみますと、作物を守るために相当頑丈な柵をつくって、そして守っている。しかし、その柵をつくっても、それを乗り越えたり、そこの下を潜ったりして、なかなかその被害を防ぐことも難しい状況の中で、中山間地でのそういった鳥獣被害を受けている農作物、農地というのはなかなか使いにくくなっている。

 そんな中で、新たな取り組みをしている地域がございました。そこでは、薬用作物、そういったものをつくることによって、柵をつくらなくても作物が守られて、そして安定的な生産ができるということで、そんな取り組みをする地域もあったんです。

 ここでまず伺いますけれども、まさにこのような薬用作物について、中山間地域で栽培される重要なものである、このように私は思うわけでございますけれども、こういった取り組みにつきまして、農林水産省の支援策はどのようなものがあるのか、お聞かせ願えますでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたとおり、薬用作物、近年需要が伸びております漢方薬の原料でございます。現在は、その八割以上を中国からの輸入に依存をしているという状況でございまして、漢方薬のメーカーからは原料の安定供給の面から、また中山間地域においては需要の拡大が見込まれる作物として、国内生産の拡大が期待されているというふうに承知をしてございます。

 この薬用作物の生産拡大を図るためには、一つは、実需者が求める一定の品質を確保するための栽培技術の確立が非常に重要でございますとともに、生産者と実需者が円滑に栽培契約を締結できるようにすることが必要だというふうに考えてございます。

 こういうことから、農林省といたしましては、まず、安定生産に資する栽培技術確立のための実証圃場の設置、また、栽培マニュアルの作成、栽培技術の指導、あと、実需者との契約に向けた事前相談ですとかマッチング窓口の設置を支援するための事業を現在実施しているところでございます。

 さらに、二十九年度の予算案におきましては、さらなる生産拡大を図るために、優良種苗の安定供給に資する産地体制を確立するための支援も盛り込んでいるところでございまして、これらを通じて、薬用作物が中山間地域でさらに拡大していくように努力してまいりたいと存じております。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 薬用作物というか、そういったもの、切りかえということが大事なんですけれども、やはり、切りかえたとしても、薬用作物なので、普通にすぐ売れるとか買うとかいうことになかなかつながらない、そういった問題もあるわけでございまして、入り口をつくった後、ちゃんと出口、どういうふうにつなげながらそれが一つのしっかりとした産業として回っていくのか、こういった取り組みが非常に重要であるのかなというふうに感じているわけでございます。

 私も、先日、栃木のある中山間地に行ってまいりまして、まさに薬用というか、そこではアマチャをつくっていました。このアマチャというのが、カロリーゼロで、ちゃんと焙煎した後、お湯を入れて飲みますと非常に甘くて驚いたんですけれども、この糖分ゼロで甘いという、こういったものというのは何かに利用できる。また、そこは非常に過疎に近い、そういった状況だったんですけれども、あいている農地にアマチャの苗を植えて畑にして、そこで、地域で暮らす高齢者の方がその栽培をしながらお小遣い稼ぎという形でやっている、そういった状況でございまして、普通だったら放棄されてしまうような土地が有効に活用されている。そして、そのアマチャという糖分ゼロの甘味料というか、甘みを持ったものがある。そこまではすばらしい。それを飲むと非常に体も温まるということで、さまざまないいことが体にあるような、そういったことがあると思います。

 そういったもの、成分をきちんと分析したり、あるいはアマチャを低カロリーの甘味料として砂糖のかわりに使うことができれば、新しい、健康を管理、維持するための食品等の開発にもつながるのではないか。そういうふうにつながることによって、中山間地の新しい産業として大きく発展する可能性がある、私は、そこにすごい可能性を見出してまいりました。

 そういった中で、この中山間地域で栽培されているアマチャについて、特徴のある機能性を生かして新たな需要を開拓することがまさにできる、またやらなければいけない、このように思っているわけでございますけれども、農林水産省の支援策についてお伺いを申し上げます。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたアマチャなど中山間地域で栽培されております地域特産作物につきましては、それらが有する機能性等も活用して新規の需要を開拓して、地域を支えていく作物として育てていくことが重要だというふうに考えてございます。

 このような新規需要の開拓を推進するために、平成二十八年度の補正予算におきまして、産地と外食産業等の連携によります新商品の開発、試作、そのために必要な機械等の開発、改良、また販路の開拓等について支援を行っているところでございます。

 また、新たな需要を開拓いたしまして継続的に対応していくためには、産地におきまして安定的な生産体制を整備する必要がございますので、二十九年度の予算案におきましては、栽培技術の普及のための展示圃の設置ですとか、先ほど先生から御指摘ございました機能性成分の分析等の取り組み、これらの支援も予算の方に盛り込んでいるところでございまして、これらを使いまして中山間地域の発展につなげてまいりたいというふうに考えてございます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 展示圃あるいは機能性のそういった分析等もしっかりやっていただきながら、新しいこういった薬用植物等も含めた、そういった中山間地域での農作物というか、新しい活用の仕方というものをしっかりと進めていただいて、地域の新たな産業に育てていただければ、また育てていきたい、このように思っているわけでございます。

 さて、このような中で、今、日本は耕作放棄地が急激にふえている。ちゃんと今まで耕作をしていたすばらしい農地が放棄されている、そういった状況。さらに、それが数年たちますと、なかなか農業をまた再開するのが難しい、そういった状況にもなるわけでございます。

 地域における高齢化や後継者不足が進む中で、農業を中心とした地方創生、やはり地方創生、また日本の未来にとって農業というのものをどう地域にしっかり根づかせながら、そして農業というのは、ただ単に作物だけではなくて、多面的な価値というか機能も当然あるわけでございまして、そういったものをしっかりと守っていく、また、そういったものを再生していくといったことが重要ではないかと思うわけでございます。

 耕作放棄地の先の荒廃農地の発生、まずは、その問題に対して、農地の再生利用というものもしっかり考えていくことが必要ではないか。

 そういった意味で伺いますけれども、農村地域の高齢化、後継者不足が進む中で、農地の荒廃化に対して、荒廃農地の発生防止と再生利用のための総合的な対策が必要と考えるわけでございますけれども、農水省の取り組みについてお聞かせ願えますでしょうか。

細田大臣政務官 まず、輿水先生におかれましては、日ごろから農林水産行政についてさまざまな御提言をいただいていることに、改めて心から御礼を申します。本当にありがとうございます。

 今まさに先生御指摘ありましたとおり、限られた資源である農地を有効活用し、農業を中心として地方創生を進めていく上で、荒廃農地の発生を防止し、また荒廃した農地の再生利用を図るということは極めて重要であるというふうに私ども考えております。

 このため、まず、荒廃農地の発生の防止に向けましては、農地を担い手に円滑に集積していくということが必要でありますので、各都道府県に農地中間管理機構を整備し、担い手への農地の集積、集約化を推進しているというところでございます。

 また、先生御存じのとおり、水田を初めとする農地にはさまざまな多面的な機能がございますので、これを維持管理、保全するという活動を支援するために、多面的機能支払い交付金及び中山間地域等直接支払い交付金といった予算上の措置も導入をしているというところでございます。

 さらに、御指摘ありました、一旦荒廃した農地をまた再生利用するという取り組みも重要でございます。

 このため、荒廃農地を引き受けて作物生産を再開する農業者の方々が行う再生作業等の取り組みを支援する荒廃農地等利活用促進交付金という措置を平成二十九年度の予算に計上させていただいておりました。また、農地の再生利用にも資する農地耕作条件改善事業あるいは農地環境整備事業等を予算上の措置として盛り込ませていただいているところでございます。

 引き続き、これらの措置を通じて、地域の実情に応じて、荒廃農地の発生防止と、また荒廃農地の再生支援を私どもとしてきちんと推進をしてまいりたい、こういうふうに考えております。

輿水分科員 どうもありがとうございました。

 本当に、荒廃農地の再生あるいは先ほどの耕作放棄地、日本は、人口が減少して高齢化が進むという中で農地をどのように守っていくのか。あるいは、人口が減少するということは、食物を消費する方が減ってくる、そういった中では、先ほどのように、農地の活用のあり方というものを、食物でいく、あるいは、より付加価値の高い、そういった薬用の作物の栽培をしていく、そういった切りかえの考え方。あるいは、切りかえではなくて、先ほどのグローバルGAP、JGAPアドバンスあるいはJAS規格ということで、日本の攻めの農業、より付加価値の高い農業を日本にしっかりと定着をさせて、そして、いよいよ海外に大きく展開をしていく、そういったさまざまな考え方、構想があるわけでございます。

 まさに今私も懸念しているのは、昔から耕作放棄地は大変だということで、大変だ大変だと言いつつ年々ふえていく。これは、このままほっておいても、ある程度先が予測されて、なかなか農作物を普通につくるのは難しい地域。しかし、今言ったような薬用作物というのは、逆にそういった厳しいところで育てるとより機能的なものを兼ね備えたいいものができる、そういったところではそれをどう推進していくのか、そして、どう切りかえていくのか。また、いい地域では、先ほど言った効率的な農業を推進しながら、工程管理、品質管理を進めながら、攻めの農業をどう展開していくのか。そういった中長期的な展望に立って、日本の中山間地域のそういった農地の利活用のあり方。あるいは、場合によっては、この農地というのを、ちょっとどう考えても使えないものがあるのかもしれない。

 そういったきちっとしたすみ分けをしながら、ここはきちっと守る、ここは違う、多面的な機能として残していく、ここは超高品質なそういったものをつくる。ここは、国内のそういった消費者用のためにきちっと、そして総合的に、日本の農業というものの、生産の側とまた消費側とバランスをとっていく。国内消費と海外輸出のバランスをとっていく。そういうことをしっかり考えていくことが、根本的に日本の農地を守り、また耕作放棄地の発生を防止し、また先ほどの荒廃農地の再生に、しっかりと計画的に進められるものと考えるわけでございます。

 いよいよ、そういった日本の農業を守るグランドデザインといったものをぜひ農水省で描いていただいて、日本の農業に希望が持てる、また、日本の農業がさらに大きく発展する、そのような道筋をつけていただければな、そんな思いでいるわけでございますけれども、その点につきまして、感想とまた決意とを伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

細田大臣政務官 ありがとうございます。先生から非常に前向きで力強いお話をいただいた、こういうふうに考えております。

 日本の農業、一般的にはコスト高という問題がございますけれども、先生今お話しになったとおり、非常に高品質で安全、安心なものを生産しているということで、国際競争力も非常に強いと思いますし、また、その意味で非常に可能性が大きいというふうに私どもは考えております。

 まさに先生今御指摘あったように、国際的な認証の取得促進等を推進しながら、やはり海外市場にそういう日本製の高品質なものをどんどん売り込んでいくという取り組み等々によりまして日本農業を前向きに拡大していく、こういうことに政府一丸となって取り組んでいるところでございますし、また、そういう取り組みも引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。

 他方で、私の選挙区もいわゆる新潟の山村部分を含むわけなんですが、やはりそういう地域は人口減少あるいは高齢化という影響を最も強く受けておりまして、非常に厳しい状況にあるというのが一般的ではないかと思っております。それらの地域の主要な産業がやはり農業であるということから、農業の活性化を中心として、また地域の活性化を図ってまいりたいと思っております。

 また、その際には、例えば今般の通常国会で農村地域工業等導入促進法を改正して、その対象を産業全体に広げるというような法案の提出を予定しておりますけれども、また、そういうことも含めて、農業政策だけでなく、地域政策という観点から、総合的に農山漁村あるいは地域を活性化する、こういう取り組みにも省を挙げて取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。

輿水分科員 どうもありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

野中主査 これにて輿水恵一君の質疑は終了いたしました。

 次に、村岡敏英君。

村岡分科員 おはようございます。民進党、秋田県出身の村岡でございます。

 大臣、政務官、きょうはよろしくお願いします。

 一日あるようで、大変御苦労さまでございます。

 まだ始まったばかりだと思いますけれども、私は、最初に甘い砂糖の話からしたい、こう思っております。

 砂糖なんですけれども、砂糖の今現状というのは、日本全体の砂糖消費量、これが百九十五万トン、うち国内自給率は、三十三万トンということで、輸入量が百二十五万トン、六七%を占めています。その中で、調整金を取って砂糖の農家をしっかりと支えていく。そして、特にサトウキビ農家、これは沖縄とか鹿児島が中心です。てん菜農家は北海道が中心。サトウキビ農家の方の沖縄、鹿児島は、離島の人もたくさんいる。約二万三千戸の農家がサトウキビに取り組んでいる。サトウキビだけしかやっていない人たちがいる。

 その中で、TPPが妥結したときには、政府の案で、加糖調製品の方に調整金をかけて、こういう法案が出ておりました。

 TPPがアメリカが永久離脱ということになって、我々は、施行日だけ、TPPが発効するときじゃなくても、やはり砂糖の農家を守るということは大切なことである。そして、離島なんかでは、サトウキビがだめになれば無人の島になってしまうという危険性もある。そういう意味では、これはTPPにかかわらずということで我々は法案を考えておりまして、まだ提出しておりませんが、近々提出する予定であります。ここは施行日だけ違うわけですから、ぜひ農林省で、同じ中身ですので、大臣、これを検討していただけないでしょうか。

山本(有)国務大臣 加糖調製品、砂糖とココア、粉乳などの混合物、これは砂糖が九割程度含まれているにもかかわりませず、糖価調整制度による価格調整の対象になっておりません。したがって、TPP発効ということになりますと、当然、輸入が増大いたします。そのために、TPP交渉におきまして、糖価調整制度は現行どおり維持して、さらに、制度の対象外である加糖調製品につきましては関税削減、無税の割り当て枠の設定等の対応となることから、輸入量がさらに増大する懸念がございます。

 そうした中で、現行の、輸入糖から徴収している調整金収入の減少が見込まれるわけでございまして、そうした意味で、生産者に対する支援を強化する必要があろうというように考えるところでございます。

 したがいまして、これは、関税削減、無税、割り当て枠の設定、こうしたことがあることによる経営安定対策という意味で考えさせていただいた措置でございますので、あくまで、TPP発効、これに合わせてこの対策をとりたいというように思っております。

村岡分科員 アメリカとは政治制度が違うわけですけれども、アメリカは、例えばこういう自由貿易の中で、交渉事で、妥結する前にいろいろな被害があるかということを調査して、その中でしっかりと、農家でも、また違う製造業でも、対策をとって交渉に臨んでいるというのが普通です。これは政治体制が違うというのはもちろんあります。

 ここは、この加糖調製品の中で、今EPAをEUとやっています、アメリカともどういう経済交渉になるかわかりませんけれども、その中を考えたら、やはり今やるべきだと我々は考えております。さらには、この砂糖の部分で、今の加糖調製品は一般財源化されています。一般財源になっていますので、やはり砂糖農家に対して、しっかりと農林省が支えている、こういう方向性を示すことは大切だと思っています。

 しかしながら、答弁を聞いていると、これはTPPのためにやったということで、ほかのいろいろなTPP関連予算を見ると、TPPにかかわらず、予算案出したのがそのままやっていく、しかしこれに関してはTPPだ、何かこう分けているんですけれども、農林省としては、本来であれば、やはりこれはTPPにかかわらずやるべきだと思っています。答弁は同じなので、この答弁は結構です。

 次に、我々は、牛、豚のマルキンの、これもTPPの発効にかかわらずやるべきだということで、法案をこれは既に提出いたしております。

 その中で、農業新聞にデータが載っておりましたけれども、全国の家畜市場で取引された黒毛和種の子牛が三十二万頭割れ、そして、このデータをとってからの最少更新で、五年で一三%減、価格は倍になっている。

 私の地元の市場で、初競りから非常にいい値段です。これは繁殖農家は非常にいい形なんですが、やはり肥育農家に経営の圧迫が出てくるんじゃないかという心配をいたしておりますけれども、これに関しては、現状認識、また対策はどのように考えていらっしゃいますか。

枝元政府参考人 御指摘ございましたとおり、子牛の市場取引頭数でございますけれども、和子牛の生産頭数の減少などを背景といたしまして、平成二十八年、三十一万二千頭ということで、減少傾向で推移をしてございます。これが子牛価格の高騰の一因となっているということから、御指摘ございましたとおり、肉用牛の生産基盤の強化は喫緊の課題だというふうに考えてございます。

 このような中、繁殖雌牛の頭数につきましては、平成二十八年に五十八万九千頭と、六年ぶりに対前年約九千頭の増というふうに増加をいたしまして、若干回復の兆しが見え始めたというふうには感じているところでございます。

 このような回復に向けた動きが確固たるものとなるように、農林省といたしましては、畜産クラスター事業を活用いたしまして、子牛の育成部門を外部化して増頭を可能とするためのキャトルステーション等の整備、また優良な繁殖雌牛の増頭、導入に対する奨励金の交付、繁殖雌牛の増頭に必要な畜舎等の整備、またICT等を活用いたしました発情発見装置や分娩監視装置等の導入の支援、このようなことを支援しているところでございまして、このようなことを通して、肉用牛基盤の強化に向けて努力してまいりたいと存じます。

村岡分科員 その対策はもちろん何回も聞いていますけれども、TPPに交渉参加して何年間という中で、繁殖農家はどんどん減っているんです。本来であれば、価格が高くなれば、市場経済でいけば繁殖農家はふえなきゃいけないんですけれども、もちろん高齢化もありますけれども、大きな不安を抱えて、実際には減り始めているということがこのデータからわかると思います。

 何が一番大きい原因だったかというと、これはTPPの永久離脱でなくなりましたけれども、何度も農水委員会でも言っていますが、やはり三八・五%を九%まで下げるという中のセーフティーネットも働いていない、こういう不安が非常に大きかったことが、繁殖農家が減っていくことだ、こういうふうに私は思っております。

 その中で、先ほど言った牛・豚マルキンはやはり早急にやるべきじゃないか。この施行期日も、TPPが発効という、もう通って成立しているわけです。そこだけ変えればいいだけなんです。大臣、どうでしょう。

山本(有)国務大臣 TPPによりまして、関税削減等に対する農業者の懸念、不安、これを払拭しまして、TPP協定発効後の経営安定に万全を期するため、生産コストの削減あるいは収益性の向上、これへの意欲を持続させることに配慮しつつ、協定発効に合わせて経営安定対策の充実の措置を講じるべきことで、牛マルキン、豚マルキンの措置を、補填率を引き上げる、あるいは豚に対しましては国庫負担水準を引き上げる、そして法制化するということを考えたわけでございます。

 あくまで、関税削減による輸入拡大、それに対する畜産農家の経営環境の大幅悪化の懸念、こうしたものに対処するために、WTO制約の中で許される対策として重要なツールとして我々はこれを考えておるわけでございますので、あくまでTPP発効後の措置として考えさせていただきたい、こう思っているところでございます。

村岡分科員 実際にはこれは新聞紙上なのでわかりませんが、自民党の中の農林部会なんかでも賛成の人が多いと聞いております。そういう意味では、我々が出した法案を審議しましょう。現場の思いとかそういうのを農林水産委員会で審議して、これは大臣に言ってもしようがないんですけれども、これをしっかり審議すれば、現場のいろいろな声が聞こえてきて、自民党の農林水産委員も、これはやるべきだ、農林省、いいことを言ったじゃないか、施行期日だけ変わればいいんだ、このことだけなんですよ。ぜひこれを審議していただきたい、こう思っております。

 その次の問題に移ります。

 林業ですけれども、森林・林業基本計画の改正によって、森林それから林業の、再造林とか、また公的機能の推進、増進を図るために一体的な措置を講ずる、こういうふうな形で改正をしたわけですけれども、現状の中では、森林所有者の高齢化や、また不在村化によって、経営意思のない者が相当存在するという課題。森林所有者のうち、不在者は二四%、相続時に何も手続していないという人が一七・九%という状況。また、主伐、再造林については、今後五年間で主伐を実施する予定がないという人が六割もいる。そのような中で、再造林の費用には満たないため、再造林を、それも主伐もしないわけですから、とても費用を出せないというのが現状です。相当多くいる。

 これに対して、農林省として、どのような対策をとっていこう、この改正をどういうふうに成果を上げていこうということを考えていらっしゃいますか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、戦後造林しました人工林が本格的な利用期を迎えておりますけれども、その森林資源を循環利用していくためには、主伐後の再造林ということが非常に重要な課題になっております。

 こうした中で、農林水産省におきましては、主伐後の再造林を確保するために、まず一点といたしましては、森林整備事業によりまして、国と都道府県を合わせて七割の補助を行っております。また、それに加えまして、造林コスト等が非常にコスト高になっているということも踏まえまして、伐採と造林の一貫システムなどを導入しまして、森林所有者の負担の軽減にもつながる施業コストの低コスト化、それに対する支援、実証事業も行っております。

 さらに、平成二十九年度の予算案におきましては、こうしたこれまでの支援策に加えまして、鹿被害等が非常に今大きな問題になっている中で、鹿等による被害に対応するための防護柵の改良についても補助の対象の中に含めるといったこと、さらには、苗木を低コストで、かつ大量に生産できる施設の整備に対する支援、こうした拡充策も含めまして予算案に盛り込んでいるところでございます。

 こうした対策によりまして、主伐後の再造林を確実に進め、森林資源の循環利用に努めていきたいというふうに考えております。

村岡分科員 国土の多くが森林という中で、日本が自然環境を守っていき、それが、いろいろな農作物から、ひいては海まで含めて、日本の非常に豊かな資源です。ぜひ再調査もしなきゃいけないのは、今後、相続が相当出てくると思います。そして、本人が持っていたかどうかもわからない人も実は森林には多いんです。ですから、ここはしっかりと対策を立てていくためにも、いろいろな形で現場のデータをとっていただきたい、こういうふうに思っております。

 次に移らせていただきます。

 生乳新制度決着ということで新聞紙上に出ておりますけれども、これはどのように決着したんですか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、農業競争力の強化プログラムにおきまして、生産者が出荷先等を自由に選べるようにするという観点から、指定団体に出荷する生産者のみに補給金を交付するという制度を改めまして、指定団体以外に出荷した生産者にも補給金を交付する、また、全量委託だけではなく、部分委託でも補給金を交付するという制度に改革をするということにしているところでございます。

 これらの制度につきまして、プログラムに基づいて幾つか考慮する点等々ございますけれども、その考慮する点も含めまして、また現場の声を聞きながら、また関係者とも調整をしながら、今、法改正に向けて検討を進めているところでございます。

 そういうことで今検討中でございます。

村岡分科員 大臣、この指定団体制度というのは、むしろ、いろいろな知恵を使って、非常に酪農家が安定して酪農に取り組めるといういい制度だと思うんです。ここに、規制改革会議からの意見で、自由にしようと。一部の方々のためにいいとこ取りをされるんじゃないかとか、いろいろな不安があるというのが現実です。

 その中で、この指定団体の機能の強化、そして、いいとこ取りされない、こういう部分の中ではどのように大臣は考えておられますか。

山本(有)国務大臣 おっしゃるとおり、昭和四十一年にこの暫定措置法ができ上がったわけでありますが、それまでは、零細な酪農農家の集出荷に大変不都合を生じておりまして、経営困難がしばしば見られたわけであります。

 しかし、一元集荷することによりまして、大変小規模な農家も助かるというようなことになりまして、三百万トンであった日本の生乳の生産量が八百万トンを超えるというような、大変いい機能を発揮していただいたわけでございます。

 しかしながら、これも長く、もう五十年近く安定的にやってきたわけでございますが、最近になりますと、全量出荷ということになりますと、自分が工夫して育てた乳牛、そして生乳、こういったものが全部同じ一つのタンクの中に入ってしまうというような、個性を豊かにするような経営ができないものかという意見も最近は出てまいりました。

 その意味で、生産者の補給金を交付する、要は、指定団体以外に出荷した者に対しても不公平感がないようにするというニーズが出てまいりましたし、また、全量委託しておられたこれまでの方々も、部分委託でもいいのではないか、自分で工夫して、さまざまな乳製品等について考えてみたいというような創意工夫というようなことも、これも大事にしなきゃならぬということでありまして、関係者とさまざま調整をしておりまして、現在、その調整がほぼ完了するのではないかという期待感を持って見ているところでございます。

村岡分科員 その今の制度に対して、不満を持っているのはごく少数だと私は思っているんですけれどもね。その部分は、しっかり現場を考えてこのような取り組みをしたのかなという大変不安があります。

 そして、この制度が、いろいろな、これは新聞紙上ですけれども、しっかりやるとか、悪いようにしないとか、そんな精神論で言っているようですけれども、現場は不安ですよ。やはり需給調整の仕組みをしっかりしなきゃいけないですし、この中で自由に参入してくる人がいれば、やはり飲用乳なんかも、それをどんどん売ろうという人も出てきたり、その中で、需給バランスが崩れて、また後戻りしてもう一回この制度を見直そうということになるんでしたら、相当気をつけてこれをやっていかなきゃいけない、こう思っております。その点はぜひやっていただきたい、こういうふうに思っております。

 次に移らせていただきます。

 前回の農林水産委員会で触れさせていただきましたけれども、米卸の京山の件です。調査は農林省でしていただいていると思うんですが、今現在、調査はどのようになっておりますでしょうか。

山本(有)国務大臣 報道を二月十日に知ることになりまして、農林省といたしましては、当該米卸業者に対して立入検査を開始したところでございます。

 現在も立入検査を継続中でございまして、これによりまして確保されました資料が膨大でございます。特に、米の出と入り、これについての詳細な確認を現在させていただいておるところでございまして、事実関係を徹底的に調査してまいる所存でございます。

 報道されている内容が仮に事実であるとするならば、重大な問題であるという認識でございますので、しっかりとこの調査を行いまして、その結果を踏まえて、さらに適切に対処してまいる所存でございます。

村岡分科員 これは、疑いをかけられた京山という会社もしっかりと自分たちでも調査しなきゃいけないですけれども、やはり農林省が、この不安を除くためにしっかりとやっていただきたい。そして、この前の農水委員会でも言いましたが、これはやはり田植えの始まる前にしっかり調査の結果を出していただきたい、こう思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 ナラシ対策のことなんですけれども、補填が一〇%、二〇%ということで、二割までは価格の下落の部分ではありますけれども、例えば三年前、八千円とか八千五百円とかになりました。そのときには、地域によっては非常に、大きく二割を超えるようなことになりました。

 その意味で、このナラシ対策というのは、どんなふうに今後、収入保険とのかかわりの中でナラシを考えていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございました、いわゆる収入減少影響緩和対策、ナラシ対策につきましては、生産者と国が一対三であらかじめ積み立てをいたしまして、それを原資として、標準的収入額のうち、最大二割までの減収を補填の対象としているところであります。

 委員御指摘の二十六年産、かなり米価水準も低かったわけでございますし、米の減収幅も今までで最も大きかったわけでございますが、その二十六年産におきましても、全国平均で見た場合には、減収幅は標準的収入額の二割でございました。したがいまして、制度として、二割までの補填で十分であるというふうに考えております。

 なお、今御指摘がございました収入保険との関係につきましては、収入保険自体、まだ今詳細、検討中だということでございますけれども、基本的に、ナラシ対策との関係で申し上げれば、ナラシ対策もお入りになりたい場合には、収入保険導入後もお入りいただけるというふうに考えているところでございます。

村岡分科員 まだ詳細は出ていないですけれども、このナラシとの、収入保険との、入る人も入らない人もいると思いますけれども、その辺はしっかりとやっていただきたい、こう思っております。

 次に移らせていただきます。

 米の生産で、生産調整が三十年度からなくなるわけですけれども、この指標を示すのが、三十四道府県で示しています。しかしながら、市町村単位までというのは二十六県。この辺は農林省はどのように考えていらっしゃいますか。

柄澤政府参考人 御指摘のとおり、米政策の見直しにつきましては、平成三十年産を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、各地で需要に応じた生産が行われるようにするということでございます。

 こういった中で、現在、各都道府県の農業再生協議会というのがございますけれども、ここにおきまして、各産地、生産者が、どのような形でみずからの農産物の販売実績を分析し、どのような作物をどれだけつくるかということをどうやってやっていくのかという検討が進められているところでございます。

 それぞれ県の協議会ごとにやり方が違ってまいると思いますが、その詳細なやり方についてはそれぞれの自主性に委ねているというところでございます。

村岡分科員 現行の自主的取り組み参考値まで示しているのは三県しかないということですから、三十年度まであるわけですけれども、これはしっかりとした取り組みがなければ、この需給のバランス、また崩れてしまう。

 それとまた、先日の農林水産委員会で言いましたけれども、大臣に話しました早場米の件も、少しこれをデータ化しながら、ちょっとそれを後で教えていただければ、こう思っております。非常に不安に思っている農家がいるという現実をしっかりと認識していただきたい、こう思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 これは林野の分野になるんでしょうけれども、菌床シイタケなんです。

 秋田なんかはやはり豪雪地帯でありまして、ハウスでいろいろな野菜をつくって、また菌床シイタケもつくっていくときに、これは農業分野の予算、林野庁の予算という中で、残念ながら、林野庁の予算は少ないんですね。

 それで、一緒に農業ということでハウスをつくったり菌床シイタケもつくりたいと思うんですけれども、それぞれの部署、来てくれということで、五十町歩、百町歩、大規模農家も、その手続の大変さに、同じ農林水産省で、何で一緒になって農業が多角経営していこうというときに分けているのか、こういう、農林省に聞くと、これはそれぞれ分野だからしようがないんだ、こう言うんですけれども、大臣、こういう調整というのは農林水産省内ではできないものですかね。

細田大臣政務官 ありがとうございました。

 先生の御指摘は、産地パワーアップ事業と、また、林野庁の所管である次世代林業基盤づくり交付金についての御質問だというふうに認識をしております。

 現在のところ、シイタケなど林業と密接な関係のあるキノコ類については、特用林産物というくくりで、林野庁の事業において施設の整備等の支援を行うということとしております。

 なお、この林野庁の事業である次世代林業基盤づくり交付金については、産地パワーアップ事業と、補助率など、同等の条件で支援が行えるというふうに考えておりまして、決して劣後するものではない、こういうふうに私どもとしては認識をしております。

 このような予算上のデマケがあるということでございますが、ただ、今御指摘のように、例えばシイタケについては、農業者が農業経営の複合部門の一つとして生産、販売を行っているというケースも少なくない、こういうふうに考えておりまして、どのような対応が可能かということについて、私どもとしても、現場の声に謙虚に耳を傾けながら考えてまいりたい、こういうふうに考えております。

村岡分科員 もう時間も迫ってまいりましたけれども、やはり、豪雪地帯というのは、菌床シイタケというのが非常に、冬でも取り組める収入源の一つなので、それが農業じゃなくて林野の分野だと分けられていること自体が、一体となって考えていくところに、相談窓口とかしっかりしていただきたい、こういうふうに思っております。

 最後、質問といいますか、通告もしていないんですけれども、大臣、「新・所得倍増論」、デービッド・アトキンソンさんの本は読まれましたか、農業分野。

山本(有)国務大臣 まだ読んでおりません。

村岡分科員 その中に、今進めている大規模化の部分ももちろんあるんですけれども、農産物の輸出は、今の日本、八倍にふやせる、八兆円だということを書いてあるんですね。それをオランダの例をとってやっているんですけれども、日本の水、そして農地、今のままで八倍にふやせる、その取り組みの中がまだ足らない。

 私は、もちろん大規模化も、それから兼業も小さい農家も含めてやっていかなきゃいけないと思うんですが、ヨーロッパ、オランダを例に挙げていますから、EUにほとんど輸出しているから、そういう状況は日本はできないんじゃないかというふうな形を言う人がいるかもしれないけれども、アジアを中心にしてやっていける。

 この論を、農業分野はすごい少ないんですけれども、ここもぜひ読んでいただきたい。読んでいただいた後でも、私もこの方のいろいろな部分の中で勉強させていただいている部分もあるので、今後また農林水産委員会で議論したいと思いますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

野中主査 これにて村岡敏英君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

野中主査 環境省所管について、政府から説明を聴取いたします。山本環境大臣。

山本(公)国務大臣 平成二十九年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その概要を御説明します。

 まず、予算の基礎となっている環境政策の基本的な考え方について御説明します。

 東日本大震災の発生から、この三月で六年がたとうとしています。復興のさらなる加速化に向け、中間貯蔵施設の整備や除去土壌等の適正管理、搬出等の実施、放射性物質に汚染された廃棄物の処理に全力で取り組んでまいります。また、帰還困難区域については、復興拠点の整備につき福島復興再生特別措置法の所要の改正がなされた上で、必要な役割を果たしてまいりたいと考えております。原発事故による放射線に係る住民の方々の健康管理、健康不安についても適切に対応してまいります。

 地球温暖化対策については、昨年十一月にパリ協定が発効したこと等を踏まえ、家庭・業務部門を中心とした地域における省エネルギー及び再生可能エネルギーの普及などの国内における地球温暖化対策を着実に推進するとともに、我が国の国際貢献のかなめである二国間クレジット制度等により、すぐれた技術による世界の低炭素化への貢献を推進します。また、気候変動の影響への適応策等に積極的に取り組んでまいります。

 循環型社会を実現するための取り組みとしては、廃棄物処理施設や浄化槽の整備、災害廃棄物対策、循環産業の育成や国際展開の支援、リデュース、リユース、リサイクルのいわゆるスリーRの取り組みの推進などを進めます。

 人と自然が共生する社会の実現に向けては、生物多様性の保全及び持続可能な利用を図るため、国立公園や世界自然遺産などのすぐれた自然環境の保護と適正な利用の推進、鳥獣保護管理の強化、希少種の保全や外来生物対策の推進などに努めてまいります。

 また、国民の健康と良好な環境の確保のため、PM二・五による大気汚染や海洋ごみ対策、水銀に関する水俣条約の実施のための取り組み等の化学物質対策、公害健康被害対策などを進めます。

 原子力規制委員会については、原子力規制活動を支える安全研究の推進及び放射線モニタリング体制の強化を図るとともに、原子力規制人材育成の強化などに取り組みます。

 次に、これらの施策を実行するための平成二十九年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について御説明します。

 一般会計予算では総額三千二百六十六億円余を計上しております。

 次に、特別会計予算につきましては、エネルギー対策特別会計に総額一千九百六十七億円余、東日本大震災復興特別会計に復興庁所管予算として総額七千百九十九億円余を計上しております。

 なお、委員のお手元に配付されております環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策については、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。

野中主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま山本環境大臣から申し出がありました環境省関係予算の主要施策の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野中主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野中主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

野中主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野洋昌君。

中野分科員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして、早速質問を開始させていただきます。

 私からは、まず、動物愛護について質問をさせていただきたいと思います。

 初当選以来、私は、動物愛護というのは非常に大事なテーマということで取り組んでまいりまして、大臣のところにも、また、つい先日も関副大臣のところに尼崎総支部で御要望に行かせていただきまして、ありがとうございます。

 動物愛護というのは、ここ数年、かなり大きな動きがあったというふうに思っております。二〇一三年に、環境省としても、犬、猫の殺処分ゼロに向けてしっかりやっていこうということで、大きな目標を立てまして、それ以来、三年近くが今経過をしておりまして、殺処分数というのは着実に、確かに数字の上では減少しております。自治体によっては殺処分ゼロを達成した、こういう自治体もございます。

 しかし、私が今感じている実感としては、殺処分が減ってきたというのは、これを引き取っている動物愛護団体の皆様の頑張りにかなり依存をしているところも多いんじゃないかな、こういうところも感じます。また、法改正がございまして、行政側も受け取りを拒否できるようになった、こういうところも影響しているんじゃないかな、こういうところも感じております。

 確かに今、現場では愛護団体の皆様にかなり頑張っていただいて、私の地元の尼崎市でも相当熱心に活動していただいて、殺処分ゼロに向けて進んでいるんですけれども、果たしてこのままで大丈夫なのかな、持続可能な状況なのかな、対策をもっと前に進めないといけないんじゃないか、こういう思いも強くしているところでございます。

 まず冒頭、この犬、猫などの殺処分ゼロの実現に向けて、環境省としての御決意というのをぜひお伺いしたいと思います。関副大臣、よろしくお願いします。

    〔主査退席、小倉主査代理着席〕

関副大臣 非常に根幹的な御質問、重要なポイントだと思います。ありがとうございます。

 平成二十四年の動物愛護管理法の改正によりまして、殺処分がなくなることを目指しまして、返還、譲渡に努力する旨の規定が追加されたところでございます。これを踏まえまして、平成二十五年に改正をいたしました動物愛護管理基本指針におきまして、引き取り数を削減すること、引き取った犬、猫の譲渡等を推進することによりまして、殺処分数の減少を図ること、これが基本方針でございます。

 環境省では、平成二十六年六月に発表をいたしました、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトのアクションプランに基づきまして、三つのポイントを考えております。一つは、普及啓発によります飼い主等の意識の向上、二つには、飼い主等からの引き取り数の削減、三つには、引き取った犬、猫の飼い主への返還と希望者への譲渡、この三つをポイントにしまして、モデル事業を自治体等と進めているのが現状でございます。

 こうした取り組み等によりまして、平成二十四年度の犬、猫の殺処分数の約十六万頭という数字が、平成二十七年度には約八万頭まで大きく減少させることができました。しかしながら、その一方で、中野委員、御指摘がございますように、自治体が動物愛護団体に依存し過ぎている、そのような課題が生じていることは聞いているところでございます。

 このような課題につきまして、まず自治体からの譲渡等が適正に行われることが重要であると考えております。環境省におきましては、譲渡する側を主な対象といたしまして、適正譲渡講習会等を実施しているところでございます。

 より持続可能な取り組みとしていきますために、動物福祉、この概念が重要なんですが、動物福祉等にも留意をしていきながら引き取り数の削減と適正譲渡の推進を図りまして、不必要な殺処分の行われない人と動物が共生する社会、この実現に努めてまいりたいと思います。

 以上でございます。

中野分科員 ありがとうございます。

 現場で動物愛護団体の皆様にお伺いをしますと、大変に頭を悩ませておられるのが、例えば多頭飼育という問題がございまして、譲渡活動等々頑張っておられますけれども、近隣から猫が家の中に何十匹もいるということで苦情が入って、それで実際に現場に行ってみると、ごみ屋敷のような状況で、数十匹の猫がいて、飼育が崩壊をしているような状況というのがあって、それをまた引き取ってということで、譲渡をしても、蛇口が閉まらなければ殺処分ゼロというのがなかなか進まない、こういう御指摘もいただいております。

 飼い主、飼う側の責任というのが何らかの形で定まっていればこうしたこともより対応がしやすいんじゃないか、こういうお声もいただいているところでございます。動物愛護管理法は議員立法でやっておりましたので、次回の改正に向けても、こうした議論は私もしっかりしていきたいと思うんですけれども、飼い主責任のあり方というものについて国としてどのようにお考えか、答弁いただきたいと思います。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十四年の動物愛護管理法の改正によりまして、動物の所有者及び占有者の責務として、従前からの犬、猫の繁殖制限に加えて、終生飼養や逸走防止等に関する努力義務規定が追加されるなど、飼い主責任の強化が図られたところでございます。

 この改正を踏まえまして、環境省では、不必要な殺処分をなくすために、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトに着手しております。この中で、殺処分をなくすためのポイントの一つとして、飼い主責任等に関する普及啓発を徹底し、飼い主等の意識向上を図ることにより、無責任な飼い主をなくし、自治体の引き取り数を削減することを挙げております。

 環境省といたしましても、飼い主責任等の普及啓発のため、パンフレットやパネルを作成して、自治体や関係団体の取り組みを支援しておりますほか、動物愛護週間に合わせまして自治体や関係団体と共同でイベントを開催するなどの取り組みを進めているところでございます。

 不必要な殺処分をなくすためには、飼い主が責任を持って飼育していくことが不可欠であるという認識のもと、環境省といたしましては、引き続き、普及啓発の徹底等により、飼い主責任の重要性に関する理解を一層広めていきたいというふうに考えております。

中野分科員 私の地元の兵庫県の方でも、飼い主責任等々含め、条例もどういう形でできるのか、こういう検討もされているというふうにお伺いもいたしました。ここは非常に大事なところだと思いますので、引き続き議論をしてまいりたいというふうに思います。

 もう一点は、動物愛護予算の充実でございます。

 先日、神戸市では、猫の不妊去勢手術などについて公費助成が行われるような制度が条例で決まったと伺いました。私の地元の尼崎市でも動物愛護基金というものを条例で設置いたしまして、支援をしております。それぞれの自治体では、こうした市会議員あるいは県会議員、こういう動物愛護に関心の高い皆様の頑張りによりましてさまざまな事例ができてきつつあるのかな、こういうふうに思います。

 特に、動物愛護の分野は、民間の、こうした団体等も含めて、果たしている役割が非常に大きいと思います。私も、例えば民営のシェルターなどへ支援ができないか、こういう御要望もいただいたりもしております。国といたしましても、こうした声にもしっかりと配慮しながら動物愛護予算の充実をぜひ図っていただきたい、このように思いますけれども、答弁いただきたいと思います。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 犬、猫の不必要な殺処分をなくしていくため、各地の自治体が地域の実情に即して民間団体と連携しつつ取り組みを進めていることは承知をしております。

 地域によって事情はさまざまでありまして、国の財政状況が極めて厳しい中、全国一律に民間団体を支援する国の制度を創設することは困難でありますが、民間団体への支援も含めてさまざまな取り組みを実施している自治体の取り組みにつきましては、環境省としてもできる限りの支援に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、平成二十九年度予算案におきましても、自治体の動物収容・譲渡施設整備への財政的支援や、災害時に自治体が担う被災ペット対策の支援につきまして増額を盛り込んでおります。

 今後とも、できる限り自治体の取り組みを支援することを通じて、各地の民間団体の後押しにもつながるよう努めてまいりたいと思います。

中野分科員 自治体も非常に今財政的に厳しいところもまたあり、例えば動物愛護の関係の職員の数を聞いても、非常に少ないといった現状もお伺いをいたします。さまざまな予算の充実を私もしっかりと訴えていきたいと思いますので、環境省としてもぜひ後押しをいただければと思います。

 続きまして、離島振興について伺いたいと思います。

 私の地元の兵庫県尼崎市というところは、奄美群島であるとか甑島であるとか、非常に離島の出身者の方が多い地域でございまして、また、こうした離島振興の取り組みというのも大変御要望が強いところでございます。

 特に、奄美群島につきましては、琉球・奄美について、世界自然遺産登録、早期の実現を目指そうということで今非常に頑張っておられます。これは環境省が担当ということでございますので、これが早期にぜひ実現をするように頑張っていただきたいと思いますけれども、これについて答弁いただければと思います。

    〔小倉主査代理退席、主査着席〕

関副大臣 御指摘の地域の世界遺産登録につきましては、本年の二月一日にユネスコに推薦書を提出したところでございます。本年夏から秋ごろにかけまして、IUCN、国際自然保護連合によります現地評価が予定されているところでございます。この現地評価の結果を踏まえまして、来年の夏ごろの世界遺産委員会の方で世界遺産の登録の可否が決まる見込みでございます。

 環境省といたしましては、来年夏の世界遺産登録の実現に向けまして、ことしのIUCNの現地評価の際に、世界遺産としての価値や、それを将来にわたって保全するための措置をわかりやすく説明していきますなど、しっかりとした取り組みで行ってまいりたい、こう思っております。

中野分科員 世界自然遺産登録も非常に関係者の皆様が待ち望んでおられまして、これが実現すれば、琉球・奄美というのが世界で非常に注目をされて、どんどん交流人口もふえていくんじゃないか、こういう期待の声でございますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 その奄美群島に関連いたしまして、私、昨年の国会でも質問をいたしました。関西と奄美との行き来をされる方の数は大変多いということで、成田からはLCCが奄美に飛んでおりました。これをぜひ関西からもLCCの就航を後押ししてほしいという質問を去年させていただきまして、これが本年の三月に、国の後押しもいただきまして、実現をする運びということでございます。関西、奄美出身者の皆様は大変に喜んでおられて、これで交流人口がまた活性化をしていくんじゃないか、こういうことで大変に喜んでおります。

 他方で、奄美群島は、奄美大島以外にも四つ島が、細かい島はもっとあるんですけれども、大きくはございまして、ここへの航空運賃ということで、またこれが引き続きの課題でございます。徳之島、沖永良部島、喜界島、与論島、この航空運賃につきましても、乗り継ぎということでかなり費用が高いということでございます。またさらに低減が図られるような支援というものもお願いしたいと思いますし、特に、徳之島については、世界自然遺産登録をしたエリアは奄美大島、徳之島ということで、これも含まれているということでございます。徳之島にもLCC就航をぜひ実現させていきたい、こういうお声や動きもあるやに聞いております。

 こうした航空運賃の低減の動きにつきまして、またぜひとも国の方から支援をお願いしたいと思いますけれども、国土交通省の方から答弁いただきたいと思います。

和田政府参考人 お答えをいたします。

 中野先生御指摘のとおり、バニラエアが本年三月二十六日から関空と奄美大島路線を開設すると発表いたしました。これによりまして、関西と奄美群島との間の運賃の低減が期待できるというふうに考えております。

 また、これに加えまして、奄美群島に関する航空運賃の割引については、奄美群島振興交付金による支援がありまして、関西と奄美群島との交流の促進に資するものと期待をしております。

 国土交通省としては、地元の方々の御要望も踏まえつつ、今後も引き続き奄美群島振興交付金による支援を実施してまいりたいと考えております。

中野分科員 ありがとうございます。

 奄美群島、先ほど私もお話をさせていただきましたけれども、LCCが就航するということで、今まではやはり片道二万円とか三万円とかかかっている場合もあったということでございます。このLCCというのは、今、関空から奄美大島という意味では、一番安いときには五千円を切る料金だということで、大きな低減でございます。

 しかし、先ほど私が御説明をさせていただいたように、ほかの島は、やはり鹿児島空港から乗り継ぎ便である、あるいは奄美大島まで一旦行って、そこからまた乗り継ぎである、こういう状況もございます。ぜひとも、先ほど奄美振興交付金という話もございました。いろいろな角度で応援をしていっていただきたいというふうに思います。

 特に、世界自然遺産登録というのを先ほど質問させていただきましたけれども、これが実現をすれば、交流人口という意味でも大きくふやしていくチャンスということもございまして、これとあわせて航空運賃低減の取り組みというのをぜひともお願いしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、甑島について質問をさせていただきます。

 甑島といいましても、どこにあるんだろう、こういう御質問をいただくときもございます。これは鹿児島県の薩摩川内市というところにございまして、ここから高速船でありますとかあるいはフェリーでありますとか、こういうところで向かうということでございます。

 この甑島につきましても、実は、私の地元の尼崎市に大変出身者の方が多いということでございまして、これの、島の振興というのもまたお願いをされているところでございます。

 この甑島につきましては、国定公園にも指定もされました。こうした離島の持つ大変美しい自然、こういうものをぜひ生かしながら、離島振興というものを図っていきたい、こういうふうに私も感じて活動してまいりました。

 しかし、離島振興を語る上でどこまでも壁になってまいりますのが、やはり航路であるとか航空路であるとか、こうしたところの運賃が非常に高いというところが最後のネックになってまいります。

 先ほど奄美群島の関係では、航空路ということで、航空路の運賃についてお話をさせていただきましたけれども、甑島については航路があるということで、離島航路、この島に行くに当たって、最後に船に乗らないといけないというのが大変に大きな物理的なバリアというか、観光の振興を図るにしても、あるいは交流を活性化するにしても、これが大変大きな課題だ、こういう御指摘をいただいているところでございます。

 離島航路につきましては、国土交通省の方で離島航路補助というものがございまして、唯一の生活の足ということでございますので、赤字があってもこれを支援する、こういう仕組みがあるところでございますけれども、運賃を低減する、こういう仕組みもあったわけでございますけれども、しかし、この運賃の低減というのがもっと多くの航路に図れないか、こういう指摘がずっとあったところでございます。

 そして、特に離島の中でも、国境を接する離島というのはやはりこの日本にとっては大変に重要性が高いんじゃないか、こういう指摘を今までもさせていただいておりました。特定国境離島というものはしっかり国として応援をしていかないといけないんじゃないか、こういうお願いをずっとさせていただいておりまして、こうして、特定国境離島の振興を図るための議員立法というものがこの前の国会で成立をさせることができました。私も提案者ということで活動をさせていただきまして、この中には、離島航路運賃の低減、こういうものも項目として含まれているわけでございます。

 こうした仕組みを活用して、特に甑島、ここについてしっかりと応援をしていっていただきたい、このように思うわけでございますけれども、これについて答弁をいただきたいというふうに思います。

北本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の有人国境離島法につきましては、本年四月一日からの施行に向けまして、現在、内閣官房におきましては、関係府省庁及び関係地方公共団体と連携しながら、鋭意準備を進めているところでございます。

 鹿児島県甑島につきましては、御指摘のとおり、法律上、特定有人国境離島地域に位置づけられておりまして、私どもが新たに創設することとしております内閣府の交付金によりまして、地方公共団体が実施いたします地域社会維持の取り組み、具体的には、離島住民向けの航路、航空路運賃の低廉化ですとか、物資の輸送費用の軽減、滞在型観光の促進、雇用機会の拡充などの取り組みについて支援することとしておるところでございます。

 このうち、御指摘の離島住民を対象といたします航路運賃の低廉化につきましては、制度上、最大でJR運賃並みまでの引き下げというものを支援することとしておるところでございます。現在のこれに係ります甑島の航路に関する準備状況といたしましては、現在、具体的な割引運賃について最終的な詰めの作業をさせていただいているところでございます。

 他の事業も含めまして、四月からの本法の施行に向けまして鋭意準備を進めてまいりたいと考えてございますので、よろしくお願いいたします。

中野分科員 ありがとうございます。

 制度の施行が、離島の住民の方にとっても、あるいはその出身の方にとっても大変に待ち遠しい、まさにそういう制度でございます。ぜひ、この制度の施行に遺漏なきよう、しっかりと後押しをいただければというふうに思います。

 離島の振興というのを私がライフテーマというか、こういうテーマでずっと取り組んでおりますのも、実は、私の選挙区、前に冬柴鉄三元国土交通大臣、冬柴先生がいらっしゃいまして、当時、国交大臣だった時代にも、日本というのは国土の面積自体を見れば狭いかもしれないけれども、しかし海洋面積を見ると世界に冠たる海洋王国である、それを支えているのがまさに離島であり島である、こういうことを冬柴先生がおっしゃられて、離島の振興というのは非常に大事なテーマだということで取り組んでおられた。

 その後を継いでということで、私も当選をさせていただきましたので、こうした取り組みを今頑張っているところでございます。離島振興、環境省だけでなくて、先ほど国交省や内閣官房やさまざまな役所の方にも答弁をいただきましたけれども、日本にとって大変大事なテーマであると思いますので、引き続き頑張ってまいりたい、このように決意をしております。

 環境の関係でいいますと、私の地元の尼崎市というのは阪神工業地帯でございましたので、そういう公害の問題でありますとか、あるいは貨物も含めて大変に交通量が多いということで、大気汚染、こうしたことも昔からかなり課題になっておりました。

 さまざまな取り組みが進んだ結果、昔でいうと、尼崎市というのは、隣の市から川を渡って入ってくると、空気の色が少しほかの市と違うんじゃないか、こういうふうに言われたことがあるぐらい、やはり大気汚染、こういうことは大きな課題だというふうに思っておりましたけれども、今は、環境省の方からも、環境モデル都市ということで、そういう指定もいただいたりとか、環境問題に大変に前向きに取り組んでいる、そういう都市、そういう市になっているというふうに思っております。

 非常に交通量が多い路線が、地元の国道四十三号線というところがございまして、これは非常に交通量が多い、大気汚染もひどいんじゃないか、こういうこともございまして、交通量をしっかりと削減していくということが非常に大事だというふうに思っております。

 他方、では、これを迂回するにはどうすればいいかといいますと、その南側には阪神高速道路が通っております、阪神高速の湾岸線という線がございまして、こちらについては、ここの交通量を高速道路に移せば、ここの大気汚染がよくなるんじゃないかということで、環境ロードプライシング、こういった仕組みというのも今取り組まれているというふうに聞いております。

 他方で、今、阪神高速については高速道路料金の大きな見直しという流れもありまして、それが非常にどうなるかというところで注目も高いところであるんです。

 例えば、ここの阪神高速の私の地元でよくある声として、尼崎末広インターというところと東海岸インターという一キロない、非常に狭いインターの区間がございまして、非常に狭い区間なんですけれども、貨物については環境ロードプライシングということで値段は下がっているんですけれども、旅客が、初乗り運賃がそのまま全部かかるということで、五百円以上、今かかってしまう、こういうところでございます。

 しかも、ここの区間は下道が実はその下にない区間でございまして、これを迂回しようとすると、交通量を削減しないといけない、大きな国道にまで迂回をしていかないといけないということもございまして、これを何とかしてほしい、ここの当該区間についてできるだけ低廉な料金にしてほしい、こういう御要望が前々からあったところでございます。

 今回、阪神高速道路料金の設定が見直される、こういうことでございますので、当該区間についてどのような料金になるのか。できるだけ低廉な料金体系というふうにしていっていただきたい、このように考えますけれども、これについて答弁をいただきます。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 お話がございました阪神高速湾岸線を含む近畿圏の高速道路料金につきましては、来年度からの新しい料金の導入に向けまして、昨年十二月十六日に具体方針案を公表いたしております。

 具体的には、関係自治体の提案を踏まえさせていただきまして、四点、大きな柱としてございます。第一に、対距離制を基本とした料金体系に整理統一をするということ。第二に、淀川左岸線延伸部それから大阪湾岸道路西伸部、こういった道路の整備に必要な財源化の観点から、必要な料金を設定するということ。第三に、地方道路公社などの管理区間につきまして、高速道路会社で一元的に管理をしようということでございます。四点目といたしまして、大阪都心部への流入に関しまして、交通分散を図りますために、複数ルートで、経路によらず起終点間の最短距離を基本で設定する。この四点でございます。

 御指摘がございました阪神高速湾岸線の尼崎末広―尼崎東海岸間の料金につきましては、御指摘ございましたように、〇・八キロと短距離でございますので、先ほど申し上げました第一の柱の、対距離制を基本とした料金体系の移行に伴いまして、普通車で現行の五百十円から三百円に引き下げという予定でございます。また、大型車につきましても、お話がございました、いわゆる環境ロードプライシング割引を継続することといたしておりまして、現行と同額の二百九十円ということでございます。

 今回の新たな料金体系の導入によりまして、必要なネットワークの充実を図りながら新たな料金体系に移行することによりまして、近畿圏の交通の流れの最適化を目指しまして我が国経済の牽引力としての役割を高めていく、こういったことで努力をしていきたいと考えております。

 以上でございます。

中野分科員 ありがとうございました。非常に大事なところであるというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 大臣も、最後まで聞いていただきまして本当にありがとうございます。動物愛護、離島振興、非常に他省庁にもまたがることも多いんですけれども、環境省がぜひこうしたところについてしっかりとリーダーシップを発揮していただいて、また政策が前に進むようにお願いを申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

野中主査 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、本村賢太郎君。

本村(賢)分科員 民進党の本村賢太郎です。どうぞ、山本大臣、よろしくお願いいたします。

 まずは、冒頭、動物愛護について数点お伺いしてまいりたいと思っております。

 平成二十四年改正動物愛護管理法の附則第十四条におきまして、法施行後五年を目途に、販売される犬、猫等へのマイクロチップ装着の義務化に向けた検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講じることが求められているということでございまして、その五年というのは来年の五月に迎えるわけでございますが、現状で、このマイクロチップの義務化に関する議論の状況はどうなっているのか、まずお伺いいたします。

山本(公)国務大臣 本村議員がマイクロチップに御興味を持っていただくことに大変感謝を申し上げたいと思います。

 と申しますのも、私も、ずっと自民党で環境に携わってまいりまして、マイクロチップの議論も十数年前からございまして、正直、やっとここまで来たかなというのが実感でございます。

 その上で申し上げたいと思います。

 災害時などに発生する迷い子の犬、猫を所有者に返還するために、所有者であることを明示し脱落のおそれがないマイクロチップの装着を進めていくことは重要だと思っております。

 御指摘のように、平成二十四年の改正動物愛護管理法の附則第十四条においても、販売の用に供せられる犬、猫等へのマイクロチップの装着の義務づけに向けて、装着に関する啓発等のために必要な施策を講ずるものとされているところでございます。

 これを受けまして、環境省としては、パンフレットの作成等さまざまな普及啓発を進めるとともに、マイクロチップの普及に関するモデル事業を実施しているところでございます。

 今後、このようなモデル事業で明らかとなった課題や成果を踏まえまして、まずは、販売の用に供する犬、猫のマイクロチップの装着義務化に向けた制度設計等の検討を進めてまいりたいと思っております。

本村(賢)分科員 附則に、販売されている犬、猫を対象としておるということで、ここは多くの皆さんに、ペットショップに義務化させるということで御理解いただいていると思うんですが、獣医師会の皆さんからも御指摘いただいているのは、飼い主の皆様への義務化は附則の対象でないということで、これは賛否が非常に割れているというふうに伺っております。

 今後、ぜひこのマイクロチップ化、山本大臣も長年取り組みを進められたということでございまして、獣医師会のお声や、そして飼い主の皆さんのお声も聞きながら、ここのところはまた慎重に進めていただきたいと思います。

 次の質問に入らせていただきますが、三・一一東日本大震災、そして昨年四月に起こりました熊本大震災等々含めて、災害時におけるペットの救護対策ガイドラインの改訂について、いつまでに行っていくのか、また改訂を行う背景についてお伺いしたいと思うんです。

 これを聞くもとは、やはり、いわゆる災害時のペットの飼い主の確認が非常に困難になっているという問題もあるということを伺っておりますので、いつまでに行っていくのか、また改訂を行う背景についてお伺いいたします。

山本(公)国務大臣 環境省は、東日本大震災の経験等を踏まえまして、平成二十五年に、災害時におけるペットの救護対策ガイドラインを策定し、災害時におけるペットの同行避難や避難所でのペットの受け入れを推奨するとともに、そのような場合に自治体や飼い主が配慮すべき事項などをお示ししたところでございます。

 昨年四月に発生した熊本地震では、環境省は、被災者の心のケアの観点から、自治体等と連携しながら、ペットを連れて避難される被災者への対応等を進めてまいりました。

 現在、熊本地震での対応を検証する作業を進めているところでありまして、その結果を踏まえて、来年度早々にはガイドラインの改訂作業に着手し、秋ごろには改訂版を公表したいと考えております。

本村(賢)分科員 このガイドラインは来年の秋ごろには策定をされるという具体の話をいただきました。ありがとうございます。

 熊本地震でも、避難をする際、ペットと御一緒にということで、私も先日熊本市や益城町にも行ってまいりましたが、随分、避難をされた皆さん、いわゆる避難所でのペットを飼う場所なども工夫をされているという点でありまして、いろいろな、東日本大震災のときにつくったガイドラインと、また今回熊本震災が発災した後の対応が大分違ったという点も環境省の職員の皆さんからお聞きをしております。熊本地震そして東日本大震災はともに大きな地震でありましたが、やはりペットは家族同様なものでありますから、ぜひその辺を理解した中で、ガイドラインの策定をお願いしてまいりたいと思います。

 次に入ります。

 山本大臣は愛媛県御出身、御地元でありますが、ちょっと残念なことに、引き取られた犬、猫の九割が殺処分をされているという、環境大臣御出身の地元がいま一つ殺処分に、取り組みがまだまだ進んでいない点もあります。私の地元神奈川県では、二〇一四年から既に殺処分ゼロが進んでおりまして、各自治体でも鋭意取り組みが進められておりますが、環境大臣として、殺処分ゼロに向けた大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

山本(公)国務大臣 愛媛県がおくれているということはかねがね承知をいたしておりまして、私の立場で知事とも相談をして、何とか他県並みになれるようにと思っております。

 その上で申し上げたいと思いますけれども、犬、猫の殺処分数については、長年にわたる自治体等の取り組みの結果、一応順調に減少を続けております。平成二十七年度には、十年前の五分の一である約八万三千頭まで大きく減少しております。近年では、動物福祉等の観点から、必要な場合を除いて殺処分を行わない自治体も出てまいりました。

 環境省では、殺処分数をさらに減少させるため、平成二十六年六月に発表した、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトのアクションプランに基づき、普及啓発による飼い主の意識の向上、飼い主等からの引き取り数の削減、引き取った犬、猫の飼い主への返還と希望者への譲渡の三点をポイントとし、自治体等と連携したモデル事業の実施等の取り組みを進めてまいります。

 他方、自治体の現場においては幾つかの課題が生じていることもお聞きをしているところでございまして、環境省としても、自治体の実情に応じた取り組みを促進することなどを通じて、これらの課題に対応しながら、不必要な殺処分が行われない、人と動物が共生する社会の実現に努めてまいりたいと思っております。

 私も長年犬を飼っておるものでございまして、何とか殺処分というのがなくなればいいなと思っている一人でございますけれども、実情というのを勘案しながら進めてまいりたいと思っております。

本村(賢)分科員 ワンちゃんを飼われているというお話も聞きました。ぜひ、御地元である愛媛県をまず皮切りに、全国一律に殺処分ゼロになることをお願いしてまいりたいと思います。

 また、一点、動物愛護法は五年に一回の改正があると思うんですが、行政が引き取りを拒否できるようになったということも殺処分がゼロになることになるかもしれませんが、しかし、そのすき間を縫って引き取りビジネスなどが横行しているというお話もございますので、犬や猫や動物はやはり命がありますので、そういった私たちの都合で犬や猫を初めとする動物の命が殺処分になることがないように、ゼロを目指して、大臣の強いリーダーシップをお願いして、動物愛護法の質問を終わりにします。

 次の質問は花粉症対策でありまして、実は私も、花粉症で悩む一人であります。

 国民の三割が罹患をして、国民病とも今言われておりますし、私も、きのうも駅頭に立っておりますと、皆さん、マスクをされて、多くの皆さんが、目をこすったり鼻水を、出てきたものを防いだり、いろいろな方をごらんになっておりますが、外出を控えるなどするため、個人消費が約七千五百億円ぐらい、この花粉症の関係で減少するとも試算をされております。

 ちょうどこの二月から四月が杉花粉が非常に多い時期でありまして、この時期は、企業にとっては年度末期の繁忙期でありますし、学生の皆さんは受験期でもあって、花粉が生活の中でも仕事の中でも非常につらい部分がありますので、この点をまず、ちょっと一点でありますが、お伺いします。

 この花粉症対策、大臣御自身も花粉症なのかどうかも含めまして、花粉症対策に取り組む大臣の思いをちょっとお伺いしたいと思います。

山本(公)国務大臣 私は、花粉症にはなっておりません、感性が鈍いので。ただ、娘たちが花粉症に悩んでおりまして、花粉症というのは本当に国民的な今悩み事になっているということは実感をいたしておりますので、環境省ができることを今後やっていきたいと思っております。

本村(賢)分科員 例えば、花粉症対策は、林野庁において、花粉発生源対策三本のおのに取り組んでおり、花粉がない、または少ない杉への植えかえなどを行っておりますし、厚労省においても、舌下免疫療法など新たな治療薬の普及にも取り組んでいらっしゃるようでありますし、環境省においては、花粉観測システムの「はなこさん」を稼働させて、全国百二十地点の花粉の飛散状況や降雨量をリアルで国民に情報を提供しているわけであります。

 環境省や厚労省、林野庁、三本の行政が一体となって取り組まなきゃいけませんが、今大臣が、環境省としてできることに取り組むと言われましたが、どんなことができるんでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のあった中で、環境省では、花粉の観測システム、「はなこさん」と呼んでおりますけれども、これを運用してございます。全国で百二十カ所、都市部、山間部に配置をいたしまして、今お話ございましたけれども、花粉の飛散状況をリアルタイムでお知らせしてございます。

 平成十四年度から運用してございますけれども、ことしは二月一日から五月末までの予定で、ホームページで情報提供を開始してございます。

 これによりまして花粉の飛散状況をごらんいただきまして、花粉症の方が花粉に暴露されることを回避いたしましたり、あるいは予防対策をとることによりまして、症状の緩和に役立てていただいているところでございます。

本村(賢)分科員 今、参考人の方から、環境省の、飛散状況等々の花粉観測システムのお話をいただきましたが、大臣の言葉として、環境大臣としての取り組みをもう一度、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 今局長から御答弁いたしましたけれども、花粉症は、日常生活に与える影響が大きく、国民的関心の高い問題だと認識をいたしております。

 環境省では、主に花粉の飛散に関する国民への情報提供等を進めるとの観点から、花粉症問題に取り組んでまいりたいと思っております。

 具体的には、杉林において生産される杉雄花の数を算出する杉雄花花芽調査、今申し上げました花粉観測システム「はなこさん」を用いたリアルタイムでの飛散状況の提供、花粉症への対処などをわかりやすく解説する花粉症環境保健マニュアルの発行等の取り組みを進めてまいりたいと思っております。

 今申し上げましたように、花粉症の問題、環境省としてできることをやっていきたいと思っております。

本村(賢)分科員 ぜひ、大臣のお嬢さんも花粉症ということでありますし、恐らく周りの皆さんにも多くいらっしゃると思いますので、環境省としてリーダーシップをとって、厚労省、林野庁とも協力しながら、鋭意前へ進めていただきたいと思います。

 次の質問に入りますが、次は、鳥獣対策についてお伺いいたします。

 私の選挙区は、神奈川県相模原市という、現在政令市なんですが、実は、数年前に旧四町と合併をして面積が二・五倍になりまして、南区、中央区、緑区と市内に三区あるんですが、私は南区に住んでおります。例えば私の地元では、森が若干あるものですから、ハクビシンが出たりタヌキが出たりというお話がありますが、中央区も同じような環境なんですが、緑区は水源地域でありまして、この水源地域には、熊を初めイノシシや鹿やヤマビルやさまざまな鳥獣被害に悩んでいる皆さんがいらっしゃいます。私の選挙区からは外れるんですが、旧津久井四町という地域がありまして、そこには、熊のお話があったり、イノシシや猿や鹿やさまざまなお話があるんです。

 例えば、ちょっと一例を挙げますと、相模原市は、東京都の八王子市と隣接をしておりますし、また、山梨県の上野原市とも隣接をしておりまして、ちょうど東京都、山梨県、神奈川県の境のところでありまして、例えば、猿に関しましては、山梨県、東京都においては雌猿を駆除できるという頭数制限がないんですが、神奈川県においては頭数制限があって、駆除できる匹数が決まっているものですから、実際に、一都二県で、猿の捕獲に考えの相違がありまして、結果、群れが分裂して被害が拡散する。例えば、山梨県の猿が、鉄砲で撃たれて危ないと思えば神奈川県側に入ってまいりますし、東京都の猿もそうかもしれません。まあ、話したことがありませんからわかりませんけれども。

 ただ、そういう状況で、猿には県境がないものですから、そして、各自治体の自主性に任せている関係から、地元の皆さん、旧津久井四町の皆さん、緑区でお困りの方々の声を聞いて、先日も、後藤祐一衆議院議員や地元の長友県会議員と一緒に現地に赴きまして皆さんの声を聞いてきたんです。自治体によってこういった差が出ており、私の地元を含め、県境に住む方などが困っていらっしゃるという声も伺っていますので、しっかりと連携をして対策に取り組んでいただきたいわけでありますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

山本(公)国務大臣 本村先生御存じのように、私も愛媛県の本当に片田舎でございますので、今の鳥獣被害の実感は身をもって知っているわけでございます。

 その上で申し上げたいと思いますけれども、環境省では、都道府県が隣接する自治体と連携して鳥獣を適切に管理する計画を策定する際の基本的な考え方を示した、ニホンザルの保護、管理のためのガイドラインを策定いたしております。

 神奈川県では、ニホンザルの雌の成獣を捕獲した場合、群れが分裂し、被害が拡大するおそれがあることから、雌の成獣をできるだけ捕獲しない独自の対策を実施していると承知をいたしております。

 環境省としては、隣接する都府県境をまたいで個体群がいる場合は、まずガイドラインに即して協議が図られるべきであり、そうでない場合は、各県で独自の判断が尊重されるべきと考えております。

 いずれにいたしましても、都府県において、市町村とも十分に連携をしつつ、広域的な対策が推進されることを期待いたしております。

 ちなみに、私のところの愛媛県も、神奈川県のようなことはやっておりません。

本村(賢)分科員 環境省が県と一緒に個体管理を行ったり、そして、農水省が市町村と一緒になって農作物の被害対策を行ったりしているわけでありますが、私も現場に行きまして、住民の皆さんにとっては、国がやろうが、県がやろうが、市がやろうが、とにかく、この鳥獣被害、農作物等々、大変困っているお話もよくよくいただいておりますので、ぜひとも、各自治体や国で投げ合いをせずに、環境大臣の強いリーダーシップで、今はちょっと猿を例にしましたが、イノシシを初めヤマビルの問題もそうだし、いろいろな問題がまだ、鹿の問題もありますし、ぜひとも御努力を進めてもらいたいと思います。

 これは農水省の関係でありますが、鳥獣被害防止特措法の、例えば補助基準が市全体でのような対策計画を求めている点は、先ほど言ったように、私のような南区、小田急沿線に住んでいる者は、せいぜい出てもハクビシン、タヌキぐらいなんですが、同じ相模原市でも、緑区の皆さんは、熊が出たりイノシシが出たり鹿が出たり、市全体でないと補助が出ないという方向はちょっと難しいんじゃないかな、ここは改善をしてもらいたいなという。これはまた農水委員会で進めてまいります。

 また、生産者の農家や自家農家の皆さんも、被害実態を報告してもなかなか反映されていない、把握されていないということで諦め感が大分出ている点も、ここは指摘をしてまいりたいと思います。

 また、猟友会の皆さんのいわゆる後継者問題、これに関しましても、民間会社がハンターができるようなルールづくりに変わったようでありますけれども、やはり地元の地理や環境、状況を知っているのは地元の猟友会の皆さんでありますので、この後継者の育成も今後しっかり取り組みを進めてまいりたいと思います。

 また、例えば鹿やイノシシのようなジビエの問題でありますが、この問題に関しても、移動式の処理車の助成なども今後ぜひまた御検討いただければというふうに思っております。

 それでは、次の質問に入らせていただきます。

 次は、森林環境税についてお伺いしてまいりたいと思います。

 私も、神奈川県会議員時代ですが、二〇〇七年、神奈川県に水源環境税という新たな税を県民の皆様にお願いいたしまして、一人当たり一律三百円の均等割と、所得に応じて〇・〇二五%課税する所得割を県民税にそれぞれ上乗せした税収であります。既に三十七府県で行っていますが、我が神奈川県は、三十九億円という全国最大の税収を誇る取り組みを行っております。また、県民目線で厳しくチェックをする形で、県民会議メンバーという形も創設して行っております。

 今回御検討されている森林環境税でありますが、国税として個人住民税に上乗せした上で、市町村向けの森林整備の財源として、国が森林面積などに応じて配分することが想定をされております。

 しかしながら、既に三十七府県や、私のお隣の横浜市も、森林環境の保全などを目的に住民税の超過課税を行っておりまして、今回、国が環境省そして総務省と検討されておりますこの森林環境税は、国税と超過課税の関係をどう整理していくかというのは、非常に全国知事会や市町村の首長の皆さんからも注目の税でありますので、その税について、大臣に、どのような整理を行っていくのか、お伺いいたします。

織田政府参考人 お答え申し上げます。

 森林環境税につきましては、昨年末に決定されました平成二十九年度与党税制改正大綱におきまして、市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てる森林環境税(仮称)の創設に向けて、平成三十年度税制改正において結論を得るとされたところでございます。

 その検討に当たりましては、委員御指摘のとおり、森林整備等を行うための財源として、既に三十七府県において実施されている住民税の超過課税、これとの関係整理が非常に重要な課題であるというふうに認識しております。

 今後、創設を検討する森林環境税の使途をどのように考えるか、あるいは、既に措置されている府県の超過課税との役割分担をどうするかなどにつきまして、納税者あるいは超過課税を実施している府県の理解が得られるよう、丁寧に説明しますとともに、十分に意見も聞きながら、検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

本村(賢)分科員 大臣、いかがでしょうか。

山本(公)国務大臣 私もこの議論にずっとかかわってまいりましたので、今回決定された大綱の方針に沿って、引き続き議論が進んでいくことを期待いたしております。

本村(賢)分科員 この森林環境税は非常に注目をされている税制でありますので、全国の知事会や、そして市町村の首長の皆さんのまた御意見、町村会の皆さんも注目されているということをよく伺っていますので、そういった皆さんの御意見をよく踏まえた上で前へと進めていただければというふうに思っておりますが、大臣、ぜひ強いリーダーシップで臨んでください。

 次の質問に入りますが、次は、今、東京都の豊洲市場の盛り土問題について、土壌汚染が問題となっております。

 私も、相模原市の綜合卸売市場というところに事務所を借りて十五年がたちました。実は、うちの市場も朝二時ぐらいからもう稼働しておりまして、そこに事務所を置いている関係で、この市場の土壌汚染問題も非常に関心が高いところであるんですが、これは全国的な注目を浴びているところであります。

 個別の土地の調査や対策に関する事務は自治事務でありますから、したがって、汚染除去等の措置の監督等は東京都が実施しているということは十分承知をしておりますが、土壌汚染対策法は環境省が所管をしている立場から、この豊洲市場の問題について、環境大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

山本(公)国務大臣 豊洲新市場の建物下部において土壌汚染対策のために実施するとされていた盛り土がなされていなかったことや、東京都が二年間にわたり実施をしてこられた地下水モニタリングにおける最新の調査において環境基準を上回るベンゼンなどが検出されたことは承知をいたしております。

 豊洲新市場の土壌汚染対策の安全性については、東京都において、専門家による科学的な検証等を実施し、適切に対処しようとされているところでございまして、環境省としては、引き続き東京都の対応を注視してまいりたいと思っております。

本村(賢)分科員 環境大臣として、例えば、東京都の小池知事に対して、この土壌の汚染問題について何か御提言されたことはありましたか。

山本(公)国務大臣 ございません。

本村(賢)分科員 ぜひまた、東京都、今、非常にこれは市場の皆さん、東京の台所でありますので、大臣も注目をして、適切な御指導をお願いしてまいりたいと思います。

 次の質問に入りますが、次は、伊方原発を含む原発政策についてお伺いしてまいりたいと思います。

 まず、大臣の原発に対するお考え、大臣の記者会見等々で伺っておりますが、改めてお伺いしたいと思います。

山本(公)国務大臣 環境大臣としては、独立性の高い三条委員会である原子力規制委員会が環境省の外局として設置をされていることから、原子力発電の将来の稼働状況について予断を与え得るような発言は差し控えさせていただきたいと思っております。

本村(賢)分科員 大臣はかねがね、閣僚になります以前から、伊方原発、発電所は稼働すべきであるという発言をされておりますし、また、そもそも原発政策に御理解があると思うんですが、いかがでしょうか。

山本(公)国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、私は、原子力発電というのは、将来はいざ知らず、現時点においては必要なものだと考えております。

本村(賢)分科員 将来はいざ知らずというのは、ちょっとこれは不適切な発言かなと思うのは、やはり、僕らが今、この今を生き抜く私たちが間違った判断をしてはいけないわけであって、未来に向かって責任ある政治判断をしていかなきゃいけないというのを御指摘していきたいと思います。

 四国電力が、昨年十二月二十六日に、伊方原発の使用済み核燃料の中間貯蔵プールが満杯に近づいてきたことから、乾方式を導入して敷地内に貯蔵施設の新設を検討すると発表されていることは御存じだと思いますが、これは大臣の御地元ですからね。中村知事から、最終的には再処理工場へ搬出すると明確にしてほしいと指摘をされておりまして、あくまで一時的な保管施設と四国電力は答えていますが、この問題についてどうお考えでしょうか。

山本(公)国務大臣 報道で見聞きした程度でございまして、ちょっとなかなか、今お答えするような知見はございません。

本村(賢)分科員 原発の防災担当大臣として、また御地元でありますので、ぜひ関心を高く持っていただいて、特に大臣は原発推進のお立場でありますので、やはり乾方式を導入して敷地内に貯蔵施設の新設を検討するという発表があったわけでありますから、ぜひ大臣として注目をしていただきたいなと思います。

 次は、これは昨年、私どもの菅元総理も質疑したようでありますが、この伊方原発の避難経路について、かつて訓練が、台風の影響で船が出港しなかったという議論をしてきたと思うんですが、大臣、そもそも、この伊方原発の避難経路はもう完成されているとお考えでしょうか。

山本(公)国務大臣 いつも申し上げますけれども、その時点においては最善の計画になるよう努めてまいりましたけれども、避難計画の整備には常に終わりや完璧はないというふうに考えておりまして、今後とも、さまざまな訓練を通じて教訓事項を得ながら改善していくものだと考えております。

本村(賢)分科員 最後にしますけれども、終わりはない、確かにそのとおりかもしれませんが、例えば、こういう、伊方原発の岬の方には約五千人の方々がお住まいになっていて、津波などが来た際には、道路の関係で、船で大分県の方へ移動されるというお話もあるわけでありまして、これは台風があろうとも、どんな状況であろうとも、やはり岬にいらっしゃる五千人の皆さんの命というのは非常に大事な命でありますので、終わりなき闘いかもしれませんが、大臣として、ぜひ避難経路を含めて、これは防災担当大臣として非常に大事なお話だと思います。川内原発もそうでありましたし、やはり避難経路がまだまだ、いま一つ再稼働に向けてできていない地域がありますので、ぜひとも、鋭意取り組みを進めていただきたいことをお願いして、きょうの質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

野中主査 これにて本村賢太郎君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野中主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小熊慎司君。

小熊分科員 民進党の小熊慎司です。

 もう間もなく、東日本大震災、また原発事故災害から六年がたとうとしております。御承知のとおり、原発事故災害はまだ継続中の災害でもありますし、そういったさなかにおいては、県内市町村、また県、県民一丸となってこの克服に努めているところでありますけれども、解決していく課題もありながら、逆にまた積み上がっていく課題もあるところであります。

 質問にはしていませんが、昨日も大変残念なニュースが流れました。小学校なんかでのいじめの問題がありましたけれども、大学までこういったことがあったということ、さらには、そういった不適切な発言をした先生が外国人講師だったということでありますので、今、国内を問わず、国外的にも風評被害が、また正しい理解が進んでいないということの一つの証左であるのかなという、大変残念なことだったなというふうに思っています。

 こういうことは、我々、党派を超えて復旧復興には当たっているところでありますけれども、こういった問題も、解決していくものもあれば、さらに起きてくることもあるということで、これはしっかりと対応を今後もしていかなければいけない、そういう思いで質問をさせていただきます。

 まず、帰還困難区域に関してですけれども、拠点も整備をされて、帰還を進めていくという段階にことしになって入っていきますが、やはり除染の問題というのは、ずっとつきまとっていく、対応していかなければいけない課題です。もちろん、科学的知見に基づく安全と地域住民の安心といったものが一致していればいいんですけれども、なかなかこれは一致していないというのも事実でありますし、一致していないからこそ、風評被害なんかもあるわけであります。

 まずは科学的根拠に立ちながら対応していくことももちろんのことではありますけれども、やはり住民の安心といったこともしっかりと念頭に置きながら対応をしていかなければ、満足のいく復興策、復旧策というのは実施できないのだろうというふうに思っています。

 そこで、まず、復興の拠点についてはインフラ整備とあわせてしっかりと整備をしていくということになっておりますけれども、そこの拠点だけでぽつんと生活をしていく、復興を果たしていくということではありません。その周辺地域もあるわけでありますし、また、動線なんかでも、そういう拠点じゃない地域を通りながらの動線を使って、生活をしていく、またいろいろな人との交流をしていく、経済活動をしていくということにもなっていきますので、しっかりと、拠点のみならず、これに目を向けていかなければならないところであります。

 そうしたところにおいては、拠点だけではなくて、しっかりと柔軟な対応をしながら、その生活実態に合わせて、また住民の、帰還住民の意思をしっかりと踏まえた上でそうした除染に対応していく必要があると思いますけれども、まずそのことに関して、対応をお伺いいたします。

山本(公)国務大臣 政府として、帰還困難区域につきましては、まずは、復興拠点から着実かつ段階的に復興再生を進めるという方針をお示ししております。

 これを踏まえまして、福島復興再生特別措置法の一部改正法案が国会に提出されたところでございまして、同法が成立した際には、環境省として必要な役割を果たしていきたいというふうに思っております。

小熊分科員 必要な役割を果たすという中に、拠点以外の、今御指摘をさせていただいた、住民の要望もあるでしょうし、拠点だけで全てが完結して生活ができるわけでもありませんし、ふるさとを取り戻したいという思いもありますので、柔軟な対応をしていただけるということでしょうか。具体的にはどういうふうに今後それを進めていくのか、お答えをいただきたいと思います。

山本(公)国務大臣 まずは、今提出されております法案が成立した暁には、私としては、まず地元と御相談をしながら、柔軟に対応していきたいと思っております。

小熊分科員 ありがとうございます。

 一つ一つ実行していくということが大事ではありますけれども、我々県民からすれば、今実現しなくても、方向性をしっかり示すということで、未来に向かっていく意欲も湧いてくるわけでありますし、希望を持てるというところもありますので。できることからしっかり積み上げていくというのも一つの誠実な対応ではありますけれども、やはり方向性をしっかり示しながら、考え方を示しながら、具体的にどう実行するかは、これは現実世界ですから急に全部やれるというわけではありませんけれども、方向性だけでも、柔軟な対応の方向性、そして、より具体的な方向性を示すことによって復興に果たす力が結集をしていける、そういうふうに私は思います。

 今の段階では、法改正に従って対応していくということは、それは誠実な対応だと思いますけれども、その先の話です。もう六年がたちました。六年がたとうとしています。そして、まだまだこれから闘い続けなければならない中で、その意欲、希望といったものを持つためには、やはり高い目標をしっかり掲げた上で、それに対して政府が方針を示していきながら、より具体的に、県民と話し合いながら政策を決めていく。その中でも、しっかりと、今決まっていないものに関しても一定の発言をしていく、方向性を示していくということが重要であるというふうに思っています。

 大臣も宇和島で、地方の方でありますから、これは環境省の人たちにも言うんですけれども、何々町に帰る拠点をつくった、ふるさとを取り戻しましょうといっても、実際に住んでいる人からすれば、その町でもないんですね。その集落に帰りたい、その地域に帰りたい。同じ町だからここに住宅整備するから、ここに移り住めばふるさとに帰ったことになるよねという感覚ではないです。東京みたいに、どこも大体同じような感じで、何丁目から何丁目に移動してくださいといっても同じだねという感覚とは違うというのは、大臣もこれはわかるというふうに思っています。

 拠点ができたから帰る人が促進されるというわけでも実はないんです。そこの町、復活させるんだから帰ったらといっても、自分の町だけれども、ふるさとと思っているところは実際はずれが生じているというのも事実で、拠点をつくって、御承知のとおり、いろいろ住民アンケートをとると、これは少ないというのはおわかりのとおりだと思います。それぞれの町が立てている、設定している帰還住民の数と現実では乖離があるというのも、大臣、御承知だというふうに思っています。

 なおかつ、帰ると言っている人たちの世代のバランスを見ると、これは高齢者が多いということで、大臣の御地元でも、限界集落を抱えているような地域、町村もあると思います。そういう意味では、本当に何千人かの、そういった高齢者の自治体を復活させるということでもあるんですね、ある意味。それは若い人に戻ってほしいという希望はあったとしても、現実はそういうことです。

 ただ、何千人、千人、二千人、三千人帰ったとしても、十年後には激減をしてしまうんじゃないかということがもう想定をされているわけでありますから、やはりこの整備に関しては、それと、若い世代の人がなぜ帰らないのか、帰るという意思を示さないのかということも含めて対応していかなければ、やったはいいけれども、新たな問題をまた抱えるということになっていきます。

 今回のこの対応は、実際は、解決ではなくて、また新たな課題を背負う一つの道筋だというふうにも私も思っています。これで解決するものもありますよ、全くゼロでは、ないとは言いませんが、さらに問題を抱えるということになるんです。

 でも、それにきちっと対応していくことが真の復興につながってくると言っても過言ではありませんから。これがゴールではなくて、スタートラインにやっと立った、そしてさらに新たな課題を解決していかなければいけないというやはり意識に立たなければ、帰還住民また福島県民の思いを背負うということにはなっていきませんので、今ほど、柔軟な対応をしていくと、これはもう抽象的な言葉ではありますが、より具体的なものをしっかりと打ち出していかなければならないというふうに思います。

 しかも、何年も先じゃないです。帰還が始まる、そして、始まったと同時に課題を抱えるわけですから。柔軟な対応と言っていただきましたが、なるべく早い時期に、できれば本当は年内と言いたいんですが、その柔軟な対応に対しても一定程度の具体的な方向性を出す、そういった考え方は、大臣、おありですか。

山本(公)国務大臣 私どもが今福島県内でやっている役割というのは除染でございます。ただ、除染をすることによって、今先生から御指摘のあったような、いわゆるふるさとの復興というのがあるんだろうというふうに思っておりますから、まずは法改正をさせていただいて、法改正成立後において、やはり一番大事なことは御地元の皆さん方の御意見だろうというふうに思っております。その皆さん方と相談をしながら、環境省の役割を果たしていきたいというふうに思っております。

小熊分科員 ぜひその方向でお願いしたいんですが、相談といっても、もう六年たっていて、実際、要望とか思いというのはもう出ていますし、あと帰ってみてまた新たな要望も出てきますけれども、大筋のことはもう出ているんですね。

 あとは、逆に、丁寧に聞きながらしっかり進めていくということも順次必要なんですけれども、もう既に上がっている要望、その中でも、拠点以外の農地とか道路とか公共施設、やってほしいというのが出ているわけです、地元の要望として。この点については、今要望が出たわけじゃなくて、以前から出ています。今回の拠点整備で外れた、そういう農地や道路や公共施設といったものに対してはどうしていくおつもりですか。

山本(公)国務大臣 繰り返しになりますけれども、まずは復興拠点で作業を進めていきたいというふうに思っております。

 先生が御指摘のようなお話は当然出てくるだろうというふうに思っておりますので、そこは、私どもとしましては、柔軟に、御地元と相談しながら対応できればというふうに思っております。

小熊分科員 これは非常にとめどない話になってくるんですね。

 先ほど言ったように、安全であっても安心が得られないとなれば、やはり除染してほしい。森林の除染もそうです。今いろいろ、何メーターとかとやってもらっていますけれども、多くの人が言っているのは、これはやはり、科学的にはそれはないという発言もありましたけれども、山からおりてきちゃうんじゃないか、目に見えているわけですから。まして、山に入っていろいろな山のものをとったり、自然を楽しんだりということで、住んではいないけれども、我々は山を利活用してきました。

 となれば、山全体の除染をやってほしいという思いも私は当然のことだというふうに思いますけれども、森林除染に関しては、住民の満足のいく対応がまだ示されていないというのも事実でありますし、帰る人だって、毎日山を見ていて、ここは除染していないと思ったら、それは気分的によくないんです。でも、実際、山まで全部除染をするとなれば、膨大な予算もかかります。

 そこで、私は、帰還というのも念頭に入れながらも、本来的には、一定程度の長期移住を促進するということが、それは賛成、反対もあるんですけれども、でも、より多くの被災者はそっちの方が救われる、時間を無駄にしない、限られた予算の中で復興。

 まずは、実は、地域の復興よりも先に立たなきゃいけないのは人間の復興ですよ。その人の人生をしっかりやり直せるようにしていくということが先に立つということであれば、本来的には、長期移住ということも、本当は政策として、政治として具体的に考えていかなきゃいけない分野がまだ、私は、もう六年たっていますけれども、まだこれは残されていて、その選択肢は検討すべき、値するというふうに思っています。ちょっと脱線しましたけれども。

 除染については線量の二十ミリ以下が解除の要件にはなっているんですけれども、専門家の間でもいろいろな意見がありますが、一ミリという数字がもう出ていますから、この一ミリというものに近づけて、以下になっていってほしいというのが多くの県民のまた意思でもあるんですね。二十ミリ以下でちゃんと暮らせば大丈夫ですよという意見を専門家が言っているのも、私もわかるところではありますが、その科学的な考え方の理解の仕方の云々ではなくて、住民としては、二十ミリ以下ではなくて一ミリ以下のところで生活をしたい、一ミリ以下でなければ、あの福島の空を、土地を取り戻したことにはならないという意識です。

 そうした思いに対して、これは先ほど言った、住民の要望、また相談しながら被災者の思いに応えていくと言っている以上、この一ミリ以下にしてほしいという思いに対してどう応えるかというのが重要になってきます。科学的には二十ミリ以下で解除しますよというのも、それは一つの答えではあるんですが、住民の要望に応えていく、町の要望に応えていく、村の要望に応えていくと言っている以上、この一ミリ以下にしてほしいという願いに対してどう対応していくのか。これをしっかり打ち出さなきゃいけないと思っているんですけれども、この点についてはどうでしょうか。

山本(公)国務大臣 政府としては、除染のみならず、モニタリングや食品の安全管理、リスクコミュニケーション等の施策を通じまして、住民の方々が生活する中で、個人が受ける追加被曝線量を、長期目標として年間一ミリシーベルト以下になることをこれからも目指してまいりたいというふうに思っております。

 今後も、年間追加被曝線量一ミリシーベルトという長期目標の達成に向けまして、政府一丸となって除染等の対策を実施し、福島を初めとする被災地の復興のために全力を尽くしてまいりたいと思います。

小熊分科員 ぜひ今後、大臣において、環境省を含め、留意してほしいのは、二十ミリ以下で解除をします、一ミリ以下を目指しますといって、ここのギャップがあるわけです。帰ってもいいですよと言いながらも、一ミリも目指しているんだけれども、このギャップがありますから、ここは丁寧に対応していかなきゃいけないというふうに思いますし、だから、よくよく考えると、森林の除染までしてほしいという意見が出てくるわけです、一ミリのためには、となってきます。

 そうした意味においては、私はだから、これは党の見解ではありませんが、一定程度の地域は長期移住を促進していくということが、これは時間をかけずにその人の人生を取り戻すという一つの方向性だというふうにも思っています。

 帰すということだけが全てではないというふうに思いますし、住民の意識もそれぞれです。帰りたい人、帰らないと決めている人、どちらか決めかねている人。でも、大臣は地方の人だからわかるとおり、決めかねている人は帰らないんですよ。帰ると言っている人におもんぱかってイエスもノーも言っていないというのも、これは田舎の人の人情ですよ。やはりどこかで背中を押さなきゃいけない、なるべく早い方がいい、そういうふうに思います。

 きょうは時間がありませんので、この点についてはこれ以上議論はしませんけれども、解除して帰すということを進めながらも、ぜひ大臣、個人的にでも、それが本当の全ての復興なのか、人間の復興というのは何なのかということを考えて、いろいろなことを検討していただきたい。その中に、実は帰すと全く真逆の選択肢も検討していただきたいというふうに思っています。大事なのは人間の復興です。ぜひともその点についてもしっかりと検討していただきたいというふうに思っています。

 次に移りますけれども、今週月曜日、我が党のエネルギー環境調査会で現地視察をしてまいりました。岡山県の真庭市に行ってきまして、林業の活性化、またCLTの普及促進といった、またバイオマスについて、多岐にわたって調査をしてまいりました。

 CLTに関しては、復興にも使われるということでありますが、まだ始まったばかりのところもありますので、この普及促進についてはしっかりと支えていく、支援をしていかなければいけないというふうに思います。

 また、きのう、たまたま地元の方とお話ししたんですけれども、CLT、真庭には行きましたが、これは製造側の話でした。使う側の建設、建築関係の話は聞かなかったんですけれども、やはりそこの意識の差もあったりして、エンドユーザー的には家を買う人が値段が安ければいいんですけれども、コストの面で製造側が大きくなるのか、施工側が大きいのか少ないのかで、やはりこの普及の度合いが違う。買う方からすれば値段が一緒でも、この比率が変われば、製造側は、PCよりは高い、でも工期が短くなるから家の値段は変わらないんだと。買う方からすればそれでオーケーなんですけれども、施工業者からすると、それでは困るよねみたいな話になってきます。

 そういった点も含めて、普及促進をやっていく上では、今取り組んではいますけれども、どのようにまたさらに進めていくおつもりか、考えをお聞きいたします。

細田大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 CLT、クロス・ラミネーテッド・ティンバー、直交集成板と訳しておりますが、これは、先生今御指摘になったとおり、中高層建築物等にも利用可能な新たな木質部材でありまして、本格的な利用期を迎えた国産材の新たな利用先として大いに期待されているというふうに私どもも認識しております。

 ただ、まだ初期段階でございますので、昨年四月に、国土交通省において建築基準法に基づく一般的な設計法等の告示が施行されたところでございますが、まず、利用の促進に当たっては、需要の掘り起こしと、また、先生から御指摘のあったような、円滑な生産、供給をこれから進めていくということが課題になるというふうに考えております。

 政府といたしましては、二方面作戦といいますか、まず需要面の対策といたしましては、CLT関係省庁連絡会議というものを設置いたしまして、ここで、各省庁が所掌する公共建築物等におけるCLT需要の掘り起こしを政府一体となって行った上で、CLTを用いた先駆的な建築に係る費用への支援などに取り組んでいるところでございます。

 また、もう一つの方向、生産面の対策といたしましては、CLTを効率的に製造する施設の整備に対する支援を行うとともに、また、その耐火性能の向上や、あるいは低コスト生産のための技術開発の推進に取り組んでいるところでございます。

 いずれにいたしましても、農林水産省も、関係省庁と連携して、CLTの利用促進に向けた取り組みを引き続き行っていく所存でございます。

小熊分科員 これはやはり、もうからなきゃだめなんですね。支援策を幾らやっても、もうからなければみんな手をつけない。

 真庭に行っても言われましたけれども、いろいろな法律の背景が多少は違いますけれども、同じ先進国のオーストリアは、もうかる林業になっているわけでありますよ。そのまま同じことをやれるわけではないんですが、成功事例がある。山はもうかっている、しかも、山の所有者にお金も落ちる。

 今、山なんか二束三文と言われているのが日本の現状です。外材も多くなってしまっている。国産材をしっかり活用していくという意味では、このCLTが一つの大きな切り口になってくると思いますし、そこでは、やはりもうかるという仕組みをしっかりつくっていくことが、それさえできれば、乱暴な言い方をしますけれども、普及していくんですよ。もうかるか、もうからないかというのが大きなやはり柱になってくるというふうに思います。そういう意味では、成功事例の国もありますので、そういったことを含めながら、もうかる林業。

 やはり、山で仕事ができるからこそ、都会に出ていく若者も、また地元で、山奥で企業誘致といったって無理なのは、先生も新潟ですから御承知のとおりで、なかなかそれは現実的じゃない。でも、山そのものが仕事になる、雇用として、収入としても安定しているというのを示せば、これは人口対策にもなってくるというわけでありますし、活用できる森林面積でいえば、日本は世界有数の国でもあります。資源のない国ではないんです。ということであれば、しっかりとこれを捉えていく。

 その中で、ぜひちょっと御検討、これは多分国交省とやっていただかなければいけないんですが、政務官御承知のとおり、日本のCLTは、同じセンチで、三センチ、三センチをこう重ねていくんですけれども、ヨーロッパは、外側は厚く、中は薄い材を張り合わせているわけですよね。強度に問題はないんです。この利点は端材が出にくいということです。木をより一層有効、三センチ以下のものでも真ん中に入れられるわけですから。日本の場合は、三センチ以下になったら端材になっちゃうわけですね。

 強度に問題がないのであれば、また、森林の有効活用、木の有効活用、無駄をなるべく少なくしていくということであれば、この基準を変えていくことの検討をしていかなきゃいけないというふうに思っています。これは関係省庁と、まさにCLTの普及のためにも、そしてまた日本の国産材の有効活用という点についても、これはちょっと検討していただきたいんですけれども、この点についてはどうでしょう。

細田大臣政務官 ありがとうございます。

 私は専門家ではないので、そこの部分についてはまた勉強させていただきたいと思いますし、先生が今お話しいただいた点は一つの問題提起として受けとめさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、今先生からお話があったとおり、今初期段階にございますけれども、いわゆる民間事業者の方が自主的に生産をし、また普及が行われて、それが幅広く使われるということが民間のマーケットベースで行われるようになることが最も重要だろうというふうに考えております。

 その点につきまして、恐らく、今規格の問題もございましたが、必要な強度あるいは耐火性能等を確保するという観点からまた検討が行われるというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、そういう民間の事業者の方がもうかるように、あるいは創意工夫ができるだけ生かされるようなルールづくりという観点に沿って、一つの問題提起として受けとめさせていただきたいというふうに思っております。

小熊分科員 これは現場からの声でもありましたし、CLTでもしっかり先進的に走っている国もあるわけで、そうした事例、いや、その国の全くまねをしなくても、日本は何でこの方式をとっているのか、この基準なのかというのをしっかりと説明していかなければいけないというふうに思いますので、ぜひ幅広く検討しながら、日本としての普及促進のための制度、仕組みを、ぜひ早急にこれは取り組んでいただきたいというふうに思いますし、人口問題の解決のためにも、山はもうかる、山に仕事があるということが重要だと思う。

 それで、国有林の話をちょっと最後にしますけれども、これは根拠があるかどうかわかりませんが、西日本は国有林が少ないです。日本全体が山国ですよ。東北、北海道は国有林が多い。昔は山が一財産でありましたから、これを民間にどんどん払い下げていったわけでありますが、これはやはり戊辰戦争の影響なのか、東軍側にはなかなか払い下げが進まなかった、財産を持って力をつけさせないという明治政府に狙いがあったのではないかというのが私の一つの推測ではありますが、現状、西高東低みたいになっています。

 でも、国有林の中で、製材されているものはあります。ざっくり、日本の流通している国産材の三割が国有林から出ています。林業の活性化、これは民間の活力もあるんですけれども、私有林もしっかりやっていく、支援をしていくというのはありますが、国有林をどう利活用していくか。そして、さらには、日本の中での東と西の違いがある中で、均衡ある森林整備と利活用をどうしていくかということをしっかり考慮に入れなきゃいけないと思います。

 林野庁のホームページに日本全体で何割ですとかと出ているんですが、この地域格差のことは余り触れていなくて、国有林をどうするって、西日本の、岡山は一割しかないと言っています。こっちの方が三割、四割あるわけです。意味合いが違う。

 あとは、今、政務官のところもそうですけれども、鳥獣害の被害があって、人口密度は減るけれども、熊密度が上がっている。お前は小熊だから何とかしろと怒られるんですけれども、私自身が小熊だけでどうしようもないんですが、でも、これは山が荒れているから出てきているという部分もあります。そうした意味では、別に鳥獣まで国の所有ではないんですが、やはり国有林の管理不行き届きでなっているという意識も必要だと思います。

 そういう意味で、国有林の利活用、製材も含め、山の整備も含め、どのように新たな対応、これまでじゃないです、今後どうしていくか。

細田大臣政務官 ありがとうございます。

 確かに先生御指摘のとおり、国有林の所在につきましては偏在があるというのは事実でございますが、いずれにいたしましても、国有林野はそれぞれの地域における重要な資源でもありまして、地域の振興、活性化に寄与していくことが国有林野事業の重要な使命であるというふうに私どもは考えております。

 そのために、例えば、森林整備等の事業発注や木材の安定的な供給、あるいは、伐採、造林の一貫作業など新たな技術の実証と民有林への普及、あるいは、今御指摘ありました、民有林等の関係者と連携した鳥獣被害対策への対応、あるいは、地域の観光資源としての国有林野の活用など、地域の実情に即した取り組みを、まさに地域の方々の意見も主体的に聞きながら行うということが重要であると思っております。

 今後とも、このような取り組みを推進することにより、国有林野を利用して地域の発展に貢献してまいりたいというふうに考えております。

小熊分科員 では、時間ですから終わりますけれども、ぜひ、偏在しているという中で、山を有効活用していく、山で仕事をつくっていく、これが大事だということを言っていただきましたから、ただ、それの割合が違うので、より国有林の多いところは国の責任でありますから、山を有効活用、利活用していく、自然を守っていく、そして人々の生活を豊かにしていくという意識は、より国有林の多いところは国の守備範囲として高い意識で取り組んでいただきたいというふうにお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

野中主査 これにて小熊慎司君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、化学物質過敏症について、山本環境大臣初め各省庁に質問させていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 化学物質過敏症、CS、あるいは多種類化学物質過敏症、MCSは、通常では問題にならないような低濃度の化学物質に過敏に反応して、頭痛、目まい、気分不良、倦怠感、脱力、体の痛み、腹痛、下痢、うつ症状、集中力低下、記銘力障害など多臓器の症状を繰り返し起こし、重症化すると、日常生活はおろか仕事や学業など社会的活動が困難になるとされています。

 原因物質は人によってさまざまで、また、複数持っている方も多くいらっしゃいます。重症な場合は自宅から一歩も出られない、何度も転居を余儀なくされるなど課題も多く、各省庁にまたがると思っています。

 そこで、まず大臣、化学物質過敏症についての認識と、現状、環境省が取り組んでいることをお伺いします。

山本(公)国務大臣 いわゆる化学物質過敏症については、その病態及び発症メカニズムについて未解明な部分が多く、医学的に確立された定義や診断基準が存在していないものと認識いたしております。

 このため、環境省では、環境を経由する化学物質過敏症を中心に、国内外の調査研究等に関する知見の収集を進めてきたところでございます。

高橋(千)分科員 今のメカニズムが不明でまだというところ、何年もこの状態にとどまっているんです。それで、研究を重ねてきてくださった。私は、きょうは、それをもっと前に進めたい、そういう思いで質問させていただきます。

 まず、CSは、既にレセプトに記載できる病名リストには登録されていると承知をしています。厚労省に伺いますが、医療保険ではどのような扱いになっているでしょうか。また、専門外来などはどの程度あると承知をしているか、お願いします。

谷内政府参考人 まず、私の方から保険適用の質問についてお答えいたします。

 化学物質過敏症の症状といたしまして、痛み、かゆみなどの症状が患者にあり、それに対して行われました治療について医学的に妥当性が認められる場合、医療保険が適用されることになります。

橋本政府参考人 それでは、専門外来の数についてのお尋ねがございましたので、私の方からお答えさせていただきます。

 いわゆる化学物質過敏症は、多様な症状を示すけれども、その病態は不明な点が多いという状況でございます。

 専門外来というお尋ねでございますが、これは、疾患に対して専門的に医学的な相談や治療を行う外来の医療機関、そのように認識をいたしますが、化学物質過敏症の場合、病態が不明な点が多うございまして、診断基準も確立されていない、そういう状況でございますので、そのような中で、化学物質過敏症を専門的に治療する専門外来の数、これを把握することは現時点では困難でございます。

高橋(千)分科員 言ってみれば、治療は対症療法ですよね。そのとき痛ければ痛みどめとか、かゆみにはかゆみどめとか、そうしたものに対して診療報酬は出ているという趣旨だったと思うのと、診断基準が確立をしていないので、専門外来は把握をしていないと。私は、これは把握してほしいという立場で今聞いております。

 専門外来の先駆けは、北里研究所病院に臨床環境医学センターが設置されたことから始まっているのかなと思っております。その後は、国立病院のアレルギー科を有する病院が数カ所、専門外来を設けられたと承知しています。

 国立病院機構盛岡病院には、二〇〇二年十二月に化学物質過敏症外来が設置され、二〇一六年三月の時点で初診患者は五百名を超え、通院継続患者は約二百名といいます。東北各県はもとより、関東、関西、北海道、四国と、全国から集まっているんです。

 この専門病院、盛岡病院の専門医である水城まさみ医師は、CSが保険診療となっていないために不採算部門であること、だから外来を広げることができないわけですね。専門医が非常に少ないこと、疾患に対する社会的認知度が低い、そして、医学、看護教育の中でも取り上げられる機会が少ないと具体的な課題を示しております。

 ただ、こうした貴重なデータを重ねている専門外来はあるわけですから、厚労省としても、全容をつかみ、実態把握をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

橋本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、いわゆる化学物質過敏症は、多様な症状を示しますけれども、その病態については不明な点が多うございます。

 私ども厚労省といたしましても、化学物質過敏症の治療に取り組んでいる医療機関があるということは承知しておりますし、インターネットで見ましたところでは、先ほど先生が名前を挙げられたような医療機関などもそういった治療に取り組んでいるということが実態としてうかがえるところでございます。

 ただ、そもそも、化学物質過敏症、病態が不明な点が多うございまして、確立した診断基準も治療法も存在しないということでございますので、いわゆる各専門外来の実態の把握をするのは、繰り返しになりますが、現時点では困難というふうに言わざるを得ないと思います。

高橋(千)分科員 診断基準が不明だと。不明だからこそ、把握しなかったら、今現実に起こっている患者さんがどういう症状なのか、あるいはどんな治療、確立していない中でどんなことをやっているのか聞かなきゃいけないじゃないですか。でなかったら前に進まないんです。

 これは、やりとりをしたときに、どこも、うちじゃない、うちじゃないみたいな議論になるわけなんです。そのときに、そんなに要望がないですからと言われました。そこが問題なんですよ。なぜかというと、最初に言ったように、この病気が外に出ていけない病気だから。だから、誰からも要望がないですよと、それで済まないわけです。

 現実に起こっている、そして治療している方がいる、そのことを、今、インターネットでも調べましたと言ったんですから、注目していただける、そのくらいお答えいただけますか。

橋本政府参考人 委員おっしゃいましたように、患者の方々が、日々の暮らしの中でいろいろな御苦労をされているということは私どもとしても承知いたしております。

 私どもとしても、可能な範囲でいろいろな知見を収集してまいりたいと思っております。

高橋(千)分科員 それで、資料の一枚目を見ていただきたいと思います。

 これは、いわてCSの会が昨年行ったアンケートであります。これは、残念ながら全部読む時間がないので、大臣もぜひ見ていただきたいと思うんですね。

 どんなことに今困っているのか、普通に暮らしている我々が気づかないことがいっぱいあるわけですよね。買い物に行くことが困難だったり、介護をすることが、逆にいろいろな、洗剤ですとかそういうものに触れなきゃいけない、そういうことが困難であるとか、あるいは選挙に行くこと自体ができないんだとか、そういうことが書いてあります。

 それで、このアンケートを見ますと、実は、四十代、五十代になってから、つまり働き盛り、その最中に発症している方が結構多いんです。そして、グラフにもしてみましたが、自宅にいてもつらい、反応が強く外出や他人と会うことがつらい、就労、通学が難しいなど、外に出ることができない方が合わせて八四%にも上るんです。

 日常生活の妨げになっているものは、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、あるいは合成洗剤、柔軟剤、化粧品、アロマ、芳香剤、たばこ、ワックスなど。日常生活にあるありふれたものが、患者さんにとってはまさに毒であったり苦痛の源である。それを知ってもらうことが、まず最初の出発点だと思うし、負担がそれだけでも軽減されるんです。

 アンケートの中で、認知、広まったという声も結構ありました。例えば、現在五十八歳の方が発症したのは十歳だった。当時は専門医もなく、病院で検査を受けても異常なしと言われ、父親からは、怠け者と言われて、びしっと平手打ちをされた。でも、今は、親御さんに付き添われて外来に来る方を見て、別世界になったな、こう言っているんです。ほかにも、CSのことを町の人に知ってもらえた。隣の人にCSの情報を渡したら、理解してもらって、殺虫剤の使用をしないようにしてもらった、こういう声が上がっております。

 そこで、内閣府に伺います。

 障害者差別解消法が昨年四月に施行されました。基本方針には、対象となる障害者は、障害者基本法第二条第一号に規定する障害者、すなわち、身体、知的、精神、発達障害を含む、その他の心身の機能の障害がある者とし、それだけではなくて、社会におけるさまざまな障壁と相対することによって生ずるもの、いわゆる社会モデルの考え方を踏まえていると明記をされています。

 この考え方に立てば、当然、化学物質過敏症の方も対象となると考えてよいでしょうか。

小野田政府参考人 お答えいたします。

 障害者差別解消法では、同法で規定する障害者につきまして、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害を含みますが、その他の心身の機能の障害がある者であって、「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と定義してございます。

 化学物質過敏症の方につきましても、それを原因とする心身の機能の障害が生じており、かつ、当該障害及び社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあると認められる場合は、障害者差別解消法で定める障害者の対象になり得ると解してございます。

高橋(千)分科員 確認をいたしました。

 そこで、強く要望されているのが、災害時の避難なんですね。例えば、熊本地震で被災したCS患者さんは、家はどうにか残ったものの、避難する場所もなく、町じゅうが工事で空気が悪く、修理もできない、お手上げと訴えています。避難所に入れないのが共通の悩みなんです。

 そこで、もう一度内閣府に伺いますが、二〇一四年の災害対策基本法の改正で、避難行動要支援者名簿を活用することになりました。ここにも、「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」とある。その他の部分は市町村に任せられていると承知をしています。

 ということは、化学物質過敏症も参照例示するなどして、避難支援をするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年六月の災害対策基本法の改正によりまして、避難行動要支援者名簿の作成が市町村に義務づけとなってまいりました。

 この避難行動要支援者につきましては、この法律におきまして、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者のうち、「災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの」とされており、具体的には、名簿を作成する市町村において判断することになっております。

 その判断に当たりましては、情報の取得能力、避難の判断能力、身体能力に着目することが想定されておりますけれども、内閣府におきましては取り組み指針を作成しておりまして、その中で、真に支援が必要な方が対象から漏れないようにするため、きめ細かく要件を設けるように求めており、要件から漏れた者がみずから避難行動要支援者名簿への掲載を求めることができる仕組みについても例示をいたしております。

 いわゆる化学物質過敏症の方かどうかに限らず、災害時に真に避難支援を必要とする方が避難支援を受けられることが大事でございますので、そのために指針の周知などを通じまして、取り組みの促進を図ってまいりたいと考えております。

高橋(千)分科員 消防庁の昨年十二月に発表した調査によりますと、名簿を作成した千四百六十市町村のうち、その他で採用しているのが六一・八%、みずから掲載を希望した方が六〇・五%ということで、今答弁にあった、みずから手を挙げているという方も採用されているということで、大いにこういう事例があることを奨励していただきたいなと思います。

 それで、昨年四月に改定した避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針には、要配慮者に対する支援体制としてのスペースあるいは個室の確保ですとか、在宅避難の方に対する安否確認なども明記をしております。こうした中にも、やはり避難所に行けない、そういう過敏症の方がいるということも考慮すべきだと思うんですね。

 ここで提案なんですが、例えば、熊本地震で注目されたトレーラーハウスを活用してクリーンルームをつくるなど、研究すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 避難生活におきまして、特別な配慮を必要とする高齢者、障害者等の方々にとってできる限り負担が少ない環境を整えるために、福祉避難所の確保を図ることが重要と考えております。

 要配慮者に対しましては、あらかじめ指定されました福祉避難所のほか、旅館やホテルを福祉避難所として活用することを可能といたしておりまして、熊本地震では、旅館やホテルのほか、益城町におきまして、トレーラーハウスを福祉避難所として活用された、そういったふうな事例もございます。

 化学物質過敏症と診断されている方を含めまして、健康上の理由から一般の避難所での生活に支障がある場合につきましては、被災自治体が適当と判断する方法によりまして福祉避難所を確保し、滞在していただくことが適切と考えております。

高橋(千)分科員 ですから、私がこれという確定的な言い方はもちろんできない、それぞれ自治体が工夫をする必要があると思うし、福祉避難所が、例えば、そのパターンの一つとしてクリーンルーム、空気清浄機ですとか特別な装置を備えたものを別個、トレーラーハウスとして用意するですとか、そういういろいろな応用はあり得ますねということを聞いているんです。一言だけ、イエスかノーかで。

緒方政府参考人 被災地、いろいろと制約が多い中ではございますけれども、要配慮者の方々にできる限り負担の少ない環境を早期に提供させていただくことが大切というふうに考えております。その観点で、時々の状況に応じまして、被災自治体と連携いたしまして適切に対応していきたいと考えております。

高橋(千)分科員 ぜひお願いいたします。

 そこで、今度は厚労省に伺うんですが、難病でもなく、障害者でもなく、理解されにくいために苦しんでいます。

 先ほど紹介したアンケートの中に、こんな言葉がありました。発症して一年三カ月が過ぎました。昨年の日記を見ると、毎日のように、息苦しさや胸部痛、就寝中の汗などで大変な日々でした。ことしはどうなるかという不安で、その日を迎える毎日です。

 問題は、こうした患者に、うつ症状があるとして、向精神薬が投与されている例が多いわけです。同じアンケートによると、十九名中十一名が投薬を受け、症状が改善したとする方は四名、そのうち三名が不眠、こういう例が多いと思うんですが、他の症状も出たなど、投薬で悪化した方は一名、ほかに九名が薬を減らしていました。

 こんな方がいます。アレルギー科に、シックハウス症候群ではないでしょうかと尋ねたら、そんなことを言うなら私は診ません、精神科へ行ってくださいと言われた。結局、精神科に行くと薬は出たんです。でも、これでいいんでしょうか。

 不眠やパニック障害などの症状があっても、でも、その原因物質があるかもしれない、それによる行動や生活の制限や孤独や経済的困難など、要因があるんだということをしっかり見て、向精神薬に頼った治療にならないようにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

馬場大臣政務官 お答えします。

 一般に、患者の治療に対しましては、その病態や患者の置かれている状況を考慮した上で適切に行われることが必要であると認識しております。

 化学物質過敏症の患者につきましては、議員御指摘のとおり、患者の状況によって向精神薬の処方が適切な場合もあれば、適切でない場合もあるというふうに考えます。化学物質過敏症は病態もさまざまであることから、より一層、患者の病状や病態を適切に確認して治療に当たる環境が実現できるよう目指してまいりたいと存じます。

高橋(千)分科員 ありがとうございます。

 適切でない場合もあるとおっしゃっていただきました。

 実は、環境省の委託研究の中で、やはり、ずっと調べてくださっているのはありがたいんですが、精神疾患との関連性が強く指摘されていて、八七%だと。

 確かに症状はそうなんです。だけれども、どこに原因があるのかということをちゃんと見ないと、やはり、今言ったように適切でないことになるわけですよね。なので、さっき紹介した国立盛岡病院の水城医師は、やはり、そういう症状に対してCSに理解のある心療内科や精神科医の介入が功を奏することがあると述べているということも重要だと思います。ぜひ、専門家を育ててほしいし、これは、環境、厚労両方に要望したいと思います。

 そこで、簡単にお答えください。

 障害年金は、傷病名にかかわらず、状態に応じて給付が決定されます。化学物質過敏症患者でも状態によっては受給できる、そういうことがあると思いますが、確認させてください。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 障害年金は、病気やけがによって一定の障害の状態になり、生活や仕事などが制限されるようになった場合に給付されることとなっております。

 御指摘の化学物質過敏症の方も、その障害の状態によって日常生活が著しい制限を受けるなどの状態にあると認められ、障害年金の等級表に定める障害の状態に該当する場合には年金が支給されることとなります。

高橋(千)分科員 ありがとうございます。

 大変な中でも、しかし、助けになる制度はあるんだということで、一つ一つ確認をしてまいりました。

 もう一つ、資料の二枚目につけてあるんですけれども、生活保護の住宅扶助基準が昨年七月、冬季加算は昨年十一月から引き下げになりました。しかし、実施要領によりまして、これはその一部をつけていますけれども、傷病、障害等による療養のために外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ない者または乳児が世帯員にいることが確認できれば、地区別冬季加算額の一・三倍の額を認定して差し支えないとあります。この資料はQアンドAであって、差し支えないという答えが書いてあるのをつけておきました。

 やはり、さっきから言っているように、外出困難な方が、外に出ることで反応してしまうということで出られないでいる方、そういう方も当てはまると思いますが、いかがでしょうか。

中井川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの御指摘の特別基準につきましては、常時在宅せざるを得ないことにより暖房使用時間が特に長くなるような事情がある場合に認定できるということになってございまして、今委員御指摘のとおり、具体的には、重度の障害者や要介護者のほか、医師の診断書等により、傷病、障害等による療養のため外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ない状態であると保護の実施機関が認めた者としており、これに該当するかどうかは、一義的には実施機関の個別の判断によるということになります。

高橋(千)分科員 ですから、確認をしただけですので、今言ったように、外に出ることによって反応してしまうから、出られないでずっといる方たちがいるんです。

 当然、特に岩手などは非常に暖房費もかかる地域でもありますし、それで、現実に、診断書をもらって、冬季加算を一・三倍いただいた方もいらっしゃいます。でも、ほとんどが知られておりません。ですから、こういう場合があるんだということを知らせていくことは大事だなと思って質問させていただきました。

 こうした場合もあり得るということで、確認させてください。一言、はいとお願いします。

中井川政府参考人 今申し上げましたとおり、傷病等のため外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ないということにつきまして、医学的知見に基づいて、診断書に基づいて実施機関が個別に判断すれば、御指摘のとおりでございます。

高橋(千)分科員 ありがとうございます。

 それで、こうして今患者の会のアンケートや寄せられた声をもとに質問を進めてきたんですけれども、驚くことに、二〇〇五年には、日弁連が化学物質過敏症に関する提言を発表しておりました。保険適用の問題から、きょうは時間の関係で取り上げていないんですが、学校での対応の問題、あるいは、空気のいいところに住まなきゃいけない、だけれども、行った先でまた何か起こるということで、引っ越しを転々とする方もたくさんいらっしゃいます。そうしたことで、転地療養に対する支援ですとか、今読んでも極めて新しいことを提言しているんですね。でも、言いかえれば、十二年たってほとんど進展していないということになるのかなと思うんです。

 そこで、山本大臣に、今まで聞いていただいたんですけれども、要望を込めて質問をいたします。

 まず、化学物質過敏症という患者がいることを認識するということが一つ。そして、述べてきたように、専門外来は少なく、まだまだ広く社会的には認知はされていません。あるいは、名前は知っているけれども、理解が広がっているとは言えません。相談の窓口をまずつくっていただきたい。当然、多くの省庁にまたがりますので、それは連携、そのためにも窓口が必要だ。関係する法令もさまざまです。そういう立場で、窓口をつくって、環境省がそのまとめをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

山本(公)国務大臣 いわゆる化学物質過敏症については、その発症メカニズムについて未解明な部分が多く、また、化学物質の暴露経路は一般環境経由に限らず、さまざまなルートが存在するものと考えられます。

 こうした状況の中で、一元的な窓口を設けることは困難でありますけれども、環境省としては、御相談を受けた際に必要に応じて関係府省と情報の共有を図るなど、可能な範囲で連携をとりながら対応してまいりたいと思っております。

 きょうは高橋先生の御質問を伺いながら、化学物質過敏症、大変深刻な状況になっているなということを感じました。

高橋(千)分科員 ありがとうございました。

 ぜひ、これを踏まえて連携を、まず必要だということを認識していただいたので、お願いをしたいと思います。

 それで、最後に、もう時間がないので言い切りにしますけれども、化審法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、五年目の改正が今国会に付されると聞いております。

 資料の三枚目につけておきましたが、二〇二〇年までに、化学物質による人の健康、そして環境への影響を最小化しようというヨハネスブルク・サミットで合意された内容の達成を目指していると言います。だけれども、二〇二〇年は目の前なんですが、資料をつけておいたように、新規化学物質の製造、輸入はふえています。また、事前審査の特例である少量新規化学物質の製造、輸入について、今までは総量規制で国内一トンだったものを各社一トンに緩和するという議論がされております。そのことによって、経産省的にいいますと、経済規模が二千七百九十億円だから、利益が八百六十一億円も損失している、こういうことを言っているわけなんです。国際競争に勝てない。

 だけれども、一方では、こうしたまだ標準医療にもたどり着けない方が七十万、百万人、もっといるかもしれないと言われている現実をちゃんと見なければ、この法律は環境省共管でございますので、厚労省も共管でございます。ですから、人の健康や環境を犠牲にした成長ではいけないと思いますから、やはり環境省は規制の側ですから、リスクを最小にするためにこそ努力をしていただきたい、このことを強く要望して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野中主査 これにて高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

野中主査 次に、農林水産省所管について、引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。足立康史君。

足立分科員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは、予算委員会の分科会ということで、山本大臣初め、ぜひまたよろしくお願いいたします。

 ふだんなかなか、農水分野を質問させていただくことはほとんどないわけですが、今回私は、食の安心、安全というか、特に東京都で小池都知事が取り組んでおられる築地市場、豊洲市場の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 きょうは農水省の井上局長においでをいただいております。ありがとうございます。役所時代に大変お世話になっていまして、先輩がいらっしゃるということを、この豊洲の問題を扱う最初のうちはちょっと頭に入っていなくて、あっ、井上局長だと思って、改めて頼りにしているところであります。

 いずれにせよ、冒頭、きょうは、そういう意味では私は本当に東京のことを今ちょっと心配していまして、だから、できるだけ事実関係を、東京都の話を国に聞くというのもこれはおかしな話だと思うんですが、ただ、豊洲市場の問題というのは私はこういうふうに理解しています。国の法律がまずベースにあって、例えば環境省の土壌汚染対策法とか、それから農水省が卸売市場法で認可をする、そういう意味では、ベースに国の法律があって、その上に東京都の上乗せの基準、これが基準と言っていいものかどうかよくわからない、これはきょうの議論なんですけれども。

 それから、私は、三階部分がまだあると思っていまして、一階が国の法律、二階が東京都の取り組み、三階は風評なんですよ、風評。ある種、マスコミも含めていろいろな形で拡大をしている過剰期待みたいなものが東京都民の皆様あるいは国民の皆様にあって、私は、期待をいただくこと自体は、それ自体が悪いことではないんですが、ひとりこの環境の問題について言えば、過剰期待というのは、いわゆるゼロリスク論という形で、必ずしも適切ではないということは、霞が関、永田町にいればこれはもう常識であります。

 したがって、そういう思いから、国でも、国の法律、東京都の取り組み、そして風評の拡大、この三階建ての建物を、どういうふうにその建物に向き合っていくかということは、ひとり東京都議会の問題ではなくて、この日本国の国会でもしっかりと取り扱っていくべきだということで、きょうはお時間を頂戴したということでございます。

 まず、順番にちょっと行きたいんですけれども、そもそも今申し上げたこの二階の部分、国がしっかりと、土壌汚染対策法とか労働安全衛生法とか食品関係の法律とかいろいろあります。それは、私の理解ではもう全部満たしているんです。豊洲市場というのは、国法からいえば、満たしているんですね。ところが、東京都は、豊洲に限っては上乗せの地下水基準、飲み水基準に近いというか、ほとんど、地下水を毎日二リットル七十年間飲み続けてもどうかというぐらいのものを求めている、求めているか求めていないかも実はよくわからないんだけれども、いずれにせよ、そういう過剰期待が生まれているわけです。

 こういうふうに、東京都がこういう国が求めていないような基準を豊洲市場に求めるに至った経緯等について、もしお調べというか、御承知いただいているところがあれば、教えていただければと思います。

高橋政府参考人 東京都にお聞きをいたしました。

 それによりますと、まず、平成二十年七月に取りまとめられました豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議報告書でございます。二十年七月に取りまとめられております。その中で、食の安全、安心という観点を考慮し、建物建設地の地下水については、地下水環境基準に適合することを目指した地下水浄化を建物建設前に行う、建物建設地以外の部分の地下水については、揚水した際に処理を行うことなく下水に放流できる濃度レベル、すなわち排水基準であります、それで地下水管理を行っていくとともに、将来的には地下水環境基準達成を目指すということが提言をされております。

 また、その後、二十一年二月に取りまとめられました豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議報告書におきまして、市場の安全、安心をより一層確保するため、地下水の浄化については、建物下と建物下以外を区別せず、施設建設前に環境基準以下に浄化するとされております。

 その後、平成二十一年二月の豊洲新市場整備方針、都知事決定でございますけれども、そこにおきまして、技術会議の提言内容をもって都の土壌汚染対策とすることが明記され、これによりまして、専門家会議、技術会議の提言は都の方針となったものと承知をしております。

足立分科員 まさに、今おっしゃっていただいたところをブレークダウンしていくと、これは、事の次第というのがわかってくるわけです。

 実は私は、今いろいろ、東京都が百条委員会を設置すると言っていますが、高橋局長には各種委員会でもずっと、高橋局長と私は今ほぼ毎日一緒にいるみたいな状況で申しわけありませんが、そうやって東京都から聞いていただいて、それをさらにブレークダウンしていけば、これは行政と行政、東京都も巨大な官僚機構ですから、しかるべき仕組みの中で今日に至っているわけです。

 これは我が党としてもしっかりと明らかにして、日本維新の会として、事の経緯は明らかにして報告書としてまとめていきたい、こう思っています。

 実は、環境省に係る予算委員会の分科会、あしたまたお時間を頂戴しますので、今教えていただいた内容をさらにブレークダウンする話はあしたもちょっと使わせていただいてということでお願いするつもりであります。

 ちょっと先を急ぐと、今ありましたように、実は、推移がありますね。要すれば、地下水基準というのは将来的に達成するものだと、平成二十年七月の専門家会議の報告書では、将来的にというのが入っているわけであります。その後、先ほどあったように、技術会議とか整備方針ということで、それがシフトしていくわけであります。

 次に議論したいのは、地下水管理システムなんです。

 この地下水管理システムについては、通告という意味では二番目と三番目だと御理解をいただきたいんですが、二つ目に通告させていただいている内容は、そもそも、豊洲市場の地下水管理システムには、まさに先ほどおっしゃった、下水排除基準を超えるような汚染がくみ上げた地下水にあればそれを除去する機能がついています。これは一応通告しているので、お答えはどなたになるかわかりませんが、なぜこういう質問をするかというと、地下水が本当にきれいなんだったら汚染除去機能は要りませんよね。なぜ地下水管理システムに汚染除去機能が設けられたのか、この点、聞いていただいていると思いますから、御紹介をいただければと思います。

高橋政府参考人 ただいま御質問の件につきましても東京都に確認をいたしましたところ、平成二十年七月に取りまとめられました豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議報告書におきまして、揚水した地下水が排水基準を超過している場合には必要な浄化を行い、排水基準に適合する状態で下水に放流していくことということが提言をされております。

 また、平成二十一年二月に取りまとめられました豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議報告書におきまして、地下水管理システムにより、揚水した地下水を下水道へ放流する際は、水質分析結果に応じ、下水排除基準まで浄化を行う地下水浄化処理施設を設置するということが提言をされております。

 その後、平成二十一年二月の豊洲新市場整備方針、都知事決定において、技術会議の提言内容をもって都の土壌汚染対策とすることが明記され、これによりまして都の方針となったというふうに承知をしております。

足立分科員 これは高橋局長に余り伺うのは本当に恐縮なんですが、御容赦いただいて、さっき申し上げたように、地下水管理システムの汚染を除去する機能が機能としてシステムに設けられているということは、すなわち、東京都は、下水排除基準よりも高い汚染の地下水がくみ上がってくることは想定内だと思っていたとしか思えないわけですけれども、そういう理解で、東京都の理解を局長にあれするのもあれですが、ヒアリングしていただく中で、もしその辺、整合的に御理解いただけているのであれば、そのロジックを教えていただければと思います。

高橋政府参考人 今回確認をしました事実関係は先ほど申し上げたとおりでございまして、ロジックといいましょうか、そこら辺の詳細まではちょっと確認ができてございません。

足立分科員 ここでやっていること自体に無理があるので。局長、あしたまたやりますので。

 そもそも、東京都が地下水基準を、地下水基準というのは環境基準ですね、それをどこまで求めているのか。将来なのか今なのか、建物なのか建物以外なのか。先ほど御紹介いただいたようなところをあしたまでにちょっと確定していただいて、その上で、では、何で地下水管理システムに汚染を除去する機能が必要だったのか、この辺の論理的な説明をぜひ東京都に求めていただいて、国会にも、あしたの予算委員会分科会で御紹介をいただきたいと存じます。

 まことにお手数でございますが、冒頭申し上げたように、豊洲市場の問題はひとり東京都民だけの問題ではなくて、日本国民全体が今注視をしている問題でありますので、何とぞ御理解をいただきたいと思います。

 その地下水管理システムですが、もう既に稼働しているわけですが、何か地下水位が下がらないんだというような一部報道がありますが、システムの稼働状況、それから地下水位の現状と、今後それが目標を達成できそうなのかどうか、見通しについても、可能な範囲で御紹介いただければと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 地下水管理システムの稼働状況につきまして東京都に確認をいたしましたところ、本年の一月十四日に開催された専門会議において、東京都から、全ての街区の地下水管理システムが動いている状況の報告がされているわけでございますけれども、その後につきましても、順調に地下水位が低下していると判断しているとのことでございます。

 具体的には、地下水位の現状につきましては、管理水位として、目標とする水位が荒川工事基準面という基準になる水位でございます、隅田川の河口の観測所の最低水位でございますけれども、これに比べてプラス一・八メートル以内というものを管理水位として、これを目指しているということでございます。現状につきましては、まず、一月十二日の時点では、基準面に対しましてプラス二・一メートルからプラス三・九メートルという報告がされていたわけでございますけれども、二月十七日の時点では、プラス一・七メートルからプラス三・五メートルというふうに地下水位は低下をしてきておりまして、今後とも、地下水管理システム等によりまして、早期に管理水位となるように東京都においては努めているということでございます。

足立分科員 ありがとうございます。

 これも何かいろいろな報道がありますので、今、順調に低下をしていっているという御紹介がありました。当事者は東京都でありますが、引き続き私たちの方でも確認を続けてまいりたいと思います。

 次に、通告の四つ目は実はきのうもやりましたので割愛をさせていただいて、ろ過海水の問題をちょっとやりたいんですね。

 豊洲市場でもろ過海水というのは使われるのかもしれませんが、この間、私、築地を見に行きましたら、ろ過海水というか、要するに、地下水じゃなくて、海水をくみ上げて、それをろ過して使っているわけであります。場長さんに伺うと、清掃に使ったり、あと、地方のマーケットから水産物が来ますね、海水とかいろいろな、淡水もあるんだろうけれども、水ごと来るわけですね。それを移して、水が足りなくなるので、水槽にろ過海水を入れて魚を泳がせているというか、ちょっとよくわかりませんが、そういうふうに使われていると聞いています。

 何か一部に、築地のろ過海水の水質に問題があるんじゃないかという報道がありますが、その点、報道はともかくとして、このろ過海水の水質について、これも御紹介をいただきたいと思います。

井上政府参考人 いわゆるろ過海水でございます。委員から今御指摘ありましたように、床の清掃であるとか活魚水槽の補給用として使用されている水でございますけれども、築地市場におきましては、東京都に確認をいたしましたところ、ろ過海水に関する水質基準というのはないわけでございますけれども、毎日、pH値、におい、色合い、濁り度合い等について水質の計測をする等の対応をとっているということでございます。

 他方、豊洲市場につきましては、これも東京都に確認をいたしましたところ、いまだ開場をしていないため、水質のチェックは行っていないということでございます。

 なお、ちなみに、ろ過をする前の取水口の海水の水質につきましては、築地市場、豊洲市場のいずれも、検査の結果、飲用の水質基準に照らしてもベンゼン等の有害物質で汚染されているという事実はないということでございます。

 また、ただいま築地市場で水質基準を超える物質が検出されたのではないかという御指摘がございましたので、この点につきましてもお答えをさせていただきたいと思いますけれども、平成二十七年八月に東京都が行いました築地市場のろ過海水の水質検査におきまして、飲用に用いる水質基準に照らして、これを超過する総トリハロメタンが検出されたということがございました。

 その原因といたしましては、海水温が高くなる夏場におきまして、ろ過海水の製造過程において、大腸菌の繁殖を抑えるために殺菌用の塩素をふやした結果によるものということでございます。

 なお、二十八年の八月の水質検査におきましては、水質基準を超過する総トリハロメタンは検出されていないということでございます。

足立分科員 ありがとうございます。

 やはり国民の皆様の、東京都民も含めて、霞が関へのある種の信頼というのは、私は、一部いろいろ不祥事ももちろんありますが、高いものがあります。

 今、井上局長から改めて、築地のろ過海水について、過去のそういう検出の値も含めて御紹介をいただいて、皆、安心をするかと思います。ただ、一時、今御紹介いただいたような経緯で基準を、基準はないわけですが、そういう環境基準を上回るようなものもあったというようなことも含めて御紹介をいただきましたので、大変ありがとうございます。

 ただ、水質基準がない等、それでいいのかという議論もきっとあると思います。これはまた別途議論したいと思います。

 以上、ここまでは、先ほども申し上げたように、あしたも同じものを通告という形でさせていただいています。足らざるところはまたあす補足的に、関係の皆様に御協力いただいて、確認をさせていただきたいと思います。

 きょうは、あと残り十分で、食品の、食の安心、安全ということを改めて、これはやはり山本大臣率いる農林水産省の皆様に伺わないと始まらないものですから、ちょっとお願いをしたいんです。豊洲と築地、恐らく、消費者庁の吉井審議官、厚労省の北島部長にお越しをいただいているわけであります。

 私は、この間、築地を見てきまして、正直、余り衛生的に思わなかったんですね。いや、非常にエキサイティングでいいんですけれども。もうすごいですね、エキサイティング。車が、車というか、場内もいろいろなものが走り回っています。だから、事故も多いんですって。たばこは一応吸っていなかったです、禁煙のところが多いんですけれども。カモメが飛び回っています。カラスも突撃してくるらしいです。ネズミ、猫。屋根はもう破れていて、これは修繕しないんですかと言ったら、いや、修繕するために登ることもできないと。そういう状況なので、例えば、ちょっと修繕しようと思ったら、足場をつくって、操業をとめないといけない、でも操業はとめられないということで、もう大変な状況でした。

 実は、食の安心、安全ということでいうと、築地は築地ブランドということがあるわけですけれども、食品衛生法はちゃんと満たしているのかとか、それからHACCP、こういうものも報道されていますが、これからオリンピックにも備えてそういう国際基準というものを導入していこうとしていくときに、豊洲と築地、端的に言うと、築地は僕は難しいと思うけれども、豊洲なら満たしていける、こう思います。

 こういう質問の仕方でいいですか、ちょっとお願いできますか。

北島政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の築地市場の食品衛生法に基づく監視指導につきましては、東京都の市場衛生検査所が実施をしております。平成二十七年度には、築地市場内の千八百八十施設に対して、延べ十一万九千七百二十八回の立入検査を行い、温度管理の不備等不衛生な食品の取り扱い事例が発見された場合には、改善指導を行っております。

 また、立入検査において収去した食品につきましては、食中毒菌、食品添加物、残留農薬等、試験室内検査を二千六百三十六件実施し、食品添加物の使用基準違反が発見されたシラス干し等二件につきましては販売禁止命令等の措置を講じるなど、食品衛生法が遵守されるよう対応していると承知をしております。

 また、HACCPでございますけれども、現在、厚生労働省では、食品の安全性のさらなる向上を図るため、全ての食品事業者を対象として、HACCPによる衛生管理を義務化する方向で検討を進めております。

 義務化に当たりましては、国際標準となっているコーデックスHACCPの七原則に基づく基準を原則といたしまして、小規模事業者や飲食店、販売店等、一定の業種については、現在も義務づけられている一般衛生管理を基本としつつ、HACCPの弾力的な運用を可能とすることとしております。

 新制度の実施に際しては、十分な準備期間を設けるとともに、御指摘の築地市場、豊洲市場を含む全国の競り売り業者や卸売業者においても円滑に対応できるよう、関係団体と調整をいたしまして、食品の特性や業態を踏まえたわかりやすい手引書の作成等を推進し、実施可能なものとしていきたいと考えております。

足立分科員 ありがとうございます。

 ちょっと再確認ですが、まずHACCPですが、いわゆるレポート、報告書を私も拝見しました。結局、A基準、B基準というのかな、そのB基準というものも含めて考えれば、仮に豊洲に移転した場合、そこで操業される例えば仲卸、そういう方々もちゃんと努力すれば準拠できるようなB基準、そういうものもちゃんと整備されて、豊洲というものがHACCPにしっかり対応できるように、厚労省としては、それは決して不可能ではないと。

 世の中で不可能だと言っている人が一部いるんですよ。それは不可能ではない、しっかりみんなが対応、努力すればできるよう、努力してもできない基準は基準じゃありませんからね。それはできないとは思っていないということだと思うので、ちょっと再確認だけ。

北島政府参考人 議員御指摘の基準Bでございますけれども、全ての飲食関係の事業者に実施いただけるような弾力的な運用を考えておりますので、当然、築地でも豊洲でも取り組めると思います。

 また、豊洲市場に関しては、広い区画も準備されていると聞いておりますので、事業者のやり方によってはA基準も取り組めるところがあろうかと思っております。

足立分科員 もう一つ、補足的に。

 食品衛生法なんですけれども、これまた国会で言うと怒られるんですけれども、私は、道路交通法と労働基準法と食品衛生法は、守っていない人はいると思うんですよ。これを言うと、何たることを国会で言うんだといってまた怒られるんですけれども。

 私の地元に阪神高速道路というのがあるんですよ。最高速度は、高速道路なのにすごい低いんですよ、六十キロとか。大体みんな守っていません。守っていないって、足立さん、それを見たのかとかいってえらい怒られるんですが、守っていません。みんな守っていないので、六十キロというのは、守ると事故ります。わかりますか、言っていること。まあわからないかもしれないけれども。それが道路交通法のある種の実態なんです。例えば労働基準法も同じようなところがあって、労働基準をみんな守っているかと、それは守っていないわけですよ。

 そういう意味で、そういう観点、そういうという私が申し上げている観点というものを官僚の皆様に御理解いただけるかどうかわかりません。でも、もし御理解いただける、まあ、いただけないなら、あなたの言っていることはわからないでいいんですが、もし一定御理解いただけるなら、食品衛生法というのは、まさに先ほど、何件かの違反というか、見つかったとかいうことですが、みんなが守れるような実態には、昔からずっと操業されていますから、やはりなかなか難しいものがあると私は見ていますが、ちょっとその辺の御見識をお願いします。

北島政府参考人 食品衛生法上の食品の衛生管理につきましては、施設の面できちんと衛生管理をしていただく部分と、それから人の健康、職員の方、従業員の方の健康面ですとか衛生的な取り扱いというソフトの面での取り扱い、二つの面が必要になってくると思っております。

 そういう意味では、各事業者につきましては、きちんと衛生管理を満たす施設で実施をしていただきまして、あとはやはりそれぞれの方のソフト面での御努力が必要だと思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、食品衛生法上の責任を負っている各事業者においては、食中毒を起こしますと本当に営業停止という大変な処分を受ける場合もございますので、しっかりと取り組んでいただきたいと考えているところでございます。

足立分科員 ありがとうございます。

 比較的食中毒等が多いのかなと私は思っていますが、それはまた改めて。いずれにせよ、よくわかりました。

 もう時間が来ましたので終わりますが、最後に通告しておりました食の安心とは何か、これはまた改めて、予算委員会以外、例えば農水委員会で取り上げさせていただきたいと思います。

 本日は、大変にありがとうございました。

野中主査 これにて足立康史君の質疑は終了いたしました。

 次に、前田一男君。

前田分科員 本日は、時間をとっていただきまして、ありがとうございます。自民党の前田一男でございます。

 きょうは、私の地元であります内浦湾におけるホタテのへい死の問題、さらには、イカの不漁に伴う水産加工業界の大変厳しい状態の現状認識、そしてその対策などについて、政府の考え方、またこれからの方向性を伺いたいというふうに思います。

 まず、ホタテのへい死についてでございますけれども、昨年まで、ホタテも海外輸出の有力な品目ということで注目もされており、日本の農林水産の輸出戦略にも大きく貢献をしてきたところなんですけれども、昨年からホタテの原因不明のへい死というものが発生しました。ロープを海につるして、そこに、一本のロープに二百五十個のホタテをつけて、そして成長させていくのでありますけれども、そのホタテが今、無事に残っているのが、二百五十個のうちの二十五個、一割あればいい方だというふうな状況になってしまっています。

 それによって、生産者の方々は大変厳しい、資金繰りも大変な状況になっているのでありますけれども、これについては、水産庁の職員の皆さんにもすぐに現場の方に飛んでいただきまして、つぶさな視察、そして現状確認というものをしていただきました。

 この場をかりまして、水産庁の担当の方には、そういった真摯な対応については御礼申し上げたいというふうに思います。

 これについて、今、政府としても原因究明、また今後の対策についていろいろと講じられているというふうに聞いていますが、その内容についてここでお伝えいただきたいと思います。

    〔主査退席、小倉主査代理着席〕

佐藤(一)政府参考人 前田先生の御質問にお答えします。

 噴火湾の平成二十八年のホタテガイの水揚げ量につきましては、前年比四割減の約七万トンと相なったところでございます。

 北海道立総合研究機構によりますれば、この減少は、ホタテガイ養殖時期に生じた波浪による養殖施設の振動による影響、高水温及び飼育密度の過多などの複合的な問題によるものではないかというふうに考えられているところでございます。

 私ども水産庁といたしましては、ホタテガイへい死被害の原因究明と拡大防止を進めるため、北海道、北海道立総合研究機構、そして地元ホタテガイ養殖業者と現地意見交換会を開催しながら、平成二十八年度の補正予算でございますが、その中で、養殖ホタテガイのへい死原因特定のための予備的緊急調査を措置したところでございます。

 そのほか、ICTを活用した、ホタテガイへい死の被害を軽減するための技術開発の実施に向けて現在手続を進めているところでございまして、今後とも関係機関と連携しながらホタテガイ生産の振興に取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。

前田分科員 ありがとうございます。

 ただいま、経営体強化プロジェクト、そういったものを予算化して、これからまさに動き出そうとしているということでございますが、きっちりと予算もつけていただいて、そして実効性のある対策を進めていただきたいというふうに思います。

 そして、厄介なのは、ホタテに、外来種のホヤの一種なんですが、ザラボヤというものが付着しておりました。これまでは、生きている貝は貝の外側にだけザラボヤがつくのでありますが、へい死が進んだことによりまして、死んでしまった貝の裏側にもザラボヤがついてしまっています。

 このザラボヤは、陸上に揚げて、そして処分をしなければいけないということになっておりまして、漁師の方々にしてみたら、ホタテの生産額は上がらない、一方ザラボヤの処理費はかさむということで、大変経済的にも厳しい状況になっています。

 こういった傾向は昨年の夏ぐらいから見えておりましたので、この平成二十九年度の当初予算におけるザラボヤの処理にかかる費用、そういったものにはしっかりとした予算をつけてほしいということも要請したのでありますけれども、水産庁としてはいろいろ頑張ってくださったんでしょうけれども、結果としては、前年度と同じ五億円、そのうちのザラボヤ対策費は一・四億円程度ということであります。

 これでは十分な処理費には至らないというふうに考えるのでありますけれども、例えば、事業間の中で、ほかのところでちょっとは浮く部分があれば、このザラボヤは経常的なものじゃなくて、今この一年、二年の話だというふうに思いますので、ここに集中的に投下するということもひとつ考えていただきたいというふうに思います。

 また、そういった支援額が十分ではないので、町の方でも、ザラボヤの処理をするのは町が引き受けて処理をすることになっていて、その処理費を減免して対応するというふうなことも町独自でやっています。これも例えば特別交付税の対象にするとか、そういったことによって町のそのような動きを後押ししていくということもできると思うんですが、そういったことについての考え方を聞かせていただきたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 お答えします。

 先生今御指摘のザラボヤでございますが、噴火湾において養殖ホタテガイに大量に付着しまして、漁具の破損、あるいは漁労作業の遅延、さらにはホタテガイの成長阻害等の被害を及ぼしている、こういう状況になっておるところでございます。

 このような状況に鑑みまして、私どもでは、二十八年度に、有害生物漁業被害防止対策の中におきまして、駆除されたザラボヤの処理施設への運搬や処理に要する経費への支援を行っておりまして、これらを通じまして、養殖業者が行う駆除作業の労力軽減を支援しているところでございます。

 また、ホタテガイにつきましては、輸出戦略上の重要な品目でございますので、平成二十八年度の補正予算の品目別輸出促進対策事業では、洋上駆除に資する洗浄機の導入への支援も認められたところでございます。

 これらの取り組みを総合的に実施することによりまして、ザラボヤによる被害の軽減をより一層図ってまいりたい、このように考えているところでございます。

 また、二十九年度の予算案で申し上げますと、二十八年度が五億二千八百万でありましたが、二十九年度は五億三千五百万ということで、厳しい財政事情のもとではありますが、若干増額となっております。先ほど先生の御指摘いただいた費用につきましては、この予算の中で、いろいろな事業の執行状況等も見ながら必要な予算の確保に努めていきたい、このように考えているところでございます。

 また、市町村との関係でございますが、市町村がどのような事業をおやりになるか、こういったものについてはよく私ども御相談をさせていただきながら、その中で我々として何かできるものがあれば、また御協力申し上げるというふうに考えているところでございます。

前田分科員 地域のホタテ漁師の方々の立場に立てば、東日本大震災、このときには、津波と潮の影響で、自分たちが育ててきたホタテ、そしてホタテの施設が全滅に近いような状況になりました。そこからようやく立ち上がって、ホタテの成長もいい方向に向かっていたのがこのような状況でございまして、今度ばかりは、もうやめてしまおうかという、そのようなホタテ漁師の方々も多くいるんです。資金繰りも大変な状況になっているようでございます。

 もちろん、私も地域の市町村の方にはさまざまな後押しをお願いしていきたいと思いますが、そこにもやはり、国のバックアップというんでしょうか、そういった姿勢があるのとないのとでは市町村の動きも違ってきますから、ぜひそういった姿勢を、またメッセージを流していただきたいというふうに思います。

 では次に、スルメイカの歴史的な不漁の状況について、一緒に考えていただきたいというふうに思います。

 資料を一枚配らせていただきました。これは、水産庁の方につくっていただいた資料を私の方でまとめたのでありますけれども、イカの国内漁獲量、平成十九年度には三十二万五千トンあったものが、平成二十七年度では十六万七千トンと半減しています。そして、二十八年度の数字はまだ出てきておりませんけれども、十五万トンを切るであろうというふうなことも言われています。

 イカは単年魚でありますので、ことしの予測はどうですかというふうなことを聞かれると、いつも、ことしはどうなるかわかりません、よくなるかもしれませんが、悪くなるかもしれません、そのような言い方でずっと推移してきているんですね。

 しかし、そういう現状認識では、これからの対策、そういったことも方向性が定まらないことになってしまうと思うんです。やはりトレンドとして今イカはどんなふうなことになっているのかということを、先々を見越してリスクをとっていくというふうなことも必要だと思うんです。

 イカのこれからの状況について、今、水産庁としてはどのような考え方を持っているのかということについて、お示しいただけないでしょうか。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御指摘ございましたイカの関係でございますが、平成二十八年度のスルメイカの漁獲量でございますが、これは六万四千トンということで、その前年の二十七年の十万六千トンの約六割の不漁となっておる、こういう状況になっております。

 この不漁につきましては、さまざまな要因が考えられるわけでございますが、海洋環境の変化が一番大きな原因であろうと認識しているところでございます。

 スルメイカの資源の調査といったものが非常に大事かというふうに考えておりまして、これについては国立研究法人水産研究・教育機構が実施しているわけでございますが、スルメイカの資源量は近年減少傾向にありまして、特に平成二十七年及び二十八年は、産卵海域でスルメイカの発生に適した温度帯が減少したことが主な要因で、また、さらに、日本海の温度変化により回遊ルートが変化して、沿岸に漁場が形成されにくくなったことが不漁に拍車をかけた、このように分析しているところでございます。

 私どもといたしましては、こうした情報についてはきめ細かく、生産者の皆さんあるいは加工業者の皆さんに行き届くよう、やはり情報提供につきましていろいろと工夫を凝らしていく必要があるのではなかろうか、このように考えているところでございます。

前田分科員 イカの不漁によって値段も上がっています。通常、木箱でイカは取引されるわけでありますが、その木箱、二十キロ入りでございますが、一昨年までは大体三千円ぐらいで取引されていたものが、昨年は二万円を超えることも出たということでございます。値段が五倍から六倍につり上がっている。

 イカの漁師さんにとっても、生産量がずっと減っていますので、それで、生産額で見てもまだまだ下がっている状況なんですが、大変なのは、イカを使った珍味などをつくっている水産加工業界であります。私の地元の函館も、イカの町というふうに言われもしまして、水産加工をなりわいとしている会社、そしてそこに働く従業員、大変、数万人の方がおられる、そのような、大きな地域の基幹産業なんです。

 それで、その水産加工の方々にしてみたら、イカが五倍、六倍の値段でありますが、では、その分製品価格に転嫁できればいいのでありますが、しかし、現実問題として、イカの珍味、スーパーマーケットなどで売られていますが、その値段も、五百円で売っていたものが二千円とか三千円で売れるということにはならないわけでありまして、大変厳しい状況になっています。

 それゆえ、今起きていることは、イカが入ってこない。国内でありませんから、海外から輸入しなきゃいけない。その輸入ももちろん値段が高くなっているのでありますけれども、イカはIQで定められた品目でございまして、国として、イカの輸入にも一定の制限をかけています。ですから、イカが高くても買えるところはまだいいのでありますが、イカが買えないというふうなところにとってみたら、本当に死活問題になっています。

 ですから、このような状況で、小売をしているコンビニなどは、国としても、このIQの枠がこれまでもずっと、これからもずっと締められているような状況であるならば、イカが高い安いの話じゃなくて、もう函館を水産加工の場として考えるのではなくて、もちろん海外製品よりも国内製品の方がお客様のニーズはあるのでありますけれども、しかし、仕方ないなというふうなことを考えて、もう既に中国の方にその生産拠点を移そうかというふうに考えている、そういう小売の会社もあるというふうなことでございます。そうなってしまうと、一旦出ていってしまったものは、例えば、イカが国内でたくさんとれた、そしてイカの輸入がしやすくなったとしても、もう戻ってはこないわけですね。

 こういった危機的な状況にあるということを、水産庁として今どのようなお考えでいるかということについてお伝えください。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今、先生の方から非常に深刻な状況ということで承ったところでございまして、やはり我々も、非常に厳しい状況にあるんじゃないかというふうに思っているところでございます。

 その中での特に加工業者の皆さんかと思いますが、非常に原料不足といったようなことでございますが、やはり我が国で水産加工業を営んでいただけるということはまことに重要だというふうに考えておるところでございます。

 こうした中で、原材料高などの社会的、経済的環境の変化の影響により一時的に売上高や利益が減少している事業者に対しては、いわゆるセーフティーネット貸し付けといったものがあるわけであります。また、加工工場についても、原料を転換する場合の加工工場の建設、機械の導入のための水産加工資金といったものが公庫資金として措置されているわけでございます。

 こうした施策の活用により、何としても地元での営業を継続していただければというふうに思っておるわけでございますが、やはりここら辺については、先ほど先生の御指摘ありましたように、きめ細かく、関係者の御意見も聞きながら、一体何が求められているかといったようなことも含めて、いろいろと我々もお話を承っていきたい、このように考えているところでございます。

前田分科員 お配りしている先ほどの資料をごらんになっていただければと思います。

 IQの品目は幾つかありますけれども、ここではイカとタラ、スケソウそしてニシンを挙げておりますが、輸入量と国内の漁獲量を足したものを国内の消費量というふうに考えたときに、イカは、大体割り当て量が七万四千九百五十という当初枠から始まって、追加枠が出て、九万ぐらいまで昨年はなっているわけでありますが、それに対して、国内の消費量は四十万トンから二十五万トン程度であります。

 一方で、タラやニシンの方を見ますと、国内の消費量に比べてIQの枠というのが非常に大きくて、枠になっているのかなっていないのかわからないような、そのような状況でございます。

 イカだけが極めて小さく絞られているわけでありますが、これはどのような理由によるかということを聞いてみたのでありますが、昔、為替の関係もあったというふうなことも聞くのでありますが、私、イカのIQの枠が余りにも、現実からしてちょっと乖離しているのではないかというふうに思っているんです。

 もちろん、イカの国内生産、その価格を下支えするという必要はあるというふうに思います。ですから、国内のイカが暴落するまでイカを自由に輸入していいとは私も思っておりませんけれども、しかし、仮に、このIQで枠を絞り過ぎているがために、コンビニなどが日本の水産加工業界を諦めざるを得なくなってしまって、そして中国やほかの国々からの輸入に切りかえていくというふうなことになってしまっては、元も子もないというふうに思うのであります。

 このIQがちょっと狭過ぎるのではないかなというふうなことについての御意見も伺いたいと思います。

 また、国内のイカの量が極めて小さいとき、まずは当初枠で、ちょうどまさに、きょうは二十九年の枠が発表されました。これだけイカがとれないというふうなことでありますのに、七万四千九百五十トンという、当初枠としてはずっと同じ量になってしまったのは私としては残念なのでありますけれども、そのようなところから、これから状況を見て追加枠を発給していこうというふうなことだと思います。

 ことしのイカのとれぐあい、その状況によって、国内のイカの生産量が少ないならば、イカの値段が下がり過ぎないという範囲の中において、もっと追加枠を、一回ということにしないで、二回でも三回でもいいと思います、弾力的に、そして機動的に出していくという考え方があってもいいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 まず、先生の方からお話ございました、イカ、タラあるいはスケソウダラ、ニシンとの関連でございますが、これについてはいろいろな理由があったかと思うんですが、やはり、タラ、スケソウダラ、ニシンについては、我が国だけのものではなかなか消費量を賄えなかったというような事情があろうかと思います。イカにつきましては、以前はかなり豊富にとれておりましたものですから、こうしたようなことになったんじゃないかということが一つであります。

 それと、今先生の方からお話ございました割り当て制度でございますが、割り当てに当たりましては、毎年度、国内の生産や在庫、あるいは輸出入、価格等に係る動向、こういったものをもとにしまして経済産業省と協議しまして、年間の輸入割り当て限度数量というものを決定、公表しているということでございます。

 イカについては、実は例年三月に決定しているわけでございますが、先ほど先生御指摘ありましたように、ことしは本日公表したということで、前倒しをさせていただいたということがまず一点でございます。

 やはり年度の途中で、先生御指摘のように、国内生産量の極端な減少によって国内の需給に大きな影響が生じるような場合には、国内在庫量や輸入割り当ての消化状況なども踏まえまして、国内漁業やIQ制度の目的に支障が生じないよう配慮しつつ、経済産業省と協議の上、追加割り当てを行う等、適切に対応することとしているところでございます。このような方針でしっかり機動に応じた対応を考えていきたい、このように考えているところでございます。

前田分科員 イカのIQ枠の中でイカを輸入するわけでありますけれども、今、海外にもイカがいなくなっている、輸入の枠があってもなかなか輸入するイカがない、そのようなことも聞かれています。

 そこで、ロシアの方にはイカが生息しているのではないか、ロシアからはイカが揚がっているのではないかというようなことも言われるのでありますが、残念ながら、今の我が国のIQの枠では、ロシアというのは輸入の対象国から外れているわけであります。

 理由を聞きますと、日本とロシアの間で地先沖合漁業協定というものがあって、日本船が出て、そしてイカをとることができるので、イカの輸入はできなくなっているんだというふうなことを言われるのでありますが、私は、そこには余り連関性は見えないなというふうに思うんです。

 もし本当にロシアにイカがあって、そしてロシアの輸入も可能になるとすると、日本の水産加工業界も大変朗報であるというふうに思うのでありますけれども、ロシアからのイカの輸入、これも認めるという方向には行かないものでしょうか。どうでしょうか。

佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のように、イカの輸入割り当て、IQ制度では輸入原産地を定めておりますが、ロシアは輸入原産地には入っておりません。

 我が国は、ロシアとの間で、日ソ地先沖合漁業協定ということで、これに基づく相互入漁を行っておりまして、我が国漁船は、ロシア二百海里水域において、ロシアからイカの漁獲割り当てを受けて漁獲を行っているところでございます。

 こうした中で、御指摘のロシアからのイカの輸入を認めることにつきましては、ロシア漁船によるロシア二百海里水域におけるイカの漁獲を促進しまして、我が国の入漁と我が国漁船への漁獲割り当てに悪影響を与えるおそれがあるんじゃないか、このように考えておりまして、ロシアを輸入対象国とすることについては慎重に検討する必要があるのではないか、このように考えておるところでございます。

前田分科員 影響があるかないかは、実際にさまざまな精査をもってやっていけばいいというふうに思いますけれども、しかし、協定があるから、だからイカのロシアからの輸入は一切できなくするというのは、私は、余り説得力がないのではないかというふうに思います。引き続きの検討をお願いしたいというふうに思います。

 また、今お話があった漁業協定、これでのイカの割り当て量は六千五百二十トンだということであります。必要なイカの量に比べたら、極めて少ない量であります。日本船によるイカ漁獲枠を拡大していくというのも一つの選択肢だというふうに思います。これも、一昨年に比べたらこの六千五百二十トンというのは小さくなってしまっているわけで、理由を聞きますと、日本から行っている船の数が減っているので、それに伴って、イカの漁獲枠も小さくなっているということであります。

 これも一つの選択肢でありますから、団体の方に呼びかけること、また促すことによって、この協定での割り当て量をふやすこともできると思います。これは協議でありましょうが、日本船によるイカの漁獲割り当て、これをふやすということも可能でしょうか。

佐藤(一)政府参考人 お答えします。

 今先生から御指摘ありました我が国漁船の漁獲割り当てにつきましては、ロシア二百海里水域でございますが、先ほど申し上げました日ソ地先沖合漁業協定に基づいて毎年開催される日ロ漁業委員会会議で、協力金の負担額や操業隻数の操業条件とあわせて協議されております。

 水産庁としましては、こうした操業条件が日本の漁業者にとって受け入れ可能な内容となるよう、日本の関係者の意向、特に協力金を負担する漁業者の意向を踏まえて、ロシア側と協議してきているところでございます。

 御指摘のあった漁獲割り当て量の条件については、引き続き、関係者の意向を踏まえながらロシアとの協議に臨んでいきたい、こんなふうに考えているところでございます。

前田分科員 このイカのIQの割り当て量、これもやはり硬直化していると思うんです。この理由は、やはり、余り枠を広げ過ぎると国内のイカの値段が下がり過ぎてしまうのではないか、また、締めることによってイカの値段が上がっていく可能性があるのではないかという、その辺の生産者団体とまた水産加工の団体での綱引きというんでしょうか、利害という形になっちゃっているからそうなっていると思うんですね。

 しかし、水産加工業界が本当に我が国また函館からなくなってしまうと、国内のイカを買い支える、そういう力もなくなってしまって、ひいては、国内のイカ生産者団体、そして漁師の方々も大変厳しい状況になってしまうと思うんです。

 したがって、イカ生産者団体も、また加工団体も、漁師さんも水産加工会社も、同じ方向性に立っていかなきゃいけないというふうに思っています。共存共栄の関係だと思うんですね。

 これまでは、両者がさまざま話し合いをするという場がなかったというふうに認識しています。これを、事前に、ことしのイカの量はこのぐらいだ、だからこのぐらいの枠をつくっていくべきじゃないのか、そういうことをお互いに協議する場、これも以前から提案しているところでありまして、水産庁としてもこれを前向きに検討していただいていると思いますが、これについて、ぜひことしからやっていくということをお話しいただきたいというふうに思うんですけれども、これは大臣のお答えをいただけますか。

山本(有)国務大臣 北海道における水産加工、またイカの操業、生産、こういったものが危機的状況にあるということをお聞きしまして、大変私も危機感を改めて覚えました。

 特に、食品の製造業、加工業、こういうものは北海道におきましては大変大事なものでございまして、額においては、日本一の二兆円を超えております。そして、雇用吸収力におきましては、これまた全国一位で、八万人ぐらいの雇用を確保しております。そんな意味で、この水産加工業、特に地方において、北海道において基幹的な産業である、重要であるという認識でございます。

 今後とも、このような考えに立ちまして、国内の水産加工業を守るために、あらゆる施策によって、水産加工業を含む水産業の健全な発展を図ってまいりたいというように思っております。

    〔小倉主査代理退席、主査着席〕

前田分科員 今の大臣の御発言は、大変、水産加工業界にとっても、また、海外に生産拠点を移そうかなというふうに考えているコンビニなどの会社にとっては大きなメッセージがあるというふうに思います。私も地域産業を守っていく観点で努力していきたいというふうに思いますので、これからも大臣の強力なリーダーシップによる水産庁の強力な後押しをよろしくお願いして、本日の質疑を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

野中主査 これにて前田一男君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出分科員 民進党、信州長野の井出庸生と申します。よろしくお願いをいたします。

 おととしまでは農林水産委員会におったのですが、その後なかなか希望が通らず、きょうは貴重な機会をいただきました。

 きょうは、農協改革、それから、少し畜産の話を踏まえて、今の農業の改革の方向性というものを伺っていきたいと思います。

 最初に大臣に、そもそもの大きな改革の流れとして、やはり中間管理機構を活用した農業の規模の拡大、それから輸出の拡大、一兆円目標を前倒しする、この二つの大きな目標というものはずっと言われてきておりますが、端的に、私のように中山間地にいると大変厳しいスローガンであるなと。その点について、まず大臣の思いを伺っておきたいと思います。

山本(有)国務大臣 日本の農業は、過去の歴史からしましても、地域農業、すなわち地域政策を中心とした農業から、それが零細企業、中小企業、大企業と発展するように、農業の成長産業化、そして加工への巨大化というような発展を遂げているものというように思っております。したがって、産業政策も必要でございます。両面相まって、私は、今後とも大事に考えていかなきゃならぬ課題だというように思っております。

 特に、中山間地域には高齢者農業、その高齢者農業からまつわる農福連携、そういったものが新しいテーマであり、期待される農業のあるべき姿というようにも私は思っております。

 この間、鹿児島で、鹿児島銀行の方に来ていただきますと、銀行OBの方々を雇用して農業を始めた、こういうことでもございますし、新しい農業のあり方というものは各地域で芽生えているわけでございます。

 最初から輸出、最初から成長というような課題ではなく、足元を地道に農業を守り育てることによりまして、やがては成長産業化へという段階論が私は大事だろうというように思っております。

井出分科員 今、鹿児島の事例を出していただきました。

 例えば、中山間地の農業と言われますと、直接支払い、多面的機能というようなことをよく言われて、よく例示されるのが棚田の話であったり、棚田も私の地元に当然あるんですが、これからちょっとお話をしたい畜産、酪農の分野で多面的機能という言葉が用いられたことが余りないなと思って、きょうは酪農の話について少し伺っていきたいんです。

 酪農は、御存じのとおり、飲むための牛乳、そっちの需要は減ってきている。一方で、加工品、そちらの方の需要は上がってきている中で、さまざま議論がされてきておりますが、まず、そもそもとして、飲む用の、飲用の牛乳の需要が低下傾向であるということが、そのことは是とせざるを得ないのか、それとも回復、一定の何か目標というものがあるのか、その点についてまず事務方に伺いたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 飲用向けの処理量は減少傾向でございます。

 例えば、平成八年から平成二十六年度で、一人当たりの年間の牛乳の消費量が三十三・三リットルから二十三・六リットルというふうに下がってきております。

 これは幾つかの要因がございますけれども、やはり幾つかのターニングポイントがありますけれども、一番大きかったのは、ペットボトルの普及等による茶系の飲料ですとかミネラルウオーター、そういう競合する飲料の消費が伸びたということ、あともう一つは、少子化によります学校給食向けの牛乳の処理量が減少したということで、例えば学乳向けにつきましても、平成八年度から二十六年度で、四十七万トンから三十八万トンというふうに下がってきております。これからの少子化とほかの飲料との競合、これらは続いていくだろうというふうに思ってございます。

 他方で、やはりさまざまな加工の分野、加工と申したのは、バターとかチーズみたいなことでございますが、一番今伸びているのは生クリーム系でございまして、これは、例えばコンビニなんかでもホイップだとかいろいろなものを使ったものが多々出てきております。そういうものの原料としての生クリームが伸びてきているということもございますので、そういう意味では、食生活が多様化し、変化している中で、飲用はこれからなかなか、ふえるというふうにはちょっと予想してございません。飲用はこれからも残念ながらそんなにふえないだろう、他方、加工用はふえていくのではないかというふうに予想しているところでございます。

井出分科員 私も子供のときは背が伸びると言われて牛乳をたくさん飲みまして、牛乳を飲んだからここまで伸びたのか、残念ながら希望の身長に届かなかったのかわかりませんが、私自身も大人になってから牛乳を飲む量が減ったことは確かに事実なんです。

 今、そういう大変残念な傾向があると最後にお話がありましたが、飲用の牛乳の消費を維持する、回復するような目標というものは、数値目標みたいなものは現時点ではないということでいいのか。先ほど、消費量が一人当たり三十三・何リットルが二十三・何リットルになったようなお話がありましたが、今目標というものがあるのかないのかだけ、もう一度端的にお願いします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 いろいろな消費拡大策としての目標というものは持ってございません。ただ、三十七年度の予測という意味では持ってございまして、例えば、二十七年度で飲用向けが三百九十五万トンでございますが、これが、平成三十七年度は、十年後に三百五十八万トンぐらいになるのではないかと思ってございます。他方、乳製品向けにつきましては、二十七年度が三百三十九万、約三百四十万トンでございますけれども、三十七年度にはこれが三百八十五万トンぐらいになるのではないかという予測は持ってございます。

井出分科員 そうしますと、今の予想を聞いておりますと、十年後には数字が逆転するといいますか、加工乳製品の方の需要の方が上に来ると。

 そこで、一つ伺いたいのは、加工原料乳生産者の補給金の話なのですが、これはもともと、飲む牛乳の方が価格が高くて、加工用の牛乳は価格が低い、だから補給をする、そういうことでその制度が始まって、ずっと来ているのかと思うんですが、これから加工の方が需要が高くなってくる、そうなってくると、そもそもこの補給金の前提自体も少し揺らいでくるんじゃないかなと思うんですが、その辺の問題意識というものをどうお考えか、教えていただきたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今、農業競争力のプログラムに基づきまして、加工原料乳の生産者補給金制度についてさまざまな改革を検討しているところでございますけれども、今先生おっしゃったとおり、この補給金制度ができたのが昭和四十一年でございますが、その当時は飲用が高くて加工が価格が安い、これ自体は今後とも変わらないというふうに思いますが、当時は、飲用の需要が物すごく伸びて、加工については飲用の方にシフトしていくんだ、それによって酪農家の所得を上げていく、その間、補給金で何とかカバーしていこうという前提でつくられまして、そのために暫定措置ということになってございました。

 しかしながら、先ほど申し上げたように、これからの飲用の消費、需要の伸びはなかなか期待できず、むしろ加工の方が伸びていくということ、また、加工については、さまざまな国際関係で競合関係もあるということも踏まえますと、現在さまざまな改革をしている中で、増加が見込まれる乳製品需要に安定的に応えていく必要があるというようなことですとか、生産現場からも安定的な制度が求められているということも踏まえまして、今回の制度の見直しを契機といたしまして、現在の暫定措置法に基づく制度ではなく、恒久措置という形にしたいということで、今検討しているところでございます。

井出分科員 暫定を恒久にしていくというお話がございました。

 例えば、農水省で発表されている資料なんかを見ますと、飲む、飲用の牛乳の価格というのがキログラム百十五円、加工の方は、チーズとかクリームとかいろいろさまざまですが、キログラム当たり八十五円から六十五円と安い。そこに補給金などでかさ上げをするというその理屈自体はわかるんですが、先ほどの需要の予測、そういうものから見ると、将来の価格差も縮まってくるんじゃないかとか、この調査というのがいつからされているのかわからないんですけれども、既に縮まってきたり、これから縮まったり逆転するというような、そういう見込み、見当、予想みたいなものというのはございますか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 飲用につきましては、今後どうなるかというのはわかりませんけれども、世界的に見ても貿易になかなかなじまない世界でございます、LLとかはちょっと別にいたしまして。

 加工の世界は、やはり国際競争の中にございますので、今後需要が仮に逆転したとしても、国内における飲用と加工用の価格の差が、実需者との関係、海外との関係を含めて考えると、飲用より加工の方が高くなるというのはちょっと、そういうことにならないんじゃないかなというふうに思います。

井出分科員 今のお話ですと、今、酪農の指定団体のあり方が問題になっておりまして、特に、補給金が、指定団体に入っているからもらえる、入っていないともらえない、もらえないから、個人でやっている方は大体、飲む、飲用の牛乳をほとんどの方がやっているというような話を伺っているんですが、ちょっとそことの整合性をどう見ていくのかなというところを考えなきゃいけないなと思っております。

 酪農の、今輸出のお話もありました。輸出についてちょっと伺いたいんです。

 農業全体で七千億円を突破した、一兆円を前倒しするという話があって、農水省の資料を見ると、ちょっとこれは見間違っていたら直していただきたいんですが、多分、震災で一旦乳製品の輸出が落ち込んで、直近一年間のデータだと七千億のうちの百億円、それが今度一兆になったとしても百億円、そうした規模じゃないかなと思うんですが、乳製品というのはやはり輸出の分野としては期待値があるんですかね。ちょっとそういう数字を見ていると、輸出で勝負できるのかなというところも疑問があるんですが、そこを教えていただきたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 先生も今おっしゃったとおり、平成二十二年には約百五十九億の輸出がございましたが、震災等もございまして落ち込んで、二十七年が多分、九十六億円ぐらいでございます。それで、二十八年が百二十五億になってございます。それで、平成三十一年の一兆円のときの輸出の目標、乳製品では百四十億円というふうに置いてございます。

 飲用自体の輸出というのは、LLをどのように伸ばしていくかということだと思いますけれども、加工品そのものは各国におきましてもさまざま貿易されておりますので、そういう意味からいたしますと、アジアを中心に、日本の強みを生かしつつ、乳製品についてもぜひ輸出を伸ばしていきたいというふうに考えておるところでございます。

井出分科員 輸出、百四十億と聞いても、何か目標が控え目だなと思うんですが、輸出、国際競争をやっていくとなると、やはり規模という話が出てくると思います、生産効率といいますか。

 中心地は言うまでもなく北海道だと思うんですが、北海道はこの二十年で酪農の戸数は約半減、一万千四百から六千四百九十戸、都道府県に至っては、平成八年、三万戸であったものが一万戸、三分の一に減少している。

 では、その一方で規模はどうなのかなというところを見ますと、北海道は、二十年前は平均一戸当たり七十八頭だった規模が百二十一頭になった。それから、都道府県は、三十四頭だったものが五十三頭になってきた。

 北海道に関して言えば、北海道は、たしか生乳の生産量は何とか横ばいで来ている。それ以外は生産量も大きく落ち込んできている。都道府県は、二十年前の比較で、五百十二万トンから三百五十一万トン。北海道は少しふえているんですかね、一割ほどふえているというようなデータが農水省から出ております。

 私の地元などを見ると、私の地元は野辺山高原というところがありまして、そこは野菜とともに酪農という分野が大変力を持っているんですが、ただ、それ以外の地域を見ますと、この間ちょっと酪農家のところに行ってお話を聞いた、佐久浅間農協管内などでは、二十頭がせいぜいだ、二十頭が大体の平均だというようなことがあって、そういう視点からすると、価格競争以前に、指定団体をきちっと守ってくださいとか、いいものをつくるので、効率よく、あとはうまくやる仕組みを維持してくださいという話がやはり地域としての強い要望であると思います。

 ですから、戸数が大きく減って規模は拡大してきている、生産量でいえば落ちている、そういう中で、国際競争に現状勝負できるかなというと、残念ながら、数字を見ている限り大変厳しい。何かその打開策みたいなものが、こういうことに力を入れて取り組んでいくんだというようなものがあれば、また、それはそうかという話になると思うんですが、そのあたりについての考えを伺いたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっとお答えになっているかどうかあれでございますけれども、規模につきましては、先ほど先生おっしゃったように、平均するともう少し大きくなりますけれども、やはり中山間、数値の少ない県等々においてはなかなか規模拡大が難しい。あと、都市に近いところは、排せつ物等の問題もあってなかなか拡大が難しいということはございます。

 ただ、これまでといいますか、戸数は減って、規模が拡大するとともに一頭当たりの乳量もいろいろな改良の中でふえてきていたので、ある程度戸数の減りというものを一頭当たりの乳量の増加でもってきておりましたけれども、都府県は、残念ながら、戸数の減少の方が一頭当たり乳量の伸びを、減少の方が強くきいているので、さっき先生おっしゃったとおり、生産量が減っているという状況になってございます。

 それで、幾つかございますけれども、北海道はある意味、やはり規模をきちっと拡大していくということでしょうし、今法人化なんかも相当進んできてございます。そういう中で、今、多分、一番課題になっておりますのは、労働時間が、ほかの畜種に比べても、また製造業等に比べても、やはり酪農の場合は相当厳しいということがございまして、そういう意味からいたしますと、二十九年度の予算で、大きい方向けには、例えば搾乳ロボットとかパーラーとかそういう機器で、要は人間が働く時間を少なくする。

 あと、先生の御地元のような規模のところですと、例えば餌なんかもまだ一輪車で押しているような状況があるんじゃないかと思うんですけれども、今はレール式で上から来るようなのがございまして、そういう規模の小さい方向けにはそういうものを二十九年度予算案の中に盛り込んで、まず労働時間を改善していこうということをやろうとしております。

 そういう意味では、一定の品質のものをきちっとつくっていらっしゃる方に関しては、ここ数年は、先ほどおっしゃった指定団体が乳価交渉も頑張って乳価も上がってきておりますので、それなりの利益が出ているというふうに承知してございますけれども、そういう労働条件の改善をしながら、ちゃんと利益が出る構造をつくっていくということかなというふうに思ってございます。

井出分科員 北海道の方も大変御苦労はされていると思うんですが、大ざっぱに言ってしまうと、北海道は、大規模で消費地から遠いですから、加工を結構中心にされているんじゃないか。北海道以外の都道府県は、規模が小さくて消費地に近いということを考えれば、飲む方をしっかりやっていただいている。だけれども、冒頭お話あったように、飲む方はこれから先細りで、大変これからの都道府県の酪農というものは厳しいかなと思っているんです。

 この酪農の問題、少し大臣に最後に伺っておきたいのは、私の地元なんかも特にそうなんですが、畜産の関係の皆様、北海道はちょっと別事情かもしれませんが、農業界、農協の中でもやはり戸数が少なくて声が小さいんですよね。その一方で、ことし指定団体のあり方等が検討されているということに対しては物すごく強い関心がありまして、私はふだん法務委員会なので、ことしは共謀罪だとかと言っているんですけれども、これは共謀罪に紛れて埋没するようなことは決してあってはならないと思いますし、私は、共謀罪を抜け出してでも農水委員会に、ちょっと手を挙げてこの問題をことしはやらなきゃいけないと思っているんです。

 そういう意味で、今申し上げた、本当に小さくて、農業の中ですら声も小さくなってきているこの業界のあり方がことし問われている、そのことについて大臣のお考えや思いを。

山本(有)国務大臣 日本で国際競争力を持てる酪農がしっかり根づくというのは北海道しかないというように判断しております。

 しかしながら、各地域地域でイノベーションあるいは努力によりまして、競争力ある品質の乳製品やヨーグルト等加工品が発生しているというようにも確信しております。

 例えば、災害がありました岩手県の岩泉乳業、ここは十年ぐらい前に町が自分でつくり上げた乳業メーカーでありましたけれども、ヨーグルトの生産で、これが販売拡大が急でございまして、最初一億円ぐらいが、災害を受けたときには九億円ぐらいに発展をしておりました。ですから、その意味におきましては、創意と工夫で酪農業というのはうまくいく場合もあちらこちらに見られるというように思っております。

 特に、EU諸国の中で、フランスがクオータ制度という指定団体制度を二〇一五年に廃止いたしました。そうすると、中山間のヨーロッパの山岳地帯の酪農家が、条件不利地域の補整がないものですから、それで困るのかと思ったら、逆に、チーズの高品質とブランド化によって、国の世話にならなくても国際競争力で頑張れるというようなこともありまして、ますます世界の乳製品の市場の変化が見られるわけでございます。

 そんな意味で、我が国も早く競争力をつけて、乳製品における国際市場化というのは待ったなしで参りますので、その意味において今から準備するというような考え方が必要じゃないかというように思っております。

井出分科員 今例示していただいた、まさに需要にどう応えていくかというのはそれぞれの業者の方の努力だと思いますが、需要に応える基礎体力、そういうものすらなくなることのないように、この問題に取り組んでいただきたいと思います。

 それと、農協の改革について短い時間で伺いたいのですが、おととしからいろいろやってきていただいておりまして、一つには、農協は強制じゃないんだよという話をおととし明示をしたりですとか、おととしは、たしか会計監査の話なんかもあったと思います。ことしは資材のことですか、そういう話があって、確かに、販売力の強化を求めたり資材価格の引き下げを求める声というのはかなりの数があると思いますので、そこに向き合おうとされているということだなとは思うんです。

 一点、平成二十八年の一月に農水省の方で出されている「農協法改正について」という資料の中で、組合員の大幅な減少、そういうものをもって、それから、農協のシェア、米の販売は六六%が五一%へ下がる、飼料の購入は五一%から二八%に下がると。

 そこで、その問題意識として、世代交代が進むと農協の事業シェアはさらに低下する可能性があって、次世代の農業者が積極的に利用する農協にしていくことが必要であると、次世代の必要性をうたっているんですが、この具体の取り組みというか、あと、次世代というのはどのぐらいの世代が次世代なのかというところをまず教えていただきたいと思います。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 その資料で次世代と言っていますのは、特に定義を持って使っているわけではございませんので、例示ですけれども、例えば十年先、二十年先という形でのことを考えているものだというふうに考えております。

 問題意識としましては、先生も御指摘のとおり、やはり現状において、生産資材の購入、農家が購入する際の一番のシェアを持っているのは農協系統でございますし、それから、農産物の販売も多くの農業者の方が農協を利用しているということに鑑みまして、やはり今そのシェアを持っている中で、最大限農家のためのサービスをもう一度再構築していただくということによって、農協が協同組合としての機能をよりよく果たしていただけるようになる、そのための改革を行いたいという考え方でございます。

井出分科員 時間が参りましたので終わりますが、もう一つ、「農協について」と去年の十一月に農水省の出された資料でも、やはり次世代が重要だということを組合員の年齢構成から出されていて、第一世代というのが七十歳超で、第二世代が五十、六十代、第三世代が二十代、三十代、四十代ぐらいまでというようなくくりになっているんですけれども、力を入れるとすると、次世代というのは第三世代ですね、第二世代を現役として、第三世代に力を入れていくような。

 私、ちょっと農協青年部の若い方から、農協は義務教育のようになっていて、これからを考えて一生懸命やっている人間に、もう少し何とかしてもらいたいというようなことも言われておりますので、農協の改革ですから、余り国がごちゃごちゃ言うのもまたいろいろあるかと思いますが、そういう問題意識も持っていただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

野中主査 これにて井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、真島省三君。

真島分科員 日本共産党の真島省三です。

 輸入粗飼料に使用された国内無登録農薬クロピラリドの堆肥への残留による農産物の生育障害被害について質問をいたします。

 配付資料一、これは昨年十二月十六日の宮崎日日新聞ですが、国内で使用が認められていないクロピラリドを含んだ牛ふん堆肥が原因と見られる農産物の生育被害が宮崎県内で発生していることを、このように社会面トップで大きく報じております。

 私も今回初めてこのクロピラリドというのを知ったんですが、大臣は御存じだったでしょうか。

山本(有)国務大臣 存じ上げておりませんでした。

真島分科員 大臣も存じ上げていないということです。

 このクロピラリドというのは、アザミとかクローバー等の広葉雑草を枯らす選択性の除草剤成分の名称で、日本では登録のない除草剤。日本の粗飼料の輸入先というのは、クロピラリドの使用が認められておりますアメリカ、オーストラリア、カナダでほぼ一〇〇%となっています。

 農水省が最初にこのクロピラリドによる生育障害発生を確認したのはいつで、その直後にどんな対応をしたのか、簡潔に御紹介ください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 農林省におきましては、平成十七年の八月に、県からの報告によりまして、クロピラリドが原因と疑われるトマト及びミニトマトの生育障害を確認いたしました。

 これを受けまして、同年の十一月に、各都道府県に対しまして、堆肥製造販売業者への指導、農業者への注意喚起、また各都道府県による調査、国への報告を内容とする通知を発出してございます。

真島分科員 二〇〇五年度の農水省通知以降、二〇一三年度までの被害発生事例について御紹介ください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十七年度の通知の発出から平成二十五年度までに、県からの報告がございますのは、ミニトマト、トマト、花、ピーマン、ナスの五品目計十八事例につきまして、クロピラリドが原因と疑われる生育障害が発生したと承知をしてございます。

真島分科員 二〇一四年三月四日に農水省の事務連絡というのが出されているんですが、そこでは、今般、複数の県から報告があり、依然としてクロピラリドが原因と疑われる生育障害の事例が散見されることから、二〇〇五年通知と農研機構が二〇〇九年に出した飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアルに基づく適切な対応の実施などを求めています。

 ここで言っている農研機構マニュアルで初めて、トマト及びミニトマト以外の品目のクロピラリドに対する耐性が、極弱、弱、中、強、極強、この五ランクで示されているんですけれども、ここで極弱とされている品目は何でしょうか。

西郷政府参考人 お答えいたします。

 農研機構では、平成二十一年に、飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアルを作成、公表しております。クロピラリドの被害回避のために生産者や普及組織等に御活用いただいているものでございます。

 このマニュアルにおきましては、クロピラリドに対する耐性に応じて、農作物を極弱から極強までの五段階に区分しております。この中で極弱とされる品目は、ナス科のトマトや豆科の大豆、枝豆、サヤエンドウ、ソラマメ、スイートピーそれからクリムゾンクローバーのほか、キク科のヒマワリ、コスモス、アスターとされております。

真島分科員 二〇一四年三月四日の事務連絡以降、二〇一六年度までの被害発生事例を御紹介ください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省は、平成二十六年三月に、都道府県に対しまして、生育障害実態調査と農家及び堆肥販売業者への注意喚起を徹底する旨の事務連絡を発出いたしました。その後、平成二十八年度までに、ナス、ピーマン、トウガラシ、トマト、ミニトマト、スイートピーの六品目十八事例につきまして、県から報告がございます。

真島分科員 宮崎県は、このスイートピーの生育被害を都城市の農家の事例で初めて確認をして、それから緊急に、昨年、県内の調査をして、昨年だけで、ミニトマトが三戸、スイートピーが七戸、計十戸の農家が被害を受けていると確認したと言っておりますけれども、これは間違いないでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 間違いございません。

真島分科員 配付資料の二に、この間の被害発生状況と国や県の対応をまとめております。二〇〇五年農水省通知以来、トマト栽培農家に対する注意喚起を指示していたのに、十年以上も被害が起き続けております。二〇一四年三月四日事務連絡で初めて、トマト、ミニトマト以外のスイートピーなどの品目も示して注意喚起をしたのに、被害が後を絶っておりません。

 農水省にお聞きをしましたら、クロピラリドに耐性が低い品目を栽培する全ての農家に注意喚起を徹底できていなかった、周知徹底できているかどうかをつかんでもこなかったとおっしゃいました。

 宮崎県の例えばスイートピーの農家数、九十二戸ですよ。これはやれば徹底できると思うんですね。被害が出るのは非常に特定の品目で、その生産農家はどこかというのはわかっているわけですから、周知徹底はそんなに難しくなかったと思うんですね。これはやればできたんじゃないでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、品目によりまして、クロピラリドによる影響の程度はまちまちでございます。平成二十一年三月に農研機構が策定、公表いたしました被害軽減対策マニュアルにおきまして、作物ごとの影響度合いについて示しているところでございます。

 したがって、同マニュアルの公表後は、都道府県による農業者に対する注意喚起につきましても、ある程度品目等を特定し、重点的に行うことが可能となったものと考えておりまして、平成二十六年三月の事務連絡におきましても、被害を受けやすい各品目の産地ごとにきめ細かな対応を行うように促しているところでございます。

真島分科員 県にマニュアルを示して、ちゃんとやってくださいと十数年言い続けてきた、それで被害がずっと出続けているんですね。

 宮崎県農業経営支援課が昨年の十一月十八日に出した文書では、なぜ生育障害の危険性と対策が関係農家に徹底されていないのかということについて、過去の県内での発生についても軽度であったことからも、全ての農業者まで十分行き届いていなかったと言っているんですね。それで、今後の対応としては、耐性が低い品目の農業者全戸に周知すると。国や県の文書で農業者全戸に周知するという言葉が出てきたのは、これが初めてなんです。

 大臣にお聞きしますけれども、なぜこの生育障害の危険性と対策が関係農家に徹底されていないのか、いなかったのか、農水省も宮崎県と同じような認識なんでしょうか。

山本(有)国務大臣 まず、クロピラリドによる被害が確認されましてから、まずは、全国の都道府県に対する実態把握と注意喚起を行う通知を発出させていただきました。次に、農業・食品産業技術総合研究機構、いわゆる農研機構におきまして、被害の未然防止等のためのマニュアルを作成いたしました。

 それらによりまして被害の発生防止をやってきたところでございますけれども、これらの取り組みで、都道府県から報告される被害の発生について、年間一、二件程度で推移してきたということでもございました。

 今回、宮崎県で深刻な被害が発生したことを重く受けとめまして、昨年十二月でございますが、クロピラリド残留の可能性に関する情報を、粗飼料、家畜排せつ物及び堆肥の流通にかかわる者の間の伝達を十分にいたしまして、園芸農家に知らせる仕組みをさらにきめ細かく導入するということをいたしました。

 都道府県に対しましては、注意喚起用のリーフレットの配布等も行いながら、農業者に対し確実な情報伝達を行うよう強く指導したところでございます。

 遅きに失した感はありますけれども、今後は、徹底的にお知らせが十分に行き届くように頑張りたいと思っております。

真島分科員 宮崎県の見解は、これまで確認してきた被害が比較的軽度だったから、全ての農家に周知徹底することをなおざりにしてきたという反省が述べられているんですね。大臣も同じようなことを言われました。そうだとすれば、まさにこの被害というのは、もう十数年にわたって続いているわけですから、農水省の責任による人災であり、薬害だと私は思うんですよ。

 私、宮崎県の花き生産者連合会スイートピー部会の西岡正明部会長にお会いしてきました。今回被害が出るまで、農家はクロピラリドなど聞いたことがなかったとおっしゃいました。

 大臣にお聞きしますが、周知徹底ができていない上に、現場からの報告待ちをずっと続けているんですよ、この間。だから、農水省に今まで上がってきた事例というのは、実際の被害の広がりの氷山の一角じゃないんですか。

山本(有)国務大臣 平成十七年に、クロピラリドが原因と思われる園芸作物、トマト、ミニトマトの生育障害が確認されましてから、十一県から計三十六例の疑わしい事例が報告されております。被害の傾向につきましては、おおむね把握できているものと考えるところでございます。

 一方、クロピラリドによる生育障害というのは、一旦症状が出た後に回復するケースがございます。このようなものにつきましては、都道府県への報告が行われていない可能性も否定できないと考えているところでございます。

 昨年十二月に発出した通知では、このような症状が出た後に被害が回復した例も含めて、報告の徹底を求めているところでございまして、今後とも、被害状況の正確な把握に一層取り組んでまいりたいというように思っております。

真島分科員 宮崎県は、オリジナルスイートピーの品種改良に大変努力をされてこられました。その生産者や研究者の努力について、簡潔に御紹介ください。

西郷政府参考人 宮崎県におかれましては、県の総合農業試験場が、宮崎オリジナル品種としてスイートピーを十九品種育成されたほか、生産者の方みずからが品種改良を行っているなど、県を挙げてスイートピーの品種改良に取り組んでいるものと承知しております。

 こうした関係者の皆様の努力の結果、宮崎県は、我が国におけるスイートピー生産の半分を占める日本一の生産県になっていらっしゃって、さらには、宮崎オリジナルスイートピーが香港等へ輸出されているということでございまして、国内外での高い評価につながっているものと考えております。

真島分科員 オリジナル品種をつくるために、七年から十数年、選別や交配を重ねる努力をされているんですね。ジャパンフラワーセレクション二〇一二、切り花部門ベストフラワー賞、新花コンテスト二〇一二、第一位となりました紅式部。二〇一二年にドイツの園芸国際見本市の切り花部門で最優秀をとったロイヤルホワイト、どちらも、非常に世界に誇れる品種になっております。

 このスイートピー生産についても、巻きひげ取り作業に大変大きな時間がかかるということで、労働時間はバラやカーネーションの約三倍ぐらいかかる。宮崎県では、生産者へ寄り添う品種改良の努力も行っています。巻きひげがないムジカシリーズというのを育成して、労働時間が約一二%短くなった。こういう研究者、生産者の日夜の努力こそ、宮崎県をスイートピー大国にしてきたと私は思うんです。

 資料三につけておりますが、昨年十二月十七日、今回の被害に遭われました都城市のスイートピー生産者上原節雄さんが河野俊嗣知事宛てに出した申し入れ書です。これを一部読み上げますので、大臣の感想を聞かせてください。

 私は、都城市において平成七年よりスイートピーを栽培してきました。栽培当初は指導者もおらず、全てが手探り状態でありました。この間、他産地へ勉強に行ったり県などの指導援助等に依り今日では市場においても一定の信頼を得てようやく軌道にのり始めた所であります。

 今年も例年どうりの作業を行い、九月十日に定植いたしました。九月二十日頃より葉が縮れる現象が出始め、当初は「肥料の濃度障害だろうか」と思っておりましたが、枯れる株が出るなど障害は深刻で広範囲に広がり始めました。県の専門職員に診てもらうとクロピラリドに依る生育障害である事が判明いたしました。応急措置としてクロピラリドを土深くに流す為に水を掛け続け、枯れた株を改埴する為に活性炭の注入などを行い一万三千八百株の内五千株余りを改埴する結果となりました。この様な措置を行いましたが障害は根絶に至らず、現在も発生し続けており品質の低下と生産量の大幅な減少は避けられません。これによって経済的損失は甚大なもので途方に暮れております。又、これまで培ってきた市場関係者等への信頼を失う事を恐れております。

この訴え、大臣、どう受けとめられますか。

山本(有)国務大臣 上原さんの花卉園芸に対する熱心さ、これをまず感じたところでございますし、また、クロピラリドという農薬の副作用が、かかる甚大な被害を及ぼすということについて予測できなかったこと、そして、何とか水をかけたり活性炭注入を行ったりしてもなお十分な対策にならないという絶望感、こういったものに対して、我々、農業にかかわるものといたしまして、何らか対策を講じる必要というものを感じたところでございます。

真島分科員 農業共済では、本件のような農薬成分に起因する被害については対象になっておりません。国や県の直接的な被害補償の仕組みもありません。

 宮崎県は、生育障害発生圃場での再発防止に向けた技術検証のための実験圃場としてこの上原さんの畑を活用するという形で支援をしようとしています。

 また、私は非常に感心したんですが、宮崎県は、市場関係者等への信頼を失うおそれという上原さんの訴えを受けて、これも機敏に対応しているんです。昨年十二月二十七日には、県大阪事務所と県経済農業協同組合連合会が、上原さんが市場として取引している株式会社鶴見花きを訪問して、事の次第を説明しています。鶴見花きからは、上原氏のスイートピーを毎年購入してくれる顧客には説明と代用品の対応をし、上原氏のスイートピーは市場では高く評価されており、県に対して、上原氏の来年作に向けて支援に取り組んでほしいという要請があったということなんですね。

 お聞きしたら、上原さん、例年七百万円から八百万円の売り上げが、もうほとんど見込めない、その被害をもたらしたクロピラリドの危険を知っていて、何の規制もなく流通させておきながら、周知徹底さえ十分にしてこなかった農水省の責任はどうなるんだというふうにおっしゃっていました。

 県も、このように、上原さんに対して支援に動いております。農水省は、何らかの支援は考えていないんでしょうか。

山本(有)国務大臣 今般の事案を受けまして、農林水産省としましては、クロピラリドの被害発生の防止と、生育障害が発生した場合の取り組みを強化する必要があると強く認識をしております。

 このため、当省におきましては、昨年十二月に通知を発出し、関係者が一丸となって、堆肥にクロピラリドが含まれる可能性に関する情報を、川上の畜産農家等から川下の園芸農家まで確実に伝達する仕組みを導入するとともに、生育障害が発生した場合には、園芸農家から当該堆肥に係る粗飼料の輸入販売業者までその旨を伝達し、クロピラリドの残留量の低減に向けた取り組みの徹底を要請する、そういうようにしております。

 また、飼料、堆肥中にどの程度クロピラリドが残留しているかを明らかにするための実態調査を開始いたしました。

 今後とも、宮崎県初め各都道府県の関係者と連携しつつ、しっかりと対応していく所存でございます。

真島分科員 上原さんはこういうふうに言っていました。十一月から収入が皆無になり、ほかの仕事をしながら来年の準備をしている、植えかえのための肥料代などの負担もあり大変だと。もし土壌を入れかえなければ生産がもとに戻らないとなった場合、多額の費用がかかりますね。

 二月六日の宮崎日日新聞で、県花き生産者連合会の西岡スイートピー部会長はこう言っています。本県のスイートピーは日本の五割以上のシェアを誇り、被害が続いたら大変だ、被害農家の損失を補償する制度がないことに対して、何らかの形で補償する仕組みを検討してほしいと言っております。

 スイートピーの被害の確認は、二〇一六年の宮崎県が初めてなんです。中でも、この上原さんの被害は大変深刻なんですね。ですから、県は、いわゆる生育障害発生圃場での再発防止の実験圃場として上原さんの畑を活用するという知恵を絞って支援をしているわけなんですね。

 私、今後のことを考えても、これだけの被害のところが生産を再開できるようになるかどうかというところを見届ける実験圃場という位置づけというのは、非常に重要なものだと思うんですね。

 農水省としても、そういう前向きの支援は考えられないでしょうか。

山本(有)国務大臣 農業者の畑を再発防止に向けた実験圃場として活用する宮崎県のように考えないかということでございますが、まず、クロピラリドによる農作物の生育障害に関する技術的な対応について、現在、農研機構において、農作物の生育障害が生じ得る堆肥中のクロピラリド濃度を明らかにするための緊急研究を実施しているところでございます。

 今後、こうした研究の結果を踏まえまして、クロピラリドによる農作物の生育障害の発生の防止、被害の軽減に向けて、技術的にどのような対応が可能か、特に宮崎県と相談しながら、最善の策を講じていきたいというように思っております。

真島分科員 昨年十二月十六日の定例記者会見で知事は、まずそういったものを入れないことが大事だ、そういったものは使わないようにすればいいんだというふうに言っております。

 二月六日の宮崎日日新聞で、県酪農協議会の石川幸保会長は、国には、粗飼料を輸入する際の検査や分析など水際対策の強化を求めたいと言っております。

 先ほども紹介されましたけれども、昨年十二月二十七日に農水省が新たに通知を出されておりますが、これは相変わらず注意喚起と、そして、事前に試験、チェックをしてくださいと。それと、新たにいろいろ緊急対応研究する、今おっしゃったのはそういうことなんですけれども、本当にこれだけで再発防止を確実にできるんだろうかというふうに思うんです。

 例えば、生物検定をしなさいということなんですが、この判定は短くても十日前後、三週間から一カ月かかる場合もあります。

 上原さんの場合は、前年まで堆肥を買っていた畜産農家から、ことしは自家使用で手いっぱいだから売れないと急に言われて、急遽、近所の知り合いの畜産農家の堆肥を購入されました。現場の農家にお聞きすると、そんな一々堆肥を検査することなんかできないよというふうにおっしゃっています。

 先ほどから紹介しています西岡スイートピー部会長は、生物検定を農家で実施するのは大変だ、飼料の輸入元、国の責任でしっかりチェックをしてほしい、牛の生育が盛んな地域でもあるので、堆肥が使えなくなると地域全体が困るんだ、安心して使えるようにしてほしいとおっしゃっていました。

 結局、流通の各段階でそれぞれ注意してくださいねという内容なんです、昨年の通知というのは。一番の再発防止策は、こうしたクロピラリドを使用した粗飼料は輸入しないということじゃありませんか。なぜ、被害が出続けている無登録農薬が残留する粗飼料の輸入を規制できないんでしょうか。

今城政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、我が国は、粗飼料につきまして大体年間百八十万トン輸入しておりまして、そのほとんどを、クロピラリドの使用が認められている米国、豪州、カナダから輸入しております。このクロピラリドという薬剤につきましては、家畜や人に対する毒性は低い、また、時間がたてば家畜の体内からほとんど排出される、ですから排せつ物に出てしまうということなんですけれども、そういうような物質でございます。

 このため、クロピラリドが残留しているおそれがあることだけをもって、その使用をしている国からの粗飼料の輸入を全てとめてしまうということは、我が国の酪農、肉用牛生産が成り立たなくなるおそれもあるということで、そこをすぐに全部とめてしまうというのは困難でございます。

 また、そうではなくて、残留基準値をちゃんと計測してチェックすべきという御意見かと思いますけれども、現在の残留検査で検出できる濃度よりも低い濃度で園芸作物に影響が出ている可能性というものが非常に高くて、そこをまず水際で計測できるという技術がまだないものでございますので、先ほど来、農研機構も通じまして、その技術を一生懸命開発しているところですが、したがいまして、にわかにそういう制度をとるというのは困難でございます。

 そういうことも含めまして、先ほど来、昨年の通知に基づきまして、輸入業者、それから、それを販売する際のこと、また、相手の輸入先国に対しても、クロピラリドが入っているかどうかということについての情報伝達についても協力を依頼しているということでございます。

 したがいまして、いろいろな研究開発、測定できること、対策、こういうものについて、園芸作物に被害が生じないようにすることについて、さらに何ができるか検討してまいりたいというふうに考えております。

真島分科員 二〇〇二年十一月の衆院農水委員会で、我が党の中林よし子議員の質疑で、日本は四十の農薬でしか残留農薬基準がない、諸外国で飼料生産に使われている無登録農薬の実態について国は把握していないということが明らかになって、当時の大島理森農水大臣は、外国における農薬の使用実態の調査を行うと約束されました。

 その後、調査が行われて、日本が残留農薬基準の制度で大変おくれているということが明らかになって、二〇〇三年五月十五日の農水委員会で須賀田生産局長が、まことに恥ずかしい結果だ、農薬の成分等を追加して外国に負けないようにしたい、現在検討を行っている、無登録の農薬については飼料の残留農薬基準を追加すると表明されて、その後、二〇〇五年にクロピラリドの被害が確認されて、この間何をしてきたんだと言いたくなるんです。

 畜産の盛んな宮崎県は、貴重な有機質資源である堆肥が非常に豊富にあります。それぞれの地域で、農作物が元気に育つ健全な土づくり、畜産農家と耕種農家が手をつなぐ耕畜連携、資源循環型農業に力を入れております。口蹄疫からの再生に大変な苦労をされてきた宮崎県の畜産農家は、堆肥で被害が出たら、地域のきずな、信頼関係が壊れてしまう、なぜ水際規制をしてくれないのかとおっしゃっています。

 飼料安全法三条三項では、基準または規格について、「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改正がなされなければならない。」とありますが、このクロピラリドが、耐性の低い作物に、微量でも生育に影響を及ぼすという科学的判断があるんですから、これは輸入規制すべきじゃありませんか、大臣。

山本(有)国務大臣 二〇〇三年当時四十あった残留農薬基準の設定が、現在は百二十になっておりまして、それぞれ各分野で努力を重ねているわけでございますが、残念ながら、この輸入粗飼料に残留するクロピラリドにつきましての残留基準値の設定は現在できておりません。したがって、その手前に、精緻な研究や分析が必要というように考えております。

 また、現在、輸入飼料や国内の堆肥の中にどの程度クロピラリドが残留しているか等の実態調査を行っているところでございまして、その結果を参考としまして、畜産業に必要不可欠な飼料を安定的に確保するという観点に立ちまして、家畜のふん尿を原料とした堆肥により園芸作物に被害が生じないようにするために、さらに何ができるかを検討してまいりたいというように考えるところでございます。

真島分科員 時間が来ましたから終わりますけれども、生産者や産地を守れない法律なら、直ちに改正しなきゃいけないですよ。食と農を壊す経済協定はしゃにむに強行するくせに、生産者や産地を守る法律づくりは十数年以上やっていない。何の検討もしていない。これは許されませんよ。頑張ってください。

 終わります。

野中主査 これにて真島省三君の質疑は終了いたしました。

 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾分科員 民進党の鷲尾でございます。

 ちょっと風邪をこじらせてしまいまして、ちょっと聞き取りづらい声かもしれませんが、三十分間、よろしくお願いをいたします。

 まず、もう地元でもかなり心配の声が上がっております平成三十年問題でございまして、減反の廃止ということで、過去も当委員会や農水委員会でも質問させていただきましたが、減反の廃止という言葉のイメージが現場にどういう影響を及ぼすのか。総理も、農家がつくりたいだけ自分たちのつくりたいものをつくる、こういう転換をやってきたんだという、国際会議等あるいは国会答弁等されておりますが、実際は、過去の質疑の中では、国の関与をなくしていく、こういう方向性であったと思います。

 この、国の関与をなくすということも実は現場ではなかなかうまく理解されていないところでございまして、今回はそこをしっかりと明らかにしてまいりたいと思っているところであります。

 具体的に、県並びに市町村の地域再生協議会の役割は基本的に変わらないという認識でありますが、県は生産数量目標をつくるということになりますが、そういう認識でよろしかったでしょうか。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございました米政策の見直しでございます。その内容は、一言で言えば、平成三十年産を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、需要に応じた生産が行われるようにするということに尽きるわけであります。

 今御指摘ございました各都道府県の農業再生協議会におきましては、国からの情報提供や支援措置を踏まえまして、それぞれの産地、生産者が、みずからの農産物の販売実績等も分析し、どのような作物をどれだけつくるかという戦略に基づきまして、需要に応じた生産を推進することができるよう現在検討が行われているところでありますが、具体的にどういうやり方をするかという点につきましては、それぞれの自主性に委ねているというところでございます。

 農水省としましては、引き続き、現在、需要に応じた生産推進キャラバンというようなことで各地にお伺いしておりまして、今やっておりますきめ細かな情報提供ですとか、あるいは戦略作物の本作化等を進める、こういった内容について、各関係者に丁寧に御説明をしているというところでございます。

鷲尾分科員 端的に、都道府県段階の再生協議会でいわゆる市町村に割り振る生産数量目標を決定する、こういう認識でよかったですか。

柄澤政府参考人 そういうところもあるかもしれませんし、別のやり方をするところもあるかと思います。それぞれのやり方、その自主性に委ねているというところでございます。

鷲尾分科員 自主性とおっしゃいましたけれども、一つのモデルとして、そういうことは農水省としては頭はあるということでいいですね、そうしたら。

柄澤政府参考人 そもそも今回の米政策の見直しの趣旨が、各現場で、それぞれの御判断によって需要に応じた生産を進めるということでございますので、国からこうしなさいと言うことはございません。

鷲尾分科員 自主的自主的といっても、ある程度のモデルがないと、国がやることに対して、県や市は何をやっていいかわからないということになりはしませんか。そこはある程度、自主的自主的といいながらも、自主的にうまく決定できるように、ある程度の、モデルの提示とかというのは、これまでもさまざまな補助事業でやってきたはずですよ。そこはどうするんですか。

柄澤政府参考人 委員も御案内と思いますが、二十七年産、二十八年産、それぞれ各地で、まさに農業再生協議会を中心にいろいろな議論を重ねていただきまして、二十七年産、二十八年産におきましても、既に、単に国の配分を守ればいいということではなくて、多くの県で自主的に、いわゆる深掘りというようなことがされております。

 したがいまして、三十年産から全く何か新しい世界に入るとか新しいやり方をするということではなくて、二十七年産、二十八年産、もう既に、実は三十年産以降のような状況の中で取り組みを進めておられるというふうにも言えるわけでございます。

 したがいまして、今のやり方を、基本的には、二十九年産もそうでございますし、三十年産以降も続けていっていただければ、需給あるいは価格も安定してくるということが各地で認識されているというふうに理解しております。

鷲尾分科員 そうだと思うんですよね。そのためのキャラバンで今いろいろやられているということですから、今の答弁に尽きているというふうに思います。

 市町村の再生協議会というのも、これも、今は都道府県段階、あえて細かく聞いています、市町村についてもどうかというところは一言言っていただきたいです。

柄澤政府参考人 都道府県もそうですし、各市町村に今、農業再生協議会、多くの再生協議会が設置されております。この再生協議会におきましては、市町村のみならず、各種の関係団体なり、あるいは大規模な生産者などもお入りいただいているわけであります。

 一言で言えば、その地域でどういう作物をどれだけつくるかということを検討していただいておるわけでありまして、いわば地域営農の戦略本部としての役割だと思います。そういった役割は三十年産以降も続けていっていただくということでございます。

鷲尾分科員 ですから、市町村の再生協議会の役割というのは、一言で言うとこれまでと変わるところはほとんどないんだ、そういう認識でよかったですか。

柄澤政府参考人 今現在はまだ国の配分というのがございますので、それが県の協議会、市町村の協議会というふうにいくわけでございますけれども、三十年産以降も、今と同様、配分はありませんけれども、みずからその地域で何をどういうふうにつくるのかということを議論して決めていくという点では、同じだということだと思います。

鷲尾分科員 先ほど、二十八年、二十九年とやっていって、三十年産もこれまでどおりやっていただくとうまくいくんじゃないかという話を、キャラバンでもそういう話をしていっているんだ、こういう話をされていますから、ということは、市町村も基本的には変わらない、いろいろおっしゃっていたけれども、きっとそういうことなんだろうなというふうに思いました。

 大臣、どうですか。今話を聞いていて、きっと大臣はそうなんだろうなというふうに言ってくれると思いますけれども、いかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のように、私も同様に認識しております。

鷲尾分科員 大変クリアになって、ありがとうございました。

 実は、この生産調整の配分方法の変更、いわゆる減反の廃止といいますが、実態としては生産数量目標の配分方法の見直し、これも若干ニュアンスとして言い過ぎなところはあるかもしれませんが、生産調整のやり方が変わりますよということだと言い過ぎではないと思います。

 これにつきまして、実は、平成三十年からいわゆる米の直接支払いがなくなりますよということが、非常に生産現場では心配を生んでいるわけでございます。

 御承知のとおり、今、反当たり七千五百円の米の直払いがございます。もともとは一万五千円だったわけですが、今その予算規模は約七百三十億程度というふうに聞いておりますが、この七百三十億は、いわゆる稲作農家が生産調整を守るということを前提にこれまで受け取っていた金額です。

 この七百三十億がなくなるということは、かなり、これまでもらった人たちからすると不安になる。マクロ的に見ても、きょうは齋藤先生もお見えですけれども、七百三十億なくなるというのはかなりの影響です。この影響がどういう方面に出てくるかというところと、それに対して、どう対策というか対処しようとしているかということを次に明らかにしたいというふうに思うわけであります。

 まず、この七百三十億でございますが、これまでは米農家に配分されてきた。私は、生産調整の方法も変わりますから、農家の経営の環境が激変しないためにも、この七百三十億はやはり米農家に、名称を変更しても何でもいいですけれども、うまくこの七百三十億が渡るような形をちゃんととらないとよくないと思うんですが、この点、当局としてどうお考えでしょうか。

齋藤副大臣 鷲尾委員御指摘のように、二十九年度では七百十四億円ですけれども、これがなくなるということで、農家が不安になるということは当然私どもも認識をしております。

 ただ、予算編成におきましては、累次の御質問がございましたけれども、毎年度、その時々の情勢が変わりますので、その情勢に応じて全体としてベストな編成になるようにしていくというのが基本方針でありますので、この米の直接支払い交付金も平成三十年度から廃止ということになっておりますので、三十年度の農林水産予算の編成過程において、この点をどう処理していくか、全体として考えていくべき問題だろうと考えております。

鷲尾分科員 よく御案内のとおりだと思いますけれども、所得が一方で下がりますから、実際、七百十四億ですね、そうしたら、七百十四億下がるということは、もらわれていた人にとってはかなりのマイナスだ、これをどうにかして埋め合わせをしなきゃいけない。どうにかして埋め合わせをしなきゃいけないときに、生産調整の方法が変わる。

 そうすると、少なくとも現場ではですよ、現場では、広域的に国が生産調整を配分するようなことはしないということであれば、一方で、生産調整を守るインセンティブの片割れが、戦略作物の助成とかほかにもありますけれども、少なくともその片割れがなくなる、これは大きい、ではもうちょっとつくろうかなと、ある意味、所得の減少が生産の増大につながってしまう。

 これは、従来どおりやっていればうまく生産調整できますよという世界を壊しかねない状態だと思っております。この点をどういうふうに認識しているか、お答えいただきたいと思います。

柄澤政府参考人 まず、米の直接支払い交付金の見直しの理由でございますけれども、これは平成二十五年末に決定したわけでありますが、一つは、米は、やはり麦、大豆などと違いまして、十分な国境措置があって、諸外国との生産条件の格差から生じる不利はない、あるいは、全ての販売農家を対象とすることが農地の流動化のペースをおくらせる、さらには、米については潜在的生産力が需要を上回っているというような状況を勘案して、二十九年度限りで廃止することとしたわけであります。

 一方、今委員も御指摘のございましたように、麦、大豆、飼料用米等へのいわゆる水田活用の方の直接支払い交付金につきましては、基本的にこの枠組みは三十年産以降も維持することとしておりますので、考えてみますと、主食用米とそれ以外の差が、三十年産以降はかえって今より開いていく。したがいまして、相対的には主食用米の生産メリットはむしろ低下していくというふうに考えているところでございます。

鷲尾分科員 メリットがなくなるから、基本的には増産ということは起こらないだろう。これはもちろんやってみなきゃわからないところでありますが、そのメリットがなくなるから、それを生産量によって取り戻そうという方もいないわけではないだろうなというふうに思うわけでありまして、そこはしっかりと注視していただかなきゃいけないというふうに思うわけです。

 それと、先ほど来申し上げておりますが、マクロ的に言えば、七百十四億、稲作農家さんからなくなりますよという形になります。これをどこに渡すかによって、大分、例えば担い手の育成等にもかなり影響があるんじゃないかというふうに思いますが、この点はどうお考えになっていますか。

齋藤副大臣 米の直接支払い交付金については、平成二十五年末の経営所得安定対策の見直しの中で、今、柄澤統括官から御説明いたしましたけれども、米が十分な国境措置があるということとか、それから、全ての販売農家を対象とすることはむしろ農地の流動化のペースをおくらせる面があるということの政策的な課題が指摘をされたということで、二十六年産米から単価を削減し、平成二十九年産までの措置とした上で、それだけで終わらせなくて、中間管理機構というものを我々は準備させていただいて、農地集積を進めていくという前向きな施策も組み合わせてやっているところであります。

 さらに、今般決定されました農業競争力強化プログラムにおきましても、今御指摘の、担い手の皆さんのリスクを軽減し、意欲的に経営を発展させていく見地から、この農地中間管理機構が中間管理権を設定した農地で基盤整備する際などには農家の負担を軽減するという措置も行うということにしておりまして、こういうトータルな絵姿の中でこの担い手問題も御理解いただければありがたいなというふうに思います。

鷲尾分科員 そういえば、去年も柄澤さんとこのやりとりをしたなと今思い出したんですけれども、今、齋藤副大臣からも、済みません、御指摘がありましたが、一言、ちょっとだけ、文句を言うわけじゃないですけれども、そういう視点もあるということをちょっと指摘申し上げたい。

 農地の流動化なんですけれども、御承知のとおり、今はもう、高齢化で田んぼを放したいといっても、受け手がいないんですよ、担い手がいないんですね。それで、集積化する、集約化するという方向性は、これは大事です。そういう意味で、中間管理機構で、これがうまく運用されているかどうかは別として、そういう制度を準備して促していこうという姿勢は私はいいと思うんですが、ただ、直払いがあるということが農地の流動化にプラスかマイナスかで見たときに、私、農地の流動化に直払いがあった方が、結論から言うとプラスだと思うんですよ。

 預かってくれる人がいないんですよ、今。預かってくれる人がいなくて、預かる人の立場からしたら、一銭もならぬその土地を預かっても、もうつらい、自分たちもたくさんやっているし。しかも、あんた、個人的に信頼してくれて、私に土地をちょっと耕してくれというのはいいけれども、そこまで行くの大変なんだよ。しかも、別に何かついているわけでもない。

 こんな農業経営の状況の中で、せめて直払いがついていれば、その土地に七千五百円ついていれば、まあ耕作してもいいかなという人たちはいるんですよ。その点を、そういう部分を見ないわけにはいかないんじゃないかと思うんです。

 今や誰も、昔は、その田んぼを貸してくれ、そのかわりこっちも耕作料を払うから貸してくれという農家さんがたくさんいらっしゃった。そうやって、今の大規模農家というのはつくられてきましたよ。でも、今は、もう預かりたくない、こういう担い手さんが多くいらっしゃるんです。

 その現状を考えると、果たして直払いをなくしてしまうことが本当に農地の流動化に資するのかどうかということは、そういう点もあるということをぜひ感じていただきたいんです。

 大臣、どう思いますか、副大臣。

齋藤副大臣 この点は、今まで鷲尾さんたちの政党とも大議論を繰り広げてきたテーマだと思います。

 一方で、生産調整の仕組みそのものが、これから人口も減ってお米の需要も減っていく中で、今のようなやり方で割り当てていくということを続けておりますと、農家一軒当たりの生産できる量というのはどんどんこれから減っていく。そうなりますと、どこかでこの生産調整という仕組みそのものが行き詰まってくる。

 そういうことを考えますと、しかし一方で、水田は大事だということで、生産調整というものを行き詰まる前に見直しながら、しかし水田は維持していくために、主食米以外の、飼料米、そういうものの生産で何とか所得が確保できるようにしていこうというのが方向であります。

 もちろん、その途中でいろいろなことがあろうかと思いますけれども、全体として農家が成り立つように措置をしていきたいというのが今の方針でございます。

鷲尾分科員 担い手の置かれている状況は極めて厳しい、そういうことをぜひもうちょっとしっかり認識をしていただきたいなというふうに思います。

 戦略作物助成があるから、それでも集積できるんだよ。本当に現場はそうなっているかなというところは、中間管理機構が本当にちゃんと運用できているんですかというところとあわせて、これは政策当局として現場をちゃんと見てもらわなきゃいけないというふうに思いますね。私は、ちょっとその見方が甘いんじゃないかということを指摘させていただきたいと思います。

 一方で、今、戦略作物の話は三十年産以降続くし、結局、田んぼを集積するに当たってもそれでメリットがあるからいいんじゃないか、こういう話をしていましたが、では、戦略作物の中で特にお金を食っていると思われている、思っているわけですけれども、飼料用米について、早くも現場では、この飼料用米の予算が続くんだか、こういう話がもう来ています。

 この予算、どれぐらい飼料米に使っているのか、そして今後の見通しについて、政府としてしっかり予算確保できているぞというところが言えるのか、御答弁いただきたいと思います。

柄澤政府参考人 まず、水田活用の直接支払い交付金全体の近年の予算額の推移を見ますと、平成二十七年度で二千七百七十億円、平成二十八年度で三千七十八億円、今度提出しております平成二十九年度予算で三千百五十億円ということで、しっかりと増額確保して計上しているところであります。この中で飼料米にお支払いしている実績を見ますと、一番最近の実績が出ております平成二十七年度で見ますと、六百六十八億円ということでございます。

 この予算につきましては、御案内のとおり、平成二十七年三月の食料・農業・農村基本計画におきまして、平成三十七年度において百十万トンまで生産を伸ばすという努力目標を掲げております。この目標の確実な達成に向けて、農水省として、不断の点検を行いながら、必要な予算をしっかり確保してまいる所存でございます。

鷲尾分科員 今の柄澤さんの話だと、平成三十七年に百十万トンを達成したい。予算的にいうと、どれぐらい必要になると思っておられるんですか。

柄澤政府参考人 これはいろいろな変数があって、一概にすぱっと言えることではございませんが、一定の前提を置いて百十万トンの試算をいたしますと、これは単収がどれぐらい伸びるかということで大分幅が出てまいりますが、一つの試算として、千百六十億円から千六百六十億円という試算がございます。

鷲尾分科員 すごいですね。でかくて約一千億上がるかもしらぬ。

 これはどこから捻出するのかな。どこから捻出しようとお思いですか、大臣。

山本(有)国務大臣 平成三十七年のことでございます。消費税も導入されておるところでございますし、さまざまな財源を見通して、財務当局と相談したいと思っております。

鷲尾分科員 私は、米の直払いの分もきっとこっちに幾分か振り分けていくんだろうな、こんなふうに考えているわけでありますが、そんなイメージでいいですか。

柄澤政府参考人 これは先ほど齋藤副大臣から御答弁申し上げましたが、御案内のとおり、予算は、予算単年度主義で、毎年毎年の政府全体としての編成でございます。今の時点で、将来の予算の中身についてコメントすることはできないところでございます。御理解いただきたいと思います。

鷲尾分科員 農水省全体の予算がどれだけふえるかということはありますが、飼料用米だけですよ、飼料用米だけでとってみても、最大の試算で約一千億かかる。平成二十七年度、六百六十八億ですけれども、多分、足元、かなりふえていると思いますね。

 というのは、需給調整がうまくきいているのは飼料用米だと農水省も説明していますから、ということは、この飼料米に配るのは平成二十八年でも相当ふえてきているんじゃないかと私は思うんです、数百億単位で。わかりませんよ、わからないけれども、ふえてきているんじゃないかと思うんですね。これを、少なくとも平成三十年で七百三十億が、米の直払いがなくなると言っているわけですから、私は、これは相当、農水省内で予算の分捕り合いがもう始まっているんじゃないかと思うんですね。

 ただ、私は、飼料用米であれば、少なくとも水田をうまく維持していこうという形の予算ということでしょうから、そこは逆にしっかりアナウンスしてもらった方が、水田でしっかりと作物をつくっている現場の農家さんには安心感を与える一つの材料じゃないかなというふうに思っておりまして、この点はぜひ御考慮をいただきたいというふうに思います。

 時間がなくなってまいりましたので、次の質問に移りたいというふうに思います。

 輸出の質問もしたかったんですけれども、これはちょっと、最後、時間が余ったらにして、圃場整備の話であります。

 中間管理機構で、今回も農水省が法案提出予定でございますね。土地改良法の改正をして、中間管理機構で預かった土地については、地元の同意がなくても、中間管理機構が主体となって圃場整備を行うことができる、こういう話でございますけれども、恐らく、中間管理機構をつくったときに、前の一万五千円から七千五百円にしたときの予算を大部分、中間管理機構に入れていますから、またさっきの話じゃないですけれども、今度、平成三十年でなくなるだろう予算も中間管理機構にある程度配分していくことを念頭に、こういった法改正も行っていくんだろうというふうに思います。

 話としては、私が質問させていただきたいのは、中間管理機構をつくったときにも、我々は法案に賛成させていただいたんですが、かなり、いろいろなメリットがあります、いろいろなメリットを地域の皆さん方に上げますから、中間管理機構にどうぞ土地を預けてください、こういう話をしています。

 中間管理機構を利用すると、非常に圃場整備がうまく円滑にいくということは、それはもちろん大事なことなんですが、実は、圃場整備をされている方と、中間管理機構を利用する方、そしてこの先、法案改正によってさらにその機能が拡充されることによって、よりメリットを受ける地域の方と、もともと圃場整備をして、地元負担が結構きく中でやっている皆さんと、かなり格差があるんじゃないか、こんな議論も出てきております。

 この点、どのようにお考えになっているか、お聞かせください。

佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。

 今国会に提出を予定しております土地改良法の改正案でございますけれども、これは、農地中間管理機構が借り入れている農地につきまして、農業者からの申請によらずに、都道府県営事業として、農業者の費用負担や同意を求めずに基盤整備事業を実施できる、そういった制度を創設したいというふうに今現在検討しているところでございます。

 その際、既存事業との不公平感という御指摘がございました。

 我々といたしましては、現実に、予算といたしましては公共事業として実施することになります。こういう不公平感とともに、公共性、公益性を確実に担保するといった観点も重要だと思います。

 そういう意味で、農地中間管理機構が借り入れた農地が一定規模以上の面的なまとまりがある、さらには、農地中間管理機構の借入期間がある程度長期にわたってある、こういったような要件を設定することにしております。

 また、整備されました農地が直ちに転用されるといったことを防止する措置もあわせて講じる、こういったところが従来の事業とは違ったところ、新たに付加する要件だと思っておりますので、公平性の観点から、不公平感が生じることのないように制度設計及び実施をしてまいりたいというふうに思っております。

 なお、既存事業におきましても、担い手への農地の集積率や集約化率が一定以上となる場合には、促進費というものを交付いたしまして、農家負担実質ゼロというふうになっておりますので、そういったことも踏まえまして、不公平感が生じないようにきちんと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

鷲尾分科員 そうしたら、今の促進費、私は非常にいい制度だと思っていまして、これは地元でもよく私説明しているんですけれども、結構知らない方が多いです。公平の確保ということで今の促進費の事例を出されましたが、では、これをもっとPRしなきゃいけないんじゃないですかね。もっとPRしなきゃいけないということは思います。

 ただ、これも、これからやろうという人たちが、本体工事が終わるぐらいまでに申請しなきゃ間に合わない話ですから、もう既に終わった人からするとやはり不公平だという指摘があるのは免れないので、そこはちょっとうまく工夫する必要があると思います。

 最後に、日本型直接支払いなんですけれども、これは多分皆さんもよくお聞きになっていると思いますが、とにかく、具体的には、農地維持支払いと資源向上支払い、相当使い勝手が悪いという話は聞いておられると思いますが、その認識と改善策について、あわせて聞きたいと思います。

佐藤(速)政府参考人 いわゆる日本型直接支払いのうち、多面支払いと言われているものにつきまして、現場からさまざまな声、我々も承知をしております。

 特に、農地維持支払いと資源支払い、こういったものについて、経理が面倒だとか、あるいは、長寿命化の方の予算が逆に足りなくなって、しかし経理が別になっているので使えない、さらには、書類が非常に煩雑だといったような声、我々としても承知をしております。

 平成二十六年に制度改正しまして、二十七年から、日本型直払いということで法律に基づく制度になったのをきっかけに、多面機能支払いでは面積が大分ふえました。新たに取り組んでいただくところも出ました。

 そういったことからいうと、これまでも制度改善に取り組んできたつもりではございますけれども、新たに取り組まれたところにおきましては、なかなか使い勝手がよくないのではないかという声もあるのではないかと思います。

 そういったことで、引き続き、書類の削減といったものはこれまでもやってまいりましたけれども、さらに工夫ができないかということは考えてまいりたいと思いますし、来年度、平成二十九年度からは、資源向上支払いのうち、長寿命化とそれ以外で区分していた経理、これを一本化できるように、こういったような運用に改めまして、事務の簡素化を図りたいというふうに考えてございます。

鷲尾分科員 そこまで問題点をわかっておられるので、ぜひ適時に対処をしていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

野中主査 これにて鷲尾英一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、斎藤洋明君。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。先ほど質問に立ちました鷲尾議員と同じ新潟県選出の斎藤でございます。よろしくお願い申し上げます。

 三十年産米から、幾つか制度が変わります。そのいわゆる三十年問題について、二点、まず冒頭、お伺いをしたいと思っております。

 まず第一に、生産調整を数量をもって示す方式が転換をするということで、三十年産米から主食用米の価格が暴落するのではないかという大変な危機感が現場ではあります。

 もちろん、個々の農家には努力していただいても、需給の問題から来る価格の暴落というのは、一軒一軒の農家の努力だけでは吸収し切れないものがあります。ですので、引き続き国が方向性を示して、自治体や農業再生委員会などの各団体が責任を持って数値目標を示して、引き続き転作の維持に努めるんだという仕組みが必要だと思っておりますが、政府の見解をお伺いしたいと思います。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、米の直接支払い交付金を二十九年産で廃止いたします。三十年産を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、生産者みずからの経営判断により需要に応じた生産が行われるようになります。

 国としては、三十年産以降も、全国の需要見通しに加えて、各産地における販売、在庫の状況に関するきめ細かな情報提供を行います。また、麦、大豆、飼料用米等の戦略作物の生産に対する支援もしっかり行うことでございます。

 また、三十年産以降も、県、市町村や関係団体が構成員となる県や市町村レベルの農業再生協議会におきまして、国からの情報提供、支援措置を踏まえて、各産地、生産者がみずからの農産物の販売実績等も分析しながら、どのような作物をどれだけ作付けるかという戦略に基づきまして、需要に応じた生産を推進するということになろうと考えておりますので、こうした枠組みをしっかりと応援してまいりたいというように思っております。

斎藤(洋)分科員 大臣、ありがとうございます。ぜひ、この三十年産米以降の、生産調整の仕方にかわるもののやり方を御検討いただきたいと思っております。

 あわせて、きょうも再三議論があったようでありますが、米の直接支払い交付金の七千五百円の今後であります。

 地元で私はおとといも、地元に新潟県胎内市というものがありますが、その胎内市の農協の青年部の意見交換会にも出席させていただいて、その前は、例えば新発田市の豊浦地区の青年有志、農業青年、それからその前は五泉市有志というふうに、特に若手を中心にいろいろ意見交換させてもらっています。その中で、この七千五百円の今後のあり方について、やはり関心が集まっていることは事実としてあります。

 米の需給ギャップの解消という観点からは、私も、総づけで全農家にこれをつけていくというのはなかなか厳しいと思っております。厳しいと思っておりますが、一方で、若手の農家からしたら、事業として成り立たせていくためには、やはり直接支払い交付金にかわる仕組みが欲しいという声があるのも事実であります。

 そこで、若手を中心に、もちろん年齢で一律に切る必要はないんですが、今現在、あるいはこれから営む営農の将来性ですとか、そういった観点で絞りをかけた上での新たな後継事業としての補助を創設すべきだというのが私の考えですが、政府の御見解をお伺いしたいと思います。

柄澤政府参考人 御案内のとおり、農林水産予算につきましては、毎年度、その時々の行政ニーズに応じまして各施策の予算額を増減するなど、全体の編成を行っているわけであります。

 今御指摘の米の直接支払い交付金、これは二十九年度予算では七百十四億円でございますが、平成三十年度から廃止することとなります。したがいまして、三十年度の今度の農林水産予算の編成過程におきまして、この予算の廃止も踏まえた上で、全体としてどのように予算を措置していくべきか、省全体としてしっかり検討してまいる所存でございます。

斎藤(洋)分科員 ぜひ前向きな検討をお願いしたいと思います。

 続きまして、農業機械の問題についてでございます。

 農業競争力強化プログラムでも取り入れられていて、非常に産地の期待も強いのが農業機械の値下げということですけれども、この農業機械の補助につきまして、産地の意見を伺っていますと、これは国と県との補助、一体の話なんですが、使い勝手が余りよくないものが多いという意見が非常に多くあります。

 その使い勝手というのは、例えば、もちろん経営規模のような受け手の条件の話もありますし、機械のスペックの話もあります。こんな大きいものは必要ないんだけれども、これでないと支給が出ないというような話もあります。その補助の収入も雑収入に計上されますので、翌年、税として徴収される分もありますので、見かけほどの補助にはならないというふうな話もあります。

 私は、いろいろな方々と意見交換をしての感想としましては、機械化あるいは機械の更新によって高度化していく農家もあれば、逆に、機械の方は節約して、そのかわり働き方で工夫をするとか、本当に創意工夫の余地はまだまだあると思います。中山間地域であれば、機械を更新するよりも、むしろ働き方を工夫した方がとかいう意見もやはり聞かれます。あるいは、作物をもっと広げたいとかですね。

 そういった観点からしますと、むしろ、この機械の購入補助というのは、将来的には、機械の購入に限定した補助ではなくて、経営を先進的にしていくための補助という形にしてもらって、その中で選択肢の一つとして機械購入に充てるもよしという方が私は農業の先進化に資するのではないかと思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。

細田大臣政務官 まず、改めまして、斎藤先生におかれましては、日ごろから農林水産行政に対して御指導、御鞭撻いただいていることに心から御礼を申し上げます。また、特に、新潟県の農業の振興、発展については、本当にさまざまな前向きな御意見をいただいていることを本当にありがたく思っております。

 私も、斎藤先生とともに力を合わせて、新潟県の農業の振興のためにまた頑張ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

 今御指摘ございました、確かに、非常にその支援メニューが使い勝手が悪いところがあるんじゃないかというような現場の声は私も耳にするところでございます。

 農林水産省はさまざまな支援メニューを持っておりますけれども、ただ、他方で、この支援メニューが国の政策の方向性に沿って構築されているということ、また、当然、税金を使って行われるということでございますから、そこにはさまざまな要件の制約があるということはぜひ御理解を賜りたいというふうに思っております。

 現場の意見を踏まえて、詳しくは御紹介をいたしませんが、私どもの支援メニューについては、さまざまな、例えば、その支援の対象の追加でありますとか、あるいは要件制の緩和というような措置をとっているところでございまして、こういう点についてまた具体的な御要望等があれば、ぜひお話を賜れれば、こういうふうに思っております。

 御提案のありました、使い勝手のいいといいますか、ある種の、経営の方針に沿って支援を行うというようなメニューは十分検討に値するというふうに考えておりますけれども、また、その要件制でありますとか支援の対象等々については、一つの問題提起ということで受けとめさせていただいて、今後、斎藤先生とともにまた考えていければというふうに考えているところでございます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 今の質問と一連の流れと御理解をいただきたいんですが、園芸作物を営む複合経営をやっている方が若手では非常に多いです、私の地元でも。また、あえて、収益性を高めるために小規模でやっているという経営方針をとっている若手の営農者の方もいらっしゃいます。

 こういった方々からしますと、補助のメニューが水稲寄り、そして大規模寄りになっているのではないかという御意見をかなりいただきます。

 私としましても、収益性を高めていく努力の方向性は農家それぞれあっていいというか、そうでないと適地適作にいつまでたってもなっていかないので、この園芸、小規模営農者向けの補助も、無制限にまくということではもちろんなくて、努力して工夫してやっている農家に対する補助としてはもっと充実させるべきではないかと思いますが、御見解をお伺いします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、品目ですとか規模の大小にかかわらずに、地域の担い手となる農業者がみずからの創意工夫で独自性また将来性のある品目を生産して、収益性の向上ですとか差別化を図っていく取り組み、これは非常に重要だと認識をしております。

 園芸作物につきましては、農業産出額の約四割を占めてございますし、また、主要な輸出品目に位置づけられるなど、今後とも高付加価値化や生産拡大が期待される分野でございますので、農林水産省といたしましても、例えば、野菜では、新たに、平成二十九年度予算案におきまして、水田地帯における水稲から野菜への転換により新しい野菜産地の育成を支援するような予算を計上したところでございます。また、果樹につきましても、高品質な果実生産につながる優良品種、品目への転換等を引き続き支援することとしてございます。

 こうした支援を通じまして、やる気のある農業者を後押ししてまいりたいと存じます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 私の地元でも、水稲とたばことか、水稲と園芸ですとか、あるいは水稲と里芋とか、組み合わせはさまざまで、各農家独自の工夫があると思いますので、ぜひ自由度の高い補助をお願いしたいと思います。

 続きまして、営農条件という点では、若手の農家と話をしていますと、北海道のような営農条件に近づけていきたいという熱い思いを感じますし、それぐらいの年収を目標にできれば担い手もどんどん生まれてくるのではないかというふうに私自身も感じております。

 その中で、一つは、条件不利地という問題があります。中山間地域、山間地も我が地元もありますけれども、そういった地域でも、やはり最大限に効率化をしたいというニーズがあります。さらに、平場はもちろん言うに及ばず、土地改良をして、今の話の流れでいうと、北海道のような営農環境を実現したいというニーズがあります。

 ですので、いずれにも対応できるように、土地改良法の改正ということには非常に期待が強いわけでありますが、この土地改良法の改正、あるいは制度それから予算面の担保もしっかりしていただいて、土地改良事業を一段と進めやすくしていただきたいと思っておりますが、ぜひ政府から後押しをするような御見解をお伺いしたいと思います。

佐藤(速)政府参考人 お尋ねの土地改良制度でございますけれども、昨年十一月の農業競争力強化を受けまして、現在、土地改良制度につきまして、農地の利用の集積の促進、防災・減災対策の強化、事業実施手続の合理化に関する措置、こういったことを検討しているところでございます。

 具体的には、農地中間管理機構が借り入れております農地につきまして、都道府県営事業として、農業者の申請なし、費用負担なし、同意なしで基盤整備を実施できる事業を創設するというのが一点。また、ため池等の耐震化事業につきましても、国または地方公共団体が、これも農業者からの申請なし、費用負担なし、同意なしで事業を実施できるような仕組み、さらには、国営事業、都道府県営事業に係る申請人数要件の廃止などを検討しているところでございます。

 こういった形で、迅速な土地改良の実施、取り組みやすい土地改良の実施といった内容を盛り込みました土地改良法の改正案を早期にこの国会に提出すべく、力を注いでまいりたいというふうに考えております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 ぜひよろしくお願い申し上げます。北海道のような農地というのを我々も合い言葉で、地元で頑張りたいと思っております。

 次に、この三十年以降の日本の農政の鍵を握るのは、私は、酪農、畜産、養鶏も含めた営農のサイクルがいかに自律的に回るようになるかということだと思っています。

 と申しますのは、幾ら戦略作物で飼料用米を支援したとしても、その出し先がなくなれば仕方がないということで、水稲農家もこの酪農、畜産、養鶏業の未来というのを非常に心配されております。

 そこでお伺いしたいんですが、こういったサイクルを支える酪農、畜産、養鶏業の存続のために、牛マルキン、豚マルキンもそうであります、また生乳の乳価交渉のスキーム、これはぜひ維持していただきたいと思っています。生乳の生産者というのは、非常に僻地にお住まいの方もいらっしゃれば、平場にお住まいの方もいらっしゃる。乳価交渉のこのスキームは、かつて、非常に交渉上不利に置かれたという経緯もあってできたものでありますから、これはもうぜひこのスキームは存続していただきたいと思っています。

 この三つの業種に共通する問題として、飼料高対策、生産費のおよそ半分が飼料代という中で、その飼料代がじわじわと上昇してくるという問題が多々あります。これは個々の農家の努力では吸収し切れない問題でありますので、この飼料高対策、今申し上げたマルキンの問題、乳価交渉スキーム、それから飼料高対策、こういったものが重要だと思っておりますが、御見解をお伺いしたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたとおり、畜産、酪農は、飼料用米の利用ですとか堆肥の耕種農家への提供などを通じまして、地域の営農サイクルにおいて非常に重要な役割を担っております。持続的な発展を図る上で、議員御指摘いただいた点は、いずれも重要だというふうに認識をしてございます。

 まず、畜産経営の安定を図るため、収入が生産費を下回った場合に、国と生産者による積立金から生産者に補填をする牛・豚マルキンにつきましては、確実な実施を図るために、二十九年度予算案におきましても、必要な額を措置してございます。

 また、乳価交渉におきまして、いわゆる指定団体がこれまで重要な役割を果たしてきておりまして、農業競争力強化プログラムにおきましても、真に生産者のためにあらゆる手段を尽くした交渉へと改革をする、交渉経緯や結果についての生産者に対する説明責任を十分に果たして透明性を確保するなどの改革を進めることとしてございます。

 また、飼料対策といたしましては、配合飼料価格の高騰に備えた価格安定制度を安定的に運営するとともに、飼料費の低減につながる自給飼料の増産、エコフィードの活用などの施策の推進を図ってございます。

 農林水産省といたしましては、今後ともこれらの対策を適切に実施いたしまして、我が国の畜産、酪農振興に万全を期してまいりたいと存じます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 特に、この飼料の問題は、農家の自助努力ではどうしようもできない部分が多々あります。これは我が党の片山さつき先生が参議院で質問しておられましたけれども、ロシア産の飼料というものが一定量輸入できれば農家経営の助けになるのではないかという御発言もございました。大臣もお聞き及びかと思いますが、ぜひこちらの試みにも御支援をお願いしたいとお願い申し上げます。

 続きまして、農協のあり方につきまして、さまざま今議論があるところでありますけれども、ぜひこの点で一点、お伺いしたいと思っていることがあります。

 農協はあくまでも組合員の自主的な組織というのが大原則ということだと思います。農協青年部とそれから農協の経営陣との意見交換会に出席させていただいた折にも、まさに農家自身から、こういうふうに変わっていってほしい、例えば販売部門の人事のローテーションのあり方ですとか、あるいは販売の資材の使い方ですとかについて、まさにこういうふうに変えてほしいということで、活発な議論が行われておりました。政府の立場としては、こういった内部からの自主改革を応援するということが一番だと思っています。

 農協がなくなるというようなイメージを持っている農家の方もいらっしゃって、こういったものは非常に地元の営農意欲ということにいい影響を与えていないと思っています。

 例えばきのうの日本農業新聞を見ましても、一枚開きますと、まるで政府と農協がけんかしているかのような記事ばかりで、これでは本当に不毛なんですね。建設的な議論をしていくためにも、農協の改革は、それは農協自身が決めていくものであって、政府の諮問機関なりが決めるものではないということを私は確認したいと思っていますが、ぜひ一言、御発言をお願いします。

細田大臣政務官 ありがとうございます。

 今まさに先生御指摘があったとおり、農協は農業者によって自主的に設立された民間組織であり、その改革は自己改革が基本であるということが、私ども農林水産省の基本的な立場、考え方でございます。

 昨年十一月二十九日に取りまとめられた農業競争力強化プログラムにおいても、全農改革について、あくまでも自己改革の原則のもとで、全農とも合意の上で各種の措置をとっていただくということになっているわけでございまして、今、斎藤先生おっしゃったような、いわゆる内部からさまざまな改革のお話が出ているというようなことでございましたけれども、そういうものを応援していくというのが私ども農林水産省の立場であるというふうに御理解をいただければと思います。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。ぜひそのメッセージを強力に発信し続けていただきたいと思います。

 きょうは、ぜひ、あと二点お伺いしたいと思っていることがあります。ちょっと毛色が変わります。

 一つは、私の地元では内水面漁業が非常に盛んなんですけれども、その内水面漁業を支える環境ということについて、変化が起こっております。

 それは、内水面漁協が、河川の、アユですとかサケですとかマスの増殖事業を行っているわけですが、組合員の高齢化、組合員の減少、それから遊漁券の販売収入も大きく減少しております。その背景には、淡水魚の生息環境が大きく悪化をしていて、組合員の経営が成り立たなくなっているということがあります。

 私の地元で申しますと、例えば村上市、三面川という川は、非常にサケも有名なんですが、アユ釣りでも有名な河川だったんですけれども、上流に治水と利水目的のダムをつくったところ、ダム下数キロ間にわたって川の石に金属物質が付着をして、全く淡水魚がすめないというような環境の変化がありました。これは、例えばこの三面川は二級河川ではあるんですが、地元の市や組合員だけでは対処のできない問題であります。

 私としては、こういった内水面漁業を後世に残していくという観点から、水産庁、農林水産省としても積極的にかかわっていただきたいと思っておりますが、御見解をお伺いしたいと思います。

佐藤(一)政府参考人 斎藤先生の御質問にお答えいたします。

 今先生の方からお話ございましたが、内水面の水産資源の増大のためには、好適な河川環境を整えることが極めて重要でありますものですから、水産庁といたしましては、内水面資源の生息環境改善のために、内水面漁業者の方が行います、生息環境改善の取り組み、あるいは内水面の生態系の維持保全を目的に行います河川清掃といった取り組み、またカワウや外来魚による漁業被害対策等に対する各般の支援策を講じてきているところでございます。

 今先生の方からお話ございましたが、こうした中、平成二十六年六月に成立いたしました内水面漁業振興法におきましては、都道府県、内水面漁協、河川管理者等が内水面漁場環境の再生のため必要な措置について協議を行うための協議会制度、こういったものが設けられたところでございます。

 水産庁といたしましては、今後、このような制度を活用しまして、内水面漁業者の知見やあるいは問題意識が河川管理に反映され、内水面魚類の生息環境改善や河川環境の再生が図られるよう取り組んでいく所存でございます。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。ぜひ積極的に関与していただいて、解決に一石を投じていただきたいと思います。

 もちろん、国土交通省もそうですし、環境省も関与する問題でありますが、内水面漁業の振興ということは河川の環境の整備ということに直結しますので、私個人としましては、私が今名前を挙げた特定の河川に限らないんですが、かつては、自然の湧水、水が湧き出ているところがたくさんあって、淡水魚は、例えばサケなんかは水温変化があるところでふ化をするというふうに言われております。ですので、当然、無限にお金が使えるわけではないので、例えば井戸を掘って水温変化のある川岸をつくっていくというようなことはぜひやっていただきたいんですが、これは水産庁だけでもないし、環境省だけでもないし、それから国交省だけでもない話だと思いますので、ぜひこういった事業に御支援をいただきたいと思っております。よろしくお願いします。

 最後に、森林環境税、昨年の平成二十九年度税制改正大綱の中で盛り込んでいただきました。

 私の地元でもそうですし、かつて林業は盛んでありましたけれども、外材の自由化を一つのきっかけとして、長期間需要が低迷して、森林の更新が進んでいないというのが実態であります。

 平成三十年度税制改正においてこの森林環境税については結論を得るということになっておりますが、私としましては、この森林環境税、一刻も早く導入をしていただきまして、特に、当初からかかわっていた市町村の関係者の方々からすれば、地方譲与税として導入をして、地方独自の財源としてそれぞれの山林の更新に使いたいということでありますので、ぜひそういった方向に進むように、お力をおかりしたいと思っております。

 この森林環境税を導入することによりまして、山林の、まず所有者もそうでありますし、伐採する人、それから運搬する人、製材する人、木材を実際に使用する人、エンドユーザーといった、林業の川上から川下までの全ての方々にメリットがあるという形にしていただきたいと思っておりますので、この森林環境税の具体化に向けて政府から後押しをいただきたいと思っておりますが、御見解をお伺いしたいと思います。

今井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ありましたように、昨年末に決定されました平成二十九年度与党税制改正大綱におきまして、市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てる森林環境税(仮称)でございますけれども、その創設に向けて、平成三十年度税制改正において結論を得るというふうにされたところでございます。

 今委員から、森林環境税につきまして、林業の川上から川下にまでかかわる全ての人に恩恵が行き渡るような仕組みを実現すべきという御提案をいただきましたけれども、この大綱には検討の視点等も示されておりますので、農林水産省といたしましては、今後、この大綱を踏まえまして、重要な論点は幾つかありますけれども、一つは、市町村が主体となって森林整備を進めるための仕組みをどのように考えていくのか、もう一つは、森林環境税の使途をどういうふうに考えていくのか、こういった重要な論点を中心に、まずは納税者の方々の理解も得られなければいけませんし、また地方自治体の理解も得られるように、丁寧な説明に努めますとともに、十分に意見交換もしながら、森林環境税の具体化についての検討を進めていきたいというふうに考えております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。ぜひ、この森林環境税の具体化にお力添えいただきたいと思っております。

 特に、論点の具体化ということで申し上げれば、都道府県独自の税としても森林環境税を導入しているところが多々あります。そういったところには丁寧に御説明等、また調整もして、全ての都道府県それから市町村の賛同のもとに導入されるということを期待しております。

 山林の再生ということにつきましては、財源が確保されない限りはなかなか手が回らない問題であります。森林を再生すれば、地方創生といって、いろいろなかけ声のもと政策をやっていますけれども、山林に近い集落は、大体もとをたどれば林業の村として始まった集落が非常に多いので、人口減少対策にもなりますし、また地方への人口の分散も進むと思います。山林が再生されれば、河川も再生されますし、それから沿岸漁業も間違いなく、山林が再生されれば、これは大きく再生をされます。

 私の地元の海域では、本土側の海岸でとれるカキと、それから、沖に粟島浦村という、粟島という島がありますけれども、その島でとれるカキが全く味が違います。これは、粟島には河川がないので、上流から流れてくるミネラル分がないということで、味が全く違うということがあります。

 それぐらい大きな影響があると思っていますので、この森林環境税の一刻も早い、より日本のためになる形での導入に向けて、政府そして与党一丸となっての努力をお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございます。

野中主査 これにて斎藤洋明君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十三日木曜日午前九時より開会し、引き続き農林水産省及び環境省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.