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第1号 令和6年2月27日(火曜日)

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本分科会は令和六年二月二十二日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      伊藤 達也君    上野賢一郎君

      古屋 圭司君    階   猛君

      米山 隆一君    赤羽 一嘉君

      田中  健君

二月二十六日

 上野賢一郎君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和六年二月二十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 上野賢一郎君

      伊藤 達也君    岸 信千世君

      古屋 圭司君    神谷  裕君

      階   猛君    米山 隆一君

      赤羽 一嘉君    稲津  久君

      田中  健君

   兼務 勝目  康君 兼務 鈴木 英敬君

   兼務 西野 太亮君 兼務 山本 左近君

   兼務 和田 義明君 兼務 櫻井  周君

   兼務 緑川 貴士君 兼務 赤木 正幸君

   兼務 遠藤 良太君 兼務 和田有一朗君

   兼務 穀田 恵二君

    …………………………………

   経済産業大臣       齋藤  健君

   内閣官房副長官      村井 英樹君

   内閣府副大臣       工藤 彰三君

   総務副大臣        馬場 成志君

   文部科学大臣政務官    本田 顕子君

   経済産業大臣政務官    石井  拓君

   経済産業大臣政務官    吉田 宣弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  門松  貴君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 上村  昇君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小林  豊君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          小池 信之君

   政府参考人

   (財務省主税局国際租税総括官)          細田 修一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           永井 雅規君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         南   亮君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         上村 昌博君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    茂木  正君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房首席スタートアップ創出推進政策統括調整官)      吾郷 進平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           菊川 人吾君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井上誠一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林  出君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦田 秀行君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           橋本 真吾君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西村 秀隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           牛山 智弘君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          畠山陽二郎君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          野原  諭君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 松山 泰浩君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         山田  仁君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      久米  孝君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    清水 幹治君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松浦 哲哉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           楠田 幹人君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          大島 俊之君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 北尾 昌也君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  古屋 圭司君     岸 信千世君

  階   猛君     神谷  裕君

  米山 隆一君     野間  健君

  赤羽 一嘉君     庄子 賢一君

  田中  健君     長友 慎治君

同日

 辞任         補欠選任

  岸 信千世君     古屋 圭司君

  神谷  裕君     階   猛君

  野間  健君     山田 勝彦君

  庄子 賢一君     河西 宏一君

  長友 慎治君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 勝彦君     大島  敦君

  河西 宏一君     稲津  久君

  鈴木 義弘君     西岡 秀子君

同日

 辞任         補欠選任

  大島  敦君     米山 隆一君

  稲津  久君     吉田久美子君

  西岡 秀子君     長友 慎治君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田久美子君     伊佐 進一君

  長友 慎治君     田中  健君

同日

 辞任         補欠選任

  伊佐 進一君     中川 宏昌君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 宏昌君     赤羽 一嘉君

同日

 第一分科員和田義明君、和田有一朗君、第二分科員遠藤良太君、第四分科員鈴木英敬君、櫻井周君、第五分科員山本左近君、第六分科員勝目康君、穀田恵二君、第八分科員西野太亮君、緑川貴士君及び赤木正幸君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和六年度一般会計予算

 令和六年度特別会計予算

 令和六年度政府関係機関予算

 (経済産業省所管)


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     ――――◇―――――

上野主査 これより予算委員会第七分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました上野賢一郎でございます。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、経済産業省所管について審査を行うことになっております。

 令和六年度一般会計予算、令和六年度特別会計予算及び令和六年度政府関係機関予算中経済産業省所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。齋藤経済産業大臣。

齋藤(健)国務大臣 令和六年度経済産業省関係予算案の概要を御説明申し上げます。

 初めに、本年一月一日に発生しました令和六年能登半島地震において亡くなられた方々に心から御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。

 震災からの復旧復興を進め、一日も早く元の平穏な生活を取り戻すことができるよう、関係省庁とも連携しながら、被災者の生活となりわいの再建支援に全力を尽くしてまいります。

 我が国経済は、国際経済秩序の変化やコロナからの再興といったマクロ環境の変化に加え、これまでの様々な施策の効果もあり、百兆円規模に達しつつある国内投資、三・五%を超える賃上げ、双方において実に三十年ぶりの高水準を示しているところであり、成長と改革の方向に向かう潮目の変化ともいうべき兆しが生じています。

 こうした潮目の変化を踏まえ、従来のデフレからの脱却、その先の新時代の経済構造への変革に向けた流れを確実なものとし、日本経済の持続的な成長を実現してまいります。

 このため、令和六年度経済産業省関連予算案として、一般会計三千五百八十億円、GX推進対策費六千四百二十九億円を含むエネルギー対策特別会計一兆三千九百七十一億円、特許特別会計一千五百二十一億円、合計一兆九千七十二億円を計上いたしました。また、復興庁計上の東日本大震災復興特別会計のうち、三百億円が経済産業省関連予算案として計上されております。

 委員各位におかれましては、よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。

 なお、詳細の説明はお手元に配付しております資料のとおりですが、時間の関係もございますので、主査におかれましては、何とぞ会議録に掲載されますよう御配慮をお願い申し上げます。

上野主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま齋藤経済産業大臣から申出がありましたとおり、経済産業省所管予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上野主査 以上をもちまして経済産業省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

上野主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。西野太亮君。

西野分科員 おはようございます。熊本二区選出、自由民主党の西野太亮でございます。

 昨年に続きまして、経済産業省所管、第七分科会での質問をさせていただきます。昨年はサーキュラーエコノミー一本に絞って質問をさせていただきましたけれども、今日は、ちょっと壮大なテーマになりますけれども、日本経済の再興という観点から質問させていただきたいと思います。総花的で議論が深まらないかもしれませんけれども、私の問題意識に沿って、できるだけ体系的に質問させていただきたいと思います。

 まず、冒頭ですけれども、先日、日本経済にとって大変ショッキングなニュースが飛び込んできました。昨年、二〇二三年、一年間のGDPがドイツに抜かれて四位に転落したというニュースです。

 私は今四十五歳ですけれども、我々世代にとっては、物心ついた頃から、日本はアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国だということで教わってきましたし、それがある種自然なことだ、そしてまた、ある種の誇りというふうに思ってきました。それが二〇一〇年に中国に抜かれて、その後も、インドみたいに人口が多くて先進国のまねをする、キャッチアップをすることによって、日本がGDPを追い抜かれることはあるんだろうなというふうに覚悟しておりましたけれども、今回は、まさか日本よりも人口規模が少ないドイツに抜かれたということで、私はそれなりのショックを受けているところでございます。

 今回の四位転落については、様々な評価、様々な見方がありますので、一喜一憂せずに、やるべきことを着実にやっていくということが重要なのかもしれませんが、私は余り楽観視していないというところがあります。

 というのも、今回の四位転落について最も大きいのは、やはり物価と為替の影響だという見方が多いんだと思いますけれども、私は、その二つも含めて、まさに日本経済の実力なのではないかというふうに思います。

 物価に関しても、例えば、バブル崩壊後、当時の経営者たちが、それまでの経営の在り方を反省して、無駄をそぎ落とす、コストカットを進めていく。当時としては正しかったのかもしれませんが、局面が変わった今でもその状況から脱し切れていない。まさに日本の実力だというふうに思います。

 そして、為替に関しても、為替が落ち着けば、それはGDPがまた復活していくんだという見方がありますが、為替も変えられないというのが私は今の日本の現状なんだと思います。

 例えば、一つの方法として為替介入がありますけれども、一九九五年、三十年前は、日本経済の世界全体のGDPに占める割合が一七・五%ありました。それに加えて、アメリカは二五%程度ありましたから、協調介入すれば、世界全体の四割程度で為替介入できたわけです。かなりの迫力がありました。それに対して、二〇二二年は、日本のGDPが世界全体に占める割合は四・二%、しかも単独介入ということで、はっきり言ってしょぼいといいますか、効果はかなり限定的だというふうに思います。

 それから、内外の金利格差が為替に影響を与えているという見方がありますけれども、確かにそうだと思いますが、だからといって、金利を上げることができるような状況ではないと思います。金利を上げれば、またデフレに逆戻りしてしまうかもしれない、さらには、利払いができなくて倒産する企業が続出してしまうかもしれない。

 そういう状況の中にあって、なかなか金融政策の正常化というものも今すぐにできる状況ではないと思いますので、私は、こういったことも含めて日本経済の現状だ、実力だということを素直に認めて、現実を直視して、やはりやるべきことをしっかりやっていくということが重要なんだろうというふうに思っています。

 というのも、経済というのは、直接的には、確かに我々の生活の豊かさに結びつくものかもしれませんが、間接的には、社会保障であったり、教育であったり、国土強靱化であったり、防衛力の強化であったり、影響するわけですから、我々の心の豊かさにも直結する問題だというふうに思います。私たちは、危機感を持って、国民の皆様方とその思いを共有して経済の立て直しに取り組んでいくということが必要だというふうに考えています。

 その上で、齋藤大臣にお伺いしたいと思います。

 齋藤大臣は、私が大変尊敬する政治家でもありますし、また、日本を代表する政治家だとも思いますけれども、その齋藤大臣からして、今回の四位転落をどのように受け止めていらっしゃるのか、そしてまた、日本経済をどのように立て直していくお考えなのか、覚悟も含めてお考えを聞かせていただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、西野委員の問題意識、私も全く共有するところであります。

 今、お話の中で一九九五年のお話がありまして、あのときは、私はちょうど日米交渉をやっている立場にありまして、アメリカ政府の口先介入によりまして、一ドル八十円を切るというところまで、為替に対する口先介入と当時言っていましたけれども、一気に円高が進みました。それが七十九円ですから、今の相場と考えると、いかに大きく世の中が変わっているのかということは改めて実感したところであります。

 御指摘のとおり、先般公表された二〇二三年のGDPは、ドイツが日本を上回って、日本が四位になったわけでありますが、これは、まず為替レートが大きく影響しているということではありますが、私は、日本の成長力が低下をしているということも反映をしているのではないかと思っています。

 一九九〇年代のバブル崩壊以降、長引くデフレの背景には、企業が足下の利益の確保のために、コストカットに注力をして、賃金や成長の源泉である投資を抑制したことが、消費の停滞や物価の低迷、さらには経済成長の抑制につながったことにあると認識しています。日独の歩みをこの間分析をしましたが、明らかにその傾向が見て取れるわけであります。

 こうしたデフレ心理とコストカットの縮み志向の経済から完全に脱却することは、私は、日本経済にとっての最優先事項であろうと思っています。賃上げが家計の消費を押し上げて、その結果、物価が適度に上昇をする、そしてそれが新たな投資を呼び込み、企業の成長や更なる賃金上昇につながる、こういった好循環を実現しなければならないと思います。

 現在の日本経済は、国内外のマクロ環境の変化と、社会課題解決を成長のエンジンとする積極的な産業政策により、潮目の変化を迎えていると思います。実際、百兆円規模に達しつつある国内投資、三・五%を超える賃上げ、双方において三十年ぶりの高水準を示しており、着実な潮目の変化が見られます。

 私は、ここは日本の経済政策の正念場を迎えているのではないかというふうに思っています。足下の変化の兆しを確実なものとして、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる成長型経済へ転換できるように、この機を逃すことなく積極的に取り組んでいきたいと考えています。

西野分科員 大臣、ありがとうございます。

 大臣はここで退室していただいて結構でございます。各論については、政務官そして役所の皆さんと議論をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

上野主査 では、齋藤大臣におかれましては、御退席をお願いいたします。

西野分科員 今、齋藤大臣から、デフレ脱却、日本経済にとっての最優先課題だというお話がありました。本当に私もそのとおりだというふうに思いますが、一方で、デフレ脱却というのは、私は日本経済立て直しの一里塚にすぎないというふうにも思っています。

 デフレを脱却して資金の流れを力強いものにした上で、本来本当にやるべきこと、構造改革であったり、成長戦略であったり、潜在的な成長力を向上させる取組をしっかり進めていく。いわば、人間の体でいえば、しっかり血の流れを確保した上で手術を断行するということが必要だというふうに思っておりますので、これから、デフレ脱却後の取組について、あるいはデフレ脱却とともに進めなくちゃいけない取組について見ていきたいというふうに思います。

 経済というのは、皆様方御案内のとおり、様々なファクターから成り立っておりますので、できるだけ、そのファクター一つ一つについて体系的に議論をしていきたいというふうに思います。

 まずは、供給サイドの話ですけれども、私の地元の支援者の皆さん方も今動画中継を見ていただいていると思いますけれども、供給力というのは、例えば、トマトを作っていらっしゃる方であれば、トマトを作る力だというふうに考えていただければと思います。ノリを作っている方であれば、ノリを生産する力だというふうに思っていただければと思います。

 その中で、一番最初に重要になるのが労働力の拡充だというふうに思います。例えば、一人当たりのGDPがそんなに大きくないインドであっても中国であっても、人口が多いからこそ、GDP総体としては非常に力強いものがあるわけでございます。

 やはり、稼ぐ力である労働力人口をいかに増やしていくかということは非常に重要なテーマだと思います。もちろん、そのために、岸田政権としては、異次元の少子化対策ということで、出生数を増やそうというふうに努力しています。

 しかし一方で、出生数というのは、今頑張って取り組んだとしても、二十年後までは、ある程度もう労働力人口は想定されていますので、それは所与のものとして進めていかなくちゃいけない。そうなると、女性の活躍であったり、高齢者の皆さん方にどれだけ現役として活躍してもらうのか、さらには、外国人人材をどう活用していくのか、こういった議論一つ一つについても、しっかり丁寧に進めていくんだと思います。

 もちろん、国論を二分するようなテーマもございますので、そういったテーマについては、本当に政治を挙げて、政治の熱量をかけて取り組んでいく、そういう局面が出てくることもあろうかと思いますけれども、いずれにしても、一つ一つ丁寧に取り組んでいく必要があるというふうに思います。

 次に、伝統的な経済学では、資本と全要素生産性を分解して考えることが一般的であるというふうに承知をしておりますけれども、でも、実は、よくよく考えてみると、資本と全要素生産性、この限界というのは明確じゃない部分がありますので、それを一体として考えて、労働生産性という議論が今は主流だというふうに聞いておりますので、それに沿って議論をしていきたいと思います。

 まず、生産性を向上させるために、いろいろなテーマ、いろいろな課題があると思いますけれども、私、一つは、労働力の雇用の流動性、これを確保するということが一つ大きなテーマになるのではないかというふうに思います。

 例えば、経営者の観点から、より質の高い雇用、より質の高い労働者を確保する、そういった環境を整備することが重要ではないか。さらには、逆の観点、労働者の観点からは、より生産性が高い、そして、より高い賃金を支払ってくれる職場環境を求める環境を整備することが重要ではないかというふうに考えます。

 前者の観点に関しては、やはり労働法制に関わる、国民世論を二分するような壮大なテーマでございますので、これは丁寧に議論していかなくちゃいけないのかもしれませんけれども、少なくとも、現時点で政府として取り組んでいただいております、労働力の観点から、より高い賃金を支払ってくれるような環境、職場を求められるような、そういう取組について、経済産業省として、政府として、どのように取り組んでいらっしゃるのかを教えていただきたいと思います。

井上(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、労働の円滑な移動というのは経済成長にとっても非常に重要というふうに認識しております。とりわけデジタル化や脱炭素化の進展によりまして急速に産業構造が転換していく中で、成長のエンジンとなる事業も大きく変化していくことが予想されております。そういった中で、これらを支える人材の育成、そして確保が必要と考えております。

 このため、新たなスキルの獲得を後押しするリスキリングの支援、そして成長産業への労働移動の円滑化を同時に進めながら、生産性の向上、さらには、それによる構造的な賃上げにつなげていくことが重要だというふうに考えております。

 経済産業省といたしましては、補正予算で措置をいたしまして、在職者のキャリア相談からリスキリング、転職までを一体的に支援する事業などに取り組んでおりまして、企業間、産業間の労働移動の円滑化とリスキリングを一体的に推進しておるところでございまして、今後ともしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。

西野分科員 ありがとうございます。

 今、雇用の観点から、より生産性の高い分野にどうやって雇用を移動させていくかという観点からお答えいただきましたけれども、今度は、企業、どうやってより生産性の高い企業を生み出していくのか、そして、企業のある意味での新陳代謝を図っていくのかという観点から質問させていただきたいと思います。

 政府としては、将来のユニコーン企業、さらにはゼブラ企業、こういったものを生み育てるべく、生産性の高い新たな企業設立、いわゆるスタートアップ支援に取り組んでいるというふうに承知しております。そして、その取組は重要なことだというふうに思いますけれども、一方で、労働力人口が減少する中にあって、生産性が余り高くない企業に労働力が滞留しているというのも好ましくないのだというふうに思います。

 やはり、スタートアップ支援と企業の新陳代謝というのは表裏一体のものだというふうに思いますけれども、政府としては、その二つの両立、どういうふうに考え、どのような取組を進めていらっしゃるのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

井上(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国の経済全体の生産性を高めるためには、新規参入や退出を適切に促し、とりわけイノベーションの担い手であるスタートアップなどに人材が集まっていくことはとても重要だというふうに考えております。

 経済産業省としては、企業の新陳代謝の促進に向けまして、成長のための人材確保や、そのための資金、ネットワーク形成等の課題を有するスタートアップ支援を強力に推進をするとともに、地域において良質な雇用の提供者となり国内投資も伸ばしている中堅企業の更なる成長も後押しをするということで、労働移動も促していくというふうにしていきたいというふうに考えております。

 具体的には、スタートアップにつきましては、人材確保や資金供給、オープンイノベーションの促進に向け、ストックオプション税制の拡充ですとか、官民ファンド等による資金供給の強化、オープンイノベーション税制を通じた事業会社との連携促進などに取り組んでいくというふうな考え方をしております。

 また、中堅企業につきましては、成長や賃上げに向けた、複数の中小企業をMアンドAするグループ化を後押しする税制措置ですとか、大規模な設備投資に対する新たな補助制度の創設等によりましてこれらの取組を促していきたい、こういうふうに考えているところでございます。

西野分科員 ありがとうございました。

 先ほどの雇用の流動性と併せて、企業の新陳代謝というのは、ある意味で、場合によっては血を流す大きな改革になり得る壮大なテーマでございますので、こういったところは、やはり政治の力でしっかり決断を下していかなくちゃいけないテーマなのかなというふうに思いますけれども、それでもスタートアップ支援などを通じて、緩やかにソフトランディングした形で、そういった企業の新陳代謝が図られるという取組は今していただいているということでお答えをいただいたんだというふうに思います。

 次に、日本経済の重要な課題として、どうやってイノベーションを生み出していくのかという重要な課題があります。

 イノベーションというのは、新たな仕組みや習慣を取り入れて、革新的な価値を創造するというふうに定義されております。例えば、オープンイノベーションの普及活動を行うJOIC、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会とNEDOが二〇二〇年にオープンイノベーション白書というものを発表しておりますけれども、その中で日本企業の問題点が幾つか指摘されておりますけれども、私が注目したのが多様性ということです。

 同質性が高い組織では、当然、新たな発想は生まれにくいというふうに思いますし、自分と同じということが当たり前であれば、自分と違う人、違う考え、違うアイデアに対して非常に排他的になりやすい傾向があるんじゃないかというふうに思います。

 逆に、多様な人材が活躍する組織であれば、様々な角度から様々な発想が生まれてきますし、そもそも、自分と違う人たちが周りにいるのが当たり前ということで、自分と違う人、自分と違う考えに対して寛容になる、そういう組織だと思います。そういう組織から、私はイノベーションは起こるというふうに確信しております。

 企業人材の確保、多様な企業人材の確保という観点からかもしれませんけれども、経済産業省として、イノベーションを起こすために、多様性を確保するためにどういう取組を行われているのかということについても聞かせていただければと思います。

井上(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、人材の多様性を高めることということは、イノベーションの観点からも非常に重要であるというふうに私どもも認識しております。

 経産省としては、具体的に、多様な人材にその能力を生かして活躍いただくダイバーシティー経営というのを取り組んでおります。

 具体的には、ダイバーシティー経営を企業に実践していただくというために必要なアクションを整理したガイドラインを作成しておりまして、そういったガイドラインの普及を通じまして、ダイバーシティー経営を企業に促しているというところでございます。そして、そういったダイバーシティー経営で成果を上げた企業の表彰なども行ってきておりまして、先進事例の発信等を行っているところでございます。

 引き続き、こうした企業のダイバーシティー経営を後押ししていきたい、こういうふうに考えております。

 さらに、ダイバーシティー確保の観点からは女性の活躍も非常に重要でございまして、女性活躍推進に優れた企業を、投資家に魅力ある企業だということで、なでしこ銘柄として紹介するという取組を行っておりまして、経産省としては、こうした取組を通じて、企業のダイバーシティーの確保というのを推進していきたいというふうに思っております。

西野分科員 ありがとうございました。

 今、生産性を高めるために、全企業、全産業に共通するような横串の議論について見させていただきました。

 その横串の議論の最後に、少しだけお話をさせていただきますと、今、新たな価値観、そして政策課題というものが次から次に生まれています。例えば、デジタルトランスフォーメーション、グリーントランスフォーメーション、人工知能とかIT、こういったものを使って技術革新を生み出していく、さらには環境に優しい技術革新を生み出していく、こういった価値観に基づいて産業を発展させるという切り口がありますけれども、この点について、政府を挙げて最大限の支援をしているというふうに承知しております。

 ただ、私としては、個別の産業についてもしっかり、ビッグピクチャーといいますか、想定を描きながら産業政策というものを推し進めていく必要があるのではないかというふうに思っています。

 特に、私は、二十一世紀の日本がどういった産業で食っていくのかということについてもしっかり考えていく必要があるというふうに思っておりますけれども、政府として、この観点から、日本の産業についてどのような将来像を描いていらっしゃるのか、今申し上げたようなDXとかGXとか、そういった切り口も含めてお答えいただければというふうに思います。

井上(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省としては、国内外の経済社会環境の変化を捉え、社会課題解決を成長のエンジンとすべく、市場だけでは進みにくい分野に対して、重点的に官民が連携し、大規模、長期、計画的に投資を進める取組を経済産業政策の新機軸として推進しているところでございます。

 この中で、委員が御指摘されたGX、DXなどにつきましては、日本の課題解決の必要性、世界での課題解決に向けた必要性、日本の貢献の可能性を踏まえまして、八つのミッションとして位置づけて政策を強化しているところでございます。

 例えば、GXの実現につきましては、二〇五〇年カーボンニュートラル等の我が国が掲げる排出削減目標と、産業競争力、経済成長を共に実現していくような総合的な政策を進めているところでございます。

 こうした取組を着実に進めていくことで、足下で生じている変化の兆しを確実なものとし、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる成長型経済への転換を実現してまいりたい、こういうふうに考えております。

西野分科員 ありがとうございます。

 今、審議官からお答えいただきましたけれども、DX、GX、そういった切り口で産業支援を行うということももちろん重要だというふうに思いますし、ある意味、そういった建前を通じてでなければ個別の産業支援をしにくいという面があるんだろうというふうに思いますけれども、私、政治家の観点から申し上げますと、世界各国の大企業が、いろいろな分野で、自動車であっても半導体であっても、本当にしのぎを削っている。さらに、重要な物資については、政府としても、もうあからさまにてこ入れをしている、支援している。

 そういう状況にあっては、日本でも、ある意味なりふり構わずに、個別の産業であっても支援しなくちゃいけないんじゃないかというふうにも考えているところでありますけれども、政府として、お答えできる範囲で、そういった考えについてお答えをいただければと思います。

井上(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 GXやDXなどによって産業競争力を強化する上では、個別産業ごとの特性も踏まえながら、委員御指摘のとおり、企業の投資を促進していくということが重要だというふうに考えております。

 GX、DXなどの経営改革を促進するため、脱炭素化投資やデジタル化投資に対する税制措置等を講じるというふうにしておりまして、その際、個別の事業分野ごとの特性を踏まえた要件を満たすことを求めているところでございます。

 来年度税制改正におきまして、戦略分野国内生産促進税制として、内外の市場を獲得すること等が特に求められる分野である電気自動車やグリーンスチール、グリーンケミカル等々の対象を特定化した上、大規模、長期的な措置を講ずることとしたいというふうに考えております。

 今後とも、個別産業分野ごとの実態を踏まえながら、その特性に応じた有効な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。

西野分科員 ありがとうございます。

 もう時間もあと五分前ということで迫っておりますので、皆さん方、用意していただいたかもしれませんが、少しちょっと質問を飛ばさせていただきたいと思います。

 私、今申し上げているとおり、やはり二十一世紀の日本が何で食っていくのかということをしっかり考えていかなくちゃいけないというふうに思っておりまして、例えば、自動車産業、これはもう長年にわたって日本経済を支えてきた基幹産業でありますけれども、例えば、CASEと呼ばれる変革の中にあって、特に、脱炭素化をめぐって諸外国から脱エンジンの流れをしかけられているというふうに認識しています。

 こうした状況の中にあって、自動車産業は岐路に立たされている。そうであれば、自動車産業がしっかり生き残っていく、日本経済を牽引していく基幹産業として発展していくということももちろん重要ですけれども、それ以外の産業、日本経済を支えていく産業についても生み育てなくちゃいけないだろう。

 例えば、潜在能力があるものとして、個人的には、半導体であったり、造船であったり、空飛ぶ車であったり、そういった様々な製品、様々な産業について、しっかりと政府としててこ入れすることによって、日本経済を牽引していけるような、そういう産業に押し上げていくということも重要なのではないかというふうに考えているところでございます。

 その中で、今、供給サイドの話をずっとさせていただきましたけれども、需要サイドについても、一つ一つ丁寧に、消費の拡大、そして投資の拡大、そして輸出促進、こうした切り口で皆さんと一緒にこれからも議論していきたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、私の当選同期の石井政務官にお伺いしたいというふうに思いますけれども、今までの議論を踏まえた上で、冒頭申し上げたとおり、デフレ脱却も非常に重要なテーマだと思いますけれども、それはあくまで一里塚にすぎなくて、それと同時に、様々な潜在成長力を押し上げるような取組をしていかなくちゃいけないというふうに考えております。

 そうした点から、政務官として、政府として、どのように取り組んでいくのか、意気込みも含めて考えをお聞かせいただければと思います。

石井大臣政務官 西野先生の問いにお答えしたいと思います。

 まず申し上げたいのは、私自身も、この日本の経済をしっかりとよくしたい、そして、それができる、今こそがチャンスであると私は思っております。この職に就いていて、そして、今日の答弁、質問も含めて、しっかりと気合を入れさせていただいたつもりでおります。ありがとうございます。

 先ほどから大臣の答弁にもございました、今、足下で潮目の変化が生じておる。百兆円の規模に達する国内投資、そして三・五%を超える賃上げ、双方において三十年ぶりの高水準を示していると言われております。

 こうした変化の兆しをしっかりと捉えて、それが長らく停滞していた日本経済を反転させる千載一遇のチャンスである、そう認識しております。デフレ脱却にとどまらず、日本経済を持続的な成長軌道に飛躍させていくための経済構造の転換を進めていく必要があると認識をしております。

 具体的には、国内投資については、GX、DXなどの戦略分野で世界をリードするための成長投資や、人手不足に対応するための省力化投資を促進することであります。日本には、これを実現する技術はあると思うんです。そして、投資と人材、これがかなえば、しっかりと成長していくと認識をしております。

 特に、GXは、資源のないこの日本の中で、合成燃料あるいはメタネーションなど、技術でエネルギーをつくることができる。もちろん、大量消費する日本でありますから、海外からつくって持ってこなきゃなりません。しかし、その技術と、そして国内でつくることができる、これをしっかりと我々の時代で確立していきたい、そう思っております。

 同時に、スタートアップや中堅企業の成長を通じた、委員おっしゃられる新陳代謝、これも重要でありまして、必要な労働移動のためのリスキリングなど、こういったことを一体として進めて、経済構造を転換して成長型経済を実現してまいりたい、そう思っております。

西野分科員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

上野主査 これにて西野太亮君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田有一朗君。

和田(有)分科員 日本維新の会の衆議院議員、和田有一朗でございます。

 この分科会では、できるだけ航空宇宙産業の進展ということを中心にお聞きしたいと思っております。

 今も、先ほど西野先生が、これから次の時代、どうやって日本は食っていくのかということを熱く語られましたが、やはりその中で一つの柱が航空宇宙産業だろう、私はそのように思っております。その中で、せんだって、ロケットが、H3が成功をいたしました。そのことを含めながら、国の開発ということについてまずお聞きしていこうか、こう思っております。

 まず、国の開発についてお聞きしていこうと思います。

 H3の成功があった、それから、SLIMが何とか今日もまたデータを伝送してくれる、伝送ということは今の時代使いませんかね、データを送ってくれている、そういうこともございます。それに向けて、今後幅広くやっていくためにはいろいろな作業が要るだろう、そういうことを聞いていきます。

 まずは、この間のH3、私も見に行かせていただきました。非常に感動をいたしました。この作業に携わられた全ての皆さんに、私は、お疲れさまでしたとまずは言いたいと思うんです。

 普通、国の機関が、こういう失敗があると、あとは非常に時間をかけて、この原因究明をしたり、審議会でいろいろな議論をしたりということになるんですけれども、早期の打ち上げに、再開を重視して、非常にエネルギーを注いだ。その中で、スピーディーに、一年足らずでここまで来た。これは非常にすばらしいことだと私は思います。労をねぎらいたいと思います。

 それは、単に携わった方だけではなしに、実は地元の皆さんも、これを支えてくれた多くの国民の皆さんの力もあってできたんだろうと私は思います。あのロケットの上に、実は多くの皆さんからいただいたメッセージを貼り付けてあるんですね、ロケットのフェアリングに。こういうものがなければ、技術屋さんたちも心が折れてしまったと思います。そういう国民的な大きな動きの中で成功ができた。

 暗いニュースが続きました。正月から、羽田の事故もあるし、当然、能登の、石川県のあの地震もあるし。そんな中で明るい話題を提供できたし、こういうことは、やはり国民の心を一つにして、前を向いていくような機運をつくることができる、私はそう思いました。

 H3は、実は、これはもう後がなかったんだと思うんです。私は前の失敗のときも実は見に行っています。その前に、飛ばなかったときも見ています。非常に私は、ロケット、宇宙開発に関心があって、ずっとウォッチをしてきたんですね。それで、やっと上がったみたいな感じで。こういう言い方はよくないんですけれども、でも、正直言って、今回、なかなか厳しいものがあったら、国民的なコンセンサスというのは取りにくかったと思うんです。やはり、本当に瀬戸際の中で、職人かたぎを発揮して、背水の陣の中で臨んで成功ができた。

 私、辛口のことをこれから言いますけれども、実はSLIMも同じ状況だと思うんです。今言いましたように、伝送写真を、伝送写真って、古い言葉ですね、私も言うのが。まだ若いつもりなんですけれども。データをちゃんと送ってきてくれていますけれども、辛うじてあれは立っているんです、あのSLIMというのは。これは、奇跡的に踏みとどまって、たまたま太陽パネルが向いている方向がよかったから、電気をうまい具合に起こして動いてくれている。これを山川理事長は、六〇%の成功だ、何とか合格点だと。確かにそうだと思います。これは、角度が変わっていたら五九%で、合格点はもらえなかったと思うんです。神がかり的なものです。神様が守ってくれたようなものですよ、これは。私はそう思います、本当に。

 こんなものは奇跡頼み、神風頼みでは駄目なわけでありまして、そういう中で、何でこうなったかというと、気の緩みを指摘する方もいらっしゃいます。効率化を追うばかりに、点検、検査の技術の継承がうまくできていなかったんじゃないかとか、人材育成がうまくいっていなかったんじゃないかという声もあります。でも、そういう中で何とか踏みとどまった。

 もうちょっと続けますけれども、OMOTENASHIも、イプシロンも、H3も、SLIMも、ちょっと前では論文の話も、JAXAに関しては極めていろいろな議論が実はあります。そういうことを乗り越えて、これから宇宙開発をやっていかなきゃいけない。

 そんな中で、今回、何度も言いますけれども、失敗はつきものなんです。ロケットに失敗はつきものです。宇宙開発も失敗はつきものです。新しい科学技術をつくるためには失敗が必要です。それを積み重ねて成功していきます。これは、ファルコンだって、アメリカの民間企業だって、みんな山のようにロケットを失敗しています。でも、これでもやり続けて、技術をつくっていかなきゃいけない。

 そういう中で、ようやくスタートラインに立てたと思うんですが、そこで、国による開発について、今回のH3の成功やいろいろなことを含めて、どう感じておられるのかお聞かせください。

本田大臣政務官 和田委員にお答え申し上げます。

 まずは、二月十七日の成功に向けて、昨年の三月七日の失敗のところから、研究に関わった、そして、打ち上げに向けての国民へのところに関しまして、大変に温かい言葉をいただきましたことに御礼を申し上げます。

 そして、H3ロケットについてでございますけれども、やはりまずは原因究明に向けて、失敗に係る調査、要因や、背後要因についてしっかり設定をしていくことが必要で、今後のロケットの信頼性向上に向けた取組として、電気系開発の強化のためにエンジニアを柔軟に確保するとともに、専門家の多面的な知見を活用する等の改善策を抽出したところでございます。

 SLIMにつきましては、もう御案内のとおり、二基目のエンジンのうち一基が機能を喪失してしまったところではございますけれども、異常検知以降も自律的に姿勢を制御し、ピンポイント着陸を実施したところでございます。

 現在、JAXAでは、生じた事象について詳細な原因調査に取り組んでおり、今後、具体的な原因や課題等が判明次第、必要な対策を講じていくこととしております。

和田(有)分科員 意気込みも伺えたと思います。時間が限られた中で質問をやっていきますので、これ以上聞きませんけれども、SLIMも実はH3と一緒なんですよね。エンジンなんですよ。イプシロンもエンジンなんですよ、射場で爆発したのも。やはりそれはH3並みに徹底的に恐らく究明すると思いますし、やって次につなげていただきたいと思います。

 次に、国だけでは宇宙開発、航空宇宙産業というのはできません。民間の力が必要になってまいります。当然、民間の力というのは産業です、これは。食うための種です。そういう中で、稼ぐ力にこれから航空宇宙産業はなってもらう必要がある。なれるし、なるべきだし、宇宙先進国の一極であり続けなければならない。そのためには民間企業の存在感というのは欠かせません。

 科学技術の裾野を広げるためには、大学や研究機関だけではなくて、企業も、中学や高等学校の教育も、国民の理解も全部必要です。限られた国の財源ではなくて、産学官の総力を結集して、巻き込んで支えていく必要があります。ispaceというのも、ちょっとうまくいきませんでした、この間。こういう果敢な挑戦を支えて、応援していく必要もあると思います。こういう姿勢が日本の再生につながっていくんだと私は思います。

 そんな中で、ロケットを打ち上げるというのは、衛星関連産業の振興というものだけではなくて、周辺産業の振興というのも必要です。製造していく、これは、単に打ち上げるだけではなしに、それを追尾をする、あるいはもちろん、衛星そのものを造る、そういったことも産業として成り立っていきます。そういった幅広い産業の育成とか、それを売っていくための営業力も必要です。

 そういったことも含めて、今後、航空宇宙産業の民間の産業としての育成について、どうお考えになっているのかお聞かせください。

石井大臣政務官 和田委員の御質問に答えたいと思います。

 委員の御指摘のとおり、民間の力をしっかりと育てていかなきゃなりませんし、また、政府としてしっかりと支援をしなきゃならない。

 宇宙開発が、世界各国が宇宙機関を始めとする官の中心から民へ主導していくという移行をされる中で、我が国としても、このゲームチェンジを好機として捉えて、宇宙産業の成長につなげていく必要があると認識しております。

 御指摘のとおり、ロケットや人工衛星、それらのサプライチェーン、人工衛星を活用したサービスなど、宇宙産業の裾野は広く、最終的に価値を生むサービスまで含め、宇宙産業のバリューチェーン全体の振興を図っていくことが重要であります。

 こうした観点から、経済産業省では、これまでも、小型衛星やその部品、コンポーネントの開発支援や、民間ロケットを活用した宇宙空間での実証機会の提供、また、衛星データを利用したアプリケーションの開発支援など、取組を進めさせていただいております。

 こうした取組を加速して商業化につなげていくために、秋の臨時国会でJAXA法を改正するとともに、総合経済対策において十年間で一兆円の宇宙戦略基金の設置を決定したところであります。経済産業省では、本基金を通じて、民間の衛星やロケット産業の本格的な事業化に向けた支援を強化していく、そのように考えております。

 経済産業省としては、こうした取組を通して、我が国の宇宙産業の成長促進及び市場拡大を強力に推進してまいります。

和田(有)分科員 基金の話も出ました。力強い答弁だと私は思います。しっかりとやっていただきたいと思うんです。

 ちょっと一点、私、さっき聞くのを忘れたというか、もう一点確認しなきゃいかぬと思ったことがありまして。

 これから日本も、民間も含めて三十本ぐらいロケットを打つ。H3でいうと、あれは十本ぐらいなんですかね、目標は。打つために、やはり射場の整備とか環境整備というのがこれから必要だと思うんです。この体制ではなかなか厳しいものがあると思うんですけれども、そこら辺に向けて、何かお考えというのはあるんでしょうか。

本田大臣政務官 お答え申し上げます。

 まずは、商業受注の前に、打ち上げ実績を着実に積み重ねることが重要であると考えております。

 その上で、政府としての商業受注に向けた取組について、内閣府などの関係府省と連携し、宇宙基本計画に記載のとおり、相手国の政府機関、企業との対話を通じた民間事業者の商業活動の後押しや、高頻度打ち上げ対応に向けた検討と取組などを進めてまいります。

和田(有)分科員 種子島の射場の拡充とか、そこら辺はまだ御答弁はないですかね。どうでしょう。

永井政府参考人 お答えいたします。

 文科省としては、並行して、基幹ロケットの高頻度打ち上げに向けた射場の整備などの取組も進めてはございます。

 例えば、機体製造能力の向上として、衛星作業と同時に推進薬を処理できる施設の整備でありますとか、射場系設備の増強等として、種子島と内之浦で共用している経路解析システム、これを種子島で専用で整備するとか、さらには、衛星建屋の新設として、打ち上げ警戒区域外での衛星組立て棟の新規整備、こういった取組について取り組んでいるところでございます。

 H3ロケットについては、内外からの非常に期待が寄せられてございまして、引き続き、高頻度化に向けてもできるだけ努力をしてまいりたいと思ってございます。

和田(有)分科員 了解しました。是非とも精いっぱい頑張っていただきたいと思います。

 あと、ちょっと私の意見なんですけれども、これを広げていく中で、ウクライナを日本は今支援していますよね。ウクライナというのは、実を言うと、非常にこういう技術にたけた国なんですね。元々、旧ソビエトの中のこういったことを担っていた地域なんです。そういうところを支援するという意味でも、ウクライナと技術協力をするとか、我々だってまだまだ足りないものはいっぱいあるわけで、そういうものを、ウクライナを支援する意味で協力するということもあるのではないのかなと思いますので、一言私なりに意見を申し述べて、次に移ります。

 次は、MRJ、スペースジェットの話でございます。

 去年もたしか私ここで聞いたような気もするんですけれども、いわゆるMRJといいますけれども、三菱リージョナルジェット、あれはもう影も形もありません。完成した飛行機も分解して、何にもありません。会社も解散してありません。一体何なんだと。

 私、あの飛行機が飛ぶのをずっと生中継で見ていて、涙が出たんです。日の丸のジェット機、商用ジェットが飛んでいくというのを見て。これから日本は明るいなと思ったら、結局駄目だった。検討会も立ち上げられました。結果的に、やはり行き着く先は、型式が取れなかった、アメリカの。そこに手落ちがあった。そういう方向に視野がなかなか向いていなかったというふうになりましたが、最近、中国が旅客ジェットをシンガポールのエアショーで飛ばして売っている。これは型式なんか持っていないです。アメリカなんか飛ばなくたっていいぐらい思っているんです、彼らは。いや、それで売れたらもっともうかると思っているでしょう。あの中国の何とかというリージョナルジェットは、中国の息のかかったところで、アメリカの型式なんか取らなくたって、おい、買えよといって、飛ばせるぞと売っているわけですよ。

 日本はそういうことをするべきではないけれども、そういう視点も世界にはあるということをなぜ我々は持ち得なかったのか。いや、持っていたのかも分からない、できなかっただけかも分かりません。

 MRJ、スペースジェットが完成品で飛んだ後、何で、型式が取れない、アメリカで売れない、買ってもらえない、だから、じゃ、もう会社もやめ、全部終わりとしたのか。これは、完成品だけでも政府が買って、例えば政府専用機の代替品に使えばよかったんじゃないですか。

 私、外務委員会にずっとおりまして、前は林さんで今は上川さんですよ。林大臣が外遊するときのいろいろな話を質疑をしたりするわけです。その中で、皆さん御承知だと思いますけれども、林さんがウクライナに行ったときに、ポーランドで一回、向こうで公用を済ませてからウクライナに入るというときに、飛行機が、民間飛行機に乗るものですから、遅れて間に合わなかった。大統領か何か、首相との会談が飛んでしまった。挙げ句の果てに、待てど暮らせどターンテーブルからキャリーバッグが出てこなかったんですよ。外務大臣ですよ。これは、パンツが入っていたか何か知りませんよ、だからよかったのか知らないけれども、何か文書が入っていたらどうするんですかね。

 ということは、今、二機、正と副で飛ばすわけですけれども、政府専用機というのは。もう一機ぐらい、閣僚の皆さんが何かのときのために使えるように、例えばMRJを買い取る、自衛隊が買うとか、そういうことぐらいしてもよかったと思うんです。

 今、世の中の流れは次世代の飛行機だということで今度なってきている。そういう中で、国も小委員会を立ち上げて、完成機についてどうするかという話が出てきました。そこら辺で、一つは、これはもう時間がなくなってきちゃったからまとめて聞きますが、ポストMRJをどうするのか。それともう一つは、MRJを、もう一回アセンブルして、あれは部品を置いているそうですよ、どこかに。集めてきて、アセンブルして、買い取って、政府専用機にしたらどうでしょうかということをお聞きしたいんですが、いかがですか。

石井大臣政務官 和田委員の質問にお答えしたいと思います。

 私も愛知県選出の国会議員でありまして、県会議員も務めておりました。このMRJ、MSJについても、まだまだやらなきゃいけない、そういう思いは同じだと思っております。

 まず、今後どのような形で取り組むべきかということの政府の考え方、その前に、今のところ、三菱スペースジェットが開発中止に至った背景としては、もう一つ、認証取得プロセスへの経験、ノウハウの不足だけではなくて、コロナ禍の影響などによってリージョナルジェット市場が当初の見通しから大幅に縮小するなどの、先行きにちょっと不透明な点があったことで止めたというところ、そして、エンジンなどの主要な装備品の海外サプライヤーに依存することでの交渉力の低下、そういった様々な原因があったと認識しておりまして、開発中止の決定も踏まえて、経済産業省では、有識者で構成される審議会で完成機事業の検証、総括を行うとともに、今後の航空機産業の政策の方向性について議論を行っている最中であります。

 そして、昨年八月に取りまとめた中間整理の中では、航空機産業の主体的かつ継続的な成長を実現するためには完成機事業への参画が不可欠であって、これを目標として掲げるべきであること、そして、三菱スペースジェットの経験も踏まえて、インテグレーション能力の獲得や海外メーカーとの国際連携による完成機事業への参画を可能とする体制を整える必要があるということ、その際に、機体サイズや時期に応じて軽量化、効率化、ハイブリッド電動化、水素利用など、多面的なアプローチが必要であることなどが示されております。

 引き続き産業構造審議会において議論を継続しているところでありまして、この春にも完成機事業への参画を目指した具体的なロードマップを含めた新たな航空機産業戦略を策定する予定となっております。

 引き続き、航空機産業の発展に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。よろしくお願いします。

村井内閣官房副長官 委員からMRJを政府専用機として採用できないかといったような御質問をいただきました。

 まず、現行の政府専用機の調達については、平成二十五年八月、政府の政府専用機検討委員会において当時の政府専用機の後継機を調達することを決定し、平成二十六年八月の同委員会において現行の政府専用機に機種を決定したところであります。

 機種の決定に際しましては、アメリカ東海岸への直行が可能な機種であること等の所要の条件の下、自衛隊での活用も踏まえ、あらかじめ定められた評価基準に従い、企業からの提案書の内容を公正かつ厳正に評価した上で、最も高い評価となった機種を選定したということであります。なお、旧MRJにつきましては、当時、提案がなされていなかったということであります。

 その上で、現在の政府専用機に加え、旧MRJを二機種目の政府専用機として保有すべきではないかということでありますけれども、この旧MRJという特定の機種を前提としたお答えをすることは差し控えますが、一般論として申し上げれば、二機種目の保有については、政府専用機の在り方に関わる話でもあるため、その必要性等を踏まえて、慎重な検討を要するものと考えております。

和田(有)分科員 慎重な検討、こういうふうな表現でありますが、やはり前向きに、積極的に検討すべきだと思います。

 今、これほど海外に閣僚の皆さんが行かれることが多い。これは国会が足を止めているという議論があって、我々維新は、それじゃ駄目だ、国会をちゃんとやらなくても、いや、ちゃんとやらなくてもというのは変な言い方ですね、国会の審議と別にちゃんと海外にどんどん行って会議に出るべきだという考え方を持っていて、そのためには今の政府専用機の在り方では足りないと私は思いますので、積極的に議論していただきたい、こう思います。

 次に行きます。万博です。

 万博、これはいろいろな議論はありますけれども、もう来年万博がやってくるわけでありまして、これは成功させなきゃいけませんし、するだろうし、始まったら世の中はお祭り騒ぎに私はなると思います。世界中から人が押し寄せて、万博、万博、いや面白いねとなると思います。

 ちなみに、七〇年万博だって、私、子供のときに、近所ですから何回も見に行きました。開会式にタイだかどこかから象がパレードをして、うちの下の道路を、神戸港に上がった象がパレードをして会場まで行って開会式をやった、我々は旗を振って象を迎えたという、私、貴重な経験を持っております。

 まあ、それはよしとして、今回の万博、いろいろな国、地域、機関、企業が参加してくださいます。国の大小、機関の大小、企業の大きさ関係なく、ひとしくこれはバックアップをして、それを目指して見に来た方々が満足していただけるように我々はフォローアップすべきだと思いますが、その点について、いかがでありましょうか。

齋藤(健)国務大臣 大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」、これをテーマに掲げて、世界の知恵を結集し、世界中から来訪する様々な人たちが刺激を受けて、次の挑戦に向けた気持ちを育んでいくような、参加、体験、行動できる万博にしていきたいというふうに考えています。

 このような観点から、御指摘のように、多様な国、地域、機関、企業などのできるだけ多くの関係者が様々な形で万博に参加できるように、政府としても後押しをしていきたいというふうに考えています。

和田(有)分科員 催事もあります。これ以上質問はいたしませんけれども、広場でお祭りをしたりとか何かあります。こういう中でも丁寧に扱っていただきたい。

 それは、はっきり申しますが、これは私の意見で述べる部分ですから答弁を求めませんけれども、いろいろな経緯があって、台湾は万博の、世界の協会に入っていません。ですので、国家として参加はできません。いろいろな経緯をたどって、台湾の関係する企業がパビリオンを出し、参加をしてくださいます。たくさんの方が期待をして、台湾からも見に来られると思います。その方々が、ああ、来てよかったね、日本はいい国だなと思って帰ってもらえるように、しっかりとフォローをしていただきたい、このことをつけ加えて、最後の質問に移ります。

 最後、AIの関係、産業です。

 AIが、どうもクリエーターの皆さんとかそういう方々に悪影響を及ぼす部分があるのではないかという声があります。アニメであったりゲームであったり、こういうコンテンツ産業というのは、日本にとって、これからの稼ぎ頭の一つです。大切なものです。これを育てるために、やはり健全なAIの関係する産業の育成であったりバランスの取れた保護というものが、ある意味では規制と言えるかも分かりません、必要かも分かりません。そういったことについてどのようにお考えか、お伺いします。

石井大臣政務官 生成AIは、多くの産業と同様、コンテンツ産業においても、単純作業の代替や効率化だけではなくて、高品質なものを生み出したり個人の発想を超えたアイデアの革新を促したりするなど、劇的な変化をもたらす可能性があると考えられております。

 他方で、委員の御指摘のとおり、クリエーターの方々を中心に、新たなクリエーターが育たなくなる、あるいは自分の仕事が奪われるといった、生成AIの広がりを不安視する声もあると認識しております。

 政府としては、こうした声を踏まえ、クリエーティブ分野と生成AIの在り方については、保護と利活用のバランスが重要との認識の下、議論を進めているところであります。具体的には、生成AIに関する著作権法などの知的財産関係法上の考え方について各関係省庁で議論が行われている最中であります。

 経済産業省としては、こうした政府全体の議論を踏まえつつ、我が国の強みであるコンテンツ産業の振興の観点から、まずは、コンテンツ産業における生成AIの望ましい利活用の在り方について、事業者やクリエーターとともに議論を深めていきたいと考えております。

和田(有)分科員 よく分かりました。しっかりとバランスを取って、やはり、最初に御質問させていただいた航空宇宙産業とコンテンツ産業というのはこれからの稼ぎ頭ですから、是非とも健全に育成していただきたい、こう思いますので、よろしくお願いします。

 終わります。

上野主査 これにて和田有一朗君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、伊藤(達)主査代理着席〕

伊藤(達)主査代理 次に、鈴木英敬君。

鈴木(英)分科員 鈴木英敬です。

 今日、大変感慨深い思いであります。私は、通産省に採用していただいた齋藤大臣にこの経済産業省の分野で質問をさせていただく機会が来たということで、大変感慨深く思いますので、一生懸命頑張ります。どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず初めに、大臣、被災地も、能登半島、何回か行っていただいておりますけれども、是非、なりわいの再生に向けて引き続き全力で御指導いただければと思います。

 それでは、今日は、サイバーセキュリティーと中小企業政策とエネルギーについて聞きたいと思います。

 まずは、サイバーセキュリティーについて。

 サイバー空間は常時有事であります、常時有事。そういう中で、また、サイバー攻撃も高度化、多様化をしている、弱いところを必ず狙ってくる。ですので、全体としてこの強化をしていく必要があるということの中で、今日は質問を進めていきたいと思います。

 先日、サイバーセキュリティーの人材育成や研究をしているIPAに、産業サイバーセキュリティセンター、これの視察に行ってまいりました。模擬プラントとかを使ってデモされているのも見まして、大変リアリティーの高い、いい取組をされているというふうに感じましたし、受講生の皆さんも大変レベルが高い、そういうふうに感じたところであります。他方で、業界によってサイバーセキュリティーの対策に温度差があったり、あるいは人材が必要なんだけれども量的に不足をしている、そういうような声も聞いております。

 そこで、産業界のニーズに応えるためにも、IPAを中心とした人材育成、これを更に強化していく必要があると思いますが、現在の取組と今後の方向性をお伺いしたいと思います。

上村(昌)政府参考人 お答えいたします。

 サイバー攻撃が高度化、多様化する中で、サイバーセキュリティー対策を担う人材の育成は極めて重要であります。一方、委員御指摘のとおり、我が国の企業などにおいて、サイバーセキュリティー人材を十分に確保できないといった声があることも承知をしております。

 このため、経済産業省では、IPAを通じまして、経済社会を支える重要インフラや産業基盤などのセキュリティーリスクに対応する人材を育成する中核人材育成プログラム、それから、若年層を対象に、第一線の技術者からの高度な技術教育を提供するセキュリティ・キャンプ、また、サイバーセキュリティーの国家資格であります情報処理安全確保支援士制度などの取組を進め、サイバーセキュリティー人材の育成、確保に努めているところであります。

 今後とも、これらの施策の拡充をすることも含めまして、サイバーセキュリティー人材の育成、確保の強化に向けた包括的な政策対応を検討し、具体的な施策を充実させてまいりたいと考えております。

鈴木(英)分科員 ありがとうございます。

 是非、加速度的に、質の高い人材と量が必要だと思いますので、強化をしていただければと思います。

 続きまして、今、各省庁とかIPAが独自にガイドラインを作っていて、上位概念から具体的な対策まで体系化されていない、そういう状況だと思いますし、例えば、複数の業界に携わる下請企業とかは、複数の取引先から水準の違うセキュリティーを求められて非常に困って、全体で見れば社会的なコストが高まっているというようなことも聞いたりしています。

 そこで、IPAにおいて、アメリカのNISTを参考にして、是非、ガイドラインの作成機能の管理一元化を行いながら業種横断的なセキュリティー対策水準を定義して、それを可視化をする、そういうような取組が必要だと思いますし、そのためにIPAを強化をするということが必要だというふうに考えております。あわせて、作ったガイドラインを例えば政府の調達の要件化していく、そういうようなことも大事だと思います。

 このIPAの対策強化と政府調達の要件化、この二つについて答弁願います。

上村(昌)政府参考人 あらゆるものがネットワークにつながって、サイバー攻撃が社会や産業に大きな影響を及ぼし得るようになっている中で、サプライチェーン全体のセキュリティー向上の推進は必要不可欠だと認識をしております。

 経済産業省では、これまで産業界と協業しつつ、サイバーセキュリティ経営ガイドライン、それから産業分野別のガイドラインなどの整備を推進をいたしまして、各企業などによる積極的な取組を促してまいりました。

 他方で、ガイドラインに基づいて、では具体的にどこまで対策を進めるべきなのかが企業などに必ずしも分かりにくいということ、それから、委員御指摘のように、取引先から様々な対策水準を要求されるといった課題もあることは承知をしております。

 このために、諸外国による取組も参考といたしまして、既存ガイドラインなどと整合性を図りつつ、各企業の業種、規模ごとに実施すべき対策水準の設定や、その対策状況を可視化する仕組みを構築すべく、今後検討を進めていきたいというふうに考えております。

 そして、こうした新たな取組については、これまでセキュリティー確保に向けた各種の取組を進め十分な知見も有しておりますIPAを主体とすることが適切だと考えております。体制強化の必要性についても、しっかりと検討をしてまいります。

 また、関係省庁とも連携をしまして、政府機関、企業による活用を促す対応を進めることで、取組の実効性を強化をしていきたいというふうに考えております。

鈴木(英)分科員 ありがとうございます。

 是非、IPA体制強化について検討していただきたいというふうに思います。

 次の質問に行きたいと思います。

 令和三年度に経産省が実施した調査におきましても、大企業、中堅企業の約五社に一社が取引先を経由したサイバー攻撃の被害の経験があるということでありますので、サプライチェーン全体のサイバーセキュリティーをしっかり高めていくということが重要です。中小企業が被害を受けた場合、その影響は自社にとどまらず、先ほど言いましたように、取引先を含めたサプライチェーン全体の事業活動に影響することが懸念されます。

 そのためには、サプライチェーン全体のセキュリティーレベルを上げていくためには、そのセキュリティーレベルがどれぐらいなのかというのを把握すること、そしてそれを評価をすること、それによって全体を高めていくということが極めて重要だと思いますが、経済産業省の考え方を聞きたいと思います。

上村(昌)政府参考人 サイバーセキュリティー対策は企業の規模に関係なく大変重要であります。中小企業を含めまして、サプライチェーン全体でセキュリティーレベルを上げていくことが必要となります。特に、大企業と同じような対策を講じることが難しい中小企業に対してのきめ細やかな支援が必要不可欠だと考えています。

 中小企業においては、セキュリティー対策の実践に当たりまして、具体的な対策が分からないといった課題、あるいは必要な予算の確保が難しいといった課題があると認識をしております。

 このため、経済産業省では、IPAを通じまして、中小企業向けのセキュリティーガイドラインの作成、それから異常監視やサイバー攻撃を受けた際の初動対応支援、保険など、中小企業に必要な対策を安価かつワンパッケージにまとめましたサイバーセキュリティお助け隊サービスの普及、それから、各種補助金の申請要件などにセキュリティー対策に取り組むことを中小企業の方々が自己宣言をいただく、いわゆるセキュリティーアクションを位置づけております。

 こういった取組をこれまで一生懸命推進をしてきたところでありますが、引き続き、こうした取組を継続しつつ、今後、中小企業の規模やIT技術の活用状況などに応じた、より効果的なセキュリティー対策を提示をしていくこと、それから、人材不足解消のために、中小企業とセキュリティー専門家をマッチングさせる実証事業といったことも進めていきたいと考えています。

 今後とも、産業界、関係省庁とも連携をしながら、中小企業がセキュリティー対策を実践しやすい環境を整備することに向け、支援策の一層の強化を図ってまいりたいと考えております。

鈴木(英)分科員 ありがとうございます。

 中小企業といっても、その中小企業の中のどういうところを強化すればいいのかというのをやはりきめ細かくやる必要があると思うんです。災害対応でいえばトリアージみたいな形で、絶対に抜けたらあかんところは赤、ここはもうとにかく強化をする。それで、黄色、青みたいな形でやっていって、リソース、お金や人材を投入するというような形で、中小企業がきめ細かくしっかりやっていけるような支援を、それがサプライチェーン全体を守ることにつながりますので、是非お願いしたいと思います。

 続いて、国際連携などについてもお聞きしたいと思います。

 ソフトウェアのセキュリティーを確保するための管理手法の一つとして注目されるSBOM、これは経済産業省において導入に向けた課題検証を実施していると聞いておりますけれども、今後、SBOMの活用が更に産業界に浸透をしていくように、これも政府調達とかで要件化、こういうのを検討していくべきだというふうに考えておりますし、また、アメリカが作りまして、我が国も共同署名をしました、セキュア・バイ・デザインのガイダンスにつきましても、事業者に示して、これへの適合を促していくべきだというふうに考えておりますが、見解を伺いたいと思います。あわせて、令和六年度中に一部運用開始されるIoT適合性評価制度、あるいはその国際連携、相互運用性、このことも含めてお聞きしたいと思います。

上村(昌)政府参考人 委員御指摘のとおり、サイバーセキュリティーを確保するための制度構築に当たりましては、産業界と連携した普及促進をきちっと進めていくことが極めて大事かと思っておりますし、政府調達などを通じました活用の促進、また国際的な制度調和を促すことで実効性を強化していくことが重要であります。

 ソフトウェアなどを製造する企業が設計段階から安全性を確保されている製品を責任を持って提供をする、いわゆるセキュア・バイ・デザイン、この概念が国際的に提唱をされてきております。昨年十月に、委員御指摘のとおり、我が国政府もそのガイダンスに共同署名をしております。

 こうした国際的な議論、また近年のサイバー攻撃の実態を踏まえまして、経済産業省では、ソフトウェアの部品構成表であるいわゆるSBOMの活用促進、それから、一定のセキュリティー基準を満たすIoT製品にラベルを付与するラベリング制度の構築といった具体的な取組を進めてまいっております。

 その中でも、関係省庁とも連携をしまして、政府機関、企業による活用を促す取組もしっかりと進めるとともに、国際的な制度調和のための海外当局との対話も進めてきております。

 セキュア・バイ・デザインの概念で求められますソフトウェア開発者が行うべき取組についても、今後、更なる具体策の検討を進めながら、その概念に沿った我が国企業などの取組をきちっと促していきたいというふうに考えております。

鈴木(英)分科員 我が国企業は、企業の規模にかかわらずもう展開がグローバル化していますので、サイバーセキュリティーについても国際連携、ハーモナイズしていくことが大事でありますから、是非力を入れていただきたいと思います。

 ここまでのところは、私、党のサイバーセキュリティーPTの事務局長もやらせていただいておりますから、是非、提言の中で後押しをしていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、内閣官房にお伺いをしたいと思います。

 国家安保戦略におきましては、サイバー安全保障の法制度を整備するというふうに書いてあるわけでありますけれども、具体的な整備がまだ行われないまま一年以上が経過をしているという状況で、我々には、少なくとも表向きには議論の進捗は顕在化していないという状況で、具体的な対応が遅れれば当然それに比例してリスクが高まる、そういうことであります。

 現在の、サイバー安全保障分野に関する法整備、これの対応を加速させる必要があると考えておりますが、政府の検討状況を教えていただきたいと思います。

 あわせて、ここは経産の分科会でありますので、特に、その国家安保戦略で示された三つの取組のうちの、ア、イ、ウのうちのア、一つ目ですね、「民間事業者等がサイバー攻撃を受けた場合等の政府への情報共有や、政府から民間事業者等への対処調整、支援等の取組を強化するなどの取組」についての検討状況も特にお聞きしたいと思います。

門松政府参考人 お答えいたします。

 我が国のサイバー対応能力を向上させること、これは現在の安全保障環境に鑑みるとますます急を要する課題であると承知しておりまして、また、現在、サイバー攻撃による重要インフラの機能停止等、これは現実的に起こっているということでございます。官民連携を通じて重要インフラ等のシステムをサイバー攻撃から守ること、これは極めて重要な課題というふうに承知をしております。

 こうした中で、先生御指摘の、能動的サイバー防御の実現に向けたサイバー安全保障分野に係る法整備等でございますが、検討を加速化しております。検討を加速化しておりますが、現行法令との関係等を含めて様々な角度から検討を要する事項が多岐にわたっているという状況にございます。

 さらに、官民連携につきましても同様に、官民の情報共有や政府からの民間事業者等への対処調整、支援といった取組の強化を含めて、様々な要素についてテーブルにのせる検討をしておりますが、いずれにせよ、こうした中で、官民連携を含めて、国家安全保障戦略に掲げた「サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる。」という目標がございますので、現在最大限の努力はしておりますが、今後もしっかり対応を続けてまいりたいというふうに思っております。

鈴木(英)分科員 ありがとうございます。

 先日も、イギリスのサイバーセキュリティーの長官と朝食で話をしたときに、日本はテクノロジーは一流だ、でもサイバーセキュリティーは遅れていると明確におっしゃっていました。これでは同志国、同盟国との連携というのがままならない状況でありますから、非常に御苦労いただいているのも十分理解をしておりますけれども、我々も政治の側でしっかり後押しをしていきますので、法整備に向けて加速的な対応を是非お願いをしたいと思います。

 それでは、続いて、中小企業政策に行きたいと思います。

 中小企業政策に入る前に、スタートアップについて、今回、産業競争力強化法の改正案でも、ストックオプションの更なる充実などを盛り込まれています。これまでのスタートアップ政策に対しまして、経産省の関係の皆さんの御尽力に心から感謝を申し上げ、更にしっかりとした政策推進を行っていただくことを期待したいと思います。

 それでは、質問に入りたいと思います。

 大臣にお伺いをしたいと思います。中小企業政策の在り方あるいはそもそも論をお伺いしたいと思います。

 去年で、中小企業基本法が制定されて六十年の節目を迎えました。中小企業基本法制定時は、中小企業やそこで働く方々を社会的弱者と捉えて、中小企業と大企業との間の生産性や賃金などに存在する諸格差の是正、これを解消するということが政策理念でありました。

 その後、一九九九年、中小企業基本法が抜本改正され、今年で二十五年の節目を迎えます。当時、その国会は中小企業国会と言われ、齋藤大臣は深谷経産大臣の、通産大臣の秘書官を務めておられ、その国会の回し含め、先頭に立ってやっていただいたと認識しております。そのときの改正時には、多様で活力ある中小企業の成長発展という新たな政策理念が提示をされ、これまでの画一的な弱者という中小企業像を払拭し、独立した中小企業の自主的な努力を前提とし、様々な政策が展開されたと考えています。

 その後、今年で十年を迎える小規模企業振興基本法というのも制定をされました。

 この二十五年の間、直近ではコロナ、あるいは物価高もありました、大規模災害もあります。こういう様々な緊急的な情勢変化もありましたが、人手不足、人口減少、こういうような構造的な変化もあります。

 私は、今改めて、少し、先祖返りではないですけれども、もちろん支援はしないといけないんだけれども、基本法制定当時のようなところの政策にちょっと偏っている部分があるんじゃないかなとちょっと私は心配をしていて、改めてここで局面転換を中小企業政策について図っていく必要がある、そして、中小企業庁で働く職員のメンバーがやはり中企庁で働くのは面白いなと思えるような、そんな政策づくりをしていかないといけないと考えておりますが、これまでの中小企業政策の総括と今後の課題、今後の政策の在り方、大臣から答弁いただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、今日の質疑、私も感慨深いものがありまして、当時、鈴木委員が東京大学の学生で、私が通商産業省の採用の責任者で、それで優秀な学生だなということで採用させていただきました。以来四半世紀が過ぎまして、今私が経済産業大臣として鈴木代議士の質問を受けるというのは、当時、夢にも思っておりませんでした。いつの日か鈴木大臣に対して私が質問できる機会が来ることを夢見ております。

 御質問ですけれども、中小企業は企業数全体の九九・七%で、従業者数の七割、付加価値の五割を占めるなど、私は日本の産業を支える重要な存在だと思っております。そういう意味では、中小企業庁で勤務されている皆さんは重要な任務を背負っているんだろうと思っています。

 当時、私自身も大臣秘書官として携わった一九九九年の中小企業基本法改正は、政策の主軸を格差是正から成長発展の促進、こういったことへ大転換を行ったものであります。その後、二〇一四年の小規模企業振興基本法制定では、成長発展のみならず、小規模事業者の持続的発展にも光を当てた、こういう流れになっています。

 この間、中小企業は、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナ、ウクライナ危機による物価高騰など激動にさらされておりまして、経済産業省としては、時には事業者向け給付金や実質無利子無担保融資など臨時異例の措置を講じて、中小企業の事業継続を全力で支えてきたところであります。

 引き続き、こうした危機対応には万全を期していくわけでありますが、人口減少、少子高齢化という避け難いマクロトレンドの中で、良質な雇用と豊かな生活環境を地域で創出するためには、改めて、中小企業自身の成長に向けた自己変革、この自己変革を後押しすることが重要な課題になっていると認識をしています。

 こうした観点から、新商品、サービスの開発等の生産性の向上や賃上げの支援、価格転嫁、取引適正化の推進、事業承継やMアンドAの推進による経営の革新など、中小企業の成長に向けた政策を強化していきたいと考えています。

鈴木(英)分科員 大臣、ありがとうございました。

 当時は、前年に、私が入省した年でしたけれども、九八年に貸し渋り、貸し剥がし、こういう物すごい大変なことがあって、特別保証とかいろいろやったけれども、そういう危機対応にも万全を期したけれども成長発展でいくんだ、そういうこともやられたわけですので、まさに大臣おっしゃっていただいたように、危機対応には引き続き万全を期しつつ、自己変革、これをしっかり、そういう挑戦を応援していく、そういう中小企業政策の展開を是非期待したいと思いますし、私もその一翼を担っていきたいと思います。

 続きまして、そんな中、今回の産業競争力強化法の改正では、中堅企業を支援するというのが新たに出てきました。この狙いを教えてください。

菊川政府参考人 委員御指摘いただきました中堅企業でございます。十年前と比較をしますと、大企業を上回る従業員数の伸び率でありましたり、給与総額の伸び率でありましたり、そういった着実な成長を示しているところでございます。また、そういったことから、地域における良質な雇用の提供者でもあるわけでございます。国内売上げやまた国内投資の着実な拡大を通じまして、さらには経営資源の集約化等によりまして、前向きな新陳代謝の担い手としての役割を果たしている重要な企業群であろうというふうに認識をしております。

 他方、中堅企業につきましては、大企業へ成長する企業の割合が欧米など国際的に比較をしても低い状況になっているところ、また、先ほど委員からも御指摘があったような人手不足等の課題に対応するような成長投資、またMアンドAなど、こういったところにまだ十分行えていないというような課題も中堅企業には存在しているというふうに認識しております。

 今回、この国会に提出させていただいておりますが、産業競争力強化法等の一部改正法案、ここによりまして、中堅企業のうち、特に賃金水準や投資意欲が高い企業を対象といたしまして、複数の中小企業をMアンドAした場合の税制措置、こういったところを講じまして、中堅企業の更なる成長や、中堅・中小企業によるグループ化、一体となった収益力の向上、これを促進をしていきたいというふうに思っております。

 先ほど大臣から答弁ございましたけれども、中小企業の成長や、また小規模事業者の持続的発展への後押しなど、中小企業政策の在り方、これをしっかりと踏まえつつ、今般構築しております中堅企業支援の枠組みを通じまして、成長意欲のある我が国企業が、中小企業から中堅企業、そしてその先への成長、こういったシームレスに成長を目指せる環境の整備にもつなげて、産業構造の改善をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

鈴木(英)分科員 ありがとうございます。是非、中小企業政策とシームレスにやっていけるようにお願いをしたいと思います。

 先ほど大臣がおっしゃっていただいた自己変革、挑戦ということの観点で、今、中小企業庁で研究会をやっていただいている、地方で核となる一定規模の中小企業、例えば売上げ百億円程度の企業、こういうのをどんどん創出していこうという取組をしていただいていると思います。これについては、伊藤調査会長の下、私、そのプロジェクトチームの事務局長をやらせていただくことになっております。

 こういう、地方において将来的に売上げ百億円などを目指していく、挑戦、自己変革をする、そういう経営者や企業を応援していく、そういうことは重要だと思いますが、中小企業庁の見解をお願いします。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、百億企業は、直接輸出額や域内仕入れ高が高く、賃金も高いなど、地域経済を牽引する重要な存在であると考えております。加えて、経済成長の実現、地域経済の発展のためには、特に地域において百億企業を創出していくことが重要であると認識しております。

 人口減少やGX、DX等の経済社会構造の変化が進み、中小企業も経営の転換を迫られる中で、それをむしろチャンスと捉え、変革に挑戦していく、こうした企業、経営者の方々を応援する必要があると強く認識しております。

 このため、私ども中小企業庁といたしましては、昨年、中小企業の成長へ向けた研究会を実施しました。その中で、成長を志向する中小企業への伴走支援を通じた経営力の強化、またそして、事業承継やMアンドAの推進による経営の革新、中小企業のグループ化による成長への支援、こういったことごとにより、新たな人材の中小企業経営への参入の後押しといった、中小企業の飛躍的成長に向けた今後の政策の方向性を提示したところであります。

 中堅企業への支援と併せまして、引き続きこうした取組により百億企業の創出を促進し、成長意欲のある中小企業が成長をシームレスに目指せる環境を整えてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

鈴木(英)分科員 ありがとうございます。党からもしっかり後押ししたいと思います。

 続いて、原発、聞きたいと思います。

 先日、浜岡に行ってきました。知事時代も行きましたけれども、更に安全対策が講じられ、多重防護も進んでいます。

 他方で、私は、いろいろな現場、最近、島根とか東海第二とかもいろいろ行ってきたんですけれども、安全対策が土木関係の投資に偏っている感じがやはりあって、そう考えると、今後、再稼働、リプレース、次世代革新炉、いろいろ行くときに、原子力発電産業の技術と人材、サプライチェーンの維持、これが困難になってきていると皆さんも危機感を持っていただいていると思っているんですが、今後、電力の安定供給、エネルギー安全保障、脱炭素という形で、先ほど言いました再稼働、そしてリプレース、次世代革新炉と進んでくると思います。そのために人材、サプライチェーンの維持が大事だと思いますが、エネ庁の見解をお伺いしたいと思います。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、我が国では、原子力について高いレベルの技術、人材、産業基盤を維持してまいりましたが、震災以降、長きにわたる建設機会の喪失で、その産業基盤が脅かされつつあるという認識でございます。したがって、原子力技術、人材、サプライチェーンの維持強化が喫緊の課題だというふうに考えております。

 昨年三月には、関連する企業、団体から成る原子力サプライチェーンプラットフォームを立ち上げ、研究開発や技能実習、技術、技能の承継などをサポートする支援メニューを中小・中堅企業を含む全国約四百社の原子力関連企業に展開しております。

 加えて、今年度の原子力産業基盤支援に対する予算額は十八億円であったところ、来年度予算案では五十八億円に増額して計上させていただいております。

 具体的な支援策としては、例えば、製造プロセスのデジタル化支援、大学、高専、サプライヤーと連携した講座開発や展開を通じた物づくり人材育成支援、海外の建設プロジェクトへの参画に向けた設備改修支援や海外規格の取得支援などに取り組んでいるところであります。サプライチェーンの実態に即した支援の強化に、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

鈴木(英)分科員 是非よろしくお願いします。大変焦眉の急だと思いますので、注力していただきたいと思います。

 最後、ペロブスカイトです。

 太陽光発電とか風力発電、この製品の多くが海外から輸入され、それに頼っているということで、やはり技術の国産化が急務だと思います。

 ペロブスカイトは主な原料がヨウ素でありますので、日本はチリに次ぐ世界二位の生産国で、原料を国内で調達できるという利点があります。令和四年には、三重県の、三重県の、三重県の宇治山田高校出身の京都大学の若宮淳志先生たちが世界最高値となる光電変換効率を達成をしたということで、これはトヨタとかも注目しているところであります。

 従来のシリコン型の太陽電池では、コスト競争力に優れた中国企業に市場を奪われ、現在の太陽電池市場の日本のシェアは〇・三%にとどまっています。そこで、世界のトップ水準の取組を進める日本の産学への支援を更に強化し、ペロブスカイトの産業化を着実に進める必要があると思いますが、今後の戦略をお願いします。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたペロブスカイト太陽電池、ヨーロッパや中国など国際的にも研究開発競争が激化をしておりますが、耐久性、大型化の分野では日本企業にも強みがあるということでございます。今後、市場を獲得するべく、量産技術の確立でありましたり生産体制の整備、需要の創出、これを三位一体で取り組んで、投資の規模とスピードの面でも競争してまいります。

 様々、予算的な対応といたしましても、研究開発から社会実装までを切れ目なく支援していく、またサプライチェーンの構築を支援していくということで取り組んでまいりますけれども、さらに、関係省庁と連携をしながら、公共施設、ビルなどの壁面、工場、倉庫、学校施設などの耐荷重性の低い建築物の屋根や鉄道ののり面などの公共インフラといった様々な分野での導入を進めてまいります。

 今後、世界の市場を獲得していくために、投資の規模、スピードの面でも世界に挑んでまいりまして、諸外国に先駆けて社会実装できるように取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(英)分科員 今日は感慨深い一日となりました。

 終わります。ありがとうございました。

伊藤(達)主査代理 これにて鈴木英敬君の質疑は終了いたしました。

 次に、櫻井周君。

櫻井分科員 立憲民主党の櫻井周です。

 今日は、大臣、魂を込めて、日本の発展のために質問させていただきますので、御答弁よろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、科学技術イノベーションの促進という観点で質問させていただきます。

 今回の税制改正、実はあした財務金融委員会でも質問させていただきますけれども、科学技術関連ではイノベーションボックス税制ということが入っております。この税制の目的は、我が国のイノベーション拠点の立地競争力を強化する、このように承知をしております。目的は大変すばらしい。ただ、問題は、本当にこうした効果が上がるのかどうかということだと思います。

 今回の税制は七年間の期限つきということです。一方で、研究開発をやって、特許を取って、製品化をしてということですから、五年とか七年とかかかってしまうわけです。そうすると、ちょうどライセンス料が入ってくるようになったときには期限が切れてしまうということになってしまうというふうに考えれば、このイノベーションボックス税制を当てにして研究開発をするとかいうようなことはなかなか想定しにくいのではないのか、インセンティブにならないのではないのか、こんなふうにも心配をするところです。

 まず、ちょっと大臣にお尋ねしたいのは、このイノベーションボックス税制の効果として、民間による無形資産投資は幾ら増加するというふうに見込んでいるのかということと、逆に、今私が申し上げたような懸念がもしあるとするならば、結局、イノベーションボックス税制とは無関係に研究開発した事業者が、ある種、棚ぼた的に、棚からぼた餅的に減税の恩恵を受けるということになるのでは、それで終わってしまうのではないのか、こういうふうにも懸念をするんですが、この二つについて、大臣の御見解をよろしくお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 まず、最初の額の見通しについては、ちょっと事前に私のところに質問内容が入っていなかったので、事務方から答えさせます。

 促進効果についてですけれども、イノベーション拠点税制は、御指摘のように、イノベーションの国際競争が激化する中で、研究開発拠点としての立地競争力を強化をして、民間による投資を後押しをしたいというものです。

 同様の制度を導入しているイギリスにおきましては、イノベーション拠点税制の効果として、税制の適用を受けた企業の有形無形資産への投資が制度導入から五年間で一〇%増加したという調査、これを公表しておりまして、我が国におきましても本制度によって国内に投資が促進されるものと考えています。

 それで、我が国で本税制を導入するに当たりましては、こうした海外の事例も参考にしつつ、産業界へのヒアリングも行っておりまして、こうしたヒアリングを通じて、研究開発から知的財産権を取得するまでに一定の期間が必要である実態も踏まえて、先生御指摘のように、制度を検討したところであります。

 この結果、租税特別措置においては通常一年から三年程度の措置期間となっているわけですが、本制度においては七年間という長めの期間を設定したということであります。

 御指摘も分からないわけではありません。まずは本制度の着実な執行を進めていくことが重要だというふうに認識しておりまして、その上で、ほかの税制もそうでありますけれども、制度の執行状況ですとか効果を検証した上で、本制度がよりよい制度となるように不断の見直し、これを行っていきたいというふうに思っています。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 イノベーション拠点税制による研究開発あるいはそれに伴う投資の促進がどれぐらい行くのか、こういうことでございますけれども、これは、具体的な案件、どういうものがあるかというのは、これから、実際、企業がどういう投資をするのか、研究開発するのか、こういうことになってまいりますので、投資促進についての具体的な数値が今明確にあるわけではありません。

 他方で、同様の制度を導入しているイギリスでは、こうした類似の税制の効果として、税制の適用を受けた企業の有形無形の投資が一〇%、これは五年間で一〇%増加した、こういうデータがございまして、こういう研究開発及びその後の投資の促進効果というのはあると思っておりまして、こういうものを促す、そういう目的でこの税制を創設したところでございます。

櫻井分科員 今の御答弁ですと、イギリスで一〇%増えたということで、これが一つ目標といいますか、目安になるのかなと。日本で本当にそれだけの効果が上がるのかどうかということは、今後しっかり、EBPMということで、検証していただくということで、よろしくお願いします。

 一方で、日本で特許出願が長らく伸び悩んでいるということの背景として、特許を取得してもメリットが薄いからというのがあるんじゃないのかなというふうにも思うところです。

 特許侵害の損害賠償訴訟を行ったとしても、まず、侵害の認定が諸外国に比べて結構辛い、なかなか侵害として認定してくれないとか、侵害が認定されても損害賠償額が少ない、小さい。それだったら、侵害された側は、訴えてもしようがねえな、裁判費用だって出ないかもしれないということを憂慮し、また、侵害した側は、訴えられてから払えばいいやというふうになってしまう。結局、特許権が軽んじられているのではないのか。これは現場の方々から聞いたお声でございます。

 そうした懸念は別に我が国だけではなくて、海外においては、だから、どうしているかといえば、アメリカですとか台湾では三倍賠償制度というのをやっていますし、中国や韓国では、中国は五倍賠償制度、韓国も今年から五倍賠償にするというふうに聞いております。こうやって特許権を重視する、保護していくというような方向でやっているし、ドイツでは利益吐き出し型賠償制度ということも導入しているわけなんです。

 やはり、損害賠償制度をしっかり強化していく、特に、少なくとも知財については、諸外国でこういうことをやっているわけですから、法務大臣も務められた大臣、いかがですかね。

齋藤(健)国務大臣 ちょっと、しっかり通告をしていただければ、しっかり答えられると思います。

櫻井分科員 御答弁はいただけなかったということなんですが、一応そういう課題があるということを是非認識をいただきたいというふうに思います。

 もう一つ、科学技術に関連しまして、先ほど鈴木議員からも質問がありましたペロブスカイト太陽電池についてでございます。

 エネルギー庁のホームページを見ますと、日本発の有望技術として掲載されております。ただ、とても残念な事実として、発明者の宮坂先生、基本特許を国内では取得したものの、海外では出願していなかったというふうに聞いております。これは、海外出願するというふうになりますと、それぞれの国で出願するということになりますから、それぞれ翻訳代とかいろいろなことを含めると百万円単位でかかっていくということで、結局諦めたというお話もございました。中国は、この宮坂先生の特許出願を見て、研究開発をして、周辺特許をたくさん取っている、こういうこともございます。

 やはり、日本発の発明、しかも有望技術について、先ほど鈴木議員からもしっかり応援していくべきだというお話がございましたけれども、その大前提として、まず出発点として、重要発明の基本特許については国際出願を支援する仕組みをしっかりつくっていくべきではないか、このように提案申し上げるんですが、大臣の見解はいかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私も問題意識は共有していまして、重要な技術については、まずは、日本だけでなくて海外でしっかりと特許を取得して、事業化をしていくということが必要だと思いますので、しかも、御指摘のとおり、海外特許庁への出願費用が高いという声は多数いただいていると思います。

 このため、特許庁では、スタートアップや大学、中小企業等に対しまして、海外で権利を取得するための出願手数料ですとか代理人の費用ですとか翻訳費等の補助を行って、費用負担の軽減を図っているところであります。

 また、費用面の支援だけでなくて、ビジネスの専門家とともに弁理士、弁護士等の知財の専門家から成るチームをスタートアップに派遣する通称IPASという事業ですとか、それから、スタートアップ向けに知財に関する情報を発信するとともに、スタートアップ、知財専門家、支援関係者のネットワーク構築、この場を提供する通称IP BASE事業にも取り組んでいます。

 これらを通じて、スタートアップによる、海外への特許出願も含めた知財戦略、経営戦略を支援しているところであります。こういった政策が広く行き渡っていくことが大事なんだろうと思っています。知財を活用しながらイノベーションを起こしていく、そういうスタートアップの海外展開を私は強力に支援していきたいというふうに考えています。

櫻井分科員 いろいろ、宮坂先生のこと、これは今から十五年ぐらい前ですけれども、そういったこともあってこうした制度も整備していただいたのかなというふうには思いますが、補助金だと限界、全額補助をするというのはなかなか難しいかもしれませんけれども、逆に、出資みたいな形で、それが大化けして非常に大きなものになれば、その分はちゃんと十倍にして返してくださいよというような、何かそういう仕組みも含めて、もう少し柔軟な、そして、最初、出願の時点でこれはすごいなと思っても、そうでもなかったということもあるかもしれないし、思っていた以上にすごかったということもあるかもしれませんので、そこは柔軟な、リスクマネーを何らかの形で入れられるような、そういったことも是非御検討いただければというふうに思います。

 続きまして、原子力発電所の安全性についてお尋ねをいたします。

 まず、東京電力福島第一原発についてです。

 これは、重大な事故が起きたということで、原子炉、はた目に見ても原子炉の建屋が結構ぼろぼろになっていたり、中については、もっと、かなりひどい損傷を受けているということなんですが、もし更に地震が起きたときに原子炉が倒壊してしまったり倒れてしまうんじゃないのか、いろいろな心配をするわけなんです。

 これについて特に、少し細かく申し上げると、原子炉を支えるスタビライザーがもう破断してしまっているんじゃないのか、次に地震が発生したら原子炉は倒壊してしまうんじゃないか、こんなふうにも心配するんですが、これは大丈夫なんでしょうか。いかがでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘になりました東京電力福島第一原子力発電所一号機のペデスタルの損傷を踏まえまして、原子力規制委員会といたしましては、昨年五月に、ペデスタルの支持機能を喪失した場合の圧力容器、格納容器への構造上の影響について評価、検討することを東京電力に指示したところでございます。

 その後、昨年十月に、東京電力による評価の内容とその結果を原子力規制委員会として確認しましたが、格納容器内の放射線量が高く、スタビライザーの状態を含めて内部の詳細な調査を行うことは難しく、評価が仮定に基づかざるを得ないことから、この評価の妥当性を確認することは困難であるという判断をしてございます。

 この判断の一方で、原子力規制庁として評価を行っております。その評価におきましては、ペデスタルの損傷により圧力容器等が一体となって転倒し、原子炉建屋へ衝突するという極端な仮定の下でも、原子炉建屋全体として構造健全性は十分に維持されているということを確認をしているというところでございます。

櫻井分科員 まず、中の放射線量が高くて調査できない、だから、スタビライザーが壊れているか壊れていないのかも分からない、私は多分壊れているんだろうと思うんです、相当な事故でしたのでその可能性は十分あると。

 また、コンクリートの建屋にしたって、放射線でずっとさらされているわけですから、どれほどもろくなっているかどうかも本当のところは分からないのではないのか。万が一にでも倒壊するようなことがあっては、これは大変なことでございますので、補強をするなりということも是非考えていただきたいというふうに思います。

 続きまして、能登半島地震のときに、今年の一月一日に発災しました能登半島地震でございますが、これに関連して、やはり幾つか懸念事項があるのではないのかというふうにも考えるところです。

 まず、スクラム制御についてです。

 運転中の原子炉は、地震を感知すると緊急停止するというふうな仕組みになっているということは承知をしております。

 東日本大震災のときには、海溝型の地震だったということから、震源地から原発までの距離があって、その時間差、距離があったので何とか安全に停止することができたというふうにも承知をしております。

 一方で、能登半島の地震、今回は直下型地震だったということで、地震が起きてすぐ大きな揺れが来てしまうということから、これは、なかなか難しい制御、もし運転していれば安全に制御できたかどうか、大変懸念をするところです。

 そこで、ちょっとお伺いしたいのは、北陸電力志賀原発、特に一号機なんですけれども、スクラム制御に要する時間は一体何秒かかるのかということをまずお尋ねします。結局、スクラム制御が完了する前に大きな揺れが来てしまったら、安全に運転停止はできないんじゃないのかというふうに心配するんですが、その点、大丈夫なんでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 規制基準におきましては、運転時にプラントの異常な状態を検知し、原子炉を自動的に停止させる機能を有する系統を設けることを求めてございます。

 これを受けまして、適合性審査におきましては、地震波についてはP波であるかS波であるかにかかわらず、地震による一定の加速度を検知した場合には制御棒を緊急挿入して原子炉を安全に停止すること、地震による揺れが発生しても制御棒を挿入することができることということを確認をしているところでございます。

 なお、北陸電力志賀原子力発電所の一号炉につきましては、申請書上の数値でございますけれども、申請書上は、制御棒七五%挿入までの時間が一・六二秒以下という形で記載をされているというところでございます。

櫻井分科員 実は、この北陸電力志賀原発については、一九九九年に臨界事故を起こしています。その事故について報告書が出ています。この報告書の添付資料三―一五には、スクラム制御で臨界事故に至る、時間軸で表になっております。

 これを見ますと、原子炉スクラムで緊急停止が発生してから、一部、この臨界事故の原因になった制御棒以外のところ、ほかのところは、九秒後に大体、九秒から十秒後に制御棒が挿入された、こういうふうに書いてあるんですね。これを見ると、九秒から十秒ぐらいかかっているんじゃないんですか。今、一・六二秒とおっしゃいましたけれども、もっともっと時間はかかるんじゃないのか。

 逆に、沸騰水型の原子炉では、下から制御棒を挿入するというふうな構造になっていると聞いていますけれども、そんなに早く入れられないんじゃないのかな、これはちょっと原子力の専門家から聞いた話ですけれども。

 ちょっと、にわかに一・六二秒というのは信じ難いんですが、いかがでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しました一・六二秒というのは、異常検知をしてから制御棒を挿入するまでのその時間でございます。これにつきましては、事業者の方で当然のことながら確認をしているというところでございます。

 その検知までの時間を、どの程度かかるのかという、事象によって全挿入までの時間が少し変わる、長くなってしまうということはあり得ると思ってございますけれども、先ほど申しましたように、例えば、地震でありますと、地震を検知をしてからスクラムするまでというものは、一・六二秒以下で挿入をするという形で申請をされているというところでございます。

櫻井分科員 あと、もう一つ、志賀原発については、二〇〇七年にも能登半島で地震があって、震度六ぐらいの揺れを感知しているというふうに承知をしております。このときに、特に一号機は、スクラム制御するためには、水圧制御ユニットで水圧をかけて制御棒を挿入していく、下から押し上げていくというふうな構造になっているというふうに承知をしておるんですが、二〇〇七年の地震のときには、許容応力の範囲内、一号機の許容応力が二十五・二ニュートン・パー・平方ミリメートルということになっておりますけれども、発生応力は十九・三だったから何とか耐えたということなんですが、今回、その倍近くの揺れが来ているわけですよね。

 二〇〇七年のときには二百二十六ガルだったのが、今年の能登半島地震では三百九十九ガル。そうすると、発生応力はざっくり一・七、八倍ということになりますと、許容応力を超えてしまって、そもそも水圧制御ユニットが壊れてしまって機能しないんじゃないか、こんなふうにも心配するわけなんです。これは大丈夫なんですかね。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 北陸電力の志賀原子力発電所一号炉につきましては、現状におきましては、新規制基準に基づく設置変更許可申請がなされておりませんので、具体的に、過去の地震などについての評価というものは、仮に申請がなされた場合には、事業者の方で確認をし、その結果について、妥当性については原子力規制委員会で確認をすることも考えられますけれども、現状において申請がなされておりませんので、詳細なところにつきましては、お答えを控えさせていただきます。

櫻井分科員 あと、もう一つ、今回、能登半島地震でびっくりしたのは、隆起している、場所によっては四メートル隆起したという場所があるということなんですね。あと、津波が来るときは、引き潮で、海水がずっと後退していく、海水面が下がるということであります。四メートル上がって、海水面が数メートル下がっちゃうと、その足し算で、結構な海水面の低下、実質の低下というのが発生し得るということだと思います。

 原子力発電所の仕組みとして、海水を冷却用の水として取り込んで原子炉を冷やして、安全性を維持しているというふうに承知をしているんですが、海水面が下がっちゃって、海水を取り入れられなくなったら、もう原子炉を冷やせなくなって、大変なことになってしまうんじゃないか、こういうふうに心配するんですね。

 これは、隆起と引き潮で海水面が低下して、それで冷却水が取水できなくなるというようなことはないんでしょうか。大丈夫なんでしょうか。

 それから、この志賀原発については、取水用のために、トンネルで海から海水を引き込んでいるというふうな構造になっているというふうに図面で見たんですけれども、トンネルが壊れちゃったら取水できなくなっちゃうんじゃないのか、そういうふうにも心配するんですが、大丈夫なんでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、原子力発電所につきましては、敷地及び敷地周辺の断層について、詳細な調査を基に活断層を抽出し、地震動評価を行った上で、原子炉建屋等の重要な建物、構造物の基礎地盤が地震時にその建物、構築物を支持できるものであること、また、地震に伴う地盤の変形により安全機能を損なわないことを確認をしております。

 ですので、取水設備というものも耐震重要施設の一部になっておりますので、断層によってその機能が損なわれないようにということを確認をしているというところでございます。

 また、取水につきましては、津波による水位変動時の海水の取水性につきまして、基準津波というものを設定をしまして、その設定による波源において、地震による隆起、沈降も考慮をした上で保守的な評価が行われているということを確認をするということになってございます。

 さらに、原子力発電所には、既設の海水取水設備とは別に、海から水を供給するための可搬型の設備を設けることを新規制基準で求めることになってございます。

 これによりまして、各プラントには大型ポンプ車やホースが配備され、仮に既設の海水取水設備が使えなくなった場合でも、原子炉の冷却などに必要な量の水を供給できる能力があることを確認をしているというところでございます。

 なお、北陸電力の志賀原子力発電所二号炉につきましては、現在、新規制基準の適合性の審査をしているところでございますので、この審査においては、今回の能登地震の知見というものも追加的に考慮をして、引き続き厳格な審査を行ってまいりたいというふうに思ってございます。

櫻井分科員 大臣、今、質疑を、やり取りを聞いていただいて、我が国のエネルギー政策という観点で、やはり、地震が方々で発生する我が国のこの日本列島において、原子力発電所を造っていくということは非常に大変だということは御理解いただけたのではないかと思います。

 そうすると、仮に安全性を確保できたとしても、すごくコストがかかってしまうということを考えると、原子力発電を主要な電力と位置づけるというのはもはや無理があるのではなかろうかというふうに私は考えるんです。

 そのことについて、やはり、もう原発はやめていく、今日、全部、即停止というわけにはいかないかもしれませんが、徐々に減らしていくというような方向性が必要なのではないかと考えますが、大臣の御見解をよろしくお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 今、櫻井委員とのやり取りの安全性について、私の立場でコメントをすべきではないと思いますけれども、東京電力福島第一原子力発電所事故を真摯に反省をして、安全神話に二度と陥らないとの決意の下に、高い独立性を有する原子力規制委員会というものが設置をされて、世界で最も厳しい水準となるよう新規制基準を策定をしてきているということであります。

 その原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めない限り、原子力発電所の再稼働が認められることはないというのが政府の方針でありまして、この方針には変わりはありません。

 その上で、将来にわたって、エネルギー安定供給の責任を果たしつつ、脱炭素社会を実現していくことは極めて重要な課題だと思っておりまして、原子力は、再エネとともに脱炭素電源として重要な電源であり、安定供給の観点からも、安全性の確保を大前提に活用を進めていく、そのように考えています。

櫻井分科員 安全性を確保しようと思ったら、それだけコストがかかる。もはやもう採算は合っていないんじゃないのかなというふうにも考えますので、是非その点もお考えいただければと思います。

 続きまして、三ポツの大阪万博のことについて質問をさせていただきます。残り時間も少ないので、ちょっと一問飛ばしまして、運営費が赤字の場合の負担の所在についてお尋ねをします。

 議事録を資料としてお渡ししているかと思いますが、昨年十二月、これは、当時、西村経済産業大臣のときですけれども、入場料収入で賄うことになっているこの運営費について、赤字になった場合、誰が負担するのか、こういう質問に対して、西村前経済産業大臣は、国が負担することはない、このように答弁をされております。

 その後、記者会見等で、ぶら下がりの記者会見で大阪府の吉村知事は、大阪府は負担しないという趣旨の発言をしております。

 また、関経連の会長、松本会長も、経済界はこれ以上負担はできないというふうに発言をしています。

 現状、誰も負担をしない、責任を取らない、こういう無責任状態にあるわけなんですが、まず、運営費千百六十億円、これは当初から大きく増えています。これ以上増加することはないのかということと、運営費が赤字になった場合、その赤字は一体誰が負担するのか、誰が処理をするのかということについて、御答弁をお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 今年二月に行われた博覧会協会の理事会におきまして、運営費について収支共に千百六十億円となる資金計画、これが承認をされています。これについては、もちろん変更を前提としたものではありませんので、しっかり守っていくということになります。

 当該計画は、昨年十一月より販売が開始された入場券の売上げの状況ですとか、民間企業からの協賛金、ライセンス収入などの動向を踏まえつつ、収支相償となる範囲内で具体化されていくものであると考えていまして、繰り返しますけれども、収支相償となる範囲内で具体化されていくものであると考えておりまして、博覧会協会にて赤字にならないように取り組まれるというふうに承知をしています。

 経済産業省としても、赤字にならないということはもう重要だと思っていますので、早期にその芽を摘み取って対策を取っていくということが重要であると考えていますので、このため、万博の主要な費用の執行状況の適正性を確認すべく、有識者委員会を新たに設置をして、先日、第一回の会合も開催をしています。

 また、こうやって事前に芽を摘んでいくことをやっていきますので、議員御指摘のような事態を想定しているわけではないんですけれども、万が一にも赤字というものが見込まれるような事態が生じるような場合には、あらかじめ、赤字にならないようにどのような手をまた事前に打っていくかということを、経済産業省としても博覧会協会の関係者とともにしっかりと対応していきたいというふうに考えています。

櫻井分科員 質問時間が来ましたのでこれで終わりにさせていただきますが、これは、費用はどんどん増えていますし、特に運営費となってくると人件費という部分も大きいかと思います。政府は今挙げて賃上げといってやっているわけですから、そうすると更に増えていく可能性、賃上げが順調に進めば更に運営費も増えていくということもあり得ると思います。しかも、そのときに人件費をカットするわけにはいかないと思いますので。

 そう考えたら、やはり、赤字の場合にはどうなるのか、最悪のシナリオもちゃんと準備しておくべきではないのかということを御提案申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 今日はどうもありがとうございました。

伊藤(達)主査代理 これにて櫻井周君の質疑は終了いたしました。

    〔伊藤(達)主査代理退席、主査着席〕

上野主査 次に、神谷裕君。

神谷分科員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 今日は分科会ということで、齋藤大臣、一日大変だと思いますけれども、是非また今日の質問、よろしくお願いを申し上げたい、このように思います。

 さて、私からもいろいろな質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず最初に、石川の震災の関連の質問をさせていただきたい、このように思います。

 御案内のとおり、もう漁港、漁村が大変な被害を受けております。御案内のとおり、漁港の部分は農林水産省、水産庁が中心となって頑張っていただくことになると思います。ただ、漁港というか漁業現場以外のところ、すなわち、その後ろ側にある様々な企業、地元企業、加工屋さんもそうです、氷屋さんもそうです、要は、漁業を支えるものは結構地元企業さんになるんですが、ここは、どちらかというと、水産庁さんというよりは、中小企業ということもありますので、経産省さんにしっかりと支えていただかなければならないんだろうと思っております。

 東日本大震災のときに一次補正をやったんですけれども、そのときには、水産庁の予算においては、もちろん水産の中心でございますから漁業を中心に仕立てたわけですが、結果として、その後ろ側をしっかり手当てできていなかったなと実は反省をしておりまして、そういう意味において、水産庁と経産省がしっかり連携していただかなければ、なかなか地域としての復興はできないだろうという反省に立っております。

 そういったこともあって、まず経産省さんに地域をしっかり支えていただくために頑張っていただかなきゃいけないと思うんですけれども、この点について、改めて大臣の所感を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、神谷委員がもう長年にわたって漁業、水産業の振興のために御尽力されていることについて、改めて敬意を表したいなというふうに思っております。

 漁業に関連する地元の中小企業への支援策についての御質問だと思いますけれども、地震発生直後、特別相談窓口の設置等の、まずは緊急措置を行ったほか、官民金融機関等に対し、事業者の実情を踏まえたきめ細かく弾力的、迅速な対応をまず要請いたしました。

 また、経済産業省で被災中小企業・小規模事業者等支援本部というものを設置をして、これを開催して、自治体や商工団体などの関係者からの意見を踏まえて、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージを具体化をして、情報提供も行ってきております。

 被災中小企業の皆様が事業に不可欠な施策、設備の復旧に御活用いただけるなりわい補助金ですとか、コロナ融資の返済負担軽減策などの中小企業支援についても、皆様に速やかにお届けすべく、関係機関と連携しつつ情報周知に努めているところであります。

 私も農林水産大臣も経験しておりますので、水産庁とはいい連携で万全を期していきたいというふうに考えています。

神谷分科員 今、大臣御紹介いただいたとおり、もう大臣は農林水産大臣を経験され、また、漁業法の改正のときにもかなり御尽力をいただいたという記憶が私自身ございます。そういったときに様々議論をさせていただきましたが、いっても、大臣は非常にそういう漁業についての造詣も深いというふうに思っておりますので、そこは実は心配はしていないんですけれども、自身のいわば反省も含めて、やはりここの連携がしっかりしていないと、面的な整備、面的な復興がなかなか難しい。

 漁業だけやればいいということではなくて、やはり、その後ろ側がどれだけできるかということが最終的には成否を分けるかなと思っていますので、浜の復興、これが大事だろうと思っているところでございますので、引き続き、これはよろしくお願いをしたい、このように思っております。

 また、今回、港が大変な大きな被害を受けております。復旧まで相当時間がかかるんじゃないかなというふうに考えているところでございます。その間、漁船等はほかの港に避難する、あるいは操業を休業する、そういうことになると思いますけれども、これら漁業を支える中小企業さん、そうなると、一定期間、例えば収入が入らないとか、そういったことで、かなり影響があるんじゃないかなと思っています。ある意味、漁業が復活というか戻ったときに、併せてここの部分も戻っていないと、いわばシンクロというか、同時に戻っていないと、どうしても機能ができない、あるいは漁村、浜としての復活ができない、このように思うわけでございます。

 ただ、見ていると、やはり相当時間がかかるだろうということもあって、その間、中小企業はもつのかなというのが非常に心配なところでございます。どっちが欠けても浜の復活は図れないことになりますので、この間、いかにして支えていくのか、これがやはり非常に課題なんじゃないかなと個人的には思っております。

 中には、一年、二年かかるような事例もあるかもしれません。そういったときに、これらの企業をしっかりと支えていただいて、浜をしっかりと復活をさせていただきたい、このように思うわけでございますけれども、これに対する所感を伺いたいと思います。いかがでしょう。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の能登半島地震で被災された漁業者の方、漁業に関する地元の中小企業への支援策、これについては、地震発生直後から、特別相談窓口の設置等の緊急措置や、官民金融機関等に対する、きめ細やかで弾力的、迅速な対応を要請しておるところでございます。

 また、なりわい補助金を始めとする中小企業支援策につきましても、迅速に公募等を開始すべく、現在、関係機関と連携しながら準備を進めているところであります。

 このなりわい補助金につきましては、大規模な災害により被災した中小・小規模事業者の方が事業に不可欠な施設設備の復旧を行う際に、その費用を援助するものであり、令和二年七月豪雨など、施設設備の損壊等の物理的な被害が広範囲かつ甚大な、激甚災害法におけるいわゆる本激、これが適用された災害におきましては、特別に措置されているものであります。

 私どもとしましては、こうした支援策を活用しながら、引き続き、水産庁を始めとする関係省庁、関係機関と一体となり、中小・小規模事業者復旧復興支援に努めてまいりたいと考えております。

神谷分科員 迅速性も大事なんですけれども、息の長い支援、これも今回の場合は大事なんじゃないかなと思っています。そういう意味において、すぐに手当てをしていただいた、このことは評価をするんですが、この先の道行きを考えると、結構、どれくらいかかるのか、ここがやはり不安なところです。

 先ほど申し上げたように、片っ方欠けてもいけないわけですから、迅速性プラス息の長い、しかも、その間ちょっと厳しい状況がないとも限らないので、ここをどうやってブリッジするか、支えていくか、ここが実はポイントなんじゃないかなと思うわけでございます。そういったところにも是非御配慮をいただきたいと思うんです。

 よく、大臣、この辺、分かっているとは思うので、もしコメントあったらお願いします。

齋藤(健)国務大臣 今回は、私の所管ではありませんけれども、漁港が相当甚大な被害を受けておりますので、おっしゃるように、漁業そのものの再建にも時間がかかる部分があるのではないかなと思っています。そして、そうしますと、やはり、その地域全体での復興を、どうあるべきかということもセットで考えていかなくちゃいけない局面になると思いますので、単に施策のパッチワークをやるんではなくて、漁港をどうするかということも含めて、しっかりと時間もかけて対応していかなくちゃいけない、そういう今回の震災の特徴があるんじゃないかなというふうには思います。

神谷分科員 重ねて申し上げませんが、どうかよろしくお願いをしたい、このように思います。

 次に、ラピダスについて伺いたいと思います。

 先般は、大臣、熊本の御出張お疲れさまでございました。北海道、ラピダス、これは本当に大事なプロジェクトだなと私自身も思っていますし、どうしてもやはり失敗させるわけにはいかないというのが率直なところでございます。

 現在、北海道庁、北海道でも、北海道半導体・デジタル関連産業振興ビジョンの素案を策定し、パブコメとかいろいろやっているところでございますけれども、その中では、ラピダスの立地を契機として、半導体の製造、研究、人材育成などが一体となった複合拠点の実現がうたわれております。迅速にこれを実現するというふうにも言われているところでございますが、ラピダスが成功するための複合拠点の実現と、北海道経済そして国内経済への波及効果をより大きなものとならしめるためにも、道内を始め国内先端企業との連携は非常に重要である、このように思っているところでございます。

 実際に、でも、そういった企業との連携が進んでいるのか。実は、私、ここが非常に不安に思っているところでございます。実際、その素案を見ておりますと、様々な企業の名前は羅列されております、実際に挙がっています。ただ、実際にそういった企業さん、絶対声がかかるんじゃないかなと思っているような企業さんに聞いてみますと、なかなか、実は、実際聞いていないよみたいなことも聞いております。

 実際、そういうような可能性がある企業を挙げていただいて、これからいろいろやるんだよということなのかもしれませんが、ただ、実際に北海道でもそういう様々な企業、北海道だけじゃなくてもいいです、国内全体でも、そういった皆さん方がある中で、一緒になって成長していただくのが本来の在り方だろうと思うし、むしろ、この国の実力をつけていくためには、そういった皆さん方の連携、これは絶対不可欠だと思うんです。

 これについて、ちょっといささか私自身は不安な面を持っているので、この点について大臣の所感を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 神谷委員が具体的にどういう声をお聞きになっているか、ちょっと私は承知をしていないのであれなんですが、少なくともラピダスプロジェクトの成功のためには、装置や素材産業など、国内企業との連携が不可欠でありまして、そういうものを通じて国内経済に波及、拡大をしていくということになるんだろうと思っています。

 個別企業の契約に関わるので、具体的企業の名前の言及は差し控えますが、ラピダス社は既に、我が国の装置、素材産業との共同開発を含めまして、多数の国内企業と連携を実施しているというふうに聞いていますので、冒頭申し上げたように、どのような声をお聞きになったかちょっと分からなくて、それ以上のコメントはできないんですが、いずれにしても、我が省としては、ラピダスプロジェクトを通じて、国内経済の活性化ですとか、我が国企業の競争力強化にもつながるようにしていかなくちゃいけないと思っていますので、地元産業界や関係機関とも連携しながら、企業間の連携、これを促していきたいというふうに考えています。

神谷分科員 実際に私もそういう声を聞いておったので不安に思ったというところでございます。実際に、もし水面下であってもつながっているのであれば、これは全然構わないと思うんですけれども、ただ本当に、実際にそういうような有機的な連携ができていなければ、ラピダスだけ前に出ても、というよりは、ラピダスそのものも成功できるかどうかというところがやはり心配でございますので、その点、是非御留意をいただいて、見ていただけたらと思う、そういうようなことでございます。

 次なんですけれども、そもそも、半導体製造技術において、二ナノメートルを回路幅とする次世代半導体の製造を目指していくんだというように聞いております。技術の導入、開発についてのめどがどれだけ立っているのかなと実は気になるところでございまして、海外の企業や研究機関にとっても、連携をしていくということになっておりますけれども、こういった先端技術、なかなか移転してくれるのかなというところも気になりますし、仮に契約ができたとしても、様々な制約があったり、あるいは膨大な金銭が必要になるのではないのかなということが、自然に思うところでございます。

 ただ、もう一方でいうと、やはり技術の開発や移転、吸収がないと、次の次の展開を模索していくこともなかなかできないんじゃないかなと思うところでございます。特に、先端技術の開発、移転のめど、これはどこまでついているのか。もちろん、言えない範囲もあると思いますけれども、技術移転されるとすれば、海外の技術を持ってくるにしても、我が国に不利あるいはラピダスに不利なものになっていないのか。そういった契約、もちろん、不利であれば契約をなかなか結ばないとは思うんですけれども、ここはちゃんとできているのか。開示できる範囲はあるかもしれませんが、これについてお伺いをしたいと思います。いかがでしょうか。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 ラピダス社は、二ナノ世代のロジック半導体の要素技術を有する米国IBM社と連携し、同社のアルバニー研究所に約百名の技術者を派遣して、技術の供与を受けながら、量産化に向けた研究開発を進めているところと認識をしてございます。

 二ナノ世代のロジック半導体は、海外のトップメーカーを含めて、まだ量産化に至っていない、難易度が高い技術ではありますが、現時点では、IBM社からの積極的な協力もあり、当初のスケジュールどおりに開発が進捗しているものと承知をしております。

 IBM社からの技術の供与については、一定の費用が発生することは事実でありますが、ラピダス社の量産に向けて特段の制約が課せられてはいないものと認識をしてございます。ラピダス社においては、知財の専門家もリテインしながら、こうした点も含めてIBMとしっかりと交渉を行っているものと聞いております。

 いずれにいたしましても、経済産業省としては、ラピダス社の開発動向について、しっかりと丁寧に幅広くフォローアップをし、適切に必要な対策を行ってまいりたいと考えております。

神谷分科員 IBMさんにとってもいいところがあるから、そういうふうにしていただけるのかもしれませんが、ただ、やはり技術の移転、特に先端技術の移転というのは、なかなか簡単にいくような話ではないというふうに思います。当然、開発された方にとってはそれだけの費用もかかっているし、それをまた簡単に移転してくれるとも思えない。

 そういった中で、今回は移転していただけるという考えの下に進んでおられると思うんですけれども、そこはやはり、もう一回とは言いませんが、もちろんラピダスはそれで進めていこうと思うんでしょうけれども、経産省、国の立場としては、そういったところはしっかりと見ていただきたいと思いますし、仮に不利な条件、多少のまなきゃいけないところもあるのかもしれませんが、そういったところはしっかりと見ていただきたいと思いますし、万が一問題があるようだったら、そこでやはり国として口を挟む、そういったことも時には必要なんじゃないかなと思った次第でございます。

 また、今回、二ナノのお話、今出ましたけれども、仮に獲得できたとして、獲得した後も、一回これを始めたら、当然、その後も引き続きずっとやっていかなきゃいけないというふうに思うわけでございます。これでしっかりと研さんを続けていかないと、あっという間にまた劣後するんじゃないかという、そういった懸念を持っているわけです。

 一回走り出したら、止まるわけにはいきません。始めた以上は、やはり長期間にわたり研究や技術開発にも国としても支援を行っていく必要が生じるんじゃないかなと思っておりますが、この辺、国として今後引き続き支援を考えているのか、また規模はどの程度なのか、この辺について伺いたい。

 また、あわせて、研究の主体はLSTCとなるようですけれども、国内外の研究機関、企業との連携は必要でありますけれども、その成果、要は、ほかのところで研究するところとラピダスが持っていくところと、優位に使用できるのか。また、これと相反する話ではありますけれども、国が投資している以上、当然、国民全体にも、あるいは国内のほかの企業にもいいところがなければいけないんだろうと思うわけでございます。そういったところをしっかり担保できるのか、大臣の所感を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 ラピダス社が二〇二〇年代後半に量産化を目指す二ナノ世代の次世代半導体は、自動運転や生成AI、量子、ライフサイエンスなどに不可欠なキーテクノロジーであります。我が国産業全体の将来の競争力にとって極めて重要であり、経済安全保障の観点からも重要な戦略物資だと考えています。

 このため、ラピダス社の取組につきましては、今後、プロジェクトの進捗や必要となる資金については精査を行いつつ、世界的な開発競争に負けることのないよう、今後も必要な支援を行えるよう、経済産業省として最大限努力をしていきたいと思っています。

 一方、御指摘のように、技術で世界をリードし続けていくためには、ラピダス社が開発に取り組んでいる二ナノ世代の半導体に加えて、更にその先のビヨンド二ナノ世代に関する研究開発などに取り組んでいくことも重要だと思います。

 このため、経済産業省では、先日、国内外のグローバルトップレベルの研究機関が連携をしながら取り組む、LSTCによるビヨンド二ナノ世代の技術開発プロジェクトを支援する旨、決定をしたところです。

 御指摘のように、こうした研究開発の成果は、ラピダス社に加えて、装置、材料メーカーも含め、広く国内関連企業に還元されていくものだと認識をしています。

 経済産業省としては、グローバルレベルでのビジネス、技術動向に関するアンテナを高く持ちつつ、技術で世界をリードし、それを国に根づかせていくための取組に対し、必要な支援を行っていきたいと考えています。

神谷分科員 今、ビヨンド二ナノのお話もいただきました。物は違うんですけれども、5Gというかビヨンド5G、これの開発あるいはその後の研究、各国を見ていても、やはり兆単位のお金がつぎ込まれています。ただ、もう一方でいうと、この国のお金はどれくらいつぎ込まれているかというと、もう全然桁が違います。そういった意味では、投資できる金額というか、こちらから出せる金額というのはかなり限られているんじゃないか、そういう懸念を実は持っています。

 もちろん、お金の多寡で決まってくるわけではないとは思いますが、ただ、もう一方でいうと、やはりそういった物量というのも大変大事な観点だろうと思います。もちろん、一ラピダスでできればいい話ではあるかもしれませんが、ちょっと今のラピダスで、まだなかなか収益も上がっていない段階でどれだけ開発費を出せるかというと、これは限定的なんだろう。そうなると、勢い国なり経産省に頼らなければいけない部分はかなり多くなってくると思いますし、逆に言うと、ここはもう国策の世界ですから、出していかなきゃいけないんだろうと思うんです。

 そういったときに、ある意味、思い切りが結構大事だなと思っていて、やはりしっかり出すものを出していかないときついんだろうと思いますので、あえてここは、これで十分だろうという金額を超える金額を是非想定をいただきたい、このように思うわけでございますので、是非、大臣にはその心積もりをお願いをしたい、このように思います。

 今お話にも出ましたけれども、NSTCやimecとの連携の話は私も聞いております。ただ、ラピダスばかりでなく、国内研究機関の関わり方、大学との連携の在り方、これについてどのように考え、進められているのか、これについて伺いたいと思います。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 半導体は、半導体チップの製造、設計に加え、製造装置や部素材、原料も含め、そのサプライチェーンは幅広い産業、技術領域から構成されております。このため、一か国だけでサプライチェーン全体を賄うことは不可能であり、グローバルな連携が不可欠であります。

 また、かつて我が国半導体産業が凋落した原因の一つとして、日の丸自前主義ともいうべき内向きな取組に終始し、有力な海外機関との国際連携を推進できなかったことが挙げられるものと認識をしております。この点については真摯に反省し、現在の半導体産業政策に生かしていくことが重要と考えております。

 このため、経済産業省としては、ラピダスプロジェクト以外についても、国内のプレーヤーと海外の大学、研究機関、企業等との幅広い連携を重視しているところであります。例えば、二ナノ世代のAI半導体設計技術開発プロジェクトにおいては、技術研究組合最先端半導体技術センターとカナダのテンストレント社との連携事業を支援するなど、多くのプロジェクトで国内外の連携を支援しているところでございます。

 引き続き、国内のみならず、有志国、地域と密接に連携し、我が国の半導体産業の復活に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。

神谷分科員 連携は非常に重要だと思うんです。ただ、連携は本当に重要なんですけれども、私、すごく懸念をしているのは、多くの連携はするんだけれども、音頭取りをちゃんとやってくださいねという話、あるいは管理をどういうふうにしていくのか。

 それともう一つ、やはり気になるのは、国内の大学、研究機関、いずれもそうなんですけれども、先端技術というか優位な技術ほど隠れたがる、なかなか公開されない、横に連携されない、そういったことがあるのかなというふうに、これまで見ていて思ったこともあります。

 それと同時に、そういった技術が開発されても、社会実装というか、実際に次の展開に行く、このコーディネート役が実はこれまでこの国には余りいなかった。それがあったために、結果として前に進んでこなかったんじゃないか、私自身はそういうような思いがあります。

 ですので、もちろん、開発、連携は重要なんですけれども、それをまたうまくコーディネートするコーディネート役、そしてそれを、更にまた社会実装をしっかりやっていただく、このことが非常に重要なんだろうと思います。ですので、ただ単に連携すればいいという話ではなくて、連携の次の世界というか、その全体をコントロールする、この役目をしっかりとやっていただかなければならないんですけれども、ちなみに、この役目、一番この扇の要になるのはどこなのか、そして誰がそれを担当するのか、念のため、これを確認してもよろしいでしょうか。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点、非常に重要な観点だと思っております。一義的には、企業としてしっかり取り組んでいただくということが重要だと思っておりますけれども、経済産業省としても、今の点についてもしっかりと精査をして、必要な措置を、対策を取ってまいりたいと考えております。

神谷分科員 かつて、いろいろなプロジェクトがあったんですけれども、やはりそこが一番、国がやっても結局社会実装のところで問題があったり、やはり最後は、コアなところで本当に上手なコーディネート役がいないと社会実装もできないし、結局宝の持ち腐れになってしまう。そこをやはりよくよく是非考えていただきたいと思いますので、是非、大臣、よろしくお願いをしたい、こう思います。

 次に、人材確保について伺いたいと思います。

 今、北海道内の工業系大学、高専では、現在でも人材の供給はやっているんですけれども、道内のそういったニーズすら賄えていないというのが現状でございます。

 実は、道内の大学に来られた方でも、ほとんど、卒業した後、半分以上というか、もっとが道外に出てしまうということで、実は、理系、工学系人材はかなり枯渇をしています。そうでなくても厳しい中において、今回、ラピダスが来ます。ラピダスに人材を提供するのも非常に重要なんですけれども、道全体でも不足している中で、どのようにしてこれをやっていくのか、この辺、目配りが本当に必要なんだろうと思っています。

 素案では、二〇三〇年度から三倍の六百人を道内半導体、デバイス関連企業への就職というようなことで北海道そのものは考えているようでございますけれども、なかなか、そもそも供給する人材も少ない、あるいは定着する人も少ない、そういう中で、きちんと定着できるのか、あるいは増やすことができるのか。実は、そこが大変な課題なんだろうと思っているところでございます。

 ただ、もう一方でいえば、熊本のように高い待遇というか、そういったものがあればまた人が寄ってくるのかもしれませんが、ただ、それはラピダス単体であって、地域の様々なそういったニーズにははまってこない可能性もあります。もちろん、総体として賃金が上がってくれば一番よいんですけれども。

 そういった意味で、人材供給、あるいは人材をどのように確保していくか、これは非常に重要な課題だと思っているんですが、大臣の所感を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のように、ラピダスプロジェクトを成功させるためには、人材の確保というのは必要不可欠であります。一方で、ラピダスによる地元人材の確保をすればするほど、地元企業の人材確保が難しくなる、そういう懸念の声も存在をしているわけであります。

 そのため、経済産業省としては、北海道大学や千歳科学技術大学、地元半導体企業等と産学官連携による協議会、これを設立して、半導体人材の育成、確保に取り組んでいるところであります。また、次世代半導体の設計、製造を担う高度専門人材、これの育成にも取り組んでいるところであります。

 まず、これらを通じて、地元人材のパイ自体の拡大、これを図っていくということに力を尽くしていかなくちゃいけないわけであります。ラピダスに必要な人材の確保と地元企業の人材の確保の両立、このパイを拡大することによって図っていくということになろうかと思いますが、おっしゃるように、そう簡単な話ではないと思っていますので、しっかり取り組んでいきたいと思っています。

神谷分科員 大学の人員、定数だって増えているわけではありません。もちろん、道内の人ばかりではなくて道外から連れてくればいいという話もあるんですけれども、なかなか現状では来てもらえていない。仮にラピダスに集まっても、ほかの企業に集まらない、これではまた様々な課題、問題が出てくると思います。

 そういった意味において、今からやっておかなければきついんだろうと思いますし、現実に、そういった大学との連携、様々なことは模索をされ、そういった話合いもされているとは思いますが、現に、定数やあるいは人材の確保の様々な施策が進んでいるとは思えないというようなところでございます。動くのなら今のうちから動かなければいけないと思いますので、このような問題を質問させていただきました。よろしくお願いをしたいと思います。

 今回のプロジェクトでは多数の企業誘致や人材の確保を必要とするわけでございますけれども、今申し上げたように、様々なところで整備をしていかなければいけない中で、いろいろな研究の機関や大学の施設に聞いていますと、そういった専門の人材を集めるには、例えば住環境での整備であるとか、あるいは学校施設であるとか、あるいは商店、医療機関、そういった社会的なインフラがそろっていないところに専門人材はなかなか行きたがらないよというようなことは聞いているところでございます。

 特に、今回は先端の人材、本当に優秀な方を集めなければいけないと思うんですけれども、そういう方に来ていただく環境づくり、これをしっかりつくっていかなければいけないと思っております。

 また、実際にワークするとなれば、様々なところ、例えば出荷についても、例えば今の千歳空港では手狭になるんじゃないかとか、当然、海を越えなきゃいけないわけですから、様々な課題、必要になってくると思うんですけれども、まずは、人材を集めてくるためのこういった社会的な設備、インフラ、これについてしっかり整備をしていただきたいと思うんですけれども、これについての所感を伺いたいと思います。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 ラピダスプロジェクトの成功や周辺地域への関連企業の立地、地元経済の発展に向けては、委員御指摘のような周辺インフラの整備が重要でございます。

 このため、令和五年度補正予算では、内閣府において、半導体等の戦略分野に関する国家プロジェクトの生産拠点の整備に対し、必要となる関連インフラの整備を支援するための交付金が創設されているところでございます。北海道には、ラピダスプロジェクトの拠点整備に必要な下水道と道路のインフラに対して、最大約十四億円の予算配分が決定されているものと承知をしております。

 また、それ以外にも、周辺の住環境の整備など、様々な取組が必要と考えております。これらについては、経済産業省としては、北海道庁や周辺の自治体、関係省庁とも連携して取り組んでまいりたいと考えております。

神谷分科員 ありがとうございます。

 誰がリーダーシップを取るかで、このプロジェクトの成否が懸かっていると思っておりますので、是非、そういった意味で、大臣、リーダーシップ、よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

上野主査 これにて神谷裕君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田義明君。

和田(義)分科員 ありがとうございます。衆議院議員の和田義明でございます。

 本日は、齋藤大臣、そして経産省の皆様、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、委員長、そして委員各位の皆様方にも厚く御礼を申し上げます。

 本日は、半導体、とりわけ私の地元千歳市に誘致されましたラピダスについて質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 このラピダスプロジェクトでありますけれども、IBMと東京エレクトロンとの基本構想から、日米政府の合意、そして今まで存在しなかったラピダスという会社が設立されるまで、三年たたずして実現されました。自民党の甘利会長を筆頭とする半導体議連がこれを推進し、そして政府が決断を下した。本当に、ラピダスの名前のとおり、非常にスピーディーに進められたプロジェクトでありまして、特に、政府が国家プロジェクトとしてこれをやるんだという決断をされたことに心から敬意を表する次第でございます。

 この半導体でございますけれども、言わずもがなではありますが、日本の産業優位性の要の戦略的物資でありますし、ここのところで勝てるかどうかというところが、ある意味、例えば中国との競争において勝てるか負けるかというところに直結するんだと思います。極めて重要なアイテムでありまして、絶対に負けられないという思いを共有させていただきますし、また、この国家プロジェクトが私の地元千歳に誘致されましたことに改めて御礼を申し上げます。

 二〇二三年の九月にラピダスの千歳工場の着工が行われました。そして、二〇二五年には二ナノメーターの半導体の試作が開始をされ、二七年には量産が開始されるスケジュールと伺っております。工事も雪の中でも順調に進んでおり、ある意味、半導体業界の中でも、これほどスムーズに工事が進んでいることに大きな驚きと注目を集めているところでございます。

 二〇二五年、ちょうど試作が始まる頃には第二工場の建設も開始される、そして、二ナノの次の世代の半導体の生産をもくろむといったことも伺っており、大きな期待が膨らんでいる次第でございます。

 政府、そしてラピダス、官民合わせて五兆円規模の投資が計画されているということでありまして、まさに本当に大規模な、今まで見たことのないような国家プロジェクトであります。

 そして、先ほど内閣府さんのお話もありました、内閣府の方からも、もちろん経産省さんからもそうなんですけれども、周辺のインフラ整備も含め、強力な御支援をいただいておりますこと、地元を代表しまして、心から御礼を申し上げます。

 一方で、物づくりには先行投資が不可欠であります。初期投資の回収まで時間を要するのは当然でございます。加えまして、半導体産業というのは、研究開発費や設備投資など巨額の投資を続けなければならないという極めて高いハードル、ハードシップがございます。

 今年の一月に、私も、IBMと東京エレクトロンが共同で研究開発をやっているアメリカ・ニューヨーク州のアルバニー、ニューヨーククリエイツというところに行ってまいりました。数千平米のクリーンルームの中に、一つの機械が数百億円というけたたましい工作機械、製造装置が並んでおり、そこで世界トップクラスのエンジニアが日々研さんを積んで研究を進めておりました。これだけのことに投資をしなければ、やはり半導体の世界で生き残っていけない、そして世界のトップランナーを走り続けることはできない。ある意味、この金額の規模、そしてこの産業のスケールに大きく驚愕をした次第でございます。

 そういった中、最初の大臣への質疑でございますけれども、このラピダスの第一工場の完成というのは、決してこのラピダスプロジェクトの完結ではなく、むしろ、あくまでスタートだというふうに思っております。これから、第二工場、その先へと工場を造り、そしてどんどんレベルの高い半導体を作り続け、そして常に、何年たっても、五年たっても十年たってもこの産業優位性というものを最先端の半導体で守り続ける、そして未来を切り開き続ける、これがこの半導体ビジネスの要諦だというふうに思っております。

 もちろん、自由経済の前提に基づいて、企業が独自でちゃんと採算を取っていかなければいけないというところはあるものの、八〇年代、九〇年代、日本が半導体産業を世界でリードしていながら敗れてしまったという苦い経験も踏まえて、やはり、国家としてこの半導体をやるんだ、特にこのラピダスプロジェクトを続けるんだという長期のコミットメントが必要だと思っております。齋藤大臣のこの長期コミットに対する意気込みをお聞かせいただければ幸いでございます。

齋藤(健)国務大臣 基本的な認識は、もう本当に和田委員と全く同じと申し上げたいと思います。

 ラピダス社が二〇二〇年代後半に量産化を目指す二ナノ世代の次世代半導体は、生成AIや自動運転始め、幅広い産業におけるデジタル化、高機能化と消費電力の抑制、これに不可欠ないわばキーテクノロジーであります。我が国産業全体の将来の競争力にとっても極めて重要であると考えています。また、経済安全保障の観点からも重要な戦略物資であります。

 一方で、ラピダス社が取り組んでいる二ナノ世代の半導体は、世界でどの企業でも量産までこぎ着けておらず、技術的な難易度も極めて高いものであります。

 経済産業省としては、技術開発の進捗や必要となる資金に関して、外部専門家の協力も得て精査を行いながら、今後も必要な支援を行えるように最大限努力をしていきたいというふうに思っています。

 また、技術で世界をリードし続けていくためには長期的な視野に立った支援を行っていくことが重要であるということは、もう委員御指摘のとおりであります。このため、ラピダス社が開発に取り組んでいる二ナノ世代の半導体に加え、更にその先のビヨンド二ナノ世代の研究開発についても、先般、経済産業省としての支援を決定をいたしました。

 経済産業省としては、グローバルレベルでのビジネス、技術動向に関するアンテナを高く持ちつつ、技術で世界をリードし、それを国に根づかせていく、こういった取組に対して、必要な支援をしっかりと行ってまいりたいと考えています。

和田(義)分科員 大変力強い御決意、誠にありがとうございました。まさに、先般、ビヨンド二ナノのところに対する支援も御決定いただいたというようなことでございますし、長期の視点を持ってというようなことで、力強いお言葉をいただきました。誠にありがとうございます。

 続きまして、先般、私が出張してまいりましたニューヨーク州のアルバニーのときでございますけれども、アルバニーにおきまして、ニューヨーククリエイツの研究者の方々、またIBMの役員の方、ニューヨーク州政府の関係者の方々、また、近隣の工科系の大学、ニューヨーク州立大学ですとかレンセラー工科大学ですとか、そういった学校の幹部の方々と面談し、そして、どのように半導体のエコシステムをニューヨーク州が築いてきたのか、それぞれどのような役割を果たしてきたのかというところの調査をしてまいりました。

 大変まず驚いたのは、ニューヨーク州のイニシアチブでございます。ニューヨーク州はこの半導体や再エネ等々に対する徹底投資というものを約二十五年ぐらい続けているということでございました。この間に何人もニューヨーク州の知事は替わって、その間、共和党、民主党の知事が生まれ、党派は違うわけでございますけれども、州政府として半導体等々をこのニューヨーク州でやるのであるという信念、そして決意というのは一度も揺るがなかったということは本当にすばらしいことだというふうに思っておりますし、ある意味、これは地域発展のために見習わなければならないことだというふうに痛感をいたしました。

 そのニューヨーク州でございますけれども、何が大事かというふうなことを聞いたときに、忍耐が一番大事ですというふうに言われました。アメリカで根性論をいきなり言われるとは少々驚いたわけでございますけれども、忍耐とはどういうことかといいますと、約二十五年間、ニューヨーク州がこの取組をやってきた中で、約十五年間というのはなかなかその結果が見えなかった、ある意味、企業の誘致ですとか、住宅地の造成ですとか、人口の増ですとか、そういったものというのがなかなか結果が見えなかった、ある意味、花が開いてきたのはこの一番最近の十年間であるというようなことでございました。

 現在、このニューヨーク州のプロジェクトが始まってから、約六万人の優秀なエンジニアの方々、そしてその御家族の方々がニューヨーク州に外から入ってきていただいて、そして、ある意味、非常に大きな経済効果を生んでいるというようなことでございました。

 じゃ、地方自治体が頑張らなきゃいけないんですねというふうに思ったんですけれども、ニューヨーク州の年間の州政府予算というのは四十一兆円でございます。北海道の予算が大体四兆円を切るぐらいでありますので、桁が一個違うということで、やはりここは国の出番でなければ厳しいのかなというふうに思っております。

 この半導体のエコシステムをつくるというところでございますけれども、ニューヨーク州の州政府の人に言われた忍耐というところ、やはり、先行投資をして、そこに来る企業が決まっていなくても工業団地を造る、そして住宅地をある意味造成をしておく、こういったことを準備しておくということが大事だと言われ、その理由はといいますと、特に工場のところは、工場を建設するのに約十八か月かかる、企業の経営者としては、十八か月プラス何か月企業のお金が寝てしまうのか、そこを見るというふうなことなんですね。この十八か月プラスの数字を、このプラスアルファの数字をできるだけ少なくするというのがやはり企業誘致の要でありますし、ラピダスを筆頭に、生産性を上げるというためには、近隣にちゃんとエコシステムがあって、物流コストをミニマイズする、人の移動をミニマイズする、そういったことをしなければ、やはりトータルの意味での日本の半導体産業、そしてラピダスプロジェクトの勝利というのはないというふうに思っております。

 そこでお伺いをしたいのですが、このエコシステムづくり、とりわけインフラの整備において、なかなかやはり、来る当てのないところでもって工業団地を造ったり宅地造成をするというのは困難だとは思います。しかし、やはりこの国家プロジェクトを成功させるために、ここへの国からの投資というのは必要だというふうに思っております。このインフラ整備に対する意気込みについて、大臣の御決意、意気込みをお聞かせいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 ラピダスプロジェクトの成功のためには、関連するサプライチェーンの構築ですとか、当然、周辺インフラの整備、これも必要になります。

 経済産業省としても、本プロジェクトを核として、北海道内に半導体、デジタル関連産業の集積が進むように、もちろん地方自治体等と連携して積極的に取り組んでいくというのは基本的な考え方であります。

 それで、インフラ整備に関しては、令和五年度補正予算で、半導体等の戦略分野に関する国家プロジェクトの生産拠点の整備に当たり必要となる関連インフラの整備、これを支援するための交付金が内閣府に創設をされたところです。まあ、委員御案内だと思いますけれども。

 北海道には、ラピダスプロジェクトの拠点整備に必要な下水道と道路のインフラに対して最大約十四億円の予算配分が決定されていると承知をしています。

 ニューヨーク州と比べると随分差があるのかもしれませんが、ただ、ラピダスプロジェクト自身は私どもにとりまして失敗の許されないプロジェクトでありますし、多額の財政資金もつぎ込むことになるわけでありますので、つぎ込む以上は、やはり成功するために必要なものというものは投入をしていかなくちゃいけないというのが基本的な考え方でありますので、今申し上げたもの以外にも、住環境などの社会インフラの整備も重要と考えていますし、それから、必要に応じて、もし団地の話なんかもあるようでありましたら、これは一つ一つ検討をしっかり加えていきたいというふうに考えています。

和田(義)分科員 齋藤大臣、大変力強いお言葉、誠にありがとうございました。

 まさに産業の集積ということは、やはりその生産性を極限まで高めるというところに直結をいたします。失敗の許されないプロジェクトであるからこそ、しっかりとそこに向けて引き続きお力を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、同じく半導体のエコシステムの範疇における話なんですけれども、人材についてでございます。

 現在、ラピダス社は、アルバニーのニューヨーククリエイツに百名の人員を送っておりまして、今頑張って研さんを積んでおるわけでございますけれども、ほどなく追加で約百人送るというふうな話も伺っております。そして、この約二百名の人たちが、ラピダスのプロジェクトが立ち上がる一番最初のステージを担っていくわけでございます。大変期待が高いというふうなことで、彼らに会ったときも激励を送ってまいりました。

 そして、一方で、この二百名というのはあくまでラピダスの創成期のプロジェクトを支える人員であって、じゃ、それ以降の人材はどうなるのか、周辺産業の人材というのはどうなるのか、新たな研究機関をつくった際にそこにどういう人たちを呼ぶのかという人の問題というのは、これから大きく、やはり力強く推進をしなければいけない課題だというふうに思っております。

 ニューヨーク州に行きまして、レンセラー工科大学そしてニューヨーク州立大学のキャンパスを見たり、また、幹部の人の話を伺ってまいりました。まずやはり国のサポート、そして産業界、とりわけレンセラーの場合にはIBMだったんですけれども、これが極めて重要であるというような話でございました。レンセラー工科大学におきましては、そこの大学を卒業したIBMの幹部の人が、IBMで必要とする人材を育てるための特別なコースをつくって、必要な、古い工作機械なんかもそこに設置をして、そして、テーラーメイドで必要な人材をつくっているというような話でございました。

 まさに、いわゆる産学官連携という言葉はもう本当に使い古された言葉ではありますけれども、本当に、目指すゴールというのを究極まで絞り込んだ産学官連携の姿であったというようなことで、大変感銘を受けました。

 また同時に、必ずしもトップのエンジニアだけを育てているのではなく、地域でお金を出し合って例えば工業高校ですとか専門学校等々もつくって、そして、工場を建てたり家を建てたりするときに必要な例えば電気工さん、こういった方々を教育したりですとか、家を建てる建設人材、こういった人たちも育てるといったこともやっておりまして、地域全体で必要な人材というのをいろいろなところから集めて、そして、教育を施して、その地域の中で経済活動を行っていただく、そうすることで、人口も増え、地域全体の経済が活性化されるというような話でございました。本当にこの人材育成のところというのは非常に核の部分だと思っております。

 お隣の韓国でございますけれども、金大中政権のときに張副首相という方がおられまして、ニューヨーク州立大学の分校を韓国に誘致をいたしました。ここで半導体技術等々も含めた学科をつくり、そしてアメリカから講師陣を呼び寄せ、そして、韓国の半導体人材、これを力強く産業界と連携してつくっているというような話もございました。

 加えまして、じゃ、日本はどうかというと、昨年の夏でございますけれども、経産省さんの方がインドの方に行かれて、IIT、インド工科大学との半導体等々における連携協定というのも締結されたというふうに伺っております。

 外国の教育機関もしっかりと持ってくる、そして外国からの優秀な人材も招致する、北海道内だけでなく、いろいろなところから優秀な人材を集める、そして、最先端の教育、地域地域で必要とされる教育を行うということがとても大事だと思っております。

 ここの人材育成におきましても、学校誘致、人材の招致、こういったところについて大変な御苦労がかかるわけでございます。この人材育成にかける大臣の意気込みにつきましてもお聞かせいただければ幸いでございます。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、ラピダスプロジェクトの成功のためには、人材育成、確保、これも必要不可欠であります。

 このため、経済産業省としては、北海道大学や千歳科学技術大学、地元半導体企業等と産学官連携による協議会、これを設立をして、半導体人材の育成、確保に取り組んでいるところです。また、次世代半導体の設計、製造を担う高度専門人材の育成にも同時に取り組んでいるところであります。

 これらを通じて地元人材のパイの拡大を図っていくということが、ラピダスに必要な人材の確保と地元企業の人材の両立を図っていくということ、これが大事だと思っています。

 先般、土曜日ですけれども、TSMCの熊本の第一工場ができ上がったということで、熊本大学も視察をしてきたんですけれども、熊本大学では同時に、新しい、学部みたいな、学環というんです、これをつくって新たに募集をしたら、定員をかなり上回る応募があったみたいなことで、要するに、プロジェクトが進んでいくと、またいろいろな、様々な動きが出てくると思いますので、そういうのをしっかり捉えて人材確保に力を入れていきたいというふうに思っています。

和田(義)分科員 大臣、ありがとうございました。

 改めまして、TSMCの工場の完成、心からお喜びを申し上げます。そしてまた、完成したことで地元の教育界においても新たな動きが生まれ、そして人材育成に大きな一歩を踏み出されたこと、本当にお喜びを申し上げますし、また、それと同様の形で北海道も頑張っていきたいというふうに思っております。

 今、千歳市の方で、来たい企業はありますか、工場を造りたい人はいますかということを約四千社にアンケートを取ったということでございます。そうしましたら、工場は今のところは様子見です、やはり、二〇二七年に量産が始まって、量産が始まったところを見て経営判断をしますというところが大宗でございました。

 二〇二七年というと、あと三年ほどあるわけでございますけれども、ただ、逆に言うと三年しかございません。その間に、やはりいろいろなインフラを整えなければいけない、そしてまた、人材の育成についても少なくとも着手をして、やはり中長期の目星をつけておかなければいけないというふうなことでありますので、引き続きの齋藤大臣そして経産省さんの御指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

 そして、最後の質問、これは半導体全般のことについてお伺いをしたいと思っております。

 半導体、元々日本は大変この分野で強うございました。一九八一年の日本の半導体の世界シェアは七〇%あったというふうに伺っております。しかし、いろいろと不幸が重なり、残念ながら、日本は半導体の表舞台から一旦姿を消すことになってしまいました。八〇年代、九〇年代に第一次、第二次日米半導体協議というものが行われ、そして、厳しい価格の条件、ダンピングの条件がつけられて、アメリカ市場になかなか出にくいという環境がつくられ、また、サイドレターで、日本の国内においてもアメリカ等々海外の半導体を買わなければならないといったところも強いられ、本当に苦汁をなめたというふうなことだと思います。

 一方で、そういった状況下、日本も恐らく、例えば業界再編等々をして企業の数を減らしてでも、やはり日本の半導体産業を守り抜くといったことはできたのではないのかなというふうには思ったりもいたします。そして、海外の政府や企業も巻き込んで、今回まさに日本がアメリカの政府を巻き込んでやったように、海外を巻き込んで、そして、共通のゴールをセットして、そこに向かってやっていこうということもなかなかできなかった非常に苦い失敗があり、今まさにこの学びが生かされているところだと思っております。

 こういった困難を経て、日米の半導体戦争を経て、蓋を開けてみて今どうなったかというと、日米の半導体の世界のシェアというのは二五%ぐらいしかございません。ある意味、この日米間の競争というのが中国、台湾、韓国を利してしまった、そして日本もアメリカも結局得をしなかったというのが残念ながら今の現状だと思って、これは両国共に大いに反省をするべきですし、その反省の下に立って今回ラピダスプロジェクトがこうやって立ち上がったのかなというふうに、大変大きな犠牲の下に進んだ新たなプロジェクトだというふうに思っております。

 そこで、このラピダスプロジェクト、そして日本の半導体産業のこれからの意義なんですけれども、多くの国民の皆様も御認識のとおり、例えば、中国に半導体を依存するということは、これは決してあってはならないことであります。日本として大きな脅威である以上、リスクである以上、やはり、中国に対する戦略的不可欠性、戦略的自律性、これをしっかりと日本は持たなければならないというふうに思っております。

 また、台湾、韓国の地政学的リスク。例えば台湾であれば、中国からの侵攻のリスクはなくはありません。そして、韓国におきましても、昨今の北朝鮮の変容ぶりについては、これはやはりしっかりと注目をしていかなければならないと思います。

 まさに、日本が、日米同盟、そして欧州も巻き込んだ先端技術の産業優位性、これのフラッグシップとして、旗手としてやはり頑張らなければいけないタイミングに来ていると思うわけでございます。この日本の戦略的自律性と不可欠性を守ることを大前提に、半導体が産業優位性の中核となる戦略物資である限り、日本は半導体にとことん投資をして、そして世界の先端を走り続けなければいけないというところでございますけれども、この半導体産業全般に対する齋藤大臣そして政府の御決意、そして心意気をお聞かせいただければ幸いでございます。

齋藤(健)国務大臣 我が国の半導体産業は、御指摘のように、一九八〇年代には世界一の売上高、これを誇っていたものの、その後、シェアを大きく落としてしまっています。

 このような状況となった要因として、日米が正面から挑み合った結果としての日米半導体協定に代表される貿易摩擦や、日の丸自前主義ともいうべき国内企業再編に注力し、有力な海外企業との国際連携を推進できなかったこと、台湾や韓国政府等が大規模な設備投資支援を行う中、バブル経済崩壊後の日本の半導体メーカーが思い切った投資ができず、政府としても大胆な投資支援に踏み切れなかったことなど、様々な要因があったと認識しています。

 こうした反省を踏まえて、経済産業省では、二〇二一年以降、スピード感を持って法律改正や大規模な財政支援を講じて、熊本のTSMC、JASMの新工場建築を始めとした複数の大規模国内投資を実現をしてきたところです。

 また、米国を始めとする有志国、地域との半導体分野における国際協力、これを進めて、次世代半導体の量産化に取り組むラピダスプロジェクト、これは、米国のIBMや欧州のimecなど、海外のトップ企業、研究開発機関等と密接に連携しながら進めてきています。

 我が国は、半導体産業の再興に向けて既に大きな一歩を踏み出しました。今後も、我が国が強みを有する製造装置、部素材等も含めて、半導体産業において日本が世界で大きな存在感を示せるよう、忍耐強く全力で取り組んでいきたいと思っています。

 私、個人的な経験になるんですけれども、一九八〇年代、九〇年代の頭に日米交渉を通産省で経験しておりまして、当時、自動車、半導体、ガラス、フィルム、政府調達、公共事業、あらゆる分野においてアメリカが日本にプレッシャーをかけてくる中で、残念ながら、半導体についても妥協を余儀なくされたところが正直ございます。そういうじくじたる思いが私にはあります。

 したがって、今回、TSMC、ラピダスを始めとして、経産省始め政府が全力を挙げて日本の半導体産業の復活にかけて取り組んでいるというところに大臣として就任ができたということは、私は望外の喜びでありますので、強い思いを持って、日本の半導体復活に向けて全力で取り組んでいきたいと考えています。

和田(義)分科員 齋藤大臣、ありがとうございました。

 まさに、以前、通産省で敏腕を振るわれた齋藤大臣の強い御決意、そして情熱を拝聴することができまして、本当にうれしくて、震える思いでございます。誠にありがとうございました。

 半導体に対する基本的な考え方、コミットメント、大変力強く思えましたし、また、やはり、アメリカの方で産業育成のためにやっております忍耐力、そして、インフラそして人材育成に対する先行投資、こういったことも併せまして、私も、微力ではありますけれども、政府とともにしっかりと、この半導体産業、そして、とりわけラピダスプロジェクトを力強く前進させるために尽力してまいりますので、引き続きの御指導、御鞭撻、よろしくお願い申し上げます。

 以上で質疑を終わります。誠にありがとうございました。

上野主査 これにて和田義明君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

上野主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。稲津久君。

稲津分科員 公明党の稲津久でございます。

 予算委員会第七分科会での質問を、齋藤経済産業大臣始め副大臣に質問させていただきたいと思います。

 まず、大臣、先日のTSMCの熊本工場の開所式、大変お疲れさまでした。国内外から多くの来賓の皆様をお迎えになってのすばらしい式典でございました。

 その中で、私も非常に感動したのは、TSMCのモリス・チャン氏の御発言の中で、今回の熊本工場の開設というのは世界の半導体の強靱化につながると話をされていました。それから、日本の半導体のルネサンスの先駆けになるというような趣旨の話をされていて、その見識の高さというか、私が考えていたようなこととはちょっと到底違う、そういうすばらしい、世界的な次元で見ているなということをつくづくと感じました。

 私は、これは齋藤大臣に申し上げるつもりはありませんけれども、あのモリス・チャン氏の発言以上に、齋藤大臣の御発言というのは大変重みのある、すばらしい御発言だったと思います。

 私はあのときちょっとメモを取っていたんですけれども、大臣は、一つは、地域経済への好循環を生み出すリーディングケースだ、こういうふうにお話しされていました。そういう着眼点も、このモリス・チャン氏とはまた別な意味で、地域経済を牽引するということを本当に現場に近い目線でお話をされたというふうに受け止めました。それからもう一つは、これもまた非常に熊本県民の方々にとっては胸に刺さったと思うんですけれども、熊本の地震の復興、そして、それと同時に九州全体にその影響力が広がるんだというお話をされていました。

 そして、この次の言葉が私は一番感動したんですけれども、日本の半導体はまだ道半ばだとおっしゃいました。過去のことは、反省すべき点は反省しながらもとおっしゃりながら、これからが要するに本舞台だというお話をされた。私は本当にそう思っています。

 このTSMC熊本工場の建設、今度第二工場もされるということで、総理もビデオメッセージの中でも、第二工場を含めて一兆二千億、総枠ですかで支援していきたいと話をされておりました。

 もう一方で、私の住んでおります北海道にも、これは国内のいろいろな企業が出資して、そして政府からも補助をいただいて、御支援いただいて、いよいよ次世代半導体のラピダスの建設工事が始まりました。先日公表された北海道新産業創造機構の試算によれば、その経済波及効果というのは、二〇二三年から十四年間で、最大で見ると大体十八兆八千億ぐらいになるだろう、こういう話がありまして、これで北海道の道民の皆さんの期待というのは大きく今広がっております。

 私どもも、実は、公明党の中に昨年の三月に半導体基盤強化プロジェクトチームというのをつくりまして、不肖私が座長を務めさせていただいておりますが、関係各府省からもヒアリングをいただいたり、それから学識経験者の方からの説明も頂戴し、さらに実際に半導体製造の現場にも視察も行ってまいりまして、こうしたことを踏まえて、昨年六月に、我が国における半導体の製造基盤強化、安定供給確保等の実現に向けた緊急提言を取りまとめて官房長官に提出をさせていただいたところでございます。

 我が党としても、引き続き、半導体また半導体関連産業、これらの支援に努めていきたい、それは、結果的に地域も潤うし、我が国の産業構造を根本から強化していくことに確実につながっていく、このように私ども決意をして、これからも取組を進めていきたいと思っています。

 そこで、まず大臣にお伺いしたいと思いますけれども、政府では、令和五年度の経済対策において、半導体関連に二兆円という大変大きな規模の予算を計上して支援をすることとしておりまして、また、令和六年度の税制改正では、半導体を含む戦略分野を対象として税制措置を新設するということにしています。ここで大きなポイントというのは、生産量とか販売量に比例して税額控除を行うというのが今回の趣旨で、これは国内では前例のないものであるというふうに認識をしております。

 この半導体に対して支援を講ずることの意義について、それから、半導体などの戦略分野を対象とした税制措置を新たに創設する意義について、どのようなお考えに基づくものなのか、これをまず大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、稲津委員始め公明党の皆さんがこの半導体産業の振興に大変力強く御支援いただいていることについて感謝を申し上げたいと思います。

 半導体は、デジタル化や脱炭素化の実現に不可欠なキーテクノロジーです。その上、経済安全保障の観点からも重要であり、日本の産業競争力全体を左右する戦略物資であります。

 経済産業省では、これまでもスピード感を持って法律改正や大規模な財政支援を講じ、熊本のTSMC、JASMの工場建設を始めとした複数の大規模国内投資を実現をしてきました。

 このような措置を講じてきた結果、九州では設備投資額の伸び率が前年の二倍以上と、伸び率としては過去最高を記録するなど、関連産業への大きな波及効果、好循環が生まれ始めています。こうした流れを継続、加速させていくことが重要であります。

 このため、今回の税制改正で、半導体を始めとした戦略物資につきましては、御指摘のように、生産、販売量に比例した税額控除を措置する戦略分野国内生産促進税制を創設することとしています。

 これは、我が国において、特に生産段階のコストが大きい等の理由から、民間のみでは投資判断が難しい分野の国内投資を促進することを目指すものでありまして、半導体につきましては、マイコンやアナログ半導体等の従来型半導体を対象とすることとしています。

 先端半導体や従来型半導体など、それぞれの特性を踏まえつつ、予算や税制などあらゆる適切な施策を総動員して、半導体政策をしっかりと進めていきたいと考えています。

稲津分科員 ありがとうございました。

 大臣、最後のところで御答弁いただきましたけれども、これは、税制措置も講ずるということを考えていくと、単に補助金を出して支援するというだけの話じゃなくて、ある意味、政策を総動員して応援していくんだと。これがやはり一番大事なポイントなのかなというふうに思っております。是非、そうした観点に立って、引き続き御支援いただきたいというふうに思っております。

 次は、半導体の製造装置や部素材の更なる成長に向けた支援についてということでお伺いしたいと思います。

 今、政府が半導体支援については大きく一歩踏み出して支援をしてくるということでありまして、これは、TSMCの日本進出もそうですけれども、世界の半導体関連企業がとても今日本に注目しているんだと思います。実は、外資系の半導体企業も立地場所として日本をやはり選び始めている可能性も出てきているというふうに思います。

 その一番大きな理由というのは、私の見解ですけれども、一つは、大胆な政府の支援があるということ、もう一つは、日本の半導体のサプライチェーンに厚みがあるということが私は理由として挙げられると思うんです。つまり、日本が強みとする、半導体の部素材を作る、あるいは半導体の製造装置そのもの、ここがやはり非常に厚みがあるということだと思います。

 こうしたことを考えていきますと、今現在でもこの分野は日本のお家芸だと言っても過言でないと思っておりますし、中には、日本企業でなければ作られないものもある、このように承知をしております。もちろん、そういったものがなければ世界の最先端の半導体が作れるわけがありませんので、まさに、このサプライチェーンにおけるチョークポイントというんですか、ここを日本が握っている、このように言っても私は過言でないと思っております。

 公明党の半導体基盤強化プロジェクトチームにおきましては、先日、半導体の露光装置の代表メーカーでありますキヤノンの宇都宮の事業所を訪問して、関係者の方々と様々意見交換をしてまいりました。その意見交換を通じて、改めてサプライチェーンにおける製造装置の重要性について再認識しました。

 こうした半導体の製造装置あるいは部素材に関する産業、これを更に伸ばしていくことが経済安全保障の観点でも非常に重要であって、政府はそのための支援を講ずる、そのような必要がある、このように断言させていただきたいと思います。

 政府では、経済安全保障推進法に基づきまして、令和四年度、五年度補正予算において半導体の国内生産能力の強化に向けた支援措置を講じている、このように認識しておりますが、半導体そのものに限らない、我が国の半導体製造装置や部素材産業の更なる成長に向けた支援の在り方について、その考えをお伺いさせていただきたいと思います。

野原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、半導体製造装置や部素材分野が半導体のグローバルサプライチェーンの中で我が国が強みを持っている分野でございまして、その産業の厚み、サポーティングインダストリーの厚みがあるからこそ、日本に投資することにビジネス上合理性があるというふうな、そういう背景になっているということは御指摘のとおりだと思います。

 生成AIの登場などにより、AI関係を中心に、今後、半導体に対する世界需要の増大が見込まれております。これに合わせて、日本の強みである部素材メーカー、製造装置メーカーが世界需要に対応して供給能力を増やしていく、世界市場に対する供給責任を果たしていくということが強く期待されております。

 そういう状況でございまして、経済産業省としては、これまでも我が国の半導体製造装置、部素材メーカーが行う設備投資について、経済安保推進法で安定供給確保支援基金がございまして、これを通じて支援を行ってきたところでございます。令和五年度補正予算におきましても、半導体関連として四千三百七十六億円積み増しておりますが、その対象としては、部素材メーカーや製造装置メーカーも支援対象になっているということでございます。

 経済産業省としては、こうした支援を通じまして、半導体の製造装置や部素材産業の更なる発展や競争力の維持向上を後押ししてまいりたいと考えております。

稲津分科員 今御答弁いただいたように、私も先ほど質問の中でも趣旨も申し上げたように、これは法律事項としてきちんと位置づけられているという認識に私も立っておりますので、今いただいた御答弁、確実に遂行していただきたい。

 先ほどのモリス・チャン氏の発言の中にあったように、世界の半導体の強靱化につながるんだというのは、まさに背景には、当然熊本の第一工場のこともありますけれども、日本のそうしたサプライチェーンの厚みが背景にあるから当然熊本に進出したんだろうし、そして、そうしたことを全部踏まえた上でのあの発言かなと思っておりますので、是非お願いしたいと思います。

 次は、人材確保に向けての対応策についてお伺いしたいと思います。

 先ほど北海道の話でも申し上げましたけれども、次世代半導体の量産拠点ができるということで大変期待もあるんですが、一方では、こうした大規模な企業進出に伴って、地元の人材、それは今でも確保が大変なのにパイの取り合いになるんじゃないか、そういった声もあります。

 私、これは根本的に違うと思っています。それは、いつ、どこで、どういう状況であろうが、そして今の時代の流れを考えても、確かに、労働力の確保とか、そういう観点では影響は多少あるかもしれませんが、この半導体の製造に関わる人材というのはまたちょっとジャンルが違うわけで、同じことで議論しちゃいけないと思います。この人材というのは、例えば北海道千歳市のラピダス、これからどうするんだ、これは北海道だけじゃ、そうじゃない、国内か、いやそうじゃない、海外からも人材を呼び込む、そういう視点に立っていかなければいけないと思っています。

 だから、そうしたいわゆる労働力確保のところだけの議論をしていると前に進まないということで、私は、そういう意見が来たら必ず反論して、いやいや、そういうことじゃないんだよと説明しているんですけれども。しかし、冷静になって考えてみたら、先日の熊本工場の開所式の挨拶の中で、ほとんどの方々から出てきている意見がやはり人材確保の話です。やはりここが最大の肝の一つなんだろうと思っています。

 我がプロジェクトとしても、こうした懸念に対して対応策を示していく、これを政府に求めてきましたが、改めてこの人材確保に向けての対応策についてお考えをお示しいただきたいと思います。

野原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、半導体産業が我が国において産業基盤としてしっかり根づき成長していくためには、研究開発投資や設備投資に対する支援を通じた技術革新や工場立地の促進などに加えまして、人材の育成、確保が大変重要な課題であるというふうに認識をしております。委員に率いていただいています公明党のPTからの御提言も、人材育成が最重点だということで御提言をいただいて、まさにそのとおりだと思います。

 このため、経済産業省といたしましては、地域ごとに半導体産業側の人材育成のニーズをきめ細かく把握し、それを教育機関と共有しながら人材育成に関する具体的な取組につなげていく、そういった取組を進めておりまして、地域の産学官関係機関をメンバーとする地域人材育成コンソーシアムを立ち上げているところでございます。

 具体的には、九州地域を先駆けといたしまして、既に全国六地域、東北、中国、中部、北海道、関東と全国六地域においてコンソーシアムが立ち上がっておりまして、地域の大学、高専における半導体の実践的なカリキュラムの展開、企業による講師派遣の拡大、それから海外の教育機関との連携も含めて、具体的な取組が進んでいるところでございます。これらの取組を通じまして、地域における人材のパイの拡大を図るということで、全体の人材をたくさん育成することでパイを増やすことで、地域における人材確保、人材のニーズとの両立というのを図っていくというふうな考え方で進めております。

 加えて、中小企業の人手不足の関係では、中小企業の省力化投資の支援も進めております。人手不足を含めた経営課題への相談体制を整えることなども通じまして、総合的に取組を進めまして、人手不足についての懸念に対する対応というのを進めてまいりたいと考えております。

 いずれにしても、現場のニーズに応じた半導体人材の育成を継続的に進めていくことで人材の裾野、パイの拡大を含む、委員御指摘のように、高度人材の育成も重要でございますので、そこについても準備を進めているところでございます。半導体産業のエコシステムの形成と地域経済の発展に貢献してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

稲津分科員 そうそう、高度人材なんですね。それで、そこのところは、これまではやはりどうしても大学、高専の話が圧倒的に多かったんですけれども、今御答弁の中でも外国人材とはっきり触れていただきましたので、もう視点もそういうふうに広げてやっていただきたい。

 それから、TSMCの熊本工場では大体千七百人ぐらいの従業員を確保していきたいというお話があったと思います。そうなると、先ほどの私の話が、ちょっと視点が、また別な視点になるんだけれども、いわゆる高度人材という以外の方々も含めて必要な人材をどう確保していくのか、この課題もそれはそれであるわけですね。そこで、是非、海外の方も含めて、ある意味、将来的に外国の方々との共生社会みたいなこともやはりどこか頭の隅に入れていかないといけないんだろうな、こんなふうに感じています。

 次は、インフラ整備の重要性についてお伺いしたいと思います。

 大規模な半導体工場を稼働するためには、やはりインフラの整備が必要です。例えば、半導体の生産過程では大量の水を消費する、そのための工業用水の確保、排水処理をするための施設、それから、工場で生産した半導体それから原材料、これを円滑に輸送、運ぶための手段、周辺の道路整備も必要になってくる。こうしたことというのは、地元の自治体が自らの予算措置で行わなければならないということがかなりウェートを占めておりますので、財政的に厳しい状況にある自治体であればその負担というのは大きくなってくるわけでございます。それで、実際に私も、北海道の、幾つかの近隣自治体からもこうしたインフラ整備に向けての支援要請とか、そうしたものも伺っております。

 今回、熊本に行って感じたことは、やはり道路整備というか交通体系というのはまだまだちょっと未整備だな、それから鉄路についても、いや、もうちょっと事前の準備ができなかったのかなというのは率直に感じました。これはたしか蒲島熊本県知事もこれにリンクしたお話をしていたと思います。

 したがって、こうしたことを考えていったときに、この半導体の大型プロジェクトを実現をするというためには、どうしてもやはりインフラ整備が必要です。このことについてどのように進めていこうとしているのか、政府の考えをお伺いしたいと思います。

工藤副大臣 お答え申し上げます。

 稲津議員御指摘のとおり、いわば国家的プロジェクトであります半導体等の大規模な生産拠点の整備を進めていくためには、工業用水の不足や工場排水の処理、道路混雑といった課題に迅速かつ一体的に対応をしていくことが求められていると考えております。

 こうした関連インフラ整備の重要性を踏まえ、令和五年度補正予算において、該当インフラの整備を行う地方公共団体を積極的に支援するための新たな交付金を創設したところでございます。交付金額は、参考でありますが、地域産業構造転換インフラ整備推進交付金、これは令和五年度補正で六十億円でございます。

 また、引き続き、関係省庁と連携しつつ、国内投資促進の動きに即応した関連インフラの整備にしっかりと取り組み、地方再生へとつなげてまいります。

 以上でございます。

稲津分科員 ありがとうございました。

 思い出しました、蒲島知事はこんな話も。道路、鉄道、それから上水道、下水道、この整備をこれからもしっかりやっていかなければいけないと。そうしたことが、こうした大プロジェクトが実際に行われているその県、当然これは地元の自治体のことも含めて御発言になったと思うんですけれども、とても大事なことなので、是非、今答弁いただいたように進めていただきたいと思います。

 時間がかなり参りまして、これは最後の質問になりますけれども、ラピダス、北海道の次世代半導体の実現も含めて、やはり半導体の政策を推進するためには、必要な支援をしっかり講じることが不可欠です。

 そして、先ほど質疑の中でも申し上げましたように、政府は、今回の経済対策において半導体関連を計上している。ただ、これが一時的であれば、私は、なかなか、今後の、進展しつつある次世代半導体プロジェクトなどについては、十分な支援にならないのではないかなと思っております。

 国内における投資を検討する半導体関連企業にとっては、政府の支援の有無が投資判断の大きな要因となります。このため、政府としての継続的な支援が必要であり、半導体支援策を今回の補正予算やそれから税制の特例措置だけで終わらせるのではなくて、さっき、冒頭大臣が政策総動員と話しておりましたが、まさにそのとおりで、こうしたことを是非行っていただきたい。

 もう一つ思い出しました、蒲島知事がこんな発言をしましたね。これからも政府におかれては継続的、安定的な支援を講じていただきたい、こうたしかお話しされたことも、とても印象に残りました。これがやはり、現場を預かる者としては、ああなるほどな、そういうことなんだなと思っております。

 そうした意味で、このことをお伺いして、質問を終わりたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 経済産業省では、これまでもスピード感を持って法律改正や大規模な財政支援を講じてまいりましたが、我が国半導体産業の復活、あるいは経済安全保障の観点からの国内生産基盤の構築、これらはまだ道半ばだと認識をしています。委員御指摘のとおり、政府による継続的な支援、これは重要だと考えています。

 このため、例えば、今回の税制改正で措置する戦略分野国内生産促進税制は、令和八年度までに認定した事業計画に基づいて、認定から最大で十年の間、税額控除が受けられる設計となっています。

 経済産業省としては、引き続き、半導体産業における積極的な国内投資を呼び込み、更なるサプライチェーンの強靱化を図るために必要な取組、これを実施してまいりたいと考えています。

稲津分科員 ありがとうございました。

 大臣の力強い御答弁をいただいて、こうした半導体の政策というのが大きく前に進むんだろうというふうに改めて確信いたしております。

 そして、今日は半導体に特化した質問をさせていただきましたけれども、やはりこれが今最大の重要事項だという認識で今日は質問させてもらいました。今、政府におけるこうした半導体産業の支援が、モリス・チャン氏がおっしゃったような、まさに日本の半導体のルネサンスになることを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

上野主査 これにて稲津久君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本左近君。

山本(左)分科員 自由民主党、東海ブロック比例代表選出の山本左近でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、改めて、国会に送り出していただきました国民の皆様始め、議員の先輩方、同僚、そして齋藤大臣を始めとする経済産業省の皆様に感謝を申し上げます。

 初めに、令和六年能登半島地震によってお亡くなりになられた方々への哀悼の誠をささげ、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。そして、救助や復旧復興のために御尽力くださっている全ての関係される皆様に感謝を申し上げ、質問に入らせていただきたいと思います。

 まずは、カーボンニュートラルについての取組です。

 カーボンニュートラルは世界での大きな流れでありますが、地球環境や生物多様性を含めた、私たちの豊かで幸せな社会を実現することが一つ目的でありまして、脱炭素というのはその手段というふうに私は捉えています。

 昨年三月、欧州委員会は、水素生産を支援するEU域内外の水素バリューチェーンへの民間投資を呼び込むことを目的とした欧州水素銀行構想を発表し、昨年末には競争入札も始まりました。世界が水素等の脱炭素エネルギーへ注目し、積極的な支援や投資を集める中、我が国においても、今国会においては、水素社会推進法案が提出される予定と承知しています。

 国が前面に立って低炭素水素等の供給、利用を早期に促進するための基本方針や、目標や支援措置など、GX、グリーントランスフォーメーションを進めるための鍵となる重要な法案であり、将来の日本のエネルギー安定供給、そして経済成長につながるものと認識しております。

 是非、齋藤大臣の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 カーボンニュートラル実現のためには、電化が困難で脱炭素化が難しい鉄鋼や化学などの産業部門、運輸部門、発電部門において水素等を利用していくこと、これが不可欠であります。このため、欧米などにおいては、低炭素水素の利活用を推進するための対策が既に措置されておりまして、世界では低炭素水素の確保に向けた権益獲得競争が既に始まっていると認識しています。

 こうした中、我が国では、本国会に提出した水素社会推進法案に基づいて措置する既存原燃料との価格差に着目した支援においては、エネルギー安全保障の観点から国内での低炭素水素等の製造や供給体制の構築、これを最大限支援しますが、当面の間は国内製造のみでは需要量を賄えない見込みが高いことから、国内よりも相対的に効率的かつ大量に製造が可能な低炭素水素等の輸入についても支援対象とすることとしておりまして、十五年間で三兆円規模の支援を見込んでおります。

 また、水素社会推進法案においては、こうした措置に加えて、拠点整備支援や高圧ガス保安法等の規制の特例措置等を講じるとともに、低炭素水素等の供給拡大に向けて、水素等を供給する事業者が取り組むべき判断基準の策定等の措置を講じていくこととしております。

 こうした制度整備を通じて、グローバルな権益獲得競争の中においても競争力のある低炭素水素等のサプライチェーンの創出、拡大、これらを実現していきたいと考えています。

山本(左)分科員 大臣、ありがとうございます。

 まさに世界の競争の中で日本がしっかりと勝っていくための法案であるということを、改めて心強い御答弁、ありがとうございました。

 大臣はここで御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

上野主査 齋藤大臣におかれましては、御退席をお願いいたします。

山本(左)分科員 続きまして、水素というのは、作る、運ぶ、使うという三つのステージがあると思いますが、使う、運ぶにおいては日本の技術がリードしている一方、作るの水電解装置などは遅れがあるという話も聞きます。この辺り、経済産業省として、御認識と取組についてはいかがでしょうか。

井上(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、作る技術の代表である水電解装置につきましては、欧州で先行して大規模な量産計画が発表されてきたと認識しております。

 一方、例えば、水素の製造効率を左右する重要な膜につきましては、世界トップメーカーであるドイツの企業が日本の化学企業の独自の膜技術、これを用いた電解装置の開発を検討するなど、世界の企業からも日本の技術力は評価されていると考えております。

 ほかにも、日本の自動車メーカーは強みを有する燃料電池のノウハウを生かしまして水電解装置の開発を行っておりますが、燃料電池と水電解装置の製造工程を九〇%以上共通化することでコストを抑え、効率的に生産することが可能となる見込みとなっております。

 今後、我が国が持つ技術競争力を維持強化するためには、いかに量産化、自動化を進め、スピーディーに市場に製品、サービスを投入できるかが鍵だと考えております。このため、水電解装置も対象にしました、五年間で四千二百億円超のGXサプライチェーン構築支援事業の中で、しっかりと事業者の方々を後押ししていきたい、かのように考えてございます。

山本(左)分科員 ありがとうございます。

 日本の技術で勝ってビジネスで負けるということがないように、しっかりと御支援を引き続きお願いしたいと思います。

 続いて、SAFや合成燃料についてお伺いしたいと思います。

 二年前、私はこの分科会にて合成燃料について質問をさせていただきました。国際競争に打ちかつために、スピード感を持った技術開発や生産拠点の整備への支援が必要だと質問したんですが、当時の萩生田大臣からも、早期に技術を確立する必要が重要である、そして、GI基金において技術開発を進め、商用化など取り組むと御答弁をいただきました。

 その結果の一つとして、昨年五月にはENEOS社の合成燃料デモンストレーション走行が富士スピードウェイで実施されまして、私も合成燃料を入れた車を実際に試乗しました。これまでガソリンが入っていた車に合成燃料をそのまま入れる、まさにドロップイン、それが全く問題ないこと、そして、高回転出力においてもその性能が存分に発揮されていることを、元F1ドライバーとしても肌身をもって体感させていただいたわけでございます。

 SAF、そして合成燃料について、現状の取組状況はいかがでしょうか。それぞれ簡潔にお答えいただければと思います。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、SAFにつきましては、いわゆる国際民間航空機関ICAOにおきまして、従来のCO2排出削減目標に加えて、二〇二四年以降は二〇一九年のCO2排出量の八五%未満に排出を抑えるという、より厳しい目標が採択されておりまして、このためにSAFの導入拡大が不可欠でございます。

 経産省といたしましては、国際競争力のあるSAFの製造、供給に向け、グリーンイノベーション基金などを活用し、製造技術の開発、実証に取り組む事業者への継続的な支援を実施してございます。

 現在、欧米企業もアジア市場を狙ってSAF製造プロジェクトを進めている中、我が国でもこうした支援を通じ、早ければ二〇二四年度下期から数万キロリットルのSAFの供給が始まる見込みでございます。

 昨年十二月のGX実行会議におきましては、GX経済移行債を活用した大規模なSAF製造設備への投資支援、あるいは、生産、販売量に応じた税額控除の導入を決め、現在、関連する予算、税制改正を国会にお諮りしているところでございまして、早期の製造、供給体制の確立に向けて取り組んでいるところでございます。

 続きまして、合成燃料に関しましては、前回委員に御質問いただいた以降、一昨年の九月に合成燃料の導入促進に向けた官民協議会というものが立ち上がりました。この中で、それまでは合成燃料の商用化目標を二〇四〇年としてございましたが、協議会での議論を受けまして、その導入の目標年次を前倒しをしまして、現在は二〇三〇年代前半という新しい目標を掲げてございます。

 このため、先ほど御指摘ありましたとおり、二〇二二年度からグリーンイノベーション基金において、総額約五百五十億円の予算により進めております合成燃料の大規模かつ高効率な製造プロセスの開発、この事業を更に加速させるための事業内容について、現在、事業者を含む関係者と検討しているところでございます。

 欧米では既に、一部、SAFの商用の出荷も始まっているところでございますけれども、我が国としても、自国生産も大事ですけれども、あわせて、日本企業の海外プロジェクトへの参入を後押しすることも含めて、早期のSAFのノウハウ獲得、それから製造技術の確立に努めていきたいというふうに考えてございます。

山本(左)分科員 ありがとうございます。

 SAF、そして合成燃料共に、スピード感、そして規模感を持って取り組んでいただいていること、感謝を申し上げます。

 そして、合成燃料の原料ともなるCO2についてお伺いします。

 水素と炭素をかけ合わせて合成燃料は作られるわけなんですが、例えば他国で作られた合成燃料を日本に持ってきて使用する場合、CO2の排出カウントというのは、生産国では製造時にマイナスカウント、しかし、使用した日本ではプラスとカウントされます。そうすると、脱炭素燃料を使うことのインセンティブが減ってしまうわけですが、ここ、二国間協定での取決めが重要な点、また、そして必要になると思いますが、取組はいかがでしょうか。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、海外で製造した合成燃料につきましては、CO2排出を生産国で計上するのか、ないしは車として使う使用国で排出を計上するのか、現時点においては明確なルールが存在してございません。このため、合成燃料の利用拡大のためには、どこの国でCO2排出を計上するのかということの国際的な整理が必要であるというふうに認識してございます。

 経産省といたしましては、まず、G7内でもこうした共通認識が醸成されるように、昨年のG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合の閣僚声明におきまして、カーボンリサイクル燃料の意義を明記したところです。

 加えて、昨年九月のドイツで開催されましたE―Fuelsカンファレンス、あるいは十一月に開催したG7加盟国が参加するワークショップにおきまして、我が国から合成燃料の越境に伴うCO2排出計上の整理の必要性について問題提起を行いまして、合成燃料がカーボンニュートラルに資する燃料として国際的にも取り扱われるよう意見交換を行っているところでございます。

山本(左)分科員 ありがとうございます。

 まさにこれからルールメイク、しっかりと作っていく、その作業にしっかりと関わっていただくことによって日本の競争力を更に高めていただきたいというふうに改めて思います。

 続きまして、工場や発電所などで炭素回収技術というのは、現在、技術開発で取り組んでおられるというふうに承知しております。そして、今日ここでお示ししたいのは、私がいるモータースポーツの世界では、国内のスーパー耐久シリーズという耐久レースがありますが、そこでトヨタ社が液体水素を使った水素エンジン車が参戦しています。昨年十一月に行われたレースにおいては、この水素エンジン車において、川崎重工が開発したCO2回収技術を搭載したことがあります。

 エアクリーナー入口にCO2を吸着する装置と、その横のエンジンオイルの熱によってCO2を脱離する装置を設置し、脱離したCO2は吸着溶液で満たされた小型タンクに回収されるという仕組みです。

 更に言えば、内燃機関が空気を取り込んで走るものであり、そして、内燃機関から出る熱を利用してCO2の脱離ができるというところが非常にメリットが大きいわけです。

 CO2を回収して走る自動車、つまり、走れば走るほどCO2を回収していく、しかも、水素エンジンであるならばカーボンマイナス自動車となるわけです。これが一般化しましたら、全国で今走っている内燃機関の自動車がCO2回収車となるわけですから、自動車はNOx含むCO2を排出しているものという認識から根本が変わり得るすごい取組だと私は感じていますし、まさにこれはトランスフォーメーション、変革の実現と理解いただけると思います。

 こういった取組は、モータースポーツが走る実験室と呼ばれるゆえんであります。液体水素燃料エンジン技術や、またCO2回収技術など、こうした新しい技術に挑戦しているということを是非皆さんにも知っていただきたいですし、さらに、応援や後押しをしていただくことによってカーボンニュートラル社会の実現に更にドライブをかけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小林(出)政府参考人 お答えいたします。

 カーボンニュートラルの実現に向けましては、脱炭素がどうしても困難な分野から、いわば残余排出というものを相殺していく必要がございます。このために、大気中から直接二酸化炭素を回収する技術、ダイレクト・エア・キャプチャー、頭文字を取ってDACと呼ばれておりますが、こうしたネガティブエミッション技術と言われるものが重要となります。そして、世界中で開発競争が行われていると承知しております。

 御指摘のトヨタの取組も、まさにその一環で実証実験を行っている段階と認識しております。内燃機関が持つ吸気能力、そして廃熱を有効活用することで効果的に回収を実施する、まさに、委員御指摘のとおり、先進的な取組であるというふうに認識してございます。

 経済産業省では、ネガティブエミッション技術それから関連産業の振興に向けまして、研究会等を開催して、国際動向や課題の整理、カーボンクレジット化に向けた検討を行うとともに、ムーンショット型研究開発事業において、高効率かつ省エネなDAC技術の開発を支援しているところでございます。

 また、海外ではDACの大規模実証が進んでおります。今後の市場拡大が見込まれる中、我が国の優れた技術の早期社会実装と市場獲得が実現いたしますよう、必要な取組について検討を進めてまいりたいと考えております。

山本(左)分科員 DACとネガティブエミッション技術への支援を更に進めていただければと思います。ありがとうございます。

 続いて、浮体式洋上風力についてお伺いいたします。

 国土の面積の約七割が森林であり平地面積が少ない我が国において、太陽光パネルなど環境保全なども物理的な制約があります。ペロブスカイト太陽電池など新しい太陽電池の技術支援も必要なんですが、その一方で、日本は排他的経済水域は世界の第六位と広大な面積を持っています。

 そこで、浮体式洋上風力のポテンシャルは非常に大きいと考えます。実証候補区域として四地区があると聞いています。これまでの課題もあり、困難もあると思いますけれども、それらを乗り越えて浮体式洋上風力の普及を実現することにおいて、日本は、再生可能エネルギーの導入が安定供給につながると思いますが、経済産業省の取組はいかがでしょうか。

井上(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘の浮体式洋上風力発電でございますけれども、これまで、グリーンイノベーション基金を活用させていただきまして、技術開発あるいは実証事業に取り組んできてございます。

 別途、排他的経済水域に向けて洋上風力を広げていく、あるいは、そのときに、地域あるいは先行利用者の方々と十分に調整を行いながら、適切に風力発電を進めていく、こういった法制度の検討も内閣府を中心に行っているわけでございますが、こちらの技術開発につきましては、議員御指摘のとおり、二月九日に、大規模実証を行うために、四海域を対象として事業者の公募を開始いたしました。北海道二海域、秋田、そして愛知県という四海域でございまして、今後、有識者で構成されるNEDOの第三者委員会で、今春をめどに二件程度採択する予定でございます。

 浮体式洋上風力について、諸外国ではそれほど大きくない規模のプロジェクトが進められていますけれども、更なる普及に当たっては、コストを下げたり、大量生産に係る技術を確立していく必要がございまして、このため、今般の実証事業では、一基当たり、諸外国よりちょっと大きいんですけれども、十メガワット以上の大型風車を用いて、また、コスト削減目標等を設定して、実証に取り組んでみようということになっております。目指すは、その上で、アジアなどの海外市場への展開も見据えていくということが肝要だと思っております。

 簡単ではない技術ですし、課題はたくさんございますけれども、今のような取組をしっかりと進めていきたいと考えてございます。

山本(左)分科員 ありがとうございます。

 まさに今御答弁いただきましたように、簡単ではない技術でありますが、やはりここ、海外市場展開も見据えた上で、日本国内における浮体式洋上風力の実現、更に後押ししていただければと思います。

 余談になりますけれども、私、愛知県の豊橋市出身なわけですが、今回、一つの地域で愛知県となりましたけれども、この地域は非常に風が強くて、体感する気温よりも、いつも風が強いので、寒い思いをしてきました。そういった地域においては、こういった浮体式洋上風力というのは可能性があるんだなというふうに、自分のこれまでの実体験から改めて感じました。

 自動車政策についてお伺いしたいと思います。

 クリーンエネルギー自動車導入促進補助金についてお伺いしたいと思います。

 日本企業のみならず、国内で販売されるクリーンエネルギー自動車、BEV、バッテリーEVやPHEV自動車への補助というのは、海外メーカーも対象になると理解していますが、ユーザーが安心し、安全に乗り続けられるものでなければならないですし、また、サイバーセキュリティーなどリスクのある自動車への補助について、私は、制限をかけたり、また補助をするべきでない、まさに差別化を図るべきだと思いますが、その辺り、取組はいかがでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 自動車産業は、国内のみならず海外においても幅広い市場があるグローバル産業でございます。そのため、御指摘のように、国内の購入補助制度、これにおきまして、特定の国で生産されたEV車両に対して差別的な取扱いをすることは、WTO違反で対抗措置を受けるおそれがございます。

 本補助事業の目的から、重要なことは、我が国において電動車が持続的に活用されていく環境を構築することであり、その実現に向けて、内外無差別に、事業者の多様な取組を促すことが重要でございます。

 こうした考え方の下、令和五年度補正予算の事業執行からは、新たな補助額の算定方法を導入することとしております。具体的には、委員御指摘、例示ございましたけれども、車両の性能だけではなく、インフラ整備、アフターサービス環境の構築、災害時の地域との連携など、メーカーの取組を総合的に評価して、これらに積極的に取り組むメーカーの車両を重点的に支援していく方針でございます。

山本(左)分科員 ありがとうございます。

 差別化というのは、WTO違反になる、違反のおそれがあるのでなかなか難しいというところですが、ただ一方で、インフラ整備や安全規範等といったところにおいては、やはり日本の、日本人のユーザーが、やはり安心、安全に乗り続けられる環境を整えていくというのは非常に重要な視点だというふうに改めて思います。

 そして、アジア、とりわけタイやインドネシアは、これまで日本の自動車企業が約九割のシェアを占める非常に大きな市場なわけなんですけれども、ここ近年、インドネシア等において、BEVにおける新車販売において、中国のBYD、韓国のヒョンデ自動車、ベトナムのビンファストなど、アジアメーカーの進出が目立ってきています。

 さらに、昨年十二月には、インドネシアにおいて、自動車メーカーがEVの現地生産計画を持つ場合は、完成車の輸入関税の税率を引き下げたり、また購入時の税金を減免したりする優遇制度も導入されたと聞いています。インドネシアは、ニッケルなどの資源を生かしたいという思いがあるんだと思います。そして、EV関連産業を誘致しようとしているというのが、私は考えるわけですが。

 今、日本の自動車メーカーがシェアを保っているものの、こうしたBEVも含めた日本勢の存在感が薄くなってはいけないというふうに思います。まさにここをしっかり取り組んでいただきたいと思うと同時に、今私たちが取り組んでいるBEVが自動車の未来なのではなく、BEVや脱炭素燃料を使ったハイブリッド車を含む多様な選択肢、マルチパスウェーの重要性というものを、今後、アジアのほかの国々にも認識していただくことが重要かと考えますけれども、経済産業省の取組はいかがでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 アジア市場のうち、例えば、委員御指摘のインドネシアにおける中国や韓国系の電気自動車の販売台数、伸びが著しい状況でございます。二〇二三年は、前年比五〇%増の約一万五千台に到達していると承知しております。

 その一方で、日系が強みを有するハイブリッド車、これにつきましても、二〇二三年には前年比で五倍以上に相当する約五万四千台が販売されておりまして、依然として約九割の販売シェアを日系が保持するなど、引き続き強い競争力を有していると認識しております。

 アジアにおきましては、日本車のシェアを引き続き維持していく、このためには、これまで培った日本の強みと現地のサプライチェーンを生かす形で、実情の異なる各国の市場に合わせた様々な選択肢、これを用意していくことが重要だと考えております。

 一方で、インドネシア、タイは、市場としての重要性に加えまして、自動車産業の集積地、こうした形での存在感も増しております。各国政府も、その産業競争力の維持強化に強い関心を持っております。

 こうした中、我が国自動車産業が、アジアのサプライチェーンとともに今後も発展していくためには、脱炭素化の要請を始め、今後の世界市場の変化を見据えた競争力の強化、これをこれらの国々と議論して、共通理解を醸成していくことが必要だと考えております。

 政府としては、こうした考え方の下で、昨年十二月の日・ASEAN友好協力五十周年特別会議におきまして、次世代自動車産業共創イニシアティブ、この創設に合意し、次世代自動車産業戦略マスタープランの策定などを進めていくこととしております。

 これらの取組を通じて、アジアにおける社会課題の解決と日本企業の市場獲得につなげてまいりたいと考えております。

山本(左)分科員 ありがとうございます。

 まさに日・ASEANでの取組を進めていただくことによって、日本の自動車販売数だけでなく、集積地としてのアジアとの連携、そして、日本の企業がますますそれぞれの市場に合わせた選択肢を提供していくことも可能になるということと理解させていただきました。

 続いて、昨年七月に欧州委員会が、自動車の車両設計から生産、廃車までの過程における循環性の向上に向けた自動車設計・廃車管理における持続可能性要件に関する規則案を発表いたしました。現行のELV、エンド・オブ・ライフ・ビークルス指令と自動車型式認証における3R、再使用、再利用、再生の可能性に関する指令を一つにまとめ、規則化するものであります。二〇三五年までに、一年当たり一千二百三十万トンのCO2削減の実現を目標としているものと聞いています。

 その規則案の中では、新車生産のプラスチックの二五%以上の再生プラスチックを利用することとあります。これは、日本の自動車のみならず、リサイクル業界にも影響が出ると承知しています。実際に、欧州リサイクル産業連盟は歓迎、一方、欧州自動車工業会は反対と、欧州内での意見や評価も分かれているそうです。

 プラスチックのリサイクル、再利用は、難しい一つの技術的課題があると承知していますが、これまで日本が取り組んできた実績や、また、挑戦し、成長し続けてきた日本自動車メーカーが、会社や業界の垣根を越えて新たな価値を創造できるチャンスでもあり、日本がサーキュラーエコノミーの先端を行く、世界をリードするチャンスというふうに捉えることもできますが、経済産業省の所感、そしてこれについての対応、今後の支援策についてはいかがでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、昨年七月、欧州委員会より、EU域内で販売する自動車の部素材などに使用されるプラスチックに一定割合のリサイクル材を含めることとするなどの新たな規制の導入に関する関連規則の改正案が示されたことを承知しております。

 サーキュラーエコノミーへの移行、これに向けてリサイクルを推進していくことは重要でございますが、一方で、当該改正案につきましては、バンパーや燃料タンクなど、自動車の様々な重要部品にプラスチックが利用されている中で、リサイクル材を利用して安全性や機能が維持できるのか、リサイクル材の品質や量をきちんと確保することができるのか、こういった引き続き議論されるべき様々な論点があると理解しております。

 日本の自動車業界におきましても、こうした点について更なる議論が必要であるとして、パブリックコメントを提出したと承知しております。政府といたしましても、先週二十一日に開催されました日・EU産業政策対話、これの対話におきまして、本規制案について意見交換を行い、こうした論点についてEU側にも伝達したところです。

 今後も、EU当局における規則案の議論を注視しつつ、引き続き、様々な機会を通じまして働きかけを行ってまいりたいと考えております。

山本(左)分科員 ありがとうございます。

 今御答弁いただきました、日・EU産業政策対話等で、やはり、日本の立ち位置や、日本の懸念事項である安全性や機能が維持できるのかといったところをしっかり伝えていただき、そして議論を進めていただきたいと思います。

 時間になりましたので、これにて質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

上野主査 これにて山本左近君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階分科員 よろしくお願いします。立憲民主党の階猛です。

 今日は、戦略分野国内生産促進税制、これは予算委員会でもお尋ねしましたけれども、やや中途半端だったので、更に掘り下げていきたいと思います。

 総務省の租税特別措置の点検結果、これは資料でお配りしているかと思います。二ページ目ですけれども、この一番最後、欄外のところに、点検項目一、三、五及び七に課題があり、達成目標が設定されておらず、将来の適用数、将来の減収額及び将来の効果が予測されていないことから、分析、説明の内容が著しく不十分な評価書、この評価書というのは経産省が作った評価書のことです、そういう評価なんですね。そういう点検結果なんですね。

 これを踏まえて、具体的にどのように改善されたのか、ここがペーパー上は明らかでなかったので、大臣から説明をお願いします。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の政策評価につきましては、総務省による点検が行われた昨年八月の時点では、議論が本格化する前の段階だったため、複数の項目で、説明等が不十分であるとの指摘を受けました。

 その後、当該点検も踏まえ、税制改正の検討を進め、与党税制調査会での議論も経て、我が国においても戦略分野の国内投資を実現するための税制として創設をする、そういう経緯でありました。

 御指摘の項目につきまして、まず、本税制の適用数につきましては、制度の創設に必要な法案を今国会に提出したところでありまして、現時点で幾つというふうに具体的に示すことは難しいということであります。

 そして、本税制の達成目標や効果につきましては、本税制を始め、同時に、予算措置や成長志向型カーボンプライシングなどの規制制度も含めて、政策を組み合わせて実施するものですから、それを組み合わせた結果、例えば、グリーンスチールについては今後十年で三兆円以上の投資を実現することや、自動車につきましては、蓄電池を含め、今後十年で三十四兆円以上の投資を実現することなどを、昨年末に取りまとめたGXの分野別投資戦略などで明記をさせていただいております。

 まずは、制度創設に必要な法案の成立を目指していくとともに、制度開始後は、今申し上げた目標、この達成や効果の実現に向けてしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えています。

階分科員 今のグリーンスチールと電気自動車の投資額については、後でまたお聞きしますけれども。

 その前に、前回の質疑の中で私の質問に答弁がなかった、この税制で適用対象となり得る企業の具体名、お答えいただけますか。

齋藤(健)国務大臣 これも前回御質問いただいて、たしか、今回の制度の成立後に、令和八年度末までに主務大臣の認定を受けた上で、実際に戦略分野において新たな国内投資を行う企業ということが対象となっていますので、今の時点で対象となる企業を断定的にこの場で申し上げるということは難しいということは御理解いただきたいなというふうに思っています。

階分科員 ということですので、私が国会図書館を通じて調べた、適用対象となるであろう企業の部分を色で塗って表示させていただいております。この企業は、自民党に多額の政治献金をしている企業も含まれているわけです。

 先ほどの御答弁で、達成目標とか将来の効果、将来の適用数、まだまだ不十分な説明だったと思います。

 他方で、この減税をやることによって、これは前回御答弁いただきましたけれども、一年当たり二千億円超、そして、十年やれば二兆ぐらい、計算上は減税の適用になるということですから、本当に、費用対効果、十分勘案されているのかという気がするわけです。

 しかも、この国家の財政が厳しい中で、税収が減る分をGX移行債で一部賄う、GXで調達した資金を一般会計に繰入れすることによって賄うということなわけですけれども、私の理解では、GX移行債で調達した資金は特別会計の中で支出をされ、特別会計という枠の中で収支相償う、収支相償というんですか、そういうものだと理解していましたけれども、一般会計の減収を穴埋めするためにGX移行債の調達資金を使うというのは目的外使用に当たるんじゃないかと思うんですが、この点はいかがですか。

齋藤(健)国務大臣 ここは大事な点だと思います。

 戦略分野国内生産促進税制の対象物品のうち、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAFなど、GXの推進に効果が高いものについては、その税収減をGX経済移行債の発行収入金で補填する。

 こうした物品に係る投資を本税制により推進をしていくということは、まず、歳出削減と経済成長を共に実現していくGX推進法の趣旨に整合するというふうに認識をしています。

 また、このGX経済移行債に係る歳出及び歳入が経理される御指摘のエネルギー対策特別会計は、エネルギー使用の合理化やCO2の排出抑制等、これを目的としているわけであります、この特会は。したがいまして、この点、戦略分野国内生産促進税制の対象物品はエネルギー使用の合理化やCO2の排出抑制に貢献するものである、こういう結びつきになるわけでありますので、エネルギー特別国会の目的にも合致をしているというふうに考えています。

階分科員 これがまかり通ってしまうと、これからGX移行債で二十兆を調達するわけですよね、これを一般会計の穴埋めに使えちゃうことになるわけですよ。ちょうど二五年度がプライマリーバランス黒字化の達成目標時期なわけですよね。そこでぎりぎりプライマリーバランスに達しないようなことがあれば、GX移行債で調達したお金を一般会計の税外収入だということにすれば、達成できちゃうんですよ。これこそまさに粉飾決算じゃないですか。

 一時は、一般会計は母屋で、特別会計は離れで、母屋でおかゆをすすっているときに離れですき焼きを食べているとおっしゃった大臣もいましたけれども、今、逆に、離れですき焼きを、作ったものを一般会計に横流しするといったようなことになりかねないんじゃないですか。

 使用目的についてはあえて問題視はしませんよ、それはGXにかなう部分はあると思います。ただ、財政規律という面では、せっかく特別会計で切り分けて、その結果、GXを推進していく部分についてちゃんと予算を確保するわけだから、それをわざわざ一般会計の税収の穴埋めに使うというのは、私は財政規律という観点から間違っていると思いますよ。その点についてはいかがですか。

齋藤(健)国務大臣 特別会計の支出の在り方ということに関わってくる御質問なんだろうと思います。

 そういう意味では、委員の御指摘も分からないわけじゃありませんが、ただ、このGX経済移行債の発行収入による、補填することを政府として税制改正大綱において示していて、そのためには、特別会計に関する法律も改正をして、減収補填のためのエネルギー対策特別会計から一般会計への繰入れをしっかり法律でも規定していきたいというふうに思っています。

階分科員 財政規律をないがしろにするというのは、この御時世でいかがなものかなということはしっかり指摘させていただきたいと思います。

 その上で、最初の方で御答弁があったグリーンスチール三兆円、電気自動車三十四兆円という話ですけれども、今後十年間の投資額の見込み額ですか、これが税制のKPIという理解でいいんでしょうか。お答えください。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、戦略分野において、本税制を始め、予算措置や成長志向型カーボンプライシングなどの規制制度も含めて、先ほど申し上げましたように、政策を効果的に組み合わせるということで、切り分けて考えるのは難しいんですけれども、同時に措置するものですから。

 ただ、グリーンスチールについて今後十年で三兆円以上の投資を実現すること、自動車については蓄電池を含め今後十年で三十四兆円以上の投資を実現すること、これは、戦略分野国内生産促進税制の達成目標でもあり、KPIと同様の趣旨であるというふうに私は考えています。

階分科員 ほかにも対象物資がありますよね、グリーンケミカルとかSAFとか半導体、こういったものについては、今言ったような数字はお示しにならないんですか。

齋藤(健)国務大臣 これも、グリーンケミカルは今後十年間で三兆円の官民投資を実現、これはGX分野別投資戦略に記載をされています。SAFについても同様に投資戦略に書いてありまして、今後十年間で一兆円の官民投資を実現と。それから、半導体についてもGX分野別投資戦略で、今後十年間で十二兆円の官民投資を実現というようなことが投資戦略に記載されているということでございます。

階分科員 あくまで、そういった数字は投資額となっていますよね。今回は、まさにこの税制の目的は、投資だけじゃなくて、生産とか販売を伸ばしたいわけですよね。生産とか販売の数字がKPIになるんじゃないですか。

 あるいは、もっと大きな話をすると、GX移行債まで使ってGX社会をつくっていくんだということですから、炭素削減量、十年間でどれだけ減らすか、そういった目標をKPIにすべきじゃないですか。何で、そうなっていないんですか。お答えください。

齋藤(健)国務大臣 確かに、御指摘も分からないわけじゃないんですけれども、まず投資をしっかりと促進をしていくということを最大限の政策目標としてもやっているわけであります。そして、その結果、成果がどうなるかということは、やはりきちんとフォローはしていかなくちゃいけないと考えています。

階分科員 やはり、これは生煮えなんですよね、制度として。

 それで、減税額がもっと小さかったり、あるいは対象となる企業が幅広かったり、要するに薄く広く受益するというのであればまだ分かるんですけれども、特定少数のところにどんと減税するということであれば、より厳しく、税制の基本原則である中立、公平、簡素、これが著しく害されていないのかどうか見なくちゃいけないと思うんですけれども、今の答弁の内容だと、やはりこれは問題があるなというふうに思います。

 そして、前回の答弁で、この税制にこだわる理由として、生産段階でのコストが高いために、初期投資支援では投資判断を引き出せないといったようなくだりがありました。

 他方で、先ほど来、TSMCの話も出ていますけれども、TSMCには四千七百六十億円でしたか、こういった多額の初期投資支援をしているわけですね。これは、今後どうするのでしょうか。初期投資支援では投資判断を引き出せないというんだったら、素直に考えると、こういった初期投資の支援はやめる方向なのかなと思うんですが、いかがでございましょうか。

齋藤(健)国務大臣 半導体産業における投資促進につきましては、まず、先端ロジック半導体等の、経済安全保障上重要であるけれども、初期投資の負担が大きくて、事業者にとって投資判断が容易ではないというものについては、初期投資を支援することで企業の投資判断を引き出す、これが大事なんだと思います。

 他方、生産段階のコストが大きいマイコンやアナログ等の従来型の半導体、これにつきましては、生産段階でのコストが高いことは投資判断の妨げに、こういうものはなるわけでありますので、本税制を通じた税額控除を措置することにより、投資判断を引き出すということが有効であると考えます。

 つまり、半導体には事業特性の異なる幅広い種類が存在をしますので、それに応じた施策というものを講じていくことが必要なんだろうというふうに考えています。

階分科員 同じ半導体でも、品目によっては初期投資支援、品目によっては生産、販売支援、分けていくということで、ダブルで支援する、初期投資支援と生産、販売支援、ダブルで支援するということはないという理解でいいですか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のように、初期投資支援に当たる補助金などで支援した案件につきましては、税制支援の対象外としたいと考えています。

階分科員 そして、これも前回の答弁で、対象品目のうち鉄鋼や基礎化学品については、脱炭素化に伴う生産コストを市場価格に転嫁するための市場創出が世界的に不十分だというくだりがありました。

 生産コストを減税によって補填するわけですよね、いわば。そうすると、かえって生産コストの市場価格への転嫁は遅れるのではないか。企業としては、そんなことをしなくても補填が受けられるわけですから、遅れるんじゃないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 グリーンスチールですとかグリーンケミカルを始め、本税制の対象分野は、特に生産段階でのコストが高いことに加えて、市場の見通し、これが立ちづらい、したがって、投資判断が大変難しいという分野であると認識をしています。そのために、本税制によって生産段階への措置を講じることで、まずはその投資判断、これを引き出すということとしているわけです。

 また、そうした大胆な投資が実現すれば、生産コストが一定程度低下する可能性があることに加え、本税制を生産、販売量に応じて措置をするということによりまして、世界的に見ても市場創出が不十分な製品につきましても、生産、販売を拡大するインセンティブというものを企業に持たせる、そういう効果もあるんだろうと思います。

 これらによりまして、本税制が対象とする製品の供給を確保、拡大した上で、成長志向型カーボンプライシングの導入、これを含めた規制、制度的措置等とも組み合わせていくことで、対象分野の製品の価値が評価をされる、そういう市場創出にもつながっていくということで、同時に取り組んでいきたいというふうに考えています。

階分科員 ややロジックが複雑なような気がするんですが、単純に考えると、生産コストを企業としては市場価格に転嫁したい、それによって採算が合うようにして、大量に生産をしていきたい、こういう好循環をつくりたいわけですよね。ということを国として後押しするためには、転嫁が必要な生産コストをそもそも圧縮していく、減らしていく、そういった設備投資を促していく、古い設備の更新を促していく、そのためには特別償却というやり方もあるでしょう。

 それから、需要側が生産コストが転嫁されて多少価格が上がったとしても買うような、需要側のインセンティブを高める政策を打ち出していく、こうしたことも考えられると思うんですが、今のやり方では、かえって市場価格への転嫁が余り進まなくて、余り即効性がなくて、企業が量産体制をつくるのには余り効果がないのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、繰り返しになるところはあるんですけれども、今回対象にする分野は、特に生産段階でのコストが高いということに加えて、市場の見通しも立ちづらい、したがって、投資判断が悩ましいという分野になるわけであります。そのために、まずは生産段階への措置を講じることで、まずはその投資判断を引き出していかなくてはいけないということが一つ前提としてあります。

 そうした投資判断を引き出す上では、これらの戦略分野の製品を調達する大企業や個人に対して逐一措置を講じるということも考えられないわけではありませんが、生産者に対する措置を講ずる方が、生産者にとっての予見可能性を確保し、投資判断を引き出す上で有効であるというふうに考えているということであります。

階分科員 それから、この税制のスキームでは、生産設備をまず計画に定めて、その計画に定めた設備を使って生産、販売しないと減税のメリットが得られないわけですよ。生産コストを減らしていく上では、陳腐化した設備が長く続くよりも、どんどんどんどん更新した方がいいわけですよね。ところが、減税メリットを最大限享受しようと思うと、陳腐化した設備も長く使わなくちゃいけない。

 これも、生産コストを高止まりさせて、転嫁できなくしていく方向になっちゃうんじゃないかと思うんですが、このスキームで本当に意味があるのか、むしろ、生産コストの減少を阻害して、我が国の産業競争力を低下させるのではないかと思うんですが、この点はいかがですか。

齋藤(健)国務大臣 今回の税制の趣旨は、生産段階におけるコストが高いからということです、繰り返しになりますから申し上げませんが。企業は、こういった戦略分野の最先端の技術を活用して、大胆な長期の国内投資を行うことになるわけであります。

 そうした投資がすぐに陳腐化するようなものに対して行われるということは想定をしにくいなというふうに私は思っています。

階分科員 それは、いろいろな分野において想像もつかないような技術の進歩もあるわけで、十年あればどんな進歩が起こるか分かりませんので、見解の相違はあると思います。

 その上で、今回の税制については、四ページ目につけましたけれども、アメリカのインフレ削減法をモデルにしたというような説明も聞いているんですね。

 それで、このインフレ削減法は、その名のとおり、インフレ削減の目的なので、企業に対して、今回のようなあめを与える部分だけじゃなくて、むちも振るっているわけですよ。増税もしているわけですよ。ところが、今回のは、あめだけですと。それから、対象品目が非常に狭いというのもアメリカとの違いです。これによって、恩恵を受ける企業が非常に狭まるということもあります。

 アメリカのインフレ削減法とは、ちょっと似て非なるものではないかと思うんですが、この点はいかがですか。

齋藤(健)国務大臣 本税制につきましては、対象分野のうち、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAFといったGXの観点から効果の高い戦略分野について、その減収分をGX経済移行債の発行収入で補填をする、そういう仕組みになっています。

 このGX経済移行債は、GX推進法におきまして、化石燃料の輸入事業者等が負担する化石燃料賦課金、あるいは発電事業者が負担する特定事業者負担金によって償還をしていくということが定められていますので、アメリカのように法人税ではないかもしれませんが、企業の負担も伴うというものになっています。

 また、本税制の対象品目の御指摘もありましたけれども、我が国には、再生可能エネルギーの導入を促進するFIT制度を始めとして、各種の制度、施策が既にあるものがあります。それから、産業構造の特徴、強みなども踏まえてこの対象品目を定めておりまして、そのため、米国とは異なり、米国で対象となっていてもこちらでは対象としない分野もあれば、グリーンスチールやグリーンケミカルなど米国が対象としていない分野などもあるということで、相違があるということであります。

階分科員 アメリカのインフレ削減法では、二〇二二年から二〇三一年の十年間で正味三千億ドル程度の財政赤字削減の見込みというような調査機関の数字も出ております。三千億ドルですから、四十五兆円か、四十五兆円です。いずれにしても、四十五兆円、膨大な金額の削減効果なんですが、こちらはそういうものではないということは申し上げたいと思います。

 それで、要するに、私がるる述べてきたことは、いずれも、この税制に対する公平性とか中立性とかいったものに疑念を抱かせるような材料なんですよ。こういうことを本当に国民に納得してもらって減税を理解してもらうためには、やはり一点の曇りもないような政府としての姿勢が必要だ。

 何を言いたいかというと、企業献金をたくさんもらっているからこういうことをやっているんだというふうに思われないようにするために、企業献金というのはなくすべきだということは、経済産業政策を所管する立場から是非おっしゃっていただきたいんですが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 政治活動に対する献金につきましては、政党や政治資金団体に対するもののみが認められているわけでありますが、それを禁止するかどうかは各党各会派において十分御議論いただくべきものであり、経済産業大臣としてお答えする立場にないため回答を差し控えさせていただくというのが用意されている答弁なんですけれども、私、階委員とこの国会で議論させていただいて、階議員は大変よく勉強されておられますし、それから、時に本質をついた御質問をされるということでありまして、私は実は敬意と尊敬をしております。

 なので、あえて申し上げさせていただきますと、私も、二十三年間、経済産業省で勤務をしておりまして、大きな税制を担当したこともありますし、大きな予算を担当したこともありますが、その政治資金云々ということを頭の中で一瞬も考えたことはありません。やはり、この今の状況においてどういう政策をしたらいいかということから政策を私はやってきたつもりですし、本当に、政治資金について、政策を立案する過程で頭をよぎったことすらありません。恐らく、私の後輩たちもそういう気持ちで取り組んでいるに違いないと確信をしていることだけはあえて申し上げたいと思います。

階分科員 ありがとうございました。私も齋藤大臣のことは尊敬していますよ。今の言葉にもうそはないと信じています。

 ただ、政党交付金というのもあるじゃないですか。本当にお金が必要だったら、国民にお願いして、政治献金は一切やらない、ただ、物価高もあり、いろいろな経費もかかるから政党交付金は少し増やしてねというお願いをする方が筋としてはいいと思いますよ。

 何かコメントありますか。

齋藤(健)国務大臣 これはちょっとコメントできません。

階分科員 じゃ、また何かの機会に。

 最後に、残された時間で貿易赤字のことをお尋ねしたいと思います。

 今年の初め、一月ぐらいでしたかね、財務省が数字を出していて、貿易赤字が九・二兆円。その前の年よりは半分ぐらいに減ったということで、いいように思えるんだけれども、ただ、輸出が増えたから貿易赤字が減っているわけではないんですね。輸出は二・八%しか増えていないんです。

 だから、お聞きしたいのは、貿易赤字が減っているとはいっても、売値が上がったりとか、あるいは数量が増えたりとかということではないんじゃないかというふうに思うんですが、輸出が伸びていない原因についてどう考えていらっしゃるか、最後にお答えください。

齋藤(健)国務大臣 まず、事実関係を申し上げますと、円建ての輸出価格についての指数である輸出物価指数で見てみますと、円建ての輸出価格というのは、二〇一七年以降はおおむね横ばいでありましたが、二〇二〇年末からはおおむね上昇基調が続いているという認識をしています。

 そして、数量はどうなのかということにつきましては、輸出取引の数量については指数で見ることにならざるを得ないわけでありますが、輸出数量指数は、新型コロナウイルスの流行により落ち込んだ後、回復を経て、世界的なインフレ及びこれに対応する各国の利上げによる需要停滞などにより低下することもありましたが、足下では、一定の増減はありますが、おおむね横ばいとなっている。

 いろいろな理由が考えられると思うんですけれども、大企業を始めとしてグローバルな生産体制を築いておりますので、輸出についても、現地生産と組み合わせながら安定的なものになっているという面もあるのではないかと思っていますが、個人的には、増えたらいいんじゃないかなと思っています。

階分科員 これで終わります。

 財務省に来ていただいたんですけれども、時間の関係ではしょりますが、私は、一つの要因として移転価格税制というものがあるんじゃないかと思っておりますが、もしこの点について御説明をお伺いできるようであれば、後で個別にお願いしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

上野主査 これにて階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田分科員 日本共産党の穀田恵二です。

 まず、大臣に能登半島地震と輪島漆器の復興支援について伺いたいと思います。

 今回の地震で輪島の漆器は甚大な被害を受けています。しかし、輪島漆器商工業協同組合の皆さんも職人の方々も、漆器六百余年の歴史を私たちの世代で途絶えさせるわけにはいかないという気概に燃えて頑張ってはります。

 先般、岸田首相も、できることは全てやる、伝統産業を三本柱で支援するとして、一つは、仮設工房の開設、二つ、施設や設備復旧のための最大十五億円の補助金、三つ、道具や原材料の確保までカバーする伝統的工芸品産業支援補助金を打ち出したところです。

 そこで、ちょっと聞きます。三つほど端的にお聞きしますので。

 一つは、原材料や道具の確保にも使える伝統的工芸品支援補助金の最大一千万円は、現地で大変喜ばれています。しかし、補助率が四分の三、残りの四分の一をどうしても負担できない、新型コロナの借入れが残っている中で新たな借入れは難しいという切実な声が上がっています。これにどう応えるか。

 二つ目は、輪島塗の特性は職住一体型であること。住居と工房の距離が問題になります。工房と住居を一体に再建するため、なりわい再建支援補助金、伝統的工芸品支援補助金、住宅再建支援制度が包括的に柔軟に活用できるよう、行政の縦割りの弊害を取り除いた計らいをすべきだと私は思います。

 また、仮設復旧のため、工期が短いプレハブ工法が採用されると聞きますが、輪島塗には、先ほど述べたが、温度と湿度の管理が欠かせません。輪島塗の特性に応じた再建というなら、プレハブ工法、ユニット工法だけでなく、木造による住宅、工房再建の工法を取り入れるべきではないか。

 三つ目、伝統工芸品支援補助金の申請が二月十六日に打ち切られました。制度の救済から外れた被災者はいないのか。随分声が上がっています。行政の予算執行の都合を優先するのではなくて、被災者の救済、支援を最優先するという姿勢できめ細かく対応すべきだと思うんですが、その三つの点について最初にお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 私も先月、七尾市、輪島市等を訪問して、まさに輪島塗に携わる職員の方からお話を伺ってまいりまして、伝統工芸を途絶えさせることなく未来につなげていくという強い思いに直接触れさせていただいております。

 復旧復興に向けては、事業に不可欠な施設や設備の復旧に御活用いただけるなりわい補助金、それから、事業再開に必要となる道具や原材料の確保を支援する、御指摘のように、伝統的工芸品産業支援補助金、それから、被災事業者が仮設工房として利用できる集合型仮設施設の整備支援事業、この三つを今御質問いただいたと思うんですが。

 御指摘のあった、今回の能登半島地震により被災された事業者等を対象とした、道具や原材料の確保に係る経費、これを補助する補助金の補助率は四分の三というふうになっていますが、残る四分の一の自己負担分、これは残っているわけでありますが、例えば日本政策金融公庫による特別貸付けですとか信用保証を通じた金融支援が可能でありますので、これは是非御相談いただきながら一つ一つ対応をしていきたいなというふうに思っています。

 それから、仮設施設の御質問ですけれども、この仮設施設整備支援事業は、本格復旧までの間にいち早く事業を再開していただくための措置であります。このため、地元の皆様の声を踏まえつつ、被災地でも速やかに設置できる工法を検討し、四月中のオープンを目指しています。

 漆器の製造には、御案内のように、数多くの工数がありまして、温度、湿度の管理ですとか、職人が昼夜を通して見なければならない場面もあるというふうに承知をしています。こうした点を含めて、引き続き、地元の皆様の声を受け止めながら、どういった対応が可能かということはしっかり考えていきたいと思っていますが、繰り返しますが、この整備支援事業はいち早く事業を再開していただくための措置であるということ、これは御理解をいただきたいなというふうに思っています。

 それから、今回の伝統工芸品産業支援補助金に基づく災害復旧支援事業は、被災地の早期復興を支援するために令和五年度予算で措置したものでありまして、適正な審査期間と事業実施期間を確保するために、公募は二月十六日までとしたところです。

 現時点で確定したものではもちろんないんですが、御指摘の、申請に漏れた方への対応につきましては、令和六年度予算案に計上をしております事業を活用して、同等の支援を講じるということを検討をいたしております。

 被災した事業者が安心して再建の道を歩めるよう、来年度においても、令和六年能登地震発災後、令和五年度に取得した道具、原材料等も対象とするということなど、今回の期間に申請できなかった事業者にも寄り添っていきたいというふうに考えています。

穀田分科員 積極的な答弁の後半はありましたけれども、やはり最初の問題は、何かというとすぐ金融の話にするんだけれども、それではなかなかいかへんという現実があるわけですから。そこは皆さん、多くの方々が知っていて、実際、国の制度として四分の一どうするねん、結局、金融機関に御相談くださいみたいな話はちょっと余りと言えば、私はうまくいかへんのちゃうかと思って、ほんまに寄り添うというのであれば、そこも含めたきちんとした対応が必要じゃないかと思います。

 そこで、一定、前向きな答弁もありましたから、要は、被災者に寄り添う、それから輪島塗をほんまに途絶えさせない、やるべきことはやる、この立場でやっていただければと私は思っています。

 そこで、輪島塗の窮状は、全力を尽くして、今言ったように、救済すべきだと思うんですね。翻って、国が指定する伝統的工芸品二百四十一品目について、その現状がどうなっているのかお聞きしたいと思います。伝統工芸産業の振興ははっきり言ってうまくいっていると思うのか、メルクマールとしての生産高、従業員数の推移を聞きたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、伝統工芸品の生産額について見ますと、一般財団法人伝統的工芸品産業協会の調査によりますと、二〇一六年度に一千億円を下回って以降、近年は漸減傾向にありまして、二〇二〇年度には約八百七十億円となっています。また、従業員数につきましても穏やかな減少傾向にありまして、二〇二〇年度は約五・四万人というふうになっております。

穀田分科員 私は、極めて深刻な現状に立ち入っているんじゃないかと思っているんですよ。今お話ありましたけれども、二〇一六年に一千億円、省によると下げ止まりというような話をしていますけれども、私はそういう問題じゃないと思うんですよね。

 つまり、おっしゃらなかったけれども、一九八五年でいいますと、それはやはり、年間でいうと五千四百六億円ぐらいの生産高なんですよね。があっともう下がっている、五分の一に今やなっているという現状なんですよね。そこの深刻さを今見る必要がある。

 というのは、今年は、この伝統的工芸品産業の振興に関する法律、いわゆる伝産法、これが制定されて五十年の節目に当たります。この伝産法の目的と振興の施策の中心は何か、簡潔にお述べいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、一九七四年に制定された伝統的工芸品産業の振興に関する法律は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品産業の振興が、国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資する、これを目的としています。

 この伝産法に基づきまして、経済産業大臣及び自治体の首長の認定を受けた事業計画に基づき、協同組合等が行う後継者育成や需要開拓などの取組や、伝統的工芸品産業振興協会が実施する産地横断的な展示販売会や海外マーケティングリサーチなどの取組に対して、補助金を交付するなどの支援、これを実施をしているところであります。

穀田分科員 今大臣が答弁ありましたように、地域経済と産業の発展、それから国民の生活発展、こういったものの継承に欠かせないものだということですよね。しかるに、じゃ、経産省はその位置づけにふさわしい振興の努力を行っているのか、ここがポイントだと思うんですね。

 私、さっき言いましたように、何でその実態を聞いたかというと、やはり、あれから五十年たっているという事態の中で、もう五分の一になっているわけですよね、事態は。だから、それぐらい深刻な現状にあるということの認識がスタートだと私は思うんですね。

 そうしますと、現在経産省が指定している伝統的工芸品、さっき言いましたように二百四十一品目ですよね。法の趣旨である振興のための国の施策である振興計画が策定されていないのは何品目か、国として伝統的工芸品への支援の総額は幾らかということについてお聞きします。

齋藤(健)国務大臣 二百四十一品目ですが、昨年十月に新たに指定されたものを除きまして、全ての組合が新規指定時に振興計画を策定をしていますが、ただし、振興計画が長期間更新されていない組合もあるというふうに認識をしております。

 金額については、今ちょっと手元にないので、後ほど。御容赦をいただければと思います。

穀田分科員 産地への補助金が三億六千万円、伝産協会への補助金が七億二千万、合わせて十一億円弱ということははっきりしているんですね。そんな簡単な話なんですよ。

 二〇二二年の総務省行政評価局によると、産地組合の伝産補助金の活用状況の調査を行って、重立った三十一品目についてやっているんですけれども、そのときに、伝産補助金の申請の前提となる振興計画を作成している組合、これは六四・五%、活用して事業実施は五八・一%と指摘しています。

 今大臣お話あったように、作ったときはと言っているけれども、この何年間といったら、それは一回ぐらいやっているというのはあるんだけれども、そうじゃなくて、今、現実に全ての産地に対してどういう支援をやっているのかということが問われているわけですよね。

 それで、そこの文章によりますと、補助金の申請書類の作成を担う事務職員の体制の脆弱さが、申請手続が負担となり活用を断念、活用した事業の継続が危ぶまれているとも指摘しているわけですね。

 それで、二〇〇一年にこの法改正があった際に、私がいただいた、経産省の調査室によりますと、元々、指定を受けた品目は、少なくとも振興計画の策定をすることと。やはり、それに基づいて随時振興を行っていくということを叙述しているんですね。

 伝産法は五十年たつのに、振興計画の策定ははっきり言って非常に低調です。したがって、今大臣お答えになりませんでしたけれども、経産省が出す補助金の総額もはっきり言って十億ちょっとですわな。それは明らかに少な過ぎる。しかも、この間、振興計画を策定できていない産地こそ、産地の存続のために、より抜本的な支援を必要としている。

 なぜ活用が低調なのか、なぜうまく機能していないのか、その辺の原因をどうお考えか、少し踏み込んで述べていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 私が認識しているところによりますと、振興計画を更新中の組合もあるので確定的な数字はお答えできないんですけれども、百品目以上について振興計画が更新をされていない、総務省の調査もありますけれども、そういう認識でいます。

 それで、伝統工芸品として経済産業大臣が指定した個別の品目に係る状況というのは様々ですので、なぜ策定されていないかについて一概にお答えすることは難しいんですが、その上で申し上げれば、日本人の生活様式の変化等に伴って伝統的工芸品の需要が減少をしてきているのではないか、それに伴って、担い手ですとか、御指摘ありましたけれども、協同組合の機能の低下などが共通する要因としては考えられるのではないかというふうに考えています。

穀田分科員 どうも相手の方の問題にいって、大体、これの話をすると、大臣、一番最初に答えるのは生活様式と言うんですよ。誰に言ってもそうなんですよね。でも、私は思うんだけれども、じゃ、着物を着ていたときに走らなかったのかと。走っているんですよね。着物を着てやりながら料理をせえへんかと。しているんですよね。だから、生活様式だけでは言えない問題があるわけですよね。しかも、百品目更新されていない。だから、そこはなぜ更新されていないのかということについて、きちんと聞くということが大切ですよね。そういうことがなされていないというのを私は指摘しているわけですやんか。

 その点でいうと、地方自治体の努力を見てみますと、例えば沖縄県では指定十六品目全ての振興計画がきめ細かく策定されていて、宮古上布の振興計画は第九次、芭蕉布の計画は第六次まで、これは令和二年度段階ですけれども、作成されていて、きめ細かい支援がされています。結果、どうなっているか。先ほど、がばっと減ったとありましたよね。あそこは、令和元年の従業員一人当たりの生産額は、宮古上布は十年前と比較して五・二七倍、芭蕉布が六・三八倍となっている。驚きましたやろ。

 こういう現実があるわけですやんか。だから、熱心に指導、援助している、そういう先進事例に学んで、先ほどあった百がやっていないということに対して本気になって援助する必要があると考えます。

 そこで、大臣がおっしゃっていた、私が言おうとしたものを先取りして一生懸命言うてはるのやけれども、肝は確かに、今あったように、需要減少への対策、販路拡大も含めてですけれども、これが一つ、二つ目に後継不足への対策、それから三つ目に、原材料や用具等の不足への対応ということを経産省は言ってはりますし、私もそうだと思っているんですね。

 そこで、需要減少への対応ですけれども、京都市が指定する伝統的工芸品、京都の場合、七十四品目指定しています。その作り手支援補助金申請者へのアンケートの結果を見ると、コロナ禍以前に売上げが戻らなければ廃業を考えるとの答えが九一・〇もあるんですね。五年前と比較しても、生産量が大幅減少が三四・五、減少が三九・九、合わせて七四・四%となっています。元々厳しい業界にコロナが襲いかかり、その後も、輸入生糸の値段が二倍になるなど、物価高と原材料の高騰が続いています。その上、インボイスによる事実上の増税を課している。現状は大変深刻であります。

 この議論をすると、先ほど言ったように、生活様式という話がありましたけれども、じゃ、どうやって販路を拡大するのかということについて少し述べたいと思うんです。

 私は、この伝産品を貴重な地域資源としてどう地域内で活用するのかという観点が大事だと。金沢では、販路拡大のため、作り手と使い手をつなげる販路拡大コーディネーターを設置し、デザイン分野や地場産業と伝統工芸品産業のビジネスマッチングを行って、付加価値の高い製品開発と販路開拓を行っています。

 国としても、こうした先進事例を全国に広げるために、知恵と力を発揮すべきではないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まさに、様々な需要拡大のための知恵というものが求められているんだろうと私も思っています。

 経済産業省でも、伝統的工芸品産業振興協会や各地の産地組合等とも連携をしまして、産地組合等における国内外への展示会への出展支援ですとか、海外の常設施設における魅力発信ですとか、それから、伝統的な技術、技法を生かした新商品開発などの支援を行ったり、御案内だと思いますが、伝統的工芸品月間国民会議全国大会を毎年十一月に開催をして、全国各産地の伝統的工芸品の魅力や伝統等を体感できるイベントを実施するなど、多面的な支援を実施してきています。

 先日、実は、石川がやっています伝統工芸品フェアといったかな、ちょっと正確な名前はあれですが、そこで輪島塗とか珠洲焼とかがすごく出ていまして、私、そこにお邪魔させていただいたんですけれども、多くの方がいまして、やはり実際に見てみるということがいかに重要かというものを改めて実感したところでありますので、今申し上げたような様々なイベントを通じて、実際に見てもらうことによって需要を拡大していくということも一生懸命取り組んでいきたいなというふうに思っています。

穀田分科員 それはそれでいいことだと思うんですよね。

 今、海外という話がありましたけれども、この間、若手の伝統産業後継者らがグループを組んで、コラボ商品を開発し、海外へ進出する動きが京都でも増えています。この一月には、アラブ首長国連邦のドバイで、日本と京都をテーマにした初のビジネス展示会が開催されています。東京や京都の起業家有志が京都府の支援を取り付けて約百社引き連れ、世界屈指の経済都市に乗り込んだそうですけれども、国の支援は取り付けられていなかったと聞いています。

 会場で最もにぎわったのは伝統産業で、西陣織や京友禅、清水焼などのブースには絶えず人が訪れ、今、実物という話がありましたけれども、象眼とか箔押しとかいったたくみの技にも来場者がくぎづけとなったと報道されています。

 親族ら五人で家内工業を営む友禅の染色企業は、ドバイの王族に大型の作品の注文を受け、これほどポジティブな商談は三十年間なかった、日本の繊細な色彩感覚が評価され誇らしいと語っています。

 私はここに足を運んでみたんですけれども、お聞きすると、コロナの中で営業が大変厳しくなり心が折れそうになったとき大学の先生から展示会のお誘いがあった、ドバイの展示会では一番小さなブースを借りて展示したが、それでも私にとっては大きな賭けだった、というのは、出展料が京都府から少し支援があり、それでも五十五万円、ドバイへの商品物流が七十万円、交通滞在費を含め総額三百万円以上かかった、商談が成立し、繊細なデザインも高い評価を受けて、自信も得て展望が見えた、次回もう一度展示会に行く体力は、しかし残念ながら我が社にはないとのことでした。

 ドバイの日本展は既に次回開催が決まっているそうです。しかし、世界に通用する伝統工芸品の技と技術を持っていても、小規模事業者や若手起業家などがビジネスチャンスをつかみ取ることは容易ではありません。海外や東京での販路拡大、ビジネスチャンスの提供に向けて、経産省としても積極的な支援を私は求めたいと思います。

 次に、後継者不足の問題について一言言いたいと思います。

 人材育成には経済支援が欠かせません。私、着物を愛用しているんですけれども、京足袋という店があるんですけれども、この方も伝統工芸士だったけれども、たった一軒しかなかったあつらえ足袋、これが、店が残念なことに、昨年、注文の新規受付を停止し、廃業の選択をされました。私が、技が途絶えるのは残念でならぬ、後継者はつくれぬのかと聞きますと、後継者をつくろうと思えば数年かかる、その間飯も食わせないかぬし、それは師匠である私の持ち出しとなり、現状では到底難しい、こう述べていました。

 調べてみると、京都市の伝統産業技術後継者育成制度の支給額は年額上限四十万円、実績は毎年二十件前後、決算額は四百万なんですね。

 金沢市の卯辰山工芸工房では、研修者は授業料無料で、それに加え、月額十万円の奨励金が三年間支給される、このような様々な施策があります。そして、工房を開設するときには経費の二分の一の二百五十万まで助成する。こういう形の経済的支援は大きな支えとなっています。

 ですから、私は、深く検討していただいて、経産省として、少なくとも金沢市並みの新しい支援策を考えるべきじゃないかと思っているんですが、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 伝統工芸品産業は、御指摘のように、製造事業者の後継者の確保、育成というものが今やもう喫緊の課題になっていると認識をしています。

 経済産業省としては、伝統的工芸品産業支援補助金、これを通じて、各地の産地組合等が実施する伝統的工芸品の製造工程を担う方々を対象とした技術継承研修や、実技指導を始めとした後継者、従事者育成事業に対して支援を行っているところでありますが、やはり、その前提として、先ほど来から委員も御指摘のとおり、需要が伸びないとやはりなかなか後継者育成というものにつながっていかないと思いますので、その双方からきちっとした施策を講じていくことが大事なんだろうと思っています。

穀田分科員 需要を拡大しようと思いますと、例えば、私、京都に住んでいますけれども、京都に来たら、小学校、中学校、高校ないしは大学でもいいですよ、一定の期間来たら着物が着れるというぐらいのことを教育しないと需要は増えませんよ。そういうことなんかもせなあかん、抜本的な、ちょっと観点を変えたようなことをせなあかんと私は思うんですね。

 同時に、最後に道具についても一言言っておきたいんですけれども。

 これは、知っているかと思うんですけれども、杼ですよね、シャトルといいますよね。これを作っている人はもう、一人しかいないんですよ。これは貴重な材料で、そして、毎日新聞にもこれが載って、この方がいなくなればどうなるかということで、九十一歳なんですね、後継者はいないと。だから、今、機を織る上で、材料、原材料、道具、ここも危機に瀕しているということを一言言っておきたいと思うんですね。

 道具類について言えば、京都府では、西陣織や丹後織物工業組合と協力して、機料品調達連絡協議会、これを立ち上げています。共同してやろうとしている。しかし、関連する産地、つまり、東の桐生、そして西陣、博多、こういったものを含めて、いわば部品、道具を安定調達できるように、その点では国として責任を果たすべきじゃないかと思うんですね。

 先ほど、そういう産品をいろいろ見たとおっしゃっていましたけれども、木地の山中、それから塗りの輪島、まき絵の金沢、こうなっていますわな。ですから、そういったものを安定的にやる場合、例えば漆だって、今、自給率は数%ですやんか。ところが、かつては二十から三十の産地があったわけですよね。京都でいうと、夜久野でも復活しようと努力がされている。そういった、いわば上質な国産漆の問題や、材、そして道具、こういったものを、きちんと安定的にそれを助ける、そういう仕掛けも含めてつくるべきではないですか。

上野主査 齋藤大臣、申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

齋藤(健)国務大臣 伝統工芸品は様々でありますので、それぞれの特徴に応じて、その産地組合の方でいろいろな方策を考えていると思います。国が一律的にやるような話でもないような気がしますので、そういうものについてしっかりと補助できるように頑張っていきたいと思います。

穀田分科員 今、一律でやってくれというんじゃなくて、その体制を、企業、そして起業、それから材、原材料、道具、こういったものを支援すると。一律にとは言っていないんですよ。そういうものをやるべきだと思うんです。

 伝産品というのは、我が国古来の、受け継がれてきた自然のものを原材料に生産されている。そういう意味でいうと、自然と共生という側面がすごく強いわけですよね。だから、ある意味、我々が目指している環境問題とか循環型経済社会の趣旨を体現した産業でもあるわけです。そういう未来を見通した形でやることこそ、伝産法の五十年という中で経産省がやるべき仕事だ。その意味では、抜本的にこれらに対応する予算を増やす必要があるということを述べて、質問とします。

上野主査 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、伊藤(達)主査代理着席〕

伊藤(達)主査代理 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の遠藤良太でございます。

 一日、終日、大臣には質疑で大変な御苦労かと思いますけれども、またしばらくおつき合いいただきたいと思います。

 私の方からは、まず大臣の方にお尋ねしたいんですけれども、昨今、株式の最高値ということが、一九九〇年の三月以来最高値ということで、経済が評価されている、株価が評価されているというところだと思うんですけれども、これはいろいろな要因があると思います。新NISAの開始であったりとか、円安の進展による株式の割安感とか、そういったことはあると思いますけれども、その中で、大臣の方で、今の日本の産業の実力についてどのような評価をされているのか、認識をされているのかをお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、今月二十二日に日経平均株価が史上最高値を更新したということは承知をしておりますが、株価の日々の動向について、経済状況、企業の活動など様々な要因によって市場において決定されるので、このことについてはコメントは控えたいと思います。

 その上で、これまでの日本経済を振り返ると、バブル崩壊以降、コストカットで生産性を高めてきた結果、足下では企業が過去最高水準の収益、これを上げている一方、設備投資や人への投資は諸外国に大きく後れを取ったというふうに認識をしています。

 一方で、自動車、半導体製造装置、部素材など、世界シェアが高く、競争力のある産業も存在をしています。こうした競争力ある産業を育てるためにも、これから、GX、DXなどの社会課題解決を成長のエンジンとする積極的な産業政策を今推し進めているところであります。

 国内外のマクロ環境の変化とこうした積極的な産業政策によりまして、足下の日本経済は、百兆円規模に達しつつある国内投資、三・五%を超える賃上げ、これら双方において三十年ぶりの高水準を示していまして、着実な潮目の変化が見られます。

 足下の変化の兆しを確実なものとして、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる成長型経済へ転換できるように、この機を逃すことなく積極的に取り組んでいきたいと考えています。

遠藤(良)分科員 大臣、ありがとうございます。

 設備の投資であったりとか人材に対して給与アップとか、そういったことを積極的にされていくというところなんですけれども、先ほど大臣からもおっしゃられたように、自動車産業の点についてお尋ねしたいんですが、御承知のとおりトヨタは日本国内でも時価総額一位ということで、そういった中で、一方で、海外でも、アメリカのテスラがどんどん伸びてきていて、EVの市場でシェアを取っていっているという状況があると思います。

 その中で、我が党の猪瀬直樹参議院議員がこういうことを言っています。テスラはスマホだ、ガラ携が日本の車だというような表現をしているんですけれども、なかなか面白いなと。これは、根拠的に言うと、テスラというのは、自動運転していく中でディープラーニングをしていって、どんどんサーバーに自動運転化していくのが蓄積されていくんだと。これが、テスラの場合は、モデルチェンジをせずに、それがどんどんバージョンアップしていく、一方、日本の場合はモデルチェンジが必要なんだということを表現しているんです。

 その中で、大臣の方は、旧通産省の時代に自動車交渉も行われてきたということを承知しているんですけれども、アメリカに比べて日本の自動車産業の競争力は、EVとかが出てきたということもあるんですけれども、その辺の辺りから、今後、日本の自動車産業についてどういうふうに競争力を強化していったりとか維持していくのか、この辺りをお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 かつて、猪瀬直樹さんにテスラを買ったので乗りに来ないかと誘われていたんですけれども、いまだに実現をしていないのが残念に思っていますが。

 自動車産業は、我が国の雇用の約一割、輸出の約二割を支える基幹産業でありまして、GX、DXの大変革の中にあっても、何としても国際競争に勝ち抜かなければならない、そういうふうに考えています。

 このため、我が国は、カーボンニュートラルの実現に向けて、EVや合成燃料、水素など多様な選択肢を追求していく中で、自動車産業の競争力を強化をしていくという方針で、具体的には、経済産業省といたしまして、G7やAZEC等を通じて諸外国に対してこうした考えを継続的に発信し、グローバルな市場形成を図るとともに、グリーンイノベーション基金を活用し、全固体電池や合成燃料等のイノベーションの促進を進めています。さらには、今後市場が拡大していくEVでも勝つことが重要だと考えていまして、このため、購入補助や充電インフラ整備を通じた国内市場の立ち上げに加えて、蓄電池の国内製造基盤の強化や上流資源の確保などを総合的に講じていきたいと考えています。

 我が国の自動車産業が引き続きグローバル市場をリードできるように、官民一体で連携しながら取り組んでいきたいと考えています。

遠藤(良)分科員 是非、自動車がやはり日本の基幹産業でもありますし、しっかりと維持していかないといけないというところだと思います。

 その中で、GX、先ほど大臣もGXであったりとかそういった話もありましたけれども、脱炭素のところでちょっとお尋ねしていきたいんです。

 資料もお渡ししているんですが、今回、衆議院の経済産業調査室が企業にアンケートを取ったというところなんですけれども、この中で、見てみると、二万六千九百七十二社を調査対象として、そこから回答されたのが一万一千三百六十一社であったと。そこで、このGXについて、脱炭素経営について、ポジティブに捉えている企業は三四%ある、全体の約三割あるんだと。一方、ネガティブに捉えているのは二三・八%というところなんです。

 その中で、内訳を見てみると、このポジティブと捉えているところの企業が、大体大企業が多いんですよね。見てみると大企業が多くて、大企業のうち五〇%近くはポジティブに捉えているんだということなんですけれども、さらに、業種で見てみると、ポジティブに捉えているのが特に金融業ですね。ネガティブというのが運輸業であったり小売業ということで、これはやはり、ネガティブに捉えているところというのは、二酸化炭素の排出の多いところがネガティブに捉えているんだと思うんです。

 その中で、政府は、経産省が昨年十二月に、分野別投資戦略で十六分野に順番に投資をしていく優先順位を決めたというのは、これは一定評価されるところなんですけれども。その中で、今回、この調査アンケートによると、ポジティブに捉えたところについては、太陽光発電の導入であったりとか社用車のEV化であったりとか、そういった、環境に関して積極的に捉えられている企業が多いと思いますけれども、一方で、やはり、今ネガティブの二三・八%近くのこの企業、ネガティブと捉えられている企業に関しては、ポジティブに捉えている企業の取組を促進したりとか取り込んでいく方法というのをどういうふうにやっていくのか、訴求についてどのような対応をされていくのかをお尋ねしたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けては、排出削減を進めること、これも大事ですし、あわせて、国際ビジネスで勝てるようなそういう企業群が、排出削減と経済成長を両立するような、そういうGXの取組を牽引していくことが大事だというふうに考えております。

 こうした動きを加速するために、経産省では、排出量取引ですとかあるいは個社では難しいルール形成についても積極的な議論を行う場としてGXリーグというのを立ち上げて、その動きを後押ししているところでございます。

 このGXリーグの参画企業の排出量は我が国の排出量の全体の五割を超えておりまして、製造業やエネルギー企業を中心に参画をしております。ただ、御指摘のように、このGXリーグにおきましても、一部の運輸関連業種など参加が十分では必ずしもない、そういう課題があるのも事実でございます。

 このGXリーグの参画企業、業種を拡大しGXの取組を更に加速するために、多排出企業につきましては、本格稼働前の排出量取引の試行段階から参画することで算定や取引に慣れることができること、そういうメリットがありますし、あるいは、サプライチェーン上での排出削減やGX製品の投入についてルールを提案できる、こういうメリットもございまして、脱炭素経営を進める上でのGXリーグ参画のメリットを説明して参加を促すということをやっていきたいと思っておりますし、それから、御指摘もありました、GX経済移行債を活用した先行投資支援の実施に当たりましても、このGXに対応する相応のコミットを支援対象の企業に求めることとしておりまして、GXリーグに参加することなどでこの要件が満たされることとなるということで、GXリーグに参加するインセンティブも講じているところでございます。

 こうしたことで、GXリーグの参画企業というのは、この一月からでも八十社以上新しく参加した企業もございまして、そういう意味では、御指摘の、今まだ参加率の低いようなところ、あるいはネガティブに捉えているところが多い業種につきましても、その参加を促して、特に御指摘の運輸業ですとか小売業、こういう業種についてもGXの取組というのを加速化をすべく、政府としても取組を強化していきたいというふうに考えております。

遠藤(良)分科員 この脱炭素をネガティブというところに捉えている企業というのは中小企業が多いんですけれども、その中で、僕の地元で、スキー場、日本海側の地域はスキー場が盛んで、兵庫県豊岡市の、関西では有名なスキー場なんですけれども、最近、雪が全然積もらなくて、スキー場の運営ができないところがある。ずっと続いているんですけれども、例えば、そういう場合であれば、人工で雪を降らせたりとか、そういった運用をしないといけない、そういう状態になっているんですけれども、地元からは、スキー場の経営をうまくするために、人力ではどうしようもないので、やはり地球温暖化というのが一定の影響があるんだということなんです。

 実際、その中で、やはり中小企業は、一方で脱炭素に対して懐疑的に思われている企業ももちろんありますから、この中でどういうふうに、この脱炭素に対して懐疑的な中小企業の意見にどのように対応されていくのかをお尋ねしたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 世界規模で異常気象が発生しまして、大規模な自然災害が増加するなど、気候変動問題への対応は人類共通の課題だというふうに考えております。

 国、地域だけではなく、産業界におきましても、国内外でサプライチェーン全体での脱炭素化を宣言する企業が増加をしておりまして、その関連で、中小企業にとってみると、取引先からカーボンニュートラルに向けた協力要請を受けた中小企業、この比率も、二〇二〇年には七・七%でありましたけれども、これが、二〇二二年には、二年間で一五・四%と倍増しております。それから、民間向け投融資の約八割を占めます東証プライム上場の銀行、金融機関ですけれども、この銀行にとってみると、投融資先の排出量を把握する必要が出てきております。したがって、中小企業はその意味でもカーボンニュートラルに向けた対応が求められていく、こういう状況でございます。

 他方で、中小企業がカーボンニュートラルに取り組むことは、省エネによるコスト削減ですとか、あるいはキャッシュフローの改善、トランジションファイナンスなどの資金調達手段の拡大、それから、いち早く排出削減に取り組むことにより受注の拡大につながる可能性があるといった、そういうメリットがあるということもまた事実でございます。

 こうした中、中小企業が取り残されないように、中小企業にGXの重要性あるいはそのメリットについて理解していただくためにセミナーを実施するとともに、今年二月には、カーボンニュートラルに取り組む必要性、具体的な取組方法ですとかエネルギーコスト低減のメリットなどについて無料で学べる研修動画を公開したり、こういう取組もしているところでございます。

 さらに、中小機構における相談窓口の設置ですとか、カーボンニュートラルに取り組む中小企業に専門家を派遣してハンズオン支援を行うなどの支援機関からのプッシュ型の支援、こういうことを行う体制も構築しているところでございます。

 引き続き、中小企業にもしっかり取り組んでいただく必要がございますので、中小企業が取り残されることがないよう、こうした施策を広く周知して効果を上げていきたいというふうに考えております。

遠藤(良)分科員 ありがとうございます。中小企業にも、これは取り組んでいくとメリットがあるんだということだと思います。

 これは調査室の内容なんですけれども、その中で、アンケートを自由記述で書いていたりするんですけれども、ここに書いているのが、ただでさえ利益が薄くなっているのでこれ以上原価が高騰すると会社の存続に関わるとか、そういったことが書いてあったりとか、欧米からの押しつけで無駄な取組だと思っているとか、こういった結構もろな批評を書いているんですけれども、そこで、見てみると、やはり多いのは、コストがかかるんだというのが多いのかなというふうに思います。

 大臣にちょっとお尋ねしたいんですけれども、こういった、コストがかかるんだということに対してどういうふうに対応されていくのかをお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 中小企業のGX推進については、昨年の七月に閣議決定をした脱炭素成長型経済構造移行推進戦略、GX実現に向けた基本方針というのがありまして、その中においても、「中小企業を取り残すことなく、社会全体のGXに向けた取組を推進していく。」ということを掲げています。

 御指摘のとおり、中小企業がGXに取り組むには投資コストの負担などの課題がありますことから、例えば、GXに資する革新的な製品、サービスの開発に必要な設備投資等を支援するものづくり補助金や、省エネ設備への更新を支援する省エネ補助金を令和五年度補正予算で措置をいたしましたし、補助金のみならず、カーボンニュートラル投資促進税制の令和六年度改正での中小企業向け措置の拡充などの取組を行っています。

 さらに、政府によるコスト対策支援だけでなく、サプライチェーン全体の取組を進めるためには、GXリーグでは参画企業自らの排出削減だけでなくサプライチェーンでの削減に取り組むこととしており、GXリーグに参画する大企業とサプライチェーン上の中小企業の連携ですとか、それから、下請中小企業振興法に基づいて、望ましい取引の在り方を定めた振興基準において、親企業、下請事業者の双方が連携して脱炭素化に取り組む旨を明記したり、さらには、グリーン化の取組も対象としているパートナーシップ構築宣言の更なる拡大と実効性の向上などに取り組んでいるところです。

 中小企業がカーボンニュートラルに取り組むことは、省エネによるコスト削減もありますし、さらに、それによるキャッシュフローの改善もありますし、トランジションファイナンスなど資金調達手段の拡大にもつながりますし、いち早く取り組むことにより受注の拡大につながる可能性があるといったメリットも、コストのマイナスだけじゃなくて、あるということでありますので、中小企業が取り組むことのメリットの理解を促進しつつ、これらの施策を通じて、中小企業も含めた経済社会全体でのGXに向けた取組、これを引き続きしっかりと後押ししていきたいと思っています。

遠藤(良)分科員 これは、先ほど来出ていますけれども、GXについては官民で百五十兆円規模の投資をしていこうというところなんです。これは、僕は以前、経産委員会でJクレジットについて質問させていただいたんですけれども、Jクレジットのその質問の中で回答が、GXリーグの排出量取引制度におきましては、企業が自ら設定した排出量削減目標達成手段の一つとしてJクレジットを利用、活用というところにしているんだということで、さらに、東京証券取引所において、Jクレジットを活用して取引所での取引実証を行ったところで、引き続き、今後、市場設計に向けた技術的検討、検証を行っていく考えであるというような御答弁をいただいたんです。

 これは、実際、二〇二三年十月に東京証券取引所にJクレジットの市場ができたということなんです。これは僕が質問したからということじゃないと思うんですけれども、何か、あっ、できたんだというふうに思って、すごく、僕も賛成というか、このGXについてはどんどん進めていくべきだと思うんです。今現在、二百五十七者がこれに参加しているということなんですけれども、その中で、大きな企業も結構参加をしていまして、関電さんであったりとか小田急さんとかオリックスさんとか、そういった大きな企業も参加しているところなんです。

 このJクレジットというカーボンクレジット市場は実現したと思うんですけれども、これは取引開始後の状況はどういうふうな状況になっているのかを確認したいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに御指摘のように、まず、令和四年九月から五年一月にかけまして、Jクレジットを対象とした市場取引の実証事業を行いまして、その検証結果も踏まえて、昨年、二三年十月に東京証券取引所において、カーボンクレジット市場を正式に開設をいたしました。

 これは実証も踏まえた結果なんですけれども、このカーボンクレジット市場を活性化するにはやはり市場の流動性も大事だということで、新たな取組として、今年度はマーケットメーカー制度というのを導入いたしまして、東京証券取引所から指定を受けた金融機関などのマーケットメーカーが一定の量の売り買い注文を両方出すことで、市場の流動性向上に寄与をしております。

 あわせて、補助事業で政府が取得したJクレジットにつきましても、これまでは入札を通じて政府が販売をしていたわけですけれども、これをマーケットメーカーを通じて市場に供給することで、需要家が市場を通じてクレジットを入手しやすいような環境の整備に取り組んでいるところでございます。

 この結果、去年十月に開設したこの東証のカーボンクレジット市場、御指摘のように二百五十七者が市場に参加いたしまして、これまでに合計十四万トンのJクレジットが約定しているところでございます。実証の段階では、民間同士での取引というのは一・八万トンでございましたので、相当活性化をして増えている、こういう状況だと思います。

 今後、更にGXリーグで排出量取引が徐々に本格化をしてまいりますけれども、そういう中で、更にカーボンクレジット市場というのも活性化をしていくものと見込まれますけれども、ここも取引もちゃんとしやすいように、そういう環境整備も含めて、政府としてもしっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。

遠藤(良)分科員 これは、Jクレジットの制度の活用が増えてきていて、進んでいるんだということなんですけれども、この中で、参加企業の中で、森林関係、森林経営という観点のところで参加している企業というのは実は余りいなくて。

 何で僕がこんなことを言うかというと、私の選挙区でもそうなんですけれども、中山間地域ですね、日本でほとんどの、都市型ではなくて中山間地域で、山を持っていて森林を持っている方、こういった方であったりとかこういった企業がここに参画をしていってJクレジットを活用するべきだというふうに、僕自身すごく、これも委員会でもお話しさせていただいたんですけれども、そういう視点を持っていまして、是非これは森林経営という部分で、森とか山とかを持っている方々にこのJクレジットをどんどん周知してもらって、活用できるんだということを是非知っていただきながら、実際、今後、農水省とも連携も必要だと思いますし、これは是非積極的に取り組んでいただきたいなというふうに思っています。

 ちょっと時間もあれなので、次に移りたいんですけれども、GXのところで最後にお尋ねしたいんです。

 金融庁が、東京証券取引所のプライム上場企業を対象に、温暖化ガス排出量の開示を義務づける検討に入るということなんですけれども、その中で、日本の排出量取引、今の現状は、参加企業の自主性に委ねられている。これは実際、制度の実効性をどういうふうに担保していくのかが課題かなというふうに思うんですが。

 実際、ヨーロッパなどと比べると、GX、排出量取引、これが遅れているのは遅れているんですけれども、一方で、競争力を高めていかないと、日本国内のGXリーグについては競争力を高めていく必要があると思いますし、こういったものを担保しながら確保していく必要があるんだと思うんですけれども、GXリーグ、日本国内でこれをどうやって競争力を高めていくのかとか、こういった辺りを大臣にお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、御指摘のGXリーグでは、現在、我が国の排出量の五割以上を占める企業が参画をし、今年度から排出量取引を試行的に開始したところであります。

 参画企業は、自ら二〇二五年度までの三年間の排出削減目標を設定、公表し、市場取引も活用しつつ、排出削減に挑戦をすることになります。目標や市場取引の状況は、GXリーグのホームページ上のGXダッシュボードを通じて公表もされます。

 こうした透明性の高い仕組みの構築を通じまして、脱炭素投資の実施など排出削減に積極的に取り組む企業が金融資本市場等から評価をされ、競争力が確保されるような環境、これを整備していきたいと考えています。

 また、二〇二六年度からの排出量取引の本格稼働に向けまして、法定化を進めるなど、GXリーグでの取組がより公平で実効的なものとなるよう検討していきたいと思います。

 さらには、二〇三三年度からは発電部門を対象とした有償オークションを導入していくことで、脱炭素に積極的に取り組む企業にとって有利な事業環境を整備していきたいと思っています。

 こうした排出量取引制度の段階的発展とともに、GX経済移行債を活用した二十兆円規模の先行投資支援を同時に行っていくということ、これらによりまして、高い成長性と脱炭素効果が期待される革新的な技術開発や社会実装、これらを更に加速をさせて、我が国の削減目標達成と経済成長、産業競争力強化を共に実現してまいりたいというふうに考えています。

遠藤(良)分科員 テーマは変わりまして、駐車規制についてちょっとお尋ねしたいんですけれども。

 私は最近、浄水器のレンタルサーバーをしている企業にいろいろヒアリングしていまして、そこで聞いたのが、宅配していくと駐禁が結構取られるんだということなんですね。これは、止めていると、止めて届けに行くんですけれども、その間に駐禁が取られると。

 これをお尋ねしていきたいんですけれども、宅配業者など貨物集配中の駐車については、実際、今現状どういう対応をされているのかをお尋ねしたいと思います。

小林(豊)政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、警察庁としても、付近に駐車場がなく、貨物集配中の車両が路上で荷さばきをしなければならないといった声は承知しておりまして、こうした声への対応は重要であると認識しております。

 これまでも、各都道府県警察に対し、貨物自動車運送事業者団体等からの要望を踏まえながら、貨物の集配に時間を要する集合住宅の付近等において、駐車禁止規制の対象から貨物集配中の車両を除外するなど、きめ細かく駐車規制を見直すように指導してきたところでございます。

 昨年二月にも、改めて駐車規制が必要最小限のものとなるように都道府県警察に通達するなど、警察としては、駐車規制の見直しに継続して取り組んでおります。また、地方公共団体等に対し、路外駐車場の整備についても働きかけをしているところです。

 一方、違法駐車につきましては、交通渋滞を悪化させ、歩行者、車両の通行の妨害となることから、警察においては、地域住民の意見、要望等を踏まえた上で、悪質性、危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りを実施しております。

 警察としては、引き続き、交通の安全と円滑を図るため、道路管理者を始めとする関係機関と連携しつつ、総合的な駐車対策を推進してまいります。

遠藤(良)分科員 ありがとうございます。

 これは先ほどもお話ししましたけれども、例えば、都心部で、特に駐車監視員という方々が緑の服を着て、自転車でいろいろなところをチェックされているんだと思いますけれども、その中で、その方々まで、実際そこまで本当に周知徹底できているのかなというところは一つ思うところです。

 一方で、例えば、販売などビジネスで時間短縮のために駐禁しているというのは、これは問題だと思いますけれども、先ほどから出ているような、荷物の配達をする、最近だと、事前のヒアリングでも聞いたんですけれども、例えば、一般車両でそういったものの配達をしている人たちも実際いるんだと。

 お尋ねしたいんですけれども、仮に自家用車で、自分の車で駐禁のところに荷物を、自分の仕事で、ウーバーのような仕事であったりとかアマゾンのような仕事で実際届けに行って、駐禁のところなんですけれどもその家に届けていくケースがあると思います。実際これでも駐禁にならないのかというのを最後にお尋ねしたいと思います。

伊藤(達)主査代理 小林審議官、申合せの時間が過ぎていますので、簡潔な答弁をお願いします。

小林(豊)政府参考人 乗用車を使って貨物の集配をする場合に、先ほど申しました駐車規制の除外がなされている場合、貨物集配中の車両が除外されていると表示があります。そこにおいて、乗用車を使って貨物の積卸しをしている場合については、取締りの対象となりません。

 ただ、貨物車が除外されているケースで、乗用車で配達されていますと、それはもう駐車禁止の対象になっておりますので、取締りの対象となるということでございます。

遠藤(良)分科員 また、これは別の機会にもしっかりと議論していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

 これで終わります。ありがとうございました。

伊藤(達)主査代理 これにて遠藤良太君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤木正幸君。

赤木分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の赤木正幸です。

 本日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。代表して質問させていただきます。

 先ほどの、まさに日本維新の会の遠藤委員の質問とかなりかぶる部分はあるんですけれども、私も、GX、いわゆるグリーントランスフォーメーションに関する質問をさせていただきます。

 私の質問は、どちらかというとかなり個人的な経験に基づいたものになっています。なぜかというと、実は、私も、ちょうどFITが始まった頃、太陽光の発電事業、経営に携わったりとか、あと、再エネファンドをつくるような、そういった経営をしたりしていたことがありまして、今でもやはり、その当時の再エネ関係の会社さんとか、あと、ESCO事業者さんなんかとかなりつながりがあって、頻繁に相談を受けるものがあります。今日の質問内容は、実は、私自身に投げかけられた質問でもありますので、是非、今後GXに対して希望が高まるような回答をお願いできればと考えております。

 GXとか、DXやら、次々と新しい言葉が出てきますので、少し整理させていただきたくて。私自身は、GXは、簡単に言うと、化石燃料をできるだけ使わずにクリーンなエネルギーに変えていくとか、そういった活動と理解しております。特に、化石燃料を消費すると二酸化炭素をたくさん排出して、これが地球温暖化の最大の原因になっている温室効果ガスですね。これは、日本は二〇五〇年に、もう言うまでもないんですけれども、カーボンニュートラルを目指して、温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにすることを国際的に約束していると認識しています。

 まさに、温室効果ガスの削減とかカーボンニュートラルに向けた取組のルール作りはやはりヨーロッパがリードしているというふうには言われているんですが、私自身は、必ずしもヨーロッパだけが全てじゃなくて、まだまだ世界各国が主導権をいい意味でも争っている状況で、なおかつ、日本企業はすごくポテンシャルがある、可能性があると考えております。

 是非、そういった、今日は、日本のGXの位置づけがここまで実は進んでいるんだよ、さらに、ポテンシャルがこれぐらいあるんだということを、私の質問を通して世の中というか日本に対して、特に、携わっている企業さんですね、さっき遠藤委員の話にもありましたけれども、中小企業も今後どんどんどんどん関与してくると思いますので、伝えていければと考えております。

 では、早速、まず一つ目の質問なんですが、先ほども言葉が出ていましたGXリーグ基本構想、これは、結構、ESCO事業とか太陽光とかに携わっている方も、まだまだ実は何なのかというのが分かっていない状況ですので、まず、ちょっとこのGXリーグ基本構想、GXリーグとは何を目指した取組なのかというところを御回答いただけますでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けましては、排出削減だけではなく、国際ビジネスで勝てるような企業群がGXを牽引していくことが重要だと考えております。

 このような観点から、GXに果敢に挑戦する企業群を後押しするため、二〇二二年二月に御指摘のGXリーグ基本構想を策定をいたしまして、この基本構想に基づきまして、二〇二三年四月にGXリーグを設立したところでございます。

 このGXリーグにおきましては、排出量取引の試行によります排出削減取組の後押しを行いますし、それから、サプライチェーン上での排出削減やGX製品の投入に関して、他業種を含む他の参画企業個社と共同したルール形成などの取組を進めていくこととしております。

 さらに、GXに果敢に挑戦する企業が評価されるように、これは市場ですとか消費者から評価されるように、企業の排出削減目標や排出実績、サプライチェーンにおける排出削減など、企業の取組状況を一元的に閲覧できるGXダッシュボードを今年一月に整備し、公表したところでございます。

 こうした情報開示基盤の整備も通じまして、企業による積極的なGXの取組を可視化し、取引先、金融機関、消費者など、外部からの評価につなげていきたい、このように考えております。

 引き続き、GXリーグでの活動を通じ、我が国の経済と環境の好循環を推進していきたい、このように考えております。

赤木分科員 ありがとうございます。

 そうですね、本当にすごい足早に、どんどん新しい開示も進んできていると私も認識しているんですが、今、GXリーグ基本構想の具体的状況ですが、実際に何社ぐらいから参画を得られているか、あと、具体的にどんな企業さんが参画しているかという点についてお答えいただけますでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 GXリーグの参画企業数でございますけれども、二月二十二日時点、先週末ですけれども、六百五十一社になっております。グローバルな大企業からスタートアップまで多様な規模の企業が、製造業以外も含めて幅広い業種から参画をしております。

 また、排出量ベースで、参画企業の排出量で見ますと、我が国全体の排出量の五割超を占めております。大分前から取り組んでいるヨーロッパ、EUの排出量取引の仕組みが、CO2のカバレッジでいうと約四割でございますので、そういう意味では、日本は後発ではございますけれども、カバレッジでいえばそれを上回っている、こういう状況にございます。

 参画企業は、GXリーグの活動を通じまして、先ほど申し上げたように、排出量取引の試行段階、その取組ですとか、あるいはルール作りの提案など、取り組んでいるところでございます。

 こういうGXリーグに参画するメリットも、参画しながら、六百五十一社まで来ているところでございますけれども、まだ参画率が低い業種もございます。したがって、そういうところも含めて、更に参加の呼びかけをして、参加率の向上に結びつけていきたい、このように考えております。

赤木分科員 そうですね、その五割超というのが、今おっしゃられたみたいな、実はヨーロッパより進んでいるということは、結構、皆さんまだまだ知らないと思います。すごくいい情報だと思いますので、是非もっとどんどん周知していただければなと考えております。

 それで、参画企業さんなんですけれども、もちろん、GXを推進しようとか、カーボンニュートラルを実現しなきゃいけないという社会的な責任感は当然あるとは思うんですけれども、私、元々やはりビジネスの出なので、どうしても、何かメリットとか何かインセンティブみたいなものがないのかなというのは考えてしまうんですが、実際にこの参画企業が得られるメリット、逆に、参画するからにはこれは果たさなきゃいけないよという役割とか義務に関して、御回答いただけますでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 参画企業は、GXリーグの活動を通じまして、本格稼働前、これは二〇二六年度から排出量取引が本格稼働すると言っておりますけれども、その排出量取引の算定や取引に慣れることができる、こういうメリットがまずあります。それから、先ほども申し上げたように、サプライチェーン上での排出削減ですとかGX製品の投入についてのルールを提案する、こういうこともできます。こういう、脱炭素経営を進める上での様々なメリットがございます。

 加えまして、一部の補助金では、GXリーグへの参画が加点要件に組み込まれている、そういうものもございます。さらに、GX経済移行債を活用した支援策につきましては、支援企業に対してGXに関する相応のコミットメントを求めることにしておりまして、GXリーグに参加することなどでこの要件が満たされるということでございます。

 また、義務についての御質問もありました。GXリーグに参加する企業、参加した企業は、二〇二五年度それから二〇三〇年度、そして二〇二三から二五年の三年間の排出削減目標を設定するとともに、排出実績を報告、公表しなければいけません。加えて、サプライチェーンでの排出削減に取り組んでいただく、こういうことも我々として求めております。

 GXリーグに参画するメリットも説明しながら、引き続き更なる参加率向上のための取組を行って、幅広い業種での脱炭素の取組を後押ししていきたい、このように考えております。

赤木分科員 そうですね、まさに私もよく聞かれるのが、このGXリーグに参加すると、何かそれで得られる補助金はないのかと。今おっしゃられたみたいな加点があるとか、資金調達が少ししやすくなるということは、非常にこの業界に関してはとても重要だと考えております。

 ちょっとこのGXリーグに関連して、先日、たしか十四日だったと思うんですが、GX経済移行債、今日、たしか五年債の入札があったと思うんですけれども、これについて、私個人の感覚としては、世界初のいわゆるトランジションボンドでしたか、にもかかわらず、かなり投資家の受けがよかったのかなと私は考えているんですが、実際に、CO2削減を目指されている会社さんとか、技術革新される会社さんにとって、この資金使途というか資金ニーズ、すごくこれから増えていくと思うんですが、このGX経済移行債の概要と、調達した資金の使途について御説明をいただけますでしょうか。

畠山政府参考人 二〇五〇年のカーボンニュートラルなどの国際公約を果たすこと、同時に、産業競争力強化、経済成長を実現する、このために、今後十年間で百五十兆円を超える官民のGX投資が必要だと考えております。

 政府としては、令和五年度から、今年度ですけれども、十年間で二十兆円規模のGX経済移行債を発行して先行投資を支援していく、こういうこととしております。

 先行投資支援を行う際には、基本原則といたしまして、規制、制度的措置と一体的に講じていくことに加えまして、民間のみでは投資判断が真に困難で、排出削減だけではなく、産業競争力強化、経済成長のいずれの実現にも貢献する分野を投資の対象としております。

 今月から、おっしゃるとおり、今日もですけれども、世界初の国によるトランジションボンドとして、外部評価機関による認証も受けた上で、GX経済移行債の発行を開始いたしました。初回の発行分として、この二回で、二月に約一・六兆円を発行いたしまして、調達する資金は、令和四年度の補正予算で措置した事業、それから令和五年度当初予算で措置した事業、この合計一・六兆円分に充当されることになります。

 具体的には、このクライメート・トランジションボンド・フレームワークに盛り込まれておりますけれども、水素還元製鉄などの革新的な技術の研究開発ですとか、あるいは蓄電池の設備投資支援、あるいは住宅の断熱性向上のための設備導入支援などが充当事業として含まれております。

 引き続き、脱炭素と経済成長の両立を図るGXを推進するために、この経済移行債、トランジションボンドを活用いたしまして、鉄鋼、化学などの産業分野、水素などや再生可能エネルギーなどのエネルギー分野、そして断熱窓や資源循環などの暮らし関連分野などにおいて、GX投資を加速していきたい、こういうことに使っていきたいというふうに考えております。

赤木分科員 ありがとうございます。

 そうですね、今おっしゃられたみたいに、意外に住宅の断熱とかそういったところにも活用されるということは、まだまだ、私も不動産事業もずっとやっていたこともあって、不動産関係の人はGXと自分たちは余り近くないというふうに思われている部分があるので、実はすごい密接だということを、私も含めてより周知していきたいと考えております。

 では、次に、もうちょっと大きな枠組みとして、日本のGX全体に関する質問に移らせていただきます。

 先ほど来お話ししています、やはりヨーロッパは何かリードしているようなイメージが強いので、欧州基準を受け入れるだけでそもそもGX市場において日本は勝ち筋はあるのかという、結構厳しい指摘を耳にします。これは私自身も企業の方からしばしば追及されます。さすがに駅立ちしているときにこういう質問は余りないです。一度だけあって、一時間ぐらいずっとこのGXの質問をがんがん、私よりもはっきり言ってお詳しい方で、すごい困ったことがあります。

 ただ、困るだけではなくて、今日はせっかくなので、きっとまたお会いすることがある方なので、実は、齋藤大臣がこういうふうに答えていましたよとか、こういう回答をされていますよと、私の質問のバックアップにもしたいなと考えていますので、私を含めて、GXに関わっている方が安心して、未来に明るい希望が膨らむような回答を是非お願いいたします。

 まず一つ目としては、ちょっと繰り返しになるんですが、欧州基準を受け入れるだけで、GX市場の日本の勝ち筋というか、勝っていけるのかという点についてどのようにお考えされているか、御回答、齋藤大臣、お願いできますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 欧米始め、世界各国で脱炭素に係る投資や、市場獲得に向けた競争が激化をしています。

 こうした中、我が国は、GX推進法に基づく成長志向型カーボンプライシング構想として、GX経済移行債を活用した二十兆円規模の大胆な先行投資支援策などによりまして、今後十年間に百五十兆円を超える官民GX投資を実現、実行していくということをしているわけであります。

 その中でも特に、脱炭素に向けた革新的技術の開発を支援するグリーンイノベーション基金事業において、例えば、抜本的なCO2削減を実現する水素還元製鉄、日本発の技術であるペロブスカイト太陽電池等の次世代型太陽電池、エネルギーの安定供給を確保しつつ、排出削減を実現する有力な手段である水素、アンモニアなど、これらは日本の強みである技術力を生かした革新的技術の開発でありますので、これを積極的に今進めているところであります。

 また、こうした日本の強みがグローバル市場の獲得につながるよう、各プロジェクトにおける国際標準化戦略の取組や体制をフォローアップする仕組み、これも導入をしてきているところであります。

 こうしたイノベーションの成果を世界に展開していくことで、国内外の脱炭素化に貢献するとともに、我が国における経済成長、産業競争力強化と脱炭素化を共に実現してまいりたいというふうに考えています。

赤木分科員 ありがとうございます。

 そうですね、どんどん、成長志向というのが、まさにある意味、負の遺産をなくすようなイメージがあるGXを、実はそれはもう成長の取りかかりになるんだというような発想は、すごく私も同意するところです。

 それで、もう一歩進めて、日本が世界のリーダーシップを発揮していけるのかという点について、どのようなリーダーシップを発揮するか、ちょっとさっきの質問とかぶる部分はあるんですけれども、このリーダーシップ、GXにおけるリーダーシップについて、御回答いただけますでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国のGX推進に向けた政策は、二〇五〇年カーボンニュートラルを我が国の経済成長とともに実現をしていくということを目的としております。

 その実現に向けまして、まずは、今大臣からも御説明ありましたように、脱炭素効果の高い革新的な技術開発を進めるとともに、排出削減や経済成長のポテンシャルが大きいアジアも巻き込んで、国際的な取組をリードしていきたいというふうに考えております。

 具体的には、AZEC、アジア脱炭素共同体構想でございますけれども、昨年十二月に首脳会合を開催しまして、同会合に向けて締結された約七十のMOUを含む三百五十件以上のプロジェクトが進行しているところでございます。脱炭素の実現に向けた世界のルール作りもそういう中で進めていきたい、このように考えております。

 さらに、IEAですとかOECDなどの国際機関と連携いたしまして、グリーンスチール、これは先ほどの製鉄のところで日本の強みを生かしていくための取組の一つになりますけれども、グリーンスチールなどの国際評価手法の確立に向けて取組を進めるなど、こういう取組を進めることでリーダーシップを発揮していきたい、このように考えております。

赤木分科員 ありがとうございます。

 まさにアジアを巻き込むというのは、すごい、ちょっと時間がなくてたどり着けないかもしれないんですけれども、まさにJCMなんかにも、二国間クレジットですね、にも関わる話かなと考えております。

 さらに、日本のGXに絡んで、やはり日本の企業の環境投資をどのように評価されるのかというのはすごく、実際の民間企業は重要だと考えています。特に、金融市場とか、あとは労働市場、さらに、いわゆる市民社会からどういった評価を、若しくは応援してもらえるような仕組みについて、どのようなものがあるか、若しくはどのようなことを考えられているかについて、御回答いただけますでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員御指摘のとおり、環境投資を含めたGX投資の実現に向けましては、各市場や社会から適正に評価される仕組みが極めて重要だと思っております。それがなければ、なかなか投資をする事業者も出てこない、このようなことだと思っております。

 このため、GX推進法に基づく成長志向型カーボンプライシング構想におきましては、炭素排出に値づけを行うことによりまして、GX関連の製品ですとか事業、この価値が高まるような、そういう取組にしていきたいというふうに考えております。

 また、GXリーグにおきましては、ルール形成の取組について幅広い企業が参画して、GX関連製品のグリーン製品の付加価値づけに関して検討を実施いたしました。昨年十二月にその成果を取りまとめました。その検討も踏まえまして、今、経済産業省におきまして、新たな研究会を立ち上げて、GX関連の製品がどのように評価されるのか、そのための方策について年度内に取りまとめを行うべく議論を進めているところでございます。

 具体的には、GX関連製品はサプライチェーン上の各企業による環境投資を含めた投資によって生み出されたものであることを踏まえまして、こうした各企業の投資による排出削減量を見える化いたしまして、取引先ですとか、金融機関ですとか、御指摘の労働市場ですとか、あるいは消費市場などの社会全体で評価するための環境整備について、専門家の知見を基に議論を進めているところでございます。

 さらに、金融市場につきましては、世界初の国によるトランジションボンドとしてGX経済移行債を発行したところでございますけれども、国内外の金融市場からGXの取組について信認を確保し、民間資金の供給を促進するための取組を進めているところでございます。

 こうした取組を通じまして、GX投資に取り組む事業者が適正に各市場関係者から評価をされるような、そういう取組を進めていきたい、このように考えております。

赤木分科員 ありがとうございます。

 そうですね、日本のGXに関する質問の最後の質問になるんですが、どうしても、私が民間出の、ビジネス出身の人間ですので、最後ここにたどり着くのは、どうやってもうかるんだというところなんですけれども、GXと経済活動というか、ダイレクトに言うと、GXともうけという論点なんですが。

 もうかる仕組みは、ある意味、民間企業が自分で考えるべきところだとは思うんですけれども、GXと、若しくはイノベーションと両立したもうかる構造のようなものを、政府としてどういったふうな想定をしているのかについて、もし可能であれば御意見いただけますでしょうか。

畠山政府参考人 我が国のGX推進に当たりましては、まさに御指摘のとおり、革新的な技術を基礎としたイノベーションが鍵になるというふうに考えております。

 具体的には、水素還元製鉄やペロブスカイト太陽電池といった革新的技術の開発、それから、その実装を一刻も早く進めまして、国内外の排出削減と我が国の産業競争力、経済成長を実現していく必要があると考えております。

 このため、昨年の通常国会で御審議いただいて成立したGX推進法、これに基づきまして、足下から、国がGX経済移行債を活用して、二十兆円規模の大胆な先行投資支援、これを行うとともに、企業がGXに取り組む期間を設けまして、当初低い負担から徐々に水準を引き上げていく方針をあらかじめ明確にした上で、カーボンプライシングを導入するということで考えております。

 こうしたことによりまして、早期にGXに取り組むほど将来の負担が軽くなる、さらに、CO2排出の少ない事業、製品がより競争力を持つようになる、そういう仕組みを実現、実行をしてまいります。

 このようなことで、まさに御指摘のもうかる構造というのをつくり上げていきたい、このように考えております。

赤木分科員 ありがとうございます。

 そうですね、まさに早く取り組むとそれだけチャンスも広がるというのは、すごく民間の構造にはマッチしているというか適していると思いますので、私も、こういったことを聞かれたときにはこういった話をさせていただこうと考えております。

 では、次の質問に移って、時間が迫ってきていますのでちょっと順番を変えて、先にJCMの話、質問にさせていただきます。いわゆる、国と国との間で行われる温室効果ガスの削減若しくは吸収に関する協定ですね。

 これは、ちょうど先日、ウクライナとの覚書の締結で知った方も少なくはないのかなと考えているんですが、この二国間クレジット制度、いわゆるJCMについて、概要と、あとは実績について御回答いただけますでしょうか。

畠山政府参考人 御指摘のJCM、二国間クレジット制度につきましてですけれども、途上国などへの優れた脱炭素技術などの普及ですとか対策実施、こうしたことを通じまして実現した温室効果ガス排出削減、吸収への我が国の貢献をJCMクレジットとして定量的に評価をするとともに、パリ協定六条に基づいて我が国あるいはパートナー国の排出削減目標の達成に活用する制度、これがJCMでございます。

 これは二〇一三年より実施をしておりまして、現在、まさに最後ウクライナを加えて、二十九のパートナー国との間で二百五十件以上のプロジェクトを進めておりまして、再生可能エネルギーですとか省エネですとか廃棄物発電などの脱炭素技術の普及や展開を世界規模で進めている、こういう状況になっております。

赤木分科員 ありがとうございます。

 そうですね、私も、以前から知っていたんですけれども、やはりウクライナのニュースを知って、こういった、海外にいろいろな再エネのビジネスをしている方々からも、二国間の中で、民間のJCMですね、民民の世界でも同じような世界があるんだねということを結構質問されるようになったんですが、この民間JCMプロジェクトについても、同じく概要と進捗、若しくはメリットのようなものを御回答いただけますでしょうか。

畠山政府参考人 これまでのJCMプロジェクトにつきましては、例えば設備導入などについて日本政府が資金支援を活用することで組成をされてきたのが多いわけですけれども、民間JCMというのは設備導入を民間資金のみで実施するプロジェクトのことを指します。

 これまで民間JCMはカンボジアでの森林保全に係るプロジェクトしかございませんでしたけれども、日本企業の排出削減の取組を更に進めるために、昨年三月、民間JCMを進める上での必要な手続や留意点を記載したガイダンスを策定をいたしておりまして、企業からの相談を受け付けているところでございます。

 民間JCMの企業にとってのメリットでございますけれども、プロジェクトへの資金等の貢献に応じて企業がクレジットを取得することができます。そのクレジットを、例えばGX―ETS、GXリーグにおける排出量取引ですけれども、ここでの自社の目標達成や取引に用いることができる、こういうメリットがあるというふうに考えております。

赤木分科員 まさにそのJCMですが、この二〇五〇年のカーボンニュートラルにおいてどういった役割を果たす、若しくはどういった位置づけをされているかというところについて御見解をいただけますでしょうか。

畠山政府参考人 二〇五〇年のカーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、二〇三〇年度に二〇一三年度から四六%削減することを目指し、さらに、五〇%の高みに向け挑戦を続けていくという、これは日本として定めているNDCでございます。これは国が決定する貢献量のことですけれども。

 このNDCにおきまして、JCMにつきましては、官民連携で、二〇三〇年度までの累積で一億トンCO2程度の国際的な排出削減、吸収量を目指すですとか、あるいは、我が国として獲得したクレジットを我が国のNDC達成のために適切にカウントすることなどとしております。

 JCMクレジットは、我が国のNDCの達成に貢献していくのみならず、パートナー国のNDCにも活用可能でございまして、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて、世界的な排出削減、吸収に貢献していきたい、このように考えております。

赤木分科員 時間が迫ってきましたので、Jクレジットについて少しだけ質問させていただきます。

 Jクレジットの概要なんかはもう先ほどの遠藤委員の質疑でも出てきましたので、結構聞かれるのが、このJクレジット市場、カーボンクレジット市場、これに参加する方法なんですけれども、東京証券取引所という名前が出てくると、やはり、普通に会社が上場するのに等しいぐらいのすごく大変さを皆さん感じられているんですが、こういったカーボンクレジット市場に参加する方法というのとか、あと、条件みたいなものがあれば教えていただけますでしょうか。

畠山政府参考人 このカーボンクレジット市場、先ほどお答え申し上げたように昨年の十月から東証で開始をしておりますけれども、この参加に当たりましては、Jクレジットの創出者として想定される中小企業などの参入を促す観点から、業種や企業の規模などによる制限を設けておりません。取引実施体制などに関する要件を満たす国内の法人等であれば取引を行うことが可能でございます。

 現時点までに二百五十七者の事業者が市場参加者として登録されておりまして、中小企業などを含む幅広い事業者が取引に参加をしております。

 条件は、それほど厳しい条件ではございませんで、法人、政府、地方公共団体、任意団体のいずれかであることですとか、業務を安定的に行う体制があることですとか、あるいは健全な経営体制であることですとか、債務超過でないことなど、要件を定めているところでございます。

 今後も、市場におけるカーボンクレジット取引の活性化に向けまして、市場参加者の拡大などに努めていきたい、このように考えております。

赤木分科員 ありがとうございます。

 今御回答いただいたように、やはり、相当ハードルが高いと思われている部分があるんですが、ここはもっと、実はそんなに高くないよということを周知していただければと思います。

 今日は大臣からも御回答いただきましてありがとうございました。私も、駅立ちでGXおじさんが寄ってきたときに自信を持って答えられるようになります。

 本日はありがとうございました。

伊藤(達)主査代理 これにて赤木正幸君の質疑は終了いたしました。

    〔伊藤(達)主査代理退席、主査着席〕

上野主査 次に、緑川貴士君。

緑川分科員 お疲れさまです。齋藤大臣、今日、全てお答えいただく予定になっておりますが、よろしくお願いいたします。

 物価上昇が今続いている中で、賃上げの水準の度合い、あるいはそれがどこまで広がるかが今後の景気回復を大きく左右することになりますけれども、その上で重要な、昨年十一月に中小企業庁が公表した、中小企業を対象にした価格転嫁の実施状況のアンケート調査の結果では、価格転嫁の裾野が広がりつつあるというふうに政府は分析をしています。他方で、アンケートでは、やはり気になるのは、全く転嫁できなかった、あるいはコストが上がったのに減額されたと答える企業の割合も依然として少なくありません。

 来年度賃上げを行うかについても、これは民間ですけれども、先週発表の東京商工リサーチの調査結果では、賃上げをすると回答した企業でも、やはり経営体力のある大企業と中小企業とでは、その数に開きが更に出てきているところですし、賃上げをしないと回答した企業では半分以上が、やはり価格転嫁ができていないということを理由にして賃上げをしないということでございます。

 やはり、原材料あるいはエネルギーコストについては、広く、少しずつ浸透してきていますし、価格転嫁が一定程度進んでいるとしても、依然として、コストの特に大きい労務費、この転嫁については遅れています。物価高と並んで、コストの大きい人手不足による労務費の上昇分ということも含めて、取引先、取引間のサプライチェーン全体で適切に分担を図るべきであるということを、改めて、この点について政府の御認識を確認させていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 農林水産大臣のときに引き続き、また緑川さんと議論ができることをうれしく思っています。

 御指摘のとおり、中小企業庁が実施をした調査では、原材料費、エネルギーコストを含めたコスト全体の価格転嫁率に比べまして、労務費の転嫁率は一〇ポイント程度低く、課題があるものというふうに認識をしています。

 経済産業省としては、年二回の価格交渉促進月間を踏まえて、発注企業の価格交渉、転嫁の社名公表や、経営トップへの指導助言を行ってきておりまして、間近に迫る三月の価格交渉促進月間においても、発注者、受注者の双方に、労務費を含む積極的な交渉、転嫁を呼びかけていく所存であります。

 特に、昨年十一月に内閣官房、公正取引委員会が公表をいたしました労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針につきましては、これまで、発表の直後に約九百の所管業界団体に周知した上で、各地域、業界団体向けの説明会を繰り返し実施をするとともに、指針が遵守されるよう、各業界団体の自主行動計画への反映、これを要請しているところであり、今後も周知活動を継続し、積極的な活用を促していきたいと思っています。

 引き続き、公正取引委員会を始め関係省庁とも密に連携して、労務費を含む価格転嫁、今が正念場ですので、これを強力に推進をしていきたいと考えています。

緑川分科員 やはり、価格転嫁ができていない分野、一〇ポイント以上開きがあるというところについての業種を見ても、例えば、トラック運送であったりとか放送のコンテンツ、また通信、労務費が特に全体のコストの中に占める割合の大きいところがなかなかできていないんですね。あるいは、個人事業主の多い業種というものも、これは力関係があるのかもしれませんけれども、目立っているところでございます。

 こうした業種、事業形態を含めて、更に転嫁率を高めていくことが底上げにつながっていくというふうに思いますので、やはり二極化のようなことが起こらないように、しっかり全体を見て、業界団体への指針の共有などもしていただいているということですので、そうしたところも必要であるというふうに思っています。

 指針は、確かに、価格転嫁について非常に踏み込んだ内容であるというふうに承知をしているんですけれども、現場で聞くと、指針が示されたことは本当にうれしいんだ、これは味方になってくれているというふうに、やはり親身になってくれているという意識が事業者側には受け止めとしてあるんですけれども、それでもなお、協議の打診というのをいまだ受けたことがないと話す事業者が非常に多いなという印象を受けています。取引の中間の業者が交渉をしたくないという場合もあったりして、そういう協議が進まないというケースもあるそうなんです。

 発注企業ごとの、先ほど大臣おっしゃっていただいた、価格転嫁の評価を記載している企業リスト、それも公表しているということで、今後の発注側の動きもしっかり注視をしていきたいというふうに思っていますけれども、そもそも、アンケートに関してなんですが、三百三十万社以上もある中小企業に対して、どのぐらいの数、アンケートを送っているのかというと、これでも全体としては多いんですが、配付が三十万社。しかし、全国の中小企業の規模で考えれば、九%というのが対象。やはり、ごく一部の声だと思います。

 リストがもっと充実したものになるように、あるいは、評価が芳しくない企業に対して、もっと多いはずです、それに対して適切な指導や助言が行えるようにするために、回答が返ってくるかどうかは、これは事業者に任せるとして、その重要なお声を届けていただける機会があると思いますので、配付先をもっと増やして、やはり、三十万社、それよりももっともっと増やして、更なる把握に努める必要があるんじゃないかというふうに思っています。

 この辺り、大臣、いかがお考えでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 三十万社というのも決して小さな数字ではないと思っていますが、今回のことをきちんと検証した上で、また今後のことは考えていかなくちゃいけないと考えています。

緑川分科員 紙のような形でなくても、あるいはコストがかからないような形を考えていただいたりとか、やはり電子でのやり取りでも構わないというふうに思いますし、情報を受け取る受皿があるんだということをしっかりアプローチもして、何らかの、Eメールとかの送付でも、何か端緒をしっかりつかめるような、きっかけをつくっていただきたいなというふうに思っています。

 というのも、やはり、私も実際、確認をしたんですが、地元の企業、秋田県内の企業を確認をしたりすると、二十五社なんですが、公正取引委員会からこのアンケートが届いていたのが八社、二十五社のうちの八社で、届いていないのがそれ以外、十七社でありました。

 つまり、国がいまだ把握できていない現場というのがやはりあるわけなんですね。値上げの要請に対して元請から無視されたりとか、極端な、深刻なケースでは、無理な価格の据置きを求められたりする、そうしたケースがないわけではないと思います。こうした長年の慣習のまま取引を、このアンケートがないまま続けている場合には、それを知らないまま続けているところもあると思いますし、そうした場合には、実際には独占禁止法、下請法違反のおそれがあるケースというものがあるわけでございます。

 アンケートが届いていないところでこうしたケースが生じている場合があるとしたら、改善を求めるべき企業というものをもっともっとやはり把握しなければならない。このアプローチができていないところにもしっかり対応するべきじゃないかというふうに思っていますけれども、大臣、改めて、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 基本的にはそのとおりだと思いますが、いかんせん数が多いものでありますので、ちょっと検討させてください。

緑川分科員 先ほどお話ししたような効率的な情報の集め方、そしてコストのかからない合理的な方法というものも何とか省内でもんでいただいて、検討して、何とか声をしっかり集められるような、実情をしっかり更に把握できるような体制というものをお願いをしたいというふうに思っております。

 ちなみに、アンケートが届いていた、先ほど二十五社のうちは八社ですけれども、そのうちの回答率が半分でありました。半分ということで、少ないサンプルですので、それはばらつきはあるかもしれませんけれども、それだけ一定程度回答があるわけであります。地域の細かいところにまでやはり国は目配りしてくれているんだという意識を現場が持って、安心感にもつながっていくというふうに思っていますし、事情を伝えるような手段、新しい声というものが確実に上がってくると思いますので、何とか努めていただければというふうに思っております。

 賃上げができていた場合でも、地域で考えたときには、現状の賃金の伸びにはやはり都道府県で差がございます。直近では、二〇二一年から二〇二二年の平均賃金は全国で一・四%、平準化すれば増えていますけれども、これは東京都の半分にも届いていないわけです。そして、来年度賃上げを行うというところでも、実は来年度の賃上げ水準の見通しというのは今年度の実績よりも下回ってしまうことが見込まれているところであります。

 地域経済の、そこで牽引役になっている中堅企業を支援して、中堅の賃上げが、中小の取引先あるいは関連業種への波及を含めて、地域の賃金水準の底上げを図るということを国が進めることを検討されていると。それは大切な視点であると思うんですけれども、中堅企業が地方に多いというふうに国は言うんですが、実際には、それ以上に、地方よりもやはり都市圏により多く中堅企業は集中しているという現状がございます。

 地方の中でも、やはり三大都市圏以外の地方で比べても、非常に私は差が大きいなというふうに思っています。調べると、やはり私の地元の秋田県では、中小企業、これは中堅企業が含まれていますけれども、その九割近くが、従業員が五人未満。これは小規模事業者に入ります。中小企業の九割近くが小規模事業者です。中堅企業の数やその割合というのは、やはり地方の県同士で比べても相当なばらつきがあるんじゃないかというふうに思っています。

 賃上げをしなければという意識は、当然、中小企業にはこれはもう浸透しているんですけれども、どれくらい賃上げできるかというのが、これは企業によって、やはり同じようにばらつきがあると思いますし、小規模事業者でお話を伺っても、やはり力関係が取引先とあるというのがひっかかって、それを乗り越えて価格転嫁をなかなか持ちかけづらいという話もございますし、たとえ価格転嫁がその場でできたとしても、持続的にこれからも、来年も再来年も賃上げが、じゃ、続くかというと、それがなかなかまたできる環境ではないということで、雇用を守るので今は精いっぱいなんだというお話がございます。

 それが、やはり全国のデータで見れば、実質賃金がマイナスであるという状況が二十か月連続で続いている、いまだそうした企業がある中で、物価の上昇をカバーするまでの賃上げには至っていないというのが実情であると思いますし、昨年の十月から十二月期のGDPを見れば、やはり個人消費がマイナスであるといったことにもそうした実情が表れているんじゃないかというふうに思っています。

 中堅企業への支援は本当に牽引役として大事なんですけれども、それと併せて、それ以上に、秋田のように大多数の、特に地方で中堅以下の中小企業がやはり物価高に負けない賃上げができるんだ、それを図れるような取組というものをこれまで以上に国として力を入れていただきたいというふうに思っているんですけれども、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 問題意識は全く共有をいたします。

 各地域の中小企業は今、深刻な人手不足に直面をして、厳しい環境の中で更に賃上げを迫られるという状況にあると思います。持続的な賃上げを実現するため、我が国の雇用の約七割を占める中小企業が収益、売上げを拡大をしていくということが、その前提となって重要なことなんだろうと思います。

 このため、価格転嫁の促進に向けて、毎年三月と九月の価格交渉促進月間に基づいて、発注企業ごとの価格交渉、転嫁の状況、これを公表をしております。

 具体的には、今年一月に二百二十社の社名を公表をしたほか、状況の芳しくない約二十社の発注企業の経営トップへの指導助言を実施をいたしました。さらには、昨年十一月に内閣官房と公正取引委員会が公表をした先ほどの労務費の指針につきましては、約九百の経済産業省の関連団体に周知したほか、各業界団体の会員企業や地方の中小企業向けに全国八地方ブロックでの説明会を実施するなど、周知徹底に取り組んでいるところであります。

 そして、中小企業向けの賃上げ促進税制につきましても、前例のない長期となる五年間の繰越措置の創設によりまして、赤字でも人材確保のために賃上げに挑戦する中小企業の後押しになればということで、抜本強化をしたいと思っています。

 加えて、中小企業が構造的な人手不足を乗り越え、生産性を向上し、収益、売上げを拡大することも重要で、このために、カタログから選ぶような簡易で即効性のある省力化投資や、新商品、サービスの開発に向けた設備投資等の支援を令和五年度補正予算にて既に措置をしています。

 こうした取組を、全国四十七都道府県に設置しているよろず支援拠点等とも連携しながら、引き続き、地方を含めた中小企業の賃上げをしっかりと後押しをしてまいりたいというふうに考えています。

 今が経済が変わる潮目であります。ここでしっかりとした賃金の上昇が経済の好循環につながっていくということ、私は正念場だと思っておりますので、先生の御指導をいただきながら、しっかりやっていきたいと思っています。

緑川分科員 やはり、価格転嫁はもちろん大事なんですけれども、その前提として併せて重要なのが、中小企業の基盤強化のための生産、製造を上げることでの成長を促していったりとか、あるいは、新しいビジネスというものを、展開を応援をするといったことは非常に大事だというふうに思います。

 そしてまた、今までのような税制の優遇、補助金ということで賃上げを誘導してきているところもあるんですけれども、やはりこれは、これまでどおりの取組では限界が来ているということも一方ではあるというふうに思います。継続的な価格転嫁のしやすい環境ということをしながら中小企業の収益基盤の向上を図っていく、これは両輪が非常に大事だというふうに思っています。

 今、インフレ局面の中で、賃上げの原資を確保できるようにしなければならない局面というのは、これからやはり増えてくると思っています。そのためには、やはり中小企業自身が客観的な数字をしっかりと出して取引先にも理解をしてもらう、原価計算あるいは原価、収益の見えるような構造ということをしっかり取引先にも提示できるような、そうした環境を支えていくといったことが大事であると思っています。

 大臣が先ほど触れていただいたよろず支援拠点については、全国の都道府県に設置をしているということで、無料の経営相談所でございます。コロナ禍もきっかけになって、相談するという企業が増えているんですけれども、昨年は価格転嫁のサポート窓口も設けているところであります。

 この窓口では、さっき申し上げたような原価計算の習得を支援していったりとか、価格交渉についての基礎的な知識をお伝えをしているということで転嫁を後押しをしているというふうに聞いています。相談を受け付けるコーディネーターの助言、その一言が、訪れた事業者の将来、方向性というものを大きく変える可能性があるだけに、このよろず支援拠点は非常に重要な役割を持っているというふうに思っています。

 他方で、ちょっと調べさせていただきますと、全国本部のホームページがあります、よろず支援拠点。全国のこれまでの支援事例ということが掲載されているんですけれども、経営課題ごとに分かりやすく、人手不足対応とか、IT活用とか、事業再構築、あるいは創業、また売上げ拡大と、検索項目が分かりやすく書いてあるのが、非常に絞り込み検索もかけやすくて便利なんですけれども、今極めて関心の高い価格転嫁の項目がないんですね。ここは、非常に調べたい方は多いと思います。

 窓口にこれまで寄せられた相談に対してどういうサポート内容だったのかとか、これはやはり、訪れる前に、受注側がどう取り組んで、ほかの同じ同業が価格転嫁をどう実現できたのかということを、アドバイスあるいはどう動いたのかということは非常に重要だと思います。それをお伝えできる大きな機会だと思っています。

 相手もあることですので、当然、お伝えしていただくことは大事なんですけれども、センシティブな情報は何とか公開しないようにして、具体的な取組事例というものを可能な限り掲載すると、これから取り組んでいく事業者には非常に有益ではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 重要な御指摘をいただいたと思っています。

 よろず支援拠点における価格転嫁支援を強化すべく、御案内の価格転嫁サポート窓口を昨年七月に新設をして、製造原価の見える化や、値づけに当たって原価率を踏まえたアドバイスなど、より実践的な支援を進めているところであります。

 現在、ホームページでは様々な支援事例を紹介していますが、今後、価格転嫁についても、具体的な成功事例を蓄積をして、全国の中小企業の皆様に参考にしていただくよう公表していきたいと思います。

緑川分科員 ありがとうございます。

 そのサポート窓口は昨年できた窓口でありますので、また今年、新しい動きということを何とか期待をしていきたいというふうに思っております。

 リアルな声というものがページに載せられていれば、やはり国の相談機関なので、平日の日中にしか対応できていないというのが状況です。それを、今、事業者は平日も忙しいですし、全国の各都道府県には一か所しかありませんから、やはり移動も、秋田は大変広い地域ですし、その負担もあると思います。それをやはりホームページでまずは確認をしたいと。どんな取組なんだということを何とか、その場ですぐ分かる、相談したいなというふうに、きっかけになるように、是非ともそのつかみをつくっていただきたいというふうに思っています。

 また、脱炭素の取組について、後半ですけれども、お伺いをしたいと思います。

 今、炭素税の先進地域であるヨーロッパ連合、EUは、昨年、炭素国境調整メカニズム、CBAMを導入しています。このCBAMは、国際取引の中で、二酸化炭素の排出量に応じたコストを負担させる仕組みです。厳しい排出規制を行っている国が、EUのような国が、それよりも規制の緩い国からの輸出入品に対して、その排出量に応じたお金を負担させたり、あるいは還付したりということを、水際でこれを行うことによって、規制の緩い国へ投資が流れていったりとか、あるいは生産拠点が移転してしまうということを防ぎながら、EUとして高い温室効果ガスの削減目標に今取り組んでいるという状況です。

 CBAMが本格的に適用されるのは再来年ということで、日本企業への影響を考えたいんですけれども、現時点で対象となる製品のEUへの輸出量は少ない、足下ではその影響は限定的ではあると思いますが、既にEUの域内で取引をしている日本の現地企業は、域外から製品を調達している場合があると思います。こうしたところは影響を受けると思いますし、また、今後、対象の製品が、一部ですけれども、今徐々に、少しずつ広げていくということが検討されているということで、例えば、今対象になっている鉄鋼に関連しては、その川下の製品である自動車。そして、日本からEU向けの自動車の輸出額は非常に多いんですけれども、対象となった場合には、やはりこれは多額のコストの負担が生じてきます。

 動きによっては、日本企業への影響が、やはりこれは大きくなるということは考えなきゃいけない部分があるんじゃないかというふうに思っていますが、大臣の御認識、お考えはいかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 昨年十月からEU―CBAMの移行期間が始まって、鉄やアルミなど六つの分野の対象製品につきまして、製造過程における温室効果ガス排出量等の報告義務が輸入者に対してもう課されています。実際の課金については、二〇二六年一月から始まる予定だというふうに承知をしています。

 このCBAM規制の今後の更なる対象製品の拡大の可能性については、欧州委員会が二〇二五年末までに実施するレビューにおいて併せて検討するということになっておりまして、その具体例として、有機化学品とポリマーが挙げられているということであります。

 それらの製品は、マクロで見れば、例えば、EUの輸入に占める日本の割合は一、二%と、一〇%を超える米国や中国等と比べると、我が国への影響はそこまで大きなものとはならないと見込まれていますが、当然、EUに対象製品を輸出している個別企業にとっては大きな影響となります。

 また、例えば、EUに輸出していた企業がアジア向けに輸出を変更するなど、貿易構造が大きく変わる可能性もあると認識をしていますので、今後も産業界との対話を続けて、EUの動きとその影響、これを注視をしていきたいと考えています。

緑川分科員 EUのこのCBAM、やはり動向は注視しなければならないと思います。

 というのは、やはりこれはEUの域内政策であるとはいえ、あくまでも域内の政策なんですが、これは結局は、輸出国側に気候変動対策を、強い政策、対策を促すというインパクトがございます。

 このCBAMはEUだけでなくて、これからイギリス、またオーストラリア、そしてアメリカ、カナダなどでも検討されていると言われています。課金を避けるために、これは先進国だけじゃなくて途上国でも、炭素税あるいは排出量取引制度、この導入が非常に今急拡大しているところでありますし、CBAMに刺激されて、更にこれを広げていく可能性もあるということで、EUによる影響だけを考えるのではなくて、貿易構造のお話もいただきましたけれども、はるかに世界全体を見た影響ということをやはり考えなければならないというふうに思っています。

 実際に、国内で多排出企業、エネルギーの多消費産業などが自分たちの排出量をオフセットしたいというような需要が出てくるのは、いろいろな無償排出の枠なども割り当てられる期間もありますので、ちょっとタイムラグはありますけれども、実際、オフセットする需要が出てくるというのは、やはり炭素賦課金あるいは排出権の有償オークションが始まる三〇年前後ではないかということで言われていますけれども、日本としては、三〇年前後というのはもう既に、二〇三〇年度の温室効果ガスの削減の中期目標の達成年度になるわけです。猶予が正直、なかなかないというのが状況だというふうに思います。

 そこで、国内のエネルギー多消費産業の低炭素化、脱炭素の取組を急がなければなりませんけれども、鉄鋼製品の更なる付加価値、コスト競争力を高めるということは、なかなか、国際分析調査によれば、現状でも今の日本の鉄鋼業というのは世界最高水準のエネルギー効率、また生産性を実現しているということですので、そこから更に脱炭素で生産性を高めていくということが非常に難しいといった専門家の指摘もやはりございます。

 そうした中で、水素還元の技術を含めて、低炭素での生産プロセスに転換するための研究開発を国もこれまでグリーンイノベーション基金で支援していただいているんですけれども、高炉鉄鋼三社で考えたときには、やはり一部の補助にとどまっています。

 そして、今後の設備実装に必要な予算額も、これは調べると、研究開発費には高炉鉄鋼三社で一兆円、設備実装には九兆円、やはりトータル十兆円もの資金調達が必要になってきます。当面、やはり最も困難な課題である技術開発の負担に対しての政府の更なる財政支援を含めた対応が求められると思いますが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 鉄鋼や化学のように、我が国の産業基盤を支え、産業競争力を有する多排出製造分野のGX対応は喫緊の課題であります。GX実現に向けた高炉での水素利用や革新電炉への転換、バイオ原料を活用した基礎化学品の製造プロセス転換など、技術開発のみならず設備の導入についても、御指摘のように強力に支援をしていかなくてはいけないと思っています。

 具体的には、グリーンイノベーション基金による鉄鋼や化学分野への約六千億円規模の研究開発支援に加え、革新電炉への転換などの製造プロセス転換等に向けた大規模設備投資等を対象にした、十年で一・三兆円規模の設備投資支援や、グリーンスチールやグリーンケミカルの生産、販売量に応じた税制措置、こういった施策を組み合わせていくということが大事なんだろうと思います。

 こうした負担軽減策に加えて、カーボンプライシングの導入時期、方針の明確化やグリーン製品の市場拡大に向けたルールメイキング等も講じることで、民間事業者の事業採算性を向上させて、GX投資、これを加速させていきたいと考えています。

緑川分科員 最後の問いは残してしまいましたけれども、民間の投資を呼び込む政府のGX経済移行債という国債の償還資金も、結局は、やはり燃料代、電気代に、国民の負担に上乗せされてしまうのではないかということがございますので、真水の支援として、政府が、やはりこれは、国民負担が全体としては増えないということをおっしゃっているんですけれども、その言葉をしっかりと国民が納得して信頼していただけるように、産業への支援をお願いをしたいということを申し上げて、質問を終わります。

上野主査 これにて緑川貴士君の質疑は終了いたしました。

 次に、米山隆一君。

米山分科員 それでは、御質問いたします。

 まず最初に、二〇二五年日本国際博覧会、通称大阪万博と能登半島地震からの復興復旧との関係についてお伺いいたします。

 まず、資料を見るまでもないと思うんですけれども、高市早苗経済安全保障担当大臣が、一月十六日の総理との面談において、復興に必要な資材の価格高騰や人手不足を挙げて、大阪万博の延期を岸田総理に進言したと一月二十七日の長野市内の会合で明らかにした後、結局取り下げたということが報じられております。

 今更感のある話題ではありますし、高市大臣と岸田総理の間の話ですので、それは齋藤経産大臣の話じゃないんですが、とはいえ、御所轄でございますし、閣議でお顔を合わせることもあると思いますので、いずれにせよ、根拠のないことを言うわけでもないと思いますので、その根拠を含めて、知るところをまずお伺いできればと思います。

齋藤(健)国務大臣 高市大臣の発言は、御自身がおっしゃっているように、政務の立場での発言と承知をしておりますし、また、私自身に言われた話でもありませんので、政府の立場からコメントすることは差し控えます。

 その上で、能登半島地震の災害復旧復興対応に最優先で取り組むべきこと、これはもう論をまたないわけであります。

 電線などの一部資材について、万博での需要が復興の妨げになるのではとの声があることは承知をしております。岸田総理からも、需給を丁寧に把握し、復興に支障のないよう、万博関連の調達を計画的に進めるよう指示があったところでもあります。

 現時点におきまして具体的に支障が生じているとの情報には接していませんが、今後も、資材等の需給をきめ細かく把握をして、万博関連の工事、調達等によって能登復興に支障が生じることがないよう取り組んでいくというのが私の反応でございます。

米山分科員 逆に、今日の質問は、どっちかというと、規模から考えて、万博が能登の復興にというのはそんなに実は考えなくても、まあ、いいという言い方はおかしいんですけれども、何せ能登半島の復興の方が規模はすごく大きいわけなので、むしろ能登半島の復興から万博の方に影響があるんじゃないのかなと思うわけなんです。

 その前提として、ちょっとこれは技術的なところで担当者にお伺いしたいんですけれども、二月二十三日、直近ですが、割に近いですけれども、日本建設業協会連合会の宮本会長が、万博のシンボルとなる大屋根のリングを例に、今後全てのリングがつながった際には内側への重機や資材の搬入に制約が生じると聞いている、木造リングができると重機等の搬入が困難になると述べたというふうに伺っておりまして、これは世の中的に、えっ、そんな単純なミスってあるんですかと思っているわけなんですが、これは本当のところどうなのか、御担当者からお伺いできればと思います。

茂木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、二月二十三日の宮本会長の御発言なんですけれども、今後全てのリングがつながった際にはその内側への重機や資材の搬入に制約が生じると聞いていますとおっしゃって、その後に、政府、博覧会協会において、様々な工事がスムーズに進むように工事間の調整をしっかりしてほしいというお話がございました。

 まず、事実関係としては、大屋根、リングは、今年の九月下旬を目途に組立てが進んでいきまして、組立てが完了をいたします。リングが九月末につながる予定で工事を進めています。

 リングがつながった後どうなるかということですが、これは、大型重機ですとか工事車両がリングの内外を通行できる空間というのが常時五か所ぐらい設けられておりまして、そこを通じて内部に入っていくことができるということで、工事の動線は確保するよう計画をしておりまして、リングの組立て完了以降もパビリオンの建設に支障が生じないように取り組んでいきます。

 他方で、リングの組立て完了後、十月の中旬以降になりますと、リングの内側の舗装工事等が始まってまいります。これが始まりますと、工事の進捗に応じまして工事車両の通行ルートというのが一部制約されることとなってまいりますので、そうした調整を綿密に行っていく必要がある、こうしたことを申し上げたということではないかと思います。

 このため、政府としても、博覧会協会と連携して、万博会場の施工に当たる建設事業者ですとか、あるいは施主に当たる参加国、こういったところと工程調整を行って、工事が円滑に進むように取り組んでいきたいというふうに考えています。

米山分科員 これはコメントしているんですが、とはいえ、これは、じゃ、九月末から五か所しか通れなくなるということで、皆さん、それは結構不安なんじゃないですかというところではあろうかと思います。まあそれは、うまくやると言うので、うまくやるんでしょうけれども、本当に大丈夫ですかと皆さんが思うからこそ、宮本会長もそうおっしゃったんでしょうねと思います。

 次に、その中で、じゃ、五か所しか通れなくなるんだったら、九月下旬までにはみんなかなり完成していないと困るんじゃないかと思うんですけれども、今、二月末ということで、もはや三月と言っていいと思うんですが、あと半年ぐらいでもう九月下旬になっちゃうわけなんですが、現時点で着工済みの海外のパビリオンというのは一体何分の何、全部でやる予定が幾つで、そのうちの幾つが着工済みで、何か国が未着工で、未着工のうちの何か国が契約済みかということを教えてください。

茂木政府参考人 まず、参加国が自前で建設をするパビリオンというのは五十数個、いわゆるタイプAというパビリオンがございますが、このうち着工済みは今五か国というところでございます。

 参加国と建設事業者の間で様々な契約が結ばれていますが、これは当事者間で行われているものでございまして、数字については回答は差し控えさせていただきますが、今、五十数か国のうち三十六か国については建設事業者が決定しているというふうに聞いております。

米山分科員 これも、押し問答したってしようがないので、コメントだけさせていただきますけれども、そうしますと、四十五か国はこれから造り出すわけじゃないですか。しかも、九月下旬には五か所しか通れなくなるわけだから、九月下旬以降は一か所で九か国分の重機が行き来しなきゃいけないわけですよ。しかも、今から造り出して、三か月ぐらい、だから、当然九月下旬までにはできていないわけですよね。だから、相当、何か本当に大丈夫ですかというのは指摘させていただきたいと思います、分かっちゃいるんでしょうけれどもね。

 また、話題の二億円トイレについてです。

 値段に関しましては、いろいろ報道を見ると、五十個か六十個ぐらい設置されているので、一個四百万ぐらいということで。余り私はこういうトイレの値段というのは知らないので、大体妥当だ、そんなに高額でもないとかいうふうに齋藤大臣もおっしゃられているので、それはそれでいいのかなと思うんですけれども。

 一方、無駄遣い批判を受けてリユースされるということなんですけれども、リユースというのはできるものなんですかねというのが非常に感じるところであり、また、リユースするのだって結構お金がかかりますでしょうというところもあり、一体全体、何個中何個をリユースする予定になっていて、しかも、それに対する経費というのはどのぐらいかかるのか、かつ、それは万博費用の中に入っているんですかというのをお伺いさせていただきます。

茂木政府参考人 まず、トイレのちょっと事実関係について先に申し上げさせていただくと、万博会場は今百五十五ヘクタールありまして、ここに会場全体で約四十か所公衆トイレを設置します。便器の数でいうと約千六百五十基ということを予定していまして、そのうち八か所について、若手建築家が設計を担って、デザイン性も考慮した仕様で競争入札を行って、施工事業者を決めているということです。

 二億円のトイレという御指摘を受けておりますけれども、約二億円で契約をしたトイレが二か所ございまして、これは、まず一か所は便器の数が五十基程度で広さが二百五十平米ぐらい、それからもう一か所は六十基で二百九十平米ぐらいということで、平米当たりの建設費用でいいますと、六十二万円から七十一万円ぐらいという形になります。

 この建設費がどのぐらいかということなんですけれども、これは博覧会協会が設置しているそれ以外の会場内のトイレというのがございまして、こちらの平米当たりの単価が今六十二万円ぐらい、それから、大阪府が二〇二〇から二一年度にかけて府下で整備した公衆トイレの平米当たりの建設費用は八十一万円と百十万円と聞いています。それから、建設価格を調査する公的団体のデータベースによりますと、二〇一六年から二二年度の平均で約七十四万円ぐらいということですので、各種トイレの平米当たりの建設費用と比べて取り立てて高額であるとは考えていない、これが一つのポイントになります。

 それから、リユースについては、今、博覧会協会で、どのようなリユースがあり得るのかというのを検討中でございますし、アイデアも募集を行っているということですので、今具体的な計画があるわけではございません。

 いずれにしても、万博の費用については、外部の有識者の委員会も設置しておりまして、これは経産省の中に設置しておりますけれども、ここでも、こういうようなトイレの設備、それからその後の利用の方法についてもしっかりと監視をしてまいりたいというふうに思っています。

米山分科員 実は、これは要は、リユースは決まっていないということではあるわけですよね。あと、他と同じぐらいの値段だというのは、それはそうなんでしょうけれども、逆に、すごく、何十年も使うものと全く同じ値段を六か月しか使わないものにかけているということではあるんでしょうね。それは、そういうものだといえばそういうものなのかもしれませんが、要は三十年分使うものをそこにどかどか建てて撤去するということではあろうかと思います。くどくど言ってもしようがありませんが、数字としては分かりました。

 次に、空調設備について。これもほんの直近で報道されたところですけれども、集中空調の予定が、海外パビリオンについて独自空調を認めると報道されておりますが、これも、最初からそうならそうだと分かるんですけれども、何で突然そんなことになったのか。それもなかなか不思議な話でして、なぜ突然そんなことになったのか、いつ、なぜ、どのようにしてこの方針変更がなされたのか教えてください。

茂木政府参考人 まず、空調についてでございますが、御指摘のとおり、海外のパビリオンの空調については、当初、集中的な熱供給施設から冷水供給を行う、こういう計画でございましたけれども、一部の参加国から、冷水利用空調設備を設置する事業者の確保が非常に難しいという声も受けまして、電気式の個別空調の利用の要望を受けていたところでございます。やむを得ず冷水利用空調設備の事業者が確保できない場合には、パビリオン内の空調管理のために、電気による個別空調、いわゆるエアコンの計画を進めていくことを許容することとしているところです。

 これについては、昨年の十月十八日ですけれども、博覧会協会が参加国を招いて実施したオンラインの説明会でその旨も伝えて、各国に、パビリオンの建設状況ですとか、そこでの事業者の確保の状況などを伺って、今、アンケート調査を取りながら、どの程度がエアコンを活用するのかというのを確認しているところです。

米山分科員 余り質問に答えられていないと思うんですけれども。

 だって、これは最初から分かっていたわけですよ。最初から集中空調にしようと言っていたんだから、最初からその施工能力がちゃんと民間にあるかどうかを確認しておかなきゃいけないわけじゃないですか。

 要するに、今の御説明は、民間の施工能力は一切考えずに、取りあえず集中空調と言って、やってみたら駄目だからそれは諦めました、そういう答えでよろしいんですかね。

茂木政府参考人 まずは、いろいろな事情の変化はあったというふうに思います。御承知のとおり、建設事業者の確保がやはりこの二年ほど非常に厳しくなってきておりまして、特に、空調、配管関係の、いわゆるサブコンと言われる事業者の確保が非常に厳しくなってきております。そういう中での状況でございますので、途中での事情変更があったというふうに理解をしております。

米山分科員 まあ分かりました。それは、じゃ、しようがない。いろいろな事情があって、空調関係や内装関係が足りなくなったということなんでしょうけれども。

 じゃ、そこから次の質問にそのまま続くんですが、能登半島地震の復興に関しまして、先ほど高市大臣は復興を優先すべきと言いましたけれども、一方では、能登半島地震からの復旧は土木工事、大阪万博は既に土木工事は終えて建築工事であるから両者は重複しないというのが、特に大阪の方々から、某政党の方々から力強く言われているんですけれども、とはいえ、じゃ、ちゃんと数字を見ましょうということでお伺いしたいんです。

 なかなかそれは、概算になるのは当然として、能登半島地震の復興に係る土木工事の発注見込額は総額でどのくらいで、そしてまた、昨年の関西、北陸エリアの土木工事はどのくらいで、また、そうしますとパーセントが出ると思いますので、能登半島の復興に係る土木工事の発注金額はその何%かというのを伺えればと思います。また、あわせて、関西万博に関しても、未完成の土木工事の発注金額はどのくらいで、それは昨年の関西、北陸エリアの土木工事の何%かというのを伺えればと思います。

上村(昇)政府参考人 内閣府防災としましては、今般の能登半島地震に係ります復旧事業費の見通しを推計したものはございませんが、一月の月例経済報告におきまして、能登半島地震のストックの毀損状況に係る試算が公表されております。その試算は、過去の大震災における損壊率を参照して機械的に推計したということでございまして、災害復旧に必要な費用を表したものではありませんが、石川県、富山県、新潟県の三県におけるストックへの毀損額は、約一・一兆から二・六兆円と試算されてございます。その内訳として、住宅、非住宅の建築物等については〇・六から一・三兆、社会資本については〇・五から一・三兆と見込まれております。

楠田政府参考人 お答えいたします。

 まず、昨年の関西、北陸エリアの土木工事の規模についてでございますが、建設工事受注動態統計調査における建設業者の所在地別受注高によりますと、最新の数値である令和四年度の北陸地方及び近畿地方の土木工事の元請の受注高は、約三・八兆円というふうになっております。

 また、今般の震災に係る土木工事の発注規模との対比についてでございますが、今、内閣府の方から答弁がありましたとおり、今般の震災についての土木に係る復旧事業費の見通しを推計をしたものがないことから、割合をお答えすることは困難ということでございます。

茂木政府参考人 万博に関してでございますが、博覧会協会が発注している土地造成などの土木工事の発注額、これが総額で百三十二億円と見込んでおりまして、これは先ほど国交省の方から答弁がありました三・八兆円という数字の比率で申し上げますと、〇・三四七%程度。こちらの土木工事は、今もう既におおむね完了しているというところでございます。

米山分科員 実は数字は私、事前に聞いていて、パーセンテージは出しているんですけれども、能登半島の土木工事、これを最大のところで一・三兆円としましょう。まあ、それは工事額と損害額は違うかもしれませんけれども、簿価じゃないわけだから、それは大体工事額でしょうみたいな、桁としては違わないわけですということでやると、実は、それは関西、北陸のエリアの三四%になるんですね、去年の発注額の。

 だから、実は、土木は物すごく逼迫すると思われるわけです。急に工事額が三〇%増えたという状態で、しかも、今、二〇二四年問題もあるわけですから、土木は物すごい逼迫すると思います。ですから、これは物すごく、職人さんといいますか、従業員さんの給与も上がる、人工も上がるでしょうし、資材も相当程度上がるんだと思います。万博の土木工事は終わっているとはいえ、〇・三五%ではありますけれども、むしろこの高騰の影響はかなり受けるんだろうと思います。

 じゃ、今度は、建築の方はどうですかということで。建築についても、もはや被害額の方は先ほどお伺いしました〇・六から一・三兆円ということでございますので、関西、北陸エリアの建築工事の額と、また万博の未着工の建築額をお願いいたします。

茂木政府参考人 万博の方の建築工事については、リングですとか催事場、博覧会協会で建設するパビリオンなど、これは総額で発注額が千五百七十九億円ということになります。これは博覧会協会が発注するもので、それ以外に、日本政府館ですとか自治体館ですとか、あるいは各民間企業が建設する民間パビリオンですとか、これから各国が建設する海外パビリオン、こういったものがございます。

 ちょっとこれは確定的なものはございませんので、先ほどの博覧会協会が発注する千五百七十九億円という数字から申し上げますと、関西、北陸エリアの建築の約一・五一八%程度ということになります。

米山分科員 そうしますと、今度も、実は能登半島の方も、先ほどの〇・六から一・三を使うと関西、北陸エリアの一二・五%なので、これもいきなり発注額が一二%増えちゃうので、相当逼迫するわけです。その上で、今度は、万博の方の建築も一・五%もありますので、まず能登半島からの影響は強く万博は受けるし、逆に万博の方が能登半島に影響しないとも言えない。要は、能登半島の十分の一ぐらいの規模の建築額を万博は取っちゃうわけなので、もう既に一〇%取っている状態で、さらに万博は一・五%ですから、本当に大丈夫ですかとは思うわけなんです。

 何せ能登半島の方は、実は能登半島によって巨大な発注が行われるので、土木資材、建築資材、また、職人さんの給与といいますか、人工といいますか、それが値上がりすると思われるんですが、それは大体どのぐらいか、少なくとも推定はしておくべきだと思うんです。それは分からないのは前提ですけれども。

 熊本地震や東日本大震災もあるわけですから、一定の推定はできると思うんですが、どのように推定しているか、御担当からお願いいたします。

楠田政府参考人 お答え申し上げます。

 建設工事の需要の増加等によりまして、建設資材、建設業従事者の需給が逼迫した場合には、一般論として、建設工事の資材費や人件費が上昇する要因の一つにはなり得るものというふうに考えております。

 一方で、建設工事におきます資材費、人件費については、復興工事のみに左右されるものではなく、日本全国の建設工事の状況でありますとか建設資材の原材料の価格など、様々な複合的な要因によって変動するものというふうに考えております。

 このため、能登半島地震の復興工事などによりまして、どの程度の資材価格、人件費の値上がりが見込まれるかということにつきましては、政府として責任を持ってお答えすることは難しいというふうに考えてございます。

 また、御指摘の人工の需給の逼迫につきましても、現時点におきましては、今後必要となる人材需要について、予断を持ってお話をできる段階にはないというふうに認識をいたしております。

 国土交通省といたしましては、今後の復旧に当たりまして、必要な資材、人材の確保ができるだけ円滑に進みますように、引き続き状況をきめ細かく注視をし、建設業界とも緊密に連携をさせていただきながら、必要な対策を講じてまいりたいというふうに考えてございます。

米山分科員 大臣にお伺いしたいんですが、それは、別に僕は責任持って答えてくれとは言っていないです、そんなの分かりっこないですから。それは予想なわけですよ。でも、それでいいんですかだと思うんです。

 でも、物すごく粗く累計する方法は簡単にありまして、それは、だって、発注額が一〇%増えるんだから、一〇%値段が上がるでしょうという、物すごい粗い推計は成立するわけですよね。ちなみに、何か聞いたところでは、熊本地震では九・三%ぐらい上がったということですから、そうすると、物すごく粗くは、一〇%程度、それは五%かもしれないし一五%かもしれませんけれども、そのぐらいは上がると思っていた方が正しいんじゃないですかだと思うんです。

 しかも、下がる要因が余りなくて、だって、政府自身がインフレ政策を継続している上に円安も進行していて、しかも、物価を上げましょう、賃金を上げましょうといって、二〇二四年問題もあるわけですよ。どう考えたって、まあ一〇パーとは言わないまでも、五パーは上がるんじゃないかと思うんですけれども、そういったことの推計はなされているのか。そしてまた、それで上がった場合には、その予算、コスト増に関しては一体どう対応されるつもりなのか。

 何か、今までのいろいろな質疑の中では、もうこれ以上のコストアップには対応しませんみたいなことをおっしゃられているんですけれども、それは現実的に不可能じゃないですかとなったら、どうするのか。それについて、齋藤大臣の現在の御見解をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 まず、能登地震による万博工事への影響については、博覧会協会において工事関係者や建設事業者に対してヒアリングを実施をしていますが、現時点で、資材の値上がりや人手不足など、万博工事に支障が生じているという情報には接しておりません。

 先日も、日本建設業連合会の宮本会長が、能登半島への対応もきちっとやるし、万博工事への対応もきちんとやっていくというのが現在の考え方で、両方ともちゃんとやれるだろうと考えているという御発言をされたことも承知をしています。

 その上で、会場建設については、国内パビリオンについては当初の計画どおり建設が進められておりまして、大屋根、リングの木造構造体の組立ても約六割を超えて進捗しています。

 また、海外パビリオンのうち、百か国以上が入るタイプB及びタイプCについては博覧会協会が建設するものでありますが、既に建設事業者は決定し、着工もしています。

 これは先ほど質疑がありましたけれども、参加国が自前で建設する五十数か国のパビリオンについては、三十六か国が建設事業者を決定をして、年明け以降、米国や中国を始め多くの国でパビリオン発表会や起工式が相次いで行われており、ほかの参加国についても順次建設が始まっていくものと承知をしています。

 もちろん、将来の値上げや人手不足について、しっかりと見据えていくことは重要でありますが、現状においてはそういう状況でありますので、今後についても、参加国について、開幕に間に合うよう、マンツーマンでの個別伴走支援や施工環境の改善といった対策によって、準備をしっかり進めていきたいというふうに考えています。

米山分科員 今は何も問題がないから大丈夫というものしか聞こえなかったんですけれども、本当は中で御検討しているであろうことを期待するといいますか、やはりそれは資本主義社会ですから、しかも、特に人員に関してはいきなりはどうしたって増えないわけですから、資材は最悪輸入すればいいという話になるんだと思うんですけれども、人員が増えっこない中で、とてもとてもそんなことは、同じ値段でいけるとは思えないというのが資本主義社会の原則だと思いますので、そこはきちんと、もちろん試算をしていただき、かつ、予算に関しても、それは私は増やすべきではないとは思います。私の意見としては、それは増やさずに、何なら計画を変更すべきだと思いますが、じゃ、どうしてもそのままやるというんだったら、それはちゃんと予算も手当てしていかなきゃいかぬでしょう、後からどたばたやるのは、それはおかしいでしょうと思いますので、そこはしっかりと対応していただければと思います。

 それで、方向はいきなり変わるんですが、しかも、時間が少ない中で、本当に駆け足で一問。でも、これは聞きたいんですけれども、工事じゃないんですよね。

 実は、万博では二万人もボランティアを想定をしており、この二万人のボランティア、本当に確保できるんですかというのがまた問題になるわけだと思うんです。だって、ボランティアは大体志が高い方で、大体決まってくるんですよ、そういうことをやる方は。その方々が結構能登に行くんだと思うんですよね。いや、そんな、万博なんか行っていられませんよということもありそうで。

 そうすると、まず質問として、二つ一緒にしちゃいますけれども、ボランティア、本当に大丈夫ですかというのが一つ。資料の方で、ちょっと嫌み半分な質問で恐縮なんですけれども、大阪府市は、阪神、オリックスのパレードぐらいでもボランティアが調達できなくて、府市職員を動員したわけですよ。事実上の動員をしたわけです。これはどうなんですか、問題ないんですか。総務省としてこれはどう考えていますかというのをまとめてお伺いしたいと思います。

茂木政府参考人 まず、ボランティアの件でございますが、大阪・関西万博では、博覧会協会が運営主体となる万博会場内と、それから、大阪府市が運営主体となる会場外の主要駅、空港等での案内などのサポートを行っていただくために、これは先月の二十六日からですけれども、それぞれ一万人のボランティアの募集を開始しているところでございます。

 先月の募集開始時点から、今順次応募は集まってきております。まずは、今回の募集期限が二〇二四年の四月三十日ですので、あと二か月超ございますけれども、この間に向けて、多くの方に参加していただけるように、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えます。

馬場副大臣 お答えします。

 総務省でありますが、職員に対してボランティアの募集がどのように行われたかの詳細については承知しておりませんが、大阪府市においては、職員に対してボランティアとして御協力をお願いしたとの旨周知されたものと承知しております。

 いずれにしても、まずは各地方公共団体において適切に判断していただくものと考えます。

米山分科員 これはまあ、そう御答弁されるんだろうとは思ったんですが。

 しかし、問題提起として一つ申し上げたいんですけれども、私も短いながら知事をやったんですけれども、地方自治体というのはやはり王国なんですよ。それはボランティアだ、強制じゃない、ボランティアだと言いますけれども、職員さんはずっと、大概、かなりの割合の職員さんが、かなり長い人生の時間をそこにいるわけですよね。だから、その中で、知事が言ったことになんか逆らえないし、みんながやることに対してなんかノーと言えないわけです。しかも、所轄として、国と地方自治体は同等だから、総務省が新潟県にそんなことをするなと指導したら、それはそれで問題になっちゃうわけですよ。かつ、それは民事訴訟で訴えればいいだろうと言われたって、職員さんたちはなかなか、それは嫌だけれども、たった一日のボランティアのことで民事訴訟をしてもう職場にいられなくなったりするぐらいなら、まあ涙をのみますかという方の方が多いと思うんです。

 とはいえ、働き方改革の中で、しかもこういうことをするのは非常に不健全なので、やはり総務省として何らかの対応をすべきでしょうだと思うんです。できる対応として、それはもちろん、総務省が新潟県なり大阪府なりにこれをしろなんというのはできないと思うんですけれども、やはり一定の指針を出す、一定の方向性を出すみたいなことなんじゃないのかなと思うんです。

 やはり国のガイドラインとか指針というのは、法的拘束力がなくても、出ると知事は従うものなんですよ。かつ、出ると、職員の人から、ほら、国からこういう指針があるんですよ、知事、そんな指示していいんですかと言うと、ああ、まあそうだなと思うものですから。

 是非これは、特にこの万博においても、実は万博に限らずいろいろなイベントで行われている強制ボランティアみたいなものは、やはりそれは今後の社会の在り方としていかがなものかと思いますので、是非総務省の方で御対応いただければということを御提言申しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

上野主査 これにて米山隆一君の質疑は終了いたしました。

 次に、勝目康君。

勝目分科員 よろしくお願いいたします。自由民主党、京都一区の勝目でございます。

 まず、齋藤大臣、今日は政府参考人さんの方でしっかりお答えいただけるということでございますので、御退席いただいて結構でございます。

上野主査 齋藤大臣におかれましては、御退室いただきますようお願いいたします。

勝目分科員 それでは、順次質問をしてまいりたいと思います。

 現在、時代の大きな転換点にある、これは多くの方がおっしゃっているわけでありますけれども、経済についてもそのとおりだというふうに思います。

 来し方三十年、簡単に振り返ってみますと、バブル経済があり、そしてそれが崩壊をして、雇用と設備とそして債務、この三つの過剰を何とかしないといけないということで、サプライサイドの改革ということをやってきた。企業はコストカットを進めて、結果、企業そのものは経営体力というものを回復をしたけれども、大きな副作用が残ったということだと思います。その内容というのが、不安定な雇用であり、上がらない給料であり、老朽化した設備であり、まあ、デジタル化が進まなかったのもその中に入れてもいいのかなというふうに思います。もちろん、これは一般論であって、個々の企業を見れば必ずしも当てはまらないところも多々あろうかと思いますが、社会全体としてはそういうことだったんじゃないか。しかも、リーマン・ショックという大不況期も経て、こうした副作用が更に増幅をされたということだと思います。

 所得は増えない、消費が増えない、経済が振るわない、成長しない、そして所得が増えないといういわゆるデフレスパイラル、これが続いてきたということで、正当な対価を払わない経済でしのいできたんじゃないか、こういうことであります。これは人を大切にしない社会ということにもつながって、少子化もこういったところにも大きな要因があるんじゃないかというふうに思います。なので、こども未来戦略にもイの一番に、若い世代の所得向上というのが書いてあるということであります。

 それで、こういった状況自体を批判することはたやすいわけでありますけれども、逆に言えば、バブル経済の崩壊というのはそれほどまでに傷痕が深かった、厳しいものであったということも言えるんだろうと思いますし、また個々の企業にとってみれば、それはもちろん、自分たちの経営を成り立たせるために所与の条件の下で最善の努力をした結果なんだということで、企業に対してある種批判、そしりをしたところでこういった状況というのは改善できたかというと、そうではなかったんだろう、こういうふうに思うところであります。

 アベノミクス三本の矢というものを通じて、経済再生、デフレ脱却というものを目指したわけでありますけれども、成果がやっとこ上がってきたかなというところでコロナ禍に襲われたということだろうと思います。

 ただ、コロナ禍も明けまして、足下の状況というのは大きく変化をしております。人手不足であるとか、あるいは生産性が必ずしも上がっていないということで供給制約を要因として、また円安による輸入物価の上昇といったようなこともあって、物価の上昇が続いており、今後も続く見込みだと。日銀総裁が先日答弁されたように、現象としてはデフレではなくてインフレの状況にあるということであります。また、株価も、今日も過去最高を更新したようでありますけれども、終わり値は若干下がったようですが、非常に高い水準にあるということであります。

 それでは今政府がデフレからの完全脱却ということを掲げるのは間違いなのか、デフレなのかインフレなのかというような問いもあったわけですけれども、間違いなのかといえば、私はそうじゃないと思うんですね。

 私たちにとって必要なことというのは、現象を描写をして言葉遊びをするのではなくて、三十年に及ぶデフレ経済の中でしみついた行政、企業、消費者、この行動変容に至るまで、デフレ経済に過度に適応してしまった社会システムを脱デフレの経済型に移行するように変革をしていかなければならないからだということです。そして、まさに今、その転換を図るべきときにあるんだということです。供給制約でインフレが起こっているときに、デフレ的にコストカットをしていたら、これはもう経済成長を伴わないインフレ時代を迎えることになるということであります。

 マクロ経済の現状を見ますと、家計と企業が貯蓄超過にあって、政府が大変な債務を抱えているというのが今の状況。企業の内部留保も五百兆ですかね、非常に高い水準になっていて、国内の設備投資が低調なんじゃないか、こういう指摘もあるわけで、企業の過少投資というのが引き続き課題になっているというふうに考えています。

 そういうことで、今、取るべき道というのは、やはり何といっても供給力を高めることだということであります。つまり、二十数年前に言っていたサプライサイドの改革と逆方向のサプライサイドの改革をしないといけないということで、テクノロジーと人にしっかり投資をしていくということ、それによって生産性を高めるということが非常に重要だということだと思います。企業を指弾するだけでは現実は動きません。

 ということで、経産省さんとして、この脱デフレ経済への移行に必要な産業政策、一番根本になりますけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、これまでの日本経済を振り返りますと、長いデフレの中で、企業がコストカットに注力をして利益を拡大してきたという、いわゆるコストカット型経済ということになっておりまして、特に日本国内における設備投資や人への投資は諸外国に大きく後れを取ったという認識をしております。

 また、政府におきましても、民間主導という考え方の下で、民間の制約を取り除く市場環境整備策を中心といたしまして、新たな価値創出に向けた取組が結果として不十分であったというふうに認識しております。

 ただ一方で、足下の日本経済でございますが、百兆円規模に達しつつある国内投資、そして三・五%を超える賃上げという双方において、三十年ぶりの高水準を示しておるところでございます。着実な潮目の変化が見られるというふうに認識をしております。

 経済産業省といたしましては、足下のこの潮目の変化を捉えまして、この流れを確実なものとするべく、GX、DXなどの社会課題解決分野を成長のエンジンと捉えて、産業政策を強化する経済産業政策の新機軸に取り組んでおるところでございます。

 こうした政府支援によりまして、企業が国内で積極的に投資を進めることで供給力を強化していく、こうした取組が労働生産性を向上させることで更に持続的な賃金上昇にもつながるものというふうに考えております。

 引き続き、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる成長型経済へ転換できるように取り組んでまいりたいと考えております。

勝目分科員 今ほど御答弁いただいた、まさに成長型の経済への転換ということ、これは本当に欠かせないと思います。もう今、骨の髄までデフレマインドがしみついていて、また、企業も、これまでの経験がデフレ下しかないという人たちが多いわけです。だから、プライシング一つを取っても、ほかのところより一円でも安くということしかノウハウが積み上がっていなくて、そういう先輩から学んで、いつまでたってもデフレ型のビヘービアが続いていくということ、ここを本当に断ち切らないといけないというふうに思います。

 そうした中で、今回、産業競争力強化法等の一部改正法案なども御提案されると思いますけれども、まさに供給力を強める経済体制へと経産省さんも総力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 その中で、今おっしゃった、人への投資の一環として、やはり賃上げというものも欠かせないと思います。これは、当然、生産性が上がって、結果として賃金が上がるという意味において、供給側の強化でもありますし、また、実入り、所得が増えるという意味で、需要側を強化するという、まさに経済を前に進めていく本当に不可欠なパーツであると思います。

 この賃上げにつきましては、令和六年度の予算というのは、本当にあらゆる分野で賃上げをするんだというこの考え方に貫かれていると思います。大企業も中小企業も、あるいは医療とか介護、福祉、こういう公定価格分野についてもそうでありますし、また、国、地方の政府調達を受ける事業者においても、例えば設計労務単価の大幅な引上げが想定されておりますように、とにかくあらゆる分野でこれをやっていくんだと、もちろんタイムラグはあるとは思いますけれども。

 こういう中にあって、今回、経産省さんとしても、様々な賃上げ税制等々、賃上げについては不退転の決意で様々な取組を進められると思いますが、内容について、よりその効果についてイメージが湧くような形で御説明をいただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

吾郷政府参考人 お答えします。

 物価上昇を上回る可処分所得の増加を実現するためにも、やはり今年の賃上げが大きな鍵を握っていると考えております。

 このため、経済産業省としては、まず経済団体に対しまして、昨年を上回る賃上げを呼びかけておるところでございます。

 また、賃上げ促進税制につきましては、既に二十万社以上に活用されておるところではございますけれども、今回の税制改正におきまして、前例のない長期となる五年間の繰越措置の創設をするなど抜本強化をするということで、更に中小企業の全体の六割を占める赤字の中小企業でも活用できるようになるものというふうに考えております。

 また、価格転嫁につきましては、昨年九月時点の価格転嫁率は四五・七%となっております。この転嫁率の更なる上昇を目指すために、一つは、発注企業の価格交渉、転嫁状況についての企業リストの公表、あるいは経営トップへの大臣名での指導助言、そして下請Gメンによる取引実態把握の強化、そしていわゆる労務費の指針、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針、これの周知徹底に取り組んできたところでございます。

 こうした取組と併せまして、省力化投資等の生産性向上への支援も行いまして、賃上げを強力に後押しすべく政策を総動員してまいりたいと考えております。

勝目分科員 ありがとうございます。

 地元を歩いていると、やはり賃上げは大事ですよねという話をしても、どうしても、いやいや、そのための事業環境がという話になって、いや、だけれども、そこですくんでしまったら、ここで物価上昇だけが起こっていくということになってしまうのでということで、転嫁対策についても話をさせていただいております。

 ただ、物流業者さんなど、なかなか転嫁が進まない業種、業態というのもやはりあるところでありまして、公取さんの方も今、優越的地位の濫用に当たるおそれも出てくるよねということで、指導に入っていただいております。これは実際には中企庁さんが実動部隊になると思いますが、中企庁さん、そして公取さんの連携の上、実効のある転嫁対策、これなしには、結局、大企業の職員さんには給料が上がっても、あとは配当に流れてしまうというようなことで、経済の循環、国内に回っていかないということになってしまいますので、非常に重要な取組であります。是非、実効性を持ってやっていただきたいというふうに思います。よろしくお願いをいたします。

 あわせて、経済の牽引役、供給の牽引役というものも新しい力が求められるだろうというふうに思っております。それこそ吾郷さんも力を入れておられるスタートアップでありますけれども、このスタートアップが機動力高くイノベーションを誘発していく、これは不可欠であるというふうに思っております。

 先般、スタートアップ議連の方でエコシステム協会の方からも伺ったところでありますけれども、今、相談窓口のワンストップ化を進めているわけですが、当然様々な分野があって、そこの専門性の高い、それぞれに応じたアクセラレーターというものの集積、目利きの集積が必要だということでありますので、こうしたものの確保、非常に速やかにそういう確保をすることが必要だというようなこともおっしゃっていましたし、また、ステージでいうと、どうしてもレーターの方が弱いんじゃないか、ここのサポートを厚くしていかないといけない、まだまだいろいろな課題があるんだろうと思います。

 これは一朝一夕に全て体制がぱっと整うような類いのものではありませんので、大変御苦労もあろうかと思いますが、スタートアップ育成五か年計画の策定から一年余りが経過をしていまして、十兆円という大変大きな目標も掲げているところであります。今の現在地について、経産省所管分野で結構でありますので、御報告をいただければと思います。

吾郷政府参考人 お答えします。

 スタートアップは、新しい技術やアイデアによりまして社会課題を解決し、そして市場に新たな刺激を与えるということで、市場の活性化や既存企業の生産性向上をもたらす存在だと考えております。これは、社会課題を成長のエンジンに転換をして、持続可能な経済社会を実現することを目指す新しい資本主義の考え方を体現する一つのものだというふうに考えております。

 先生御指摘のとおり、一昨年、令和四年十一月に、政府はスタートアップ育成五か年計画を策定いたしております。その中で、三つの柱、人材の育成やネットワークの構築、それから資金供給の強化、そしてオープンイノベーションの推進というこの三つの柱で政策資源を総動員いたしまして、官民でスタートアップを育成するということに取り組んでおるところでございます。また、主要施策につきましてはロードマップを作成いたしまして、KPIを定めてこれを進めておるというところでございます。

 この中で、経済産業省におきましては、例えば、二〇二七年度におけるメンターによる若手人材の発掘、育成、年間五百人を目標といたしまして、未踏的なアイデア、技術を持つIT人材を発掘、育成する未踏事業、これの規模の拡大、あるいはディープテック分野や地方への展開、そして、二〇二七年度までに累計で世界各地へ千人を派遣することを目標といたしまして、イノベーション人材の育成及び海外イノベーション拠点の設置、それから人材とのネットワーク構築のためのプログラム、J―StarXの推進、こうしたものに取り組んでおるところでございます。それぞれ今年が初年度ということではございますけれども、着実に実績を今積み上げているところでございます。

 今後とも、政府全体でフォローアップを行いつつ、資金供給、人材確保、出口戦略の強化などをしっかり推進してまいりたいと考えております。

勝目分科員 是非よろしくお願いいたします。

 そして、その中で、ちょっと分野としてヘルスケアについて申し上げたいと思うんです。

 私、この間、厚生労働の関係で活動することが多くて、医薬品であるとか医療機器、これのイノベーションを進めていかないといけないということで、これは、薬価であるとか薬事であるとか、あるいは現場における医政の分野、そういう、厚労省が先端的に担う部分というのが非常に多いわけであります。ただ、関係者の間で議論していると、創薬力の強化一つを取っても、まさにアカデミアの成果をちゃんと産業化をしていかないといけないという、ここのノウハウの部分というのがどうしてもやはり経産省さんのお力をおかりしないと、なかなか厚労省さんだけではそういった育成というものが限界もあるのかなということで、この間コミットいただいていることには敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。

 ヘルスケアについては、まさにそういう新技術を社会に実装していくということもそうでありますし、また、健康づくりに寄与するというのは、それぞれ、高齢社会が非常に進んでいる中で、当事者としてもクオリティー・オブ・ライフが高まりますし、その結果として医療費の抑制にも資するということで、非常に社会的な意義も大きい分野だと思います。また、世界的にも成長が期待される分野ということで、ここを日本として取りに行かないと、今、デジタルと医薬品でもう膨大な貿易赤字を抱えて、もちろん配当で返ってきている所得収支の分はあるにしても、そういう状況にある中で、このヘルスケアについて、やはりしっかり取り組んでいかないといけないというふうに考えております。

 令和五年度には補正予算も組んでいただいて、このヘルスケア分野の投資促進につながるような取組もしていただいているわけでありますが、この進捗含めて、方針をお伺いしたいと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃるとおり、予防、健康づくりを支えるヘルスケア産業や、医療に必要不可欠な医薬品、医療機器産業は、国民の健康を下支えするとともに、経済成長を牽引することができる重要な分野だと考えております。

 経済産業省としましては、厚生労働省等の関係省庁とも密に連携しながら、まず、ヘルスケア分野では、パーソナル・ヘルス・レコードを活用した新たなサービスの創出ですとか、地域と連携したスタートアップ創出拠点の整備に取り組んでいるところであります。

 医療機器分野では、イノベーションを牽引するスタートアップの創出ですとか、国際機関と連携したアジアへの展開、こういったものを進めております。

 また、医薬品分野においては、新薬創出の鍵を握る創薬ベンチャーに投資が集まるエコシステムの構築、さらには、ワクチン、バイオ医薬品の国内製造拠点整備などへの支援、こうしたことを行っているところであります。

 こうした取組を通じまして、ヘルスケア分野にしっかり投資が集まってくる、そういった状況を創出してまいりたいと思っております。

勝目分科員 大変大事な分野ですので、是非お取組をそのまま御継続、拡充をしていただきたいと思います。

 このヘルスケアを社会実装するためには、やはり、それぞれの企業の力というのも非常に大きい、重要だと思います。この間、健康経営というものを取り組んでいただいてもう十年たつかと思いますが、大きく広がって飛躍をしていると思います。

 先日、これは厚生労働委員会で経産省さんにお越しをいただいて伺ったわけですが、そのときに、中小企業への浸透が課題だというようなお話を伺っております。こちらは引き続き是非進めていただきたいと思うんですが、今日、ちょっとだけ別の観点からお伺いをしたいと思います。

 今、冒頭申しましたように、大変な人手不足で、人材の希少性が高まっているわけでありまして、こうした中で、従業員の方に、いかに健康に、フルパフォーマンスで仕事をしていただける、その環境をつくるかというのは、企業にとってもう経営戦略そのものになってきているんじゃないか、こう感じているところであります。

 私自身、今、党の方で、女性の生涯にわたる健康についていろいろな議論をさせていただいて、経産省さんからも参画をいただいておりますけれども、先般、女性の健康課題による損失というのが三・四兆円に及ぶという試算を明らかにしていただきました。これは経産省さんからお伺いをしました。この試算の中で、実は男の更年期による損失も結構大きくて、一・二兆ということでありまして、こういう、実際に数字が出ることで、マグニチュードというんでしょうか、その影響の大きさが見える化してきて、これはいよいよやはり意識を持って取り組んでいかないといけない、こういう環境が醸成されていくんだろう、こう考えるところであります。

 このように、企業の経営のいわば持続性を左右する項目になってきていると思うんですね。そうすると、今度は、金融市場において、投資家が企業を見る目の目線の中に、健康経営をちゃんとやれているかどうかということが入ってくるんじゃないか、こんなふうにも思うところであります。

 こういう金融市場における取扱いも含めまして、健康経営の今後についてお伺いしたいと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省におきましては、先生御指摘のとおりですが、人的資本投資の土台として、経営者が従業員の健康増進に戦略的に取り組むことで、生産性向上、ひいては企業価値向上につなげる健康経営を推進してきたところであります。

 金融市場との関係でありますが、健康経営に取り組む法人を見える化するため、二〇一四年度より金融市場からの適正な評価を目的にした健康経営銘柄の選定を開始したところでありまして、選定された企業の株価はこれまでのところTOPIX平均を大幅に上回る推移となっております。

 加えて、二〇一六年度からは健康経営優良法人も認定しておりまして、申請数は調査開始以来増加してきております。今年度は、大規模法人と中小規模法人の両部門で合計二万者を超えたところでございます。

 一部の機関投資家におきましては、健康経営の取組を投資評価の一項目として活用するなど、投資家や金融市場を始めとした様々なステークホルダーからも評価を受けております。そのため、最近では、有価証券報告書等において健康経営の取組を情報開示する企業も増加し、投資家との対話に活用されていると聞いております。

 一方で、健康経営の取組の質に差があることですとか、中小企業を始めとした地域における認識はまだ不足しているということが課題であると認識しておりまして、今後、このため、経済産業省としては、健康経営の効果分析等を検討する健康経営の可視化と質の向上、二つ目に、健康経営関連サービスの創出を推進する新たなマーケットの創出、三つ目として、中小企業等への普及拡大を検討する健康経営の社会への浸透、定着、この三本柱を中心に、官民連携をして、この健康経営を一層普及してまいりたいと思っております。

勝目分科員 ありがとうございます。

 効果分析、可視化、これは非常に重要だと思います。是非お取組をお進めいただきたいと思います。

 さて、がらっと変わりまして、ちょっと地元案件に近くなってくるわけですが、伝統産業についてお伺いをしたいと思います。

 私の地元京都は、御案内のとおり、伝統工芸、伝統産業の町であります。仏壇、仏具、表具、人形、器、扇子、和装関係ということで、多くが国指定の伝統工芸品になっておりまして、今なお暮らしの中に息づいております。

 ただ、ほかの産地と同様に、まあ京都ブランドなんて一般には言われますけれども、現実はなかなか厳しい状況にあります。需要が縮減をしており、また後継者難にも悩んでおられます。多段階の下請構造もあって、サプライチェーンも非常に脆弱性を抱えている、こういう状況にあります。

 しかし、この伝統工芸品がもたらすものというのは、これはもう世界で日本しか、更に言うと、うちの地元のことで言うと、京都でしか提供できない、まさにオンリーワンの価値なのであります。なので、世界レベルで付加価値が高いものなんだ、これは伝産品の大きな意義だと思うんです。インバウンドで、今海外からもお客さんがたくさんいらっしゃっている中で、海外展開といったものもしっかり進めたいなというふうに思います。これは、マネタイズを通じてサプライチェーン全体に循環をしていく、その入口に立つものだと思っています。

 例えば、今、京友禅でインドのサリーを作るという取組を進めていまして、これは、プロジェクトはもう三年目に入って、デザインもかなり洗練をされてきています。先般は、ムンバイとデリーで展示会をやり、こっちの在東京のインド大使館でファッションショーも開催をされ、私も行ってきて、なかなかすごいものだったんですけれども、そういう新しい取組をやっています。西陣織と友禅と、あと丹後ちりめんという三つの産地、これまで全然ばらばらにやっていましたけれども、去年、今年と、まとめてみんな一緒に東京で展示会をする、こういうことも今始まっております。

 この京友禅サリーは、もちろんインドで浸透してほしいなというのはあるんですが、今サリーというのはもう欧米で高級ファッションとして着用されているわけでありまして、こういうところへの展開にもやはりつなげていきたいなという思いがあります。こういう海外展開へのノウハウ支援、あるいはネットワークの紹介といったものもどこかしらお願いできるとありがたいですし、三産地についても、やはり新しいマーケットによりアウトリーチできたら効果も高いかな、こう考えるわけであります。

 なので、この伝産品の育成支援というのも、単に補助金を出しますとか、あるいは海外で展示会をやるときに、それをお金の面でサポートしますというのにとどまらず、そういう専門性の高い御支援を何らか構築していただけると非常に効果が出てくるんじゃないかなと思いますし、また、関係機関、関係省庁との連携も不可欠だと思います。方針についてお伺いしたいと思います。

橋本政府参考人 お答え申し上げます。

 伝統工芸品産業は、日本人の生活に根差したものでございまして、地域の産業を支える重要なものと認識いたしております。その担い手を守り、生業や産地を維持していくためには、海外需要も獲得していくことは重要であるという委員の御指摘のとおりかと存じております。

 このため、経済産業省におきましては、一般財団法人伝統工芸品産業振興協会とも連携し、海外展示会への出展支援などや海外での販路拡大に向けた情報提供など、多面的な支援を実施いたしております。

 また、海外展開に積極的に取り組む事業者を支援する新規輸出一万者支援プログラムにおいても、経済産業省、中小企業庁、ジェトロ、中小機構が一体となり、支援を実施いたしているところでございます。

 さらに、文化庁や農林水産省における様々な取組を行っておりますので、そういった関係省庁とも連携して、伝統工芸の振興を推進してまいりたい、このように考えております。

勝目分科員 この伝統産業を、保護する客体としてではなくて、やはり産業として成り立っていくということが、これができれば一番ベストなわけでありますので、日本ならではの価値というのを、単に言葉の上でするのではなくて、しっかりそれにふさわしい経済的価値を獲得できるような、そういう具体的な支援といったものをこれからも是非研究をしていただきたいですし、そういうつながりを持っているのは、いろいろ、民間でもそんなに表に出ていないところでいらっしゃるんだろうと思うんです。そういうところとのつながりを是非つないでいただけると、これは大変勇気づけられる取組になると思いますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 最後に、ゼロゼロ融資についてお伺いをしたいと思います。

 コロナ禍を乗り越えるための金融支援のゼロゼロ融資、返済も進んできているところだと思います。今年の補正予算でも、ゼロゼロの返済が始まっているところが更に積極投資をする際にも使える資本性劣後ローンの条件改善などを取り組んでいただいているところかと思います。

 私の地元は旅館業も多くて、今非常に、コロナのゼロゼロ融資の返済ももちろんやってはいるんですけれども、経営に与える負荷も大きいというところで、常にいろいろな支援があるとありがたいなというところであります。

 現状をお聞かせいただきますとともに、今具体的にどういう支援ニーズを皆さんお聞きになっていて、どういう対応をされているか、最後に伺いたいと思います。

上野主査 中小企業庁山本事業環境部長、申合せの時間が既に経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、民間ゼロゼロ融資の返済が本格化し、利用者の六割程度が返済中である中、コロナ禍で増大した債務の返済負担軽減や経営改善、再生支援のニーズが高まっているものと認識しております。

 こうした事業者のニーズに対応すべく、昨年一月にコロナ借換え保証制度を開始いたしまして、返済期間の長期化と収益力改善を一体的に支援しております。これまでに約十四万件、約三・六兆円の借換え申込みを承諾しております。

 加えて、昨年八月に、挑戦する中小企業の応援パッケージを公表しております。中小企業の経営改善、再生支援の強化を進めてきておりますが、その中で、御指摘のあった資本性劣後ローンについても、昨年十一月の経済対策を踏まえ、黒字額が小さい回復途上にある事業者の金利負担を軽減するよう、運用を見直したところでございます。

 今後、関係省庁と連携いたしまして、年度内に再生支援の総合的対策を取りまとめることとしておりまして、引き続き、事業者に寄り添い、きめ細かく支援をしてまいる所存でございます。

勝目分科員 ありがとうございます。終わります。

上野主査 これにて勝目康君の質疑は終了いたしました。

 次に、岸信千世君。

岸分科員 よろしくお願いいたします。自由民主党の岸信千世です。

 本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。感謝申し上げます。本日最後の質問者です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、冒頭、元日に起きました令和六年能登半島地震で亡くなられた方々に対しまして謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての皆様方に対しまして心よりお見舞いを申し上げます。

 今回の震災では、既に経産省関連として、復興に取り組む被災した中小企業、小規模事業者等について、施設復旧に係る費用を補助するなりわい再建支援事業、また、商店街等再建支援事業等の施設整備に係る復旧支援を始め、様々なメニューが既に出てきておりますけれども、引き続き、是非、傷んだ地域経済、また中小企業、小規模事業者のサポート、これを継続的によろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問に移りたいと思います。

 まず、冒頭、GX、グリーントランスフォーメーションに向けた政府の取組について、冒頭一問、大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

 今現在、世界規模で異常気象が頻発し、また、大規模な災害が増加するなど、気候変動の問題が世界共通の課題となっております。また、カーボンニュートラルに関して目標を掲げる国や地域が年々増加し、脱炭素化社会に向けた動きが加速化しております。

 我が国においても、二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減、また二〇五〇年カーボンニュートラル実現という大きな国際公約を掲げて、政府はこれまで、有史以来、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業、社会構造から、クリーンエネルギー、こうしたところに、中心に転換する、いわゆるGXを進めている最中だと把握をしております、理解をしております。

 御承知のとおり、GXは、ただの気候変動の対策だけではなくて、エネルギー政策、経済安全保障、産業政策としても大変重要な役割を担っていると考えております。世界では、国家を挙げた脱炭素投資への支援、また、新たな市場やルール形成をする取組が加速しておりまして、今や、GXに向けた脱炭素投資、この成否が、企業や国家間の競争、これを左右するといっても過言ではありません。

 我が国は、周囲を海で囲まれ、資源に乏しい国です。脱炭素関連の技術に関して研究開発は従来から盛んではありましたけれども、この技術的な強みを是非、国際的な競争力、これを強化していく、こうしたところに官民で協調していければいいんじゃないかな、そのように考えております。

 こうした中で、今般のGX、実現する政策の一つとして、水素やアンモニアといった脱炭素エネルギーの普及拡大を支援する水素社会推進法案がございます。

 この水素やアンモニアは、燃焼時に二酸化炭素を排出しない、環境に優しい次世代エネルギーではあるんですけれども、同時に、取扱いも大変難しいと思います。現状多くは、水素は工業用途、またアンモニアは肥料用途といった限定的な利用、市場規模もとどまっておりまして、価格も少し高くなっております。

 今後は、化学や製鉄、発電といった温室効果ガスの排出削減が簡単ではない産業分野におきまして、クリーンな水素、アンモニアが大規模に利用されていくように見込まれますし、このようにしていかなければならない、そのように考えております。

 この度の法案では、既存の燃料との価格差を埋める値差の支援、そして供給インフラを整備するための拠点整備支援を通じて、大量の水素やアンモニアを安定的に供給するサプライチェーンを構築するための支援措置が講じられる予定だと伺っております。

 こうした中で、拠点整備というのは、大都市圏を念頭に大規模拠点を三か所、また、地域ごとに分散した中規模拠点を五か所程度選ぶという方針が既に示されておりますけれども、まずは、今年夏頃からこの度公募が始まります。この拠点選びというのは本当に大変重要となってくると思いますが、まずは、政府の意気込み、しっかりとお伺いしたいと思いますし、また、日本各地でこのような公募に向けて皆さん今一生懸命準備されていると思います。また、自治体との連携というところでも加速をしていると考えております。

 一例を挙げますと、私の地元の山口県、周南コンビナートがございまして、石油精製、石油化学を始め、鉄鋼、セメント等の多彩な基礎素材型の産業が集積をしております。これらの産業は元々、二酸化炭素を大量に排出するモデルでございまして、その代替がかなり難しいとされている代表的な産業であります。

 このコンビナート、今具体的な企業で申しますと、出光興産、東ソー、トクヤマ、日本ゼオンの化学、エネルギーの四社が連携をして、出光興産の既存のインフラを活用してアンモニアの輸送基地化、またコンビナートの各社の発電燃料、これを石油からしっかりアンモニアに切り替える、こうしたことで、この域内の百万トン超のアンモニア供給体制の構築を目指している、そのような状況となっています。

 ただ、このコンビナート、元々、石炭と塩の電解による様々な、まずは化学の素材の生成、そしてナフサからのエチレンの生成を通じた化学製品、これを多岐にわたり生み出している、そうした元々の供給網が既に整っている、また企業各社の連携等々も既に取れているような地域の特性がございます。こうした利点、こうしたものを十分に生かす取組となっておりますけれども、また、ここに加えて、製鉄分野の日鉄ステンレス、この五社と県と市が一つの協議体をつくって港湾事業というものをしっかり進めています。こうした取組というのは、やはり国の方も注目をしていただいて、昨年には西村経産大臣にも御視察をいただきました。

 ただ、この五社がやっているコンビナート事業、実は、公正取引委員会とひとつ相談という形になりまして、この取組が他の企業を寄せつけない、いわゆる独禁法の規定にひっかかるのではないかということで協議を長く重ねていたと伺っています。しかし、最終的には、先日、相談の結果、公正取引委員会としては、価格カルテルなどにつながるおそれは低く、独占禁止法上問題がない、そのような判断が出た旨の発表があったと伺っております。その後、出光が既に、既存インフラも活用して、今、アンモニアの供給の試験的な動きに着手をしたと地元から聞いています。

 これは、例えばカルテルとかそういったものを禁止するために、独禁法の有用性というものはもちろん言うまでもないんですけれども、やはり国が推す、また地域でも推していくというGXの取組について、地域の利点を生かした取組なので、しっかりとまた国もこういったものは後押しをしていただきたい、そのように考えております。

 済みません、長くなりましたけれども、改めて大臣にお伺いします。

 このような、元々日本にあったコンビナート群をしっかりと活用して、また、コンビナート群の企業がGXに対応できるようにサポートするのも国の務めではないかな、そのように考えております。脱炭素社会には、こうした素材産業が集積するコンビナート、こういったところも大変重要な役割を担ってくると思いますけれども、今後、政府が掲げるGXの取組、これの特にコンビナート部分の意義、また政府の支援の取組等々、教えていただければ。また、地域の特性に合わせた支援というものの有用性、その辺りも是非大臣の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 石油コンビナートは、石油精製、石油化学等の基幹産業が大規模に集積をしており、エネルギーや素材の供給を通じた、我が国の経済、産業そして国民生活を支える重要な基盤としての役割を担っていると認識していますし、もちろん地域にも重要な影響を及ぼす、そういう設備だと思っています。

 このようなコンビナートの脱炭素化を進めるには、水素やアンモニア等のCO2を出さない燃料を活用してGXを推進していくということが今や不可欠であります。

 委員御指摘のコンビナートにおいても、石油化学分野を中心としてアンモニア利用の検討を行うなど、地域の特性を生かした、また既存のいろいろな施設も生かしながらGXの取組を進めているというふうに承知をしています。

 経済産業省としても、コンビナートの脱炭素化の動きを後押しするため、今国会に提出をした水素社会推進法案におきまして、国が前面に立って、主務大臣による基本方針の策定、認定を受けた事業者に対する価格差に着目した支援あるいは拠点整備支援、高圧ガス保安法等の規制の特例措置等を講じるとともに、低炭素水素等の供給拡大に向けて、水素等を供給する事業者が取り組むべき判断基準の策定等の措置を盛り込んだところであります。

 こうした環境整備、これを進めることで、コンビナートのGXに向けた取組を加速化をしていきたいというふうに考えています。

岸分科員 大臣、ありがとうございます。

 国が前面に立って、このGX、環境整備を行っていくと、大変強いリーダーシップの発言をいただきました。本当にありがとうございます。

 この後は、以下、政府の参考人に詳しい質問をお伺いいたしますので、大臣は退室していただいて結構です。ありがとうございました。

上野主査 齋藤大臣におかれましては、御退席お願いいたします。

岸分科員 今の質問に関連して、前段にもございましたけれども、水素社会推進法案、この拠点整備支援の対象で大規模拠点を三か所、中規模拠点を五か所、この後選定をしていくというふうな話ですけれども、まず、選定の要素ですとか、将来性、また、どのような分野で選定をしていくのか、そして、今は三か所、五か所ということですけれども、今後、どんどんどんどんと拡大をしていく、そういった展望があるのか。

 例えば、今、日本の各地のコンビナートにおいては、クリーンエネルギーを中心に産業の転換が進んでいますけれども、今回、周南の例を取り上げましたけれども、そういった周南以外のモデルというのも全国各地、多岐にわたっております。

 こうしたコンビナート群が地域の経済を支えているということは言うまでもございませんけれども、最終的には、こういった拠点選びの有無によっては地域の経済や雇用にも影響が出てくると思いますので、今後の展望も含めて政府参考人から教えていただきたいと思います。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、水素基本戦略というものを昨年六月に改定しておりますが、そこで、今後十年間で産業における大規模需要が存在する大都市圏を中心に大規模拠点を三か所程度、そして、産業特性を生かして相当規模の需要集積が見込まれる地域ごとに中規模拠点を五か所程度整備するものとしております。

 世界に勝てる水素等のサプライチェーンを整備していくためには、一定のスケールメリットを発揮できる需要の集積を国内につくっていくということが重要だと考えてございます。

 一方で、この水素社会推進法に基づく支援対象の決定につきましては、こういう戦略の方向性を大きな方向性として頭に入れながらも、また、今回の法律に基づいて国で策定します基本方針等を踏まえて、その詳細な要件等はまた今後検討していくことになりますけれども、この支援対象の拠点の決定に当たりましては、構築されるサプライチェーンのスケールメリットを生かして地域間の連携がどの程度可能になるのか、あるいは、拠点にまず選ばれるところがあったとしても、その他の後発地域への展開の可能性がどれぐらいあるのかなどの観点も含めて基準を作っていきたいと考えておりまして、特定の地域以外にも裨益が見込まれるような拠点を選んでいくような基準の策定を検討しているところでございます。

岸分科員 今、この後の、三か所、五か所の後、後発地域というところにも少し目を向けていただきたいという言及もいただきましたけれども、そうしたところも是非しっかり展開できるようによろしくお願いいたします。

 続いて、半導体に関する予算措置についてお伺いさせていただきたいと思います。

 近年のデジタル化の進展に伴うデジタル機器の需要拡大等により世界的に半導体が逼迫したことを踏まえて、各国で、経済安全保障及び産業政策の観点から、半導体の生産基盤を自国内に構築する、このための支援策を打ち出していると思います。我が国も、もちろんそうしたところで特定半導体基金というものが造成され、半導体の支援が加速化しております。

 この同事業によって、今、国内では、熊本のTSMCの工場へは最大四千七百六十億円の支援が行われておりまして、今月二十四日に開所式等が行われておりました。また、今、日本ではまだ製造ができていない先端半導体を製造するTSMCの第二工場、こちらにも、最大で七千三百二十億円、こういったところを支援する、その動きを承知しております。このほか、広島県にもマイクロンの工場がございまして、こちらにも約二千億円以上の支援が決定している、そうした数字を承知をしております。

 ほかにも、先端半導体の製造技術、この開発を支援する基金等々の基金が存在をしております。こうした基金を今後どのように活用をしていきたいのか、また、企業を今幾つか選定はされていると思うんですけれども、これはどれぐらいの規模まで、ボリュームまで増やしていきたいのか、その意義についても政府参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

野原政府参考人 お答え申し上げます。

 半導体は、デジタル化や脱炭素化の実現に不可欠なキーテクノロジーでございます。その上、経済安全保障の観点からも重要でございまして、日本の産業競争力全体を左右する戦略物資でございます。

 経済産業省では、これまでもスピード感を持って法律改正、大規模な財政支援を講じ、委員御指摘のように、熊本のTSMC、JASMの工場建設を始め、複数の大規模な国内投資を実現してきたところでございます。

 このような措置を講じてきた結果、九州では設備投資計画額の前年度からの伸び率が過去最高を記録するなど、関連産業への大きな波及効果、好循環が生まれ始めております。こうした流れを継続、加速させていくことが重要だというふうに考えております。

 お尋ねのあった基金でございますが、三種類ございまして、先端半導体基金、これは、5G促進法に基づいて認定された先端ロジック半導体を始めとする先端半導体の製造基盤を整備する事業に対して支援を行うものでございます。経済安保基金、これは二つ目の基金でございますが、これは、経済安保推進法に基づいて認定された従来型の半導体、それから製造装置、部素材の製造基盤整備事業に対して必要な支援を行うものでございます。それから、三つ目がポスト5G基金というものでございまして、これは、次世代半導体の量産技術を始めとする研究開発事業に対して支援を行っている、あわせて、半導体関連の人材育成、それから半導体以外、通信あるいは生成AI関連の研究開発事業に対しても支援を行っている基金がございます。

 これら三つの基金、それぞれこれまでに措置された予算額の合計でございますが、先端半導体基金が約一兆七千億円、経済安保基金が約八千億円、それからポスト5G基金が半導体以外の予算も含めて総額約一兆四千七百億円となっておりまして、これらの予算を活用して半導体産業を復活させるということで、日本の国内に誘致をして産業集積を分厚くするという取組を引き続き強力に進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

岸分科員 ありがとうございます。

 この基金、三つともかなりのボリュームがあると思うんですけれども、こうしたところが、全国的にその基金を利用していただくところが増えていけば、我が国の半導体のサプライチェーンというものもしっかりと構築されていくのかな、そのように考えております。

 実際、私の地元の山口県でも、半導体そのものを生産するというところではないんですけれども、半導体の製造装置の部品、一部の部品を製造する、エッチングの装置のところを製造する日立ハイテクというところが下松市に工場を新設をします。ちょうど、先ほど話が出た熊本のTSMC、九州と、マイクロン、広島を結ぶ中間地点に地理的にはございまして、そうした中で、そういった地理とか地域性でも、そうした半導体の関係、しっかりと工場や企業の集積というものを行っていった方がいいのではないかな、そのように考えております。

 今、県単位ですとか自治体単位でも、国とは別に独自で半導体や蓄電池の製造拠点等の進出に対して支援をするというものをやっております。山口県では、最大五十億、これを助成する、こういう補助もございまして、こうした、国だけではなく、県や市、自治体、小さいところはさすがにできないとは思いますけれども、そうした半導体の支援というものも併せて連携を行っていくことが重要なのではないかなと考えておりますけれども、国としてはどのように考えておりますでしょうか。

野原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、大規模な半導体プロジェクトの推進に当たりましては、人材育成、それから周辺インフラの整備といった課題に対応するため、地方自治体を始めとする地元の関係者との連携が大変重要でございます。

 例えばTSMCが進出している九州におきまして、半導体人材の育成強化のため、全国に先駆けて産官学連携による人材育成コンソーシアムを設立いたしまして、大学、高専による実践的なカリキュラムそれから教材の開発、産業界からの講師の派遣等を進めているところでございます。

 また、周辺インフラの整備につきましては、令和五年度補正予算におきまして、半導体等の戦略分野に関する国家プロジェクトの生産拠点の整備に際して必要となる関連インフラの整備を支援するための交付金が内閣府に創設をされたところでございます。熊本県に対しては、先月、工業用水、下水道、道路の整備に向けて総額約三十億円の配分が決定しているということを承知しております。

 熊本に限らず、半導体プロジェクトの推進に当たっては、引き続き、関係省庁、地方自治体等と連携し、諸課題に対してきめ細やかな対応を行ってまいりたいと考えております。

岸分科員 補助事業だけではなくて人材とか環境というものも県や自治体と連携をしていくということだと思います。

 続いてですけれども、下請の取引適正化、また、価格転嫁についてお伺いさせていただきたいと思います。

 今、日本の企業で九割、また雇用でいえば七割が中小企業でございまして、とりわけ、地方の経済を支える、雇用を支えているのが中小企業だと考えております。この中小企業が賃上げをしやすい環境をつくり、従業員の方にも給与にも転嫁されることで、しっかりと地域経済が潤い、地方の活性化につながると考えておりますけれども、このような地域の経済を好循環させるためには、立場の弱い下請等の中小企業、この取引条件の改善が重要だと考えております。

 この度の下請取引の適正化を図る法律、これを見ますと、政府は、親事業者の義務と禁止行為を定め、また、下請事業者に対する優先的な地位の濫用行為を取り締まるとされています。また、下請事業者の体質強化、こうしたところもしっかりとサポートをしていく、こういうことが示されておりますけれども、この下請関係の法律の最新の運用の実績とか、また、今回振興の基準が改正をされると承知をしておりますけれども、その内容についてお伺いをさせていただきたいと考えております。

 また、加えて、今、これは山口県の中小企業団体中央会が取ったアンケートなんですが、価格転嫁及び賃上げに関する臨時調査という結果でして、山口県内の企業の状況として、一部価格転嫁、価格の引上げができている、しかし十分ではないと答えたところが六一%。また、そもそも価格の転嫁ができていない、引き上げられていないといったところが一一%。これを合わせると、約七割、存在をしております。

 依然として厳しい状況にあるということは数字でも明らかとなっておりますけれども、この価格転嫁の内容部分を見てみますと、やはり、原材料費の部分に八六%転嫁されているという内容に対しまして、人件費の方には約三割、その水準にとどまっています。やはり、この人件費というところにしっかりと稼ぎが転嫁をされてこなければ、なかなか従業員の給与、従業員のモチベーションにもつながりませんし、最終的には地域の経済にも悪影響が出るんだろう、そのように考えております。

 こうした窮状というのは何も山口県の今回のアンケートだけではなくて、多くの地方の中小企業等々がそうした状況に直面していると考えておりますけれども、今後、政府はどのようにこうした状況を支援をしていくのでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 まず、下請代金支払遅延等防止法の運用状況でございます。こちらは中小企業庁が公正取引委員会と共同で運用を行っておりますけれども、中小企業庁におきましては、令和四年度において、発注側、受注側の事業者に対する調査に基づき、発注側の親事業者七百十六社に対して立入検査を行いまして、うち六百二十六社に対して改善指導を行ったところでございます。

 また、下請中小企業振興法がございます。こちらに関しましては、毎年三月と九月を価格交渉促進月間としておりますけれども、この両月における中小企業に対する価格転嫁の実態調査の結果を踏まえて、これまで、約四百八十社の発注側事業者の価格交渉、価格転嫁の状況を公表いたしますとともに、結果の芳しくない延べ約百十社の経営トップに対して事業所管大臣から指導助言を行ってきておるところでございます。

 加えて、同法下請中小企業振興法に基づきまして、親事業者と下請事業者の望ましい取引関係を定める振興基準がございます。この振興基準につきまして、中小企業の取引環境をめぐる状況の変化等に応じて累次の改定を行ってきておる中ではありますけれども、足下におきまして、御指摘のありました労務費の適切な価格転嫁を推進し、中小企業の賃上げの原資を確保するため、新たに規定を改正することとしております。

 具体的な中身は、内閣官房、公正取引委員会の公表した労務費の価格転嫁の指針に沿って対応すること、また、急激な価格上昇のあります原材料価格、エネルギーコストの上昇がある場合にはこれを適正に転嫁すること、こういった内容を盛り込む方針でございまして、パブリックコメントを実施しておるところでございます。

 また、御指摘のありました労務費の転嫁に関しましては、この労務費の転嫁に関する指針につきましての説明会を各般行っております。さきの質疑におきまして大臣からも御説明を申し上げましたけれども、所管業界団体九百に向けて周知をすること、また、各ブロックにおける説明会、延べ三千人の参加者を得ること、また、各業界団体向け、関係の深い団体七千人の参加を得ての説明会を実施すること等を行ってきておるところでございます。

 これらの指針の遵守につきましては、さらに、各業界団体の自主行動計画への反映も要請しているところでございます。

 一般に、御指摘のとおり、やはり、労務費の価格転嫁は、例えば原材料費、エネルギーコストに比べると低い傾向にございますが、これらの施策によりまして労務費の価格転嫁を進めてまいる所存でございます。

 また、間近に迫った三月が価格交渉促進月間でございます。ここにおける価格転嫁の状況、交渉の状況につきましても、公表を含めてしっかりフォローアップをし、この取組を推進してまいる所存でございます。

岸分科員 質疑を終わります。ありがとうございました。

上野主査 これにて岸信千世君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十八日水曜日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時九分散会


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