衆議院

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第18号 平成29年5月16日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十九年五月十六日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 竹内  譲君

   理事 古賀  篤君 理事 左藤  章君

   理事 坂本 哲志君 理事 田所 嘉徳君

   理事 葉梨 康弘君 理事 小川 淳也君

   理事 奥野総一郎君 理事 輿水 恵一君

      青山 周平君    池田 道孝君

      大西 英男君    鬼木  誠君

      金子めぐみ君    神谷  昇君

      菅家 一郎君    小林 史明君

      新藤 義孝君    鈴木 憲和君

      田畑 裕明君    高木 宏壽君

      谷  公一君    土屋 正忠君

      冨樫 博之君    古川  康君

      前田 一男君    武藤 容治君

      宗清 皇一君    八木 哲也君

      山口 俊一君    山口 泰明君

      黄川田 徹君    近藤 昭一君

      鈴木 克昌君    高井 崇志君

      武正 公一君    稲津  久君

      梅村さえこ君    田村 貴昭君

      足立 康史君    吉川  元君

    …………………………………

   総務大臣         高市 早苗君

   総務副大臣        原田 憲治君

   総務大臣政務官      金子めぐみ君

   総務大臣政務官      冨樫 博之君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  安田  充君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   総務委員会専門員     塚原 誠一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     古川  康君

  金子万寿夫君     八木 哲也君

  菅家 一郎君     青山 周平君

  逢坂 誠二君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     菅家 一郎君

  古川  康君     前田 一男君

  八木 哲也君     田畑 裕明君

  福田 昭夫君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     神谷  昇君

  前田 一男君     池田 道孝君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     金子万寿夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方自治法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)


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     ――――◇―――――

竹内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方自治法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長安田充君及び法務省大臣官房審議官金子修君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋正忠君。

土屋(正)委員 おはようございます。自由民主党の土屋正忠であります。

 このたび政府提出の、地方自治法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 今回の地方自治法の改正案は、内部統制の整備を中心とした監査制度の充実強化と、首長への損害賠償請求、責任の見直しの二本柱であります。

 私は、市長として、住民訴訟の被告と原告と両方経験をいたしましたので、こういう法律案が出てくることが非常に感無量でありますが、そういうことも含めて質問させていただきます。

 今回の改正案で新しい方向として出された、知事及び市区町村長の下に、みずからの内部統制を強化するために、自治体みずから基準をつくることにより監査機能の充実を図るということは、大変結構なことだと思っております。また、国が監査基準の策定に指針を示し、必要な助言をすることも大事なことだと思っております。

 私のところにも、日弁連などがこの点を問題にして提案がございましたが、しかし、現場の実情を考えますと、何らかのガイドラインを出す、こういうことについては結構なことではなかろうか、こんなふうに思っております。

 何といっても、地方自治体といっても、地方公共団体といってもさまざまであります。都道府県も、例えば人口千三百五十万の東京都から五十七万人の鳥取まであるわけでありますし、千七百四十一の市区町村の中では、三百七十二万人の横浜市から百六十八名の青ケ島村まであるわけでありますから、まさに大小、また置かれた立場など種々さまざまであります。中小の市町村にとっては、内部統制のガイドラインをつくるということもなかなか難しい、こういった実態ではなかろうかと思います。そういうことも含めて、今回、ガイドラインを出すということについては大変結構なことだと思っております。

 具体的にどんなぐあいなのかということになりますが、監査委員のあり方でありますが、都道府県では四、五名、市区町村では二名程度の監査委員がいるわけでありますが、どちらかというと、市区町村などにおいては、第一会派が議長をとり、第二会派が副議長をとる、そして第三会派が監査委員を割り当てられるという、言ってみれば処遇的な要素があって、監査機能に特化して適任者が選ばれるということがなかなか議選の場合にはないわけであります。

 では、代表監査委員と言われている学識経験者の問題はどうなるかというと、大体十万人サイズの町だとフルタイムの代表監査委員がいることが多いわけでありますが、しかし、これは行政のOBが圧倒的に多いわけであります。したがって、率直に言いますと、わかりやすい言い方をすると、一期四年の監査委員をもう一期ぐらいやりたいなと思っている監査委員は、なかなか辛口のことを行政に指摘したり提案したりすることは心理的にも難しいということになるだろうと思います。

 議選の監査委員が比較的議会内の会派割り当てみたいな実情で選ばれてくる、片っ方の代表監査委員もそういった、行政を常に意識しながら監査する、こういうことでありますから、なかなか独立した形の、例えば国でいう会計検査院のような役割は到底果たし得ていないわけであります。

 でありますからして、監査委員の独立性を高め、さらに機能を充実強化するという方向に行くことについては全く異議がないわけであります。

 さらにまた、監査の事務体制を考えてみても、例えば十万人規模の地方交付税の標準団体は、恐らく職員は七、八百名だろうと思います。その七、八百名の中で、監査委員事務局に配属されるのは大体四、五名であります。だから、四、五名で地方自治体のやっている教育、福祉、まちづくり、また治安、防災、こういうことについて全部監査するというのは相当困難性があるわけであります。

 そういう実情に鑑みて、地方自治法の第百九十九条には、財務に関する事務の執行及び経営に係る事業の執行、いわゆる財務監査と事務監査が定められているわけでありますが、監査委員の機能を強化していくという方向からすると、この今回の法改正の中にあります専門監査委員の任命に内部統制の整備の観点からITの専門家などを想定するということを言われていますが、同時に、法務や財務のスペシャリストである弁護士、公認会計士、税理士などの専門家を積極的に活用していくという方向があってもいいのではないかと思います。

 また、今回の改正の中で、議会選出の監査委員を必ず置かなければならないという必置規定を緩めて、置かなくてもいいですよ、逆に言えば、それ以外の監査委員を置いてもいいですよということを規定しているわけでありますから、これはやはり時代に合ったもの、このように考えているわけであります。

 今回のいわゆる改正の趣旨について、改めて局長にお尋ねをいたしたいと存じます。

 続いて、住民訴訟における首長への……(発言する者あり)では、答弁お願いします。

安田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案におきましては、監査委員と議会のチェック機能における役割分担を純化する観点から、議選監査委員を選任しないとすることができるということにしております。

 また、監査委員の独立性を確保しつつ専門性を高める観点から、代表監査委員が監査専門委員を選任することができることとしているところでございます。

 監査委員の選任要件は、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関しすぐれた識見を有する者とされておりまして、また、今回設置をいたします監査専門委員の選任要件は、専門の学識経験を有する者とすることとされているものでございます。

 御指摘のございました弁護士等の専門職でございますけれども、これらの選任要件に該当し得るものと考えておりまして、監査の実効性を高める観点から、各地方公共団体の判断によりましてこれらを選任していただくことは選択肢の一つだと考えているところでございます。

土屋(正)委員 今、局長から御答弁をいただき、その方向でぜひ、全体のガイドラインをつくる際にはそういうことも念頭に置いてつくっていただきますようお願いをいたしたいと思います。一言で言えば、行政からひもつきでない、心理的にもひもつきでない監査委員を選んでいくということであります。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 続いて、住民訴訟における首長への損害賠償請求についてお尋ねをいたします。

 日本の首長は、私も二十二年市長を経験いたしましたが、相当強い権限を持っています。私は、日本の首長の権限はアメリカの大統領より大きいんじゃないかと思っております。アメリカの大統領は、御承知のとおり、法案提出権は持っておりません。また、予算編成権も持っていないわけであります。これらの二つの権限は議会に属し、議会に対して、例えば予算教書という形で、こういう予算をつくってくださいということを要求するものでありますが、日本の場合には法制的にも予算編成権を持っております。

 さらに、いわゆる条例提出権というのは、首長と議会と両方持っているわけでありますが、御存じのとおり、いわゆる十万人サイズで考えてみますと、議会の職員というのは七、八人から十人ぐらいですから、当然、衆議院の法制局のような機能はなかなか持ち得ないわけであります。でありますからして、実態は、条例提出権はほとんど首長が握っていると言っても過言ではないわけであります。

 さらに大きなのは、人事権であります。議会で同意を要するのは、副市長や監査委員、教育長などの特別職のごく少数でありまして、それ以外は、一般職として、絶大な人事権を持っているわけであります。

 こういうことを鑑みると、すばらしい市長が出ればよし、しかし、とんでもない市長が出た場合にはえらいことになるというのが全国あちこちであるわけでございます。(発言する者あり)隣で知事がそうだとおっしゃっておりますが、よい知事、悪い知事、普通の知事というのがあるわけでありますから、実際にそういうことを指摘した「暴走する地方自治」という、こういう本まで出ているわけであります。

 でありますからして、住民監査をやって、それを前置として、その後で住民訴訟を起こすということは、いわゆる強大な権限を持っている者に対する牽制球として、権力のチェック・アンド・バランスとして非常に大事なことではなかろうかと存じます。首長の不当な権限行使に対して住民監査請求をやりやすくする、あるいは住民訴訟に対する心理的牽制となる、こういうことが必要だと思います。

 今回の政府提出案には、首長等の損害賠償の上限を条例で定めることを可能とする条項が入っておりますが、この立法の趣旨と、過去の、首長に対する相当高額な損害賠償が命じられた事件もあると思いますので、具体的な事例の上で、このことがどういうふうな方向を持っているのか、改めてお尋ねをいたしたいと存じます。

 その上で、住民訴訟が提起された場合に、原告の住民側が訴訟費用を負担することが実はすごく大変であります。例えば、私は、交際費が不当だといって十何万円の請求をされて、七万円ぐらい負けたんですけれども、そのとき弁護士費用は百万円かかりました。だから、七万円争うために、幾ら友人といえどもお金は払わなきゃしようがないと思って百万円払ったわけでありますが。事ほどさように、住民側についても訴訟を受ける側についても、弁護士費用というのは相当負担になります。

 ですから、私は、将来の形としては、住民訴訟まで行く手前の監査機能を充実させるというのがいいんじゃないかというふうに思いますが、それを含めて、どういうことなのか、この立法の趣旨を御説明いただきます。

安田政府参考人 お答えいたします。

 住民訴訟制度についてのお尋ねでございますけれども、この制度は、住民自身が訴訟を提起することを通じまして、地方公共団体の財務の適正性を確保することを目的とする制度でございまして、不適正な事務処理を抑止する効果を有していると考えております。

 しかしながら、現行制度におきましては、いわゆる四号訴訟の対象となる地方公共団体の長や一般職員については、軽過失しかない場合においても損害の全額について責任を追及されまして、個人として多額で過酷な損害賠償責任を負うことがあるということ、それによって長等の萎縮を招き、円滑な行政運営に弊害が生じているとの見解があるということがございます。

 また、長や職員への損害賠償請求権等を議会が放棄し、長等を救済することにつきましては、最高裁判決における裁判官意見におきまして、権利放棄の判断が政治的関係に影響を受けて客観性や合理性が損なわれ、裁量権の逸脱、濫用になることがないよう求められているということがございまして、こういう課題があるものと認識しているところでございます。

 このため、今回の改正におきまして、条例によって、長や職員の損害賠償責任の範囲を事前に明示し、一律に責任の一部免責を行うことを可能とし、また、住民監査請求があった後に、損害賠償請求権等を放棄する際の監査委員からの意見聴取手続を創設することとしているものでございます。

 長や職員が高額の損害賠償責任を負った事例としてどういうものがあるかということでございますが、例えば、市長がゴルフ場開発不許可処分とされた開発業者から買い取った開発用地の買い取り代金が著しく高額であるとして訴えられて、市長が二十六億一千二百五十七万円の賠償義務を負った、こういう例がございます。

 また、弁護士費用についてでございますが、現行制度について御説明申し上げますと、地方自治法第二百四十二条の二第十二項の規定によりまして、住民訴訟を提起した者が全部または一部勝訴した場合において、弁護士または弁護士法人に対し報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払いを請求することができる、このようにされている条文があるということでございます。

土屋(正)委員 時間が参りましたので要望にさせていただきますが、どうぞこれからも、チェック・アンド・バランスがきちっときいて、暴走する市長がいないように、また逆に首長が余り萎縮しても困るわけでありますから、その辺のバランスを大臣以下がまたごしんしゃくの上、新しい実情に応じた法制度を整備していっていただきますようにお願いして、きょうの質問を終わります。

竹内委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 地方自治法等の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 初めに、ただいまもございましたけれども、地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等につきまして質問をさせていただきます。

 今回の法改正では、地方公共団体の長等の損害賠償責任について、職務遂行上善意で進めたことである、あるいは重大な過失がないという条件のもとで、損害賠償責任を限定して、それ以上の額を免責する条例を制定することを可能にするものでございます。

 具体的には、地方公共団体の長初め委員会の委員、副知事や副市長、また監査委員等に、さらには一般職員等も含めて、免責の最低責任限度額を、国が定めた参酌基準を受けてあらかじめ条例で定めておくことができるとするものでございます。

 そこで、まず、地方公共団体が最低責任限度額を定める上で、国からの参酌基準について、どのような根拠をもとに、どのように考えているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 今回新設いたします地方自治法第二百四十三条の二でございますが、地方公共団体の自主的な判断を尊重し、最低責任負担額の設定を条例に委任するものでございます。

 一方で、条例の制定、改廃に当たりまして、政令におきまして、目安といたしまして、会社法などの規定を参考に参酌基準を設けたい。その上で、過度に低額な最低責任負担額が設定されることがないよう、最低額は設けるということにしているところでございます。

 この参酌基準についてでございますけれども、他の立法例を参考に、年収額を基準といたしまして、職責などを考慮した一定の乗数を乗じて算出した額とすることが考えられるところでございます。

 この、他の立法例を参考とした場合でございますけれども、乗数としては、長については六倍、委員会の委員または委員などについては四倍、監査委員については二倍などが考えられると思っておりますが、具体的には、国会での御審議でございますとか有識者の意見を踏まえまして、政令で規定することとしたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 地方自治体の予算執行等につきましては、住民の代表として選出されました議員で構成される議会の議決に基づいて進められているものと考えますが、ここで、地方自治体の長がその議決に従いさまざまな事業を執行したとしても、住民からの訴訟を受け、裁判所がその執行の中身が不適切であるとの判断をした場合、それによって発生した損害の責任は、地方自治体の長などの執行側の責任として損害賠償責任が問われるということでございます。

 そこで、住民訴訟を受けての、地方自治体の長等による予算執行に対する裁判所の判断のあり方について伺います。

 現行の法制度のもとでどのような形になるのか、また一方、今回の法改正を受けて地方自治体が最低責任負担額を定めた場合とではどのように変わるのかにつきましてお聞かせ願えますでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 まず、現行の住民訴訟においてでございますけれども、長や職員の損害賠償責任につきましては民法上の損害賠償責任と解されておりますので、長や職員に故意または過失がある場合には、相当因果関係のある損害の全額について責任を追及されるということになっているところでございます。

 今回の改正後に、地方公共団体が一部免責条例を制定した場合におきましては、裁判所において、当事者の主張に基づきまして、故意、過失の有無だけではなくて、過失が認められるときには軽過失か否かについても判断されることになると考えております。裁判所が軽過失と判断した場合には、この一部免責条例が適用されまして、損害賠償責任額が一定の限度に限定されることになるものと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 いずれにしましても、今までは、過失があった場合はもう全額だった、軽過失であろうが重過失であろうが一緒だったことが、今回は、軽過失であれば最低責任限度額という形になるということでございますが、先ほど、おおむね年収の六倍の損害ということで、いずれにいたしましても、執行側の責任は非常に重いことを痛感するわけでございます。

 ここで、今回の法改正では、住民監査請求等があった後に損害賠償請求等の放棄に関する議決をしようとするときは、監査委員からの意見を聴取することとしており、このことにより、議会による損害賠償責任の放棄の議決が可能となっているわけでございます。

 この議会による放棄の議決の適正性についてはどのように担保されるのか。この点についてもお聞かせ願えますでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 議会による議決による権利放棄につきましては、平成二十四年の最高裁判決で、議会の裁量権に基本的に委ねられているが、諸般の事情を総合考慮して、これを放棄することが裁量権の範囲の逸脱または濫用に当たると認められるときは、議決は違法となり、放棄は無効となる、このように判示されているところでございます。

 したがって、権利放棄に係る議決を行う際に、議会には、政治的状況に影響を受けることなく、裁量権の逸脱または濫用となることのないよう、客観的で合理的な判断をすることが求められるものでございます。

 そこで、今回の改正では、御指摘のとおり、請求権を放棄するに当たりまして、監査委員から意見を聴取することとし、放棄の判断の客観性や合理性を担保する仕組みを設けることとしているところでございます。また、この場合に、免責条例制度との均衡から、故意、重過失の場合の放棄でございますとか、最低責任負担額を下回るような放棄の議決は、今後は慎重に判断されるものになると考えているところでございます。

 このような判断が求められているにもかかわらず、なお妥当性を欠くような放棄議決がされた場合には、最終的には、住民訴訟を通じて、裁判所によって放棄の妥当性が判断されるものと考えているところでございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 いずれにいたしましても、最終的にはその合理性、妥当性、裁判所で判断をされる、こういう形になるものであることが確認できたわけでございますけれども、実際、ただいまの議会における議決による損害賠償責任の放棄について、具体的にどのような場合を想定しているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 今の時点で全ての具体例を想定できているわけではございませんけれども、例えば、住民訴訟において、多額の責任追及を受けた長が死亡いたしまして、残された遺族が到底支払い切れないような多額の損害賠償債務を負わざるを得なくなったような場合などには、個別具体的な事情を踏まえて、議会の議決による放棄を行うことはあり得るものと考えているところでございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 いずれにいたしましても、放棄というのは極めて限定的、そういったものだと認識をさせていただきました。

 いずれにしましても、地方自治体の予算執行におきましては、執行側の責任は非常に重いということで、慎重かつ適切な予算運営を期待するものでございます。

 続きまして、地方独立行政法人への窓口関連業務等の追加につきまして質問をさせていただきます。

 地方独立行政法人でございますが、事業の効率化による採算性の維持向上と公共的使命の達成を両立するための機関であるとされております。具体的には、水道、電気、ガス、鉄道、路面電車、あるいは、バス、病院、大学、試験研究機関、保育所、特別養護老人ホーム、福祉施設などが今そういう形で進められている現状もあると伺っております。

 ここで、今回の法改正では、地方独立行政法人の業務に、転入届、住民票の写しの交付請求の受理等の窓口関連業務などの申請等関係事務の処理を追加するものと認識をしているわけでございますが、まず、今日の人口減少社会において人的資源が限られる現況下では、厳格な契約条件のもとで、裁量等を使用しない事務的な手続などの窓口業務の民間への委託も既に進められているものと思いますが、地方自治体における窓口業務の民間委託の状況、現状についてお聞かせ願えますでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年四月一日現在で、窓口業務の民間委託導入率は、全市区町村で一五・八%となっているところでございます。内訳を見ますと、指定都市では八〇%、特別区では七八・三%とされておりますが、指定都市、中核市以外の市では二四・六%、町村では三・八%となっておりまして、中小規模の団体には広がっていないところでございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 ただいまの答弁で、中小規模以上の自治体では民間への委託もかなり進められているということが確認できたわけでございます。

 そこで、改めて、きょうは原田副大臣にお伺いいたしますけれども、現行の窓口業務を民間委託する場合には、現状どのような課題があるのか、一方で、今回、独立行政法人が窓口業務を担うことでどのようなメリットがあると考えているのかについてお聞かせ願えますでしょうか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 窓口業務を民間委託する場合の課題といたしましては、一部に審査や交付決定などの公権力の行使にわたる事務が含まれ、一連の事務の一括した民間委託など効果的な委託が困難であること、町村などの小規模自治体では、事務量が少なく単独での委託先の確保が困難であることなどがございます。

 今回の改正案では、地方独立行政法人の業務に公権力の行使を含む窓口業務を追加すること、市町村は、みずから法人を設立しなくても、連携中枢都市圏の中心都市などが設立した地方独立行政法人と直接規約を締結し、窓口業務を行わせることを可能にすることなどを盛り込んでおりまして、これらの課題の解決につながるものといたしておるところでございます。

 地方独立行政法人は、行政から独立した自主的、自律的な業務執行が可能でございまして、業務運営の効率化や住民サービスの向上が期待できるところでございます。

 具体的には、職員の勤務条件や給与などについても、地方公共団体の職員よりも柔軟に設定できる、例えば夜間、休日の窓口対応や繁閑期に応じた人員配置などが期待できるところでございます。

 継続して窓口業務を担うことによりまして、窓口業務に係るノウハウの蓄積、専門性の確保が図られることもメリットと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 今回の法改正によって、地方自治体における窓口業務の効率化等への選択肢もふえると同時に、民間委託ができなかった自治体も、この独立行政法人を活用することにより、具体的な改革が進められる、そういうことを確認することができました。ありがとうございました。

 最後に質問させていただきます。

 決算不認定の場合における長から議会等への報告規定について伺います。

 本来、決算というのは、次の予算に当然反映されるというものであると思うんですね。そういった意味で、今回改正で、決算の不認定を受けて長がこういった措置を講じた場合に議会へ報告することを義務づける、このことは具体的にどのような効果があると期待をして法改正を行ったのかにつきましてお聞かせ願えますでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正でございますけれども、決算不認定となった場合に、長が措置を講じ、その内容について長から報告等を法的に義務づけるということでございますけれども、その措置の内容の適否について議会での議論の俎上にのせることが可能になるなど、決算審議を通じて議会の監視機能がより適切に発揮され、議会と長との関係が活性化されることを期待しているものでございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 時間となりましたので、以上で質問を終わらせていただきます。

竹内委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田(徹)委員 民進党の黄川田徹であります。

 第三十一次地方制度調査会の答申を受けて、さまざまな改正案が提出されております。私の方は、監査制度を中心に、通告に従い順次質問していきたい、こう思っております。

 まず最初に、現行の監査制度でありますが、この概略をお尋ねいたします。

高市国務大臣 地方公共団体の監査制度は、公正で合理的、効率的な地方行政を確保するために大変重要なものでございます。

 監査委員による監査の制度と、外部監査人による監査の制度がございます。

 監査委員は、長と並ぶ執行機関であり、地方公共団体の行政全般に関する監視とチェックを地方公共団体の内部で行う機関としての役割を担っています。例えば、地方公共団体の財務に関する事務の執行、地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査するほか、必要があると認めるときは、地方公共団体の事務の執行について監査をいたします。

 他方で、外部監査人による監査の制度というのは、公務員の地位を有さない、一定の資格などを有する外部の専門家が地方公共団体との契約によって監査を行うものでございます。地方公共団体の外部監査は、包括外部監査と個別外部監査の二つの種類がございます。

 このように、地方公共団体内部の執行機関であるが長とは別の独立した組織、執行機関である監査委員による監査と、地方公共団体外部の専門家である外部監査人による監査というものが相まって、地方公共団体の公正かつ適正な行財政運営を担保することとしております。

黄川田(徹)委員 大臣お話しのとおり、監査は、監査委員の監査と、外部監査人、外部監査と、二つがある。それから、首長部局あるいはまた議会とかありますけれども、同じような形で、独立した機関としてある程度位置づけられておるということでありますね。

 監査委員監査、この監査委員でありますけれども、先ほど土屋先生がお話しのとおり、自治体も規模の大きさに大分差がありまして、常勤の監査委員もあれば非常勤の監査委員、特に町村だと、常勤の監査委員、小さい市もそうですね、いないところが多いわけでありまして、しかしながら、仕事は等しく同じ仕事をやる、財政規模の違いだけだということで、規模の大きさで、新たな、さまざまな財務、事務、違いがあるかと思いますけれども、それでも基本的には同じだ。

 事務局なのでありますが、事務局は、都道府県は必置である、市町村は任意である。しかしながら、任意とはいえ、ほとんどのところが事務局を持っていると思うのでありますけれども、ただ、町村にはないところもある。

 それから、これまた土屋先生がお話しのとおり、議会選出の監査委員でありますけれども、地方議会では、議長、副議長、監査委員と、何か地方議会の三役みたいな形で、たびたび名誉職じゃないのかという指摘も受けているところである。その部分にこの改正案もあるみたいでありますけれども、その意味かどうかは別にして。

 それから、事務局の独立性なのでありますけれども、首長部局から出向されて事務局長なり書記なりで仕事をするわけでありますけれども、人数が足らない。仕事が終わればまた戻ってきて仕事をする。ですから、監査の書記としては厳しい財政監査、事務監査をするのでありますけれども、また自分も戻って監査される側になるということで、なかなかその辺は、いわゆる第三者機関でない、純粋の独立機関でないというところも私はあると思っております。

 その上で、地方公共団体間で監査の目的や方法論等の共通認識が確立されておらず、監査基準に関する規定が法令上ないということにはなっております。そしてまた、独自の監査基準によって、監査委員の裁量によって監査を実施する、そういうことでできるということの現行の法制度であります。

 また一方、都道府県、都市、町村ごとに監査に関する団体がありまして、監査を行うに当たっては、参考となる基準が策定されておるわけであります。しかしながら、この基準の適用は各地方公共団体の判断に任せるというのが現状だと思っております。

 その上で、今般の総務大臣の指針、制度設計なのでありますけれども、具体的にその内容をどのように考えておるのか、お尋ねいたします。

安田政府参考人 お答えいたします。

 監査基準についてのお尋ねでございますけれども、現行の監査制度におきましては、御指摘ございましたように、監査に関する共通認識が確立されておらず、どのような観点で監査を行うか、監査、審査結果に何を記載するかなどについて統一的な考え方がないということがございますので、監査委員の個人任せの監査となっている、あるいは住民から見て客観的に評価することができない、こういった課題が指摘されているわけでございます。

 今回の改正では、監査委員は監査基準に従って監査を行わなければならないというふうにしているところでございます。そしてまた、その監査基準を定めるに当たりましては、監査の質を高めるために、監査に関する統一的な考え方としての指針を総務大臣が示し、これに関連して必要な助言を行うということを明確にすることにいたしているところでございます。

黄川田(徹)委員 これまで裁量でもできるということの現行法なものですから、ある程度の基準ということで、その基準も統一的なものということ。ただ、先ほど私が話したとおり、自治体の規模等全く異なるところがありますので、その部分では、自治体の実情といいますか、もちろん、それぞれの監査委員がそれぞれ自治体で基準をつくるということでありますから、その指針もそれをそんたくして、しっかりとやっていただきたい、こう思っております。

 ところで、指針のつくりもそうなのでありますけれども、自治法で一般的な指導助言ができるということであるにもかかわらず、これに関しては重ねて総務大臣の助言規定を新設しておるわけであります。この部分はどういうことなのでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁申し上げましたとおり、今回、総務大臣が指針を示しまして、必要な助言を行うということを明確にしておるものでございます。

 この指針の策定に当たりましては、監査に携わる実務者や監査に関する専門家などからも意見を聞くことを想定しておりまして、総務大臣の助言も、このような地域の実情や監査実務者の意見などを踏まえた指針に基づくことになると思っております。

 加えまして、この指針や助言には法的拘束力はないものでございまして、各地方公共団体の監査委員は、この指針や助言を踏まえつつ、地域の実情に応じた監査基準を定めることも可能だというふうに考えているところでございます。

 あくまで、総務大臣が助言として行う、その総務大臣の責務を定めたものでございます。

黄川田(徹)委員 確認でありますけれども、「助言を行うものとする。」となっておりますので、読み方によっては義務づけ規定みたいな感じになっていて、地方分権の流れにちょっとさお差すようなといいますか、逆行するような感じもあるのではないかとちょっと思いましたので、確認の意味での質問であります。何か答弁があれば。

高市国務大臣 指針の策定に当たりましては、監査に携わっていただいている実務者の方々や監査に関する専門家の方々からも意見を聞くということを想定しておりまして、総務大臣の助言も、先ほど来先生からお話のありましたような地域の実情ですとか監査実務者の御意見を踏まえた指針に基づくということとなります。

黄川田(徹)委員 それでは次に、総務省に、平成二十四年に地方公共団体の監査制度に関する研究会が設置された。そして、翌年に報告書が出ていまして、地方公共団体の監査を全国的にサポートするためのシステム、監査サポート組織、地方共同法人の創設の必要性が出ております。そしてまた、今般の地方制度調査会の答申にも、地方公共団体の監査を支援する全国的な共同組織の構築の必要性、これも出ているわけであります。

 そこで、監査共同組織の創設、これは今回にはないのでありますけれども、この検討に係る、先ほど地方三団体と言いましたけれども、全都道府県監査委員協議会連合会、全国都市監査委員会、全国町村監査委員協議会、これら三団体との意見交換等はなされていての検討、そして今回の結果なんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 今回の制度の立案に当たりましては、共同組織の問題だけではなくて、監査制度見直し全体につきまして、監査三団体と意見交換を行ってきたところでございます。

 全国的な共同組織についてでございますが、御指摘ございましたように、第三十一次地方制度調査会答申においては、監査基準の策定とか研修の実施、助言、こういったものを行うために、全国的な共同組織の構築が必要とされたところでございます。

 これに関しましては、先ほどの地方の監査三団体からでございますけれども、まず、全都道府県監査委員協議会連合会からは、共同組織の必要性には疑問があり、仮に必要な場合には既存の地方の監査団体などが母体となるべきではないか、あるいは、全国都市監査委員会からは、共同組織のあり方については地方公共団体主導による議論を尽くす必要がある、こういう意見がございました。

 こうした意見などを踏まえまして、今回の法改正では、これは盛り込まずに引き続き検討するということにさせていただいたところでございます。

黄川田(徹)委員 地方三団体からそういう意見があれば、そういうことで、こういうことになったと。

 ただ、監査の研修といいますか、これまでは月例監査とか定期監査とか決算の意見書とか、定型的なものがあったわけでしょうけれども、訴訟の関係の意見であるとか、指針に係る意見であるとか、さまざま質が変わってきていると思いますので、そういう研修の充実とかをしていかないと。

 それから、先ほどお話ししたとおり、事務局も、五年も十年もそこにいるという人はいないわけですよね。ですから、その部分も含めてしっかりと取り組まなきゃいけないんじゃないか、こう思っております。

 そこで、また現状をちょっとお聞きするんですけれども、監査委員の給料とか報酬、これはどんなことになっているんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 監査委員に対する給料、報酬についてでございますけれども、現行制度上、常勤の委員には給料が、非常勤の委員には報酬が支給されるということになっておりまして、それらの額、支給方法は各地方公共団体の条例で定めるということにされているところでございます。

 実情でございますけれども、都道府県・指定都市、一般市、町村の間で給料、報酬にかなりの開きがあるというふうに認識しておりまして、例えば町村などでは、代表監査委員でも一人当たりの常勤の職員の給料、報酬の平均が五万三千円にとどまるというようなことでございまして、かなり都道府県等とは差があるというふうに認識しているところでございます。

黄川田(徹)委員 お話のとおり、監査委員、常勤、非常勤ありますけれども、大分、奉仕の精神でやっていただくというところが間々あるかと思います。

 そしてまた、地方にあっても、例えば代表監査委員、自治体のOBだとしっかりした監査ができるのかというところもあるので、できれば公認会計士であるとか弁護士さんであるとか税理士さんとかという人になっていただければいいんでしょうけれども、この報酬の範囲内でお願いしますというわけにもなかなかいかないところがあるというのも実情だ、こう思っております。

 そういう中で、先ほどお話ししたとおり、監査委員の役割が大きくなって、監査委員の職務にふさわしい給料とか報酬が必要になってくるんじゃないのか、こう思うわけでありますけれども、この法制度改正に伴って、地方公共団体に対する財政措置であるとか、何か検討されたとかというところはあるんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 現在、地方公共団体の監査に要する標準的な経費につきましては、地方交付税により措置されているところでございます。

 今回の監査制度の見直しに伴って新たな財源措置を検討したかどうかということでございますが、現時点では考えていないところでございます。ただ、見直し後の監査の実態を踏まえまして、新たに算定すべき経費が発生するという場合には検討する必要があるものと考えているところでございます。

黄川田(徹)委員 各自治体に何億とかそういう話にはならないと思いますし、それから、条例で定めるとか任意であるとか、選択になっておりますからあれなのでありますけれども、中身を見ますと、監査専門委員を創設できますよであるとか、包括外部監査の実施の頻度の緩和。

 これは多分、都道府県とか政令市とか、これは中核市もですかね、必ずやらなきゃいけない。三年に一回とか五年に一回じゃなくて毎年度やらなきゃいけないということで、そうなると、毎年度やるところは一〇〇%やっているんでしょうけれども、あとは、やってもいいですよということなので、市とか町村だと、幾らかやっているところがあるかもしれませんし、課題があるということでやっているところがあるかもしれませんが、監査専門委員をお願いするにしろ外部監査をお願いするにしろ、それなりのまとまったお金が必要だということになりますね。

 そうなると、せっかく制度上選択肢をふやし頻度を緩和して、五年に一回ぐらいは、では市でもやってみようか、町村でもやってみようかという外部監査ということなのでありますけれども、どうもその辺が、制度を変えてみて自治体がどういう選択をするかとか、そういうものをしっかりと見据えていただきたいと思いますし、このぐらい監査制度を充実強化というのであれば、監査委員事務局なのでありますけれども、現行は、都道府県は必ず事務局を設置しなさい、市町村は任意ですよということになっているんですが、市町村も必置制にして、充実強化を図って交付税措置も強化した方がいいかと思うのであります。この点についてはどうですか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 事務局の必置化ということでございますけれども、やはり特に町村等の場合におきましてなかなか、先ほど御指摘ございましたように、そもそも職員数が少ないということがございまして、実態として対応できるかどうかという部分がございます。

 また、共同設置などの方法もございまして、そういうものも含めてまずは検討していただきたい、このように考えているところでございます。

黄川田(徹)委員 首長、議会、監査委員、住民と全体的なガバナンス、バランスをとるということの制度設計ですから、それが大都市と地方で差があるというのはちょっと私は問題だと思います。それでも、まず、久しぶりの大改正でありますので、動き出して、制度を変えたからこれで終わりということではなくて、必要とされるものでありますから、特に監査の充実はどの自治体にとっても最重要課題だと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、残りの部分、まだ十五分ぐらいありますので、次に移りたいと思います。内部統制体制の制度化の整備に向けた取り組みについてお尋ねいたしたいと思います。

 内部統制体制の制度化の必要性と意義について、まずもってお尋ねいたします。

原田副大臣 お答えをいたします。

 地方公共団体の総職員数は減少を続けておりまして、個人任せによるチェックを行う体制だけでは、複雑多様化した事務処理に適切に対応できなくなると想定されておるところでございます。

 また、地方分権改革の進展による地方公共団体の責任領域や自己決定権の拡大、行政制度の複雑多様化、行革による職員一人当たりの業務分担の増加など、地方公共団体を取り巻く環境も、適正な事務処理を一層難しくするおそれがございます。

 こうした状況を踏まえて、地方公共団体の長みずからが、行政サービスの提供など事務上のリスクを評価、コントロールして、限られた資源の中で事務の適正な執行を確保するため、体制を整備、運用する取り組みを進めるために内部統制の制度化を行うものでございます。

黄川田(徹)委員 今、副大臣から御答弁いただきました。人口減少社会に突入して、それにどうやって対応していくか、そしてまた、自治体運営も最小の経費で最大の効果を上げていかなきゃならない、それから、もちろん、これも地方制度調査会からの答申の上でなのでありますけれども、民間企業の方ではリスク管理ということでさまざま内部統制の整備がされているとか、さまざまある中でだと思っております。

 そこで、都道府県知事及び指定都市の市長は義務づけ、その他の市町村長は努力義務としたわけでありますが、この趣旨はどういうことでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 本来、全地方公共団体に内部統制に関する方針の策定及び内部統制体制の整備が求められるもの、このように考えておりますけれども、地方公共団体にとりまして過度な負担とならないように、まずは、組織や予算の規模が大きく、その必要性が比較的高いと考えられます都道府県及び指定都市に対してのみ義務づけることといたしまして、その他の市町村については、今回の改正案では努力義務とさせていただいているところでございます。

黄川田(徹)委員 小規模自治体には余り負担をかけないようにということのようでありますけれども、しかしながら、この仕組みは、多くの自治体で整備がされることが望まれるわけでありますね。先んじてやること、その中で、動きを見て、中核市あたりもやっていくという形になろうかと思いますが、こういう考え方の部分では共通認識は必要だと思いますね、各自治体とも。

 そこで、これに対する地方六団体の意見は、どういう意見があったんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 第三十一次地方制度調査会におきまして地方六団体からヒアリングを行った際には、内部統制に関しましては、体制整備による事務の増加や費用対効果について考えるべきではないか、あるいは、長が何をすべきか具体的に示すべきではないかなどの御意見をいただいたところでございます。

 これらの御意見も踏まえまして、この三十一次地制調答申では、内部統制への過大な期待により、コストと効果が見合わない過度な内部統制体制の整備につながらないようにすべきであること、これが示されております。

 また、長が具体的に何をすべきかにつきましては、各地方公共団体が地域の実情に応じて取り組むものではございますけれども、今後、先行的モデル事例の紹介などによりまして支援していく、あるいは、必要に応じて、国においてガイドラインの策定などについても検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

黄川田(徹)委員 制度をつくることが目的ではなくて、この制度がどのように運用されていくか、さらに改善されていくかが大事だと思いますので、引き続き、総務省もしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 大体これで終わる時間になるかなと思ったんですが、まだまだ時間がありますので、損害賠償の関係は他の委員にと思っていましたけれども、一つだけちょっとお尋ねいたしたいと思います。

 調査会の答申には、四号訴訟の損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄を禁止することが必要だと明確に示していたわけでありますけれども、今般の、住民訴訟判決確定前の権利の放棄議決の禁止の部分にはなっていないような気がしますが、調査会の答申に対する法案として出すときにおいての検討はどういうことになっていたんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、三十一次地方制度調査会答申では、四号訴訟の対象となる損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄については、長や職員の賠償責任の有無について曖昧なまま判断されるという問題もあるため、禁止することが必要と指摘がされているところでございます。

 しかしながら、その後の政府部内の検討あるいは有識者を交えての検討の中で、住民訴訟の係属中に限って権利放棄を禁止することについては、むしろ住民監査請求中あるいは住民訴訟提起前の権利放棄を誘発することにもなりかねない、こういう課題もありまして、制度化する必要性は少ないものと判断したところでございます。

 権利放棄の議決につきましては、平成二十四年最高裁判決の枠組みに照らしまして、訴訟の中でその有効性が判断されるということに加えまして、今回、地方公共団体の長や職員個人が負担する損害賠償額を限定する措置が設けられることとなれば、より一層慎重な判断が求められる、このように考えているところでございます。

黄川田(徹)委員 監査委員が監査請求権の発生を否定したから住民訴訟の対象となったわけでありまして、意見に客観性とか合理性が担保されないのではないかとちょっと危惧はいたしております。

 それでは、引き続き、私は岩手の選挙区であります、岩手県の決算なのでありますけれども、何度か否決を受けている部分がありましたので、今般、決算の不認定の場合における普通地方公共団体の長等がとるべき対応についてお尋ねしてみたいと思います。

 改正案では、必要と認める措置を講じたときに、その内容を速やかに議会に報告、公表となっております。であるならば、決算不認定の場合の必要な措置の義務化の検討といいますか、措置を講じたときではなくて、決算不認定の場合には必要な措置の義務化をするべきではないのか。こういう検討はなされなかったのでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、今回の改正では、決算の認定に関する議案が否決された場合に、長が必要と認める措置を講じたときには、議会に報告するとともに公表しなければならないということとされておりますが、措置を講ずることまで義務づけることは求めていないところでございます。

 この理由でございますけれども、決算につきましては、議会が不認定とした場合には、既に行われた収入、支出に対して事後的に是正措置を講ずることができるのは極めて限られている、つまり、決算上の係数ミス等の場合に限られるというふうに考えておりまして、必ずしも全てのケースにおいて必要と認める措置を講ずることができるとは限らないということで、必要と認める措置を講ずるかどうかは任意の対応とするということにしたものでございます。

 ただし、次年度以降の予算に不認定とした趣旨を踏まえて対応を反映するなど、将来にわたって措置を講ずる余地もございますので、長が必要と認める措置を講じた場合には報告の義務を課する、このようにしたところでございます。

黄川田(徹)委員 不認定自体で首長の政治的責任が問われているということもあると思いますので、そういうことだと思いますけれども、いずれ、この改正によってどのぐらい効果があるか、ちょっと見てみたいと思っておりますが、これまた、各議会、三団体ありますので、それぞれ何か御意見でもあったのかどうか、お尋ねいたします。

安田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正案につきましては、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会から提出された「地方制度調査会における重点検討項目について」におきまして、「決算不認定の場合の首長の対応措置について」、これが盛り込まれていたところでございます。これにつきましては、第三十一次地方制度調査会の専門小委員会における検討を踏まえた上で、調査会答申が提出されたことを受け、総務省において法案化をしたものでございます。

 なお、その後、法案化した後でございますけれども、法案内容について三議長会にも情報提供をしているわけでございますが、特段の御意見はいただいていないというところでございます。

黄川田(徹)委員 それでは、残り時間も少なくなってまいりましたので、最後に、窓口業務等における地方独立行政法人の活用についてお尋ねいたしたいと思います。

 制度設計をされたわけであります。地方独立行政法人の活用も選択肢の一つということでありますけれども、民間委託の状況等、私なんかは市町村に関心がある議員なのでありますので、特に小規模の市町村でのこの制度設計に対する活用の認識はどれぐらいあるのかなとちょっと思っているんですね。

 町村自体、大きな自治体と違って民間委託が十分に進んでいない現状にあるので、小規模市町村での活用の認識についてお尋ねいたします。

安田政府参考人 お答えいたします。

 総務省におきましての考え方でございますけれども、民間にできることを民間に委ね、捻出された人的資源を公務員がみずから対応すべき分野に集中していくとの観点から、外部資源の活用を進めていくことは市町村にとりまして重要な選択肢の一つであると考えているところでございます。

 窓口業務のアウトソーシングなどの業務改革によりまして、より効率的、効果的に窓口サービスを提供している事例もございまして、各地方公共団体において、直営などの手法と比較して、より適切な手法を判断していただく必要があると考えております。

 しかしながら、御指摘ございましたように、窓口業務の民間委託は、特に中小規模の市町村には十分広がっていない、こういう状況にございます。

 総務省の市町村への調査でございますとかヒアリングにおける状況を取りまとめますと、窓口業務の民間委託の阻害要因といたしましては、一連の業務フローの中に含まれる審査や交付決定等、現行法制上、市町村の職員が行うべきとされる事務を切り分けることが困難であること、また、小規模団体については、業務量が少なく採算性が見込めないため民間事業者の参入が期待できないこと、あるいは地域によっては委託先となる民間事業者自体が存在しないことなどの指摘が多いものと考えているところでございます。

 こうしたことから、今回、窓口業務について、地方独立行政法人に行わせるという新たな選択肢を設けるということを御提案申し上げている次第でございます。

黄川田(徹)委員 残り時間はほとんどないのでありますけれども、それでは、現段階で構いませんので、この制度活用の市町村の見込みといいますか、それから効果について重ねてお尋ねいたします。

安田政府参考人 お答えいたします。

 今回の制度改正案では、地方独立行政法人の業務に公権力の行使を含めた一連の窓口業務を追加すること、市町村は、みずから法人を設立しなくても、連携中枢都市圏の中心都市などが設立した地方独立行政法人と直接規約を締結し、窓口業務を行わせることを可能とすることなどを盛り込んでおりまして、特に中小規模の市町村にとりましては、外部資源の活用に際しての課題の解決につながり得るもの、このように考えているものでございます。

 ただ、もとより、地方独立行政法人の設立それから活用でございますけれども、これは当該地方公共団体の自主的な判断によるものでございまして、ただ、このような課題を抱えている市町村も多いものというふうに考えているところでございます。

 こうした団体におきましては、こうした地方独立行政法人を設立して、これを活用する方が、より効率的、効果的に行政サービスを提供できると判断される場合もあるものと考えております。

 現時点において、市町村の制度活用の見込み数は持っているわけではございませんので、この点は御理解賜りたいと存じます。

黄川田(徹)委員 この制度設計は選択肢の一つということで、利活用できるところはどんどん利活用しなさいということだと思います。

 時間でありますので、終わります。

竹内委員長 次に、武正公一君。

武正委員 おはようございます。民進党の武正公一でございます。

 地方自治法改正について質疑を行わせていただきます。

 お手元に資料がありますが、これは平成十三年自治法改正ですね。ですから、もう平成二十九年ですから十六年前、この総務委員会で私も質疑に立ちました。そのときの法改正について改めて検証をし、今回の改正、特に、長、職員の住民訴訟について中心で質疑を行いたいと思います。

 平成十三年当時、お手元一ページにありますように、それまでは、先ほど土屋委員からあったように、長個人を住民が訴えるという類型でございました。それについては、濫訴、すなわち、原告勝訴率が大体七%、つまり、十三件に十二件は勝てていないじゃないか、わずか七%の勝訴で訴えし過ぎだというようなこと、あるいは、先ほどのお話のように、長が弁護士費用を負担というようなお話もありました。そこで、政府は提出をされたわけでございます。

 ちなみに、弁護士費用については、平成六年の改正で、勝訴、一部勝訴は公費で負担するように、訴えられた自治体の長、職員、法改正をしております。

 何よりも、この平成十三年改正によって、長あるいは職員を個人として訴えるのではなくて、まず団体を訴えるという形態に変わりまして、その団体が負けた場合には、団体が長にその責任を問う、訴訟を行う、職員に対しても。

 あるいはまた談合についても、後ほど触れますが、談合があったということで住民が訴えた場合、訴えられた自治体、しかし、これは自治体側を訴えたわけではないわけですね、談合企業を訴える。これについても、訴えられる自治体側が、裁判を行って、それで負ければ、企業に対してまた責任を問う、あるいは職員個人に対してその談合にかかわった責任を問うというような類型に変わったわけであります。

 まず第一に、濫訴は解消されたのかということでお伺いをしたいと思います。

 二ページをごらんいただきますと、平成十四年からこの十四年半の間の件数が二千二百七十五件、四号訴訟ということでございます。改正前は住民訴訟八百七十八件のうち七百五十四件ということで、五年間ですから、年間百五十から百七十件ということでございました。この十四年半ということでの二千二百七十五件ということですから、件数的には余り変わっていないなということです。

 ちなみに、原告勝訴件数は百十七件ということですから、パーセントでいうと五%。濫訴が七%で、濫訴だから変えるんだというお話でしたが、かえってさらに政府が言う濫訴は進んでいるということもありますが、平成十三年改正の検証、まず濫訴は解消されたのか、大臣、お答えをいただきたいと思います。

冨樫大臣政務官 お答えいたします。

 住民訴訟の件数は、平成十四年の住民訴訟制度改正前の五年間で八百七十八件、改正後の十三年間余で二千八百五件となっております。

 住民訴訟の年平均件数で比較すると、制度改正前が百七十五件、改正後が二百七件となっており、この結果を見る限り、制度改正前後で住民訴訟の件数に大きく変化があったものとは考えておりません。

 以上です。

武正委員 申し上げますけれども、私、副大臣、政務官、答弁要求しておりませんので、大臣にお答えをいただきたいと思います。

 濫訴が解消されていないということで、大臣、よろしいでしょうか。

高市国務大臣 今お答えがありましたとおり、改正前と改正の後を比べてみて、年平均でそれほど大きく数が変わっているわけではないということでございます。

武正委員 おまけに、濫訴というのは、勝訴率が七%です。つまり、十三件のうち十二件は勝てないのに訴えているじゃないかということでしたが、今の二千二百七十五と百十七、四号訴訟、二ページを見ていただくと、五%ということで、それまでの原告勝訴率七%が、さらに濫訴が進んでいるんですよ。

 この点は、大臣、御認識いかがでしょうか。かえって濫訴が進んでいるのではないかという指摘、いかがでしょうか。

高市国務大臣 それを濫訴と呼ぶかどうかということでございます。

 訴訟の件数について、微増はいたしておりますけれども、年平均ではそれほど変わっていないということでございます。

武正委員 時間制約がありますから次に移りますが、これは政府側が国会あるいはまた説明で使った言葉です。濫訴とは、要は勝訴の率が低いと。でも、さらに低くなっているということですから、一体この法改正は何だったのかということでございます。

 次に移ります。

 先ほど触れましたが、企業に対する談合が行われているということで、自治体側と住民が争うというケース、これが、同じく被害を受けている自治体側が住民訴訟を受けて立たなきゃいけない。そして、負けた場合には、その談合にかかわった職員やあるいは企業に対して賠償を求めていくという二段階訴訟、これは非常におかしいなということもやはり平成十三年当時指摘をされたんですが、実態、企業に対する談合についての訴訟、第一段階で自治体側と住民が争うというケースはどのぐらい生まれたのか、御説明いただけますでしょうか。

 大臣、お願いいたします。

冨樫大臣政務官 総務省では、住民訴訟全体の件数は把握しているものの、談合した企業に対する損害賠償請求権などの行使に関する住民訴訟の件数については、特に抽出して把握しておりません。

武正委員 再三申し上げますが、大臣以外求めておりませんので、その点、御注意を再度申し上げます。(発言する者あり)

竹内委員長 質問を続けてください。

武正委員 今お話があったんですが、平成十三年の論点で極めて大事な論点だったんですが、そもそも、この第二段階、例えば、では次に聞きますけれども、失礼しました、もう一つ、ちょっと飛ばしちゃったものですから。

 裁判が二段階化するということで、裁判の長期化につながるということでありましたが、では、実際に長期化につながったのかどうか。

 それから、二段階訴訟で自治体首長が自治体職員に対する求償権を放棄した事例はどのぐらいあるのか。これをあわせて伺いたいと思います。

冨樫大臣政務官 二段階による訴訟の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 四号訴訟で地方公共団体が敗訴した場合、その後の結果としては、全額を個人に対して請求したもののほか、長などまたはその相続人が一部支払った、議会が損害賠償請求権を放棄したなどの事例があるところであります。

 訴訟が長期化しているかどうか把握しておりませんが、いずれの場合にあっても、四号訴訟で地方公共団体が敗訴することにより、財務会計行為の違法性や責任の所在が明らかにされており、地方公共団体の財務の適正性を確保し、不適正な事務処理を抑止するという住民訴訟制度の意義は確保をされております。

 したがって、平成十四年改正前後の住民訴訟件数の比較や、二段階目の訴訟等で地方公共団体の長などが責任追及される事例について網羅的に把握することは、必ずしも必要がないものと考えております。

 そして、もう一つが、二段階目の訴訟等で請求権を放棄した事例というお話でありましたので、お答えをさせていただきます。

 平成十四年の改正後に、四号訴訟において、地方公共団体が敗訴した件数は百十七件あります。

 敗訴した場合は、判決の結果として、地方公共団体は長などに対して責任を追及することが義務づけられますが、その後の結果としては、全額を個人に対して請求したもののほか、長などまたはその相続人が一部を支払った、議会が損害賠償請求権を放棄した等の事例があることは把握しております。ただし、網羅的な調査は実施しておりません。

 以上です。

武正委員 大臣にお答えいただきたいんですけれども、今、質疑で答弁要求していない政務官からお答えがあったんですが、事前に質疑、伺うについて総務省からも聞きましたが、平成十三年自治法改正は、私ども、対案を当時民主党で出しまして、例えば、先ほどの弁護士費用なんかについては、住民が一部、一時取り下げたりして事実上勝訴の例もあるから、こういった弁護士費用も賄うようにしようよと。ただ、やはり非管理職員については対象から外そう、この二段階訴訟じゃなくて、当初の直接訴えられるということを堅持しながら、そのときには監査委員に聞いて、非管理職員に対して賠償を長が求めるというような対案を出して、そして、通常国会で私も本会議の質問にも立ちましたが、本会議でそうした法案が提出をされておりますが、臨時会まで続いて議論するほど、この総務委員会で大変大きなトピックとなったわけであります。

 そしてまた、今回の改正が、議会放棄があって、また、これはやはり政治的な恣意性があるんじゃないかという最高裁判決があって、地制調から諮問があり、今回法改正ということなので、今の答弁要求していない政務官のお話ですと、検証していない、把握していないというお答えなんです。

 自治法の改正を政府として提出される。今回、日弁連を初めやはりさまざま、これまでの故意、過失が、善意あるいは重過失、善意並びに重過失を除く、軽過失であればというふうに言っているんですが、これについてはさまざま異論が出ている中で、平成十三年改正の検証がされていないということについて、大臣として、法案提出者としてどのようにお考えか、御所見を伺いたいと思います。

高市国務大臣 平成十四年改正でございますが、機関としての地方団体の説明責任の明確化、地方団体の長などの訴訟負担を初め各種負担の軽減などを目的として行われました。

 談合業者への損害賠償請求などについても、現行制度においても、住民訴訟敗訴後、地方団体というのは損害賠償請求権を行使し得るものでございます。

武正委員 質問に答えていないんですね。

 二段階化による長期化につながったのかどうか、これについては調べていませんと。また、談合について住民が争うケースはどのぐらい生まれたか、調べていませんと。求償権放棄については、議会の権利放棄については知っていますけれども、具体的に事例については把握しておりませんという答えなので、これでは余りにも不誠実ではないですか、自治法の改正を求める政府の法案提出者としていかがですかというふうに伺っているんですが、お答えをいただきたいと思います。

高市国務大臣 四号訴訟で地方公共団体が敗訴した場合の事例としましては、二段階目の訴訟などで、全額を個人に対して請求、長などまたはその相続人が一部を支払い、議会が損害賠償請求権を放棄といった事例がございます。

 いずれの場合でも、四号訴訟で地方公共団体が敗訴するということによって、財務会計行為の違法性や長などの責任の所在が明らかにされており、地方公共団体の財務の適正性を確保し、不適正な事務処理を抑止するという住民訴訟制度の意義というのは確保されております。

 したがって、平成十四年改正前後で、先ほど来お話があります住民訴訟件数を比較するとか、それから、二段階目の訴訟などで地方公共団体の長などが責任追及される事例について網羅的に把握するということについては、必ずしも必要がないと考えております。

武正委員 この十四年改正、十三年国会での議決ですけれども、そのときにはこの国会で、やはり住民側の訴訟、これが、例えば先ほどの弁護士費用については、今度は自治体側が組織として応訴するわけですので、弁護士費用も全部、それから人員も全部、自治体側がそろえられるというような改正をしているわけです。

 後に賠償額についての制限のところでも話が出ようかと思いますが、会社法などでは、軽過失だから簡単に責任を免れるほど甘い運用ではないとされているんです。

 例えば、取締役や執行役が、株式申込書の用紙、新株引受権証書、新株予約権申込書、社債申込書、もしくは新株予約権つき社債申込書の用紙や目論見書などの重要な事項に虚偽の記載、記録をした場合や、虚偽の登記、公告をした場合などについては、虚偽の情報開示をした場合は、重過失がなくても第三者に対して責任を負う、軽過失でも責任を負うということにしておりますし、また、これらは、役員がその記載、記録、登記または公告などについて注意を怠らなかったことを証明できた場合に限って責任を免れることができるという、立証責任が求められているということなんです。

 ですから、後ほど話がある国賠法も、善意であればいい、あるいはまた重過失でなければ、軽過失であれば公務員に対して求償責任はないんだというふうにいいますが、国賠法一条一項ではやはり要件は故意、過失なんですね。民法の七百九条の不法行為に倣っているわけなんです。

 ですから、ここでなぜ長及び職員は軽過失でいいのかというふうに変えるかということは、極めて大事な論点。本当にまたこれで、先ほど同僚議員からも住民訴訟の意義は認めておられますよ、その中での法案提出ですから、これについては極めて政府側に説明責任がある、平成十四年改正の検証は必要だというふうに思います。

 総務大臣、改めて、住民訴訟の意義についてはどのようにお考えでしょうか。

高市国務大臣 平成十四年の住民訴訟制度の改正は、第二十六次地方制度調査会の答申を踏まえ、住民による監視機能のさらなる充実を図るため、地方公共団体の説明責任の強化や訴訟審理の充実を行い、地方分権の時代にふさわしい制度として、住民訴訟制度を再構築したというものでございます。

武正委員 もう一度ちょっとお答えいただきたいんですが、大臣のお言葉で伺いたいんです。住民訴訟について評価をされているか、されていないのか。

 今回、また見直しをされて、ある面、長、職員の責任を軽過失であれば問題としないというふうに軽くするわけですよ。ということは、今の住民訴訟制度は問題が多い、そして、長やあるいは職員が過度に責任を問われているという御認識なのかどうか。

 また、先ほど触れたように、濫訴はかえって法改正でひどくなっているわけなので、そうした中で政府として提出するわけですから、今の住民訴訟について、大臣としての御認識を、見識を伺いたいと思います。

高市国務大臣 住民訴訟制度というのは、地方公共団体の財務の適正性を図るということを目的とするものでございます。違法な財務会計行為に対する是正効果や抑止効果を有しております。住民訴訟制度には意義があると思っております。

 今回の見直しですけれども、軽過失しかない場合にも違法な職務執行行為を行った長などが一定の範囲で損害賠償責任を負う点では従前と変わりませんので、違法な財務会計行為の是正や抑止という住民訴訟の機能というのは従前と変わらず発揮されるものと考えております。

 ただ一方で、個人の責任追及のあり方ということについて、現行制度について、御承知のとおり、一定の課題が指摘されています。きょう委員が御提出いただいた資料の中にも、長が破産をされたということ、それから、お亡くなりになって御遺族が大変重い責任を負っていらっしゃるといった事例も掲載されております。

 今回、ガバナンス全体の見直しを行うという中で所要の改正を行いますので、そのために地方自治法改正案を提出して、御審議をいただいているということでございます。

武正委員 資料四ページのことを言われていると思うんですが、これは総務省から、長や職員に対する高額の損害賠償が命じられた事例、十二事例ですね。十二年間で十二事例ですから、年間一件ということですし、先ほど総務省から会社法の参酌を参考にしてということで、六倍、四倍、二倍というお話がありましたが、例えば知事の年の給与総額二千二百万ということでいきますと、六倍ということになりますと一億三千二百万ということもあるということでありますので、果たして一億を超えるということが高額なのかどうか。

 会社法参酌との比較、これは国会で御論議をという答弁がありましたので、私は、やはりこの点も、額だけでなくて、長を直接訴えられなくなったという中で、しかも濫訴がかえってふえているという中で、さらに、軽過失を除くというような今回の改正、国賠法に倣え、あるいは会社法に倣えで本当にいいんですかといったところが問われるというふうに思います。

 今お話があった、先ほど総務省から御答弁のあった二十六億円、賠償額ですが、これは京都市のポンポン山事件、市長が議会などの反対を押し切ってペンペン草の生える山を高額買収した事案、極めて限られた件であります。また、よく平成十四年改正の根拠ともされた日韓高速船訴訟、あるいはチボリ公園事件訴訟、最終的に長側が勝訴しております。

 そのほか、入札で随意契約した高額購入事案が少なくない。しかも、随意契約の要件を満たすかどうか、法的にきちんと吟味していなかった事例ばかりである。こういったところが対象外になっていく可能性がある法改正というのは、極めて懸念を持つわけでございます。

 その四ページをごらんいただきますが、それでは大臣、どうでしょうか。今回法改正されて、例えば、神戸市ほか四件は議決により権利放棄ですけれども、こういった十二件は、軽過失は除くという今回の法改正でこれが施行されると、こういった事例は対象外になってしまうのかどうか。これは非常にわかりやすい例だと思うんですよ、先ほど大臣も言ったように、この十二例というのは。それはいかがでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

高市国務大臣 現行の地方公共団体の長などに対する四号訴訟では、過失の認定について、軽過失と重過失が分けられているというわけではなくて、今回の改正によってその対象となる事例がどの程度あるかということについては、具体的に申し上げることはできません。

 なお、判例におきましては、浄水場用地の土地購入に際して、その判断に至った諸情勢に鑑み、直ちに町長の帰責性が大きいと判断することはできないとされた事例があるということは承知をいたしております。

武正委員 そういうお答えを総務省はされるんですが、これはこれから参考人、あるいはまた審議を重ねていくこの委員会に、この法改正によって、軽過失は除くという法の趣旨、もちろん全部ではありませんが、趣旨でどう変わるのか、これはやはり政府として説明責任があると私は思いますよ。

 だから、ぜひそれは委員長に御協議をお願いしたいんですが、理事会等でも協議をお願いし、政府側には、ぜひ事例をやはり出していただきたい、どう変わるのか。

 例えば、こういう十二例は直接言及できないのであれば、こういうケースだと対象外になり得るというようなことを出していただかないと、なかなか審議が深まらないと思いますので、これは、委員長、御検討をお願いしたいと思います。

竹内委員長 理事会で協議します。

武正委員 それでは次に移りますが、私は、やはり故意及び過失、これを下げてしまうということは、今言った、善意であれば対象外、あるいは重過失でなければといったことは、極めて懸念があるということを再度申し上げておきたいと思います。

 その上で、次の資料を見ていただきたいんですが、先ほど来、政府あるいは大臣が触れておられる外部監査制度、これも、もちろん監査委員の権限を強化するというのは私は結構かなというふうに思います。

 ただ、私も県議会を経験しておりますが、地方議会経験の先生方も多いと思うんですが、私、議選監査委員は務めたことがありませんが、そうした地方議会の皆さんに聞きますと、監査委員になると結構大変なんだ、一カ月間、決算、あるいはまた監査、あるいは決算のための議会、こうしたところに缶詰になって大変だよと。ただ、やはりそれで包括的に、自治体側のさまざまな、ある面、議会としてのチェック機能が高まるんだというようなことを言っておりましたので、今度の議選監査は選択制というのが、果たして、地方議会側の意見はちょっと私も承知をしておりませんが、本当にこれでいいのか、二元代表制の機能が弱まるのではないのか、懸念をいたします。

 その上で、この外部監査制度、資料五ページを見ていただくとおわかりのように、実は、外部監査制度の契約件数というのは大体百件前後で、導入されても余りふえていない。

 外部監査の導入のときに、六ページにありますように、弁護士、公認会計士、実務精通者、特に税理士を外部監査人に加えるようにというようなことも、これはかなり当時、与野党、議会から強く政府に働きかけた経緯もあるんですが、この包括外部監査人、税理士は合計五名、百十八名のうちの五名、四・二%ということも、あるいは個別外部監査人は一名というようなことも含めて、余り進んでいないというか採用されていないなということもあります。

 この外部監査制度、今回の法改正では直接言及ありませんが、外部監査人、あるいは包括外部監査人、個別外部監査人、やはりこの制度をもっと自治体が使いやすくするということも極めて大事な点ではないかと思いますが、大臣、これについて御所見を伺いたいと思います。

高市国務大臣 外部監査というのは、監査委員による監査を外部の目により補完するという観点から有用なものでございます。

 そのため、改正案では、外部監査のうち、包括外部監査について、条例により任意に導入できる地方公共団体に対して、毎会計年度必ず実施することを義務づけず、条例で実施頻度を定めることができることとするということによって、その導入を促進するといった改善を図っております。

 ただ、外部監査というのはあくまでも監査委員監査を補完するものでございまして、外部監査のあり方の変更については、今回の監査委員による監査の充実強化の成果を踏まえた上で検討してまいりたいと存じます。

武正委員 最後に、第三セクターについて伺いたいと思います。

 七ページ、八ページ、ごらんをいただきたいと思います。第三セクター等に対する地公体の損失補償等の推移ということで、平成二十一年からの集中改革期間、地方債を発行して、第三セクター、特に土地開発公社などの解散などが進んだという結果、損失補償額は五兆円減額になっております。しかし、依然七兆円を超える損失補償残高、債務保証残高、借入金残高がございます。

 割に、これまで解散などの手続を踏んだところは、ある面、いろいろ問題があった。例えば横浜市なんかは、千三百億地方債を発行して、この改革期間に土地開発公社を解散しているんですね。横浜市土地開発公社、平成二十五年度の許可で、一千三百八十三億四千五百万円、二十年での返済。あるいは、川口市も三十年返済で二百三十二億でやっておりますが、こういったところはまだいいんですけれども、実は、残っているところが結構問題があるんじゃないのか。この改革期間に解散とかできなかったところ。

 この八ページを見ていただきますと、第三セクター等改革推進債を発行して、先ほどの横浜市だったり、まあ土地開発公社は解散に至っているわけなんです。土地開発公社の許可額は二十八年度までで累計六千二百二十億ということです。既に報道がありますが、この六千二百二十億は簿価であったということで、実際のところの評価額は半分ということで、公金投入が半分近く損失額になっているという指摘があるんですが、この点についての御見解。

 そしてまた、こうした第三セクターの解散が、改革推進債を活用した場合、これまで行われてきたところはまだしも、これから解散などの手続をしなければならないときに、今回の地方自治法改正で、住民訴訟が提起された場合に、これも先ほど類型を示してくれという話にもかかわりますが、どうなるのか、どういう影響が出るのか、これについてあわせて伺いたいと思います。大臣、お願いいたします。

高市国務大臣 土地開発公社の長期保有土地は、公社経営や地方公共団体の財政にも影響を及ぼす可能性がありますので、基本的には、設立出資者である各団体の責任において健全化が図られるべきものでございます。

 総務省では、土地開発公社を含む第三セクターなどの抜本的改革を集中的に推進するために、三セク債の発行を認めてまいりました。

 三セク債は、金融機関への弁済ができなくなった土地開発公社について、設立団体が地方債で調達した資金で債務保証の履行をできるようにすることで、その後の金利負担などの増加を抑えるということとともに、土地開発公社の整理に当たり、設立団体が一時に負担することが難しい負担を平準化することを可能としています。

 設立団体が土地開発公社の整理に伴って受けた土地の簿価と時価の差額があり、損失が出ているのではないかという問題意識でいらっしゃると思うんですが、そもそも三セク債は、土地開発公社から受けた土地により起債額全額の償還を賄うことを想定したものではなく、簿価と時価との差額については地方団体が負担するということを前提に、土地開発公社の整理を可能とする仕組みでございます。

 それからまた、今後、法律が改正されてどういうふうに変わっていくかということのお尋ねだったんだと思いますが、土地開発公社や第三セクターとの間で締結した契約や地方債の発行、損失補償契約の履行行為などの財務会計行為が違法となるのかどうかということについては、個別の契約内容、事案などに応じて判断されるもので、今回の地方自治法改正の前後で変わるものではございません。

 また、過去の土地開発公社等の土地取引に関する住民訴訟が提起された場合も、今回の自治法改正の前後で、その責任追及の範囲については、基本的に変わるものではございません。

武正委員 最後のケースもあわせて、ぜひ、この審議の中で議論を深掘りして、より具体的に政府からの説明、そしてこの委員会での理解が深まるよう、政府としての取り組みをあわせてお願いして、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

竹内委員長 次に、梅村さえこ君。

梅村委員 地方独立行政法人法改正案について質問いたします。

 本法案は、第二十一条五号に業務の範囲を追加し、地方独立行政法人の業務に新たに窓口関連業務を追加するものですが、お手元にある総務省資料の改正概要にあるフローチャートのように、これまで民間委託できなかった公権力の行使部分、つまり、このフローチャートでいえば、青の部分を赤にしていく、審査、決定などの業務も含め、一連の窓口業務を一括して地方独立行政法人ができるようにするものだと聞いております。

 そこで、まず伺いますが、どうして公権力の行使業務が地方独立行政法人だと可能になるのか、確認させてください。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、市町村の窓口業務には審査や交付決定等の公権力の行使が一部含まれておりまして、これらを含めて一括して外部の主体に取り扱わせるようにするためには、法律によって授権する仕組みが必要でございます。

 今回、これを地方独立行政法人において行うということにしているわけでございますけれども、それについて述べさせていただきますと、地方独立行政法人は、組織、運営の根幹につきまして地方公共団体の関与が制度として担保されておりまして、地方公共団体の責任において組織、運営の適正を確保することが常に可能であるというふうに考えていることがまずあります。

 その上で、今回の制度設計におきましては、地方独立行政法人が行うことができる窓口業務を、定型的な業務として法律の別表に掲げたものに限定いたしまして、かつ、市町村の強い関与のもとに業務を行う、こういう制度設計をとったわけでございます。

 これらの措置を講ずることにより、公権力の行使に当たるものを含めた市町村の窓口業務を、一括して地方独立行政法人に取り扱わせることができる、このように判断したところでございます。

梅村委員 今の御答弁にあったように、今まで民間委託ではできなかった一連の窓口業務を、地方公共団体から一括して丸ごと切り出していく、そういうことを可能にするものだというふうに思います。

 安倍内閣は、骨太方針二〇一五で、窓口業務のアウトソーシングなど汎用性のある先進的な改革に取り組む市町村を二〇二〇年度までに倍増させるということを述べられております。

 そこで、確認いたしますが、先ほど委員の質問の中で、ただ選択肢の一つであり、押しつけるものではない、そういう御答弁があったと思いますが、それでいいのかどうかということを一つ確認させていただくのと、あと、あわせて、定型的な業務だから可能になるということだったが、逆に、今回該当しないとされるのはどんな業務なのかについて、お答えください。

安田政府参考人 お答えいたします。

 まず、選択肢の一つかどうかということでございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、あくまでこれは選択肢の一つでございまして、具体的にこの制度を活用するかどうかは各市町村が判断すべきものと考えているところでございます。

 定型的でない事務として除外されるものは何かという、お答えでございますけれども、御指摘のように、今回の制度設計におきましては、地方独立行政法人は、窓口業務のうち定型的な事務として法律の別表に掲げたものにつきまして、公権力の行使にわたるものを含めて行うことができるとしているものでございます。

 定型的な事務というのは一体何かということから申し上げさせていただきますと、客観的、外形的に一定の手順で処理が可能なものであって、内容について、裁量性のある判断の余地が小さいもの、こういうものを指すものと私どもは考えているところでございます。

 このため、まず、法律の別表からは、非定型的な事務が除かれる。例えば、生活実態の確認が必要となる生活保護の受給申請の受理でございますとか、人の身分関係を創設し、あるいは判例、法規等の専門的知見の理解が必要である戸籍の届け出の受理、こうしたものは、市町村長の指揮監督権のもとで職員が引き続き処理することが適切であるため、除外しているものでございます。

 また、別表に掲げたものであっても、その一部には非定型的な事務が含まれるものがあることから、その詳細を総務省令に委任しているところでございまして、例えば、住民基本台帳に関する事務については、記載事項の調査のうち、申請書等との突合による単純な字句の修正は地方独立行政法人の対象業務となると考えられますけれども、一方で、その者の居住実態も含めて住所について調査を行って職権により記載する事務につきましては、裁量性のある判断の余地が大きいものでありますので、地方独立行政法人の対象事務から除外することを想定しているところでございます。

梅村委員 これは大変大切なところだというふうに思います。

 今御答弁があった点については、公権力を行使する業務であっても定型的業務だとして切り出していく一方で、総務省令の中で個別の事案については検討もしていくということがあったかというふうに思います。

 それでは、例えば戸籍について聞いていきたいと思います。

 この間、二〇一四年に東京都足立区において戸籍法違反や偽装請負の実態が明らかになり、委託した相当部分を直営に戻さざるを得なくなった事例があると思います。

 このもとで、この二年間ほど、法務委員会の中では我が党の仁比聡平参議院議員も質疑に立ちましたが、二〇一五年三月三十一日に、法務省民事局民事第一課補佐官名の事務連絡「戸籍事務を民間事業者に委託することが可能な業務の範囲について」ということで、戸籍事務の民間委託に関するQアンドAというものが出されました。ここでは、公権力の行使、検認、判断が必要な業務は、民間委託はだめだ、自治体の職員がみずからやること、さらに、市町村の執務能力が低下することのないよう十分な対策を講じるようにということで、かなり詳細な注意事項を指摘してきた経過があるというふうに思います。

 しかし、今答弁があったわけですけれども、今回の法改正案を読む限りでは、こうした例えば戸籍業務をめぐるこの間の議論の到達が今後どうなるのかということは非常に曖昧で、先ほどの御答弁のように、総務省令、今後の協議の結果、何ができて何ができないのかということを記述していくということでは、余りにも重大な戸籍をめぐる議論の経過との関係でいえば、このまま本当に法案を通していいのか、本当に公権力にかかわる部分がもしかしたら可能になっちゃうんじゃないか、これは残されるのか、そういう積み上げてきた法務委員会での議論が、今後、窓口業務でどうなっていくのかというのがやはり私はさっぱり見えないものだというふうに思うわけですね。

 そこで、さらに総務省に聞いていきたいと思いますが、QアンドAで示されてきた、公権力などにかかわって自治体職員がやるべきだとされた戸籍業務、例えば、私も職員の方に聞いたんですけれども、交付は、先ほどおっしゃった一定の手順で行われるような作業でもなくて、裁量性の余地が小さいものという定型的業務にとどまるような実務じゃないと思うんですね。本人であればいわゆる証明書を持ってくるというのはあると思いますけれども、第三者請求、弁護士さんだとか行政書士だとかいろいろ、遺産の問題とかさまざまな請求があると思います。

 私も読ませていただきましたけれども、そういうQアンドAを読むと、外形的に一定の手順、裁量性の余地が小さいものということでは含まれないものがたくさんあると思います。こういう点は、そのまま地方独立行政法人に移行するのではなくて、このまま、民間委託というか地方独立行政法人の委託はだめだという判断を省令でされていく可能性はあるのかどうかについて、確認したいと思います。

安田政府参考人 お答えいたします。

 まず、戸籍についてどういう事務を別表に掲げるかということにつきましては、立案段階から法務省さんの方と協議させていただきまして、別表の書き方といたしましても、「戸籍法による戸籍若しくは除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍若しくは除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書の交付に関する事務であって」という形で、まずここで一段階絞り込んでおります。

 つまり、住民基本台帳法の方は少し広目な書き方になっておりますが、戸籍につきましては、先ほど申し上げましたように、人の身分関係を創設し、あるいは判例、法規等の専門的知見の理解が必要な事務がかなりあるということでございますので、まず法律段階でも絞り込んでおります。

 かつ、今後、具体的に省令を定めるに当たりましては、その別表に掲げたものであっても、一部には非定型的な事務が含まれるものはあると考えておりますので、総務省令を定める際に、関係府省と協議を行った上で事務の範囲を定めるということになるものと考えているところでございます。

梅村委員 では、答弁として確認させていただきたいと思いますが、一部にはそういうものがあるということで、今後、検討をきちんとしていくということでよろしいということですね。

安田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま申し上げましたとおり、別表に掲げられたものであっても、一部には非定型的な事務が含まれるものはあるものと考えておりまして、今後、関係省庁と協議の上で検討してまいりたいと考えております。

梅村委員 今御答弁があったように、この戸籍については、いろいろ議論を経て、今の到達があると思います。そもそも、戸籍業務は、人の親族的身分関係を登録、公証するという極めて重要なものであり、住民の人権やプライバシーにかかわるものですので、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そこで、今度は法務省に聞きますが、非常に、この間、成り済ましの犯罪、しかも重大犯罪が後を絶たないと思います。例えば、この間、殺人事件があったときに、容疑者が被害者から奪った健康保険証を悪用して戸籍謄本を取得して、この謄本を使って旅券を申請し、交付をされて、いろいろ犯罪を犯す、成り済ましだとか、そういうことというのは結構あるというふうに思います。

 こういうことを踏まえると、公的権力を行使するという認識を強く持った戸籍窓口業務が一層大事になっているというふうに思いますが、法務省としても、この間積み重ねてきた議論をしっかりと今後も踏まえていく立場に立つかどうかというのを御答弁お願いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 戸籍謄本等の交付請求につきましては、委員御指摘のとおり、個人情報の保護が必要とされております。

 そういう情勢に鑑みまして、平成十九年に、それまでのいわゆる戸籍公開の原則を見直しまして、戸籍謄本等を請求することができる場合を制限する旨の戸籍法改正を行ったところです。

 同改正におきましては、現に請求の任に当たっている者の確認を初めとする戸籍謄本等の不正請求を防止するための仕組みを設けたところでありまして、これらの点について市区町村に対する研修等を実施するとともに、日本行政書士会連合会等の関係団体に対して、戸籍法施行規則に定める統一請求書の適正な管理等について周知を要請し、統一請求書を紛失した場合には、報告を求め、全国の市区町村に周知するなどの取り組みを行っているところでございます。

 このような戸籍をめぐる関係諸法令の趣旨とかあるいはこれまでの御議論を踏まえて、今回の改正についての省令の協議においても検討してまいりたいというふうに思います。

梅村委員 今御答弁がありましたように、二〇〇七年の戸籍法の改正、これは大変重要なことだったというふうに思います。それまで公開制度だった、そして個人情報の保護も図ろうということ、また、記載の真実性を担保するために本人確認をしっかりとやっていくことを含めて強化をされたというふうに思います。そうなってくると、より厳密な窓口対応が必要だというふうに思います。そして、職員の執務能力が極めて高いものが、改正によって一層求められてきた経過があるというふうに思います。

 そこで、総務省に改めて確認しますが、地方独立行政法人の窓口業務は誰が担うことになるのか。身分ですね、今窓口業務にいらっしゃる方々が、地独法の五十九条などに基づけば、身分が変わっていくと思いますが、そこを確認させていただきたいと思います。

安田政府参考人 お答えいたします。

 地方独立行政法人の職員でございますけれども、これはさまざまなケースがあると思います。

 一つには、新たな地独法を設立した際に、新たな職員を雇い入れるというケースもあると思いますし、今御指摘ございましたように、現に窓口業務に従事している職員が地独法法の規定に基づいて移行するというケースもあるというふうに考えております。

 この地独法法の規定によって移行する場合には、別に辞令を発せられない限り、特段の手続を経ずに当該地方独立行政法人の職員になるもの、このようにされているところでございまして、市町村の職員から地方独立行政法人の職員になる道がここに開かれているということでございます。

梅村委員 今の御答弁ですと、新たな職員を雇う、もしくは、地独法五十九条に基づけば、特段の辞令がない限り、今窓口で任期の定めのない常勤職員として窓口業務をやっていらっしゃる方が、そのまま横滑りで地方独立行政法人の職員になるということでよろしいかというふうに思うんですけれども、そうなった場合、先ほどの御答弁で、効率化の柔軟的な対応が可能だというもとで、また、今回の独立行政法人は、経費、事業年度ごとに業務の改善、効率化の目標を目指すわけですから、いわゆる職員の賃金が下がったりとか非正規化が進む可能性も否定はできないものだというふうに思います。

 そうなってくると、本当に専門的で高度な戸籍業務が担保されるのかどうか、それが一つ大きな問題としてあるというふうに思いますし、また、そのまま移行して移ってしまうのではなくて、現に働いていらっしゃる方が、事前に聞きますと、二万八千六百九十五人、窓口関係では戸籍中心にいらっしゃると聞きましたので、やはりそういう人たちの働く環境が今後どうなっていくのか。

 機械的には移行させない、しっかりと議論を、働く人たちの声を聞いていく、こういうことで、もし選択する場合も必要だと思いますが、いかがでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 窓口業務を行う地方独立行政法人には、市町村において、進行する人口減少、高齢化などの諸課題に対応するための政策の企画立案に集中的に人的資源を投入することができるように活用するということも想定されているわけでございまして、この場合には、移行するのではなくて、その方々は別の部署に移っていく、こういうケースもあるというふうに考えております。

 もう一つ、どういう勤務条件になるのかということでございますが、地方独法になりますと、特定地方独法におきましては公務員法が適用になりますが、一部、適用除外の項目がございまして、勤務条件、給与等については基本的に労使交渉で決められるということになります。一般地独法でも当然そういうことでございまして、基本的に、勤務条件等についてはそういう形で、労使の話し合いの中で決まっていくもの、このようになるものと承知しているところでございます。

梅村委員 非常に専門的で重要な業務をやっていらっしゃる方ですので、そういう方々の執務能力を高めるためにも、やはり待遇は下げてはいけないということを訴えたいというふうに思います。

 最後に確認したいんですが、それでは、独立行政法人における個人情報の保護、国の方では法律がありますが、地方独立行政法人でどうなっているのか、また、情報開示請求はどのようにされるのか。調査によりますと、民間委託が進んでいない最大の要因が、個人情報が守れるかどうかというのを自治体の方が心配しているという調査だというふうに思いますので、この点を確認させていただきたいと思います。

安田政府参考人 お答えいたします。

 まず、地方独立行政法人は、市町村と同様でございますけれども、行政機関個人情報保護法の適用の対象外でございます。

 具体的には、各地方公共団体については、それぞれ条例で定めるところによりまして個人情報の保護が図られておりまして、地方独法につきましても、そういう形で、ほぼ全ての地方独立行政法人について個人情報保護に関する規定が設けられているところでございます。

 あわせて申し上げますと、地方独立行政法人の役職員には、地方公務員と同様の秘密保持義務が課されておりまして、こういう形でも担保されているところでございます。

梅村委員 住民や自治体自身の不安が、こんな大事な業務をしっかりと住民の安心を守りながらできるのかという不安が大変大きいと思います。

 安倍内閣の進める公的サービスの市場化のもとで、憲法に基づく地方自治、地方公共団体の福祉の増進の役割を後退させてはならないことを訴えて、質問を終わりたいと思います。

竹内委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 私の方からは、地方自治法の改正案について、その中で住民監査と住民訴訟について質問をいたします。

 住民監査請求権、住民訴訟提起権は、自治体の構成員である住民の利益を保障するために、法律によって認められた参政権の一種であります。

 その意義については、最高裁判所の一九七八年三月三十日の判決においても、次のように述べられています。「財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もつて地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたもの」とされたところであります。

 地方自治体においては、たびたび、職員の過剰な接待であるとか公金の不正支出、あるいは不当な売買契約、違法入札など、数多くの地方公共団体において財務会計上の違法行為がありました。これに対して、住民みずからが住民監査制度や住民訴訟制度を通じて是正させてまいりました。行政の執行に緊張感を与え、これまで、地方財政の健全化や適正化、そして無駄遣いの防止に多大な貢献をしてきたところであります。

 そこで、高市大臣に伺います。

 住民監査や住民訴訟というのは、こうした重要な意義を持っているものと考えますけれども、大臣の受けとめはいかがでしょうか。

    〔委員長退席、坂本(哲)委員長代理着席〕

高市国務大臣 住民訴訟制度は、住民自身が訴訟を提起することを通じて、地方公共団体の財務の適正性を確保することを目的とする制度でございます。

 不適正な事務処理の抑止について一定の役割を果たしてきたものだと認識をしております。

田村(貴)委員 改正案の内容について質問します。

 改正案では、地方公共団体の長などが負う損害賠償の限度を政令で定め、自治体はそれを参酌して、その額を条例で定めるというものであります。その政令の基準は、会社法、独立行政法人通則法などを参考にして決めるというふうにされています。

 しかし、それは、自治体の首長などに対する、違法な財務会計行為に対する是正効果や抑止効果といったものをなくしてしまわないか、そういう懸念があるんですけれども、総務省、いかがですか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、住民訴訟制度は、地方公共団体の財務の適正性を図ることを目的とするものでございまして、違法な財務会計行為に対する是正効果や抑止効果を有しているというふうに考えております。

 今回の見直しでございますが、軽過失しかない場合にも、違法な職務執行行為を行った長等が一定の範囲で損害賠償責任を負う点では従前と変わらないわけでございまして、違法な財務会計行為の是正や抑止という住民訴訟の機能は従前と変わらず発揮されるものというふうに考えているところでございます。

田村(貴)委員 日弁連の意見では、「政府が設定するとされている免除に関する参酌基準や免除の下限額については、住民訴訟の違法行為抑止効果を減殺することのないよう、相当な程度の額に設定しなければならない」というような意見が出されています。免除の設定というのが住民訴訟の違法行為抑止効果を減殺する可能性について言及されています。

 損害賠償責任の免責についてでありますけれども、善意でかつ重大な過失でないときとされていますが、具体的には、その判断は誰が行うんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 善意でかつ重大な過失がないときとは、地方公共団体の長などが、違法な職務行為によって地方公共団体に損害を及ぼすことを認識しておらず、かつ、認識していなかったことについて著しい不注意がない場合を指すものと考えているところでございます。

 この認定についてでございますけれども、具体的には、住民訴訟の中で、当事者から条例の適用に関する主張がされることによりまして、裁判所において判断されるものと考えているところでございます。

田村(貴)委員 善意でかつ重大な過失でないときの判断は、裁判所において行われるということであります。

 では、この一部免責について、自治体が条例で定めるということは、裁判所にとってみたら、判断にどういう影響をもたらすものと総務省は考えますか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 現行の住民訴訟におきましては、長や職員の損害賠償責任については民法上の損害賠償責任、不法行為責任と解されておりまして、長や職員に故意または過失がある場合には、相当因果関係のある損害の全額について責任を追及されるということになっております。

 今回の改正後に地方公共団体が条例を制定した場合には、裁判所において、まず故意、過失の有無だけではなくて、当事者の主張に基づいて、軽過失か重過失か、これは条例の適用の有無についての判断をする前提になりますので、これが判断されるということになるものと考えております。

 当然でございますが、軽過失と判断された場合には、損害賠償額が条例で定める限度に限定されますので、損害額が最低責任額を上回る部分については免責をされる、こういうことになるというものでございます。

田村(貴)委員 条例があるということが裁判所の一つの判断になるとするのであれば、やはりこれは軽過失の判断も出てくる、それが促されてくるのではないかなと私は懸念するものであります。

 ひいては、住民の監査請求や住民訴訟に抑止効果をもたらすもの、そうした問題があると思いますけれども、どうですか。私はやはり抑止効果がもたらされていくのではないかなと思うんですけれども、いかがですか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 私どもとしましては、今回の制度改正によりましても、軽過失の場合であっても、限度額は設定されるということになりますが、責任は問われるということでございますので、必ずしも抑止効果をもたらすものとは考えていないところでございます。

    〔坂本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕

田村(貴)委員 次に、自治法二百四十二条の、新設の十項についてお伺いをいたします。

 最初に確認をしますけれども、自治体の首長等に対する住民からの損害賠償請求について、議会がこれを放棄するという議決をするときであります。

 そのタイミングの話でありますけれども、住民監査が行われた後であるならば、監査が行われる前であってもできるのか。訴訟となって、訴訟中であることは、もちろんできるわけですけれども、判決確定後のいずれの段階においても、この議会の放棄の議決というのは今の制度の中ではできるということでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 現行制度におきまして、議決による権利放棄をする時期の制限というのはございませんので、今御指摘のございました、住民監査請求のあった後あるいはある前でも可能でございますけれども、あるいはまた訴訟の判決が出た後、いずれの段階においても放棄することは可能でございます。

田村(貴)委員 そうなってきますと、住民が自治体の長等に対して、不正がある、そして不正使用があるとか、そうした形で住民監査を行います。そのときに、議会が、請求のいかんを問わず、あるいは監査の内容のいかんを問わず、請求直後に放棄の意思を示してしまう、議決をして示してしまうというのは、これは非常に重たいものがあるんじゃないか。住民に対しては非常に重い意思が示されてしまう。

 往々にしてそういう流れに進むのではないかなという懸念を持ちますけれども、いかがでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 先ほどは現在の制度を申し上げましたけれども、今回の改正法におきましても、放棄の時期に制限がないのは同様でございます。

 ただ、議決による権利放棄につきましては、平成二十四年の最高裁判決で、議会の裁量権に基本的には委ねられているが、諸般の事情を総合考慮して、これを放棄することが裁量権の範囲の逸脱または濫用に当たると認められるときは、議決は違法となり、放棄は無効となるという判例がございます。

 今回、時期についての制限はないわけでございますが、いずれにいたしましても、この判決の枠組みに沿って、議決の有効性、適法性というものが判断されるものというふうに考えております。

 また、住民監査請求直後に放棄するということであれば、そのタイミングで放棄することの必要性についても説明を求められることになるというふうに考えている次第でございます。

田村(貴)委員 ちょっと話をまとめますと、高市大臣にお伺いしたいんですけれども、つまり、住民監査請求があった、そして、その監査請求に対して、議会が長の立場に立って条件反射的に損害賠償請求を放棄するということは今度の法改正の趣旨ではない、そういうことを目指したものではないということでしょうか。

高市国務大臣 今回の改正は、債権放棄の判断の客観性や合理性を担保する仕組みとして、監査委員の意見聴取手続を設けたものでございます。

 仮に、監査委員の意見に沿うものであっても、妥当性を欠くような放棄議決がされた場合には、最終的には住民訴訟において放棄議決の妥当性が争われることになります。

 したがって、監査委員に対する意見聴取手続が義務づけられるということによって住民監査請求直後の放棄が促進されるとは言えませんし、もとより、それを促進することは今回の改正の趣旨ではございません。

田村(貴)委員 条件反射的に議会が放棄を議決するということを想定しているわけではないという話であります。

 しかし、先ほどから議論をし、そして答弁をいただいているわけでありますけれども、制度上は、住民監査請求があったその直後に議会が放棄の議決をすることは制度上可能なんですよね。可能なんですよ。そういうところがやはり制度上としてあるんだったら、監査委員の意見を聞けばいいやという流れが生まれやしないかというふうに思うわけです。

 先ほど、首長の善意でかつ重大な過失でないとき、この判断というのは裁判所が決めるという話でありました。損害賠償請求の有無についても、最終的にはここで決着させたいというふうに住民が思っても、監査の請求があった時点で、監査が開かれようが開かれまいが、監査委員の意見を聞くことによって議会が議決できるという制度があるというのは、これはやはり私は問題ではないかなというふうに思います。

 ここは議会の判断がまず先行してくるんだね、あるいは、この自治体に対してはこういう住民側の問題意識があって監査請求を起こすんだけれども、議会が門前払いしてしまうかもわからないということになれば、それは請求者である住民の意欲をそぐことになってしまうのではないか、住民に対しての抑止力を与えてしまうものではないのか、監査委員の意見をつけることによってもこの流れというのは変わらない、私はそう思うんですけれども、総務省、いかがですか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 放棄の時期に制限がないということは、改正前、改正後を通じて変わらないわけでございます。今回は、意見聴取の手続を義務づけたということでございます。

 この義務づけは、もちろん、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、住民監査請求直後の放棄の促進を意図するものではございません。

 仮に、住民監査請求があった直後に議会が放棄議決をしたとしても、先ほどもこれも申し上げましたが、住民訴訟が提起されれば、当該放棄議決の違法性のほか、長などの行為の違法性についても裁判所において判断されるものというふうに考えております。

 したがいまして、住民監査請求があった直後に議会が放棄議決を行うことができるということになっていることが、直ちに住民訴訟の提起に影響を与えるものとは一概に言えないものと考えているところでございます。

田村(貴)委員 でも、やはり住民の代表である議会によって放棄の議決というのは、非常に重いものがあるということであります。

 そうしたことが条件反射的に起こらないようにすることが私は求められると思うんですけれども、そういう対策等についてはお考えでしょうか。

安田政府参考人 今回の改正によりまして、議会が放棄議決をする際には監査委員の意見を聞くということにされているわけでございます。

 この監査委員の意見、これは監査委員の合議による慎重な審議を経た上で機関としての意見が述べられるということになるわけでございますが、今回の改正であわせて盛り込んでおります監査基準、監査委員が策定することになる監査基準、これにおいてどのような意見を述べるべきかということも定められるべきだというふうに考えております。

 この点については、私どもの方で指針を定めて助言をするということになっておりますので、その中で検討してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

田村(貴)委員 指針を定めて、その中で検討、助言を考えていくということですね。

 第三十一次地制調では、損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄を禁止することが必要とされていました。それが覆されています。

 地制調の答申は、すなわち、不適正な事務処理の抑止効果を維持するという趣旨ではなかったのではないでしょうか。この趣旨がどうして翻ってしまったんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、訴訟係属中の損害賠償請求の放棄につきまして、第三十一次地方制度調査会の答申におきましては、四号訴訟の対象となる損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄については、長や職員の賠償責任の有無について曖昧なまま判断されるという問題もあり、御指摘のように、不適正な事務処理の抑止効果を維持するため、禁止することが必要と指摘していたところでございます。

 しかしながら、その後の検討の中で、住民訴訟の係属中に限って権利放棄を禁止することは、むしろ住民監査請求中や住民訴訟提起前の権利放棄を誘発することになりかねないという課題があること、それから、たとえ訴訟係属中に放棄されたとしても、平成二十四年の最高裁判決の枠組みに照らしまして、その有効性について訴訟の中で判断されることになること、こういうことから、今回の改正においては制度化を行わなかったところでございます。

田村(貴)委員 やはりここは議論のあるところだというふうに思います。

 次、質問しますけれども、監査委員の意見を聞くということですけれども、その意見の聞き方であります。

 議長が監査委員から意見を聞きました。まあ口頭でも聞いたということになると思うんですけれども、聞き方についてはどういう場面を、どういう聞き方を想定されているのか。また、その意見を聞くという行為に対して、それは住民も知ることができるのか。そういったことについて教えていただきたいと思います。

安田政府参考人 お答えいたします。

 監査委員からの意見聴取の具体的な運用につきましては、これは各地方団体に委ねられることになるわけでございますが、一般的には、議会が議長名で監査委員に対して意見照会を行い、これに対して監査委員が文書で回答するといった運用が想定されるのではないかと考えております。

 また、この監査委員の意見でございますけれども、損害賠償請求権の放棄議案の議会審議の中で住民に対しても明らかになるもの、このように考えている次第でございます。

田村(貴)委員 やはり聞き方のあり方についても、法の提案の中では不透明である。それから、議論してきましたけれども、損害賠償請求というのは監査の前に退けられてしまう可能性がある。

 住民監査、住民訴訟というのは、冒頭申しましたように、地方財政の健全化それから無駄遣いの防止に多大な貢献をしてきた。やはりこういった制度の維持発展というのが求められるところだと思います。

 しかし、この法改正によって、どうせ議会が退けてしまうんだろう、やっても無駄だ、そして損害賠償の限度額も決められてしまった。これは、住民監査、住民訴訟の機運がそがれてしまうのではないか、そういう懸念は拭い去れません。

 本改正案には以上述べてきたような問題点があることを指摘しまして、きょうの質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

竹内委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは、法案審議ということでございます。

 まず最初に、局長で結構ですが、ごめんなさい、ずっと聞けていなかったので、もう既に出ているかもしれませんが、多くの委員の方とちょっとポジションが違うかもしれませんが、私は、やはり国賠との並びで、いわゆる住民訴訟に係る首長等の責任要件を故意、重過失に限定すべきではないかなと個人的には実は思っていますが、この議論、政府、総務省としてはどういう整理をされているか、改めて教えてください。

安田政府参考人 お答えいたします。

 第三十一次地方制度調査会答申では、「長や職員への萎縮効果を低減させるため、軽過失の場合における損害賠償責任の長や職員個人への追及のあり方を見直すことが必要」、このように答申されておりますが、この地方制度調査会では、御指摘の、軽過失免責という議論も行われていたものと承知しております。

 一方、地方公共団体の長などの責任追及について、軽過失を免責する方向での見直しにつきましては、この第三十一次地方制度調査会の答申をまとめるに当たりまして、日本弁護士連合会などから、事後的に違法な財務会計行為を是正し、及びこれを抑止するという住民訴訟の機能が失われるなど、強い反対の意見が寄せられたところでございます。

 これを踏まえまして、法案化に当たり、再度有識者による懇談会を開催し、住民訴訟制度の見直しの具体的な方向性について議論し、取りまとめを行ったところでございます。

 懇談会の議論でございますけれども、まず、長や職員の責任要件を故意、重過失に限定することについては、地方公共団体のガバナンスに関するさまざまな議論を踏まえると慎重であるべきだ、しかしながら、個人責任として過酷である等の問題を解決するためには、会社法等の規定を参考に、長や職員個人が負担する損害賠償額を限定する措置を講ずることが適当であるとの意見が取りまとめられたところでございます。

 今回の改正法案においては、これを受けまして、軽過失の場合にも一定の責任を負うことを前提に、損害賠償責任を限定する措置を設けることとしたところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 今御紹介をいただいたように、これは極めてバランス感覚が重要になってくる問題でありまして、私も勉強させていただいて、非常に悩ましいテーマを、政府として、地制調に加えて懇談会も設置をして精査をしてこられた。その御努力には心から敬意を表したいと思いますし、最終的には我が党は前向きに対処していきたい、こう思っていますが。

 ただ、先ほど、今御紹介あったように地制調で軽過失の免責も視野に多分入っていたんだと思うんですが、日弁連なんかもそうだと思いますが、諸団体の意見を踏まえて、最終的には免責は慎重に整理されたということであります。

 私は、このバランスについて、やはりちょっときついんじゃないかなと思うんですね。特に、先ほども出ていましたが、住民と個人との間に団体が今入っているわけであります。本来、団体を間に入れたのは、地方公共団体を間に入れたのは、個人が責めを負うのは大変だということで多分、どうですかね、これはそういうことじゃなかったのかな。

 ごめんなさい、通告していませんが、適当でいいですよ、雰囲気でいいので。要すれば、間に団体を入れたのは、個人に余り責を負わせる、例えば立証するとか証拠能力とか、証拠を集めなあかんわけですから、そういうのがやはりあったという理解でよろしかったですか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、平成十四年の制度改正で、第一段目の訴訟、これは四号訴訟における第一段目の訴訟でございますけれども、これは団体を相手方とすることになったわけでございますが、この制度改正によりまして、地方公共団体が有する証拠や資料の活用が容易になり、審理の充実や真実の追求にも資するもの、こういう理由もあったものと理解しているところでございます。

足立委員 まさに、今おっしゃったような趣旨だと私も理解しています。

 ところが、今、実際にその第一段目の訴訟で何が起こっているかというと、例えば東京都。小池都知事が石原元知事に対する住民訴訟において弁護団を組み直して、石原元都知事を支える立場ではなくて、住民と一緒になって追及をする。

 この豊洲をめぐる動きは、結局、小池さんらしく延ばし延ばしになっていまして、ポジションをつくりかえるとか言いながら、四月二十七日の東京地裁での進行協議にあっては、いや、ちょっと待て、まだ膨大な資料があるので態度を留保させてほしいといって先送りしています。それから、次は五月三十一日だといって、とにかく、この豊洲移転をめぐる石原元都知事に対する責任追及において、都が一体どういう訴訟方針で臨むかということは結局まだ決まっていないわけです。ひどいですよね。小池都知事というのは本当に何も決めないんだなということを痛感するわけですが。

 いずれにせよ、弁護団を組み直してでも、団体が個人を住民と一緒になって追及するということになったのでは、これは制度の趣旨に反すると私は思いますが、副大臣、どうですか。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 住民訴訟が提起されている場合には、通常は、地方公共団体と住民とで、財務会計行為の違法性や地方公共団体の長等の責任の有無について判断が分かれるところでございます。

 住民訴訟が提起されれば、地方公共団体は被告として、財務会計行為の違法性や長などの責任の有無に関する地方公共団体の判断内容の正当性を主張、立証することとなります。

 通常は、地方公共団体は、長や職員の財務会計行為が正当と判断していると考えられるため、基本的には長や職員と主張内容が一致するものと考えられます。

 しかしながら、現職の長は、本来、客観的に発生している債権があれば、原則としてこれを行使すべき義務を負うものでありまして、事後的な調査などを踏まえ、地方公共団体が長や職員と異なる主張をし、例えば元職の長の責任を追及することも、必ずしも住民訴訟制度の本来の趣旨に反するとまでは言えないものと考えております。

足立委員 本来の趣旨に反しないケースもあるよと今おっしゃったわけですね。でも、今起こっていることは、実際の現場で起こっていることはほとんどが反しているんじゃないかと私は言っているわけです。東京はそうですね。だって、弁護団をかえてまで追及しているんですよ。

 それから、原田副大臣よく御承知のとおり、我々の地元でも、豊能町、能勢町のダイオキシンの問題も、それは副大臣はもうプロだと思いますが、結局、選挙で争って前体制をひっくり返した新体制が、前体制を追及するわけです。それは、今副大臣が御紹介をされた本来の趣旨に反するんじゃないんですか。

原田副大臣 個々の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

足立委員 個々の事案じゃなくていいですよ、では。

 そういうふうに、選挙で争った、政争、政治がそこに持ち込まれることはたくさんありますね。まず、それは認めますか。

原田副大臣 お答え申し上げます。

 先ほども答えさせていただきましたように、現職の長は、本来、客観的に発生している債権があれば、原則としてこれを行使すべき義務を負うものでありまして、事後的な調査などを踏まえ、地方公共団体が長や職員と異なる主張をし、例えば元職の長の責任を追及することも、必ずしも住民訴訟制度の本来の趣旨に反するまではいかない、このように私は思っています。

足立委員 答弁になっていないんです。ちょっと教えてあげてくださいよ。

 そういう本来の趣旨に反しないケースがあり得るという副大臣の御説明はごもっともですよ、それは私も否定しません。しかし、選挙を経て、与党と、まあ、地方だから別に与党も野党もない面もありますが、ある面もあります。要は、ある前職を支えていた政治勢力と新首長を支えている政治勢力が割れて選挙で戦うわけです。政権交代が起こった。いいですよ、それは。

 ただ、その新しい地方公共団体が元首長を、もとの長を追及する形でやるケースが東京、豊能町、能勢町、我々の地元でも起こっていますね。まず、そういう政治化している案件があるということ。私は今、事例を申し上げましたが、一般論としてそういうケースが多々あるということは認めないんですか。

原田副大臣 政治問題化しておるところは認識をいたしております。

 ただ、その問題に関しましても、訴訟の場で、制度に沿って……(足立委員「聞いていないです、そんなことは」と呼ぶ)想定をさせていただきたいと思います。

足立委員 そんな言いわけしなくてもいいので。

 私が聞いているのは、政治化しているケースが多々ありますねと言っているわけです。それは、先ほど申し上げたように、本来の趣旨に反するという理解でいいですね。いいですか。局長でいいよ。

安田政府参考人 お答え申し上げます。

 副大臣の方から御答弁申し上げましたように、今のお話は、第一段の四号訴訟において、地方公共団体と元首長の意見が異なるというようなケースでございましたけれども、それだけに限りませんで、例えば、住民訴訟において権利放棄をする場合の議会と長との関係等々も含めて、政治的な状況によって影響を受けているのではないかというケースはあるものというふうに認識しております。

足立委員 実際、先ほど御紹介をいただいた地制調の答申においても、今おっしゃったように、「政治的状況に左右されてしまう場合があること等が指摘されている。」こう書いていますね。東京がどうだとか私たちの地元がどうだというのは各論だからそれはいいんですが、私は、すごく多いと思うんですよ。

 副大臣、少なくとも、選挙で体制がかわる、選挙で戦うわけですよ、首長選挙で戦ったと。前体制を、新体制が住民と一緒になって前体制の首長個人を、団体が一緒になって追及するという構図になることは、だから、一般論としてはあり得ると私は思うんですが、いいですねと言っているんです、副大臣。ちょっと副大臣、それぐらい答えてくださいよ。

原田副大臣 一般論としてはあり得ると思います。

足立委員 まさに、一般論としてあり得るんですよ。

 加えて、各論は政府は答えないということで、個別のところでやればいいと思いますが、東京なんかひどいですよ。小池さんは本当に、皆さん覚えていらっしゃいますか、小池さんはいいかげんにした方がいいですよね。覚えていらっしゃいますよね。豊洲移転をめぐる石原元都知事に対する責任追及。小池さんは、わざわざ弁護団を取っかえてまで石原前都知事を追及すると言っているんですよ。これは東京の話です。

 局長、こういうのは、先ほど私が局長に冒頭伺った、団体を間に入れた趣旨に反しませんか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど副大臣から御答弁申し上げたとおり、現職の長は、本来、客観的に発生している債権があれば、原則としてこれを行使すべき義務を負うというものがございますので、その個別のケースについて、こういう、それが政治的なものなのかどうなのかということは、私ども、申し上げることはできないということでございます。

足立委員 いや、局長、もうちょっといけるでしょう。

 すなわち、政治化しているのは認めているんでしょう。政治化しているケースがあるわけですよ。そうしたら、その団体が、それは債権を持っているんだから、その債権を忠実に確保していくというのは当たり前ですよ。当たり前だけれども、政治化しているということは、政治といったらどっちかですよ。政治的にポジションをつくって団体が個人を突き上げるというのは趣旨に反している。

 そういう趣旨に反しているケースが世の中に一個もないんですか。私は、冒頭局長が答えてくださった、世の中にその趣旨に反するケースがあるだろうと言っているんです。あることを認めないんですか、局長は。

安田政府参考人 お答えいたします。

 個別について申し上げることはできないと思っておりますけれども、政治的な影響が訴訟の遂行においてあると言われているケースというのはありますし、それが新聞等で報道されているものもあるというふうに認識しております。

足立委員 だめだね、総務省は。副大臣も同じですか、副大臣。

原田副大臣 先ほどお答えしましたように、一般論としては私はあり得ると思います。

 以下は、今局長が答弁したとおりでございます。

足立委員 大臣、細かいことはいいんですけれども、大臣も大体そんな感じで。

 大臣、これはそういう、小池都知事のことを言いません、小池都知事は僕は嫌いですが、好き嫌いじゃないな、おかしなことをやっていると思いますよ、地方自治法の趣旨に反することをやっていると私は思っているわけです。

 ただ、各論はいいですよ。一般論として、政治化しているわけですから。政治化しているケースがある。今、局長は、いや、それは報道ベースだとかわけのわからぬことを言っている。審議会に指摘されているんだから。だから、そういう逃げの姿勢はよくないよ。別に、あるからだめとは言いませんよ。あるけれども、ほかにも大事なことがあるから、全体としては制度はどこかで決めなあかんから決めているんでしょう。それを認めないというのはおかしいんじゃないですか。

 僕は、だから、政治化しているということを認めるのであれば、本来、もともと制度をつくった趣旨から離れて、団体がそういう、本来追及すべき債権を超えて政治的に元職を追及するというようなことが世の中にはあると思うし、それは制度の趣旨に、ちょっとずれているんじゃないか、こう思いますが、大臣、ちょっと前向きに。

高市国務大臣 先ほど来委員がおっしゃっていますような係争中の案件につきましては、私どもは答弁ができません。

 しかしながら、一般論として、例えば、首長さんがかわって非常に激しい争点として対立があったというようなときに、政治的な対立がその後も続くということというのはあり得ると思います。

 ですから、今回の法改正案というのは、まさに、例えば議会が政治的な配慮をし過ぎて、全く損害賠償請求権の放棄を不合理に行うようなことのないように、また、監査委員の制度というものをしっかりと強化して公正公平にするように、そしてまた、余りにも個人が過大な損害賠償を求められたり、亡くなってしまった場合に御遺族が過大な賠償に苦しむというようなことが合理性なく行われないように、そういったさまざまな意味を込めて改正案を提出させていただいております。

 何とぞ御賛同を賜りたいと存じます。

足立委員 もう時間が来ましたので終わりますが、大臣が丁寧に御答弁いただきましたので、前向きに検討させていただきたいと思いますが。とにかく、そういうのがあります。

 もうきょうは時間がないのでやめますが、百条委員会でも同じことがあります。私の地元、茨木市でも、地方自治法に規定している正当な理由という解釈を議会の多数派でやって決めちゃって、元職を告発するという、とんでもないことを私の地元の自民党がやっていますので、これは苦言を呈して、質問を終わります。

 ありがとうございます。

竹内委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 少し質問の順番を変えまして、先に、地方独法業務への窓口関連業務の追加に関する事柄について質問させていただきたいというふうに思います。

 現行は、自治体の窓口業務を民間委託する場合、民間事業者が取り扱える事務の範囲は特定をされています。さらに、業務を実施する官署内には必ず職員が常駐し、不測の事態に際しては職員が臨機応変に対応すること、市町村長の判断を伴う行為や原簿の管理は職員が責任を負うこととされています。

 例えば、住民異動の手続で民間事業者が行えるのは、受け付け、入力、交付に限られ、審査や決定の手続は職員が行うことになっているものと承知しております。この理由は、窓口業務の一部に公権力の行使が伴うからにほかなりません。

 今回の改正で、窓口業務全体を包括的に委託可能というふうにされておりますけれども、公権力の行使という問題はどういうふうにクリアをされているんでしょうか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 市町村の窓口業務には審査や交付決定等の公権力の行使が一部含まれておりまして、これらを含めて一括して外部の主体に取り扱わせるようにするためには、法律によって授権する仕組みが必要でございます。

 この際、こうした業務には、各種行政サービスの基礎となる行為が含まれ、特に適切な実施が求められておるところでございます。

 この点、地方独立行政法人は、組織、運営の根幹について地方公共団体の関与が制度として担保されておりまして、地方公共団体の責任において組織、運営の適正を確保することが常に可能でございます。

 その上で、地方独立行政法人が行うことができる窓口業務を、定型的な事務として法律の別表に掲げたものに限定し、市町村の強い関与のもとに業務を行うものとしております。

 これらの措置を講じることにより、公権力の行使に当たるものを含めた市町村の窓口業務を、一括して地方独立行政法人に取り扱わせることができるものと判断したところでございます。

吉川(元)委員 ちょっと関連ですけれども、私自身は、今、授権、関与という規定を設けることによって可能であるというお話だったんですが、地方独立行政法人法の八十七条の三の二項のみなし規定によって行えるのかなというふうに思っていたんですが、そうではないということなんでしょうか。ちょっと通告しておりませんが。みなしという規定がありますけれども。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点は改正法八十七条の三第二項でございまして、申請等関係事務処理法人、これが窓口法人でございますけれども、これが行う業務を処理する場合には、申請等関係事務処理法人を設立団体または設立団体の長等とみなして関係法令が適用されるということでございまして、これも一つの効果ということでございます。これによりまして、言ってみれば一種の代理が、この申請等関係事務処理法人ができるということを定めたものでございます。

吉川(元)委員 公権力の行使にかかわる部分を代理にさせるというのは、ちょっと私自身、なかなか納得のいかないところであります。

 ちょっと関連してですけれども、地方独立行政法人には、皆さん御存じと思いますが、公務員型の特定地方独立行政法人と非公務員型の地方独立行政法人、一般型というふうにも言われますが、その二つの類型があります。

 今回の窓口業務の委託は、一般型、すなわち非公務員型でも可能になるというふうに承知しております。

 今回の改正の下敷きといいますか、もとになった、地方独立行政法人制度の改革に関する研究会報告書の法人類型の考え方では、非公務員の一般型であっても公権力行使は可能であるとする一方、一律に整理するものではないと記述されております。すなわち、最終的に公務員としての取り扱いが必要かどうかについては、一般型を原則としつつ、個別の行政事務の性質に応じて検討することが適当であるというふうにされております。

 窓口業務を委託される地方独立行政法人、具体的には申請等関係事務処理法人という名称になるようですけれども、それに対する指導、助言、報告、検査、監督、停止命令の権限が自治体の長に付与されます。このような自治体の関与規定を置いたとはいえ、窓口業務で取り扱う情報は極めて重要な個人情報でもありますし、先ほど不正な取得があるのではないかといった質問もありましたが、非公務員型の一般独立行政法人に業務を包括的に委託することが適切なのかどうなのか、大変疑問に感じております。

 なぜ公務員型ではなくて、非公務員型、一般型の一般独立行政法人でも委託可能なのか、説明をお願いします。

安田政府参考人 お答えいたします。

 独立行政法人制度そのものの成り立ちでございますけれども、平成九年の行政改革会議最終報告におきまして、政策の企画立案機能と実施機能を分離し、実施部門のうち一定の事務事業について独立行政法人を設立するという考え方に基づいて制度設計されたものでございまして、もともと、政策、行政の中の事務を一部実施するという考え方に基づいてできております。

 学説上も、これは特別行政主体ということと位置づけられていまして、一定の範囲で公権力の行使が認められると解されておりまして、現に、非公務員型であっても公権力の行使を行っている例は多いものと認識しております。

 今回の法案におきましては、先ほど申し上げたような措置、委員からも御指摘のありましたような措置を講ずることによりまして、公権力の行使を含めて、市町村の窓口業務を一括して地方独立行政法人に取り扱わせることができることとしておりますが、これは役職員の身分が公務員であるか、非公務員であるかを問わないものというふうに考えております。

 なお、御指摘の守秘義務等の観点でございますけれども、地方独立行政法人においては、一般型においても地方公務員法に定める守秘義務と同様の守秘義務がかけられている、役職員にかけられているということを申し上げておきたいと思います。

吉川(元)委員 地方独立行政法人法を読みますと、いわゆる一般型といいますか非公務員型と、公務員型の定義がされております。

 最初に、二条の第一項で一般型、非公務員型の定義がされていて、その後に、特定地方独立行政法人はということで公務員型の定義が行われております。

 それを読みますと、独立行政法人のうち、その業務の停滞が住民の生活、地域社会もしくは地域経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすため、またはその業務運営における中立性及び公平性を特に確保する必要があるため、これが一般と特定の違いだというふうに、この定義を読むとそういうふうに書かれているわけです。

 そうしますと、住民票等々の窓口業務については、その業務が停滞をしたとしても、住民の生活、地域社会もしくは地域経済の安定に直接かつ著しい支障を来さない、あるいは業務運営における中立性及び公平性を特に確保する必要はないという判断をされたということでよろしいんでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、地方独立行政法人の役職員の身分につきましては、一般型、非公務員を原則としつつ、その業務の停滞が住民の生活等に直接かつ著しい支障を及ぼすという場合、またはその業務運営における中立性及び公正性を特に確保する必要があるためという場合、この場合にその役職員に地方公務員の身分を付与する必要があるものとしまして、地方公共団体が当該地方独立行政法人の定款で定めるものについて、公務員とすることとされているものでございます。

 窓口業務を行う地方独立行政法人については、まず、業務実施が困難となった場合には、今回新たな監督規定を設けておりますが、設立団体による直接執行を義務づけております。この結果、業務が停滞する場面は限定されるのではないかと考えております。また、地方独立行政法人が行う窓口業務は定型的なものに限定されておりますので、業務の処理に当たって裁量的判断の余地は小さいということから、これらの要件に必ずしも当たるものではない。

 逆に、地方団体の方で、この要件を踏まえて、私どもの団体で当たると判断すれば、これは該当するわけでございますが、一般的に全て当たるものであるとは考えていないところでございます。

吉川(元)委員 個別、個々の答弁を聞いておりますと整合性があるような感じもするんですけれども、全体を見ると、非常に整合性がないんじゃないかというふうに感じざるを得ません。

 といいますのも、この委員会、前々回ですか、地方公務員法の改正を行いました。その際に、会計年度任用職員という制度を新たに設けました。伺いますと、現在、臨時、非常勤のうち、特別職、臨時的任用、一般職非常勤等々がありますけれども、特別職非常勤職員の大部分が会計年度の任用職員に移行するという話を伺っております。

 その際に、任用上の課題として第一に挙げられているのが、先ほど、守秘義務は同様にかかる、役員に対してかかるということですね、役職員に対してかかるということでありますが、特別職には、守秘義務、政治的行為の制限など、公共の利益保持に必要な諸制約が課されない、だから会計年度任用職員という新たな制度をつくって、特別職非常勤職員の任用を厳格化していくんだという議論が前々回の委員会の中で行われました。

 そうしますと、今回のいわゆる非公務員型の地方独法というのは、こういう任用の厳格化、あるいはここで言うところの政治的行為の制限等々が、これは一体どういうふうになるのか。きちんとそこはやっていきましょうというふうに、前回の地公法の改正の際の立法事実といいますか、その理由として挙げられているものが、今度は、公務員型だったらまだわからないでもないんですけれども、一般型にするということは、それはいわゆる労基法の世界でありますし、公民権も保障されているわけでありますから、そこら辺はどういうふうに整合性がとれるのか、尋ねます。

安田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁申し上げましたように、地方独立行政法人の役職員には、特定独法については地方公務員法が適用されて、地方公務員法の守秘義務がかかります。一般独法については、地方独法法の中に守秘義務に関する規定が設けられておりまして、それが適用されることによって役職員とも守秘義務がかかるということになっております。

 政治的行為の制限につきましては、いずれについても地方公務員法の適用は除外されておりますけれども、特定独法については、一定の役職員について政治的行為の制限がかかる、このような規定が設けられているところでございます。

 こういうものを踏まえながら、各地方団体において、地方独立行政法人制度を採用するのか、その場合に一般型をとるのか、特定型をとるのか、判断していただければというふうに考えているところでございます。

吉川(元)委員 私は、そもそも公務員の政治的行為の制限そのものがおかしいというふうに思っておりますけれども、だけれども、先ほども、公権力の行使は存在をするわけです。その場合に、政治的行為の制限は一方でかからないというふうになると、これは整合性がとれないんじゃないんですか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 地方独立行政法人法でございますけれども、これは、業務運営の効率性の発揮でございますとか自主性への配慮の観点から、準公務員法の規定の中でも必要最小限のものを適用しているところでございます。

 なお、政治的行為の制限等の話でございますけれども、窓口業務を行う地方独立行政法人につきましては、その行う窓口業務が定型的なものに限定されているということでございまして、一般独法でも対応が可能ではないかというふうに考えているところでございます。

吉川(元)委員 定型的だというのはそれはそうですけれども、それは、おおよそ定型的であって、その中には審査や決定も当然含まれるわけです。

 だとするならば、そもそも、定型だというんだったら、受け付け、入力、交付、これだけあればいいだけで、実際には審査や決定という公権力にかかわる問題も含まれているということでありますから、今の説明だと全然答弁になっていないんですけれども。

 もう一度答弁をお願いします。

安田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、今回の地独法の改正におきまして、一般独法それから特定地独法とも、御指摘のございました審査等の業務も行える、公権力の行使も行えるということでございます。

 ただ、これは、全ての公権力の行使といいますか、幅広く公権力の行使が認められるということではございませんで、まさに定型的なものに限って、判断の余地が少ないものに限ってこれは別表及び省令で定めることによりまして行使が認められるというものでございますので、そういう範囲に限られているとはそういう意味でございます。

吉川(元)委員 限定された公権力の行使、だからオーケーなんだということであれば、今の職員なんかは特にそうじゃないですか。窓口で実際に職務をしている公務員については、限られた公権力の行使しかそこの場で行えないわけですから。だとするならば、そこも政治的な行為の制限というのはおかしくならないですか、それを制限するという行為自体は。

 例えば、課長だとか部長だとか、まさに非常に大きな公権力の行使をする人についてはそうかもわかりませんけれども、一般職員に関しては、そういうふうな形でいうと、限定される公権力の行使じゃないですか。また、仕事自体も、定型的なものもやっておられる方もたくさんいらっしゃると思います。そういう方についても同じように考えるのであれば、そちらの方の政治的な行為の制限というのは、制限をするということはおかしいことにならないですか。

安田政府参考人 地方公務員についての政治的な行為の制限というのは、地方公務員という一つの職、職といいますか、地方公務員という身分を持った者全体についてそういう制限をかけているものでございまして、一概に論ずることはできないというふうに考えているところでございます。

吉川(元)委員 ちょっと余り時間がありませんので、あと一点、少し確認をさせていただきたいと思います。

 先ほど、窓口業務の停滞に関してのお話が少しありましたけれども、停滞した場合どうするのかといったときに、その場合には、簡単に言うと、市役所で公務員が窓口業務をやるということです。これは、常時そういうことが可能だと。

 つまり、窓口業務については、地方独法にやってもらうということにしているけれども、同時に、従来からの市役所における公務員が行う窓口業務も並行して行えるという理解でよろしいんでしょうか。そういう特殊な状況以外にも。

安田政府参考人 先ほど申し上げましたように、今回の法律においては関与をいろいろ置いておりますが、その中で、申請等関係事務処理法人に対して市町村長が停止命令を出したり、あるいは申請等関係処理法人がみずからこの事務を行うことが困難だと認めた場合、届け出る、こんな規定がございまして、その場合には、申請等関係処理事務は市町村が直接処理する、こういう規定を設けているところでございます。

 これは、そういう事例が起こった場合ということではございますけれども、一方において、今回、窓口独法が行う、申請等関係事務処理法人が行う事務は、窓口業務の全てではなくて、先ほど来申し上げておりますように、やはり市町村長が直接実施すべき裁量的余地の、裁量的な判断の余地が広いものでございますね、例えば住所の認定でございますとか戸籍の届け出の受理でございますとか、こういうものについては常時市町村の職員が実施するということが予定されているものでございまして、一部においてまずそういう事務が残るということ、それから、こういう事態が生じた場合には直接執行の可能性がある、こういう制度になっていくということでございます。

吉川(元)委員 ちょっとまだ疑問が解けないところがありますので、次回また引き続き質問したいと思います。

 終わります。

竹内委員長 この際、御報告申し上げます。

 明十七日に参考人として出席を求めることに決定しておりました弁護士黒岩哲彦君につきましては、本日の理事会での協議の結果、これを取り消すことといたしましたので、御了承願います。

 次回は、明十七日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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