衆議院

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第8号 令和4年3月24日(木曜日)

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令和四年三月二十四日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 あかま二郎君 理事 斎藤 洋明君

   理事 新谷 正義君 理事 田所 嘉徳君

   理事 岡本あき子君 理事 吉川  元君

   理事 中司  宏君 理事 輿水 恵一君

      井野 俊郎君    井林 辰憲君

      井原  巧君    石田 真敏君

      石橋林太郎君    大串 正樹君

      加藤 竜祥君    川崎ひでと君

      小森 卓郎君    坂井  学君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      武村 展英君    中川 貴元君

      西野 太亮君    鳩山 二郎君

      古川 直季君    古川  康君

      松本  尚君    保岡 宏武君

      柳本  顕君    渡辺 孝一君

      石川 香織君   おおつき紅葉君

      奥野総一郎君    鈴木 庸介君

      堤 かなめ君    道下 大樹君

      湯原 俊二君    阿部 弘樹君

      沢田  良君    守島  正君

      福重 隆浩君    西岡 秀子君

      宮本 岳志君

    …………………………………

   総務大臣         金子 恭之君

   総務副大臣        中西 祐介君

   総務大臣政務官      鳩山 二郎君

   総務大臣政務官      渡辺 孝一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 五味 裕一君

   政府参考人

   (総務省国際戦略局長)  田原 康生君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            吉田 博史君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            佐々木啓介君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         森下 俊三君

   参考人

   (日本放送協会会長)   前田 晃伸君

   参考人

   (日本放送協会副会長)  正籬  聡君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 松坂 千尋君

   参考人

   (日本放送協会理事)   松崎 和義君

   参考人

   (日本放送協会理事)   林  理恵君

   参考人

   (日本放送協会理事・技師長)           児玉 圭司君

   総務委員会専門員     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     石橋林太郎君

  加藤 竜祥君     松本  尚君

  鈴木 庸介君     堤 かなめ君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     石田 真敏君

  松本  尚君     中川 貴元君

  堤 かなめ君     鈴木 庸介君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 貴元君     加藤 竜祥君

    ―――――――――――――

三月二十三日

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官五味裕一さん、総務省国際戦略局長田原康生さん、情報流通行政局長吉田博史さん及び中小企業庁経営支援部長佐々木啓介さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。金子総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

金子(恭)国務大臣 日本放送協会の令和四年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第七十条第二項の規定に基づき、総務大臣の意見を付すとともに、中期経営計画を添えて国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入、事業支出が共に六千八百九十億円となっております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入が八百七十三億円、資本支出が七百八十三億円となっております。

 次に、事業計画につきましては、地域情報の発信強化、ユニバーサル放送・サービスの充実、訪問によらない効率的な営業活動の一層の推進、グループ全体での業務の見直しなどによる効率的で持続可能な組織の実現等に取り組むこととなっております。

 総務大臣といたしましては、この収支予算等の執行に当たり、引き続き経費削減に徹底的に取り組むとともに、受信料の適正かつ公平な負担の徹底に向けた取組を進めることにより、収支均衡を確保することを求めております。

 また、日本放送協会の中期経営計画で示された、事業規模の一割に当たる七百億円程度を還元の原資として、衛星波の削減を行う二〇二三年度に受信料の引下げを行う方針については、衛星付加受信料を含め、受信料引下げの内容を早期に具体化することが望まれる旨の意見を付しております。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

赤羽委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長前田晃伸さん。

前田参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の令和四年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして御説明を申し上げます。

 NHKの中期経営計画の二年目となります令和四年度は、経営計画に基づき、スリムで強靱な新しいNHKらしさの実現に向け、放送・サービスの強化を図るとともに、令和五年度の受信料値下げと衛星波の一波削減に向けた構造改革を着実に実行してまいります。

 事業運営に当たりましては、新型コロナウイルスの感染拡大で社会経済が大きな影響を受ける中、受信料で成り立つ公共メディアとして信頼される情報の社会的基盤の役割を果たしていくため、自主自律を堅持し、事実に基づく正確な情報を公平公正に伝え、命と暮らしを守る報道に全力をささげます。あわせて、多様で質の高いコンテンツを合理的なコストで、最適な媒体でお届けします。また、日本を積極的に世界に発信し、様々な分野で国際社会との相互理解を促進するとともに、地域の課題や情報を広く発信して地域の発展に貢献いたします。また、ユニバーサル放送・サービスの提供の充実に取り組みます。

 インターネット活用業務は、実施基準に示した費用の範囲の中で、国内及び国際向けコンテンツを効果的に提供するとともに、インターネット活用業務が果たし得る社会的役割を検証するために社会実証を実施いたします。

 受信料につきましては、訪問によらない効率的な営業活動を一層推進し、営業経費を削減するとともに、公平負担の徹底と受信料制度の理解促進に取り組みます。

 NHKグループ全体で業務の見直しやガバナンスの強化を図るとともに、働く一人一人の創造性を最大化する人事制度改革を加速させるなど、効率的で持続可能な組織の実現に向けた取組を強化いたします。

 次に、建設計画におきましては、緊急報道設備や番組制作設備の整備を進めるとともに、いかなる災害時などにも安定的に放送・サービスを継続するための設備整備等を実施いたします。また、老朽化しております東京・渋谷の放送センターや地域の放送会館の建て替え事業を着実に推進してまいります。

 以上の事業計画に対応する収支予算は、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入、国内放送費などの支出、共に六千八百九十億円を計上し、九年ぶりに収支均衡予算としております。

 また、資本収支は、収入として減価償却資金など総額八百七十三億円を計上し、支出には建設費など七百八十三億円を計上しております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。

 以上、令和四年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その概要を申し述べました。事業計画の一つ一つの施策を着実に実行し、公共メディアとして視聴者の皆様の期待にお応えしてまいりたいと存じます。

 委員各位の御理解と御支援をお願いを申し上げます。あわせて、何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。

赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。斎藤洋明さん。

斎藤(洋)委員 自由民主党の斎藤洋明です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、心より感謝を申し上げます。

 昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領の演説がございました。戦争で亡くなられた方々へのお悔やみを申し上げますとともに、被害に遭われている方々へのお見舞いを申し上げます。一刻も早く戦争を終わらせるため、我が国政府には、引き続き、ウクライナ政府への支援とロシアへの制裁の強化を強く求めます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、NHKの中期経営計画で示されました、二〇二三年度に向けました七百億円を原資とする受信料の値下げに向けた作業につきまして、現在の進捗状況をお伺いいたします。

前田参考人 お答え申し上げます。

 二〇二二年度は、経営計画の二年目として、新しいNHKらしさの実現に向けて放送・サービスの強化を図るとともに、二〇二三年度の受信料値下げと衛星波の一波削減に向け、構造改革による支出規模の圧縮に取り組み、九年ぶりの収支均衡予算としております。

 例えば、営業の訪問要員に関わる経費を大幅に削減し、営業経費率は、一九八九年度の公表開始以来一〇%を初めて下回り、九・三%となる見通しでございます。受信料の公平負担と営業経費の削減の両立に向けて、訪問によらない営業で具体的な成果を出せるよう取組を進めてまいりたいと思います。

 二〇二二年度は、計画どおりの支出の削減を行って収支均衡予算とするなど、これまでのところ、一連の改革は経営計画どおり進んでいると考えております。その成果を、最終的には二〇二三年度に受信料の値下げという形で視聴者の皆様に還元することを考えております。

 衛星波の削減を行う年となりますので、衛星契約の方の値下げを検討いたしております。その具体的な内容につきましては、今年の秋に明らかにさせていただきたいと思います。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 大臣意見にもありましたとおり、早期に受信料引下げの内容の具体化を求めたいと思います。

 次に、働き方改革についてお尋ねをいたします。

 NHKの記者の方の大変痛ましい過労死の事件がございました。それを受けまして、「NHKグループ 働き方改革宣言」におきまして、長時間労働を改めるという宣言をしていただいているところでありますが、具体的な成果は上がっていますでしょうか。

林参考人 お答えいたします。

 NHKでは、共に働く仲間を失うことがあってはならないという強い決意の下、二〇一七年十二月に公表しました「NHKグループ 働き方改革宣言」に基づきまして、長時間労働に頼らない組織風土づくり、業務改革に取り組んでおります。

 二〇二〇年度の一般職職員の年間総労働時間の平均は、前の年度に比べまして、およそ二十時間減少しております。働き方改革宣言前の二〇一六年度からは、およそ五十四時間減少しております。

 記者の休みの確保につきましては、二〇一六年度と比べると、年間でおよそ十三日休みが増えております。

 働く人の心と体の健康を最優先に考えていくことは、これからも変わるものではございません。その上で、多様で効率的な働き方を推進し、職員一人一人の能力を最大限発揮することで、視聴者の皆様にお届けするコンテンツ、サービスを充実向上させていきたいと考えております。

斎藤(洋)委員 労働時間の削減について一定の成果があったということは、評価を申し上げたいと思います。

 その上で、OA機器の発展などによりまして、最近の労働密度というのは昔に比べても濃くなっていると私は考えておりますし、また、NHK、公共放送として例えば災害対応などに力を入れる限りは、休みといっても完全に気を抜けないような休みにならざるを得ない面もあると思います。是非、この働き方改革について不断の努力を求めたいと思います。

 関連いたしまして、もう一点お尋ねをいたします。

 労働環境の改善、これは大変重要なことでありますが、単に環境改善するだけではなくて、特に若手の力をNHKの経営にもっともっと生かしていただきたいと思っております。幹部や経営陣への若手の登用も非常に重要と考えますが、NHKの取組状況をお尋ねいたします。

林参考人 お答えいたします。

 NHKでは、全ての改革の土台となる人事制度改革で、強過ぎる縦割りと年功序列を抜本的に見直し、若手の登用も含めた適材適所の人事を推進しているところでございます。

 具体的には、初めての試みとして、五十歳以下の管理職を対象に、次期経営層を担う人材を公募し、抜てきした十二名を、昨年、地域放送局の局長や副局長、関連団体の役員などに配置いたしました。いずれも、地域サービスの向上やグループ経営改革を牽引する活躍を見せております。

 管理職の登用でも、三十代半ばから手を挙げられる新しい制度を導入したほか、二十代、三十代の若手職員の中から将来の経営マネジメントを担う人材を選抜し、育成する研修も行っております。

 職員一人一人が思い描くキャリアを後押しして、持てる力を最大限発揮できる環境を整えていくことを通して、視聴者の皆様にお届けするコンテンツ、サービスを充実向上させていきたいと考えております。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 是非、引き続き、やる気のある、能力のある若手の登用と、その力を生かした改革を進めていっていただきたいと思います。

 私は、NHKだけではなくて霞が関も、是非、もっともっと若手の幹部登用を進めていただきたいと思っておりますが、是非よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、建設費に多額の予算を計上しておられます。もちろん、必要な建設費はこれはしっかり使っていただきたいと思いますが、渋谷のNHK放送センターの建て替えに、第一期で六百億円、第二期で一千百億円、合計一千七百億円を見込んでおられます。これは、働き方改革でありますとか、あるいは感染症の対策、それから災害に備えた機能分散といった様々な観点から、機能の縮小ですとかあるいは地域分散を進めるといったことによりまして、この建設費の圧縮ということは考えられないでしょうか。

松坂参考人 お答えいたします。

 放送センターの建て替え計画については、今後の衛星波や音声波の整理削減も見据えて、建物の規模やコストなどを抜本的に見直しております。

 現在建設中の第一期、報道機能を中心とした情報棟では、スタジオの規模の見直しに加えまして、放送設備についても、最新の技術の活用などによってコストを抑制してまいります。

 第二期以降に計画している建物については、働き方が変わってリモートワークが定着しつつあることを踏まえ、オフィスの面積を縮小するなど、建物の規模を見直す検討をしております。

 さらに、スタジオについても、埼玉県川口市で計画している施設へ移転し、数を減らすことを検討しております。

 また、首都直下地震などの大規模災害で放送センターの機能が失われた場合、大阪放送局を西日本のBCPの拠点として、放送を継続するため、大阪放送局から継続的に全国発信できる体制としていまして、更に機能の分散ができないか検討しているところです。

 今後、建築費全般が高騰するなど、見通せない要素はありますけれども、放送センターの建て替えの見直しを更に進め、全体としてコストの抑制に努めてまいることにしております。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 今言及いただきましたとおり、首都直下型地震が起きたときに、渋谷の放送センターに機能が集中していますと、災害報道の点で心配な面もあります。また、建設費の高騰。これも、計画が立てられた以降も高騰が続いております。是非しっかり見直していっていただきたいと思います。

 続きまして、関連団体に関しましてお伺いしたいと思います。

 関連団体へのNHKからの出向や再就職、これが行われていると思いますが、これは目的に照らして適切なものとなっているか、過大なものとなっていないかについて、チェック体制も含めてお尋ねいたします。

林参考人 お答えいたします。

 関連団体への出向は、主として、関連団体も含めたNHKグループのコンテンツ制作力やサービス提供の機能を高いレベルに保ち、互いの技能や知見を共有するために行っているものでございます。そのため、各団体の求める人材要件を確認した上で、NHK職員の適性やキャリアパスを考慮して配置をしております。

 また、関連団体への再就職は、協会で培ったノウハウやスキルを引き続きグループ内で発揮してもらう目的で実施をしております。今年から、各団体が求める人材の要件を示して公募を行い、希望する五十六歳以上の職員が応募するマッチングシステムを導入しております。選考は団体が行い、必要な人材の最適配置を行ってまいります。

 関連団体は、受信料で成り立つ公共放送NHKのグループの一員であり、委託費の削減を進める中で、出向や再就職が適正な形となっているかどうか、NHKの担当部局でチェックし、その人数も見直してまいります。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 関連団体への出向や再就職が、年配になった方の処遇のためということであってはならないと考えておりますので、是非、関連団体の活性化ですとか、目的に照らして適切な人事となるように、しっかり御配慮をお願いしたいと思います。

 関連してもう一点お尋ねいたしますが、NHKグループ全体としてしっかり改革や運営を進めていくためには、若手、これから経営を担っていくような若手の人事交流も進めるべきと考えますが、御見解をお伺いしたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 NHKのグループ経営の基本は、NHKと関連団体、そして関連団体相互のそれぞれが役割分担しつつ、一体となって視聴者・国民の信頼に応え、公共メディアの使命達成に向けて取り組んでいくことであると思います。

 昨年は、従来は役員、OBの行き先となっておりました重立った関連団体の社長ポストに現役の役員、職員を出向という形で就任させたのを始め、役員ポストにも四十代、五十代の管理職を出向させました。

 また、今年に入ってからは、NHK、関連団体から公募した若手職員、社員に一定期間、相互のプロジェクト業務に参加してもらうなど、グループ一体で多様な経験を積む機会を確保しております。

 人事交流は、それぞれの役割分担の中で培われた技能や知見を共有することで、NHKグループ全体として総合力を強化することが期待できることから、今後も積極的に拡充していきたいと考えております。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 前田会長が進められましたこの交流人事の改革は、私は高く評価を申し上げたいと思います。若い人たちの交流が、グループの一体運営ですとか改革に非常に大きな力になると考えております。是非今後とも改革を進めていただきたいと思います。

 もう一点、関連団体に関しましてお伺いいたします。

 関連団体は、NHKへの財政的な寄与ですとか、あるいは視聴者負担の軽減に役立つという御説明がなされております。しかし、一方で、例えばコンテンツの二次利用でありますとか民間事業者への委託、あるいは、少なくとも競争性のある契約によってはなし得ないのかという疑問もございます。是非この点について御説明いただきたいと思います。

松坂参考人 お答えいたします。

 番組コンテンツの二次利用につきましては、外部事業者、例えば衛星放送事業者ですとかケーブルテレビ、それにインターネットの配信事業者などに提供しております。

 提供するに当たっては、NHKの放送や配信と重複していないか、利用の目的が番組を社会に還元するという二次利用本来の目的にふさわしいかどうかなどを判断した上で提供しています。

 こうした判断に加えまして、番組提供に当たっての権利処理ですとか番組の複製等の業務を行う必要があるため、NHK本体と緊密に連携を取ることができる関連団体が行っているところであります。

 NHKの子会社は、それぞれの事業分野でNHKの業務を補完、支援し、NHKとともに豊かで多様な放送文化の創造に努めることを基本的な役割としています。加えて、効率的なコストによる経費節減や副次収入等によりNHKの財政に貢献することで、視聴者の皆様の負担の抑制につながっていると考えているところであります。

斎藤(洋)委員 関連団体が行っている業務のうち、民間でもできるのではないかと考えられる業務につきましては、引き続き、競争的な方法によりまして、民間事業者の活用も含めて御検討いただいて、経費節減のために不断の努力をしていただきたいと思います。

 続きまして、放送法によりまして、放送事業に関する調査研究業務、これがNHKの本来業務と位置づけられて、放送文化研究所がその役割を担っておりますが、この業務は民間ではなし得ないものでしょうか。これは是非総務省にお伺いしたいと思います。

渡辺大臣政務官 斎藤委員の御質問にお答えいたします。

 NHKが行うべき業務の一つとして、放送及びその受信の進歩発達に必要な調査研究を行うことが放送法第二十条第一項第三号に規定されております。

 これを受けまして、放送文化研究所におきましては、国内外の放送事情調査や視聴者の意向を把握する世論調査などの公益性の高い内容の調査研究を実施しております。

 放送文化研究所は、これらを通じて、放送法、放送及びその受信の進歩発達というNHKの目的の達成のため、業務を行っているものと承知しております。

 また、NHKは、こうした調査研究の結果を放送番組の編集にも反映させていることから、NHKが自らの責任で実施することが適当と考えております。

斎藤(洋)委員 私は、調査業務、これは内容をいろいろ見てみますと、内容によっては民間の研究機関でも十分できるのではないかというものもあったと思っておりますので、是非そういったことも将来的に御検討いただきたいと思います。

 例えば、NHKは国民の多くの皆様が支持していますという調査結果を、NHK自らが調査するよりも、それは少なくとも外部に委託した方がいいんじゃないかというような私は心証を持ちましたので、是非御検討をお願いしたいと思います。

 続きましてお伺いしたいと思います。

 インターネット活用業務を新年度から大いにやられるということですけれども、ただ、インターネットに接続できる端末があるからといって、そこから直ちにNHKの受信料を徴収するということになりますと、これは私は到底国民の理解を得られないと考えております。

 この点につきまして、総務省及びNHKから、それぞれ見解をお伺いしたいと思います。

中西副大臣 斎藤洋明先生にお答えを申し上げます。

 御案内のとおり、放送法第六十四条では、NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備を設置した者がNHKと受信契約をしなければならないというふうにされております。

 受信料につきましては、NHKが公共放送としての社会的使命を果たすために、必要な費用を広く国民・視聴者の皆様に公平に御負担をいただくものであるというふうに考えております。

 したがって、インターネットを通じたコンテンツ視聴の急速な拡大などの環境変化を踏まえ、今後の受信料の在り方については、幅広く国民の皆様また視聴者の皆様からの御理解を得る必要があるというふうに考えております。

 総務省としては、テレビを設置していない方を新たな受信料の対象とすることは、現時点で考えておりません。

前田参考人 御質問のような、インターネットに接続できるというだけでスマートフォンやパソコンから受信料をいただくということは、現時点では考えておりません。

 一方で、現在の放送法では、NHKのインターネット活用業務は放送の補完という位置づけとなっておりますが、放送と通信の融合が進んでいる海外と比べますと、社会の実情に合わなくなっているとも考えております。

 インターネットの普及は世代を超えて急速に進んでおりますが、インターネット上には不確かな情報があふれ、フェイクニュースやフィルターバブルなどの問題も指摘されております。公共メディアとして、正確で信頼できる情報や多様で質の高いコンテンツを、インターネットも使って、いつでもどこでもお届けするとの重要性は、これまでになく高まっていると考えております。

 こうしたことを踏まえまして、インターネットを通じて番組や情報をお届けする意義や役割、多様化する視聴者ニーズなどを検証するために、この四月以降、社会実証を実施することといたしております。その社会実証の結果をしっかりと検証し、得られた知見を民放の皆様を含め関係者の方々と共有していきたいと思います。

 放送と通信の融合の時代にふさわしい受信料の在り方につきましては、NHKとしても研究しているところでございますが、いずれにせよ、視聴者・国民の皆様の御理解を得ることが大前提だと考えております。

斎藤(洋)委員 以上で質問を終わりますが、フェイクニュースがインターネット上にあるからといって、受信料を徴収するということにはならないと思いますし、また、国民の理解を得るという意味では相当厳しいと御理解いただきたいと思います。インターネットがこれだけ普及している時代にあって、受信料を機械的に徴収するということは、人頭税を徴収するということと私は変わらないと思っておりますので、是非そこは政府にも慎重な姿勢でいていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

赤羽委員長 次に、輿水恵一さん。

輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきましたことに、心より感謝を申し上げます。

 それでは、早速でございますが、質問に入らせていただきます。

 初めに、新しいNHKらしさの追求について伺います。

 公共放送であるNHKの使命と役割は、国民から徴収した受信料を主な財源として、放送の自主自律を貫き、視聴者の判断のよりどころとなる正確な報道や、豊かで多彩なコンテンツを全国で視聴できるようにすることで、健全な民主主義の発展や公共の福祉に寄与することと認識をしております。

 そして、今、NHKは、視聴者である国民の皆様の信頼に応えるとともに、より効率的な運営体制を再構築し、正確かつ公平で公正な、そういった放送・サービス、そして、いつでもどこでも最適な媒体を通じて発信し続ける、新しいNHKらしさの追求に取り組んでいると伺っております。

 そこで、まず前田会長に伺いますが、新しいNHKらしさの追求とは、具体的にどのような課題に対して、どのような改革を進めようとしているのか、お伺いを申し上げます。

前田参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルスの感染症の世界的な流行、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、相次ぐ大規模災害などによって社会経済の先行きに不透明感が増す一方で、幅広い世代に利用されておりますインターネットには、不確かで曖昧な情報もたくさんございます。

 そうした時代環境の中で、既存業務を抜本的に見直して、スリムで強靱な新しいNHKとなり、正確、公平公正で、豊かなコンテンツをいつでもどこでも皆様にお届けし続けることが、今の時代のNHKが果たすべき使命だと考えております。

 経営計画で掲げました五つの重点項目のうち「安全・安心を支える」では、地域に密着した災害などの情報を、放送とインターネットを連動させて、これまで以上にきめ細かくお伝えしていく予定であります。また、大規模災害の発生によって渋谷の放送センターが機能停止した場合でも代替できるよう、大阪放送局の機能強化を進めているところであります。

 コンテンツの強化では、報道やドラマといったジャンル別に経営資源を管理し、重複する内容の番組を整理、削減することで、質の高いコンテンツに経営資源を集中させる取組を進めております。

 この春の番組改定では、新たな番組や従来の番組の放送時間の変更などで、総合テレビとEテレを合わせ約半分近く、四二%の番組を入れ替え、視聴者ニーズに応える番組編成を実施してまいります。

 このほか、訪問によらない営業では、営業経費の大幅な削減に取り組み、来年度、初めて営業経費率を一割以下に抑えることにしております。

 人事制度改革では、公募により若手管理職を選抜し、四十代前半の地域放送局も誕生させております。

 経営計画二年目の来年度は、新しいNHKらしさ、スリムで強靱なNHKの実現に向けた取組を更に強化し、視聴者・国民の皆様の信頼と期待に応えてまいりたいと思います。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 五つの重点項目について御説明をいただきましたが、これを一つ一つ着実に進めていただければと思います。

 それでは、ちょっと具体的な中身についてお伺いいたしますが、まず、命と暮らしを守る報道の強化について伺います。

 ただいまも会長からもございましたけれども、激甚化、また頻発する自然災害や、想定外の事案による社会の様々な課題等に対しまして、専門的な知識や経験を生かした取材に基づく信頼できる情報を迅速に一人一人に届け、適切な判断と行動を促すこともNHKの大きな役割であると思います。

 そこで、国民の命と暮らしを守る報道を強化するために、令和四年度はどのような取組を進めようとしているのか、お聞かせください。

正籬参考人 お答えいたします。

 大規模災害や新型コロナウイルスなどの様々な脅威から一人一人の命と暮らしを守るために、安全、安心につながる情報を、テレビ、ラジオ、それからインターネットで、それぞれの特性を生かして的確に発信していくということはNHKの使命だと考えております。

 今月十六日に宮城県と福島県で震度六強の揺れを観測した地震がありましたけれども、避難の呼びかけや被害の状況に加えて、インターネットで放送の同時提供を行ったほか、停電ですとか交通への影響ですとか自治体による避難に関する情報なども、インターネット等のサイトを通じてきめ細かく伝えました。

 令和四年度も、多様な伝送路で、それぞれの特性を生かして、正確な情報を伝えていきたいと考えております。

 また、首都直下地震などの発生時でも放送・サービスを確実にお届けするために、東京の放送センターの代替として、大阪放送局の機能強化に取り組んでおります。大阪放送局では、ニュースのデジタル発信を専門的に担うグループの本格運用を始めておりまして、令和四年度にはこの取組を促進いたします。

 人材育成についてですけれども、新採用者、それからいろいろな各段階での研修がありますが、防災・減災に関する研修を行っているほか、去年末に国が新たに千島海溝、日本海溝の巨大地震の被害想定をまとめたことも踏まえまして、本部と各地の放送局が連携して、大規模災害を想定した訓練を、二月二十八日、先月に実施いたしました。こうした取組を強化して、専門人材の育成を進めていきたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 命と暮らしを守る報道ということで、今御説明いただきました。是非進めていただきたいと思っております。

 ここで一つ、聴覚障害者や、また、訪日また在留外国人に対しても、災害の情報や生活に必要な情報を適切に届けることも重要と考えるところでございますが、この点についての取組の現状と、今後についてもお聞かせ願えますでしょうか。

正籬参考人 お答えいたします。

 緊急災害時における障害のある方や訪日、在留の外国人への情報提供は重要な課題だと受け止めておりまして、強化を進めております。

 今月十六日の宮城県と福島県での震度六強の揺れを観測した地震では、テレビの特設ニュースの開始と同時に字幕放送を実施いたしました。また、津波注意報が出されていましたので、海岸や川の河口から離れるよう呼びかける手話の動画をワイプでつけまして、初めて試験的に使用しました。今検証を進めております。

 また、訪日や在留の外国人向けには、NHKワールドJAPANの英語の音声を総合テレビの副音声で流すとともに、総合テレビの画面上ではNHKワールドJAPANのQRコードを掲載しまして、英語ニュースのウェブサイトに誘導いたしました。

 さらに、国際放送のインターネットライブストリーミングでは、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受けまして、AIの多言語字幕付与サービスにウクライナ語を追加するとともに、ニュースのサイトにもウクライナ語のページを加えました。日本政府の対応、支援の動き、在日ウクライナ人の活動など、様々な情報を発信しております。

 ユニバーサルサービスでも一人一人の命と暮らしを守る情報を的確に発信していくために、こうした取組を一層強化してまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 きめ細かいサービスをこれからもしっかりと進めていただければと思います。

 続きまして、構造改革による経費の削減についてお伺いを申し上げます。

 先ほど前田会長より、今現在、スリムで強靱なNHKに向けた番組経費の見直しや営業経費の構造改革が進められている、このように伺いました。

 そこで、それぞれ具体的にどのようなことが、令和四年度はどこまで進められるのかにつきましてお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

松坂参考人 お答えいたします。

 四月からの来年度、二〇二二年度は、現在の経営計画の二年目として、新しいNHKらしさの実現に向けて、放送・サービスの強化を図るとともに、二〇二三年度の受信料値下げと衛星波の一波削減に向けて、構造改革による支出の圧縮に取り組みます。

 具体的な支出の圧縮としましては、国内放送費が前年度に比べまして百二十一億円の減としております。これは衛星放送関連の経費が大半を占めております。衛星については、報道や国際など必要なコンテンツを維持する一方で、衛星波の削減を視野に、コンテンツを精査して整理し、予算を削減しております。

 それから、訪問によらない営業活動の推進により、訪問要員に関わる経費を大幅に削減し、営業経費率は、一九八九年度の公表開始以来一〇%を初めて下回って、九・三%となる見通しです。支払い率は、来年度も今年度と同じ八一%を確保したいと考えております。

 このほか、建物や機材などの設備投資、建設費につきましても、必要なものを精査して、来年度は百五億円削減しております。

 安全、安心を支え、多様で質の高いコンテンツを合理的なコストでお届けすることに注力し、四月以降は、新たな番組や視聴者ニーズに応える番組編成を実施していきます。

 今後も構造改革を進めるとともに、必要なコンテンツには経営資源を投入して、スリムで強靱なNHK、新しいNHKらしさの実現に向けて取組を強化してまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさに一つ一つ、今までのやってきたことを見直しながら経費の節減が進められていることがよく分かりました。

 そこで、この経費の取組と連動しての国民が負担している受信料の軽減、二〇二三年度に向けてというふうに今お答えいただいたんですけれども、具体的に、どのような視点で、どのように進められるのか、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

前田参考人 お答え申し上げます。

 経営計画の中でもお示ししておりますが、現在進めております一連の改革の成果を、最終的には二〇二三年度に受信料を値下げするという形で還元することをお約束しております。その原資といたしましては、営業改革など構造改革を断行し、更なるコスト圧縮を行うことや、財政安定のための繰越金の取崩しを行うことなどで確保していくことを想定しております。

 二〇二三年度は衛星波の削減を行う年でございますので、衛星契約の方の値下げをまず最初に考えたいと思っております。その具体的な内容につきましては、今年の秋に明らかにしたいと思います。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 しっかりと進めていただきたいと思います。

 続きまして、NHK放送技術研究所の予算につきまして伺います。

 NHK放送技術研究所の技術により、放送や映像の世界も大きく進歩していると私は思っております。この分野における当研究所が果たしてきた役割は多大であり、最近では、8Kの映像技術、これが内視鏡を活用した医療の分野にも大きく貢献していると思います。

 そこで、今日までNHK放送技術研究所で主にどのような技術が開発され、社会に実装されてきたのか、また、現在はどのような技術の開発に取り組んでいるのかにつきましてお聞かせ願えますでしょうか。

児玉参考人 お答えいたします。

 NHK放送技術研究所は、各種放送方式の研究開発を進め、二〇〇〇年に衛星デジタル放送、二〇〇三年に地上デジタル放送、二〇一八年に4K・8Kスーパーハイビジョンの実用化に貢献してまいりました。また、音声認識技術による生字幕制作システムの実用化を始め、東京オリンピック・パラリンピックで実施しました、手話の動きのCGを自動生成する手話CG実況などのユニバーサルサービスの研究にも取り組んでおります。

 現在は、放送・通信融合サービスとして、放送・通信など伝送路を意識しない新たな受信方式や、AR、VRコンテンツも利用できる放送の高度化、紙のように薄くて軽く、丸めて持ち運べるフレキシブルディスプレーなどの研究開発を進めております。

 また、認知科学や材料、デバイス、ホログラムなど、長期的な視点で取り組む基礎研究の分野にも引き続き対応してまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 私も、NHKの8Kの映像で、内視鏡で8Kの映像を見ながら手術をする、そういった画像を見せてもらったんですけれども、今までのものは血管がよく見えなかったんですけれども、血管の細かいところまで見られて、より高度で安全な手術もNHKの開発した8Kの技術でできるのかな、このような感想を持たせていただいているところでございます。

 そこで、NHK放送技術研究所が開発した技術はこのように社会に大きく貢献していると思いますが、経費の節減の取組、削減の取組は非常に重要であると思いますが、当研究所の研究についてはしっかりと継続をしていただきたいと思っております。

 そこで、NHK放送技術研究所の予算の近年の推移と、今後の方針についてお聞かせ願えますでしょうか。

児玉参考人 お答えいたします。

 放送技術研究所を含むNHKの技術関係の調査研究費は、年により多少の増減はございますが、この五年間では、おおむね年間六十億から八十億円程度となっております。

 今後も、公共メディアとして、視聴者に新たな価値を提供するための研究に取り組むと同時に、未来のメディア、サービスに目を向けた研究にも積極的に取り組み、基礎から応用まで、必要となる技術の研究開発をバランスよく進めてまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 続きまして、インターネットの活用について伺います。

 近年、モバイル端末の急速な普及等により、インターネットの利用が急激に拡大をしています。インターネットにより、いつでもどこでも世界中の情報が得られるようになりました。

 そこで、NHKのインターネットの活用について、他の放送事業者などの関係者との連携ということで、総務大臣からもこういった意見もあったと思いますが、このような現状も踏まえ、今後の取組についてお聞かせ願えますでしょうか。

松坂参考人 お答えいたします。

 インターネットによる情報発信の重要性は年々増しております。NHKは、インターネット活用業務実施基準の範囲内で、NHKのコンテンツにいつでもどこでも触れられる、触れていただくように取り組んでいるところであります。

 主なサービスといたしましては、常時同時配信と見逃し番組配信を行うNHKプラス、それから、「らじる・らじる」によるラジオ番組の配信、そして、NHKニュース・防災アプリなどを通じた安全、安心を守る情報の提供などがあります。また、国際発信を効果的に拡充するため、国際放送のウェブサイトやアプリの強化にも取り組んでいます。

 二〇二二年度は、NHKプラスで、総合テレビの番組の提供時間を一日二十四時間に拡充するほか、インターネットに接続したテレビで見逃し番組を御覧いただけるサービスを新たに開始いたします。また、国際発信では、NHKワールドJAPANについて、インターネット配信事業者経由での海外での配信を強化するほか、在外邦人向けの日本語のNHKワールドプレミアムで、ネットでの提供番組の拡大にも取り組みます。

 民放との連携につきましては、放送法の努力義務を踏まえて、TVerを通じたNHK番組の配信を現在十程度の番組で行っておりますけれども、民放各社でインターネットによる番組の同時配信が本格化する中、連携、協調を今後どのように進めていくのか、民放各社の御意見や御要望を伺いながら、対応を検討していきたいと考えております。

 今後とも、民放との二元体制を堅持しつつ、インターネットの適切かつ効果的な活用に取り組んでまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

赤羽委員長 次に、鈴木庸介さん。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属の鈴木庸介です。

 今日は、NHKと政治の距離についてお伺いをしたいと思います。

 距離と申しましても、我々野党もメディアとの距離については度々御批判をいただくところでございますので、どこの党がどうこうということではなくて、NHK御自身が政治というものに対してどういう捉え方をしていらっしゃるのか、そのことを中心にお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、会長にお伺いをしたいと思います。

 御案内のように、ウクライナ情勢の中で、ロシアの国営テレビ、チャンネル1、ロシア・トゥデー、こうしたロシアの放送全体、そしてまた、国営テレビの職員がテレビニュースの中に映り込んで反戦を訴える、こういったロシア独特の放送の形みたいなものが今浮き彫りになっているかと思うんですが、そのことに対する会長の見解をお伺いできますでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 ロシア国営テレビの職員だった女性の行動は、世界中に衝撃を与え、報道をされております。NHKでも、彼女が放送局を退職したことや、メディアの取材に応じ、今は非常に困難なときですが、全ての人が声を上げなければいけませんなどと発言した様子などを詳しくお伝えしてまいりました。

 ロシア国内では様々な動きが出ておりますので、しっかりと伝えていきたいと思います。

鈴木(庸)委員 ロシアの国営テレビに対する評価というところに関しては今なかったわけでございますけれども、メディアの政治に対する中立というものが、今、世界中で問われているのではないでしょうか。

 しかし、残念ながら、二〇二一年の国境なき記者団によります報道の自由ランキング、これは御存じの方も多いと思いますけれども、ロシアは百五十位なんですね。しかし、我々日本も六十七位。これが評価できる数字だとは私は到底思えません。これには、意見の多様性とか報道に対するルーツの透明性とか、また政治からの独立性などが基準になって、この六十七位という順位になっている中であります。

 そうした中で、放送法の第四条という規定がございます。

 この放送法の第四条、御案内のように、放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、一番、公安及び善良な風俗を害しないこと、二、政治的に公平であること、三、報道は事実を曲げないですること、そして四、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることとされております。

 NHKは、この放送法の第四条をどの程度守れているかと評価していらっしゃいますでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 NHKは、放送番組の編集に当たりまして放送事業者が遵守すべき事項を定めた四条を含め、放送法にのっとり、事実に基づき、公平公正、不偏不党、何人からも規律されることなく、自らを律して放送に当たっております。

 こうした自主的な編集判断の下、視聴者にできる限り幅広い視点から情報を提供することを目指しており、意見が対立したり異なる意見があったりする問題では、そうした意見があることを伝え、公平性を確保するように努めております。

鈴木(庸)委員 今の答弁で理解いたしましたのは、しっかりと放送法の第四条は守れているということで理解をいたします。

 それでは、幾つか質問をさせていただきます。

 二〇一九年にNHKのウェブで配信をされまして、文部科学省が進めてきた英語民間試験の延期などについて批判した、NHKの、ばばを引かされたのは受験生だ、英語民間試験、なぜ国は推進したという記事が掲載後に削除をされました。また、東大もばばを引かされた、検証、英語民間試験という記事も掲載後に削除をされております。

 削除された理由については、一部メディアが、記事が有力政治家に対して批判的だったので、当時の政権を忖度したのではないか、そうした報道もされているようではございますが、これはどのような経緯で削除したのか、経緯と見解をお伺いできますでしょうか。

正籬参考人 お答えいたします。

 御質問の記事は、二〇一九年十一月に、大学入学共通テストの英語の民間試験導入の延期を受けまして、これまでの議論の過程ですとか経緯を詳しく検証しようと掲載されたものです。

 この中では、民間試験の導入について、二〇一四年に文部科学省が設置した有識者会議でも専門家や教育関係者から指摘が相次いだとして、当時の発言内容を引用したんですけれども、外部から様々な指摘がありました。それを踏まえて内容を精査した結果、その有識者会議の引用の内容について事実の誤りや丁寧さを欠いた点が確認されたことから、記事を削除しまして、これについてはおわびも掲載しております。

 御指摘のような政権への忖度があったということはございません。

鈴木(庸)委員 事実の誤りだったという御答弁でございました。

 もう一つ聞かせてください。

 同じく、去年一月に予定されていたNHKスペシャル「令和未来会議 どうする? 何のため? 今こそ問う 東京オリンピック・パラリンピック」の収録が、収録の二日前に、関係者に通知していたにもかかわらず、急遽延期となっています。これについても、開催への準備を進める中で、討論番組の中でオリンピックやパラリンピックをやるべきではないといった意見が出ることについて、忖度又は影響を及ぼされたのではないかという報道が一部なされております。

 これについても、どのような経緯で延期になったのか、教えていただければと思います。

正籬参考人 お答えいたします。

 取材、制作の過程については原則としてはお答えしていませんけれども、御質問の番組につきましては、二〇二一年一月に入りまして二回目の緊急事態宣言が出されるなど、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻さを増している状況などを踏まえて、放送を一時延期したと聞いております。

 その後、出演予定者のスケジュールなどを踏まえまして、三月に放送していまして、その中では様々な意見が出されたことは御承知のとおりです。

 御指摘のような忖度ということはございません。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一つ聞かせてください。

 まず、BPOについて御説明をいただきたいと思います。

松坂参考人 お答えいたします。

 BPOは、二〇〇三年の七月、NHKと民放連によって設立されております。

 BPOの規約にありますように、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情ですとか放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から対応し、放送倫理を高めていくことを目的としております。

 BPOには、放送倫理検証委員会、放送人権委員会、青少年委員会の三つの委員会があります。放送倫理、放送による人権侵害、青少年に対する放送の在り方について、有識者で構成される委員会が独立した立場から審議などを行っております。

鈴木(庸)委員 独立した立場から審議ということでございました。

 当然、設立の合意書にはNHKの名前も入っているわけでございますが、ある放送業界にも大変見識のある有力な政治家の方から、BPO委員の人選に国会が関われないか提起をしたいという声がございました。これについて、民放労連さんの方では、BPOの人選に国会が関わるようなことは、権力の介入を排して放送の自律を図るBPOの設立の理念に反するもので、認めるわけにはいかないとおっしゃっています。ロシアがウクライナに侵略戦争をしかけ、国際的に緊迫した情勢の下で虚実入り交じった報道が錯綜している、このように人々の情報環境にも大きな影響が及んでいる状況で、民主主義社会の基盤となる言論、表現の自由を脅かすような議論が政権与党内で行われていることに対して強く抗議するという声明を出されていますが、こうした一連の動きについて、会長はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 BPOの三つの委員会の委員は、放送事業者の役職員を除く有識者で構成され、評議員会が選任をいたしております。委員を選ぶ評議員会も、放送事業者の役職員を除く有識者から選任をされております。

 BPOの委員の人選は、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に、自主的に、第三者の立場から対応するというのが規約の目的にかなう形で行われるべきものと考えております。

鈴木(庸)委員 ですから、政治が関わるということについての会長の見解をお伺いしているんですが、いかがでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げましたとおり、自主的に、第三者の立場から対応するという規約の目的にかなった形で行われるのが正しいと思っております。

鈴木(庸)委員 なかなか、これで更問いをしてもらちが明かないと思うので。

 るる申し上げてきたんですけれども、要は、私たち野党からも、また、野党が仮に政権を取ったときにでも、NHKには政治から距離をきっちりと置いていただきたいと思うんです。政治家にどれだけ距離が近いのということを誇る組織ではなくて、どれだけ国民の役に立つ情報を取るのか、そうした矜持を持っていただきたいというのがお願いでございます。

 NHKの予算も決算も、国民からの受信料をもらっていますので、国会の承認を受けるということ、これは理屈は分かるんですけれども、NHKの周りには余りにも、政治家、政治からの忖度とか圧力とか、こうした報道が多いなというのを感じております。

 私、個人的には、NHKの予算は国会の承認の必要をなくせばいいと思っております。というのは、そうすれば、政治家の顔色をうかがわなくて済みますし、その代わり、徹底的にその世代世代の政権を批判的に、そして検証的に見ながら、公共放送として、受信料を払ってくださっている国民の皆様にそのお返しをしていただきたいと重ねてお願いを申し上げたいと思います。そして、この六十七位という不名誉の記録を挽回するべきだと思っております。

 次の質問に行く前に最後にお伺いしたいのは、例えば権力からの介入をはね返すとか、こういった、局内にはどのような指針、基準、あるんでしょうか。

正籬参考人 お答えいたします。

 NHKの報道姿勢についてですけれども、放送ガイドラインというのが、これは公表しているものがありまして、不偏不党、公平中立、意見が分かれるものについては多角的な角度でお伝えしていく、そのことを明確にうたっております。そのことを我々は日々大事にしながら報道に当たっていく、スポンサーは受信料を払ってくださっている視聴者の方々だ、そのことを肝に銘じて日々仕事に当たっております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 重ねて申し上げますけれども、このロシアの報道を見ながら思うのは、NHKが政治的自律を保つこと、これが本当に民主主義のとりでとして大事なことである。私たちの生活の自由と言論を担保するための努力を重ねてお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 次に、受信料の話を少しさせていただきたいと思います。

 前回私が質問させていただいたときに、金子大臣から、インターネットを通じたコンテンツ視聴の急速な拡大などの環境変化を踏まえた今後の受信料の在り方については、幅広く国民・視聴者の皆様からの御理解を得る必要があると考えています、総務省としては、テレビを設置していない方を新たに受信料の対象とすることは、現時点では考えておりませんと。

 先ほど斎藤先生への答弁にもありましたけれども、現時点ではということが強調されてございますけれども、前田会長も同じ、このとおりの考え方でよろしいでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 インターネットに接続できるというだけでスマートフォンやパソコンから受信料をいただくことは、現時点では考えておりません。

鈴木(庸)委員 現時点ということは、将来的にはそういう可能性も残されているということで理解をしておりますけれども。

 受信料の在り方を考えていく受信料制度等検討委員会というのがNHKの中にある。私も今回の質問の勉強をする上で初めて知ったんですけれども、受信料制度等検討委員会というのがあって、この流れに沿ってある程度NHKさんの動きが出ているのかなとも考えたんですが、これは一体、どういった組織で、どういったことを議論しているんでしょうか。

松坂参考人 お答えいたします。

 NHK受信料制度等検討委員会は、二〇一七年に設置しております、外部の有識者の方で構成する会長の常設の諮問機関です。将来の受信料制度の在り方についての検討ですとか放送受信規約や受信料免除基準の変更を行う際に、諮問をいたしまして、答申をいただいております。

 最近では、検討委の下に専門委員会というものを設けまして、インターネットが浸透して様々な情報が飛び交う情報空間の中で公共的な情報を届ける意義や役割などについての検討も行っていただいているところであります。

鈴木(庸)委員 この議論の中で私が注目させていただいたのは、平成二十九年七月二十五日に、このNHK受信料制度等検討委員会の中にある「常時同時配信実施に関する各種想定」にある、「同一コンテンツについては、異なる伝送路に対する追加の費用負担は求めない」というのがあります。ネットでもNHKの同時放送を見られるようになった場合の受信料の在り方について、本契約が一つあれば、複数のパソコンを持っていたとしても契約は一つでいいという方向性に触れられておりました。これは大変分かりやすいと思います。

 ただ、その一方で、NHKアーカイブに蓄積されているデータというのは、我々が払った受信料を元に制作されてきたわけですよね。でも、ネット上で、アーカイブのデータをNHKオンデマンドで見ると、これは有料になってしまう。

 この辺りに、今後NHKとして、放送と通信が融合したときに一体どんな受信料の在り方を考えているのか、ちょっと分かりにくくなっている一因があると思うんですけれども、これは、受信料で作って受信料で放送したものが、なぜオンデマンドで改めて有料になっているんでしょうか。

松坂参考人 お答えいたします。

 NHKオンデマンドは、NHKが放送した番組をインターネットを通じて有料で配信するビデオ・オン・デマンド・サービスです。過去に放送した番組の提供には権利処理ですとか配信設備などに一定の費用がかかりますため、二〇〇八年から受益者の負担で提供を開始しております。

 一方、二〇二〇年に常時同時配信サービスを開始するに当たりまして、見逃し番組配信サービスの在り方についても改めて検討を行いました。当時、民間放送事業者においても一週間程度の見逃し番組配信を利用者負担なしで提供するサービスが定着していたことなどを踏まえ、常時同時配信と併せて、一週間の見逃し番組配信サービスについては、受信契約のある方々には追加の御負担なく利用してもらえるようにしたところであります。一週間以内であれば本放送の時間以外にもいつでもどこでも御覧いただける、これがNHKプラスということであります。

 一方、放送から一週間以上経過した番組については引き続き受益者負担で提供することが妥当と考えておりまして、NHKオンデマンドについては、協会の豊富な映像資産であるアーカイブスを享受していただく有料のサービスと改めて位置づけているところでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 ネットフリックスとかアマゾンプライムとか競合他社が出てきている中で、納得感を持って千二百二十五円を払ってもらう、これが大変重要なところなのかと思っております。

 この受信料のパートで最後に伺いたいのは、会長は、今後、受信料の在り方についてどう考えていらっしゃいますか。漠然と、状況を見てとかというのじゃなくて、ちょっと、ドン・キホーテさんの受信設備のないテレビが販売数を伸ばしたり、そういうことが大きなニュースになるくらい、NHKの受信料が今後どうなるのかというのは、国民の皆様にとって大変大きな関心事だと思います。

 なかなか具体的に言い切れないところもあるかと思うんですけれども、その辺についての会長のお考えを伺えればと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 現在の受信料制度は、歴史的な経緯で、ラジオから始まりまして、ラジオから白黒テレビになって、カラーテレビになって、それから衛星放送が始まりまして、いろいろなものを全部、新しくなる都度見直しをして、結果的に上乗せして受信料をいただくような形になっております。ですから、衛星契約の方は衛星付加料金という形になっております。

 こういう階段状に積み上げたような受信料体制がいいのかというのは、衛星放送が始まったばかりのときは、普及していませんので、付加価値というのは分かるんですけれども、今既にもう五割を超えました。そうなりますと、かつて白黒テレビがカラー化したときと同じで、五割を超えたところで、ふさわしい受信料の体系はどういうことかというのは、やはりもう一回考える必要があると私は思っています。

 今、もう一方で、減免制度も実は物すごく複雑になっていまして、いろいろな意味で、受信料制度が積み上げてきた実績と実態がやや合わなくなっておりまして、視聴者の方から見ても、これは何だという御意見もたくさんございますので、ここは、私は一度、受信料をもう一回見直す必要があると考えております。

 その中で、インターネットをどうするかというのも、現時点ではインターネットは補完業務ですので、そのままいただくということはないと思うんですけれども、そもそもそれが補完業務でいいかどうかというのを含めて御議論いただいて、最終的には、やはり国民の皆様が納得いただけるような、できるだけ私はシンプルな形にした方がいいと考えております。

鈴木(庸)委員 会長御自身のお言葉で語っていただきました。本当に、どうもありがとうございます。

 最後に、NHKの新しい人事制度についてお伺いをできればと思います。簡単に御説明いただけますでしょうか。

林参考人 お答えいたします。

 社会状況の変化や技術革新のほか、減収局面が続くことが想定される厳しい経営環境にありまして、スリムで強靱なNHKに変革し、NHKでしかつくり出せない価値、サービスをしっかりと視聴者の皆様に提供し続けていくことが、受信料で支えられる公共メディアの責務だと考えております。

 このため、様々な環境変化にも柔軟に対応できる多様な人材を確保し、働く一人一人が能力を最大に発揮することができる環境を構築していくことが急務であると考えておりまして、現経営計画における重点項目の一つとして、人事制度改革を掲げました。

 年功序列や人材育成不足といった人事の課題の抜本的な解消を実現すべく、まず、採用活動や人材育成など、すぐに実現できる取組から順に実行しております。

 二年目となる現在は、あらゆる職員に関係する職員体系の再編成に着手したほか、職員一人一人の志向や成長ステージに応じてキャリアをサポートする体制づくりなどを進めております。

 職員が安心感と共感を持って人事制度改革に向き合い、将来にわたって視聴者の皆様の負託にお応えし続けることができる組織へと変革してまいります。

鈴木(庸)委員 先ほどの斎藤委員の質問に対する答弁にもあったんですけれども、局長級を若いところから登用する。

 マネジメント人材を育成するために若手の抜てき人事というところは分かりますし、これは前田会長がみずほ銀行の頭取時代に三十代の支店長を抜てきした、そういった人事のやり方に重なるところもあるんですけれども、はたから見ると、例えばプロ野球、俺はプレーヤーとして、ピッチャーとして、バッターとして結果を残したいと思って入ってきて、今までは、そこで結果を残せば監督になって、名球会に入ってみたいな感じになっていたと思うんですけれども、入ってちょっとしたら、いや、君、フロントに来ないかと言われているような、そんな人事制度な気がするんですね。

 では、これは何が起こるかというと、先ほど申し上げましたように、今コンテンツの強化というものが急務の中で、専門性の高い人材というものがこの人事制度で果たして育つのかなという疑問を持っております。

 前田さんは人事の専門家でいらっしゃいますので、その辺も含めて、このマネジメント制、新しい人事制度で、コンテンツの強化プラスマネジメントの強化、この両方が担保できる根拠を教えていただけますでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 NHKの、私が会長になって最初に感じたことは、NHKの人事制度は極端に縦割りが強くて、それから、年功序列が物すごくきついものがございました。地方の局長会議を招集しますと、局長さんの年次はほぼ五十代後半、ほぼ全員同じで、ほぼ一、二年しか違わないという、普通、役所でもないような極端な年功序列になっておりました。

 それから、管理職比率が非常に高くなっています。人員構成でいいますと、要するに、普通はこうなっているんですけれども、こういう感じなんですね。若い方が十分働ける状態ではない、むしろ若い方にすごく負荷がかかる組織になっています。

 これで本当に持続可能かというのが私の最初の問題意識でありまして、それで、ここでやはり人事制度そのもの、それから縦割りのところを少し是正しないとこれは無理だということで、今回の抜本的な人事制度改革に着手いたしました。

 専門性との問題ですけれども、私は専門性を否定していくことは全くありませんで、専門性は物すごく重要だと思います。ただ、縦割りの中で、要するに、俺の後ろからついてこいということだけで専門性は担保できません。技術は物すごく進歩しますので、今回は、専門性をある意味でしっかりと評価するために、スペシャリスト人材という専門性を評価する制度も設けました。

 それから、新しい人事制度は、専門性を更に強化するために、縦の、専門で生きていくという方の仕組みを更に進化させましたので、今までみたいに年功でこうなるとか、そういうことではございません。

 そういう意味で、今までの、私は過去のNHKの職員の方の実績を否定することは全くありませんが、このままでいきますと、人員構成を含めて、NHKの未来の持続可能性は低いということがございましたので、そこを是正するために今回の人事制度改革をしたわけでございます。そういう意味で、今までいた方がいづらくなるとか、そういうことは私はないと思います。

 ただ、なぜ公募を入れたかといいますと、社内で、例えば、私がこれは若い人でできそうだというふうに抜てきして局長に配置しますと、多分、部下の方は年次が上の方になりますね、ほとんどが上の方だと思いますので。それでは、恐らく、いい形で組織運営ができないと思います。

 そのためには、非常に厳格な試験をいたしまして、倍率でいいますと、去年も今年も約十倍という倍率で、かつ、たくさんの方に面接いただきまして、大丈夫かどうかを見た上でライセンスを差し上げました。初回の、昨年度やったときは百二十人の方が応募していただきました。今年は三百人の方が応募いただきました。

 去年はなぜ少なかったかといいますと、やはり縦割りがきついものですから、手を挙げて局長になりたいなんて言うと上司からにらまれる、そういう事態がございました。今年は、そういう意味では、そういうこともなくすように、人事評価の仕方を公表いたしまして、こういう方を評価します、そういう形で、皆さんに分かる形で変えました。

 そういう意味で、専門性を評価するということは全くそのとおりでございますが、それだけではマネジメント人材は永遠に育ちませんので、やはり両方私は必要だと思っております。

 以上です。

鈴木(庸)委員 前田会長の人事も、延期されなければ来年の一月までということですので、人事のしっかりとした結果と、あと、重ねて、政治からの距離というものに御留意をいただきながら、NHKの経営を進めていただければと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、吉川元さん。

吉川(元)委員 立憲民主党の吉川元です。

 早速質問させていただきます。

 私、総務委員会、この一年余り外れておりました。その間に、かんぽ生命の契約に関する「クローズアップ現代+」の番組をめぐり、当時の上田会長に経営委員会が厳重注意した件に関係する、三回の経営委員会の議事起こしが開示されました。これは昨年七月八日のことです。

 この議事起こしですが、非公開とされた経営委員会で、放送法が禁止する個別の放送番組への介入に抵触しかねない議論あるいは発言があったのではないかとして、かねて、我々野党あるいは視聴者の方からも全面公開が求められていたものです。開示された議事起こし、私も読ませていただきました。

 そこで、まず、森下経営委員長にお聞きします。この三回の経営委員会の議論、放送番組の編集への介入に類する議論や発言は全くなかったという認識でしょうか。

森下参考人 お答えいたします。

 経営委員会といたしましては、あくまでもガバナンスの観点から注意を行ったものでありまして、放送法の第三条や第三十二条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識して議論しておりました。番組の編集の自由を損なうような事実はなく、執行部もそうした事実はなかったとしていると承知しております。

 今回の件では、抗議の元となった番組などについて確認する必要がありまして、番組などをめぐる意見や感想も含まれておりますが、あくまでもガバナンスに関する議論であることがその場でも何度も強調、指摘されておりまして、具体的な制作手法などを指示することを意図した議論ではなかったと認識しております。

 以上、お答えいたしました。

吉川(元)委員 確かに、当時の上田会長への注意、これはガバナンスについてということになっています。しかし、私、議事起こしを読みますと、本当にそうなのかなと。

 当時、代行だった森下委員長、二〇一八年十月九日の経営委員会で、「クローズアップ現代+」の番組について、奇異に感じた、インターネットだけで取材してそれで番組を作るということが、本当はちゃんと取材になっているのか、あるいは、適切な取材の在り方というのは、経営委員会でも意見を言うべきだと思うんですよねといったような、番組の内容あるいは編集の在り方、これを出発点にして議論が行われております。

 先ほど、意見や感想であって、制作手法について何もそういう話ではないんだと言いましたけれども、適切な取材の在り方について、経営委員会でも意見を言うべき、これはまさに制作手法そのものについて発言をされているというふうに言わざるを得ませんし、当時の石原委員長も、そういう作り方、だからろくに考えていないんですよと、森下代行に同調しております。

 そして、当時の上田会長への注意を決めた十月二十三日の経営委員会。会長への口頭注意をめぐって、ある委員が、ここではガバナンスが表になっているとは思いますけれども、先ほどの議論の中では、番組の作り方、つまり執行ですね、そこがかなり問題にされたと発言をしております。

 これに対して石原委員長は、法律に触るから、こういう言い方になっている、向こう、郵政側ですけれども、は、したがって、そこが分かっていて、ガバナンスの問題だとと発言をしております。

 石原委員長は、さらに、そこまで言うと、つまり番組の作り方が問題なんだということを言うと、何だという話は返ってくる危険性はありますよ、こんなNHKの中でとおっしゃっています。

 ちょっと、経営委員長が、こんなNHKなんという発言をすること自体、耳を疑うんですけれども、これは明らかに、この議事起こしを読むと、放送法三十二条二項で規定されている放送法三条の規定に抵触する行為の禁止、三条の規定というのは、何人からも干渉又は規律されない、こういうことを明らかに、一項もそうですけれども、執行できない、放送番組について。というその規定そのものにも私は違反をしているんじゃないかと。

 当時の経営委員会の議論、ガバナンスの名をかりた事実上の放送現場への介入、そして会長への圧力行使、こう言われても私は反論の余地はないというふうに指摘をさせていただきます。

 関連して、もう一点だけ質問いたします。

 昨年七月に開示された経営委員会の三回目の議事起こし。NHK情報公開・個人情報保護委員会は、二〇二〇年五月に、開示すべきとした答申を出しました。これに対して、経営委員は公表済みの議事概要を議事録として公開しただけであったために、公開・個人情報保護委員会は、昨年二月に再び、全面開示すべきと答申を出しております。

 答申内容。経営委員会がかねて主張してきた非開示の理由、三つほどあるようですけれども、今後の審議の阻害をするおそれがある、第三者、これは郵政側だと思いますが、に不測の損害を生じさせるおそれがある、非公表を前提に行われた意思形成過程の情報である、この三つについて、ことごとく全面否定をしております。

 にもかかわらず、実際の開示は昨年七月。一回目の答申から一年二か月、二回目の答申からも五か月近い長い時間を要しているんですけれども、なぜこれほど時間がかかったのか教えてください。

森下参考人 お答えいたします。

 NHK情報公開・個人情報保護審議委員会からの一度目の答申におきまして、経営委員会としては、説明責任を果たすべきとの答申の趣旨を踏まえまして、議事の内容を整理、精査した上で公表したものであります。しかしながら、二度目の答申では、情報公開制度の趣旨にのっとって、対象文書そのものを開示せよと指摘がございました。

 私どもは、審議委員会からの二度目の答申であることを重く受け止めまして、昨年二月二十四日から七月六日まで、十回にわたって慎重に幅広く様々なケースについて検討を重ねてきたために、開示の判断に至るまで四か月以上の時間を要したものでございます。

 また、経営委員会は十二名の合議制でありまして、昨年三月に新しい委員が二名入られたこともあります。

 また、途中、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、リモートによるテレビ会議システムにより開催していたこともありまして、そういったことも要因になったと考えております。

 いずれにしましても、慎重に幅広くあらゆるケースについて検討した結果、開示の判断が四か月以上を要したということでございます。御理解のほど、お願いをいたします。

吉川(元)委員 十回ということでございますけれども、慎重に議論をした、それはそのとおりなんだろう。また、この議論そのものについては議事録として公開しているということ、これも当たり前なんですけれども、評価したいと思います。

 ただ、公開するかどうかの議事録を読んでおりますと、こういう発言があります。「個々の発言を見ると、細かいことの指摘がたくさんあると思うので、それに耐えられる自信があれば、別に開示しても怖いこともない」あるいは「議論の過程の中では、取材姿勢などに言及しているところもあり、あの状態で全部出すと非常につまみ食いもされるでしょう」、こういう発言が繰り返し行われているんですよね。

 結局、会長の厳重注意処分について放送法に抵触をする可能性がある、少なくとも可能性はあったんだということは、やはり経営委員会の中でも認識はあったんだというふうに私は感じておるわけであります。

 それはさておきですけれども、五回目の経営委員会、五月十一日ですけれども、そこでは、基本的に不開示だが議事録に整理された部分だけは、議事要旨ですかね、開示をする、公開をする、要は一部開示ということで合意形成がされておりました。ところが、六月八日の経営委員会では、監査委員会、それから経営委員会事務局、それぞれ弁護士に相談をしたところ、全面開示を求めた個人情報保護委員会の答申と異なる対応をした場合には、定款違反、役員の忠実義務違反、ひいては放送法違反とみなされるおそれがあるということが指摘をされて、一転して全面開示の方向にかじを切っております。

 最初から弁護士の方に聞けば、一回目でこの議論は終わった話だというふうに思いますし、正直、何をやっているのかというふうにも思わざるを得ません。

 上田会長への厳重注意、対応が遅い遅い、あるいは返事をしていないということがガバナンスについての厳重注意の中身の一つだったというふうに思いますが、経営委員会の対応の遅さというのは、それこそ経営委員会のガバナンスがどうなっているのか、そういうふうに言わざるを得ないというふうに思います。

 議事起こしの開示に当たっての経営委員会の見解は、極めて重要な権限行使として会長を注意したという特異な事案であり、審議委員会で全面開示せよと言ったから開示したんだというふうに言っておりますけれども、特異な事案あるいは非常に重大な、重要な事案であるからこそ議事録に議論の過程をきちんと残しておく、国会の同意人事を経て総理から任命された見識のある経営委員、そして協会の最高意思決定機関の経営委員会、その責任を自覚して職務の遂行をしていただきたいというふうに思います。

 それでは、予算あるいは中期計画等々について、経営計画について質問させていただきます。

 今期の中期経営計画では、スリムで強靱な新しいNHKを目指す構造改革の柱として、保有するメディアの整理削減が挙げられております。その中で、衛星三波のうち2Kの一つを削減して、将来的には4Kの普及状況を踏まえて、もう一つの波も整理をすることを検討するとしております。

 今後、4K、8Kが衛星放送の軸になるというふうにうかがえるんですが、4K・8Kロードマップに従い、二〇一八年十二月に実用放送が開始をされました。政府の日本再興戦略二〇一六では、東京オリパラが当初実施されるはずだった二〇二〇年には世帯の五〇%で視聴されること、これが目標とされております。直近の数字はどうなっているでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 4K、8K衛星放送を視聴することができるテレビなどの受信機の出荷台数は、二〇二二年二月末までの累計で約千二百三万台となっております。

 なお、4K、8K衛星放送を受信するためには宅内設備が対応している必要があります。この点について申し上げますと、放送サービス高度化推進協会という団体の推計によりますれば、パラボラアンテナを利用した直接受信による4K衛星放送の受信可能世帯数、つまり、4K対応テレビなどを設置いただければ4K放送を御覧いただける世帯の数は、二〇二〇年三月末時点の数字ですが、三千百八十万世帯となっています。また、このほかに、ケーブルテレビなどを通じて受信している世帯もあります。

吉川(元)委員 要は、アンテナが来て受信できるかどうかというのが、先ほどの三千万世帯を超える数字だというふうに思います。

 昨日質問のレクをした際に、世帯普及率という数字は存在しないんだ、実は調べていないんだというお話を聞いて、ちょっとびっくりをいたしました。これは今日の議題とは少し外れますので、別の機会に聞こうと思っておりますが。

 先ほどの日本再興戦略の中では、世帯の五〇%で視聴されること、これが目標とされているわけです。ところが、世帯のいわゆる普及率そのものの数字が元々ないにもかかわらず、この五〇%という目標を掲げるというのも、これも私、よく分からなくて、盛んに政府はKPI、KPIというようなお話もされるんですけれども、基の数字がないのにどうやって、あるいは調べていないのにどうやって世帯普及率五〇%というような数字が出てきたのか。これは非常に奇異にも感じております。これはまた別の機会に質問をさせていただければと思います。

 それで、もう一つ総務省にお聞きしたいんですけれども、目標どおりに普及していないというのが実情だというふうに思います。大体、日本は六千万世帯、正確な数字は私も分かりませんが、六千万世帯があると言われておりますから、出荷台数が一千二百万台ということになると、ダブりも当然あるわけで、実際のところは二〇%程度の数字だというふうに思います。普及率五〇%には遠く及んでいない、この原因はどのようなところにあると考えていますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 4K、8Kの普及状況につきまして、例えば、目標を設定した時点に比べテレビの平均使用年数が延びていることや、そのほか、二〇二一年九月に、先ほど申し上げた放送サービス高度化推進協会という団体が視聴者アンケートを実施しておりますが、そこによりますと、4Kテレビに不満を有する理由として、4Kチャンネルが少ない点が指摘されていることがございます。このような点などが要因の幾つかになっているのかと思います。

 一方、受信機の出荷台数は、本年二月末、約千二百三万台と先ほど申し上げましたが、昨年一年間で四百二十万台ぐらい増加しています。

 こうした状況を後押しするために、引き続き、関係者と連携の上、周知広報活動など、普及に向けた取組を進めてまいりたいと存じます。

吉川(元)委員 NHKが第二十五回放送を巡る諸課題に関する検討会に提出した資料では、衛星放送の波の削減については、4K、8K放送の普及状況を踏まえるとなっております。

 残念ながら五割にも達していない状況、世帯の普及率ですけれども、この状況で波の削減というのは可能と考えていらっしゃいますか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 受信料収入が長期的な減収傾向となることが予測される中で、経営資源を質の高いコンテンツに集中させ、スリムで強靱な新しいNHKを実現させるために、衛星波は二〇二三年度に2Kのうちの一波を削減、音声波は二〇二五年度に一波を削減する方向で検討を進めております。

 一方で、御指摘のような状況もございますので、現在放送しておりますコンテンツに対するニーズを調べまして、視聴者の皆様の利便性を損なわないようにしながら進めていくことが重要だと思います。例えば、2Kと4Kで同じ番組を放送して、4Kテレビでなくても御覧をいただけるようにしたり、番組の一部を他の放送波に移したりするなどの工夫も必要だと思います。

 丁寧に対応してまいりたいと思います。

吉川(元)委員 もう一点、メディアの削減、波の削減についてお聞きします。

 音声放送、音声の方ですけれども、いわゆるラジオです。現在はAM二波とFM一波、これを、AMを一波に削減をするということが中期経営計画にも盛り込まれています。そうしますと、現在のラジオ第二放送、ここが縮小、廃止の対象になるのではないかと推測をいたします。

 ところが、この第二放送は、ほかのラジオ局では余り重視をされていない教育、語学、それから教養講座などの番組が多く含まれておりますし、リスナーが圧倒的に多いとは思いませんが、NHKらしさという点では、第二放送こそ、Eテレと並んで、NHKらしさを示す波だというふうにも私自身は感じております。

 今、朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」というのが行われていますけれども、百年にわたる主人公の家族の物語ですが、この縦軸というのはまさにNHKの第二放送の英会話、これが軸となって展開される番組でありまして、そういう意味でいいますと、AMの波の削減、第二放送で扱われている教育、教養、あるいは語学に関する番組、今後どのように扱われていくんでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 音声波につきましては、主として、地域の民放ラジオ局が所有するAM放送の送信アンテナ設備の老朽化が進みまして、費用の面から更新が難しくなっておることから、民放を対象にAMからFMへの転換を見据えた国の施策の検討が始まっております。

 NHKにおきましても、AM放送の送信アンテナ設備の更新に多額のコストがかかっておりまして、二〇二五年度に現在の三つの波、ラジオ第一、第二、FMから、二つの波、AM、FMへ整理削減する方向で検討を進めております。

 もちろん、削減によりまして視聴者の皆様の利便性が低下しないというのは大前提で準備しておりまして、ラジオ第二の番組につきましては、残る二波に振り分けたり、インターネットを活用したりすることなどを検討しております。

 来年度の番組改定では、検討の一環として、英語の語学放送をラジオ第二とFMと同じ時間帯で編成する予定であります。

 今後は、視聴者の意向調査の結果などを踏まえ、整理削減の具体策をまとめてまいる所存であります。

吉川(元)委員 是非、視聴者、リスナーの声をしっかり聞いていただいて、英語だけじゃなくて、いろいろな国の言葉、AM、NHK第二をかければそれを学ぶことができるという、これは非常に貴重な番組だというふうに思いますので、是非、リスナーの声をしっかり聞いて対応していただきたいというふうに思います。

 あわせて、もう一つ、地上波のサブチャンネルについてお聞きしたいと思います。

 北京の冬のオリンピック、スノーボードのハーフパイプの平野歩夢選手が最終滑走で見事に逆転優勝しましたが、放送は直前にサブチャンネルに切り替わる。見逃してしまった方も少なからずいらっしゃるようで、まさかのサブチャンネルという言われ方もされているようでありますが、このサブチャンネル、どういう場合に利用されるのか、また、ほかの、例えば今後このサブチャンネルを別な形で利用する技術的な検討等は行われているのか、その点についていかがでしょうか。

正籬参考人 お答えいたします。

 サブチャンネルを使用するマルチ編成につきましては、地上波で常時使用するということは技術的には可能です。ただし、本来のハイビジョン画質から標準画質に低下することになりますので、視聴者の方々からは、ちょっと、よい画質にしてくれという御要望をいただくことも多々あります。

 そうしたことから、運用に当たっては、必然性、必要性を十分に検討した上で実施の有無を決めております。総合テレビではスポーツ中継、Eテレでは午後二時台の高校講座でマルチ編成を実施しております。

 緊急報道や災害関連など、国民の命と暮らしを守る番組、また、国会中継や選挙報道など、政治的公平性の観点から放送の対応がその時々で異なることが好ましくない番組につきましては、原則としてマルチ編成は実施しないということにしております。

吉川(元)委員 実は、この後、放送と通信の融合についてもいろいろお聞きをしたいことがございました。ただ、今日はちょっと時間がもうこれで来ましたので終わりますけれども、また引き続き、機会があれば、この放送と通信の融合についてもお聞きしたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。

赤羽委員長 次に、岡本あき子さん。

岡本(あ)委員 立憲民主党・無所属の岡本あき子でございます。

 私の地元は宮城県仙台市、東日本大震災の被災地になります。

 昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説がありました。原発、侵略の津波、亡くなった方を埋葬できないつらさ、復興。様々なキーワードに、三・一一を経験した者として、本当に心が痛みます。

 改めて、犠牲になられた方々に哀悼の意を表したいと思います。

 ウクライナへの軍事侵略の事実の把握については、報道の大切さは言うまでもありません。改めて、報道、特に公共放送の役割、使命の必要性を実感しているところです。

 加えて、先週は、福島県沖地震が、あるいは岩手県沖地震が起きました。

 ちょっと通告の順番を入れ替えて、先に先週の福島県沖地震など、相次ぐ地震災害に関連して伺わせていただきたいと思います。

 この地震でも命が失われました。しかし、被害が少なくてよかったなどというコメントが見受けられ、本当に残念に思っています。震度六強の地震により、局所的にも相当なダメージが起きているということは忘れてはなりません。

 その意味で、現状を的確に報道してくださるメディアの役割は重要です。特にNHKでは、災害情報、避難所の情報、交通やライフライン情報をデータ放送画面などで常に得ることができることも感謝申し上げたいと思います。

 現在も被災状況を把握している最中ですが、鉄路、道路、港湾等も損壊をしています。その場所場所では深刻な被害が発生しており、その救済を求めて、政府に伺いたいと思います。

 資料一を御覧ください。東日本よりもひどいというコメントも載っている記事です。

 被災した事業者への支援をまず求めたいと思っています。グループ補助金適用の声が出ています。

 この資料一は、仙台市秋保温泉のホテルになります。ここ一軒だけでなく軒並み、ホテルが、水路、下水、温泉水などの管路が多数損壊をして、温泉街全体で施設復旧のめどが見えていない状況です。ほかにも、遠刈田温泉あるいは福島の温泉事業者でも被災が多かったと聞いております。

 せっかくの三連休や春休みで、予約がようやく八割を超えてきたと期待したところで、全てキャンセルという状況です。これから復旧計画を作られますが、グループ補助金の適用を当然前提に考えていただきたいと思っています。今時点でいかがでしょうか。これは経産省になりますか、お答えください。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、宮城県や福島県の中小・小規模事業者の皆様の中には、東日本大震災や新型コロナ、昨年の福島県沖地震に加えまして、今回の福島県沖地震で被災された方もおられまして、連続する災害によりまして、大変厳しい経営環境にあると承知をしてございます。

 経済産業省といたしましては、発災翌日に、中小企業支援策といたしまして、災害救助法が適用された宮城県及び福島県内の全市町村に対しまして、中小企業関係団体等による特別相談窓口の開設、災害復旧貸付けの実施、セーフティーネット保証の適用、既往債務の返済条件緩和等への柔軟な対応の要請、小規模企業共済災害貸付けの適用等の措置をそれぞれ講じているところでございます。

 現在、地方経済産業局の職員を被災地に派遣いたしまして直接情報収集を行うとともに、被災自治体、福島相双復興推進機構等からも被害状況を収集しているところでございます。

 引き続き、経済産業省といたしまして、被災状況の把握を続けるとともに、状況を踏まえた上で、必要な支援策を考えてまいりたいと存じます。

岡本(あ)委員 ちょっともう一点、確認です。

 グループ補助金もそのメニューの選択肢の一つにもなり得るということでよろしいでしょうか。

佐々木政府参考人 現在、地方経産局の職員、被災自治体、それから福島相双機構等からも被害情報を収集しているというところでございまして、その被災状況をしっかり把握しながら、必要な支援策をしっかり考えてまいりたいと思っております。

岡本(あ)委員 今ほど御紹介いただいた中は、貸付けですとか債務の相談、そういうものばかりですので、これからやはり復旧復興を目指すためには、是非、東日本大震災からの一連ということでの判断も求めたいと思います。

 今御答弁で、連続する災害だということを御答弁いただきました。この点、内閣府にも確認をさせていただきます。

 三月十六あるいは十八の単発の地震被害と捉えないでいただきたいと思っています。自治体や事業者にとって、十一年前の東日本大震災、コロナ、そして昨年二月にも福島県沖地震がありました。それに加えて、今回の福島県あるいは岩手県沖の地震です。四重苦となっている、これを前提に、内閣府の防災でも、災害の対応という発想を持っていただきたいと思います。これは内閣府にお答えいただけますでしょうか。

五味政府参考人 委員御指摘のように、今回の被災地域は、昨年二月にも今回と同程度の大きな地震があり、被害を受けました。また、十一年前の東日本大震災を経験した地域でもございます。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で経済状況が悪化する中で発生した災害でもございます。

 十九日に二之湯防災担当大臣が被災地を視察した際にも、御地元から、度重なる災害に対して心が折れそうな状況だといった切実な声をお伺いしたところでございます。

 被災地の方々の復興に向けた希望が失われることのないように、被災された方々や被災自治体の声をしっかりと受け止め、政府一体となって支援を進めてまいります。

岡本(あ)委員 金子大臣には、今後、特別交付税措置等もあると思いますので、是非その点をお願いさせていただきます。これはお願いということで、お答えいただけるのであればお願いします。

金子(恭)国務大臣 まず、三月十六日に発生をいたしました福島県沖を震源とする地震においてお亡くなりになられた方々に心より御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 まずは、今回の災害により被害を受けた自治体において、応急復旧対策などにどのような財政負担が生じるのか、その実情を丁寧にお伺いしてまいります。

 その上で、来年度の特別交付税措置を含め、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じることにより、被災自治体の財政運営に支障が生じないよう、万全の対応をしてまいります。

岡本(あ)委員 万全という言葉をとても心強く受け止めました。

 重要伝統的建造物保存群などもありますので、是非、自治体が、先ほど心が折れるという言葉があったとおりでございますので、もう一度元気を取り戻せる、その支援という形で、政府挙げてお願いをしたいと思います。

 そして、ロシアのウクライナ侵略に対する報道について伺わせていただきます。

 公共放送は世論を扇動、誘導する影響があります。ロシアの国営放送でこれが更に明らかになっています。だからこそ、取材者の安全確保はもちろんですが、AIやサイバー攻撃も含めて、様々な情報作戦が飛び交う中で、事実に基づき、確認をした上での報道が大切になります。フェイクニュースやずさんな取材、あるいは報道する側の先入観等による偏向報道がないよう、公平公正にと求めます。

 この点、前田会長、御配慮している点、御説明いただきたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナ情勢をめぐりましては、様々な情報が錯綜しております。意図的に誤った情報を流す動きや、情報が武器になってしまうこともある中で、NHKに求められるのは正確な情報の発信だということを肝に銘じ、プロとして、一つ一つの情報を確認しながら、日々の取材や報道に当たっております。

 ニュースや番組では、記者や解説委員だけでなく、専門家の方々にも御出演いただき、一つ一つの事象の背景などを詳しく解説する対応を進めております。視聴者の皆様に多角的で深みのある情報をお伝えできるよう努めているところでございます。

 NHK放送ガイドラインでは、「戦争報道にあたっては、一方に偏らない公平・公正な姿勢を保ち、視聴者に正確で客観的な情報を提供する。」と明記しております。

 引き続き、視聴者の皆様に正確で公平公正な情報の提供を続けてまいりたいと思います。

岡本(あ)委員 ちょっと時間の関係で質問を一個飛ばしますけれども、今、事実を確認して、公平公正な情報を出していくという御答弁がありました。

 ちょっと、ウェブニュースになりますが、資料三の一、それから資料三の二を御覧ください。

 昨年末、テロップの捏造問題も起きましたけれども、情報を軽んじて扱ったり、政治への忖度や制作側の主観が偏向報道に加担するなどということは絶対あってはなりません。

 そうしたところ、先週の三月十七日、衆議院の憲法審査会が開かれたんですけれども、NHKの三月十七日の「NEWS WEB」で、衆議院憲法改正審査会というタイトルで流すということが起きました。資料三の二ですね、大体四時間か五時間後なんですけれども、訂正されて、衆院憲法審査会と直っております。

 これは一体どういう経緯でタイトルが憲法改正審査会となったのか、また、掲載のチェックはどうなっているのか、削除の判断はどうだったのか、一連の御説明をお願いしたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 御質問のタイトルは、今月十七日にNHKのウェブサイトで公開いたしました、衆議院憲法審査会、緊急事態への対応など自由討議という記事のものでございまして、ウェブの記事がツイッターに投稿される仕組みになっております。

 記事の本文では正しく衆議院憲法審査会と表記されておりましたが、ウェブ用にタイトルを作成する段階で、御指摘のとおり、誤った表記を掲載してしまい、その後、誤りに気がついて、正しい表記に直す対応を取ったと聞いております。

 ウェブの記事を出す際には、報道局の担当部署の管理職やデスクがチェックすることになっておりますが、確認が不十分だったと思います。

 ウェブの記事を修正する場合は、報道局の責任者が、方法を含めて、個別の事案ごとに判断しておりますが、視聴者にとって訂正等の理由が分かりやすい対応に努めてまいりたいと思います。

岡本(あ)委員 先ほど鈴木庸介議員からも指摘があった際は、修正する説明をして削除したという説明があったんですが、今回は、さらっと削除、ツイッターは何事もなかったかのように削除されているんです。それからウェブニュース、「NEWS WEB」の方は修正をしていますが、ここを修正しましたとか、何もない状態なんです。これはなぜ対応が異なるのか。

 それから、本来だったら二重三重、管理職も含めてチェックをされるということが、なぜ誤りになったのか。

 この点、もう一回御説明ください。

前田参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、ウェブの記事を修正する場合には、報道局の責任者が、方法を含めて、個別の事案ごとに判断しておりますけれども、視聴者にとりまして訂正等の理由が分かりやすい対応に努めてまいりたいと思います。

岡本(あ)委員 是非、誤ったら誤ったで、しっかり説明をちゃんと載せていただきたいと思いますし、残念ながら、憲法改正審査会という名前だともし思われたスタッフがいたとすれば、非常に心外だということをお伝えしたいと思います。

 あと、今回の事業計画に対する総務大臣の意見で、「地方からの情報発信、地方創生への貢献の観点から、あるいは、災害時のバックアップ機能の充実の観点から、引き続き、公共放送の機能の地方分散に取り組む」とあります。

 地域情報の発信の強化ということも事業計画で会長が御説明になりました。そのための予算確保、どのようになっているのか、御説明ください。

前田参考人 お答え申し上げます。

 公共放送の機能の地方分散を進めるとともに、地域放送・サービスの充実を図ることは、NHKの取り組むべき大きな課題と考えております。

 二〇二二年度は、全体支出を削減する中で、地域放送・サービスの予算は六億円増額し四百三十三億円として、取組を強化しております。

 地域創生への貢献の観点からは、地域の情報をその地域のみならず全国へ、さらには国際放送を通じて世界へと発信することはNHKの使命の一つと考えておりまして、引き続き充実を図ってまいります。

 また、災害時のバックアップ機能の観点では、首都直下地震など、渋谷の放送センターが機能停止した場合に、代替機能を担う大阪放送局の機能強化を進めているところでございます。

 四月の番組改定では、各地の放送局による地域向けの情報発信も充実させるほか、地域での職員の採用も増やしていくことにしておりまして、地域の放送・サービスの更なる充実に向けて取り組んでいきたいと思います。

岡本(あ)委員 是非、地方局の予算もしっかり確保していただきたいと思います。

 残念ながら、例えば東京の場合、出演者に衣装とかメイク代とか、そういうものもついているんだと思うんですね。ところが、地方局にはなかなか、そこまで十分な予算がなくて、地方局から東京に行った瞬間に、同じ方が非常に洗練されて男性も女性も見える、こういう小さな格差がいろいろなところに影響していると思いますので、是非この点もよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、資料二を御覧ください。私の地元、NHKの仙台放送局です。

 是非皆さんにお越しいただきたいと思うんですが、実はここ、常禅寺メディアステーションに、赤で囲んだ枠のところに、東日本大震災メモリアルコーナーというのがあります。数字で1、2、3、6ですね。メモリアルのコーナー、VR、それからシアター、それから当時の津波の高さも現場で体験できます。

 私も、実は震災で停電で、当時のNHKが何を流していたのかはリアルタイムで見ていないんですが、ここでは七十二時間の放送が再現して、見ることもできるんです。

 是非、こういういい取組をしている地方の発信強化をしていただきたい。このことを求めて、ちょっと時間が参りましたので、質問を終了させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、沢田良さん。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、NHKという皆さんがよく知っている公共放送について、現状や今後の在り方などを中心に、前田NHK会長の御認識や、金子総務大臣の御見解を伺いたいと思っております。

 本日も、御準備いただいた関係省庁の皆様、委員部の皆様、よろしくお願いいたします。

 現NHK会長の前田会長のキャリアは、富士銀行から始まりまして、メガバンクであるみずほフィナンシャルグループ取締役会長という、きっすいの銀行マンというイメージです。

 銀行における営業には大きな役割があり、高度な金融に関する知識、企業が抱える課題や潜在的なニーズをつかむためのヒアリング能力、そして、経営者にとって融資が受けられる、受けられない、これはもちろん死活問題ですから、融資に対しては大変冷静な判断が求められます。思うように融資が受けられない場合には心ない言葉を言われることも珍しくありませんし、精神的なタフさも当然求められます。

 前田会長に質問です。

 前田会長は、銀行のトップの当時、銀行における営業というものはどんな役割があるとお考えでしたか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 私も営業をやっておりまして、要するに、業績を推進するその基になるものは、一つは、やはり新しい、新規のお客さんを開拓するというのが一つですね。それからもう一つは、既にいるお客様の取引を更に深く深化させる。この二つが、民間企業で発展する基になる土台となるものであります。そういう具合に認識をして仕事をしてまいりました。

沢田委員 ありがとうございます。

 そうですね、やはりつき合っているお客様との関係を深化する、すごく大切なことだと思います。

 ちょっと続けざまの質問になるんですけれども、前田会長、では、NHKにおける営業の役割とは何でしょう。教えてください。

前田参考人 お答え申し上げます。

 NHKでの営業の重要な役割は、最前線で視聴者の皆様と接して、NHKの価値や存在意義に御理解、御納得いただいた上で御契約をいただき、受信料収入の確保に努めるということでございます。

 これまでの営業活動は、支払い率向上、要するに公平負担を徹底的に追求するというスタイルでやりましたので、受信料をお支払いいただいていない約二割の方々に集中的に訪問する、そういう取組をずっとやってきました。これは私は、やや行き過ぎで、先ほど私がお答えしたとおり、既存の八割のお客様との接点も重要でございまして、そちらも必要、両方必要なことでございます。

 そういう意味で、八割のお支払いしていただいている方のニーズもちゃんと把握して、払っていただいていない方は納得して払っていただけるという、その二つが重要だと私は考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 ほかに質問を用意していたんですけれども、そのお答えもいただいたので、大変心強いというか、NHKの方で考えていただいているなと。

 そもそも、やはりNHKに対する負の国民感情が高まったきっかけというのは、もちろん今の御返答にもあったんですけれども、NHK及びその委託先法人による訪問営業活動への不信感です。

 女性の単身世帯に深夜に訪問する、訪問員が名前や訪問目的を言わない、家の中にテレビがあるか確認させろなど、いまだあふれる動画にも残っています。もちろん、誇張したものや、フェイクがあるのも当然分かっています。

 ただ、問題なのは、あたかも受信料を払わない人間を裁けるかのような、上から目線の営業姿勢が会社に蔓延していたことであり、NHKの必要性や魅力を理解していただき契約を取るという営業の視点ではなく、ただテレビを持つ者を見つけて、法律を盾に契約させる、悪く言えば、銀行でいう貸したお金を返せというような、債権回収のような役割が一般的だったからと感じます。

 そんな中、賃金は上がらない、国民負担率だけが過去最高四八%と、私は、政治の失敗を多くの国民が背負わされている、まさに金銭的に疲弊している方が多い中で、NHKが真に必要かどうか分からない、そういう方が増えたのは必然だと感じました。

 前田会長が二〇二〇年の十二月の定例記者会見で、訪問営業活動についてコメントされています。全面的な見直しをさせており、来年度以降、従来と同じスタイルの営業活動はしないということで、今の御答弁をいただきました。

 やはり、お客様とどうつながっていくのかということは、我々、民間であり、そして公共的な役割を持つものを同時に考えて、八割のしっかりとして受信料を払ってくださる方々、この方の受信料を元に残り二割の方に裁判を起こしたりとか、そういう人が払わなきゃいけないということをアピールすることだけを続けていったらば、当然、八割の方からすると、不信感も高まってしまう。それも前田会長からの御答弁でいただきました。

 今回、令和四年度収支予算には、巡回訪問営業から訪問によらない営業の転換を進め、営業経費を二年間で四百六十四億円削減とありました。

 今まで政府から求められていたコスト意識を高めたという面でもちろん評価できますが、私は、同時に、先ほど会長からも答弁いただいたNHKの信用を取り戻すという意味で、当然、NHKの役割や意義を理解していただけるような丁寧な営業への変更が必要と考えます。

 前田会長に質問です。

 先ほどおっしゃったNHKの役割や意義を理解していただける丁寧な営業の部分、具体的にどういった取組をされているか、ちょっと教えていただけますか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 訪問によらない営業への転換で訪問要員体制を大幅に縮小していることもございまして、視聴者の皆様から寄せられる苦情の件数は、以前の一割から二割程度と大幅に減少いたしております。訪問要員体制は今後も縮小を進める予定でございまして、苦情の件数も更に減っていくものと思っております。

 一方で、インターネットやSNS等のデジタルでの接点を通じて、公共放送の役割や受信料制度の意義を御説明する活動を強化いたしております。質の高いコンテンツをお届けするとともに、イベントなどを通じてNHKの価値を改めて実感していただき、視聴者とのつながりを深めていく取組が大切だと考えております。

 こうした取組を丁寧に続けていくことによりまして、信頼を更に強いものにしたいと思います。

沢田委員 ありがとうございます。

 しっかり、営業の部分については、国民の信頼をかち得るように、不断の努力をよろしくお願いいたします。

 ただ、変更していくという、もちろん姿勢の部分はこれからどんどんどんどん上がっていくとしても、やはり政府から求められているコストを抑えていくという方向性を含めて、現状の受信料制度というのは大変大きな問題を抱えていると私は感じています。

 というのも、どんなに質を上げても一定の収入となり、逆にどんなに質を下げても同じような収入となってしまう。本来、民間であったらば、よい商品を適正な価格でよい営業で売るという競争環境が起こる、この民間では当たり前のサイクルが機能しづらいという負の側面もあります。そこに、唯一物を言う政府に忖度するというような今までの改善レベルの動きで、真に国民に必要とされる公共メディアになれるとは、私は厳しいというふうに考えております。

 そんな中で一番の鍵になるのが、総務大臣の意見です。

 大臣の意見のメインは、業務、受信料、ガバナンスの三位一体改革に取り組むこととあり、手段の改善を求めており、高止まりしている子会社への随意契約比率の引下げという鋭い指摘はありつつも、放送番組を充実、ラジオを使用、放送・サービスの普及に関する研究を推進、サイバーセキュリティー強化、支払い率が八一%もあるのに、支払い率の向上に全力を挙げることなど、ほとんどがコストが上がるオーダーであり、インターネット活用業務については、アマゾンプライムが千四百六十万件、ネットフリックス六百万件登録と、テレビのネット接続率が四〇%を超えている中にもかかわらず、節度を持って事業を運営すること、議論を深めていくことといった消極的な意見で占められております。

 世界の公共放送が新しい形を模索してダイナミックに行動している中、大臣の意見からは、明確な目的なく、現状維持の微修正しか感じません。

 金子総務大臣に質問です。

 現状維持の微修正で、真に国民に必要とされる公共メディアに変わっていけると考えますか。又は、最低限の公共性のみを追求すべきや、より民間に近い形でNHKの魅力の最大化を図りたいなど、方向性があれば是非教えてください。

金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘の総務大臣の意見は、NHKが公共放送としての基本的な役割や使命を果たしていくための主要な課題について言及した上で、NHKが毎年度の事業を遂行する上で、個別の事項も含めて、必要と考えられる点を指摘したものでございます。

 その上で、NHKについては、国民・視聴者の負担する受信料で運営される公共放送であることを踏まえ、豊かでよい番組を放送するなどの基本的な役割を果たしつつ、経営のスリム化、ガバナンス改革を不断に進めていくことが求められると認識しております。

 さらに、現在、インターネットを通じたコンテンツ視聴の拡大など、放送を取り巻く環境は大きく変化しており、デジタル時代における公共放送の果たすべき役割や使命について検討を行うことが必要であると考えております。

 そうした中で、NHKにおいては、テレビを保有、視聴しない方々を対象とした社会実証を実施する予定であると承知しております。

 将来に向けた公共放送としての在り方については、その検討に当たり、国民・視聴者からの十分な理解を得ていくことが必要であり、総務省としても、こうしたNHKにおける実証の状況も踏まえながら、有識者検討会などにおいて、引き続き丁寧に検討してまいりたいと思います。

沢田委員 やはり時間軸が遅いと言わざるを得ないかなと。ダイナミックに放送と通信の融合時代という中で、全世界がまさにしのぎを削っている中、今、このペースで検討と議論を進めている段階なのかというところは、やはり考えていただきたいなと思います。

 私は、固定した受信料で維持する組織と、競争環境の中でよい商品を適正な価格でよい営業、広報で売るという組織はインセンティブが全く異なりますので、災害、報道、教育など公共性の高いコンテンツは維持し、情報化社会の中で情報の取捨選択ができないときのセーフティーネットとしての役割を担う、受信料を大幅にダウンさせても維持できる、コストの最小化を目指す守りのNHKと、大ブロードバンド時代に、世界で戦える事業者として、すばらしいコンテンツをすばらしい営業、広報で拡大していく、自立して課金などで収益を稼いでくる攻めのNHKと、二つに分離すべきと考えます。

 前田会長に質問です。

 NHKが抱えるアーカイブや質の高い放送技術、良質なスタッフ、世界とのつながりは、ほかの民放よりも、この大ブロードバンド時代に世界で戦う環境として素地が整っていると私は感じますが、世界と戦うメガバンクの経営で培ってきた前田会長の眼力や判断として、NHKにそのポテンシャルはあると考えますか。教えてください。

前田参考人 お答え申し上げます。

 今委員の言われた、ポテンシャルがあるかという点でございますが、ポテンシャルはあると思います。

 ただ、今、NHKは抜本的ないろいろ改革をやっている最中でございまして、まず先にスリムで強靱にしないと、ポテンシャルを発揮するところまでいかないと思います。私は、まず、スリムで強靱にするのが先だと思います。それがないと、持続可能性は保証できないと思います。

沢田委員 ありがとうございます。

 あるという言葉を聞いて、大変安心しました。

 私は日本大学芸術学部の放送学科卒業ということで、卒業生にNHKで働いている方もたくさんいます。大変優秀なスタッフが多くいらっしゃるNHKですからこそ、我々日本維新の会としても、そのポテンシャルがあるというところを信じて、これからも全力で後押ししていきたいと思いますので、是非頑張っていただければと思います。

 質問を、最後、通告した部分がちょっと言えなかったんですけれども、一言だけ。

 このNHKの放送なんですけれども、深夜の放送となっているんですね。こういった大事な議論を、国民の皆様に、受信料を払っている皆様に見ていただけるためにも、是非ライブか、又は一番見やすい時間に放映されることを前田会長に最後にお願いして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

赤羽委員長 次に、阿部弘樹さん。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 まず、一九八二年、放送法が改正され、NHKの出資による子会社が認められました。NHK関連団体、NHKグループの指導監督も当然行われているわけでございますが。

 済みません、予告にはないんですが、大臣、カラオケを歌われるかどうかを、まず最初に御質問をさせてください。

金子(恭)国務大臣 下手ですが、歌います。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。

 それでは、八二年、放送法改正のNHKに出資を認めた経緯というものを御説明いただけますでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 昭和五十七年の放送法改正におきましては、NHKの業務の円滑な遂行に資すること、NHKの持つ放送分野における高度な技術、経験等や番組素材などを広く活用すること、あるいは、副次収入の増加により財源の多様化を図ることといった観点から、NHKの業務に密接に関連する事業を行う者に対し、出資することができることとしたものでございます。

阿部(弘)委員 非常に参考になるお話ですね。密接に業務に関連する、そういう者に出資するということでございます。

 今日は、NHKが思いついたプロジェクトXというのを皆さんに御披露したいと思います。

 まず、プロジェクトX。NHK出版社は、音楽著作権管理を行っておりますね。NHKとの取引は、ほぼ皆目ゼロ、〇・四%。百二十億余の売上げに対して四千万しかない。

 本来は海外では禁止されている音楽著作権の管理を、NHK自体では行われないから、子会社で行っているというふうな説が専らでございます。NHKで放映されたものは十年間著作権があって、かつ毎年更新。

 これは、最後に申し上げますが、NHKの、総務省、放送コンテンツ製作取引適正化ガイドラインの中の、優越的地位の濫用ではないかというふうにも言われておりますので、まず、その点を申し上げておきます。

 内部留保金が見る見る増えて、今は百七十四億円も内部留保が上がっている。カラオケを歌うたびに、大臣、大臣の歌っているカラオケ代もNHKに入っているんですよ。受信料だけじゃなくて、私の大好きなプロジェクトX、「地上の星」のカラオケを歌うたびに、NHKに課金が入っていく。

 次に、NHKのプロジェクトX。二〇〇六年以降、財政状況に応じて積極的に大型配当を実施するとネットではうたっている。多いときには七十億円の配当金。ですが、NHK本体の余剰金がどんどんどんどん膨らむにしたがって、去年、今年と、この配当金が目減りしている。NHK出版の余剰金を見てみると、一株当たりの額はどんどんどんどん膨れ上がっているのに、配当金を減らしている。

 恐らく、配当金が増えると余剰金が増えて、また受信料が高過ぎる、下げろという世論が起きるのを何か予期してそういうことをしているのかと思わざるを得ないようなことが起きている。

 次に、三番目は、ネット情報で大変恐縮なんですが、NHKのテーマソング、今はAIさんの「アルデバラン」、私も食堂で見て、そして折々見て、その歌を口ずさむ。カラオケを歌ったらまた課金ですよ、これを。NHKさんに幾ら払えばいいんですか、こんなものを。国民は、このことも払わされていることを知らない。

 質問に移りたいと思います。

 出資金の配当がこの二年で急激に減っている経過というのはどういうことなんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

松坂参考人 お答えいたします。

 子会社からNHKへの配当に関するお尋ねですけれども、これは、関連団体運営基準に基づきまして、子会社の純利益の五〇%相当額を基本として、各社の決算状況を踏まえながら実施しております。

 二〇一九年度末から二〇二〇年度にかけて新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けまして、子会社の番組制作ですとかイベントなどができず、子会社の利益が落ち込みました。このため、二〇一九年度決算に基づいた二〇二〇年度の子会社からの配当、そして二〇二〇年度決算に基づいた二〇二一年度の配当は大きく減りまして、それぞれ各年度十九億円程度にとどまっております。

 今年度、二〇二一年度は、引き続きコロナの影響はあるものの、子会社の業績についてはコスト削減などの収支改善を行っておりまして回復基調にあることから、今年度決算を踏まえた来年度の配当は増えるものと考えております。

 今、委員の御指摘がありましたけれども、利益剰余金の中には固定資産ですとか運転資金、それから将来のシステム対応などの投資の資金などもありますが、そうした利益剰余金などに加えまして、前年度の決算の状況を踏まえて、必要なものについては特例的な大型配当も実施することにしております。

 御指摘のように、コロナの影響でこの二年度は大型配当もできておりませんけれども、今後の状況を見ながら、大型配当ができるようなら対応していきたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 時間が短いものですから、丁寧に答弁されたら、私の質問時間がなくなります。

 NHK出版についてお伺いします。

 ここは、コロナ禍でも、音楽著作権などを原資としておりまして、順調に増えております。私は、最初に言いましたように、一株当たりの純資産額は着実に増えているのに、何で株配当が少ないのかというのが非常に疑問なところです。

 次に、お尋ねします。

 NHK公認ドラマプロデューサーという方がこういう朝ドラのAIさんの音楽、決定をなさって、特定のレコード配給会社に決定しているというネット報道がありますが、そういったことはあるんですか。ちなみに、来年度の「ちむどんどん」、どういう方が行われて、レコード配給会社はどちらなんですか、お伺いします。

正籬参考人 お答えいたします。

 ドラマの制作や主題歌のアーティストの選定についてですけれども、これは、NHKが自らの判断で決定しております。今御指摘の、NHK公認ドラマ音楽プロデューサーという肩書はございません。また、外部の方にそうした名刺を許可したことはないと聞いております。

阿部(弘)委員 違うんですよ。ネットが事実かどうかをお聞きしているんですけれども。

 事前の説明では、お話ししましたように、十七枚配ったというふうに、枚数まで規定して、本人が配ったということを言っているじゃないですか。まあ、そういうことを言っても関係ないとおっしゃるんですが。

 来年度の「ちむどんどん」の歌、どこのレコード配給会社ですか。

正籬参考人 お答えいたします。

 今ここで直ちにお答えできる材料を持っておりません。

阿部(弘)委員 だって、聞きますよと言ったのに。とんでもない。

 そのプロデューサーが二千万よりちょっと安いぐらいのお金を制作会社からもらっているんですよと、ネットでは言ってあるじゃないですか。そのことは事実なんですかとお尋ねしていますよ。そんな不誠実な国会答弁、国会対応がありますか。

 会長、いかがですか。

正籬参考人 お答えいたします。

 ドラマの主題歌、アーティスト等の選曲につきましては、NHKが自らの判断で決定しております。今御指摘の、どなたがどういう収入を得たということについては承知しておりません。

阿部(弘)委員 この七年間、ほとんど同じ制作会社が、ある方の力によって決まったんじゃないかというふうな告発があっているじゃないですか。告発が事実かどうかをお聞きしているんですが、あなたは真正面から答えなきゃいけないですよ、そういうことを。私もカラオケをしたら、おたくの会社に課金されているんですよ。放送料以外も課金されている。

 こういう、もうかるような、本来、最初に総務省からお答えいただいたように、密接な業務の関連も全くない会社がNHKという名前を振りかざしてプロデュース活動を行っているということで、このことは、またこれから、様々な機会を通じてNHKさんにお尋ねしますが。

 最後に総務省にお尋ねしますが、放送コンテンツ製作適正化ガイドラインで、優越的地位の濫用というのは、こういう、NHKの公認ドラマプロデューサーが名刺を配って、そして行為を行うことが、その優越的地位の濫用に当たるんですか。あるいは、そういう方が一千万なり二千万なりお金をもらうことは、議員であればあっせん利得に当たるわけですけれども、民間人もそんなことをやったら、私どもは、最初にお話しいただきましたように、放送法で、そういう指導監督を行う役目は一義的にNHKがあると思うんですが、そういうことがあってはならないと思います。

 時間が来ましたので、会長、真相究明をお願いしたいと思いますが、いかがですか。日銀総裁よりも高い給料をもらっているNHK会長さん、お願いします。真相究明についてお伺いしたいと思います。

前田参考人 先ほどからお答えをしているとおりでございます。その名刺を使われた方については、全く存じ上げておりません。

阿部(弘)委員 終わります。

赤羽委員長 次に、守島正さん。

守島委員 日本維新の会、守島です。

 まず、令和四年度のNHK予算において、事業支出のスリム化や予算における収支均衡を実現したことに関しては、前田会長以下、前向きな経営改革に鋭意取り組んでいただいているものと認識しています。

 その上で、まず、予算に関して広く聞きたいと思います。

 今回、事業支出における一番の削減幅は国内放送費でありまして、二百四十億円の支出削減のうち、半分以上の百二十一億円にこれが当たりますが、この圧縮できた主な理由をまずお聞かせください。

前田参考人 NHKでは、毎年、予算をつくるときに、それぞれの部局から予算の申請をさせて、それを、過去三年、四年前は受信料収入が豊富だったものですから、そのまま予算として提出しておりました。昨年、一昨年から、私が会長になってから、予算をつくるときに、予算そのものの査定を厳格に行いました。それぞれの部局からの予算を査定した上で適正かどうか、そういうチェックをかなり強烈に入れまして、その結果として支出が削減できたということでございます。

 ずっと昔は、元々査定していたんですけれども、その後で、かなり受信料収入が豊富になった段階で、しっかり査定するというのを一時止めていたんですね。これが逆に、要するに支出が増大のしっ放しになったという一つの要因であります。そこは元に戻したということで、トータルの支出そのものが七千億を切る水準まで落とすことができたと思います。

守島委員 ありがとうございます。

 予算査定を厳しくしたということで、スリムで強靱な組織をこれからもつくっていってほしいと思うんですが、こうした前田会長の経営改革の方向性は支持するんですが、やはりトップダウンでこれから改革を遂行するに、経営陣の覚悟、これも必要と考えます。

 ちなみに、NHK会長の報酬は三千九十二万円であり、この額は、残念ながら、国務大臣よりちょっと高いわけでございます。会長報酬に関しては、多寡に関してはいいんですけれども、平成二十五年以降変わっていなくて、過去の不祥事に対する取組としてカットしている役員報酬の削減割合も、非常勤であります経営委員長が三割程度カットしているのに対して、会長のカット率は一五から一八%と差があります。

 ちなみに、日銀総裁、さっき阿部さんが報酬は低いと言ったんですが、日銀総裁の方が高いんですが、日銀総裁は、東日本大震災後二年間、三〇%のカットをしたという過去の経過がありますが、現在、コロナ禍によって国民生活にも大きな影響が出ている中で、NHKは高額な受信料の上で経営が成り立っているということを考えると、国民の理解も必要になってきますし、組織を改革していく上で、経営陣自ら範を示すことで、より強力な施策遂行ができるんじゃないかということも考えられるんですが、この点、会長はどう考えているでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 私は民間企業の出身でございますが、その経験から申し上げますと、NHKの役員報酬は、世間一般の役員報酬額と比較して、とりわけ高額とは思っておりません。

 NHKの執行役員、執行部の役員の報酬額につきましては、放送法の規定によりまして、経営委員会が判断するものと理解しております。

 なお、NHKの役員報酬は、例えば平成八年度の会長報酬、四千三百万円でございましたので、その後、段階的に引き下げ、現在は三千九十二万円となっております。

 私みたいに外から来た者から見ますと、そんなに高くないんですけれども、ただ、御指摘のように、公共放送ですから、これはやはり抑制的にやるのは当然だと私は思っております。

守島委員 会長、率直な意見をありがとうございます。

 民間企業であれば、利益を上げている分、それは高額報酬を得てもしかるべきと思うんですけれども、これから新しいNHKを目指す今の経営計画下においては、組織に予算削減を求めるような改革を行う上では、経営陣も覚悟を示す、そのことで、目的達成に向けて、全社的な意識共有のためにも重要な考え方の一つだということも思っていますので、御指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、訪問によらない営業へと業務モデルの転換を目指す中で、営業経費率は一割を切ったことは、これも評価したいんですが、そもそも、ユーザーへのベネフィットにつながらない営業経費が長年にわたり一割以上を占めていたことが問題であり、今なお、諸外国の公共放送と比較しても、受信料支払い率が低く、営業経費率が高いと、総務調査室の指摘もあります。

 支払い率に関しては、NHKの説明では、これは維持していくと言っていますが、営業のシフトチェンジを行うことで下がってくる可能性がありますし、そもそも、さきに述べたように、諸外国に比べても低いのが現状ですので、これはより高い目標を持ってほしいと思います。

 その上で、受信料の支払い率について確認いたします。

 受信料支払い率には地域格差がありまして、東京とか大阪といった大都市ほど支払い率が低いんですけれども、この理由と、大都市が軒並み低い中で、それ以上に沖縄は支払い率が低く、二〇二〇年度の支払い率はもう五〇%を切ってしまっているという状況ですが、これはなぜなんでしょうか。解消できないんでしょうか。

松崎参考人 お答え申し上げます。

 支払い率は都道府県ごとに差がございまして、東京や大阪など大都市圏では、世帯の移動が多いこと、単身赴任やオートロックマンションなど集合住宅の割合が高くて面接が困難であること、NHKの契約収納業務が難しい環境にあるということが支払い率に影響しているものと考えております。

 また、沖縄県につきましては、米国統治下から日本に復帰した一九七二年、昭和四十七年まで、受信料制度に対してなじみがない期間が長かったことなど、歴史的な背景などが影響していると考えております。

 二〇二〇年度においては、コロナウイルスの感染拡大の影響により、訪問活動を停止するなど営業活動を制限したことや厳しい経済状況が続いたことにより、全ての都道府県で推計世帯支払い率が低下をしており、特に沖縄県に限って低下傾向があるということではないと考えております。

守島委員 歴史的な経緯と言うんですが、特に沖縄において低下しているというか、もう半分以下になっているのが現状なので、やはり、近年、契約する意思のない人が増えているというのは、これはモラル的な問題にもなってくると思うので、こうしたことを考えると、支払い率を上げる余地は僕自身はあると思っていますので、顕在している問題には目をそらさずに、着実に取り組んでいってほしいと思います。

 次に、渋谷の放送センターの建て替えについて、想定建設費は、これまで二転三転してきて、今、千七百億円が建設積立資産として計上されている上で、現在、建設費の見直しを行っていると聞きます。

 今年度予算では、積立金の取崩しをせずに百十八億円の建て替え費用を予算計上していまして、この予算に加えて、昨年以前も積立金以外から予算措置がなされていて、この額が二百億円近くになっています。

 なぜ、積立金は想定建設費相当の高い水準を維持したまま、予算での支出を続けるのか。建て替え費用が増額されることを見据えたバッファーとしているようにも感じてしまうんですけれども、建設費の見直しに当たっての検討状況を教えてください。

松坂参考人 お答えいたします。

 委員から最後に御指摘がありましたけれども、センター建て替えなどについて、建設積立資産を充てることにしているんですが、各年度の建設費が減価償却資金の範囲内で収まるときは、まず減価償却資金をその財源に充てるということで対応しておりまして、不足する場合は、建設積立資産を取り崩すという対応をしております。

 この建設積立資産なんですけれども、委員が御指摘のように、千七百億円、第一期と第二期でという想定に基づきまして、二〇一六年度末で千七百七億円が確保できました。これについては、二〇一八年度から第一期の関連工事、これに関連してこれまでに十四・三億円を取り崩しておりますけれども、先ほど申しましたように、減価償却費の中で対応する面もありますので、二〇二二年度末の予算を立てた見込みでは、建設積立資産は千六百九十三億円と見込んでおります。

 御指摘がありました計画の見直しなんですけれども、現在、衛星波や音声波の整理削減も見据えて、建物の規模やコストなどを抜本的に見直しております。

 第二期以降に計画している建物については、スタジオについても新しい制作手法等を活用するなどして数を減らすことを考えているほか、リモートワークが定着しつつあることを踏まえてオフィスの面積を縮小するなど、建物の規模、それからコストを見直す検討をしております。

 建設費全般が高騰することも予想されるなど見通せない要素はありますけれども、放送センター建て替えの見直しを更に進めて、全体としてコストの抑制に努めてまいりたいと考えております。

守島委員 ありがとうございます。

 けれども、どちらにせよ、放送センターに費やした金額が、これまで費やしたお金が分かりにくいんですね。積立金は一定プールされているのは、僕自身は過剰な積立てだなと思っていますし、使わない資産を保有してBSを大きくするというのは、民間感覚からすると好ましいものではないと思っています。

 建設コストの再算定をしていく上で、これまでのトータルコストもしっかり提示していくべきですし、新しい建物における放送設備費等の引き当てもなされていない中で、より分かりやすい資料を提示しながら、放送センター建て替え事業の全体予算の妥当性がチェックされていくべきだと思っています。これは質問をちょっと割愛します。

 続いて、経営面について聞きたいと思います。

 会計検査院から、NHK関連団体のNHK取引や随意契約については、取引数量、金額に妥当性が見出し難いと指摘されておりまして、近年では、関連団体との随契比率は、件数にして八三・二%、金額にして九二・七%となっていますが、これは改善できるんでしょうか。

松坂参考人 お答えいたします。

 NHKの関連団体は、NHKグループの一員として公共放送の業務を補完、支援することを基本とし、NHK業務の効率的推進を行うことを大きな役割として設立しております。

 関連団体との取引なんですけれども、番組制作を始め、放送設備の保守ですとかコールセンターの業務など、公共放送の役割を果たすために子会社などが持つ技術やノウハウが不可欠な業務も多く、こうした技術やノウハウを必要とするものについては随意契約としております。

 一方で、従来関連団体に委託していた業務の中でも一般の業者に請け負ってもらうことが可能な業務については、競争契約への移行拡大、これは必要だと考えております。来年度、二〇二二年度も、施設の警備ですとか保守管理業務などの一部を新たに競争契約にすることにしています。

 一方、委託が多い番組制作の分野ですけれども、これは、品質管理の観点から、単純に競争契約にするのは難しいものが多いんですが、業務委託の効率性を高めるために、番組の質の確保に配慮しながら、外部のプロダクションなどを対象とした番組企画競争というものを通じまして、こうしたものを今後も積極的に実施していきたいというふうに考えております。

守島委員 ありがとうございます。

 関連団体の経営統合とかも含めて、今ずっと経営改革をやってくれていると思うんですけれども、NHKはこれまで、受信料による安定した収入があるという経営環境において事業規模をどんどん拡大してきて、そうした中、多くのNHK関連会社を置き、競争性のない随意契約、こうしたもので相互依存して、結果、肥大化したことを考えれば、やはり抜本的な改革というのは必要だと思っています。

 NHKが受信料収入によって経営がなされている理由というのは、放送法において、公共放送としての独立性を財源面から保障するためであり、NHKのテレビ放送を受信できる設備の設置者はNHKとの受信契約締結義務を負うこと、これによりますが、そもそも、公共放送の定義となると難しいんですが、この定義とするもので考えられるのは、放送法第十五条の「豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行う」という言葉に係っている「公共の福祉のため」という概念だと僕自身は思っています。

 解釈論はおいておいたとして、この公共放送の定義に「公共の福祉のため」という言葉を当てはめたとして、NHKのジャンル別の編成比率を調べたところ、例えば、公共の福祉に当たるジャンルとして、仮に報道、教育、福祉等を設定して、それ以外を別のジャンルとした場合、前者の番組上の編成比率は約二二%、後者は約七八%となっていて、これが完全に公的か否かですみ分けられるわけではないんですけれども、おおよそ公共的な部分は二割しか放送されておらず、ある意味、その二割のために受信契約締結義務というものが国民に課されていまして、必要以上の受信料が課されているんじゃないかというふうに考えています。

 国民に受信料負担を求めるのであれば、やはり国民に理解が得られるような形にしなければいけない中で、NHKの業務には、民間放送と大きな差異がないものと、民間放送にはできないものがあると思っています。

 これらを分社化するかはともかく、適正な市場環境や経営を行うためにも、民間でできることは民間でという考えに基づいて、前者においては広告スポンサー収入を認めるなど、民営化に向けた改革がなされるべきだと思っています。後者の、民間ではできない公共放送的な部分に関しては、国からの委託事業にするか、受信料収入で運営してもよい性質のものじゃないかと思っているんですが。

 最後に、組織を分割するかはともかく、我々は、NHKを大きく二分して、一方は公共性を引き継いで、もう一方は、NHKがこれまで培ってきたコンテンツ、技術を引き継ぎ、民間市場に打って出るべきと考えておりまして、公共部分の受信料負担は減らしつつ、民間的な部分でより収益を上げる仕組みを構築することを推奨したいと思っているんですが、NHKという組織が永続し、かつ、国民の期待に応え続けていくための、未来を見据えた構想や戦略を、これは会長に聞きたいと思います。よろしくお願いします。

前田参考人 お答え申し上げます。

 放送法第十五条には、協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において、豊かで、かつ、よい放送番組を放送することなどが規定されております。

 このため、NHKは、広く視聴者に負担していただく受信料を財源とする公共メディアとして、特定の利益や視聴率に左右されず、確かな情報や豊かな文化を育む多様な番組をお届けしてきたところでございます。

 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、相次ぐ大規模災害などによりまして社会経済の先行きに不透明感が増す一方で、幅広い世代に利用されておりますインターネットには、不確かで曖昧な情報があふれております。そうした時代環境の中で、既存業務を抜本的に見直して、スリムで強靱な新しいNHKとなり、正確、公平公正で豊かなコンテンツを合理的なコストで皆様にお届けし続けることは、NHKにおいても変わらぬ使命だと私は考えております。

 新しいNHKらしさ、スリムで強靱なNHKの実現に向けた取組を更に強化して、合理的なコストで、正確で公平公正、かつ、豊かで信頼できる情報やコンテンツを放送とインターネットを連動させてお届けしてまいります。改革の成果を受信料の値下げという形で還元するとともに、視聴者の皆様からの信頼に応え、情報の社会的基盤としての役割を果たし続けることが必要だと考えております。

守島委員 時間が来たので、大臣にも質問通告していたんですけれども、本当に申し訳ありません。半分ぐらいしか消化できませんでした。次回の機会にしたいと思いますが。

 今、会長がおっしゃったとおり、今の経営改革、今の経営の延長線上でやっていくことを僕らも評価はするんですが、これから放送がネットにどんどんどんどん傾斜していく中では、本当に抜本的な経営改革がもっと必要だと思っていますので、今の道筋とともに新しい経営形態の在り方というのも是非検討していただいて、未来永劫、NHKが国民の期待に応えられる組織であることを期待して、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 以上で午前中の質疑は終了いたしました。

 本会議散会後直ちに委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十二分開議

赤羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。道下大樹さん。

道下委員 立憲民主党の道下大樹です。

 質問の機会をいただきまして、心より感謝申し上げます。

 まず冒頭、ロシアによるウクライナ侵略が始まって一か月がたちました。子供たちを含めて、多くの方々が犠牲になりました。心より哀悼の意を表します。また、人口四千四百万人のウクライナ、四分の一が家を追い出され、離れ、そして国内、さらには隣国へと避難をされているということであります。

 私は、この侵略に断固抗議し、非難をいたします。即時停戦とロシア軍の撤退を強く求めます。ウクライナに一日も早く平和が戻ることを心よりお祈りいたします。

 さて、令和四年度NHK予算案について質問をさせていただきます。

 午前中から、前田会長、大変お疲れさまでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、NHK改革についてであります。

 これまで、会長が代わるたびに、それぞれの会長の思いをNHK改革として掲げて取り組んでこられたということは一定の評価をさせていただきますが、会長が代わるたびに改革が打ち出され、そして、その改革の検証をせずに、また次、新しい会長になったら新しい改革、また次から次へとそういう改革が打ち出されて、私は、PDCAサイクルがきちっとなされていないのではないかというふうに思っております。その改革が成功したのか、又は失敗したのかの検証がなされないまま次の改革になっているというふうに思います。

 どういう業務が必要なのか、これは同時並行に取り組むことはなかなか大変だと思います。やはり改革のプライオリティーというものを具体的に示していくことが必要だと考えますが、こうした点についての認識を前田会長に伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、これまでNHKでは、会長の任期が三年ということもございまして、抜本的な改革が先送りされてきました。私は、これではNHKの構造改革は永遠にできないと考え、人事制度改革を始めとして抜本的な改革が必要だと考えてきました。計画を立てるだけでなく、速やかに実行し、後戻りできないところまで進めることが何より肝要だと考えております。

 就任した最初の年に中期経営計画を取りまとめ、新しいNHKらしさを目指し、スリムで強靱な体制へ生まれ変わるという方向性を示しました。それから人事制度改革、ジャンル別管理によるコンテンツの改革、営業改革、地域改革など、一気に進めてまいっております。現時点で改革の対象となっていない部署はございません。

 NHKの組織は縦割りが強過ぎるため、改革で成果を上げるためには、様々な組織の改革を同時並行でスピーディーに行うことが必要だと考えております。これらの改革は徐々に成果を上げつつあり、例えば営業改革では、訪問によらない営業への転換によりまして、大幅な営業経費の削減が実現しつつあります。

 一方で、委員御指摘のとおり、一つ一つの改革では、繰り返しPDCAを回して成果と課題を検証し、軌道修正を繰り返すことも大切であります。幾つもの改革をそれぞれ丁寧に、かつスピーディーに進めることで、全体として後戻りできないところまで改革を推進していきたいと考えております。

 経営計画二年目となる今年は、視聴者にNHKは変わったと実感していただけるように、一連の改革の成果を視聴者の方々に目に見える形でお示しする、改革実感の年と位置づけております。

 新年度には、視聴者サービスに応える新たな番組を数多く編成いたします。また、秋には、構造改革の成果を、受信料値下げの具体的な計画としてお示ししたいと考えております。

道下委員 今、前田会長は、同時並行に、そしてスピーディーに改革に取り組むとおっしゃいました。その会長の考え方は一方で正しいかもしれません、必要かもしれません。民間企業に長く勤めておられた、金融機関に勤めておられた前田会長のお考えであります。

 ただ一方で、改革に伴って、現場の管理職の皆様や職員の皆様は戸惑い、混乱し、振り回されてきたとも、私はあちこちから伺っております。

 前田会長の取り組むNHK改革を着実に実行するためには、まず現場管理職にきちんと理解してもらい、職員にまで浸透して、組織一体で取り組むことが必要なのではないでしょうか。今それができているのでしょうか。前田会長のこれまでの御認識と今後の取組について伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、改革の成否は、その精神をどこまで現場に浸透させ、組織全体で取り組むことができるかに懸かっていると考えております。

 NHKの過去の改革では、プランができ上がっても現場に浸透させることができず、実行されないということを繰り返してきた部分がございます。

 私は、着任以来、重要な改革方針が定まった機会を捉え、役員や部局長だけでなく、全国の要となります管理職にオンライン会議で直接語りかけ、改革の精神を浸透させてまいりました。さらに、昨年からは、一般職を含む全職員を対象としたオンライン会議を度々開催し、改革の必要性とその意義を直接共有することで、全職員が改革に取り組むことができるように努めてまいりました。

 また、目標管理制度を新たにつくり、経営の方針とNHKの中のそれぞれの組織の目標、さらに、職員一人一人の貢献とのつながりが見えるようにいたしました。組織改革も進め、権限を現場にできる限り下ろして責任を明確にして、自律的に改革に取り組む組織風土が必要だと考えております。

 このような組織マネジメントの改革は、来年度、再来年度と更に進化させ、組織全体となってNHK改革に取り組んでまいりたいと思います。

道下委員 これまでの課題というものを今答弁されまして、前田会長も、やはり管理職そして職員、しっかりと一体となって組織改革をしていくということの決意が述べられました。

 これは一定の評価をさせていただきますが、今ちょっとそういう管理職や職員の方々の話になりましたので、ここで、職員や役員の男女比率についてお伺いしたいと思います。

 私もいただいておりますが、二〇二二年度収支予算と事業計画の説明資料の三十ページのところに、NHKの要員構成があります。性別構成、二〇二〇年度、男性八〇・一%、それが二〇二一年度には七八・九%、女性が一九・九%から二一・一%に増えたということであります。大体、男女構成比率八対二。会長や理事、理事十二名の中では女性は一名。これは民放よりは女性の役員は多いというふうに伺っておりますけれども、他の企業、団体と比較すると、女性の数や割合が圧倒的に少ないと言わざるを得ないと思います。

 ダイバーシティーを目指す中で、女性だけではなくて、障害者、若者、シングルマザー、様々な立場の声を受け止めて放送するためには、NHKの中にも多様な人材、女性を含めてダイバーシティーを取り入れるべきだというふうに思います。

 ただ一方で、数値目標を設定し、その達成のために女性管理職登用をせかすべきではないとも私は考えます。女性が働き続けられる職場環境が重要である、また、障害者の方も、いろいろな立場の方々が働き続けられるNHKというものが私は大変重要であるというふうに思います。

 そこで、例えば、女性が希望すれば長く働けるNHKにするために何が必要と考えるのか、そのためにどのように経営としてアプローチされていくのか、前田会長のお考えを伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 女性の役員や管理職が少ないという御指摘はそのとおりで、私も全く同じ認識でございます。経営やコンテンツ、サービスに多様な視点を反映させていく観点からも、積極的な登用が必要だと考えております。

 現時点で、採用の入口のところは半数以上が既に女性となっておりますが、過去の採用数に男女間の隔たりが大きかったために、候補者となり得る女性職員の絶対数が少ないというのも事実でございます。その中にありまして、昨年は、本部の部局で六名、地方の放送局で十二名の女性局長を登用しております。引き続き、積極的な登用に努めたいと思っております。

 また、女性が現場の中心的役割を担う機会を増やし、各種研修を充実させるなどの取組を進めているほか、ワーク・ライフ・バランスを踏まえた働き方ができるよう、育児、介護サポートの施策やリモートワーク制度も充実させてまいりました。

 これからも、女性を積極的に登用して、活躍する機会を増やし、NHKの方針決定にも広く参画できるようにしていきたいと考えております。NHKのダイバーシティーを促進していくことで、視聴者の皆様に多様なサービスをお届けしてまいりたいと思います。

道下委員 会長、ありがとうございます。

 NHKの中でも、職種によって長く働き続けられたり、アナウンサーの方は結構長く働かれると思いますが、記者職だと現場、夜討ち朝駆け、本当に大変だと思います。そうした職種ごとにおいても、現場の声をしっかりと聞いていただいた上で、誰もが働き続けられるNHKを目指していただきたいと思います。そうした環境があればこそ、公共放送というものがまた、中身のある、芯の強い放送が続けられるというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、ロシア、ウクライナ問題と報道姿勢について伺いたいと思います。

 ロシアによるウクライナ侵略に関連して、ロシア国内におけるNHKワールドの放送ができなくなってしまいました。こうした事態に至ったことについて、前田会長の率直な御意見を伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 三月四日、ロシアで軍事に関して虚偽の報道をした者への処罰を導入した法令が施行されたことを受け、NHKワールドJAPANの配信を委託しております現地の代理店が配信を停止したと通告してまいりました。現在、ロシアへのテレビ放送の配信は停止しております。

 NHKといたしましては、現地のNHKの放送、配信関係者の安全確保を最優先に考えておりますが、今回の事態で、ロシア国内にテレビ放送によるNHKの情報を伝える機会を失うことになり、大変残念でございます。

 一方で、NHKワールドJAPANのホームページはロシア国内でも閲覧可能になっておりまして、インターネット経由で放送の同時配信が視聴できる上に、ロシア語やウクライナ語を含む二十の言語でニュース記事も提供いたしております。

 また、ラジオの国際放送はロシア語でニュースを放送しており、こうした媒体を通じて、ロシアやウクライナをめぐる日本や世界の動きや在日ウクライナ人の活動などについてお伝えしていきたいと考えております。

道下委員 こうした情勢において、ロシア政府、行政による様々な情報統制がこれからも進んでいくと思いますが、そうした中でも、NHKとして、是非、正確な情報をロシア国民の皆様にも提供していただきたいというふうに思います。

 そこで、ロシア国営テレビ第一チャンネルのニュース番組において、女性ディレクターが、戦争反対、戦争を止めろ、プロパガンダを信じないで、ここの人たちは皆さんにうそをついていると書かれたプラカードを掲げて、戦争反対、戦争を止めてと声を上げた。これは、皆様、いろいろとテレビやニュースなどで御存じだというふうに思っております。

 この行動は、身の危険を感じながらの勇気ある行動だと私は考えますが、前田会長の御意見を伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 ロシア国営テレビの職員だった女性の行動は、世界中に衝撃を与え、報道されております。NHKでも、彼女が放送局を退職したことや、メディアの取材に応じ、今は非常に困難なときですが、全ての人が声を上げなければなりませんなどと発言した様子などを詳しくお伝えしてまいりました。

 ロシア国内では様々な動きも出ておりますので、しっかりと伝えてまいりたいと思います。

道下委員 今回、この女性ディレクターは自ら辞職したということで、国営テレビの方から何か処罰があったとか、処分を受けたとか、そういう情報は私は聞いておりません。そうした意味で、ロシア国営テレビ第一チャンネル、この放送局も、やはり女性ディレクターと心の中では同じ考えであったのではないかというふうには思っているんですけれども。

 そこで、NHKに関してちょっとお伺いしたいんですけれども、これまで、NHKにおいては、突然の番組差し替え、放送中止、アナウンサーやキャスターの降板など、政治的な圧力があったのではないかと視聴者や国民が推測する、臆測する、うわさ話も含めてありました。もちろんあってはならないことでありますし、もしそうした政治的圧力や何らかの脅迫行為などがあった場合は、これはNHKははねのけていただきたいと思いますが、もしそうした政治的圧力などによって虚偽の内容が無理やり放送される、放送しなければならない状況になった、真実がねじ曲げられた内容が放送される、そんなときに、もしNHKの職員の方が今回のロシアのディレクターのような行動を取った場合、会長としてどのようにお考えになりますでしょうか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 NHKは、税金でも広告収入でもなく、視聴者の皆様に御負担いただいております受信料を財源とすることにより、事業運営の自主自律が保障されており、外部からの圧力などに屈することなく、公平公正で正確な報道を貫くことが使命であると理解しております。

 ただいまいろいろ御指摘ありましたが、少なくとも、私が会長になってから、そのような圧力があったことはございません。また、御指摘のような事実はあってはならないと思いますし、あり得ないと考えております。

道下委員 以前、ある会長の下では、政治が右と言ったら、左でも右と言わなきゃいけないというような発言をされた会長もいらっしゃいます。私はびっくりしました。また、今回、先ほど本会議場でも人事案が採択されましたけれども、その中でも、NHKの放送について、公平中立的なものをちょっと踏みにじるような発言をされた経営委員会の委員の方もいらっしゃいます。

 そうした意味で、私は、NHKは本当に、今、前田会長がおっしゃったような公平中立性、そして圧力からも絶対屈しないという強い信念が、それが視聴者や国民の信頼を得るものだというふうに思いますので、今の前田会長のお言葉は、NHK内のみならず、やはり我々政治に携わる者や国民に向けて発信されたものだというふうに受け止めていきたいというふうに思います。

 さて、今回、このようなロシア、ウクライナ問題について国内でも様々な放送がされておりますが、テレビのワイドショーで、ウクライナ情勢について、専門家ではないコメンテーターなどが調査や知識が不十分なまま自分の考え、思いを発言し、それが、更にメディアが二次的に報道し垂れ流している状況、これを私は若干憂慮しております。

 もちろん、表現の自由は保障されなければなりませんが、視聴者や国民がきちんと情報分析能力、いわゆる情報リテラシーを持ってそうした発言の真偽などを考えなければ、うのみにして、それがあたかも正しい真実であるかのように、それが流れている意見の総意であるというふうに、間違って受け止めてしまうのではないかというふうに思います。

 NHKは、ロシアやウクライナの政治や軍事の専門家、研究者を招いて意見を伺って、それを放送されています。それこそ公共の電波で流すべきことだというふうに思います。正確かつ適正な報道の在り方について、前田会長の考えを伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナ情勢をめぐっては、様々な情報が錯綜しております。意図的に誤った情報を流す動きや、情報が武器になってしまうこともある中で、NHKに求められておりますのは正確な情報の発信だということを肝に銘じ、プロとして、一つ一つの情報を確認しながら、日々の取材や報道に当たっております。

 ニュースや番組では、記者や解説委員だけでなく、専門家の方々にも御出演いただき、一つ一つの事象の背景などを詳しく解説する対応を進めております。視聴者の皆様に多角的で深みのある情報をお伝えできるよう努めているところでございます。

 NHKの放送ガイドラインでは、「戦争報道にあたっては、一方に偏らない公平・公正な姿勢を保ち、視聴者に正確で客観的な情報を提供する。」と明記しております。

 引き続き、視聴者の皆様に正確で公平公正な情報をお伝えしてまいりたいと思います。

道下委員 先日、我が党では、訪日ウクライナ人の方からお話を伺いました。

 各種メディア、放送に対しての要望としては、ウクライナからの情報と、ロシアの国営放送など、またロシア政府などが出す情報などをフィフティー・フィフティーに扱うのではなくて、真実味がある方を重く放送してほしいと。そちらの方の、真実かどうかということも含めて、それをバランスよく、つまり、五〇、五〇ではなくて、どちらが真実なのかということを考えて放送してほしいというふうに、国内の放送局に、訪日ウクライナ人の方が我々に要望されたということを御紹介しておきたいというふうに思います。是非お願いいたします。

 では、ちょっと観点を変えまして、地域放送の体制について伺いたいと思います。

 前田会長は地方局からの発信強化を目指しておられますけれども、地方局の職員がもうぎりぎりまで削られてきていると私は認識しております。前田会長も認識しておられると承知しております。

 地域放送経費予算を約六億円増額されていますけれども、配分がまだ決まっておりません。各都道府県に放送局があり、これを均等配分したら、一放送局当たりは本当に額が少なくなってしまいます。何より地方局の人材育成が重要でありまして、そのための予算がきちんとつくかどうか、やはりこれからの地方局における放送体制の強化、体力をつけるための施策というものが重要だと思いますけれども、前田会長のお考えを伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 二〇二二年度は、事業支出全体では前年度に対して二百四十億円という経費の削減を行いましたが、地域放送・サービスの充実につきましては、経営上の重要な柱の一つと位置づけまして、今年度に比べ六億円増額し、四百三十三億円といたしました。この六億円の分配につきましては、各放送局からの提案制とし、それぞれがアイデアを競い合って地域放送・サービスの充実につなげていくことを考えております。

 また、御指摘のとおり、地域の放送・サービスの強化につきましては、地域での人材育成が重要でございます。その土地とのつながりを深めながら、地域の魅力をじっくり掘り下げ、課題に向き合うなど、地域に根差したサービスを届けられる人材を育てていく必要がございます。地域で生まれ育った人材の採用を増やすなど、様々な取組を行っており、地域放送局における取材、制作体制の強化を図っていきたいと思います。

 一方で、若手を中心にして、職種を超えて様々な業務を体験し、一人の職員が多様な業務を担うことができるようにするマルチスキル化にも取り組んでおります。これによりまして、例えば大規模災害が発生したときでも全局体制で柔軟にパワーを発揮することができる、スリムで強靱な地域放送局を目指しております。

 また、現在は地域改革推進室という形で支援をしておりますが、この四月以降は、地域改革支援局と局に格上げをした上で、人的、また物的な支援を強化してまいりたいと考えております。

道下委員 私の地元北海道でも、この四月からの放送で、例えば地域枠で採用された方がアナウンサーになっていたりということもありますし、また一方で、放送局の体制が変わって人数が減るということで心配した地元も幾つもあります。そうした点では、逆に地域でしっかりと取材力を高めて放送するということを丁寧に説明していただきたいというふうに思います。

 次に、インターネット活用と、あと、公平性について伺いたいと思います。

 前田会長は以前から、我々との意見交換の場において、テレビ離れ、新聞離れが加速していることや、放送と通信の融合が進んでいるという認識、また、インターネット活用には制約があるとお話しされていました。

 今、NHKは、受信料で成り立つ公共メディアとして、健全な民主主義の発展に貢献し、信頼される情報の社会的基盤の役割を果たすべく、その一つとしてインターネット活用業務に取り組んでいるというふうにおっしゃっています。

 そこで、私はこういったインターネット活用業務も大変重要だというふうに思うんですけれども、テレビを持って受信料を払っている方々だけではなくて、今、先ほど前田会長もおっしゃったように、テレビを持たず、そしていわゆる受信料も支払っていないという人も増えてきています。

 そんな中で、NHKは、放送のほかに、このようにインターネット活用業務を拡大している。そうすると、受信料を支払っている人と、テレビを持たずに受信料を支払っていない人との公平性、平等性、理解と納得、これをどのように保つかということが大変重要だというふうに思うんですが、前田会長のお考えを伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 幅広い世代でインターネットによる動画視聴の普及が急速に進む一方で、インターネット上には大量の不確かな情報があふれております。公共メディアとして、正確で信頼できる情報や、多様で質の高いコンテンツをいつでもどこでも視聴者の皆様にお届けすることの重要性はこれまでになく高まっております。

 一方で、現在の放送法では、NHKのインターネット活用業務は放送の補完という位置づけとなっております。放送と通信の融合が進んでいる海外と比べますと、社会の現状に合わなくなってきているのではないかと考えております。

 放送と通信の融合の時代におきましても、これまで培ってきた民放との二元体制を堅持しつつ、命と暮らしを守る公共メディアとして、正確、公平公正で、豊かな放送・サービスを放送とインターネットを連動させてお届けしていくことで、皆様からの信頼に応え、情報の社会的基盤の役割を果たしていく必要があると考えております。

道下委員 私はちなみに、インターネット利用者から受信料みたいなものを徴収することには賛同いたしません。これは大きな反動、反発が出てくると思いますので、申し上げておきたいと思います。

 そろそろ時間となりましたので、最後の質問とさせていただきます。これからのNHKについて伺いたいと思います。

 前田会長の体制の下、新しいNHKらしさの追求を進めておられます。私は、視聴者・国民に信頼されるとともに、必要とされ、なくてはならない存在と認識されるNHKを目指して頑張っていただきたいと考えています。そのためには、NHKが基本と考える公共的価値の向上に取り組むことと、受信料の適正化が重要と考えます。今後のNHKの将来像について、前田会長のお考えを伺いたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルスの感染症の世界的流行、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、相次ぐ大規模災害などによって社会経済の先行きに不透明感が増す一方で、幅広い世代に利用されておりますインターネットには、不確かで曖昧な情報もたくさんございます。

 こうした時代環境の中で、既存業務を抜本的に見直して、スリムで強靱な新しいNHKとなり、正確、公平公正で、豊かで信頼できるコンテンツをいつでもどこでも皆様にお届けし続けることは、将来においてもNHKの変わらぬ使命だと考えております。

 経営計画の中でもお示ししておりますが、現在進めております一連の改革の成果を、最終的には、二〇二三年度の受信料を値下げするという形で視聴者の皆様に還元することをお約束しております。

 新しいNHKらしさ、スリムで強靱なNHKの実現に向けた取組を更に強化して、情報やコンテンツを放送とインターネットを連動してお届けしていくとともに、改革の成果を視聴者の皆様に還元していくことで、今後も期待と信頼に応え、情報の社会的基盤の役割を果たし続けてまいりたいと思います。

道下委員 ありがとうございました。NHKを応援させていただいておりますので、頑張ってください。

 質問を終わります。

赤羽委員長 次に、奥野総一郎さん。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 早速質問をさせていただきます。

 今、会長は、受信料値下げのお話、二〇二三年度からと御説明されましたけれども、この方針は、いつ、どこで、どのように決まったのでしょうか。経営委員長、お願いします。

森下参考人 お答えいたします。

 受信料の値下げを含む中期経営計画の検討に当たっては、執行部から項目ごとに説明を受けまして、経営委員の情報共有を図り、意見交換を行う集中討議、いわゆる勉強会のようなものでありますが、それを重ねてまいりました。

 例えば、二〇二〇年七月七日の経営委員会ではNHK経営計画における収支見通しについて、八月四日では受信料収入の見通しについて、十月十三日では設備整備の在り方について、十一月二十四日ではグループ経営改革の現状について、十二月八日では営業の構造改革について、意見交換を行いました。

 また、二〇二〇年八月から九月にかけまして行いました中期経営計画案に対する意見募集では、視聴者・国民の皆様から値下げの要望を数多くいただいております。

 こういった集中討議の意見交換や意見募集でいただいた御意見などを踏まえまして、経営委員会、執行部共に検討を重ねた結果、今後の構造改革にめどがつき、収支のバランスを確保しながら受信料値下げの原資が確保できる見通しが立ったということで、執行部から、十二月二十二日の経営委員会で値下げの方針が示されまして、さらに、二〇二一年一月十三日には二三年度に実施する方針が示されたものでございます。

 以上、お答えいたしました。

奥野(総)委員 私は毎回議事録の話をするんですけれども、かんぽ問題のときもそうなんですが、公開されている議事録を見ても、なかなか跡づけができないんですよ。値下げの話が最初にぱっと出てくるのは、今おっしゃった二〇二〇年の十二月二十二日の経営委員会で、森下委員長が、「次期中期経営計画では、受信料の値下げを明言していることは、非常に新しく、かなり思い切ったことだと思います」という形で突如出てくるんですよ。おっしゃるように、いろいろな議論がそれまであったのかもしれませんが、明確に跡づけがなかなかできないんですよ。

 これは、うがった見方をすれば、菅総理になって、菅さんはずっと昔から受信料を下げろという話をされてきましたし、なかなかそのとおりにこれまでなってこなかったところがあったので、そこに忖度が行われて、いきなりこういう方針転換が行われたんじゃないかと思うんですね。

 NHKは、従来、非常に受信料の引下げには慎重でした。いいことですよ、下げるのはいいことですけれども、従来非常に慎重でしたし、以前下げたときも、視聴者への還元をするという形で満額下げなかったというようなこともあったんですよ。

 私が奇異に思ったのは、どこでどう意思決定を行ったのかということなんですが、これは、議事録を見ると、集中討議として意見を行ったとしか書いていなくて、中身が書いていないことがあるんですけれども、これはきちんと跡づけされましたでしょうか。

 重ねて言うと、七百億円の原資というのがいきなり出てくるんですが、この七百億円の内訳というのは議事録にきちんと書かれていますでしょうか。

森下参考人 お答えいたします。

 集中討議は、中期経営計画の検討を行う上で、執行部から項目ごとに説明を受けまして、経営委員の情報共有を図り、意見交換を行う、いわば勉強会のようなものでありますが、そういった意味で、これは実施したことは公表いたしておりますが、内容は非公表といたしております。

 経営委員会議事運営規則第五条第四項第三号の「審議、検討または協議に関する情報であって、公表することにより、その審議、検討または協議が円滑に行われることを阻害するおそれがあるもの」に該当することから、このような対応をしております。

 なお、集中討議の内容は非公表といたしておりますが、討議を踏まえまして執行部に対して行いました質問や意見は、中期経営計画の議決後に議事録の資料として公表しております。

 例えば、新型コロナウイルス感染拡大による受信料収入への三か年の影響や、執行部案の妥当性、受信料還元の原資を積み立てる新たな料金の運用方法、営業経費削減に向けた取組と業績確保などについて質問をいたしまして、執行部に回答を求めております。

 以上、お答えいたしました。

奥野(総)委員 経営委員会というところは、経営のことを語る、議論する場ですよね。とすると、当然数字がなくちゃいけないんですよ。

 受信料というのは、国民の皆さん、支払い率八割と言っていますけれども、多くの方が払っていただいているわけですよ。全員が、税金と言うと言葉があれですけれども、関係者。多くの視聴者の皆様の自発的に払っていただいているもので成り立っているんですから、きちんと情報開示、数字の情報開示が必要だと思うんですね。

 値下げはいいことです。だけれども、じゃ、その七百億、あるいは、これからまた伺いますが、その値下げの額が本当に適切なものかどうかということは分からないじゃないですか。きちんと数字の根拠を、議論の根拠を開示すべきじゃないですか。

 毎回申し上げていますが、のみの会とかと言って開示をしないとか、集中討議とだけ書いてあって中身は一切開示しないというのは、この二十一世紀の社会においてあり得ないんじゃないですか。

 まして、皆さん、しかも公的なお金を預かっているんですよ。国会だって予算委員会をテレビでやっているし、やっていないところは議事録で開示をしているし、ネット中継だってしているわけですよ。経営委員会だってネット中継してもいいぐらいの話じゃないですか。

 皆様のNHKと言うんだったら、きちんと開示をして、その値下げの根拠も示すべきだと思いますし、あるいは逆に、その値下げは大丈夫かという意見だってあったっていいと思いますよ。今、私、申し上げたけれども、政権が替わって急にこんな話が出てきたわけですから、経営委員会の中で、本当に大丈夫なのか、こういう話があったっていいと思いますよ。これからNHKだって、コンテンツの競争で大変なわけですからね。

 もう一回伺いますけれども、こういう情報をなぜ開示しないんですか。皆さんが支障が出るとおっしゃっていますが、その支障というのは、国民への説明を無視していいほどの大きな支障なんですか。どういう支障ですか。

森下参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明いたしましたように、種々の議論をした結果、十二月二十二日の経営委員会で、執行部から値下げの方針が出されまして、そこで詳しく資料が出ているというように思います。

 それから、途中段階のものについては、整理したものが、そういう審議の内容、それから執行部に行いました質問や意見、それに対する回答も、先ほどお話ししましたように公表しておりまして、それを読んでいただくと議事の経過はお分かりいただけるものと認識しております。

 以上、お答えしました。(奥野(総)委員「じゃ、まず七百億……」と呼ぶ)

赤羽委員長 ちょっと待ってください、指名してから。まず挙手をして、私が指名しますから。

 奥野総一郎さん。

奥野(総)委員 大変済みません。

 申し上げますが、じゃ、七百億の内訳というのは、これは三年間で七百億ですかね。具体的な内訳を教えていただきたいのと、それは、その議事録、公開されている資料の中の何月何日のどこに書かれているかというのをお答えいただきたいと思います。

松坂参考人 お答えいたします。

 現在の経営計画中の値下げについては、今委員長からもありましたけれども、二〇二〇年の十二月二十二日の経営委員会で、値下げを実施すること、これについてお示しして、審議を行っております。

 そして、二〇二一年一月十三日の経営委員会で値下げの原資についてもお示しし、具体的な金額を打ち出して議論を行っております。

 七百億という金額ですけれども、これは、値下げを行うに当たって、どれぐらい手元に還元のための原資があるか、そういう考え方です。この原資につきましては、財政安定のための繰越金の取崩し、それから、新放送センター建て替えに備えた積立て資産の見直し、そして、現在の計画最終年度の収支の黒字を原資として検討を行いました。

 まず、財政安定のための繰越金は、コロナなどの影響もありまして、二〇二〇年度末には百七十億円前年度から増えまして千四百五十億円となる見通しだったことから、この中からかなりの金額を視聴者への還元に充てるめどが去年の一月の段階では立っております。加えまして、経営計画の最終年度である二〇二三年度の黒字として想定していた八十億円。そして、新放送センターの建設計画の見直しを進めることにしておりまして、この建設計画の見直しによるお金も百五十から二百億程度は確保できるというふうなことで、二〇二三年度の値下げをまず行うに当たっては、こうしたことで捻出した七百億円の原資、それを基に、今後、具体的にこれをどのように使いながら値下げをしていくかについては、毎年度の、これから先の収支なども踏まえまして、これについては、今年の秋に、会長が申しておりますけれども、どのように値下げをするかをお示ししたいということです。

 七百億円の原資をどういうふうに確保したかについては、去年の一月十三日の経営委員会の議決のときの議事録に掲載しております。

奥野(総)委員 今の説明が書かれているということですよね。

 今の説明は、必ずしも明確に、七百億を幾ら、例えば積立金の取崩し幾らとかという話はないですよね。今になって、例えば受信料の徴収の委託を解除してなんという話も報道されていますから、ようやく最近になって具体的な数字のめどが立っているように思うんですが。まず七百億ありきじゃないか、こういうふうに受け取れます。

 もう一回聞きますが、きちんと議事録に、今の御説明になった、千四百五十億分の幾ら、八十億、それから、収支の見通しから幾らという話がきちんと書かれていて、合計七百億になるということが示され、だから、七百億は大丈夫、こういう話だったんでしょうか。

松坂参考人 今御説明しました七百億円をいかに確保するかということについては、財政安定のための繰越金の見込みなども踏まえまして、先ほど説明しましたようなことについては、経営委員会で御説明して、議事録にも掲載しております。

奥野(総)委員 いや、やはり、これはちゃんと書かれていないんですよ。七百億ありきなんですよね。だから、今になって、受信料の委託契約打切りなんという話が突然出てきたり。

 いいですよ。いろんな努力をするのも大事だけれども、七百億が適切かどうかというのは分からないんですよ、これだと。もっと下げる余地があるのかもしれない。あるいは、今後経営に響くかもしれない。議事録がきちんとしていないから、分からないんですよね。それが、本当に、じゃ、経営委員会としていいのか。

 これは毎回申し上げているんですが、経営委員会の開示をもっとちゃんとすべきじゃないですか。籾井会長のときには、何か一言一句、やたら細かく出た時期もあったんです。ところが、また元に戻ってしまって、全く、森下委員長になってからは開示されないんですよ。

 これは毎回申し上げているんですが、開示義務は会長にもかかっているんですね、前も申し上げたけれども。

 会長は、このままでいいと思われますか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 情報開示の在り方でございますが、経営委員会とは、二〇二〇年の八月から九月にかけて実施いたしましたNHKの経営計画に対する意見募集の結果などを通して、建設的な議論を重ねておりまして、受信料値下げにつきましても、真摯に議論を行ってまいりました。

 二〇二〇年十一月十日の経営委員会では、構造改革による支出規模の大幅な見直しや、受信料の値下げに向けた原資を積み立てる新たな科目の設定について検討を行いました。

 十二月二十二日の委員会では、執行部から、受信料値下げを実施することと、その原資についての考え方を示し、検討を行いました。

 二〇二一年一月十三日の委員会では、値下げの原資について、具体的な金額を示して議論を行っております。

 これらの経緯は議事録として公開されており、情報開示は一定の成果を果たしたと思います。

 今、奥野委員の御質問の、七百億の規模でございますが、これは三つのソースを基にして還元できると考えておりまして、これは、一過性で一回だけ下げるのであれば、非常に説明は簡単なんですけれども、毎年それぞれの科目はフラクチュエートしますので、そのうち、どれをどれくらい使って、この後ずっと値下げのしっ放しができるか、そういう計算が必要になります。そういう意味では、七百というのは、全体の事業規模は七千億、その当時ありまして、その当時の一割ぐらいという一つの目安なんですね。

 これは、無理をすれば、多分千億ぐらいできるかもしれません。ただ、それをやりますと、恐らく、コスト削減がコンスタントにそこまでできないということになります。そうしますと、番組がまともに作れないということになりますので、経営する側としますと、やはり少し安全を見ざるを得ないな、そういうことでございまして、これは、どこかから降って湧いた数字ではございません。そういうのを積み上げた結果で、この程度はできると。

 ただ、先ほどから申し上げておりますとおり、この二年、コロナでかなり環境が変わってきましたので、何とか値下げをしたいと思いますが、その原資がこのとおりになるかという保証はございません。

 ただ、執行部といたしましては、改革の成果をしっかりと還元したいという意欲は変わっておりません。

奥野(総)委員 御努力は多としますが、ここへ来て、昨年か、受信料の徴収委託契約を打ち切ったという報道もなされていますが、ここで多分、数百億、二百億ぐらいですかね、浮くんだと思いますが、これというのは、当時から想定されていた、今の説明になかったんですが、七百億の中に元々、内数として当時から想定されてあって、それが議事録上、出てきたんでしょうか。もし違うとすれば、更に新たに財源が出てきたというふうにも取れるんですが、そこは議事録でちゃんと跡づけできるんでしょうか。

松坂参考人 御説明いたします。

 これは、NHK経営計画、現在の経営計画の要旨なんですけれども、これを作る際に、ちょっと数字が似ていて紛らわしいんですけれども、七百億円の経費を削減して、百五十億円ぐらいは重点的なところに投資するということで、差引き五百五十億円の支出を削減する、この三か年でですね、そういうことは言っております。

 その中に、コンテンツの絞り込み、これは、必要なものは残しながらもコンテンツを精査するですとか、また、訪問によらない営業とか、あとは、設備投資なども含めた既存の設備の在り方の見直しなど、そういう項目を入れまして、そうしたことで五百五十億円を、支出を削減するということについては、この経営計画と、あと、これの説明資料というところに記載しまして、経営委員会でも議論して決めております。

奥野(総)委員 そうすると、委託の打切りというのは、後から出てきた話ということですね。

松坂参考人 現在、営業の方の、法人委託の削減等は進めておりますけれども、そうしたことも含めて、この三か年で五百五十億円の支出の削減をするということは、あらかじめ宣言して、経営計画に盛り込んで進めているということであります。

奥野(総)委員 やはり、ちゃんと書かれていないんですよね。我々は、見ていて分からないんですよ。

 当時、菅総理は、一割減なんて言っていたと思うんですよね。図らずも、会長が一割とおっしゃったけれども、一割減ありきがあって、そこから無理くり、結論を出しているんじゃないですか。後づけでいろいろなことを言っているように見えるんですよ。それで本当にいいんですか。違うというのなら、きちんと議事録は開示。議事録をきちんと開示しておけば、そういうことは言われないんですよね。議事録が曖昧だから、こういうふうに言われてしまうんですよ。

 でも、皆さんは一応企業体ですからね。株式会社だったら、これじゃ済まないと思いますよ。株式会社以上にまずいのは、国民からお金を任意で払ってもらっているわけですよ。会計が明確じゃない、方針が明確じゃないところに国民は本当に払うと思いますか。だから、私は、情報開示が大事だと思っているし、とりわけ経営委員会の議事録はきちんと出してくださいというふうに申し上げているんですね。

 もう一点、そうすると、二三年度引下げと言っていますが、これは具体的に、どこをどう下げていくんですかね。

 当時、菅さんは、一割下げると。たしか、事業規模の一割に当たる七百億円を充てて、月額で一割を超える思い切った受信料の引下げにつながりますと明言しているんですが、これは一割削減につながると。どこがどう一割下がるんでしょうか。

松坂参考人 お答えいたします。

 還元の、値下げの原資のための七百億円というものは、その原資も使いながら、この先の収支を、計画を立てて、それで下げるということで、七百億円は、財政安定のための繰越金などや、放送センターの建て替えの見直しなどで確保して、それも使いながら、これから、二〇二三年度以降どのように値下げをするかということについては現在詳細を検討しておりまして、どのような値下げをするかについては、この秋に公表したいというふうに考えているところであります。

 今、四波あります衛星波のうち一波を削減する、二〇二三年度中に削減するとしておりますので、それも踏まえまして、衛星付加受信料の一割程度の削減をしたいというふうなことは説明しているところであります。

奥野(総)委員 衛星中心に一割程度下がるということでよろしいですよね。

 大臣、今の議論を聞いて分かると思うんですけれども、なかなか議事録がきちんと詳細に書かれていないんですよ。見ていて分からないんですね。

 総理が去年の施政方針演説で、一割下げる、こう言っているわけですよ、当時の菅総理が。政府としては、一割下げなきゃいけないということなんですね。そういうこともやはりきちんとNHKの側で議事録の中に残していただきたいし、公表もしていただきたいと思うんですが。

 どうですか。情報開示、総務省が一応、放送法の中に書かれていますけれども、今のままで、NHKのこのやり方でいいと思われますか。

金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。

 NHK経営委員会の議事録につきましては、放送法第四十一条に基づきまして、経営委員会の定めるところにより作成、公表を行うこととされており、個別の議事録の公開についてはコメントを差し控えたいと思います。

 その上で、総務省としては、今般の大臣意見においても述べたとおり、NHKにおいて情報の公開を一層推進することにより、引き続き運営の透明性の確保を図っていただきたいと考えております。

奥野(総)委員 いや、これ、会長は一生懸命おっしゃるけれども、きちんと開示していただかないと、じゃ、どこまで財源のカットの余地があって、どこまで還元できるのかというのは分かりませんよね。最初に七百億という数字が出てきているけれども、その内訳も、今聞いても余り明確ではないし、やはり、きちんと経営体として、会長、しっかり数字を出すべきじゃないですか。

 もう一回聞きますけれども、改革していただけませんか、これ、議事録開示。会長。

前田参考人 お答え申し上げます。

 この秋には数字を、はっきり根拠を示して、どれくらい下げられるということを開示できると思っております。

奥野(総)委員 小さな声で聞き取れなかったんですが、議事録はきちんと改革いただける、議事録の開示をきちんとこれまで以上にやっていただけますか。

 この前、NHK問題のときは、情報公開請求に基づいてきちんと出すとおっしゃっていたんですが、同じように、日頃からきちんと経営委員会の議事録については開示をしたらどうですかということですけれども。会長。

前田参考人 経営委員会の議事録の開示は経営委員長が判断するところでございますが、少なくとも、適切に最近は開示をちゃんとされていると思っております。

奥野(総)委員 これは会長も責任がありますからね、開示については、経営委員長とともに。連帯責任ですよ。経営者をずっとやっておられたんだから、数字の大切さは分かっておられると思うんですよ。ちゃんと開示していれば言われないんですよ、逆に。開示しないと、もっと下げる余地があるんじゃないかとか、こういう話になるんですね。

 最後にもう一点。例の字幕の問題、もう一回オリンピックの字幕の問題なんですけれども。

 私は、この前の質問のときに、オリンピックを成功させなきゃいかぬというムードがNHKの中にあって、そういう雰囲気が忖度を生んで、反対、ああいう字幕のつけ方、誰もそういう字幕がついていても問題視しないということにつながったんじゃないか、こう申し上げたんですよ。

 ちょっと違う角度から、これも問題になっているんですが、去年の一月当時、NHKスペシャルですね、NHKスペシャルのオリンピック企画が中止になったということが報道されました。これはどうも事実らしいんですが、その理由が、NHKの世論調査で圧倒的に反対が多かったんですよ。

 去年の一月の九日からの調査を見ると、開催すべきは一六%、中止すべきは三八%、更に延期すべきは三九%。さらに、中止すべきと更に延期すべきはいずれもその前の年から七ポイント増えて、七七%になりましたとここに書いてあるんですね。ほとんど反対一色の中で、そういうことがあったんですよ。番組が飛んだということがあったんです。

 ところが、その翌月からの世論調査を、これはネットに残っているんですが、見ると、聞き方が変わっていて、どのような形で開催すべきだと思うか聞いたところと。その前は、開催すべきか中止すべきかと聞いているのが、言い方が変わって、どのような形で開催すべきだと思うかと聞いたところ、これまでと同様に行うが三%、観客の数を制限して行うが二九%、無観客で行うが二三%、中止するが三八%ということで、中止すべき、延期すべきは、前回七七%が一気に三八%、半分に減っているんですよね。それは、こういう聞き方をしたらそうなるんですよ。

 三月以降もそういう聞き方になります。途中、コロナの感染が増えると中止というのが増える時期もあるんですが、一貫して賛成というか、開催すべきというのが多くなっている、こういう世論調査があるんですけれども、何で二月から突然変えたんですか。

正籬参考人 お答えいたします。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催が近づく中で、国民の関心も高いことから、世論調査でも質問をしております。

 個別の質問の設定理由などについては、取材、制作の過程に関わるためお答えを差し控えさせていただきますが、世論調査の質問内容につきましては、IOC、国際オリンピック委員会の動向ですとか、刻々と動く社会情勢などを総合的に判断して決めております。

奥野(総)委員 答えられないんですよね。なぜ聞き方が変わったかという答えになっていないじゃないですか。突然、ずっと聞いてきたものを変えるのはおかしいと思うんですね。

 時間が来ましたけれども、最後に会長、この間、私の質問に対して、意図的に字幕をつける、故意にやるんだったらもっとうまくやるはずだ、そういうことをおっしゃったんですよ。私は唖然として次の質問ができなかったんですけれども。

 会長がそういう雰囲気を醸し出しているんじゃないですか。今の世論調査もそうですけれども、オリンピックを成功させるべきだという暗黙の了解を局内で出しているんじゃないですか。そういう会長の姿勢がああいう字幕を生んだんじゃないか、これが私の言いたかったことなんですが、いかがですか、最後。

赤羽委員長 申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

前田参考人 お答え申し上げます。

 先般の奥野委員の質問に対して、私の説明の仕方が不適切であったとすれば、おわびを申し上げます。

 捏造ではないかという御質問をされましたので、そういうことではないということを説明したつもりですが、説明の仕方が悪かったとすれば、おわびを申し上げます。

赤羽委員長 奥野総一郎さん、よろしいですか。

奥野(総)委員 ちょっと答えとは違いますが、期待した答えとは違いましたが、以上で終わりたいと思います。

赤羽委員長 次に、中司宏さん。

中司委員 日本維新の会の中司宏です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 NHKの令和四年度予算等に関連して、順次質問をさせていただきます。

 私、若い頃、マスコミにおりましたので、NHKの記者さんと記者クラブでデスクを並べたり、また、取材現場で一緒に取材した経験を懐かしく思っています。取材のネットワークのきめ細かさ、また層の厚さに、さすがに公共放送と、大いに力の差を感じたものでした。そのNHKが広く国民に愛され発展し続けることを願いつつ、質問に入ります。

 令和二年版の情報通信白書によりますと、十歳代の人が一日にテレビを見る平均時間、二〇一五年に、平日が九十五・八分、休日で百五十五・八分であったものが、四年後の二〇一九年には、平日が六十九分、およそ二十七分短くなりました。休日で八十七・四分、これはおよそ六十八分短くなっています。一方、同じ十歳代の人のインターネットの利用時間ですが、二〇一五年に平日が百十二・二分、休日が二百二十一・三分であったものが、二〇一九年には平日百六十七・九分、休日二百三十八・五分に伸びています。

 おおむね、全世代共に、テレビの視聴時間は年を追うごとに減少してきている、逆にネットの利用時間が大幅に増加をしている、そんな傾向であります。

 また、同年のNHKの全国個人視聴率調査でも、一日のNHK視聴時間の平均は五十六分で、五年前の調査に比べて十分短くなっています。

 若い人を中心に、今後、年を追うごとにテレビの視聴時間が短くなってくる。それに伴って、NHKの視聴時間も減少していくものと予測されます。

 まずは、こうした点についてどう受け止めておられるのか、NHKの前田会長に質問させていただきます。

前田参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、インターネットによる動画視聴の普及や若者を中心とした視聴者のテレビ離れが急速に進み、大きな変革の時代を迎えていると考えております。その一方で、インターネット上には大量の不確かな情報があふれております。

 正確かつ公平公正で、豊かで信頼できる情報を、放送とインターネットを連動させていつでもどこでもお届けするというNHKが果たすべき役割は、これまで以上に大きくなっていると考えております。

中司委員 ありがとうございます。

 インターネットを活用する人、ネットで情報を収集する人が、白書では、四年間に一〇%近く増えている。先ほど示したように、ネットを利用する時間も増大をしているわけであります。

 ネット端末しか持っていない人は現在NHKを受信することはできませんが、NHKを見たい人は大勢いると思うんですね。そうした時代の流れにあって、NHKは公共放送として役割をどう果たしていくのか、会長にお聞きします。

前田参考人 お答え申し上げます。

 放送と通信の融合時代において、インターネットにおきましても、安心、安全を支え、多様で質の高いコンテンツを合理的なコストで提供していくことが、情報の社会的基盤の役割を果たすために重要だと考えております。

 そのため、NHKプラスの常時同時・見逃し番組配信や、NHKオンデマンドなど、多様な媒体を通じてコンテンツを発信しております。

 さらに、四月以降にはインターネット活用業務の社会実証を実施し、NHKがインターネットを通じて番組や情報を届ける意義や役割、多様化する視聴者ニーズなどを検証してまいります。

 今後のインターネットの活用やサービスの在り方につきましては、時代の変化にしっかりと向き合っていくことが必要でございまして、関係者の意見もしっかりと伺いながら検討してまいります。

中司委員 今、改革についてお話をされていると思うんですけれども、急激な社会の変化にやはり追いついていっていないのではないかというふうな感じを受けるわけでございます。

 NHKの経営計画の中で、新しいNHKらしさの追求というものが打ち出されています。NHKらしさというと、私は、民間とは違った特徴、つまり、NHKの持つ公共性にあると思っています。

 広く国民の受信料に支えられているNHKにとりまして、公共性の高い報道、教育、それから福祉など、公共性に重点を置いたこうした放送に、先ほどの守島委員の質問ではその割合は大体二〇%強から三〇%ということでしたけれども、そうした公共性に重点を置いた放送に努めるべきだと考えるんですけれども、公共性についての認識、そして目指す方向について、会長の考えを伺います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 NHKには、放送番組の編集に当たって高い公共性を発揮することが求められておりまして、放送法では、豊かで、かつ、よい放送番組の放送を行うことによって公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大限の努力を払うように求められております。

 NHKといたしましては、こうしたことを踏まえまして、報道、教育、教養、娯楽の各部門にわたって、豊かで、かつ、よいもの、よい放送番組をお届けすることによりまして、放送の二元体制の下で、様々な分野で民放と切磋琢磨していくことが重要であると考えております。

中司委員 ありがとうございます。

 公共ということにつきましては、例えば大規模災害などで、様々な状況に応じて適切な情報を伝える、こういうことも公共放送の大事な役割であると思っています。

 災害のバックアップ機能につきまして通告していますけれども、またこれは次の機会にさせていただきます。

 また、国際放送につきましても、海外からの理解を深めるということと同時に、国際親善とか経済交流とか、そうした公共性の高い役割があると思っています。

 ロシアへの放送のことについて質問をする予定でしたけれども、道下委員の方から同様の質問がありましたので、割愛させていただきます。

 ただ、公共性の高い国際放送事業者とされまして、この悲惨な状況の中で、人道支援として何かできることはないのか、そのことについて伺いたいと思います。

正籬参考人 お答えいたします。

 人道支援については、我々も日々考えております。

 NHKワールドJAPANのウェブサイトでは、英語テレビ放送のインターネットの同時配信を行っていまして、AI自動翻訳機能を使って、ほかの言語の字幕も提供しております。今回の事態を受けまして、ウクライナ語字幕を追加いたしました。また、ニュース記事をロシア語を含む十九の言語で提供してきましたが、新たにウクライナ語への対応を開始しております。

 それから、こうしたこと等を通じまして、日本国内での支援の動きですとか、在日ウクライナ人の方々にも役立つ情報を届けていきたいと考えております。

 また、ウクライナ語のサイトでは、日本に来られる避難民のための自治体の支援窓口なども紹介しております。

 さらに、日本語の学習コンテンツ「やさしい日本語」というものがあるんですけれども、そのウクライナ語版を早急に掲載しまして、避難してきた方々にも活用してもらうべく、今準備を進めているところでございます。

中司委員 ありがとうございます。

 できることは限られているかもしれませんけれども、できるだけの対応をお願いしておきます。

 さて、現在の受信料制度ですけれども、先ほども言いましたように、減少する一方のテレビの受信者のみの負担であるということから、いずれ行き詰まってくることが予測されます。

 イギリスでは、先般、二〇二八年度以降には視聴者からの一律の徴収制度から課金制に移行していくという意向を検討する方針が示されています。このように、海外においても様々な対応に迫られているわけで、NHKも、小手先の修正ということではなくて、抜本的な改革が必要だと思います。

 そうした中、前田NHK会長は、放送を巡る諸課題に関する検討会の分科会で受信料制度に言及されて、最終的には総合受信料のような形になることが分かりやすいと発言されたと聞いています。

 総合受信料とはどのような制度を想定されているのか、お聞きいたします。

前田参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、総務省の検討会の分科会で、インターネットの普及が更に進み、視聴者・国民にとって不可欠な情報基盤となることが確実となった中で、最適な媒体を通じてコンテンツを提供していくためには、最終的には、伝送路に関わらない総合受信料のような形になることがより分かりやすいのではないかと申し上げました。

 放送と通信の融合時代にふさわしい受信料の在り方につきましては、この委員会で令和三年度の予算、事業計画を承認していただいた際の附帯決議も踏まえて、外部有識者の知見もかりながら、引き続き検討しているところでございます。

 現時点で具体的な考えは持っておりませんが、いずれにしましても、視聴者・国民の皆様の御理解を得られる制度であることが大前提だと考えております。

中司委員 分かりました。よろしくお願いいたします。

 本委員会におきましても、放送と通信の大融合時代にふさわしい公共放送の在り方、受信料の在り方について、真剣に検討し、新しい社会と技術に対応した公共メディアとしての経営ビジョンを構築する、今年度の予算についてもこうした附帯決議が付されているわけでございます。これまでにこうしたことについて十分に検討を重ねてこられていると思いますけれども、前田会長の改革への思い、また、金子総務大臣の思い、あるいは決意をお聞かせください。

前田参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行や、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、相次ぐ大規模災害など、社会経済の先行きに不透明感が増す一方で、幅広い世代に利用されておりますインターネットには、不確かな、曖昧な情報もたくさんございます。

 こうした時代環境の中で、既存業務を抜本的に見直して、スリムで強靱な新しいNHKとなり、公平公正、豊かなコンテンツをいつでもどこでも皆様にお届けできる、放送と通信の融合時代においても、NHKの変わらぬ使命を果たしていきたいと考えております。

 総務省の検討会がまとめた論点整理でも触れられておりますとおり、民放との二元体制の下で、放送が提供してまいりました正確で質の高い多様なコンテンツには、今後も信頼や期待が寄せられていると考えております。

 NHKは、構造改革を断行して、多様で質の高いコンテンツ制作に経営資源を集中するとともに、デジタル時代に果たす意義や役割、どうすればコンテンツがよりたくさん、しっかりと届くかということを社会実証を行って確認してまいります。

 新しいNHKらしさ、スリムで強靱なNHKの実現に向けた取組を更に強化して、情報やコンテンツを放送とインターネットを連動してお届けしていくことで、視聴者の皆様の信頼に応え、情報の社会的基盤の役割を果たし続けてまいりたいと思います。

金子(恭)国務大臣 お答えいたします。

 今、前田会長からも決意を述べられましたが、NHKにおきましては、国民、そして視聴者の負担する受信料で運営される公共放送であることを踏まえ、その基本的役割を果たしつつ、経営のスリム化やガバナンス改革を不断に進めていくことが重要であると認識をしております。

 さらに、中司委員御指摘のように、現在、インターネットを通じたコンテンツ視聴の拡大など、放送を取り巻く環境は大きく変化をしており、デジタル時代における公共放送の果たすべき役割や使命について検討を行うことが必要と考えております。

 そうした中において、NHKにおいては、テレビを保有、視聴しない方々を対象とした社会実証を実施する予定であると承知をしております。

 総務省としては、NHKにおける実証の状況も踏まえながら、有識者検討会などにおいて、公共放送によるインターネット配信の意義やサービスニーズを検証した上で、公共放送の果たすべき役割や使命について引き続き検討してまいりたいと思います。

中司委員 時間が参りましたので、最後にちょっと述べさせていただきます。

 繰り返しになりますけれども、世の中は放送と通信の融合時代に大きく変わってきております。今NHKの抜本的な改革を進めなければ、世界の趨勢についていくことはできないと思うんです。

 そこで、私たち日本維新の会は、これからの時代にふさわしいNHKの在り方として、NHKを公共を担う部門と民間の部門とに分割するとともに、国民負担の軽減を図ることを柱とするNHK改革推進法を本日提案したところでございます。こうした方向に沿って、私たちはこれからもNHKの改革を働きかけてまいりたいと思っております。

 これからの時代の最先端を行くメディアとして、より一層信頼される公共放送として、未来を見据えてNHKが再出発される日が来ることを期待して、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、先ほど奥野委員からも御質問がございましたけれども、BS1スペシャル不適切字幕問題について質問させていただきます。

 問題となっておりますのは、昨年末に放送された「河瀬直美が見つめた東京五輪」という番組の中で、事実関係の確認が不十分な内容の字幕が使用された問題です。

 以前にも、平成二十六年に「クローズアップ現代」「追跡 出家詐欺」において過剰な演出を行ったやらせ疑惑問題が発生をいたしましたときに、匿名チェックシート、複眼的試写、取材・制作の確認シートなど、再発防止に取り組まれました。その後も、現場で対応が行われているかどうかをきちんと検証を続けられており、適切に行われている旨の検証結果も報告をされておりました。しかし、実際には、今回、このような防止策が機能いたしませんでした。

 再度このようなことが起こったということは、私は、別に根本的な原因があるのではないかというふうに拝察をいたしております。このことについて、NHK前田会長の御見解をまずお伺いしたいと思います。

 あと一点、引き続いて、東京オリンピックというスポーツを通じた平和の祭典に関する番組の中で事実と異なる報道がなされたことについても、どのように前田会長として受け止めておられるか、併せてお伺いをしたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 今回の事案につきましては、NHK放送ガイドラインにも定められております、取材、制作のあらゆる段階で真実に迫ろうという取材、制作者の基本姿勢から逸脱しておりまして、ずさんな対応だったと考えており、誠に遺憾でございまして、改めておわびを申し上げます。

 NHKでは、二〇一五年に発覚した出家詐欺問題を受けて、匿名チェックシートや複眼的試写といった再発防止策を導入し、多くの放送現場で実行されておりましたが、今回の事案では、定められたルールを担当者が正しく認識しておらず、チェック機能が働かなかったものと考えております。

 このため、番組制作に関わる全ての部局に、番組やコンテンツの内容が放送ガイドラインに沿って正確かどうかやリスクがないかどうかをチェックする責任者を新たに配置するなど、体制を一段と強化してまいります。

 今回の問題を受けて、全国の放送現場で放送の取材、制作に関わる職員、スタッフを対象に勉強会を実施するなど、人材教育も強化してまいります。

 オリンピックというスポーツの祭典においてこのようなことが起こったことは、誠に遺憾でございます。

西岡委員 今会長からお話がございましたように、様々な防止策を取っていたにもかかわらず今回このようなことが起きてしまったわけでございますので、改めて、前田会長からございました研修も含めて、このことをしっかり徹底していただき、事実に基づく報道という基本姿勢をしっかり貫いて進んでいっていただくことを改めてお願い申し上げたいと思います。

 引き続きまして、NHKの今後の在り方につきまして質問をさせていただきます。

 先ほどの議論の中でもありましたけれども、視聴者、特に若者を中心にいわゆるテレビ離れの傾向が顕著でありまして、また、インターネット動画配信サービスの普及で、視聴者自身が様々な作品を視聴できる機会が拡大をしたために、放送とネット配信の区別というものを視聴者が特別意識することが大変希薄となった状況もあり、放送界を取り巻く環境が大きく変化をいたしております。

 今回の事業計画として、NHKらしさを実現するコンテンツの強化ということがうたわれておりますが、社会が多様化する中で、公共放送に求められる役割というものも変化をいたしているというふうに思います。また、視聴者のニーズも大変多様となっております。

 こういう状況にあって、改めて、NHKの使命、また公共放送の役割について、前田会長がどのようにお考えになっているかということをまずお伺いした後、所管をされております金子総務大臣の御見解を続けてお伺いしたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、インターネットによる動画視聴の普及や若者を中心とした視聴者のテレビ離れが急速に進み、大きな変革の時代を迎えております。

 その一方で、インターネット上には大量の不確かな情報があふれ、フェイクニュースやフィルターバブルなどの問題も顕在化しております。正確で信頼できる情報を広くしっかりと届けるため、NHKが果たすべき役割は大きいと考えております。

 このため、公共メディアとして、インターネットを通じて番組や情報を届ける意義や役割、多様化する視聴者ニーズなどを検証するために、この四月以降、社会実証を行い、結果はしっかりと検証して、得られた知見は関係者とともに共有してまいりたいと思います。

 放送と通信の融合時代におきましても、安心、安全を支え、多様で質の高いコンテンツを合理的なコストでお届けしていくことで、情報の社会的基盤の役割を果たし続けてまいりたいと思います。

金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。

 NHKは、公共放送として、放送法に基づき、広告主の意向や視聴率にとらわれない豊かでよい番組を放送することによって、文化水準の向上に寄与するなどの重要な社会的使命を担っており、これまでもその使命を果たしてきたと考えております。

 他方で、西岡委員御指摘のように、現在、インターネットを通じたコンテンツ視聴の拡大など、放送を取り巻く環境は大きく変化をしており、デジタル時代における公共放送の果たすべき役割や使命について不断に検討を行うことが必要と認識をしております。

 そうした中において、NHKにおいては、テレビを保有、視聴しない方々を対象とした社会実証を実施する予定であると承知をしております。

 総務省としては、NHKにおける実証の状況も踏まえながら、有識者検討会などにおいて、公共放送によるインターネット配信の意義やサービスニーズを検証した上で、公共放送の果たすべき役割や使命について引き続き検討してまいりたいと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 こういう時代だからこそ、改めて、公共放送の持つ重要性、意味というものがますます重要となってくるというふうに思いますので、視聴者の皆様のニーズに沿ったことも含め、また様々な、やはり経済合理性ではなかなか網羅できない、大切な、公共的な役割を担っていただくことや、少数者の意見というものをしっかり吸い上げる機能というものも大変重要な機能だというふうに思いますので、引き続きのお取組をお願いしたいと思います。

 続きまして、先ほどからの質疑とちょっとかぶる質問となりますけれども、受信料の引下げについて、前田会長にお尋ねをいたしたいと思います。

 先ほどからずっと議論があっておりますけれども、二〇二三年度に、事業規模の一割に当たる七百億円程度を原資として、受信料を引き下げる方針を明確にされております。その中で、秋をめどに具体化を示されるということでございますけれども、今回の令和四年度NHK予算に対する総務大臣の意見にもありますように、その具体像を早期に示す必要があるということを、総務大臣も意見の中で指摘されております。

 早期に具体策を示されるということが私は求められているというふうに思いますけれども、改めて前田会長の御見解をお尋ねしたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 令和四年度予算は、一連の改革によりまして支出を抑え、収支均衡予算としており、改革の成果を二〇二三年度に受信料の値下げという形で視聴者の皆様に還元していく予定であります。

 その原資といたしましては、営業改革などの構造改革を断行し更なるコスト圧縮を行うことや、財政安定のための繰越金の取崩しなどで確保していくことを想定しております。

 値下げの具体的な内容につきましては、先ほどから申し上げましたとおり、現在検討を進めておりまして、今年の秋には具体的にしっかりとした数字でお示ししたいと思います。

西岡委員 関連する質問でございまして、これは所管する総務省にお尋ねをいたしたいというふうに思っておりますけれども、NHKの方針をまずお聞きした後、所管である総務省の御見解を併せてお伺いしたいわけでございますけれども、この二〇二三年度に予定をされている値下げというものは、恒久的なものというふうにお考えになっているのでしょうか。それとも、一時的な値下げということを考えておられるのかどうか。

 また、先ほどから衛星契約をまずという御答弁がございましたけれども、地上契約の方の値下げというものは行わない方針であるかどうかについて、NHKの方針をお聞きした後、所管である総務省の御見解をお尋ねしたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 値下げを行うという以上、一回限りということではないと考えております。

 値下げを継続して実施していくためには、構造改革をしっかりと進めた上で、支出を安定的に削減していくことが必要となります。値下げを予定しております二〇二三年度には、衛星波の一波削減を行う方針であるほかに、衛星付加受信料は地上契約と比べて割高感があるということはずっと指摘されておりますので、値下げは衛星付加受信料について実施したいと考えております。

 一方、地上波につきましては、大規模な災害に備えた命と暮らしを守る報道の強化や、全国ネットワークを生かした地域情報の発信強化、教育、教養コンテンツの充実、ユニバーサルサービスの拡充など、NHKならではの放送・サービスにしっかりと取り組み、価値を更に高めていきたいと考えております。

吉田政府参考人 総務省といたしましては、従前よりNHKに対し、業務、受信料、ガバナンスの改革を進めるべきであるということを申し述べてまいりました。そういう中で、NHKが中期経営計画におきまして、事業規模の一割に当たる七百億円を還元の原資として二〇二三年度に受信料の値下げを行う方針を示したことは、一定の評価ができるものと考えております。

 受信料の引下げの具体的な内容は、NHKにおきましてまずは検討いただくものと考えておりますが、委員からも御紹介ありましたとおり、早期に明らかにすることは重要と考えておりまして、NHK予算に付した総務大臣意見においてもその旨の指摘を行っているところでございます。

 NHKにおきまして、国民・視聴者からの御意見なども十分踏まえながら、早期に御検討いただきたいと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 引き続き、是非早期にその具体像をお示しいただきますように、よろしくお願いいたします。

 続きまして、新型コロナウイルス感染症に係る受信料減免措置についてお伺いをしたいと思います。

 先般、蔓延防止等重点措置が全国的に解除をされ、感染が一定減少をしているものの、第五波に比べまして大変減少傾向が緩やかな状況が続いております。事業者、個人共に経済的に大変厳しい状況の中で、受信料の負担が重いという現実も引き続き続いていると認識をいたしております。

 受信料減免措置についての現在の支援内容と今後の方針について、NHKにお伺いをしたいと思います。

松崎参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、収入減により受信料の支払いが難しいといったお問合せを受けて、NHKでは、支払い期限を延伸する措置を専用の相談窓口を設けて受け付けているところでございます。この措置は二〇二〇年四月より始め、今月末が期限だったところでございますが、総務大臣の認可を受け、本年九月末まで期間を延長して、個々の御事情に配慮した対応に努めているところでございます。

 今後も、感染拡大による社会経済への影響や、政府や自治体による支援の動向などを注視しながら、必要な対応の検討を進めてまいりたいと思っております。

西岡委員 三月までであったものを九月までということで、引き続き相談窓口を続けていただけるということで、是非皆様の、視聴者の御意見に沿ったお取組を引き続きよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 先ほど前田会長からも総務大臣からもお話がございました、インターネット活用業務の社会実証についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。

 これは、武田前総務大臣のときに、テレビを保有していない方を対象とした発信について社会実証の実施の要請があり、行われるということだと承知をいたしておりますけれども、どのような形でこの実証を行っていかれるのかということについて、NHKにお伺いをしたいと思います。

松坂参考人 お答えいたします。

 社会実証は、放送と通信の融合が進む中、公共メディアとしましてインターネットを通じて番組や情報を届ける意義、役割、多様化する視聴者ニーズを検証するため、テレビを日常的に利用していない方や利用が少ない方などを対象に実施いたします。

 内容については、例えば報道、教育、教養、娯楽の各分野ですとか、分野を横断したものなど、NHKプラスで提供している番組と「NHK NEWS WEB」など、ウェブサイトやアプリで提供している情報などを組み合わせて、アプリですとかウェブサイトで番組や情報を提供することを検討しております。現在、四月以降の実施に向けて詳しい日時や内容などについて検討を進めているところで、決まり次第、事前にNHKのウェブサイトなどで公表することにしております。

 視聴者の利便性が高まり、情報空間における公共性を検証するなど、将来の日本のためになるような取組を進めてまいりたいというふうに思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 今、お取組の目的をお話をしていただいたわけでございますけれども、この実証につきましては、例えば、今後テレビを持たない世帯の方が増加するという中で、パソコンですとかスマホですとか、そういうものを使っておられる方を受信料契約の対象とするということを、そのデータを基に想定されたものではないかという御指摘もあるわけでございますけれども、総務省として、この実証の実施目的というもの、どのようにこの目的を考えておられるかということを総務省にお尋ねをいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 インターネットを通じたコンテンツ視聴の拡大など、国民の視聴スタイルというのが急速に変化している中で、公共放送の果たすべき役割や使命を議論することが必要と考えております。

 NHKにおいて、テレビ受信機を保有しない方々を対象に、これまではむしろ、テレビが普及していく、あるいはほぼ全世帯にあるということが前提でございましたけれども、御指摘のとおり、そういう世帯が増えてくるという中で、社会実証を行うことを通じまして、公共放送におけるインターネット配信の意義やサービスニーズを検証するということを目的としているものでございます。

 具体的な内容については、先ほどもNHKから答弁がありましたとおり、NHKにおいて検討中ということでございますけれども、テレビ受信機を設置していない方を新たに受信料の対象とすることを想定して行われるものではないものと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 また具体的な実証が始まりましたら、その実証の結果もウェブサイトで公表されるということでございましたので、その結果を注視してまいりたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に行きたいと思いますけれども、次の質問は先般から質疑があっておりますので後に回しまして、その次の質問に入らせていただきます。

 災害放送につきましては放送法に規定があるわけでございますけれども、有事などその他の事態に対する放送上の具体的な規定というのはないのが現状だというふうに認識をいたしております。例えば、今般のロシアによるウクライナ侵攻等、国際的な緊急事態、国内外の有事発生時の番組の切替えというものを、適時適切に、国民に必要な情報を的確な時期に伝えていくということが大変重要だと思っております。

 このことについて、NHKの方針ですとか指針というものについて御説明をいただきたいと思います。

正籬参考人 お答えいたします。

 国内外で有事が発生した際、様々な状況を踏まえまして、編成の変更などを総合的に判断することにしていまして、ニュースについても機動的に対応しております。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まった二月二十四日は、侵攻を確認する前から特設ニュースなどで緊迫する情勢を総合テレビやBS、ラジオでお伝えしてきましたが、ロシアの複数の国営通信社がロシア国防省の話として攻撃が始まったと明らかにしたのを受けまして、特設ニュースの放送を開始すると同時に、速報スーパーを行いました。また、L字放送を立ち上げて、きめ細かく情報を発信するなどしました。

 一方で、国内では、例えばJアラートでミサイル発射に関する情報が発信された場合には、国民・視聴者の生命財産を守るために、放送では、原則としてテレビ、ラジオの全ての放送波で臨時ニュースの放送を開始して、ミサイル発射に関する情報を直ちに視聴者に伝え、頑丈な建物や地下などに避難するよう呼びかけることにしております。

 また、国民保護法で、有事におきましては、放送事業者である指定公共機関に、警報、避難の指示、緊急通報の三つの緊急情報を放送する責務が定められております。NHKは、広域民間放送局とともに指定公共機関に指定されております。

 いずれにしましても、有事の際、正確な情報をできるだけ迅速に伝えるということは公共メディアとして非常に重要な役割だと認識しておりまして、よりよい方法を常に検討し続けたいと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 具体的に通告はいたしておりませんけれども、例えば指針のようなものとか、そういうまとまった、このようなときにというようなものはございますのでしょうか。それとも、そのときに判断をするということでございましょうか。

正籬参考人 お答えいたします。

 例えば大地震のとき、震度五強、震度六といった、その場合にどのように対応するのかということについては、内部で指針を定めております。

 それから、今申し上げましたように、Jアラートでの、国民の生命財産に緊急に影響がある場合、これは全て、全波で臨時ニュースを伝えるということも決めておりまして、個別のケースにおいて、内部的に指針を定めております。

西岡委員 ありがとうございます。

 引き続き、国民にとって必要な情報を的確にお伝えいただくということを、是非また全力で取り組んでいただくことをお願い申し上げたいと思います。

 それでは、引き続いて質問させていただきますけれども、先ほどから御答弁もあっておりますが、大規模災害時に必要な情報を伝え続けるということが大変重要だと思います。

 その意味では、バックアップ機能の地方分散化が重要であるというふうに考えておりますけれども、大阪で今拠点化を進めておられるというふうに先ほどから御答弁があっておりますけれども、具体的な代替のバックアップ拠点というのは、大阪だけを想定されて進められているのでしょうか。地方分散化につきまして、NHKにお伺いをいたします。

正籬参考人 お答えいたします。

 NHKは、東京から放送・サービスを発信できなくなった際の代替として、大阪放送局の機能強化に取り組んでおります。東京の放送センターが首都直下地震などによって放送を出せなくなった際には、大阪で緊急のニュースを制作し、全国に放送をお届けします。

 また、大阪放送局では今年度から、放送だけではなくて、ニュースのデジタルコンテンツの発信を専門的に担うグループの本格運用を始めていまして、令和四年度はこの取組を促進いたします。災害で東京の放送センターの制作機能が失われた場合でも、このグループが中心になってデジタル発信を継続することにしております。

 さらに、ラジオにつきましては、放送センターから放送が出せなくなった場合も、東京など身近な情報を伝えるために、さいたま放送局にラジオの放送ができる設備を整えております。

 全国のどこで大規模災害が発生したとしても、公共メディアとして、一人一人の命と暮らしを守ることができるよう、バックアップも含めた体制強化に取り組んでいきたいと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 想定できないことが起こっているのが今の状況でございますので、様々な局面を想定した、そういうバックアップ機能を充実していただくということを、また改めてお願いしたいというふうに思います。

 それでは、今審議中であります経済安全保障推進法案に関連をして質問をさせていただきます。

 今審議中の法案でございますのでお答えいただける範囲で結構だと思っておりますけれども、この法案においても、重要なインフラを担う分野として放送分野が位置づけられております。まさに基幹インフラとして放送・通信分野の事業が継続されることを確保するということは、極めて国家として重要であると認識をいたしております。

 主務大臣としての責務というものも法律の中で定められておりますけれども、総務大臣として、この経済安全保障推進法案の中で放送が位置づけられているということを受けまして、大臣の見解ということで、もし、大臣の方からお話しいただければというふうに思います。

金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。

 現在審議中の法案では、安定的な提供を確保すべきサービスであるいわゆる基幹インフラとして、放送のほか、電気通信、郵便といった総務大臣が所管する事業が規定されております。

 このうち、委員御指摘の放送事業については、災害情報など国民生活及び経済活動の基盤となる情報を提供するサービスであり、その安定的な提供に支障が生じた場合、国家及び国民の安全を損なうおそれがあることから、基幹インフラの一つとして本法案に位置づけられたものでございます。

 本法案を国会でお認めいただいた場合には、総務大臣は、放送などの所管事業の主務大臣として、各サービスの安定的な提供の確保のため、重要設備の導入などの際の事前審査や必要な場合の勧告の実施など、制度の適切な運用に努めてまいりたいと思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 法案が今審議中でございますので、そのような意味でも総務大臣の役割が大変重要だというふうに思いますので、継続的に確保するということ、大変重要なことだと思っておりますので、是非、大臣には、このことへのお取組をお願い申し上げたいと思います。

 時間が残り僅かとなっておりますけれども、この法案に関連することでございますけれども、今般のロシアによるウクライナ侵攻に関連をして、我が国においても、大変サイバー攻撃の被害というのが続発をいたしました。

 サイバー対策というのは従前から大変重要な危機管理でございますけれども、特に、今の状況を含めて、サイバー対策は大変重要な対策だというふうに思っておりますけれども、このことについて、NHKの対応、そして総務省の対応をお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

児玉参考人 お答えいたします。

 放送は重要インフラの一つとされ、海外の放送局でサイバー攻撃による被害が発生した事例もあることから、NHKでも、サイバー攻撃を想定したセキュリティー管理体制、CSIRT、コンピューター・セキュリティー・インシデント・レスポンス・チーム、これを設けております。このCSIRTが中心となって、NHKグループ全体の通信を二十四時間三百六十五日監視するとともに、重要システムについてはインターネットから分離するなどの措置も取っております。

 万が一セキュリティーインシデントが発生した場合は、状況を速やかに把握した上で、協会内の各部署と連携し、被害拡大阻止のための措置を取るなど、的確に対応することとしております。特に、放送機器においては、放送を継続できるように、バックアップ設備の整備も行っております。

 政府の情報セキュリティー戦略をつかさどる内閣サイバーセキュリティセンター、それから放送・通信業界の攻撃情報や対応を共有する組織、ICT―ISAC、これらの組織などとも連携をして、重要社会基盤事業者としての対策を更に強化し、サイバー攻撃に対するセキュリティーの確保に努めてまいります。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 総務省では、放送設備のサイバーセキュリティーの確保につきまして、技術基準の中で各放送事業者について適合維持義務を課しております。例えば、番組送出の起点となる番組送出設備を外部ネットワークと隔離するなどの措置が講じられているところでございます。

 なお、昨今の情勢を踏まえ、総務省としては、内閣サイバーセキュリティセンターなどの関係省庁と連携し、NHKを含む放送事業者等に対し、サイバーセキュリティー対策の強化について注意喚起を実施しております。また引き続き、関係省庁と連携の上、サイバーセキュリティー確保に努めてまいりたいと思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 これで終わります。超過して申し訳ございませんでした。ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 NHK予算の承認案件ですけれども、我が党は、従来、受信料負担増など国民負担増や経理などの不祥事があった場合、政治家の圧力に屈した場合や会長が不偏不党を脅かす発言を行った場合などを除き、基本的には賛成をしてきております。

 しかし、二〇二〇年度、二〇二一年度と二年連続で反対の態度を取ってきたのは、かんぽ生命の不正販売を取り上げた「クローズアップ現代+」をめぐって、当時の日本郵政の鈴木副社長からの抗議を受け入れて、予定していた第二弾の放送番組を取りやめ、先送りし、さらには、経営委員会がNHK会長に厳重注意を行い、事実上、番組編集に圧力をかけたからであります。

 経営委員会の行為は、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法三条に違反し、公共放送たるNHKの自主自律を脅かすものであり、断じて許されないと考えます。

 したがって、この問題が解決されたことを確認しなければ、到底予算の承認に賛成することにはなりません。

 今日は、資料をお配りいたしました。

 資料一は、かんぽ不正報道問題の経緯について、総務委員会調査室が作成した資料であります。「クローズアップ現代+」が放送された二〇一八年四月二十四日から昨年七月八日に至る経緯を時系列に沿ってまとめてくれております。

 まず冒頭に、経営委員会の基本的認識を聞きますけれども、経営委員会が外部の圧力に屈して現場の番組制作に介入したという認識はございませんか。

森下参考人 お答えいたします。

 視聴者の皆様からの御意見や御指摘に真摯に向き合うことは視聴者対応の基本でありまして、適切な視聴者対応が行われているかを監督することは経営委員会の重要な責務と認識しております。

 郵政側からの書状は、二〇一八年八月に会長宛てに質問の文書を送ったのに二か月間近くたっても回答がないため経営委員会に文書を出したとの趣旨であったため、執行部側の業務執行が視聴者目線に立っていないと考えたことなどから、会長に注意を申し入れたところであります。

 経営委員会といたしましては、あくまでもガバナンスの視点から注意を行ったものでありまして、放送法の第三条や第三十二条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識して議論しておりました。

 以上であります。

宮本(岳)委員 資料一の経緯を見れば明らかですけれども、四月二十四日に番組が放送され、七月七日と十日には、番組第二弾制作のために、情報提供を呼びかけるネット動画がホームページ上に掲載されました。

 すると、その翌日、二〇一八年七月十一日には、日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の三社長名でNHK会長宛てに、ネット動画の削除に関する申入れ書面が届けられました。聞きますけれども、この書面は公表されておりますか。NHK会長。

前田参考人 お答え申し上げます。

 会長宛ての書簡の内容を公表することは、相手方との信頼関係を損ねるおそれがございますので、基本的には公表すべきではないと考えております。

 なお、お尋ねのあった郵政三社からの書簡についても、同様の趣旨でNHKからは公表しておりません。

宮本(岳)委員 公表されていないんですね。

 その後は、NHK大型企画開発センターチーフプロデューサーが、番組制作と経営は分離し、会長は関与しない旨を伝え、八月二日には、再びNHK会長宛てに、取材対応を控えさせていただくとの書面が届いております。会長、この書面は公開されておりますか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 開示されておりません。

宮本(岳)委員 これも開示されていないわけですね。

 そして、日本郵政の鈴木上級副社長が、九月二十五日、当時の森下俊三NHK経営委員会委員長代行と面談をいたしました。森下代行は今の経営委員長でありますけれども、二〇二〇年三月二十四日付の「郵政三社からの申し入れに関する経営委員会での対応の経緯について」という経営委員会の文書によりますと、森下経営委員長は、鈴木康雄日本郵政取締役上級副社長と、鈴木氏が総務省総合通信基盤局電気通信事業部長の頃から、挨拶をする程度の面識はありましたと書かれております。

 森下経営委員長に聞くんですけれども、鈴木氏が総務省総合通信基盤局電気通信事業部長に就任したのは二〇〇一年のことでありまして、二〇〇五年に総務省郵政行政局長になるまでの期間であります。では、この時期、森下経営委員長は何をされておりましたか。

森下参考人 お答えいたします。

 ちょっと手持ちの資料はございませんが、私は当時、東日本電信電話の役員等をしておりました。

 ただ、私は、鈴木さんとは、先ほどお話がありましたように名刺を交換した程度でありまして、それ以降、一切、個人的なつき合いはございませんので、仕事上も余り直接的に対応したことはございません。

 以上、お答えいたしました。

宮本(岳)委員 事実ですけれどもね。

 二〇〇〇年に森下さんはNTT東日本代表取締役常務執行役、二〇〇二年にはNTT東日本代表取締役副社長、二〇〇四年にはNTT西日本代表取締役社長、こういう形ですから、形としてはですよ、総務省の総合通信基盤局電気通信事業部長という電気通信事業者を規律する側と規律される事業者の代表取締役、こういう関係でありました。

 それで、今、面識は名刺交換程度だということでありますけれども、二〇二〇年三月五日の当委員会の質疑で、吉川元議員の質問に答えて、二〇一八年九月二十五日に鈴木副社長と会ったときのやり取りを相当詳しく語っておられます。「まさに、トラブっているんだ、問題が起こって、それで、ツイッターの動画で削除を申し入れて、それで、チーフプロデューサーのそういう発言があったんだけれども、その後、そのチーフプロデューサーの発言について会長に八月二日に文書を出したんだけれども返事が来ない、だから経営委員会で、ガバナンス上、経営委員会で対応すべきじゃないかというお話がありました。」と。

 つまり、挨拶する程度だとおっしゃるんですけれども、このときはお互いにトラブルの中身を話し合うような関係だった、こういうことですか。

森下参考人 お答えいたします。

 当時、私は阪神高速道路株式会社の非常勤の会長をしておりまして、それで、鈴木さんの秘書から面会の申出がございました。多分これはビジネスのことだろうということで、阪神高速道路の東京事務所でお会いしたわけでございます。そういったときに、鈴木さんからそういう話がありました。

 私としては、そういうつもりでお会いしたつもりはなかったし、中身的には私が判断できる話ではございませんので、個人ではできませんというお話をいたしまして、それで、本当にそういう要望があるのであれば、経営委員会に申し出ていただかないと、個人では受け付けられませんということをお話しした、こういうことでございます。

 以上、お答えいたしました。

宮本(岳)委員 個人では対応できないので、それは経営委員会に書状で出してくれ、こうおっしゃったわけですね。

森下参考人 お答えいたします。

 私は、だから、阪神高速道路の会長としてお会いしていますので、経営委員会の委員としてお会いしているわけじゃない、そういう意味でございます。ですから、このお話は私としては受けられません、そういう意味でございます。

宮本(岳)委員 この二〇二〇年三月五日の質疑、吉川先生の質疑ですが、このときには、新聞報道があるだけで、非公表と決めているので出せないと、議事録の公開すら拒んでおりました。

 しかし、その後、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が、二〇二〇年五月二十二日と二〇二一年二月四日と二回にわたって全面開示の答申を出し、ついに、昨年七月八日には二〇一八年十月九日、二十三日、十一月十三日の経営委員会の議事起こしというものが公表されております。

 公開された議事起こし、これを見ますと、これまで行ってきた、日本郵政の鈴木副社長からNHKのガバナンスが利いていないのではないかと指摘され、ガバナンスの問題を議論した上で当時の上田会長に対して厳重注意をしたという説明は、到底通用しないものだと言わなければなりません。

 森下経営委員長、議事起こしが公表された今日においても、放送法が禁じる経営委員会による番組編集への関与は一切なかった、こう言い切れますか。

森下参考人 お答えいたします。

 経営委員会としては、あくまでもガバナンスの観点から注意を行ったものでありまして、放送法の第三条や第三十二条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識して議論しておりました。番組の編集の自由を損なうような事実はなく、執行部もそうした事実はなかったとしていると承知しております。

 今回の件では、抗議の元となった番組などについて確認する必要があり、番組などをめぐる意見や感想も含まれておりますが、あくまでガバナンスに関する議論であることがその場で何度も強調、指摘されておりまして、具体的な制作手法などを指示することを意図した議論ではなかったと認識しております。

 なお、番組本編の放送が二〇一八年四月でありまして、動画の公開終了や夏季特集で取り上げないなどの執行部の判断は七月から八月にかけて行われております。経営委員会に郵政側から書状が届いたのは十月でありまして、時系列から見ても番組介入はありません。あり得ないということでございますというふうにお答えしました。

宮本(岳)委員 資料二を見ていただきたい。公表された二〇一八年十月二十三日の議事起こしであります。上田前会長に厳重注意を行った日のものです。ページは少し飛んでいます、抜粋してあります。

 二〇一八年十月二十三日の経営委員会では、まず冒頭、監査委員でもある高橋委員が、NHKのガバナンスの欠如の指摘について、監査委員会で調査した結果を報告することから始めております。赤線を引いておきました。高橋委員は、「協会の対応についてガバナンス上の瑕疵があったとは認められないと判断いたしました。以上でございます。」と述べております。

 監査委員会がガバナンス上の瑕疵があったとは認められないと言っているにもかかわらず、なぜガバナンス上の問題で会長に厳重注意を行う必要があったんですか。

森下参考人 お答えいたします。

 二〇一八年十月二十三日の経営委員会で、監査委員会からは、協会の対応に組織の危機管理上の瑕疵があったとは認められないと報告を受けました。これは、郵政三社からの経営委員会宛て書状に関して監査委員会が監査を行った結果、本件の情報が会長までいち早く報告されておりまして、組織対応がなされているということから、協会の対応について、組織の危機管理上の瑕疵があったと認められないと判断したとのことでありました。

 しかし、これはあくまでもNHKの中だけの話でありまして、経営委員会といたしましては、次の二つの観点から、会長に対して注意を申し入れたのです。

 一つは、番組の制作と経営は分離しているため、番組制作について会長は関与しないというチーフプロデューサーの説明は、編集権についての考え方が組織にきちんと共有されていないというガバナンスの問題が含まれている、そう考えたこと、もう一つは、郵政三社からの書状は、二〇一八年八月に会長宛てに質問の文書を送ったのが二か月たっても回答がなかったために、経営委員会に文書を出したとの趣旨だったということでありまして、協会側の業務執行が視聴者目線に立っていないと考えたことでございます。

 そういうことで、ガバナンスの問題として扱っております。

 以上、お答えいたしました。

宮本(岳)委員 資料二の右側を見ていただきたい。

 当時の石原経営委員長が、当時の上田会長に文書を読み上げる形で厳重注意を行ったところの議事起こしであります。

 今回のことについていまだ郵政三社側に御理解いただける対応ができていないことについて誠に遺憾と言いつつ、ガバナンス体制を更に徹底せよ、そして、必要な措置を講じた上で、後日経営委員会に報告を求めております。

 これに対して、さすがに当時の上田前会長も戸惑いを隠せず、反論を試みております。

 先ほど監査委員からの御報告で、ガバナンス上は問題ないと、瑕疵があったとは認められないという報告があったではないかと。そして、個別番組に絡むような形でのガバナンスということになると、私の方としてもなかなか対応がと、言葉を詰まらせております。

 これは、ガバナンスというより、まさに個別番組に絡む形の指摘なのではありませんか。

森下参考人 お答えいたします。

 基本的には、先ほどお話ししましたように、郵政三社側への対応ができていないということでお話をしておりまして、それについては前会長は何事もおっしゃっていなかったんですね。

 要は、個別番組への介入に対して、そういった、会長が危機感を示されたということでありますけれども、そういうことについては、あくまでも我々はガバナンスに関する議論を行ったことでありまして、御本人がどういうふうに受け止めたかという、本人の感想だというふうに経営委員会の方は判断をしております。

 いずれにいたしましても、二か月たって回答が出されていなかったということと、先ほどお話ししました、社内でのチーフプロデューサー以下の教育が不十分じゃないか、そういったことについて全く回答がなかったということでございます。

 以上、お答えしました。

宮本(岳)委員 いや、その郵政から届いた会長宛ての手紙も、書面も公開されていない、二つが二つとも出ていないですね。この議事起こしだって、去年の七月になって出てきたわけですよ。

 資料三は、二〇一八年十一月十三日の経営委員会の議事起こしであります。

 経営委員会として、当時の上田会長に注意をして、郵政各社に遺憾の意を示す文書を送り、NHKの木田専務理事、放送総局長が、編成局の部長を帯同して、NHK会長名の書簡を手交して謝ったら、相手は納得し、日本郵政の鈴木副社長から礼状が届いたというものですね。

 十一月七日付で鈴木副社長から届いた礼状には、感謝の言葉とともに、木田専務が持っていった文書にある、放送法の趣旨を職員一人一人に浸透させるだけでは十分ではないなどと言い、放送番組の企画、編集の各段階で重層的な確認が必要だとまで言っております。

 なぜそこまで立ち入るのかと思ったら、下線部、「かつて放送行政に携わり、協会のガバナンス強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場から」と、自らの経歴に触れております。

 だから、それを受けて、経営委員が口々に、ちなみにその方って放送関係にいらした方なんですかとか、総務省の何か次官をしていた方らしいですね、総務省を辞めた後に郵政のなどと語り、最後に、当時の石原委員長が、非常に詳しい方でいらっしゃると述べて終了しております。

 総務省に確認します。

 当時の鈴木康雄副社長は、二〇〇九年から二〇一〇年にかけて総務省事務次官を務めた人物に間違いないですね。

吉田政府参考人 お答えをいたします。

 お尋ねの鈴木氏は、二〇〇九年七月から二〇一〇年一月までの間、総務事務次官を務めたと承知しております。

宮本(岳)委員 資料三の議事起こしでは、石原経営委員長が、番組を作るときに、もうほとんどでき上がった段階で上のところに持ってきて、これでいいじゃないかということではまずいなどと述べて、それぞれのところで、つかさつかさで、きちっとやっぱり管理をしていかないとまずいんじゃないかということを鈴木さんはこの中で主張されておるということだと理解しておりますとまで言っております。

 NHKに重ねて聞きますけれども、これは番組編集への介入ではありませんか。この問題を自分たちで判断するのではなく、視聴者・国民に判断を仰ぐべきだと思います。

 まず、議事起こしをホームページに公表し、議事録の作成と公表もすべきだと思いますが、そうではないですか。

森下参考人 お答えいたします。

 その前に一言。

 先ほど先生の方から、郵政の手紙が公表されていないということがありましたけれども、経営委員会に十月に来た手紙については公表しておりますので、誤解のないようにお願いをいたします。

 それから、鈴木さんの手紙が先ほどありましたけれども、そのときは経緯の確認をやり取りしたという記憶をしております。むしろ、手紙が来た段階、審議する段階では、鈴木さんがどういう人かということは皆さん分かっていない、知らないということで審議をしておりますので、この件に関する議論が先入観を持たずにされたというように私どもの方は解釈をしております。

 それから、議事録の開示のことでありますが、これにつきましては、情報公開制度に基づいて請求者に開示した文書、これは、経営委員会終了後、各議題に関する議論などを逐語的に粗起こしすることによりまして作成されたものでありまして、これも放送法第四十一条で定める議事録ではございますが、非公表として取り扱っております。

 これは、経営委員会の議事運営規則第五条一項で、「経営委員会議事録は、会議のつど作成するものとし、原則として、次回の会議においてその内容を確認した上で、委員長または委員長職務代行者および監査委員会が選定する監査委員一人が署名する。その後、遅滞なく、経営委員会議事録を公表する。」と定めております。

 従前より、経営委員会では、経営委員会議事運営規則第五条四項の非公表事由に当たると判断された議題に関するものにつきましては、公表とともに内容の確認及び署名も省略する運用がなされてきておりました。よって、情報公開するということで開示した文書も、非公表として取り扱っております。

 以上、よろしくお願いします。

宮本(岳)委員 開示するんですね。一言。開示するんですね。答えてください、だらだらと言わずに。

森下参考人 お答えいたします。

 請求があれば開示をいたしております。

宮本(岳)委員 いや、請求者には開示しているんです、既に。請求者に開示したものは国民に開示しなさいと言っているんですよ。

 それから、七月の十一日のNHK会長宛ての文書は、公表していないと会長が答えたとおりじゃないですか。

 NHKはやはり全く反省していないと言わざるを得ません。反省がないから同じ過ちが繰り返されるわけであります。

 二〇二一年十二月の河瀬直美が見詰めた五輪という番組に、五輪反対デモに参加している男性が、実はお金をもらって動員されていると打ち明けたなどという、全く事実に反する字幕が放映され、これも、今年二月の十日にNHKの調査チームが報告書を公表いたしました。

 この字幕は全く事実に反する誤ったものだった、これはお認めですね。

前田参考人 お答え申し上げます。

 BS1スペシャルでつけた字幕は、誤ったものでございました。

宮本(岳)委員 字幕をめぐっては、私は参議院議員時代に随分苦労した経緯があります。

 我が党は一貫して、NHKに聴覚障害者の方々のための字幕放送の拡充を求めてまいりました。私は、特に、生放送であるニュースに字幕をつけることを繰り返し求め、ついに二〇〇〇年三月二十七日、生放送である「ニュース7」に字幕が付与されました。障害者団体の方々と一緒に見て、みんなで拍手したのを昨日のことのように覚えております。

 自動で音声を字幕に換える機械の開発が鍵だったんですけれども、あのときNHKが非常にこだわったのは機械の変換ミスで、万が一にもNHKが誤った字幕を放送するわけにはいかないという言い分でありました。その点で、今回の字幕の事件は余りにもお粗末で、断じて許し難いと言わなければなりません。

 今回の、「BS1スペシャル」報道に関する調査報告書では、二〇一五年にNHKで発生した「クローズアップ現代」「追跡 出家詐欺」問題の取材をめぐる問題とその教訓にも触れております。

 しかし、このときも、二〇一五年四月二十八日にNHKが出した調査報告書が、「事実のねつ造につながるいわゆる「やらせ」は行っていない」と結論づけたことに対して、二〇一五年十一月六日に出されたBPO、放送倫理・番組向上機構の検証委員会の報告書は、「しかし、NHKの調査で、はたして番組に関する疑問は解消したのか。検証は十分であったのか。問題は、「過剰な演出」や「実際の取材過程とかけ離れた編集」というレベルにとどまるものなのか。 当委員会は、調査の推移を見守っていたが、「最終報告書」に疑問点が残り、また、意見を述べるべき問題もあるとの結論に至った。」こう述べています。

 会長に聞くんですけれども、このときのBPOの指摘を真摯に受け止めておりますね、会長。

前田参考人 そのときの御指摘は、そのとおりだと思います。真摯に受け止めております。

宮本(岳)委員 ところが、今年二月十五日、前田会長は、当委員会でBS1スペシャル報道問題を問われ、意図的ではなかったと強調しつつ、「意図的にやるのであれば、もうちょっとちゃんと意図的にやるんだと思いますが、こんなずさんなことで何かをやり遂げようという、とても私には理解できません。」という、耳を疑う答弁を行いました。これはもちろん、先ほど奥野議員御本人が質問されましたけれども、まるで他人事、著しく当事者性を欠いたもので、言い回しや表現の問題ではありません。真摯な反省とはほど遠いと言わざるを得ません。

 会長、これはもうあっさり撤回すべきじゃないですか。

前田参考人 お答え申し上げます。

 説明の趣旨が不適切であったということでありますので、撤回させていただきます。

宮本(岳)委員 もう時間が来ましたので、どこまでできるか分かりませんが。

 そういうことの中で、かんぽ不正報道でもBS1の字幕問題でも、やはりNHKの信頼を揺るがす事態になっているという認識を持つべきです。

 資料の四につけました。NHK受信料制度検討委員会の次世代NHKに関する専門小委員会の報告書に掲載されている、これはNHK自身が二〇一九年三月に実施した調査結果であります。

 NHKに求める公共的価値のうち、左端、正確、公平公正な情報で貢献することが実現しているという答えは一六・九%と極めて低い。公共的価値として挙げられている六項目の中でも際立って低いんです。

 今、NHKに求められるのは、公共放送としての自覚を持ち、公共放送の自主自律を守り、正確、公平公正な情報で視聴者・国民の信頼を取り戻すことではないのか。このことについてのNHK前田会長の御見解をお伺いして、時間が来ましたので、質問を終わりたいと思います。

前田参考人 お答え申し上げます。

 今回の調査は、視聴者四千人を対象に、NHKの公共的価値の評価をしていただいたものでございますが、このうち、正確、公平公正な情報で貢献することについては、ほぼ毎日NHKの放送などに触れておられる方は高く評価していただいている一方で、ほとんどNHKを御覧いただいていない方は相対的に低い評価となっております。

 この結果を見ますと、何よりもNHKのコンテンツに触れていただくことがNHKの理解を深めることにつながると考えております。

 NHKでは、現在、放送やインターネット、イベントなどを通じて、視聴者の皆様との接点を拡大し、NHKのコンテンツに触れていただくことで、価値を実感していただく視聴者リレーション活動を強化しているところでございます。

 また、新年度の番組改定では、総合テレビとEテレを中心に、視聴者のニーズを踏まえた新たな番組を数多く放送する予定で、インターネットなどを活用しながら、世代を超えて一人でも多くの視聴者にNHKのコンテンツに触れていただくための努力を重ねてまいりたいと思います。

宮本(岳)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、信頼を取り戻すために頑張ると言っていただきたかった。やはり人間がしっかりと説明することが基本だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。中司宏さん。

中司委員 日本維新の会の中司宏です。

 党を代表し、令和四年度NHK予算等に反対の立場から討論いたします。

 放送と通信の大融合時代にふさわしいNHKの在り方について、これまで我が党が再三指摘してきたスピード感のある改革の方向性が十分に示されていないのが反対の理由です。

 令和四年度予算では、訪問によらない営業への転換や、事業規模の一割に当たる七百億円程度を原資とした受信料の還元、子会社等の削減など、一定評価するところもありますが、まだまだ抜本的な改革とは言えません。

 こうしたことから、日本維新の会は、本予算等に反対すると同時に、本日、肥大化したNHKを公共を担う部門と民間部門とに分割するとともに、国民負担の軽減を図ることを柱とするNHK改革推進法案を提出しました。

 インターネット社会においてテレビの視聴時間が減少傾向にある中で、テレビを受信料の対象とする受信料制度など、近年の放送と通信の融合の時代の流れに対し、NHKの改革は追いついていないと言わざるを得ません。そのための業務の重点化、組織の合理化など、未来を見据えた抜本的な改革で再出発を図る必要があると考えます。

 そこで、改革法案では、NHKの放送を報道、教育、福祉等に重点を置いた公共番組に絞り、それ以外の放送番組等の業務は新たな法人を設立して分割することや、受信料は新たに公平公正な制度を構築して国民の負担を軽減することなどについて、内閣に置くNHK改革推進会議において検討し、改革を推進していくことを骨子としています。

 国際社会の趨勢から見ても、これらの改革を断行することで、国民の負担を軽減し、公共放送として国民が求めるNHKを実現していくことが不可決であります。

 国民から信頼される公共放送としてのNHKの発展を願いつつ、令和四年度予算等については反対であることを表明いたしまして、討論とさせていただきます。(拍手)

赤羽委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件、いわゆるNHK二〇二二年度予算の承認に対して、反対の討論を行います。

 放送の自主自律の遵守が求められるNHKの対応に、国民の信頼は揺らいだままです。

 NHKのかんぽ生命不正販売の報道をめぐって、我が党は、NHKが日本郵政グループからの圧力に屈し、経営委員会が会長を厳重注意したことは、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法三条及び三十二条に違反する行為であると厳しく指摘し、二〇二〇年度、二〇二一年度のNHK予算の承認に反対いたしました。

 予算承認後の昨年七月、経営委員会は、情報公開請求者に対し、議事起こしを開示しました。そこには、日本郵政からの圧力に屈する経営委員会の対応が生々しく記されております。しかし、ホームページ等で公表しないばかりか、いまだに全文は議事録として作成されておりません。

 視聴者・国民への説明責任を放棄する経営委員会、執行部の姿勢は無反省と言わざるを得ません。こうした下で、執行部が編成し、経営委員会が議決をした予算を承認することはできません。

 さらに、経費の削減ありきで、訪問によらない効率的な営業活動への移行を掲げ、大幅な営業活動の縮小を図ろうとしていることは重大であります。

 二〇〇九年以降、NHKが営業の法人委託にかじを切り、契約数の増加のノルマを課せられたスタッフの強引な勧誘や契約者をだますような手法が横行し、国民からの強い批判が殺到しました。丁寧な説明をないがしろにした訪問営業が、NHKへの信頼を揺るがす事態となっています。

 本来、訪問営業は、公共放送としてのNHKの役割や受信料制度への理解を視聴者・国民に促す重要な役割を持つものです。本来の姿に立ち返ることこそ必要です。縮小では、国民の理解を得られないばかりか、受信料収入への悪影響も懸念されます。

 最後に、視聴者・国民の代表としての自覚と、放送法を遵守する経営委員会に改革することを強く求めて、反対討論といたします。

赤羽委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより採決に入ります。

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。

 本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 この際、ただいま議決いたしました本件に対し、田所嘉徳さん外三名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、公明党及び国民民主党・無所属クラブの四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。湯原俊二さん。

湯原委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)

  政府及び日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。

 一 協会は、放送番組の編集に当たっては、受信料を財源とする公共放送の性格を定めた放送法の趣旨を十分踏まえ、事実に基づく放送に強い責任を自覚し、かつ政治的公平性を保つとともに、「人にやさしい放送」のさらなる拡充により放送のバリアフリー化を進め、我が国の公共放送としての社会的使命を果たすこと。また、寄せられる様々な意見に対し、必要に応じ自律的に調査し、その結果を速やかに公表し、国民・視聴者に開かれた公共放送として信任を得られるよう努めること。

 二 政府は、日本国憲法で保障された表現の自由、放送法に定める放送の自律性に鑑み、協会を含めた放送事業者の番組編集について、引き続き自主・自律性を尊重すること。また、経営委員会委員の任命に当たっては、公正な判断をすることができる経験と見識を有する者から、教育、文化等の各分野及び全国各地方が公平に代表され、かつ、女性の比率を引き上げるなど多様な意見が反映されるよう幅広く選任するよう努めること。

 三 協会は、その運営が受信料を財源としていることを踏まえ、国民・視聴者に対し、情報を十分に開示し、説明を尽くすこと。また、そのために、経営委員会及び理事会等における意思決定過程や、財政運営上の規律、不祥事に伴う処分、子会社等の運営の状況、調達に係る取引等を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、経営委員会及び理事会の議事録の適切な作成・管理を行うとともに原則としてこれを公表すること。

 四 協会は、平成二十九年十二月の最高裁判決にも鑑み、公共放送の存在意義及び受信料制度に対する国民・視聴者の理解の促進や信頼感の醸成に協会一体となって、一層努めること。また、受信契約の締結に際しては、今後訪問によらない営業においても、関係者に対する影響等に留意するとともに、視聴者の理解を得ながら適正に行われるべきことを、職員に指導し、周知徹底すること。

 五 協会は、放送センターの建替えに際し、受信料を財源としていることを踏まえ、中期経営計画で示された「新放送センターの建設計画の抜本的な見直し」の具体的な内容を早期に明らかにし、国民・視聴者の理解が得られるよう説明を尽くすとともに、建替えに係る費用の圧縮に徹底的に取り組み、その成果を国民・視聴者に適切に還元すること。

 六 経営委員会は、放送法が定める協会の自律性を担保するために、協会の経営に関する重要事項を決定する権限と責任を有する最高意思決定機関であることを深く認識し、職務を遂行するに当たっては、放送法を遵守し、特に、何人からも介入されることのない個別の放送番組の編集への経営委員会の介入が疑われるような行為は厳に慎むこと。また、協会が放送法に定められた役割を的確に果たせるよう、監督権限を行使すること。

 七 協会は、協会本体及びグループの職員による一連の不祥事に対し、国民・視聴者から厳しい批判が寄せられていることを踏まえ、協会一体となって綱紀を粛正しコンプライアンスを徹底した運営を行うことで、信頼回復に努めること。また、子会社を含むグループ全体としての経営改革に組織を挙げて迅速かつ確実に取り組むこと。

 八 協会は、過去の記者が過労で亡くなった事実等を踏まえ、協会の業務に携わる者の命と健康を最優先とし、適正な業務運営と労働環境確保に努め、長時間労働による被害を二度と起こさないよう、全力で取り組むこと。また、ハラスメントの防止など職場の環境改善を進め、障害者の雇用率の向上及び女性の採用・登用の拡大を図ること。

 九 協会は、放送と通信の大融合時代にふさわしい公共放送の在り方、受信料の在り方について、引き続き真剣に検討し、新しい社会と技術に対応した公共メディアとしての経営ビジョンを構築すること。

 十 協会は、自然災害が相次いでいる現状に鑑み、地震災害、風水害、雪害等、いかなる災害時にも放送・サービスが継続され、正確な情報が国民に伝達されるよう、地方局と連携し、放送設備と体制の強化を図ること。

 十一 協会は、インターネット常時同時配信等通信分野での業務について、社会実証の結果や民間放送事業者の見解に十分留意しつつ、国民・視聴者のニーズや動向を的確に把握し、国民・視聴者に対する情報提供や関係者間での情報共有及び連携を図り、協会における通信分野の業務の在り方について、できるだけ明確にその姿勢を示すよう努めること。

 十二 協会は、国際放送については、我が国の経済・社会・文化等の動向を正しく伝え、我が国に対する理解を促進するよう努めること。また、世界情勢や感染症の現状に鑑み、在外邦人に対し、生命と身体の安全に関する情報を適切に伝えるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

赤羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、金子総務大臣及び日本放送協会会長前田晃伸さんから発言を求められておりますので、順次これを許します。金子総務大臣。

金子(恭)国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

赤羽委員長 次に、日本放送協会会長前田晃伸さん。

前田参考人 日本放送協会の令和四年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして御承認を賜り、厚く御礼申し上げます。

 NHK経営計画の二年目となる本予算を執行するに当たりまして、御審議の過程でいただきました御意見並びに総務大臣意見の御趣旨を十分に生かしてまいります。

 また、ただいまの附帯決議は、十分に踏まえて協会の運営に当たり、業務執行に万全を期したいと考えております。

 本日は、ありがとうございました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤羽委員長 次回は、来る四月五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十一分散会


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