衆議院

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第15号 令和4年4月28日(木曜日)

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令和四年四月二十八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 あかま二郎君 理事 斎藤 洋明君

   理事 新谷 正義君 理事 田所 嘉徳君

   理事 岡本あき子君 理事 吉川  元君

   理事 中司  宏君 理事 輿水 恵一君

      井野 俊郎君    井林 辰憲君

      石田 真敏君    加藤 竜祥君

      川崎ひでと君    小森 卓郎君

      坂井  学君    鈴木 英敬君

      高見 康裕君    土田  慎君

      中野 英幸君    西野 太亮君

      鳩山 二郎君    古川 直季君

      古川  康君    保岡 宏武君

      柳本  顕君    山口  晋君

      渡辺 孝一君    石川 香織君

      おおつき紅葉君    鈴木 庸介君

      道下 大樹君    湯原 俊二君

      阿部 弘樹君    沢田  良君

      守島  正君    福重 隆浩君

      西岡 秀子君    宮本 岳志君

    …………………………………

   総務大臣政務官      鳩山 二郎君

   総務大臣政務官      渡辺 孝一君

   参考人

   (東京大学副学長・公共政策大学院教授)      大橋  弘君

   参考人

   (弁護士法人英知法律事務所弁護士)        森  亮二君

   参考人

   (株式会社政策工房代表取締役)          原  英史君

   総務委員会専門員     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     中野 英幸君

  鈴木 英敬君     高見 康裕君

  西野 太亮君     土田  慎君

  柳本  顕君     山口  晋君

同日

 辞任         補欠選任

  高見 康裕君     鈴木 英敬君

  土田  慎君     西野 太亮君

  中野 英幸君     加藤 竜祥君

  山口  晋君     柳本  顕君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 電気通信事業法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電気通信事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学副学長・公共政策大学院教授大橋弘さん、弁護士法人英知法律事務所弁護士森亮二さん及び株式会社政策工房代表取締役原英史さんの、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様方に、委員会を代表し、一言御挨拶を申し上げさせていただきます。

 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人の皆様におかれましては、限られた時間でございますが、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りますようよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人の皆様は委員に対して質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず大橋参考人、よろしくお願いいたします。

大橋参考人 皆さん、おはようございます。

 御紹介いただきました大橋弘と申します。

 経済学を専門としております。本法律案との関わりですが、ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会及び電気通信事業ガバナンス検討会の座長を務めました。また、電気通信紛争処理委員会での特別委員も拝命しております。

 本日は、このような貴重な場をいただきましたので、我が国の電気通信が直面する課題とそれへの対応について、申し述べたいと思います。

 一九八五年に電電公社が民営化され、我が国も海外とほぼ同時期に、通信市場が自由化をされました。この自由化によって、民営化したNTTと新規事業者との間で競争が生まれ、より安価で多様なサービスが提供されるようになりました。あわせて、目覚ましい技術革新の中で、音声通話からデータ通信、あるいはウェブやSNS、チャットなど、消費者が通信に触れる場も多様化しました。通信が社会経済活動と切っても切れない不可欠な要素になる中で、ネットワーク設備を有する事業者と、そのネットワーク設備を使ってサービスのみを提供する新規事業者との間で競争条件の変化、そして、消費者保護に対して新たな対応が求められるようになりました。

 本改正案では、こうした電気通信での目覚ましい技術革新と社会経済構造の変革に対応するために、公正競争ルールと消費者保護ルールに対して新たな手当てを行うものと思っております。

 以下、三つの点に絞って意見を申し述べたいと思います。

 まず、公正競争のルールの再整備に関してであります。

 通信自由化以降、ネットワーク設備を有する事業者の参入を促してきました。しかし、ネットワーク敷設には高額な費用がかかることもあり、設備を持つ事業者のみでの競争に期待するには限界がありました。そこで、ネットワーク設備に対する投資インセンティブを損なわない形で、適正な条件の下で設備を開放させるようにし、ネットワークを持たない事業者に対しても市場参入の機会を与えることで、より多様なサービスと低廉な価格を実現することを政策として目指してきました。

 自由化後の政策議論において、モバイル音声通話のように複数者のネットワーク事業者がいる場合は、競争が働くはずなので、接続というような強制的な制度は不要だとの事業者からの意見もありました。

 実際に、自由化とは、事前規制の認可の世界から、届出による事後規制の世界へと移行することを意味しています。なるだけ、接続のような規制的な制度ではなく、卸という自由で相対での場で多様なサービスを生み出せるようにすべきという雰囲気が大勢を占めた時期もあったかと思います。

 十分な競争が働けば、接続という画一的な約款は一種のセーフガードの役割を果たし、卸役務によって、接続よりも魅力的で競争的なサービス提供がなされる姿が想定されていました。競争的な環境では、ネットワーク事業者であるMNOが提供するサービスと、ネットワークを持たないMVNOが提供するサービスとは、同一条件で競争できるはずと考えられていたわけであります。

 ところが、モバイル音声通話において、MNOの提供するサービスをネットワークを持たないMVNOが提供しようとすると逆ざやになってしまうことが、事業者に対するヒアリングを重ねる中で明らかになりました。この点は、モバイルの音声通話市場において、複数のMNOがいても競争が働くわけではなく、接続約款があってもMVNO向けの卸価格が十分低下するわけでもないということが明らかになったわけであります。

 私は、この点は、通信市場における競争の考え方の一つの分岐点になるのではないかと思っています。これまで、契約先に選択肢があれば、競争が十分に働いて適正な卸価格が維持されるとされてきました。つまり、卸価格の適正性は、市場に複数者いることを確認すれば事足りるとされてきたのだと思います。

 今回、モバイル音声通話市場において明らかになったのは、複数者をもってしても競争が働くとは限らないということでした。これは、複数の競争者によるカルテルであれば競争当局がきちんと対処すべきと考えますが、他方で、適正なコストも分からない中で、なかなか、競争の状況を事後的に判断することは容易ではありません。

 この法改正において、卸役務に対して、料金算定の方法などの提示義務が課せられることは、市場競争をしっかりモニタリングする上での重要な行政ツールになるものと思います。

 この度まとめられた情報通信行政検証委員会の報告書においても、NTTグループだけでなく、ほかの事業者からも、従来以上に客観的なデータを取得して市場検証を行うべきとの提言がなされています。公正競争確保において、複数者が市場にいることをもって慢心せず、データ検証をしっかり行って、モバイル音声通話だけでなく、それ以外の領域にも視野を広げて市場検証を行うべきと考えます。

 二つ目の論点です。ユニバーサルサービスになります。

 民営化によって誕生したNTTに対しては、国民生活に不可欠なサービスである電話を、安定的に全国に供給する責務が課せられることになりました。この責務はNTT三社に引き継がれるとともに、費用負担については基金で支えることで今に至っています。

 現行の事業法における基礎的電気通信役務は、加入電話や公衆電話の一部となっています。しかし、コロナ禍を通じて、テレワークや遠隔サービスが浸透し、また、社会経済活動においてもデータ通信の利用が不可欠になる中で、ユニバーサルサービスには、災害用の公衆電話を加えながら、第一種公衆電話の設置基準を緩和し、台数を減らす新制度が発足しています。

 この音声ネットワークの適正化の上に立って、次は、データ通信について、基礎的電気通信役務としてどう捉えるかが政策的課題となっていました。

 今次のウクライナ情勢を見る限り、有事における通信の重要性が改めて明らかになってきたものと思います。戦争で多くのインフラが破壊される中、オンライン映像がつながり、戦禍の状況が世界に発信されるためには、有事における強靱な情報インフラが必要であります。

 有事における情報インフラが威力を発揮することを念頭に、平時におけるインフラ整備に努めるべきであり、その点で、本改正案における、ブロードバンドを基礎的電気通信役務に新たに組み込む提案は、時機にかなったものと評価できるのではないかと思います。

 もっとも、ユニバーサルサービスの最終形は、この改正案では見えていないものと思います。さきの第一種公衆電話の設置基準緩和に表れているように、技術の進展や社会経済の受容性の変化に応じて、ユニバーサルサービスの内容も変わっていきます。

 まずは、本改正案にある有線ブロードバンドのユニバーサルサービス化に取り組みつつ、将来に向けては、無線も含めた通信方式も検討のスコープに入れた仕組みを考えていくことが求められるものと思います。その点を考えれば、今回、有線ブロードサービスにおいてラストリゾート責務を規定しないという点も理解ができるところと思います。

 最後の論点は、通信利用者に対する保護に関わる点です。

 我が国で多くの利用者を得ているアプリにおいて、送受信された画像や動画が海外に保管あるいはアクセス可能な状態にあったことが国民の大きな関心事となりました。現在の事業法では通信利用者の機微な情報を守ることが難しいのではないか、また、利用者の情報を守ってもらいたいとする国民の思いと、事業法が定める規律との間に乖離が生じ始めているのではないか、こうした懸念が国内で高まりました。

 ウクライナ情勢に関連して、海外ではサーバー攻撃なども見られており、利用者情報をいかに保護しつつ、安心、安全に通信サービスを利用できる環境を再設計できるかが我が国における急務な政策課題となっており、本改正案は、こうした状況に対する対応として評価ができるものではないかと思います。

 事業法では、電気通信事業を営む者に対して、利用者保護として通信の秘密を求めています。しかし、通信の秘密は、通話やメールに及びますが、ウェブサイトの閲覧やアプリまではカバーされていません。必ずしも個人情報とは言えませんが、こうした通信利用者のウェブ履歴情報やアプリの利用者情報などを守ることが急務ではないかという声が国民の間でも高まったものと思います。

 今回の法改正では、更なるデジタル化を我が国で推進していくに当たり、通信に対する信頼を確保する上での最低限の手当てを行うことを目的にしたものと思っています。

 大規模な電気通信事業者等に対して、利用者情報の取扱いを社内ルールとして定めさせたり、あるいは利用者情報の統括責任者を置いたりといったことは、利用者情報を守る上での必要な規律と考えます。また、利用者情報の外部送信に対しても、利用者の確認の機会を与えさえすれば可能となっているという点で、多くの事業者が既に取組を始めているところと思われ、この点でも、ビジネスをしっかり行ってきた事業者には著しい影響を与えることはないだろうというふうに見込まれます。

 このように、今回の改正案は、利用者情報の保護の観点で必要最小限の規律を示したものと思われます。よって、この規律においても利用者情報を利益の源泉とする事業者がいなくなるわけではないと思います。

 この改正案をきっかけに、利用者情報を厳格に扱う事業者が利用者の信頼を得ることで成長するビジネスモデルがしっかり根づき始めるとよいと願っています。間違っても、利用者情報を営利のために、いいかげんに扱う事業者が市場で支配的になるようなことがあってはなりません。今回の改正案が意味のある形で機能する上では、データ管理にしっかり取り組む企業を利用者が見極め、選別をするということも併せて求められるものと思います。

 他方で、ヨーロッパではデジタルサービス法が制定されるなど、海外の利用者情報に対する規制や利用者保護に対する政策が目まぐるしく変化をしています。

 我が国のデジタルプラットフォーム事業者に対する取組においても、利用者情報の扱いに厳格さを欠くと海外に見られるような事態は、我が国企業の海外展開などにおいて不利に働くことになりかねません。

 今回の改正案を出発点にして、海外での政策動向を注視しながら、我が国の企業の更なる海外展開やビジネス成長につながるような取組を促していくべきですし、そうした官民連携の仕組みを充実させていくことも重要と思います。

 通信自由化から四十年近くがたつ中で、これまでの法体系や市場の実情が今の社会経済の実態に合わなくなっています。今回の改正案は、こうした実態の変化に合わせたものであり、通信事業者及び利用者にとって必要なものです。しかし、これまで述べてきたように、この改正案で全ての手当てが終わったわけではありません。今回の法改正案は、今後の更なる手当てを行う上での最低限の規律を設けたもの、いわば出発点だというふうに捉えられるべきものと思います。

 以上となります。本日は、貴重な機会を頂戴しまして、ありがとうございました。(拍手)

赤羽委員長 大橋参考人、大変ありがとうございました。

 次に、森参考人、よろしくお願いいたします。

森参考人 御紹介にあずかりました弁護士の森でございます。

 本日は、お時間をいただきまして、ありがとうございました。

 電気通信事業法改正、今回の大きな柱三つのうち、利用者情報の規制についてお話をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 下のスライド。本日、三点お話ししたいと思っておりまして、一つ目が、改正法の背景でございます。二つ目が、利用者情報規制のうちの一つの大きなものである外部送信のことについてのお話、それから三番目に、今回、利用者情報規制について二重規制ではないかという批判がありましたので、これについてのお話をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 おめくりいただきまして、改正法の背景でございます。

 下のスライド。緑、青、赤となっておりまして、一番、個人的法益、二番、社会的法益、三番、国家的法益というふうになっております。

 一番、個人的法益のところですけれども、利用者情報の規制ということですので、これがプライバシー等の個人的法益に深く関わるものであるということは大変重要なところではございます。ただ、これはやや見えやすい話でございますので、本日は省略をさせていただきまして、二番、社会的法益、三番、国家的法益についてお話をさせていただきたいと思います。二番の上から三つ目、健全な言論環境の確保、三番の一番上、健全な民主主義システムの確保のところでございます。

 利用者情報の問題がなぜ言論環境や民主主義システムに関わってくるのかということでございますけれども、おめくりいただきまして、次のスライドです。

 この問題が一番はっきり表れたのが、ケンブリッジ・アナリティカ事件であろうかと思います。既に御案内のところではございますが、二〇一六年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営を支援し、ブレグジットの国民投票で離脱派を支援したと言われている政治コンサルティング会社でございます。事件のてんまつは、クリストファー・ワイリーという元社員の方の告発で明らかになっております。

 二ポツですけれども、実に八千七百万人分のユーザーの情報をフェイスブック社から取得しております。フェイスブック社、現在社名変更されてメタになっておりますが、当時フェイスブック社ですので、本日はフェイスブックとしてお話をしたいと思います。

 この八千七百万人分のデータベースを利用しまして、心理学やアドテクノロジーなどの手法を使いましてプロファイリングを行って、操作しやすい人たちを選び出して操作したというふうに言われております。

 下のスライドです。CAとは、ケンブリッジ・アナリティカの略でございます。

 どのような誘導をしたのかということを先ほどのワイリーという人の著書から私が要約したものですけれども、フェイスブックから取得したユーザーのデータベースを用いて、まず誘導しやすい人を探し出すわけでございます。どんな人か。神経症で自意識過剰、陰謀論に傾きやすい、衝動的に怒りに流される、そんな人でございます。

 これに対して、ターゲティング広告、コンテンツのレコメンド、そういったことを使った働きかけを行います。

 どんな働きかけかといいますと、具体的には、フェイクグループ、これは同社がつくった人為的なグループですけれども、○○郡愛国者とか、私は愛国者といったもっともらしい名前がついておりますが、そこに誘い込んでいろいろ議論をしまして、エコーチェンバーの効果で集団として先鋭化させるといったことを行ったと言われております。

 エコーチェンバー、御案内のとおりですけれども、同じような傾向を持った人をフォローする、あるいは同じような傾向を持った人の発言をレコメンドされるということで、同じような傾向の人同士でつながって同じようなことを言い合ううちに、音が反響する小部屋のような状況になりまして、更にその傾向を強めてしまう、やがてはほかの意見に耳をかさなくなる、そういった現象であると言われております。

 おめくりいただきまして、次のスライドですけれども、このケンブリッジ・アナリティカの事件ですが、ここから、こういったリスクがあるのではないかというふうに言われているのではないかと思います。

 一つは、元々は選挙、投票に影響を与える目的であったわけですけれども、その中で、その集団の中で議論するあるいは外に情報発信をするときに、対立をあおるような意見、自国民と他国民、あるいは民族の違い、そういった間での対立をあおるような議論がなされてしまいまして、そこで社会の分断を招くということです。

 それから二番目に、選挙に影響を受けるということは、国の在り方に影響されてしまうということであります。

 また三点目、同社の背後に外国、アメリカ以外の国の影があったというふうにも言われておりまして、もしそうだったといたしますと、安全保障上の問題が生じるということでございます。

 こういった弊害が可能になったのは、これが実現されてしまったのは、詳細なユーザーのプロファイリングが可能なフェイスブックのユーザーデータベースがあったからですし、また、そのユーザーデータベースは外部送信によって作られたものと言えるのではないかと思います。外部送信のみによって作られたわけではないかもしれませんけれども、外部送信によって、人の心理に分け入っていくような非常に詳細なものとなったということは言えると思います。外部送信については後ほどちょっと詳しく御説明いたします。

 外部送信は、これまではプライバシーの問題として語られておりましたけれども、それのみならず、社会や国の在り方についての問題であるということがこの事件によって明らかになったのではないかというふうに思います。

 下のスライドは、先ほどのものと全く同じでございます。このようなことを前提に、健全な言論環境の確保、それから健全な民主主義システムの確保という立法事実を御覧いただけばいいのではないかというふうに思います。

 おめくりいただきまして、次のスライドでございますが、三番の上から二番目、要人に関する情報の悪用の防止というふうになっております。

 これはどのような事件で明らかになったかといいますと、下のスライドを御覧ください。LINEの個人データ管理不備の問題でございます。

 LINEは非常に多くの国民が利用しているサービスです。先生方のような要人もお使いになっていて、そこで重要なメッセージが外国に見られてしまうということになりますと、プライバシーの問題のみならず安全保障上の問題も生じるということになりますので、当然に適正な取扱いが求められるということでございます。

 このようなことから、おめくりください、次のスライドですけれども、上のところ、赤いところは不適正な取扱いに対する規制ということになります。LINEの問題で明らかになったところでございますが、方向性のところを御覧いただきますと、一番上のところですが、取扱いに関する社内ルールの策定、取扱方針の公表、二ポツですが、統括責任者の選任、そんなことを求めているわけでございます。

 それから下のところ、こちらは外部送信に対する規制、青いところでございますが、外部送信に関しましては、方向性のところを御覧いただきますと、情報を外部送信する際に本人に確認の機会を与えるというような規制を設けるということになっているわけでございます。

 下のスライドは、この上のスライドを私がちょっと分かりやすく強調したものでございますので、お時間のあるときに御覧をいただければと思います。

 おめくりいただきまして、次のスライドは、いよいよ外部送信の御説明ですけれども、下半分に二つ絵がありまして、左側がウェブサイトの外部送信、右側がスマホアプリの外部送信ということになります。本日は、クッキーを使うウェブサイトの外部送信ついて、左側について御説明をしたいと思います。

 おめくりください。

 上のスライドに、クッキーによるウェブ閲覧履歴の追跡というふうにございます。

 クッキー、御案内のとおりでございますが、これは、サーバーがブラウザーを区別、識別するためにブラウザーに割り振るシリアル番号のようなものでございます。一つのサーバーから見た場合、アクセスしてくる全てのブラウザーは、違う識別番号、違うクッキーを持っているということになります。

 本来、もう少し時間をかけて御説明したいところなんですが、下のスライドを御覧ください。こちらで外部送信の御説明をしたいと思います。

 私は毎日、この○×スポーツというスポーツ新聞のウェブサイトを楽しみに見ております。この赤いところに野球の結果とかサッカーの結果が書かれておりまして、白いところ、画像、ここに広告が表示をされております。

 実は、この広告の画像は、その○×スポーツのウェブサイトにあるのではなくて、これは広告事業者のサーバーから取ってきたものでございます。

 広告事業者は、○×スポーツサイトにお願いして、○×スポーツのウェブサイトに、タグと呼ばれる短いプログラムを置かせてもらっています。このタグを私のブラウザーが読み込みますと、このタグに、広告事業者サーバーに行って画像を取ってこいという指示が書いてありまして、私のブラウザーは、その指示を受けて広告事業者サーバーにアクセスをして画像を取ってくる。私は、そのことに気づかずに、あたかも全て○×スポーツのウェブサイトから来たものであるかのように、このピンクのところをその画像と一体的に見ているということでございます。

 私のブラウザーが私の知らないうちにタグの指示を受けて広告事業者サーバーにアクセスするときに、広告事業者サーバーは、私のブラウザーが誰の指図で来たのかということが分かります。○×スポーツのウェブサイトの指図で来たのねということが分かりますので、広告事業者サーバーとしては、私が○×スポーツウェブサイトを見たということが分かるわけでございます。正確に言えば、私のブラウザーが、クッキーナンバー何々のブラウザーが○×スポーツのウェブサイトを見たということが分かるわけでございます。

 このように、私、利用者が知らないうちに広告事業者サーバーによって私の閲覧履歴が取得されることが外部送信でございます。

 おめくりください。

 広告事業者は、○×スポーツだけではなくて、様々なウェブサイトにタグを置いてもらっておりますので、私のブラウザーがこのいろんなウェブサイトにアクセスするごとに、再び広告事業者のサーバーに私のブラウザーはアクセスをしまして、ああ、今度はウェブサイトAの指図で来たんだね、今度はウェブサイトBの指図で来たんだねということで、ウェブの閲覧履歴を蓄積することができます。

 広告事業者サーバーは、下のスライドを御覧いただきますと、このような形で、識別番号何々、クッキーの番号何々のブラウザーはこのようなウェブサイトにアクセスしてきたということを知ることができるわけでございます。そうしますと、ハワイ旅行に関心を持っている、フィットネスに関心を持っているということで、そういった人向けの広告を出すことができるということになります。

 おめくりいただきまして、これと全く同じ仕組みで、フェイスブックも、いいねボタンによってウェブの閲覧履歴を収集したわけでございます。この収集した閲覧履歴によって、先ほどお話ししましたケンブリッジ・アナリティカによる詳細なプロファイリングが可能になりました。

 ここではシンプルにハワイ旅行とフィットネスというふうにいたしましたけれども、様々なウェブサイトの閲覧履歴を取得することができますので、陰謀論に弱いとか怒りに流されるといった、そういった細かい、人情の機微に分け入った分析ができるということになります。

 下のスライドを御覧ください。これは、リクナビによる閲覧履歴の収集。リクナビの問題に関しても、同じようなことが行われたというふうに思っております。

 リクルートは就活サイトを中心にタグを置いていたかと思いますので、おめくりください、次のスライドのように、就活生がどの就活サイトを専ら見ていたのか、外資系の就活サイトを専ら見ていたということであれば、外資系への就職を希望しているのねということが分かるということでございます。

 このような外部送信、もちろん、プライバシー上も問題がありますし、先ほどお話ししましたような社会、国家の問題ということもありますので、これまでにも取組が行われてまいりました。

 おめくりください。

 これまでの取組ということで、一番上ですけれども、スマートフォンプライバシーイニシアティブ。総務省は、二〇一二年から、スマホのアプリによる外部送信につきまして、どのような情報を誰に送信しているのかということを明示するように、その透明化を図るように、ガイドラインを作って取り組んでいたということでございます。

 一つ飛ばしまして、一番下。やはり総務省ですけれども、プラットフォームサービスに関する研究会というところで、今度は、スマホアプリではなく、ウェブサイトの方の外部送信についても検討してきたということでございます。

 最後に、今回、利用者情報の規制について、二重規制であるという批判がありましたので、こちらについてお話をしたいと思います。

 おめくりください。

 まず、二重規制という批判がいま一つよく分からないというところがございます。一般論として、一つの対象事項に二つ以上の法律がそれぞれの法目的で適用されるということは普通に生じることでございまして、必ずしも悪いことではないということです。

 下のスライドですが、今回の御批判は、電気通信事業法ではなくて個人情報保護法でやるべきだというようなことであったかと思いますが、電気通信事業法の目的は、通信サービス利用者の保護と、通信の信頼確保ということにあります。

 先ほど大橋先生のお話にもありましたが、元々、通信、これらの目的のために、上の青いところ、通話やメールについては、これは通信の秘密によって守られていたわけでございます。こういったものが筒抜けにならないということは電気通信事業法の中心的な課題であり、通信の秘密のルールによって守られておりました。

 しかし、利用状況の変化によって、皆さん、通話やメールばかりするわけではなく、ウェブサイトを見る、アプリを利用する、こういったことが中心になったわけでございます。ところが、ウェブサイトは、外部送信によって閲覧履歴を第三者に把握されてしまう。アプリも、外部送信によってアプリに関する情報が外に出ていってしまう。これではいけないだろうということで、これについて、通信の秘密と同じように保護すべきではないかということが今回の規制の目的でございまして、これは電気通信事業法のど真ん中の課題ではないかというふうに考えております。

 おめくりください。

 逆に、個人情報保護法から見た場合にも、個人情報保護法は、他の法律による個人情報の規制を想定しているわけでございます。これは制定時の附帯決議なんですけれども、赤いところを読ませていただきます。「特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。」「医療、金融・信用、情報通信等、国民から高いレベルでの個人情報の保護が求められている分野について、」「個別法を早急に検討する」。

 個人情報保護法は、様々な個人情報、その中には重要なものもそうでないものもありますが、それを広く薄く規制する法律です。したがいまして、特に重要なもの、特別な性格のあるものについては、それは、それぞれの分野における法律において規制されることを当然に想定しているということでございます。

 下のスライドを御覧ください。

 歴史的経緯といたしましても、先ほど申し上げましたように、アプリの外部送信については、スマートフォンプライバシーイニシアティブで二〇一二年から、十年前から総務省が自主的な取組を促進してきたところでございます。

 また、総務省のプラットフォームサービスに関する研究会では、ウェブサイトの外部送信について、二〇一八年頃から検討してきたものでございますので、これを個人情報保護法でやるべきだという御批判は当たらないのかなというふうに考えております。

 以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

赤羽委員長 森参考人、大変ありがとうございました。

 それでは、最後に、原参考人、よろしくお願いいたします。

原参考人 おはようございます。原でございます。

 政策シンクタンクの運営のほか、政府では、国家戦略特区ワーキンググループの座長代理などを務めております。本日は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。

 今般の電気通信事業法改正案に関して、更なる課題も含めて、意見を申し上げたいと思います。

 まず、第一の柱である情報通信インフラの提供確保に関してです。

 ブロードバンドのユニバーサルサービス化、これは推進すべきだと考えます。これまでの社会で、日本中、どこに住んでいる人であっても電話が使えるということが重要でした。これからの社会では、それ以上に、どこに住んでいる人でもインターネットが使えるということが重要になります。教育、医療、仕事、行政サービス、あらゆる場面でインターネットが基盤になります。インターネットがつながっていないので自宅でオンライン診療を受けられないとか、在宅勤務ができないとか、そういったことのない、取り残される人のいない社会にしなければいけないと思います。

 一方で、ブロードバンドのユニバーサルサービス化によって全てが解決するわけではありません。これからのデジタル社会を支えるインフラはほかに幾つもあって、戦略的な整備、利活用を進めていく必要があると考えます。

 例えば、配付した資料の中で三つほど点を打ってありますけれども、一つ目に、通信と放送に関してです。これまで別の法体系で、それぞれユニバーサルサービスとされてきていました。

 放送の分野では、NHKは、放送波をあまねく受信できるようにする義務があり、民放さんは、対象地域内であまねく受信できるよう努める、努力義務が課されているということでした。

 通信が電話の時代にはこれらは明らかに別々の話だったわけですが、ブロードバンドをユニバーサルサービスにするということであれば、ブロードバンドを放送にも活用すべきであると考えます。社会全体でインフラの維持、運用を効率化して、放送インフラの維持、更新に要しているコストの低減を更に図っていくことが重要だと思います。

 それから、二つ目の点ですけれども、5Gインフラの整備、ビヨンド5G技術の開発などは、これからの国の競争力に直結します。事業者任せではなく、国が戦略性を持って取り組むべきと考えます。

 今後、5Gの本格的なサービス拡大に向けては、全国に基地局を整備していく必要があります。事業者ごとではなく共同基地局の整備、それから、送電用の鉄塔とか交通信号などを基地局に利用するといったインフラシェアリングも課題です。また、広い意味でのインフラとして、希少な資源である電波の帯域をいかに確保して、有効に活用していくかということも重要な課題であります。

 それからもう一点、デジタル社会では大量の電力を使います。安価に安定した電力を供給するために、送配電インフラの増強、デジタル化も不可欠です。

 デジタルの問題とそれからエネルギーの問題、これは所管している省庁も別々で、扱われている委員会も別々で、別の話のように捉えられがちですが、これらを一体的に整備しないとデジタル社会は機能しません。

 それから、自動運転やドローンの活用拡大とか、さらに、空飛ぶ車とか、そういった普及に向けて、陸や空における新たなデジタル交通インフラの整備も課題になっていくと思います。海底ケーブル、データセンターなども課題です。

 それから、資料では書き落としましたが、衛星コンステレーションによる通信網の確保、これもとても重要な課題だと思います。

 先ほど、大橋参考人からも、ウクライナ情勢を踏まえて、強靱な通信ネットワークが重要であるという御指摘があって、これも全くそのとおりだと思います。現在、ウクライナにおいて何が通信元になっているかというと、スターリンクの通信網が国民の生活、それから国防も支えているわけです。これは安全保障の観点でも、大規模災害に備える観点でも、国で迅速に進めるべき課題なのではないかと考えます。

 こうしたインフラについて、通信は総務省、エネルギーは経産省、交通は国交省といった縦割りではなくて、整合性を持って最適な設計を行う、これが重要だと思います。総合的なデジタルインフラの戦略を策定することが必要です。縦割りを打破するために、せっかくデジタル庁が設けられたわけでありますから、デジタル庁で担うべき課題ではないかと思います。

 それから、第二に、安全、安心で信頼できる通信サービス、ネットワークの確保についてです。

 まず、今後の課題として、規制体系の整理、見直しが必要と考えます。

 今般の改正案を見ますと、実質的に個人情報保護法と重なる部分は多いという印象を受けます。これは先ほど森参考人から、二重規制ではないんだという御説明があって、これも全くそのとおりなんですね。電気通信事業の利用者保護と個人情報保護というのは目的が違っていて、重ならない部分があります。

 これも全くそのとおりなんですが、一方で、この規制の中身として、求められている規制は、今回の法案でいうと、情報取扱規程の策定とか方針の公表、統括責任者の設置。個人情報保護法の下でこれまで求められてきたことと相当程度重なるというように思います。電気通信事業法と個人情報保護法の関係が不明確になってきているのではないかと思います。

 これは、この電気通信の分野に限らず、経済社会の実態と規制体系とがずれてきてしまっている、この一つの表れではないかと思います。

 デジタル化の推進に伴って、産業や経済社会の構造が垂直統合型からレイヤー型に転換してきました。一方で、国の規制体系は、かつての垂直統合型の社会に即した形で、縦割り規制、いわゆる業法と呼ばれる規制体系が多くの領域で取られています。縦割りの産業ごとに、事業者が縦割りの所管省庁から許認可や監督を受けて、そこの下でやっている限りは、消費者保護とか安全確保とかもろもろの問題が生じないという構造です。行政組織もそれに合わせて縦割りで構成されてきました。

 この規制体系と経済社会の実態が多くの分野でずれてきていると思います。例えば、金融の分野ではフィンテック、それから、輸送の分野であればライドシェアとか、旧来の縦割り構造にはまらない新しいビジネスが生まれてきています。そして、旧来の規制体系の下ではこれが認められないとか、そういった様々な問題が生じてきている。

 これは、日本だけではなくて世界中で起きていることです。規制体系のずれをいかに迅速に実態に合わせて修正していけるかということが、その国での新しい産業の創出やイノベーションの明暗を分けているということだろうと思います。

 電気通信事業法の話に戻りますと、ここもやはり経済社会の実態とのずれが生じているように思います。

 かつては、電気通信設備を用いる電気通信事業、これはごく一部の特殊な事業だったわけです。これを業法という形で規律をしていたというのが元々の電気通信事業法だと思います。しかし、現時点では、ありとあらゆると言っていいんでしょうか、多くのサービスが電気通信設備を用いてなされるわけです。これをもう業法という枠組みで捉えようとすること自体に無理が生じている、それが今回の改正案によって顕在化しているように思います。

 むしろ、横断的な規制として、利用者の保護とか、信頼できるデータ利用の確保とか、競争環境の確保といった目的ごとに、どういった規制が最適なのか、これは個人情報保護法や独禁法などの既にある横断的な規制との関係も含めて、規制体系を再設計していくということが今後の課題なのではないかと考えます。

 こうした規制体系の見直し、これはその先の行政組織の再設計も含み、様々な分野にまたがる課題です。これも、せっかくデジタル庁を設けられたわけですから、ここで進められることを期待しております。

 それから、括弧二、二点目です。当面の規制運用として、透明性を高めて、業法にありがちな恣意的、裁量的な運用をなくすことが課題だと思います。

 ありとあらゆるサービスが電気通信設備を用いてなされるようになったということに伴って、規制対象になる事業者の範囲は極めて分かりづらくなっているように思います。

 総務省さんが四月に電気通信事業参入マニュアルガイドブックというのを公表されました。明確化していこうという努力は多とするのですが、残念ながら、これを見てもなお分かりづらいように思います。

 これを見ていきますと、例えば、オンラインの会計クラウドサービスなんかは電気通信事業に当たるとされるわけです。これは登録や届出の対象ではありませんが、一定の規律の対象になります。

 一方で、リアルの店舗を持っている、例えば銀行サービスに関してネットバンキングを導入する場合には、これは単に電気通信を手段として利用しているだけなので、電気通信事業に当たらないということになっているわけですね。そうだとすると、ネット専業で金融サービスをやっているところはどうなるのか、その境目はどこになるのか。少なくとも、私が見ている限りではよく分からないわけです。

 これは、最終的には規制体系の見直しによって解決すべき課題なのかもしれませんが、少なくとも、当面の運用において、できるだけ明確化を図っていくことが課題だと思います。

 それから、括弧の三のところです。三点目に、実効的な利用者保護規制を行うことが必要だと思います。

 今般の改正案では、利用者に関する情報の外部送信について、利用者への通知又は公表などを求めています。しかし、この種の通知や同意は、現実には形骸化しているのではないかと思います。

 様々なオンラインサービス、私も利用するたびに、情報取扱規程などを見てクリックしろと言われるわけですが、私自身は、正直なところ、ほとんど読んでいないです。ここにいらっしゃる皆さんはどうか分かりませんが、多くの方々が中身を確認していないのではないでしょうか。

 こうした通知や同意取得、多くの場面で法令上求められていますが、結局のところ、行政や立法府の方々からすると、消費者保護のルールをちゃんと設けましたという形式を取っている。事業者の方からすると、通知や同意取得をちゃんとやりましたという形式は整っている。形式は整っているんですが、肝腎の消費者保護が置き去りにされているように感じます。より実効性を高める方策を検討すべきではないかと思います。

 例えば、一案として申し上げれば、デジタルの技術的な仕組みを組み合わせれば、標準的なルールとは違う部分を分かりやすく、何か浮かび上がって明示するようにするとか、そういった通知や同意取得をもっと理解を容易にする、本当に利用者保護につながるようにするという余地があるのではないかと思います。今後の課題として更に御検討いただければと思います。

 それから、配付資料では二枚目ですが、三点目、電気通信市場の公正な競争環境の整備に関してです。

 今回の法案にあるMVNOへの卸料金の適正化などは、これは進めるべきことだと思います。

 一方で、電気通信事業の公正な競争環境の観点では、まだ残された課題が多いと思います。

 根本的には、電電公社民営化から四十年近くを経て、いまだにNTTは半官半民の組織であるという点、これはもう残された大きな課題の一つだと思います。

 NTTは今もなお、NTT法に基づいて、総務大臣から事業計画の認可を受けて、様々な監督を受けるという企業です。そうした企業が、世界の情報通信市場で、熾烈なグローバル競争の中で本当に戦っていけるのか。こうした状態は、NTTとそれから競合事業者の方々双方にとって、市場において自由なビジネスを発展していくことの阻害になっているのではないかというように思います。そろそろNTT法を廃止して、NTTを完全民営化すべきではないかと考えます。

 その際に、外資の取扱いは課題です。これは、むしろ横断的な規制として外資規制を入れたらよいと思います。

 現行制度では、通信分野について、NTTのみNTT法に基づいて外資規制が課されています。電話回線が社会の基盤だった時代にはこれは妥当なルール設定だったのだと思いますが、ブロードバンドがユニバーサルサービス化されるという中で、NTTにだけ外資規制がかかっているということにむしろ違和感があります。経済安全保障の観点で必要な領域を対象に、実効的な外資規制を横断的に設定すべきではないかと考えます。

 同時に、競争政策の強化、これも更に徹底していく必要があります。

 ボトルネック設備や事業のドミナント性に応じた競争環境の確保は引き続き課題です。これは本来、独禁法を中心とした競争政策が担うべき領域であり、長年議論され続けている課題ですが、公取の機能強化なども更に進めるべきだと思います。

 それから、競争政策として、国内では力の強いNTTと競合事業者との競争確保という視点もありますが、でも一方で、より強大なGAFAによる競争阻害の問題もあります。独禁法の運用強化、それから新しいルールの設定により対応していく必要があると思います。

 以上、今回の改正案に伴って、更なる課題も顕在化してきていると思います。こうした課題にも是非お取り組みいただければと思います。

 誠にありがとうございました。(拍手)

赤羽委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の皆様からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がございますので、順次これを許します。古川康さん。

古川(康)委員 自民党の古川康でございます。

 本日は、三人の参考人の皆様方には、本当にありがとうございました。

 今回の電気通信事業法の一部改正は、電気通信事業を取り巻く環境変化を踏まえまして、電気通信サービスの円滑な提供と利用者の利益の保護を図ることを目的にしたものだと承知をしております。日々、技術革新が進んでおります。新たなサービスも登場しています。そうした中で、この変化に適切に対応するということと併せて、かつ、今後のイノベーションを阻害しないように、そういう新しい制度整備が求められるところでございまして、自民党の中でも精力的に議論を重ねてきたという経緯がございます。

 そこで、まず、利用者に関する情報の適切な取扱いについて、大橋参考人、そして森参考人にお尋ねをいたします。

 近年のデジタル化の進展に伴いまして、社会経済活動や国民生活の基盤としての電気通信サービスの重要性がますます高まってきているわけであります。

 一方で、サイバー攻撃の複雑化や巧妙化、経済活動のグローバル化などが進んでいて、情報漏えいなどのリスクは一層の高まりを見せています。先ほどもお話がございましたが、利用者の情報の取扱いについて、国外の委託先から我が国の利用者に関する情報にアクセス可能であったという事案が発生をいたしました。それ以外にも、通信の秘密や個人情報の漏えい事案は後を絶ちません。利用者に関する情報が常にリスクにさらされている状況にあると私は言えると思っています。

 そうした状況の中において、電気通信サービスの利用者に関する情報の適切な取扱いに関する制度の整備は待ったなしの状況であると考えています。

 本件の議論の過程においては、様々な御意見があったと承知をしています。イノベーションの促進と利用者にとっての安心、安全をいかにして両立させていくかが重要だと思いますが、一部の報道では、関係者との調整過程で規制内容が後退したという報道もございました。

 私としては、様々な関係者やステークホルダーの御意見を踏まえて検討が進められた結果であって、情報通信市場がグローバル化する中で、国際的な動向とも整合性が取れた内容になっていて、大変重要な一歩であると認識をしているわけでございますが、本件の検討に深く関わられた大橋参考人、森参考人におかれては、この後退したという指摘についてどのように受け止めていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 消費者情報、利用者情報の取扱いについては、非常に幅が広い議論がなされてきました。

 今おっしゃっていただいたように、イノベーションの促進を非常に重要に考える人、あと、利用者の情報保護を、イノベーションよりもそっちの方に軸足を置く方、いろいろなステークホルダーがいる中で、何か決めなきゃいけないというときに、やはり二つのバランスをうまく取っていくということが極めて会議の中では重要だったかなと思います。

 これまで、今おっしゃっていただいたように、利用者情報の保護に関して若干懸念が国民の中で高まっていたということも事実ですので、やはりそちらの方へ軸足を置きながら、最終的に今回の改正案ができているのかなと思います。

 そういう意味で、国際的な動向、要するに利用者情報を保護する、強化するという方向性に整合的だと思いますし、また、ステークホルダーの声を聞きながら、バランスを取って今回セットしているという意味で、おっしゃっていただいたように、ステークホルダー全体の声を聞いた一つの形として捉えていただいて結構なのではないかと思います。

 ありがとうございます。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございました。

 後退ではないかということでございますが、私が検討の過程で申し上げた意見と今回の法案を比べますと、私は、より利用者保護に厚い仕組みにするべきであるというふうに考えておりましたので、それは、見方によっては後退ということになろうかと思います。しかしながら、もちろん、様々な人の様々な意見があるということは私も承知しておりまして、私の意見がみんな通るわけではないということは分かっております。

 特に今回強調したいのは、外部送信の問題ですけれども、私が最も関心を持っているのはその問題なわけですが、これについて、法規制というものがこれまでなかったわけでございます。

 そうしたことを考えますと、まずここで、外部送信というものがどういう問題なのか、そして、それがなぜ規制されるべきなのかということを皆さんに知っていただいて、さらに、これまでみたいに何もない状態で、利用者が、国民が全くそのことについて守られない状態であるというのは、これは非常に不適切だと思いますので。

 私としましては、まず、今回の利用者情報の保護の規制を法律として成立させていただいて、その後、今回、官民連携スキームによって様々なルールのアップデートを図っていくということも検討会の方針として示されておりますので、それを通じて、利用者の意識を法律の制定によって前に進める。

 そして、様々な情報、それは技術の情報であったり、あるいは国際的なルールの水準に関する情報であったり、あるいは国民の問題意識であったりするわけですけれども、そういったことを取り込んで更なる規制のアップデートを図っていただいて、その中で利用者情報の更なる保護を図っていただきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 まさにこの議論に深く関わられた両参考人から、大きな一歩であるということでの御認識を賜ったというふうに理解をしたところでございます。

 さらに、先ほどからお話が出ておりますが、個人情報保護法とのいわゆる二重行政かどうかという事柄についてもお尋ねをさせていただきます。

 これも大橋参考人及び森参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、先ほど来お話が出ているように、電気通信事業法において利用者情報の取扱いについて規律を設けるということは、個人情報保護法との二重行政であって、個人情報保護法制で対処すべきという意見もあった、このように承知をしているところでございます。

 私は、もちろん規律の適用関係が複雑になり過ぎないように配慮する必要はあるものの、今回、電気通信事業法の目的の範囲において利用者情報の適切な取扱いに関する規律を設けるということについては、意味のあることではないかと思うところでございますが、大橋参考人、森参考人はどのようにお考えなのか、教えてください。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 冒頭でも述べさせていただいたとおりなんですけれども、利用者情報の中には、個人情報に該当するかどうか極めて解釈が難しいものが含まれていると思います。ウェブの閲覧履歴とか、あるいはアプリの利用者情報というふうに私、申し上げたんですけれども、そうしたものが本当に個人情報で完全に守れるのかということは、かなりの議論が必要だ。

 それに比較すると、電気通信事業法の中で利用者情報、利用者を保護する、消費者の安心、安全を確保するという観点では、それらは明らかにしっかり守れるものですから、ある意味全体の一般法と、あと、各自の事業法の役割分担の中で、今回、アプリあるいは利用者情報をしっかり保護していくという形というのは、国民の目線から見てもかなり分かりやすいし、安心を与えるものになるのではないかなと私は感じています。

森参考人 御質問ありがとうございました。森でございます。

 私、先ほどの御説明でも申し上げましたように、これは個人情報保護法でやるべきであって、電気通信事業法でやるべきでないというふうには全く考えられないなというふうに思っております。

 その理由は、先ほど申し上げましたように、まず一つは、電気通信事業法の目的として、通信の信頼確保であったり、あるいは利用者の保護であったりということとの関係で、通信の際に生じる利用者の情報の保護を図る。これはユーザーが、国民がスマートフォンを握り締めてやることですから、その際の自分のいろいろなことが外に出ていってしまうのを守ってほしいというのは、やはりスマートフォンの利用を所管するところで保護していただくべき話なんだろうと思います。

 よく事業者側でどうなのだという話になりますけれども、やはり利用者の側から、国民の側から見て何が守られるべきなのかということになりますと、これはスマートフォンの利用を守るということになりますので、それは電気通信事業法の関心事のど真ん中であるということかなというふうに思っております。

 繰り返しになりますけれども、個人情報保護法は、重要な情報、そうでない情報、様々なものを保護する一般法でございますので、各分野において特別な性質の情報、あるいは特にプライバシー性の高いものというものがある場合には、その分野での規制を当然に想定しているということでございます。

 例えば銀行法にも、銀行利用者の情報に対する保護の規定というものが盛り込まれております。それと同じように、電気通信事業法において通信サービス利用者の情報を保護する、個人情報保護法とは別にということは、これはもちろん可能である。

 最後に一点だけ補足をさせていただきたいと思いますが、現在、個人情報保護法では、先ほど大橋参考人から御指摘がありましたように、今般、外部送信との関係で申し上げましたような、ウェブの閲覧履歴とか、あるいはクッキーとか、こういったものが個人情報にならないということがあります。

 これはこれで非常に重大な問題ですので、そうしたオンラインでの識別子みたいなもの、あるいはオンラインでの行動履歴みたいなものは個人情報として把握していただく必要がありますので、個人情報保護法は個人情報保護法でアップデートは必要です。

 しかしながら、個人情報保護法のアップデートを前提としても、なお電気通信事業法でスマホの利用者の情報を保護するということは、これは必要なことであって、正当なことではないかと思います。

 以上でございます。

古川(康)委員 ありがとうございます。

 まさにそれぞれの法律の目的に沿った形で、様々なルールを新しくこれからつくっていかなければならない、そういうことだと理解をいたしたところでございます。

 それでは、まさにこれからの規制の在り方についてお尋ねをしてまいります。

 これはお三方それぞれからの御意見を賜りたく存じますが、情報通信分野の技術の進展は著しいものがあります。諸外国においても、法制度を含めて様々な取組が進められています。そういう状況の中で、何もやらない、座して待つというわけにはいきません。一方で、変化が激しいために、何が正解なのかが分かりづらいというところもこの分野の特徴かと思います。

 電気通信事業ガバナンス検討会の報告書では、その疑問に対する一つの答えが示されているように感じています。すなわち、報告書の中では、「事業者自らの内部統制によるガバナンスを基本としつつ、政府による規制・ガイドライン等はそれを阻害せず官民が連携しながら、利用者の利益が確保できるように適切な規律となる官民共同規制の実施体制を整えることが重要である。また、利用者側の意見についてもよく踏まえることも重要である。」と指摘されています。

 そこで、お尋ねをいたします。

 官民共同規制、官民共同ガバナンスという考え方が示されているわけでありますが、今後の時代における情報通信分野の規制の在り方について、三人の参考人のお考えを伺わせてください。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 世の中が非常に不確実で、なおかつ動的に動いている中において、事前規制というものは、国が事前に規制を決めて、不確実で動学的な中でそれを定性的に守っていく、静学的に守っていくということですけれども、それは極めて硬直的な姿を生むんだと思うんです。企業のイノベーションにも余り利さない姿になるんだと思います。

 他方で、事後規制という姿は、実のところ、迅速性に欠けるところがあります。競争違反をしたといって公取が摘発をしようと思っても、これは裁判に行くと何年もかかる話になって、そうすると、結審したときには既に別のビジネスステージに移っているということになります。そうすると適切にその執行ができないということになりますので、そうすると、その中間形をどう探していくのかというのが、不確実、ダイナミックな世界においては非常に重要だと思います。それが今御指摘いただいた官民連携あるいは共同規制というものなんだと思います。

 事前にステークホルダー同士がルールメイキングを決める、それで、そのルールメイキングも、スタティックな、硬直的なものではなくて、時代の変化に合わせて柔軟に、ステークホルダーの合意の中で変えていく。そうすることで、利用者、利用者もステークホルダーですから、利用者の保護と、あと企業のイノベーション、それとのバランスを取っていく。

 そういうふうな新しい考え方、これはまだなかなか実績がないですけれども、これからそうしたものを、我々、実績をつくっていかなきゃいけないというフェーズに入っているのかなというふうに思います。

 ありがとうございます。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございました。

 私の考えます官民共同規制、そうですね、官民共同ガバナンスにおける今後の展望といいますか課題といいますのは、このような技術に基づく、技術の進展から発生した社会の豊かさであり、その反面、その影の面である問題ということですので、これは技術についてのことを規制に取り込んでいかなければいけないわけでございますが、その中で、事業者の意見を聞かないわけにはいかない。

 事業者の方が技術のことを分かっていることは明らかですので、その知見を得て、利用者情報の規制、これは外部送信についてもセキュリティーについても何でもそうだと思いますが、ルールをつくっていくという意味での官民共同というところはあろうかと思います。

 しかし、事業者サイドの意見ばかり聞いていると、これはやはり利用者保護に薄いということになってしまいますので、利用者側の意見、消費者代表の意見であったりとか、あるいは市民、社会と呼ばれるような団体の意見をしっかり聞いていただいて、そのどちらもきちんと意見を聞いて進めていただくことが重要だと思いますし、また、官民共同規制であることによって、ややもすれば規制の実が上がらないということも可能性としてはあり得るところでございますが、その場合にはより厳しい法規制に、個々の行為の義務をつけた法規制に移っていくということを考えることも必要になってくるのではないかと思います。

 以上でございます。

原参考人 ありがとうございます。

 お話のありましたように、変革の大きな領域において、官民共同規制が重要である、それから硬直的な事前規制が機能しづらいということは、もう両参考人言われたとおりだと思います。

 もう一点申し上げておきたいのは、変革に対応していく、これは重要ですが、一方で、新しい道筋を示していくということも重要だと思います。

 日本は、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストという、新しい世界秩序をつくっていこうということだと思いますが、国際調和を図りながら新しい道筋を示していくということが重要なのかと思います。

 ありがとうございます。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 こうした御意見を踏まえた新しい規制の在り方についても、しっかり続けていかなければならないと感じたところでございます。

 最後の質問になります。ブロードバンドのユニバーサルサービス化についてでございます。

 今回の制度改正は、デジタル田園都市国家構想の実現のためにも大変重要な取組であると認識をしております。私の地元でもそのようなお話を伺うところでございます。

 有線ブロードバンドを基礎的電気通信役務に位置づけるという意義について、大橋参考人、これには様々な考え方もあったと思いますけれども、お考えを示していただければと思います。

赤羽委員長 大変恐縮ですが、時間が経過しておりますので、簡潔に御答弁をよろしくお願いします。

大橋参考人 今回、有線ブロードバンドを基礎的電気通信設備の一つの類型として入れるということでありますが、もちろん、例えば携帯ブロードバンドはどうなんだとか、そういうふうな議論もございました。

 他方で、携帯は、現在のところ、競争事業者の中で競争的に、全国津々浦々普及ができるというふうな体制になっておりますので、これを基礎的電気通信役務に入れて、競争補完でお金を入れるというのはやはり適切ではないだろうということで、今回、有線ブロードバンドに限定して行うということになったと承知しております。

古川(康)委員 ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、吉川元さん。

吉川(元)委員 おはようございます。立憲民主党の吉川元です。

 今日は、三人の参考人の皆さん、大変お忙しい中、貴重な御意見をありがとうございます。私からも、何点か質問させていただきたいというふうに思います。

 今回の法改正、柱としては大きく三つあろうかというふうに思いますが、二番目の、安心、安全で信頼できる通信サービス、ネットワークの確保、とりわけその中でも、今日もお話ございましたけれども、特に外部送信の話を中心に少し伺いたいと思います。

 その前に、まず大橋参考人にお伺いしたい。

 先ほど少し話があったんですけれども、二重規制の問題で、森参考人、原参考人とも、これは二重規制には当たらないというお話でしたけれども、大橋参考人も同様の御見解でよろしいのかということをまず確認させてください。

大橋参考人 私も、二重規制には当たらないというふうに考えております。

吉川(元)委員 次に、原参考人に伺いたいというふうに思います。

 先ほどいただいたお話の中で、実効的な利用者保護規制を行うべきというお話がございました。私も全く同じ思いであります。

 私も、見ておりますと、非常に小さな字で山ほど書いてあって、同意しますかと言われたって、しかも非常に難しい言葉で書いてありますから、普通であればもう、見ていない、見ていないけれども見たということで同意をしてしまうケースが多々あろうかというふうに思います。

 他方で、外部送信とも関わる話なんですが、本人が意図しないところで、閲覧履歴等が、あるいは検索履歴が広告事業者に飛んでいって、知らない間に実は広告が表示されている。

 これは私の経験なんですけれども、今回の問題があったときに、たまたま、どうなるんだろうということで、過払い金というのを検索をかけたんです。検索結果が出て、それをすぐ閉じて、そしてまた、日頃見ているヤフーのトップページを開けると、そこから約二か月にわたって延々と過払い金の広告が出続けるんですね。別に僕自身、過払い金の問題を抱えているわけではないので、気にしなけりゃいいといえば気にしなきゃいいんですけれども。ただ、これは消しようがない。どうやっても消えないんです。

 先ほど、事前の同意の在り方、あるいは公表の仕方というお話がありましたけれども、オプトアウトというものを積極的に行えるような、しかも簡易に行われるようなシステムが私は必要だと思うんですが、この辺りはどのようにお考えでしょうか。

原参考人 ありがとうございます。

 オプトアウトの仕組みも大変重要だと思います。それから、同意を事前に取るようにする、事前にちゃんと通知をするということも重要だと思いますが、では、その前提として、分かりやすい状態で情報が開示をされている、規程などが開示をされているということが重要かと思いますので、先ほど、そういった意見を申し上げたところです。

吉川(元)委員 では、次に森参考人に伺います。

 実は、今はもうないと思うんですけれども、余りないと思うんですが、いわゆる一国二制度の、つまり、電気通信事業者なのかどうなのかというその切り分けで、こちらには規制がかかるけれども、同じようなことをしても規制がかからない外国の企業、かつてはGメールという、今でもGメールはあると思いますけれども、メールの解析をして、そこでどのような広告を打てばいいのかという問題があって、実は当委員会でも恐らく過去に議論になったことがあったんだろうと思います。

 その際には、なかなかこれは規制の対象にならないんだというような話もありましたが、その後、規制の対象になるということになったというふうに思いますけれども、やはり、依然として一国二制度という問題点というのはまだ存在をしているのでしょうか。

森参考人 御質問ありがとうございました。

 御指摘のとおりでして、一国二制度の問題、これは、日本の事業者にだけ日本の法律が適用されて、外国事業者であって日本でサービスを提供している事業者に日本の法律の適用がされないという問題でございます。

 かつては、先生御指摘のとおり、かなりいろいろな分野でそういったことが見受けられて、これは非常に大きな問題でございました。一つは、公平公正な競争環境でないということ、そしてもう一つは、日本の消費者が外国の事業者との関係で保護されないということでございます。

 ただ、かなり、大分状況は改善しておりまして、特に電気通信事業法についても、電気通信設備の所在地によって区別するというようなことではなく、やはり、国内にサービスを提供している者に対して法律を適用するということになりましたので、かなり解消はされていると思います。

 ただ、完全でないなと思うのは、先般報道されておりましたけれども、会社法の登記ですね。外国法人であっても日本で継続的に事業を展開している場合には、会社法の登記をして、それで代表者を日本に置く。そのことによって、日本でその会社を消費者が訴えようとした場合に、その代表者に書類を届ければよいということになるわけです。これは代表がいないと、海外の会社にその書類を届けなければいけなくなる。送達というんですけれども、これは延々と時間がかかります。

 そういう内外不均衡というのはあったわけですけれども、これも、ようやく、先般ですが解消されつつありますので、まだ残っていることは残っている、大分解消されたという状況ではないかと思います。

 以上です。

吉川(元)委員 ありがとうございました。

 次に、これも先ほどから少しお話しになっていますけれども、個人情報保護法との関係ということで、少しお伺いをしたいというふうに思います。

 森参考人にお伺いをいたしたいと思いますけれども、デジタル社会の進展の中で、個人情報の定義、これで果たして十分なのかという疑問は私も持っております。

 先ほど御紹介いただいたリクナビ問題に象徴されるように、提供元から出るときには個人識別性がないけれども、行った先で自分の持っているクッキーと突合して、個人識別性を持つような、つまり個人情報に変化するような、そうした問題が発生をして、個人関連情報という新たなカテゴリーがつくられたというふうに理解をしております。

 ただ、個人情報保護法を見ますと、個人情報があって、要配慮個人情報、匿名加工情報、仮名加工情報、そして個人関連情報と、もう本当に複雑な、多分我々が見ても、これは何でこれは何なのかというのが分からないような、非常に複雑な増築、改築が繰り返されているような気がしてなりません。

 また、今、問題になっております個人識別に関してですけれども、個人情報保護法では、確かに個人識別符号も個人情報とされておりますが、ただ、その定義の中で、特定の個人を識別することができることと。つまり、特定という文字が入ったがゆえに、それまでの普通の個人情報と同じ意味合いを持つようになってしまって、結果的に言うと、ヨーロッパのGDPRの定義なんかから比べても、著しく後れを取っているというふうに思いますが、現在の個人情報保護法、とりわけ個人情報の定義についてどのようにお考えでしょうか。

森参考人 ありがとうございます。森でございます。

 二つのことについて、主としてお尋ねいただいたのかと思います。一つは、個人情報保護法の中にある、何とか情報という概念の複雑さということでございまして、もう一つが、個人情報の範囲が狭いんじゃないか、個人情報保護法の保護の範囲が狭いんじゃないか、大きく二つのことをお尋ねいただいたんじゃないかと思います。

 一点目につきましては、確かに複雑ではありますけれども、やむを得ない部分がかなりあるのではないかと思います。

 御指摘のとおりですが、個人関連情報という概念が令和二年改正によって入ってきたのは、これはやはり、リクナビのような問題に対応して入ってきたわけですので、元々は個人情報でないデータベースですけれども、外に出したときに個人情報になるという問題を認識して、それに基づいたアップデートですので、これは適切なアップデートであったかなというふうに思います。

 また、匿名加工情報、仮名加工情報、これも、何とか安全に個人情報を利用できないか、利活用はするんだけれども、何とか安全な形でということで出てきた概念ですので、そういった創意工夫の結果、概念が複雑になっているという面はあろうかというふうには思います。

 二点目の、範囲が狭いということにつきましては、これは全く御指摘のとおりでございまして、今や我々は、オフラインでの生活と同じぐらいオンラインで生活をしているわけです。授業もオンラインで受けます、会議もオンラインでいたします。そのときに、やはりオンラインで識別されるような情報は、例えば私の氏名、オフラインで森という氏名がついておりますけれども、オンラインの識別子、事業者から見て、この人とつまめるような、そういった情報は、それはやはり個人情報として保護されるべきでありますし、今後の改正を通じて、個人情報の範囲は、そういったオンラインの識別子にも拡大されるべきであるというふうに私は考えております。

 以上です。

吉川(元)委員 ありがとうございます。

 次に、もう一度、森参考人に伺います。

 今回の法案では、いわゆる外部送信、第三者への情報の送信について、確認の機会を与えるということになっております。

 私も、去年の秋ぐらいまでは、実はかなり期待をしておりまして、ただ、年末から年始にかけて、先ほど後退したかどうかというお話がございましたけれども、通知、公表でもよいということの案になったというふうに思っておりまして、そこは少し私も不満が残るところではあります。

 他方で、サードパーティークッキーへの対応だけで十分なのかという疑問も私自身は残っております。

 既に、アメリカの巨大プラットフォームなんかでは、サードパーティークッキーの制限といいますか、いわゆるプライバシーを守るためにサードパーティー、つまり外部送信を規制しますということを事業者自らがやり始めている。

 一見すると、これは個人のプライバシー、個人情報の保護に資するというふうにも見えるんですが、他方で、アメリカのプラットフォームというのは非常に巨大なプラットフォームでありまして、しかも、これまでの間に、既に第三者送信ということで膨大な個人データを収得済みのものであります。また、魅力的なコンテンツもこうしたプラットフォームに集中をしている。

 そうすると、簡単に言うと、ファーストパーティークッキーだけで十分に、個人の様々な、履歴でありますとか、そうしたものを、閲覧の履歴等々含めて全部確保できる。つまり、もうそういうことはしなくても、自分だけ単独でいけば自分で十分に確保できる。その代わり、それ以外の第三者は当然何も持っていないわけですから、ますます巨大プラットフォームに頼らざるを得ない。

 つまり、情報が独占をされて、市場そのものが寡占化をして、支配力が更に強まっていくのではないか、そういう私自身は危惧を持つわけですけれども、この点についてはどのように考えればよろしいでしょうか。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございます。

 まさに先生の御指摘どおりだというふうに思っております。

 今や、こういった法規制、日本では第一歩ということですけれども、ほかの国でも、そういった、サードパーティーデータというんでしょうか、ユーザーの知らない間に誰かがデータを取得するということは様々な規制を受けておりますし、また、御指摘のとおり、プラットフォーム事業者、これはブラウザーのベンダーであったりアプリストアであったりするわけですけれども、そういったところがクロスサイトのトラッキングというようなものを制限する、サードパーティークッキーを制限するという傾向が顕著になっております。

 その結果、結局、パーソナルデータを持てるのは巨大プラットフォームだけということになってしまいまして、特に今後は、ユーザーとの直接接点がある、ユーザーに直接サービスを提供する、これをファーストパーティーといいますけれども、そのデータが、専らビジネスで使えるパーソナルデータということになろうかと思います。

 我々は、まさに日々生活する中で、若い方はインスタグラムをされたり、我々はメタのフェイスブックを使ったりユーチューブを見たり、外国事業者のサービスを使う時間というのがどんどん長くなっているのではないかと思います、ネットフリックスを見たり。このデータが、彼らによって利用できるパーソナルデータということですね。

 ですので、便利なサービス、面白いサービス、ユーザーが長時間アクセスするサービスをつくっていかないとユーザーデータは取れないということでございますので、そういった形に、ほかの法制度の組合せ、面白いサービスができる、便利なサービスができるための規制緩和等を進めていただくことがいいのではないかというふうに考えております。

 以上です。

吉川(元)委員 ありがとうございます。

 また森参考人に伺うんですが、先ほどケンブリッジ・アナリティカ事件というのを御紹介をいただきまして、私も非常に、その話を聞いたときには、これはまずいなというふうに感じました。

 当然、我々は公正な選挙によって選ばれ、国民の代表としてこの場にいるわけですけれども、そこに様々な個人データを、パーソナルデータを活用して、いろんなことが働きかけが行われて、それによって、当然政治の姿も見られますし、私もそれ以上に物すごく怖いのは、対立が先鋭化をして、いわゆる、まあ、ここら辺でいきましょうよということができなくなってしまった社会というのは、それは大変恐ろしいし、実際、さきのアメリカの大統領選挙でも、暴動といいますか、議事堂が襲われるというようなことも発生をいたしました。

 そういう意味でいうと、健全な民主主義をどう守っていくのかという観点からも、この問題は考えていかなければいけないというふうに思っております。

 その場合に、先ほども少しお話がありましたけれども、エコーチェンバーあるいはフィルターバブル、それに基づいて、政治広告をターゲットで、ターゲット広告を行うという、これについて、私は何らかの規制をかけないと大変なことになってしまうのではないかというふうに思いますけれども、森参考人はどのようにお考えでしょうか。

森参考人 御質問ありがとうございます。森でございます。

 これもやはり、先生の御指摘どおりだろうというふうに思っております。

 個人の内心に深く分け入っていくようなプロファイリングができるデータベースをそう簡単に作られないようにするということで、今回の外部送信の規制、一つの役割を持っているわけですけれども、やはりそれだけでは十分ではなくて、先ほど申し上げましたような社会の対立、選挙への介入みたいなことを防ぐためには、やはりなかなか改善できないフィルターバブルやエコーチェンバーみたいなことの影響を少しでも減らすべく、例えば、政治広告は行動ターゲティングでは出さないとか、あるいは、フィルターバブル状況を少しでも改善するために、これはなかなか法規制でというわけにはいかないかもしれませんけれども、メディアにおいて、行動に基づいてレコメンドするものと、そうでなくてコンテンツの文脈でレコメンドするもの、例えば、旅行のサイトを見ている私に、実は私はフィットネスのサイトもいっぱい見ているものですから、フィットネスのコンテンツも出るわけですけれども、そのフィットネスのコンテンツをレコメンドするのではなくて、旅行のコンテンツを見ているのであれば旅行関連のコンテンツをレコメンドするとか、これはメディア規制ということになりますので、自主規制ということになろうかと思いますけれども、そういった様々な工夫が今後必要となってくるのではないかと思います。

 以上です。

吉川(元)委員 もう時間も余り残っておりませんが、大橋参考人に伺いたいというふうに思います。

 先ほども大橋参考人が、今回の法改正というのは終わりじゃないんだ、出発点なんだというふうにお話しいただきました。

 EUの方では、既に十年前にGDPR等々ができ、また、デジタル市場法、そして先日、デジタルサービス法、こうしたものの導入も合意をされたというふうに聞いております。

 今回の電気通信事業法の改正、もちろん不十分な点、改正そのものが、もう少し踏み込めればよかったなという点もあろうかというふうに思いますけれども、ただ、電気通信事業法単体では、やはり限界も当然あろうかというふうに思います。

 ヨーロッパは、今言ったとおり、GDPRに加えてデジタル市場法それからデジタルサービス法と、非常に多岐にわたる法律を作って対応していこうということですけれども、今後、我々日本としてどのように進んでいけばよいのかということを最後に御質問したいというふうに思います。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 ヨーロッパは、全般的に規制色が強い法律の考え方を持っているんじゃないかと思います。他方で、例えばアメリカでいうと、もう少しその規制色が弱くなって、事後的なものも組み込みながら何とかやっていく。我が国においても、やはり我が国のやり方で多分考えていくということなんじゃないかと思います。

 先ほど、官と民でガバナンスをしていくというふうな考え方もありましたが、なかなか、強い規制を望んでいる国でもないですし、他方で、事後的な制裁というのがなかなか時間がかかるところもありますので、そういう意味でいうと、やはり、事前にステークホルダーの中で合意を取りながらルールをデザインしていくような多分姿を、今後こうしたデジタル化の更なる進展の中でつくっていく必要があるのかなというふうに思います。

 今回、そうした第一歩という意味で出発点というふうに申し上げた次第であります。

 ありがとうございます。

吉川(元)委員 今日は、貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 以上で終わります。

赤羽委員長 次に、守島正さん。

守島委員 日本維新の会、守島です。

 本日は、参考人の皆さん、御貴重な意見をありがとうございます。

 まず、情報通信インフラの提供確保について、原参考人に聞きたいと思います。

 デジタル社会を支えるインフラについては、事業者とか省庁の縦割りを超えて国が戦略的に整備し社会全体で維持、運用すべきという意見でしたが、国が主導しデジタル庁が戦略策定すべきとされている理由、そして、リエゾンとしての機能もデジタル庁が担っていくべきという理解でいいのか、ちょっとお答えいただけたらと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 デジタル社会を支えるために、これは最初にお話しいたしましたように、光ファイバーだけでなく、無線通信のインフラ、放送波のインフラ、電力のインフラ、交通インフラ、また更に衛星コンステレーションなど、様々な課題があります。これらの総合的なインフラを縦割りではなくてつくっていく必要があると思います。

 デジタル庁、縦割りを打破してデジタル政策の司令塔となるべく、せっかく設けられたわけですから、その役割を是非果たして、さっきのリエゾンとしての機能というのはそういうことなのかと思いますが、その役割を果たしていけるといいんじゃないかと思います。

守島委員 確かに、裾野がデジタル分野は非常に広いので、そういうリエゾン機能をしっかり担っていただきたいというふうに思っています。

 ブロードバンドサービスをユニバーサルに位置づけるというのは我々も同じ見解ですが、通信と放送の融合時代を見据えると、通信網を放送インフラとしても活用すべく整備を一体的に行うことで、それが効率的なサービス提供とか、ひいてはNHK改革とか民放の再編とか、放送業界の変革につなげることができるとは思うんですが、そのことが寄与するかどうか、原先生に聞きたいと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 現状では、放送波のインフラを維持するために相当のコストがかけられています。番組を放送波で流すのかブロードバンドで流すのか、これは提供する側の技術上の御都合にすぎないわけでありまして、視聴者にとってはどうでもいいこと、どうでもいいと言ってはあれですけれども、関係のないことだと思います。最も効率的な選択を行って、放送事業者はもっとよい番組を作るということに力を注がれるのがよいんじゃないかと思います。

 その観点では、インフラの部門を切り離すということも一案かと思います。そうしたことをやっていくと、NHK改革それから民放の再編といったことの起点にもなっていく。新しい通信・放送産業の進化に向けて、前提となるインフラ戦略をしっかりつくっていくのがいいんじゃないかと思います。

守島委員 今おっしゃるように、効率性が高まっていけば、事業者はより資源をサービス分野に特化できるということもありますし、ひいてはインフラ部門との切り分けも選択肢に入るということですが、であれば、今回のハード整備の話にかかわらず、B5Gを見据えたインフラとして、電波帯の整理とか帯域開放も一緒に考えるのが重要だと思いますが、その点、どう考えられるでしょうか。

原参考人 ありがとうございます。

 全くそのとおりで、電波の問題、希少な資源である電波を社会全体でいかに有効に活用していくか、これは大変重要だと思います。帯域の開放にインセンティブをどう付与していくのか。それから電波オークション、これはもうOECD諸国の中で導入していないのは今や日本だけです。これをどうしていくのか。

 それから、例えばアメリカであれば、帯域を開けて有効に使っていくために、従来、放送の領域で使われていた電波を買い上げて、それを新しい領域に今度はオークションで売り渡していくといったような二段階のオークションなんかもなされています。

 そういった方策も含めて、いかに電波を有効に活用していくのかという方策は更に検討いただくべき課題かと思います。

守島委員 ありがとうございます。

 維新としても、この間、NHKであったり情報通信の改革法案など、放送資源のすみ分けとか電波帯域を有効利用するという施策を推進してきました。よって、有線ブロードバンドの維持費用支援の交付金制度を始めとした今回の方針は賛同するんですけれども、原参考人の意見も踏まえて、ブロードバンドのインフラ整備にとどまらない放送、通信のあるべき姿という議論に、これを機につなげていきたいというふうに思っています。

 次に、安全、安心で信頼できる通信サービス、ネットワークの確保に関して、これも聞こうと思っていた質問が結構かぶっていたので、何点かに絞って聞きたいんですが、まず、検討会の座長を務められた大橋参考人に伺いたいんですが、特に法案では、情報が国内で管理されるべきとまでは書いていないんですけれども、電気通信事業者は情報取扱規程等を策定して、大臣に届け出、指針を公表するとされています。

 さっき森参考人のお話で話題になったんですけれども、LINE問題のように、海外でデータが保管されたり、海外の委託先から個人情報データにアクセス可能だったりすることは、これが国内と同等の適切な個人情報保護下にあっても、安全保障上の観点からやはり問題はあるのでしょうか。そうであれば、その安全性の担保という実効性をどう確保していくのか。もしなければ、この公表で国民に安心感を与えられるというのであればその回答でもいいんですけれども、御見解をお聞かせください。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身は、国内にデータ等を保管しなければならないというふうには必ずしも考えていなくて、どういう体制で保管されているのか、それをしっかり国民にも知らしめる、知らしめるというか、知っていただくことで安心だと感じていただけるのであれば、私は場所は問わないんじゃないかと思います。

 当然、ビジネスとしての効率性とのバランスの問題だと思いますので、ここは今回は周知をするということで、保管の国をですね、あるいは、それが公表できないのであれば、その理由について言っていただくという形に落ち着いたものだというふうに思っていますけれども、基本的に国外でもいいのではないかとは思います。

守島委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、しっかりと安全性が確保されていれば、国内外問わないというのがやはり市場的な考え方だと思いますが、それ以上に、やはり国民理解で何か心配だという声も十分懸念されているので、運用上、しっかりその安全性、信頼性が確保されるよう行政側にも努めていくようお願いしていきたいというふうに思っています。

 続いて、森参考人に質問をしたいんですけれども、これも少しかぶっているんですけれども、クッキー等の情報を外部送信する際、今、通知又は公表でいいということになっているんですけれども、これは各種、参考人の意見でもあったように、形骸化し、利用者はちゃんと中身を確認しないんじゃないかということは事実としてあると思っています。

 今でいうと厳しい規制と言えない現状、やはりちゃんと利用者の同意を得るべきだという意見もたくさんあると思うんですけれども、今回の利用者情報の外部送信における義務に対する見解と、運用面で、この状況で対応することができることがあれば教えていただければと思います。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございました。

 運用面でということですので、今回の法律を前提にしますと、利用者が知り得る状態に置く、利用者に通知するということですので、その中身は、それは工夫によってかなりよしあし変わってくるんじゃないかというふうに思っております。

 ですので、まずは外部送信ということについて知っていただくということが重要かと思いますけれども、今でも自主的取組としてそういうことをやっているウェブサイト、割と分かりやすい説明を書いているウェブサイトというのは、これはないわけではなくて、ですので説明の工夫ですね、外部送信の仕組みについての説明の工夫。あと、どういうところに出しているのか、その出しているところの選び方みたいなこともありますし。

 法律上の要求としては、知り得る状態に置くと、通知だけかもしれませんけれども、より一歩踏み込んで、そのオプトアウト、導線をつくるとか、どういう条件にするとか、そういうことは可能だと思いますし、また法文にも選択肢としては書かれているところですので、運用には様々なやり方があって、最低限の通知、公表でいくという場合であっても、御説明の工夫の余地というのはかなりあるのではないかと思っています。それを官民連携スキームではっきりさせていくというところもあるのかなというふうに思います。

守島委員 ありがとうございます。

 法文には同意という言葉もあるんですけれども、一定、経済団体等の意見もあって、公表とかで済むというような話に落ち着いたというふうに思っていますが、今参考人おっしゃったように、運用面でそこをカバーできるところもたくさんあると思うので、それもしっかり議論していきたいというふうに思っています。ありがとうございます。

 次に、原参考人にお聞かせいただきたいんですけれども、こうした規制というのは、まず前提条件として、諸外国と比べてどうなのか。特にヨーロッパでは、先ほどの質問でもあったように、我が国の規制以上のものがあるのが現状だと思うんですが、こうした国際比較の観点をちょっとお聞かせいただけたらと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 国際比較という観点でいえば、これはもちろん日本だけの問題ではなく、世界で、EUなどで先行しているルール形成がありますから、これは国際調和を図っていくということが非常に重要だと思います。

 それから、一般的なルールとして、欧州の場合ですと、GDPRがあり、更にデジタルサービス法があり、データ法案があるといったようなことになっているということですね。

 それから、私、最初のお話の中で、規制体系の在り方についてのお話をいたしました。縦割りの業法から横割り、横断的なものに変えていくことが重要なんじゃないかということを申し上げましたが、これはちょっと一点だけ補足をさせていただきますと、韓国では、電気通信事業法の横断規制化というのが進んでいるというように認識をしています。グーグルやアップルが自社の内部決済アプリを強制することを禁じるという法制化がなされました。

 これは日本でも是非検討すべき課題だと思いますが、こういうのは、本来は競争政策や独禁法の領域なんだと思います。これは韓国の場合は電気通信事業法の枠内でやっているといったことがあって、各国とも、情報通信の世界というのが大きく変革をしていく中で、規制体系の在り方、規制の仕組み、何が最適な規制なのかということを模索中だということだと思います。

 先ほども、正解はないんだというお話がございましたけれども、日本も、国際調和に留意をしながら、規制をバージョンアップをしていくということが大変重要なんじゃないかと思います。

守島委員 ありがとうございます。

 国際比較の話をさせていただきました。関連して、原委員に聞きたいんです。

 とはいえ、日本においては、こうした規制は事業者のビジネスモデルの本質を変更、転換させる可能性があって、電気通信事業者の存立を危うくしてしまうというような見解があって、一部の経済団体からの反対の声というのも上がっているんですが、そうした規制による市場への過度な介入という危惧に対する見解、今もう答えてもらったと思うんですが、改めて原参考人の意見を聞きたいと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 イノベーションの促進とそれから利用者の保護というのが、何か対立する概念であるかのように捉えられがちだと思うんですが、これは違うんじゃないかなと思います。

 信頼できるデータ流通の環境をつくるということこそが産業の発展、それからやっていらっしゃる企業の発展であり、更なるイノベーションを生んでいくということだと思いますので、必要なルールをつくって信頼できる利用者保護の環境をつくる、これによって、更にイノベーションの促進ですとかそういったことを進めていくことにつながるんじゃないかと思います。

守島委員 ありがとうございます。

 次に、ちょっとかぶってしまうんですが、先ほどからある、個人情報保護法との関係が不明確で、二重規制のような形になる、実運用面で負担が大きいというような指摘が経済団体からあるんですけれども、これは森参考人の整理でも、二重規制ではないという話は先ほどから伺っているんですけれども、もちろん、法の目的は違うし、クッキーが完全に個人情報と言えるわけではないんですが、この指摘に関する見解を端的に、改めて、森委員と原委員から聞かせていただけたらと思います。

森参考人 御質問ありがとうございます。森でございます。

 私は、個人情報保護法でやるべきで電気通信事業法でやるべきでないとは考えておりません。

 個人情報保護法で規制の対象になること、これはいいことといいますか、先ほど申し上げましたように、オンラインの識別子というのは、これはデジタル時代のアイデンティティーだと思いますので、当然、個人情報保護法の保護下に置かれるべきだと思いますけれども、個人情報保護法とは違う目的を持っている電気通信事業法ですね、通信サービス利用者の保護、通信の信頼確保でございますので、スマホを握り締めてやっているときにウェブの閲覧履歴が筒抜けだ、あるいはアプリの関連データを送信されてしまう、これは電気通信事業として大変困るわけでございまして、個人情報保護法とは全く別に電気通信事業法で規制対象とすることが正しい道であるというふうに思います。

 以上です。

原参考人 ありがとうございます。

 電気通信事業法と個人情報保護法、これは現行の制度において目的が違うというのは全くそのとおりであって、二重だからいけないとか、何か重複している部分があるからいけないということではなくて、これは確かに重複する部分があると思いますが、重複している部分については負担をなくす方策を考えていけばいいということだと思います。例えば共管的な運用にするとか、そういった方策が考えられるということだと思います。

 ただ、これは一方で、もう一つ、私が最初に申し上げたのは、電気通信事業法というのがかつての法律の姿から相当変質をしてきている、かなり横断的な規制になってきているんだと思います。規制体系の在り方について、さらに、それを担う行政組織の在り方について、見直すべき時期なのではないかと思います。

守島委員 ありがとうございます。

 そもそも二重ではないという御意見であったり、そういう重複するところもあれど、やはり前向きに、これから規制においては在り方を見直していかないといけないということで、だから反対というよりかは前向きに、これから、最初、大橋参考人がおっしゃってくれたように、これが第一歩ということで、ここから、より通信事業に対しての安心、安全度というのを高めていければいいかなというふうに私自身も思っています。

 最後、電気通信市場の公平な競争環境の整備に関して一問だけ、これは原参考人に聞きたいと思うんです。

 原さんからは、MVNOへの卸料金適正化は進めるべきだが、電気通信市場の公平な競争環境の観点では、根本的にNTTの完全民営化を目指すべきという意見をもらいましたが、公平な市場を構築するための、NTT民営化も含めた進むべきプロセスで想定しているものを御教示いただければ幸いです。

原参考人 ありがとうございます。

 これは、NTTが半官半民の組織であるということが、NTTとそれから他の競合関係にある事業者双方にとってビジネスの飛躍的な発展を目指す上での壁になっているということから、先ほど、NTT法を廃止をする、完全民営化をすべきではないかということを申し上げました。

 そのときに、横断的な規制をセットで導入をしていかないといけないと思います。その一つが先ほどちょっと申し上げた外資規制であり、それから経済安全保障の観点での規制も課していく必要があると思います。

 それから、競争環境の確保、ボトルネックになる設備、事業のドミナント性に応じた規制は更に必要であって、独禁法を中心とした競争政策、公正取引委員会の機能強化なども含めた、そういった対策、新しいルールの導入も含めて規制措置を講じていくべきだと思います。

守島委員 時間となりましたので、終わります。ありがとうございました。

 今日のやり取りを踏まえて、以後の法案審議であったり、業界の改革、通信分野の改革にしっかり生かしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

 本日は、ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、輿水恵一さん。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、三人の先生方に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど来、個人情報等の保護という形での論点で、いろいろな議論があるかと思います。

 大橋先生の方からは、利用者の安心、安全を確保した利用者情報の取扱いということでお話をいただき、個人情報の保護においては、企業の海外の展開を考える上でも、業法としてのそういった取組も必要だ、あるいは、閲覧履歴やアプリの利用者情報などを業法にて保護すること、これが大事だ、そういった御指摘をいただきました。

 そして、森参考人からも、同じように、現在では通信の秘密として通話やメールというものはしっかりと守られているのだけれども、ウェブサイトやアプリ等からの利用者情報、そこがちょっと抜け穴になっている、こういったところも御指摘をいただき、その上で、個人情報保護法制定時の附帯決議から、医療、金融、信用、情報通信等、高いレベルの個人情報保護が求められる分野については個別法、そういう指摘もある中で、今回の業法による改正というものは必要であるのではないか、こういう御指摘をいただきました。

 一方、原先生の方からは、そんな中でも、デジタル化の進展に伴い、垂直統合型からレイヤー型に産業や経済社会が構造転換しているという中での、縦割り、いわゆる業法から横断的規制への転換も求められるはずということで、今後の展開についても言及をしていただきました。

 そこで、ちょっと質問というか、三人の先生方に見解を伺いたいんですけれども、まさに個人に関する情報というのが、これから非常に、様々、いろいろな形でネットの世界で飛び交う。こういった中で、個人の情報というのはそれぞれ個人にとってどのような権利があるのか、またそれをどのように守るべきなのか、またどのように活用できるのか等について、原理原則をしっかり定めて、そして、その上に立っていろいろな分野での展開というものも考えることも必要なのかなと。

 そういう、もうちょっと全体的に立った視点での、ある程度の方向性というものを示すことも今後は必要になるのかなというふうに思うんですけれども、三人の先生方の御見解をお聞かせ願えますでしょうか。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、個人の情報はその個人のものだというふうに思いますので、その個人が利用についても判断すべきものだというのが、多分、原理原則として私が持っているものです。

 他方で、現在、必ずしもそうした形になり切れていないというところだと思います。今回の法改正というのは、そうした方向へある意味一歩踏み出すものですが、個人の情報について、自分が完全に管理をして、利用を意識してその許諾をするという形には必ずしもなり切れていないと思います。

 私も、そうした世界観を目指して今後考えていくのがいいんじゃないかなというふうには思いますけれども、ただ、これはいろいろな御意見がある中での私個人の意見ですので、そういうふうに受け止めていただければと思います。

 ありがとうございます。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございます。

 大変難しいお尋ねであろうかなと思いますけれども、私も、大橋参考人と同じように、基本的には、自分の情報は自分のものであって、選択する権利が自分にあって、そのことが事業者側に一定の制約をもたらすものであろうというふうに思っております。

 講学上は様々な議論があって、プライバシーとの関係で選択権を重視する大橋参考人や私のような考え方と、そうではなくて、事業者側での取扱いの適正という観点から考えていくべきであるという考え方もありまして、対立のあるところではございますが、私は前者を支持しているということです。

 今後、いろいろな分野で、個人に関する情報、パーソナルデータに関する情報の規制ということが問題になるときに、私個人としてお考えいただきたいことは、個人に関する情報の規制の場面では、事業者が誰かということは余り実は問題ではないということでございます。

 本日、外部送信とウェブの閲覧履歴のお話をさせていただきました。ウェブの閲覧履歴、これは広告事業者に送られますとか、フェイスブックが集めますとかリクルートが集めますとか申し上げましたけれども、一旦データベースになってしまったらどこに行くか分からない性質のものでございます。

 ですので、このような利用者情報、例えばこれを、通信によって外部送信されたものを仮に通信関連プライバシーと呼ぶんだとすると、その規制の対象になるのは、これは電気通信事業者だとか広告事業者とかそういうくくりではなくて、当該通信関連プライバシーを扱う人が規制の対象になるというふうな考え方をほかの分野でもしていただくのがいいのではないかと思っておりまして、なかなかそれは、もしかすると原参考人の横断的規制のお話にもつながってくるかもしれませんし、今の規制体系とは必ずしも合っておりませんけれども、私はそういうのがいいのではないかというふうに考えております。

 以上です。

原参考人 ありがとうございます。

 おっしゃられた原理原則に基づくルール整備、これはもう全くおっしゃるとおりだと思います。これも大変重要なことだと思います。

 データ保護という観点でいえば、個人にとってデータ保護は大変重要である。一方で、データを活用することによって、新しい産業がどんどんと起こり、それから国民の生活にとっても大変な利便性があるということで、保護と活用との調和をいかに図るのかということが課題なんだと思います。

 そのときに、今の個人情報保護法の規制対象とする範囲や規制の内容がこれで十分なのか、最適なのかということは見直さないといけないと思います。そのときに、まさに原理原則に基づいて、何のためのルールをつくるのかというところに立ち返った上でルール設定をしていくことが重要だと思います。

 私、最初のお話の中で、縦割りの業法のところを見直さないといけないというところにちょっと力点を置いてお話をし過ぎたかもしれませんが、そのときに、当然ながら横断的な規制、個人情報保護法などの横断的な規制についても、併せて原理原則に基づいた見直しがなされるべきだと思います。

 ありがとうございます。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 そういった中でも、私も、データは個人のものだ、しかし、個人が、世の中にどんな情報が個人のデータとして、あるいはパーソナルデータとしてあって、それがどういうふうに使われるとどうなるのか、そういった知識も国民の皆さんと共有しながら、そういった原理原則についても今後議論ができればな、こんなように思っております。

 さて、続きまして、先ほど、この事業法、電気通信事業者という、今回の規制の対象になる事業者が分かりにくいんじゃないかと、原参考人の方からございました。

 要は、実際の店舗を持っている、そういった業態だと一千万人以上であっても入らないとか入るとか、そういう問題とか、あるいは、今後、技術やサービスというのは、当然、デジタルの世界は猛烈なスピードで変化する。こういう中にあって、市場や業態であらかじめ該当する事業者を規制する、この在り方について今後様々検討の余地があるのかというふうにちょっと考えるところでございますが、三人の先生方に、その点についての御見解もお聞かせ願えればと思います。

 よろしくお願いいたします。

大橋参考人 どうもありがとうございます。

 若干難しい問題だと思っていますが、確かに、通信というものを使わない業態というのがもはやなくなってくる中において、通信事業者とは一体どういう事業者を指すのかということの理解がだんだんだんだんぼやけてきているということがあると思います。

 これをどう今後整理していくのかということが重要だと思うんですけれども、多分、私の頭の中の整理は、通信の基盤的な部分と、その基盤的な部分の上に乗っかる各種サービス、いわゆる医療、介護であったりとか、あるいは製造業でもいいですけれども、そういうふうなサービスが存在しているというふうな二層的なものが私の頭の中にあって、基盤的なところは、今回議論している、ある意味総務省なりが見ている部分があって、上の、個別に扱わなきゃいけない部分、やはりそういう部分が出てきていて、そこというのは、医療、介護であればそこの業法が見ていくというふうな、分担する姿が一つあるのかなと。それぞれの業態によって、実は配慮すべき事項のウェートの置き方というのは若干違ってきていると思うので、全てを一般的なもので網羅させることの多分デメリットもあるのかなと思います。

 実際に、今日、競争政策の話もありましたけれども、競争政策自体がそういうふうなたてつけになっていると思っていまして、独禁法というものがありますけれども、各業法の中にそれぞれ競争政策的な条項というのが埋め込まれているのが現在の在り方で、それ自体の分担について、特段大きな違和感なく、多分、今それなりに運用されているというふうな認識でいますので、そのような姿も一つの将来的な姿としてあり得るのかなという感じはしております。

 ありがとうございました。

森参考人 御質問ありがとうございます。森でございます。

 これまた難しい御質問ではございますが、切り分けというのは現行法でもできなくはないと思っておりまして、例えば、私が銀行のウェブサイトにアクセスをするといたします。そして、そのウェブサイトにアクセスをして、銀行で自分の振り込みとか入出金を行う、インターネットバンキングを使うというときに、銀行のウェブサイトにアクセスするまで、これはインターネットアクセスプロバイダーであるMNOやISPを使って銀行のウェブサイトにアクセスしまして、ここまで通信の守備範囲だと思いますけれども、そして、銀行でログインをしてから後のインターネットバンキングにおけるデータみたいなことは銀行の扱いだ、銀行の中のことだと思います。

 では、その銀行のウェブサイトに置かれた先ほどの外部送信用のタグ、これはどうなのかみたいな、そういうところは確かに分かりにくい話にはなりますけれども、タグを設置している人はいろいろなウェブサイトにタグを設置しているわけですので、どちらかといえば通信の世界のこととして共通のくくり出しができると思いますので、現行法上、そういう切り分けというのは一つできなくはないかなと思っております。

 電気通信事業法に関して言えば、御指摘のとおり、様々な業態があったり、今の電気通信事業者、電気通信事業を営む者との区別が難しいというふうなお話はありますけれども、最終的な形としては、電気通信のサービスを利用者に対して提供している者ということで、これは設備がどうであろうとも、特に、ネットワーク仮想化みたいなことも言われておりますので、設備を持っている、あるいはアプリだけでやっている、そういった区別なく、それらを電気通信サービスを利用者に提供する者として、利用者目線で規制をしていく法律になるのがいいのかなというふうには思っております。

 以上です。

原参考人 ありがとうございます。

 やはり、これも原理原則に基づいて、一体どういう場面で、個人データについて、どのような保護をすべきなのかということを考えるべきなんだろうと思います。

 やはり、今の電気通信事業法の体系の中でいいますと、先ほどネットバンキングの例で申し上げましたように、電気通信設備の使い方によって電気通信事業に当たるのかどうかが変わる、それによって規律がかかるのかかからないのかが変わってくるというのは、これはどうも、本当にデータを保護する、消費者を守るという観点から考えたときに、これが妥当なのかというところには疑問があるように思います。

 そういった観点で、どういった場合に消費者の利益をどのように守るのかというところをきちんと整理をし直すということが課題なのではないかと思います。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 その上で、三人の先生方にお聞きしたいんですけれども、利用者の安心、安全を確保した利用者情報の取扱い、また保護という観点からすると、こういった企業の取組とか考え方と同時に、やはり最近、サイバー攻撃の複雑化、巧妙化ということでリスクが増しておりまして、近年は、総務省の調査だと、一年間に観測された国内外からのサイバー攻撃の関連の通信数が三年間で三倍になっているということです。

 そういった中で、やはり安全、安心のためには、事業者のサイバーセキュリティー対策の在り方ということについても、しっかりとある程度の見解というか基準がないといけないのかなというふうに思うんですけれども、この点についての先生方の御見解をお聞かせ願えますでしょうか。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 サイバーセキュリティーに関して、私は必ずしも専門の分野にいるわけではないですけれども、企業の取組としても非常に重要というか、最近でも、製造業の、自動車の部品メーカーがサイバー攻撃に遭って、かなりの部分で操業停止をせざるを得なかったというふうなこともあったと思います。

 現在のサイバーセキュリティーの、私の見立てですけれども、結局、各業態、業に任せてつくらせている部分というのがあるのかなと思いまして、もう少し統一的な基準の中でエンフォースしていく必要があるのかなと思います。

 各社の取組、皆さん非常に頑張っていますけれども、やはりそれだとばらつきが出てしまうので、一つの、アリの一穴からいろいろなところにネットワークで広がってしまうところもありますから、全体としての底上げをどうやって図っていくのかというのは極めて重要なイシューだと思います。

 ありがとうございました。

森参考人 御質問ありがとうございます。森でございます。

 私は全くサイバーセキュリティーの専門家ではないわけでございますけれども、電気通信事業法との関係では、サイバーセキュリティーに関する対策を行う際に個々の通信をチェックする、確認するということがありまして、これが通信の秘密との関係で問題になる場面というのはあります。

 この通信の秘密とサイバーセキュリティーの関係を、今は割とアドホックに、サイバー攻撃に対する通信サービスの在り方検討会、ちょっと済みません、正式な名称を忘れましたけれども、そういったところで検討して、これは緊急避難でできるであろう、これは正当業務行為でできるであろうというふうにしておりますけれども、一方で通信の秘密の問題、片方で、他方でサイバーセキュリティー、非常に重要な二つの利益の緊張関係が問題になっていますので、そういったことを電気通信事業法の中で法制化して何らかの原理原則のようなものを決めていくということは、意味のあることではないかというふうに思います。

 以上です。

原参考人 ありがとうございます。

 サイバーセキュリティーの問題、今回のウクライナの事態でも問題が顕在化していると思います。ルールの整備強化を図っていくということが大変重要だと思います。

 その際に、最低限のルールでよいところから、それから重要インフラのようにより高い水準が求められるところまであるわけで、そういったレベルに応じたルールの整備強化がなされていくべきということなのかと思います。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさにそういった中で、ユニバーサルサービスということで、かつては、いつでもどこでも声がつながる。そして今度は、いつでもどこでもデータでしっかりつながっていく。また今後、将来的には、先ほど自動運転だとかドローンだとかそういうお話もありましたけれども、いつでもどこでも物や事がつながっていく、そういう社会になるのかな。

 このように思っている中で、やはり、そうなったときの基盤というか、事業者の、レイヤーごとのサービスの部分と、通信の安定性とかあるいは高速性とか品質というものも非常に大事になってくるのかなというふうに思うんですけれども、今回の、事業者の品質とかレベルというものに対しての、どうあるべきかということについて簡単に三人の先生に御見解を伺えればと思うんですけれども、よろしくお願いいたします。

赤羽委員長 時間が参っておりますので、簡潔によろしくお願いいたします。(輿水委員「委員長」と呼ぶ)

 輿水さん。

輿水委員 済みません、今、簡単にと言ったんですけれども、時間になってしまいました。

 今後も、そういったサービスについてまた皆様方と議論しながら、全国民の皆様が安全で安心なサービスが受けられるような、そんな社会を皆さんと目指して頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今日は、ありがとうございました。以上で終わります。

赤羽委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 今日は、参考人の皆様には、大変お忙しい中お越しをいただきまして、専門性に基づいた大変有意義なお話をいただいておりますことに感謝を申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 若干同じような質問をさせていただくことがあるかと思いますけれども、どうぞお許しいただいて、よろしくお願いいたします。

 先ほどからも議論があっておりますけれども、ウクライナの問題、大変、これまで想定しておらなかった有事が今発生をいたしておりまして、日本においては、自然災害も含めて、通信というものがそういう有事にしっかり保たれていくということがいかに重要であるかということを、今回のことで改めて痛感したわけでございます。

 これまでの参考人のお話の中でも、強靱な情報のインフラをしっかり平時から整備していかなければいけないという御指摘もあっておりましたけれども、今後、緊急に、しっかり整備をしていくために今必要なこと、また、これからの課題について、お三人の参考人の先生方に御所見をお聞きしたいと思います。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに、我が国は自然災害も多いですし、また台風その他、地震が非常に来る中で、しっかり情報通信インフラを整備していく、それがまた地方創生にもつながっていくということなのかなと思っています。

 他方で、全てのインフラを基礎的電気通信役務として入れるということは、国民負担の観点から非常に重たいことになってしまいますので、やはり、事業者の競争を促しながら、そこに補完する形で、しっかり全国津々浦々へと情報ネットワークが広がっていくという形をうまくつくっていく必要があるんだと思います。

 今回、ブロードバンド、有線ブロードバンドですけれども、有線ブロードバンドの中にも、競争がある地域とない地域があります。ない地域については、やはり一定程度、事業者負担の中で、あるいは国費の中で面倒を見て埋めていく。ただ、複数の事業者がいるところは、そこは競争的な環境の中で、民営の中でやっていただく。そういうようなバランスというか、なるたけ国民の負担を最小にしながら、いかに効率的にネットワークを広げていくのかというのは非常に重要な視点だなというふうに思っています。

 ありがとうございます。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございました。

 私は、インフラ整備ということよりも、ちょっと、今回の事業法改正との関係でも、事故報告の義務を拡大するという議論がなされたわけでございます。

 これは、通信サービスを提供する主体が、様々な事業者が出てきているということなので、これまでは設備を持っている一部の事業者がサービスを提供しておりましたけれども、だんだんそうではなくなってきて、SaaSのベンダーのようなものがサービスを提供できる、あるいは、そういったベンダーと契約をして、何も持っていない事業者であっても、直接、通信サービス契約をユーザーとの間に締結するというようなこともできるようになってきておりますので。

 そういう意味では、通信が例えば止まったときに、何で止まったのか分からないとか、事故原因も分からないとか、また止まるかもしれないみたいなことになるとそれはよくないと思いますので、やはりプレーヤーの変化に応じて、適宜、事故報告のような規定はアップデートしていく必要があるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

原参考人 ありがとうございます。

 有事ですとか巨大な災害も考えたときに、通信インフラそれから電力インフラ、いかに強化をしておくかということが大変重要だと思います。その更に裏側にある海底ケーブルの整備ですとかデータセンターの整備、こういったことも課題であって、これは既に取り組まれつつあるのかと認識しております。

 一方で、総務省さんなどの出されている資料を見ているに、先ほど私、ちょっと触れましたけれども、衛星コンステレーション、これはウクライナでまさに今用いられて、何とかそれで保っているという衛星コンステレーションについて余り力が入っていないように見えたものですから、ここは是非取り組んでいただけるといいんじゃないかなと思って、先ほども意見を申し上げました。

西岡委員 ありがとうございます。

 様々な、先生方から御意見をいただいたわけでございますけれども、今、ブロードバンドのお話がございました。

 現在、基礎的電気通信役務の対象とするブロードバンドは、有線ブロードバンドに限るとされております。諸外国においては、ユニバーサルサービスにおいては提供技術の限定はしていないわけでございますけれども、日本が有線ブロードバンドのみとしていることについての見解というものを、先生方、お三人の先生方にお聞きをしたいと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 競争中立という言葉がありまして、同じ目的を達成するのであれば手段を選ばない、つまり、有線でも無線でもいいのではないかという考え方が他方であることは承知をしています。

 他方で、これは事業者などの御意見なんですけれども、無線と有線だと、事故時とかその復旧とか、あるいは設備的なトラブルの予見性でいうと、有線の方が技術的に安定であると。無線については、地方まで行ったときに、トラブルが起きたときにそれを即座に復旧できるような人材がどこまでいるのかということについて、不安視する声が非常に多かったということも事実だと思います。

 また、携帯もあるいは無線も、ある意味、我々の感覚からすると、低廉で、津々浦々、不可欠性もありますし、そういう意味でユニバーサルサービスと我々は感じますが、基礎的通信役務という観点でいうと、これは競争補完という考え方で基本的に交付金なりお金を入れるということがもう一つついてきます。

 携帯電話あるいは無線においては、基本的には国費を入れなくても、競争的な環境の中で、ロードマップの中で事業者自身が広げていくというふうな形で取り組まれているところもありますので、今すぐ基礎的電気通信役務に入れるということ自体は、やはり若干無駄なお金を投じることにもなりかねない事態を生むというふうに思いますので、当面は有線ブロードバンドでやっていく。

 ただし、本当に無線で全国津々浦々、事業者が行くと言っている形で行くかどうかというのは、今後を見なければなりませんので、もし過疎地域とか、人口減少が思ったよりも早く進んだ場合に、事業的に難しいということが生じた場合には、またそのときに次の手を考えていかなきゃいけないのかなという意味で、ある意味、今後考えていくべき点もあるというふうに申し上げたところでございます。

 ありがとうございます。

森参考人 森でございます。

 お尋ねの基礎的電気通信役務に無線を入れるべきかということについて、適否を考えたことがありませんので、御容赦いただきたいと思います。申し訳ありません。

原参考人 ありがとうございます。

 日本の場合には、有線のブロードバンドが圧倒的に普及しているということなんだろうと思います。これから白地で整備を進めていくということであれば、これは中立に、有線でも無線でもいいんじゃないかということが合理的なんだと思いますが、一方で、日本の現状を考えると、有線ブロードバンドが非常に普及をしていて、いや、むしろ世界と比べてもずっと普及をしているのに、なかなか利活用が進んでいないということの方が課題なんだろうと思います。

 その現状で考えると、今回の改正案において、有線のところを取りあえずユニバーサルサービスにするという判断をされているというのは、これは合理的な判断なのかなというようには思っております。

西岡委員 ありがとうございます。

 続きまして、森参考人にお伺いをしたいと思います。

 これまでも議論があっております、例えばLINE社の問題でございますけれども、業務委託先の中国関連会社の従業員が我が国の利用者の個人情報にアクセスが可能な状況であったということを含め、また、そのデータが日本のみで管理をされているということだったのが、実は他国で管理をされていたなど、様々なLINE社の問題で、今、先ほどからも御議論があっておりますけれども、データをどう扱って、どう考えるかということが大変重要な課題だというふうに思っております。

 私自身は、やはり、先ほど先生方からもお話がありましたけれども、基本的に、データは個人がそのデータの使い道を決めていくということが大変重要だというふうに思いまして、データ基本権ですとかデータ自主権というのが、今、日本ではまだなかなか確立をされていないという状況があるというふうに思っております。

 例えば、クッキーなどによってブラウザーや端末から収集する利用履歴データというものは個人情報ではないというくくりに今なっているということ自体が、諸外国においてはこれは個人情報だという範疇で法体系がなされているということも聞いておりますけれども、今後、データというものをどう捉えながら利用者の情報を保護していくかということを、是非、また森参考人にその方向性をお聞きをしたいのと、また、今回、大変当初の議論からは後退した中で、公表するというようなところでかなり後退をしたということでございますけれども、今回の法改正で、今までよりは利用者の情報が保護されるという面があるのであれば、御説明をいただきたいというふうに思います。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございました。

 二点御質問いただきまして、前半は、今のような外部送信のような状況との関係で、データ保護法制全般についてということでのお尋ねだったかと思います。

 私は、全く新しい法律を作るというようなことではなくて、やはり最初にやるべきことは、先ほど申し上げましたようなデジタルにおける、我々の生活のデジタル化といいますかオンライン化といいますか、それが非常に進んでいることからすれば、名前が分からない、どこの誰であるかは分からなくても、オンライン上、この人と言えるようなことについては、これは個人情報保護法の保護の対象にすべきであるというふうに思いますので、個人情報の範囲を拡大するということがやはり一丁目一番地でやることではないかというふうに思います。

 済みません、後半部分の御質問をもう一度お願いしてよろしいでしょうか。大変申し訳ありません。

西岡委員 諸外国においては、クッキー等で収集した情報というのを個人情報というふうに捉えているというところが日本と。

森参考人 大変失礼しました。

 そうですね、それもレベルが違うということも問題でして、他国で受けられている保護のレベルを日本の消費者が、日本の国民が受けられていないというのは、それは問題だと思います。

 また、今回の電気通信事業法でよくなるのかというお尋ねもあったかと思いますが、これもよくはなるというふうに思っております。

 外部送信の状況について、先日、総務省の検討会で、よく知っていると何となく知っているを合わせて三割であるというふうに伺いました。これはある調査によってですけれども。

 今回、法律ができることによって、一つは、確認の機会を与えられるというだけでも一応の保護にはなりますし、また、法律ができることによって、外部送信の仕組みが多くの人に知られて、それによって問題意識が更に高まって、更なる利用者保護の規制へのアップデートが可能になるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

西岡委員 恐れ入ります。

 あと一問、森参考人に引き続いてお尋ねをしたいと思います。

 先ほど、サーバーを設置する国の問題というのもあるというふうに申し上げたんですけれども、サーバー設置国をしっかり公表していくということも大変重要なことではないかというふうに思いますけれども、サーバーを設置している国名をしっかり義務づけをしていくというところについて、森参考人の御見解をいただきたいと思います。

森参考人 ありがとうございます。

 お尋ねは、恐らく、どこでデータを取り扱っているかということをしっかり公表するということだと思いますけれども、これは個人情報保護法でもそれに関する一定の義務が課せられておりまして、公表しないといけないということがあるわけですけれども、どこに置いてあるかを公表することと同時に、そこがどんなところなのかということが消費者に分からないといけないということかと思います。

 そのような観点から、個人情報保護委員会は、一定の国については、そこの法律がどんな法律なのか、日本と比べて保護のレベルがどうなのかということを調査して公表してくれているわけですけれども、そういったことをより進めていただきまして、どんな法律になっているか。

 そしてもう一つは、ガバメントアクセスですね。政府が事業者、委託先の情報に裁判所の令状等なくアクセスしたりすることがあるのかというようなことも併せて公表していただいて、どこにあるのかということと併せて、その国の状況がどうかということも消費者が知れるようにすることが重要ではないかと思います。

 以上です。

西岡委員 ありがとうございます。

 それでは、原参考人にお尋ねをしたいというふうに思います。

 御説明いただきました中に、実効的な利用者保護規制を行うべきということでお話をしていただいたんですけれども、その中で、実効性を高める方策を検討すべきというお言葉がございましたけれども、具体的にはどういう方策を検討すべきであるとお考えになっているのかということについてお伺いをしたいと思います。

原参考人 ありがとうございます。

 実効性が今現状においては疑問であると申し上げましたのは、同意の取得とか通知とかが義務づけられていても、実態として、これは私自身もそうですけれども、表示されている取扱規程はもうとても見る気になれないというようなケースが多くて、これを何とかしないことには、通知を義務づけたところで、同意取得を義務づけたところで、消費者から見たら、よく分からないものが出てきて何か面倒くさいなというだけになってしまっているのではないかということでございます。

 なので、先ほど一案として申し上げましたのは、技術的な仕組みを使って改善をする余地がないでしょうかと。これはデジタル技術を使って、標準的なルールと今使おうとしているサービスとでルールがどう違うのか、緩やかな場合もあればより厳しくなっている場合もあると思いますが、厳しくなっているとしたらどこが厳しいのか、何か甘いところがあるとしたらどこが甘いのかということが何か表示されるような仕組みをつくるとか、そういったことができると、より実効性が高まっていく。消費者から見ても、いや、これで大丈夫かなということが気づけるとか、そういったことになっていくんじゃないのかなと思います。

 ほかにもいろいろな可能性があるかと思いますけれども、是非御検討いただければと思います。

西岡委員 大橋参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 御説明の中で、利用者の安心、安全を確保した利用者情報の取扱いというところの最後の項目でございますけれども、海外での厳しい規律や規制に堪え得るような国内事業者をしっかり育てる仕組みが必要だということの言及があったというふうに思いますけれども、具体的にどのような形でこのことを進めていくという、具体的なことがございましたら、御教示いただけたらと思います。

大橋参考人 これは恐らく運用上の話にはなると思いますが、まず一つは、消費者がよりデータの管理を厳格にやっている事業者を選ぶような雰囲気というか、そうした土壌をつくっていくということも、もう一つすごく重要だなと思っています。

 法律的に規制を課す以上に、そうしたマーケットをつくっていくことで、データに関する消費者の、あるいは国民の意識を高めていくという活動の中で、やはり海外の競争にも堪え得るような事業者を国内から育てていくというふうな姿勢はすごく重要だなと思って申し上げた次第であります。

西岡委員 もう時間となりました。

 本日は、大変有意義な、勉強になる御助言をいただきまして、ありがとうございました。

 これで私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 三人の参考人の先生方、本当に今日はありがとうございます。

 私の方からも御質問申し上げたいと思うんですけれども、順々に各会派がこうして質問してまいりますと、いよいよ、全て、大概のことは聞かれてしまいまして、質問が残っていないという状況でありますけれども。

 まず、大橋参考人にお伺いしたいんです。

 先生は、政府、電気通信事業ガバナンス検討会の座長をお務めだったと思うんですけれども、第十六回の議事録を少し見せていただきましたら、大橋先生、座長の方から、様々な議論、これを御紹介いただいた上で、「しっかり議論できたかというと、そこまでには至っていないと私も思っていまして、そこは忸怩たる思いはありますけれども、ステークホルダーも非常に多いですから、そうした方々を交えて今後しっかり検討していってほしいと思います。」という御発言が記されております。

 「忸怩たる思い」という言葉を使っておられますので、その辺りの先生の思いを、是非この場でお聞かせいただきたいと思います。

大橋参考人 どうもありがとうございます。

 まさに発言どおり議事録が残っているということでございます。

 ある意味、先ほどの御質問の中でも、私が利用者情報に対してどう考えているのかということについて若干お話をさせていただきました。

 いろいろな見方がいる中で、決めなきゃいけないことですから、そういう意味でいうと、ステークホルダーの声は全て聞いて、皆さん御納得の上で、最終的な案として合意をいただいたという点においては、私はしっかりとした改正案ができたというふうに思っています。

 他方で、利用者情報の保護について、私自身は、先ほども申し上げたように、基本理念からすると、やはり、利用者がしっかり自分のデータとして判断ができるような、そうした環境をつくることが理想だなというふうに思っています。

 それは、技術的にもなかなかまだそこまでに至っていないことも分かりますけれども、そうした思いの中で、ちょっとそうした発言もあったということでございますが、案としては、やはり、現状以上に、今回の改正案は、国際的な動向という意味でいうと整合的なもの、つまり強化の方向へ向かっていますし、利用者保護にも一歩前進ですので、そういう意味でいうと、私自身は、今後更に、これを出発点にして、よりよいものをみんなで工夫して考えていくことが重要だなというふうに考えているところでございます。

宮本(岳)委員 ありがとうございます。

 先生のそのじくじたる思いも受け止めて、国会としての役割を果たさなきゃならぬと思うんですね。

 今、基本理念というお言葉がございましたので、実は、私は長く国会議員をやっておりまして、参議院議員をかつてやっておりましたとき、二〇〇〇年の十一月でありましたけれども、初めて国会に、これは高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案、通称IT基本法と呼ばれるものが出てまいりました。あれは森喜朗政権であったと思いますけれども、そこで、この法案を審議、私自身が審議に当たったわけでありますけれども。

 共産党は、よく何でも反対というふうに誤解されますけれども、高度情報ネットワーク社会、IT社会、これは反対ではございません。大いに意義あるものというふうに位置づけておりまして、私、ここで、こう申し上げました。

  そもそも情報技術は民主主義と密接なかかわりを持っているものであります。ルネッサンスでの印刷技術の発展が、フランス革命に代表されるその後の民主主義の形成に大きな力となったのを初め、新聞、放送など情報技術の開発とその普及が国民の情報入手と発信の手段を広げ、言論による民主主義の前進に大きく寄与してきました。

  また、近年の情報通信技術の進展は、経済の分野だけでなく、国民の社会生活や文化をも大きく変化させつつあります。インターネットの普及は、生活水準や利便性の向上のみならず、民主主義の発展にも文化の向上にも大きな寄与をすることができる一方で、新たな社会的格差を拡大する可能性も持っています。だからこそ、新しい技術を国民全体のものにし、民主主義の発展と国民生活と福祉の向上、さらには文化の発展に役立てるための本格的な取り組みが求められているのです。

こう述べた上で、しかし、この見地が欠落しているからこの法案は駄目なのだと述べておりますから。そこから始めているんですね。

 ちょっと、三人の参考人の先生方お一人お一人から、これは二〇〇〇年に私が申し上げたことですけれども、こういう理念についてどのようにお感じになるか、それぞれお聞かせいただきたいと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 まさに、インターネットの黎明期において、インターネットが普及することで民主主義が更に増進される、そうすることで自由な言論の世界が生まれるというふうに、我々というか、多分多くの方々がそういう思いで取り組んできたんだと思います。

 そうしたインターネットの普及の広がりと、あと深さが今の時点まで至ったときに、我々振り返ってみると、確かに、情報というのは、アクセシビリティーというのは物すごい高まったことは間違いないですが、他方で、別の弊害も生んだというふうなことなんだと思います。

 それは、典型的には、寡占の問題ですかね、データ独占の問題であるとか、それに基づく、今日ケンブリッジ・アナリティカ等のお話もありましたけれども、ある意味フェイクニュースのような問題、そうした情報に基づいて我々は判断をするわけですから、やはり、情報の基盤自体が、いかに公正なもの、それは営利の手ではなくて、しっかり公共のものとして基盤をつくるかということが極めて重要だということを、私たちは今学んでいるところなんだと思います。

 今、新しい技術を国民のものにするとおっしゃいました。国民のものになっていないんです、今。そういう意味でいうと、いかに国民のものにするのかということの、まさに我々は試行錯誤をしているさなかであって、これについて、まだどの国も解答を見出していないという状況であります。

 そんな中で、我が国は我が国なりのやり方を、各国の知見を学びながら今やっているところでありまして、この改正案がまさにその第一歩になるというふうな認識でおります。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございました。

 まさに大橋参考人のおっしゃったとおりですけれども、元々、インターネットによって、これまで大きなメディアに独占されていた情報発信が個人の手に戻ってきた、個人でも情報発信できるようになった、いろいろな人が情報発信できるようになったというのは、これは本当にいいことだと思います。

 そして、今日、外部送信の文脈でお話ししましたレコメンデーションのようなことも、これは、本来はやはり、私に合ったものをコンテンツとしてお勧めする、私が買いそうなものを広告として出すということなので、便利な面というのはあるわけでございまして、そういう意味では、どんどん便利になっているということは、これは確かなんだろうと思います。

 ただ、やはり一方で、看過し難いデメリットが、影の部分が生まれてきて、それによって非常に大きな危険にさらされる。これは国家、社会も併せてということですけれども、そういった問題が出てきましたので、これに対する対応が求められていて、今回、利用者情報の規制というものがここでできましたので、これを初めの一歩として、それはもう本当に初めの一歩でして、今後のアップデートによって問題意識を皆さんに共有していただくと同時に、利用者情報の保護を強化していただきたいというふうに思います。

 以上です。

原参考人 ありがとうございます。

 先ほど読み上げられたIT基本法の審議の際の御発言は、全くそのとおりだと思って伺っておりました。IT化を進める、デジタル化を進めるといったことは、これは、何か党派によって意見とか利害が異なるということではなくて、社会をよりよくしていくための基盤であるということなんだろうと思います。

 ただ、今お二人の参考人も言われたように、その進め方においていろいろな問題が起きているということはそのとおりであって、これが技術によって解決していく面もあると思います。それから、制度によって、これはまさに先生方に新しいルールを設定していただいて、ルールによって解決していける部分もあるということで、まだ課題が残っているということなのかと思いました。

宮本(岳)委員 ありがとうございます。

 さあ、そこで、そのような安心、安全で国民に寄与できるネットワーク、IT環境というものをつくっていく上で、一つは、やはりユニバーサルサービスという、今回も出てきている。先ほど申し上げたのがもう二十二年前でありますから。そして、その頃には光ファイバーも全然なくて、むしろ、光ファイバーが非常に先行して、とにかくIT化というのは光ファイバーを引くことだという時期もありました。その結果、今日、先ほどお話があったように、相当な普及率になってきているということですが。

 ブロードバンドをユニバーサルサービスとして接続をしっかり進めていくというのはいいんですけれども、このユニバーサルサービスの概念というのは、元々は、国は、ユニバーサルサービス、これを保障する責任がある、国民の側からは当然それを求める権利がある、そういうことで特に固定電話等々はやってきたわけですよ。ところが、今回のものはそういう概念になっていない。

 私は、やはり、ブロードバンドへの接続の権利と、それを公的に、これは、国が直接保障するかどうかは別として、当然、筋合いとしたら、社会の側から全ての国民に保障する、こういう理念が必要ではないかと思うんですが、これは大橋参考人と森参考人の御意見を聞かせていただけますか。

大橋参考人 ありがとうございます。

 恐らく、今、ユニバーサルサービスの議論を今回していますが、サービスが出た暁には、じゃ、アクセスはどうなんだというふうなお話も当然出てき得るのかなというふうに思います。他方で、まだ敷設が進んでいない部分については、これはしっかりユニバーサルサービスとして事業者が自らの責務としてやっていただく必要が恐らくあって、今回、そうした形での御提案だと思っています。

 確かに、ブロードバンドにおける基礎的電気通信役務の扱いというのが第一種固定電話とは若干違っていて、それは何かというと、地域によって十分ペイしている地域と、あと、競争がやはりないので、広げるためには何らかの交付金等の手だてが必要だという地域があって、また、これは、整備費をどう考えるのか、あと、その後の維持費をどう考えるのか、細かく実は考えていかないといけない部分があるんだと思います。

 詳細の一部は今後詰めていくということになっているんだと思いますけれども、やはり、そこの部分はしっかり、まずは敷設。設備として持っていく。その後、じゃ、アクセシビリティーはどうなんだということの今御指摘された議論をしていかなきゃいけないんだと思いますが、ただ、この議論は、恐らくまだ十分議論がされていないイシューだと思っていまして、そういう意味でいうと、ちょっと、そうした議論も今後、議論の熟度が高まる中でやっていくべき内容の一つだと思います。

森参考人 森でございます。御質問ありがとうございます。

 アクセシビリティーについては、重要な問題だと思いますけれども、私も専門家として十分に考えたことがありませんので、御回答は御容赦いただきたいと思います。

宮本(岳)委員 維持費ということも、今、コストの問題ですね、大橋先生からもございました。

 元々のユニバーサルサービスという場合は、例えば郵便などもユニバーサルサービスでありますけれども、山のてっぺんに送る場合でも、切手を貼れば同一料金でと。コストから考えれば到底考えられないんですけれども、それを保障するというところにユニバーサルサービスという考え方の根本があるので、コストがかかるからどうこうということでは元々はなかったと思います。それを、民営化したりとか競争政策を導入して、様々、今日ここまで来たのかと。改めて、ユニバーサルサービスということも今後議論していく必要があるというふうに思います。

 さて、個人情報の保護、プライバシーの保護というのが、実はこの二〇〇〇年のときにも、そういうネット社会の発展の上で鍵であるということは議論もされました。そして、森参考人が資料におつけいただいた二〇〇三年、平成十五年四月二十五日のこの個人情報保護法制のときの附帯決議ですね。私はこの法案の審議に当たりましたが、これも覚えております。改めて、プライバシーの保護というものがやはり非常に大事だということは言うまでもないことですよね。

 それで、改めて、この十六回のまた電気通信事業ガバナンス検討会の議事録等々も読ませていただきますと、ここで森参考人は、この議事録の中で、「まず、適正な取扱い規律の適用対象となる利用者情報からCookieや広告IDにひもづく情報が外れていますのは残念です。」とはっきり述べておられます。

 今回こういう形になったことについて森参考人はどのようにお感じか、そして、どうすべきだとお考えか、聞かせていただけますか。

森参考人 御質問ありがとうございます。森でございます。

 議事録に書かれているとおり申し上げました。

 私としては、特定利用者情報の範囲については、そういった契約とか、そういったものと関係なく、先ほどちょっと通信関連プライバシーみたいなことを申し上げましたけれども、広くその本人に対して影響を与える、その本人がどんな人かということを把握した上で、その人に影響を与えられるような情報については、それはやはり危険があるわけですから、その保護の対象としていただきたいというふうに思ったわけでございますし、現在でも思っているわけでございます。

 しかしながら、先ほども申し上げましたように、人によって様々な意見がある。そして、法案として出てきたら、それを法律にしていただくことによって一定の保護が図られるわけです。これまでみたいな何にもなしではなくなるという意味がありますので、まずは法律を成立させていただいて、そして、しかる後、この今後の検討課題のところで、環境の変化に応じた制度の在り方の見直しということが強調されています。これは、素早いアップデート、早いアップデートということを、今回の法改正というのは、ある意味、中に内在させているものではないかと思いますので、この問題について、状況の変化、あるいは諸外国の状況を踏まえてアップデートを繰り返していただきたいというふうに思っております。

 以上です。

宮本(岳)委員 この法案をめぐっては、経済団体等の反対もあったというふうに聞いております、もちろん。経済にとってどうかということが検討されたんだろうと思いますけれどもね。

 私たち、実は今、優しくて強い経済ということを申し上げるんです。これはなかなか、ぽかんとされることが多いんですが、優しかったら弱い、厳しく競争を、激しい競争をやれば強くなる、こう考えがちですけれども、実は、この二十年ほど、競争政策をあおり、厳しい戦いをやってきましたけれども、結論としては、やはりなかなか強くはならなかった、むしろ優しいことこそ強いことではないかというふうに考えておりまして、個人情報の保護とか、あるいはユニバーサルサービスをきちっと確保するとか、そういう社会こそ実は経済的にも強くなるんだ、こういうふうなことも考えております。

 先生方の御意見をしっかり受け止めて、この審議に万全を期したいということを申し上げて、今日の質問を、時間ですので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げさせていただきます。

 参考人の皆様におかれましては、長時間にわたりまして、様々な質疑に対しましても、専門性に基づいた的確な御意見を頂戴いたしました。今後の法案審議に大変有用なやり取りだったというふうに存じております。委員会を代表いたしまして、御礼を申し上げます。

 本当に今日はありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る五月十日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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