衆議院

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第1号 令和5年2月20日(月曜日)

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本分科会は令和五年二月十五日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      今村 雅弘君    堀井  学君

      山本 有二君    鷲尾英一郎君

      渡辺  創君    池畑浩太朗君

二月十七日

 堀井学君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和五年二月二十日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 堀井  学君

      東  国幹君    今村 雅弘君

      加藤 竜祥君    中曽根康隆君

      平沼正二郎君    山本 有二君

      若林 健太君    鷲尾英一郎君

      阿部 知子君   おおつき紅葉君

      奥野総一郎君    渡辺  創君

      池畑浩太朗君    岬  麻紀君

   兼務 神田 潤一君 兼務 日下 正喜君

   兼務 山崎 正恭君 兼務 吉田 宣弘君

   兼務 仁木 博文君 兼務 櫛渕 万里君

    …………………………………

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   環境大臣         西村 明宏君

   農林水産副大臣      野中  厚君

   農林水産大臣政務官    角田 秀穂君

   経済産業大臣政務官    長峯  誠君

   環境大臣政務官      国定 勇人君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            山中 伸介君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         高橋 孝雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         菅家 秀人君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           森   健君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            青山 豊久君

   政府参考人

   (林野庁長官)      織田  央君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  奥田 直久君

   政府参考人

   (環境省環境再生・資源循環局長)         土居健太郎君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

   環境委員会専門員     吉田はるみ君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     平沼正二郎君

  山本 有二君     高村 正大君

  渡辺  創君     阿部 知子君

  池畑浩太朗君     赤木 正幸君

同日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     中曽根康隆君

  平沼正二郎君     今村 雅弘君

  阿部 知子君     おおつき紅葉君

  赤木 正幸君     岬  麻紀君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     佐々木 紀君

  おおつき紅葉君    奥野総一郎君

  岬  麻紀君     浅川 義治君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     加藤 竜祥君

  奥野総一郎君     渡辺  創君

  浅川 義治君     奥下 剛光君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     東  国幹君

  奥下 剛光君     池畑浩太朗君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     若林 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  若林 健太君     山本 有二君

同日

 第二分科員吉田宣弘君、第三分科員神田潤一君、第四分科員山崎正恭君、仁木博文君、第七分科員日下正喜君及び第八分科員櫛渕万里君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

堀井主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算及び令和五年度政府関係機関予算中環境省所管について、政府から説明を聴取いたします。西村環境大臣。

西村(明)国務大臣 令和五年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その基礎となる環境政策の基本的な考え方を御説明申し上げます。

 環境省は、我が国が直面する数々の社会課題に対し、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブの同時達成に向け、地域循環共生圏の構築等により統合的に取組を推進することを通じて、持続可能な新たな成長を実現し、将来にわたる質の高い生活の確保を目指してまいります。

 東日本大震災からの復興については、残る特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けた除染や家屋等の解体に加え、拠点区域外における取組を推進します。また、福島県内除去土壌等の県外最終処分に向けた日本全国での理解醸成活動、ALPS処理水の海洋放出に対応した海域環境モニタリング、放射線健康管理、福島再生・未来志向プロジェクトにも全力で取り組みます。

 国際関係については、本年四月に札幌で開催されるG7気候・エネルギー・環境大臣会合、プラスチック汚染対策に係る条約交渉などを通じ、環境外交を主導してまいります。また、二国間クレジット制度、JCM、昨年のCOP27で私から発表したパリ協定六条実施パートナーシップやロス・アンド・ダメージ支援パッケージの推進などに取り組みます。

 カーボンニュートラルについては、地域脱炭素移行の加速化、商用車の電動化促進等のGXの推進を筆頭としながら、地域、暮らしといった需要側からの脱炭素化を推進します。脱炭素先行地域と脱炭素の基盤となる重点対策等を通じて、地域共生型再エネの最大限導入拡大と住宅、建築物のZEH化、ZEB化などの省エネ、蓄エネを推進します。これらの取組を、昨年から開始した新しい豊かな暮らしを提案する国民運動や、株式会社脱炭素化支援機構による資金供給、地域金融機関とも連携した環境金融で後押しします。

 サーキュラーエコノミーについては、動静脈の一体の資源循環を実現するべく、プラスチック、金属資源、太陽光パネル等のリサイクルの推進、バイオマスプラスチックや持続可能な航空燃料、SAFの製造実証、食品ロスの削減やサステーナブルファッションを推進します。加えて、一般廃棄物処理施設や浄化槽整備を着実に実施し、災害廃棄物処理体制の構築にも取り組んでまいります。

 ネイチャーポジティブについては、生物多様性の損失と気候危機への統合的対応を進めるべく、我が国の新たな生物多様性国家戦略を策定し、企業緑地など、民間取組の認定等を通じて、二〇三〇年までに陸と海の三〇%以上の保全等を目指します。また、民間提案の活用等を通じて国立公園満喫プロジェクトを推進し、インバウンド拡大や地域活性化につなげてまいります。

 このほか、水俣病対策、石綿飛散防止対策、有機フッ素化合物対策、熱中症対策、子供の健康と環境に関するいわゆるエコチル調査、鳥獣保護管理、外来種対策等も着実に推進します。

 原子力規制委員会については、厳格な原子力規制活動を支える安全研究の推進及び放射線モニタリング体制の強化を図るとともに、原子力の安全確保に係る人材基盤の強化等に取り組みます。

 これらの施策を実行するための令和五年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について申し上げます。

 一般会計予算では総額三千二百五十七億円余を計上しております。

 次に、特別会計予算につきましては、エネルギー対策特別会計に総額二千三百十七億円余、東日本大震災復興特別会計に復興庁所管予算として総額三千二百三十億円余を計上しております。

 なお、環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策については、お許しを得て説明を省略させていただき、委員のお手元に資料をお配りさせていただきました。詳細は、お手元の資料を御覧いただきますようお願い申し上げます。

 よろしく御審議くださいますようお願いを申し上げます。

堀井主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま西村環境大臣から申出がありました環境省関係予算の主要施策の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀井主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

堀井主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

堀井主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田潤一君。

神田(潤)分科員 おはようございます。

 衆議院青森二区選出の神田潤一と申します。

 青森二区は、青森県の県南と言われます八戸市、十和田市、三沢市を中心とする地域ですが、この地域には十和田八幡平国立公園と三陸復興国立公園の二つの国立公園が含まれており、大変自然が美しく、食べ物もおいしい地域となっております。

 本日は、ポストコロナにおける地方経済の回復の大きな柱となる観光に関しまして、国立公園の景観の保護や環境保全、整備方針などについて御質問させていただきたいと思います。

 まず、国立公園満喫プロジェクトについて、二つの点を質問させていただきます。

 国立公園については、一九三一年に国立公園法が制定されて以来、我が国のすばらしい景色の保護と適正な利用の増進のため、全国三十四の国立公園が制定されてきたところと認識しております。さらに、環境省では、二〇一六年から国立公園満喫プロジェクトを立ち上げ、環境整備や利用促進を進めてきたところと認識していますが、まずは、この国立公園満喫プロジェクトの意義について教えてください。

 また、二〇一六年から二〇二〇年にかけまして、全国の三十四の国立公園から八つの国立公園をパイロットプロジェクトと位置づけて取組を進めてきたところと認識しております。十和田八幡平国立公園がこの八つのパイロットプロジェクトに選定された背景についても教えてください。

国定大臣政務官 神田委員の御指摘にお答えをさせていただきます。

 二〇一六年に策定をされました明日の日本を支える観光ビジョンを踏まえまして、環境省では、国立公園のブランド力を高め、自然を満喫できる上質なツーリズムの実現を目指し、国立公園満喫プロジェクトを推進してきたところでございます。

 その推進に当たりましては、地元の熱意やそれを支える体制、インバウンドを伸長するポテンシャル、先導的モデルとなる特徴的なテーマの有無等の観点から、先行的、集中的に取組を実施する八公園を最初に選定したことは、委員御指摘のとおりでございます。

 そこで、十和田八幡平国立公園の件でございますけれども、観光団体を含む地元からの要望、複数県にまたがる連携体制の構築、震災復興や温泉文化といったテーマ性が評価をされ、この八公園の一つとして選定をされたところでございます。

神田(潤)分科員 ただいま、当選同期の国定勇人政務官から大変情熱的な御答弁をいただきました。自らも国立公園のプロジェクトを推進されている国定政務官と一緒に、私も推進してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に参ります。

 ただいま御紹介いただいた国立公園満喫プロジェクトのホームページを拝見しますと、二〇二一年以降の取組方針という資料が出てまいります。そのうちの具体的なアクションプランを拝見いたしますと、情報発信とコンテンツの造成、あるいは、ワーケーションでの利用、利用形態に応じたゾーニング、地域の金融機関や交通機関、また民間企業やDMOとの連携、広域的な周遊利用などと並んで廃屋撤去という項目が掲げられております。

 このように、具体的なアクションプランに廃屋撤去が掲げられている理由について御説明をいただきたいと思います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 国立公園満喫プロジェクトにおきましては、優れた自然そのものが最大の魅力であるという考え方の下、上質感のある滞在環境の創出のための利用拠点の再生整備に取り組んでまいったところでございます。

 一方で、国立公園の利用拠点の中には、時代の変化や旅行客のニーズの変化に対応できずに取り残されたホテルや旅館等が廃屋化したエリア、そういったところが少なからず存在し、地区の景観を阻害しているところでございます。

 このため、国立公園満喫プロジェクトでは、廃屋を始めとするマイナス要因を取り除くことでエリア全体の景観改善につなげる、引き算の景観改善とも言える考え方を柱としているところでございます。

神田(潤)分科員 ありがとうございます。

 ただいま御説明いただいたように、景観を損なう廃屋については、引き算の考え方でしっかりと整備をしていっていただくという御方針を御説明いただきました。

 ポストコロナにおきまして、インバウンドも含めてたくさんの方々に国立公園に訪れていただき、その魅力を満喫していただいた上で、できればリピーターとなって地域経済を潤し、地域の活性化につなげていただきたいという大きな期待が地元からもあります。

 一方で、その景観を損ねている廃屋の撤去は大変重要な課題だと認識をしております。

 そこで、御質問させていただきます。

 環境省では、具体的に、例えば令和五年度予算などでは、どのようにしてこうした廃屋撤去を進めていこうとしているのでしょうか。

奥田政府参考人 お答えいたします。

 環境省としましては、御指摘のとおり、景観を阻害する廃屋、これは非常に観光地としての魅力を大きく損なうということで、地域の関係者と連携して対策を進めていきたいということを考えているところでございます。

 この制度そのものは令和元年度に設置しましたけれども、この事業では、やはり、地元の市町村が地域関係者と協力して行うマスタープランの作成、廃屋撤去、町並み改善など、官民が一体となって、景観改善、拠点再生の取組に対して支援を実施してきているところでございます。

 コロナ後のインバウンドの再開も見据えて、引き続き、地域関係者と連携しながら、令和五年度も更に廃屋撤去若しくは跡地活用の取組を推進していく方針としているところでございます。

神田(潤)分科員 ありがとうございます。

 十和田八幡平国立公園につきましては、青森県、秋田県、岩手県にまたがる広大な地域に、カルデラ湖と奥入瀬渓流、また、日本有数の火山地域に点在する湖沼あるいは湿地帯、原生林などの中に様々な動植物が息づく独特の生態系を誇っております。また、個性豊かな温泉地が点在し、湯治文化や伝統的な祭り、伝統芸能に触れ合えるほか、冬場はバックカントリースキーの人気スポットでもあります。

 この十和田湖畔の休屋地区には、多くの旅館やホテル、あるいは休憩所や売店などが立地し、最盛期には十和田八幡平国立公園を代表する観光地あるいは宿泊スポットとなっておりました。特にバブルの頃には、大変たくさんの旅館やホテルが建造され、大変なにぎわいを誇っておりました。

 こうした中で、二〇一一年三月に東日本大震災が発生し、その後の苦境の中で法人の顧客需要や団体客が減少し、その後の復興過程でもなかなか震災前の水準には戻らずに、ホテルの廃業などが相次ぎ、廃屋が増加したという現実がございます。さらに、近年の新型コロナによって個人の観光客も激減いたしまして、現在は更に厳しい状況となっております。

 一方で、奥入瀬渓流をより楽しんでいただくことを企図いたしまして、交通渋滞の緩和や自然保護を図るために、国土交通省にも御協力いただいて、青ブナ山にトンネルを通しバイパスを整備する、また、これによって奥入瀬渓流を徒歩で楽しんでいただくといったプロジェクトも推進されているところでございます。

 私も、昨年秋に現地を視察いたしまして、また、十和田市の関係者などにも現状をヒアリングするなどいたしまして休屋地区の廃屋の状況を確認いたしましたが、主なものだけでも二十棟以上に上っております。また、これまで八棟が撤去されておりますけれども、依然として十棟以上の建物が廃屋として残っているという現状を視察してきております。

 これらの廃屋につきましては、ただいま御説明いただいたように、景観だけでなく、観光客の安全性や、また地元の治安の面でも懸念が広がっており、今後のポストコロナの観光振興においては非常に大きな懸念材料になっているということが地元から聞かれております。

 そこで、三つお伺いしたいと思います。

 こうした十和田湖畔の廃屋の撤去に向けまして、環境省ではこれまでどのような対応を行ってきたのでしょうか。また、今後の廃屋撤去の見通しはどのようになっているのでしょうか。さらに、廃屋の撤去を進めるに当たって、十和田湖の所在する青森県や十和田市などの周辺市町村との役割分担はどのようになっているのでしょうか。

奥田政府参考人 お答えいたします。

 十和田湖畔におきましては、十和田市を始め、地域の関係者の協力の下に、令和元年、二〇一九年に休屋地区の再生計画を作成させていただいたところでございます。この計画に基づいて、環境省や地域の関係者が一体となって、廃屋の撤去若しくは店舗の外壁の改修等の町並みの改善を進めさせていただいてきたところでございます。

 環境省所管地では、土地所有者としての権原に基づきまして、令和三年、二〇二一年の十一月に湖畔沿いの一件、令和四年、二〇二二年には更に周辺三件で環境省所管地における廃屋の撤去というのを実施させていただいたところでございます。

 なお、これらの拠点の再生及び地域の活性化は、廃屋の撤去ということにとどまらず、跡地の利活用が進むことが前提でございます。このため、環境省では、関係する自治体若しくは地域住民が参加する地域懇談会というものを設置させていただいて、継続的に開催をしているところでございます。この中で、跡地の利活用も含めて、地域一帯での利用方針の議論というのを行うようにさせていただいているところでございます。

 この地域にはまだ多くの廃屋が残されておるところでございます。地域からの御意見を踏まえつつ、地元自治体の皆さんとも連携しながら、引き続き、地域と一体となって、景観の向上を始め、利用拠点の再生にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

神田(潤)分科員 ありがとうございます。

 ただいま御説明いただきましたように、周辺市町村との役割分担の中で、地元の十和田市におきましても、廃屋が撤去された地域における石畳の敷設、あるいは既存の民間施設の上質化、リノベーションなどを環境省の補助事業なども活用しながら進めていると認識をしております。また、地域懇談会を開催いたしまして、二〇五〇年の子供たちに見せたい十和田湖の姿を作成したり、あるいは廃屋撤去後の跡地の利活用などについても議論を進めているところです。

 また、国の令和五年度予算におきましては、国立公園利用拠点滞在環境等上質化事業ということで予算が組成されており、こうした廃屋の撤去のほか、インバウンド機能の向上、これはWiFiや多言語サイン、あるいはトイレの洋式化などが含まれます、また、文化的魅力の活用などが、地元の自治体が主体となって、環境省や既存民間事業者と協議をして策定されるということが含まれております。

 また、既存施設の観光資源化ということで、利用機会が減少した施設のインバウンドの受入れ環境の整備を前提とした施設の機能転換又は強化のための内装や設備の整備、あるいはワーケーションの受入れ事業の支援、そして、引き算の景観改善ということで、利用拠点の景観改善のための無電柱化、あるいは伐採、駐車場の舗装面の緑地化などが含まれているというふうに認識されております。

 こうした国立公園の整備に資する予算の策定につきましては、私もしっかりと支援をさせていただきたいと考えております。

 さて、最後になりますが、十和田湖のみならず、ほかの国立公園におきましても同様に、撤去しなければならない廃屋が散見されているというふうに伺っております。是非ともこれらの廃屋の撤去を早急に進めていただき、観光の推進を後押ししていただきたいと考えております。

 また、そうした取組等を通じまして国立公園満喫プロジェクトを強力に推進し、また、インバウンド需要や国内観光客の呼び込み、地域の活性化にもつなげていただきたいと考えておりますが、西村環境大臣の決意をお聞かせいただければ幸いです。

西村(明)国務大臣 今御指摘のありました十和田八幡平国立公園を始めとした八つの公園での先行した取組を踏まえまして、環境省では、二〇二一年、令和三年以降、国立公園満喫プロジェクトの取組を全三十四公園に水平展開しているところでございます。

 具体的には、廃屋撤去等による景観改善を始め、自然体験活動の促進、官民連携による利用拠点の魅力向上など、様々な取組を推進しているところでございます。

 今後、インバウンドが本格的に再開する中、国立公園の魅力を高めて、美しい自然の中での感動体験を柱とした滞在型高付加価値観光を推進してまいります。国立公園の保護と利用の好循環を通じて、地域活性化にもつなげてまいりたいというふうに考えております。

 神田委員の御地元から国政に出られて長く活躍された大島理森先生も、環境行政に非常に大きなお力を発揮していただきました。是非、神田委員におかれましては、大島先生の大きな期待を担っているわけでございますので、こうした環境への取組を通じて、地域活性化に加え、今後大きなお力を発揮していただきたいと思っております。

神田(潤)分科員 ただいま西村大臣から大変力強い御決意を伺いました。ありがとうございます。

 先ほども申しましたように、私の地元、十和田八幡平国立公園のほか、三陸海岸復興国立公園も所在をしております。こちらの方は、八戸市にある、ウミネコが飛ぶ、天然記念物になっている蕪島、あるいは、種差海岸から岩手県の三陸海岸に続く非常に風光明媚な場所になっております。

 一方で、この地域は、東日本大震災において、津波などによって非常に大きな被害を受けた地域となっております。現在もその復興の途上にある地域となっております。十和田八幡平国立公園につきましても、また、この三陸海岸復興国立公園につきましても、大震災からの復興という意味合いにおきましても、しっかりと御支援をいただきたいというふうに考えております。

 なお、十和田湖畔につきましては、今話題にいたしました廃屋のほかに、宇樽部地区という、桟橋に四隻の遊覧船が放置をされております。この宇樽部地区の桟橋は、現在十和田湖で稼働している遊覧船が天候が急変するときには緊急避難をするための桟橋とも想定をされております。この四隻の遊覧船が放置されたままという現状では、緊急時に避難することが困難な状況というふうに伺っております。

 もちろん、この遊覧船は、まだ所有者との法律的な手続などが済んでいないということもあって、早急に処分するということがなかなか難しいというふうに伺っておりますが、観光地、国立公園の環境整備という点におきましては、休屋地区の廃屋撤去と並んで、この宇樽部地区の放置遊覧船の対応につきましても環境省には引き続き御指導いただきたいということを申し添えまして、少し時間は早いですけれども、私からの質問を終了させていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

堀井主査 これにて神田潤一君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子さん。

阿部(知)分科員 立憲民主党の阿部知子です。よろしくお願い申し上げます。

 今日は、環境委員会でお時間を頂戴して、感謝を申し上げます。

 私が本日取り上げたいのは、昨年の十二月から環境省の方で、東京電力福島第一原発事故後の汚染土壌の再生利用に関しまして、新宿御苑や埼玉の所沢、茨城の国立環境研究所等々で行おうとされている実証事業につきまして、多く住民から懸念や反対の声も上がっておりますので、しっかりとその声を聞いて、また、御不安もあろうことかと思います、説明もしていただきまして、そもそもこの実証事業がいかなるものであるのか、もう一度皆さんと共有をしていきたいと思います。

 冒頭、大臣には一枚目の資料を御覧いただきたいですが、これは、環境省がその当日、所沢や新宿御苑の住民説明会で使われたものから引用をいたしております。上段、上の段であります。

 しかし、そもそもこの資料自身が、ある意味古くて、そして現状を反映していないのではないかと思います。使われた資料が国民にきちんと今起ころうとしていることを伝えていないとなると、それはそれで問題だと思っておりますので、私の指摘に大臣がお答えいただきたいと思います。

 まず、従来よく言われておりましたことは、中間貯蔵施設には東京ドーム約十一杯分の汚染土壌がある、千四百万立米ということでありました。そして、それを八千ベクレル以上、あるいは八千ベクレル以下、未満といいましょうか、と分けたときに、高い濃度のものはどこかの最終処分場に、そして低いものは再生利用という言い方をされています。

 大臣、今、福島の復興再生特別措置法等々でいわゆる帰還困難区域、拠点区域などの汚染土壌もここに運ばれることになっていると思います。そういたしますと、従来用いてきた千四百万立米、これは、数値は何回か変わっておりますが、現状、千三百幾つで、大体ここに近くなっております、帰還困難区域以外のものから運び込んだもの。しかし、今、これから、現在もやっておられますが、帰還困難区域の復興拠点の除染も始まり、その土壌も搬入することになっているかと思います。そういたしますと、それだけで百六十万から二百万立米が増え、さらに、この国会でかかります復興の特別措置法関連で申しませば、帰還困難区域の拠点地域以外にも広げていくような復興特別措置法の改正がございます。それを分かりやすく説明したものが下の図であります。

 果たして、千四百万立米、プラス百六十から二百万立米、これは帰還困難の拠点区域、そして、今後除染がされるであろう帰還困難区域からの汚染土も発生するとすると、そもそも市民向けの説明の段階で、私は、現在進んでいることも含めて御提示なさるべきと思いますが、いかがでしょう。

西村(明)国務大臣 これまで中間貯蔵施設に搬入された除去土壌等につきましては、その搬入量の状況等につきましては、環境省のホームページや環境白書、中間貯蔵工事情報センター等で公表してきているところでございます。

 御指摘のありました特定復興再生拠点区域外の除去土壌等につきましては、今国会に提出されている福島特措法の一部改正法案が成立した後に中間貯蔵施設へ搬入するものというふうに想定しております。その搬入状況につきましても、しっかりと公表してまいりたいというふうに考えております。

阿部(知)分科員 大臣、よく聞いてください。

 三つ区分があるんです。帰還困難区域には、拠点区域を用いて、つくったんです。それから、それ以外のところから、これから始まろうとしていますが、既に帰還困難の拠点区域は除染が始まって、ここに、中間貯蔵施設に入れてございます。そうであるならば、これは大臣、普通に考えても、帰還困難区域というのは汚染がひどいから今までやらなかった、しかし、これから帰りたい人もいるだろうと考えてやっていると。

 そもそも、御説明のときに、ずっと言ってきました、東京ドーム十一杯分だ、千四百万立米だと。もう既に違うんですよ。始まっているんです、これからじゃないんです。私は、住民に説明するときに、今起きていること、考えていることをきちんと言わないと、これは余りに安易な説明だと思います。そして、一体どれくらいになるか分からないんです。

 ここにも、この前から私は、じゃ、今度の帰還困難区域は拠点区域以外のところからどのくらい出るでしょうねとお尋ねしたら、それは分からないと。すなわち、今中間貯蔵にあるものよりも増えるということはまず明確になさるべきだと思うんです。

 加えて、いわゆるこれまでの帰還困難区域以外のものの除染土の搬入は、汚染特措法という法律の二十五条で指定して、二十八条で計画を立てて告示をしてまいりました。

 ところが、帰還困難の拠点区域、真ん中ですね、百六十万から二百万立米については告示はあったのですかと聞いたら、これは汚染特措法じゃないからない、すなわち、復興の方の法律でやっているからないというお話でした。計画はどうですか。計画は、今までのものは、何年たてばどこまで下がるとか一応見通しておられます。今、真ん中に挟まった部分は既に始まっているのに、告示もない、計画も示されない、本当にそれで、私は国民への説明になっているのかどうかと思います。大臣、いかがですか。

西村(明)国務大臣 今御指摘ありました数字に関しては、一応試算は出ている、ここに、いただいた資料に書いてありますけれども、これが公表されていないという御指摘だと思います。

 ちょっと、その辺に関しては、事務的に、私も承知しておりませんので、事務的にお答えさせていただきますが、しっかり、本省とすれば、公表できるものはしっかりと公表していくというのが立場でございます。

阿部(知)分科員 事務方にお答えいただく前に、一応この試算は公表はされております。私が言うのは、なぜ住民説明会でこのことを示されませんかということであります。よく環境省の資料を見れば、出てはおります。でも、法律の根拠も違うし、汚染の状態も伝えられていないし、それでは本当の説明会にならないのではないかという指摘です。まして、これから拠点区域以外からも運び込むわけですから、そこまできっちりと説明してこそ、今、中間貯蔵施設に運び込もうとしているものが何であるのかが分かると思います。

 そういう意味で、大臣、事務方ときちんと詰めていただきたいです。これは公に使われた資料ですが、私は、資料として古いし、真実じゃないし、今起きていることを伝えていないと思います。いかがでしょう。

西村(明)国務大臣 御指摘のことはもっともだと思います。しっかり、現状ある資料に関しては公表しながら、そして、皆さんの御理解を得ながら事業というものを進めていきたいというふうに考えております。

土居政府参考人 お答え申し上げます。

 資料につきましては、搬入量、最新の値といたしまして、今年の一月末が約一千三百四十一万立米でございましたので、その値を使っておりますが、順次これが更新されていきますので、それを、更新した最新の値で御説明したいと思います。

 また、計画につきましては、福島特措法の特定復興再生拠点の計画、こちらの方に除染も含めて位置づけておりますので、計画はこちらの法律に基づいて行われているというものでございます。

阿部(知)分科員 私が何度も申しますが、見れば、ここから運び込んだ土の量も書いてあるんです。でも、これまで説明されていたドーム十一杯分というのは、あくまでもそれ以外の地域からなんです。それ以外の地域から運び込んでいるということも伝えなければ分からないです。

 累積値で示してあるからいいでしょうというのが今の御答弁ですよ。そうではないです。除染しているエリアが違うんだということなんです。法律も違うんだということなんです。今までのドーム十一杯分は特措法、土壌汚染の。今回は復興特措法。根拠が違うものを入れているんです。私は、こうやって、どんどんこの中間貯蔵施設を、ある意味、枠を広げていくというのはやはり問題が大きいと思います、法治国家なのですから。

 そして、資料の二枚目は、いわゆる特措法のことを書きましたが、特措法では、様々な、その地域の土地その他の物に調査測定をしなければならないというのが二十七条にあって、その方針を明示するのが二十八条にございます。

 では、最後の質問とも関係いたしますが、今の事務方にお伺いいたしますが、ここの土壌の、復興再生拠点区域の土壌調査はなさったんでしょうか。

土居政府参考人 お答え申し上げます。

 除染を実施する際には、それぞれの場所におきます線量を測って、どれぐらい低減する可能性があるかという技術的な検討も行いますので、それぞれの除染作業の同意をいただいた土地について測定をそれぞれしております。

阿部(知)分科員 調査とは測定だけではないんですね。放射能汚染されているんですから、どんなものでどのように汚染されているかというのが大事なんです。線量は測ることができます。でも、それにとどまらないので、私はあえて指摘させていただきました。また最後にお伺いいたします。

 そして、大臣には三枚目の資料を御覧いただきたいですが、いわゆる土壌汚染特措法に基づいて、二〇一四年から中間貯蔵の施設というものが、ここに運び込んで、実際には一五年から運び込まれておりますが、そして、三十年たったらここからは福島県外に持ち出すというお約束を、県民の皆さんとも、また、このJESCO法という中間貯蔵・環境安全事業株式会社法でもいたしました。赤線を引いてございますように、「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする。」となっております。

 はて、では、本当に三十年以内に汚染土は福島県外に移せるだろうか、これは誰でもが疑問に思います。

 そこで、下にまたまとめてみましたが、二〇四五年段階で、八千ベクレル以上のものはどこかに造る最終処分場、でも、これは場所は未定、八千ベクレル以下は道路工事などで再生利用する計画でありますが、まだまだここが実用化は見通せていない。

 正直言って、初めての放射線の甚大な事故ですし、これをどうするかは、単に不備なことを指摘するのみならず、やはり知恵は集めていかなければならないと思いますが、先ほど申し上げましたように、搬入量はまた増えてくる、そして三十年というお尻は区切られている、本当に実現可能なんだろうかと誰でもが思うところでございます。

 そして、そういう中で何が起きたか。

 大臣、四枚目の資料を見ていただきますと、これは、政府の方で平成二十八年に、そうした状況に鑑みてだと思いますが、中間貯蔵除去土壌の減容・再利用技術開発戦略というものを、ガイドラインでしょうか、戦略、計画を出されました。しかし、この計画は、これまでの法の枠を飛び越えて、様々な問題を示していると思います。

 これまで、放射線の汚染土壌は、原子炉等規制法という法律で百ベクレルという数値が決められて、私たちの生活空間にある放射能はそれを基準値としてまいりました。ところが、この開発戦略のところで、八千ベクレル以下はいわゆる公共事業等々に使って再利用していくという方針が打ち出されて、ここで二重基準になりました。炉規法では百ベクレル、これは法律じゃないですけれども、戦略、ガイドラインでは八千ベクレル。この間で本当に混乱が起きないのか。

 あるいは、大臣、恐縮ですが、もう一つあるんですが、炉規法、原子炉等規制法に基づく場合は、この百ベクレルの及ぼす影響について、クリアランスというものをつくっていて、それを原子力規制委員会がチェックするという構造になっております。原子炉等規制法は原子力規制委員会が扱い、ここで何か外に起きたときは百ベクレルで、その安全を担保するために原子力委員会がクリアランスチェックをするという。

 ところが、今回の八千ベクレルに基準を引き上げたのにクリアランスのチェックもなく、そしてダブルスタンダードになる。このことについてどうお考えでしょう。

西村(明)国務大臣 除去土壌の再生利用につきましては、環境省が設置した有識者による検討会において、除去土壌の再生利用の安全性評価を含む議論を行い、その中で、再生資材化した除去土壌の安全利用に関する基本的な考え方を示したところでございます。この検討委員会は、中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会でございます。そして、現在では、この基本的な考え方に沿いまして再生利用実証事業を実施しております。

 今後、この成果も踏まえつつ、放射性物質汚染対処特措法の省令において、再生利用に係る技術的基準を作成することといたしております。その際には、指定廃棄物に係る技術的基準を策定した際と同様に、放射線審議会にお諮りすることを含めて、専門家の皆様の意見をしっかりと聞きながら検討してまいるという形になっております。

阿部(知)分科員 今、大臣の御答弁は、安全委員会によって、原子力規制委員会の定めを取っ払って基準を作っているということなんです。

 原子力規制委員会、あちこちでないがしろにされておりますが、なぜこういうクリアランスレベルという発想が起きたかというと、やはり原子力規制委員会の役割は健康と人体に与える影響をしっかり見ていくということで、では、こういう汚染土壌があちこちに使われたときの影響はどうなるのかということで、クリアランスレベルのチェックということを置いたわけです。その安全再利用基準が百ベクレルなわけです。

 今、これからるる審議会をやられるとおっしゃいますが、既にある現状がこれまでの法の規定を乗り越えてしまっている。特に安全がないがしろにされている。これが、今例えば実証実験をやられようとするときに、所沢の市民も、新宿の区民も、反対の声が上がる大きな一つの原因であると思います。

 大臣、おかしいと思いませんか。今までは百ベクレルだったんです。それを原子力の安全委員会がチェックしていたんです。なぜ、今急にこの戦略とかそれから委員会をつくって、そこで決めたからといって、法を飛び越えていいのでしょうか。教えてください。

西村(明)国務大臣 今委員の御指摘のあった百ベクレルというのは、通常時、原子力発電所等々を解体したりしたときに、その資材が、どこでも使っていいですよという、そういった上での百ベクレルという基準だというふうに承知しております。

 今回の八千ベクレルというのは、先ほど申し上げましたように、有識者による検討会の中で、安全性の評価を含む議論を行った上で基本的な考え方が示された、その数値が八千ベクレルということで、これは、クリアランスで言うところの自由に使うというよりも、そういったしっかりしたチェックをしながらの利用において八千ベクレルということで、全く同じものではないということだと承知しております。

阿部(知)分科員 では、そのしっかりしたチェックが何であるかということでもあります。言葉でしっかりしたチェックと言うのは簡単ですが、それを、本当に国民の安全を担保するためのものとして検証できるかどうかが大きな問題です。

 二〇二〇年の一月でしたか、たしか環境省は、汚染特措法の四十一条の二項に定める、いわゆる環境省令で定める基準、今、先ほど申しました百と八千と乖離しているので、どういう基準でやっていくかを一回決めようとなさいました。そしてパブコメを取られました。パブコメの件数、二千八百五十四件、そのほとんどが反対。ダブルスタンダードは駄目。今大臣がおっしゃいましたが、どこでも使えるわけじゃなくて、限られたところでいろいろチェックしながら使うんだからいいですよと、ある意味八千ベクレルを許容されているわけですが、なかなか受け止めはそうなっておりません。逐一チェックもできません。

 先ほど、原子炉の中で起きたことを外に漏らさないための、それで、外に出していいのは百だというのは、それはそれなりの理由があるからです。環境汚染を引き起こさないための判断でございます。

 大臣は、なぜ、この二〇二〇年一月、環境省が、基準、例えば三千にしたかったか、五千にしたかったか知りませんが、を作ろうとしたとき、多くのパブコメで反対をされ、いまだにできていないのだと思われますか。

西村(明)国務大臣 繰り返しにはなりますけれども、先ほど申し上げたように、除去土壌の再生利用につきましては、環境省が設置した有識者による検討会において、その再生利用の安全性の評価を含む議論を行って、その上で基本的な考え方を示したわけでございます。そうしたものを踏まえた上で、放射線審議会といった第三者的なところにもしっかりお諮りをした上で検討してきたところでございます。

阿部(知)分科員 何事の政策も、特に安全に関わるものは、信頼とか、受け手側のそのことの理解、よしとすることがなければ成り立ちません。ずっと環境省はそうやってきて、実は、福島県内でも、今のように県外でも、そういう有識者検討会議に基づく実証事業をやろうとして、多く市民から反発を受け、ほとんどの事業がやれない状態で今日まで来ています。

 これも環境省がお使いになった県内、県外の事業の説明で、資料六ページを開けていただきますと、上が県内、県内では、南相馬で盛土、それから飯舘で農地、また中間貯蔵施設内で盛土工事をやっておりますが、これらはいずれも、市民生活と遠い、少し隔離された場所であります。

 二本松と南相馬で道路の下にこの汚染土壌を入れようとして、市民の反対が強く、実施できませんでした。二本松というところの原セ地区というところに環境省の福島地方環境事務所が宛てた通知によれば、風評被害への懸念など多数の御意見をいただいたため、現時点で事業着手できておらず、汚染土壌の再生利用については地元の御理解をいただくことが重要であることから、今回は着工いたしませんと。結局、すごく反対が強かったんです、道路の下に使うということ。

 環境省は説明されたとおっしゃいますが、地域を挙げての反対になり、これは頓挫してございます。大臣、御存じですか。

西村(明)国務大臣 承知しております。

阿部(知)分科員 私は、当然だと思います。

 確かに、この汚染物質をどうするかは難しいです。でも、昔から放射線汚染は、集めて、コンクリにして閉じ込めるという方法がずっと取られてきました。これをあるレベルのものは出してよいとすることへの理解は、私は得られないものと思います。

 そして、今回の所沢と新宿御苑、これも非常に政府側の説明が不親切というか、事実を伝えていないと思います。

 開けて、資料の七枚目。これは新宿御苑のところで使われた説明会の案内ですが、そもそもどんな案内だったかというと、修正前は、福島第一原発事故に伴う環境影響と環境再生事業について、今回実施予定の実証事業についてお話しします、こんなことを書かれても何のことか分かりません。七枚目の中に抜いてあります。

 そして、これは何なんだということになって、新宿区の方でも多くの市民の声が寄せられて、結果、加筆修正されました。この二段目が違ったところですが、ここに福島県の除去土壌を再生利用した花壇整備の説明を行いたいというふうにつけ加えられました。最初のアナウンスは、訳が分からないアナウンス、何なんだこれはとなって、こうやって文章を変えて、それでもなお、ほとんど限られた人数の人しかこれが通知されない。

 今、地域では反対運動が非常に大きくなっております。所沢でもそうであります。町内会で反対を決議されて、それを市長に持っていかれました。大臣も既に御承知のことと思いますが、弥生町の町内会八百世帯が実証事業への反対を決議して、所沢市長のところに持っていかれました。それを受けて市長は、市民の理解のないものは市としても当然受け入れられないというふうにおっしゃっておられます。

 私は、そもそもの資料もいいかげん、内容もちゃんとしていない、伝える気がない、おまけに反対が強い、大臣、こうやって町内会やあるいは住民からの反対決議が次々上がって、それは大変重要な住民の意思だと思います。そうしたことをないがしろにしてこの事業を進めることはありませんよね。お答えをお願いします。

西村(明)国務大臣 今委員からの、この説明会、非常に不親切であったのではないかという御指摘は真摯に受け止めたいというふうに考えております。

 その上で、除去土壌の再生利用につきましては、二〇一一年の野田内閣において閣議決定されました除染特措法に基づく基本方針の中で再生利用についての必要性が明記されておりまして、これに基づいて理解醸成の活動や実証事業等の取組を環境省として今進めているところでございます。

 その中で、環境省としては、全国での対話フォーラムや一般の方を対象とした実証事業の現地見学会、また、官邸や関係省庁へ除去土壌を用いた鉢植えの設置、環境大臣室にも置いておりますけれども、こうしたことによって、再生利用に関する理解醸成への努力を積み重ねております。

 所沢や新宿御苑における実証事業につきましても、地元自治体とよく相談をしながら進めておりますけれども、例えば一般に向けた説明会は、御指摘のものにつきましては、コロナ禍のため参加人数を制限せざるを得なかったという報告を受けております。

 また、今後の追加の説明会や、周知、開催の方法等についても検討してまいりますし、これまでいただいた御質問や御意見につきましては、引き続き丁寧に説明をしていきたいというふうに考えております。

阿部(知)分科員 今、西村大臣は、民主党政権下に再利用を決めたのではないかとおっしゃいました。当初言われていたものは、減容化とか、いろいろな処理をして容量を減らすということでありました。外での実証事業に使うなどということは、その当時は言われておりませんでした。二〇一六年以降のことであります。

 そして、私は思います、こういういいかげんな説明、そして住民合意の無視を積み重ねれば、道はどんどん遠くなると思います。そもそも、先ほど、冒頭申し上げました、今度新たに加わる帰宅困難区域の汚染土壌の総体量も試算されておりません。それ抜きに法律を通す、復興特措法の改正を行うなどということもおかしいと思います。

 環境省は、よく復興庁とお話をしていただけますようお願い申し上げて、終わらせていただきます。

堀井主査 これにて阿部知子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、櫛渕万里さん。

櫛渕分科員 れいわ新選組の櫛渕万里でございます。

 三・一一の東日本大震災と福島第一原発事故から間もなく十二年がたとうとしております。改めて、全ての犠牲者の方々に心から御冥福をお祈りするとともに、今なお健康やなりわいに大きな影響を受けて、あるいは避難を強いられている皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 事故はまだ収束しておりません。原子力の緊急事態宣言も発令中であります。今なお七市町村は帰宅困難区域で立ち入れず、帰れない方々が少なくとも三万人もいると言われています。

 当時私は、政権与党の衆議院議員として、津波の被災地に約一週間後、そして福島には事故約一か月後に足を運びましたが、それまでに見たこともない凄惨な光景が広がっており、本当に言葉を失ったことを昨日のことのように覚えております。

 原子力に対する安全神話を二度と繰り返してはならない、そのために、国は、原子力の推進と規制を分離し、安全規制行政を一元的に担う独立した組織として新たに発足したのが原子力規制委員会であり、規制庁であります。

 しかし、二月十日、岸田政権は原発推進へ大きくかじを切り、この安全神話が復活しかねない、そのような内容を盛り込んだGX基本法を閣議決定いたしました。

 環境大臣にまずお伺いいたします。

 岸田政権の原発政策について、原子力依存度をできるだけ低減していくという方針は変わりありませんか。

西村(明)国務大臣 変わりはございません。

櫛渕分科員 そうしますと、GX基本方針の中身に書いてあることと、低減は続けるんだ、原子力依存度は下げるんだということの方針、原発を進めるのかやめるのか、政府のそのスタンス、どうにも国民は理解できないと思いますよ。

 改めて、GX基本方針は、原発再稼働の推進、そして次世代革新炉の新増設、また原発の運転期間延長など、原子力を長期にわたって活用する、そのことを明記されています。

 特に問題なのが期間の延長です。原則四十年、最長六十年という運転期間の条件を維持しているように見えながら、審査で停止した期間を除けば、七十年、八十年も可能。六十年を超える延命の道を開くことになります。規制委における議論は、その是非こそ論点だったのではないのでしょうか。

 このパネルを御覧ください。これは規制委員会での発言の幾つかの抜粋でありますけれども、二月八日の規制委員会で四対一で唯一反対した石渡委員からは、科学的、技術的な知見に基づいて、人と環境を守ることが原子力規制委員会の使命である、また、運転期間を法律から落とすことは安全側への改変とは言えないという発言もありました。

 賛成した伴委員からも、二月十三日には、制度論が先行して六十年超えが後回しになり、ふわっとしたまま決めなければならなかった。さらに、杉山委員からは、外から定められた締切りでせかされて議論してきた、我々は独立した機関であって外のペースに巻き込まれずに議論をすべきであったという苦言が出されています。

 環境大臣にお伺いします。

 二月八日に規制委員会で反対意見が出されているのに、なぜ結論を待たずに、二月十日、政府は基本方針を閣議決定したのですか。独立性を持って原子力の安全規制を審査する委員会の決定をなぜ政府は尊重しなかったんでしょうか。理由を教えてください。

西村(明)国務大臣 今月十三日の原子力規制委員会の臨時会合において、高経年化した発電用原子炉に関する安全規制制度について議論されて、一人の委員が反対されたものということは承知しております。その上で、独立した原子力規制委員会として多数決により決定したものというふうに承知しております。

 三条委員会、独立した原子力規制委員会における議論でございまして、その内容についてのコメントは差し控えますけれども、委員それぞれの専門性に基づき議論がなされた上で、原子力規制委員会設置法に……(櫛渕分科員「大臣、申し訳ないんですが、その点聞いていないんですね」と呼ぶ)基づき、合議制の下で委員会としての決定がなされたものと承知しております。

堀井主査 櫛渕さん、発言は主査の指名を受けて行うようにお願いいたします。

櫛渕分科員 はい。聞いたことに対してお答えいただきたいと思います。

 二月十日に閣議決定を先にしたのはなぜですかとお聞きをしています。規制委員会の独立性を無視したプロセスでないとおっしゃるなら、二月八日に反対意見が出され、二月十三日の臨時会まで待つべきだったのではないですか。

 独立性というのは、政府とは違う、技術的、科学的な根拠に基づいて安全性を審査するということを旨としている組織のことですよね。違いますか。だから、それが担保されているから国民からの信頼を得られるわけであり、そこで疑念が生まれようものなら、その時点で、運転ルールはもちろん、再稼働や新増設という話にはならないと思いますよ。

 また、先週、大臣は総理から指示を受けましたね。新たな安全規制の具体化などの指示を受けて、原子力規制庁の片山長官に伝えているようでありますけれども、幾ら伝達と言葉を換えても、それは独立した組織に対する圧力に当たるのではありませんか。安全規制を決めるのは規制委員会ですから、独立した組織の議論のペースをなぜせかすんでしょうか。

 山中委員長に今日はお越しいただいておりますので併せてお聞きいたします。

 臨時会は新たな規制制度について異例の多数決により決定されたわけでありますけれども、委員長はその後、法案のデッドラインがあるので仕方ないと釈明したと報道されていますが、事実ですか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会の山中でございます。

 本件は、昨年十月五日以来、四か月かけまして慎重に議論を進めてきた案件でございます。二月八日の時点で高経年化した原子炉に対する安全規制に関する概要についての議論を行いまして、賛否を問いましたところ、反対意見が出ました。その上で、一旦、技術的な議論を更に深めたいということで、十三日の臨時の原子力規制委員会において更に議論を行いまして、決を採ったところでございます。

 当然、この四か月間、高経年化した原子力発電所の安全規制について、継続的に厳正な安全規制ができるよう、法案の提出を目指して審議を慎重に行ってきたわけでございますので、法案の提出というのは私どもにとって必要なことでございましたので、そこが一つのスケジュールの締切りになったということは事実でございます。

櫛渕分科員 独立した機関であるわけですから、法案のデッドラインは、そんなに制約を受けるものなんでしょうか。そして、委員の中から反対意見が出ているにもかかわらず、それを待たずに閣議決定をするというのは、やはり独立した機関として、私は、プロセス、おかしいと思います。

 事実上、政府の都合を優先させたわけでありますけれども、独立した規制機関としての存在意義を失いかねないものであるということを是非、山中委員長には御自覚いただきたいですし、これが原子力政策に対する国民の不安や不信を更に広げるものになっているということを御自覚いただいているんでしょうか。

 続けて委員長にお聞きいたします。

 十五日の予算委員会で総理は、原発の運転期間の上限について、安全規制のためだったと答弁されています。

 実際に、運転期間については、原子炉等規制法は、第二節の第四十三条三の三十二に定められており、成立時は安全規制だったことは紛れもない事実であるということで間違いありませんね。

山中政府特別補佐人 御指摘の、現行の運転期間につきましては、平成二十四年当時の国会審議において、安全性に関する科学的、技術的見地や政策上の判断を含めて、幅広い観点から原子炉等規制法に盛り込まれたものであると承知しております。その後、令和二年七月に、原子力規制委員会は、原子力発電所の運転期間は利用政策上の判断であるとの見解を決定いたしました。

 今般、経済産業省において運転期間に関する利用政策上の検討が行われましたが、原子力規制委員会としては、それがどうあれ、高経年化した発電用原子炉の安全規制が損なわれることがないよう、厳格な制度案を検討してまいりました。

 私としては、総理はこのような経緯を踏まえて御答弁されたものと理解しております。

櫛渕分科員 もう一度お聞きします。

 山中委員長も、この上限規制は安全規制のためであるという御認識でよろしいですか。

山中政府特別補佐人 令和二十四年当時議論をされまして導入されました原子炉等規制法の運転延長認可制度につきましては、少なくとも、四十年におきましては、高経年化した原子炉の安全規制を行うための審査を行うものでございます。しかしながら、六十年という年限を経て、仮に安全規制に適合していても運転を止めなければならないという政策的観点が加味されたものであるというふうに理解しております。

櫛渕分科員 はっきりお答えにならないので、どちらにも答えられるような御答弁だったように思いますが。

 もう一度確認したいことは、利用政策上ということを委員長は繰り返すわけなんですけれども、もう一度、この規制委員会ができた経緯、そして原子炉等規制法の新しい運転ルールが決まったときのことを振り返ると、やはり大きなポイントは、冒頭で申し上げたように、三・一一の事故を受けて、原子力規制行政の責任機関を規制委員会に一元化するのとセットで見直されたのが新しい原子炉等規制法であるわけですよ。しかも、その当時、それを作ったのは民主党だけではありません。自民党、公明党、三党の合意で決まった超党派の法律であり、重いものです。国会において重いものだと思いますよ。そして、その柱の一つが運転期間の制限の規定の追加ということだったわけですね。

 つまり、規制委員会の発足と運転期間上限ルールはセットであったということです。過去の様々な経緯を見ても、一緒に、全てセットで出されています。

 つまり、ここで運転期間ルールが規制法から全削除されれば、規制委員会自体の存在意義に関わるわけであり、規制委員会はこのルールの存在を守らなければならないのではありませんか。運転期間ルールだけが何やら独り歩きしているように見えて仕方ないんですね。

 もう一度、委員長にお伺いします。

 今回、GX基本法に従って原子炉等規制法から運転期間の制限の規定を全削除する改正案が提出されると聞いていますけれども、この立法事実は何ですか。

山中政府特別補佐人 先ほど、令和二十四年の国会で審議されたとお話をさせていただきましたけれども、平成二十四年の間違いでございます。平成二十四年の国会審議で、運転延長認可制度と原子力規制委員会が設置されるということが両方で議論をされ、決定をされたということは承知しております。

 その上で、運転期間の延長につきましては、原子炉等規制法においては、運転期間に関する定めと高経年化した発電用原子炉に対する安全規制についての定めがセットで規定をされています。このうち、運転期間の定めについては、令和二年七月二十九日に原子力規制委員会で決定した見解のとおり、原子力利用の在り方に関する政策判断であり、原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではないと決定をしております。

櫛渕分科員 私の質問は、今回、運転期間を全削除をして法改正をするということに当たって、その立法事実は何ですかということの質問でありました。そこはお答えになっていないと思います。

 そもそも、今回の運転ルールの変更の議論はどのような経緯だったのか。総理が原発運転期間延長を含めた検討の指示を出したのは八月二十四日とされていますけれども、水面下で様々な動きがあったのだと思います。

 私が見る限り、三つの段階があるんですよ。この間、委員長がよく引き合いに出される令和二年の見解を細かく見ていくと、二〇一七年の一月十八日に開催された原子力規制委員会と電力事業者との意見交換会で、事業者側から、一定の期間を運転期間から除外してはどうかと提案があった、ここにまずは端を発しているものと見えます。

 そして次に、その後、二〇一九年四月に出された経団連の提言を見ると、そこには、不稼働期間を運転年限から除外する、そして、運転期間を六十年超えに延長すると書かれていて、二〇一七年の意見交換会、このことを裏づけているように見えるんですね。つまり、事業者側からの提案で始まっているんじゃないですか。

 そして、その後、二〇二一年の四月十四日、第二十三回原子力小委員会の議事録を見ると、電気事業連合会から、安全対策投資の回収見通しが厳しい、運転期間を見直してくれと要望が出ています。

 要は、今回の運転期間ルール改正、つまり原子炉等規制法を、改正が必要とされているその本質は、安全のための投資がかさむから、費用を回収するためには運転期間の延長が必要という電力会社からの要望、つまりは、要はお金の話なんじゃないんですか。違いますか、委員長。

山中政府特別補佐人 運転期間に関する議論につきましては、様々な議論が長年にかけて議論されてきたものと私自身は承知しております。

 ただ、その一端として、二〇一七年、委員が御指摘になりました、電力事業者のCNOと原子力規制委員会との議論、これが発端になっていることは事実でございます。その中で、原子力発電所を運営する事業者から、運転期間の中から運転停止期間を除いてほしい、これを安全規制の側で考えてほしいという要望がございましたので、それ以後、三回CNOの会議はございましたけれども、それは安全規制の判断できる事柄ではないときっぱりと拒否をさせていただきました。

 また、停止期間中でも原子力発電所の劣化は進むものでございます。したがいまして、原子力規制委員会としては、暦年で高経年化した原子炉の安全規制を行うという考え方を改めて示したものでございます。

櫛渕分科員 今の委員長のお話は、こうした事業者、電力会社側からそのような要望があったということをお認めになったと受け止めました。

 そして、委員長がよく引き合いに出されている令和二年の見解で、規制委員会が運転期間の在り方について意見を述べる立場にないというふうによくおっしゃるわけですが、これは、停止期間について延長してほしいという電力会社からの要望に対して、それはできませんと答えたものであるという理解でよろしいですか。

山中政府特別補佐人 令和二年七月の原子力規制委員会で私どもが決定させていただいた見解の中には、運転期間については、原子力利用政策で判断すべき事柄であって、原子力規制委員会が意見を申し述べる事柄ではないという見解ももちろんまとめましたし、原子炉の運転停止期間中にも劣化が進むという事柄についても同時に決定をさせていただきました。

櫛渕分科員 そうすると、安全規制をつかさどる規制委員会が利用政策の側に意見を言う立場にないと日頃おっしゃるのは、このときに、停止期間について延長してほしいという要望をいわば突っぱねるためということでよろしかったということで、よろしいですね、分かりました。

 では、そうであったとしても、一方、今度は環境大臣にお伺いしていきたいんですが、法律から条文を削除する話ではないと私は思うんですね。これは、当時国会が国民の意思を背景に入れたものですから、事業者の要望で変える話ではありませんし、ここが私はどうにも腑に落ちないんです。

 環境大臣にお聞きします。

 環境省は基本的に、国民の健康や命、生活を保護する規制の立場の省庁であると考えておりますが、原子炉等規制法から運転期間を削除する法改正の理由は何ですか。

西村(明)国務大臣 これまで原子炉等規制法に運転期間の話が入っていたわけでございますけれども、今回、GX等々の話で、電気事業法の方にそれを移していくということで、その部分を削除するということではないというふうに承知しております。

櫛渕分科員 だから、その理由は何ですかとお聞きしているんですよ。何で電事法の方に移管するのか、説明になっていませんよ。

 法改正の立法事実について、規制委員会とどのような協議があって、大臣は炉規法から条文削除をすることをどうしてお認めになったのか。どんな法案審査のプロセスがあったのか。経産省と環境省、これは規制と推進というふうに大きくくくってもいいと私は思いますが、決して中立な立場でいるのが環境省ではありません。

 それだけでなく、運転期間のルール変更を電事法に移管するということは、冒頭から申し上げてきた原発事故を受けての規制と推進の分離、これがあやふやになって一体化しかねない、これがこの法案の大きな問題点だと私は思っています。ですから、なぜなんですかとお聞きしています。

 今回、電力会社の経済性を最優先するかのようなルール変更が急がれて、六十年超えの老朽原発リスクに対する十分な議論もないまま、原子力利用側に運転ルールが移管して、推進と規制の一体化に逆戻りしていいんでしょうか。それが束ね法案の実態だと私は思います。

 大臣にもう一度お伺いします。

 繰り返しますが、原発事故の最大の教訓として、推進と規制を分離し、原子力規制委員会の発足とセットで四十年運転ルールが作られました。それが僅か十一年で変更になる。このルール変更について、束ね法案には俺は署名しない、そう御決断いただけませんか。被災地御出身であり、県内には原発も抱えられて、そして復興委員会での役員も務められてきたお方だと存じ上げています。お答えください。

西村(明)国務大臣 法案についての御質問がございましたけれども、今まで炉規法に入っていた運転期間に関しては六十年という規制の部分だったけれども、運転期間の延長という、これは利用部分でございますので、これが電気事業法に移ったということでございます。

 原子力規制庁、規制委員会とすれば、運転期間の延長等々の御議論は利用政策の問題でございますので、規制庁と規制委員会はしっかりと、どのような状態になっても、しっかりとした安全審査を行ってまいります。

櫛渕分科員 いやいや、原発事故を受けて、国民の意思で、原子力安全行政として、炉規法が、これまでになかった四十年ルールというのが入ったんですよ。なぜそれを全削除するんですかと聞いています。電事法に移すのがなぜですかと聞いていません。なぜ、そもそも、炉規法から全削除するという立法事実が何なんですかということをお聞きしたんですが、お答えいただけないということが分かりました。

 先週、週末に、総理から御指示の中で、国民の不安を払拭するために説明ができる準備を含めた上で法律案の閣議決定を行うべきということがあったかと思います。今日の質疑で全く不安は払拭されていない、それどころか、誰のために四十年ルールを変更するのか、電力会社のための理由しか今日は出てきていません。それが今日の結論です。

 是非、なぜ、あの事故を受けて、国民があれだけ、不安とそして被害と、今なお深刻な状況に置かれている方がいる中で、この運転ルールを炉規法から全削除するのか、明確に今後明らかにしていただきたいと思います。

 そして、時間がなくなってきましたので、今後の安全検査についてお伺いしていきたいと思います。

 先日、予算委員会で西村経産大臣は、アメリカで八十年延長の承認を受けたものが八基あると答弁されました。しかし、うち六基は承認取下げになっていますので、是非、政務官、今日来ていただいていると思いますが、訂正をお願いします。

 アメリカでは運転期間の延長回数に制限はないし、英国やフランスでも運転期間に制限は設けられていないとそのとき大臣は答弁されていますが、これは全く条件が違うんですね。何が違うか。一番大きいのは、原発運転認可の延長審査に対して、地域の住民がその安全評価や環境影響評価に参加して懸念や反対を表明する、そうした機会が保障されているんです。実際、アメリカのカリフォルニアのディアブロキャニオン原発は、環境への影響が争点となって、結局、延長運転を断念、閉鎖が決定されました。フランスでも、十年ごとの延長の審査プロセスにおいて住民参加の協議を行うことが法律で義務づけられているんです。

 委員長にお聞きします。

 日本でも住民の参加や環境への影響を原発審査に取り入れるべきだと思いますが、いかがでしょうか。今後、四十年そして六十年ルールを撤廃して、七十年、八十年ということも可能になるというようなときに、こうした新たなルールを入れるおつもりはありませんか。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 現在検討しております案は、現行の高経年化技術評価と運転期間延長認可制度、この二つを一体化するという方法を考えております。

 具体的には、三十年を超えて運転しようとするとき、その後、十年を超えない期間ごとに長期施設管理計画の策定を義務づけることとしております。その上で、原子力規制委員会が、その計画が災害防止上支障がないこと及び原子炉施設の技術基準に適合していることを審査し、許可するものとしております。

 このような新しい制度をきっちりと議論をし、今後、検討チームを設置し、議論を進めてまいりますけれども、その中の議論は全て公開で行うこととしておりまして、国民に分かりやすい説明を行うようにしております。また、審査の結果についても、パブリックコメント等、国民の意見公募を行う予定にしております。

櫛渕分科員 そもそも、炉規法から全削除すると先に決めておいて、その後、今週水曜から具体的な検討に入るというプロセス自体、おかしくないですか。枠組みだけ決めて、全部安全基準の中身については後回しということもおかしいということを指摘をさせていただきます。

 時間が来ましたので、最後、まとめに入りたいと思いますが、原発を、その運転ルールの話というのは、今後どのような日本をつくっていくかということに大きく影響していたわけですね。これを見ていただくと、細かい説明はもう省きますけれども、このまま現行ルール、すなわち原則四十年ルールを適用すれば二〇四九年に原発稼働ゼロが実現するということが大きな、当時の国民の期待だったわけです。

 様々な時間の差はあっても、将来的に、やはり原発というのはリスクがありますから。日本は地震大国です。そして、ウクライナの戦争を受けて原発攻撃リスクも高まっています。南海トラフやあるいは首都直下地震、三十年のうちに七〇%の確率で起こると言われているわけですね。ですから、国民の多くは、程度の差はあれ、やはり将来的に原発を減らしてほしい。

 れいわ新選組は、即禁止、むしろ積極財政で廃炉ニューディールを進めるべきだ、このように公約を掲げておりますけれども、このように運転ルールの変化を、どのような影響が、当時の決定から、中期的な国民の社会、そして将来の子供たちに影響していくかということを改めて最後に申し上げたいと思います。

 ちなみに、現行ルールを改正して新規のルールにすれば、原発依存はずっと続く、このような状況になります。再稼働、今日はできませんでしたけれども、次世代革新炉と言われる、次世代でも何でもない、コストばかりがかかる新しい原発を新設するということも言われておりますし、こうした間違ったGX基本方針の下で、真の持続可能な社会は実現できないと思います。

 れいわ新選組は、脱原発、脱炭素、これを二本の柱にして本当の持続可能な社会をつくっていくために引き続き政府に質疑を求めてまいります。

 ありがとうございました。

堀井主査 これにて櫛渕万里さんの質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

堀井主査 次に、農林水産省所管について政府から説明を聴取いたします。野村農林水産大臣。

野村国務大臣 初めに、予算の基礎となっております農林水産施策の基本方針について御説明を申し上げます。

 食料は人間の生活に不可欠であり、食料安全保障は、生産者だけの問題ではなく、消費者を含めた国民一人一人に関わる国全体の問題です。しかし、この食料安全保障について昨年を振り返ってみると、近年の世界的な人口増加等に伴う食料需要の拡大に加え、ロシアによるウクライナ侵略により、食料や生産資材の価格が高騰するなど、我が国の食をめぐる情勢は大きく変化しており、まさにターニングポイントであったと認識いたしております。

 こうした食料安全保障のリスクの高まりの中で、将来にわたって国民に食料を安定的に供給していけるようにするためには、国内市場の縮小や生産者の減少、高齢化といった課題を乗り越え、国内の生産基盤を維持強化するとともに、安定的な輸入と適切な備蓄を組み合わせながら、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していく必要があります。

 こうした課題に対処するため、喫緊の対策として、肥料や配合飼料、燃油などの価格高騰対策等を実施しているほか、輸入食料や輸入生産資材への過度な依存を低減する構造転換対策などを内容とする令和四年度第二次補正予算を措置するとともに、令和五年度当初予算を国会に提出しているところであります。また、昨年末には、これらの対策を政府一丸となって継続的に講じていくための食料安全保障強化政策大綱を策定いたしました。

 食料安全保障の強化には、こうした構造転換のみならず、それを支える国内の生産力と、その前提となる強固な生産基盤が不可欠です。そこで、拡大する世界の食市場を獲得するための農林水産物・食品の輸出促進、みどりの食料システム戦略を踏まえた環境負荷低減の取組推進、これらを進めるための土台となるスマート農林水産業の推進などの施策についても着実に実行してまいります。

 また、こうした食料、農業、農村を取り巻く厳しい環境の下で、食料安全保障を確立していくためには、食料・農業・農村政策を見直す必要があると考えています。

 このため、食料・農業・農村基本法の見直しのための検証を進めることとし、昨年、食料・農業・農村政策審議会に設置した基本法検証部会においても、精力的に審議を行っていただいているところです。生産者の減少、高齢化や国内市場の縮小、世界的な食料需要の拡大や気象変動への対応など、現行基本法が制定された二十年前には想定されなかったレベルで変化している我が国の食料、農業、農村を取り巻く情勢の変化を踏まえ、次の時代を形作る食料・農業・農村政策について、各界各層から幅広く御意見を伺い、国民的コンセンサスの形成に努めながら、しっかりと検証、見直しを進めていき、これらの御意見も踏まえて、本年六月をめどに食料・農業・農村政策の新たな展開方向を取りまとめます。

 次に、令和五年度農林水産予算の概要を御説明します。

 一般会計の農林水産予算の総額は二兆二千六百八十三億円であり、その内訳は、公共事業費が六千九百八十三億円、非公共事業費が一兆五千七百億円となっています。

 以下、農林水産の重点事項については、委員各位のお許しをいただき、御説明を省略させていただきます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

堀井主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま野村農林水産大臣から申出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀井主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

堀井主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

堀井主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中曽根康隆君。

中曽根分科員 自由民主党の中曽根康隆でございます。

 本日は、野村大臣そして野中副大臣を始め、政府の皆様に貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まさに今大臣が御発言していただきました食料安全保障、ロシアのウクライナ侵略で、我々、いろいろと気づかされることがありました。その最たるものが食料安全保障だというふうに考えております。平時はいいですけれども、有事になると、各国、やはり保護主義に走る傾向がありますし、また、自由貿易体制というのが機能不全に陥るというのも、我々、目の当たりにしたところでございます。やはり依存するというのは怖いなというのを感じました。自分たちで食べるものはしっかりと自分たちで作っていく、この基本にやはり立ち返らなきゃいけないんだろうなというふうに考えております。

 主要穀物の国産化、また農地、労働力の確保、それに加えて、危機に強い食料供給体制の構築というのは喫緊の課題であります。また、御案内のとおりで、この二年間で飼料は最低でも四割、肥料は三割、価格が高騰しているわけであります。こういった飼料や肥料の輸入依存構造からの脱却というのもまた待ったなしであります。

 海外への過度の依存の危うさ、先ほど申し上げた貿易自由化のリスク、農業の生産基盤の弱体化など浮き彫りになりましたけれども、改めて、政府の、大臣の食料安全保障に対する危機感、そして具体的な対策をお伺いしたいと思います。

野村国務大臣 今般のロシアによるウクライナ侵略によりまして、食料や生産資材の価格が、先ほどお話がありましたように高騰したことにより、我が国の農業、それから畜産業、そして食品産業などにも多大な影響を与えております。

 将来にわたって我が国の食料の安定供給を図るためには、食料や生産資材の輸入への過度な依存を低減していくための構造転換を進めよう、こういうことで進めておりますが、安定的な輸入と適切な備蓄を組み合わせつつ、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していくことが重要だと考えております。

 このため、昨年末に策定いたしました食料安全保障強化政策大綱に基づき、小麦や大豆、さらには加工用野菜、それから飼料作目などの海外依存の高い品目の生産拡大や米粉の利用拡大、畑地化の推進など、こういったことに取り組んでまいります。さらに、肥料の国産化に向けた、堆肥、下水汚泥資源等の国内資源の利用拡大などを着実に実施し、食料安全保障を強化してまいりたい、こんなふうに考えておりまして、補正予算でも八千三百億の予算を確保させていただきましたし、さらには、当初予算におきましても、それらを網羅した予算となっているところでございますので、どうかよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

中曽根分科員 大臣、ありがとうございます。

 今、備蓄という言葉も出ました。やはり、食料安全保障において、備蓄というのは今後ますます大事になってくるというふうに思います。

 やはり、輸入停滞に備えた備蓄、すなわち、本来入ってくるはずのものが入ってこなくなったときにしっかりと国内で供給できるだけのものを備蓄しておく。これも、品目ごとに、備蓄の水準とか又は備蓄の運営の在り方、こういったことを今のうちからしっかりと整備しておく必要があると思いますし、その時々の情勢を見ながら備蓄の量もコントロールしていく必要があると思います。

 そういった意味で、農水省として、日本をしっかりと俯瞰した上で、食料備蓄のコントロール、これを具体的にどうやっていくのか。生産拡大という話もありましたけれども、じゃ、一体、拡大するときに誰が、どうやって、どのぐらい、どの品目を拡大していくかとかですよね。そこら辺までしっかりと決めておくことがやはり実用的な備蓄のコントロールにつながると思いますので、そこら辺、もうちょっと具体的に政府の皆さんにお答えいただければと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるとおり、食料の安定供給は国家の最も基本的な責務の一つでございますので、海外からの食料の輸入に支障があったときなどは、おっしゃったように、備蓄を適切に活用する、これに組み合わせて、国内における緊急増産を行うなどにより食料供給を確保することが必要だと考えております。

 そのため、農林水産省では、緊急事態食料安全保障指針というのを定めておりますけれども、凶作や輸入の途絶といった不測の事態の深刻度に応じて、レベルゼロから二までの三段階の講ずべき具体的対策やその実施手段を示しております。

 我が国の食料供給に関する不測の事態が発生したときには、この指針に定めたレベルに応じて、米、小麦、飼料穀物の備蓄の活用、代替輸入先国からの緊急的な輸入、米や芋類といった熱量効率の高い作物への生産転換、あと買占めの是正などの適正な流通の確保などの対策を的確に実施してまいります。

 また、平素から定期的に、指針に基づく具体的な対応や実施手順等についてシミュレーション演習も行っておりまして、この結果を踏まえ、指針の内容の更なる充実を図っていきたいと考えております。

中曽根分科員 ありがとうございます。

 今、大臣始め政府参考人の方にお答えいただいた、こういうことをやっていきますというもの一つ一つにおいて、やはり、いつまでに何を達成するという、しっかりとした数値を掲げるということが大事です。いつまでにこれだけのことをやるという数値目標を掲げて、それを一つ一つ実行していき、達成していく。結果的に食料安全保障の基盤が強固になっていくと思いますので、是非ともそこら辺は着実な実行をお願いしたいと思います。

 続きまして、鳥インフルエンザについてお伺いをしたいと思います。

 今年に入って、私の地元、群馬県前橋市において三件連続で鳥インフルが発生をいたしまして、地元の関係者はもう瀕死状態に陥っております。

 発生農家への支援だけでなく、これは当然、移動、搬出の制限がかかりますので、その区域に該当する農家へのダメージも非常に深刻であります。これは連続で発生してしまうと、制限が解除になるかなと思ったときにまた次の制限が入って、それがまた解除になるかなと思ったらまた次の制限がという形で、今回の件では、二か月にわたって制限、要は移動、搬出の制限がかかって、結果的に、出荷するはずだったひなとか鶏が大量に死んでしまうという事例も聞いております。

 そういった中で、長期間にわたる制限の場合、一回であれば耐えられたけれども、二回、三回重なるとさすがに厳しいよという声、こういった長期間の制限の場合に、現状の政府が考えている補償だけでは不十分だという声も聞いておりますけれども、それに関してどう考えるか。

 また、制限解除の際に当然検査をするわけですけれども、ウイルス分離検査というのが、現状、これは四日かかります。これを例えばPCR検査にすれば一日で済む、すなわち制限の期間も短くなるわけです。そういった、制限区域の農家の負担を軽減するためのルール変更というのは今後可能なのかどうか。例えば、発生現場から離れているところだけでもPCRの簡易検査にするとか、一律ではなくて距離で区別するとか、そういった柔軟な対応ができるのかどうかを含めて教えていただきたいと思います。

野中副大臣 まず、支援について申し上げますが、発生農場につきましては、家畜伝染病予防法に基づいて、原則、殺処分した家禽の評価額の全額を手当金としてお支払いをしております。

 また、搬出制限区域によって鶏卵等の移動が制限がかかる、そこによって発生する売上げの減少額、飼料費、輸送費の増加額については、国で二分の一、そして都道府県で二分の一を支援をしております。

 また、影響を受けた農業者について、家畜疾病経営維持資金や農林漁業セーフティネット資金の低利融資の利用を活用していただくことになっておりまして、これらの支援によって、まず安定的に経営が継続できるように私どもも支援をさせていただきたいというふうに思っております。

 また、それぞれの状況が継続することによって、二か月、先生の御地元は滞って経営が大変厳しくなった、そこについて状況に応じた対応ができないかという話がございました。

 制限がかかる状況に応じてなんですが、先生の事例では、例えば、検査によって陰性が確認されるなど、一定の条件を満たせば、防疫指針に基づいて、都道府県とそして私ども農水省との協議の上、制限の対象外とできます。例えば、先生の御地元で発生した事例も、協議について速やかに実施をしておりまして、前橋の事例については発生当日の出荷が可能となったところであります。

 一方、防疫指針による制限区域の設定期間や解除のための必要な検査方法、これは審議会の専門家の意見を踏まえ、科学的知見や国際基準に基づいて定めているところでありまして、ウイルス分離検査については国際基準で定められているというところでありますので、これらについて、科学的知見に基づいて、私どもは引き続き、都道府県と連携しながら必要な対応を行ってまいりたいというふうに思います。

中曽根分科員 副大臣、ありがとうございました。丁寧な御説明でした。

 移動制限がかかった場合の増加額、二分の一ずつ国と県で補償するとか、必要な措置をしていくというのは大変ありがたいんですけれども、そこにやはりスピード感も是非とも欲しいなと思います。補償を申請するに当たっても、やはり手続が煩雑であるとか、又は申請から支給までに例えば何か月もかかるとか、やはりキャッシュフロー的な意味でも経営をなかなか続けられなくなるというような事例も聞いております。手厚いサポートをいただく、又は柔軟なサポートをいただくと同時に、迅速なサポートも是非とも心がけていただいて、農家の皆さんの少しでも力になっていただけるようにお願いをしたいと思います。

 また、発生に当たっては、自衛隊の皆さんとか県の関係者が殺処分に当たったり、もろもろの場面で一体となって感染拡大防止のために必死に現場で頑張っていただいておりますので、国としても引き続き十分なバックアップをしていただきたいというふうに思います。

 続きまして、酪農に移りたいと思います。

 これはもう言うまでもなく、配合飼料もそうですし、とにかく餌が高止まっている状態。乳代からコストを引くともうマイナスで、売っても売っても赤字の状態。

 少し荒い言い方になりますけれども、いわゆる農家の皆さんから聞く声を代弁すれば、やはり、カレントアクセスで海外から入ってくる乳製品は引き続き入ってくる一方で、国内の農家さんには減産をお願いしたり、又は、北海道においては、クラスター事業で供給量を多くしろと言ったら、今度は余っているからお金を出すから殺処分しろとか、さらに、いわゆる子牛、スモール価格も今大変低い状態に、まあちょっと持ち直しましたが、なっているという中で、話を聞けば聞くほど、国のしっかりとした基本方針というのがぶれられると自分たちも困るんだという声を聞きますし、やはり現状はどう考えても非常に苦しい状況。私の地元でも、毎月二、三百万の赤字で、せっかく息子も孫も担い手として頑張ろうと言ってくれているのに、経営ができなくなってもうやっていけないというお母さんの声を聞いたり、やはり何とか助けてあげたい。

 そういった中で、やはり生産者の皆さんも、国としては最大限のことをやってくれている、そういったことは多分皆さん理解してくれていると思います。だからこそ、現場の皆さんも、本当に苦しい中でも歯を食いしばって今耐えていただいているというふうに思います。

 恐らく、今、酪農家の皆さんが一番聞きたいことは、この苦難を何とか乗り越えた先に、今後、国として中長期的に酪農をどうしたいのか、国産の牛乳・乳製品、一体どういうふうな位置づけでやっていきたいのか。やはり国の政策が一貫性を持ってしっかりとしていないと、現場も今後いろいろな状況で振り回されることになりますので、そうなれば絶対担い手なんかも現れないことになります。

 是非とも、大臣にお伺いしたいんですが、中長期的な酪農に対するビジョンを教えていただきたい。酪農家が希望を持てるような、将来継続して営農できるような、そういったお考えを是非ともお聞かせいただきたいと思います。

野村国務大臣 いろいろ生産資材が高騰している中で、特に飼料の影響を一番受けておられるのが酪農だろう、こんなふうに思っておりまして、今、畜産の危機的な状況の中で最も厳しいのが酪農家の皆さん方だろうと思っておりまして、先般来、どういうやり方でこの急場をしのいでいくかということを議論もさせていただいておりますが、当面、需給のやはりバランスを取っていかなきゃいけないということでございます。

 それは、なぜそういうことが起こってきたのかということでありますが、令和二年三月に策定いたしました酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針というのが定められておりまして、これによりますと、それまでは生乳が非常に不足基調だったわけでありますが、その後、この基本方針に基づきまして、令和十二年度の生乳生産目標を七百八十万トンということで定めたところでありますが、現在、七百六十五万トン、七百八十には届かないところでありますが、それでも需給のバランスが崩れかかっているという状況でございまして、生乳の増産を支援してきたところでありますが、現状では、大きな理由が二つありまして、一つは、新型コロナの拡大による生乳需要の急激な減少、これが一つであります。それからもう一つは、円安の進行などによる飼料価格の高騰、こういった不測の事態が重なりまして、酪農経営が非常に厳しい状況に置かれているというのは、もう委員御指摘のとおりでございます。

 このために、我々は、需給の改善を図るために、在庫低減対策や消費拡大対策、あるいは生産抑制の取組に対する支援、こういうことを生産者あるいはメーカー共々でやっておりまして、コスト増加を価格に適正に反映できる環境を是非整備をしていきたいというふうに思っておりまして、飼料高騰の影響を緩和するための、また国の方での緊急対策も講じているところでございます。

 中長期的には、酪農の生産性の向上を図りつつ、輸入飼料への過度の依存から脱却をいたしまして、国内飼料生産基盤に立脚した足腰の強い酪農への転換を図ることが重要であり、このための諸対策を講じてまいります。

 私も、非常に気になりまして、地元の酪農協のいろいろな指標を見せていただいておりますが、もう委員御承知のように、十一月からは十円値上がりしました、生乳代が。それによって少し好転しつつあるというのが見えておりまして、またさらには餌代の対策等についてもやっておりますので、こういったものが結果として酪農経営にどういう影響を及ぼしていくのかというのもやはり見定めていかなければいけないだろう、こんなことを思っているところでございまして、またいろいろとお力をおかしいただきたいと思っておるところでございます。

中曽根分科員 大臣、本当に御丁寧な答弁、ありがとうございます。

 まさに、今大臣おっしゃったとおりで、二つの大きな理由、コロナによる生乳の需要が減、そしてウクライナ侵略等に端を発するコスト増、この二つが直接的な原因で酪農家を苦しめているということだというふうに思います。

 これは、二つとも想定していなかった事態が起きて、それによって国内で混乱が起きているということで、まさに、冒頭申し上げた食料安全保障に直結してくるというふうに思いますので、国内の頑張っている、やる気のある酪農家たちが引き続きモチベーションを保って営農ができるように、是非とも、これからも柔軟な、そしてスピーディーな対応をお願いをしたいと思いますし、我々自民党としても全力でバックアップをしていきたいというふうに思います。

 そういった中で、今まさに大臣の御答弁に出てきた価格転嫁についてお伺いをしたいと思います。

 農産物の価格転嫁がなかなか進んでおりません。しわ寄せは生産者に来ております。これはなぜか。結局、生産者に価格決定権がない場合が非常に多いからだというふうに思います。

 コストが上がっても価格転嫁できない、それでも言い値で売らざるを得ない。作っても作っても赤字になってしまう、だったらもうやめてしまった方がいい、こういう農家さんが現状たくさんいるのは事実であります。持続可能な農業生産にはやはり適正な価格形成の実現が不可欠でありまして、この問題、真剣に取り組まないと、生産者のモチベーションは下がる一方、同時に、やはり食料自給率も下げてしまうということになります。

 一例として、この対策で、皆さん御承知のとおり、フランスでは新しい法律ができました。農業者の報酬保護のための法律というものです。これは何かというと、農家の収入を守るために、農家と農産物の買手である食料事業者との契約を結ぶ際のルールを定めたものでありまして、書面契約を義務化して、契約内容は農家側が提案、価格決定の際に生産費がどれだけかかったかを考慮しなくてはならないことをしっかりとその契約書に盛り込むという法律であります。

 日本の農家もしっかりと価格転嫁をできるような体制を整えるべきと考えておりますけれども、農水省の見解をお伺いしたいですし、価格転嫁できているかどうかはどうやってチェックをしていくのか、これも併せてお伺いしたい。そして、このフランスでできたような法律、こういったものを例えば日本で取り入れることができるのかどうか、同じくお答えをいただきたいというふうに思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 まず、価格転嫁についてでございますが、私どもにおきましても、価格転嫁は非常に重要と考えておりまして、現在、政府で取りまとめました転嫁円滑化施策パッケージ、これに基づきます取組のほか、農林水産省といたしましても、適正取引の推進や、あるいは、消費者等に対してコスト上昇の背景を分かりやすく伝える広報活動等を行っているところでございます。

 昨年末に決定いたしました食料安全保障強化政策大綱におきましては、食料安全保障の強化のための重点施策といたしまして、「生産者・食品事業者・消費者等、国民各層の理解と支持の下、生産・流通コスト等を価格に反映しやすくするための環境の整備を図る」こととしておりまして、今後、生産、流通の実態等を踏まえて、コストを反映した価格が形成されるためには何が必要か、検討してまいります。

 あわせまして、エガリム法についての答弁でございますが、フランスのエガリム法は、二〇一八年十一月に、農業生産者と取引相手の関係を見直し、持続可能性に配慮すること等を目的として公布されました。

 また、同法の施行後、生産、流通コストを反映した価格形成を推進する観点から見直しが行われまして、エガリム2法が二〇二一年十月に公布され、本年一月から全面的に施行されたと承知しておりまして、現在、その状況等について調査を行っているところでございます。

 今後、こうした外国の事例も参考にいたしまして、我が国の生産から流通までの実態等を踏まえて、それぞれの段階でコストを反映した価格が形成されるには何が必要か、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

中曽根分科員 ありがとうございます。

 是非とも前向きに、そういった海外の事例のいいものを日本でも取り入れていただきたいというふうに思います。

 そして、今御答弁の中であったとおりで、消費者のマインドを変えていく、これはやはり極めて大事だというふうに思います。生産コストが上がれば当然スーパーで並ぶ価格も上がるんだ、これは当たり前の話で、そこをやはり消費者がしっかりと理解して受け入れる、こういったマインドがつかないことには、いつまでも生産者がしわ寄せを食らうことになるというふうに思います。やはり、安売り合戦で、みんなが痩せ我慢している状態というのは極めて不健全でありますので、そういったこともしっかりと抜本的に変えていく必要があると思います。

 また、六月の中間取りまとめに向けた、現在二十年ぶりに改定作業が進んでいる、先ほどから話をしている食料・農業・農村基本法、これにおいても、やはりしっかりと、価格転嫁を含めた農家の所得の確保、こういったことを明記をしていただくことを強く希望をしておきたいというふうに思います。

 続いて、ちょっと輸出の話をお伺いします。

 政府は、二二年度の農産物・食品輸出、一兆四千億円でありました、今後、二〇二五年には二兆円、三〇年には五兆円という大きな目標を掲げております。これをどうやって達成をするのか。品目ごとに、何を、どれぐらい、誰が、どうやって、それをどこに出していくのか。やはりしっかりとした戦略を立てた上で、各プレーヤーがそれを実践していく必要があるというふうに思います。そして、この大きなビジョン、戦略を誰が描いていくのか。

 そういったことも含めて、是非ともこの輸出の戦略についてお伺いしたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 委員御質問のありました輸出拡大に向けた戦略でございますが、二〇二〇年に輸出関係閣僚会議において輸出拡大実行戦略を策定し、日本の強みがあり、輸出拡大の余地が大きい品目として、輸出重点品目を定めたところでございます。

 現在二十九ある輸出重点品目ごとに、輸出先の国、地域別の輸出目標額を設定した上で、その目標達成に向けた課題を明確化し、そのために育成すべき国内産地を特定しております。

 さらに、昨年十二月には、この品目ごとの取組をより強化する観点から、同戦略を改定し、七団体十五品目について、認定品目団体を中核としたオール・ジャパンでの輸出促進、大ロット輸出産地のモデル形成への支援などの方針を示したところでございます。

 農林水産省としては、この輸出拡大実行戦略で示した品目ごとの目標に沿って、二〇二五年二兆円の目標の前倒し達成を目指し、更なる輸出拡大を進めてまいります。

中曽根分科員 時間が参りました。

 これからも、日本を支えてくれている日本の農家の皆さんに寄り添う、優しくも、かつ力強い、しっかりとした農業政策を推進していくことをお願いして、私の質問は終わります。

 ありがとうございました。

堀井主査 農林水産大臣、簡潔にお願いいたします。

野村国務大臣 先ほど、中曽根委員の質問に対しまして、私の答弁の中で、令和四年第二次補正予算を八千三百億、こう申し上げましたが、正式に言えという指示がありまして、八千二百六億でございます。申し訳ございません、訂正させてください。

中曽根分科員 大臣、わざわざありがとうございます。

堀井主査 これにて中曽根康隆君の質疑は終了いたしました。

 次に、池畑浩太朗君。

池畑分科員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。

 兵庫県でも、農林水産業の全てがあります西播磨、中播磨から参りました。当選以来、委員会は、特別委員会、予算委員会以外は、ずっと農林水産委員会でございます。これからも農林水産委員会におられるように、日々研さんを積んでまいりたいと思っております。

 まずは、粗飼料自給率向上について質問させていただきます。今、中曽根代議士からもありましたので、かぶった部分はちょっと避けながら質問させていただきたいと思っております。

 一年半、ずっとこの質問をさせていただいております、粗飼料の自給率向上についてでございます。分科会でございますので、少し具体的に質問させていただきますとともに、同時に提案もさせていただきたいと思います。

 日本の飼料自給率は、令和元年度では二五%となっております。そのうち、牧草など粗飼料は国産が七七%を占めております。農林水産省は、粗飼料の自給率を七七%から一〇〇%にするという目標を立てておられます。昨年と今年は一%も変わっていないようにお見受けいたしますけれども、農林水産省はその現状をどのように分析しておられるのか。また、粗飼料の一つである稲わらについて、国内について、どの地域に余剰があり、どこで不足しているのかといった現状を把握しているのか。二問、お聞きしたいと思います。

    〔主査退席、鷲尾主査代理着席〕

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 粗飼料自給率でございますけれども、令和三年度の概算でございますと、飼料自給率全体が二五%の中で、粗飼料につきましては七六%でございます。これは、令和十二年度に一〇〇%に引き上げることを目標として、自給飼料の生産に取り組んでいるところでございます。

 また、委員、次の御質問の飼料用の稲わらでございます。

 稲わらでございますけれども、これは、国内生産量の一割弱に相当する約七十万トンが飼料として利用をされております。一方、約二十万トンが中国から輸入という状況でございます。

 この飼料用の稲わらにつきまして、国内の産地別の利用量などを把握するために流通粗飼料の調査を実施をしておりまして、東北地方のような水田地帯におきますと、飼料利用以外の稲わら量が多くなっておりますので、粗飼料としての供給余力がある一方で、九州など畜産地帯では輸入の稲わらが利用をされている状況にあるというふうに認識をしてございます。

池畑分科員 今、答弁いただきました。ありがとうございます。今のように、把握をしている部分があるというふうに思っております。

 そこで、ちょっと提案も含めての御質問なんですけれども、平成二十七年四月より稼働しております農地情報公開システム、農地の情報公開を開始されているというふうに思います。全国農地ナビとも言われておりますけれども、ちょっとこの関連で質問をさせていただくという通告はさせていただいていなかったんですけれども、このシステムのよい点と、現状、どのように活用されていると思われているか、答弁をいただければと思っております。

    〔鷲尾主査代理退席、主査着席〕

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 私ども、先ほど申し上げましたけれども、飼料用の稲わらの国内の産地別の利用量などの把握でございますが、流通粗飼料調査を実施をしてございます。

 ただ、今委員御質問の農地ナビ、これが粗飼料の生産あるいは流通上どのように活用ができているかというのは、ちょっと、現時点、申し上げる材料がございません。恐縮でございます。

池畑分科員 ありがとうございます。

 現状、そのシステムがどのように活用されているかというのは、今の段階で、通知もしておりませんでしたので、そのような答弁になったかと思いますけれども、現状、農家の方々はこのシステムを結構利用されておられます。現状、すごく使いやすいですし、どういったところにどういった作物がつけられていて、規模拡大を望んでいるんだけれども、地域でどの辺に農地が空いているか、そういったことを公開をしておられるので、かなり使いやすいということでございました。

 その中で、私自身も思いますけれども、農地情報公開システムというのは、このような使い方ではないというふうに思うんですけれども、応用していく上で、今作付をしておられる場所、そういったところも流通システムで確認をしておりますということでございましたけれども、現状、把握している、作付を行っている地域、その中で、なかなかそういったものがないということでございましたら、国として速やかに、関係団体、自治体やJAさん、そういったところにも、積極的な、情報を吸い上げることによって、意欲ある農家さん、その地域で、稲わらというよりも粗飼料を作っていく、そういった気持ちになる方がおられるんじゃないかなというふうに思っております。

 今、稲わらの余剰地域は東北の方に多いですよというお話もいただきましたけれども、対策を講じていかなければいけないというふうに思っております。

 こういった自給率を上げていくには、地味だと思いますけれども、積極的に、農林水産省側から、この県のこの場所になら物流コストもそこそこで粗飼料の自給率を上げる可能性ができるよ、そういった土地を探していただきまして、地味ながらでも、こちら側から声をかけていく姿勢を見せていくことで、生産者側や地域、自治体、JAとか、気持ち的にも、農林水産省、国は本気なんだなということが農家にも伝わっていくと思います。

 この提案についてどういうふうに思われるか、ちょっとお聞きをしたいところではありますが、地味ではありますけれども、このシステムを逆に農林水産省が利用して、この地域にはこういった土地が空いております、そういったことも含めて、その地域の周りの方に粗飼料を生産していただく、そういった提案について、何か御意見ございましたら答弁いただきたいというふうに思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 粗飼料の自給率一〇〇%の目標ということを先ほども申し上げましたけれども、これまでなかなかそこまで達成ができていないという現状でございますが、これは、やはり要因といたしまして、畜産経営の規模拡大が進む中で、飼料生産に適した土地が限られている、利便性のよい飼料作付地の確保が難しいというような要因、それから、畜産経営が規模拡大する中で、労働力がなかなか確保できずに、飼料生産にかける時間の確保が難しいというような要因がございます。

 一方、先ほども申し上げましたとおり、水田地帯には粗飼料として稲わらの供給余力がある一方で、畜産地帯では輸入稲わらが利用されている状況にあるということでございます。やはり、持続的な畜産物の生産を実現をして畜産経営の安定を図るためには、国産稲わらの利用拡大が極めて重要だというふうに認識をしてございます。

 このため、稲作農家さん、稲わらを作ってそれを販売する方と畜産農家のマッチング、これはもちろん、同一都道府県内でも偏在がございますので、同一道府県内でもマッチングをするような取組をしておりますし、さらに、都道府県を越えて更に供給可能なようなものにつきましては、国産稲わらの販売をしている方の一覧表などを作りまして、ホームページなどで公開をして、マッチングに努めているところでございます。

 そういった取組に加えまして、やはり粗飼料につきましては、飼料生産組織が稲わらを例えば収集するというようなときに必要になる機械ですとかについて支援をするというようなことですとか、あるいは、令和四年度第二次補正におきましては、角型で、輸送あるいは保管の効率が高い国産稲わらの収集、梱包などについて実証支援をするような対策をしてございます。

 こういった取組によりまして、国産の稲わら、粗飼料の利用を一層推進していきたいというふうに考えてございます。

池畑分科員 丁寧な答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 やはり、地域の現状を把握しているのは、自治体だったりJAだったり、その地域で活動されている農家さんだったりというふうに思っておりますので、是非とも農林水産省側から、どうなっている、どういうふうにやっているということを積極的に声をかけることだけでも国は本気なんだなということが分かっていただけるというふうに思いますし、一年かけて、一生懸命頑張っておられるのはよく分かります、短期間で、七六%と今訂正いただきましたけれども、一〇〇%にすることはかなり困難かもしれませんけれども、今言われました補助金だとか流通コストに対して、一生懸命取り組んでおられますというお話もいただきました。中期的な計画を立て、一歩ずつ目標に向けて取り組んでいただくことが必要かなというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 次の質問に移らせていただきます。

 肥料の価格高騰の対策について質問させていただきたいと思います。こちらが先ほどの中曽根代議士からの質問とちょっとかぶりますので、質問の角度を変えて質問させていただきたいというふうに思います。

 ウクライナ情勢等、高騰した肥料の販売価格は現時点でも緩和の兆しが見えないということであります。令和四年度補正予算で講じました肥料価格高騰対策を、恒常的に、若しくは当面中期的に措置すべきではないかというふうに思っております。

 恒常化をする際は、価格上昇の基準を単に前年のものとするのではなくて、ウクライナ情勢前のものを基準に採用するべきではないかというふうに思います。

 その理由といたしましては、現在の基準では、令和三年から令和四年の急高騰までは有効に機能しておるんですが、令和四年から令和五年の高騰単体で見れば一見有効のようでありますけれども、令和三年から令和五年での高騰分の大部分を補填されないということになりまして、生産者への負担が大きいことが挙げられると思います。

 その点についてどう思われているか、答弁をいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 今般の肥料価格高騰対策事業におきましては、昨年の秋肥と本年の春肥を対象に、本年度の予備費で七百八十八億円を措置したところでございます。

 本年の秋肥以降の販売価格の動向につきましては本年の春以降に明らかになりますので、今後の販売価格の動向と農業経営への影響を十分に注視していく考えです。

 他方、肥料原料の国際価格の影響を受けにくい生産体制、これを構築する必要があると考えておりまして、このため、今後、土壌診断等による施肥量の適正化を進めるとともに、堆肥や下水など肥料成分を含有する国内資源の利用拡大、これをしっかり進めていきたいと考えておりまして、国内資源由来の肥料の施設整備ですとか耕畜連携の促進、これを進めていきたいと考えております。

池畑分科員 答弁ありがとうございました。

 やはり、今いただきましたように、これから春に向かって、いろいろなことを精査しながらもう一回取り組んでいただけるということでありましたので。このような負担を生産者に強いることを続けるのであれば、なかなか、国内生産者が大量に農業生産事業の継続を諦めてしまうということになりかねないというふうに思っております。国内産業の保護の観点からも、現状の対策は、いま一度、今のように見直していただきたいというふうに思います。

 昨日、神河町というところの大規模農家に、見学させていただきまして、いろいろなお話を聞かせていただきました。立派な、四十年を超えるユズの木がたくさん並んでおりまして、その農家さんは初めてお会いした農家さんだったんですけれども、開口一番、肥料が一・五倍や、このままではもう無理やという話をいただいたんです。明日そういった質問もするんですがという話だったんですけれども、具体的によくいろいろな制度を御理解いただいているんですね、いただいている上で、開口一番、肥料が高いということと、このままではもう絶対生きていけぬわみたいなお話をされるんです。

 現状をよく分かっていらっしゃるんですが、このようなことを我々に言うということは、是非、春以降見直していただきまして、継続をしていただくということをアピールしていただけましたら、安心していかれるんじゃないかなというふうに思いました。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 有機農業の推進に向けた対策について質問させていただきたいと思います。

 農林水産省は、みどりの食料システム戦略を策定いたしました。二〇五〇年までに目指す姿として、有機農業の推進を行い、耕地面積を含める有機農業の取組面積の割合を二五%の百万ヘクタールまで拡大することを目標の一つに定めています。長期的な目標を立てるならば、講じる補助事業などの対策もまた、長期的に継続して講じる必要があるのではないかというふうに思っております。

 現状定まっている補助事業に続く施策を告知をいたしまして、持続可能な食料、農林水産業を行う農業者に対して力強いメッセージを示すべきではないかなというふうに思っております。具体的には、消費者にも有機無農薬の農作物を消費していただく意識を持っていただくためにも、有機食材についての勉強だとか、健康になるだとか、オーガニック給食なんかにもつながっていくこと、大切なお孫ちゃんやお子さんたちの健康も、地域全体、国で盛り上げていくことが必要だというふうに思っております。消費者とともにそういったことを考えていくということを推進していく事業を考えてはというふうに思っております。

 農業の大転換ということで、昨年から、前金子農林水産大臣も含めまして、いろいろな御答弁をいただきましたり、農業の有機無農薬のいろいろな発信をするんですけれども、実際、地元では結構半信半疑なんですね。本当に有機農業を進めていくんだろうかというふうなことをよく言われます。

 前回、農林水産委員会でも質問させていただきまして、大臣にも答弁をいただきました。大臣自身が広告塔となって情報発信も必要でないのかというふうなことをさせていただきました後、農林水産省のユーチューブにも出演されていた姿をお見受けさせていただきました。大臣の雰囲気がすごい出ておられまして、かなりよかったというふうに思っております。

 それで、大臣の更なる農業に関しての見識の深さとか今までの経験値を生かして、農林水産省の中で、是非、有機無農薬の推進をしていく過程を、そして目的達成までどのように大臣が考えておられるかというのを提示していただきたいというふうに私は思っているんです。

 この間ユーチューブに出演されて、かなりインパクトはあったと思うんですけれども、そういった、有機無農薬を進めていくんだということも含めまして、鹿児島出身の白石君と多分セッションすると面白いというふうに思うのですが、具体的に、どのように有機無農薬を推進していくかというのは、結構、発信していくことが必要だと思っておりますが、大臣はどのようにお考えか、お話を聞かせていただきたいと思います。

野村国務大臣 御質問ありがとうございます。

 有機農業、私も自分の菜園で有機で野菜なんかを作っておりましたが、こういう役柄をいただきまして、今年は冬野菜も春野菜も難しいな、こんなふうに思っているところでございます。

 やはり有機の野菜等については、消費者の皆さん方は大変関心が高いんです、高いんですけれども、なかなかそれが広がっていかない。なぜかというのを考えたときに、多分、池畑委員も御承知だと思うんですが、全国の有機農業の会長でありました大和田さんという方が今年亡くなりました。ちょうど役所から、農水省からも安岡審議官が行って話をしていて、その一時間後に急逝されたんですが、そういうリーダーがおられたということで、奥さんも大変御立派な方で、今奥さんが後を継いでやっておられるんですが、いずれにしても、やはりそういったすばらしいリーダーがいるかというのが一つ。

 それから、私も安岡審議官も出席しましたのは、地球畑という店舗を五店舗持っておられます。これは、有機の野菜なり有機のいろいろな製品でありまして、五店舗で、ちょうど、三十年もかかって五店舗になっているんですが、その三十周年の記念に招かれて私とか農水省の安岡審議官が行ったんです。

 私は役所でも申し上げているんですけれども、スーパーマーケットに有機の野菜と一般の野菜とを並べても売れないよと。それは価格が違いますから。地球畑に行きますと、全てが高いです。高いですけれども、やはり有機のファンの方々は、そこでないと駄目だという消費者のファンの方々も多くて、やはりそういうのがマッチングしていかないとなかなか広がりができないな、こんなことも思っております。できるならば、今回の有機質のいろいろなものを拡大していくためには、やはりそういうアンテナショップも必要だろうということも今省内では申し上げているところでございまして、そういった、スーパーにただ流通していくという形にはなかなか難しいなと。

 それから、もう一つは、いい仕組みとしては、今、学校給食で有機の野菜を使った地域もあります。ですから、そういったものをどんどんどんどん横展開させていく。そういう形で、有機の皆さん方がそれこそ一生懸命作った有機質の野菜であれば子供たちも喜んで食べてくれる、あるいはまた消費者の皆さん方の関心も高い、そういうようなやり方でやはり広めていかないと、ただ有機、有機と言ってもなかなか難しいと思います。

 それと、もう一つ、追い風は、ほとんどの、今、輸出も力を入れているんですが、例えばお茶一つ取っても、これは化成の肥料なり農薬を使ったものは輸出できません。ですから、有機質のお茶でないと駄目だということで、今、一生懸命、静岡なり鹿児島のお茶の産地は、そういった方向に転換をしながら輸出に力を入れているところでございますので、そういういろいろな輸出の面なり、あるいは、そういう学校給食の面なり、あるいは、もう一つは店舗の在り方なり、こういうことも総合的に考えていかないと、ただ有機、有機と言ってもなかなか進まないだろう、こんなことを思いながら、今、現場と話をさせていただいているところでございます。

池畑分科員 ありがとうございました。

 もう一点。例のユーチューブで、いろいろな、大臣が御自身で、有機無農薬をこういうふうに進めていくんだということで、御出演されていらっしゃいましたけれども、さらに、ユーチューブに、農林水産省がやられているBUZZMAFFでしたっけ、あれにどのように出演されて、具体的にユーチューブで大臣御自身が情報発信をしていくか、その辺、ちょっともう一度御答弁いただけたらと思います。

 前回、私が、大臣御自身がユーチューブやいろいろなところで情報発信をしていく、農林水産省がこうやってやっていきたいといったことを情報発信していくということで、その後に農林水産省のやっておられるユーチューブに出演されたと思うんですが、これからも有機無農薬の、こういうふうに進めていくんだということも含めまして、ああいった形で、大臣御自身がああいうSNSに乗っかって情報発信をしていくお気持ちがあるかどうか、お話をしていただきたいと思います。

野村国務大臣 先ほど局長の方からもちょっと答弁しましたけれども、全国の先進的な産地でありますオーガニックビレッジの方々に一堂に集まっていただきまして全国集会を開催したところでありますが、ここで私自身も取組の推進を全国に向けて発信をさせていただきました。

 それはそれとして、全国に呼びかけて、今、役所の方でもやっておりますけれども、なかなかこれは、実際に取り組むのと言うのとではまた違いますので、是非一つ一つ具体的な取組を推進してまいりたい、こんなふうに思います。

池畑分科員 今のような公で発信をされているところも多々あるというふうに思います。是非、農林水産省が一生懸命作っておられるユーチューブというのは、結構私は評判がいいというふうに思っていますし、かなりの再生回数もありますので、大臣のその雰囲気のいいキャラクターで見識をそういった場面で広げていただきますと、国民の方々も分かりやすく伝わっていくんじゃないのかなというふうな質問でございました。ありがとうございました。

 そこで、私ももう質問時間がなくなってまいりましたので、最後、また大臣に質問させていただきたいと思います。

 これは、今も御答弁いただきましたけれども、二〇五〇年までに目指す姿の達成に向けて、関係者が一体となって取り組んでいくために、必要な予算を継続的に確保していただくことを期待しておりますけれども、有機農業推進に向けた農林水産省の、大臣の決意を最後にお聞きしたいんです。

 先ほど、るるお話をいただきました。具体的に、農作物の輸出の件だとか、有機無農薬はこういうふうに輸出しなきゃいけない、知覧茶、霧島茶の件だと思いますけれども、やはり具体的に基準も持っていかなければいけない。でも、世界的に見て、日本の有機農業はどこまで信頼されているのかなと。各国から見てみて、日本の有機無農薬というのはかなり魅力的だということも含めて、どういった基準でやっていかれようとしているのか。

 国際的に見て、有機無農薬の先進国というのはたくさんあるというふうに思います。私も農業高校の教員時代に、備中高松というところだったんですけれども、JAとしてかなり先進的に有機無農薬の野菜を推進していた地域ではあったんですけれども、その当時から、推進していく地域だったのにもかかわらず、余り注目をされなかった。今のようにSNSがなかったり、有機無農薬の基準がよく分からなかったり、そういったことがあったのかもしれません。しかし、やはり岡山県の中ではそういったことが人気であったり、推進していく、今、大和田さんの話が出ましたけれども、地球屋さん含めまして、そういったところに売っているということは分かるんですけれども、これから、ちょっと長期的なお話になりますけれども、二〇五〇年の目指す姿を、有機無農薬の推進に向けた大臣の決意を最後にお話しをいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

野村国務大臣 先ほどもちょっとお話を申し上げましたところでございますが、いずれにしましても、有機栽培につきましては広がりが出てきているということは、これはもう議員御承知のとおりでございまして、それにまた私ども役所としても拍車をかけていかなきゃなりませんが、特にやはり輸出について、そこのところが非常にネックになっておりまして、高温多雨な日本の環境でありますので、非常に農薬なり肥料なりというのが化学物質を使わないとなかなか育たないというのがありましたが、しかし、それだけでは有機はできませんので、今現在やっておりますのが畜産とそれから耕種農業とのマッチング、こういうことを具体的に今やっております。

 一つ例を申し上げますと、これは手前みそみたいに見えるんですが、私の鹿児島では、鹿児島の畜産、牛、豚、鳥の堆肥を使いまして、これをペレットにしました。完全な有機質の農業でありますが、それで、昨年の秋肥からは全てお茶農家はこのペレット肥料を使うようになりました。

 そうしますと、どんな結果が出るかといいますと、これは輸出が可能なお茶園が全部あるということになってきます。全てじゃないんですけれども、ほとんどのお茶園が有機質の肥料を使った製品だということで、大変、今、輸出の方も相当伸びてきておりますので、農家の皆さん方も、やはり有機でやればこれだけ高く売れる、あるいはこれだけの輸出ができるというのが分かってきていただけたのではないのかなというふうに思いますし、野菜も一部そういうところがございます。

 ですから、やはり日本と外国との違いは、有機なのか、あるいは化学物質を使った肥料、農薬だけを使っているのかということで大きな差別化ができていくのではないか、こんなふうに思いますので、そこを売りにしたい、こんなふうに思います。

池畑分科員 御答弁ありがとうございました。

 やはり大臣、お詳しいと思います。是非やはり、ユーチューブ、いろいろなSNSを駆使して、日本国の方々に分かるように、世界の方々にも分かるように、今のお話を発信していただきたいというふうに思っております。全国の農林水産の生産者やそれに関わる事業者がやはり奮い立つような日本国に共にしていきたいというふうに思っておりますので、今後ともいろいろな面で発信をしていただきたいというふうに思います。

平形政府参考人 失礼いたします。事実関係だけちょっと御説明させていただきます。

 先ほど大臣から、大和田さんが急逝されたときに安岡審議官という名前が出ましたけれども、これは技術会議の川合局長であります。

 また、輸出につきましては、お茶の輸出、有機質でないと輸出できないというふうに大臣が申し上げましたが、今、有機質のお茶が伸びておりますが、輸出六千七百トンほどのうち有機質は千三百トンほどでございます。これをどんどん伸ばしていくという趣旨でございます。

 失礼いたしました。

池畑分科員 よく分かりました。

 ありがとうございました。

堀井主査 これにて池畑浩太朗君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)分科員 公明党の吉田宣弘でございます。

 今日は、この第六分科会、質問の希望を出させていただき、望みどおりかないました。本当に関係各位の皆様の御配慮に感謝を申し上げ、質問に入らせていただきたいと思います。

 私は、農業政策こそが国の柱であると常々考えてまいりました。言うまでもないことですが、食を生み出す農業、漁業、酪農、畜産、人間が生存するために必要な酸素を生み出す森林を対象とした林業、これらは人間が生存するために欠くべからざるものでございます。

 また、経済がグローバル化し、経済的な取組が一つ一つの国家の主権を乗り越えて行われている今の世界において、農業、漁業、酪農、畜産及び林業が経済と不可欠な関係を持ちながら展開されている以上、安全保障の観点から農林水産業を捉えておく意味でも、私は、農林水産業政策というものは国家の存亡に関わるような重要な分野であると考えています。

 この点、農林水産業政策が功を奏したか否か、そのことは、その持続可能性と予見性を現時点においてどのように確保するか、過去の経験を生かし、未来に向けて政策に生かしていくことが重要であると考えております。

 以上のような観点から、本日は、赤潮、私は九州選出でございますけれども、九州では非常によく発生しております。また、有明海のノリ生産における先日起きました寒波被害と、みどりの食料戦略における有機農業について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、赤潮についてですけれども、九州の八代海と有明海では、過去にも発生をして、養殖漁業が被害を受けてきた歴史があります。赤潮については、私は、幼い頃から繰り返し繰り返しその発生についての報道をニュースで耳にしてきておりまして、発生のたびに生産者が被害を受けているというように承知をしております。心を痛めております。私は専門家ではありませんから確かなことは分からないのですけれども、その発生を人間のコントロールで防ぐということはできないと思います。

 しかし、天気予報のように予測することはできるのではないかと考えております。言うまでもなく、養殖漁業は地域産業の重要な一部であって、このなりわいを未来に向けてしっかり継続をしていく、これが必要だと思っておりますが、赤潮を防ぐことができないのであれば、これは備えるしかないわけでありまして、赤潮の発生を予測することができれば、この備えを確かなものにすることもできると思います。もっとも、この予測そのものも、技術的にも科学的にも非常に難しいということを私も勉強して、学ばせていただきました。ただ、一方で、この赤潮について無策であってはならない、そのように思っております。

 この点、公明党は、昨年十月に岸田総理大臣宛てに提出をさせていただいた総合経済対策の策定に向けた提言の中で、熊本県八代海で発生した赤潮による漁業被害への対応などを着実に実施することを提言いたしました。

 そこで、まず、この提言を受けての政府の取組について御答弁をお願いしたく存じます。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 昨年夏に八代海で発生いたしました赤潮により、熊本県、鹿児島県においてトラフグやシマアジ、マダイなどがへい死し、約二十億円の被害が報告されております。

 赤潮による養殖被害につきましては、養殖魚などの死亡による損害に対しては、養殖共済やその特約である赤潮特約による補填、被害を受けた漁業者の当面のつなぎ資金として、低利の運転資金である農林漁業セーフティネット資金を措置しているところでございます。

 今回の赤潮被害につきましては、被害が大きいことや、同様に被害が大きかった平成二十二年の対策などを踏まえ、令和四年度補正予算として八代海・有明海等赤潮対策緊急支援事業を措置いたしました。これにより、有害プランクトンのシスト分布調査や海域の流速、底質状況などの漁場環境調査などにより、赤潮に強い養殖生産体制の構築を支援してまいります。

吉田(宣)分科員 御説明ありがとうございました。

 有害プランクトンのシスト、これは休眠胞子と言われるもののようでございますが、の分布調査や、海域の流速、また底質状況などの情報が得られるということでございました。画期的な取組であり、高く評価し、御支持申し上げたいと思います。

 先ほど、予測は難しいと承知していると申し上げましたが、難しいからといって諦めていては、私は駄目だと思っております。今御答弁ありましたように、基礎データが含まれておりまして、基礎データが存在するのであれば、それを予測に活用すること、これが私は必要だと思っております。

 この点、先月の日経新聞に、「赤潮ルート予測 漁業支援」という記事が掲載されておりました。民間二社と鹿児島大学が共同で赤潮の移動先を予測するシステムを開発したとのことでございました。

 また、ビヨンド・アワー・プラネットというNTT宇宙環境エネルギー研究所がサポートするサイトの記事なんですけれども、そこに、近年、機械学習アルゴリズム、これはAIの一種とのことでございますが、を用いて沿岸海域の赤潮予測モデルを構築し、性能評価を行うといった方法が開発され、成果を上げているとのことでございます。既往の研究と整合する予測結果を出すことに成功をしており、機械学習による赤潮予測に有効であることが示されている、今後は高性能なアルゴリズムを用いて赤潮予測モデルを向上させる研究が行われる予定であるとのことでございました。

 そこで、これらAIなどの最先端の技術を用いた赤潮予測への取組に農林水産省としても積極的にコミットしていただき、養殖漁業の未来に光を差すようなこと、生産者に希望を送っていただきたい、そのように思いますけれども、ここでは角田農水大臣政務官から御答弁をいただきたいと思います。

角田大臣政務官 委員御指摘のとおり、赤潮被害の軽減のためには、予測のための早期かつ的確な情報の収集と提供が重要であるというふうに認識をしております。

 このため、農林水産省においては、県の研究機関等と連携し、自動観測ブイも用いた赤潮モニタリング体制を構築し、赤潮分布情報を迅速に漁業者へ提供しているところです。

 さらに、赤潮の的確な予測に向けて、収集したモニタリング情報の分析等により、例えば、八代海においては高栄養塩の海水が海底から表層まで占有すると赤潮の発生の可能性が高まることが判明するなど、研究開発を進めているところです。

 引き続き、民間企業や大学による最新の技術開発についても情報収集等を行いながら、赤潮の予測技術の開発を進めてまいります。

吉田(宣)分科員 政務官、本当に力強い御答弁ありがとうございます。是非とも、ここは積極的に進めていただきたい、そのように思います。

 赤潮の予測に様々なデータが必要になってくると思いますけれども、今御答弁にもありましたが、その一つに赤潮の餌となる栄養塩のデータも入ってくると思います。そして、この栄養塩なんですが、これが不足をすると、今度はノリの養殖に様々悪影響を及ぼすというようなことをお聞きをしております。したがって、赤潮の予測というものはノリの養殖対応にも応用することができるかもしれないと思います。そこで、この赤潮の予測をノリ養殖にもスピンオフすることで、一挙両得の効果を得ていただきたい。是非とも前向きに取組を進めていただきたいと思います。

 ところで、今申し上げた有明海のノリの生産なんですけれども、先月、寒波による被害を受けております。

 農林水産省におかれましては、一月二十九日に藤木農林水産大臣政務官が熊本市の現地に直行、そして二月五日には、今御答弁いただきました角田政務官から佐賀市及び大牟田市の現地に直行していただいたとお聞きをしております。被災現場に駆けつけてくださったことに、九州選出の国会議員の一人として深く感謝を申し上げます。

 実は、この私も、角田政務官が視察をされた二月五日に、場所は違いますが、熊本県の宇土市の住吉漁協というところの組合長様の御協力をいただき、被災現場を自身の目で確認をしてきました。組合長は、冬の突風というのは極めて珍しく、こんなことは長年生産をしてきたけれども初めてであるというふうにおっしゃっておられました。

 藤木政務官は熊本市、私は宇土市、熊本県の状況を見てまいりましたので、ここでは、角田政務官から佐賀市と大牟田市の視察の状況について御説明いただきたく存じます。

角田大臣政務官 私自身、二月の五日に佐賀県と福岡県のノリ養殖の現地に出向きまして、寒波による被害の状況を確認してまいりました。佐賀県、福岡県においても同様に、いまだかつて経験したことのない、この時期では初めてというような大きな風であったというようなお話を伺いました。

 佐賀県佐賀市では漁業関係者と意見交換を行わせていただき、被害状況に加えて、復旧の進捗状況についてお話を伺ってまいりました。福岡県大牟田市では、寒波直後にドローンで撮影した被害状況の映像を確認をした上で、船上から、被害を受けた一部のノリ養殖施設の状況を視察してまいりました。

 両県とも復旧は非常に順調に進んでいることを実際に確認をするとともに、復旧に携わられた関係者の方々の御尽力に敬服をしたところであります。

 また、この意見交換の中で、今シーズンは大変に厳しい状況であるけれども、供給に対する生産者としての責任をしっかり果たしていきたいんだというような心強い言葉もいただいたところでございます。

 農林水産省として、漁業者の皆様の言葉をしっかりと受け止め、被災された漁業者に寄り添いながら、有明海のノリ養殖の振興を図ってまいります。

吉田(宣)分科員 御答弁ありがとうございます。

 現地を本当に視察していただいて、その生産者の生の心の思いを受け止めていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。

 私も生産者とお話をする機会がございますけれども、生産する全ての礎というのは、やはりこれは人材なんですね。しかし、人材不足ということをよくお聞きをします。やはり、漁業の現場における人材確保策というものも、日本の伝統的ななりわいである漁業というものを未来につなげていくためには不可欠のことであろう、そのように思っているところでございます。

 そこで、漁業の持続的な取組として、是非、農水省におかれましても、この人材確保策、これはしっかり取組を進めていただきたいと思うところでございますけれども、農林水産省からこの点についての御答弁を賜りたいと思います。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 漁業就業者の減少が進む中、我が国の漁業を持続的に発展させていくためには、資源管理による漁獲の増大に加え、毎年一定の新規就業者の確保とその定着を図り、年齢バランスの取れた就業構造としていくことが重要であります。

 このため、農林水産省では、経営体育成総合支援事業により、就業希望者が経験ゼロからでも漁業に就業できるよう、就業相談会の開催や、漁業学校などで学ぶ方への資金の交付、漁業現場での長期研修などを通じ、就業前から就業後まで切れ目なく支援しているところでございます。

 今後とも、現場のニーズを酌み取りつつ、漁業就業者の確保のために必要な支援にしっかりと取り組んでまいります。

吉田(宣)分科員 是非しっかりとした取組をお願いしたく存じます。人こそ城の石垣でございます。よろしくお願いいたします。

 次に、私自身が今回のノリの現場での突風被害、そういったものを自分自身の目で確認をさせていただいた上で、一つ質問をさせていただきたいんですけれども、生産者の御努力で随分ノリ小間の復旧が進んでいるところもありましたが、一方で、それがそのまま、手数が足らずにそのままの状態になっているところもありました。

 今回、生産者のお話を聞く中で、すごく運が悪かったと言ってしまえば本当に語弊もあるし、申し訳ないなと思うんですけれども、今回、満潮のときに突風が吹いたということですね。ノリの支柱があるわけですけれども、支柱のほぼほぼ、ぎりぎりのところまで満潮で潮が満ちてきたときに突風が吹いて、この支柱の中にといいますか、外枠にこうやってノリの網が上下するような仕組みになっています、これが、突風が吹いたことによって支柱の上を越えて、そして支柱の上の方にひっかかってしまったりとか倒れ込んでしまったりとか、そういうことで、もうそのノリの網、せっかく育てたノリというものが駄目になってしまった、そういった状況でございました。

 今、本当に収穫のシーズンでございまして、本来であれば、しっかり収穫をして、そしてそれを販売をするというようなことができたわけでございますけれども、その機会が失われたということでございます。非常に心を痛めているところでございますけれども。

 ここで私がお聞きしたいのは、今回被害を受けた資材関係というのは、もう繰り返し使えないものも多いわけです。網であったりとか支柱であったり、折れたりしたものもあるし、様々被害を受けておりますが、次の生産に備えなきゃいけないわけですね、当然のことですけれども。

 この処分せざるを得なかった資材については、次回の生産を行うために、本来であればまだ使えたのに使えないから新しく買ってこなきゃいけないということであって、ある意味、予定をしていない支出を伴うことになってまいります。財政力がない生産者は、もしかすると生産を続けることができない場合もあり得るんじゃないのかな、そういった心配をしておりますが、こういったことに関して、農水省から支援策について御答弁をいただきたいと思います。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産庁といたしましては、今回の寒波による漁業被害に遭われた漁業者の皆様方が今後も事業継続できるよう、後押ししていく考えでございます。

 具体的には、まず、積立ぷらす、漁業共済により、今漁期の生産金額の変動に伴う減収に対し、しっかりと補填してまいります。なお、一月二十五日には、水産庁から漁業共済団体に対し、漁業共済の迅速な災害査定と早期支払いを要請したところでございます。

 また、被災した養殖施設の復旧につきましては、低利に設定されている農林漁業施設資金が借入れ可能であるほか、金利を無利子化する事業を措置しております。このような資金を積極的に御活用いただけるよう、日本政策金融公庫と連携して、漁業者からの相談に対して親身に対応してまいります。

 今後とも、現場の生産者の声を聞きながら、有明海沿岸四県とも協調して、しっかりと取り組んでまいります。

吉田(宣)分科員 力強い答弁だったと思います。本当にありがとうございます。

 熊本県も支援策をいち早く打ち出しておりまして、漁業環境の保全を目的として、漁業者が行う、破損したノリ網などを漁場から撤去する取組、そういったものについて支援策を講じているところでございまして、今、こうした被害を受けた生産者の所在をする都道府県とも連携を取って進めていただくというふうなお話であったかと思いますけれども、是非とも、現場の県とも連携を取ってこの支援策を進めていっていただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、ちょっと話が変わりますけれども、農水省がみどりの食料システム戦略に掲げる、二〇四〇年までに、主要な品目について農業者の多くが取り組むことができるように、次世代有機農業に関する技術を確立する、これにより、二〇五〇年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を二五%、百万ヘクタールに拡大するということを目指すと記載がされてあるわけでございますが、この点について質問をさせていただきたいと思っております。

 先ほども池畑先生の方から有機農業についての御質問があったところでございますけれども、ちょっと基礎的なことで恐縮でございますが、ここにうたわれております次世代有機農業、これはどのような農業をいうのかについて、まず確認をさせていただきたいと思います。御説明お願いします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員おっしゃられたみどりの食料システム戦略には、二〇五〇年までに有機農業の飛躍的な拡大という目標を掲げております。これを達成するには、多くの農業者の方が経営の選択肢の一つとして有機農業に取り組めるような技術を確立していくことが必要になると考えております。

 このため、農林水産省では、次世代の有機農業の技術といたしまして、例えば、AIやリモートセンシングを駆使した予察情報によりまして、生産者が圃場の病害の発生の兆候をスマホ等のプッシュ通知で知ることができるような病害虫の予報システムの開発ですとか、植物と土壌微生物の相互関係を解析して、それらを活用した栽培システムの開発ですとか、また、病害虫への抵抗性を強化するなど有機栽培に適した品種の開発、こういったものを行うこととしております。

 これまでの有機農業の技術に加えて、こうしたスマート技術などを取り入れた有機農業が次世代の有機農業と考えております。多くの農業者が有機農業に取り組める技術の確立に取り組む考えであります。

吉田(宣)分科員 御答弁ありがとうございます。

 これから有機農業というものを拡大していくということに当たって、様々な技術を活用するということはすばらしいことでございまして、是非とも取組を着実に進めていただきたい、そのように要望申し上げたいと思います。

 一方で、これまでも長年にわたって有機農業に一生懸命取り組んでこられた生産者もおられます。私は、そのようなお一人ですけれども、熊本県の菊池市でそのような生産者の方と懇談をさせていただいたこともございます。詳しくは申し上げませんけれども、本当に、ある意味、その方の、一人だけが持っているスキルみたいなところがあったりして、なかなかこれを広げていくということについては、様々難しいこともあるのかなというふうに思っているわけでございますけれども、それでも私は、そこの生産者の生産した水稲栽培におけるお米、食させていただきましたけれども、本当においしい味わいで感動いたしました。このようなすばらしいお米というものは、やはり多くの方にも食べていただきたいな、そのような気持ちでいるわけでございます。

 そのような、先ほども農水大臣も有機農業の代表者の方のことを紹介されておられましたけれども、全国に恐らくおられるんだろうと思うんです。このような、全国におられて御自身の御努力で有機農業を展開してこられた方の様々な知見であったりとかノウハウであったりとか、それが仮に横展開可能であるのであれば、そのような情報を広く収集をして、そして広く広報して、そういった方の農法というものが有機農業という形で広まる取組の助けにしていただけないかな、そのように感じているところでございますけれども、ここでは、意気込みも含めて、角田農水政務官から御答弁をいただきたいと思います。

角田大臣政務官 有機農業につきましては、当面、まずは二〇三〇年に六・三万ヘクタールまで拡大するという目標を掲げております。この目標の達成には、現在、現地で実践をされている技術の横展開を図ることが極めて重要だというふうに考えております。

 このため、吉田委員御指摘のとおり、有機農業者の技術など、現場の優れた取組を広く情報発信することが重要であり、農林水産省では、各産地の優良事例を表彰するコンクールの開催や、現場で取り組まれている栽培技術集の公表、また、有機農業を地域振興につなげている自治体ネットワークによる自治体間での情報の共有、さらに、有機農業の拡大に向けて、生産から消費まで行うモデル産地であるオーガニックビレッジの取組など、全国各地の取組について情報の発信に努めているところでございます。

 農林水産省としては、今後更に、あらゆる機会を通じて、有機農業者の技術や先進的な産地の取組等の現場の優れた取組の収集と周知に取り組んでまいります。

吉田(宣)分科員 本当に力強い御答弁をいただいたというふうに、本当にうれしく思います。

 この有機農業、本当に様々なメリットがあることは言うまでもないことです。低農薬、また、様々な肥料、こういったものも軽減するような効果も当然あるわけでございまして、本当に期待が大きいところでございますので、是非とも取組を進めていただきたく存じます。

 予定した質問が終わりましたので、ここで私の質問を終わらせていただきます。

 本日は誠にありがとうございました。

堀井主査 これにて吉田宣弘君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

堀井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。加藤竜祥君。

加藤(竜)分科員 自由民主党、長崎二区選出、加藤竜祥でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 野村大臣並びに野中副大臣始め農林水産省の皆様方におかれましては、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 早速でございますが、まずは食料安全保障の観点から質問をさせていただきます。

 さて、昨年の二月二十四日にロシアがウクライナへ侵攻して、間もなく一年が経過をいたします。世界情勢に大きな変化があったこの一年は、我が国の農林水産業の将来の在り方を考えさせられる一年になりました。

 中国での需要増も重なり、ここ二年間で飼料は四割、肥料原料は三割も価格が上昇し、燃油高や円安の影響もあって調達コストが大幅に上がり、農家の経営が大変厳しいものとなっております。まさに、資源を海外に依存している我が国の食料安全保障の弱さが明らかになりました。予備費や補正予算により、生産資材やエネルギー価格の高騰対策を継続して支援をしていただいておりますが、我が国の食料安全保障を考える上で、農家の経営を安定させることは最も重要であることからすれば、現在の状況が続く限り支援を継続をしていかなければなりません。

 また、我が国の食文化に必要不可欠な大豆や小麦は特に海外依存度が高く、海外情勢からの影響を最小限に抑える必要があることは言うまでもありません。輸入元である諸外国は、異常気象や有事の際には自国を優先することは当然であります。

 今までも食料安全保障の議論は多く行われてまいりましたが、輸入価格が落ち着くと、自然と食料安全保障の声は薄れていきました。しかし、問題を根本から見直さなければ、海外有事が起きるたびに、我が国の食料安全保障は脅かされます。

 国民に対して食料の安定供給を確保することは、国の基本的な責務です。今こそ政府が本気になって、これまでの国際分業政策を見直し、国内農業を基軸とした食料安全保障を真剣に考えていかなければなりません。肥料や飼料、穀物生産も輸入に依存をしている状況を打破し、海外情勢の影響を最小限に収められるよう、早急に農政の転換が必要です。具体的には、食料の国産化、増産、備蓄、輸入先の多様化など中長期的な戦略が必要不可欠であります。

 食料・農業・農村基本法では、食料供給について、国内の農業生産の向上を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄を組み合わせ、食料の安定的な供給を確保することとしております。

 私は、やはり、食料安全保障の強化について、まずは食料自給率の向上が最も重要であると考えております。政府が食料安全保障を真剣に考えるのであれば、食料の国産化と増産を基本とすることを大きな柱と掲げ、現在輸入に頼っている食料の国産に向けた取組をしっかりと示していくべきであると思います。もっとも、自給率の低下は長年の課題とされながら一向に改善が認められない問題であることを踏まえると、国による大胆な支援が必要であると思います。

 今後、農林水産省は食料安全保障にどのように取り組んでいくのか、お聞かせください。また、食料・農業・農村基本法の見直しの議論が始まっていると認識をいたしております。食料安全保障、特に自給率向上への取組についてどのように取り込んでいく方針であるのか。それぞれについてお尋ねをいたします。

野村国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 ただいま御指摘の、委員の方からありましたように、国民への食料の安定供給は国の責務である、まさしくそのとおりでございまして、食料の安全保障は、ただ生産者だけの問題でなくて、これは消費者を含めた国民一人一人の、大きな、国全体の問題だというふうに思っております。

 こうした中で、我が国の食料安全保障のリスクが高まっていることを踏まえれば、近年、カロリーベースで三七から三八%、そして生産額ベースでは六三から六七%で推移している食料自給率の向上に向けて努力していく必要が、これはもう必然であります。

 そのためには、安定的な輸入と、それから適切な備蓄、この二本柱でありますが、組み合わせつつ、国内で生産できるものはできる限り国内で生産するとの方針の下、年末に策定しました食料安全保障強化政策大綱に基づきまして、食料安全保障の強化に取り組んでまいります。

 また、特に、委員の御出身であります、野菜につきましては、需要が拡大している加工、業務用向けのうち三割が外国産となっておりますので、契約栽培を前提とした産地の育成の加速化、あるいは、中核事業者の処理加工施設や冷凍加工、貯蔵施設の整備等への支援を通じ、国産切替えに向けた体制強化を進め、国産利用の拡大を図っていく考えでございます。

加藤(竜)分科員 ありがとうございました。

 食料・農業・農村基本法の改正は、今後の我が国の農政や食料安全保障の方向性を決める大変重要なものであります。しっかりと検証をしていただき、引き続き議論を深めていただきたいと思います。

 また、食料の国産化と増産という点だけではなく、更に一歩進めて、食料の供給元となる農家、農村保護を自給率向上に結びつけて考えることが重要であると考えております。

 我が国の農地は昭和三十六年がピークで、当時六百九万ヘクタールありました。農地が現在どうなっているかと申しますと、最新の統計では、四百三十五万ヘクタールであります。約六十年間で三〇%近く農地が減少をいたしております。更に今後農地が減少をしていくことが予測されております。

 農地が減少し、生産基盤が弱体化すれば、輸入依存が高まり、食料自給率が低下をすることを意味します。日本で長年にわたって農地が減少し続け、生産基盤が弱体化したのは、農家の高齢化や後継ぎ、新規就農者不足が原因の一つであります。それは、農業に魅力を感じる方が少なくなったことが原因であります。

 農業を稼げる産業にし、農村の魅力を向上させることこそが農村のにぎわいをつくり、食料自給率の向上につながります。私は、生産基盤の強化を行い、農家の生産性、収益性を上げることこそが重要であると考えております。

 日本の限られた農地の中で農地の生産性を最大限向上させ、生産基盤を強化するのが圃場整備であります。圃場整備によって生産額が向上することが顕著に数字に表れております。

 私のふるさと長崎県は、全国的にはここ二十年間で農業生産額が二・一%減少をしている中、圃場整備をしっかりとしてきた結果、担い手への集積、集約を進めたことで生産性が向上し、近年の農業生産額が一〇%近い約百三十億円増加をいたしました。

 また、圃場整備による規模拡大で機械化、IT化により効率性が高まり、生産力が向上したことにより農業所得も増え、地域に後継ぎが戻りました。

 私の地元、八斗木白ネギのブランド化に成功をした雲仙市八斗木地区というところがあります。元々この地区は急傾斜地が多く、不整形地で、道路やかんがい施設も未整備で、非効率な営農が行われてまいりました。しかし、区画整理とかんがい事業を進めた結果、労働時間と営農コストが激減し、生産性が飛躍的に向上したことで、農業所得も増加をいたしました。

 もうかる農業が実現した結果、どうなったかというと、親の背中を見ていた次世代の若者に波及し、ふるさとを離れずに実家に残る後継者が増え、地域が活性化をいたしました。農家一世帯当たりの所得が向上したことや若い世代が増えたことにより、地域の子供の数が増えました。これは、農業農村整備事業により生産性が上がり、稼げる農業が実現されることで農業の魅力が向上した一例です。

 岸田総理を先頭に、政府は異次元の少子化対策を掲げておられますが、今の例からも明らかなように、私は、一次産業が基幹産業である地方においては、農業農村整備事業の推進が最も有効な少子化対策であると確信をいたしております。八斗木地区の小学校では、事業前には四十名まで落ち込んでいた児童数が、事業後は、現在は一・八倍の七十四名になっております。

 さらに、農家の所得が向上したことにより、地域の経済にも効果が波及し、農村だけではなく地域全体のにぎわいが生まれました。八斗木地区は、圃場整備事業により地方創生をなし得たと言ってもよいと思います。

 農業農村整備事業は、食料安全保障の観点からも、少子化対策の観点からも、そして地方創生の観点からも効果が絶大な事業であると確信をいたしております。今後、政府はこの流れを是非モデルケースとしていただき、全国へ拡大させていかなければなりません。

 そこで、お尋ねをいたします。

 農林水産省でも農業農村整備事業の効果を十分に検証されていると思いますが、この事業を更に推進していただくことが極めて重要であると考えます。農林水産省のお考えをお聞かせください。

野中副大臣 農業農村整備事業を力強く推し進めよというエールをいただいたというふうに認識をしております。

 担い手への農地の集積、集約化を含め、農業の振興を図っていくためには、基盤整備の推進というのは何より重要であります。

 このため、農地の大区画化等を行う農地中間管理機構関連農地整備事業等に加え、畦畔除去、暗渠排水等のきめ細やかな耕作条件の改善を機動的に進める事業により、農地の基盤整備を進めているところであります。

 また、農地の基盤整備は、その実施に当たって、農業者を中心とした多様な関係者、それから地域の農業、農村の将来像を見通した上で、地域農業の発展を図るため、十分な合意形成を行い事業を進めており、農村振興の観点から有効な手段であるというふうに考えております。

 先ほどの先生の事例、集積、集約化率を向上させることで省力化、効率化を図って、その結果、八斗木白ネギのブランド化にも成功した、そして、稼げる農業によって後継者が育ち、その結果、地元の小学校の児童数が増えた、まさにモデルケースであろうというふうに思っております。

 私どもとしましては、好循環のモデル事例が一例でも増えるように、引き続き集積、集約化を進めてまいりたいというふうに考えておりますので、モデル地域を抱える先生といたしましても、何よりそのためにはいわゆるNN予算が重要でありますので、先生の力強い後押しをお願いいたします。

加藤(竜)分科員 ありがとうございました。

 私の地元長崎県は、多くの離島、半島、中山間地域を抱え、厳しい条件の中で、地域の農業関係者が一体となり、創意工夫をして、農村を維持発展させております。圃場整備を行いたいと考えている地域がまだまだ数多くございます。そうした意欲ある担い手へのニーズに応えるべく、十分な支援を引き続きよろしくお願いを申し上げます。

 次に、水産業に関して質問をいたします。

 水産物の食料自給率は魚介類全体で五五%です。政府は令和十四年度の目標を七六%としておりますが、現在の水産業の置かれた厳しい環境を考えますと、これを実現するためには、国が水産業に関わる方々に対して相当に厚い支援をすることが必要であると思います。

 昨年、新たに次期水産基本計画の基本的な方針が閣議決定されました。水産資源管理の着実な実施、そして水産業の成長産業化、最後に漁村の活性化の推進という三本の柱で水産業の振興に取り組んでいこうという理念は、水産業の経営の安定化や食料安全保障強化に資する、大変すばらしい理念だと思います。この方針を各施策にしっかりと取り込めるかがこれからの課題であろうかと思います。

 私の地元である長崎県は、水揚げ高が全国二位で、捕れる魚種の多さは全国一位の水産県でございます。しかし、他県と同様、海洋環境の変化による漁獲量の低下や新規就業者の減少といった大きな問題に直面をいたしております。

 例えば、有明海におきましては、近年頻発する豪雨による流域河川からの影響や、様々な環境の変化が要因となり、近年、水産資源が減少し、漁獲量も減り、漁家経営は大変厳しいものとなっております。

 労働環境の厳しさや少子高齢化、過疎化などが原因で、新規に漁業に参入する方が減少をいたしております。私は、漁業就業者数を減少させる一番の要因は漁獲量の減少であると思います。

 有明海の再生対策として、平成二十年から二十四年度、そして平成二十六年から三十年度に長崎県が事業主体となって実施をする水産基本整備計画へ支援をいただき、海底耕うんや貝殻散布による底質改善が行われたところであります。さらに、令和二年度から再度御支援をいただいている海底耕うんや藻場造成事業、種苗放流事業を実施することにより、漁獲量が改善方向に向かっております。

 これは今後の有明海再生に通じるものと考えておりますが、漁獲量を向上させ、漁業就業者数の減少を食い止めるためには、更なる支援が必要であると考えております。

 そこで、有明海の漁獲量や漁業環境をどのように現状把握されているのか、また、有明海の再生に向けて、農林水産省の今後の取組や方針についてお尋ねいたします。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 有明海における漁獲量につきましては、地域により若干の差は生じておりますが、全般的に見まして、ガザミやエビ類などについては漁獲量が増加し、漁業者の皆様方からは、再生の取組について一定の成果が確認されたとの声も上がっていると承知しております。一方で、タイラギにつきましては、平成二十四年以降十一年連続の休漁といった厳しい状況にあると承知しております。

 漁場環境につきましては、有明海・八代海等総合調査評価委員会の令和四年三月の中間取りまとめによりますと、近年、豪雨の増加や気温、水温の上昇が漁場環境に影響を与えている可能性があると指摘しております。

 有明海の再生につきましては、有明海特措法に基づき、関係省庁及び関係県と連携し、地域の実情に応じて、海域環境の改善のための覆砂や海底耕うんなど、また、水産資源の増養殖対策として、種苗生産や放流などに取り組んできております。なお、海底耕うん、覆砂などの水産環境整備事業は補助率のかさ上げ措置などが図られているところでございます。

 農林水産省といたしましては、引き続き、有明海の豊かな海としての再生に向け、取組を推進してまいります。

加藤(竜)分科員 ありがとうございました。

 私は、有明海の再生には、自主的な資源管理、そして魚がすむ環境の整備、最後に、安定的な種苗放流が相乗的に機能することこそが必要であると考えております。その中でも、種苗の研究事業及び海底耕うんや藻場の造成といった環境整備事業の支援拡充が特に必要であると考えておりますので、有明海の漁業に携わる皆様方の思いに寄り添うような施策を引き続き実現をしていただくように、これからもどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 また、水産業の安定的な経営の観点からも、自給率を高める観点からも、必然的に養殖業の生産割合を上げていかなければならないと思います。

 長崎県諫早市の小長井漁協は、かき日本一決定戦において初代王者となったほか、島原市の島原漁協のアワビの陸上養殖、南島原市の深江漁協はクルマエビの養殖といった、高価な水産物の養殖に成功をいたしております。

 今後は、生産性を高め、高収益化、安定供給が担保されれば、養殖業はまさに成長産業となり得ます。そのために必要なのはスマート水産業の振興であるかと思います。

 スマート水産業の実践に果敢に挑戦していく中で、人工知能を駆使し、養殖魚の成長データや給餌量や給餌タイミング、餌コスト等が的確に把握できるシステムが開発をされております。これにより効率的、安定的な養殖業を実現することで生産性や所得の向上、担い手の維持に寄与するものと考えております。

 しかし、組合員が少ない漁協は、限られた予算の中で、養殖業や民間の研究機関との連携、スマート技術の導入、実証実験への参加をしております。地元自治体も、地域の海を盛り上げようと支援を検討をしても、財政が厳しく、自主財源に限りがあり、満足な支援ができておりません。地域の小規模な漁協が、漁村のにぎわいを生み出そうと、まさに生き残りをかけて新規事業に取り組もうとしており、こうした取組について、国を挙げて応援をしていかなければならないと考えております。

 そこで、小規模でも新技術の導入に意欲がある漁家や漁協に対するきめ細やかな支援が必要であると考えます。養殖業の成長産業化のため、財政が厳しい地域の漁家に対して農林水産省はどのように支援していくのか、教えてください。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産庁では、国内外の需要を見据え、令和二年七月に、生産から販売、輸出に至る養殖業成長産業化総合戦略を策定し、養殖業の成長産業化を推進しております。

 委員御指摘のとおり、小規模な養殖業者を始め、養殖経営の収益を高めていくことも重要でございまして、養殖業事業性評価ガイドラインを活用した経営の見える化の取組、餌の使用量削減が期待できる自動給餌などのスマート機器の導入、機器の共同利用など中小養殖業者による協業化の取組、水中ドローンを活用した養殖漁場の改善など新たなスマート技術の開発、実証など、意欲のある養殖業者に対してきめ細かな支援を行ってまいります。

 引き続き、農林水産省といたしましては、現場の漁業者の声を聞きながら、養殖業の未来を見据えた施策を力強く進めてまいります。

加藤(竜)分科員 ありがとうございました。

 引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

 水産業の経営が厳しい今こそ、漁業関係者の皆様や漁村に暮らす人々に希望を与える施策を早急に講じなければ、水産国である日本の漁村の活気を取り戻すことはできません。農林水産省の皆様におかれましては、どうか地域の水産業に携わる方々の意見に耳を傾け、そして、地域それぞれの実情に即したきめ細やかな支援をこれからもどうぞよろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

堀井主査 これにて加藤竜祥君の質疑は終了いたしました。

 次に、おおつき紅葉さん。

おおつき分科員 立憲民主党・無所属のおおつき紅葉です。

 本日は、予算委員会の分科会審議において初めて農林水産省の所管に関わる質問の機会をいただきましたので、大臣を始めとする農水省の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 野村大臣におかれましては、私と同じ、地方、鹿児島県の御出身でありますので、地方の基幹産業であるまさに第一次産業、農業、林業、水産業、これを再びにぎわいを取り戻して、地方に日本を元気にする施策を是非ともお願いしたいと思います。

 早速質問に入ります。

 それでは、農業の資材価格の高騰対策について伺います。

 御承知のとおり、現在、ウクライナ情勢や円安等の影響により肥料や飼料等の農業資材価格が高騰したため、生産コストが上昇しておりまして、生産者は大変厳しい状況に置かれております。

 肥料については、多くの農業者が必要とする資材でありますが、我が国は化学肥料の原料のほとんどを輸入に依存しておりまして、国際情勢により肥料価格が左右されてしまいます。

 農水省の統計によりますと、ここ一、二年の間に約一・五倍に値上がりしたと報告されていますが、私の地元北海道では、昨年六月に主要な化学肥料の価格が約一・八倍に値上げされまして、この値上げ幅は一九八九年度以降で過去最大であったと報道もされておりますし、農家の皆さん、実際に悲鳴を上げております。

 また、飼料についても、トウモロコシ等の主な原料を輸入に依存している配合飼料価格が高騰していることに加え、乾牧草の輸入価格も高騰しておりまして、これは農水省の統計によりますと、やはり、ここ一、二年で約一・五倍に値上がりしていると報告されています。

 このような状況に対しまして、政府は、肥料については、昨年七月に、予備費によって、化学肥料の低減に向けて取り組む農業者に対して肥料コスト上昇分の七割を支援する肥料価格高騰対策事業を設置しましたが、これは今年の五月までと、あと二か月半後まで迫っております。肥料の価格高騰はいまだ続いておりまして、五月に高騰が収まる見通しも今のところないと思います。

 そこで、まず伺いますが、今年の六月以降もこの肥料の価格高騰対策を継続する必要があると考えますが、政府の考えを教えてください。

平形政府参考人 お答えいたします。

 今般の肥料価格高騰対策事業におきましては、昨年の秋肥と本年の春肥を対象に、本年度の予備費で七百八十八億円を措置したところですが、本年の秋肥以降の販売価格の動向は本年の春以降に明らかになるため、今後の販売価格の動向と農業経営への影響を十分に注視していく考えです。

 一方、委員御指摘のとおり、肥料原料の国際価格の影響を受けにくい生産体制、これを構築する必要がございます。このため、今後、土壌診断等による施肥量の適正化を進めるとともに、堆肥や下水など肥料成分を含有する国内資源の利用拡大、これをしっかり進めるために、国内資源由来の肥料の施設整備や耕畜連携の促進、これを進めていく考えでございます。

おおつき分科員 ではまた、飼料についてなんですけれども、昨年九月に、予備費によって、配合飼料の高止まりによる生産者の実負担額の増加を抑制するために、生産コストの削減等に取り組む生産者に対して、二〇二二年十月から十二月期について補填金を交付する配合飼料価格高騰緊急特別対策が措置されましたが、その後も飼料価格は高止まりしております。

 この状況を踏まえて、本年一月二十四日に開催された物価・賃金・生活総合対策本部で、岸田総理から野村大臣に、昨年の対策を継続し、今年一月から三月期についても配合飼料コストを抑制するための追加策を講じるよう指示が行われたものと承知しております。

 そこで、一刻も早く追加の具体的な対策内容を関係者に示す必要があると思いますが、現在どのような状況なのでしょうか。また、経営の危機に瀕している酪農を始めとした畜産農家に安心して経営を継続してもらうためには、四半期ごとの対応ではなく、配合飼料価格安定制度の見直しも含めて、もっと先を見据えた対策を講じる必要があると考えますが、政府のお考えをお聞かせください。

渡邉政府参考人 委員の御質問にお答えをいたします。

 飼料価格の高騰に対しましては、これまでに、配合飼料価格安定制度におきます異常補填基金への累次の積み増しのほかに、委員御指摘のとおり、十―十二月期、第三・四半期に、配合飼料一トン当たり六千七百五十円の補填を行う特別対策を措置をさせていただいたところでございます。

 第四・四半期、一―三月でございますけれども、高い飼料価格が引き続き経営を圧迫しているという声もございますので、委員御指摘のとおり、一月二十四日の物価対策本部におきまして総理指示がございます、第三・四半期の、配合飼料コストを抑制する対策を継続するということで、生産者の皆様が安心して経営継続を見通せるよう、具体的な対策を検討してございます。

 また、配合飼料価格安定制度の見直しにつきましても御指摘をいただきましたけれども、これは生産者から、補填金の支払いの早期化を含めまして、見直しの意見など、様々な御意見をいただいております。

 こうしたことを踏まえつつ、幅広い関係者の意見を伺いながら、どのような対応ができるか検討していきたいと考えてございます。

おおつき分科員 是非、目を離さないでいただきたいと思います。

 次は、日本を襲っている牛乳ショックについてです。この牛乳・乳製品の消費拡大対策について、まずはお伺いします。

 資材価格の高騰による生産コストの増加は多くの農業者に影響を与えていますが、現在最も経営が大変で営農継続が危機的な状況にあるのが酪農です。

 過去最悪レベルとも言われております、この酪農危機。酪農においては、飼料価格の高騰に加えて、副収入となる子牛の価格、今、一頭千円、いや、千円以下、五百円なんかという低落もありますが、特に牛乳・乳製品のこの需要減退による需要緩和の影響が深刻化しております。現場では、生産抑制に取り組んでおりますが、牛乳・乳製品の在庫が高水準にある中、処理不可能になって生乳が廃棄されることも懸念されておりまして、一刻も早い需給改善が求められております。

 そこで政府は、二〇二二年度第二次補正予算で、生乳の需要改善対策として、酪農経営改善緊急支援事業を措置されました。これは、生産者が早急に経産牛をリタイアさせて一定期間生乳の生産抑制に取り組む場合に奨励金を交付するものですが、要は牛を処分して供給を減らすことで需給改善を図ろうというものになっております。

 奨励金をもらえること自体はありがたいのですが、牛を減らすということは酪農家の生産基盤の弱体化につながりますので、より望ましい需給改善方法は消費を拡大することだと思います。

 この点について政府は、在庫水準が高い乳製品の在庫について、生産者団体や乳業メーカーが協調して行う脱脂粉乳の在庫を削減する取組を支援したり、乳製品のECサイト等への販売形態の変更や消費拡大プロモーション等を支援されてきましたが、これら民間の取組の支援だけでは需給改善が不十分であるのが現状であります。

 そこで伺いますが、国がもっと責任を持って消費拡大に向けた対策を強化する必要があると考えますが、政府の考えを教えてください。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、ぬれ子の価格なども低落しておりまして、今、足下の平均価格は全国平均で約二万円程度ということですが、例えば昨年度から比べますとかなり下がっているというのは事実でございまして、厳しい経営の状況が続いているというふうに認識をしてございます。

 そういった中で、委員御指摘のとおり、第二次補正の中で緊急のリタイアの事業などを措置をいたしました。これは、民間が自ら生産抑制に取り組むということで、北海道、都府県共に独自に生産抑制をされているという状況を踏まえまして政府としても支援をするということでございますし、また、生産者と乳業者が協調して飼料に脱脂粉乳を転用するといったような在庫低減対策についても、政府としても、生産者、乳業者の取組に支援をしているところでございます。

 政府といたしましては、そういった取組も大事でございますけれども、やはり、生乳需給が緩和する中で、牛乳・乳製品の消費拡大というのは非常に重要である、需要の底上げが是非とも大事だということで考えてございます。

 このため、農水省といたしましては、御指摘のとおり、業界が取り組む牛乳・乳製品の消費拡大ですとか、あるいは、更なる消費の伸びが期待される国産チーズの品質の向上あるいはブランド化ですとか、コンソーシアムによる牛乳・乳製品の輸出拡大などを支援してございます。

 また、国も自ら参画をいたしまして対応していくということも重要だと考えてございまして、牛乳でスマイルプロジェクトによりまして、官民の二百八十を超える幅広い参加者が共通のロゴマークの下で販売促進やPRなどを行って、消費拡大の輪を広げる取組を行っております。国もしっかり参画をして、そういった消費の拡大に取り組んでいきたいと考えてございます。

おおつき分科員 次に、後継者対策を拡充する必要性について伺います。

 さて、我が国の農業においては、少子高齢化、そして後継者不足などの影響から、就農人口の減少が続いて、非常に深刻な状況になっています。

 これはちょっと別件にはなるんですけれども、農家の方を伺いました。そうしたら、うちの子は東京に就職したから、もう帰ってこないよと言われました。こんな声を聞くのは一回だけじゃありません。

 今日はこれは御提案だけにさせていただくんですけれども、こうやって農家の方々が高齢化すると一つ問題なのが、実は運転免許証の話だと言っていたんです。これは管轄は違いますけれども、農業従事者の高齢化によって、やはりトラクターとかトラックを運転しないと農業を継続できないというんですよ。でも、国としては、やはり、高齢者のドライバーの方々は免許を返納してくださいと、推進されていると思うんです。

 ただ、例えばこういったことに特例制度を設けるとかしないと、やはり、地方、こうやって後継者不足のところはかなり大変な状況になっておりますので、政府一丸となってこれから考えていただきたいなと思う問題さえも出てきております。

 そして、農水省の二〇二一年度の白書では、「我が国の農業の持続的な発展のためには、若年層等の農業従事者の確保・定着と併せて、それらの農業従事者一人一人がこれまでに比べてより大きな役割を担っていくことが必要」、こう述べられております。

 具体的な状況を確認しますと、ふだん仕事として主に自営農業に従事している基幹的農業従事者の人口は、農水省の農林業センサスによりますと、二〇一五年の百七十六万人から二〇二〇年の百三十六万人へと、五年間で約四十万人も減少しております。

 日本全体の状況を見ても危機的な状況であることは分かりますが、地域の実情について、実感できる規模感の人数で見ると、更に危機感が募ります。

 例えば、私の地元北海道の状況を見ますと、二〇一五年の約八万五千人から二〇二〇年の約七万一千人へと、五年間で約一万五千人減少しています。さらに、私が主に活動を行っている地域ですが、石狩、後志、いずれも二〇一五年は約五千人でしたが、二〇二〇年には、石狩は約七百七十人減って四千百五十人、後志は約七百三十人減って四千三百三十一人です。それぞれの地域で毎年百五十人前後の基幹的農業従事者が減っているという極めて危機的な状況なんです。これに対して、二〇二一年の新規農業者数は、石狩で二十六人、後志で三十三人という本当に厳しい状況にあります。

 また、農業経営を引き継ぐ後継者の確保状況につきましては、農水省の二〇二一年度の白書からですと、農業経営体のうち、約七割もの経営体が後継者を確保していないという現状が示されております。

 一方、新規就農者の状況は、近年横ばい傾向にあるようですが、最新の二〇二一年の新規就農者数が約五万二千人となっています。この内訳を見ますと、全体の約七割が新規自営農業就農者、いわゆる親元就農者となっています。全体の新規就農者数を更に増やしていく必要があると思いますが、現状において、親元の就農者の方々には大きな役割を担ってもらっているということが分かりますよね。

 このような状況に対して、政府は、まさに今審議している二〇二三年度の予算案におきまして、農業人材の一層の呼び込みと定着を図るためとして、新規就農者育成総合対策という事業に百九十二億円計上しています。

 そこで、この新規就農者育成総合対策に対して、私の地元からこのような要望が参りました。総合対策の経営発展支援事業や経営開始資金について、親元就農の場合、経営継承が要件になっており、そのため、親が若い場合など現実に継承が難しい場合に支援の対象とならないため、その要件を除外、緩和してほしいというものです。

 先ほど申し上げた就農人口の危機的な状況を考えますと、この親元就農という事情があるかもしれませんが、親の農業を継承できなくても、農業の担い手という意味では、まさに即戦力なんです。地域の農業も、そのような方々に頼っているのが実情ではないでしょうか。ですよね、大臣。うなずいていらっしゃると思います。白書にも書かれていたように、これから更に大きな役割を担うことが期待されているわけですから、幅広く支援の対象として、地域の農業をバックアップすべきだと考えます。

 そこで、伺います。

 現行の総合対策の対象とならないこのような親元の就農者に対して、要件を緩和して支援の対象とする考えはありますか。また、支援対象とすることが難しいのであれば、この危機的な就農構造、環境を改善するために、このような親元就農者に対してどのような支援ができるんでしょうか、あるいはこれから検討していただけるのでしょうか。農業者の立場に立った御答弁をお願いいたします。

村井政府参考人 お答えいたします。

 委員から御指摘いただきましたように、農業者の高齢化、減少が進んでおります。基幹的農業従事者につきましては、六十五歳以上が約七割であるなど、年齢構成のアンバランスが大きな課題となっております。

 このため、農林水産省におきましては、若者が新規に農業経営を開始する際の資金面や投資面の負担が軽減されるよう、新規就農者育成総合対策の中で経営開始資金の支援や機械、施設等の導入支援を行っているところであります。

 こうした支援は、基本的に経営開始時の負担軽減を目的としていることから、親元に就農される場合については、五年以内に少なくとも経営の一部を継承する場合に限らせていただいております。

 今後も、若い方々に農業を職業として選択していただけるよう、これらの総合的な支援を通じて、農業を担う人材の育成、確保を一層推進してまいりたいと考えております。

 また、親元就農に何とか支援ができないかという御指摘だったかと思います。令和四年度から新たに措置をした経営発展支援事業につきましては、投資への支援に重点を移したことから、新規参入者並みのリスクがない親元就農の場合でも支援対象としているところでございます。これによって、経営開始資金の支援対象とならない親元就農の取組であっても、機械、施設等の導入支援を受けることが可能であり、令和五年度予算においても引き続き支援の対象としていきたいと考えております。

 このような支援によって農業構造の転換を図りながら、農業人材の確保を推進してまいりたいと考えております。

おおつき分科員 是非柔軟に考えていただけたらと思います。

 さて、この問題に関連して、大きな農政に関わることについても伺わせていただきます。

 私たち立憲民主党は、失われた十年政策検証プロジェクトチームを立ち上げまして、民主党政権から自民党政権に戻った後の十年間の政策を検証しております。その中で、農業者の戸別所得補償制度についても検証を進めています。

 民主党政権時に導入した戸別所得補償制度は、自民党政権に戻った後に縮小、廃止されてしまいましたが、それは本当に正しい選択だったんでしょうか。特に、自民党政権に戻ってからの農政は、競争力強化、成長産業化、輸出拡大、農協改革といった、いわゆる新自由主義的な産業政策に偏ってきました。その結果、十年間で農業、農村の所得倍増をうたわれていたようですが、その目標には到達しませんでした。それどころか、農家の平均収入は下がり、先ほど申し上げたように、農業従事者の数は激減して、後継者の確保も大変厳しい状況でございます。

 さて、先日、二月六日の予算委員会で、先輩議員である野間健議員が、戸別所得補償制度を取り上げられて野村大臣と議論されたと承知をしております。また、大臣は、御就任以降、この厳しい農業環境を踏まえてのことだと思いますが、今がターニングポイントだ、日本の農業の大転換をしていかなければいけないと、とても強い発言を繰り返されております。

 そこで、幅広い農業者を直接的に支える制度を再構築すべきだと考えますが、地域のため、農業者のために導入した農業者の戸別所得補償制度を再構築する必要性について、農業の大転換を掲げる野村大臣の力強い御答弁をお願いいたします。

野村国務大臣 先般、野間委員とも議論をさせていただきましたけれども、確かに、二十二年に米の戸別所得補償制度ができまして、そして、米農家の皆さん方からは、我々が解消したときには、何でやめるんだ、こんな鋭い御批判もいただいたのは事実でございますが、その後、我が国におきまして、やはり、農家の所得をどう安定させていくかという視点から、麦、大豆の生産者に対する畑作目の直接支払い金ということを現在もやっておりまして、今回の予算の中でお願いしておりますのが千九百八十四億、麦、大豆用に交付をするように予算を確保させていただきたいというお願いをしておりますし、それから、主食用米から他の作目への作付転換を支援する、いわゆる水活でありますが、これに二千九百四十二億円の予算を計上させていただきました。

 また、さらには、中山間地の直接支払いや日本型直接支払いといった農業者に対する直接支払いを行っているところでございまして、また、そのほかに、農業収入が減少した場合には、セーフティーネット対策として、ナラシやあるいは収入保険という収入補填の制度も新しく設けたところでございます。

 今後とも、こうした制度を着実に実施していくことにより、農業者の経営等を支えていきたいと思っております。

 先ほど申し上げました水活は、二千九百四十二億ではなくて二千九百四十億でありました。済みません、訂正させてください。

おおつき分科員 ただ、その制度だと、やはり農業従事者は増えておりません。減少する一方ですので、いま一度考え直す必要があるところがたくさんあると思います。

 続いて、林業分野についてお伺いいたします。コンテナ苗についてです。

 コンテナ苗は、裸苗よりも植付けが容易で、労務の軽減が図られるほか、従来の裸苗よりも植栽に適する時期が広いことから、労務を分散することができるといったメリットがあります。

 このコンテナ苗の利用、生産目標が当初見込みよりも大幅に早く達成できる見込みとなったことから、北海道では、コンテナ苗利用拡大推進方針が、新たな目標を定めるために近々改定される見込みと聞いておりまして、新しい推進方針の下、まだ国有林や道有林、そして一部の民有林にとどまっているコンテナ苗の利用が一層拡大していくものと、私も大いに期待しているところでございます。

 そこで、お伺いします。

 コンテナ苗の更なる利用拡大に向けては、需要と供給の両面から取組強化が必要と考えておりますが、まず、現在の普及、利用状況において、どのように分析し、どういった対策が必要となるか、農水省の考えをお聞かせください。また、供給面の取組強化として、家族経営や中小の苗木生産者でもコンテナ苗の生産設備を導入できるように要件を緩和するなど、支援策を拡充する必要があると考えますが、併せて見解をお聞かせください。

織田政府参考人 お答えいたします。

 まず、コンテナ苗の生産につきましては、平成二十一年頃から始まりまして、その生産量を着実に伸ばしてきております。令和二年度の生産量は約二千三百万本、苗木全体の三五%を占めるようになってございます。

 コンテナ苗につきましては、委員御指摘のような、非常に軽労化に資するですとか、あるいは労務の分散に資する等々の特性があるということで、これは造林コストの低減にも大きく貢献するものと認識しております。

 このため、農林水産省といたしましては、このコンテナ苗を用いた低コスト再造林に対する支援によりその需要の促進を図りますとともに、苗木生産者の方々が安定してコンテナ苗を生産できるよう、コンテナ苗生産の手引きというものを作成し、その普及を図っておりますほか、このコンテナ苗の生産施設の整備そのものに対する支援も行っているというところでございまして、今後とも、これらの取組を通じて、コンテナ苗の更なる生産、利用を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

 また、あわせて、要件の話がございました。コンテナ苗の増産に向けましては、苗木生産の多くを占める小規模な生産者の生産体制の強化が必要と考えてございます。このため、コンテナ苗生産施設の整備への支援ということで、令和五年度予算におきまして、小規模事業者への支援の強化を図るべく、支援の規模要件を年間五万本から一万本に引き下げるとともに、未経験者でもコンテナ苗の生産に取り組みやすくするための技術研修等の措置を講ずることとしてございます。

 今後とも、これらの施策を通じて、コンテナ苗の安定供給を強力に進めていきたいというふうに考えてございます。

おおつき分科員 次に、ブルーカーボンについて伺います。

 さて、繁茂した藻類や海草から成る藻場は、水産生物の産卵場、そして生育場、餌場等を提供するなど、水産資源の維持、増大に大きな役割を果たしていると思います。それとともに、藻場には二酸化炭素を固定化する重要な働きがあります。まさに、海の中で森の役割を担っているということです。

 いわゆるブルーカーボンで、二〇〇九年十月に、国連環境計画、UNEPの報告書において、藻場、浅場等の海洋生態系に取り込まれた炭素がブルーカーボンと命名され、二酸化炭素の吸収源対策の新しい選択肢として提示されました。農水省がおととし策定されたみどりの食料システム戦略において、ブルーカーボンの推進がうたわれていると承知しております。

 先月十九日、私の地元北海道にあります積丹町で、全国から関係者が集まり、ブルーカーボンの仕組みや活用について考えるセミナーが開催されました。

 積丹町はウニの名産地であります。積丹町では、通常なら廃棄されるウニの殻を肥料に活用する取組が行われてきました。この肥料で藻場を再生するとともに昆布を育てているんです。つまり、廃棄されたウニの殻で藻場と昆布を育て、その昆布を食べたウニの身入りがよくなって、またその殻で藻場と昆布を育てるという循環型再生産を実践するとともに、ブルーカーボンを推進をしております。

 そこで、まず、水産業におけるブルーカーボンの意義について政府はどのように認識されているのか、また、水産業におけるブルーカーボンの推進によって重要な役割を果たす藻場は年々減少しておりますが、その原因となっている、全国に広がるいそ焼けの状況についてはどのような対策を取られているのか、併せてお伺いいたします。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、海藻による二酸化炭素の固定化、いわゆるブルーカーボンが注目されておりますが、その基礎を成す藻場は水産生物の産卵場や育成の場として非常に重要であると認識しております。しかしながら、現在、海水温の上昇や食害生物などによって藻場の衰退、喪失を抱える都道府県は二〇二一年時点で三十一県に上るなど、全国でいそ焼けが拡大しております。

 このため、水産庁では、磯焼け対策ガイドラインを作成するとともに、地方公共団体、漁協などが参画する磯焼け対策全国協議会を毎年開催し、情報共有を図っているところでございます。また、各都道府県においては、藻場・干潟ビジョンを全国八十海域で策定し、海藻が着生しやすい基質の設置や基となる藻の設置など、ハード、ソフト一体的な取組を進めているところでございます。

 今後とも、引き続き、農林水産省といたしましても、積極的にいそ焼け対策に取り組んでまいります。

おおつき分科員 時間が参りましたので、済みません、森林環境譲与税については質問ができませんでした。申し訳ございません。あとは、ミサイルの発射が最近相次いでおります。漁業関係者の方々、かなり不安な声が広がっておりますので、是非、政府においては、正確で迅速な情報提供をお願いいたします。

 ありがとうございました。

堀井主査 これにておおつき紅葉さんの質疑は終了いたしました。

 次に、東国幹君。

東分科員 続きまして、北海道六区の東国幹でございます。

 質問の機会を大変ありがとうございました。ただ、冒頭、通告が大変遅れてしまいましたこと、職員の皆様方を始め、大変御迷惑をおかけいたしましたことをおわびを申し上げたいと思います。

 それでは、畑地化への転換、これについてまず質疑をさせていただきたいと思います。

 私の住む北海道というのは、米への執着というものはやはり根強いものがございまして、開拓時代に、米を作りたいけれども明治政府が厳として米を作らせなかった、そういう歴史から始まっております。そして、官憲の目を盗んで米の苗を取り寄せて、そして生育して、それが成功した。それから北海道の米作りというのが始まって、もう延々として、もはや百四十年ということに相なります。

 今、政府が推進しているこの畑地化への転換、これは、様々な事由があるかと思います。米の需給バランスの調整、あるいは、一年前からは、やはり論議の及んだ水田活用直接支払い交付金交付対象の厳格化、そういったものも含めて、生産者の皆さんは、このまま水田でいこうか、それとも畑地への転換をしていこうか、そういった分水嶺というか、判断をやはり迫られてきたこの一年であったというふうに思っております。

 そういった中において、畑地化への転換を進める中にあって、この支援事業、これも大変ありがたいことでございまして、作種によって違いますけれども、おおむね十四万、そして、五年間において年度年度で二万円の支援ということ、そして高収益はまたちょっと更にアップするということで、本当に政府の決断に敬意を表したいと思っております。

 ただ、二二年度の二次補正予算では、水田を畑地にする、麦や大豆、飼料作物やソバ、そういったものへの畑地化促進事業、これに二百五十億円、これは計上済みなのでありますけれども、おおむね来月ぐらいまでに取りまとめるというふうには聞いておりますけれども、今時点で、この予算の活用の希望等々、どのような状況なのか、まずお伺いをしたいと思っております。

    〔主査退席、鷲尾主査代理着席〕

平形政府参考人 お答えいたします。

 畑地化につきましては、麦、大豆等の畑作物の本作化を促すためということで、委員御紹介の令和四年度第二次補正予算において二百五十億円の畑地化促進事業、これを措置するとともに、令和五年度当初予算においても二十二億円の畑地化促進助成も計上をしております。

 令和四年度の第二次補正予算の畑地化促進事業につきましては、令和四年十二月末から開始をしております。三月十日を国への締切りとしております。現在、各都道府県におきまして要望調査、これが行われているところでございます。

東分科員 三月十日までと。当初でこれは二十二億円、これもまた断続的な予算措置、これを期待をしているんですけれども、まず、予算措置において、これはポイント制を活用して優先順位をつけていくというお話も聞くんですけれども、その真偽というか、この詳細、明らかにできるところ、是非ちょっと明らかにしていただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 令和四年度第二次補正予算の畑地化促進事業におきましては、委員御指摘のとおり、補正予算でございますので、取組の内容に応じてポイントが決まります。ポイントの高い順に、予算の範囲内で支援を行うということとなっております。

 具体的には、畑地化を行う品目ですとか規模に応じてポイントが決まります。例えば、高収益作物、委員御紹介がございましたけれども、による取組に対しては高いポイントが付与されますし、また、まとまって、規模を大きくして畑地化する場合には高いポイントが付与される、そういう中身でございまして、これは要綱の中で示しております。

東分科員 ポイント制の中身にしろ、この二百五十億円、そしてこれからも恐らく予算措置がされるであろうと思うんです。そういったことが、生産者の皆様方の、とにかく情報が欲しいというところでございます。畑地化にするという決断の中では、やはりその判断に対する、とにかく参考情報が欲しい、そういった場面でもございます。

 そして、ちょっとそもそも論になるんですけれども、この二百五十億円、これは二次補正ではあるんですけれども、果たしてそれで足りるのかどうなのかという意見や問合せも多うございます。

 これは、私は、例えば地元北海道だけでも二百五十億円は更に超えるんじゃないかな、そういう感想を持っているんですけれども、今後どのような程度で予算を措置していくのか、お伺いしたいと思います。

平形政府参考人 委員、二百五十億が十分かどうかという御質問だと思いますが、このような畑地化のための支援事業というのは、高収益作物に対してはここ数年行ってきておりました。そういう意味でいうと、高収益作物の部分であれば大体このぐらいの予算の消化というのは分かるんですけれども、今回は、高収益作物に限らず、いろいろな畑作物全般を対象にするようにしております。そういった意味でいうと、この二百五十億が大きく足りなくなるということはなかなか想定し難いんですけれども、一方で、じゃ、これも、二百五十億、どのぐらい使われるかということもなかなか実は予見し難いところもございます。

 そういった意味で、令和四年度の二次補正予算につきましては十分説明、それから、どういう要綱でというのは御説明してきたところでございますが、それに対して各産地の中でどのように手が挙がってくるかというのは、まさに三月十日までの国への提出というんですか、それを待ってみる、そのための要望調査を今行っているところでございます。

 現時点で、予算の過不足についてコメントできる状況にはございませんが、一つは、この畑地化の事業につきましては、制度をつくるときから、特に借地の場合に、耕作者が土地所有者の理解を得ているかどうかというのは重要なポイントだという話ですとか、土地改良区との協議、これも調っている必要があるだろうという御意見をいただきまして、こういったことも要件の中に入れて、実際に交付申請のときまでに、こういった地権者の方ですとか土地改良区との協議を終えていただく、そういう見込みになっているかどうかということについても、我々も十分確認をさせていただくというふうになっております。このために、今の段階で、これについて過不足があるのかどうかということをちょっと申し上げられる段階にはございません。

 また、これは補正予算でございますので、補正の補正というのはありませんので、ここでの、どうしてもポイントの中で採択していくという方法を取らざるを得ませんけれども、あとは、当初予算の中で、このものに回っていくものを、どのぐらいあるかというのを、これも状況を見ながら進めていきたいというふうに考えております。

東分科員 御答弁いただきましたけれども、まさにそのとおりだと思うんですね。

 例えば、畑作への転換ということになると、地権者と耕作者が別々の場合は、その同意を得ているかだとか、そして、どちらを優先的にするかというのは、私は、どちらかというと、地権者は大事だと思うんですね。やはり、一旦畑地化にしてしまったら後戻りができなくなってしまうという現状なものですから。そういったこととか、土地改良区、それの協議。恐らく、土地改良区の運営事業もこれからちょっと大変になるかもしれません。賦課金が低減する、あるいは、本州の土地改良区の中では、水田以外、これは賦課金を取っていないという土地改良区もあるやに聞いております。定款を変更したらどうだとか、いろいろやっているやに聞くんですけれども、これもまた一つちょっと大変なことかなと思います。

 いずれにせよ、この畑作への転換というものは、様々な角度からまだちょっと課題があるかな、それを完結するまでにちょっと時間がかかるかなと。私の地元では、例えば、粘土地なものだから水田を造ったんだぞ、火山灰地だからこれは畑作に向いているぞと、そういう生産者も少なくないわけなんですね。だから、土壌に合う合わない、そういったこともあってのこの畑地化への決断というものはやはりあることと思います。

 ただ、この予算の措置については、これは、私はまだ国会にいなかったですけれども、二年前だったでしょうか、高収益作物次期作支援交付金、これはコロナ対策なんですけれども、これの希望者というのは相当あったんですが、そこのところでちょっといろいろ論議があったということも聞いております。それは畑作への分水嶺ということになるかと思いますので、是非とも断続的な予算措置、生産者の皆さんが納得するような予算組みを今後ともお願いを申し上げたいと思います。

平形政府参考人 委員御指摘の中の高収益作物次期作支援対策は、まさにコロナ対策でありますので、コロナによって、花ですとか果実の生産者の方が、どんどん出荷していかないと次の経営が成り立たないということで措置したものでございまして、土地利用型の麦ですとか米ですとか大豆ですとか、そういったものとはちょっと違う対策になっておりますので、ちょっと申し上げます。

東分科員 次に、畑地化促進事業費、これを活用しても、大体、五年間で、まず二万円、これは一括してということも許されるということも聞いておりますけれども、今からいえばR八年までということになるんですけれども、耕作することは当然、五年間で義務づけられているところであります。しかし、R九年以降は、じゃ、やめてしまおうかとか、離農、耕作放棄地が多くなるのではないだろうかとか、そういったことの見立ても、多くなるのではないかという懸念の声もあるわけなんです。

 畑地化への支援事業というものがまさにいいものであるのは間違いのないことであります。それだけに、また逆の効果もあるかもしれない。それをいただいて離農するだとか、そういった懸念への見解というのはどのようなものでしょうか。ちょっとお伺いしたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 今般の畑地化促進事業は、麦、大豆等の産地化を図っていただくということのために、畑地化後に畑作物の生産が定着するまでの間の五年間、継続的に支援を行うことと。委員御指摘のとおり、二万円掛ける五年間というのもございますし、一括してそれを五年分受領される方法もありますが、少なくとも、こういったお金をいただいて、それで耕作をやめていただく、そういうものを促進するために措置しているものではございません。

 一方、土地利用型の作物でございます麦、大豆等に関しましては、諸外国との生産条件の格差を是正するための畑作物の直接支払交付金、ゲタ対策というものが法律によりまして措置をされております。これは、水田作か畑作かを問わず支援をしております。

 このほか、中山間地域の営農継続に向けた地域ぐるみの話合いですとか、農地の粗放的な利用を含めた農地保全、農地保全に必要な基盤施設整備等、きめ細やかに取り組めるよう、最適土地利用対策、これも拡充をしております。また、複数の集落協定ですとか自治会などが連携して営農や生活を支える農村RMOの形成推進も進めていく考えでございます。

東分科員 次に、食料の備蓄に関してでありますけれども、農水省の中に食料・農業・農村審議会、こういった審議会があるわけなんですけれども、そこによれば、米の備蓄水準百万トンを減らす論議があると承知しているんですけれども、食料安全保障の考え方、これはやはり、サプライチェーンが崩れたり、あるいは有事のときだとか災害のときだとか、大型災害のときだとか、そういったところの事態に備える食料安全保障、そういったことの考え方に逆行する動きでもあるのではないかという懸念もあります。

 米の備蓄百万トンの維持、私はこれは必要だと思うんですけれども、これは見解をお伺いしたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 政府備蓄米は、不作等による米の生産量の減少によりましてその供給が不足する事態に備えて、必要な数量の国産米を在庫として保有をしているものでございます。

 主食用米の需要の減少が続いております。備蓄水準、現在約百万トンになっておりますが、それを定めた平成十三年から、現在では需要量が約二百万トン減少をしております。

 食料・農業・農村政策審議会の食糧部会ですとか基本法の検証部会においては、出席する委員から様々意見をいただいております。例えば、需要が減少している中で政府備蓄米の水準は考え直すべきじゃないかということをおっしゃる方もいらっしゃいますし、また、米の備蓄量については慎重に検討する必要があるんだというふうにおっしゃる委員もいらっしゃいます。また、備蓄の強化に要するコストについて国民に分かりやすく説明することが必要だ等の意見もいただいております。また、近年では、不作時のみならず、災害時においての政府備蓄米の活用、こういったものも求められるようになってきているというふうに承知をしております。

 こうした課題を踏まえながら、基本法の検証等の議論の中で、政府の備蓄全体の在り方について、一つは、民間の方でもお米の在庫がございます。そういった民間の在庫の役割ですとか、米以外にも麦等、他の穀物の供給の安定化、そういった観点も勘案して議論を進めていく考えでございます。

東分科員 次に、小麦についてなんですけれども、例えば、有事の際には三か月はもたない状況であるというふうにお聞きいたします。備蓄保管料への助成は外国産が対策というふうになっておりますけれども、これは国産のものも助成対象とする必要があるやなしか、そういったことも含めてちょっと見解をお伺いしたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 小麦の備蓄につきましては、国内需要の八割以上を占めます外国産の小麦を対象といたしまして、輸入の途絶や遅延等が発生した際の代替輸入先の確保に要する期間等を勘案いたしまして四・三か月、このうち、洋上分に二か月、小麦の船が浮いていますので、それを除いた二・三か月について、回転方式で備蓄をしているところでございます。

 一方、国産の小麦につきましては、輸入農産物等への過度な依存を低減する観点からも、その振興を図ることはとても重要な課題でございます。近年、反収や品質が向上してきた一方で、年産の変動が大きく、実需側からは収量、品質の安定化が求められております。このため、令和二年度以降、補正予算等において国産小麦の収量の変動に対応したストックセンターの整備、また、産地等で一定期間保管する経費の支援等を行っているところでございます。

 国産小麦の保管支援については、こうした取組を踏まえ、引き続き、食料・農業・農村基本法の検証等に併せて検討を進めていきたいと考えております。

東分科員 御答弁の中にありました基本法の改正等々、御期待を申し上げたいと思うんですけれども、やはり備蓄対策というのは、恐らく、私は、食料の確保、サプライチェーンの循環等々も含めて食料安全保障の中の一つの柱になるかと思います。先ほど、米の方の民間の保管、備蓄、そういったものも含めての計画的な策定というのはやはり求められると思いますので、是非ともよろしくお願いを申し上げたいと思っております。

 また、備蓄には出口対策も必要であると考えております。相当、やはりストックされている備蓄というものも少なくない。例えば大豆などは、私の地元では、これは系統改革関係なんですけれども、倉庫の中にずっと保管されている状況であるというふうにお聞きしております。つまり、品物はだぶついているわけなんですね。そして、長期間にわたって倉庫で眠っている。

 ただ、やはり大豆も小麦も非常に自給率がまだまだ不足をしているという中で、今、地元で生産意欲、そういったものが倉庫に眠っている現状からすると、生産意欲が湧くかどうか。ちょっと、その出口対策、それはどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 国産大豆につきましては、銘柄によるのかもしれませんが、一般的には旺盛な需要がございます。昨年秋に収穫され、現在、産地倉庫に保管されている大豆についても、今後、入札や相対取引により順調に販売されるものというふうに考えております。

 一方、国産大豆は、年産ごとに生産量の変動が大きく、更なる需要拡大のためには、安定供給体制の確立が急務だというふうに考えております。

 このため、調整保管機能を果たすストックセンターの整備、麦と同じように、そういったストックセンターの整備が必要だと思いますし、また、輸入大豆から国産大豆への切替えなどに取り組む食品製造事業者に対して、新商品の開発への取組等、生産だけでなく流通、消費、それぞれの段階において総合的に支援すること、これで更なる国産大豆の需要拡大を進めていきたいというふうに考えております。

東分科員 それでは、酪農、畜産の対策についてでありますけれども、飼料支援、これは再度早急に対策を打っていただきました。本当にありがたいことでございます。

 ただ、私の住む北海道では、二百戸あたりの廃業を余儀なくされているとのことでございます。それらの状況は御承知のとおりと思いますけれども、特に、副産物であるぬれ子、この価格が大体一頭千円ぐらい、殺処分まで行われているというところでございます。ぬれ子に対する補償金、そういったこともちょっと考えていくべきではないかと思うけれども、いかがでしょうか。

 そして、併せてで恐縮でありますけれども、飼料対策はもう確実にやっていただいております。ただ、ぬれ子の場合はカーフミルク、これが不可欠でありますけれども、飼料同様の扱いとしてカーフミルクへの対策もすべきと考えますけれども、見解をお伺いしたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 酪農家の皆さん、生産コストが上昇する中で、需給ギャップの解消に向けて生産抑制に取り組んでおりまして、大変厳しい状況であると認識をしてございます。

 我が省といたしましては、今日の酪農経営が厳しい状況になっているのは、やはり生乳生産コストの約五割を占める飼料の価格が高騰したことが主たる原因であるということで、委員御指摘のとおり、各種の対策をやってまいりました。

 委員から御指摘のありましたいわゆるぬれ子でございますけれども、本年一月の全国平均価格を見ますと一頭当たり約二万円程度ということでございますけれども、昨年と比べますとやはり大きく低下をしていると承知をしてございます。

 ぬれ子につきましては、生乳生産の副産物でございますので、そこに直接的な支援を行うことは困難であると考えますけれども、ただ、酪農経営を支える収入源の一部ではもちろんありますので、目下の経営状況の中で、離農抑制などといった観点からも、どういう対応が可能か、検討したいと考えてございます。

 また、カーフミルク、いわゆる代用乳でございますが、これへの対策でございますが、これは、ALICの事業、農畜産業振興機構の事業の中で、酪農家さんに対する、パスチャライザー、初乳や生乳の加温殺菌装置でございますけれども、そういった装置の導入の支援などを行いまして、酪農家さんが自ら農場で生産した生乳を哺育に使用する自家哺乳を支援するというようなことをやらせていただいております。

東分科員 時間も押してまいりましたので、最後の質問でございます。

 午前中、先輩議員も質疑があったかと思いますけれども、価格転嫁、やはりこれが、農業の場合、生産者の皆さんに、生産費は高くなって、そして転嫁がなかなかできない、メーカーとの交渉の中でなかなか転嫁されない状況でございます。農業大国でありますフランスのエガリム法並みの適用、そういったものがやはり不可欠だと思います。そういったところの見解をお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 生産コストが急増している中で、農林水産省として、農業経営への影響を緩和するための措置を講じるところでございますが、価格転嫁も重要と考えております。

 政府で取りまとめました転嫁円滑化施策パッケージに基づきます取組のほか、農林水産省といたしましても、適正取引の推進や、消費者に対してコスト上昇の背景を分かりやすく伝える広報活動を行っているところでございます。

 委員から御指摘のございましたフランスのエガリム法につきましては、生産、流通コストを反映した価格形成を推進する観点から見直しが行われ、本年一月から全面的に施行されたと承知しており、現在、その状況等について調査を行っているところでございます。

 今後、こうした外国の事例も参考にしながら、また基本法検証部会におきます御審議もいただきながら、我が国の生産、流通の実態等を踏まえまして、コストを反映した価格が形成されるには何が必要か検討し、加工流通業者や消費者の皆様の理解も得ながら、適切な価格転嫁のための環境整備を進めてまいります。

東分科員 基本法、今の三十条でも、適正に価格転嫁をすべしという条文がございますので、今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げまして、私の質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

鷲尾主査代理 これにて東国幹君の質疑は終了いたしました。

 次に、山崎正恭君。

山崎(正)分科員 公明党の山崎正恭です。

 本日は、委員長、理事の皆様に第六分科会での質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、先ほど東委員からもお話がありましたが、私も初めに、持続可能な農業に向けた適正な価格形成についてお伺いします。

 私は四国比例ブロック選出でありますが、今、地元の高知、また徳島、香川、愛媛、どこの県の現場に行っても、農業関係者の方が口をそろえて異口同音におっしゃられるのが、この適正価格についてであります。

 先日も、地元高知の四十代前半の農家をやっている友人、高知ですので施設園芸で野菜を作っておられるのですが、お話をお伺いすると、昨年来の重油の高騰、さらに様々な資材の高騰でコストがどんどん上がる中で、販売価格は全く変わらない、この数十年ほとんど変わっていない、このままでは本当にこの先農業を続けていくことができなくなるのではないかとおっしゃられていましたが、このことが本当に、今、どこに行っても農業関係者の方から真っ先に言われることであります。

 農業に関しては、よく、こういったコストの負担を川上である生産者が一手に担っているというふうに言われますが、やはりこの構造をしっかり変えていかないと持続可能な農業にならないと強く感じております。

 先ほどの農家の友人も、今の状況ではなかなかこれから先の明るい展望を見出すのは厳しい、おやじの代から両親が頑張ってきた農業ですが、今の年齢のうちならまだ転職も可能なので、最近は真剣に、農業を続けるかどうかを考えていますと語っておられました。

 この友人は、高知県の中でも農業どころと言われる南国市の農家さんですが、周りの若い三十代、四十代の農家さんも同じような悩みを抱えているとおっしゃっていました。

 やはり、そういった農家さんを守るには、何といっても、生産コスト等を考慮した、再生産可能な適切な価格形成が重要であると思います。

 そこで、先ほど東委員からもお話がありましたが、世界に目を向けてみますと、フランスが二〇一八年に、農業者の所得向上を図るため、エガリム法を公布、さらに、二〇二一年に、同法の課題を踏まえ、エガリム2法を公布しています。

 エガリム法は、農業者と最初の購入者との間での書面での契約締結を義務化しています。その書面の記載義務事項の中に、価格及び生産コスト等を考慮した価格を自動改定できる決定方式又は価格の決定様式を入れなければならないルールになっていますが、その決定方式の基となる生産コストの指標については、その品目ごとに生産者から小売までの各段階の代表組織が加盟した専門職業間組織によって作成され、これが公表されることになっています。そして、最初の購入者以降の流通においては原価割れでの販売を禁止する規定となっています。

 要は、これによりまして、生産者から小売業者までみんなが入った代表機関が、その組織で決めた生産コストの指標を作ることによって、その後の適正な価格形成に大きな影響を与えることとなります。さらに、昨今のように重油や資材が急に高騰した場合においても、それを反映させ自動改定できる決定様式が導入されることで、格段に農業生産者の収入が安定することとなります。

 先ほど申しました、今、日本の多くの農業者が抱えている適正な価格形成において参考になるフランスのエガリム法の取組だと思いますが、この取組についての農水省の見解をお伺いします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員からも御指摘がございましたフランスのエガリム法でございますが、二〇一八年十一月に、農業生産者と取引相手の関係を見直し、持続可能性に配慮すること等を目的として公布されました。

 また、同法の施行後、生産、流通コストを反映した価格形成を推進する観点から見直しが行われまして、エガリム2法が二〇二一年十月に公布され、本年一月から全面的に施行されたと承知しております。現在、その状況等について調査を行っているところでございます。

山崎(正)分科員 やはり、適正な価格が安定して形成されることが、農業者の皆さんにとって最も重要なことであり、持続可能な農業に向けての最重要な要素であると言っても過言ではないと私は考えています。

 是非、日本においても、生産コストや、もっと言えば、日本では来年から物流の二〇二四年問題もあります、流通コストも踏まえた、農業者が再生産可能となる適正価格の形成に向けた取組が、日本の持続可能な農業の発展に向けて非常に重要かつ待ったなしの状況であると思いますが、大臣の御認識をお伺いします。

野村国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 先ほどエガリム2法についての御質問もございましたけれども、まだなかなか、日本の場合は研究段階でございまして、フランスのように即施行ということには難しさがありますねということでしか言えません。

 そこで、農水省としましては、飼料や肥料の急激な高騰等による農業経営への影響を緩和するための措置として、適正に価格に反映していくことが重要だという認識は、これは委員と全く同じであります。

 しかしながら、生産コストの上昇に対応した価格転嫁が行われるように、政府全体としては、転嫁円滑化施策パッケージに基づきまして、各省庁とも連携を取りながら、農水省としても、食品製造業者あるいは小売業者に対して協力要請を行いながら、さらに、食品の値上げについては、消費者の今度は御理解をまた一方では求めていかなければならない、こういったための広報活動もやってございます。

 今後、生産、流通の実態等を踏まえて、コストを反映した価格が形成されるには何が必要か、こういった検討をしなければなりませんし、エガリム法もまたその一つでもありますので、これも検討させていただきたいと思っておりますが、いずれにしましても、加工流通業者等や消費者の皆さんの理解も得ながら、適切な価格転嫁のための環境整備を整えていかなければならない、こんなふうに思っているところでございます。

山崎(正)分科員 丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 次に、農業のDX化、スマート農業、物流の効率化の推進についてお伺いします。

 農業のDX化、スマート農林政策の推進は、これからの我が国の農業振興には欠かせない重要な政策であることは言うまでもありません。

 そんな中、今、私の地元高知県におきましては、農業DXの取組として、産学官が連携したIoP、インターネット・オブ・プランツが導くネクスト次世代型施設園芸農業に取り組んでいます。

 IoPとは、多様な園芸作物の生理、生育情報をAIにより可視化し、利活用を実現する最先端の研究であり、栽培、出荷、流通まで見通したIoPクラウドを構築し、AIにより営農を支援していこうという取組です。

 具体的には、ビニールハウス内の温度や湿度、炭酸ガス濃度などを見える化するとともに、栽培管理において重要な指標となる光合成等の生理、生態情報、例えば光合成速度や蒸散速度といった生理、生態情報の数値化、見える化を実現、それらを基に、生育予測や収穫量、時期などを予測するAIのプロトタイプの開発も行っています。また、個々の農家さんからデータ利用の同意を締結しており、IoPに集まってくるビッグデータを使って新たな研究、製品開発に活用できることが大きな特徴であり、これによって、産地全体としてのスーパー四定、定時、定量、定品質、定価格を目指しています。

 実は私は元中学校教員でありますが、私の教え子も、この高知県のIoPの取組の中でナスを作っています。先日会ったときに、IoPの取組はどうよと聞いたところ、いや、やっぱりすごいですよ、確実に大きくナスが育っていますし、質もよく、収量が上がってきていますと、すぐに言葉が返ってきました。

 本当に今後の日本の農業の可能性を感じる、この農業のDXの取組でありますが、全国的に見た現在の技術開発や実装の推進の現状についてお伺いします。

角田大臣政務官 私も、委員御地元のIoPの現場について視察もさせていただきまして、非常に耕地面積が狭いという不利な条件の中で様々な工夫をして収量を上げている、その取組の成果というものを実感させていただいたところでございます。

 スマート農業は、高齢化や担い手不足に対応するとともに、化学肥料や化学農薬の削減など環境負荷の低減に役立ち、みどりの食料システム戦略実現の鍵となるものであり、農林水産省としても、これまで全国二百五の地区でスマート農業実証プロジェクトを実施してまいりました。

 このプロジェクトによって技術開発、実装を進めており、委員御地元の高知県を含め、水田作では、スマート農業技術の導入による労働時間の削減や、収量データに基づく作型、品種構成等の最適化による収量、利益の増加、そして新規の就農者であっても熟練者と同等の精度、速度で作業が可能となるといったような成果が出ているところでございます。

 また、御指摘の施設園芸においても、環境制御による収量、品質の向上等の成果が出てきており、農林水産省としては、こうした成果の積極的な情報発信を行って、更なる社会実装を進めてまいりたいと考えております。

山崎(正)分科員 他方、なかなか農業のデジタル化に取り組まれない農家の方がよくおっしゃるのは、経費が高くて無理だという御意見であります。

 しかし、高知県などでは、先ほど御説明したIoPに見られるように、県や市町村が一緒になって強力に推し進めていることもあり、設備によっては国が二分の一補助で、さらに県、市町村がそれに上乗せで補助を行い、合計で八五%の公的支援を受けられるメニューもあるようで、かなり導入に向けての後押しになっているようですので、その辺の周知も一つ、これからの推進に向けた重要な要素なのかとも考えております。

 あとは、年配者の方は、やはり、そんなもんじゃねえんだ、俺は自分の目と勘のみを信じるという熟練の農家の方もいらっしゃり、親子で農家をやっている場合は、DXの導入時に親子間で対立関係になるという話もよくお伺いします。

 全体的には、そういうふうに若い方が導入することが多いと思いますが、ただ、若い方、例えば、先ほどの質問で御紹介した友人なんかは、今、農業のデジタル化、スマート農業等が言われているが、新しいものに挑戦するときにはやはり不安がつきものです、三年続いたコロナ禍の影響も大きく受け、さらに燃油や資材高騰の今の状況では、もし挑戦して失敗したら、その次の年の資金がたちまちなくなってしまう、そのような状況ではなかなか新しいものに挑戦していく勇気、決断ができないですとおっしゃっていました。

 こういった実情を考えた場合、やはり今後、更なるDXの普及に向けては、支援の強化と、その効果を知ってもらうための更なる普及促進が重要であると思いますが、農水省の御認識をお伺いいたします。

角田大臣政務官 スマート農業実証プロジェクト、これまでのプロジェクトを通じまして、先ほど申し上げましたけれども、労働時間の削減や収量増大等の効果、これが確認されているわけでございますけれども、一方で、大きくは、導入時のコストと人材不足、スマート農機の導入のコスト、それから、スマート農業の取組を実践できる、こうした人材が不足しているという課題が明らかになっております。

 このために、農業者が個別に高額なスマート農機を導入するのではなくて、スマート農機の作業の受託、シェアリングなどを行う農業支援サービス事業体、この育成、普及や、実証参加者等から構成をするスマートサポートチームによる他産地への実地指導を通じた人材育成とデータ活用の推進等の施策を着実に実施することにより、スマート農業の普及を進め、農業の成長産業化と地域の活性化を図ってまいります。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 次に、食料・農業・農村基本法の見直しについて質問いたします。

 昭和三十六年に制定された農業基本法に替わり、平成十一年に食料・農業・農村基本法が制定され、はや二十年以上が経過しました。

 その間、食料自給率の低迷や農業生産基盤の弱体化、また多発、激甚化する自然災害、さらに今般の安全保障環境の厳しさ等、我が国の食料、農業、農村をめぐる環境は大きく変化しています。

 そういった中、令和四年九月九日に岸田総理は、スマート農林水産業、農林水産物・食品の輸出促進、農林水産業のグリーン化、食料安全保障の強化、これらを農林水産政策の四本の柱として、社会課題を成長のエンジンに転換し、社会課題を解決しつつ、食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長を推進していくという方針の下、農林水産政策を大転換していく、このため、全ての農政の根幹である食料・農業・農村基本法について、制定後約二十年間で初めての法改正を見据え、関係閣僚連携の下、総合的な検証を行い、見直しを進めると力強く宣言され、現在、政府・与党は、改正を見据えた総合的な検証、見直しを進めています。

 そこで、まず初めに、食料安全保障の位置づけについてお伺いします。

 現在の基本法では、第十九条に、不測時の食料安全保障のみが規定されていますが、昨今の新型コロナウイルスの世界的な蔓延やロシアによるウクライナへの侵略等により顕在化した食料安定供給のリスクにより、食料安全保障の強化は国家の喫緊かつ最重要課題であると思います。

 そこで、今回の基本法の改正においては、食料安全保障の定義を明らかにした上で、平時を含む食料安全保障の強化を基本法の目的として明確に位置づける必要があると思いますが、大臣の御認識をお伺いします。

野村国務大臣 ありがとうございます。

 委員の方からございましたように、基本法ができまして二十年たちました。この二十年間の間の食料安全保障のリスクというのは、もう御承知のようなことで、ますます高まっております。

 したがいまして、先ほど御案内がありましたように、今の基本法では、これはもう、不足したときだけではなくて平時もということを今議論していただいておりますので、私の方からこうなりますとはまだ言い切れませんが、今の議論の中では、消費者の方、それから学者の方、それから生産者の方、あるいは流通業界の方、いろいろな方々が入って今議論をしていただいておりますので、今おっしゃいましたようなお話というのも出てきておりますので、多分そういったことが盛り込まれてくるのではないかというふうに期待をいたしておるところでございますが、いずれにしましても、こういった方々の、各界各層の皆さん方のコンセンサスを得ながら、六月をめどに政策の新たな展開方向をお示しするということになっておるところでございます。

山崎(正)分科員 ありがとうございます。

 是非、現行の十九条とかではなくて、第一条に位置づけるぐらいの重要なことであると思いますので、是非、今後の議論の中での御検討をお願いいたします。

 次に、生活困窮者への支援策についてお伺いします。

 新型コロナウイルスの影響等により我が国における経済格差は拡大しており、全ての国民に十分な食料の供給が行われる体制づくり、支援強化が重要となっております。今、政府においても、フードバンクや子供食堂などへの支援の強化を図っているのは承知しておりますが、今回は特に、このフードバンクや子供食堂などにすら様々な理由でアクセスができない生活困窮者の皆様への支援策についてお伺いします。

 例えば、アメリカにおける生活困窮者への支援策としましては、旧フードスタンプと言われるSNAP、補助的栄養支援対策プログラムがあります。低所得者層の方にSNAP専用カードを受給し、受給者はそのSNAP専用カードを使って、政府によって許可された小売店で食料品を購入します。そして、政府はSNAP専用の口座に給付金を振り込みます。一人当たりの平均給付額は、二〇二一年度で一か月当たり百二十七ドル、約一万八千円です。

 この制度の効果としては、生活困窮者の方への食料の供給とともに、最近は各自治体が地域経済活性化の取組として行っている地域電子通貨と同じような効果、範囲はもう少し広くなるかもしれませんが、食料品販売店の活性化につながっていく側面もあるのではないかと思います。

 アメリカのSNAPと同じような政策となると、これは農水省だけの問題ではなく、厚労省との絡みが出てまいりますので、簡単なことではないと承知していますが、誰一人取り残さないというSDGsの観点からも、生活困窮者の方への食の安全の保障、そして食料販売店の活性化に向けて、アメリカのSNAPのような取組を日本においても今後進めていくことが重要だと思いますが、農水省の見解をお伺いします。

角田大臣政務官 アメリカでは、補助的栄養支援プログラムとして、低所得者等の一定の要件を満たす方を対象に、小売店での食品購入を経済的に支援する制度がありますが、これは、我が国でいえば生活保護制度に近いものではないかというふうに考えております。

 食料に係る支援については、現在我が国においても各省庁で取り組んでおり、農林水産省においては、食育や食品ロス削減の観点から、子供食堂、またフードバンク等への支援や、政府備蓄米の無償交付などの取組を行っているところです。

 経済的弱者への対策の在り方については、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会等においても現在議論が行われているところでありまして、今後、食料政策全体の中で検討していきたいというふうに考えております。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 次に、学校給食についてお伺いします。

 平時からの食料安定供給、地域農業への理解醸成を図る観点から、学校給食の国産化など、国や地方自治体が一体となって国産畜産物の消費を推進することが重要であると思います。

 また、給食の国産化は食育としての側面からも非常に重要なことであると思いますが、この給食の国産化の現状についてお伺いします。

角田大臣政務官 国産農林水産物を学校給食に使用して、食に関する指導の生きた教材として活用することは、生産者の努力や食に関する感謝の念を育む上でも大変に重要だと考えております。

 文部科学省の調査によれば、令和三年度における学校給食での国産食材の使用割合は、これは金額ベースですけれども、八九%となっておりますが、更に国産食材の活用が促進されるよう、政府の食育推進基本計画において、学校給食における国産食材等を活用した取組を増やすということを目標としております。

 農林水産省では、特に地場産物を学校給食に利用していくため、地産地消コーディネーターの派遣や地場産物を使ったメニューの開発などを支援しておりまして、今後とも、関係省庁と連携して、学校給食での国産や地場産物の利用を積極的に推進してまいります。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 給食の国産化が金額ベースで八九%あり、さらに食育にも力を入れて取り組んでいると聞きまして、大変うれしく思います。

 実は、このことは、先ほど一番に質問いたしました適正な価格形成と密接に関連していると思います。実は、私が教員だということもありまして、農家の皆様から言われることが、小さいときからしっかりと食育に取り組んでもらいたい、そして、先ほど角田政務官からの御答弁にもありました、食育を通して、農家の皆さんが頑張ってくれた農産物を適正な価格で買っていこう、そういった国民意識を醸成してほしいというふうな御要望、これもいろいろなところで言われることでございます。ますます力を入れて取り組んでくださるよう、是非お願いいたします。

 次に、条件不利地域における食料品アクセスへの支援についてお伺いします。

 私が住んでいる高知県は、高齢化、過疎化が全国よりも先んじて進んでおりまして、過疎地域における、特に高齢者の方への食料品の供給が重要な課題となっております。

 一昔前から、民間の方が軽トラック等の移動販売車で山間部等に点在する高齢者のところを回ってくださり、大事な食料品の供給を担ってくださっています。

 また、自治体も全国的に様々な取組を行っており、最近では、自治体が車を出して高齢者の方を乗せ、食料品の買物だけでなく、病院や散髪などのサービスも一緒に行っているともお聞きしました。

 しかし、それらのサービスが始まった頃から、更に加速度的に高齢化が進み、支援のフレーズというか、難しさ、困難さがもう一段上がってきたように感じております。具体的に、過疎化が進み、点在する高齢者の方の人数も減り、民間業者の方の経営が成り立たなくなってきています。地域によってはJA等が行っている地域もあるようですが、現状としては同じ状況だと思います。なかなか難しい問題ではありますが、じゃ、人数が少なくなってきたから、食料アクセスが厳しいから人の多い地域に移り住んでくださいと言っても、一筋縄ではいかないのがこの問題の難しさであります。

 そこで、山間部の過疎地域など条件不利地域における食料アクセスの支援は今後ますます重要となってくると考えますが、大臣の認識についてお伺いいたします。

野村国務大臣 お答えを申し上げます。

 山崎委員のところと私の地元も同じような中山間地で、人口がどんどん減っておりまして、今おっしゃいましたような買物弱者が増えつつございます。したがって、高齢化が都市部に先駆けて進行いたしておりますので、集落機能が低下してきていることは間違いないことでありますので、そうなりますと、食料品などの生活物資の買物に苦労する方が増えてきております。

 そこで、こうした中で、複数の集落で支え合う農村RMO、農村型地域運営組織の形成を推進いたしておりますが、農用地保全活動や農業を核とした経済活動と併せて、生活支援等を行う取組を支援しているところでございます。このほかにも、買物困難者のための買物代行、これもありますし、あるいはJAだとか、あるいは生協さんだとか、あるいは一般のスーパーさんも、購買車をそういったところに回しながら地域の皆さん方にサービスを提供しているというのも、取組事例が現れつつあります。

 こういう形で地域を支え合っていくというのが今取り組まれている状況でございますけれども、いずれにしましても、農水省としては、中山間地においても生産活動と生活活動が持続していけるように、引き続き、必要な支援を検討してまいります。

山崎(正)分科員 ありがとうございます。

 農水省さんのホームページには、全ての国民が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できるようにすることは、国の基本的な責務であるとあります。是非、この食料アクセスの問題を、総務省や国交省など他省庁とも連携した取組の強化をお願いいたします。

 最後に、みどりの食料システム戦略についてお伺いします。

 今、世界がカーボンニュートラルへの取組を加速させています。世界が一つとなって地球温暖化を防ぎつつ、農業の持続的発展を図ることが重要となっています。やはりその中で重要なことは、農業者、事業者、消費者が、それぞれの立場で環境負荷軽減に向けての取組を推進することであり、今回改定の食料・農業・農村基本法の中でも、是非、ここの部分を明記する必要があると思います。

 こういった流れの中で、みどりの食料システム戦略の中での取組がスタートしていますが、この部分において現場の農家の皆さんから聞こえてくるのが、有機農法、有機農法という雰囲気で、有機農法への転換がすごく叫ばれているように感じるが、いきなり有機農法なんて無理だというお声が非常に多く出ております。

 非常に重要な問題であるというのは、もはや農家の皆さんが思っていることでありますが、例えば、昨年は肥料価格高騰対策を契機として、土壌診断が今までにない規模で行われましたが、やはり、まずはそういった身近な、誰もが取り組めることから始めて、それぞれが主体的に化学肥料を減らしたりというふうな取組が行えるよう、段階的に着実に進めていくことが重要だと思いますが、農水省の見解をお伺いします。

角田大臣政務官 みどり戦略の実現に向けて、まずはKPI二〇三〇年目標を達成するため、既存の優れた技術、取組の横展開と持続的な改良を進めていくことが必要であります。

 このため、生産現場においては、地域でモデルとなる意欲的な取組を創出していただくことが重要と考えており、例えば、堆肥への転換によって化学肥料を低減をする、また、病害虫の総合防除による化学農薬の低減、栽培暦の見直しなどについて、地域の自治体、JA、研究機関等が連携して取り組んでいただきたいと考えておりまして、このために、みどりの食料システム戦略推進交付金等を措置をしまして、土壌診断やペレット堆肥を活用した土づくり、化学肥料、化学農薬の低減等に取り組む産地の創出、戦略の実現に必要な技術の開発、普及等に取り組んでいるところです。

 また、個々の生産者や事業者が行う化学肥料、化学農薬の低減等に取り組むための設備投資についても、みどりの食料システム法に基づく税制、融資等の支援措置により後押しをしてまいります。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

鷲尾主査代理 これにて山崎正恭君の質疑は終了いたしました。

 次に、日下正喜君。

日下分科員 公明党の日下正喜でございます。

 私は、広島、中国ブロックが地元でございまして、農水省の関係では初めての質問となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、高病原性鳥インフルエンザについて質問させていただきます。

 今シーズンは、過去最速の十月二十八日に国内一例目が確認されて以来、一月二十九日までの時点で、二十五道県で七十事例発生し、約千二百三十五万羽が殺処分の対象となっており、鶏卵加工業者も含めて経済的な損失も大きく、経営者や従業員の御心痛を考えると、何とかこれまで以上の防疫対策が講じられないものかと思うところです。

 私は、一月に、広島県の三つの鶏舎において計四十三万羽を殺処分せざるを得なかった経営者のお話を伺いました。初めての感染だとのことでございました。十二月二十七日に感染が確認され、埋却、消毒に二十日前後を要し、その後、鶏舎は三か月間そのまま放置し、次に、おとりの鳥を入れ、一か月、感染が見られないことを確認し、県の許可が出て初めて再開できる、十二月の感染から約半年後、順調にいけば五月末頃に再開できるとのことでございました。

 しかし一方、日頃の感染防止対策にも怠りはなく、鶏舎もウィンドーレスで、ネズミや猫などの侵入も防げるもの、鶏舎ごとに担当を決め、鶏舎間の人の行き来も制限し、出入りの際の長靴の消毒、周辺のため池などの水も抜き、渡り鳥対策もしてきたということで、一体どこから感染したのか見当がつかないと嘆かれていました。

 広島県では、他の業者、地域でも被害が出ており、今回、広島県の三分の一に当たる鳥が殺処分になったとのことでございました。

 今回、これだけの被害が全国に広がっており、毎年このような被害に見舞われないか、関係者は不安でたまらないと思います。

 まずお聞きしたいのは、疫学調査チームによる徹底した感染経路の把握、原因の究明についてでございます。

 原因が判明して初めて対処が可能となるわけでございます。農水省として、今後どのような体制で疫学調査を実施していかれるのか、今シーズンの実施状況も含めて、野村大臣にお尋ねしたいと思います。

野村国務大臣 ただいま委員の方からお話がありましたように、去年の暮れから今年にかけましての鳥インフルエンザの、蔓延と言った方がいいと思いますが、先ほどお話ありました二十五県、そして、七十六事例、千四百七十八万羽というとてつもない羽数の殺処分を行ってきたところでございますが、こういったようなことは、これは日本だけではなくて、世界的な今猛威を振るっておりますのが鳥インフルエンザでございまして、したがって、日本でも大変な被害を被りました。

 今お話のありました疫学チームでありますが、発生いたしますと、まず私どもは、その都度、国、都道府県の職員を始め、疫学、それからウイルス、野鳥の専門家を含めた疫学調査チームをそこの農場に必ず派遣をしております。

 対策の仕方としましては、私なりあるいは役所の局長クラスで知事とも直接お話をしながら、そして、対応を的確にやっていただきたいということを申し上げてきておるわけでありますが、その疫学チームの調査結果につきましても、専門家にも報告して、様々な観点から詳細な分析もしていただいておるところでございます。

 実は、先月、一月三十一日の専門家会合におきましては、今シーズンの発生事例に関わる調査結果を踏まえ、引き続き飼養衛生管理を徹底するということがありましたが、特にということで、共同施設を利用する場合は出入口の消毒を徹底しなさい、交差汚染に注意することというのが一つであります。

 それから、今まで初めて指摘されましたのが、ウィンドーレス等々で密閉してあるのにもかかわらず入ってきているというお話もありましたけれども、鶏舎の屋根裏に設置された入気口というのがあるんだそうですが、そこや天井裏などのふだん目が届きにくい場所を点検して、必要に応じて補修をしてくれと。いわゆる天井裏というのは我々も気づかなかったんですが、一月のこの専門家会合においては、こういったところもきちっとやってくれというところも指摘を受けたところでございまして、重要な提言をいただいたというふうに思ってございます。

 今後とも、疫学チームによる調査を適切に実施しながら、専門家からいただいた提言を踏まえながら、そして関係者と危機感を一層共有しながら、発生予防及び蔓延防止に是非取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

日下分科員 ありがとうございます。更なる調査の充実をお願いしたいと思います。来年は、激減した、その対策によってと言われるような、そういう調査、対策を行っていただければというふうに思います。

 次に、半年もの間、鶏舎は稼働できず、その間、社員に対する給料を支払っていかなければなりません。こうした場合、空舎期間の雇用労賃や地代等の固定経費の二分の一を補助する家畜防疫互助基金支援事業が活用できるのだと思いますが、この基金は年二百八十万羽を上限に想定されているとも聞いております。今回のように、全国で想定の五倍、千四百万羽を超える被害が発生した場合、この基金が底をつかないのか心配でございます。

 ここで一点確認させていただきたいことは、固定経費の地代等の中に、鶏舎建設に要した借入金の月々の返済額も含められないものかという点でございます。かなりの負担になっていると伺っております。今シーズンの互助基金についての申請状況や運用の見通しなど、御説明いただければと存じます。

森政府参考人 お答えいたします。

 家畜防疫互助基金支援事業について御質問いただいたところでございます。

 本事業につきましては、経営を再開する場合に、家畜の導入を完了するまでに要します空舎期間の地代や、減価償却費等の固定経費を対象に交付上限単価を設定して生産者の基金を造成をしているということでございまして、御指摘の借入金の返済額については、この算定の対象、あるいは造成の基礎としては含まれていないという状況でございます。

 また、申請状況につきましては、この事業実施主体でございます日本養鶏協会によりますと、今シーズンの発生農場からの申請はまだ受理をしていないという状況でございます。

 今後、今シーズンの鳥インフルエンザの発生に対応しました交付額ですとか、その後も含みます運用の見通しについて、事業実施主体において精査がなされていくものと承知をしておりますが、生産者基金の追加造成の必要性なども含めまして、状況に応じた適切な運用が行われますよう、農水省といたしましても事業実施主体と相談してまいりたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいと思います。

 また、殺処分した家禽に対する手当金である家畜伝染病予防費でございますが、評価額の算定には餌代も含まれると聞いております。昨今の飼料価格や光熱費の高騰もございますので、そうした高騰分についても是非加算していただきたいという要望がございます。この点につきましても御答弁いただければと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 手当金についての御質問ということでございます。

 鳥インフルエンザが発生しました農場に対しましては、家畜伝染病予防法に基づきまして、原則として、殺処分した家禽の評価額の全額が手当金として交付されるということでございます。

 この具体的な評価につきましては、当該家畜の導入時の費用に、患畜、疑似患畜となる直前までに当該家禽の生産に要した費用の実費を積み上げて評価を行うということが一般的でございます。

 そういった意味で、評価額につきましては、実際に要した費用を積み上げているということでございますので、御指摘の飼料価格や光熱費の高騰分についても考慮がなされるという仕組みでございます。

 さらに、経営再開に当たりましては、低利融資、例えば家畜疾病経営維持資金でございますとか農林漁業セーフティネット資金の活用も可能ということでございますので、農水省といたしましては、できる限り円滑に発生農家が経営を再開できるように支援をしてまいりたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。

 日本の鶏卵は、国内自給率も非常に高く、品質については海外からも高評価されていると聞いております。鶏卵の安定供給に向けて、鶏卵業者また養鶏業者を守るためにも、農水省による大所高所からの支援の実施を重ねてお願いしたいと思います。

 あと、鶏卵の価格の高騰につきましても、特に卵を大量に使用する食品加工業者には、経営を圧迫する大変厳しい状況となっております。鶏卵高騰に関しまして、特段の支援策を、関係省庁とも連携し、検討していただきたいと存じますが、農水省の御見解をお伺いしたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 卵につきましては、生産コストの増加に加えまして、鳥インフルエンザによる採卵鶏の殺処分が拡大をしてきたということから、非常に高い価格水準でございます。

 このような中で、長期安定契約の比率が比較的高い家庭消費向けは、現時点で全体として不足しているということではございませんけれども、加工向けにつきましては不足感が出ておりまして、一部の加工業者さんは追加的な輸入の準備を始めていると聞いております。

 こうした状況の中で、生産者団体は、傘下の生産者に安定供給を緊急に呼びかけまして、飼養期間の延長など、供給の増に可能な範囲で取り組んでいただいております。

 委員御指摘の食品製造加工業者に対しましては、原料卵メーカーが行う緊急的な輸入に対して、貿易あるいは検疫手続の円滑化を始めとしたサポートを行いますとともに、鶏卵の価格の高騰によりまして中小事業者が一時的に業績悪化を来した場合の低利融資制度などについて、情報の提供をしていきたいと考えてございます。

 農水省といたしましては、引き続き、最大限の緊張感を持って、鳥インフルエンザの発生予防、蔓延防止に全力で取り組むとともに、卵の需給と価格の動向を見ながら、配合飼料価格高騰に対する対策も含めまして、鶏卵の生産や関連の事業者さんの経営を後押ししていきたいと考えてございます。

日下分科員 ありがとうございます。

 農水省によれば、野生鳥獣による農作物被害は令和三年度が約百五十五億円となっており、被害金額は依然として高い水準にあります。家庭菜園など、特に中山間地域で自給自足されている方々などからは、農作物を作る意欲がそがれ耕作をやめたとの声も聞かれるなど、営農意欲の減退により、数字に表れる以上に、より一層深刻な影響を及ぼしています。

 農作物に害を及ぼす鳥獣の捕獲を更に推進していくべきでございますが、捕獲とともに、ジビエとしての利用も重要なテーマでございます。害獣とされてきた野生生物が、食文化をより豊かにしてくれる食材となり、山間部を活性化させてくれる地域資源ともなり得ます。

 しかしながら、現状では、捕獲したイノシシや鹿のうち、ジビエ食材として活用されたりペットフードに加工されたりするものは約一割程度で、大半は廃棄処分となっています。栄養豊富で滋味あふれるジビエ肉を廃棄することは、命を粗末に扱うことにもなりかねません。

 そこで、まず大事なことの一つは、一般消費者にジビエが安全でおいしい食材であることを知ってもらうことです。

 ジビエ食材の需要拡大に向け、農水省も、モデル地区の整備やセミナーの開催など、様々な取組をされておりますが、環境省も「サステナブルで健康な食生活の提案」の中でジビエを食生活に取り入れることを推奨されています。両省を挙げて取り組まれていることは心強い限りでございますが、その役割分担、連携はどうなっているのか、御説明いただければと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、中山間地域を中心に、農業上の重要な問題となっております鳥獣害を軽減するため、狩猟制度を所管する環境省と連携して、鹿やイノシシなどの捕獲を進めております。また、捕獲しましたこれらの鳥獣を地域の資源として有効活用するため、当省では、食肉処理施設の整備等への支援やジビエのプロモーションの実施などを行っているところでございます。

 環境省においても、ジビエ利活用は、鳥獣の捕獲を進めるに当たりまして、委員御指摘のとおり、いただいた命を無駄にせず有効活用する点でサステーナブルといった理念にも通じることから、ジビエの利用拡大に取り組んでいただいていると認識しております。

 このほか、安全なジビエ供給の観点から、食品衛生を所管する厚生労働省とも連携するなど、当省が中心となりまして、関係省庁と連携しながらジビエの利活用を推進しているところでございます。

日下分科員 ありがとうございます。

 また、イノシシや鹿などの捕獲、処理、そして適切な加工を経て食材、食品流通に乗せていくという一連のシステムの整備が重要だと思います。ジビエ食材の利用を広げるためには、一連の流れの中でボトルネックになっている箇所を洗い出し、そこに手を入れていくことが必要です。

 今後、農水省としていかにしてジビエ食材の流通拡大をしていかれるのか、農林水産大臣のジビエ推進に係る御決意も併せて、御見解をお伺いいたします。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、最近におきましては、このジビエの利用拡大というのが進んでくるようになりました。当初はやはり、なかなか、皆さん方、初めてのイノシシであるとか鹿であるとか、こういうことに対して、田舎の方では、我々はもういつも目にしているような話なんですけれども、目につかない、こういうこともありまして、進んでいなかったんですが、自民党の中にもジビエの推進をする議連ができ上がりまして、藤木先生という、長野の方ですが、これはジビエを、長野県でレストランもやっておられる方で、この方にも来ていただきながらいろいろな話を聞いたわけでありますけれども、なかなかジビエが広がっていかない。

 ただ、やはり品質のいいジビエでないと、ただ捕ったから食べろという話にはなかなかならないものですから、食べ方の問題だとか、あるいは捕った後のさばき方の問題だとか、いろいろなことがありまして、現在はそういったことも、議連の中でも、あるいはまた先進地に行きながら勉強もさせていただいておるところでございますが、捕獲から各段階におきます衛生管理の知識を持つ捕獲者の育成がまず必要だ。まず、どこを撃たなきゃいかぬのかというところもありまして、もうおなかを撃ったらこの獲物は食えないというようなことも我々も聞いておりますが、ですから、どこを撃てばいいのかという捕獲者の育成。

 それから、食肉処理施設への搬入を増やす体制にしないと、いずれにしても、銃につきましては、銃といいますか、動物は山奥におるものですから、なかなか、仕留めたにしても、それから今度は運んでくるのが大変だということで。

 最近はジビエカーなるものもできておりまして、一台か二台だと思うんですけれども、私の知っているので一台しか知らなかったんですが、もう五台になっているそうですが、そういうジビエカー等をそろえながら食肉処理施設への搬入量を増やす方法、それから、衛生管理と流通規格の遵守を承認する制度の普及、こういったことなどを併せながらジビエの普及をしていきたいというふうに思っておりまして、それによって、鳥獣被害の軽減を図っていく、そして、その捕獲鳥獣を資源として有効活用するというジビエの取組についてもなお一層取り組んでまいりたいと思っております。

日下分科員 ありがとうございます。本当に、できるだけ、廃棄処分というか、埋却処分であるのか焼却処分であるのか分かりませんけれども、そういったことが極力減らせるように対策を講じていただければというふうに思います。

 次にお聞きしたいことは、酪農や畜産で出る牛のふん尿が再生可能エネルギーとして注目されているということでございます。

 牛のふん尿は長い間多くの酪農家を悩ませてきましたが、このところ、ふん尿からバイオガスを生産し、燃やして発電に使うという地域が増えていると聞いております。それにとどまらず、今、次世代のエネルギー、水素やメタノールさえも取り出すこともできるといいます。

 中国地方にも千頭単位で酪農を行っている事業者がおりますが、ふん尿による周辺への悪臭被害、また、ある場所では、何らかの処理を行っているとはいえ、酪農、牧畜施設から出るふん尿による水質汚濁。この水質は、市によると、基準値を下回っているため問題はないとされておりますけれども、施設の下流にあり、市民の憩いの公園を流れるその渓流には以前には見られなかった泡が立ち、何とも残念な景色になっております。

 このような規模の酪農施設などでは、積極的にバイオガスプラントの導入を進めてはどうかと思うのでございます。みどりの食料システム戦略等の支援措置などを活用して、事業者にとっても周辺住民にとってもウィン・ウィンの関係になるような施策を行うことができないだろうかと考えております。

 一般論になって恐縮でございますが、農水省のこうした事業者に向けた取組の方向性、また、プラント導入に際しての支援措置などがあれば、具体的に例示していただければと思います。

角田大臣政務官 日下委員御指摘のとおり、家畜排せつ物の処理、これが今大きな課題となっているわけですけれども、この家畜排せつ物をエネルギーとして有効利用するということは、地域の資源循環にも資する重要な取組であると考えております。

 みどりの食料システム戦略においても、エネルギー調達における脱炭素化、環境負荷軽減の推進を図る観点から、地域の未利用資源の一層の活用に取り組むこととしておりまして、このために、農林水産省としては、令和四年度補正予算及び令和五年度予算のみどりの食料システム戦略推進交付金において、家畜排せつ物等の地域資源を活用したバイオガスプラント等の整備を支援してまいりたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。是非進めていただきたいと思います。

 次に、下水汚泥を肥料化する取組について御質問いたします。

 先日、野村大臣の御地元でもある鹿児島高専の取組を学ばせていただきました。

 そもそも、下水汚泥は微生物の集合体であって、我々市民が作り出した安心、安全な農資源である、下水汚泥には微生物由来の窒素が多くカリウムが少ないということ、本来は地域を循環していくはずの資源をイメージの悪さから利活用されていないことはもったいないこと、そういうことから実証研究がなされており、下水処理場から排出される下水汚泥、脱水されたものでございますけれども、それと地域バイオマス、この場合は竹おがくず、米ぬか、焼酎かすを用いて発酵処理し、重金属濃度が低く泥状にならないという顧客ニーズにも合致した新規下水汚泥肥料の開発に成功しております。二〇二一年に肥料登録も完了しております。

 現在、霧島市の茶農家や県、企業の協力の下で実証実験を行い、既存の有機質肥料と同等の収量、品質を得ることができている、また、土壌や茶葉への重金属の蓄積もなく、加えて、地下水への窒素溶脱も少ない結果を得ており、今、本肥料の事業化に向けた取組を検討しているとのことでございました。

 事業化に向けた課題としては、一つには、地域バイオマス、米ぬか、焼酎かすの季節による偏り、また長期保存が難しいこと、二つ目は、下水汚泥は脱水工程で高分子凝集剤が使用されているため有機JAS制度の認定を受けることができない状況になっており、農家からも下水汚泥肥料の有機JAS認定を望む声があること等でございます。

 政府を挙げて肥料や飼料の国産化に乗り出した状況の中で、全国に同様な取組があると思います。このような取組に対し、農水省の広い見地からこれを後押しする手だてはないものかと考える次第でございます。大臣の御所見をお聞かせいただければと存じます。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 言わなくてももう十分御理解いただいておりまして、とにかく肥料原料については海外依存、ほとんど原料は輸入物でございます。

 したがって、一番困りましたのがリンでありました。リンは九〇%を中国から輸入しておりまして、そのリンが止まってしまって慌てましたのが昨年のちょうど今頃の時期ですかね。それで、モロッコからこれの輸入を開始をしまして何とかリンを確保できたんですけれども、ほかの、窒素、リン酸、カリがありますけれども、今お話しの汚泥はリンを一番含んでおるわけでありまして、今、リンを取り出す技術が発達しまして、各地区で、汚泥からリンを抜くといいますか、リンを取り出す、そういった実験なりが進んでおります。

 ですから、そういったことで、国内にある資源をできるだけ活用しようということでやっていただいておりますが、ただ、肥料成分を含有する下水は、処理過程におきまして化学物質を使用することから、これを肥料として使用した農産物は有機JAS制度の認証を受けることができません。

 こういうふうにして役所の答弁には書いてあるんですが、それがどういう形でできないのか、これは、確かに、化学物質を使用するときにはこれはできませんよということですから、なかなかこれは難しいのかなということはありますが、今後いろいろな研究も重ねていかなければいけないというふうには思っておりますが、こうしたことも皆さんの知恵をかりながらやらせていただきたいと思っております。

日下分科員 ありがとうございます。

 副資材の調達、米ぬかとか焼酎かす、貯蔵庫の設置とか、そういったことへのまた助成についてもよろしくお願いしたいというふうに思います。

 最後に、みどりの食料システム戦略には、有機農業の取組拡大や、土壌診断による化学肥料の低減などのグリーンな栽培体系への転換、みどりの食料システム法に基づく堆肥等の生産等を支援するほか、肥料の利用効率の向上等につながる新品種の開発等を支援するとあります。また、各地域の状況に応じて、環境負荷低減と持続的発展に向けた地域ぐるみのモデル的先進地区を創出するとともに、有機農産物の販路拡大、新規需要開拓等を促していくことも述べられています。食の安全、安心を支え、持続可能性を追求する意味においても大変重要な取組だと思います。

 まさにそうした取組を各地で実践されている農業生産者が集うイベントが、二月十八日、三重県尾鷲市にて開かれたと聞いております。残念ながら私は参加できませんでしたが、こうした地域ぐるみのモデル的先進地区の取組は、みどりの食料システム戦略を考える上での参考になるとも思います。

 農水省の担当者の方も、現地に赴かれて、取組について聞き取りも行われていると聞いております。評価など、お聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

鷲尾主査代理 申合せの時間は既に経過しておりますので、政府は答弁は簡潔にお願いを申し上げます。

平形政府参考人 お答えいたします。

 みどりの食料システム戦略の実現に向けては、生産者だけでなく、消費者を含め、国民各層にその趣旨を御理解いただく必要があります。

 委員御指摘の尾鷲市を含む五十五市町村において、有機農業拡大に向けた先進地、いわゆるオーガニックビレッジとして、地域ぐるみで生産から消費まで一貫した取組が実践されているところです。マルシェ、イベント等の開催も行われており、政府としても、それをしっかり支援をし、有機農業を始め、みどりの食料システムの戦略に、より多くの方に触れられ、その理解を深める契機となるよう、これからも努めてまいります。

日下分科員 ありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

鷲尾主査代理 これにて日下正喜君の質疑は終了いたしました。

 次に、岬麻紀さん。

岬分科員 皆様、本日はお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、荒廃農地の対策及び鳥インフルエンザについて御質問させていただきます。

 まずは、通告の順番を変えまして、鳥インフルエンザの方から進めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、昨年十二月八日、農林水産委員会におきまして、私の地元である愛知県豊橋市の十二月五日と十二月八日に発生しました鳥インフルエンザの発生につきまして、緊急で質問をさせていただきました。それから二か月以上経過をするわけですが、鳥インフルエンザの感染拡大は止まりません。今では動物園でも感染が拡大しておりまして、やむなく休園している動物園もございます。

 今シーズンは、昨年の十月二十八日に一例目が発生し、それ以来、令和五年二月十五日九時現在で二十五道県、七十六事例が発生しています。約一千四百七十八万羽が殺処分をされてしまいました。ワンシーズンとしては、過去最大の記録となってしまいました。

 そこで、伴いまして、卵のことについて注目をしております。

 農水省が毎月公表しております食品価格動向調査によりますと、卵の全国平均小売価格は、昨年の十一月から上昇を続けまして、今でも上昇が続いております。JA全農たまごによりますと、卵の卸売価格の目安とされている東京区のMサイズ一キログラム当たりの価格は二月十六日に三百三十五円を記録しました。これは統計が公表されている一九九三年以降、最も高くなっているわけです。去年の二月の百七十五円から比べても平均価格は二倍近くになり、先月の平均価格は、五十五円、一気に高まっております。

 近年では、買物をするときに、通常のスーパーマーケットだけではなく、高齢者の方もネットスーパーを利用されている方が増えてきました。そこから、私の支援者さんからもお声をいただいておりまして、ネットスーパーで卵を買おうとしましたら、白玉、赤玉など、これまでは種類が選べたのに、今はもう限定されてしまっている、さらに、一パックは二百九十八円、これは税込みにしますと三百円を超える価格となっているということで、こんなに高い卵ってどうなのかしら、そんな懸念をいただいているわけです。

 また、消費者だけではなく、卵を使う飲食店にも影響は深刻です。レストランやコンビニエンスストアなど、卵を使った商品の販売が一時休止になっていたり、また、私の地元では、駅前の中華料理屋さんでは天津飯が発売されなくなっていたり、さらには、愛知県でチェーン店をされている喫茶店なんかでは、お客様へというようなチラシも配付されておりました。これは、鳥インフルエンザの拡大に伴って、卵を使用した商品が一時提供ができないというものでございます。

 こういった状況におきまして、昨年十二月に私が質問をさせていただきました。鳥インフルエンザの感染拡大による鳥肉、また鶏卵の価格の影響ということで伺いましたところ、野中副大臣からは、現時点での流通段階での不足感は生じていないと聞いている、最近の価格上昇は、必ずしも鳥インフルエンザ発生の結果であるとは考えていないという御答弁をいただきました。しかし、今となっては、鶏卵の需要と供給のバランスが崩れていて、鳥インフルエンザの感染拡大による価格の影響であると言わざるを得ません。

 今後の卵の価格の見通しなど、現状、どのような把握で、どのような見通しをお立てになっているでしょうか。まずは教えてください。

    〔鷲尾主査代理退席、主査着席〕

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、鶏卵の価格でございますが、非常に高い水準となってございます。今御指摘の全農たまご東京Mサイズでございますが、二月二十日、キロ当たり三百三十五円ということで、御指摘のとおりでございます。

 これは、平年、過去五年間の二月の平均値が百七十七円であるのに比べますと、平年比ですと一八九%、また、委員おっしゃいました前年同月の月平均は百七十五円でございますが、これに比べますと一九一%というのが鶏卵の今の卸売価格の状況でございます。

 この主な要因でございますけれども、一つには、飼料価格の高騰などで生産コストが増加しているというようなことが一つございますし、また、委員御指摘のとおり、鳥インフルエンザによる採卵鶏の殺処分羽数が過去最多の千三百六十二万羽ということで、国内全体の採卵鶏の飼養羽数の約一割まで拡大しているということもあるということでございます。

 このような中で、家庭消費向けの鶏卵につきましては、長期安定契約の比率が比較的高いものでございまして、地域によっては、もちろん、特定の銘柄が入らなくなって不足をするとかいう結果、ほかの銘柄で代替しているといった例はございますが、家庭消費向けにつきまして、現時点で全体として不足しているかというと、そういうことではないようでございます。パック卵の店頭での一月の小売価格は平年比で一一三%ということで、卸売価格の上昇に比べると、小売の方はある程度限定的でございます。

 ただ、一方、委員御指摘のとおり、加工向けの鶏卵につきましては不足感が出ておりまして、一部の業者さんは追加的な輸入の準備を始めていると聞いております。

 こうした状況を踏まえまして、日本養鶏協会、生産者団体でございますけれども、傘下の生産者に対しまして安定供給を緊急に呼びかけまして、生産者におきましては、飼養期間を延長するといったような、供給増に可能な範囲で取り組んでいただいているというふうに承知をしています。

 今後、卵の価格がどうなるかというのはなかなか予断を持って判断するのは難しゅうございますけれども、農水省といたしましては、引き続き鶏卵の需給と価格の動向を注視しながら、例えば配合飼料価格高騰に対する対策などをやってまいりまして、そういった対策も含めて、鶏卵の生産というものを後押しをしていきたいというふうに考えてございます。

岬分科員 ありがとうございます。

 一日も早く収束をすることを願いますけれども、たとえ収束をしても、養鶏場によっては、すぐに復活ができなかったりですとか、元どおりには戻らないという、一定の期間もかかるかと思います。

 野村農水大臣は、一月の九日に、農水省内での防疫対策本部におきまして、非常に強い危機意識を持った対応が必要だと述べられています。全国の農家に対して、徹底した衛生の管理を行うようにと求められました。

 殺処分を余儀なくされた方々の心痛、そして殺処分に実際に御尽力をされた皆様方の心の負担などもケアが必要なのではないかとも考えております。

 生産を円滑に回復できるように、国としてもしっかりと後押しをしていただきたいのはもちろんですけれども、今後の清浄化の見込みを含めまして、大臣の見解はいかがでしょうか。

野村国務大臣 私は確かにこの一月にはメッセージを発しました。といいますのが、やはりこの頃、だんだんだんだん鳥インフルの感染が拡大していったものですから、これは大変なことになるよということを省内でも議論しまして、全体的に、鳥を飼っておられる方々あるいはそれに関係する方々に警鐘を鳴らさないと、卵が不足してくる事態になってくるということを思ったものですからやったわけでありますが、しかし、それにもかかわらず、どんどん拡大をいたしまして、先ほど委員おっしゃいましたようなことで、一千四百七十八万羽の殺処分になりました。

 それで、私は毎週二回、火曜日と金曜日に記者会見しているんですが、十二月に卵が三百円を超えていたので、卵の値段はどうなりますかと言われたときに、大体年末に上がって、大体一月を越すと下がりますという話をしましたら、案の定、一月になったら二百六十円に下がったんです。一旦下がったんです、三百円が。しかしながら、今度は感染で殺処分が多くなってきたものですから、やはりそれだけ、なかなか卵を産む鳥が少なくなったということで品薄感が出てきて、それで上がりました。先ほどありましたように、三百円を超えるような価格が今出ておるわけであります。

 しかし、これは今だんだんだんだん収束に向かっておるような感じを受けているんですが、またうそを言ったと言われるといかぬので。

 鳥インフルは、暖かくなってくれば少し収まってきます。そうしますと、今までかかったところは、消毒をしたりして、空舎期間を空けて、そしてひなを入れていきますから、そうしますと、大体、今私が言っているのは、あと六か月ぐらいお待ちください、そうしますと新しい鳥が新しい卵を産み出しますのでということを申し上げているんですが、それにしてもなかなか、六か月間という期間、これは消費者の皆さんにも、それから流通業者の皆さん、販売業者の皆さん方にも大変迷惑をかけていると思います。

 ただ、スーパーとかそういうところでは卵が品切れになったということはまだ出ておりませんので、加工メーカーの方々、特に、先般、食品業界の皆さん方の総会に行きましたら、マヨネーズの社長なんかが、とにかく卵を何とかしてくれというお話はいただいておりますけれども、それは輸入で賄ったりとかいろいろな形で対応してくださいよということは今申し上げているところです。

 いずれにしても、この鳥インフルを収めないとこれはもうどうしようもないことであります。どうしようもないと言っては失礼ですけれども、早く収めて、そして早く農家の皆さん方にも営農を再開していただきたい、こう思っているところです。

岬分科員 ありがとうございます。

 是非、国民の、家庭の大事な食でございますので、しっかりと回復をすることを願っております。引き続きよろしくお願いいたします。

 それでは、続きまして、荒廃農地対策について伺いたく存じます。

 我が国では、農業者の減少、また荒廃農地の拡大が加速しております。地域の農地が適切に利用されなくなるということが大変懸念をされるわけです。

 農業就業者の五割以上は六十歳以上という、いわゆる高齢化に伴って、体力的なものもありまして、リタイアをされる方が増えております。農地など経営資源ですとか、また農業技術が適切に承継されないという例も多く見られるようになっています。そのような背景の下、農地減少が続き、また、荒廃農地の面積は横ばい傾向となっていますが、いずれも改善の兆しはなかなか見られません。

 そこで、平成二十六年には農地中間管理機構、いわゆる農地バンクが発足しています。これは農地の集積、集約化を実現するための取組というふうに伺っておりますが、農林水産省の担い手への農地の集積率については、農地バンク発足前の平成二十五年度四八・七%から、来年度の令和五年度には八〇%に引き上げる目標を設定されています。

 しかし、この来年の八〇%という目標なんですが、かなり厳しいのではないかなという印象を持っています。令和三年度の末には、この集積率は五八・九%にとどまっております。

 背景の理由を考えますと、分散している農地であるとか、また地形的な条件が不利な部分、そういった農地で引受けが進んでいないのではないかと考えられますけれども、全国平均を見ますと五八・九%ということです。

 私の地元である愛知県を見ますと、全国の平均五八・九%に対しまして四一%、約二〇ポイントも低い集積率になっております。これがまさに都市農業の課題ではないのかと考えられます。

 こうした状況を踏まえまして、農地中間管理機構、農地バンクのこれまでの取組及び来年度の目標であるという八〇%、農水省の現状認識、どのようにお考えでしょうか。教えてください。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の方から数字、御紹介ございましたけれども、令和五年度までに全農地の八割を担い手に集積するという目標に対して、令和三年度では五八・九%ということになっております。年々増加はしておりますけれども、現状、そういった数字になっているということでございます。

 農地バンクが創設されました平成二十六年度以降、農地集積面積は、令和三年度末で二百五十六万ヘクタールとなっております。農地バンク創設前の平成二十五年度末に比べまして、約三十五万二千ヘクタール増加をしているという状況でございます。

 このうち、農地バンクによる集積面積は約十五万七千ヘクタール、増加面積全体の四割強を占めている、そういった状況にございます。また、年々、担い手への農地集積面積に占める農地バンクの割合は増加傾向にあるということで御理解をいただければと思います。

 一方、令和五年度までとなっております八割集積目標に向けては、農地が分散している状況を改善して、農地を引き受けやすくしていくことが重要であるというふうに考えております。

 このため、昨年五月に成立をいたしました一部改正法による改正後の農業経営基盤強化促進法では、人・農地プランを地域計画として法定化し、将来の農地利用の姿を目標地図として明確化した上で、目標地図に位置づけられた受け手に対し、農地バンクの活用により農地の集約化等を進めていくこととしております。

岬分科員 ありがとうございます。

 政府は、人・農地プランの取組も支援をされてまいりました。昨年の、令和四年の通常国会におきまして、農業経営基盤強化促進法の改正法が成立をしております。これは、これまでの人・農地プランを地域計画として法定化したものです。

 地元の関係者の声を聞いておりますと、農地バンクがきちんと機能していくのかという心配はかなりあるようでございます。人・農地プランの、地域計画として法定化はされましたけれども、その策定、実行に向けた取組が始まりまして、今後、農地バンクがこれまで抱えていた課題が本当にきちんと解決をされるのか、また、この新たなプランがきちんと機能していくのかという心配がありますが、そこはいかがでしょうか。

野中副大臣 今委員からもございましたとおり、改正基盤法で、地域の話合いによって未来像をちゃんと目標計画として描き、そして、それを実現するために、多くの受け手を受け入れつつ、かつ集約化を図っていくということになります。

 集約化の一つとしまして、現行の農地バンクの農用地利用配分計画、そしてまた、市町村による農用地利用集積計画、これを農地バンクが作成する農用地利用集積等促進計画に統合一元化をすることとします。これらをすることによりまして、農地バンクが有する機能、分散している農地をまとめて受け入れて、そして一団、大きな形として受け手に出すという機能を利用して、大きな固まりで集約化を図ってまいりたいというふうに思っております。

 それでまた、その集約化の取組の後押しでありますけれども、農家負担ゼロの基盤整備について、従来の区画整理に加え、新たな、農業水利施設等の整備を加えます。また、機構集積協力金については、農地バンクが貸し付けた農地の集約化割合に応じて集約化奨励金を交付することとしまして、これらのメリット措置として取組を後押ししてまいりたいというふうに思っております。

岬分科員 ありがとうございます。

 いろいろと試みをされている、支援をされているというのは十分に理解ができます。

 さらに、各地域の市町村が地域計画を策定しまして、各都道府県単位での取組が行われている。そうすると、多様な地域の実情を踏まえた丁寧な対応が必要になります。

 そこで、現地コーディネーターという方々を増員するというふうにも伺っておりますけれども、この現地コーディネーターとはそもそもどんな方なのか、またどんなことを担われるのかという疑問があります。現地の状況や実情がしっかりとお分かりになっている方なのか、地域のそれぞれの特色ですとか実情が把握できていない方が現地コーディネーターになられても、また弊害が出てくるのではないかという心配がありますが、その辺りはいかがでしょうか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 農地バンクの現地コーディネーターは、農地バンクを活用した農地の貸借を推進するため、都道府県庁あるいは都道府県の農協中央会職員のOB等を配置をしておりまして、令和四年度時点で全国で約七百名となっております。

 令和五年度予算案におきましても引き続き増員に必要な予算を計上しており、農地バンクに対して、地域の実情に詳しい普及指導員ですとか、あるいは農協の営農指導員のOB、集落の代表者等の農地や地域農業に精通した人材にまで募集の範囲を広げてその確保をお願いしているところであります。

 今後、目標地図の実現に向けて、現地コーディネーターについて、農家負担ゼロの基盤整備の実施に向けた土地改良区との実施区域の調整や、受け手が不足する地域における中山間地域等直接支払いの活動組織が行う農作業受託の調整、さらには、農地バンクによる遊休農地解消に向けた関係者との調整等の活動を推進してまいりたいと考えております。

岬分科員 ありがとうございます。

 いずれにしても、当事者である地域の方々が一番詳しくて、一番課題意識をお持ちだと思いますので、JAのOBの方ですとか、いろいろと精通されている方というのは分かりましたけれども、今は人手不足というのも叫ばれていますので、適材適所にきちんと配置をしていただけるように改めてお願いをしたく存じます。

 次です。

 農業委員会は、農業者の意向等の情報を勘案して目標地図の素案を作成されていくというふうに今伺っております。これを、農地関係情報を一筆ごとに表示できるデジタル地図というのを用いるということで、eMAFF地図と言っているということを知りました。

 このeMAFF地図、農業委員会で、出し手、受け手の情報は、様々な状況ですとか情報のやり取りを一括してできるタブレットでやっていこうということだと思うんですが、このeMAFF地図、従来から市町村の農業委員会が整備している農地台帳というものもデータをひもづけをして一元管理をされるということですが、これは膨大な量であり、これをきちんと使える、活用できるものに作成するのにはそれ相応の労力や時間がかかると思われますが、整備状況がどうなのかということが一点。

 そして、農業委員会の方々、高齢の方も多いと伺っておりますので、タブレットの操作であったりとか、そういったものに抵抗感がある方、このeMAFF地図のデータ分析をうまく活用ができるのかといった心配がございますが、その辺り、支援をされるということですが、どのように進んでいるのか、教えてください。

菅家政府参考人 お答え申し上げます。

 委員ただいま御指摘ございましたように、現在、eMAFF地図の整備を進めているところでございますけれども、これによる農地関連業務の抜本的効率化を実現するためには、農地台帳を始めとする農地情報とそれから地理情報のひもづけ、これが大変大切になってくるところでございます。

 現在、全国の自治体を対象としまして、令和四年度より本格的な作業を進めているところでございますので、引き続きこの完成に向けて注力をしてまいりたいというふうに考えております。

 二点目の御質問のタブレットの関係でございますけれども、農業委員会の方で目標地図を作成するに当たりましては、高齢な農業委員などの方々もタブレットを活用することになるわけでございますけれども、こういった方々におかれましても円滑にタブレットの操作というのができますように、まず、タブレット上の調査項目は国が統一的に定める。それから、タブレットの入力画面は、選択ボタンを押すだけで次の画面に移行するタッチパネル方式を、非常に使い勝手がいいようにタッチパネル方式を採用する。それから、都道府県農業会議において、タブレットの使用方法につきまして、農業委員会に対する研修や、巡回による操作指導をデモ環境で現在行っているところでございまして、こういった取組をしっかり推進していきたいと考えております。

岬分科員 ありがとうございます。

 いずれにしても、支援することが目的になってしまっては意味がございませんので、しっかりと実際の地域に浸透して、そして皆様が均一に活用ができるように、是非とも進めていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

 それでは、次に、今日は農地バンク、農地委員会の質問をさせていただきましたけれども、何とも接点を見出せないという農家の方ですとか高齢者の方も実際にいらっしゃいます。そうした方は、これから農業はリタイアするけれども、この農地をどうしたらいいのか困ってしまった、そして、もう今となっては草がぼうぼうであったり荒れ地になってしまったりということで、手のつけようがないというように、困っていらっしゃる方も多くいます。

 実際に、私の名古屋市中川区という場所は、まだまだ農業をされていて、これから後継ぎがいないであるとか、もうやめたい、そういったお声もあるわけですね。農地を持っているけれども耕すことができない、売ろうと思ってもなかなか買っていただける方もいないし、そのまま置いておいても困る、どうしていいか分からないという声が非常に多く相談として寄せられています。

 これは名古屋だけではなくて、多くの都市地域において、以前は農業をやっていたという方々の共通の問題だと思います。実際、こうした声というのは大臣に届いていますでしょうか。そこも心配となるわけですけれども、踏まえて大臣のお考えをお聞かせいただけますか。

野村国務大臣 岬委員と違いまして、私は本当に中山間地の田舎も田舎育ちでございますので、十分その声はありまして、実は、私も農地を持っておりまして、つい最近、地元の方から電話がかかってきまして、野村、おまえの土地を何とか貸してくれないかという。それは中山間地で非常に狭い土地だったんです、農地だったんですけれども、それが一面になりまして、すぐに借り手がつきました。

 そのぐらい、自分の土地というか農地でありながら、どうすればいいかというやはり疑問というのは出てくるんですが、みんなが話をしていけば、誰かリーダーが、ここは俺に任せろとか、ここはあの人に任せようじゃないかという話合いの結果が出てくるので、今進めております人・農地プランの話合い活動を是非進めていけば、そういった問題は私はなくなっていくと思います。

 だから、これからの農地の集積なりあるいは集落の機能というのは、話合いから始まる、そして、ここの農地をどうするかというところから始めていけば必ずや答えは出てくる、こういうふうに思っております。

岬分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。

 あと、一点、大変困っていることがあります。それは、農業振興地域というものがございまして、これは私の選挙区である名古屋市中川区でよく寄せられていますが、一部の地域が農業振興地域に指定をされておりまして、農用地では農地転用が禁止されているために、農用地がそのまま放置されている状況が多々ございます。農用地がまとまった土地ではなくて、個人所有の、点在をしている状況でありまして、なかなか前に進まないんですね。農用地区域から除外をしようと思っても、要件が厳しくて実際にはできない。そのような前例がないので、更にハードルが高まってしまっているということなんです。

 これからは、時代に応じて農用地を更に活用していく、ほかの用途でも使えるようにしていく必要もあると思いますが、これはまた農水省とともに議論を進めてまいりたいと思いますけれども、世代交代の中からこういった問題がございます。これはまさに、農業振興地域の整備に関する法律、昭和四十四年に制定されておりますので、五十年以上そのままで、今まさに世代交代があるという問題があります。その辺りは、大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

村井政府参考人 お答えをいたします。

 担当局が参っておりませんで、農地の関連ということで、農地制度を所管しております私の方からお答えをさせていただきますけれども、各地域のそれぞれの状況に応じて、大変、農地をめぐっていろいろな問題が発生してきているというのは我々も重々承知をしておりますけれども、一方で、食料安全保障が課題となっている中で優良農地をいかに確保していくか、こういった視点も極めて重要であるというふうに考えております。

 我々の立場といたしましては、優良農地をしっかりと確保して、それをきちんと適正に、総合的に利用していく、そういった視点から、引き続き農地制度については検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

岬分科員 時間いっぱいまでお答えいただいてありがとうございます。

 是非、次回、農業振興地域についての取組をまた議論させていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

堀井主査 これにて岬麻紀さんの質疑は終了いたしました。

 次に、平沼正二郎君。

平沼分科員 自由民主党の平沼正二郎でございます。

 本日は質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私の地元でございますけれども、十増十減で旧岡山三区というところになりましたけれども、ここは五市七町二村ありまして、大変広い地域でございます。しかも、そのほとんどが中山間地域でございまして、かつ、多くが過疎地域でございます。当然ながら第一次産業がメインでございまして、この地域の発展には、農林水産業をいかに持続させ、また活性化させることが重要なわけでございます。私も、農は国の基であるという認識を持って日々活動させていただいております。

 しかしながら、現実的には、飼料、肥料価格の高騰、そしてエネルギーコストの上昇など厳しい状況が続いておりまして、大変苦境が続いております。特に、今話題にもなっておりますけれども、酪農に関しては大変深刻な状況で、特に私の地域においては家族経営の酪農家も大変多くて、現在の状況に陥る以前から、休みもなく毎日働き、それでも何とか家族を養って経営を維持しているという状況でございました。

 私の知人の息子さんも、親戚の酪農経営を手伝っており、精力的に働いて、将来的にはその牧場を引き継ぐということを目標に頑張っておられましたけれども、ところが、今回の酪農の苦境で牧場を閉鎖せざるを得なくなってしまい、彼も牧場を引き継ぐことができなくなってしまいました。せっかく若い担い手がやる気を出して酪農に携わるチャンスがあったわけでございますけれども、非常にもったいないなという結果になってしまったわけでございます。このようなケースは今後ますます増えるのではないかなと、私も危惧をしております。

 例えば、岡山県のある組合においては百六十五軒の酪農家がおりますけれども、そのうち二十軒ほどは、今、政策金融公庫から融資を受けている状態で、借金がかさんで、先行きが非常に不透明な状況でもございます。

 今、政府が取られている今後の酪農対策に関しての見解をお伺いさせていただけますでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 酪農経営でございますが、配合飼料価格の高騰に加えまして、ぬれ子などの価格の低落によりまして厳しい経営環境にあると承知をしてございます。

 その中で、新型コロナの影響を受けました需給緩和を改善をして、経営の安定を図るために、酪農家の皆さんが苦渋の決断で生産抑制に取り組んでいることも承知をしてございます。

 国におきましては、まず、やはり生乳の需給ギャップの解消が重要と考えております。生産者と乳業が協調して行う在庫低減対策ですとか、あるいは業界とともに行う消費拡大の取組の推進、生産者の生産抑制の取組への支援、また、実質無利子無担保による金融支援など、これまで必要な対策を講じてきたところでございます。

 また、乳価につきましては、乳業メーカーと生産者団体との間の交渉で決まるものでございますが、昨年十一月には飲用向け、本年四月からは乳製品向けの乳価がそれぞれ十円引上げとなったところでございます。また、加工原料乳生産者補給金も、本年四月から四十九銭の引上げということでございます。

 さらに、一部の生産者団体におきましては、飲用向け乳価の更なる引上げに向けて、乳業メーカーとの交渉を開始されたとも聞いております。

 今後とも、酪農経営の安定のために、生乳需給の改善を図りまして、コストの増加が価格に適正に反映できるような環境を整備していきたいというふうに考えてございます。

平沼分科員 ありがとうございます。

 需給ギャップの解消、引き続きやっていただければと思いますし、あと、自助努力もされている方も私の地元にいらっしゃいまして、かねてから飼料価格という部分がやはりすごくネックになっているのかなと思っております。

 私の地元でも、若手が輸入粗飼料への依存を減らそうとして、自前でトウモロコシの生産等を行って国産粗飼料生産に取り組んでいるところもございます。また、若手の酪農家や農家の方々が手を組んでアライアンス組織をつくって、様々な課題の解決に取り組んでいただいているということもしております。耕作放棄地の整備を請け負って、そこでトウモロコシを作ったり、また、先ほど述べた国産粗飼料生産にも同じく取り組んでおります。また、地域と連携して農地の整理を手伝ったり、幅広いような活動もしております。

 こういった組織もございますので、是非、政府の支援に関しての検討も引き続きよろしくお願いを申し上げる次第でございます。

 次に、鳥獣被害対応についてお伺いをいたします。

 私の地元における鳥獣被害は大変深刻な状況でございまして、鹿、イノシシ、熊、猿、ヌートリア、アナグマ、カラスなど、集落によっては確実に人口よりイノシシや鹿の方が多いんじゃないかなというような地域もあるように思います。

 ある集落で、鹿や熊よけの高い柵を設置しておりますけれども、それこそ、もう家の周りをぐるっと柵が囲っておりまして、まるで人間がおりの中で生活しているのではないかというようなところもございます。

 そもそも、中山間地域で収量も多くなく、かつ、斜面地における草刈りも非常に大変な場所において、せっかく育てた農作物が被害に遭うというのは大変悲惨な状況でございまして、現在も様々な補助をいただいて、先ほど申し上げたような柵や、また電柵の整備なども行っておりますけれども、なかなか苦労しているというのも実情でございます。

 また、ある集落においては、以前に鳥獣被害防止総合政策交付金を使用して柵の整備を行ったんですけれども、年数が経過して、やはりイノシシの侵入経路とかがちょっと変わってきちゃいまして、今まで被害を受けていなかった田畑も被害を受けるというようなことも出ておりまして、これは再整備の必要性等も出てきております。

 このような整備見直しについての対応状況に関して教えてください。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、野生鳥獣による農作物被害防止のため、鳥獣被害防止総合対策交付金によりまして、侵入防止柵の整備等の支援を行っております。

 この中で、被害の拡大を防止する観点から、鳥獣の生息域や被害状況の変化によりまして侵入経路が変わった場合には、既存の柵の一部を有効活用しつつ新たな柵を追加する再編整備の取組についても支援可能としているところでございます。

 一方、耐用年数に達しておらず受益地が重複する場合には二重投資になる等の問題がございますので、再編整備の支援ができない場合があることも事実でございます。

 農林水産省としましては、予算の適正な執行を図りながら、地域の実情に応じた侵入防止柵の整備など鳥獣被害の対策を支援してまいりたいと考えております。

平沼分科員 ありがとうございます。

 再整備のこともできるというお話でございまして、実は、私が、再整備をしてほしいということで相談を受けたときに、最初は、地元の農政局の方では、なかなか難しいんじゃないかというお話もいただいて、改めて農水省の方もきっちり見てきていただいて、こういう方法だったらできるよという御提案もいただいて、今進めております。そういったところも、ちょっとギャップがある部分もあったりもするので、引き続き、こういう再認識というのも図っていただければなと思っております。

 また、なぜ鳥獣が集落に出てくるかということを考えると、やはり、元々すみかだった山とか森が彼らの住居として適さなくなってきているような状況もあるのではないかなと思っております。出てくる鳥獣の対策ももちろん必要ですけれども、やはり本来あるべき自然との共存も含めた多角的観点での対策も、林野庁、環境省含め、関係省庁と連携して取り組んでいただければ幸いでございます。

 続きまして、スマート農業と有機農業の地元の取組に関して質問させていただきます。

 現在、政府においては、農業人口の低下や高年齢化などから、より効率性の高いスマート農林水産業に力を入れていることと承知をしております。また、それと同時に、環境負荷軽減の観点及びオーガニック市場活性化も視野に入れて、有機農業の生産強化にも努めていただいていることと思います。

 みどりの食料システム戦略においても、環境耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を二五%、百万ヘクタールに拡大という目標も書かれております。

 そのような状況下の中、スマート農業と有機農業、この二つを同時に実現しようとしているという取組が私の地元で行われておりまして、これは、地元の高校生が地元の企業とコラボレーションしておりまして、お米の有機栽培の実験を行っております。しかも、その農法にスマート農業の仕組みを入れておりまして、自動操舵システムによる多数回中耕除草という試みを行っております。

 聞き慣れないかと思いますけれども、この多数回中耕除草というのは、江戸時代に確立されていた、田植後四十五日の間に六回ほど田んぼの中をかき回すというもので、効果としては雑草が生えにくくなったり収量も増えるというようなことが、これは江戸時代の農書に書かれているそうでございます。

 それを現代の技術で、かき回す作業を自動化、田植機に中耕除草機を設置して、自動操舵システムでこれを運行させるということをしております。まさに温故知新の発想でやっておりまして、農業経験がほとんどない高校生たちが、実際に肥料も農薬も使わないで収穫まで行い、実験データを公表しております。

 結果を見ると、なかなか安定的な収量も確保できそうな結果も出てきておりまして、非常によい取組であるなと私も思っておりますけれども、このような地域一体となったスマート農業そして有機農業促進の取組に対して、今の支援はどうなっているか、教えていただけますでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業の推進に当たりましては、農業者のみならず、自治体や機械メーカーなどサービス事業体、また流通加工事業者、それから先生御紹介のございました高校、大学、試験場など、地域の様々な関係者が参加をして取組をしていただくことが重要と考えております。

 このため、農林水産省では、有機農業の拡大に向けて、地域ぐるみで生産から消費まで一貫した取組を行う市町村に対して支援を行っておりますが、この中で、関係者が連携して新しい技術や品目を地域に導入する取組についても対象としております。

 また、地域の関係者が連携して、それぞれの産地に適した、環境に優しい栽培技術と省力化に資する先端技術を取り入れた技術の検証、検証に必要なスマート農業機械の導入等についても支援を行うこととしております。

 このような事業を通じて、先生おっしゃるように、地域に即した有機農業の拡大、これを着実に進めていきたいと考えております。

平沼分科員 ありがとうございます。

 私の地域ではたまたま、農業機械を造っている会社と、地元でいろいろなイノベーションに取り組んでいる企業、そして農業の関係者の皆様が一体となってできたという好事例でもあると思いますけれども、ほかの地域でも展開できるような要素も含んでいるかなと思っておりますので、是非ともその辺りも知見を広げていただければなと思っております。

 そして、今回の取組は、農業手法だけではなくて、高校生という将来の担い手にもなり得る若者たちが食育そして農業に触れてもらえるという側面も持っておりますので、まさに、現代における農業課題の解決に向けて、大きな一つのヒントになるものであると思っております。引き続き、御支援と取組をよろしくお願いいたします。

 先ほど来から、中山間地域に関しての酪農、鳥獣被害対応など質問させていただきましたけれども、農業、特に米に関してでございますけれども、これは、高齢化も進み、立地条件の不利などもあり、限界を迎えつつあります。特にお米の価格が一昔前より下落しておりまして、大変苦境が続いております。何とか先祖伝来の土地を守ろうと踏ん張っていただいておりますけれども、なかなか中山間という特性上、圃場整備も難しくて、生産効率性の確保もどうしても難しい地域も多くあるのが私の地元の現状です。

 ある私の地元の兼業農家の方なんかですと、会社から得た給与やボーナスなどから農業に持ち出しをして、何とか農地を維持しております。しかしながら、持ち出しというのも限界もありますし、今後の継続も不透明な状況でございます。

 このように、中山間地域における農業は、平地と違って苦労も多くて、通常より支援を厚めに行う必要性もあるのではないかなと私は思っておりますけれども、現状の中山間地農業への支援に関して教えていただけますでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 委員から御指摘ございましたように、中山間地域においては、特に稲作をされている兼業農家の皆さんなどでは、収益性がそれほど高くない中で、機械の装備などに他産業からの収入を充てて営農していただいていることもあると承知しております。

 中山間地域は、我が国の農業産出額全体の約四割を占めるなど、食料の供給基地としても重要な地域であり、これまでも、日本型直接支払制度による生産活動の下支え、中山間地農業ルネッサンス事業による基盤整備、施設整備等への優遇措置、中山間地域農業農村総合整備事業による農業生産基盤と農村生活環境の一体的な整備の推進等により、中山間地域に支援を行ってきたところでございます。

 また、今後、人口減少が見込まれる中で、中山間地域に対しては、複数の集落協定や自治会などが連携し、営農や生活を支える農村RMOの形成を推進するほか、粗放的利用を含めた農地利用に必要な基盤整備等に取り組むための最適土地利用総合対策の推進、デジタル技術を活用した収益力向上、販売力強化、生活支援等の取組に対する支援の強化等によりまして、中山間地域の方々の農地を守り、暮らしを支える支援を行ってまいりたいと考えております。

平沼分科員 ありがとうございます。

 いろいろと対策を打っていただいておりまして、やはり不利地という部分もありますので、引き続き、手厚い対策というのを中山間に関しては取り組んでいただければ大変助かります。

 また、この中山間地農地維持効果の中で重要なものの一つが、やはり私は治水の管理であるかなと思っております。山からの水が農地に入ることによって適切に循環し保全される、まさに日本の原風景の保全こそが治水につながって、河川の氾濫を軽減するなど安全の確保にもつながっております。生産の効率性だけでなくて、こういった観点からも、中山間地における農地保全に引き続き取組をいただくようにお願いを申し上げます。

 次に、輸出に関してお伺いをいたします。

 現在、日本の農林水産物・食品の輸出が好調でございまして、二〇二二年の一月から十二月の輸出額も一兆四千百四十八億円を記録して、前年比一四・三%プラスということで、過去最高を記録したと聞いております。

 輸出の拡大を行うことがやはり食料安全保障にもつながると私は認識をしておりますけれども、やはりオール・ジャパンの戦略で海外への売り込みを行う必要があると思っております。例えば、海外においては、オージービーフだったりシャンパンだったり、成功している事例がたくさんございます。私の岡山県においてはシャインマスカットや白桃などがありますけれども、やはり国としてブランド化に力を入れて取り組む必要があると思っておりますけれども、その辺りの戦略に関してお伺いをいたします。

水野政府参考人 お答えいたします。

 輸出拡大に向けましては、委員御指摘のとおり、日本の強みを発揮できる品目についてブランド化し、他国産との差別化を図っていくことが必要でございます。

 このため、昨年、輸出促進法を改正し、オール・ジャパンで輸出促進に取り組む団体を品目ごとに認定する制度を創設したところであり、例えば、青果物については、認定団体が日本産果実マークの普及等により日本産青果物のブランド化を推進しているところでございます。

 また、ブランド化の推進に当たっては、GI、地理的表示保護制度の活用も効果的であり、これを、各地域の生産団体や全国レベルの品目団体が、地域や品目ごとの事情を踏まえて輸出促進に有効活用していけるよう、農林水産省としても支援していく考えでございます。

平沼分科員 引き続き、オール・ジャパンでのブランド化戦略に関してお取組をお願いをいたします。

 そして、ブランド化するのももちろん大切なんですけれども、同時に、やはりブランドをしっかりと守っていくということもしなければなりません。保護政策も併せて重要であると思っております。

 実際に、マスカットやイチゴなど様々な品種が海外において不正に生産され、流通しているという事例が散見されます。私の地元においても盛んに作られており、地元果実として確固たる地位も築いており、人気も高いシャインマスカットがございますけれども、残念ながら、シャインマスカットは海外品種登録ができていなかったという実態もございまして、シャインマスカットに関しては、現状においての対応強化というのがなかなか厳しいものがあるのは理解をしております。

 しかしながら、やはり、同様のケースを今後生まないためにも、今後の品種保護に関しての対応が非常に私は重要になってくると思っておりますけれども、その辺りの現在の取組状況に関してお伺いできますでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 我が国の優良な品種の海外流出を防止するためには、育成者権者が品種を適切に管理することが重要でございます。

 このため、農林水産省では、育成者権者が海外での品種登録や侵害対応を適切に行えるよう、相談窓口の設置や情報提供を行うほか、海外出願や侵害対応に係る経費を支援してきているところでございます。

 また、来年度からは、農研機構を中心に関係者が連携し、育成者権者に代わって専任的に海外出願や権利侵害の対応、海外ライセンス等を行う育成者権管理機関の取組を開始することとしているところでございます。

 これらの取組を通じて我が国の品種が適切に保護されることが重要であり、また、海外からのライセンス収入が得られれば、それを活用して更なる品種開発が期待されると考えております。

平沼分科員 ありがとうございます。

 新しい、優秀な日本の農産物というのは、品種改良も含めて、作るときにも大変苦労をしていたり、非常に品質も高いものでございますけれども、引き続き、そういった保護政策の対応もしっかりしていただいて、更なる輸出拡大をして攻めの農業をできる、そして、こういった新しい品種改良したものがどんどん売れれば、日本の農地、また第一次産業も更に発展するものと思っておりますので、今まで以上の取組を是非ともよろしくお願いを申し上げます。

 次に、食料安全保障に関してお伺いをいたします。

 食料の国内における生産体制の確保というのは当然重要でございますけれども、それと同時に、代替の輸入先や蓄えをしておくということも必要であると思っております。

 現状、平時における備蓄確保と不測時における代替輸入に関してのシミュレーションなどの取組状況に関してお伺いさせていただけますでしょうか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、海外からの食料の輸入に支障が生じるなどの不測の事態に備えまして、平素から、米や小麦、飼料穀物について、一定水準の備蓄を確保するとともに、緊急事態食料安全保障指針を定めまして、凶作や輸入の途絶などの不測の事態の深刻度に応じて、レベルゼロから二までの三段階の講ずべき具体的対策やその実施手順を示しております。

 また、定期的に、不測時における対応に関するシミュレーション演習を行っておりまして、具体的には、米、小麦、飼料穀物の備蓄の活用、代替輸入先国からの輸入、不足する農作物の緊急増産、買占めの是正などの適正な流通の確保などの実施手順の実効性の検証などを行っているところでございます。

 今後とも、これらの不測時に備えた対応をしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

平沼分科員 ありがとうございます。

 今、安全保障というのが非常に注目されておりまして、当然、防衛という安全保障もありますけれども、やはり、私は、この食料安全保障というのがなければ、いざ有事になったときに国民の食を確保していってしっかりと国民を守るというのは、国の大きな責務の一つであると思っております。しっかりと平時におけるシミュレーションをしていただくことによって、緊急時に慌てふためくことがないというか、しっかりと対応できるということを国民の皆様にもしっかりと示していただければ、非常により安心感もあります。

 また、先ほど申し上げたとおり、平時における輸出の拡大といったものも、やはり有事の際には、これは食料の確保につながるということもありますので、いろいろな食料安全保障の側面はありますけれども、昨年来から急にこうやって非常に注目を浴びてきたものでございますけれども、果断な努力をしていただいて、国民の皆様がしっかりと安心してこの国に暮らしていただけるような環境の整備に取り組んでいただければなと思っております。

 時間もなくなってまいりましたけれども、最後の質問に参ります。

 現在、大麻取締法の改正の話も出ておりまして、主に医療用などに関して、中毒性のない成分である麻のカンナビジオールの活用に関して議論がされておりますが、現在、日本における栽培者は二十七名でございまして、七ヘクタール、ちなみに戦前は三万七千名ほどいらっしゃって、四千九百ヘクタールまであったそうですけれども、現在、七ヘクタールまで落ち込んでいるという状況でございます。

 現代においては、麻の活用範囲というのは非常に広くて、医薬品であったり、美容の分野、そして健康の分野、衣類であったり、そして日本であればやはり古来から神事に活用されているわけでございます。また、GXの分野においても麻の活用というのが非常に期待をされておりまして、CO2の吸収量であったり、建築材に使うコンクリートみたいなものを作ったり、あと、軽量で剛性もあるということで、それを活用した自動車の内装やボディー部分への活用というのもいろいろ実際にもされているという実態がございます。

 こういったことからも、今後非常に活躍が期待される麻の産業でございますけれども、無毒大麻の開発や生産基盤整備などに関して考えていかなければならないと思いますけれども、今後の国内における麻生産に関しての指針をお伺いをいたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 現在、委員おっしゃるとおり、厚生労働省厚生科学審議会において、大麻取締法等の改正に向けて、大麻の新たな産業利用の目的の追加、それから、合理的な栽培管理規制ですとか免許制度について審議が行われているというふうに承知をしております。

 農林水産省では、これまでも、大麻等の工芸作物に対して、その生産性の向上に向けて、栽培に関するマニュアルの作成、それから、農業機械の改良や導入などの支援を行ってまいりました。

 農林水産省といたしましては、厚生労働省における検討の状況を踏まえながら、新たな制度となった場合には、それに対応した生産の在り方についても検討をしてまいりたいと考えております。

平沼分科員 ありがとうございます。

 今、ほとんど海外の生産のものに頼っているという状況がありまして、しかしながら、いろいろなポテンシャルがあるということでございますので、せっかく法改正していろいろ使えるようになったということが起きても、海外輸入品にまた頼ってしまうような状況が今だと生まれかねないのかなと思っておりますので、国内の基盤整備も含めてしっかりと、いろいろやはり、なかなか、無毒性という部分も、広がっていない部分も国民の皆さんにはありますので、理解の増進も深めつつ、しっかりと新たな産業の一つとしてこの推進を検討していただければなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 少々早いですけれども、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

堀井主査 これにて平沼正二郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、仁木博文君。

仁木分科員 有志の会の仁木博文です。

 野村大臣、そして政府参考人の皆さん、今日はよろしくお願いします。

 まず私は、野村大臣に農水委員会でも質問させていただきましたが、地方の農業、特に、それを担う上でのプラットフォーム、農地の問題も今日取り上げたいと思います。

 今、私も、徳島県という、比較的耕作面積がちっちゃくて先祖代々の土地を受け継いでお米を作っている方々が多い地域に自分自身も住んでおります。まあ、調整区域内に住んでいるんですけれども。そういうところの農地、いわゆる中山間地域ではなくて平地の農地、この辺の運用。いわゆる、耕作が、今後担い手が急激に減って耕作放棄地が続出するのではないかというふうなことを危惧しております。大臣、こういったところに向けての国としての具体的な政策、これからどういった展望があるのか。

 これは地方にとって非常に大きなことですし、日本全体、先ほども平沼議員の方からありました、食料安全保障ということに関しましても大きく寄与する問題でございますので、大臣、何かありましたらお願いします。

野村国務大臣 平野部での農業の在り方なんですか、それとも中山間地の……(仁木分科員「中山間地じゃないです」と呼ぶ)中山間地じゃなくて。

 多分、今委員のおっしゃっているのは、水田を中心にした、そういうような構図というか絵が今浮かぶんですけれども。

 やはり、これから水田については、今、十万トンずつ毎年消費が減っておりますから、米についてはできるだけほかのものに転作をしていただこうということで、いろいろな政策を打ち出しているわけでありますから、それについて、では何を作るのかというのは、そこの中心で、やはり集落で、どういうものが適しているのか、あるいは、もう既に六割方は今転作をお願いをしているわけですから、ほかのものにも転作している、その中で、経営として成り立って、いいよというようなものがあれば、それをまた導入していただくとか。

 一番は、とにかく自給率を上げるためには、小麦だとか大豆だとか、あるいはまた餌になる子実トウモロコシとか、そういうものを是非やっていただきたいんですけれども、なかなか、だからといって、例えば鹿児島の私の地域で、大豆だとか小麦だとか子実トウモロコシはできません。なぜかというと、雨季が早いですから、水が入った途端に駄目になります。ですから、そういう適地もあるし。だから、何をやるかというのは、そこの地域の、一番、皆さん方、長年農業をやっておられる方々に聞いていただいて、そしてどういうものを入れていくか。

 国としては、小麦なり大豆なり子実トウモロコシを奨励して、しかも、それに対する交付金というのは大きくなってくるからそれを作るかとか、そういう話をしていただかないと。何を作るかと今突然聞かれると、委員の地域のイメージも分かりませんし。徳島ですよね。(仁木分科員「はい、そうです」と呼ぶ)徳島は徳島でいろいろな地域作目はあるんだろうと思いますけれども、そういうものはいろいろ地域で話をしながら進めていただきたいということしか申し上げられません。

仁木分科員 大臣、ありがとうございます。

 今、大きな発言をしていただいたと思っております。というのは、やはり地方の、特に私が今申し上げた調整区域内農地の水田を今作っているところの今後のありよう。大臣は、それぞれ、農業そのものが、私が冒頭申し上げたように、プラットフォームが大切であると。

 プラットフォームというのは、天候であったり、大臣も言われた鹿児島というプラットフォームである天候、そしてまた農地ですよね、農地そのもの。つまり、土壌の条件とかいうのもあると思います。そして、その中で、今後のお米の需要が伸びない、大臣もお認めになりました。人口は、今、日本は六十六万人ぐらい毎年減少する予定になっております。そういう中で、ただでさえ若者の米の消費が伸びない中で、今後需要が伸びないであろう。ですから、転作、飼料米とかあるいはほかの畑作への転用ということも今大きい形でおっしゃっていただきました。

 ですから、私は、今、例えば農地バンク等々、農地中間土地管理機構がいわゆるそのお世話をしたりしておりますが、後で、質問通告しておりました新規就農者もこれから考えなきゃいけないと思います。そういう中で、やはり大臣、今行政的に、それぞれ、そういった私が言っている対象地域を一度視察された上で、その場で、本当に歯を食いしばってそこで頑張って、これから農業を、これは半農半Xでもいいんですけれども、やろうとされている方々と一緒に伴走支援することになる人材育成、何か別の機関をつくられても私はいいんじゃないかなと思っております。

 いろいろな農林水産省の出先機関はありますけれども、やはり、場合によっては農業を一度もやったことのない方もいらっしゃるし、そういう農家の苦しみ、そこで新規就農して、収益があって、食いしばってそこの難しい損益分岐点までつながって、そこから永続して農業として自立してやっていけるところまでいく方々と一緒に歩んでいくような、そういうスタッフを農水省でも育てていくということで、私は、ここにおいて、今そういった農地バンク以外の、また、プラスアルファ、あるいは、農地バンクにそういった伴走支援するような方々、地域地域によって大臣がおっしゃったように違います、このプラットフォームが。だから、そこの、地域地域の実情に応じた新たな転作をした上での農業を担っていく体制をやっていっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

野村国務大臣 行政組織ですから、いろいろな機能分担があると思うんです。

 私は、それは県がやるべきだと思うんです。県の普及員さんというのがおりまして、いろいろな作物の普及なり技術普及をやる人がおります。その人たちは地域を一番よく知っているし、どういう作目だったらいいのか、あるいはどういう人があそこにはいるということは全部分かっていますから、普及員を中心にして。農水省の人たちは、そういう方々を今度は指導する立場ですから。だから、農水省の人が、農業を全く知らない人がいても、そこはやはり機能分担で、県の行政の方々がやる分野、あるいは農水省がそれを指導する分野、そういうのがあっていいんだと私は思います。

仁木分科員 私は地元で、少子化対策は地方の創生に懸かっていると言っております。地元に仕事がある。そういう意味でいうと、農業、食料安全保障を担う農家の人を育てていく、特に若い人が場合によってはその地域に入っていく。これは他県からでもいいと思うんですね。そうすると、国のいろいろな機関としまして、そういう、新規就農を地方でしたいなと思う方々に、情報のみならず、農業のノウハウ、あるいは、大臣、私、先ほど共有したと思うんですけれども、やはり、この地域ではお米以外にこういった農産物がいいんじゃないかということを実証しているような場を得て、そこでいい結果が出たならば、こういった農業、農作物もあるよということを新規就農するような方々へ教えていくような、伴走支援していくような仕組みというのもこれから本当に必要だと思っております。

 そこで、ちょっと通告しました質問に戻りたいと思いますけれども、新規就農、これはいろいろな問題があって、いろいろ変えてこられました。例えば、就農を実際に行う前に二年間座学で得た間も百五十万円年間もらえるとか、あるいは年齢の緩和というのもやっています。

 肝腎のプラットフォームである農地の取得に関して、ちょっと規制が、やはり要件が厳しいような気がしますけれども、大臣はその辺はどうお考えでしょうか。農地取得、農地取得の要件。(野村国務大臣「それは新規就農者の農地取得」と呼ぶ)そうです、新規就農者です。

村井政府参考人 お答え申し上げます。

 新規就農者の農地の取得に関して、それぞれの地域でやはり様々な課題があるということは、我々もいろいろな現場の声を聞いております。

 昨年五月に成立をいたしました一部改正法による農業経営基盤強化促進法、これに基づいてこれから地域計画を策定していただくことになりますけれども、その地域計画の中で、新規就農者を受け入れる場合に、どういった農地をその新規就農者の方に配分するか、そういったことも、やはり地域の話合いの中でいろいろ御検討いただくということが非常に重要であるというふうに考えております。

 我々、今後、各地域の地域計画の策定に向けて、またいろいろ地域の悩みを聞きながら、地域に寄り添いながらこの取組を進めてまいりますけれども、その中で、今申しましたように、新規就農者の方の農地取得についても、可能な限り円滑に進むよう、この地域計画の制度をうまく活用していただけるように、我々としても考えてまいりたいというふうに思います。

仁木分科員 私、徳島県で、実は農地バンクの活用率が低い県で、ワーストワンです。それで、その辺の分析もまたされているとは思うんですけれども、例えば私の地元でしたら、やはり、土地の集約がしづらい、土地改良がなされていないような農地がたくさん分散しております。本当に、農地を貸与しても返してくれるのかとか、あるいは、何か変な形をつくって、例えば諦めて途中で帰ってしまうんじゃないかとか、様々な不安も、農地をお持ちの方々がいらっしゃるわけでございます。

 ところが、大臣、私、冒頭に申し上げたように、今兼業的にお米を作っている農家の、そこから今議論をスタートしていますけれども、その方々が、本当に、お米を作らないというか、作れないという、実際、もう限界に来ているんですね。お子さんやお孫さんがいらっしゃったとしても県外だったり、実際、もう農業をしないと明言されたりして、じゃ、そういうところの土地が本当にどうなるんだろうと。大臣も冒頭に、私が言っていることはお米ですかと、お米ということを言っていないにもかかわらず言われました。本当に、西日本、そういう農地がたくさん点在すると思うんですよ。

 これは本当に、今の人口動態、去年も人口は年間八十万人を切りました。こういう状況で地方がどういうふうになっていくのか、私は本当に憂えております。

 私は、今大臣が転作ということを堂々とおっしゃっていただいたので、そういう農地の転作的なことを県が主導してやっていくと言われました。ですから、大臣、今日の答弁を受けて、改めて行政的に、県のそういった農地を所管している職員の方々、あるいは関係機関の方々に通知をして、これから急いでそういったことを、特に徳島県は農地バンクの利用率も低いです、そういうことでおっしゃっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

野村国務大臣 やはり、これは人によるわけでありますけれども、私は、去年、法律を改正しまして、人・農地プランというのを法制化しました。今までも人・農地プランというのはあったんですけれども、法律で定めていなかったんです。それが、昨年法律が通って、いよいよ今年の四月一日からスタートしていきます。これに基づいて、やはり、ここの農地をどうするんだという話合いは必ずやってください、でなければ、ここの土地はなくなりますよ、あるいは、もう人もいなくなるじゃないですかということを申し上げているんです。

 それは何からそういうことを言い出したかといいますと、私も農地を持っていました。そうしたところが、集落の代表の人が、おまえ、もうその土地はバンクに出せという話で、もう本当に渡りに船でした。そして、出しました。そうしたところ、そこは全部基盤整備をして、今ではもう、一枚の田んぼになっています。今、一生懸命、隣の集落の人が来て、ちゃんとやっているんです。うちにはそんな人はいませんでした。だから、そういう人が出てくるから、おまえもバンクに農地を出してくれと。

 私は、このバンク法ができるときに申し上げたのは、やがては今申し上げたような農地は全部国のものになっていくんじゃないかと。だって、農地バンクに出して、私の子供も孫も、そういう農地はもう必要ない、要らないと言っているわけですから。そうすると、農地バンクが所有する農地が増えていくということになっていくと思うんです。

 それは、皆さんがイメージされるような、山形だとか、いろいろな広い、広大な水田地帯は別ですよ。私が言っている中山間地の、そういう、先ほど質問がありました農地については、もう誰も引取り手がなくて、中間管理機構が持つ、バンクが持つ農地になっていくのは、やがてはそうなっていくのじゃないかなと。私は、自分の土地を今預けていてそう思います。私の子供も、全然、農地があるということもほとんど関心がありません。ましてや、今、孫になりますけれども、孫も全く関心がありません。だから、そういうことになっていくのかなと。

 ですから、そこはやはりみんなで話し合って、じゃ、バンクに預けるか、あるいは個人的に請け合うか、そこはそこの集落の話合いだというふうに思います。

仁木分科員 今大臣は、すごい大きいことをおっしゃったと思うんですけれども。いわゆる中間管理機構に託されている土地で、担い手が見つからない、言うなれば、不動産でいうと優良物件でないかもしれない土地というのは、場合によっては、そういう農業の担い手がいない方、そして、その土地というのが将来的に国のものになるかもしれない、そういうふうなことをちょっと言われたので、私はどぎもを抜かれましたが、そういう発言にも至ったわけで、私はそれを責めませんが、とにかく、大きいことを農水のトップの大臣が発言されたということを、これは議事録に残しておきたいと思います。

 その上で、私は、そういうことではなくて、今、環境が、担い手の環境、そしてまた世の中のトレンドが大きく変わっているということで、これは農地に影響する法律があります。

 私が言っているのは、さっき言った市街化調整区域、実は昭和四十三年に施行されております都市計画法というのがあるんですね。これはいろいろ線引きというのを、いわゆる境界です。これはステークホルダーがいまして、農業委員会であったり、あるいは各自治体の方なわけでございます。

 実は、地方においては、昔は都市計画法というのは、スプロール現象、都市の中心部への乱開発を予防する意味でもあったわけでございますが、かえって、私の四国、徳島においては、駅の中心とか、かつて、昭和時代、中心部であったところが、逆に高齢化で空洞化しているというか、本当にドーナツ化現象になっていて、むしろ、市街化区域外、市街化調整区域の方が、土地の利活用をしたいから、もっとここに開発させてほしい、例えば住宅地や商業地にしてほしいという、そういう要望が関係者の方からあるくらいなんですね。

 ですから、大臣、本格的に、大臣の言ったようなことを、私、同じことを共有したと今日思っておりますので、本当にこの利活用、農地のプラットフォームをよりいいものにしていくためには、国土交通省所管の都市計画法にも及んでやらなければ、人・農地プランというのは、大臣が言っているような形も、今、成功事例の、御自身がまず隗より始められた事例も、農地バンクに関しておっしゃいましたけれども、大切だと思いますけれども、大臣、そういった御用意、本当にそういうことも相まってこそ、地方創生というか、地方によりローコストで家庭を営んで、場合によっては子育てできていく、少子化対策にも寄与する地方創生になると思いますけれども、大臣、その辺はどうでしょうか。

野村国務大臣 私が先ほど仁木委員に申し上げたのは、私の例でいいますと、これは国のものにもうなると。言ったのはそういう意味で、全てがバンクに預ければ国のものになるとかじゃなくて、私の農地はもうそうなっちゃうと。子供もどうの孫がどうのということも言いましたが、あれは私的な、私の個人的な話でありますから。先ほどのは、何か農地バンクに預けると全部国に取っていかれるぞという話じゃございませんので。そうじゃなくて、私が申し上げたのは、自分の事例を少し話をさせていただいたということで御理解いただきたいと思います。

 そこで、今のお話ですけれども、私もなかなか、今、質問があって、ぱっと答えられないと思います。また変なことを言っちゃうと、みんなが、後ろの人たちが心配しますので。

仁木分科員 ありがとうございます。農地バンクに預けて、需要のない土地が国の方になるということはないということは大臣おっしゃいましたけれども、それは、私はびっくりしたので、そういうような形で認識しております。

 それで、ちょっと質問を変えたいと思いますけれども、今度は山の方について質問したいと思います。

 実は、私の同僚の有志の会の議員が予算委員会で岸田総理の方に質問した際に、大切な、例えば食料安全保障にも寄与するであろう農地や山、山というのは、いわゆる水源になるところを外国人が買っている、この問題はどう受け止めますかということで、今回、いろいろな法律があります、できておるということの答弁を総理からはいただきましたが、今の法律では、いわゆる土地取得に関する法律に関しては、農地とか、水源である山が対象になりにくいんですね。

 その辺を広げていこうというのは、これは、食料安全保障、先ほども平沼議員がおっしゃっていましたけれども、いわゆる多くの議員が今、やはりセキュリティーということで、食料も安全保障に入るということで、御省の存在意義が、いろいろ、非常に高まっているわけですよね。

 水は全て必要ですよね。特に農業では欠かせない。農地もそうであります。こういうのを外国人が例えばどんどん取得していって、ウォータービジネス、水ビジネスじゃないですけれども、日本人が、あるいは日本の農業の方々が外国の企業から水を買わなきゃいけないような状態になるというのはあり得ない状態であります。

 私、これはレクをしました、質問に際しまして。そうすると、いわゆる明らかにオープンでしている場合しか農水省は把握していないと思うんですよ。実際は、例えば、外国人が日本の企業に資本を出して、日本の企業として買うんだけれども、実はその株主がほとんど外国人であったり、具体的には中国系であったりしまして、それで、いざというときに水が容易に手に入らないんじゃないかという問題もあるわけでございまして。

 大臣、法律も施行はされておりますけれども、食料安全保障という概念もやはり大きく加えることによって、これは三八%ですから、六二%は輸入しているわけですね、その今の現状を考えて、農地と山の外国人の土地取得に関して、より規制を強化すべきだと私は考えますが、いかがでしょうか。

野村国務大臣 このことについてはもうほかの委員会でもちょっと出ているんですが、要は、農地については、農地法がありまして、いろいろな規制がかかっています。だけれども、山についてはそういった規制がかかっていません。

 いや、私も、山は、長官にも今日は来てもらっているんですが、今日、予告があったものですから、ずっと前のを広げてみますと、三年の法務委員会で当時の法務大臣が答弁しているんです。外国人のみを対象としての土地の、森林の取得を規制することに関しては、制限目的の正当性や、また、制限手段の必要性、合理性の観点から、より慎重な対応が必要になる、こういったような答弁を当時の法務大臣がしておられまして。上川さんの頃なんですが。

 ですから、森林については、我々も、内部でも議論をしております、党の中でもしてきましたけれども、なかなかそれをストップをかけるいわゆる根拠がないといいますか、法律がないということで、山の場合は外国人が所有をしているのが実態としては出てきている。昨年だけでも二十九件出てきたということで、私もびっくりしていたんですが、十九件です、失礼しました、令和三年は十九件の二百三十一ヘクタールです。

 ですから、こういうことは、やはり何かこれは問題だよなと言うんですけれども、山に関してはなかなかそれを規制する法律がないということだと思います。

仁木分科員 大臣、ありがとうございます。ですから、大臣もそのことは大きく、重要視しているということに受け取りました。

 それで、私が申し上げているのは、実態はもっと多いかもしれないんですよ。ですから、これは農水省としても、農地も含めて、先ほど私が申し上げたような、明らかな外国人企業ですよという形で、今農水も、農地バンクもそうですけれども、法人化、法人が参入することもより緩和していますので、そういった、手を挙げて、オープンでの外国人企業としての農地取得のみならず、日本人企業だけれども株主が外国人であるとか、これは放送法とかもいろいろ厳しいのがあるんですね。農地の取得に関して、そして、今、実態の把握がより難しい水源たる山の取得に関しても、これはサーベイ、調査を農水省としてもしてほしいということをまず申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

織田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣から答弁ありましたように、外国人等による森林の取得に対する規制は設けておりませんけれども、外国人等が森林を取得した場合でも、取引状況をしっかり把握するとともに、保安林制度あるいは林地開発許可制度の中で多面的機能の発揮を図ることとしているところでございます。

 森林法のいわゆる所有者届出をしていない者などの把握につきましては、農林水産省では、市町村に対して、不動産登記簿あるいは固定資産課税台帳等の情報を定期的に入手をし、無届け者を把握するとともに、無届け者に届出を提出するよう働きかけを行うよう指導もしているということでございます。

 そういったことで、公共団体ともよく連携をして、外国人等を含めた森林所有者の把握に努めていきたいというふうに考えてございます。

村井政府参考人 農地に関しても、我々、把握しているところを御紹介をさせていただきたいと思います。

 農地に関しましては、平成二十九年から、外国法人、外国人が出資している日本の農地所有適格法人、それから居住地が海外にある外国人が新たに農地を取得した状況について調査を行っております。

 平成二十九年一月から令和三年十二月までの五年間の累計で、外国法人等が出資している日本の農地所有適格法人による農地の取得状況は六社、六十七・六ヘクタールとなっております。また、居住地が海外にある外国人による農地取得の状況は平成二十九年だけということになっておりまして、一者、これは〇・一ヘクタールとなっております。なお、この方につきましては、結婚して外国籍を取得した日本人が、お父さんが亡くなったことによって日本の農地を相続したというケースであると承知をしております。

仁木分科員 私の徳島県は、結構私有林が多い、そういう県であります。それで、この際、例えばGPSを用いたりドローンを用いたりしての山のいわゆる計測というか測量というか、そういうのも、多大なコストも要るかもしれませんが、境界、これも大切だと思っておりますので、可能であるならばそういうことも、将来、大切な水源、山を守っていく、そして山の機能を高めるためにも、今、そういうことの予算も考えていただきたいと思います。それが一点。

 もう一点は、ちょっと時間がないので、今日、私の地元は、生シイタケが結構、日本ナンバーワンの、そういう産地を有しております。例えば乾燥シイタケというのは、大分とか、先生の御地元九州、まあ大分なんですけれども、そういう地域がありますが、生シイタケが、昔の、いわゆる乾燥シイタケの流れがありまして、林野庁所管なんですね。ところが、生シイタケというのは、ステーキにしたりとかいろいろな活用がありまして、結構需要が高いわけです。今、林野庁のシイタケという所管を、例えば普通の農水省の所管に戻すということは考えていらっしゃらないでしょうか。その二点、よろしくお願いします。

織田政府参考人 お答えいたします。

 ドローンですとかGPSだとか、そういった活用は現在も一生懸命やっておりまして、例えばレーザー計測をすることで地形が分かって境界がはっきりするとか、そういったことは引き続きしっかりやっていきたいと思います。

 それで、シイタケの関係でございます。

 主に、キノコ類は森林原野において産出された産物であるということで、林野庁で所管してきたところでございます。

 一方、先生御指摘のように、現在、菌床なんかも多くなっているということではあるんですけれども、やはり森林内で生産する原木シイタケの生産者もまだいっぱいいらっしゃいますし、菌床キノコも、おが粉等、木質資源を活用していること、さらには、林野庁においてキノコ類についてのこれまで蓄積した知見を有するということで、引き続き林野庁が所管しているということでございます。

仁木分科員 最後ですけれども、大臣、今日、私が総論として申し上げたかったのは、農業も、いわゆる世界の環境が変わってくると、いろいろ、やり方、そしてまた実態も変わってきますよね。

 そうすると、やはり、例えば私、前回、農林水産委員会で質問しましたが、フードテックの中で、地元で徳島大学が、コオロギというインセクト、昆虫を、昆虫食を広めようとする形がありまして、最近は、その生産体制をNTT東日本と提携して、いわゆるハイテクのファクトリー、工場みたいな形で原材料のコオロギを生産して、それを大量加工して、そして消費者のという形になっていくわけですね。これは、場合によったら、コオロギ自体、所管は農水省に見えるんですけれども、もしかしたら経産省の所管になるかもしれないんですね。

 私が今日申し上げたかったのは、そういう、いろいろな食料を織りなす環境が変わってくることによって、所管する省庁のありようも変わってくるかもしれないんですけれども、その辺は、例えばどのようにお考えでしょうか。

堀井主査 高橋大臣官房総括審議官、お答えは簡潔にお願いいたします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省におきましては、農林水産業及び食品産業に関する新たな事業の創出を推進する施策を所管しております。

 委員御指摘のように、技術の発達等によりまして生産体制が変化するというようなことはあり得る場合だと考えておりますけれども、例えば、現在でも、野菜の生産を植物工場で行う場合でありましても当省が所管しておりますので、昆虫食の生産体制が変化した場合でありましても、引き続き当省が所管するのが適当でないかというふうに考えております。

仁木分科員 時間が過ぎました。ありがとうございました。大臣、また今後ともよろしくお願いします。

 皆さん、ありがとうございました。

堀井主査 これにて仁木博文君の質疑は終了いたしました。

 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)分科員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 それでは、早速質問に入りたいと思いますが、私の地元選挙区に印旛沼土地改良区というのがございまして、私が当選一期生のときに、国営二期工事ということで、老朽化した施設の改良の予算をつけていただきました。二〇一一年かな。土地改良の予算がばさっと、まあ我が党が削ったんですが、ここの印旛沼だけは、十年計画で三百二十億円の予算で土地改良区を、私の地元の方も陳情に来ていただいて、ついたんですね。

 以来、ずっと私も見てまいりました。折に触れて機場とかも伺っていますが、工事がやはり遅れているんですよ。たしか十年で、もうできていなきゃいけないんですが、進んでいない。軟弱地盤が出てきたり、それから、資材の高騰とか事業者がいなかったりとか、いろいろな問題があると思うんですが、完成見込み、どうなっているんでしょうか。もう一度、遅れている理由を伺いたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農業用水の安定供給や排水不良の改善、流域の水質保全のため、国営かんがい排水事業印旛沼二期の地区を実施しているところでございます。

 委員が御指摘ありましたように、当初、平成三十年度完成に向けて老朽化した揚水機場や水路等を整備してきたところでございますが、想定を上回る軟弱地盤での工事等により、予定工期が令和六年度に延びているところでございます。

 しかし、更なる工法変更等による事業費の増額によりまして、現在、工事の完了予定時期を含めた事業計画の見直しを進めているところでございます。

 事業の完了予定時期が遅れている理由としましては、生物の生息環境への影響の観点から、機場建設予定地の位置を変更することによりまして、更に軟弱地盤対策工の追加が必要になったこと、それから、東日本大震災を踏まえまして、施設の安全確保の観点から、水路の路線に大幅な変更が必要になったことなどから、工事の実施に時間を要しているためでございます。

奥野(総)分科員 あそこは常に水をくみ上げていないと、沼地ですから浸水してしまうんですね。二〇一九年の洪水のときも、あれはかんがいがどうという話じゃなくて、川への放水がうまくいかなかったのもあって、亡くなった方も出たりとか、非常に危険な地域でもありますし、循環型で、回すことで、水のろ過、水質の浄化というのも役目があるわけですから、この温暖化の中、あるいは水質浄化の観点からも、一刻も早く完成させていただきたいんですが、大臣、これはしっかり予算をつけていただいて、今お答えできないとおっしゃっていますが、一日も早く完成をさせていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。大臣。

野村国務大臣 今のは印旛沼の二期の話ですよね。(奥野(総)分科員「そうです」と呼ぶ)これにつきましては、先ほど局長の方からも話がありましたが、要は、地域農業の発展なり印旛沼の水質保全に不可欠な事業だ、こういうことは認識をいたしておりますが、このために、早期に事業を完了できるように、事業計画の見直しを速やかに行うとともに、必要な予算を確保し、事業の着実な推進に努めてまいりたいと思っております。

奥野(総)分科員 是非お願いしたいんですね。近隣の北総中央用水とかがあるんですが、結構、賦課金を払いたくないとか、土地改良区自体が、参加者が減ってきたり、だんだん先細っていっているんですよ。まだ印旛沼は歴史ある土地改良区だし参加者も多いんですけれども、やはり、きちんと、皆さんのためにも早く実現していただきたい。是非お願いしたいと思います。

 同じく印旛沼の話なんですが、先ほど生物という話もありましたが、ナガエツルノゲイトウ、こういう、水草というのかな、つるが切れて、浮遊しながら漂って、大量に増えているんですね。これを排水のときにポンプが巻き込むと止まってしまったり、今、非常に問題になっています。

 現在、これはどういう対応をされているか。現状認識と、これはどうも、伺うと印旛沼だけじゃないようなんですが、どういう対応をされているんでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 ナガエツルノゲイトウは、関東以西の二十五都府県に侵入していると認識をしております。

 ナガエツルノゲイトウは、近年、排水路等に繁茂しており、機場に群落のまま漂着し、ポンプの緊急停止が発生するなど、施設の管理に支障を来していると承知しております。

 対策としては、できるだけ早期に発見し駆除することが重要であり、関係省庁や関係機関と連携しながら情報共有を図っているところでございます。

奥野(総)分科員 なかなかやはり追いついていないんですよね。どんどん増えてしまうし、結局、人海戦術で、発見次第といったって、僕も見てきましたけれども、そこら中に茂っているわけです。これは非常に地元も対応に苦慮していますが。

 そんな中、ちょっと地元で拝見したんですが、これを肥料に変えるというプロジェクトもあって、最近は余り聞かなくなったんですが、いいアイデアだなと思ったんです。もし肥料になるんだったらコストも一定程度回収できますから、コストを賄いながら駆除できるということだと思いますし、近隣に肥料として配れば一石三鳥ぐらいの効果があると思うんですが、このプロジェクトは今どうなっているんでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 印旛沼で駆除したナガエツルノゲイトウの処分方法としまして、堆肥化の可能性について、平成二十七年に国立研究開発法人土木研究所で研究が行われていたと承知しております。この研究では、堆肥化は可能であったが、継続性の検討は行っておらず、供給の安定性等の検証が必要であるという結果となりました。

 一方、農研機構を中心に、効率的な駆除対策に有効と考えられる水田と畦畔に効果のある除草剤の検討を進めておりますので、新たな知見が得られれば関係者に情報提供を行っていきたいと考えているところです。

奥野(総)分科員 除草剤と言われると私も反応してしまうんですが、印旛沼は結構水質も厳しくなっていますし、水質に与える影響なんかも十分考えていただきたいと思います。

 全国的に、これは外来種になるんですかね、しっかり対応していただきたいと思いますが、通告していませんが、大臣、しっかりお願いします。

野村国務大臣 特定外来種であるナガエツルノゲイトウは、増殖力が強く、大群落になると対策が難しくなるため、できるだけ早期に発見し駆除することが重要と認識しております。

 農林水産省では、発見や駆除の方法をまとめたマニュアルを環境省と連携して作成しており、農研機構における効率的な駆除対策等の研究成果なども盛り込みながら、マニュアルを更に使いやすいものにしていきたいと考えております。

 今後とも、河川を所管する国土交通省や地方自治体等の関係機関とも連携しながら、駆除方法、蔓延防止対策等の普及啓発に取り組んでまいります。

奥野(総)分科員 国交省もやっているようなんですが、局長、これは予算措置なんかは考えていないんですか、通告していませんが。

青山政府参考人 お答えいたします。

 ナガエツルノゲイトウの駆除作業につきましては、河川、湖沼、農業水利施設の管理者に行っていただいているところでございます。

 このため、農林省では、先ほど大臣からもコメントございましたけれども、環境省と連携しながら、発見、駆除の方法をまとめましたマニュアルを作成することや、国土交通省、地方自治体、土地改良区等の担当も含めました全国会議を開催するなどを通じまして、管理者の駆除作業を支援しているところでございます。

 さらに、管理者の作業が容易となるよう、ポンプ場に漂着したナガエツルノゲイトウを除去するための除じん機を設置するなどの支援を行っているほか、また、農業者等が共同活動によって農地周りの水路等に生育するナガエツルノゲイトウの駆除を行おうとする場合は、多面的機能支払交付金などを活用していただいているところでございます。

奥野(総)分科員 是非、お願いします。

 もう一点、先ほど土地改良区の持続可能性みたいな話をしたんですが、電気代がかかるんですね。この地域は、近隣の北総中央用水もそうですし、印旛沼土地改良区も、沼の水をポンプでくみ上げて循環させますから、電気代がどうしてもかかります。

 日頃から一定程度は補助をいただいているというふうには理解をしていますが、昨年来の電気料金の高騰が続いています。補正で一定程度措置していただいているのは承知をしていますが、予算措置の現状について、また令和五年度予算でどうなっているか、伺いたいと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、印旛沼地区における基幹的な農業水利施設の電気料金を含みます維持管理費について支援しているところでございます。

 また、現下の電気料金の高騰を踏まえまして、令和四年度補正予算におきまして、省エネルギー化の取組を行う施設管理者に対して電気料金高騰分の七割を支援する措置を講じたところであり、印旛沼地区において活用する見込みとなっております。

 なお、令和五年度当初予算においては、維持管理費の軽減を図るため、農業水利施設の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入に対する支援の充実を図ることとしております。

 今後とも、必要な予算の確保と土地改良区の維持管理費軽減に努めてまいります。

奥野(総)分科員 この資源価格の高騰というのは、円安とか、まだ戦争も続いているわけですし、まあ、一定程度落ち着いてきたと思いますが、電気料金が下がる見込みはなかなかないと思うんですね。ですから、補正で一発でという話じゃないと思うんですよ。もちろん、いろいろな自然エネルギーの活用とかあると思いますが、できるところとできないところもありますから。

 こういう印旛沼とか北総中央用水とか、電気料金のかかるところというのは一定程度措置していただかなきゃいけないんですが、さらに、値上げの話というのがあって、地元から聞いたんですが、農事用電力について、ここは東京電力管内ですが、値下げ幅を圧縮する、逆に言うと、値上げをしていこう、こういう動きがあるというふうにホームページに出ているんですが、事実関係は把握されていますか。その上で、これはどのぐらいの影響が出るんでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 現在、電力料金につきましては、経産省の方で電気料金の激変緩和対策が講じられておりますけれども、一方で、委員から御指摘ございましたように、各電力会社から電力料金の値上げが申請されているところでございます。

 農林水産省では、印旛沼地区の維持管理費に対する支援を継続するとともに、土地改良区に対する省エネ化に向けた現地指導等の支援についても調整していきたいと考えているところでございます。

 済みません、具体的に何割上がるというところは、料金体系とも関連しますので把握しておりませんけれども、電気料金高騰による土地改良区の運営や維持管理費への影響を注視しまして、どのような対応が必要か、今後、関係省庁とも相談してまいりたいと考えております。

奥野(総)分科員 何か、ホームページ上は平均三割上がる、こういうふうに出ているようなんですよね。もし三割アップということだったら大変な高騰です。今まで割り引かれていたものが上がってしまうわけですから。

 従来から、土地改良区の皆さんから、やはり賦課金がよそに比べて高いんだ、こういう話も私も伺っているんです。これはやむを得ないところではあるんですが。もちろん、一定程度補助をいただいているというのも承知をしていますが、これは、余り上がっていくと、さっきの持続可能性の話になって、抜けていく人も出てくるんですよね。

 現に、近くの北総中央用水、これは私も予算のお願いなんかもしたことがあったんですが、なかなか、払いたくない、こういう人もいっぱいいるわけです。もう当初の計画から大分ずれて、完成もしなくなっていて、当初の狙いとは全然ずれてしまっているわけです。

 印旛沼もこういう形で、あそこも非常に広い領域を持っていますから、賦課金がどんどん上がるようだと、一方で、後から聞きますけれども、食料自給率を上げようとか、農地の集約、集積を図ろう、こう言っている中で、こういうインフラの部分でコストアップで、それがマイナスになって足を引っ張ってしまうということは絶対に避けるべきだと思うんですね。

 私がこの値上げの話をしたら、実は事務方の方は知らなかったんですよ、もちろん現場の土地改良区の方は知っていたんですけれども。これは結構問題だと思います。もちろん、制度上上がってくる仕組みになっていないというのはそうなのかもしれないですけれども、その辺りはしっかり把握をしていただいてやっていただきたいんです。

 先ほどしかるべき措置とおっしゃいましたが、大臣、やはり、今後も電気料金が下がらない、さらに、上がる話も出てきているわけですから、しっかり措置していただきたいんですよ。これは、土地改良区の持続可能性の話でもあり、農業、農家の持続可能性の話だと私は思うんですが、やはり、その辺りはしっかり農林省として見ていただきたいんですが、いかがですか。

野村国務大臣 令和五年度につきましても、基幹的な農業水利施設の電気料金を含む維持管理費に対する支援を引き続き行いたいと考えております。

 また、今後の電気料金高騰の状況を注視し、土地改良区の運営費等への影響について把握し、どのような対応が必要か、検討をしてまいりたいと思っております。

奥野(総)分科員 引き続きとおっしゃったように、従来からあるわけですよ。ただ、こんなに電気料金が高騰するというようなことは想定されていないんですよね。

 だから、従来の制度を使うというのであれば、例えば補助率のかさ上げをするとかを考えなきゃいけないし、そこを変えないのであれば、臨時の措置として何らかの補助をしていく。これは、一発で、補正と言っていますが、そうじゃなくて、引き続き措置を、皆さんは次の補正があるとは言えないんでしょうけれども、補正じゃなくて、やはり平時から組み込んでおくべきだと思うし、検討していただくのはいいんですが、前向きにしっかり、これからも電気料金が下がらないようだと、何らかの助成を考えるということをもう少し前向きに、大臣、言っていただきたいんですけれども。これはやはり言わないと、地元の方も安心できないと思うんですよ、すごい不安がっていましたから。いかがですか。

野村国務大臣 先ほど申し上げましたように、土地改良区の運営等への影響についてもう少し把握をして、ちゃんと部署がありますから、それに基づいて、どのような対応が必要か検討をしてまいりたいと思っております。

奥野(総)分科員 局長、もうちょっと踏み込んでいただきたいんですけれども、大臣は慎重なんだけれども、把握といったって、明らかになっているわけですよ、料金がこれから上がっていく可能性が。だから、上がる場合についてはしっかり予算措置も含めて考えているということをもう少し答弁いただきたいんですけれども、いかがですか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 大臣からお答えいたしましたように、電気料金、これから高騰していくわけでございます。それがどのように影響が出るかということを踏まえまして、今後関係省庁とも相談していきたいと考えております。

奥野(総)分科員 是非お願いしますね。予算も要求の話もあるし、なかなか言えないのは分かりますけれども、やはり、きちんと先行きを示していかないと、なかなか農業も続かないと思うんですね。是非お願いしたいと思います。

 それから、同じく食料自給率の話に、食料自給率というか農業の持続可能性の話を最後にしていきたいんですが、防衛三文書の中で、食料安全保障というのが国家安全保障戦略の中に出てはくるんですけれども、あれは防衛の話じゃないですから、本体にちょろっと出てくるだけで、具体的にそこはどうしていくのかという話は、あれを読んでもさっぱり分からないんですね。だから、皆さんの方で食料安全保障についてしっかり考えていく、示していくというふうになると思うんです。

 当然、食料自給率をアップしていかなきゃいけない。今、四割を切っていますが、四五%が目標でしたっけ、なかなかそれも達成できていない。また、昨年は、リンですか、肥料が入ってこないとか、様々な問題が起きているわけです。そうしたものを含めて、農業を守っていく、輸入が途絶してもちゃんと食料を確保できる、燃料も肥料も輸入が途絶しても耐え得るような農業にしていくということだと私は理解しているんですが。

 そんな中、一つ出てくるのは、みどりの食料戦略システム、昨年出てきましたけれども、これは、有機農業を広げていくということであれば、肥料については国内で自給していくということだと思うんですね。そういう意味で、食料安全保障上も私は大事だと思います。

 非常に意欲的な目標をうたってはおられるんですが、これは以前に、二〇年の三月に有機農業の推進に関する基本的な方針が決められて、二〇一八年に二万三千七百ヘクタール、耕地面積で〇・五%の有機農業の取組面積を三〇年に六万三千ヘクタールということで、倍近くになるのかな、に引き上げると言っていますが、これは現在どうなっているんですか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 現在二万五千二百ヘクタールでございます。

奥野(総)分科員 副大臣にお答えいただこうとしたんですが。

 現在二万三千とおっしゃいましたっけ。まだ今年で四年目だけれども、ほとんど増えていないということですね、これ。

 本当にこれは、まずできるんですかということですけれども、三〇年。

野中副大臣 まず、二〇三〇年六万二千ヘクタールの有機農業の取組面積に向けまして、やはり、国内市場を、消費を拡大していく、それで海外輸出によってマーケットを拡大させていくというのと、千葉でもありますけれども、生産から消費まで地域ぐるみで行っていただくオーガニックビレッジの創出、また、有機農業の指導員の育成等を含めまして、二〇三〇年の六・三万ヘクタールを目指して取り組んでまいりたいというふうに思います。

奥野(総)分科員 確かにそれは、今の時点でできないということにならないし、それはできるのかもしれないんですが。

 さらに、しかし、この今回の戦略、みどり戦略の中では、二〇五〇年には百万ヘクタールにする、物すごく意欲的なんですが、当初、三〇年が六万三千、これも、今聞いているとなかなかそれも相当な努力が要ると思うんですが、じゃ、こんなに劇的に増やすことができるんでしょうか。

 私は増やすべきだと思いますよ。さっき言った理由で、肥料なんかも自前でできるわけですし、恐らく健康にもいいという、できれば低農薬、減農薬、無農薬のものを中心にということだと思いますが、本当にこういう目標は達成できるんでしょうか。あるいはどうやって達成するんでしょうか。

野中副大臣 私も、副大臣に就任する前に、同じような質問を委員会でいたしました。

 ただ、委員おっしゃるとおり、非常に意欲的な数値であるというのは承知をしております。先ほどの取組と同時に、二〇四〇年までに何とか次世代の有機農業の技術を確立することによって、そこから更に飛躍的に拡大していきたいというふうに思っております。

 なかなか一足飛びに駆け進んでいくというのは、まあ、一段一段、二〇三〇年の目標、そして二〇四〇年、二〇五〇年というふうにいって、目標達成に向けて取り組んでいきたいというふうに思っております。

奥野(総)分科員 事務方に伺ったら、イノベーションで、害虫に強い品種を作って、減農薬、無農薬につなげていくんだ、そうやって広げていくんだというような話もございました。

 それは進めていくべきだと思いますが、結構イノベーションをうたっているんですけれども、結構それがマジックワードになっていて、そんなにイノベーションが本当に起きるんですか。半導体だとムーアの法則があって、一万倍、百万倍と、どんどんどんどん生産性というか、容量が上がっていくんですけれども、農業はそうじゃないと思うんですね。

 ちょっと私が伺ったところだと、米の収量は縄文時代から二十倍しか進歩していないというふうな話なんです。二十倍だって相当だと思いますけれども、そんな急にいくものじゃないと思うんですよね。だから、やはりイノベーションも大事ですけれども、それだけで一気にいろいろなことが解決するわけではないと思うんです。もちろん有機農業の面積が広がるのも大事なんですが、耕地面積自体が少しずつ減少しているということなんですね。

 ちょっと話があれしますが、人・農地プランをこれからやっていくんですが、そこはやはり地元の農家の皆さんから、本当にできるのかという声も出ています。二〇二〇年の農業センサスを見ると、この間の経営耕地の減少率というのは史上最大なんですよね。だから、集積を始めているんだけれども、どんどんそれを上回る勢いで減っているということなんですね。

 現場の方から伺った話もまさにそういう話であって、理念はよく理解できる、だけれども、本当にそんなに担い手がいるのか、集約、集積していくんですけれども、担い手の数が足りていくんだろうか、やる気のある人は確かに一定数いるんですけれども、それでも足りないんじゃないか、人・農地プランというのは本当にこれは機能するんだろうかという不安の声がやはり現場では出ています。

 これから計画を作っていかれるんだと思いますし、そのこと自体を否定はみんなしていないんですけれども、そううまくいくのか、負担が特定の人にかかるんじゃないか、こういう心配があるようなんですが、いかがでしょうか。

野中副大臣 就農者数が減っていく、減少していく、そしてまた高齢化が進んでいくという、まさに本格的に入っているというふうに思います。その中で、改正基盤法によって、今の段階でまだ農業者で受け手が見当たらないという場合は、そこをしっかり記入していただいて、それによって、市町村が発表するわけですから、それによって内外から、市内外から受け手が見つかるかもしれないというふうに私は思っております。

 確かに、元々就農者数が減っていくわけですから、一人当たりの担っていただく面積が拡大すると思いますけれども、できるだけ、そういった意欲ある人に担っていただきたいというふうに思います。

奥野(総)分科員 私が聞いたのは、私の地元の地域、農業の盛んな地域で担い手もそれなりにいる地域の方がおっしゃっているので、そこでもそういう話なんですから、ましてほかの地域だと、私の地域は都市近郊の部分と農村の部分、両方あるんですけれども、都市近郊の部分はほとんど難しいんじゃないかというふうに感じるわけですよ。

 集積、集約化もいいんですが、それは大事だと思いますけれども、やはり、なぜ担い手が育たないかというと、収入が少ないからだと私は思うんですよ、端的に言って。皆さん、子供に継がせられないという声は非常に強いですよね。ですから、まずは、日本は家族農業が従来中心だったわけですから、一気に大規模農業にかじを切るというのもまた難しいんじゃないかと思います。両方、まさに両方並べて進めていくということだと思うんですよ。

 民主党のときに戸別所得補償をやりました。あれはなくなったんですが、全く同じものをつくれればいいんですけれども、とにかく一定程度所得を補償していかないと担い手が育たないと思うんですね。新規就農の方は結構入ってきますが、これも続かない、半分ぐらいはリタイアしてしまいますし、やはり農家の後継者、御家族の方がきっちり継げるように、親が継がせたいと思うような仕組みをつくることも必要だと思うんです。

 だから、人・農地プランで区域割りをしますけれども、中心のところはやはり従来の農業を担っていた方がしっかり担っていく、空いているところを法人なりよそから入ってきた人に誘導していくという話じゃないかと私は理解しているんですけれども。

 そういう意味で、そういう所得補償的なものをもう一回きっちり復活させるということについてはどう思われますか、大臣。

杉中政府参考人 我が国におきましては、農業者の皆様に安心して生産を継続していただくという観点から、麦、大豆などの生産者に対する畑作物の直接支払交付金、主食用米から他作物への作付転換を支援する水田活用の直接支払交付金、中山間地域等直接支払いなどの日本型直接支払いといった農業者に対する直接支払いを行っております。

 また、農業収入が減少した場合のセーフティーネット対策といたしまして、いわゆるナラシ対策や収入保険という収入補填制度も設けております。

 今後とも、こうした制度を着実に実施していくことによって、農業者が安心して生産を継続できるとともに、国内農業の生産基盤をしっかり支えていきたいと考えております。

奥野(総)分科員 収入保険も大事だと思うんですが、結構区分が細かかったり、料率が高かったり、既存の制度の重複があったり、いろいろ問題があると思うんですが、その辺はやはりきちんと統一して考えて、どうやったら農家が持続可能なのかとやはり考えていかなきゃいけないと思うんですよ。いろいろな制度があるのは分かっています、その時々の事情でつくられたのも分かっていますが、大事なことは、持続可能性だと思うんですね。

 最後、今、農業基本法の改正の話も出ていますが、食料自給率は一向に上がらないわけですよ、あの法律をやっていて。今度見直すんですが、過去の反省を踏まえて、どういうふうに変えようと思われていますか。大臣、最後。

野村国務大臣 先ほどもちょっと別なことで答弁申し上げましたけれども、要は、これから、国内でできるものは作っていくという、これはもうそのとおりで、やらせていただきたいと思っていますが、そうしますと、自然に、例えば小麦にしても大豆にしても、ここ何年間で少しずつ上がってきていることは事実なんです。ただ、全体的に米の消費が下がっているものだから自給率は上がってこないということもありますので、是非、国内でできるものは国内で作って、そして自給率も当然その結果として上がってくるということをしていきたいと思っております。

奥野(総)分科員 でも、米や麦の、国産の麦の消費を振興するのも皆さんのお仕事だと思うんですよ。

 時間がなくなりましたけれども、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

堀井主査 これにて奥野総一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、若林健太君。

若林分科員 自由民主党、長野一区、若林健太でございます。

 今日の分科会、最後のバッターとなりました。大臣もお疲れだと思いますが、おつき合いをいただければというふうに思います。

 ロシアによるウクライナ侵攻から一年が経過をいたしました。世界は一変して、我が国でも改めて、食料安全保障、その重要性を指摘する声が大きくなってきたところです。一方、AIやIoTといったデジタルの革命もどんどん進んで、スマート農業を通じて抜本的な生産性の革命を、こんな期待も高まっています。

 農業を取り巻く環境は大きく変わってきているわけで、政府では、新しい資本主義の下、食料安全保障の強化、あるいはスマート農業による成長産業化、農林水産物・食品の輸出促進、みどりの食料システム戦略の実現、この四つの柱を立てて、約二十年ぶり、食料・農業・農村基本法の改正作業が行われているというふうに承知しているところです。

 農業政策の基本法とも言えるこの改正作業について、現在の状況、そしてまた今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほど委員おっしゃいましたように、大変な、世界の食料情勢が変化を遂げておりますが、あるいはまた、気象変動による海外の食料生産の不安定化もあります。現下のウクライナ情勢を受けて、世界的に、食料あるいは資材価格の高騰など、食料安全保障上のリスクというのが非常に高まってきているというのは、これはもう御承知のとおりです。このために、昨年末に策定しました、また党の方でも御議論をいただきました食料安全保障強化政策大綱に基づきまして、輸入食料や輸入生産資材への過度な依存を低減していくための構造転換対策を進めてまいりたいと思っております。

 また、食料・農業基本法は、先ほどおっしゃいましたように、もう二十年たっておりますので、大変、その間にいろいろなリスクが発生をいたしております。

 したがって、これはもうやはり見直す時期だということで今回委員会を立ち上げまして、食料、農業、農村を取り巻く政策を見直すことにいたして、今現在、部会をつくりまして、もう九回開催しましたけれども、その見直しのための検証を行っておりまして、国民的コンセンサスを形成しながら検証を進め、六月をめどに政府の新たな展開方向を取りまとめたいと思っているところでございます。

若林分科員 今、カロリーベースでの食料自給率は四〇%を切っております。当面、四五%を国家目標として実現するんだということで取り組んでいるわけですが、この食料安全保障を考えると、四五%だってどうなんだ、もっと意欲的な目標を掲げるべきじゃないのかということも思います。

 いずれにしても、カロリーベースでの食料自給率を上げていくためには、多くを輸入に頼っている飼料の国産化ということが極めて重要だと思っております。この点について、そのための取組と現在の目標値というものについてどうなっているか、伺いたいと思います。

野中副大臣 輸入飼料への過度な依存から脱却して、飼料の国産化を図るというのは大変重要であります。

 数値でありますが、飼料の自給率を二五%から令和十二年度に三四%に引き上げることを目標としまして、そのために、耕畜連携、飼料生産組織の運営強化、国産粗飼料の広域流通、飼料用トウモロコシ等の高栄養な飼料の生産拡大、草地の整備等による牧草の収量、品質の向上など、国産飼料の生産、利用の拡大を進めてまいりたいというふうに思っております。

若林分科員 現実的な数値目標を掲げて着実に政策を進めていく、とても大事なことだと思うんですけれども、しかし、国として、食料安全保障の視点で、これなら大丈夫だ、こう言えるようなための着地というのはやはりしっかり持っていなきゃいけないと思うんですね。いずれにしても、今、農政全般、基本を大きく変えていかなければならないとき、重要な議論だというふうに思います。これからも私もしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 人口減少している我が国にあっては国内市場がどんどんと縮小してきているわけで、農産物の輸出に活路を見出すというのは大変重要だと思っています。昨年、令和四年の輸出実績は一兆一千百四十八億と、前年度比一四%増、過去最高ということになりました。ポストコロナによって世界的に外食需要が伸びたということもありますし、また、円安だということも手伝ったというふうに思いますが、同時に、政府の取り組んでいる様々な取組も大きく貢献をしたのではないかというふうに思っています。

 現在、輸出重点品目二十九品目のうち、七団体十五品目について品目団体が創設されたということを承知しているところです。国内の産地がばらばらで取り組んで、同じ国に違う地域がどんどんと押し寄せていく、こんなことがあってはなかなか、同じ国でありながらお互いに足を引っ張ってしまう、こういうような状況になってしまうので、品目団体をしっかり設置をして、国として一致団結して取り組んでいくことが大事だ、こういう趣旨だと思うんですね。

 ところが、一方で、各県ごとは、それぞれの県ごとに産地ブランドをしっかりつくって、そして売り込みをかけていきたい。例えば我が長野県についても、協議会をつくって、今、年間輸出十二億を目標にしているんですが、これに向けて、昨年はほぼそれを達成しつつある、こういうところまで来ているんですね。

 国全体として品目団体で一致結束してやっていくという方向と、一方、それぞれの都道府県が、それぞれの地域がブランドを大事にしながら輸出を伸ばしていこう、こういう取組について、お互いに連携していかなきゃいけないと思うんですね、そごがあってはいけないし。どうやってこれをそれぞれの方向、輸出促進に向けていくのか、どんな取組をしているのか、伺いたいと思います。

野中副大臣 業界共通の輸出課題に対する情報収集や調査は、全国レベルの認定品目団体が主体的に実施することが効果的でありまして、各地域の団体、事業者に情報共有することが有益であります。

 ブランド化についても、全国団体が日本産のブランド価値を輸出先国で浸透させた上で、各地域がそれぞれ地域ブランド産品を売り込むことで相互作用が働いて、輸出拡大につながるというふうに考えております。

 このように、全国レベル、地域レベルとの連携については、都道府県の輸出促進協議会等が認定品目団体に加入し、その構成員として活動することが効果的でありますが、私ども農水省といたしましては、このような全国、地域間の連携を推進することによって、更なる輸出拡大を促進してまいりたいというふうに思います。

若林分科員 そうですね。輸出振興に当たってはそれぞれのステージがあるから、やはり、品目団体が国をまとめて突破していくという段階と、それから、それぞれの地域がブランドを生かしながら売り込んでいくというステージと、それぞれステージが違うので、そのステージに合わせた形で振興させていく。それを是非国が、また農水省がうまく調整をしていただけることを期待したいというふうに思います。

 自民党でもいろいろな会議で輸出振興の取組をしておりますが、現地それぞれ、様々ですね。香港、台湾、あるいはシンガポール、それぞれのテーマがあるので、それに合わせた形、マーケットインでの取組ということが大事だと思うので、是非お願いしたいと思います。

 残念なのは、東日本大震災の原発事故以降、輸出規制、我が国の農産物輸出に当たって規制をかけている国々がたくさんあります。だんだんと交渉することによって改善をしてきたんですけれども、今なお、中国、台湾、韓国といったような、近隣で大きなマーケットを持っているような、そういったところがいまだ規制が残っている。大変残念なことだというふうに思っています。

 私も何度か中国大使館に行って、規制を撤廃してくれというようなことを、自民党の農林部会の役員として伺ったこともありますが、なかなか壁は厚いなということでありますが、今、現状、どういう取組をしているのか、また、今後の意気込みについて伺いたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 原発事故に伴う日本産食品への輸入規制については、政府一体となった科学的根拠に基づく働きかけの結果、五十五のうち四十三の国、地域が規制を撤廃してきたところでございます。

 現時点で規制を維持しているのは、一部の都県等に輸入停止を続ける中国、韓国、台湾、香港等に加えて、検査証明書等を要求するEU、ロシア等の十二の国、地域のみとなりました。

 日本食品の安全性は科学的に証明されており、輸入規制は科学的知見に基づき早期に撤廃すべきというのが我が国の立場でございます。

 農林水産省としては、関係省庁と連携し、いまだに規制を維持する全ての国、地域に対して、あらゆる機会を捉えて規制の早期撤廃を働きかけているところであり、今後、一層の働きかけを行ってまいります。

若林分科員 農産物の輸出というのは、輸出をしている一方、国内の生産地はしっかり維持しながら、国内市場が縮小していく段階で輸出をしていく、まさに備蓄しているのと同じ意味合いもありますし、食料安全保障上も大変意義があるというふうに思います。今盛んに努力をいただいていると思いますけれども、大きな市場、近隣の諸国がなお規制をしているということについて、是非これからも突破していただけるように頑張ってもらいたいというふうに思います。

 さて、化学肥料の多くを輸入に頼っている我が国にあっては、ロシアによるウクライナ侵略や円安によって肥料価格が物すごく高騰して、多くの農家が悲鳴を上げていたわけであります。政府は、肥料価格高騰対策ということで、化学肥料の二割低減の取組を行った農業者に対して、コスト上昇分の七割を支援いただきました。このことは大変、現場に大きく評価をいただいたわけですが、一部組合、一部JA組織、私の地元のJAながのもそうだったんですけれども、国に先駆けて組合員に対して補助をしたということで、国の補助と併せて農家を助けよう、こういうふうにやったわけですが、ちょっと勇み足でやったということで、この取組は値引き扱いという扱いになってしまいました。JA系統の皆さんからすると、大変不満があるわけであります。

 もう少し、いい政策に取り組むに当たって、事前に系統組織や何かともっと調整をした上で取り組めばよかったなというふうに思うんですが、その点について伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 肥料価格高騰対策における支援金は、肥料価格の高騰による農業経営への影響を緩和するために措置したものでございます。

 このため、肥料の販売事業者が肥料の価格を値引きしたり、あるいは購入に対して助成を行った場合、農業者が最終的に負担された肥料費を基に支援金の額を算定することにしておりますので、この点については御理解いただきたいと考えております。

 この事業の仕組みについては、各地で開催する説明会の場での説明ですとか、事業のQアンドAの作成、公表を通じて周知を図ってまいりましたが、委員御指摘のとおり、制度を設計する前にいろいろ意思疎通を十分やるべきだということにつきましては真摯に受け止めて、更に丁寧に対応していきたいと思ったところです。

若林分科員 食料安全保障の観点から、肥料の国産化というのは大変急務だというふうに思っています。

 そこで、古くて新しい試みではありますが、下水汚泥の国内肥料資源への利用促進というのが対策を打たれたというふうに承知しておりますが、実証実験等の募集をかけている今の現状と、それから、これからの肥料の国産化に向けた目標についてお伺いしたいというふうに思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 四年度補正予算におきまして、国内資源を使った肥料の圃場での効果の実証ですとか散布機械の導入、それから、肥料の高品質化、ペレット化等に必要な施設整備等を支援する国内肥料資源利用拡大対策事業、百億円を措置したところでございます。

 本事業につきましては、昨年十二月二十一日から本年一月二十日まで第一次の募集を行いまして、現在、審査の手続を進めております。あわせて、本事業のうち、圃場での効果の実証等を行う支援事業につきましては二月一日から二月二十八日まで、また、ペレット化に必要な施設整備等を行います事業につきましては一月二十三日から三月十七日まで第二次の募集を行っているところでございます。

 いずれにしましても、原料の供給事業者、それから肥料の製造事業者、耕種農家などの連携が重要でございますので、関係者間のマッチングなどに取り組みつつ、本事業の活用を進めて、各地域において国内資源の利用が進むように取り組んでまいりたいと思っております。

 目標につきましては、先ほど副大臣の答弁の中にもありましたけれども、現在、リンベースでの肥料の総使用量が二十八・五万トンございます。家畜堆肥ですとか下水などの肥料成分を含有する国内資源のものは今二五%となっておりますので、十二月に決定いたしました食料安全保障強化政策大綱におきまして、二〇三〇年までに、堆肥ですとか下水汚泥資源の使用量を倍増し、肥料の使用量、リンベースに占める国内資源の利用割合を四〇%まで拡大ということを目標と設定しております。

若林分科員 肥料の国産化、極めて重要なテーマだと思います。今掲げた目標が着実に実行できることを期待したいと思います。

 配合飼料価格安定基金に関してお伺いしたいと思います。

 国と飼料メーカーが原資を積んでいく異常補填基金が枯渇したために、令和四年度第三・四半期の異常補填額が大幅に減額されるというような話がありました。畜産農家は非常に不安に思われたところであります。結果として、政府の決断によって差額分は補填してもらったわけですが、第四・四半期に向けて、異常補填が満額交付されるように緊急補填金の準備が必要だ、こう思いますけれども、これについてどのように対処されているか、伺いたいと思います。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 飼料価格の高騰に対しましては、これまでに、配合飼料価格安定制度における異常補填基金への累次の積み増しに加えまして、第三・四半期に、配合飼料一トン当たり六千七百五十円の補填を行う特別の緊急対策をさせていただいたということでございます。

 第四・四半期でございますが、高い飼料価格が経営を圧迫しているとの声がございます。配合飼料価格安定制度による補填につきましては、異常補填基金に対しまして、先般の補正予算、令和四年度の補正予算で百三億円の国費の積み増しを措置をいたしたところでございます。また、一月二十四日の物価対策本部におきます総理の指示を踏まえまして、第三・四半期の緊急対策、配合飼料コスト抑制対策を継続することで、生産者の皆様が安心して経営継続を見通せるように、具体的な対策を検討しているところでございます。

若林分科員 しっかりとした予算措置を取っていくということでありますが、今後も配合飼料価格安定制度の発動が見込まれる中で、これはメーカーの方の、国とメーカーと両方で支える制度でありますので、そちらの方の同意、了解もいただいていかなければならないということだと思います。その辺の協議の行方についてはどうなっていますでしょうか。

渡邉政府参考人 委員の御質問にお答えをいたします。

 配合飼料価格安定制度の異常補填基金でございますが、御指摘のとおり、国と飼料メーカーが同額を積み立てるということでございます。国は、先ほど申し上げましたように、昨年度より累次積み増しをしてきているところでございます。

 飼料メーカーにつきましては、第三・四半期までの異常補填に要した飼料メーカーの負担分につきまして、今後十年かけて手当てをする予定であるということでございますし、また、通常補填基金の積立ても必要だということで、負担が大きくなっているという現状にございます。

 いずれにいたしましても、農林水産省といたしましては、生産者の経営の安定を図るために、引き続き飼料メーカーと相談をし、その協力を得て、制度が安定的に運用されるように対応していきたいと考えてございます。

若林分科員 しっかりお願いをしたいと思います。

 農業は、おてんとうさまを相手に、常に様々な気象条件との闘いの連続であります。昨今、異常気象が続いていく中で、天候リスクというのは非常に高まっているというふうに思うんです。

 そうした中で、農業をやりながら子育てをしていく若い担い手にとって、収入保険の制度というのは、リスクヘッジするに当たっては大変重要な制度だと期待をされているところであります。しっかりと運営をしていかなきゃいけないと思っております。しかし、今、現行の保険金支払いの基準が、九割を上限とした上で、自己責任部分九割というのがあって、実質、収入減のうちの八一%の保険金支払いというふうになっていて、私の地元の担い手は、収入保険いいよね、こう言っていた仲間も、実際に利用しようと思ったら期待したほどじゃなかったな、もう幻滅だ、こんな話があるわけです。

 昨年、収入保険制度導入四年後の見直しの中でもこの問題について取り上げさせていただいたんですけれども、一方で、実は、この収入保険、保険契約に対して支払いする件数が非常に多くて、国庫を導入しながら保険制度として維持していくためには、今の支払い基準八一%の上限額を上げていくというのはとても難しいということで、残念ながら断念をしたところでもありました。

 保険というのは、多くの契約で一回一回の事故に対して対処をしていく、こういうことでありますが、一定率を超えて事故が起こると保険制度そのものが成り立たなくなってしまうということでありまして、今、現状の支払い実績が多いということは大変心配をしております。

 その点の、この原因ということについてどう見ておられるか、伺いたいと思います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 収入保険の保険金等の支払いの状況でございますけれども、制度開始以降、令和元年は加入者数の約三割に対して総額百六十九億円、令和二年は加入者数の約四割に対して総額三百五十億円、令和三年は加入者数の約五割に対して総額七百二十五億円を支払っております。

 特に、令和二年以降は、新型コロナウイルスの影響などが保険金等の支払い増加の要因になっていると考えているところでございます。

 今後とも、状況の変化を見ながら、保険制度として持続的に制度運営が図られるよう努めてまいりたいと考えております。

若林分科員 加入者数の四割だ、五割だなんて払っていたら、民間の保険会社ではとても成り立たないんですね。ですので、コロナという大変特殊な事情があったということでありますが、今後、これをしっかり、保険が制度として成り立っていくために、よく分析をしてもらいたいというふうに思います。

 収入保険の加入者数は、令和四年十一月末、七・九万経営体で、青色申告を行っている農業経営体の大体二割程度ということであります。保険というのは、とにかく、多くの皆さんによる支え合いという制度でありますから、この裾野をしっかり広げていく、そして、特殊な事情があったんだけれども、保険事故が一定の割合の中で収まっていくような形で、是非この制度をしっかりと維持していってもらいたい。若手の農業経営者の皆さんにとってまさに希望の制度だということでありますので、お願いを申し上げたいというふうに思います。

 私の地元の長野県は、雪深い、私自身は北信と言われる北部におりますので、豪雪地帯になるんですね。昔は、冬になると出稼ぎをしなければならない、家族がばらばらにならなければならないということで、それを何とかしなきゃいけないんじゃないかということで施設園芸が発達をした。そしてまたキノコの生産も、そういう中で、大きな施設の中でキノコを作るということで発達をしたところであります。全国有数のキノコの生産地にもなったわけであります。

 しかし、販売単価が厳しい中、厳しい経営を強いられている農家が多いわけであります。そんな中で、燃料や培地の資材費などが高騰して、大変、ここのところ苦しんでおりました。施設園芸セーフティネット構築事業の枠の中に入れてくれと何度も地元の方に要請を受けていたんですけれども、この枠組みの中にはなかなか入れることができないということでありました。

 こうした中で、長野県は、地方創生交付金を使って、単独で四億の予算を計上して、キノコ農家に対する支援をつくるようにしたんですね。その後、国も、県の対策を打った後、特用林産物に対する対策として、国内森林資源活用強化策ということで対応を打っていただきました。生産資材高騰の二分の一、補助をするということでやっていただいたわけで。長野県は、エリンギやシメジといった主産物、キノコ生産の主力については県単の方でやって、国の新しい事業についてはシイタケなどの対応に充てたということであります。

 私、昔から思っているんですけれども、今、エリンギだとかブナシメジというのは、実際の生産現場に行っていただくと分かるんですけれども、まさに施設園芸なんですね。施設の中でばんばんと、いろいろ燃料をたきながらやっています。シイタケのように森林の中で原木に菌を打って栽培するのと、ちょっと違うんですね。どうも、それを一緒くたにしていることによって対策がいつもちぐはぐになっているという感が否めないわけであります。

 こうしたシメジやエリンギ等について、特用林産物とはちょっと扱いを変えていただくことはできないものなのかということをかねて思っておりまして、今後、こうしたものについて、例えば先ほどの施設園芸セーフティネット構築事業のような、そういったものの検討というのを是非してもらいたいというふうに思うんですが、この点についていかがでしょうか。

野中副大臣 エリンギやシメジというキノコ類、これは経営費に占める燃料費の割合が一割で、他の施設園芸に占める燃料費の割合が二、三割ということから、それが理由で施設園芸セーフティネット構築事業の対象とはなっておりませんが、先ほど若林先生がおっしゃられたように、昨今のウクライナ情勢の燃料高騰、また、生産に必要な小麦ふすま、おが粉等の生産資材価格も上昇したということから、次期生産に必要な生産資材の導入費の一部に対する支援、この中に、燃油価格高騰の影響を受けた生産者の補助率をかさ増しをしたところであります。

 セーフティネット構築事業の対象にせよというところは、なかなかいい答えが、今お答えすることはできませんけれども、令和五年度予算についても、省エネ化、コスト低減に向けた施設整備への支援を計上するというところもやっておりますし、生産者の実情を見ながら、必要な支援に取り組んでまいりたいというふうに思います。

若林分科員 ありがとうございます。セーフティネットというのにはなかなかならないということであります。

 ただ、以前、実は、役所のやるベジタブルフェアにキノコは入れられません、林産物ですから、こう言われたことがあって。しかし、民間のキノコ業者なんかはベジタブルだという売り込みをしながら、価格が冬にずっと相場が上がって、夏は駄目になっちゃうんだけれども、夏の対策ということでそんな売り込みもしているんですね。

 長野県は、実は、シメジやエリンギというのは農政部でやって、シイタケや何かは林務部でやるということで変えているんですね。分野をどこに置くかによってちぐはぐになっているという思いをずっと持っておりまして、この点を是非将来の課題として、一言申し上げておきたいというふうに思います。

 質疑時間が終わりました。最後のバッターとしておつき合いをいただきました。ありがとうございました。

堀井主査 これにて若林健太君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十一日火曜日午前九時より開会し、引き続き農林水産省及び環境省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時三分散会


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